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[40964] 逸る気持ちが (オリ主、15禁)
Name: 有機物◆9958cba6 ID:8e62a772
Date: 2015/02/05 17:36
初めましてこんにちは。
ド素人の有機物と言います、処女作です。
このSSは作者の趣味全開なので、ご了承ください。
他の作品と少し似ているところもありますが、自分で考えたものなので暖かく見守ってくれると嬉しいです。

・オリ主です。
・オリジナルストーリー有り。
・少し同性愛の描写がありますが、外見だけを見るとノーマルです。


後日談や番外編なども書きいれる予定です。

更新履歴

・2月日 投稿日、1話2話3話更新





[40964] 1話
Name: 有機物◆9958cba6 ID:8e62a772
Date: 2015/02/05 13:34
何年前だったか、あの魅力に取り憑かれたのは。

1話

清潔感のない様な寂しい室内を夕日がオレンジ色に照らしていた。
冷たいフローリングの床を裸足でペタペタと歩く。
今は夏だろうか、エアコンのおかげで常温より少し涼しく保たれた室内のせいかたまに季節感が感じられなくなる。
冷蔵庫からキンキンに冷えた麦茶をコップに注ぎ、乾燥した喉を一気に潤した。

「ふぅ」

濡れた口元をよれよれのシャツで拭い、テレビの電源をオンにしてふかふかのソファーにどしんと座った。
麦茶とコンビニのサンドウィッチとプリンを食べながら自分の好きなバラエティ番組を延々と見る。
コンビニでの偏った食生活にゴミだらけの室内。

だいたい外に出るのはコンビニで食べるものを買う時だけだ、月一回食べ物がなくなったらコンビニへ一ヶ月分の食料を買いだめする。
店員や他の客からは異様な目で見られるがあんまり気にしない、というか気にしなくったの方が正しいのか。

高校を卒業し、一流企業の会社に正社員として入社したエリートだったあの時代を思い出す。
まぁ結局五年ほどそこに勤め、その時点で嫌気が差しサラリーマンを辞めた。
あの頃は景気もあり、今となればすごい時代だったんだなと感じられた。

あの日からだ。
田舎の親からも見捨てられ、元々勉強一筋で友達もろくに出来なかったので相談やら遊びの約束やらすることも出来ない。

稼いだ金でなるべく安めのマンションを借りて、あの日から今の今まで十二年。
今では三十五歳の無職・引きこもり・童貞と言う最悪な三拍子を持っているのだ。
そして今だに親から生活費だけもらっているというクズ野郎だ。

三十路を過ぎても純真な身体(つまり童貞)を持っていれば魔法使いになれるというが嘘だろう。
まぁ最初から信じてはいないが。
そろそろこの生活からも脱出した方が良いと言うちゃんとした脳は持っている。

働こうと思えばすぐではないが働ける。
でもその気力も起きないし体力も落ちたので尚その気になれない。
ゲームやネット、テレビ漬けの生活はやめられないのだ。
1日寝ていてばっかでも誰にも怒られない。
こんな状態で生活していたらダメ人間にもなるだろうに。
何故途中で無理してでもやめなかったのかと昔の自分に問い詰めたい。

そして話は変わるが、最近週刊の少年誌にハマっている。
少年ジャ◯プが歯至福だと自身ではそう思っている。
中でも一番面白いと思うのがHUNTER×HUNTERだ。
幼い頃にその作者の作品が好きだったこともあり、今では取り憑かれた様に大ファンになっている。
何年もの休載が辛いが。

いっそ逃げれるのなら二次元へ。
死後の世界が二次元ならば今すぐ死ぬ。
パソコンの世界に入りたい。
こんなことばっか良い年して願っている。
一時期トリップという二次元に行けるとの方法があるのを知り、片っ端から試してみた。
もちろん危険なのものも、ピンからキリまで。

だが今の現状がある限りあの方法は真っ赤な嘘なのだ。
体験談やらもあの時は素直に信じてしまっていた。
ネトゲやギャルゲー、エロゲーなんてほとんどやり尽くしたしな。
あの頃は心も下半身も元気だった。

ピンポーン。
不意の呼び出しにびくっと肩を揺らした。
あれぎ来たのかも知れない。
わくわくとした気分で印鑑を片手に玄関へかけた。

がチャッとドアを開けると、いつもの綺麗なお姉さんだった。
こんな真昼間なのに出勤せずに清潔感無しのオッさんがいるなんて。
もしかして、無職……___。
そう蔑んだ様な思われ方をされている、絶対といって良いほどに。

このお姉さんで何度妄想しただろうか。
まるで現実にない、男性向けエロ同人の様なシチュエーションを悶々と思い浮かべていたのだ。
印鑑を押し、荷物を受け取ると営業スマイルのままの綺麗な女性はそそくさと玄関から姿を消した。
多分マンションの監視カメラに映る佐伯さんの顔は歪んでいたと思う。

自分の顔よりも大きい重いダンボールをどすんとリビングの床に丁寧に置く。
カッターでダンボールに張り付いたガムテープをベリベリと剥がす。
処理が面倒くさい程に入った発泡スチロールを床に投げ捨てた。

「き、きたぁ……」

発泡スチロールに埋れた品物を手に取りながら嬉々とした。
品物はとりあえず近くに置き、明細書やら説明書に目を通す。

うわ、やっぱり改めて見ると高いなぁ。

明細書に記された『三十四万八千円』の七文字を見つめながら痛い出費だな、と冷や汗を流した。
でもこれが出に入れば必ず、パソコンの世界に入れるのだ。
高い金払ってでも逃げたい場所、それが俺にとっての二次元なのだから。
振込は明日するとして、明細書は目立つ様に冷蔵庫に猫のマグネットで貼った。

俺が買ったのは一部のマニアが膨大な金をかけて作ったと言うパソコンゲーム。
パソコンゲームと言っても、頭に機械を着けてバーチャルの世界を体験できる近未来的なゲームだ。
バーチャルの中では意識も手足の感覚もあっちの世界に持って行かれるらしい。

ガセじゃなかったらマジで漫画だぞこれ。
これが本当なら倍の金をつぎ込んでも惜しまない位だ。
これはオークションで落とした中古品だから半額以下の値段だが、新品の状態で買うと五十万は軽く超える。

ソフトをパソコンに繋ぎ、麦茶やお菓子、頭に着ける機械を近くに置く。
準備完了だ、と心をウキウキさせながらソフトを起動させた。
某赤い帽子の髭オッさんがゲームオーバーした時の様なメロディーが冒頭から流れた。
もうちょっと違うメロディーに出来なかったのか。

麦茶を飲みながら次の画面が現れるのを待つ。
少しすると英語でならんだ文字が三つ表示された。
START、DERETE、RESET、つまり始めるデータ消去始めからと言うことだろう。
これは中古品だから前の奴のデータが残っているんだっけか。

DERETEを押してからRESETでゲームを最初から始めた。
また選択肢が出て来た。
ワンピース、HUNTER×HUNTER、NARUTOと言う大人気の漫画たちの題名が表示されている。
迷わずにHUNTER×HUNTERにカーソルを合わせた。

このゲームでは三つの選択肢によって、入れるゲームが異なる。
例えばその代わりに一度ワンピースを選択すると他の二つはプレイすることが出来ない。
という仕組みになっているらしい。
いくらこのゲームが凄い機能を持っていようとHUNTER×HUNTERが選択肢に入っていなかったら買っていなかっただろう。

画面が変わると同時にアニメーションが流れた。
オープニングかチュートリアルか、どんな感じなのだろう。
食い入る様にパソコン画面を見た。

アニメーション、と言うよりはこのゲームの説明だった。
説明のほとんどはネットで見まくった、頭に入っているのでここら辺は聞き流そうと体制を崩した。
だが原作が終わればゲームは終了するというまだ知らなかった説明に頭を悩ませた。

HUNTER×HUNTERは休載してばかりで全然暗黒大陸から進んでないぞ。
その時は原作再開まで待たなくちゃならないのか?
悶々と悩む。
一通りの説明が終わったのだろう。

自分のアバターを作成する画面に変わった。
男か女か、の性別選択。
自分はハッキリ言うと女より男の方が好きかも知れない。
だが男としての健全な欲はある。
HUNTER×HUNTERの魅力に取り憑かれた今ではあのキャラクターと結婚したいという思いがたくさんだった。

俺が一番好きなキャラクターはレオリオ。
主人公四人組の一人だが、四人の中で極めて登場数が少ない。
だが俺はレオリオが好きだ、だからこそバーチャル世界では女になりレオリオと恋愛がしたいと思っている。

あっちも心が男だなんて絶対に思わないであろう。
そう決心した俺は性別を女にした。
色々と細かい選択肢があり、凝ってるな。
とバーチャル世界を見るのがより一層わくわくした。

名前は何が良いだろうか。
やはりバーチャル世界でも自分の名前に近いもので呼んで欲しい気持ちもある。
早川 賢人をもじってハヤトがいいな、男でも女でも取れる中性的な名前が良い。

髪の色や形、目の色に体型。
選択肢が本当に細かいな、年齢は10歳から選択できるのか。
取り敢えず自分の思う憧れのキャラクターの様に容姿端麗なキャラに設定して見た結果こうなった。

長いピンク色の髪と目に身長は160cmほどの痩せ型、でも巨乳という男のロマンを詰めた。
歳はレオリオと歳が近く、でも主人公たちとも歳を近くしたかったため十六歳にした。
容姿端麗な巨乳美少女と言うわけだ。

外見は美少女でも中身はニートのオッさんだなんて醜いな。
念能力は自由に設定出来る訳でもなく、50個の質問に答えて行き性格から導き出す様だ。
こう言う類は何度やったことだろう。

自分の性格で素直にやるとあの頃は操作系だったが、生憎俺は特質系が良い。
なので特質系の性格パターンを導き出している俺にかかれば系統は特質系になれる。

50個の質問に答え終わり、診断結果を見る。
よし、計画通りの特質系だ。
特質系はレアだからな。
特質系になったところで、どんな念能力が良いかと妄想が膨らむ。

あの日から念能力をパンパンにまとめたノートがある。
全ての系統の念能力を書き溜めたが、中でも一番多かったのが特質系だ。
あの頃の俺もやはり特質系が一番カッコ良いと思っていたのだろう。

全ての長い項目を入力し終え、アバターの全体図、アップが表示された。
うん、やっぱこれはどこからどう見ても美少女だよな。
男なら絶対に惚れるわ。
しかも胸もでかいと来た。

この容姿でハヤトって名前も正解だったかもしれない。
ギャップってやつだろうか。
エンターキーを押すと、黒い画面に白い文字で『頭に機械を付けてください』と表示されたのでわくわくしながら機械を被った。

真っ暗じゃないか、本当にガセだったら嫌だ。
と思った瞬間機械が作動したのか視界が明るくなった。
もしかしてここがバーチャルの世界か?
三次元で見る様な景色ではなく、アニメの様な景色。

マジだったのか、進化してるな。
それにしてもここは外じゃない、室内だ。
しかもピンクがたくさんの女の子の様な部屋だ。
もしやここがバーチャル世界での俺の部屋なのかもしれない。
それにしても何故ピンクなのだろうか、髪やら目をピンクにして性別設定女にしてせいか?

なんかピンクだらけで目が痛いな。
縫いぐるみやメイク道具、鏡等の十六歳の高校生設定が生きているのか。
ともあれ、まずはやっぱり家の探索からだな。







[40964] 2話
Name: 有機物◆9958cba6 ID:8e62a772
Date: 2015/02/05 13:35
この家はどうやらマンションらしい。

2話

エレベーターの中も見て見たが、8階まであった。
そのうちの俺の住む場所は3階だった。
3階って何故かいやだ、主人公なら最上階とかが良かったものだが愚痴愚痴言っててもしょうがない。

間取りは2LDK、俺が三次元で住むマンションと全く同じ間取りだ。
305号室という部屋ナンバーも一緒、なんか見られてる様で怖い。
でも違うのはこのザ・女の子のピンク部屋。

ぬいぐるみやアクセサリー、メイク道具、教科書や通学カバン。
もしかしてこの子は普通に学校に通っている設定なのか?
今までの空白の十六年間の過去やら面倒くさかったのでおまかせをクリックしたせいかよく分からなくなってしまった。

今着ているこの服も学校の制服だろう。
カレンダーを見て見るがやはりハンター文字、まぁ某サイトで50音全部暗記してるから平気だが。
今日は8月8日、土曜日。
この二日間でだいたいの情報をゲットしなければ。
ゲームの楽しみはここからなんだよな。

まずパソコンを使ってハンター試験が今何期なのかを調べた。
287期を過ぎていたら無意味なのだから。
カーソルを下へ下へと持って行く。
今は286期、1年後……か。

ここで一年間修行したり色んな敵を倒してレベルアップ、みたいなそんなロールプレイングなのか。
取り敢えずここの住所がどこか知りたい、一旦マンションの外に出る。
マンション名の下に住所が書いてあるはずだ。

「っぇ」

驚きと感動が詰まった声が思わず出た。
パドキア共和国アルブル市クッカ町6-4-12、か。
まさかパドキアだなんて思いもしないよな。
ここからだとククルーマウンテンまではどの位距離があるのだろうか。
ちなみにここら一体は花の町と言われる程花が綺麗に咲いているらしい。
時間があったら行ってみよう。

そしてここでの俺は他の住人達とのコミニュケーションをとっているのか?
もしアバターが友好的でノリの良い性格だった場合、自分との性格とかけ離れている。
やばい、ちゃんと自分の性格通りに
設定するべきだった。

特質系はカリスマ性、だった気がする。
ならアバターがカリスマ性抜群の明るい性格だったら周りが驚くだろう。
なにせピンクの髪と目に腰まで伸びきった長い髪、おまけに容姿端麗ときたら確実に目立つ。
それにクラス、いや学年の中心人物にもなれるだろう。

どうしたものか、それにこのゲームでは基本自由活動で戦闘しようが優雅に暮らそうが個人の自由らしい。
俺はレオリオとの恋愛が先だが。
というかこの容姿で一人称俺は痛いかもしれない。
高校生だった時のクラスの女子の一人称はだいたいが私だった、と思う。

なので取り敢えず一人称は私に統一することにした。
まぁ心の中ではそのままの男の俺だが。

部屋のふかふかのソファーにぼふんと座り、悩みに悩んだ。
戸籍はあるのか、家族や親戚、友達はいるのか。
ここへ来てから心境の変化のせいか悩んでばっかだ。

「んー、どうしたもんか」

美少女の姿であぐらをかくのは少し気が引ける、まぁあんまり気にはしないが。
誰も別に見ていないし。
ぐーっとお腹が鳴る音がした。
お腹空いたな、一旦三次元に戻って弁当食べよう。
部屋に掛かった時計を見ると、針は午後12時10分を表していた。

……でも、せっかくここへ来れたんだからここでの食べ物になれておきたいなとも思った。

そんな訳でクローゼットらしきものを漁り、普通の服に着替えた。
理由は制服のまま行くのはどうかと思っただけだ。
お金はあるのか、それは自分の机に置いてあった貯金箱を壊し一万円ちょっとをカバンから見つけた財布に入れた。

財布に入っていたのは三千円くらいだった、まぁ高校生だしこのくらいか。
他にも財布の中に入っているのはくしゃくしゃになった数枚のレシートに定期券、学生証やポイントカードだった。
学生証を財布から取り出し、カードに映った少女の顔はニコッと笑っていた。

カバンかけにかかっていたオシャレなカバンに財布とケータイ__アバターの物と思われる__を詰め、鍵をかけにてマンションを出た。
空気が違う、気がする。
俺が住んでいた東京の空気は息苦しくて汚かったなとふと思い出す。
と言っても数時間前のことだが。

「あっちー」

冷たい空気が入る様にパタパタと襟を揺らした。
取り敢えず勢いだけで外に出てみたが、どの店にしよう等全く決まっていない。
ケータイを片手に白い壁に寄りかかる。

さっきからチラチラと視線を感じる。
こっちが顔をあげると即座に下を向くが。
これはあれか、俺が美少女なために皆の視線が集まる訳か。
罪な男……この場合は女か、だぜ。
決まらなかった。

取り敢えずネットでここから近い距離にある飲食店を探して見ることにした。
スクロールしながら比例して眉が下がる。
中々良い店が見つからない。
ここでは日本食とかは当然ない様だし、今食べたい気分のスパゲティの店が見つからない。

スパゲティのお店なら大抵あるだろ、もしかして普通の町並みではなく普通のゲームみたくレストランが4、5件なのだろうか。
そうだったら最悪だ。
もうスパゲティ縛りを外し、普通に歩いて行き飲食店を探した。

「いらっしゃいませー」

妙に間延びした挨拶の店員に首を傾げつつ案内された席に座る。
ここはごく普通のファーストフードの店だ。
バーチャル世界とは言えど、味覚はちゃんと感じられるのか心配だ。

持って来られたお冷をちびちび飲みながらどれにしようかとメニューをペラペラめくる。
お冷はただの水の味がする、まさかだが食べ物全部味覚が水の味しかしなかったらどうしようと恐怖でぶるっと肩を揺らした。
この店では主に何でもある、レパートリーも豊富で美味しく従業員の接客も良いと評判がある、とネットで調べた。

取り敢えずお腹が空いているので普段三次元ではあめり食べないものを食べようかなと思う。
メニューをパラパラ見ていて、ふと目に止まった"ラーメン"。
ラーメンか、最近カップ麺しか食べてない気がする。
俺は豚骨よりも醤油派だ、だけど今日は違うものを食べたくてあっさりとした塩ラーメンに決定した。

これでいいかと思い、呼び出しベルを押す。
何故か分からないがこのボタンを異様に押したくなるのはなんでだろうか。
すぐ店員が来て、顔を上げたかと思うと真っ赤な顔になりぽけっとした表情になった。

が、すぐに姿勢を直し注文をとって何故か顔を手で押さえながら去って行った。
なんだ? と一旦思ったが今の自分の容姿を思い出す。
今のちょうど若い男性の店員だったし、"ハヤト"の顔見て赤くしたのだろうと勝手にうんうんと1人で納得した。

ケータイでネットを見ながら暇つぶしをしていると、さっきの男性店員が塩ラーメンを運んで来た。
そして伝票にサラサラと書き込み会釈をし他の客の注文を取りに行った。
感じの良い青年だな。
おまけに金髪のイケメンだし、俺もこんな美形に生まれたかった。

暖かいラーメンをずずっとすすりながら、塩も案外いけるかもしれない。
なんて密かに思った。

「ふー」

食った食った、とでも言う様にお腹を叩いた。
あ、やばい今女子高生だった。
今のかなりおっさん臭かったと思う。
残りのお冷を飲み干し、会計を済まし店を出た。

……一旦部屋に戻って現実にも戻ろうかな。

ハヤトが部屋に戻ると同時に頭に付けた機械を外し、視界も心も一気に現実に戻された感覚だった。
現実で頭に付けられた機械はバーチャルではないものとして扱われる。
だがその代わりに頭の横、つまり耳の少し上の方にプラスチックのケースで保護されたスイッチを押せば現実世界に戻れると言うことだ。

これは絶対に壊れないことはないらしい、だが最悪の事態が起こってしまったら二度と三次元二度と戻れなくなってしまう。
まぁ自分としてはあそこに未練があると言うわけではない、というか歓迎だった。

あっちで食べたものもこっちに影響するのか。
ゲームをやり続けて数時間何も食べていなかったがラーメンを食べたおかげかお腹は膨れていた。

疲れたな。
ハヤトの学校事情云々は明日調べて、今日は明日連続でプレイに望むためにもう寝よう。
よれよれの服のまま身体も洗わずに自室へ直行し布団にくるまって眠りに着いた。

目を覚まし、目覚まし時計を見ると針は9時を指していた。
自分としては久々に早く起きられたのだろうか。
麦茶を出そうと冷蔵庫を見る。
あ、そうだゲームの明細書はっといたんだっけ。
今日午前少し前くらいに振り込みに行くか。

パソコンの前によっこいしょ、とオッさん臭い台詞を吐きながら座った。
ゲームを起動させ、頭を覆う機械を被る。

「よっし」

昨日と同じように、同じ服を着たハヤトはベットの上に座っていた。
そっか、動きが連動するんだっけ。
昨日は風呂にも入ってないし、歯も磨いていなかった。
取り敢えず歯を磨いてから顔を洗う。

風呂は、どうするべきだろう。
いやでも自分の身体なんだから。
恥じらわないで、というか興奮の方が勝つけど。
でも待ちに待った、生なわけでも無いが女の子の裸がここにあるからには見ないわけにはいかない。

タオルを二枚用意し、服を全部脱いだ。
自分で設定した通りの巨乳だった。
サイズ指定はしてないがH位はあるだろう。
ごくんと唾を飲み込み、風呂に入った。

「ぷはー」

風呂から出て着替えを着た後に、冷蔵庫に入っていた甘いカフェオレを飲み干した。
風呂での性欲は断ち切ったが、この身体にも時期になれるだろう。
今確信できたが、このバーチャル世界と三次元の時間軸は同じらしい。

バーチャル世界で三時間過ごせば、こっちの世界では三時間過ごしていたのはあることだ。
でもこっちで寝ていた分の時間もあちらのプレイ時間に含まれていた。
だから確信できたのだ。

そして今日はハヤトが通っている学校の事を調べることにした。
パソコンを起動させて、ここから近い距離にある学校一体を調べた。
ここから三十分と、ここから一時間の学校を二つ発見した。

一つはセレッソ学校、もう一つはセレジェイラ学園。
セレジェイラ学園の方は私立で、セレッソ学校の方は普通の公立だったので多分セレジェイラ学園の方だと思う。
でも一時間掛けてこっちの路線も分からない俺が行くのか?
出来ればセレッソ学校であってほしい。

……制服を調べるか。
ハヤトが着ていた制服は赤いリボンタイに白シャツ、赤チェックのプリーツスカートと紺色の靴下。
ぱっと見私立でも公立でも通るなー、なんて考えながら二つの学校の制服を見て行く。

やっぱ、セレジェイラ学園か……。
一時間もかけて行くなんて、正気かよ。
取り敢えず路線を探して一回セレジェイラ学園まで行って見るか。
暇だしな。

思い立ったが吉日。
俺はまた制服に着替え、マンションを後にした。



[40964] 3話
Name: 有機物◆9958cba6 ID:8e62a772
Date: 2015/02/05 14:15
「うっ……」

3話

満員電車に揺られること三十分。
満員電車は経験するのは凄く久しぶりだからか、いつもより気持ち悪く感じた。
三十分も座れていないし、そろそろ足腰も限界に近い状態にあった。

やばいやばい、この体力でハンター試験に望むのはヤバすぎるぞ。
系統も特質系になれたからと言って最初から念に目覚めているわけでもないし。
修行しておこしていったら多分才能の無いと思うであろうハヤトは何年かかるのだろうか。

287期のハンター試験は来年、確かゴンやキルアたちは一週間で起こせるとかウィングが言っていた気がする。
こんなんじゃ絶対に間に合わない、せめて念を覚えることが出来たらどれだけ試験が楽になるか。

「っ」

電車がガタンガタンと揺れまくる。
ちょっと待て、これ凄い混雑だぞ。
後二十分位ここにいるなんて地獄だ。
しかもハヤトの格好だからか男からの視線が熱い、キモイ。
まぁ電車にこんな美少女がいたら俺も見るけどな。

「ディアンソス駅に停車します、開くドアは右側です」

アナウンスが流れると同時に人混みにも流された。
ちょうどここが降りる駅だったしラッキーだ。
暑苦しさからも解放されたし。
そこからは改札を通りケータイの地図を見ながら学校を探した。

「ここかぁ」

私立なだけあって学校はかなりでかい。
教科書とかでも見て学年と組みが1年2組なのは確認済みだ。
でも日曜だからかひと気は見当たらないが、多分体育館や校庭であろうところから声が聞こえた。
部活かー、青春してんな。
そう言えば俺はいっつも帰宅部だったな、ハヤトは何部に入っているのだろう。

学園も確認出来たので帰ろうかと思ったが、一時間掛けてまでここへ来たんだ。
なにか見て行った方が良い。
そんな結論に至ったため、テキトーにオシャレなカフェを訪れた。

店名は『スターバッケス』通称スタバ、もうこっちの世界反映してるよな。
通称で呼んだらもうあの某有名店だ。

「ご注文が決まったら呼び出しボタンを押して下さい」

顔を赤らめた女性店員がそう言ってお冷をくれた。
そしてそそくさと去ってしまった。
何故同じ女なのに顔を赤くするのだろうか、レズなんだろうか。
それとも女も惚れる魅力的な顔をしているのか?
もしそうだったら美少女過ぎた。

メニュー表をめくる。
俺は苦いものが苦手で、コーヒーとかカフェオレとかはシロップをたくさんかけないと無理な程の甘党である。
なのでキャラメルマキアートなどと甘そうな名前を被った苦い飲み物は頼まない。

三次元でも一回だけ格好つけて1人でスタバに行った事があり、そこでキャラメルマキアートを頼んだ結果。
甘くない、詐欺だ。
なんて思いながらガムシロップを8個程入れた思い出がある。
なのでここは定番の抹茶ラテにしようと思う。

だいたいの抹茶ラテは甘くて美味しい。
呼び出しボタンを押し、すぐに来た笑顔の店員に愛想が良いなと心が和んだ。

「抹茶ラテ一つで」
「以上でよろしいですか?」
「はい」
「かしこまりました、抹茶ラテ一つですね。アイスとホットどちらにしますか?」

んー、今の季節は夏だし暑いからアイスかな。

「アイスで」
「はい、抹茶ラテのアイスですね」

そう言って去り際に会釈をする感じの良い店員さん。
そう言えば若い女性と喋ったのなんて何年ぶりだろう。
まぁここもバーチャル世界だから二次元なんだけど。

待ち時間をケータイでつぶす。
おもむろにケータイのバイブ音が鳴る。
メールの着信だ。
何故着ボイスがキュー○ー三分クッキングに設定されているのかは分からないが笑いそうになった。
そしてリズ……女の子の名前だから友達か何かだろうか。
ヤバイな、ハヤトの口調とかメールの文面が分からん。

何故か過去の送信メールは消されているし。
もうなんなんだ、取り敢えずこの子の文面をマネしよう。
マヤからのメールを見ていると、他人のメールを覗いているみたいで少し罪悪感を感じたがハヤトは自分のアバターだから関係ない、これはゲームなんだ。
と自分に言い聞かせた。

内容は〔今日って暇? これから遊ぼうと思うんだけど、平気かな?〕

これが女子高生のメールなのか。
もっと記号とか顔文字絵文字の乱用の文かと思っていた。
今の時間は10時半を少し過ぎた程度、もうすぐでお昼の時間帯になる。

うーん、どうするべきか。

女子高生と遊ぶのに抵抗はない、むしろ嬉しい。
ギャルゲーで鍛えこんだ俺のエスコートテクニックやさり気ない優しさは多分このバーチャルでも通用する。
あ、でも自分は女だったから意味ないのか。
折角の友人関係、学校での出来事を収集できるチャンスだ。
これからなやることもないし、暇なので相手が誰だか分からないが会うのは楽しみだ。

そして女の子らしい文面を頑張って作った結果がこれだ。
〔うん、今暇だから大丈夫だよ! 待ち合わせとかお昼はどうする?〕
シンプルな文面だが多分ハヤトもこんな感じだろう。
というかそうであれと願う。

送信! と意気込みながらボタンを押す。
送った、送ってしまった。
あーどうしよう、なんてオロオロしているとすぐにまたキュ○ピーの音楽が流れた。
というかこっちのバーチャルにもある設定なのか。
ふざけただろ製作者ども。

やっぱり高校生だからケータイを使う機械もたくさんあるのか、メールの返信が早い。
それか思い立った文章をそのまま書いてチェックせずに送信する奴かどうか。

〔そっか(^O^) よかった〜、じゃあお昼も一緒に食べたいから11時半にラードゥガ駅の改札に待ち合わせね!〕

……待ち合わせ、学生時代に友達と待ち合わせて遊ぶなんてしたことは記憶にない。
というかそんな妄想ばかりしていたからか現実と妄想がこんがらがってしまったのかもしれない。

駅、さっき快速を乗っていた時にそんな名前の駅を通り過ぎた気がする。
取り敢えずいつの間にか来ていた抹茶ラテを飲みながら返信メールを考えた。
〔分かった! お昼は何食べよっか(´・ω・`)?〕

出来るだけ可愛い顔文字を選び、相手に合わせて手早く送信した。
このメール相手の名前はリズ、どんな子だか分からないがハヤトと友達と言うことは結構可愛いのではないかと少しばかりニヤニヤしながら抹茶ラテを飲み干した。

パパッと支度を済ませ、会計をしてから店を出た。
取り敢えず待ち合わせ場所のラードゥガ駅に行かなきゃならない。
少し早歩きでもと来た場所のディアンソス駅の改札をくぐり西方面の電車に乗った。
ラッシュを過ぎたのか車内はガランとしていて、他に客が二、三人いる程度だった。

取り敢えず一番端のシートに座り、ケータイを開いた。
案の定リズからのメールが届いていた。
少しの間無視してしまったかの様に思われてないだろうか心配になる辺り自分は小心者だと感じた。

〔じゃあウチのオススメのレストラン行こ! スパゲティとかハンバーグとか色々あるから! そこでも良い?〕
ウチっ娘か、なんか良いな、萌える。
スパゲティあるのか、俺はミートソースとか結構好きだしそこで良いかなと慣れて来た様に返信した。

ケータイの画面を切り替え、ここからラードゥガ駅までどの位かかるか。
どこで乗り換えるかなど、俺は電車があんまり好きじゃないし、通勤時以外にあまり電車を利用しない男だった。
だから路線については詳しくないが、バーチャル世界の路線はもっと分からない。
駅名がなんか外国語だし、意味が分からない。

……15分か。
出るのが早すぎたかもしれない。
待ち合わせは11時半、今の時刻は11時を少し過ぎた頃。
相手のリズと言う子が当たり前だが来ていなかった場合、何して時間を潰せば良いのか。
しばし電車に揺られながら考え込んでいた。

静寂な車内を壊すかの様に膝の上からキ○ーピーのテーマが鳴り止まない。
あぁ、恥ずかしい。
そして何故かボリュームが大になっていたため大音量で車内に響いた。
穴があったら入りたいとはこの事だ。

他の客と言っても二、三人程度で助かったが笑っているおじさん。
奇妙な目で見るおばあさん。
顔を赤めてまさに萌え〜、とでも思っていそうな表情をした多分ヲタクの男性。
最後おかしい。

急いでスピーカー部分を押さえつけながらボリュームをゼロにした。
肝心の内容は〔もう駅の改札についちゃったんだよね、暇だ〜(*_*) 後三十分位はかかるよね?〕

もう駅についていたらしい。
つくづくタイミングが良い、好奇な目で見られているがメールの返信をした。
〔私も時間間違えて早めに来ちゃったんだ(-。-; 今電車の中だから、後十分で着くと思うよ!〕

結構女の子風のメールを送るのも慣れて来たかもしれない。
十分感の合間暇だったので、着ボイスをキュー○ーからくるみ割り○形へと変えておいた。
こっちの方が自分的には好きだし笑われないのでピッタリだ。

「ラードゥガ駅〜、ラードゥガ駅〜、お出口は左側です」

良し着いたか、ケータイをバックに放り込み電車を降りた。
階段をおりて行き、改札機の方に注意も向けると紺色の髪の毛をした高校生くらいの少女がケータイ片手に誰かを探しているように辺りをキョロキョロ見回している。

彼女がリズかは特定出来ないので、出来るだけ近くに寄ってあちらから気づいて貰う様に仕向けようとした。
すると彼女がおもむろにこちらを向き、小走りでハヤトに駆け寄った。

「おー、探したよー。ハヤトお久ー」

少し息を切らしながら間延びた様な声で喋る少女がリズだと確信出来た。
リズはハヤトより少し小さいくらの身長の可愛い藍色の髪と目の子だった。
随分と間延びした子だなと思いつつ苦笑いしながら少し笑う。
そう言えばリズは"久しぶり"と言った、今はちょうど夏休み期間だろうし結構会っていなかったのだろう。

「久しぶり、リズ」

ニコッと笑みを浮かべると彼女の顔も一緒に笑顔になった。
なんかこういう友情系良いな、なんて場違いにもそんな事を思ってしまった。

「お、なんか喋り方が違うぞ? それにメールの文面もおかしかったし、イメチェンか?」

ニヤニヤとしながら言うリズに驚く。
ハヤトはこう言う感じの喋り方じゃないのか、なら聞くしかない。

「そう? 私のいつもの喋り方ってどんな感じだっけ?」
「えー忘れたの? 何時もだったら『おっ久ー! 超久しぶりだねぇ、今日は何処で何をしようか⁉︎』みたいにハチャメチャでしょ、落ちいた大人しキャラ目指してんの?」

両手をピストルのような形にして口を一層ニヤつかせるリズ。
なるほど、高校生だしそういうテンションなのか。
じゃあリズの言う通りのイメチェンでいいか、そんなつもりではなかったが。

「そうそうイメチェンー、大人しキャラ目指してます☆」

少し明るそうな雰囲気を出してみた。
こんなテンションでこの町を周るのか、何故か冒頭から嫌気が差してきた。


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