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[40341] 【ドラゴンボール】フリーザとあの頃
Name: やわらか◆c337fb2c ID:4819d57e
Date: 2014/08/16 01:23
この冬一番の寒い日が暮れようとしていた。
コールド星の王族の住むコールド城は極寒の静けさが覆っている。
いつもなら城の庭で遊ぶ子供達の姿は見えず、エメラルド色だった芝生も真っ白な
雪で見えない。
――ここ一か月の大雪のせいで、高さが5メートルもの雪が積もったからだ。
故に日頃の趣味を奪われた王族は、温かさを求めて暖房の効いた屋内に引きこもり、
暇を持て余すのであった。
そんな中王族の次男フリーザは、一人自室でワイドショーを見ていた。
短い円錐型の黒い2本の角に幼児体型は相変わらずだが、この冬の間に食べ過ぎた
為、服が多少ピチピチになっていた。
そんな中、突然自室のドアが開いて人が入ってくる。
「息子よ、ワイドショーばかり見ずに偶にはパパと一緒に学校にでも行かないか?」
「パパ、入るときはノックしてと言いましたよね? それと学校にですか、ふむ……
丁度暇を持て余してところなので私も同行致しましょう」
父親はまさに息子をそのまま大きくしたかのような容姿であった。外殻が頭部と腕
・脛を覆っているが胸部は肌が露出しており、顔にはシワがあった。
そして息子と同様、人を殺すことに何の躊躇いのない残酷な目も持ち合わせていた。
「うむ、これでママも安心することだろう。ママはフリーザが学校に行かなくなっ
たから心配してパパに相談にきていたのだからな。良かった良かった」 と、強面の顔を笑みに変えた。
「では、準備をしたら玄関ホールでまた会おう、」 そう言いながらコルドは子供
部屋を後のするのであった。

フリーザはその後制服に着替え、スクール帽子を被ると部屋から出て玄関ホール
に向かう。するとそこにはパパ、それにママ、クウラまでもいた。するとママは
笑みを浮かべ、
「フリーザちゃん、今日はうんと豪華なお弁当を作りましたからね。お昼ご飯
楽しみにしていてね? あっフリーザちゃん、蝶ネクタイが曲がってるわ」 
そう言いながらママはフリーザに近づくと屈みフリーザの世話をし始めた。
「蝶ネクタイはこれでよし、ああそれと鼻水がついてるわ。ほらチーンなさい」 
ポケットからハンカチを取り出す。
フリーザはそれに素直に応じ綺麗にしてもらうのであった。
暫くするとそれも終わり別れの挨拶をするだけとなり、 「それではフリーザ
、行こうか?」 とコルドは手をフリーザに翳すとフリーザもそれに応じ手
を繋ぐ。
「それではママ、クウラお兄様、行ってまいります」 と挨拶を交わすと、
それに二人も応じ、
「行ってらっしゃい、フリーザちゃん」 「じゃあな、しっかりと学んでくる
んだぞ」 と笑顔で手を振り見送るのであった。



[40341] 予告 月の破片
Name: やわらか◆c337fb2c ID:4819d57e
Date: 2014/08/18 20:23
冬の陽光は城内を横切り年季の入った学校を照らしていた。
フリーザはコルドと学校前で別れ校内に入っていく。
校門を通りずっと狭い道を歩いていくと、急に開けてきて大きな
氷河のある湖の畔に出た。
向かい岸には氷山が高く聳え、その頂上には荘厳な城が見えた。
大なり小なり塔が連なり、城壁の窓枠の下からは陽光を受けた
氷柱がキラキラと輝いている。
フリーザはその池の上を飛行して横切ると、城の正面の頑丈な
扉を目指してスピードを超加速していく。
それから城の真下近くまで来ると柔らかく降下していき扉の前
に到着するのだった。
フリーザは腕時計を見るなり、 「ふむ……思ったよりも早
く着きましたね。」 と呟き目の前に構える城を眺める。
フリーザは何度見てもこの城に目を奪われる。我が先祖チルド
先王から受け継がれ、コルド王国創世記から存在するこの城に。
大雪により城自体は雪で覆われているものの、その魅力は健在し
ていた。
「しかし私の先祖も学校を立ち上げるとはやることが壮大だ。
まあ、私も勉学は嫌いではありませんから好都合だったのですが
……」 と口を切るとその絶対的な自信を持つ眼力の強い目が伏し
目がちになり溜息を吐く。そしてこう紡いだ。
「まさか私がこんな目に遭うとは思いもしませんでした……」





「化物フリーザだ!!」 「ヒッ、フリーザだ!」 
「あれ残虐王子じゃない!?」 「また帰ってきたのかよ……」
「平和な日々が……」 フリーザが扉を開け廊下に入った途端、
囁き声が付き纏ってきた。そしてフリーザの周りから蜘蛛の子を
散らすように去っていき、その廊下にはフリーザ唯一人となった。
その光景を見てフリーザは自嘲するような薄笑いを浮かべる。
フリーザは学校では一人ぼっちであった。
常識から逸脱した強靭なパワーにまだ幼いながらにある
抑えられない嗜虐心。
故に周りの生徒達とも関われず孤立していく悪循環に陥ってい
た。
これがきっかけでフリーザは頻繁に学校に通わず自宅の部屋に
引きこもるようになる。
親に相談する訳にはいかない。息子とはいえ宇宙一の王族がそ
んなことを考えることをあの人達が許容する筈がない。最悪、
親の手にかかる可能性が高い。
フリーザは惨めな気持ちで廊下を見つめていた。
何でも相談できる親友が欲しかった。いい子になりたかった。
でも何よりも一番願ったのは……。

――”普通の家庭に恵まれた家族の元に生まれたかった”――

この国を出てどこか見知らぬ惑星に逃げようかと何度も何度も
考えた。
でも、そんな危険を冒せなかった。自分にはどこにいようと父
コルドによる監視の目が光っていたからだ。
フリーザは誰もいなくなった廊下で蹲る。


――その眼には”月の破片”が零れていた――




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