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[716] 人柱力と妖魔の敵
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2007/11/28 18:21
               NARUTO



             『人柱力と妖魔の敵』


          
             第1話 人柱力の邂逅





「・・・・・・やっと、終わった」



 血まみれで傷だらけの体を起こして呟いたのは、5歳程度の金髪の少年。



 里外れの小さな川のほとりで水を汲んでいたら木の葉の里の人間が来て、突然背後から襲われた。



 数名の大人による気が遠くなるような暴力は、数十分続いてようやく終わった。



 少年・うずまきナルトは血や泥がついた体を綺麗にするために川に入って汚れを落としていた。



 冷たい川の水が傷口に沁みこんでピリッと痛みが走るが、その痛みが現実感と生を実感させる。



 それがとても苦しくて、ナルトはぽろぽろと涙を流した。



「・・・・・・なにが、いけないのかな・・・・・・なんで、ボクだけ」



 自分が何か悪いことをしているつもりはない。



 だけど、周りの大人はみんな冷たい目で見てくる。



 なんでそんな目で見てくるのか、さっぱりわからなかった。


 こういう、不当な暴力という表現が生易しい程の行為は日常茶飯事におきている。さすがにナルトの心も里の人達への憤りと憎しみでいっぱいだった。



 父・四代目火影『波風ミナト』と母『うずまきクシナ』が我が子の荒んだ状態を見たら、どう思うだろうか。



 妹が、今の自分を見たら間違いなく泣いてしまうだろう。



 ナルトは必死に涙を止めようと袖で拭う。



 そんな時だった。






「見つけた・・・・・・」







 突然聞こえた声に振り返ったナルトは、目の前にいる15歳程度の女性に見入った。



 金髪に黒目、特に変わった人ではない。



 ただ、その姿から溢れ出す気配が、そして瞳が、ナルトに不思議な感覚をもたらしていた。



「お姉さんは、誰?」



「ん? 私の名前はユギト。雲隠れの特別上忍にして『二尾』の人柱力よ」

「ジンチュウリキ?」



 初めて聞く言葉に首を傾げるナルト。



 ユギトと名乗る女性はナルトの頭を撫でながら微笑んだ。



「そう。君と一緒でね、雲隠れの里の人間に嫌われてて、そんな今が嫌で・・・・・・幸せになりたくて、同志を集めてるの」



「お姉ちゃんも?」



「そう、お姉ちゃんも。そして君の苦しみも悲しみも寂しさも、究極の所まで理解できるうちのひとりよ。だから君を助けにきたの」



「・・・・・・助けてくれるの?」



「うん。お姉ちゃんについて来たら君の友達になれるし、もっとこれからも友達を増やしていける」



「友達も?」



「そう。それでどうかな? 私の同志にならない? 組織名は『縁』って名前なんだけどね」



 思い出すは、火影という立場にありながら自分を目にかけてくれる老人。



 尾を引くは、日向という名門のお嬢様でありながら、自分に懐っこく接してくる少女との関係。



 心配なのは、双子の可愛い妹。



「・・・・・・つれてって」



 ナルトはユギトと名乗る女性の話は難しい言葉が多すぎていまいち理解できていなかった。



 しかし不思議な感覚が、自分と目の前のお姉さんは特別な繋がりがあると、子供ながらに感じ取っていた。



 それは人柱力同士だから・・・・・・ということではあるが。



 そして何よりも、平穏が手に入るというのは、ナルトという少年にとっては麻薬の魅力があった。



「よし、そうこなくっちゃ! ・・・・・・って、そうだ、君の名前は?」



 差し出されたお姉さんの、ユギトの手を握り締めナルトは、やっと現れた『家族』に向かって、生まれて初めて妹と日向の少女以外に微笑み返した。



「うずまきナルト」








 この日、火の国の木の葉隠れの里から、最強の妖魔『九尾の狐子』を封印した、うずまきナルトがいなくなった。







 そして、この3年後に『雲隠れの里』が突如滅亡し、『縁の里』が設立された。











「だぁ~! 寝坊した~~~~!」



 自室の目覚ましを寝ぼけ眼で見た少年、うずまきナルト(十二歳)は、姉の呼び出しの時間に僅かながらオーバーしていることに大声を上げていた。



 姉のユギトは普段は温厚だが、生活のことや仕事関係・礼節関係の事になると沸点が著しく下がってしまう。



 あの人の折檻だけは受けたくないものだ。



「こら、紫苑! 起きろ!」



 ナルトの布団の中で眠っていた少女に大きな声で怒鳴りつける。



「んん・・・・・・朝? ・・・・・・おはよう、ナルト」



 少女の名前は紫苑。かつて鬼の国の巫女をやっていた彼女だったが、ナルトやユギト、そして仲間たちの力とあることがきっかけで魍魎を見事に打ち倒し紫苑を縛り付けた運命を打ち払った。



 だが困ったことに紫苑はナルトをいたく気に入ったらしく、そのまま助けられた勢いで着いてきてしまったのだった。



 もちろん鬼の国とは同盟関係に結ばれているし、近い将来に姉妹国となるはずだ。



 この紫苑だが、ナルトの妻になることを公言しており、夜毎に部屋に侵入しては布団に潜り込んできて一緒に寝ているのだった。



 ナルトも最初の頃は照れていたが、慣れとは恐ろしいもので、今ではすんなりと受け入れてしまっている。



「紫苑! 早く広間に行かねぇとユギ姉に殺されるぞ!」



「え? ・・・・・・きゃあああああああああああああ! 大変!」



 ようやく時計に気がついた紫苑は、時刻を確認するとナルトと同様に悲鳴を上げてバタバタと支度を始めた。



 こうして床を転がるように飛び出した2人は大慌てで作戦会議室である広間にむかったのであった。



「すまん! 寝坊した!」



「遅くなりました!」



 ドカドカと足音を立てながら飛び込んで来た2人を迎えたのは、この『縁の里』を支える幹部たち。



 中央の一番奥、つまり里の最高指導者の席は空席だが、壁際には奥から順番に、厳じい・ユギト・君麻呂・白・我愛羅・デイダラ・九羅華がいる。



 他の仲間たちは任務中でいないようだ。



 ナルトと紫苑は慌てて自分たちの定位置で正座をすると、緊張したように背筋を伸ばしている。



「・・・・・・とりあえず説教は後でする」



「「はぅ!?」」



 ユギトのドスが効いた言葉を聞いてビクつく二人。



 白は苦笑いを浮かべ、君麻呂は無表情、我愛羅は溜息を吐いている。そして何故か九羅華は半目で紫苑を睨んでいた。



 デイダラは「ナルトはMだな、ウン」とか言っている。



「今回の任務は久しぶりにデカイからよく聞きなさい」



 ユギトは全員の目を見据えて言う。



 その真剣な表情に皆も真剣な顔つきになった。



 ユギトは厳じいに促して、四尾の人柱力である厳じいが口を開いた。



「デイダラを除いたお前たち6人には、来週開かれる木の葉の里の中忍試験に参加してもらう」

 ナルトの眉がピクリと動く。



「理由は木の葉を潰そうと、最近できた音の里という連中と砂隠れの連中が手を組んで画策しているらしい。我々にとって来るべき戦いに勝利するためには木の葉が今弱体化、もしくは滅ぶのは好ましくない。従って中忍試験に潜り込んで我らの里の力を見せつけつつ、音の里の野望を阻止して欲しい」



「音の里ですか・・・・・・たしかそこのトップは大蛇丸という元木の葉の忍びにして伝説の3忍と呼ばれた変態でしたね」



 白がこれまでに入手していた情報を口にする。



「変態か・・・・・・」



「・・・・・・どんな相手だろうが関係ない。オレたちは縁の里のために全力を尽くすだけだ」



「変態が相手なんだぁ。ナルト、私をしっかり守ってね?」



 君麻呂が嫌そうに呟けば、我愛羅は素直に里への執着をみせる。九羅華だけは隣のナルトの腕に抱きついて甘えた言葉を囁いていた。



 ナルトは紫苑のプレッシャーを感じながら、ハハハ、と薄ら笑いを浮かべている。



「2組のスリーマンセルを編成。1組目は白・君麻呂・我愛羅。2組目はナルト・紫苑・九羅華だ。必要な書類を下の受付で貰ったらすぐに出発してくれ」



「わかった」



「俺を外すなら、何でここに呼んだんだ? ウン」



 白のチームはうなずくとすぐに瞬神の術で消える。



 デイダラは仲間はずれが面白くないらしい。ふてくされている。



「大丈夫だ。お前も大規模な戦闘になったらすぐに参加してもらうから」



「わかってんじゃん、うん」



 芸術を披露する機会があって喜ぶデイダラ。調子のいい男である。



 デイダラに比べて白たちは余計な口は挟まず、そして迅速に行動できる彼らは優秀だった。



 しかし。



「あ~、木の葉は億劫だぁ~。めんどくせー。いきたくねー」



「大丈夫よ、ナルト。私がずっと傍にいてあげるから」



「こら~! 紫苑! あんた懲りずにナルトのところで寝たにも満足せず、木の葉でもベタつくつもり!? そんなことさせないわよ!」



「・・・・・・おまえら、はよいけ」



「じゃあなナルト、ウン。これは餞別だ、ウン」



 実力は縁の里の『四覇聖』と称されるほどに強くなったナルト。しかしどうもこの姿を見せられたら不安になってしまうユギトと厳じいであった。









 こうして、うずまきナルトは7年ぶりに木の葉の里へ戻ってきたのである。



[716] Re:人柱力と妖魔の敵
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2007/11/11 01:35


  NARUTO


『人柱力と妖魔の敵』


第2話 木の葉への帰還


 緑豊かな大地を走っている白い虎と大きな鳥が凄まじい速度で移動していた。


「あ~・・・・・・木の葉は久しぶりだな~」


 言葉は軽く言っても内心では本気で気が重いナルト。


 事情を知っているが故にそれを感じた紫苑と九羅香は、ナルトの両隣に 寄り添うように座る。


「・・・・・・大丈夫。ありがとな紫苑、九羅香」


 ナルトの笑顔にほんのり頬を染める2人。


 実は今は大きな鳥に乗って移動中である。


 そう。


 この鳥は『六尾』と呼ばれる妖魔である。


 九羅香の中に封じられた妖魔であり、規制をかけて口寄せした本体。


 普通なら尾獣を口寄せすることなど簡単にはできないのだが、それは尾獣と九羅香の関係が特殊であり、それで可能となった。


 ちなみに大地を走っている白い虎は白が宿す『五尾』の尾獣である。


 白はナルトたちと出会った当初、尾獣を宿していなかった。ではなぜ人柱力となったのか。


 そこにはちょっとした経緯があったのだが、それはまた別の機会に。


 そんなこんなで、地上を爆走する白い虎に乗る白・我愛羅・君麻呂。


 空を飛行するナルト・紫苑・九羅香。


 尾獣が2体も表に出ている時点で、とんでもないことだった。








 通常、縁の里から木の葉隠れまでは1週間はかかる距離にある。


 だが尾獣で移動すること半日かからず到着した。もちろん木の葉のだいぶ手前で尾獣を戻している。


「あ~、やっと到着した」


「疲れた~! ナルト、おんぶ~!!」


 まったく疲れた表情をしていない紫苑。ナルトの背中はすでに紫苑の定位置である。
「あ、紫苑! あんたねぇ、ずっと座って移動してたくせに疲れる訳ないでしょうが!」


「・・・・・・さっさと手続きとって宿へいかないか?」


「そうですね。君麻呂、一緒に来てください」


「わかった」


 相変わらずの女性陣を無視してさっさと里への入国手続きを入り口で踏んで先に進む白たち。


「だー! もう! 喧嘩してないで飯でも食いに行こうぜ?」


「さんせ~!」


「私もお腹へったかな」


 食事という言葉に反応するのは仕方が無いこと。


 縁の里はまだできたばかりだし、当然ながらまだ食関係の市場は大きくない。


 その辺は木の葉隠れの方が圧倒的に大きかった。


 実は食事することの方が中忍試験より楽しみなのだが・・・・・・それは口にしない約束である。


 手続きを踏んで木の葉隠れの里に入り、人が大勢賑わっている通りへと出た。あちこちから良い匂いがする。


 ナルトはあらかじめ調べておいたラーメン屋へ直行した。


 そのラーメン店は『一楽』。


 店に到着すると、紫苑はナルトの背から下りて苦笑しながら言う。


「ナルトは本当にラーメンが好きねぇ」


「まあな」


「私も好きだからいいんだけど。何食べようかなぁ」


「私も! えっとねぇ、私は醤油かな」


 そう言いながらラーメン店の暖簾を潜ると、店は夕時なこともあってなかなかの盛況ぶり。


 ナルトたちがカウンターに座ってそれぞれ注文すると、ナルトの視界に金色の長い髪が飛び込んで来た。



 
ドクン、と。




 心臓が跳ねた。




 ナルトの様子がおかしいことに気がついた2人はその視線を追って、やっぱり固まってしまう。


 ナルトたちは入る前から騒がしかったために実は店内の注目を集めていた。しかも他里の額宛をしているのだから尚更である。


 ナルトの視線の先には金髪の髪が太腿まで伸びている少女と、桃色の髪の少女、黒髪の少年と、銀髪の男性の一団である。


 彼らもまたナルトたちを見ていたのである。


 そして問題の金髪の少女はナルトを見てハンマーで殴られたように驚いて、目に涙を浮かべて震えながら声をかけてきた。


「・・・・・・兄様?」


「・・・・・・・・・・・・!」


「・・・・・・兄様ですよね?」


 少女の言葉に桃色の髪の少女は眉を顰め、黒髪の少年はなぜかこちらを睨んでいる。


 銀髪の男性は鋭い視線をこちらに投げつけてきていた。


 ナルトは必死になって自分を偽る。


 これは、予想していた事態の1つ。何を慌てる必要があろうか。


「・・・・・・えっと、なんのことかサッパリわからないんだけど」


「・・・・・・え」


 少女の表情が凍りついた。


 さっきとは質が全く違う涙が溢れ出す。


「俺は中忍試験のためにやってきた、今回初参加の縁の里の忍者なんだけど」


 こんな嘘はすぐにバレる。


 バレるのは時間の問題だ。ではなぜ嘘をついている?


「・・・・・・私のことがわからないんですか? 妹のサクヤです、ナルト兄様」


「だから、俺は縁の里のものだって。それに俺には妹じゃなくて姉が1人いるだけなんだけど」


「・・・・・・姉が・・・・・・いるのですか」


 サクヤとなのる少女はナルトの言葉はまったく聞いていない。すでに確信しているようでもある。


 ラーメンが運ばれてきたので勢いよく啜る3人。紫苑も九羅香も表上は平然としていた。


 勘違いしているの分かった? というのを態度で示しているのが伝わったのか。サクヤと名乗る少女たちもまた食事に戻った。


(サクヤのお兄さん!? ってことは4代目火影の子供ってこと? でも本人は否定してるし里も違うわよね。 でもでも、とても雰囲気が似てる)


(・・・・・・女2人と一緒にいる軟弱者なんか、俺の相手じゃねぇ)


(これは3代目に報告だな)


 桃色の髪の少女がその高き頭脳故に混乱に陥ってしまっている。


 黒髪の少年は、そのエリート思考と傲慢かつ滑稽な思想故に、自分だって似た現状だということを忘れて他人を見下していた。


 銀髪の男はすぐにナルトの正体に気がついていた。自分の師とその奥方にあまりにも似ていたからである。


(すまない、サクヤ・・・・・・)


 自分とサクヤの関係は一目瞭然なのだが、それを公言する訳にはいかない。


 全ては、大蛇丸の野望を阻止してからだった。


 そうでなければ、自由に動けない。


 サクヤたちがラーメン一楽から出ていった後、テーブルに突っ伏すナルト。


「あ~ビックリした」


「ナルト・・・・・・がんばったね」


「・・・・・・おつかれさま」


 紫苑も九羅香も悲しみを浮かべながらナルトの背をポンと撫でる。


「・・・・・・宿に行こう」


 精神的に、とても疲れていた。


 トボトボと重たい足取りで、仲間の待つ宿へ向かった。








(サクヤ、可愛く成長したみたいだったな・・・・・・よかった)


 先ほど会った我が妹のことを宿に着いても思い出していて、今更ながらそんなことを考えているナルト。


 かなりの兄バカである。


 木の葉の宿でのんびり休息をとっていたナルト達は、各々温泉に入ったりトランプをしたりと悠々自適に過ごしていた。


 ナルトはお茶を飲みながら夜風に当たっていたが、ふと幼き頃の記憶を思い出して、散歩してくると言って出かけた。


 向かった先は火影の顔岩がある方角のさらに奥にいった場所。木々で生い茂った周りに囲まれるようにぽっかりと広場がある。


 そこへナルトは到着すると、中央にある大きな丸太の正面に立ち過去へ想いを馳せた。


 そう。


 ここはナルトが木の葉の里にいて迫害されていた頃の唯一の安寧の場所だった。


 ある日に自分と同じ歳の少女と知り合って、それからは地獄のような毎日に潤いがもたらされた。里を去ったがあの子には特別な想いがあった。


 あの子はどうしているだろうか、と思った時だった。


 その子が林の向こうから現れたのだ。


「え・・・・・・ナルト・・・・・・君?」


「・・・・・・・・・・・・」


 現れたのは日向ヒナタ。


 まだ幼かった頃のことなのに、自分の名前を覚えていてくれた。それがナルトにはとても嬉しかった。


 だから、サクヤの前では偽ったのにヒナタには素で対応していた。


「・・・・・・久しぶり、ヒナタ」


「ナルト君!」


 一輪の花が、そこに闇夜の中に咲き開いた。






「―――ってなことがあって、今回俺がここにいる理由ってな訳」


「・・・・・・ナルト君も中忍試験に出るんだ。わたしも出るんだよ?」


「え? そうなのか? それは一緒に合格できるといいな!」


 なんで今まで会えなかったのか、なぜ他里にいるのか、今は縁の里にいること、中忍試験を受けるために来たことなどを説明するナルト。


 もはや里の情報など筒抜け状態であった。


 だがヒナタもそこは気にしていないようにナルトの話に相槌を打っていた。


 しかしナルトの「合格」という言葉に顔を曇らせるヒナタ。


「・・・・・・う、うん」


「・・・・・・もしかして、まだ本家のいざこざが続いているのか?」


「・・・・・・・・・・・・」


「そっか」


 ナルトはヒナタの事情を知っている。幼い頃にずっと相談を受けていたから。


 自分の実家なのに家のどこにも居場所はなく、宗家と分家の間で悩み、自分の才能と性格に悩み、名門の重圧に押しつぶされそうになっているヒナタ。


 あの時は慰めるだけで何もできなかった。幼いながらも必死にあれこれと手を使ってヒナタを慰めてはいた。この少女の悲しむ顔は見たくなかったから。


 でもそれは大したことではなくて。


 でも今は違う。


 自分は強くなった。


『縁の里に四覇聖あり』とまで称されるまでに。

 
 だから。


「・・・・・・ヒナタ、明日から中忍試験の開始日まで、空いてる時間を俺にくれないか?」


「えええぇぇ!?」


 逢瀬を交わす約束のような言葉に、ヒナタは盛大な勘違いをしてしまったのだった。



 


「それで、火影さま。我々にどのような用事なのですか?」


 そこは木の葉隠れの里を纏める火影室。


 そこに3代目火影と相談役の2人。そしてカカシとアスマ、紅とガイがいた。


 彼ら3人は今年の中忍試験に忍者アカデミー卒業1年目の新人を出場させることを決断した、担当上忍である。


 ちなみにガイの担当する班の下忍だけは2年目である。


「今回の中忍試験において、新たな里から参加申し込みがあった」


「ほぅ・・・・・・親父、それは何て里なんだ?」


 3代目火影を親父と言ったのは、アスマである。彼の名前は猿飛アスマという。


「名を『縁(えにし)の里』と言う。登録者数は2班の6名じゃ」


「縁の里・・・・・・たしか雲隠れの里の後にできた里ですよね。まだ立ち上がって間もない」


 紅という名の美しい女性がそういう。彼女は日向ヒナタの担当上忍でもある。


「それが何か問題あるのですか、火影さま」


 マイト・ガイという珍獣ともいえる髪型と服装、濃すぎる眉毛の男性が尋ねた。


「カカシからの報告で発覚したのじゃが、その6人の中にあの『ナルト』がいるんじゃ」


「「「なっ!?」」」


「ワシも水晶で確認したが、あれはナルト本人に間違いないの。幼い頃の4代目とその奥方、クシナにそっくりじゃ」


 3代目の言葉に全員が驚きを隠せなかったが、そっくりという言葉に僅かながら嬉しさが宿る。


 クシナと似ているという事は、底抜けに明るいのだろう。


 4代目に似ているという事は、どっしりとした大地を思わせるほどの聡明さと優しさが滲み出ているのだろう。


 この場にいる4人の上忍は行方不明になったナルトの行方を心配していたのだから当然の想いであった。


 だが同時に不安もあった。


 代表として、カカシが口を開いた。


「・・・・・・ナルトがこの里に戻ってきた理由は、本当に試験参加だけでしょうか」


「それは解らんの・・・・・・あの子がこの里を恨むのは当然のことじゃ」


「だから我々は里の評議会と話し合った結果、とりあえず様子をみて、何かやらかしそうならお前たちに取り押さえさせる事を決めたんじゃ」


 そこで相談役の2人が口を開いた。


 2人の言葉に火影も頷く。


「・・・・・・サクヤも気がついているはずじゃが、それを認めてはならんぞ。あくまでも監視ということを念頭に行動しておくれ」


「「「「御意」」」」


 4人の上忍が大きく頷いたのを確認した火影は、ぼやきながら天を仰いだ。


「それにしても・・・・・・縁の里とはのぅ」


「・・・・・・・・・・・・?」


「よいか? 滅んだ地に新たな里を立ち上げるというのは大変なんじゃ。パイプや信頼性を1から築いていかなければならないし、何よりその地を狙う輩が大量に湧いて出てくる。いわば小規模の戦争じゃの」


「・・・・・・・・・・・・」


「それなのにじゃ。あの里はたった数年で完全に雲隠れと同じ規模の里にまで成長しおった。しかも問題点はまだあるんじゃ」


 言葉を引き継ぐように相談役のコハルが口を開く。


「あの里に侵入した各国の忍びや山賊、悪党といった輩はすべて殲滅されているんだよ」


「そうじゃ。しかもワシらの独自の情報によれば、あそこの里にいる忍びで有名な連中がいる」


「有名な連中? コピー忍者のような通り名ですか?」


「そうじゃ。里のトップに立ち、圧倒的な力を保有する4人がいて、そやつらは『四覇聖』と呼ばれている。さらにじゃ」


「ま、まだ何かあるんですか?」


 あまりのでたらめな情報に冷や汗をかいている4人は、あまり聞きたくないという表情である。


「その四覇聖に追随する実力者が6人ほどいるらしく、その6人を『六聖剣』というらしく、彼ら10人は縁の里でも人気が高いらしい」


「・・・・・・・・・・・・」


「そして今回の試験の申し込みと同時に、初めて縁の里から申し入れがあって、同盟を結びたいと申してきた」


 全員が黙り込む。


 ごくりと、誰かが唾を飲み込む音が響いた。


「・・・・・・良くないことが起こらねばいいがのぉ」










あとがき


今回、初めて投稿しましたアリムーと申します。


投稿手順で四苦八苦した為、最初の投稿が間が空きすぎでおかしなことに。許して下さい(苦笑)


この物語は読んだら分かるように、完全な人柱力軍団な話です。


ええ。少し無茶な設定ですが、迫害される彼等なら、その可能性も捨てきれないと思い、このような物語が完成しました。


そしてこの物語は、最初は原作通りに進みますが、途中からは完全オリジナルになります。暁もメンバーは出てきますがすでに存在していません。


そして何よりもカップリングが問題です。


ナルトは設定上かなりモテます。また劇場版オリジナルキャラの紫苑も登場。かなりナルトと密接な関係になっています。


もし、この物語をもっと読みたいと思った方がいらしたら、メッセージかなにかくれたら嬉しいです。




[716] 人柱力と妖魔の敵
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2007/11/25 19:34
    NARUTO


     『人柱力と妖魔の敵』


   第3話  それぞれの事情


「なんだこりゃ・・・・・・」


 中忍試験の開始の日がやってきた。


 ここ数日はヒナタの空いている時間、つまり早朝の数時間と夕暮れ時の数時間だけの訓練時間である。


 実はこの訓練をしていることは紫苑と九羅香には内緒だ。


 もちろん、それがバレたら命がないから。


 ナルトはここ数日は常に綱渡り状態を続けたのであった。


「人多すぎだろ・・・・・・」


「そうね」


「この中で何人受かるのかな」


 ナルト・紫苑・九羅香が呟く。


 到着した第一試験の会場に敷き詰められた下人たち。階段を上がってくるところで振るいをかけていたから、これでも十分に減ったのだろうが、それでも多い。


「あ、我愛羅たちがいた」


 部屋の一角に静かに座っている仲間を見つけて一緒に座る。


 6人は座ると静かに会話を始めた。


「遅かったですね」


「俺が寝坊したんだ」


「・・・・・・そうだと思った」


「・・・・・・・・・・・・」


「玉藻姉さんが寝てる期間でよかったですね。起きてたら・・・・・・・・・・・・ダメですね。あの人は僕たちには厳しいけど、ナルト君には極端に甘いですから」


「・・・・・・それは否定できないな」


 それは、ある女性の話。彼等にとって最も恐ろしく、ユギトよりも怖い存在。そして姉代わりでもある。


「アハハハハ。そ、それよりもさ、なんか私たち注目集めてない?」


「あ、それはワタシも感じた。なんかジロジロ見られてて、嫌な気分になりそう」


 木の葉、砂、音、雨、草、霧といった里の連中の視線がグサグサと突き刺さる。


「・・・・・・俺たちが珍しいからだろう・・・・・・縁の里の情報事態が少ないはずだからな」


 我愛羅がボソボソと口にする。


 しかし単純ながら正解だろう。


「ああ。ウザイことこの上ない。殺してやろうか、特に音」


「お、落ち着いて君麻呂君」


 危険な言葉を吐く君麻呂。彼もこの視線にイラついていたようだ。


 慌てて嗜める紫苑に、白は毎度のことながら助けられていた。


 音の連中は何故か殺気まで向けてきている。近年新たに創設された里同士として敵対心でも燃やしているのだろうか。


 そんな会話をしていると、木の葉の下人たちの方で動きがあった。








 時は遡り、ナルトたちが室内に入ってくる少し前のこと。


 木の葉の新人下忍達は教室の後方に集まって話していた。


 最初は久しぶりの再会ということで挨拶程度の会話だったが、序所にアカデミー在籍時のような他愛無い会話になってくる。


 そこへ妙な男が1人、新人下忍たちの下へ近づいた。


「おい君達!! もう少し静かにした方がいいな・・・・・・。君たちが忍者学校出たてホヤホヤの新人9人だろ? かわいい顔して騒いで・・・・・・まったく。ここは遠足じゃないんだよ」


「誰よーアンタ、エラソーに!」と9人いる下忍の中の1人、クリーム色の髪の少女、山中いのが突っかかった。


「ボクは薬師カブト。それより辺りを見てみな」


「辺り?」


 そう言われ、一同一斉に周囲の様子を伺う。


 すると、一部の者を除いた全ての人間がこちらを睨んでいて、特に雨隠れの額宛をした者達は青筋を浮かべながら睨みつけている事に気がついた。


「うっ・・・・・・」


「あいつ等は雨隠れの奴らだ。気が短い。試験前でみんなピリピリしている。どつかれる前に注意しとこうと思ってね」


 さすがに騒いでいた全員がおとなしくなった。


「まあ、仕方ないか。右も左もわからない新人さん達だしな。昔の自分を思い出すよ」


「カブトさん・・・・・・でしたっけ?」


「ああ」


「じゃあ、アナタは2回目なの?」


 試験に詳しそうな様子から経験者なのかと問う、桃色の髪の少女・春野サクラ。


「いや・・・・・・7回目。この試験は年に2回しか行われないから、もう4年目だ・・・・・・」


「へー、じゃあこの試験について色々知ってるんだ?」


「まあな」


「へ~、カブトさんって凄いんですね」


 関心した声を上げるサクヤ。素直に賞賛しているようだ。


「へへ・・・・・・じゃあ、かわいい後輩にちょっとだけ情報をあげようかな。この忍識札でね」


 賞賛に気を良くしたようで、カブトはポーチから数枚の札を取り出す。


 この札は、いわば今回参加者の関する情報紙である。


 見るためにはカブトのチャクラを使わないと見れない仕組みになっているらしく、カブトはこの難関試験の為に数年かけて集めたらしい。


「おお、すごい解りやすい立体図だな。これは何の情報なんすか?」


 と、犬を頭に乗せた黒髪の少年・犬塚キバが聞いた。


「今回の中忍試験の総受験者数と総参加国・・・・・・そして、それぞれの隠れ里の受験者数を個別に示したものさ」


「その札に個人情報が詳しく入ってるやつ・・・・・・あるのか?」


 じっと札を見ていた、偉そうな態度の黒髪の少年・うちはサスケが尋ねる。


「フフ・・・・・・気になる奴でもいるのかな? もちろん今回の受験者の情報は完璧とまではいかないが、焼き付けて保存している。君たちのも含めてね。その『気になる奴』の君が知っている情報を何でも言ってみな。検索してあげよう」


「木の葉のロック・リーって奴だ」


 この教室に来る前にその少年といざこざがあったらしく、サスケは彼に関する情報を求めた。


「なんだ、名前までわかってるのか。それなら早い。ええっと・・・・・・ロック・リー。年齢は君たちより1歳上。任務経験はDランク20階、Cランク11回。班長はマイト・ガイ上忍。体術が異常に伸びてるが他はてんでダメだな。昨年、実力ある新人下忍として注目されたが試験には出てこなかった。君たち同様、今回が初受験だ。チームメイトは日向ネジにテンテン」


 最後の言葉に、9人の新人下忍の中にいて、今まで大人しく話を聞いていた少女、日向ヒナタが体を震わせた事には誰も気付かなかった。


 サスケやサクラはカブトたちはカブトの情報にフンフンと頷いていたが、カブトは溜め息を吐いて忠告した。


「まあ、ボクとしては『縁の里』の連中を警戒することをお勧めするよ」


「えにしの・・・・・・さと?」


 聞いたこともない国の名前に、サスケの隣にいた少年、奈良シカマルや秋道チョウジが首を傾げた。


 他の面子も同じらしく、一様に不思議な顔だ。


 ただ、ヒナタだけは違う反応を示している。


「そう、縁の里。この里は今回初参加の国なんだけどね。君たち下忍になりたての忍じゃ知らないのもしょうがないさ」


「その里が何だっていうんですか?」


 いのが眉を顰めると、


「この里はね・・・・・・数年前に設立したにも関わらず、あっという間に小国の中では抜きん出た実力がある国と噂されている。ふつう建国間もない国や里というのは他国からの侵略を受けやすい。それは軍事的に未熟かつ疲弊している段階だからだ。だがこの里に侵入した忍、大名の軍はことごとく壊滅しているって話だ。とにかく謎が多い国なんだよ」


「・・・・・・なに、そのムチャクチャな話」


 信じられないという、いのの言葉に頷く一同。


「・・・・・・あ、ホラ、ちょうど今教室に入ってきた連中が縁の里の参加者6人のうちの3人だ」


 全員がバッ、と目を向けるとそこには派手な金髪髪の少年が1人と赤い髪の少女が1人、クリーム色の髪に紫眼の少女がいた。


「あ!」


「・・・・・・あいつらは」


(・・・・・・兄様)


(・・・・・・ナルト君)
 サクラとサスケは先週数日前に遭遇した人物たちがやってきたことに、そして渦中の人物であることに驚き、サクヤをここ数日ずっと悩ませていた少年を見て悲しそうな顔をした。


 ・・・・・・ちなみにヒナタは頬を染めて、ここ数日の幸せな時間を反芻するように、ぽーっとしていた。


「ん? なんだ、彼らのことを知ってるのかい? 驚いたな」


「いえ、数日前にラーメン屋でバッタリ会っただけで・・・・・・」


 実はそれだけではなく、サクヤが「・・・・・・兄様?」と呟いたことで、サクラは衝撃を受けたのだ。


 サクヤはあの里を救った英雄、4代目火影の娘である。またサクヤから兄がいて死亡扱いになってる、だが実は行方不明なだけになってると、こっそり相談を受けたことがあるのだ。


 だからサクラは自分がどういう対応をとっていいのかすらわからなかった。


「ふ~ん・・・・・・ん? 彼らも仲間と合流するみたいだね」


 じっと彼らの方を見ている9人の新人下忍たち。


 だが注目しているのはこの教室に居る人全員らしく、あちこちでひそひそと噂されているのが聞こえる。


「・・・・・・縁の里のことで、他里に流れている噂がある。『縁の里には四覇聖と六聖剣と呼ばれる連中がいる』ってね」


「四覇聖!? 六聖剣!?」


 やたらとカッコイイ響きの言葉にいのが目を輝かせた。


「それしか知らないけどね。そういう連中がいて、その連中が里の実質的な軍事力の要らしい」


「へえ・・・・・・」


 その噂事態が下忍程度に集められる情報ではない。それは噂ではなく各国の上層部や暗部にしか知りえない情報なのだから。


 ではなぜカブトは知っているのか。


 それはカブトが付き従っている人物が原因なのだが、それは誰も知りえない。


「まあ、それでも音と一緒で木の葉と比べると小国である事に変わりはないんだけどね」


「なんだか自信がなくなってきた」


 チョウジがそういうと、いのやヒナタ、サクラも肯いた。


 根拠のない自信をもっているサスケとキバは鼻笑いするだけだったが、ずっと無言を通していたシノとシカマルやサクヤは縁の里の連中、特にナルトをジッと見つめていた。




 兄様・・・・・・やっぱりカッコイイです!




 なぜかサクヤの中ではナルトが兄であることは真実となっており、この教室内の男連中と勝手に比べて、危ないことを考えていた。








 大勢の生徒でごった返す中、一部の生徒が不穏な言葉を吐いた。


「おい、音が小国だとよ」


「心外だね」


「あいつら・・・・・・ちょっと遊んでやるか・・・・・・」


「フフ・・・・・・そうだね。残り物の忍みたいな言い方されちゃあね・・・・・・知らないなら彼のデータに加えてあげようよ・・・・・・音隠れの忍は・・・・・・『それなりに残忍』ってね」


「やりますか・・・・・・」








「ん・・・・・・? 僅かな殺気がする」


 ナルトの言葉に反応すると同時に仲間の5人全員がその殺気に反応した。辺りに視線を通わせると、音隠れの額宛をした3人組みが動いたのを見た。


 音隠れの中で包帯をグルグルと全身に巻いた男がサクヤたちのいる場所へ、カブトに迫る。


「・・・・・・あの野郎っ」


ナルトはサクヤとヒナタへ直接的には危険はないが危ない要素が迫った為にピクッと体を動かしたが、見事に全員の手によって服を掴まれて静止された。


 ナルトが両手を挙げて降参というポーズを取ると、全員が手を離す。


 その間にカブトが包帯男の攻撃をうまく避け、しかしかわしたはずなのにメガネが壊れて嘔吐する、という不可解な現象が起こっていた。そうしてカブトを心配したサクヤとヒナタ、そしてサクラが心配そうに駆け寄った。


 音の連中の突然の攻撃により、室内は急激に緊迫した空気に包まれる。


「な~んだ、たいした事ないじゃん。4年も受けてるクセにさ。あんたの札に書いときな。音隠れ3名中忍確実ってな」


「い、いきなり何をするんですか!」


 サクヤが抗議の声を上げ、ヒナタもサクラも睨みつける。


「あ~? うるせえ女だな。ザコは引っ込んでろよ新米下忍ちゃんたちよ!」


「そうそう」


「ザコがいきがるんじゃねえよ!」


 ケケケ、と小馬鹿にした笑いを浮かべ、カブトを含めたその場の木の葉の新人下忍たちへ視線を向けた。


 そして抗議の声をあげたサクヤへはその隣にいた女が軽いケリを入れ、ヒナタへは逆立てた髪の男が唾を吐きつけた。




 その瞬間だった。




「・・・・・・最後に1つ聞いてやる」




 地獄から這い上がってくるような声が響いた直後、音隠れの3名ドス・キン・ザクの横に、まさに突然1人の男が現れたのだった。


「「「な!?」」」


「「「え!?」」」

 
 ただ、いきなりそこに現れたとしか言いようが無かった。


 飛び込んで来たのは当たり前だが、その残像すら、影すらわからなかった。


 音の3名に限らず、木の葉の下忍、そして室内にいる一部を除いた忍以外はまったく気付けない。


 金色に輝く髪に蒼眼の瞳。派手な柑橘色の服を纏った男がそこに立っていた。


「・・・・・・おまえら」


 それはナルトである。


 彼の氷のメスを突きつけられたような寒さを感じさせる瞳に、誰もがゾクリと寒気を覚える。


「・・・・・・さっき何をした?」


「え・・・・・・な・・・・・・」


 意味不明の言葉しか発せられない髪を逆立てた男。


「・・・・・・この2人に・・・・・・何をしたって聞いてるんだよ!!」


 ナルトの蒼い眼が突然、赤い灼熱の瞳へと変化し、彼の体の周囲にはオレンジ色のチャクラが吹き上がった。


 吹き上がったオレンジ色のチャクラの層にポコポコと水泡が浮き上がり、異常性を際立たせる。


 チャクラの層が『何かの形』を形作り、ナルトの目が縦割れをおこして人外の眼へ変化した。


「・・・・・・ヒッ!?」


「!?」


 包帯男・ドスの両側にいるザクとキンの首を掴みあげ、ググっと締め上げるナルト。周囲の人間たちも、そしてサクヤも目の前で恐ろしく変貌した少年に釘付けになって動くことができない。


 チャクラの圧倒的な放出量に絶句する一同。


「な、なにしやがる! 手を離せ!」


 このままでは仲間が殺されると察したドスは声を荒げるが、恐怖で体が動かない。


「・・・・・・ならば詫びろ。地面に這い蹲れ。頭をつけろ。そして2度と偉そうにするな。ただのザコの分際で」


 ドス自身が発した言葉を突きつける。


 ドスは屈辱のためか、それとも恥をかいた故か顔を真っ赤にした。


 しかしナルトから絶えず発せられる尋常じゃない殺気に体がガタガタと震え、言われた通りに土下座するドス。


「あ~あ、やっちゃった」


「なさけな~い」


「まあ、彼の殺気に当てられちゃ、彼ら程度の忍には堪えるでしょうから」


「・・・・・・落ち着け、ナルト」


「そうだ。ここでこいつらを殺すのはマズイ。試験中にしろ」


 2度目は止めることができなかったために、ナルトの隣へ瞬身の術で現れた紫苑たち。


 九羅香は情けない格好のドスに遠慮なく口撃する。そんな九羅香に白が嗜めるように彼らをフォローする。我愛羅はナルトを本気で落ち着かせようとしているようだ。そして、そういう問題ではない言葉を吐く君麻呂。


「・・・・・・そうだな」


 紫苑がナルトの背中に抱きついたことで、ハッと我に返るナルト。両手を緩めてザクとキンを放すと、彼らは盛大に咽ていた。


(こいつらが、縁の里の忍・・・・・・つーかありえねぇだろ、この金髪。なんなんだよさっきのチャクラは・・・・・・めんどくせぇことになりそうだな)


(なになに!? なんなのこの人たち!)


(・・・・・・こいつら全員・・・・・・とんでもないスピードだ)


(・・・・・・得体の知れない気配がするな)


(・・・・・・お腹減った)


(こいつら、危険な臭いがするぜ)


(兄様の綺麗な蒼い瞳が真っ赤に・・・・・・いったいなんで)


(ナルト君・・・・・・私たちのために怒ってるんだ・・・・・・嬉しい♪)


 各々が感じるところがあるらしく、新人下忍たちは驚いている。


 だが一部の人は、はっきり言っておかしい。


「・・・・・・失せろ。そして2度とこの2人に手を出すな。出したら今度こそ命がないものと思え」


「・・・・・・・・・・・・くっ!」


 敵わないと踏んだ音の3人はすごすごと教室の端に移動して、そこで俯いて座ったのだった。


「・・・・・・ヒナタ、大丈夫か?」


「う、うん。ありがとう、ナルト君」


「そっちの子も、怪我はないか?」


 まるで、ついでに助けたとばかりな口調で問うナルト。


「え、は、はい兄「それはよかった」・・・・・・」


「そんじゃ、お互い次の試験に進めるといいな」


 ヒラヒラと手を振って紫苑をおんぶしながら立ち去るナルト。


 そのナルトに続くように縁の里の仲間もついてくる。


 と、そこへ。


「「我愛羅・・・・・・」」


 普段はあまり喋らず、感情も読みにくい我愛羅がビクリと震えた。


「・・・・・・何の用だ」


「お前、久しぶりに会った姉兄にいきなりソレか!?」


 ナルトたち一団に近づいてきた砂隠れの忍者の男女。そんな男女2人の言葉に、木の葉の下忍たちは戸惑いを隠せない。


(姉に兄って・・・・・・どういうことだ? 里が違うのに兄弟? ・・・・・・まさか)


 シカマルという極めてめんどくさがりな性格の少年が、しかし隠れた才能である極めて高い頭脳を用いてある予測をした。


 シカマルの疑問は木の葉の忍者たち皆が思った事だが、誰も口を挟めない。


「6年前にいきなり姿くらましやがって! どれだけ大騒ぎになったと思ってんジャン!?」


「そうだ。私たちがどれだけ心配したと思ってる」


「・・・・・・俺は縁の里の忍だ。お前たちは砂の忍。そういうことだ」


 我愛羅の言葉に驚愕の表情を隠さない2人組み。


 それは当然だろう。彼等は数年前の我愛羅しか知らない。憎悪と殺意に撒き散らしていた少年しか。


 だが、目の前の少年はどうだ?


 言葉こそ突き放しているが、そこにこめられた意味を汲み取ると、少年の穏やかさが否が応にでも分かる。


「・・・・・・俺もお前たちも無事・・・・・・そして今は試験の真っ最中・・・・・・連絡が取りたければ縁の里まで来い」


 突っぱねた我愛羅はスタスタと元にいた場所まで歩いていった。


 もちろん白も君麻呂、ナルトに紫苑に九羅華も我愛羅の心配をしていたが、彼がしっかりと対応できたことに嬉しく思い、彼に続いていった。


 残された砂隠れの2人組み、テマリとカンクロウは少々ショックを受けたようだが、彼の安否を確認できて些か安心できたらしく、彼等も元にいた場所に戻っていった。


 そしてこの事態に木の葉の忍たちはずっと蚊帳の外だった訳だが、2人の忍者は会話から得た情報に、より一層、真実に迫っていた。


 シカマルとサクヤである。


(ちっ、めんどくせーな。つーかこいつら里の情報隠す気ないだろ? あの愛とか彫った男、元砂隠れって事じゃねぇか。となると他の忍びもその可能性は捨てきれないってことじゃねぇのか?)


(あの無口な人・・・・・・元砂隠れの人なんだ。それにお団子頭の人が行方不明になったって言ってました・・・・・・それに時期が気になります。お兄様がいなくなった時期と同じじゃないですか。ということはやっぱりあの人はナルト兄様です! というか、兄様に図々しくおんぶしてもらってた女は誰です!? 許せません!)


 シカマルは持ち前の頭脳で真実に差し迫る。


 サクヤも4代目火影の娘としての才能からか、やはり勘が鋭い。


 だが。


 少々ブラコンの気が強すぎるらしく、脇道に逸れがちであるようだ。








「おら! 静かにしやがれどぐされヤロー共が!」


 こうして一悶着がありながらも、一次試験官のヤクザ風貌の男と大勢の教官達が現れたことで、中忍選抜試験は始まったのである。


 もちろん、ナルトたちは軽々と突破を決めた。


 試験内容は紫苑のある能力のお陰で予め知っていたので、楽々の突破だった。








あとがき


感想のメッセージを送ってくれた方、ありがとうございます。送り返すべきか迷ったのですが、掲示板に書き込むのもどうかと思い、この場をかりて感謝を。


とても励みになりました! ありがとう!


実は私は紫苑とヒナタが大好きな人間です。いのも好きですが、彼女たちには及びません(笑)


そこにサクヤが参戦する予定ですが、女同士の戦いも期待してください。


そしてこの物語の目玉、人柱力の力もちゃんと物語にからめていきますのでお楽しみに(^o^)/



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第4話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2008/01/02 18:16
         NARUTO

『人柱力と妖魔の敵』

第4話  突入! 第44演習場


翌朝、第1次試験を突破した28チーム84名は、試験官に連れられてある場所にやってきた。


第2次試験ということだけあって、誰もが良い面構えである。


1次試験の担当試験官・森乃イビキによる精神面を試される試験により、かなりの数を落とされたと思った受験生だったが、第2次試験官のみたらしアンコが、


「こんなに残したの!? 今年の1次試験は随分と甘かったようね・・・・・・ま、いいわ。私の試験で半分以下にしてあげる。あ~ゾクゾクする。ウフフフフ」


 ハッキリいって、受験生はドン引きである。


 だが一晩だって気合を入れ直したらしく、皆が気合十分で望んでいるのだった。


「へえ~~~・・・・・・なんだか不気味なところね」


 紫苑がほぇ~と感心しながら見回している。木の葉に来たのが初めてな彼女は、ナルトの妻を公言しているだけあって好奇心旺盛だ。


「そうですね。なかなか雰囲気出てる森だと思います」


「あ、白もやっぱりそう思う?」


「ええ、もちろん。君麻呂、貴方はどうです?」


「ゾクゾクするに決まっている。ここで十分に暴れることができそうだ」


「・・・・・・まだ七尾をコントロールできてないようだな・・・・・・感情が高ぶるとアレの影響が出ている・・・・・・まだまだだな」


「・・・・・・我愛羅、僕はまだアレを取り込んでまだ3年しか経ってないんだ。無茶いわないでくれ」


 ベラベラと会話するだけの余裕がある彼女たちは流石としか言いようがない。しかし言っている事は重大過ぎる情報だ。


 相変わらず彼等には、情報を隠す、という概念がないらしい。


 それでどうやって今まで隠して来たんだと思うが、それは里に侵入してきた『全ての敵を抹殺』していたからに過ぎない。


「あれ? そういえばナルトは?」


「え、え~と・・・・・・って、いた! あそこ!」


 九羅華が指差した先には、木の葉の下忍の女の子と一緒にいるのが見えた。


「ねぇ、九羅華。私の記憶が正しければあの子って」


「うん。昨日もなにかやたらと庇ってた子よね。凄く怒ってたし。しかもあの程度だったとはいえ、初期段階まで高ぶらせるきっかけを与えた子だし」


「これは警戒が必要ね」


 お互いにうむ、と頷く紫苑と九羅華。


 そんな2人の会話を聞いて、白は苦笑いするしかなかった。






「―――ってな事があって、風雲姫の映画撮影が里の近くであったんだ」


「そうなんだ・・・・・・それなら私も見たよ? たしか第2弾だったよね?」


「そうそう、あれってウチの近くなんだ。今度見にこいよ」


「うん、行きたいな」


 他里同士にも関わらず仲良く会話を繰り広げるナルトとヒナタ。


 みたらしアンコ特別上忍が説明を始めているのに、まったく聞いていない。


 そんな2人をジッと見つめる少女・波風サクヤ。


 彼女は昨日のナルトを見て、心を痛めていた。


(兄様・・・・・・昔は私に笑いかけてくれたのに、今は私を無視してる。もしかしたら本当に忘れてるのかも。でも、そうだとしても、アレの説明にはつながらない)


 自分が音忍に蹴られて、友達のヒナタが唾つ吐かれた時に、物凄いスピードで目の前に現れた兄様。


 そして吹き上がったチャクラに、何よりもおかしかったのが、蒼眼の瞳から灼眼の瞳に変わったこと。そして瞳孔が縦に割れた。


 ―――そうだ。


 自分はあの瞳を見た瞬間、恐怖を感じたのだ。


 血継限界とか、瞳術とかそういう類のものじゃなかった。自信はないが、少なくとも自分は感じた。


 この7年間のあいだに兄の身に何があったのか、それを知りたかった。


 3代目のお爺様に尋ねてみたが、首を傾げて「分からんのぉ」と言われた。


 だがサクヤは見逃さなかった。瞳の色が変化して瞳孔が割れたと言った瞬間、3代目の瞳が一瞬だけ大きく開かれたのを。


 アレは絶対に何か知っているハズだ。


 だが、結局は教えてもらえなかった。


 生まれた頃から兄にベッタリだったサクヤは、今、兄との間に大きく厚い壁があるのをハッキリと感じていた。


(兄様・・・・・・苦しいです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っていうか、なんでヒナちゃんと一緒にいるんです!? やっぱりスタイルですか!? というかいつからそんなに女垂らしに!? やはりボン・キュ・ボンがいいんですね!?)


 どんなに苦しくても、やはり嫉妬と危険な突っ込みは忘れないサクヤであった。


 そんな少女の激しい葛藤と独り漫才は、唐突に終わりを告げた。


「―――その内容は、何でもアリアリのサバイバル・・・・・・って聞け―――!」


 いつまでも喋っているナルトとヒナタの2人組みに、ついに試験官のみたらしアンコはキレた。


 袖から素早く取りだしたクナイは、ナルト目掛けて一直線に襲い掛かる。


 サッとナルトが顔を逸らすと、クナイは背後にいた草の受験生たちの間を縫って地面に突き刺さった。


「みたらし教官、いきなり顔目掛けてクナイはやりすぎじゃないですか? さすがに避けないとヤバかったですよ」


「アンタがナンパしてるからでしょうが!」


 どうやらアンコには、縁の里のナルトが他里まで来てナンパしているようにしか見えなかったらしい。


「酷い言い掛かりだな、まったく」


 プンプンと頬を膨らますナルト。


 ヒナタはいきなりの展開にびっくりして付いていけない。


 すると、背後からありえない程の長さの舌を出してクナイを巻きつけて持ってきた、草の受験生である長髪の女がやってきた。


「あら、殺気を私に向けるなんて、良い度胸ね」


 どうやらこの女は殺気をアンコに向けていたらしい。


「いえね、私の大事な髪を切ったクナイをお返ししようかと思いまして」


「あら、ありがとう」


 アンコはナルトの傍までやってくると、どこか得体の知れない草の忍がもってきた長い舌に巻きつけたクナイを受け取ろうとした。


 すると、ナルトから「ストップ!」という声が上がった。


「? なに?」


「みたらし教官みたいにめちゃ美人くの一が、そんな蛇みたいななげー舌で唾液塗れにしたクナイなんて受け取っちゃダメだ! 汚れる! 俺のを上げるから!」


「・・・・・・・・・・・・」


 シーン、とその場が静まり返った。


「確かにそうね」


(認めたよ!!)


 その時、国を越えて心が一つになった。






 平和に必要不可欠な国々の民の心を一つにするという、素晴らしい事象が起こったりもした開始直前の説明会。


 各々は死亡同意書にサインをして、これから何が起こってもそれを自分は承諾しています、という意思を示した。


 それぞれの班に一つだけ、『天の書』か『地の書』が配られた。


 両方の巻物を揃えてゴールすればいいんだと、ナンパ行為も同然の言葉を発したナルトに嫉妬のオーラを撒き散らしながらおぶさってきた紫苑から説明を受けた。


 こうして各班がそれぞれのスタート地点に別れることになったのだが。


 既に戦いはそこから始まっていた。


 ナルトや九羅華、白や我愛羅に君麻呂といった仲間が既に移動した中、紫苑は珍しくナルトの背から降りて、一人の少女と対面していたのだ。


「・・・・・・貴方には負けないわ」


「! ・・・・・・わ、わたしも負けません」


 まるで何でも見透かすような紫の眼に睨まれて、ビクリと怯えたヒナタであったが、すぐにその意味に気がつき、己を奮い立たせる。


 しばらく両者が睨みあって、同班のキバやシノが声をかけた為に緊張が溶けるかと思いきや、新たな人物の乱入があった。


「ま、まってください!」


「あ、あなたは・・・・・・」


 予想外の人物の登場に少しだけ動揺する紫苑。


 やってきたのはサクヤ。


 真っ白な上着を着込んで、茶色のスボンという動きやすい格好をしている。


「あの、あなたは・・・・・・」


「初めまして、でいいかな。ちゃんと挨拶をしてなかった訳だし。私の名前は紫苑。ヨロシクね」


「あ、はい、こちらこそよろしくです。波風サクヤです」


「サクヤちゃんね・・・・・・長い付き合いになるんだから仲良くなりたいものだわ」


「!!」


「それじゃ」


 サラリと、聞き様によってはとんでもない言葉を置いていく紫苑。


「ま、待ってください! あの、あなたは兄さ・・・・・・いえ、あの人とはどういった関係なんですか!」


 背を向けて歩き出した紫苑に、まるで懇願するかのような声を上げるサクヤ。


 彼女とナルトの事情を知っている紫苑は、彼女の気持ちがなんとなく分かる。


 だから、少しだけ教えたくなる。


「私はね、あの人に助けられたの。死の運命から」


「死の運命?」


「そう。運命というより宿命ね。生まれる前から宿命付けられてた私の義務。そこから、まったく関係がなかった彼が助けてくれたの」


「兄さ・・・・・・あの人が?」


「そう、あの人が。私は・・・・・・本当に嬉しかった。あの人は私の太陽なのよ」


「そう・・・・・・ですか」


 紫苑の言葉に一抹の寂しさを覚えるサクヤ。


 だが本当に幸せそうな表情の紫苑を見て、大好きだった兄の根本的な優しさは失われてない。


 そう、彼女が教えてくれた。


「じゃ、中で会いましょう」


 確かな関係が、新たに生まれた。






「それでは、第2の試験・・・・・・始め!」






<某金髪少年チーム>


「おっしゃあ~~~~~!! 巻物集め競争開始~~~~~~~!!」


「え!? いつからそんな話になったの!?」


「アハハハ!! よ~し!! バンバン集めちゃう!!」




<某美少年&愛の少年&骨っ子少年チーム>


「さて、僕たちも移動しましょうか」


「・・・・・・どうせナルトが競争しようとか言ってるぞ」


「なら、僕たちも負けずに競争だ」




<4代目金髪少女のチーム>


(とりあえず、兄様を探して話を聞きたいです)


「ふん、足を引っ張るなよ!」


「あ、待ってよサスケ君!(しゃーンナロー! サスケ君と5日間も一緒♪)」




<白い白眼少女チーム>


「ひゃっほー!! サバイナルは俺たちの得意分野だぜ! ヒナタ! 泣き言なんか言うな―――ヒッ!?」


「長い付き合いって・・・・・・長い付き合いって・・・・・・長い付き合いってどういうこと? 私だって・・・・・・ブツブツ」


「・・・・・・落ち着け、ヒナタ」




<幼馴染み3人組みチーム>


「あー、クソめんどくせ~~~~~~~~」


「モグモグ・・・・・・お菓子が5日間もつか心配だよ」


「あんたたち! さっさとサスケ君のところまで行くわよ!」




<熱血オカッパ少年チーム>


「さあ、がんばりましょう!」


「落ち着け、リー。焦ればつまらんミスをするぞ」


「ふふふ、リーってば相変わらずね」




<草の舌長女チーム>


「ここからは殺し放題よ、ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」


「そうですね」


「早く終わらせましょう」






あとがき


 感想掲示板の方ではいろいろな指摘を頂き、ありがとうございます。
 ちょっと今回はペースダウン。
 しかも原作の話、というか会話を少し変更しています。
 まあ、二次創作ですし。
 原作に忠実な方は気分を悪くされたでしょうが、そこはオリジナルとして割り切っていただけたら幸いです。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第5話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2008/01/02 18:16
    NARUTO

   
   『人柱力と妖魔の敵』


  第5話 暴走列車は止まらない






「見つけたー!!」
 突然聞こえた爆音のような声にビクリと震えて周囲を警戒する滝の忍者3名。
 背中合わせに全周囲警戒をしていた滝の忍は、必死で気配を探る。
 しかし、なかなかやって来ない。
「・・・・・・・・・・・・?」
 すると、どういう訳が急に眠気が襲ってきた。
(幻術か!? ・・・・・・くそっ、やば・・・・・・い)
 班のリーダーと思しき男が、意識を失う前に必死で幻術返しを行おうとする。
「・・・・・・解!」
 そう言って、滝の忍3名は倒れた。
「ふふ~ん、一丁あがり♪」
 現れたのはうずまきナルト。手には扇子を持っていて、楽しげに倒れている3名をみやると、彼等がもっていた巻物を奪った。
「残念だったな~、別に幻術なんかじゃなかったんだよ」
 そう。
 ただナルトは即効性の睡眠液を霧状にして風遁の術と扇子で扇いで嗅がせただけ。
 まったく、術など使ってない。
「んじゃ、バイバ~イ!」
 実に卑怯臭い戦い方であった。




「なぜだ・・・・・・なぜ誰も来ない」
 眉を顰めて『ゴール』の正面に佇む君麻呂。
首を傾げているところから、本気で戸惑っているのがよく解る。
「競争だというから一撃で昏倒させて奪って来たというのに。どうなっているんだ?」
 全速力で駆け抜けている最中に出会ったどこかの忍(確認もしてない)を瞬殺した君麻呂は、そのまま一気にゴールした。
 だが、バラバラに分かれた班員もいつまで待っても来ず、里の仲間も来ない。
 おかしいなぁ、と首を傾げる君麻呂は、探しもせずにずっとその場で待っていた。
 ずっと、ポツンと・・・・・・。




「ナルト~、どこに行ったのじゃ~?」
 紫苑がフラフラと歩いていた。どうやらおんぶして欲しいらしく、いつもある温もりがないのが寂しいらしい。その所為で昔の言葉のクセが出ている。
 だが、迂闊にもまったく隠れることがなく、堂々と獣道を歩いている。
 敵に『全く』会うことなく。
 紫色の瞳だけが、不気味なほど不透明になっていた。
 その背後を九羅華が苦笑しながらついていっていた。




「いい香りです」
 川沿いをゆっくりと歩いている白。
 自然に溢れた場所を歩くのが好きな白は、空気を吸い込みながら2次試験を堪能していた。
 川の水をポットに入れたりしながら歩くその表情は、実にご機嫌だ。
 今にも歌を歌いだしそうなその笑顔は、白を初めて見る人がみたら、皆が思っただろう。
 なんて美人な子だろう、と。
 しかしそんな白がポツリと呟く。
「やれやれ。とても良い気分だったんですが・・・・・・残念です」
 笑顔が消えた。




「なあ、ヒナタ。あの縁の里の金髪男とは知り合いだったのか? 本当は昨日から聞きたかったんだけどよ。」
「え、えっと」
「・・・・・・それは俺も聞きたい。何故ならばあの男、いや、あの縁の連中は得体が知れないからだ」
 犬塚キバという少年と油目シノという少年、そして日向ヒナタが罠に嵌めて巻物を戴こうという作戦を決行しようとしたが、なぜか全く来なかったので仕方なく移動して、もっとゴールに近い所で罠を張ろうということにしたのだ。
 木の上を移動していたキバは、やっとという感じで切り出した。
 シノも妙に長い言い回しで尋ねる。
 実はこの2人に限らず、他班の同期メンバーも尋ねたがっていたのだが、ナルトの異様なチャクラと殺気の所為で尋ね難い心境になっていたのだ。
(ど、どうしよう・・・・・・ナルト君の事を話すのってどうなんだろ・・・・・・)
 ヒナタはこの数日間の、修行をつけてもらっていた時の会話を思い出す。




『ヒナタ、ひとつお願いしたい事があるんだけど』
『う、うん。何?』
『昔、俺がこの里にいたって事は、この中忍試験期間中は内緒にしててくれないか?』
『え、う、うん。いいけど・・・・・・どうして?』
『うん・・・・・・まあ、ヒナタなら話してもいいんだけど・・・・・・いや、でもこれは流石に問題あるかなぁ』
『えっと、言い難いことなら話さなくてもいいんだけど』
『いや、まあ、そういうことでもなくて。まあ俺が元々木の葉にいたっておかしいだろ? 縁の里の忍なのに』
『あ、確かにそうだね』
『ああ。それにそれって抜け忍扱いになってもおかしくないし』
『そ、そうだね。もし抜け忍になったら大変なことになるし』
『そうしてもらえると助かる。あ、でも試験後ならいくらでも言っていいぞ』
『う、うん。わかった』

 


 ヒナタはナルトとの会話を思い出して、どう答えるかを決めた。
「えっと、ナルト君とは一週間前くらいに知り合ったの。この里にナルト君が来た時に偶然会って・・・・・・」
「ふ~ん」
「・・・・・・そうか」
 シノは表情をまったく変えないのでどうか分からないが、キバはヒナタの回答に不満気だ。
 どうやら、あまり信じてはいないらしい。
 すると、赤丸が突然吠え出した。
 キバは赤丸の泣き声にハッとなり「止まれ!」と指示する、
「ど、どうしたの?」
「何かが来る!」
 キバの鼻と赤丸の嗅覚に関しては絶対な信頼がある2人は、辺りを警戒する。
「ヒナタ、頼む!」
「う、うん。びゃく―――」
 彼女の能力・血継限界の白眼で全周囲を見通して貰おうかと思いキバが指示し、ヒナタが頷いて発動しようとした時だった。
「あれ、ヒナタ?」
「ナ、ナルトくん!?」
 この場に聞こえてくる筈がない、自分たち以外の声に3人は驚愕した表情を浮かべる。
 ヒナタはともかくシノとキバは、ナルトがいつ自分たちの背後をとったのか全く解らなかった為、慌てて距離をとった。
「ヒナタ、こんなところにいたのか!」
「う、うん。で、でもナルト君、班の人は?」
 ナルトとは知り合いだし、班の人の1人とはついさっき話したばかり。言わば顔見知りだ。
 だが今は試験中な訳だし、友だからといって戦いにならないという理由にはならない。
 ヒナタはナルトが1人でいるのを不思議に思ったらしく、辺りをキョロキョロする。
 キバやシノは額に汗を浮かべて、ナルトを威嚇している。
「ん? ああ、仲間はいないよ」
「いない!?」
「!?」
「うん、いない。巻物競争って事でバラバラに散ってるから。今はどこら辺にいるかなぁ」
「・・・・・・・・・・・・」
 思わず絶句する一同。
 サバイバルという、何でもアリの試験中に1人で行動するなんて、どれだけバカげていることだろうか。
 しかもその回答が競争の為だというのだから、唖然としても仕方がなかった。
「あ、そうだ。巻物やろうか? 今そこそこ集まってるからさ」
「え!?」
「天の書が2つと地の書が1つか。どっち?」
「えっと、地の書がないんだけど・・・・・・」
 ごそごそと懐から取り出した巻物。
 まだ始まって1時間も経ってないのに3つも入手しているナルトに驚く。
「ほい。あげる」
「で、でもナルト君の班の分は?」
「俺たちの班は地の書だから、天の書が1つあれば問題なしだ。まあ、その巻物も紫苑がもってるんだけど」
「そ、そうなんだ」
 ナルトが地の書を差し出してくるので、おずおずと戴くヒナタ。
 キバもシノも見ているだけで、何も言わない。
「ああ、たぶんウチの里のやつらも刈りまくってると思うけど、ヒナタたちには手を出さないはずだから安心してくれよな」
「え・・・・・・ど、どうして?」
「まあ、そういう奴等なんだよ」
 ニシシと笑うナルト。
 刈りまくっている、という言葉にシノとキバは背筋が寒くなるが、口を挟む勇気がない。
 だが、笑っていたナルトが、一瞬だけ視線をヒナタからあらぬ方向へ外し、真面目な顔つきになった。
 ヒナタはそんなナルトの変わり様に戸惑ったが、すぐにナルトはヒナタヘ笑顔を向ける。
「ほんじゃな、ヒナタ。俺もヒナタたちといたいけど、もうちょっと遊びたいからさ」
「う、うん。わかった。ありがと、ナルト君」
 ヒナタがニコリと笑うのを見届けたナルトは、キバやシノにもニッと笑い、またも目の前から消えてしまった。
 あまりのナルトのスピードにヒナタたちには消滅したかのようにしか写らなかった。
「も、もらっちゃった」
 後ろで呆気に取られているチームメイトに、ヒナタは苦笑いを浮かべながらそういったのであった。




 一方、走り去っていったナルトは、嫌なチャクラを感じ取り、大急ぎで現場に急行していた。
 遠くからでも漂ってくる、生理的に嫌悪が走る感覚。
 この感覚は、ナルトには身に覚えがありすぎた。
 そして、そのチャクラを感じるはずがないので、大急ぎで向かっているのだ。
 ―――そう。
 このチャクラ。
 縁の里『六聖剣』の一角にして、三尾の人柱力を不幸にした奴。
 今、この場に彼女がいないのは、幸か不幸か。
 そして、ソイツが傷を負わしているのが誰かを知った時、今までの恨みから完全にキレた。
「なあ、大蛇丸」




「強すぎる・・・・・・」
 目の前の敵を見据えて、私はそう洩らさざるを得なかった。
 突然の突風が吹いて、皆がバラバラになり、戻ってきた私とうちは君が仲間同士であることを確認した。
 だがサクラちゃんが戻ってこず、探しにいったら巨大な大蛇に追い詰められるサクラちゃんを発見した。
 なんとか3人がかりでやっつけた私たちだったが、蛇の中から突如出現した草忍の女と戦闘を開始してから、私たちは絶望的状況に陥った。
 ケタ違いの殺気にサクラちゃんが動けなくなり。
 私たちを守ろうとしたうちは君は、鳩尾に一発いれられて戦闘不能になった。
 私は得意の風遁の忍術で対抗する。
「くっ・・・・・・風遁・烈風刃!」
 小さな刃どんどん枝分かれし、8つに分裂した風の刃が草忍に襲い掛かって、命中したと思った瞬間だった。
 草忍の足下から巨大な蛇が再び出現し、私の烈風刃など口寄せ出現の衝撃でかき消されてしまった。
「あらあら・・・・・・貴方それでも本当に4代目の娘? ガッカリね」
「・・・・・・!」
「もうちょっと楽しめるかと思ったのに・・・・・・目的のサスケ君は私の殺気に動けはしたけど一撃でやられるし、興味があった貴方は大したことない。がっかりだわ」
 草忍の女は、ふう、と大きな溜息を吐いて私たちを見下した。
 悔しいが、私たちとこの相手ではレベルが違いすぎた。
 それは最初の殺気で分かっていたことだったが、殺しにきているこの人の前ではそんな事は関係ない。
 勝たなければ殺されるのだ。
 冗談ではない。
 やっと、本当にやっとの思いで兄と再会し、問いただそうと思っていたのに。
「まだまだ!」
 私は大きく後方に跳躍し、複雑な、現時点では一番の大技を繰り出す。
 それは忍びの術ではCランク。でも威力はあるとされている技。
「風遁・烈空弾!」
 繰り出された風の塊が、蛇の上に乗っている草忍に襲い掛かる。
 これで何かしらの変化がなければ私たちは殺される。
 微かな希望を込めて放った技だったが、それも無常に終わった。
「風遁・烈空弾」
 私の印を組む速度よりも、何倍もの速さで結ぶ敵。
 そしてまったく同じ技なのに、私の烈空弾は簡単に弾かれて、そして私は相手の弾に弾き飛ばれた。
「あぅ!」
「・・・・・・ダメね。もういいわ。貴方はここで死んで頂戴」
 目の前の草忍の女の口から這い出てくる刀。
 そして女は私の傍にやってくると、刀を振りかざして、もっとも迎えたくなかった瞬間が訪れたのだった。
「強すぎる・・・・・・」
 私はそう呟く。
 自慢にはならないが、私の風遁はカカシ先生にも褒められるほどだった。それなのに、この敵には全然効かない。
 視界の片隅で、うちは君が蹲りながらこちらに向かって何か叫んでいたが、私も烈風弾を喰らって全身が痛かった。
(兄様・・・・・・ごめんなさい・・・・・・もっと、いろんなこと、一緒にしたかったです・・・・・・)
 刀が振り下ろされる。
 私は、それを虚ろな目で見た。
 その瞬間だった。

「なあ、大蛇丸」

 神様が、最後に気を利かしてくれただろうか。
 そこには、一番会いたかった兄様が。
 ナルト兄様がいた。
あとがき

昨日はリアルの方が異常に忙しく、なかなか書けませんでした。
これからもリアルの方が忙しくなりそうですから、毎日の更新は難しいです。
ですが、必ず最後までいきますので、辛抱強くまっていてください。

そしてやっと普通の文章の間になってるはず(汗)
これからはこんな感じでいきますので、今までと違和感あるでしょうが、我慢してくださ~い!



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第6話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2008/01/02 18:15
     NARUTO


    『人柱力と妖魔の敵』


 第6話  激突! 九尾VS変態オカマ




「なあ、大蛇丸」
「あら、久しぶりね・・・・・・ナルト君」
 サスケとサクラは最悪の瞬間が訪れると思った。
 だがその時に辺りに浸透するような声がして、どこから聞こえたんだと探ろうとした瞬間、大蛇丸とサクヤの間に人間が飛び込んでいた。
 サスケはいったい誰がと確認した瞬間、猛烈に屈辱感に覆われた。
それは、先週からサクヤの前に突然現れた変な男。
自分にとってはサクヤと関係を持つのに邪魔になるかもしれない、限りなく目障りな存在の奴だった。
クナイと刀がガチガチと音を立てる。
「・・・・・・お前、その姿はなんだ?」
「相変わらずスピードだけは一級品ね」
 ナルトの問いにまともに付き合うつもりはないらしく、ナルトは内心で舌打ちする。
 ナルトの記憶では、大蛇丸の容姿は目の前にいるようなものではなかった。
 別人と言ってもいい。
 だが感じるチャクラは大蛇丸のソレだし、独特の喋り方はコイツしかいない。
 グッと一瞬だけ全力の力を込めて、刀を弾き、大蛇丸が後方の木へと跳躍した。ナルトは倒れているサクヤの正面に立ち、草忍の女・大蛇丸を睨みつける。
「答える気はなし、か。まあいい。ここで決着をつけてやる」
「フフフ、できるのかしら? スピードしか取り得のない縁の里の忍が。特に君ね」
「お前が知ってるウチの忍は俺も含めて4人しかいねぇだろうが。何もかも知った気になるなんて、根性も腐っていたがついに頭まで腐ったか。もはや救いようがねぇな」
「・・・・・・フフフ。あの失敗作は元気にしてる?」
「てめぇっ―――!」
 せっかく挑発していたのに、あっさりと大蛇丸の挑発にのってしまうナルト。
 彼は仲間に関してのみ、沸点が著しく下がってしまう。それが一番の弱点だった。
 激傲したナルトは瞬神の術で大蛇丸の背後に回りこみ、頚動脈目掛けてナイフを突き出す。
 それを大蛇丸は辛うじて受け止め、弾き返し、瞬神の術で消える。
 ナルトはそれを追って、また瞬神の術を使った。
「・・・・・・すごい」
 あまりのスピードに何が起こっているのか分からないサクラは、どこからか聞こえるクナイと刀の音に、戦っているのだとようやく悟り、そのスピードに驚く。
「・・・・・・・・・・・クッ!」
 そんなサクラの呟きに、サスケは悔しげに呻いた。
 彼も写輪眼という、うちは一族の血継限界に目覚め発動しているというのに、まったく見えないのだ。
 うちは一族の特徴とでもいうべきエリート思考から、彼は打ちのめされていた。
 ようやく、大蛇丸とナルトがサクヤたちの目に見える場所に出現した。
 彼等は自分たちの真上、気の上に乗っている。
「てめぇだけは、絶対に許さねぇ・・・・・・ここで殺してやる」
「そんなにいきり立たないことね。解っているんでしょう? 今の貴方の力はスピード以外は私以下なんだから」
「教室での一件からチャクラ量が増えてたのは知ってたけど・・・・・・まだまだね。全然扱えてないじゃない。人柱力として覚醒も半端みたいだし。バケモノなのにねぇ」
 大蛇丸はナルトへの口撃を止めず余裕な口振りだ。しかし視線はまったく外さなかった。
 スピードだけは、本当に自分と匹敵するのだから。
 だが術がまったく使えてない。その点から大蛇丸は若干の余裕を見せていた。
 口寄せした大蛇が、大蛇丸の下にやってくる。
「悪いんだけど、貴方なんかに構ってられないのよ。私はサスケ君に用があるんんだから」
 大蛇丸はヤレヤレ肩を竦めて溜息を吐く。
 ナルトは大蛇丸の「人柱力として」という言葉から俯いている。
(・・・・・・人柱力として覚醒? 兄様はあの変な草忍と知り合いのようですし、たしか大蛇丸といえば伝説の3忍の1人・・・・・・それにバケモノっていったい何のことを)
 バケモノという言葉に、サクヤの鼓動が早まる。
 サクヤは痛む体を引きずりながらサクラの傍に歩み寄った。
 サクラもそれに気がつき、慌ててやってくる。
「サクヤ、あんた大丈夫!?」
「な、なんとか。サクラちゃんは?」
「私は大丈夫よ。それよりあの人・・・・・・」
 サクラは視線をナルトへと向ける。
「なんだか、様子がおかしくない?」
 2人が視線をナルトへ向けると、大蛇丸と向かい合ってるナルトの様子がおかしい。下を向いていて表情が伺えない。
 そして。
 ナルトの目の色が灼眼へと変化し、教室の時とは違って完全に九尾の目になった。


 一方、ナルトの行動をいち早く察知していた我愛羅はとにかく砂の移動船で爆走していた。
 しかし。
 何をどこで間違えたのか。
 ある程度巻物を集めた途中からは、ある人物の背後を付いてまわっていた。
 それはテマリ。我愛羅の姉である。
「・・・・・・姉さん、見ない間に大きくなった」
 砂を抜けて縁の里の忍になって、我愛羅は変わった。
 殺戮のみに自分の存在意義を見出していた事から。
 初めての、絶対に裏切ることがない親友たちを得て、里を愛し。
 そして懐かしむことから『シスコン』へと。
「・・・・・・カンクロウ、なんでそんな変な化粧してるんだ?」
 これでは、ただのストーカーだった。
 そしてまだまだ、我愛羅の盲目的ストーキングは続くのである。


 白が着々と君麻呂が独り孤独に待っている場所に近づいていた。
 そして一戦闘を終えた白が休憩しているときに、右から良く知る圧迫感を感じた。
「ん? この気配は・・・・・・」
 覚えがある。
 少し前に、あったあの事件。
 あの子を縛り付けたものと戦った時に、発動した。
 さすがに、今度もなったらマズイはずだが・・・・・・。
「まあ、彼女がいるから大丈夫でしょう」
 きっと彼女たちがいれば問題ない。
 彼女にとって、大切な人はナルト君なんだから。
 人は、大切な人を守るために強くなるのだから。



「―――っ! 紫苑!」
「ええ! 九羅華、お願い!」
 力の脈動を感じる。
 これは、彼に『使わせてはならない』力。
 もう、あの時のような事にはなって欲しくないから。
「口寄せの術! いでよ、燬鷇凰!」
 呼ばれたのは、妖魔の一角。
 最強の妖魔・六尾の鳥獣『燬鷇凰(きこうおう)』
 それの完全な縮小版。力も100分の1の力に抑えた移動用。
 紫苑と九羅華は飛び乗って急行する。
 ナルトが転身状態に陥る前に助けるために。


「覚悟しとけよ」
 金髪の少年が目の前で突然変貌した。
 吹き上がった紅いチャクラは放出されずに形を纏い、尾を形成する。
 体に纏わり付く紅のチャクラは沸騰し、ビリビリと辺りの木々に衝撃を与えていた。
 室内であった時とは比較にならない程の危険信号を、細胞が訴えている。
 サクラは生物としての本能からガタガタと震えだし、サスケは凄まじい程のチャクラ量に唖然となる。
 サクヤは、昨日に急変した兄を再び観た。胸が押し潰されそうになるほど苦しい。
「・・・・・・潜影蛇手!!」
 大蛇丸の顔色が変わり、腕から飛び出してきた蛇がナルトの腕に絡みついた。
 ナルトはその蛇に構うことなく大蛇丸との距離をつめ、左足で大蛇丸を蹴り飛ばす。
 その今までとはケタ違いのスピードと衝撃に大蛇丸は吹き飛び、サクヤたちからは見えなくなった。
 ナルトはそれを確認すると、上空へと跳躍する。
「―――クッ! ちょっと余計な事を言いすぎちゃったみたいね。ここは撤退した方がいいかもしれな」
 大蛇丸はドロを払って脱出用の印を組む。
 だが。
 組んでいる最中に、上空からとてつもない気配がするのに気付き、ハッと空を見上げる。
 そこにいたのは。
 人柱力として『初期段階』まで変化したナルト。
 そして、発動させている術は―――!

『超特大螺旋丸!!!!!』

 全身にチャクラの渦を圧縮させ纏った、4代目火影の得意忍術だった。
(マズイわね!)
 サクヤたちは見た。
 受験生たちは見た。
 辺りが一瞬だけ白い閃光に包まれ、空が暗くなるのを。大地が揺れ動くのを。
 そして。
 爆心地一帯が焦土と化した。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第7話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:7edb5915
Date: 2008/01/02 18:15
     NARUTO


  『人柱力と妖魔の敵』


第7話 役者は揃い、動く陰謀




 ソレはギリギリで逃げていた。
 実力者に寄生していたことで安心していたから。
 だがアレがあの者たちを送り込んでいるとは思わなかった。
 おそらく偶然なのだろうが、気をつけるにこしたことはない。
 しばらくは身を潜めておこう。


「ングッ! ゲホゴホ! な、何があったの!?」
 担当試験官のみたらしアンコは、突然の閃光と震動に好物の団子を喉につまらせながら立ち上がった。
 クシを近くの木に投げつけるアンコ。そこには彼女が食したと思われる団子のクシが木の葉マークを描くように刺さっている。
 食べすぎである。
「これは・・・・・・問題が発生したみたいね」
 手元にあった団子を全てもって、本部へと走り出すアンコ。
 まだ食べるのか・・・・・・アンタ・・・・・・。


「なんなの、いまの!?」
「俺が知るかよ・・・・・・」
 木陰に身を隠しながら移動していた、木の葉の名家『猪鹿蝶』の3人組は、突如襲った閃光と爆音、そして爆風に驚いて振り返った。
 考えられない事象にいのの戸惑いは大きい。
 シカマルはめんどくさそうな顔をしながらも冷や汗を流し、チョウジは爆風でふっとんだお菓子に涙を流していた。
「ちょっと、様子を見に行くわよ!」
「マジかよ・・・・・・他の班もたくさんよってくるんじゃねぇのか?」
「だから慎重に行くのよ!」
「めんどくせえ」
「ほら、チョウジ! さっさと行くわよ!」
「僕のお菓子が・・・・・・」
 

「どうする? 様子を見に行くか?」
「・・・・・・止めた方がいい。何故なら既に巻物を手に入れているのだから、不要な危険を負う必要はないからだ」
「・・・・・・そ、そうだね」
 寡黙かつ陰険な印象を受ける少年・油目シノ。
 しかし彼の冷静な判断力と落ち着きぶりは、仲間たちからはしっかりと信頼されていた。
 そしてシノ自身も今の不可解な減少に興味はあったのだ。
 だが野次馬根性で近づくのは愚かだとしか思えない。そう、シノは判断した。
 シノの言葉に同意するキバとヒナタを含めた3人は、大急ぎでゴールの塔へと向かっていった。


「ネジ、どうです?」
「・・・・・・なんなんだ、アレは・・・・・・」
「ど、どうしたの? 何が見えるの?」
 ガイ上忍が指導する教え子たちのチームが、ある木の上に立ち止まって、閃光と爆音が発生した方向を見ている。
 そのチームの中でもリーダー的存在である日向ネジ。彼にはある能力がある。
 彼の一族のみに遺伝として伝わる秘伝の能力・血継限界『白眼』。
 それは対象のチャクラとそれが流れる経絡系を目視することができ、体内へと打撃を与える特異体術を使う、木の葉隠れの里の最古の名家。
 彼はその分家の血筋にあたる。
 その白眼で1キロ程先を視ていたのだが、その状況に冷や汗が流れる。
「・・・・・・ここから1キロ弱ほど離れたところだが、そこら数十メートルが・・・・・・森が砂塵と化している・・・・・・」
「な!? なんですか、それは!」
「起爆札? でもそんなに威力がある訳ないよね・・・・・・」
「それに・・・・・・」
「まだあるんですか!?」
「・・・・・・犬神家がいる」
「・・・・・・は?」


「兄様!」
ありえない閃光と爆発、吹き上がった砂塵に鳥肌が立った。
その衝撃波に思わず身を低くしたサクヤは、痛む体を起こして現場に走る。
サクラも走るサクヤを慌てて追いかけようとするが、いまだ蹲っているサスケの下に駆け寄った。
「サスケくん! 大丈夫?」
「・・・・・・ああ。それより、俺たちもいくぞ」
 憤怒している内心を取り繕い、サスケはぶっきらぼうにサクラに言う。
 サクラはサスケに肩を貸して、2人でサクヤの後を追った。
 しばらく走っているとサクヤの背中が見えて、サクラが声をかけた。
「サクヤ、何があったの・・・・・・っ!?」
「なっ!?」
 眼前に広がっていたのは、『森林が生い茂った』はずの場所が『砂漠のように』
なり、砂塵がもくもくと上がった光景だった。
「・・・・・・なんなんだ、コレは!」
 思わず怒鳴ってしまうサスケ。
 兄の姿を必死で探すサクヤ。
 砂煙が晴れてくると、何かの影が視えてきた。
「・・・・・・兄様!」
 心配するサクヤは、言わないように気をつけていた呼称で呼んでしまう・・・・・・が。
 そこに現れたのは、地面から生えた腰と両足の人間らしきもの、つまり犬神家の格好をしたナルトだった。
 ちなみに草忍の女の姿が見えないことに安堵しているサクラとサスケ。
「・・・・・・にぃさま?」
 そのあまりな格好に思わずズッコケそうになるサクヤ。
 心配で仕方がなかったサクヤだったが、あまりな格好をしたナルトらしき物体には近づけない。
「あれ・・・・・・生きてる?」
「・・・・・・しるか」
 ふざけた光景に怒りが引いてきたのか、サスケは吐き捨てる。
 とりあえず起こすか、と近寄ろうとした時だった。

 バサ、バサ、バサ。

 妙な音が突如聞こえてきたので上空を見上げると、そこには1羽の鳥。
 だが7色の虹色な色をした羽の鳥は、その毛皮故に奇天烈さを撒き散らしている。
 突如あらわれたその鳥は、犬神家をしている物体の上に移動すると、地面へと降下した。
 そこで初めて、サクヤたちはその鳥の上に人が乗っている、ということに気がついた。
 地面に降りたのは2人の女性。
 サスケたちはその2人の顔に見覚えがあった。
「あぁ~! ナルト! なんで埋まってるの!?」
「アハハハハハハハ!!」
 地面に埋まって足を出しているナルトを見て、大慌ての紫苑と爆笑する九羅華。
 彼女は面白い事が大好きなのだ。
 せっせと地面から掘り出してナルトを救出すると、彼は土塗れになりながら気絶していた。
「・・・・・・私がおんぶしようか?」
「ダメに決まっておる! 私がおんぶするのだ」
 九羅華の言葉をあっさりと切り捨て、いそいそとナルトを背負う紫苑。
 そして紫苑と九羅華は、さも今気付いたというような顔で振り返って言った。
「あれ、サクヤ?」
(ワザとらしすぎる・・・・・・っていうか紫苑、演技上手すぎ・・・・・・しかも呼び捨て)
 ニコニコしながらナルトを背負って近づく紫苑。
「あ、え、えと、紫苑さん」
「そうそう。私がその紫苑さん」
 どの紫苑さんだよ、と心の中でサスケが突っ込む。
 すると、目の前の大きな鳥が、ボン、という音と共に消えてしまう。
「ちょっと一緒に休憩しない? 貴方たちも今の戦闘で疲れただろうし、ナルトも休ませたいしね」
「あ、そうですね」
 サクヤもサクラもそれに同意見なのか、素直に頷く。
 普通なら即座に戦うところだし、一緒に休憩なんてもっての他だ。何か罠があると思うのが当たり前。
 しかし結果的にナルトに助けられたことや、草忍の女を撃退してくれたこと、紫苑や九羅華の邪気のない笑顔を見て、信じることにしたのだった。
 紫苑はニコニコしながら、背後にいる九羅華に言う。
「さて・・・・・・余計なザコはよろしくね、九羅華」
「わかったわ」
「え、ザコ?」
 何の事を言ってるの、と眉を顰めた3人だったが、紫苑の背後にいた九羅華という女性が一瞬で消えた事に驚く。
「さ、行きましょ?」
 なんでもない、とでもいう表情で、森の中へ入って行く。
 3人は変わり果てた大地を気にしながら、紫苑に付いて行った。


 森に入った紫苑は、適当なところで腰を下ろし、薪に火を酌む。
 ナルトは火の傍で横になっていて、苦しそうに息をしながらも眠っている。紫苑はそんなナルトに持っていた水筒の水を飲ませたりして、看病していた。
 サクヤも看病したいのだが、頑ななナルトの態度から関係をばらしたくないのかも、でも看病したい、という気持ちの板挟み状態になってオロオロし、結局ナルトの傍に座っているという形で落ち着いた。
 サクラは紫苑やナルトをチラチラと見ていて、様子を伺っているという感じだ。
 サスケは消えた九羅華が気になるのか、辺りを目線のみで伺っている。
 そして解らないことにイラだったのか、サスケは紫苑に聞く。
「おい、お前。あの女はどこに行ったんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい!」
「サ、サスケくん・・・・・・」
「なに、キミ。さっきから偉そうにして。人にものを尋ねるなら丁寧に訊くのが常識じゃない? 貴方にはそんな常識すら備わってないのかしら」
「なんだと!?」
「今度は怒るの? 図星を指されたからって逆上するんだ。しかもその程度のことで」
「・・・・・・おまえっ!」
「自分の傷を抉られてキレるなら、まだいい。まあ、それも押さえられるに越したことはないけど。だけど人の忠告やアドバイスすら全く聞き入れないのは、愚かとしか言い様がないわ」
「・・・・・・・・・・・・!」
「もう少し、キミは心に余裕をもった方がいいわ。そうすればもっと忍としても強くなれる。これは経験者の助言ね」
 紫苑は思い出す。
 巫女として育ち巫女として死ぬはずだった自分。
 巫女ではなくなり、『あるモノ』を取り込み人柱力になった自分。
 一般人の肉体を必死で改造して忍となった自分。
 ナルトの隣に立ちたくて、守りたくて、必死で特訓した。
 だからあの頃は本当にがむしゃらに力を求めていた。焦っていた。でもそれではダメなのだと、それだけではダメなのだと、仲間の皆が教えてくれた。
 そしてだいぶ強くなれた今だからこそ、よくわかる。
 心にゆとりを持って、信念を持ち、必死になり、こう在りたいと強く願うこと。
 そうすれば、強くなれる。
「お前に何がわかる!? 知ったような口をきくな!」
「少なくても、貴方よりは強いわ」
「なっ!?」
 一瞬で背後に回られたサスケは、首筋にクナイを当てられている事とその速度、そして起こった事の事実に、草忍の女の時とは別の死の体感を味わう。
「はい、今ので死んだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「これで解った? 少なくても貴方より強いって」
「くっ・・・・・・」
「ちなみに、私は忍の修行を始めて3年目だよ。それまでは巫女だったの」
「!?」
「今の貴方みたいに沸点はそこまで低くなかったけど、それでも焦ってたわ。力を求めてた。ある理由でね。でも仲間のアドバイスで、仲間を守りたいという気持ちが、私をここまでにしてくれた」
「・・・・・・そうなのか」
「まあ、私もまだまだなんだけどね。スピードだけだし、仲間のレベルに追いついてきたのは」
 舌をちょっと出して、アハハと笑う紫苑。
 すでにナルトの隣に戻っている。
「そうそう。彼女、九羅華がどこに行ったのかだったわね。九羅華にはここに集まってきた連中を片付けてもらってるのよ」
「たった独りで!?」
 紫苑の言葉に驚くサクラ。
「フフフ。大丈夫、大丈夫」
「え、そうなんですか・・・・・・?」
「もちろんよ。大した強さの奴はいなかったし、何よりも・・・・・・」
「何よりも?」
「彼女はね、私たちの仲間の中では『最速』なんだから」


 ゴール地点に到着した砂隠れの忍のテマリとカンクロウは扉の中に無事に入っていった。
 途中で遭遇した幻術を使って罠を貼っていた忍がいたが、テマリの風遁の術の前に見事に吹き飛ばされて気絶で終わった。
 そうやって巻物を2つ手に入れたテマリたちは無事にゴールした。
 ストーカー行為に及んでいた我愛羅はその光景をみてホッとしていた。
 そしてゴールの扉の前で、不動のまま佇む君麻呂を見て首を傾げた。
 我愛羅はとりあえず放置しておこうと決めると、また引き返して
移動を始めた。どこへ行こうというのだろうか。


「ただいま~」
「おかえり~」
 背後からひょっこりと歩いて現れた九羅華。
 4人の視線とナルトのいびきが集まる中、彼女の背後からさらに人影があった。
 現れたその人物にサクラは驚きの声を上げたのだった。
「いの!?」
「サクラ!?」
「あら、白じゃない」
「ひとりじゃ寂しいから来ちゃいました」


 日が暮れ・・・・・・君麻呂は一人孤独に待ち続ける。


☆あとがき☆
 すいません、遅くなりました。
 しかも短い。
 リアルの用事が立て込んでいて、なかなか書けませんでした。

 1つ重大な事に気がついたので、少し聞きたいです。

 シカマルとのCPはテマリかいの、どちらがいいんでしょうか。
 それとも、予想外にサクラ?
 それともこれからTS化する白!?(冗談)



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第8話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/21 12:40
     NARUTO


『人柱力と妖魔の敵』


 第8話  嵐の前の静けさ




「で、何があったのよ、いの」
 サクラたちが野営する場所にやってきた山中いのの班は、自分たちが変な閃光と爆風が起こった場所にやってきて、気がつけば背後に立っていた九羅華に「ついてくる? サクヤさんの班がいるところに合流するんだけど」と誘いを受けたのでやってきたと、説明した。
 今は白が捕ってきた川の魚を焼いている最中だ。
「っていうかよ、魚なんか焼いたら臭いで敵を呼んじまうんじゃないか?」
「ああ、大丈夫ですよ。もうほとんど班は残ってないはずですし、来たら気配でわかりますから」
「いや、そういうことじゃないんだけどよ・・・・・・めんどくせー」
 どこか論点がずれている白の回答に、シカマルは頭をポリポリとかいて、めんどくさそうに魚に噛り付いた。
 チョウジは問答無用に魚を食べている。実に嬉しそうだ。
 だがいのはその言葉に反応した。
「ほとんど班が残ってないって・・・・・・何でわかるの!? っていうかそれはマズイわよ。私たちまだ巻物揃ってないのに!」
「ああ! 私たちもだ! どうしよう、サスケくん!」
「・・・・・・チッ」
 白の言葉に大いに焦るいのとサクラ。そしてどうするかと眉を顰めるサスケ。
「ああ、大丈夫ですよ。いくつか巻物もってますから」
 そういって懐から取り出したのは、天の書と地の書。
 いったいドコにしまっていたのかと問いたくなるほど出てくる、出てくる。
 合計で6つの巻物が目の前に出された。
「な、なんでこんなに・・・・・・」
「すごい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 目を丸くして絶句している木の葉の忍たち。
 そして何故か白が悲しそうに呟いた。
「歩いていたら、敵がたくさん来たんですよ・・・・・・ナンパ目的で」
「へ? ・・・・・・ああ! 白さん綺麗ですもんね」
「そうですね。私も悔しいけど白さんには適わないなぁ。同じ女として羨ましい限りです」
 いのとサクラが納得したかのように、コクコクと頷く。
 そんな様子に紫苑と九羅華がお腹を抱えてぷるぷると震えていた。
 あまりにも可笑しすぎて、声すら出ないようだ。
「・・・・・・ううぅ」
 白が大粒の涙を零して、さめざめと唸る。
 そんな白についに紫苑と九羅華は地面に転がってまで、悶え苦しんでいる。
「ちょっ!? どうしたんですか!?」
 焦るいのとサクラ。
 女の涙ほどめんどくせーもんはねえと呟くシカマル。ハンカチを差し出すチョウジ。
 そんな彼等に衝撃的な言葉が投げられた。
「僕は男です!」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?!?!?!?!?」」」」」
 長い沈黙の後に大絶叫する木の葉の忍一同。
 いや、サクヤは驚いていない。ナルトのお世話をするのに夢中だからだ。
「アハハハハハハハハハハハハハ!! ヒ~!! お腹が苦しい!! もうダメ・・・・・・!!」
「・・・・・・白よ、いい加減諦めた方がいいのではないか? プププ」
「・・・・・・受け入れると大切なものを無くしそうなんですよ。諦められません!」
 涙を流す白にポンポンと肩を叩いて慰める紫苑。慰める気なんか全くなく、爆笑する九羅華。
 哀れな白を、信じられないという目で見つめる木の葉の忍一同の前に、またもや乱入者が現れた。


「サスケくんに呪印を附け損ねちゃったわ・・・・・・まあ、まだチャンスはあるし焦らないでおきましょう」
 草忍の女に変装していた大蛇丸は、傷だらけの身体を押さえながら不気味に呟く。
 彼は気付いていなかった。
 ナルトと激突して影を使った転移をした瞬間、自分の体から『あるもの』が逃げ出したしたことを。
 伝説の3忍と呼ばれた大蛇丸が、まったく気付けなかった。


「これは・・・・・・」
 中忍試験の本部にて、みたらしアンコや暗部、試験官たちが運び込まれた遺体を見ていた。
「この遺体、草の忍ね。ってことは・・・・・・あの時のあいつか」
 長い舌を出してクナイを出してきた奴を思い出す。あの時はナルトとかいう縁の忍の助言で受け取らなかったが、その通りにして正解だった。
 ちなみに、ナルトのクナイを後でちゃんと貰うつもりだ。
「これは・・・・・・大蛇丸か」
 暗部の1人が遺体を見て呟く。アンコはそれにコクリと頷いた。
 彼女は大蛇丸が木の葉に在籍した時の師弟関係にあった。そして大蛇丸に呪印をつけられて捨てられたという過去をもつ。
 もちろん今は何とも思っていないが、当時は結構ショックだった。
「大蛇丸が中忍試験に潜り込んでいるということか・・・・・・とりあえず火影様に報告するが、今さら中止はできないだろう」
「・・・・・・そうね。とっても危険だけど」
 事の重大さに重たくなる室内。
 そこに中忍の試験官が飛び込んで来た。
「大変です!」
「何? 騒がしいわね」
「と、とにかくこれを見てください!」
 飛び込んで来た試験官は持ってきたビデオテープを差し込んで、テレビを点ける。
 映し出された映像は、第2試験のゴール地点の映像。
 そこに映し出された2人に、暗部たちは、ほぅと感嘆の声を上げ、アンコはニヤリとした顔をする。
「なかなか頼もしい子達が来たわね・・・・・・開始2時間でゴールするなんて」
「いえ、それもそうなんですが・・・・・・」
「なに?」
「ここです」
 巻き戻しで映像を戻すと、そこにはゴールの扉の前に立っている少年の姿が。
 開始して30分の時点ですでにここに立っている。
「な!?」
 腰に巻物を2つ持っていることから、驚愕の表情を浮かべるアンコたち。
「こいつは!?」
「ええ、彼は今回初参加の縁の里の忍なんですが・・・・・・ですけど」
「なによ、はっきり言いなさい!」
「それがここにずっと立ってるだけなんです。ゴールもせずに」
「はい?」


「・・・・・・やっと見つけた」
「あ、我愛羅。やっと来たのですか」
「・・・・・・用事も済んだ。君麻呂が独りでゴール前で立っていたが何をしているのかさっぱり解らなかったからな。こっちに来た。それより、何でナルトが寝てるんだ? 力の波動は感じていたが」
「ああ。彼は大蛇丸目掛けて超特大大玉螺旋丸で地面に特攻したらしいんですが、逃がした挙句に地面に埋まって気絶らしいですよ?」
 白の容赦ない言葉に我愛羅は溜息を吐いて、ナルトの頬をバシバシと叩いて呟いた。
「まったく・・・・・・四覇聖の1人が聞いて呆れる」
「まあ、彼らしいといえばらしいですけど」
 クスッと笑う白に我愛羅も微かに口元を吊り上げる。バシバシと叩き続ける我愛羅に、サクヤはムッとなってその手を止めようとするが、その前にナルトが「う~ん」と唸って目を覚ました。
「あ、兄さ、えっと・・・・・・大丈夫ですか?」
「んん・・・・・・あ~、大丈夫。ありがとう」
 目の前に広がる光景に経緯を悟ると、ナルトは目の前のサクヤにお礼を言う。
 僅かに動揺した瞳に気付く者は紫苑だけ。
 ナルトは目を擦って起き上がると、白から水を貰ってゴクゴクと飲む。一息入れると、ふと自分を凝視する木の葉の連中に気がつく。
「ん・・・・・・何?」
 ナルトがボーっとした顔を向けると、サスケが横柄な態度で尋ねてきた。
「お前、四覇聖って呼ばれてるのか?」
「ああ? なんでソレ知ってんだ?」
「カブトが言ってたんだよ。縁の里には四覇聖と六聖剣と呼ばれる連中がいるってな」
「・・・・・・あ~、カブト、ね(あの野郎、油断できないな)」
「今、我愛羅がナルトくんの事を四覇聖のくせいに何やってんだって言ったから気付いたんですよ」
「なるほどね」
「で、どうなんだ。答えろ」
 サスケがギロリと睨んでくるが、ナルトは眠そうにしながら答えた。
「あ~、お前さ、なんでそんなに偉そうなの? つか敵意剥き出しだし」
「私もさっきそれ言ったんだけどね。どうやら偉そうな態度は彼の性格みたい」
「ちょっと、サスケくんに失礼なこと言わないで下さい!」
 いのが怒りながらナルトと紫苑に言うが、2人は完全に無視だ。
「ああ・・・・・・サスケって名前で思い出した。お前、うちは一族か」
「そうだが、それがどうかしたか」
「聞いたことあるぞ、うちは一族は傲慢かつ過剰なプライドを持ち、意味不明なほど写輪丸に自信を持っている一族だって」
「なんだと!?」
「そういえば、前にうちはマダラとか言う奴とうちはイタチと戦った時もそうだったな。まるで自分たちが神であるかのような物言いだったっけ」
「!? おまえ、イタチに会ったのか!? 奴はどこにいる! 教えろ!」
 急にサスケは殺気立ち、ナルトの胸元を掴みかかってくる。
 サスケの急変振りに目を丸くする縁の里の忍一同に、びっくりする木の葉の忍たち。
「その時に言ってたっけ、サスケとかいう弟がいるって」
「おい!」
 無視し続けるナルト。
「答えろって言ってるだろ!!」
「うるせえな」
「俺はあいつを殺さなくちゃいけないんだよ! いいから教えろ!」
 サスケの言葉にうるさいなと思ったのか、ナルトは眉を顰めてサスケに言い放つ。
 サスケはさらに顔を近づけ、ナルトに迫った。
 だが、ナルトはサスケの言葉に目を丸くして鼻笑いした。
「お前が、あいつを殺す? そんな実力で? ハハハ! 冗談もいいところだ」
「そうですね。彼の実力程度じゃ、イタチには敵わないでしょう」
「冗談もいいところ~~~~♪」
「おまえらぁ・・・・・・!」
「じゃあお前さ、どの程度まで修行したわけ?」
 ナルトの言葉にサスケは自信満々に返す。
「ガキの頃から必死に修行したさ! だからアカデミーでもトップだったし、俺にこなせないものなどない!」
「なーんだ、たかが『必死』程度か」
「なっ!?」
「本当に強くなりたかったらな、肉体を術に耐えれる強度まで鍛え上げ、必死程度じゃなくて本当に死ぬギリギリまでやってこそなんだよ。お前の身体さ、見た限りじゃ、筋力トレーニングやってると思えないんだけど。どうせ才能にかまけた練習方法しかしなかったんだろ? しかもその様子じゃ師匠すらいない」
「お前!」
「強くなりたかったら、まずはその不必要なまでのウザいプライドをなんとかするんだな」
 そう言って、ナルトはサスケの鳩尾を蹴り上げ、サスケは激痛のあまりに気絶してしまった。
 サクラといのは「サスケくん!」と叫んで駆け寄り、介抱する。
 ナルトはそんな彼の様子を見て大きな溜息を吐いた。
「ったく・・・・・・こんなことじゃ、アレが襲撃してきたらコイツ死ぬんじゃないか?」
「そうですね・・・・・・アレは彼のような人間に反応するらしいですから」
「まあ、名家とか旧家のような所って、プライドとか誇りとかで成り立っているものだから。仕方がないんじゃないかな」
 九羅華がナルトと白の言葉にさりげなくフォローを入れる。
 紫苑はサクラたちにサスケに飲ませる水を渡して、ナルトの膝の上に座る。
 一連の出来事を傍観していたシカマルは、初めてナルトに話しかけた。
「なあ、ナルトって言ったか?」
「おお、なんだ?」
「っと、俺は奈良シカマルってんだ。よろしく頼む」
「僕は秋道チョウジ。よろしくね」
「おう。よろしくな、シカマルにチョウジ」
 ニッと笑って握手する。
 そんな暢気な彼等にいのは怒り声を上げた。
「ちょっと、シカマルにチョウジ! なに暢気にしてんのよ! サスケくんに説教垂れた挙句に暴力振るった奴なのよ、そいつ!」
「めんどくせー奴だな。いいか。そもそもサスケの尋ね方に無礼千万なところがあっただろうが。それに言ってる事はナルトの言う通りだと思ったしな」
「モグモグ・・・・・・そうだね。やっぱり友達でもない人に対しては、普通は丁寧な言葉で聞くのが礼儀ってものじゃない?」
「ま、俺はそこは気にしてなかったがな。それよりも勘違いしてる所が気になっただけだ」
「あいつの勘違いはアカデミーからずっとだったぞ。俺はその度にめんどくせー奴だって思ってたからな。まあもっとも、こいつより弱い俺がいう権利はないかもしれないけどな」
「僕は・・・・・・モグモグ・・・・・・サスケよりもシカマルの方が凄いと・・・・・・モグモグ・・・・・・思うけど」
「買い被るなよ、チョウジ」
 裏切られたいのはがっくりと肩を落とした。
 サクラも何かいいたそうにしていたが、シカマルたちの言葉も最もだと思ってしまい黙り込む。
 サクヤはサスケ事態に興味がないからか無視していて、ナルトの膝に座る、つまり抱きかかえられている紫苑にギラギラと睨みを効かせていた。
 彼女はサスケの好意に気付いていなかった。


 うちはサスケは波風サクヤに好意を持っていた。
 いや、気になる程度、であるが。
 サスケはチーム内でただ1人の男。木の葉の決まりで男2人に女1人が決まりであった。しかし特例としてサスケの班はこうなった。
 だからサスケは思ったのだ。
足手まといが増えるだけだが、女なんだから守ってやろうと。
男としての本能から、そう思っていた。だから強くなろうと思った。
 だが今回の試験では守れず、サクヤという血筋的にうちは一族に相応しい女の危機に、まったく役に立たなかった。
 そしてそのサクヤを救ったのは、他里の忍であり、サクヤが気になっている男(サクヤの兄様という台詞は聞いていなかった)。
 兄に言われた「愚かなる弟よ」と言われた時のように、悔しかったのだ。
 そして。
 サクヤにとってはそんなサスケの想いは邪魔でしかなかった。


 翌日、爽やかな朝日が昇った頃、ナルトたちはゴール地点に向かっていた。
 シカマルやサクヤたちは巻物を貰って、なんとか無事にゴールした。
 サクヤはナルトと話をしたそうにしていたが、ナルトが話しかけてこない様子をみて悲しそうにしていた。
そしてナルトたち。
「・・・・・・おそかったな」
 なんだか哀愁を漂わせている君麻呂。
「・・・・・・まさか、昨日からずっとそのままなのか?」
 我愛羅が恐る恐るといった感じで話しかける。
 白はだらだらと汗を流し、紫苑や九羅華は苦笑を浮かべている。
「・・・・・・誰だったっけ? ナルトがきっと競争しようとか言ってるぞ、と言ったのは」
「・・・・・・巻物争奪競争と言ったつもりだったのが」
「・・・・・・ヒドイぞ、君たち」
 シクシクと涙を流して、地面にノの字を書く君麻呂。
 あまりにも可愛そうであった。


あとがき

初めてホームページ、つまりWEBサイトをつくりました。
いや、まあショボイですけど。
これからアップしていきますし、この作品のこれまでの話をサイトに載せていきます。もちろんこれからの話はココにアップしていきますので、誤解なきよう(苦笑)
よかったら遊びに来てください。SSを主に連載しています。
http://tpunight.jyoukamachi.com/



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第9話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/11/28 17:29
     NARUTO


  『人柱力と妖魔の敵』


 第9話 決定! 第1試合の組み合わせ!


いじける君麻呂をなだめてご機嫌をとってと、あれこれ手を尽くしたナルトたちは、そのまま大広間へと連れてこられた。
 大きな石像の手が印象的なその広間は、集会場を思わせる造りのはずなのに、何故か戦場を意識させる。
 第2試験通過者はこの場に集められていて、皆が一列に並ばされた。
 だが始まるまではまだ時間があるらしく、各々がゆっくりとしている。
「普通、第2試験直後に第3試験なんてやらせるか? 僕は疲れているんだぞ」
「あれ、君麻呂が疲れたのですか? 珍しいですね」
「・・・・・・誰かさんたちのおかげでな。一晩中突っ立ってたんで足が疲れてるんだ」
「・・・・・・・・・・・」
 まだ恨みをもってるらしく、ネチネチと小言を言う君麻呂。
 白は苦笑の表情を浮かべ、我愛羅は明後日の方を見て口笛を吹いている。
 ・・・・・・まったく音が出ていないが。
「しかしこれほど人数が多いとは思ってませんでした」
 白が辺りを見回して呟く。
 紫苑がそれに対して、そうだね~、と言いながら辺りを伺う。
「まあ、木の葉の新人君たちの実力を測らないといけなかった訳だから、ここまで『生き残らせてあげた』んだから当然のような気もするけど」
「そうですね。その為に巻物も上げた訳ですし」
「でもさ、その所為で楽させちゃった訳だし、それじゃ成長しない訳じゃない。それって本末転倒じゃない?」
 九羅華が、ふと疑問に思った事を口にする。
 すると、今までブツブツと嫌味という名の独り言を呟いていた君麻呂が言った。
「いや、あんなサバイバルでは育ち難いだろう。あれよりも1対1でやる個人選を体験する方が重要だし大切だ」
「・・・・・・そうだな」
 君麻呂の的確な言葉に我愛羅は頷いて、ふと視線を教官陣に向けると、そこにはナルトの姿が。
「・・・・・・ナルトは何をやってるんだ?」



「ホント~に、あんたコレくれるの?」
「うん、だって約束したじゃん」
 みたらしアンコに近寄ったナルトは、ニコニコとした顔で話しかけると、アンコはナルトがまたもナンパ目的で近づいてきたと思ったらしい。
 しかしナルトがクナイを渡してくると、それを受け取って目を丸くしたのだった。
「まあ、貰えるものはもらっとくわ。なかなか手入れが行き届いてて良いクナイじゃない」
「でしょ? みたらし教官のクナイはあの変態オカマ蛇のせいで汚れちゃったからね」
「!!」
 ナルトの言葉にピクリと反応するアンコ。
「言っておきますが、俺はあの変態の手下じゃありませんよ?」
「・・・・・・それを信じる証拠は?」
「ん~、まあ物的証拠はありませんね。強いて上げるなら、試験中にあいつと戦ったって事くらいですか」
 縁の里の額宛、つまり横に一本のラインのマークをしていても、それが大蛇丸の部下ではない、という証拠にはならない。
 だから、それなら起こるはずのない戦闘行為があった事を告げる。
「あいつと!?」
「ええ。あいつと」
 ナルトが大蛇丸と戦ったという事に驚いているのか、それとも戦って生き残った事に驚いているのか、アンコはポカンとした表情だ。
「・・・・・・あいつの目的はサスケのはずなのに、何でアンタと?」
 アンコは最終確認のためなのか、より視線を強くさせて睨む。
 ナルトは一瞬だけ地面を見て逡巡し、再び顔を上げた。
「まあ・・・・・・恨みもあったし、彼女が殺されそうでしたから・・・・・・だから・・・・・・ですね」
「・・・・・・そういうこと、か」
 アンコは納得したという感じで、何度も頷いている。
 どうやら、彼女は火影からいろいろと自分とサクヤの関係を聞いているようだ。
 だから、ナルトは告げる。
「それでですね、火影のじっちゃんに伝えてください」
「なにを?」
「変態オカマ蛇をボコって弱らせてあるから、本試験までは動けないはず。だから早く後任の火影を探せと。それにアイツの相手はウチが相手をすると」
「・・・・・・わかったわ。っていうか、アンタの実力も半端じゃないわね」
「いえ、それはアレのおかげなんです。アレの・・・・・・ね」
「・・・・・・・・・・・・?」
 ナルトの言いたい事が何なのか、最初は分からなかったアンコだが、言い直したナルトが腹部に視線を向けたことで、ハッと気付いて辛そうに表情を歪める。
「ハハハ・・・・・・まあ、気にしないでください」
「・・・・・・アンタ、この試験後ヒマでしょ?」
「ええ」
「なら、一緒にお団子でも食べにいきましょ。いろいろ話をきかせてよ」
「もちろんいいですよ。楽しみにしてます」
 アンコがニコリと微笑んで言う。
 彼女は強い人だな、とナルトは感じて承諾する。

『ほほ~~~~~う、それは妾のナルトを誑かそうとする魂胆だと受け取って構わぬな?』

「うわっ!!」
「わっ!? な、何? どうしたの?」
 突如、広間に響き渡るほどの大きな声を上げたナルトに驚くアンコ。
 そのナルトはダラダラと汗を流して挙動不審だ。
「え、えと、いや、あの、その、なんでもない。じゃ、みたらし教官。また!」
『こら、ナルト! 妾を口寄せせんか! 少しその女と話があるのじゃ!』
「うるさい! つーか、いきなり起きてきて開口一番がソレか!」
 ドタバタと仲間たちの所へ駆け寄るナルト。
 ナルトが大声を上げて、独り言をぶつぶつと言っているのを見ていた紫苑たちは、何となく見当が付いているのか、冷や汗を流していたり、逃げ腰だったり、苦笑していたりととても忙しい。
「もしかして、玉藻姉さんが起きました?」
 念のためと白が確認してくる。
「もしかしなくても起きたぞ」
「ハハハ・・・・・・」
「あ、玉藻姉さん。おはようございます」
 紫苑がナルトの腹部辺りを見ながらペコリと頭を下げる。
『おお、紫苑か。そちは相変わらず堅苦しいの』 
「―――だってさ」
 ナルトが玉藻の言葉を代役して喋る。
「いえ、これも大事なことですから(ナルトの傍にいるためには気に入られないとダメだからでしょうが!!)」
『だが、そちはまだナルトと一緒に寝てる訳ではあるまいな?』
「いや、寝てるぞ」
 今度はナルトは訳さずにそのまま答える。紫苑はアワアワとしながらナルトの口を塞ごうとするが、時は既に遅い。
『何じゃと!? やはり油断ならんやつよ。妾が起きたからには好きにはさせんぞ!!』
「―――だってさ」
「アハハハハ・・・・・・やっぱり」
 ドーンと落ち込む紫苑。
 彼女のナルトの妻&子供を産むという野望はまだまだ遠い。
 我愛羅と君麻呂はとある理由から尻を隠しながら白の後ろに隠れていた。
 彼らに何のトラウマがあるというのだろうか・・・・・・。



「まずは“第2の試験”通過おめでとう!!」
 やっとのことで始まった第3試験。3代目火影が来たことで緊迫した空気が流れている。受験者たちも綺麗に一列に並びキチンと整列中だ。
 そんな受験生たちに労いの言葉をかけるアンコ。
(フフ・・・・・・まさか9チームの26人も残るなんてね・・・・・・半分以下にしてやるとは言ったけど、本当はもっと少ないだろうと予想してたんだけどね)
 自分の予想が外れたことに、面白いと感じるアンコ。
 その頃の受験者達は・・・・・・。

【山中いの・奈良シカマル・秋道チョウジ】
(へぇ~、結構残ってるものね)
(つーかこんなに残ってるのかよ、クソめんどくせーな)
(はやくご飯食べたいなぁ・・・・・・)
 四六時中ご飯の事しか考えてないぞ、チョウジ。

【日向ネジ・ロック・リー・テンテン】
(ふん・・・・・・無駄な悪足掻きをしている連中がこんなにいるのか。愚かなことだ、ねえヒナタ様)
(ガイせんせ~~~!! 先生が最高にナウイです!! 光ってます!! 僕も歯をキラーンと光らせたいです!!)
(あちゃ~、ガイ先生って完璧にビジュアルはカカシ先生に負けてるわね)
 根暗は放って置いて、とりあえず尊敬の方向を間違えているぞ、リー。

【ドス・キヌタ・ザク・アブミ・キン・ツチ】 
(チッ、あの野郎。俺に恥をかかせたことを後悔させてやる)
(あの金髪は殺してやるっ!!)
(あいつには、あまり関わりたくないわね。せっかく森の中でも避けてきたんだから)
 あえて何もいいません。

【カンクロウ・テマリ】 
(ちっ、9チームしか残んねぇなんてな。他の奴等には厳しかったみたいジャン)
(我愛羅・・・・・・よかった、特に怪我をしてないみたいね。でも森の中でも会いにきて欲しかったんだけどな。いろいろ話したかったし)
 ストーカーしてましたよ、テマリさん。

【日向ヒナタ・犬塚キバ・油目シノ】
(あ、ナルト君。無事だったんだ・・・・・・よかったぁ)
(ちっ、木の葉のルーキは皆無事じゃねぇか)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 シノくん・・・・・・あんた一体・・・・・・いや、なにもいうまい。


【うずまきナルト・紫苑・九羅華】
(はぁ!? 一緒に風呂だ!? ふざけんな!! そんなこと・・・・・・ん? テレてねぇよ!! アホか!!)
(はぁ・・・・・・ナルトと一緒に寝れるの少なくなっちゃうな)
(ん~、紫苑は落ち込んでるみたいね。でも、仕方がないか)
 玉藻姉さんとのやり取りが忙しいナルト。何を話しているか、実に解りやすい。

【白・君麻呂・我愛羅】
(さて・・・・・・これからどうしましょうか)
(お願いだ、姉さん・・・・・・お尻だけは勘弁してください!)
(罰はイヤだぁ・・・・・・そんなにやらないでくれ!!)
 とっても誤解を招きそうな事を考えている君麻呂に我愛羅。

【波風サクヤ・春野サクラ・うちはサスケ】
(兄様・・・・・・やっぱり年上ですか!? 年上の女がいいのですか!? あんな戦闘狂と仲良く話すなんて、やはりスタイルですか!?)
(縁の里の連中とやりたくないわ。勝てる訳ないじゃない)
(くそっ! あのナルトとかいう野郎! 絶対に半殺しにして兄貴の事を吐かせてやる!!)
 未だに実力の差を認めようとしない愚か者と、嫉妬に叫ぶ双子の妹。
 あんたは妹だろ・・・・・・。

【カブト・ツルギ・ミスミ・アカドウ・ヨロイ】 
(ふふ・・・・・・どうやら少し計画にズレがあったみたいですが、とりあえず計画通りに行動するか)
(・・・・・・計画頓挫したんじゃないか?)
(・・・・・・危なくなったらアノ力も使うか)



 とりあえず、まともに話を聞いている奴が誰一人もいないという。
 そんな中、3代目火影が前に出てきて、中忍選抜試験は実は各国の戦争の縮図だとか、戦力を測るためだとかそういう話をダラダラとしていたが、縁の里の連中は全く聞いていない。
 すると、なんだか具合の悪そうな男が前に出てきて、第3試験に進出するための予選をやると言い出した。
 具合の悪そうな男、月光ハヤテは異議を唱える木の葉の新人下忍に丁寧に対応しする。
「―――とまあ・・・・・・体調の優れない方・・・・・・これまでの説明でやめたくなった方・・・・・今すぐ申し出て下さい・・・・・・これからすぐに予選が始まりますので」
「これからすぐだと!?」
 ハヤテの言葉に驚いて大声を出すキバ。
「あのー、ボクはやめときます」
 すっと手を上げた人物を見て、ハヤテは手元の書類で確認する。
「えー、木の葉の薬師カブトくんですね・・・・・・では下がっていいですよ」
 と、あっさりと承諾。
 実際には人数を減らして、第3試験の時間を減らすのが目的なので、ここで受験者が減るのに異論はないのだ。
「えー、他に辞退者はいませんか? 言い忘れてましたが、これからは個人選ですからね・・・・・・自分自身の判断で手を上げてください」
 そういうと、もう1人、手を上げるものがいた。
 その者は・・・・・・。
「あ、はい。僕も辞めときます」
 白であった。
「えー、縁の里の白くんですね。いいですよ。下がってください(大したケガも見受けられないのに下がるのか・・・・・・何かあるな)」
「どうも」
 あっさり辞退した白に、驚いた顔をしているのがサクヤやサクラ、サスケといった、昨夜に出会った木の葉の下忍たちであった。
 だが縁の里の連中は特に驚いてもいない。
 あ、辞めるの? そういう感じである。
(なんで白君が!? だって白君、ケガしてないじゃない!!)
(白君が~~~!? あんなに綺麗な白君が!?)
 全く関係ない絶叫を上げるいの。
 シカマルやチョウジも不思議に思っているらしく、首を傾げているが、2階に登って見物しようとしている白と目が合うと、ニコリと白は笑った。



「ふむ・・・・・・何度か見る顔じゃな。それにナルトと同じ里の白・・・・・・か」
「ええ。彼は特にケガをしている様子もありませんし、辞退するなんておかしいんですが」
(ナルトの伝言だと、大蛇丸に手傷を負わしたんじゃったな。さらにアヤツを自分達に任せろと言う。これは試験が終わった後にナルトから詳しい話を聞くべきじゃのう)
「とりあえず、暗部に会場周辺を張らせておくということで、試験を続行するという事で変わりはありませんか?」
「もちろんじゃ。このまま試験は続行する。幸い、サスケに呪印は刻まれてないようだしの」
「了解しました」
 コソっと耳打ちするアンコに真剣な面持ちで返す3代目火影。
 大蛇丸は彼の弟子だったからこそ、その思考がよく解る。
 あいつの狙いはうちはサスケであることや、呪印を付けようとしていること。
 そしてこの里を攻撃しようとしていることは、彼には丸解りだった。
 だがそれもナルトの、いや、縁の里の忍たちのおかげで狂っているようだ。
(ナルトたちに感謝せんとのぉ)



 各々の思惑が複雑に絡み合う中、正面の電光掲示板には第1回戦の対戦者の名前が表示された。

『うちはサスケ VS 君麻呂』


あとがき

なんだか前回のあとがきでややこしい書き方をしちゃったみたいで、すいません。
HPの方は関係ないSSを載せたりします。また、これまでの話を載せていきます。
決して、HPの方が早いとか、そういうのはありません。
もしよかったら、私のHPに載せてるSSを読んでくれればなぁと思っています。
あと、感想や疑問、質問、誤字指摘がありましたら、HPの掲示板に書いてくれても結構ですので、どしどし書き込んじゃってください。
感想掲示板がなんか使えないみたいなんで(汗)


対戦は、これから予想外の対戦カードになります。
そして内容も重要な試合は一試合ずつ濃くしていきます。
つまり、これからはオリジナルの展開になっていくと思ってください。
次回をお楽しみに!



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第10話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/15 12:52
       NARUTO


  『人柱力と妖魔の敵』


   第10話 悲劇の主人公に浸る男


『第1回戦 うちはサスケ VS 君麻呂』

 2階の見物席に移動したナルトたち。
「おおお、これは面白い対決になりそうだな」
「・・・・・・勝負にならんだろ」
「いえいえ、君麻呂はアレと種族性のせいで戦闘狂ですが、本来は他人への気遣いを忘れない男ですから」
「そうね・・・・・・確かに」
「なんだか面白いことになりそ~♪」
 電光掲示板に表示された名前を見て、戦闘場に飛び降りた君麻呂。うちはサスケが鼻で一笑すると、彼もまた2階から飛び降りて相対する。
 対戦表を見たナルトたちは、笑いながら言う。
「なあ、ナルト。あの君麻呂って強いのか?」
 そこへ近づいてきたのがシカマルとチョウジ、いの。
 さらに後ろから付いてきたのはヒナタの班、サクヤの班である。
 ぶっちゃけガイ班を除く新人下忍全員である。
「んあ? ああ、君麻呂は強いよ。つーか全員来たのかよ」
 ナルトは苦笑しながらシカマルの疑問に答えた。カカシや紅、アスマといった担当上忍たちはナルトたちを探るような目で見てくる。
「どのくらいだ?」
「まあ、身内贔屓じゃなく、縁の里の連中の評価なんだけどな、それでいいか?」
「ああ。主観が入ってない方がありがたい」
「君麻呂は『本気』で戦う場合だったらウチの里のナンバー3と評価されてる」
「!?」
 その予想外の強さに驚愕の表情を浮かべる木の葉の下忍達に上忍たち。
「・・・・・・本気で戦う場合?」
「ああ。『全力』になるとまた変わってくるだろうけど」
「・・・・・・なるほどね。あー、クソめんどくせー」
 シカマルはひっかかりを覚えたのか、ナルトの言葉に突っ込みを入れると、ナルトは意味深に答える。
 その言葉の意味がわからないらしく、首を傾げている下忍たち。
「まあ、君麻呂の実力は今から始まる戦いを見ればいい。よくわかるハズだ」



「それでは、第1回戦を始めます。両者とも、よろしいですか?」
「ああ、準備はできている」
「はやくはじめろ」
 あくまでも自然体の君麻呂と、強い人物と戦えるのを肌で感じ取ったのか、サスケは歓喜さに震わせながら構えた。
「それでは、第1回戦、始めてください」
 審判の月光ハヤテが宣言すると、サスケはサッと構えを取った。
 君麻呂は構えすらせずに、ただ突っ立っている。
 サスケは眉を顰める。
「・・・・・・なんの真似だ」
「これで十分と言う事だ。僕が名乗りを挙げて構える時は、相手に戦ってもいいと思う時だけなんだから」
「なめやがって!!」
 激傲したサスケは両手を重ねて印を組む。
「火遁! 豪火球の術!」
 膨らせた口から大人サイズの火の玉が飛び出す。火の玉はそのまま地面を焼きながら君麻呂に直撃する。
「ふっ!」
 サスケは燃え盛る地を見て一笑する。だが余裕釈然な彼は、それ故の危険さを知らない。
「どこを見ている」
「なっ・・・・・・がぁ!?」
 横から襲ってきた衝撃に吹き飛ぶサスケ。ゴロゴロと転がるサスケは痛む頬を押さえて立ち上がると、忌々しげに睨む。
「―――っの野郎!」
 サスケの瞳に浮かぶ模様を見て、観戦していたサクラたちが口々に喋る。
「あれは、写輪眼!」
「よーし! こっからよ、サスケくん!」
 サスケは写輪眼を発動したことで、再びニヤリと笑って相対する。
 その自信に溢れる顔を見て、君麻呂は溜息を吐き、瞬神の術を発動する。
「・・・・・・(僅かに見えるぞ!)そこかぁ!」
 素早くホルスターから取り出した手裏剣を投げる。
 だが当たった感触がないと察したクナイを構えるとさっと後ろに振り返る。
 その直後にキンとクナイ同士がぶつかり合い押し合いになった。
「・・・・・・ふん、もうお前のスピードには付いていける。残念だったな」
 使ってきたのは体術に瞬神の術だった。
 どうやらこの男は速さを使って、一撃で倒すことが、こいつのやり方のようだ。
 だから、写輪眼を発動した自分には、完全には見えないが、それでも軌跡が見えれば予測ができる写輪眼には防ぐことが可能だ。
 もはや忍術を使ってこようが、自分にはコピーはがあるから対応できる。
 同じ下忍なのだ。下忍レベルの忍術しか使えないだろう。
 サスケはそう判断し、これからは自分が優勢だと悟る。
「おいおい、お前の仲間、やばいんじゃないのか?」
 キバがナルトに話しかける。巻物を譲ってもらったことや、去り際にキバたちに笑いかけたことから、キバにはナルトに対する警戒心がすっかり薄れていた。
 そんなキバの言葉にナルトに代わって我愛羅が言う。
「・・・・・・うちはサスケというのは、本当に自信過剰のようだな。あの程度で相手に勝った気になるなんて」
「まったくだな。最初に言った君麻呂の言葉をすっかり忘れてるよ」
「う~ん、彼自身の力は全然使ってないのにね・・・・・・」
 紫苑がナルトにおぶさりながら言う。
 彼女のいつものポジションだ。
『ぬぅ! 紫苑! またおんぶか!? 妾だってナルトにおんぶしてもらいたいわ!!』
「・・・・・・体格的に大変だよ」
 ナルトの1人突っ込みに、事情を知らない木の葉の諸君は怪訝な顔をするだけだった。
 


「・・・・・・君は自分の血継限界に不要なまでの自信をもってるみたいだな」
「なに?」
 サスケの脳裏に昨晩のナルトの言葉が過ぎる。
「5大国の一角、木の葉の名門うちは一族の血継限界。キミは何か絶対的強さをもっていると、勘違いしてないか? 血継限界の力など、所詮は補佐的なものでしかないものなのに」
「はん! 事実、お前は押されてるだろうが!」
 サスケが力任せにクナイを弾くと、君麻呂は後方へと跳躍する。
「火遁・鳳仙火の術!」
 上空へ跳躍して発射した複数の火の玉が君麻呂に直撃する。
 今度は間違いなく君麻呂に直撃した。そうサスケは確信する。
 地面に降り立ったサスケは煙が上がった場所を見つめた。
 煙が序所に消え始め、そこに現れたのは、傷ひとつ、焦げ跡すらない君麻呂であった。
「バカな・・・・・・」
「キミのその根性。同じ特異な一族の出として実に恥ずかしい。この僕がじきじきに叩きなおしてあげよう・・・・・・本気でね」
 君麻呂が初めて構えを取る。
 その構えは独特にして流麗。
 見ているモノの背筋がゾクリと寒気が走る。
 僕は誇りをもっている。
 里人が、人として失くした日常を再び守り造ってくれた彼らに敬意を表してつけてくれた称号を。
 だから高らかに宣言しよう。
「縁の里所属、四覇聖がひとり、かぐや君麻呂・・・・・・参る」



「屍骨脈」
 君麻呂の左の掌から形成される白い物体。
 右の腕から突き出てくる白い物体。
 それは、骨。
「「「「ヒッ!?」」」」
 骨を掴む、骨が突き出る、その異常性に悲鳴を洩らす女性陣。
「な・・・・・・なんだ、それ」
 それに無視して君麻呂は消える。
 今までの速度とは明らかに違うスピード。チャクラをより丁寧に全身に回し、足場にチャクラの力場を作ってそれを弾く。それが圧倒的なスピードを生む。
「椿の舞」
 “目の前に”現れた君麻呂は、高速で突き出す剣舞をくりだし、サスケの身体は切り刻まれる。
「がぁっ!!」
 追い討ちをかけるように君麻呂はサスケの背後に回りこみ蹴り上げる。弾かれたサスケは上空へと押し上げられ、君麻呂はそれを追撃。
 上下左右、胸へ足へ筋へと浅く斬り続けて、最後は縁の里で現在も豪遊中の借金女から教わった体術、かかと落としを入れた。
 腹部にめり込み、そのあまりの重さに空中で嘔吐するサスケ。
 地面に叩きつけられた。
身体のあちこちが刻まれ、血がダラダラと出ている。
 だが君麻呂は攻撃の手を止めない。
「十指穿弾」
 指先から銃弾のように飛び出した骨は、サスケの腕や足を貫く。
 サスケはもはや立てる状態ではなかった。
「・・・・・・く、そ・・・・・・俺はこんなところで・・・・・・負けられない・・・・・・兄貴を、アイツを殺すまで・・・・・・負けられないんだ・・・・・・負けるはずない」
「くだらない」
「な・・・・・・に?」
「くだらないと言っている」
「き、きさま!」
「俺もイタチと戦った事があるから事情は知っている。ハッキリ言わせてもらおうか。お前が兄を殺そうと思ってる時点で兄の掌の上で踊ってるんだ。そして幾らお前が兄を殺そうが、それからの人生も、そしてこれまでも兄に狂わされたこととなんら変わりはない」
「どういうことだ」
「さて・・・・・・な。それくらい考えろ。他人に答えを求めるな。だが一度失った平穏と安息の地を、お前は自らそれを殺そうとしているのだ。どこかの誰かのようにな」
「・・・・・・!」
「しかもまだ言わせてもらえば、お前のその雰囲気と態度。何か? お前は悲劇の主人公気取りか? この世で一番悲しいのはお前か? 世界中で一番孤独なのはお前か? ・・・・・・ふざけるな。お前はまだマシな方だ」
「俺が・・・・・・まだマシだと!」
「マシだ。ウチの里にはお前なんかより悲惨な過去を背負っている連中がたくさんいる。だがお前のように恨んではいても、未来を見据えて活きているから腐っちゃいない」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・いつまで寝ているつもりだ」
 君麻呂はサスケの襟をつかんで持ち上げる。
 そして至近距離から徒手で再び叩き込んむ。鳩尾、胸元、顎、頬へと次々と叩き込む。
 そしてゴミでも扱うように宙へと放り投げて、ある印を高速で組んだ。
「土遁・土石流弾」
 君麻呂の足元が壊れ、地面の土砂と石がサスケに襲い掛かる。
 ぐしゃ、ごしゃっと嫌な音が響き、ボロ屑のように落ちる。
 ハヤテが追い討ちをかけようとする君麻呂に手を翳して止め、サスケに近づいた。
「これは・・・・・・ゴホゴホ・・・・・・重傷ですね・・・・・・ゴホゴホ・・・・・・この勝負、君麻呂の勝ち!」
 咳き込みながら宣言する月光ハヤテ。
 君麻呂は溜息を吐いて、2階へと跳躍する。そして帰ってきた君麻呂へ労いの言葉をかける里の一同。
「おっつかれさん!!」
「・・・・・・おつかれ」
「おめでとう、君麻呂くん」
「なかなか楽しかったよ、君麻呂」
「衝動に駆られずにがんばりましたね、君麻呂」
 コキコキと肩を鳴らして座り込む君麻呂。
 そんな君麻呂を恐怖の目で、異常者の目で見つめる一同。
 ナルトたちはそんな反応を見て「はぁ」と大きな溜息を吐いていた。
 これが、特異とも言える力を授かった一族の宿命。どれだけがんばろうと、自分達は恐れられる。
 その点、縁の里の民は違う。
 民達も、ほぼ全ての住人が人生をめちゃくちゃにされ、人として終焉を迎える間際だった者たちばかり。
 だからこそ、痛みを知っているからこそ、彼らはそれを守ってくれる君麻呂たちを恐れない。
 そして安寧を守護する彼らに対して敬意をもって、呼んだのだ。
 『四覇聖』とその剣である、『六聖剣』と。
 そして運ばれていったうちはサスケ。
 後に彼は病院の診察で、こう判断される。
 全治半年だと。



(レベルが違いすぎるの・・・・・・忍としても、人間としても、男としても)
 火影は目の前で起こった事態に目を瞑った。
 自分が危惧していたことが起こってしまい、そしてサスケは重傷を負ってしまった。君麻呂という彼がサスケをボコボコにしてくれたお陰で、とりあえずサスケにも何かしらの変化があることだろう。
 それが、良い方に向いてくれることを祈るばかりだ。
(それにしても、かぐや、か・・・・・・どこかで聞いた事がある一族じゃな。それに四覇聖が1人と言った・・・・・・あの少年の年齢でソレか。驚きじゃのぉ) 
「強いですね、彼」
「そうじゃな」
 アンコは無意識のうちに呟いていた。
「血継限界の能力をもっていて、それが骨、ですか」
「特異の力をもってるのぉ。上忍でも彼に勝てるか解らないほどの実力じゃ」
「はい」
「縁の里、か。まさかここまでの力をもっているとは」
 会場を修理している間はやはり退屈なもの。
 わずかに溜息を吐いた火影だったが、そこへ日向の宗家、つまり日向ヒアシがやってきた。
「火影さま、まさかうちはが負けるとは思いませんでしたな」
「おお、ヒアシか。どうしてここへ来た?」
「もちろん娘がどこまで強くなったか、最後の見定めをするためです」
「・・・・・・娘を切り捨てるつもりか」
「日向の力を衰退させることはできません。これは親としても情よりも優先させねばならぬ事ですから」
 ヒアシと火影はハッキリと目を合わせて言い合う。
 名家には名家の事情があるのだ。
「・・・・・・とにかく、ゆっくり見物させてもらいます」
「・・・・・・勝手にせい」



 試合はそのまま続けられた。
 木の葉のナンバー1ルーキが手も足も出ずに負けたことは、木の葉の下忍たちに少なからずショックを与えたようだ。
 次の対戦であった『山中いの VS 春野サクラ』。
 これはダブルノックダウンという結末を迎えた。
 内容事態はレベルの低いものであったが、彼女たち自身は何かのターニングポイントとなったようだ。
 そして、ある意味において宿命とでもいうべきか。
 電光掲示板に映し出された、次の対戦者名。



『第2回戦 日向ネジ VS 紫苑』



あとがき

サスケ敗北です!!!!!

これ以上もないくらいのボロ負けです。だって千鳥をこの時点で覚えてる訳ないですしね。
おそらくこの時点でサスケの敗北って、他のSSじゃ有り得ないのではないでしょうか?(笑)
そして始まる戦い。
『日向の天才にして腰抜け』と『未来詠みの巫女・紫苑』
期待してください。
彼女たちの対戦は、とても長くなります。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第11話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/01 19:34
    NARUTO


  『人柱力と妖魔の敵』


    第10話 巫女の爆弾発言


『第1回戦 日向ネジ VS 紫苑』

「私・・・・・・か」
「紫苑、無茶はするなよ?」
 ナルトが頭をポンと撫でると紫苑はくすぐったそうに首を竦める。なんだか嬉しそうだ。
「がんばってくださいね、紫苑」
「・・・・・・あまりムリはするな」
「がんばってね、紫苑♪」
「もしもの時は俺達が止めるから心配するな」
 みんなは心配そうに声をかける。
 紫苑はナルトにぎゅっと抱きついて温もりを確かめるように抱きしめる。
(紫苑がたった1人で戦うのはこれで・・・・・・2度目か。いつも俺たちと一緒に戦ってきたからな)
 ナルトは紫苑の好きにさせ、彼は彼女の背中を撫でた。
『ふむ・・・・・・まあ、今回くらいは大目に見てやるかの。それよりも、負けるでないぞ、紫苑! 妾が鍛えたのだからな!』
「じゃあ、行ってきます!」
「ああ、がんばれ!」
 力強く宣言した紫苑は、ピッと敬礼をして降りようとする。
 すると、そこへサクヤが声をかけてきた。
「あの、し、紫苑さん」
「ん? あ、サクヤ」
 皆の視線が集中する。
「え、えと、あの、応援はできないんですけど・・・・・・気をつけて」
「ん・・・・・・ありがとう」
 サクヤの言葉に頷くと、既に待っていた日向ネジの正面に降りて立つ。
 紫苑はネジの目を見た瞬間にハッと大きく見開く。そしてフフっと自嘲めいた笑みを浮かべて、下を俯く。
 そんな紫苑を訝しみながら宣言するハヤテ。
「それでは第3試合、日向ネジVS紫苑の対戦を始めます」
 ハヤテの合図で独特の構えを取るネジ。
 紫苑は袖から扇子を取り出し、中腰の構えで日舞のような構えを取った。
「ふ・・・・・・お前は構えるのか?」
 ネジはどうやら君麻呂が言っていた言葉を思い出し、構える紫苑に言っているみたいだ。
「私は彼らに比べて、強くないからね。そんなに余裕はないの」
「そうか。では俺もそちらの流儀にしたがって戦おう。木の葉隠れ所属・日向分家・日向ネジ」
「縁の里所属・六聖剣がひとり、未来詠みの巫女紫苑」
 お互いが、宣言した。
「「いざ、参る!!」」



「さきよみ・・・・・・って何だ?」
 シカマルがナルトに聞いてきた。
 それに対して、ナルトは肩を竦める。
「さて・・・・・・ね。それは詳しくは言えないな」
「秘密ってことか?」
 ナルトがニヤリと笑うと、後ろからカカシが強張った声をかけてきた。
「それはしっかりと答えてもらおうか、うずまきナルト君」
「・・・・・・何だと?」
「キミたちの力は異常だ。それを隠していた為にサスケが重傷を負ったんでね。隠されたら困るんだ」
「バカか、お前?」
「なに?」
「忍が力を隠すのは当然のことだろうが。しかも今は試験中。火影さんも言ってただろ? 同盟国間の戦争の縮図だと」
「だから言わないと?」
「当たり前だろ? 寝ぼけてんのか? しかもうちはがケガしたのは、アイツが弱かったからだろうが」
 緊迫した空気が2階席に漂う。
 あまりの空気に下忍たちはオロオロして居た堪れないようだ。
 すると、カカシの後ろにいたガイが出てきた。
「・・・・・・ナルトくん」
 ガイの弟子を思うその表情に、ナルトは体術で激しい攻防を繰り広げている紫苑へと視線を向けて応えた。
「安心して下さい、ガイさん。彼女は優しい女の子ですから、重傷を負わせることもないですし、見たところは日向ネジは天才でしょう。彼女はまだ忍として修行を積み始めてまだ3年目。良い勝負のはずです・・・・・・全力を出さない限り」
 僅かに表情が歪むナルト。
 ナルトの丁寧な言葉と自分に対して出た言葉の違いに、少し落ち込むカカシ。
 だが、ひとつだけ解ったことがある。それは彼が『敵』にはとことん容赦がないのだと。
「・・・・・・なら、全力の場合は?」
「その時は、俺たちが止めます。でも誤解しないでください。貴方たちの為じゃありません。俺たちの為ですから」
 そうしないと、アレが出てきてしまう。
 アレはまだ紫苑はコントロール出来ないから、出てくると危険だ。
 紫苑を、死なせる訳にはいかないんだから。



「・・・・・・なかなかの体術だ。この日向流にそこそこ付いて来ている」
「そりゃそうよ。体術は姉さん直伝なんだから」
 我流のムチャクチャな動きは一見見苦しいが、扇子の突きと日舞が混ざり合った体術は、素人臭さを感じさせない。
 腹部を鉄扇で突くが、ネジは身体を捻ることで避け、その勢いで反転して手刀を叩き込む。紫苑はこれを屈むことで避け、上回しで回転蹴りを入れてくる。
 ネジは腕を交差する事でこれを防ぎ、押し返す。
 紫苑はいったん距離を取り、額に浮かんだ汗を拭いた。
「・・・・・・なんだ、もう疲れたのか」
「じゃあ、これでどうかしら?」
 そういうと、紫苑は瞬間的にその場から消える。瞬神の術を発動したのだ。
「―――っ、白眼!!」
「!」
 完全に背後から襲い掛かってきた紫苑の鉄扇を防ぎきる。
 そしてネジの拳が紫苑の腹部に入った。
 紫苑は衝撃でふっとび、地面に転がりながら体勢を立て直して腹部を抑える。
「・・・・・・ムダだ。お前がいくら俺より速くても、この日向の白眼からは逃れることなど不可能だ。お前が俺に敵わないことは運命で―――」
「もう! 女のお腹を殴るなんて、なんて最低な奴! 私にはナルトの子供を産むっていう夢があるんだからね! もし今ので何らかの異常になっちゃったらどうしてくれるのよ!!」
「・・・・・・・・・・・・」

 シーン

 ナルトに集まる侮蔑の視線。
 サクヤの瞳に燃え上がる怨嗟の炎。
 仲間たちの笑いに打ち震える姿。
 そして、ガックリと落ち込むナルトくん。
『まだ言っておったのか、紫苑!! こんな場所で宣言するとは、他国に認知させたようなものではないか。うぬぬぬぬ・・・・・・狡猾なやつめ!!』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、突っ込み所が違うから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、合ってるのか?」
 ショックで落ち込むナルトは、しかしちゃんとツッコミは忘れない。だが混乱しているのか、言ってることが訳解ってないようだ。
「ナルト・・・・・・おまえ・・・・・・最低だぞ」
 シカマルがポンとナルトの肩に手を置く。
 チョウジやキバもうんうんと頷く。
 するとシノが
「そういう約束はまだしない方がいい。なぜなら俺たちはまだ成人を迎えてないからだ」
「先生・・・・・・貴方の息子はとんでもない女垂らしに・・・・・・シクシク」
「落ち込むな、カカシ。きっとナルト君の青春の結果なんだ!」
「いや、意味わからねぇから」
「まあ、同じ女の身から言わせてもらうと、ちゃんと責任は取って幸せにするのなら、何も言わないわ」
 滂沱の涙を流すカカシなどの上忍たち。
 そんな彼らにナルトはついにキレた。
「マテやこらっ!! 誤解だよ!! いや、誤解ではないか。とにかく!! 俺から言った約束じゃなくて、紫苑と知り合った際にあいつが勝手に宣言しただけだよ!!」
「言い逃れは最低だ。何故ならそれは責任逃れにしかならないからだ」
「事実だよ!!」
「だけど一緒にいるって事は、それを認めたってことだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
 何も言い返せません。
 いや、別に認めたつもりはなかったんだけど。
 口をパクパクさせているナルトは、実に滑稽で哀れだ。
そして、後ろからかけられる怖い声。
「ナルト君・・・・・・今の本当?」
「ちょっと、いいですか?」
 それはヒナタさんとサクヤさん。
「ひっ!?」
 肩におかれる手。
 連れて行かれるナルト。
「ぎゃああああああああああああああああああ!! や~なか~んじぃ~~~~~~~~~~~!!」
 ナルトの悲鳴が響き渡った。



「ま、まあ、とりあえず続けるぞ」
 呆然としていたネジは気分を入れ替えて、というより誤魔化すように紫苑を睨みつける。
 紫苑はナルトの慌て様を見てクスクスと笑っていた。
 とても良い気分だ。
「さて・・・・・・がんばりますか!」
 紫苑はビシッと構えてネジに相対する。
 すると、ネジは溜息を吐いて紫苑に言い放った。
「やめておけ。お前の力では俺には勝てない。これは始まる前から決まっていた運命だ」
「運命?」
 ネジの言葉に、初めて紫苑の表情が歪む。
「人にはそれぞれ生まれる前から決められている運命がある。それは避けることができない運命だ」
「・・・・・・へぇ~、それで?」
「うちはサスケがあの男に負けたのも、お前が俺に勝てないのも、全ては運命だ」
 思いっきりシラけた顔で見つめる紫苑に、大仰な素振りで語りだすネジ。
「ふ~ん、だから?」
「戦うのはやめておけ。ムダなんだからな」
 ネジの言葉に会場が静かになる。
 そのネジの言葉を聞いた日向ヒアシは、眉を顰めて苦しそうな顔をした。
 だがそんなネジに対して、紫苑は手裏剣を取り出す。
 紫苑の行動に嘲笑しながら構えるネジ。
 紫苑は手裏剣を上空に投げると、足を開いて両手を合わせ、印を結んだ。
「手裏剣影分身の術!!」
 紫苑が叫ぶと、上空に舞って勢いをつけて振ってきた手裏剣がいくつにも分裂を始める。
 1つが2つへ。
 2つは4つへ。
 どんどん分裂を始めた手裏剣はおよそ1000を越える数に分裂してネジに襲い掛かった。
 その術を見て、驚愕の表情を浮かべる火影。
「な、なんだコレは!? クッ!?」
 ネジは慌てて掌を翳し、奥義を発動する。
「日向流奥義、八卦衝回天!!」
 グルグルと回りだしたネジは、チャクラの障壁を体中から放出して壁を作り、有り得ない数に分裂した手裏剣を全て弾き落とした。
 ネジは僅かに冷や汗をかきながら、再びニヤッと笑った。
「ふっ・・・・・・ふふ、残念だったな。大した攻撃だが、この日向の技には敵わない」
「本当に腹が立つわね、この腰抜けボーヤ」
 怒りを露わにした紫苑は、何度も深呼吸を繰り返す。
 そうでもしないと、怒りで頭がどうにかなりそうだ。
 そんな紫苑を見ていたナルトは、意外にも穏やかな笑みを浮かべていた。
 そんなナルトを見て、ヒナタは声をかけた。
「あ、あの、ナルト君」
「ん?」
「応援、しないの?」
 ヒナタは黙って見ているナルトが不思議に思えたらしい。
 縁の里のメンバーも、どこか怒りが混じったような、苦しそうな顔をしているというのに。
「ああ、もちろん応援はしているさ。ただな」
「ただ?」
「日向ネジは、紫苑にとって本当に腹が立つ、というか許せない存在だろうから」
「ネジ兄さんが?」
「ああ」
 ナルトは思い出す。
 紫苑が忍者の修行を始める3年前より、さらにその1年前。
 同士を集めて、窮地に陥っている人々を探していたころ。
 紫苑と初めて会った、鬼の国でのこと。
 ユギトと我愛羅と九羅華、そして君麻呂と白と共に対面したら、紫苑は不自然なほどの透き通った紫の瞳をした紫苑は巫女装束で、まさにこれから、彼女は宿命の死へと赴こうとしていた所だった。
 話を聞くと、鬼の国が管理する、世界を破滅へ導く魍魎が復活しつつあるということで、先手を打って紫苑が封印に行くということだった。
 ナルトたちはその護衛を申し出て、鬼の国を守ろうとした。
 そう言った話し合いを鬼の国の家臣としていた時だった。
 突然ビクッと震えて目を見開いた紫苑が、ナルトにいきなり告げたのだった。



「見える・・・・・・お前の死の運命が」


あとがき
映画疾風伝の内容に入ります。
といっても、オリジナル要素入りまくりですけど。
そして感想を書いて頂き、誠にありがとうございます。
誤字脱字の指摘に関しましては、気付き次第、修正をしています。
感想掲示板に指摘していただくか、私のHPの掲示板に書き込んで教えて頂ければ嬉しいです。あつかましくてすいません。

紫苑VSネジ編。
がんばります。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第12話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/01 19:36
    NARUTO


 『人柱力と妖魔の敵』


 第12話 鬼の国&沼の国


「見える・・・・・・お前の死の運命が」
「お前って・・・・・・俺?」
 シーンと静まり返った会議室。
 縁の組織のメンバーは突如、妙な事を言い出した紫苑に目を丸くし、鬼の国側の人たちは動揺を隠せない。
 ナルトはハハハと笑い飛ばした。
「お前なぁ・・・・・・いきなり何を言い出すんだよ。俺は強いから死なないって。まあ、まだコントロール出来てないのは確かだけどさ」
「・・・・・・・・・・・・」
 紫苑は目を伏せたままで、何も言わない。
 紫苑の様子と鬼の国の連中の動揺した様子にユギトは何かを感じ取り、冗談ではないと悟った。
「どういうことです? 我々が魍魎にやられると? そりゃあ魍魎の強さは半端じゃないですけど・・・・・・」
「いえ、そういう意味ではなく・・・・・・」
 鬼の国の中でも、紫苑に仕える一番の重臣の男が言い難そうに紡ぐ。
「紫苑様には説明した魍魎を封じる能力意外にも、もう1つ能力があるんです。それは『未来を視る』力なんです」
「未来を視る?」
「はい。紫苑様はふとした切っ掛けで、未来の出来事が見えるんです。しかも、人の死という瞬間が」
「それが、先程の発言に繋がったと?」
「・・・・・・はい。紫苑様には視えたんだと思います。そして今まで紫苑様の予知能力は外れた事がないのです。というよりも、外れるととんでもない事になります。紫苑様の言った未来が訪れないという事はその能力に欠陥がでたということであり、それは魍魎を封印できないと言うことになり、紫苑様が死ぬ事を意味しています」
 全員の視線が紫苑とナルトに集まった。
 重苦しい空気に包まれる。
 ナルトを死なせる訳にもいかない。
 だけど、ナルトを助けると紫苑が死んで魍魎が復活する。
 どっちも選べない状況に全員が黙り込んでしまった。
「・・・・・・まあ、とにかく出発しようよ。時間もないことだし」
 わずか8歳の少年が立ち上がって、そう言い放つ。
 鬼の国としては、少年が死ぬことで鬼の国の役割が果たされるのだから、少年が紫苑に付いていってくれるのが一番ありがたい。
 連中は頷いて準備にとりかかります、と言って紫苑を連れて準備に向かった。
「・・・・・・ナルト、おまえ」
 心配する我愛羅が声をかけてきた。君麻呂も白も九羅華もどこか怒ったように、そして心配した表情を向けている。
「ナルト、言った意味を解ってるの?」
 ユギトは怒った顔でナルトを見つめてくる。
 ユギトたちの心配する気持ちを感じたのか、ナルトは大丈夫だよ、と言ってから、庵を挟んだ向かいを歩く紫苑を見つめる。
「俺は・・・・・・死なないよ。サクヤに謝ってないしね。そして鬼の国の姫巫女・紫苑も死なせない」
「だが、あの子の巫女能力は桁違いに高いみたいだぞ」
 君麻呂が念を押してきた。
 今回の事は容易なことじゃない、と言いたいようだ。
 だけどさ、と続けてユギトを見る。
「今回の事くらい跳ね除けられないと、来たるべき戦いに勝てないと思うから」
「・・・・・・そうね」
「・・・・・・そうだな」
「・・・・・・その通りだ」
「・・・・・・さすがナルトね」
 ナルトの言葉に頷くみんな。
 最悪な未来なんて、訪れさせない。望まない未来なんてお断りだ。
 組織・縁が、魍魎封印の為に動き出した。



「では、出発します」
 ユギトが号令をかけると、神輿の中にいる紫苑を中心に移動を始める。
 中央に紫苑の神輿。その両脇に鬼の国の警護役・足穂とユギトで固め、ナルトと君麻呂が後方を、我愛羅と九羅華が前方と足穂側を守ることになっている。
 すると、国の正門付近が騒がしくなり、突如爆発が起こった。
「何があった!?」
 足穂が近くにいた兵士に尋ねると、慌ててやってきた兵士がそれに答えた。
「敵襲です! 正体不明の者が4名、正門から侵入しようとしています! 狙いは紫苑様の様です!」
「何だと!?」
「足穂、我々は紫苑様を連れて先に先行する。ここで足止めされる訳にはいかないからな。あなたはどうする?」
 ユギトが予想外な事態にも冷静に対応する。足穂はその言葉にハッとなるが、すぐに頷いて了承する。
「うむ、ではかたじけないが、紫苑様を頼みます。某も後ろから付いて行きますが、遠慮せずに手筈通りに進んでください」
「・・・・・・わかった」
 ユギトは一瞬だけ逡巡したが、それに頷いて紫苑を神輿の中から出てもらう。
 出てきた紫苑は門の方角を見ているが、特に怯えた様子はない。
「・・・・・・ナルト、お前が紫苑を背負いなさい」
「え? オレ?」
「そうよ、はやくなさい」
「わかったよ」
 ユギトの容赦ない言葉にナルトはしぶしぶ頷いて紫苑を背負う。
 紫苑を背負ったナルトは、では行きます、と呟くと8歳とは思えないスピードで走り出す。
 その背後を仲間たちが続々と付いて来る。
 こうして時間稼ぎをしている隙に、なんとか鬼の国を出発できたのであった。


「妾は疲れたのじゃ! 一旦、休憩にする!」
 夕暮れになって、紫苑はおんぶするナルトに急に喚きだした。
 ナルトは、困ったなぁ、という顔をしたが、ユギトが少し溜息を吐いてから、
「休憩にしよう」
 と言った。
 九羅華や君麻呂は紫苑の我が侭っぷりに眉を顰めた。こんな所で休憩などしている暇はないのに、何をバカなことをと思った。
 足止めしている連中に申し訳ないと思わないのかと、言いたくなったが、そもそも彼女がいなければ魍魎を封印できないので、口を閉ざさざるを得ない。
 紫苑は夜風に当たりたい、と言って見晴らしの良い場所で、1人ポツンと崖淵に座っていた。
 そこにナルトが飲み物を渡してきた。
「・・・・・・飲む?」
「・・・・・・・・・・・・」
 何も言わずに受け取る紫苑。どうやら喉が渇いていたらしい。
 ナルトはニコーっと笑って隣に座る。
「しっかし、紫苑も大変だね。魍魎なんてモノの封印しなきゃいけないなんてさ」
「・・・・・・妾を呼び捨てにするなど、ナルトは不思議なやつじゃな」
「あ、ごめん。馴れ馴れしかったかな?」
「・・・・・・まあ・・・・・・別に構わぬ」
「そっか。じゃあ紫苑って呼ぶよ」
 目の前に浮かぶ大きな月を前に、紫苑は紫の透き通った瞳でジッと見つめる。
 その幻想的な光景を前に、紫苑はポソリと呟く。
「死が怖くないのか?」
「んぁ?」
「妾が見た未来は絶対じゃ。運命は変わらない」
「そっか」
 ナルトのあっさりした言葉に、紫苑はムッとした顔をした。
「信じておらぬな?」
「いや、紫苑の能力は信用してるよ。ただ」
「ただ?」
「そんな運命には全力で抵抗するけどね」
「無駄な事を・・・・・・」
 ナルトのご都合思考に呆れ果てる紫苑。
 ナルトもそんな紫苑の吐き捨てた言葉にムッとしたが、背後から足穂やユギトが出てきたことで会話は打ち切られた。
「2人とも、そろそろ出発だ。敵が迫っている」
 ユギトの索敵能力はずば抜けて高い。全員が頷いてナルトは紫苑を背負おうとすると、足穂が紫苑の前に出てきて膝をついた。
「では、紫苑様。私はここで・・・・・・」
「うむ・・・・・・」
 あっさりとした紫苑の言葉に足穂は頷くと、そのまま困惑するユギト以外を置いて、来た道を引き返していった。
「ユギ姉、足穂さんはどこに行ったの?」
「気にするな。さっさと行くぞ」
「・・・・・・分かった」
 何か気にかかる。
 ナルト・我愛羅・君麻呂・白・九羅華は何度も後ろをチラチラと振り返りながらも走り続ける。
 大きな岩場地帯の川を越えた時、背後から気配を感じた。
 全員がビクリと体を震わせた直後、我愛羅が言った。
「・・・・・・俺が1人と相手をする。他を頼んだ」
「我愛くん!?」
 九羅華が驚いた声を上げた時には、川の岩場で立ち止まっている我愛羅の姿が。皆も驚いているが、それぞれが各個撃破していくのが、一番の安全策だということ、そして我愛羅の実力を知っているからこそ、誰も咎める事はない。
 気配は4つ。
 我愛羅が相手をしているから、ちょうど3対3に別れればいい。
 そして一番しっかりしているユギトがナルトに同行すれば、問題も少ないはずだ。
 そう考えた君麻呂は、自分の考えた案を口にする。
「・・・・・・じゃあ、ナルトとユギト姉さんは先に行ってくれ。俺たちがそれぞれ相手をしよう」
「そうね・・・・・・そうしましょ」
「ええ。それが最良の策だと思います。それぞれ片付いたら仲間の応援にかけつけるということで」
「ナルト、また後で会おう」
「がんばってね、ナルト♪」
「僕等もなるべく早く駆けつけますから」
 3人がうんと頷き、ユギトの反応を待たずにそれぞれ散開した。
 その姿を、紫苑は戸惑いの瞳で見ていた。



「ここから先は行き止まりだ」
「なんだテメー! このギタイ様の相手をするつもりか? アアン!?」
 口に薄い緑色を覆わせた男は妙な口調で我愛羅の前に立つ男。沼の国の抜け忍らしい。
 我愛羅は無表情で言い放つ。
「・・・・・・生憎だが、お前の相手に時間をかけていられないんだ。親友の未来がかかっている。すぐに終わらせてもらうぞ」
 我愛羅の背中の壺から、大量の砂が解き放たれた。

「なんだぁ女が私の相手かよ? しかもガキ」
「あなただって女じゃない。しかも子供」
 どっこいどっこいの台詞を吐き続ける九羅華と沼の国の抜け忍・シズク。
 しばらくはお互いの悪口の応酬が続いたのであった。

「チッ・・・・・・女が相手かよ。やりにくいな」
「・・・・・・・・・・・・」
 沼の抜け忍セツナが白を前にして、頬を微妙に染めながら呟く。
 白の瞳からは大量の水が零れ落ちていた。

「このクスナを相手にする愚か者がいるとはな」
「お前が誰だろうと、俺はお前を倒すだけだ」
 沼の抜け忍の中で兄貴分となっている青年・クスナの前に君麻呂が立つ。
 君麻呂は目の前の男を前にして、敵の実力に内心で驚きながら覚悟を決める。
「よかろう。では我の秘術を味わうがいい!」
「・・・・・・・・・」
「暗黒忍術―――!」
「なっ!?」


「あれは・・・・・・」
 目の前に進軍している大量の兵士たち。
 だが、どこかおかしい。
 崖の上から見下ろしているユギト・ナルト・紫苑は、魍魎を封印している洞穴に目前に迫ったところで、数万にも及ぶ3メートルの甲冑兵達がいた。
「たしか兵馬俑とかいう、伝承に伝わる兵士だったわね」
「そうじゃ。あれは魍魎から漏れ出したチャクラの一部が生み出した兵隊じゃ」
「アレで一部!? だって数万はいるよ!?」
「それが魍魎の力じゃ」
「・・・・・・すごいな」
 ナルトの額から汗が流れ落ちる。
「ナルト・・・・・・お前は敵を避けて洞窟に入れ。そしてすぐに魍魎の封印にとりかかるんじゃ」
「・・・・・・わかった!」
 ナルトは頷き、紫苑を背負ったまま一気に飛翔する。
 その姿を見届けたユギトは兵隊の一番前に立ち、大きく構えた。
「・・・・・・足穂殿がオトリをやってまで・・・・・・予言通りに死を受け入れてまで魍魎復活を阻止しようとしているんだ。私も『本気』じゃなく『全力』でいかないと女がスタるってもんだ」
 そういってユギトは獣のように身を屈めて両手を地面につき、大きく息を吸い込んだ。
 そいて、その目が金色に変化する。
「転身! 尾獣化の術!」
 二尾の尾獣・炎の化け猫に変化した。



 兵馬俑の頭上を飛び越えているナルト。
 ナルトは知っていた。この洞穴に近づくにつれ、紫苑が微妙に震えていることに。
 どんどん、呼吸が乱れてきていることに。
「大丈夫か? 紫苑」
「・・・・・・・・・・・・平気じゃ」
 紫苑の震えは止まらない。声もどこか上ずっているし、全然大丈夫そうにはみえない。ナルトは紫苑を気遣って何かを言おうとしたが、それを考えていた為に、反応が遅れた。
「ナルトっ! 前!」
「えっ! しまっ―――!?」
 目の前に襲い来る暗黒の竜。
 その竜がナルトと紫苑を弾き落とした。
(これは、黒龍暴風弾!)
 その上級忍術を真正面から受けた衝撃で、ナルトは紫苑をおぶっている手を離してしまう。
「紫苑!!」
「あ・・・・・・・・・」
 頭から、滝つぼに紫苑は落ちていった。
 おかしなことに、紫苑の表情には恐れもなにも浮かんでいなかった。

(死んだ・・・・・・)



あとがき

 原作のビデオレンタルがないのに話をかいてしまった~~~~~!!
 もう記憶がとびとびであやふやです!
 劇場版がレンタルされたら、また話を付け加えます。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第13話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/06 21:49
      NARUTO


 『人柱力と妖魔の敵』


第13話  運命と宿命 





「あ・・・・・・・・・・・・」
 ―――終わった―――
 でもこれで、私が予言する必要はない。
 誰かに対して、死ねと言う必要もなくなった。
 これで・・・・・・何もかも・・・・・・。
「紫苑―――!!」
 ハッとなって目を開けると、目の前には必死の形相のナルトがいた。
 なぜ?
 なんで、ここまで必死に・・・・・・?
 こんな高さから滝つぼに落ちたら、いくら忍とはいえタダでは済まないはずなのに。
 いったいなんで・・・・・・?
「お前は絶対に死なせない―――死なせてたまるかぁ!!」
「―――――!」 
 紫苑を宙で捕まえたナルトは、紫苑の下に回りこんで彼女を庇うように抱え込む。
 そして、2人は水面に叩きつけられた。



「ハハハ! 砂なんぞ、当たらなければ意味はないんだよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
 我愛羅の壷から放出される大量の砂を避けるギタイ。
 ギタイは避けながら、土遁の印を組んでいく。
「土遁・砂石砲」
 人間大のサイズの石がギタイの目の前に現れ、特大の大砲のように打ち込まれる。
 それを自動で砂の壁が出現し、土石は叩き落とされる。
「・・・・・・同じ、土か」
「これは決着をつけるのが長引きそうだなぁ! おぃ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「だが残念だったな! この俺にはまだ奥の手があるんだからな!」
 我愛羅の襲いくる砂を回避しながらギタイはぎゃあぎゃあと叫ぶ。
 奥の手と言った言葉に我愛羅の眉がピクリと動くが、気にせずに砂を操り続けた。
「これを見ろよ・・・・・・!」
 ギタイが手にとったのは一匹のクモ。
 そのクモを口の中に含み飲み下したではないか。
「・・・・・・? 1体何を・・・・・・」
「ぎゃははははははははは! お前はもう俺に殺される事が決まったんだよ!」
 煩わしい声で叫ぶギタイが、みるみると姿を変えていく。
 我愛羅の目が大きく見開かれた。
(・・・・・・俺たちと同じ人柱力か!?)
 ギタイの身体が肥大化し、体が石のように変化し始める。
 そして体中から出現する触手。
 その姿はまるで・・・・・・。
「・・・・・・クモ?」
「その通り! 俺はこのタランチュラのチャクラを吸収して変化できるんだよ!」
 ギタイは言い終わると激しく加速する。
 大きな触手が我愛羅に次々と襲い掛かってくる。
 我愛羅は右へ左へと跳躍しながら回避。
「砂時雨」
 ギリギリで避けながら放たれる砂の散弾。それはギタイの身体に直撃したが、特に効果がない。
 我愛羅はチッと舌打ちし、大きく後退する。
 ギタイはギャハハと高笑いした。
「どうした! お前の砂が効かないから諦めたか!?」
「・・・・・・いちいちうるさい奴だ」
 我愛羅は壷の砂まで砂に化すと、両手を使ってこれまでの砂の速度を数倍にまで引き上げる。
 それは、これまでの我愛羅が遊んでいたのではないかと思うほどの量と速度。
 砂はギタイを完全に拘束した。
 だがそんな状態にも関わらずギタイは余裕だ。
「なんだ、これ? 俺に砂なんぞ効かないんだよ! まだわかんねぇのか!」
「砂縛柩・・・・・・」
「いいぜぇ・・・・・・何するか見せてもらおうか」
 ギタイの身体はクモと石の融合体。
 能力的には相手が上。
 だが―――。
 かざし開かれた手がグッと握り締められた。
「宣言通り終わらせてもらう・・・・・・・・・・・・砂瀑送葬!!」
 
 グシャ

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」
 絶命の叫び声。
 ギタイは完全な油断と驕りにより、あっという間に潰されて死んだ。
 宣言通りの、さっさと済ませたのである。
 我愛羅は潰した砂を元に戻し、砂は元の壷を形成して元に戻った。
「・・・・・・慢心と油断ほど危険なものはない、ということか」
 そう呟き、我愛羅は跳躍した。


「この小娘が! さっさとくたばれ!」
「オバンのくせに! 3種の性質変化は凄いけどね! 当たらなきゃ意味ないのよ!」
「誰がオバンだ! 私はまだ10代だよ!」
「じゅうぶんオバンよ! 私はまだ8歳なんだからね!」
「じゃあ、ジョンベンくさいガキだな!」
「ガキで結構よ! 私はまだまだ女として明るい未来があるんだからね! あんたは絶望的だけど。プププ」
「なんですって~!」
 実に見苦しい応酬である。
 あまりにも情けないやり取りではあるし、突っ込みどころも非常に多いが、繰り出されている技は凄い。
 沼の抜け忍・シズクは火遁・水遁・雷遁といった3種の性質変化をもっていて、たくさんの忍術を乱発してくる。
 それに変わって、九羅華の方だが、彼女はとにかく瞬神の術で避けていた。
 あまりにも早すぎる。
 シズクはどこからか聞こえてくる九羅華に向かって前方位に乱発していた。
 彼女は九羅華の姿を目視できないでいたのだ。
 一方、九羅華の方も凄まじい程の術と3種の性質のコンビネーションがシズクに近づけないでいた。
「かわいそ~、あんたひょっとして男?」
「はん! 私の術にビビッて出てこれない小娘が囀るな! ひょっとして漏らしてんのか? きたねぇな!」
「あまり叫ばないでくれない? 唾が飛んで汚いのよ。それでも女なの? 同じ女として恥ずかしいわ」
「なんだと!?」
「なによ!?」
 ―――まだまだ続きそうだ。


「残念です・・・・・・君が退いてくれれば命まではとらなかったのに」
 白は冷たい瞳を向けて、ソレに吐き捨てた。
 その先にあるのは『人間だった』もの。
 すでに原型は留めていない。
 いや、何もない、という方が正しい。
「この子も満腹ですし・・・・・・さっさと行きましょうか」
 白の傍にいたそれは、煙を舞い上がらせて消滅する。
 沼の忍の実力は本物だった。2つの性質変化を使う実力者は十分にどの里でも上を狙える。
 だが。
 白の実力の方が高かっただけだった。
「ナルト君・・・・・・すぐに皆で応援にいきますから」



 仲間達が激しい戦闘を繰り広げているころ。
 滝に落ちたナルトは紫苑を抱き上げて泉から這い出てきた。
 気絶している紫苑を木陰に下ろし、紫苑を揺さぶる。
「紫苑! 紫苑! 大丈夫か!? しっかりしろ!」
「・・・・・・・・・・・・うっ」
「気が付いたか、紫苑!」
「ナルト・・・・・・・・・・・・ここは」
 震える瞼をゆっくり開ける紫苑。
 彼女は身体を起こして辺りをキョロキョロと見回す。
「ここは落ちた滝の近くだ。それより、身体は大丈夫か?」
「・・・・・・そうか。妾は大丈夫じゃ」
 紫苑は僅かに俯いて、弱々しく答えた。
 ナルトは屈伸運動とかで身体を軽く動かしている。ボキボキと鳴るとナルトは恍惚の顔を浮かべている。
 そんな曇り一点もない、絶望もない、何かを信じている様子に紫苑の心は乱された。
「・・・・・・なんで、お前は諦めない」
「ん?」
「諦めたら楽になる。自分の運命など受け入れた方が何もかも楽だ」
「・・・・・・紫苑の巫女としての事を言ってんのか?」
「それもだが・・・・・・お前が死なない場合は私が死ぬ。お前が死んでも、私が異界へ魍魎を再封印すれば、私は力を使った事で死ぬ」
「何だって!?」
「そういう運命なのだ・・・・・・母様もそうやって死に、私もそうやって死ぬ運命、いや・・・・・・宿命だ」
「逃れられない未来なら、それを受け入れた方がいい。ずっと・・・・・・楽だ」
 
 母は妾を死なせる為に、この封印の為だけに産んだのだ。
 
 なんで妾は生まれたのだろう。

 なんで母様はそんな運命を受け入れたのだろう。
 
 紫苑は嘲笑した表情を浮かべ、気だるそうに立ち上がった。
 ナルトは紫苑の傍に近寄り、彼は背中を向けて座り込んだ。おんぶの格好である。
「そうだな・・・・・・俺はきっと・・・・・・欲張りなんだろうな」
「欲張り?」
「俺は幸せになりたいんだ。紫苑、キミは幸せになりたくないの? 運命とか宿命とかそういうのを置いておいてさ」
「・・・・・・・・・・・・」
「周囲の人間からは化け物って言われてさ、殺されるほどの虐待を生まれてからずっと受けてて、その理不尽な現状を諦めて受け入れてた」
「・・・・・・化け物?」
「だけどさ、逃れられない運命に必死で抗ったから、俺は今、ここにいる。新たな、自分と同じ境遇の仲間と共に、自分が望む未来を手に入れる為にな」
 紫苑がナルトの背に乗ってくる。
「・・・・・・・・・・・・」
「だから心配すんな! 俺は死なない。そして紫苑、お前も絶対に死なせないから! 魍魎くらい俺が倒してやる!」
 ナルトはそう高らかに誓った。
 紫苑が大きく目を見開き、その両手をナルトの首元に優しくまわした。
 彼女の腕が何かを渇望するかのように、ぎゅっと握り締められた。
 震えは・・・・・・治まっていた。


「クククク・・・・・・ついに復活だ!! この私が魍魎を取り込んで、世界を滅ぼし、千年王国の復活を果たしてみせようぞ!!」
 魍魎が封印された洞窟の中で、より煌びやかな鎧を着込んだ忍が1人。
 その者の名は黄泉【ヨミ】。
 沼の忍たちを総括し、魍魎を復活させるために今回の騒動を引き起こした張本人。
 その忍が、魍魎を封印する結界を破壊し、封印を解き放った。
「あははははははははははははははははははははははははははは!!」
 異界から出現した八俣の化け物が、笑い狂う黄泉を喰らい尽くした。


あとがき

次回は尾獣化したユギト、強敵と戦う君麻呂と口喧嘩を続ける九羅華さんの回です。
ついに運命の瞬間が訪れます。
そして、映画とはまったく違う事になっていきます。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第14話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/11 00:55
         NARUTO


     『人柱力と妖魔の敵』


       第14話  尾獣化 




 女同士の激しい言い争いは永遠に続くかと思われたが、徐々に変化が現れた。
 シズクが明らかに疲れだしたのだ。
「あれあれ~? もう息切れかな~?」
「うるせ~よ!」
 印を結ぶ速度に変化はない。
 だが彼女のチャクラはそろそろ限界だ。
 当たり前である。彼女はずっと飛び交う自分に対して術を乱発していたのだから。
 その分、自分は瞬神の術を使っていただけ。もちろんそこそこ疲れてはいるが、彼女ほどではない。
 そして、絶好の機会はやってきた。
「チッ・・・・・・チャクラが」
 シズクは忍術を止めると、突如走り出したではないか。
 走る逃走経路に煙球を撒いて身を隠そうとしている。九羅華は彼女をジッと見ていた。
「何とか、兄貴の所までいって補給を・・・・・・」
 彼女の呟きが聞こえ、そこでようやく何をしようとしているか悟る。
 彼女は仲間の所へ行き、どうやるかは知らないがチャクラを補給しようとしているのだ。
 九羅華はその無計画性に呆れた。
「貴方の3種の性質変化は凄いと思うけど・・・・・・私達みたいにスピードがないとそれも意味がないのよ」
「クッ! もうきやがったか」
「悪いけど、ここで終わらせてもらうよ・・・・・・」
 突如、横から吹き付けてくる突風。
 ―――これは、風遁・大突破―――
 それに気づいた時には手遅れだった。
 煙で隠していた辺り一帯が全て吹き飛ばされ、視界がクリアになり・・・・・・。

 首を刎ねられた。

「術のバリエーションが多いのもいいけどね・・・・・・速度がないと所詮はザコなのよ」
 九羅華は自分の愛刀に付いた血を払い落とす。
 転がる死体を見下ろして、興味がなくなったようにその場から消えた。
 シズクは痛みも感じることなく死ぬことができたのは幸いかもしれない。



「どうした? 防戦一方ではないか」
 君麻呂は戦いが始まってから数分で既にボロボロだった。
 風遁系の術と、そして暗黒忍術という特殊な術の連携は予想を遥かに上回るほど強かったのだ。
「十指穿弾」
「暗黒忍術・黒龍暴風弾!」
 彼の血継限界による攻撃はことごとく暗黒忍術により叩き落され、得意の接近戦に持ち込もうとも術の正体が不明瞭で迂闊に入り込めなかった。
 つまり、相性が最悪なのでる。
 ギリギリで避けた君麻呂は大きく跳躍して木の上で止まる。
(どういうことだ・・・・・・こいつのチャクラに限界が感じられない)
 君麻呂はかなり状況が悪いことに眉を顰め、クスナと呼ばれる忍を見下ろしていた。
 すると目の前にいたクスナが2人に分裂したではないか。
(分身の術!? だがおかしい・・・・・・これはただの分身じゃない)
「そうだよ。これは傀儡の術だ」
 それはまったく同じ性能の分身の術。
 その傀儡が君麻呂と距離を詰めてきた。
「チッ―――!」
 傀儡から突き出された右の拳を受け止め、君麻呂は回し蹴りで吹き飛ばす。
 しかしその直後、目の前にカマイタチが襲い掛かるのを感じ取った。
 君麻呂は慌てて避けようとするが既に遅く、身体がズタズタに切り裂かれる。
 何とか距離をとった君麻呂は忌々しくクスナを視た。
「ククク・・・・・・お前は俺には勝てねえよ」
「・・・・・・・・・・・・」
 クスナの耳障りな言葉を無視しようとして、そして頬が引きつるのを見た。
 無表情だった君麻呂の微妙な顔にクスナは後ろを振り返り―――。
 絶句した。
「な、なんだこれは!?」
 それは遠くから押し寄せる砂の津波。
 この森すべての砂が集まったのではないかと勘違いするほどの砂の量だ。
 その大津波の更に上に、まるで西遊記を気取っている仲間の姿を確認した。
 そう、我愛羅である。
 彼は砂の雲を作り出し、その上で印を結んでいるのだ。
「流砂瀑流!」
 全てが圧倒的。
 砂の量は半端じゃなく。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 完全にクスナは飲み込まれた。
 だがそれでは終わらない。
 我愛羅は筋斗雲(ちがう)から飛び降りると、砂で覆われた大地に両手を付けて、
「砂瀑大葬!!」
 ドン、と物凄い衝撃と共に木々など飲み込まれたモノが押し潰される音が響き渡った。
 本当ならここで終わりにしていいと思うし、事実、これまではそれで終わった。
 だが、相性が悪かったとはいえ、自分が実力で押されていたことがよほど悔しかったのだろう。
「早蕨の舞!!」
 圧倒的硬度を誇る我愛羅の流砂に触れて、彼の奥の手である血継限界を発動させる。
 そのダイヤモンド並に固いはずの流砂から次々と飛び出てくる骨の剣軍。
 それが、地中にいるものを滅多刺しにするものだと、嫌が応にも理解できる。
「・・・・・・僕の力を思い知ったか」
「・・・・・・・・・・・・」
 あえて突っ込むなら、やりすぎだろお前等・・・・・・。
 こうして、悲鳴すら上げることが許されずにクスナは絶命したのであった。
「終わったようですね」
 背後に現れる気配。
 それはよく知る人物の声だった。
 君麻呂は肩をコキコキと鳴らして、振り返った。
「ああ、今終わった」
「・・・・・・こっちもだ」
「僕もです・・・・・・九羅華の方を見てきたのですが・・・・・・まあ彼女は放って置いていいでしょう。どうせ追いつかれます」
「そうだな。早くナルトの応援に行こう」
「・・・・・・賛成だ。あいつは早すぎる」
 彼女の中にいる尾獣の特性でもあるのだが、それ以上に彼女の才能がそれを上乗せしている。
 能力は単一しかないが、彼女のそれは一級品。
 あのユギトですらおいつけないほどの速さなのだから、よほどのものだ。
「では、行きましょう」
 白の言葉を皮切りに、彼を先頭にして次々と消える縁の忍たち。
 ちなみに白が見た彼女の光景は、醜い言い争いをしている真っ最中だったとか。



『どうしたこの鉄くず共!! そんな力じゃ、この二尾は止まらんぞ!!』
「フニャーーーーーー!!」
 恐ろしいほどの大軍を前に、大暴れしている巨大なネコ。
 吐き出される炎は、凄まじい高熱を発していて、直撃した跡地は何も残っていない。
 尾を振れば大地が割れ、衝撃波で吹き飛ばす。
 その力は、正に尾獣の名に相応しい。
 そんな勇猛かつ常軌を逸した状態になっているのだが、その巨大なネコは先ほどから何か叫びまくりだ。
 延々とニャーニャーと喚いていて、よく聞くとこんな風に叫んでいたりする。
「ニャ! ニャニャニャ!!」
 全く理解できなかった。



「この奥か?」
「そうじゃ。ナルト・・・・・・気をつけてくれ。嫌な予感がする」
「ああ・・・・・・嫌な気配がビリビリ伝わってくる」
 岩で覆われた道を、紫苑を担いで駆け下りるナルト。
 奥に行けば行くほど、寒気がするほどの気配と感覚が流れてくる。
 しかも奥の方からこの世のモノとは思えない叫び声が聞こえてくるではないか。
 ナルトは、滝に落とされた際に襲ってきた国龍暴風弾を放った奴がどこかにいると判断して、気配を探りながら進む。
 どんどん通路が細く狭くなっていき、そしてついに大きな大空洞へと出た。
 そして、目の前に広がる光景に2人ともが言葉を失った。

 ―――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん―――

 八つの頭を出し、身体は何で出来ているのかサッパリわからない。
 黒い水や空気で出来ているのではと思ってしまうほど濁っていて、この世の全ての負が凝縮されているかのような威圧感。
 尾獣とは違う圧迫感。
 ナルトは紫苑を下ろして、額から落ちる汗を拭う。
「紫苑・・・・・・俺があいつらを引き付けるから、あいつの力をちょっとでも削いでくれ」
 ナルトは紫苑に封印をさせるつもりはなかった。
 彼女を死なせたくなかった。
「じゃが、ナルト!」
 目の前のあまりの威圧感に、一度は奮い立たせた想いが折られそうになり、ナルトに縋るような声をあげてしまう。
 あの敵は桁が違いすぎる。
 人間が相手をできるものじゃないはずだ。 
 ナルトの身を心配しているからこそ、紫苑はナルトを戦わせたくなかった。
「大丈夫だって」
「ナルト・・・・・・」
「俺もお前も死なない・・・・・・こんなところで死んだら、何もできなくなっちまうんだぞ。俺はそんなのイヤだ」
「でも・・・・・・」
「頼んだぜ・・・・・・紫苑、お前の事を信じているからな!」
 ナルトは震える足を思いっきり叩くと、魍魎へと跳躍した。
 紫苑は「ナルト―――!!」と叫んだが、彼が魍魎へと突進するのを見ると、キッと社へ目を向けた。
 そうだ。
 彼が自分を信じてくれるなら、自分にできる事を全力でやろう。
 紫苑は無理やりそう思い込むことにして、彼女も社へと走り出した。
 近くにあった人間らしき物体が目に入ったが、目を背ける事で必死に恐怖から逃げていた。
「多重影分身の術!」
 ナルトが空中でうじゃうじゃと出現し、その全てのナルトが高速で印を結ぶ。
「火遁! 火龍炎弾の術!」
 大きい的には大きな術を。
 100体近いナルトが繰り出した火遁は、全てが魍魎に命中する。
 しかし魍魎は全く効いていない様子で、8つの頭がそれぞれ襲い掛かってきた。
 次々と影分身が消えていく中、本体のナルトはクナイに起爆札をありったけ装着する。そして一頭の魍魎が向かって来たのを確認すると、影を踏みつけてそれをなんと回避する。
 そしてすぐにそのクナイを魍魎の口の中へと叩き込む。
 一瞬後に大爆発が起きて、魍魎の一体は少しの間だけ動きが止まる。
 だが、本当に一瞬だけだった。
 魍魎はナルトが手強いと判断したのか、全ての頭が一斉に襲い掛かってきた。
「くっ―――! この野郎!」
 必死で虚空瞬神の術を発動して、辛くも回避する。
 竜のような外郭している口に捕まったら、一発で食い殺されてしまうだろう。
 時には手を差し出して相手の鼻を押すことで回避したり、クナイを突きたてて別の頭を蹴り飛ばす。
 そこまで来て、紫苑が社へ到着し、結界を展開している光景が目に入った。
 見た事もない術式だが、あれが巫女の能力なのだろう。
「風遁、絶・練空弾!」
 火遁が効かなかったので、改良型の練空弾を放つナルト。
 だがそれも全く効果がない。
 大きく舌打ちしたナルトはチラリと紫苑の方を見る。
 すると、彼女の口元から血が流れているではないか。
(そうだ・・・・・・紫苑だってこんな化け物に干渉してんだ。辛いにきまってる!)
 紫苑の血に僅かに動揺したナルトだったが、頭を振る事でそれを無理やり外に追い出す。
 だが、それがいけなかった。

 ドスっと、何か妙な音が響き渡った。

「ナルト―――!!」
 何故かこちらを見て悲鳴をあげている紫苑がいた。
 何故か、それが全部スローでハッキリと読み取れる。
 なんで?
 なぜ、俺の腹から。魍魎の口が突き出ている?
「ぐっ・・・・・・・ガハっ!!」
 なんで、血なんか吐く?
 どうして、俺はぶらさがっているんだ?
 どうして、俺は地面にゴミのように投げ捨てられているんだろう。



 ナルトがやられた。
 自分が視た未来の光景と全く同じだった。
 あんなにも妾を励まして、心の澱みを洗い流してくれた人が、運命の通りになってしまった。
「ナル・・・・・・ト」
 だから嫌だったんだ。
 こんな巫女の力なんか。
 部下も、足穂も、父上も、母上までも、運命に従って死んでいった。
「ナル・・・・・・ト・・・・・・ナルトぉ」
 何でこんなに涙が出る?
 何で封印術なんか詠唱している?
 私はナルトの言葉を信じて、決めたはずだ。封印術は使わずにアレの力を削ぐようにやると。
 でも、ナルトは地面に転がってピクリとも動かず。
 魍魎はそれを嘲笑うかのように喚き蠢いている。
「母上・・・・・・妾は・・・・・・」
 貴方は、こんな事になる妾を生んで、幸せだったのか?
 こんな思いをするくらいなら、最初から変な期待なんかするんじゃなかった。
 こんな事になるなら、ナルトたちに助っ人を依頼するんじゃなかった。彼だけでも逃がせばよかった。
 希望を持つのではなかった。
 もう・・・・・・どうでもいい。
「封印術・四点結界方陣―――」
 母の形見である、胸元の水晶のペンダントをボンヤリと眺めながら最後の言葉を紡ごうとした時だった。
 それは、起こった。



『小僧・・・・・・あの魍魎に手を出す何ざ、愚か者のすることだ。アレは人間ごときが相手にできるものではない。何故それがわからぬ』

 ―――うるせえよ。あいつを死なせたくなかったんだから、しょうがねぇだろ。

『何故だ。お前と小娘はまだ会って1日も経ってないではないか』

 ―――理屈じゃねえんだよ。何か、助けたくて、助けたいと思ったんだからよ。文句あっか!?

『あの小娘じゃなくても、違う奴でもお前は助けようとしたか?』

 ―――したさ。俺は運命だとか宿命だとか、そんなの大嫌いなんだよ。気に入らねぇからぶっ飛ばす! それだけだ。

『ククク・・・・・・ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!』

 ―――何笑ってんだよ。ムカツクやろうだな。

『野郎ではない・・・・・・まあいい。妾たちの事情もあるが、お前自身も気に入ったぞ。正直嫌な奴ならどうしようかと思っておったところじゃ』

 ―――は?

『妾たちの事情は人間たちにも無関係ではないしの。妾の力を貸す代わりに協力してもらうぞ』

 ―――あの~・・・・・・話がみえないんすけど。

『小僧、名は?』

 ―――無視かよ・・・・・・うずまきナルト。

『ふむ・・・・・・あの女の息子か。まあ良い! 行くぞ、ナルト! この最強の尾獣・九尾を封印した器よ!』



 ソレは人間として不自然な位の動きだった。
 突如、ナルトの腹部からあふれ出し、岩石を浸食するかのように黒い闇が広かった。
 次の瞬間、真っ赤なチャクラがナルトの全身から噴出し、彼の周りに何かの形を形成していく。
 紫苑は見た。
 お尻の部分に、まるで尻尾のように何本も尾が形成されていくのを。
 1本。
 2本、3本、4本。
 皮膚から血が噴出し、辺りに飛び散る。まるでシャワーだ。
 そしてナルトがどんどん異形のモノへと姿を変えていく。
 耳のようなものが生え。
 人間の骨格じゃなくなり。
 ―――そして。
 尾が9本に達した時に、死んだはずのナルトが起き上がった。
「ナル―――っ!? な!?」
 人間の顔ではなかった。
 それこそ、まるで狐のように目の掘りが深く、牙を生やし、尻尾があって。
 彼の特徴とも言える金色に輝く髪が、異常に長く伸びていた。
 青の瞳は・・・・・・縦にくっきりと割れていて、それは人間の目ではなかった。



 九尾とうずまきナルトが、完全に人柱力として覚醒した瞬間であった。



あとがき

あああああああああああああああ!! 力不足だああああああああああああああ!
描写弱っ!! そしてスイマセン!!
次が最後で、また中忍試験に戻ります!!
ナルトの回想の話ですので、完全に割り切って呼んでもらえたら嬉しいです(泣)



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第15話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/12 20:23
         NARUTO


    『人柱力と妖魔の敵』


       第15話  最終決戦 




「・・・・・・・・・・・・」
 起き上がったナルト。
 いや、狐型の人といった方が適切か。
 短かい金髪が膝元まで長く伸び、目が妖魔のおぞましさに変わり果て、頬には何かの模様らしき筋が真紅で彫られ、手は獣状の手に変化している。何よりも腰元から突き出た9本のサラサラの尻尾がばたばたと動き回っていた。
 まるで、やっと外界にでたとばかりに喜びまわる子供のように。
「ナ・・・・・・ナルト?」
 あまりの威圧感に紫苑の震えは止まらない。
 あの姿はいったい何だ?
『周囲の人間からは化け物って言われてさ、殺されるほどの虐待を生まれてからずっと受けてて、その理不尽な現状を諦めて受け入れてた』
 ―――いま、やっとその意味がわかった。
 そして、だからこそナルトは運命に逆らっていたのだと。
 決して、幸福な未来を諦めなかったのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
 魍魎はナルトから迸る尋常じゃない雰囲気に危機感を覚えたのか、8頭全てが襲い掛かる。
 スッと手を振りかざし・・・・・・。
 勢いよく振り下ろした。
「キャッ!!」
 ありえない程の衝撃波。
 凄まじいその威力に、魍魎は吹き飛ばされて岩壁に叩きつけられ、絶対防御として結果内にいる紫苑まで衝撃のあまりに転んでしまった。
 ナルトはサッと後ろに後退すると、左手を前方に向ける。
 すると指先に高密度の黒い球体が出現する。
 それはどんどん密度を高めていき、九尾のチャクラが一点に集中される。
 その硬度さゆえに、ナルトを中心に足場の岩がひび割れを起こした。
 そして一瞬の沈黙。
「・・・・・・・・・・・・フッ」
 音速を超えた速度で球体が飛び、倒れ伏せている魍魎へと直撃した。
 あまりの衝撃と重圧で、身体をペースト状にまで押し潰された魍魎はピクリとも動かなくなった。
 正に、圧倒的な力の差。
 魍魎には人間が勝てる相手ではなかった。人外には人外が、化け物には化け物が。
 初めて相手と同じ土俵に立って、戦えるものだ。
戦闘不能になったのを見届けたナルトは、前のめりに倒れる。
 徐々に尻尾が崩壊を始め、髪も元通りになっていく。
 だが身体中から血が滲み出ていて、とてもじゃないが動ける体じゃない。
「ナルトっ!」
 紫苑は身体を起こしてナルトの元へと駆けつけようとする。
 だが何とか踏みとどまった。
(そうじゃ・・・・・・今、妾がやることは、ナルトとの約束を果たすこと。ナルトだって、あんなになってまで守ってくれたんだから)
 紫苑は立ち上がって両手を押さえ、力を解放する。
「ナルト! 紫苑さま!」
「無事か!」
「応援にきましたよ!」
「・・・・・・ナルトが倒れている」
「ナルト!!」
 敵を全て片付けたのか、ユギトたちが空洞に飛び込んで来た。
 彼等の存在を背後に感じて、無事だということにホッとした紫苑は術を続行する。

(ナルトの言う同士とは・・・・・・そういう意味だったのか)

 今なら、彼が言っていた意味がよく解る。

(母様・・・・・・妾は・・・・・・)

 今こそ、信じることができる。

(妾は・・・・・・ここで諦めたりはしません)

 母様が、私を封印の為だけに産んだのではないということを。

(運命に逆らって見せます!)

 母様が私に何を願っていたのかを。

(宿命に殉じたりしない・・・・・・幸せになってみせます!)

 なんで、私に授けたペンダントの石を、わざわざ『幸福』の意味のものを選んだのかも。

(私は――――!!)





「本当によかったんですか?」
 全てが終わり、ボロボロになったナルトを背負っているユギトが紫苑に尋ねた。
 眼下に広がるのは、洞窟が半壊してガラクタと化した兵馬桶の兵隊たち。魍魎の影響を受けたせいで噴火を起こした火山の姿であった。
「ああ、よかったんじゃ。妾は・・・・・・ナルトに教えられた。運命に逆らう事を。母様の本当の願いを」
「んん・・・・・・・・・・・・」
 紫苑の声に反応したナルトが、ゆっくりと目を開けた。
 そのナルトに君麻呂が声をかけた。
「起きたのか、ナルト」
「ああ・・・・・・それで、どうなったんだ」
 ナルトは疲れきった表情で君麻呂に尋ねた。
 君麻呂はそれに答えず、ある方向に視線を向けた。
 その先には、無事な姿の紫苑がいた。
 紫苑は目覚めたナルトへ振り返り、柔らかな笑顔を向ける。
 そんな紫苑に、非常に身に覚えがある気配がするのを感じる。
 だが、これは有り得ないはずだ。
 なぜならば・・・・・・。
「紫苑・・・・・・おまえは」
 ナルトの言いたい事がわかったのか、紫苑はウンと頷いて笑いかけた。
「そうじゃ・・・・・・妾もナルトと同じように人柱力となったのじゃ。妾の封印術で自分の身体に封じ込めてな」
 鬼の国の筆頭だった紫苑は知っていたのだろう。人柱力の言葉も、その意味も。
 ナルトは彼女が行ったその決意を、知る。
「そう・・・・・・か・・・・・・・・・・・・すまない。俺が弱かったせいで、こんなことになって」
 正直に言って、自分が変わってしまった事を覚えていた。
 そして、身体が転身についていけなくて、大技を使った直後に気を失ったことを。
 全て、自分が倒せていれば、忌まわしい運命にある人柱力に紫苑がなることはなかった。
 だから、ナルトは謝るしかなかった。
 そんなナルトの気持ちを解っているのか、紫苑はクスッと笑って空を仰いで言った。
「ナルト・・・・・・妾はこれからは運命がどうのとか、宿命がどうのとか言って逃げるのは止めることにしたんじゃ」
「へ・・・・・・?」
「妾も幸せになりたい・・・・・・いや、なるんじゃ。母様のように大きくなって子供を作って、この鬼の国と自分が住む場所を笑顔でいっぱいにしてみせる」
「紫苑・・・・・・」
 紫苑の言葉に、皆が声を失う。
 紫苑の決意に皆が嬉しい気持ちと笑顔に圧倒されたのだ。
 そして、次の言葉にナルト以外が全員が凍りついたのだった。
「ナルト・・・・・・協力してくれるか?」
「「「「「!?」」」」」
「ああ! もちろん!」
 即答するナルト。実に嬉しそうな笑顔だ。
 ―――絶対に意味わかってねぇ―――
 速攻でつっこむ仲間たち。
「そうか! それじゃあ、妾も仲間に入れてもらおうかの」
「おお!? 紫苑も仲間になってくれるのか! やりぃ♪」
「まあ、鬼の国も今は半壊状態じゃからな。ここを拠点にしてはどうじゃ? 妾も仲間になるために色々と準備が必要じゃからの」
 紫苑の言葉にユギトも、ふむと頷いて承諾した。
「そうだな。そうしようか」
 ユギトの言葉に皆が、やりぃ!と喜び合って、紫苑に自己紹介を始めた。
 紫苑が、ナルトたちの仲間になった瞬間である。





 ナルトは目の前でネジと戦っている紫苑を見て思い出していた。
 あの後は鬼の国を拠点に動き回り、紫苑は鬼の国の復興と後釜を用意するのに奔走し、縁の里の設立と共に紫苑まで付いてきたのである。
 鬼の国の滞在時には、紫苑の言葉遣いについて九羅華がつっこんで直そうと努力したり、紫苑の言葉の意味を知ったナルトが絶叫を上げたりしたのである。
 また九尾と完全に和睦状態になったことで口寄せしたら出てくるようになった玉藻が好き放題暴れ放題という騒ぎがあったのは別の話である。
「さあ、紫苑が本気になるぞ」
「え、今まで本気じゃなかったっていうの?」
 ナルトが物思いにふけっていたのを見つめていたヒナタとサクヤは、ナルトの言葉に驚く。
「いやいや、本気ではあったさ。だが・・・・・・」
 そういってニヤリと笑ったナルトが、ヒナタとサクヤに言った。
 まあ、木の葉の面々も聞き耳を立てて聞いていたが。
「所詮は器が違うんだよ。運命だなんだといっている腰抜け野郎と、自分で運命を打ち破り、宿命を覆した紫苑ではね」
「・・・・・・・・・・・・宿命を覆す」
 ヒナタが誰ともいわず呟いて、紫苑を眺めた。
 その紫苑は、もっていた扇子を懐に入れ、両手を合わせた。
「さあ・・・・・・覚悟は出来てるかしら? ボウヤ」
 紫苑の馬鹿にした態度にカチンとくるネジ。
 ネジはサッと構えて睨みつける。
「私に運命だなんだと説教を垂れた事、後悔させてあげる」
 紫苑は左腕の裾を肩まで巻くり上げ、正面に翳した。
 そして右手を高速に動かす。
 それは、片手の印。
「叩き潰せ・・・・・・魍魎」
 紫苑の左腕から、滲み出るように一頭の化け物が飛び出した。


あとがき

 やっと本編に戻った・・・・・・。
 というか、紫苑は尾獣ではない人柱力になりました。
 つまりイレギュラーの人柱力です。
 本編を読んでいて数が合わないことにアレ?と思った方もいると思ったでしょうが、こういう事です。
 次回はついに紫苑VSネジ決着。
 そして、うずまきナルトVS―――との戦いが始まります。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第16話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/15 16:35
           NARUTO


    『人柱力と妖魔の敵』


       第16話  毒舌の我愛羅 





 それが出た途端、会場が凍りついた。
 異形ともいうべきおぞましさを持つ龍のような生物が、可憐な少女の腕から滲み出て出現したからだ。
 その生物の圧迫感に、ネジは逃げ腰になる。
「な・・・・・・なんだ・・・・・・それは」
 ネジは呻き声のように搾り出して問いかけた訳だが、紫苑という少女はそれを無視していた。
 というより紫苑としては、答える余裕がなかったのだ。
「くっ・・・・・・あぁ・・・・・・・・・つぅ」
 必死で左腕を押さえて全身をこわばらせている。
 そして現れた異形はしばらくの間、意味不明な動きをしているだけで、ネジに襲い掛かる気配がまったくない。
 ナルトたち縁の里の忍たちは焦ったように身体を乗り出して叫ぶ。
「紫苑! それ以上開放しちゃダメだ!」
「紫苑さん! チャクラを左手に集中して!」
 ナルトは、一頭しか出さないように注意を促し、白が未だコントロールができない紫苑に助け舟を出す。
 サクヤやシカマル、カカシたちは突如現れた異形に対してがくがくと震えたり、目を見開いて驚いている。
 ナルトと白の言葉が聞こえたらしく、紫苑はコクリと頷いてグッと力を入れて呟く。
「・・・・・・さあ、いきなさい・・・・・・久しぶりに出してあげたんだから、命令ぐらい聞きなさいよ」
 よほど辛いのか、顔を顰めながら言う紫苑。
 彼女の言葉に呼応するかのように、魍魎はネジに襲い掛かった。
 ネジは振るえる足を叱咤して、慌てて迎撃するために回りだした。
「回天!!」
 高速で回るネジはチャクラの放出による絶対防御で魍魎を迎え撃つ。
 だが、彼は理解していなかった。
 魍魎はあっさりとネジの回天による壁を打ち破り、ネジの身体を吹っ飛ばしたのだ。
「・・・・・・がはっ!!」
 あまりの衝撃にネジは吐血し、地面に倒れ込んだ。
 たった一発で、ネジは動けなくなってしまったのだ。
「戻りなさい!」
 紫苑は突き抜けるような声で、今にもネジを喰らおうとする魍魎に命令し、左腕全体にチャクラを流し込む。
 すると魍魎が引っ張られるように紫苑の腕の中に戻っていった。
「・・・・・・はあ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ」
 額から汗を流しながら焼け爛れる左腕を押さえて膝を付く。
 あまりにも異常な展開に会場はシーンと静まり返ってしまった。
「なんとか無事だったか・・・・・・」
「ええ。一頭だけだった事も関係しているでしょうが、よく抑えこんだと思います」
「そうだな」
「・・・・・・腕の治療をしてやらないと」
「もう~紫苑ったら・・・・・・心配ばっかかけるんだから」
 ホッと一安心する縁の里のメンバー。
 審判者である月光ハヤテはネジの下へ近寄り状態を確認し、戦闘不能だと解ると高らかに宣言した。
「日向ネジは気絶により戦闘不能とみなし、勝者・紫苑!」
 ハヤテの合図で紫苑は蹲ったまま瞬神の術でナルトたちがいる場所へ戻った。
 だが会場は異様な雰囲気に包まれ、勝者への拍手はなかった。
「無茶しすぎだ、紫苑」
 ナルトたちは紫苑の下へ駆け寄ると、急いで掌仙術を腕にかけ始める。
 圧倒的なチャクラ量からすぐに直るはずのそれは、魍魎という特異な存在の名残の所為が、回復速度が明らかに遅い。
 結局、日向ネジがタンカで医務室へ運ばれてから次の対戦者が電光掲示板に表示されるまでかかってしまったのである。
 そしてその間、全ての人間の視線を浴びることになった。


「ネジが負けたか・・・・・・だが、あれは仕方が無い」
 ヒアシは目の前で起こった事態に信じられないながらも冷静に判断する。
 教えてもいなかった宗家秘伝の日向流まで独自に編み出したセンス。それはどこをとっても一流だ。
 手塩に掛けて育てているハナビどころか、ヒナタなどもっての他だ。そうヒアシは判断する。
「では・・・・・・ネジの様子を伺いに行くとするか」
 負けはしたが、十分な評価に値する内容だった。
 これから宗家党首である自分が鍛えていけば、十分の強さに到達できるだろう。
 日向ヒアシは、火影のするどい視線を感じつつもニヤケながら会場から出て行った。
 娘の試合がまだ残っているにも関わらずに。


【第3回戦・カンクロウVSツルギ・ミスミ】


 紫苑の腕に包帯を巻いていると、次の試合が始まった。
 重苦しい雰囲気のまま砂隠れのカンクロウが戦い始めた。
 しかし、サクヤとヒナタを除いた木の葉の忍者たちは皆試合に見入っているのに、肝心の我愛羅が見ていなかった。
 なぜ我愛羅に関係があるのかというと。
「観なくていいのか、我愛羅」
「・・・・・・いい」
「何で?」
 我愛羅のあまりにもきっぱりとした態度に、紫苑は首を傾げた。
「兄弟でしょ?」
「・・・・・・兄弟だが、知った事じゃない」
「ひどいなっ!!」
 ナルトの突っ込みに、なぜかコクリと大きく頷く我愛羅。
「・・・・・・カンクロウは訳解らん化粧を気に入っているようだからな。ここで痛い目にあってそれに気付いた方がいいだろう」
「おいおい」
 中々の毒舌を吐く我愛羅に苦笑する紫苑とナルト。
 包帯を巻き終えると、会場がザワつき、拍手と歓声があがった。
 そして白がやってきて我愛羅に言った。
「カンクロウ君が勝ちましたよ」
「・・・・・・・・・・・・チッ」
「いやいや、チッて・・・・・・ハハハ」
 砂隠れ特有のからくり人形を使った術で、見事に敵を翻弄して圧倒したらしい。
 会場は素直にカンクロウに拍手を送っていた。
「・・・・・・次はこの俺がじきじきに砂の化粧をしてやる」
「いや、だからちがうだろ」


【第4回戦 日向ヒナタVSうずまきナルト】


「げっ!!」
「う、うそ・・・・・・」
 電工掲示板に表示された対戦カードを見て、呻き声を上げるナルトと、戸惑いの声のヒナタ。
 2人はお互いを見詰め合って、何度も掲示板を見返している。
 月光ハヤテが「早く降りてきてください」と下で言っているが全く耳にはいってこない。
 ナルトは紫苑のケガを見て下を俯き、誰に話しかけることもなく瞬神の術で会場に降り立った。
 縁の里の仲間は、誰も声を掛けずにナルトを見守っていた。
一方で動揺しているヒナタはフラフラと下へ向おうとしていた。
 そんなヒナタに、担当責任者である上忍の紅が声をかけた。
「ヒナタ!」
「は、はい・・・・・・」
「・・・・・・がんばってきなさい」
「・・・・・・はい!」
 紅の言葉に、何がいいたいのかわかったのだろう。
 ヒナタはハッと気付いた表情になり、大きく頷いて会場に向った。
 そして全員が見守る中、ついに幼馴染みでもあり、師弟関係でもあり、好意を向け合っている両者の対決が、今始まるのである。



あとがき

ヒナタVSナルト!
この対戦も予想外だったのではないでしょうか。
しかしこれは第1話の段階で決まっていました。
ちょっとだけ長くなります。
次回をお楽しみに。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第17話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/21 13:05
       NARUTO


     『人柱力と妖魔の敵』


  第17話 あの日あの場所で




 妙な緊迫感が、開始前なのに会場を包んでいた。
 木の葉の下忍一同はナルトとヒナタが何故か仲が良い事を知っていたし、特にサクラやいのといったくの一はヒナタの気持ちを見抜いている。
 というより、解らないはずがない。
 一方でナルトの表情が強張っていて緊張しているのも一目で気付く。戦いたくないんだなぁと、誰もが感じた。
 サクヤも固唾を飲んで見守っている。
 会場に下りたナルトとヒナタは試験官であるハヤテの前で向かい合い、お互いを見詰め合っていた。
「ヒナタ・・・・・・」
「ナルトくん・・・・・・」
 お互い呼吸が荒い。
「えー・・・・・・ゴホゴホ・・・・・・それでは準備はよろしいですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「ゴホゴホ・・・・・・では、第4回戦 日向ヒナタ対うずまきナルト、試合を始めてください!」
 ハヤテによって開始宣言がされても全く動かない両者。ハヤテはそんな2人を無視して距離を取る。
 ヒナタはゆっくりと、本当にゆっくりと日向流の構えをとった。
「ナルトくん・・・・・・ここ数日の修行の集大成みたいなものだね・・・・・・この試合」
「そうだな・・・・・・一応確認するけど、本当にいいのか?」
「うん」
 半ば予想していたのだろう。ナルトも軽く手首を揺らしてサッと構える。
「縁の里所属、うずまきナルト、参る」
「今の所は日向宗家長女・日向ヒナタ、いきます!」
(今のところは?)
 なんかとてつもなく聞き逃してはならない台詞があった気がするが、きっと気のせいだ。
 否、そう思い込もう。


(ふむ・・・・・・ナルトが日向家長女とここ数日は修行してたのは知っておったが)
 3代目火影は目の前で繰り広げられる体術の攻防に、予想外のヒナタの実力を見て感心しながら思考に耽る。
 ナルトが木の葉に来てから頻繁に水晶で様子を見ていたが、日向宗家の長女と仲が良いのはとても驚いていた。
 そして、そういえばナルトが里にいた頃から仲がよかったのお、と思い出す。
(ナルトの実力が四覇聖と称されるモノなら、下忍など相手にならぬはずなんじゃが)
 しかしヒナタとナルトは良い勝負をしている。
 もちろん手加減しているのは丸解りだが、それでも体術の技術という点だけにおいては本気を出している。
 その証拠に木の葉最強の体術・日向流を押しているではないか。
(それにしても、先ほどの紫苑という少女・・・・・・あの化け物は十数年前に世界を未曾有の混乱に陥れた魍魎ではないか? ということはあの少女も人柱力ということじゃ・・・・・)
 3代目は魍魎を見たことがある。
 一頭しか出てこなかったが、あれは間違いなく魍魎だ。
 そして魍魎を社へ封印したのではなく、巫女自らが自分の身体へと封印した事に驚愕する。
(これは・・・・・・早くナルトたちと対談せねばならぬな)


「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 日向流独特の体術は、しなやかな動きによりナルトへ迫る。
 しかし、ナルトの両腕に綺麗に弾かれてしまい、決定打を与えることはできない。
 
『そうそう・・・・・・体術で求められるのはキレとか威力かもしれないけどさ、大前提としてスピードが無ければ意味ないんだよ』
『でも・・・・・・私まだ身体強化なんてできないし・・・・・・あれ凄く難しいから』
『確かに。だけどヒナタだからこそできる、やり易い方法を教えてあげる』

 ヒナタはこの数日で教わった事を、下忍任務中にも暇さえあれば練習してきた。
 シノは解らないしキバは気付かなかったようだが、紅は気付いていた。
 ヒナタが白眼でチャクラ放出の練習をしているのを。
「やぁ!」
「!」
 いきなり速度が上がった拳と蹴りにナルトは少し驚きながら避ける。
(まさか、もうこれができるなんてな・・・・・・さすがだなヒナタ)
 もちろんまだ未熟だが、それでも速度が上がっている。
 例えば左足で蹴る時に、蹴る足の裏にチャクラを一点集中させ、蹴り上げた瞬間に拡散させる。
 いうならば、風圧の力を利用した高速体術なのだが、これは実はとても難しい。とても一般の下忍ができるものではない。
 しかしヒナタの日向としての才能、つまり白眼によりチャクラの流れを目視できることが、この術に対してとても有効なアドバンテージを発揮する。
 それを予想してナルトはヒナタに教えた訳だが、まさか数日でものにするとは思ってもいなかった。
「よっと!」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
 ナルトは大きく後ろに跳躍して後退する。

『ねぇ、ナルトくん・・・・・・ナルトくんは今は幸せ?』

『私は日向の自分の居場所がなかったから、今まで認められようとしてがんばってきた・・・・・・でも』

 ナルトはヒナタに見えるギリギリの速度の瞬神の術で移動する。
 そして後方から手裏剣を数枚だけ取りだし、傷つけないように投げた。
「・・・・・・っ!」
 ヒナタはそれをクナイでなんとか捌ききり、同様に手裏剣でナルトへと投げる。こちらは手加減がない。
 実力は明らかに離れているのだから当然のこと。
 ナルトは飛んできた手裏剣を虚空瞬神の術を発動させ、宙で方向転換することで避ける。
 そして試合開始時んも場所に戻ってきた。
「ヒナタ、よくここまで・・・・・・。正直いって驚いた」
「ナルトくんと修行したから。無駄にしたくなくて・・・・・・」
「なんだか懐かしいよな」
「そうだね・・・・・・初めて会った時を思い出すよ」
 それは、ナルトが木の葉にまだいた時の話。
 里から虐待を受け、恐ろしい程冷たい目で見られていた時のこと。
 恐ろしい程の殺気から森に逃げ込んでいたナルトが、川辺で一人落ち込んでいたときだった。
『あ、あの・・・・・・』
『だ、だれ!?』
『え、えと・・・・・・これ、つかって?』
 泣いていたナルトへ差し出されたハンカチ。
 ふと顔を上げて見ると、そこには自分と同じように寂しげな闇が漂う瞳をした、可愛い同年代の少女。
 そこに、ナルトを哀れむ視線も、同情する視線もなかった。
 あったのは、純粋な心配する気持ちだけ。
『ありがと・・・・・・』
 それから、ナルトとヒナタは言葉を交わして、お互いの悩みを知った。
 何で、自分が化け物と言われるのか、白い目で見られるのか解らない。
 自分の居場所があるはずの実家に、全くそこにはなかったということ。
 ナルトはヒナタを励ますことしかできなくて、それなら自分が修行に付き合ってあげると言った事が始まり。
 それからは、小さな少年と少女の修行が毎日の生き甲斐になった。
 毎日、毎日。
 ずっと。
 家族といるよりも大切な時間になった。
「ナルトくんがいなくなってからずっと寂しかったんだよ、ほんとうに・・・・・・」
「・・・・・・すまない」
 ナルトが来なくなった時の喪失感を思い出したのか、ヒナタの瞳に涙が溢れる。
 だから、そんな想いをさせてしまったナルトは謝るしかなかった。
「ううん・・・・・・責めたいんじゃなくて・・・・・・ただ、でも、会えてよかった」
「俺もだ・・・・・・」

『でも・・・・・・それは本当に自分の為に生きているっていえるのかって・・・・・・ナルトくんの事を聞いて、思うようになった』
『自分の為に?』
『うん。だって、私は日向宗家を継ぎたい訳じゃない。ただ、自分の居場所が欲しくて、否定する実家に対して意地になって努力してきただけで』
『そっか・・・・・・』
『私はナルトくんみたいに、幸せになりたい・・・・・・自分と大切な人と共に生きたいんじゃないかって・・・・・・そう思うようになったの』
『ってことは、まさか・・・・・・』
『うん。だからね、ナルトくん。もし―――』

 彼女の願い。
 それを聞かずに自分のエゴを押し通したその結末になんの意味があろうか。
「ナルトくん・・・・・・本気で、お願い」
 彼女を傷つけたくない、その気持ちは今もある。
 だが。
「わかった・・・・・・」
『ナルト、がんばるのじゃ! 男なら女の願いくらい叶えてやる器量くらい見せるものじゃぞ!』
 大きく息を吐いて。
 そして片手を地面に付き、まるで獣のような体勢になった。
 その瞬間、空気が変わった。



「どうやら、本気でやるみたいですね」
「・・・・・・・・・・・・ああ」
「そのようだ。だがナルトのお気に入りだろ、あの子は。本気でやったら殺してしまうぞ」
「む~~~~~、なんだかお互いに解り合ってるって感じ。ハブかれてるみたいで面白くないなぁ」
「こら九羅華! 私とナルトの方が解りあってるに決まってるだろう!」
 ナルトとヒナタが繰り広げた高度な攻防を固唾を飲んで見守っていた縁の里の忍たちは、ナルトの空気が変わった事をすぐに見抜いた。
 その物騒な言葉を聞いた木の葉の下忍たちは大慌てだ。
「あ、あの! 白さん!」
「はい、何ですかサクラさん」
「今の話・・・・・・あの人が本気でやったらって」
 サクラは顔を青褪めながらキョロキョロと見比べている。
 きっと第2試験の時の砂塵と化したあの恐ろしい光景とキレた時のナルトを思い出しているのだろう。
 白はサクラや心配そうにしているキバやシノ、そして紅やサクヤといった連中を安心させるために言った。
「大丈夫。殺しはしないはずです。日向ヒナタさんは彼にとっても大切な人の一人ですから」
「で、でも」
 犬神家とか、そういった間抜けな印象も強いのか、どこかで誤って彼が殺してしまうのではないか、と懸念をしている。
 白はそんなサクラの疑問を感じとり、そして笑った。
「ふふふ・・・・・・」
「な、何がおかしいんですか?」
「貴方の心配は杞憂に過ぎません。なぜならば彼は・・・・・・」
 白が言葉を紡ごうとして、それを塞ぐように戦場からナルトの高らかな声が上がった。

「縁の里、戦闘部隊最高幹部-四覇聖がリーダー、人柱力第九尾うずまきナルト・・・・・・参る!」

「彼は、僕等のリーダーですから」

 うずまきナルトの姿が消えた。



あとがき

やっと復活です。
そしてナルトの縁の里内での立場が明らかになりました。
もちろん彼はリーダーであって、里長ではありません。
そこも追々明らかになる予定です。
それから、何故いちいち名乗るのか、それもちゃんと理由があります(笑)
あと、今回は短くてすいません。
次は長くします。



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第18話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2007/12/28 18:27
           NARUTO


      『人柱力と妖魔の敵』


        第18話 大切だけれど




 うずまきナルト。
 彼の忍としての力は、実は仲間うちでは中間クラスしかない。
 ―――だが。
 ピンチに陥った時や大切な者が傷つけられそうな時、彼は驚くべき力を発揮して、これまでも多くの仲間たちを救ってきた。
 そして彼が四覇聖のリーダーである理由はそれだけではない。
 彼、うずまきナルトは人柱力としてユギトや厳じいを含めた誰よりも、尾獣と共鳴している。
 一尾から九尾まで、その尾の数が尾獣としての強さを示すが、尾獣の中でも九尾は別格だ。次元が違うと言ってもいいかもしれない。
 そんな九尾と共鳴し、転身の術を使って尾獣化した時のナルトの強さは想像を絶する。
 手足を振り下ろせば大地を砕き、衝撃波であらゆるものを吹き飛ばす。
 チャクラを収束させれば、その圧縮率故にどんな敵でも一撃で死亡する。その攻撃が、軍隊や侍といった数多くの里の侵入者を潰してきた。
 だがナルトの尾獣化は共鳴率の高さ故に、身体に多大な負担を要する。それは寿命を削るもので、仲間や玉藻自身がそれを禁じたほどだ。
 しかし彼の忍術には大きな弱点がある。
 それは遠距離系の忍術が火炎龍弾と大突破、物質影分身しかないということだ。
 仲間たちに比べると驚くほど忍術が少ないのだ。
 故に体術とスピードに特化してきた。
 どんな敵でも一撃で首を刎ねられるように。
 その結果として、ナルトの速度は里のナンバー2にもなった。
 それが数日前、日向ヒナタの前で明らかになった。


『見とけよヒナタ。これが忍が出せるスピードの中でも最高クラスの速度だ』
『う、うん。―――白眼!』
『おらよっと!』
『―――っ!! は、早すぎるよ、ほとんど見えないし・・・・・・』
『まあ、このスピードで見えるようになるまで、目を慣らすぞ』
『う、うん。お願いします』


 獣のような体勢になったうずまきナルトを見て、ヒナタは嬉しそうに口元を緩ませ、でも恐れるように身を震わせる。
 ナルトはそんなヒナタを見て笑った。
「嬉しそうだな、ヒナタ」
「うん・・・・・・だって、ナルトくんが本気を出すんだもの。それって私と対等に戦ってくれるってことだと思うから・・・・・・」
「なるほどな」
 ナルトはヒナタの言葉に苦笑する。
 この少女は本当に自分と対等に付き合いたいのだ。そして隣に立ちたいと言っている。
 ―――まったく・・・・・・俺の気持ちなんかお構いなしだな―――
「・・・・・・いくぞ」
「うん!」
 言い終わると同時にナルトが消える。
 ヒナタは白眼を発動し、ナルトの襲撃に備える。
 これまでのスピードと打って変わったナルトの瞬神の術に、会場は驚愕の雰囲気に包まれた。
(兄様、すごい・・・・・・まったく見えません)
(先生の息子なだけはある・・・・・・先生には及ばないまでも、それに追随する速度だ)
(僕の裏蓮華以上に速いです・・・・・・)
 全員が驚きの声を上げる中、ヒナタが急に右腕を跳ね上げる。
 するとその腕に何かがぶつかり、ヒナタが吹き飛ぶ。
「あっ―――!!」
 ミシリと、嫌な音が会場に響いた。
 ヒナタは片手を付くことで体勢を整え、周囲を警戒しようとする。
 だが、それ以上にナルトの攻撃が早かった。
「くっ!!」
 後ろから襲ってきた衝撃。
 ガツンと殴られた衝撃に、ヒナタは派手にゴロゴロと地面に転がる。
 そこで初めてナルトの姿がはっきりと現れた。
「・・・・・・・・・・・・」
 やっと終わった、ナルトはそう思った。
 実際にはそんなに時間は経ってないし、むしろあっという間に終わったのだが、ナルトには物凄く長く感じたようだ。
 意識を刈り取る為に手加減無しで蹴り飛ばした。本来ならクナイで首を刎ねる行為だが、そんなことはもちろんしない。
 これで大切なヒナタを傷つけないで済むと思った。
 ―――しかし。
「・・・・・・つっ・・・・・・まだ・・・・・・私は・・・・・・戦える」
 確実に意識を刈り取ったはずなのに立ち上がった。口元からは血が流れ、頬には叩きつけられた衝撃で痣ができている。
 まさか・・・・・・いくら自分のスピードをよく見てきたとはいえ、咄嗟に衝撃を逃がしたとでもいうのか・・・・・?
 だが、そんな事をこのたった数日でできるようになるなんて・・・・・・彼女はきっと―――。
「・・・・・・影分身の術」
 ナルトが50人も現れ、ヒナタを取り囲む。
 今度は逃げさないように。
 ヒナタを痛めつけねばならないこの勝負を早く終わらせよう。


 日向ヒアシは長年胸に突き刺さっていた悩みと心配が拭えて、心が晴れ晴れとしていた。
 実の弟が里の為、日向一族の為に人身御供となって死亡した事件。
 それにより、弟の息子であるネジが誤解で宗家を恨んでいることは知っていた。何とかしたいと考えていた。
 圧倒的な才能を有しているネジがこの上なくボロ負けしたこの機会がちょうど良い時だと思っていた。
 面会を申し出ると、ネジはすっかり弱りきっていた。
 それは当然だろう。対戦相手の少女は3年しか修行してないと言っていた。その状態で明らかに手加減されていて、自分の勝利を宣言した途端にあっという間にやられたのだ。
 これ以上なくプライドと自信をズタズタにされてしまったのだろう。
 そんなネジに過去の真相を語った。
 弟のヒザシは宗家に強制されて死んだのではなく、自分から志願したのだと、人身御供になったのは事実だが、せめてヒザシの本当の想いを知っていてくれないかと、語った。
 きっとネジは解ってくれたはずだ。
 これからはネジより一層実力を付け、まっすぐに育ってくれることだろう。
 そして日向宗家の跡取りとしてヒナタと・・・・・・。
 ハナビは分家として宗家を強力補佐役として・・・・・・。
 そんな勝手な計画を練りながら会場に戻った時だった。
 ―――雰囲気がおかしい。
 ヒアシは火影たち上忍・特別上忍に目を走らせた後、対戦者を観て―――娘の姿に試合中か、と納得する。
 見た感じは大した傷は負っていない。それほど弱い対戦相手なのかと溜息を吐く。
 ―――だが。
 次の瞬間に娘が吹き飛び、ボロボロになった。
 娘しか見ていなかった為にヒアシにはただの蹴りを喰らって吹き飛んだようにしか見えなかったのだ。
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
 大きな溜息を吐く。
 どうして我が長女はここまで才能が無く弱いのだろうか。
 性格の事もあるだろうが、長女のヒナタは絶対に忍には向いていない。だから早々に見切りをつけて次女のハナビを鍛えているのだ。
 役に立たない長女は、ネジの婚約者として使ってやるつもりだ。
 それ以外に使い道がない。
 ヒアシは心底呆れていた。


「・・・・・・・・・・・・まだ、立ち上がるのか」
「驚きましたね・・・・・・彼の一撃を喰らって意識があるだなんて」
「無意識に手を抜いてしまっているのではないか?」
「ううん。ナルトの一撃は完璧だったよ。ただあの子が僅かに支点をずらしたのよ」
「さすがね九羅華。でも何で避けれたんだろ」
「ナルトは試験が始まるまでよく空けてたから・・・・・・ひょっとしたらあの子と訓練していて、それでスピードに見慣れていたのかも」
「なるほど。それが本当なら彼のスピードに僅かでも対応できたのは納得です。ですがそれでも痛みは半端じゃないはずですが」
 ヒナタの根性と実力に目を見張り、感心した表情を向けている縁の里の忍たち。
 少し前から訓練していたという言葉に驚くヒナタの班のメンバーたちと紅。
 そしてナルトのチャクラコントロールとその僅かでも見せた実力に、背筋がぞっとするヒアシを除いた全ての木の葉の忍たち。
 紫苑は平然とした表情の裏に隠された彼の苦しみを察して眉を顰めた。
 サクヤはヒナタとナルトの対戦を観てなんだか悲しくなり、ぎゅっと両手を握っていた。


「ヒナタ・・・・・・」
「ナルトくん・・・・・・」
 重い脳震盪が起こっているのだろう。ヒナタの足はガタガタと震え、フラフラと身体が揺れ動いている。
 ナルトは必死に彼女の言葉を思い出し、その裏を読み取ろうとした。
 彼女は何を願っている?
 何故ここで無理して立ち上がる必要がある?
 何を・・・・・・。
「・・・・・・・・・まだ、私は、負けてない」

『私は、幸せになりたい―――!』
『本当に、日向宗家にいて―――』

 俺はこの里からいなくなることで・・・・・・。

 ヒナタはチラリと火影たちの方を白眼で観ると、フラフラとしながら駆けぬける。
 日向流体術の突きを仕掛けるヒナタ。
 だがその動きには先ほどの精細さに欠ける。
 ナルトは左手で拳を弾くと、彼女の胸元に手を当て、寸頚を喰らわせた。
 吹き飛ぶヒナタの周りいた影分身のナルトたちは、宙に舞う彼女に向かって平均下忍程度に落とした速度で印を組み上げる。
「風遁・大突破」
「風遁・大突破」
「風遁・大突破」
「風遁・大突破」
「風遁・大突破」
「風遁・大突破」
 全方位からの風圧により、ヒナタは脳を殴られたような症状に陥り倒れた。
「がはっ・・・・・・ゲホ・・・・・・ゲホ・・・・・・」
 倒れた状態で血を吐くヒナタ。
 どうやら内臓にもダメージが及んだらしい。
 もうこれ以上は無理だ、と彼女の仲間たちの悲鳴が聴こえる。
 そう。もう終わりだ。
 だが・・・・・・。
「まだ・・・・・・です」
「・・・・・・・・・・・・」
 立ち上がった。
 血を吐いて立つのもままならないはずなのに。
 ナルトはすぐに彼女を病室に運ぶ為に。
 そして何よりも彼女の狙いに協力したいのだから。
 ナルトはワザとらしく大仰に溜息を吐く。
 いかにもバカにしたような態度だ。
「ったく・・・・・・女の子を殴るのは趣味じゃないんだ。もう終わらせて貰うよ」
 忍の世界に男女の事など関係ない。むしろそれは侮蔑の言葉となる。だからこそ。
「いくぜぇ・・・・・・」
 全ての影分身たちが瞬神の術で消えうせ、彼は次々とヒナタの懐へと飛び込み、蹴り上げ・当て身を喰らわせ、昏倒させた。
 全く容赦がなかった。
 倒れたヒナタに近づき、確認するハヤテ。
 これ以上は戦闘は無理だと判断し、宣言する。
「戦闘続行不可能と判断し、勝者・うずまきナルト!」
 おぉ~~~と歓声が上がり、その実力に拍手が上がった。
 ヒナタの担当上忍の紅が駆けつけてくるが、その前にナルトがヒナタを抱き起こした。
 そして紅に言う。
「じゃあ、俺が彼女を救護室に連れて行きま~す。こうなったのも俺の責任ですしね~」
 ナルトはヘラヘラと笑いながら消えた。
 紅はナルトの物言いと態度にムッとして後を追ったであった。
 彼の急変した態度に、シカマルやキバ、シノは首を傾げていた。
 もっとも、いのやサクラたちは憤慨していたが。


「ヒナタ・・・・・・ごめんな」
 救護室で手当てを受けたヒナタは安らかな寝息を立てて眠っていた。
 医療班が見た限りでは内臓にも深刻なダメージがないらしく、数日の療養で治るようだ。
 紅とナルトが付き添う中、彼はヒナタのダメージが一番深い内臓へ、掌仙術をかけ続けている。
 ナルトはよほど心配だったのか、ずっと心配そうに見詰めていた。
 そんな彼の態度が、さっきの腹が立つ物言いの態度とは全然違うから、紅は困惑した様子だ。
「あんた・・・・・・何を考えているの?」
「・・・・・・ずいぶんストレートな聴き方ですね、紅上忍」
「それが私なのよ」
「まあ、いいです。そうですね・・・・・・彼女がそれを望んでいたからです」
「ヒナタが・・・・・・?」
 紅は顎に手を当て考えるしぐさを見せた。
 そんな彼女にナルトは言葉を紡ぐ。
「ヒナタには宗家での居場所はありません。しかし、かといって彼女は宗家の長女。いうならば第一位継承権権利者です」
「・・・・・・でも、本当にあの子がそれを望んでいるの?」
 なるほど、と言った感じで頷く紅。
 どうやら合点がいったようだ。
「ええ・・・・・・俺が縁の里の事を話した時、彼女はとても羨ましがっていました。そしてこうも言ったんです。『本当に日向宗家にいる事が自分にとって幸せなんだろうか』って」
 ナルトはヒナタの額に手を当てて、サラサラの髪を撫でる。
 紅は彼の言いたいことがわかったのか、言葉を大幅に省いてボカしながら言った。
「私はヒナタの担当上忍だからそれを承諾することはできないわ」
「ええ・・・・・・そうでしょうね」
「でも」
 フッ、と優しい笑顔が浮かんだ。
 その優しい微笑みは、教え子だからとかではなく、本当に彼女の事を大切にしているのだなと感じた。
「一人の女として、あの子のそれを応援するわ」
「ハハハ・・・・・・ありがとうございます」
 ナルトは紅に嬉しそうに礼を言った。
 その笑顔に紅は、昔可愛がってもらったあの人の姿を被らせる。
 赤みがかった茶髪にイタズラっ子な笑顔を浮かべ、太陽のように暖かかった憧れの美しい女性。
 うずまきクシナの笑顔を。
 そしてあの人の忘れ形見が、目の前に確かに存在している。
 受け継がれている。
 なんて、なんて―――嬉しいことだろう。
「ふふ・・・・・・じゃ、ヒナタの事は頼んだわ」
「はい。解りました」
 紅の顔には、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。



 試合が次へと移行し、秋道チョウジと犬塚キバが激しい戦闘を繰り広げている中、日向ヒアシの内心は激しい竜巻が起こっていた。
「おのれ・・・・・・木の葉の名門・日向一族を愚弄しよって・・・・・・ヒナタもヒナタだ・・・・・・あのような無様な負け方した挙句、敵に情けを掛けられるとは」
 名門とは、歴史と威厳によって守られているようなものだ。
 それを、この試合で完全に泥を塗られた。
 いくら娘とはいえ、許せるものではない。
 これは予定を変更してヒナタの後釜にハナビを据えることにしよう、と考える。
 ―――そう。
 日向ヒナタの勘当という、容赦の無い選択を。



 自称ぽっちゃり系と実はとっても犬臭い男との対戦は実に激しい戦いになった。
 肉弾戦車という巨大化し回転しながら突撃するぽっちゃり系の秋道チョウジ。
 赤丸という相棒の犬と一緒の連携で獣人体術奥義である、回転しながら突っ込んでいくという牙通牙を放つ犬塚キバ。
 彼らの試合は回転に回転という、まったくもって相性の悪い同士の対戦となった為に、お互いが回転で目を回して体力も底尽きるという泥沼の試合で決着がついた。
 つまり、ふらふらで動けなくなって引き分けということだ。
 一見派手な技の応酬なので、光景だけは凄い試合だった。
 親友が体力切れで倒れた様子を見て苦笑いするシカマルといの。安堵する気持ちを隠しているようだが、それはバッチリ皆にもバレている。
ナルトとヒナタが戻ってこない中、白が突然動いた。
「さて、ちょっと僕は外へ行ってきます。息抜きしたいんで」
「僕も一緒に行こう」
 君麻呂が同行し、白と一緒に外に出て行った。
 自分勝手な連中だ、そう周りは思った。
 そうこうしていると瓦礫の撤去が終わり、次の対戦表が電光掲示板に表示される。


 それは、ある人物にとって最悪の対戦だった。


 その人物は、それを見た途端に顔を青褪め、動揺のあまり半泣きになったという。


 愛という文字が入った少年が、である。


 『第6試合 我愛羅VSテマリ』



あとがき
最近はずっとマジメ路線で来ていました。
しかし次回はギャグ路線でいきます。
ええ。
それはもう予想外の予想外。
そういった結果が・・・・・・・・・・・・( ̄ー ̄)ニヤリッ



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第19話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2008/01/02 18:14
             NARUTO


        『人柱力と妖魔の敵』


        第19話 ストーカーの末路




「ひいっ! 我愛羅と対戦だなんて最悪じゃん―――・・・・・・って、今の我愛羅は分からないか。ん~、どうするんだテマリ?」

「・・・・・・我愛羅とは戦いたくないに決まっている。それにあの計画を成功させるためにはあまり目立ちたくないんだが」

 テマリがむ~と唸って悩みだした。

 我愛羅の強さが昔から比例するように強くなっているなら自分は叶わないはずだし、本当に戦いたくない。

 我愛羅はカンクロウと違って私に似て可愛いからなぁ・・・・・・!

 妙な事を考えているテマリに、離れたところから妙な声が聞こえてきた。




「イヤだ」

「おいっ!」

「運命は残酷よね」

「アハハハハハハハ!!」

「無理だ」

 電工掲示板に表示された対戦表を見てしばらく固まっていた我愛羅が、ボソリと呟いた。もちろん速攻で突っ込みを入れるナルトと紫苑、爆笑中の九羅華。

 すると我愛羅がガタガタと震えだした。

「審判!! 俺は危険す―――モガモガ!!」

「ダーメ。俺だって逃げなかったんだから。逝ってこ~い!」

 一本背負いでぶん投げると、我愛羅はバウンドしながら地面を転がった。受身というか着地を取れないほど動揺しているらしい。

 我愛羅の対戦者であるテマリ、つまり我愛羅の実の姉は何だか戦いたくなさそうに降り立った。

 よろよろと立ち上がった我愛羅を確認したハヤテは、対戦するものと判断して宣言した。

「それでは、我愛羅対テマリの試合を始めます」

 試合開始の合図がされても目の前で夢遊病者のようにゆらゆらと揺れ動く我愛羅。

 テマリは心配そうだ。

「我愛羅・・・・・・だ、大丈夫か?」

「・・・・・・戦いたくない」

 ボソリと呟いた声にテマリはよく聞こえなかったらしく、首を傾げている。

 すると我愛羅は狂ったように叫びだした。

「・・・・・・戦いたくないんだよぉ! なぜだ!? 何故俺にもこんな試練が訪れる!? 俺はぁ! 姉さんの事を遠くから見ているだけで満足だったのにぃ!! 神は俺に恨みでもあるのかぁ!?」

 頭を抱えて叫びだした我愛羅とその内容に、会場はドン引きだ。

 事情を知らない木の葉諸君の視線が特に痛い。

 なんだか哀れむ視線も含まれているが・・・・・・主にテマリへ。

「我愛羅・・・・・・テマリ信者になったじゃん?」

 カンクロウの声は誰にも聞こえなかったが・・・・・・実に体を良く表した言葉である。

 そして、ついにはゴロゴロと地面に転がりだした我愛羅。

 愛する弟が奇行を見せ始めたので、試合中にも関わらず心配して駆け寄ろうとしたテマリは、いきなり足を止めるはめになった。

 それは我愛羅の砂が壷から飛び出し乱舞し始めたからである。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 錯乱状態の我愛羅さんの意識は既に砂の統制を失っている。

 すなわち。

 テマリへの攻撃開始だった。

「くっ―――!」

 背から大きな扇子を引き抜き、テマリの持ち味である風遁術で迎撃しようとした時だった。

 錯乱状態だった我愛羅の瞳が大きく見開かれたのだ。

「なにをしているううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」

 大量の砂がテマリに迫った瞬間、砂は大きく旋回し、なぜか我愛羅の元へ。

 そして何故か我愛羅へ着弾した。

「がはああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「は?」

 その呆気に取られた声は誰が洩らしたものだったのか。砂を戻そうとした我愛羅はなぜか自分の砂により吹っ飛ばされて壁に叩きつけられている。

「ぷっ!! あははははは!! もう、最高♪」

「なんで我愛羅の砂が自分を襲えるんだよ・・・・・・」

 ナルトのゲンナリした声にサクヤが反応した。

「あ、あの・・・・・・」

「・・・・・・どうした?」

「あの人の砂って・・・・・・自分の意思で動かしてるんじゃないんですか?」

「いや、コントロールしてるよ? してるはずなんだが・・・・・・」

 米神を押さえてう~んと唸り始めたナルトにサクヤといのの視線が集まる中、我愛羅はボロボロになりながら立ち上がった。

 無意識下においての全力の行動だったので、まったく手加減できなかったのだ。

「さ・・・・・・さすが姉さんだ・・・・・・俺をこんなにまで追い込んだ奴は里外の連中じゃ久しぶりだ」

 自爆じゃねぇか!

 誰もが心の中でそう突っ込んだが、誰も口に出せなかった。

 その後も我愛羅は砂で拘束しようとするが、砂がテマリを包み込もうとした瞬間に、我愛羅は拒否反応を示した。

 そして毎回の如く、

「だめだあああああああああああああああああ!」

 と、喚いては自分に戻し、そして勢いがありすぎる為に自爆しているのだった。

 もはやワザとやっているとしか思えない。

 我愛羅は致命的な傷がないようだが、既に服もボロボロだ。

「さあ姉さん。思いっきり攻撃をするんだ! 俺に攻撃が当たらない事は知ってるだろう?」

「我愛羅・・・・・・私を気遣うなんて、随分と優しくなったんだな・・・・・・姉さんは嬉しいよ」

 感激の涙をホロリと流しているテマリ。

(((((どこをどう聞いたらそんなにポジティブにとれるんだ(のよ)!?)))))

 なんだかテマリへも痛い視線が含まれ始めた。

「じゃあ、行くよ?」

「きてくれ姉さん! 俺は姉さんの愛情を全部受け止めるよ!」

「やっ!」

 クナイに起爆札を付けた攻撃。

 とりあえず様子見といったところか。

 この程度の攻撃は我愛羅の自動防御の砂で防がれるはず、そうテマリは思った。

 だがその判断は甘かったといわざるを得ないだろう。

 自動で我愛羅の前に砂の盾が形成されつつある中、何かが詰まったような顔で我愛羅が叫んだのだ。

「守鶴ぅ!! 姉さんの愛のムチを防ぐというのかキサマぁ!?」

 ・・・・・・・・・・・・はい?

 あのバカは今なんと言いました?

 とりあえず、我愛羅が喚きながらも関係なく迫り来る起爆札付き飛びクナイ。

 自動で守りを固めるはずの砂が、『何故か』いきなり停止する。

「守鶴ぅ! 母さん! そこをどくんだ!!」

 ボロボロと崩れ始めた砂の盾。

 まさか本当に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 だが砂の盾を回収するのは少し遅かったらしく、硬度を失った砂の盾に埋まる形でクナイは突き刺さり、見事に―――。

 目の前で爆発。

「がはぁあああああああああああああああああああああああああ!!」

 いい感じに焼き上がった我愛羅は地面にドサっと落ち、なんだかヤバイ空気が会場を包んだ。

 ミディアム・・・・・・いや、レアかな。

 だがかなりの至近距離で喰らったのだ。下手したら死んでいるかもしれない。

「我、我愛羅!?」

 テマリはまさかこんな事態になるとは思ってもいなかったらしく、泣きそうな顔で我愛羅に駆け寄ってくる。

 目の前で死人が出たことで、思わず唾を飲み込む木の葉の忍者たち。

 だが。

 仰向けに倒れている我愛羅の腕がゆっくりと天へと持ち上がったではないか。

 ガクガクと震える腕は頼りないが、手が何かを示そうと、ゆっくりと指が動いている。

 そしてそれが形成された時、我愛羅はポツリと呟いた。

「・・・・・・姉さんの愛情は・・・・・・最高だ」

 仲間たちがいる席へと親指をグッと突き出し、サムズアップしてみせる変態。

 それが最後の言葉となった。






「バ・・・・・・バカだ」

「う、う~ん・・・・・・でも人それぞれの愛情の形ってあるから」

「あははははははははははははは!! ひ~~~~~~~~~!! お腹が痛い~~~!! 苦しいよ~~~~!!」

 担架で運ばれていく仲間と心配そうに連れ添う姉を見つめながら、ナルトはボソリと呟いた。

 紫苑は必死にフォローしようとしているようだが、その表情は引き攣っている。九羅華は彼女の笑いのツボに入ったのか地面を転がりながら爆笑中だ。

 しばらくこの状態が続くから放置しておこう。

 それにしても、我愛羅だけではなくテマリもブラコンだったか。さすが姉弟。

 一方で我愛羅とテマリの試合が一方的な自爆で終わった事で、何ともいえない雰囲気に包まれている木の葉陣営。

 シカマルがナルトへ滝のように汗を流しながら聴いて来た。

「お、おい、ナルト。お前の仲間・・・・・・大丈夫か?」

 その『大丈夫』には、きっといろんな意味が詰まってるんだろうなぁ。

「ま、まあ、あいつの身体は大丈夫だ。我愛羅の身体には砂の鎧もあるし、起爆札も直撃じゃなかったしな」

「そ、そうか・・・・・・」

 引き攣った頬を見ると、未だ納得はしてなさそうだ。

 いのが身体を震わせているところから、我愛羅の言葉に寒気でもしたのだろうか。

「今の試合はアレだったが・・・・・・本来なら我愛羅は強いんだぞ?」

「そ、そうなのか? 全くそうは思えないんだが・・・・・・」

「い、いまの試合は忘れろ。なんていうか・・・・・・我愛羅にとって最悪の相手だっただけだ」

「俺にとって母ちゃんのようなものか・・・・・・めんどくせー」

「ちょ、ちょっと違うような・・・・・・って何だ、その例えは?」

 ボリボリと頭をかきながらシカマルはだるそうに言う。その表現はよく解らないが、きっとそれで合っているのだろう。

 なんだかコントのような試合を繰り広げた会場はすっかり妙な雰囲気に包まれているが、次の試合はちゃんと進められる。

 次の対戦者である、油目シノと音の忍であるザク・アブミの試合が行われようとしていた。





「さて、急ぎましょう君麻呂」

 外へ散歩にでかけた白と君麻呂。彼らは外へ出るとある場所へ向かっていた。

「どこへ行くんだ」

「それはお楽しみです」

 白が笑いながら言うので、これ以上は絶対に聞けないと判断して諦める君麻呂。経験上、この顔の白には勝てた試しがないからだ。

 しばらく走っていると、ある場所で白が急停止する。

 そこは『木の葉病院』。

 中へ入っていき、受付も何も済まさないで先へズンズン進んでいく。

 すると、ある病室の目の前に仮面付きの忍が1人倒れていた。これは暗部だ。しかも白いフードだから暗部部隊長クラス。

 白と君麻呂はお互いを見遣って慌てて扉を開けると、そこには君麻呂によってぼろぼろにされて、泥のように眠るうちはサスケと写輪眼のカカシの姿が。

 そして2人の前には見覚えのある、特に白にとって、とても因縁がある1人の忍がいた。

「大蛇丸!!」

 大蛇丸は突然の乱入者に僅かに舌打ちすると、全員から距離を置くように窓側へと跳躍した。

 カカシが膝を付いているところから、すでに戦闘は始まっていたか、あるいは殺気に呑まれてしまったのだろう。

「あら、久しぶりね・・・・・・縁の里の白君」

「誰かと思えばおまえか、変態」

「ナルト君に惨敗した癖に、よくそこまで余裕ぶっていられるものです」

 ニタニタと笑みを浮かべる大蛇丸に君麻呂と白は容赦なく投げかける。大蛇丸がこの場にいることで、君麻呂はようやく白が試験を辞退して散歩に出かけた理由が解った。

 そんな彼らの毒舌ともいうべき言葉にイラついたのか、大蛇丸は青筋を浮かべながら2人に問う。

「何しにきたのかしら?」

「貴方の目的を潰しにきたに決まっているでしょう?」

「鈍い奴だ」

「・・・・・・・・・・・・」

 彼らは全く容赦がなかった。

 カカシは突然の乱入者によって哀れになってきた大蛇丸へ、気の毒そうな顔を向けている。

「とにかく、貴方を殺させてもらいます」

「お前を殺せば、全てが上手くいく」

 2人は抑えていた殺気を開放して、油断なく大蛇丸へ近づいていく。

「あら・・・・・・貴方たちにできるのかしら?」

 大蛇丸の表情は余裕そうだ。

 カカシは彼らの上忍を遥かに越える圧倒的な殺気に思わず息を呑んだ。

「できないとでも思っているのですか?」

 白は懐からクナイを取り出すと、大蛇丸へ告げた。

「僕の大切な人であるイサリビの人生をめちゃくちゃにした罪、もはや許せるものではありません。ここで殺します」

「面白いじゃないの・・・・・・できるものならやってごらんなさい」

 白の表情が消え、彼らの殺し合いが―――始まった。






あとがき

イサリビ。つまり漁火はアニメ第170話辺りに出てくるアニメオリジナルキャラです。
誰だか解らない方は、DVDでもレンタルして確認して下さい(笑)



[716] 『人柱力と妖魔の敵』 第20話
Name: アリムー◆8bdab598 ID:aa3c0cc0
Date: 2008/01/25 15:38
             NARUTO


        『人柱力と妖魔の敵』


          第19話  白の戦い




 カカシの前では、自分の現時点の実力では敵わないであろう忍び同士が次元を超えた戦いを演じていた。
 辛うじて己の写輪眼で見える速度で斬り結ぶ大蛇丸と縁の里の忍。
 だが、縁の里の忍がこれほどの実力を秘めているとは思わなかった。
 彼等は下忍。
 それなのに、あの伝説の三人の一人と、2人がかりとはいえ互角に戦っているではないか。
 ひとりの少年はサスケが戦った子。血継限界の少年ということは知っていたが、あの時の戦いぶりと比べると雲泥の差だ。
 今、たしかにこの少年は大蛇丸を殺す気で戦っている。
 そしてもうひとりの少年。
 彼も特殊な血継限界の一族らしい。
 片手で印を結び、氷の攻撃を繰り出していた。
 驚くべき才能。
 例えば、ここにアスマがいた場合、自分はアスマと共闘したとして、ここまで善戦できただろうか? 
 ・・・・・・・・・・・・否。
 大蛇丸の実力はとにかく計り知れない。不気味な忍術と禁術を使い、実戦経験も違いすぎる。
 自分だって通り名がつく程の忍だ。実力だってあると自負している。そして尊敬し敬愛する4代目の教え子だ。
 だが、今の自分は―――――――。



「ふふふ・・・・・・やっぱりいいわ、君の能力。そしてそこの君も。貴方たちが欲しいわぁ」
「断る」
「お断りします。僕は変態は嫌いです」
 霧瞬神の術を使ってクナイで大蛇丸の首を狙う。
 一閃振るった剣閃は、大蛇丸の服を微かに切り裂くだけ。
「このっ!!」
「―――っ!!」
 大蛇丸は口から取り出した草薙の剣で白のクナイを防いだ。
 ぎしぎしと重なり合う刃で押し合いをしていると、
「椿の舞い!」
 高速の連続突きが大蛇丸を襲うが、大蛇丸は後方へ飛んで避けた。
「逃がしません!!」
 白は空いている片手で高速の印を結ぶ。
「千殺水翔!!」
 大蛇丸の全方位に水を細く殺傷力を高めた針が無数に出現し、大蛇丸に襲い掛かる。
「しまっ―――!!」
 後方に体が流れていた事で大蛇丸は体勢を立て直す事ができない・・・・・・はずだった。
 大蛇丸は虚空瞬神の術を発動させ、無数の針の間を掻い潜るという芸当を見せた。
 白は防御するか、もしくは叩き落さない限り避わせないはずの攻撃を、避けるということで回避してみせた大蛇丸の実力に冷や汗をかいた。
「ああ、そうそう。貴方たちが暁を滅ぼしたの? 感謝してるわ」
 大蛇丸は少し離れた場所に着地すると、白たちに言葉をかけた。
 その言葉に、ニヤリと口元を緩ませる君麻呂。
「僕たちであって、僕達じゃない」
「・・・・・・? どういうことなのかしら?」
「暁にいたメンバー、指導者のうちはマダラを含め、不死身コンビ、雑食男、リーダーらしき男と相棒の女、人形使いとは確かに戦いましたよ。彼等が僕等の中の獲物を狙ってきましたから」
「・・・・・・」
 うちはマダラという名前に驚愕の表情を浮かべる大蛇丸とカカシ。
「戦っている最中にね、ある事が起きて、彼等はその時に死にました」
「まさか、貴方たちごときが、彼等に勝ったとでもいうつもりかしら? 私にすら勝てないのに」
「さて、どうでしょう? まあ1つ教えられるとすれば、九尾を過去に操ったという神気取りのマダラもイタチも、尾獣を手に入れて世界征服しようとしたS級犯罪者どもも、どれだけ強くなろうが異能を手に入れようが、人間ごときではアレに比べるとゴミ同然だということです。僕達も、そして貴方も」
「・・・・・・言っている意味がわからないわ」
「それは自分で調べてください」
 ニッコリと微笑む白。
 彼の微笑みに何故か君麻呂が青くなったが、何か思い出したのだろうか?
 大蛇丸は舌打ちして、白たちを睨みつけた。
 組織が滅んだと聞いた時は耳を疑った。何を馬鹿なと一笑に伏せた。
 だがそれが事実だと解り、“どうやって”滅んだのかが気になった。それで探りを入れてみたのだが・・・・・・。
「貴方も、どうせ死ぬんですよ。人間はどこまでいこうが所詮は人間。尾獣は妖魔。それ以上の範疇を超える事はないんですから」
「あら、それじゃあ、貴方たち縁の里の忍達ははどうなのかしら? 人柱力ばかりのくせに」
 大蛇丸は仕返しのつもりで、嘲笑うように侮蔑の目を向けてきた。
 カカシは、人柱力という言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべた。
(ちょっと待て! ナルト以外にも人柱力がいるのか!? というか、そればかり? という事は、縁の里というのはまさか―――)
「僕等はまた事情が変わってくるんですよ。貴方と違ってね」
「白、おしゃべりは終わりだ。『全力』でやるぞ」
「わかりました。どこまで?」
「補助状態まで」
 大蛇丸は指を齧るとバッと身構える。
 白と君麻呂は両腕に自分の血を塗りたくり、地面に口寄せの文様を描く。
 そして、それは現れた。

「口寄せの術! 来てください、白獅子!!」
「口寄せの術! こい、黒帝!!」

 もくもくと巻き上がる白煙。
 その煙の中を見つめる大蛇丸。
 煙が消えつつある中、ソレは姿を現した。
「―――っ!!」
「な―――っ!?」
 大蛇丸とカカシは思わず絶句した。
白と呼ばれていた少年の傍には、白いライオンがいて、その鮮やかな毛並みは実に美しい。その獅子の尾は五つ。
 君麻呂という少年の傍には、黒い毛並みの馬がいた。しかしその肉付きががっしりしていて、体躯は高さ3メートルは越える程で圧倒的な威圧感。しかしその馬の金眼は怒りに溢れ、迸るチャクラは台風のように暴れ狂っていて、その尾獣の凶暴性が伺える。そして尾が七本あり、気味悪いくらいに揺れている。
 彼等はその口寄せしたモノに乗っていた。
(あれは・・・・・・まさか尾獣!? そんなバカな! 尾獣を口寄せできるなんて! しかもアレは本体なんかじゃないはずだ。彼等はそんな事までできるのか!?)
 カカシは死んだように眠りこけるサスケの前に盾になるように出て、彼を隠すように抱える。
「・・・・・・これはマズイわね」
「逃がしません!!」
「逃がすか!」
 ドン、と黒帝の前足が地面を叩くと、地割れが発生し、病院が大きく揺らぐ。
 あまりの振動に大蛇丸の体勢が揺らいだ瞬間、白獅子に乗った白が背後へいつの間にか回り込んでいて、その鋭い爪で大蛇丸ごと弾き飛ばした。
 胴体から腹部にかけて切り裂かれた大蛇丸は壁に叩きつけらて、瓦礫の中で手をついて蹲っていた。
「これで、終わりです!」
 白獅子の口に牙のような尖った高圧縮のチャクラ針が形成される。

「雷遁・招雷弾!!」

「くっ―――三重羅生門!」

 大蛇丸は防御の口寄せ、羅生門を展開した。
 それにより病院の天井は崩壊。唯一助かったのは、ここが一番最上階の端に位置していたことだろうか。
 だが、強固な羅生門は白の招雷弾によって吹き飛ばされた。
 崩壊する隔離病棟は完全に崩壊。
 カカシが舞い上がる砂塵の中で薄目を開けて見ると、大蛇丸がいた場所は何もなくなっていて、彼が死んだことすら判別できない。
 白と君麻呂が口寄せした尾獣を消すと、そこへ歩み寄った。
「逃げられましたか」
「ああ。だが招雷弾によりあの変態の四肢はしばらく麻痺して動けないはずだ。ぎりぎりで逃げれたとはいえ、多少なりとも当たった訳だしな」
「そうですね・・・・・・やはり彼と戦う場合はアレが必要ですね」
「ああ。彼女がいれば、あれを貼る事ができる。そうすれば変態は逃げることはできない。今度こそケリをつけよう」
 彼女を戦わせるのは辛いけど、倒したいと一番願っているのはイサリビを除いても他はいない。
 白は小さく溜息を吐く。
 やはりツメが甘い。
 あの変態が逃走用にいろいろと策を持っている事は解りきっていた。だったら無駄話しなどせずに殺すべきだったのだ。
 白はギュッと手を握り締めると、大きく深呼吸して気持ちを切り替えた。
「カカシさん、大丈夫ですか?」
「ああ・・・・・・こっちは大丈夫だ。だが君達はいったい・・・・・・?」
「全てお話しますよ、この3次試験予選が終わったら。火影も混ぜて」
「しばらくは変態・・・・・・大蛇丸はこないだろう。だが念のために暗部を小隊以上で護衛させることをお勧めしておくよ」
「ああ。狙いはサスケだからな」
 カカシは神妙に頷き、緊迫された状況が緩んだ事で大きな溜息と深呼吸をした。
 すると、勢いよくペタリと座り込む白と君麻呂。
「あ~、それにしても疲れました」
「まったくだ。血継限界の能力に口寄せは疲れる」
「でも、あの最狂の黒帝と、だいぶ感応してきたようですね」
「ああ。最初の頃は蹴られていたからな。それに比べると進歩したと自分でも思うよ」
「馬に蹴られるってやつですね」
「・・・・・・意味が違うぞ」
 どこまでもマイペースを崩さない彼等を、何て図太いんだとカカシは思った。
 遠くから、大勢の足音が聞こえてくる。
 とりあえず増援が来たようだから、一安心といこうじゃないか。



 白と君麻呂が木の葉病院に向かっている頃、油目シノとザク・アブミの試合は、なかなか血生臭い結果に終わった。
 油目一族は蟲使いの一族。
 契約して身体の中に飼っている無数の蟲を上手く使って、ザクの腕から発せられる風遁系の射出口を詰め、自爆を誘った。
「なかなかやるなぁ、あいつ。シノっていったっけ。ヒナタの班だよな?」
「ああ、そうだ。シノは忍としての才能がすげえあるぞ」
 ナルトがほほ~ぅ、と感嘆した声を上げると、シカマルがどこか嬉しそうに自慢してきた。
 そのシカマルの言葉にチョウジもうんうんと頷いている。
「名家・油目一族は将来が安泰だ。あいつは凄い忍びになるぞ」
「? なんだ、お前やけに詳しいな」
「そりゃあ当たり前だって」
「?」
 ナルトの言葉にシカマル達やイノもサクラも首を傾げるばかりだ。
 シノは観戦席に戻ってきても様子は変わらず、ただ淡々としている。
 だがナルトの褒め言葉に微かに口元が緩んでいた。その事には誰も気付く事はない。
 そうこうしている時、次の対戦カードが表示された。

【九羅華 VS テンテン】

「あ、やっと私だ」
「おお、ホントだ」
「がんばってね、九羅華」
 桜の模様が描かれた着物を着て対戦場に降り立ったのは九羅華。
「がんばってくださいね、テンテン!」
「がんばるのだぞ! テンテン!」
 同じ班のメンバーから激励を受けて降り立ったのは、テンテンと呼ばれるお団子頭の可愛らしい少女。
 懐や背には大きな巻物をいくつも担いでいる。
 その格好を見て、九羅華は彼女が暗器使いか口寄せ主体のスタイルだと把握する。
「ナルト!」
「ん?」
「私の獲物くれる?」
「おお、アレを使うのか。いいぜ!」
「ちょっと待って下さい審判さん」
 ナルトは鞄から巻物を取り出すと、その場で広げて印を組む。
 それは道具を口寄せで取り出す印。巻物。
 ボン、と音を立ててあるものが出現する。何が出てくるのかと観戦席にいた木の葉の忍びたちは一様に覗き込んできたが、それを見て目を丸くする。
 それを見て、サクヤが口にした。
「刀?」
「そ。これを使うのが九羅華の戦闘スタイル」
 ナルトがポイっと投げると、九羅華はそれを掴み、自然体で構える。
「お待たせしました」
「・・・・・・ごほごほ・・・・・・では、九羅華対テンテンの試合を始めます!」
 試合の合図が告げられるとテンテンは巻物を腕に巻きつけて構える。いつでも武器を取り出せるようにしたスタイルだ。
 一方で九羅華は片手に鞘入りの刀を携えたまま、ただ突っ立っている。
「・・・・・・構えないの?」
 テンテンは眉を顰めた。
 これまでの戦闘から、縁の里の忍びは構えて名を宣言する事が、戦うに値する敵の場合だと。
 ならば、構えすらされないのは自分など、敵ではないからか。
 だがそれはテンテンの誤解だった。
「あ、ごめん。これが私の構えなの」
「・・・・・・それが構え?」
 呆気に取られるテンテン。
 そんなやる気なさそうな態度のどこが『構え』なのだろうか。
 そんなことを思ったテンテンだったが、彼女の言葉でハッとなった。
「では・・・・・・縁の里所属・六聖剣がひとり、瞬神の九羅華・・・・・・参ります」
 テンテンはその言葉と射殺すような瞳に戦慄し、叫び声を上げて我武者羅に攻撃した。



「そんな、バカな・・・・・・」
 呻き声はガイのもの。だがそれは仕方が無いかもしれない。
 この場にいる木の葉の忍びたちは誰もが唖然としていた。
 眼下に広がるのはおびただしい数の忍具。
 全ての種類の手裏剣、大剣、大鎌、槍等。
 ありえない武器の数に皆も驚いていて、それが襲った少女の身に訪れる大怪我という未来を全員が予想した。
 だがどうだ?
 命中すると思った瞬間、彼女は刀を抜刀し、『全て』を叩き落したではないか。
 全方位を取り囲んでの攻撃も、全て一瞬で叩き落され、もしくは破壊された。
 刀を抜刀したというのは僅かに見えていたが、それ以降は全く見えないのだ。
 訳が解らない恐怖に襲われたテンテンは、ただひたすら武器を投げ続けた。
 それだけ怖かったのだ。
 そうこうしているうちに体力が尽き、口寄せするだけのチャクラも尽きた。
「まあ、相性が悪かったってだけだから、そこまで落ち込まないで、ね?」
 テンテンの落ち込みっぷり哀れになってきたのか、九羅華は冷や汗をかきながら言う。
「う・・・・・・」
 だがその言葉は最悪に等しかった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
「ええええええ!? ちょ、ちょっと! 泣くのは勘弁して欲しいんだけど!」
 テンテン、大泣き。
 一同、唖然。
 ナルトは、目の前で広がる光景に苦笑し、審判が戦闘続行不可能で九羅華の勝ち! と宣言しているのを聞きながら言う。
「まあ、武器の取り出し方がまだ甘いとか、そういった事は目を瞑ったとして、テンテンはなかなか良かったよ」
「そうね。なんていうか、相手が悪かったって感じ。あの子も幻術とか雷遁系を使えたらまだまともに戦えただろうけど・・・・・・」
 そう。
 彼女はとにかく『速い』
 おそらく、彼女が何をしたのか、テンテンには見えなかったはずだ。
 九羅華は全く忍術が使えない。故に刀による戦闘と速度をひたすら鍛え上げてきた。
 そして彼女の縁の里の役目は奇襲・暗殺に特化している。
 この戦いは、殺せないというハンデを背負った上でテンテンは負けたのだ。
 ある意味相性が悪かったといえるし、もしくは逆に良かったともいえる。
「これで転身したらもっと早いんだから、卑怯だよな」
「そうだね・・・・・・鬼ごっこで九羅華が鬼になったら5分もかかんないもん。あれは卑怯だよ」
 燃えるような赤い髪をひとつに束ねた彼女を見て、ほんとに忍者というより武士だよなぁ、と思ってしまうナルトと紫苑であった。



 次の対戦が掲示板に表示された。
『第8試合  ロック・リー VS ドス・キヌタ』






あとがき
お久しぶりです。まだ生きてますよ~(≧∇≦)b
久しぶりの投稿です。もちろんナルトも続けていきますよ~!
・・・・・・スランプ脱出できません(泣)
しかも短いし。
というか、早く試験終わらせたい・・・・・・でも、次回は燃える男・ロックリー!
なんとかスランプを脱出して面白く書きたいです。


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