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[672] NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/10/28 03:42
夜の闇が支配する草原で、対峙する二つの影があった。

一人は黒の忍装束を身に纏う老人。

もう一人はクナイを逆手に持ち、身体のいたるところから血を流す4、5歳程の少年。

老人は瞳から零れる涙を拭うこともせず、まっすぐ少年を見据えている。

「ナルト・・・・・・」

苦渋に満ちた表情と声で老人は少年の名を紡ぐ。

「・・・・・・すまぬ。 ナルト・・・すまぬ」

「・・・・・・」






老人の謝罪の言葉など、すでに少年の耳には入っていなかった。

過去、笑顔で近づき毒入り饅頭を渡してきた者がいた。

笑顔で近づいてきて、突然クナイで襲い掛かってきた者もいた。

老人がそのうちの一人になっただけ。

少年にとって重要なのは、これまでで最も強いこの暗殺者から如何にして逃げ切るかであった。












このような状況でも不思議と『憎しみ』は沸いてこなかった。

否、『憎しみ』は自分にとっての何か――人、物、幸せ――を奪われて沸き起こる感情だ。

だが、自分は生まれてこのかた、他者から負の感情以外をよせられたことはない。

目の前の老人とて、憎まれることはなかったが、常にその眼に哀れみと悔恨が映っていた。

他者に疎まれ、常に命を狙われる。

何故と問う暇もない。

これが自分にとっての『あたりまえ』であった。

彼らの負の感情を知ってはいるが、理解はできなかった。

だから、自分は『憎しみ』を理解できない。その感情は欠落していた。

むしろ己の腹に存在するものを考えればこれまで生きていたことのほうが不思議なのだ。

老人の判断は里の長として間違ってはいない。

そうとすら考えていた。






だからといって自分は死ぬべきだという思いなど起きるはずはない。

自分には自分の――自分だけだが――立場がある。

老人にも里長として、火影としての立場がある。

ただそれだけのこと。互いが互いの立場の為に戦う。それだけのことだった。

少なくとも自分はそう割り切っていた。












二人の間を冷たい風が吹き抜ける。

涙に濡れる老人の目が大きく見開かれ、手は高速で印を結んでいく。




『火遁 火竜炎弾』




老人の口から圧倒的な熱量をもった炎が吐き出され、それらが竜を模して少年に襲い掛かった。

大口を開けて向かって来る火竜が少年にはゆっくりに見える。

多量の出血で動かぬ身体に、それでも少年は死にたくないと強く思っていた。

その時、少年は自分の中で何かが大きく蠢くのを感じた。

「おおぉぉぉぉ!」

自分の全身から溢れ出ようとする強大な力を無我夢中で、縋る思いで解き放った。

その瞬間、少年の全身から朱いチャクラがあふれ出し、火竜とぶつかり大爆発をおこす

突然の事に老人も爆発の余波に巻き込まれた。












爆発から数分後、焼け野原となった草原の地面から老人が出てくる。

咄嗟に土中に逃れ、身を守っていた。

肩で息をしながら、先程のことを考えていた。

少年から溢れ出したチャクラは四年前、彼が生まれた日に起きた悲劇の元凶のチャクラ。

老人は注意深く辺りの気配を探った。

だが、少年の気配も先ほどのチャクラも一切感じられない。

熱を持った身体に冷たい夜風が吹き付けるだけだった。

先ほどの戦闘など最初から無かったかのような静けさだった。

ゆっくりと身を起こし、老人はその場から離れる。












「・・・・・・ナルト・・・四代目よ・・・すまぬ・・・・・・」

老人の慟哭は草原を吹き抜ける風に消えた。



[672] Re:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/10/28 04:01
「戻ったか、猿飛・・・・・・」

老人を迎えたのは、共に戦乱を駆け抜け三代目火影として里の頂点に立つ彼を支えるご意見番の二人だった。

「・・・・・・」

やつれきった顔を二人に向ける。

付き合いの長い二人はその心中など、彼が今回の戦闘に赴く前から当然のごとく解っていた。

声をかけるべきではないことは重々承知していたが、それでも聞かねばならなかった。




「あの子は?」

火影は静かに首を横に振った。

「判らぬ・・・・・・」

「判らぬとはどういうことだ? 逃がしたのか?」

逃がしたくなる理由は解かる。が、それは許されないことだ。

「判らぬ。ワシの火竜炎弾を九尾のチャクラを引き出し、防いだところまでは確認している。

 防いだ瞬間大爆発が起こり、ワシは土中へ逃れた。

 数分後、土から出た時には、あの子の気配も九尾のチャクラも消えていた。

 遺体も無い。爆発の中心にあの子はいた。

 あの爆発で助かるとは思えん。が、判断できぬ・・・・・・」




九尾のチャクラと聞いて、二人は顔を見合わせた。

今回、三代目が少年を討たねばならなくなったのは、一つの事件があった。












当時、少年は火影邸の離れに軟禁状態ながらも時々襲ってくる暗殺者から己の環境を理解していた。

暗殺者に存在を悟らせないため、気配を消すのではなく、気配を自然に同化させる術を身に付けた。

気配を消して近づいてくる者を探知するため五感を鍛え、気配ではなくチャクラを探知する術も身に付けた。

チャクラの探知を覚えたころ、己のチャクラとは別のチャクラを己から感じるようになった。

そして暗殺者達が自分に呟く『化け狐』という言葉から己に宿る妖の存在を認識した。

字を覚えてからは術書、医学書、化学書、兵法を読み漁っていた。

歴史書から九尾の存在を知ったのもこのころだ。

術書を読み、チャクラコントロールを覚えるために部屋の壁や、庭の樹を利用し修行していた。

九尾の存在により、チャクラを上手く練り上げられない事を感じながらも身体に覚えさせる為に何度も壁や樹に挑んだ。

身体を幾度と無く地面に打ちつけながらも、繰り返した。

相手から完全に存在を隠すためにチャクラを0から限界まで自在にコントロールできる必要があった。












少年が己のチャクラを完全にコントロールできるようになったころだった。

暗殺者達が少年を殺すどころか、存在も掴めない状況だと知り、

里の名家、うちは、日向、奈良、秋道、山中、犬塚、油目の先代達が各々の子飼の忍たちに命じ、

現当主達には内密に少年の暗殺に動いた。






少年の戦い方はシンプルなものだ。

自分の存在を自然に同化させ、相手の背後から首を切るサイレントキリング。

しかも、欠落した感情は殺気や怒気を放つこともなく、敵は認識した瞬間首を切られ絶命する。






写輪眼を持っていても一旦姿を隠し、その視界から姿を消せば背後を取れる、うちは。

特別な探知能力の無い奈良、秋道、山中は何とかなった。

だが、今回の暗殺者達の中には360°の視界を持つ日向、嗅覚に秀でた犬塚、虫で索敵を行う油目がいた。

自然と同化させるといっても本当に同化できるのではなく、忍にとって最も重要な第六感から己を隠し、

あたかも同化しているように錯覚させる戦いであった為、第六感に頼らない戦い方をする彼らの連携に

悉く己は見付かり傷を負った。

少年が遂に追い詰められ、彼自身も出血で意識を手放した瞬間それは起こった。

少年の身体から醜悪なチャクラが噴出し、その身体を覆った。

そのチャクラは狐を象り、縦に割れた少年の瞳も相まって九尾を連想させた。

勝負は一瞬。そこに残ったのは数秒前までは人であった物。

そして九尾のチャクラで傷が塞がり、意識を失った少年だけだった。












少年に関し緘口令を敷いた火影も今回のことで名家の先代達に厳罰を科そうとしたが、事を大事にできなかった。

少年が九尾のチャクラを引き出したことは、九尾が少年に力を貸し与えたものだと、

九尾の生死が少年の生死に関わることを先代達が知ってしまった。

彼らがこの事を公表すれば、それまで少年の死が九尾の復活に繋がるのではと考え、行動を起こさなかった者達が

一斉に少年を始末すべきと動き出すためだ。

火影の悩みに感づいた先代達は、自分達が完全に隠居するかわりに少年の抹殺を要求してきたのだ。

要求を断り、少年の生を選べば秘密は公表され下手すれば、里の分裂になりかねない。

ただでさえ、四代目の死や里の崩壊寸前から復興してきたばかりの状況で何としても避けねばならない事態であった。

先代達は、少年暗殺のことは口にせず、ただ里の為に九尾の器の抹殺を口にし続けた。






火影は少年の抹殺を決めざるをえなかった・・・・・・












「どうする? 生死が判らぬ以上、各国へ指名手配をかけるか?」

その問いに火影は再度、静かに首を横に振った。

「もう、いいじゃろう・・・・・・生死不明と伝えれば、先代等は報復を恐れて里に秘密を公表しかねん。

 そうなれば里全体が動かねばならん。このまま、死んだことにしておいてくれ。頼む・・・・・・」

三代目の言葉にご意見番達も視線を落とす。

ご意見番として、里の為に非情になる心と、

若くして散った里の英雄、四代目火影と少年の関係、四代目の真の願いを知る者としての心が

彼らに決断させずにいた。










沈痛な空気が支配する火影執務室の戸を叩く者がいた。

三人は一瞬で表情を変え、応対する。

「入れ」

「失礼します」

入ってきたのは火影が雇っている家政婦の一人だった。

「ナルお嬢様が、ようやく寝付きましたので、今日はこれで」

そう言って頭を下げる。

「ナルが、どうかしたのか?」

「それが、今夜はどうも眠れないご様子で。突然涙を流したり、物語を読んで、つい先ほどお休みになられたところです」

その事を聞き、再び視線を落とす三人。

「そうか、ご苦労だったな。今日はもうよい。明日、また頼む」

何とかその言葉だけを搾り出し退室させる。

部屋は再び沈痛な空気が流れた。






「ナルの様子を見てくる」

三代目は立ち上がり、部屋を後にする。

ご意見番達も後に続いた。












部屋の主を起こさぬよう静かに入ると、ベッドに眠っているのは金の髪の少女。

その顔を覗き込むと、涙の流れた跡があった。

三代目は、いつものようにその頭を撫でようとし、ふと手を止めた。

少女の頭に触れようとしている己の手は、先程少女にとって唯一の肉親であり、双子の兄を討った手だ。

もう少女に触れてはいけない手。

だが触れなければ、寂しがりやの少女はそれに気付き、傷つくだろう。

明日からも少女に悟られぬよう、いつも通りに接しなければならない。だが、今は・・・・・・

「ナルト・・・ナル・・・四代目よ・・・・・・すまぬ・・・すまぬ」

三代目の慟哭に反応したかのように、少女の目から再び涙が零れた。








































4年前、木の葉隠れの里を襲った金毛白面九尾の妖狐を封印した英雄四代目火影。

里人で、彼の遺児が女の子の他に双子の兄がいることを知る者は少ない。

また、彼らが疎み続けた九尾の器たる男の子がその男の子であることを知る者も・・・・・・














あとがき


NARUTOの世界に本物の忍者の考え方をするナルトをだしてみたい。
と思って、創ってみました。その際、ある種完成された
忍ですから、あまりナルトの成長は望めないかも・・・・・・
そう思ってナルを登場させてみました。
連載続くよう、頑張ってみます。



[672] Re[2]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/10/29 18:58
八年後。鉄(くろがね)の里

木漏れ日が差し込む森の中をゆっくりとした足取りで進む者がいた。

漆黒の長いストレートの髪。

女性物の着物。

十人中十人が美人と答える美貌。

森の雰囲気と相まって、存在そのものが幻想的だった。

やがて、一軒の御堂の前にやってきて、音も立てず扉を開ける。






「長、親方がお呼びですよ」

御堂の中には、座禅を組んでいる金の髪をした十二歳くらいの少年がいた。

閉じていた目をゆっくりと開き、扉のほうへと身体をむける。

「わかった。ご苦労、白」

振り返った少年の瞳は透き通るような碧眼。両頬には三本の痣。

鉄の里の忍を統率する若き長『ナルト』

かつては姓があったが、今は無い。

里の者がナルトと呼び、それで通じるなら姓など不要と思ったからだ。

ナルトに白と呼ばれた者は歳は15。

女性と見紛う程の顔をしているが、れっきとした男性である。

ナルトが8歳のころから共にこの里で暮らしている忍だ。






御堂を出て、二人はゆっくりと歩いていく。

「今日は、どの辺りで気付いたんです? ナルト君」

先程は『長』と呼んでいたが、今は『ナルト君』。

実はナルトは里人の前では大人の姿に変化していた。

鉄の里を守る忍の長が12歳の子供では対外的にも、対内的にも不味い為である。

白は長としてのナルトに用件を伝える為に、先程は『長』と呼んでいたのだ。

「扉から20メートル離れたところだ」

「20メートルですか・・・・・・」

御堂の中のナルトまでの距離を合わせると30メートルには気付かれていたことになる。

「最初の頃に比べれば十分だろう。チャクラもほぼ感じなかったし、気配もしっかり消えていた。

 同化は技術でどうにかなるものでもないしな」

「でも、気付いたんですよね?」

「ああ、気配を消せば、自然の中にポッカリと穴ができるようなものだからな。それを探った。

 だが十分、五影クラスの背後でも取れる」

そう話している内に里の中心部にやってきた。




















鉄の里は、木の葉隠れの南西、火の国の国境付近に位置する里である。

小規模ながらもこの一帯のほとんどで良質の金属がとれ、その産出とともに加工、精錬技術が発達した里である。

里人達のほとんどがその技術者達であった。

八年前、この里の者が瀕死のナルトを保護し里に連れ帰ったのである。

木の葉以外の人間と接した事のなかったナルトは警戒していたが、身体が動かず碌に食事も取れない自分の身体を支え、

食べさせてくれた人達に、初めて暖かさというものを感じた。










九尾の影響もあり傷も癒えて一年が経った頃、火の国の大名達の一部から鉄の里に火の国と

同盟を結べという達しがきた。

同盟とは名ばかりの、属国に近い条約内容で、狙いは明らかに金属と里の技術力であった。

大名の私兵を使って脅しの形をとってである。

里人達は当然反発し、戦うことを決意。鉄の里は、忍界大戦により天涯孤独になった者達が寄り集まり

切り開かれた経緯を持っている為、里人にとって絶対に失いたくない地なのだ。

その際、ナルトに逃げるよう促した者――ナルトを助けた里の代表『親方』――の前で、

ナルトは変化の術で大人になり、屋敷を飛び出す。










大名の私兵に忍はわずかな数しかいなかったこともあり、半日程で全滅させた。

里に戻ると、武器を持ち戦闘に備えていた里人達は、突然現われ敵を全滅させた

忍装束を返り血で真っ赤に染めた男に警戒心を強める。

その時親方が本陣となっていた屋敷から出てきて、一先ず礼を述べ、

屋敷の奥に招いた。

親方と二人になったところで変化を解除。

返り血で染まる5歳の子供の姿に、

どこまでも透き通る瞳に戦慄を覚えながらも、意を決して尋ねた。

ナルトは初めて自分の事を話した。

木の葉隠れの里の生まれで、九尾が里を襲った日に生まれ、そのまま封印の器にされたこと。

里を壊滅寸前まで追いやった九尾への恨みは深く、何度も命を狙われたこと。

強くなることが、生き抜くための最低条件であったこと。

里の権力者達に狙われ、抵抗する際、九尾のチャクラを開放したこと。

そのことで本格的に自分の抹殺が決まり、逃げてきたこと。

全てを話し、里を去ろうとするナルトに親方は拳骨をくれ、力強く抱きしめた。

返り血に染まる自分の身体を気にすることも無く、ただ強く。

出て行く必要は無い。鉄の里で暮らせと・・・・・・

ナルトは静かに頷いた。






鉄の里に住むに当たり、ナルトは自分が里を守る忍となることを話した。

私兵とはいえ、忍を含めた者達を退けた鉄の里に、各国の隠れ里が忍を放ってくる可能性がある為である。

大名達の要請で木の葉が動くかもしれない。

もともと狙われる要素も存在する。




人の闇を見続けたナルトには、暖かさをくれた鉄の里人にも闇があることなど百も承知であった。

血で染まる自分に恐怖を抱いていた長に。

里人全てを犠牲にしてでも戦うことを選択した彼らの判断に。

それでも、初めて自分に暖かさを感じさせ、自分に価値を見出してくれた、

小さく、愚かで、暖かいこの里を、忍として守り抜くことを決意した。

以来、大人の姿をして鉄の里の忍の長として、子供の姿でその部下を演じている。

年の離れた兄弟ということにして。




















あとがき


はい、ナルト君は新興の里の忍の長になってます。(←若すぎだ
長として、忍として里を守るナルトの姿勢と覚悟
を上手く書けたらと思ってます。

白も出しました。鬼人の方も出てきます。(オリキャラはメンドry)
原作で大蛇丸が穢土転生でこの二人呼び出したら、どうしよう・・・・・・
((;゚Д゚))ブルブル

えー、実はナルの姓。つまり四代目の姓が決まってません。
良い語呂が浮かばない・・・・・・リクを頂ければ応じます
誰か助けて・・・・・・



[672] Re[3]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/01 18:20
里の内部へ入る前に影分身を一体作り、自分は20歳あたりに変化し、里の一際大きな屋敷の内部へ入る。


「遅ぇぞ! 長として呼ばれてんだから、とっとと来やがれ!!」




二人が着いた早々声を荒げるのは、かつて霧隠れで『鬼人』の異名を取っていた『桃地 再不斬』。

白と共に追われていたのをナルトが保護したのだ。

傷を負った白の治療の為、鉄の里に留まっていたが、その際治療代にと鉄の里の忍として自分の部下になれ

と言うナルトに大人しく応じる鬼人でもなく、ナルトに勝負を挑んだのだ。

自分の得意とするサイレントキリングをしかけたが、自分以上の使い手であるナルトの前にあっさり伸された。

その後、何度も勝負を挑んだが、里に留まっている内に忍として里を守るナルトの過去と、その思い。

白が、ナルトが忍ととして育てている親をなくした孤児達に懐かれた事。

自分自身も職人気質の里人達と気が合ったため、「高く買え」と言って納得したのである。


「ああ、悪い」

変化を解き淡々とした口調に、何を言っても無駄だということは、再不斬とて重々承知の上だ。


「白も。呼びに行ったアンタまで、のんびり歩いてどうするのよ」

白と同じくらいの年齢の少女が、呆れたように言う。




彼女の名はミコト。

有名な陰陽師の家系に生まれながら、かつて先祖が交わった鬼の血が色濃く出て生まれた為に、

忌み子とされ追放された過去を持つ少女である。




「すいません。森の中がとても気持ちよくて、つい」

にっこりと微笑んで言う白に、言葉を詰まらされるのもいつものことだ。

ナルト、白、ミコト、再不斬、彼ら四人が鉄の里を守る忍達の主戦力である。

「おう! ナルト、ちょっと聞きてぇことがあってな」

変化を解いたナルトに声をかけたのは、五十代ながらも、筋肉に覆われた身体を持つ職人達のトップ『親方』

「お前ぇ今度、中忍試験を受けるって言ってたよな、何でだ? それに開催は『木の葉』だっていうじゃねぇか」

『木の葉』という言葉に一同の視線がナルトに集中する。

ナルトは静かに口を開いた。










「少し話が長くなるが、最近里に侵入してきた忍達の中に『鉄』と同様、新興の里とされる『音隠れ』という忍の里

 に属する者達がいたんだ。『♪』の額宛をしているな」

中忍試験とは関係なさそうな話をしていくが、皆とりあえず話を聞き続ける。

「あぁ、確かにいたな。身体に変な模様が出てきたり、角が生えてきた奴らが。

 妙な術を使ってきやがる、それなりに歯ごたえのある奴らだった」

ナルトと共に迎撃に当たった再不斬が相槌をうつ。

「そいつらの事が気になって、音隠れに関して調べたんだがな。
 
 その里を造ったのが、木の葉伝説の三忍の一人『大蛇丸』という噂らしい。

 これは、かなり真実に近い噂だ。

 そして最近、その音隠れが不穏な動きをしているらしくてな。

 開催が木の葉での中忍試験の時期にその動き、

 音隠れが何らかの動きをみせるかもしれない。それらを探りたい」


世界中に轟く伝説の三忍の名に各々の表情が強張る中、一人落ち着いた顔をしていたミコトが問う。

「でも、どうして『参加』する必要が? 木の葉に忍び込んで調べるだけでいいんじゃないの?」

試験に参加することは、各国にその力を示すことだ。

力を隠してこそ忍を信条とする彼の考えが掴めなかった。

「『参加』の形を取るのは、堂々と木の葉に侵入できることもあるが、『鉄』の未来(さき)を見越してだ。

 今は金属も十二分に産出され年間の採出量も計算されているが、

 子供達の世代か、まだ先か、産出できなくなる時は必ず来る。

 そうなっても、この里は他国よりも優れた技術力という武器も持っているから、原料を他国から買い取り、

 加工して販売するという形に移行できる。が、その際に他国と交渉が必要になってくる。

 交渉の武器として重要になってくるのが、その国の軍事力。忍の力だ。その下地を造っておきたい。

 いずれにせよ、アカデミーの子供達にも、いずれ通らせたい道だからな」

隠すことが忍ではあるが、現在は忍の存在が各国の軍事の主戦力になっている以上

対外的にある程度の力も示さなければならないこともある、とナルトは考えていた。

「なるほど、確かに最近でもまだ十分とはいえ、以前より産出が少なくなった金属も出てきた。

 ガキ共の未来を考えれば遅かれ早かれ向き合わなきゃなんねぇことか・・・・・・

 でも、本当にいいのか? 木の葉なんだろ?

 それに大蛇丸って奴の動きもこの里に何か関係あんのか?」

心配そうな表情で親方はナルトに問う。

「大蛇丸は木の葉に恨みを持っている奴だ。木の葉に戦争でも仕掛ける可能性が高い。

 それにこの里の金属と技術力は、大蛇丸じゃなくても欲しているだろう。

 木の葉とて火の国の軍事を担っている里だからな。

 うちの里を狙う大名共の要請で本格的に動いてくる可能性もある。

 両国の戦力把握と同時に、戦争になった場合の両国の消耗も把握しておきたい。

 音隠れも木の葉と戦って無事ではすまないだろうし、木の葉も消耗すれば、

 大陸のパワーバランスを取っている国である以上、戦力維持につとめるだろうからな。

 鉄の里に忍び込んできた者たちは全て始末してきたから、奴らにとってうちの里の戦力は未知数。

 戦力不明の里に迂闊に仕掛けてくることもなくなるだろう。


 俺の方は大丈夫だ。

 登録には偽名を使うし、鉄の忍の長である自分が私情で木の葉に何かを仕掛けて、

 里を危険に晒すような真似はしないさ。

 そもそも、木の葉への怨みは俺には無い・・・・・・」


ナルトが私情で動くような忍ではないことは解っているが、やはり木の葉には何か含むものがあるのではと

考えていたが、長の言葉を信じることにした。ナルトが自分達に嘘を言ったことは無かったから。










「で、誰が参加するの? 私達の中からなんでしょ。」

場の空気を変えるため、ミコトが尋ねる。

「スリーマンセルで登録だから、俺と白それにミコト、お前だ。再不斬には里の護衛として残ってもらいたい。

 俺とミコトで里に二重の結界を張る。式神のほうも頼む。再不斬、お前には子供達のことも頼む。

 課外と称してCかBランクの任務でもやらせてくれ。あいつらなら大丈夫だろう」

すでに決定事項のように淡々と話すナルトに再不斬が噛み付く。

「あぁ!? 里の護衛はともかく、俺にガキ共のお守りだ!? 

 勘弁してくれ。そんな柄じゃねぇことくらい解ってるだろ。

 俺が出るから、白、てめえが残りやがれ!」

再不斬の剣幕に白は苦笑するが、ナルトは表情を変えない。

「それも考えたんだがな。中忍試験とはいえ半分は任務だ。相手にするのは中忍になれるかどうかの下忍達。

 しかもある程度、実力も隠すことも必要になってくる。

 お前の場合、ストレスで木の葉の名のある上忍に喧嘩を売りかねん」

ナルトの言葉にグッと声を詰まらせる。

考えてみれば、自分はかつて霧隠れで上忍を務めていた。今は実力もさらに上がっている。

今更下忍を相手にしても、逆にストレスが溜まる。

派手なことをすれば、ミコトから『お仕置き』もあるだろう。

頼みの白もいない。

再不斬が唸っていると、再不斬の隣に座っていた親方が耳打ちをしたかと思えば、ニヤリと笑った。

「里の方は俺に任せて、てめえらは中忍になってこい!」

さっきとは態度が逆である。

そんな再不斬に白はキョトンとし、ナルトは相変わらず無表情。

「・・・・・・人とも、アタシがいないから好きなだけお酒が飲めると思ってるでしょ?」

ミコトはジト目で二人を見ている。


職人達や再不斬は大仕事の後、必ず宴会を開く。

特にこの二人はすさまじく、必ず飲み比べを始め、酔い覚ましにと水遁を発動させたり、誰彼構わず力比べをしかけたりと

被害は甚大なものになる。その後、いつもミコトが説教+お仕置きをするのだ。




ミコトの言葉にビクリと二人は身体を振るわせた。そんな二人に追い討ちをかける。

「・・・・・・帰ってきて、蔵のお酒が無くなってたらお仕置きは通常の三倍だから」

「まあまあ。多少は羽目を外すかもしれませんが、しばらく里の護衛をほとんど一人で預かるんですから」

今度は二人が声を詰まらせる。そこへ、白が助け舟を出す。これもいつもの光景だ。


四人の光景を少し表情を緩めて見ていたが、不意に真剣な表情になり、ナルトは長として命令を下す。

「とりあえず、決まったな。親方、中忍試験ではその里を示す額宛が必要になるからマークも含めて三つ頼む。

 ミコト、長期に亘る結界が必要となる。そちらは任せる。

 白、応急処置用の薬と知識を子供達に。しばらく留守にするから念入りにな。

 再不斬、しばらくこの里を守れるのは実質お前一人だ。頼む。

 俺は、中忍試験参加の書類を作成する」

四人は力強く頷いた。



[672] 真の忍 設定
Name: 朱螺
Date: 2004/11/01 18:34
ナルト


 鉄の里の若き長。木の葉の隠れ里出身で十二年前、里を襲った九尾の妖狐の器。
 大人の姿をしているときは『鉄 朱螺(しゅら)』を名乗り忍の長として、
 子供の時は、『ナルト』として他国の情報収集+里の忍術的結界担当
 九尾のチャクラは使えるが、身体が二次成長を迎えていない子供の身体であることから
 限界使用時間を決めている。
 無音殺人術は相手を確実に殺す状況になるまで、温存して戦う。
 鉄の里に来て感情が芽生えてきた為、無音殺人術の実行の際は、感情を隠す仮面を被る。
 双子の妹の存在も父のことも知らない。が、まったく気にしておらず木の葉への怨みも無い。
 優秀な彼だが、忍としていくら力をつけても、何故か親方の拳骨には逆らえない。







 水の国生まれで、血継限界の持ち主。幼きころ、父親に殺されかけた経緯を持ち、
 一人になったところを再不斬に拾われる。最初は自分を道具として考えていたが
 鉄の里でナルトの忍としての姿勢をみて、思い直す。血継限界の力はナルトの助言により
 確実に決着をつけるとき以外は使わないようにしている。
 普段は、鉄の里特性の鋼糸と医療忍術技術、水遁系の術を駆使して戦う。
 里ではアカデミーの先生+医者




ミコト(オリキャラ)


 火の国の陰陽師の家系に生まれたが、先祖に鬼と交わった者がいて、鬼の血を色濃く受け継ぐ。
 忌み子として扱われ、追放され鉄の里の森を彷徨っていた(普段、森にはナルトの幻術結界がある)
 ところを保護される。
 忍術の知識は最初は無かったが、ナルトに教えられる。
 鬼の力としての印を結ばない妖術と陰陽術が使えるが、これもナルトの助言で簡単には使わない。
 また、腕力が桁違いにあり屈強な鉄の里でもトップ。
 赤いセミロングの髪に、赤い瞳をしている。
 武器は『金棒』
 普段はアカデミーの先生+里の呪術的結界担当。




桃地 再不斬


 元霧隠れの上忍。己の理想の為、水影暗殺事件を起こすが失敗し白と共に抜忍となる。
 仲間になる経緯は本文上だが、一番の理由はナルトの忍の姿勢に己の理想とする忍の姿を見た為。
 より優れた気配の消し方、チャクラの探知、音以外での相手の動きの把握を覚え無音殺人術に磨きをかけ
 る。
 武器は『真・首斬り包丁』ミコトの血と再不斬のチャクラを併せ、呪術的要素を加え里で打ち直したもの。
 里の護衛担当。




親方


 鉄の里の職人達のトップ。里の基本的な在り方や方針は、彼を含めた職人達が
 決めていく。ナルト達忍はその補助。里人達の中でナルトが長であることを
 知る唯一の人物。
 また、里人達はナルトが木の葉生まれで、身体に妖を宿している
 ところまでは知っている。




鉄のアカデミー


 とはいえ、生徒数は十人にも満たない。年齢は5~10
 孤児達をナルトが保護し育てている。
 幼いころからでも、忍の厳しさ、在り方を教え込むため、
 他国のアカデミー生とは比べ物にならない実力、覚悟を持つ。
 課外と称して、里人の護衛等のB、Cランク級の任務も行う為、
 やってることは下忍、中忍と変わらなかったりする。



[672] Re[4]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/06 18:42
十日後、ナルト達は街道を北へ歩いていた。

背負う荷物の中には、職人達が作った鉄の忍を示す手裏剣とクナイがデザインされた額宛が入っている。

「ねぇ、何で歩いていくわけ? 私達の足なら今日中に木の葉に着けるでしょ」

のんびりと歩く男二人にミコトが抗議する。

ナルトは無表情のままで、白は苦笑しながら答える。

「木の葉に送った書類には到着予定日も記入してある」

「まあ、そう急ぐ理由もありませんし」

相変わらずな二人に脱力しつつ、ジト目で言う。

「・・・・・・そうね。でも木の葉に予定日通り着かなきゃならないことはないし、急ぐ理由はないけど、ゆっくり行く理由もないわ」

ミコトの言葉に、白は納得した顔をしてナルトを見る。白とて、ナルトのペースに合わせていただけだ。

「・・・・・・ちょっとした訓練だ」

「「訓練?」」

「ああ、俺は情報収集担当だから他国への潜入が主な仕事だが、その際最も重要なのは忍特有の癖の隠し方だ。

 意識していなければ、足音を消して歩いてしまい、気配も消そうとしてしまう。

 何がおこっても対処できるような体勢を維持してしまう。

 そういった、忍であるが故の弊害を意識的になくす。つまり一般人として振舞う訓練だ」

気を抜いてしまう為に出てしまう忍の癖をしっかり隠す為と聞いてミコトは脱帽するが、すぐに気を取り直す。

「でも今回は『忍』として木の葉に行くんでしょ!

 C、Dランクの任務にあたってる下忍としてなんだから、少々なら問題無いわよ。

 最近じゃ任務の行き帰りに、額当して堂々と街道歩く下忍の姿も見れるんだから!

 ・・・・・・でも言われてみれば、アタシは意識したこと無かったわ。やってみよ!」

そう言って、わざと足音を立てて歩いていてみたりしている。










そんなミコトの様子を見つつ、あたりに忍がいないことを確認して、白はナルトに尋ねる。

「そういえば書類の写真、変化せず素顔でしたね。どうしてです?

 木の葉でナルト君の顔を覚えている人もいるでしょう。本当に大丈夫なんですか?」

心配そうな表情でナルトを見る。

「ああ、あえてそうしたんだ。おそらく三代目火影は俺を覚えている。死んだと思われていた九尾の器が、

 詳細不明の鉄の忍として現れれば、木の葉としては音隠れに向けたい注意を嫌でも俺に向けざるを得ない。
 
 そうなれば音隠れも動きやすくなるだろう」

「・・・・・・つまり、自分を囮に音の奇襲をやりやすくさせる為・・・・・・ですか?」

「そうだ。俺達にとってベストなのは、両国が戦力を削りあい、膠着状態になることだ。

 どちらか一方が完全敗北しても駄目だ。

 疲弊したまま互いを敵として睨み合わせ、鉄の里から視線を逸らせる」


ナルトの目が真剣なものになる。木の葉に怨みは無い。が、助ける義理も無い

音隠れはもちろんのこと、一部の意思とはいえ、火の国とも敵対関係にあるのだ。

同盟を結んでいるわけでもない。


「戦力不明といえど、音はしょせん小国でしかない。やるとすれば奇襲しかない。

 が、大国木の葉が全力でそれの阻止にまわれば、奇襲そのものが成功しなくなるだろう。それでは困る」

「・・・・・・でも、それだけでは奇襲が成功し、音隠れが勝利するんじゃ?」

「いや、たとえ奇襲が成功しても木の葉は崩れない。押し返すだけの意思の力を持っている。

 『木の葉を愛し、守る』というな。

 その反動からくる憎悪を受けてきた俺だからこそ解かる」


ナルトは解かっていた。

木の葉が自分に向けてくる憎悪の裏にある感情を。

彼等の仲間や家族への深い愛情を。










ナルトの言葉に白は黙る。

自分達のしようとしていることは、ある意味両国の戦争を煽るようなものだからだ。

木の葉の忍はもちろん、忍以外の者達も死ぬだろう。それを傍観する立場をとるというのだから。

そんな白の思いを察しナルトは続ける。

「忍以外の非戦闘員は、ほぼ無事になると思うぞ。木の葉には奇襲を受けた際のマニュアルがある。

 里の各所に避難経路を設置し、そこを里最強の暗部全部隊で非戦闘員の避難にあたる。

 それまでは正規部隊の上・中・下忍達が敵の相手をする。

 これは九尾来襲の後に作られたマニュアルだから、

 音の首謀者が木の葉出身の大蛇丸だったとしても知らないことだ。」

ナルトの言葉にも、まだ白の表情は晴れない。




「・・・・・・忍として己が為すことに罪悪感を持つのは当然だ。

 罪悪感を持つということは己の為していることを理解している証拠だ。

 忍は本来人の世の闇を生きるもの。決して誇りとすべきものじゃない。

 術などの力に溺れるわけでもない。

 木の葉のように『守る想い』を重視し、

 『想い』で忍を縛りつけたあげく自分達が『奪う者でもある』ことを忘れがちになり、

 奪った者に、何かに対し憎しみをぶつけるわけでもない。

 己の罪を理解し、許されざることであっても守りたいものがある。

 俺達は今回、木の葉の人間も、音の人間も見殺しにする。

 殺すということは殺されるということ。

 これから先、自分達も同じように見殺しにされるかもしれない。

 それでも俺は・・・・・・戦う・・・・・・」






ナルトは八年もの間、鉄の忍として里を守ってきた。

里に侵入してくる幾人もの忍達をその手で葬ってきた。

その中には家族の名をよびながら絶命していった者達もいる。

その時、ナルトは悟ったのだ。

彼等もまた自分同様、何かを守る為に戦っているのだと。

自分はその『守りたい』という意志を誰より理解したうえで、その命を『奪った』のだと。

己の為している事は、決して許されない、誰からも責められるべきものなのだと。

『守る為に殺す』それはあくまで殺す為の理由であって、正当化するための理由ではない。

けっして正当化してはいけないのだと。






そう言い切ったナルトの言葉に白はハッとなった。

今の自分は、かつて『忍』という名の道具として、湧き上がる感情から目を逸らしていた頃とは違う。

己の罪も闇も認めて、それでも戦うナルトの姿をみたから彼の配下になったのだ。

それにナルトは『音の人間』とも言った。

戦争を仕掛けようとする側の命も、受ける側の命も、そこに存在する命の価値をすべてを認めた上での言葉。

「そう。そうでしたね・・・・・・」

静かに、何かを確認するように白は呟く。

これから始まる戦いに、彼もまた鉄の忍として覚悟をきめた。












後書き

今回はナルトと木の葉の忍達の違いを書いてみました。
上手く伝わってればいいのですが。
どうにもナルトの話は説明口調になってしまい、
ダラダラと長くなってしまいます。

あー、マジでナルの苗字が決まらん。
何かないかな・・・・・・



[672] Re[5]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/10 15:50
木の葉隠れの里、火影執務室。

昼間だが、部屋は人払いをしている為、静まり返っている。

部屋の主、三代目火影もまた机の上に置かれた数枚の書類を静かに見ていた。

その目に様々な感情を浮かべながら。

そこへ部屋の静寂を破るノックの音が響いた。


「入るぞ、三代目」

「ワシ等を呼ぶとは。何かあったのか? 三代目」

入ってきたのはご意見番、『水戸門ホムラ』と『うたたねコハル』。

通常ならば、任務に関しては、火影が単独で判断し処理している。

ご意見番の意見が必要なほど里にとって重大なことがあったのかと、二人は問う。


三代目は目の前に置かれていた書類を取り、そっと二人に手渡す。

「今回の中忍試験、鉄の里が参加の意思を伝えてきた・・・・・・」

『鉄の里』と聞いて、二人は眉間に皺を寄せる。

私兵であり一部のとはいえ、忍を含めた火の国の大名の軍を全滅させた里。

木の葉からも中忍、上忍の調査部隊を派遣したが、その全員が消息を絶ち、

Sランク任務として暗部を送り込んだにもかかわらず、小隊全員が消息不明になった。

それまでに、得られていた情報。

良質な金属の採出とその加工技術に優れた職人達の里、という姿以外、

忍の里としての情報が一切、手に入らない里。





二人は書類を受け取り、一枚一枚捲っていく。

忍であるため簡単なものだが、プロフィールと顔写真が載っている。

載っているのが下忍の情報であり、最低限の情報しか載っていない為、1枚1分ほどで読んでいたが、

最後の1枚を目に入れた瞬間、二人の表情が強張った。

写真に写っているのは見事なまでの金色の髪。

透き通るような碧眼。

両頬にある線のような三本の痣。

かつて里を救った英雄とその娘にあまりにもよく似た面差し。

・・・・・・八年前、自分達が抹殺を決断した子供。



しばらく書類を手に呆然と固まっていた二人は、ハッと我に返る。

「猿飛、この子は・・・・・・」

三代目ではなく、猿飛と呼んでしまったあたり、二人もまだ落ち着いていない。

三代目は咥えていたパイプを手に持ち、ゆっくりと煙を吐く。

「うむ・・・・・・あの子・・・・・・ナルトじゃろう」

三人はそっと目を閉じる。子供に対する里の態度、自分達が下した決断を思い起こす。

「・・・目的はやはり復讐か・・・・・・」

「・・・・・・かもしれん」

逆恨みではない。復讐されるだけのことをしたのだ。

三代目は静かに席を立ち、窓から里を眺める。

すぐ側にある忍者アカデミーからは子供達の笑い声が聞こえてくる。

「・・・・・・来るべき時が来たのやもしれん」

窓に映る三代目の顔は何がしかの覚悟を示すようにみえた。





「どうする? 非同盟国を理由に参加を取り消すか?」

ご意見番として、里の存亡に関わりかねない事態を未然に防ぐための意見を言う。

「いや、それは無理じゃ。鉄の里が今回の試験に参加することは、すでに同盟各国に知られておる。

 下忍とはいえ、詳細不明の里の忍を知るいい機会と各国は考えておる。木の葉だけの意思で

 拒否はできん・・・・・・何より、ワシはナルトと会いたい。いや、会わねばならんのじゃ・・・・・・

 あの子の目的が復讐であれば、この命を差し出してでも止める。止めねばならぬ。

 なに、この老いぼれの命で済むのなら安いもんじゃわい!」

決意と覚悟を秘めた言葉に、ご意見番は口を出す。

「三代目、お前・・・・・・! お前は火影なのだぞ! お前が失われれば、木の葉はどうなる!?

 それに、鉄だけではない。近年誕生した音隠れの里のこともある。鉄ほど詳細不明ではないにしろ

 聞こえてくる噂は、きな臭いものばかりの里だ。今、お前を失えば・・・・・・!」

「分かっておる。ワシとて早々、命を差し出すつもりはない。

 それにな、あの子の目じゃ。

 4年間で、あれほどの扱いを受けきたにもかかわらず、最後に会ったあの日ですら、

 あの子の目に憎悪を感じなかった。いや、憎悪を向けられてもいい。あの子と話がしたいんじゃ。

 頼む・・・・・・」

昔から、一度三代目が自分達の意見を受け入れなかったら、最後までその意志を貫いてきた。

今回の『頼む』も、ある程度最初から予測できたことだった。





「ナルの方はどうする? ナルトは父親のことも、妹のことも知らぬはずじゃ。当然、ナルも兄のことは知らぬ。

 それにナルの下忍同期の者は、あの事件の名家、旧家の直系ばかりじゃ。

 あの子達を、この試験の間だけでも暗部を護衛に付け隔離すべきか・・・・・・」

三代目とホムラの言い合いを黙って聞いていたコハルが口を開く。






ナルトには父親が四代目であることは伝えられていなかった。

ナルトがまだ幼かったこともあるが、里から迫害されている状況を作ったのが実の父親であると

ナルトが四代目を怨むことを避けたかったからだ。

そして、双子の妹の存在を隠したのも兄妹で憎みあって欲しくなかったからだった。



「うむ。それも考えておこう。じゃが、まずワシがナルトと話をする。あの子と鉄の出方を見極める。

 その上で、どうするか決める。もしワシの身に何かあったら・・・・・・

 その時は自来也あたりを、この椅子に座らせてくれ。

 うむ、急ぎ自来也の捜索に暗部を走らせよ。ナルトの出方しだいでは、あやつの力も借りたい」

四代目の師である自来也は九尾来襲の際、大蛇丸を監視する為、三代目の許可を得て里を抜けていた。

自分が里を出ていなければ、四代目を死なせることはなかったかもしれないと悔やんでいた。

ナルトを説得する力になるかもしれない、と三代目は考えた。

三代目の指示にご意見番の二人は頷く。










八年ぶりの木の葉。

ナルトはここで己の出生を知ることとなる。

そして、己を狙う大蛇丸以上の影の存在も。

そして、この中忍試験を機にナルトの予想以上に歴史が、時代が大きく動こうとしていることを。










後書き


みごとに会話だけ。ナルの姓が決まらないから
ダラダラ先延ばしてるのがミエミエか・・・・・・ 



[672] Re[6]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/14 16:17
「ここが木の葉隠れですか・・・・・・」

里を囲む巨大な外壁にある入り口の一つで門番に通行書を見せ、

ナルト、白、ミコト、そして担当上忍として影分身を出し変化させたナルトの4人は木の葉に入った。

商人の掛け声。あちこちに見られる多種多様な看板。忍具を示すものまである。

そして額当をファッションの一部にして堂々とあるく忍達。

何より眼前の巨大な岩肌に彫られている四つの顔『火影岩』

「活気のある里ね。賑やか過ぎるくらい。これで『隠れ里』になるのかしら?」

木の葉があまり忍の里らしくないとの情報は得ていたが、あまりの活気に、呆れるようにミコトと白が呟く。

鉄の里とて活気はあるが、職人達の活気だ。忍があまりにも生活に密着した木の葉の活気とは違う。

鉄の里は職人達の里以外を示す忍の里としての姿はほとんど隠している為、ギャップを感じている。

特にミコトはナルトから忍のイロハを学んだ為、余計に違和感を感じている。

これは木の葉がその興りから忍の里であったのに対し、鉄はもともと職人達の里であった違いからくるものだ。

多少、ギャップに戸惑っている二人の耳に声が響く。


((二人とも、ここからは任務に関わる会話は全て『伝心の術』を使う。そしてこの里で俺は『朱螺』だ。

 『ナルト』は禁句だからな))

『伝心の術』

あらかじめ使用者同士が契約し、舌にチャクラを乗せて発することで音にならずに

伝えたいことを相手に伝えられる術で、彼等は任務中はこの術を多用する。





二人に伝えた直後、何かを察知したように、ナルトは若干その表情を引き締めた。

((どうしたんです?))

((何かあったの?))

傍目には気付けない変化だが、付き合いの長い二人はその変化に気付き『伝心の術』で話しかける。

((・・・・・・早速、監視が始まっただけだ))

監視という言葉に、二人は自然体のまま気配とチャクラを探る。が、まったく察知できない。

((僕達でも気付けない監視ですか・・・・・・相当の相手ですね。位置は?))

表情をまったく変えず、ただ臨戦できるよう二人は集中する。

((位置を言うなら、『火影の執務室』。監視者は三代目火影。

 これは『遠眼鏡の術』と言って三代目が持つ水晶球を使って、特定の人物を追跡できる術だ。

 ターゲットのチャクラパターンを知っていれば、里内ならばその姿を確認できる。

 俺は『器』だからな。この里では常に監視下にあった。

 どうやら、俺のチャクラパターンを記憶していたみたいだな))

ナルトは完全に自然体に戻り、冷静に状況を伝える。

常に監視されてきたナルトの優れた五感は、水晶を通しての視線に感づいていた。


((『みたいだな』じゃないわよ! いきなり監視されたら、あんた身動き取れないじゃない!!

 それにその影分身体もチャクラパターンに引っかかるんじゃないの!?))

監視がついたと言うのに、あっさりと普段の態度にもどったナルトにミコトが叫ぶ。

といっても術での会話の為、ミコトの表情は変わっていない。

が、聞こえてくる口調とのギャップに、ナルトと白がなんとも珍妙な光景だな(ですね)と同時にと思ったのは秘密だ。



((・・・・・・その点も問題無い。任務をする時はチャクラパターンを変えるし、こいつも常に変化させている))

ナルトは相手のチャクラを察知すると同時に、そのチャクラの性質をも解析できる。

チャクラとは本来、身体エネルギーと精神エネルギーで練り上げるものであり、術ごとにその割合も変わる。

そのため、普段使っている術や相性などにより、自然と体に独特のチャクラの質が染み込み、

その人物を特定するまでになっていく。

しかし、チャクラコントロール――身体エネルギーと精神エネルギーの組み合わせ方――を

極限まで高めたナルトは自在にそのパターン、質を自在に変化させることができる。

これにより、ナルトはチャクラの質をまったくの別の者のそれに変えることができるのである。



((・・・・・・相変わらず、サラリとすごいことをやってのけるわね・・・・・・ま、いいわ。

 とりあえず、これからの予定を教えてちょうだい。調べ物があるなら試験前にやっときたいし))

ナルトの言葉通りか、二人は影分身体のチャクラを探知してみるが、

見事なまでに本来のナルトのチャクラとは別物になっていたため呆れる。

いつもナルトに突っ込んでみるものの、常にその先を見越した答えで切り返してくる。

長としては頼もしいかぎりだが、それでも切り返されたあと、ミコトは少し悔しそうな顔をする。

ナルトがぐうの音も出ない完璧な突っ込みを。ミコトの密かな目的だったりする。



((とりあえず、受付で到着の報告を済ませ、滞在許可書を貰ったら今日のところは宿へ行く。

 俺を監視しているなら、三代目本人が接触してくる可能性があるからな。

 それまでは下手な行動はしないつもりだ))

里の様子から、九尾の器である自分が来ることは里人には知らされていないとみられる。

知っているのは、おそらく三代目火影とその側近あたりだけだとナルトは推測していた。

そして三代目の性格から、本人が必ず自分に接触を試みてくることも。


四人は賑やかな大通りを抜け、一先ず受付所にむかった。















その四人の様子を水晶で覗く者、三代目火影の瞳は湿り気を帯びていた。

鉄の里からの書類が届いた日から毎日、定期的に水晶でその姿を探った。

会いたい想いと、会いたくない想いの相反する感情を抱いて探し続けたその姿を。

英雄四代目の実子であり、里を救った真の英雄。

里の、自分の罪によりその命を絶とうとした子供が成長して里に戻ってきた姿に自然と涙が浮かんでいた。

「どうだ? やはりナルトだったか?」

水晶を覗き続ける三代目に、ご意見番が声をかける。

「この水晶に映ったんじゃ。あの子は間違いなくナルトじゃ・・・・・・」

零れそうになる涙を拭い三代目は答える。



「・・・・・・やはり暗部を向かわせるか、受験資格を剥奪し里外へ出すか?」

三代目の意志は承知だが、ご意見番として里の危機を想定した上での意見を言う。

性格上、三代目が自分達の意見に否と言うことも分かっていて。

「いや、先日言ったとおり、ナルトと話がしたい。これだけはどうしても譲れんのじゃ。

 それに鉄の里の試験参加は確実に各国に知れ渡っておる」

これはナルトが参加の書類をわざわざ他国の忍を雇って木の葉に送らせたからだ。

自分の参加を木の葉が拒否できない状況を作り出す為に。


「・・・・・・分かった。猿飛、お前は木の葉隠れ三代目火影だ。

 お前の命はお前だけのものではない。それだけは忘れるな」

「・・・・・・分かっておる。」





かつて、自分が殺そうとした子供との八年ぶりの再会。

この再会が、『忍の神』とまで呼ばれた男にこれまでの忍としての人生を顧みる機会を与えることになる。










あとがき

スーパーに行ったら、豚バラブロックが安かったので、豚の角煮に挑戦している一人暮らしの朱螺です。
はい、ようやく木の葉に到着。次話で三代目とナルトの再会です。
・・・・・・ごめんなさい、ナル登場は次々話です。










宿屋にて。

「ちょっと、なんで一部屋だけなのよ・・・・・・二部屋取れなかったの?」

「中忍試験の時期ですからね。一部屋だけですけど、隣室はありますから」

「任務では、野宿もあるだろうが。無理言うな」

「・・・・・・覗かないでよね」

「・・・・・・(苦笑)」

「・・・・・・俺は年齢はまだ12の子供だ。それに再不斬に言わせれば、

 『貧乳の怪力小娘なんざ、下手すりゃ白より色気が無え!』

 らしいからな。問題無いだろう」

(ッ! ナッ、ナルトくん!?)

「ッ! あんのバカ鬼ッ! 絶対殺す!!!」

部屋が怒気と殺気を含んだミコトのチャクラで埋め尽くされていく。



ナルト、時々空気が読めない天然・・・・・・




「・・・再不斬さん・・・・・・ボクは・・・・・・この二人には適いません・・・・・・」



[672] Re[7]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/20 14:58
眼前にに広がる森。

広大であるにもかかわらず、自分はその木々を見下ろしている。

足元には豆粒の様に小さい人間達。

自分の意思とは関係なく、その者達を裂き、喰らう。

炎を浴びせる者、水を浴びせる者、風を刃にし放ってくる者。

全て焼き払っていく。

突然、目の前に煙が立ち、現われたのは巨大な蝦蟇。

その背に乗る一つの影の存在。

金色の髪。

強大なチャクラ。

透き通るような碧眼。

その目に映る、強い意志。










ガバリと布団から起きて周りを見回す。

部屋の中、自分達が宿泊している宿の一室だ。

隣の布団には白が眠っている。

目を閉じる。自分とミコトが部屋に張った二重の結界は正常に作用している。

結界内は遠眼鏡の術でも見ることはできないようになっている。

少し汗を掻いている。ナルトは静かに、息を吐いた。

「・・・・・・久しぶりだな。この夢は。舞台もしっかり木の葉だ。器用だな・・・九尾・・・・・・」

自分の臍の部分を擦りながら、小さく呟いた。



「どうしたんです?」

「なんか、あったの?」

隣に眠っていた白が、隣室からミコトが目を覚ます。

忍として、木の葉という場所の為、三人とも眠りは浅い。

「・・・・・・あの夢を・・・見たんですか?」

臍を押さえているナルトの様子をみて、白が訊ねる。

「ああ、久しぶりにな。しかも舞台は木の葉に戻ってた。器用な奴だな。コイツ」

表情を変えない、慣れきったことだとでも言うようなナルトの言葉。

それはとても。

白は俯き、ミコトはジト目になる。

二人に、いや、ナルトを知り、共に生きる者達にとって、それはとても痛い。

「ナルト君、僕達は『鉄の忍』です。あなたに教えられ、共に『忍』として生きることを決めた忍です」

決して大きくはないが、白の言葉が静かな部屋に響く。

心配をかけてしまったかと苦笑し、大丈夫だと言う。

「分かってる。俺は鉄の長だ。この夢に慣れたというより、俺自身がさせない。それは俺自身の望みだ」

だから、大丈夫だと。





「木の葉に来たから、反応したんだろう。九尾の生理現象のようなものだ」

「なっ! 朝っぱらから、下品な表現するんじゃないわよ!!」

場の空気を変えようと、おだやかな口調で言った言葉にミコトが噛み付く。相変わらず天然のナルト。

「おい、ここは宿で、しかも早朝。大声出すな」

「落ち着いてください、ミコト。ナルト君に他意はないんです」

ナルトは自分の言葉で引き起こした事態だと気付かず、白は、なんとか宥めようとする。

場の空気の変化にナルトは満足する。やっぱり気付いていなかった。










「・・・・・・少し、散歩してくる」

少し和んだ場に安堵し、ナルトは告げる。

「ナルト? 私達も・・・・・・」

「いや、一人でいい」

即答された返事に何かを感じ取った二人。

「・・・・・・分かりました。気をつけて」

静かに見送った。





早朝。朝霧の立ち込める木の葉の里を歩く。

火影邸に軟禁状態であった為、そう度々出歩くことはなかった。

一度だけ目を盗んで、出歩いたことがあったが、周囲の者が自分の姿を見た途端、

ものすごい殺意を込めた目で睨まれ、人気の多い通りであったにもかかわらず暴行を受けた。

それ以来、出歩くことはしなくなった。

その時も、特に憎悪しなかったことは覚えている。

それまで、幾度となく暗殺されかけた自分。

この里にとって、自分は何らかのターゲットなのだ、ぐらいにしか感じなかった。

ふと顔を上げる。

朝もやのかかった、巨大な『火影岩』

そして、誰かからの視線。

フッと息を吐き、四つの顔の上に向かった。





火影岩の頂上。

かつて一度だけ、夕暮れに染まる里を、三代目と共にここから眺めたことがあった。

「木の葉隠れの忍達は皆、里を守ろうとする強い意志、『火の意志』を持っておる。

 この里で、その意志を持つ者は皆家族そのものなんじゃよ。ナルト」

感情を示さぬ自分に、三代目は何とか教えようとしていたのだろう

だが、そのころより夢に出てきた、己が破壊する里の景色だという以外になんの感慨も沸かなかった。

今はどうか?

朝もやのかかる里を見下ろす。

・・・・・・やはり、何の感慨も沸いてこなかった。

おそらく、自分はこれからも木の葉に対し、何の感情も抱かないのかもしれない。

自分の家族はここにはいない。

徐々に近づいてくる、気配は消しているが張り詰めたチャクラの存在を感じながら、静かに息を吐いた。





ナルトを見ていた三代目の水晶は、彼等が宿に入った途端、その姿を映さなくなった。

それは宿に結界を張り、監視を防いだということ。

ナルトが自分の監視に気が付き、即座に対応したということ。

それがそのままナルトの実力の高さを示すことだった。

そのまま火影としての公務をこなしつつ水晶を覗いたが、何も映さないままだった。

わずかな仮眠を取りつつ監視を続けたが、早朝になって不意に水晶が反応し、ナルトの姿を映した。

水晶の中で、ナルトはただゆっくりと里内を歩いている。向かっているのは火影岩。

誘われていると感じた三代目は、それに乗ることにした。










肌寒さを感じる火影岩の頂上から里を見下ろす金糸が三代目の目に映る。

声を絞り出そうとして息が詰まる。様々な感情がそうさせているかのように。

「・・・ナ、ルト・・・・・・」

ようやくその言葉だけを搾り出す。

ナルトは静かに振り返る。

その透き通るような碧眼は変わっていない。憎悪を宿さぬその色は。

「「・・・・・・」」

お互い、一切言葉を発しない。しばらく静寂が続いた。





「・・・久しぶり・・・・・・と、言うべきなのかな。三代目火影・・・・・・」

このままでは埒があかないとナルトの方から話しかける。

「・・・・・・ッ!」

「己が殺そうとした、殺したはずの者が生きていたんだ。当然の反応だな。正直俺とて何を話しいいかわからん。

 しかも、この里にとって戦乱の火種でしかない九尾の器だ。どう対処していいか分かるはずもないか。

 自分でもあの時、どうやって助かったか覚えていない。九尾のチャクラを引き出して、火遁を防いだところまでだ。

 あの後、鉄の里の一人に助けられ、里で忍として育てられた。

話さない三代目にかまわず、聞きたいであろう事を話す。

『育てられた』と言い、自分達を統べる長の存在をにおわせる。

「ナルト・・・・・・ワシはあの時ッ!」

言いかけて三代目は言葉を止めた。何を言っても言い訳にしかならないからだ。

「・・・・・・ワシが・・・・・・この里が憎いか?」

それだけを問う。その答えで自分がどうするかを決めねばならないから。

だがその問いに、ナルトは少し顔をしかめた。

「・・・・・・それを聞いてどうする? 俺がこの里を、アンタを憎んでいないと言って何かが変わるのか?

 何も変わりはしない。ここは一応忍の里で、アンタは火影だ。アンタのあのときの判断は間違ってはいない。

 アンタが『忍』として奪ってきた命の一つだ。俺もそのことを『忍』として理解している。」





憎んでいない。そうナルトは憎まない。以前は憎むという感情そのものが理解できなかった。

だが今は違う。自分は忍として、己の守りたいものを守ると同時に、誰かの何かを奪っている。

ナルトは、白達やアカデミーの子供達、鉄の里の民はそれを常に心に抱いている。

自分達のしていることは、程度の差はあれど、常に誰かに何らかの恨みを受けるものだということを。

どんな理由や題目を並べても、『忍』という存在でいるかぎり憎まれる存在なのだと。

だから、憎しみに憎しみで返す真似はしない。

それが闇に生きる『忍』が常に自覚しなければならないことだと思っていた。

その考えが、そこにある命――正確には死に逝く命、つまり『死』――に対して平等だという考えにもなっていった。

その考えが三代目が火影として奪ってきた命と、あの時、奪われかけた自分の命は同じであると言わせてた。

忍の神とまでいわれた三代目ならば自分の言葉を理解するとナルトは思っていた。





「違う! この里に生きる者はワシにとって家族そのもの。お主もワシにとって大切な家族。

 四代目も同じ考えじゃった。その大切な家族であるお主をワシは討った。

 そんなワシにはこのような事を言う資格は、もう無いのやもしれん。

 じゃが、お主を守るべき大切な家族ではない、と思うたことは一度も無い!」

三代目は自分の命など取るに足らないものだとでもいうようなナルトの言葉に反論した。

確かにナルトの命を奪おうとした。それでも三代目にとってはナルトは今でも掛替えの無い存在だった。





ナルトは三代目の言葉におやっと思う。

ナルトはあの時客観的に『奪われようとしていた』自分の命のことを言っているのだ。

今『生きている』自分の命を、そのようには考えていない。



ナルトは確かに死に逝く命に対し平等だ。だが、生きている命に対しては違う。

忍として、様々な生死に関わってきた。

馬鹿げているとしか言いようの無い理由で守られる命もあれば、理不尽な理由で奪われる命もあった。

命が平等だという考えなど慰めにもならないことだと思っている。

自分にも、守りたいと思う、他者より優先する命があるのだから。



そして気付いた。三代目の言う命と、自分の言う命の違いに。

三代目の言うことは当たり前のことだ。木の葉だけが持つ考えではない。

自分もまた鉄の里に生きる者を家族だと思っている。

死が誰にも等しく訪れるものだからこそ、守りたいと思う『生きている命』を全てを賭して守るのだ。

それを理由に、自分は誰かの命を奪うのだと。

この考えは、凄まじい矛盾だ。

自分が憎まれるべき、責められるべき存在と言いながら尚、他者を殺め続けているのだから。

死を与えながら、それは等しいと言いながら、守りたい命があるというのだから。

同じ理由で誰かに殺されても文句は言えない。

それでも刃を持って戦うと決めた。

そんな矛盾を、想いを抱えても忍び耐える者。憎しみも正義も無い。それが『忍』だと思っていた。





三代目ならば、忍の神ならば自分と同じ考えだと思っていた。

この巨大な木の葉の里を守ると同時に数多の命を、何かを奪っている自覚があるのだと。

「自分は木の葉を守る為に、お主を犠牲にした。ワシの力が足りなかった」

その一言、ただ事実を言ってもらえればそれ以上何も言わずとも、自分も同じ忍として理解できる。

その言葉が木の葉の里を守る火影としての覚悟だと。

だが、三代目の言葉は木の葉の忍達がよく口にする言葉、『家族』

『守る想い』を重視しすぎた、木の葉を象徴する言葉。木の葉を守る忍としての自分達に『誇り』を持つ言葉。





(結局、『火影』は木の葉の忍達の長でしかなかったか・・・・・・)

(ああ、だからこの木の葉の里に、『俺のような者』が生まれたのか・・・・・・)

ナルトは忍としての三代目に、否、火影に対する自分の中の何かが急速に冷めていくのを感じた。










「さっきも言ったとおり、俺は忍だ。木の葉に復讐する気など起きようはずもない。

 木の葉に来たのは中忍試験に参加し中忍の資格を得ること。それが鉄の意思だ。そしておれは鉄の忍だ」

機械的にそう告げると、そのまま火影岩から立ち去る。

「火影は・・・・・・『忍』だと思っていたんだがな・・・・・」

急に感情を示さなくなったナルトに困惑する三代目とすれ違う瞬間、そう呟く。

「ナルッ!?」

その言葉に、三代目は思わず振り向いた。

だが、ナルトの姿は未だ晴れぬ朝靄の中にすっと消えていった。

今、三代目にナルトの言葉の真意は理解することはできなかった。

後にその言葉の真意を、ナルトの忍としての姿勢を彼は知ることとなる。















あとがき

ナルトと三代目の再会終わり。もう一度、話す機会を設けます。
正直、三代目が、かつて殺そうとしたナルトに何を言うのか想像できず、
延々悩んだあげく、ほとんど喋らせていない・・・・・・
本文中にあるよう何を言っても言い訳になると思って。

ナルトの忍としての考え方も出しました。(今回、書いたので全部ではない)
ごちゃごちゃ書きすぎて、途中でやってられるかー!と2日程、書くの
投げてました。

次回、ようやくナル登場です。本編に入ります。



[672] Re[8]:NARUTO 真の忍
Name: 朱螺
Date: 2004/11/25 16:03
三代目と分かれた後、ナルトは白達と共に朝食を取った。

感情的になったが、自分達の真意は明かさなかった為、木の葉の監視は続くだろうと話して。

その後、二手に分かれて木の葉を見て回ることになった。

木の葉の地形を把握し、戦闘の際には的確な行動を取れるようにする為である。

白とミコト、ナルトと分かれて各々が行動に移った。





「あのアカデミー兼執務屋敷を中心に、扇状に里が広がってるわけね」

「ええ。その上の火影岩が非戦闘員の避難所になっているようですね。ナルト君の情報通りです。

 中忍試験の最中でもアカデミーは通常運営。夜半の襲撃でないかぎり、

 子供達が今回の戦争に巻き込まれることはなさそうですね」

「こころへんから路地ね。って、あれ?」

店が並ぶ通りから、民家の多い路地へ入った所で、見慣れているが、雰囲気がまるで違う金髪が二人の目に入った。










「こらッ! その手をはなせってば!!」

そう叫ぶのは、肩にかかるくらいのサラサラの金糸に、透き通るような碧眼を持つ少女。

彼女の視線の先には、黒子のような格好をした少年と、彼が掴みあげている男の子。

少年の額には砂隠れを示す額宛がある。

「うるせーのが来る前にちょっと遊んでみたいじゃん・・・・・・」

黒子の少年がさらに男の子を自分の顔の高さまで持ち上げる。男の子は苦しそうに呻く。

「オマエーー!!」

金髪の少女は悠然と向かっていくが、黒子の少年が指を軽く動かした瞬間、何かに転ばされたように倒れる。

(何だってば・・・・・・今の?)

「なんだ。弱いじゃん。木の葉の下忍てのはよォお!」

(こ・・・こいつらって国外の・・・・・・何でこんなとこに・・・・・・)

金髪の少女の隣にいるピンク色の髪の少女が顔をしかめる。



((ねえ、あれって・・・・・・ナルト?))

((ち、違うと思いますが・・・・・・似ていますね))

様子を見ていた白とミコトが呆然とする。

((似すぎてるわよ。まったく同じじゃないけど、チャクラの質まで似てるわ。

 チャクラに乱れも無いから、変化の術でもない。声からして女の子よね?))

((・・・・・・ちょっと、様子を見ましょうか。))

とりあえず二人は気配を消し、様子を見守ることにした。下手な動きを見せて、目立つことを避ける為に。



「木の葉丸ちゃん!!」

「木の葉丸君!!」

「く・・・苦しい・・・コレ・・・・・・」

さらに締め上げられたことで、木の葉丸と呼ばれた男の子は呻き声を出す。

金髪の少女の側にいるその友達二人は心配そうな声で叫ぶ。

「こら! 黒ブタ!! 木の葉丸を放さないと、このアタシが許さないってばよ! このバカ!!」

転ばされた少女が起き上がり、さらに大声で叫ぶ。

(バカはアンタでしょ! 相手あおって、どーすんのよ!)

ピンク色の髪の少女が後ろから金髪の少女を締め上げながら、小声で言う。

「ムカつくじゃん・・・お前・・・・・・大体、チビってきらいなんだ・・・・・・

 おまけに年下のクセに生意気で・・・・・・殺したくなっちゃうじゃん・・・・・・」

「あーあ。私・・・知らねーよ・・・・・・」

砂隠れの少年の連れの少女が投やりに言う。

「ま、このドチビの後はそこのうるさいチビね!!」

そう言って、砂隠れの少年は木の葉丸を持ち上げたまま殴ろうとする。

「この・・・・・・!!」

金髪の少女は助ける為に駆け出す。その時何か鈍い音がし、砂隠れの少年が男の子を持つ手を放す。

足元には小石が転がっている。

「よそんちの里で何やってんだ、てめーは」

声の主は、近く木の太い枝に座っている黒髪に黒い瞳の少年。額には木の葉の忍を示す額宛。

「キャー、サスケ君カッコイイーー!!」

(サスケ!! 何でアンタは、いつもこうでしゃばるんだってば!?)

ピンクの髪の少女が目をハートにしながら叫び、金髪の少女は顔をしかめる。

金髪とピンクの少女、そして現われたサスケという黒髪の少年はスリーマンセルの仲間らしい。

「クッ・・・ムカつくガキがもう一人・・・・・・」

砂隠れの少年は痛む手を押さえながら呟く。

「失せろ」

サスケと砂隠れの少年が睨みあう。

そして・・・・・・

「・・・・・・大丈夫ですか?」

その空気を壊すような優しげな声が響く。

その場にいる全員が驚いて声の聞こえた箇所をみれば、落とされた木の葉丸を抱きとめている長い黒髪を持った後姿。

「だ、だ、大丈夫だぞ! コレ!!」

突然自分を抱きとめて、にっこり微笑む美人に木の葉丸は顔を真っ赤にさせながら叫ぶ。

「クッ、なんなんだよ! おいそこのガキも降りて来いよ!」

そう言って、砂隠れの少年はずっと背負っていた布に包まれていた巨大な物を地面におろす。

「おい。カラスまで使う気か!?」

砂隠れの少女もさすがに止めようとする。

「あらあら、感情にまかせて喧嘩? それって忍としてどうかと思わない?

 黒髪君の反対側の枝にぶらさがってるひょうたん背負った少年も、そう思うでしょ?」

砂隠れの少年と少女の背後から聞こえた声に、またもや全員が驚き、振り返れば赤髪の少女が立っていた。

その少女の口からでた内容に、さらに全員がサスケがいる反対の枝を見る。

そこにはひょうたんを背負い、その目の周りには深い隈がある少年がぶら下がっていた。

「!・・・・・・カンクロウ、やめろ・・・・・・里の面汚しめ・・・・・・」

呼ばれた少年は少女の言葉に一瞬、目を見開いたがすぐに無表情になり、砂隠れの少年に言い放つ。

(こいつ・・・いつの間にオレの隣に・・・・・・それにあの二人も・・・・・・カカシ並みの抜き足だぜ・・・・・・)

彼等の担当上忍である木の葉でも有数の忍であるはたけカカシを思い浮かべる。

三人が声を出すまで、サスケはその存在にまったく気付かなかった。

「ガ・・・我愛羅・・・・・・」

ひょうたんを背負った我愛羅と呼ばれた少年の出現に脅える砂隠れの少年、カンクロウ。

「喧嘩で己を見失うとはあきれ果てる・・・・・・何しに木の葉くんだりまで来たと思ってるんだ・・・・・・」



((アンタもよ! 白。下手に目立っちゃ駄目じゃない!))

((す、すいません。つい・・・・・・))

我愛羅が喋る最中、伝心の術で周囲に気付かれること無く会話する二人。白とミコトである。

木の葉丸が落ちた瞬間、白が飛び出したのだ。

((しょうがないから絡みますか))

((いいんですか?))

((出ちゃったもんは仕方ないでしょ。臨機応変な対応も忍よ。ともかく、あの我愛羅って子のチャクラ・・・・・・))

((・・・ええ。彼とは別に、あのひょうたんからもう一つのチャクラを感じますね・・・・・・))

((じゃあ、もしかしてナルトと同じ・・・・・・))

((・・・・・・『器』の可能性が考えられます))

二人は無表情のまま、木の葉と砂の下忍を観察する。



「聞いてくれ・・・我愛羅。こいつらが先に突っかかってきたんだ!」

「黙れ・・・・・・殺すぞ・・・・・・」

金髪の少女達を指差しながら言い訳をするカンクロウを、殺気を込めた一言で黙らせる我愛羅。

「わ・・・分かった。オレが悪かった」

「ゴ・・・ゴ・・・ゴメンね」

カンクロウと砂隠れの少女、テマリが必死に謝る。

彼等は三人兄弟なのだが、傍目の関係からはそうは見えない。

「君達、悪かったな・・・・・・」

(あのカンクロウにいとも簡単に石つぶて当てるとは・・・できるなコイツ・・・・・・

 それにあの二人の動きと存在・・・・・・オレですら気付けなかった)

感情のない声で隣のサスケに謝罪を述べ、瞬身の術でカンクロウとテマリの間に立つ。

「どうやら早く着きすぎたようだが。俺達は遊びに来たわけじゃないんだからな・・・・・・」

「分かってるって・・・・・・」

「・・・・・・行くぞ」

その場を去ろうとする我愛羅。

「ちょっと待って!」

ピンクの髪の少女が砂隠れの三人を呼び止める。

「何だ?」

「額宛から見て、あなた達・・・・・・砂隠れの里の忍者よね。それにそっちの二人の額宛は見たこともないわ。

 砂は確かに木の葉の同盟国ではあるけれど、両国の忍の勝手な出入りは条約で禁じられているはず。

 そっちの二人は問題外。目的を言いなさい! 場合によってはあなた達をこのまま行かせるわけにはいかないわ」

真剣な表情で問い詰める彼女の名は春野サクラ。

「・・・・・・フン!灯台下暗しとはこのことだな。何も知らないのか?」

そう言って、テマリは通行証を出す。他の四人も各々の通行証を見せる。



「お前達の言うとおり私達は砂隠れの下忍・・・・・・そっちの二人は私達も知らないがな。中忍選抜試験を受けに来た」

そう言ってテマリは白とミコトを見遣る。

「知らなくて当然ね。私達は最近できた『鉄の里』の忍。目的はそっちと一緒よ」

この状況で下手に誤魔化せば、余計に怪しまれる。試験に進めば嫌でも里の名は知れるのだから述べてしまう。

「中忍選抜試験?」

金髪の少女がはじめて聞く言葉のように聞き返す。

「本当に何も知らないんだな・・・・・・中忍選抜試験とは砂・木ノ葉の隠れ里とそれに隣接する小国内の

 中忍を志願している優秀な下忍が集められ行われる試験の事だ」

「何で一緒にやるの?」

「合同で行う主たる目的は、同盟国同士の友好を深め忍のレベルを高め合う事がメインだとされるが、

 その実、隣国とのパワーバランスを保つ事が各国の緊張を・・・・・・」

金髪の少女の問いに律儀に説明するテマリ。



「木の葉丸ってばよ! アタシも中忍選抜試験ってのに出てみよーかなぁ!?」

「おおッ! てか姉ちゃん、何で助けてくれなかったんだ!? コレ!! カッコ悪いぞ! コレ!!」

「バ・・・バカ!! あんなヤツ、アタシだってすぐにやっつけてたってば!!」

そのテマリをあっさり無視して、白に助けられいつのまにか側に戻ってきた木の葉丸と話す金髪の少女。

「てめー! 質問しといてコノヤロー。最後まで聞けー!!」

当然激怒するテマリ。



((・・・・・・あいつにも時々、人の話をあっさり無視することがあったわね))

((・・・・・・ええ))

見事な無視っぷりに、白とミコトの二人の脳裏に思い浮かぶ顔。



「おい! そこのお前・・・・・・名は何て言う?」

瞬身で地面に降りてきたサスケが言う。

「え? わ・・・私か?」

「違う! その隣のひょうたんだ」

少し頬を赤らめるテマリを一言で否定し、隣の我愛羅を鋭い目で射抜く。

「・・・砂瀑の我愛羅・・・・・・」

無表情のまま答える我愛羅。

「・・・オレもお前に興味がある・・・・・・名は?」

「!・・・・・・うちはサスケだ・・・・・・」

かつてナルトの命を狙った、血継限界『写輪眼』をもつ『うちは一族』。

今はサスケを除き、彼の実の兄である『うちはイタチ』により一族は皆殺しにされている。

その戦闘のエリートの血が騒ぐのか、武者震いをしながら答える。

しばらく睨みあう両者。

「あのさ! あのさ! アタシは? アタシは?」

その両者の空気を読まずに割ってはいる金髪の少女。

「興味ない・・・・・・そこの二人・・・名は?」

「俺も興味がある・・・・・・名乗れ!」

あっさり金髪の少女を無視して、白とミコトを見る我愛羅とサスケ。



((偉っそうねー。てか忍が堂々と名乗りあうんじゃないわよ・・・・・・こいつらバカ?))

((うーん。どうしましょうか?))

((・・・・・・はっきり言ってコイツラよりあっちの金髪の子の方が気になるのよね。よし、この状況を利用しますか!))



「・・・・・・興味無いわね」

「なにッ!!」

「・・・・・・!!」

どうでもいいような顔をしてそう述べるミコトにサスケと我愛羅の視線が鋭くなる。

「あんた達なんかに『興味無い』って言ってんのよ」

強者と自負するプライドを傷つけられたのか、不敵に笑うミコトに殺気混じりの視線をぶつける二人。

周りの者は緊迫する空気に身を震わす。



((サスケって子はまだ殺しを経験してないわね。カワイラシイモノだわ。我愛羅って子は経験はあるけど

 余計な感情が混じってるわね。いずれにせよ・・・・・・まだまだね))

自分達の仲間であるナルトの放つ殺気は、憎悪や怒気を含まない、まさに純度高いの殺気である。

まるでナルトそのものが、一切の余分なものを取り除いた『殺意』そのものであるかのように。

共に戦う中で時に放たれるそれは直接浴びなくても身を震わせるものだ。

それを経験している自分達にとっては、どんな殺気でもカワイラシイモノでしかない。



二人の殺気を不敵な笑みで受け止めるミコトが、急に笑顔のまま顔を金髪の少女の方へ向け、そちらへ歩き出す。

「そこの二人には興味無いけど、アナタには興味あるのよね。私はミコト。こっちは白よ。名前を聞いていいかしら?」

そう言って、ミコトと白は金髪の少女の前に立つ。先ほどまで無表情の白も微笑を浮かべる。

しばし呆然としていた金髪の少女は、突然嬉しそうに目を見開き、その青い瞳を輝かせる。

「アタシの名前聞きたいってば!?」

「ええ」

「アタシは『ナル』! 『藤林 ナル』だってば!! いつかあそこに顔を刻み込む『火影』になる女だってば!!」

そう言って、四つの顔が刻まれている火影岩を指差しながら叫ぶ。

彼女こそ、四代目火影『藤林 カヤク』の遺児。そしてナルトの双子の妹である。



((ナルさんですか・・・・・・名前も少し似てますね))

((側でじっくり感じて分かったけど、この子内包するチャクラ量もナルトと同じくらいあるわよ・・・・・・

 ちょっと、この子について調べてみましょうか))

((そうですね・・・・・・))



「そう、ありがと。」

そう言って、自分の顔より下にあるナルの頭を撫でる。

ナルはニシシと嬉しそうに笑う。

「おい! 待ッ「じゃあね」

ナルの方へ行き、自分達をあっさり無視したミコトを呼び止めるサスケをさらに無視して、帰ろうとする。

「あ! そうだってば。 えーと、白? だってば?」

「はい」

呼び止められた白は柔らかく微笑み、応える。

「さっきは木の葉丸助けてくれて、ありがとだってば! 白の『姉ちゃん』!!」

「あ、あ、ありがとうなんだな! コレ!!」

満面の笑みでお礼を言うナルと、顔を真っ赤にさせた木の葉丸。

笑顔のまま表情を凍らせる白と、必死で笑いを堪えるミコト。

「あ・・・あの、ぼ「いいのよ! 気にしないで! じゃあ!!」

間違いを訂正しようとする白の言葉を無理やり遮り、自分と同じ体格の白の襟を片手で掴み上げ瞬身の術で消える。

「・・・・・・行っちゃたってば」

「はー、綺麗な姉ちゃんだったな・・・コレ・・・・・・」

残されてポカンとするナルと、どこか遠くを見ている顔をする木の葉丸。

「ちッ!!」

(まあいい。面白くなってきたぜ・・・・・・)

「・・・・・・行くぞ」

完全に無視され不機嫌ながらも、出会えた強者達に笑みを浮かべるサスケ。

そして憮然としたまま、カンクロウとテマリと共にその場を後にする我愛羅。





そして少し離れた木の上にある三つの影。

「どう思う?」

「まあ、大したこと無いけどさ・・・・・・木の葉の黒髪と砂隠れのひょうたん・・・・・・

 あの二人は要チェックだね。

 『鉄』と名乗った二人は未知数だよ。全体を見ていたはずの僕らですら、その動きが見えなかった。」





「あの木の上にいた三人組・・・・・・様子見ってとこかしら?」

「・・・・・・そうですね。彼等から感じたチャクラは以前、ナルト君と再不斬さんが倒した

 音隠れの忍の遺体に残っていたチャクラと同質のものでした。とりあえずナルト君には『砂の彼』、

 『藤林 ナルさん』、『音の動き』を報告しましょう。

 ・・・・・・て、そろそろ降ろしてもらえません?」

瞬身の術で消えたミコトと、彼女に片手で背負られている白は通りを歩いていた。

二人とも、自分達の様子を見ていた三人組に気付いていた。

「ところで、ミコト・・・・・・どうして僕が訂正するのを止めたんです?」

降ろされた白が笑みを浮かべて尋ねる。少し冷気を孕んでいる。

「オモシロカッタカラヨ・・・・・・」

機械的な口調であっさりと述べるミコト。

移動する二人の周りの凍りついた空間は、彼等が宿に戻るまで続いた。



[672] Re:真の忍 設定2
Name: 朱螺
Date: 2004/11/25 16:37
藤林 ナル

 ナルの双子の妹。お互いに存在を知らない。
 九尾襲来という不幸の中に生まれた唯一の光として、里人達に可愛がられる。
 「お嬢様、お嬢」と呼ばれているが、本人は「ナル」と呼ばれたい。(←木の葉丸と同じ悩み)
 成績は、体術はトップクラスだが、筆記は赤点スレスレ。
 忍術は、その内包するチャクラ量の多さからコントロールが上手くいかず不得手。
 アカデミーでは留年しておらず、シカマル達と同じ年に入学、卒業。
 総合的にドベではない。成績考慮の班構成だが、くノ一二人という形で平均化をはかっている。
 アカデミー時代まではツインテールだったが、卒業試験直前にバッサリ切り落とし、今の長さに。
 いの、サクラを姉のように慕い、ヒナタとは親友。
 シカマル、チョウジ、キバ達とつるんで遊ぶ。男の子の遊びが大好き。



[672] Re[9]:NARUTO 真の忍 10話
Name: 朱螺
Date: 2004/12/03 00:02
――火影は・・・・・・『忍』だと思っていたんだだがな・・・・・・――




ナルトと別れる際言われた言葉が、三代目の脳裏から離れずにいた。

ナルトを追い込んだ木の葉や自分への侮蔑や嘲りという感情からでた言葉には聞こえなかった。

その口調には何か真理のような響きを持っていた。

自分は、木の葉の創始より忍として生きてきた。火影として里を愛し、守る者としての覚悟もある。



『大切な者を守る時、真の忍の力は表れる』



それが長年、忍として生きてきた自分が見出した答えである。

その想いは、広く木の葉の忍達の想いでもある。

ナルトを犠牲にした自分がふさわしくないと言われれば、そうかもしれない。

だが、自分の見出した答えまで間違っているとは思えない。

ただナルトの言葉には、自分を含めた『火影』、ひいては木の葉の忍に対するもののように聞こえた。

それ故に、彼の言葉の真意が分からなかった。

そうしているうちに、続々と自分の部屋に集まってくる気配を感じた。















「召集をかけたのは他でもない」

先ほどの自分の思考など億尾にも出さず、集まった忍達に告げる。

「この面子の顔ぶれで、もう分かると思うが・・・・・・」

「もうそんな時期ですかね・・・・・・」

「すでに他国には報告済みなんですよね。里でちらほら見ましたから――で、何時です?」

マスクで口元を、額宛で左目を隠した、眠そうな目をした者と楊枝を咥えた者が尋ねる。

「一週間後だ・・・・・・」

「そりゃまた急ですね」

三代目はパイプを手に持ち、一息吐く。

「では・・・正式に発表する――今より七日後、七の月一日をもって・・・・・・中忍選抜試験を始める!」

ここに集まった忍たちは、試験の試験管としての任に就く者、受験資格を持つ下忍達の担当上忍をしている者達だった。





「さて・・・・・・まず新人の下忍を担当している者から前に出ろ」

そう言われて前に出たのは先ほどのマスクの男、不思議な服を着ている女、ヒゲをはやした2m近い長身の男。

「カカシに、紅に、アスマか・・・どうだ・・・お前達の手の者に今回の中忍選抜試験に推したい下忍はいるかな?

 言うまでもないことだが・・・・・・形式上では最低8任務以上をこなしている下忍ならば・・・

 あとは、お前達の意向で試験に推薦できる・・・・・・」

(・・・・・・できれば今回、こやつ等の部下には、いや、ナルだけでも参加してほしくないのじゃが・・・・・・)

彼等に意向を問いながら、三代目はナルトが参加する今回の試験の不参加を望んでいた。





眠そうな忍は『はたけ カカシ』。里一の業師と言われ、現在、木の葉で三代目に次ぐ実力を持った忍である。

ナル達下忍七班の担当上忍である。

三人の真ん中の女性は『夕日 紅』。新人上忍ながら、その幻術におけるスキルは相当高い。

また木の葉一の美貌の持ち主と言われている。

彼女が担当しているのは『日向 ヒナタ』、『犬塚 キバ』、『油女 シノ』。

かつてナルトを襲った里でも有数の名家の跡取りの三人で構成されている下忍八班が彼女の担当である。

ヒゲの大男は『猿飛 アスマ』。かつて暗部にも所属していた経験ももつ忍で、その戦闘スキルは非常に高い。

彼が担当しているのは『山中 いの』、『奈良 シカマル』、『秋道 チョウジ』。

この三人もまた、かつてナルトを襲った旧家、名家の跡取り達で、親の代から彼等の術の相性の良さから

スリーマンセルを組んでいる。



ナルの同期達が、悉くナルトの抹殺の事件に関わった名家の直系の跡取りであることから、

ナルトが参加する今回の試験への参加は、三代目にとっては避けたいことであった。

しかし、彼等が里でも特に血継限界・秘伝秘術を伝える家の忍である為、早い段階からの経験を積ませたい

というのが、彼等の家と里の思いでもあった。紅班にいたっては、すでに試験を想定した修行も課していると聞く。

その為、もし火影の権限で彼等の試験参加を止めさせるなら、その理由も話さなければならない。

そうなればナルトのことも言わなければならなくなり、里に混乱が起こる。





「まぁ通例、その倍の任務をこなしているのが相応じゃがな・・・・・・」

悟られぬよう、火影の意見を言う。

(聞くまでもない・・・・・・あいつ等には、まだ早すぎる)

火影の言葉を聴きながらアカデミーで教師をし、試験の試験管の一人としてこの場にいるのは中忍『うみの イルカ』

彼は、アカデミー時代、ナル達の担任を務めていて、ナルを四代目の娘と見ずに接する為、彼女に特に懐かれている。

「じゃあ、カカシから・・・・・・」

三代目の言葉にカカシは左胸の前で印を組み、構える。

「カカシ率いる第七班、うちはサスケ、藤林ナル、春野サクラ・・・・・・以上三名、

 はたけカカシの名をもって中忍選抜試験に推薦します」

「なに!?」

思わず声をあげるイルカ。

「紅率いる第八班、日向ヒナタ、犬塚キバ、油女シノ・・・以上三名、夕日紅の名をもって左に同じ」

「アスマ第十班、山中いの、奈良シカマル、秋道チョウジ・・・猿飛アスマの名をもって左に同じ」

「・・・・・・ふむ・・・全員とは珍しい・・・・・・」

(・・・・・・やはり参加するか・・・・・・・)

予期していた三人の返答に最悪の事態が頭をよぎるが、それを表情には出さず言う。

予期はしていたが、その年の新人下忍全員が参加するのは極めて異例である。



「ちょ、ちょっと待ってください!!」

「なんじゃ、イルカ?」

「火影様、一言言わせてください!! さしでがましいようですが、今、名を挙げられた九名の内ほとんどは・・・

 アカデミーで私の受け持ちでした。確かに皆、才能ある生徒でしたが試験受験は早すぎます。

 あいつらには、もっと場数を踏ませてから・・・・・・上忍の方々の推薦理由が分かりかねます」

「私が中忍になったのは、ナルより六つも年下の頃です」

「ナルはアナタとは違うッ!!」

天才エリートと言われたカカシを基準にするなとイルカは吼える。

「アナタはあの子達をつぶす気ですか!? 中忍試験とは別名・・・・・・」

「大切な任務に、あいつ等はいつもグチばかり・・・・・・一度痛い目を味わわせてみるのも一興・・・・・・

 つぶしてみるのも面白い・・・・・・」

「な・・・何だと!?」

生徒を愛するイルカは、自分の道具のような物言いをするカカシの言葉に声を荒げる。

「・・・・・・と、まぁ、これは冗談として。

 イルカ先生・・・あなたの言いたいことも分かります・・・腹も立つでしょう。しかし・・・・・・」

「ぐッ・・・・・・」

「カカシ・・・もうやめときなって・・・・・・」

かなり険悪になってきている空気に、紅がカカシを止める。

「口出し無用! アイツらはもうアナタの生徒じゃない・・・今は・・・・・・私の部下です」

「・・・・・・・・・・・・」

彼等の直接の上司という立場からの言葉に、イルカは何も言えなくなる。

(・・・ったく、めんどくせー奴らだな)

傍観を決め込んでいたアスマは内心ぼやく。





「・・・・・・」

(この三人・・・・・いや、カカシだけにでも話すべきか・・・・・・)

カカシはナルトとナルの父、四代目火影の教え子で、九尾が封印されたのが双子の兄、ナルトであることを知る

数少ない者である。封印後、壊滅状態の里の状況から暗部への配属となり、長期の里外任務に就いていた。

カカシ自身も師を失った悲しみを忘れる為、暗部の任務に没頭していた。

その時、すでに上忍の位に就いていたとはいえ彼は14歳。

正直、ナルトのことを気遣える余裕をもっていなかった。

彼がナルトの抹殺が行われたことを知ったのは、事件から一月後のことだった。















「どうしたんです、火影様?」

中忍試験の会議が終わった後、カカシは自分だけだけ私室に来るよう言われた。

私室には三代目の他にご意見番の二人もいた。

何か面倒なことしちゃったかな? と、その時はまだ気楽に考えていた。

「・・・これから話すことは、里の者ではワシとここにおるご意見番以外は知らぬことじゃ。決して他言は許さぬ」

Sランクの任務を言い渡すような厳しい口調で三代目はカカシに告げる。

「今回の試験・・・ある者が参加する・・・・・・」

そう言って、一枚の書類を渡した。

「・・・・・・!!」

受け取る前はいつもの眠そうな表情をしていたが、内容と写真を見た瞬間、その右目が大きく見開かれた。

写っているのは、己が受け持つ師の忘れ形見に、何より師と同じ顔を持つ子供。

九尾封印の証の一つとも言える両頬の痣。

所属は、上忍や暗部の間で噂の一つとして話題に上っている『鉄の里』とある。

「・・・・・・なッ! 三代目、ご意見番、この子は!?」

震える声で問う。

「・・・・・・お前は、ワシ等以外では真実を知る唯一ともいえる者じゃからな・・・・・・

 双子の片割れ、四代目の息子・・・・・・『ナルト』じゃよ・・・・・・」

その名を聞きたかったのか、聞きたくなかったのか、目を見開いたまま静かに書類を置き、深く息を吐いた。

「・・・この子は・・・・・・ナルトは八年前に三代目自身の手によって死んだと聞いていましたが・・・・・・?」

カカシの問いに、三代目は八年前の出来事でカカシに伝えていなかった部分、

事件の発端となった名家と旧家の関わり、死んだのではなく行方不明であったことなどを話した。

何かに懺悔する様に。

話を聞いて、カカシは呆然となった。九尾が復活しかけ、止む無く討ったと聞いていたからだ。

「・・・ナルトは・・・・・・復讐の為に木の葉へ?」

「・・・・・・今朝、あの子に会った。あの子からはこの里への憎悪は感じられなかった。


 木の葉に何の感慨も持っていない目じゃった・・・・・・」

今朝のナルトの目を思い出す。その目に憎悪は感じられなかった。木の葉への執着そのものが。


英雄の、木の葉を愛した四代目の子をそのようにしてしまったことが酷く辛かった。



「なぜ先程、俺達がナル達を推薦するのを止めなかったんですか!? 状況如何でナル達との殺し合いに!!」

「各名家は特殊な術を伝えている家じゃ。その家を継ぐであろうあの子等に、経験を積ませたいとするのが、

 上層部の考えじゃ。里は慢性的に忍不足にあるからの・・・・・・もし、今回の試験に出さないならば

 その理由を言わねばならん。ナルトが生きていたことを話せば、里が大混乱に陥る。下手をすれば

 ナルトを含めた鉄の里との戦争へと発展しかねん。じゃが、鉄の里の戦力は全く不明。ナルト個人ですら

 その実力は、もしかすればワシを超えておるやもしれん。そんな者が下忍の地位に居るような里には

 うかつに手も出せん。非同盟国を理由に参加を拒否しようとしたが、すでに鉄の参加は各国に知られておる」




様々な思惑がからみ、もはや回避は不可能な状況。その場にいる四人は首を垂れるしかなかった。















あとがき

カカシ、ナルトを知る。です。
正直、カカシにナルトのことを知らせるべきか迷いました。
真実を知る者として扱うかも。
でもまあ、知っててもいいかと思い、こうなりました。
彼には、原作以上に自責の念にかられてもらいましょう。
いや、わたし嫌いじゃないですよ、カカシ。



[672] Re[10]:NARUTO 真の忍 11話
Name: 朱螺
Date: 2004/12/04 21:57
中忍試験を数日後控え、ナルトは再び早朝の木の葉隠れを歩いていた。

ただ、今回は街ではなく森の中を。

八年前、自分が木の葉を出るきっかけとなった名家からの襲撃事件。

あの日、追っ手から逃れる為にこの森に逃げ込んだことを思い出していた。

深手を負い、九尾の回復力がなかなか追いつかず、樹の根元でしばらく体を癒していたことを。

その時、出会った少女のことを。

追っ手の家の者だと分かる、震えながら傷薬を塗ってくれた濃紺の髪に、白い宝玉の瞳をもつ少女のことを・・・・・・

すぐ側に追っ手の気配とチャクラを感じ、彼女に何も言えずに、その場を後にしたことを。















早朝の鍛錬を終えた日向ヒナタは、木漏れ日さす森の中を歩きながら、数日前のことを思い出していた。

担当上忍である紅から言われた、中忍試験へ自分達を推薦したという話を。

チームメイトのキバは興奮したように喜び、シノも無言ながら意欲があるようだった。

そして言われた一言、「試験までの間は、ヒナタが考える期間だ」と。

スリーマンセルでの登録である為、自分が出なければキバもシノも参加できない。

自分に自信が持てないヒナタは二人の為に参加しなければと思いながらも、正直不安に駆られていた。

親友のナルなら、喜んで参加するだろう。彼女の頑張りにはいつも励まされ、勇気付けられる。

そう考えている内に、自分が歩いている場所が何年も前に来たことがある場所だと気付いた。

身体中に切り傷を負い血に染まった服を着た、親友と同じ金の髪と空色の瞳を持つ子供と出会った場所だと。

日向の跡継ぎとして、毎日父から厳しい修行を課せられていた。

修行が上手くいかず叱責を受け、逃げるようにこの森に来た時だった。

その子と出会った時、その様子から自分は恐怖を覚え、震えていたのを思い出す。

何より、自分を見たその瞳に。敵を睨むかのような視線に。

そのような視線を受けたのは初めてであった為に言いようのない恐怖に駆られた。

震えながら、あわてて樹の幹に体を隠して様子を見れば、こちらを睨みながらも、時々苦しそうに呻く子供の姿。

恐る恐るその子の前に出て、常備していた日向特製の傷薬を深く傷ついた腕に塗ってあげた。

その間に自分を睨んでいた瞳が、何か不思議なものを見るかのような瞳になった。

子供が何かを言おうと口を開こうとするが、喉がかれて声が出せないようだった。

水を汲んでくるからと言って、その場を離れた。しかし戻って来て時、その場に子供はいなかった。

すぐ後、自分と同じ日向の家の人や他の忍の人達が何人もあらわれた。

金の髪の子供を見ませんでしたか、と聞かれたが、思わず知らないと嘘をついてしまった。

家に戻った後も父からの追求もなかった。

その後、その子を探している内に出会ったのがナルだった。

しかし、ナルに聞いても違うと言われ別人だと分かった。それ以来、その子の事は記憶の片隅に追いやられていた。

何故、今思い出したのだろうと思っていると、その子と出会ったその場所に佇む、金色の髪の存在が目に映った。





「・・・ナルちゃん?」

この里で金の髪を持つ子は親友のナルだけであるため、彼女だと思い、ヒナタは声をかけた。

しかしその声に振り返った顔は同じ顔の造りではあるが、その雰囲気の違いからすぐに別人だと分かった。

同じ金の髪のはずなのに、ナルが太陽だとすれば、目の前の少年のそれは月。

同じ色の瞳のはずなのに、ナルの瞳はどこまでも広がる空、少年のそれはどこまでも深い海。

醸し出す雰囲気だけで同じ色のはずが、まったく正反対に見える。

ヒナタは思わず息を呑んだ。

少年は自分を見た瞬間少し目を見開いたが、すぐに無表情になった。

目の前の少年の存在で、ヒナタは先程まで思い出していた少年の顔を、急にはっきりと思い出し、

少年の顔と重なった。





一方、名を呼ばれた少年、ナルトも驚いた。

近づいてくる気配とチャクラには気付いていた。そのチャクラが日向一族のものであるとも。

一瞬姿を隠すかと考えたが、そのチャクラに攻撃意思を感じなかったことと、

なぜか、以前どこかで感じたことのある懐かしいさがあったからだ。

かけられた声に振り向いて、目に映る少女の顔に先程まで思い出していた、幼き少女の面影と重なる。

ナルトには珍しく、驚いた表情をみせた。





「あ、あのッ!! む、昔・・・ここで・・・・・・あの・・・・・・」

ヒナタには珍しく、大きな声だったが、途中からモゴモゴと口篭ってしまう。

ナルトも以前自分を助けてくれた少女だと確信していた。あの時の礼を言わねばならぬとも。

しかし己は、現状木の葉に監視を受けている身であり、何より九尾の器。木の葉にとっての忌み子。

ここで、彼女との接触がバレ、彼女も自分、ひいては鉄の里にも何らかの形で不利益に発展することは避けたかった。

「・・・・・・」

「あ・・・・・・あの、何でもないです・・・・・・すいません・・・・・・」

結局、今はそれ以上の言葉は聞かないと、目を細めてヒナタを見据える。

下を向いて喋らなくなったヒナタの横を通り過ぎる。

(・・・すまない・・・・・・)

ナルトはそのまま、森の中に溶け込むように消えていった。



その後姿をじっと見ていたヒナタはナルトが着けていた額宛を思い出す。

手裏剣とクナイが刻まれた見たことのない里のものだったが、あのように堂々と姿を現しているのは

木の葉に正規に滞在している者、今回の中忍試験の受験者かもしれない。

確証はないが、何故かヒナタはそう思った。試験に参加すれば、もう一度会えるかもしれないと・・・・・・




















(先生、先生のもう一人の宝物、ナルトが生きていました・・・・・・でも、やっぱり許されませんよね。

 里は・・・俺は先生の最期の願いを、想いを裏切ったんです・・・・・・)

同じ頃、はたけカカシはとある墓の前に来ていた。

墓に刻まれた名は『藤林 河矢久』。英雄、四代目火影の墓だった。

墓といっても忍者である為、中には遺体はおろか、骨すらない。それでもそこは里人にとって四代目の墓だった。

昨日、三代目に聞かされたナルトのこと、八年前の真実を思い、何故ナルトの側にいなかったのか、

自分がいれば、このような事態にはならなかったのではと、四代目の前で懺悔するよう佇んでいた。

「あーー、カカシ先生だってば!!」

深く思い沈んでいたカカシを現実に引き戻す大声が辺りに響く。あまりに思い沈んでいた為、まったく気付かなかった。

振り返れば、四代目の宝、教え子のナルが花を持ってやって来た。

「おーー、ナル。朝稽古の帰りか?」

瞬時にいつもの眠そうな顔に戻し答える。

ナルは朝修行とその後の、四代目への墓参りを日課にしていた。

「先生も、父さんの墓参りだってば?」

「うーん、ま! そんなところかな。四代目は俺の先生だった人だしね」

ナルはニシシと笑って花を添え、目を閉じ静かに手をあわせた。

その様子を、カカシはなんともいえない表情で眺めていた。

「カカシ先生、今日は珍しく早起きだってばね! 今日の任務は遅刻にならないってば!!」

お祈りをすませ、振り返ったナルはカカシを見上げる。

「あのねぇ・・・・・・別に寝坊してるんじゃなくて、隣のお婆さんがぎっくり腰になったり・・・・・・」

「ハイ! 嘘ッ!!」

いつもの調子で答えるナルに沈んでいた気持ちが少し引き起こされる。

だが、やはり一時的なもので、目の前の少女と、自分達が里の罪を押し付けた少女の実の兄が

争うことになるかもしれないという恐怖が、カカシの心を締め付ける。

「アハハ、じゃあな、ナル。遅刻しちゃ駄目だよ」

これ以上、ナルの顔を見ることが辛くなったカカシは、それでも悟らせることなく、場を後にした。

「ムーーッ! それは先生の方だってばッ!!」

ナルが怒って叫び返す。





「先生、どうか二人が争うことにならないよう・・・・・・」

空を見上げ、カカシは呟いた。

晴れ渡る空の色は、今日も、想う三人の瞳と同じ色だった。















あとがき

はい、実はナルトはヒナタと会ってました! です。
うーん、次話から中忍試験が始まるんですが、
ナルト視点で、会場からにすればいいか、
もう一人の主人公ナル視点、つまりリーとの出会い等も書くべきか、を迷ってるんです。
正直、色々書きすぎて展開遅いですし、ナル視点で書いてもほとんど原作と同じで変わらないんです。
さっさと試験を開始すべきでしょうか?



[672] Re[11]:NARUTO 真の忍 12話
Name: 朱螺
Date: 2005/01/08 18:19
「大量ね・・・・・・」

「・・・・・・そうですね」

「・・・・・・」

ナルト、白、ミコトは試験開始を言い渡されているアカデミー301の教室に集まってくる各国の下忍達を見て呟いた。



((とりあえず言っとくわね。あの瓢箪を背負った子・・・・・・あの子が『器』の可能性のある砂隠れの下忍よ))

((確か名は『砂瀑の我愛羅』でしたね・・・・・・))

ミコトと白は先日会った砂隠れの三人の方を見ながらナルトに術で話しかける。

ナルトは我愛羅を見遣り、チャクラを探った。

そして確かに彼の中に感じる、本人とは別の妖のチャクラ。

((・・・・・・間違いないな。奴の中には俺と同様、妖がいる。ただ、俺のように封印という形ではなさそうだが))



妖を体内へ入れる方法はナルトの様に『封印』させる方法のほかに、対象の魂に『憑依』させる方法もある。

我愛羅のチャクラと妖のチャクラの比率から、憑依であることを見抜いていた。



((他にそれなりに実力がある奴がいるか探るぞ。特に、試験に絡んでいる可能性のある音隠れの者のチャクラを・・・・・・))

ナルトが他の受験生達の実力を探ろうと二人に指示を出そうとしたとき、勢いよく教室の扉が開いた。





「す・・・・・・すげー」

「・・・・・」

「な・・・何よ・・・これ・・・・・・」

入ってきたのは木の葉隠れ下忍七班。藤林ナル、うちはサスケ、春野サクラ。

かなり、ギリギリで入ってきたことと、勢いよく開かれた扉の為に、他の受験生の注目を浴びる。





((あら、あの子も・・・・・・))

((・・・ナルト君・・・・・・あの金髪の子が、故四代目火影の遺児、『藤林ナル』さんです・・・・・・))



白とミコトはナルトに似た、少女のことをすぐに調べたが、身元はあっさり判明した。

ナルトに九尾を封印し散った、木の葉の英雄四代目火影の忘れ形見、『藤林ナル』。

白は、己に九尾を封印した四代目の娘のことを知れば、ナルトが動揺しないかと心配したが、

「そんな軟なわけないでしょ。憎むなんて真似しないから、私達はアイツの下にいるんでしょ」

というミコトの言葉で、全てナルトに話していた。



((どう? 外見だけじゃなく、チャクラの質も似てると思わない? 色んな術を使うアンタは特異性は無いけどさ。

 それでもアンタの自然体のチャクラと、あの子のチャクラは似てるのよね))

((・・・・・・確かに似ているな・・・・・・))

やけにあっさりと類似を認めた。裏があろうとなかろうと、とりあえず現状を認める。

認めた上で、自分の行動を決める。忍として的確な判断を下す為である。

((・・・・・・俺はそうそう屋敷の外に出ていたわけじゃないからな。あの女を見るのは初めてだ・・・・・・

 おそらく、三代目が気を回したんだろう。九尾の器が、四代目の娘と会わないようにとな))

((あまりにも似てるじゃない? 兄弟かと思ってさ。アンタから親類とかの話聞いたことなかったし))

((・・・・・・そういえば、考えたことも無かったな。あの時に必要だと感じていたのは、生き抜く術だけだったからな))



話している内容はナルトの出生のことで、とてつもなく重い話のはずなのに平然と話している。

ナルトはよく、自分のことを『器』と称するが、自虐的ではなく事実の一つとして口にする。

『ナルト』としての自分と、『器』としての自分。どちらを否定しても、それは自分足り得ないから。





((もし、兄妹だとしたら、ナルト君は四代目の息子ということになりますね。では、四代目は自分の子に九尾を!?))

((・・・可能性の問題だが、それが事実だとしても、不思議ではないだろう。大名から血縁者の暗殺依頼も少なくない。

 この大陸外の異国で、広く布教されている宗教の聖典には、人の最初の殺人は弟殺しとも記されている。

 血の関係は確かに尊い。だが血の絆に縛られすぎて、血の絆に甘えすぎて

 その者がどの様な人間なのか、どう向き合っていくのかを忘れてしまえば、その絆は時に大きな毒となる。

 それをお前達は一番知っているだろう?))

((・・・・・・はい・・・))

((・・・・・・まあね・・・))

((俺は、血の繋がりを感じたことはないから正直その毒の痛みも解からん。俺には語る資格すらないかもしれんな。

 だが繋がりがないからこそ、俺は共に歩むと決めた者と向き合うと決めた。

 俺がより『人』を知り、学び、『人』としている時ならば甘えよう。だが、『忍』である時はそうはしない。

 最初からある『家族』や『仲間』などゴメンだ・・・・・・))







実の父に殺されかけた白。一族に捨てられたミコト。他者を想う気持ちと、『鬼人』と呼ばれ利用し利用するという

忍の関係との比重に苦しんできた再不斬。親を失い憎しみに身を委ねそうになっていた子供達。

年齢的にまだまだ子供な自分達に里を守らせている親方や里人達の痛み。

その度にナルトは、時に言葉にできないながらも必死に向き合った。その者が何を抱えているのかを必死に探った。

温かさ、哀しみ、喜び、痛み。時に互いを傷つけながら目を逸らすことだけはしなかった。

それだけのことをして、互いを認め、共に歩む。そこで初めて『仲間』と言えるのだ。

しかし、木の葉隠れで言われるのは、その者がどの様な者か、どんな思いを持つのかを抜きに、

里人は皆『仲間』や『家族』だ、という関係をまず教える。

では何故、自分はただ迫害され続けたのか。以前にも自分同様、木の葉で迫害や中傷を受けた者がいたのか。

長である代々の火影達が、見逃し続けているのだ。

『人の愚かさ』を『里を愛する』という言葉で目を逸らして。

『愚かさ』を否定するわけではない。それもまた『人』として誰もが持っているものだから。

ただ、目を背けたくなるような愚かさにも向き合う。向き合って認める。

人の世の闇を生きる『忍』。人を知り、人を利用する、時に人の感情や想いすらも。

人を欺き、裏切り、仮面を被る。それを常とする自分達が、それでも独りではなく誰かと共に歩むならば

持たなければならない最も重要な考えの一つだとナルトは思っていた。















あとがき

気付けば、一月放置。本当はイビキ登場まで書きたかったんですけど
今回の話はちょっと重くなっちゃったし、ナル達の会話は明るめだから
ちょっとバランスが・・・・・・
実生活がちと忙しく、またほど一月放置しちゃうかも。
なんとか連載は続けたいと思ってますので。



[672] Re[12]:NARUTO 真の忍 13話
Name: 朱螺
Date: 2005/05/16 22:00
「サスケ君、おっそーい!!」

ナルト達が、ナルについて話していると、甲高い声が響き、サスケの背に飛びつく影があった。

「私ったら久々にサスケ君に逢えると思って~、ワクワクして待ってたんだからー!」

下忍十班の山中いのである。彼女はサスケのことが好きで、そのことでサクラとは親友でもありライバル関係にある。


「サスケ君から、離れーッ!! いのぶた!!」

「あーら、サクラじゃない。相変わらずのデコりぐあいね。ブサイクー」

「なんですってー!!」


かなり醜く罵り合っているようにみえるが、二人にはいつものことであり、挨拶のようなものになっている。

「なんだよ、こんなメンドクセー試験、お前等も受けんのかよ?」

サスケに抱きつくいのの背後から、かなりやる気のなさそうな口調で話す男の子が現われる。

「シカマルにチョウジ! お前等も受けるのかってば!?」

「よお、ナル。ったく、クソめんどくせーー!」

現われたのは、山中いのとスリーマンセルを組む、奈良シカマルと秋道チョウジ。

奈良シカマルは頭はかなり良いのだが、生来のめんどくさがりの為、何事にもやる気が無い。

秋道チョウジは、その忍術がチャクラと共にカロリーを大量消費する秘伝忍術を伝える家の為、常に何かを口にしている。

今も、ナルに応えることなく延々と手に持つお菓子を頬張り続けている。



「ひゃほーー! みーっけ!!」

そこへ、一際騒がしい声が響く。

「こ・・・こんにちわ・・・・・・」

「・・・・・・」

真っ先に声をかけたのは犬塚キバ。忍犬を使役する犬塚家の嫡男で忍犬赤丸を頭に載せている。

控えめに挨拶するのは日向ヒナタ。先日ナルトと再会し、また、己自身の為に選抜試験受験を決意したようだ。

挨拶もなく、寡黙な少年は油女シノ。蟲を使役する油女一族の跡取りである。

夕日紅率いる下忍八班である。


「これはこれは、皆さんおそろいでェ!!」

どこか楽しげに喋るキバ。

「何だと。お前等もかよ! ・・・・・・ったく」

「くー、なるほどねー。今年の新人下忍9名、全員受験ってわけか! さて、どこまで行けますかねぇ、俺達?

 ねぇ? サスケ君」

挑発するように、今年のNo.1ルーキーであるサスケに話しかける。

「フン、えらく余裕だな。キバ」

アカデミーでは授業を抜け出すなど問題児として名を馳せていたキバの自信に、こちらも余裕を見せて対応するサスケ。

「俺たちは相当修行したからな・・・・・お前等にゃ負けねぇぜ」

「うっせーってば!! サスケならともかくアタシが負けるか!!」

キバの言葉に過敏に反応したのはシカマルと話していたナル。

「ご・・・ごめんね。ナルちゃん・・・・・・キバ君もそんなつもりで言ったんじゃ・・・・・・」

オズオズと止めに入るヒナタ。

「あっ、ヒナタ! ヒナタも試験受けるんだってば!? 合格するよう頑張ろうってばよ!!」

親友のヒナタが目に入り、パッと表情を輝かせるナル。

「う・・・うん。頑張ろうね」

ナルの笑顔に緊張もわずかに解れる。ヒナタはいつもナルの笑顔に励まされている。

ナルがふと横を見ると、シノが静かに佇んでいる。

「シノ! シノも頑張ろうってば!!」

その空気を破るようにナルは声をかける。

「うむ・・・・・・だが、スリーマンセルでの登録だからチーム戦だ。言うなれば、敵同士での・・・・・・」

空気を破られて、不機嫌になるかと思われたが、気にした様子もなしにナルに応える。

「ムー、とにかくお互い頑張るってば! 個人戦でシノと当たっても全力だってば!!」

「そうか・・・・・」

「シノ、相変わらず表情が無いってば!!ほら笑うってばっ!!」

そう言って、ナルは手を伸ばし、シノの両頬を引っ張る。シノの方が背が高く、襟のある服を着ているので背伸びをしながら。

「・・・・・・はなへ(はなせ)・・・・・・」

「ニシシ。面白いってば、シノ」

一見正反対の性格の二人だが、何故かシノはナルが話しかければきちんと応え、ナルもシノの近寄りがたい雰囲気を気にしない。

「「・・・・・・手前ぇ等こんなところで、何イチャついてやがる!!」」

完全に二人の世界を創りだしていたナルとシノに、シカマルとキバが怒鳴りつける。

「アハハ。シノにあんなこと出来るのって、ナルくらいだろうね」

お菓子を頬張りながら、暢気にチョウジが言う。





((・・・・・・な、なんというか、アカデミーの延長ね・・・・・・))

各国の下忍が緊張のため静かに過ごす中、圧倒的な存在感を示す一団に、頬を引き攣らせるミコト。

白も隣で苦笑している。

((・・・・・・))

ナルトは少し真剣な表情で彼女達を見ていた。

((ナルト?))

表情の硬いナルトに気付き、ミコトが声をかける。

((木の葉隠れの名家や旧家の者達だ・・・・・・うちは、油女、犬塚、奈良、山中、秋道・・・日向・・・・・・))

彼等のチャクラを探ると、それがかつて自分が相手をした血継、秘術を伝える一族の者達だと判った。

((・・・・・・それってナルト君が木の葉を出るきっかけになった・・・・・・))

((・・・ああ。四代目の娘だけでなく、あの時の名家、旧家の子息達を・・・・・・何のつもりだ?))

自分が参加することが分かっているはずなのに、彼女達のように自分に深く関わる者達を参加させたのはどういうつもりか。

自分の命を狙った一族の者達ということではなく、そんな者達を参加させた三代目の判断を訝しんでいた。

((・・・なんにせよ、当たれば叩くだけでしょ。目立たない程度に・・・・・・))

三代目が何を考えているかは分からない。自分達の目的は試験の突破であることから、そこで考えることを止めた。





「おい、君達!! もう少し、静かにした方がいいな・・・・・・」

騒がしいナル達に、木の葉の額宛をした年上の忍が注意する。

「君達が『忍者学校』出たてホヤホヤの新人9人だろ? かわいい顔してキャッキャッと騒いで・・・・・・まったく

 ここは遠足じゃないんだよ」

「誰よーアンタ? エラソーに!」

「ボクはカブト。 それより辺り、見てみな」

「辺り?」

そう言われ、一同は他の下忍たちの方を向く。

雨隠れの額宛をした者達が額に青筋を浮かべながら、ギロリとこちらを睨みつけていることに気付いた。

「うっ・・・」

「君の後ろ・・・・・・あいつ等は雨隠れの奴等だ気が短い。試験前でみんなピリピリしてる。どつかれる前に注意しとこうと思ってね」





((注意ね・・・・・・確かにあの子達の態度は、自分達を的にしかねないものだわ。

でもそれ以上におかしいのは、放っておけば的になって騒いでくれてる一団の中に、態々入っていくアナタ・・・・・・))

((あの人のチャクラは医療系ですね。それも相当の・・・・・・そして、微かに混じっているこのチャクラは・・・・・・))

((・・・・・・問題は、何が目的であの集団に態々近づいたのか・・・・・・))

ナル達を見ていた三人も、現われたカブトと名乗る青年を注意深く観察していた。





さすがに、騒いでいた全員が大人しくなる。

「ま! 仕方ないか・・・右も左も分からない新人さん達だしな。昔の自分を思い出すよ」

「カブトさん・・・・・・でしたっけ?」

「ああ」

「・・・じゃあ、アナタは2回目なの?」

試験に詳しそうな様子から、経験者なのかと遠慮がちにサクラが問う。

「いや・・・・・・7回目。この試験は年に2回しか行われないから、もう四年目だ・・・・・・」

「へー、じゃあこの試験について色々知ってんるんだ?」

「まあな」

「へー、カブトさんてすごいんだー」

「へへ・・・・・・じゃあ、かわいい後輩にちょっとだけ情報をあげようかな。この忍識札でね」

賞賛に気を良くしたように、カブトはポーチから何枚かの札を取り出す。

「忍識札?」

「簡単に言えば、情報をチャクラで記号化して焼き付けてある札のことだ。この試験用に情報収集を四年もかけてやった。

 札は全部で200枚近くある。見た目は真っ白だけどね・・・この札の情報を開くには――」

そう言って、左指で札を押さえ、右手で印を組む。

「・・・・・・何やってるのー?」

「ボクのチャクラ使わないと見ることができないようになっている・・・・・・例えばこんなのがある・・・・・・」

真っ白だった札がチャクラで反応をおこし、大陸の小地図が浮き上がった。

「うわあ、すごい見やすい立体図だ! 何の情報コレ?」

「今回の中忍試験の総受験者数と総参加国・・・・・・そして、それぞれの隠れ里の受験者数を個別に表示したものさ」

「その札に個人情報が詳しく入ってるやつ・・・あるのか?」

じっと見ていたサスケが尋ねる。

「フフ・・・・・・気になる奴でもいるのかな? もちろん今回の受験者の情報は完璧とまではいかないが焼き付けて保存している。

 君達のも含めてね。その『気になる奴』の君が知っている情報を何でも言ってみな。検索してあげよう」

「砂隠れの我愛羅・・・・・・木の葉のロック・リー。それと・・・・・・」

「『鉄』の白姉ちゃんに、ミコト姉ちゃんだってば!!」

サスケの言葉をナルが引き継いだ。





((・・・・・・))

((・・・相変わらずか?))

あの日からずっと女として間違えられたまま、大声で『姉ちゃん』と呼ばれ、さすがの白も頬を引き攣らせる。

ミコトは隣で笑いを堪えるのに必死になっていた。





「なんだ、名前まで分かってるのか。それなら早い」

そう言って、カブトはすばやい動きで束から四枚の札を抜き取った。

「まずは、ロック・リーだ。年齢は君達より一つ上だな。任務経験はDランク20回、Cランク11回。班長はマイト・ガイ上忍。

 体術がこの一年で異常に伸びてる・・・・・・他はてんでダメだな。

 昨年、実力のある新人下忍として注目されたが、試験には出てこなかった。君達同様、今回初受験。

 チームメイトは日向ネジにテンテン」

七班が301の教室に来る途中に一悶着あり、サスケはロック・リーと名乗る者と手合わせすることになった。

忍・体・幻術を見破る力を持つと言われる写輪眼を発動させても、

動きを目で追うことが出来ないほどに高められた純粋な体術を目の当たりにし、

なす術も無く完敗したのだ。ちなみに彼はサクラに一目惚れし、いきなり告白までしている。


「次は砂瀑の我愛羅。任務経験Cランク8回、Bランク1回・・・・・・すげーな下忍でBランクか。

 他国の忍で新人だからこれ以上詳しい情報はないが・・・・・・ただ任務は全て無傷で帰ってきたそうだ」

Bランクを経験して、なお無傷の下忍という言葉に、聞いている者達も真剣な表情になる。


「次に鉄の里、白とミコト・・・・・・この里は近年誕生した小国で、情報らしい情報がほとんど手に入らない。

 しかも新人だ。ボクでも直前に二人の写真を手に入れたばかりだから、情報は皆無といえる・・・・・・」

白とミコトの二人の写真を並べる。鉄は各国の暗部をもってすら、隠れ里としての情報を掴めない。

故に各国上層部にとって戦争の縮図たる中忍試験での彼等の参加は、ありがたいものだった。


「木の葉・砂・雨・草・滝・音・鉄・・・・・・今年もそれぞれの隠れ里の優秀な下忍がたくさん受験に来ている。

 ま、音・・・それに鉄はさっき言ったとおり近年誕生した小国の里なので情報はあまりないが―――
 
 それ以外は凄腕の隠れ里だ」

「な・・・なんか自信なくなってきましたね・・・・・・」

「つまり・・・ここに集まった受験者はみんな・・・・・・」

「そう! リーや我愛羅、そして鉄から唯一参加してきた白やミコトのような・・・・・・

 各国から選りすぐられた下忍のトップエリート達なんだ・・・・・・そんな甘いもんじゃないですよ」

そう言ってカブトは締めた。





同じ頃、301の前で教室の扉をカカシはじっと見続けながら、七班を推薦した時のガイの言葉を思い出していた。


「そんなに甘いもんじゃないぞ。お前は焦りすぎだ・・・・・・イルカの言うとおりだな。俺の班も一年受験を先送りにして

 しっかりと実力をつけさせた。もうちょうい青春してから受けさせな」

「フッ・・・いつもツメの甘い奴等だが・・・・・・なーに、お前ンところの奴等ならすぐ抜くよ。あいつらは・・・・・・」

「ぐっ・・・・・・」

「その辺にしておけ。では次・・・新人以外の下忍の推薦を取る」

「ま! ケチつけるなよ・・・・・・」


(とは言ってみたものの・・・さすがに怖い者知らずヤツラも・・・今回ばかりはビビッてるかな・・・・・・

 なによりこの扉の向こうに・・・・・・ナルトもいる・・・・・・)

あの時は積極的に推したが、ナルトが参加していることを知っていたら絶対に止めていた。

カカシにもこの試験がどう動いていくのかがまったく読めなかった。





カブトの話を聞いてからナルはその体を震わせていた。

(さすがの意地っ張りも、この人数で緊張しちゃってる・・・無理もないわ・・・みんな同じ下忍でも、私達って一番ピチピチの新人だもんね。

 なんかナルらしくない・・・ちょっと励ましてやるかな)

「ねぇ・・・ナル。そんなにビクつかなくても・・・・・・」

震えるナルの様子を見て、サクラが励ます。

だがその瞬間、俯いていたナルは満面の笑みを浮かべながら一同を指差し声高に宣言した。

「アタシの名前は『藤林 ナル』! アンタ達にゃあ、負けねぇーってばよッ!! 分かったか―――!!!」

その大声は全ての下忍のはおろか、教室の外にまで響き渡り、カカシのシリアスモードをもぶち壊しにしていた。

「あー、スキっとしたってばよ――!」

「「・・・・・・こ・・・このおバカ――!! いきなり目立って、敵作ってどうすんの――!!!」」

まったく悪びれず、さわやかな笑顔で言ってのけたナルにサクラといのの二人の姉から容赦ない拳骨が振り下ろされた。





「・・・・・・」

「えらく威勢がいいな。イジメが足りなかったんじゃないか? リー」





((・・・・・・先程の言葉は取り消す・・・やはり似ていない))

((ま・・・まぁ、外見だけですから・・・・・・ってどうしたんです? ミコト))

((あ、あの表情(かお)で、大声張り上げるナルトを想像したら、笑えてきて・・・・・・))

((・・・・・・))





「フフ・・・音隠れは小国のマイナーな隠れ里だとよ」

「心外だね」

「あいつら・・・ちょっと遊んでやるか・・・・・・」

「フフ・・・そうだね。残りものの忍みたいな言い方されちゃあね・・・・・・知らないなら、彼のデータに加えてあげようよ

 ・・・・・・音隠れの忍は・・・・・・『それなりに残忍』ってね」










えー、とりあえずスイマセン。年明けてから忙しく、1ヶ月どころか4ヶ月放置・・・・・・
これからも忙しいです。頭の中には色々あるのに文字にする時間が。
ダメだな。言い訳ばっかで・・・・・・ほんと申し訳ないです。



[672] Re[13]:NARUTO 真の忍 14話
Name: 朱螺
Date: 2005/06/29 02:28
「やりますか・・・・・・」

顔を包帯で覆い、『♪』の額宛をした少年が呟いた。

視線の先には先程、大声で啖呵をきったナルにガミガミ説教をしているサクラの側にいるカブト。

音隠れの三人は、受験生がひしめく教室内をすばやい動きで移動していく。

少年は着ているローブを捲り上げる。その腕は、穴の開いた奇妙な手甲に覆われていた。

『死』の文字が描かれた着衣を着ている髪を逆立てた少年が大きく跳躍し、カブトに向かってクナイを投げつける。

「!!」

カブトは後方に飛ぶ退くことで、クナイを避ける、がその隙を突くように包帯の少年が距離を詰め、拳を放つ。

(コイツら音隠れの・・・・・・)

カブトは上体を後ろへ反らし、紙一重で避ける。

((かわした!?))

(見切れるスピードだ)

そう思った瞬間、カブトの眼鏡にピシィッとヒビが入り、レンズが粉々に砕け散った。

「!」

(成る程・・・こういう、攻撃ね・・・・・・)

様子を見ていた他の受験生も、この現象に眉をひそめた。

「どういう事だ・・・かわした筈だ・・・何故、眼鏡が・・・・・・」

サスケは回避したのをはっきりと見たのに、何故眼鏡が壊れたのか解からなかった。

「鼻先を掠めたんだろ・・・・・・粋がってるからだよ。あのクソ」

悪態をつくシカマルも、何故攻撃が当たったのか解らないという表情をしていた。



「!?」

瞬間、カブトを凄まじい嘔吐感が襲い、体がぐらつく。

「うえぇっ!」

床に膝を突き、胃の中のものを吐き出した。

「あ! 吐いたァ!!」

「カ・・・カブトさん?」

その声に、教室の全ての下忍の目が集まった。

カブトの前には、攻撃を仕掛けた音隠れの下忍。

顔に包帯のドス・キヌタ。髪を逆立てた、ザク・アブミ。長い黒髪のくノ一、キン・ツチ。

「カブトの兄ちゃん!」

「大丈夫!?」

カブトに駆け寄るナルとサクラ。

「あ・・・大丈夫さ・・・・・・」

苦しそうに、返事をするカブト。

「なーんだ・・・大した事ないんだァ。4年も受験してるベテランの癖に・・・・・・」

「アンタの札に書いときな・・・・・・『音隠れ』3名、中忍確実ってな」

バカにするように、見下ろすドスとザク。

(カブトは完全に見切っていた筈・・・・・・何故、嘔吐した・・・・・・)

サスケは、ドスの攻撃のカラクリを模索し続けていた。





「リー、今の技・・・・・・どうだ?」

「見切りに問題はなかった・・・ネタがあるな」

先程、ナル達の間で話題に上ったロック・リー。

そして、そのチームメイト日向ネジ。リーが常々倒したいと考えている、木の葉でも有数の実力をもつ下忍である。





((攻撃の瞬間、練り上げられたチャクラが、あの手甲に・・・・・・))

((・・・・・・))

耳に手を当てているナルト。音隠れの三人の動きに気付き、その攻撃を見極める為、目、耳、鼻にチャクラを集め活性化し、

チャクラの探知を含む、六感の全てでその攻撃を見極めていたのだ。

((なるほど・・・文字通り『音隠れ』ということですか・・・・・・))

((ああ・・・・・・以前仕掛けてきた、音隠れのの三人の一人にも、音を利用する術を持つ奴がいた。間違いない・・・・・・ん? そろそろか・・・・・・))

ナルト達は攻撃の分析をしながら、教室に近づいてくる、複数のチャクラを感じ取り、黒板の方を向いた。










「静かにしやがれ!どぐされヤローどもが!!」

ざわめく教室に突如響く大声。それとともに、噴煙が上がった。

現われたのは、統一された作業着のような服を着た、木の葉の額宛をつけた集団。

そして、その集団の先頭に立つ黒いロングコートを纏った、顔に大きな切傷を持つ大男。

「待たせたな・・・・・・『中忍選抜第一の試験』・・・試験官の森乃イビキだ・・・・・・」

その凄みのある眼光と笑みに当てられ、居並ぶ受験生達はゴクリと息を呑んだ。

イビキは黒い手袋に覆われたその手で、音隠れの三人を指差した。

「音隠れのお前ら! 試験前に好き勝手やってんじゃねーぞ、コラ! イキナリ失格にされてーのか?」

「すみませんねェ・・・・・・何せ初めての受験で舞い上がってまして・・・つい・・・・・・」

ドスは謝罪の言葉を口にしているが、口調はむしろ挑発的なものだった。

「フン・・・いい機会だ、言っておく。試験官の許可なく対戦や争いはありえない。

また、許可が出たとしても相手を死に至らしめるような行為は許されん・・・・・・オレ様に逆らうようなブタ共は即失格だ・・・分かったな」

さらに凄みを増した眼光が全ての受験生達を射抜いた。

「何か甘っちょろいな、この試験・・・・・・」

その言葉が聞こえたのか、試験管の中忍達はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

血の気の多い受験生への楽しみか・・・・・・目の前の自分達の実力を見極められぬ者達への嘲りか・・・・・・





「では、これから中忍選抜第一の試験を始める・・・志願書を順に提出して、変わりにこの・・・・・・」

そういって、受験生達に番号の書かれた長方形の札を見せる。

「座席番号の札を受け取り、その指定通りの席に着け・・・その後、筆記試験の用紙を配る・・・・・・」

試験管達はテスト用紙を準備していた。


「ペッ・・・・・・ペーパーテストォオォォオ!!」


金髪の少女から、先程の啖呵以上の絶叫が発せられた。










受験生達は各々、番号札を受け取り席についていった。

木の葉隠れ下忍七班の三人は全員がバラバラの席になっていた。

(ナルにとっちゃ、最悪の試験ね・・・・・・フフ・・・ヘコんでる、ヘコんでる)

サクラはナルと離れた後ろの席。体術はともかく、筆記で赤点の常習だったナルの慌てぶりに余裕の笑みをみせていた。

(あー、みんなバラバラになっちゃったてばよォ・・・どーしよっかなぁ・・・・・・)

頭を抱えて机に突っ伏すナル。かなり心細い。

「ナルちゃん・・・・・・」

そんなナルに声がかけられた。

「あ! ヒナタ、隣りだってば? 気配消すの上手いなぁー。気付かなかったってばよ。 あー、知り合いが隣りでよかったー」

「う、うん。 お互い頑張ろうね・・・・・・」

ヒナタは元々、存在感が少ないのだが、ナルはずっと気配を消すのが上手いのだと思っている。

親友が隣にいることでナルは少し安心していた。





「試験用紙はまだ、裏のままだァ・・・そして、オレの言う事を良く聞くんだ・・・・・・」

全員に用紙が行き渡ったのをみてイビキが説明に入る。

「この第一の試験には、大切なルールってもんが『いくつか』ある・・・・・・

黒板に書いて説明してやるが、質問は一切受け付けんからそのつもりでよーく聞いとけ」

手に持つチョークで黒板を突く。

「ルール?」

(質問を受け付けないって・・・・・・)

ただの試験ではなさそうな言葉にサクラは訝しむ。

「第一のルールだ!まず、お前らには最初から各自10点ずつ持ち点が与えられている。

筆記試験問題は全部で10問格1点・・・・・・そして――この試験は減点式となってる」

そう言って、黒板にルールを書き始める。

「つまり問題を10問正解すれば、持ち点は10点そのまま・・・・・・

しかし、問題で3問間違えれば持ち点の10点から・・・・・・3点が引かれ、7点と言う持ち点になる理由だ」

(フムフム・・・10問間違えれば0点と・・・・・・)

ナルは目を細めながら、真剣に聞き取る。

「第2のルール・・・・・・この筆記試験はチーム戦・・・つまり受験申し込みを受け付けた3人1組の合計点数で合否を判断する。

・・・・・・つまり、合計持ち点30点をどれだけ減らさずに試験を終われるか、チーム単位で競って貰う・・・・・・」

チーム単位という言葉に自信の笑みを浮かべて聞いていたサクラは机に頭を打ち付けた。

「ちょ・・・ちょっと待って! 持ち点減点方式の意味ってのも分かんないけど、チームの合計点ってどーいう事ォ!!」

手を上げながら、叫ぶように問うサクラ。

「うるせェ! お前らに質問する権利はないんだよ! これにはちゃんと理由がある、黙って聞いてろ!」

(理由・・・?)

荒々しい口調で、サクラの質問を撥ね付ける。

「分かったら『肝心の』次のルールだ。第3に、試験途中で妙な行為―――つまり『カンニング及び、それに順ずる行為を行った』

と、ここにいる監視員たちに見なされた者は・・・・・・その行為『1回につき、持ち点から2点ずる減点させて貰う」

「あ!」

今までの説明の意図を理解したサクラは思わず声をだした。

「そうだ! つまり、この試験中に持ち点をすっかり吐き出して退場して貰う者も出るだろう」

(成る程・・・・・・筆記問題以外にも減点の対象を作ってるって事ね)

監視員として中忍達が、ノートと鉛筆を持ち受験生を取り囲むように椅子に座っている。

「いつでもチェックしてやるぜ」

態と椅子に浅く腰掛け、ギシリと音をならし、受験生にプレッシャーを与えようとする者もいる。

「無様にカンニングなど行った者は自滅して行くと心得て貰おう。仮にも中忍を目指す者、忍びなら・・・・・・立派な忍らしくする事だ」

イビキはニヤリと意味ありげに笑みを浮かべる。

(落ち着いて・・・そう・・・そうよ!ナルは兎も角、サスケ君と私は大丈夫・・・ナルが例え0点でも私達がカバーすれば・・・・・・)

かなり厳しいルールにサクラは自分を落ち着かせるように、心の中で呟く。

「そして最後のルール・・・・・・この試験終了時までに持ち点を全て失った者。及び、正解数0だった者の所属する班は・・・・・・

3名全て道連れ不合格とする!!」

(なっ・・・!!)

(何ですってェェエ!!)

アカデミーで『赤点女王』の名をほしいままにしていたナルを抱えるサスケとサクラは最後のルールに驚愕の表情を浮かべた。



(・・・・・・うっ・・・2つの殺気・・・・・・)

冷や汗を掻きながら、ナルはおそらくは自分の班員達のものであろう殺気を感じ取っていた。










「試験時間は1時間だ・・・・・・よし・・・始めろ!!」

第一の試験がイビキの宣言とともに開始された。

(こ、これってもしかして・・・とんでもない事になったんじゃ・・・ナル・・・・・・0点だけは止してよ!)

自分が問題を解くことより、頭を抱えるナルの姿を後ろから見ながら心の中で呟く。





「クッ・・・」 (ククク・・・なーんてね・・・・・・アタシってば、こんな修羅場はいくつも潜り抜けてきたんだもんね・・・・・・

『赤点女王』の称号は伊達じゃないってば!)

まったく自慢にも、根拠にもならない称号だが、とりあえず精神的には落ち着いている。

(こういう時は、焦らず、騒がず・・・・・・一問一問冷静に問題を眺める! そして解りそうな問題に全力で取り組めばいいんだってばよ!!)

プルプルと体を震わせながら問題を眺め始める。

(チィ・・・・・・ヤバいぜ・・・ナルの奴、いきなりビビってんじゃねーだろうな・・・・・・)

震えるナルの姿を確認し、サスケは内心毒づく。

「一問目は暗号文か・・・・・・やってくれるってばよ!!」

しばらく、余裕の表情で問題文を眺めるナル。

(・・・・・・次!!)

あっさりとあきらめた。



しばらくナルの様子を見ていたサクラも我に返る。

(・・・・・・っても、私も自分の心配をしなくちゃ・・・ここで私が点を取って置かなきゃ・・・えっと・・・第2問・・・

『図の放物線Bは、高さ7メートルの木の上にいる敵の忍Aの手裏剣における最大射程距離を描いている。

 この手裏剣の描く楕円に表れる敵の忍者の特徴、及び平面戦闘時における最大射程距離を想定した答え、
 
 その根拠を示しなさい』

こ・・・これって・・・不確定条件の想定と力学的エネルギーの解析を応用した融合問題じゃない・・・・・・!)

専門知識を駆使しなければ、解くことも出来ない難解な問題にサクラは目を見開く。

(こんなのナルが解ける理由ないじゃない! って言うか此処にいる殆どの奴が出来ないわよ!! こんな問題ー!!)

私はできるけどと付け足しながら、問題に取り組んでいく。



ナルは最初の方こそ、余裕の表情を浮かべていたが、問題を読み進めていくたびに、どんどん表情が曇っていき、

終には、真っ青になってしまった。

「フン」

一方、サスケも不敵な笑みを浮かべていたが・・・・・・

(フフ・・・なるほどね・・・・・・こんなの・・・1問たりともわかんねェ・・・・・・)

完全にはったりの笑みであった。

「オマケに何だよ・・・この10問目は・・・!!」

『この問題に限っては、試験開始後45分経過してから、出題されます。

 担当教師の質問を良く理解した上で、回答して下さい』



(やっ・・・やばいってばよーーー!!! マジでェ!! マッジィでェ!!)

目に涙を浮かべながら、ナルは完全にパニクッっている。

(どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・どうし(以下略)・・・ヤバイ・・・アタシが完璧に足引っ張ってるってばよーーー

あたしのせいで皆が失格になっちゃうーーー。火影への道がーーー)

「・・・・・・」

隣りで頭を抱えて突っ伏すナルに気付き、ヒナタは心配そうに見つめる。



その間にも試験管達は、手に持つノートに書き込んでいる。

(・・・にしても・・・この念の入れよう・・・オレ達がカンニングするってまるで決め込んでるようなやり口だな・・・嫌な奴らだぜ・・・・・・)

打開策が見付からぬまま、サスケはそんな中忍たちの様子をみていた。



(第2のルール・・・3人1組の合計点で競うって事は、高得点順に上位何チームかが選ばれるのよね・・・・・・

一体何チームが合格できるようになってんのかしら・・・知ってどうなるものでもないけど・・・不安でならないわ・・・・・・)

問題を解きながら、サクラは合格基準を考えていた。その時隣りの者が挙手し、今疑問に思っていたことを問うた。

「あの~これだけは教えて欲しいのですが・・・・・・」

「!」

「いったい何チームが合格なんですか?」

不安そうに、砂の下忍がイビキに尋ねる。

「ククク・・・・・・知ってどうなるワケでもないだろ・・・それともお前・・・失格にされてーのか・・・?」

「す・・・すいません・・・・・・」

冷酷なイビキの返答に、萎縮して座ってしまった。

(・・・全51チーム中、もし合格が10チーム程度だとしたら・・・無理してでもかなりの点を保持しなきゃならないわ・・・・・・

まるでカンニングを誘うようなシステム・・・サスケ君もナルも、焦ってカンニングに走らなきゃ良いけど・・・)

髪をかき上げながら、二人を心配するサクラ。

(・・・大丈夫・・・ナルもそんなに馬鹿じゃないわ・・・・・・私には分かってる)

何とか自分に言い聞かせるように、問題に集中する。



(・・・焦っちゃだめだってば・・・・・・とりあえず、慎重に、慎重に・・・・・・見つからないように、カンニングするしかないってば!!)

サクラの心配を他所に、ナルは安易な行為に走ろうとしていた。

(・・・・・・いや! いや! やっぱりダメだ! ダメだ! そんなアブネー橋、渡れないってばよ!)

自分の頭を叩きながら、なんとか耐える。



(・・・しかし、この人数で見張られてちゃな・・・・・・たぶん、あのノートでチェックするんだろーが・・・・・・)

サスケはまだ打破する手が思い浮かばず、中忍たちを観察するようにみていた。

――無様なカンニングなど行った者は、自滅していくと心得て貰おう――

――にも中忍を目指す者、忍なら…立派な忍らしくする事だ・・・・・・――

唐突にイビキの言葉が思い浮かんだサスケ。

(ちょっと待てよ!!)

何かに気付いたように顔を上げるサスケ。

(そうか・・・そういう事か! ・・・・・・チィ、何てこった・・・・・・これはただの知力を見る筆記試験じゃなかったんだ!

早く気付け! ナル!! 命取りになるぞ! ・・・・・・何故ならこのテストは・・・・・・

カンニング『公認』の偽装・隠蔽術を駆使した・・・情報収集戦を見る試験でもあったんだ!!)

イビキの言葉からこの試験の真の意図に完全にサスケは気付いた。

(『忍は裏の裏を読め』か・・・・・・つまり試験官の本意は・・・カンニングをするなら

『無様なカンニング』じゃあなく、『立派な忍らしく』バレないようにすべし・・・ってことだ。

そう考えれば『減点方式』と言う、この試験の異例さ・・・そして『カンニング発覚1回につき、2点の減点で済む』と言う甘さ・・・

いわば、4階の猶予にも納得が行く。 要するにここで試されるのは、如何に審査官とカンニングをされる者に気取られず、

正確な答えを集める事ができるか・・・・・・気付けナル! 勘の良い奴はそろそろ動き始めるぞ!)

後ろからでも、パニックになっているのがわかるナルの様子に答えを見つけながら、心中穏やかでないサスケ。










サスケの予想通り、各国の下忍たちは情報収集戦を展開していた。

砂瀑の我愛羅は、カンクロウをギロリと睨みつける。

(そう睨むなっての・・・・・・分かってんじゃん・・・)

我愛羅は左手を机の縁に突き出す。細かい砂の粒が、その左手にまとわりついた。

(我愛羅もやり始めたか・・・・・・フン・・・頼むぜ、カラス)

彼の内心に反応したかのように、試験管の中忍がピクリと動いた。



一方木の葉の下忍たちも各々の能力を駆使し、解答を集めていた。

(ワン!ワン!ワン!)

(ひゃほ~! 良い子だ赤丸! 次は第4問だ・・・・・・)

忍犬使い、犬塚キバはパートナーの赤丸に解答を探らせていた。

また、幾人かの受験生の周りを蟲が飛び交い、一人の少年の下に集まっていた。

(よし! 教えてくれ・・・・・・)

同班の蟲使い、油女シノは蟲を使っていた。

(リー、見えたら額宛を・・・・・・)

忍具の扱いに長けた、ガイ班のくノ一テンテンは自分の真上の照明に鏡をしこませ、糸で操り、リーとコンタクトを取っていた。

音隠れのドス・キヌタは目を閉じ集中している。

(この字のリズム・・・書き順・・・字画数からして・・・・・・成る程ね・・・)

音から、解答の文字を推測し、空所を埋めていく。

日向一族であり、血継限界保持者の日向ネジは瞑想しているかのように、静かに目を閉じていた。

(『白眼』!!)

突然目が開かれ、目の周りに血管が浮き出る。彼の目には、前方にいる受験生の体が透け、解答がはっきりとみえていた。

サスケもカンニングのターゲットを決め、チャクラを練り上げる。

(よし、アイツだ・・・動きを全て・・・・・・コピーする!! 『写輪眼』!!)










一方、ナルト達はすでに解答を書き終えていた。彼等がどの様に空欄を埋めたか、少し時間を前に戻す。

「試験時間は1時間だ・・・・・・よし・・・始めろ!!」

イビキの言葉と同時に、鉄の三人は術での会話に入る。彼等の伝心の術は、あらかじめ、一定の者達だけで契約をすることで

チャクラを口から発することで、契約者間で自動的に伝達される改良が施されていた。

((・・・よし。 では答えを言うぞ・・・・・・))

開始の合図と同時にナルトの言葉が白とミコトに伝わる。

((・・・・・・え!?))

((は? ちょっと待ってよ! アンタや白なら自力で解ける問題だと思うわよ・・・・・・でも、いくらなんでも早すぎでしょ!

アンタでも解くのには、それなりに時間は必要なはずよ!?))

白も同じ意見らしく、ミコトに同意している。

((始まったばっかで、カンニングのターゲットも、まだ一問目の答え書いてる途中みたいだし。 どういうことなのよ?))

てっきり、カンニングの手段、あるいは仕掛けを教えようとしているのだと思った。

((・・・・・・中忍試験が始まる前に、第一試験の問題と解答、及びこれ以降の試験の内容と、進行スケジュールを入手しただけだ))

((ナ、ナルトくん・・・それはちょっと・・・・・・))

((アンタ・・・・・・それはさすがに・・・・・・))

とんでもないことをサラリと言ってのけたナルトに二人も絶句する。さすがに反則すぎる。

((・・・任務の前の情報収集は当たり前だろう?・・・・・・))

((に、任務って・・・・・・))

いつの間にか、ナルトは某ヒゲ司令のファイティングポーズをとっている。

((同じことだ・・・予定されていた試験なんだ。情報戦はその時点から始まっている。

守れなかったのは木の葉の怠慢だ・・・・・・問題無い・・・・・・))

((((・・・・・・))))

いつの間にか、サングラスまでかけている。二人は、もう何も言えなかった。

((では、いくぞ。第一問・・・・・・))

こうして、三人は教室の誰よりも早く解答し終わり、十問目の内容と答え、今後の試験の予定について話すことになった。










少しだけ、時間に余裕が持てました。今までよりは、更新のペースは上がると思います。
てか、今までが遅すぎだ・・・・・・
うーん。ナルト達の会話が少ない。まぁ、この場面ではしょうがないです。



[672] Re[14]:NARUTO 真の忍 15話
Name: 朱螺
Date: 2005/07/11 13:58
各国下忍が情報戦を繰り広げている中、ナルは机に突っ伏し、頭を抱え続けていた。

静かな教室には時を刻み続ける時計の音が響いていた。

(あー・・・・・・どんどん時間が過ぎていくってばよー)

未だ、解答欄は白紙のままだった。

(もー、こーなったらやっぱカンニングしか!!)

「うわあ!!」

その瞬間、ナルの横スレスレをクナイが通りぬけ、後ろに座る、木の葉の下忍の解答用紙に突き刺さった。

驚きの声をあげる木の葉の下忍。

「な・・・何の真似ですか!!」

「5回ミスった…てめーは失格だ・・・・・・」

試験管は笑みを浮かべ、そう告げる。

「そ・・・そんなァ・・・・・・」

「コイツのツレ2人共、この教室から出てけ・・・・・・今すぐだ」

仲間の二人を道連れにし出口へ向かわされる。

「うっ・・・くそ・・・・・・」

「ホラ! さっさと出ろ!!」

三人は、肩を落として、教室を出て行った。

(うっ・・・危ねーってばよ・・・・・・もう決めた! 絶対、カンニングだけはしねーってば!!)

不合格者の姿を見て、心に決めるナル。

「ナルちゃん・・・・・・」

「!」

その時、控えめな声が右隣から聞こえて来た。

「わ・・・私のテスト見せてあげる・・・・・・」

(え!?)

目だけをナルの方へ向け、ヒナタは告げる。

「ナルちゃん、私の答え見て・・・・・・」

――な、何言い出すんだってば、ヒナタ?――

長年、一緒にいるため、ヒナタに他意は無いことは知っている。

「な・・・・・・なんで見せてくれるんだってば?」

「ナ・・・ナルちゃんに、こんなところで消えてもらいたくないから・・・・・・ほら、新人は私達九人だけだし・・・・・・

この先、不安も多いから・・・・・・」

ヒナタ自身、励みになる頑張るナルの姿を見ていたいと思ったからだった。

「ヒ・・・ヒナタァ・・・・・・ヒナタが隣でよかったてばよーー」

道が開けたと思い、心で感謝の涙を流しながら、ヒナタが脇から見せる答案に視線を向けた。

だが、そんなナルの耳に試験管の鉛筆の音が聞こえた。

そっと見るとノートに書き込み、不敵な笑みを浮かべて、こちらを探る視線に。

「ヒナタ…分かってねーってばよ・・・・・・」

「え?」

「アタシみたいな、スゲー忍者はカンニングなんかしないんだってばよ!」

笑顔を向けて、そう応えるナル。

「ナルちゃん・・・・・・で・・・でも・・・・・・」

「それに・・・下手すればカンニングを助けたって事で、見せてくれたヒナタがヤバいかもしれねーってばよ?」

「あ・・・」

(それに・・・もしバレたりしたら、サクラちゃんやサスケのヤツに迷惑かけかちゃうしな・・・・・・ここでヘマするわけにはいかねーってば)

目を細めながら、なんとしても避けたい状況を再確認する。

「ご・・・ごめん・・・わ、私…余計な事しちゃったかな・・・・・・」

「そんなことないってば・・・・・・ありがとね、ヒナタ」

そう言って、再び問題を見るナル。だが・・・・・・

(とは言ったものの・・・・・・どうしよー、意地はっちゃたてばよーー)

ヒナタには見えぬように涙を流していた。

そうこうしているうちに、残り時間は半分となっていた。

(こうなったら・・・・・・もうコレに賭けるしかないってばよ・・・・・・)

真剣なナルの目は第十問目をうつしていた。










(よし! できた!! あとはこの10問目を待つだけ・・・・・・)

サクラは自力で問題を解ききり、見直しともに完璧である。

一方、写輪眼を発動させたサスケは順調に、解答欄を埋めていった。

(オレの手が淀みなく動いてる・・・念の為、もう2・3人コピーしてみるつもりだったが・・・いきなりコイツで当たりだ!)

ナルの苦戦を他所に七班の二人は順調であった。

(どうやらサクラの手が止まったみたいねー。じゃ、そろそろやらせてもーらお!)

サクラの後方からその様子を探っていた、十班の山中いのが笑みを浮かべながら、印を組んでいく。

(サクラ・・・アンタのデコの広さと頭の良さだけは、スッゴーイって認めてんのよ…私。

だから、感謝しなさーい・・・この術のターゲットになる事をね・・・・・・じゃ、行くわよーー!)

印を組み終わると、コトリと眠るように、机に突っ伏した。

(いのの奴寝てやがる・・・あの術を使い始めたな・・・・・・)

(あの術は逆らえないからなー・・・・・・)

同じ十班の、奈良シカマルと秋道チョウジがそんないのの様子に感づいていた。

いのが印を組み終わった瞬間、サクラの体がビクリとなり、その目が虚ろになった。

(フフフ・・・悪いわね・・・サクラ・・・・・・ちょっとの間、アンタの精神に入り込ませて貰ったわー)

山中家が、薬草等の植物の知識とともに伝えているのが、今、いのが使った『心転身の術』をはじめとする心術系の忍術である。

心転身の術は、自分の精神を放出して対象者にぶつけることで、相手の体を乗っ取る術であり、

比較的、山中一族以外の者でも習得が可能な忍術である。

(・・・っと早く答え覚えちゃわないと・・・・・・この術、2~3分が限界なのよねー

シカマルとチョウジにも乗り移って、この答え写したげないといけないしー)

いのは、あっさりと九問の解答を手に入れた。





「102番、立て・・・失格だ」

「ちっ・・・ちくしょう・・・・・・」

その間にも、次々とカンニングが発覚していった下忍たちが失格となっていく。

「23番、失格!」

「嫌だ~!!」

「43番と27番、失格!」

十四組目の失格が告げられた時、遂に我慢できなくなった砂隠れの下忍が机を叩く。

「俺が5回もカンニングした証拠でもあんのかよ!! アンタらホントにちゃんと、この人数を・・・・・・」

逆切れし、試験管に食って掛かるが次の瞬間、試験管の姿が消え、逆側の壁に、砂の下忍を叩き付けた。

「良いかい・・・・・・私達は中忍の中でも、この試験の為に選ばれ編成されたエリートなのだよ」

「ぐっ!!」

「君の瞬き一つ見落としはしないんだよ・・・言って見れば、この強さが証拠だよ」

試験管の実力を垣間見せられた他の受験生はゴクリと息をのんだ。

その騒動の最中、試験管の中心、イビキは我愛羅に目を向けていた。

(フン・・・あのガキ・・・・・・何かやってるな。この騒ぎに眉一つ動かさず、冷静に事を運ぶか・・・・・・新米にしちゃ上出来だ・・・・・・)

我愛羅は右手で左目を押さえながら、チャクラを練り上げる。すると、我愛羅の左手に砂が集まり、眼球を模った。

(視神経は繋がった・・・・・・第3の眼・・・開眼!!)

我愛羅の砂は、いったん握りつぶされ周囲に散らばり、一部は、カンニングのターゲットの目を見えなくし、

その間に、解答欄の前で再び眼球を模る。

「すいません」

我愛羅が術を行使し始めたと同時に、カンクロウは手を上げ、立ち上がった。

「何だ?」

「ちょっと、トイレに・・・・・・」

「トイレは、俺達が付き添う事になってる」

「成る程ね・・・・・・」

試験管の一人が、カンクロウの腕に手錠をはめ、教室を出て行った。



「それにしても大した奴らじゃねェじゃん! 試験官ってのもよ・・・・・・」

用を足しながら、試験管に聞こえるように呟く。

「『1人試験官が増えてる』事にも気付かねェんじゃな・・・・・・なァ、そう思わねーか・・・・・・カラスよ・・・・・・」

いつの間にか、カンクロウについていた試験管の顔がボロボロと崩れ、意志の無い瞳が覗いていた。

「フ~・・・さーて、じゃあ1問目の答えから教えて貰おうか・・・フフフ・・・・・・」










(フフフ・・・愚図はあらかた落とし終えたな・・・・・・それじゃ本題を・・・45分経ったし、始めるか)

「よし! これから第10問目を出題する・・・・・・」

試験開始から45分経ち、イビキが宣言する。

――来た! これに賭けるしかないってばよ!――

もはや選択肢の無いナルの表情が真剣なものとなる。

(フン・・・もったいぶりやがって・・・・・・)

(いよいよ最後の山ね・・・・・・)

サスケとサクラは余裕を持って、10問目を聞こうとしていた。

(早く帰って来やがれカンクロウ・・・10問目始まる前にカンペを貰う手筈なのに・・・・・・!!)

教室の入り口を窺いながら、テマリは焦りの表情を浮かべる。

「・・・と、その前に一つ・・・・・・最終問題に付いてのちょっとしたルールの追加をさせて貰う」

「!!?」

突然のイビキの言葉に、下忍達の表情が強張る。

その時、教室の扉が開き、カンクロウが戻ってきた。

「フ・・・強運だな・・・・・・」

「!?」

「『お人形遊び』が無駄にならずに済んだなァ・・・・・・? まあいい、座れ」

(コイツ・・・カラスを見破ってやがる・・・・・・)

どうやら、自分のカンニング手段を初めから見破ったうえで、見逃されていたことを悟り、内心冷や汗を流す。

表情に出さないまま、席に戻る途中、カンクロウはテマリにカンペを渡す。

「では、説明しよう・・・これは絶望的なルールだ・・・・・・」

イビキの視線が、一際鋭いものとなった。










「部下達がいないと、暇になるわね・・・・・・」

「何・・・すぐに忙しくなるに決まってる・・・・・・て、おい、どうしたカカシ。考え込んで・・・そんなに心配か?」

上忍たちが待機する人生色々にて、新人下忍三班の担当上忍の三人がいた。

アスマと紅が話をする中、カカシは何か考え込むように、視線を下に向けていた。

「・・・・・・ん? あ、いや。なんでも・・・・・・」

「心配する以前の問題だ・・・・・・今年の第一試験管は森乃イビキだからな」

「・・・・・・よりにもよって、あのサディストか・・・・・・」

(こりゃ、第一の試験も危ういな・・・・・・いや、その方がいいのか。そうすればナルトと戦わずに・・・・・・)

普段なら試験突破を望むが、今回ばかりは話が別である。

「・・・・・・サディスト?」

「紅・・・お前は新米上忍だから知らねーのも無理はねー・・・・・・」

「一体何者なの?」

「プロだよ、プロ・・・・・・」

「プロ? 何の?」

アスマは肺に煙を溜め、ゆっくりと吐き出した。

「拷問と尋問!」

「・・・・・・え!?」

あまりに短い簡潔な応えに、紅は再度聞きなおす。

「木ノ葉暗部、拷問・尋問部隊隊長・・・・・・特別上忍森乃イビキ! まあ、試験に・・・肉体的な拷問はないにしても・・・

尋問のスキルを生かした精神的な『苦しめ』を強いられているに違いない・・・・・・」










教室内は、最後のルールを聞く為に、今まで以上に静まり返っていた。

「まず・・・お前らには、この第10問目の試験を・・・…【受ける】・【受けないか】のどちらかを選んで貰う!!」

(受けるか、受けないかを選ぶ・・・?)

ルール以前の選択支にも思える言葉にサスケは訝しむ。

「え・・・選ぶって・・・! もし10問目の問題を受けなかったらどうなるの!?」

意図の見えないイビキの言葉に、テマリが焦れるように声を荒げる。

「【受けない】を選べばその時点で、その者も持ち点は0となる・・・・・・つまり失格! もちろん、同班の2名も道連れ失格だ」

「ど・・・どういう事だ!?」

「そんなの【受ける】を選ぶに決まってるじゃない!!」

あまりにも当たり前をルールのように話すイビキに受験生達は一斉に騒ぎ出す。

そんな、受験生達を無視するように、イビキはさらに言葉を続ける。

「・・・・・・そして・・・もう一つのルール」

(まだあるの・・・いい加減にしてよ!!)

追加され続けるルールにサクラの忍耐も切れそうになる。

「【受ける】を選び・・・正解できなかった場合―――その者については今後、永久に中忍試験の受験資格を剥奪する!!」

「!!」

宣言通り、最悪のルールが発表された。

「そ・・・そんな馬鹿なルールがあるかァ!! 現に此処には、中忍試験を何度か受験している奴だっている筈だ!!」

頭に忍犬赤丸をのせたキバが大声で抗議する。

「ククッ・・・運が悪いんだよ・・・お前らは。今年はオレがルールだ・・・その代わり、引き返す道も与えてるじゃねーか・・・・・・」

「え?」

「自信のない奴は大人しく【受けない】を選んで・・・・・・来年も再来年も受験したら良い」

イビキの瞳が受験生達を試すように、冷酷さをます。

(ああ~何てことオ~~!! ・・・つまり、3人内1人でも【受けない】を選べば3人共道連れ不合格

・・・【受ける】を選んで、もし正解できなければ―――その人は一生下忍のまま・・・・・・

どっちに転んでも分が悪い! こんなの普通の神経じゃ選べないわよ!!)

あまりのルールにナルは身を震わせる。

「では、始めよう・・・この第10問目・・・【受けない】者は手を挙げろ! 番号確認後、此処から出て貰う・・・・・・」

全員が考え込むように口を閉ざし、教室は静まりかえっていた。

(いったい、どんな問題なんだってばよ・・・・・・? もし間違えたら一生下忍のまま、ぜったいヤダ!!

・・・・・・かといってこんなところで【受けない】選んで・・・・・・サクラちゃんとサスケを道連れ失格するのもヤダ!!)

額に汗を掻きながら、ナルは悩む。

(私は手を挙げない! 【受ける】を選んでも正解する自信があるから・・・・・)

自分の頭脳に自信のあるサクラは、【受ける】決意を固めていた。

(例えナルが間違えて道連れ不合格になっても、私は10問目を間違った訳じゃないから、次も受験できるし・・・・・・でも)

サクラはナルの後姿をみる。

(でも、ナル・・・アンタは別・・・私達の存在を無視してでも此処は大人しく引いて次の機会を考えるべきだわ)

その時、ちょうどナルの左に座っていた木の葉の下忍がスッと手を挙げた。

「オ・・・オレはっ・・・やめる! 受けないッ!! す・・・すまない・・・源内! イナホ!!」

教室に広がる空気に耐え切れなくなったのか、遂に脱落者が出始めた。

「50番、失格。130番! 111番! 道連れ失格」

試験管の事務的な言葉に、表情を曇らせ教室を去っていく。

最初の脱落者を皮切りに、自信の無い者達が次々と失格になっていく。





((あらあら、どんどん空気が重くなってくわね・・・・・・))

((うーん、任務は、基本的に死ぬ確立の方が高いんですがね・・・・・・任務の過程で、引き返せざるをえない場合ならともかく、

はじめから任務放棄はありえないんですけど・・・・・・))

((忍の任務の基本だ・・・・・・アカデミーで教えることだろうが・・・・・・))

問題そのものを知っているナルト達は余裕だった。だが、内容、答えが解っていた故の余裕ではない。

忍として任務を受ける以上、前提として抱いておくべき覚悟なのだ。

事実、ナルト達はその覚悟をアカデミーで教えている。





(ナル・・・何で手を挙げないのよ・・・・・・)

サクラは、身を震わせながら、それでも決して手を挙げないナルの後姿を見ていた。


―――やったてばよォーー。アタシ、忍者、忍者、忍者!!―――

―――火影になる為に、アタシってばどんな努力もする覚悟なんだから!!―――

―――火影を越す! 里の皆に、四代目の娘じゃない『藤林ナル』を認めてもらうんだ!!―――


アカデミーの頃から、幾度となく聞いてきたナルの言葉を思い出していた。

(いっつも、バカの一つ覚えみたいに火影、火影って・・・・・・悪いわね・・・ナル・・・私、アンタのその無謀な夢・・・潰させたくないみたい)

サクラの右腕がゆっくりと挙げられようとしていた。





「奴は・・・イビキは・・・人間の心を知り尽くしている・・・そして、最もアイツの恐ろしい所は・・・・・・

相手を心理的に追い詰める事で精神をいたぶり・・・人間の本来持つ弱みを浮き彫りにする事だ。」

人生色々ではアスマが、暗部拷問尋問部隊隊長の任につく、イビキという男の説明が続いていた。

「アイツの尋問に誤魔化しは効かない・・・・・・」





「え!?」

挙手しようとしたサクラのめに写った光景は、震えながらもまっすぐに挙手されたナルの左腕だった。

(ナ・・・ナル・・・・・!!)

さっきまで、心の中で挙手を促していたサクラだが、実際その光景をみて動揺していた。

同班のサスケや、隣に座るヒナタも驚愕の表情を浮かべる。

だが次の瞬間、その手が勢いよく机に叩きつけられた。

「なめんじゃねーってばよ!! アタシは逃げない!! 受けてやる!! もし一生下忍になったって・・・・・・

誰よりも強い下忍になって、火影の名を受け継いでやるから、別にいいってばよ!! 怖くなんかない!!!」

鼻息荒く、今日一番の大声で盛大に啖呵をきった。

(アイツ、俺達の事なんか全く考えてなかったか・・・良い根性してやがる・・・・・・)

(そうよね・・・アンタ、そーいう大馬鹿だもんね・・・・・・)

ナルらしい言葉に、どこか諦めたように二人は苦笑する。

「もう一度訊く・・・人生を賭けた選択だ、やめるなら今だぞ」

「まっすぐ自分の言葉は曲げない・・・・・・それがアタシの忍道なんだ!!」

彼女の言葉は他の受験生達にも影響を与えていた。

不安や焦りという感情と空気に支配されていた教室がナルの言葉で吹き飛ばされていた。





((自分の『言葉』は曲げないか・・・ずいぶんと自身を縛り付けちゃうのね。『自分』を曲げないなら分かるんだけど・・・・・・))

((ああ・・・暗殺のターゲットに用心棒として雇われ、口上で『護る』と誓った上での暗殺は常套手段なんだがな・・・・・・))

((ま・・・まぁ、この場の空気を変えたという意味では、彼女の言葉は賞賛すべきだと・・・・・・))

一部分を除いて・・・・・・





(フン・・・面白いな・・・・・・こいつ等の不安をあっという間に蹴散らしやがった・・・血は争えんか・・・・・・)

十二年前、自分が中忍に上がった時に起きた九尾の襲来。

新米中忍として里人の避難に当っていたが、里の全てが絶望的な空気に覆われていた。

そんな、空気をその存在だけで打ち破ったのが四代目火影だった。

共に戦ったことはない。だが、その存在感だけは、今でもはっきり彼の記憶に刻まれていた。

(78名か、予想以上に残ったな・・・・・・これ以上粘っても・・・同じだな・・・・・・)

イビキが試験管の中忍たちに目配せすると、彼等は笑みを浮かべ、イビキの考えを理解したように頷く。

「良い決意だ。では・・・此処に残った全員に・・・・・・」

受験生達が、十問目を一語でも聞き逃すまいと、真剣な表情でイビキを見据える。

「『第一の試験』の合格を申し渡す!!」

突然の合格宣言に、教室は一瞬シンと静まりかえる。

「ちょ・・・ちょっと、どういう事ですか!? イキナリ合格なんて! 10問目の問題は!?」

サクラが我に返ったように尋ねる。

「そんなものは初めからないよ・・・言って見ればさっきの2択が10問目だな・・・・・・」

試験中の冷酷な表情を一変させ、ニカっと笑うイビキ。

「ちょっと・・・! じゃあ、今までの前9問は何だったんだ・・・!? まるで無駄じゃない!」

テマリが納得できないと、声を張り上げる。

「・・・無駄じゃないぞ・・・9問目までの問題はもう既に、その目的を遂げていたんだからな」

「・・・ん?」

「君達個人々々の情報収集能力を試すと言う目的をな!」

「・・・・・・情報収集能力?」 (何かキャラが変わったわね・・・・・・)

雰囲気をガラリと変えたイビキにテマリは戸惑いを隠せない。

「まず・・・このテストのポイントは、最初のルールで提示した『常に3人1組で合否を判定する』と言うシステムにある

それによって君らに『仲間の足を引っ張ってしまう』と言う、想像を絶するプレッシャーを与えた理由だ・・・」

「何となく、そんな気がしてたんだってばよ・・・このテスト!」

ナルは合格に安堵していた。

((((((ウソつけ!))))))

そんなナルに同期の下忍たちからツッコミが入る。

「しかし・・・このテスト問題は君達下忍レベルで解けるモノじゃない・・・当然そうなって来るとだな・・・・・・

会場の殆どの者はこう結論したと思う・・・点を取る為には『カンニングしかない』と・・・・・・

つまり、この試験はカンニングを前提としていた!」

「フン」

テストの意図が自分の考え通りだったことに満足げな笑みを浮かべる。

「その為『カンニングの獲物』として、全ての回答を知る中忍を2名ほど・・・予めお前らの中に潜り込ませておいた・・・・・・」

(え!? そうだったのぉぉ・・・・・・!!)

絶対にカンニングだけはするまいと考えていたナルは、カンニング公認だったことに驚きを隠せない。

「『ソイツ』を探し当てるのには苦労したよ」

「ああ・・・ったくなァ・・・・・・」

各国の下忍の中にも意図に気付き、苦労しつつターゲット探しを成功した者もいるようだ。

「ハハハハ・・・バレバレだったっての―!! んなのに気付かない方が可笑しいってばよ!!」

その会話が聞こえたのか、ナルは周りの受験生に合わせるように笑う。

(((((((気付いてなかったな・・・・・・)))))))

再び、同期の下忍たちからツッコミが入った。

「しかしだ・・・ただ愚かなカンニングをした者は・・・当然、失格だ・・・・・・」

そういって、バンダナの様に頭に巻いていた額宛をはずすイビキ。

その下には、凄まじい傷跡があった。

「何故なら・・・情報とは、その時々において命よりも思い価値を発し、任務や戦場では常に命懸けで奪い合われるモノだからだ」

(ひでェ・・・火傷にネジ穴・・・切り傷・・・拷問の跡だ!)

イビキの言葉の重みを実感し、サスケをはじめほとんどの受験生が息を呑んだ。

(クク・・・袋の下はもっと酷いんだろーな・・・ま、ボクだったら捕虜になるようなヘマはしないけどね・・・・・・)

音隠れのドスは自信満々に思っていた。

「敵や第3者に気付かれてしまって得た情報は『既に正しい情報とは限らない』のだ・・・・・・

これだけは覚えておいて欲しい! 誤った情報を握らされる事は仲間や里に壊滅的打撃を与える!!」

イビキ再び額宛を巻き、試験中のような真剣な表情で忠告する。

「その意味で我々は、君らに・・・カンニングと言う情報収集を余儀なくさせ、それが明らかに劣っていた者を選別した・・・と言う理由だ」

「でも・・・何か最後の問題だけは納得行かないんだけど・・・・・・」

九問目までの意図は説明されたが、十問目の意図がまだ分からず、テマリは再度尋ねる。

「しかし・・・この10問目こそが、この第一の試験の本題だったんだよ」

「・・・・・・いったい、どういう事ですか?」

「説明しよう・・・・・・10問目は、【受ける】・【受けない】の選択・・・言うまでもなく、苦痛を強いられる2択だ。

【受ける】を選び、問題を答えられなかった者は『永遠に受験資格を奪われる』・・・実に不誠実極まりない問題だ」

確かにと顔をしかめながら、聞き続ける受験生達。

「じゃあ・・・こんな2択はどうかな・・・君達が仮に中忍になったとしよう・・・・・・

任務内容は秘密文書の奪取…敵方の忍者の人数・能力・その他、軍備の有無一切不明・・・・・・

更には敵の張り巡らした罠と言う名の落とし穴が有るかもしれない・・・・・・さあ、【受ける】か? 【受けない】か?

命が惜しいから・・・・・・仲間が危険にさらされるから・・・・・・危険な任務は避けて通れるのか・・・・・・」

十問目を、実際の任務に置き換えて説明を続けるイビキ。

「答えはノーだ! どんな危険な賭けであっても、降りる事のできない任務もある・・・・・・

ここ一番で仲間に勇気を示し、突破していく能力。これが中忍と言う部隊長に求められる資質だ!」

教室の空気を変えたナルには情報収集力はともかく、勇気という資質はあった。

「いざと言う時、自らの運命を賭せない者、『来年があるさ』と不確定な未来と引き換えに心を揺るがせ・・・・・・

チャンスを諦めていくも者・・・そんな密度の薄い決意しか持たない愚図に・・・・・・

中忍になる資格などないとオレは考える!!」

力強い言葉で断言した。

「【受ける】を選んだ君達は、難解な第10問の正解者だと言っていい! 

これから出会うであろう困難にも立ち向かって行けるだろう・・・・・・

入口は突破した・・・・・・『中忍選抜第一の試験』は終了だ・・・君達の健闘を祈る!」

最後に残った受験生達に激励を掛け、イビキの話は終わった。

「祈っててーー!!」

(フン・・・・・・まったく、あのじゃじゃ馬姫は・・・・・・!)

その瞬間、教室の窓ガラスを突き破りながら、黒い布が教室に飛び込んできた。

その黒い布からクナイが放たれ、天井に突き刺さり、イビキを覆った。

「な・・・なんだぁ!!!」

(ふー・・・・・・コイツだけは全く・・・・・・)

「アンタ達、喜んでる場合じゃないわよ!!」

布の中から現われたのは一人の女性であった。

天井から吊り下げられた布には『第2試験官 みたらしアンコ見参!!』と書かれていた。

「私は第2試験官! みたらしアンコ! 次行くわよ、次ィ!!」

右手を振り上げ、ナル以上の大声で叫ぶ。

「ついてらっしゃい!!」

第一試験の余韻を引きずる空気を無理やり突き破って現われたアンコに、一同はしばらく反応できずにいた。

「・・・空気読め・・・・・・」

布で姿を隠されていたイビキがちらりと顔を出し、ボソリと呟いた。その言葉に頬を赤らめるアンコ。

「ナ・・・ナルの未来を見てしまった気がするわ・・・・・・」

サクラをはじめとする、同期の下忍達全員が同じことを思った。

アンコは教室を見渡し、布の後ろから出てきたイビキに尋ねる。

「78人!? イビキ! 26チームも残したの!? 今回の第一の試験…甘かったのね!」

「今回は・・・優秀そうなのが多くてな・・・・・・」

「フン! まあ、いいわ・・・次の『第2の試験』で半分以下にしてやるわよ!!」

(・・・!! は・・・半分以下に・・・・・・『してやる』!?)

「あ~~、ゾクゾクするわ! 詳しい説明は場所を移してやるからついてらっしゃい!!」





全員がアンコについて行き、教室でイビキは一人答案を回収していた。

一枚の用紙を手に取り、苦笑する。

(まさか白紙で第一の試験を通過したとはな・・・・・・『藤林ナル』本当におもしろい姫に育ったものだ)










((ふーん、あれが木の葉で元大蛇丸の部下だった人かぁ・・・・・・))

ナルトは試験の情報を事前に入手していたと同時に、試験に携わる試験管達のデータも集めていた。

その時、大蛇丸の部下だったという、みたらしアンコが目に付き二人に試験の間にある程度情報を伝えていた。

大蛇丸に裏切られたという情報があるが、未だ繋がっている可能性もある人物として。

((それにしても、あのアンコって人・・・・・・))

((ええ、音隠れがうちの里に送ってきた忍に刻まれていた『呪印』のチャクラを持ってますね・・・・・・))

((ああ・・・だが、妙だ・・・・・・確かに『呪印』のチャクラだが、音の忍に刻まれていたチャクラとは僅かに性質が異なる・・・・・・))

((異なった時期に付けられたんじゃない? その間に、術を微妙に改良したとか・・・・・・))

((・・・・・・いや。術が改良されて、質が変化したというようなものじゃない・・・・・・基本的には同一人物のチャクラなんだが、

精神エネルギーか身体エネルギーのどちらかがまったく別のものに変わったかのような・・・・・・妙な変化だ))

((・・・・・・何かありそうですね))

彼女の後を追いながら、話し続ける三人の視界に、広大な森が姿を現した。










ようやく、第一試験終了・・・・・・ここ台詞が長くてキライ・・・・・・
ほんと作家泣かせな場面です。
第二試験は端折る場面も考えないと・・・・・・
基本的にナルト視点で書きたいから。



[672] Re[15]:NARUTO 真の忍 16話
Name: 朱螺
Date: 2005/07/15 18:10
アンコに連れられ着いた場所は、巨木が立ち並び、森の奥が見えない不気味な雰囲気を醸し出す森であった。

森を隔離するように金網で囲まれ、『立ち入り禁止区域』という注意書きと何かを封ずる術式の書かれた錠があった。

「ここが『第2の試験』会場、第44演習場・・・・・・別名『死の森』よ!!」

アンコは第二試験でおこる惨劇を予想し楽しんでいるかのようなゾッとする笑みを浮かべる。

受験生達は森の異様さを肌で感じているのかゴクリと息を呑んだ。

「・・・・・・何か、薄気味悪い所ね・・・」

不安そうに呟くサクラ。

「フフ・・・此処が『死の森』と呼ばれる所以、すぐに実感する事になるわ」

不安を煽るような言葉を放つアンコ。

「此処が『死の森』と呼ばれる所以、すぐに実感する事になるわ・・・なーんておどしても、ぜんっぜん平気! 怖くないってばよ!!」

ナルが不安を吹き飛ばすように、第一試験同様声を張り上げる。

「そう。お嬢ちゃんは元気が良いのね・・・・・・」

ニコリと笑みを浮かべるアンコ。だが次の瞬間、笑みを浮かべたままクナイを手に取り、ナルに向かって投げる。

クナイはナルの左頬をかすり、彼女の後方の地面に突き刺さる。

その際、ナルの後ろにいた草隠れの下忍の髪が一本、ヒラリと地面に落ちた。

「アンタみたいな子が真っ先に死ぬのよねェ。フフフ・・・・・・」

一瞬でナルの後ろに移動し抱え込むアンコ。

「私の好きな赤い血・・・ぶちまいてね♪」

ナルの頬から流れる血を舐め取る。

だが突然、何かに反応するようにクナイを取り出した。

「クナイ・・・お返ししますわ・・・・・・」

「わざわざ、ありがと」

先程、髪を切られた草隠れの下忍が、人のものとは思えぬ長い舌で絡み取られたクナイをアンコの首筋に突きつけていた。

アンコもまた、取り出したクナイを突きつける。

両者の間にピンとした空気が張り詰める。

「でもね・・・殺気を込めて・・・私の後ろに立たないで・・・・・・早死にしたくなければね・・・・・・」

そう言って、舌からクナイを掴み取る。

「いえね・・・赤い血を見るとつい、ウズいちゃう性質でして・・・・・・それに、私の大切な髪を切られたんで興奮しちゃって」

シュルシュルと口の中に戻っていく草隠れの下忍の舌。

「・・・・・・悪かったわね」

(ナ・・・ナルちゃん・・・・・・)

(な・・・何よ、この試験管・・・・・・はっきり言って、ヤバイ!! それにコイツも・・・・・・)

渦中の中にいるナルを心配するヒナタと、二人の異常さに警戒を抱くサクラ。

「どうやら、今回は血の気の多い奴が集まったみたいね・・・・・・フフ・・・楽しみだわ・・・」

特別上忍である自分相手に、真っ向から殺気をぶつけてくる下忍に、アンコもまた興奮していた。

(アンタが一番、血の気が多いってばよ・・・・・・)

頬を押さえながら、ナルは内心思う。










((((ナルト(君)・・・・・・))))

((ああ・・・間違いない。音隠れの・・・・・・うちに進入してきた音忍達に『呪印』をつけた奴だろう。

大蛇丸の部下か・・・あるいは本人か・・・・・・))

((第一試験終了までは間違いなくいませんでした。ここに来るまでに入れ替わったと考えられますね))

草隠れの下忍がもつチャクラを探り、三人は確信した。

((後者であって欲しいわね・・・・・・コイツ相手となると、殺るには、ナルトはともかくアタシや白、一人じゃ無理ね・・・

二人同時ならいけそうだけど。にしても、このチャクラ・・・生理的に受け付けないわ・・・・・・))

((殺意と狂気・・・いえ、狂喜というべきでしょうか・・・・・・その2つの感情が特にチャクラにしみついてますね))

草隠れのチャクラに顔を顰める白とミコト。相手を殺すこと、戦うことに愉悦を覚える者のチャクラだと。

((予定変更だ・・・・・・カブトの監視を中止し、俺はコイツの監視に当たる。お前達も式を俺に寄越し、観察しろ))

((カブトの方は、どうするの? 私か白がやる?))

((・・・・・・いや。コイツ程の者が出張ってきているんだ。カブトの方からコイツに接触してくるだろう・・・・・・

お前達は安全な場所を確保し、式を通して観察に当たれ))

草隠れの下忍の登場に、真剣に今後の予定を立てる三人。










「それじゃ、第2の試験を始める前に・・・アンタらにコレを配っておくね!」

そう言って、アンコは懐から紙の束を取り出した。

「同意書よ。これにサインしてもらうわ・・・・・・こっから先は『死人』も出るから、それに付いて同意を取っとかないとね!

私の責任になっちゃうからさ~♪」

にこやかな笑みを浮かべながら、恐ろしいことを言うアンコ。

「まず、第2の試験の説明をするから、その説明後にこれにサインして、班毎に後ろの小屋に行って提出してね」

そういって、金網の前に設けられた小屋に目配せする。

「じゃ! 第2の試験の説明を始めるわ。早い話、此処では―――極限のサバイバルに挑んで貰うわ」

(サバイバルかよ・・・またクソめんどくせー試験だな!)

同意書を廻しながら、内心愚痴るシカマル。

全員に同意書が行き渡ったのを確認し、アンコは巻物を一つ内容が見れるように広げた。

「まず、この演習場の地形から順に追って説明するわ」

巻物には死の森の簡易地図が記されていた。

「この第44演習場は・・・カギの掛かった44個のゲート入口に円状に囲まれてて、川と森・・・中央には塔がある

その塔からゲートまでは約10キロメートル・・・この限られた地域内で『ある』サバイバルプログラムをこなしてもらう

その内容は・・・各々の武具や忍術を駆使した・・・・・・」

地図をしまい、2つの巻物を取り出す。

「何でもアリアリの――――――『巻物争奪戦』よ!!」

「巻物?」

「そう『天の書』と『地の書』・・・この2つの巻物を巡って闘う。ここには78人、つまり26チームが存在する。

その半分13チームには『天の書』、もう半分の13チームには『地の書』を――――それぞれ1チーム一つずつ渡す

そして、この試験の合格条件は・・・・・・」

受験生達が真剣な表情でアンコが手に持つ巻物を見る。

「『天地両方』の書を持って、中央の塔まで3人で来ること」

「つまり、巻物を取られた13チーム・・・半分が確実に落ちるって事ね・・・・・・」

ルールを理解し、その結果を読み取るサクラ。

「ただし、時間内にね。この第2試験、期限は120時間・・・・・・ちょうど5日間でやるわ!」

「5日間!?」

「ご飯はどーすんのォ!?」

いのが試験の長さに、チョウジはごはんの心配をして、思わず叫ぶ。

「自給自足よ! 森は野生の宝庫。ただし、人喰い猛獣や毒虫・独創には気を付けて」

事務的な返答にガックリとうなだれるチョウジ。

「それに13チーム39人が合格なんてまず、有り得ない。何せ行動距離は日を追うごとに長くなり、

回復に充てる時間は逆に短くなって行く。オマケに辺りは敵だらけ、迂闊に寝る事もままならない・・・

つまり、巻物争奪で負傷する者だけじゃなく、コースプログラムの厳しさに耐え切れず

死ぬ者も必ず出てくる」

この試験の厳しさがようやく分かってきたのか、神妙な面持ちになるナル。

「続いて失格条件について話すわよ! まずは一つ目・・・時間内に天地の巻物を塔まで持ってこれなかったチーム。

二つ目・・・班員を失ったチーム又は、再起不能者を出したチーム。ルールとして・・・・・・途中のギブアップは一切無し、5日間は森の中!」

そんな下忍たちの表情をみて笑顔になるアンコ。

「そして・・・もう一つ・・・巻物の中身は塔の中に辿り着くまで決して見ぬ事!」

「途中で見たらどーなるの?」

「それは見た奴のお楽しみ♪」

ナルの問いに、意味深な返答をする。

「?」

「中忍ともなれば、超極秘文書を扱う事も出てくるわ、信頼性を見る為よ。

説明は以上、同意書3枚と巻物を交換するから…その後はゲート入口を決めて、一斉スタートよ!

最後にアドバイスを一言――――死ぬな!」

そのアドバイスは、この試験に限らず忍の世界において唯一といえるルールだった。

「そろそろ巻物と交換の時間だ」

待機所から中忍が開始の時刻が近づいていることを知らせた。

(なるほど・・・各チームが渡された巻物の種類・・・そして3人の内、誰が巻物を持っているのかも分からない・・・って理由か

イビキが言った通りだ・・・この試験では、情報の奪い合いが命懸けで行われる)

受験生達が、一チームずつ、巻物を受け取りに待機所に入っていく中、サスケは同意書を見直し、第一試験でのイビキの言葉を思い出していた

(・・・・・・全員が敵!! 此処にいる奴等の決意は固い。殺し合う事にもなる・・・って理由だ)

サスケ同様、真剣な表情になっていく下忍たち。

(フフ・・・同意書の意味・・・少しは分かったみたいねェ・・・・・・)

そんな様子をみながらアンコは不敵に微笑んでいた。





ゲート16:キバ・シノ・ヒナタ

「ひゃほおお! サバイバルならオレ達の十八番だ! ヒナタ、甘えは見せんじゃねーぜ!」

「・・・・・・」

自信なさげな表情のヒナタ。



ゲート27:シカマル・チョウジ・いの

「命懸けかよ・・・面倒臭ェがやるしかねーな・・・(こうなりゃナル狙いだ)」

隣では、未だにチョウジが、ご飯とうわごとの様に呟いていた。



ゲート12:ナルト・サスケ・サクラ

「よーし! 負けないってば!! 近づく奴、片っ端からブッたおすってば!!」

他チームを挑発するナルに顔を引き攣らせるサクラ。



ゲート20:ドス・ザク・キン

(フフ・・・やっと、この機会が来た・・・公然と我々の使命が果たせるチャンスが・・・・・・)

彼等の使命とは・・・・・・



ゲート6:我愛羅・カンクロウ・テマリ

(敵チームもそうだが・・・我愛羅と5日間もいるのが怖い・・・・・・)

弟である我愛羅に恐れをいだくカンクロウとそれをみて、ため息をつくしかない長子テマリ。



ゲート41:ネジ・リー・テンテン

(ガイ先生! ボクは頑張ります!!)

尊敬する師である、担当上忍ガイに心の中で熱く誓うリー。










ナルトは、自分達のゲートまでの道の途中で、すばやく影分身の術を発動させた。

現われた二人の分身体はすばやく、『土遁 土中泳魚の術』で地面に沈んでいく。それを見た白もすばやく印を組んでいく。

そしてナルト達がゲートに着き、案内の試験管が鍵を開けた瞬間、白が術を発動させた。

『魔幻 此処非の術』

振り返り、説明しようとした試験管に幻術がかかり、試験管の脳内では、本来とは別の場所にいるナルト達に説明している。

その間に、ミコトは何も書かれていない巻物を取り出し、サラサラとそこに術式を書き、中央に『玉』と書かれた巻物が完成した。

ナルトは目を閉じ、先程、潜らせた影分身体に命令を下す。

分身体は2つのチームが待機するゲートの土中へと移動していた。

カブトのいる第38ゲート、謎の草忍の第15ゲートの地下に。

その地下に自分の体一つ入る空洞を作り、ポーチから水晶を取り出し、それを地面に置き、印を組んだ。

すると、水晶から青白いチャクラが立ち上り、地上へと登っていく。

しばらくすると、その青白い色と黒色のチャクラが交じり合ったものが降りてきて、水晶に吸い込まれていく。

それらを確認すると分身体は水晶に術式を書いていく。

本体のナルトは分身体から作業終了の確認を受け、ミコトに目配せする。

すばやく印を組み、先程作成した巻物の『玉』の文字の上に手を置くミコト。

『忍法 口寄せの術』

すると、影分身体が何らかの術を施していた水晶が二つ現われる。

ナルトはその水晶を自分の前に置き、術を発動させる。

『忍法 遠眼鏡の術』

水晶が光り、カブトそして草忍の姿を映し出した。

「・・・・・・よし。奴らのチャクラパターンは記憶できたな」

ナルト達は、音隠れの者と判断した要注意人物二人のチャクラパターンを記憶し、監視する為の作業をしていたのだ。

かつて、ナルトが三代目から同じ術で監視を受けていたように。

白が水晶と、試験開始前に木の葉の情報を記した巻物を、風呂敷に包み、ミコトは親指を噛み切り左掌に血をつけ再び口寄せを発動した。

煙が立ち、今度は一匹の白い子犬が現われた。

「なんや、ナルト達やないか! 此処どこやねん!?」

キバが連れている赤丸より少し大きい、ミコトが契約している山犬の一族の子供である。

本来は鉄の里の背にそびえる大陸最高峰の山脈の一角の主で、ナルト達に協力するようになった。

一族の子供達は、里まで降りてきて、里やアカデミーの子供達とよく遊んだりしている。

「中忍試験で里を空けるって話したでしょ。今その最中なんだけど、ちょっと頼みがあってね」

「これを再不斬さんに渡して、会合の間で保管してくださいと、伝えてください」

そう言って、白は風呂敷を小さな背に巻きつけた。

「フーン・・・・・・ほな、此処は木の葉で、試験の最中か。まぁ、キバリや。あ、なんや美味いモンあったら土産に買おてきてや!」

「はいはい、モロにはお酒でいいかしら?」

「そやな。けど、あんだけデッカイおかんの胃袋満たすには、めっちゃよおけ買わなあかんで」

モロとは彼の母で、山犬の一族の長である。

「そおね。でもまぁ、なんとかするわ。それじゃ、お願いね」

「ん! まかしとき!!」

そう言って、再び白煙に包まれ戻っていった。

水晶を手元に置かず、里に戻した理由は里の防衛を第一とするためである。防衛機能と水晶を直結し、

その水晶が記憶するチャクラの者が里に侵入してきた場合、すぐに警報がなる仕組みになっている。

自分達は、これから直接彼等を監視し、同じ機会はあるためである。



一息つくことなく、三人は次の作業に入る。

ナルトは身に着けていた手甲を外し、手の甲に術式を書く。

白は先程のミコト同様、無地の巻物に術式を書き、中央に『人』の文字の入った巻物を完成させる。

ミコトは陰陽術で使う人型の紙を二枚取り出し一枚に術式を書き、白の作業が完成したら、白にも紙を渡す。

「「オン!」」

各々の人型の紙が光り、手の平大の白とミコトの姿となる。

ナルトはチビ白、チビミコトを肩に乗せ、二人に向き直る。

「・・・よし、お前達は巻物を入手後、安全な場所で式をとおして監視しろ。合流時、危険時には口寄せを頼む」

「わかりました」

「アンタも気をつけなさいよ」

白は作成した巻物を自分のポーチに入れる。

ナルト達、鉄の忍は任務の際、自分達の体に術式を刻む。仲間と合流する時、仲間が人質、あるいは身動きが取れなくなった時

式を通して状況を伝え合い、必要に応じて口寄せで集合、救出という手段をとっていた。

全ての作業と予定の確認を終わらせ、白は試験管にかけた幻術をといた。










「これより中忍選抜、第二の試験・・・・・・開始!!」

アンコの号令と共に第二の試験が開始された。



「散!!」

開始と同時に森に入ったナルト達は一瞬にして、森の闇の中に消えていった。










さあ、試験開始です。
関西弁の子犬の名前募集です。相変わらず、思い浮かばないです。
『人型の紙』これ名前なんでしたっけ。正式な名前あったら
教えていただきたいです。
チビ白、チビミコトはネギまのチビ刹那を想像してください。
なんか頼みごとばっかですね。ほんまスイマセン。



[672] Re[16]:NARUTO 真の忍 17話
Name: 朱螺
Date: 2006/05/14 15:22
「風を切る・・・入ってろ」

死の森を駆けながら、ナルトは肩に乗る白とミコトに注意する。

「わかりました」

「ん、わかった」

そう言って、二人はナルトの着ている暗部装束に近い濃紺の忍装束の懐に入った。

それを確認し、ナルトは視認することすら適わぬほどに速度を上げた。

やがて、彼の感覚器に対象者のチャクラが感じられた。

その近くにいる3つのチャクラも。

(このチャクラは、うちはの生き残り・・・桃色髪のくノ一・・・・・・そして・・・藤林ナル)

わずかに目を細めながら、さらにスピードを上げる。

「あと100メートル・・・・・」

ナルトの視界に、手裏剣を構える金糸が映った。










「悪いなサスケ・・・・・・合言葉はわすれちゃったってば」

ナルトが目的地に着いた時、監視対象の草忍がヘビのように大木に体を巻き付けながら、

サスケに迫ろうとするのを、ナルがその進行方向に手裏剣で牽制をくわえたところだった。

「いいわよ、ナル! いけてる!!」

草隠れの下忍の底知れぬ実力に、恐怖を感じていたサクラはナルの登場に安心する。

「ナル! カッコ付けて助けに来たつもりだろーが・・・・・・出しゃばるな!逃げろ!! コイツは次元が違い過ぎる!!」

写輪眼を発動させながら、焦りの表情でナルに怒鳴る。目の前の相手の圧倒的な実力を肌で感じ取っている為だ。

「フフ・・・あの大蛇を見事倒して来たようね・・・・・・藤林ナル」

(ッ! こいつってば、どう見てもヘビみてーな姿しやがって・・・・・・そうか、さっきのヘビはこいつのしわざだったのか・・・・・・)

三人で逸れた時の暗号を話し合っている時、突然突風に襲われナルは二人と離されてしまったのだが、

その際、信じられないほどに巨大なヘビに襲われたのだ。

(アイツが来て・・・場が良くなったためしがない・・・どーする・・・・・・)

ナルの、よく任務中に先走って失敗する癖を知るサスケは、なんとか場から逃げる術を考える。

「やいやいやい!! どーやらお前ってば、弱いものイジメしちゃってくれたみたいだな!!」

そんなサスケの気を知らず、盛大に啖呵を切るナル。

(マズい・・・・・・このままじゃ3人ともやられる・・・・・・)

ナルの発言が挑発になるとサスケはさらに焦る。

(これしか方法はない・・・・・・)

サスケはそれまで草忍の攻撃を避ける為に発動させていた写輪眼を戻した。

(!)

(・・・写輪眼を・・・)

(・・・・・・)

サスケの行動に驚くナルとサクラ。静かに様子を窺う草忍。

「巻物ならお前にやる・・・・・・頼む・・・これを持って引いてくれ」

「はぁ!?」

「え?」

サスケの提案にニヤリと笑みを浮かべる草忍。

「サスケ!! 何トチくるってんのアンタは!? 巻物、敵にやってどーすんだってばよ!!」

サスケの弱気な提案に怒鳴るナル。

「なるほど・・・センスが良い・・・『獲物』が『捕食者』に期待できるのは、他のエサで自分自身を見逃してもらう事だけですものね・・・」

草忍は太い木の枝に巻きつけていた体を戻し、ゆっくりと枝に腰掛けた。

「受け取れ!」

サスケは巻物を草忍に放り投げる。

クルクルと回転しながら向かっていく巻物を、しかしナルが一瞬で奪い取る。

「てめぇ! よけーなことするな! この状況が分かってるのか!?」

この場を切り抜ける為の手段をふいにしたナルにサスケは怒る。

「・・・・・・」

そんなサスケをナルは無言で殴り飛ばした。

サスケは何とか体勢を整え、隣の枝に飛び乗る。

「てめー、急に何しやがる!!」

「ナル・・・アンタ何を・・・・・・」

ナルの突然の奇行ともいえる行動にサクラもサスケも呆然となる。

「アタシってば、合言葉は忘れちゃって・・・確かめようはないけど・・・・・・お前はサスケの偽者だろ・・・!!」

「このウスラトンカチが・・・・・・俺は本物だ・・・!!」

「・・・ウソつけ・・・・・・こんなバカで腰抜けヤローは、ぜったいアタシの知ってるサスケじゃねーってばよ!!」

ナルが真剣な表情でサスケを睨みつける。

「こいつがどんだけ強えーか知らねーけど・・・巻物渡して、アタシ達を見逃す保証がどこにあるっていうの・・・・・・」

「・・・・・・!」

「ビビッて状況分かってねーのはお前の方だってばよ」





((へぇ・・・・・・センス良いじゃない))

一連のやり取りを、気配を消して窺っていたナルト達はナルの行動に少し感心していた。

((そうですね・・・巻物だけが目的ならば、即殺するか、あれだけの技量差をもって戦わずとも奪うこともできたはずです・・・・・・

それをせずに、態々姿を現し力量の差を見せ付けたということは、始めからむこうは・・・・・・))

((だが、真っ向から戦おうとしている・・・・・・相手の目的は本能で理解していても、実力差がわかっていないのは確かだ。

 命懸けで倒すべき状況じゃなく、命懸けで逃げるべき状況だ・・・・・))

木の葉で命を狙われ続けてきたナルト。刺客を全て倒せたわけではない。

当時はチャクラコントロールの修行だけに絞り、使用できた術自体は少なかった。

力が足りず、逃げることにすら命を懸けなければならぬほどの絶望的な状況を、幾度も経験してきたのだ。





「フフフ・・・藤林ナル・・・・・・正解よ」

「!!」

草忍がその長い舌で舌なめずりをしながら、冷酷に告げる。

「巻物なんて・・・・・・」

そう言いながら、袖をまくり、うでに描かれた術式に、親指を噛み切って流れた血を擦り付ける。

「殺して奪えばいいんだからね・・・・・・!」

「ふざけんなってば!!」

その言葉にナルは怒りを露にし、草忍に突貫していく。

「よせ!! 逃げろ、ナル!!」

サスケは止めようと叫ぶがすでにナルの耳には届いていない。

(見損なったってばよ、サスケ!!)

そうしているうちに、草忍は印を組み終わる。

『口寄せの術』

白煙と共に、その足元に大木以上とも言える大蛇が現われた。

殴り飛ばそうと、草忍に跳びかかろうと空中にいたナルに、大蛇の尾が凄まじい速さで襲い掛かった。

周りの木々とともに、なす術もなく小さな体が弾き飛ばされる。

「「ナルっ!!」」

大木の枝を何本も折りながら、ナルは太い木の幹に叩きつけられる。

「ぐぁっ!!」

苦痛の声と共に吐血するナル。

ゆっくりと落下していくナルをとらえようと大蛇の舌が伸びる。

「フフ・・・・・・とりあえず喰らっときなさい♪」

その光景を楽しむかのような口調で大蛇に命令する草忍。

ゆっくりと落ちていくナルの目には、未だに動くことの出来ないサスケ。

その瞬間、ナルの中で何かが一気に弾けた。

「ふ・・・ざけるなー!!」

それは、迫り来る大蛇への叫びか。恐怖で動けぬサスケへの叫びか。

ナルの体が膨大な量の青白いチャクラに覆われ、そのチャクラは体の全てを活性化させる。

己を捕らえようとする舌を掴み、その大蛇の巨体を強引に引き寄せ、頭部をすさまじい力で殴りつける。

(ッ!! このチャクラ量は・・・・・・)

大蛇の頭に載っていた草忍は、突如ナルの体から溢れ出した膨大なチャクラに目を見張る。

(ナ・・・ナル、切れちゃってる・・・・・・でも、あのナルが、どーしてこんなに強いの!?)

サクラは突如豹変したナルに驚きを隠せない。

だが草忍が驚いたのは一瞬で、落ち着いて印を組み、空中のナルを『風遁 大突破の術』で再び吹き飛ばす。





「やっぱり、大したチャクラ量ね・・・・・・」

「えぇ、このチャクラ・・・やっぱりナルト君に似ていますね・・・・・・」

「量はある・・・だが、チャクラの変換効率が悪い。コントロールもしきれていない・・・・・・」

三人はナルの豹変に動じることなく冷静に分析していた。

ナルは、確かにナルトと同等量の、上忍をもはるかに超えるチャクラ量をもっているが、二人のチャクラ量は同程度。

ナルトはさらに、今なお完全に制御しきれていない九尾のチャクラという永久機関をも備えているのだ。

それ故チャクラの総量ではすでに火影クラス以上のナルですら、ナルトの総量には九尾のチャクラ分、遠く及ばない。





(・・・・・・これ程の肉体大活性・・・チャクラ量だけはアイツの娘ということかしら・・・・・・)

(あ・・・あれが、ナル・・・・・!?)

突如豹変したように、圧倒的なパワーを発揮するナルにサスケの表情が驚愕に彩られる。

「(フフ・・・面白くなってきたわ) 次はサスケ君・・・君よ! どう出る!?」

ナルの力に興味が沸いたというような笑みを浮かべながら、大蛇の牙をサスケに向ける草忍。

サスケは蛇に睨まれた蛙のごとく、迫り来る恐怖に震えていた。

「サスケ君ッ!!」

サクラが呼びかけるが、サスケはまったく動けない。

その巨体がサスケを吹き飛ばそうとするその瞬間、その間に小さな、だが力強い存在が大蛇の巨体を背中で受けとめる。

「・・・・・・よぉ・・・怪我は、無ぇーってばよ・・・・・・ビビリのサスケおぼっちゃん?」

口から血を流しながらも、軽口をたたくナルに、サスケは呆然とする。

だが、想像以上にダメージを受けたのか、ナルを覆っていたチャクラは急激に力を失っていく。

呆然とするサスケの脳裏には、以前の任務での己の言葉が思い起こされていた。





それは七班が結成されて間もない頃、森に逃げたペット探しの任務で、ナルは死の森から抜け出てきたと思われる

巨大な人食い虎と遭遇し、恐怖で身動きが取れなくなった。

ナルに迫るその虎を、あっさりと撃退したのはサスケだった。

腰を抜かしたナルに向けられたサスケの言葉はナルは忘れないだろう。

「・・・・・・よぉ・・・怪我は、無ぇーかよ・・・・・・ビビリのお嬢様?」

お嬢様扱いされることを嫌うナルにとって、悔しさで忘れえぬ言葉だった。





奇しくも、かつて自分が言った言葉がそのまま返され、サスケの鼓動が大きく響く。

だがその瞬間、大蛇の頭上に載っていた草忍が舌を伸ばしナルの体を絡めとる。

「うわぁっ!! は・・・放せー!!」

そのまま、自分の眼前までナルを持ち上げる。

「フフ・・・チャクラ量だけは四代目の娘ってところかしら・・・・・・とりあえず、おやすみなさい・・・・・・『幻術 春眠香』」

そういって、印を組み術を発動させる。ナルは一瞬ビクリとなって静かに瞼を閉じ、気を失った。

(相当のチャクラを持ってるみたいだけど、垂れ流してるだけで、まったく使いこなせてないわね・・・今はアナタは邪魔・・・・・・)

気を失ったナルを無造作に後方へ投げ飛ばす草忍。

「(このままじゃ、落ちる)・・・ナルッ!!」

サクラは咄嗟にクナイを投げ、ナルを木の幹に貼り付ける。

その光景をただ見ていることしか出来ないサスケ。

「サスケ君!!」

サクラはサスケに向かって叫ぶが、その背は震えている。

「ナルは・・・確かにサスケ君にとってはドジで・・・・・・足手まといかもかもしんないけど・・・・・・少なくとも臆病者じゃないわ!!

女の子だけど懸命に戦ったわ!! ねぇ!! そうでしょ!!」

そんなサスケを叱咤するようにサクラは声を張り上げる。


――愚かなる弟よ・・・このオレを殺したくば恨め!憎め!!そして醜く生き延びるが良い・・・逃げて逃げて・・・生にしがみ付くがいい!!――


恐怖を振り払おうと、きつく目を閉じるサスケの脳裏には、兄イタチが一族を惨殺し最後に残した言葉が浮かんでいた。

「違う!!」

サスケの瞳に写輪眼が甦った。

(フフ・・・一族の血が騒ぎ始めたようね・・・・・・)

その様子を見て草忍は笑みを浮かべる。

(オレは兄貴を殺す為に生き残らなきゃならない・・・・・・そう思った・・・! 

だが、間が抜けてたのはオレの方だったようだな・・・ナル・・・サクラ・・・!!)





草忍が大蛇を返そうと腕の術式に指をかけたが、大蛇はサスケとは違う方向を注視している。

何か獲物を発見したような様子で。

((気付かれたか・・・・・・))

((アンタ、今『同化』じゃなくて、ただの『隠行』なの?))





人はたとえ目から情報が入ってきても意識しなければ、対象を認識することはできない。

ナルトの同化は気配を消すのではなく、大地や大気、植物等が持つ自然のチャクラと同じチャクラを練り上げ、周囲に発散する術で、

発動させれば、目の前にいるにもかかわらず、相手はナルトを意識から外してしまう。

背景とナルトの区別がつかなくなってしまうのだ。

しかし、あくまで意識や気配での感知から外すだけで、それ以外の器官での感知から逃れるには限界がある。

かつて、木の葉で追われたナルトが追い詰められたのは、油女の蟲に負わされた傷と出血により、犬塚の嗅覚に捕まり、

日向の白眼で完全に捕捉されたからだった。





((試験前、土中の影分身にも気付いてないようでしたし、隠行で十分と思いましたが、蛇のほうが気付くとは・・・・・・))

((蛇の中には、鼻先で獲物の体温を感知するものがいる。おそらくはそのタイプだろう。『同化』でもばれていたかもな))

大蛇はナルト達がいる方を向き、鎌首をもたげる。

(餌でも見つけたのかしら・・・あるいは、試験中の下忍か・・・・・・しょうがないわね。お行きなさい・・・・・・)

草忍は大蛇の頭から飛び降り、サスケに向き直る。

(来るのは蛇だけか・・・・・・ならば『影分身の術』)

ナルトは影分身を発動させ、体温を消す為、自分は『土中泳魚の術』で地面に潜った後、大地との同調に入る。

一時的に土中に潜るナルトの真上を、分身体を追う大蛇が通り過ぎていった。

真上を通ったにもかかわらず、ナルトをまったく認識することなく。





そうしている間にサスケはポーチから忍具を取り出し、戦闘態勢を整えた。

(・・・こんなところで命を懸けられないような奴が・・・どうして兄貴に勝てるんだ!)

サスケは木の枝から飛び降りると同時に、右手に持つクナイを草忍に向けて放つ。

そのクナイを蛇のような動きで次々と避けていく草忍。

(見えるぞ!!)

落下途中、太い木の幹に右手と右足を引っ掛け、遠心力を加えて左手の大型手裏剣を放つサスケ。

己の進行方向を読みきって向かってくる手裏剣に一瞬驚愕するが、それをも飛び上がって避ける草忍。

サスケは、手裏剣を投げた反動そのまま木の幹を一周し、同じ位置から口に加えていたクナイを投げる。

(まずまずね・・・私の動きを先読みして、確実に急所を狙ってくる・・・見えてるのね)

顔面を狙ってくるそのクナイを顔の動きだけで避ける。

クナイはチャクラで強化されていたのか、ものすごい勢いで飛んでいき一手目の大型手裏剣を追い越した。

その瞬間、大型手裏剣が空中でピタリと停止し元の軌跡を辿る様に引き返した。

同時に草忍も己の体の両側を通る糸と後方からの手裏剣の飛来音に気付いた。

「これは・・・・・・写輪眼操風車 三ノ太刀!!」

振り返った草忍の顔面に大型手裏剣が突き刺さる。

「やったぁ!!」

歓声をあげるサクラだが、微動だにしない草忍。

ゆっくりと振り返ると、その口には受け止めめた手裏剣があった。

「(私の逃げ道を完璧に読んで、そこに見えない三手目を打つとはね・・・)フフ・・・残念だった」

だが、再びその顔が驚愕に彩られる。

口に大型手裏剣と繋がる糸を咥えたサスケは、既に印を結び終えていた。

「フン・・・・・・『火遁 龍火の術』!!」

糸を伝い、炎が一直線に駆け抜け草忍の顔面に直撃した。

しばしその顔が炎で焼かれるが、火がおさまるとゆっくりと顔をあげた。

「その歳で・・・ここまで写輪眼を使いこなせるとはね・・・・・・流石、うちはの名を継ぐ男だわ」

皮膚が焼け爛れているが、まったくダメージを受けた様子のない草忍。

「やっぱり私は・・・君が欲しい・・・・・・」

写輪眼を発動させ動き続けてきた為か、サスケは肩で息をしている。サスケに駆け寄るサクラ。

「色々と君の力が見れて楽しかったわ」

額宛のマークに指をおき、草忍の目がカッと見開く。

(ぐっ! 金縛りか・・・・・・体が動かない!)

サスケとサクラは完全に、四肢の自由を奪われていた。

指を離した草忍の額宛のマークは音隠れのそれを表す『♪』になっていた。

「やっぱり兄弟だわね・・・・・・あの『イタチ以上』の能力を秘めた目をしてる・・・・・・」

「!! お前は一体何者だ!!」

自身が仇と定めている実兄『イタチ』の名に過剰に反応するサスケ。

「私の名は『大蛇丸』・・・・・・もし君が私に再び出会いたいと思うなら・・・・・・この試験を死にモノ狂いで駆け上がっておいで」

その手には、いつの間にかナルから奪った巻物が燃えていた。

「私の配下である『音忍三人衆』を破ってね・・・・・・」

「な・・・なにワケ分かんない事言ってんのよ!アンタなんかの顔、こっちはもう2度と見たくないっていうのよ!!」

気丈に叫ぶサクラ。

「フフ・・・そうはいかないのよ・・・・・・」

嘲笑を浮かべ、印を組む大蛇丸。

同時にその首が蛇のように伸びだし、サスケの首筋に鋭く噛み付く。

「サスケ君は必ず私を求める・・・・・・『力』を求めてね」

ゆっくりと首を元に戻す大蛇丸。

サスケの首筋に痛みが走るとともに、三巴の文様が浮き出してきた。

「ぐっ・・・な・・・なんだ! 急に・・・苦し・・・・・・!!」

サスケが痛みに跪くとともに、二人に掛けられていた金縛りの術が解ける。

「アンタ! サスケ君に何をしたのよ!!」

大蛇丸を睨み付けるサクラ。

「別れのプレゼントを上げたのよ・・・・・・」

「!?」

そう言うと大蛇丸は大木の枝に飲み込まれていくように、その姿を消した。

「ぐわァ!!」

「サスケ君!!」

同時にさらに痛みが増したのか、首筋をおさえ苦痛の声をあげる。

「うっ・・・ぐあぁぁあああああ!!」

「しっかりしてサスケ君!!・・・ねェ!!」

手を握り、励ますしかできないサクラ。その目には涙を浮かべている。

「ナル・・・・・・ナル・・・・・・どうしよう、サスケ君が・・・・・・」

縋る様にナルに呼びかけるが、彼女もまた肉体大活性と戦闘でのダメージにより、その意識を完全に手放していた。

「うっ・・・うっ・・・」

サクラの目からは涙が頬を伝っていた。

『ギャー! ギャー!』

「キャ!!」

死の森の木々のざわめきと獣達の鳴き声がさらに恐怖に陥れる。

(私・・・私・・・・・・どうしたらいいの!!)

仲間が意識を失い、取り残されたサクラ。

今は必死に目を瞑り、サスケの体を抱きしめる外なかった。










「後は影分身に尾行させる。式は分身体と行動を」

「はい」

地中から出て、監視を行ってきたナルトは大蛇丸が去ったのを確認し、分身体を作る。

「巻物は揃ったか? そろそろ合流しよう」

「ええ。地中に入る直前から、式を通して見てましたよ。巻物も揃っています」

「蛇の方は? もう倒したの?」

「ああ。生体器官を金縛りして、『黄泉沼』で沈めた」

分身体の肩に式がのり、瞬身で大蛇丸の追跡に移った。

それらを確認し、目を閉じる。ナルトの手の甲、試験直前に書いた口寄せの術式が輝き、その姿が消え去った。



「どお? 安全な場所。目立ちすぎて、逆にみんな気付かないの」

「僕は、どうかと思ったんですが・・・・・・」

ナルトが口寄せされ合流した場所。それはゴール地点である塔の頂だった。

死の森一帯が見渡せ、時間も夕刻。西日が眩しい。

「まあいい。本題だ」

「あの草忍、大蛇丸本人だったわね」

「本人で助かりましたね。あれが部下に過ぎなかったとしたら、さすがに厄介でしたし」

「狙いは『うちは』か・・・ただの勧誘にしては、最初のカブトの接触やら大袈裟な感じだな。

 他にも狙いがあるのか・・・・・・」

「あー・・・あと、あれ。『うちはイタチ』」

「ナルト君、接触したことは?」

「ない。 俺が木の葉を出た時は、まだ下忍でもなかったんじゃないか?」

「うちは一族を一人で滅ぼして里を抜けた・・・大蛇丸と接点があったとはねー・・・」

「二人が同時期に木の葉に在籍していた期間はない・・・・・・接触は、里を抜けた後か・・・」

「最悪、うちはイタチが大蛇丸の部下である可能性もありますね・・・・・・」

「戦う可能性もあるわけか・・・はたけカカシもいるし、とりあえず写輪眼対策しとくべきかしら? アンタは問題なしだけど」

「ああ。うちは一族とは、木の葉内で。暗部として『鉄』に探りに来た奴らを含めて、馬鹿ほど相手をしてきたからな。

 特徴さえ把握すれば、どうという相手ではない・・・・・・俺がやりあった経験が『うちは』の全てならば、の話だが・・・・・・」

「気になることでも?」

「ただの『うちは』が一人で『うちは』そのものを滅ぼすことができたのか、ということだ」

「共犯者・・・大蛇丸あたりが関与していた可能性は?」

「それもあるがな・・・・・・一人で実行できるほどの力量と想定しておくべきだな。

『うちは』と『大蛇丸』木の葉内部にある情報を探ってみるか・・・・・・

 入手した進行スケジュールによると、三次試験まで、一ヶ月ある。その間に・・・・・・!」

「「!」」

三人は突然会話を止め、徐に印を結び、目を閉じる。

大蛇丸をさらに追跡していた分身体と式から情報が入ってきたのだ。

二次試験の試験官で、かつての大蛇丸の部下、みたらしアンコと接触している。

二人の会話、行動から情報が流れてくる。


火影暗殺・・・部下が足りない・・・うちはの血・・・世継ぎになれる器・・・アンコの使った大蛇丸の禁術・・・呪印の痛み・・・


大蛇丸がアンコの前から姿を消したのを確認して、分身体は消え、式は自ら燃え尽きた。

「・・・追跡はここまでか。もう少しチャクラを与えておくべきだったかな」

分身体のチャクラが切れ、維持できなくなったようだ。

「ある程度情報も手に入りましたし、いいんじゃないですか。あとはカブトあたりとの接触を見張れば」

「とりあえず、ちゃっちゃと合格しちゃいましょ。今、塔内部で合格を受けたのは、2チームよ。

 木の葉の油女、犬塚、日向のチーム。最短記録で入ってったのが砂隠れのあの子。『人柱力』の子のチーム」

「最短時間を数十分更新の三位か・・・・・・妥当なところだな・・・・・・『人柱力』か・・・・・・」

尾獣を体内に宿した者、『人柱力』

ナルト自身、自分を含め他にもそういう存在がいることを知っていても、直接会ったことはない。

あの目をみれば、どんな扱いを受けてきたかも分かる。

『うずまきナルト』と呼ばれ、木の葉に居続ければ、自分もああいう目をしていただろう。

どういう対応をとることになるかは分からない。

今、確信を持って言えることは一つだけ。

あの目をした者・・・大蛇丸・・・木の葉隠れ・・・現時点において、どの者達とも自分という忍は相容れないということだ。










あとがき・・・・・・ゴメンナサイ!
それしかないっす。実生活忙しくて、とんでもない期間放置。
その間も、コツコツと感想が。
ぶっちゃけ忙しさは、変わりません。次投稿するのにも時間かかりそう。
情けないけど、なんとか頑張ってみます。


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