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[42107] (TVアニメシャーロット)Charlotte SS 乙坂有宇の記憶力がずば抜けていたら
Name:  幸せな二次創作◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2021/08/31 05:41
 題名通りTVアニメシャーロットの主人公、乙坂君の記憶力がずば抜けていたらどうなるかというお話




 2016年 10/23 サードプロローグ後の物語を大幅に編集中。

 2016年 10/24 サードプロローグ後の物語の編集終了。



[42107]  プロローグ 異常な記憶力、異質な力 [訂正版]
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2018/02/01 19:43
 僕、乙坂有宇にはずっと小さい頃から疑問に思っていた事がある。

 一つは、幼い頃に読んだ本の内容をあれからかなりの歳月がたったにも関わらず逆さまから一字一句言えるほどの異常な記憶力にたいして。

 そしてもう一つは、何故自分は自分でしかなく、他人ではないのだろうというもの。

 我思う故に我ありとは昔の哲学者の言葉だったけど、僕は我ではなく、他人を思ってみた。

              あの人も僕なのではないかと。




 他人を思う、そんな事を何時も思いながら過ごしていると、ある日の僕は、他人になっていた。

 簡単に言えば乗り移りだ。だけどこの能力は視界にいる人間にしか使えないし、乗り移れる時間は五秒。

 しかも、乗り移っている間は僕の体は無意識状態になっていて、慣れないうちはよく怪我をすることもあった。


 時間も短いし、視界にいる人間にしか乗り移れないから邪なことには使えない。学校で女子に乗り移ってあれやこれやしたい。なんて、淫らな考えが過るような年頃に発現したので、頑張って乗り移れる時間を増やせないか試したりしたのは今では恥ずかしい思い出である。結局、増えなかったけどな!


 五秒しか乗り移れないという理由から、僕のやれることといえば、精々気に入らない不良連中に乗り移り、その仲間にスクリューブローを全力でレバーに叩き込む。そんな腹いせくらいにしか使えない能力だった。


 だが、人間の閃きとは唐突にやってくるものだ! この異能力を存分に発揮できるアイディアを僕は思い付いた!

 それも僕だからこそできる事である。

 それがなにか、教えてやろう。






 頭のいい連中に乗り移ってテストの答案の解答を暗記すれば学年一位も夢じゃないんじゃね....だ!


 幼い頃に読んだ本を逆さまから読み上げることのできるような記憶力だ。この異能力を使えば楽にできてしまう気がする。

 カンニングなんてしなくても、記憶力がいいのだから教科書を暗記すればいいじゃないかというやつもいるだろうが、少なくとも異能に目覚めた時点の僕はそんな面倒な事を進んでしようなんてことは微塵も思わなかった。


 まぁそんな訳で、僕はテストで直ぐ様そのアイデアを実行に移した。

 頭のいい連中に乗り移りまくり、そいつらのテストの解答を完璧に記憶、自分の体に意識を戻されてから、信憑性の高い答えを自分の答案用紙に記入していき、そして、僕は全教科ほぼ満点という記録を叩き出して、中学生活で初めて学年一位の座を手に入れのだった。


 当然、成績の急上昇にカンニングを疑う教師が出てきて、再テストをさせてきた。だが、僕には意味の無いことなんだよ! 馬·鹿·共·目!


 僕は一度見たものや聞いたものを絶対に忘れることはない。目の前で同じテストの問題をすらすらと解いたら教師陣が僕を疑うことは無くなった。元々、暗記系の科目ではいい点をとっていたのがよかったのかもしれない。


 だが、一人、厄介なやつがいた。校長だ。頭が禿で舞台に立つとき照明で禿頭がピカチュウと光る太ったあのプライドの高いと有名な校長だ!


 校長は僕が答えを覚えているのではと疑っていた。ある日の放課後、校長は僕を校長室に呼び出して、僕の苦手とする物理の再テストをさせてきた。他の教師達の時と同じようにすれば問題ないと思って座ったが最後、テストの問題の内容は全くの別物で僕には解くことができない。


 僕は焦った。このままではカンニングがバレてしまうと。しかし、校長のミスで何とか切り抜けることができたのだ。


 「どうした。まさか解けないのか?。答えはこの机の上にあるからカンニングはできない。乙坂君、カンニングをしていないと証明したいなら早く解きなさい.....」

 それを聞いて時、僕は俯いてテストに集中するふりをしていた。シャープペンを持つ手が震える。校長から見れば問題を解けないことに困り焦っているようにでも見えていただろう。校長はそんな僕を見て自分はやはり正しかったとでも思ったのかうっすらと卑しい笑みすら浮かべる始末だった。

 だが、その時、僕は焦っていたわけでも困っていたわけでもない。笑いを堪えるのに必死なだけだったのだ。

 わ、笑うな! ぜ、ぜ、絶対に笑っちゃダメだ!


 そう自分に何度も言い聞かせる。笑えば不自然に思われる。僕は深呼吸をすることで笑いを堪えきった。

 校長、あなたは、僕にあたえてはいけない情報をあたえてしまった。あなたの机の上にテストの答えがあるという情報が僕の耳に入らなければ、校長の考えが正しいと証明され、僕はカンニング魔というレッテルを貼り付けられていたことだろう。

 でも......あんたが座る椅子の前に存在するその机の上に、今解いている問題の答えがあるというなら話は別だ....!


 僕は直ぐ様、校長に乗り移り、机の上に置かれている紙を見る。確かに今、解いているテストの答えだった。

 僕はその答えを四秒で脳に焼き付け、残りの一秒でその紙を元の位置に戻すと同時に自分の体に戻った。

 自分の体に意識が戻った時思っていたことは 勝った! という確信だった。今この状況を作り出し僕を絶望の崖っぷちに立たせた憎むべき校長に対してだ僕は勝ったんだ。

 僕は深い静かな勝利のため息を吐くと机にのるテスト用紙を見ていた顔を上げ相変わらず薄ら笑いをしている校長を見た。

 僕が乗り移っている間は乗り移っている人間の意識はない。つまり校長は僕が答えを見たのにも気づけなかったということ。そのことに思わず口の端を吊り上げてフッと笑った。

 「?」

 校長はそれを見て一瞬首を傾げた。危ない危ない、少しでも怪しまれるのはよくないじゃないか。今はカンニングをしていないと僕がこの大人に示す時間なのだ。だから僕がカンニングをしていないと証明してやろう。僕がカンニングをしていないことの証人となるのは僕に疑いをかけた校長自身だ。

 僕はシャープペンを確りと持ち、ひとつめの解答を埋めた。そして次々に問題の答えを覚えている通りに記憶しているままに記入していき、最後の問題を解き終えると、回答用紙を校長の座る仰々しいデスクにバシッと叩きつけるように渡した。

 「解きました。 .....どうしました? 早く採点をしてください校長先生」

 僕が急に問題を一気に解いたことに茫然としていた校長は僕の言葉ではっとなると近くの鉛筆立てに立ててあった赤ペンで採点を始めた。

 結果は言うまでもない。


 「ぜ、全問正解だ.....ばかな」

 「これで僕がカンニングなんてしていなかったとご理解いただけましたか」

 「くっ.....ああ、疑って、すまなかった」


 校長は悔しそうに頭を下げる。 誠意なんて全く感じれない謝罪。実にくだらん!

 こいつは僕を窮地に追い込み、問題を変えたテストに四苦八苦する姿を窺って、追い込まれる様を楽しんでいたのだ! その事を僕が赦すわけがないし、上っ面な謝罪を貰っても嬉しくもなんともない。 

 だが、思っていることをそのまま言っても意味がない。説教をくらうだけ....。

 その時の僕は心の広い乙坂有宇だった誰がどんなことをしようとも許せる人間だった。そう思いこんで校長を許した。もちろん表面上だ。本心では許す気なんぞまったくないのである。

 「校長先生、誰にでも間違う時はありますよ。それに、今日の事は仕方ないことですし....。それじゃ、僕は妹を家で待たせているので帰りますね。失礼しました」

 僕はそう言うと校長室から退出し、その後すぐに、自分のクラスの教室に鞄を取りに行った。その後、再び、校長室に足を運ぶ。

 先程言ったが、あえて、もう一度言おう! 表面上で許せど、本心では僕は校長の仕打ちをゆるすつもりなんて微塵もなかった。

 やつは僕が苦しむ姿を嘲笑った。窮地に立たせた。それだけで万死に値する!

 だから、僕は校長に対して報復する権利がある。 やり返す。徹底的に! 僕のもちいる力を使ってな!


 僕は校長室前にたどりつくと、退出の際に僅かに開けておいたドアの隙間から、僕の解いた回答用紙を納得のいかない様子で見ている校長に乗り移る。

 そして、校長に乗り移った僕は後ろにある、校長室の窓を無駄のない最小限の動きで開けると三階であるここから真下にある花壇から少し離れた、アスファルトに飛び降りた。

 宙に身を投げ出した瞬間、意識が自分の体に戻される。

 そして、直ぐ様、普段人が使わない、非常階段がある場所まで全力疾走し外に出た。

 非常階段から校舎の裏に出て、澄まし顔で校門まで向かっている道中、校長の痛みに悶える絶叫が聞こえた。しかし、足から落ちたから死んではいないだろう。 

 次の日クラスの奴らから知ったが、校長の足は完全粉砕、もう治ることはないらしい。そして飛び降りた当人は何故は飛び降りたのか覚えていないと言っており、精神患者扱いだ。校長が自分で窓から飛び降りる所を見ていた人間がいたらしいし、そう思われて、当然だろう。誰も乗り移られ操られていた、なんて考えない。

「校長が自分で飛び降りた」との証言が多かったからか僕が疑われる事もなかった。

 完全犯罪成立。 僕を窮地にまで追い込んだ仮はしっかり返した! ざまぁみろ! これが、僕に楯突いた結果だ。これは当然の報いで、僕が正義なんだ! 楯突いた奴が悪なのだ! 


 閑話休題。


 さて、あのスカッとした出来事から、そんなこんなで時間がたち、もうすぐ受験シーズンなのだ!

 乗り移り+完全記憶能力という最強の能力を持っているので、当然名門校に進学してやるつもりである。

 だけど、受験では誰が頭がいいのかは分からない。だから僕は幾つもの名高い塾に塾生のふりをして忍び込んだ。

 どの受験生が、どの科目が得意なのかを徹底的にリサーチ。そして、無事、エリート校に首席で入学したのだった。



 桜花が咲き誇る春。この陽野森高校の体育館では新入生を迎える入学式が行われている。

 『では、新入生代表、乙坂有宇君挨拶をお願いします』

 「はい! 」

 新たなる学校の校長に返事を返し僕は立ち上がり、舞台へと向かう。

 その途中、やれイケメンだの、あいつが首席かだの同じ新入生達が騒いでいたが、ああ、そうだとも!。

 眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能。それが僕だ! お前らとはできが違うんだよ!

 マイクの置かれた場所に立ち、辺りを見渡す。下から椅子に座って僕を見上げる生徒に教師達、そして僕は彼らを見下ろす。

 ああ、まるで愚かにも神を崇める人間とそれを見て程度が知れると見下す神のようではないか! どらちらがどっちなのかはいうまでもないだろう......。

 今のこの光景に思わず口の端を吊り上げてしまいそうになるが何とか堪える。


 『本日は私達、新入生の為に、このような盛大な式をあげていただき、誠にありがとうございます! 春の暖かな春の日差しに包まれ、私達は伝統ある陽野森高校の一員となります。明日からの学校生活では学業は勿論、部活動にも全力で取り組み、自分自身を向上させていきたいと思います。本日は誠にありがとうございました! 』

 挨拶が終わると僕はお辞儀をした。それと同時に盛大な拍手の喝采がこの体育館を包み込む。

 ああ、もう無理だ......。「フッ」僕は顔を伏せながら、噛み殺していた笑いを思わず漏らした。



[42107]  第一回 僕が正義だ。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/27 13:55
 高校生活が始まってから初めての実力テストが終わった。その翌日、テストの総合点数と順位が張り出され、その場所、一階の廊下に人だかりができていた。僕もその中に当然いて、成績上位20人の中に自分の名前が記載されているかを確認する。

 一位 乙坂有宇 総合得点498点

 この結果を見て同学年の奴らが色々と騒ぎ立てていた。称賛の声。嫉妬妬みの声。自分との各を思い知ったという声。ああ、一躍有名になった気がする。上から下にいる奴らを見下ろすのは実に気分がいい!。

 僕はふっと口の端を吊り上げると自分の教室である一年一組へと踵を返した。

 午後の授業が終わり、僕はスマートフォンの画面を開き、今日なにか予定を入れていなかったか確認すると、メールが届いていた事に気付く。知らないアドレスからだったがメールの内容を見てこれが一年二組の生徒であることがうかがい知れた。

 1-2 の杉本というものです。放課後校舎裏に来てくれませんでしょうか。夜まで待ちます。

 これがメール内容だ。文面から察するにまた告白のようなものだろう。ここ最近こう言うのが増えた。学園トップの成績にルックスだってイケてる方だ。これで持てない訳がない。僕は酷く迷惑しているのに.........とっとと帰らせるか。

 校舎裏には一人の女子生徒がいた。僕が来たのが見えると嬉しそうな顔をする。

 「ごめんなさい。こんな所まで呼び出して」

 そう思うな呼び出すなよ。と僕は思ったが僕のイメージが壊れないようにできるだけ優しい態度で接する。

 「えっと僕に何かようかな?」

 女子生徒は僕の顔を見て、顔を赤らめ伏せる。そして緊張したこうばった声で、

 「あの友達からでいいので私と付き合って貰えないでしょうか!」

 僕に告白した。友達からででいいか。何か狡い奴だな。僕は答えをどうするかいかにも迷ってますという態度を取りながら観察してみる。そこそこの容姿。だが、他に突飛している部分は何処にもない。杉本という名前がこの高校で噂されているのも聞いたこともない。つまり普通のどこにでもいるちょっと顔のいい女以外の何者でもないということだ。僕のステータスと全くもって釣り合わない!。

 「えっと、僕は今の成績を維持するために寝る間も惜しんで勉強しなくちゃいけない誰かの相手をしている暇なんて無いんだ。だから ゴメン!」

 勿論、嘘八百だ。勉強なんて一切してない!!!。

 「そうですか......分かりました......突然お呼びしてすみませんでしたー!!!」

 告白を振られた杉本某は泣きながらこの場を去っていく。バカなやつだ。友達からでいいのでとか狡い告白をしたから、僕がふった以上、お前は僕の友達になる機会も無くなったということだ。告白が友達になってくれなら、社交的な面をアピールするためにならんこともなかったが、告白に友達からという言葉を使ったあんたには僕が友人になってやる義理もない。

 恋人は僕のステータスを引き立たせる為の重大なポジションだ。僕がお前ら見たいな普通の女子を選ぶわけがないだろ。

 そうだ、僕のステータスに相応しい人間、狙うはただ一人。この高校のマドンナ的存在。


 放課後、部活のあるものはテスト明けの久しぶりの部活へ、そして部活に入っていないものは昇降口で靴に履き替え下校する。僕は昇降口から出て、少し離れた場所で、ある人物が来るのを待っていた。

 「えー弓ちゃん昨日のスペシャル見てないの」 「うーん。昨日はその時間、丁度外出していて」

 来た。昇降口から出てきた二人の女子生徒。その内の一人は圧倒的な存在感を放っている。

 腰まで伸びる艶やかな黒い髪。少し垂れ目気味の瞳は儚く優しげだ。すっと通った鼻梁な鼻と薄い桜色の唇が絶妙なバランスで配置されている。そう彼女こそ、この高校のマドンナ的存在。白柳弓!。僕はお前を落とす!!!。

 校門を出るとすぐ交差点がある。そこの横断歩道ので白柳弓とその友人だと思われる赤毛の少女は赤信号が青になるのを待っているようだ。僕は近くの壁にもたれかかり機会を疑っていた。

 大丈夫だ。チャンスは絶対くる。能力の限界である五秒をいかにして使うかだ。丁度その時走行してくるトラックの姿が目に入った。これだな。

 僕はまず白柳さんの隣にいる赤毛の少女に乗り移り白柳さんから出来る限り離れる。

「え、みっちゃんどうしたの!」

 次はトラックの運転手だ。視界が変わり運転席から見える白柳さんに向かってハンドルを切る。
自分に突っ込んでくるトラックに驚き身動きできない白柳さん。間に合え!。

 その時、.......何かピントのずれたような違和感があった。だが、僕はその些細な違和感を気にせず自分の体に戻されてから全力で走った。そして

 ズガッッキィィィィィイッ!!!!!!。ガラガラガッシャン!!!!!!!。

 「「「.........」」」

 静寂がその場を支配した。道路には鮮血がアートのように刻まれ、トラックは校門の壁に激突し壊れたようにピーピーと煩く叫んでいた。唖然、唖然、唖然、呆然、呆然、呆然。

 何が起きたかすぐには理解できなかった。だが、時をおいて僕は自分が何をしたのか理解した。

 ........僕は失敗した。

 ステータスを手に入れることは出来ず、何かの利益を得たわけでもなない。ただこの世界で悪とされ禁忌とされている殺人を犯しただけ......。

 ふと、右手に何かを持っていた感触があったので見てみる。華奢で細い五本の指。肘辺りからすっぱりと切り裂かれている一本の何か。この往来にいた誰かが僕を見て「ひっ!」と悲鳴をあげる。

 僕が持っていたものがそれほどまでにおぞましいものだったからだろうか?。さっきまで生きていた人間の腕なのに。

 だが、肘から先の人体は存在しない。僕は白柳さんの腕を持っていた。いや、掌を掴んでいた。彼女が必死に伸ばした手を掴んだのだ。だが、間に合わなかった押し倒すように前へ突っ込めば、まだ、助かったかもしれない。

 失敗。失敗。失敗失敗失敗失敗失敗。僕が殺してしまった.....。

 「弓ちゃん!?。え、弓ちゃん?」

 赤毛の少女がいつの間にか戻って来ていた。何があったか見ていたようだが、何が起きたか理解出来ていないらしい。

 赤毛の少女は鮮血をたどりトラックまでいくとそのしたを覗きこんで崩れ落ちた。

 そのあと暫くして警察が来た。その場で見ていたものに事情聴取してくる。僕は白柳さんの腕を持っていたことを聞かれて彼女を助けようと掴んだ結果だと供述しておいた。嘘ではない。この現場にいたの人々もそれを見ていた為に僕は直ぐに家に返された。この事件は居眠り運転による不幸な事故ということでけりがついたようだ。

 真実とは全くかけ離れたものだが誰も気づくことはない。相手に乗り移ったなんて発想を誰もすることはない。僕が捕まることはないだろう。

 けれども、僕せいで白柳さんは死んでしまい。トラックの運転手は人殺しとして見られている。はたして、捕まらなかった事を素直に喜んでいいのだろうか。いや、人の命だ軽いわけがない。

 ならば、自首する?。相手に乗り移ったと?。信じる訳がない。さらに言えば信じてもらえたとしても科学者とかの実験材料にされるのが落ちだ。
 
 だから、僕はこうすることに決めた。犯罪者達の代名詞 死んだぶんの人間の分まで生きてやる。不幸になったやつらの分まで幸せになってやる。ようするに僕は自分のしたことを肯定した。

 そうだ。僕は人を不幸にした。そのことは逆説的に考えれば自分が幸せになるため努力した結果だ。それの何が悪い!!!!と開き直った。 

 この考え方は間違いではない。 僕が正義だ!!!。

 白柳さんの分まで長生きしよう!。トラックの運転手の不幸の分、僕が幸せになろう!。幸せになるための努力をしよう!。するべき事を纏め僕は家へ帰る。

 さて、まず幸せになるための一歩として今晩の夕食は妹の歩未と一緒に作るかな。



[42107]  第二回 幸せになるための努力
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/16 06:46
 他人の分まで幸せになる。殺した人間の分まで生きる。そう決めたあの日から二日が経過した。

 事故の次の日の白柳さんの葬式にはクラス全員が参加した。勿論、僕もそのなかにいて君の分まで生きるよと自分の中で決意を再確認した。

 僕が幸せになるためには何が必要か、誰からも注目を浴びるステータス。この世を楽して生きるため金持ちになる。誰からも妬ましく思われるような人生を共に歩く女性をてに入れたい。だいたいこんな所だろう。

 だから僕は白柳の葬儀の次の日から学業にも真剣に取り組むようになった、小テストも分かるところは解くようになった。解らないところは頭の良いやつに乗り移って答えを暗記してテストを解いた。

 え、変わってない?。まさかちゃんと自分でも解いただろ.....。さらに僕は高いステータスが欲しいんだ一位を持続するためならどんな汚い手をも使う。それの何が悪いんだ。

 昼休みは株の儲けの仕方、株の傾向等々の情報の本を頭の中に叩き込む。記憶力だけには自信があったから金持ちになりたいを叶えるために.....幸せになるためには必要な知識を蓄え続けた。

 家へ帰宅したらタスクを終らせ、今までやらなかった明日ある科目の予習と復習をして、妹の歩未の夕食の手伝いをするようになった。

 「久しぶりに有宇お兄ちゃんが手伝ってくれるのは嬉しいのですが、急にどうしたのでしょうか?」

 野菜を包丁で切っているとプライパンでオムライスを作っている歩未がもっともなことを聞いてきた。昔は歩未と交代で家事をしていたが僕が中学に入ってから今日まで歩未にばかり家事をまかせてきりだったのだ。中学は部活に入っていたから帰りがどうしても遅くなってしまって、当番を守れてなかった。朝も同じ理由で家をでる時間が早すぎて家事なんてやってる暇がなかった。それからというもの、歩未が一人で家事をしてくれていたのだ。僕が突然料理を手伝いたいと言えば持って当然の疑問だろう。


 「えっと、純粋に歩未の手伝いをしたかったんだ。中学に入ってから家事をほったらかしにしてただろ?。高校では部活に入ってないから時間があるんだ」

 「え、有宇お兄ちゃんもう部活やってないのですか!。中学生の頃はいろいろな部活を掛け持ちしてたのに!?」

 歩未は意外そうな顔をする。僕が部活に入っていないことでそこまで反応するだろうか普通。

 「高校では勉強に専念したいんだ。部活なんてやってたら今の成績が落ちちゃうだろ?」

 「確かに勉強できる有宇お兄ちゃんはカッコいいですが、いろいろな部活で活躍する有宇お兄ちゃんもやっぱりみたいのですぅ」

 「う、お前時々凄い恥ずかしいことをいうな.......」

 「恥ずかしい?何が?」

 しかも天然が入っている。取り敢えず野菜を切り終えたのでお皿に盛り付けるか。歩未もオムライスができたらしいし早くしてしまおう。

 オムライスは味はいつも通り胸焼けがするほどに甘いかったが今日はいつも以上に知識を頭につめこむのに集中して疲れていたからか美味しいと思えた。

 食事を終えると僕は図書館から借りておいた株の本をぱらぱらと速読する。頭に内容は確り入っているので問題ない。十冊目を読み終える頃は株の概要と儲ける為の方法を完璧に理解していた。後はこの知識を実践するだけで幾らかの儲けをだせるだろう。

 直ぐ様勉強机の上に置いてあるパソコンを起動し、株のサイトへといき一番儲けがでるであろう会社へ投資する。投資額はたったの十万。他は何千万とだしているが僕の財産は貯金していた十万円だけ、一応僕の全財産なのだから利益がどのくらいでるのかが楽しみだ。

 次の日の夕方には僕のその十万円は百万円になっていた。僕が学校での昼休みを使って株の動きを見て、より利益がでるであろう会社に投資を切り替えた結果だ。スマートフォンと三十分間以上にらめっこ下のは初めてかもしれない。

 授業も確り理解し、休み時間は数学の教科書の公式の丸暗記をしてみたり、株の動きを読んだりとそれなりに幸せになるための努力をしていた。

 そして事はその日の夕方、、高校での放課後僕の株が百万を超えたのを確認したときに起きた。

 『一年一組乙坂有宇くん。至急生徒会室まで来てください。繰り返します。一年一組乙坂有宇くん至急生徒会室まできてください』

 僕を呼び出す校内アナウンスが鳴り響いたのだ。生徒会に呼び出されるので思い当たる所があるのは白柳さんの事件のことくらいだが.......。僕はスマートフォンの電源を落とすと、生徒会室へと向かう。なにか嫌な予感を感じながら。

 だが、そんなもが当たったとしても僕には関係ない。僕は自分が幸せになるために努力をするだけだ。たとえこの手を何れだけ悪に染めようとも僕は幸せにならくてないならない。それが僕の義務だ。



[42107]  第三回 断裁予告
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 00:24
 生徒会室へ行き。中に入ると生徒会長らしき人物がいた。長テーブルに腕をおき、椅子に姿勢正しく座っている。

 中に入ってまず僕が気になったのは室内の中央に置かれた机と椅子。その上には筆記用具と一枚の紙が置かれている。これを見て、白柳さんのこととは違うことで呼び出されたことがある程度予想できた。

 「生徒会長の大村です」

 出入口付近で生徒会長の自己紹介を聞いたが直ぐに忘れそうな名前だと思った。忘れないけども。

 「僕に何のようでしょう。用事があるので手早く恃みたいのですが」

 「それはあなた次第です」

 生徒会長はそうふてぶてしくいうと長テーブルに上にあった紙を手に持ち僕に見せてくる。

 「これはこの前の実力テストの貴方の答案用紙のコピー。見事な満点です。同じテストがその机の上にあります。この場でもう一度満点を取ってください」

 どうやらカンニングを疑われているらしい。生徒会長の今の言葉でほぼ間違いないだろう。中学でも同じことをされたことがある。あの時は教員達だったけど今回は生徒会長.......いや学生か。この間の実力テストといっていたから解こうと思えば余裕だが一応惚けてみることにする。

 「はぁ?、それに何の意味が」

 「貴方にはカンニングの容疑がかかっています。」

 「ッ!」

 「九十点以上なら白。それ以下なら黒と判断されます」

 これでカンニングを疑われていないという線は完全に消滅した。できれば僕の考えが間違っていれば良かったんだけどな。さらにいえば九十点以上でないと黒と判断するという。かなり高い基準判定。受けてもいいが、僕は幸せになるための努力をしないといけない。こんなことに時間を割くのは勿体無い。受けてやる義理はないな。

 「馬鹿馬鹿強い! 帰らせてもらう! 」

 僕は強引な態度で断り、帰ろうと踵を返すが足を止めらざるえないことを生徒会長が口にする。

 「この件に関しては校長、教頭の了解を得てのもの今逃げれば退学処分となるそうです」

 「退学......だと」

 無視できない発言に僕は思わず振り替える。事にしてはあまりにも話が大きすぎる。カンニングの容疑で疑われ、再テストを受けなかっただけで退学までさせるか? 僕のカンニングがバレるは訳がない。カンニングは誰かのでっち上げだろうがそれを真に受けるだろうか?

 「さ、初めてください」

 いや、何かがおかしい。この事態もそうだが、生徒会長が言っていたことにも腑に落ちない所が幾つもある。

 とりあえず僕は答案用紙が置いてある机の椅子に座り、問題を解き始める。

 仮にこれが嘘だったとして何の目的が......。どこかに監視カメラでも隠して僕がどのような手段をもちいてカンニングしているのか証拠をのこそうとしている? それとも.......いや、全てが憶測の域をでない。だがいえることは一つ。乗り移って生徒会長が持つ答案用紙を見てはいけない。カメラにせよ、誰かが隠れている可能性にせよ、乗り移りの瞬間を見られるのは最悪としか言えない。下手に打って出る必要はないだろう。

 幸いな事に今解いている問題は確かにこの間解いた実力テストと同じ問題だ。答案用紙の解答は全て今にもそこにあるように鮮明に思い出すことができる。僕は十分で全ての解答を埋め終えた。

 見直しをし、間違いがないか確認し終えると僕は解いている間ずっと疑問に思っていた事を生徒会長に追求してみることにした。

 僕は立ち上がり生徒会長を見据える。

 「もう、終わったんですか」

 「はい。一度解いたことのあるものだったので思ったより早く終わりました。でも、この答案用紙を渡す前に聞きたい事があるんです」

 「聞きたいこと? 」
 
 首を傾げる生徒会長。

 「貴方はテスト前にこう言いましたよね。この再テストを受けなければ退学になり、それは校長教頭の了解をえてのことと」

 「ええ、確かにその通りです。先程の言葉は嘘偽りのない事実です」

 かかった.....。

 「そうですよね。一生徒のカンニング容疑がかかった再テストであり、退学までかかった重大なことがらだ」

 「ですからそれがどうしたのかと.......」

 「そんな重大なことを見定めるこの場で何故、教員が一人もいないんですか? 何故、あんた以外の人間がいない。こいった場には普通教員の一人や二人いるものだろ」

 「ッ!! 」動揺を露にした生徒会長。

 「それは、先生方に任されたので」

 苦しい嘘だ。それに、明らかに視線をそらし、動揺している。と、いうか生徒会長は何も無いところに助けを求めるような視線を送っている。

 しかし、この人が独断でこの場を作ったのだろうか?。いや、事をそう簡単に決めつけることはできない。だが、決めつけて探らないと出てくる物も出てこないという。間違っていたら謝ればいいだけだ。疑われるような事をするのが悪いんだよ!

 「いや、それが本当だとしたら大変だ。いくら生徒会長でも僕と同じこの陽野森高校の一生徒であることに変わりはないですよね。生徒にそんな重大事項を丸投げしてるなんて到底思えないのですが? もしそれが事実なら大問題ですよ」

 僕は椅子から立ち上がり答案用紙という証拠品を持って、生徒会室を出ようとする。

 「ど、どこへ」

 「はぁ? どこって、校長室か職員室ですけど? あんたが言っていた事が本当か嘘かを確認しにいくんですよ。嘘だったらあんたは退学、良くて停学ですね。生徒会長という肩書きは無くなります御愁傷様」

 僕はそう言うと、職員室へ向かうため、出入口の扉へと向かい、廊下に出ようとした。が、その時、僕は持っていたものがなくなっていたことに気づいた。証拠品の答案用紙が無くなっているのだ。

 「僕の持っていた答案用紙がなくなった? 」

 「答案用紙ならここっすよ? 」

 「え? .....うわぁ!! お前一体どこから?! 」

 僕の傍らには僕が持っていた答案用紙用紙を持った銀髪サイドテールの女子がいた。ただ制服はここのものではない。何故、他校の生徒がここに.....。と、言うか一体何処から出てきたんだ。

 「私はずっとここにいましたよ。最初からです」

 「さいしょから? え、どう見たって急に現れたようにしか僕には見えなかったぞ」

 銀髪サイドテールの女子は「こいつ頭が良いのか悪いのかよくわからない奴だな」とめんどくさそうな顔で僕を観察するような目で見る。

 ドンッ!

 その時、生徒会長は急に立ち上がると「ソイツに言われてやったんだ俺は悪くないんだー!!! 」と叫びながら一つしかない出入り口の扉から退場した。

 「あちゃあ。あとで謝っとかないと」

 生徒会長を銀髪サイドテール(略)は見送ると僕を真剣な雰囲気を纏って見てくる。

 「どうも生徒会長の友利です。別の高校のですが。......思っていたシナリオとはだいぶ違いますが単刀直入にお聞きします。乙坂有宇さん。貴方は相手に乗り移ることのできる特殊能力をもっていますよね。毎回その能力を使ってカンニングしている。違いますか? 」

 なんだこの女、馬鹿なのか。急に僕の前に現れたと思ったら特殊能力者とか言いだしたぞ。さらに言えば僕の能力がバレている。

 しかし、カンニングを認める訳にはいかない。ある程度僕の事を調べているみたいだしな。今もかまをかけているだけかもしれない。迂闊に肯定に取る態度を取ったらどういう事態になるか予想がつかない。ボイスレコーダーや、監視カメラがこの教室に着いているあるいは持っている可能性もある。慎重に言葉を選ぼう。僕は絶対に幸せにならなきゃいけないんだ。幸いこいつは僕がテストの問題を全て解くところを見ている。言い逃れられる可能性はまだある。この女が言っていたシナリオと違う事態も恐らく僕が再テストをすべて解いたことに関わっている筈だ。言い逃れてやる。

 「はぁ? 特殊能力? 一体あんたは何を行っているんだ。そんなものが有るわけがないし、何より僕はカンニング何て絶対にしない」

 「そうっすよね。普通認めないか。いいですか聞いて下さい。貴方のその能力は思春期のみに起こりえる病のようなものでそれが終わると消えます。しかも科学者に気取られれば貴方は捕まり、あなたの人生は終わりです」

 科学者。本当にそんなやつがいるとはな。さらにこいつの物言いから僕以外にも能力者が居るのが伺い知れる。ならこいつはそいゆう奴等から特殊能力者を守る組織と考えていいのか? 

 いや、その科学者に対抗する組織という可能性もある。取り敢えず今はしらを切って出方を伺うしかない。

 「えっと君大丈夫? 病院いった方がいいんじゃない? 」

 「貴方が特殊能力者であることは間違いありません。ここ数週間貴方を監視していましたから」

 「え、......監視だと」

 友利某はハンディカムをポケットからだすと僕に映像を見せてきた。映っているのは僕の姿だ。この女本気で監視していたのか。

 そして当然と言うべきか、映像の中には白柳さんを殺してしまった事故の時のものもあった。

 「この通り貴方の意識がない間に近くにいる人がおかしな言動を取っています。さらにこの映像の途中にあった事故も あなたがおこしたんですよね? その結果一人の女子生徒が亡くなった」

 「......」

 「さて、あなたは自分が特殊能力者であると認めますか? 言い訳してもいいですけど突然無意識になる病を持っているなんてことがないのは、貴方の健康診断書で確認済みっすけど」

 どうするこの女.....。乗り移って窓から飛び降りて殺すか?。ここは三階だから頭から落ちれば死ぬだろう。だが、僕に能力者だと認めろとあの映像を見せたあとに言ってくるとはな。あれではあなたは人殺しであると認めるのかと聞いたようなものだろ。やはり気に入らない根性をしている。

 「一応、聞いておくが、僕が能力者だと認めた場合あんたはどうするつもりだ」

 「その時は我々の学校星ノ海学園に転入してもらいます。そこに特殊能力者がなくなるまでの間、通い続けてください。安心してください貴方がどんな罪を持っていたとしても星ノ海学園はあなたを科学者から守ります」

 ......。

 事故だった。あんなことになるとは思っていなかった。僕を、人を人殺しよばわりするな!!!

 だめだ、感情的になったら。...........落ち着け、僕はだからこそ殺してしまった人間の分まで生きないといけないんだ。

 僕は不幸になった彼女と見知らぬ運転手の為に幸せにならないといけない。その事だけを考えろ。学年トップの成績も転校先でも同じようにすればいい。金も設備があれば手に入る。知識も近くの図書館にでも行けば解決だ。さらに言えば科学者という物騒な奴等からも守ってもらえるなんて一石二鳥じゃないか! 断る理由なんかない。

 「分かった.......能力を持っていることは認める」

 「はい。分かりました。あなたの親権をもつかたには、すでに承諾をもらっています」

 「随分と用意が良いんだな。証拠と言える証拠もなかったのに」

 「証拠はさっき言った通りです。本当は現場を押さえるつもりだったんですが.......貴方が全ての答えを解いてしまったのでぱぁです。でも、今の発言で十分証拠ででしょう。ボイスレコーダーで録ってました」

 そういってポケットから小型レコーダーを見せる友利某。こいつ.....。いや、特殊能力者と言うことを認めさせるにはこれくらいは当然か。

 「あっそ.....」

 「それとあなたには生徒会に入ってもらいます。あなたの能力は使えるんで」

 「は? なぜ僕があんたの学校の生徒会に」

 「あなたは自分のしてきた事に色々と思い当たる所があるのではと思ったことと、あなたのように能力を悪用する奴等を脅すためです。私達は そう言う存在なのです」


 そのあと星ノ海学園に転入するにあたっての事を一通り説明を受けた。説明の途中友利某と同じ生徒会の高城という眼鏡の男がきたが余り話はしなかった。

 それにしてもあまりに突拍子もない話だ。科学者に、そいつらから能力者を守る為の機関。あまりに非現実的で、陳腐な表現だが何処かの創作の中に迷いこんだ気分だ。

 あの事故も丁度こんな感じに非現実的で........。

 そう思おうとした刹那、アスファルトに刻まれた鮮血によるアートと、肘先のない腕がちらついた。

 直ぐ様、意識してそこから思考を離す。

 考えるな、意識するな。今は、あの友利某とか言うやつのことだ。科学者? それから能力者を守る組織? 嗚呼、受け入れようとも! こんな不思議な能力もあるんだ。それを今まで有効活用してきたのだろ。だったらそんな突拍子もない話を現実として受け止めよう!

 そして、僕はこの能力が消えるまでにやることを一つ決めたぞ!

 ......友利某。いや、友利! 僕は、僕の思っていることを勝手にお前の価値観を元に測ったことが気に入らない!。 憐れみを含んだ、愚かしいものを見るかのほうなあの蒼い瞳。ヘドが出る!

 さらにだ! 罪滅ぼしをしろと言わんばかりの物言い。つまり、僕がしたことを貴様は罪だと考えているということだ。罪とは悪。僕は幸せになるために事故を起こした。人を不幸にした。それは自分が幸せになるためにしたことなんだから悪ではない間違っていない!! しかしお前は僕を悪だと言ってしまった。これがどういう事か、お前に教えてやる!

 僕が正義だ! 正義を否定するものは僕を否定したと同じつまりは悪だ。僕の前に立ちはだかる者も悪だ。

 悪は正義が裁かなければならない。

 友利、僕はお前の大切にするもの見つけ出して始末する!!!

 そして、僕の正義を否定したお前を絶望に追い込み必ず殺す。お前を僕は利用して、利用して、要らなくなったら切り捨ててやろう!



[42107]  第四回 この世は金だ!
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 01:24
 星ノ海学園の敷地には併設したマンションがあり、そこへ僕と歩未は引っ越すことになった。引っ越しの為にダンボールに日常製品や私物をつめこんで送りだす。引っ越し業者に手伝ってもらったから思った以上に早く終った。荷物をつんだトラックが出るのを見送ると僕と歩未はあらかじめ呼んでおいたタクシーにのり星ノ海学園の併設マンションまで送ってもらう。

 「有宇お兄ちゃん。タクシーで星ノ海学園にまで行くなんて......大丈夫なのでしょうか? 」

 車内で歩未が不安そうに聞いてくる。

 「お金の心配なら問題ないよ。ここ最近株を初めてな、なかなかな利益が出たんだ」

 「株ってあのお金が増えたり減ったりするあれのことでしょうか? 」

 「嗚呼、ちゃんと勉強して始めたからそう簡単には破産しないよ。これでも陽野森高校で学年トップを張っていたのだぞ? 頭には自信がある。お前の兄を信じろ」

 僕が格好つけて言うと歩未は「有宇お兄ちゃん。何でもできるから凄すぎるのですぅ」と呆れたようにでも嬉しそうな声でそう言った。僕もその可愛らしい喜びの表情や仕草をみて少し嬉しい気持ちになった。


 昨日、僕はあの友利という女に転入するにあたっての注意を聞き、家に帰宅したあとに、転入先である星ノ海学園について調べてみた。

 そして、表向きには全寮制の学校と書かれているが間違いなく大きな力を持った組織であるということが調べだして直ぐに分かった。その星ノ海学園は買収されていて作られていたのだ。前は別の高校だったらしい。さらに土地の買収にその後の速やかな能力者を匿う為の施設の建設。

 その上ネット上に星ノ海学園の能力者の噂の影も形もないときた。科学者から守るために当たり前といえば当たり前だけど、簡単に情報の流出をさせないようにできるほど世の中甘くない。必ずどこかに綻びがあり情報は漏れてしまうものだ。と、図書館で読んだ社会のデジタル情報のマニュアル本に書かれていた。

 防ぐためにはそういった情報が漏れた瞬間にネット上から削除し、本人を見つけ出してやめさせるしかないのだ。それには莫大な費用と設備が必要なはず、それをやってのけている。そんなとんでもな組織機関が味方で頼もしいが同時に恐ろしい。友利とかいうあの女を能力で殺していようものならどんな手を打たれたか......考えたくもないな。

 だが、やはりできれば関わりたくなかったな。歩未にはとくに関わらせたくなかった。

 一通り調べ終え、株の動きをパソコンでみていると、「特待生として星ノ海学園に転入することになるとおじさんから電話をもらった」と歩未が僕に本当かどうかを確かめにきた。友利に説明を受け、あらかじめ知っていた僕が肯定すると歩未が「家庭が助かりますぅ」と嬉しそうにいった。早く資金を集めようと改めて思った。歩未に楽をさせてあげたいからな......。

 結局、あのあと株で儲けを出し、達成感みたいなものを覚えたあと、直ぐに布団に入って、就寝。今日の引っ越しに備えた訳だ。

 そういえば、今朝、株の状態を見てみるとまた利益が出ていた。このまましばらく、うなぎ登りだろう。その資金を使って世界中の能力者に関する情報を集めて見るのもいいかもしれない。もっともまだ先の話だし、その前にやらなければならないことがある。そうそう、株を初めて思うことが一つあった。

 「やっぱりこの世は金か......」

 「有宇お兄ちゃん。絶対に悪い大人にはならないでね? 」

 「ごめん。冗談だって。ちょっと、ドラマでみた悪どい社長の真似をしたくなっただけ。本気にするな」

 「それならいいのですぅ。あゆも安心しましたー! 」

 その世の中金だなぁなんて考え。でも歩未に本気で心配されてしまった。発言には気を付けないと。しかし、この世は金という言葉はこの世界のシステムにしっくりくる。衣食住、それらすべてを手にする為には金がいるのだから、お金がなければまともに生きる事すら叶わない。お金があればこの世界ので楽に生きることができる。金は幾らあっても困らない!

 そうだ、僕は、幸せになりたい。ならなければならない。でも誰かが幸せになると言うことは誰かが不幸になることだと言うこと忘れちゃいけない。 さっきいったお金持ちだって、持っていないものの分も実質的には奪ってるも言えるのだから。



 「おお!広いのですぅ! ここ全部歩と有宇お兄ちゃんと使っていいのでしょうか!!! 」

 広いダイビングに広い部屋、僕と歩未とでは確かに広いかもしれない。星ノ海学園から少し離れた場所にある併設マンション。その一室に僕と歩未は引っ越してきた。しばらくの歩未と部屋の広さに驚いていたが引っ越し業者が梱包されたダンボールを持ってきたので直ぐにやめる。この歳ではしゃいでいるとは思われる訳にはいかんからな。歩未は業者の者がダンボールを運んでいる姿を見つける。

 「お疲れ様でござる。不肖私目にもお手伝いを! 」

 積極的に手伝い要求するなんて....。何て言い子なんだ。全国の諸君見習いたまえ! これができるいい妹だ! だからなおのこと手伝わせる訳にはいかない。重いし危険なものが結構あるからな。

 「歩未、あんまり業者の人から仕事を奪ってやるな。仕事が仕事にならないだろ? 危険物も結構あるから業者の人に任せよう」

 「そもそうなのですが......」

 余程力になかったことを気にやんでいるのか少し落ち込む歩未。

 「そんな顔するなよ。僕の方で手伝ってほしいこともあるんだ。いいか? 」

 「はい有宇お兄ちゃんのお手伝いはこの歩未がたしかに引き受けましたでござる! 」

 「よし、じゃ業者さんが運んできた、ダンボールの梱包をといて整理していこう」

 「了解なのですぅ! 」

 こうして僕は歩未とある程度まで梱包の中身を出して整理した。ある程度整理が終え、ソファーに座って休んでいるといつの間にか友利がいた。ついでに高城という生徒会の一人の眼鏡をかけた男もだ。

 「どうも、お邪魔します。と言うかしています」

 「何でここにいるんだ......」

 「放課後になったので、二人だけでは大変だろうから手伝いに来ました」

 この女には歩未に知られたくない事件のことを知られている上に、あまりいい感情がないから早く帰ってほしい。よし、断るか。しかし、それはかなわなかった。別室で休んでいた歩未が入ってきたのだ。

 「あー! もしかして有宇お兄ちゃんと同じ学校の人でしょうか! 」

 色々と最悪なタイミングだ。これは面倒なことになりそうだな。具体的には歩未が手伝いを受け入れるとか......。

 「生徒会長の友利です。で、こっちの眼鏡は高城」

 「はい。私は生徒会の高城と言うものです 」

 「私は歩未! 乙坂歩未なのですぅ! 」

 「うん。よろしくね歩未ちゃん。 今やっている作業を手伝わせてもらっていいですか? 」

 「勿論なのですぅ。むしろこちらがお願いします! 」

 ふっと友利が僕に得意げな顔を向けてくる。くそ、なんなんだこの敗北感は.......。まぁ手伝ってもらえるのはありがたいことなのでいいか。

 だが、この女が歩未にあの事件の真相を言わないかだけが不安だ。

 「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。憶測だけのものを一々言う趣味はありません」

 「......あっそ。歩未そろそろ休憩終わるか.....続きやるぞ」

 「うん! 」

 僕はそう言うとまだ段ボールが置かれている玄関へと一人で向かった。歩未と友利は段ボールの梱包をといて整理していく続きをするために僕達兄妹の寝室と勉強部屋の役割になるであろう部屋に移動した。

 玄関にある一つダンボールの中におじさんからの送りものが届いていることに気付き、梱包をとく。確か、転入が決まった翌日にお祝いに美味しいものを送ることにしたとか言っていたけど一体どんな美味しい物なんだろう。期待してさぁ箱の中身はいかに!

 乙坂有宇は箱を開いた。中身は金さんラーメンだった。

 ドンッ! 僕は床に拳を打ち付ける。美味しいものって全部金さんラーメンかよ!! 取り敢えず見なかった事にしておしいれの中に封印した。

 金さんラーメンの封印を終えた僕は歩未の様子を見に行く。友利も一緒に作業をしているようだ。

 僕は友利が歩未と一緒にいるのが不安でしかたがない。もしかしたらもう事故の事をいったのではと危惧したりした。が、証拠がない事を歩未に教えてもなんの特にならないということに気づき少し警戒を解く。しかし、あの高城某は分からないから警戒しておくにこしたことはないだろう。奴も僕のしたことを知っているのだろうから。

 歩未はダンボールの梱包を解きおえると、あー! と大きな声を出す。

 「どうかしましたか? 歩未ちゃん」

 「うん。懐かしい有宇お兄ちゃんのトロフィーと賞状が出てきたのですぅ」

 「ああ、中学で取った賞状とかか、あっても場所取るだけだから捨てもいいっていっておいたのに....」

 「むぅ! 有宇お兄ちゃん思いでは大切にしないとダメなのでござる! 」

 「て、いうか、さりげなく会話に入ってきたな.....」

 「歩未の様子を見にきただけだ。まさかと思うが歩未に変なことをおしえなかっただろうな? 僕の妹に少しでもおかしな事をしてみろ、明日には、貴様は永遠の眠りについているだろう」

 「何もしていません。ただ手伝いながら会話をしていただけです。て、言うかシスコンなんだよ! あと、殺さないでください」

 「安心しろ軽い冗談だ。.......やるならもっと惨たらしくやる(ボソリッ)」

 「いや、それ、安心できませんって.....」

 惨い云々はともかく、この女、誰がシスコンだ! 誰が! と、言っても墓穴掘るだけだろうから何も言わない。せいぜい呪詛をはくくらいだ。心臓よ凍れ! なんちゃって。

 「えっとシスコン? 何かのコンテスト? 」

 「......歩未、世の中には知らなくていいことがあるんだ気にするな。それよりその賞状とかトフィーはダンボールの中へと戻せ、出しても邪魔になるだろ」

 「部屋に飾ろうかとおもったのですが.......」

 やめてくれ。恥ずかしすぎて僕が死んでしまう。というか高校生にもなって中学でとった賞状を飾るってどんな羞恥プレイだよ。そんな事を僕が思っているとは知らない歩未は本当に残念そうにしている。

 「それにしてもなんの、賞状やトロフィー何ですか。結構数がありますけど.....」

 「......」

 「ゴメン、歩未! 僕ちょっと気分転換に外の空気でも吸ってくるよ」

 僕は踵を返し歩未と友利がいるこの部屋から出ようとするが友利に腕を掴まれ止められる。こいつ誰の腕を掴んでやがる! じゃない! 一刻もここを離れなければ! 今は気にしている場合じゃない。

 「まぁまぁ。あなたも久しぶりに自分の思い出を思い返してみるのもいいかもしれませんよ」

 「おい放せ! 僕は今直ぐにこの部屋からでないといけないんだ! 放してくださいマジお願いします! 」

 僕の必死っさを見て、掴んでいた手を話す友利。

 「たかが思い出を話されるだけで、そこまでの反応しますかね? 」

 「ねぇ......友利のおねーちゃん」

 「はい、何ですか歩未ちゃん? それよりも早く乙坂有宇君の取った賞状やトロフィーが何なのかを私は聞きたいです」

 星ノ海学園生徒会長友利。やはりお前は僕の敵だ。寧ろ敵でしかない。今回はお前の好奇心に巻き添えをくらった。

 僕は別に賞状がなんの賞状なのか話されることに抵抗はないし、多少羞恥はあるが別にきにしない。むしろ自慢してやろう。称賛させてやろう。いかに僕が有能なのか示してやろう! だがな、僕が自分でやるぶんにはいいが、今回は問題は話しをする人間にある。そう歩未にな!!

 「わかったのですぅ。先ずこの賞状が野球部に入っていたときの全国大会優勝の賞状と、こっちがその全国大会でもらった最優秀投手賞。で、こっちがサッカー部の全国大会の準優勝の賞状と、得点王の賞状。これがテニス部の..................(以下略)の物かな」

 「かなりたくさん、あるんですね.......てか、どんだけの部活に入っていたんだよ! しかも全部優勝の賞状とか、準優勝とか、バナイなっ!! 」

 「.......」

 「? どうしたんすか。そんなもうこの世の終わりだという顔をして.....。普通に自慢できるものじゃないっすか」

 「......僕はお前の巻き添えをくらったんだ。おかげで今日はこれ以上片付かないぞ......」

 「は? 何をいってるんですか? 歩未ちゃん賞状の説明ありがとうございます。それでは梱包をと言っていって片付けの続きを「ねぇ、聞いて友利のおねーちゃん。この賞状の決勝戦はね。有宇お兄ちゃんのサヨナラホームランで............このサッカー大会の決勝戦は.......テニスですごいサーブが......」

 その後、歩未の僕の中学時代の武勇伝は 高城がこの部屋に友利を迎えに来るまで続いた。

 「えぇ、もう友利のおねーちゃん帰っちゃうのー! 夕御飯も一緒に食べていって欲しいのですぅ。それに、まだ、話していない有宇お兄ちゃんの賞状とトロフィーを手にするまでの話もあったのですが.......」

 「い、いぇえ、わたし達、宿題があるんすよだからちょっと無理かなぁ~」

 友利は超遠慮がちに、声を震わせながら言い訳をする。

 「あれ? 友利さん。宿題は終わったとグフッ! 」友利から肘鉄をもらう高城。

 「何いってるんだ高城、まだ終わってないんすよ! .......話を合わせてください帰れません」

 「何でかは分かりませんが分かりました! そうなんです。早くかえらなければなりません」

 「でもお礼もしないで返すのは.....」

 いや、高城は掃除をしていたが友利と僕は最初だけで殆どなにもしていないじゃないか。お礼する必要があるのか? それにしても、くそ、全然片付かなかった思い出話のせいで! しかも、僕は完全に巻き添えだったぞ.......。

 助けをだしてやるのはしゃくだったが僕も食事をしながら延々と自分の賞状の事を話されるのは勘弁願いたいので助けてやることにする。

 「そうはいっても歩未、食器の枚数が足りないし今日は帰ってもらおう。あと毎度毎度言うけどあまりに僕の思い出話で時間を使いすぎだ。聞かされる方にも予定もあることを忘れるな」

 「ごめんなさいなのですぅ。友利のおねーちゃん」 

 歩未はそう言うと寂しそうな顔をする。友利と高城が帰ってしまうのがそんなに寂しいらしい。

 「大丈夫ですよ。また直ぐ会えます きっと」

 歩未の頭を撫でると友利は帰っていった。

 すれ違ッたときに「何処かの生徒会長のせいでとんだ引っ越しだった」と皮肉を言ってやると苦笑いをしていた。

 友利達が帰った後、歩未と一緒に料理を作り、一緒に食べて。そのあと交代でお風呂にはいる。歩未がお風呂に入っている間に僕は後片付けを何とかすまし、歩未がお風呂からあがってきたあとに交代でお風呂にはいる。湯船につかっている時間だけがなんか心が安らいだきがした。この家の中から友利という不安要素が去ったのも大きいかもしれない。

 お風呂からあがり、寝室にいくと歩未が望遠鏡を使ってベランダから星を見ていた。寝る前に星を見るのが歩未の望遠鏡を買ってから毎日続けている日課というよりは趣味。そういえばあの、望遠鏡って誰が買ってくれたんだっけ?

 「本当に星が好きだよなお前......。毎日、星を見てて飽きないのか? 」

 「うん。星はただ見上げるだけでも綺麗だけど、望遠鏡でみる星の光と形はもっと綺麗なんだよ。よくみると一つ一つが違った形をしているし、やっぱり見ていて飽きることはないと思うのですぅ」

 「へぇ。なら星好きの歩未には星ノ海学園は正に聖地みたいな感じじゃないか? まるでお前の為につけられたような名前だしな」

 「星ノ海学園........いい名前」

 歩未は星の彼方へと意識を飛ばした。手を振っても気づかない。重症だな....。

 歩未がトリップしているあいだにパソコンを起動し株見てみる。すると、とんでもない金額にまでお金が膨れ上がっていた。驚いたが直ぐにまぁ当然だと勝手に納得した。本書かれていた事を遵守し、実践できているだから当然だと。もっとも僕だからこそ直ぐに出来た事だろう、普通は何年も勉強してやるものだ。

 ただ僕は少し要領が良かったことと、記憶力がずば抜けていたからこそ株の内容と儲け方を理解でき、実証できた。さらに僕は幸せにならないといけない。そんじょそこらの奴らとは覚悟が違う。

 必ず幸せにならないと.........。その為ならなんだってやる。そう決めたんだ。

 「歩未、お前の学校、僕の通う学校と近くの場所だし明日一緒に登校するか?」

  でも、今は、

 「え、うん!一緒に登校するのですぅ。あゆも有宇お兄ちゃんを誘おうとしていましたのですが、先に言われちゃいました......」

 身近な所から幸せを感じよう。だが、この幸せは何時まで続くかわからない。不安要素である友利と高城某がいる限りこの幸せが終わるのではないかと何時もビクビクする日を送らないといけないのだ。

 だから僕が安心するためにはあいつらをどうにか始末しないといけない。その為にはまずあいつら情報を集めよう。金ならある。後は実行するだけだ。

 僕はその日の夜、ネットの情報屋に依頼を持ちかけた。とあるハッカーらしいで仕事も凄く早く、信頼もできるらしい。どこでその情報屋の情報を得たのかはあまり口にできるような所ではない。でも、しいて言うならば、そういう裏社会で生きるような奴らが経営するようなブラックなサイトみたいな所で知った。

 友利と高城の個人情報。家族に友人。個人資産、何をやっていたかなどを調べ僕に情報を送る。それが株の数百万の株資産の内、およそ半分を使って依頼した内容。

 次の日の朝には友利と高城の情報がファイルで送られてきた。やはり世の中金だ。金があれば大抵のことはできる!! そうして僕は二人の詳しい情報を手に入れた。

 たった二人の情報の為に百万を叩いたのは馬鹿だという奴もいるかもしれないがそれは間違いだ。些細な情報でも必ず役に立つ。

 そうすべては僕に逆らう悪を裁く為に。



[42107]  第五回 情報と憶測
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 01:30
 友利奈緒。性別女。星ノ海学園に所属の一年生。家族は県外にいる母親と入院中の兄の二人。過去に国立の中学の受験に受かった経歴を持つが、入学はせず、別の中学へと入学している。兄はバンドのメジャーデビュー寸前の人物だったらしいがデビューせず、友利奈緒と同じ系列の高校へと転入している。そして一年半後、友利奈緒は星ノ海学園へ転入。友利奈緒の兄、友利一希もその頃にある病院に入院した。母親は特に問題のない生活を送っている。

 時刻は朝の五時半。僕はパソコンのメールが届いた音で目をさました。そして、昨日の夜に依頼した情報屋から送られてきた、メールの中にあったの友利と高城に関してのファイルを今、確認している。

 情報屋の情報は依頼した内容どおりのものだった。家族に関しての情報。今までの経歴等々。それらの情報が今見ているファイルに記載されている。ただ、親しい友人などの情報は流石に一晩では集められなかったようだ。もっとも、たった一晩で家族構成などを集めてくれたのはありがたい。一番知りたかった情報だ。

 「しかし、国立の中学に受かった経歴があるとはな、偏差値70以上で60%くらいの確率だった筈ぞ......」

 友利下の名前は奈緒と言うらしいあの銀髪女は、頭がキレるらしい。あの茶番劇もあいつが考え僕が乗り移る瞬間を映像に証拠品として残そうとしていたしな。しかも退学という名目をおき、焦りを誘い冷静な判断をしにくいように誘導したことからも奴の知的指数が高い事が伺える。常に発言と行動には注意しておいた方がよさそうだ。いつ嵌められるかわかったもんじゃない。

 それにしても、情報屋は本当にいい仕事をしてくれた。奴に兄がいてしかも入院中だとは、何の病だろうか?。友利が星ノ海学園に転入した時期と重なる事が気になるな。

 友利兄はと友利と同じ系列の高校へと転入していたが色々とおかしな所があった。バンドのメジャーデビュー寸前だったにも関わらず、それをぼうにふったことや、その後バンドの活動そのものをやめていること。高校での情報が全くないこと。情報屋いわく、その時期が存在していなかったらしいが......。まぁ、今度、機会があればこの病院を訪ねてみるのもありかもしれない。友利から行こうと言わせることができればいいが........それは結構難しいか。入院中の家族の事を話そうとは普通はしないだろう。だが、然り気無く聞き出すことができる話題の種は必ずあるはずだ。

 高城に関しては本名が高城丈士朗ということと、ごく一般的な生活をおくっていた事くらい。あと家族構成だが、実家は遠いし、何かに応用できそうなものは無かった。

 しかし国立の中学に受かったのに入学せず、別の中学に入学した友利奈緒。奴が星ノ海学園に来る前にいた中学は一体どういう所だったのか知れば何かが分かるんじゃないかと考え、僕はインターネットでその中学を検索してみることにした。

 その中学のサイトは直ぐに見つかった。そこは全寮制の学校で、小中高のそれぞれの学校が同じ敷地にあることがわかった。だが、サイトの内容はまるで星ノ海学園のサイトに記載されていた内容と同じようなもので具体的にどの様なカリキュラムが取り入れられているのか等は書かれていなかったし、何より突飛した部分は何もみつからない。偏差値が高い訳でも、音楽で秀でているものもない。
 そして.....

 「校内の写真が乗っていないのは何なんだ.......」

 この学校のサイトには外側の建物の様子は写っていたが生徒の姿も、校内の様子も乗っていない。
まるで見せたくないと言っているように思えるのは僕だけなのだろうか。

 考えろ。友利奈緒とこの中学と何を結びつけることができる?。

 特殊能力。国立中学。バンドのメジャーデビュー。偏差値。家族構成。入院。星ノ海学園。

 『科学者に気取られればあなたは捕まり、あなたの人生は終わりです』

 友利奈緒は僕を説得する際にそう言った。........科学者。

 友利奈緒は何故、能力者を科学者から守ろうとする。能力者が科学者から狙われているのであれば、居合わせす可能性があるのに。

 星ノ海学園の生徒会がそれを任せられているのか? 星ノ海学園は能力者を科学者から守る為にあるはず、........何故、友利なんだ。星ノ海学園を作った組織に任せればいいはずなのに。能力値や責任感を買われた? いや、それだけで星ノ海学園の組織は能力者の対応をまかせるだろうか? 星ノ海学園は科学者から能力者を守る為の施設じゃないか、それでは本末転倒だ。星ノ海学園を作った組織のやつらからしたら守ろうとしたのに捕まったら意味がない。だから普通はさせないし任せない。

 結論。守るべき対象に星ノ海学園の組織が率先してまかせるなんてことは絶対にないし、普通リスクを背負ってまで一生徒が能力者を助けるなんてことはしない。

 さらに能力者保護の活動を守られるべき一生徒がするためには、自分から率先し、星ノ海学園を作った当人に頼み込むでもしないかぎり。不可能だ。

 なら、友利奈緒がそうしたんだとしたら、なにが彼女をそうさせたのか。.......入院中の兄が関係している可能性が高いな。となるとあの施設の学校は......。全ては憶測の域をでないが、なにを探るかは決まった。



 「....ちゃ.....有宇お兄ちゃん。有宇お兄ちゃんってば!。起きてくだされ!」

 聞きなれた声で意識が覚醒していく。歩未が僕の体を揺すってを起こしてくれているらいい。というか考えている間にいつの間にか、パソコンを開きながらテーブルの上に突っ伏すように寝てしまっていたようだ。

 「......歩未? 」

 「あ、やっと起きたのですぅ。有宇お兄ちゃん早く学校へいく支度をしないと遅刻するよ」

 僕はダイニングルームのテーブルでパソコンを使っていた。色々と考え込んでいた内にいつの間にか眠ってしまい、朝ご飯を作り終えた歩未に起こされたらしい。壁にある釘に吊るされた時計は午前7時をさしている。確かに着替えを早くすませないとあっという間に遅刻が確定してしまうかもしれない。

 「嗚呼、着替えてくるよ。パソコンで文章を読んでたらいつの間にか眠ってたみたいだ。朝食の手伝いできなくてゴメン。夜は手伝うよ」

 「うん......。でもずっとパソコンばかりやってると目が悪くなるよ。気を付けてね、有宇お兄ちゃん....」

 嗚呼と僕は頷き、パソコンを閉じると手に持って寝室へと行く。寝るわけでない。寝室とパソコンを置いていた勉強机と服を片付けている引き出しは同じ部屋にあるからだ。

 三分程度で制服に着替え、鏡の前に立つ。そこには中々に整った容姿をした学ランを着た少年が立っていた。僕は鏡に腕を預け、寄りかかり、思わず吐息を漏らす。

 「......何を着ても格好いい」


 「それじゃ。歩未そろそろ行くぞ!」

 「有宇お兄ちゃんお弁当もった?」

 「嗚呼、持った」

 朝食を食べ終え、登校バックを持ち、靴に履き替え歩未が来てから一緒に登校する。歩未の学校は僕の学校と近くにあるので途中までは同じ道なのだ。道中何を話していたのかは割愛する。

 歩未の通うことになる学校の正門前で歩未と別れると僕は自分の学校へと向かった。



[42107]  第六回 その為ならプライドだって捨てられる
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 01:28
 「失礼しました」

 そう言うと僕は職員室から出る。学校のついてすぐ、僕は職員室に向かい星ノ海学園でのクラスなどの説明を受けた。僕の通うことになる教室は二年B組らしい。取り敢えず一段落ついたのでため息がでそうだ。

 「ようこそ我が校へ~」

 ため息をつくこともできなかった。

 職員室からでるとそこには僕の敵、友利奈緒がいた。同じく排除対象の高城丈士朗もいる。僕はため息を吐く。そのため息は色々とめんどくさい思いを表したかのような疲れきったものだった。


 階段を上っている途中も、教室が同じ階にあるのか奴らはついてはきたので取り敢えず、話の種になりそうなものを言ってみる。あばよくばファイルを読んで考えた憶測が正しいのか確認できる内容がいいと考えたので特殊能力者関連の話にしよう。

 「ここでは全生徒が特殊能力者をもっているのか? 」

 僕の話の種もとい質問に答えたのは高城だ。

 「いえ、可能性のある者、予兆の見える者の方が多いいです」

 それくらいはわかっている。全ての生徒が特殊能力者を持っていれば驚異の組織として認識され、あっちこっちの能力者団体から襲われるだろうが。さらに言えばここは能力者を科学者から守る所だ。予兆や可能性があるだけでも保護対象になるだろうだろう。でも、予兆は分かるかもしれないが可能性のある者はどういう判断基準なのだろうか。気になったが今は聞かない。聞いたところで話としては案外すぐ終わってしまう気がしたからだ。

 「でもそれだけで........」

 「むかーし。我々のような特殊な力を持ったものはことごとく科学者のモルモットにされたんすよ一度捕まったら人生おしまい」

 淡々とした口調でそういう友利、さて、ここで憶測を一つ確認できるかもしれない。だが、相手が言わない可能性のほうが高いけどな。僕は情報屋から送られてきたファイルの入院中の友利の兄について憶測を立てていた。バンドでメジャーデビュー寸前だったにも関わらず、何故、全寮制の学校へ妹の友利奈緒と一緒に行くことになったのか? 何故バンド活動がピタリと止んだのか?

 情報が遮断されていた友利のいた中学。そこは科学者の研究施設であったんじゃないのか?

 そこの科学者に能力者として二人は目を付けられたからではないか。そして人体実験を受けた結果友利兄は入院したのではと。......あり得ない話ではない。それを確認するための台詞はこうだ。

 「はぁ....。そんな大袈裟な話信じるわけがないだろ」

 「.......私の兄のことなんですけどね」

 「えっ」

 確認終了。あまりにあっさりといったので少し驚いてしまったが僕の憶測が正しい可能性が今の言葉でぐんっと上がった。


 「能力者を守るためにある人物が今のシステムを作り出した。兄は間に合いませんでしたが....」

 さっきの淡々とした口調に暗い感情が乗っている気がする。それもそのはずだ、こいつも兄と科学者のところにいたのだから。入院しているという情報から幾つか可能性があるがどれもいいものじゃない。

 しかしながらこいつは本当にいい根性をしている。僕に能力を使えとかと言いながら、能力を使っている所を科学者に見つかれば捕まると口にしたのだから。

 「だが、お前は僕に力を使えといった何故だ」

 「生徒会だけは特別な事を任されているんです。あなたのように野放しになっている能力者を誰よりも早く見つけ、確保して護るか、能力者を使わないよう脅す」

 さて、次に得たいものはこいつの裏にいる存在だ。生徒会に能力者を確保させようとする阿呆。護る存在を危険にさらす馬鹿だ。そいつだけは確信をもって存在すると言える。上手く聞き出せるか、ここがターニングポイントだ。

 「.......ふざけているとしか言いようがないな。そもそもその能力者を確保し、護るのはこの星ノ海学園を作った奴らの仕事の筈だろ。それを護られる方が能力者を保護しに、捕まる危険を背負うのは本末転倒もいいところだ。そんなことをやらせるとはこの星ノ海学園を作った奴は馬鹿なのか。それともお前がその馬鹿な奴に頼んだのか? 」

 「馬鹿、馬鹿といっていますがあなたよりはよっぽど頭のキレるひとですよあの人は.....。そして確かに私が頼んだ結果作られたのが生徒会です。そういうところに気づくのは本当に鋭いっすね」

 友利奈緒はこの星ノ海学園を作った権力者と繋がりがある。この憶測も今ので肯定された。僕が馬鹿だ馬鹿だと侮辱したときの今の反論からして間違いないだろう。

 「.....別に。だが、今のではっきりしたが僕は完全な巻き添えだってことだよな。お前のために生徒会で自分の身を危険にさらすなんて嫌だぞ。僕は僕が大事だ。科学者に捕まる可能性があるのはまっぴらごめんだね。それとも僕に生徒会に入ることで得られるメリットでもあるのか? それとも........あのテープで脅すか」

 「最初から.......それが目的だったんすか」

 「ああ、そうだ」

 そう、僕はこいつが自分頼んで生徒会を作ったと言う言葉を口したら最初からこうするつもりだった。あの白柳さんを殺してしまった時のテープを破壊消滅させるただそれだけだ。それができれば次は友利奈緒を潰す。僕が幸せになろうとするのを邪魔する、僕を否定した悪。

 「僕はあのテープがあるかぎり一生不安に脅かされながら生きないといけない。あのビデオをネットに流すんじゃないのか。僕が他人に乗り移ることのできることこの学校に広め、僕に不利益をもたらすんじゃないか。いつ裏切るのか、いや、いつ僕を潰すのか! それらを考え怖くておちおちと寝ることもできやしない。僕はお前たちが信じられないし怖い。だから、......あのテープを破棄してくれそれが僕が生徒会を手伝う。いや、友利、あんたを手伝う。最低条件だ......頼む」

 友利に僕は頭を下げる、ここは廊下で時々通りかかる生徒がなんだこいつという顔で見てくるがそれでいい。注目を浴びるのは頼まれている友利と高城もだ。これ程狡猾な方法はあるまい。

 勝手に哀れだと思うがいい。勝手に蔑めばいい。勝手に見下すがいい。だが、僕は切実に頼み込んでいるのだ。それをした奴は僕の誠意を踏みにじった事になる最低のクズだ。僕は自分が幸せになるためならプライドだって捨てる。だが、僕だけ嫌な思いはしたくない。するときは相手も一緒だ!!!

 しばらく友利と高城は黙っていたが遂に友利が折れた。

 「分かりました。確かにあなたの言う通りある意味私のための危険のある仕事ですし、一方的に相手を脅せる物をもているのもなにかが違います。信用の無いままだらだらとされるのも困ります。テープはちゃんと破棄しておきますので、安心してください」

 僕はその言葉を聞き、思わず口の端を吊り上げようとしてしまうが我慢する。所詮は口約束これは互いを表面上信用しあうためのものでしかない。友利がテープを捨てない可能性もあるし、仮に捨てたとしても僕が手伝わない可能性もあるのだ。そうこれは僕と友利のばかしあいの儀式にすぎない。僕は顔をあげると友利たちを見据える。

 「.....ありがとう。いまからはあんたたちに協力させてもらうよ」
 
 こうして僕は生徒会員になった。もっとも気持ち的には(仮)だけどな。さて、.....自分の教室に行くか。



[42107]  第七回 星ノ海学園
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 01:50
 友利達と廊下で別れたあと僕は自分の教室である一年B組の出入口に立っていた。先生が呼んだら入って自己紹介をしろと言われたのだが、一体いつの時代の転校生だよ、と思ったのは果たして僕だけなのだろうか?

 「乙坂入ってこい! 」

 呼ばれたので扉を開けて教室のなかに入り、教壇前に立つ。自己紹介はやはり緊張するな具体的にはこれから始まるこの学校での三年間に利用できる奴と出会えるか不安になる。まぁ、それは自己紹介をしてからにしよう。営業スマイルは忘れずに。

 「えっと、乙坂有宇です。陽野森高校から来ました、よろしくお願いします」

 爽やかな笑みで自己紹介を終えると教室内にいた殆ど女子から黄色い声援があがる。

「きゃー! 」「イケー! 」

 さてと、ここでもカンニングするための頭のいい奴を探しだして秀才を演じよう。全ては僕が幸せになるために! まぁちゃんと予習復習、教科書の要点の丸暗記と勉強はしているが.....。やはり保険は大事だ。一応どんな人物がいるのかと辺りを見渡すと、ここにいてほしくない人物がいた。

 窓側の一番前の席にいる銀髪サイドテールは見間違いか、と思ったが、教室内の一番後ろの席の出口付近にいる眼鏡をかけた手を振っている優男を見て勘違いじゃないとわかってしまった。窓側の席にいる友利が鼻で僕を笑ったきがしたが多分気のせいじゃないだろう。

 クソどうしてくれようか.....同じ学年だったなんて思ってなかった。

 高城の前の席が僕の席だ。出入口が近いから楽でいい。しかし、どう見てもカンニングや、乗り移る瞬間を監視する役だろう。多分これは友利の手回しだな。奴は校内ではある意味最強かもしれない。


 数学の授業を確りと聞きながらノートに書き込んでいるのは今やっている授業よりもかなり先の問題だ。

 授業で今やっている内容は前に自分で予習をしていたので退屈なのである。だから教科書は、今、授業でやっている内容のページを開いているが、僕の頭の中では予習より先のページの問題が展開されていた。教科書は全て読み内容を覚えているのだ。そこに書かれている問題を解いている。

 「乙坂さん、そのノート黒板に書かれている内容じゃありませんよね」

 問題を公式を使って解いていると後ろの高城が話しかけてくる。どうやら後ろから僕のノートを覗いた......僕のノートが見えたらしい。

 「え、まぁ.....今やっている所、ずいぶん前にやったことがあって、一寸、予習をな」

 「そのページって、今、開いる所とは違う内容ですよね?」

 しまったな。高城に僕の記憶力がずば抜けていて教科書丸暗記しているんだといってもおかしな目で見られるだけだろうし、何より別の特殊能力じゃないかと疑われかねないぞ。さらにあの陽野森高校での再テストの意味が消え、僕がカンニングしていた証拠になりかねない。なんとか誤魔化さないと。

 「この問題は昨日の内に書いていたのだ。それを解いているんだ」

 「そうなんですか。ですが復習もしないとテストで良い点数を取れませんよ」

 「ああ、参考にさせてもらうよその意見」

 何とか誤魔化せたかな。そうして僕は絶対に忘れない予習を続けた。

  
                    2

 四時間目の授業が終わる鐘の音がなると教室にいた生徒の殆どはいなくなった。たしか、案内書に書いてあった一階に学食、おそらくみんなそこに行ったんだろう。

 僕は机の横に掛けていたバックの中から歩未特性のお弁当を取り出す。さて、今日のお昼は何だろう? 
 
 弁当を開く。中身はがんばれとひらがなでかかれた乙坂家特性ピザソースオムライスだった。

 「......学食で何か買おうかな」

 流石に昨日の晩御飯とは被ってほししくなかった。そう、昨夜もオムライスだったのだ。歩未は小さい頃に僕が好きだったオムライスをずっと作り続けている。隠し味には砂糖たっぷりふんだんに、もう隠し味じゃねぇよ! というほどピザソースが使われていて、砂糖ご飯と称してもいいだろう。
 
 「乙坂さんはお昼はどうするんですか」

 「え? ......あることにはあるんだけど、ちょっと足りないかな。できれば学食まで案内してくれると助かるんだけど......」

 「では、一緒に学食までいきましょう案内します」

 「嗚呼、それは助かる」

 ふと、窓側の席でイアホンを耳に嵌め込んで一人で音楽を聞いている友利の姿が目に入った。高城は何時もはどうしているのだろう? 聞いてみるか。高城にも聞いておきたい質問があるし。

 「なぁ、あいつは誘わないのか? 」

 「貴方がよければ誘っても構いませんが? 」

 「いや、いい。......それよりさっきの授業中といい、今といい、何であんたは僕にそんな気楽に話しかけてくるんだ? 」

 「と、いいますと? 」

 「僕がやったこと、お前もあの事件現場で見ていたんだろ.....」

 そう、この高城も僕のやったことを見ていた一人なのだ。見ていなかったとしても友利から聞いていた可能性が高いと思う。そんな友利いわく罪(悪)だと断定した奴に普通は話しかけてこない。朝の友利とのやり取りを間近で見ているのだから尚更だ。

 高城はそうですねと眼鏡をくぃッと上げると僕を上から見下ろす。正確には僕が座っているからそう形になったのかもしれないが.....。そのことにいらっとになりそうだったが我慢してきいてやろうじゃないか。

 「はい、確かの私はあの場の近くにいて見ていました。貴方のしたことはこの世界では許されないことです。しかし、私も見ていることだけしかできなかった」

 この世界では許されないかやはりこいつも僕に立ちはだかる障害的存在だ。だが、見ていることだけしかできなかったとはどういう......。

 「どういうことだ。見ているも何もあの場の人間はどうしようもなかったはずだ」

 「いえ、私の能力を使っていれば可能性はあったんです。ですが私は咄嗟に動くこともしないでただ見ていました。私の能力を使っていれば助けられたかもしれないのです」

 「......そうか。だが、それの何処が僕に普通話しかけてくる理由になるんだ?」

 高城は僕の言葉を聞いて少し考えた後、理由になっていないことに気づいたようだった。頭大丈夫か?。

 「確かのに理由にはなりませんね。しかし、今の貴方は生徒会の一員であり、校内のことを右も左もわからない転入生。親切にしたり話しかけたりするのはある意味当然かと」

 「何か無理やり感がある感じが、するがそう言うことにしておくよ」

 学食は込み合っていた。テーブルも満員だ。少し会話で時間を割きすぎたかもしれない。もう少し早く来ても同じだったかもしれないけどな。

 「結構混んでるなテーブルも空いてない」

 「では、サンドイッチでも買って教室に戻りましょう」

 サンドイッチを販売している場所を確認してみる。そこも結構な数の人だかりができていた。女子が多いのはやはり軽食だからだろうか。

 「いや、あっちも結構な数がいるぞ」

 「そこは私に任せてください。私の能力のみせどころです!」くいっと眼鏡を上げる高城少年。

 「へぇ、どういう能力なのか拝見させてもらうよ」

 「はい。ただ....」

 「? 」
 
 「早すぎるが故に何が取れるかは運しだいです! 」

 眼鏡が光の角度のせいか白くなっている気がする。それより能力を使ってもいいのだろうか?。それを聞く前には高城の姿は消えていた。

 「え、いったいどこへ? 」

 一瞬高城が消えてからおよそゼロコンマ五秒、食堂に台風の風圧に当てられたようなに余波が襲いかかった。窓ガラスも破壊され、テーブル席で食事をとっていた奴等は殆どがひっくり返っている。

 「なんだ今の! 」「爆発! 」 と混乱しあわてふためく生徒達。

 サンドイッチを売っていた女性店員がまたかというような呆れた表情をしていたがまさか今のは高城がやったのか?。女性店員の態度を見ていると日頃からやってそうで怖いな。

 高城はすぐに帰ってきた。だだし体は血まみれで頭からも血が吹き出していた。

 「お待たせしました。おお。今日は素晴らしい収穫ですカツサンドですよ」

 「その姿でので成功と言えるのか.....血まみれじゃないか。ホラー映画にでても通用するぞ」

 「ホラー映画で通用するかという話は兎も角、私は制服のしたにプロテクターを着こんであるので大丈夫ですが? 傷も浅いものです」

 頭から血が出ているじゃないか......。人は見かけによらないというが.....

 「あんた、見かけによらず危ないやつなんだな」

 「どういう意味でしょう? 」

 そう言うとこがだよ!

 「しかし、インパクトある能力だなさしずめ超高速移動か? しかもピタリと止まれないようだ」

 「友利さんも言っていましたが貴方の感は凄まじいですね。しかしこれは瞬間移動です。貴方のいった通り都合よくピタリと止まれません。この能力のおかげで何度病院送りになったことか....クッ」

 何となく最後の悲痛さを思わせる顔が印象的だった。.......気がしないこともない。

 教室に戻り高城の机にあるサンドイッチの種類を見てみる。全てカツサンドだった。

 「全部カツサンドか.....」

 「瞬間移動ですよ品定めしている暇があるとでも? 」

 しかもどれも潰れている。と言えば今と同じ台詞が帰ってきそうなので止めておく。それにしても.....。僕は潰れたサンドイッチを食べながら友利を見る。周りに女友達もいない。一人だ。

 「生徒会長なのにアイツはボッチなのか....」

 「ボッチって....彼女の能力は特定の対象から見えなくなる。逆にその不完全さが今の状況を招いたのでしょう」

 特定の対象から見えなくなる能力。ふと頭に陽野森高校での突然現れた友利の姿が過った。
あれか、どうりで近くで撮られていても気づけなかった訳だ。しかし高城の言ったことと、今の友利のボッチ!!!! (強調するのに特に意味はありません)ライフの姿を総合すると.....。

 「能力者脅す時に何か仕出かしたのか? 」

 「誰かからきいたんですか? 」

 「いや、あんたが言ったことと、今のアイツのボッチ!!! という現状、そしてあの性格だ。僕の時も脅してきたしな。手段なんて選ばないってスタンスなんだろ」

 「そうですね当たってますよ。能力者を確保する際に、暴力行使にでることも多々、いや結構ありますしね。相手には見えなくとも周りからただ一方的に暴力を振るっているようにしかみえない。だから」

 「誰も友達がいないと 」

 「.....。しかし、彼女もここに来る前はあんな性格ではなかったそうですよ」

 「ふーん」

 友利奈緒の兄、友利一希が入院する前の話しか。これで友利が生徒会長になったのに兄が関わっているのは間違いないと断言できるな。さてさて、いったいどうなっているのか。楽しみだ入院中の友利一希。もし、その兄が友利奈緒の希望なら早く壊しておきたいな。友利奈緒は僕の正義を否定した悪だ。

 「あ、こっちに来ますよ」

 高城がそう口にしたのを聞いて僕は友利のいる席の方を見る。確かに立ち上がってこっちへ近いてきた。そして僕と高城の前に立つ。

 「協力者が現れます」

 「協力者? なんだそれは」

 「生徒会長室に集合ということです」

 「え、今ので分かるのか」

 僕はサンドイッチを頬張り全て食べ終えると友利、高城とともに生徒会室へと向かった。道中、高城に「そう言えばアイツは一年で生徒会長なんだよな」と然り気無くきくとこの学校の生徒会長の条件を教えてくれた。行動力と状況においての適切な判断力、そして能力者としての責任感だそうだ。

 もっとも、奴は初代生徒会長で奴のためにこの学校を作った権力者が動いている限り友利が生徒会長であるのは変わらないだろう。しかし、僕はその時、友利奈緒を生徒会長から引きずり下ろす手が次々と頭に浮かんできた。

 生徒会長であってもこの学校の半数がそれに不満をもってデモを起こせば生徒会長という座から引きずり下ろせないか。

 または自分からやめさせられないか等々。

 「ちょっと試してみるのもありか......?」

 しかし、それを試すにはその知識がたりない。家に帰ったらネットのページを見て覚えよう。

 ブログの作り方を!!!! そして作ってみようか友利に不満を持っているやつらが集まるサイトを! 奴に不満を持っている奴等は結構いるはず。よし、いける!!! そんなことを考えている内に生徒会室の扉前についたのであった。



[42107]  第八回 神になることもできる
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 01:59
 生徒会室は広々とした空間で真ん中に大きな机がありその上に地図がおかれている以外には突飛したところはなかった。ああ、後床は梱包を解いた、ダンボールが所々に散らばっていたことと、本棚が大きかったところ以外には殆どなかった。しかし、殆どないという割にはかなり目を見張る物があったりしたのだけれど、少なくともその時の僕にとってはどうでもよく、僕の頭の思考にはどういうブログを作るかを考えていた。本気でする気はないけどな。協力者とやらがくるまでの間の、暇潰し、あくまでも遊び感覚である。

 この学校を作った権力者に潰されないようにしたいな。確かテレビでよくやっているけど海外のサーバーを使えば消されにくいんだっけ。そこも含めて調べないと。

 ふと、その思考の間に友利を生徒会長から引きずり下ろして何をするんだと疑問を持った。僕は僕の努力を否定されて、さらに脅しの証拠品を持っていて僕が何をしたのかをしっているから不安要素を消す感覚で排除しようとしてきたのだが、引きずりおろすだけで僕に何かメリットがあるのだろうか。.....うむ。考えてみたが精々優越感に浸る程度だ。たしかにそれも魅力的ではあるが、全て地位を奪うだけではあいつは折れない気がする。やっぱり、やめるか。

 しかし、あいつはなんで生徒会長をしているのだ? やはり入院している兄が関係しているのだろうか。これが分かるまでは保留にしておいた方がいいかもしれない。

 この時、僕は思ってもいない。人の死は呆気ない物であると。少なくともこの時間の僕は考えていなかった。


 生徒会室にはいってから僕以外の二人も静かであることに気づく。誰かを待っているようだ。

 バタンっ! 突如、両開き扉を開きびしょびしょに濡れた長い髪の男が入ってきた。水男と名付けよう。

 水男は地図のあるテーブルの前に立つと指先を伸ばし、水滴を地図の上に落とす。

 「能力は.....念写」

 そう口にしたあと、水を含んだゴムシューズが地面を滑る時に出す音を出しながら帰っていた。今のが協力者か。


 「不審者か! 警察へ連絡しないと! 」

 「驚きすぎだろ! ......間違っても警察に連絡しないでください。協力者を科学者に捕まえられる訳にはいかないので」

 友利は必死に、警察へ連絡しかけていた僕を止める。

 「あの水男が協力者か....。柄にもなく動揺してしまった。というか今の男は何をしたんだ」

 僕の当然の疑問には高城が答えた。多分、能力者の居場所とその能力を教える存在何だろうがもしもの為に確認だ。

 「特能力者の居場所とその能力を教えてくれたんです」

 「南羽高校。待ち伏せするか......早退していくぞ」

 「え、いいのか? 勝手に早退して」僕の素朴な質問。それに友利が答える。

 「大丈夫ですよ。生徒会所属していればどんなときにどのような行動を取ろうと内申書には響く事はないっすから」

 「それはありがたいが、毎日こんな調子で授業を欠席したらテスト期間が地獄になりそうだな.....」

 南羽高校。星ノ海学園のように現代人が飾りにこだわりまたしよー。という学校なら、この高校は見た感じ、歴史の積み重なった、古い雰囲気のある校舎だった。

 校門前には僕と友利、高城の三人が集まっている。しかし、僕もこんな風に探され、見つかったんだろうか......。

 「では、聞き込みかいしー! 」

 「はい」

 友利掛け声に高城が返事をする。そして友利は聞き込みへと校門の中へと入り聞き込みを開始する。さて、具体的にはどうするべきか。念写って能力だから写真についての噂を聞くか。

 「高城一応聞いておくが聞き込みは写真に関することを聞けばいいのか?」

 「いえ、一概に写真だけとは言えません。最近不可思議なことが起きていないかや念写能力と断定されているので貴方のいったように写真に纏わるもの聞くのもいいですね」

 そうアドバイスをすると高城も聞き込みを開始した。どう見ても頭のあれな連中と同じなのではと思うが、やはり信用は大事ということで僕も聞き込みをすることに決め......な分けないだろ!。やってられるか!。僕まで頭のおかしいやつだと見ず知らずの人間に思われるだろうが!。眉目秀麗成績優秀スポーツ万能で他人にやさいいという優等生という高いステータスにちょっとあれな人とついたその日には僕はその屈辱に耐えかねて髪の毛が真っ白になってしまうかもしれない。

 というわけでもっとスマートにいこうと思う。僕はデバイスをズボンのポケットから取り出すと南羽高校の裏サイトにアクセスする。そして写真に纏わる噂話がでまわっていないかログを見たがそれらしきものはない。

 面倒だからそのサイトで書き込みをした。内容はこう.......写真に纏わる噂を聞きたい。私はとある学生だ。教えてくれてそれが本当だと分かった奴には明日、体育館の裏で二万やろう。

 この間学んだ教訓、この世の中、金!。その書き込みをした途端一気に書き込みが増えた。そして殆どのやつが同じ名前をだす。二年E組有働がここ最近女性が下着姿をした写真を販売しているらしい。弓道部部長らしいな。

 僕が有働の情報を集めていると友利が血相をかいたような顔をして戻ってきた。

 「?どうしたんだそんな血相かいて」

 「あなた....こんなところでなにやってるんですか。それより、挙動のおかしなやつがいましたあなたの能力で乗り移って荷物を確認してください」

 「嗚呼、分かったどいつにだ」

 「くそ、校門まで戻ってきたから見失っただろ! 」

 なんだその理不尽は! 友利はそのおかしな挙動のやつがいないか辺りを探している。僕も探しみるとかなり離れた場所だがまるで見られてくないものを運ぶキョロキョロと周りを警戒して、体育館へと向かう男子生徒がいた。

 「あいつか? 」

 僕が指差して言うと友利が確認し、「そうです。間違いありませんといい」といい友利は追いかける。僕も友利の速度に合わせて追いかける。しかし、あれが二年E組の有働なのだろうか? 僕にエロ本を隠し持って帰ろうとしている男子にしかみえないんだが.....。

 友利の姿をみた挙動の不振な男子生徒はあと少しのところで全力疾走。体育館裏へと逃げ出す。僕も友利も体育館裏へ、向かい、男子生徒との距離がもう少しに縮まった。

 「早く! 」

 「ああ! 」

 僕は全力で走れば取っ捕まえることはできるんだが、そこまで言うのだから仕方ない。僕は視界にいる相手を僕だと考える。次の瞬間僕は他人の男子生徒になっていた。制限時間は五秒持っているカバンを必死に中身を全部ひっくり返すと僕は地面に這いつくばる自分の体へと戻った。

 「え、なんだこれ! 」

 自分のバックの中身が散乱している事態に驚く男子生徒、友利はすでにその中身をチェックしている。それを阻止しようと男子生徒が動こうとするが次の瞬間、風が彼をダンボールが積み重なったゴミ捨て場らしき場所へと吹っ飛ばした。今のは高城か。

 「なんなんだろうこれぇ~女子生徒の写真綺麗な人っすね。お次は女性の下着姿....これが念写か小もないことにつかうな.....」

 友利はダンボールに尻から嵌まっているい男子生徒のもとへといく。僕もついていくか。

 「これは貴方が撮ったんですか? 」

 「ち、違う買ったんだ」

 「誰から買ったんですか? 」

 「.....」

 沈黙を守る男子生徒。きっと買った時に絶対に誰にも言うなよ。見つかったとしても俺のことは教えるなと言われ、頷いたんだろう。今こいつは男の友情だとか自分に酔っているに違いない。

 「友利、僕からこいつに聞きたいことがあるんだいいか? 」

 「何もやってなかったのに何を聞くんですかね....」

 く、一々煩いことを......。まぁいい。勝手にきくしな。僕はドスの聞いた声を出す。

 「おい、あんた今から聞くことに答えろ。お前は二年E組有働を知っているか? 」

 「っ! お前なんで! ....はっ!」

 口を両手で閉ざす男子生徒だが遅い。

 「有働? って誰ですか? 」

 「嗚呼、最近女性の下着姿の写真販売しているという噂の二年E組の弓道部部長だ。この学校の裏サイトでそんな情報が書き込まれていた。今のこいつの反応で間違いはないだろう」

 これは真実だ。だが、書き込まれていたのではないく書き込まれたが正しいけどな。やはり世の中金!。

 「そんなこと調べていたのか! てか、わかってたんなら言えよ! 」

 「言おうとしたがお前が挙動不審なやつがいるといって僕に言う暇をあたえなかったんだろ」

 「チッ。まあいいでしょう。でどうなんですか」

 「く! 」

 「安心してください。これを第三者に漏らすようなことは絶対にしません本当のことだけを教えてくれればいいんです」

 「いや! 」

 「言わないとこの写真の子にあなたがこれ持っていたことをばらしますよ? 」

 この日ほど友達とかの関係は脆いと思ったことはなかった。

 「はい、有働から買った! だから! それだけはマジでやめて! 」

 「よーし二年E組有働を捕まえろ! 」

 友利はそう言うとこの場を去った。高城もついていく。僕も置いてきぼりになるのは面倒なので後を追う。去り際、あの自白したダンボールに嵌まっている男子生徒の写真を撮っておいた。

 さっきのサイトで有働の名前が出ているし、噂になれば守るべき能力者が退学とかになりかねない。

 そうなったら僕のせいだろ? その為の保険さ。 取り敢えずあの闇のサイトには、有働ではかった。全く別人の仕業だった。と書き込んでおいたがだが、書き込まれた有働の名前は消すことはできん。だから別のネタをくれてやろう。

 ある男子生徒がダンボールにはまっていた件というのを闇のサイトもとい、南羽高校裏サイトに写真と共に書き込みをしておいた。彼には悪いが僕の仕事は能力者を守ることだ。苛められるようになっても僕は自分の仕事を真っ当しただけで何も悪くない。取り敢えず高校生活御愁傷様。名前も知らない男子君。君は有働を霞ませるための駒となってくれ。

 夕方。弓道部に僕たちは忍び込む。他の部員は丁度帰る所だったがまだ、部長であるターゲット有働は残って練習をしていた。

 しかしながら中々に凛々しい顔をしている。僕のルックスには負けるがな。僕と高城は有働から離れたところで待機、友利は能力を使い有働の近くにいく。そして能力を解いた。驚く有働。彼には友利が突然現れたようにしか見えなかった筈だ。

 「いやーびっくりしたなぁ。まさかこんなハレンチな写真を念写能力を使って売りさばいている人が弓道部の部長だなんてぇ~」

 友利は甘ったるい声をだし、ぶりっこキャラクターのようなポーズを取る。しかしなぜだろうその姿を見ていると嘔吐しそうになるのは......。

 「写真?、念写能力? 何のことだか....」

 急に現れた友利に冷静対応する有働。しかし残念ながら奴は有働の部活のロッカールームにあった証拠品をその手に持っているハンディカムで確り撮している。どうする。(敵の味方)

 「あなたのお客さんがげろったすよ。あと、あなたのロッカーも調べさせてもらいました大量の写真がでてきましたよ? このビデオカメラに証拠として撮しておきました」

 有働はハッタリだと思ったのだろうが友利にそれを否定される。カメラとは逆の左手にもつ針金、あれで友利は有働のロッカーを開けた。本当に器用に開けたんだから驚きだ。

 「部室のロッカーくらい簡単に開けられます。......どうしてこんなことを?」

 「.......それは金になるからさ」

 「家庭的な問題ですか....そんなお金をもらっても親御さんは嬉しくないっすよ」

 「仕方ないだろ!!! 病気なんだから! 」

 しばらくの間、友利を有働は見つめると懐に手を入れ、一枚の写真を友利に見せつける。目がいいから見えてしまった。友利の下着の写真が.......。胸のなかから込み上げてくる嘔吐感とさぶいぼが立つような感覚におそわれる。

 「うわ、なんてものを見せるんだよ.....」

 「乙坂さんどうしたんですか」

 「いや、面倒なことになりそうでちょっとな......」

 「お前の下着姿を念写した! 顔まで写っている! ばら蒔かれたくなければ全てを無かった事にしろ! 」

 「え、今ので念写もう終わりすか! ばないなっ! でも、そんなの需要ないっすよ? 」

 そうきょとんとした顔で言う友利。確かにあれはないな。僕がここまで嫌悪するということは絶対需要はない。断言してやる。

 「何をいっているんだどっからどう見ても上玉だろ? 」

 え、マジ、弓道部って目がいいやつが多かった筈だぞ.....。あの有働とか言うやつ視力いくつだよ。絶対眼科いった方がいいって! 弓道部に目は大事だ! (経験談)

 「え、マジっすかやったー誉められたー! 」

 「ああだから消えろ.....」

 友利がこれ以上調子ずいている姿をこれ以上見ていられないので有働に乗り移り、友利に写真を渡す。
 「ナイス」

 いや、あんたのためにやったんじゃないない。僕のためにやったんだ。

 「写真がない」と意識が戻った有働は混乱する。

 「写真ならここです」

 「何でお前が....」

 有働には理解できない。当然だ僕が乗り移っている間は当人の意識は無いのだから。今、有働にとることができる手段はたった二つ。一つ、あきらめ投了する。二つ今、手に持っている矢を友利に向けて脅す。そして有働が取った手は二の矢を向けるだった。

 「く、全てを無かった事にしろ! 」

 有働の構えは流石、弓道部、流れるように早く、標準は友利の顔ピタリと安定して止まっている。なかなかの熟練者のようだ。友利はそれを見て俯くと

 「矢を人に向ける何て最低です。.......武道精神、ナッシングかよ! 」

 床を大きく踏み有働を威圧した。有働はそれに驚きただでさえ添えるように持っていた矢を放す。

 瞬間、僕は間近で見た白柳さんの死を見たときにうっすらと感じた、世界の歪みの様なものを見た。まるで何者かが本来あるべきことをねじ曲げたようなそんな気づきにくいそんな些細な、でも多分大きな変化。

 走馬灯と呼ばれるものは死の寸前で訪れる。まるで一秒が何千倍の長さに感じ、様々な記憶を頭に過らせる。

 だが、今僕が見ているものはそれと似て非なるものなのかもしれない。世界は灰色に染まっていた。しかし、思い出が過ることはない。

 ゆっくりと友利の頭へと推進する矢を掴もうとする前方へとゆっくりと飛ぶ、高城の姿、しかし、右手では遅すぎた。ならば次は左手と掴もうとするが掴むことはできない。もう一度左手でとろうとするが遂に矢はその左手をする抜け友利へと

 ガラスの砕ける音がした。「ッ! 」同時に骨を貫く心臓の脈のようにうなだった音を聞いた。灰色の世界はいつの間にか終わり、あたりは元の色と時間を取り戻す。

 床に誰かが倒れている.....。銀髪のサイドテールの僕と同じ高校に通う女子生徒が床に倒れている。頭には一本の矢がつきたっていた。

 「え、嘘だろ、事故だ! 俺が殺したんじゃない。救急車だれか救急車を! 」

 有働は一人、同じように救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車救急車。と目の前で起きたことに混乱しているのか何度も、口にするがその場を立ったまま動かない。

 僕はその様子をただ見ていた。ただ呆然とあの日の事故の様に。しかし、今回は違う友利に、死んだ人間に近づいた。蒼い瞳は見開きながら空を見ていた。その額には矢がつきたっている。矢先は脳へ達している。息はしていない。死んでいる。即死だ。助かる可能性ははっきりいて皆無だ。

 「なんなんだよこれ......」

 全速力で走ってくる足音が聞こえる。高城が外から帰ってきたらしい。

 「乙坂さん! 何をしているんですか早く救急車を! 」

 ここで無駄だと口しても良かったが、高城の淡い期待に答えるためにも僕は119番へと連絡した。


                      2



 あれから三日、結果として生徒会の活動は最悪だった。生徒会長の友利奈緒は呆気なく死んだ。それも事故死、彼女の気迫に驚いてうっかりと矢を放してしまった弓道部の部長は退学となった。

 人に矢を向けた時点でいけなかったのだ。彼は人間失格の烙印を世間から押された。殺す気は無かったんだ、ただ知られたくないことを知られて矢を向けたと供述し、テレビにも出た。

 その知られたくないことはなにかと記者会見で聞かれた元弓道部有働少年は自分は念写能力の能力者であり、病気母親の治療費ために女性の下着姿を念写した写真を売りさばいていたそれがばれたと口にした。

 それが本当であると言う声が思った以上にあり、念写能力使ってくださいと有働は紙を渡され念写能力使おうとした。が結果は何度やっても失敗。あり得ないといいながら何度もやっていたが結局念写が成功することはなく、彼はエセ超能力者のレッテルを新たに貼り付けられた。彼はまだ時間があるはずなのにどうして能力を失ったのだろうか? もし、失ったとしたら何故。僕は幾つか可能性へと至っていた。

 一つは僕が乗り移った能力者は能力を失う可能性。またもう一つは僕が能力を奪った可能性。どっちも馬鹿なとしか言いようがない可能性だったが、何故友利がたった五秒しか相手に乗り移れない能力者を使えるといい生徒会へ入れたのかを考えると絶対にないとは言い切れなかった。

 僕は明日行われる友利奈緒の葬式前にそれらの可能性を試してみることにした。僕が相手の能力を乗り移ることで消す事ができるという能力は直ぐには確認しようのないことなので、相手の能力を奪う事ができる能力ならばと言うことで念写能力をつかってみることにした。テレビで有働が念写のさいには紙を持ち、数秒間瞬きせずに写したいものを見ると念写できるらしい。僕は自分の部屋で鏡に映る自分をメモ用紙に念写してみた。
 結果は

 「.....ハハハハっ。.....まじかよ」

 僕の持っているメモ用紙には僕の姿が浮かび上がっていた。僕は自分の能力を勘違いして使っていたのだ。相手に五秒乗り移る事ができる能力じゃなく、相手に乗り移ることでその相手の持つ能力を奪うことがだったのだ。

 この世界にはかなりの能力者がいるらしい。僕が世界中の能力を奪えばどうなるのだろうか?。
僕はきっと全能になれる。そうだ神になることだって夢ではない。そうすれば死んだ人間、白柳さんも生き返らせる何てこともできるのではないだろうか。または、あいつも.......。

 ッ! いや、何を考えてるんだ僕は! 目の前で人が死ぬところを二回も見たから頭がおかしくなっているのか.......。僕は自分が幸せならいいじゃないか。白柳さんの事故を無かったことにしたいと思うのはわかるが、なぜ、あいつを.......。

 何だか、心にポッかりと穴が空いた気分だった。虚無感なのだろう。自分で手を下す必要もなく、僕にとって悪は死んだ。絶望すらさせないで。

 「もう寝るか.....」

 僕は寝室に向かう。ご飯はどうするのかと歩未に聞かれたが今日は食べる気にはならなかった。昨日は無理して食事を喉に通していたがさすがに無理だ。本を読む気にもなれない。
 布団を敷き寝そべるとすぐに僕の意識は暗い闇の底へと落ちていった。

 暗転。



[42107]  セカンドプロローグ なにがなんだか分からない.....。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/13 02:02
 明晰夢と言うものを知っているだろうか。幼かった頃に読んだ小説で僕はその明晰夢なるものを知ったのだが、明晰夢とは夢を夢だと理解している状態のことだ。さらにすごいことに明晰夢では自分で行動ができたりもするし、まるで現実にいるように違和感がないときもあるそうだ。明晰夢を極めれば自分の思い通りのイメージした展開にもできるらしい。だからこそ、明晰夢をみるためのトレーニングと言うものもあるそうだが、そう簡単に夢だと認識することはできないし、夢そのものをみることができなければ意味がない。だから、明晰夢というものをみれるかどうかは運しだいということになる。みれたときは自分の思う展開や舞台をイメージして自由自在の夢をみれるといいな。大抵そのイメージを明確化しようとすると目が覚めてしまうのが大多数だそうだけど......。

 さて、何故僕が今、明晰夢の事を語りだしたのかを説明しようと思う。もっとも、夕日が綺麗に見えるこの夕焼けの下、誰かに締め付けられ、身動きできないようにされながら、風を切り裂き空を飛んでいるこの状況を説明しろと言われても絶対に説明はできないだろうう。

 「なんじゃこりゃーぁぁっぁっぁぁぁっぁあぁ!!!!!!! 」

 そんな僕のむなしい叫びだけがこの空に響いていた。更に僕は唯一苦手なジェットコースターよりも早い速度で飛んでいるために体に力が入らなかった。僕が思うことはただ一つどうかこのリアルな感覚を伝えてくるこの事態が夢なら早く覚めますように.......。


                     1
 夢を見ている。

 真っ暗闇の中にポツンと僕は一人でたっていて自分に自問自答していた。僕はどうするのかと.....。

 白柳さんと親しい中になるためにトラックに轢かれそうになったところを助けるという演出をして結果的に失敗し、白柳さんを殺してしまった。僕があんなことを企まなければ実行しなければ、失敗しなかったら、まだ生きていたかもしれない。

 『でも、それは幸せになろうと努力した結果じゃないか、それの何が悪いんだ。失敗しなければ万々歳だっただろうけど、幸せにな努力した結果だ、恥ずべきことじゃない悪いことじゃない』

 暗闇のどこかか僕の声が聞こえてきた。その言葉はあの日、白柳さんを殺してしまった時に思った自分を肯定する言葉だ。

 確かに幸せになろうとして起きた結果だ。人間が自分の為に幸せになりたいのはある意味当たり前なのかもしれない。

 幸せなるために努力することは確かに僕にとっていいことだ。と言うか誰だって幸せを望んでいる。その為に努力することはきっと間違っていない。でも、自分の幸せの為に他人を巻き込んでもいいのだろうか。

 偉い人になりたい、大臣になりたい。その為に勉強をする努力をする。お金持ちになって楽をしたい。その為に経済について勉強をする努力する。いい成績をとって周りからちやほやされたい。だから勉強をする。好きな人ができた、その人と彼氏彼女の中になりたいから切実にアピールしたり、然り気無くアピールしたりする。これらは全部、自分の願望でそして自分にとっての幸せになるためのものだ。だけど、皆その為に必死になって生きて必死に努力している。

 僕はどうだろう。学年一位になって周りから称賛の目で見られたくて、楽をするために乗り移ってカンニングを続けている。

 白柳さんと親しくなりたかったのは学園のマドンナと親しい仲というステータスが欲しかっただけだ。その為に見ず知らずのトラックの運転手を巻き込み、さらに白柳を危険にさらし、白柳さんを殺してしまった。



 いい成績を取るために成績優秀の奴を調べてから乗り移ってカンニングをした。

 白柳さんに近づくために失敗はしたが努力をした。

 だけど、努力方向性が間違っている。僕のしていた事はただ相手を利用して自分が幸せになって、周りからちやほやされたいだけだったのだ。自分がいい思いをしたいが為に他人を利用した。

 これが幸せになるために努力して失敗したんだからって許されるのか。悪いことではないのか。人の命だぞ........軽いわけがない。必死に生きている人間の一人だったんだ。それを軽々しくあんたの分まで生きるとか、幸せなるとか身勝手にもほどがある。

 だけどそれが僕だ。僕が言った事だ。......やったていることだ。だけど僕に他人の分まで勝手に幸せになる権利は無い.....。

 そう思った次の瞬間、僕はさっきまでとは真逆の真っ白な所にいた。場所が変わっても何故だか驚く気にはならない。きっと心の何処かでここが夢だと知っていたからだ。

 その真っ白な空間でも僕は自分を少しでも許せるように自問自答を続ける。

 次に浮かんできた自問は友利の事だ。白柳さんを殺してしまった時の証拠を持っていて僕が相手に乗り移ることができることから事故を起こしたのが僕だと推理し、それを脅しの材料として僕に星ノ海学園に転入するようにもちかけてきた。どんな罪をもっていようと星ノ海学園は受け入れるといって僕を悪者のようにいって。

 「奴は僕にとって最悪とも言える都合の悪い証拠品を持っている。証拠品を破壊し、僕のやったことへ行き着いているあいつらを排除しないと.....。僕は、幸せになる努力をしたにすぎない。ただ運が無かっただけだ。幸せになる努力をして何が悪い!。その邪魔をするというのなら殺るしかない」

 今さらだけど、必死に生きている人間を殺す権利が僕にあったのか。それに、僕が殺さなくてもあいつは死んだ。

 「証拠品を持ってたんだ。殺さないといけなかった!。僕は白柳さんの分まで幸せにならないといけないんだ! 」

 でも、僕は僕でしかない。白柳さんじゃないし、白柳さんから自分の分まで生きてくれ、幸せになってくれとは頼まれていない。僕が勝手に一人で納得して、一人で許されようとしていだけじゃないか。




 また光景が変わる。次は自分の部屋だ。僕は部屋の隅で膝を抱えていた。

 なら! 僕はどうすればよかったんだろう。白柳さんを殺してしまった僕はどうすれば.....。

 全ては、あの事故から狂いだした。あの時上手くいけば僕がこんなことを考える必要も無かった、人を殺すだとか、そんなことも考えなかった。

 「僕は......どうするればよかったんだ。僕がどんなに幸せになろうと死んでしまった白柳さんの為になることなんてないじゃないか。ぼくは、自分のしたことを......肯定する以外にどすればよかったんだ....」

 気分が重くなってくる。それと同調するように鉛のよう重たくなりに体が沈む。僕がしたことは許されないことだった。なら白柳さんと同じように死ぬと言うことでしか償えないのだろう。でもそれで白柳さんが生き返るわけではない。 僕は

 「僕、はどうすれば償える。許してもらえる 償えないのか」

 「多分、人の命ってものは償うことのできないものなんじゃないんすか......」

 銀色の音のように透き通った声が聞こえた。声の主は僕の前に立っている。見上げればそいつが誰なのかが分かるのかも知れないが僕は見上げることはしない。顔を見てしまうとそいつが消える気がして、だから俯いている今の状態ではそいつの足元しか僕には見えていない。

 「あなたの考えている通り償いに死んでしまった人間の分まで生きて、その人の分まで幸せになると言うのはあまりにも身勝手な事でただの自己満足といってもいいでしょう。そして、その罪滅ぼしに自分の死をもって償うというのはただの逃げです......」

 「うるせぇよ、偉そうに......なら、なら、僕は、どうすればいいんだよ! 」

 そうだ。僕はどうすればいいんだ。どうするのが正解なんだ。

 「勝手に相手の分まで生きるのも幸せになるのも不正解。ならせめて同じように死ぬそれは逃げ、なら、何が正解.....なんだよ.....どうすれば償えるんだ....」

 感情が乱れる。涙腺は緩み涙が出る。暫く間この場を沈黙が支配した。ふと、頬に華奢で細い掌が添えられる。きっと目の前の奴が僕があまりにも惨めだったから同情したのかもしれない。哀れんだのかもしれない。僕は一体どんな人が僕の頬に触れているのか知りたくて、顔を上げようとするがきっと僕が見たらその瞬間消えてしまうのだ。そんな気がしたので顔はあげない。

 「.....きっと正解なんてないだ思います。多分どんなことをしても自己満足以外の何でもないんです。でも、勝手に、自分で自分に、許されないでくだない。だから死ぬも今まであなたのやっていた逃げです」

 「......正解なんてないってことなのか」

 「はい。でも、生きてください。生きている間、考え続けてください分からなくても答えがなくても.....です」

 僕はその言葉を聞き頷く。今はまだどうするのがいいのかわからない。考え続けても答えがでないかもしれない。何も答えになっていないのかもしれないけど、でも、ほんの少しだけ救われてしまった。

 僕はゆっくりと俯いていたいた顔をあげる。そいつは僕の視線とあわせる為に屈んでいた。銀色の髪を二つに結び、蒼色の目はこの部屋の空間差し込んでくる月の光によって蒼白く輝いている。そして来ている服は星ノ海学園の制服だ。彼女は死ぬ前の姿と変わらない。だが、その体はもう今にも消えてしまいそうなくらいにぼんやりとしている。

 「いま、言ったことを絶対に忘れないでください......」

 「嗚呼、約束、するよ.........僕は絶対に! 」

 僕は立ち上がり、そいつを見据える。だが、そいつは僕が言葉を最後まで言い切る前に消えていた。でも、最後の一瞬、口元に笑みが見えた気がした。

 「.......ありがとう僕は 絶対に忘れない」その言葉とともに僕もこの部屋からゆっくりと消えた。









                      2

 夢を見ていた。忘れないようにしたい。そんな夢を。

 意識が闇の中からゆっくりと浮上していく感覚がある。覚醒へと向かう途中そういえば今日が友利の葬式だったと言うことに気付き大至急起きなければ遅刻すると意識を覚醒へと導いたのが最後。

 僕は風を切るように誰かにがっしり固定され夕日の空の下を飛んでいた。そして、このままいけば数百m先にある川にドボンするだろう。あの川に突っ込めば目がバッチリ覚めるかもしれない。同時にこのあまりにリアルな風を切る音や、ジェットコースターにのったときに全身に立つ鳥肌は夢めであったと気づくだろう。

 「嗚呼ああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!! 」

 しかし、ジェットコースターよりも早い速度に僕が悲鳴をあげないわけがない。悲鳴をあげているにも関わらず目が覚めないのはおかしいが早く覚めてくれないだろうか。あ、川がもう近くなった目が覚めるなぁ。

 訂正、目が覚める事はなかった。僕と僕を逃がすまいとがっちりと締め付けている誰かはそのまま川に突っ込み、僕を下敷きに水切りの要領で跳ねていく。そして、夢にも関わらず、川の水が冷たい冷たい。あれ、これ現実なんじゃと思うと顔面を水面に叩きつけられる。どうやら、このままでは河川の壁に激突してしまうのを悟ったり僕をブレーキに使っているらしい。

 「ぼごごごご」

 息ができない。と思った瞬間、跳ねる勢いは止まり、冷たい川のなかへ沈んだ。直ぐ様浮上しよう。僕を押さえつけていたやつは離れたようだ。そうして、僕は沖もとい河川に上がった。

 髪の毛は濡れ、服は水を吸収し、重くなっている。何でだろうかもう少し肺活量はあったきはしたんだがなんだか息切れが激しい。僕は地べたにそのまま横になる。と同時に僕と一緒に川の中に突っ込んだやつも川から出てくる。警戒するが、体に力が入らない中学では数々の部活動に参加していた僕の体とは思えない軟弱さだ。

 警戒していた相手は倒れる僕の前に来た。

 クソ、なにかは知らないが誰だ、こんなふざけたお起しかたをしたやつは....。顔を拝んで、中学時代ボクシング部で全国大会優勝の僕のジャブとストレートをワンツーでかましてやる。

 このあとする行動を決め顔をあげてみる。警戒心最大で直ぐにでも攻撃できるように体を直ぐに起こせる体制をとっておく。

 僕を川へと吹っ飛ばした奴と思われる足音が聞こえてくる。僕は目を細め相手を見た。視線の先にいたのは星ノ海学園所属生徒会会員の高城その人だ。

 は? 何やってるんだこいつは、てか、どんな起こし方だよ友利の葬式だとはいえ部屋に侵入したあげく瞬間移動で僕を川へぶっ飛ばすとは.......。

 「お前、何を.....」

 「瞬間移動です」

 「は? 」

 瞬間移動がどうしたんだ! 僕が聞いているのは何でこんな事をしたのかだ。

 「文字道理一瞬で移動する能力ですが都合よくぴたりと止まれません。この能力のおかげで何度病院送りになったことか....! 」

 高城は拳を握りしめ、いつか見たような悲痛さを表す顔をする。て言うかこいつがこんな河川敷に連れて来た理由がわからない。ただ、瞬間移動でここまでぶっ飛ばして来やがったんだ。警戒するにこしたことはないだろう。僕は立ち上がり高城を睨み付ける。こんな意味不明の事をして、こいつの目的は一体なんだ。

 「おい、これから僕をどうする気だ」

 僕は高城にそう聞いた。だが僕の質問に答えたのは高城ではなかった。

 「我々の学園に転入してもらいます」

 「え......」

 知っている一人の女の声、銀の音のような透き通った声だ。だが、もうこの世には存在するはずのない声、それが僕の真後ろから聞こえた。

 後ろを振り替える。

 「ッ......転入? 」

 思わず笑いがでそうになる。振り返った先には、精気を宿した目をし、蒼い瞳で僕をみている星ノ海学園の制服着た銀髪の少女が一人。

 「はい、この世にはあなた以外にも特殊能力を持ったものが存在しています」

 これはなんの冗談何だろうか。現実だと思ったら死んだ人間が出てきて意味のわからないことを言い出す。転入も何も僕は星ノ海学園に在校している。いや、現実じゃないのかこれは? だって死んだ人間が動いているんだ。いや現実だ。なら僕は幻覚でも見ているのかもしれない。

 「でもそれは思春期のみに起こり得る病のようなものでやがてきえます。それが消えるまで私達の学校星ノ海学園に通い続けてください」

 「は? 」

 この幻覚は何をいっているんだ。やっぱりおかしい。僕は星ノ海学園の生徒じゃないか。というよりはこいつは幻覚か否かの確認だ。少なくとも今僕はここを現実世界の感覚と認識している。確かめてみるしかない。

 「ちょっと待ってくれ、あんたは幻覚か? 生きているのか?」

 「はぁ? なにいってるんすか死人が喋るとでも? ていうか私、死んでないですし.....」

 「え、......死んでない? 」

 僕は友利に近づき脈があるかどうかを確認しようと手を取ろうとするが、友利は僕を警戒してか不可視の能力を使い消える。

 「くそ、これじゃ確認できない.....。高城お前には見えているんだろ?。とっととこの幻覚が本物がどうか確かめてくれよ」

 「な、何故、私の名前を。さらに友利さんの能力まで知っているとは貴方は何者ですか?! 」

 「は? なにいってるんだお前?僕が知っているのは当然じゃないかと言うかあんたが僕に教えたんだろ?」

 なんだこれ、会話が噛み合わない。ふと自分の着ている制服に目がいく。部屋着で寝ていた筈なのにいつの間にか制服だった。しかも星ノ海学園の制服ではなく、陽野森高校の制服だ。

 そしてふとして気がついたが何故、夕方になっている。朝に目覚ましをセットしていた筈なのに、日の光は西へ傾いていた。夢だと思ってたから気にしなかったけど色々とおかしい。

 「私と貴方は初対面の筈です。そんな人に情報を漏らすようなことはしませんよ! もう一度聞きます貴方は何者ですか! 手荒な手段は好きではありませんが瞬間移動で激突されたくなければ吐いてください!」

 警戒した目で見る高城。答えなければ本気で突っ込んできそうだ。それに初対面という言葉。意味がわからないし......洒落にならん! 多分友利の幻覚か、何かも近くにいるだろう。

 くそ、なんでだ、目覚めてすぐだからか頭が回らない。落ち着け取り敢えず今揃っているピースを考えろ。

 僕の着た記憶のない陽野森高校の制服。高城の初対面という発言。夕方。........共通点も繋がりそうな解答も上がらない。ふと、ズボンのポケットにスマートフォンが入っているのに気づく。僕はポケットに手を入れスマートフォンを取ろうとしたが高城が警戒しているので迂闊に動けば骨折騒ぎになるでやめる。

 くそ、状況を把握しないと手の打ちようがない。そもそも、陽野森高校制服を着た覚えはないし、この制服はクローゼットの中へ閉まっていた。次に高城はどうにも演技をしているように思えない、さらに言えば僕が朝の目覚ましを聞いていない時点でおかしい。しかもここが現実ではないと言われても信じられない。

 ここが現実なら、今さっき目の前にいた友利は本物だった? .....馬鹿な。

 何故、僕は陽野森高校の制服を着ている? 高城は僕を知らないようだった。


 刹那、頭にあり得ない馬鹿みたいな考えがよぎり、僕は口を開いた。


 「今日は何月何日だ。答えろ.....」

 「それよりも私の質問にお答えしてください」

 「頼む。後で話すから! 今日の日付は! 」

 高城は僕が必死聞くからか答えてくれた。そしてその日付を聞いたとき僕は現実が現実ではないことを知る。

 「.......あり得ない」

 それはまさに非現実染みたことだった。

 今日、この日の日付は過去のもの、星ノ海学園の生徒会のあつらと接触した日のものだったんだから。

 世の中はスピリチュアルなことだらけだ。特殊能力者にせよ、今回の目が覚めたら過去にいたにせよ。もう、なにがなんだか分からない。



[42107]  第一回 誰かの声
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/16 05:37
 なんなんだこれは、目が覚めたら過去に戻っていただと.....。ハハハッ、意味がわからない。

 高城が警戒した目で見てくるなか僕は今の状況を受け入れることができていない。一つだけ言えることは僕が過去にいるという非現実じみた事態を体験しているということだろう。これが夢である可能性は五感が感じる情報量の多さから絶対にない。つまりこれは現実なのだ。僕は今、過去にいるんだ。

 「さぁ。私は貴方の質問に答えました。次は貴方の番ですよ。 何故、私の名前と友利さんの能力を知っているのですか」

 高城が体制を低くし何時でも突撃できる体制で聞いてくる。能力を使って消えている友利もどこか近くで見ているのだろう。僕はどう答えるべきか迷う。気がついたら過去の世界に戻っていて、あんた達とは未来であっていると正直にいっても余計ややこしくなるだろう。それに、僕は過去でこんな所に運ばれた経験はない。寝ている間にこの世界の僕に何があったのか逆に聞きたいくらいだ。

 しかし、友利の能力を言ったことはかまをかけたということで誤魔化せるかも知れなかったが高城の名前はそう簡単には誤魔化せない。どうする逃げるか?........。いや、こうなれば自棄だ。僕は略奪の能力者だ。もしかしたら未来からこの時代にタイムリープしてきたといっても略奪の能力で奪ったということで何とかなるかもしれない。

 「嗚呼、分かった。......あんたらのことを僕が知っていたのは僕がッ! 」

 僕は自分が何で友利と高城を知っているのかを口にしようとした。だが、僕がそのことを最後まで口にすることはできなかった。

 世界が灰色になり、まるで軸がずれたような違和感を体に感じる。いや、軸がずれたんじゃない僕がもとの軸へと引っ張られているのだ。あの友利が死んだ世界へと.....。

 この事をいっちゃいけないんだ。言えば多分もとの時間と世界へ戻されることになる。未来を変えられるかもしれないのに......?。あれ、未来を変えたいのか僕は?。

 心臓が締め付けられるように痛く、呼吸は荒くなる。不味い、このままじゃ.....。

 「........悪い.....理由は言えない」

 結局そう言うことしか僕には出来なかった。

 「言えない?。何故?」

 「ッ」

 僕はこの場から逃げだそうとする。少し考える時間がほしかったから。.......この場から逃げ出したかったから。その時「待ってください」友利の声が聞こえた。

 僕はその声に反応して後ろを振り替える。友利の姿が見える。目の前で死んだのに生きている。当たり前だここは僕が知っていない別の世界の過去なのだから。

 「何だ......」

 「いえ、転入についての説明をしてなかったのでその事についてお話をしようかと」

 淡々とそう言う友利。

 「転入することはおじさんに承諾を得ているんだろ......知ってる。それとも生徒会へのスカウトか?」

 僕がこれから友利が言うであろう台詞を言うと友利は少しの間、驚いた顔をしていたが直ぐにいつもの無表情に戻る。

 「.......さっきまでとはまるで別人ですね.....教えていない情報も知っている、それに何で私があなたを生徒会に入れようとしていたことが分かったのか.....不思議です」

 馬鹿か僕は。疑問に思われて当然のことをさっきから口にしている。やっぱり冷静な判断ができていない。落ち着け混乱は思考能力を低下させるだけだ。僕は自分にそう言い聞かせ自分は過去にいるんだという事を現実として取り敢えず受け入れる。混乱はあとですればいい。そして少し落ち着きを取り戻し友利に発言する。

 「世の中特殊能力何てものがあるんだ。不思議なことなんていくらでもあるだろ。だから、安心しろよ。あんたの言うとうり、星ノ海学園に行く。それと生徒会に入れてくれるか?。そのほうが僕にとっても都合がいい。得体の知れない奴だけど、必ずあんたの役には立つ」

 生徒会に入らないと言ってもよかったが、人が死ぬとわかっていて見殺しにするのはすきじゃない。それに友利奈緒は僕が悪だといったあの日から手を下すと決めていた存在なのだから絶望する前に死なれる訳にはいかないのだ。

 しかし、今まで全く気にしたたことがなかったが、人の命を僕は奪っていいか?。奪う権利があるのだろうか.......。好き勝手にやっていた僕がそんな柄にも無いことを何故か考えていた。

 友利は少しの間しゅんじゅんした後に口を開いた。

 「分かりました生徒会に入ってもらいます。確かにあなたの能力は使えるんで」

 「嗚呼、色々と助かる」

 「........最後に一ついいですか」

 真剣な雰囲気をまとた友利。僕は答えられる範囲で答える事にする。

 「なんだ」

 「あなたが何か秘密を抱えているのは何となく分かります。それがあなたが別人の様になったことや、私の能力のこと高城の名前を知っていた事にも関係があるのでしょう。......その秘密、話してくれるんですかね....?」

 秘密。僕は未来でここにいる二人に合っているということ。だがそれは絶対にいってはならない。きっとあの世界へ戻されてしまうから人が目の前で人が二回も死んだあの世界に.........。だから答えは決まっていた。僕は顔を上げ友利を見るとハッン!と鼻で笑い。口の端を吊り上げ友利を見下ろす。きっと今僕の顔は人様を蔑む笑い顔になっていることだろう。友利が訝しげな表情をしているのがその証拠だ。

 「はっ!。僕の秘密をいつか話してくれるかぁって?。話す訳ないだろ! 僕はそこで今も警戒している高城某に川へと吹っ飛ばされたんだぞ。しかもそれを指示したのはあんただろ!。百万年たとうが教える訳がない! 絶対やだね! 」

 高城は僕の態度に目を見開く。そして怒りの混じった声で僕の態度を軽蔑するような発言をした。

 「生徒会に入れてもらって、保護してもらう立場の人間の態度じゃないですね。それに貴方には私たちの仲間になるんですよ。信頼関係を最初からぶち壊すなんて貴方は恥ずかしくないんですか!」

 「恥ずかしい?。高城、あんたのその言い分は確かに至極当然の反応だ。だが、それがどうした!。生徒会に入れてもらう立場なのに、頼んでいる立場なのに偉そうにする。それが恥ずべき行動? 態度? だからどうした! 」

 「なっ!」

 「それはそれ、これはこれなんだよ。あんたが僕を川へと飛ばした事実は僕にとってはあんたらに怒りを覚えるには十分なものだ。ただの日常を送っていた奴の所に不意討ちで現れていきなり現れ、窮地に追い込みそして次は川へとドボンだ! 謝罪なしな上に、さらには、こっちだってわけわかんないのに警戒して瞬間移動で追撃しようとしてくる。ホント最悪だ! 」

 「いや、あなたが逃げ出すからしょ....。話を聞かせるためにはしかたなかったですし」

 友利が僕に言う。しかし、逃げ出した?。いったいなんのことを言っているんだ?。今日は友利が接触してきて、僕がカンニングの疑いで生徒会室に呼び出され、逆にあの生徒会長を脅してやった日のはずだ。つまり逃げ出したというのは僕が生徒会室から逃げ出したということか?。まさかなと思いながらも話をあわせないわけにもいけない。僕は逃げ出したという友利の言葉には触れず不満を垂れ流す。

 「知るかよ!、もう少しやり方くらい考えろ! 死ぬかと思ったぞ! 」

 「う~ん、確かに凄く高く飛びましたし、このカンニング魔の言い分にも一理ありますね」

 「ええっ! 友利さん! 貴方は私の味方では無いんですか! 」

 「いえ、私は正義の味方です」

 「僕のことをカンニング魔と言うな! 」


 そんなこんなでいつの間にか不毛な言い争いが始まり、数分が経過、夕日も徐々に西へと沈みはじめ視界に入る空にはうっすらと闇がかかってきている。それにしても何で僕はこんな不毛なやり取りをしているんだろうと疑問に思った。死んだ人間と会話していることがそもそも異常事態なのに。いや、過去いて今やり取りをしていたのは死ぬ前の友利なんだから別に異常ではないか。異常なのは過去にいるという事実ただひとつだ。ふとして、空の色が薄暗くなっていることに気づく。

 ここらで一度家に戻って状況を整理したほうがよさそうだな。歩未が帰りが遅いと心配しているかもしれない。


 「これ以上は不毛だ。妹に心配させるかもしれないし僕は帰る。.....取り敢えずだが生徒会の協力は確りする。だが、今日の仕打ちを僕は一生忘れないし、あんたらを信用するきも信用されるきもない。話かけてくれば返事くらいちゃんと返すし、用があれば話かけたりもするが....、兎に角、秘密云々きかれても絶対に言わん! これだけは譲れない! 」

 「はぁ。分かりましたよ......ほんとめんどうな奴だな」

 友利は本当にめんどくさそうな奴を相手にしている態度だった。こいつのせいでおかしな方向に話が進んだ気がするのに釈然としない。

 「じゃぁ僕は帰る。たく......散々な目にあった」

 僕はその言葉を残しずぶ濡れの制服でこの場から逃げるように立ち去った。目的地は引っ越す前のアパートだ。

 僕は友利達から離れ、しばらくしてから自分の今後を考える。

 .......僕はまだ、この世界がどういう世界なのか全然知らない。まずはこの世界の情報を集めないといけない。

 そして心の片隅で僕らしからぬ考えがまだ、めぐっている。

 僕は自分の為だけに人の命を、僕と同じようにまたは違った形で何かを求め必死に生きている人間の命を殺める権利があるのだろうかとかそんな哲学みたいなことだ。

 今まで考えもしなかった事を自分に問ながら家までの道を歩く。

 ふと、ふわっと風が吹いた。冷たく濡れた制服が春の風のせいで余計に冷たくなる。もう冬はとうのむかしに終わっているのに。寒い。

     

                    - 約束を絶対に忘れないでください。

 
 その風にのせられ誰かの声が耳に届いた。辺りを見渡すが薄暗い道があるだけで誰もいない。空耳だったようだ。でも何となく聞いことがあるような、声だったので心の中で分かっていると呟いておいた。

 僕は約束なんて誰ともしてないはずなのに、なんで分かっているなんて呟んだろう。それは答えた本人の僕にもわからない。

 でもなんとくだけど、その声の主が笑った気がきて心なしか僕はふわりと吹き付けた風に少し暖かな感覚を覚えた。



[42107]  第二回 違う過去の世界
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/16 05:58
 「ただいま......」

 「あ、有宇お兄ちゃんお帰りなさいなのですぅ!」

 僕が前に住んでいた家の中に入ると玄関先に歩未が出迎えてくれる。これで確実に僕が過去にいることが証明される。手の込んだドッキリという可能性はなくなった。高城が嘘をいっている可能性もまだ残っていたからな。この家に置かれた家具や机などが引っ越し前の状態であることと歩未の服装が僕が生徒会と接触した日と同じものだということを目にすれば自分が過去にいるのだと確信できた。

 歩未は僕が僕を出迎えるとそして必然的に僕がずぶ濡れなことに気づく、どう言い訳しよう。

 「て、有宇お兄ちゃんそんなに何でずぶ濡れなの!」

 「嗚呼、実は道中大事なプリントを見ていたら風に飛ばされて川に流されてしまってな、それを取りに行ったらスッ転んでこの様だよ」

 あまりにもあり得ない言い訳だったが絶対にないとは言いきれまい。歩未は「それは大変なのですぅ。早くお風呂に入ってくだされ!」とずぶ濡れの僕をお風呂に入るとように促す。というか今ので信じたのか.......。あまりにも純粋で人を疑うことを知らなさすぎる歩未は将来へんな男に引っ掛からないか心配だ。

 「嗚呼、入ってくるよ」僕は直ぐにバスルームへいき、冷えきった体を湯船に沈め、暖めた。

 風呂から上がると歩未がオムライスを作る用意をしている。卵に、ご飯、ケチャップ少々にそして.......ピザソース。あの甘いオムライスは何か久しぶりな気がする。友利が死んだあの後の夕食も無理やり食べたが直ぐに吐きそうになって歩未にバレない様に吐くが大変だった。その後は食欲がないといってあまり食べていなかったのだ。

 だが、今この時間では友利は生きている。もう、気分が悪くなることもないだろう。だってこの世界では友利は死んでいないんだから。

 ふと思った、未来のあの世界では今、僕の体はどうなっているのか。この時間の乙坂有宇と入れ替わったのか。それとも意識不明になっているのか。考えても僕には確認のしようのないことなので諦めよう。


 「歩未、僕も手伝うよ」

 「え、有宇お兄ちゃん手伝ってくれるの?」

 歩未は僕が料理の手伝いをするというと少し驚いた顔をする。白柳さんの事故の後の僕は手伝っていなかったのだろうか?。

 「何か変だったか?」

 「いえ、でも有宇お兄ちゃんが料理を手伝ってくれるって言うの久しぶりだから、ちょっとびっくりしただけなのですぅ」

 「.......」

 この世界の僕は歩未の手伝いをしていないのか。白柳さんの事故の後には手伝い始めているはずだけど、もしかするとこの世界の乙坂有宇と僕の価値観やものの見方、感性そのものが違ったのかもしれない。

 「だけど、大丈夫なのですか?。有宇お兄ちゃん久しぶりだから上手く出来るかな? 」

 「大丈夫。失敗しそうになったら歩未がフォローしてくれるだろ? 」

 「分かったのですぅ。このあゆに有宇お兄ちゃんのアシストはお任せあれ!」

 元気よくそう言う歩未の頼もしさといったら.......。しかし、僕が失敗することはないだろう。ここの所は歩未の手伝いをしっかりしていたし料理スキルは現在進行形で上達中だぜ!。

  ........と、思っていたが甘かった。

 「嗚呼!、有宇お兄ちゃん黄身に殻が」

 「なにっ!」

 僕が卵の片手わりに失敗した...だと。

 「有宇お兄ちゃん、ケチャップとピザソースの順番が間違っているのですぅ!」

 「しまった! つい拒絶反応が! 」

 拒絶もなにも僕はそこまで嫌いじゃないはずなんだけどな。

 その後もケチャップを多くご飯にかけてしまったり、オムレツをぐしゃっとしたものにしてしまったりと何故か失敗が何とか完成した。

 「「完成!」」

 完成オムレツの形は少し、おかしい。トマトケチャップの量を多めにしたライスは真っ赤、ピザソースの甘さを確実に押さえているだろう。しかし、この僕が失敗するなんて.......くそ、意識がこの世界で覚めてから色々とおかしい。僕が自分のこの体に馴染んでいないのか?。

 「.......すまない歩未、色々と失敗したが何とかお前のおかげでオムライスを作ることができた」

 「誰にでも失敗はあるのでござる。それに有宇お兄ちゃんは久しぶりに作ったんだからしかたないよそれよりも早く食べよ!」

 妹の兄を気遣う心に申し訳なさとありがたみを感じながら、歩未と一緒にオムライスを食べ始める。何時もの甘すぎると言えるオムライスは、何時ものように甘すぎる感じはなく、ピザソースは程よい隠し味になっていた。

 見た目はあれだが美味しい.....。歩未はピザソースの量が足りない気がするけど、これも美味しいかもしれないといってくれたのでまぁいいだろう。

 オムライスを食べている最中歩未が何かを思い出したような顔をし僕に話しかけてくる。

 「そういえば有宇お兄ちゃん、おじさんから聞いたのですが、星ノ海学園に特待生として転入することになるって聞きました本当でなのしょうか!」

 「......ああ、まぁ、本当だ」

 「おお!。家計が助かりますぅ!。それとおじさんがお祝いに美味しいものを送ってくれるそうですぅ」

 歩未はスプーンを皿の上におき、嬉しそうにしながら両手を広げるように開開させる。おじさんからの送りものを僕は知っている。何故、全て金さんラーメンなんだ!。せめてメロンとか少し高いものがよかった!。

 オムライスを食べ終え、食器を洗い終えると、僕は自分のテーブルの上にあるパソコンの電源を入れようとする。この世界の僕が株をしているかを確認するためだ。歩未の手伝いをしていなかったことといい、生徒会に無様に捕まったことといい、この世界の僕は幸せになる努力をすると決めて辿って来たもをしていない可能性があったからだ。だが、丁度その時そスマートフォンのメールを受信したメロディがなった。陽野森高校の生徒からだろうか。僕のメールアドレスが陽野森高校の誰かから漏れたのか知らない生徒からのメールが入ったりするのだ。いつかの一年二組の杉本なる女子にもメールアドレスは教えてなかったのにメールが届いたりしたからな。一体今度はどんなやつだ。

 僕は一度ため息を吐くとメールのファイルを開く。

 「ッッ!!!!」

 バタリッ。

 「有宇お兄ちゃん! どうしたの! 」

 僕はメールの差出人の名前を見て、座っていた机の椅子の上から思わずおち、落としたスマートフォンから仰け反るように離れる。手は震え、呼吸は荒くなり、頭が恐怖で真っ白になる。

 どういうことだ。どういうことだどういうことだどういうことだどういうことだどういうことだ。同じ思考がぐるぐるまわる。

 何で、何で、何で、何で、何で、こうも僕の知っている世界と違うんだ.........。

 「有宇お兄ちゃん大丈夫! 顔真っ白だよ! 」

 歩未が心配する声が聞こえてきて少しだけ、本当に少しだけだが、落ち着く。だが手の震えはとまらない。

 「大丈夫だ......。歩未、頼みがあるんだ.......そのスマートフォンに表示されているメールの差出人を教えてくれないか.....」

 僕の声は震えていた。まるで悪魔に魂を抜かれそうになっているようにか細い声になっている。歩未は「うん」と心配そうな顔をしたまま落ちていたスマートフォンにゆっくり近づき、拾うと、メールの差出人を見る。

 「えっと?.......しら、......やなぎ?で読み方あってるかな....?」

 思わず唾をグビリッと飲み込む。心臓が破裂してしまうのではないかと思うほどに高速で脈をうつ。なのに体温は上がることはない逆に温度は誰かに奪われるように低くなり、唇も小刻みに震えだす。未知なる事態にたいしての恐怖が僕の全身を蝕んでいた。

 人がトラックに轢かれ、死んだあの瞬間の映像が鮮明に思い出される。この日ほど、自分の異常な記憶力を恨んだことはなかった。

 鮮血が辺りに飛び散り、その血は一番近くにいた僕の頬にも付着した。引きちぎられた腕。ゆっくりとその腕から流れる血液に誰もが唖然としたあの一時の静寂。

 胃の中に入れたばかりのものが逆流してくる感覚を覚える。トイレに駆け込み、出せる限りのものを全て吐き出す。

 消化しきれていない血のような赤い物体。それがさらに僕を形成する意識を揺さぶる。

 あり得ない。生きている。死んでいない。目の前で死んだのに。僕が殺したのに。なんなんだこの世界は、僕が経験したことと違うことが起こっている世界。違う結末を、辿っている世界。......過去。

 友利に星ノ海学園に転入するように言われた場所も違ったし、高城に瞬間移動でぶっ飛ばされた事もなかった。そして、僕の世界では僕が殺してしまった白柳さんも生きている......。

 ........割りきるしかないこの世界は僕の知っている世界とにて非なる世界であると言うことを....。 受け入れるしかない。殺してしまった人物が生きている過去の世界を......。

 「落ち着け.......受け入れろ......」

 自分にそう言い聞かせる。そうだ受け入れるしかない。死んだ人間が生きている過去も、自分の知っている世界ではないことも。

 「有宇お兄ちゃん大丈夫!!」

 歩未が心配してきたらしい。取り敢えず「大丈夫だ」と言い僕は吐いたものを流すと確り掃除をしたあとに出る。

 歩未はそのあとも心配していた。僕は大丈夫としか言うことが出来なかった。だが歩未の心配している通り全然体調はよくなかった。何度も吐きそうになったがその都度我慢した。

 受け入れろ受け入れろ受け入れろ受け入れろ受け入れろ。自分に何度もそういい聞かせる。大丈夫だ。相手は僕が殺した事実を知らないんだ。殺されやしない.....。

 メールの中を一度見たので記憶に残っている。読んだわけではない。その時の画像を鮮明に思いだし、ゆっくりと読む。スマートフォンで直接見るのはなんだか嫌だった。現実を突きつけられているようで..........。

 メール内容は僕が生徒会室に呼び出された後、どうして、校門から逃げるよう必死な表情で出ていったのか。あの後帰ってこなかったのは何故か。そして、忘れた鞄を預かっているから明日の朝、学校で渡すという内容だ。

 そう言えば友利や高城から逃げ帰るように家路についたとき僕は手ぶらだった。やはり、完全には冷静になれていなかったらしい。歩未に言った言い訳もつじつまが会わないじゃないか。何せ僕は鞄を持っていなかったのだから......。歩未がその事に気付かなかったとは思えない。分かっててもあえて気付かなかったふりをしてくれたのかもしれない。本当に何時も気を使わせているな....。

 何時もの就寝時間となり布団に横になる。歩未は心配そうな顔をして「気分が悪くなったら言ってね」と僕を気遣ってくれる。本当に言い妹を僕は持っているな......。

 電気を消し、布団に横になりながら僕は明日の朝のことを考える。白柳さんに会わなければならない鞄を彼女が持っているから。あの鞄は星ノ海学園でも使うからな。だが、それは建前だ。本当にあう理由は別にある。彼女が生きているか否か。それによって僕の今後の動きが変わってくるのだ。

 白柳さんが生きていると言うことは友利に殺してしまった犯人という証拠をとられるという事態が無くなったことになる。友利を排除する理由も証拠も無くなくなったのだ。

 唐突に突きつけられた別の世界の現実。

 僕は彼女が白柳さんが生きている姿を見ないと自分の気持ちに踏ん切りがつけられない気がする。今は兎に角睡眠を少しでもとってもおかないと......。





                      その晩、僕が眠りにつけることはなかった。



[42107]  第三回 さようなら、白柳さん。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/16 06:25
 頭の芯が重い気がする、昨日は結局一睡もできなかった。さらに、過去の世界に飛ばされたという非現実的な現状と、死ぬはずの人間と会話をしたこと、そして、殺してしまった人間、白柳さんがこの過去では生きていたことに驚き、混乱し、恐怖に侵されたせいで精神的にも疲労困憊だ。

 僕は隣の布団で寝ている歩未を起こさないように自分の布団からでると水を飲みに台所へと行く。水を飲んだついでに家の外に出て外の空気に当たる。空を見上げると明るくなり始めている。

 「本当にいきているのか......」

 白柳さんが生きているのか僕にはあってみるまではわからない。だが、生きているのだというのであれば、この世界の乙坂有宇、僕は白柳さんをあの自作自演の事故から救ったことになるのか。さらに事故が起きた日付から少し日付がたっているところをみるとこの世界の僕は白柳さんと恩人と救われた人の関係を持っていたと考えるのが妥当だろう。そうすれば歩未の手伝いをしていなかったことも、あのあと確認したが株をしていなかったことにも説明がつく。僕が歩未の手伝いや株を始めたのは元を辿れば白柳弓という一人の少女を殺してしまったからなのだから。

 僕はスマートフォンの電源を入れ、メールの一覧や、SNSの白柳さんとのやり取りを見ていく、少し、状況の整理ができたからか、あれだけ怯えていた存在からのメールを見ることをしても気分が悪くなる事はなかった。

 メール、SNSのやり取りはほとんど白柳さんとのものが大半だ。白柳さんにこっちから連絡することはあまりなかったようだ。相手の方から連絡がくるのを待ってから返信や、返事を返している。そしてSNSの最後の僕の返事は生徒会室に呼び出された時間帯に書き込んだものが最後のものになっている。
 
 その返事の後、僕は生徒会室にて僕は再テストを受けさせられたはずだ。そこまではいい、問題はその後からだ。

 昨日のあの白柳弓が生きているという衝撃的な事実を知ったメールに書いてあった内容、僕が必死な表情で校門から逃げたというもの。逃げていたなら、それは生徒会のあいつらからだろう。友利も僕が逃げたから高城に瞬間移動をつかわせたらしい。

 だが、腑に落ちないのは僕が何故、生徒会の連中から逃げる必要があったかだ。逃げた末路が高城からの瞬間移動による空中浮遊だったということなんだろう。でもそうなるわけがない。

 僕は生徒会室で問題を全て解き、あの場の不自然さを生徒会長に追及し、遠回しに脅してやった。その結果、生徒会長は逃走。事を能力を使って見ていた友利が姿を表し、僕に真っ向から向かってきた。白柳さんを殺してしまった時の事故現場の動画と乗り移っている瞬間の動画を見せつけて、さらにその能力が科学者に気取られれば人体実験の実験台にされる、だから星ノ海学園に転入しろと脅しと忠告をしてきた。僕はそれを受け入れ、利用するだけ利用して、証拠もろとも奴を消すことを決めた。

 これが僕の記憶、世界の昨日の出来事だ。だが、この世界は僕の知っている歴史とは異なっている。死なせてしまった人間も生きていて、起きなかった出来事も起こっている。友利の言葉と生徒会室に呼ばれた後、逃げ出したという白柳さんの目撃と、僕のこの身で体験した高城にぶっ飛ばされたことが証拠だ。しかし、逃げ出す必要も理由もないはずなのに、一体何故.......。

 普通に考えればカンニングの瞬間を友利に撮されて証拠を突きつけられたということだが、別に逃げる必要はない。その場で問題を解いて、カンニングなんかしていません。何かの間違いだとか、しらをきれ通せばいいし、白柳さんが死んでいないなら友利の言葉にも耳を傾け、冷静な対応をしたはずだ。

 そもそも、同じ実力テストなら一度見たら全て覚えているのだから、カンニング何てする必要はなかったはず........。なら何故逃げた?。いや、逃げる必要があった。

 .......全てが異なっている世界。知っているのとは違う世界。

 「この世界の僕のスペックも異なっていた? 」

 一応辻褄は合いそうだ。そう、たとえばこの世界の僕の記憶力が並みのものだったとしたら........。オムライスも失敗したし、肉体のステータス、器用さや筋力値も違うのかもしれない。そうすれば肺活量が減っていると思ったのも筋は通る。いや、だが待て、その考えでは僕が今だに見たものも聞いたものを、鮮明に思い出すことのできる記憶力はどう説明するんだ。今の考えだと僕より劣化する乙坂有宇に憑依したということだろ。なら、肉体面だけではなく脳もそうでなければならないはず、今だ機能しているぞ.......。脳の中身が書き換えられたのか?。.........だめだ、憶測にしかならない。だが、肉体的ステータスが違ったことは間違いないと思う。

 この世界の自分がしたこと、今の状況を推理しているうちに、あっという間に時間は過ぎていた。もう日が上り始めている。僕は朝日を見た後、直ぐに家のなかへと入り陽野森高校の制服へ着替える。

 今日は引っ越しの用意があるし高校は休んでも問題ないのだが、やはり、白柳さんが生きているのかを確認はしておきたい。あと、白柳さんが持ってるという鞄を取りに行かないと.......。そしたら直ぐに帰ろう。

 歩未と一緒に朝食を作り、一緒に食べ終える。その頃には何時も陽野森高校へ登校していた時間になっていた。

 「じゃあ歩未、体調も良いし、予定通り、僕は先生方に挨拶をしに行くよ、あと、鞄を白柳さんから受け取らないと。引っ越しの用意は帰ってきてから手伝うから、それまでちょっと頑張ってくれるか」

 「了解なのですぅ。有宇お兄ちゃん、無理はしないでね..... 」

 「嗚呼.....分かってる、行ってくよ 」

 こうして僕は陽野森高校へと向かった。歩未にはああいったけど体調がいいというのは嘘だ。白柳さんに会いに行くと考えるとあの事故の映像が頭の中に流れ気分が悪くなる。歩未に嘘をついたことに何となく罪悪感を覚えた。

 陽野森高校まで後少し、だが、学校に近づくにつれ、僕は内心おかしくなりそうだった。その感覚は道を前に進むにつれて激しくなっていく。白柳さんは本当に生きているのだろうか、実はこの世界でも死んでいて、僕に殺された恨み晴らすために、墓からゾンビのように起き上がって僕を呼び出したんじゃないのだろうか。この世の中は非現実だらけの世界だ。墓から起き上がるのもあり得るのかもしれない。そんな妄想染みた事を僕はそうかもしれないと根拠も無いのに信じはじめていた。........この世界ならと。まさに疑心暗鬼の状態だ。

 だけど、僕は足を止めない。止めてはならない。白柳さんが生きているとこの目で確認しなければならない。僕はそうしないときっと白柳さんの死んだあの時の事が永遠に頭にちらつき眠ることもできないだろう。前の世界ではあんたの分まで生きて幸せになることで赦されるなんて思っていたのに、今、頭の中では、そんな身勝手な事で赦される訳がないと思っていて不安になっている。その身勝手な行いを恨んだ白柳さんが僕を殺すかもしれないと怯えている。

 そんなことあるはずがないと僕は頭を左右にふる。だってそれはこの世界の事ではないんだ。殺していないから大丈夫なんだ。メールもSNSでの会話もあの事故後彼女が生きていると証明している。

 「大丈夫だ.......彼女は前の世界のことを知らないはずさ......大丈夫」

 そう口のしたときには、僕は陽野森高校の校門前に立っていた。色々と考えていたら、いつの間にか着いたらしい。

 辺りを見渡すと校門の近くのの壁が砕けたている後があった。トラックが突っ込んだ時に出来たものだろう。だが、警察の姿は見えないし、道路に血液が付いていることもない。事故はあっても死人は出ていない証拠だ。僕の世界ではあのあと一週間近く警察がこの現場にいたらしい。そうニュースでいっていたことを記憶している。人が死んでいたなら同じように警察がいてもおかしくない。でもいないということは誰も死んでいないということだろう。

 僕は校門をくぐり抜け、白柳さんを探す。そういえば学校で渡すとは書かれていたけど場所指定が無かった。何処で鞄を渡すつもりなんだろう。普通に考えれば教室か?。だけどそうとは限らないし......。

 校門の近くの木々が並ぶの下のベンチに腰を下ろし、どこで白柳さんが鞄を渡すかを考える。だが、僕は彼女のことを全く知らない。この世界の僕は会話や、一緒に帰る仲だったようだけど、僕は姿は見たことはあっても、最後の最後まで話した事もないのだ。

 「ッ! 」赤いアートが刻まれる瞬間が目の前に広がった。僕は直ぐに目を制服の袖で擦る。するとただの校門近くの場所に戻った。.......不味いな、ついには幻覚まで見えた始めたぞ。もう鞄も白柳さんの生きている姿も確認しないで今すぐ帰るべきなんじゃないか?。鞄はメールで送ってくれると助かるとでも書いけば、宅配で送ってくれるかもしれない。それくらいのことをしてくれるくらいの仲にはメールとSNSのやり取りからは窺えた。

 「.......もう、いいか」

 僕は椅子から立ち上がり、家に帰ろうとする。歩未も一人じゃ大変だろうし、手伝わないと。そんな言い訳をしながら僕はすぐ近くのの校門へと向かう。

 そうだ。帰ろう。ここにいたら頭がおかしくなりそうだ。僕はゆっくり出口である校門へふらふらしそうな体に言うこと聞けと体にむちうって、歩く。顔はうつ向けいているが歩く。そしてもう少しで校門から出るという所で誰かから声をかけられた。

 「お、乙坂くん.....」

 動かしていた足を思わず止める。声は遠くから聞いたことがあった。けど、こんなに近くで聞いたのは初めてだ。僕はうつ向いていた顔を上げる。

 そこには.......僕が殺してしまった。血にまみれ、髪も何もかもが赤く染まった少女がいた。そして一本の腕は肘の辺りから引きちぎられている。千切れていないもう片方の手には僕の鞄と白柳さん自身の鞄を提げていた。一瞬、頭の中が真っ白になる。あり得ない、死体が動いている!!!。幻覚だ.......幻覚でなければなんだと言うのだ。僕は制服の袖で目元を擦り、もう一度目の前にいるであろう少女を見た。

 「乙坂.....くん? 大丈夫ですか顔色が......」

 そう心配そうに僕を見るのは先程とは違ってちゃんとした人間だ。少し垂れ目気味の大きな瞳。その他のパーツが完璧に配置された美少女といってもいい整った容姿に、メリハリの効いたボディーライン。風に吹かれて彼女の鮮やかな黒髪がさわわさと靡いた。細い足には包帯が巻かれている。事故の時の怪我なのだろう。それにチクリと胸が痛むが、よかったやっぱり僕の幻覚だった...。あそこまでリアルな幻覚を見たのは僕の記憶力せいなのだろうか。しかし、記憶力云々以前に幻覚を見せるまで追い詰められていた僕の柔な精神力の脆さにうんざりする。

 「......大丈夫。ちょっと、寝不足なんんだ。おはよう......白柳さん」

 僕は無理やりの笑みを浮かべて心配そうに僕を見る白柳さんにそう返事を返した。


                     2 


 校門から少し離れたところにある、人気がないテーブルとベンチ、昼になるとこの場所に人は結構集まるのだがこの時間はあまり人はいない。朝の部活だったり、授業の準備だったりがあるからだ。

 そのテーブルを挟んで僕と白柳さんは対面していた。僕の膝の上には鞄が置かれている。白柳さんから返してもらったのだ。その後、昨日何があったかを訊きたいと言われたのでお昼時何時も使っていたこの場所へ白柳さんを連れてきた。彼女は人前では話しにくい事なのだろうと察し、黙ってついてきた。

 「昨日、あのあと何があったんですか?」

 白柳さんは僕をしっかりと見ながら僕に訊いてくる。僕は少し俯く。白柳さとを正面から向き合いたくなかったから。いや、この世界とは別の世界の過去で彼女を自分の私利私欲の為に殺してしまったことに対する罪悪感からか、今、こうして生きて話をしている彼女の顔を見るのが躊躇われた。だが、こういつまでもうつ向いている訳にもいかない。訊かれた質問にはある程度、答えられる範囲で答えたいと思っている。だが、その前に、あのあととは何かを、確認しないといけない。僕は何があったか知らない。そもそもたどっているものが違う世界のだ。今、こうして白柳さんが生きていて僕と少し仲がよかったというのも僕の世界とは全くもって違う。だから僕が考えている憶測と白柳さんのいうあの事が同じであるとは限らないのだ。

 「あの、後って僕が生徒会室に呼び出された後のことかな」

 「はい....。乙坂くん必死な表情で走って、私の手を握って何かから逃げようとしていたように見えました。私は脚に怪我をしていたので転んでしまって......」

 白柳さんの話を聞いた限りで想像する絵図は、この世界の僕が星ノ海学園の生徒会から逃げ、一緒に下校しようと約束をしていた白柳さんをつれて逃げ出そうとした。だが、白柳さんは脚に怪我をおっていて直ぐに転んでしまった。その後、足手まといだと判断し必死に逃走。

 僕は白柳さんの話からしたこの世界の乙坂有宇の人物像を想像し、内心呆れ返る。白柳さんに悪印象をあたえてどうするんだ......せめて、先にどこかに行っててくれとでもSNSで連絡しておけば、逃走後合流出来たかもしれないのに。僕は白柳さんに頭を下げる。

 「白柳さん。君が脚を怪我していることも分かってたはずなのにあんな酷いことをしてごめん......僕のした事は最低なことだ......君を待たせていたのは僕で.....」

 「いえ、大丈夫です.....!! 乙坂くんにも何か事情が、あったんですよね....」

 白柳さんは事情があって、僕があんなこと、怪我を気にしないで引っ張ったと思っているのか僕を咎めない。昨日のメールの返事をしなかったにも関わらず.....。だけど、彼女が求めるその何かの事情は、彼女が聞いたらいや、誰が聞いても、きっと、あまりにもしょうもない、事だろう。いや、カッコ悪いことだ。自分がまいた種を他人に拾われ突きつけられて、うまい言い訳も思い付かずただ逃げるという愚作を取っただけ。自業自得としか言いようがない。

 白柳さんは僕がその事情を言うのを待っているようだ。何か凄い事情があったに違いないと、自分の中にあるトラックに引かれそうな所を勇気を持って助けてくれたそんな恩人、そんな人だからこそ必ず自分が赦せるような事情があったんだと、悪い方に考えたくなくてそう思っている。確認をしたい。そう安心をしたいのだ。だから、カンニングがばれて逃げ出したなんてことを白柳さん言えば幻滅することはまちがいない。

 「事情は......確かにあった。けど......」

 「...........」

 僕に白柳さんは事情を教えてくれと目で訴える。きっと彼女は今、自分には教えてくれないのだろうか。そこまで信用されていないのだろうか。仲がいいと思っていたのは自分だけなのだろうかというような不安が飛び交っているに違いない。

 さて、どうするか。ここで正直にカンニングをして周りからちやほやされたくて成績トップをとっていたことがばれて逃げ出した。と言えば彼女との関係は確実に破壊される。白柳さんは話していて優しそうで温厚そうな印象を受けたが多分根は強い人間だ。きっと僕のやったことは間違いだった反省してこれからは真面目に生きてください。あなたのことは恩人としては覚えておきますと一方的に振られたように言われて僕だけがダメージを受けることになる。故に、言うメリットは何もない。

 だが、嘘を言って、この関係を持続させたいとは僕自身全く思っていない。少し前なら、自分がこの手で白柳さんを殺してしまったあとの数日間なら考えていたことかもしれないが、今、その殺した白柳さんを目の前にしている僕は思っていない。この関係を断つべきだと考えている。いや、断つべきなのだ。

 白柳さんを危ない目に遭わせて、命を救われた恩人というある意味重く最悪の記憶を植え付けた。そして、その好意にこの世界の僕は付け込んで来たはずだ。僕だったらそうしている。自作自演の演出。トラックの運転手の不幸など知らぬ存ぜぬ。職を失って牢に入った経歴もついたのだ。雇い入れてくれる場所はもうないかもしれない。

 白柳さんには死んでいたかもしれないという恐怖を刻んでしまった。嘘で作られた関係だとも知らずに......好意を覚えさせた。だが、それが僕で、私利私欲を満たすためだけに起こした事の結果だ。この世界の僕は自分の計画通りにできたからよかったんだ。僕のように事を起こし、結果、白柳さんを殺してしまうこともあったかもしれないかったのに。僕は僕と同じ気持ちを味会わなかった、この世界の自分に嫉妬した。だからこそ、今のこの状況は気に入らない!。

 問おう。人を殺したことがあり。その殺してしまった本人に過去に戻ったことで逢えました。はたして、のんのんと仲良くしたいでしょうか?。する権利はあるのだろうか?。したとして相手は自分は、はたして満たされるのだろうか?。
 
      答えは全て否だ!。

 僕は今、生きているこの白柳さんを見ているだけでも殺してしまった罪悪に飲まれそうだ。僕の起こした事の結果、偽物の好意を植え付けられ自由を縛っていることにも罪悪を覚え、うまくやった僕自身に嫉妬と嫌悪を覚える!。なんでお前は上手くやれたんだって。

 あんなに勝手にあんたの分まで生きようだの幸せになろうだのと、自分は幸せになっても、死んでしまった人は絶対に幸せにはなりやしないことを口にして、その死んでしまった人の時間は絶対に動くかないのに、幸せにはなれないのに。

 散々な事をしていながら、生きている白柳さんを見て今ごろになって罪悪感を覚えて、本当に僕は何処までも自己満足を得たいだけ。

 殺してしまった白柳さんには、いくら僕が幸せになろうがその幸せを分けてやる事もくれやることも幸せにしてやることもできないのだ。死人の時間は感情は思考はどんなことをしようと何も感じないし動かないんのだから。

 それなのに、僕は他人の分まで幸せになるといい自分だけが幸せになっていた。その努力さえすれば自分のやったことは間違ってないと、赦されるんだと勝手に納得して、他人の幸せを奪って、自分だけが幸せになっていた。

 皆、必死に毎日を生きている。幸せになるための努力をしている。道を探している。そして白柳さんもこの世界で生きている一人なんだ!。別の世界でも生きていた。

 でも僕は、他人の人生を、幸せを終わらせる可能性のあることを自分の為に平然とやった。白柳さんの学園のマドンナというステータスがほしかったから。そして僕は失敗した。

 この世界の僕!、お前は成功し、白柳さんに近づくことをやってのけた!。嗚呼、羨ましいとも!、嫉妬するとも!。だが、それは偽物でしかない。最低の行為だ。クズやろうだ。その時間を楽しんでいたことが、超気に入らない!。僕は自分が不幸なのは嫌だ。僕じゃない誰かが、僕を差し置いて、幸せそうにしているのも気に入らない。それほどまでに身勝手で無差別な嫉妬を持っていて、幸せを感じてるそいつらの不幸を求めてる、それが僕だ。

 どうだ僕、この世界あんたと合わせてダブルクズだろ!。だからダブルクズである僕らはクズらしい最後を迎えてやろうか! 。

 罪悪感とか負い目は所詮、自分を赦すために覚えるものだ。自分を卑下にすることで周りに反省していますよ、頑張っていますよ、罪悪感を抱いてますよとアピールして、勝手に赦されようと思う狡い奴の考えだ!。偽善者だ! だから、僕は覚えない。罪悪感も負い目も。僕は僕の為に生きるということを間違いだとはいわない。寧ろ誇ろう! そしてその誇りを貫く!。 最底辺の悪役クズになってやろう!。恨まれよう、憎まれよう!。そうして、睨んできた奴を腹を抱えて笑おう!。ザマァってさ。

     たとえ、それが間違いであっても、乙坂有宇は死ぬまで、クズでいい!。


 僕は覚悟を決めながらく閉じていた口を開いた。

 「えっと、実は星ノ海学園に転校することになって......」

 要領を得ない言葉だからか白柳さんが困惑の表情をする。さらに突然の転校だ当然の反応だろう。

 「急にどうして....」

 「色々とあってさ........ごめん」

 このごめんは前払いのごめんなさいと事情を教えないごめんだ。

 「白柳さんの方から合いに来てくれたらうれしいなぁ.......」

 「だって、あまり遠すぎます!。せめて週に代わりばんこでとか......」

 僕の無茶な言葉に提案をだす白柳さん。しかしながらそれはできない。僕は監視のな居場所への移動は慎まないといけないのだ。つまり、ここへは能力が消えるまでは絶対にとはいわないがよっぽどのことがなければ来ることはないというか二度と来ない。

 「すまない。それもできないんだ。僕からはここへこれない」

 「どうして?」と当然の疑問をぶつける白柳さん。

 「.......どうしても言われても.....僕にはどうしようもなくて」

 僕は敢えてあやふやな言葉しか言わない。だがこれでいい。条件はクリア、白柳さんは僕の受けた印象では、芯が強い人間。つまりこんな風にハッキリと理由も言わない一方的すぎる願いは聞かないはずだ。さらに僕の頼みは言ってしまえば白柳さんだけに僕の住む所に来るようにいっているのだ。僕は行かない。そう、この図は一方的に白柳さんが僕に会いに行くようなもの、受け入れたらただのストーカーだ!。故に白柳さんに残された選択肢は少ない。
 
 「あなたには感謝しています。その気持ちは揺るぎません。でも、あなたとはまだ交際していません。その去るあなたを一方的に追いかけるなんてまるでストーカーのようじゃないですか」

 「それは、悪いと思っているでも僕からは会いに行けないんだ......」

 少しの間の沈黙が続くがその沈黙を白柳さんが破った。その声は何かを踏ん切ったような声と表情だ。

 「分かりました。これからはお互いの道をそれぞれ進んでいきましょう」

 「.......」
 
 「私は貴方を命の恩人としてその思いは何時までも忘れずに過ごしていきます。それだけです。」

 白柳さんはそういうとベンチから立ち上がり、僕を見下ろす。そして機械的に言葉を並べた。

 「助けてもらいありがとうございます。本当に感謝しています。でもここで貴方とはさよならです。どうかお元気で」

 その言葉を残し、白柳さんはこの場を離れようとする。だが、白柳! 僕に一方的なダメージを残してこのままフェイドアウトしようなんて考えじゃなないだろうな?。そんな身勝手な女を僕は赦さないし、何より僕だけが不幸になるのはおかしい! それがこの僕を形成する概念なんだよ!。
 
 「あーあ、何て身勝手な物言いなんだろうか? 相手に言えない事情があるのは今の会話から分かったことだろうに、まさか一方的にダメージを与えて離脱とは思わなかったよ。やれやれ、今度は学園のマドンナこと白柳さんの友人だか親友だかのあの赤毛の少女に手をだすしかないか」

 態々大きな声で言ったんんだ聞こえない訳がない。ピタリ、と白柳さんの足が止まった。ふん、食い付いたな。白柳さんが振り替えって僕を見る。その顔は困惑と動揺が表になっていた。

 「どういう.......」

 「は、まだ気づかないの?! 僕は、君の事なんて最初から何とも思っていなかったんだ。助けたのは学年トップで優等生の僕が人を救った事がある、という事実が欲しかっただけだけ。まさか助けたのが、あの学園のマドンナ的な存在の白柳さんだったのは嬉しい誤算だったよ。これを気に、君に近づいてそのステータスを手にすれば僕はある意味完璧なステータスじゃないか! だから僕は君を手に入れるために、誰とも付き合わなかった遊びにいったり、一緒の下校したりしたんだよ。それにさっきの私と貴方はまだ交際していません?。 なにそれ遠回しな告白かい。可愛いね。そんなに、いい仲だと自分で思っていたりしたのかな?。だとしたら、僕はお腹抱えて君の自意識過剰っぷりを笑ってあげるよ! ハハハッ」

 白柳さんはうつ向き悔しいのか拳を握りしめている。肩も怒りに震えているようだ。白柳さんはこっちにゆっくり戻ってくる。

 「まぁ、僕は君の親友のとか、いや、君に関係なくとも高いステータスになりそうな女子なら、君との時間でやったことを同じように誰にでもするよ。僕のSNSも教えるし、一緒に下校とか。あ、そうだね、SNSには今後入って来ないでよ。今度は君の近くにいるあの赤毛ちゃんを狙ってるから迂闊に君と友好すぎる関係が続いている何て思われたら攻めにくいんだよ。関係を断ったとでもいっておいてくれ、もうすでに仕込みは終わっているんだ」

 勿論嘘八百だ!!!。寧ろ嘘しかない! 仕込み何てやってないし、赤毛さんにも話しかけた記憶すらない寧ろ気まずい関係だったしな。この世界の乙坂有宇も白柳さんに夢中だっただろうから話す機会はあまりなかっただろう。

 気がつくと白柳さんは僕座る椅子の前にたっていた。

 「ッ!!」

 五本の華奢な指が風を切る。そして、バシーーーーンッ!!!。僕の頬をぶった。白柳さんが。
 
 「......痛いんだけど、だけど、あんたの手も痛そうだし相子だな。ざまぁみろクソ女」

 「最低ですね。さっきの言葉は一部撤回します。もう私は貴方を恩人としては見れなくなりました.....」

 そう言うと今度こそ、白柳さんはこの場からさった。丁度、その時、八時の鐘がなる。

 白柳は遅刻と。ふ、これで精神的なダメージも相子だ.....。我ながらクズい。クズの極みだ!。でも完璧だ!。

 白柳さんを助けたのは人を助けたというステータス欲しさのため。交流関係はただ近づいてステータスを手にかったから、高いステータスの女なら誰にでも同じ事をする。それが僕だというのが彼女の認識になったはずだ。 でも実際その通りだしな!

 これで、彼女中で恩人として僕が生きることは、もう、ない。楽しい思い出も仕方なく僕がしていたということも知った。

 誰にでも必要とあらば同じことを同じようにやる。認識しろ特別ではなく利用されようとしていたんだと。助けたのもステータスのためなのだとこれで、期待も、偽物の淡い感情も関係と同時に彼女の中から排除した。

 でも、これでいい。これが彼女が本当に自分で幸せを探せるようになるための方法なんだ。僕なんかのクズから解放されたんだ......。恩人も楽しい思い出も全て僕の自作自演の作った、偽物の関係と時間なんだから早く忘れてしまった方がいい。ついでにこの世界でうまくやった僕のことも気に入らなかったし完璧な結末だ!。ほんと、ざまぁだよ。

 勝手に巻き込んで、勝手にやめて、結局、僕は、ただ自分が納得したいだけ。でも今回のこれは偽善をしてきた自分へのけじめでもある。まぁ、勝手に初めて勝手に止めたのだからただの自己満足なのだろう。死んだ白柳さんへの罪滅ぼしにもならないし、もういない、この世界でうまくやった僕への嫌がらせにもなりやしない。でもさ、少なくとも、別の世界で自分を殺した相手がまんまと自分を騙してイチャイチャする所なんて見たくないと思ったんだ......どう?。

 ふと、椅子に座ったまま、空を見上げる。何処までも続く青い空に自己主張の激しい太陽。今日は布団を干すには理想の晴れ日和。自己満足に浸るのも、昼寝するのもいいかもしれない。

 「さようなら、白柳さん.......」

 僕は鞄を持って立ち上がると出口の校門を目指し、校門を出ると家路へつく。道中、一度、陽野森高校の校舎を見るとポツリと呟いた。

               ― 生きててくれてありがとう。どうか、お幸せに.......。



[42107]  第四回 万有引力の法則
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2017/02/01 08:08
 引っ越し業者のトラックに、大量にあった梱包したダンボールを全て積み終える頃には時間は昼をすぎていた。午前中からひたすらダンボールに必要なものを詰め込み、要らないものを捨てる作業を続けていたがそれもこれもこれで終わりだ。
 引っ越し業者のトラックが出るのを見送ると力が一気に抜けていくのを感じる。

 「終わったー」

 「終わったなのですぅ」

 歩未と僕はトラックを見送った後、何も無くなった家の玄関に座りこむ。

 「後は星ノ海学園に電車に乗った後、バスに乗って移動か........先が遠い」

 「有宇お兄ちゃんファイトなのですぅ! 」

 「嗚呼....じゃあそろそろ行くか」

 「アイヤイサー!  」

 こうして僕の二度目の引っ越しは終わった。いや、引っ越しは引っ越し先の家に梱包したダンボールが届いてからが始まりなのだ。一度入れ込んだ日常用品に、服等々を全て整理しなおさないといけない、まったく、めんどくささといたらありやしない。しかも僕は二度目の引っ越しだ。一度し終えた事をまた、しないといけない、色々と複雑な気分だよ。


 白柳さんにぶたれた僕は直ぐ様逃げ帰るように何処にも寄り道せずに一直線に引っ越しの用意をしている歩未のもとへと帰った。帰宅すると歩未はすでにほとんどのものをダンボールの中に詰め込み終えていた。僕がやったこといえば業者を呼んだ事と、歩未が要らないと判断して捨てたゴミを出しにいったくらいだ。嗚呼、机とか勿論、トラックにつんだよ。何もやらなかった訳ではない。

 そして今、僕の筋肉は悲鳴をあげている。つまりは筋肉痛だ。たかが机や冷蔵庫を運んだくらいで筋肉痛が起こったのだ。この世界の僕はどうやらスポーツをしていなかったらしい。賞状らしきものすらなかったつまりは部活にはいていなかったのだ。にもかかわらず歩未の手伝いをしないとはこの世界の乙坂有宇は僕よりも駄目な乙坂有宇なのではないのだろうかと思ってしまう。生徒会室に呼び出されて、ぼろを出したり、怪我をしている白柳さんを連れて逃げようとしたりと........あれ、もしかして馬鹿........なわけないよな......。 ........ないよね?

 

 駅にいき、電車乗り、途中で乗り換え、そして星ノ海学園近くの駅におり、星ノ海学園行きのバスに乗り、バスをおりて徒歩、二分。星ノ海学園の併設マンションへとたどり着く。

 併設のマンションの入り口を潜るとそこはホテルの受付のような作りになっている。ホテルと違うことと言えば警備員しかいないことである。むさ苦しい。さらに僕や歩未を睨むように見てくるのだから気分的にも最悪だ。前もそうだったが恐らく能力者である僕を警戒しているんだろう。歩未はこのマンションの作りにおお!と声を上げながら走り回っているので気づいていないがもし気づいたらどうすんだよ。歩未が怖がるだろうが。僕は警備員に睨み返すとこの場を後にする。

 そしてエレベーターにのり歩未と僕がすむことになる部屋へと向かった。エレベーターはガラス張りで外の光景が見れ、歩未は文字どおり食い入るように見ていた。


 「おお! 広いのですぅ!。本当にこれをあゆと有宇お兄ちゃんの二人で使っていいのでしょうかー!」

 歩未はここにきてからはしゃぎっぱなしだ。微笑ましい。と、ここで引っ越し業者の人間がダンボールを運んでくる。歩未はそれを見ると手伝いを要求する。何処の世界の歩未も気のきくいい妹らしい。

 「業者さんがやってくれるからいいんだよ」

 「少しでも力になれたらと思ったのですが......」

 「あんまり業者さんの仕事を奪ってやるな」

 「おお! その発想はあゆにはありませんでしたー! 」

 「ああ、だから僕たちは部屋の掃除でも、いッ! 」

 頬に走る痛み、どうやら今朝のあのサヨナラビンタのダメージが、残っていたらしい。思わず頬に手を当てて擦ってしまうくらいには痛い。

 歩未はそんな僕を見て心配そうな顔をする。

 「有宇お兄ちゃん帰ってきてからずっと頬が腫れていたけどそれどうしたの」

 「うーん....」

 歩未には昨日から心配をかけているし、これ以上隠し事はしたくないから言うべきかな。言っても別に問題はないだろうし......。

 「実は学校にいったときに女の子と喧嘩しちゃって......」

 「喧嘩....仲直りはしたの?」

 「いや、してないよ。喧嘩別れってやつかな.......でもこれで間違ってないと思う別れ方だったから後悔はしてない」

 そう、僕は後悔はしてない。寧ろよくやったと自分だけが幸せになりと願ってる自分を自分で殴りたい気分だ。勝手にやってかってに誰かを不幸にして、勝手に、終わらせた自己満足以外のなんでもない行為だったけど、最低の行為だったけど、多分これで間違ってない。白柳さんの今後を考えれば、僕みたいな奴を恩人と思わないほうがいいのだ。そもそも、あれは僕が茶番で起こしたものだ。自分で命の危険に去らして自分で助けたそんな恩人を恩人だとは思ってはいけない。ああ! 殴られてスッキリした !

 歩未は僕の言葉から何かを感じとったのか「そっか.....」とだけいうと掃除を始める。僕もそれを手伝った。夕方までには全てを終えておきたい。今日中にやらないとならないことがまだある。


                2

 部屋の片付けとダンボールの中身をある程度整理し終えると僕は着替えていた陽野森高校の制服に着替え直したあと、歩みに少し学校の校長と教頭に挨拶をしてくるといい家を出た。もう今日から住む一室なのだから家でいいだろう。

 このマンションの出入口には警備員がいる。彼らに見つかると都合が悪いので見つからないためのルートを通る。僕はこの建物に初めてきた時に全ての監視カメラの位置を覚えていた。そこには僅かだが死角が確かにあるのだ。その死角をつき、一回にある男子トイレの中に入る。目にはいるのは換気ように一枚の大きな窓、トイレで窓がない場所はない。その窓を開け、僕は出入口の警備員に見つかることなくこのマンションを出た。

 友利と高城が歩未の手伝いに来る放課後まで二時間あるかないか。それまでに、用を済ませ、帰宅しないといけない。

 併設のマンションを出て、バス停に向かった。バスに乗り目的地まで向かう。

 目的地は友利が死んだ場所 南羽高校だ。

 明日、僕の知っている未来では友利は死んでしまう。証拠を見つかって、手に持っていた弓で脅すことしかできなかった念写能力を持っている有働の失敗によって友利は死ぬのだ。あんな状況になるとは予想もできなかった。だが、僕は前もってその事態が起こりゆる事を知っている。友利奈緒を確実に助けたいならば、明日起こることを絶対に起きないようにしてしまえばいい。

 そう例えば、僕が有働に乗り移って略奪の能力で念写能力をもう一度奪ってしまえば、明日能力者を発見する水男は念写の能力者を探知することがなくなる。そうなれば、生徒会が有働のもとにたどり着くことは無いし、友利奈緒が死ぬ事もなくなる。

 白柳さんが生きている以上、白柳さんが事故で死んでしまう瞬間が記録されたテープは存在しない。だから、友利を排除する理由はないし、死ぬ理由もない。

 このまま、僕の知っている未来を辿るなら、友利は死ぬ。人が目の前で死ぬ姿をそう何度も見たくはない。

 だから、友利奈緒は僕が助ける。いや、助けなけなければいけないんだ。





 3

 バスに揺られること数十分。僕が乗っているバスは南羽高校近くのバス停で止まった。そこで降りると僕は南羽高校へと走って向かう。

 ここからは時間との勝負だ。友利や高城に僕が星ノ海学園のマンションから脱走した知られたら言い訳が面倒だし早く終わらせて帰ろう。


 暫く走っていると南羽高校の校門前にたどり着く、下校時間ではないから門は閉じてあった。面倒だがゆっくりと門を開けるとその隙間から入る、ガツッと何処かが門にぶつかった音がしたが僕にとってはどうでもいい事だった。

 南羽高校に潜入もとい、侵入して直ぐに校舎の中に向かう。校舎の中に入ると直ぐに二年E組の教室を目指す。昇降口の入り口付近に校内の地図が書かれていたので迷うことはなかった。扉の隙間から覗いた二年E組はもう、授業が終わったのか騒がしくなり始めていた。

 僕はその中を少し見渡し有働の姿を見つけ、相手に乗り移る。その間五秒。体に戻されると僕はこの場を立ち去ろうとするが残念ながら授業を終え、帰宅用意のできた女子生徒がこの教室を出た。そして鉢合わせしてしまった。

 「君誰? 違う学校の制服みたいだけど......転校生?」

 「ああ、そうなんです。でも、もうようもすんだので、これで」

 「まって、君メアド教えてよ」

 「すみません。急いでいるので」

 僕はそう笑顔で言うとこのばから全力で後にした。女子生徒は唖然としてその場に立ちすくんでいた。



 僕は校門に着くとタクシーを止める。お金が勿体ないが帰宅する時間を短縮するためだ。致し方ない。

 「それで、何処まで?」

 運転手がそう聞いて来たので「星ノ海学園まで」と少し焦った声で僕は言った。


 マンションの中にトイレの窓から入り、部屋に戻る。その足は少し早歩きだ。もうすでに友利と高城の手伝いに来る時間が差し迫っている、下手をすれば鉢合わせになる可能性が

 「「「あ......」」」

 ものの見事に部屋の前でばったりとあった。成る程これが万有引力の法則か....。しかし、僕が着ている今の制服をどう説明しよう.......。



[42107]  第五回 他人の不幸と自分の幸せ
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2018/11/20 05:16
 我が家のオムライスはとびきり甘い。砂糖が加えられた乙坂家秘伝のピザソースがふんだんに使われているからだ。使用量はケチャップの味を完全に打ち消す程。なので、乙坂家秘伝ピザライスといってもいい。

 そんな歩未特性オムライスだが、時々食べると美味しいと思う。流石に毎日この甘いオムライスが続くのは来るものがあるが。

 今日三日連続だ。僕だけこんなピザライスばかり食べなければならないて理不尽じゃないか。

 いわく人の幸福と不幸は死んでから振り替えれば全員平等になるのだと何処かの宗教では説いている。

 であるなら身近に君たちも僕と同じ不幸を味わうべきだろう。


 「友利に高城、手伝いをしてくれたお礼にといってもなんだが夕御飯でもどうだう? なに、遠慮はいらないさ。歩未も喜ぶ」

 「しかし、引っ越して来たその日にお邪魔になるのもどうかと....」

 「そんなことないのですぅ。あゆも、友利のお姉ちゃんと一緒に夕御飯を食べられたらうれしいなぁー!」

 歩未の可愛らしい頼みを聞いて少し友利はしゅんじゅんしたが結局は「分かりましたお邪魔にならないならごちになります」と一緒に夕食をとるのことに合意した。
 
 「高城も食べていけよ歩未特性のオムライスの味は抜群の破壊力だぞ?(物理的に) 」

 「オムライスですか。私の好物です」

 「それはよかった! 沢山食べていってくれ、さささっ」

 僕は満面の笑みを浮かべる。そしたら、友利や高城は胡散臭さいやつを見る目になる。何かあると勘づいたのかもしれない。

 だが遅い! すでに貴様らは歩未の誘いを受けている。今さらやっぱりいいとは言えまい。

 刮目せよ赤の地獄を! オムライスと言う名の料理を!

 




 経緯を説明するには生徒会の友利と高城とばったりと自分の部屋の前で合ってしまった場面まで戻る。

 「生徒会の友利と高城。なぜここに?」

 生徒会が来るのは知っていたが本来は知ることはできない。なので不自然にならないよう本当に驚いている演技をする。

 「放課後になったので引っ越しのお手伝いをしようかと」

 友利が言い高城は頷く。

 友利は兎も角、僕を川へとぶっ飛ばした高城も来るとは。奴には罪悪感とか後ろめたさとかないのか? 僕のこともあまりよく思っていないだろうに。友利が行くと言うから仕方なくついてきたといったところだろう。

 「それはありがたいな.....あ、今のなしで! よく考えてみれば! 昨日! ただ怯えて逃げていた一般人を川の中までぶっ飛ばしたんだ! これぐらいの手助けは当然だな! 馬車馬のごとくコキつかうから奴隷のように働け! ハハハッ!」

 「何て偉そうなんだ!」

 「無駄にテンションが高そうで疲れそうです」

 僕の仰々しさと高笑いにうんざりした様子の友利と驚く高城だった。

 「ところで、どうしてあなたは陽野森高校の制服をきているんですか? 私達より後にここに来たってことは何処かに外出してたんですかね?」

 友利は、服装や、学校を終えてから来た自分達よりも後に来たことに疑問を持ったようだ。歩未には星ノ海学園の教員に挨拶に行くと嘘をついて出ていったが、僕がしていたことと言えば少し離れた所にある南羽高校に行き、念写能力の能力者の能力を奪って、直ぐ様タクシーにのって帰宅したという顛末だ。星ノ海学園になんて全くいっていない。

 とりあえず、あらかじめ考えておいた言い訳を述べる。

 「あんたの言う通り少し出掛けていたんだ。今後、僕は監視がある所以外には移動できないんだろ? それが始まる前にやっておきたい事があったんだ。で、ついさっきそれを終えて帰ってきたところだ」

 「そうですか」

 因みに今の僕の言葉にはどこで何をしていたという情報は入っていない。友利はそれに気づいているだろうがその後は何も聞いてこなかった。

 




 開けっ放しのドアから上がると丁度、歩未が入り口の手前にある部屋からでてきた。僕が南羽高校にいっている間にもダンボールの梱包をといて片付けていたらしい。

 「ただいま歩未」

 「お帰りなさい有有お兄ちゃん、後ろにいるのは有宇お兄ちゃんと同じ学校の人でしょうか?」

 「ああ、そうだ。わざわざ手伝いにきてくれたらしい」

 「どうも、友利です。暇なので手伝いに来ました」

 「高城です。力仕事ならお任せください! 鍛えてますので!」

 「乙坂歩未なのですぅ! 有宇お兄ちゃんがお世話になります! 友利のお姉ちゃん、高城さん、有宇お兄ちゃんをよろしくお願いします!」

 礼儀正しい妹よ。よろしくしてやっているのは僕のほうだ。お願いするのは友利たちのほうだろ。

 「あなたとは似ないでしっかりとしたいい子ですね.....」

 「余計なお世話だ」



 やはり二人増えただけあって作業効率はよくなったりどんどん片付いていく。

 前は歩未が僕の取った過去の賞状を見つけ出してそれを聞いた友利のせいで全く片付かず延々と僕の思い出話を聞く嵌めになったがこの世界の僕は部活に入っていなかったようだし作業はスムーズに進んだ。

 玄関先にいつの間にかおいてあったおじさんからの贈り物金さんラーメンを封印した後、歩未のいる部屋にいく。

 そこには歩未だけでなく友利も一緒にいた。そして友利が何かしていた。

 「歩未ちゃんマジック見せてあげようか」

 「おお! それは見たいのですぅ!」

 「一瞬の出来事だからちゃんと見ててね? 」

 「うん! て、ええ!」

 友利が言った事に頷いた歩未は頷いた瞬間驚きの声をあげる。察するに友利は能力を使って歩未から見えなくなったようだ。友利は一度立ち上がると歩未の後ろに周りこみとんとんとつつくように肩を叩く。

 「え、!」 

 「どう、楽しんでもらえた? 」

 「うん! 凄いのです! テレビに出ている人達よりも凄いのです!」

 一瞬にして歩未が友利になついた瞬間だった。僕は歩未が嫌いなやつになついてしまったのが面白くなかった。

 「おい、そこの銀髪少女、遊ぶんだったら帰らせるぞ」

 「はいはい。お兄ちゃんは怖いねー」

 「手伝ってもらっているのにねー。心に余裕のない人ってかっこわるいと歩は思うのでs「いやー! 息抜きって大事だよな! 作業も楽くやれるならそれがいいし、ちゃんとやっているならそれでいな! それにしても心にゆとりのない人間って怖いな誰のことだろうなそいつ! 僕が成敗しておくよ!」

 心の狭い人間って悲しいよね! 心は広く持たなければいけないと。

 友利はそんな心を広くもつ僕をじと目で見るとボソッ呟いた。

 「.....シスコン」

 「ずたずたにするぞ」

 「しすこん? 何かのコンテスト?」

 「シスコンっていうのはね」

 「やめろ。歩未、世の中には知らいほうがいい事もあるんだ。と言うかはやく終わらせよう」

 友利がニヤニヤした顔で見てくる。うざい。




 夕日が沈み終える頃には全ての片付けが終わった。

 「じゃあ私達はこれで」

 友利と高城は引っ越しの手伝いを終えると帰ろうとする。本当に手伝いにきただけのようだ。てっきり生徒会に入れてくれと頼んだ事について聞かれたり、高城に何故名前と友利の能力の事を知っていたのか改めてきかれるものかと思っていたんだが、聞いてこなかったな。きかれても答えるきなどさらさらないが。

 大方、僕を迂闊に刺激すれば乗り移って能力を奪われる可能性があると思っての慎重になっているんだろう。でもあんたらには悪いが、言おうに絶対に言えないのだ。言えばあの世界に戻るそんな確信がある。あの世界に戻る理由がないしメリットもない。

 「友利のお姉ちゃん帰っちゃうの?」

 寂しそうな声色でそういう歩未は友利にすっかりなついてしまったようだ。こんな寂しそうな表情をする歩未は見るにたえない。

 だから、僕はある提案する。

 妹の為ならなんだってやってやろう。僕に逆らえば能力を奪われる可能性が生まれてしまう。それを友利も高城もわかっている。だから否定はさせない。僕が正義だ!

 「友利、高城、手伝ってくれたお礼と言ってはなんだが一緒に夕御飯でもどうだろう? なに、遠慮はいらないさ。歩未も喜ぶ」




 食卓に並ぶのは歩未と僕が作った乙坂家特性のオムライスだ。調理中のピザソースの量がいつもより少し多かったように見えたのはは気のせいであってほしい。

 「それでは頂いてくだされ! 」

 「「「いただきます」」」

 テーブルには四人座っている。歩未の隣に友利、歩未の正面に高城、そして友利の正面に僕だ。この配置はきがついたらこうなっていた。妹が誰のとなりだろうと知った事ではない。

 友利、貴様は今から歩未にきらわれるのだからな! 歩未の舌ははっきり言ってシスコンであるかもしれない僕でもちょっとと思ってしまうくらいに音痴。一般食を食べ続けてきたあんたや、高城には到底食べきれるものじゃない。

 僕は自然に口に運んでいるがこれも毎日食べているからであってつまり一般的なお前らでは!

 「はむっ。歩未ちゃんの作ったオムライス、美味しいですね」

 ............。
 .............。
 ................うん?

 「はい。友利さんの言う通りこのオムライスは美味しい。将来の男性が羨ましいくらいです」

 常識が壊れた音がした気がした。思わず、後ろに椅子ごと倒れてしまうほどに深刻なダメージだった。

 「ゆ、有宇お兄ちゃん、椅子の上から急に倒れてどうしたの!」

 「大丈夫っすか?」

 「顔が青いですね」

 「い、いや、何でもない.......問題ない」

 僕は一緒に倒れた椅子を元に戻し、腰をおろすとゆっくりオムライスを口に運ぶ。

 甘い。

 やっぱり乙坂家のオムライスは甘かった。胸焼けがするほどに。


 友利と高城は歩未の特製オムライスを食べ続け、あっという間に完食した。この世は理不尽だと知った。自分と他人の幸福や不幸はきっと同じ数ではないんだ。


 友利は使った食器を歩未と一緒に洗ったあと、歩未と少し談笑をしていた。歩未が星の話をして、友利に一方的に聞かせ、友利が持っている知識を総動員して星についての話にあわせる。歩未は自分の話が通じているからか凄く嬉しそうに笑っていた。歩未があんなに嬉しそうに笑うのは久しぶりに見た気がする。


 僕は二人が話している間高城とチェスをして時間を潰した。さっき歩未をさりげなく将来の男性が羨ましいとかどうとか口説くような発言をしていたので徹底的にボコした。チェスなど既存の盤面を暗記さえしてしまえば○×ゲームだ。最善手させ打てば勝てる。

 




 そして時刻は夜の九時をすぎ、僕たちは玄関にいた。



 「夕御飯ごちそうさまでした。歩未ちゃんのオムライスほんとうに美味かったですよ」

 「それは良かったのですぅ! 実は、あのオムライスは有宇お兄ちゃんの好物なんだ!」

 「まぁな」

 子供の頃の話だけど。

 「へぇ、そうなんですか。でも、何でその事を私に? 」

 「友利のお姉ちゃんが知っておけば有宇お兄ちゃんとお付き合いになったりしたときに役に立つかなぁーて」
 
 「「それはない! 」」僕たち二人がはじめて息があった瞬間だった。






 友利と高城は帰った後、僕は明日の星ノ海学園に登校する用意を終えてから寝室に布団を敷く。歩未も僕の隣に布団を敷くと何時もの趣味である。星の観察を望遠鏡を使って始める。歩未の日課はこの世界でも変わらない。

 歩未の日課を見てその都度思う。歩未が使っているあの望遠鏡あれを誰が買ったものだったっけと。その記憶だけが何故か思い出せないのだ。この異質で異常な記憶を持っているのに。歩未は覚えているのだろうか?

 「なぁ歩未、その望遠鏡誰が買ってくれたのか覚えているか? おじさんが買ってくれたわけじゃ無かった気がするんだけど」

 歩未は星を見るのをやめると少し考え、きょとんとした表情で僕を見る。

 「あれ、そう言えばこの望遠鏡を買ってくれたのって......うーん思い出せないのですぅ。でもおじさんでもお母さんでも無かったと思うよ」

 「心あたりは無しか」

 「あ!でも!この望遠鏡を買ってくれた人と、一緒に住んでいた気がするんだ、有宇お兄ちゃんとあゆと三人で.....」

 歩未はう~んと唸る。しかし、一緒にすんでいたか......。覚えがない。ならその歩未の言うその望遠鏡を買ってくれた人って誰のことなんだろう。

 「一緒に住んでいたもなにも、ずっと僕と歩未だけだっただろ、夢にでもでてくるのか? 」

 「でも、本当にいたような、そんな不思議な気分なのですぅ」


 もし、歩未の言っていることが本当だったとして。僕と歩未はその誰かの事を忘れているということになるとして。それを前提に考えることで一部の記憶の欠落の説明がつくとして。だとしたらその人物は何者なのか。


 「歩未、そろそろ寝るぞ」

 「うん。おやすみなさいなのですぅ」

 「ああ、おやすみ」
 
 歩未は自分の布団のなかに入る。それを確認して僕は電気を消し、アラームをセットしたスマートフォンを自分の枕元においた。

 目を瞑り明日の事を考える。

 僕は今日、僕の世界での友利奈緒が死んでしまう原因となった有働からは能力を奪った。これで有働は今後、能力を使うことはできないし、必然的にあの水の男が有働を見つける事はない。これで友利は死なない。

 悪いな有働。あんたに覚えがなくとも僕にはあんたが人を殺した未来を可能性を知っている。今頃能力が消えたせいで困っているかもしれない。あんたは病気の母親の為に能力を使って金を集めていたようだが、それも今日で終わりだ。だが、あんたが金を稼げなくなっても僕は知った事ではない。母親がどうなろうと知った事ではない。人を殺す可能性を持っていたから、そうした。あんたは身近にいる人間を幸せを守るために能力を使っていたけどそれをいきなり、なんの前触れもなく奪われた自覚なく。精々どことも知れぬ誰かに神にでも憤りでも覚えていてくれ。

 
 僕は自分の幸せのために行動する。それが結果的に他人を不幸にしても。僕が幸せになれるならそれでいい。ただそれだけだ。



[42107]  第六回 Re
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2018/11/20 05:39
 遊歩道のアスファルトを蹴り飛ばし、前に前進、走り込み、そしてラストスパートをかけて足を止める。十キロを走りきったのだ。この世界に来る前の僕の体なら一時間ちょっとあれば軽い気分で走りきれていた距離なのに、この世界での部活もスポーツもしていなかった僕の体はその倍二時間もかかってしまった。まったくもって軟弱なこと極まりないな.....。自分の体が自分の身体じゃないように重たい。息も上がっており到底気楽に走ったとは言えない.....無様すぎる。これじゃもしもの時に歩未を守れないではないか。

 僕は少しの間息を整えようとゆっくり呼吸しながら歩く。少しでも早く息を整えるためだ。そして息が整うと、うっすらと太陽がみえはじめた空の下を歩き少し離れた併設のマンションへと戻った。


 僕は走り込みを始めた。自分の知っている身体の感覚に戻す為だ。この身体は如何せんキレがわるい。早く、筋力を上げないとな。オーバーワークになってでももとに戻したいと思っている。そこまで何故こだわるかと聞かれれば勿論、歩未を守るためだ。どんな事態に陥ろうと歩未だけは僕が守りたいたった一人の家族なのだから。


 僕は自分の部屋に戻るとシャワーを浴びて汗を流し、学校の勉強(かなり進んでいる)をする。これは今ではすっかり習慣になっていた。前は勉強しないで楽して一番になりたかったが僕は今では幸せの努力は惜しまないようにしている。ずるはもうしないって決めたんだ。勉強を一区切り終えると丁度歩未が起きた。僕は勉強道具を片付けると歩未の料理の手伝いをする。今回は卵も片手でちゃんと割れたし、ケチャップとピザソースを間違えることもなかった。........オムライスか.....。

 朝食を食べ終わると僕と歩はそれぞれの制服着替え、家を出る準備をする。

 「そういえば歩未は僕と近くの学校だったよな?」

 「はい、なのですぅ!」

 「なら、途中まで一緒に行かないか」

 「おお!。あゆも有宇お兄ちゃんを誘おうと思っていたのですぅ!」

 「そうなのか、息ぴったしだな」

 「うん!」

 登校の為の準備を終える僕と歩未は一緒に家を出て、一緒に登校する。そう言えば歩未の中学につくまでの間の道中、歩未はハロハロというバンドのボーカルの西森柚咲の話をしてきた。あれはもはやミーハーレベルかもしれない。前の世界の歩未ハロハロのボーカルの事が好きだったがここまでではなかったと思う。やっぱり僕の知っている世界とこの世界は少し違うのかもしれない。いや、少しじゃないか僕の世界では死んでしまった人も生きているんだ。何かが違うのは確かだ。

 「それじゃここで」

 「いってくるのでござる!」

 歩未の通う校門前で別れた後、僕も自分通う高校、星ノ海学園へ向かった。今日は二度目の転入で僕の世界では友利奈緒が死んでしまった日でもある。死因になりえた存在、有働とは僕の行動により、おそらく接触しないだろうが今日が山場だ。もしも友利が危険になったらその時は何としても僕はあいつを助けないといけない。何としても未来は変える。


 「と、決意したはいいが...」

 「ようこそわが校へ」

 「これはデフォルトなのか、いきなり変化がないぞ....」

 「.....なにいってるんすか?」

 職員室を出ると友利と高城がいた。ここは僕が経験した歴史というのはあまりにも些細な事だろうが出来事である。やっぱり未来を変えるなんてできないのかもしれない。まぁしばらくもすれば分かることだが.....。

 「ただの独り言だ。それよりここは全生徒が特殊能力をもっているのか」

 「いえ、その前兆がみえるもの可能性があるものが大半ですね」

 「可能性のあるやつの方が多いんだな」

 高城の言葉に適当に相づちで返す。

 「あまり驚かないんですね」

 「驚いてはいるよ。よくそれだけでここに保護したりするなってそこまで徹底するのには理由があるのか?」

 友利は僕が初めて知った情報であまり反応を見せないのでそのことを訝しんだ。本当にめざといやつだ。気をつけねば。

 「昔、我々のような、特殊な力を持ったものはことごとく脳科学者のモルモットにされたんですよ。.......捕まったら人生おしまい」

 「人生、お仕舞いか。本当だとしたら穏やかじゃないな」

 「私の兄のことなんですけどね」

 「えっ」

 友利は僕の言葉から信じていないと思っていたのか前回と同じくさらりと爆弾発言をする。しかし、よくも信用していない人間にそんな情報を.......。人それぞれだし僕にどうこう言う権利はないけども。


 「能力者を守る為にある人物が今のシステムを作り出した。兄は間に合いませんでしたが」

 「それは災難だったな」

 友利と高城にクラスまで案内してもらう間も僕たちの話は続く。

 「そう言えば乙坂さんはどうして生徒会に入ることにしたんですか」

 「あんた、見かけによらずズバズバ聞いてくるよな、そこにいる友利ならまだ分かるけど...」

 「どういう意味っすかそれ」

 友利が不快そうな表情でこっちを睨んでくる。暴力反対! だが僕は友利をあえて無視した。

 「事実遠慮というものがないだろあんたには。高城の質問だが、僕が生徒会にはいったのは贖罪? いや、自分でしたことに決着をつけるためかな。それがなにかは前にも言ったがいうつもりはない」

 「そうですか贖罪ですか、よくわかりませんね」

 「何か罪になることでもしたんすか。あ、もしかして、カンニング「それはない」」

 友利の言葉を僕は直ぐに否定する全くもって違うことだ。それで不幸になったやつはいないんだ。その程度事で僕が償いをするだとか懺悔をするだとかあり得ないと断言できる。それに生徒会に入ったのは本当は友利を排除する為だったし、でも今は違うか。

 「他人の不幸を願ったら本当にその人に不幸が起きてしまった。その不幸になった人への償いと言うよりは折り合いを付けたいんだ。つまるところ自分が納得したい。そんな身勝手なことだよ」


 教室前にいくと前回と同じくその場で別れる。僕が前回と同じく担任教師と軽い世間話をしている間に友利と高城が僕の通うことになる教室一年B組の教室に入っていくのが見えた。前は注意してなかったが堂々と入っているじゃないか。気付かなかったのが不思議なくらいだ。チャイムがなりホームルームが始まる。僕は教室のドアの前で待機だそうだ。演出が大事だと言っていたがここらへんは変わらないんだな......て言うか演出ってどこの演劇団体何だよ先生。

 「乙坂入ってこい」

 担任教師に呼ばれたので僕は教室に入ると教壇の前にたつ。営業スマイル、営業スマイル。何事も第一印象が大事だ。

 「えっと、乙坂有宇です。陽野森高校からきましたよろしくお願いします」

 こうして僕の二度目の転校生としての、そして、未来が変わるかどうか知る日が始まった。さぁここからがターニングポイントだ。



[42107]  第七回 くそ、ぶん殴ってやりたい。
Name:  幸せな二次創作◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2018/11/20 05:49
 午前中の数学の授業は数学女教師の川崎先生が担当している。前回の世界と変わらず、この問題にはこの公式を云々を使うとか言っているが、僕はかなり前に予習でして終わらせいた内容であまりにも退屈だった。いや、退屈だけなら、まだ、いいが、今日の昼過ぎに人が死ぬという未来を知っているからか授業に集中できていなかった。

 僕の起こした行動の結果、協力者の能力では有働は見つからないはず、そして、南羽高校に生徒会が行くことはない。友利奈緒が死ぬなんて事はない筈だ。だが、もし僕の能力がちゃんと機能していなければ........馬鹿かちゃんと能力は奪ったじゃないか。でもこの世界は似て非なる世界だ。予想外の事も起こりうるかもしれない。警戒をしておいたことにはこしたことはないな。

 瞬間、僕に何かが飛んできた。何時もなら避けられたかもしれないが、考え事をしていたせいか回避することは叶わず。僕の額にそれは直撃した。白い物体白チョークが。

 「いてっ...」

 白チョークを投げたのは授業をしていた数学教師の川崎先生のようだ。にしても転校生は名前を呼ばれてから入ってくるとか、授業を聞いていない生徒にチョークを投げるとかこの学校ってできの悪い漫画みたいな場所だな。

 「転校生の乙坂有宇くん、私の授業はそんなに退屈かしら?」

 「いえ、そんなことは、すみません少しぼーとしてました。気を付けます」

 「そう、ぼーとはしていたけど聞いてはいたと......ならここに来てこの問題を解いてください聞いていたのなら解けるでしょ?」

 何で教師で無駄にてきぱきしてる奴らはこうも突っかかるんだろう。こういうのは解けなければ聞いていないじゃないかと一方的に悪いように言われ、解いたとしても今後気を付けなさいと言われ、最終的には指名されたやつは悪になるんだよな。くそ、面倒な。

 僕は席から立つと教壇にいき、黒板に書かれている問題を速読して、直ぐにその問題に合う、公式つかってすらすらと解き終えた。数学なんて公式を適当に覚え、問題に適切な公式を使えばだいたい解ける。正し応用力を試されるのは僕には難しいです。

 「せ、正解です」

 僕は冷めた目で川崎教員を一瞥すると自分の席に戻った。配置を入れ換えているだけで内容事態は大したことがなかった。あの何の捻りのない問題、本当に数学教師何だろうか。教科書に乗っていた問題内容じゃなかったから自分で作ったんだろうがつまらないにも程がある。

 「乙坂さん、勉強できたんですね」

 「あれくらい、誰でも解けるだろ」

 「いえ、数学教師の川崎先生の授業の内容は難しいことで評判なんです」

 嗚呼、だから前の世界で僕が別のページの学習をしていたら授業は聞いておいたほいがいいとか言ってきたのか。

 「乙坂くんって勉強もできるんだ」「マジかよくそ」など、何とか女子や男子がヒソヒソと呟いているのを聞いたが、この学校の奴らはレベルが低いなのだろうか。いや、友利奈緒という国立の中学に受かった奴もいるんだ。僕より頭が良くて知識が豊富なやつの一人や二人はいるだろう。それにいなかったとしても、それがなんなんだって話。

 教壇では数学教師の川崎がまたただ複雑なだけの数式を書いてどの公式を何処でつかって解くのか云々を説明していたがその内容もやったことのあるものだったので退屈なのは変わらなかった。



 午前中の授業が終わり、ついに昼休みがやってきた。僕の行動の結果、未来がどう変わったか確かめることになるだろう。協力者が現れなければ友利は今日死ぬはない。現れるとなれば僕が有働から能力を奪えていなかった。または別の能力者となるだろう。つまり死の確率が存在する。もしそうなっても前回と同じことは絶対にさせない。


 「乙坂さんはお昼はどうするんですか?」

 「実はお弁当を持ってきている」

 「そうですか。私はお弁当ではないので、学食にいって何か買ってきますそれでは!」

 突風が余波を残し去っていった。能力を日頃から使っているのか。また店員がこめかみに手を当てて呆れた顔をするぞ。僕はため息をはくと弁当を開けた。中身は歩未特性ピザソースオムライスでがんばれとケチャップで書かれていた。因みに歩未の弁当のオムライスには僕がケチャップをかけている。僕の知っている歩未もハロハロのボーカル西森柚咲のファンだったのでその西森柚咲をデフォルメした絵を書いておいた。今朝、学校まで道中この世界の歩未は西森柚咲の大ファンだと言うことを聞いたからきっと喜んでくれているだろう。


 その頃、歩未はできたばかりの友人と昼食をとっていた。

 「おお! あゆっちのお弁当の中にゆさりんが!」

 「有宇お兄ちゃんめっさ凄いのですぅ! 」

 「え、乙坂さんのお弁当、乙坂さんのお兄さんが作っているの?」

 「うん」

 「器用だねあゆっちのお兄さん」

 お弁当ゆさりんは好評のようだ。そして有宇も好評だった。こんな風に.......。


 「自動販売機で飲み物を買ったら当たりがでたので乙坂さんいかがですか......って乙坂さんと私の机の周りに大量の女子生徒が! いったい何が!」

 いったい何がじゃねぇよ高城! 助けろ!。こんなことになったのは本当に些細な親切からだった。



 僕がオムライスを食べ終わり、弁当箱を片付けた時見知らぬ女子生徒が話しかけてきた。同じクラスの奴だろうが僕はこのクラスの奴らとは関わりを持っていなかった為に全く知らないのだ。

 「乙坂くん私佐藤って言うんだけど....」

 「佐藤さん......。僕に何かようかな?」

 「乙坂くん数学の教師の川崎先生の問題解いていたでしょ、私、出された問題で分からないところがあるんだ。良かったら教えてくれない」

 「.....分かったよ教えられる問題なら...」

 「ありがと」

 そして僕は佐藤某が渡してきたノートの間違っている解答の問題の公式の使い方と何処がどう間違っているのかを教えた。社交的一面のアピールになるし、断る理由もない。昼休みが終わるまでのいい暇潰しになるだろう。佐藤某は最初は間違った時もあったが幾つか要点を教えると、自力で全て解ききった。ただ、やたら引っ付いてきたりしたことはウザかった。

 「ありがとう乙坂くん!」

 「いいよ、これくらい」

 「えっと、.....乙坂くん良かったらメールアドレスを交換しない、お礼もしたいし...」

 ああ、やっぱりそういうのが目的か、陽野森高校でもこういうことがあった。メールアドレスを聞くために何もないところでわざわざ僕に見えるように転んだり、また、ラブレターにみたててメールアドレス教えて欲しいなど遠回しに僕に近寄ろうとする女子達。あれは本当に鬱陶しかった。しかし、同時に面白くもあった。僕に近づくために頭を使ったり奇怪な行動をしているやつが続出していたからな。まるで下界の奴が天界にいる僕に媚を売るかのようでそれはもう内心、腹を抱えて笑ったよ。

 ......おっといけないいけない。今の僕は優等生で社交的なんだった。

 「お礼って、僕はただ数学の問題を教えただよ。いいそういうの」

 「う、うそ、ウソだから。友達としてメアド交換」

 「友達......そう言うことなら喜んで」

 こういうやつのあつかい方は心得ている。まぁ精々僕の社交的一面のアピールの為に利用させてもらおうか。

 僕はスマートフォンを出すと佐藤さんと赤外線交換でメールアドレスを交換した。それが終わると佐藤某は自分の所属する女子のグループへと戻っていった。

 僕はスマートフォンをバックの中へ直ぐに片付ける。さて、協力者は今の所は現れないか。といっても前回呼び出しをくらった時間まであと少しあるな。友利を見るがイアホンを耳に付け音楽を聞いている。ここらへんは変化無しか.....。ふと、友利を見る僕の視界が複数の人影に遮られた。なんだ?見上げると十人近くの女子......。

 「「「「あの、乙坂くん私とメアド交換しませんか!」」」」

 「」僕はあまりの数の多さに唖然とした。


 そして今の事態に陥っているわけだが、香水に匂いが色々まじって臭いし、キャピキャピと騒がしすぎる。くそ、こいつらぶん殴ってやりたい。女を殺してやりたいと思った事はあったが、女を殴りたいと思ったのは生まれてはじめてだ。

 て言うか、高城マジで助けろ!。

 「あの邪魔のなのでそこ、退いてください」

 淡々とした声と同時に周りの女子が静かになった。目は嫌悪を表すかの言うな冷たい目になる。その女子達の間を通って来たのは銀髪サイドテールの蒼い瞳女子。友利だ。

 「高城がいない.....」

 「友利さん私ならここです!」

 出入口辺りから聞こえる高城の声。友利はここに何をしに来たんだ......まさか来るのか奴が!。

 「協力者が現れます!」

 「分かりました!。私は先に生徒会室に行っておきます!」

 「協力者.....」

 「なに座ってるですか?。あなたも行くんですよ」

 「え、分かった。えっと続きは放課後か明日って事で」

 そう言うと僕と友利はこの場を去る。協力者が来たと言う事は能力者が見つかったってことだ。まさか有働が.......。そんなことはないと思いながらも僕は不安を感じられずにはいられなかった。



[42107]  第八回 怒りのアッパーあァァアアァアァァ!
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/20 13:13
 生徒会室、この部屋に来るの二回目になるのか。友利奈緒という生徒会長がこの世から去ったあの日から僕は生徒会室には行かなかった。学校にいっても後ろの席にい高城は相手に乗り移り僕が友利を殺したのではと思っていたのか警戒していたし、僕も気まずかったから話しかけることはなかった。そんな三日後僕は過去の全く違った未来をたどった世界にいて........。


 「どうしたんですか。顔色悪いっすよ」

 心配そうなと言うよりは訝しげな表情で銀髪のサイドテールの少女友利奈緒は僕を見る。僕の顔色が悪いのはこのあとに来る協力者が念写と口にするかもしれないことに不安を感じているからだろう。顔色が悪い自覚はないが。

 「いや、別にちょっと香水の匂いがうっ」

 「乙坂さんの周りには先程まで女子生徒が沢山囲んでましたからね」

 「はぁ。顔だけがいいのも困るんですね......」

 友利は呆れた顔をし、高城は眼鏡をくいっと上げて僕が顔色が何故悪いのかを分析する。不安だけでなく気分が悪いのは香水の匂いのせいもあるだろう。

 あと、友利、僕は顔立ちだけがいいとか言うな! 他にもいいところがあるだろ!

 「よけいなお世話だ! それよも協力者とやらがここにくるのか。察するにそいつが能力者を見つけてる奴なんだろ」

 「はい....多分もうまもなく来ます」

 友利がそう口にした時生徒会室の両開き扉が開き、特殊能力の居場所を教えるずぶ濡れのロン毛の男が入ってきた。

 ずぶ濡れの男、水男は部屋の中心にある地図の乗ったテーブルの前に立つと、指先から水滴を地図の何処かに一滴落とす。そして見つけた能力者の能力を口にした。

 「能力は........口寄せ」

 「口寄せ?」

 協力者が言った能力は有働の能力じゃ無い。つまりこの世界の有働からも能力を奪えていたことになる。これで友利が矢に射ぬかれ死ぬ未来は無くなった。しかし、口寄せとは一体何だってばよ!。

 「降霊術、つまりイタコだ」

 「へぇ、インチキとかじゃなく、それを本当に使えるとしたら凄いじゃないか」


 「もうひとつ.......発火」

 能力者は最後にその言葉を残しこの場から立ち去った。

 「二つの能力を有しているなんて!」

 「直ぐに確保した方がいいですね。ですが......」

 友利は地図を見ながら訝しげな顔をする。僕も地図を覗く。この場所は路地?。人気の無さそうな場所だ。さらにこの位置から考えるに移動中だな....もしかすると誰かに終われてる?。それともただの不良か。または何処かに向かっていて近道をしているのか。考えられる可能性はこの辺りか。実際に行ってみれば分かることだろう。

 それよりも、この世界の友利の判断力や推理力を試すのにはいい機会だ。

 「これただの道です。移動中ですね」

 「.....平日の真っ昼間にか?。そうだな....学校サボってるとか?」

 「それがっすね、ここ人気のない細い路地のはずなんですけどね」

 「.....ふーん」

 「あなた、分かっているんでしょ?。呑気なことは言ってられません。早急に確保に向かうぞ! 」

 「はい」

 どうやらこの世界の友利もあれくらいは推理できて当然らしい。しかし、本当に目敏いことで.....。

 しかし今回の保護対象は二つの能力を持っているのか。二つの能力の内一つは取りついた霊が持ってるのか? それとも保護対象自身が二つの能力を有しているのか。はたして、どっちなのかな。


 協力者が水滴を落とし示した路地に向かうと昼のこの時間なのにも関わらず建物の影で薄暗かった。夏は涼むことができるかもしれない。それにしても静かだ。この周辺は人の喧騒ひとつない。さらにシャッターが閉まっている商店街が余計に静寂を引き立たせていた。

 「ここであっているのか? 」

 「はい」

 三人で路地を進んでいくと要らなくなった段ボールが積まれている場所で友利が脚を止めた。しかし、毎度思うのだがそのハンディカムで撮りながら歩くのはやめてほしい。知らないうちに撮された人間は不快な思いをすると思うし特にこの僕が不快だからな!

 「どうした、何か分かったのか?」

 「はい、どうやら、その人は相当必死にこの場所を走り抜けたようですね」

 友利がハンディカムで見ている、段ボールはよく見るとずれたあとがあり、角の埃が無くなっていた。恐らく逃げる際にぶつかったのだろう。こんな些細なことに気づくとは、やはり侮れないなこいつ。

 また、しばらく歩くと今度は僕と高城にも分かるような足跡があった。

 「一つは狭い感覚でもうひとつは大きい、完全に女の子が大人に追われてる」

 「男から女の子が逃げてるってことか ?!」

 「はい、事件性があります....先を急ぐぞ」


 路地を抜けた先には路地に入る前と同じようにシャッターが降りた店が並んでいた。さっきと違うのは所々開いている店があると言うことと、人が少数だがいると言うことだろう。

 パイプでプカプカと煙草を吸う化粧で歳を誤魔化そうとしてお化けになっているオバサンに何かなかったか、それを見ていないか等を聞いてみた。

 「ああ、さっきのあれね。アイドルが男に追われてるって、撮影でしょ」

 「アイドル?どんな?」

 僕の言葉にオバサンは自分の記憶をたどり、そのアイドルの名前を出す、意外、と言うよりは知っている奴が多い名前だった。

 「そう、今人気のある。そう、西森柚咲ちゃん」

 「聞いたことあるな」

 友利はその名前に一致する顔を思い出そうとするがなかなか合致しないようだ。それにしても西森柚咲って今日ケチャップで描いた歩未の好きなアイドルじゃないか。こんな人気のない場所で一体何を....。もしかしたら今回は前にもまして面倒なことになるかもしれない。その時高城が声を上げた。

 「ゆ、ゆさりん!」

 目を輝かせる高城。その場を離れた後友利が高城に「知っているのか?」と問いかける。

 「通称ハロハロ! How-Low-Hlloというバンドでボーカルを勤める、今、人気上昇中の歌って踊れるアイドルです! 」

 「お前、そんなアイドルオタだったのか! 引くなっ! 」

 友利の言う通りだな。今後こいつには絶対歩未を近づけさせないでおこう。もし歩未に合わせれば同士とかいって近づいてきそうな気がする。

 「落ち着け、話を戻そう。その西森柚咲なる人物が誰かに追われているのは分かった。だが、どうやって探すんだ? 時間があまりたってはいないけど何処にいるかはわからない。早く保護しないといけないのに、情報量が少ないすぎるだろ......」

 生憎だが僕が持っている能力は相手に乗り移って能力を奪う略奪と写真をとる念写だけだ。能力者が何処にいるかが分かるような能力は持っていない。こいつにはなにか策があるのだろうか。だがいくら切れ者でもこの情報量の少なさからでは何か案を出すことはできないだろう。

 それに分かっていることといえば、西森が能力者で何者かに追われているということだけ。

 追っている奴らが何の目的で西森柚咲を追っているのかはまだはっきりとしない。能力であることから科学者関係の奴である可能性が高いが、相手は芸能人でアイドルだ。おいそれと捕まえるわけにはいかないはず......。なら会社が科学者に売った?。しかし現役アイドルと一時的な大金とでは釣り合わない気がする。それよりはどんどん売り出すほうが利益もでるしな。だめだやはり情報が少なすぎる。

 「そうなんですよね.....」

 友利は考える素振りをしながらハンディカムで辺りを見渡す。そして偶然、人の影を見た。

 「ッ! 不審者発見追います! 」

 走り出す友利の後に僕と高城も走る。多分、友利が見たのは西森柚咲を追っていた男の可能性が高い。西森柚咲について探る僕達を警戒して路地に隠れて様子を伺っていたのだろう。僕も確かに見えた。

 男の影を見た路地にあと少しで友利が到達するだろうという所で僕はまた -あれを見た

               「ッ」 


 世界のピントがずれる感覚、本来あるべき姿が未来がねじ曲げられる。そんな感覚。前は些細な変化と思っていたが今回は確かに感じる大きな影響。これは誰かが死ぬ、その前兆でもある。


 誰だ?!

 友利が一歩、また一歩と前へそれと同時に僕の違和感は大きくなる。つまりは友利奈緒という少女が死ぬ事を物語っている。

 友利が死ぬ? 折角生き返った、いや、生きているのに?

 助けろ。人が目の前で死ぬという悲現実はもういらない。友利を助けることができるのは今は僕しかないんだ。

 僕は一歩一歩と先を走っている友利の腕を掴み、後方へと路地から遠ざけた。僕に引っ張られた友利は僕より後ろで尻餅をつく。

 「乙坂さん何を! ッ」

 高城が言葉を止め息を呑んだのが分かったが本当に洒落にならないぞ。それ......。

 路地から高速で飛び出してきた。一本の刃と太い男特有の右腕。あの右手に収まるものは一本の果物ナイフ、つまりは人の命を奪う事も容易くできる刃物だ。あのまま友利が進んでいれば確実に大怪我を負っていただろう。いや、軌道から首筋だったから死んでいた。

 「クソ、外したか!。だが見られちまったんだ。....死ね」

 男は路地から出てくる。奴と僕と友利との距離は近い。後ろを向けて逃げても大人と学生だ。直ぐに追い付かれ刺されて死ぬ。奴のあの目は確実に人を殺せる目だ。スポーツをしていたときの対戦相手を倒すという闘志の目ではなく、ただ敵を殺すというだけ冷たい腐敗した目。

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。どうする乗り移るか、いや、そんな暇はないあの能力はタイムラグがある。奴はもう直ぐにでもこっちを刺し殺そうとしている。くそ、こうして考えている間に男はナイフを構えた。せめて僕一人なら......。友利を逃がせれば.....。

 「.......友利能力を使って、高城の所まで逃げろ。僕が乗り移るからその間に高城が拘束をするように伝えてくれ」

 「あなた、乗り移る暇があるように見えるんですか、私が応戦した方がまだ! 」

 「早くしろ! 死にたいのか! 」

 「ッ」

 友利は尻餅をついた状態で能力を使った。

 「女の方が消えた......。ちっ、先ずはお前からだ!」

 友利がここを離れ高城の場所まで離れていく。そして、男はそれに驚き、僕を標的にしたようだ。
ヒュンッと風を切り奴のナイフが僕を襲う。大振りだが、人を奪える凶器は充分威力を発揮する。このまま受ければ危険だ。僕は相手のナイフの軌道を一瞬で見切り地面を蹴り後ろに跳ぶことでかわす。しかし、後ろに下がっても追撃されるだけ、応戦しなくては.....死ぬ。

 僕は後ろにとんだあと、直ぐに構えを取った。

 拳を軽く握り、左拳は視線に、右拳は自分の頬から少し離れた場所に添えるように置く。腹筋に軽く力をいれ、膝を軽くまげ、一定のリズムを縦に刻む。昔ボクサーだったという(自称)ボクサー大好きのじいさん教師直伝のボクサースタイルだ。この構えを取るのは中学二年の秋の大会以来だが、しっくりきた。

 「一丁前にボクサースタイルだぁ?。見てくれだけのガキが、死ね!」

 集中しろ、チャンスは一瞬、一発軽いのをくれてやればいい。ナイフをもった男は僕に接近し、ナイフで振るう。

        --------- ここだ ! 

 僕は奴の肘が伸びる一瞬を狙い奴のナイフを持つ右手首に最速の左フックを当てる。キレは現役時代に比べるまでもなく劣っていたがそれは仕方ない。だが、アドレナリンがでているからか、並大抵の人間にはだせない重さと早さを備えた一発だった。

 「グッ!」

 キンッッッんと耳障りな音をたてて男の手からナイフが離れ地面に落ちる。男は痛に声を上げる。軽く当てたつもりだったが思った以上に威力があったようだ。

 僕は男が痛みに悶えた一瞬をつき、気合いの乗った声と共に右拳を突き上げた。

 「オラアアアアァァ! 」

 腰の回転の乗った全力のアッパーは奴の溝に食い込み、奴胃液を逆流させる。

 「グオッぁあぁ」

 男は口から苦痛と共に胃液を吐きた。だが、膝は折れていない、念のためにアッパーを突き上げた時に戻しておいた左拳の最速ストレートを男の顔面に叩き込んだ。骨の軋む音がする。男の顔面は鼻は潰れ、骨に罅でも入ったのかもしれない。と思ったが今の骨の軋むような音をたてたのは僕の拳だったようだ。かなりの激痛が左拳を襲ったが我慢する。

 ナイフを持った男が崩れ落ちそうになるのを確認する。よし今なら僕はこの他人を僕だと思い乗り移る。

 「高城早く捕まれろ! 」

 「分かりました」

 見知らぬこの男の声で高城を呼びつけ、地面に突っ伏し腕を高城が拘束した。この不審者に乗り移って分かったが鼻は潰れ、顔の何処かに罅が入っていたのか、もうそれはそれは痛かったと言っておこう。


 「ほら、起きろ!」

 友利が意識を飛ばした男の顔を叩くと不審者は目を覚ました。奴の顔、胃、手首、これらの場所では激痛が走っていることだろう。だが奴はその痛みに悶えながらも態度には現さなかった。

 「洗いざらい吐いてもらう。吐いたら救急車を呼んでやるよ。お前は何者だ」

 「こっちも仕事でやっている教える気は.....」

 友利の質問に男は答える気は無いらしい。僕は男の近くにまでいくと拳を構え男を脅す。

 「なぁ、あんた、さっきは良くも僕を殺そうとしてくれたな。だからさもう、何十回か、殴るなり蹴るなりしていいか? 手加減なしで! きっと顔は原形をとどめないけど、いいよね? 」
 
 「ひっ.....し、仕事を頼まれたんだ」

 「何の? 」

 男は恐怖からか震えながら答える。

 「...西森柚咲を探している」

 「誰に頼まれて? 」

 「太陽テレビ」

 「の誰?」

 「それは知らない本当だ!」

 嘘を言える場面じゃないし、僕は「そうか」というと、高城が押さえ込んでいる男の顔面を本気で蹴る。男の歯が意識ともに一本宙にとんだ。

 この蹴りは折角生きている人間を殺そうとしたこいつへの怒りの一発だ。おかげさまで友利が死ぬ所だったんだ。これくらい当然だな!

 「乙坂さん。今のは.......」

 「あれくらいは当然だろ。こっちは命を落とすことだってありえたんだ」

 高城が僕の今の行為を批判的に言おうとするが、僕が路傍に落ちるナイフを指すと黙りこむ。僕はそのナイフに近づき、持ってきていたハンカチを被せてから拾うと近くのスチール缶ようのごみ袋のなかに捨てた。これで確り工場の磁石に引っ付いてくれるだろう。

 「その、さっきはありがとうございます。助けてくれて」

 友利が意識を失った男から僕へと視線を移すと、お礼をいてくる。

 「嗚呼、それよりも怪我は無かったか? .......腕とかかなり強く引っ張ったが」

 「大丈夫です。何処も怪我はありません....」

 「そうか、しかし、まじでギリギリだった....」

 僕は痛む左手をぶらぶらとさせながら疲労感たっぷりのため息を吐く。人に向けてナイフを躊躇いなく振るうことのできる奴とタイマン張ったんだ。精神的な疲労が激しい。こんな命のやり取り、どんな部活でも経験することはないだろう。

 丁度、友利が予め呼んでいた救急車が来た。救急隊員がアザだらけの男を運んでいく。男の顔面には紫色に変色した痣ができていた。きっと暫くの間、痛に苛まれ続けることだろう。 ザマァみろー!

 ナイフを持っていた男の無様な格好をみて、その無様さを内心で笑っていると友利が僕にさっきの喧嘩で見せたボクサースタイルのことをきいてきた。

 「それにしても、さっきのかなり様になってましたけどボクシングでもやってたんですか?」

 「えっと、昔近所にボクサーだったお爺さんがいたんだその人から習っていたんだ」

 友利にいった今の言葉はもちろん嘘であるが本当だ。昔ボクサーだったという、自称元ボクサーでボクシング大好きな五十代後半の教師からボクサー部に入部して僕はボクシングを教わった。しかし近所になんて住んでいなかったけど。

 この世界では、僕は部活をしていなかったからそう言うしかなかった。じいさん元気にしているかな?。

 そんなことよりも、結局、西森柚咲は科学者の手のものから追われていたわけでなかったわけだ。ある意味幸運だったかもしれない。高城は兎も角僕や友利は離脱する手段がなかったわけだから。

 先ほど男が言っていた太陽テレビを携帯で調べてみて分かったが西森柚咲の所属する事務所は太陽テレビの傘下にあたるらしい。つまるとこと西森柚咲は太陽テレビの権力者と何らかのいざこざを起こし追われるはめになったと言うことだな。

 あの雇われたという男は危ない仕事を受ける人間だろう。そして西森柚咲の捕獲をその権力者が頼んだ。権力者が直々とは一体西森柚咲は何を起こしたんだ。なにか都合の悪いことでも知られたのか?。

 僕が考えに耽っていると誰かが来た。

 「お前ら何者なんだ」

 「えっ? 」

 ここの近所の奴かと最初は思ったが違った。

 僕たちが振り替えるとそこには髪を染めた目付きの悪い不良みたいな奴がいる。(お前こそ誰だよと思いました)。

 「西森柚咲を探しているものです」

 「通称ゆさりんです!」

 男は高城の高いテンションをヒラリとかわし、話を続ける。僕もその能力がほしい。

 「何の為に」

 「追われているようなので保護しようかと」

 「柚咲の知り合いなのか?」

 「大ファンです!」

 次の瞬間、高城は友利の回し蹴りを受け、宙で舞っていた。さようなら高城。ありがとう高城。君のことは忘れない。あれ、今飛んでいったのって誰だろう。しかし、高城はこのさいどうでもいいこいつは西森柚咲のことを呼び捨てにした。つまりは親しい仲ということだ。もしかしたらこの不良は西森柚咲の行方を知っているかもしれない。

 「ずっと見ていたがお前ら、最後の方、勝ってた奴が倒れて、男の方がお前らに拘束を頼んだよなあれは?」

 「あれは僕の特殊能力だ。あんたの所にいる西森柚咲も特殊な力を持ってるんだろ」

 「な!?、なんでそれを!」

 いや、こいつ自分で言ったじゃん。柚咲の知り合いかって、だからあんたらの関係者だってことは分かるからな。だがこれで確信したこいつ西森柚咲の居場所を知っている。まんまと引っ掛かってくれたな。

 「私たちであれば、その子を助けられるかと」

 「分かった。.......なら、証明してくれお前らがアイツと同じ力を持っていると言うことを」

 「同じではありませんが......ほいっ」

 友利は淡々とそいうと能力を使った。

 「な、消えた!」

 「信じて貰えましたか?」

 「.....ああ。付いてこいよ。けど、きっと混乱するぞ」

 「どういうことですか?」

 「ややこしいことになっているんだよ。お前らの目で確かめて見てくれ」

 この不良の要領を得ない言葉の意味を僕達は後でそれを目にしてから知ることになる。



[42107]  第九回 よし、悪は燃そう!。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/09/24 08:05
 「なぁ、ここに西森柚咲がいるのか?」

 僕は髪を染めた、不良みたいな青年に問いかける。

 「ああ。付いてこい」

 不良青年に連れて来られた場所は、もう長い間使われていない古い建物、クラブだった。昔は扉を開ければ地下から大音量の音楽が聞こえてきていたのかもしれないが、今目の前にある扉の先は静かで人の気配を全く感じない。

 扉を開き、中に入ると地下に続く階段がある。階段横の壁にはここでライブを行っていた時に貼られていたのであろう壁紙とポスターが残っており、時間がたち、剥がれてしまった壁紙はコンクリートの冷たい地面に落ちている。ポスターを見てみると、今から三年前の年が書かれていた、思ったより、ここが使われなくなってから時間はたっていなかったことを意外に感じる。さっき、建物が古く見えたのは、周りに人の姿がなく、殺風景だったからかもしれない。

 壁に貼ってある色々なバンドの壁紙を見て、友利が「すっげー!」と目を輝かせながら手に持ったハンディカムで貼られている壁紙を撮影していく。こいつはこういうバンドなどが集まる場所が好きなのだろうか?。

 友利が足を止め、壁紙を撮影していると茶髪の不良はモタモタした様子にイライラしたようで...

 「ぼっけとするな、置いていくぞ....」

 そう、刺々しい言いぐさで警告するとそくさくと一人下へ降りていく。僕も友利も高城もその後をついっていた。しかし、偉そうなにする奴だなぁと僕は少しイラっとした。

 茶髪の不良に案内された場所はそこそこの広さのある一室。バンドのメンバーの休憩室だった場所なのかもしれない。そこには黒のニット帽を被った、僕より一回り大きい長身の男と歩未の好きなアイドルの少女西森柚咲がいた。

 テレビで見たことはあったけど実物は初めてだ。歩未にこの事を言えば、羨ましいのですぅ!と言われるのは間違いないだろう。

 「戻ったか」

 ニット帽の男は髪を染めた不良青年が帰ってきたのに気づく。その不良青年に付いてきた後ろの僕たちの姿を見て訝しげな顔でこっちを一睨み。おお、怖いこっちの方が不良を演じているような青年よりも、億倍怖い。いや、三倍くらい?。

 「はむ、はむ.....」

 能力を持っていると思われる西森柚咲は一人、マシュマロを両手で持って、小さな口でちまちまと食べていた。その姿は当然、僕以外にも見えているわけで

 「本物の...ゆさりん!!!」

 そう、西森柚咲のファン、いや、あの様子からして、ミハーであろう高城はもう興奮と感激の状態である。面倒を起こしてくれるなよ高城......。いや、もう早速起こしてる。

 「ハロハロのCD! 全部持ってます!!!!」

 「ありがとうございます」

 高城に自分のCDを全て持っていると言われたアイドルはお得意であろう営業スマイルを振り撒く。僕には分かるあれは演技だと!。僕もよくやるからな......。

 笑みを向けられた高城は膝を付き、神々しい何かを崇めるように西森柚咲を見ている。高城......アイドルは誰にでもあんな感じで愛想を振り撒くんだぞ。お前だけじゃ無いんだぞ!。

 「おい、何だこいつらは」

 黒のニット帽の男が髪を染めた不良青年に訊く。当然だ見ず知らずの人間を連れてきたらそんな反応だろう。

 「美砂と同じ特殊な能力を持った連中だ。確認はとってあるから間違いない」

 「美砂?本名は柚咲じゃなくて美砂なのか?」

 「そこがややこしい所なんだよ」

 僕が訪ねると、噛ませ犬的な不良少年は茶髪に染めた髪をガシガシっと掻く。

 「おい、いいのか話して」

 「柚咲を追っていた彼奴を撃退してくれた奴等だからな」

 「では、直接事情聴取してもいいっすか」

 「くだらねぇ事を聞きやがったら無事では帰れないと思え」

 友利に釘を刺す、黒ニット帽の男はドスの効いた声も迫力も似非不良青年とは大違いだ。しかし不良って高校生をすぎたら不要とはいわないのではないのだろうか。訂正、髪を茶色に染めた青年とでは話にならない。身体がでかい奴はその存在事態が驚異だ。いるだけで威圧感あるし、何より素の力が半端じゃない。まともにやり合ったら今度は僕があの殴った男の様にアザだらけになるかもしれない。

 「こわっ......友利、慎重に頼むぞ」

 「どんだけ、ビビりなんすか、さっき殴りあってた時の威勢は?! 」

 「僕は勝てるものには威勢はいいが、負けるものにはとことんビビりだ」

 「真顔でそんなこといわれても......。はぁ.....はいはい、わかりました」

 頼んだぞ友利! 僕は友利を信用してまかせると、友利があのニット帽の琴線に触れたときの為にすぐに逃げられる様に出入口の方へバレない程度に数歩下がった。ビビった訳じゃないから! ニット帽の男の攻撃範囲になる場所から離れただけだ!

 「初めまして、友利といいます」

 友利は相棒のハンディカムを華奢な手の一つで持ち、いまだ、チマチママと両手で一つのシュマロを口に運んでいる西森柚咲に近づく。西森柚咲は友利に話しかけられたのでマシュマロを一気に食べると(何故最初からそうしなかったのは疑問だが)友利の方を見てアイドル的返事を返した。

 「初めまして、ゆさりんこと、西森柚咲です」

 ほう、アイドルは女子に話しかけられると、日本のアイドル私に一般市民の分際で喋りかけんなよ!! ブース!!。とか口にする上から目線のイメージがあったが、案外そんな事はないな。

 ただ、自分で自分の事をゆさりんと名乗る、ちょっとイタイ奴ではあったが。

 「いやーアイドルって初めて見ました。まるで、作り物見たいに可愛いっすね」

 「私もそこまでお近づきになりたい」

 「まぁ高城、僕たちはここで静かに見ていよう」

 最早、暴れ馬の如く、西森柚咲に突っ込もうとする高城を僕が抑え込む。どうどう....。その間にも事情聴取は進んでいく。

 「では、まず本名を教えてください」

 「黒羽柚咲でっす☆」

 おかしいな黒羽柚咲は男の声をだすのか、なぁ....高城?。

 刹那、神速で重い友利の蹴りが高城をおそう。またか......さようなら高城。

 「てめぇには聞いてねぇよ!」

 相変わらす遠慮がなく清々しい奴だと思う。それにしても黒羽ってそういう派手な名前の方が芸能人のイメージにあっているきがする。

 「しかし、本名の方が芸名ぽいな」

 「はい、よく言われます。でも、黒い羽なんてアイドルぽくないと言うことで、西森とつけてもらいました!」

 確かにアイドルっぽい名字だな。


 「で、黒羽さんは黒羽さんでない時がある。それは自覚してますか?」

 友利は自己紹介も終わったらか直ぐ様本題に入った。

 「自覚はない。なんで知ってるんだ?」

 「テメーにも聞いてねぇよ!」

 「んだとっ!」

 茶髪の青年が黒羽の代わりに答えると友利は高城と同じように扱う。こいつ、柄の悪いやつらが怖くないのだろうか。黒羽は友利の質問され、少しあやふやに答える。自覚がないからか仕方ないのかもしれない。いや、もしかしたら自分は別人であるときがあるということには気づけているかも、言ってしまえば入れ替わるようなものなのだろうし、気がつけば別の場所にいるなんてことは起きている筈だ。

 僕の予想は当たっていた。

 「そうなんですよ。眠り病と言うんでしょうか?。最近、いつの間にか寝ていて起きると違う場所にたりする.....と言うことがありまして、お医者さんに多重人格の恐れがあるぅ~とか言われちゃってます」

 「そうですか。多重人格ではないので安心してください」

 うん、どう見ても特殊能力のせいだよ.....。しかし、こいつで確定か。口寄せの術を使えるやつってばよ!。

 友利も、もう黒羽が特殊能力者であると確信できるだけの情報は集めたので事情聴取を終了した。

 「彼女は我々と同じ特殊能力者。死者を降霊させる能力者です」

 「まじかよ」

 「その能力を使い、貴方たちの言う美砂という子を呼び出しているのでは?」

 「え、美砂」

 黒羽はその美砂という名前を友利が口に出すと反応を見せる。当然友利はそこに食いつく。

 「どうしました?」

 「何も聞くな」

 黒ニット帽の不良が友利を止める。どうやらその話はタブーらしい。しかし、そこでも突っ込むのが友利だ。

 「お知り合いですか」

 「柚咲の一つ上の姉だ。半年前に、事故で亡くなっている」


 ---------てめぇ何見ず知らずの奴にあれこれ教えるんじゃねぇよ!!!

 声がした。だが、この声はさっき聞いた声より少し、低く、迫力があるものだ。あの天然見たいなやつから出るものとは思えないが

 「ぐっ」

 西森柚咲がいきなり立ち上がり、ニット帽の不良に蹴りを入れる。それはもうすごい音がした。

 「えええええええええっ!!!」

 高城は今目の前で起きた事態にそれはそれは驚いていた。僕も驚きはしたが声にはださない。しかし、こいつに主導権があんのか!。

 「もしかして、貴方が美砂さん!?」

 友利、スクープなのはわかるが、嬉しそうにするな相手に失礼だろ!。

 「揃いも揃ってうっぜぇなー!」

 何て変わりようだ!!!。もはや、別人じゃないか。いや、別人なのか....。

 黒羽は右手を壁に翳す。するとその先にあったポストが発火した。次々に発火しまくり、あちこちを燃やす、これ、死ぬんじゃないか......。

 「おお! すっごい能力!」

 友利は興奮した様子でハンディカムにこの様子を撮影している。高城は僕の足元に抱きついてきていた。やめろ僕にそんな趣味はない。

 「やめろ美砂! この場にいる全員を焼き殺すきか!」

 「チッ........そいつはセンスがないな」

 ああセンスがない。人間の丸焼きなんて、寧ろセンスが無さすぎるだろ!。くそ、この女とは絶対に関わりたくなかった!。もうすでに関わってしまったから諦めるしかないか......。

 黒羽が指をならすと、先ほどまでの炎は幻影のように消えた。


 「驚きました、自由に呼び出せる訳ではなく、美砂さんのほうに主導権があるんですね」

 「何か文句あるかよ」

 黒羽に憑依した美砂と呼ばれる女は黒羽が先程まで座っていた椅子にふんぞり返る。なんて、不完全な能力だ!。具体的には近くにいる人間の命が危険にさらされるという伴う所とかとくに!。降霊する相手は選べ!。

 「と、いうことは類いまれなる憑依体質、そして、その柚咲さんに憑依する美砂さんが発火能力を持つと」

 「....ああ」

 「この二人との関係は?」

 友利の言っているこの二人とはあの不良と似非不良少年の事だ。多分不良仲間じゃないか。この女も不良みたいだし。

 「生きていた頃、やんちゃしていた仲間だ」

 「何故、妹さんが追われているかご存じですか?」

 美砂というある意味友利より危険な女は、黒のニット帽の不良仲間に言ってもいいと顎先をむけることで許可をだす。言えってころだろう。黒ニット帽の不良は懐からスマートフォンを取り出した。

 「こいつだ。どっかの現場で柚咲が間違えてもって帰ってきたテレビ局の大物アナウンサーのものだ。それにメールが届いて柚咲が読んじまった」

 「ああいう奴等は腐っているからな、金の猛者だ。危ないの金に手を出すとか、麻薬売買しているヤクザとつるんでたりしているから」

 しかし、やはり知ってはいけない秘密を知り追われていたのか。何かのいざこざの正体が一通のメールを見たことだったとは.....。それがここまで大事になるなんて現役アイドルは思いもしなかっただろう。

 「お前の言う通り、金の使い込み、ヤバい連中との付き合い。サツに持っていけば間違いなくしょっ引かれる内容だ」

 「電源は切ってありますか.....?」

 「嗚呼、だが昨日までは切っていなかった」

 「ならGPSでこの辺にいることはバレてますね.......今更返した所で無事ではすまないだろうし、警察に行けば黒羽さんがそのプロデューサーを売ったことになって芸能活動ができなくなる」

 完全に詰んでいるな.....。もう、いっそのこと、そのプロデューサーを業界から消したほうが早い気がする。

 「ならテレビ局ごと燃やしてやる!」

 成る程、その手があったか、僕はその案に賛成する。

 「嗚呼、それがいいだろう。だが、燃やすのはそのプロデューサーとその関係者だけにしろ。善良な人間まで殺す必要はない」

 黒羽にとりつた美砂は僕の言葉に成る程と頷く。

 「確かに善良な人間まで燃やすにはいけないな。よし、そのプロデューサーと関係者とやらを燃やす」

 「いや、燃やすなよ!。ダブル 馬鹿か! 。そんなことをしたら妹が警察につかまるわ!。あとお前は唆すな!」

 「お前何様だ! ああん! 」

 友利の言いさに声を荒くする美砂。僕も友利の言葉に異を唱える。

 「そそのかす? 僕は燃やすなら悪だけにしろといっただけだ。そうさ、僕は悪くない。悪いのは腐った業界さ」

 「いや、燃やすのに賛成していた時点で悪いただろ! .......はぁ美砂さん貴方は妹さんを少年院送りにしたんですか」

 美砂は友利が言った少年院という言葉を聞き苦々しい顔をする。あれって金さえ払えば入らなくてもいいじゃなかったか?。

 「くっ、そいつはセンスがねぇな」

 「冷静になってください。妹さん助けたいんですよね」 

 「もちろんだ」

 へぇ、友利には何か策があるようだ。どんな策なのか。友利は悪い顔をしている。

 「ならこっちから逆に相手を脅しにかかりましょう」

 「......勝算は」

 「私は脅す作戦を立てるのが大の得意なんです」

 「気っ風が良いなぁ。分かった言う通りにしよう」

 「そこのお二人も協力してください」

 「ああ、美砂が言うなら」

 「もちろんだ」

 その時、柚咲が一瞬、かくりと船をこぐようにふらついた。だが、直ぐに体は安定する。雰囲気が変わった。いや、戻ったのだ。いつの間にか赤かった瞳も翡翠色に戻っている。

 「あれ?ひょっとしてぇ、また私寝てましたかぁ?」

 「お疲れなんですねぇ。まぁ、焼きマシュマロでもたべて落ち着いてください」

 「あ、いつの間にかマシュマロ、焼きマシュマロに!」

 ホントだ。美砂のさっきの発火で燃えたのか......。黒羽はまたチマチマと焼いたマシュマロを食べ始める。

 「.....」

 「おーい。高城、壁の方に向かって何をするきだ?」

 「私はゆさりんと......今後どうせっすればいいのか....さっぱり分からない」

 アイドルのあまりの変わりようが答えたのか高城は頭を壁に打ち付けるということを繰り返していた。取り敢えず忘れろ。そして、それやめろ怖いから。ここにいる皆ドン引きだぞ。

 壁打ち高城はほっておいて、その作戦とやらを聞かせてもらおうか。

 「では、まず作業着店にいきますか」

 「「は?」」

 「お二人には防寒服が必要なので」

 防火服。それを使うということは。

 「成る程、その防火服をしたに着こんで燃え盛る建物から安全に逃げるのか.....」

 「いや、だから、建物は燃やしませんって、燃えるのは美砂さんのお仲間の二人です」

 友利が何をするのかそれを聞いて何となく分かったが敢えてボケる。

 「え、じゃぁ二人に火をつけて、燃え盛る体でそのプロデューサーを拘束でもするってのか?なんて、シュールな光景だ......」

 「あなたが馬鹿なのは分かってましたが、なんでそんな発想がでてくるか.......」

 友利からあきれられた顔をされたが、まぁ自分でもそれはないと思ってしまった僕であった。



[42107]  第十回 プロデューサー私はてめぇを殺したい。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/20 13:40
 友利奈緒の立てた作戦はなかなかに面白いものだった。しかしよくもまぁこんな作戦を直ぐに思い付いたものだ。

 「それでは黒羽さん電話を」

 「ああ、じゃなかった、はいぃ!」

 友利に促され、黒羽は自分のスマホからそのプロデューサーとやらに連絡した。ピッ、数コールで大手プロデューサーは出る。そして、一方的にこの場所にこい、今ならまだ赦してやると、絶対に思ってもいないことを述べ切ると直ぐに電話を切った。こういう地位に寄生して自分の地位に甘んじて何をしてもいいと勘違いをしている大人は本当にいる。他人の事で僕には関係ない筈なんだが気に入らないな......特にもう西森柚咲が諦めた観念して電話をかけてきたとか思っている辺りが。

 「じゃぁその指定された場所にいきましょう」

 友利の言葉にこの場にいる全員が頷いた。



 黒羽が呼び出されたのはもう使われていない海近くの倉庫の前だ。そこには車が三台あり、ボディガードなのかなのか黒ずくめの男たちが四人いた。彼らはみなプロデューサーと思われる男の後ろで待機している。

 その黒ずくめの男の中達は油断しまくっている。所詮はガキを脅すために呼び出されただけだからと警戒していないのだ。バ·カ·目!そこが命取りになったな!。一台の車の横に待機している二人の黒ずくめに近づく、黒ずくめ、だが彼らは偽物だ。今は被ってはいないが、ニット帽の男と茶髪の青年である。

 彼らは、黒ずくめ二人に近づき、首に腕を固めた。締め技で意識をかりとろうとしているのだ。

 締め技で意識を失うメカニズムは、一般的に、首の動脈が圧迫されて脳への血流が行き届かなくなるからと言われているが全く違う。正確には頸動脈洞と呼ばれる場所を強く圧迫することで迷走神経が過剰反応を引き起こし、その信号が心臓に伝わって脈拍が低下、その際血圧が下がり、脳への酸素供給が足りなくなって失神する。原理としては首吊りと同じで、眠るように意識が無くなる。ただし、これはある程度の知識があるからこそできることで、無闇に首をしめれば、ただの窒息、苦しい思いをするだけで、意識は無くならない。意識が無くなったときはそれは窒息死だ。使用の際は要注意だが僕が教えたから大丈夫だろう本に読んだことがあった内容をそのまま教えただけだからな!。

 黒ずくめの男二人は意識を失った。意識のなくなった音達を、不良二人組は車の後に隠すと、彼らが立っていた場所に立った。これで第一の準備は整った。丁度、黒羽も来た。さぁ悪徳プロデューサーあんたの無様な醜態を見せてもらおうか!。

 「やっと、お出ましか.......」

 「あの~何で追われているか分からないんですけど~ゆさりん何か、しましたけぇ~」

 「とっと、俺のスマホを返せ! 」

 黒羽はスマホを相手に見えるように両手で前に出す。

 「これですかぁ~」

 「そうだ!」

 「返したところで、ゆさりんピーンチみたいな?」

 「どのみち、お前に業界での未来はない」

 悪徳プロデューサーは偉そうにそして、得意げにそう言うと、黒羽に近づいていく。

 この世を腐らせる奴らには面白い事に共通点がある。その事態の本質を何も知らないのに知っている気になっているということだ。そういう奴は視野が狭い。今だってそうさ、自分は駒をとる方で相手は取られるだけの言いなりの存在だと思い込んでいる。権力があるから相手は絶対に逆らえないとそう思っている。同じ人間なのに.......。自分は上位の存在でそれ以外は下だと。だがその驕りが悪徳プロデューサー、今日あんたを殺す。

 「私の未来がない?.......くそがそれはてめぇのほうだ!」

 黒羽が手を震うと、高級外車のそばにいた、二人組が急に燃え上がった。悶えながら倒れ、地面をのたうち回るように這いつくばる二人、炎が消える頃には倒れた二人はピクリとも動かない。だが、これは演技だ。あの二人は下に防火服をきたあの長身の不良と似非不良少年だ!。故に実際の所は怪我ひとつない。

 「な、何が起きた......」

 今目の前で起きた、日現実的な出来事に、困惑の表情を隠せない。悪徳プロデューサー(笑)。それを見て面白そうに口の端を吊り上げ、笑い目を細める黒羽はまさに空想に出てくる悪魔よりも悪魔っぽい。

 「てめぇらはあたしを追い詰めていたつもりだったんだろうが、逆にあんたらが追い詰められていた。その事に気付けねぇなんて.....全くもってセンスがねぇなぁ!」

 「だ、誰なんだお前は、本当に西森柚咲なのか......」

 そのあまりに知っている人物像とかけ離れている姿に別人に思えたのかプロデューサーのけ反りながら震えた声でそう言う。

 「何時からあたしが西森柚咲だと錯覚していた!」

 「な、何!、ならお前はいったい...」


 そう、今の黒羽は黒羽であって肉体こそ共有しているが全くの別人だ。だが、美砂その台詞言う必要があったのか?。

 「そうだなぁ、今日の私は悪を裁く西森柚咲だ!。私は自分が成功するためならなんだってやる。私にたてつく奴なら、そう、悪なら迷わず消す! 」

 美砂は更に腕を震う。おっと、僕の出番か、近くの倉庫の影で隠れていた僕は、ボディガードの一人に乗り移り、そいつのポケットからナイフを拝借すると太ももに突き刺した。あれ、やばい超痛い、泣いちゃう.........。

 「イタァァァァァァァ!!!!!!!」

 「ハハッ!もう面倒だ!。私がお前らを全員始末してやるよ」

 美砂は更に腕を振るった。すると僕の乗り移ったボディガードの隣にいた奴も吹き飛ぶ。僕は次の瞬間、自分の体に戻された。あまりの痛さに死ぬかと思った。

 もう、何が起きているか分からず、ただ混乱しているであろうプロデューサーは、自分が殺されそうになっていることにやっと、気づいたのか、慌てて逃げ出そうと車に乗ろうとするが次の瞬間、能力を使って気配を悟らせなかった友利に蹴飛された。ふ、地面に這いつくばってザマァないな!。

 美砂は足音が相手に聞こえるように一歩一歩と地面に足を着けながら地べたに這いつくばるプロデューサーのオッサンに近づく、そして、しゃがむと髪の毛を引っ張って自分と視線を合わせる高さまっで持ってきた。

 「私はてめぇを何時でも闇に葬ることができるんだよ。分かったか?」

 「へ、ご、ごめんなさい!、ここ、降参です!」

 「このスマホは返してやる。だが、次こんなことがあれば一瞬で塵にする!」

 美砂は掌からプロデューサーに面前で炎をだし、その場を離れる。解放されたプロデューサーのオッサンは車置いてすごい速度で走り去った。陸上選手にも勝るとも劣らない速さだった。やはり人間窮地に追い込まれると凄い力を発揮するものなのか.......。でもこれでプロデューサーは黒羽に簡単には手を出せなくなった。友利の作戦は成功ということでいいんだよな。

 友利の作戦は単純だ。西森柚咲に手を出せば逆にあんたらが痛い目見るぞ、と黒羽は恐ろしい存在だぞ、とそのプロデューサーとやらに認識させるただそれだけ。あとは星ノ海学園に転入させれば今、この現場にいた連中が科学者に伝えたとしても手出しは出来ない。本当に僕にやった茶番劇もそうだったが、脅す作戦が得意らしい。

 「これで終わりか.....」

 僕は辺りを見渡す。警戒は怠っていないつもりだが、友利が今日死にそうになったのは確かだ。だから他にも死が来るかもしれないと思いながら探してはいるが......危険なものは見当たらない。意識を失っている男たちはまだ意識を失ったままだ。危険要素はないが注意しないと全てが台無しになる。そうなれば僕はまたあの虚無感に苛まれるまれることに....。

 「なんすか?」

 「いや、別に...」

 いつの間にか友利を見ていたようだ。友利は訝しい表情で僕を見たあと黒羽と、不良二人のもとに向かう、僕もその後をついていった。

 「ご協力ありがとうございました。迫真の演技でしたよ」

 「礼をいうのはこっちの私はの方だ。これであの連中は柚咲に手出しできないだろう」

 「いえ.......まだです」

 友利は能力を使える者を捉え実験を繰り返す科学者の話を美砂とその仲間の二人に話した。

 「と、いうことで柚咲さんには我々の学校に来てもらいます」

 「な、なんで.....」

 髪を赤に近い茶色に染めた青年は今の話の内容を理解していないらしい。

 「それはさっきいった通りです。我々の学校が日本で柚咲さんにとって安全な場所なんです」

 茶髪の青年は顔を伏せる。そんなに黒羽、いや、美砂と離れるのが嫌なのだろうか。もう会うこともないと思っていた人間に会えたときの気持ちはほんの少しはわかる。......こいつはもう会えないと思っていた奴と会えたときどう思ったのだろうか?。

 「それは、柚咲にとって助かる話だな.......そうしてくれ」

 「ちょっと待て! えっと....能力が無くなったら、もう二度と美砂にはあえねぇってことか...?」

 青年は伏せていた顔を上げ、自分に理解でき、なおかつ気になったことを、だが耳にしたくないことを聞いたのか掌からを強く握っている。

 「はい。そうなります。ですが故人ですよ。今まで出会えていた方が、不自然じゃないですか...」

 「で、でも!」

 「ショウ!。こいつの言う通りだ!。もう美砂はこの世にいないんだ! ここらで美砂とはお別れそう決めないか? 」

 「.......分かった。なら、せめて、最後に思いの丈を伝えさせてくれ」

 このショウというやつは死者に何を伝えようとしているのか。そして、何を語るのか僕はその姿をほんの少しだけ自分に重ねて見てしまう。

 ショウと呼ばれた青年とあの長身の不良と美砂をおいて僕たちはその場を離れた。しかし、あまり離れるすぎると逃亡という低い可能性が行われた時に対応できないので、僕達は近くの倉庫の影でその様子を見ていた。あくまでももしもの為であって、覗き見をしているわけじゃない。

 「ていうか何で隠れる必要があるんだよ」

 「まさか、空気を読めない馬鹿とは......」

 「お前、モテないだろ」

 友利が戦慄の表情でそういう。ニット帽の奴は僕をモテない扱いした。

 「あんたら本人前にしてよく、ずばずばと言えるな......」

 僕はこれでも空気は読める筈だ!。本当に失礼な奴等だ。

 茶髪は顔を赤くして、美咲を見る。


 「とっと.......くそ、こう言う時に言葉が出てこねぇ」

 「え!? ショウもしかして私に気があったのか?」

 え.......マジ。某ショウとは照れぎみに俯き「嗚呼」と肯定する。

 「そうだよ.......俺は美砂!。お前のことが好きだった!.......恥ずかしい話だけど、恋しちまっていたんだ......なのにその想いを伝える前に逝きやがって!」

 溜め込んできた想いを吐き出すように、自分のなかで全てを終わらせるために.......ショウと呼ばれている青年は必死に言葉を並べる。

 「それも原付のニケツ事故で、俺は軽い怪我ですんで、お前を.......殺したのは俺で!!!」 

 「そっか......そいつは大変な思いをさせ続けちまったなぁ」

 美砂はショウに近づくと慰めるように、そして受け入れたと言わんばかりに肩を優しく軽く叩く。
自分の想いを、ずっと言えなかった事を死人に受け入れてもらって、心に刺さっていた刺が消えたのか、一人の青年は泣いていた。

 「泣くなよ、そういうスリルを求めたのはあたしだ、自業自得だ。......ショウ私のことは忘れて明日からは自分の人生を歩め。死人の事を何時までも引っ張るな。でないと、お前の人生狂っちまってこの先幸せになれないぜ........」

 「分かった......。分かったよ美砂。お前のいない道を俺は、進む......。お前の想いを断ち切って生きていく」

 サワリッと海の潮風が吹いた。それと同時に美砂の薄い赤が混じった甘栗色の長い髪がなびいく。

 「よし、二人とも幸せな人生をおくれよ。.....ずっとありがとな....最高に楽しかったぜ!」

 こうして、少し長い生徒会の今日の活動は終った。最後に思いを伝えられて赦されたあの不良少年はこれからは自分の道を進み出すのだろう。死者から赦しを得る。その事が僕にはとても複雑で妬ましく思ってしまった。

 本当に心の底から妬ましいよ。だって、僕はこの世界とは別の世界で殺してしまった白柳さんから赦されることもないのだから.....。




 帰りのバスが来るまでの間、僕と友利と高城は同じバス停にいる。時間はもう夜の十時をすぎており、家に帰りつくのは零時を過ぎるかもしれない。歩美には友利が策を立てたときに今日は遅くなると連絡しておいたけど心配しているかもしれない.....。

 しかし、本当に長かった二回目の生徒会なのに何でこうもトラブル続きなんだろう。もう呪われてるとしか思えない。

 呪いをかけられている疑いがある、隣にたつ銀髪サイドテールは戦場で磨耗した兵士のような、疲弊した表情をしていた。もっとも、ほとんど表情に変化がないので僕の勘違いかもしれないけど。

 「なんとか片付きましたね......」

 「はい。それにゆさりんが私がいる学校に転入してくるなんて.......やたーぁ!!!ヒャホーイ!」

 「引くな!」

 友利と高城を今のやり取りを見たあと、僕は前々からきこうと思っていたことを口にした。

 「....なぁ、あんたらは何時もこんなことをしているのか?」

 「はい。特殊能力者を二度と兄のようにあわせないようにするためです」

 友利の兄、友利一希。この世界とは別の世界で僕は友利とその家族、周辺、つまりは人間関係を探った事があった。だから、僕は友利の兄がどこにいるかを知っている。

 現在、友利一希は星ノ海学園からかなり距離がある場所の病院に入院しているらしいが、入院している理由は友利から聞いた科学者の存在が関わっているとしか僕には思えない。友利の科学者の話から推測するに、友利一希の病状は良くない。だけど気になった、友利奈緒という存在の原動力となっているその兄は今どういう状態なのか。悪意はない、ただ純粋に一度は消そうと思った相手のことが気になった。

 「で、実際その科学者に捕まったお兄さんはどうなったんだ?」

 ピタリ、と友利の表情がどことなく固まったように見えたのはきっと気のせいではない。表情の変化こそ少ないが間違いなく不意を付くような質問だったのだろう。友利はこのまま黙りを貫くかと思われたがそんなことはなかった。

 「.....特に隠すことでもないので行きますか」

 「え、何処に」

 「兄の.....所にです」



[42107]  第十一回 あ、赤い....
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/08/20 13:42
 ゆっくりと音を鳴らさないように、玄関の扉を開け、僕は中へと入る。慎重にしなければ寝ているで歩未を起こしてしまいかねない。ゆっくりとひっそりと存在を気取られられないように.....。

 靴を脱ごうとした瞬間、パチリと玄関と廊下の電気が点き、僕は一人の影に覆われた。誰かと後ろの廊下を見れば、まだ少し幼さが残る、我、妹が実体として、存在した。頬を膨らませ、両腕を前組み、いかにも怒っていますという表情だ。その少し怖いよ......。

 「むぅ.....」

 「その、えっと、歩未さん.....どうして起きてるの?」

 「有宇お兄ちゃん、遅い!」

 どうしよう、歩未、本気で怒ってる......。いい言い訳を考えるんだ乙坂有宇!。

 遅くなるのは伝えてあっただろ、そっちこそ何でまだ起きているんだ。だめだ!。これでは兄として妹を傷つけてしまう。妹を傷付ける兄は死すべし、兄とは常に妹に優しく、そして、彼氏を連れてきたときには厳しくするべきだ。そうすることがこの僕、妹マイスターの義務でありでな.....あれこれ自分に言い訳になっている。

 何も隠す事はない。遅くなったのを謝って、生徒会が忙しかったと言おう。最悪は生徒会に罪を擦り付ければいい。よし、それだ!。

 「歩未......遅くなって本当にごめん!。実は、生徒会に入ったんだけど、こんなにも忙しいとは思っていなかったんだ」

 僕は靴を脱ぎ終えたあと、歩未の前に立つと謝罪の言葉とまごうなき事実を話した。で、勝手に生徒会に入ったことを怒られるか、何で言ってくれなかったのかと、悲しまれるかするかと思っていたのだが......。

 「え、有宇お兄ちゃん生徒会に入っているの! 」

 えっと、何か驚かれただけであっさりと赦されました。歩未、なんて、なんて、いいやつなんだ!。

 「え、うん、言うの忘れてた」

 「えーそう言う大事な事はちゃんと教えてよ!。」

 「嗚呼、今度からそうするよ、所で今日の晩御飯は?」

 僕が話を逸らすため、晩御飯の献立のことを口にすると、歩未は得意気な顔をする。

 「今日のメニューはあゆ特製のて野菜ゴロゴロカレーなのですぅ!」

 「おお!。美味しそうだな!。もうお腹ペコペコで......」

 「じゃ、沢山食べて疲れを癒してくだされー!」

 「嗚呼!」

 話を逸らす話題に乗っかるところも、歩未、僕は好きだが、悪い男には引っ掛かるなよ.....もしもの時はこの僕が.....。


 「できましたー!」

 「いただきます!」

 歩未と僕は二人一緒に野菜ゴロゴロカレーを食べ始める。歩未は僕が帰ってくるまで待っていたそうだ。乙坂家のルールと言っていたけど、それういえば僕の知っている別の世界の歩未も同じことを言っていた。部活で帰りがおそくなった時も待っていたんだっけ、久しぶりに聞いた気がする。

 にしてもこのカレー凄く赤いのに甘いなぁ気のせいかなぁ~。僕、認めろ、多分気のせいじゃない。一人で二役を演じていると歩未が味の感想を聞いてくる。

 「有宇お兄ちゃん、どうかな?」

 「うん。すっごく美味しいよ。それよりこれ隠し味には.....」

 「乙坂家秘伝のピザソースでなのでござる!」

 うん知ってた。ピザソース........ほんと、どうしてくれよう。

 真っ赤なピザソースカレーを食べている途中、テレビを見ていると音楽の紹介番組で西森柚咲の入っているバンドハロハロのが流れる。

 「あ! ハロハロ!」

 歩未はスプーンを持つ手を止め、テレビを食い入るように見る。僕も釣られてみるがやっぱり今日あったあいつは本物だったことを再認識した。それをポツリと呟いていた事は失敗だ。

 「やっぱり、本物なのか」

 「何がでしょうか?」

 「え、西森柚咲とその本人が」

 「え!もしかして有宇お兄ちゃんの知り合いなんでしょうか!」

 しまった......でも口止めもされていないし話しても問題はない、よな.....。

 「来週の月曜、うちの学校に転入してくる」

 「ええ!それはめっさ凄い事なのですぅ!。あゆも、逢えたりしないかな」

 「まぁ、可能性はあるかもな」

 「うぉぉ!それは本当に凄い事なのですぅ!」

 その時、興奮のあまりか、ブシュウーと歩未が鼻血を噴き出した。僕はポケットの中に入れっぱなしだったポケットティッシュを取り出すと歩未に落ち着けと言い、鼻血を噴き出す正面の歩未の席まで全力移動、ティッシュで歩未の鼻をつまむ。危ない危ない。危うくカレーがさらに赤くなるところだった。しかし、ここまで興奮するか.....そこまで西森柚咲にご執心とは。やはり高城とはあわせないように細心の注意を払わないとな、この世界が破滅する......。


 晩御飯を食べ終え食器洗いを手伝った後、僕は風呂に入り、あがったその後、少し勉強を、歩未はその間、何時使っている望遠鏡で星を見ていた。

 「よし、これで終わり。歩未そろそろ寝るぞ。明日も学校だし」

 「うん。今日は彗星が見れた上にゆさりんと逢えるかもしれないので感無量で寝付けるのですぅ!」

 「そいつは器用だな」

 感慨にしみじみと浸かりながら眠るなんて本当に器用すぎる。

 「早く有宇お兄ちゃんの学校に来ないかなぁ!」

 「来るのは来週の月曜、それ変わらないんだから落ち着け、寝れなくなるぞ。.......そうだ!。歩未は見たい彗星とかないのか?」

 僕は話題を西森柚咲からそらすために見たい彗星はないかと歩未に聞いてみる。歩未は少しの間う~んと唸りながら考えると彗星の名をポツリと呟いた。

 「長期彗星かな....」

 「それはどんな彗星なんだ?」

 「何百年の一度しかやってこない彗星なのでござる!」

 何百年に一度しかやってこない彗星。歩未がその彗星を見れたらいいなぁと心から思った。


 歩未が自分の布団に入ったのを確認すると僕は電気を消す。僕も自分の布団に潜ると、今日のこと思い返した。

 何とか乗りきった。よくやったと自画自賛したっていい。友利を死から守ったんだ。今日一日を乗り越えた。僕は未来を変えたんだ。今日、友利は死ななかったその事実が未来が変わった証拠だ。今のところあれ(死)は感じない。本当に終わったんだよな。まだ油断はできないけど.....。

 明日、友利と友利の兄の病院に行くことになっている。明日は土曜日、午前中で授業が終わるから午後から病院に向かうのだろう。前に友利一希望のいる病院は距離があった....往復で帰ってくるのは、今日より少し早いくらいになるかもしれない。

 そうだ、歩未にまた怒られるも嫌だし明日の朝伝えないと。今日みたいに待たせるのも悪いし一人で食べてもっらっておくか......。

 少しずつ意識が途切れどきれになる。瞼が重くなり、体が沈んでいく感覚を覚えた。今日一日ずっと辺りに気を配っていたからか疲れているのか、酷く眠い。

 眠気に襲われながらも、僕の思考はまだまわる。


 友利一希は科学者に捕まっていた。友利にどうなっているのかなんて聞いたが酷い状態と考える普通だ。

 友利の捕まれば人生お仕舞いという言葉。その意味を僕は知ることになるのだ。実際に友利とその兄は科学者に捕まっていたのはずなのだから........。

 そこまで考えた後、僕は眠気に身を任せ規則的な息使いになった。



[42107]  第十二回 知らぬ能力 [訂正版]
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/09/17 08:15
 たった一人、僕は、広い広い、砂漠をひたすら歩いていた。太陽が砂漠全体を熱している筈なのに僕には暑いという感覚はもうない。感覚を消すという能力を奪って持っているからだ。水も必要ない。睡眠も何もかも生きるために必要だったものは今持っている能力でなんとかなるから。資金は株で集め最早大きな会社の三つや四つを立ち上げることもできるほどに持っている。

 だけど、早くしないと金は兎も角、今、持っている全ての能力が消える。まだ目的の過去を改変することができるような能力者の居場所を掴めていない。

 地図を見れば今歩いている少し先に能力者の団体がいる。あいつらが今日の僕の標的の一つだ。能力を奪えばどんな能力か分かる。今回の標的の中に視認するだけで相手の能力が分かる能力者がいるらしい。この情報は信憑性が高い。

 いや、そうでなくては困る。僕は過去を変えないといけない。僕の大切なたった一人の家族を生き返らせる為に。

 「歩未、必ずお前を生きかえすから待っててな.....」

 死んだ妹を生き返らせる、その為に僕は今日もまた、能力者から能力を奪っている。








 嫌な凄く気分が悪くなる夢を見ていた気がする。きっと昨日、ナイフを持った男と敵対したり、またまた、ナイフを持っていたボディーガードに乗り移り、太ももにナイフを突き立てて、その痛みで泣きそうになってしまったからだろう。思い出したら涙が出てきた。

 「....ふぁ」

 ただの欠伸のせいだった。

 何時も通りの朝、携帯が表示する時刻は四時を少し過ぎたところだった。眠っていた部屋の窓から見える外はまだ暗く太陽は出ていないが一時間もすればあっという間に空は蒼くなって、太陽が顔を出すだろう。

 台所に行き、ミネラルウォーターを冷蔵庫の中から取り出すとコップを食器棚から出し、テーブルの上におき、その中にキンキンに冷えた水を注いでそれを仰いだ。

 冷た透明な液体が目覚めてからからだった喉を潤すのを感じる。その冷たさに寝起きで少しぼんやりとしていた思考も少しずつまわり始めた。

 「よし、行くか」


 テーブルの上に置いたミネラルウォーターを冷蔵庫に片付け、使用したコップを洗い、布巾でコップを拭くと食器棚へと戻した。使ったら片付けるは基本中の基本である。


 その後、動きやすい格好に着替えると僕は今日も走り込みに併設のマンションを出た。トレーニングは計画性を持ってやりたい所だが、この体に僕は今だに違和感があるのだ。それはこの世界の僕が運動部に中学時代に入っていなかったことにせいなのだろう。筋力や体のキレがないため、前にやれていた動きもできなくなっている。昨日、ナイフを持った男とボクシングスタイルでやり合った時はアドレナリンのおかげで現役時代にはひどく劣るものだったが何とか動けた。だが、それではだめだ。僕がいた世界の自分の体のように頑丈でなければもしもの時、歩未を守ることができない。だから今は計画性を持って少しずつ筋肉をつけるのではなく、多少オーバーワークでいいから筋力を確りとつけてボクシングをやっていた現役に匹敵するくらいは動けるようになっておかなければならない。それに体を動かせばこの身体の感覚も掴めて一石二鳥だしな。そんなことを考えながら僕は地面を蹴り走り出した。




 十キロを走り終えその後、直ぐに帰宅しシャワーで汗を流す。そして制服に着替えて、歩未が起きる間での三十分間のリビングで勉強する。これはもう僕の日課みたいなものだった。それに時間は限られているのだ上手くつかわなければ。

 暫く勉強していると歩未が目を覚ました。

 「有宇お兄ちゃんおはよう」

 「おはよう歩未、良く眠れたか?」

 「はい、なのですぅ。でも寝た時間が遅かったからか少し眠いかも....」

 歩未は布団からでると、その場に座り、うーんと両腕を上へ向けて伸ばしたり、寝癖で少し跳ねた髪を手櫛で整えていた。そんな歩未の愛らしい姿を見ていると今日が始まったんだぁって思えてきて何だか楽しい気分になる。早起きは三文の徳というが歩未の寝起きの顔はそれ以上の価値があると思えてならない。誰かがシスコンといった気がしたが空耳ということで......。

 何時ものようにと言ってもこの世界にきてからは三日目になる朝食の用意を手伝って僕と歩未は一緒に朝食をとる。メニューは昨日の特製カレーだ。この世界の歩未の料理は僕のいたこの世界とは別の世界の歩未の味と変わらない。ピザソースはあらゆるの世界の歩未のおともなのだ。

 食事の途中で歩未に今日も遅くなることを伝えないと昨日のようなことになってしまうということに気付いた。だから家を出るときに歩未に今日も遅くなることを伝えておく。昨日のように遅くまで待たせるのは申し訳ないからだ。

 「歩未、実は今日も帰りが遅くなるかもしれないんだ、生徒会で......」

 「え、今日も!」

 「ごめん。だから今日の夕食は僕を待っていなくていいから、先に食べててくれ」

 「わかったのですぅ.......もしも帰りが早くなるときは教えてね」

 歩未は寂しそうにそう言うと朝食を先程とよりも少し遅いペースで食べ始めた。朝食の時に出す内容じゃなかったかもしれない。しまったな.....。

 「ああ、その時は連絡する。昨日よりは早く帰ってくると思うからさ、元気だせ」

 僕は歩未の頭をポンポンと軽く叩く。こうすると僕の知る歩未は嬉しそうにするのだが、この世界の歩未は不思議そうな顔をしていたが元気そうな表情になって頷いた。





            1



 午前の授業が終わり、放課後になる。今日の授業は、正直に言うと寝てた。それはそれはぐっすりと。昨日は凄く気を張っていたしそれに命を落とすかもしれないような場面にも遭遇し、こういうのはおかしな話だけど馴染んでいない自分の身体を必死に動かしたから、身体が疲れているのかもしれない。

 自分の席の椅子の背もたれにもたれかかり、今朝歩未のやっていたように腕を伸ばしたりしていると友利が僕の席に何時もの無愛の表情できた。昨日、連れて行ってくれるといった友利の兄のところへ行くから僕を呼びにきたのだろう。


 「では、行きましょう」

 「ああ」

 友利に返事を返したのは僕だけで後ろの席にいる高城は何も言わない。高城は行かないのだろうか。

 「高城、あんたは行かないのか?」

 「私は遠慮しておきます。お二人で行ってきてください。それに、私はゆさりんが月曜に転校してくるのその日の為のシミュレーションをしなくてはならないので! 」
 
 「結局それか! お前どんだけアイドル好きなんだよ引くな! 」

 だらしのない顔で夢想している高城に友利の鮮やかな引くなが炸裂する。他人の趣味に別にどうこういうつもりはないが、その何を考えているか分かる顔はやめた方がいい。

 教科書類をまとめて鞄に入れると昨日の女子が話しかけてきた。

 「あ、あの乙坂君!」

 「えっと、佐藤さん?」

 「今日暇? よかったら食堂で一緒にご飯とか....」

 友利と高城がこっちを見ている。どうするのかと聞いているのだろう。

 「ごめん実は用事があるんだ。また今度にしてくれないかな」

 「なら、明日とかは何かある?」

 僕はスマホを弄りスケジュールを出す。特に何もないがやはり生徒会に入っている以上いつ呼び出しを受けるか分からない。だが、ある程度社交的である面をアピールするためにここ誘いに乗っかるのが定石だ。だが、内容次第だな。

 「明日は日曜だし何も今のところ予定はないけど.....」

 「なら明日私の部屋にこない?。実は乙坂君を紹介してほしいって女の子がいて、隣のクラスの子なんだけど.....」

 そういう誘いか......。良い印象を植え付けるのには持ってこいの機会かもしれないけど、歩未との時間も減るし断るか。ただでさい寂しい思いをさせてしまったんだその埋め合わせくらいはしないと。

 「見ず知らずの女の子の相手か。ごめん、一寸、無理かな.....」

 「そっか、引き留めてごめんね」

 「いや、佐藤さんが謝ることないよ。こうして転校生の僕に気安く話しかけてくれるだけでもありがたいし.....。じゃ僕はこれで」

 僕はそう言うと鞄を持って下に降りた。友利も一緒についてくる。その時、佐藤さん友利のこと睨んでいたけど友利、あんた、どんだけ女子に嫌われてるんだ。生徒会長という奴はイメージ的には人気者だが、この学校の生徒会は思った以上に周りから嫌われている。だが、あからさまに嫌がらせを仕掛けてこないのはこいつが危険を承知で能力者確保に向かっていることをこの学校にいる生徒はどこかで理解しているからなのかもしれない。それでも強引なやり口や手段を選ばないことに不満を持っている者は多いようだ。


 「モテモテですね。顔は良くてもただのカンニング魔なのに」

  あと、性格にも不満をもっている事に気づいた今日この頃だ。

 「茶化すな、そしてカンニング魔って言うな、カンニングも立派な努力だ」

 「努力する方向性が違うと思いますけど......そんなんじゃ身に付きませんよ社会人になってからどうするつもりですか?」

 友利の言うことは正論だ。思わず頬をひきつらせたが直ぐに止め、堂々とした振る舞いを見せてやる。

 「確かにそれは正論だ。 だが、僕はこのスタイルを変えるない! 屁理屈と絡め手ありとあらゆる不正で社会を生きてやる! 」

 「いや、そこは正攻法でちゃんと努力してくださいよ....」


 流石にこの言葉にはぐうの音もでなかった。




 学校から出て駅につくまでの会話や出来事は割愛する。特に特筆す点は無かったのだ。あったことといえば迷子の僕達と同じくらいの年齢の外国人と遭遇して道を聞かれたくらいだ。相手は日本語を話せない普通の外人だったのでそれには友利が対応した。何かやたらと僕を見ていた気がするが多分気のせいだろう。

 駅について友利が発した言葉は昼食の有無の確認だった。

 「お昼はまだですよね?」

 「まあ」

 「ではあのお店で駅弁を買いましょう」

 友利が指先で示す店は確か有名な駅弁店だ。糸をぴっぱると温かくなる弁当だったか?。有名なだけあって列ができていた。僕は並ぶのは好きじゃなし売店でサンドイッチをかうことにする。ふと先程まで近くにいた友利がいなくなっていた。誘拐でもされたかと焦って周りを探す。だが誘拐なんて物騒な可能性の危惧は杞憂で終わった。

 友利は駅弁店の列に並んでいたのだ。思わず呆れまじりのため息が出た。僕はそれを確認すると近くの売店へと足を運んだ。




 「これこれ! 糸を引っ張ると温まる牛タン弁当スッゴくないですか!」

 僕が売店でサンドイッチを買って数分後、友利は、駅弁を両手で持ち、ハイテンションで駅弁を僕に見せてくる。よっぽどて手に入ったのが嬉しいのだろう何時もの無表情が一変していた。しかし、弁当が凄いかときかれても別にすごいと思わない。知ってるし。

 「はいはい。ちょー凄い。それよりも、早くしないと電車が来るぞ」

 「うわ、適当だなぁ......それじゃ行きますか」



 弁当を買ったあと友利と僕はすぐに電車に乗り込んだ。



 「はむっ、はむっ」

 「.......」


 僕の隣にいる同じ学校の制服を着ている女子は誰なのだろうか。いや、分かっている皆まで言う必要はない。僕の隣に座り、周りの事など全く考えず平然と駅弁を美味しそうに食べている友利奈緒は相変わらず自分主義だった。

 電車のなかは人が密集していて、そのほとんどの人達が僕と友利に迷惑そうな視線を送ってくる。

 マナー違反を平然とやってのけている友利がその視線を向けられるのはわかるが隣に座っているだけで僕まで巻き沿いをくらうのはあまりに良い気はない。

 しかしまさかこんな間接的な嫌がらせがあったとは......。友利とは未来永劫仲良くするなんてことはないな。断言します。

 電車を降りるまで、僕は世の中の言いたいことを言わない大人達の迷惑なんだけどという視線を向けられ続けた。自分で注意すれば相手は止めるかもしれないのに注意もせず目線で誰かが言えよと押し付けあっている見るにたえないことをやり続けている社会人を見て、自分はあんな大人にはなりたくないなと切に願った。関わりたくないはわかるけど、中途半端な行為をしないでもらいたい。無視すればいい話なのだ。マジで無関心でいてください。

 電車から降りて暫く歩くとバス停があった。そこにおいてあったベンチに座りバスを待つ。先程まで駅弁当を食べていた他人の目なんて気にしないゆるふわの長い銀髪をサイドテールにしている少女はまだ食べたりない様子だった。

 僕はそれを無視してサンドイッチを食べようとするがあの不快になる視線を受け続けたせいか食欲が全くわかない。サンドイッチは後で食べるか.......。

 「あれ、そのサンドイッチ食べないんですか」

 「.....」

 僕がサンドイッチを食べないと見た友利がサンドイッチを要求してきた。別に食べなくとも問題なかったのでどうぞと無言でサンドイッチのはいった袋を友利に渡す。次のバスの中で友利はサンドイッチを食べる。食べる。食べる。はい!なくなったー!。

 「そんなに食べたら太るぞ絶対。いや、もう.....」

 「む、太りませんよ」


 友利は心外だと不服そうな顔で睨んでくる。意外なことに表情に幾つかバリエーションがあるらしい。

 それにしても女というやつはどうして体重の話になると見栄をはるのだろう。でも、もう少し友利をこのネタで弄るにもありかもしれない。

 「どうだろうな? あんたと同じようなことを言っていた近所のお爺さんは今ではすっかり、右手にコーラを常日的に持ち歩いているお腹がでているアメリカ人と何ら変わらなくなってしまった。きっとあんたも......友利、浅はかな」

 僕は無念そうな表情をして友利から顔を背けた。


 「いや、女子高生をじじーの体験談で判断するしないでください。性別も年齢も大きい違います。私は女でまだ十代ですよ」

 「ああ、分かってる。冗談だ。そこまで本気にするなよ、今のあんたの歳なら太ったとしても一キロ前後だろ」

 「り、リアルすぎて否定できない......」



 今までのは全て余興だ。人においそれと話せるような話でないことが分かっていたから冗談をいれたりと僕らしからぬ言動をとってきた。それで休憩を挟んで数分後、友利は自分の兄の事を語り始める。


 「今から話すのは私の過去の話です。 別に隠すようなことではないのでお話します。知っておいてもらわないと兄のところについたとき、驚かせてしまうかもしれないので」

 「.....」

 「まず、兄が特殊能力者になりました。私が受験で国立の付属中学に受かった時にことです。その時兄はレコード会社と契約して寸前でした。でも、兄はレコード会社とは契約できず、私も進学出来なかった」

 そのあとの話をすこし要約する。ある日二人を一人で育ててきた母親が話があると二人を呼び出し、同じ系列の寮制の学校転入させると勝手に決めた、そのことを自分の子供にそれを教えた。だが、当然デビュー寸前の友利の兄はそれを受け入れいれようとしなかったが母親が必死に頼んだことで折れ、その学校に通うこととなった。おそらくその学校が科学者の施設だ。やはり過去に立てた憶測は当たっていた。

 「そこは見かけは学校で直ぐに友達はできた。ただ、毎日授業が終わると、検査のようなものを受けさせられた。一緒の学校のはずなのに兄とは会えないままでいた。私が兄を探そうとすると決まって友達が止めた.......。そしてその頃兄は、ずっと奴等に実験台にされていた。兄の能力は空気を自由に振動させられると言うもので、ライブでその能力を使ってギターの音色を様々なものに変えていたことから奴等に見つかった。その能力を利用すれば通信のジャミング、また電波ジャックも可能と科学者は考えた」

 「あんたはその兄といつ会えたんだ.......」

 「私が兄と会えたのは一年後です。もう私の事を妹と判断することもできなくなってました」

 廃人、植物人間、記憶喪失。今の話から考えれば、今頭に過った可能性の中に現在がある。しかし、死んではないだろう。僕がこの世界とは少し、違う世界で調べた時には病院に入院しているし、今の、この道のりは僕その時に調べた友利の兄が入院している病院への道だ。

 死んではいない、生きてはいる。それが人間と呼ばれるのかわからないが.....。

 メジャーデビュー寸前だった、国立の中学に受かった子供達を科学者に売った母親。人間が誰かを売る時は大抵、金が関わっている。きっと大金が手に入ったことだろう。

 そのお金を手にした時、子供を売った母親は何を感じたのだろうか。罪悪感、負い目?、もし、そうならば、そいつはずるいと思った。

 どんなに罪悪感を覚えようと、負い目を感じようと、科学者に自分の子供を売ったことにはかわりない。

 悪いことだとわかるけど仕方なかった、私は最低だとか、ごめんなさいとか思えれば、まだ、自分はまとも、逆に哀れむべき存在、だから赦されるなんて考えているなら、僕はこう思う、犠牲になった奴に失礼だと。

 自分の為に、売ったんだろ!  それで金を獲たんだろ!  自分の為に犠牲にしたんだろ!  自分の為に誰かを不幸にしたんだろ!  だから、どんな言葉を並べ立てようが、どんなに謝罪しようが、負い目を感じようが、所業はクズの行いだ!。でも世間で自分がそう思いたくないから、思われたくないから、綺麗でいたいから、罪悪感とか負い目を感じて赦されようとする。仕方なかったと言い訳して自分は哀れまれる存在だと........ふざけてる! 犠牲にされたものからすればたまったもんじゃないはずだ! 赦されようなんてずるい、犠牲にされたことを正当化されたら犠牲されたものは恨むこともできないじゃないか、ただ不幸になるだけの存在になってしまう。

 だから、勝手に赦されてはいけないし、赦しをこうのもやってはいけない。相手に恨まれるべき存在でなければならないのだ。自分が幸せになるために誰かを犠牲にしたそれの何が悪い!。お前らは自分が幸せになるための犠牲になったんだよごくろうさん!。と悪役にならないといけない。一見開き直っているように見えるかもしれないけど、.....行いはまさにその通りなんだし、誰かを不幸にして幸せを得た以上クズだろ。僕もそうしてきた人間だ。そして、今でもその考えを否定しきれない。自分の幸せ為に、他人を犠牲にしている。

 自分のやったことは哀れむべきだとか、仕方なかったと言うやつらはただ綺麗でいたいだけの偽善で偽善の偽善、まともを気取った、異常者、偽善者的なクズだ。クズのプライドもくそもない。

 その母親はどうだったのだろうか。まぁどっちを取ってもクズとたちのわるいクズだ。でも僕は口にしない。だって友利の母親に関わったことはないし、所詮は他人事だ。口を挟む権利も、ましてはクズである僕が見ず知らずの相手をクズと口にするのは失礼すぎる。でも思うのは別に誰も傷つけないしいい!。(←これが本物のクズ)

 友利の話はもう少しの間続いた。


 「私を兄から遠ざけようとしていた友達も科学者達が作ったかりそめの友達.....。私も毎日検査を受けさせられていたのは兄妹だと二人とも特殊能力者になる可能性が高いからただそれだけの事だった。私はもう、誰も信じないと心に決め、その学校から逃げ出した......」

 「その後、どうなったんだ」

 「唯一信頼できる人と出会い今に到っています」

 信頼できる人、そいつが星ノ海学園創設者なのだろう。または、そいつと同等の存在。

 友利に能力者の保護を手伝うことを許した人物か。いったい、どんな奴だ?。馬鹿という風に僕は思っているが一代で科学者から守るための施設を作ったのだから切れ者なのは確かだろう。訊いたら案外あっさり教えてくれるかもしれない。

 「なぁその人って.....」

 「あ、次降ります」

 残念なことにその人物なるものについては聞き出せないかった。次のバス停でおり、少しすると上に続く長い階段があった。この先に友利の兄が入院する病院があるのだろう。立ち止まって階段の先を見上げていると友利がそれに気付き声をかけてきた。


 「行きますよ」

 「ああ」


 階段を登り終えると、あったのは大きな病院だった。その中の受付で友利は面会手続きを終えた。しかし、受付の言葉が聞こえたが敷地内ならいいが外に連れ出すことは不可な状態。生半可な気持ちでその兄のことを聞いたのは間違いだったかもしれない。


 友利にその兄がいるという病室まで案内されるがままについてきた。そしてある一室の前で止まる。

 「ここなのか....?」

 「はい、ここが私の兄のいる病室です」

 そして友利はゆっくりと目の前の扉を開けた。

 ヒラリと羽が舞う。雪を欺くように真っ白で、綺麗な羽が一室をチラリチラリと舞っている。いや散っているのだ。その羽は全て病室のベットの中から飛び出していた。ベットの中の羽毛をむしりとっているのはこの病室の中に僕達がくる前から中にいた一人の人間が行っていることで、今もなお、狂った声で、狂うように何度も何度もベットを破いている。事情を知らぬ第三者が見ればただの異常者。知っているものが見てもそれは変わらない。なるほど、この人壊れているんだ。そうとしか僕には思えない。

 「また、鎮静剤が切れてる」

 壊れた人間を見ても一切の感情を抱かぬ眼で、それを眺める、その血を分けている妹は、手慣れた手つきでナースコールをカチッと押した。もう、すぐ看護師が鎮静剤を持ってやってくるだろう。

 「この人はいったい何をしているんだ」

 僕はこの光景を見れば誰もが思うであろうことを口にした。

 「作曲です」

 「作曲......?」

 作曲って、楽器も何も持っていない、ただ叫びながら布団を破いているだけだ。

 「兄は、これでギターを弾いているつもりなんです」

 「ッ」

 布団を破くのが演奏.......ならメロディは


 「唸って聞こえるのはメロディ、主旋律なんです....」



 母親に科学者へと売られ、唯一の家族である兄は壊れてしまっていた。多分唯一の家族のはずだ。なんで友利は.......。

 -ごく当たり前のような顔をしている。なんで壊れていない。壊れても狂ってもおかしくないような思いをしている筈なのに......。


 「友利.......」

 「なんですか」


 あれ、何で僕、友利に声をかけたんだ?。友利に同情しているのか?。そもそも、ここへ来る話題をふったのも僕だし、自分でこの状況を作って、勝手に同情しているだけなんじゃ。

 同情とか、哀れみとか、そんなのは安全圏にいるもの達の何の重みもないただの偽善......。一度はこの壊れている人を殺そうとしたことがあるのに同情なんて、偽善以外のなんなのだ。そんなこと思う権利はない。

 やっぱり、何も言わないが正解な気がする。


 友利から視線外すと、布団を破き、唸ることで演奏を続ける友利の兄と一瞬目があった。


  澄んだ蒼い妹と同じ色の、しかし海の底の様に深く濁った瞳と目だった。

 「ッ!!!!!!!!」

 その刹那だ。頭の中に何が入ってくる。次々と次々と丸でドロドロに溶けた熱を孕んだ鉄が直接頭に入ってくる。激痛だ。狂いそうな程の痛み。


 「.......」

 友利の兄、友利一希はいつの間にかベットを破くのを止め、僕と目を合わせていた。ここからだ。こいつの目から僕に忌々しいといえるぶっ壊れるの前提の記憶の一部が、流れているんだ。

 脳をいじくり回される。早く目をそらさないと.......目を逸らす........逸らせない。あれ、動かない、体が動かない。目も何もかも! 動かない! 。

 次の一瞬、出来ていた思考は消滅する。それほどの激痛と狂気、に襲われたのだ。ただし今度は頭ではなく。魂、心とか言う心臓部分に近い場所の何かがごんごんと削られる。まるで僕の意識をスライサーにかけられる感覚だ。不味いこのままだと僕の中で何か死ぬ。バキバキと何かが折れていく音が聞こえる。

 バキバキッバッキバキバキバッキバキバキバキバキ、パキッ........

 何かが完全に折れる音をたてる寸前、僕を襲っていた痛みは無くなった。まるで最初から無かった様に。あれが錯覚だったように......。



 「どうしたんですか! 」

 友利こ心配そうな声が聞こえる。いつの間にか僕は膝を付いていたようだ、身体中は脂汗で一杯で、制服が汗で透けている。立とうとするが手足に力が入らない。だが、先程の全く動かないわけではない。心臓を右手で胸板の上からつかむ。

 どく、ドク、ドクっ、ドクッ。

 心臓は脈をうっている。生きている。

 「あ、ああ、だ、だ大丈夫。す、少し立ち眩みがしただけだ」

 「立ち眩みってすごい汗じゃなですか!。それに身体も震えて.....」

 何か寒くて、身体は震えて、声も震えているけど、大丈夫痛みは無いし問題ない。伏せていた顔を上げ友利の兄の方を見ると物静かにこちらを見ていた。いや、友利の方を見ているんだ。そこに先程までの狂気はないように見える。友利もその事に気づき驚いた表情をしていた。


 「....お..」

 声がした。だけど、僕の声ではない、友利奈緒声でもない。別の人間の声だ。この病室には僕と友利以外には一人しかいない。

 「な......お」

 「え.....私のこと.....分かる、の?」

 「な、お」

 「せ、先生友利一希さんが! 」


 鎮静剤を持ってきた看護師が今の一連のやり取りを見ていて、医師を呼びにいった。一体何が起きたのだろうか?。何かが起きたそれだけは確かだ。それにしても寒い.......。




 そのあと、直ぐ、担当医の医師が駆け込んできて、家族の関係者でない僕は病室の外で待っていろと命じられた。ふらふらしかがら出ていくと、大丈夫かと心配されたが、ただの貧血といい病室を出た。そして、病室のそばにある、ソファーにもたれかかるように、座った。まだ寒い.........本当に。

 暫くして、医師が病室から出ていった。そして、友利も病室から出てきて少し話があると僕を病院の外へ連れ出した。その頃には先程までの寒さと震えの症状はなくなっていてたので問題ない。外に出ると夕焼け空が広がっていた。

 「なぁ、あんたの兄さんに何が起きたんだ」

 取り敢えず一番気になっていることを聞いてみた。

 「バスの中で話しましたよね。兄は私が妹であるとすら分からなくなっていたって」

 「でも、それは前の話だったんだろ。今さっきあんたを見て名前を呼んでたじゃないか」

 「そんな状態じゃ無かったんです。私のことを判別できるような状態じゃ無かった」

 友利はどことなく苦しそうな顔をしている。酷い状態だったらしい。病室の中に入った時のあの発狂の方が何時の状態で鎮静剤を一定時間毎に投与しないと、ずっとその状態なのだとか、当然友利の姿を見ても妹であるとすら認識できなかったそうだ。

 「医師の話では何らかの要因によって元の普通の状態に近い所にまで戻ったといっていました。私の事もちゃんと分かってくれて.......あなたが何かしたんですよね」

 何かをしたという自覚はない。だが心辺りならある。あの友利の兄と目があった時に、大量に流れ込んできた狂気と絶望と激痛の記憶。あれ以外にはない。ただ、僕はあんな意味不明で自分が痛みを伴う能力を奪った記憶も、持っている記憶もない。それに心の病人を治す能力もだ。何処まで遡って探しても見当たらない。

 「.......わからない。あの時、あんたの兄さんから何かが流れ込んできて、激痛に襲われて。それ以外は何も......」

 「分かりました。あなたにも分からないなら解明のしようがありませんね。でも、もしあなたが兄を救ってくれたなら........ありがとうございます」

 自覚のない事に感謝されて、よくわからない複雑な気分だ。友利の兄の壊れた心と言うものを僕が直したんだとしたら、それは能力以外にあり得ない。コントロール不可の発動条件が分からない精神干渉の能力といったところだろうが、僕は本当にこの能力に心当たりが無かった。今まで乗り移った他人の中にこの能力を持っていた奴がいたのだろうか。もしそうだとして僕は自覚なく、他にどんな能力を持っているのだろうか。僕には分からない......。


 帰りは一人で帰った。その頃には完全に震えも寒さも消えていた。友利は兄の検査結果と付き添いのようだ。今日は病院に泊まるらしい。たった一人の家族に久しぶりに自分を気づけてもらえたのだ。当たり前だろう。行きと同じ道をたどり、星ノ海学園前のバス停でバスを降り、家路につく。スマホの時刻を見れば昨日より三時間ほど帰りが早い。歩未に帰宅予定時間を逆算して連絡をしておいたがちゃんと夕食を食べているだろうか?。あまり遅い時間に食べると不健康だから心配だ。




 「有宇お兄ちゃんお帰りなさい! 」

 「ただいま歩未、ちゃんと晩ご飯は食べたか?」

 「いえ、有宇お兄ちゃんが昨日より早く帰ってくると知ったので待っていたのですぅ!」

 「......歩未早く食べよう、健康を第一にだな.....」

 こうして今日も僕の帰りを待っていた歩未と一緒に食事をとった。友利の今日の話の中に出てきた兄弟だと両方特殊能力者になる可能性が高いと言う話を思い出す、歩未も能力が目覚める事があるのだろうか。

 チクリと頭の芯に痛みが走った、それは今日のあの絶望と激痛と狂気を受けた為の一時的な後遺症みたいなものだろう。歩未が能力者になる訳がないのだ。

 「有宇お兄ちゃんどうしたの?」

 「別に」


 そうあり得る訳がない。僕は根拠のないことを勝手に確信していた。



[42107]  サードプロローグ テロリストの少女
Name: 幸せな二次創作◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/20 00:37
 アメリカ合衆国のとある研究所は今、テロリストに襲撃を受けていた。

 「く、くるなぁ!!!」

 けたたましく鳴り響く警報。そして痛苦と恐怖からの悲鳴がこの場を支配している。

 白衣をきている科学者の男は目の前の自分を殺そうとする相手に叫びながら、銃を向ける。科学者が日常品として銃を持っているのはおかしいと思う知れない、だが、この特殊能力者研究所内では全ての科学者がハンドガンを持ち歩くのは当たり前だ。彼らが研究しているモルモット、少年、少女達の特殊な力の中には人の命を奪えるものも存在するわけだから護身用として銃を持っているである。

 自分に銃口を向けられても、テロリストの一人であるまだ十五の少歳の短い白髪の少女は、驚くことも、脅えることもしない。ただ無表情である。いや、分かりにくいが呆れた表情をしている。自分には無意味なことなににと。


 「し、死ね! 」


 パンッ!と乾いた発砲音が一回、科学者はこれでテロリストは死んだと思った。思わず口の端を吊り上げ、ざまぁみろと嘯こうとしたがそれは中断される。

 笑っていた口の端がピクリと凝固した。眼前で起きていることに目を見開く。

 撃った相手は死んでいなかったのだ。


 発砲により少女に向かったはずの銃弾は少女の目の前で回転しながら止まっていた。物理法則を無視した現象、これを引き起こせるのは自分達が研究している特殊能力者以外にいない。

 少女が手をゆっくりと振り落とすと、銃弾は跡形もなく消滅した。


 「な、能力者か! 」

 科学者は、殺したと思って安心して下ろしていた銃をすぐに構え直す。が、遅い、その構えの僅かな時を使い、白髪の少女は一瞬で科学者との距離をつめている。

 科学者の男は引き金に手をかける。その間ゼロコンマ八秒。

 だが、その科学者の男の胸にそっと手が添えられていた。


 「凍れ」

 たった一言が科学者の男の耳に触れた。

 胸元に感じた一瞬の冷気、なんだとそれを見れば、華奢な掌に触れられ、完全に凍る自分の胸部。

 先程、銃弾を防いだ能力とは別の能力。一瞬で全てを凍らせる。さしずめ『氷結』といったところだろう。


 「な、んで、二つも......」

 科学者の男の疑問は当然である。基本的に能力者は一つの能力しかもっていない。派生の能力はあっても全く別の能力を複数宿しているということは今までに前例がないのだ。


 しかし目の前に、二つもの能力を使用している能力が存在している。

 パキッ....ピキッ..。

 冷気によって凍らされた胸元の氷が速度をまし面積を増やす。それは皮膚の中まで、細胞までもを凍らせ、ついに男の心臓まで到達する。

 そして、数々の非道な実験を繰り返してきた、ある科学者の男の心臓は凍った。

 「ばけもの.....め」

 手から落ちる、鈍い光を放つ一丁の銃。今の言葉が男の最後の言葉になった。

 それを聞いた、少女コーピアは男に一瞥をくれただけでなにも言い返すことはない。

 ただ、思うのだ。能力者の人間に非人道的なことを平気な顔でできていた。あんた達の方が化け物だと。



 警報と自分達の敵である科学者の悲鳴を聞きながら、彼女は組織の仲間の決めた合流地点へと余裕を持って向かう。道中、この施設に雇われた警備員がアサルトライフルで数百発の銃弾を撃ち込んでくるが、そのすべてを先程の科学者の男の銃弾と同じように能力で防ぎ、そのすべてを氷付けにした。

 短めの白髪を靡かせ、淡々と敵を殺す。このテロリストの少女コーピアは複製の能力者だ。今まで有力な能力者を持つものにであっては複製してきた彼女は人類最強のテロリストといえる。そんな彼女にしてみれば、今、ここにいる敵兵なだそこらにある石ころにすぎない。簡単に一蹴できる。


 淡々と淡々と敵を殺し続けて、殺して殺した先には能力者の人権が約束された未来がまっている。

 そう信じて今日もコーピアは能力者を使い実験をしていた研究所を一つ潰した。


 解放された能力者は壊れて何も反応を示さないものもいれば、助けがきたと安心した表情の者もいる。皆子供だ。能力を持つことのできるのは思春期の過ぎていないものだけなのだから当たり前だが、こんな子供相手に人体実験を繰り返す奴等(科学者)やはり殺すしかない。全て殺さなければまた同じことが起きるそうコーピアの組織は考え、今まで幾つもの能力者研究所を破壊し科学者達を殺している。それが彼らの正義だった。




 科学者の施設をまた新たにひとつ潰した今日、帰還した組織のアジトでコーピアは軽い睡眠を取っていた。


 そして、あやふやな空間を漂う。


 夢だ。自分は今、夢を見ているんだ。


 それもただの夢ではない。この現実と夢の狭間を漂う感覚は複製した能力の一つの予知夢が発動している。


 予知夢は睡眠の際に夢を見たときに、1/2の確率で発動する能力だ。この能力の的中率は百パーセント。

 何時かの国家のお偉いさんの手の者たちの襲撃を予知した時は跳び跳ねたものだ。そして、今見ている予知はコーピアにとって、これまでもっとも最悪の予知夢だった。



 コーピア達は◎月○日のその日、アジトの一室で、テロにより科学者から救いだした能力者達のデータを整理していた。能力者である少年少女達は大抵、金の為に売られ研究材料にされる。故に救いだした能力者達に居場所はない。だから同じテロリストになることを救い出された能力者は強要される。渋る者も当然いるが、その数よりもテロリストになることを同意する者のほうが多い。

 その理由は先程も言ったように科学者から解放されても帰るあてがないことと、自分を売った者の元へ帰れないことを理解しているからだろう。渋る者もその事を聞けばテロリストになるしかないと理解し仲間になる。仲間には食料も寝床の用意が約束されている。なるだけで生きていける環境が約束されるのだ。死と隣り合わせということ以外はメリットありまくりだろう。


 さて、自分がもっている能力を口にさせ、実際に使わせて、その結果を纏めたものが今整理しているデータ、資料である。

 「何か、目ぼしい能力者はいたかい?.....」

 資料を見ているコーピアに訊ねたのは、灰色の髪青年。青年である彼は少年時代、氷結という能力を持っていた少年だったが、その能力は今もう彼の中からは消滅している。


 「とくに、珍しい能力はない......と思うよ? 」

 灰色髪の青年、テロリストを束ねるボスに敬語も使わずに、コーピアは言った。灰色髪の青年、クロムはそうかというと、コーピアにいつの間にか入れていたコーヒーをさしだし、円テーブルのコーピアの正面の椅子に座った。

 「と、言うことは今回は複製することはしないのか.....」

 クロムの言葉にコーピアは頷くと、円テーブルに隅におき、カップを口に運び、コーヒーを少し飲んで、カップをテーブルに置く。

 「この資料にのっている能力者の子達は、皆、人を傷つけない能力で、日常のどこかには役にたつだろうけど、その能力は私には必要ないよ.......むしろ邪魔にしかならない」

 「邪魔って.....いや、まぁいいか。それより、コーピア、君お昼はまだだよね。あさからずっと資料ばかり読んでいたし、何も食べていないんじゃない?」

 クロムに言われて、そういえば今日はまだ何も食べていなかったと言うことに気づくコーピア。その反応でクロムはやっぱり食べていなかったのかと仕事への集中力に感心半分、呆れ半分だ。

 「今朝、作ったスープが大鍋の中に残っていたけど、早くしないと部下の皆が全て食べてしまうかもしれない、どうする?」

 「うーん、もう、少しで読み終わりそうだから、あとでいくよ、リーダーは先に行ってて」

 クロムはそれを聞き、分かったけど早くこいよ。と、言うとその場を去った。

 場面が一気に過ぎていく。夢だからそう言うこともあるだろう。




 何か聞こえる。凄く煩くて危険をしらせる音響。警報だ。


 今なっている警報は何者かがアジトに侵入してきたとつげるもので、人気のない場所に存在するこの建物に入ってきたと言うことは科学者サイドの人間の可能性が高い。コーピアは最低限の武装を、対人ナイフを片手に持つと侵入者を撃退すべく、警報の合間に聞こえるアナウンスが指示する場所へと向かった。



 アナウンスが指示した、場所は一階のFとなずけられたエリアで、謂わば、この建物の正面玄関だ。そこに一分弱で到着した。


 「 ッ! 」

 まず匂ったのは蒸せるような香り。この臭いは何時も嗅いでいる赤黒い液体のものだ。自分達が敵を殺した後に残るもの。

 そして、コーピアは見た。


 地獄が広がっている様子を。広々としたこの空間は、床も壁も真っ赤な鮮血で赤く染まり、仲間の能力者の死体が大量に転がっていた。手には銃器が握られていたが、そのほとんどが木っ端微塵に破壊されている。


 死体、死体、死体、死体が花畑の花のように大量に赤い液体を流して咲いている。その中心に悠然と立つのは黒髪の少年。コーピアより少し上だと思われる少年だ。容姿からして日本人だろう。ただ、組織内に日本人はいない。つまりその少年はテロ組織の仲間ではない。うっすらと笑みを浮かべ、直ぐに無表情になりはぁと重い息を吐いた。

 悪魔だ。そう思うほどに目の前にいる敵が恐ろしくてならない。今まで何人も殺してきたが体の底から恐怖を感じた事はなかった。


 「あなたが殺したの? 私の仲間を....皆を」

 声が震える。本能が言っている。対峙すれば死ぬ。数多くの有力な能力者達から複製した能力を総動員しても勝てないとそう確かに確信していた。


 死体の中心にたつ、真っ黒なコートを纏っている少年はコーピアへゆっくりと振り向くと、何かをした。だが、コーピアは何か異常を感じたわけではない。ただ一瞬、何かをしたような気がした。



 「ああ、殺した。 あんたら見たいな奴は他人を不幸にする。 テロは悪さ......他人を巻き込む偽善者を僕が裁いた。ただ、それだけだ」

 コーピアは相手がなれないはずの英語で流暢に話している間に、先手必勝で複製した能力、『氷結』を使い、相手の足元を氷づけにしうとしたが、なにも、起こらなかった。


 「え、なんで......」

 「無駄だ。あんたの能力は僕が全て略奪した。もう使えない」

 「略奪...!? 」


 そのままの意味でとれば相手から能力を奪う能力だろう。そしてそれは現実だ。自分の能力が発動しなかった。

 能力者の天敵、コーピアの能力も大概だが、この男の能力はそれすらも大きく勝る。理不尽の体現だろう。


 「それにしても、僕以外にも複数の能力を保有しているなんて驚いたなぁ。でも、おかげで複製した能力共々僕のものになった。でも、目的のものは結局なしか.......歩未まだ生き返らせれないよ」

 黒髪の少年は全てに苦しみ、全てに悲しそうにしていた。この世の理不尽を恨むかのような表情も混ざってぐちゃぐちゃだ。

 「ああああああぁぁぁああ!!! 」

 雄叫びを上げコーピアは乗り込んできて、仲間を皆を殺した少年に突っ込む。自棄だ。勝てる訳がない。それでも、自分に与えられた仲間の死というものに怒りを感じられずにはいられない。

 殺す。

 だが、衝動だけで感情的に行動したところで理不尽な力の差は埋まらない。コーピアは次の瞬間には四肢を失い、死んでしまった。






 「うぁぁあああッ!!!!!」

 「ッ!。どうしたコーピア」

 「クロム、ここは......?」

 「アジトのお前と俺の部屋だ」


 クロムの言葉をきき、辺りを見渡すと見知った部屋が広がっている。自分は今ベットの上で寝ていたのか。どうやら、先程までのものは予知夢だったらしい。それも今までのなかで一番最悪の予知だ。

 「クロム、私見た! 略奪の能力者一人が数ヶ月後に、この組織を滅ぼしに......皆を殺しに」


  コーピアの要領の得ない言葉をクロム瞬時に理解する。


 「予知夢か。それしても略奪だと.....能力を奪えるとでも言うのか....そいつの顔や名前は」

 「顔は日本人、名前はわからないけど、あれは早く始末しないと不味い.....この組織が一日で皆殺しにさせられた。 私もこ、殺されて」

 「一日.....だと。 」

 コーピアは体を震わせる。全身は悪夢(未来)を見たせいで汗だくで、焦点も合わない。先程の死ぬという感覚の恐怖がまだ残っているのだ。これから未来で自分自身に起こること死を


 この組織の数は能力者と元能力は含め、合計四百人以上がいる。設備も揃っている。それがたった一人に一日で殲滅された?!。コーピアの予知が外れたことはないつまりは、それは必ず起こる。勿論、変えることもできるだろうが.........。

 クロムは少しの間考えると口を開く。震えるコーピアは一瞥する。それは何の感情も抱いていない冷徹な目。


 「コーピア、そいつがこの組織の場所にたどり着いた以上、能力者を見つけることのできる能力があるということが予想される。ここはそう簡単に見つかる場所じゃないしな。だから、逃走したところで見つかり同じ未来を辿る可能性が高い。やられる前に殺るしかない。今の話が未来ならコーピア、お前だけが頼りだ。日本へ行け! そしてその略奪を殺すぞ」


 「でもアレは....」

 本物のモンスターだ。完全に狂っていた。あっという間に殺された。


 「やれるな? やらないと皆死ぬんだ。敵に殺されるそうなんだろ? 」

 「殺される.....死ぬ。 だめ....でもさ」


 コーピアは仲間の死ぬ所を見たくはない。殺されるのも見たくはない。しかしあれは悪魔だ。対峙すれば未来と同じ結末死か見えない。

 「コーピア。そいつがどんな化け物か知らないが動かないと未来を変えられない。それとも今お前が口にしたのはただの夢か? 」

 夢ではない。コーピアが見たのは今まで何度も助けられた予知夢だ。必ず起こる未来だ。だからあの凄惨な未来は変えなければならない。

 そして、コーピアは覚悟を決めた。


 「分かったよ。クロム.....行くよ日本に。情報を集めないとね」

 淡々と呟く。 変えなければ死ぬ。だから変る。恐怖だとか感情にまかせても意味はない。無為に時間を潰すだけだ。 - だから動く。



 こうして、運命の歯車は動き出す。一人の少年が背負った運命歯車がくるくると狂狂と。












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 後書き

 今回のChalrotteの二次創作は三人称で執筆させていただきました。ついに物語に深くか関わるであろうオリキャラの登場ですね。

 この話から徐々に本当に僅かですが物語に変化が訪れます。原作に沿って物語を執筆はしていきますが、多分何処かで、いや、今もうすでに支離滅裂なストーリーが始まっていると思ってしまう私です。

 誤字、脱字の訂正、描写の変更は、追々やっていきます。もしかしたら、このストーリーを大幅変更する可能性もありますが生暖かい目で見てやってください。


 それにしても、自分の技量不足と知識不足、会話センス、構成力は壊滅的ですね。描写や、感覚表現、情景だとか、は努力しだいで何とかなるのかもしれないですけど、他は絶望的かもしれません。

 小学三年生にちょっと毛が生えた程度の頭なのは本当に何をするにしても困ります。身体だけは大人になって頭は子供というこの矛盾。.........勉強しよ。もう二次創作を書いている場合じゃないぜマジで。........それではさようなら。



                                       終わり。



[42107]  第一回 助け船だと思った? 残念! それ泥舟ですー!
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/20 01:02


 『有宇、あなたには才能があるのだから一番は当たり前なの』

 忘れたい過去。

 『なんで、なんで、そんな気味の悪い能力を持っているのに一番になれないのよ!』

 誰にだってそう言うのはあると思う。

 『所詮.......この程度か』



 失望の眼差し。

 過去にあの時、母さんが向けた目は今でも覚えている。どんなに努力しても褒めることはしない母さんが失望した時、僕は絶望した。これが僕が忘れたいものの記憶である。



 「嗚呼......眠い」


 今朝、見た久しぶりに見た夢は最悪だったと僕乙坂有宇は悪夢の内容を思い出しては不快な気分になっていた。

 具体的にどのあたりが不快なのかというと歩未と一緒に学校への道を歩いているのに、楽しくないからだ。

 それもこれも、今日の夢が何度もフラッシュバックせいで歩未との会話に集中できないせいだろう。僕の母親の夢、中学の前半はよく見ていたがここ最近は見ていなかったのにまた突然どうして見てしまったのだろうか。取り敢えず目の前にちらつく映像をなんとかしなければ。歩未との折角の登校を楽しめない。


 「有宇お兄ちゃんどうしたの? 顔色悪いよ」

 「え、いや、大丈夫ちょっぼーとしてただけだ」

 歩未が僕の事を心配してくる。その顔を見て、僕は自分に嫌気がさした。

 歩未になんて顔をさせているんだ。しっかりしろ、乙坂有宇!、今朝みた悪夢を引きずっているんじゃない。僕はそなんだから馬鹿なんだ!

 馬鹿かどうかはさておき、そう自分に叱咤して歩未の方に目をやると、まだ歩未は心配そうな顔で僕を見ていた。兄思いのいい妹だ。


 「ほんとに? 体調が悪いなら家に戻るべきなのですぅ」

 「大丈夫だ問題ない。心配かけてごめんな、昨日夜遅くまで本を読んでいたから寝不足なだけだよ」

 ハハハっと笑顔を作る。夜遅くまで本を読んでいたのは本当だ。読んでいた本はプログラミングの本。友利の兄の病院に行った次の日、ネットで能力者に繋がるような情報はないかなぁと思い、ネットを漁っていると、偶然、バイトの広告が目に入った。それは簡単なプログラムを作る作業を手伝うというものでプログラムが打てれば誰でもOK。自宅でもできる内職のようなものでこちらとしては是が非でも入りたいバイトだ。

 こことは別の世界で僕は株をやり、いくらか儲けをだして、資金があったて色々やっていたが、この世界では僕は株をやっていない。故にこの世界の僕は資金がない。だけど金は欲しい。生徒会の給付金ごときじゃ足らん!。そう、もう少しだ。もう少し、金があれば手札が増えるし、歩未にも楽をさせてやれるのだ!。しかし、株を始めようにも、この学校にいる限り、そんな暇はないだろう。生徒会活動がくそ忙しいだろうし、そんな状態で株を始めれば直ぐに破産するのが落ちだ。なんで生徒会に入ったんだよクソッ!。

 株はできない現状、そこでだ!、金を手に入れる為、その内職、パソコンの前に三十分座るだけで月、二十万ゲットだぜ!。を実行するため僕はプログラム勉強を始めたのである。それが昨日、夜遅くまで起きていた理由だ。広告見てすぐさま、図書館から持ってきた本を幾つか読み切り、パソコンにプログラムのソフトを落として、実践してみたが僕はある程度のプログラムなら打てるくらいにはなっている。やはり自分でいうのもあれだが、僕は要領がいいな。この調子で行けば、今週の終わりには完全マスターだ!。


 「どんな本を読んでたの?」

 「アルバイトに必要な知識を得るための本だ。というか、歩未、話をしてる間に.....ついたぞ」

 僕の通う高校のすぐ近くにある歩未の通う学校の校門前についた。歩未はいつの間にと驚いたあと「行ってくるのですぅ!」と元気一杯の可愛い笑顔で敬礼したあと校門のなかへと歩いていった。僕はそれを見送った後、自分の通う学校への門へと歩く。やはり我妹は最高に可愛いぜ!



 少しでもハイテンションになろうと歩を進めるなか、陰鬱な気分で荒々しい息をはいた。今朝、夢のせいか、記憶の片隅に潜め意識しないようにしていたものが今僕の頭の中には映し出されている、僕は脳裏でそれを睨み付けた。

 うつっているのは、長い黒髪を後ろで束ねた女性。視点はその女性を見上げるように見ていることから子供だと言うことがわかる。その女性は料理を作っていた。

 次々に場面が変わり、その人が勉強を教えている場面や、歩未と一緒にいるときのことが流れるがそれも次の瞬間には終わり、その人が僕を写さない目で一瞥する映像が.........。


 「おはようございます.....」


 クラスメートの女子の声で映像は霧散した。僕はいつの間にか教室の扉の前にいた。どうやってここまできたか覚えていない。どうきたかを意識すれば思い出せたが、記憶を辿るに、ここまで自動運転だったらしい。

 僕に声をかけてきたのは、ふるゆわの銀髪、サイドテールの少女、友利奈緒だ。扉の前にたつ僕が扉を開けて中に入るのを待っているらしい。

 「おはよう.....」

 「はい、で、早く開けてくれませんかね、はっきりいって邪魔です」

 遠慮がない女だ。僕はやっぱりこの少女がどんな不幸もので悲惨な人生を送っていた人間だろうと友好的には絶対になれないと思う。

 だけど僕の大事な妹の歩未はこの遠慮がいっさいない友利奈緒が大好きなので無下には扱えない。

 友利は無愛想な顔で僕の後ろで、僕が退くのを待っている。全然可愛くない。まぁそれは今関係ないか。

 それよりもだ。何時もは誰よりも先に学校へきてそうなこの女が今日は僕と同じ時間とは意外だった。

 「なに、ぼーとしているんですか、退いてください」

 思考に耽っていると友利が迷惑そうな顔でそう言う。

 「ああ、分かったよ。それにしても、意外だな、あんたがこの時間に登校しているなんて....。てっきり誰よりも早く来ているものかと思ってたよ」

 「普段ならそうですね。でも今日は兄の所から来たので時間が何時もより遅れたんです」

 「そうだったのか」

 「はい.....」

 一緒に病院に行って友利の兄に合ったこと時のことが頭によぎる。僕がしたのかそれとも何かの偶然か、発狂していた友利一希と僕の目があったことでなにかが起きた。友利一希は科学者の人体実験により精神に大きなダメージを受け、妹の友利を妹とすら認識できないほどになってしまっていた。

 だが、僕と『目』を合わせたとき何かが起きて、彼は妹を認識できるほどには回復したのだ。現在は順調に回復に向かっているらしい。

 だから友利が病院にとまるのは不思議なことじゃない。自分のことを久しぶりに気づいてもらえたんだ。少しでも長く居たいと思うのは当然かもしれない。

 あの時、友利一希と目を合わせたときに起こった、一時的に激痛に襲われたが今はもう痛みは感じないし、友利奈緒が死ぬという未来も変えられた。何もかもが上手くいっている。

 友利に病院でお兄さんと何か話したりしたのかーとか聞きたい気持ちもあるが、僕が二人の久しぶり家族の話やできごとをきくのもおかしな話だろう。



 僕は結局、何も聞かずに、ドアを開け中に入る。そして友利が必然的に後ろについてくる形になる。でも僕は入り口近くに机があるのでそこでお別れだ。グッパイ友利。あんたが、女子達に睨まれているけど僕には関係ない話だ。


 「おはようございます、乙坂さん、見てください今日の為に持ってきた、ゆさりんのアイドルグッズを!」

 自分の席の机に鞄をおくと、高城が挨拶してくる。一応、挨拶を返すため、後ろの席の高城の席をみると、僕の目に飛び込んできたのは何かのグッズだ。そのグッズの正体はすぐにわかった。黒羽の写真のクリアファイルに、ゆさりんと名前が入った団扇、そしてハロハロとピンク色のロゴの入った、ハロハロのイメージを具現化したような筆箱、そんな学校に不必要なものがずらりとならんでいた。

 「あんたそれ......」

 「はい、私なりに柚咲さんが転校してくるシミュレーションをして考えついた答えがこれです!。そう!、柚咲さんが自分のグッズを買ってくれたことを喜んで、嬉しそうな顔でわた」

 テンションMAXな高城。しかし、高城の言葉最後までは続くことはない。教室のドアから入ってきた、巨漢の男、体育教室の前田先生の言葉で遮られたからだ。

 「高城、それ、なんや?」

 「あ、え、」

 高城は後ろを壊れたロボットのように、ガタガタと震えながら振り向く。そこにはゴリラにも勝るとも劣らぬ、笑顔で高城を見ている、前田が!。本日は担任教師は出張、かわりにこのおっさんが今日一日、担任をするわけだ。

 僕は途中で高城の話を聞くのを止め、鞄から教科書を取り出して、あくまでも他人です、私には関係ないあーりません!。と知らぬ存ぜぬを貫いていたので問題ない。て、いうかそれを早くしまうように、扉から前田先生が入ってくるのが見えたから言おうと思ったのだが、まさか最後まで聞かないで語り出すとは...高城これはあんたの自業自得だ。

 「で、高城、これは?」

 「あっと、そのですね......」

 だらだらと滝のように汗を流す高城は助けを求める視線をこっちに送ってくる。

 面倒な.....このまま知らぬ存じぬを通すと見捨てることになるし、高城が何で助けてくれなかったんですか!。とか、後でさわぐかもしれない。しかたないこの状況を利用しないのは勿体ないしな。

 僕は助け船をだしてしやることにした。もっともそれは.......破滅へ導く為の泥船だけどなぁ! 

 僕は教科書を机の中に入れ込んだあと、座っていた椅子から、立ち上がり、前田教員の方を見据えると発言した。

 「待ってください。前田先生、高城君はきっと今日、この学校に転入してくる黒羽さんの歓迎会を行おうとして、きっと、この道具! を用意したんです。この道具! は黒羽さんを歓迎するために必要なんだと思います。だから....」

 「これは、これは道具じゃありません!。ハロハロのゆさりんのグッズですよ、道具じゃない。魂を燃やすための、ゆさりんにアピールするためのグッズでもあるんですよ! 乙坂さん!」

 僕はこの時唇の両端を盛大に吊り上げて、笑った。馬鹿目。自爆したな高城。

 「ほう、グッズかー。そーかそーか.......お前は学校にグッズをもってきたと、しかもアピールのために....」

 「は、しまった! つい、本音が!! 」

 「高城、このグッズは没収だ。反省文3枚だから覚悟しておけよ」

 そう言うと前田先生は高城の机の上のハロハロのグッズを乱暴に回収し職員室へ持っていった。

 「あアアアアアアアァアァァアアア!」

 「高城......。フヒッ」

 僕は悔しそうに俯く、その時笑いが少し漏れてしまった。しかし高城お前は単純すぎるな。

 現在、僕の立位置は友人を助けようとしたが力及ばずだったことを少し申し訳なさそうにしている優しい少年、周りが見ればそう見えるだろう。だが、高城を助ける? ありえん! 全くもってあり得ない! こうなることを見越してやったんだ! そもそも何で僕がこいつを助けないと行けないんだよ! あんたがこの世界で僕を瞬間移動でぶっ飛ばしたときのことを僕はまだ恨んでるんだ。あのあとの帰り道、くそ、寒かったんだぞ! しかも未だに疑う視線を時々感じるし、こんなやつには僕のステータスを上げる為の捨て駒にして当然さ! ハンッ! ザマァー!

 ハロハログッズをとられた高城は暫くの間、燃え尽きた灰のように真っ白になっていた。黒羽がくるまでは......だが。


 HRL

 「えー、今日からクラスメイトになる転校生を紹介するぞ、自己紹介を」

 「はい! 初めまして! ゆさりんこと~」

 黒羽は溜めを作り、胸元に両手でハートを作る。

 「黒羽柚咲ですっ☆」


 瞬間、周りの男子の目の色がかわり、ザッ!と一斉に立ち上がると地面を揺らす、雄叫びのような歓声を上げる。それはきっと好きな女の子と恋人の関係になったその晩、家に帰りついて、布団に向かって叫ぶであろう喜びの雄叫びのようだ。

 『『うおおおおおおおおおおォォオ!!!!!!!!!』』

 「おら!静かにせんかい!。席を立つな、そこ踊るな!。」

 前田先生が注意するが聞かないやつが大半だ。しかし、意外なことに高城は叫んでいない。可憐な物を見た乙女のように恍惚とした表情をしている。寧ろこっちのほうがさっきまでの面より、気持ち悪い。

 高城の顔の件はともかく、今、周囲の人間は本物のアイドルを見て騒いでいた。

 「ゆさりんテレビで見るより可愛くない!」「顔ちっちゃ~い!!」「本名は黒羽っていうのか~」

 「フッ......そんなことも知らないとは.....さては、にわかですね..?」

 高城は、眼鏡をくっと上げながら得意気に口を開いた。にわかって突然目覚めるって意味だっけ、何時かの高城が足元に抱きついてきた映像が浮かぶ、やめろ、僕にはそんな趣味はない。

 しっかし、いっこうにやまないこの騒ぎ、ここは何処かの動物園かよ。

 この騒ぎ何時まで続くんだと思っている時、黒羽が動いた。黒羽は人差し指指を唇のした辺りに持っていき

 「しー....」

 と注意する。固まる周り。さっきまで嵐のような騒ぎが嘘のように消えた。それを見て黒羽は微笑む。黒羽、あの騒ぎを一瞬で止めるとは、......恐ろしい奴。案外、侮れないのかもしれない。

 「お仕事で出席できないときもありますが...皆さんとの高校生活、おもいっきりエンジョイしていきたいと思います! よろしくお願いします! 」

 黒羽はお得意の営業スマイルを向けたあと、お辞儀をする。その姿は確かに可愛い、一人のアイドルだった。思わず、僕もときめくところだったが、この手のアイドルは誰にでも愛想よくしている筈だ。そうさ、こんなの媚を売っているだけなのだ。騙されるな僕。そう自分に言い聞かせるとふぅとため息を吐いた。よし、やはり勘違いだった。

 僕が精神統一を終えたそのあとすぐ、「ゆっさりん」と誰かが立ち上がり、そう言った。誰とは言わんが眼鏡をかけた奴だった。それにつられて周りの男子もゆさりんという。そしてそれは伝染し。

 「「「「ゆっさりんっ! ゆっさりんっ! ゆっさりんっ! ゆっさりんっ! ゆっさりんっ!」」」」

 クラスの僕以外の男子全員が立ち上がり、ゆさりんコールを始めた。しかし、やはり黒羽は男子をいのままに操る特殊能力でも持っているのだろうか。そう思わせる程に男子は黒羽を崇拝しているように見える。といっても一人の眼鏡が悪乗りして、他が乗っかただけかもしれないけど。

 「静かにせんか!」

 前田先生が持ち前の野太い声で騒いているやつらを注意するが、ゆさりんコールが静かになるころには一限目がもうあと数分で始まる所だった。

 「黒羽はあの席やな」

 前田教員が指を指したのは窓の方を見ている友利の隣の席だ。黒羽は友利のもとへ近づいていく。当然黒羽という少女は見知った相手には挨拶をするだろう。黒羽は友利の席の前で足を止めると挨拶をした。

 「友利さん。よろしくおねがいしますね! 」

 「.......よろしくおねがいします」 

 友利は相変わらず他人に無関心で、黒羽の方を見ずに返事を返した。当然、周りの受けは良くない。今のやり取りを見ていたクラスのやつらは友利の態度について態々口に出す。それは悪意の塊そのものだった。

 「なんだあれ」「ゆさりんにたいして失礼じゃない」「感じわるいー」

 囁くように陰口が飛び交う。しかし、嫌われている。でも、友利がどう言われようと僕には関係ない。友利に危険を及ぼすようなら、歩未が悲しまない為にも僕は全力をもって友利を護るが、正直日常生活では助ける義理も思いもない。そもそも、これは今まで友利自身が原因で積み重なってきたものなのだ。誰も信用しないと決めた友利自身の問題。だから僕には関係ない。


 一時間目のチャイムが鳴る。何処の学校でも多分変わらないチャイム音。その音は今日の学校という時間が始まったことを僕ら生徒と教師に伝える。

 教科書を開いて黒板を見ようとしたとき、誰かの視線を感じた。誰かと思って周りをちらりと見ると、その視線は消える。


 結局、昼休みまでの間、その視線を時々感じたが、探そうとするとすぐに消える。


 あの視線は一体誰のものだったんだろう。何かあまり好意的な視線ではなかった気がする。

 
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 後書き

 更新がもの凄く遅れた理由。 一つ、執筆データが消えたから。二つ、プロットの紙が消息不明。


 久しぶりに書いたから、キャラに違和感を感じます。プロットの有無でここまで違うとは....困ったなぁ。

 試験勉強をボチボチ始めないと行けないので、更新ペースが遅くなるかもしれません。



[42107]  第二回 視線 [訂正]
Name: 幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/20 01:14

 昼休みの食堂はいつもどおり賑わっている。周りを見れば同じクラスの友人と一緒に食事をしながら駄弁る生徒や、教師と一緒に食事をとる生徒たちが楽しそうにしていた。テーブルは午前中の授業が終わりすぐにここへ来たというのに、ほとんど埋まっていたが、残り僅かのテーブルの席を獲得できた僕は幸運だなと思いながら歩未お手製のオムライス弁当を食べる。

 何時もなら教室で食べる僕だが、今日はアイドル黒羽が我がクラスに転入してきたことで騒がしいを通り越して煩い空間ができあがっていた。黒羽が転入してきた噂を聞いた他のクラスの生徒が内のクラスに乱入してくるし、メールのアドレス交換にサインや握手を求める生徒など、兎に角煩すぎて呑気に昼食をとることができなかったのでここ食堂へと一人逃げ込んだのだ。全くアイドルだかなんだか知らないが、少し前までは僕がちやほやされていたのだ。もう少しちやほやしてくれてもいいじゃないか。どいつもこいつもステータスかよ。

 なぁーんて思いながら、あの教室とは違い、一人で昼食をゆったりと食べられると思って歩未お手製、メッセージつき、オムライス弁当を開いていただこうと思っていた。

 「ねぇ、乙坂くんその可愛らしいオムライスお弁当は乙坂くんが作っているの? 」

 「......いや、妹のお手製だよ、佐藤さん」

 だが、僕は一人でゆっくりと昼食にありつくことはできないようだ。テーブルを挟んで正面にゆったりとした仕草で座った少し焦げ茶色混じりの黒髪のショートカットの少女、佐藤某のせいでね。
某....いまだに下の名前は知らない。

 「ふーんメッセージの書かれたオムライスを乙坂くん君の妹が.....仲がいいんだね」

 佐藤さん、僕が一人ゆっくりと歩未お手製オムライスを食べようとしていたところに突如やってきた同じクラスの女子生徒。てっきり黒羽に話かけている団体の中にいるものだと思っていた。食堂に来るなんて、予想外だ。黒羽とのお友達ステータスを手にする為に必死なあの団体の連中と同じような思考の持ち主と見ていたんだが他人は簡単には分析できないものだな。

 「まぁね。大切な家族だから仲良くするのは当然だよ」

 「お、言うね。さすが乙坂くん!」

 オムライスを口に運びながら僕がいうと佐藤さんは茶化すような態度をとる。さすがも何も、僕にとっては歩未と仲がいいのはごく当たり前のことなのだ。それはどんな世界でも変わらない。

 「はいはい。まぁ、僕と妹の仲がいいとかはこの際置いておくとして、今僕は君と一緒に食事をとっているのわけだけど、僕が教室を出るとき、佐藤さんの友達は黒羽さんと話をしていたよね、君はいいの? 」

 「うん。私はゆさりんとは休み時間に話せたし、昼休みまでずっと付きまとったらウザいと思われるかもしれないでしょ。それに一人話しかけすぎて、周りの女子から反感を買うのはいやだし、友達はゆさりんに夢中だから.....。うん、やっぱり、今日、あの場所での昼食はないよね」

 「.......そ、そうなんだ」

 佐藤さんは食堂の店で購入したサンドイッチを少し食べる。その姿ははたから見れば可愛いのかもしれないけど、さっきの聞きたくもない打算的な考えをきいて可愛さは完全相殺された。

 女子高生って色々計算しているんだなぁと感心半分、腹黒さの恐怖半分で、取り敢えず女子生徒の発言は全て批判的なことを遠回した皮肉として受けとるように心がけるよう心に誓った。


 佐藤さんのことを僕はなにも知らない。認識といえば、転校生に気軽に話しかけてきた、人当たりのいい人間、とかではなく、メアド欲しさに数学で分からなかった問題を利用し、接触してきた人だ。あと僕の社交的一面のアピール材料。佐藤さんは友達としてとか初対面の時言っていたけど多分本人も僕と同じで友達とは思ってもいないだろう。自分を引き立たせる良質な素材としか考えていない。

 そもそも初対面の人間がすぐに友達なら、赤の他人、つまり、全く信用していない人間もお友達とやらになってしまうのではないか。友達って信用できて、ある程度の仲を持っていて、相手との共有する思い出がある、他人のことを言う筈だ。

 僕は佐藤さんを信用していなし、あっちも同じ。思い出といえるものも共有していない、ある程度の仲もない。ぶっちゃけ社交的な人間であるアピールをするための材料という認識。佐藤さんに何か良くない噂があれば直ぐ様、縁を叩き斬るつもりでいるし、悪い噂を持っているやつと関係持っていても何の利益もない。上っ面だけの友達。お互いを利用するそんな交友関係だ。しかも、下の名前も知らないで友達とか言わないと思う(あちらは知っています)。

 友達未満のこの関係は何事もなければ高校生活のあと二年間続くかもしれない。この先、今の認識が変わるときがくるとすれば、佐藤さんが信用できる人間であることを確信した瞬間だろう。信用できるかできないかは今回みたいに話す機会が何回かあれば分かってくるだろう。しっかり独断と偏見で決めてやるさ。内心超上から目線の立場で考えながら僕はオムライスを口に運んだ。

 クッ!.........ピザソースが甘い。悪どい思考が一瞬で霧散した。



 昼食は直ぐに食べ終わった。二人とも軽食の部類に入るような量だったからかもしれない。本当は食事を終えたら校舎の敷地にある図書館にいってプログラム関連の本を読もうと思っていたんだけど、佐藤さんに折角なんだから話をしようと言われ、雑談をしている。僕の前住んでいた場所や、通っていた陽野森高校での生活を訊かれたから一応当たり障りのない答えを返しておいた。

 陽野森高校での成績について訊かれたとき思わず苦笑いしてしまったのは仕方ない。僕はそこそこ上位と佐藤さんに嘘を言った。実際は一位、首席だったのだが、カンニング、世で言う所の不正(僕流に言うと上位をとるための工夫と努力の結果)をした結果のものだったので首席だったことを打ち明けるのは躊躇われた。

 躊躇われた理由?。一位をとっていたとか発言すればここでも上位に入り込まないといけなくなるだろ!。能力で乗り移り、カンニングするにしても、今はまだこの学校の上位のやつの顔も名前も知らないんだから不可能だ。特に、物理で成績優秀のやつを探せなければ、一位にはなれない。朝と夜勉強をしていますが物理はいまだにさっぱりだよ!。他の科目はそこそこ自信があるけど。物理だけは一向に進まない上に自信なんて欠片もない。何か解決作をと考えるが、考え出したらキリがないので今考えるのはやめることにする。

 その後、佐藤さんの質問に適切な答えを選択しては、質問をするを繰り返すを続けていると佐藤さんがここではこういうのを聞くのはご法度なんだけどと前置きをおいて僕に何かを問おうとする。

 「乙坂くんはどんな.....」

 佐藤さんの言葉が紡がれることはななかった。食堂に吹いた暴風とも言うべき余波によってガラスが割れたからだ。

 驚く、食堂にいる生徒や、教師達、眼前にいる佐藤さんも驚いた表情をしている。

 「地震? 」

 「いや.....多分違うと思う」

 僕は佐藤さんの推測を否定する、この光景を前にも一度見てみたことがあるからだ。こんなことをするやつは一人。割れたガラスとは反対方向、食堂の入り口からこの竜巻にあったような現場を作り出した本人、高城丈士朗は頭から血を噴き出しながらこっちへ向かってきた。前は血まみれの姿に驚いたが二回目の今は初回より驚きは少ない。

 「どうした、高城。生徒会に集合か? 」

 「はい、友利さんは先に生徒会室で待っています」

 「分かった。佐藤さん、僕は生徒会にいかないといけないから...」

 「そうなんだ。生徒会じゃ仕方ないよね....。私もクラスに戻ることにするよ」

 佐藤さんはにこりと愛想笑いをした。僕はじゃというと自分の出血をハンカチで拭き取る高城と生徒会室に向かう。そう言えば佐藤さんはさっき何を言うつもりだったんだろう。

 テーブルから離れ、生徒会室へと歩を進める中、僕はまたあの視線を感じた。誰かに見られている感覚、刺々しい敵意を持った視線。

 僕は何となく後ろを少し振り返った。丁度、その時に視線は消える。後ろの食堂はもうあと数十分で昼が終わりだというのに賑やかだ。先程まで座っていたテーブルにはまだ佐藤さんがいて、僕が見ていた事に気づいた彼女は手を振っている。友利とは違い愛想のいい女子である。

 しかし、さっきから感じる視線はなんなんだ。いや視線といか遠くから見られているというか......。いや、今は生徒会活動が最優先だな。僕は切り替えて視線のことは気のせいということにしておいた。






 星ノ海学園から二キロ程離れた山にある少し大きな木の太い枝に足をかけて、少女は両手で筒のように空洞を作ってそれを眺めている。そして、透き通るような白髪をもつ少女は自分が見ていたことに反応したターゲットに驚いていた。偶然かと思ったがどうにもそうじゃない。何度も反応している。

 「やっぱり......気づかれてる」

 そうポツリと呟くと筒の形をさせていた手を止めて、高さ15mは下らない木の上から飛び降りる。着地はふわりとまるで浮遊したかのようにゆっくりと地に足をつけた。そして少女はこの場を後にした。



[42107]  第三回 とある任務という名の襲来 
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/23 02:49
 生徒会室に高城と共出来る限りの早足で向かった。それはもう気持ち悪い歩き方に成る程に早く、しかし走らず。あくまでも早歩きでだ。僕は通常の歩行速度でもよかったのだが、何でも、呼び出されて直ぐに生徒会室に行くのが生徒会に所属するものの決まりだそうだ。

 走ってれればいいのに、廊下にはこの学園の能力者、またはその素質があるもの(生徒)が駄弁りながら食堂へと向かったり、教室に戻るために歩いていたりと思いの外混んでいたため、走ることはできない。だから早足で歩を進め、最小限の動きで障害物もとい、能力者、またはその素質のある(生徒)をかわしながら生徒会室に向かった。結果、自分でもよくやったといってもいいほどの短時間で生徒会室についた。



 「おっそーい。お前らなに座だ! 私が集合かけたら三十秒でここまでくる。生徒会に所属するもののルールだぞ」

 なのに、生徒会室に入って、招集をかけた生徒会長の言われた第一声がこれだ。僕と高城ができるだけ早く来るために苦労したにもかかわらず、生徒会長様、友利は自分専用のデスクの椅子にふんぞりかえっていた。それがさらに神経を逆撫でする。


 「そんなルールは知らん。それにそのルール、瞬間移動ができる高城は可能もしれないが、僕には不可能だ」

 「いや、ルールなんで守ってください」

 「無茶言うな! 走ってこれるならまだ可能性はあるが、廊下に人混みができるような場所で走れるか! 」

 友利は僕の言葉を聞くと、はぁと呆れ顔でため息を吐いた。その顔がまたイラッとくる。

 「冗談ですって....」

 「は? 冗談? イッザッジョーク...?」

 「はい、と言っても呼び出されたらすぐにくるようにしてください。能力捕獲の為には一刻を争う場合もあるかもしれないので」

 「ああ......分かった。で、黒羽はなんで微笑ましいものを見る目で僕らを見ているんだ」


 生徒会室に僕と高城が入る前からいた黒羽柚咲は、僕の友利今のやり取りを微笑ましそうに見ている。いったい何なんだ。僕に聞かれても黒羽はその表情をやめない。

 「いえ、お二人は仲がいいんだなぁ~と思って」


 黒羽の言葉を聞きまず、自分の聴覚に異常がないかを確認する。うむ、異常はないようだ。つまりは、黒羽の発言は幻聴ではないということか。ならそう思う要素があったということ....。

 僕は思考を回転させる。

 今のやり取りの中に仲がいいと思う要素があっただろうか。いや無い。しかも、僕と友利は前の世界と合わせても、出会ってからまだ一ヶ月もたっていないし、この世界ではまだ数日だ。それにさっきのはどう見ても友利が僕を使って遊んでいただけだろ。偉そうな態度でな。

 全く噛み合っていないし! 相性は、水と油! やはり友利と仲がいいと思われる要素は存在ない! 思われたくも無い! あんな奴と仲が言いとかマジあり得ないわぁ(失笑)

 故に、僕は黒羽の発言を即刻に否定する。全ては自分の為に!

 「「よくない! 」」 

 友利も否定した。友利と同じタイミングだったのはあっちも僕と同じ考えを抱いている証拠である。でも黒羽はそれがわからないようでにっこりと微笑んだ。もしかすると同じタイミングで答えたのを仲がよいと勘違いしたのか?。なんて面倒な奴なんだろう。一々、友利といかに仲が悪いか説明するのも面倒なのでもうため息しかでない。

 「はぁ.....。あれ? そういえば、黒羽は何故ここにいるんだ? 」

 「あ、はい私自身もなんで呼び出されたのか分かっていないんでした! 」

 いや、それは駄目だろ。何で理由もわからずついて来た。不審者についていっちゃダメって幼稚園も知っているぞ。

 黒羽の人を疑わない心は歩未に匹敵するかもしれない。でも、歩未の純真無垢さは世界の誰にも破れない程に清らかで透明度があるものだ。アイドルなんて職業をやっている限り黒羽が歩未の領域に侵入することは不可能!

 そもそもアイドルなんてやっている時点で心が汚れるのは決定してんだよ!

 どんな時代のアイドルも年齢とればシワが増えるし、その上、引退後は煙草をすいながら、聞きたくもない暴露話をして、元ファンだった連中の理想を、アイドルに理想を抱いている人間達の思いを木っ端微塵にするやつらだ(*独断と偏見による意見です*)。今現在黒羽がすんだ心をしていようと最終的には心が荒むから歩未には勝てない! やはり、歩未、お前が世界で一番だった。

 歩未が世界一の純真さを持っているのは誰もが認めることなのはわかる。しかし、今は何故、黒羽が生徒会室にいるかだ。僕は友利から黒羽が生徒会に入ったという話を聞いた覚えがない。


 「それで、えっと、私はどうしてここに呼ばれたんでしょうか」

 将来最悪を撒き散らす黒羽と世界一の妹の素晴らしさにまたひとつ気づいた僕の疑問に友利が答える。

 「どうしてもなにも、黒羽さんは生徒会のメンバーですから」

 「そっかー私が生徒会の~......えっ」

 黒羽が驚愕する。僕もいつの間にか黒羽が生徒会のメンバーに入っていたことに驚いた。でも、アイドルをやっている黒羽が内申に響かないようにするために生徒会に所属させるのは当然の処置だろう。生徒会に所属さえしていれば授業にでなくとも内申が悪くなることはないのだから。現役のアイドルにはありがたい制度だ。

 しかし、黒羽が生徒会に入ったという連絡が僕にまわってきていないのには悪意を感じる。

 「あの~そんな話聞いていような気が.....」

 「僕にも黒羽が生徒会に入ったなんて連絡、来ていないぞ」

 「いえ、黒羽さんには確かに話ましたよー それも転入前に...。まぁあなたにはしてませんが」

 「おい」

 友利は黒羽から顔をそらしてそう言った。転入前ってことは美咲には話したってことだろう。黒羽に星ノ海学園の転入の話したのは全てが終わって美咲が入れ替わっていた時だった。どっちにしろ黒羽自身は聞いていない訳か。なら覚えもないは当然か。

 しかし、僕に話してないのにはやっぱり悪意を感じる。これでも一応生徒会の一員なのだから連絡するべきだろうに。黒羽やっぱり友利との仲なんぞまったく良くないのだ。 

 黒羽は暫くの間う~んと頭に両手の人差し指を当てて、生徒会のメンバーに入れられたこと時のことを思いだそうとしていたが、絶対に思い出すことはないだろう。生徒会についての話は黒羽ではなく、美咲が聞いていたのだから。

 黒羽は暫くすると、両手の人差し指を離した。やはり記憶に無かったのだろう。突然、決まっていた生徒会への所属、さすがの黒羽も文句や不満の一つや二つくらいあるはずだ。

 さぁ、友利に不満を文句をアイドルの悪なる部分を吐き出せー。貴様の本性を見せるのだ! (←どうしてもアイドルを悪にしたい)

 黒羽は友利の方を見て、両拳を胸元に持ってくる。

 まさか友利を殴ろうと! 

 意外だが、黒羽は感情的で直ぐに手をあげてしまう人間なのかもしれない。

 黒羽は華奢な指で作られた両拳にぎゅっと力を入れると少し前屈み気味になる、顔は気合いが入っている様子だった。いざ、友利に殴りかかろう!

 ......なんてことするわけなかった。もし本当にに殴りでもしたら暴力沙汰でアイドルとしての活動は終わる。なので黒羽が友利を殴るわけがない。それは分かるけど。

 黒羽のとった行動それは覚えもないのに現状を受け入れるという並大抵の人間にはできぬことだった。

 「わっかりました! 本当は全く覚えていませんがやるからには全力でお手伝いします! 」

 現状をすんなりと受け入れたのだ。身に覚えもないことで勝手に決められていたにも関わらず文句や不満の一つもないとは黒羽という少女の度量の広さは歴史に出てくる人物、坂本龍馬並みに広いのかもしれない。友利も黒羽の天然すぎる態度に少し茫然としえいたが直ぐに何時もの無愛想な表情にもどると淡々とした口調で黒羽に「はい、是非よろしくお願いします」と言う。 


 「ゆさりんと生徒会活動.....! 心踊りますね乙坂さん! 」

 黒羽が生徒会の一員になったことが余程嬉しかったのか。高城はテンションあげあげだ。しかし、黒羽のいる生徒会活動を想像しても心は踊らない。寧ろ、あの凶暴な姉の美咲がいつ出てくるか分からないからな。同意を求められても困る。取り敢えず適当に相づちを打っておくか。

 「ああ、まぁ、人が増えるのはいいことだよな」

 パシらせるとかできそうだし。ああ、でも、美咲に変わられたら僕が死ぬのでパシリはやめとこう。



 「で、私は何をすればいいんでしょうか」

 黒羽の生徒会の仕事についての質問には僕が答えた。

 「普段は特殊能力者の確保や保護をしたりしているから動向するだけでいいんじゃないか」

 「だいだいそんなところですが、今日は特殊能力者の確保も保護もしません」

 「え、なぜ? 」

 思わず質問に答えた方が質問する事態になった。特殊能力者を探すのでないなら何故僕達は集められたのだろうか。

 「今日はとある任務をまかされているんです。しかも場合によっては生徒会の存続にも関わるものです」

 「ッ! 」


 友利の言葉を聞き、思わず唾を飲み込んだ。生徒会の存続に関わるような任務だと。ただでさえ能力者確保に敷地外にでるという危険なことをやっているのに、いったいなにをさせるきなんだこの学園作った馬鹿は。

 友利が任務を任されたということはこの学園の創設者、またはその近くにいる同等の権限をもっている奴からだろう。そもそも馬鹿が複数なのか一人なのかは分からないが、生徒会活動で護るべき能力者を科学者が目をつけているかもしれない能力者のもとへと確保にいかせるなんて事を許している時点で本物馬鹿なのは間違いない。

 そんな、創設者関係の奴等だ。きっと無理難題超危険な任務だろう。今日の活動は前よりも警戒して、友利を守らないといけないな。しかし、何故、友利の影の護衛みたいな真似をせねばいかんのだ。これでは過保護すぎる。知っている過去は塗り替えられ、友利がいきている。僕の世界で友利が死んだ日はもう過ぎ去った。もうこれ以上死の危険なんてあるわけがない。

 その筈なのに.....もしものことを考えてしまう。また友利が命の危険に晒される時がくるのではと。

 生徒会活動を続けていれば、この先、能力者確保の為に外にでる限り科学者と鉢合わせてしまう可能性もあるし、何より人は簡単に死んでしまう。僕はこの平和な日本で、それもすぐ近くで二度見ている。こことは異なる未来をたどった別の世界で。

 だから、不安だ。そして、他人のことのようにいっているが僕だって何時死ぬか何て分からない。何時、どうなってしまうのかなんて、誰にも分からないのだ。

 やはり、危険な目に合わせないように活動の際は警戒しておくべきか。友利が死んで歩未が悲しむ姿はもう見たくない。あれ、僕、歩未に友利が死んでしまったことを伝えたっけ?。

 「どうしました? 」

 「え? なにが」


 ノイズ。ザザザッ「お...ちゃん」......。

 今のは誰だっけ?。それを聞いた瞬間、周りの景色が加速的に遠退いていった。世界から切り離され、そして、過去に見てきたものが一気にフラッシュバックした。

 これは過去の記憶だ。

 赤い薔薇よりも濃い真っ赤な鮮血がアートのように刻まれたアスファルトが眼前に広がっていた。

 人を下敷きに引きずったトラックは壊れたように耳障りな音を奏でている。その光景を呆然と見ていた僕は自分の手に何かを持っていることを気づく。それは華奢な掌で手首から先がない。

 誰かが悲鳴をあげた刹那、場面が切り替わり、あかね色の夕焼け空の下の何処かの弓道場に僕は立っていた。傍らには銀髪の髪の少女が倒れていた。彼女の瞳は虚空を写し続けていて、蒼い瞳にはやや夕日の輝きが反射して少し赤色に見える。だけどそれは夕日輝きではなく、その少女の額から流れる赤い液体だった。

 誰かは呆然としていた。自分が殺そうと死を望んだ相手が呆気なく、勝手に死んだのだから。それは自分がその少女の死を願っていから起きたてしまったわけではない。事故だった。でも望みがかってに叶ってしまった後はただ虚無感だけが僕の心を支配した。

 更に場面が変わった。全てが血まみれだ。景色も視界も。何処かの玄関に倒れ伏す誰かも。そして、それを見て、誰かが悲鳴を上げて泣いていた。腕の中には血まみれの大切な人が抱き抱えられている。



 「....なんだ今の」

 「ほんとに大丈夫ですか。あの時見たいに顔色悪いですよ」

 友利の声が聞こえてきた。映し出された誰かの記憶達は霧散する。

 さっきまでの光景は全て消え去って、辺りを見れば、見慣れた部屋があった。本棚や書類があり、梱包をといた段ボールが床のあちこちに散乱している。

 生徒会室だ。どうやら僕は幻を見ていたらしい。今朝みた悪夢といい最悪な一日だ。僕はゆっくりと辺りの確認をする。友利と高城黒羽が心配そうな顔で僕を見ていた。友利のいうあの時とは友利一希と接触したときのことだろう。

 でもあの時のような激痛に苛まれている訳ではないし何かが削られるような感覚もない。ただ過去を見ていただけだ。最後の方は覚えがいないし夢でみた何かだろう。今は生徒会活動に集中だ。守るだの何だのは後で考えよう。


 「嗚呼、大丈夫だ。ちょっと寝不足だからか貧血気味になっていたようだ。もう治った」

 「はぁ.....ならいいですけど」

 「ああ、というかその任務とやらはなんなのだ? 」

 「あ、私も気になります! 」


 「それはですね」と友利が答えようとした刹那、両開きの扉が勢いよく風をきり開かれた。その扉を開いた人物はずぶ濡れだ。長髪も制服も、水浸しになっている。

 その男は生徒会室にはその状態のまま入ってきた。ゴムせいの靴が床につくたびにバスケット場でよく聞くようなキュキュっという音をならす。

 - 協力者だ。

 協力者、もとい水浸しの水男は中心にある机の前に立つと机の上に乗ってある地図から少し上に指を出す。

 その異様な姿に黒羽がポカーンと口を開けている。確かにいきなりの登場で驚くような姿なのはわかるがアイドルがそんなアホッ子みたいな顔するのはなぁ.....。とてもじゃないがTVでは放送できない。高城が仲間である旨を伝えると黒羽は不気味がりながらも水男を見ていた。

 僕は机に近づき、水男がどこに水滴を垂らすかを確認する。この水男が何処を示すのかで今回の任務の危険度が変わる気がする。科学者の本拠地とかだったら流石に抗議しよう。死ぬのも死なれるのもごめんである。


 僕は緊張して協力者が指先から水滴を垂らすのを待つ。そして、ポトリっと水滴が地図に落ちた。ついに始まるのだ生徒会の存続をかけた任務とやらが!

 
 「........試験範囲は32~36ページ」

 「は? 」

 思わず呆けた声が出てしまった。

 水男は試験範囲のページを言い残すと両開きの扉をパタムッ! と閉めてこの場を後にした。

 試験範囲って、ここで僕は先ほどまで想像していた科学者の本拠地に乗り込みますとかそんな危険な任務でないことを確信した。


 「えっと....何が起きたんでしょう...」

 黒羽は閉まった扉から視線を僕に移し、何が起きたのかを訊いてくる。僕自身もなにがおきたのかまだ、わかっていないというか分かりたくない。先程までの決意を見失って仕舞いそうだったから。

 しかし悲しきことに僕の頭脳は勝手に解を出していく。

 とある任務。いっけん危険な香りを漂わせるフレーズ。しかし、本当に危険なら友利は危険を伴う任務と言っていただろう。流石の友利も危険な任務なら参加の意志も自由にしてたはずだ。本当に危険ならだが......。

 次に生徒会の存続。 生徒会の存続これは生徒会がなくなる可能性を示している。生徒会が無くなる時って何だろう。

 生徒会活動ができなくなった場合。 またはできない状況にあえう場合だ。 ここの活動は能力者確保だからそれができない=外出できないだ。能力者を確保にいけない状況。

 もしそうなることがあるとしたら、停学処分を受けているか、あとはテストで赤点をとったときだな。補習や再試験なんてしてたら活動はできない。

 今後、生徒会活動ができなくなってしまう事態と、水男の試験範囲.......これで答えは簡単に出た。

 「いや、何時もは、能力者の居場所を教えてくれるんだけどな.....今回は試験範囲か。友利、任務ってまさかと思うが、.......僕や黒羽の学力が怪しいから、学力向上を促すとかじゃないよな?」

 「はい、その通りですよ? 」

 友利はなに言っているんだコイツという目で僕を見てくる。黒羽はまだわかっていないといった表情だ。

 「ああ、クソ。緊張して損した」

 「緊張って一体どんな内容だと思っていたんですか? 」

 「僕はてっきり科学者が関わった危険な極秘任務とかそういうの想像してたんだ。能力者である僕達を科学者が狙っているかもしれない能力者の元へ向かわせることを容認しているような奴だぞ。きっと馬鹿だから危険な任務もやらせるんじゃないかって......」

 「はぁ。そう言うことを学生である私達にさせるような人じゃないですよ、あの人は。生徒会については私のお願いを無理して聞いてもらったんです。あとあなたより頭がキレる人ですんので馬鹿呼ばわりはしないでください! 」

 友利は自分が信頼している人物のことを馬鹿呼ばわりされたのが気に入らないのか頬を少し膨らませぶすっとした。それを一瞬でも何かマスコットみたいで可愛いと思ってしまった僕の頭はもしかしたら何かしらかの異常をきたしているのかもしれない。病院いった方がいいかな。

 「えっと、けきょくその任務って? 」

 「黒羽、落ち着いて聞いてくれ。多分、僕達はこれから」

 僕の言葉は途中でいつの間にかむくれた表情を止めていた友利に遮られた。

 「じゃ、はじめますか勉強会」

 「へ? ...........えっ!? 」


  - 地獄を見ることになるかもしれない。


 

 
 こうして、その任務は始まった。存続すらかかった期末テストへ向けての地獄の勉強会が。











[42107]  番外編 迷子のテロリストの少女と黒髪のターゲット
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/09/02 13:56
 甲高いエンジン音が響いているのが聞こえてくる。ここは日本のX空港だ。空港の外は人が行き来していて、空港のなかに入るもの、タクシーやバスに乗るものたちがいる。それらは海外の人間も少なからずいるがやはり日本人が多い。

 辺りを観察しながら空港前で佇む少女が一人。少女の長い透き通るような短い白髪が風で靡いた。それを自分の華奢な両手で押さえつけると空には飛行機が飛び立った。それを見送ると少女コーピアは最低限の荷物を詰め込んだトランクをカラカラと引きながら歩き出す。

 コーピアの任務は日本にいる略奪の能力をもった少年を見つけ出し排除することである。近い未来自分達の組織を滅ぼしにくる少年。コーピアは自分の能力の一つである予知夢でその未来を予知した。

 その少年は何の感慨も抱かないような眼差しで平気で仲間達を殺した。殺した理由は余りに独断と偏見がまじったもので身勝手すぎるものだった。

 その危険人物は今から数ヶ月後には組織のアジトにやってくる。アジトの場所を変えれば未来も変わるだろうが恐らくあの略奪という全能になる可能性すら秘めた特殊能力を持っている奴には意味をなさないだろう。予知夢で見た奴の言い方では世界中のテロ組織を潰しているようだった。さらにあの状況は迷わずあのアジトへと侵入してきたようだった。憶測だが能力者を感知する能力を略奪の力で所持していたのかもしれない。

 故に未来を変えるならあの略奪の能力者の日本人の情報を手に入れ殺られる前に殺すしかないのだ。

 奴の情報は皆無。だが日本人である以上あの日本の能力者に関する組織が情報を持っている可能性が高いだろう。 -と言ってもない可能性のほうが遥かに高いのだが- 

 そのなかに奴に関するデータがあれば上出来。なくとも日本の能力者に関するデータが取れればそれでも良い。組織の役に立つのだから。だが願わくは奴に関する情報、または対抗できるような能力者の情報があってほしい。なければ未来は無いのだから。


 「いこう.....」

 コーピアはそう呟くと最初の目的地へと向かった。能力を実験台にする科学者の研究施設へ。

 -それにしても日本って何て閉鎖的なんだろう- コーピアには日本人の誰も彼もが希望と夢をもたない諦観を宿した目をしている気がした。これは予知夢でみたあの何もかも諦めた日本人の諦観に満ちた目が印象に残っていて先入観を持っているからかもしれない。

 それにしてもあの自分と変わらないような歳のしかも平和の国で育てられたはずの日本の少年は一体どんな体験をすればあんな全てを諦めたような目をするようになるのだろうか。

 いや、コーピアには関係のない話だ。自分は奴を本気で殺すのだから。

 どんな悲惨な人生を送っていようと私には関係ない。


 コーピアは足を前に進める。歩いて歩いて歩いてそして歩いた。

 ふとコーピアは足を止めた。

 腕時計を見れば歩いておよそ三十分が経過していた。辺りを見渡せば溢れんばかりの人が往来する道路。無数に立ち並でいるビル。この前行ったアメリカの都市より低いように感じるが今はどうでもいいだろう。



 「ここ何処....?」

 コーピアは初めて来た日本の町で迷子になった。


 取り敢えず落ち着こう、状況を整理、自分は迷子になっている。OKこれは理解できる。まだ見ぬと地であるし、一応日本の細かい地図と場所は覚えているが、同じような建物と同じような人が徘徊しているこの場所がどこか分かっていない今はあまり意味をなしてない。せめて自分がどこにいるのかを理解することができれば.......。

 「.......人にきくしかない」

 コーピアはそう決めて人に場所を訪ねようとする。そうだあの日本の学生服をきている黒髪の少年と隣をあるく同じ学校だと思われる長い銀髪を二つに結んでいる少女に訊くことにしよう。コーピアは自分の少し前で雑談をしている少年少女の元へと足を運んだ。

 近づくにつれ話声が聞こえてくる。

 「で昨日のだが、黒羽にプロデューサーが迂闊の手出できなくすることと恐怖を植え付けることには成功したが実際のところはどうなんだ」

 「と言いますと? 」

 「あのプロデューサーがそう簡単の諦めるかという話だ。星ノ海学園で保護することで科学者が迂闊に手を出せない状況は作りだせた。でもその他は別だろ。ああいう奴等はそれなりの権力を持っている黒羽を業界から追い出してどん底に陥れることも可能なんじゃないか。それとも、そういう面も学園は守ってくれるのか? 」

 「学園は科学者が少しでも関わる可能性のあることからなら守ります。黒羽さんが力を持っている以上危険な目にはあわせません」

 「権力者から守ることもできるだけの力をもっているのか凄いな....」


 科学者という単語を聞きコーピアは驚き、足を止めた。 話の途中からまさかと思ったが今前にいる二人は能力者関連の人物だった。いや、学生なのだから能力者だろうか。ならば迂闊に接触するのは危険かもしれない。

 コーピアは会話に出てきた星ノ海学園というのはデータを自分の記憶を頼りに探した。今回の任務で調べることになっていた組織のひとつだ。確か科学者から能力者を守る組織だった。圧倒的資金力と警察の情報操作すらできる権力を持っているとのことだった。今の会話、この二人はそこに保護されている能力者なのだろう。

 コーピアは二人から距離をとることにした。今は別の組織に忍び込んでデータを盗んでいき、あの略奪の能力者を見つけ出さなければならない。星ノ海学園は最後辺りだ。

 コーピアは一歩二歩と後ろにのけ反った。その時、後ろからの衝撃、敵襲かと思ったが体の大きい男に突き飛ばされただけだったようだ。男からの謝罪はない。確かに後ろに下がったのは自分だが謝罪の一つくらいないのだろうか。コーピアは不快な思いをした。更に予期せぬことは続く、ぶつかったせいで前の方に倒れそうになり、一歩二歩三歩とバランスが取れず大きく前に歩を進めてしまった。そしてバランスをとるために手を前に伸ばすと学生服の少年の肩に触れてしまった。


 最悪だ......。落ち着け、接触してしまったのは失敗だが、謝ってこの場を去ればいいだけのこと。コーピアは直ぐに謝まろうとするついでにこの場所が何処かも聞くことにした。

 「あ、すまない......て外国人か。日本語は分からないかもな」

 しかし、謝まる前に謝られた。日本人は何て空気が読めんのだとコーピアは思った。コーピアは日本語は理解できるある程度なら喋ることもできる。無茶苦茶不本意だった。顔を上げていえ分かります喋れますと発言しようとしたが。顔を上げた瞬間心臓が氷つくような衝撃に襲われた。

 「えっと、すみません、......どうしまたか? 」

 少し硬い感じの英語で自分に話しかける黒髪の少年。自分の予知夢にでてきた組織を仲間を何の感慨もなしに平然と殺してのけた少年。髪は予知夢で見た時よりも短い上に目の印象もだいぶ違うが間違いない。.....奴だ。

 反射的に靴の裏に仕込んでおいた刃を振り上げそうになるが寸前とところで踏みとどまった。今やれば監視カメラなどが設置されている場所でしかも公共の場が騒ぎになるし、星ノ海学園は権力者すら掌握してしまうほどの組織だ。迂闊には手を出せない。しかし外にいる今だからこそ殺るチャンスなのかもしれない。

 「あの大丈夫ですか? 何かを困ったことでも?」

 少年のとなりにいた銀髪の少女が自分に話しかけてきた。こちらは少年と違い英語に硬い感じもない。日常的に耳に触れる発音だった。

 コーピアは脳をフル回転させる。今は下手は打てない。確実にやれる機会を待たなければ......。

 落ち着け落ち着け落ち着け。自分にそう言い聞かせ、結局、日本語のできない困った外国人を演じることになった。

 この場所が何処なのかを聞き、少年と少女とは別れた。そして、自分のいる場所を自分の頭の中に展開している地図を頼りに人気のない場所へと向かった。

 

 「........見つけたよ」


 自分の信用している組織のリーダーであるクロムに通信を傍受されない為の専用デバイスで報告する。クロムは見つかった経緯をきき偶然って怖いなと呟いたあと指示をだした。

 「コーピア、優先順位は変わらない。先ずは日本で奴の情報を集めることだ。予知夢では奴にどうやって能力を奪われたかも分からなかったのだろ。略奪にも何らかのプロセスがあるはずだそれがわからない限り接触はするな」

 「......分かった」

 「それと日本の能力者関連の組織を調べ終えたら奴を監視しておけ。いやこの場合は観察しろか。どうやって能力を奪うのかを知っておきたい.....慎重に行動しろよ。能力を奪われたらその瞬間全てが終わるからな」

 「了解」

 その後、デバイスをきるとコーピアは行動を開始した。そうして僅か二日という時間でほぼ全ての能力者関連の組織や施設からデータを盗みだし、自分の組織にデータを送信した。そのデータは全て目を通したが略奪の能力者の少年に関するデータはなかった。

 残る組織や施設はあと僅かだコーピアは星ノ海学園以外に略奪の能力者に関する情報はないと判断し星ノ海学園へと向かうことにした。

 そして、その日から略奪の能力者の観察が始まった。



[42107]  第四回 テスト勉強と一時の恥
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/23 03:09
 勉強会。なんてものを僕は初めて経験している。僕は動かしていたシャープペンを止めてそんなことに気がついた。シャープペンをノートの上に置くとふぅと思わずため息がでる。中学では勉強なんてまともにやらなかったし、友人もとい僕のステータスを上げる為に利用している奴らに勉強会をしようとテスト前に誘われたりもしたが、全て断っていた。

 歩未との時間が大切だったし、何より勉強なんて全く行くつもりはなかった。ボロが出るから全て断っていたのだ。そしてそれは間違っていなかった。

 僕は生徒会室にある何時もは大きな地図がおかれている机の上にある僕の教科書とノートそれを隣で見てた友利を一瞥すると扉の方へと足を運ぶ。

 「どこへ行くんですか? まだ終わってませんけど」

 「ああ、ちょっとそこらへんを散歩にな」

 「犬か! ていうかさっきまでの勢いはどうしたんですか? 物理をやりはじめてかほとんど進んでいないですけど」

 そう、勉強会が始まって数十分間は問題なかった。歴史だとか、国語だとか、古典だとか生物基礎だとか、英語とか、公式さえ覚えれば余裕な数学だとか、とにかく、覚えてしまえば楽々なものなら全く問題なかったんだ。寧ろ驚かれた。カンニング魔なのに勉強できたのかと。失礼だと思ったし、僕は勉強ができないわけじゃない。実際そう言い返した。

 だが、恐れていた事態が起きてしまった。

 勉強会はやはりでるもんじゃない。自分の苦手なものが他人に知られるから、そう、今まさに今この瞬間、苦手な物理を前にして苦戦しているように.......。

 「もしかして物理がにが」

 「断じて違う! 今日はもう集中力がきれただけだ! そもそも、あんな意味不明なものは建設業をやっている奴や、どこぞの物理学者に任せておけばいいのだ。一般市民である俺達には必要性のないもののはずだ。寧ろあんなちんぷんかんぷんなものを平気な顔で黙々と時続けられる奴らの方がどうかしているんだ! 」

 「動揺しすぎで分かりやすっ! 一人称も僕から俺になってますし物理が苦手だって自分でいったもんでしょ」

 今日、勉強会なんてものをやって解ったこと。過去の僕の対応は決死って間違っていなかった。即ち最終的にはボロがでるということが立証されたのだ。

 そのあと僕は友利に反論をし続けたが結果はただ墓穴をほっただけだった。文字通り穴があったら入りたい気分である。

 椅子に座り、机に突っ伏し、顔を隠す。今できることといえば取り敢えず優しい目で見つめてくる友利以外の生徒会メンバー達の視線を直視しないことくらいだろう。いっそ死にたい。絶対に死なないようにしようなんて覚悟がくだけ散った瞬間だった。

 「しっかし、勉強ができたのは意外でした。 まぁでも、苦手な科目がなかったらカンニングなんてしないか」

 「カンニングって? 」

 「黒羽、頼むから聞かないでくれ。人には色々な事情があるんだよ」

 黒羽はわかりました聞きませんと耳をふさいだ。天然というか馬鹿というか。しかし、そもそもだ! 本来なら勉強会何てしなくてよかったはずなのだ。すべてはこの世界の僕があの陽野森高校での茶番を見破れず、テストを解けなかったせいである。クソっ! おかげで恥をかいた。この世でもっと恥をかきたくない友利相手にだ。

 「それに今さら勉強とか、テストまであと一週間もないだろ。最悪の場合は能力使えばどうにでもなるじゃないか。物理なんて社会で使うことなんて普通はないし、今回の任務とやらはあくまでも赤点をとらないようにするだろ。英語だとか、数学とか、国語とか、歴史やらは社会にでてからも使う事があるかも知れないからしっかり身につけていたほうがためになるが、物理はどうだろうか。うん、やはり学者でも目指していなければ物理なんて覚える必要はないな」

 よし、言ってやった。僕は何かをやりきった感を覚えた。友利にねちねち言われるかもしれないが知ったことではない。右から左にスルーしよう。そう思っていたのだが

 「はぁ、なら別に勉強しなくてもいいですよ」

 「え? 」

 友利の他人事のような言いぐさに思わず驚く。確実に呆れられるか、説教されるかと思ったが違ったようだ。

 「何驚いているんっすか? あなたの人生なんだから私は口出ししませんよ。さっき、あなたが言ったとおり赤点さえとらなければ今回の任務は達成ですし、何より物理ができなくても、社会にでても困らないは確かです。まぁ大学にいくならちゃんと勉強していたほうがいいと思いますが。....思春期を越えたら能力が消えること忘れていませんよね? 」

 「あ....」

 覚えてはいたが、物理を否定することに必死だったから忘却の彼方へとおいやっていた。

 そうか、大学に入試する時にはこの乗り移りの能力は消えているんだった。僕はそこそこいい大学に入りたいと思っている。社会に出たとき役にたつくらいの経歴がほしいのだ。今の時代大学をでても就職できない人間が増えているというし、高卒なんて論外だ。となるとやはり苦手な物理を克服するしかないのか......。

 僕は面倒なと思いながらも机に座ってシャープペンを右手にとり教科書をと向き合う。そして早速解らないところが出てきた。

 仕方ない。屈辱ではあるが将来と効率を考えて今はプライドを捨てよう。僕は隣に座り同じ科目の教科書を開いている友利を見た。

 「友利....」

 「はい」

 「ここが何故、こうなるのかが解らない。教えてくれ」

 「わかりましたよ....えっとこれは」


 僕は解らない所を友利に説明してもらった。高城と黒羽が微笑まし笑みを浮かべていたが取り敢えず無視しておくことにした。一時の恥。一時の恥。と僕は自分に言い聞かせシャープペンを動かし続けた。


 解き方の説明を受けたりしているとき、さっき見た幻覚や、今日昼まで感じていた誰かに見られているみたいな感覚の事が気になりもしたが他の事を考えるのは目の前の勉強に集中できてないと言うことだろう。それがバレ、「ちゃんと集中しろ! 」怒られたりしたがまぁなんとか教えてもらったところを理解できた。そして、ふと休憩しようとデバイスを手にして時間を見れば六時を過ぎていたんlで今日はこのくらいのところで解散しようと提案したのだが却下された。キリ良いところまでは帰らせてくれないらしい。勉強会が終わったのはそれから約一時間後。部活をしている生徒が帰宅する時間になった。



[42107]  第五回 クソッ! 舐めていた! 僕は学園創設者のことを完全に侮っていた。
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/01 09:17
 羞恥の勉強会が終わり学校から併設のマンションへと帰る。夕日はすっかり沈んでいて今は暗闇と星々が空を支配している。歩未には勉強会が長引くからと連絡を入れているので先に夕食でも作って僕の帰りを待っているだろう。


 歩を進めながら、頭の中で友利が教えてくれた物理の要点を復習したりしていた。が、苦手意識があるせいかすぐに飽きた。これは後にして、家に帰った後にすることを決めておくか。

 先ずは部屋の歩未と夕食を一緒に食べ、部屋の掃除、タスクを終わらせ、今日の復習と結構、進めている予習をしよう。


 そうだ、食事のときに学校での様子でもきいてみるか。いや、黒羽が転入してきたかをきかれるだろうし、その事を教えたあとでもいいか。でも歩未は黒羽のファンだからな.....。今日は黒羽の話で一日が終わるかもしれない。

 帰宅したらすることが纏まったあたりで、ふと昼間に感じた視線のことが気になり始めた。見たこともない記憶なども気になっている。いや、そのせいで気になっているのかもしれない。腕の中に抱えた誰かの死体。悲鳴を上げて泣く誰か。あれを見てから、感じていた視線が一気に嫌なものに思えてきた。

 まるで誰かに見られているような不思議な感覚は僕の生徒会に呼び出された直後から感じたなくなったけど、結局あれは何だったんだ?

 僕の能力の危険性を考慮して学園の権力者が監視でもつけているのだろうか。まさか! ハハハッ! ハハハハは....はぁ。


 ......笑えない。ありえない話ではない。僕の能力は略奪という能力者から能力を奪うことのできる能力だ。それは一個人が持つにはあまりにも強大すぎる力で、いつか考えたように全世界にいるであろう能力者から能力を奪いまくったとしたら僕は全能に、世界を滅ぼせる化け物にもなり得る。

 そんな危険を孕んだ力をもった存在を放置するなんて馬鹿な真似はしない。それに、僕の能力ははたからみれば乗り移りだが、実際は略奪であるということはあの協力者なら見破っている筈、そうでなければたった五秒間しか相手に乗り移れない能力者を前の世界の友利もこの世界の友利も生徒会に入れやしなかっただろうし、この学校に転入してからは接触せず無関心だったと思う。


 「あ、ちょっと待て.....」


 そこまでいきついて僕は今まで気づかなかったことに気がついた。思わず併設マンションへ向かっていた歩を止めて立ち止まってしまう。

 生徒会に略奪の能力者を所属させることを最終的に決定するのは友利の上司だ。友利が僕を所属させる理由は最終手段で能力者が今後能力を使えなくするための切り札札としても、その上司にとっては僕はいつ危険な存在になるかわからない存在のはずだ。そいつが生徒会の所属をただでOKするだけでとはとても思えない。ならば生徒会に僕を入れてそいつはどうする、いやどうしているのだ。

 やっぱり、監視か。自分の手の届く範囲外の監視。現に学園でカメラがない教室などで生活をしている間の僕をほぼ完璧に監視ができている。

 成る程、だから友利と高城が同じクラスだったのか。友利が手を回したものかと思ったが首謀者は学園の創設者関係の人物だったのだ。

 この世界では僕から友利に頼んで生徒会に入ったが断ると言っていても、最終的には無理やり入れられていたのかもしれない。別の世界では脅迫してきたしな。

 つまり生徒会は僕の監視もかねた存在だということに......。

 「何で気づかなかったんだ。それに馬鹿じゃなかったのか......」

 馬鹿だと侮っていた奴が思っていたよりも切れ者だったことに冷や汗をかく。

 全ては憶測と現状に当てはまるものからのこじつけではあるが一応筋は通っている。そして、本来監視については自分が略奪の能力者であると認識したときに気づけるものだったはずだ。だが、自分が他人の保持している特殊能力を奪えると気づいた時の僕は気が気じゃなかった。人が目の前で二度も死んだことで、そして、殺そうとしていた相手が呆気なく死んだことに虚無感を覚えて僕は正常な思考ができるような状態じゃなかったのだ。気づけなかったのも無理はない。

 この世界に来てからも、自分がいた世界とはまるで違う結末を辿っていた事や過去に戻っていたことに混乱していたし、友利が死ぬ未来を無くすことを必死になってやっていたため全く考えもしなかった。

 今日感じた視線とそれは何だったのかという疑問が脳裏を掠めなければ延々にここまで考えが及ばなかったかもしれない。

 自分が身近にいるものから監視されているという可能性に気づかないまま僕はその監視者達と悠々と学生生活を送っていたことだろう。偽物の友人。友利から聞いた過去の話が頭に過る。

 友利も高城も監視者であり、もしかしてクラスメイト全員が監視者?。

 背筋に冷たい感覚が走った。辺りを一気に警戒し、見渡す。今この瞬間も誰かに監視されているような気がして正直、凄く怖い。

 「ッ! 」

 そこまで考え、止まっていた歩を進めた。足をひたすら前に前に。思考はそれと同調するように回り始める。

 もし、これがあっていたとしてら。今の僕の周りの状況を作り出したのが僕が馬鹿だと侮っていた友利奈緒の唯一信頼できる奴ならば、そいつは生徒会だけに僕の監視を任せるか?。いや、そんな筈がない。

 友利と高城が同じクラスにいたのは監視のためで。どの世界でもやたら高城が関わってきたのも監視のためで。

 その後の黒羽が同じクラスにやって来たのは生徒会に所属するものならば同じクラスになるのだとそう思考を誘導させるためのものだ。

 正直、舐めていた。全てが仕組まれていて、僕はその仕組んだやつの手のひらの上だったと言うことだ。

 そんなことをやってのける奴が生徒会だけに任せるわけがない。他にも予備が身近にいるはずだ。

 やはり、クラスメイト全員?。いや、それならば一人や二人挙動がおかしな奴がいてもおかしくない。なら接触してきた奴らが怪しい。女子には話かけられたが男子には接触もされていない。なら、監視役がいるなら、クラスメイトの女子の可能が高い。僕が周りを完全警戒していると思っているなら接触はさせないだろうがそれはまずない。何せ僕は強大すぎる能力を持っている以外はただの学生だ。青春謳歌しましょう高校生だ。本人に能力の自覚があるなら兎も角、友利の撮してきたこの世界の僕が能力を自覚していないのは監視を言い渡した奴は知っている筈だ。もっとも、今は中身が違うのでそのビデオは正確な情報ではないが......。

 考えろ、監視が頭にない僕になら、監視役は僕と友好関係を築こうと接触してくる。いや、きた。

 クラスの女子の中で僕に積極的に接触してきた奴と言えば佐藤さんだ。

でも、彼女が監視者だとして、僕はどう対応するか。今後、急に距離をとるのもおかしな話だし、違和感を抱かれぬよう今を変わらずを貫くしかないか。まぁ一番可能性が高いというだけだがそう過程して動いた方がいい。クラスメイトの中にいる監視者の対応はこれでいい。

あとは、学園側のやつらに略奪の能力を自覚していることをバレないようにしなければ......。自覚がバレれば僕は何をされるか予測がつかない。そんな事態に陥るのは最悪だ。

 なら、僕がすべきことは自分の能力を自覚していることを悟られず、この能力が消えるのを待つことだろう。そうすればそのうち、監視もとける。


 僕は進めていた歩を止めた。脳をフル回転していた間に自分の住んでいる所の番号のドアにたどり着いていたようだ。

 扉を開いて中に玄関に入る。玄関には歩未の僕よりも小さな靴が綺麗に揃えて置かれていた。

 扉が開いた音で僕が帰ってきたことに気づいたのだろう。歩未の足音が聞こえてくる。

 それから少して、歩未が何時ものように僕を出迎えてくれた。

 「有宇お兄ちゃんおかえりなさいませー! 」

 「ああ、ただいま。歩...未?」

 僕は言葉の途中で?に歩未なる。どうしたのだろう歩未は心配をするときにする僕の表情を窺うような目をしているのだ。

 「有宇お兄ちゃん? 顔色が悪いのですぅ。 やっぱり体調がよくなかったんじゃ.....」

 「え? 別に何ともない。あ.......いや、寝不足だからかな、確かに体が重い気がする一寸仮眠とれば大丈夫だって」

 歩未が言うのだから僕は今具合の悪そうな顔をしているのだろう。今朝の悪夢で睡眠不足なのは確かだし、何よりも自分が監視されているということに気がついてしまったことで今後のことが不安でしょうがない。もし、自分が能力を自覚しているということがバレたらどうなるのかそれが一番不安だ。その他にも色々と不安はある。偽物のクラスメイト、友人。笑えない話だ。考えれば考える程不安になる。怖くなる。

 落ち着け。今は態度には出しちゃいけない。大切な家族に、歩未に心配させるわけにはいかない。


 「むぅ。ちゃんと休むべきなのですぅ! 」

 「ああ......そうだな。今日はもう休むよ」

 歩未に促されるがまま僕は寝室へと向かった。本当は寝ている時間すらももったいなかったが今後の行動や方針を決めるのは明日でも遅くはない。それに歩未の言うとおり睡眠は大事だ。睡眠不足では思考能力が低下するし、精神にも影響を及ぼす。

 今はゆっくり休もう。


 制服をゆるい服に着替え布団を敷き横になる。今日の気分は最悪だ。あの血まみれの死体を抱え悲鳴を上げながら泣く誰か。あの幻覚と思われるものは、あれは......いったい誰だったんだ?。

 視線の正体は僕の憶測通りなのか。

 本当に嫌な予感がする。これから先良くない事が起こりそうなそんな根拠のない確信。

 だからこそ、こう思った。

 どうか、何も起こらないでほしいと。平和で少しスピリチュアルな世界であってほしいとそう願った。



[42107]  第六回 詰んでいた現状 [訂正版]
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/23 04:04
 いつも通りの朝。

 睡眠時間はいつもより長いが起きた時間は4時だ。そこは何時もとかわらないが、昨日みたいに悪夢はみなかったからぐっすり寝むれた。

 隣の布団ですぴすぴと可愛らしい寝息をたてて寝ている歩未を起こさないように物音を一つたてず僕は布団から起き上がると、そのまま台所へと行く。目覚めの朝は喉がカラカラだ。


 水分を補給して喉を潤した後、日課である走り込みに出ようと着替えようとしるが、出されていた課題を全くしていなかったことに気付き、急いで課題にとりかかる。テスト前だからか量がいつもよりかなり多めだった。今日は走り込みに行けそうにない。リビングのテーブルを使い僕はひたすらシャープペンを動かした。その途中昨日の憶測の件が頭を過るが今はいつも通りにするしかないと言い聞かせタスクに集中した。

 タスクを全て終えたころには走り込みから帰ってくる時間を少しすぎていた。僕は自分の日課ができなかったことに少しイラつきを覚えたがそんなこと覚えたところで時間は帰ってきやしないと、予め持ってきていた制服を手に風呂場へむかい、シャワーを浴びて汗を流す。

 ぬるま湯を浴びながら考えることは、昨日気づいた監視のこと。今後どうしようかと勉強で少し疲労した頭をまわして考えるがあまり対策らしい対策はでてこなかった。精々、態度を変えず、今まで通り普通に生活するくらいだろう。


 風呂から上がり、リビングのソファーに座る。

「どうするべきか.....やっぱり気づいていないのだとアピールするべきなのか」

 ぐっーと腕を天井に伸ばす。寝起きの体がほぐれた感じがした。

 この世界の乙坂有宇、つまり僕は自分の能力が五秒間相手に乗り移るものだと思い込んでいた。だからこそまだ普通の生活があたえられているのだろう。自覚したとわかったら直ぐ様能力が消えるまで監禁でもする。少なくとも隔離施設に入れられる。僕ならそうするし学園側も当然そうするだろう。星ノ海学園は能力者が固まった組織だし略奪の能力を持っている僕からすれば能力奪い放題の場所なのだ。同じことをいうが自覚してることがバレた瞬間、すぐ確保される。

 だからこそ、僕は自分の能力が五秒間相手に乗り移ることだと思い込んでいる少年を演じ続けないといけない。そうすればなんの問題なしで高校生活を謳歌できるのだ。奪った能力を実際に使いでもしない限り、自覚してるという疑いは持たれないはず.....。

 .......奪った能力を実際に使わなければ。

 僕はそこで引っ掛かりを、いや、というか自分がもう取り返しのつかないような失態をおかしていることに気づいた。

 疑われる可能性はない? 僕は奪ったと思われる能力を監視役である友利の前で堂々と使ってしまってるぞ。

 それに自分から生徒会にいれろとか、この世界にきて直ぐに、まだ僕の知ってなかったはずの高城の名前とか友利の能力とか、あいつらの前で口にしてしまっている。

 どうみても怪しいし疑われる要素がたくさんあるじゃないか。生徒会に入れてくれといった時に、「自分の能力はやくにたつ」とか言ってしまっている。五秒しか乗り移れない奴が何をいっているんだとい話だ。あれでは略奪の能力に気づいていると言ってしまっているようなものじゃないか。いや、五秒間乗り移れることが本当にやくにたつと思っている馬鹿にみえないことも......。それは楽観しすぎか。

 あのときは混乱していたとわいえ、迂闊に発言すべきじゃなかったんだ。友利はカメラをまわしていたし、学園側にも聞かれている筈だ。

 奪ったと思われる能力が発動して友利の兄を助けたこともそれを見ていた友利が報告をしているはずだ。

 学園側に僕が自分の能力を自覚していると思われてもおかしくない要素は十分に揃っている。ならば何故、確保しにこない。略奪の能力の危険性は僕に監視をつけた奴になら分かっている筈なのに。

 まだ確証はないからか?。能力を実際に使ったところを友利に見られはしたが撮られてはいない。
証拠といえる証拠がないからまだ確保はできないとか....?。それとも、確保の用意が整っていないのか?。


 「駄目だ、さっぱりわからない.......」

 「何が分からないのでしょうか?」

 聞き慣れた声。歩未が起きてきたようだ。時計を見れば六時を少しすぎていた。かれこれ一時間近く考えていたようだ。

 「おはよう歩未、ちょっと勉強で行き詰まってな」

 「有宇お兄ちゃんにも分からないって凄い難しい問題なのでしょうか!? 」

 「まぁ.....僕にだって分からないことはたくさんあるよ」


 今も学園側が何を考えているのかさっぱり分からない。相手が何を考えているのか分からないというのは不安が募るばかりだ。いや、今は歩未との大切な時間なんだ。こういうのは学校につくまでは考えないようにしよう。


 「それより、そろそろ朝食をつくらないとな、調子も良いし手伝うよ。勉強道具を片付けたら手伝うから使う食材と材料を用意しておいてくれ」

 「了解なのですぅ! 」

 歩未は元気な笑顔で返事をする。僕はその様子に顔を綻ばせると勉強道具を片付け、歩未の朝食づくりを手伝った。

 今日は何時のオムライスではなく、秘伝のピザソースを使ったトーストだ。味は何時ものように甘かった。歩未が砂糖をかけた上にピザソースを塗ろうとしていたのを阻止できなかったらもっと甘いトーストになってしまっていたかもしれない。

 ピザソースのトーストのおかげなのか歩未のおかげなのか先程まで感じていた学園側への不安も少し無くなった。


 登校するの時間ギリギリまで昨日話せなかった黒羽、もとい西森柚咲の話を歩未に話した。歩未は僕のいるクラスに黒羽が転入してきたことと生徒会に所属したことを話をすると興奮した様子で色々ときいてきて、答えられる範囲の質問の答えは返した。何で転入してきたのかは流石に分からないとしか言えなかった。能力者関連の話はするわけにはいかないしな。



 「あ、もうこんな時間だなそろそろ行くか.....話の続きは歩きながらでするか」

 「うん! 」

 僕達はその後、登校の用意を終わらせると学校へと向かった。登校中も色々と歩未が黒羽について聞いてきたので昨日の勉強会で知った勉強はあまり得意ではないということと今テストに向けて頑張っていることを話した。

 「あゆも、勉強は苦手だからなぁ.....でも、ゆさりんが頑張っているならあゆも、テスト勉強、頑張るのですぅ! 」

 「そのいきだな。僕もテストでいい点をとれるように頑張るよ」

 「有宇お兄ちゃんが頑張ったらきっと、この学校でも一番だね! 」


  歩未の言葉を聞いて苦笑いになる。学力がかなり上がっているとはいえ、流石に、一位になるのは難しいだろう。数学や他の教科の勉強はかなり進んでいるが物理はなぁ。

 いや、でも......そうか、一番か。


 「そうだな、一番になれるように頑張るよ」



 この世界の乙坂有宇が、そして、僕自身が求めるものは同じだった。

 どんな手段を使っても一番になる。全ては自分の幸せの為に。一度は努力の仕方の間違いだと否定した在り方だが、今は手段は選んでられない。

 だから、僕は今回の期末テストで星ノ海学園の一位になってやろう。

 過去の自分を演じる。

 そうすることが、今、自分にできる学園側に対する精一杯の欺きだ。

 意味があるのか分からない。もしかしたら逆に怪しまれるだけかもしれない。

 でも、やってみなければ結果は分からない。


 今回のテスト、僕はカンニングを主軸にして問題を解くぞ........。



[42107]  第七回 コードカンニング 反逆の乙坂 
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/30 02:47
 絶対に一位をとるときめてから、あっという間に時間が過ぎた。もう明日から期末テストが始まる。

 今日も学校はいつもどおりに行動した。普通に授業を受け、その合間に話しかけてくる佐藤さんやその他の女子、そして、高城を相手にしたり、昼は生徒会室で友利や黒羽、そして高城と昼食をとった後に、室内の中心に置かれた大きな机でテストへ向けての勉強。放課後の今も生徒会室で勉強だ。

 「と、解けたー」

 生徒会室に嬉しそうな声が響く、声の主は歩未の大好きな現役アイドルの黒羽だ。

 黒羽は小学生から芸能活動をしていた為に勉強がかなり遅れていた。最後に数学で勉強した所は、と、いう高城の質問に九九、八十一と答えた時には友利と僕は一瞬固まった。高城は小学生から芸能活動していたから仕方ないですよね!と泣きながら励ましていたが、その顔に正直ドン引きだ高城。

 黒羽が残り僅かな日にちしかないのに赤点なんて回避できるのかよと最初は思ったが高城がマンツーマンで勉強を教えたおかげと、黒羽の勉強への理解力が高かったことで、黒羽はあっという間に今、勉強している教科書のページまでおいついた。

 黒羽柚咲、天然みたいな所が多いが要領がいい上に容姿もいい。普通の女子校生をしていても男子から高い支持率を受けていたことだろう。

 「ありがとうございます高城さん! なんとかなりそうです」

 「まさか、短期間でここまでできるなんて、柚咲さんの吸収力は素晴らしいですね」

 「高城さんの教え方のおかげですね! 」

 その後、二人はいえいえ、と謙遜しあっていたが二人とも十分にすごいぞ。


 一方、僕はというと、友利がマンツーマンで物理の勉強を見ている。分からないところなどを聞けば教えてくれるし教え方も上手いので学習がはがどる(特に物理)。今回のテスト、自分の実力で問題をといても全て赤点になるような点をとることはないだろう。

  しかし、他人に教えをこうことを恥、そして屈辱だと僕は思う。何せ、あの友利だからな。今度のテスト勉強の際はこの勉強会には参加しなくともよいように確りと勉強としておこうと僕は心に決めたのだ。

 僕は友利が作った簡単な問題を解きおえると、黒羽のように嬉しい声をあげるのではなく、ふぅと短い吐息をはいた。

 「終わりっと....」

 「見せてみてください」

 僕の隣に座る、友利はテーブルの上においたノートに書かれた物理の問題を採点していく、結構自信はあるがどうだろう。

 「十問中、七問正解であと三問は不正解.....ですね」

 「え、何で? 間違った式でも使ったか?」

 「はい、二つは間違った式を使ってますて言うか、この問題とこの問題で使っている式が逆です」

 友利が赤ペンで指すペケ印のつういた二つの問題を見て、どこが違うのだと思うのだが、値を求める為の式と質量を求める式が間違っているらしい。これも覚えてしまうしかないか。


 「そうなのか.....。よし、覚えた。で、もうこれで物理は赤点回避できるとおもうか? 」

 「.......」

 友利に話しかけているのに話しかけられている当人は応じない。こいつ、人の話聞いてないのかよ。もう一度聞こうかとしたがその前に友利が僕の質問に返事をかえした。

 「どう....でしょうね。テストの問題を作るのは私じゃないので何とも.....まぁ赤点は回避できるとは思いますけど」

 友利はそう述べた。僕はよし、これで第一関門はクリアと内心ガッツポーズをする。


 「まぁ、この僕にかかればざっとこんなもんだな! 」

 僕はふてぶてしくそう言った。だって少しは自慢してもいいだろう。僕の要領の良さを。黒羽ばかりいい格好されては面子丸潰れだからな。

 「まだ調子にはのらないでください。間違っているところもあるんですから....にしても確かに要領というか、理解力がそこそこ、あるというか....。ていうか、数学できているのに、何で物理が苦手だったのかさっぱりなんですけど....」

 「いや、数学はどの公式使って解けとか問題に書いてるじゃないか。でも物理はその時の水素は何%加えただろうとか、どの公式を使って解けとは書かれてなかったんだから、ちんぷんかんぷんにもなるだろ! 」

 「ですから、求める為の式があるんだから、何れを使えばいいのか問題文から分かるだろ! 」

 「はぁ?! 寧ろ問題文のせいで、何れを使えばいいのか分からなくなって、別の公式を使ったんだろ!」

 僕と友利は言い合い。にらみあう。数学でも文章問題は嫌いだ。

 多分、友利が正論なのだろうが分からないものは分からんのだよ。

 このまま言い争いが続くだろうと身構え反論材料を探しだそうとしたとき、くすりっと誰かが笑った。

 笑い声が聞こえた方を向くと、黒羽が僕と友利を見て笑っている。

 「どうしました柚咲さん? 」

 黒羽の隣に座っている高城が訊く。黒羽はいえと言うと。笑顔でこの勉強会初日に口にした言葉と全く同じ台詞をはきやがった。

 「やっぱりお二人は仲がいいんだなぁーって! 」

 「「だから、よくない!! 」」

 同じ言葉を同じタイミングで言った友利と僕は何故、同じことを同じタイミングでいうと睨みあう。というか、黒羽はまたそれを見て微笑む。何かアホらしくなったので僕はため息をはいて、にらみつけるのを止めた。それと同時だったか黒羽が語り出した。


 「私、小さいころからアイドルをやっていて、放課後友達と遊んだりとかしたことがなくて...。あ、今のお仕事が嫌になったとかじゃないんですよ! けど.....それでもこうやって放課後誰かと勉強したり、委員会だったり部活動とかしたことなかったから、ちょっと.....憧れてて」

 黒羽は今のこの時間を大切な思い出としているのだろうか。だとしたら、僕がこの勉強会を全く楽しんでいなくて、あくまでも何時どおりの自分を演じるために仕方なしにでていて、そして今回の期末テストでカンニングをして確実に一位をとろうとそんな卑怯な考えでこの場にいることに何か申し訳なさを感じてしまった。勿論、謝罪なんぞする気はないが。

 「勉強とかは苦手ですが、ちょっと楽しんじゃったりして、今の状況なんか青春しちゃっているなぁーって」

 「ゆ、ゆさりん!!! じまじょうね! 一緒に みんなで!! 青春~~~~!!! 」

 黒羽の言葉に号泣の高城に友利の引くな!。が炸裂した。


 青春。よくわからないけど、黒羽はそれを今していると感じているのか。でも、他人のことだから僕にはよく分からない。それに僕にはその青春があたえられていない。クラスメイトはもう誰も信用できないし、今この瞬間も監視をしていると思われる友利達。いや、友利は敵だった時期があるからあまりショックではない。寧ろ信頼してた。絶対敵だって。それに基本的に他人にたいして無頓着だから色々と気を使わなくてすむ。が、よく話しかけて来てくれた高城が監視の為によく絡んできてたんだと思うとほんの少しだがショックだったし何故か話しかけてずらくなった。もっとも、客観的に見れば違和感ないほどの振る舞いはしているから怪しまれやしないだろう。

 それでも黒羽のいう青春とやらはこの時間を言えるのだろうか。他人と騙しあう。そんな時間すらも青春なのだろうか。かなりかけ離れている気がする。


 勉強会はそのあと少し続けられたが、部活動が終わる時間の前には解散になった。一週間前よりは早い下校だ。生徒会室を出る間際に見た外の景色はもう大分暗くなっていた。

 歩未に勉強会で遅くなることは伝えていたけどやはり早く帰ってやりたい。歩未はたった一人の僕の家族なのだから寂しい思いはさせたくないのだ。

 「いいか赤点だけは絶対にとるなよ。一夜漬けはいいかど完徹はするな分かったな! 寝る前に歯磨けよ! 風呂に入れよ! 」

 生徒会室からでたあと友利は僕と黒羽に相変わらず偉そうに言う。

 「はいはい」

 「頑張ります! 」


 僕と黒羽はそれぞれに友利に返事を返す。やる気なさげな僕とは対極で黒羽はやる気満々である。

 そして黒羽と高城は鍵をかけている友利より先に昇降口に向かい出した。僕はそれを見送ると丁度生徒会室の鍵をかけた友利に話しかけた。

 「あのさ....」

 「なんすか? 」

 相変わらず、他人に興味がなさげな青色の瞳がこちらを見る。

 「一応お礼を言っておくよ。今日まで勉強とか、その、分かんないとことか、色々教えてくれてありがとな」

 「? なんすかあなたが礼をいうなんて.....。私は別に貴方や黒羽さんの為に勉強会を開いた訳ではありません。あなたたちが赤点になっては生徒会活動に支障をきたす、それはこちらとしては非常に困るので、そうならないために、学力向上を促しただけですから」

 「だろうな、あんた無理に他人に踏み込まなさそうだし、そもそも、興味すらなさそうだしな」

 というか、最初から確信していた。友利奈緒は自分の為に行動する奴だ。それに過去の経験のせいだからか、他人には無関心だし、目的の為に必要なら他人を利用もする奴だ。過去で僕を脅した時のようにな。ほんといい根性をしている。だから安心できる。こいつは命令されているから言われたままにカンニング魔何かの監視をしているのだと。普通なら僕に興味すらないと。

 「散々ないわれようなんですが......まぁ、その認識で大体あってます。あなたにも実際興味ありませんし」

 「......あんたも遠慮ってものを知らないな。真っ向から言われると流石に傷つくぞ」

 「う~ん? どうしたんですかやけに今日は口数が多いというか。馴れ馴れしいっすね、正直気味が悪いです」

 「はっ! 自意識過剰じゃないか?! 僕はただ礼を言っただけだ」

 「礼を言われたのは最初だけであとは私のことを誹謗中傷してるだけにしか思えないんですけど....」

 友利は微妙顔をする。

 「あれ、そう言えばそうだな。礼を言ってた筈なのに何故か悪口合戦になっている気が」

 「気づいてなかったんですか.....」

 「き、気づいてたし! 兎に角、あんたは感謝を求めて勉強を教えた訳ではない、自分のためっだということだが、そのお陰で、僕はだめだめだった物理のことを理解できるようになったし、問題も解けるようにもなった。今回はあんたの行動が僕の利益にもなった。だから感謝してる。ありがと.....」

 「はぁ....。まぁ感謝は受け取って置きます。で、いいっすかねもうそろそろ帰りたいんですけど」

 「....ああもういい。クソ、やっぱこう言うのは僕にはにあわないな! 何故か振られた男子みたいで惨めだ」


  ぶつくさいいながら僕は友利の透明な澄んだ蒼い瞳からから背を向ける。そして、昇降口へと向かった。そこまで同じ道だったのでかなり気まずかったとだけ言っておこうか。


 さてと、僕は友利たちに対してんl裏切り行為を明日する。勉強会の意味をぶち壊すカンニングという不正を、教えた側からすれば呆れてものもいえんと思うであろうことを。

 明日は期末テスト初日。

 この一週間、監視役の可能性の高い、佐藤さんや、女子なんかにこの学校での成績優秀者の情報を聞き出した。さらに校内を駆け回り徹底的なリサーチをした。下準備は完璧でもう作戦は始まっている。あの一位になると決めた瞬間から。


 僕のこの一週間の行動が僕が自分の本当の能力を自覚していないと言う証明の下準備になっていて、テストの結果により、『乙坂有宇は自分の本当の能力に気づいていない可能性が高い』となるだろう。その為の一週間。

 その仕組みは単純。監視役がもし僕が本当に自分の能力に気づいているという前提で監視をしているのなら、テストを控えた僕が成績優秀者の情報を集めているのおかしいとおもわないだろうか?。

 どうみても成績優秀者の情報集めはカンニングするための下準備だ。

 そして、それを見ていた監視役はこうも思いだろう、自分の本当の能力に気づいているのなら自分の能力についてや他の能力者について色々探っているは分かるが、成績優秀者の情報をを片っ端から集めているのはどういうことだと。

 答えはさっきも言ったがカンニングしかない。これによりまだ僕は自分の本当の能力に実は気がついていないのではないかという可能性を高めることができる。それも僕が監視に気づいていることがバレていないからこそだ。

 監視していることに気づいていないと思っているから、今回の期末テストの一連の動きを見て、過去の失敗である、自分は使えるし生徒会にいれろ云々とか言ったのは、本気で五秒間乗り移ることを使えると思っていたのではとか。友利から伝わっているであろう、使えるとは僕の意外な学力の高さなど(物理以外)のほうだったのではないのかとか。色々勝手に考えてくれるかもしれない。

 兎に角、僕が自分の能力に気づいていない可能性を高め、もしかしたらと思わせることができればそれでいい。

 監視に気づいている素振りは僕は一切とっていないし、学園側もまさか監視に気づいているとは思うまい。かなり巧妙な罠を張ってたからな。

 これは言わば奇襲だ。先制攻撃。これがどう転ぶかは分からないが、略奪を自覚している疑いを晴らすにはこれしかない。それに、監視に気づいたとわからなければ絶対に上手くいく。物事は、シンプルなものほど、一つ何かを間違えれば真実にはたどり着けない。そうなってる。

 もう後戻りはできない。これはこの学園に対する反逆だ。人を手のひらの上において、監視者達から経過報告をまってやがる学園の権力者たちに対する反逆。自分の生活を脅かす学園側への対抗。



                                          だから!



[42107]  第八回 期末テスト
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/24 02:50
 期末テスト初日 一限目 英語

 今日の教室は、何時もの喧騒が一切ない。皆、用紙に向かって集中し、ひたすらペンを動かし続けている。

 静かにペンを走らせるものもいれば、カリカリと力が入っているものもいる。後者の奴は取り敢えず、もう少し力を抜けよと思ってしまうのは僕だけなのだろうか。いやきっと他の奴だってうるさいなぁと思っている筈だ。

 解答欄を埋めながら、僕は迷惑な、と、苛々を覚える。しかし、こんなものは一々気にしていたらきりがないし、そもそも何時もは気にもしていなかったことなんだが、やはり、久しぶりにカンニングすることに後ろめたさみたいなものがあるせいなのか気にならなかったものが気になってしまう。

 いや、でも、僕はカンニングをすると決めた。そうしなければ、今までやってきた情報収集が無駄な行動になってしまう。落ち着け、平常心だ。今は自分のテスト用紙の問題を取り敢えず自力で解き、テスト終了まで、残り十分になったら乗り移りを実行する。それを繰り返すただそれだけでいい。

 残り時間十分。早い者はもう全ての解答を埋め終えている時間。

 自力で解いた英語のテストは自己採点して八十は確実に越えていた。空欄率は八%。自信のない解答が三問ほどある。赤点は回避できているが、これではだめだ。僕は一位を取る。その為に、百に近い数字を出さなければならない。

 僕は、持っていた、シャープペンを机に音を立てずに静かに置く。ゆっくりと呼吸を整える。

 - よし、やるか

 両手を組んで、そこに顎を乗っけて固定、これで、腕の力を抜いたとても、顔はピクリとも動かない。

 僕は他人に乗り移っている間の意識がなくなっている。しかし、この体制なら崩れないからほぼ怪しまれることはない。強いて言えば少し格好つけてる痛い奴に見えるかもしれないが素材が良いのだからまぁ絵になるだろう。


 僕は自分の場所から見える前方の頭の良さそうな男子を自分だと思い込む。我他人思う。あの人は自分なのだと。

 視界が別の視界に切り替わる。目の前の机の上には自分の字とことなった筆跡のスペルが書かれたテスト用紙があった。よし、乗り移り成功。そして、答案用紙の解答を全ての暗記。

 僕が乗り移ったのは成績トップの一人、高橋という男子。得意科目は英語と国語だ。

 英語が得意というだけあって残り時間十分の今、ほぼ全ての問題を解いていた。僕が解けていなかった空欄の所も解いていた。流石だな。

 取り敢えず一通りの確認は終了。乗り移っていられる時間の五秒が経過しまた視界が切り替わる。

 これで、解けなかった問題が三つは埋めることができる。僕は答案用紙にカンニングで見た答えをl記入した。

 よし、次! 

 あらかじめリサーチしていた。成績上位者達に次々乗り移っていき、僕のテストはどんどん答えが埋まっていく、間違っていたところも完璧に修正し、あっという間に答案用紙の答えは埋まった。


 ふと、僕の席の後ろの高城が気になる。こいつは、僕の乗り移る光景をこいつも友利と一緒に観察していたはずだ。つい先程まで、乗り移っていたときの僕を見てカンニングをしていたと思っているだろうか。

 カンニングがバレてないと困るのだが....。僕は自分の能力が五秒間乗り移るものだと思っているのだ、そう、監視役には思ってもらわないといけないだから頼むぞ高城。



 一時限目の英語が終わった休み時間。周りから一時的にさっきまでの集中が生み出していた静かな空気のようなものは消えて、雑談をするものが出てくる。といっても殆どがさっきのテストのできや、次のテストの話だ。

 僕は次の物理のテストに備え、机からノートをとりだし、復習を始める。目を通すだけでも少しは違うだろう。カンニングは前と違いあくまでも答えあわせみたいなものだしな。自力で解けるものは解いておきたい。能力が消えた後に苦労しないようにちゃんと。そして、何時かカンニング無しで一位をとってみせる。


 そう決意を固めたとき、高城が話しかけてきた。

 「乙坂さんはさっきの英語のテストどうでした? 」

 「どうって、八十は確実だと思うぞ」

 高城はそれを聞いて一瞬目を鋭くした気がする。どうみてもカンニングを疑ってる。自力で解いた所で八十点は確実だと思ったから、口にしたのだが前科ある人間には信用がない。

 実際にカンニングはしているし、返ってくる高得点のテストを見たらカンニングしたと確信されるだろう。

 でも自力で解いて、いいとこまでいったのに、それもカンニングだと思われるのはなんだか癪だな。

 「.......」

 「あのさ、疑うのは分かるけど、ちゃんと自力で解いてるし安心しろよ。勉強会でも物理以外は別に悪く無いってのは知っているだろ? 」

 「いえ、別に疑ってるわけではありませんよ、乙坂さんがちゃんと勉強できることを、私と友利さんもちゃんとこの目で見ていますから.....それより、手を組むのって乙坂さんの癖なんですか? 」

 高城は疑ってるわけでないと言いながらも結局は疑ってるわけなのであった。じゃなきゃ、手を組んでいたことについてなんて聞いてこないだろう。ここで挙動不審になったり、動揺したり、肯定したら、もっと追求してきそうなので取り敢えずしらをきる。

 「手を組むって、そんなことやってたか? 」

 「はい、残り時間十分辺りから」

 「残り十分....って、ああ、丁度、その頃テストの問題を解き終えたんだよ。見直しをしてたときだな....。でも、そんなに長い間、手を組んでたりしてたのか」

 僕は会話をきり、高城から、視線を自分のノートに移す。

 僕にしてみればどうでもいい話だ。無意識的な行為なんだから、これ以上、追求しても無駄だ高城、もう諦めろ。少なくともまだあんたに僕がカンニングしたと確信できるだけの証拠はない。テスト結果が貼り出されるまでは何をいっても僕はしらをきれる。

 でも、一時限目からこの疑いっぷりか、今日はいつも以上に高城によく話しかけられるかもな。



 その後のテストも一時限目と同じように僕は解いた。 休み時間には高城はよく話しかけてきたし、昼休み一人で昼食をとっていたら佐藤さんがやってきて高城と似たようなことを聞いてきた。

 やっぱり佐藤さんが監視役であるのはほぼ間違いない。僕のことをよくきいてくるし、テストでのことを聞いてくる。最後のほうで頻繁に目閉じて急に開けたりしてたとか、他にも色々。だが、良く接近してくるということは、そうせざるえない状況になっていると考えてもいいかもしれない。


 さて、午後のテストも頑張るか.......。 



[42107]  第九回 成り行きに任せる
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/24 03:13
 期末テストがテストが終了した翌日の昼休み、期末テストの結果がはりだされた。

 テスト結果が張り出されたその場には自分達の成績を気にするものがいて、当然僕もその場所にいた。同じクラスの友利、高城、黒羽もいる。というか高城と黒羽はとなりにいる。

 僕は、成績上位者二十名の名前を見ていく。

 一位 乙坂有宇

 あった。僕の名前だ。僕の名前が一位に書かれていることに同じクラスの生徒達がざわついていた。

 隣で成績上位者欄を見ている黒羽も驚いた顔をしたあと、きらきらとした尊敬の眼差しで僕を見てくる。

 「わぁー! 乙坂さん凄い! 一位ですよ! 」

 「そうだな....」


 カンニングして取った一位を本当に凄いと尊敬の眼差しを向けてきている黒羽。騙しているようで悪いなと少しは思ったが、僕は監視役を騙すために行動をおこしたのだ。自分の身を守る為に....。だから後ろめたさを覚える必要はない。堂々としていよう。


 「まぁ、今回のこれは、普通だよ」

 ホエーほおけている黒羽。ふと、隣にいる高城と、少し離れた場所にいる友利が僕を見ていることに気がついた。

 隣にいる高城になんだ?と聞いた。

 「乙坂さん貴方は.....」

 高城、そして、友利も今回僕がカンニングをしたことをこのテストの結果を見て確信しただろう。

 今の高城の目がそれを物語っている。そう、失望の目。勉強会の意味をぶち壊したものにたいする蔑みの目だ。そこには哀れみも含まれている気がする。

 僕は別にカンニングをしなくとも赤点は回避できた。それは友利も高城も分かっていたはずだ。勉強会のお陰で自力で解いても苦手科目も赤点を回避できていただろう。

 でも、それでは、僕は納得しなかった。さらに、私利私欲のためにカンニングをし一位を取ったのだ。と、今の高城と友利は思っているはず。

 実際は友利、高城とその他の監視者達を欺く為の行動だったのだが、結局、自分の為にしたことなのだ。

 さらに今回のカンニングは色々と教えてくれた友利に対しての裏切りだ。蔑まれてるのは当然。

 さらにその蔑みに含まれた哀れみは、自力で解くことにそして勉強会に意味を見いだせなかったことに対するものだろうか。別に望んでやっていたわけじゃないのだから哀れみなんて向けないでほしい。

 「高城、別に僕がどうしようと僕の勝手だろ? それに今回の任務は達成された何も問題はない」

 「ですが、貴方は! 」

 「高城さん? どうしたんですか? 乙坂さんも....」

 黒羽が僕と高城の不穏な空気察し、心配そうな顔で見てくる。この一連のやりとりを見ていた同じ学年の生徒達も僕らを見ていた。

 あまり騒ぎにはしたくないし、カンニングをしえいることがこんな大勢の場で知れれば僕の沽券にも関わる。カンニングしていたと知るのは監視者達と学園側だけでいい。


 「何でもないよ。一寸な」

 僕は困り顔をする。高城も周りの視線に気づいてあやふやな態度をとって、黒羽に心配させたことを申し訳なさそうにしていた。

 その間に僕は自分のクラスに戻った。教室に戻ると友利は何時もの様に一人でいた。僕よりも先に教室に帰ってきていたことには少し驚いた。あのやり取りを見てなかたのか?。でもさっきまでいたよな?。て、ことは、見てたけど無視したということか。やっぱり他人のことには興味がないらしい。

 友利は音楽プレイヤーで音楽を聞いている。どんな曲を聞いているのだろうと少し気になったが知らなくとも困らない事なので頭の片隅に追いやり、歩未のお手製弁当を食べることにする。

 これで僕がまだ自分の能力に気が付いていないのだとその可能性が高いと監視役は思う。乙坂有宇は自分の能力を相手に五秒間乗り移るものだと思い込んだままだと。そう上の奴に報告してくれるだろう。

 しかし、それと引き換えに生徒会メンバーと険悪になってしまった。友利は兎も角、高城とはかなりぎすぎすした仲になってしまった。

 それに、後ろの席だから、今後、嫌でも顔を合わせることになるんだよなぁ。面倒だなぁ。


 お弁当箱に詰め込まれたオムライスをスプーンで掬う。今日のオムライスのメッセージは『なんとかなる』だ。

 本当に何とかなるだろうか? 黄色の皮と赤いライスを口の中に運ぶ。次の瞬間には強烈なピザソースの甘味が口内を支配していた。

 「あまっ....」


 まぁ、これからは、ただ成り行きに任せていくしかない。歩未の言う通り、きっと、なんとかなるさ。

 


 そして、その翌日のことだ。乙坂有宇を監視していたもの達からの報告を読み、学園創設者達がどういうことだと困惑したのであった。乙坂有宇の思惑通りになったのだ。

 だが、さらに後日、学園に何者かが侵入し、能力者関係の資料を盗まれ、学園創設者とその身近にいるもの達が混乱するはめになるのだがそれはまた別の話。


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 次回テスト編終了



[42107]  第十回 誰かに認めてもらいたくて
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/10/29 11:18
 階段を一段、そして、一段と上っていく。そのたびシューズがトン、トン、と音を響かせる。

 ふと、眼前に扉が現れた。僕はその扉の取っ手を手のひらで包み込みゆっくりと回した。

 キぃーと扉が開くときになる音と共に、現れたセメントタイルへと一歩踏み出す。

 また一歩、一足と歩を進める。ビューんと強い風が吹いた。髪の毛がその風にフワリと持ち上げられる。

 屋上のフェンスから、夕焼けに染まる外の町の様子を俯瞰していた少女のゆるふわの銀髪も風によって靡く。銀髪を抑え、その少女友利奈緒はこちらに半分振り返った。

 「やっときましたか」

 「ああ」

 銀の音色に僕は短い言葉で返す。僕を見ている蒼く澄んだ瞳は、何時もの様に他人を移さない。そして淡白な表情なのだが、でも今日は何故だか不服そうな顔で僕を見ていた。



 「遅いです。生徒会長に呼び出されたらすぐに来ることと言いましたよね? 」

 「教師に呼び出されていたんだ、仕方ないだろ」


 僕はテストのことで放課後、ついさっきまで、教師から呼び出しを受けていた。何処かの誰かが僕がカンニングをして一位をとったとか口にしたらしい。一応の確認のためということで僕は職員室に呼び出され、再テストをさせられていたのだ。何時かの陽野森高校での茶番劇を思い出すような事だった。

 再テストの内容は期末テストと同じものだったので無事高得点を出し、カンニングはなしと判断された。

 能力を使ってカンニングをしたのではないかとか、きかれるものかと思っていたんだけど、その様な質問はなかった。再テストだけだったのでほうとうに意外だ。もしかすると教師陣は生徒の特殊能力がどのようなものなのかをしならないのかもしれない。何処から情報が漏れるか分からないから一般人である教師には生徒の能力を教えられていないとか....。そんなところだろう。

 で、職員室から解放されて、時刻確認のためにデバイスの電源を入れたら友利からメールが届いていたことに気づく、放課後、屋上に来てくださいとだけ書かれていて、放課後が始まりおよそ三十分が経過していたため慌てて屋上に馳せ参じた次第である。

 「態々、屋上になんか呼び出して、僕に何かようがあるのか? 」

 こんなことを言ってはみたが今日の昼休みに張り出されたテストの結果のことと、誰に乗り移ったのかとか訊かれるのだろう。

 何せ自分の能力略奪だから。乗り移った相手が能力者ならそりゃ知っとかないとな。

 呼び出された理由に心あたりがありありです。しかし敢えてしらを切らせてもらおう。



 「ようも何も、勉強会の意味を帳消しにするような事をしといてよく言いますよね」

 「何のこと......分かったよ、悪かったから取り敢えずその顔やめてくれ」

 友利はオラウータンか何かを見るかのような冷たい目で僕をハイライトの消えた濁った瞳に写していた。しらを切ると言う選択しは僕には無いらしい。


 「カンニングのことだろ」

 「はい、では、参考までに、誰に乗り移ったのかを話してもらいましょうか? カンニング魔さん? 」

 「クッ。事実だが、面向かって言われるのはあまり良いものじゃないな。しかし、まってもらおうか! 何で僕がカンニングをしたと決めつけられる? もしかすると山が完璧にあったのかもしれんぞ」

 「いや、あなた今自分でカンニングのことだろと言ったじゃないですか。それに、他は兎も角苦手科目だった物理が、一夜漬けや徹夜程度で九十を越えるわけないっしょ」

 なにいってんの?という呆れた表情をする友利....。 反論したいと思ったが最初に自分で認めてしまった時点で、反論はきない。無念だ。

 「チッ、わぁかったよ! 言えばいいのだろ! 言えば! えっと、まず、僕の前の席の女子、前島蛍、後は、一番前の席に座っている眼鏡をかけた。高橋輝だな。後はあんたと同じ窓側の真ん中の席にいる男子の宮越京ってやつ.....」

 「......」

 「なんだ? そんなに見て、僕の顔に何かついているのか?」

 友利が目を見開き、僕を見ていた。何時も淡白なこいつの驚く顔はレアかもしれない。

 「いえ、よく知っていたなぁと....あなたは生徒会活動であまりクラスの生徒と話す機会がなかったはずなのに」

 「そりゃ、今言った奴等とはまともに話したこともないぞ。いや、前島さんとは佐藤さんの所属グループにいたから面識はあったが、他は全く話していない。成績優秀者に入っていたから、名前と顔を覚えたんだ。そう言えば、乗り移った奴があと一人いたか、月丘悟っていう華奢な男子」

 成績優秀者の名前、クラスでの順位は勉強会の合間に調べた。絶対に一位をとるために徹底してだ。今僕の頭の中には成績上位のクラスメイトの顔と名前は勿論、得意科目までもが完璧にインプットされている。

 それを友利に胸張って言うと、僕の話を聞いた友利は、はぁ、と小さななため息を吐いた。そして、呆れを宿した目で僕を見て、華奢な人差し指を差す。

 「そんだけ、行動力があるならもっといい方向に持ってけよ! 今までのテストの傾向を調べるとか! そして、一夜漬けでもしていれば正攻法で上位狙えただろ! 」

 それをきき僕は鼻で笑う。

 「はっ! そんな時間があるならやっているさ! 限られた時間でトップに滑り込むには成績のいい奴の得意科目を調べる以外の選択しがなかったんだよ。結果は出せたし問題ないだろ! 」

 はぁ、はぁと息をきらしながら僕は友利を睨み付ける。友利も僕を睨み付けていた。でも暫くもしないうちに友利は僕を睨むのをやめ神妙な顔で僕を見据える。

 「私は、あなたのことなんかのこと別に興味もへったくれもないですが」

 「......」

 「そこまでして一位をとることに意味なんてあるんですか? 」

 友利の質問。何故だが胸に刺さった気がした。

 「一位をとる理由? そんなの、いろいろとメリットがあるからに決まっているだろ。ステータスにもなる」


 少なくとも今まで僕は自分のステータスになるから、上から下にいるものを見下ろすことができるからという理由で今まで一位をとってきた。

 僕が自分から勉強をするようになってからもそれは変わらないし、今後はテストを自力で解いて一位になりたいと。カンニングは今回限りだと、そう思って実行した。

 僕がカンニングをしたり、その為の情報集めをしたのは、僕を監視しているものに僕は自分の本当の能力をまだ気づいていないと思わせるためのものだ。

 この世界に来て最初、生徒会に入れてもらえるように頼んだ際、自分は役に立つと言ってしまった。たった五秒相手に乗り移るだけの能力だろ思っている癖にだ。何故そんなことをと考えれば略奪の能力が自分の本当の能力だと気づいているということになる。でもまだその証拠がないから何とも言えなかった筈だ。次に友利奈緒の兄に面会したとき、僕は自分認識していなかった奪ったであろう能力を使った。それにより、自覚しているという疑いがさらに深まっただろう。

 その疑いを無くすため、僕が自分の能力が五秒相手に乗り移るだけの能力だとまだ思いこんでいると思わせる為に今回のことを興したのだ。

 カンニングをした。勉強会を無意味なものにして。


 でも、別に一位じゃなくとも良かったのかもしれない。上位二十名には入れさえすればそれでカンニングを今と同じように認めればそれで良かった。

 友利の言葉に何か引っ掛かりを覚えたのは、僕が監視を欺くのを建前に、一位をとったから?

 カンニングをして、一位になることを正当化したから......なのだろうか?

 『有宇あなたが一番をとるのは当たり前なの』

 つい、この間見た母さんの夢が脳裏に一瞬はしった。あれは関係ないと思いたい。


 「.....違うのか? 」

 「私はあなたじゃないので質問されてもこまります」


 そうだ、これは友利に訊いても分からないことじゃないか。何を言っているんだ僕は。


 僕が一位に拘って来た理由。

 やっぱり、称賛を浴びたいから? 素晴らしいと周りに褒められたいから? 

 独り言のようにぶつくさと囁く僕に友利は訝しげな顔をしている。でも今はどうでもいい。

 僕が一位に拘る理由は

 あれ? そもそも、僕が一位になろうと思ったのはなんでだっけ?

 あれは確か.......


 遡る。

 『なんだ、この程度か.....』

 『なんで一位をとれないのよ』

 『頑張って勉強しなさい。あなたはやればできるんだから』

 『成績落ちてきたわね』

 『一位やっぱりすごいね有宇は』

 遡る。

 『有宇、凄いよ! ○○小学校の入試合格だって』

 『凄い記憶力有宇あなた天才よ! 』


 僕が通っていた、名門と呼ばれる高校校に附属するエリートが集まる小学部。

 そこで一位を取ってる間、母さんは僕をよく誉めてくれた。でも、学年があがるごとに段々とれなくなって、母さんにも褒められなくなって、一位をとれるように必死で勉強したけれど結局一位にはなくて.....。それからはずっと失望されていた。で、小学部の最後の辺りだったか、この記憶力が学校側に買われてで中学は超難関っていわれる中学の受験を進められた。

 それは、その小学校の教育機関が選んだ生徒だけが受けられるものでそれに入ったとき母さんはすごく喜んだ。僕はいつも以上に頑張って勉強し、その受験を受けた。

 でも、結局選ばれた10人の内3名しか受からなかった。僕はその三名には入ることは叶わず、そして母さんは父さんと離婚して、出ていったのだ。

 『なんだ、この程度か....』

 あの言葉を残して......。父親はの僕の記憶力のことを不気味なものとしていたので母の後を追うように出ていった。

 母さんはよく、僕と歩未に会いに来る弟に親権を渡し、それから僕と歩未は叔父さんと暮らすことになった。

 それからは、勉強は嫌いになった。中学では部活動に入り、色々な部活を掛け持ちしてそれらに没頭することで忘れることにした。でも結局忘れられなかった。その時ほど自分の異常な記憶力を恨んだ事はない。毎晩のように同じ悪夢を見た。失望の目で僕を見る母さんの夢を。


 そして、精神も大分安らぎ、悪夢も見なくなった中学最後の春、僕は能力者になった。

 他人に乗り移る能力だ。僕はその能力が出ても直ぐにはテストで一位をとろうなんてしなかった。と、言うか不気味なものとして使っていなかった。

 でも、ある日。僕は友人を呼んだときに出されたアルバムを見てしまい。あの頃を思い出したのだ。日々勉強をしていた。小学生時代のことを。それで高校受験シーズンであったこともあって僕は一つのアイディアを思い付いた。

 それが能力を使かって、自分の記憶力を駆使し、一位になることだった。

 そして僕は一位をとり続けた。周りから称賛られるようになり、教師たちからも褒められた。叔父さんも近所の人達に自慢してたりもした。

 嬉しかった。褒められることも称賛されることも......。何より誰かに認めて貰えたことがたまらなく嬉しかった。


 そうか......僕が一位をとり続けたのは一位に拘るのは一位なら誰かに認めて貰えるからだったんだ。あまり深く考えたことがなかったから気づかなかった。


 「それで、結局、あなたの一位に拘る理由はなんだか分かりましたか? 」

 「そうだな。何となくだけど分かった」

 「へぇ。一応聞いてもいいっすかね? 」

 「たんなる自己顕示欲、誰かに認めてもらいたいとかそう言う誰にでもあるものだ。一位になれば周りは僕を称賛したり、妬んだり、応援したり、友人なんだとか自慢したりしてくれる。僕という存在を認めてくれる。だから僕は一位に拘り続けている。どんなことをしてでも一位なりたい。だから今回も一位になった......なってしまった」

 「.....承認欲求ってやつですね。あなたはそれが人一倍強いみたいです」

 「まぁ自覚は無かったがそうだったみたいだな」

 誰かに認めてもらいと思って勉強で一番になることは悪い事ではない不正をしたとしてもバレなきゃ問題ないのだ。でも、今回の行動は勉強を教えてくれた友利にたいしての裏切りなのは間違いない。相手が監視者だったとしても、友人でなかったとしても、友利は自分の時間を使って勉強を教えてくれたことにはかわりない。それを踏みにじった僕はやっぱりクズだったということだろう。

 でもこっちにだって言い分ってものがある。もしかしると能力が消えるまで軟禁されるかもしれない事態だったのだ。僕が自分の能力に気づいていることがバレていたら高校生活は灰色になっていた。それを回避するために今回カンニングをした。それを悪いことだとはどうしても僕には思えない。自分の身を守る為の手段だったのだ。友利を裏切った結果になってしまったがぶっちゃけ僕を監視するための偽り友人やクラスメイトとか、監視役兼ねて、生徒会活動時は僕をコキ使う生徒会長達のほうが僕には最低に思えるのだが......。いや、やむを得ずやっていても監視って! 監視するために近づかれたのだよ。僕は寧ろ被害者だ。全部が偽りだったと気づいた時はかなりショックだったのだ!

 それに気づいてここ一週間は周りが全て監視の目に見えてしまったりしてどれだけ不安だったか......。だからあいこでいいだろう。

 だが、それを伝える訳にはいかない、僕は裏切ったという事実だけを見るしかないんだ。


 「そして、僕は友利を裏切った。感謝とか言っときながら自己満足に浸るために......」

 これだけは、天地がひっくり返ろうが変わらない。

 「はぁ.....。昨日も言いましたけど、私は生徒会活動ができなくなると困るからあなたに勉強を教えたにすぎません。任務は達成ですし、別にいいですよ」

 「.....すまない」

 「謝らないでください」

 「でも.....僕は」

 「さっきもいいましたが私は気にしていません。生徒会活動が続行できるなら問題ないですし。何より私は謝罪を要求していません」

 友利はそう言った。謝罪はいらないと。気にしていないと。本人が気にしていない上に謝罪もいらないならば僕はもうどうすることもできない。結局、謝罪という行為はただ自分が許されたいだけのもので被害にあったものからすれば何とも身勝手な行為でしないということだ。


 「そうか......。そうだな。謝りたいのも僕が許されたいからで、罪悪感から逃れたいからだ。自分の為だもんな......」

 「.......」

 「.......」

 沈黙が痛い。どうするか。もう、強引にでも帰るか.....。でもそうすれば明日さらに気まずい空気に....。

 「はぁ....」

友利はため息を吐く。そして、めんどくさそうに頭を掻いき、僕を見据えて嘯いた。

 「そこまで分かっているのなら、謝罪なんてしないでくだい。て、いうか、後悔や罪悪感抱くくらいなら、カンニングしないければいいしょ」

 「う....」

 「それと、さっきもいいましたが、あなたは表面上の命令をしっかり達成しました。私は今後も生徒会活動ができる。ほら、何の問題もないんです」

 「そ、そうなのか? 」

 「はい、ですので謝罪なんていりません。それも、わりと切実に」

 そこまで僕をからの謝罪を嫌うかこの女。やはり、友利奈緒は基本的に自分の目的の弊害にさえならなければ他人なんてどうでもいいのかもしれない。

 一応、もう一度、確認してみよう。

 「ホントに?」

 「はい。.......そもそも私があなたを呼び出したのはカンニングした相手の名前をきく為だった訳ですし、そこに謝罪会なんて入ってません。情報提供お疲れ様です。もういっていいっすよ」

 「......。僕はもうしばらくここで風にでも当たっている。先に帰ればいい」

 「そうっすか。じゃ、私は帰りますね」

 友利はそう言うと、僕の後ろにある、出入口の扉を開き、足早でこの場を去った。バタンと扉が閉まる。

 夕日の下、僕は空を見上げる。屋上から見える朱色に染まった鱗雲達。鱗雲は心地よい風に乗って少しずつゆっくりと流れている。

 「......なんだかな」

 僕は何処かで、怒られると思ってた。感謝しときならが平気な顔で裏切ったからだ。だがそんなことはなく、謝罪は拒否されるし......。

 なにか、釈然としない終わりかただ。何をやっているんだうか僕は。


 その後、暫く風にあたったあと僕は下校した。

家に帰った僕は、まず、高城に電話で昼のことを一応謝っっておいた。明日、気まずい思いはしたくないというこちらの都合を高城は受け入れ、友利と同じくもう気にしていないといい。こちらこそすまなかったと謝られた。あんな大きな場で言い合うようなことじゃなかったとのことだ。高城はどこまでも人に気を使う奴らしい。


 そして、僕は歩未と一緒に夕食の買い物へと出掛けた。今日は、僕が一位になったお祝いだったのでピザソースがいつも以上にふんだんに使われた料理になり、胸焼けに苦しむことになった。甘い(涙)。

しかし、なんというか、テスト期間から紺詰めすぎていたからか久しぶりにゆったりとした時間だったな。




 夜

 夕食を食べ終え、皿洗いを手伝った後、僕は寝室にある。自分の机でタスクを進める。

 目的は達成できた。僕を見ていた監視者達は僕は略奪を相変わらず他人に乗り移る能力と勘違いしていると思ったことだろう。

 すべて上手くいった。やり遂げた。これで確保! 能力消えるまで軟禁だ! とかにはならないだろう。この学園は人道に反することはしてないらしいからな。

 かといって監視が緩むわけではない。これからも偽りの友人、僕の監視もやっている生徒会メンバーと学生生活を謳歌することを考えると憂鬱だが、物は考えよう。監視をしている奴らとは本当の意味で友達になる機会が多いにあるということだ。略奪の能力が消えたら関係の全てが無くなってしまうわけではない。偽りの関係も本物になりえるはずだ。

 だから、精々、僕に必死に媚びまくれ、取り入ろうとしてくるがいい。利用(ステータス上昇の)できるなら、友達にもなろう。親友だって演じよう。

 一緒に高校生活を謳歌しようじゃないか。そんな茶番劇がいつかいい思いでになると信じて僕は演じ続けるみせる。仲間を友人をクラスメートを......。


 



[42107]  番外編 佐藤美保の監視報告
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/04 03:32
 私の名前をまずなのろうか。 私の名前は佐藤美保 十六歳の高校一年生の愛想もよく、クラスではトップカーストのグループに所属していて、教師からも受けのいい。完璧な女子高生です!

 .....ごめんなさい調子に乗りました。完璧ではないですし、至って平均的な女子高生です....。

 唯一と一般的な女子高生と違うことと言えば特殊能力を持っている思春期の子達が通う、星ノ海学園の生徒ということと、その星ノ海学園を創設した人達と関わりがあったりするくらい....前者は兎も角、最後のはどう見ても結構重要ですよね。えへへ。.......はぁ。


 その、私達が通う星ノ海学園の創設者の方々との関わりがあるせいで、今、私は凄く面倒なことさせられているんです。

 それも、同じクラスの男の子の監視という普通の女子高生はしないであろうこと.....。正直、自分がなんでこんなことをやっているのかわからなくなってきてます。

 流石に以前、お世話なった方々とはいえ、この恩はいつか絶対に返します! なんて言ってしまった人のお願いであっても、その、ストーカー見たいな真似なんてやってて気持ちの良いものじゃないんですよ! まったく.....

  あの人は私になにさせてんですか!

 あの人というのは、私が能力者を研究、もとい、人体実験のモルモットにする科学者に人にはあまり言えないような酷いことをされて、精神的に追い詰められていた時期に助けてくれた命の恩人なんですけど.....。

 幾らなんでも、その恩返しにストーカーやれって.....酷い! このゲス! 文句いっても軽くいなされましたけどね!

 兎に角、恩返しの為に私は同じクラスの男の子、乙坂有宇君を監視するはめになっているわけです。

 乙坂君の能力は特殊能力の略奪というとんでもないもので、その危険さは下手をすれば兵器になって世界征服すらできるものです。まぁ本人にその自覚はなく、相手に乗り移る能力と勘違いしているとのことですが....。

 この学校に来る前にまるで自分の能力に気づいている素振りをとったんだとか。あくまでも素振りで気づいている可能性は低いと思いますが念のために確認をしよう。ようするに揺さぶりましょうということです。自分の本当の気づいているのであれば、直ぐに確保し、外界から隔離された施設で能力が消えるまで生活してもらうようですね。うわぁ.....灰色の高校生活だよ。


 だからこそ勘違いであってほしいとあの人は言ってました。けど、こんな回りくどいことするなら、最初から能力を説明して軟禁でもすればよかったのになぁ。この学園の創設者の方々の甘さが見受けられますね。上に立つものは時に冷徹に判断をくださなければならないというのに、この甘さのせいで最悪の事態になったら、私はあの人達を軽蔑しますよ.....。

 そんなこんなで転校してきた乙坂君と出会い、監視、いや、観察をはじめたんですけど。

 普通にイケメンですね。相手に乗り移り移ってテストをカンニングしまくり、秀才を演じていた人とは到底思えないです。

 授業でも確り問題も解いてましたし、私が話す切っ掛けを掴むために彼の得意そうだった数学の答えを.....問題の解き方を教えてもらったときも丁寧に教えてくれたし、まぁ、メアドの交換をしてとっと友達になっても損のない人物と思うくらいにはイケメンでしたね。実際にメアドを聞いた時の迷惑そうな表情がなければ私もコロッと騙されていたでしょう。

 あの表情またかよ、見たいなうざそうな表情。あれって多分前の学校で沢山の女子からメアドなんかを聞かれいたからでしょうかね? もしかしてメアドほしさに近づかれたとか思われたのかなぁ。



 もし、そんなことを思っていたならこの言葉を送りましょう。死ねばいいのに.....。


 ていうか私が数学の教えてもらおうとしたのは何れくらいの学力か確認するためだった訳だし、別にメアドも欲しくて求めたんじゃないだけど。と、いうか寧ろなんで自分狙いの女子か見たいな結論に至れるのかよくわからない。私はお礼が普通にしたかっただけなんだよ。数学の川崎先生の出す問題は頭が痛くなるからそりゃ教えもらったらお礼するよね。

 ていうか、少し話しかけただけで自分のこと狙いとか思うなんて絶対ナルシストかなんかでしょ。

 そんなナルシストさんにはこの言葉。死ね(以下略)。


 こう思うことで何とか私は怒りを表に出さず乙坂君のメアドを手に入れたのでした。


 その日から何度か接触を試みました。中学時代、この学校で同じがクラスだった友人が乙坂君を紹介してくれといったのでそれを後述にして私の部屋に誘ったり。断られましたけど。

 お昼を誘ったり、一回目はタイミングが悪くて断られましたが二回目は一緒に昼食を食べました。

 他にも色々手をつくしましたが、あまり話す時間を取ることはできませんでした。




 「た、タイミングが何時も悪い.....」

 毎晩自分の机の上で同じ言葉を呟く毎日。なんかもうやだなぁ。そもそも何で私がこんなことを。監視しようにも生徒会の人達のせいでできないじゃないですか。

 いや、それはそれでいいのか。生徒会も乙坂君の監視役らしいですし、あくまで私はその生徒会の人達が監視していない所で乙坂君を監視する役目ですしねぇ。

 でも毎度、乙坂君と話をしようとしたり、昼食の最中とかに生徒会の人が乙坂君を連れていくですよね......。邪魔ばかりするなぁあの銀髪生徒会長。

 必然的に生徒会の人が近づかない場所、クラスの外と食堂以外の場所に乙坂君いたら私が近づくことになるわけで.....

 「つけないといけないのかなぁ~ 面倒だなぁ。 しかも、どうみてもストーカーだね」


 独り言を呟きながらも私は分かっていた。やりたくないなぁと思ってもやらないといけないんだ。

 私はいつの間にこんな危ない子に.....。純真無垢の心は穢れてしまった。そもそも純真無垢ではないのですが、常に打算的なんだけれどもそれでも私はもう私がわからない。

 はぁ....とため息を吐いた。


 その時です。ベッド上に置いてあった私のスマホが鳴りました。

 「着信音? 誰だろうこんな時間に」

 私は勉強机から離れベッドの上に置かれたスマホを手にとり、ベットに座り込みます。

 デバイスの画面には夜遅くにしかも私が寝る前にかけてきた不届き者の名前が表情されています。

 『乙坂有宇』

 「はぁ?」

 何で乙坂君がこんな時間に? 何か連絡してくるような事態が起きたのですかね? メアドと携帯番号を教え得てからといいものいつ来るかいつ来るかと待っていて一度もこなかったのにどういう風のふきまわしだろう。

 取り敢えずとってみるか....。

 「はい、もしもし? 佐藤美保さんに何かごようですか? 」

 「え、あ、えっと、夜遅くにごめん。もしかして寝る前だったかな? 」

 「いや、まだもう少し起きておくつもりだったよ。もうすぐ期末テストだからね」

 「て、ことは勉強中だった? 」

 「うん。まぁそんなとこかな」


  実際、さっきまで勉強してました。まぁ、このナルシストのことで頭を悩ませていて余り進んでいませんが.....報告書制作どうしよう。

 「で、乙坂君はこんな時間に何かような?」

 「うん。実は期末テストについてきいておこと思って....」

 「というと? 」

 「同じクラス高橋に聞いたんだけど物理の試験範囲が変わったて本当? 生徒会長に聞いても自分で確認しろしかいわないし....」

 「嗚呼、試験範囲は変更って君達が生徒会室にいった後、前田先生がいってたね」

 私は何処の範囲が変わったのかを伝えました。

 「ふーんここが変わったのか。あ...佐藤さん。ありがとうね」

 「うん。いいよこれくらい。ようはこれだけ? 」

 「えっと、もうひとつ....いい? 」

 「うん? 何かな」

 「これはあくまで、僕個人が知りたいことなんだけど、前回のテスト期間での成績上位者の名前を教えてくれないかな」

 それを聞いて私は確信しました。ああコイツカンニングするきだなと。どうやら彼は生粋のカンニング魔なのかもしれません。顔がいいのに秀才まで演じるとか......ゲスだね。


 「成績優秀者の名前? ......なんで、そんなことを聞くのかな? 知りたい理由を教えてもらっていい?」

 「理由か.....。興味があるんだ成績上位者の人達に。まぁでもこれは個人的なものだし。無理にとは言わないよ」

 どうしようかな。これって教えれば私はカンニングの片棒を担いだとということになるよね。しかも、一度生徒会長に痛い目を見せられた筈なのに懲りずにやるなんてやっぱり顔は良くても中身は馬鹿なのかも。


 「う~ん。ごめんね私そう言うのには無関心で.....だから乙坂君の力にはなれないかな」


 健気にそして申し訳なさそうな声で答えておけばオールオーケー。嗚呼、なんでこんなやつに申し訳ないようにしないといけないのだろう。不快指数上がるなぁー。

 「そうなんだ。ごめん。変なこと聞いて」

 「うん、いいよ別に。じゃまた明日学校で」

 「ああ、じゃ.....」


 こうして乙坂君との初通話は終了した。


 次の日の乙坂君は学校中から成績上位者やクラスの皆の得意科目などを然り気無く聞き出していた。委員長の手伝いをしながら、テストの自信を聞いたりして、昨日のような直接的な聞き方はしていなかった。やるね....。着実にカンニングの準備を進めているよ。

 しかし、これでほぼ確定。乙坂君は自分の本当の能力を自覚していないってことになる。自覚してれば能力者について調べているだろうし、それにあの馬鹿でナルシストしかも妹の手作り弁当を堂々と食べるようなシスコンが、自分の力に気づいていたとしたら隠し通せるわけがない。

 クールを気取っているけど、馬鹿だし.....。ナルシストだし.....。


 これらのことから乙坂君は自分の能力に気づいていない可能性が高いと......。


 私はそう学園創設者の方々に報告した。その後の期末テストで乙坂君が一位がとったことから私の報告の信憑性が高いと判断されたらしい。

 そして、私は乙坂君の監視の役目は終了だそうだ。

 これであのナルシスト君から離れられるね。あとは徐々に関係を断っていこう。カンニング魔と関わりがあるなんてごめんだ。ついでにカンニングをしたかもと教員にも伝えておいた。


 ふ、精々、自滅するがいい。


 と、思ったんだけど、その後乙坂君はカンニングはしていないと判断された上に、乙坂君は私に一切話しかけてこなくなった。

 一体どういうこと?


 そして、その次の日、お手洗いから教室に戻る際、こんな話が聞こえてきた。教室の入り口辺りからだ。乙坂君と生徒会の高城君の声が聞こえてくる。

 「そう言えば乙坂さん、ここ最近佐藤さんと話をしている姿を見ませんが.....」

 「嗚呼、そう言えば最近話しかけてこなくなったな」

 「いいんですか? 」

 「そう言われても、僕から話しかける理由がないしなぁ。それに今までだってあっちが一方的に話しかけてきただけで僕は興味すらないわけで.......うん。正直彼女は友人と言えるかも怪しいな。だからさ、僕が佐藤さんと話していなくともなんの問題はないだろ。話す必要性があれば話すし話しかけられれば受け答えはするけど、やっぱり僕から話しかけたりする理由はなにもないな」

 その会話を聞いた私は多分人生で一番屈辱にもにた何かを感じ、憎悪を抱いた。これではまるで私が乙坂君に必死になって話しかけていた人みたいではないか。あっちは興味すらない? 友人とも思っていない.....? いや私も思っていないけど


 「はははっ.....さいあく.....」


 ホント......死ねばいいのに。





                    佐藤美保の監視報告                 (完)



[42107]  乙坂隼翼(学園創設者様)の困惑
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/04 02:56
 乙坂有宇の学校生活の報告を聞いて、学園の創設者である乙坂隼翼はどういうことだと困惑していた。

 乙坂隼翼

 名前からわかるように彼は乙坂有宇の実の兄である。アニメを見て知っていた方々には言うまでもなかったかもしれない。そして、もしもアニメを見ていない方がこの小説を読んでいたのであれば謝罪しよう。マジ、ごめんなさい。

 さて、謝罪云々はともかく、この乙坂隼翼というまだ十八にもなっていない少年が能力者を守る組織のリーダーということは驚きの事実だ。

 そんな彼、乙坂隼翼が何故、実の弟である。乙坂有宇を監視していた者達の報告を聞き、困惑しているかを教えよう。

 監視の理由。それは、乙坂有宇は自分の能力を自覚していない......勘違いして仕様している可能性が高いという報告が監視していたもの全員から届いたからだ。だがそれもあるが......一番の理由は

 その前に、彼乙坂隼翼が実の弟を監視していた理由を話そう。

 当初、乙坂有宇は自分の本当の能力に気づいていないと思われていた。しかし、確保直前逃走したのち、急におかしな言動をとったあと、生徒会に自分は使えるので所属させろと言い出した。さらに彼の確保へ向かった生徒会メンバーの名前を名乗ってもいないのに知っていたりと色々と不自然な点を見せた。

 それにより、自分の本当の能力、略奪の能力を自覚している可能性がでてきたのだ。名乗ってもいないのに星ノ海学園の生徒会メンバーの名前を知っていたのも奪った能力によるものではないかと。

 そして、疑いが非常に深まることがおきた。

 友利奈緒、乙坂隼翼が能力者を実験材料とする科学者から助けた少女のその兄の病状が著しく回復したのだ。いや、それ事態は喜ばしいことなのだ。奈緒ちゃんも自分の兄の病状の回復に喜んでいたし彼女には今後幸せな生活を送ってもらえたらそれでいい。

 問題は、その回復を促したのが我が弟、有宇の奪ったと思われる特殊能力だったこと。

 精神を癒す力。回復は見込めないといわれていた廃人を自我のある状態まで戻したその力のことを有宇自身が自分には別の能力があるということを知ってしまったことが問題だった。

 奈緒ちゃんは無自覚でその能力のことは知らなかった様子だったと言っていたが、自覚有無問わず、略奪の能力であると至れる材料を持ってしまったのは危険だ。もしかすると有宇は自分の本来の能力に気づいてしまったかもしれない。気づいてしまうかもしれない。

 それはとても危険だ。自分の弟に言う言葉ではないかもしれないがあいつは馬鹿だ。後先考えず能力を奪いまくり優越感に浸ったり、周りに自慢したりするかもしれない。それにより有宇が略奪の能力であることが何処からか漏洩し、テロリストから狙われる日々がぁぁあ!!!!!。

 そんな事態にならない為に、俺は元々つけていた監視の数を増やし、少しでも自分の力を理解しているような素振りをとったら直ぐに報告を受けて確保して、有宇には悪いが能力が消えるまで俺達、学園の創設関係者が住む秘密施設で過ごして貰うつもりだった。

 のだが、あの日から一度も有宇が能力を使う事もなく、やっと不自然な動きを見せたと思ったら、テスト期間へ向けての情報収集。能力者について調べるとか、自分が何故複数の能力を持っていたのか等を調べる気配はなかった。

 もしかすると黒羽柚咲というアイドル少女が二つの能力を所持していた為に二つの能力を持つことは別段珍しい事ではないと思ったのだろうか?

 いや! だとしても! 熊耳がお前を探しだした時、奈緒ちゃん達はお前が複数の力を持っていたことを知っていたかもしれないだろ! 隠していたとか思うだろ普通! そして聞くだろ! にも拘らず有宇のやつは自分の知らなかった能力のことすらも聞かなかった。気にもしてなかった。やつのバカ度はもう天をも貫くレベルだったのだ。

 しかし、熊耳が有宇を見つけ出した際、能力は略奪一つだったのだが、あの精神回復は検知した後に奪った能力か。乗り移りを無差別に繰り返す時があったらしいからその時に略奪したのか?。いや、今はそれは置いておこう。

 とにもかくにも我が弟は自分の能力に興味すら抱かず、期末テストのカンニングに備えて、成績優秀者の情報収集だ。一度奈緒ちゃんに痛い目見せられていたのに懲りていないようだ。

 ん? 何々、乙坂有宇の学力は物理以外の科目は平均以上と思われる!

 生徒会を纏め、有宇の勉強の能力を上げ赤点回避を奈緒ちゃんに任務として命令したのだが、奈緒ちゃんから報告を聞いたとき俺の耳がおかしくなってしまったのかと思った。

 しかし、これが真実だとして、何故、有宇はカンニングの下準備を.......。

 あいつの性格や行動などを考えると、上位に入ってまわりからちやほやされたいとでも思っているのか。

 欲望に忠実なあいつならあり得るな。

 自分の弟に容赦のない評価の兄隼翼であった。何なんだこの兄弟。兄は弟に容赦のない最低評価をくだし、その弟はその兄を馬鹿よばわりしている。フッ....末期だな。


 そして、そんなこんなで期末テストが終了し、乙坂有宇(弟)はこの星ノ海学園で学年トップに君臨した。乗り移りを駆使したカンニングの力で.........。


 秘密基地、科学者からの身を守るための最後砦の一室。その広い部屋に俺、親友の熊耳、悪友の七野に、有宇が外出するさいなどの監視を任せている信頼できる少女、目時。

 そんな、学園を創設するために沢山の日々を過ごしてきた仲間が集まっていた。前泊という記憶を消すことのできる能力を持つ少年は現在仕事中でこのルームにはいない。

 「......凄い成績だな」

 熊耳が我が弟の成績を見てそう言った。恐らく、テストの答案用紙にかかれている点数を見ていってのだろう。残念ながら訳あって視力を喪い盲目になった俺にはその点数を見ることはできない。

 「どれどれ......おお! すげぇいい点数じゃん。 ゲッ、乙坂ってことは」

 七野は答案用紙にかかれている名前を見たのだろう。直ぐにカンニングによる点だという確信に至ったようだ。

 「ああそう言うことだ」

 熊耳は直ぐにそれを肯定する。我が弟の恥を見られている。そう思うと何だが胃が締め付けられた。

 「あー なんだカンニングの癖って直りにくいのか? 」

 「七野.....気遣いはいらない。これは有宇が自発的にやったことだ。どう見てもいや、多分....。おそらく......。違ってくれ」

 「落ち込むなよ! ほら! あれだもしかすると赤点にならない為に仕方なくのことだったかも! 」

 そうであってほしい。だがそれは直ぐに目時に否定される。

 「いや、弟君の学力は一つの科目を覗いて平均以上だけど、一位になれるほどではない。さらに苦手科目も満点ということから推測するにカンニングは間違いないでしょうね」

 「クッ...そして、すべての科目満点という数字は苦手科目以外もカンニングをしているということになる」

 「隼翼。すまない今回のカンニングは俺のせいだ.....。友利と高城はそうとう頭がいいから焦らせてしまたかもしれない」

 熊耳がフォローしてくれる。だが今回に限っては有宇が悪い。

 「いや、プーのせいじゃない勉強会には俺も賛成だった」

 「しかし、もう少し慎重に」

 熊耳の言葉は最後までは続かなかった。ポコンっという音が鳴った。

 「それはそれで過保護すぎ」

 「む」

 どうやら目時が熊耳を咎めたようだ。

 「長期的な目線で見れば大丈夫よ。根はいいこなんだから。案外些細なことで変わるかもよ」

 「そうだな。そうであってほしいと、兄として心の底から願うよ。ありがとな目時」

 「う、うんまぁ。私はそう思ったからいっただけだし」

 目時......マジでいい仲間だ。こんな友達がいるなんて俺はついてるな。

 「お前みたいな友をもてて俺は嬉しいよ」

 「「「.......はぁ」」」

 何故か呆れられたため息を皆吐いた。

 「うん? どうしたんだ」

 「いやまぁ....なんだ。それより隼翼お前が俺たちを呼び出したんだろ。何かようがあったんじゃないのか?」

 「嗚呼、実は有宇が自分の能力を自覚しているかの話の続きだ」

 俺の言葉を聞きここにいる皆から真剣に聞く雰囲気を感じる。

 そして、俺は話始めた。受けたいくつもの報告結果とその報告したもの見解らといっても全て同じ結論何だが......。

 「以上のことから有宇は自分の本当の能力に気づいていない可能性が非常に高い。それに自分の知らなかった能力にすら興味を抱いていないよいだった。そして、相変わらず自分の能力は五秒間乗り移る力だと思っているらしい」

 「なんというか。俺でもある日自分の自覚していない能力が発現したら聞くと思うぞ....」

 「......まぁ。自覚していないならそれにこしたことはないじゃない。もし自覚して使ったりしたら高校生活を失うようなものなのだし。軟禁するような形にならないならそれで.....」

 「そうだな。有宇や歩未には普通に学校に通わせてやりたい。だから気づいていないならそれでいいんだろう」

 「........」

 「どうしたの熊耳? 浮かない顔をしているけど」

 「......いや、多分俺の考えすぎだろう」

 熊耳の声は何か納得のいっていないそんな感じの声だった。

 「プー。報告に何かおかしな点があったか? もし大事な事なら話してくれ」

 「ああ、これは俺が抱いている違和感というか疑問なんだが、乙坂は勉強は平均以上できていたんだろ。それにもかかわらず何故カンニングをしたのかと思ってな.....。もう少し真剣に勉強すれば実力で上位に食い込むこともできたと思うんだが」

 成る程。尤もな意見だ。しかし、有宇が一番になりたいのは自分の欲望の為だけだと思っているんだが、ステータスだとか回りを見下す為だとか.....。

 「確かに苦手科目以外は上位を狙えた筈よね....。苦手も友利ちゃん達が赤点回避は確実だっていっていたから、一夜漬けでそこそこまで上げることもできたかも....」

 「て、いうか、カンニングしてたやつがそんなに勉強できるてるのが俺はおかしいと思うぞ」

 七野の話はともかく、熊耳達の話は気になった。

 「いや、いや、待ってくれ。プー、目時、お前らは根本的な所で間違っている」

 「間違い? というと」

 「有宇の場合、勉強できるとか関係ない。やつは常に自分の欲望に忠実だ」

 自分の弟に言うべきことではないのはわかっているがあえて言おう。奴のクズ度は馬鹿度と同じく天をも貫いていると。

 「あいつはただ上位なだけじゃ絶対に納得しないんだ。自分より上がいることは認めない認めたくない。上から見下ろすのはいいが見下ろされるのは絶対に認めない。だからこそ一位をとるためにあらゆる手段を使う。それがあいつだ」

 「「うわぁ....」」「弟だぞ....。えげつないこというな.....」

 七野や目時がドン引きの声をだし、熊耳は頬がひきつった時に出すような声と雰囲気をする。

 「.....自分の弟に対しての言葉ではないと思うんだが、何時だったかタイムリープを繰り返したときの何処かでカンニングのことを咎めた事があったんだ。その時に逆ギレして、高笑いしながらそう言っていたから間違いない。でも普段はほんとうに優しい奴なんだ。だけど、自分の目的の為になると歯止めが効かなくなるんだよ俺の弟.....いいやつなんだけどな」

 「うん。えっと弟くんがただ上位じゃ納得しないのは分かったわ......苦労しているのね」

 目時、お前ほんといいやつだな。

 「弟とんでもないな.....いやネジが飛んでるな」

 「七野、お前のフォローは全然心に響かない。むしろ俺の心を抉る」

 「何故に! 」

 そういうところがだ。

 「しかし、一位になる理由は分かったが......俺が抱いた違和感はそこじゃないんだ」

 「? どういうことだプー」

 「乙坂はカンニングのことで一度痛い目にあっている。それにここの教師陣が自分の能力と経歴を知っているかもとは思わなかったのか? 」

 「ッ! それもそうだな」

 確かにそうだ。一度痛い目にあっているんだ。いくらあいつでも警戒するだろう。それに奈緒ちゃん達が同じクラスなのだ。教師にカンニングのことがバレる危険性は直ぐにでも分かったはず。

 「もし、赤点を回避するために、学力が足りず仕方なく能力を使ったならわかるそうせざる得ない状況が今回はあった。赤点を取れば生徒会メンバーに迷惑をかけてしまうわけだからな。だが、バレる危険を背負ってまでカンニングをするのはどうしてだ? 今回は赤点回避する程度ならできただろう。いくら隼翼のいうような性格や考えをしていてもバレたら一貫の終わりだぞ? それにもかかわらずバレる危険性が高いカンニングをし一位になった」

 「言われてみればそうね。いくら一位がいいからってバレる可能性が高いくらい分かっていたはず。熊耳に言われるまで考えもしなかった」

 「いや、でもさぁ。案外バレないと思ったんじゃないか? 」

 「兄の俺としても七野の方に一票いれたいところだが.....確かに妙だ」

 しかし、そうなると有宇はカンニングをしても大丈夫と思うだけのなにかがあったことになる。

 「もし、今のがわかっていたんだとしてカンニングしたのなら、乙坂がカンニングをしても大丈夫と思うだけの何かがあったということだな」

 「そう.....なるな。あいつもそこまで馬鹿じゃない」

 「じゃその何かってやつは何なんだ? 」

 「そうだな.....」

 すぐにあげることのできるのは教師陣が誰がどんな能力を持っているか知らないことを知っていた。情報漏洩を防ぐ為に教師には生徒がどんな能力を持っているかなどは一切教えていない。だからカンニングを躊躇わなかった。

 だが、これは奈緒ちゃん達がカンニングのことを告げればカンニングしたことは直ぐにバレる。彼女が他人に興味がないとしてもそんな危険を犯すだけの度胸は有宇にはないだろう。

 乙坂隼翼の考えは間違いだ。乙坂有宇はやるといったらやる男。一度は友利奈緒の弱みを握る為、相手の個人情報に株の資金をほぼ全部使い込んだ男である。行動力は人一倍あり、自分の命の危険をおかしてまでも歩未の悲しい顔をみないため、ナイフを持った男と殴りあいなどもする。その度胸はもはや一般人のそれではない。しかし、カンニングしてバレたらとしても大丈夫という保険が乙坂有宇には確かにあった。完全記憶能力。乙坂隼翼や熊耳達の推理は確かにあっていた。やっても大丈夫というだけの手札があるのだ。乙坂有宇には。

 なら他に何がある。奈緒ちゃんの弱みでも握っているのか。思い当たるのは奈緒ちゃんのお兄さんのことだが流石にないか。

 じゃぁ何が.......

 「教師陣が生徒がどんな能力のことを持っているか知らないことを知っていただとか! 」

 俺は七野の考えを直ぐに否定する。

 「いや、例えそれを知っていても同じクラスに奈緒ちゃん達がいる以上あいつに行動に起こすだけの度胸はないよ」

 「それもそうか.....」

 「幾つか思い付くものはあるが全て友利や高城がいる以上不可能だな」

 「私も同じだわ.....」

 そうだ、確実な手段がない以上。手詰まりだ。

 「やっぱり俺の考えすぎなのかもしれないな」

 熊耳の言葉に不安を覚える。あれだけの確信みたいなものがあったんだ。このまま終わっては釈然としない。それは目時達も同じのようだ。

 「後先考えずに一位になることを優先したってこと? でも今考えた限りではその可能性の方が薄いじゃない。もしかしたらカンニングがバレても困らない能力を奪って使えるようになったのかもしれないわよ」

 「と言っても、そんな都合のいい能力があるわけがないじゃないか。この特殊能力ってほとんどが制約で縛られていて不完全なものばかりだろ? 」

 「だが、黒羽の姉の発火能力のように制約がないものもある」

 熊耳の言葉でう~んと皆唸る。これ以上考えても無駄だ。カンニングをしても大丈夫だと有宇が思った何かを確認するには実際にあいつにカンニングの疑いをかけ再テストさせるしかないだろう。

 「有宇がどんなものを得てしてカンニングに移ることができたのか分かる方法が一つある....」

 俺の言葉に七野はおお!と声を上げ、目時と熊耳はそれがどんなものなのか分かっているのかあまり乗る気じゃない。

 「実際に有宇にカンニングの疑いをかければ、そのカンニングにでれるだけの何かが分かるはずだ」

 「いや、でもそれってもしものとき弟くんに被害が大きすぎない」

 「そうだぞ。隼翼、乙坂が考えなしに行動にうつしていた場合、乙坂は周りから白い目で見られるようになってしまう。やはり....止めよう。これは考えすぎだったということにしておこう。俺達の疑問解消の為だけに乙坂に干渉すべきではない」

 「た、確かにデメリットが大きすぎだしな止めておこうぜ」

 みんなが言うとりもしもの時のデメリットが大きい。ここは俺達が目を瞑ればいいだけの話だ。

 「そうだな有宇のことを考えればここは目を瞑るべきだな....」

 みんなはそれにすぐに同調した。それが弟を思うなら正しい選択だと。でも何故だろうか。俺はこの熊耳が見つけた違和感を解消しなければ重大なことを見落とす気がした。いや、おそらく見落としたのだろう。そう思う何かが熊耳の覚えた違和感にはあった。

 こうして、乙坂有宇は自分の本当の能力を自覚していないという結論にいたった彼ら達だった。

 あと少しのところで真実にたどり着けていたかもしれないが、カンニングをやれる自信の完全記憶能力をもっていることには気づけても監視していることがすでにバレていて、それを利用し欺かれてたと言うことには辿り着けなかっただろう。

 熊耳の着目点は悪くない。何故カンニングなんて危険をおかしたか。と、いう所に目をやったのは流石だ。しかし、カンニングをする理由ではなく、できる理由の方へと考えをシフトさせたことが乙坂有宇の作に溺れた何よりの証拠だ。

 物事がシンプルなものになると着目するべき以外のもの『前提』が重要になる。『前提』をあやまれば全てが迷宮入りだ。それが今回の何よりの失敗。乙坂有宇が監視に気づいている『前提』がなかった。ただ、それだけのこと。

 乙坂有宇が再試を受けて全て満点をとっていてそれに気づけても『前提』を間違えばたどり着くのは奪ったと思われる新たな能力だけ....そこに自覚の有無は確認しようがない。本人がしらを切ればそれまでだ。まさか自分達を欺こうとカンニングをしたとは思わない。辿り着けない。

 乙坂有宇。彼は平行世界の記憶と能力を保持し、知識や様々な経験に置いては平凡な暮らしをしていたこの世界の乙坂有宇とは比べものにはならない程だ。

 幼いころは英才教育を受け、中学ではトラウマから逃れるためありとあらゆる部活動に打ち込み数々の実績を残し、高校生活では人を殺めたその日から、さらに知識と行動力を起こす力を得た。そんな異質で以上な存在。彼のその頭脳には、並みの発想やIQでは到底及ばない。だから『本物』の『天才』くらいだろう。彼を簡単にあしらえ、いとも容易く、用意したトリックを解き明かすことのできるのは....。または幸運なものくらいだ。

 乙坂有宇。彼は凡人ではないが『本物』の『天才』でもない。ただ記憶力がずば抜けていて、行動力があって、凡才、昔の彼の言うところの見下されるべき愚民達よりも要領がいいだけ。ただそれだけの少年だ。

 ただこれは言える。彼は『異質』だ。それだけは何があっても変わらない。



[42107]  第十一回 惨めになってたまるかぁ !!!
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/22 03:23
 一番最初の世界の誰かのエピローグ



 何度繰り返したろう。

 何度、失敗して生きる意味を失っただろうか。

 最後に見る光景は、何時も、赤く、輝く、綺麗な鮮血。そして、大切なその人は何時も真っ赤に染まった身体で僕を見て微笑む。

 「-------!!! 」

 僕は悲鳴をあげて、泣き叫んで、喚いて、死ぬ寸前のその人の身体を抱き抱え、誰かに助けをこう。

 誰か......。

 誰でもいい....。

 僕じゃ、助けられなかった。

 ----が死ぬのを何千回も見た。 もう、---が死ぬを見るのは嫌だ。 助けようと繰り返す度にあの赤く煌めく液体が----から流れる姿を見なければいけないのだ。苦痛に呻く姿を、死にたくない誰か助けてと、救いを求めるあの目を、でも最後には僕を心配させない為に微笑む、優しいその子。

 だから助けようともがいてきた。何度も繰り返した。

 でも、嗚呼、もう嫌だ。疲れた。なんで、こんな思いを僕がしないといけないんだ。なんでこんなにも世界は理不尽なのだ。

 力なんてなかった。どうにもならない世界の理というものがあった。

 僕が僕である限り ----- は絶対に助けられない。何度繰り返そうが結果は変わらない。それが分かっていてどうして繰り返してきたのか。

 .......わかっている。ああ、わかっていた。そうだな。結局、全部忘れたほうが自分の為でもあり ---- の為にもなるわけだ。

 だから僕は







                        1 


 朝、目を覚ますと、何故だか涙が流れていた。寝起きの意識と五感が徐々に冴えていく。ふと、布団の中にある両手に鋭い痛みを感じ、ゆっくりと恐る恐る眼前まで出してみる。二つのの掌からは左右、同じ数、五つの小さな傷から、滑りのある血液が滴っていた。

顔前に持ってきていたせいで自分の頬に赤い液体が付着する。

「……!? 」

その事に思わず、声を上げそうになる。駄目だ!  隣の布団では歩未が寝ている。今声をあげ、起こしたらこの手の傷が見られてしまう。それだけは絶対に!

「ッ! 」

僕は、強い意思を持って喉まででかかっていた悲鳴の声をなんとか、塞き止めることに成功した。

そして、直ぐ様飛び上がるように起き上がると掌についている血と、自分の顔に付着してしまった血を洗い流すため、風呂場の洗面所へ足を運んだ。



「……」

顔についてしまった血を洗い落として、赤い手を冷たい水で洗っていく。手の傷は寝ているときに強く拳を握りしめ、爪がかなり深くまで食い込んだら為にできたもののようだ。

歩未にこの手の傷を見つかったら心配されてしまう。起きてこない内に絆創膏でも貼って隠しておこう。言い訳も確り考えておかないと。

 僕は、ため息を吐き、リビングに向かった。そして、カラーボックスにある救急箱の中から絆創膏をとりだし、手のひらの傷に貼ると、ソファーに腰をかけた。

時計を見てみるとまだ四時前だ。これは健康的な早起きというよりは、じーさん、ばーさんの起きるような、そんな早起きだなと自嘲気味なことを思う。

窓の外は、真っ暗だ。何時も起きてからランニングにいくときに見るのと変わらない空の色。なら別に問題ないか。何時もより少し早いだけだ。

僕は、そう開き直るとソファーから立ち上がり、台所の食器棚からコップをだし、そこに、水道水の水をそそぎ一気にあおいだ。冷たい水が寝起きの喉を通り、乾きを潤す。同時に、思考もクリアになり、掌の傷のことを少し考えてみる。

期末テストが終わってからというもの嫌な夢を毎晩見ている。最初は嫌な夢見たなー。とか所詮は夢だったが数日たった今では、夢が現実のような臨場感を纏い、僕に害を与え始めていた。

そして、今回ついに、手に自分で傷をつけてしまい、さらには涙腺が異常をきたし、涙が勝手に流れるという事態をひきおこした。

僕は一体どうしてしまったのだろうか。やはりあれか? 精神的な問題なのか?

この世界にきて二週間近くたったのに、まだあの世界の事が記憶が無意識的に、僕を苦しめているとでもいうのか。

いや、違う多分それもあるが。だが、僕を今苦しめているのはきっと別のなにかだ。あの勉強会の時にみた誰かの記憶。それがあかたも僕が経験したかのようなもののように脳がかってに捏造して、僕に悪夢を見せつけてくるのだ。そうだ。そうにちがいない。

意識しないようにして、忘れたふりをするしかないか。それでも駄目なら医者に助けを乞おう。

「そろそろいくか」

取り敢えず、日課であるランニングに集中して、頭の中からあの誰かの記憶を記憶の片隅に追いやる。

僕は運動しやすい格好に着替え、ランニングへとむかった。真剣にその誰かの記憶の事を考えもしないで。



 期末テストから数日が過ぎた。教室にはテスト前にはあったあのピリピリした空気はすっかり無くなっていた。雑談を楽しむやつ、昨日のテレビのことで盛り上がっているやつと教室は賑やかさを取り戻し皆青春を謳歌している。

 そして、僕はというとその青春というものを現在進行形で行っていた。

 太陽が丁度真上から見ろしてくる昼休み、僕は体育館の裏に呼び出されていた。この星ノ海学園の体育館裏は人気は全くなく告白なんかでよく使われるらしい。そんな話を誰かが口にしていた気がする。

 僕が体育館裏で待っているとそこには一人の女子生徒がきた。何時か陽野森高校でもこんなことが何度もあったのだが.......この星ノ海学園では初である。あと久びさな気がする。

 「あの、こんな所まで呼び出してすみません」

 その女子生徒はまず僕を体育館裏にまで呼び出したことを謝罪する。この最初に謝罪も何度も聞いた。僕は眼前に立っている子に取り敢えず返事を返す。

 「いや。大丈夫だよ。えっと、それで、この手紙って君が? 」

 今朝、学校に登校し靴箱を開けると、一通の手紙が入っていた。その場で読んでみれば昼休みに体育館裏に来てほしい。そして私の思いのたけを伝えさせて欲しいという旨が書かれていた。

 ラブレター。今までいくつももらったがここに来てからは初のラブレターだ。

 やはり、というかなんというか、学年トップに君臨した転入生というのは女子生徒にはなかなか好評価だったらしい。期末テストの結果が貼り出された翌日、クラスでも今まで話さなかった女子生徒が話しかけてきたり、別のクラスの女子生徒が声をかけてきたり、兎に角、ちやほやされた。

 まぁカンニングのおかげで一位になったので後ろめたさみたいなものがないと言えば嘘になるが悪い気分じゃなかった。(これが僕にとっての青春なのだ! もっと称賛するがいい! 崇めるがいい! ちやほやしたまえ! と思ってしまうくらい悪い気分じゃいです。)

 そして、ラブレターだ。嬉しくないわけがない。おかげさまで今朝の事なんて全く気にならなくなり、昼休みまでの時間が待ち遠しかった。

 体育館裏に僕ん呼び出した女子生徒は中々の容姿だった。僕の中にある彼女になり得る女子の最低基準は一に顔、二ステータスだがその基準をちゃんとこの女子生徒はクリアしている。

 そしてその女子生徒は知っている人物だった。もっともこっちが一方的に知ってるだけだが。

 クラスは違うが同じ学年で、成績はトップクラス。容姿も良い。確か、愛川陽菜(あいかわひな)だったか。成績優秀者を調べていて知った。

 今回の期末テスト二位。前回の実力テストは一位。つまりはこの学校の実質一位。そんな彼女が僕にラブレターをくれたのだが何か接点があっただろうか。匿名だったから差出人が彼女だったことに今でも驚きを隠せない。

 「えっと、たぶんそうです」

 「たぶん?」

 なんかはっきりしないものいいだ。愛川さんはその後、「えっとその.....」となにか迷った表情をして、僕の顔を見る。そして、意を決したのか確り僕の顔を見据えた。

 「えっと、あのですね.....」

 「うん.....」

 「人違いでした! すみません! 」

 「....
  ........
  ............うん?

  えっと、つまり、君は間違って手紙を僕の靴箱に入れたってことか? 」

 「はい.....本当にごめんなさい」


 一瞬、現実を受け入れられずに呆然としてしまったが、ただの人違いだったようだ。そういう間違いは誰にでもあるさ。

 「三組の綾坂(あやさか)君の靴箱に入れたつもりだったんですけど。それが間違って乙坂君の靴箱に....」

 いやいや、後ろに同じ坂がつくとはいえ、綾坂と乙坂を間違えるものなのか? この学校の学年トップはどじっ子というやつなのかもしれない。

 クッ、しかし、面倒なことを.....。このままでは僕が告白されるかもと思っていたら実は間違いだった可哀想な少年になってしまうではないか。ここで取り繕っても惨めになりそうだ。

 だからここはフォローして、対等な立場にならなければ。ようするに僕も別に間違いでも気にしていないと問題ないのだと、そう思わせないと。このままでは無様すぎる!

 だが、一応確認しておこう。その気はないのかと

 「あー、つまり、君は僕が好きというわけではないんだな」

 「はい....。その....怒ってますよね? 本当にごめんなさい! 」

 きっぱりとそう言うと、愛川さんは僕に頭を下げた。怯えているのか少し震えている。僕はそんな彼女を見て、少し間を開け、発言した。

 「いや、気にするな。間違いは誰にでもあるさ。匿名だから逃げることもできたのに、こうして謝罪しにきてくれたわけだし」

 「えっと、怒ってないんですか? 」

 「ああ.....。愛川陽菜さん、君は誠実な人だな」

 「あ、ありがとうございます.....。私、その、怒鳴られたりすると思って...」

 愛川さんの発言を聞き疑問をいだいた。この学校でも僕は優等生で通りっているなのに、彼女が抱いている僕はそう怒鳴り散らすような狭量な人間。彼女は何故、そんな認識いや、先入観をいだいていたのだろうか。聞いてみることにする。

 「君のなかの僕ってどんなそんなに怖い人なの? 」

 「ちょっと......。生徒会長と一緒によくいますし」

 成る程、友利のせいか。 ていうか、あいつ、どんだけ嫌われているんだ。 まさか、生徒会に入っているだけでこうも良くない印象を持たれていようとは。

 期末テストに向けての勉強会のせいで一緒にいることが多かったのもいけなかったのかもしれない。

 取り敢えず、僕がそのような器の小さな人間ではないことを伝えなくてはいけないな。友利となかがいいと勘違いしているのも訂正させてもらおうか。

 「君はなにか誤解をしている。僕はあいつとなかいい訳じゃない。一緒にいるのは生徒会の仕事の時だけさ。あいつも僕も、お互い友人とすら思っていない、むしろ嫌悪しあっているくらいだ」

 「そうなんですか? 」

 「ああ.....。喧嘩なんて日常茶飯事だ。だから、決して、いや断じて仲はよくない」

 言ってやった。断言してみせた。愛川さんは一瞬唖然としたが直ぐにそんなんだと安心したような顔をする。友利奈緒嫌われ具合がとんでもない。

 それにしても、間違いのラブレターとは僕もついてないな。

 「じゃあ、僕はもう行くよ。君の恋がうまくいくことを応援させてもらうよ。うまくいくといいね」

 「あ、ありがとうございます! 応援しててください! 」

 思ったのだがこの学校は天然が多いと思ったのは僕だけか。愛川さんは僕に間違えてラブレターを送って迷惑をかけた訳だよな。恥をかかせたのだよな。そんなやつが応援をしたのだ。なにか裏があるとは思わないのだろうか。失敗しろという意思返しの皮肉とかさ。全く天然はこれだから困る。だからどうか願わくは愛川さんの恋が玉砕で終わりますように!



「はぁ」

少し重いため息をはいた。昼休みは、もう後半に差し掛かっている。

教室に戻ると一人の女子生徒が話かけてきた。

 「もしかして告白と思ってた? 残念だったね乙坂君。それは君の勘違いだよ」

 というか嫌味だった。

 「やぁ、佐藤さん。久しぶりに話かけてきたと思ったらいきなりなに? 」

 佐藤美保、下の名前はこの間知った。期末テストの結果が張り出されて以来全く話かけてこなくなった同じクラスの女子生徒で元監視者だと思われるやつだ。

 佐藤さんは期末テストの結果が張り出された日から話かけて来る回数が激減した。その彼女の言動から彼女は監視を降りたか、降ろされたかしたのだろうということは直ぐにわかった。そして僕の奇襲が上手くいき、略奪の能力を自覚していない。白だと判断されたことも理解できた。

 佐藤さんは少しずつ僕との関係を断つつもりだったらしいけど、その手伝いを進んでさせてもらった。高城に佐藤さんの話題をださせるように誘導し、職員室に呼び出された佐藤さんが教室に戻ってく寸前の所で、あっちが一方的に話かけてきてるだけで友人でも何でもないと言ってやった。聞こえて無かったとしても、僕達の会話を拾った女子の誰かが彼女に伝えたことだろう。自分でいうのもなんだが今の僕はモテている。少しでもライバルを蹴落とす為に、他の女子よりも話している回数の多い彼女は実は乙坂有宇にとってはただ一方的に話かけてくるクラスメイトでしかないと、その本人に伝えたことだろう。因みに佐藤さんを職員室に呼び出されるように仕組んだのも僕だったりする。カンニングなんてしたとか言った人には注意を促してくださいと教師に言っておいたのだ。あの女、監視者でありながら、僕のカンニングまでばらし、そのあとずらかろうとしたのだ。偶然、校長と担任が佐藤さんが乙坂君がカンニングをどうのこうの云々という会話を聞かなければ考えもしなかった犯人だったぞ。

 そんな彼女はここの数日、全く話かけてこなかった。これで僕の認識、あんたなんて友人でもなければ興味もないのだということが伝わったのは確実だと思われたのだが

 「て、言うか佐藤さん.....見てたのか」

 「いや、何となくそんな後だと思っただけだよ。乙坂君が朝ラブレターを読んでよっしてガッツポーズしていたからそんな落ちだったらいいなぁ。なんて思って出た言葉じゃないから....」

 コイツ......。僕が友人でも何でもない、興味すらないと口にしたことへ対する当て付けか。と、いうか友人でないのは確かじゃないか。この女は友人のふりをして略奪を持つ僕を監視していただけだし、実際関係を少しずつ断とうとしていた。なのにこっちがそれに大賛成って答えをだして、関係を断ちやすくしたというのにこれだ.....。

 これだから愛想がよくても無駄にプライドが高い女は困る。自分から関係を断つのはいいが相手から関係を断たれるとキレる。意見は一致しているのにも関わらずにだ。

 「それでその願いにもにた思いが叶っていたとして、佐藤さんが僕に何のようがあって話かけてきたんだ」

 「ようがないと話しかけたらだめなの?」

 潤んだ瞳で僕を下から見る佐藤さん。上目遣いというやつだ。だがどんな女の上目遣いよりも可愛らしいナチュラルな上目遣いを僕は毎日見てる そう! 歩未のナチュラルな打算的もなにもない純心な上目遣いにくらべれば、打算的ありの上目遣いなどどうという事もない。寧ろ嫌悪する!

 「そういう訳じゃないけど、ここのところ全く話かけてこなかったでしょ。てっきり、嫌われているのかと.....。僕君に何かしたっけ? 」

 「.....この男、よくもぬけぬけと.....」

 佐藤さんはボソリッと憤りを含んだ呟きを吐いたが僕は聞こえていないふりをする。

 「え、なにか言った? 」

 「い、や! なん、でも! 」

 「そう。じゃ、もういいかな実はこの後図書館にいくつもりだったんだ。ようがないなら僕はこれで」

 「ちょっと! 」

 そんな感じで適当にあしらい、僕は、図書館に行こうとする。教室に戻ってきたのは借りていた本を登校バックの中に入れていたからだ。本を持ち、いざ図書館へ! と教室を出る。

 「あ、乙坂さん。探しましたー! 」

 「黒羽? どうした」

 教室を出て直ぐ、生徒会の一員である黒羽が僕を呼び止めた。走ってきたのか膝に手をついて、少し大きな吐息を漏らしている。頬も何処と無く朱に染まっていた。それだけでもどれ程急いで探していたのか分かる。

 「あの、友利さんからメールが届いていたと思うんですが......」

 「メール? 」

 デバイス(スマホ)を開くとメールが一件届いていた。知らないアドレスだ。

 開けてみる。

 生徒会室に集合。すぐにくるよう 生徒会長 友利

 そんな要件だけが書かれたメール。というかあいつ何で僕のメアドを知っているんだ? 教えた記憶がないんだが.....。

 「確かに届いているな。気付かなかったよ」

 「はい! その協力者さんが現れるそうなので急いで生徒会室に来るようにと」

 「分かった。わざわざ呼びにこさせてすまないな」

 「いえ! 友利さんからの初めてのお願いだったので」

 「あ、ああ。そうだったのか。うん、じゃあいくか」

 つまりはパシりかよ......。友利、あんたアイドルになにさせているんだ。ていうか高城が聞いていたら止めているか一緒に来ているはずなんだが......。

 こうして、僕と黒羽は生徒会室に向かった。道中、男子生徒達の殺意にもにた視線にさされたがそんなことを知らない黒羽は、呑気な顔で僕の妹、歩未のことを聞いてきた。

 「僕の妹? 僕に妹がいるって誰から聞いたんだ」

 「えっと、友利さんと高城さんから、可愛らしい妹さんがいるって」

 「ああ、そうだったのか。そうだな、よければ、今度あってみるか? 」

 「え、いいんですか! 」

 「いや、できればこっちからお願いしたい。実は僕の妹は君の大ファンなんだ」

 そう、何を隠そう、我が妹はこの黒羽柚咲いや、正確には芸能人の西森柚咲のファンなのだ。毎晩、歌のニュースで黒羽がでるたびに画面に食い入るように見て、終わるころにはテンションはマックになっている。時々、歌いなが、踊ったりしている。それを僕に見られて赤面をして、萎んでいたあの小動物みたいな可愛さは誰も越えることはできやしないだろう。

 「そうなんですか! ありがとうございます! 」

 「嗚呼、だからあいつにあってくれると凄く嬉しい」

 「分かりました開いている日は......ああ、しばらくないですね。ごめんなさい」

 黒羽はスマホでスケジュールを見て、がっかりし申し訳なさそうな顔をする。

 現役のアイドルはやっぱり忙しいらしい。

 「そうなのか.....。いや、開いている日ならいつでもいいんだが」

 「わかりました! 開いている日があったら連絡しますね」

 「分かったじゃその時は連絡を頼むよ」

 そんな話をしていると生徒会室に着いた。さて、今日は能力者確保かまた別件か。気を引き閉めていこう。

 僕は両扉を開く。

 「おっそい! メール送りましたいね? 」

 「乙坂さん、ゆさりんに迎えにくてもらうなんて.....クッ」

 そこにはふてぶてしい態度の生徒会長と、黒焦げになりながら、こちらに血の涙を流す高城。

 高城が黒焦げになっている理由は美咲が関係しているんだろう。その黒焦げ高城を見て首をかしげている黒羽。相変わらず美咲になっていときの記憶はないようだ。



 さてと、今日も生徒会活動のはじまりだな。

「悪いな少し遅れた、で今日は何なんだ」



[42107]  第十二回 プロ入り間違いなしの高校球児だと
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/17 12:25
 「で、なんで遅れたのか、言い分をきこうじゃないですか。あとメール送りましたよね」

 僕が遅れてきたことが不満なのか友利奈緒はディスクの椅子にふんぞりかえって、上から目線で聞いてくる。その態度にムカつきを覚えながらも、確かに遅れた理由や訳くらいは言わなくてはいけないと納得している自分もいる。最後のはともかく。

 でも、ラブレターをもらって、昼休みがはじまってすぐに呼び出された場所に行った。しかも人違いだったなんてことをそのまま報告するわけにはいかない。僕の沽券に関わる。

 僕がどう言い訳をしたもにかと悩んでいると黒焦げになっていた高城がそう言えばと発言をする。

 「乙坂さん、昼休みが始まってからすぐに教室を出ていきましたよね」

 「あ、それ、私も見てました! 」

 「ふーん。怪しいっすね。どこいってたんですか」

 高城と黒羽の証言をきき、友利が僕を怪しいなぁーと怪訝な目で僕を見る。

 どうする。ここでしらをきっても余計に怪しまれるだけ、下手をすれば告白されるかと思っていたけど実は人違いだったんですーのことがバレてしまうかもしれない。ふと、僕にニヤニヤしながら嫌味を言ってきた佐藤さんの姿が頭に浮かんだ。あいつ、僕が言ったことを相当怒っていたからな、友利が僕の昼休みの動向を探っているとしれば喜んで、昼間の一件を口走るぞ。

 「「「じー....」」」

 「......な、何だよ。その、疑わしいやつをみるような目は.....。僕が昼休み、何処に行っていたって僕の勝手だろ。この学園は個人の行動まですべて報告しないといけないのか。僕にだってプライベートがあるんだ」

 「いや、でも、昼休みに入って直ぐにいなくなったてところはかなり怪しいなぁーと」

 友利の言葉に高城、黒羽もうんうんと頷く。

 「なんで、今日は何時もよりも突っかかってくるんだ。高城や黒羽はともかく、友利! あんたが個人の動向に興味持つとかおかしくないか。何時もは注意を促す程度だろ! 」

 「えーそんな事はありませんよ! 友利さんだって同じ生徒会の人のことの一つや二つ気になりますって! 」

 「いやいや、黒羽、友利が個人に興味をもつなんてことあるわけないだろ」

 「そうっすね。はい、別にあなたへの興味とかじゃありません。私は何故遅れてきたのか。何故、すぐに言い分がでてこないのか。そこが気になっただけです」

 ようするに何かやらかしていないか。相手に乗り移ったりしてやましいことをしていないかとか。略奪が自覚有無とわず行われた可能性を危惧しての確認か。でもそれならば別に教える必要はない。

 「なら、後で監視カメラでも確認して動向を割り出せばいいだろ」

 友利は「まぁそれもそうなんすけどねぇ」とさらりと呟く。この学園倫理とか大丈夫なのだろうか。プライベートもなにもあったもんじゃない。監視カメラを見れば簡単に動向を探れたり何をしていたのか分かってしまうのだ。

 しかし、僕が言ったことには友利は納得しなかった。

 「ですが、やっぱり、遅れてきたんですから自分の口でその理由をいってほしいっすね。私的理由で遅れたとかでは、困ります。本当に一刻を争う事態だってあるんですから」

 確かに正論だ。この生徒会、本来学園側がやるはずの能力者確保を任されている。いわば仕事だ。私的な理由、例えば遊んでいたから遅れたとかでは許されようがない。そして、僕が遅れた理由を言わなければ友利もどのように注意を促せばいいのかわかないか。

 「確かにそうだな。じゃ言うが、今回僕が遅れたのは、あんたがいう私的理由によってだ。ある人から呼び出されていた。そいつが誰かは教えられないし、何故呼び出されたかはいえない。その人の許可を得ていないからな。だが、その人に合う時の為にマナーモードにしていて、友利からのメールにも気づかなかったし、教室からだいぶ離れた場所にいたから直ぐに連絡を受けることもできなかった。だから、あらためて謝罪する。遅れてすまなかった......黒羽も態々探させるようなことをさせて悪かったな」

 「いや! 私は大丈夫ですよ! 友利さんから初めて、頼まれたことでしたし....。でもそれってもしかして」

 黒羽、高城、友利は今で察したようだ。僕が誰かから告白を受けた事を。もっとも中身は一切言及していないので僕の勘違いで終わったということは今はまだバレることはない。今は、まだな。

 「ああ、そこらへんは想像にまかせるよ」

 「なんというか、どう対応すべきか迷うような事柄ですね」

 高城が難しい顔で言った。まぁ能力者の確保を誰よりも早くしなければならない仕事だ。本来は無視すべきことなのかもしれない。だが、一高校生にあまりにそれは酷ではないか。青春を奪っていることになるんじゃないか。高校生は楽しく青春がしたいのだ。今回のことを誰が否定できよう。

 「はぁ。なら今度からは、マナーモードにはしないでください連絡がきたら、例え物事の途中でも直ぐに来るように....」

 友利もたかが高校生ならしかたないかと、呆れたような、疲れたような、うんざりしたかのような表情でそう言った。彼女にとっては青春とやらは鬱陶しく、苦々しい思いのものなのかもしれない。

 友利奈緒は能力者を科学者から守ることが最優先で、それ以外のことには基本的に無関心なのだ。それに、友人達に裏切られた過去を持つ彼女は人を信用していない。踏み込まない。興味を持たない。義務や義理でかかわることはあるだろう。話しかけられたら、返事を返す。そんな最低限のことはするが自分からは関わらない。青春とかそうゆうのは無意味なものとか考えていそうな気がする。もっともこれは僕の独断と偏見だが。

 「嗚呼、そうする。今後は気をつけるよ」

 僕は、友利の蒼い瞳を見据え、できるだけ真剣にそう言った。返事のよさには自信があります。


 その後、少しの間、雑談を交わす。

 「で、今日も呼び出された理由は任務とやらか? 」

 あまり、外にでて、科学者と鉢合わせする可能性のある能力者への接触に賛成的じゃない僕は、この間の期末テストの時のような危険性のない事であってほしい。そんな淡い願いを込めての質問だった。

 しかしながら、現実というのは何処までも願いどうりにはいかない。

 「いえ、今回は違います。任務は受けていないので、何時もの生徒会活動です」

 「そうか.....」

 「はい」

 今回の活動も真剣にそして、慎重しよう。警戒を怠らないように注意しよう。そう決意を固めて協力者をまつ。

 「乙坂さんはあんまり乗る気じゃないみたいですね」

 高城の言葉に思わず、頷いてしまいそうになるが、それではカッコ悪い。ただ、科学者に怯えているようにしか見えない。この世界に来て最初に自分は使えると啖呵をきったのだ、それ相応の振る舞いをしなければ、へんに勘ぐられる。

 「は! 何をいう高城! 僕が乗る気じゃないのは当然だ。何が悲しくて、能力者を探すためにイタいような聞き込みやらなんやらをしなきゃいけないのだ! 絶対頭のおかしな連中としてみられるだろ。もっと派手に秘密組織と戦ったりするのかとか期待してたのに、何か違ったし僕の見せ場みたいなものが全くないじゃないか。これじゃあ生徒会に入った意味があまりないぞ」

 「は、はあ....」

 僕の生徒会に入った理由を聞いて少し困惑気味の高城。それとは対象に友利だけは僕の生徒会に入った理由を直ぐ様咎める。

 「あなたはなにいってるですか.....。私達がそんな派手に動くわけないでしょ。そんなことしてたら捕まって人生おじゃんですよ。て、いうか進んで生徒会に入れてくれってのはそんなのが動機だったんですか。呆れてものも言えません.....」

 「何だと! 男なら誰だってそんな夢を一つや二つ見るくらいはするだろ! 」

 「はぁ。もういいっすから黙っててください。頭が痛くなります。あと、活動は真剣にしてくださいお遊び気分でやられてもこまります」

 「当然だ。活動は真剣にするさ」

 友利の言葉はもっとだ。科学者と鉢合わせる危険性、能力を悪用している奴らと対峙したさいの危険性はこの活動には常にあるのだ。それくらい僕だってわかっている。ただ、へんに勘ぐられるのが嫌でデメリットしかなかったから演技をしただけだ。

 「お、乙坂さんって、意外に熱いかたなんですね.....」

 黒羽がドンび.....唖然としている。余程今の僕の演技に驚いたらしい。何時もより、口をぽかんとしている。

 「熱いというよりは」

 「馬鹿っすよね」

 「.......何か言ったか?」

 「いえ.....」「はい、特には」

 高城と友利は僕を馬鹿として認識しているらしい。黒羽も苦笑いしているあたりちょっと残念な人とでも思っているのかもしれない。全く失礼な話だ。だが、これでまた略奪のことを認識している可能性を減らせるのだからいいか。あの日の発言を自分の力だけを盲信して口にしたものとしても何も違和感のない人間を演じ続ければ学園も僕を軟禁しやしないだろう。灰色生活は嫌だからな。

 馬鹿と思われるのは本意じゃないが今は仕方ない。能力が消えたらネタバレを思いっきり屋上で叫んでやろう! うん! そうしよう。

 そんなことを考えた時だった。生徒会室の唯一の出入口の両開きの扉がバッタン! と突然いきよいよく開かれた、突然のことだったので僕、黒羽はびっくと肩を跳ねさせて、その扉から、キュッキュとずぶ濡れのシューズを鳴らして中央のテーブルにおかれた地図に近づく一人の長髪で顔を隠した男。相変わらずの水浸し具合だ。毎度水を被って、風邪をひかないのだろうか。

 その男、もとい、水男は地図前で止まると、指先から地図のどこかへと水滴を一滴、垂らす。そして、低い声で見つけた能力者の能力を口にした。

 「能力は、念動力」

 バッタム。それだけを伝えると、水男はこの場から去った。毎度不気味だな。あいつ、もしかしなくとも貴重な能力だよな。能力者探知なんて何人もいるわけないし、案外、学園製作の関係者の一員なのかもしれない。側近とか?。

 まぁそれはおいおい確認するとして.....。友利は協力者が示した場所が関内学園ということを確認すると。よっしとガッツポーズをする。どうしたのだろう。

 「よっし、ビンゴ! 」

 「? 何が?」

 
 バッシ! と中央のテーブルの上に友利が勢いよく叩き着けたのは何処かのスポーツ新聞だった。日付は三日間ほど前か。

 そこには一面を使った、高校野球のニュースが乗っていた。高城と黒羽も近づいてそれを見る。

 「これ、先週のスポーツ新聞! 私、目つけていたんですよー! 」

 友利は得意気な顔でそう言う。新聞の内容を読み上げてみよう。

 「えっと、ナックル冴え渡る。三試合連続完全試合達成、プロ入り間違いなしの超高校級投手だと....」

 「翌日、その練習を見に行ってきたんですよ。 皆さんも見てください」

 友利は相変わらず、得意気な態度で、ハンディカムをテレビ(ここの生徒会室には大抵何でもあります)に接続し、映像を流す。

 液晶テレビの画面に映ったのは、三人の選手と一人の審判。どうやら一打席勝負でもしているらしく、マウンドにはその超高校級の投手、バッターが打席にたっており、キャッチャーはミッドを構えている。

 そして、その超高校級の投手は腕を振り上げ、投手モーションに入る。一本の脚で立ち、左脚の太ももを垂直に、その後、下半身をリード。確りと地面を踏み込んで、上半身を回転、そして、腕を降り下ろす。だが、それらは全てが荒削りで粗末にも美しいフォームとはいえないと僕は感じた。

 手から離れたボールは打者へと進み、かなり揺れて、キャッチャーミッドにズバッ! と納まった。
柔らかいキャッチングだからこその清々しい音だ。あれならピッチャーは気持ちよく、投げられる事だろう。書く言う僕も中学時代エースとしてマウンドに君臨していた頃を思いだし、あのミッドに投げて見たいなぁと思ってしまった。久しぶりにボールを投げたい気分になった今度ショップで買おうかな。ここ最近始めた日給のプログラムミングのアルバイトのおかげで少しだがお金に余裕があるし.....。とそれよりも今はあの投手のことか。

 「凄いですね! 」

 「メジャー選手並みですね! 」

 黒羽と高城の意見に同意する。

 「ああ、凄い変化球だな。あんな荒削りなフォームと腕の振りでよくあんなナックルを投げられるもんだ。相当の指先の感覚やセンスをもってなるんだろうな」

 ふと、横から視線を感じた。見てみると友利が僕をじーと見ている。高城もだ。

 「.......」

 「.....何だよ。僕、おかしなことでも言ったか? 」

 「もしかして乙坂さんって野球に詳しかったりしますかぁ? 」

 黒羽の質問に、合点がいった。ああ、あまり野球に興味のないやつはフォームなの腕のふりだのセンスだの口にはしないか。

 「えっと、中学で少しな.....」

 「野球部に入っていたんですか? 」

 「いや、そうじゃなくて、近所に住んでいた元甲子園球児のおじさんに手ほどきをな」

 そう適当に話をでっち上げた。この世界では僕は中学部活なんてしていない。だから嘘を言うしかない。事実をいってもそんな記録なんてないのだから怪しまれるだけだ。ならそうするしかない。因みに、野球部のコーチは同じアパートの住人だったりして時々一緒に練習をしたりとかしたので完全な嘘ではない。

 「またっすか。前は、ボクサーのおじさんで、今回は元高校球児のおじさん。あなたって何気に運動系の人と繋がりがありますよね。まぁ動けるかどうかは別ですが....」

 「失礼な、僕は、運動神経には自信があるぞ。で、こいつとその念動力が何か関係あるのか」

 もう、念動力ってのと、友利がこの映像を見せたことでもう理解はしているが敢えてきく。大方念動力とやらでこの変化球を投げているのだろう。でも、もし間違っていたら、僕、恥をかくそれは嫌だ。

 「......そうですね。この投手の手にアップするので良く見ててください」

 液晶テレビの画面に、投手の手がアップされる。そして、違和感ありありのものを見た。

 「おかしくないですか? 」

 「えっと何がですか? 」

 黒羽は首を傾げ、高城も、直ぐにはわからないようだ。

 「.....ボールの握りがナックルじゃないな。これ思いっきりストレートだぞ」

 「はい正解です。これ、握りがストレートなんです。全球そうなんです。そもそもナックルは極度に回転を押さえるために、こう、ボールに回転がかからないように突き立てるように握って、投げる不規則に揺れるボールです。ストレートの投げ方ではボールに回転がかかりさっきのように揺れたりはしません」

 友利は何処から持ってきたのか硬式のボールに人差し指と中指を折り曲げ第二間接と親指だけで握って見せる。よく、ナックルの握りを調べたもんだな。

 「でも、この投手はストレートの握りでナックルを投げていた。と、いうことは」

 「成る程、つまるところ、ボールを投げた直後、念動力で動かしている動かしていると」

 「ほへー。これまた、凄いですねー! 」

 黒羽は分かっているのか?

 「甲子園の予選が始まる前に抑えておかないと不味いです。直ぐに行きましょう」

 「あ、あの授業は? 」

 「大丈夫だ。黒羽、生徒会に入っていればどんな行動をしても、成績にも内申にも響かないんだ。アイドルには嬉しいシステムだな。お得だな」

 「は、はあ......」

 黒羽のそんな気の抜けた返事を聞くと、僕達は直ぐ様、その超高校級のピッチャーのいる関内学園へと向かったのだった。








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 次回 誰にだってナックルは投げられるその魔法の名は 



 



[42107]  第十三回 誰にでも投げられるナックルの魔法
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/17 12:42
 バスを使って、駅まで行き、電車に揺られること三十分。駅で降りたあと歩いて三分。関内学園に到着した。行事の違いなのせいか、学校からは下校する生徒が多々見える。どうやら今日の授業はもう終わったらしい。急いでグランドまで向かうとそこでは野球部員が掛け声を上げながら走り込みをしていた。

 友利が顧問と思われる教師師に超高校級投手、福山に話があると切り出すとその教師は何を思ったのかこころよくそれを受け入れた。他校の生徒だということで怪しまれるかと思ったのだが、どうやら既にアポをとっていたらしい。用意がいいことでと感心していると、問題の高校球児をその教師が連れてきた。

 教師は職員室にようがあるようで、そのあと、すぐにここからいなくなった。



 「星ノ海学園の生徒会のものです 」

 友利は相手にまず自分達が何処のものなのかを伝える。それを伝えられた相手の福山は訝しげな顔する。そりゃ、他校の生徒が自分になんのようだろうと思う。

 「なんですかいきなり。今練習中なんですけど」

 当然というか。急に呼び出されたことに不満を覚えているのか。あまり好意的な態度ではない。しかし、僕達のなかの一人、黒羽が「すみません」と謝るとその福山その不満気な態度を崩し、心底驚いた顔をした。

 「え、西森柚咲! 」

 「あー。彼女のことは無視して、今は私の話を聞いてください」

 「なんですか.....」

 折角アイドルと会えたのに、話をさせてもらえない。福山は友利にたいし不満を募らせるばかりだ。しかし、友利はそんなことはどうでもいいとばかりに本題を切り出した。

 「単刀直入に聞きます。あなたは念動力を使ってナックルボールを投げている。そうですよね? 」

 福山はそれを聞きいても動揺はしない。至って普通の反応をしてみせた。

 「念動力? 超能力のですか? そんなの持っているわけないでしょ? 生徒会じゃなくオカルト研究会かなにかですか? 」

 「......いいですか。よく、聞いてください! それは一時的な病のようなものです。あなたがプロを目指したとしてもその頃にはその能力は消えています。それどころか誰かに貴方の能力のことがバレれば貴方は捕まり、二度野球のできない身体にされます。なので今後その能力は使わないでください」

 友利は強気に行く。あくまでも持っている前提でしか話をしないという意思表示と、能力を持っているというだろうと確信している態度だ。福山もその強気な態度に負けじと、断固として認めるつもりはないようだ。相変わらず毅然とした対応をする。

 「捕まるって誰にですか? 」

 「貴方のような能力者を研究する科学者にです」

 「そんな、馬鹿げた話を信じろと? 」

 お互いに譲らない。友利の脅しを聞いても福山は対応を変えるつもりはないようだ。

 「わーかりました。では私を見ていてください」

 「? ってあれ? 消えた」

 友利はこのままではらちが明かないと判断し自分の不可視の能力を使って見せたようだ。因みに僕達にはその姿が見えていて、福山が急に驚きの声を上げたようにしかみえない。


 「信じてくれましたか? 」

 「.......」

 福山はまだ自分が能力者であることを認めない。だがそろそろ、アイツが出てくるぞ。そんな態度をとっていたらな。

 『往生際がわりぃなぁ。丸焼きにでもするか』


 目の色が赤になり、声のトーンが一段下がった、黒羽。いや、美咲は前にでて、右手から炎をだして見せる。言わんこっちゃない。僕は能力を使ったことを注意をする。友利の能力はともかく、美咲の能力は目立つのだ。こんな人の目で使って言い訳がない。

 「おい! こんなところで能力を使うな! 人の目があるだろ」

 「ちっ.....」

 美咲は苛立ちを隠そうともせず、唾を地面に吐き捨てた。僕は、正論を言っただけだろなんでキレるんだよ。て、言うかこう言うの友利の仕事だろ。その友利はというと、美咲の吐き捨てた唾を見て、頭を抱える高城にドン引きしていた。

 「ああ! これはゆさりんの唾液! いや、美咲さんの唾液なのか....。反応に困る! 」

 「 引くな!」

 女性陣の冷たい目も気にせず、未だに頭を抱える高城。おかげで会話が途切れた。が、しかし、あの険悪な空気は霧散した。ナイスだ高城。あんたの犠牲は無駄にはしない。

 「......本題に戻ろう。で、どうするんだ」

 「そうっすね」

 とりあえず高城のことは今は他人、無関係な人として扱う事にした。

 しかし、友利に丸投げしてみたものの、念動力、使いようによっては人を殺すこともできてしまうような部類のものかもしれない。いっそ、今の内に乗り移ってこの福山ってやつから能力を略奪できないだろうか。でも、この場でいきなり乗り移るのも不自然だし.....。また別の機会を伺うしかないか。

 友利は少しといっても数秒だが、熟考すると提案をだした。

 「では、野球で勝負しませんか」

 「は? 」

 こいつは何を言っているのだ? 

 「私達の学校の野球部と貴方の学校の野球部で。私達が勝ったら私達の言うことを聞いてください。私達が負ければ貴方には二度と関わりません。どうっすか? 」

 福山はしばらく、黙りこみ、考えを纏めると答えた。

 「悪いですけど。断らせてもらいます」

 「もしかして、打たれるのが怖いんですかぁ? 」

 友利のあからさまな挑発にも福山は乗らない。あくまで冷静だ。

 「いや、そうじゃないですよ。俺達があなたのその星ノ海学園と試合してなにか得られるとは思わないだけです。俺達は甲子園を目指しているんだ。なにもメリットのない試合を受けるよりも、ちゃんと練習に打ち込んだほうが得られるものも多い」

 友利は面倒な。と頭をかき、美咲に至っては青筋を額に浮かべ、「こいつもう燃やそうぜ」とか危ないことを言っている。高城はいまだに地面とにらめっこだ。

 しかし、この福山の言い分はもっともだ。受けて負ければ能力を使うことを禁止される。勝ったとしても星ノ海学園の野球部とやり合って得るものはない精々今後邪魔が入らなくなるだけだ。それに星ノ海学園は無名校で放課後ちらほらと見た限りでは弱小といってもいいくらい酷いレベルのものだったぞ。そんなところとやっても時間の無駄でしかない。練習して技術を磨いたほうがいいに決まっている。

 なら、それよりもメリットがあるものを提示してやろう。

 「おい、福山だったか? 」

 「ああ.....」

 「あんたの言い分はわかった。ならそれ相応のメリットがあれば受けるってことでいいのか? 」

 「具体的には? 」

 「そうだな、145km以上の球速と、あんたと同じナックルを投げられる投手が内にはいる。生きた140後半の速球だ。この地区にはそういないだろ? さらに、ナックルボーラだ。どうだ、受ける気になったか? 」

 「いや、でも」

 「甲子園にいくんなら、140越えのキレのあるストーレートを投げる投手なんてざらだぞ。それなのにこの学校の野球部ときたら、あんたを含めた投手全員140kmの真っ直ぐすら投げられないときた。バッティングマシンじゃ、生きたボールはなげられない。もし甲子園にでれたとして、誰も敵投手の生きた球に掠りもしなかったじゃ笑い話にしかならんぞ。それに野手だって速くて生きたストレート打って見たいと思うけどなぁ。 それともあれか? あと数日もあればあんたの球速が10kmも上がるのか? どうなんだ超高校級ピッチャーさん? 」

 最後は挑発に挑発を重ねえみた。あんたはナックル抜きなら大した速球も投げられないだろと。

 因みに145kmの生きた球を投げる投手? ナックルボーラ? そんなやつを星ノ海学園で僕は一人も見たことないね。嘘八百に決まっている。超ハッタリだ!

 友利と高城は非難の目で僕を見ている。美咲は「そんなすげぇやつが内にはいたのかーやり合ってみたいぜ」とか言って信じてしまっている。

 実はナックルボーラを作りだすのは容易くできるのだが、140km以上の球を投げるにはある程度の才能が必要となる。正直、あの学園にはそんなやつは一人としていやしない。つまり、擬似的に作り上げたナックルボーラさんを倒したら140km越えの投手を出してやるとか本番になってから言うつもりだ。当然そんなやつはいないのでナックルボーラさんに奮闘してもらうしかない。幸いここの打者は内といい勝負の音のスイング音だ。ふんっ! 中身のないスイングしかできていない。

 だから、受けさせることさえできればナックルボーラさんがやってくれる。そのはずだ。

 「くっ。確かに、生きた140後半の速球はそうは見られない......」

 「さぁどうだ。試合をするきになったか? 」

 「.......わかりました。その試合受けますよ」

 福山は暫く唸っていたが、最終的には折れた。きっと能力を使えば負けやしないと判断してだろう。それに生きた速い球だ。受けるってやってもいい。そんな上のもの見方で同意したに違いない。

 「それは何よりだ。で、友利、日時と場所は何処にする」

 「あなたってひとは.......はぁ。そすっすね、一週間後、私達の学校、星ノ海学園の敷地にある野球グランドでどうすですか? そちらの顧問には私から後で話をつけておきます」

 「わかりました」


 こうして、試合の申し込みと受理は完了したのだった。



 帰り道、僕の隣を歩く友利の視線が痛い。

 「で、どうするんですか。145kmのストレートにナックル。うちにはそんな優秀な投手なんていませんよ。なのにあんな提案をして......」

 「う、いや、でも、ああいうしかなかっただろ。勝負を受けさせるには。それに145kmのストレートはともかく、ナックルはなんとかなると思うぞ」

 「はぁ。ナックルは変化球のなかでもっとも難しい球のはずですが? 一週間で習得できるとでも? 」

 「そりゃ普通に練習すれば習得なんてとてもないができないさ。でも僕は誰にでもすぐにナックルを投げられるようにできる魔法を知っている。それさえ使えば、あんたも黒羽も、高城だって、そこらにいる子供でさえもナックルを投げられるぞ」

 足音が三つ止まった。振り替えると友利が蒼い瞳を細め訝しげな顔をしてこっちを見ていた。

 「その魔法って何っすか? 」

 黒羽も興味があるのかうんうんと頷いていて「私もきになります! 」と言っている。高城も「確かに興味かありますね。誰にでも投げられる魔法というのは」眼鏡をくいっと上げて僕を見てくる。

 三人の注目が僕に集まる。しかたない、一応どういうものかを伝えておこう。


 「良いだろう。魔法を教えてやる。誰にでもできる簡単なものだ。小学生にだってできる。科学実験室にあるような注射器のようなものと、ただの水。用意するのはこれだけ。あと投げる時に使うボールだな」

 「ふむふむ」と頷いている美咲から戻った黒羽。

 「.........」呆れたと白い目を向けてくる、友利。高城は眼鏡が光に反射してどいう目をしているかわからないが友利と同じようなものじゃないかな。

 「そして、その注射器に水を入れ、ボールのどこでもいい、一ヵ所から水を注入する。そうすることで、ボールのなかの芯の重心が偏り、後は投げれば勝手に揺れるようになる。擬似的ナックルの完成だな。揺れる原理としては芯の重心が水を注射した所に偏ったことで、投げたさいボールの回転が不規則になり、大きな空気抵抗を受け、かなり揺れて、落ちるようになるんだ。ボールの片面だけに釘を打ち込んでする魔法もあるがそれは証拠に残るし目にもつく、だが、水なら! 水なら後日、陽にでもあてとけば証拠はのこらない! 正に魔法! 」

 それを聞いた、友利と黒羽の反応は


 「それ、魔法じゃなくてイカサマじゃないっすか! 」

 「乙坂さん! 不正は駄目ですよ! 」

 「ゆさりんの言う通りです! 」

 ダメ出しだった。だが僕は言うのだ。

 「はっ! 相手だってイカサマを使ってるんだ、ならこっちは知恵を絞って対抗(イカサマ)するしかないだろ! 僕は悪くない! 」



 こうして、一週間後まで野球部に僕の魔法を教え、それを不規則に変化するそのボールをコントロールする練習を続けてもらった。



[42107]  第十四回 試合開始
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/24 15:45
 毎朝、走りながら思うことは、ここのところずっと見ている悪夢のことだ。意識しないようにして、普段は忘れているふりができても、眠ると、勝手に夢にでてくる。

 その悪夢は、今や現実の僕の体すら蝕みはじめ、深く眠ることもも叶わない。強く拳を握りしめ、爪が柔らかい手のひらに食い込んだ感触を覚えれば直ぐ様、目を覚ます。

 全身は汗でグッショリしていて、気持ちが悪い、直ぐに、起きて、着替えを持って、風呂場にいき、汗を流す。

 その後は何時もの日課の走り込みの時間まで起きている。布団には戻らない。眠るとまた悪夢に苛まれ凄い汗をかくからだ。

 おかげで何時もより二時間早く(夜中の二時だったり三時だったりします)起きてしまって睡眠不足日々が続いている。

 僕のハンサムの顔も流石に毎日の不眠のせいで、目の下にくまができている。ランニングも体がおもいせいかタイムが落ちた。

 このままではいけない。流石にくまは隠せないくらいくっきりとできてしまっている。歩未にここのところ、この忌々しいくまのせいで心配されてしまっている。



 「はぁ......」

 ゆっくりと失速して、荒い呼吸を繰り返す、十キロ走りきったのだ。暗かった辺りは朝日が上り始めたことで、開け、姿を表していた。暗がりの道だけを照らしていた電灯も消え始めている。

 ふと、空を見上げる。晴天の澄んだ蒼だ。所々に真っ白な雲もある。

 「今日の試合は問題なさそうだな」

 ぽつりと誰に言うでもなくそう呟くと僕は併設のマンションの方へと歩を進めた。




  1



 「と、言うわけで、すまないが145km以上の速い球を投げる投手は病欠で休みだ」

 日曜の休み。星ノ海学園の所有地であるこの広々としたグラウンドに集まった数十人の二種類のユニフォームの選手達。その数十人の内半分の相手選手に向かって僕はそういい放った。

 当然、相手チームからは不満の声が上がった。

 彼らがこの練習試合を受けた理由の一つが速い球を投げる投手とやりあえるからだったからだった。当然の反応だ。特に相手チームのキャプテンにして、エースの福山は親の仇をみるかのような眼光を僕に向けた。

 「兎に角、わざわざ、こんな遠い所まできて、目的の投手の一人がいないから帰る。何てカッコ悪い、そして非生産的なことはないだろう。折角だ。試合をしてくれないか。速い投手はいなくともおたくらのエースといい勝負のナックルボーラーが内にはいる」

 彼らはどうすると話あった。そして、僕がいったとおりここまで来てなにもしないで帰るのも釈然としないということで何とか納得してくれた。

 そして、対極のベンチの一つの方へと関内学園野球部は向かう。そのなかのエース福山が僕に話しかけてきた。

 「ほんとうは145kmを投げる投手なんていなかったんじゃないんですか。いや、もしかしてナックル使いも.....」

 「何を言っているんだ。僕は嘘をつかない。それに今日のこれは真剣勝負だ。相手を騙すなんてことをするわけがないだろ。あ、じゃぁ僕もそろそろ自分のチームの場所にいかないとな。今日はよろしく超高校級投手先輩」

 最後にそんな嫌みを残し、逃げるように我がチームのベンチへと僕は向かった。ボロをだすかもしれんし、これ以上相手に情報を与えてやる必要も全くない。逃げるが吉だ。


 「で、どうでしたか」

 自分のベンチに戻ると友利が聞いてきた。

 「大丈夫だ。試合は受けてくれるらしい。まったく、強豪ってわけでもないのになんであんなに態度がでかいんだか」

 うんざりだ。能力で勝ち上がっているのにあかたも自分の力とでもいうような不遜な態度。投手がそうならまだわかるが関内学園のチーム全体が自分達は強いと思っているようだった。

 この間見た限りじゃうちの野球部といい勝負のスイングだったのにな。その勘違いをただすこともできればいいのだが。なんなら「貴様らの実力は別段たしたこともないのだ。所詮は投手に依存していた寄生虫でしかないんだよ! この下手くそども! 」と一言いってやりたい。でもそんなことをしたらどんな仕打ちをされるかわからないので今回は自重しよう。次回があれば遠慮なくいってやるが。


 「秋田、宮崎、今日はお前達にかかっているからよろしく頼むぞ」

 「「ああ、ゆさりんの為だ」」

 僕は投手である秋田と捕手(キャッチャー)である宮崎にそう言う。彼らは頷いた。この二人が魔法を成立させるのだ。

 彼らは最初、イカサマを渋ったが、西森柚咲の写真を渡すと喜んで了承してくれた。黒羽に許可を得て撮影されたもので、サインも入っていて中々の価値あるものだ。高城も欲しがっていたが黒羽の中にいる美咲と、生徒会長の友利に却下された。理由はドン引きな顔で頼んできたかららしい。



 「よし、他の部員も黒羽、いや、ゆさりんに良いところを見せるためにもこの試合、勝つぞ! 」

 『『おう! おう!』』

 全ての野球部部員が黒羽の為にとやる気を出していた。因みにみここにいる全ての部員に黒羽のプロマイドが配布されている。当然やる気も上がる。

 因みにそのやる気を出させた黒羽本人はというと、あはは....。と少し反応に困っている様子だった。友利はドン引きしていて、高城もはりきり、ゆさりんLOVEとかかれたハチマキを頭に巻いていた。


 「あれ、今、乙坂さん。私のことゆさりんっていいましたか?」

 黒羽が僕に聞いてきた。煽動するために周りにあわせて僕が使った、黒羽の愛称のゆさりんという言葉に反応した黒羽。どことなく、嬉しそうな顔をしている気がする。友利は「ここにもアイドルオタが」とか不本意な事を言って、僕から距離をとった。

 「乙坂さん。ついにあなたもゆさりんの魅力に気づいたんですね! 」

 と高城が仲間が増えたと喜ばしそうに僕に仲間だという目を向けてくる。鬱陶しい。

 僕はアイドルオタじゃないし、黒羽のファンになったわけでもない。ただ、周りのやる気を更にあげるためにノリノリの空気を作る為に口にしたにすぎない。

 「別に、ただのノリだ。他意はない」

 「やりましたねゆさりん! ついに乙坂さんもゆさりんのファンになりました! 」

 「やった! ゆさりん、嬉しい! 」

 「だから、他意はないといっているだろうが! 」

 僕はアイドルなんぞに興味はない。自分のこともゆさりんとか言うやつには特に興味が湧かない。むしろ関わりたくない。アイドルというステータスがなければ話しかけたりもしないぞ。

 とここでこの悪ふざけをたつために、メガホンを使って注意した人物が一人。

 「はい、はい! お遊びはここまで、あまえら! 今日の試合で勝てなかったら全員尻バットだからな! 」

 生徒会長友利。銀髪の長い髪を両サイドで青いカチューシャで括った運動しやすいジャージ姿の女子。

 因みに、生徒会の僕らは野球部のユニフォームを持っていない為、僕も、高城も黒羽も、運動のしやすい格好。つまりはジャージでこの試合に参加する。

 それにしても尻バットとはなんて前時代的な。今は暴力をふるえば直ぐに問題になるのだぞ。

 「はぁ.....」


 ため息をついた。

 それにしても、体が重い。今朝からずっと。

 手には傷を隠す為、絆創膏が貼られている。

 目の下にはくまができていた。今朝、友利や高城、そして黒羽にも指摘された。アルバイトが忙しいと誤魔化したが早いところ医者に相談するべきだろう。

 「おい、そこの君早く整列しなさい」

 「え、...すみません」

 突然おおきな声がして、びっくりする。どうやら整列して相手チームとの試合前の挨拶をするようだ。いつの間にか僕以外のやつらは整列し終えている。

 「なにしてんっすか早く並んでください」

 「ああ、すまん。ちょっとぼーとしていた」

 友利に促され、列にならんだ。


 「これより、関内学園と星ノ海学園の練習試合を行います。一同、礼! 」

 『『よろしくお願いします! 』』

 こうして、練習試合が始まった。とりあえず気を引き締めて頑張ろう。面倒なことは全部あとまわしだ。



[42107]  第十五回 刹那的スイング
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2016/11/28 15:30
 先行は関内学園チームだった。内の野球部は後攻、守備だ。

 各々、自分のポジションにつく。

 「プレイボール」

 審判のグラウンドに響くような掛け声とともに、試合が始まった。



 星ノ海学園投手、秋田は、投手として突飛した能力を持っていない。球速は平凡だし、コントロールは雑だ。変化球もカーブとスライダーの二種類しかない。それもイマイチキレのない変化球だ。

 だが、今日の彼は違った。いや、能力値が跳ね上がった。変化球がキレキレになったとかそういう目につくような変化はない。

 だが、纏うオーラが、威圧感が気迫が今までのどんな試合ともまるで違う。それを関内学園の野球部は本能で感じていた。

 一番バッターはバッターボックスに立った瞬間、圧力を感じた程だ。なんだとマウンドを見れば、仁王立ちの投手が真っ赤な紅蓮の炎を纏っていた。

 投手だけではない。マウンドにいるほぼ全ての星ノ海学園野球部の部員達が仁王立ちでオーラを纏ってバッターボックスに立つ自分を見ている。

 - な、なんなんだよ。こいつら、ただの練習試合だろ。なのに.....何故覚悟を決めた男のような姿なんだ!


 困惑、動揺、そして、恐怖を本能全てで感じ覚えているうちに、投手、秋田の第一球目が放たれた。

 ボールには思いが乗っている。

 - 俺は、俺達が、ゆさりんを勝たせるんだぁぁぁあああぁ!!!

 頭に過るのは今売れているアイドル、西森柚咲のプロマイド写真。サイン入り。

 『くそ嬉しかった』

 憧れのゆさりんと一緒に、同じチームで野球。

 『絶対に負けられない!!! どうか勝たせてやりたい』


 - いや勝つ、勝つんだあああ !


 今、野球部全員の思いがボールに込められ、放たれた! 纏うのは炎、男の覚悟の炎だ!

 
 ゴオオッォッオオオオと物凄い唸りを上げ、バッターに向かって来たボール。

 それが今、女房である。宮崎のキャッチャーミッドに収まり凄まじい炸裂音を鳴らした。


 バァァンンッッ!!!!!

 「ストライク!!! 」


 余談ではあるがこの直球が後にも先にも、星ノ海学園投手、秋田太郎の最速のストレートだったという。




                     1

 一塁を守りながら、僕、乙坂有宇はその後の光景を見ていた。投手、秋田は炎見たいなオーラを纏っているし、他の部員達も見な仁王立ちで、何らかの迫力あるオーラを纏ってボールが飛んで来るのを待っている。というか、仁王立ちでちゃんと守れるのか? と突っ込みどころ満載だが、何故か負ける気がしない。今秋田が投げたボールが炎を纏ったストレートになっても不思議ではないかと思えてしまうほどに今グラウンドで守備を守っている野球部部員達はやる気と覚悟に満ちていた。

 全て黒羽のおかげだろう。サイン入りプロマイド写真がそんなに嬉しかったとはな。男ってのはホントに単純だ。ご本人がこの試合に参加していることが彼らのやる気をさらに引き上げているのかもしれない。

 「なんっすか。この異様な光景は.....正直ドン引きですよ」

 ショートを守る友利がひきつった顔でいう。彼らのやる気の源黒羽もはわわと周りの気迫を感じおどおどしている。そして、三塁を守る、高城はというと、黒羽に勝利を捧げる為の一人になり、頭にハチマキを巻いて、仁王立ちで金色のオーラを纏っていた。

 「ゆさりんに勝利を! 」

 ともかくも、グラウンドは黒羽のファンである、またはプロマイド写真をもらった野球部部員達の気迫が充満しており、相手はバッタードン引きだ。いや、気圧されいる。


 秋田は次も炎のストレートをミッドへ投げ込み、あっという間に、ツーストライクにまで追い込んだ。

 ふと、キャッチャーの宮崎が僕を見てくる。僕は頷き使えと指示をだした。宮崎は頷き返すと、予め、ミッドに収まっていた、もうひとつのボールを取りだし、それを投手へと投げ返した。球はスクリュ気味の回転だ。普通に投げ返すと揺れる為の特殊な回転をかけるのだ。

 投手秋田はそれを受けとると仁王立ちになり、僕を見る。いや、もういいから早く投げろ。

 ゴゴッゴゴゴゴ!!! とオーラが滲みでているから、早くキャッチャー見ろ。秋田はフッとニヒルに笑うとキャッチャーを見た。ムカつきを覚えたが突っ込み入れんからな。

 秋田は腕を大きく振りかぶるり、左足を引き、右太ももを大きくあげ、テイクバック。そして、右腕を降りおろした。


 関内学園の一番バッターは、その球を見て、棒だ球かと思ったことだろう。事実彼はそう思ていた。さっきまでのストレートのように気迫が乗ったボールではない、打ち頃の球、更にど真ん中ときた。こんな絶好球はない。そう思ってバットを振り始めて気づく、ボールが揺れる!

 その揺れ方が尋常じゃないほどだった。自分のチームのエースのナックルといい勝負だ。誰かがメジャー級といったそのナックルに勝るとも劣らないボールは更に激しく揺れ、斜めに落ちた。

 バットが空を切る。

 「っ! 」

 「ストライク! バッターアウト!」



 関内学園のキャッチャーはそのナックルを見て、この練習試合は面白くなりそうと思い笑った。投手、福山は本当にナックル使い方がいたことに驚きつつ、自分よりもよっぽど才能があるんだなと暗い気分になった。


 そのあとの秋田は、全ての気迫を纏ったストレートと、魔法のナックルを駆使し、二番、三番を連続三振に撃ち取り、一回を完璧なピッチングで終えた。


 ベンチに戻る際、秋田に声をかける。

 「ナイスピッチング。秋田二回もその調子でたのむぞ」

 「乙坂、みなまで言う必要はないぜ。俺はいや俺達は負けないから」

 秋田は炎のオーラを纏いながらベンチへと戻り腰を下ろした。

 「インチキでの連続三振なのになんであそこまで態度がでかいのか.....」

 ショートから帰ってきた友利が呆れた様子で言った。確かに秋田は魔法というなのインチキでナックルを投げ、三振をとった。だが、魔法ナックルの制御は難しいのだ。そうポンポン投げられない。ストレート中心の投球で完璧に抑えてみせたのだ。寧ろ誉めていいと思う。

 「まぁ、良いじゃないか。秋田も野球人としてはやりたくないであろうことをやってくれたんだ。少しくらい活躍する自分によってもさバチは当たらないって」

 「はぁ。でもいつ、ボロだすか分かりませんし程々にしておいてください」

 「分かってるぜ。生徒会長」

 秋田は相変わらず紅蓮の炎のオーラを纏いながら、真剣に答えた。でもベンチではオーラ解けよ熱くるしい。それは友利も同じらしい。あっつとか、鬱陶しそうな顔をしている。

 「にしても、相手バッター内の投手のストレート打てないとか相当ヘボいですよ.....」

 「だろうな。でも、今日の秋田の球は走っているし、なんか炎出てるし、あんがい強豪校のバッターにも通用するかもしれん」

 そうっすか? と訝しげな顔を友利はするが、中学時代、全国大会に四番で出場しているこの僕はあのバッターボックスには立ちたくないなぁと思った。息苦しい感覚に教われる予感がするしな。投手の気迫尋常じゃない。兎に角、今ベンチで、黒羽からあのストレートと凄かったですと賞賛されている、ガッツポーズをしている秋田や、「バットでは俺が....」「いや俺が」何て言いながら纏うオーラを増幅している野球部の連中とはやりあいたくないな絶対。


 一回の裏 星ノ海学園の攻撃。

 一番キャッチャー宮崎。またれいによってオーラを纏っている。秋田の紅蓮の赤とは違い、冷たい青い炎が宮崎から放たれていた。

 それをマウンドにたった福山はもろに感じ一歩のけ反りそうになる。だが、負ける気はない。

 ふぅと深呼吸を一つ、すぅと青い炎のオーラを纏う、相手バッターに集中する。

 大丈夫だ。打たれることは絶対にない。打者は放たれる魔球にバットをかすらせることすら叶わず打つとられるだろう。- そういう能力なのだ。

 投球モーションにはいり、第一球。

 福山から放たれたボールは指から離れた瞬間、念力によって動かされる。あり得ないような、激しい揺れ、打者の手元で更に揺れて落ちる。元が直球の為に、速さもそなえている魔球は、一流の打者ですら当てることは叶わない。

 ズバッンンッと爽快音が響く。バッターボックスに宮崎は、バットを振りきった状態で硬直していた。目も僅かだが見開いている。

 「ストライク! 」

 審判の判定がなされる。

 その後、福山は、二球続けて、ナックルで宮崎から三振を奪うと、二番、三番も完璧に仕留めた。

 まるで、星ノ海学園の秋田に対抗するかのような、遊び球一つないピッチングだ。この試合投手戦になる可能性が高い。

 ベンチに戻ってきたバッターたちはオーラが消えていた。あれだけ「打つ!」と意気込んでいたのだ、それをあっけなく連続三振で抑えられたのだ。さらに活躍できなかったのではゆさりんに誉めてもらえないではないか!(これがオーラが消えた理由だったりします)

 「あんだけ打つとか言ってたのに三者三振ですか。やっぱショボいですね」

 「くっ」

 「宮崎さん。岡野さん。内田さん。ドンマイです! でもみなさんまだ試合ははじまったばかりですよ! 二回もゆさりんと一緒にがんばりましょう! 」

 黒羽は、打ち取られた三人を励ます。両拳を前に構えてガッツポーズだ。三人はそれを見て、再燃焼を始めた。

 - ゆさりんが俺達を励ましてくれている。いつまでもくよくよしていられん

 と、なんとも単純な思考ルーチンによる復活。でも黒羽の為になんとしても勝つという覚悟はやっぱり本物だ。三人とも各々の覚悟の色のオーラを纏い。『応援ありがとう』と爽やかに笑って守備についた。友利はうわぁと冷たい半目になっている。

 「あなたもああいう、励ましてくるれる女子がいいんですかね」

 「なんだよ。そんな冷たい目で見ないでくれ、言っておくが僕はああいうぶりッ子系には興味はない。もっとおしとやかな感じで相手を思いやれて、笑顔のたえない女の子がいいな。うん」

 言ってはみたが、そんな理想どうりの女子なんていないかもしれない。ふと、艶やかな長い黒髪でおしとやかな目をして、微笑んでいる、学園のマドンナの顔が脳裏に過った。が、じとめで僕を見ている友利をみて、その学園のマドンナは脳裏から霧散した。

 「.....」

 「なんだ」

 「いえ、フラれた女に未練たらたらの男ってカッコ悪いなぁとただ漠然と思っただけです。私達も早く守備につきましょう」

 「おい! このままでは僕があまりに惨めな男みたいになるぞ、撤回しろ! 今の!」

 「守備、守備ー」

 友利は撤回することもなく、自分のポジションについた。くそ、あの女、相変わらず癪にさわる。苛々しながら、一塁ベースについた。

 僕はもう、白柳さんとは綺麗サックり関係を断ったのだ。お互いに嫌悪しあい別れるという完璧な別れ方でな。それを未練たらしいだと。ありえんな!。

 そもそも、そういうふうになったのは、この世界の僕にあんたらが接触したからで、

 「乙坂! ボールいったぞ! 」

 投手秋田の鋭い声。はッとなって正面に意識を向けると白球が飛んできていた。もちいる反射神経を総動員して、左手のグローブにボールを納める。

 「っ!」

 危ない。あと一瞬反応が遅れたら顔面にぶつかるという寸出んのところだった。秋田にボールを投げて渡す。

 「乙坂集中しろよ。危ないぞ」

 「ああ、悪い。次は気をつける」


 ここ最近の睡眠不足による疲れと、悪夢による精神的な磨耗、更に友利のフラれた云々話に気をとられていたせいで注意力が散漫気味だ。集中しないと怪我をすることになる。気を引き締ないと。

 二回表も三人で打ち取った。四番にストレートを捉えられて打ち返されていた以外は完璧な投球だ。その四番キャッチャーだが、要注意だな。今日燃えに燃えている。秋田のストレートを意図も容易く打ち返したのだ。魔法のナックルを多用しなければ、打ち取れない強打者だ。

 二回の裏の内の攻撃は三者凡退、四番はバットにナックルをかすらせることはできたが、結局三振、その他も三振で六連続三振だ。因みにまだ僕の打者は回ってこない。どうして九番なんだろう。四番がよかった。

 三回の表、秋田ストレートを打たれランナーをだすも、残りの打者を打ち取り、点をとらせない。

 三回の裏、七番黒羽。

 『頑張れ! ゆさりん! 』『打て打て! ゆさりん! ゆさりんー! 』

 ベンチから黒羽のけたたましい大きな声援が送られる。熱気倍増。さらに応援をしている野球部達は皆ゆさりんとかかれた、鉢巻きをまいている。高城もそのなかにいる。

 「おい高城、黒羽の次はあんたなんだから早くネクストバッターサークルに行け」

 「乙坂さん! そんなことより今はゆさりんの声援をですね」

 「バッターボックスの近くだから、黒羽の打つ姿を間近で見られるからここにいるよりいいと思うが」

 「では、いってまいります」

 高城はベンチから直ぐ様いなくなりネクストバッターサークルに向かった。行動はや。

 「嗚呼、耳がいたいので、少し騒ぐのやめてもらっていいですか」

 「でもよ、生徒会長今はゆさりんの打席なんだぜ、応援せずにいられるかっての」

 「「「そうだ、そうだ! 」」」

 「あーうっさい、うっさい」

 友利は本当に心底迷惑している、鬱陶しいという顔で重いため息をはいている。かくいう僕もベンチの騒がしさに、内心、苛立ちを覚えていた。こっちは睡眠不足のせいで、体は重いわ、思考もまわらないしでイライラしてんのにこいつらの呑気さはなんなのだ。

 確かに黒羽の為に頑張ろうとか、やる気を引き出すために勢いを煽ったが、ここまで騒ぐ必要ないだろ。少しでも体を休めたいから静かにしてもらいたいものだが。でもそれは僕の都合なので我慢しよう。それにこの勢いとやる気を削ぐようなことはしたくない。


 黒羽は、バットの持つ手の位置が逆だったし、腰も入っていない。なってない、スイングで、あっという間にツーストライクにまで追い込まれた。

 「あわわ....」

 本人は次がないことに焦っているのか、おどおどしている。まあ。黒羽には最初から戦果を期待していないさ。

 ビシュッ!

 三球目、ストライクゾーンに入った甘い所に入った変化球。

 ヒュンッ! という鋭いスイング音と共に二塁間を白球が抜けた。

 「なっ! 」

 「いいセンスだ。だけど私のセンスには及ばないぜ! 」

 黒羽、もといその姉、黒羽美咲は一塁まで走ると、投手に向かってそういう。それにしても、右手と左手が逆だったのに、よくあんな風を切るようなスイングができたものだ。美咲のセンスとやらはあんがい侮れないのかもしれない。

 『うおおおおおお!!!! 』「ゆさりんが打った! 」「あの球も打てないわけじゃないぞ! 」「次は俺が! 」


 美咲のヒットでベンチがさらに盛り上がり、これ続けという雰囲気が出来上がる。

 次は高城の打席だ。高城が打てるかどうかで、流れが決まる。

 「美咲さんが作ってくれたこの流れに、乗れるよう、ヒットを......」


 福山のセットポジションからの投球。

 一球目、ナックル。空振り。 二球目ナックル、見送って、ボール。三球目、外角低めのストレート、手を出して、ファールで、追い込まれる。

 次は、恐らくナックルで決めに来るはずだ、最悪、送れればいいのだがツーストライクに追い込まれてからではリスクが高い。積極的に打ちにいくしかないぞ。

 ビシュッ! ブンッ!

 「うっ! 」

 「ストライク! バッターアウト!」


 高城は三振に終わった。ベンチの温度が少し下がった。

 「さて、僕もネクストバッターサークルで用意しておかないと」

 僕はバットを持って、ベンチを出る。ちょうど高城がベンチに戻ってくる。

 「どんな感じに変化するんだ。あのナックル」

 「かなり揺れますよ。速さもあるので、なかなかあてられません。当てた美咲さんは本当に凄いです」

 「だな、いったいどんなセンスで打ったのやら。まぁ、美咲に打てたんだ、ちゃんと食らいついていけば、打てない球じゃない」

 「ストライク! バットアウト!」

 審判の判定が声が聞こえた。どうやら、三球三振だったらしい。くそ、なんか打てない球じゃないといっていた自分に自身が持てなくなるではないか。

 バッターボックスに急いで向かう。その際、三振友利と少し話した。

 「バントもさせてもらえないとは思いの外やるっすねあの投手」

 「ツーアウト二塁になっても余り意味はないけどな」

 「む、チャンスになるんですから、ツーアウトになってもこの場合送るべきしょ。で、打てそうですか? 」

 「さぁ。まぁ、俺様にかかれば、あの球をスタンドに運ぶのは造作もないだろうな」

 「ここスタンドありませんし、フェンスっすよ」

 「.......フェンスを超すことなんて造作もない」

 俺様キャラで格好つけてみたが、決まらなかった。少し赤面。

 「はぁ、期待しないで待ってます。どうせあなたも三振ですし」

 「ふん。どうかな」



 「ストライク! 」

 「ストライク! 」

 「ストライク バッターアウト! 」


 いそいそとベンチに戻って叫ぶ。


 「.......三振! なんでさ! 」

 「こっちが聞きたいです。何がフェンスを超すことなんんて造作もないっすか? 余裕の三振ですよ、しかも空振り」

 「食らいつけばいつかは当たるかもしれませんが、その食らいつく為の餌に届かなければにもなりませんね」

 友利に呆れられ、高城に三振で見事な空振りだったことを責められる。僕も正直、バットに当たらないとは思わなかった。

 あの投手のナックル。球速もあって、かなり揺れる。もうね、残像すらのこるくらいに。いったいどうして、美咲はあんなナックルを打てたのやら。それに気のせいかもしれないが、僕に投げたナックルは、速さも揺れも他より2割増だったと思う。優秀な捕手が二球連続で取りこぼしたのだ。ナックルの球威が増した証拠なんじゃないか。

 「ちっ、折角センスで打っても誰も続かないんじゃ、やりがいがないな」

 「そう言わずに次ぎも頑張ってください美咲さん」

 「分かってっるよ。打順になるまで、あいつと変わるか。........あれ、私また、ねてました?」

 美咲は引っ込み、黒羽が出てくる。先程までの荒々しい雰囲気は消え、のほほんとした陽気な雰囲気になった。

 「はい....」

 「柚咲さん。見事なヒットでしたよ」

 「え、私ヒットだったんですか! 」

 「嗚呼、それはそれは鋭い打球だった。あんたに続いて、打てれば良かったんだが」

 「私も高城も、あなたも、三振っすからね」

 「くっ。とにかく、折角の流れに乗れず、勢いが落ちてきた、だから、掛け声を頼むそれだけで勢いが戻ってくるはずだ」

 「わ、わっかりました! 三回も頑張りましょ! 」

 『おっし!!!!! やってやるぜー!!!!』


 勢いは戻った。

 だが、その後は投手戦が続き、両者、中々走者が塁にでることはできない。六回の裏、美咲がまた、ヒットを打つが、高城は送ることはできずスリーバント失敗。友利も送る仕草を見せたが見送り三振。

 そして、僕は

 激しく、恐ろしく揺れるそのボールに必死に食らいつこうとするが、そもそもバットにかすりもしない。

 「あの一寸タイムもらってもいいでですか靴紐が....」

 「タイム! 」

 バットを地面におき、ほどけてしまった靴紐を結びながら、あのナックルにバットを当てる方法を考える。

 あの投手、友利、黒羽、高城、その他の選手にはストレートを混ぜたりしてくるのだが、僕にはナックルしか投げない。全球ナックルだ。それに睨み付けてくるし、かなり敵視されているのは間違いない。

 今日の僕のスイングは問題ない。体調は不調気味ではあるが、それでも、150kmのストレートだって打てるだろう(豪語)。問題は相手投手の特殊能力。

 バットに触れる寸前に大きく、動かしてくる。だから、バットに掠りもしない。捕手も違和感を感じているのだろう。首を傾げている場面も多々あった。でも、投手に直接聞くことはしない。

 めんどうな。まずは、どうにかして、バットに当てないとな。

 「もう大丈夫です」

 「分かった」

 バットを手に持ち、ゆったりと後ろに構える。

 投手は直ぐ様モーションにはいる。

 バットに触れる寸前大きく動かす以上、それまでは最小限しか動かしていないということ-----------------なら

 放たれた魔球、揺れる揺れる。だが、大きくはない揺れ。それがバッターボックス当たりに差し掛かると大きく揺れるのだ。

 ならば、その大きく揺れる直前が存在する。

 ステップでバッターボックスギリギリまで前に出る。

 それは、バッターボックスに差し掛かる直前の前にあるボール。

 ボールは揺れてる。しかし、大きくは動いてない。これは不意討ちだ。一回限りの不意討ち。

 ビュッッンンッ! 空気を切り裂く大きな一本のバット。その真芯が、白球を完璧にとらえた。

 「ッッッ!!! 」

 一瞬の衝撃。下半身の力を腰の回転力を上半身のスピンへと伝える。毎日十キロという距離を走りこみ即興ではあるが鍛え上げられた、脚の力が乗ったそれはボールに鋭いスピンをかけ、長打へと誘った。

 ザクッという音とともに、フェンスへ鋭いライナーが突き刺さる。

 長打コースだ。

 「おお! 」

 とこれは驚きだと友利の声が聞こえた。

 黒羽の体で、美咲が走る。

 二塁をまわり、三塁をまわる。その時には、関内学園の外野手は、ボールを中継へと投げていた。ボールを受け取った中継は流れる動作でバックホームへ。

 飛び込む黒羽。キャッチャーはボールを受け取り黒羽に触れる。

 僕は二塁ベースから判定を聞いた。

 「セーフ! 」


 星ノ海学園 1-0 関内学園

 試合が動き出した。



[42107]  第十六回 2
Name:  幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:159db371
Date: 2021/12/29 04:40
 六回の裏、星ノ海学園が先制した。その点は僕の一振りのスイングによって産み出された一点だ。二塁ベースから、ホームベースに突っ込んだ美咲の判定がセーフだったことが分かったとき、思わずガッツポーズをしてしまった。

 ベンチでは友利が「おお! 」と声を上げ、星ノ海学園野球部一行は、一同纏う灼熱のオーラを増やすことで、僕のバッティングを称賛した。打たれた相手投手福山は唖然としている。余程自分のナックルに自信があったらしい。本気のナックルが通用しなかった相手はいままでなかったのか、信じられない様子だ。

 「ナイス乙坂! 今のは最高にセンスが光ってたぜ! 」

 ホームベースに頭から突っ込んだ、美咲はゆっくりと立ち上がるとグッド! と親指を立てて笑顔でそう言った。僕はそれに、少し恥ずかしかったが、拳を上げて少し誇らしげにして返してみた。



                       2


 打たれた。関内学園エース福山はその事にショックを受けた。

 能力の念動力で揺れる球を更に大きく動かす寸前を狙って打ってきた。こんな風に打たれたのは初めてだった。

 この能力に目覚めてから、暫くして、このナックルを編みだし、試合で使い続け、幾多の強打者から三振を奪ってきた。

 - その球が、あんな素人に?

 その事がショックでそして不満でならない。


 「くそっ」

 スパイクの爪先でマウンドの地面を蹴る。どこでもいいから八つ当たりしたかったのだ地面なんだしべつにいい。何ならスパイクで掘り起こして、相手チーム星ノ海学園とやらのあの投手の投げづらいマウンドにしてしまおうか。だが流石にそれは選手としてどうかと思ったので自制した。

 「有史! 」

 そこで、バッテリーの隆人がタイムをとって、ぼくがいるマウンドまで、やってきた。ぼくが苛立っていることに気づいたのだ。もう少し余裕を見せておくべきだった。これでは動揺していると相手のチームに教えているのとおなじだ。隆人に気を使わせるとは情けない。

 「隆人.....まさか本気のナックルを打たれるとはね。すまない。つい、動揺してしまった」

 「いや、それはいい。今日のナックルは何時もよりも激しく揺れてキレもある。ストレートも走っているし、残りの打者をちゃんと打ち取ることができれば言うことなしさ。それにまだ一点だ。俺達が確り取り返して見せる。だから安心して投げてくれ」

 ぽんっと、ぼくの胸に大きなキャッチャーミッドを当てる。ぼくはそれだけで少し気がらくになった。先程までの苛立ちや不満は消える。そうだ、ぼくは隆人を信じて投げて、二人で点を取り返せばいい。次の回は三番黒田からだ。四番の隆斗と五番の僕にまで打順が回る。

 隆人はさっきの打席唯一、相手ピッチャーからヒットを打っている。それに相手はスタミナも切れてきているのかコントロールが定まっていない。四球が連続ででたりもした。そろそろ反撃どきだ。

 大丈夫だ。逆転できる。

 そう福山は自分にいいきかせ女房の隆人にサンキューと礼を言う。

 「もう大丈夫だ」

 「そうか。信頼しているぞ」

 タイムを終え、隆人はキャッチャーの定位置まで戻った。バッターボックスには次のバッターが入っている。

 抑える。

 二塁にいる。自分から打ったやつを確認したあと投手モーションに入る。

 腕を振り上げ、投げた。その直後、念動力でボールを動かす。

 スパンっと爽快音がボールを納めたキャッチャーミッドから響き渡る。

 こうして、六回の裏のピンチは、次のバッターをなんなく打ち取ることで免れた。



 僕の活躍のおかげで先取点を取れた我が高校のベンチは大変賑わっていた。六回終わってベンチに帰ってきて、ナイスだとかやると思っていたぜとか声をかけられる。

 ......ことなどなく。

 重圧を感じるまでの暑苦しいオーラを浴びせられることで、僕はベンチの野球部一行から歓迎された。

 「乙坂....貴様抜け駆けしやがったな」

 「俺達の見せ場を奪いあまつさえ、ゆさりんをバックフォームにまで返すなどということを......うらやま、けしからん! 」

 「「「ずるいぞゴラらぁああ!!! 」」」

 「ちょ怖いって。当てられたのは不意討ちみたいなものだし、黒羽が前にいるのも僕の打順の前なんだから仕方ないだろ......」

 と言うか、帰ってきて賞賛を浴びるならわかるんだがこれは.....なんなのだ。僕が何したっていうんだ。ちくしょう....。

 「あーはいはい。そいつをしばくにしても、憎悪なんかを吐き捨てるにいしても取り敢えず、試合が終わってからにしてください。まだ七回っすよ。はい、守備につけー」

 「くっしょうがないか。」「乙坂、あとで覚悟」「でもゆさりんのヘッドスライディングかっこよかったよな」「嗚呼、でもそれが俺達じゃないとは」「やはり後で奴は極刑だな」

 そんな物騒なことをいいながら、友利にしたがい野球部員は各々のポジションへとベンチから向かっていく、僕もグローブを付け、自分のポジションに向かう。

 友利のおかげで一難去ったが、試合の終わった後が怖い。というか、友利も終わった後も助けてくれるのだろか。いや、あいつはそんな自分の目的外のことしかも他人事にはとことん興味ももたずドライだ。助けてくれやせんだろう。

 それに、打ったのに友利から褒められることも賞賛されることもなかった。高城もあのオーラを纏う集団の中だったし。戻った黒羽は混乱してたし、ああほんとなんなんだこのチーム。

 そんなこんな思っていると、ファーストのポジションをベンチでグローブを付け終わった友利が通った。その時、僕の前で一度止まる。

 「.......なんだ」

 「いえ、さっきのヒット中々様になってましたよ。おかげで一点取れました。でも、これからです。気を引き締めて確り守備してください」

 「ああ」

 「それと、もううちの投手のスタミナが切れそうです。あんなオーラみたいの纏ってますけど球威は落ちてきてます。だから......もしもの時は能力を使います」

 友利は何時もの淡々とした口調でそいう。どんなときでも手段は選らばないのは彼女のモットーなのか。僕たちはすでに不正している、ナックル魔法というイカサマ。でも、あれはスタミナが切れコントロールが定まらない今使うのはリスクが高いし、ストレートが入らなければ魔法のナックルは使えない。あれは言わば決め球なのだ。追い込んだときのみに使うそんなもの。使いすぎたらボロがでるそんなものだ。

 だから、友利はそれが使えなくなったときの最悪のピンチのことを考えている。その時は僕の相手に乗り移る力を使う。成る程、合理的だ。そして僕もそれに賛成だった。

 「そうだな。分かった。もういいから守備にいけ友利、審判が睨んでいるぞ」

 「そうみったいっすね。じゃその時は」

 「ああ」

 友利は自分のポジションに向かう。僕はそれを見送って、バッターに集中した。この回は三番クリーンナップからだ。気を引き締めよう。



[42107] 第十七回 今どんな気分だ?
Name: 幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:1dc281c7
Date: 2022/04/04 05:13
七回の表 関内学園の攻撃三番バッター黒田から打順が始まった。

マウンドに立つ星ノ海学園エース、秋田太郎は闘志に燃えていた。

(あと3回抑えて、ゆさりんを勝たせるんだ!)

女房役の宮崎は秋田の強い闘志を宿した目を見て頷く。

(俺もお前と同じ気持ちだ秋田。俺のリードとお前の投球で完封してゆさりんに勝利を)

二人のゆさりんへの愛は以心伝心を可能としていた。

関内学園の三番バッター黒田は既に右のバッターボックスに入り、バッテングフォームに移り投球を待っていた。

序盤は星ノ海学園の選手たち六人の闘志に怖気付いていたが、関内学園の選手たちは徐々に慣れてきいた。

(一点は取られたが、四番の隆人と五番の有史の前の打順の俺が塁に出ておけば逆転もある。くらいついて塁に出て見せる)

秋田が投球モーションに移る。

宮崎の要求した球はゆさりんを勝たせたい強い想いを乗せた渾身の全力のストレート。ミッドはインコースに構えられていた。

秋田の手からボールが放たれる寸前、指先の汗でボールが滑りコントロールが制御できなくなった。

秋田は気合いを入れて勝負を急ぐあまりここに来てロージンバックをつけるのを忘れてしまっていたのだ。

宮崎も秋田と分かりあっている感覚に酔っていたため気づいていなかった。

「しまっ!」

数瞬後、関内学園の打者である黒田の左腿あたりから鈍い音がした。黒田は痛みで顔を渋める。が、すぐにバットを地に置き拳を握った。

「っアウチ! ……オッシャーーー! 塁に出たぞ!」

関内学園の三番打者が塁に出たと同時関内学園のベンチのムードが良くなる。

何せ、ランナー一塁で次は関内学園の四番だ。長打が出たら同点、ホームランが出たら逆転もある。

「タイムお願いします!」

タイムをとったのは友利だった。そして、星ノ海学園のグラウンドに居るスタメン選手全員をマウンドへと集めた。




「……ここからは私たちも能力を使います。あなたの能力で四番と六番打者に乗り移ってやる気なくバットを振って三振してください。五番の念動力の能力者は敬遠でよろです」

五番を抜かした理由は僕が乗り移ると念動力の能力者の能力が消えてしまうからだろう。

乗り移った直後に能力が使えなくなれば僕が自分の能力が乗り移りでないことに気づくと考えたといったところぁ。

……実のところ僕は自分の真の能力を自覚しているんんだが……それがバレたら多分ろくな事にはならないので気づいてないフリをしないとな。

ここでの自然な反応は。

「疑問なんだが何故、念動力の能力者は敬遠なんだ? 他と同じように乗り移って三振でいいじゃないか」

「人のふり見て我がふり直せ。彼には自分がやっている能力を使った不正が客観的にどういう事を生むのかその目で見てもらいたいですからね。反省するにはまずは自覚を促さないとなので」

「そういう事か。ならただの三振なんて生ぬるい! もっと徹底的にやるべきだ! 僕に考えがある」

久しぶりに口元が釣り上がる。

「なんすかその悪い顔……いったい何をするつもりですか?」

「( -言- )ククク……それはな」

……。

「──という内容だ」

僕がやろうとしている事を聞いた星ノ海学園生徒会含めた選手一同は皆「うわぁ」とドン引きしていた。

「……良くそんなゲスい事思いつきますね」

「……乙坂さんあなたと言う人は」

「乙坂さん酷すぎます! 関内学園の選手さんたちが可哀想ですよ!」

友利と高城は呆れるようにいい、黒羽は反対してきた。

「おいおい、そんなにこぞって僕を褒めるな。面映ゆいじゃないか」

「「「褒めてない「せん」「です」」」

黒羽は適当に言いくるめて、タイムは終了し僕を含め各々自分の守備位置に戻った。

一塁から打席に立つ関内学園の四番の捕手を見る。

今からやる事は一方的な蹂躙だ。僕があんたらに絶望をくれてやろう。

……。



左のバッターボックスに立ちバットを構え星ノ海学園の投手を見据える。

失投で黒田が出塁できたのは幸運だった。これで逆転も狙える。

有史のためにも女房役の俺が長打を打って点を返す。ホームランなら逆転だ。

長打のヒットによる同点弾でも、有史がヒットを打てば逆転できる。

俺と有史で点をとって、俺と有史で打者を抑える。そうやってウチは今まで勝ってきたんだ。

相手投手の闘志は確かに凄まじいものだが、疲労が見えてきている。投手の交代がなかったのが不思議なくらいだ。

……いやこういう重要な場面だからこそエースに託したのか。

だが、俺もこのチームの四番だ。負けるわけにはいかない。

有史はこの試合に本気で勝ちにいっている。

試合前、大会を控えているのにこんな弱小チームと試合をする意味があるのか俺は有史に聞いた。

あいつは「これからのためだよ」と言った。俺には分からない。なにかあるんだろう。

けど、あいつが勝ちたいと望む限り女房役の俺は答えて魅せる。

相手投手がモーションに入る。

集中を研ぎ澄ませていく。相手の一挙手一投足に全神経を集中させろ。

リリースの瞬間の位置、指先と握りを見逃すな!

俺がこのバットでランナーを返す! バットのグリップを握りこむ。

……。

「え?」

次の瞬間、俺は右のバッターボックスに立ってバットを振っていた。

投手は投球モーションをいつの間にか終えている。

捕手を見ればミットにボールが収まっていて……。

審判は俺を見て目を丸くしていた。まるで君は一体何をしているんだと言わんばかりの表情だ。

いったい何が起きた、左のバッターボックスにたって居たのに、どうして俺は右のバッターボックスに立っている?

今何が起きたのか理解できなかった。その時だ。一塁の守備に着いているジャージの男が声をあげたのは。

「審判! 投球動作中にバッターボックスを出た場合はバッターアウトですよね! 」

「っ! バッターアウト!」

審判は無情にも俺にバッターアウトを宣言した。

「なっ!」

これには驚くしかない。俺はバッターボックスを出た記憶はなかったからだ。審判に抗議する。

「ま、待ってください! こんなのおかしいでしょ! 俺はバッターボックスを出た覚えはなくて……」

「けど、君、投球動作が始まる前は左のボックスに入ってたよね? で、投球動作の途中で右のボックスに移動したのを私はしっかり見ていたよ」

「っ……で、でも!……」

「バッターアウトだから、次の打者に変わるように」

「……」

バッターボックスを俺はとぼとぼと離れていく。

ネクストバッターズサークルからバッターボックスへと向かって歩く有史とすれ違う。

「有史……すまない。折角のチャンスを俺は……なんでこんなことをしてしまったのか自分でもわからないんだ」

「隆人……君は悪くないのをぼくはわかっている。それとすまない……今起きた不思議なことはきっとぼくのせいだ。だから隆人は気にやまないでくれ」

「有史それはいったいどういう……」

「すまない隆人。試合が終わったら君にはすべて話すよ」

有史は悲痛な面持ちでそういうとバッターボックスへと歩いていった。

…。




予定通り五番の念動力の能力者、福山は敬遠され、ワンナウト一二塁になった。

僕の隣の一塁ベースに福山が歩いてきてベースに片足をつけて止まりこっちを睨んできた。

「さっきのは、お前たちがやったのか?」

「フフフ、さっきってあの四番のルール違反か? 試合であんな事をするやつ初めてみたよ」

「惚けるな。真面目な隆人があんな馬鹿な真似をするわけがない」

「そうか。なら、それが答えだろう」

六番バッターがバッターボックスに入ったので、投球の投球モーションに合わせて能力を使い乗り移る。

そして、また四番バッターの時と同じように投球モーションの最中にバッターボックスから出て反対のバッターボックスに立った。

「バッターアウト!」

審判の声が響く。

一球で打者がアウトになる。

五秒が経過し元の身体に戻る。身体は地面に座りこんでいた。

「君! さっきも急に座り込んでいたけど大丈夫かね!」

一塁の審判にまた心配される。

「ああ、問題ない。ちょっと立ちくらみがあっただけだ」

キリッと顔を作って答え、立ち上がってまたバッターボックスをみた。

「なんで俺反対のバッターボックスに!」

「君アウトだから早く次の打者に打席を譲って」

先程と同様案の定バッターは驚いて困惑していた。

彼らからすればいきなりバッターボックスが逆に変わっていて、アウトを言い渡されるわけだからそりゃわけわかんないし、驚きもするだろう。

「……まさか、お前が」

ああ、そうだ。僕がやった! 四番バッターも今の六番バッターもなあ!

投手が投球動作に入ってからバッターボックスを出るのはルール違反だ。ルール上、それを破ればバッターはその時点でバッターアウトになる。

そして、乗り移りでその行為を行えば否応なしにたった一球で一個のアウトをとれるのだ。

友利たちはドン引きしていたが効率と普段は絶対しないミスでアウトにして選手に絶望を与えるならこれが一番いいだろう。

「なぁ、あんた、自分がやってきた事と同じ事を仲間にされて、今どんな気分だ?」

「……ぼくとお前がやっている事を一緒にするな」

「一緒だよ。特殊な力を使って努力を積み重ねてきた相手打者から簡単にアウトを奪っている」

「……ぼくはお前のように相手に直接害を与えて心に傷を負わせるやり方はしていない」

「苦しい詭弁だな。なぁ、さっきの質問に答えてくれよ。今どんな気分だ? この惨状をを見てまだ力を使い続けたいのか?」

「ぼくは……それでも……」

またバッターボックスに七番バッターが入ったので、乗り移りで投手の投球モーションと共に四番と六番のバッターと同じ末路を辿らせた。

「あいつを……甲子園に……」

「……」

「バッターアウト! スリーアウトチェンジ!」

審判の宣言と共に関内学園の一二塁のランナーたちはベンチへと戻っていく。星ノ海学園の選手たちも攻撃に回るため一旦ベンチへと戻った。

その後の試合は動かなかった。

福山は念動力のナックルで星ノ海学園の打者を完璧に抑え、僕は関内学園の打者を乗り移りで反則アウトにしまくる。

9回の表、最後の打者も乗り移りで投手の投球動作中にバッターボックスを変え、一方的に打ち取った。

関内学園の選手たちは一人を覗いて最後の最後のまで何が起きているのか理解出来ず困惑していた。理解できないことに翻弄され戸惑うその様子が少し面白いと思えた。自分でいうのもなんだけど僕はやっぱり性格が悪い。


試合が終わって星ノ海学園の野球部員たちは全員帰らせたあと、友利は福山だけを星ノ海学園のベンチに呼び出した。

福山はベンチの椅子に座り、俯いていた。

「我々が勝ちました。約束通りその今後能力二度と使わないでください」

それを聞いた福山は俯いたまま独りでに語り出した。

「……隆人、キャチャーとは幼なじみでずっと二人でバッテリーを組んできた。……ウチの高校の野球部が弱い事はわかっていた。けどあいつはぼくと組むことを選んでくれた。ぼくは平凡なピッチャーだ。けど隆人は違う。本当に脚光を浴びるべき選手だ。だからこの不思議な力を使ってでもつれて行きたかった。プロからも注目される甲子園に」

「私利私欲のためではなく、友情のために能力を使っていたんすね。…我々は今日の試合ズルをして勝ちました。あなたもズルをして投げてきました。でもちゃんと見てくれる人はいます」

「…」

「ズルなんかしなくても大学でも社会人野球でも。あなたは彼の親友としてずっと見守って行けばいいと思います。あいつぼくの親友なんだぜって自慢できる日が来ます。絶対っす」

そう言うと友利は福山に優しげに微笑みかけた。

「……ああ」

福山は終ぞ俯いたままそう呟いた。

それを見て僕は、友利の言葉はどうやら届かなかったようだと悟った。

何せ福山は口で返事こそせど、今後能力を使わないとは、最後まで言わなかったのだから。


話が終わると福山は遠目にこちらを見ていた関内学園の仲間たちの元へと戻って行く。

その後ろを姿を見て、乗り移るかどうか迷う。今後も福山は能力を使うのではと思ったからだ。

科学者に福山が目を付けられれば、救出するのはリスクが高まるんじゃないか。

能力を護りたい思いの強い友利は福山をきっと救うため行動に出るだろう。そうなればまた友利の身に危険が生じる。

そんなのはごめんだ。

けど、ここで僕が急に乗り移るのは不自然だろう。能力に気づいている事がバレるかもしれない。

……今まで何を見てたんだ僕は。

福山は友情のために能力を使い。

友利は能力を護るために能力を護るために使っている。

彼らは他人のために能力を使い、僕は自分の欲を満たすためだけにしか使ってこなかった。そのせいで取り返しのつかない誤ちもおかした。

過去の誤ちを悔いるのなら、僕は自分のためだけじゃなくて、他人のことも思える人間になるべきだ。

なら、福山から能力を奪わなくては。

……そうわかっているのに。能力がバレて自分が被害を受けるかと思うと……行動できない。

結局僕は自分の事しか考えていない人間なのか。……自己嫌悪だな。

「なに難しそうな顔しているんですか?」

隣に居た友利が不思議そうにこっちを見ていた。

「いや、別に。それよりいいのか? あの感じだとあのピッチャー今後も能力を使う気がするんだが」

「……やっぱそう思いますよね。まあ、それは後でこっちでなんとかしておきます。それより、ちょっと彼に乗り移ってもらえませんか?」

「乗り移ってなにをするんだ?」

「特になにもしなくていいです。ちょっとした実験なので」

友利は福山の能力を僕に奪させる気らしい。自分で動けなかった僕としてはありがたい提案だった。

「よくわからんが、乗り移ればいいんだな?」

「はい。よろしくお願いしま〜す」

僕は能力を発動し、福山に乗り移った。

五秒が経過し、自分の身体に意識が戻るとなんかめっちゃ柔らかい感覚と、ふわっとしたいい匂いが広がった。

「お疲れ様です」

「んッ!」

すぐ耳元で友利の声がした。

意識を失った僕の身体を倒れないように友利が支えてくれていて……で、僕の顔は友利の胸元にすっぽり収まり両手で軽く抱きしめられる形になっている。

つまり……この柔い感触は友利の! おっ……

「うおおおおぉ!」

トンデモ展開に驚愕し、勢いよく離れる。

心臓がばくついている。後、なんか顔が熱い。

自己嫌悪のあの陰鬱な感覚はすっかり消え去ってしまった。

今あるのは羞恥? 興奮? 高揚? ときめき? 性欲? わ、わからん。色んな感情がごっちゃになってドキドキする。

あいつ、めっちゃ柔らかかったし、めっちゃいい匂いがした。あれが女子の感触……本当に同じ人類か!?

……なんてこった語彙が死んだ。

くっ……友利のくせに。

「ありがとうございます」

「い、いや、いんだが、それで今のでなにかわかったのか?」

一応聞いておく。

「今はまだ分かりません。しばらく様子見です」

「そ、そうか」

「それじゃあ解散〜気をつけて帰れよ〜」

「とはいえ、友利さん帰る方向は一緒ですが」

「ならみんなで一緒に帰りませんか〜〜?」

高城がツッコミ、黒羽が何故かえへへと照れ笑いを浮かべながら提案する。

で、みんなで帰ることになった。

途中、コンビニによって皆で食べたアイスの味は、運動後だったからか、それとも久しぶりに食べたからなのか、とても美味しいと思った。



[42107] 終わりと始まりのプロローグ 幸せな日常
Name: 幸せな二次創作。◆0adc3949 ID:0f391a22
Date: 2022/04/04 05:50
灼熱の太陽に焼かれる荒野を二人の少年を引きずりながら歩いていた。
後方の離れた場所から耳を劈く爆発音。先程、破壊した軍事車両のガソリンが漏れ、搭載されていたバッテリーのケーブルから散った火花が引火したのだ。

「ああああああああぁぁぁ!」
「熱い! 熱い! 助けっ……」

野太い大人の男たちの苦しみの叫びが荒野に響くが五分もしないうちに静かになった。
『見た』通りの結果だ。 引きずっている少年たちも中に乗ったままなら彼らと同じように火あぶりになる悲惨な運命を辿った事だろう。

この少年達は今、焼死したテロリスト達に攫われた近くの村に住んでいた特殊能力者だ。テロリストの仲間でないなら殺す理由もない。

引きずっていた少年二人の服から手を離す。ドサッと少年たちの身体は全て地へと落ちた。
地面に転がる少年二人を眺めもう何十万回も繰り返してきた作業を開始する。
乗り移り、保持する特殊能力を略奪し、奪った能力が目的のものかを確認する。
特殊能力を奪う度、記憶がすり減っていく。今ではもう自分が何処の誰なのか思い出せない。

けど、覚えている事もある。僕は殺されてしまったあいつを助けるために世界を変えることができる能力を探し求めて世界中の特殊能力者から能力を奪い続けてきた──っ

一瞬、思考が真っ白になった。だってあまりに唐突だったから……。
今まで何十万回と期待する度に裏切られて、記憶が無意味に消えいったのに。
ああ、でもやっと報われる。

「これは……ははっ……ははは! ……やった! やった……やったぞ……やっと見つけた……僕は手に入れたんだ!」

抜けるような青空に手を伸ばし掴んだ。

「……タイムリープ……これであいつを救える」

夢想する愛しいあいつの姿を……その名を呼ぶ。

「あれ? ……あいつって誰だっけ……大切な人だったのに!……あいつの……名前……名前……なんでだ。 ……どうして顔も名前も思い出も思い出せないっ ……う、あぁ、ああああああああぁぁぁ!」

僕は膝を地について、両拳を地面に叩きつける。
そして、嗚咽した。幼児のように泣きじゃぐった。
失った記憶はもう二度と思い出せない。
あいつの名前も顔も殆どの思い出も失った事が胸が抉れるくらい悲しくて、悔しくて、喪失感に耐えきれなかった。

一頻り泣きじゃくり、落ち着いたあと、僕は立ち上がる。
胸に手を当てるこの中にはまだあいつを助けるという意思が残っている。

「まだ失っていないものもある。……助けに行くんだあいつを……そして今度こそ、護るんだ」

タイムリープの使い方は、奪った能力を確認したことで理解していた。
けど、どの時点に戻ればいいかなんて記憶が虫食い状態の自分には判断しようがない。
だから、遡れるところまで遡る。そして、身近にいる全ての人を護り通す。
その中にはきっと、あいつも居るはずだ。

そのためにもタイムリープによって奪った特殊能力が消えないように細工する。
よし、準備は出来た。
今行くぞ──必ず助けてやる。

「───跳べよぉぉおおお!!!!」


☆☆☆☆☆

これが乙坂有宇の最初のタイムリープだった。
しかし、彼の奪ったタイムリープには代償と制約があった。
①時間遡行の時間の二分の一の時間分記憶も巻き戻ってしまう。
②タイムリープする先は平行世界であること。

有宇はそれらを知らなかった。彼はあくまでなんの能力何かと使い方を知れるだけで、能力の代償や制約についてまでは把握出来なかった。

そして、あの日、友利と初めてあった日。有宇は平行世界で目覚めた。

「なんじゃっこりゃああっああああああぁぁぁ!」

夕焼け空の下、高城に雁字搦めされながら、河川敷の空を飛んだその瞬間に……。

☆☆☆☆☆


「有宇お兄ちゃん朝だよ! おはようなのですぅ!」

月曜日の祝日。朝、妹の歩未によって起こされた。

「歩未、今日は祝日で学校は休みだろ。もう少し寝させてくれよ」
「でも、もう十時だよ? ちょっとたるみすぎなのですぅ!」
「昨日の生徒会活動のせいで筋肉痛なんだよ……」
「筋肉痛? 昨日、生徒会で何をしたのでしょうか?」
「……野球部の助っ人。超高校級の投手のいる学校とウチの高校とで練習試合をしたんだ」
「野球部の助っ人? 練習試合? 生徒会ってそんな事もするの?」
「星ノ海学園の生徒会は一般的な学校の生徒会と違って特殊なんだよ」

そう言うしかない。
特殊能力者を科学者を護るために保護、もしくは特殊能力を使う危険性を教え、能力を使わないように脅す活動をしてるんだ☆……なんて言えるか。

「へぇーそうなのでござるか」
「ああ。だから、今日はゆっくり休ませてくれ」
「……そっかー。せっかく学校がおやすみだったし、有宇お兄ちゃんと久しぶりに一緒に街にお出かけ出来たら良いなと思ってたのですが、疲れてるならしょーがないよね。残念だけど今日一緒にお出かけするのは諦めるのですぅ」

歩未は残念そうに眉を下げたあと、作り笑いを浮かべた。
悲しみを隠す時の取り繕ったような笑顔。チクリと胸が痛んだ。
お前にそんな悲しい顔をしてほしくない。
お前の浮かべる笑顔はもっと楽しげで明るくて元気なものであってほしい。
お前に幸せになってもらいたいから僕はここに居るんだ。

「……わかった。街に一緒に出かけよう」
「え?」

睡魔を誘う布団から起き上がり脱出。布団を押し入れへと仕舞う。
歩未はポカーンとしていた。

「支度するから少し待ってくれ」
「ゆっくりお休みしたかったんじゃ?」
「今日、歩未と一緒に出かけるのと休むのどっちを優先するかなんて比べるまでもないだろ」
「無理してない?」
「してないさ。僕もお前と一緒に出かけたい気分になったんだ」
「それならいいのですが……」
「それに、歩未のためなら僕は無理だろうが無茶だろうがなんだってしてみせるさ。……お前は僕のたった一人の大切な妹なんだから」
「有宇お兄ちゃん……」

フッ、決まったな。我ながらイケてる台詞だ。

「その、脚が震えてるのですぅ。ホントに休まなくて大丈夫?」

くっ……鍛え方が足りなかったか。

この後、歩未と一緒に街に出かけた。外食は美味しかったし、一緒に買い物するのもめちゃくちゃ楽しかった!

幸せな日常というものがあるならきっとこういう時間のことを言うんだろうとそう思った。


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