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[3960] これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/24 12:52
これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)




「……へっ? 何処よ、此処ッ?」


俺は三十路が近い都内に住むごく普通の会社員(独身)。

未だに実家で暮らすハンパモンだが、朝 起きる時間は染み付いているので自然と目が開く。

だが……視界に現れるのは"いつもの"天井じゃなくて、知らない天井だった。

それに瞬時に違和感を感じた俺は、慌てて上半身を起こすと、周囲を見渡した。

おいおい、俺のPCや漫画のコレクション・ガン●ムのポスターは何処に行った!?

何処の高校生の部屋だよ! ドッキリなんてされるのは芸能人ダケじゃないのかよッ!?

そう思いながら立ち上がって室内をゴソゴソと弄繰り回し、隠しカメラを探す。

……あっ、エロ本じゃね~か。 今時の大人は皆PCの中に詰め込むものだよ、ボーイ。


「ボーイって誰やねん。」


そう漏らしながら、俺はもう一度 室内を見渡す"ついで"に窓越しに外を見ると……

……其処には廃墟。 何か"途轍もないもの"に蹂躙された一軒家が隣にあった。

お隣さん、運が悪いなぁ……飛行機でもピンポイントで落ちたのかなァ……って!!

そうじゃねぇだろッ! 何処の被災地だよ此処!? 当然、警察とか来て大騒ぎなんだろうなッ!?


≪だだだだだだだだっ!!≫


そう考えると俺は、部屋を出て一直線に外へ出ようと走った。

何かこの家の構造を"覚えている気がした"けど、その時は慌ててて気にもならなかった。

ンな事よりも、俺が玄関のドアを開くと、そこには――――


「……オーマイゴット……」


……見渡す限りの廃墟。 何処の撮影現場ですか、これは?

廃墟と化したのはお隣さんダケではなく、遠い視界・全てが瓦礫の山だった。

これってもしかして……東京大空襲や関東大震災みたいなのが起きたのかッ?

俺が知らない場所で寝てたのは百歩譲って良いとして……北●鮮が核でも落としたのか?

あんまりの光景に、俺は逆に冷静になってその場で状況を分析している。

けど答えがでるハズもなく、何となくお隣さんの家を見てみると……あれ?

こ……これって、もしかして……もしかすると……"あのゲーム"の……


「戦術機じゃね?」


目の前のメカの残骸に向かってそう漏らす。 当然、答えなど返って来るワケが無い。

そうだよ、間違いないよ……2年くらい前に同僚から借りたゲームの機体だよッ!

確か……ゲキシンかフブキあたりだった気がする。 ……えっ、撃震? なるほどね。

それはともかく、泣けるからやってみ? ……と言われてやってみたんだけどさ。

最初はキャラの髪型とかに無理があり過ぎる気がしたけど、オルタのラストはボロボロ泣いたよ。

スミカだっけ? そうそう、純夏の日記のシーンとか、最後の作戦の後とか特にね。

でも……何でよりにもよってオルタッ? どうせならラ●スとかの世界に飛ばせよ、オイ!!

勿論クリア済みのシリーズで、主人公でなッ! ……って、此処での俺の"立場"って何なんだろう?

そう思って自分の体を見てみると、今時の高校生じゃ誰も着ないような白いガクラン。

確かはく、はく……そうだ、白稜柊高校の制服……って、事は……!!


「ちょっ、おまっ!」


その場で慌てて髪や顔をペタペタ触る俺。 やっぱりだ、カラダが"俺"じゃねぇ!

なんか白銀っぽいし、起きた時に気付けよ全く……!

そうだよなぁ……オルタの世界でアソコで目を覚ましたシチュエーションなら、白銀決定だろ。

だが、どうする……此処最近の運動なんて、一週間前にゲーセン行く時 自転車に乗った位だぞ?

学生の時はともかく、腹なんてちっとも割れて……あれっ?

腹を触ってみると、腹筋が割れてるし、筋肉もかなりついている!

試しにステップを踏んだりジャブをしてみると、驚くほどカラダが軽いじゃあ~りませんかッ。


「ヒャッホーイッ!」


何と言うムキムキぼでぃ。

憧れの肉体を手に入れ、俺ははしゃぎながら周囲をグルグルをまわった。

だが……疲れはしていないが1分後むなしくなり、俺は瓦礫に腰を降ろして考える。

……そうだよ、俺にはウロ覚えの知識はあっても、この世界へ覚悟なんて胎児以下じゃねぇか……

戦いの"た"の字も無い世界で、28年間も普通に暮らしていた。 平和が当たり前の日常で。

それなのにこれからBETAと殺し合い宇宙とか、できるワケ無ぇってマジで!

そもそも、マウラヴって"白銀武"っていう主人公だからこそ、成り立ってるゲームだろ?

白銀は必死になって現実と戦って、仲間の死を乗り越えて、純夏の為にBETAどもと戦う。

結果 愛の力でボスのち●こをブッ殺して、因果から開放されてAFの世界に戻ってオシマイ。

そんな泣けるシナリオが有ったからこそ、"あいとゆうきのおとぎばなし"を語れるんだ。

なのに俺なんかが白銀だったら、あいとゆうきのおとぎばなし(笑)になっちまうじゃねぇか!!

誰だよ初っ端からブチ壊しにした奴!? 考えた奴、出て来いよマジでっ!!

……けど、頭の中でキレても只の変態だ。 俺はこれから"どうしようか"を寂しく考える。


「逃げ出してぇ……」


BETAと戦うとか正直 冗談じゃない。 即効で死んで無駄な税金を使うだけだ。

だから、シュミレータ過程とかそんなのも、やるダケ無駄でしかない。

戦●の絆っていうガン●ムのアーケードゲームなら将官なんだが、だからどうした。

あれは何回も撃墜されても直ぐリスタートできるし、命のやり取りなんぞ有るワケが無いしな。

逆にワザと突っ込んで撃墜されてポイント稼いだり、囮になってポイントは取れなくても、
味方を勝たせるゲームとは言え、実際にやるとしたら命が幾つあっても足りたもんじゃねぇ。

つまり、俺は死にたくない。 というか、良い年して世話になってるお袋のカレーが食いたい。

……えっ? 誤解しないでね。 ちゃんと実家に金は入れてるよ、10万くらい。

さておいて、白銀が何もしなかたら"この世界"のオルタ計画は5になって人類滅亡だろ?

俺を現代日本に戻す頭脳があるのって、考えてみりゃ~"ゆーこせんせー"しか居ねぇ。

だとしたら……はぁ~……結局はテンプレ通りにいくしかないのかよ……

まぁ、戦えなくてもオルタの白銀より展開が判るだけでも良いかもしれないけど……

俺は若い体ながらも"どっこいしょ"とカラダを起こすと、横浜基地を目指して歩き始めた。


……ちなみに当然、白銀の部屋に戻ったら、ボロボロになってしまっていた。




……




…………




そう言えば、横浜基地の場所なんて知る筈も無かった。

ゲームじゃ白銀が覚えてたし、都内に住んでる俺は神奈川の地理なんて知るワケありません。

それ以前に、地元でも駅と反対側の路地を入れば、あっという間に迷子になります。

……でも、何でか知らないけど俺は道を覚えていたようだ。

だとすると……さっきから変だと思ってたけど、ひょっとして……


「今日は……多分、2001年10月22日。」


疑問を口にすると、年月日が自然と出てきた。 そうか! ループした白銀が覚えてるんだッ!


「新潟あたりがヤバイいのは……11月11日。」


おぉ~! これって凄いんじゃないのか? 知識が無くてかなり絶望的だったんだけど……


「ヤバいのが落ちてくんのは……決まってない、珠瀬事務次官が来る日。」


成る程……判らない事があったら"俺"に聞こう。

口に出さないと白銀は答えてくれないのが癪だが、気をつければ済む事だ。

それに、戦術機の動かし方も白銀が覚えてくれてるっぽい。

なんか目をつぶって思い出そうとしたら、白銀の記憶がどんどん浮かんできた。

BETAが目の前にいて"キモッ"って思ったんだけど、何か怖く無かった。

……いいね、いいね。 恐怖を乗り越えた白銀が俺なら、何とかなる気がしてきたぞ~。


「ウホッ、いい見張り。」


そんな鼻歌交じりで歩く中、見えてきました国連太平洋方面第11軍横浜基地。

それにしてもあのアンテナはダサいな。 白銀が爆笑してたのも、なんだか判る気がする。

さておき案の定、ゲートの前には原作で無残な死に方をした2人の衛兵が立っていた。


「おい、こんな所で何をしてるんだ?」

「外出してたのか?」

「まぁ、どう言う訳かね。」


……ホント、どう言う訳だよ。 責任者、出て来い。


「こりゃまた物好きが居たもんだ。」

「通るには許可証と認識票を掲示してくれ。」

「……そんなモノ、俺には無いよ?」


そこで俺は、JO●Oのトニオみたいな表情で所持品が何も無い事を言った。

すると予想通り一歩下がってライフルみたいなのを構えられたが、それもあんま怖くなかった。

なんでだろ……何時もの俺なら"ヒイィーーッ!"って失禁しながら手をあげると思ったんだけど。

どうせ"ゆーこせんせー"に連絡とって貰ってオルタ4計画の事を遠まわしに促せば、
此処を通してくれるのは判ってたから、一応フザけてみたんだけど……マジ何でビビらねぇの俺?

ひょっとしたら実戦でもBETAと殺りあっても平気な気がして来たぞッ。

これで白銀が戦術機のエースだったら、クリアできるかもしれねぇ。

そう考えながら俺はテンプレ通りの対応をして、無事に基地内部に入る事が出来た。


≪コッ、コッ、コッ、コッ……≫


「前のループの階級は……大佐。」


――――マジで!?


「おい、今は喋るなッ。」

「此処で射殺する事も出来るんだぞ!」

「ヘイヘーイ。」


へぇ~……大佐ってそれなりに高い階級だよな?

だとすると、やっぱり"この白銀"はエースか! そりゃ~良かった。

だがこの時の俺は……ガン●ムのゲームの所為で、凄いドコロじゃない事には気付かなかった。

戦●の絆じゃ大佐戦ってさ、確かに成るまでは苦労するけど、慣れてくると物足りなくなるのさ。


「あっ、ゴメン……ちょっとトイレ……」

「ふざけるな、我慢しろ!」

「無理、イク……漏れちゃうっ……」

「き、気持ちの悪い奴だな……さっさと済ませろ!」


度胸試しにトイレ……予想していた通り、ライフルを向けられながらションベンする事になった。

でもやっぱりビビってないぞ俺……ループ白銀、やっぱ凄ぇよ。

けど、これ以上フザけると本当に射殺されてしまいそうだ、自重することにしよう。




●あとがき●
もっと最低な奴にしようと思いましたが、18禁になってしまうので自重です。
テストなので超不定期です、読んでくれて有難うございました。
万が一続きが気になれば、忘れた頃にでも続きを見に来てください。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ2
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/25 11:13
これはひどいオルタネイティヴ2




――――前言撤回、俺は自重できなかった。


「嫌っ、触らないで……やめて……」

「お前……ふざけるのも大概にしろっ!」

「全く、お前みたいなイカれたガキ、博士の命令じゃなきゃ~な!」

「こんな冗談で怒らんといて~。 もっと肩の力を抜いて仕事しないと、
 いざBETAと鉢合わせたら一瞬で首をモガれちまうよ?
 えっと、そのBETAって……闘士級ね。 なるほど、なるほど。」

「ば、バカにするなッ、俺達だってBETAごときなぁ!」

「おい……もうツッコむのも止めにしようぜ、コイツ絶対何かおかしいって……」

「HAHAHA。 まぁ、香月博士の知り合いッスから。」

「……あぁー……」

「!? な、納得したなんて思って無いんだからなっ!」


……何と言うツンデレ。

まぁ、こんな感じで厳重な身体検査を受けて、俺の安全は証明された。

その間でところどころ冗談を言いまくったけど、そりゃ冗談も言いたくなる。

バカやってないと重苦しい雰囲気に飲まれちまいそうだったからだ。


「オオゥ……」

「何か?」

「いえ、なんでもないッス。」

「(ないッス?)……では、ご案内いたします。」


そんな俺の前には、イリーナ・ピアティフ中尉が居た。

思わず息を漏らしてしまったが、やっぱ可愛いなぁ……

美人とは思わないのは俺の年の所為だから気にするな。

さておき案の定、基地内を案内してくれ、彼女の頭越しにエレベータが見えてくる。

それにしても良い形の尻だなぁ……触りたい。 だが無謀なので視姦の如く凝視する。

すると2度程こちらを振り返られたが、俺は真剣な表情で首を傾げることで誤魔化した。


「では、このエレベータを降りれば……」

「…………」


エレベータの前まで来るとピアティフちゃん(命名)は、
"ゆーこせんせー"の執務室までの道のりを丁寧に説明してくれる。

うぅむ……マジで凛々しい。 だが、此処で別れると暫くは見れなくなるのかなァ……

今の気持ちが表情に出たのを隠す事も忘れ、俺は彼女の話が終わるとスイッチを押した。

そして、同様に少しだけ彼女との"別れ"を惜しみながら、礼を言って置く事にした。


≪ガシューーーーッ≫


「案内……ありがとう。」

「は、はぁ。」


≪ウイイイイィィィィンッ……≫


「……っ……」


≪しーーーーん……≫


「……(なんて、悲しい目をした人……)」


ぶっちゃけ執務室の階すら聞き忘れていたけど、白銀が覚えていてくれた。




……




…………




「貴方がシロガネ タケル?」

「ヒュウ……♪」

「何っ? 今時のガキは口笛で質問に答えるの?」

「あーっと、すいません。」


いきなり不審者を見るような目で、白銀の名を言ってきたゆーこさん(命名)。

別に俺の先生ってワケでも無いから、リアルの歳は近そうだし、ゆーこさんでいこう。

それはそうと、ゆーこさんは㌧でもない美人だった。 反則だろこれは。

ヘアカラー云々はゲームの世界だからスルーするが、俺は思わず口笛を吹いてしまった。

いや、不可抗力ですよね? 軍人のディ●ッカも敵機を撃墜したら口笛のの1つや2つッ。

けど……今の行動だけで更に警戒されてしまったようで、目が怖い。 美人は変わらんけど。


「あんた……何者?」

「えっと、BETAにやられて死にましたけど、何故か生き返ったスーパーマン(笑)です。」

「つまらない冗談ね、此処で射殺されたいの?」


≪――――チャキッ≫


「怖っ! よしてくださいよ。 ……でも、事実なんです。
 難しい事は良く判んないんスけど、インガ……因果……あぁ、そうそう。
 "因果律量子論"って言葉で納得して貰えると思うんですけど。」

「!?」

「自分の事をこう言うのも何ですけど、白銀って言う事にします。
 その白銀は、"元の世界"じゃ平和な世界で暮らす普通の高校生でした。
 いわゆる、BETAのBの字も存在しない世界ですね。」

「…………」

「その世界ではゆーこさ……失礼、博士は物理の教師をやってまして、
 博士の友達の神宮寺まりもさんは白銀の担任の先生でした。
 でも、ある日起きたら10月22日の"こっちの世界"で目を覚まして、
 ワケも判らず生き抜いていくんスけど戦死。 気付いたら、また"この日"に目を覚ましたと。」

「その話を信じろって言うの?」

「アッハッハー(乾いた笑い)。 正直"自分"で言ってて"何それ"って思いますよ。
 泣きたいくらいに。 俺が意味も無くこんな事言われてたら、射殺してます多分。」

「なら、望みを叶えて欲しい?」

「まさか~。 でも、電話で"計画"について遠まわしに言いましたよね?
 俺、色々と貴女が得する情報を知ってるんです。 何せ何回もループしてますからね。
 もう残ってる時間は少ないんでしょう? 何せオルタ5に移行するのは……そうそう。
 12月24日ですからね。 あと2ヶ月ちょいしか残ってないッスから。」

「……ッ……ふん、ますます怪しいわね。 月日も今、直ぐに出て来なかったじゃない。」

「ま~、記憶を全部受け継いでるってワケじゃないッスからね。 ……で、信用してくれます?」

「御生憎様。」

「まぁ、それなら引き金をひいて撃てば良いと思いますよ。
 ど~せ俺には当たりませんから、その時は貴女をレイプでもしましょうかね。
 女を殺す趣味は無いんで命は取りませんけど、此処から脱走しようとする俺を、
 怒りに身に任せた貴女が部下に命令して……"射殺"ってところですか?」

「!?」

「でも、当然俺を殺した事から、なんだっけ……半導体150億個の並列処理回路……
 それから完成する……? ――――やべっ、野郎知って無ぇや。」

「このっ!」


≪ドォンッ!! ――――ビシッ!!≫


おいおいおいっ! 俺、凄ぇバカな事 言ってないか? いくら何でもレイプはね~だろ、レイプは。

何か半分は白銀が言ってる気がする。 成る程……"黒白銀"か! それなんてR指定!?

……って、それどころじゃねぇ! ゆーこさんを煽り過ぎて、発砲させちゃったよ奥さん。


「だから奥さんって誰やねん。」

「――――!?」


≪――――ぐいっ!!≫


「ふ……何と言う平和ボケ。」

「ち、ちょっと! 離しなさいよっ! 何処触ってんの、アンタ!?」


勿論、ド素人の発砲なんぞ当たるワケもなく、"白銀"は素早く距離を詰めると後ろに回り込む。

そして拳銃を奪って正面に放り投げると、体を押さえるついでに左手を胸に伸ばす。

当然 年下趣味では無いとされるゆーこさんは怒るが、無駄な抵抗でしかない。

マブラヴじゃとんでもない天才だけど、思ってみりゃ俺をアッサリ通すのは無いわ~。

同じような事を言ってきたヤツが居て、今 首折ったら"この話"終わりじゃね?

……だが、俺も死にたくは無いので"黒白銀"に脳内で蹴りを入れつつ、耳元で囁く。

未だに胸の感触を楽しんでいたりするが、役得・役得。 命張るんだ、もうちょっと揉ませろ。

それはそうと……さっきは白銀に頼り過ぎていた。 アンリミの白銀が知らん事は俺が言わねば。


「まるまる、いや……ぜろぜろユニット。」

「!?」

「どうやって作るかは謎ですけど(嘘)、それが完成しないとオルタ計画4はど~にもならないんでしょ?
 結局、貴女は一人でナントカ回路を完成させるのは失敗に終わります。 その結果、
 数年後 俺を殺した事を後悔しながら飛び上がるシャトルを眺める羽目になるんですよ。
 ただのレイプ狂だったかもしれないのに、そんな"どうでも良い事"に可能性を感じるんです。」

「……あんたは、何が目的なの?」

「俺が望むのは一つだけッス。 元の世界に帰って、親父と酒を飲んでお袋のメシを食いたい。
 それで、そろそろ結婚して独立……いや、そんな事よりニコ●コ動画の新作を――――」

「ちょっと、何処が一つよ?」

「!? あぁ、すんません。 ともかく、俺の"情報"が欠かせないのは断言しますけど、
 貴女の存在も無ければ絶対にオリジナルハイヴは落ちません。
 だから……マジ"こんな事"して今更アホかと思いますけど、信じてくれませんか?」

「…………」

「信じられないのなら、ほんのちょっとだけ待ってください。
 未来は有る程度判ってますから、20日以内には決定的な証拠を出せます。」

「都合の良い話ね。」

「なんなら、ずっと監視を付けて、予知したのが外れたら射殺しても構いません。」

「ふ~ん……心意気は買うわ。 なら一応、利害は一致しているのね?」

「そりゃ~もう。」

「……判ったわ、"使って"あげるから離しなさい。 何時まで胸、触ってんのよッ。」

「うわっ、そうだった。 すいません。」

「じゃあ、私からも色々と聞く事が有るわ。 その前に……」

「――――え。」


≪――――バシンッ!!!!≫


……強烈な平手打ちを食らった。 マジで泣きそうになった、帰りたい。

でも、オーバーアクションする俺のヘタれさを見て、ゆーさこんは少しだけ警戒心を解いてくれた。

あっ……そういやウサギっ娘がどっかに居るんだったね、帰りたいとか情け無い感情はヤバい。

世界の平和・世界の平和・世界の平和……!! 定期的に念じる事にしておこう、心で。




……




…………




≪――――ィィィィイン……≫


「……駄目……今日も何も――――!?」


≪ピクッ≫


「……(今、何か……強い"意志"のようなものが……別に……)」




……




…………




≪――――ひょいっ≫


「うわ、スゲー。 コレが銃かぁ~……重ッ。」

「……何よ、銃なんて珍しいモンでもないでしょ?」

「あ、あぁ……えっと、戦術機ばっかに乗ってると、逆にハンドガンが珍しくて。」

「……(ほんと、なんなのよコイツ……)」


そんな早くも墓穴を掘りかけた1時間後。

色々とゆーこさんに質問され、面倒臭かったので殆どを白銀に答えさせた。

原作でも白銀が"あの程度"の知識しかなかったから"利用"してくれたんだから、
なるべく同じように過ごして、女の子が死ぬところをフォローする感じで行くか。

……ってか、当たり前だが第一印象がオルタの時より凄ぇ悪かったっぽいし、
俺の持っている情報を全部出し切っちまったら消されちまうかもしれない。

あんな事しておいてアレだが、とにかく俺は死にたくない。 黒白銀、自重してくれ。

んでオルタ4については、ぶっちゃけ俺が白銀の元の世界にさっさと行って、
理論持ち帰って00ユニットを完成させればクリアに凄い近付くんだろうけど、
それもタイミングを合わせた方が良いのかなぁ? 勿論、今のところは秘密にしてある。

何時かあんま覚えてないけど、最後に行ったのがトライアルで"ぱっくんちょ"の後か……

それなら、最初に行ったのは何時だったっけ? タマパパがヤバい後あたりかなぁ?


「それで終わりっすか?」

「大方。 でも、あんたの事は信用したワケじゃ無いからね。」

「ですよねー☆」

「……なによ、そのムカつく笑顔……それより、あんたの処遇はどうしようかしらね……」

「ん~。」


こっちじゃ白銀は死んでるんだし、色々とヤバいんだよね? 判りますよゆーこさん。

でも、どっちにしろ月詠さんとかにはバレちゃうんだよね。 だったら仕方無いね。

そんなワケで俺もドナ●ドが殺人吟味するようなノリで首を傾げる。

正史なら訓練兵なんだろうけど面倒だし……衛士になっても、
ひょっとして"俺"が白銀を頼っても戦術機に乗れないヘタれだったらマジでヤバくね?

覚悟はしてたけど、それなら訓練兵……いや、体がムキムキで恐怖が無いだけマシかぁ……


「妥当に前みたいに訓練兵で――――」

「いえ、待ってくださいゆーこさん。」←すでに呼称はスルーする事にした夕呼

「何よ?」

「ループしてきたばかりですから、まだ自分が戦術機に乗れるかさえ判らないんですよ。
 "シュミレーター"ってのをやらせてください。 ヘボかったら訓練兵でお願いしまっす。」

「期待外れだったら、覚悟しなさいよ?」

「あはは、俺の使い道はあくまで情報って事で。 まぁ……良い感じだったらバリバリ戦いますから。」

「当たり前よ。」

「ともかく……これから一緒に頑張りましょうね? ゆーこさん。」

「……どの口で言ってんのよ。」

「(あっ、でもヤバい……戦術機に乗れなかったと思うと、恐ろしくて涙がぁっ……)」


≪――――キラリ≫


「……っ!?」

「(おやじ、おふくろ……待っててくれ、明日の晩御飯までには帰るからさ……いや無理か。)」

「…………」

「あれ、どうしたんスか?」

「……ん……何でも無いけど あんたさ、実年齢は幾つなの?」

「28です。(白銀じゃなくて俺のね)」

「……ふーん……」


考えた結果、シュミレーターと言う保険を掛けて、これからの事を考える事にした。

まぁ、戦術機を動かせなくても白銀の体だ。 バリバリ成長してくれるだろ。

号泣したいのもヤマヤマで、目尻に涙が浮かんだけど、後は俺のやる気次第ッ! がんばるぞーっ!

……と気合を入れていると、俺をじーーーーっと見ているゆーこさん。

すると何故か年齢を聞かれたので、あらぬ期待をして答えると、興味が無さそうに視線を逸らす。

俺……ショックッ! でも、その時のゆーこさんは結構 魅力的だったりした。


「……ゆーこさん。」

「何よ?」

「キスして良いですか?」

「殺すわよ。」


――――だから嬉しくなって、つい言っちゃったんだ☆ (ドナ●ドのノリで)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ3
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/25 11:11
これはひどいオルタネイティヴ3




「…………」

「…………」


俺とゆーこさんは無言で通路を歩いている。

はやくもシュミレーター試験をするようで、俺は彼女に案内されているのだ。

だが俺の冗談が御気に召さなかったようで"話し掛けんな"と言うオーラが背中に漂っている。

うぅむ、こりゃ結果を出さないとマズいぞ。 それよりも白衣で尻が見えないぜ、ガッデムッ!

けど凝視してると段々と輪郭が見えてきた……まぁ、他にやる事が無いんだから不可抗力だよね。


「……(なに難しい顔してんのかしら? コイツ……)」


そんなこんなで、俺はシュミレーターをするべく、ロッカーに案内された。

其処で"強化装備"とか言う黒いスーツに着替えるように言われたんだが……

何だよこのスーツ、何だよこのスーツ、何だよこのスーツ。 大事なことなので3回言いました。

でもこれを着ないと戦術機を動かせないっぽいし、仕方無いよね。

フィードバック・データとか言う感覚の機能とかも、この段階じゃどうしようもないか。

歳が歳なので着替え終わるとかなり恥かしかったが、白銀に自身を頂いてデカい筐体に乗り込んだ。

……凄いな、これ一個ダケで何千万掛かってるんだろう。 ガン●ム好きにはたまんねぇ。

でも緊張する……これからの戦果で俺の初っ端の運命が決まると言っても良いからな。


『ご注文はお決まりかしら?』


うわッ、誰この美人さんっ? ゆーこさんだつ~の。

ボケはさけおき、これが網膜投影ってヤツか……びっくらこいた。

俺が知ってるゲームは、頭上に水晶玉みたいなカメラのレンズがあって、
映画みたいに目の前に画面を展開させて映して、敵プレイヤーの機体と戦う。

ガン●ムみたいなメカも顔面のメインカメラから映像を撮って、レンズを通して目の前に映すのかな?

それはそうと、ゆーこさん……なんだかさっきから冷たいよなァ……

まぁいいや、大事なテストだし一番難しいのをやって、実力を認めて貰うべきだよな……


「今のところの最高難易度のやつは……ヴォールク・データっすよね?」

『それよ。 ハイヴ攻略シュミレーションで良いの?』

「えぇ、それでお願いします。 HQのホラ、アレ……管制とかはいらないっすから。」

『そ……判ったわ。 機体は不知火で良い?』

「それが一番っすね。」

『……武装の設定は?』

「えっと……なんだっけ、俺が得意な……突撃前衛仕様で適当に……」

『なんだか頼り無いわね~、怖かったら棄権扱いで訓練兵行きで良いのよ?』

「それは遠慮しておきやす。」

『まぁいいわ、準備するからちょっと待ってなさい。』

「はい。」

『…………』


≪――――プツンッ≫


「ふーーーーっ。」


しかめっ面のまま、通信を切るゆーこさん。

そして訪れる沈黙……失敗すれば彼女の下僕確定・成功すれば信頼に一歩近付く……か。

すっ転んでも巻き返す望みはあるけど、超緊張する……心臓がバクバク言ってる。

ゲームで有名プレイヤーを引いた時の差じゃない、幻滅するゆーこさんの顔を考えると超怖い。

天才である彼女は、失意の俺のハートをめった刺しにする皮肉を言ってくるに違いないのだ。


「俺は……できる。 BETAは怖い……いや、ちっとも怖くない。 むしろ、マスコット。」


今の自問が、白銀の言葉だと信じたい。 お前だけが頼りなんだ……!


「来たわね、まりも。」

「はっ――――何の御用ですか? 副指令。」

「ちょっと、今から見て欲しいものがあるの。」

「……シュミレーター……ですか?」

「そうなんだけど、まりも。 今は"私とあんたダケ"よ?」

「!? ですが――――」

「私とあんたダケなの。」

「もう……判ったわよ。 ……で、それがどうかしたの?」

「まぁ、詳しくは結果を見てから言うわ。 どっちに転ぶかは、"結果"次第ね。」

「???? どう言う事……?」

「お楽しみ。」

「はぁ……私も暇じゃないんだけどッ?」

「(あんたがまりもの上官になるか、情け無い訓練兵となるか……どっちかしらねぇ?)」




……




…………




『準備万端よ、そろそろ始めるわ。』

「微妙に長くありませんでしたか? ……うん、普通に長い。」

『うるさいわね、気のせいよ。』


心拍数が安定した辺りで、またゆーこさんがイキナリ現れてまたドキドキする羽目になった。

いや、これは恋だ。 ゆーこさんが美人過ぎるからドキドキしているダケで、断じて緊張ではない。

そう俺は自分に言い聞かせて、操縦桿を握り締める両手に力を入れる。

そうだ……一流のパイロットになったつもりで挑むんだ。 そうすれば勝つるッ。

俺はいち会社員(28)であって白銀武……そう、カ●ーユ・ビダンになったつもりになるんだ。

片方の精神は四番目の娘だろって? 細かい事は気にしないでください。

そんな何度も何度も心の中で気合を入れる中、とうとうシュミレーターが始まる……!!


「ゼータガン●ムッ、出ます!!」

『『――――はぁ?』』


その時 咄嗟に出した台詞を聞いて、ゆーこさんの声がハモった気がしないでもなかった。




……




…………




ハイヴに突入して間も無く、俺は初めてBETAを目撃した。

(シュミレーターだけど)記念すべき一匹目は要撃級……しかも多数。

BETAの中核とも言えるヤツで、その要撃級はこちらを見るや否や突っ込んで来る!

それに対し俺が"俺のまま"なら前腕を食らって終わりだったろうが――――


≪バッ!! ――――ズシンッ、ズシンッ≫


や、やったッ!? いける、いけるぞ!! 凄いぜ白銀……っ!

避けようと思ったら"白銀と言う体"が操縦を覚えていたのか、
不知火を跳躍させ壁と壁を蹴って飛び、あっと言う間に向かって来た要撃級達を飛び越えれたのだ!

そうだ……ハイヴ攻略はとにかく奥に行かなくちゃならないんだよな。

チェーンガンとか言うのをブッ放したい衝動に晒されたが、ここは我慢しとくか。


「!? ね、ねぇ……あれ誰が操縦してるのッ? なんて動きなのよ!」

「……黙って見てなさい。」


奥に進んでゆくたびに、BETAの数はまりもり……いや、もりもり増える。

もはや単機で殲滅はどうにもならないから、BETAの少ない箇所を探しては、
誘導後 噴射着地で其処に着地して再度 噴射跳躍し、どんどんと奥へと突き進んでいく白銀の操縦。

なんか、俺が考えた事をそのまま行動に移してくれている感じだ……


「――――当たりはしないッ!!」


避けようと思えば無理そうで無い限り避けてくれる白銀様。(既に敬称)

素晴らし過ぎて俺のテンションも上がり、気分はニュータイプのカ●ーユ。

いいなぁこれ! もし次もやる事になったら、有名パイロットの台詞を肖ろう。


『見えるッ……そこぉ!!』

「ね、ねぇ夕呼……誰なのアレっ? 黙って無いで答えなさいよ!」

「…………」

『出てこなければ、殺られなかったのに!!』

「嘘でしょ、あの体勢で射撃っ!?」

「……(誰なのって……あたしが聞きたいわよ。)」


中層近くまで進むと、流石に斬ったり撃ったりしないと足場が作れない。 時にはBETAを踏む。

でも……まだまだやれる気がするんだけど、機体の制御がおっつかないみたいだ。

一つ一つの動作を入力する度に、ガチャガチャと両手を懸命に動かす必要が有る。

そろそろ両手が痛くなってきた。 ゲームじゃ何時間もイケたのに、操作性悪すぎ……

あぁっ! ヤバい、そろそろ避け切れない……スパ●ボで言う被弾台詞を言う流れじゃね?


≪――――ドガッ!!≫


『ぐっ……こ、こいつっ!?』

「……っ……な、なんて気迫なの……?」

「ふん。 けど、そろそろ撃墜されそうじゃ……」

『遊びでやってんじゃ無いんだよぉぉーーーーっ!!!!』

「……っ!?」

「……白銀、あいつ……」

「しろがねっ? 彼は、白銀って言うのね?」

「……(そう、まるで人が変わったような……じゃあ、今までのアイツは……)」


くそーっ、撃墜されちまったらゆーこさんに幻滅されちまうじゃないかっ。

実は既に十分どころか非現実的な位置まで進んでいたんだけど、俺は必死すぎて気付かなかった。

左腕を要撃級に持って行かれてメインの長刀が使えなくなっちまった今、
名台詞を叫びながらチェーンガンをばら撒きまくって何とか奥へと進んでゆく。

でもあっと言う間に弾切れになり、ゲームみたいにリロード時間も存在しない。

つまり詰んだ。 進んではいるが徐々に後続に追いつかれ始め、突撃級に突っ込まれ――――


『しまったッ!? 直撃を食らった……!!』


アボン……致命的な損傷、大破。 ごめんねカ●ーユ、君を名乗った時点で撃墜はタブーなのに。

それはそうと最後までノリノリだったな~、悔しそうに撃墜された俺。

良い年してガン●ムごっこかよ……必死ではあったけど、かなり恥かしい。

ゲーセンで言ってたら変態だ。 ゆーこさんに聞かれてる時点で、既に立派な変態だろう。


『ご苦労様。 出て来て良いわよ。』

「……はい。」


……その為、小さくなりながら筐体から出てくる俺。

まぁ、半分も行かずにやられちまったけど、白銀が動かしてくれたダケ儲けモノだ。

後は俺が戦術機の云々を頑張って覚えれば、一人でハイヴの奥まで行けるハズだ。

あれ、なんかオカしくね? ……単機で反応炉って壊せないんだったよな。

未だに心臓がバックンバックン言ってる為か、自分の戦果の程度まで頭が回ってない。


「……あれ?」

「あっ……」

「おぉ~っ……貴女、もしかして"神宮寺さん"ですか?」

「え、えぇ。 どうして私を?」

「それは……えーーっと……」

「……(こ、こんな子が……)」

「……(ゆーこさんにも劣らず、ふつくしい……)」


≪じーーーーっ≫


筐体を出ると、俺を迎えてくれたのは二人の美女だった。

そのうち片方は言わずともながら、もう片方は"神宮寺まりも"ちゃんだった。

唐突な初対面に、俺は彼女を見たまま固まってしまったが、相手も同様に固まる。

……うぅ、多分 変な目で見られてるんだろう。 何せガン●ムごっこしてたしな。


「ほらほら、な~にお見合いしてんのよッ?」

「あっ!? すんません。」

「い……いいんですっ。」

「はぁ……それじゃ~まりも、紹介するわ。 彼は"白銀 武"少佐よ。」

「「――――少佐ぁ!?」」


けどゆーこさんが助け舟を出してくれ、俺の事を紹介してくださる。

でも少佐……少佐って紹介されたよ!? "あの戦果"で俺を少佐にしてくださったんですかっ!?

あぁ、そうだったな……中層まで単機で行くとか、XM3もないこの時点じゃ有り得ないんだったね。


「何よ五月蝿いわね、二人してハモんないでよ。」

「すんません。(なんか此処に来てから謝ってばっかだな~俺。)」

「あっ……し、失礼しました少佐殿! 私は神宮寺まりも軍曹でありますっ!」

「は?」

「先程のヴォールク・データによる操縦、思わず見惚れる程でありましたっ!」

「は、はぁ……どうも……」

「宜しければ、この機体に是非 御教授願いたく――――痛っ!?」

「いきなり何を言い出すのよ、今回はそんな事を教えさせる為に呼んだんじゃないの。」

「……(何故にチョップを……)」

「とりあえず、紹介したかっただけよ。 それダケだから、職務に戻りなさい。」

「は、はぁ……わかりました。 ――――では。」


華麗に敬礼をして去って行くまりもちゃん。 やっぱこの呼称がしっくりくるね。

けど……何であんな事ダケに彼女を呼んだんだ? お陰で変なヤツだと思われたではないか。

まぁ、その誤解は後で解けば良いか。 俺はヘタクソな敬礼をして彼女を見送った。


「おっぱお。」

「何言ってんの、あんた?」

「いや、おっきいのは良い事ですよね。」

「……時々変な言葉を使うわよね、アンタ。」

「気にしないでください。 今、妙なテンションなんで。」

「それにしても、つまんなかったわね~。 まりもにアンタを扱(しご)かせようと思ったのに。」

「いや……むしろ彼女だったら本望だったかも……」

「え。 あんた、もしかして……まりもみたいなのが好みだったの?」

「そうかもしれません、(会社員の俺だったら)結婚したいかも。」

「……本気?」

「ゆーこさんとも結婚したいですよ?」

「死にたいの?」

「マジでごめんなさい、調子に乗りました、許してください。
 さて冗談はこれくらいにして……さっきので、俺の事を随分と評価してくれたみたいッスね。」

「ふん……まぁ、まりもがアレだけ驚いたくらいだしね。」

「驚いてくれたのは良いんですけど、キモいとか痛いとか言ってませんでした?」

「はぁ? ……何で?」

「言ってなかったら良いんです。」

「とにかく、アレを見てアンタの処遇を決めたわ。 言った通り少佐であたしの直属の部下。
 任務は護衛と基地の防衛。 そしてオルタネイティヴ4の協力と支援よ。」

「了解です。」

「でも、信用には程遠いわよ?」

「妥当かと。」

「IDとか認識票 云々は後で届けるわ。 部屋への案内は必要かしら?」

「基地の構造は(白銀が)覚えてると思うんで部屋番だけ教えてください。」


どうやら俺は、実力を評価されたらしい。白銀様、流石であります。

けど評価されなかったら怖いまりもちゃんに……それはそれで一興だが近道できて良かったぜ。

そんなこんなでゆーこさんに部屋の場所を教わると、彼女はくるりと歩き出そうとするが……


「そうだった、待ってください。」

「まだ何か有んの?」

「色々と世話を焼かさせた俺が言うのもアレですけど、ちゃんと休んでくださいね。」

「ハッ……そんなつまらない事を言いたかっただけなの?」

「いや……そうじゃないんスけど、ゆーこさん疲れてるでしょ?
 ……だって、結果オーライはオーライでしたけど、
 俺みたいな"得体が知れない奴"と護衛なしで対面しちまうなんて、
 どう考えても疲れてるとしか言えないじゃないですか~。」

「…………」

「それだけオルタ計画4に行き詰ってたって事なんですよね?」

「だから何?」

「休んでくださいって事です。 ゆーこさんが倒れた時点で人類に未来はありません。
 ……信じられます? 以前のループでは失敗に自棄になって俺に抱かれた事もあるんですよ?」

「……っ!?」


……羨ましいぜ白銀……失敗前提のイベントなんて俺には体験できねぇよ。

でも、こう言う事を言わないとフラグも立たないし、ホントに倒れられたら俺が困る。

物凄い形相で睨まれて凄い怖いけど、頭を冷やせば俺の言葉を理解してくれるだろう。


「まぁ……それだけッス。 オルタ4、必ず成功させましょう。」

「…………」


それだけ言って、俺は逃げるようにその場を去った。

……何というやっつけな競歩……だって、こぁいんだもん。

そんな中、チラっと後ろを振り返ると、まだゆーこさんは筐体の前に立っていた。


「……はぁ……あたしは以前のループで、
 自分の恥かしい事、全部 あんたに曝け出してたって言うの?」


≪遊びでやってんじゃ無いんだよぉぉーーーーっ!!!!≫


「ムカつく言動ばっかだけど、遊びじゃない……か。
 それがあんたの"本気"の意見だったって言うんなら、とりあえず肝に銘じておくわ。」


――――俺はその日の夜、ゆーこさんの復讐が怖くて眠れなかった。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ4
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/26 04:35
これはひどいオルタネイティヴ4




2001年10月23日 午前


「マジ眠い。」


ゆーこさんの所為(決めつけ)で眠れなかった俺は、おぼつかない足取りで通路を歩いていた。

……だが、なんのこれしき……徹夜でゲームでもしたと思えば我慢できるってもんさ。

そんな今はいわゆる考えがてらの散歩。 初めて着た国連軍の軍服に慣れる為でも有る。

あっちの俺が着てもガタイの所為で似合わないんだろうけど、白銀は様になってるな~。

んでもって横浜基地の構造は白銀が知ってても、いちいちブツブツ自問自答もアレだし、
2ヶ月以上世話になる施設って事で、早いうちに造りを理解しておいても良いだろうな。

それはそうと、少佐の階級を得た俺だが、どこの隊にも所属していないので、
今のところゆーこさんに呼び出される以外は何もやる事が無かったりする。

つまり、これからの自由度がかなり高いって事になるんだけど、何事にもデダシが肝心だ。

俺の未来予告は11月11日だけど……それまでに、できる限りの事をやろう。

でも大きな事をし過ぎてオルタと流れが大きく変わったら、
決断力の無い俺は躓いちまうと思うから、慎重にオルタの流れを思い出しつつ進めていこう。


「食堂の場所……PXは……其処を曲がって直ぐ……」


判らない今の段階では、仕方なく小声で白銀に頼りながら歩みを進める。

目的地はPXであり、昨日の朝から何も食っていなかったから腹がペコペコだったりする。

するとテラ広い食堂……俺の高校はマンモス校だったが、その何倍も広くて圧巻だった。

でも、何だか昔を思い出して懐かしい気もした。 白銀も違う意味では懐かしい場所だろう。


「えっと……たぬきうどん ください。」


京塚のオバハンが忙しなく動いているのを遠目に、俺はうどん(大盛り)を受け取る。

この世界のメシはあんまり美味くないらしいからな……できるだけ味が変わらないっぽいのを選んだ。

そんで食堂を見回したら例の訓練兵の連中が居た……が、今のところはスルーしておく。

それにしても判りやすい髪型の連中だよな、耐性が無かったらお盆ごとブチ撒けてたところだ。


「(居た居た)……すんません、隣 良いっすか?」

「!? し、少佐……!!」


≪――――ガタッ≫


「うわっ、びっくりした。」

「お早う御座いますッ!」

「ち、ちょっと止めてくださいよ……めっちゃ見られてるじゃないっスか。」

「申し訳ありません。 ですが、規律ですので……」

「そうですか、規律なら仕方無いね。」

「少佐?」


多分、何を言われても仕方無いNEと返した だろう。


「いやまあ、座ってください。 畏まらないで良いですから。」

「しかし――――」

「まりも殿、座ってくだされ、後生でござる。」

「は、はぁ……」


声を掛けたの相手は まりもちゃんであり、この人しか思いつかなかったのだ。

一人で食うのも精神的にアレだし、昨日紹介してくれたしで、何となく声を掛けたつもりだった。

なのにイキナリの敬礼……僅かであれ予想していたから良かったが、
一歩間違えれば彼女を全身火傷にさせてしまってかもしれない。

まぁ、それはそれで責任とって結婚して……って、話が跳躍し過ぎだろ常識的に考えて。

それはさておき、まりもちゃんが座ってくれたので、俺も横に座るのだが、ぎこちない雰囲気だ。


≪ずずずずーーーーっ≫


「……(ん? それなりに美味い……)」

「あの。」

「ふぁい?」

「少佐はどう言った経緯で副指令の元に来られたのですか?」

「もぐもぐ、ゴクンッ。 ……ん~。」


気分はドナ●ド調。ついやっちゃったんだ☆


「あ……機密に入るのであれば、無理に御答え頂けなくても結構ですから。」

「えっと、拙僧には目的がありまして。」

「目的?(拙僧?)」

「えぇ。 "俺の目的(帰還)"にはゆーこさんの頭脳がど~しても必要で、
 "ゆーこさんの目的(00ユニット)"にも一応 俺が居た方が良いっぽいんで、
 目指す"目標"が同じって事で、昨日からお世話になる事になりました……と。」

「では、目標とは……?」


案外 食い付いてくるなぁ……でも機密は言えないから歯痒いッ。


「"俺の目的"と"ゆーこさんの目的"については詳しくは言えませんけど、
 どっちにも共通している"目標"ってのが"オリジナルハイヴ"の消滅になりますね。」

「――――ッ」


酷いな、目的については全く答えになって無いぞ?

BETAの抹殺なんて~のも、全人類の"目標"じゃないか。

まりもちゃんが一番知りたいのは、それぞれの"目的"に、
俺とゆーこせんせーに必要なのが"何か"って事なんだろうしなあ。

ゆーこさんの目的は00ユニットだから、目標を潰すのは"目的"の後になるんだが……


「此処に来た経緯としては……そうだなぁ、その共通の目標にあたって、
 ゆーこさんの下に居た方が最もコンプリートし易いと判りましてね。」

「…………」


そもそもゆーこさんの下に居ないと、100%オリジナルハイヴは落ちないのよね。


「俺の生い立ちとか軍歴については、一切お答えできません。」

「……そうですか。(それが一番 気になってたんだけど……)」


俺の正体は問題外、こっちに来て一日しか経ってないんだから どうにもならない。

一回死んだとか言うわけにもいかね~しなあ。 ヘタしたらもう一回殺される。

つまり まともに答えられる事がひとつもなく、全部暴露しても、
彼女なら力になってくれるとは思うけど、まりもちゃんは眉を落としている。

うわっ……俺は悪く無いのに、これってヤバくね? 少しフォローでもしとくかな~。


「でも、シミュレーターくらいなら暇な時 付き合いますよ?」

「えっ!?」

「なんか昨日、気になってたみたいだし……俺 如きで良ければですけど。」

「と、とんでもありませんっ!」


≪ガタッ!!≫


「――――っ!?」

「機会があれば、是非 お願い致します!!」


ジーザス! い、今……揺れたッ? うわ~、凄ぇ、服の上から揺れるなんて初めて見たっ!

まりもちゃんは唐突に立ち上がると敬礼し、俺の興奮を他所に、また腰を降ろしたのだ。

……そっかあ。 根っからの軍人だし、衛士として精進する事が生き甲斐なんですねぇ。(遠い目)

ま~良いモンも見れたし。 俺は"何時かは生でも拝むぞ!"と言う希望を胸に、彼女に微笑んだ。

まりもちゃん、荒んだこの時代に飛ばされた俺に、ぬくもり(乳揺れ)をありがとうッ!


「はははっ、そんな事で喜んで貰えるなら、言ってみた甲斐がありました。」

「それは勿論です。 少しでもBETAを多く倒す事が、私達軍人の存在意義なのですから。」

「流石ですね~。(絶対 俺には真似できない心意気だし)」

「それは私の台詞です。 少佐 程の腕を持つ衛士は、私は見た事がありませんでした。」


まぁ、そりゃそうですよねー。 反則ワザ使ってますから。

でも説明しようが無いし、適当に"それっぽい事"言っとくか~。


「俺があの機動概念を確立させたのは、最近ですからね。
 それをまり……軍曹ほどの教官に広めて貰えれば、それだけで戦死者が減るでしょう。」

「買いかぶりぎです。」

「いやいや。 それに、そろそろ戦術機の"新しいOS"もできると思うので、共に検証しましょう。
 それならジオ……人類は後10年は戦えますッ。 ……あ、今の話に限っては絶対内緒ですよ?」

「……くすっ。」

「ど……どうしました?」

「いえ、誠に失礼ながら……あまりにも表情 豊かな方なので、つい面白くて。」

「あーー……」


やべっ、ベラベラと喋りすぎたかも。 まりもちゃんって、年も近くて話し易いからなぁ……

そう言えば感覚が狂ってたけど、この基地で少佐って結構な階級みたいなんだよね。

つまり……軍曹である彼女にこんなフレンドリーに話してる時点で異常なんだわ。

まりもちゃんは教官だからアレだけど、少佐になってもオカしくはない人だったんだっけ。

まぁ……状況が状況だし仕方無いから、階級による上下関係の所為で、
少佐に対する相手の反応の空気は読むようにはするつもりだけど、
俺にとっては"こっち"の人たちの表情が硬すぎるのに違和感を感じまくりなんだよな~。


「ですが何時かは"心から笑える日"が来るのを願いたいものですね。」

「……同意です。」


それはそうと、やっぱ眠いな~。 何せ部屋を出た第一声がそれだったしね。

ふぁ嗚呼、なんだか眠くて涙が出てきたよこりゃ……

そこで、流石にまりもちゃんの方は向かずに、大きな欠伸をする。


「――――っ!?」

「(ねむっ……)……うわ、すんません。 格好悪いトコロ見せちゃって。」

「い、いえ。」

「そう言えば話は変わりますけど、受け持ってる訓練兵が5名 居ますよね?」

「あっ……はい。 おります。」

「近いうちに例の"新OS"、彼女達にも試して貰おうと思ってるんです。
 戦術機を全く知らない訓練兵がどう動かせるかってのも、貴重な情報になりますから。
 だから宜しくお願いしますね? 訓練の様子は、後で見に行ってみますよ。」

「わ、判りました! お任せくださいっ!」


3度目の立ち上がっての敬礼も、もう慣れました。

そして、また揺れた……もう、最高です貴女。 俺の会社に居たら絶対 求婚してました。

ミンチ野郎は死ねと思いますが、ストーカーする男の気持ちがちょっとだけ判ります。

そりゃ~兵士級も白銀の頭なんかじゃなくて、貴女に"ぱっくん"といきたくもなりますね。


「お任せしますた。」

「それでは少佐ッ、この度は有難う御座いましたッ!」


≪たたたたたたっ……≫


時間を確認したまりもちゃんは、その場を走り去ってゆく。

お盆を持ちながら走るなんて凄いですね、せめて食器を返却してからにすれば良いのに。

俺は恒例のお尻を眺め終えると、伸び切った たぬきうどんを再び食い始めた。


≪ズルズルズルズル≫


とりあえず、11月11日迄の予定が一つ出来たな……それにしても覚え易いな日付。

何をどうやって教えたら良いのか良く判らんけど、
ベテランのまりもちゃんだし突き合……付き合うだけで良いっぽいな。

今日のこれからの予定は、もう少し基地内を歩き回ってから、207B分隊の連中に会おう。

今すぐに行っても良いんだけど、流石にマブラヴのヒロイン達に纏めて会うのは緊張するしね。


「(少佐の涙は、大切な"何か"を思い出した為かもしれない……)」


ちなみに、後から207B分隊のヒロイン達から聞いた話によると……

この日を境に まりもちゃんの"鬼軍曹"っぷりがヒートアップしたらしい。

その理由は何となく察せるので、俺は心の中で4名に土下座しておいた。


「(昨日の迫力と言い――――私も、負けてられないわ。)」




……




…………




2001年10月23日 午後


流石に昼食を挟んで4時間も歩き回っていると構造は把握できる。

良く歩いたと思うが、この基地が広過ぎなんだっつーの。

けど流石 白銀だけあって、足はちっとも堪えていないのはさておき。

最初は すれ違う人達は訝しげで俺を見ていたが、少佐の階級証を見るや否や立ち止まって敬礼。

対して俺は歩きながら、証明写真の撮影の時をイメージして敬礼しまくって、
それで午前に"此処での少佐"が凄いって事に気付かされたのでした。

始めは妙な優越感やら戸惑いやらで慣れなかったが、今は結構 順応してきたぜ。

勿論、ハンガーの戦術機とかを見た時には開いた口が塞がらなかったが、
もうヤケクソだ~、ここまでくると何を見ても驚かないぜ、はっはっはっはっ(涙)。

ちなみに地下は手付かずだが、ピアティフちゃんあたりが案内してくれるといいな。


「――――小隊集合ッ!」


そんなこんなで最後まで放置しておいたグラウンドまでやってくると、
目立ち易い姿の俺の姿に、早くも気付いたまりもちゃんが207B分隊の娘達を集めようと叫ぶ。

ちょっ、気が早いな!? こう言うのって少し訓練風景を眺めさせて貰ってからやんねぇ?

まあいいか、まりもちゃんの言葉で、グランドを走っていた4名がすぐに走ってくるが……

走っていた様子は日本記録レベルとは言わなくても、インターハイ・レベルぐらいは有った気が。

それより一番 背の低いのはともかく、何であの3人はドッグタグに黒いタンクトップ姿なんですか!?

冬が近いんですよ!? 走ったら汗ダクになるからだろうけど、刺激が強すぎるだろこれはッ!

……でも……考えてみれば女子陸上選手も皆 アレより走り易い姿なんだよな……

そうだよ、ボディラインがヤバ過ぎるんだって。 眼鏡はまだ良いとして残り二人は犯罪だろ。

揺れてる、揺れてる。 良いブラ使ってるのか激しくは無いが、こりゃ慣れるまでキツそうだ……

俺は自然と内股になるが、流石に情けな過ぎるし、根性で直立不動を維持する事にした。


「紹介しておこう、彼は"白銀 武"少佐。お前達にとっては雲の上の存在かもしれんが、
 昨日 香月副司令 直属の指令を務めるべく着任された御方だ。 敬礼ッ!!」


キャラが変わってる まりもちゃんの言葉で、4人全員が同じ動作で凛々しく敬礼をする。

流石だな……新OSの件については旨く隠しているようだ。

でも案の定"何で自分達に少佐を紹介してくれるの?"と言うのが顔に書いてある。


「では一人づつ訓練兵の紹介を致します。 御剣ッ!」

「はっ――――御剣 冥夜 訓練兵であります。 分野は主に――――」

「あぁ、資料は読んでるから詳しい説明はいい……ぞ。」

「……は、失礼致しました。」


まりもちゃん含め5人の独特の雰囲気に押されて沈黙している俺。

ンなうちに自己紹介が始まり、一番左の御剣 冥夜が一歩踏み出して名乗る。

ゲーム通りのスタイルや顔付き。 剣術が十八番の皇女様口調キャラだったか?

やっぱり髪型が凄いよな~、ありえないだろそれは。 星っぽいとこはどうなってんDA?

ゲームでも誰か一度はツッコんでやれよ。 まぁ、今更 気にしたら負けだけどな。

近いうちにじっくり触りたいな~と思いつつ、御剣を下げると不思議少女が一歩前に出る。

一人一人 丁寧な自己紹介とかされても、少佐様の自分を維持するのが非常のキツいのDeath。


「彩峰 慧 訓練兵です。」


余り知識が無い俺だが、彩峰は恐らくマブラヴで一番の巨乳だったハズ。

それでどうして運動とか格闘が得意なのかが謎だが、
恐らく男は皆、今の足の踏み込みでも若干 揺れるバストに目を奪われるからだろう。

BETA相手にも接近戦が強いって事は、純粋に操縦技術が有るからなんだろうけどね。

オルタでの彼女の最期あたりの叫びは何か引いたけど、キャラ的に無理があったんじゃね?


「榊 千鶴 訓練兵です!」


……と、ファンが聞いたら射殺されそうな事を思いつつ、次に一歩出たのは榊 千鶴。

分隊長で総理大臣の娘で、委員長。 そして眼鏡。 ついでに彩峰と犬猿の仲だっけ?

だが注目すべきは"ふとまゆ"だろう。 現代日本ではそれを萌え要素だと豪語するモノノフも居る。

でも、その眼鏡は不便過ぎるだろ……なんでそんなにデカいの掛けてんだYO。

少佐権限で戦術機に乗っての実戦時は網膜投影があるし、眼鏡外させようかな~。

EXで白銀とデートした時は可愛かったし三つ編みも解いて……とバカな事を考える。


「た、珠瀬 壬姫 訓練兵ですっ!」


そんなうちに最後の一人。 唯一ドモって自己紹介をする珠瀬。

彼女の十八番は一発で出てくる。 世界レベルの超一流とも言える狙撃の腕だ。

けど案の定 俺の視線は30度ほど下がり、年齢が17か18だとは考えられない容姿をしている。

ついでに髪型も世界どころか銀河クラスだな……ギャグでは武器にもなるみたいだし。

……だが、なんか癒される……特に口元辺りに。 だから嬉しくもなって、つい犯っちゃったんだ☆


「…………」


≪ザッ……≫


俺は無言でスタスタと歩くと珠瀬の前まで歩み寄る。

対してハテナマークを浮かべる彼女に、腰を落として両脇を掴むと――――


「にゃっ!?」

「…………」

「し、しししししし少佐っ!?」


ひょいっと自分の顔の高さまで持ち上げ、まじまじと観察する。

う~ん……本物の珠瀬だ。 それにしても軽いな、空に放ったら月まで届きそうな気がする。

そう考えて空を仰ぎ、視線を戻すと、珠瀬は顔を真っ赤にして目をぐるぐる回していた。

あれっ……あれれ? あがり症って治ってたんじゃなかったっけ?

いや、治ってるはずだ……既に治ってるって昨日 白銀が言ってた。(いやマジで)

多分、ランニングで疲れていたのだろう。 そう思って珠瀬を地面に置き、まりもちゃんを振り返る。

直後 背後でドタッ……と倒れた音がし、訓練兵が何やら騒いでいるが、
少佐たるもの訓練兵の軽い失態くらいには、目を瞑ってやろうではないか。


「…………」

「軍曹、どうしたんです?」

「あっ!? い、いえ何でも!」

「まぁ、これで自己紹介は終わりですね。 引き続きお願いしまっす。」

「は、はい。」

「んで話は変わりますけど、鎧衣が退院したあたりで南の島の……なんだっけ、
 総戦技評価演習……? やりますから、そのつもりでいてください。」

「!? ……成る程、早く戦術機を……」

「そそ。 テスパさせますから。」

「テスパ?」

「テストパイロットの略です。」

「あぁ……な、成る程。」

「でも迂闊に口にしちゃダメですよ?」

「承知しております。」

「えっと……本来なら、11月の半ば……あたりだったんですけどね。」

「えぇ、その予定でした。」


……これは白銀もピンポイントには覚えて無いらしい。

まぁ、オルタの世界な時点で別にワザワザ聞くような事じゃねぇや。


「じゃあ、俺は行きます。 その前に一つお願いがあるんですけど――――」

「何ですか?」

「……あいつらに、上着きせてください。 風邪ひかれちゃ困りますから。」

「!? わ……わかりました。」


些細でくだらない事とは言え……未来を変えてごめんなさい。

僕には刺激が強過ぎて、さっき珠瀬を直視しなかったらおっきしちゃってたんだお( ^ω^)

ロリコンなら更に悪化してたんだろうけど、俺にはそんな性癖が無くて助かったZE。

よって凌いだって事で達成感を味わう意味で、ブーン♪と両手を水平にしてその場を走り去った。

まりもちゃんが、俺の背中をずっと見守っていていた事を知らずに……


「(まさか……珠瀬の弱点を一目で見抜くとはね……
 それに些細な事だけど、あの娘達の体を気遣ってくれるなんて……」


冷静に考えてみると少佐があの走りするは無いわ。 死にたくなった。




……




…………




「新OSの開発~?」

「はい。」


まりもちゃんについ言ってしまったからには、作って貰わないとね。

そう考えて、俺は執務室に赴いて、忙しそうなゆーこさんに話し掛けた。

その時 昨日の事を考えてションベンちびりそうになったけど、重要性を必死にアピールする。

第一にスペックの飛躍的な向上による戦死者の低下・及び戦線の維持。

第二に交渉の材料としていかに利用できるかだ。 ループでも役に立ったよ~と付け加えて。

だがゲームの会話 云々はちっとも覚えていないので、具体的な説明の殆どを白銀に任せた。

……結果 最優先で作ってくれる事になったし、正史通りにイケたっぽいな。


「それじゃあ、さっさと出て行きなさい。」

「え~っ、昨日の事 まだ怒ってます?」

「怒って無いわよ、必要以上の会話は時間が勿体無いだけ。」

「そーなのかー。」


それにしては昨日、俺のバカな会話に付き合ってくれてた気がしたけど。


「まあ、言われた通りちゃんと寝たわよ。 これで満足?」

「えぇ。 じゃあ、最後にひとつだけ。」

「何よ?」

「戦術機の新しい武装についてなんですけど。」


……おっ? 寝てくれたのか、俺が睡眠不足になってまで助言した甲斐があったな。

でも、なんだかさっきの白銀の言葉ダケで戦術機の未来を変えちまうのは癪だな。

俺も一つ肖ってみるとするか。 出てけとは仰るけど、なんか言えそうな空気だし。


「武装?」

「戦術機って両手に武器を持っていないと、攻撃ができ無いじゃないですか。」

「なに当たり前の事言ってんの?」

「それが"以前(嘘)"不便だと思いましてね、考えた時には戦死 直前で、
 設計できそうな ゆーこさんが居なかったんで無理でしたけど、提案があるんです。」

「面白そうね、言ってみなさい。」

「戦術機が手を使わずに使える武装があると良いなって思うんですよ。」


これはマジな話だ。 ゲームでもサブ射撃が無いだけでも何かと不便になる。


「ふ~ん、例えば?」

「頭部バルカン砲とか胸部バルカン砲とかあるといざと言う時、
 弾数は少なくても"戦車級"とかに対して良いんじゃ無いんですかね?
 上を目指せば胸部マルチ・ランチャーとか肩部ミサイル・ランチャーとか。
 もし両手をモガれても逃げる時、それなりに戦えると思うんですけど。」


流石にビーム・サー●ルとかメガ粒●砲とかは無理だろうけど、
現実的な武装を色々と言ってみると、結構興味を示してくれたゆーこさん。

そんなワケで、OSだけじゃなく戦術機の武装も弄ってくれると言うと、
俺は感謝と期待をしまくりつつ退室し、長い通路を一人で歩いている。

ここで……本来ならウサギッ娘や"脳味噌"とのご対面なんだろうけど、
207B分隊の時で精神力を使い果たしたので、その覚悟は今夜しておく事にしよう。

ぶっちゃけ、脳味噌を見たらマジで漏らしてブッ倒れ、フラグがバキ折れそうなので、
早く上の階に行ってションベンして飯食って寝たかったのもある。

PXでのディナーではまりもちゃんと再びくだらない事を話すモノの、
やっぱり訓練兵達は少佐って階級に遠慮して、話し掛けて来てはこなかった。


「(世界の平和・純夏頑張れ・世界の平和・純夏頑張れ・世界の平和……!!)」


こうして長かった2日目は……例の"念じ"で閉められ、グースカ眠った。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ5
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/26 23:24
これはひどいオルタネイティヴ5




2001年10月24日 午前


「お早う御座います、少佐。」

「軍曹、おはよ~ゴザいます。」


今朝は全員共通の喧しい目覚ましには起こされずに目が覚め、良い気分でPXに向かった。

すると途中でまりもちゃんと遭遇し、彼女はビシっとした敬礼をしてくれる。

対して俺も微妙な敬礼を苦笑と共に返した。 どう違うかはセリフで判断してくれ。


「これからお食事ですか?」

「えぇ。 折角なんでまた、一緒に行きましょう。」

「はい。」

「ところで、今日の指導は何をするんですか?」

「……座学です、昨日は少々 張り切り過ぎてしまいましたから。」

「ほほぅ。 ……で、みんなヘバっちゃったと?」

「いえ、優秀な娘達ですから 問題ありませんでした。」

「まぁ……鎧衣も含めて、訓練兵にしておくのは"惜しい"じゃ言葉足らずッスからね。」

「お解りになりますか?」

「データは嘘をつきませんからね。」

「成る程。」

「まぁ、欠点って言うのもあるみたいですけどね~……」


……特に"ふとまゆ"と"ヤキソバ"の事ね。


「お聞きしても宜しいですか?」

「チームワークかと。(それが原因で通れるのを落としたんだしな)」

「!? ……御見事です。」

「まぁ、それさえ削れば一流のパイロ……衛士になると思います。
 難解かもしれませんけど、衛士にとって一番大切なモノが……"仲間"?
 ……って事を叩き込んであげてください。 今度モメてたりした時。」

「はい。」


"仲間"って単語は白銀が弾き出してくれた。 百戦錬磨の衛士が言うなら間違いない。

そんな会話をして進んでゆくと、やがてPXに到着した。

着いたのが早かった様で人は左程多くなく、俺はカウンター越しに注文する。


「たぬきそば くださ~い、普通盛りで。」

「…………」


昨日 合成ハンバーグ食ってみたけど、あんま美味くなかったんだよね。

だから今回は蕎麦でいく。 蕎麦って言っても立ち食いで食うようなシンプルなやつね。

スープで大体の味が決まっている食事の方が、今のところ食い易いのだ。

わざわざ店に赴いたのにコショウを誤ってブチまけたラーメンを食う位なら、
家でカップラーメンを食う方を選ぶ。 ……変な例えだが、気にせんといて。

ちなみに普通盛りならあんまり多くは無いんだが、今日の予定の為でも有る。


「おっ、キタキタ~。」

「……あの、私も おそばを……」


――――何故か まりもちゃんも蕎麦を注文していた。




……




…………




朝食を終えると、俺はシミュレータールームへと向かった。

控え目にしたのは、食い過ぎると朝食が"もんじゃ焼き"になっちまうからだ。

……で、何でシミュレーターなのかって言うと、只単に俺のスキルアップの為。

白銀に任せればバリバリ活躍してくれるっぽいけど、これから教えていく立場にもなるからな。


「うはっ……」


そう言う訳で強化装備に着替えると、何名かの衛士がグループになって訓練していた。

勿論、管制付きで。 ……けど、気になったのは女性衛士達の姿だ。

エロ過ぎだろ常識的に考えてッ! 普通にガン●ムの宇宙服みたいなので良いだろうが!!

ぬふぅっ……胸の形がクッキリ表れていて、ヘソ辺りのラインも見える。

……ダメだ。 慣れない俺にとっては、徐々に股間の変なのさえ陰毛に見えてきやがる。

だ、だが此処は我慢だ……それ以前に、今 息子が膨らんだら強化装備に阻まれて自滅してしまう。

よって一切 彼女達を見ないようし、極力 男性の衛士に焦点を合わせる事にした。

俺は上半身を丸めながら一番 目立たない隅っこのの筐体に入ると、
ブツブツと白銀に頼りながら外の端末と筐体内部を往復し、シミュレーターの設定を行う。

何から何でも一人でやるのは間違いなく異例なんだろうが、
戦域管制を担当してくれる人が居ればこんな事をしなくても済むとは言え、
色々とボヤきながら"学ぶ事"から始めるんだし、少佐でソレは100%怪しまれる。

そんでもってモニターを衛士に見られでもして色々と質問されると、
専門用語を全然把握していないし、白銀に聞きながらイチイチ返答するワケにもいかね~。

だから"俺自身"が慣れるまでは一人でやるしかない。 これはゆーこさんの手も借りれない。

ループのお陰でベテラン衛士で通っているんだから、白銀じゃない俺を察せられるワケにはいかない。

……で、訓練している衛士の中では昨日 俺に敬礼してくれた人も居たらしく、
少佐の邪魔をしたり余計な勘繰りをしてくるヤツもおらず、何とか開始にまで漕ぎ着けた。


「さぁ……楽しませてくれよッ!?」


誰も見ていない……誰も聞いていない。 つまりは撃墜され放題、撃ち放題の食い放題。

めっちゃ気楽であり、ヴォールク・データにも関わらず緊張感の無い戦いッ。

まぁ……とりあえずフィードバック・データの為に白銀に任せてバリバリと戦うとするか。


「貴様等の攻撃パターンなど……お見通しよ!!」


今回はスパ●ボごっこをする事にし、自分は敵のザコキャラ・エリート兵。

有名パイロットの台詞を肖るのは、実戦の時とか迄 取って置く事にしよう。

さておき内容としては……本番では無いのか、エリート兵 如きを肖っているからなのか。

前回の地点まで行けずに大破する事が多い。 やっぱ白銀は本番に強いのかね~?


「なっ……バカな!?」


一人で空しいとは思うけど、テンションと殺る気が上がるんだから言わずにはいられない。

んで10回ほど挑戦すると……ようやく大破した距離が記録を塗り替えていたが、結果はニの次。

操縦性もお察し下さいとは言え置いておき、カラダに違和感が無くなってきた。

即ちフィードバック・データの云々が及第点に達したようで、俺は一度 筐体を出た。


「あっ……違ぇ、こっちでもなくて……これかっ!」


そしてログを消去しつつ次のステップ。 俺自身が白銀の操縦を元に戦術機を動かす。

マップは市街地……有る意味ハイヴより複雑な地形だし、色々と勉強になるな~。

また厄介である"光線級"との戦いも考え、チョンチョンと配置し、空中で避ける練習もする。

判らない単語が有ったら白銀に聞く事も忘れず、気付いたらあっと言う間に4時間経っていた。


「凄ぇ……やっと出てきたよ……」

「な、何時間シミュレーターやってるの? あの人。」

「かなり揺れてたみたいだけど、どんな事をやってたんだ?」

「気になるけど……少佐相手に聞けるワケ無いし……」


いかんいかん、ゲームみたいに夢中になっちまったZE。

でも得れたのは多かった。 そろそろ腹が減ったので、今日はコレぐらいにしておくか。

そう思って筐体を出て来ると……何やら遠目でヒソヒソと俺を見ている衛士様達。

……ま、まさか見られて無いよな? エリート兵 気取りだった恥かしい俺を……

ともかく、逃げるが勝ちだッ! 俺は冷静を装って敬礼すると、その場から走って逃げた。




……




…………




2001年10月24日 正午


突然ですが、ワタクシから大切なオハナシがあります。

午後はウサギッ娘&脳味噌とご対面しようと思ったんだけど、ヤバい事に気付いてしまった。

そういや~"ヤシロ カスミ"って、人の心を読むんだったよな……

それを考えて"ソレっぽい事"を定期的に念じていたのは良いけど、
俺が一方的に"読ませる"のはともかく、普段俺がこうやって考えてる事も読まれてるのかな?

……もし、そうだったら……ゆーこさんに報告された時点で、嘘がバレる……


「なんてこったぁっ!!」


≪――――ガタンッ!!≫


「くっ……俺がちゃんと考えてれば"こんな事"にはっ!」


遅れて来たので人が少なく、地味に助かったのは どうでも良いとして。

思わず何処かの艦長みたいな事を言うと、両手でテーブルを強打し、
無意識のうちに考えた事を、つい口に出してしまった俺。

マズいぞヤバいぞ……寒気がしてきた。 俺が白銀じゃない事を知られたら終わるんじゃね!?

元からオルタ計画4には協力するつもりだし、社なら理解してくれるとは思うけど、
ゆーこさんの事を考えたら……ガクガクブルブル……なんか、鳥肌もたってきた……

全部 社に俺が知ってるオルタの展開を読まれ、既に報告されてたら絶対に消される。

むしろ解剖……そんな最悪な展開を考えちまうけど、とにかく会ってみるしか無い……な。

周囲がまたヒソヒソと話しているモノの、今の俺には眼中に無くPXを後にした。

とりあえず、散歩でもして冷静になろう。 トライアルみたいな情け無い白銀には絶対ならんぜ。


「……少佐。(やっぱり、あの時の目は……)」←偶然見ていたピアティフ中尉




……




…………




2001年10月24日 午後


"例の部屋"に行くついでに、ゆーこさんに会おうと執務室に入った。

もし正体がバレている感じだったら、即 土下座するつもりでしたよ?

でも ゆーこさんは留守だったので、白銀に聞きつつソロソロと長い通路を進んだ。


「!? 人間の……脳だ……!」

「…………」


……賭けても良いっ! 倍プッシュだ……っ!(何が?)

オルタをプレイした後 白銀になったら、この部屋に入った人は絶対に俺と同じ事を言ったハズだ。

そんなヤツお前だけだって? ンな冗談はさておき、直ぐ視界に入って来たのは、
解説するだけでダークな気分なりそうな、デカいシリンダーに浮かぶ"鑑"の脳味噌。

そして予想通り、浮かんでいる脳味噌を見上げている"社 霞"の後ろ姿だった。

社は俺の台詞が聞こえていたようでこっちを振り向くと、"なんだこいつ"と言う視線を向ける。

いや……無表情だから読めないんだけど、現在ネガティブな俺はそう思ってしまったのだ。


「よっ。」

「……?」


右手を上げて声を掛けるが、ピクリとも反応が無い。 ……おっ?

よく見ると僅かであれ首を傾げたような気がしないでもない。 どっちかって? シラネ。

ともかく俺は勇気を出して足を踏み出し、静かな空間に乾いた音を響かせる。


「パパだよ。」

「…………」


――――ぶほぉっ!? 緊張なあまり、最低なボケをかましてしまった。

うぅ……社さんが汚い目モノを見るような視線を向けてくる。

まぁ、俺がそう思ってるダケで表情は全く読めないんだけどね。

そんな雰囲気の中、俺は更に一歩 一歩 足を踏み出していくが、彼女は微動だにしない。

反応は無いけど……後退されるよりはマシだ。 少しはポジティブにいってみよう。


「"こっち"だと始めまして、俺は白銀 武。 ごく一般の国連軍衛士さ。」

「…………」

「君は社 霞だよね?」

「…………」

「違う?」

「……そうです。」

「そうか。 んでもって、其処に浮かんでるのは俺の幼馴染の"鑑 純夏"。」

「……っ……」

「今はワケ有って"こんな姿"だけど……実は元気で明るくて可愛いヤツなんだ。
 ……でも、バカでドジでマヌケで口煩くて、オマケに乱暴者だったりするけど。」

「…………」


鑑 関連は半分 白銀に頼ったんだが、酷いなお前……やっぱり俺が言うべきだったかもしれん。

前者で褒めたのは俺なんだけど、それを全否定するような感じで後者を言いやがったぞコイツ。

けど……なんでどうして。 今 ハッキリと社のカラダから緊張が抜けたような気がしたぞ~。


「社?」

「……白銀さん。」

「なにかね?」

「知ってるんですね……私の事を……」

「うん。 "因果律量子論"って知ってる?」

「はい……詳しくは 説明できませんけど……」

「なら話が早いや。 なんかさ、その影響で"違う世界"から"純夏"に呼ばれちゃったんだわ。」

「……呼ばれた……?」

「そう、呼ばれた。 だから"違う世界"で社の事は知ってたんだ。」

「…………」

「まぁ、細かい事は気にしなくて良い。 とにかく"呼ばれた"からには純夏を助ける。
 そんでもって、BETAをやっつける! ……だろっ?」

「……っ……」


必死で作り笑顔をして話し掛ける俺に対し、何故か眉を落とす社。

ヤバいなぁ……やっぱり"俺"の存在がバレてるのかっ!?

……って事は今、"胸や尻の事で頭が一杯なテメェが平和を語るな"とか思われてるんだろうか?

だとしたら今は平気でも、今夜あたりで ゆーこさんに消されてしまうではないかっ!

ここはひとつ笑ってくれ、社っ! いや、俺が何とかして笑わさねばならん……!!


「――――コマネチ!!」

「…………」


咄嗟にガニマタになって股間でVを作ってみたんだが、無表情の社。

シャカシャカ両手を動かしてみるが、人形のように反応が無い。

当時は革命だったネタのハズなのにダメなのか!? こ、これならどうだっ!!


「えっと……社さん。」

「……?」

「"鶏肉"って英語でなんて言うのかな?」

「……チキン。」

「欧米かっ!」


≪――――びし≫


「…………」


あ……あれ? このネタのツッコミってこれで合ってるんだっけ?

それなりに流行ってるから試してみたけど、どっちにしろ笑いが取れないし失敗か……

入り口から風が吹き抜けてくる中、社は俺を汚物を見る様な表情で見上げてる。(決め付け)

……だ、だったら若者にウケていたっぽい"アレ"でいこうっ! 俺は死にたくないのだ!!

俺は一歩 下がると、左手を腰に添え右手を頭上で大きく左右に振りながら歌う。


「意味は無いけれ~ど、ム~シャクシャしたか~ら、ハイヴに単機で行~ってく~る~♪」

「…………」

「意味は無いけれ~ど、ム~シャクシャしたか~ら、香月博士をひっぱた~く♪」

「…………」

「武勇伝、武勇伝♪ 武勇デンデンデデンデンッ!!」(カキーン!!)

「…………」


≪ひゅううううぅぅぅぅーー……≫


……流石に このネタは……1人じゃ無理があったか?

それ以前に、俺が芸人の真似事する事 自体が間違っていたようだ。

社は相変わらず無表情であり"もういいよ、あんた……"と言ってる様に感じる。

だが、諦めるわけにはいかないッ! 社を笑わせないと、俺の命が危ないのだ!!


「すまん、ちょっと待ってくれッ! 次は……次は絶対 面白いと思うから!」

「……もういいです。」

「へっ?」

「白銀さんが……私を楽しませてくれ様とした事は、判りました……」

「そ、そう?」

「……ありがとうございます。」

「あっ……いや~、どういたしまして。」

「…………」


こうして、また沈黙が訪れたが……れ、礼を言ってくれた!?

無表情で有る事には変わり無いが、これは大きな前進だろう。

なら……いい加減 本題に入るか。 俺は息を呑むと、再び社に話し掛けた。


「(不思議な人……でも……この人の、世界の平和と純夏さんを想う気持ちは……)」




……




…………




……結論から言うと、俺は危機を免れた。


「たーちあがーれ、けだーかーくまーえー。」


何で免れたのかって? ……ふふん、仕方無いな。

今となっては、歌を口ずさむほど余裕な状況の俺様が教えてやろう。

例えば"障壁"があるとする。 それは1000までのダメージが無効化され、
被ダメージが1001を越えてしまえば、全てダメージが通ってしまうとしよう。

実は……"俺"がこうやって脳内で考えている事は、全て1000を越えていないのだ。

つまり、俺の思考は全て"障壁"に阻まれ、社の"リーディング"に全く読まれないって事だ!

だが1001を越えれば"障壁"を乗り越え……社は気付いてしまうって寸法になる。

そこで遠まわしに"都内に住む俺の世界"のイメージが見えたか、色んな角度から聞いてみたが、
全く結び付くようなイメージは見えなかったみたいなので、どうやら本当に読めないみたいだ。

逆に"白銀の世界"のイメージはEXもアンリミも"大まか"には見えるらしく、
簡単に言うと、俺の考えは"例外"を除いて一切読めないが、白銀のリーディングは可能らしい。


「よーわーきもーのーのたてとなれー、そしてーせーかいをーみーちーびーけー。」


……ちなみに"例外"とは、俺が心の中で霞に伝えたいと強く思い、叫んだ内容に限る。

お察しの通り、社のリーディングを警戒して"世界の平和"を念じたヤツが例外にあたる。

でも……白銀は00ユニットの事は知らないハズなのに、
俺が普通に知ってる素振りを見せる等、既に何度か墓穴を掘ってはいるが、
いくらなんでも社は100%相手の考えている事を全て把握できるワケでは無い。

もしかしたら、本当に白銀が知ってる可能性もあるけど、
最悪 何度もループした事により、様々な情報が入り乱れてると言い訳すれば良いだろう。

それと何より、社 自身が人の心を読むのが好きじゃない"良い娘"で助かったよ……


「あら白銀。 何しに来たわけ?」

「特に用は無いんですけど、純夏と社に会ってきました。」

「……そう。」

「ま~、時間はまだまだ ありますよ。 焦らずいきましょう!」

「人に仕事を押し付けといて、言ってくれんじゃない。」

「ははっ。 そうでした、すんません。 それじゃ~失礼しま~す。」


地上に戻るついでに、ゆーこさんの執務室に顔を出す。

案の定 訝しげな様子だったけど、キーボードを打つ手は止まらないのは流石ですね。

対して相変わらずヘタクソな敬礼をして退室し、ピタリとその場で停止する。

そして自動ドアが閉じると……沈黙の中、くるりと振り返って一言。


「ゆっくりつくっていってね!!!」


……恐らく、相当ウザい顔をしていた事だろう。

もし ゆーこさんに聞こえていたのなら、間違いなく命は無いだろうね。

よって俺は"スィーー"と駆け出し、そのままの表情でエレベータへと向かって行った。

余程 死亡フラグを回避したのが嬉しかったのだろう。 誰にも俺を制する事はできない。


「……死にたい。」


そんなハイテンションのまま、自室に戻ったのだが。

鏡で維持していた表情を確認してみると、やっぱり止めときゃ良かったと後悔した。

もし自室に戻る前にPXに行ってしまっていれば、横浜基地を追われていただろう。

やっぱり、少佐らしくしないとな……だが、もはや俺は止まれないのさ!(開き直り)

あっ!? やべ……そう言えば、次の日から社が起こしに来てくれる様になるハズ……


「……夜のうちに抜いておこう。」


――――俺は逝くぜ、ピリオドの彼方に。


「……アッーー……!!」


――――今朝の衛士をオカズに、ついやっちゃったんだ☆




●戯言●
①これはひどい……はこのSS、最大級の褒め言葉です。
②死んだ白銀が地球、ループ白銀が月なら、馬鹿は太陽です。(距離的な意味で)
③こんなSSがマブラヴ板に存在して良いんでしょうか……?



[3960] これはひどいオルタネイティヴ6
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/27 20:54
これはひどいオルタネイティヴ6




2001年10月25日 午前


起床の放送に起こされる前、予想通り 社が俺を起こしに来てくれた。

これも判っていたから普通に対応できたけど、
知らなかったらネボけてたのも有って襲い掛かっていたかもしれない。

息子の処理も昨夜のうちにしておいて良かった、白銀の体でも敏感なところは俺と一緒だ。

勿論……エロゲーでしかない展開に、抱きついてキスしたくなったが抑えた。

ゆーこさんに やっちゃった☆アレもヤバいが、そんな事したら社ならトラウマになるだろう。

何事にも自重。 社の信頼なしでも桜花作戦は語れないんだ。

……え、むしろもっとやれって? 無理。 だって死にたくないんだもん!


「ばいばい。」


さておき、社のその行動は俺に対する好意では無い。

起こすのが済むと、静かにそう嘆いて右手を小刻みに振るとさっさと部屋を出て行った。

彼女は鑑をリーディングし、白銀を起こすイメージを発見し、同じ事をしているんだからな。

まぁ、社が白銀を好きな事に気付くのはオルタから居なくなる時っぽいし、
鑑から読めたと言う理由で飯を食わそうとするあたり、"愛"と言う概念すら今は無いんだろう。


「はぁ……」


俺は何時もの軍服に着替えると、PXを目指して通路を歩く。

この姿も"こっちの世界"じゃリーマンの代名詞である背広みたいなモンだと思えば気が楽だ。

まぁ……言うまでも無し、流石に紳士服店で売ってたりはしないんだろうけどね。


「お早う御座います、少佐。」

「おはようッス、軍曹。」


ネボけてはいないが、"ある理由"で憂鬱な気分な俺。

んでもって……昨日の朝と同じように まりもちゃんと遭遇。

今日もラッキーだなぁ~と思いつつ、二人で並んでPXを目指した。


「……ふぅ。」

「少佐、どこか体調でも?」

「えっ? いや、何とも無いですよ。」

「なら、良いんですが……」


昨日と同様 早く着いた為か、やっぱり人は少ない。

直ぐに注文が可能であり、俺はきつねうどん をオバハンに頼んだ。

すると――――何故か、まりもちゃんも うどんを頼んでいた。

もしかして好みが会うのかな? 美味しいもんね、うどん も蕎麦も。

うへへへ……次も同じだったら、更にお近づきのネタができるぞ~。


「ごちそ~さま。 それじゃあ、俺は行きます。」

「では私も。」


……けど、まりもちゃんとの会話は今回は殆ど無かった。

元からベラベラと話す時間が無いのもあるが、前途のように憂鬱な気分だったからだ。

その為 溜息も出ており、何時の間にか うどんを食い終えた俺は席を立った。

続いてまりもちゃんも付いて来たので、心配してくれた感謝も込めて歩きながら言う。


「シミュレータ、もうちょい待ってくれれば付き合えると思います。」

「そ、そうですか? わざわざ時間を作って頂いてるみたいで……」

「いやいや、そりゃ~とんでもないッスよ。」

「今日もシミュレーターですか?」

「あれ、言ってましたっけ?」

「小耳に挟んだもので。」

「成る程~。 まぁ、そうです。 今日もガンガンやるつもりですよ。」

「御熱心ですね。」

「当然ですよッ、それじゃ!」

「あっ……」


御熱心と申したか? そりゃ~熱心になりますともっ!

俺が生き残る為にでもあるけど、男と女で一緒にシミュレーターやるなんて、
こっちの世界にとっては まりもちゃんとデートするようなモンですから!

……少佐……御教授 頂け有難う御座いました……(無理が有る女声)

……軍曹……君になら、俺の背中を預けられる……(意識し過ぎて逆にウザい男声)

いいね いいね。 でも なんか恥かしくなって、食器を返却すると走り出してしまう俺。


「軍曹も頑張ってくださ~いっ!」

「…………」


≪だだだだだだだだっ≫


「(やっぱり昨日PXで、少佐が癇癪 起こしてたって噂は本当だったのかしら……?)」


――――えっ、ノロケ話は良いから憂鬱だった理由は何だって?

言うまでも無い、昨夜のナニで痛感したんだけど、
臨戦態勢に入った白銀の息子が"俺の"よりも断然デカかった からだよッ!

俺の体でもあるので嬉しい事は嬉しいが、同じ日本人なのに……エロゲーの主人公、恐るべし!!




……




…………




≪――――どっ≫


「うぉ?」

「あっ!」


シミュレータールームを目指して歩いていると、偶然 ピアティフちゃんと鉢合わせした。

もし曲がり角で接触していなければ すれ違いに敬礼して終わりなんだろうけど、
運が良いのか悪いのかブツかってしまった事から、彼女は俺の胸板に弾かれてしまう!

互いに歩いていたダケなんだけど、白銀のガタイが良すぎなんだよな~。

……って、それどころじゃねぇ! 俺は反射的にピアティフちゃんの右腕を左手で掴んでいた。


≪――――ぐぃっ!≫


「よっ!」

「……ッ!?」


直後 右腕を引っ張り、社交ダンスみたいな反動で彼女は俺の胸におさまる。

別にこんな勢いをつけなくても救出できたんだろうが、俺は力の制御ができていなかった。

体はムキムキでも認識は会社員(28)のままだからな……力のセーブもこれからの課題だ。

……そんな事を考えて黙っていると、何やらピアティフちゃんが小刻みに震えていた。


「大丈夫っすか?」

「は、はい……平気ですから、放してくださいっ。」

「!? す、すんません。」

「……っ……」


な、なんて迂闊な俺。 無意識のうちに、右手で彼女の尻を触ってしまっていたのだ!

や……や、やっちまったぜ☆ いや、ムニッとしなかったダケでも自重したんですよ?

ともかく、これは誤魔化すしかない! 俺は慌てて距離を取った彼女に話し掛ける。

勿論、尻? なにそれ美味しいの。 ……と言う真面目な表情でピアティフちゃんを宥める為だ。


「中尉?」

「あっ!し、少佐。 こちらこそ申し訳ありません、私の不注意でした。」

「いやいや、なんの。 それより拾いましょう。」

「は、はい。」


……おっ? 案外 普通に誤魔化せた。 俺が少佐だし、目を瞑ってくれたのか?

会社じゃ~セクハラなんて、いかに上司がペェペェにしようが訴えられたら終了だ。

でも"こっちの世界"じゃ~多少は許されるのかッ? いやいや、俺は不可抗力以外はやりませんよ?

そんなバカな事を考えながら、ピアティフちゃんがブチ撒けた書類を拾っているんだけれども。


――――ちょっ、見えた!?


「これで全部ですかね。」←心臓バクバク

「……はい、何から何まで有難う御座いました。」


ついさっきまで、尻を触る位なら救出を諦めてパンチラ見とけば良かったなと思ってた矢先。

偶然 拝める事ができ、そのまま時間が停止すれば良いのにな~……と思った。

しかし現実は残酷である。 30秒程度で書類は拾い終わり、彼女は頭を下げてくださる。

上官だから空気を読んでるけど頭下げたいのは俺だぜ……幸せな一時を有難うッ。

……だが、そろそろ少佐の俺を維持できるかが際どいところだ。

ここは名残惜しいが、ボロが出ちまう前に立ち去るとするか~。


「それじゃ~、俺はコレで。」

「――――あのっ。」

「はい?」

「こ、これから少佐は……どちらに?」

「シミュレータールームで訓練でもしようかと思ってます。」

「昨日もされていたと聞きましたが?」

「あれ、何故 中尉までも?」

「……噂で耳にしました。 話によると、全て御一人で行われていたとか……」

「その通りです。」


……おや? なんで引き止められたんだろう。

貴女のような可愛い娘ちゃんに、真面目な少佐様を演じているのは、
かなり辛いんですけど。 全然 上官っぽい口調じゃない? 慣れて無いから表情だけで勘弁して。

さておき、今の時点で大丈夫そうなのは ゆーこさんと まりもちゃん位だしなぁ……

此処の人 良い女 多過ぎなんですよ。 横浜基地の女衛士とか、何処のファッションショーですか?


「そこでなのですが……宜しければ、戦域管制の御手伝いを させて頂けないでしょうか?」

「なんと。」

「お、御一人では何かと不便だと思いますので……」

「……っ……」


こ、これはッ! ピアティフちゃんからのデートのお誘い!?(違うって)

正直 願っても無い事ですよッ? 彼女は良い女の中では一番"まとも"だからなぁ~。

ゆーこさんや まりもちゃん みたいに胸がデカいワケじゃないけど、
それが逆にムダに意識しなくて良いって事で、何だか親しみ易い感じがするんだよね。

原作でも甲21号作戦とかでキビキビ働いてたし、是非頼みたいところなんだが――――


「少佐?」

「……すまない。」

「えっ?」

「気持ちは有り難いのだが、機密なので俺は一人で訓練を行わなくてはならないんだ。」

「!?」

「機会があれば、俺から頼む事にするから宜しく頼むッ。」


≪――――だっ!!≫


無理なんだよ……まだまだ白銀大佐に御教授 願いたい俺は、誰にも管制を任せられない。

……くそっ。 自分から可愛い娘の誘いを断るなんて、ハタチ越えてから初めてかもしれないな。

その為か、つい言葉遣いまで硬くなってしまったでは ありませんか。

んでもって中学生の時 気になる娘を家に誘える雰囲気だったのに、
言い出してから塾だった事を思い出して断り、嫌われてしまった事を思い出してしまった!

そんな俺の目尻には涙が浮かび始め、俺は告白してフラれた熱血漢のように走り去るしかなかった。

……何よっ! 白銀のバカ! 青い空なんてだいっ嫌い! ……いや、白銀は関係なくね?


「やっぱり私じゃ……力には なれないのかしら……」




……




…………




2001年10月25日 午後


≪ばこーーーーんっ!!!!≫


「うわっ!? や、やられた……!!」


哀しみの後、俺はそれを振り払うようにバリバリとシミュレーターを勤しんだ。

傍から見ると危ないヤツだっただろう。 だが、そうでもしないと俺の気持ちは癒えないんだ。

けど相変わらず例の台詞は止めず、今回もエリート兵を肖って6時間程 訓練を続けた。

殺られ台詞を悠長に言ってる暇があったら脱出した方が良いんじゃね……と無駄な事を考えながら。

そんで筐体を出てくると やはりヒソヒソと噂されていたが、昨日と同じく俺は逃げ出した。


「――――良し。」


遅れた昼食後、ちょっと疲れたので自室で休んだ後、俺はPXに向かった。

そしてラーメン(大盛り)を受け取り、向かうのは207B分隊の集まる席。

よく見れば別の場所にA分隊の姿も確認できるが、"そっち"の予定はまだ考えて無い。

反面、B分隊と話す覚悟は先程の休憩で できたので、気合を入れると彼女達に近付く。


「ごめん。 邪魔して良いかい?」

「貴方は、白銀少佐……!」

「け――――敬礼!!」


≪――――ガタンッ≫


御剣と榊の視界から接触すると、御剣が瞳を見開き榊が慌てて起立し、
背を向けて座っていた彩峰と珠瀬も立ち上がり、此方を向いて敬礼してくださる。

予想はしており まりもちゃんで慣れていたとは言え、4人でされると迫力があるな~。

けど此処でも上着を着ていてくれて助かる……俺は苦笑をしながら、お盆を片手に何とか敬礼した。

すると榊が右にズれ、隣の御剣も流れを読んだので、俺は榊の左に座らせて貰う事にした。

くぅ~っ。 若い娘4人と会話するなんて、何年ぶりだこりゃ……有る意味 感動的だ。


「食事を一緒にするのは初めてになるね。」

「は、はい……ですが宜しいのですか? 我々 訓練兵などと……」

「構やしないよ。」

「ですが、周囲の者が何と言うか――――」

「おかたい。」

「!? 彩峰ッ!」

「ははは。 まぁ、俺が勝手に来てるんだから君等は何も気にする事は無いって。」

「そう言う事?」

「だから、なんで貴女が言うのよ!?」

「ぷっ……!」

「し、少佐!?」

「あぁ、ごめん。 こうも言われた(ゲーム)通りだと思うと、笑っちゃってね。」

「……っ!?」


思った通り良いキャラしてるよな~彩峰は。

こう言うボケは いくらでも大歓迎だ、俺の世界を思い出す。

でも榊は恥かしくなったのか、俺の隣で赤くなっているぞ。


「ふっ……それより榊、白銀少佐には感謝せねばなるまい?」

「感謝? なんだねそれは。」

「白銀少佐は我々の弱点を見抜き、神宮寺軍曹に助言を与えて頂いたと聞きます。」

「あ~……って事は、モメたの?」

「はっ。 今朝の訓練にて些細な事ではありましたが、
 以前の演習ではそれが大きな失敗にへと繋がり、不合格となりました。
 榊と彩峰はそれが誰の所為だと今朝でも揉めておりましたが、
 初めて神宮寺軍曹にそれについて檄を飛ばされ、目が覚めた次第です。」

「ほ~。そうなのか? 榊。」

「は、はい。 軍曹が言うには、少佐は超一流の衛士と聞きます。
 つまり……BETAに対する実戦での心得を全て知っておられる。
 そんな方に指摘された事と有れば、目が覚めない訳にはゆきませんから。」

「成る程ね、ゴホンッ。 まぁ……非常に簡単な事だ。 演習だったから良かったけど、
 実戦だったら御剣も珠瀬も鎧衣も巻き込んで戦死。 整備班が徹夜で組んだ戦術機も大破。
 汗水垂らして働いた皆の結晶の予算の無駄。 その原因が"喧嘩でした"と言われたら馬鹿みたいだろ?
 データだと"お前達"の能力はAクラスなのに、戦場でモメて死ぬなら便所掃除でもしてた方が良い。」

「うっ。」

「彩峰も考えてみろ、例えば相手はBETAじゃないが2対2で戦術機同士が戦っているとする。
 榊の機体が敵機の長刀の餌食になりそうになる。 即 射撃でカットが必要。 当たれば落とせる。
 それなのに、お前は榊が気に入らない。 撃たない、若しくは判断が遅れる。 榊が死ぬ。
 彩峰も死ぬ。 違う場所で同じように2対2で戦い、相手を押していた御剣と珠瀬が居る。
 お前等2人を撃墜した2機の奇襲で死ぬ。 全滅。 嫌だろ? 死んでも死に切れないだろ?」

「……うん。」


彩峰に言った事は俺が好きなゲームでも同じだ。 15分で500円も掛かる高給取り。

それなのに、腕の問題じゃない。 気に入らないからカットしない。 それで負ける。

訓練兵で例える下仕官ならともかく、実戦に例える将官でもそれだったらどうする? マジで無い。

正直、命を掛ける"この世界"では更に無い。 そんな榊と彩峰には絶対 背中を預けられない。

こんな事がアンリミだと、白銀と3人で同棲する迄しないと直らないなんて本当にバカげてる。


「BETAは、とにかく物量が多い。 だから連携は非常に重要になる。
 だから戦場に立っても あえて向かってくるBETAを放置して、味方に任せる時が有る。
 その時 やるべき事をしなかったらどうなるのかを、肝に銘じておいてくれ。」

『――――はいっ!』


この時の俺の表情と気持ちはかなりガチだった。 だが直後に肩の力を抜く。


「けど……それさえ克服したのなら、"君達"は最高の衛士になると思う。
 期待しているから頑張ってくれ。 総戦技評価演習も近いしね。」

「わ、わかりました!」


はぁ……自分でも どの口で言ってるのかって思う。 覚悟なんて相変わらず胎児以下なのに。

けど彼女達は桜花作戦には絶対に必要不可欠な存在だ。 仲間割れとかマジ洒落になってねぇ。

だから俺は少佐を気取って助言っぽい事を言うと、榊が何かヤケに興奮している。

確かに少佐様が直々に"期待している"とか言ってくれたら俺でもテンパると思うけどね。

真面目な榊なら尚更で、こんな精神 会社員の戯言を真に受けてくれるのなら嬉しい限りだ。


「……神宮寺軍曹も感謝されたようです、自分の目も覚まさせてくれたと言われていました。」

「へぇあ、なんで?」

「(へぇあ?)……は。 暫し実戦から離れていたらしく、
 我々に一番 足りないものが、仲間を想う気持ちと言う事を見落としていた……と。」

「ほほ~。」


確かにアンリミの仲間割れ云々も、まりもちゃんが もうちょい頑張れば多少は違ってたような……


「……珠瀬も変わった。」

「にゃっ!?」

「珠瀬も? 何が?」

「――――は。 白銀少佐に初対面で欠点を見抜かれ、それを痛感したようです。
 今まで以上に精進し、軍曹も珠瀬を評価しておりました。」

「へぇ……(見抜いた覚えなんかないんだけどな……)」

「あう、はうあうぁぅ~~……」


珠瀬に顔を向けると、顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。

そういや何も喋ってないから妙だったんだけど、ずっと挙動不審だった気が。

にしても、欠点ってなんじゃらホイ。 ……あぁ、ランニングが苦手って設定が隠れてたのかな?


「とにかく、皆のプラスになってたんなら良かった。
 多分 当日は俺も立ち会うことになると思う。 宜しく頼むよ。」

「し、少佐もですか!?」

「え……何か問題でも有んの?」

「榊、緊張する?」

「あッ、彩峰ぇ!」

「惚れた?」

「なっ!? いい加減にしなさいッ、失礼な事 言うんじゃ無いわよ!!」

「惚れたね。」

「うるさいっ!!」

「…………」

「いい加減にせぬか、二人とも。 少佐が呆れておられる。」

「はぅ~。 榊さん、落ち着いてくださ~い。」

「はっ!? も、申し訳ありません白銀少佐っ!!」

「HAHAHA、お馬さん。 良い子だ良い子だ。」

「……乗せない方が好み?」


いや、気持ち良ければ何でも良いですよ?


「ぐッ、ぎ、ぐっ……!」

「彩峰くん、そろそろ自重だ。 榊にテーブルを引っくり返されてしまう。」

「ごめん。」

「結構。 ……だが彩峰、今の場合は"サーセン"だ。 はい、榊にも言ってみ?」

「サーセン。」

「(な、なんか余計に腹立つ気が……)」

「よろしい。」

「……いいね、これ。」

「だろ? 特別に君にやろう。」


ふむ……良いぞ、これこそが俺の求める空気だ!

この面子の中では彩峰と一番結婚したい。 巨乳 云々とかを除いて。

さておき、これが207B分隊との初めての接触となったワケだが、
説教以外は彩峰の存在で気難しい空気にならず、それからも色々と話し込むと先に席を立った。

彼女達の件で最も不安だったのはチームワークだったが、まりもちゃん ナイスです。

介入が少し遅れた気がしたけど、問題ないっぽいな。 後は会って無い鎧衣くらいか。


「――――敬礼ッ!!」


……勿論、最後は敬礼で閉められた。 皆が振り返ってるから程々にしてくんろ。


「白銀少佐……か。」

「良い人でしたね~。」

「珠瀬、惚れた?」

「えっ!? そ、そそそそんな事は――――」

「随分と砕けた感じが有るけど、私も良い人だと思うわ。」

「うむ。 だが、あの階級にしては随分と若そうな気がしたが……」

「そだね。」

「……とにかく、期待して頂いているからには、次は必ず合格するわよ?」

「当然だ。 しかしだな、やはり若い気がするのだが――――」

「御剣までもが惚れた?」

「!? な、何を馬鹿なッ!」

「サーセン。」


――――夜のオカズは、彩峰でつい犯っちゃったんだ☆ (ヒャハハハハハ)




●戯言●
今回笑いどころは殆ど無かったと思います。これはひどく……ない?
半年前から溜めていた下書きを大幅修正して投稿させて頂いています。
そろそろネタが切れそうですが、テスト板では皆様有難う御座います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ7
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/28 16:19
これはひどいオルタネイティヴ7




2001年10月26日 早朝


「…………」

「…………」


俺は社に起こされると彼女を外で待たせて即効で着替え、今は二人で通路を歩いていた。

何故 一緒かと言うと……何やら ゆーこさんが俺を呼んでいるらしい。 いわゆる"お仕事"だ。

そんなワケでPXへは行かずに、執務室へ行くべくエレベータを目指している。

急げ、急げ~。 一秒でも早く行かないと、彼女の機嫌を損ねてしまう。

だが紳士な俺は、勿論 社の歩行速度に足を合わせている。 トコトコと歩く姿が可愛い。


「降りようか。」

「……はい。」


……だが……朝の挨拶と今の一言 以外は終始無言。 響くのは二人の足音だけ。

何か話そうと思っても、社の性格を考えると何を言っても盛り上げる自信が無い。

笑わそうと思って滑りまくった事も思い出すとトラウマになっており、勇気が出ないのだ。


≪ウイイイイィィィィ……≫


「…………」

「…………」


狭いエレベーターの中でも無言。 ……気まずい雰囲気が訪れる。

社は何とも思っていないんだろうけど、俺はその場でボリボリと頭を掻く。

まるでレストランで大人しくできない子供。 社に何か良い話題を振りたくて仕方無いのだ。


――――だから、俺は解除する。 "自重"と言うリミッターを。


≪……イイイイィィィィン……≫


「……良いのかい? ホイホイ付いて来ちまって。」

「……?」

「俺はウサギさんだって構わないで食っちまう人間なんだぜ?」

「……!」


≪――――ガコンッ≫


地下19階に到着し、エレベータのドアが開く。

それは俺にとって、社とのコミュニケーションへの第一歩への扉にも見えた。

さぁ……オヤシロさんっ! ウサギを社で比喩していると言う、この俺の難解に どう反応する!?

それを理解し、どのような反応を示してくれるかダケでも、俺は社の多くを学べるかもしれない!!

引かれてしまえば今後 極力 自重するけど、逆であれば更に前進しても良いって事になるからなっ。


≪――――じわっ≫


……だが。 俺は社の瞳が水気を帯びたのを見て、読みが甘かったと痛感する。


「や、社?」

「……白銀さんは……ウサギさんを、食べるんですか?」

「ゑっ?」

「ウサギさん、可愛いです……食べちゃダメです……」


な、泣かれてしまったッ。 どうやら、それ以前の問題だったらしい。


「だ、だからさ! 違うんだってッ! ホントに食べるんじゃ無くって、
 俺はウサギさんを食べちゃいたい位に可愛いと思ってるって意味で――――」

「…………」


そんな訳で必死に誤魔化し、社を宥めるのに10分以上を要していた。




……




…………




「遅い!」

「返す言葉も御座いません。」

「……っ……」


執務室のデスクに腰掛け待っていた ゆーこさんは、ものっくそ不機嫌だった。

理由は理解できるので、俺はすぐさま土下座し、お怒りを収めて頂く事を切に願った。

俺の真横には未だに涙目の社がおり、ウサギさん大好き少女にあのネタは無謀だったようだ。

……いや、元ネタ考えると普通に無いよな……全くリミッターを解いた俺は限度を知らねぇぜ。

意味を知ったら社なら泡吹いて倒れそうだ。 見てみたい気もするけど、リスクがな……


「社。 ご苦労様、行って良いわよ。」

「……はい。」

「!? や、やし――――」

「白銀。」

「ぇあ?」

「この悪魔。」

「ティウン ティウン ティウン。」


≪――――どさっ≫


社が部屋を出た直後、言葉の針によるクリティカルヒット。

俺は ゆーこさんの言葉に、呆気なく仰向けに倒れた。 さすが天才、容赦無ぇぜ。


「立て。」

「イエッサー!!」


――――そして起立。 残機はまだ残っていたようだ。


「そんなモンじゃ済ましたくないけど、あんたを呼んだ理由を話すわ。」

「はい。」

「戦術機の新武装のシミュレーション・データが仕上がったの。」

「ま、マジですか!?」

「それ何語?」

「本気と書いてマジと読みます。」

「あぁ、白銀語ね。 とにかく、こっちに来るのよ。」

「ウィっす。」


うへっ、凄いなぁ~……もう設計が終わったのかYO。

よ~く見てみると、ゆーこさんの目にはクマができている。

て、徹夜か……それなのに俺ってヤツは……ゆーこさんっ、マジすまんかった……

そんな感じで脳内で猛省していると、手招きされたのでデスクに近付く。


「――――見なさい。」

「!? こ、これはひどい……!」


俺はデスクの上に有った、一枚の紙を手に取って見た。

それには ゆーこさんが描いたと思われる、ヘタクソな戦術機っぽい何かがあった。


「それじゃないわよ、フザけてんの?」

「あっ、こっちですか。」


真面目な雰囲気になると、ついやっちゃうんだ☆

俺は軽くボケをかました後に、ゆーこさんの横に回りこんでディスプレイを見せて貰う。

すると其処には、不知火っぽいが ちょっと太った感じの戦術機が映っていた。

元々戦術機はスマートメカだから、そんなに違和感は感じないけどね。

――――間違いない、これが新型 武装仕様の不知火なのですな。


「とりあえず、額の左右に2門の頭部バルカン砲。
 左胸には胸部マルチ・ランチャーを付けてみたんだけど。」

「おぉ~……」

「頭部バルカン砲は連射は効くけど、威力は低いわ。要塞級や突撃級には ほぼ無意味かもね。
 腹部マルチ・ランチャーは、要は誘導性の有る小型のグレネードを発射するの。
 連射は効かないけど広範囲に掛けて爆発するから、戦車級以下の小型種を纏めて潰したり、
 中型以上のBETAへの牽制や味方の補助や自衛。 状況によって色々な局面で使えるハズよ。」

「す、凄ぇや……!」

「そして右胸にはマルチ・ランチャーの予備弾薬を出来る限り詰め込んでいるわ。
 ……でも、それらのお陰で機動性が5%前後 低下しちゃうけど、
 新OSのお陰で総合的なポテンシャルは遥かに上がる事になる予定よ。」

「この機体、もう作れるんですか?」

「まさか。 これから白銀に色々とデータを取って貰わないと無理ね。
 この……"不知火S型"のデータは権限付きでシミュレーターの端末に放り込んで置いたから、
 今日はそれを徹底的に頼むわ。 新OSと一緒に仕上げに掛かるつもりだから。」

「了解です。」

「でも、データを取る際には注意して。 どっちの武器も実際にBETAには使ってない。
 だから与えるダメージは最低値に設定してあるから、実戦とは使い勝手が変わると思うの。」

「実戦で威力が減らないだけ十分ですよ。 ……でも そうなると、
 不知火S型がロールアウトするのは、実戦を必ず経験させる必要が有るって事になりますよね?」

「そうよ。 実戦データをシミュレーターにも反映させないと、表には出せないわ。
 勿論、BETA相手に不知火S型をテストするのも、あんたの役目よ。」

「把握しました。」


ゆーこさん……思ったより、ネーミング・センス良いな~。

勝手に解釈させて貰うとTSF-TYPE94(S) いわゆる指揮官用 不知火ってところだろう。


「だけど、一つだけ欠点があるのよね。」

「なんですか?」

「武器の使い分けが難しいのよ、白銀のレベルならともかく、
 新しい概念の武器って事でベテラン衛士でも慣れないと難しい感じ。
 少なくとも、訓練兵レベルの衛士じゃ使いこなせないんじゃないの?」

「ふむ……」

「初期開発にはコストもバカにならないわ、それに見合う働きは出来そうなの?
 白銀の専用機を一機作るくらいなら、不知火を多く作る方がマシかもしれないわよ。」

「ん~……じゃあ、こ~するのはどうでしょう? サブ射撃はマニュアルとオートで分ける。」

「どう言う事なの?」

「戦ってればありますよね? 着地や装填のディレイ(遅れ)で、
 両手による攻撃が出来ないって状況になって、致命的な隙を晒す時。
 今にも複数の戦車級が食い付いて来ようとしているのに、対応 出来ない。」

「えぇ、戦術機も人型だし。」

「……でも、その時の為に不知火S型のサブ射撃があるモノの、
 ゆーこさんの言う様に恐怖とかで慌ててしまい、サブ射撃に切り替えられる技量が無いとする。
 そこで、あらゆるディレイが発生した時に限り、トリガーを引けばサブ射撃に自動で切り替わる。
 ……って言うのはど~ですか? 被爆を考えて近距離では頭部バルカン砲、
 中距離ではマルチ・ランチャーに切り替わる感じで。 勿論 技術が有ればマニュアルで良いですけど。」

「その発想は無かったわね。」

「勿体無い代物だと思いますけど、有る意味"将来"を考えると死ぬハズの新米衛士が、
 初戦で助かるかもしれません。 新兵の命が不知火S型よりも軽いと言われれば終わりですけど。」


欠点に対し、戦術機の両手が使え無いタイミングで、
衛士の技量と関係なく自動で攻撃ができる、便利なシステムを提案する。

そうは言っても、これって設定に滅茶苦茶 手間が掛かるんじゃないか?

けど、作ってくれるのは ゆーこさんだ。 天才なら……天才なら何とかしてくれる……!


「ま……良いわ、出来ない事も無さそうだし。 これは訓練兵に試させると良さそうね。」

「そうですね。 マジで有難う御座います。」

「ふふん、今のシステムの提案も、新OSと新機体と同時に仕上げておくわ。 感謝する事ね。」

「はい! ゆーこさん……抱きしめて良いですか?」

「良……や、お断りよ。 それじゃ~眠いからお休み~。」

「お疲れ様でした~。」


――――何とかしてくれるそうです。 そして、松尾芭ションボリ。


「あぁ、白銀。」

「はい?」

「何が有ったか知らないけど、ちゃんと社に謝っておきなさいよ?
 あの娘も設計に協力してくれたのよ、ど~してか"白銀の力になりたい"とか言って。」

「……っ!」

「ふぁあぁ……もう限界。 ちゃんとデータ取らなかったら"落とす"わよ?」

「なッ、なんで目線が下に行くんですか?」

「何でかしらねぇ~?」

「――――こわっ!?」


不敵な笑みを浮かべると、黒いオーラを纏いながら、ゆーこさんはフラフラと去って行った。

それにしても、社が協力を……そう言えば、天才少女だったんだっけ。

てっきり何とも思われて無いと考えてたけど、案外 心を開いてくれてたのかもね。

だったら、エレベータで勝負に出た俺のアレは何だったんだ……泣けるぜ。 社は眠いダケだったのか。

ともかく……今日の訓練、頑張るぞッ! 俺は無意識に股間をガードし続けたまま、気合を入れた。


「(はぁ……オルタネイティヴ4はアイツの言う通り行き詰ってるし、私も甘いもんねぇ……)」


――――不知火S型。 後から聞いた話によると、実は"S"は白銀の意味だったらしい。 納得。




……




…………




2001年10月26日 午前


既に人気が無くなったPXで食事を終えると、俺はシミュレータールームへと走った。

そろそろ まりもちゃんとシミュレーターをやってみるのを視野に入れないとな。

ついでに"不知火S型"の使い勝手を榊達に教えられるようになって貰えれば完璧だ。

勿論、それには俺が"不知火S型"に慣れないといけないから、
ゆーこさん が印刷していてくれたファイルを片手に、初代ニュータイプの気持ちで仕事に励む。


「凄い……5倍以上のエネルギーゲインがある。」


ね~よ。 そもそもエネルギーゲインが何かすら判らないけど、気分の問題ね。

先ずは何も攻撃してこない的を平地に100個くらい配置させ、色々と試してみる。

しかし判りやすいマニュアルだな……マジ天才過ぎだろ、ゆーこさんは。


「白銀の腕はね。」


≪ダパパパパパパパッ!!≫


「戦術機、4機分ぐらいかな?」


≪ボンッ、ボォンッ! ボォォンッ!!≫


今現在は、4機のAI戦術機を相手にサブ射撃を駆使して戦っている。

頭部バルカン砲で戦術機に回避運動を強制させ、あえてマルチ・ランチャーで硬直を狙う。

他にもバルカンで牽制してから斬り掛かったり、マルチの爆風で撹乱してから射撃したりと試す。

既に500個近い的で試した事もあって、早くも道化師の如く敵機を捌けるようになっていた。

でも、AI戦術機って随分と弱いな……まさか、衛士って殆どこんな程度なんだろうか?

まぁいいや。 んで、市街戦での光線級を含むシミュレーター、やがてはハイヴのデータをも取る。

流石に白銀であっても終盤でヴォールク・データは無理があったみたいだが、何とか記録は更新。

極力 回避重視な攻略で無造作・無反動で攻撃が出来ると言う事から、格段に楽になっている。

これでXM3が完成したら……一体何処まで潜れるんだろうか?

サ●ヤ人でなくてもワクワクしてきたな。 それに今回は俺自身も頑張っていますよ?

だって、ゆーこさんに大事なモノを落とされたくないしね。 半分はコレが原動力なのDA。


「し、しまった!? うわぁっ!!」


ついでに……実戦では洒落にならない台詞は、今のうちに どんどん消化しておこう。

シミュレーターであれど殺され台詞は格好悪いし、一人の時で叫ぶのが一番だZE。




……




…………




2001年10月26日 午後


「腹減った……死ぬ……」


大事な一人息子の為にも、昼食を抜いてアホみたいに訓練していたら、
何時の間にか窓の外は夕焼けになっていた。 カラスは鳴いていないが早く飯食って寝たい。

筐体と端末は計20往復はしており、ゆーこさんが怖いからって流石にやり過ぎじゃね?

だが、社への償いも兼ねればこれしきの事で……俺はフラフラとロッカーに向かった。

やっぱり途中で衛士達には注目されたが、今じゃ逃げ出す体力も残っていなかった。


「白銀少佐。」

「!? なんだ……御剣か。」


根性で通路をヘロヘロと歩いていると、後ろから御剣に話し掛けられた。


「どうなされたのです、顔色が悪い様ですが。」

「あぁ、ちょっと気合を入れて訓練してたからね。」

「訓練ですか……?」

「ざっとシミュレーターを8時間ほど。」


学生の頃ゲーセンなら開店から閉店まで居た事もあったけど、流石にコレはきついな~。

疲れるけど面白いからガンガンやってしまったが、今度は長くても6時間程度に抑えておくか。

でも8時間って普通に一日働く最低限の長さだしな。 俺にとっては、もうちょい頑張りたい気も。


「は、8時間もですかッ!? しかし、何故其処まで……」

「……ふっ。」

「少佐?」

「御剣も、いずれ解る。 誰にでも……失いたくない"モノ"があるのさ。」

「なっ……!」


いや、わかんね~だろ。 御剣は女だぞ? まぁ、それは些細な事として。

そっ……と赤子を撫でるように自分の股間に優しく右手を添えて、俺は御剣を真っ直ぐに見て言う。

おいおい、格好 付けて何言ってんだ俺は……下品にも程が有るだろ、アホか?

疲れてたとは言え……死のうかな。 だが何故か御剣は、瞳を見開くと何故か驚愕している。

対して、実は御剣の瞳が一切 股間を視野に入れていなかった事に気付かない俺。


「御剣?」

「……感服致しました。」

「は?」

「!? い、いえ……何でもありませぬ。 ところで、歩かれるのは御辛そうに見受けます。
 不躾(ぶしつけ)とは思いますが、私で宜しければ肩をお貸し致しましょうか?」

「良いのかい?」

「御気になさらず、何処へでも参りましょう。」

「じゃあ……PXに頼むよ。」

「承知。」


≪――――ふにゅ≫


長袖の訓練服を着込んでいても柔らかい……が、今は疲労と空腹で意識できないぜ。


「御剣も……飯は済んでないのか?」

「はい、これからです。 今は皆を待たせております故。」

「そっか。 なら ちょうど良かったね。」

「はい。」


……そんなこんなで、PXに到着すると榊ら3人が注文を済ませ御剣を待っていたようだ。

飯に手をつけないで待っているあたり、もはやチームワークについては気にする必要は無さそうだ。

だが3人は俺と御剣を見ると訝しげな視線を投げ掛け、御剣は何だか赤くなって俺から離れた。

しかし疲労困憊(ぱい)な俺は、それにすら気付かず 掻き揚げうどん(大盛り)を注文した。

ちなみに御剣も うどんを注文。 おま……ひょっとして横浜基地って そば&うどん が流行ってんのか?

流行ってるなら、まりもちゃんのは偶然だったのか~。 がっくし。 早まらなくて良かったぜ。


「――――敬礼ッ!」


夕食後 昨夜と同じ敬礼を受け、腹が膨れた事から何とか自力で自室に戻った。

そしてシャワーを浴び、さすが白銀。 疲労の半分程が既に消える中 ベットに潜った時。

今更になって御剣のヌクモリを思い出し、それが俺の今夜の"全て"を物語っていた。


「(御剣……柔らかったなあ~。)」


――――今夜も言うまでもなく、つい犯っちゃったんだ☆


≪ザザザザザザ……ッ!!≫


「(白銀少佐……あの若さで。 私は、貴方を目標に励みたいと存じます。)」


――――ちなみに御剣がグラウンドを毎晩走っていたのに気付かされたのは、少し先の事だった。




●戯言●
このSSを打つに当たって、私は心はノリノリですが無表情で黙々と臨んでいます。
ですが何故か6話を読み直していたら彩峰のサーセンで盛大に吹いてしまいました。
SSと言うのは有る意味魔法なのかと思いました。皆様多くの感想有難うございます。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ8
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/29 20:22
これはひどいオルタネイティヴ8




2001年10月27日 午前


≪ゆさゆさ ゆさゆさ≫


「朝です……おはようございます。」

「ん……おはよう、社。」


昨日は酷い事をしてしまったが、今朝も律儀に起こしに来てくれた社。

何故そんなに献身的に……けど、社は鑑のイメージを真似してるダケなんだよね……ハァ。

そう言えば……鑑は毎日毎日 白銀を起こしに行ってやってたんだよなあ~。

鍵が閉まってても諦めず、壊してまで起こしに来る位だし。 根性だけはハンパじゃねぇぜ。


「ばいばい。」

「――――とっ、待ってくれ 社。」

「……?」

「あ~……昨日はアリガトな、助かったよ。 ゆーこさんを手伝ってくれたんだろ?」

「……いえ。」

「それと、悪かった。 変な事、言っちまって。」

「……っ……」

「や……社?」

「ダメです、許してあげません。」

「え"ぇあ!?」


な……何故!? 起こしに来てくれたから、怒ってないと思ってたのにっ!


「……名前で呼んでください。」

「えっ?」

「これから名前で呼んでくれれば……許してあげます……」

「あ、あぁ……そんな事で良ければ。 ……ゴホンッ。」

「…………」

「霞。」


≪――――ぽっ≫


「……っ……」

「ちょ……っ! 霞ッ!?」


≪バタンッ≫


……よく判らんが、名前で呼べば許してくれるらしい。

よって言ってみたら、直後に"霞"はさっさと部屋を出て行ってしまった。

こっ恥ずかしかったから視線を逸らしていたので、気付くのに遅れて止め様が無かったぜ……

くそっ……可愛いぜ、ウサギッ娘……何時か絶対にキスしてやる……ッ!

別に名前で呼ぶ事に抵抗は無いんだが、イキナリそんな事を真顔で言われるのは予想外だったな。


「(香月博士だけ名前で……ズルいです……)」


まぁ 鑑をリーディングをしてるんだし、霞も名前で呼んで欲しくなるのは普通か。

……待てよ? だが、そうなると霞が俺を"タケルちゃん"と言うべきな気がする。

でも良いや、原作通りだし。 そもそも霞のキャラじゃ無し、恥ずかしいのかもしれない。




……




…………




2001年10月27日 午後


「軍曹。 明日あたりであれば、シミュレーターに付き合えますよ?」

「ほ、本当ですか!?」


朝食の時に まりもちゃんと そんな事を言い、俺は午後のシミュレーターも終えた。

稼働時間は若干 抑えて合計6時間。 昼食や休憩も挟んだので、夕食の時間が近付いている。

……だが まだ時間が有るので適当に散歩していると、見知った顔が複数あった。

例の207B分隊の四天王だ。……でも、これじゃ鎧衣が涙目? まぁ、今は良いか。


「――――あっ。」

「よう榊、頑張ってるか~?」

「白銀少佐ッ!!」

「うわっ、びっくりした。 いきなり何だよ?」

「神宮寺軍曹に何があったんですかっ!?」

「はっ? ……どう言う事だ? 御剣。」


榊に凄い勢いで迫られた。 EXの白銀も毎日大変だなこりゃ。 何故 彩峰は自重しない?

さておき、よく見ると珠瀬は判り易いが、彩峰までもがソワソワしている気がする。

そこで、今でも唯一冷静で空気の読める御剣に話を振ってみた。 対して頷くと答えてくれる。


「……は。 今日の神宮寺軍曹は何処か、変な様子だったのです。」

「なして?」

「判りませぬ。 それ故に皆、気になっているのです。」

「なんか~、妙にニコニコしてたんですよ~。」

「……鼻唄も歌ってた。」

「ま、マジでッ!? "鬼軍曹"と呼ばれるあの人が!?」


"マジ"と言う白銀語は、既に彼女達には説明済みだ。 今では彩峰も良く使う。


「うん、マジ。」


――――ホラね☆


「何時もは厳しい教官ですけど、あんな軍曹は初めてなんです……」

「だったら、聞いてみれば良かったじゃないか。 分隊長だろ?」

「!? で、ですけど……逆に怖くて聞き難くって……」

「ふ~む。 なんだか判る気もするな。」

「少佐……何か知ってる?」

「俺が?」

「……良く軍曹と、食事してる。」

「あ~。」


ぶっちゃけ、207B分隊のコ達とも、バリバリ食事したいのよね。

でも少佐だからなぁ……横浜基地の空気を読むと、そんなに介入できないんだよな。

原作みたいに白銀が訓練兵だったらともかく、左官も有る意味 自由度が無いね。

まりもちゃん を混ぜたくても教官と訓練兵との立場上、できないみたいで断られるし……

それにしても、見られていたのか。 まぁ、俺も最初はB分隊に気付いてスルーしてたし自然か。


「少佐、何か心当たりは有りませぬか?」

「ん~。」


――――白銀は、つい唸っちゃうんだ☆


「昨日までは確かに、何時もの軍曹だったんですけど。」

「そうだなぁ……有るとすれば、明日シミュレーター訓練に付き合う約束をした位かなぁ。」

「ん。 ――――それだね。」

「それしかないわね。」

「は?」

「うむ、これで合点がいきました。」

「良いな~、神宮寺軍曹~。」

「えっ、え?」


ちょっと君達、何を納得してるんですか?

もしかして……まりもちゃん、シミュレーター訓練如きで何でそんなに喜んでたの!?

あのキャラ壊してまで!? 確かに俺にとってはデートみたいなモンだから嬉しいけどさ……

まりもちゃんが喜ぶのは、染み付いた価値観を考えれば何かオカしいだろッ!

ひょっとすると、戦闘狂だったりしますか? 俺と対戦する事に血が騒いで嬉しかったりッ?

なんか不安。 思わず放心してしまうと、榊達は輪を作って何やらヒソヒソと話している。


「(もしかして、軍曹って少佐に……)」

「(……かもね。)」

「(うむ。 露骨過ぎて そうとは思わなかったがな。)」

「(お似合いかもしれないけどね~。)」

「(けど、軍曹には負けてられないわ。)」

「(そだね。)」

「(あぁ、少佐は我々の目指す方でも有るのだから。)」

「(あうっ。 はぅあぅ……)」


ちょっ、何でイキナリ蚊帳の外にされてるんですか?

全く聞き取れないし、こんな時にいきなり連携発揮するなよ。


「何を話してるんだ?」

「何でもありませんッ。」

「しいて言えば……会議?」

「失礼致しました。」

「あ、あははは~っ。」


寂しいので一歩踏み出して声を掛けると、いきなり一列に並ぶ四人。

意味が判らず首を傾げていると、榊が一歩踏み出して言う。 なんか真面目な顔してる。


「少佐ッ! 必ず合格致しますので、当日宜しくお願いしますっ!!」

『――――敬礼ッ!!』

「ん? あ、あぁ……頑張って……ね?」




……




…………




「どうですか? これで。」

「ざっと見てみるわ、ちょっと待って。」


≪カタカタカタカタ……≫


「……(どきどき)」

「へぇ、やっぱり やるもんじゃない。 問題ないわ。」


夕飯が済むと、俺は昨日今日のシミュレーター・ログを持って執務室に向かった。

メシは何時も通り まりもちゃんと食ったんだけど、ホントにニコニコしてたよ。

EXじゃ普通なんだろうけど、オルタじゃ有り得ないなら笑顔が逆に怖かった。

まぁ……深くは考えない事にしよう。 んで、ゆーこさんにログを渡すついでに言ってみた。


「まりもを不知火S型に乗せたい~?」

「良いですか?」

「別に問題ないわよ。 それにしても 何で?」

「明日 夕飯の後、訓練する事になったんです。 だから軍曹にも慣れて貰おうと思って。
 榊達にもいずれ不知火S型には乗る事になりますから、教官として。」


流石に最初の実機は吹雪かもしれないけど、その辺はどうなんだろう?


「ふ~ん……まりもと、ねぇ。」

「はい。」

「ん~……」

「ゆーこさん?」

「――――決めたっ!」

「な、何をです?」

「明日のオペレーター、あたしが手伝ってあげるわ。 感謝しなさい。」

「ホントですか!? でも、忙しいハズだったんじゃ。」

「ちょっと位なら大丈夫よ。」

「はぁ。」


……どう言う風の吹き回しだ? まぁ、いちいち端末と筐体を往復するよりは断然マシか。

それに不知火S型も機密に入るんだろうから、他の人には任せられないっぽいし。

あぁ、でも霞やピアティフちゃんなら大丈夫かな~?

でも 色々と教えながらやる訓練だし、いちいち人の手を借りるのも、どうだかなあ……


「まりもの午後の指導は中止にして、訓練兵達にも見学させましょう。
 そんでもって、シミュレータールームも1時間は貸切にして――――」

「はぁ。(1時間だけ?)」

「白銀……ちょっと耳 貸しなさい。」

「はい。」


何を思いついたか知らないけど、ゆーこさんは考えを随分とエスカレートさせている。

それを黙って見ていると、手招きされたので近付いで耳を寄せる。

あっ……やっぱり良い匂い。 でも彼女が口にした内容で、俺の顔が引き攣った。


「さ~て、明日が楽しみね~っ!」

「…………」


――――ゆーこさん、やっぱり貴女は恐ろしい人だ。




……




…………




2001年10月28日 午前


「ばいばい。」

「ちがうぞ、霞。」

「……?」

「その場合は、"またね"って言うんだぞ?」


今朝は霞とそんなやり取りをし、朝食では まりもちゃんに ゆーこさんが来る事を伝えた。

そして昼迄はシミュレーターの最終調整。 とにかく、不知火S型に体を慣らしておく。

勿論 台詞は自重しない。 一昨日はダ●ゲルにしたから、今日はラ●サスにしておこう。


「い、伊隅大尉!? うわああああぁぁぁぁぁっ!!!!」


ヴォールク・データの中層で大破。 相変わらず密度が凄い、XM3ないともう無理だわ。

でもなんで彼女の名を叫んだかって? だって大尉ってこの人ダケだもん、沙霧はヤダし。

けど……嗚呼、楽しい。 実戦しないでデータ取ってるだけで仕事になるなら一生やっていたい。

だがBETAと戦うからこそのシミュレーターなのだ。 いずれ賭けるのは命、リスク高ぇぜ。

しかし多くの衛士は死ぬ事を前提として励んでいるんだろう。

天皇陛下バンザーイッ! ……まぁ、俺にはこの世界に10年居続けても理解出来ないだろうね。


「おっ? 皆 もう居たのか。」

「――――敬礼ッ!!」


控えめに昼食を取ってシミュレータールームにやって来ると、まりもちゃん達が居た。

慣れない場所でギコちない様子のB分隊4名も一緒であり、まりもちゃんの言葉で皆が敬礼する。

それに俺もヘタクソな敬礼で返すと、スタスタと ゆーこさんもやって来た。


「もう揃ってるみたいね~。」

「敬――――」

「はい、ストップ。 あたしに敬礼は要らないわよ?」

「……はぁ。」


敬礼を制止され、まりもちゃんは溜息に似た相槌を漏らす。

流石のゆーこさんだぜ……俺は空気を読んでいるが、彼女はフリーダムだ。

……えっ、お前が言うな? 全て脳内だからノーリスクだ、何も問題はないさ☆

さておき、B分隊4名は香月副司令の登場で緊張気味だ。 まぁ、当たり前か。

榊あたりはもっとオーバー・アクションすると思ったが、まりもちゃんが事前に言ってたんだろう。


「それじゃ、白銀 まりも。 着替えてきなさい。」

「ほ~い。」

「了解。」

「榊達は楽にしていなさい、あたしは設定を弄ってるから。」

「は、はいっ!」


ゆーこさん。 名前を連ねたダケなのは判りますが、間にディレイを入れてください。

白銀の嫁になる まりもちゃんを想像してしまったではないですか。

……って、気付いたら まりもちゃんは歩き去っている。 俺もさっさと着替えるか。




……




…………




「お待たせしました。」

「済んだわね? それじゃ~早速 始めるわ。」

「あの、ゆ……副司令。 訓練兵まで連れて来て何を始めるんですか?」


流石に俺の方が着替えるのが早かった。 当たり前だよね。

しっかし……たまんねぇなあ。 まりもちゃんを直視するのだけは絶対に止めて置こう。

ここで息子が大破したりしたら、戦術機まで大破して情け無い事になってしまう。

それはそうと、まりもちゃんは ゆーこさんが来た理由が判らない。 俺は知ってるけど黙っておく。


「まりもには、これから白銀と戦って貰うわ。」

「えっ!?」

「白銀は不知火に改良を加えた新型に乗るけど、構わないわね?」

「ま、待ってくださいっ! 聞いてませんよ!?」


そりゃ~聞いてないよなぁ。最初は二人で軽く訓練するダケのつもりだったのに。

今なっては午後の指導を中止し、訓練兵までもが見学に来ている。

彼女にとっては予想外だろう。 勿論、俺にとっても予想外なんだけどね。


「あら何? 白銀に負けるのが怖いの~?」

「!?」

「まぁ、そうかもね~。 確かに まりもと白銀じゃ、勝負にならないかも。」

「むっ……そんな事はありません! 確かに少佐の腕は一流だと思いますが、
 私だって少しくらいは戦えますッ。 馬鹿にしないで下さい!」

「ふふん。 なら、決まりね?」

「――――少佐、宜しくお願いします!」

「は、ハーイ。」

「まりも、白銀に勝てれば階級を大佐まで上げても良いわよぉ?」

「!? し、少佐! 手加減抜きでお願いしますっ!」

「はぁ。」


煽るゆーこさん、釣られるまりもちゃん。 でっかいおっぱいが釣れましたねぇ。

特に"大佐にしても良い"って事は まりもちゃんが微塵にも勝つ可能性が無いと言うのと同じだ。

まりもちゃんは流石にそれにはカチンときたらしい。 でも俺はヒクヒクと苦笑いをするしかない。


「……榊。 あんた達はこれから初めて新型を拝めるのよ?
 まだ見ているのは、あたしと 白銀だけ。 自分が設計してなんだけど、かなりの機体よ?
 いずれ あんた達もテストする事になると思うから、しっかり見ときなさい。」

「はっ、はい!!」


まりもちゃんには悪いが、ゆーこさんには逆らえない。

俺は筐体に向かい、まりもちゃん もプンプンと別の筐体に入る。

そして着席すると すぐさま網膜投影で ゆーこさんと まりもちゃん顔が出てくる。

ゆーこさんはニヤニヤとしており、まりもちゃんは至って真剣な表情だ。


『マップは市街戦。 まりもは不知火、白銀は新型の不知火S型。 ここまでは良い?』

「はい。」

『問題ありません。』

『武装は まりもが迎撃後衛、白銀が強襲前衛 仕様。 これも大丈夫?』

「OKっス。」

『同じく。』


迎撃後衛も強襲前衛も役目は違えど武装は殆ど同じ。

――――87式突撃砲×2(36ミリ/120ミリ・予備弾倉4/2)

――――74式近接戦闘長刀×2 65式近接戦闘短刀×2

このうち長刀1本を"92式多目的追加装甲"に変え、
突撃砲を一つにして36ミリの予備弾を4から8に増やしたのが迎撃後衛 仕様だ。

意外と詳しいなって? まぁ、色々と別のポジションも試してみたからね。

格闘はかなり度胸が要るから、俺が一番 好きなのは弾倉も多い強襲掃討なんだが、
ゲームと違って勝手に回復するワケじゃないしなぁ。 燃費の良い強襲前衛の方がマシだ。

白銀の十八番は突撃前衛なんだけど、強襲前衛仕様にしたのは盾は邪魔だからだ。

赤い彗星も名言をいってただろ? 実際BETAに一発でも食らえばオシマイだし、
光線級の攻撃を一時的に凌げるのは有り難いが、それよかBETAを倒せる武器を多く持つ方が良い。

俺の好きなゲームは盾なんて意味無かったから、こっちの方が定着しているんだ。

それ以前に、一対一だとポジションなんて関係無い。 武器だけで選んでいる。

ポジションは? ……と聞かれれば、当然 白銀の得意な突撃前衛、武器変更も視野に入れるか。


『まりも、新型について何か聞きたい事は有る? 少しは粘れるかもよ~?』

『……ありませんッ。』

『あら、そぉ? それなら始めるわ――――状況開始。』

「お願いしまぁ~す。」

『――――ッ!!』


≪――――ズシンッ≫


ゲームを思い出して、名も知らない味方と組んだ時の様に"お願い"をしてしまった俺。

すると御気に召さなかったのか、リンクが切れる直前に まりもちゃんの顔が更に引き締まった。

確かに真剣勝負で言うべきじゃなかったかな……でも俺、緒事情で緊張感が……


「(……あれが新型の不知火S型? 少し大きいわね、何か意味が有るのかしら?)」


≪――――ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ≫


「(……機動性はこっちの方が有りそう。 白銀少佐の腕を考えれば、
 接近戦は厳しそうだし、距離さえ詰められなければ……いけるかしら?)」


俺は開始直後から、数百メートル離れた不知火の方へと一直線に走っている。

まりもちゃんは その場で こちらの様子を伺っており、両手には突撃砲と盾。

距離はまだ有るし、RPGではまるで意味が無いけど、相手の動向を探るのも良い策だ。

それにBETAに対して盾の重要性は微妙だと思うけど、戦術機同士だと有効だよなあ。

互いにマシンガンを持った人間が戦えば、盾を持ってたほうが有利だろうし。


「はしる~、はしる~、おれ~た~ち~、切り裂くBETAをそのま~ま~に~♪」


小声で歌う俺。 不知火S型はまだ、何も武器を手にしていない。

……案外この歌、流行るかもな。 くだらない事を考えながら距離を詰める。

そんで有る程度距離を詰めると、長刀を無造作に抜き、変わらずそのまま走り続ける。


「(ど、どう言う事? 何で、この距離で長刀を持って無造作に走ってくるのッ?
 そろそろ射程内よ? こっちは突撃砲を構えているって言うのに……)」


走ってくる俺に対し、まりもちゃんも未だに突撃砲と盾を構えて警戒している。

俺の行動を疑問に思っているのだろう。 何せ水平噴射さえしないんだからな。

竹槍を持ってマシンガンを持つ相手に、特攻しに逝っているようなもんだ。


≪ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ――――≫


「(少佐は何を考えてるの? それ以上 近付いたら、幾らなんでも避ける事は――――)」

「白銀フラッシュッ!!」


≪――――ドオオォォォォンッ!!!!≫


「きゃあっ!?」


120mm滑空砲の射程内にはとっくに入っているが、中距離で撃たれても当たる気はしない。

だって白銀が相手だ。 俺の動きを見ていた時にそれは判っていた だろう。

けど……チェーンガンの有効射程内だと別だし、今 まさに不知火が射撃を開始しようとした時!

直前。 俺は走りながら、マルチ・ランチャーを不知火に無造作に発射すると、直後に噴射行動。

対して誘導性は高いが まりもちゃんの腕の為か命中はしていないようだ、噴射跳躍に避けられる。


「い、今の攻撃……何なの!? ――――えっ!?」

「ウッディ!!!!」


≪――――ガシュウゥッ!!!!≫


「!? そ、そんな……っ!」


"相手が射撃武器を持っていないのに撃たれる"と言う、予想外の出来事。

弾速はチェーンガンの方が上なのに、盾あれど まりもちゃんは慌ててしまったんだろう。

腹部マルチ・ランチャーはまだ仕方ないけど、頭部バルカン砲の概念すら無いんだなあ。

俺は一気に距離を詰め、まりもちゃんは長刀による一撃を食らって大破。 盾も無意味。


『神宮寺機。 致命的損傷、大破。 ぷっ……――――状況終了。』

『……っ!?!?』


――――俺は30秒で勝った。 ゆーこさん、鬼ですかアンタは。




……




…………




「――――まぁ、そう言う訳で。」

「…………」

「BETAを相手にする時は、いかなる時でも油断をしてはいけないわ。
 実戦でも教科書通りに対応しようとしたら地獄を見るわよ? 常に裏の裏を見るの。」

「…………」

「……ね~え? ま・り・もっ?」

「う、うぅぅ~……っ!」


戦いが終わると一旦 筐体を出て、唖然とする訓練兵を前に、
俺とまりもちゃんを左右に、ゆーこさんがニヤニヤとしながら何か言ってる。

対して まりもちゃんが酷い。 これは酷い。 猫背でめっちゃ情け無い顔をしている。

ほらEXのアレだ。 "有明は……有明だけは嫌なのよぅ~!"と言う時のヤツだ。

ゆーこさんは まりもちゃんのクセを全部 知っていて、俺に最短で勝たせるアドバイスをし、
彼女を煽って不知火S型の兵器についてを何も教えず、訓練兵まで呼んで恥を晒させた。

……だが、まりもちゃんは全て自分のミスだと思い込むだろう。

何せ人に教える立場の人間なのに、死の8分どころか30秒で負けてしまったからだ。

しかも そのうち20秒以上はS型が普通に走っていた以外、何も状況の変化が無かったのよね。

その"走っていたダケ"なのが彼女を必要以上に警戒させ、俺はアソコまで距離を詰めれた。

さっさと噴射で近付いていたら、早々と弾幕を張られ、残骸に逃げられていただろう。


「ふっ……くくくっ。 あっはっはっはっ! 可っ笑しい~っ。
 30秒! 30秒よ? あんなに早く負けた まりもなんて初めてみたわよ~っ?」

「あうっ、あぅあぅあぅっ……」

「もうサイコーっ、久しぶりに良いものが見れたわね~。
 ……ふぅ。 それじゃあ榊、アンタ達は自習しといて。 解散っ!」

「は、はい。 敬――――」

「いらない、いらない。 それじゃ~白銀 まりも。
 やっぱ午後はずっと貸し切りにしておくから、仲良くやんなさ~い。」

「はぁ。」


ゆーこさんは笑いを堪える感じでスタスタと去って行った。ディレイ入れてください。

!? ちょ……おまっ。 それはそうと、いちいち榊達を呼んだのはその為ダケなのかよ!?

見学相応の事も考えてくれてたと思ったのに、トコトンやるなこの人……

だが 榊達は空気を読んだらしく、まりもちゃんを哀れむ視線を向けると、
各々が無言で俺に敬礼して去って行った。 ちなみに、彩峰は口元で笑いを堪えてた。

そして残ったのは、俺と"これは酷い状況"のまりもちゃんダケになる。


「し~ろ~が~ね~しょ~さ~?」

「は、はい。」

「うぅっ……お願いします、私を一から鍛え直してくださいっ!」

「えー。」


涙を流す まりもちゃんに対し、俺は引いて嫌そうな顔をした。 可愛いけどね。


「お願いしますっ、私 何でもしますから~ッ!」

「何でも?」


私、何でもしますから。 エロゲーだと確実にラブシーン・フラグだろう。

だが……今の まりもちゃんの顔が余りも情けな過ぎて、全くその気は起きなかった。

よって普通に教える事にし、この顔ではマズいのでとりあえず宥める事から始めた。


「はい~っ、だからお願いしますぅ~っ!」

「はぁ。 ……まぁ 約束ですからね、シミュレーターには付き合いますよ。」

「あ~り~が~と~う~ご~ざ~い~ま~す~。」

「あの、だから。 とりあえず、語尾を延ばすのと 泣くのは止めて下さい。」


さっきからボディを直視してるんだけど、魅力が相殺されている……助かった。


「落ち着きました?」

「は……はい。」

「それじゃあ、新型でヴォールク・データを流して見ます。 先ずは見ててくださいね。」

「……わかりました。」


――――それからは、何とか終わりまで順調だった。




……



…………




そして、夕食。 ピンポイントな時間だったので混んでいた。

よって5分ほど並ぶ事になり注文を済ませると、相手席に適当に座った所が、
タマタマ207B分隊の席と近かったらしく、何やら"さっきの事"を話していた。

こんな時は、ついやっちゃうんだ☆ 俺は体を丸めて聞き耳を立てる。


「さすが白銀少佐……あの神宮時軍曹を僅か30秒で撃墜してしまうとは……」

「でも……軍曹って元中隊長で中尉だったって聞くわよ?」

「……少佐が強いのかな。」

「そうだよ~、やっぱり少佐って凄い人だったんだね~。」


いやそれ、S型のお陰ですよ? ヨイショされてもプレッシャーなんですけど。

俺は走って跳んで斬った以外は、特に何もしてません。

けど……まりもちゃんの悪口を言わないあたり、彼女を尊敬しているんだろうな。


≪お願いしますっ、私 何でもしますから~!≫


≪だったら脱げ! 俺様の機動概念を、先ずは体に叩き込んでやる!≫


「まりもちゃん……ハァハァ。」


――――今夜はまりもちゃんで、とうとう犯っちゃったんだ☆




●戯言●
EXみたいに香月博士にイジめられる姿が書きたくて、ついやっちゃったんだ☆他意はないです。
自分で勝手に設定してなんですけどS型、何も知らない衛士にはタイマンでかなり強いのでは。
そんなワケで、今回は軍曹云々以外はちっともひどくないですね。自重できて良かった。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ9
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/30 23:24
これはひどいオルタネイティヴ9




2001年10月29日 午前


「……またね。」

「あぁ、またな。」


"こっちの世界"に飛ばされてから、今日で一週間が過ぎた。

早かったんだか長かったんだが……何だかんだで色々と有った。

そのうち"新戦術機"を作って貰うって言う大きく正史を変えた事したけど、大丈夫かな~?

まぁ、俺が佐官なってる時点でアレだし、今更 気にしても仕方無いんだけど……

一つだけヤバいと思っているのは、俺が訓練兵じゃないから、
207分隊の4名との交流が、此処一週間 正史よりも遥かに少なかったって事だ。


「ん~。」


だから、鎧衣が来るまでに時間を見て"好感度"上げておく必要があるかもしれない。

寂しくシミュレーターでも良いんだけど、ぶっちゃけ もう"飽きた"んだよね。

まりもちゃんに教えるのは別なんだけど、一人でやっても これ以上 上達できない。

例えれば、一人でオンライン・ゲームをプレイしているようなもんだ。

小隊を組めれば連携についての云々がこれでもかって位 学べると思うんだけど、
これから当分 乗る羽目になる"不知火S型"は機密だし、今の俺には仲間さえ居ない。

ヴォールク・データをやってもXM3が完成しないと、
数十分掛けて集中したとは言え、記録を1mや2m伸ばす位にしかならない。

つまり、俺の"操縦力"が戦術機の"限界反応"をとっくに越えてしまってるんだよね。

だから朝食を終えると、俺は自室で207B分隊の情報シート(+α)を見ていた。


「これかっ?」


――――榊 千鶴。


「これかぁ☆」


――――御剣 冥夜。


「こっちの方が良いかな?」


――――彩峰 慧。


「これもいいなぁ☆」


――――珠瀬 壬姫。


道化師のノリで情報シートを吟味する俺。 ……キモッ!

また、少佐の特権で他の人の情報シートも持っており、そっちにも目を通す。

やっぱりこっちも捨てがたい……今回は、そっちの誘惑に負けちゃったんだ☆




……




…………




「ピアティフ中尉、今日は助かりましたよ。」

「恐縮です。」

「ありがとう。 その見返りで、俺にできる事が有ったら何でも言ってくれませんか?」

「!? いえ、そんな……私が好きでさせて頂いた事ですから。」

「遠慮は要りませんよ?」

「そ、そうですか? では、シミュ――――」

「……っ……」


ヤベ!? む、無意識のうちに嫌そうな顔をしてしまったではないかッ。

ピアティフちゃんにオペって貰うのは大歓迎なんだけど、
シミュレーターに飽きていた所為で、この顔……この顔が勝手に……っ!

それよりも何をしてんのかって? 地下を案内して貰ってました、引き受けてくれて良かった。


「――――いえ、私の独り言を聞いて頂けませんか?」

「えっ? まぁ、そんな事なら。」

「……少佐の過去に何が有ったかは遠く察せませんが……あまり自分を責めないで下さい。」

「は?」

「そ、それだけですッ。 ……では、失礼します!」

「あっ。 どうもでした~!」


……はて? 意味が判んないんだけど、今の"自分を責めるな"ってのは、
正史じゃなくても気にするなって事か? 過去って言っても一週間しか経ってないんですけど。

ピアティフちゃんがそんな事を知ってるワケないんだけど、何か今ので安心したな。

けど……チクショウ、デートし損ねたな~。 いや、だから違うってッ!(いい加減にしろ)


≪くっ……俺がちゃんと考えてれば"こんな事"にはっ!≫


「(毎日"一人"でシミュレーターに没頭しているなんて、死に急いでいるとしか……だから。)」




……




…………




2001年10月29日 午後


好感度イベント発生、夕食前 俺は何故か横浜基地の屋上にいた。

目の前には彩峰の姿。 そう……俺はこれから彼女に求婚するんだ。

そして今夜は初夜を……って、これってそう言うゲームじゃねぇから!


「何か用?」

「ゴホン。 彩峰君、キミは此処最近 頑張っているようだから、これを進呈しよう。」

「!?」

「――――ロードローラーだァっ!!」

「どう見てもパン。」

「的確なツッコミありがとう、これは"やきそばパン"だ!」

「ふぉお……?」

「さぁさぁ、遠慮なく貪り付くが良い!」


取り出しまする、やきそばパァーン。 京塚のオバハンに言って材料を貰い、何とか5個作った。

料理はヘタクソだから夕方まで掛かっちまったが、良い感じのが出来たぞ~。

そんな努力の結晶をアッサリくれてやるのは若干 癪だったので、
やきそばパンのサランラップ(っぽいの)を剥がすと、それを股間に持って行ったんだが……


「――――ぱくっ。」

「な、なんですとぉ~っ!?」


ちょ……おまっ、ヤキソバ好きにも程が有るだろッ!?

跪くとデカい口空けて躊躇無く"ぱっくん"と食いやがったッ! なんて芸人根性してやがる!

これは流石に遣り過ぎだと思ったんだが、俺は彩峰を甘く見過ぎていたようだ。


「ん……美味しかった。」

「(ゴクリ)」


――――上目遣いで口元を拭うと、ゆっくり立ち上がる彩峰。

絶対狙ってやってるだろ? こいつ。 襲い掛かりたいんですけど。


「少佐?」

「!? そ、そうか……美味いか、それなら良かった。」

「もっと食べたい。」

「よしきた、任せておけ~ッ。」

「何でチャックに手を?」

「すまん、自重する。」


――――よ、読まれた!? いや、当たり前だろ。

見たまんまを言ったダケなんだろうから。


「じ~……っ。」

「見つめるな、そして口に出して言うな。」

「サーセン。」

「はははっ……全く、お前には負けたぜ。 全部やるから食っちまえ!」


こんな遣り取りが、彩峰が全ての やきそばパンを食い終わるまで続いた。

マジ潤うぜ……こんな娘が、オルタでは恋を実らせずに死ぬなんて絶対に間違ってる。

白銀は気付いてすらやらねェし……ガラにも無く正義感 染みた事を思ってしまった。


「(少佐……もっと早く、会いたかったな……)」




……




…………




夕食を終えると、俺はシミュレータールームに直行する。

予想通り、榊達に何やら彩峰が質問攻めを受けていたようだが、
俺さえ翻弄するアイツの事だ、誤魔化す事なんて朝ヤキソバ前だった だろう。

んで……まりもちゃんとの訓練を終えると、軍服に着替えて再び対面する。


「少佐、今日も有難う御座いました。」

「お疲れ様です。」

「本当に勉強になります。 この操縦が行き渡れば、戦死する衛士は明らかに減少する筈です。」

「そりゃどうも。 こっちとしても軍曹は、覚えが早くて助かりますよ。
 人にモノを教えるのは、あまり得意じゃないんで。」


まりもちゃんは、朝は昨日の事も有ったし、少し"どよ~ん"としていた。

だって榊達に情け無い姿を晒しながらも、引き続き教官をしないといけないんだからな~。

すると想像した通り、夕飯時の彼女は疲れた顔をしていたので、ちょっと心配だった。

けど……夜の訓練は順調。 非常に飲み込みが早いし、やはり"意気込み"が違うようだ。

マニュアルでのサブ射撃の切り替えも問題無いし、俺のログで復習もしているらしい。

あの情け無い姿を見た時は相当 不安だったが、流石は軍人。 立ち直りが早いぜ。


「ふふ、恐縮です。 ……それに、不知火S型も素晴らしい機体ですね。」

「気に入ってくれました?」

「はい。 "サブ射撃"と言うモノが、こんなに戦いを楽にさせてくれるとは思いませんでした。」

「えぇ。 ハイヴ攻略の時は特に重宝すると思いますよ?
 常に移動し続けている必要が有りますから、両手が塞がるディレイが多いですし。」

「そうですね……はぁ~。」

「ど、どうしました?」

「中隊長を経て教官となりながら、私も全く成長していなかったと思いまして。
 ハイヴ攻略を想定した機動概念 及び新戦術機など、考えた事がありませんでしたから。」

「それは大丈夫です。 皆 同じですし、知らなかったら今から知ってゆけば良いダケですよ。
 あと……不知火S型は、こんなモンじゃないです。 新OSが完成すれば、
 例え単機だろうと反応炉まで辿り着ける可能性を秘めていると思いますよ?」

「!? それは、また……」

「まぁ、単機じゃ反応炉は壊せませんから、一人や二人 頑張るダケじゃ無意味ですけどね……
 だから、これから広めていくんです。 こうやってテストをしたりして。」

「わ……私にも、出来るでしょうか?」

「勿論です。 だから、お互い頑張りましょうね?」

「は、はいっ! 少佐……このテストに参加できた事を、誇りにしようと思います!」


……これなら、今月中には教える事は無くなりそうだ。

しっかし、ホント上官気取りは慣れたモンじゃないな……恐縮なんてこっちの台詞なんですけど。

けど これも"目的"の為。 まりもちゃんは喜んでくれてるんだし、調子に乗っちゃおうじゃないか。

俺は敬礼して立ち去る まりもちゃんの尻を堪能しながら見送ると、
大きな溜息を吐いて肩の力を抜き、ヤレヤレなポーズを取りながら首を捻った。


≪ん……美味しかった。≫


≪だが 少し零してるぞ? お仕置きだ!≫


――――いいえ、ケフィアです。

えっ、今日のオカズ? 彩峰に決まってるじゃないですか、当たり前でしょ?

ピアティフちゃんも際どいトコロだったんだけど、また犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年10月30日 午前


「何の用ですか? ゆーこさん。」

「今日はアンタに紹介したい娘が居るのよ。」

「おっ、マジですか? できればハタチ以下でポニーテールの娘とかだと嬉しいんですけど。」

「バカ言ってんじゃないわよ。 それ以前に、もう後ろに居るじゃない。」

「…………」

「うわっ、びっくりした。 ……え~っと。」

「――――は。 白銀少佐、私は伊隅 みちる大尉であります、
 副司令の下、今はA-01の部隊長を務めさせて頂いております。」

「お~。」

「今迄 特殊任務に当たらせていたのよ。 戻ってきたし、丁度良いと思って。」

「…………」


霞にゆーこさんが呼んでいると言う伝達を貰うと、朝食後に俺は執務室へと赴いた。

すると何時の間にか背後に居たのはヴァルキリーズの部隊長、伊隅大尉だった。

……か、完璧な人 出てきちゃったよッ! なんか登場、早すぎじゃね!?

しっかし、ちっとも気配を感じなかったな……いや、俺の緊張感が無さ過ぎたダケだけどね。

対して軽く自己紹介を済ますと、伊隅の視線に俺を吟味するような何かを感じた。

無理も無いか。 いきなり副司令に対してアホな事 言って、しかも見た目が若いんだしな。


「伊隅、白銀が若いって思わなかった?」

「……あっ、はい。 誠に失礼ながら。」


流石 天才のゆーこさん、早くも彼女の考えを読んだらしい。

まぁ、伊隅の気持ちも判らないでもないか。 むしろ妥当だろう。

俺も必死に生きてる中だったら、イキナリこんなノリの上官を紹介されたら萎えるよ。


「見ての通りのヤツだから、失望するのも無理もないわね。」

「――――酷ッ!?」

「でも、人は見掛けによらないわ。 まりもを30秒で大破させた変態よ?」

「な……っ!?」

「ちょっ……あの、変態って……?」

「何か文句あんの? 変態さん。」

「くっ、変態じゃないです……仮に変態だとしても、変態と言う名の紳士ですよ……」

「は?」

「流してください。」

「…………」


そんなバカな会話をしている中、伊隅は黙って俺を見ている。

……あれっ? 何だか、俺を見る目が180°変わった気がするんですけど。

あぁ……以前は自分の教官だった まりもちゃんに勝った事に驚いているのか!

しかも反則技とは言え30秒だからな……彼女を尊敬する伊隅なら驚愕だろう。


「大尉?」

「!? あっ、失礼しました。」

「ところで ゆーこさん、用ってそれダケですか?」

「そうよ。 何か用事でも有るの?」

「えぇ、例の如くシミュレータールームにでも行こうかと。」

「ご苦労な事ね。 そんなら行って良いわよ?」

「どもッス、それじゃ~大尉。 俺はこれでッ!」

「――――はっ。」


≪ガシュ――――ッ≫


ぶっちゃけた話、俺は若干 冷や汗を感じていた。 出撃フラグだと思ったからだ。

チキンと言いたければ言ってくれ、俺はXM3が完成しない限り実戦は避けたかった。

戦術機の性能を活かせぬまま死んでゆけッ!? 丁重にお断り致します。

だから退室したい事を促すと、嫌な予感は外れたようなので安心して執務室を出る。

……まぁ、"用事" があるのは本当だけどね。 あと今A-01と関わるのも正史に反するし。


「副司令、先程の話は……」

「本当よ? その時、白銀は新型の不知火に乗ってたけどね。」

「新型……ですか。」

「気になるみたいね?」

「はい。」

「まぁ、新型については近いうちに判るから待ってなさい。
 白銀は……とにかく"背負ってるモノ"が尋常じゃないってとこかしら?」

「!? 副司令でも、計り難い衛士と言う訳ですか。」

「ん~……癪だけど、そうとも言うかも。」

「ふむ……」

「ふふん。 案外、速瀬あたりを嗾(けしか)ければ面白いモノでも見れるかもよ?」

「……!?」

「あの様子だと、午後もシミュレータールームに居るんでしょうしねぇ~?」

「…………」




……




…………




2001年10月30日 午後


昼飯を終えると、俺は再びシミュレータールームにやって来た。

……えっ? 一人で訓練するのは飽きてたんじゃないかって? その通りさ☆

実を言うと、今は軍服のままで訓練せずに、衛士達の様子をひたすら見ているダケだった。

長椅子に腰掛け、まるで……お小遣いが足りない子供が大人のプレイを眺めているように。

べっ、別に連携 組んでる様子が羨ましいなんて思って無いんだからね!?

冗談はさておき。 当然 意味は有る。 俺が"女衛士"の強化装備 仕様に慣れる為なのだッ!

今は一人か二人で訓練しているけど、近いうちにエロスーツを直視しまくる時が来る。

だから、今のうちに耐性を付けておく必要が有るのさ。 結構重要だよ? これ。


『くッ、白銀少佐……戦死なされるとは……』

『私達が不甲斐無いばっかりに……!』

『……珠瀬、どう?』

『す、すごく……大きいです……』


……ねっ、こんな事になりたく無いでしょッ?

それ以前に、場景が見えないって? 大丈夫、俺にも全く見えないから気にするな!

ともかく そんなワケで女衛士達を視姦し続け今に至る。 どうせならコレ位やらないとね☆


「……ん?」


そんな中、遠くにどっかで見たような顔が目に入る。 しかも3人組だ。

あれは伊隅と……ヴァルキリーズのメンバーかな? そうだ! 速瀬と涼宮(姉)かッ!

大方 特殊任務を終えて戻って来たのは良いけど、暇になってしまい、
腕が鈍るから速瀬が無理矢理 涼宮(姉)を誘って伊隅がお守り役ってトコロか?

涼宮(姉)の方は軍服だが、伊隅と速瀬はエロスーツだ……たまんねぇなあ。

よって訓練(?)の為ジロジロと見ていると……注意を怠り、速瀬と目が合ってしまった。


――――ニコッ♪


あややや。 つい、笑って誤魔化しちゃったんだ☆

すると速瀬は俺を指差して、何か涼宮(姉)にベラベラと言ってる。

直後、近寄って来た伊隅に殴られ、そのまま頭を擦る速瀬を無視して近付いてくる。


「白銀少佐。」

「なんです? 大尉。」

「謝罪致します。隊の者が失礼を致しまして、申し訳ありませんでした。」

「んぁ? 良いですよ、そんな事。」

「痛ったぁ~。 大尉~、いきなり酷いじゃないですか~ッ。」

「酷いのは貴様の方だッ、上官を指差して良い訳があるか! 恥を知れッ!」

「えぇ~っ! じ、上官~ッ!?」

「!? し、少佐の階級証……!」

「――――敬礼ッ!」


流石 真面目な伊隅だ。 まぁ、軍人の常識を考えると妥当なところか。

だが場合によっては射殺だぞ速瀬……それ以前に、余り近寄って来ては欲しくなかったな……

我慢するのキツいじゃないですか、これで涼宮(姉)がエロスーツ着てたら逃げ出してた所ですよ?

そんな彼女は事故の所為で若干遅れてやってくると、俺の階級を理解して背筋を伸ばして直立。

直後 伊隅が敬礼してくれ、その様子はA-01だけあって非常にサマになっている。

それは速瀬も同様で敬礼だけはキマっており、俺も立ち上がりカチコチとした敬礼をする。

嗚呼、格好良く胸を張らないで下さい……恥ずかしく無いの? そんな事 思ってるの俺だけか。


「大尉……これから訓練ですか?」

「はい、副司令に暇を頂きましたので。 ……では、紹介致しましょう。 まずは――――」

「それは必要無いです。 既に資料で理解してますから。」

「そうでしたか、失礼しました。」


……嘘だけどね。 現段階でのヴァルキリーズの隊員全員は把握して無いけど、
どうせ知ってる事しか言われないだろう。 スリーサイズとか教えてくれるなら話は別だが。

それと……少しでも直視する時間を減らしたい事を理解して欲しいんですけど。


「それにしても珍しいですよねぇ? 大尉から個人レッスンに誘ってくれるなんて~。」

「さっき水月からそう誘われた時は、また何か適当に理由を付けて来たと思ったんですけどね。」

「遥~、ひっどぉ~。」

「ははは。 まぁ、頑張ってください。 俺は此処で見させて貰いますから。」

「なんなら、少佐も一緒にどうですかぁ~?」

「止めんか速瀬ッ。 白銀少佐の衛士としての腕は一流と聞く、お前の及ぶ様な方ではない!」

「……ふ~ん……少佐、それってホントです~?」

「み、水月! 失礼よっ。」


あれ……な、なんかヤバい空気じゃないですか? どうなってんのっ?

伊隅の言葉で嫌な予感がすると、直後に的中……速瀬が不敵な笑みを浮かべている。

……こいつ、ぶっちゃけ白銀の事 ナメてね? 口だけじゃ信用できないってハラだろ。

少佐なのに見た目が若いから、訓練を此処で見てるダケしかできない、
何処かの"お偉いさん"のボンボンとでも思ってるのかもな~。


「白銀少佐~。 私"一流の腕"って言うのを見せて貰いたいンですけどぉ?」

「やめろ速瀬! 申し訳ありません、直ぐに黙らせますので。」

「……いや、一戦ダケなら良いですよ?」

「し、少佐ッ!?」

「涼宮中尉……何か?」

「い、いえ。」

「やっりぃ~っ! 言ってみるもんですねぇー?」

「とりあえず、着替えて来ます。 ……けど速瀬中尉、その前に条件が有る。」

「なんですか?」

「現在テスト中の、改造型不知火で相手をさせて欲しい。 構わないか?」


――――まぁ、不知火S型には将来 乗って欲しい連中だし問題無いよな。


「そんな事ですか~? ぜんっぜんオッケーですよォ?」

「有難う、では待っていてくれ。」


おっぱいおっぱい……埒があかんぜ、このままでは息子がおっきしちゃうんだお( ^ω^)

よって俺は速瀬の提案を飲むと、条件付きで彼女と戦ってやる事に決める。

ちなみに条件を述べた時は背を向けており、俺は我慢の為かムダに表情が硬かった。

そして背を向けたままロッカーへ向かい入ると……盛大に肩の力を抜いて溜息を吐いた。


「さ~て、腕が鳴るわね~っ!」

「……伊隅大尉。」

「なんだ? 涼宮。」

「あの。 水月を煽ってませんでしたか?」

「ふん……さてな。」




……




…………




『は、速瀬機……致命的損傷、大破。 状況……終了。』


……十数分後、俺は速瀬に勝った。 今は涼宮(姉)が目を"まんまる"にしてオペっている。

非常に可愛いが無理もない。 まりもちゃんは30秒だったが、速瀬は15秒だ。

ちなみに俺は一歩も動いていない。 行動もカチカチとトリガーを引いたダケだし。


「お疲れ~。」

「くっ、うッ……うぅぅぅ~~……っ!!」

「…………」

「…………」


戦闘が終わりリンクを開いた時の速瀬の表情は、放心状態。

それを無視して俺は筐体から出ると、遅れて凄い勢いで出てきた速瀬。

もう……顔を真っ赤にして、これでもかって位に悔しそうだ。 言葉さえ出ない様子。

一方、伊隅と涼宮(姉)は口を半開きで速瀬を見ている。 まさに開いた口が塞がらない状態。

ちなみに内容としては、俺は盾が欲しかったので迎撃後衛 仕様のS型を選び、
状況開始直後 速瀬は射撃戦は不利と悟って長刀を片手に、水平噴射で突っ込んできた。

俺が射撃すれば直ぐに跳躍で回避するつもりだったんだろうが、
限界まで引き付け、無造作に放った胸部マルチ・ランチャーを直撃させる。

……対して、まさにジャストミートッ! 被弾後、速瀬機はその場で仰向けにダウン。

彼女にとっては、始球式でホームランをかっ飛ばされたピッチャーの心境だろう。


「バアアアアァァァァルカンッ!!!!」


その"ついで"に何となくノリで頭部バルカン砲をバラバラと撃っちゃったんだ☆

するとアッサリと速瀬機は大破した。 ……ジャスト15秒だ。

正直……これって着替える必要すら無かったんじゃないのか? 計画通り過ぎで吹きもしねぇぜ。


「そ、それじゃ~俺はこれで。」


……なんか……もう、どうフォローして良いのか判らない。

速瀬の性格を考えれば、悪戯に傷つけてしまうダケだろう。

ならばクールに去ろう、俺はクルリと背を見せて着替えに戻ろうとするのだが……


「ま、待ちなさいっ!」

「(やっぱり)」

「あんなの卑怯じゃないッ! もう一回 勝負しなさいよォ!!」

「やれやれ……一戦だけと言ったハズだろ?」

「うっ……さ、さっきのは無し! もう一回ッ、もう一回だけッ!!」

「ふん、出直してくるんだな。」

「……っ!!」


実を言うと、今の速瀬のギャップは……正直、たまりません。 すごく……可愛いです。

まりもちゃんの時は情けなさが目立ってしまったが、これじゃまた股間がウズいちゃうんだ☆

だから我慢するのを意識しながら、顔を強張らせて最もな意見を述べて去ろうとすると、
速瀬の表情が急に涙目になる。 ……やべぇ、反則だろそれ。

されど現実は非情なのだ。 俺は立ち止まり振り返ってやると上官面を維持して言う。


「だが……どうしても鍛えて欲しいと言うのなら、夕食後 また此処に来るんだな。」

「!? くっ、判ったわよ……覚えてなさいよぉ~~!?」

「フッ……(笑)」

「くっ、くううううぅぅぅぅ~~……っ!!」


き、決まったZE。 ちなみに最後まで伊隅と涼宮(姉)は無言&唖然だった。

速瀬の少佐に対する言葉遣いを、もはや注意する気も起きなかったみたいだね。

さておき――――この後 夕食を摂ったら速瀬の相手をするつもりだったが、急に面倒臭くなった。

だからつい、一緒に御飯を食べてた まりもちゃんに頼んじゃったんだ☆

後から聞いた話だと、速瀬は律儀に俺が来るのを一人で待っていたらしい。


「速瀬中尉、ご無沙汰してま~す。」(にっこり)

「!? じ、じじじじじし神宮寺軍曹ぉぉ~~ーーッ!?」

「少佐は任務の為 来れないそうなので、今夜は私が代わりに御相手させて頂く事になりました。」

「あ……あんの男おおぉぉ~~っ!!」

「ちなみに、貴女に拒否権は有りません。 何せ少佐からの御命令ですから。」

「ちょっ!? か、勘弁してください~~っ!!」

「(本当は今から少佐に教えて貰う筈だったのに……覚悟しなさいよ、速瀬~ッ!)」


……だって、伊隅とかなら教え易そうなんだけど、速瀬はちょっとなぁ。

俺が教えるよりも、まりもちゃんや むしろ彼女に教わった伊隅が教える方が良い気がするのさ。

だから頼んだ、真面目な話。 ……でも、ちょっと勿体無い事したのかな……

!? べっ、別に速瀬のフラグを立てたいと思った訳じゃ無いんだからね!?

けど、どっちにしろ可愛かったのは確かだ。 考えてみれば、速瀬はハタチちょいのポニーテール。


≪この単細胞が!! お前なんて性処理役で十分だァ!!≫


≪くっ、悔しい……でも感じちゃう……っ!≫


――――だから今日も我慢できずに、つい犯っちゃったんだ☆


「あっはっはっはっ! あーーっはっはっはっはっ! 15秒ッ?15秒ーーっ!!」

「……(ごめんね、速瀬。 あれだけログを消して置いてと頼まれながら……)」


ついでに翌日の朝、霞から聞いた話によると。

深夜の執務室に ゆーこさんの笑い声が高らかに響きまくり、なかなか寝付けなかったと言う。

理由は少なくとも、俺には判った。 もはや一生 速瀬はゆーこさんに逆らえないだろう。


「(速瀬が迂闊だったとは言え、白銀少佐の本当の実力は"どれ程"なのかしら? ……判らない……)」




●戯言●
さぁ、速瀬中尉に励ましのお便りを送ろう!嘘です、相変わらず自重できません。
でも実際会話するにあたって、本当に馬鹿が砕けているのは副司令と彩峰だけですね。
けど速瀬中尉あたりはこれからケンカ友達になりかもしれません。先の話ですけど。
こんな主人公を憑依させた私ですが、武に対しての一方的な友情はHomeをどうぞ

●追記●
同日23時ごろ修正させて頂きました、申し訳ありませんorz
①誤字修正②速瀬中尉の年齢設定ミス。情報有難う御座います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ10
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/08/31 22:48
これはひどいオルタネイティヴ10




2001年10月31日 午前


「ん? 今日は少し眠そうだな。」

「はい。 昨日……香月博士が五月蝿くて……なかなか眠れませんでした……」

「なるほど。」

「じゃ……またね。」

「またな~。」

「…………」


何時もの如く起こしに来てくれる霞。 もはや贅沢な目覚まし代わりだ。

最初2~3日には多少ドキドキしたけど、なんだか早くも慣れてしまった。

AFの御剣姉妹みたいな事されたら、ちょっとやそっとじゃ慣れないんだろうけどね。

そんな霞は相変わらず無表情だが、眠そうな仕草くらいは判るようになったし、
他にも変化は有るっ! "またね"からの退室に、若干タイムラグが発生しているのだ。

しかも、ピコピコと頭のアレが動いている。 これは礼を言わざるを得ないッ!!


「霞。」

「……?」

「何時もありがとな?」

「――――っ」


≪バタンッ≫


……でも、即効で退室されてしまった。

今のタイミングで声を掛けても、これ以上のコミュニケーションは難しいらしい。

よって室内に沈黙が訪れると、俺はベッドに腰掛けた姿勢でバイクに乗るような気分で言った。


「BETAが相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない。」


――――いや、例え使えても勝てませんよね。




……




…………




朝食時、まりもちゃんに速瀬の事を聞いてみると、バリバリ鍛えてやったらしい。

勿論 不知火S型には乗せてやらず、不知火同士での(強制)訓練だ。

階級は速瀬の方が高いのだが、終いには上下関係も逆転していたとの事。

ちょっと気の毒な事したかなあ……いや、むしろ速瀬の性格を考えれば復讐が怖いぜ。

今度 出会うまでには、少なくともエロスーツには慣れておかないとなぁ……


「おはようございま~す。」

「!? あ……あら、白銀じゃない。 何の用?」


何時もの様に麺類の朝食を済ませると、俺は執務室に向かった。

例の如くゆーこさんがおり、何か棚のガラスを見て両手で髪型を変化させていた。

その髪型じゃ今の以外 無理がある気がするけどな……なんで そんな事を? まぁ、いいや。

ゆーこさんはコホンッと気を取り直すのだが、何だか機嫌が良い気もする。


「えっと……不知火S型・新システム・新OSの状況が聞きたくて来ました。」

「ふ~ん。 じゃあ、順番に言ってあげようかしら?」

「お願いします。」

「まず不知火S型。 一昨日のうちに最優先で2機組むように指示しといたわ。
 長くてあと1週間もあれば、練習用の吹雪と一緒に搬入されて来る予定よ。」

「そうですか。」


訓練兵の実機はやっぱり吹雪か……まぁ、そりゃそうだろうな。

サブ射撃のシステムが出来上がって無いから、テストさえして無いんだし。


「でも、吹雪5機には頭部バルカン砲を付ける様に指示しておいたわ。
 胸部マルチ・ランチャーは機体の違いやコストの関係で拵えるのは無理だったけど、
 頭部を改造するダケなら、そんなに手間が掛かるってワケじゃないし。」

「おぉっ! 流石ですねー。」

「新しい吹雪の名前は……どうしようかしらね。」

「う~ん、吹雪F型とかで良いんじゃないんですか?」

「その理由は?」

「"元の世界"のゲームのハナシですけど"後期生産型"の意味でした。
 ま~それに胸部マルチ・ランチャーが加わればS型にでもすれば良いんじゃ無いんですか?」

「なら、面倒臭いし それで良いわ。」


かなり適当に考えたんだけどな……良いって言ってくれるなら問題無いか。

まぁ、S型より出回る事も無いだろうし、有って無い様な名前と思えば良い。

こっちの概念を考えれば、頭部バルカン砲だけでも強いとは思うんだけどね。


「システムとOSはどうですか?」

「殆どが済んでるから、タイミングは新型の搬入に余裕で合わせれるわ。」

「成る程。」

「……で、それだけ?」


個人的にはOSを先に仕上げて欲しいところだ、シミュレーターがつまらないしね。

でも……これから言う事を考えると、既に殆どを済ませて居てくれてマジ助かった……

S型と新システムが加わっても正史より遥かに仕上げるのが早いし、やっぱこの人は天才だ。


「いえ、まだあります。 B分隊の総戦技評価演習なんですが、
 11月3日から始めれませんか? 急で申し訳ないッスけど。」

「随分と気の早い話ね。」

「軍曹が言うに、欠点のチームワークは既に解消されてるみたいなんで、
 鎧衣が退院してくれば、さっさと次の段階に進んだ方が良いと思うんです。」

「鎧衣は何時戻るの?」

「明日だそうです。 だから2日に出発して3日に開始……みたいな。」

「ふ~ん……まぁ、バカンスが早まるだけね。 それで良いわよ?」

「有難う御座います。」


ありゃ? 思ったよりもアッサリOKしてくれたな~。

多分……不知火S型が予想以上に"使えそう"と判って気分が良いんだろう。

何せ伊隅以上の衛士を30秒……A-01のナンバー2を15秒で大破させたんだしな。

これで実戦で"結果"も出せば、XM3も相まって俺の事を信頼してくれるハズだ。


「ところで、あんたも行くの?」

「はい。」

「ふ~ん……」

「……?」

「ふぅ~~ん……」

「な、何ですか?」

「正直、アンタが行く必要は無くない?」

「ギクリ。」

「第一、白銀は関係無いじゃない。 別に まりもが居れば問題ないでしょ?」

「ゆ、ゆーこさんだって行くじゃないですか……」

「あたしは休暇よ、文句有んの?」

「無いです。 ……でも、B分隊の皆には行くって言っちゃったんですよ。」

「へぇ。 やる気を出させるのを口実にして、ノコノコと行くなんてやってくれんじゃない。」

「ご、後生です……連れて行ってください。」

「ふふん。 ま~良いわ、勝手にしなさい。」


……さ、流石ゆーこさんだ。 俺が8割は下心で行く事を見抜かれてしまったッ!

本気で生きたきゃXM3無かろうとシミュレーターやってろってトコロだが、
南の島に楽園が待っていると言うのに、俺はそれを見過ごすワケにはいかないのだ。

だが図星な事には変わらないので、俺は苦笑いをしながら話題を変える。


「けど……見合う働きはしますよ、新型が来たら直ぐ実戦で使わせて貰いますから。」

「……どう言う事?」

「最初"20日以内には決定的な証拠を出せる"って言いましたよね?
 "その時"が、そろそろ近付いて来ているって事です。」

「それは何時なの?」

「――――11月11日です。」

「揃ってるわね。」

「ど~してか揃ってます。」

「……で、何が起きるの?」

「佐渡のBETAが新潟辺りに上陸して来ます、結構な数で。」

「!?」

「だから、その時は俺を出撃させてください。 適当に捌いて帰って来ますから。
 もし それが外れたりしたら、俺を追い出すなり殺すなりしても構いません。」

「…………」

「ゆ~こさん?」

「……それだけ?」

「そ、それだけですけど?」

「ふ~ん……てっきりアンタの事だから、日本海の防衛ラインに、
 防衛基準体制2でも入れて~とでも言うと思ったんだけど。」


多くの衛士が死なない事を考えれば、必死にホントだとアピールして指示して貰うべきだ。

……でも、この時の俺は大人になっていた。 ゆーこさんの気持ちも理解できるからだ。

ゆーこさんに成り切って考えれば、正史ならともかく初対面で"あんな事"をした、
俺の言葉を信じるにしては、これはちょっと大きすぎる賭けだろう。


「別に良いですよ。 証拠は何もありませんから、ゆーこさんの好きにしてください。
 どっちにしろ出撃はしますから、それで俺の予知と覚悟を知って貰えると嬉しいです。」

「……そう。」

「それじゃ~失礼しま~す。」


それに何より……オルタの展開さえ知っている俺には、判っていた。

アピールしようがしまいが、予知に対する彼女の判断は決まっている……と言う事を。

俺は、そのまま考え込む ゆーこさんをそのまま、執務室を出て行った。


「(白銀……やっぱり割り切れる奴。 だったら、普段のアンタは……)」




……




…………




2001年10月31日 午後


午前に続いて、昼食後 俺は再びシミュレータールームに赴いた。

勿論 やる事はひとつ。 グヘヘヘヘッ、良い乳してまんな~。

今はこう言う冗談を考える事ができ、耐性がかなり付いてきたみたいだ。


「(し、少佐がまた見に来ているわっ!)」

「(ど……どうしよ~茜ちゃ~ん?)」

「(まいったなぁ~、流石に緊張するね。)」


そんなセクハラ発言を脳内でしながら眺めているのは、207A分隊の面々。

特に涼宮(妹)・築地・柏木の"美乳三連星"が俺の耐性を更に底上げしてくれる。

涼宮(妹)は十分スタイルが良いとは言え、他の女衛士と比べれば胸は普通な方だが、
築地と柏木……特に築地がヤバ過ぎる、最も巨乳なのは彩峰だと思ったが忘れていた。

何と言うロリ巨乳……君達は俺のオカズのネタをどれだけ増やせば気が済むんですか?

もう、こっちの世界だと履歴書で"趣味:自慰行為"って書ける自信ありますよ?

慣れていそうで何処か恥じらいがありそうな表情がたまんねぇ……右のサイドテールも斬新。

柏木もポイントガードやってるにしては乳デカ過ぎだろ、あぁ それはEXのハナシか。


「(とにかく、頑張るしか無いわ! 私達は違うって事を見せるのよッ。)」

「(そうだねぇ~。)」

「(は~っ。 最近 来た少佐が、横浜基地の質の低さに怒っていて、
 シミュレータールームで睨みを利かせてる噂は本当だったのかなぁ~?)」

「(そうみたい……お姉ちゃんの話だと、速瀬中尉をアッサリ大破させちゃったって……)」

「(う、うそぉ~っ!?)」

「(そんな風には見えないのに……最初は一人で訓練してたのもその為かぁ……)」


そう言えば此処最近、何故か訓練する衛士達の様子に違いが出てきた。

鈍い俺が違いに気付くんだから間違いない、皆がキビキビとシミュレーターに励んでいる。

なのに俺は長椅子に座って長々と視姦かよ……何と言うニート。

あっ!? や、ヤバイ……A分隊の連中が俺を見てヒソヒソと何か話している。

こうなったら逃げるが勝ちだッ! 俺は無表情で立ち上がると、スタスタとその場を離れた。

まぁ……最後に最高の訓練(?)が出来た。 A分隊よ……嫌いじゃなかったぜ、また会おうッ。




……




…………




――――夕食後。


「お疲れ様です、軍曹。」

「有難う御座いました。」

「これでもう、今のところ俺が口頭で教える事は無いですね。」

「そ、そうですか……」

「明後日には南の島に出発ですから、間に合って良かったです。
 明日は鎧衣の足りない点をB分隊 皆で補ってあげてください。」

「……わかりました。」

「あれ? 何か元気無いですね、疲れました?」

「そうでは無いんですけど……あの……」

「????」

「お……御暇な時で構いませんから、また個人的な指導をお願いできませんか?」

「そんなの全然 構いませんよ? 俺で良ければですけど。」

「ほ、本当ですかッ!?」

「もちろんさぁ☆」


嬉しかったのでキモそうな笑みで、ついOKしちゃったんだ☆、引かれなくて良かったZE。

そんなワケで……まりもちゃんと不知火S型や機動概念についての最終調整を行っていた。

少なくとも榊達に教える腕については、俺以上に適任になっただろう。 いや、元からか。

しっかし、まりもちゃんも熱心だよなぁ~。 やっぱり志が俺よりダンチだぜ。




……




…………




「御剣、頑張ってるな。」

「し、白銀少佐っ!?」


夜の訓練が終わると、俺は深夜のグラウンドにやって来た。

気配は消しながらゆっくりと。 すると白銀の情報どおり御剣が走っており、俺の姿を見て驚く。

冷静な御剣にしてはオーバー・アクションだな、実戦だともっと驚きの連続だぞ~?

あぁ……影で努力してたトコロを見られたから驚いたのかな? 天才はそう言うのを嫌うしね。


「ごめん、邪魔したか?」

「……いえ、そろそろ切り上げるところでした故。」

「しっかし、御熱心な事だな~。」

「この程度 大した事ではありませぬ。 私は一刻も早く衛士となり、
 戦場に立ちたいのです。 ……少佐のように。」


気のせいかもしれないけど、後者は小声だった気がする。

別に少佐だからって遠慮しなくても良いんだけど、そうもいかないか。


「じゃあ……何が御剣を"そうさせる"んだ?」

「それは――――」

「……?」


とにかく、このイベントでは御剣に"例の台詞"を言わせないといけない。

その後に確か白銀は恥ずかしい事を言ってたと思うけど、どんな内容かは覚えていない。

反面……御剣が毎晩 走っていると言う事さえ、白銀の口から出るまで忘れていたと言うのに、
御剣の"例の台詞"は、何となく印象に残っていたのだ。


「月並みですが、私にも守りたいモノがあるのです。」

「それは何だい?」

「この星、この国の民。 ……そして、日本という国です。」

「成る程ね。」


上官が相手なのか、オルタの時よりも畏まった雰囲気が有る。 当たり前か。

今の言葉を俺には言う権利すら無いけど、御剣が言うには様になってるなあ。

そう思って御剣を見ていると、彼女は表情を改める。 ……あれ、なんか可愛いぞ?


「……少佐。 宜しければ、貴方の守りたいモノとは何なのか、
 私に聞かせては頂けないでしょうか?」

「……っ……」


!? 俺の表情が強張る。 だって……何も考えて無かったんだもんっ!

え~と、何にしよう……"仲間"だとベタ過ぎるし、恋人だと御剣とのフラグが失われる。

適当に"少佐っぽい事"言わないとダメだな……御剣が頼り気な視線を向けて来てるし……


「…………」

「ひとつは"仲間"……もうひとつは"家族"さ。」

「……そうですか。」

「けど今は……どっちも居ないんだけどね。」

「――――っ!?」

「はははっ。 俺は……そんなところさ。」


≪――――くるっ≫


結局 俺はベタベタな事を返答し、後者のフォローを入れた。

そもそも仲間なんて元から居ないし、家族は"あっち"で健在だが"こっち"に居ないと言う意味だ。

これで御剣までとは いかずとも、"少佐っぽい事"にしては及第点だろう。

だが……仲間が居ないと言う事は"友達が居ない"と同じ意味なので悲しくなってしまった。

その為、ちょっと目が潤んでしまったみたいなので、視線を逸らしてしまうと――――


「……っ!!」


≪――――どっ≫


「み、御剣!?」


情けないから逃げようかな~と思うと、何故か御剣がタックルしてきた。

いやいやいや、抱き付かれたんだって! 何ですかこのイベント、聞いてませんよ!?

……と言うか、おっぱいがぁ……おっぱいが当たっているッ!!

思わず体を強張らせる俺。 必死に別の事を考えて、下半身に集まる熱を抑える。


「申し訳ありませんッ!」

「ぇあ?」

「少佐の御気持ちを考えず……無粋な事を言ってしまいました……!!」


≪――――ぎゅっ≫


「……!!」

「……お許しくださいッ。」


なんだ御剣……友達の居ない俺をこんなに気遣ってくれるなんて、なんて良い娘なんだ。

更に おっぱいを押し付けられた時は、もう襲おうかと思ってしまったが、
必死に冷静になると今の言葉に感動してしまい、逆に性欲が抜けてゆくのを感じた。

"許すが良い"じゃなくて"お許しください"なんだなと、意味の無い事も考える余裕もできた。

だが……未だに乳が当たっている事には変わり無い。 俺は硬い表情で静かに口を開く。


「いや……気にするな。 とにかく、離れてくれ。」

「!? し、失礼致しましたっ!!」


そうです、離れてください。 慌てて飛び引かれたのが、ちょっとショックだったけどね。

まぁ~俺を慰めてくれたダケだって言うのに、襲っちまったら元も子もないからな~。

でもなんか御剣の顔が真っ赤な気がするんですけど……暗くて良くわかんねェや。

さっき心臓もバクバク鳴ってたみたいだし、きっとランニングで疲れてたんだろうね。

それはそうと……上官として、慰めてくれた礼を言わなくてはならない。

御剣の魅力にも、これ以上負けてはいられない。 ここは視姦による訓練の腕の見せ所だ。


「……御剣。」

「は、はい?」

「ありがとう。」


≪――――ギュッ≫


「……!?」


俺はドキドキしながらも顔には出さず、御剣に近寄ると静かに抱きしめた。

ついさっき言った事と、今の行動が矛盾しているが、気にしないで下さい。

それはそうと正面から当たってる……当たってるんだが、
ここで勝たなくては、遥かに刺激の強いエロスーツにも負けてしまう。

礼のついでに抱きしめてしまってはいるが、理由として"もう一つ"の目的があった。


「……お前の守りたいモノが、守れるのを祈っているよ。」

「し、少佐……」


≪さわっ……≫


「(計画通り)」

「――――っ!?」


キザっぽい事を言いながら、俺はドサクサに紛れて御剣の髪を触った。

……そう! 目的とは、この変な髪形がどうなってるか触ってみたかったからだ。

う~む……一言でいえば普通。 元ネタのG●-02みたいに硬いと思ってたんだが……

恐らく奇跡が100回くらい重なって、このようなクセッ毛になったのだろう。

神様も髪型に奇跡を起こすぐらいなら、さっさと鑑を救ってやれよと思うんですけど。

そんな事を思っていると、御剣はカタカタと震えているようだ。 ――――むっ?

いかんいかん、そうだった! ピアティフちゃんみたいに尻を触る前に離れよう。


「…………」


≪――――ぱっ≫


「あっ……」

「それじゃ~御剣。 また明日な?」

「は、はいッ。」


……御剣は敬礼をして見送ってくれた。 とっても良ぇ娘や!!




……




…………




≪御剣も、いずれ解る。≫


「……白銀少佐……お許しください……私は、浅はかでした……」


≪誰にでも……失いたくない"モノ"があるのさ。≫


「……っ……お許し……ください……」


……その夜、何故か涙を拭いながら自室に戻る、御剣が目撃されたようだ。

あれ? あいつ影で努力してるトコロを見られるのが、そんなにショックだったのかッ?

珠瀬と言い御剣と言い、原作と違って変な設定が隠されてるモンだな~。


「(……冥夜様……一体、あの男は……?)」




……




…………




「折角だから、俺はあのおっぱいを選ぶぜ!!」


……さてさて、無事にイベントを終えた俺は、達成感を胸に自室へと戻っていた。

そしてベットに潜る中……思い出しまするは、御剣のおっぱいの感触。

"美乳三連星"のおっぱいズも素晴らしかったが、流石に生の感覚には敵うまい。


≪し、少佐ッ……何故、このような事ばかり……?≫


≪五月蝿い! お前は黙ってパイ擦っていれば良いのだァ!≫


――――だから 今夜も御剣をオカズに、つい犯っちゃったんだ☆


えっ? 毎晩毎晩、いい加減にしろだって? おまっ……仕方無いだろッ!?

俺が日中どれだけ我慢してると思ってるんだ!? 勘弁してくださいッ!!(涙)




●戯言●
美琴登場まで書く予定でしたが、冥夜とのイベントに行数を食ってしまったので以後次回。
ちなみに(馬鹿)主人公は人を苗字で呼ぶ癖があります。先生や軍曹のように年齢が近かったり、
社のように霞と呼んでもOKと言われれば名前で呼びます。(純夏は必須なので最初から名前)


●皆が白銀(馬鹿)をどう思っているのか●
副司令:????
ウサギ:????
軍 曹:尊敬できる上官
オペ娘:放って置けない
御 剣:尊敬→謙遜
 榊 :信頼できる上官
彩 峰:理想の上官
珠 瀬:格好良い上官
伊 隅:謎の上官
速 瀬:ギャフンと言わす
涼宮姉:興味ある上官


●追記●
同時23時頃、冥夜云々で矛盾点が有ったので修正しました。申し訳ないorz
彼女が深夜に毎晩走っていた事は、白銀本人に聞いたと言う事に変更しました。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ11
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/01 21:59
これはひどいオルタネイティヴ11




2001年11月01日 午前


「此処か~?」


俺は白銀の情報を頼りに基地内を歩き、校舎の窓際の廊下の様な場所で足を止めた。

どうやら"この位置"が、白銀と鎧衣が間も無く出会う場所で間違い無い様だ。

流石に白銀は"何時何分"かは覚えていなかったので、とりあえず朝飯を食ったら直行した。


「…………」


う~ん……めっちゃ暇だけど、とりあえず待つしかないか。

俺は腕を組みながら壁に背を預け、ひたすら鎧衣がやって来るのを待つ事にした。

5分経過……10分経過……もうッ、レディを待たせるなんて失礼しちゃうわ!!

待つ事と並ぶ事は あまり好きでは無いので、俺は無意識のうちに仏頂面になっていた。


「おっ……」


……そんな最中、かなり遠くの方から走ってくる人影が見える。

あれは……良しッ、鎧衣っぽいな! 白稜柊高校っぽい制服の姿だし、判り易くて助かる。

よって仏頂面は変わっていなかったが、心の中では喜んでおり壁から背を離した。


「あっるぇ~?」( ・3・)


……すると、何故か。 鎧衣っぽい娘は急に立ち止まると歩き出し始めた。

しかも背筋を伸ばしてるっぽいし、思わず俺は変な声を出してしまった。

あぁ、そうか! 鎧衣は滅茶苦茶 目が良いらしいから、俺が佐官だと気付いたんだろう。

確かに佐官クラスの人間の視界で、パタパタと走ってれば怒られるだろうしなあ~。

俺は心の中で苦笑すると、スタスタと鎧衣に近付く。 対して鎧衣は目線を合わせ様としない。


「――――っ。」


そんな緊張の中、有る程度 接近すると鎧衣は無言で敬礼した。

これは横浜基地内を歩いていれば日常茶飯事なので通り過ぎるトコロだが……

俺はその場で立ち止まると、鎧衣に向き直って相変わらずヘタクソな敬礼を返した。

すると予想通りだ。 歩きながら敬礼をされると思った鎧衣は目を丸くしている。


「えっ、え……っ?」

「君は"鎧衣 美琴"かい?」

「は……はい。 どうして、ボクの事を?」

「俺は"白銀 武"……207B分隊の皆から、話は聞いている。」

「!?」

「そ、それじゃあ……貴方が"白銀少佐"なんですかッ?」

「御名答。」

「そうだったんですかぁ~っ!?」

「うわっ、びっくりした。」

「聞いてます聞いてますっ! ミンナが言うには、とっても良い人だって!!」

「へっ?」

「榊さんと冥夜さんは、期待してくれている白銀少佐の為にも、
 今度の総戦技評価演習は、絶対に合格するぞって言ってましたッ!!」

「ちょっ……鎧衣。」

「壬姫さんも理由は良く判らないけど凄いやる気になってたし、
 あの慧さんも"少佐の為なら頑張る"とか信じられない事を言ってましたからっ!!」

「いや、だから……」


最初は俺が声を掛けた事に驚いているようだったけど、
俺が"白銀少佐"だと判るや否や、凄いテンションで喋り始め出した。

大きな瞳をキラキラと輝かせ、俺に半歩近付いてのマシンガントーク。

そうだ、鎧衣はこう言う奴だったんだ。 ……って言うか、彩峰に対しての云々が酷いなオイ。

でも何故か憎めないな……白稜柊っぽい制服姿が可愛い所為でもある。


「あははっ、これって絶対 少佐には内緒って言われてたんですけどね~♪」

「…………」


いや内緒だったら言ったらマズいだろ。 本人相手に大声でバラすなよ。

流石はマブラヴで最も空気の読めない奴……其処が痺れる憧れるッ。

そんな半分が呆れ・半分が苦笑の意味な視線を無言で向けていると、
ハッとなった鎧衣は慌てて直立不動になり、再び真面目な顔で敬礼をしてくれる。


「あっ! す、すいませんッ。 失礼しました、白銀少佐!」

「はははっ、聞いた通りの娘だな。 ちょっと落ち着きが無いみたいだ。」

「!? うっ……ご、ごめんなさいッ。 軍曹には何時も注意されてるんですけど……」

「ま~、気にするな。 チームの空気を和めるのも、一つの才能だからな。」


ありゃ? ……意外と自分でも気にしてるんだな。

鎧衣は涙目とはゆかずとも、図星だったか落ち込んでいる様子。どっちも極端な仕草だな。

けど、ここは少佐としてフォローするべきだろう。 才能と言うか鎧衣のソレは天然なんだけど。


「あ、有難う御座います。」

「それより……君のサバイバルスキルの能力については軍曹からも聞いている。
 演習は3日から始まるけど、病み上がりで頑張れるか?」

「は……はいっ! やれます!!」

「そ、そうか。 じゃあ、頑張ってくれ給え。」


むぅ……おっぱいは無いけど、鎧衣も思ったより可愛いな~。

制服姿が良いのもあるけど、何よりも表情がオルタ世界 相応じゃ無いのが良すぎ。

緊張感が無いとも言えるが……瞳に輝きが含まれていた娘は、鎧衣が始めてだ。

その為 思わず元の世界を思い出し、鎧衣を抱きしめたくなったではないかッ。

けど初対面で抱きしめるのもアレだし、彼女以上に空気を読めない人間になってしまう。

よって俺はその場からギコちなく歩き去り、鎧衣は再び敬礼して俺を見送ってくれた。


「白銀少佐……やっぱり良い人だなあ。 ボクも頑張ろうッ!!」




……




…………




2001年11月01日 午後


ど・れ・に・し・よ・う・か・な?


「(少佐……また来てるのッ?)」

「(あ、茜ちゃぁ~ん……)」

「(気にしちゃ負けだよ、頑張るしかないね。)」


午前と同様 何時もの如くシミュレータールームに赴いた俺は、
美乳三連星のエロスーツ姿を見ようが、逆に今夜のオカズとして吟味できる程迄 成長している。

流石に築地レベルを近距離で直視するのは厳しそうだが、俺は更に伸びてゆく筈だ。

ふっ……これなら南の島まで行っても、そう簡単には堕ちまいっ!

……けど、なんか当初の目的とは違ってるような……恐らく気のせいだろう。


「おんや?」

「…………」


明日出発の演習に向けて、全ての"訓練(?)"を終えた俺。 南の島が非常に楽しみだ。

よって早めに夕食を済ませ鼻歌交じりに散歩していると、PX側から御剣が歩いて来た。

だが何故か俺には気付いていないようで、無駄のない足取りで脇道を入り、
其処を通ったついでに見てみると……丁度 壁に片手を当てて溜息を吐いていた御剣。

つい さっきまで背筋を伸ばしていたが……暗そうだな。 これは声を掛けるべきだろう。


「御剣。」

「――――っ!?」

「どうしたんだ?」

「し、白銀少佐……」

「他の奴等はどうした、もう食事は済んだのか?」

「…………」


御剣にしては今回も大袈裟に驚いていた。 どうした、冷静沈着の娘さん。

問いに首を振ったと言う事は食欲が無いみたいだが何故 演習前にもなって……

う~ん……やっぱり、俺に影で訓練してたトコロを見られたのを引き摺っていたのか?

御剣の事だから、ついさっきまでも冷静な雰囲気だった事から、
それが理由でB分隊の皆の足を引っ張ったりする事は無いんだろうが、
万が一落ちられでもしたら俺が詰むしな……これは安心させてやるしかあるまい。


「昨日の事を、気にしているのか?」

「……!!」

「やっぱりか。」

「……っ……」

「……御剣、気にし過ぎだ。 俺は何とも思っていない、
 むしろ……その志は素晴らしい事だと思うけどな。」

「!?」


そう……影で努力している事を知られようが、御剣は胸を張るべきだ。

むしろ自分の志を誇りに思えば良い。 少なくとも彼女の努力を、俺には真似する事はできない。


「お前には……守りたいモノがあるんだろう?」

「そ、それは――――」

「あの話は嘘だったのか?」

「!? だッ、断じて嘘などでは御座いませぬ!!」

「なら良いじゃないか。 全く……御剣は真面目過ぎるんだよ。」

「……では……わ、私を許して頂けるのですかッ?」

「へっ?」

「例え嘘でも構いませんッ、もう一度……もう一度 お聞かせくださいっ!」


ちょっ……許すって何をですか? 泣きそうな顔をして言われても困るんですけど。

まさかグラウンドを勝手に使ってた事を許すってワケでも無さそうだし、それ以前にね~よ。

……でも、許してあげれば頑張れるのかな? だったら許してやらざるを得ないッ!

俺は縋る様な御剣の視線に押されながらも、彼女に近付くと再び抱きしめる。 役得?


「……許すさ。」

「あっ……」

「お前は、俺の可愛い生徒なんだからな……?」

「……っ……」


金●先生を肖って、つい言っちゃったんだ☆ ……若しくは魚●ガール。

今のは完全にノリなので、少なくとも御剣には理解できないだろう。

それなのに俺を抱き返して下さるんですが、ホント鎧衣と違って空気が読める娘だ。


「これで満足か?」

「は……はい。」

「なら良かった。 演習 頑張れよ?」

「も、勿論です。」

「だったら飯も食っておけ、皆も心配してるハズだ。」

「――――はっ。」


くそっ……訓練(?)は十分やったハズだが、流石に"胸の感触"には慣れないな。

俺は頑張って理性を保ちながらも、優しいつもりで微笑むと、その場を後にした。

それにしても偶然 見掛けれて良かった~……これで演習は何とかなりそうだぜ!


「生徒……教える側と、教わる側。 少佐……私が後者と言う事から、
 無粋な事を述べたと知りながらも、あえて許して頂いたと言う事なのでしょうか?」


≪……お前の守りたいモノが、守れるのを祈っているよ。≫


「今は それでも構いませぬ……感謝致します、白銀少佐。」


≪許せるワケが無いだろうが!! とりあえず脱げ~ッ!≫


≪ああぁぁっ!! お……お許しくださいっ……≫


――――今日はA分隊でヤるつもりだったけど、また御剣で犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月02日


「う~……フラグフラグ~。」


今 執務室を目指して全力疾走している僕は、
日本の未来の為にBETAと戦う、ごく一般的な国連軍衛士。

強いて違うところを 挙げるとすれば、南の島に興味が有るって事かナ~?


≪ガシューーーーッ≫


――――名前は"白銀 武"。

そんなワケで、目的地である地下19階フロアの執務室にやって来たのだ。

中に入ると散らかったデスクの前には、一人の美しい女性が座っていた。


「ハッ!?」

「来たわね? 白銀~。」


……ウホッ! 良い副司令……そう思っていると、突然ゆーこさんは、
僕の見ている目の前で立ち上がると、バサリと白衣を脱ぎ落としたのだ……!!


「さぁッ! バカンスに出発よ~っ!?」(直訳:行かないか?)

「――――っ!?」


そう言えば、この人は休暇も兼ねて207B分隊の演習に付き合う事で知らされていた。

良い女に弱い僕は、誘われるままホイホイと南の島に付いて行っちゃったのDA☆

……いや、この流れは無理があったか。 尻尾を振ってホイホイ付いて行くのは正解だけどね。

ともかく今日は待ちに待った出発の日であり、丸一日はヘリの中で終わった。


「……ッ……」


≪ゴババババババババババ……ッ!!!!≫


「(白銀少佐……ずっと腕を組んだまま、黙って座っているわね。)」

「(少々 貧乏揺すりもしている気がするのだが……)」

「(私達を……心配してる?)」

「(えへへ。 そうかもしれないね~、少佐って優しい人だから。)」


――――けど、飛行機以外で空なんて初めてだよ! 怖ッ……帰りたくなってきた。




……




…………




2001年11月03日 午前


「では、ミッションを言い渡すッ!!」

『――――はっ!!』

「本作戦は、戦闘中 戦術機を破棄せざるを得なくなり、強化外骨格も使用不能という状況で、
 如何にして戦闘区域から脱出するかを想定したモノである。 従って脱出が第一優先目的だ。」

『…………』

「また 行動中、地図中に記した目標の破壊。後方撹乱を第二優先目的とする。
 破壊対象は全部で3箇所だ。 これに受かれば、
 貴様等は晴れて衛士の仲間入りだ、全力を尽くせ!!」

『――――はっ!!』


鬼軍曹モードのまりもちゃんが、B分隊の皆に任務を言い渡している最中だ。

俺はヘリコプターでの長距離移動が堪えており、少し距離を置いて立っている。

今 まりもちゃんの近くに居ると、怒声が頭に響いてしまうんだぜ……

それに"南の島"である事もあり、日差しが かなり強いので、
まりもちゃんと珠瀬をも含む皆が黒のタンクトップ姿……当然 皮膚は予防済み。

だが多少 刺激がある姿なので、迂闊に近付きたく無いところだ。 当然 俺も同じ姿。


「作戦期限は144時間、それでは状況開始!!」

『――――了解っ!!』


ちなみにメンバーは三つに別れており、御剣&珠瀬……鎧衣は一人。

そして貫禄の榊&彩峰。 まりもちゃん、良く指導して下さいました。

内容は良く聞いてなかったけど、アンリミと大きく変わらないだろう。

そう思っているうちにB分隊は出発し、俺は拳を握って彼女達の背中を見送って嘆く。


「B分隊の勇気が、世界を救うと信じて……!!」


――――ご愛読、有難う御座いましたッ!!(完)






























「な、何を言ってるんですか? 少佐。」

「いえ……打ち切りには なりませんから、安心してください。」

「????」

「まぁ、今夜は此処で野宿ですね。 テントでも組んじゃいましょう。」

「わ……わかりました。」


今のは俺にとっても洒落になって無いな……1回限りにしておこう。

さておき、バカンスの出だしにしては地味な作業だが、今は我慢するトコだ。

午後の事を考えるとワクワクとしてしまい、俺は鼻歌交じりで野宿の準備を始めた。




……




…………




2001年11月03日 午後


「そろそろ迎えに行ってきま~す。」

「……はい。」


野宿の準備と食事が終わり、俺は一人で海岸を歩いていた。

さっきは、まりもちゃんと二人っきりって事で地味に良い雰囲気だったが……

無神経にも俺は、ちょっと早いけど ゆーこさんを迎えに行く事を優先させてしまったのだ。

まだ夕方になる迄には時間はあるけど、ゆーこさんが"着替える前"に到着しなくてはッ!


「……~~♪」

「!? う、うおおおおぉぉぉぉ……っ!!!!」


≪ドオオオオォォォォーーーーンッ!!!!≫


これを拝むダケでも"南の島"に来た甲斐が有ったってモンだぜ!!

俺は上記の様な擬音が頭に響くほどの、ダイナマイト・ボディのゆーこさんを発見した。

ビーチ・チェアに背を預け、際どい水着姿を晒す美女……ホントに日本人ですか貴女?

ちなみに彼女が水着に着替える前に、此処にビーチ・チェアとかを用意させられたのは俺だ。

我侭な彼女が曰く、俺達が少しでも視界に入ると雰囲気が台無しになるから らしい。


「何よ白銀、折角の良い気分を台無しにしないでよ。」

「す、すんません。」

「ふふん。 まぁ、その気持ちも判らなくも無いけどね~。」

「ゆーこさん……い、今 サンオイルとか塗りたい気分じゃないですか?」

「そろそろ日が沈み始めたって言うのに?」

「ですよねー☆」

「……で、終わったの?」

「はい、軍曹も待ってますよ?」


まぁ……サンオイルについては半分は冗談だ、言ってみたダケなんだぜ?

塗らせて貰ったら貰ったで、今の俺では絶対に耐える事は出来ないだろう。

また"あの時"みたいに揉みたくなったけど、眼福になったダケでも良しとするか。


「(なによ……思ったよりも、押しが弱いじゃない……)」




……




…………




――――夕方。


ゆーこさんと一緒に砂浜を歩き、彼女が使っていたビーチ・チェアとパラソルを、
両手で担いで まりもちゃんの所へと戻った俺は、何時間か休憩するとテントを出た。

休憩する必要はちゃんと有り、まだヘリコプターでの旅の後遺症が残っていたからだ。

さておき、目の前には夕飯の準備に掛かろうとしている まりもちゃんと、
それを眺めながら折りたたみ式の椅子に座っている、ゆーこさんが居た。


「軍曹。 今 皆の状況はどんな感じなんでしょうかね?」

「まだ始まったばかりですから、そんなに遠くへは行ってないと思います。」

「……そうですか。」


俺は まりもちゃんとそんな心配をしながらも、視線は ゆーこさんの方を向いていた。

この人 未だに水着姿なんですけど、その上に何で白衣を着てるんですか!?

着替えてないのは嬉しいけど、こんな不釣合いな組み合わせ、現代日本にだって無いですよ?


――――たまらねェぜ……!!


≪……ザシャッ≫


「し、少佐! 何処へッ?」

「すんません……俺、ちょっと行って来ます。」


俺は心の中で ひぐ●しの主人公のような叫びを上げると、その場を走り去った。


「こんな時間に……まさか、あの娘達の様子を見にッ!?」

「ふん……そんなところかしらね。 今の時間だとまだ、あの丘の上なら周囲が見渡せそうだし。」

「やっぱり、心配なのかしら?」

「全く、甘いんだか違うんだかイマイチ理解出来ない奴よね……白銀って。」

「な、なら私も――――」

「待ちなさいよ、まりもが行ったら あたしの夕飯はどうなるの?」

「だ、だけど……」

「30秒~。」

「うぐっ!? わ、判ったわよッ! 作れば良いんでしょ? 作れば!!」

「そう言う事~。」


≪んっ……白銀~…今度は前もお願~い……≫


≪ま、任せてください! 勿論 下だってやっちゃいますよ~?≫


――――つい我慢できなくて、大自然の中で犯っちゃったんだ☆




●戯言●
しつこいですけど、無駄に勘繰る冥夜が書きたくて、つい犯っちゃったんだ☆
これからも主人公がバカやるのは勿論ことですが、皆が生存しフラグ乱舞し、勘違いする。
そうさせる為に、主人公がオルタをプレイした事を前提に正史での常識を覆す大きな事を
ひとつだけですが考えています。それを皆様がどう感じるかで今は頭が一杯です@w@



[3960] これはひどいオルタネイティヴ12
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/03 08:21
これはひどいオルタネイティヴ12




2001年11月04日 午前


――――青い空!! 青い海!!


昨日は長旅の後遺症や野宿の準備等で、泳ぐ気なんてちっとも浮かばなかった。

けど今日は別であり、俺は3人で朝食を済ませると上着を抜いで上半身ハダカになる。

当然ハーフパンツっぽい水着を履いており、俺は両手を大きくV時に広げると叫ぶ!


「砂浜よッ、私は帰って来た!!」


≪……ザザ~~ン……≫


「白銀……何言ってんの?」

「何か叫びたい気分だったダケです。」

「ふふっ。 白銀少佐、嬉しそうですね。」

「そりゃもう、こんな綺麗な海なんて久しぶりに見ましたからね~。」

「そうなんですか?」

「えぇ……もう10年以上前になるかな……」

「まぁ、楽しむのはアンタの勝手よ。 好きにしなさい。」


"こっちの世界"の人間には絶対に理解の出来ない事を叫んだ俺。

いや~……南の島が綺麗そうだって事はプレイした者としては最初から知っていたけど、
"この時代"に存在するBETAに対する恐怖さえ潤してくれそうな景観だ。

ちなみに俺の後ろにはビーチ・チェアに背を預け、グラスでワインを飲んでいるゆーこさんの姿。

昨日と同じ際どい水着姿であり、勿論 今回もチェアとパラソルを持って来たのは俺だ。

初日は俺達すら視界に入れたくないと我侭を言っていたが、
それも仕方無いのかもしれず、彼女に掛かる"重み"が少しでも癒えるなら安いモンだ。

んでもって今日は視界に入れたく無いのがテント等だけで許してくれた。

そんな彼女の真横には まりもちゃんが昨日と変わらないタンクトップ姿で立っている。


「それはそうと――――」

「はい?」

「軍曹、もしかして……水着を持って来て無いんですか?」

「そうですけど?」

「な、何でなんですかっ!? 折角の南の島だと言うのにッ!」

「私は教官として演習の為に、南の島に来ていますから……」

「あたしは"持って来い"って言ったんだけどね~、まりもってヘンな所で硬いんだから。」

「……はぁ、軍曹の水着姿も見れると思って楽しみにしてたのに……」

「し、少佐……御気持ちは嬉しいですが、そんな事を言われましても……」

「ちょっとアンタたち。 少佐とか軍曹とか言って、気分をブチ壊す単語 出さないでよ。」

「ん~……それも一理あるかなぁ……」

「少佐?」

「じゃあ……言えそうな時は"まりもちゃん"って呼んで良いですか?」

「ま……まりもちゃんッ!?」

「!? あははははっ! "まりもちゃん"~っ? 白銀、アンタ良いセンスしてんじゃないっ!」

「HAHAHA、そりゃどうも。」


……ぶっちゃけ、最初からずっと こう呼んでみたいと思ってたんだよね。

ゆーこさんの切り出しはナイスだったな~、俺はそれを利用させて貰う事にした。

けど……まりもちゃんの顔が驚愕する。 そりゃそうだろうね、イキナリだし。


「ちょっと待ってくださいッ! "ちゃん付け"だなんて――――」

「良いじゃないッスか、勿論 迂闊に人前では言わない様にしますから。」

「……ぅっ……」

「まりも~、今"満更でも無い"って思ったんじゃ無いのぉ~?」

「!? お、思ってません!! 絶対 思ってませんからッ!」

「とにかく決定ですね、俺の事も好きな様に呼んでくれて構いません。」

「で……でも、この年で"ちゃん付け"はやっぱり……」


むっ? OKかと思ったけど……やっぱり、まだ引っ掛かっているみたいだな。

EXの"情け無いモード"のように、肩を落として涙目ながらも指摘してくる。

……だが、これダケは譲るワケにはいかない! 俺は"奥の手"を使わせて貰う。


「そう言えば、シミュレーターに付き合う前"何でもします"とか言ってましたよね?
 ソレ使わせて貰います。 場の空気は読みますから"まりもちゃん"って呼ばせて下さい。」

「うぅっ!?」

「まりも、もう諦めなさ~い。」

「くぅ~っ……わ、わかりました。 もう好きに呼んで下さい。
 だったら、私は"白銀さん"と呼びます。 そ……それで良いですか?」

「勿論OKです。 別に"白銀君"って呼んでも良いですよ?」

「勘弁して下さいッ!」

「まりも、一歩 前進したじゃない。 良かったわね~?」

「ゆ、夕呼!!」


こんなカンジで、俺は彼女を"まりもちゃん"と呼べる様になった。

……だけど……まりもちゃんの水着姿が見れないのが計算外だったよな~。

真面目な鬼軍曹だし、水着なんぞ言われても持って来ない人だったのだろう。

"まりもちゃん"と呼べるようになったのは良いが、それが未だに納得いかん……


「まりもちゃん。」

「ひゃいっ!?」

「話を戻しますけど水着……ホントに無いんですか?」

「も……持って来てません。」

「……そうですか。」

「そ、そうなんです。」


俺は無言で足元に落ちていたモノを拾った。


「"葉っぱ"なら有りますよ?」

「意味が判りませんっ!」

「まぁ良いか~……とりあえず、軽く泳いできま~すっ!」

「行ってらっしゃ~い。」

「イイィィヤッホオオォォーーーーウッ!!!!」

「!?」


≪ばしゃああああぁぁぁぁんっ!!!!≫


「岡崎最高ぉぉーーーーっ!!!!」


まりもちゃんの水着は残念だったけど、近いうちにB分隊の皆の水着が待っている!

よって俺は素直に海水浴を楽しむ事にし、ゆーこさんに手を振られながら、
ハイテンションで砂浜を走り出すと、雄叫びと共に海に飛び込んだ。

泳ぎは得意でも苦手でも無いけど、流石は白銀……世界を目指せる泳ぎが俺には有った。


「…………」

「まりも~、今 水着持って来れば良かったって考えてたんじゃ無いのぉ?」

「か、考えて無いわよっ!」

「それはそうと、あの様子じゃ"軽く"じゃ済みそうに無いわね~。」




……




…………




2001年11月04日 午後


「ふ~っ……到着っと。」


白銀のお陰で調子に乗って近くの島まで行き、往復してしまった俺。

流石に疲れたので足が地面に付くと、ゆっくりと砂浜を歩いて2人を探す。

すると同じ場所に居たようで、ゆーこさんはビーチ・チェアで寝ており、
まりもちゃんは木の影で腰を落とし、幹に背を預けながらノンビ~リとしていた。

距離を詰めると、俺に気付いたまりもちゃんが立ち上がり、ゆーこさんも起きた。


「お帰りなさい、白銀……さん。」

「只今 帰りました、まりもちゃん。」

「随分と遠くに行ってたみたいね~?」

「えぇ、久し振りだったんで少し張り切り過ぎちゃいましたよ。」

「そ……それじゃあ私、夕飯の準備をして来ますっ!」

「ぇあ? まだ早いんじゃ――――」


ありゃ……行ってしまった。 それに、EXでも無いのに何故か"オ姉"走り。

やっぱり、まりもちゃんは可愛いなァ……水着がまだ諦め切れないZE。


「放っときなさい。 照れてんのよ、まりもは。」

「何でッスか?」

「ふん、自分で考えなさい。」

「ところで……話は変わりますけど。」

「何よ?」

「明日 少しだけ、その水着を まりもちゃんに貸すって言うのはどうですか?」

「ちょっと、そうなったら あたしの水着はど~なるのよっ?」


再び俺は無言で何かを拾った。


「"葉っぱ"なら有りますよ?」

「おととい来なさい。」


結局その日も ゆーこさんの魅力(水着+白衣)に耐え切れず、大自然の中で犯っちゃったんだ☆

勿論 B分隊の誰かと鉢合わせたら自殺モンなので、双眼鏡は忘れない。

んでもって その夜、俺はテントの中で"葉っぱ"のまりもちゃんを想像して犯っちゃったんだ☆

当然2人の美女のテントとは別だ。 そうなったら絶対に耐えれないだろうしな~。

まだまだ俺は修行不足だったようだ……まりもちゃんが水着だったら、それはそれでヤバかったかも。




……




…………




2001年11月05日 午前


――――総戦技評価演習。


ド素人の俺から見ても、これは非常に厳しい試験だと思う。

でも……戦術機で戦うにあたっては、ちっとも役に立たない内容なんだよね。

だから俺は前から違う事をさせようと考えてたんだけど、結局 何も思い浮かばなかった。

例え落ちても通過でき、日程も短く済んで、大きな達成感を味わえる演習。

しかも場所が南の島……これは難しい条件だし、俺は正史の演習で頑張って貰う事にした。

ヘタに変えても事故が起こったら詰むし、今の彼女達なら余裕でクリアできるだろう。

アドバイスをしてやればもっと楽になるんだろうけど、訓練兵と同じ立場で無い限り、
教えてやっても只のカンニングみたいなモノになってしまうから、待つ事しかできない。


「まりもちゃん、皆の状況はどうですか?」

「途轍もなく良いペースですね、特に鎧衣が速かったみたいです。」

「アイツがですか?」

「はい。 トラップ地帯をピョンピョンと通り抜け3箇所の地点のうち、
 最も離れた目標を破壊すると、昨日の夜のうちに残り2組の4人と合流しています。」

「マジっすか……」


B分隊各員に付着した発信機の情報を元に、テントの前で状況を報告してくれる まりもちゃん。

う~む、流石 鎧衣だな……マヴラヴで最も判断力のある娘と言われているダケある。

確かに彼女だと二人より一人の方が断然 移動は楽かもしれないな。

しかも、昨日のうちに合流したって事は……若干 不安だった榊&彩峰も頑張ったようだ。


「現在は……1つのポイントに配置していた無線の暗号を解読し、
 友軍と合流する事を想定した、西の方向へと移動している模様です。」

「確か其処ってフェイクがありましたよね?」

「はい。 ゴールは北西ですが南西のフェイクに迂闊に近付けば砲台に狙撃されます。
 ですが其処にはボートが隠して有りますので、予め配置して置いた燃料を、
 水筒に入れるなりして持って来ていれば、北西迄の距離を大幅に短縮できるでしょう。」

「その条件として、珠瀬による対物体狙撃銃でのレドームの破壊……ですか。」

「そうです。 正直なところ、この任務で全ての物資を最大限に活かしてクリアした分隊は居ません。」

「だけど、このペースって事は……」

「えぇ。 2日目で全てのポイントを破壊していますし、
 水分の消費を考えると、燃料を持って来た可能性は十分考えられます。
 故にひょっとすると、初めての"最高点"が生まれるかもしれません。」

「おぉ~っ……だったら、明日にでもクリアできるかもしれないッスね。」

「そうなってくれると、教官の私としては嬉しい限りです。」


アンリミで同じ演習を経験していた白銀でさえ、ボートは結局 使えなかったハズ。

……つまり、最短ルートでの合格は出来ていなかったと言うワケだ。

なのに今回はパーフェクトの可能性が有る……何だか嬉しくなってしまうではないかッ。

それにしても、チームワークが解消されるダケでこうも効率良く進んでいけるなんてな~。

考えてみれば今のところ"スコール"も無いし、足止めも全く食らって無いんだよな。


「だったら、明日には移動した方が良さそうですねぇ。」

「はい。」

「それじゃ~今のうちに楽しんでおかないとなぁ。 また泳ぎに行ってきま~すっ!」

「あっ、白銀さん……」

「まりも。」


≪――――ぬっ≫ ←テントから出て来た。(水着+白衣)


「な、何よ?」

「やっぱり思ったでしょ? 水着が有ったら良かったなって。」

「……くっ……」

「"葉っぱ"ならあるわよ?」

「だから要らないって言ってるでしょ!?」


――――ちなみにB分隊の"保護者"は俺ら3人だけだ。

ヘリの操縦はまりもちゃん、ゆーこさんはバカンス目的、俺は只のパシリ。

トラブルの為の人員は一切 連れて来て無いけど、今のB分隊には最初から必要無いのさ!




……




…………




2001年11月06日 夕方


テントはそのままにして片付けを済ませるのと、ヘリによる移動で午前の殆ど時間を使い、
俺達はB分隊の到着を待つ為、演習のゴール地点へとやって来ていた。

ゆーこさんは"もう行くの~?"と不満がってたが、まりもちゃんが宥めてくれた。

今は"茶番に付き合う気は無い"とヘリの中で寝ているようで、相変わらずな人ですね。

それはそうと……来たッ!? 恐らくボートを使ったんだろう、マジで早いタイムだ!!


「つ、着いたの?」

「……そのようだ。」

「疲れた……」

「はぁっ、ふぅっ……」

「あれ~香月博士は帰っちゃったんですか~?」


ちょっ、鎧衣……こんな時ぐらい空気読めよ。

けど彼女含めて皆ボロボロ。 かなり急いだのか疲労困憊と言ったトコロだ。

良くもまぁ、こんなになるまで……それに引き換え、俺は何をしていた?

泳いだり、せがれ弄りしたり、泳いだり、せがれ弄りしたり……それだけな気がするんですが。


「それでは貴様等の評価を述べる! 先ずは3箇所のポイントの破壊。
 想定された時間を大きく短縮しており、破壊を選ぶ時間もクリアしている。」

『…………』

「次に暗号の解読。 多少 把握にズレが有ったようだが、十分許容範囲内だ。
 それにより貴様等はボートを発見でき、使用の為の燃料をも確保していた。」

『…………』

「そしてボートの使用の為 探索レーダーが入っているレドームの発見、及び破壊。
 以上の遂行により、貴様等は全ての物資を効果的に利用し、此処に辿り着いた。」

『…………』

「……だが、少々焦り過ぎだ。 急ぎ過ぎと言っても良いかもしれん。
 今回において何が貴様等を そうさせたのかは知らんが、私から忠告させて貰おう。
 これは場合によっては命を落とす事も有るッ。 戦術機での戦いでは、
 何事にも焦り過ぎず・急ぎ過ぎず戦うのが妥当だ。 肝に銘じて置くんだな!」

『……!!』


淡々と評価を述べる まりもちゃんだったが、急に厳しい顔になって口調も厳しくなる。

それに対して榊達の体がビクリと振るえ、緊張の色が走った。 ちなみに俺も怖かった。

けど……まりもちゃんは直ぐに優しい表情になると、総評を告げるべく口を開く。


「――――しかし、これは減点の対象にはならん。 つまり、貴様等は合格したッ!!
 しかも満点ッ! 総戦技評価演習を満点で合格した訓練兵は、貴様等が初めてだ!!」

「!? ご、合格……」

「合格……したのか……」

「それに満点?」

「あわっ、あわわわっ……」

「やったあぁ~~っ!!」


合格と告げられると、B分隊の5人は各々のリアクションで喜び始めた!


――――榊は眼鏡を外して涙を拭い。


――――御剣は瞳を閉じて震えながら感動を味わい。


――――彩峰も瞳を閉じ満足気な溜息と共に口元を歪ませ。


――――珠瀬は最初は唖然としていたのだが。


――――鎧衣が飛び跳ねて喜んだ直後 珠瀬に抱きついて共に喜びを分かち合う。


余程 嬉しかったのだろう、原作はプレイしたけど彼女達の感動は俺にも伝わって来た。

だが……俺はB分隊の努力の影で南の島でのバカンスを楽しんでいたダケ。

しかも大自然の中で……何だか情けな過ぎて涙が出て来てしまったのではないかっ!

少なくとも、俺なんかに此処で感動を共にする権利は無い。 よって席を外す事にした。


「…………」

「あら? 白銀少佐……」

「何処へ行かれるのだろう?」

「泣いてた気がする。」

「えぇ~っ!?」

「もしかして……ボク達を?」

「――――そうかもしれんな。」

「じ、神宮司軍曹……どう言う事ですかッ?」

「海岸沿いで野宿する中、度々 少佐は双眼鏡を片手に席を外され、
 丘の方へと向かって行かれた。 ……恐らく、貴様等の動向が気になったのだろうな。」

『……!!』

「良いか? 貴様等には早いうちに訓練兵として、新OSと新型戦術機のテストを行って貰う。
 その際 白銀少佐により、新たな操縦の機動概念を学ぶ機会が有るかもしれん。
 どれもBETAとの戦いに革命を起こせる可能性を秘めた代物だ、それを誇りに思えっ!!」

『――――はいっ!!』


……ゴメンB分隊の皆。 少なくとも横浜基地に戻る迄は自重するから許してくれっ。




……




…………




2001年11月07日 午前


「…………」


昨日のうちにヘリで最初の場所に戻ると、テントを新しく追加して一泊した。

さておき今現在 俺の目の前には、楽園(パラダイス)が広がっている。

B分隊5名全員が水着をきて、残り少ない時間のバカンスを楽しんでいるからだ。

しかし……俺は あんなに楽しみにしていたと言うのに実況する気もせず、
木の幹に背を預けて自己嫌悪に陥りながら、様子を眺めていた。


「……少佐。」

「なんですか軍曹?」←空気を読んで呼称変更

「行ってあげなくて良いんですか? 皆 少佐と楽しみたいんだ思いますよ?」

「ふっ……冗談は止めてください。 俺は見てるダケで十分ですよ。」

「そんな事はありません、あの娘達が頑張ったのは、少佐のお陰でも有るんです。」

「いや~、そんなハズは……」

「――――こら御剣ッ! 何をしている!? 少佐を御迎えしろッ!」

「は……はいっ!」

「ち、ちょっ……軍曹!」


今日は教官や上官の事を忘れて、アイツらには気兼ね無く楽しんで貰いたい。

そう思ってたんだけど、近付いて来た まりもちゃんがイキナリ叫ぶと、
珠瀬を水を掛け合っていた御剣が、慌てて近寄って来てしまう。

揺れてる揺れてる……ホントに十代ですか君は? いやいや、そうじゃなくってッ!

まりもちゃん、折角 楽しんでたんだから、そっとして置いてあげりゃ良かったのに~。


「白銀少佐。 宜しければ、共に楽しみませぬか?」

「……っ……」

「ねえねえ、行きましょうよ~?」

「た……珠瀬。」


≪――――ぐいっ≫


何時の間にか珠瀬も近寄って来ており、二人に両手を引っ張られた。

なんだ、こいつら……必死に頑張ってる最中に遊んでた俺を許してくれるのか?

ふと遠くを見ると鎧衣が大きく手を振っており、榊と彩峰もこっちを見ていた。

しかし まだ自己嫌悪で悩んでいると、まりもちゃんが微笑みながら言ってくる。


「ふふっ、この娘達は少佐と遊びたがっている様ですが?」

「そ……そうなのか? 御剣。」

「当然です、少佐の存在こそ有って楽しめると言うもの。 ……さ、参りましょう。」

「白銀少佐~、早く~!」

「は、はははっ……判ったよ。 だったら遊びまくるかァ~っ!!」

「少佐少佐~ッ、こっちこっちーーっ!!」


くそっ、何て良いヤツらなんだ! 出来るんだったら全員と結婚したい。

良し! 今更だけど決めたぞッ。 ループ上等、俺が死のうと絶対に見殺しにしてやるものかっ!!

俺は残り一日のバカンスを精一杯 楽しむ事にし、手を振る鎧衣の方へと走り出して行った。

ふと沖の方を見た時 まりもちゃんが指を銜えて見ているような気がしたけど、マジすんません。


≪ゴババババババババババ……ッ!!!!≫


……こうして、南の島のバカンスは最高の形で終了し、その日のウチに日本へと帰還していた。

まりもちゃんは午前中に睡眠を取っており、今現在は操縦桿を握っている。

B分隊5名は全員が遊び疲れて寝ており、俺はゆーこさんと肩を並べて座っていた。


「まぁ、そこそこは楽しめたわね~。」

「ですね。 ゆーこさん、また行きましょうね?」

「別に良いけど……何時の話になるのかしらね。」

「やだな~勿論、オリジナルハイヴを落とした後に決まってるじゃないですか。」

「……っ!?」

「あれ、違いました?」

「えっ? まぁ……その予定で考えておくわ。」

「お願いしま~す。」


――――ちなみに、俺が"消えなかったら"が条件だけどね。

そう考えると少し確率は低いかなぁ……オリジナルハイヴは落とす気 満々だけどな。

でもバカンスも終えたしで何となく悲しい気分になり、俺は暫く外の景色を眺めていた。


「(な、なかなか良い横顔してるわね……こいつ。 それに――――)」


≪勿論、オリジナルハイヴを落とした後に決まってるじゃないですか。≫


「(こんな事 堂々と言える人間なんて、あたし以外 居ないと思ってたんだけどねぇ。)」




●戯言●
地味にボートとかを活用させたかったので、つい無駄な描写を入れちゃったんだ☆
漫画では軍曹は水着をきていましたが、葉っぱネタが書きたくて持って行かせませんでした。
ちなみに下書きを書いていたのは丁度此処まででしたが、引き続き書こうと思っております。
テストの段階では此処で終わらせるつもりだったんですが皆様応援マジで有難うございます。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ13
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/05 10:13
これはひどいオルタネイティヴ13




2001年11月08日 午後


≪――――バタンッ≫


「お待たせ 霞、行こうか。」

「……はい。」


日本に戻ったのは明け方だったので、俺は昼過ぎまで寝ていた。

B分隊の皆は器用にも、ヘリの中で寝れてたみたいだけど、
俺は行きと同様になかなか寝付けないどころか、一睡もできていなかったのよね。

だから まだ寝てようかな~と思ったんだけど、昼過ぎに霞が俺を起こしに来てくれる。

どうやら俺達の戦術機が搬入されて来たらしいので、折角だし見に行く事にした。




……




…………




――――副司令はね、ビニールを破くのに夢中なんだ☆


「ふふふ~ん♪」


――――ホラね?


≪ビリビリビリ~~ッ≫


――――ヒャッハッハッハッハ!!


「ふ~ふふ~ん♪」


――――自然に体が動いちゃうんだ☆


≪ビリリリリリーーッ≫


「おぉ、やってるやってる。」

「…………」


俺はくだらない事をイメージしながら、ハンガーの柵に寄りかかり、
ゆーこさんが不知火S型のシートのビニールを破く様子を眺めていた。

何気にこれって"オルタの世界に行ったら見てみたい事"の一つかもしれない。

ちなみに 俺の真横には霞が黙って立っており、同様に ゆーこさんの様子を眺めている。


「ふ~、良い汗かいたわ~。」

「汗かくまで夢中になる事ですか? ソレは。」

「五月蝿いわね、人の趣味にケチつけんじゃないわよ。」

「趣味って……」

「それよりもどう? 不知火S型。」

「……すごく……大きいです……」

「そんなの見りゃ解るわよ。」


――――また、このネタを使ってしまった。

口に出すのは始めてだったって事で、勘弁して下さい。


「ん~……何と言うか……圧巻ですよね。」

「そう? 戦術機なんてアンタにとっては珍しい代物でも無いでしょ?」

「新型だと そう見えるんですよ。」

「ふ~ん。」

「整備班の人達は随分と気になってるみたいッスね。」

「そうね、搬入直後にずっと取扱書を回し読みしてるわ。」

「新しい概念の武装がイキナリ来たんですしねぇ。」

「まぁ、あたしの用は済んだし戻る事にするわ。 アンタはどうすんの?」

「折角ですし、新OSのテストでもして来ようと思ってます。」

「それって明日からじゃないの? 帰った直後は"頭痛い~"とか言ってたし。」

「大丈夫ッス、もう治りましたから。」

「……そ。 まぁ、程々にしときなさい。」

「は~い。」

「(社……後はアンタ次第よ~。)」


ビニールを破けて満足したか、ゆーこさんは軽い足取りで去って行った。

それにしても新型……俺だけの戦術機。 ついに完成したんだな。

なんだか嬉しくなってきた、白銀がアンリミでワクワクしてたのも今なら分かるぜ。

同時に俄然やる気も出たし、実戦もそろそろ近いしで今日は頑張るとするかな~。


「…………」

「じゃあ、シミュレータールームに――――」

「……!!」


≪……ぐっ≫


「うわっ! どうした? 霞。」


その場から歩き出そうとしたら、突然 何者かに袖を掴まれた。

あぁ、そう言えば忘れていた……霞が横にずっと立っていたのを。

当然 振り払うワケにもいかないので、俺は動きを止めて彼女を見下ろす。


「…………」

「霞?」

「……寂しかったです。」

「ぉあ?」


≪BETAを倒すッ、BETAを倒すッ、BETAを倒す……ッ!!≫


「……っ……」

「ちょ……か、霞っ?」


≪世界の平和ッ、世界の平和ッ、世界の平和……ッ!!≫


「判っています……白銀さんは、遊びに行ったんじゃ無いって事は……」

「……!!」


――――思いっきり遊びに行ったんですけど。 霞ッ、君は勘違いしているぞ!

今ので何だか罪悪感が湧き、悲愴っぽい表情になってしまった気がする。

そんな俺の顔を見て、霞の表情が更に曇ってしまう。 しかも、涙目だし……


≪頑張れ純夏っ、頑張れ純夏っ、頑張れ純夏ああぁぁ~~ーーっ!!!!≫


「……っ……それでも、寂しかったんです……」

「……かすみ……」


スタッフーッ、スタッフゥー! これって どう言う事ですかっ!?

なんか涙を零しながら"寂しかった"と申しておられるんですが……

もしかして、気付かずにシミュレータールームに行こうと思ったのがヤバかったのか!?

!? ……そうだ"御土産"だ! よく覚えて無いけど、白銀と何か約束してた気がするッ!

し、しまった……南の島にウカれ撒くって、霞とのイベントを疎かにしてしまうとはっ。

毎日"念じる"のは欠かさずやってたんだけど、とにかく何とかするしかないのかな……


「……ぅ……くッ……」

「――――すまない。」

「……っ?」

「悪かった、寂しい思いをさせて。 だから、今度は霞も一緒に海へ行こう。」

「ほ、ほんと……ですか?」

「あぁ、また行くって"約束"は ゆーこさんとしたから大丈夫だ。」

「……ありがとう……ございます……」

「礼なんて要らない。 だから泣き止んでくれ、俺まで泣きたくなっちまうからさ。」

「す……すいません。」

「――――良し! 気が変わった、今日は霞と遊ぶ事にしようッ。」

「良いん……ですか?」

「あぁ、ど~してか そんな気分になっちゃったんだ。
 "あやとり"も良いけど……トランプで神経衰弱とかでも良いかもな!」

「……っ……」


こんな感じで俺は霞を宥めながら、脳味噌の部屋でトランプを楽しんだ。

御土産については忘れていた事を悔やむ限りだが、海のイベントは消化できたしOKだろう。

ちなみに"この日"から、俺は"念じる"のは止めた。 やっぱコミュニケーションが一番だよね。


「次はこれと……これです。」

「オーーマイゴオオォォーーッドッ!!」(ジョ●フ調)


――――んでもって神経衰弱は、見事に全敗したのでした。


「(白銀さん……私の我侭を聞いてくれて……ありがとうございました……)」




……




…………




2001年11月09日 午前


近い未来にXM3となる新OSも、不知火S型と同様にテストが必要。

それを行うのは、今のところ俺と まりもちゃん……そして、B分隊の5名だ。

いずれA-01にも手配する予定だけど、彼女達は11月11日を過ぎてからの話になる。

何故かと言うと、俺と まりもちゃんが今日 丸一日で新OS(α版)試し、
明日のうちに ゆーこさんに調整して貰い、新OS(β版)を完成させてから使わせるからだ。

そして11日に不知火S型の実戦テストをも兼ねる事で、
A-01に纏まった形で新しい機動概念と戦術機をプレゼント出来ると言うワケだ。

厳しい演習後って事で今日は休みであるB分隊においては、
仮免許すら無い状態だし、αだろうがβだろうが最初は同じだろうし例外ね。


「少佐、今日も宜しくお願いします。」

「こちらこそ、軍曹。」

「あの……白銀少佐、私も立ち会わせて頂いて宜しいのでしょうか?」

「全然問題無いですよ。 この前は断っちゃってすんませんでした、ピアティフ中尉。」

「い、いえ。 そんな……」

「とにかく今回は大事なテストですからね、頑張りましょうか。」

『――――はっ!』


そんなワケで俺はシミュレータールームにて、2人の美女と向かい合っていた。

まりもちゃんはB分隊への指導の為に、新OSに逸(いち)早く慣れて貰う為。

ピアティフちゃんは以前 断ってしまったので、何となく声を掛けたらOKしてくれた。

白銀大佐のお陰で用語は色々と理解できたし、もう一人寂しく訓練する必要は無いのさッ。

それにしても両手に花……嬉しい限りだぜ。 俺はやる気マンマンで筐体に入っていった。

んで着席すると、一呼吸置いて まりもちゃんとピアティフちゃんの顔が網膜投影される。

う~む……まりもちゃんのバストアップは、相変わらず刺激が強過ぎるんだぜ……


「軍曹。 俺は早速ヴォールク・データを流してみます。」

『そうですか、では私も――――』

「いえ、先ず軍曹は新OSに慣れるところから始めてください。
 2機連携でのテストは午後にしましょう。 BETA相手に市街戦でも流してみてください。」

『……了解です。』

「中尉。 俺にはヴォールク・データをお願いします、仕様は強襲前衛で。」

『はい……設定完了しました。 それでは私は……?』

「管制は軍曹の方をお願いします。」

『承知しました。』


……こんな感じで新OSのテストは開始され、俺はハイヴを突き進んで行く。

やっぱり壮快だ! 今迄はひとつひとつの動作が終わった後に、
次の行動を瞬時に入力する必要が有り、全ての機動が非常に不便で非効率的だった。

だが新OSでは先行入力が可能、ゲームではバランスを考えて での着地硬直さえキャンセルできる。

当然 攻撃時にでも可能で、同じく追加要素の格闘によるコンボ→射撃と言うキャンセルも、
跳躍噴射や水平噴射etc...と同時に可能であり、何と一回目で記録を塗り替えてしまった。


「バカな!? この……俺が、落ちるだとッ!?」


けど色々と格闘を試していたら、下層でミスって撃墜されてしまった。

ハイヴの中で意味も無く長刀を振り回すなんて自殺行為だし、どう考えても脳筋だよな~。

これは恐らくヤ●ン・ゲーブルを肖っていたからだろう、攻撃的な人ですからね。


「ふぅ~っ、首尾はどうでしたか?」

「信じられない戦果を出せましたッ、OSの違いでこんなに変わるなんて……!!」

「神宮司軍曹の腕はお聞きしていましたが、あれ程とは……」


――――4時間が過ぎ一度 筐体を出ると、まりもちゃんも外に出ていた。

若干 疲れた様子。 そりゃそうだよな~……俺が奇特なダケであって、これが普通なんだろうね。

けど彼女の瞳には活気があり、俺は苦笑しながら まりもちゃんのログを見る。


「ふ~む……まだ機体に引っ張り回されてる感じですね、まぁ 俺もですけど。」

「お恥ずかしい限りです。」

「でも流石ですよ~、多くの記録を更新してるじゃないですか。」

「少佐も素晴らしいです、単機で下層まで辿り着けるなんて……」

「!? す、凄い……」

「はははっ。 色々と試していたんで、一度も反応炉までは行けませんでしたけど、
 頑張れば到達できると思いますよ。 ラストがちょっとキツいんですけどね~。」

「だ、だったら今度は私と――――」

「管制はお任せくださいっ。」

「いやいや、ちょっと待って下さい。 その前に飯にしましょう、疲れてるみたいですし。」

「あっ……そうですね。」

「わ、私も御一緒して宜しいでしょうか?」

「もちろんさぁ☆」


まりもちゃんが興奮している。 新OSが それ程までに、希望を見出せる代物だったんだろう。

それは俺も同じだったけど、彼女のお陰で逆に冷静で居られる事ができて良かった。

でも2人と食事が出来る事が嬉しくて、ついキモい笑みで言っちゃったんだ☆(2度目)

しかしなあ……俺は何時も通り うどんを頼んだんだけど、2人とも うどんってどう言う事だ?


「(白銀さんはずっと飢えに苦しんでる人達を考えて、少食にしているんだもの……)」

「(とてもじゃ無いですけど、彼の目の前で美味しい料理は食べれません。)」


横浜基地の美味さの価値観は 合成食品全般>うどん&そば で確定らしいんだけどなあ。

俺は合成食品の方が美味く感じないから食ってないけど、何か理由が有るんだろう。

きっと……そうそう。 きっと彼女達はダイエットをしているんだろうね、俺も肖らないとな。




……




…………




2001年11月09日 午後


「それじゃ~ハイヴ攻略、いっちょやってみますか。」

『はい。』

「新OSで2機連携は初めてなんで、今回は管制もお願いします。」

『了解しました。』


昼食を済ませると、俺達は再びシミュレーターに勤しむ事になっていた。

行うのは2機連携でのハイヴ攻略。 有る程度進めば地上とのリンクが切れるが管制付きだ。

新OS無しでも まりもちゃんとヴォールク・データをやろうとは思っていたけど、
最初から結果は見えている。 一人の時より記録を多少伸ばすダケだろうし試していない。


「俺の仕様はさっきと同じで。 ……軍曹はどうします?」

『少佐にお任せします。』

「だったら打撃支援でお願いします。」

『了解。』

「中尉。」

『はい、設定……完了です、それでは宜しいですか?』

「何時でもどうぞ~。」

『……ッ』

『ヴォールク・データ……状況開始。』




……




…………




『前方500m、右通路より大隊規模のBETA接近中!
 うち戦車級 約300・要撃級 約100・突撃級 約50……』

「了解! 軍曹 頑張ってください、もう少しですよッ?」

『わ、わかってます……!』

『本道 BETA出現まで残り30、29、28……』

「やべっ、鉢合わせたらオシマイだ! 推進剤 食いますけど突き抜けますよっ!?」

『了解……ッ!!』


≪ゴオオオオォォォォーーーーッ!!!!≫


ヴォールク・データ下層、俺とまりもちゃんは2機連携でハイヴ内を突き進んで行く。

俺の不知火S型は87式突撃砲、まりもちゃんは支援突撃砲を片手に装備している。

主に先ずは俺が前方に跳躍噴射し宙でBETAを引きつけ、まりもちゃんが空いた地面に着地し、
俺も適当に足場を作って着地後 走れるだけ走って再び跳躍噴射。

そして奥に進み再び俺がBETAを引き付け、まりもちゃんを安全に着地させ、
再び適当なスキマを狙うor作るして着地して走って跳躍噴射……と言うのを繰り返していた。

こんな感じよりも俺と彼女で囮を交互にできれば言う事無しなんだけど、
まりもちゃんにもその技量が有るとは言え、まだまだ完璧では無いので任せられないんだよね。

でも最初なら全然 上出来だ……とは言え、出来る事なら反応炉までは辿り着きたい。

だから必死になっており、推進剤が半分を切っていながらも俺は諦めずに奥を目指している。


「抜けれた! 後は次のフロアを抜ければ……」

『!? 前方1kmに旅団規模のBETAが接近中、接触まで後2分切ります……!』

「うへっ、マジッすか!?」

『申し訳ありません、戦術機の索敵範囲外でしたので……』

「そう言う想定が普通ですからね、リンクの範囲は400mですし問題無いですよ。」

『はい。』


初めて まともな管制を受けたけど、ピアティフちゃんはホント凄いな。

いかなる状況下でも、俺が聞きたい事を問う前に全て報告してくれるんですけど。

自分で調べても判るんだけど、言って貰える方が咄嗟の判断も早くなるしね。

それはさておき、反応炉を守る為にBETAが壁を作って俺らを押し潰そうと接近中だ。

2機連携と言っても逆に単機よりもペースは落ちてるから、仕方無いんだが……


「ちょっと厳しいかも……此処に来るまでに時間掛けすぎたかなぁ~。」

『……ッ……』

「軍曹、俺が引き付けますんで回り込んで突破を――――」

『私に任せてくださいっ!!』

「えぇっ?」

『これ以上、少佐の足は引っ張れません!!』

「ちょっ……軍曹!?」


動く壁になっているBETAは恐ろしいけど、これ位 なんとかしなくちゃ話にならんな。

だから突破しようと気合を入れたんだけど……まりもちゃんが何故か勝手に突っ込む!!

うわっ……予想はしてたけど、これってまさか……"特攻"ってヤツですか?

まりもちゃんが足を引っ張ってたって事は確かなんだけど、
むしろ最初にしては良くやってたと思うし、何でそうしちゃうのかなあ~。

まだまだ彼女は伸びるだろうから、全然OKだったんだけど、責任を感じていたらしい。

"この世界"の価値観を考えれば仕方無いけど、これはダメだと指摘しておかないとね。

そんな事を思いながら不知火S型の背中を眺めていた俺だったが、このシチュエーションは……


『――――っ!!!!』


≪ドゴオオオオォォォォーーーーンッ!!!!≫


「まっ……」

『神宮司機……自決装置 作動。』

「マウアアアアァァァァーーーーッ!!!!」

『――――ッ!!』


……Zガン●ムを肖って、つい言っちゃったんだ☆

実はさっきから、ガン●ムごっこをしたくてウズウズしてたんだよね。

ピアティフちゃんがビックリしてるけど、こうなってしまっては止まれないZE!!


「畜生ッ……ちくしょオおォォーーーーッ!!!!」

『白銀少佐、白銀少佐ッ!?』

「貴様らァ!! 近付くヤツは、みんな灰にしてやるっ!!!!」

『し、白銀少佐ッ! どうなされたんですか!?』

「落ちろ、落ちろっ!! うおおおおぉぉぉぉっ!!!!」

『……白銀少佐ッ……』


まりもちゃんがS-11で自決した事により、BETAの壁が盛大に吹き飛んだ。

よって反応炉迄の道が空いたワケなんだけど、俺は必要以上にBETAを蹂躙して奥へと進んだ。

とにかく撃って撃って撃ちまくり、それだけ俺はノリノリだったのさ。

流石ジェ●ド・メサ中尉だぜ。 気付いた時には、俺は反応炉に到達していた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

『し、白銀機……反応炉に到達。 状況……終了。』


――――うわっ! や、やっぱりピアティフちゃんが引いてらっしゃる。

まりもちゃんは自決した直後にリンクが切れてたから助かったぜ。

後で適当に誤魔化して、"変人"と言うレッテルを貼られるのダケは回避しなくては。

そんな事を考えていると、ハイヴの画面が消えて まりもちゃんの顔が出てくる。


「……お疲れ様でした。」

『すいません、白銀少佐。 足を引っ張ってしまって。』

「そんなの全然気にしてませんでしたよ、自決なんてしなくても良かったのに。」

『ですが――――』

『白銀少佐ッ。』

「何ですか? 中尉。」

『神宮司軍曹に対し秘匿回線の使用許可をお願いします。』

「何でッスか?」

『お願いしますッ!』

「ど、どうぞ。」


≪――――プツンッ≫


こ、怖かった。 怒った顔したピアティフちゃんなんて、初めて見たかもしれないね。

結局……待つ事一分、再び まりもちゃんとピアティフちゃんの顔が出てくる。

ピアティフちゃんは、さっきと違って落ち着いた表情をしてるけど、
今度は まりもちゃんが真面目な顔をしている。 でも……なんか悲しい雰囲気もある。

1分の間に、一体何が……!? 聞きたいけど、今は聞ける空気じゃ無さそうだな~。


『お待たせしました、白銀少佐。』

「お帰りなさ~い。」

『……っ……』

「それじゃ~もういっちょ、行きますか?」

『……だそうですが? 軍曹。』

『はい……お願いしますッ! 次は間違っても自決など考えません!!』

「うわっ、びっくりした。」

『先程は本当に申し訳ありませんでした、少佐ッ!!』

「き、気にして無いですってば。」


――――意味判んないけど、簡単に諦めない気になったのなら良しとするか。


≪神宮司軍曹。 先程の不知火S型の自決によって白銀少佐は……
 貴女を今は無き戦友の背中と重ねたのかも知れません。≫

≪え……ッ!?≫

≪自決直後 白銀少佐は絶叫し、半狂乱になってBETAを殺戮していました。
 私が呼び掛けても、反応炉に到達する迄は何も聞こえていない様子で……≫

≪そ、そんな……≫

≪初めて御会いしてから……私には少佐が死に急いでいるようにしか見えませんでした。
 ですから彼の目の前では、決して命を粗末にしようとは思わないで下さい。
 例えそれが……シミュレーターでの戦いであっても……どうか、お願いします。≫

≪わ、わかりました……わざわざ有難う御座います。≫


「(白銀さん……必ず、貴方と肩を並べられる腕の衛士になって見せますっ!)」




……




…………




『白銀機・神宮司機、反応炉に到達。 ――――状況終了。』

「良しッ、やったぞ~!」

『ふぅ~~っ……』


あれから何度もヴォールク・データを繰り返した結果、
俺も色々と勉強になったけど、まりもちゃんも見違える程 成長した。

どれ程かと言うと、任せられなかった囮役を交互に出来るように成るレベルであり、
計5回うち最後の2回は互いに無事に反応炉まで到達でき、この上ない戦果を叩き出したのだ!

反応炉を破壊する武器は持たない攻略だったので、到達した時点でシミュレーターは終了だけど、
今度は"それ"を持って攻略する事も考えないといけないんだよな~。

……考えてみれば、最後の攻略では互いに弾倉は半分も減っていなかった。

むしろ頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャーの消費の方が激しかったんだよね。

だから背中(74式稼動兵装担架システム)に反応炉を破壊できる武器を背負う方が良いかもな。

明日その辺も踏まえて、新OSについての報告をゆーこさんにして置く方が良いかもしれない。


「いや~、予想以上の成果でしたねぇ。」

「まさか2機の戦術機で反応炉に辿り着ける日が来るなんて……」

「不知火S型と新OS……こんなに素晴らしいモノだったとは思いもしませんでした。」

「でも、まだまだ課題はありますよ。 今度は反応炉を破壊する事を考えませんとね。」

「――――それでは少佐、中尉ッ! 私は御先に失礼致します!」

「ぇあ?」

「御二人とも今日は本当に有難う御座いましたっ!」

「ちょ、軍曹……?」


そんな事を考えているうちに、まりもちゃんが敬礼してロッカーの方に歩いて行ってしまう。

止める間も無く姿が消えてしまい、その場には俺とピアティフちゃんが残された。

や、ヤバいな……ガン●ムごっこをした後だから二人っきりは気まずい。 そう思ってると……


「き……気を遣ってくれたのでしょう。」

「!?」


意味不明な事を漏らすピアティフちゃん。 まりもちゃんが気を遣ったってどう言う事ですか?

まさか……俺がピアティフちゃんに"ガン●ムごっこ"についての言い訳をさせてくれるために!?

凄いぜ、ピアティフちゃんは其処まで読んで 秘匿回線でまりもちゃんに促したのか!!

さ……流石 ゆーこさんの秘書だぜ……彼女 迄とはゆかずとも、かなりの天才なのだろう。

そんなピアティフちゃんは沢山喋って疲れたのか、やや顔が赤い。

何やら俺を上目遣いで見つめているのがソソるが、期待に応えて言い訳させて頂こう。

嗚呼……けど、天才相手に言い訳なんて簡単に出て来ない。 俺の表情は硬くなっている。


「…………」

「ところで……さっきの事なんだが……あれは、俺の"癖"みたいなモノなんだ。」

「く、癖……?」

「あぁ。興奮すると訳の判らない事を叫んでしまう。 だから、忘れて欲しい。」

「……っ……」

「俺からはソレだけだ。 では、また宜しく頼む。」


そうだ……これは癖なんだ。 悲しいけど、これって性分なのよね!!(某中尉調)

まぁ 言っている事は理解できないだろうし、全てスルーして貰う事にしよう。

けど言い訳にはなって無いんだよね……変な癖が有る時点で変人には変わらない。

そう考えると悲しくなったので居た堪れなく、その場を後にしようとしたのだが……


≪……ダッ!≫


「――――っ。」

「……ッ!?」


!? あ……あれ? ほっぺに暖かい感触……なんですか これ?

ちょっ……おいおいおい!! なんかピアティフちゃんにキスされましたよッ!?

直ぐに離れちゃったんだけど、背伸びして何やってんですか貴女は!?

めっちゃ嬉し過ぎてリアクション取れないんですけどっ! 襲い掛かって良いですか!?

こんな感じで脳内でテンパりながら、黙ってピアティフちゃんを見ていると――――


「少佐……深くは問いません、先程の件は忘れます。 ですから、今の事も忘れてくださいっ。」

「は、はい。」

「それでは……し、失礼しますっ!」

「…………」


真っ赤になりながらパタパタと走り去るピアティフちゃん。

俺は未だに状況を飲み込めていなかったけど、彼女の背中を見たら思ってしまった。

此処は声を掛けてフラグを立てるべきだとッ! 原作で余り接点が無い娘だけど別に良いよね!?


「――――中尉!!」

「!?」

「俺、明後日 出撃するんです!そん時は管制、任せて良いですか!?」

「も……勿論ですっ!」


思い付きで危険な提案をした俺に対し、振り返ったピアティフちゃんは、
立ち止まってOKと同時に敬礼してくれると、再び走り出していった。

一人だとやっぱり不安が有ったけど、彼女の戦域管制が有れば更に安心だろう。

キスしてくれたのは……スキンシップだな、良く判らないけど挨拶みたいなモノなんだよきっと。

とにかく今日は顔を洗わないぞッ! 俺は鼻歌交じりにロッカーへと歩いて行った。


「(はぁ……私も もっと積極的に行った方が良いのかな……?)」


≪白銀少佐……生きて帰って来てくれたんですね……≫


≪当たり前だろう? 君の処女を残して死ぬワケにはいかないからな。≫


――――今夜はピアティフちゃんをオカズに、勿論 犯っちゃったんだ☆




●戯言●
第二部(?)スタートです。ネタを考えるのに一週間は掛かると思ったんですが、
突発的にビニールとジェ●ドネタが浮かんだので、つい犯っちゃったんDA☆
伏兵ピアティフ中尉、彼女が一番勘違いしています。そしてようやく実戦な予感。




●皆が白銀(馬鹿)をどう思っているのか●
副司令:????
ウサギ:懐いている様子
軍 曹:尊敬できる上官
オペ娘:放って置けない
御 剣:尊敬できる上官
 榊 :信頼できる上官
彩 峰:理想の上官
珠 瀬:格好良い上官
鎧 衣:優しい上官
伊 隅:謎の多い上官
速 瀬:ギャフンと言わす
涼宮姉:興味ある上官


●追記●
同日10時ごろ誤字修正を行いました、度々すいませんorz



[3960] これはひどいオルタネイティヴ14(+用語ver1)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/07 08:57
これはひどいオルタネイティヴ14




2001年11月10日 午前


「それじゃ~霞、今日も純夏の事 宜しく頼むよ?」

「……はい。」


俺は朝 霞に起こして貰うと、そんな会話をしてからPXへ行き即効で朝食を済ませる。

そして、ゆーこさんと会うべく地下19階へと降りると、走って執務室に向かった。

目的は昨日のログを渡す事による新OS(β版)の作成、
及び11月11日についての質問と、昨日 思い浮かんだ新兵器開発の提案だ。

今現在は、ログを受け取ったゆーこさんが記録を眺めた直後、目の色を変えたトコロだ。


「まりもとのニ機連携で反応炉到達? ……嘘みたいね。」

「嘘みたいなホントの話です。」


≪カタカタカタカタッ……≫


「う~ん……この場面は反動の殺し方が甘い、まだ修正の余地が有りそうね。
 此処の動作は機体に余計な負担が掛けてるみたいだし、調節して微修正を……」

「…………」


イキナリ俺を眼中に入れずに、新OS(α版)の修正に没頭し始めてしまった。

余程 結果に満足してくれたのかな? 嬉しそうに作業している様子が微笑ましい。

……けど、俺には"聞きたい事"と"提案"が有るので声を挟むしかないのだ。


「格闘中の隙を中型クラスに狙われた時は、コンボを中断して後方跳躍噴射すると同時に、
 突撃砲に持ち替えて離れながら迎撃? イカれた発想ね……でもその場合はこうした方が……」

「あの……ゆーこさん?」

「このタイミングだと左腕が邪魔でマルチ・ランチャーが撃てれてないわね、
 バランスには問題無さそうだから、使えるように修正をして……」

「ゆーこさんってば。」

「この空中で噴射を短い間隔で繰り返してフワフワ浮いてるのは何なのかしら?
 でもハイヴの中だと悪く無いアイデアじゃない。 フットペダルを踏む力の使い分けをする事で、
 噴射の強弱が調整できる様にすれば、推進剤の消費をかなり減らせるように……」

「ゆーこさん!!」

「!? 何よ白銀、居たの?」

「直ぐ作業に当たってくれるのは嬉しいんですけど、まだ話が有るんです。」

「何よ?」

「明日の件……どうなりました?」


最初から判っている事だが、聞かねばならない。 怪しまれちゃうしね。

対して ゆーこさんは面白く無さそうにチェアーに背を預けると言う。


「日本海の防衛ラインには、今日付けで防衛基準体制2を入れる事にしたわ。」

「そうですか、有難う御座います。」

「別にアンタの為にしたんじゃ無いんだからね。」

「……何と言うツンデレ。」

「ツンデレ? 何よそれ。」

「流してください。」

「まぁ……アンタの話が本当なら、今夜のうちには動きが有るでしょうね。
 その時点で白銀とA-01には防衛ラインに向かって貰うから、準備しておきなさい。」

「β版は間に合いそうですか?」

「ふふんッ。 あたしを誰だと思ってんの?」

「天才ですね、解ります。」

「煽てても何も出ないわよ? とにかく、出撃迄には整備も間に合わせるわ。」

「どもッス。 ……でも、その際はピアティフ中尉を管制で御借りしたいんですけど、
 構いませんか? 本人はOKしてくれたんですけど、ゆーこさんの秘書ですし。」

「……(こいつ何時の間に……案外侮れないわね。)」

「ゆーこさん?」

「ん……別に構わないわよ? どの道 大事な実戦テストだし、誰か付かせる予定だったから。」

「そうでしたか。」

「……で、話はそれだけ?」


トントンとデスクを両手の中指で叩きながら言う ゆーこさん。

なんか地団駄を踏んでるみたいで笑える、早く作業に戻りたいのだろう。

……けど、きっと興味を持ってくれるハズだ。 俺は心の中で詫びながら口を開く。


「まだ有ります。」

「何なのよ?」

「最後のヴォールク・データのログで、残った弾倉を見てみて下さい。」

「仕方無いわね……えっ!? 36ミリでさえ4個のうち2個余ってたの?
 120ミリも1個余ってるし、随分と余裕が有ったみたいじゃない。」

「えぇ。 俺 強襲前衛だったんですけど、片方の長刀と突撃砲は全く使いませんでした。
 滑空砲を使った時なんて、距離が遠かった まりもちゃんのフォローをした時が殆どでしたし。」

「じゃあ何が言いたいワケ?」

「使わなかった長刀と突撃砲の代わりに、背中に"違う武器"を持った方が良いと思ったんです。」

「違う武器……自立誘導弾システムでも付けるつもり?」

「まさか。 ハッキリ言うと、反応炉を破壊できる武器を持ちたいです。」

「!?」

「えっと……実弾系のバズーカか180ミリ以上の大型砲を背負うのが理想かなぁ……」

「ちょっと発想が飛躍し過ぎじゃない? 反応炉を壊すなら自動起爆装置が有るじゃない。」

「そうなんですけど、以前のループだとBETAにそれを壊された事が有るんですよ。
 だから武器で直接 壊した方が良いかなぁと……その場で起爆させるよりは、
 射撃して着弾した時の反動も利用する方が多少コストを抑えれると思いますし……」

「……(こいつ、ハイヴに潜った事もあるのかしら……)」

「それと、旅団や師団クラスに壁を作られて迫られると状況によっては詰むんですよ。
 昨日は まりもちゃんが自爆して道を開くってパターンも有ったんで、
 反応炉破壊云々は置いておくにしても、高火力の武器は必要かなぁ~と……」


原作でも速瀬は反応炉を破壊する為に自爆し、榊と彩峰もBETAを食い止めるべく自決した。

そんな事にならない為にも、戦術機が持つ"高い火力を持つ武器"の開発を提案をしてみた。

TEだとレールガンの存在が有るけど、ハイヴの中で運用するのは今じゃ難しそうだしね。


「ん~……言いたい事は解るけど、戦術機が背負うにしては大き過ぎる武器になるわ。
 重量は極力抑えれば長刀+突撃砲の重さくらいにはなるだろうし、問題無いかもしれないけど、
 砲身の長さには引っ張り回される事になるだろうし、今以上の機動力低下は痛いんじゃないの?」

「重量自体には問題は無いんですか?」

「えぇ、でも長刀以上の長さの武器を背負わせるのは無理が有るわよ?」

「……だったら短くすれば良いんです、使う時 以外は。」

「どう言う事?」

「"折り畳み式"にすれば良いんですよ。」

「!?」


武器開発に対して最初は乗り気じゃ無さそうな ゆーこさんだったけど、
起爆装置が壊された事や まりもちゃんが自決した事を言ったら若干 靡いてくれる。

んでもって"折り畳み式"の案を出すと、納得してくれたか"開発"を飲んでくれた。

それで決定した事は、180ミリ大型砲よりも折り畳みが安易そうなバズーカの開発。

弾数は多くて4発程度らしいが、自立制御でも全く使わなかった突撃砲と長刀を持つよりはマシ。

代償として武器が2個しか持てない事で決定されてしまうんだけど、
ハイヴの中で無駄に敵を倒す必要は無いし、弾倉を増やして突撃砲を二丁持つのも良いかもな。

また爆風に巻き込まれない為に、盾の強化にも視野を入れてくれた ゆーこさんなのでした。

無茶な気もしたけど、これだけ技術が進んでるんだ。 今度も天才なら何とかしてくれるさッ!


「度々すんませんでした、宜しく御願いします。」

「別に結果が出れば構わないわ。」

「んで……明日の仕事はA-01の援護って感じで良いですか?」

「……ん……実戦のテストをしてくれれば、何でも良いわ。」

「了解ッス。 それじゃ~失礼しま~す。」

「はいはい。」


≪ガシューーーーッ≫


今 言おうとして躊躇ったっぽいな、BETAの捕獲についての件……まぁ、良いか。

例え現場を見て意図を聞いても流せと言われるダケだろうし、元々とやかく言うつもりは無い。

多くの味方や まりもちゃんを殺す事に繋がるんだろうけど、俺が頑張れば皆 助けれるハズだ。

さておき……正史に大きく反して出撃する事になっちまったけど、
不知火S型を作って貰った代わりだと考えれば良い……と言うか今更って感じだよね。

そういやヴァルキリーズで死傷者が出るハズだし、フォロー出来るよう頑張るとするか。


「(何だか踊らされてるみたいよね……悪い気はしないんだけど。)」


――――ちなみに、バズーカの名称は決まっていない。 案はあるんだけどね。




……




…………




2001年11月10日 午後


「んじゃ~そろそろ行くわ。」

「あの。」

「どした? 霞。」

「また……来て下さい……」

「当たり前だろッ、またな~。」

「ま……またね。」


ゆーこさんと会ったついでに霞のトコロへ遊びに行った俺だったが、つい遊び込んでしまった。

だって早めに帰ろうとすると霞が悲しそうな顔するんだもん、俺には絶対 抗えませぬ。

NOと言えない日本人万歳っ! ……それはそうと、午後の時間はどうしようかな。

……あぁ~……そういやB分隊がシミュレーターでもやってる最中かもしれない。

まりもちゃんが指導してるだろうから安心なんだけど、覗いて見るのも良いかもしれないね。

最もエロいスーツを着ているんだろうし、耐性を付ける意味でも見に行く価値は有る。

そう考えながら心の中でウキウキしつつも、真面目な少佐を演じて通路を歩いていると――――


「あぁ~~っ!!」

「ぅえ!?」

「水月……どうしたの?」


――――鬼女 ハヤセ ミツキ が1体出た!!


唐突に速瀬が通路を曲がって現れ、俺の顔を見るとデカい声を上げたのだ。

直後 怖い顔でズンズンと足を踏みしめながら近付いて来るんですけど……

しかし足に障害を抱えながらも健気に走り出した涼宮(姉)に肩を掴まれる。


「(水月! 良く考えて、相手は上官でしょッ?)」

「(くっ……)」

「――――敬礼っ!」

「……ッ……」


涼宮(姉)はボソボソと速瀬に何か言ったと思うと、凛々しく俺に敬礼してくれる。

速瀬も顔はヒクヒクしているが、涼宮(姉)に続いて俺に敬礼した。

恐らく まりもちゃんの指導の賜物だろう、速瀬の相手を頼んで正解だったかもしれない。

だが未だにプルプルと震えているので不安だったが、涼宮(姉)が困った顔をしながらも口を開く。

良い娘だよなぁ……マブラヴ以外はプレイしてないから良く知らないけど、結婚してぇ……


「あの、少佐……これから どちらに?」

「ん……次の任務まで暇なんで、訓練兵達の様子でも見に行こうと思ってね。」

「そうなんですか。」

「それじゃ~これで失礼するよ。」

「はい。」


本来なら じっくり話し込みたいところだが、速瀬が居るし難しいだろう。

そう考えると……涼宮(姉)と話す機会は限りなく少ないかもしれない。

正直 残念だが次の機会が有る事を期待しよう。 よって早足に立ち去る事にした俺。


「ふぅ……水月、悔しいのは分かるけど相手を考えてよ。」

「わ、分かってるわよ。」

「どうして、そんなに白銀少佐を嫌うの? 悪い人には見えないんだけど。」

「嫌ってる訳じゃ無いんだけど……どう見ても私達より年下なのよ? 何だか悔しいじゃない。」

「階級に年は関係無いよ。 それに神宮司軍曹が認めてる人でも有るんだから……」

「ふ、ふんだッ。 ちゃんと勝負するまで、私はアイツを認めないわよ!」

「全くもう……負けず嫌いなんだから。」

「それよりも遥、アイツを追っかけるわよ? 尾行するの、尾行ッ!」

「えっ、えぇ~っ……」


――――逃げ延びた……(メガ●ン調)




……




…………




「おっほぅ……」


シミュレータールームにやってくると、予想通りB分隊の皆が居た。

今日は地味に日曜日なので、他に衛士達の姿は無いようだ。 いや、此処じゃ曜日は二の次か。

さておきB分隊は まりもちゃんの指導を受けており、基礎を叩き込まれている様子。

しかしなぁ……案の定とは言え、何で肌の色に近いスーツを着せられているんだろう。

と言うかビニールを被ってるダケにも見えるし、有る意味全裸よりヤバ気がするんですが。

あの色だと目を凝らせば透けそうだし、訓練兵に対するイジメにしか見えませんよ?

その為か皆には恥じらいが見え隠れしており、ケツとか特にエロいんですけど。

だから今の彼女達はエロスーツの違いから"美乳三連星"よりも挑発的に見えてしまう。

そんな事を考えながらB分隊達をネットリ眺めていると、榊と目が合ってしまった。


「あっ、白銀少佐……」

「!? 白銀少佐に敬礼!!」

『――――っ。』

「こりゃ御丁寧にどうも……」


すると まりもちゃんも俺に気付き敬礼し、B分隊も続いてくださる。

ふむ、流石に強化装備だから乳は揺れないが……もし揺れてたらおっきしちゃってるお( ^ω^)

されど胸を張る彼女達は恥ずかしそうだ、あの彩峰でさえ頬を紅くして小刻みに震えている。

だけど笑うワケにはいかない、俺は珠瀬に目の焦点を合わせながら敬礼すると、
彼女達の魅力から逃げるように、軍服のまりもちゃんに視線を移した。


「いらしてたんですか、少佐。」

「えぇ、暇でしたから。 ……ところで、どの辺まで進みました?」

「先程 特性検査が終わったところです、御剣と鎧衣の適正が若干 高めですね。」

「成る程。 でも大差は無いんでしょう?」

「はい。」

「まぁ、俺は見てますから引き続き御願いします。」

「お任せ下さい。」

「――――んっ?」


ついさっき初めて見た時はエロ過ぎて逃げ出したくなったけど、訓練には この上ない相手だ。

よって夕食迄 此処で時間を潰そうと思っていると……B分隊の皆がこっちを見ている。

そりゃ目の前に居るから見るんだろうけど、何か言いたそうにしてるのよね。


『…………』

「榊、何か俺に言いたい事が有るんじゃないかい?」

「!? い、いえ……別に……」

「遠慮は要らないぞ、何だね?」


5名の訴えるような瞳。 これは聞かざるを得ない、内容によるけど。

んで分隊長の榊に聞いてみると、彼女は左右の仲間と顔を見合わせた。

その後 頷き合うと、再び俺を見据える。 "私達と結婚してください"とかだと良いな~。


「も、もう一度……少佐が戦術機を操縦する様子を見せて頂けませんかッ?」

「なんと。」

「榊ッ! 図々しいぞ、身の程を弁えろ!」

「も、申し訳ありません!」


いきなり険しい表情をする まりもちゃんに対し、榊は直立不動になった。

まぁ、少佐を相手に"そんな事"を頼んだら"こっち"の常識だと怒られるのは無理もないか。

……でも、出し惜しみするのは頂けないな、どっちにしろ俺 程度には成長して欲しいし。

正直なトコ甘ちゃんな俺としては、XM3もさっさと広める方が良いって思ってるしね。


「……いや、別に良いよ?」

「少佐!?」

「はははっ、だから暇なんですって。 ……彩峰、キミは何が見たい?」

「……ハイヴの攻略?」

「彩峰!!」


……できればβ版が完成してから見せたかったけど、良い機会だし問題無いか。

しっかし まりもちゃん怖いなぁ……真横なんで耳が痛いんですけど。


「OK。 んじゃ~それで行こう、管制は欲しいから俺一人かな~。
 出来る事なら2機連携を見て貰いたいトコだったんだけど……」

「はぁ……分かりました。」

「軍曹?」

「――――涼宮中尉ッ!」

「は、はいっ!?」

「うわっ、びっくりした。 ……って、あんなトコに居たのか……」

「訓練兵達にヴォールク・データの2機連携による攻略を見せたいのです!
 大変 恐れ入りますが、戦域管制をお任せしても宜しいでしょうかッ!?」

「か……構いませんけど?」

「有難う御座いますッ、涼宮中尉に対し敬礼!!」

『――――っ。』


何時の間にか話が飛躍しているな。 涼宮(姉)と速瀬……隠れて見てたのかよ!?

その気配に気付いたまりもちゃんは流石だな~って言うのはさておき、オペ娘の登場は有り難い。

速瀬がオマケに付いているけど、俺の実力を分かって貰える良い機会かもしれないな。


「は、遥ぁ~……何オッケーしてんのよぉ?」

「あっ……ごめんね、つい。」




……




…………




『前方500m地点より旅団規模のBETA接近中! 接触まで60、59、58……』


強化服に着替えた俺と まりもちゃんは、ヴォールク・03の真っ最中だった。

実戦じゃ無いんだろうけど戦域管制は涼宮(姉)。 見学者はB分隊5名とオマケの速瀬。

見学者がどう見ているかは判らないけど、初っ端の涼宮(姉)の表情は驚愕を表していた。

まぁ、それは妥当だよね。 正直なところ、驚かないほうがオカしいだろう。

……けど驚愕が感激に変わった涼宮(姉)は、興奮しながらも管制を続けてくれている。

絶望的な物量のBETAに対し、希望を見出せた事が嬉しかったんだろうね。


「しまった、ちょっと丁寧に行き過ぎたみたいですね~。」

『どうしましょう?』

「抜けますよ、大丈夫ですよね?」

『勿論です。』


現在位置は下層。 状況は以前と似ていて、まりもちゃんが自決した時よりも余裕が無い。

恐らく見学者が居るって事で、丁寧な攻略を心掛けた為だろう。

しかし下層は不自然にBETAの密度が高いよな……多分だけど、
中層より先は横浜ハイヴのデータを使ってるから、曖昧にするよりは難易度を上げてるんだろう。

けど失敗するつもりは無い。 俺は まりもちゃんと頷き合うと、互いに前に出る。


「――――今ですよ!?」

『了解!!』

「そらそらッ、こっちだ~!!」


デカい本道の左に寄りながら限界までBETA達を引き付けた直後に、
まりもちゃんが右に水平噴射し、俺は射撃はせずに徐々に後退し大量にBETAを釣る。

その側面を射程ギリギリで まりもちゃんが宙からマルチ・ランチャーと支援突撃砲で牽制する。

射撃中も小刻みに噴射行動……フワジャンをしながら、反応炉の位置を正面として、
右斜め後ろに下がっており、地面のBETAは手も足も出せていない。

それによって3分の1程のBETAがまりもちゃんに釣られ出すが、
先程 撒いた後方のBETAが近付いて来たようで、涼宮(姉)が予想通り告げてくる。


『白銀機 後方より突撃級 接近中ですッ! 数は約100、接触まで20秒切ります!!』

『少佐ッ。』

「引き続き誘導してて下さいッ、先に一気に抜けますっ!」

『了解!!』


十分 引き付けたし問題無い、右側に突破できる手筈が出来た。

俺は最後にマルチ・ランチャーを数発プレゼントすると先程の彼女と同じように右に水平噴射し、
ぐるりと回りこんでBETAを宙で釣っていたまりもちゃんの右隣を通り抜ける。

それと同時に まりもちゃんも適当な足場に着地しており、跳躍噴射して俺の後を追って来てくれた。

先程の釣りの結果、最後尾のBETAも不知火S型の機動には追いつけないし届かない。

つまり……ステージクリアだ。 相変わらず反応炉を破壊する武器は無いけど、
今回は自動起爆装置は持っていくべきだったのかな~……まぁ、どっちでも良かったか。


『白銀機 神宮司機、反応炉に到達。 状況終了!』

『――――ワァッ!!』


興奮気味にヴォールク・データの終了を告げる涼宮(姉)。

同時にB分隊が歓喜してるっぽい声が聞こえ、俺はまりもちゃんに親指を立てる。

対して まりもちゃんも微笑みながらウィンクしてくれた。 結婚してください。




……




…………




「少佐、軍曹ッ! 素晴らしかったです!!」

「これ程とは……御見それ致しました。」

「……やるね。」

「凄いです、凄すぎます~っ!!」

「ぼ、ボクにも あんな操縦 出来るのかな~ッ?」

「はははっ、大した事はないさ。 ねぇ、軍曹?」

「はい。」


筐体を出ると、興奮した様子のB分隊の5名。 恥ずかしさは何処へやら。

ソレに対してまりもちゃんと交わした言葉は、強ち間違いじゃ無いんだよな~。

本気でやったら後何分かはタイムを縮められた だろうし、訓練を続ければもっと縮まる筈。

……でも、悪い気はしないな。 そう思いながら速瀬を見てみると、唖然としていた。

う~ん、そうだよな……戦術機の云々を理解していない訓練兵達よりも、
エースパイロットである速瀬の方が驚きはデカいだろう、彼女の性格も考えれば尚更だ。

だが これで見直してくれたんだろう? そう言う思いを込めて俺は思わず――――


――――ニコッ♪


「……っ!?」


≪――――ダッ!!≫


「み、水月!?」


つい……微笑んでしまうと速瀬は唇を噛み締め、悔しそうな表情で走り去ってしまった。

そして追い掛ける涼宮(姉)、お大事に。いや、その……馬鹿にしたつもりは一切 無いんですよ?

何となく表情が緩んだダケであって……そうオタオタしているうちに、まりもちゃんが叫んだ。


「良いかッ! 貴様等には近いうちに、先程の技術を最低限 得て貰う様にする!
 戦術機によってハイヴを攻略する為には必ず必要なモノだ、判ったか!?」

『――――はっ!!』

「だが、ほぼ全ての衛士は現在利用した新OS及び不知火S型の存在は知らん!
 よってテストを担う貴様等が戦術機でのハイヴ攻略の可能性を、最も秘めている事になる!
 その事を念頭に本日からのシミュレーター訓練に当たれッ! 良いな!?」

『――――了解っ!!』

「それでは、先程のリプレイを見て貰う事とする! 質問には後程 答えよう。」


……そう言い終えると まりもちゃんは端末を操作してモニターにリプレイを移す。

視点は まりもちゃんだ。 俺の操縦は少し荒削りだから、彼女の方が参考になるだろう。

まぁ……後は任せても大丈夫だろうな~。 俺が居ても邪魔だろうし、無難に見学しとこう。

俺は まりもちゃんと目を合わせると、口の動きダケで"後は御願いします"と言った。

対して まりもちゃんは優しく頷いて下さったので、俺は満足気に次の行動に移す。

狙いは早速 映し出されたモニターを見上げている珠瀬であり、唐突に肩に手を置いた。


≪――――ポンッ≫


「……珠瀬くん。」

「は、はいっ!? なななな何ですか、少佐?」

「手紙には……嘘を書いちゃダメなんだぜ?」

「――――にゃっ!?」

「HAHAHA、じゃあ頑張ってくれ給え。」

「あうっ、あうあうぁ……あうっ……」


思いっきり図星だったらしい、なかなか可愛いな……お持ち帰りしたい。

しかし叶わぬ夢。 俺は痙攣する珠瀬を無視してスタスタと離れると、長椅子に腰掛けた。

……そして暫く、B分隊のエロスーツを眺めながら今後の事を考えていた。

一番気になるのは速瀬の事だけど、涼宮(姉)だったら何とかしてくれるハズだ……多分。

最悪 明日の戦いに支障を来たす可能性も有るけど、フォローしてやりゃ問題無いか。


「あっ、そんな所に居たんだ……」

「……ッ……」

「水月、一体どうしたの? 少佐も軍曹も素晴らしかったじゃない。」

「……それは認めるわ。」

「じゃあ、何で急に?」

「良く判らないけど……ただ……凄く悔しかった。
 若いのに戦いの事なら何でも判ってる様な感じなのが、ムカついたのかもしれない。
 あの時 笑われたのも、きっと私の"覚悟"を嘲笑ってたんだと思う。」

「そ、それじゃあ今迄……少佐はどんな辛い思いをして来たんだろ……」

「うっ……それが判らないのが、グスッ……悔しい……悔しいよ、遥ぁ~……」

「水月……」

「絶対にっ……アイツを越える衛士になって……仇を討ってやるんだから……ッ!!」




……




…………




2001年11月11日 早朝


原作通り、俺の予知は的中。 旅団規模のBETA群が日本海・海底を南下して来た。

それにより第56機動艦隊が全滅、6時半過ぎには帝国軍第12師団がBETA群と接触した。

そして7時過ぎには進軍予想により、BETAの目標が横浜基地と判明。

よって横浜基地にも防衛基準体制2への移行が発令されるが、その前に殲滅させるのが正史だ。


「ピアティフ中尉、A-01の状況は?」

『間も無く大隊規模のBETAと接触します。』

「数は?」

『約500です。』


今現在の俺は不知火S型(新OSβ版)強襲掃討仕様のテストの為、戦場へと出向いていた。

強襲前衛仕様じゃ無いのは、俺がチキンだからだ。 初戦で格闘メインとかしたくない。

さておきBETAの動きは日付が変わる辺りで判っていたので、時間的に余裕を持っての到着だった。

移動中は寝てたから中越・下越・新潟の何処かさえ判らないが、自分の役割をこなすだけさ。

そんな俺がフォローするっぽい伊隅・ヴァルキリーズは、CP含めて全員でたったの8名らしい。

伊隅・速瀬・宗像・風間・涼宮(姉)……残り3人のうち二人が前衛、一人が後衛、

3人は此処で戦死か病院送りになるんだろうけど、前衛が二人も死ぬのかYO。

う~ん……速瀬みたいなエースパイロットで無い限り必然かもしれないなぁ……

他の原作での前衛も白銀・御剣・彩峰ってバケモノ揃いだし……

実戦においてBETAの物量を前にXM3無しで格闘とか俺なら絶対嫌なんですけど。

でも前者の5人の生存が最低条件とは言え、死ぬ娘達も極力助けたいところだな~。

……しかしなあ……たった7機で500体かよ、旅団規模って多くても5000だろ?

3つの艦隊と1ダースの中隊が狩り出されてるのに10分の1を相手にするとか、
ゆーこさんのスパルタ教育にも程が有り過ぎる気がするんですけど。


「ま~……少し様子を見ますよ、状況報告を御願いします。」

『了解しました。』


恐らくピアティフちゃんは涼宮(姉)と同じ機内で俺と通信してるんだろうな。

ちなみに不知火S型の運搬はシークレット。 伊隅達は俺の存在を知らないのだ。

さておき丘の上から地響きを響かせて迫り来るBETAを眺めている、俺と不知火S型。

周囲に味方部隊は皆無らしい……そりゃBETAを捕獲するなら当然だよね。

とりあえず、穴が生まれたら直ぐにフォローしに行こう。 嗚呼……緊張するぜ……


「……始まったか。」

『はい、交戦開始したようです。』

「どきどき、大丈夫かな~……」

『突撃級に対し7機の回避を確認。 後衛4機が背後より突撃級の殲滅に移行、
 前衛3機が要撃級及び戦車級を殲滅中。 ……突撃級、殲滅したようです。』

「出だしは順調か……」

『第一波の戦車級の殲滅も確認――――ッ!?』

「どうしましたッ?」

『ヴァルキリー2が前線で孤立している模様です、このままでは――――』

「ま、マジすか!? だったら早く行かないと……!!」

『コールサインはどうしますか?』

「か……考えて無かった、またの機会で御願いしますっ!」

『はいッ。』


な、なんてこったっ! 速瀬がピンチらしい、死なれちゃ洒落にならんぞ!?

コールサインはストーム・メビウス・ニコニコ・ドナルド・ガチムチ・げろしゃぶ……

良いのが……と言うかロクなのが思い付かなかったので、後でじっくり考えて置く事にしよう。

とにかく初の実戦だッ! 今回もエースパイロットを肖ろう、主人公は死なないんだからな!!


「……良しっ! 不知火……S型は、白銀 武で行きます!!」




……




…………




『はああああぁぁぁぁっ!!!!』


≪――――ザシュッ、ザシュゥゥッ!!≫


『ヴァルキリー1よりヴァルキリー2へ! 速瀬、死ぬ気かッ? 下がれ、出過ぎだぞッ!?』

『はぁっ、はぁっ……こんなモンじゃない……私の"覚悟"は、こんなモンじゃない……!!』

『大尉ッ、どうかヴァルキリー2の支援を……!』

『こ、このままでは速瀬中尉がッ!』

『一条・神村、止すんだっ! それ以上出るとお前達も戦車級の餌だぞ!?』

『う、ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズへッ!
 こちら側より見て左側が若干 手薄です! マップ転送しますッ!』

『むっ……判った! ヴァルキリー3・4・7ッ、左右に展開しろ!
 右翼よりBETAを包囲しつつ殲滅し、ヴァルキリー2を援護する!!』

『――――了解ッ!!』


丘の上よりジャンプして着地 直後、勝手にリンクに紛れ込むと、
奮戦するヴァルキリーズの会話を聞きながら、彼女達を援護するべく水平噴射!!

一条と神村って聞こえたのは今回死ぬハズの前衛の娘なのだろう、見捨てるワケにはいかない。

それにしても速瀬の"覚悟"って何だ? 意味が判らんけど気にしない事にしよう。

……そんなうちにヴァルキリーズとの距離が縮まり、俺は跳躍噴射して彼女達を飛び越える。


≪――――ゴォッ!!!!≫


『!? な、何だ……今のは!? あの機体は何処かで――――』

『し、不知火S型……まさか、白銀少佐が!?』

「何でこんな所に来るんだよッ!!」


≪ドパパパパパパパパ……ッ!!!!≫


速瀬は状況がアレなので別として、不知火S型を知る伊隅と涼宮(姉)の驚く声が聞こえる。

一方 俺は跳躍噴射中に両手でチェーンガンをバラ撒きまくって、
足元のBETAは今のところ無視しておき、速瀬の周囲のBETAを狩りまくる。

そうしていると"レーザー照射警報"が鳴り響いたので、俺は即 噴射降下するべく操作する。


『し、少佐!?』

「見えたっ!!」


≪――――カッ!!!!≫


ピアティフちゃんの声と同時に複数のレーザーを回避して着地する。

正直ジム・ス●イパーのR-4型ビーム・ラ●フルに比べれば止まって見えるぜ!!

アレは着地を狙われて避け様と思う前に食らうからな……光線級がそんなんじゃなくて良かった。

さて置いて、当然 着地直後も手は休めず、俺は両手のチェーンガン、
新武装の頭部バルカン砲、そして胸部マルチ・ランチャーを駆使してBETAを蹂躙する。

まさに俺TUEEEE状態ッ! 突撃級が居ないダケでこうも楽になるなんてな~。

けど……飛び越えたBETAや後続のBETAが接近中だ、まだまだ油断はできないか……

しっかし速瀬は本当に危なかったな、戦車級に食い付かれる直前だったし。

それに弾が切れている上に今は興奮しているようだ。 お陰で俺が冷静にもなれたんだけどネ。


「こちら白銀機ッ! 速瀬機は確保した、彼女の後退の援護を頼みます!」

『ヴァルキリー1、了解しました! しかし、少佐は――――』

「俺はBETAを引き付けますッ、殲滅は速瀬をどうにかしてからで!」

『ですが――――』

「命令だ、復唱してくれッ! 御願いしますから!!(泣)」

『!? 速瀬の後退援護を最優先としますッ、行くぞ!!』

『――――了解!!』


孤立してるのに"ですが~"とか泣きたくなるから止めて下さい。

助けてくれる気持ちは非常に嬉しいケド、貴女達に一人でも死なれると物凄く困るんです。

そんな俺の気持ちが通じたか、ヴァルキリーズはBETAを包囲しつつ距離を詰めてくださる。

後は速瀬をどうにかすればOKか……言う事を聞いてくれれば良いんだけどね。


『ふぅッ……ふぅ……し、少佐……何で……?』

「速瀬中尉ッ! 跳躍噴射で下がってくれ、光線級は俺が引きつける! 補給を済ませるんだ!!」

『な、何よ……私はまだ……!』

「良いから命令だ!! お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!(涙)」

『――――ッ!!』

『ヴァルキリーマムよりヴァルキリー2へ! 水月……御願いだから下がって。』

『……ッ……り、了解。』

「命を粗末にしないでくれ、シミュレーターの相手なら終わったら幾らでもするからさ。」

『!? そ、その話……忘れんじゃ無いわよ?』

「おうともッ。」

『――――ふんっ。』


俺と涼宮(姉)の説得が通じ、速瀬は後方に跳躍噴射する体勢に移った。

内心ガチで溜息。 白銀の時みたいに半狂乱になってたら詰んでたかもしれないしね。


「さ~て……囮か。 中尉、頼りにしてますよ。」

『は、はい。 ですが……絶対に無理しないで下さいね?』

「大丈夫ですよ。」

『……白銀少佐?』


ここからが正念場……俺は時間差で迫って来る戦車級を頭部バルカン砲で潰しながら、
ピアティフちゃんと視線を合わせる。 対して心から心配そうな表情をしてくださる彼女。

そんなピアティフちゃんを安心させる為に、俺はエースパイロットに成りきり、
自嘲するような笑みを静かに浮かべると、述べようとする。

死を覚悟して戦いながらも帰りたい場所が有る……そんな矛盾に対する言葉を。


「逃げ回りゃ……死にはしない。」

『――――ッ!?』


……でも この名台詞……A-01の全員に聞こえちゃってるんだよねッ?

言ってから恥ずかしくなってきたッ、やっぱ止めとけば良かったYO!!

俺は恥ずかしさを掻き消す様に不知火S型を跳躍噴射させ、BETAの群れへと突っ込んだ。




●戯言●
白銀にラストの台詞を言わせたかったので、今回はつい長くしちゃったんだ☆
さてさてバズーカの名称と出撃台詞の時点で肖ったキャラの名前が判れば立派なガンオタでしょう。
ちなみに一条と神村と言うのはオリジナルの苗字なのですが(後にもう一名?)、
必然的に生き残りのA-01の名前が必要だったので出したダケです。
このSSに大きく関わる事はまず無いので、空気みたいな娘が3人いると思ってください。


■これはひどいオルタネイティヴ(用語ver1)■


●胸部マルチ・ランチャー
戦術機の左胸に装備する武装。
無動作で小型のグレネードを発射できる。
弾速は遅いが広範囲に爆発し威力は中程度。
速瀬中尉のように直撃してしまうと大ダメージ。
陸戦型ガンダムの武装で非常に有名。


●サブ射撃システム
サブ射撃のマニュアル操作には相当な技量が必要であり、
戦術機が様々な硬直で両手による攻撃が不可能な場合、
オートでサブ射撃が発射できる状況に切り替わるシステム。
当然自動でオートに切り替わる以外の場面でもサブ射撃の使用は可能。
マニュアル操作が可能な衛士はこのシステムは最初からカットしている。


●不知火S型
頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャーを追加した不知火。
機動性は不知火より5%低下しているモノの、
前者の武装を両手を使わずに、ほぼ反動無しで使用できる。
初見で相手をする衛士にとってはまさに外道の性能。
S型とは白銀のイニシャルで、ガンダムでは指揮官用の意味。


●頭部バルカン砲
戦術機の額の左右に装備する武装。
射程は短いが無動作で低威力のバルカンを発射できる。
戦車級以下のBETAに対しては極めて有効。
ガンダムシリーズの代名詞の武器。


●フォールディング・バズーカ
折り畳んで背負うバズーカ。被爆を考え爆風を抑え威力に特化している。
意味はタンパク質が特定の3次元構造に折り畳まれる現象を言う。
弾数が4発だが反応炉を破壊できる威力を持つ。(弾数はスパロボFを参照)
ハイヴ内であれば迫り来るBETAの壁を崩すのに有効で、
地上戦では誘導により集めた敵を一掃する(要空中)等 様々な局面で使える。
反面 長刀と突撃砲が計2個しか持てず状況の見極めも必要なので、
ほぼエースパイロット専用の武器となる。現在 香月博士が頑張って開発中。
元ネタはGP-03ステイメンの同名称の武器だが、
原作と違って片手では無く両手で持つ事となる。


●吹雪F型
頭部バルカン砲を追加した吹雪。機動性の低下は殆ど無し。
乗っている衛士は未熟でもサブ射撃システムの存在により、
硬直が発生しようと無動作で反撃してくるので侮れない。
F型とは後期生産型と言う意味で、元ネタはザクFⅡ。


●追記●
同日9時ごろ誤字複数修正しました、申し訳ないorz
指摘してくださった方有難う御座います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ15(+伊隅戦乙女隊ver1)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2022/04/20 02:22
これはひどいオルタネイティヴ15




2001年11月11日 午前


囮の為にBETAの群れへと突っ込んだ俺は、水平跳躍噴射で奴らの奥を目指していた。

当然 狙いは光線級と重光線級。 こいつらを倒せば俺にとって厄介な相手は要塞級程度だ。

だけど、そろそろ目の前に要塞級が接近……重光線級は奥に控えているのか……


『要塞級は3体のみ確認、距離300m切ります』

「それよりも先に光線級と重光線級を殺りますッ! 数は!?」

『――――光線級25、重光線級は5体の模様』

「把握しました、マーキングを御願いします!」

『了解……少佐ッ、レーザー照射来ます!』

「!? 来る……そこだっ!」


俺が速瀬と合流する前に照射してきたと思われる、
要塞級の手前に居る光線級のレーザーをヒョイっと回避した俺。

ウザったいのでフワジャンをしながら12秒のインターバルのうちにチェーンガンで片付ける。

マークして有るので自動で照準を合わせて構えてくれるし、アッサリと5体を始末した。

"フォックス3"とか言って置くべきなんだろうけど、孤立してる状況だと無意味だよね。

かなり格好良いとは思うけど、コールサインさえ決まって無いしな……

そんなうちに要塞級が接近して来ているが、今は後方のレーザー種の壁にしかなっていない。


『要塞級 接近中、距離50m!』

「でけぇ~……けど、お前を相手にしてる暇は無いんだよっ!」


≪――――ブォッ!!≫


『!? し、少佐ッ! それ以上 高く飛んでは危険です!』

「大丈夫ですって!」


接近してきた要塞級の触手を宙でヒラリとかわすと、更に噴射跳躍して奴の頭を飛び越える。

高度は約70m……教本を考えれば非常識にも程が有るよね、こんな戦い方するなんて。

んでもって来てます来てます、レーザー照射警報。 もはや視界が真っ赤なんですけど。

何せ遠距離でレーザー級25体が狙っていますからね! それ程 危ないって事か。


『白銀少佐!?』

『不味そうですね、あれ……』

『そんな、私達の為に……』


伊隅・宗像・風間の声が聞こえる。 心配してくれているんだろう。

確かに当たれば一瞬で蒸発するだろうが……肖っているエースはシー●ック・アノーだ。

回避には定評が有るし、今の俺には新OS(β版)・白銀大佐・不知火S型が付いているのさ!


≪――――カッ!!≫


「なんとおぉーーーーっ!!!!」

『――――っ!?』


よって全てのレーザーを回避成功。 照射見てから水平余裕でした、略してあるのがコツだぜ?

一方 驚く伊隅達……それはそうとインターバル中にさっさと始末しないとね!

俺は更に噴射を活用してレーザー種に近付く。 推進剤が有り余ってるのは嬉しい限りだ。


『光線級インターバルに移行! 照射まで10、9、8……』

「これまでだ……ッ!!」


ピアティフちゃんがカウントダウンしてくれる、これはマジで助かるわ。

流石に12秒で光線級の全滅は無理だけど、第二照射もヒョイっと避けて残りも仕留ようとする。

……けど、原作の空気を読んで5体ほど光線級を残しておく。 俺って律儀過ぎじゃね?

それはそうと……次の標的は重光線級5体。 マーキングが無くても奴らはデカいから直ぐに判る。


『重光線級、照射まで16、15、14……』

「……こんな所にノコノコ来るからっ!!」


≪ボヒュッ!! ――――ドゴオオォォンッ!!!!≫


両手の二丁同時でも当たりそうなんだけど、120ミリってコストが高そうだよね。

だから近付きながら右手で1発づつ命中させ、最後の1体のレーザーを簡単に避けて反撃。

そして撃破……これで厄介な奴らを全滅させれたって事で、俺はフワジャンをしながら喋る。


「こちら白銀機! 重光線級は全滅させたッ、そちらはどうです!?」

『こちらヴァルキリー1、速瀬を離脱させました! 現在 要撃・戦車級を迎撃中ですッ!』

「把握ッ! 後は食い放題ッスよ!? 適当に囮をやってるんで無理せずに宜しく!」

『――――了解!!』


推進剤はモリモリ減る事になるけど、放置した光線級のレーザー照射警報にだけ気を配れば、
後は適当に浮いているダケで、一方的にBETAを攻撃できる。

今は主にチェーンガンで要撃級を攻撃し、伊隅達がヤバかったらフォローを入れるべく様子見だ。

……けど心配は要らなかったようで、ヴァルキリーズの士気は最高潮の様子。

やがて補給を終えた速瀬も戻り、2体の要塞級が120ミリの集中砲火でどうと倒れる。


『要塞級、残り1です!』

「後はコイツだけか……」


≪……ズシンッ、ズシンィィッ!!!!≫


BETAの数は減り、もう宙に浮かぶ必要も無くなったけど、
地割れを起こしながら最後の要塞級が馬鹿デカい音を鳴らして接近してくる。

地面に立ってると物凄い威圧感だよな……けど、動きがスロー過ぎて触手には当たる気がしない。

他のBETAと連携を取られると、相手をするのは恐ろしいんだけど、ほぼ単体だしな。


≪フオオォォォォンッ!!!!≫


「当たるか!!」


≪――――チャキッ!!≫


「抵抗するんじゃない、逝っちゃえよッ!!」


≪ドゴォッ!! ――――ドゴオオォォンッ!!!!≫


余裕で触手を避け懐に入り込むと、F91のヴェ●バーのように突撃砲を両手に引いて構える。

そして同時に120ミリ滑空砲を発射! 勿体無いけど、つい殺っちゃったんだ☆

弾丸は当然 至近距離なので直撃し、要塞級はブッ倒れた。今の振動で避難した地元の人 涙目確定。

しっかし……思ったより手間取るモンだな。 ハイヴの中には光線級は居ないし、
500体を全滅させるのとスルーするのとは、案の定ワケが違うって事か……


『!? 白銀少佐、HQより撤収命令が出ています』

「……えっ、まだ戦いは終わってませんけど?」

『そ、それは――――』

「あっ……いや、OKッス」


そんな事を思いながら残りのBETAにマルチ・ランチャーを放っていると、突然の撤収命令。

ふ~ん……成る程……ゆーこさんは俺に捕獲をスルーさせるよりも隠す事を選んだのか。

今のピアティフちゃんの反応からすると、もしかすると彼女は知ってるかもしれないな。

……けど、追求する気はサラサラ無い。 お役御免上等だ、フォローは済んだし帰るとするか。

俺は後方跳躍噴射しながら適当にBETAを捌きつつ、伊隅達の横を素通りする。


『白銀少佐、どちらへ?』

「不知火S型のテストは完了しました、俺は引き上げますんで後は頼みます」

『了解ッ! 助かりました……少佐』

「いえいえ」


微笑んでくれた伊隅の表情を最後に、俺はデータリンクの範囲外へと離脱した。

とりあえず初戦は何とかなった……白銀大佐、マジ助かりました。(土下座)

しかしピアティフちゃん、そんな可愛そうな人を眺めるような表情で俺を見ないでくれ。

ガン●ムごっこは仕方無いんだよぅ! ともかく……嗚呼……次はションベンだ。


『ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズへ。 只今よりBETA捕獲作戦に移行せよ』

『聞いたな!? 全員 実弾を酵素弾倉に変更しろッ!』

『――――了解ッ!』

「……ッ……」


≪良いから命令だ!! お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!≫


「(……アイツ……少しだけ、泣いてた……)」


≪そ、それじゃあ今迄……少佐はどんな辛い思いをして来たんだろ……≫


「(私と遙だって孝之を……それなら、アイツはどれだけの人を失って……)」


≪逃げ回りゃ……死にはしない≫


「(……それでも、生きる理由がアイツには有る……それは何なのよ……?)」

『――――速瀬ッ、何をしている!? 貴様が一条と神村より出遅れてどうするッ!』

「!? す、すみませ~ん! ヴァルキリー2、ヴァルキリー5・6に続きます!!」

『全く戦闘中に考え事とは……終わったら腕立て200回だぞ!?』

『御愁傷様です、速瀬中尉』

『ストレス発散は捕獲作戦だから無理ですからねェ?』

「む、宗像ァ・葛城ィ!? くうぅ~ッ、何もかもアイツの所為よぉーーっ!!」

『良し速瀬、その意気だッ! ヴァルキリー3・4・7、続け!!』

『――――了解!!』


……程無くして、ヴァルキリーズは被害無しで作戦を成功させた事が耳に入った。

ピアティフちゃんが報告してくれ、その際 俺は輸送車の上の戦術機の中で揺られていた。

横浜基地に戻ってからは、PXで特に誰とも会う事無く飯を食い、俺は執務室へと向かってゆく。




……




…………




2001年11月11日 午後


「白銀 武、只今 特殊任務より帰還しました~」

「ご苦労様」

「ヴァルキリーズは全員無事だったみたいです」

「へぇ……良い仕事をしたもんじゃない」

「速瀬がちょっとヤバかったですけどね」

「あの娘が? まぁ……3機くらいは殺られると思ってたし、そう言うパターンも有るかもね」

「実際に有ったんですってば」

「……でも、それ位で死なれる様だとA-01じゃやっていけないわ」

「でしょうね~」

「……ふ~ん……思ったよりも冷静なのね」

「これは性分ですって(嘘)……それに、相応の理由も有りそうですから」

「理由?」

「……旅団規模って事から多くても5000のBETAに対し、
 3つの艦隊と12の中隊が迎え撃って、1つの艦隊と4つの中隊が全滅させられた。
 それなのに、あえて10分の1のBETAに7機のみの戦術機をブツける。
 現状では正直 無謀です……何か深い意味でも有るとしか思えませんからね」

「"深い"意味は無いわ、新OSで無くとも旨く立ち回れば、
 500体であっても7機も有れば十分よ。 機体の性能を殆ど活かし切れて無いだけ」

「それは否定しませんけどね……残念ながら」


正直なところ、さっきピアティフちゃんに総被害を聞いて、めっちゃ驚いた。

3つの艦隊が1000体のBETAを倒していたとして計算しても、
最低48機もの戦術機が25体のBETAすら倒せずに大破しちまってるんだからね。

各中隊も被害はゼロってワケじゃ無いんだろうし、更に能率は悪かったんだろう。

ゆーこさんのスパルタの理由については、聞かずとも俺には判るので深く問うつもりは無い。

よって"残念ながら"と言いながらも、俺は ゆーこさんに午前のログを手渡した。

対して彼女も場の空気を変えたかったのか、カタカタとキーボードを打ち始めてくれる。


「……ふ~ん……相変わらず変態的な機動ね、シミュレーターに限っての話だと思ってたけど、
 ホントに実戦の時でも、レーザー照射を空中で避けれるなんて」

「惚れ直してくれました?」

「バカ言いなさい」

「はははっ、冗談です。 ところでバルカンとマルチ・ランチャーのデータはどうでした?
 レーザー種を殺っちゃうと宙の方が楽だったんで、大して多様はしてなかったんですけど」

「問題無いわ、明日迄にはシミュレーターのデータに反映させて置くわよ?」

「是非に御願いします。 ……で、不知火S型のロールアウトは何時になります?」

「今のところ目処は無いけど、A-01の娘達の機体は近いうちに組む様に指示しとくわ」

「ふむふむ。 バズーカに関してはどん位 掛かりそうですか?」

「気の早い話ね、昨日の今日でしょ?」

「すんません」

「ん~……不知火S型の事も有るから、遅くても今週中にはデータを拵えとくわ」

「重ねて御願いします」

「折り畳み式のバズーカ……名前に案はある?」

「"フォールディング・バズーカ"とか如何っすか?」

「タンパク質の3次元構造? シンプルだけど悪くは無いわね、それでいきましょ」

「有難う御座います」

「後は任せときなさい。 バズーカも完成した暁には不知火S型で、
 XFJ計画の開発陣の鼻っ柱をヘシ折ってやるのも良いかもしれないわね~」

「……XFJ計画?」

「日米共同開発で何やら遣ってるらしいの。 オルタネイティヴ4が潰えれば、
 人類が滅亡する時間を少しだけ延ばすダケにしか成らないって言うのにね」

「ふ~む……まぁ、(原作そのものと)関係ないのに期待はしませんよ」

「ふふん、言うモンじゃない。 じゃあ、用が済んだら出て行って良いわよ」


"フォールディング"の深い意味なんぞ知らなかったので、ゆーこさんの知識には感服するぜ。

しかも彼女にとっては普通の単語っぽいし、バズーカの件も心配無さそうですね。

XFJ計画とか言うのについては謎だけど、オルタ本編しか知らない俺には関係無いか。

何となくTEっぽいけど、それに関わる機体を使わなくてもクリアできるしね。

……でも、まだ話は有るんだよな~。 作業を中断させてばっかりで申し訳ない限りだ。


「最後に1つだけ。 少しは俺の事を信用してくれました?」

「!? ……まぁ、少しだけならね」

「そりゃ良かった。 じゃあ、失礼しま~す」

「…………」


≪ガシュゥーーーーッ≫


ラストの話と言っても今のダケで、ゆーこさんの其の言葉を聞きたかったのだ。

よって俺は早足に執務室を出る。 "他にも予知しろ"とか言われると今じゃ困るしね。

何せ思い出しながらの物語の進行だ……天才を目の前にボロを出さない自身は無い。

そんなこんなで地上に戻る前に霞に会って安心させてやると、俺は執務室の扉に戻り一言。


「ゆっくりつくっていってね……」


――――流石に音量は自重したが、表情はエレベータに乗るまで戻らなかったようだ。




……




…………




「ぅおっ?」

「あっ……」


疲れたから寝たい。 それに俺の息子が寂しがっているのだ。

そう思いながら自室を目指していると、俺の部屋の前にピアティフちゃんが居た。

成る程ッ! 部屋に連れ込んで良いイベントですか? ……いやいや、無いって。


「あれ~、何してんですか? そんなトコで」

「えっ? し……少佐の部屋に伺おうとしたら、お留守だったみたいで……」

「だったら丁度良かったですね、何の用ッスか?」

「あのっ、そのっ……今日は……御疲れ様でした」

「あぁ、御疲れでした。 ホントに助かりましたよ」

「……ッ……」

「……んで、話ってソレだけですか?」

「いえッ、それと……これから私の事は"イリーナ"と呼んで下さい!」

「ぇえ!?」

「では少佐……し、失礼しますッ!」


≪――――ダッ!!≫


な、なんだってぇー!? 名前で呼んじゃって良いですと~ッ?

思ってみればピアティフって苗字だったんだよね、心の中でもピアティフが定着してたよ。

……だってゲームでも、ピアティフ・ピアティフばっか言ってたんだもん。

何で呼称がイリーナで良いとしてくれたのかはイマイチ判らないけど、
恐らく可愛そうな俺の友達になってくれるんだろう、これって前進ですよね!?

俺はファイルを抱え走り去るピアティ……イリーナちゃんを眺めながら、静かに嘆いた。


「……イリーナ……君に決めた」(ポケ●ン調)




……



…………




≪今から君は俺のモノだ、イリーナ……≫


≪はい、武さん……来て下さいっ……≫


さっきの名前の呟きは白銀の容姿から、傍から見れば渋かったんだろうけど違うのよね。

イリーナちゃんの尻を見た事で、今夜のオカズの決定を表していたダケだったのでした。

くそっ……まだまだ消化する必要の有るネタが多いってぇのに、イリーナちゃん恐るべし!!


――――そんなワケで2日ぶりの今夜も、イリーナちゃんで犯っちゃったんだ☆




●戯言●
海本さんの人気に嫉妬。白銀の活躍が書きたかったから、つい犯っちゃったんだ☆
今回は恐縮ながら非常に短いですが、次の展開は書きながら決める事が出来ました。
特に速瀬とか速瀬とか速瀬とか。次回は馬鹿白銀に戻るので勘弁していってね!!!


●伊隅戦乙女隊●
ヴァルキリー1 伊隅 みちる(迎撃後衛)
ヴァルキリー2 速瀬 水月(突撃前衛)
ヴァルキリー3 宗像 美冴(迎撃後衛)
ヴァルキリー4 風間 祷子(制圧支援)
ヴァルキリー5 一条 優理子(強襲前衛)
ヴァルキリー6 神村 亜衣(強襲前衛)
ヴァルキリー7 葛城 綾乃(打撃支援)


●フォーメーション●
速瀬をワントップに一条と神村が左右に展開。
速瀬の後方に葛城が打撃支援。葛城の右に伊隅、左に宗像。
葛城の背後に風間が配置され計7機編成となる。


●オリキャラ●
一条→身長高め・Cカップ・冷静・黒髪ロング
神村→身長普通・Bカップ・活発・黒髪ショート
葛城→身長高め・Dカップ・勝気・茶髪ポニテ
全員同期で19歳、苗字だけ覚えて頂ければOKです。
当作品では殆ど空気なので御気になさらず。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ16
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/11 14:52
これはひどいオルタネイティヴ16




2001年11月12日 午前


う~む……昨日は早めに寝てしまった。 疲れが溜まっていたんだろう。

戦った時間は10分以下なんだけど流石は実戦、俺の精神力を根こそぎ持って行ったようだ。

でも、それダケで済んだとも言える。 未だに覚悟が無い俺が戦えたのも白銀大佐のお陰。

10月22日の時点でビビら無ぇってのは把握してたけど、もしもの事が無くてホント助かった。


「お早う御座います、少佐」

「どもッス、軍曹」

「御食事ですか?」

「正解。 行きましょ~か?」

「は、はい」


……何とか、少佐様を装うのも慣れて来た。 ギスギスした空気は相変わらず好きになれないけどね。

今はギクシャクと背筋を伸ばしながら歩いて、擦れ違う人間達と形だけの敬礼をする中、
まりもちゃんと通路で出会い、自然な流れで並んでPXへと向かった。

そして ラーメンを注文すると、まりもちゃんは蕎麦を注文し、適当な席へと歩いてゆく。

途中で周囲を見渡してみると……207A分隊とB分隊が別の場所で朝食を摂っている。

更に観察すればヴァルキリーズ8名の姿も見える。 全員生還だな……聞いた通りで良かった。

しかし唯一 目が合ったのが速瀬ダケってのは、運が良いのか悪いのか……恐らく後者だろうね。


「あの……御一緒して宜しいですか?」

「どうぞどうぞ~、イリーナ中尉」

「……(白銀さん、何時の間に……)」


二人で並んで席に座ると、時間差でやって来たイリーナちゃん。 注文していたのは うどん。

彼女の希望に対し断る理由は無いので、俺の正面に座って貰い3人での朝食が始まった。

……良いねェ~、友人同士で飯を食うってのは! 全員 麺類なのが地味にシュールな気もするが。


「あぁ~軍曹……大きな声では言えませんケドね。 実は俺 昨日、出撃したんですよ」

「あっ……そうなんですか?」

「あれェ? 思ったより驚いて無いッスね」

「!? そ、それは――――」

「中尉、何か言ってましたっけ?」

「いえ……私は何も……(3日前の事、見られてたのかしら……?)」

「まぁ 良いか。 ……んで、その際の任務は"不知火S型"のテストと、
 "ヴァルキリーズ"のフォローだったんですけど――――」

「白銀少佐ッ!!」

「うわっ、びっくりした」

「う、ヴァルキリーズの娘達は無事だったんですかッ!?」

「神宮司軍曹、落ち着いてください」

「!? す、すいません……少佐・中尉」


どっちかと言うと機密っぽいんだけど、まりもちゃんには不知火S型の実機が配備されている。

だから言っても構わないだろうし、何となく話題を振るつもりだったんだが……

唐突にヴァルキリーズの安否を気にし出した まりもちゃん。 立ち上がった勢いで乳が揺れた。

それはそうと、何故……そうかッ! A-01の娘達は皆 彼女の教え子なんだったね。

さっきの観察でヴァルキリーズの姿は確認できてたけど、まりもちゃんは気付いて無かったのか。


「……で、話を戻しますけど。 ヴァルキリーズは全員無事でしたよ」

「そうですか……良かった」

「速瀬がポジション的にも有ってちょっとヤバかったですけど……良い感じでした。 ねぇ中尉?」

「はい。 小型種を含む500体のBETAを相手に速瀬機が小破。
 強襲前衛の2機が僅かに戦車級に齧られた程度で済んでいましたから」

「し、少佐は大丈夫だったんですかッ?」

「俺は地上でBETAを相手にするのが怖くて常に宙に浮いてましたからね、無傷でしたよ」

「レーザーを避けるリスクの方が高い気がしたのですけど……」

「何はともあれ良かったです。 あの娘達が無事だったのは、きっと少佐の御陰なのでしょう」

「はははっ、買い被り過ぎですって」


……俺のお陰……か。 自惚れる気は無いけど、強ち間違っちゃいないのかもね。

もし関わらなければ、強襲前衛の一条と神村が戦車級に食われちまって、
打撃支援の葛城は、要撃級あたりに病院送りにされてたりして……

速瀬がピンチだったのは妙だったけど、アイツの実力なら気合で生還したのかもしれないな。


「……では少佐・中尉。 私はこれで失礼します」

「今日もB分隊を頼みますね、軍曹」

「はい、お任せ下さい」

「それじゃ~俺も行く事にします、ピアティ――――」

「……ッ……」

「――――じゃなかった、イリーナ中尉」

「はいっ」


こんな感じで、朝食を終えた俺達は各々の職務に移るべく散る。

しっかし……イカンイカン。 少しでも気を抜くとイリーナちゃんを苗字で呼んでしまう。

今 凄い悲しい顔をされた様な気がしたから、マジで注意しておかないとね。

俺は何故か頭を下げてくださるイリーナちゃんに手を振りながら、PXを後にした。




……




…………




これから まりもちゃんに対してダケでなく、色々な人間に教えてゆく立場になるハズ。

正史だと白銀は中盤以降になってから伊隅にBETAの基礎を叩き込まれていたけど、
俺が教える側の方が断然、部隊の総合力の底上げに繋がる……のかな?

例えば……俺が後衛に"光線級が居ない時ぐらいは跳躍して狙撃しろ"って教えるだけでも、
前衛に掛かる負担が、かなり減るような気がするんだよね……

何にせよ教える側となるなら、第一に出来る限りの知識が必要なんだろうなぁ。

そう思って自室に戻ると、俺は適当に借りた何冊かの教本や資料を読んでいたんだけど……


「日本語でおk」


結局2時間で挫折……簡単そうな本ですら、専門用語ばかりで辞書が必要じゃないか……

大まかに書いて有る事は分かるんだけど、理解しながら読んでゆくとペースが激減する。

こりゃダメだな、イチから把握してゆくには一年や二年も掛かってしまいそうだ。

そう考えてベットの上に体を投げて背伸びをすると、俺は瞬時に起き上がって部屋を出て行った。




……




…………




「あっ、白銀少佐」

「お邪魔しに来ました、軍曹」


……人に教える事を考えるよりも、やっぱり衛士として強くなって戦死を極力避けよう。

俺はそう開き直ってシミュレータールームへとやってくると、ついでにB分隊の様子を見る事にした。

すると予想通り まりもちゃんが厳しく指導しており、彼女は俺に気付くと近寄ってくる。

その際 俺はB分隊の訓練の内容が気になり、既にモニターを眺めていたので、
まりもちゃんは空気を読んで下さり、一分ほど間を開けてから俺に問う。


「……どうですか? 皆の様子は」

「う~ん……」

「少佐?」

「まだ2日ですし、何とも言えませんね……今のところは、軍曹に任せます」

「そうですか」

「あえて言うなら、光線級が存在しない場面での跳ぶ事の重要性を珠瀬と鎧衣 辺りには特に。
 それとテスト中のサブ射撃のオートシステムを、成るべく多用させるようにしてください」

「わかりました」

「じゃあ、俺もこれから……」

「――――小隊集合ッ!!」

「ぅえっ!?」


B分隊は今日でまだシミュレーター訓練の3日目。

まだ戦術機と言う名の"ゆりかご"に慣れる段階だろうし、今でも走ったり跳ねたりしている。

だから俺がアドバイスするのは先の話か……そう思って立ち去ろうとすると、何故でしょう。

唐突に まりもちゃんが叫ぶと、何時の間に出て来たのか、B分隊が俺の前に集まる。


「特殊任務より生還された、白銀少佐に敬礼!!」

『――――っ』

「や、やぁ……頑張ってるようだね?」

『――――はっ!』


そして大声で敬礼! な、なんですか? この空気。 立ち去り辛いんですけど。

マジで畏まらなくて良いのに……でも、それだと他の連中が やっかむのが目に見えるしなぁ~。

即ち慣れるしかないってか。 俺は頭痛を感じながらも、表情を緩めて言う。


「大丈夫だ、皆 楽にしてくれ」

『――――っ』

「あァ~……今日で3日目になるんだろうが、悪く無い機動だ。 その調子で頑張ってくれ」

『…………』

「白銀少佐。 何か気になる事が有れば何でも言ってやって下さい」

「え~……」

『…………』

「(すみません白銀さん……何せこの娘達は貴方の言葉を最も必要としているのですから……)」


うぅ……"今のところは軍曹に任せる"って言ったのに! まりもちゃんのオッパイ星人ッ!

榊達は何かこっちをずっと見てるし……エロスーツを直視するのがキツ過ぎるぜ。

だが、少佐として何か言うべきなのだろう。 俺は直ぐ様 考えてしまった事を言う。


「わ、悪いが今はアドバイスできない……昨日の今日だろうしな」

『――――っ』


見るからに残念そうな5人。 勘弁してくれ……本当の事なんだYO。

だからフォローを入れる事にしていた。 前途の様に咄嗟に考えた事だが――――


「だけど……少し経ったら ちゃんとした指導するつもりだ。
 いずれ一人一人、俺と一緒に"個別指導"とか良いかもしれないな」

『――――ッ!?』


オーマイゴッド!! つい言っちゃった☆ 今の言葉で榊達の体が強張ってしまったッ!

くっ……咄嗟に考えた事とは言え、流石に個別指導は不味かったか……

解ってるよ、嫌なんだよね? でも、そんな在り来たりなリアクションをされると悲しいぜ。

!? まりもちゃんも俺を見て驚いた顔をしている……ひ、引かないでくれ~っ!


「いや……今のは冗談だ。 気にしないで流し――――」

「是非御願いします!! 白銀少佐ッ!」

「わ……私からも御願い致しますッ、少佐!」

「うわっ、びっくりした」

「教えて……私にも」

「わ、私も色々と教えて欲しいです~!」

「あぁ~ッ、ボクもボクも!」

「こッ、こら貴様等ァ!! 相手を弁えんかッ!」

『――――っ!?』


……何でか知らんが、イキナリ榊と御剣に凄い剣幕で迫られた。

それに彩峰と珠瀬も続き、鎧衣までもが空気を読んで俺に近寄ってくる。

や、止めて下さいッ! 特にエロスーツ仕様の御剣と彩峰は半径2メートル以内に近寄らないで!!

それはそうと、さっきは滅茶苦茶 嫌そうだったのに何故……そうかッ!

恐らく"嫌"と言う気持ちよりも、衛士として精進したい気持ちが勝ったんだろう、素晴らしい志だ。

流石は白銀大佐だね。 俺が命を助けられてるんだし、頼りたくなるのも当然か。

ふはははっ、しかし良い機会を作れそうだな……あくまで個別指導だ、他意は無いんだぜ?

そんな事を一瞬のウチに考えていると、まりもちゃんの檄で再び整列するB分隊。

毎度毎度まりもちゃんも大変だね~。 でも、仕事みたいだから頑張って下さい。


「まぁ……俺が教えれる様になるのは皆が"それなり"に成ってからだけど、
 まだまだ始まったばかりだろうし、焦らずに頑張ってくれ」

『――――はっ!』

「でも"個別指導"ってゆ~のは言い過ぎたかもしれないね。
 強制はしないけど俺で良かったら喜んで教えるから、その時は宜しく頼むよ」

『――――はっ!』

「俺からは以上です、軍曹」

「有難う御座います。 では……これを」

「んっ……何ですか、それ?」

「副司令から預かった、昨日の新潟での少佐の戦闘記録です。
 丁度少佐も居られますし、訓練兵達に実戦での動きを見て貰おうと思いまして――――」

「え"ぇあっ!?」

「い、良いのですか!? 軍曹ッ」

「有り難き幸せに御座います」

「見たい」

「し、少佐の実戦? わくわくします~」

「そう言えば何で国連軍の少佐が、帝国軍に紛れて戦ってたんでしょうね~?」


まずは鎧衣、空気読め。 さて置いて、俺は様子を見に来た事を更に後悔してしまった。

個別指導が出来る~と内心喜んでいた矢先、昨日の戦いをB分隊に晒すのかよ!?

A-01の皆の前で言った時は、互いにテンパってたって事で自己解決してたのに!!

俺の背中に嫌な汗が流れる。 そんなうちに、まりもちゃんは端末を操作し始めていた。

するとモニターに映し出されてしまう、俺のガン●ムのエースに肖った"初"の実戦。

ちょっ……何で何時の間にか207A分隊の5人まで見に来てるんですか!? 勘弁してくれよっ!


――――S型……不知火は、白銀 武で行きます!!


――――何でこんな所に来るんだよッ!!


――――お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!


――――逃げ回りゃ……死にはしない。


――――なんとおぉーーーーっ!!!!


ヤベェ……滅茶苦茶 恥ずかしい。 出撃時の時の台詞は新米 丸出しではないかッ。

速瀬に指示してた時は涙目だったし、"逃げ回りゃ"については教える側としての台詞じゃない。

ラストの回避については恥ずかし過ぎて顔から火が出そうだった。 ……死にたい。

その際 皆の様子を見てみると、痛い人を見るような視線で御剣とまりもちゃんが俺を見ていた。

けど直ぐ視線を外される。 ……と思った時、彩峰までもが眉を落として俺を見ているではないかッ。


「……っ!!」


≪――――ダッ!!≫


「あっ、白銀少佐?」


穴があったら、むしろ埋まりたい。 とうとう俺は居た溜まれず、その場を早足に歩き去ろうとした。

榊が咄嗟に声を上げてくれたが、走らないダケでも自重していたんだよね。

とりあえず着替えて、1時間ぐらいしたら戻って来よう……ゆーこさんのアホォ~ッ!!

俺は唇を噛み締めながら、モニターを眺めるエロスーツ姿のA分隊達の横を素通りした。


「(白銀さん……あの娘達を救ってくれて、本当にありがとう……)」

「(白銀少佐、貴方の言葉……決して恥じるような事では御座いませぬ。
 自分をあえて虐げながらも、立派に役目を果たされたではないですかッ)」

「(少佐は……多くの仲間を犠牲に……だから、私に仲間の大切さを……?)」


――――結局、戻ったのは2時間後。 俺はロッカーで不貞寝してました。


「なんだか、私……解っちゃった気がするなぁ~」

「あ、茜ちゃん……少佐ってきっと……」

「そうね……少佐は此処に来るまで多くの仲間を失って来たんだと思う。
 だから私達が同じ思いをしない為に、頑張るよう促していたのかもしれない」

「なんだか、目から鱗だよね~?」

「そうだね。 それに、ちょっとだけ……ちょっとダケだけど、戦ってる少佐。 格好良かったよね?」

「うん……確かに、指導を受けれてる千鶴達が羨ましいかも。」

「新型の不知火S型かぁ~、私も乗りたいな~」

「そう言えば、B分隊の吹雪も何か違ったような気がしたよぉ?」

「そうね(……私達も今度、少佐に何か指導して貰えるよう、聞いてみようかな?)」




……




…………




2001年11月12日 午後


……2時間後、俺はシミュレータールームに戻ると、何食わぬ顔で訓練を開始した。

主に単機でヴォールク・データ攻略と、地上戦の鍵であるレーザーの回避を繰り返す。

シミュレーターの設定は指導のついでに まりもちゃんに任せていたので、手間が省けていた。

そして昼飯を挟んで更に4時間が経過し、訓練兵達も去った今現在……

そろそろ俺も訓練を切り上げる前に、一つの的に対して"有る事"をしていた。

何も無いマップで不知火S型に乗り、長刀と突撃砲ダケを装備し、斬りかかると――――


≪――――ザシュッ!!≫


……右から左に薙ぎ払い。


≪――――ザシュッ!!≫


……左上から右下に振り下ろし。


≪――――ザシュッ!!≫


……左下から右上に振り上げる。


そしてエンドレス。 他に色々とパターンは組めるけど、新OSの誕生により、
この様な"コンボ"と言うモノがトリガーの連打で安易に永久的に続かせれる様になった。

ゲームでは次の格闘に繋げる為には、命中 直前に決められたフレーム内でしか、
次の格闘の入力は受け付けてくれなかったが、それはゲームのバランスを考えた為でしか無い。

つまり戦術機の運用に置いては、ポテンシャルを極限まで上げる必要が有る事から、
規制や制限など存在するワケもなく、適当に連打するダケでコンボは繋がってしまうのだ。

……かと言ってもBETAは物量。 ほぼ全てのBETAは3回も斬れば沈黙する。

だからコンボを続ける位なら、より多くのBETAを相手にする訓練をするべきなんだが……


≪ドパパパパパパッ!!≫


コンボによる3発目の振り上げが命中する直前、俺はロックオンを解き、
フットペダルを踏み込むと、同時に射撃に移行する様に先行入力をする。

直後 3発目の長刀は命中するが、ロックオンを強制的に外したので、
持ち替えた突撃砲による36ミリは明後日のほうに飛んでゆく。

しかし それを気にせず、俺は操縦桿を操作しながらフットペダルを更に踏み込み、
的の背後に回りこむと、再び宙で長刀に持ち替えて斬り掛かり3発のコンボを入力する。

そして、再び3発目が決まる前に突撃砲で射撃するように入力し、
ロックオンを外して武器を持ち替えると弾丸を外し、再び的の正面に回り込み長刀のコンボを繰り返す。

時には一回目や二回目の格闘でロックオンを外して突撃砲に持ち替え、
反対側に回り込んでコンボを続ける。 何度も何度も……何かにと取り憑かれた様に。

……ちなみに、格闘の後にロックオンを強制的に外して射撃するのは"外す"。

外した後に回り込んで3発のコンボを永久的に続けるのは"回す"と理解して貰えれば良いと思う。


「ふぅ……軍曹、終わりましたんで これで切り上げます。」

「は、はぁ……」


――――まりもちゃんが、さっきから俺の謎の練習を見て目を丸くしていた。


「ふ~っ、疲れた~」

「あの……少佐」

「何ですか?」

「先程の訓練は、一体何を考えてのモノだったのでしょうか?」

「えっ? あぁ……我流の訓練方法ですよ、余り気にしなくても良いです」

「…………」


納得いかないと言った表情をする まりもちゃん。 ですよねー☆

気持ちは判るけど、これは"俺の世界"のゲームを思い出した機動に過ぎないんだよね。

それに"こっち"で実戦を経験して判ったけど、やっぱり格闘は怖いんだぜ!!

白銀が突撃前衛だから同じ事をしようと思ってたけど……訓練ダケで十分です、マジで。

だから実戦では格闘は余りしないって事で、シミュレーターでコンボを楽しむ事にしたダケなのだ。

……でも、まりもちゃんは前途の通り納得してそうじゃ無いので、適当に誤魔化さなくては。


「しいて言えば……"乱戦"での訓練ですかね?」

「乱戦?」

「はい。 前衛は戦闘中、BETAの攻撃を食らう危険性が最も高い。
 だから、どんな状況でも咄嗟の判断で素早く格闘を中断してロックオンを別のBETAに送り、
 突撃砲に持ち替え、奇襲して来たBETAを迎撃する必要が有るんです」

「それをさせない為のニ機連携では?」

「その通りですけど、多くの衛士が"それ"が出来ずに2機諸共 戦車級の餌になっていますが?」

「うっ……」

「さっきの機動は先行入力が必須で今迄の概念では到底入力 出来なかったモノですから、
 そう考えるのは無理も無いでしょうね。 ……でも、新OSだと見た通り可能なんです。
 例えば俺が一匹のBETAを斬った直後に突撃砲に持ち替えロックを送り、
 軽い後方跳躍噴射をしながら迫って来たBETAを射殺。
 そして新たなBETAに直ぐ様 長刀にスイッチして斬りかかるのを繰り返す。
 ソレが完璧に出来ればフォローするべき者が軍曹だとしたら、どう思います?」

「よ……より多くのBETAを相手に出来ると思います」

「判ってくれましたか?」

「では……的の背後に回り込んでいたのは……」

「それは……え~っと……"外す"一連の行為で最も難しい入力だからです。
 だからアレを……"回す"のを完璧にこなせれば、色々な状況に対応出来るハズですからね」

「成る程……」

「納得しました?」

「はいッ。 やはり少佐の機動概念は素晴らしいです!」

「そ、そりゃどうも……」

「有難う御座いますッ、早速 私も試してみますねっ!?」


≪たたたたたたっ……≫


"回す"って言うのは単体の背後を取り続けて格闘で一方的に攻撃する手段だ。

けど長刀の一撃を食らえば戦術機は当然ながら、BETAだって沈黙する。

だから正直 無意味なんだけど、"外す"のは今考えればかなり有効かもしれないね。

そう考えて適当に例を出して言ってみると、まりもちゃんが興奮してしまった。

……なんか凄く理解してくれたみたいで、ロッカールームの方へ走って行ってしまった。

夕食でも誘おうと思ったのに、これから訓練ですか? 頑張りますなぁ~……


「(白銀さんの技術は全部習得して、あの娘達に教えれるようにならないと!)」


――――この時の俺は、知る由も無かった。

俺が気付かないトコロで まりもちゃんは"外す"のと"回す"のを努力の末マスターしてしまい、
それを御剣や彩峰にも教え込み、速瀬ら迄もが気合で学習してしまう事を。

ちなみに幾分か先の日程のシミュレーターで御剣と彩峰に披露され、俺は驚愕する事になるのでした。




……




…………




2001年11月12日 夕方


着替えを終えた俺は、まりもちゃんが今になってシミュレーターを始めた事を確認した。

出来れば付き合っても良かったけど、結構 疲れたので俺はPXを目指している。

そんな時、通路の脇から何処かで見たような顔が2つ現れ、近寄って来ると――――


「白銀少佐!」

「こちらでしたか」

「んっ? 君達は――――」

「宗像 美冴少尉であります」

「風間 祷子少尉です」

「あぁ、そうだった。 昨日は世話になったね」

「いえ……それは こちらの台詞ですよ」

「特殊任務で戦死者が出なかったのは……実は初めてだったんです」

「なんとぉーっ」(小声)


ユリーズが出現! 対して立ち止まる俺に2人は敬礼してくれた。 宗像は今 少尉なんですね。

しっかし"あの3人が"戦死してたら、残るのはこの2人と伊隅・速瀬・涼宮(姉)だけか……

きっと伊隅の同期・速瀬と涼宮(姉)の同期・宗像と風間の同期・一条と神村と葛城の同期は、
皆 キツい任務で戦死してるんだろうなぁ~……くわばら、くわばら。


「ですから、この場で御礼を言わせてください。 有難う御座いました」

「有難う御座いました、白銀少佐」

「はははっ、よしてくれよ」

「そうはいきません、何せ祷子は朝から礼を言おうとばかり口にしていまして……」

「……!!」

「ほほ~」

「今夜辺り妾に如何ですか? されど私も混ぜて頂けると有り難いんですが」

「み、美冴さんっ!」

「ん~」


――――宗像のトークが斬新で、つい唸っちゃったんだ☆


「……ダメだそうだ、残念だったな祷子」

「もう、私達の用件はそんな事じゃ無いんですからね?」

「礼だけじゃ無いのかい?」

「――――はっ。 これから祝勝会が有りまして」

「はい、お誘いに伺うところだったのです」

「祝勝会って……何で?」

「先程 申しました通り、戦死者が出ませんでしたので」

「何時もなら、仲間達の好物を皆で食べていましたから……」

「あぁーー……」

「気が御乗りでは無ければ無理にとは言いませんが……」

「えぇ、訓練をなされていたと聞きましたし」

「……いや、断る理由は無いよ。 参加させてくれないか?」

「そうこなくては」

「では、ご案内致します」


……確かに原作では勝利の後も葬式みたいな感じだった気がする。 柏木の好物食ったり。

多少 明るいような気もしたけど、それは全部 無理矢理 雰囲気を作っていたダケに過ぎないんだ。

そう考えると誰も死なずに任務を終えた祝勝会なんて、物凄く珍しいんじゃ無いのだろうか?

だったら便乗も悪く無いか。 俺は原作通りの性格の二人の背中を追って行った。




……




…………




……祝勝会は簡単に言うと、非常に楽しいモノだった。 腹ん中がパンパンだぜ?

宗像と風間に連れられて急に拵えられた部屋に入った直後、皆が俺を称えてくれたのだ。

A-01の8名は勿論……見た事も無い、影で俺達をを支えてくれていた人達。

主にA-01の機体の整備班長や、俺の不知火S型の整備班長は勿論、
不知火S型を完璧に組んでくれた企業のお偉いさんや、PXの京塚のオバハンetc...

それだけ500体のBETAを8機で……しかも被害無しで凌ぎ切った事は凄かったんだろう。


「はじめまして、白銀少佐」

「昨日は有難うございました~っ!」

「えぇと、私は葛城 綾乃って言って――――」


生憎 A-01と京塚のオバハン以外で知ってる人は居なかったけど、色々と話し込んだ。

そのうちの一条 優理子、突撃前衛。 長髪で眼つきは鋭いけど、優しい物腰で冷静な御嬢様タイプ。

二人目の神村 亜衣、同じく突撃前衛。 ボーイッシュとは違うけど、短髪で活発なムードメイカー。

そして葛城 綾乃、打撃支援。 勝気でトゲが有る性格をしているが、おっぱいがデカくてポニテ。


「白銀少佐……申し訳ありません」

「伊隅大尉、どうかしましたか?」

「実は あの時、速瀬を嗾けたのは私なのです」

「!?」

「恐らく速瀬が孤立する状況になったのは、アレが影響していたのだと思います。
 それなのに少佐が来てくれなければ、速瀬を救う事は出来ませんでした。
 本当に……有難う御座います。 戦死者を出さずに任務を遂行出来たのは、少佐の御陰です」

「大尉、頭を上げてくださいよ」

「――――はっ」

「速瀬がヤバく無くても、どの道キツかったのは一緒でしたよね?
 それに、俺一人でも500体のBETAは倒し切れなかったと思いますし、お互い様ですよ」

「ですが――――」

「えっと……"あの言葉"は聞いてましたよね? 実は俺って臆病なヤツなんです。
 だから精鋭であるA-01と一緒に戦ってテスト出来るってダケで心強かった。
 即ちギブ・アンド・テイクです。 以後も作戦を共にする機会もあるでしょうし、宜しく頼みます」

「と、とんでもありませんッ。 此方こそ宜しくお願いします!」

「了解~」


伊隅に対しても、こんな感じでガン●ムごっこの事を誤魔化せた。 臆病なら仕方無いよね?

速瀬を嗾けた事に関しては今更って感じだし、ちっともカチンとは来なかったさ。

んでもって何故か飯も美味くて最高だった……ンだが、今の俺のテンションは妙に低い。

本来ならスキップしながら歩いても良いハズなのに……何故なんでしょうね?

……正解は、ヴァルキリーズに厄介な"お荷物"を背負わされてしまったからなのです。


「う"ぅ~っ……気持ちワルぃ~……」

「…………」


俺は祝勝会の終盤。 酔っ払った速瀬に肩を貸しながら、長い通路を歩いていた。

白銀は未成年なので俺は酒を飲まなかったが、速瀬は涼宮(姉)の制止を無視して飲むわ飲むわ。

流石に俺と他の人間との会話に割り込むのは涼宮(姉)が止めてくれたが、何ですか この状況?

今は落ち着いているけど、さっき迄は暴れていたので、俺が運ぶしか無いっちゃ無いが……


≪――――ガチャッ≫


「あ"っるぇ~……何処よ此処ォ~?」

「速瀬の部屋だろうが……さっさと入れよ」

「あはっ、あはははははっ! わたしの部屋だァ~っ」

「そんじゃ~、俺はこれで――――」


酒に弱い事で定評の有る速瀬の部屋にようやく辿り着くと、ドアを開けて中に入る。

すると速瀬は俺の手から逃れ、お花畑を駆ける様に手を広げて何やら騒いでいる。

付き合ってられんぜ……俺は涼宮(姉)あたりと話に戻ろうかとドアのノブに手を掛けるが……


「まァちなさぁ~いっ!!」

「――――ぐぇっ!?」

「まだまだ飲むのよォーッ? 付き合いなさいよぉ~」

「こっ、こらッ……放せってッ!」


唐突に首の後ろの軍服を掴まれ、呼吸困難に陥る! ……死んだらど~すんだよ!?

だが呼吸を整える暇も無く、俺はアーム・ロックを掛けられてしまう。

痛てっ、痛ててててて!! 何だこの馬鹿力は……白銀の肉体でも解けないだとォ!?

そんなうちに速瀬は何処からかワインボトルを取り出し、歯でコルクを抜くとラッパ飲みし始める。

ゴクゴクと何口も……当然アーム・ロックを外す隙は無く、やがて口からワインボトルが離れた。


「プッはぁ~っ! ほらほら、少佐様も飲みなさ~い?」

「ふ、ふざけんなッ! 俺は未成ね――――んグッ!?」

「今夜は無礼講なんだから、遠慮すんじゃ無いわよォ~ーッ!!」

「んぐッ……ゴクッ、ごくっ……ぐっ……ゴクンッ」


ワインは好きでも嫌いでも無いが、こんな飲み方を好きなワケが無い。

……けど、無理に抵抗しても軍服が汚れるダケだ。 俺は仕方なくワインを飲み捲る。

流石に辛口の赤をこのペースで飲むのはキツいぜ……だが、今は飲むしかないよな……

もはや間接キッスなんだ~……とか言う事を考える余裕すら無く、頑張って飲む俺。


「へェ~、なかなか良い飲みっぷりじゃな~い♪」

「――――ぷはっ!? ゲホッ……けほっ」


そのまま数十秒……速瀬は満足したのか、俺の口からワインボトルを放す。

同時にアーム・ロックも外れるが、痛さと苦しさで その場で俺は息を漏らしていた。

後に思えば……この瞬間に逃げ出せていれば、どれだけ救われていたか……

一方 速瀬は満足気にワインボトルをドンッとテーブルに置くと、ベッドに勢い良く腰掛けた。

……そして、未だに咽(むせ)るのが続いている俺を、熱の篭った瞳で眺めだした。


「じ~っ……」

「く、口に出して……言うなっ……」

「…………」

「そんな目で、ゲホッ……見る、な……?」

「…………」

「は……速瀬……?」

「…………」


次第に瞳を潤ませる速瀬。 なんだよ、めっちゃ可愛いじゃないか……酔っ払いの分際で。

俺は速瀬の瞳に心を奪われていたのかもしれない。 いや、これは赤ワイン(辛口)の所為だろう……

合成だから美味くも無いし……でも何だ、この雰囲気……明らかに誘っているような……速瀬の瞳……

……ってか、白銀って酒に弱ッ……頭がクラクラしやがる……ヤベっ、何か言わないと……

そう意味も無く……考えて、俺は"適当に頭に浮かんだ単語"を……口に出して、しまった。




「やらないか?」


「――――っ!?」




……あれっ? 俺 今なんか凄いヤバい事を、言った様な気がするんですけど……

だって速瀬が目を丸くしてるし……マジで何て言ったんだろ……ちょっ!?

急に速瀬は、表情を改めて立ち上がると……両膝を着いている俺を見下ろして……


「な……何だよ?」

「上等よ~ッ、やったろうじゃない」

「は?」

「馬鹿にしないでよねェ? わたしだって男の一人や二人……」

「!? おまっ、おまおまおま……な、何して……」

「なによ~、アンタが言い出したんでしょぉ~っ?」


何と俺の目の前で、速瀬は服を脱ぎ始めた……何やってんですか? この人。

俺が何を言ったのかは知らないけど、段々と酔いが醒めていくのを感じていた。

でも体の自由はまだ効かない……いや、あえて動かそうとしていないのかもしれない。

速瀬は既に下着姿。 風呂にでも入るような勢いで、彼女は衣服を脱ぎ去ってゆく。


≪――――ぽよっ≫


「んォお……ッ!?」

「んふふふふふ~っ……」


やがてブラジャーまで外してしまい、挑発的な笑みを浮かべながら俺を見る速瀬。

今は腕を組んでいるので突起が見えないのが残念……いや、そうじゃなくてだなっ!?

どうなってんだよ、この状況ッ! 何でショーツ一丁で速瀬が近付いて来るんだよッ!?

俺は逃げ出そうと試みるが、足がフラついて立ち上がるのが精一杯だった。

そんなウチに速瀬との距離があっと言う間に無くなり……ヤツは俺に抱き付いて来た。


≪――――ふにゅっ≫


「うぉあっ!?」

「少佐ぁ~ん♪」

「ぐぉっ!?」


そして肩に両手を回してくる速瀬。 当然 ナマ乳が当たっており、俺の下半身が脈打つ。

しかもホッペをスリスリしてくるし……ヤベェ、マジで洒落にならなくなってきた。

これ現代の俺だったら絶対に襲ってるよ!? だけど、俺は白銀……流石にヤバい気がする……

それなのに、早くも俺の息子は反応しそうだ……そう絶望し、覚悟を決めた矢先――――


「!? う、う"ぇ……っ!」

「ちょっ、おま」


――――酔っ払いの速瀬は、ほぼ全裸で吐いた。 しかも、俺の軍服にダイレクトに。


「Nice Boat」


――――しばらく お待ち下さい。




……




…………




……30分後。


「はぁ……ったく」


速瀬の"もんじゃ焼き"で一気に酔いが醒めた俺は、その"後始末"をしてやっていた。

今現在はベットで寝息を立てている速瀬の口元を拭ってやると、そのまま放置し、
上着をTシャツ以外脱いだ俺は、PXから雑巾を持って来て床の掃除をする。

そして雑巾や"もんじゃ焼き"の付いたティッシュ等を廃棄し、再び速瀬の部屋に戻った。

んでもって軍服を水道水で洗い終えると……強引に絞って水気を落とし、室内を見渡す。

まぁ……片付いたな。 匂いは流石に残ってるけど、換気扇が何とかしてくれるだろう。

軍服はクリーニングしても元に戻るのかな……されど持ち帰れば現代のファンに売れるんだろうか?

さておき最後に速瀬に視線を移すと、布団を羽織って暢気にスヤスヤと寝ているではないかッ。

叩き起こして文句の一つでも言ってやりたい気分だが、酒の所為でもあるし良しとするか……

そう考えて数度目の溜息を漏らすと、俺は部屋を出て行こうとしたが――――


≪――――カチャッ≫


「待てェいっ!!」

「んな……っ!?」


≪――――ゴンッ!!!!≫


「こんな良い女を差し置いて、出て行こうとしてんじゃ無いわよォっ!!」

「痛ってぇッ……おま、何で起きて……」

「今 目が覚めたのよ~ッ、そしたらアンタが行こうとしてたのッ」

「だからって、いきなり何……しやがるッ……」


唐突に頭を鷲掴みにされると、ドアの角に顔面を叩きつけられた!!

め、滅茶苦茶 痛ぇ……これって霞ダケの災難じゃ無かったのかよ……ってか鼻血が……

対して速瀬は未だに酔っ払ってるんだろう、おっぱいが丸見えなのに胸を張っている。

だけど今の速瀬には魅力が感じられ無い……って言うか、今の一撃で頭がクラクラしてきたぞ……


「五月蝿い! つべこべ言わずに、こっちに来なさ~いっ!」


≪――――ボフッ!!≫


「がっ……!?」


速瀬は痛みで前屈みになっていた俺に抱き付き、ベットの上へと引っ張り込んだ。

ちなみに俺の顔は速瀬の おっぱいに挟まれており、柔らかい感触が心地良かった。

しかし、同時に怪力によって呼吸困難に陥り始め、俺の意識は朦朧となってくる。


「ふふ~んだ、今夜は放さないわよォ~?」

「い、嫌だ……放してくれ……頼む……から」

「ダメぇ~♪」

「マジ……かよッ……」

「ふぁあ……眠ぅ~……」

「……っ……」


ほぼ全裸の速瀬と、上半身Tシャツ姿の俺……角への一撃で、俺の血が僅かに飛んだベッド。

……ヤバい……ヤバ過ぎる。 このまま意識を失えば、大変な事になる気がする……

しかし弱っている俺と、速瀬の怪力。 そうなると、導き出される結末は一つしか無い。

俺は幸せな感触を味わいながらも……速瀬の寝息が聞こえて来ると同時に意識を失った。


「良かったのか? 涼宮。 速瀬を少佐に任せて」

「はい……大尉。 水月には今、寄り掛かる人が必要だと思いますから」

「少佐は女に"情"を移す様な方には見えんが?」

「それでも……良いんです。 水月が人の温もりを感じられれば」

「それ以前の問題で有ればどうする?」

「命の重みを誰よりも理解している少佐なら、解ってくれると思います」

「ふむ……」

「もう水月には、あんな戦い方をして貰いたくありませんから……」


――――案の定 翌日、俺は速瀬の悲鳴で目を覚ます事となる。 神様のバカ~ッ!!




●戯言●
絆ネタ炸裂。佐渡島で冥夜・彩峰・水月が外し捲りながら暴れる姿が書きたくなったのでつい。
水月のイベントに関しては、全裸ではヤバそうなのでショーツだけ残す事にしちゃったんだ☆
唯依さんに関しては、TEの時間軸を無視すれば強引な手で登場させる事は可能ですがどうしよう。


●皆が白銀をどう思っているのか●
副司令:????
ウサギ:懐いている様子
軍 曹:尊敬できる上官
オペ娘:好きなのかも
御 剣:尊敬できる上官
 榊 :信頼できる上官
彩 峰:理想の上官
珠 瀬:格好良い上官
鎧 衣:優しい上官
涼宮妹:興味ある上官
柏 木:興味ある上官
築 地:興味ある上官
伊 隅:一目置ける上官
速 瀬:ギャフンと言わす
涼宮姉:頼りになる上官
宗 像:一目置ける上官
風 間:一目置ける上官


●白銀が皆をどう思っているのか●
副司令:頼りになる天才
ウサギ:抱きしめてキスしたい
軍 曹:良いお友達
オペ娘:良いお友達
御 剣:おっぱい
 榊 :ふとまゆ
彩 峰:おっぱい
珠 瀬:お持ち帰りしたい
鎧 衣:空気読め
涼宮妹:おっぱい
柏 木:おっぱい
築 地:いっぱい
伊 隅:頼りになる同僚
速 瀬:こっちくんな
涼宮姉:結婚したい
宗 像:ユリーズ1
風 間:ユリーズ2


●追記●
同日15時頃誤字修正を行いました。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ17
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/13 17:38
これはひどいオルタネイティヴ17




2001年11月13日 早朝


「……ッ……」


瞼(まぶた)は開かずに、意識のみが覚醒する。 ……しかし、半分程度であり朦朧な状態。

俺は何故かうつ伏せに寝ていたようで、まだ起床のラッパは鳴っていない……みたいだ。

"こっち"に来てからは、起きる時間が普段 起きてた時間よりも2時間は早いんだけど、
恐らく白銀の習慣のようなモノなのか……実は霞の助けが無くても大丈夫なのかもしれない。


≪――――ふにゅ≫


まぁ とにかく起きるか……と思い顔を右に動かそうとしたら、柔らかい弾力に阻まれた。

なんだこれ、なんだこれ? 今度は左に動かそうとしても同じような弾力を感じた。

次に後ろに動かそうとするモノの、"何か"が俺の頭を押さえている様で動かせなかった。


「……?」


≪――――むにっ、むにむに≫


……何故"こうなっている"んだろうか? イマイチ思い出せない。

よって俺はネボけながら何も考えず、手探りの如く両手を適当に這わせてみた。

右手は上の方へ、左手は下の方へ。 すると、どちらにも柔らかい手触りが感じられた。


「……んぁっ……」

「????」


≪――――ふにゅ、ふにゅにゅ≫


「……ぁ……んっ……」


う~む……何だか非常に良い手触りだな、この上ない幸せを感じる。

頭の方から甘い声が聴こえた様な感じがしたけど、恐らく気のせいだろう。

しっかし、まるで右手は突起からして おっぱいをモミモニしている感じで……

左手には……若干ズり下りたショーツ越しにお尻を触っている様な、チカン紛いの――――って!?


「…………」

「…………」


今 自分が"何を触っているか"に気付いてしまった俺は、ハッとなって視線を仰いだ。

すると、目の前には俺を見ている速瀬さん。 視線が合わさり暫しの沈黙が続く。

始めは俺と同様ネボけ顔の速瀬だったが、次第に瞳が大きく見開かれてゆき――――


「きゃああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

「おわあーーっ!?」


……案の定の悲鳴。 同時に俺の"意識"も完全に覚醒し、互いに跳び引いた。

速瀬は若干ズれているショーツを戻しもせず、真っ赤な顔で枕を抱き俺を睨み付ける。

対して俺も長い睡眠時間によってズれたズボンを直しながら、ベッドから距離を取った。


「なッ、なななな……何でアンタが其処に居んのよぉっ!!??」

「ちょっ……バカッ! デカい声出すなって!!」

「……!!」

「とりあえず、落ち着け……落ち着け。 ……なっ?」


昨夜はワインを無理矢理飲まされて、誘惑されたと思ったら"もんじゃ焼き"を食らう。

そして掃除をして帰ろうと思ったら……角に顔面を叩き付けられて捕獲されて撃沈したんだったな。

速瀬が五月蝿い分 冷静になれたようだが、コイツは覚えていないんだろうか……?

今現在は俺の言葉で、速瀬は左手に枕を抱きながら右手で口を塞いだトコロだった。

すると数秒後……未だに顔を真っ赤にしながらも、右手を離すと俺を見て声を抑えて言う。


「こ、これってどう言う状況よ? ……説明しなさいよッ」

「やっぱり……覚えてないのか?」

「…………」(コクリ)

「えっと……昨夜は祝勝会が有ったよな? その時 酔っ払ったみたいだから、俺が送ったんだ」

「そ……それは大体判るわよッ、"その後"の事を聞いてんの!」


やっぱり昨夜の記憶は無い……か。 参ったな~、どう説明するべきだ?

ワインを飲まされたのはともかく、"もんじゃ焼き"の事は流石に言い難いよね。

弱みを握るにしてもネタとしては色々な意味でキタな過ぎるし、言わない方が幸せかもしれない。

……まぁ……多少誤魔化しても、"事後"だとは絶対に思われないだろう。

何せ俺はTシャツを着てズボンを履いているし、速瀬にはショーツが有るのだから。


「部屋に入ってからは……先ずは無理矢理 酒を飲まされた」

「…………」

「それで、酒の後は……色々と"世話"を焼かされたもんだ」

「……ッ!?」


――――これは"もんじゃ焼き"についてだ。 隠して置くのは俺の優しさだZE?


「"その後"は直ぐに帰ろうと思ったんだが……君は俺を帰さなかった」

「んなっ……!?」

「仕舞いにゃ さっきの様に俺の頭をガッチリ固定してたし、朝まで戻るに戻れなかったのさ」

「……う、嘘よッ……嘘……なんでしょ……?」

「嘘なもんかよ。 御陰で今でも体はギシギシ言ってるんだぜ?」

「……っ!?」


――――アーム・ロックの頭痛と角にブツけられた顔面の痛みは、正直 まだ有るのよね。


「ともかく、騒ぐような事じゃない。 俺は気にして無いから、速瀬中尉も気にしないでくれ」

「~~ッ……」

「それじゃ~俺は失礼するよ、さっきはネボけて変な事して悪かったね」

「……あっ……」


≪チャッ――――バタン≫


俺に暴力を振るった事に関しては、中尉の立場からしてタブーなんだし追求しない事にした。

けど痛かったのは癪だったから、多少は言葉に棘を持たせちまったな~。

とにかく……うむ、この事は全て忘れて貰うに限る。 さっき揉んじまった事も含めてね。

だから速瀬が反論してくる前に上着を掴み、俺は上官気取りの言葉を残すとさっさと退室した。

ふ~……何とか誤魔化せたぜッ! 幸い速瀬も追い駆けて来てないし大丈夫――――


「…………」

「……!!」


――――と思って念の為 周囲を見渡して見ると、涼宮(姉)が隣の部屋のドアから顔を出していた。


≪バタンッ!!≫


こ、これはいかんッ! 慌てて何か声を掛けようとすると、瞬時にドアを閉じる涼宮(姉)。

ヤバいな……送るのを頼まれたダケなのに、朝まで部屋に居るとか絶対 誤解されそうだッ。

いや、親友の涼宮(姉)にしか見られなかったって事を幸いだと考えた方が良いか……

何事にもポジティブだ。 俺は後で誤解を解こうと心に決めると、自室へと歩いていった。




……




…………




≪それで、酒の後は……色々と"世話"を焼かされたもんだ≫


「そ、そんな……私……アイツに? ……でも、履いてるし……そんなワケ……!」


――――だが この時、ベッドに鼻血が滲んだ事さえ忘れていた俺は判っていなかった。


≪"その後"は直ぐに帰ろうと思ったんだが……君は俺を帰さなかった≫


「!? ――――ち……血の跡……?」


≪嘘なもんかよ。 御陰で今でも体はギシギシ言ってるぜ?≫


「や、やっぱり……やっぱり……私……ッ……そんなぁ~……」


――――想像以上に速瀬はデリケートであり、男性経験に疎かったと言う事を……




……




…………




≪――――カチャッ≫


「朝です……白銀さん」


≪――――し~ん……≫


「……白銀さん?」


≪――――きょろきょろ≫


「…………」


≪――――じ~っ……≫


「……ッ」


≪――――ボフッ≫


「(……白銀さんの……匂い……)」


≪――――ガチャッ≫


「ウィーッス」

「……っ!?」

「あれっ? 霞、何やってんだ?」

「……ッ!! ……ッ!?」


憂鬱な気分で自室に部屋に戻って来ると、何故か霞が俺の枕に顔を埋めていた。

対して霞はビクンッと跳ね起き、ベッドから離れると挙動不審で俺の様子を伺い始めた。

しかも表情の変化は少ないが、顔をを結構 赤くしている。 はて……何が起こったんですか?

あぁ……そうか、人見知りをする霞は寝顔を見られるのに抵抗が有るんだろう。

物語が進むと一緒に寝たりもするんだろうけど、まだ心を開いてくれては居ないんでしょうね。


「……驚かせたのなら済まなかった、今日も起こしに来てくれたんだよな?」

「はっ……はい」

「ありがとう、今日は軽い用が有って早起きしてたんだ」

「そ、そうだったんですか」


霞は未だに顔を赤くして俺の方を向いたまま、にじり にじりとドアの方へと移動する。

そんなに嫌がる事だったのかなァ……俺はこの先の展開に不安を感じながら、声を掛けた。


「霞……またな~?」

「まままま、またね」

「まままま?」

「……ッ!!」


≪――――バタンッ≫


霞は更に顔を赤くして、彼女にしては早い勢いで部屋を出て行った。

もしかしてアレだと風邪を引いている可能性が有るな……お大事にしてくれ霞。

……それはそうと、霞を見送った俺は自分のベットに視線を移した。


「ふんもっふ!!」


≪――――ボフッ≫


枕に染み付いた良い匂い……間違いなく霞のモノだ。


「……霞タン……ハァハァ……」


――――白銀はウサギの匂いを嗅ぎながら、朝っぱらから つい犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月13日 正午


「ラーメン大盛りにしといたよ、しっかり食べなッ!」

「HA☆NA☆SE」


奮発して2時間ほど朝の運動に励んだ俺は、2度寝してしまうと昼前に覚醒。

そして替えの軍服に着替えると、PXに向かい何時もの如く麺類を注文した。

昼食を摂るのは朝と夕と違い、人によってかなりの時差が有るようで、
手の空いていた京塚のオバハンにバシバシと背中を叩かれながら、俺は席の方へと向かった。


「伊隅大尉」

「し、白銀少佐ッ」


≪――――ガタッ≫


「昨夜は御世話様でした」

「はははっ、俺は特に何もしてませんって。 それより隣 良いですか?」

「――――はっ」


適当にPX内を見渡すと人は少なく、伊隅が一人で飯を食っていた。

丁度 食い始めた辺りの様で、俺は必然的に声を掛ける。 ……寂しく食うよりは良いしね。

すると立ち上がって敬礼して下さり、俺も片手で敬礼すると席に着いた。


「今日は一人なんスか?」

「はい。 昨夜の事もあるので、今日は皆を休ませています」

「大尉は今朝に何を?」

「主に書類の整理を……午後はシミュレーター訓練でも行おうと思っております」

「成る程」

「…………」


う~む……余り会話が続かないな。 妙に畏まってるみたいだし、プライベートの会話がし難い。

その為 自然に沈黙が訪れてしまい……二人で黙って飯を食う流れになってしまう。

其処で考えたのが、伊隅の立場。 A-01の部隊長だから、俺の知らない原作の事を聞ける筈。


「大尉。 そう言えば207A分隊は、A-01に入って無いんですか?」

「――――はい。 任官はしたモノの、まだまだ経験不足ですから」

「指導をするのは大尉なんですよね?」

「えぇ。 そうなのですが、私達の職務も有るので毎日と言う訳にはゆきません」

「ふ~む……そうなると、指導する時 以外は必然的に自主練って事になってるみたいですね」

「……そうですね、最近は積極的に行っていると聞くのでこちらも助かります」

「むぅ……」

「少佐?」


正直なところ、伊隅の部隊長としての任務とA分隊の指導を両立するのは無理が有るよな。

そんな状況で戦場に駆り出されると、そりゃクーデターやトライアルで死ぬハズだわ。

……かと言って直ぐ様A-01に引き込んで実戦をするも、足を引っ張る可能性が否めない。

教えるは教えるで即席の連携は難しい……原作ではホント良く立ち回れたモンだぜ。

それでも死者は出てたし、旨くやるには ど~したもんかなぁ……と考えている俺。

!? あぁ~……だったらA-01全員を同じスタートラインに立たせれば良いんだよな?

XM3の存在でそ~なった様なモンだし、何で早く気付かなかったんだろうか。

俺は考え込んでいた自分を見る伊隅に向き直ると、水を口に含んだ後に言った。

ちなみに水なのは、合成のお茶も余り美味くは無いからなんだぜ……コーラが飲みたい。


「……大尉」

「はい?」

「不知火S型と新OSについて、どう思ってます?」

「……はっ……率直に申しますと少佐の戦いを見て、非常に素晴らしいモノだと思いました。
 出来る事なら今 直ぐにでも、我々も得てみたいと言う考えが強いです」

「そうッスか、聞くまでも無かったみたいですね~」

「え?」

「良かったら午後、教えましょうか? 俺で良ければですけど」

「よ、宜しいのですかッ?」

「はい。 ヴァルキリーズの質を考えると、今のOSに大尉達の腕は宝の持ち腐れですからね。
 むしろ、こっちから新しい機動概念は教えてあげたいぐらいですよ」

「それでは白銀少佐――――!」

「OK。 先にシミュレータールームで待って居てください、副司令に許可を貰って来ますんで」

「……はっ、ありがとうございますっ!」


大きなイベントは まだ先だし、まりもちゃんと同じ要領で伊隅にも教えてやるとするか~。

結果 伊隅が大まかにマスターしてくれれば、A-01全体の総合能力の飛躍的な向上に繋がる筈。

よって先に食事を終えた俺は席を立ち、昼食の途中ながら起立して敬礼してくれる、
伊隅の視線を背中に浴びながら、PXを立ち去って行った。 ……恥ずかしいんですけど。


≪はははっ、俺は特に何もしてませんって≫


「(昨夜は速瀬の相手が有ったでしょうに、気持ちの切り替えの早い人ね……)」←若干赤面




……




…………




2001年11月13日 午後


……その後、俺はゆーこさんにA-01に対してのシミュレーターによる、
不知火S型と新OS(β版)の使用許可を貰うべく、執務室に訪れるとアッサリOKを貰った。

ついでに聞いた話によると、A分隊の不知火S型を組む話も既に進んでいるらしい。

そう言えばS型を組んでくれた企業の"お偉いさん"っぽいオッサン、やけに興奮してたしな~。

何か先行投資してくれるっぽいらしく、こちらの安い出費で早急に拵えてくれて居るらしい。

確かに新OSが無いと考えても強い機体だしな……いずれ株が上がると思うのも判る気がする。


「許可どもッス。 それじゃ~失礼しま~す」

「はいはい」


さておきOKは貰えた。 伊隅が待ってるだろうし、さっさと行くとするかな。

けど 最後に振り返った時……何となく ゆーこさんが残念がっている気がしてしまった。

予知は今 言うべきじゃないから、無意識のうちに彼女から逃げる様にしていたかもしれない。

う~む……新武装で正史より更に世話になっている事だし、このまま立ち去るのもアレかなぁ……

一瞬で そう考えると、俺は立ち止まってデスクの裏に回り込むと ゆーこさんに近付いた。


「おぉっ……これってバズーカのデータですか?」

「ん……そうよ、今 色々と案を考えてる所なんだけど」

「お疲れ様ッス。ところで、こんなの知ってます~?」

「何なのよ? 忙しいんだから……あっ」


ディスプレイを覗くと、何やらバズーカっぽい画像と様々な記号や文字が並んでいた。

フォールディング・バズーカを設計してくれている事は一目で判るけど、他はワケわからん。

されど開発してくれるのは有り難い……が、今の目的はソレではないのだ。

俺は ゆーこさんの手の上からマウスに手を掛け操作すると、メモ帳っぽいプログラムを開き、
強引な姿勢でキーボードを打ちはじめた。 ……ゆーこさんの良い匂いがする。


≪――――カタッ≫


  ∩(≧∀≦)∩


≪――――カタカタッ≫


  (´・ω・`)


≪――――カタカタカタッ≫


  | ゚ д ゚ )


「……ふぅ、こんなんだっけ」

「…………」

「どうですか? これ」

「し……白銀。 あんた……天才?」

「HAHAHA、こんなのも有りますよ?」


≪――――カタッ≫


  ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!


≪――――カタカタッ≫


  ヽ(´∀`)人(・ω・)人( ゚Д゚)人(・∀・)人( ̄ー ̄)人(´_ゝ`)ノ


≪――――カタカタカタッ≫


  キタ━━━( ゚∀゚ )━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━( ゚∀゚ )━━━!!!!


「!? ほ、他には無いのッ?」

「や、やり方によっては幾らでも簡単に作れますよ?」

「そうなの? あたしにも出来る?」

「勿論ですよ。 ホラ、こうやって記号を変換して……」


――――唐突に始まった俺の顔文字講座(やっつけ)は、30分に渡って続いた。

もしやと思ったけど、こう言うフザけた遊びの概念すら無かったのね。

ゆーこさんが予想以上に驚たのは意外だったけど、気分転換になってくれて良かった~。




……




…………




――――思わぬ事で、時間をロスしてしまったZE。


「んっ?」

「……っ!」

「涼宮中尉!!」

「は、はいっ!」


シミュレータールームを目指して進んでいる中、早足に角を曲がると、
およそ20メートル程 前方に、涼宮(姉)がこちらの方向へと歩いて来ていた。

だが目が合った直後、彼女の表情が強張ったので逃げられると思った俺は、咄嗟に彼女の名を叫んだ!

すると涼宮(姉)は直立不動になったと思うと、観念したか ゆっくりと俺の方へと歩いて来る。

……良~し、これで誤解が解けるぞ! 俺も涼宮(姉)に近付いて互いに距離詰めた。


「何をしてたんだい?」

「お、お散歩です。 なるべく足を動かして置いた方が良いそうなので……」

「あぁ~……大変だね」

「いえ、そんな……」


う~む、何て話を切り出そう? 速瀬の部屋に朝まで居たのは紛れも無い事実だし……

ヘタな事を言っても更に誤解されそうなので、つい涼宮(姉)の目の前で考え込んでしまった。

すると俺を上目遣いで見上げている涼宮(姉)。 何か可愛いけど、引き続き考えている俺。


「~~……」

「あのっ、白銀少佐」

「んっ? ゴメンゴメン、何だい?」

「水月の事……有難う御座いました」

「は?」

「頼れる人が少佐しか居なかったんです……本当に御免なさい」


何故いきなり、そんな事を? 涼宮(姉)が親友の速瀬の事で、俺に礼を言って謝るって事は……

そうか、実戦で速瀬を助けた事だね。 思ってみれば祝勝会では、涼宮(姉)と話す機会が無かった。

何せずっと酔っ払い(速瀬)の相手をしていたしな……アイツにも困ったモンだよ。

さておき、律儀な娘だな~。 改めて礼を言われると、俺も調子に乗って上官面しちゃいますよ?


「……気にしないでくれ、俺は自分の役割を果たしたダケさ」

「で、ですけど――――」

「もし涼宮中尉にも必要な状況だったら、当然 俺は同じ事をしたよ」

「えぇ……ッ!?」


ありゃま? 涼宮(姉)ってば……何で急に顔を真っ赤にされたんですか?

俺って今 そんなにクサい台詞を言ったんでしょうか? ……いや、真っ赤になるんだし間違いない。

"こっち"の価値観は良く判らないけど、騎士が姫を助ける様な台詞ダケでクサくなっちまうのか~?

だったらガン●ムごっこは どれだけ……しかしアレだけは譲れん、俺の生命線なのだからッ!!


「す、涼宮中尉?」

「……あっ!? いえ、ななな何でも無いですッ」

「だったら良いんだけど……俺は本気だからな?」


――――そうさ、涼宮(姉)の様な可愛い娘をBETAなんぞに殺らせないぜ。


「――――っ」

「ちょっ……涼宮中尉!?」

「……っ……ふぁ!? す、すみません白銀少佐っ!」

「いや、良いんだけど……」

「……ぁう~……」


やっぱりキザ過ぎるんだろうか? 真面目に言ったつもりなのに、涼宮(姉)は倒れそうになった。

そんなカラダを俺は咄嗟に支えると、直ぐに意識が戻った涼宮(姉)は俺から慌てて離れ、
恋愛ゲー宜しく頬を真紅にして、もぢもぢしながら こちらを見ている。

ついでに抱きしめようと思った衝動は我慢したので さておき、これ以上 刺激するのは避けよう。

なんか俺自身も ムラムラしてきた……このままでは涼宮(姉)に襲い掛かりかねないZE。


「……ところで話は変わるけど、これから訓練に付き合ってくれないか?」

「くっ、訓練……ですか?」

「あぁ。 伊隅大尉に不知火S型と新OS(β版)について色々と教えるんだ。
 次にA-01で一番知って欲しかったのは君だからね、丁度良かった」

「そ、そうですか。 では是非 私も立ち合わせて下さい」


――――良い感じで空気を戻せたな、これで ようやく誤魔化しに入れるぞ。


「宜しく頼むよ。 ……んでもって、今朝の事なんだが……」

「(ま、またぁ~?)」

「他の娘達には内緒にして置いてくれないか? 士気に関わるだろうしね」

「!? わ、わかりました」

「有難う。 それじゃ~行こうか?」

「は……はいっ」


くそっ……結局、良い誤魔化し方が浮かばなかった俺は、涼宮(姉)に内緒にして貰う事を選んだ。

速瀬の親友だと言う事を考えると、いずれ俺とは何も無かった事を本人から聞くだろう。

祝勝会のラストで速瀬を連れて行くのは皆に見られたが、涼宮(姉)ならフォローしてくれるだろう。

だから今の判断は間違っていない。 俺はそう自分に言い聞かせると、
涼宮(姉)と共にシミュレータールームを目指して通路を歩いて行くのだった。


≪……気にしないでくれ、俺は自分の役割を果たしたダケさ≫


「(やっぱり、白銀少佐は水月を抱いてくれたんだ……でも……)」


≪もし涼宮中尉にも必要な状況だったら、当然 俺は同じ事をしたよ≫


「(まさか、あんな事 言われるなんて……あうぅ、どうしよぉ~っ)」


――――しっかし、何でさっきから涼宮(姉)はキョド(挙動不審の略)ってるんだ?




……




…………




……30分後。


≪ドパパパパパパパパッ!!!!≫


『ちぃっ!?』

『伊隅機 被弾、小破! 戦闘行動には支障無し!』

「はっは~! 弾幕はパワーだぜぇっ!!」


今現在 俺と伊隅は、涼宮(姉)のオペレーターの元、一対一で市街戦を行っていた。

機体は互いに不知火S型+新OSβ版。 仕様は俺が強襲掃討、伊隅が迎撃後衛だ。

別に対戦する気は無かったんだけど、伊隅に無理に頼まれて戦う事になっていた。

だが半分 お遊びの様なモノなので、互いにリンクは開き会話は全て通っている。


『さ、流石です少佐……同じOSで此処まで違うとは……!』

「新OSの機体の操縦は初めてなんだから無理もないですって」

『私は以前 神宮司軍曹との2機連携を見せて頂いた事が有りましたけど……』

「大尉に俺の機動を見せたのは実戦のみでしたよね~?」

『はい……ですが、簡単に殺られる訳にはいきませんッ!』

「では見せて貰おうかッ? A-01・部隊長の戦法とやらを!!」


戦いは一方的。 俺は常にフワジャンをしながら両手のチェーンガンで伊隅を射撃し撒くっている。

当然 着地する時は障害物の真上だったり、その陰に隠れたりするので、硬直の隙など見せない。

対して障害物を盾に伊隅は逃げるのが精一杯であり、先程 既に小破している。

同じ条件ながら伊隅はサブ射撃の使い方も、新OSでのみ可能な新しい起動概念も知らないのよね。

……けど、流石はA-01の部隊長。 伊隅は諦めていない様で遂に攻勢に出てくる!!

何と突然 伊隅の不知火S型が、障害物を跳躍噴射で飛び越えて、
空中で相変わらずフワジャンをしている此方に向かって突進して来たのだッ!


≪――――ブァッ!!!!≫


『……ッ!!』

「沈めっ!!」


≪ドパパパパパパパパッ!!!!≫


対して俺は両手のチェーンガンで迎撃するが、伊隅の盾に全て弾かれる。


『せぇい!』


≪――――ガバッ!!≫


よって無駄撃ちと思い弾幕を止めると、それを好機と伊隅は盾を"投げて"来た!

その発想は無かったな……顔は平然だが、内心ちょっとダケびっくりしてしまった。


「なんのっ」


しかし俺は盾をヒョイッと避けるが、既に目の前には長刀を振り上げる不知火S型が有った。


『はああぁぁっ!!』

「そうそう当たるモノでは無いッ!!」


≪――――ブウウゥゥンッ!!!!≫


短時間で学習した新OSの先行入力を生かしての連続攻撃……まさに素晴らしい才能を持つ伊隅。

しかし、俺は長刀すらヒラリと避けてしまい、伊隅のS型は地面に着地せざる得なくなる。

キャンセルを使えば俺に隙を晒さ無い事も出来るんだけど、流石に其処までは無理だったようだ。

一方 俺の不知火S型は、無理な着地をした伊隅のS型の正面で、既に武器を構えて地面に立っていた。


『!? し、しまったッ!』

「――――恋符」(小声)


≪ズドッ!! ズドオオォォォォンッ!!!!≫


直後、両手の突撃砲からの120ミリ、及びマルチ・ランチャーを一発ずつ直撃させた。

肖ったキャラが白黒の魔法使いからクワ●ロ大尉に代わり、再び白黒に戻っているが気にしないで下さい。

これでもチェーンガンと頭部バルカン砲を撃たず、後の台詞を言わなかったダケ自重したんだよ?

それはともかく、当然ながら伊隅のS型はひとたまりも無かったようで、若干吹っ飛んで大破した。


『伊隅機 致命的な損傷、大破。 状況終了』

『……参りました、白銀少佐』

「すんません、ちょっとヤり過ぎちゃいました」

『いえ、気になされないで下さい』

「どもッス。 じゃあ、本題に移りましょうか。 涼宮中尉、設定の切り替えを御願いします」

『はい』

「そうだな~……先ずはサブ射撃について教えますから……」


――――こんな感じで、俺ら3人は数時間に渡って訓練を行った。




……




…………




2001年11月13日 夕方


「それじゃ~今夜は頑張って下さい」

「白銀少佐、御指導 有難う御座いました」

「本当に勉強になりました」

「いえいえ。 お疲れ様でした~」


伊隅と涼宮(姉)を前に、そんな会話を最後に俺はシミュレータールームを離れて行った。

二人は まりもちゃんに匹敵する物覚えの良さで、俺も有意義な時間を過ごせたモンだ。

それにしても伊隅はウェスト細かったな~……既に好きな人が居るらしいのが残念ですな。

さておき、教えた事はサブ射撃のマニュアル操作から始め、3次元機動 迄と色々だ。

流石に まりもちゃんの様に2機連携で、伊隅とハイヴに潜る事は出来ないが、時間の問題だろう。

涼宮は涼宮で、新たな機動概念を理解して貰えればCPとして指示の幅も広がるよね。

これから何やら夕食の後に、まりもちゃんと3人で夜の訓練をも始める様だし言う事無しだ。

まぁ~……こんな調子で訓練を続ければ、俺が教えた事を伊隅がA-01に、
そのまま教えてやる事で、クーデターやトライアルでの脱落者を確実に減らせるだろう。

トライアルはともかく、クーデターだとフォローの行い様が無いので、特に頑張って貰いたい。


「……げっ」

「!?」


そんな事を考えながら相変わらずギクシャクとPXを目指していると、
運悪く脇道から一人で歩いて出て来た速瀬と遭遇してしまった!

速瀬はこちらを確認するとビクリと反応したので、俺は内心ドキドキしながらも距離を詰めるが、
何故か仕方無さそうな顔をしながら、立ち止まると無言で敬礼して来たではないか。

……あれっ? 思ったよりも弁えてるじゃないか。 何か有ったんですか?

もしかして昨夜の事を思い出したのか? ふ~む……だったら良い機会だし、
言いたい事が有るなら何か言わせてやろう。 何となく今、そんな気分になってしまった。

恐らく速瀬の行動で若干 安心した為か、彼女に対する警戒心を緩めてしまったんだろう。

よって正面で立ち止まって速瀬を眺めていると、何やらモゴモゴと言葉を選んでいる様子だった。

また何故か顔を赤くして……くっそ~、何で関わりたくないヤツなのに可愛く感じてしまうのか。


「????」

「……ぅッ……その~……」

「……速瀬?」

「いっ……1回ヤったからって、調子に乗んないでよねッ?」

「はァ?」

「私は……アンタなんて……す、好きじゃないんだから……」

「…………」

「何よ……き、聞いてんのぉ~?」


いや、俺の事が嫌いってのは会った日から解ってるが……"調子に乗るな"って何なのさ?

あぁ~……1回勝ったダケで調子に乗るなって事か? "ヤった"ってのが妙だが、それしか無いだろう。

それは戦闘中とは言え約束したし上等だぜ。 だから上官として、今 弱気になる訳には いかないな。


「……安心してくれ」

「え?」

「一度で満足して無かったのなら、何度でも闘(や)ってやるさ」

「んなッ!?」

「どうしてもって言うんなら、今からでも良いんだぞ?」

「なッ、ななな、ななななな……っ!!」


顔を真っ赤にして震えている速瀬。 そ、それだけドタマに来たのですかッ!?

こっ……これはいかん。 殴られる前に消えた方が良いな……もう痛いのはゴメンだ。

俺は懸命に余裕そうな表情だけは維持すると、速瀬の横を素通りする。

殺意を堪えてくれ、速瀬。 都合の良い話だが、上官を殴るのは君の首を絞めるダケだ。


「ふっ、冗談だ。 またな?」

「~~……っ!!」


ちなみに、俺の立ち去る方向はPXと逆なのです。 だって……速瀬さんが怖いんだもん。

まぁ、一日くらい夕食を抜いても大丈夫さ……違う意味でのオカズは沢山あるけどね。

俺は怒り(?)でトマトみたいに顔を真っ赤にしている速瀬をそのまま、クールに去って行った。

――――何と言う典型的な逃げるが勝ちッ! だが、それが最高の選択だったようだZE。




……




…………




≪一度で満足して無かったのなら、何度でもヤってやるさ≫


「あ、アイツ……信じられないッ! 私……初めてだったのに、何て身も蓋も無い事……!」


≪どうしてもって言うんなら、今からでも良いんだぞ?≫


「で、でも……全然 覚えてないし……また抱いてくれるなら……って、冗談じゃ無いわよォッ!!」

「……(水月、少しは素直にならないとダメだよ?)」←物陰から涼宮(姉)


――――余談だが今夜は、速瀬が怖くて少しチビっていたので、ヘコんでしまい普通に寝た。




●戯言●
何時の間にか速瀬中尉がワントップに……酒癖悪い事から思いついて、つい犯っちゃったんだ☆
涼宮(姉)も妙に勘違いしています、自分で書いておきながら大丈夫なのかこれから……?
最近は1話書くのに10時間くらい掛かります、ゆっくりよんでいってね!!!(意味不明)


●女性→白銀●(5文字以下)
副司令:????
ウサギ:懐いている
軍 曹:尊敬できる
オペ娘:惚れている
御 剣:尊敬できる
 榊 :信頼できる
彩 峰:理想の上官
珠 瀬:格好良い人
鎧 衣:優しい上官
涼宮妹:興味ある人
柏 木:興味ある人
築 地:興味ある人
伊 隅:頼れる上官
速 瀬:純潔返せ
涼宮姉:????
宗 像:一目置ける
風 間:一目置ける


●追記●
同日17時誤字修正を行いました



[3960] これはひどいオルタネイティヴ18(+伊隅戦乙女隊ver2)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/16 23:33
これはひどいオルタネイティヴ18




2001年11月14日 午前


昨日の事も有ってか少しだけキョドっていた霞に起こされた俺は、例の如くPXを目指した。

最近は段々と合成食の味にも慣れて来たので、多少は麺類以外にも挑戦している。

それはそうと今日は まりもちゃんでは無く、A-01の8名と鉢合わせしてしまい……


「敬礼ッ!」

『――――っ』


先頭の伊隅が即座に敬礼して下さり、残り7名も同じような動作をとった。

人通りの有る通路で大袈裟な……いい加減 慣れて来たから良いんだけどね。

でも8人同時は流石になぁ……初日の時、イキナリ佐官にしてくれて素直に喜んじゃってたけど、
シミュレーターの結果の前に、ゆーこさんに最高位は大尉にしてくれって言っとくべきだったかな~。


「御早う御座います、白銀少佐」

「んっ? あ、あぁ……おはよう」


まぁ 敬礼されたからには、俺も依然としてヘタクソながらも敬礼を返さねばないので行う。

そんな中、必然的に正面の伊隅と左右の速瀬&涼宮(姉)と目が合ってしまうのだが、
3人とも妙に顔が赤い気がする。 特に速瀬には即座に視線を逸らされてしまったではないか。

……霞みたいに風邪なのかな? 恐らく流行っているのだろう、俺も気をつけないとね。

ともかく、これで敬礼は済んだ。 ボロが出る前に さっさと立ち去ることにしようッ!

速瀬の件も有るし ほとばりが冷めるまで、必須である訓練以外は関わらない方が良い気がする。

俺は一瞬で そう考えると、クルリと向きを変え背筋を伸ばしながらスタスタと歩き去った。

そして角を曲がる際にチラッと彼女達を見てみると、まだ8名はその場におり、
おずおずと涼宮(姉)が伊隅に何か話し掛け様としているトコロだった。


『そう かんけいないね』

『きかせてくれ たのむ!』


――――勿論、クールな俺は前者を選んだ。

べっ、別にA-01の俺に対する評価が気になってたワケじゃ無いんだからね!?


「行っちゃいましたね」

「……そうだな」

「釣れない方ですよね。 こんな美女達を前にして、食事にも誘わずに立ち去るなんて」

「ふざけるな宗像、少佐は色香などが効く様な方では無い。 当然 お前が相手だろうとな」

「それは手厳しいですね」

「何なら試してみるか? 骨は拾ってやるぞ」

「ふむ……今のところは遠慮しておきましょう」

「い、今のところはッ?」

「妬いたのか? 祷子」

「もう、美冴さんったら……」

「…………」

「水月、どうしたの?」(小声)

「えっ? な、ななななんでも無いわよ?」(辛うじて小声)

「そう……(見惚れてたんだよね、白銀少佐に)」

「は、遙ぁ~……何よその目~? ホントに何でも無いんだからねッ?」

「わかってるよ(……私もちょっとだけ、そうだったかもしれないけど……)」




……




…………




白銀の好物とされる鯖味噌定食(大盛り)を持ってPXの席を見渡す。

すると まりもちゃんが珍しくB分隊の娘達と一緒に朝食を摂っていた。

……ふむ……成る程。 総戦技評価演習も終わったし、付き合い方に変化が出たんですね。

言葉遣いは相変わらず厳しいのだろうけど まりもちゃんの表情には優しさが有り、
B分隊の皆も彼女を信頼して居る事から、俺に対しては有った緊張の色も感じられない。

まりもちゃんってば……本来なら白銀が担うべき役割を負ってくれちゃってまぁ~。


「フッ……羨ましくなんか、無いねっ」


≪すたすたすたすた……すとっ≫ ←歩行&着席


「……ッ……」




――――白銀の……うそつきーーーーっ!!!!




そうトレ●ン先生の様に心の中で涙しながら適当な場所に座ると、俺は一人で食事を始めた。

くっそー……気分がナーバスだと合成食は余り美味く感じないんだぜ……

よって遅いペースでチマチマ食っていると、何となく移した視界に入ったのは"天使"だった。

即ちイリーナちゃんであり、彼女は同僚と思われる2人の女性に背中を押されている。

"友達の居ない少佐が一人で寂しがってるんだから行きなさいよ!"とでも言われて居るのだろうか?

なんかイリーナちゃんってば嫌そうな顔してるし、地味にショックだけど無理に来なくても……

そう思っていると、イリーナちゃんは何故か顔を赤くしながらも俺に近寄って来てくれた。

今更だけど恥ずかしいんだと思う。 だって佐官の俺に近寄ってくる人なんて全然居ないんだもん。

まりもちゃんや伊隅は自分の志が勝る様なんだけど、普通の軍人から考えると、
いくら白銀の"潜在能力(恋愛原子核)"が有るとは言え、俺が若い容姿なのに佐官だから、
不気味orチートと思われているんだろう。 どちらにしろ孤独で俺 涙目と言う事ですな~。


「少佐……また御一緒しても宜しいでしょうか?」

「当然ですよッ、どうぞ~」

「で、では」

「…………」


しかしイリーナちゃんは、俺のお友達だ。 シミュレーターに付き合うのをOKしてくれる位だしね。

でも他人の目が気になるトコロとは言え、友人の俺を気遣って食事と共にしてくれるのは有り難い。

そんな事を思いながらイリーナちゃんの同僚っぽい2人の方に、何となく視線を移すと、
気付かれた直後 慌てて違う席に向かって行ってしまい、解っていたケド悲しくなってしまった。


「もッ……申し訳ありません。 あの娘達が行けと言うモノですから……」

「えっ? どう言う事ッスか?」

「少佐と2人で……し、食事をする様に……と……」

「むぅ……」


……成る程、やはり"正解"だったか。 これで辻褄が合うってモンだ。

あの2人は寂しがっている俺を助ける為に、イリーナちゃんを派遣してくれたのだ。

どうせなら3人で来て欲しかったが、周囲の視線が痛く感じるのを恐れたのだろう。

嫌がっているイリーナちゃんダケを犠牲にしたのは減点だが、俺は嬉しいので許す事にしよう。


「迷惑であれば、失礼させて頂きますが――――」

「いやいや! 待ってくださいってッ。 行っちゃう必要なんて全然無いです」

「そ、そうですか?」

「……嬉しいですよ、少なくとも俺は」

「!?」

「イリーナ中尉?」

「う……嘘でも嬉しいです……」(小声)

「ぇあ?」

「な、何でも有りませんッ」


……やっぱり周囲の目が気になったのかな? 席を立とうとしたイリーナちゃん。

彼女は真面目だからなぁ……むしろ、尉官と飯を食う俺の事を心配してくれたのかもしれない。

けど俺は まりもちゃんと進んで食事をする位だし、気にする事なんて有り得ないZE。

だから慌てて引き止めると、細かい事は気にしないで 雑談しながら食事を進める事にした。

小声で何かを言っていたのは周囲が喧しくて聞き逃してしまったが、気にしない方向で行こう。


「(神宮司軍曹は本来であれば少佐に成っても可笑しく無い事を、誰もが知って居る……)」


≪……嬉しいですよ、少なくとも俺は≫


「(それなのに、白銀少佐……そんな事を言ってくれるなんて……)」


――――さておき午後の訓練に誘ってみたら、快く引き受けてくれた。 やったぜッ!!




……




…………




朝食を終えた俺は、適当に間を置いてシミュレータールームにへと向かった。

すると今日も207B分隊が訓練に明け暮れており、まりもちゃんも頑張っている模様。

ちなみに たった今 昨日の夜の訓練の時に、伊隅&涼宮(姉)と付き合った彼女に聞いた話によると、
本日のA-01は俺と まりもちゃんの2機連携によるヴォールク・データのログを元に、
機動概念の勉強会を行う予定の様で、少なくとも今日は速瀬に絡まれる心配は無さそうだ。

それはそうと、モニターを見上げる俺の顔は唖然としていた。 何故なら――――


「なんか……随分と進歩してますね」

「はい、現在は連携による戦いを教えて居る所です」


一昨日は飛んだり跳ねたりしてたダケなのに、既に武器を持って戦っているからだ。

これって俺よりも進歩が早いんじゃないのか? 何だか劣等感を抱いてしまった。

……そう言えば……どっかのサイトで見た"うろ覚え"のデータによると、
榊達は戦術機に触れてから一ヶ月もしないうちに、ベテランパイロット以上の技量になるんだよね。

それどころじゃ無くて、例えば珠瀬の最も苦手な能力でさえベテラン並って感じで……

まぁ、ア●ロやカ●ーユだってそうだったし、空想のバランスは現代レベルを超越してるよな~。

でも俺としては有り難い限りだけどね……何て言ったって彼女達の技量が俺の命に関わるから。


「こりゃ~将来が楽しみですね」

「私も そう思います」

「アハハハ、明日には実機訓練って言ったトコロっすか?」

「流石ですね。 その予定です」

「!? じ、冗談だったのに……」

「ふふふっ、これも少佐の御陰ですよ」


……んっ? 何か違う気がするけど、少佐がイキナリ来たって事でヤる気に成ってるんだろうか。

そう考えると少佐になって良かったって素直に思えるね、チームワークも良くなったみたいだし。

反面 まりもちゃんに美味しいトコロを持って行かれた様な気がしないでも無いけど……まぁ良いさ。


「此処まで来ちゃうと俺の出る幕、無さそうですね~」

「そんな事は有りません、少佐が居るダケで今日の皆の取り組みも変わると思います」


そりゃ~少佐が訓練を見に来てれば頑張りもしますって、俺が訓練兵で有ってもハッスルするよ?

まぁ……それで捗(はかど)るなら願っても無い。 午前中は ずっと見学して居ようかな~。

決めたぞッ、まりもちゃんには悪いが此処は少し俺の株を上げさせて貰おうではないかッ。


「それじゃ~後で軽くアドバイスでもさせて貰いましょうかね」

「はい、宜しく御願いします」


――――くっ、余裕だな まりもちゃん。 だが……俺は生きる為にも出しゃばるのさッ!




……




…………




……数時間後。


「先ずは前衛から。 御剣は長刀の腕に頼り過ぎだ、もう少し射撃を多用したほうが良い。
 地上戦では2分程度 味方が持ち堪えさえすれば補給の余裕は幾らでも有るんだ」

「――――はっ」

「でも、納得いかないよな? 顔に書いて有るぞ?」

「…………」


訓練の様子をボケ~ッと眺めながら、俺は無い知恵を絞って考えを纏め終えた。

そして今現在は整列した5人の訓練兵を前に、上官面してアドバイスを始めている。

先ずは御剣……流石に少佐の言う事に反論はしない様だか、俺もソレだけで終わらす気は無い。


「さっきのシミュレーターでは同じ数の戦術機のAIが相手だったけど、
 BETAはハイヴの内部になると物量は数千倍だ。 格闘をする余裕など無いと言っても良い。
 特に低フェイズの攻略だと突破優先だから、無駄遣いさえしなければ弾倉は余裕で余るんだ」

「はっ」

「……けど、格闘をするなとは言わない。 御剣にはその実力が有るしね。
 しかしながら短所を伸ばす事も必要だ……次からは それを特に心掛けてみてくれ」

「承知致しましたッ」

「今のOSだと、射撃で牽制して格闘に繋げる事を当たり前と考える方が良い。
 勿論 逆に格闘から射撃に繋げて離脱する事もな。 特に頭部バルカン砲で牽制するのなら、
 長刀に持ち替える必要すら無いんだ。 だが御剣はそれすら殆ど 行ってなかったし、
 それだと吹雪F型に乗って訓練する必要すら無い。そんなの勿体無過ぎるだろ?」

「!? な、成る程……未熟でした。 お許し下さい」

「良いって良いって、じゃ~次に彩峰」

「はい」


――――流石に まりもちゃんの目も有って、彩峰も畏まっている。

俺的には"にゃに?"って応えられても別に良いんだけどね……しかし胸デカッ。


「……彩峰は御剣と逆だな。 良い感じで斬り掛かる前に、射撃で牽制して戦っていた。
 ディレイ時にオートによるサブ射撃も多用してたし、マニュアル操作を覚えれば更に化けるだろう」

「はい」

「けど反面、自分の力を過信している。 御剣とラインを合わせずに前に出ている事が多い」

「…………」

「勿論 それが悪い事とは言わない、榊・珠瀬・鎧衣のフォローを信じて居るんだよな?」

「……ッ!?」

「だが、前に出過ぎれば危険な事には変わらない。 俺はそれで死んだ奴を何人も知っている。
 彩峰が同じ様に倒れれば、皆も死ぬ可能性が飛躍的に高まる事を忘れるな」

「はい」

「御剣が彩峰の様な戦い方を覚える様になれば、自然とラインも上がるだろう。
 実力を付ければ更にラインは上がってゆく。 急ぐ事は無いんだ、クールに行こう」

「わかりました」


素直な彩峰ってのも良いな。 佐官ってのも やっぱり良いモンですな。

……ちなみに、当然"死んだ奴を何人も知っている"ってのは嘘っパチだ。

白銀大佐は知ってるだろうけど、そうでも言わないと危なっかしい戦い方は治りそうに無いしね。

ゲームとは違って一発で致命傷になる命掛けの戦いで、御剣の様にロクに射撃もせずに、
長刀をブンブン振り回したり、彩峰みたいに出過ぎた戦いを見るのはマジで心臓に悪いんだ。

俺が白銀と言う存在で有りながら、いざ実戦で格闘を恐れるのと同じ要領で、
御剣と彩峰が桜花作戦迄 五体満足だと判っていても、傍観するのは怖いのさ。


「次は榊」

「はい!」

「指揮能力は文句の付け所が無い。 俺でも、あの要領で皆に指示を出すのは無理だと思う。
 ……だけど、その指揮の内容は"彩峰が出過ぎる事"が前提となっている」

「うっ」

「榊達 後衛のフォローを信じている彩峰の行動を買ったんだろうが、もう一歩と言ったトコロだ。
 それで支援の甘くなった御剣が倒れれば本来転倒。 ラインは常に合わせて指揮しないと、
 大きな状況の変化に対応出来ない。 しかし、それが前提なら榊は完璧な指揮をすると信じている」

「少佐……」

「彩峰が俺のアドバイスを聞いてくれるなら、自然と実現するだろう。
 後は技量の問題ダケだ。 俺の強襲掃討のログを見るなりして精進してくれ、頼んだぞ?」

「は、はいっ!」


――――少佐に頼まれたからには、榊みたいな娘は頑張るだろう。 立場 利用してゴメンね。


「そんじゃ~珠瀬」

「はぃいっ」

「射撃の命中精度は……百発百中だな。 俺が敵に回したら素足で逃げ出す程 凄いと思う」

「ほ、ホントですかッ?」

「あぁ……それに、連携も問題無い。 だから、ジャンプ・スナイプ(JS)を取得して貰いたい」

「じ、ジャンプ・スナイプ……ですか?」

「狙撃は前衛が奮戦している事が前提だけど、射線に味方が重なる状況が多々有る。
 そんな状況で光線級が一匹も居なかったら跳ばずしてどうするのか?
 跳べば射線に味方が重なるBETAどころか、多くの敵を射撃できて味方の支援も安易。
 特に光線級が皆無なハイヴでのJSは、砲撃支援の必要最低スキルだと思うんだ」

「は、はぁ……」

「衛士の概念から跳ぶのに抵抗が有るのは判るけど、光線級の餌食に成る為に跳ぶんじゃない。
 生き残る為に明日へと跳ぶんだ。 以後 夕陽に向かって積極的に試して置いてくれ」

「わかりました~!」

「それと――――」

「ぅえ?」


≪――――ザッ≫


「"手紙の件"については大丈夫だよな~?」(近寄って小声)

「!? はわっ、あわわわ……もう……だ、だだだ大丈夫です~……」

「それは良かった」←ゆっくりと離れる

「はぅあうぁ……(な、何で判っちゃってるんだろ~?)」


――――手紙については さて置いて、ノリで恥ずかしい事を言ってしまったZE。


「最後に鎧衣」

「はいッ」

「君の判断力……状況に応じての武器の使い分け、フォローのタイミングは言う事無しだ、
 唯一サブ射撃のマニュアル操作をマスターしてしまったダケは有る」

「有難う御座いますッ」

「でも、珠瀬と同様 積極的に跳ぶ事を考えてくれ。 それで判断の幅が更に広がるだろうけど、
 鎧衣なら問題無いと思うし、いずれは新開発の兵器を任せる可能性も有ると思うから、
 楽しみにして置いてくれ。 今はまだ開発中だけど……近いうちに完成する予定だ」

「そ、そうなんですか!? 楽しみにしてますっ!」


――――今のは普通に了解とかで済ませるべきだと思ったけど、まぁ 鎧衣だしな~。


「……今回は以上だ。 軍曹、後は宜しく御願いします」

「はい、有難う御座いました。 ……少佐はこれから何を?」

「俺は俺で訓練しますよ、まだまだ やり足りない事が多いですからね」(本音)

『……!?』

「(さ、流石は白銀少佐ね……アレでまだ上を目指そうなんて……)」

「(貴方には感服されてばかりです、白銀少佐)」

「(何が……少佐を、そうさせるんだろう……)」

「(わ、私も少佐みたいな凄い衛士になりたいな~)」

「(う~んッ、開発中の新兵器ってどんなのなんだろ~?)」

「あれ……どうしました? 軍曹」

「えっ、いえ。 そ……そうですか。では……白銀少佐に対し敬礼ッ!」

『――――っ』


う~む、特に何も考えずに思った事を纏めてアドバイスしたけど、効果は有った……のかな?

とにかくこんなトコか……とは言え、こんな偉そうな俺でも、まだまだ自分の技量には自身が無い。

あんな進歩を見せられた直後だし、午後の訓練は気合を入れないとな~。

まぁ……昼食は朝と違って手堅く麺類にして置くか。 ――――だけど、その前に。


「そうだ……言い忘れてたけど」

『――――っ』

「"個別指導"はちゃんと行う予定だから、忘れないでくれよ?」

『……ッ!!』


何となく畏まった空気を壊してから去ろうと思ったんだけど、
そんな あからさまに嫌そうな顔をしないでくれよ君達~っ……ちくしょう。

ちくしょおおおおぉぉぉぉ……っ!!!!(Cv若本)……あ~っ、スッキリした。


「(あ、茜ちゃ~ん。 本当に後で聞くの~?)」

「(無理に目を付けられない方が良い気もするけどなぁ……)」

「(それでも言うッ。 私達が少しでも長く生き残る為には、少佐の指導が必要なの)」

「(指導なら伊隅大尉がしてくれてるのに~)」

「(私達も頑張って訓練してると思うけど?)」

「(ともかく私、御願いしてみる。 あんな動きが出来る人なんて、今迄見た事が無かったし……)」




……




…………




2001年11月14日 午後


昼食を摂った俺は、再びシミュレータールームに向かうとロッカーで強化装備に着替えた。

イリーナちゃんは まだ来てない様だけど、先に一人で訓練するのも良いかな~?

そう思ってB分隊が頑張っているのを遠目にスタスタと歩いていると、
まるで狙っていたかの様に俺の行く手を塞ぐ者が現れた。


「し、白銀少佐ッ!」

「んぁ?」

「あのッ……お話が有るのですが、宜しいでしょうか?」

「……君は?」

「207A分隊、涼宮 茜少尉です!」


――――超人 スズミヤ アカネ が1体出た!!


な、なんでやねん。 涼宮(妹)来ちゃったよ、しかもエロスーツ姿で。

全く警戒して居なかったので、ビックリしてしまった。 ……無論 心の中でだけど。

ここ最近 慣れてきた事の一つとして、俺のポーカーフェイスの強化も挙げられるだろうね。

さておき……凛々しく敬礼する涼宮(妹)。 何だか嫌な予感がするんですけど……


「俺に何の用だい?」

「それは、その~……」

「????」

「わ、私達に戦術機の機動についての云々を教えて欲しいんです!」


……少し遠慮しながらも告げてくる涼宮(妹)。 大方 予想してたけど……その通りだったか。

俺が一人で訓練するつもりだって~のは今迄 見てたから解るだろうに、この娘も志が強いねぇ。

ピアティフちゃんと二人っきりで訓練でき無くなるのが癪だが、別に付き合っても良いんだけど……


「ふ~む……」

「……っ!?」


このエロスーツがどうもなぁ……涼宮(妹)でコレなんだし、築地とかだと耐えれるのか俺?

まりもちゃんは慣れたし、伊隅は色気よりも真面目さの方が勝つ様に感じるからまだマシだが……

そう考えて ついボディをねっとりと眺めてしまうと、ビクリと涼宮(妹)のカラダが反応した。

描く表情は恐怖……ま、不味いッ! 俺の遠距離からの視線を警戒する位だ、正面で視姦はヤバいだろ。

5人の美少女+イリーナちゃんとの訓練は嬉しいけど、相手の気持ちを考えるべきだったね。

此処はA分隊との訓練は諦めるか……いずれ伊隅に教わるだろうし、俺が教える必要も無いさッ。


「……悪いが遠慮して置こう」

「えっ?」

「俺が居る方が、君達は訓練に集中出来無い気がするのでな」

「(い、今の視線……まさか"試されて"いたの?)」

「じゃあ、俺は行くから――――」

「ま……待って下さいッ!」

「!?」


――――横を通過しようとしたら、俺の前に回り込んで来る涼宮(妹)。 なんだか必死そうだ。


「私達が少佐にとって取るに足らない衛士だと言う事は判りますッ、
 それでも……"私達"には少佐の指導が必要なんです!!」

「……ッ……」

「白銀少佐……どうか、御願いします!!」

「……分かったよ」

「本当ですか!?」

「うん」

「あ、有難う御座いますッ!」


実力を謙遜しつつ勢い良く頭を下げる涼宮(妹)。 此処まで御願いされると、もう断れないね。

"君が望む経験"には完敗だ、映画化決定。 俺は表情を崩すと諦めたように両手の掌を返した。

すると涼宮(妹)は顔を上げて表情を綻ばせた。 可愛いじゃないか……勘弁してちょ。


「なら……イリーナ中尉が来るまで待って居てくれ、彼女にオペレーターを任せたいんだ」

「はいっ、では皆にも言っておきます!」


敬礼すると興奮気味でアホ毛を揺らしながら走り去る涼宮(妹)。それだけ嬉しかったんだろう。

思ってみれば速瀬にも1本、涼宮(姉)には2本生えてた様な気がしたなぁ……何が?

……さておき、俺としては彼女達の魅力に耐え切れるか厳しいトコロだが、
引き受けたからには仕方無いし、特に築地のバストアップだけは直視しない様にして置こう。

そんなワケで俺は大きな溜息を吐くと、小走りでやってきたイリーナちゃんに手を振った。




……




…………




……15分後、成り行きで始まってしまったA分隊への指導。

彼女達の技量は涼宮(妹)を除いて全体的にB分隊を下回ってはいたが、
今のところ連携力は遥かに凌いでおり、それが早期の演習の合格に繋がったんだろう。

ちなみに3人に続いて4人目が黄色い髪の"麻倉"、そして5人目が緑の長髪の"高原"と判明した。

そんな彼女達と真っ先に行ったのが"俺vsA分隊"であり、伊隅と同様 無理に頼まれた。

全く~……教わる側の彼女達は負けても何も問題は無いけど、
俺が負けると言い訳のしようが無い事から、超プレッシャーだし勘弁して欲しいんですケド。

だから ぶっちゃけ必死になって戦ったけど、思ったよりも簡単に勝てて良かった~。


『涼宮機 致命的損傷、大破。 A小隊全滅……状況終了』

『つ、強過ぎるッ……』

『やっぱり止めとくべきだったんですかねぇ……』

『うぅ……そんなぁ~、五人掛かりで手も足も出ないなんて~』

「はははっ、OSさえ無いノーマルの不知火だし仕方無いさ」


戦場は平地戦を選択し、先ずは水平噴射で近付きながら射撃してくる5人のうち、
フワジャンでA分隊の120ミリを避けながら、適当に晒された噴射の切れ目や着地の硬直を狙い、
こちらが放った120ミリを直撃させて、麻倉と高原の2機を真っ先に仕留める。

例え旧OSであれど距離が有れば、硬直を確認してから撃っても当たらないので、
弾の誘導を期待して硬直の1秒前位に撃ってみたら、旨く誘導してくれて命中したのだ。

そうなると僅か1分で残りは涼宮(妹)・柏木・築地ダケとなり、後は根性で何とかなった。

今の表情はニヤけているが、心臓はバクバク。 俺のポーカーフェイスよ、まだ持ってくれ!!


『(やっぱり、白銀少佐は格が違う。 この人に付いて行けば、私達はきっと……)』


――――こんな感じでヤバかった時も有ったが、俺は頑張って指導してやったのでした。




……




………




「白銀少佐、今日は有難う御座いましたッ!」

「いやいや、お疲れさ~ん」

「敬礼!!」

『――――っ』


……結局 俺は本日の午後、4時間に渡ってA分隊に指導を行っていた。

何だか教えるのにも慣れて来た気がするな……詰まった時も白銀大佐が的確に助言してくれるし。

まぁ、涼宮(妹)達も まりもちゃんや伊隅と同じ様に物覚えが良かったのも有るけどね~。


「白銀少佐……ま、また御願いしても宜しいでしょうかッ?」

「んぁ? 良いよ、時間が合えばだけどね」

「ホントですか~? それは楽しみですねぇ」

「あのあのっ、本当に勉強になりました~っ!」


――――柏木&築地。 特に築地は目を輝かせているのが可愛いけど、こっちくんな。


「はははっ、それは良かった。 それはそうと近いうちに、
 さっき迄 使っていた"不知火S型"が君達にも配備されるハズだ。」

『え、えぇ~~ーーっ!?』

「んでもってイリーナ中尉にシミュレーターの制限も解禁して貰ったから、
 勝手に俺のログを見るなりヴォールク・データなりと、どんどん訓練して置いてくれ。」

「は……はいッ!(今回の指導で、私達を認めてくれたんですか? 少佐……)」


≪俺が居る方が、君達は訓練に集中出来無い気がするのでな≫


「ともかく……なかなか教え甲斐が有ったよ、俺も負けてられないな」

「……(危うく失望され掛けていたけど、勇気を出して良かったわ……)」

「茜ちゃ~ん、どうしたの~?」

「!? な、何でもないわッ」


……なんか……指導が終わった今、A分隊の俺を見る目が変わった様な気がする。

最初は視線に怯えてるような感じもしてたけど、優しく教えた甲斐が有ったってモンだ。

"優しく"は言い過ぎかも知れないが、まりもちゃんの指導を考えると随分と砕けてるんだろうね。

実際にはS型と新OSの御陰な線が強いんだろうけど、嬉しくなっちゃったから、
つい白銀は不知火S型の搬入について、口を滑らせちゃったんだ☆

すると今の驚き様……いずれ判る事とは言え、それを目の前で見れるのに悪い気はし無いぜ。

よってか、既に俺は佐官としての威厳を忘却し、頭を掻いてヘラヘラとして居ると……


「――――白銀少佐」

「はい?」

「私はこれで、失礼しますっ」

「え"!?」

「……ッ……」


なんかイリーナちゃんが寂しそうな顔で、その場から立ち去ろうとしていたのだ!

こ、これはヤバいっ! チヤホヤされるのに酔いしれて、彼女への配慮を忘れていた……

そうだよな~、若者同士の会話に貴女も入りたかったんですよね?

俺は実は違うのは内緒として、イリーナちゃんも十分若いとは思うけど、
流石に10代じゃ無いんだろうしな~。 ……ともかく、何か労う必要が有るだろう。

此処は例え野暮で有ろうと、数少ない俺の友達の為に引き止めざるを得ない。


「イリーナ中尉ッ!」

「――――っ」


≪……眉毛太いですよね? イリーナ中尉って何気に≫


「まッ、ま……いや……何でも……ないです……」

「……そう、ですか」


けど呼び止めたモノの、そう言うイカれた労いしか浮かばなかった俺は必死で言葉を飲み込んだ。

そ~言やぁ今回の礼は最後のシミュレーターが終わった直後、既に筐体の中で告げてたんだよね~。

その代わりが榊に劣らずの"ふとまゆ"についての指摘はマズいだろ、嫌われるドコロの話じゃねぇYO。

よって結局 何も言えなかったんだけど、イリーナちゃんは何故か少しだけ表情を綻ばせると、
浅く礼をして立ち去って行った。 そんな彼女の背中(特に尻)を苦笑いしながら眺めていると……


『…………』

「――――うぉっ」


A分隊全員が俺に注目している。 各々が好奇心いっぱいの表情で。

フッ……おいおい、見惚れるなよ~照れるだろ? なんちゃって。


『…………』


≪じ~っ……≫×5


「ご……ゴホン。 訓練は終わったし、君達は早く着替えて来なさい。
 追加の質問が有るなら、後でPXで聞く事にするからさ」

『は~いっ!』


築地の様なボディを見るのには当然 抵抗が有るが、実は見られるのにも有ったりする。

彼女達よりは断然マシだろうが、現代日本で生きて来た俺にとっては男用スーツでも恥ずかしいのだ。

よって退ける為にも妥当な指示すると、A分隊達は元気な返事と共に立ち去って行った。


――――何故か上目遣いで俺を眺め続ける、涼宮(妹)を残して。


「……ッ……」

「どうしたんだ? 着替え無いのか涼宮」

「し……白銀少佐は、ピアティフ中尉の様な女性(ひと)が好みなんですか?」

「え?」

「なッ、何でもないです!! それじゃ着替えて来ますッ!」


いや……イリーナちゃんは普通に好みだけど、何でそんな事を聞くんだ?

そう考えて首を捻ると、涼宮(妹)は顔を真っ赤にして走り去って行った。

対して俺は道化師のノリで、彼女の尻を眺めながら唸っちゃうんだ☆


「ん~」


ふむふむ……涼宮(妹)の尻は要チェックや。 イリーナちゃんと良い勝負だな。

それはそうと、彼女達は異性の好みが気になる年頃なのだろうか?

考えてみれば少佐とは言え、年齢が近い男は俺位だろうし思い切って聞いて来たのだろう。

流石の女性・高比率だぜ……まぁ~ひと仕事終えたし、美少女達との夕飯と洒落込む事にしますかッ!

俺は邪な考えと共に大きく背伸びをすると、人気の無くなったシミュレータールームを後にした。


≪イリーナ中尉ッ! まッ、ま……≫


――――また管制、御願いしますッ!


≪いや……何でも……ないです……≫


「(白銀少佐……あの娘達の前で"それ"を言おうとしてくれたダケでも、嬉しかったです……)」




……




…………




……そして夕食後は まりもちゃん・伊隅・涼宮(姉)の訓練に付き合った。

その際 案の定"俺vsまりもちゃん+伊隅"での戦いを挑まれたが、何とかスムーズに勝利!

市街戦に置いて伊隅機に隙を見て俺が斬り掛かったのだが、盾防御されたので"外し"に繋げると、
外した時のロックオンが丁度カットしようと接近して来た まりもちゃんのS型に良い感じで送られ、
36ミリの直撃を食らって まりもちゃんのS型は大破し、伊隅はそのまま俺に背後を取られる。

そして成す術も無く長刀の一撃で大破……即ち"回された"のだ。 ホント運が良かった勝負でした。

回すのは"こちら"での戦いじゃ無意味だと思ったけど、戦術機同士だとマジで有りだな。

さっきみたいに盾防御されたり長刀同士でカチ合った直後で外せれば、"回す"事に繋げられる。

こりゃ良い発見だったけど……見返りが特に何も無い、緊張感の有る一戦は癪だよな~。

今度勝ったら罰ゲームで全員にキスとか迫ろうかな……いや、出来る事なら一発……ダメ?

ンな事はさておき、伊隅によると翌日からA分隊はA-01と本格的に合流する事となるらしい。

同時に宗像を中尉に昇進させ、伊隅・速瀬・宗像がそれぞれA・B・C小隊の隊長になるとの事。

なんだかんだで、A-01の基盤がこれで整って来たってワケだ。 こりゃ期待できますな~。


「ふぅ……今日も頑張ったな~」

「…………」

「あっ、水月。 そんなトコで何やってるの?」

「遙っ!? い、いや……別に何でも~……」

「もしかして……夜の訓練の様子、ずっと覗いてた?」

「う"っ」

「もう……訓練を一緒にしたいなら、言って来れば良いのに。
 それに結局 今日一日、白銀少佐に声を掛けれて無かったみたいだし……」

「し、仕方無いじゃない……今更どんな顔して話しゃ良いのよ~っ?」

「白銀少佐なら、何も気にし無いで接してくれると思うよ?」

「うぐぐっ……それはそれで、納得いかないわよ……私の……う、奪っておいて……」

「~~っ……」

「ちょっ!? 其処で何で遙が赤くなってんのよッ?」

「あ、赤くなんか成って無いよぉ~」

「とにかくムカつく……アイツが平然としてるのがムカつく~っ……」

「あははっ。 水月ったら、すっかり白銀少佐に夢中だね」

「な、何で そ~なんのよぉッ!?」


≪今回の罰ゲームは、お前だけで勘弁してやるッ!!≫


≪で、でも少佐……5人分の相手なんて無理です……≫


――――今夜は悩んだ末 涼宮(妹)をオカズに、つい犯っちゃったんだ☆




●戯言●
ふとまゆ………否 閑話休題。涼宮(妹)のターンッ!ドロー勘違いフラグ、ドロー勘違いフラグッ。
今回はむしろA-01のポジションや新キャラ2名の名前を考えるのに手間取ってしまいました。
またど~でも良い話ですがA分隊の容姿を確認する為にインスコしたAFにてピアティフ中尉を
初めてビーチバレーで多用してみたら、何故か3回に2回は速瀬のアタックをブロックできたので、
簡単に勝つ事が出来ました。でも優勝の労いが"白銀君、やったわ!!"ダケなのが悲しいDeath。


●伊隅戦乙女隊●
ヴァルキリー01 伊隅 迎撃後衛 A小隊長
ヴァルキリー02 速瀬 突撃前衛 B小隊長
ヴァルキリー03 宗像 迎撃後衛 C小隊長
ヴァルキリー04 風間 制圧支援 C小隊員
ヴァルキリー05 一条 強襲前衛 C小隊員
ヴァルキリー06 神村 強襲前衛 A小隊員
ヴァルキリー07 葛城 打撃支援 C小隊員
ヴァルキリー08 涼宮 強襲掃討 B小隊員
ヴァルキリー09 柏木 砲撃支援 B小隊員
ヴァルキリー10 築地 強襲掃討 B小隊員
ヴァルキリ-11 麻倉 打撃支援 A小隊員
ヴァルキリー12 高原 制圧支援 A小隊員


●フォーメーション●
A小隊が右翼・B小隊が中央・C小隊が左翼に配置。
先ず速瀬をワントップに一条と神村が左右に展開。
一条の背後に葛城、神村の背後に麻倉が打撃支援。
速瀬の後方・左に涼宮(妹)・右に築地が強襲掃討で前衛と打撃支援をカバー。
その二人の間の後方に柏木が全域を見渡しながら砲撃支援。
葛城の左に宗像&背後に風間。麻倉の右に伊隅&背後に高原が配置。

■築地 多恵■
茜と同じポジションが良いと言うダケで強襲掃討を目指したミーハー。
しかし決めた後に同じ役割だと2機連携が組めない事が分かり涙目になる。
だが同じ小隊に配属され歓喜。 彼女のレズっ気が世界を救うと信じて……!!
今思うと、彼女達は人数合わせでリタイアしたみたいで不憫だ……

■麻倉 遼子■
キイロ(髪の色)ではベタ過ぎるので名前に2時間タップリ悩むも何も思い浮かばず、
結局 涼宮ハ●ヒの憂鬱に登場する某ナイフの人で妥協してみる。
遼子と言うのは打撃支援を行うと言う事で僚機的な意味合いから。
AFをプレイした時によると、被弾時は"……ヒット"とクールな感じ?

■高原 水鳥■
髪が緑っぽいのでミドリで適当に変換すると水鳥と出たので即採用。
制圧支援にしたのはA-01のバランスを考えた為であり、
後にバズーカを持たせたいから。当然麻倉とは仲良しで同小隊員。
AFをプレイした時によると、被弾時は"ヒットぉ~"とライトな感じ?


●おまけ●
http://sylphys.ddo.jp/upld2nd/game2/src/1221569923079.jpg
なんか適当に遊んでたら犯っちゃったんだ☆



[3960] これはひどいオルタネイティヴ19
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/19 22:36
これはひどいオルタネイティヴ19




2001年11月15日 早朝


何時もの様に霞に起こされた俺は、彼女と一緒に通路を歩いていた。

どうやら ゆーこさんが俺を呼んでいるらしく、執務室を目指しているのである。

考えてれば、彼女から呼び出されるのは2週間ぶりぐらいな気がするんですけど。

用が有る時は俺から訪ねる事が多くて、その際 ゆーこさんの用も聞く事が多かったしなぁ~。


「おはよーございます」

「今回は早かったわね」

「そりゃ~そうしますって、徹夜なんですよね?」

「そう言う事」

「――――ッ」

「あっ、霞?」


ゆーこさんと朝の挨拶を交わしていると、唐突に霞が執務室を走って出てゆく。

今日は何時もと変わらない様子だったから あえて気にし無い事にしていたんだが……

更に好感度が下がったのかと不安になってしまう俺……霞が走る事って結構 珍しいんだよね。

よって話を中断して霞を目で追ってしまうと、自動ドアが閉まるのと同時に背後から ゆーこさんの声がする。


「ふ~ん、随分と気に入られたモンね~」

「!? それって……俺が霞にですか?」

「そうよ」

「マジっすか、そうは見えなかったんですけどね」

「……白銀。 アンタ思ったより鈍感なのね、何回もループしてるんだから、
 あたしよりも付き合いは長いんでしょ? それなのに社の"好意"に気付かないなんて」

「は、ははは……生憎この時期は色時どころじゃ無いッスから」


そりゃ~"俺"にとっては初めてなんだから、ちっとも分からないってばよッ!

けど ゆーこさん限定とは言え、ループについての配慮を忘れてたのは迂闊だったな~。

ここは知ったか振りでもして置く事にしよう。 ……どうかボロが出ませんように。

そう考えながら心の中で霞に謝りつつ適当に誤魔化してみると、
ゆーこさんの表情が、少しだけ真面目になった様な気がしないでもなかった。


「――――でしょうね」(小声)

「え?」

「……何でも無いわ。それより本題よ」

「なんスか?」

「フォールディング・バズーカの設計が終わったわ」

「え、えぇ~!? 俺が言い出してから、まだ5日じゃ無いッスか!」

「思ったよりも捗(はかど)って、直ぐに済んだのよ」


――――おいおいっ、凄くねェか!?

ゲームじゃバズーカの"バの字"も出てなかったのに、もう終わったのかよ!!


「また霞に手伝って貰ったんですか?」

「今回は あたし一人で余裕だったわよ。 ……とにかく説明するわ。
 使う前は名前の通りに"折り畳んで背負っている状態"だけど、
 持ち替える直前に瞬時に背中で組み立てられて両手に収まるようになっているの」

「ふむふむ」

「まぁ……色々と考えて設計したけど、当然 使い勝手は使ってみないと分からない。
 だからアンタには暫く、このフォールディング・バズーカのシミュレーター・テストを任せるわ」

「御安い御用ですよ。 じゃ~……どれどれ、ちょっと見せてください」


流石は天才だ……兵器の開発用にもう一人 ゆーこさんが居たのなら、
日本の戦術機は間違いなく、ぶっちぎりで世界一位の性能を誇っていただろうに。

そう考えながら俺は、興奮気味にディスプレイを見せて貰おうとデスクに近付いたのだが、
何故か突然ゆーこさんはガタりと立ち上がって、俺の通行を妨害して来た。

……しかも顔が少し赤く、彼女にしては珍しく慌てているような気がし無いでもない。


「――――ダメ」

「何でッスか?」

「生憎 見せられないデータが有るのよ」

「え~……」


そんな事を言われると余計 気になってしまうのが"人間のサガ"と言うモノだ。

まぁ……見せられないと言っても、機密レベルでは無いんだろう。 それは間違いないZE。

絶対に見られたく無ければパスワードでも付ければ良いんだし、
その時点で技術面の問題で、営業部門の俺にはど~する事も出来無いのだから。


「とにかく用は済んだわ、出て行きなさいッ」

「そんな~、見せて貰う位 良いじゃないですか~」

「ダメ!」

「其処を何とか」


俺は穏便に通ろうとするのだが、ゆーこさんは身を挺(てい)して行く手を阻んでくる。

今現在は相撲の様に正面から俺に抱き付いており、その御陰でおっぱいが当たってます。

流石のボリュームだぜ……ギュウギュウと意識せずに押し付けて来る辺り、
余程 見られたく無くって必死になっているのだろうね。

……だが逆に俺の好奇心はドンドン上昇してゆき、こうなったら最後の手段を使うべきか?


「ダメったらダメ!」

「あっ、量子電導脳」

「えっ!?」

「今だッ、マウスげっとオオォォ!!」

「あ、あぁーーっ!?」

「!? こ、これは……!!」


徹夜明けなのか、簡単に注意を逸らしてしまった ゆーこさんをスルーして椅子に座るとマウスを弄る。

対して彼女は諦めたか妨害して来ず、俺は簡単にフォールディング・バズーカのファイルを開けれた。

すると飛び込んで来たのはバズーカの設計図(完成版)……なのだが、至る所で"顔文字"が多用されている。

主に"しぃ"……(* ゚ー゚)系が圧倒的に多く、次点が(´・ω・`)ショボーンと言ったトコロだ。

他にも"モナー"やら"ギコ"やらetc……ま、まさかコレが見られたくなかったのかッ!?

そう思って ゆーこさんに視線を移すと、腕を組み顔を真っ赤にしてソッポを向いている。


「~~ッ……」

「ゆーこさん」

「なによ?」

「こんな事で恥ずかしがる必要なんて無いですって。
 "あっちの世界"だと、このくらいの顔文字を使うのなんて普通ッスから」

「ほ……ほんとっ?」


流石に設計で使ったりはしないだろうけど、ゆーこさんみたいな人が使う時なんて限られてるしな。

けど随分と安心した表情しちゃってまぁ……初めて彼女が"可愛い"と思ってしまったではないか。


「HAHAHA、そうじゃ無かったら顔文字なんて概念は俺の世界に生まれてませんから」

「……っ……」

「まぁ、此処までウケてくれたのは予想外でしたけどね」

「ふんだ……笑いたきゃ笑いなさいよ」

「いえいえ、むしろ懐かしい記憶が蘇ってきましたよ。 有難う御座います」


――――これは結構本気だ、ゆーこさんの意外な一面が見れて凄ぇ癒されたし。


「!? そ、そうそう……伊隅達の不知火S型だけど、明日の昼頃には搬入されるわ」

「えっ? 相変わらず早いッスね、それも言い出してから たった5日じゃないですか」

「思った以上にウケが良かったみたいで、他の発注をそっちのけて最優先で組んでくれたの。
 流石にA分隊のS型5機の搬入は、もう少し先みたいだけどね」

「へぇ~」

「それと……ついでに"もう一機"別の機体が搬入されて来るわ」

「別の機体?」

「ヒントは御剣よ」

「あ~……あぁッ! もしかして、紫の武御雷ッスか!?」


≪――――ガタッ≫


「良く解ったわね」

「そりゃ~ループしてますから。 少し時期が早いみたいですケドね」

「そうなの?」

「えぇ。 多分B分隊が"総戦技評価演習"を早めに通過できたからじゃ無いですか?」

「なるほどね」


ゆーこさんは空気を変えたかったのか、話題転換による追加情報を下さった。

ふ~ん……伊隅達の不知火S型(7機)ダケじゃなく、御剣の武御雷(紫)もねぇ~。

思わぬプラスの情報に俺は何時の間にか立ち上がっていたが、ゆーこさんはテンションが低い。

空気は変わったけど、まだ引き摺っているんだろう。 しかも徹夜明けらしいし、俺も何か情報を……


「ところで、其処で思い出したんですけど」

「何を?」

「俺 明日、斯衛に絡まれると思います」

「……どう言う事?」

「早い話……国連軍のデータベースを改竄(かいざん)した事、バレてるんですよ」

「!?」

「相手は以前から此処 横浜基地に出入りしている月詠中尉+少尉3名。
 死んだハズの"白銀 武"が御剣に近付いて来た事を警戒しており、遂に接触して来る感じです」

「ふ~ん。 政府の管理情報も改竄しとくべきだったのかしら」

「まぁ……面倒事にはならないんで気にし無いで良いッスけど、これも予知の一つって事で」

「そう」

「でも以前と違って余り御剣とは関わってないんで、あんまりアテにはなりませんけどね」

「……ん~……」

「ゆーこさん?」

「……何でもないわ、話はそれだけ?」

「そんダケっす。 んじゃ~ちゃんと寝て下さいね? 俺はこれで失礼しま~す」

「――――白銀」

「なんスか?」

「アンタは最初から死んでない。 ……良いわね?」

「ぇあ?」

「もう休むわ、出て行って」

「は、はあ」


≪ガシュウゥーーーーッ≫


……情報交換後、俺は ゆーこさんの言葉に押される様にして執務室を出た。

ラストの言葉が若干 気になったけど、死んでよ~が生きてよ~が白銀の肉体が此処に有る事は変わらない。

だから深く考えない事にし、霞と鑑の居る部屋を目指して、俺はスタスタとその場を歩き去った。


「不知火S型と新OSが完成したのは良いけど、実戦データだけじゃパンチが足りなくって、
 物足りなかったのよねぇ~。 ……だから、今回はアンタの情報を利用させて貰おうじゃない」


そして数時間……俺は朝食を抜き、霞とトランプで遊んだ。

好きではないドコロか全くのド素人だが原作の事も考えて、"あやとり"も少しだけやったけどね。

トランプに置いては主に神経衰弱と七並べ……ポーカーとかも行うんだけど、何故か全く勝てない。

だから悔しくて懐かしの"スピード"を教えて遊んでみたら、大差で勝ってしまい、
霞がヘコんだ(様に見えた)ので、結局 負けてばかりのゲームで遊ぶ事となってしまう。

……とは言え霞は楽しめた様で、頭のアレをピコピコと揺らしながら俺を見送ってくれた。


「――――君ッ」

「し、白銀少佐!?」


そして昼食後の午後。 B分隊は今日から実機訓練、A分隊とA-01は共同シミュレーター訓練。

よって一人で訓練する事にし、シミュレータールームを目指す中、
イリーナちゃんの友人である娘の片方(金髪ロン毛)が、一人で歩いているのをチャンスと声を掛けた。

端末と筐体を往復すると伊隅達に見つかる可能性が上がる事から、
それを避けたかったのが大きかったダケなんだけど、簡単にOKしてくれて良かったZE。

ついでに管制(しかも美女)も付いたので良い訓練が出来たし言う事無しだったんだけど、
ラストの1本辺りで妙に友達の娘の瞳に熱が篭ってたような気がしないでも無かった。

ちなみに単機のヴォールク・データにおけるS型バズーカ仕様のテストのみを行っており、
今回は反応炉までは到達できなかったけど、様々の局面での使い分けを考えながら臨んでみた。


「ふァあん……白銀少佐ぁ~っ……」


≪……くちゅ、くちゅくちゅ≫


――――イリーナちゃんの御友達(その1)は今夜、つい白銀で犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月16日 午前


……本日の俺は、B分隊の実機訓練の見学&指導をしていた。

主に まりもちゃんが不知火S型 単機でB分隊の吹雪F型5機を相手にする様子を、
俺も不知火S型に乗って様々な角度から眺め、適当に浮かんだ内容をアドバイスとして教えていた。

この訓練でも何百万単位で金が掛かってんのかな~と、くだらない事を考えながら。

その際 御剣と彩峰 辺りが俺と勝負したい様な事を遠まわしに口にしていたが、
流石にソレは まりもちゃんに厳しく制され、俺も元から戦ってやる気は無かった。

べっ……別に負けるのが怖かったワケじゃ無いんだからね!?

俺の愛機のS型がペイント弾で汚れちゃうのがイヤなダケなんだからっ!!


『午前における実機訓練はこれで終了とする!』

『――――有難う御座いました!』×5

『御指導下さった白銀少佐に敬礼ッ』

『――――っ』

「お、お疲れさ~ん」


彼女達の訓練が終わる頃、まりもちゃんの不知火S型は多少ペイント弾で汚れてしまっていた。

一度だけ御剣の捨て身 紛いの攻撃を受け、珠瀬に隙を突かれて支援突撃砲の直撃を食らったのだ。

けど"捨て身"の評価はしかねるので以後 許可はしない事にしたが、
まりもちゃんを落とした事 自体は流石だ、いずれは2vs1で勝てる様にも成って欲しいケドね。

だが……それよりも榊達の青いハズの吹雪F型は、ペイント弾の所為で真ッ黄色に染まっていた。

後衛の珠瀬機も同様。 戦う度に まりもちゃんに全滅させられているんだから当然と言えば当然か。

されど直撃を食らい易い御剣と彩峰の機体は特に酷い。 これで良く今迄 戦えたモンだ。

恐らくメインカメラに一度もペイント弾を当てずに済ませた、まりもちゃんの腕によるものだろう。




……




…………




「お~っ……」


俺の機体をハンガーに戻し着替えて戻って来ると、丁度 新たな不知火S型が搬入されているトコロだった。

今迄 伊隅達が乗っていたノーマルの不知火と入れ替えているダケとは言え、
7機と多く しかも新品で新型な為か大規模なモノであり、多くの整備班が出向いている様子。

また衛士の見学者もチラホラとおり、彼らと同様にボンヤリと搬入の様子を眺めていると――――


「白銀少佐!」

「少佐も此方でしたか」

「榊、御剣。 ……みんなも一緒か」

「うん」

「なんか戦術機が沢山 搬入されてるって聞いて来ました~」

「凄いなぁ~、アレ全部が新型なんですよねッ?」


――――B分隊登場。 噂を聞いて搬入の様子を見に来たのだろう。


「まぁ……元々 不知火S型は俺と軍曹のが搬入されてたし、有る意味 吹雪F型も新型だろ?」

「そうですけど、一度にあんな数の新品の機体が配備されるなんて、凄く珍しいと思います」

「この御時世……新たな戦術機を作る余裕など、そうそう有るモノでは御座いませぬ故」

「そだね」

「不知火S型が、それだけ期待されてるって事なんですねー」

「あれ~? 一番 奥のハンガーが空いてるけど、何でかなぁ?」


――――鎧衣は相変わらず勘が良いな~。 空気を読めて無いのも同じだけど。


「それに、もう少しでA分隊の不知火S型5機も配備されるハズだ」

『……ッ!?』

「意外か? けど涼宮達は既にソレだけの技量を身に付けてるって事だ、君達も頑張ってくれ給え」

「も、勿論ですッ!」

「では我々は一刻も早く吹雪F型に慣れる事を考えなければ……」


試しに涼宮(妹)の名を出してみると、予想通りの反応をするB分隊。

頑張るに当たってライバルの存在も必要だし、榊は特にやる気になった様だな。

……そんな会話をしながら、搬入の様子を眺めている中、
暫く経ったので榊・彩峰・鎧衣が先にハンガーを去り、次第に見学者も減って来た時。

遅れて搬入されて来た機体を確認した瞬間、珠瀬の表情が驚愕へと変わった。


「わぁっ! あ、あれって……!」

「――――ッ」

「武御雷(紫)だな」

「……(私には、あの様な物は必要ないと言ったのというのに……)」

「しかも御剣 専用の」

「!? ご……御存知なのですか、少佐ッ?」

「まぁね。 色々と事情が有るんだろ?」

「……うッ……」

「しかし興味深い。 ちょっくら近くで拝んで見るとするかな~」

「あっ……少佐~?」

「お、お待ちくださいッ」


御剣は俺が武御雷(紫)を彼女の専用機と知っていた事に驚いている様子だ。

だが多くは告げずに歩き出すとタラップを降りてゆき、俺の後を珠瀬→御剣と続いて来る。

すると珠瀬は余程 興味を引かれていたのか何時の間にか走り出しており、
俺を追い抜いて装甲に触れようと、武御雷(紫)との距離を詰めて行った。

そうなれば彼女は月詠さんに殴られてしまうが、涙目の珠瀬も萌え……じゃなかった。

正史を考えれば必ず阻止しなくてはならならず……俺は大きく息を吸い込むと叫んだ!


「珠瀬ッ!!」

「は、はぃいっ?」

「……少佐?」


う~む……だけど、此処で止めたら月詠さんに無駄に怪しまれるんじゃね?

その為 俺は珠瀬を呼び止めるダケでなく、追加の行動に移る事にした。

思ってみれば自重するべきだったかもしれないが、珠瀬と御剣の視線に応えたかったのだ。

別に応えなくて良かったのかも知れないケド、"俺自身"が武御雷(紫)に興味が有ったのさッ。


「先に武御雷に触るのは俺様だ!! 上官を差し置いてズルいぞ珠瀬ッ!」


≪ビシィッ!!≫


――――俺は左手を腰に右手の親指を立て、それを自分に向けて言った。


「!? は、はぅはぅわっ……ゴメンなさい~っ!」

「御剣~、別に俺が触っても構わないよなァ?」

「は、はぁ……どうぞ」

「"御剣の許可"が出たなら問題無いよな? では早速――――」


≪ぺたっ、ぺたぺた≫


"御剣の許可"と言う台詞を強調し、俺は手形を付ける気持ちで躊躇無く武御雷(紫)に触れた。

なんかスベスベして冷たい……少なくとも不知火S型よりは手触りが良いなあ。

でも触ったからって、やっぱり感動するワケじゃないね……何だか空しいモノが有る。

だから更なる行動の為に俺は"自重"と言うリミッターを解除し、表情を改めた。


「……ッ」


――――劇画(JO●O)調に。


「フム、これが"武御雷"の手触りか……!」


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「……だがッ、触るダケでは生憎"リアリティ"欠けるな……」

「し、白銀少佐ぁ~?」

「何を言われているのですッ?」


≪ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……≫


「――――味も見ておこう」


≪ぺろっ≫


『……ッ!?』

「き、貴様ァーー!!」

「おっと」


背後の二人から訝しげな視線……そして物陰から複数の殺気を感じるモノの、
国連軍衛士はうろたえないッ! 俺は躊躇無く武御雷(紫)に顔を近づけ、優しく舌を這わせた。

ぶっちゃけ冷たいと言う感想以外 浮かばず、やっている事は只の変態行為だ。

だが"釣り餌"としては完璧だった様で、物陰から赤い軍服の月詠さんが飛び出し、
奇特な色と形の髪をしている、白い軍服の斯衛トリオも彼女に続いて出て来るッ!

当然 警戒していた事から、既に俺は武御雷(紫)から距離を取っている。

むぅ、国連軍はともかく斯衛軍じゃなくて良かったかも……ちょっと衣装が有り得ないデザインだぞ。


「この武御雷は、冥夜様の御為のみ存在するもの!!
 貴様のような下賎の者が触れて良い物では無いのだぞッ!?」

「て、帝国斯衛軍……!」

「フッ……そう言う事だ、危なかったな珠瀬」

「にゃっ!?」

「(あの月詠の気配を読んでおられたのか? 流石は白銀少佐……しかし……)」

「しかも触れるだけで無く……し、舌を……這わせるなど……
 貴様は宮内省斯衛部隊を愚弄……ひいてはミカドを冒涜する行為を犯したのだ!!」

「いや~、そんなつもりは――――」

「……月詠中尉! これは どう言う事なのですッ?」

「!? め、冥夜様……お止め下さいッ。 我々にその様な言葉遣いなど――――」

「武御雷など訓練兵の私には過ぎた代物ッ! 恐れ入りますが乗る気など御座いませぬ。
 私め等にでは無く、白銀少佐の様な より優れた衛士に御与え下さい!!」

「――――!?」×4


いや御剣……例えに俺の名前を出してくれるのは嬉しいんだけど、無理が有るだろ~?

そもそも俺は斯衛じゃ無いんだから例え月詠さんが持ち帰ったとしても乗れないってば……

でも乗らないんなら御剣が乗るまで斯衛で預かって貰う方が良い気がする。

これ一機で一週間どれだけの維持費が掛かるんだろう? そんな庶民的な考えをする俺。

対して月詠さんは今の御剣の言葉に眉を落とすが、直ぐ様 矛先を俺に向けて来た。

……か、顔が怖ぇ……凄い殺気だ。 何だか穏便で済まなそうな気がするんだが……


「白銀 武!」

「はい?」

「どうやら……間違いでは無さそうですね」


月詠さんが俺の名を呼び応えると、金髪ロールの少女・戎(えびす)だっけ……

……の言葉に月詠さんは続ける。 あれッ? 何だか嫌な予感がするんですけど。


「白銀 武、貴様は何者だッ!」

「何者って なんの事っスか?」

「トボける気ですか!?」

「戎」

「――――っ」

「……死人が……何故此処に居る?」

「え?」

「国連軍のデータベースを改竄して、此処に潜り込んだ目的は何だ!?」

『――――!?』


戎の言葉を制止し発言した月詠さんの"死人"と言う単語と……データ改竄 云々を叫ぶ神代?

……の言葉に、背後の御剣と珠瀬が驚愕する。 勿論、俺も寒気を感じてしまった。


「政府の管理情報までは手が回らなかったのかッ?
 それともまさか……追及されないとでも思ったか!?」

「……ッ……」


俺を指差し凛々しく叫ぶ巴? ……なのだが、俺は何も応えられない。


「もう一度だけ問う……死人が何故 此処に居る?
 ――――白銀武ッ。 冥夜様に近付いた目的は何だ!?」

「ち、ちょっと待ってください。 俺はそんなつもりは……」

「白銀少佐・月詠中尉! こ、これはどう言う事なのですッ?」

「今の話、ほ……本当なんですか~?」

「……ッ……」


おいおいおいっ、これってヤバくないか? 明らかに原作と違う流れだぞこれはッ!

何で"今のタイミング"で月詠さんが"死人"について追及して来るんだよ~っ!?

御剣と珠瀬が聞いているって言うのに、さっきの露●先生ネタが そんなにヤバかったのか?

謝れッ、JO●Oファンに謝れ! ――――いや、謝るのは俺の方ですよね。

しかし不味いな……どう誤魔化せば良いんだッ? 最悪 此処で消されちまうんじゃ無いんだろうか?

助けて~、おかーちゃーんっ! ……と思って悲愴な表情で黙っていると、天の助けが現れる!


「あ~ら、目的なんて有る筈 無いでしょ~?」

「誰だッ?」

「ゆ、ゆーこさん」

「始めから白銀は死んで無いのよ。BETAに殺されそうになったけど奇跡的に逃げ延びた。
 そもそも誰も白銀が死んだ場面なんか見て無いんだし、御剣意識過剰なんじゃ無いのぉ?」

「――――!?」×4

「そうよねぇ~、白銀?」

「んあ……はい。 死んで無きゃ今 此処でピンピンしてる筈無いですし」

「むぅ、そう言われてみれば。 ……月詠中尉、先程の話は言い掛かりにも程が有り過ぎませぬかッ?」

「!? で、では……何故 今頃になって国連軍のデータベースを……」

「簡単な事よ~。城内省のデータで"死んだ事になっていたまま"の方が、
 今迄 影で白銀を動かし易かったからに決まってんじゃな~い。
 むしろ、わざわざ抜けてた穴を埋めてアゲたのよ? 逆に感謝して欲しいわ」

「そ……そう言う事だったんですか~」

「珠瀬、誤解は解けたわね? だったらアンタは行きなさい」

「は、はい~っ!」


ゆ~こさんキタコレ!! 確かに開き直ってりゃ良かったんだよね、チキン過ぎでした俺。

しかし開き直るにしても ゆーこさんが言うと説得力が有るなァ……あの月詠さんが負けてるよ。

確かに ゆーこさんなら本当に水面下で全くバレずに人を動かせそうだし、強ち間違いじゃ無いかもね。

ついでに誤解を解いた珠瀬に退く様に促してくれ、彼女は敬礼すると慌てて走り去った。


「でも、貴女達は納得してなさそうね」

「……ッ……」

「ま、真那様……」×3

「ふふん、だったら体で分かって貰おうかしら。 ねぇ、白銀~?」

「へぇあ?」

「……香月副司令、我々には理解 致しかねますが?」

「解らない? "白銀 武"と言う存在を、今迄 公に一切 晒さずに温めて続けて置いた理由。
 つまり、どれだけ価値の有る衛士かって言うのを教えてあげるって事よ。
 そ~ねぇ……戦うのは白銀一人に対して後ろの白服の娘達3人。 それでど~かしら?」

「!? ふ、副司令ッ! それは幾らなんでも白銀少佐とは言え――――」

「五月蝿いわね、元はと言えばアンタの連れが勝手に着せた濡れ衣でしょ~?
 武御雷を黙って搬入させてあげたダケでも多めに見てんだし、これ以上 口挟まないでよ」

「も、申し訳ありません」

「――――香月副司令ッ」

「何よ中尉、御剣はウチにとっちゃ只の訓練兵よ? あたし何かマズい事でも言った~?」

「……くッ……」


流石は ゆーこさんだなぁ、相変わらずの挑発的な笑みで月詠さんを手玉に……って、オイッ!?

なして何時の間にか俺が斯衛トリオと戦う事を促しちゃってるんですかぁーー!?

"3バカ"は幾らなんでも可愛そうだから そう呼ばないのはさておき、正史と全然 違うじゃん!!

ゆーこさんが介入して来た時点で違和感を感じてたけど、そうですか……こう言う流れですか……


「それで、どうすんの? 戦わずして信じちゃっても構わないのよ~?」

「神代・巴・戎」

『――――はっ』

「……良いでしょう。 白銀少佐の腕、我々で見極めさせて頂きます」

「つ、月詠中尉!?」

「……(申し訳ありません……冥夜様)」

「なら模擬戦は実機で場所は横浜基地周辺での市街戦。 日時は明日の午前中、準備完了次第 開始。
 白銀は新型の不知火、その娘達は3機の武御雷(白)、実弾は無しって感じで良いかしら~?」

「……承知」

「なら決まりね、楽しみにしてるわよ~?」

「マジで~」(小声)

「はい。 それでは……我々は これにて失礼 致します」

「…………」(唖然)

「白銀少佐、先程の非礼は謝罪しよう」

「はぁ……」

「さ~て、面白くなって来たわね~♪」


結果 月詠さん達は模擬戦の条件を飲むと、ゆーこさんに軽く頭を下げ御剣にも浅く礼をすると、
最後に俺と視線を合わせず通りすがりに安直な謝罪をし、その場を立ち去って行った。

対して放心状態の俺……何せ唐突に斯衛トリオとの対戦カードを勝手に組まれ、
しかも"絶対に負けられない戦い"をする羽目になってしまったのだから。

んで厄介事を引き起こした ゆーこさんも、満足そうに口元を歪ませると歩き去ろうとする。

それに気付いた俺は慌てて彼女の後を追い、歩きながらも先程の件について問う。


「ちょっ……ゆーこさんってばッ!」

「何よ~? あたしはこれからビニールを破きに行くんだから、邪魔しないでくれる?」

「勝手に模擬戦 組んどいて何 言ってんですかッ」

「別に良いじゃない、データを考えればアンタが負ける様な相手じゃないわ」

「そう評価してくれるのは嬉しいんスけど、今迄無かったイベントなもんで……」

「男が細かい事 気にすんじゃ無いわよ。 それにしても、大きな獲物が釣れたモンね~っ」

「エモノ?」

「アンタを仕官させる際、あえてデータの改竄に穴を作って置いたのよ」

「えぇッ!?」

「当然バレて誰かが言い寄って来ると思ってたんだけど、御剣の斯衛が連れて良かったわ。
 言い訳なんてアンタが今こうして生きているダケで何とでもなるし、
 流石に"因果律量子論"を持ち出して来れる程、頭の冴えるヤツなんて居ないんだろうしね」

「うへぇ……」

「だから、折角の獲物は利用させて貰う事にするわ。
 不知火S型と新OSにおける"実戦以外"の貴重なデータとしてね」

「実戦以外のって?」

「いくらBETA相手に有効でも、プライドの高い有る意味"幸せなレベル"の連中は、
 ソレだけじゃ納得しないっぽいのよ。 だから不知火S型で斯衛の武御雷をも叩き潰す事で、
 より確実に交渉を"こっち"の有利に展開させる事が出来るってワケ」

「成る程」

「とにかく11日以来の仕事よ? 命令するわ、勝ちなさい」

「り、了解~」


……ま、まさか原作にそんな ゆーこさんの配慮が有ったとはねぇ……

いや、数多くのオルタの世界で俺が経験するオリジナルな設定と考えた方が良いか。

だが……何か忘れている気がする……そう思っていると、ゆーこさんが先に気付いたようだ。


「あぁ……そう言えば、御剣を放って置いたままだったわね」

「うわっ、そうだった。 どうしましょう?」

「今頃 武御雷でも見上げてるんじゃない? あの娘にも思うトコがあるだろうし」

「それじゃあ、そっとして置く方が良いかな~」


――――そう。 自分の不幸に抗うのに夢中で、御剣の事をすっかり忘れていた。

あの娘も武御雷(紫)を突然プレゼントされたり、連れがイキナリ上官と戦う事になったりで大変だな~。

だけど俺も俺で斯衛トリオには負けられないから、しっかりと訓練して明日に備えないとね。


≪御剣も、いずれ解る。 誰にでも……失いたくない"モノ"があるのさ≫


「くっ……貴方はやはり、衛士にもならぬ頃……家族や友を全て失いッ、
 生還した過去が有りながら……更に戦いでも、多く仲間を失ったのですね……」


≪……お前の守りたいモノが、守れるのを祈っているよ≫


「白銀少佐ッ……必ず私は この武御雷を乗りこなせる衛士となり、
 貴方をBETAから守り抜いて見せましょうッ!!」(涙目)




……




…………




2001年11月16日 午後


午後のB分隊は室内で、映像による午前の訓練の復習をするらしい。

A分隊とA-01の午前は昨日と同様、共同シミュレーター訓練だった様で、
午後も昨日のシミュレーター訓練の結果をも踏まえながら、更なる技術の向上を目指すらしい。

そして技術が身に付いて来れば、12機の中隊による連携を組んでゆく予定との事。

ンなワケで今日の午後も俺は一人で訓練する事にし、今回も偶然一人で通路を歩いていた、
もう片方のイリーナちゃんの友達(金髪セミロング)に声を掛けてみた。


「――――キミッ」

「し……白銀少佐」


……結果 彼女もオペレーターを引き受けてくれ、今日も有意義な訓練が出来た。

内容としては……遂にバズーカを背負いながらも単機で反応炉に到達できた~って感じだね。

だけど、彼女もラスト辺りで瞳に熱が篭り始めていた様な気がしたんですケド……

よって何だか怖いから礼を言って直ぐに走り去ってしまったが、明日はきっとバッチリだぜ!!


「ひゥうん……イリーナが羨ましいよぉ~」


≪……くちゃ、くちゃくちゃ≫


――――イリーナちゃんの御友達(その2)も今夜、つい白銀で犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月17日 午前


「今回も宜しく御願いします、イリーナ中尉」

『は、はい』

「えっと……先ずは何処に行けば良いんですかね?」

『少々 お待ちください、只今よりマップとポイントを転送します』


ゆーこさんの謀略により、オルガ・クロト・シャニ……じゃなかった、
斯衛トリオと戦う事となってしまった俺は、不知火S型に乗り込むと戦地にへと赴いていた。

そんな今回の戦いは貴重な交渉手段の一つとなる、不知火S型と新OS(β版)の模擬戦データの収集……

つまり機密に入るので公には隠されて行われるらしく、見学できる者は限られている。


「こ、斯衛の武御雷3機と白銀少佐が単機で戦うんですかッ?」

「流石に分が悪いと思われるのですが……」

「では何か、貴様らは白銀少佐が負けるとでも思っているのか?」

「……ありえないね」

「そうですよ~、白銀少佐は勝ちます~っ」

「白い武御雷かぁ~。 どんな色でも新しく頭部バルカン砲を付けるダケで、大分違いそうですよね~?」

「よ、鎧衣……貴様は また関係ない事を……とにかく、少佐の勝利を疑うな!」

『――――はっ!』


……まずはB分隊と、まりもちゃん。


「た、武御雷が3機も相手なのね……」

「平気だよ茜、私達5機でも勝負にならなかったんだからさ」

「白銀少佐の腕と不知火S型のサブ射撃を考えると、絶対大丈夫だよぉ~」

「……どう思う? 水鳥」

「あはははっ、聞くまでも無いね~」


……次にA分隊5名。


「これは見物だな……どうなるか……」

「ふんっ、あんなヤツ負けちゃえば良いのよ!」

「でも水月……勝てたらホントに凄い事だよ? ねぇ、宗像中尉?」

「そうですね。 新型とは言え不知火が3機の武御雷に勝ると言う、信じられない事が現実となります」

「私達は その"信じられない戦術機"と全く同じにモノに乗り、今後も訓練を行う事が出来るのですね……」

「し、しかもそれが……いずれ12機の中隊規模に……?」

「あわわわっ、それって凄くない? 綾乃ォ~!」

「それでヴァルキリーズの本領発揮ってトコになるのかなァー?」


……そしてA-01の8名が、全員 大型車両内のモニターの前で試合開始を待ち望んでいた。

う~む……人数こそ少ないけど、マブラヴのメインキャラ達が見学してるってのは緊張するぜ。

負けるつもりは最初から無いとは言え、相変わらずプレッシャーに弱いな~俺は。

流石に実戦の時よりはマシだけど……此処は やはり有名なパイロットを肖るとするかッ!

俺は そう決めると、イリーナちゃんの送ってくれた情報を元に、
与えられた地点へとそれなりの高度を維持して向かうと、噴射を切って無造作に降下する。

そして地面が近付くと同時に軽い噴射行動で反動を殺し、地面を必要以上に揺るがした。


≪ズシイイィィィィン……ッ!!!!≫


この着地の時点で既に俺は、とあるパイロットに成り切っていた。

白銀の実年齢を考えても少女と言える相手である、斯衛トリオを考えてでのチョイスだ。

機体に負担を掛けない程度とは言え、無駄に振動を感じる様に着地したのも"彼"の所為かもしれない。

俺は既に配置に着いている3機の武御雷(白)を遠方に、着地後一歩だけ右足を力強く踏み込ませ、
不知火S型を直立させるように操作すると、やや強く吹いている風で靡かれながら機体を佇ませ嘆いた。


≪――――ズシンッ!!≫


「この風……この肌触りこそ戦争よ」

『……ッ!?』


イリーナちゃんが案の定 驚いているけど引かんといて~ッ、こればっかりは自重できないんだYO!

しかも、緊張していた俺は再び墓穴を掘っていたらしく……気付く事は無かったのでした。

これからガン●ムごっこをする際での台詞は全て、斯衛の4名含め全員に筒抜けだったと言う事に……


「神代・巴・戎……やはり奴は潜り抜けた修羅場の数が違う様だ、心して掛かれ」

『――――は、はいっ!!』


≪始めから白銀は死んで無いのよ。 BETAに殺されそうになったけど奇跡的に逃げ延びた≫


「(まさかアレが本当であれば我々は何と言う勘違いを……それに、冥夜様は心から彼を……)」


≪私め等にでは無く、白銀少佐の様な より優れた衛士に御与え下さい!!≫


「(……らしくなかった。 冥夜様の想いに嫉妬し、私は我を失っていたのだ)」


――――斯衛トリオちゃん達……手加減してね? 俺は逃げ出したいと思いながらも、気張る事にした。




●戯言●
今回初めて白銀の心理描写以外での描写が2箇所入りました。勿論お解かりですよね?
このタイミングから、白銀ダケでなく一日の〆は女性キャラのスーパー賢者タイム直前も使おうと思います。
でもスーパー賢者タイムって男性専用だったかな?スーパー聖女タイムってヤツは無い様ですし。
次回はタケル・ラル少佐のはっちゃけにご期待ください。デデン、デデデデンッ(S型のアイキャッチ)


●追記●
同日22時頃誤字修正等を行いました



[3960] これはひどいオルタネイティヴ20
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/23 02:45
これはひどいオルタネイティヴ20




2001年11月17日 午前


『それでは、今回の模擬戦についての注意事項を御説明致します』

「は~い」

『…………』×3

『先ずは――――』


もう直ぐにでも戦いが始まるのかな~と思って気合を入れていたんだけど、
その前にイリーナちゃんによるルール説明がある様で、斯衛トリオの顔が出てくる。

内容としてはまず、互いに戦域管制は無くイリーナちゃんによる戦況報告のみだと言う事。

そして俺と斯衛トリオの音声は互いに全て漏れる様なので、これは俺にとっての利点となる。

反面 戦闘区域と言うモノのがあり、其処から出てしまえば無条件で大破扱い。

特に常に包囲されて戦うと"思われる"俺にとっては"一応"デメリットとなるだろう。

しかも弾倉が全仕様において通常の半分となっているらしく、これは言われるまで気付かなかった。

イリーナちゃんはソレが俺にキツい条件と感じたのか、最後にこう告げて来てくれる。


『弾倉については……特に白銀少佐は注意してください』


心配そうな顔だけど可愛いし、その気持ちは嬉しいですな~。

ちなみに俺の仕様は"迎撃後衛"なのだが、ルールの所為で予備弾倉は半分な為、
36ミリが4個・120ミリは1個しか無く、長刀は元から1本しか無い。

だが相手には仕様をいちいちバラさなくても良いので、この距離によるパッと見では、
恐らく斯衛トリオは盾を持っている事から突撃前衛か迎撃後衛だと思っているだろう。

盾を持っているのは制圧支援も含まれるけど、支援突撃砲しか持っていないから該当しないしね。

対してレーダーによると武御雷(白)の左から神代・巴・戎の機体ってトコだろう。

盾を持っている機体は無く、いずれも長刀を装備している事から、
突撃前衛・強襲掃討・迎撃後衛・打撃支援・砲撃支援・制圧支援はいずれも該当しない。

つまり、全機が強襲前衛って事か。 距離詰めて一気に勝負を決めるつもりなんだろう。

ぶっちゃけ新OS無しの不知火だと どんな仕様にしても勝てる気がし無いんですけどね。

……とは言えイリーナちゃんは、今の仕様でさえキツいと思っているんだろうな~。

まぁ 友達の俺を気遣ってくれるのは嬉しいから、ちゃんと安心させてあげないとね。


「大丈夫ですよ、中尉」

『えっ?』

「この白銀 武……例え弾倉が尽き長刀が折れ様が、素手であっても戦って見せますよ」

『……っ!?』


≪――――素手であっても戦って見せますよ≫


「!? そんな……す、素手でなんて……!」

「あ、あはは……強ち間違いでも無いのかもね」

「でも茜ちゃん……白銀少佐なら、ホントに素手の戦術機でも戦ったりするのかも~」

「……それにしても水鳥、茜が驚く時って分かり易くない?」

「うん。 髪の毛の"アレ"がピンッとなるからねぇ」


肖ったパイロットに成り切って名言に似通った台詞を述べると、イリーナちゃんは驚愕する。

それは斯衛トリオも同様……って、声が漏れるって言われたばかりなのに忘れてた~っ!

しかし負けない為にも俺は自重してはいけないのだッ。 格好良い台詞なんだし誤魔化せば済むさ!!

それに海本さんを肖った事で、俺が戦える様になった事が証明されたし、ちゃんと意味はあるのだ。

……勿論、武器が一切 無くなれば一目散に逃げますよ? 肖ったのは台詞ダケですからねッ?

対して斯衛トリオたちは呆れていたんだろうけど、表情を改めると神代が俺を睨んで言う。


『と、とにかくッ! 手加減するつもりは無いからな!?』

「……ッ……」

『――――状況開始まで残り60秒』


やはり彼女がリーダー格なのだろう。 全く少佐様を相手に良い度胸ではないか。

いや……月詠さん達は俺を敵視してるから、それも仕方無いって事なのかな?

それに彼女達は斯衛だから国連軍の階級が反映されるってワケじゃ無いのかもしれないね。

されど そんな事を言われると、また肖りたくなってしまうではないか……我慢できんぜッ!


「ふっ……気に入ったぞ神代くん。 それだけハッキリ物を言うとはね」

『!?』

「まさかな、時代が変わった様だな……君みたいのがパイロットとはな」

『……ぅっ……』

『じ、状況開始まで残り30秒』

『どうした神代ッ? 奴の言葉に惑わされるな!』

『は、はいっ』


白銀は我慢できなくて、つい言っちゃったんだ☆ 結果、案の定 神代さんが引いてらっしゃる。

第一 時代が変わったもクソも無いよね……俺もBETAに殺されていない事になったから、
建前は神代達くらいの年齢で戦術機に乗って戦ってたって境遇になるんだしな~。

さておき月詠さんの声が聴こえると同時に、神代達は表情を改め、
同じく引いていた巴と戎も凛々しく切り替わった。 ……EXとのギャップがホント凄ェぜ。


『3・2・1・ゼロ。 ――――状況開始』

『行くぞッ! 巴・戎!!』

『了解!!』

「掛かって来なさい!!」


そんなうちに模擬戦がスタートし、同時に斯衛トリオとイリーナちゃんの顔が消える。

直後すぐ様 瓦礫の中に散開する3機の武御雷(白)。 予想通り包囲して一気に潰す気なのだろう。

対して俺も操縦桿を強く握ると、弾幕を張るべく跳躍噴射で空高く舞い上がった。


「(元々ゲリラ屋の俺の戦法でいこう)」


――――今のは全く関係無いとは言え、口に出すと洒落にならないので心の中で言いました。




……




…………




「そこだッ!」


≪ドパパパパパパパパッ!!≫


『くぅっ!?』

『巴機、小破。 戦闘行動には支障無し』


戦闘開始後2分経過。 俺は弾幕を張り続けながら斯衛トリオを捌いていた。

彼女達は主に3機連携による波状攻撃を仕掛けて来ており、不知火S型が休む暇など全く無い。

……とは言え俺は常にフワジャンをしており、着地する場合は瓦礫の高い位置を心掛けている。

その硬直を狙って格闘や射撃を受ける事も多々あるんだけど、もはや旧OSの限界だ。


『そ、其処!!』


≪――――バヒュッ!!≫


「正確な射撃だ。 それゆえコンピューターには予想しやすい」


≪ドパアアァァァァン……ッ!!!!≫


新OSは"着地キャンセル"が安易に可能なことから、ひらりと戎の120ミリを回避し、
不知火S型が"着地し様とした場所"がペイント弾で真っ白になってしまう。

しっかし戦っていて解ったけど、正直 武御雷は不知火S型よりもスピードも装甲も桁外れだなあ。

予想した通り新OSじゃなかったら、とてもじゃないけど捌けなかったトコだ。


『でやああぁぁっ!!』

「おっと」


≪――――ガコンッ!!≫


それはそうと120ミリを回避した事で俺は浮いており、高度は約30メートル。

そんな不知火S型を狙って神代が物陰から跳躍噴射で突っ込んでくるけど、俺は安易に盾防御する。

実は迎撃すれば仕留められていたのはさておき、流石は武御雷(白)……盾の耐久値が一気に減った。

直前に噴射で勢いを付けて対抗していなかったら、一気に押し潰されていたかもしれないぜ。


≪ズシイイィィィィンッ!!!!≫


現状は力比べの真っ最中であり、俺の不知火S型はシールド防御した体勢のまま。

対して神代の武御雷(白)は斬り掛かった体制のまま落下し、互いに地面に着地する。

此処で頭部バルカン砲を撃つなり、後方水平噴射をして距離を取るなりするべきなのだが、
俺は何もせず神代の機体の様子を伺う。 ……ぶっちゃけ、"言いたかった"のだ。


『……ッ……』

「ほう、思い切りの良いパイロットだな。 手強い」


≪ミシミシッ、ミシッ……≫


『くっ……こ、このッ……』

「はははっ、それにしても良い度胸だな。 ますます気に入ったよ」

『なっ!?』

「確か……巽(たつみ)とか言ったな?」

『お、お前に名前を呼ばれる筋合いなど無いッ!!』

「なんてな」

『うあっ!?』


≪――――ゴォッ!!!!≫


ですよねー☆ ……と思いながら俺は唐突に前方水平噴射をし、盾で神代機を押し出した。

その勢いに抗えず武御雷(白)は尻餅を着いてダウンし、俺は突撃砲の銃口を向ける。

しかし誤射を恐れて射撃して来なかった巴機に先程からロックオンされていたので、
今になって放たれた36ミリを後方跳躍噴射でヒラリと回避。

そのまま継続する射撃をフワジャンで避けながら、こちらもチェーンガンで弾幕を張り、
慌てて巴が障害物に隠れたのを確認すると、再び中距離から戎より放たれる、
120ミリを避けつつ高い瓦礫の山に着地した。 ……流石に俺が120ミリを撃つ余裕は無いな~。


『くそっ……確かにパワーとスピードはこっちが上なのにッ』

『な、何であんな動きが出来るのよ?』

『うぅ……本当に不知火なんですの~?』


――――!? でかしたぞ戎、良くぞ言ってくれましたッ!

思えばこの台詞を言いたくて、無駄に戦いを引き延ばしていたと言っても過言では無い。

まぁ……模擬戦におけるデータ収集が目的ってのも有って、色々と捌いてたのも大きいけどね。

さておき、俺は不知火S型の信じられない機動に驚く斯衛トリオの武御雷(白)を見下ろして叫ぶ。


「不知火とは違うのだよ、不知火とは!!」

『……っ!?』


≪――――不知火とは違うのだよ、不知火とは!!≫


「し、少佐……格好良いな~……」

「ちょっ……遙!? アンタ何言って――――」

「!? そ、そう言う意味じゃないよ水月……ただ単に今のは衛士として素敵だったかなぁって」

「確かに……ソレに関しては同意ですね」

「私もです、美冴さん」

「う、嘘ぉ~ん……そうだッ。 大尉は何とも思って無いですよね!?」

「むぅっ……実は私も今の少佐の言葉には、何か来るモノを感じたな……」

「……ッ!?」(ガーン)


このパイロットを肖るに当たって一番言いたかった事を言えた……もう満足だぜ。

それに十分 新OSの機動も活かせたし、そろそろ勝負を決めた方が良さそうだな。

俺は何時の間にか3機で固まっている武御雷(白)を遠方に、無造作に地面に着地した。


『くそっ、こうも強いなんて……』

「(神代は既に小破しただけでなく、推進剤が漏れた状態と仮定されている。
 あと持って2分と言ったところか……それ迄に決めなければ勝機は見えない)」

『し、信じられない……』

「(巴は36ミリの弾倉が空……もはや彼を足止めする事は叶わないか)」

『ですが、諦めるワケにはいきませんわ』

「(戎は120ミリが弾切れ。 タイミングは完璧の筈だったが一発も命中しなかったか……)」

「さ~て、そろそろ決めるとしようか」

『……っ!?』

「(白銀少佐の腕は間違い無く本物……それに、神代達を撃破する余裕は多々有った筈だ。
 ……やはり香月副司令の言われた事は正しかったと言う事なのだろうか?)」

「よっと」


≪――――ジャキッ≫


俺の様子を伺う斯衛トリオを前に、不知火S型は盾を左手に長刀を抜き放った。

実は この戦いで抜刀するのは初めてであり、まだ弾倉は36ミリ・120ミリと共に残っている。

されど俺は接近戦を煽ろうとする。 ……不知火S型の"全て"を駆使して彼女達に勝つ為に。


『ど、どう言うつもりだッ?』

「見ての通りさ、チャンバラで勝負を決めよう」

『なっ!?』

『た、巽ぃ~?』


――――俺の言葉に巴が驚愕し、戎が神代の判断を仰いでいる様子。


「な、何て無茶な事を言うの!?」

「バカな!? いくら不知火S型とは言え、3機の武御雷に接近戦を挑むなど……!」

「榊、御剣。 落ち着く」

「二人とも~、良く考えてみてよ~」

「少佐は まだ、一度もサブ射撃を使って無いんだよぉ?」

「あっ!? 言われてみれば……」

「むぅ……そ、そうであったな」

「……(白銀少佐……人を"気に入った"なんて、今迄一度も……)」

「あれぇ~、どうしたんですか? 軍曹」

「えっ!? よ、鎧衣か……何でもないぞ……」


――――何やら斯衛トリオがボソボソと話しているのが聴こえるけど、空気を読んで待っている俺。


『よ、良し……望むところだ』

「そ~こなくっちゃな」

『くっ……行くぞッ!!』

『覚悟!』

『このっ!』


≪ゴォ……ッ!!!!≫


身構える俺の機体に対し、3機の武御雷(白)は水平噴射で此方に突っ込んで来た!!

正面から見て左に巴・真ん中に神代・右に戎と言う陣形で、左右の武御雷(白)が若干前に出ている。

そして有る程度 距離を詰めると、巴と戎の武御雷(白)が唐突に左右に跳び、
神代はそのまま長刀を振り上げて正面から斬り掛かろうとしてくるのだが……


「そらっ!」


≪ボヒュッ!!≫


『なッ……うわぁっ!?』


≪――――ドパァンッ!!≫


俺は無造作に胸部マルチ・ランチャーのペイント弾を放ち、神代機に直撃させる!

実弾では無いので当然ダメージは無いが、仮定されてしまった事実から、
彼女の武御雷(白)は速瀬の時とまるで同じ様な感じで仰向けにダウンする。

装甲の違いで大破では無い様だけど、ほぼ無力化させたと言って良いだろう。

だけど それに見向きもせず、俺は右を向き頭部バルカン砲を同じ様に無造作に発射した。


『神代機、中破。 兵器使用不可能』

『えぇっ!? どうして――――きゃあッ!』


恐らく左右の2機は神代を囮にし、巴機は左の瓦礫を・戎機は右の瓦礫を蹴り、
俺を挟み込もうとしたのであろうが、戎の武御雷(白)はバルカン砲を食らって動きが止まる。

威力は低いのでダメージは少ない様だが、不意打ちだった事も有り牽制には十分だった様だ。

一方、巴機は左から三角跳びによる長刀での一撃を食らわそうと突っ込んで来るのだが……


『(ふ、二人とも何が有ったの? だけどッ)』

「おっとぉ!!」


≪――――ブウウゥゥンッ!!≫


胸部マルチ・ランチャーと頭部バルカン砲を駆使した結果、一対一で斬り掛かられるのと同じだ。

よって先程までと同じ要領で、ヒラリと巴機の太刀を後方跳躍噴射で回避する。

直後 逆噴射を行い、硬直を晒したキャンセルの効かない武御雷(白)に斬り掛かる不知火S型!!


『!? は、速……ッ!』

「いただくぞっ!」


≪――――ガシュッ!!≫


……右手の長刀で右上から左下に振り下ろし。


≪――――ガシュッ!!≫


……左から右に薙ぎ払い。


≪――――ガシュッ!!≫


……最後に右下から左上へ、盾を持った左手を右手に添えるようにして振り上げる。


『巴機 致命的損傷、大破』

『え、戎ッ!!』


≪ズウウゥゥゥゥンッ!!!!≫


『はああぁぁっ!!』

「――――甘い!!」


本当はいくら武御雷(白)でも2回も斬れば大破するんだろうけど、俺は必要以上に隙を晒した。

巴はソレを好機と見て倒れる直前に戎の名を叫び、丁度 右からは武御雷(白)が接近して来ている!

だが前途の様に"狙っていた"ので、俺は戎の太刀さえも左に浮いて避けると、
右に向き直り既に"もう一つの腕"で持ち替えていた突撃砲を、空振りした戎機に向けていた。


『そ、そんなッ!?』

「えぇい、迂闊な奴だ!!」


≪ダパパパパパパパパッ!!≫


『きゃああぁぁ……っ!!』

『戎機 致命的損傷、大破』


36ミリを至近距離から食らい、戎の武御雷(白)は真っ黄色になって巴機の付近に倒れる。

ふぅ、これで終わりか~。 緊張したけど何とかなったみたいだ、良い感じで動けて良かったぜ。

……けど視線を移してみると、まだ神代機が立ち上がろうとしているのを確認した。


『こ、このッ……卑怯な……接近戦のみを挑んだクセにっ……』

「…………」


大きなダメージで機動をシステムに殆ど制御されているだろうに、頑張るじゃないか。

かと言って どうする事も出来無いだろうし……神代の言葉も負け惜しみでしか無い。

されど思ってみれば、このシチュエーションは"使える"かもしれないな……

俺は一瞬のうちに考えを纏めると、冷めた表情で突撃砲を神代機に向けながら距離を詰めていった。


≪――――ズシンッ≫


「君達は立派に戦ってきた」

『ひっ』

「だが……兵士の定命(ていめい)がどういうモノか、良く感じておくんだな」

『うッ、うああああぁぁぁぁっ!!!!』


≪――――ドパアアァァァァンッ!!!!≫


『か、神代機……致命的損傷 大破』

「……ッ……(負けたか……)」

『第19独立警護小隊全滅。 状況終了』

「……(やはり彼は……白銀少佐は、本当に多くの死線を……)」


神代機に正面から120ミリを直撃させ、戎機の様に白い機体を真っ黄色に染めたのを最後に、
全ての武御雷(白)は倒れ、斯衛トリオとの模擬戦は(俺にとっては)無事に終了したのでした。

肖ったパイロットが使った時は負け台詞だったんだけど、旨い感じで使う事が出来て良かった。

実際に殺すワケじゃ無いから緊迫感なんて無いんだが、神代も乗ってくれて雰囲気が出たぜ~。

けど約束を破っちゃって更に嫌われちゃっただろうなぁ……彼女たちはEXでさえ白銀に敵対的だし。

よって俺は斯衛トリオの機動システム制御が解ける前に、跳躍噴射で基地へと帰還して行った。




……




…………




――――30分後。


「ま、真那様……」

「申し訳ありません~」

「巴・戎。 気にするな、相手が悪かったと言う事なのだろう」

「それにしても、あんな武器を隠していたなんて……」

「機動も有り得ませんでした。 どうやったら、あんな動きが~」

「それは私も気になった。 後に白銀少佐か香月副司令に尋ねてみなければな」

「では、白銀少佐の件に関しては……」

「私達の思い違いだったのでしょうか~?」

「……そう考えるしか無いだろう。 あの驚異的な衛士として腕は、
 確かに"隠すだけの価値"が有るだけのモノと言えるだろう」

「……ッ……」

「それにしても、神代はさっきからどうしたと言うのだ?」

「そ、それが……」

「さっきから こんな調子なのです」

「……っ!」


≪たたたたたたっ……≫


「た、巽っ?」

「何処に行くのですか~?」

「ふむ……」

「何が有ったのでしょう?」

「あんな事、初めて ですの」

「先程の戦いで……何か思うところが有ったのだろう。 今はそっとして置いてやれ」

「は、はい」

「何か釈然としませんわ……」


≪――――君達は立派に戦ってきた≫


「……(まさか建前の止めとは言え……初の実戦でBETAさえ退けた神代が臆するとは……)」


≪だが……兵士の定命がどういうモノか、良く感じておくんだな≫


「……(この娘たちは まだまだ若い。 その為、あえて白銀少佐は恐怖を教える為にッ?)」




……




…………




2001年11月17日 午後


「本当にお見事でした、白銀少佐」

「いえいえ、自分の力で勝ったんじゃ無いです。戦術機の性能の御陰だという事を忘れないで下さい」

「御謙遜なさらないでください。あの娘達も感動していました」

「そうなんスか?」

「はい。 今後、より訓練に身が入る事となるでしょう」

「だと良いんですけどね~」


見学を終えたB分隊とA-01は、午後は何事も無かった様にシミュレーター訓練を行っていた。

俺はそんな彼女達の間をフラフラと行き交い、適当にアドバイスをしながら時を過ごした。

そんで夕飯の時間が近付いて来た今、俺は まりもちゃんと並んでPXを目指している。

会話の話題は案の定 午前の模擬戦について であり、話しながら注文を済ませると――――


「おっ? あれって」

「斯衛の3名ですね」

「うわぁ……まるで葬式だな~」

「やはり、敗戦がショックだったのでしょうか?」


視界に飛び込んで来たのは、食事を摂っている神代・巴・戎の斯衛トリオ。

髪型で只でさえ目立つのだが、それは榊達も同様。 特に真っ白な服装が存在感を現しているのだ。

けど反面 彼女達は沈んでいる様子で、何だか非常に痛々しいではないか。

多分、俺の所為なんだろうね……余計なイベントの所為で実戦で死なれても困るよなぁ……


「すんません軍曹、俺ちょっと行って来ます」

「えっ?」

「あの調子じゃ不味いでしょうしね、フォローを入れて置きますよ」

「……そうですか」

「今度 また一緒に飯食いましょうね?」

「は、はい……(相変わらず、優しい人なんだから……)」


久しぶりの まりもちゃんとの食事が潰えるのは惜しいが、此処は我慢して斯衛トリオと接触しよう。

よって無造作に彼女達に近付いてゆくと、いち早く手前の巴が俺に気付いた。

それに左隣に座っていた戎も続き、二人は瞳を丸くする。 ……あれっ、そんなに意外だったか?


「あっ……白銀少佐」

「な、何か御用ですの?」

「ん~……午前は互いに戦った仲だし、昨日の敵は今日の友ってね」

「い、意味が判りませんッ」

「そもそも、戦ったのは昨日では無くて今日ですわ」

「手痛いツッコミ有難う。 それより空いてるし座るぞ?」

「……ッ!?」


丁度 神代の左隣の席が空いていたので、適当な事を喋って勝手に座ると、
彼女はビクりと体を振るわせた。 なんだかイメージが変わったな……可愛いじゃないか。

まるで小動物の様な……設定だと強気で色黒で男口調だった様な気がするんですけど。

されどこりゃ嫌われたモンだな……散々ガン●ムごっこで遊んじゃったしな~。

とにかく話題を振るしか無いね。 俺は鯖味噌定食(大盛り)を口に含みながら喋り出す。


「ところで、君たちの腕は大したモンだ。 全く驚いたよ」

「ひ、皮肉ですか? それは」

「私達……手も足も出ませんでしたのに……」

「そりゃ~仕方無いよ。 あの機動が活かせたのも、全部 新OSの御陰だからね」

「新OS?」

「で、では……あの頭と胸の武器は何ですの?」

「それは新しい概念の武器……"サブ射撃"さ。 なかなかのモンだったろ?」

「は……はい」

「あれは完全に不意を突かれましたわ」

「……ッ……」


警戒を解いてくれたっぽい巴と戎はともかく、なんだか喋る度に神代が"どよ~ん"となってゆく。

サブ射撃の事を言った時は更に酷くなり、恐らく一瞬で中破させられた事を気にしてるんだろう。

成る程……普段は気が強いけど打たれ弱い娘だったんだな~。 何とか元気付けてあげるか。

そう考えると俺は懐からメモと黒ペンを取り出して、3人の前で何やら執筆を始める。

この世界だと覚えなくちゃいけない事が多すぎるから、地味に何時も持ち歩いているんだぜ~?


「な、何ですか? 唐突に……」

「何を書かれているのですか?」

「ん~……何かアドバイスをしようと思ってね、忘れて貰わない様に書いているんだ」


――――そのまま数分、メモを続けるのだが……俺は非常にバカな事を書いていた。


「(ねぇ、何時まで書いている気なのかしら?)」

「(でも……あの少佐の助言なら、待っていて損は無いかもしれませんわ)」

「……んっ?」


神代は未だに小さくなっているけど、巴と戎は期待の眼差しを向けて来ている。

……うぐっ、マズいな。 2枚目を書き終えてから気付くなんて、俺の頭はどうなってしまったんだ。

今からでも書き直さなければッ。 でも時間が無い……そう思って何気なく視線を仰いでみると……


「(あ、あいつらはッ!?)」


遠方から榊達の様子を睨んでいる、二人組みの衛士を発見してしまった。

顔が特徴的だから直ぐに判るッ! 原作で武御雷(紫)の事で因縁をつけて来たヤツじゃないか!!

う、迂闊だった! これは白銀が止めなければならないんだよな……どうするべきだッ?


≪――――ガタッ≫


「白銀少佐ッ?」

「ど、どうされました~?」


俺は唐突に立ち上がると、巴と戎の言葉を無視して二人の衛士を難しい顔をして眺める。

う~ん……少佐としての立場を使えば楽なんだろうけど、何だかフェアじゃ無いよなあ。

自分の階級を利用するヤツだと神代達や榊達に思われるのはヤダし、ど~したもんだろう。

そう思っていると、俺の周囲の人達が何やら此方を見てヒソヒソ話をしているではないかッ。

イキナリ立ち上がったから変な野郎だと思われているのかな……勘弁してくださいよ~。

その為か俺は未だに二人の衛士を眺めていながらも、内心 涙目になってしまっている。


≪じ~~っ……≫


「(ち、ちょっと……)」

「(なんだよッ?)」

「(さっきから……白銀少佐がこっちを睨んでるわよ……)」

「(!? ど、どうしてだよッ?)」

「(きっと読んでるんじゃないのか? 新型の機体の事を訓練兵に聞き出そうとした事……)」

「(だけど少佐には関係無い事だろうが!)」

「(そ、それでも少佐に目を付けられたらヤバくない? 香月副司令の直属の衛士みたいだし……)」

「(うっ……)」

「(やっぱり私達が首を突っ込んで良い事じゃ無いんだよ……
 少なくとも今アイツらに絡んだら、絶対に少佐が介入してくると思う。
 良くシミュレーター訓練の様子も見てやってるらしいし、機嫌を損ねたら最悪 殺され――――)」

「(わ……解ったよ、それ以上言うな。 ……行くぞッ)」


……あれっ? 連れの女が男の方に何か言ったと思うと、二人は小走りでPXを去って行った。

俺の涙の訴えが効いたのかな? いや……泣いては無いんだけど、ぶっちゃけ我慢してたのよ?

とにかく未然に済んだっぽくて良かった! 周囲のヒソヒソ話も治まったし、一件落着だ~。

よって俺は視線を神代達に戻すのだが……訝しげな表情で俺を見上げている巴と戎。

神代は俺に視線を向けようとしておらず、呆れているのだろうか? ……そうだったよっ!

まだ何も解決していないんだったッ。 アドバイスのメモをど~にかしないとダメなんだったYO。

だけど斯衛トリオは食事を殆ど終えているし、もはやタイムオーバーだ。 此処は誤魔化すしかない!


「ゴホンッ……君達」

「えっ?」

「な、なんですか?」

「俺は急用を思い出した。 悪いが失礼させて貰おう」

「……そうですか」


――――興醒めした様な巴の表情。 勘弁してくれ……こうなったら奥の手だッ。


「お詫びと言っちゃ~なんだけど、新OSを使わせて貰える様 副司令に聞いて置くよ」

「ほ、本当ですのっ?」

「うん、武御雷が どれだけ冴えた機動が出来る様に変わるか気になるしね。 ……それと」


≪――――すっ≫


「あっ……」

「神代くん、君には特に期待しているからな~?」

『……ッ!?』

「え、えぅ……っ?」

「HAHAHA、それじゃ~失礼するよ」


ガン●ムごっこの時に、特に神代に喋った台詞が多かった事から、
それを利用して彼女の髪を優しく撫でると、ウザそうな笑みを浮かべて俺は立ち去った。

思い切った行動だったと思うけど、ビクりともされなかった事から悪くは思わなかったんだろうね。

これで葬式ムードが癒えるとは思えないけど、後にもう一度フォローしに行けば問題無いか。

……なんだか行うべき事が増え続けている様な気がするけど、気にしたら負けなんだZE。


≪それにしても良い度胸だな。 ますます気に入ったよ≫


「……っ……」


≪だが……兵士の定命がどういうモノか、良く感じておくんだな≫


「(あ、あの時……凄く怖かった。 けど……少佐は私の為を思って?)」


≪神代くん、君には特に期待しているからな~?≫


「し……白銀少佐……」(キュン)

「え"ぇ!? まさか……」

「た、巽ぃ……あなた~」

「!? ち、ちちちち違うぞッ! 勝手に決め付けるな!!」

「真っ赤になって何 言ってるんだか」

「説得力が有りませんね。 ですけど……元気になった様だし良かったですわ~」

「だ……だから違うと言ってるだろうッ! そ、それよりも……少佐はメモを忘れて行っているぞっ?」

「!? ホントだ」

「な、何て書いてありますの~? 巽」

「う~ん、汚い字だな~……どれどれ」(カサカサ)




○ジェット・ストリーム・アタック(1枚目)
メンバーそれぞれが搭乗した戦術機が縦一列に重なって並び、真正面から見ると、
1機のみが攻撃対象に向かっているように見せかけ、前方のBETAに連続攻撃を仕掛ける戦法。
ちなみに3機とも違う仕様にして、別の武器で攻撃して行くのがポイントだよ?
例:120ミリ(強襲掃討)→36ミリ(迎撃後衛)→長刀(突撃前衛)


○君達には気合が足りないので以下の台詞を使ってみよう(2枚目)
神代……こいつを貰うぜェ!!・オラオラオラァァ!!・オラァッ!次はどいつだぁ!?
巴……撃滅!・抹殺!・でりゃーッ、必殺!・何だか知らねーが、てめーも瞬殺!!
戎……うざ~い!・バァ~カ・邪魔はてめーだよ・オマエ、オマエ、オマエー!!




「…………」

「…………」

「…………」


≪ひゅううううぅぅぅぅ~~っ……≫


この後 何故かマ●ルさんの漫画でシラけた様なビジュアルになった感じの斯衛トリオが、
顔に縦の線を何本も引きながら、何時までもPXに佇んでいたと言う。

その後日、彼女達がジェット・ストリーム・アタックの訓練をしているのを見て驚愕した俺。

しかも顔を真っ赤にしながらもBETAを罵倒する様な言葉も連呼していたんだけど、
自分の都合の悪い事は忘れるのをモットーにしている俺は、その理由は安易に察せても、
きっと まかり間違って斯衛トリオに3バカでも憑依してしまったのだろうと自分に言い聞かせた。


「こ、こいつを貰うぜー!」

「ひ……必殺ぅ~っ!」

「うざああぁぁ~い!!」


神代は真っ赤。 巴は涙目。 戎はヤケクソ気味で俺の妄想を実行に移していた。

もはや立派なガン●ムごっこ……しかも3人同時。 本人達は気付く事は無いけど、既に俺を越えたね。

正直……たまりません。勿論、月詠さんが頭痛を感じる事となったのは言うまでも無いオチ。




……




…………




「白銀少佐」

「ぇあ?」


誤魔化すに誤魔化して夕食を済ませた俺は、複雑な気持ちで自室を目指して通路を歩いていた。

すると俺の前に当然現れたのは月詠さん。 相変わらず凛々しい表情で御座いますな。

オルタに置いて"美人"と言う単語が最も近い女性は誰かと聞かれれば、間違いなく彼女を選択するね。

……ちなみに、案の定ビックリしたモノの表情には出ていない。 相変わらずのポーカーフェイスッ。

さておき、月詠さんは唐突に俺に頭を下げてくださると、面を上げずに言って来る。


「申し訳ありませんでした」

「へっ?」

「数々の非礼、御許しください。 それに"先程"の冥夜様に対する心遣い、感謝致します」

「あ、あぁ……良いですってそんな事」

「ですが――――」

「いくら必要だったからって俺が今迄 裏で動いていたのは確かですから、
 疑うのも仕方無いですよ。 全ては御剣の事を想っての事なんスよね?」

「は、はい。 しかし、少佐の過去の苦難や今の御気持ちを考えず……」

「そんなの全然気にしてませんって」

「……そうですか」

「えぇ」


ゆーこさんの介入で斯衛トリオと戦う羽目になったけど、それをクリアした今は何のそのッ!

"先程"ってのが良く解らないけど、早い段階で月詠さんの誤解が解けたみたいで良かった~。

そんな月詠さんは安心した表情で面を上げると、ぎこちないが癒される笑みを浮かべた。

けど彼女は直ぐに表情を真剣なモノに改め……俺を真っ直ぐに見つめて来ると言う。


「では私個人として、少佐に頼みたい事が有ります」

「ふ~む……御剣の気持ちを裏切ってくれるなって感じの御願いですか?」

「!? そ、その通りです」

「良かった~。 当たってましたか」

「何故 お解かりに?」

「はははっ、たまたまですよ」


――――今のは自然と白銀の口から出たんだよね。 俺は流石に其処までは覚えて無かったけど。


「なんと……貴方には驚かされてばかりですね」

「そりゃどうも。んじゃ~俺はコレで失礼します」

「はい」

「良かったら今度、一緒に訓練しましょうね~」


月詠さんは鋭い人なハズだ。 もう少し話したかったけど、俺は早めに会話を切り上げる事にした。

ベラベラと自分の過去の作り話をしても、一つでも矛盾を言っちゃうと疑われるだろうしな~。

ともかく……唐突に始まったイベントは切り抜ける事が出来たし、正史よりは確実にプラスになった。

日数にも結構 余裕が有るみたいだし、明日は ゆーこさんに今日の模擬戦の感想でも聞こうかな?

そう考ると俺は月詠さんに軽く手を振って別れ、彼女の視線を背に受けながら再び通路を歩き出す。


「まさか あの様な若くて実直な衛士が、影で何年もBETAと戦い続けていたとは……」


≪例え弾倉が尽き長刀が折れ様が、素手であっても戦って見せますよ≫


「あの戦いに於ける志し……私も貴方を見習わなくてはなりませんね」


≪良かったら今度、一緒に訓練しましょうね~≫


「それに一緒に訓練……ですか。 それも悪くは……いえ、是非 御教授願いたい限りです」


――――その日の夜、何故か例の二人の衛士がワザワザ俺に謝る為に訪ねて来た。

良く解らないけど頭を何度も下げられたので、特に訳は聞かずに許してあげた。

すると安心した様に去ってゆく二人。 ……何かホント変な設定が多いな、深く考えない事にしようっと。




●戯言●
何故か神代のターン。タケル・ラル少佐に名台詞を言わせたら必然的になっちゃったんだ☆
ちなみに巴を白銀が斬った時のモーションは絆のガン●ム系機体と全く同じです。


●追記●
同日3時頃に誤字修正を行いました



[3960] これはひどいオルタネイティヴ21(+用語ver2)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/09/26 21:20
これはひどいオルタネイティヴ21




2001年11月18日 午前


「おはよ~ございま~す」

「あら白銀、丁度良かったわね」

「何か用だったんですか?」

「そうよ。 そろそろピアティフに連れて来させようと思ってたし」


今日の朝食は まりもちゃんと摂り、昨日の感想を聞こうと執務室にやって来ると、
ゆーこさんがソファーに座ってコップを片手に、何かを飲みながらリラックスしていた。

視線をデスクの方に向けると珍しく霞が居て、パソコンと向き合って何か作業をしている。

顔は隠れて確認できないけど、特徴的な髪が飛び出ているので、安易に彼女と特定できた。


「あぁ……そう言えば、今日は霞が起こしに来てくれませんでした」

「ホントは その時 連れて来させれば良かったんだけどね」

「今はそれがちょっと気になってます」

「……(まぁ、こんな事でコイツをからかっても無駄よね)」

「ゆーこさん?」

「霞はワケ有りでね、見ての通りよ」

「はぁ……」


――――さっきからカタカタと何かしている霞。"お仕事中"と言う事なのだろうか?


「とにかく座んなさい」

「は~い。……おやっ?」

「どうかしたの?」

「……くんくん……それってコーヒーですか?」

「ふふん、本物よ~?」

「俺には出ないんですか?」

「欲しけりゃ自分で入れなさい」

「やらいでか」


できれば ゆーこさんの真横に座りたかったが、俺は素直にテーブルを挟んでいる正面のソファーに座る。

すると前方から懐かしい匂いがしたので聞いてみると、どうやら"本物"のコーヒーを飲んでるらしい。

今となっては希少らしいので、"モドキ"以外のコーヒー豆には初めて御目に掛かったッ!

砂糖を入れれば無理矢理にでも美味くはなるんだけど、やっぱり天然モノが一番だよね?

そんなワケで未だに作業している霞を気にしながらコーヒーを入れ、俺は再びソファーに着席。


「それじゃあ本題に入るわ」

「御願いします」


コーヒーを飲みながら互いにリラックスした状況で、真面目な会話が始まる。

内容として、まずは昨日の斯衛トリオとの模擬戦。 率直に言えばゆーこさんは満足してくれた様だ。

結果 新OS(β版)・不知火S型による実戦データ・模擬戦データが揃ったので、
後はバズーカのテストを残すのみ。 それが済めば直ぐにでも帝国軍に揺さぶりを掛けるつもりらしい。

けど、これに関しては俺の理解の範囲外だ。 ……とは言え、ゆーこさんに任せておけば安心だろうね。

そう考えながら貴重なコーヒー(本物)をチビチビと啜っていると、予想していた話題へと移った。


「後はフォールディング・バズーカのテストなんだけど」

「どうしました?」

「データとは言え反応炉を"無事に破壊した事実"が欲しいわ」

「あぁ~、その事なら今日済ませます」

「本当?」

「……えぇ。 以前一人で壊そうとしたらミスって爆風に巻き込まれちゃったんですよ。
 発射直後さっさと離脱するなら普通に無事で済みそうなんですけど、
 確実にクリアする為に、まりもちゃんとの2機連携で仕上げてみようと思ってます」


反応炉のデータは横浜基地のモノが存在するので、耐久力等は既に解っている。

だからシミュレーターではバズーカの一撃で反応炉を壊せたんだけど、
威力を甘く見過ぎていた俺は、無駄に距離を詰めていた事も有って飛んで来た瓦礫に当たって大破した。

BETAのカタマリに撃った時は奴らダケを巻き込む様に中心に撃ったから、
まさかハイヴの壁とかもダイレクトに粉砕する威力だとは思わなかったんだよね~。

一人でコッソリやってた時で良かったぜ……自分が巻き込まれる時点でS-11を使う方がマシだしな。


「まぁ……その為に"盾"も強化するようにしたんだしね」

「見学者は以前と同じでB分隊とA-01。 以後バズーカを使っての連携も学んで貰います」

「なら皆へのフォールディング・バズーカの説明は、その時あたしがやったげるわ、
 ピアティフにもまだ説明して無かったし、あんたじゃ無理だろうから」

「有難う御座います」

「さ~て、データを見て驚く頭の固い連中の顔が目に浮かぶわね~♪」

「……ところで話は変わりますけど」

「何よ?」

「霞はさっきから何をしてるんですか?」


これで本題は済んだし、後は適当に予定の調整を交わせば良いだろう。

よって閑話休題の意味で俺は気になっていたが置いておいた事を ゆーこさんに聞いてみた。

すると彼女は珍しく苦笑いしながら視線を逸らし、ポリポリと頭を掻きながら言う。


「ん~……まぁ、見て貰った方が早いわね」

「ぇあ?」

「こっちに来なさい」

「はい」


ゆーこさんは立ち上がるとデスクの方へと向かったので、俺もコップを片手に続く。

そんな最中でも霞は未だにカタカタとキーボードを叩いており、ようやく見えた表情も真剣だった。

無表情の時と大きな差は無いけど、纏っている空気は違い、それは今の俺にでも安易に理解できる。


≪カタカタカタカタッ……≫


「調子はどう? 社」

「……色々と出来ました」

「見せてみなさい」

「はい」


ゆーこさんと俺が近付くと、霞は手を止めて こちらを見上げてくる。

すると ゆーこさんは霞の後ろに回り込んでディスプレイを覗き込んだ。

それに俺も残り少ないコーヒーを口に含みながら続くのだが――――


「へぇ~、沢山新しいのが出来たわね」

「どれどれ……一体何を――――ぶほォっ!?」


――――迂闊にも貴重なコーヒーを盛大に吹き出してしまった。


「ちょっ!? 汚いわねッ、何やってんのよ」

「コーヒー……勿体無いです……」

「す、すんません。 でもこれって~」

「"顔文字"よ。 社ったら洒落で教えてみたら、すっかりハマっちゃったみたい」

「さ、さっきから……ずっとコレをやってたんスか?」

「……っ……」


何と霞は"顔文字"をひたすら打ち込んでいた様で、メモ帳のようなプログラムには、
彼女によって新しく作られたと思われる、かなりの量の"顔文字"が並んでおり、
俺はソレを見て肩の力がモリモリと抜けてゆくのを感じていた。

そんな中 霞を見てみると恥ずかしそうに頬を染めており、あぁ もう可愛いなチクショウ。

……けど ゆーこさんの前なので抱きしめたい気持ちを堪え、俺は空気を読んだ話題を振る。


「それにしても……た、沢山作ったモンだな~」

「は……はい。 夢中になってしまいました……」

「なら霞~、どれが御気に入りなんだ?」

「……これです」(指差しながら)

「!?」

「へぇ。 なかなか良いんじゃない?」


 \(^o^)/


「白銀さん……ど、どうですか?」

「/(^o^)\」(訳:ナンテコッタイ)

「白銀?」

「えっ!? あ、あぁ……なかなか可愛いんじゃないかッ?」


よ……よりによって霞のお気に入りは"オワタ"かよッ、何てセンスしてやがる!?

まぁ"こっちの世界"だと元ネタを知ってるのは俺ダケだろうし、普通に褒めてやる事にしたけど……

霞の"お気に入り"と言ったら"アレ"しかないだろう! 顔文字とは少しズれると思うけどね。

よって俺は再びキーボードを無理な姿勢で打つべく、コップを置くとズイッと霞の横に寄った。


「し、白銀さん?」

「こう言うのはどうだ~? 霞」


≪――――カタカタカタッ≫


  ∩∩
 .| | | |
 (・x・ )


「!?」×2

「一応ウサギだ。 なかなか良いモンだろ?」

「は、はいっ……凄く可愛いです」

「まさか3行も使って作るなんて……や、やるわね白銀……」

「結構 難易度は上がりますけど、同じ要領で他にも色々と作れますよ~?」

「お……教えてください」

「あたしにも教えて頂戴ッ!」

「り、了解ッス」


正直AA(アスキーアート)なんてコピペしかした事無いんだけどな~。

でも霞と ゆーこさんの好感度アップの為にも、思い出しながら作ってゆくしかないね。

こうして第二回顔文字講座(やっつけ)が始まり、俺の午前の時間か削られてゆくのでした。




……




…………




2001年11月18日 午後


数時間後シミュレータールームにて、俺は強化装備に着替えた姿で、
ゆーこさんの右斜め後ろに控え、合計19名もの女性達と向かい合っていた。

榊達B分隊5名+まりもちゃん+A-01の衛士12名+CP将校の涼宮(姉)。

此処まで面子が揃うのはゲームでも無かったハズだ、何だか圧巻ってヤツだよな~。

ちなみにたった今は ゆーこさんによるフォールディング・バズーカの説明が済んだトコロだ。


「それじゃ~まりも」

「――――はっ!」

「これからアンタと白銀でヴォールク・データをやって貰うわ。
 条件は反応炉の破壊。 バズーカは白銀が使ってくれるから大丈夫よ」

「了解しました!」


階級がアレなのでA-01の娘達よりは少し距離を置いて立っていたB分隊。

そんなB分隊と同じ列に立っていた エロスーツ姿の鬼軍曹こと まりもちゃん。

彼女は ゆーこさんの言葉に前に出てくると、胸を張って凛々しく敬礼して応えるんだが……

相変わらずのボディラインだぜッ。 ……でも、まりもちゃんのは慣れたから まだマシなんだよね。

問題は まりもちゃんダケでなく、涼宮(姉)以外の全員がエロスーツ姿なのがキツ過ぎる。

その御陰で俺は さっきからずっと仏頂面だ、興奮を抑えるのが非常に辛いんですよっ!

だから必然的に軍服姿の涼宮(姉)に視線を向ける事が多く、何度か目が合ってしまっている。

珠瀬と鎧衣あたりを見ているのが一番良いんだけど、位置的に不自然だからなァ……

反面 御剣や彩峰を見なくて済むんだけど、葛城・築地あたりは極力見ない様に心掛けていた。

しかしながら、シミュレーターの御披露目が始まると言う事で、ようやく回避が可能ッ。

緊張するのか? ……と聞かれれば確かにしてるんだけど、実戦と比べたら断然 余裕なのは勿論の事。

斯衛トリオとの戦いの時と比べるとなれば更に楽に感じるし、きっと何とかなる筈さ!!


「それじゃ~軍曹。 頑張りましょうか」

「はいッ」


――――そう言葉を交わして筐体に入ると、直ぐ様ゆーこさんの顔が出てくる。


『白銀、仕様はどうするの?』

「確か……バズーカ仕様は"強襲制圧"と"制圧後衛"でしたっけ?」

『そうよ』

「軍曹はどっちが良いですか? 突撃前衛か迎撃後衛の2択になりますけど」

『どちらでも構いません』

「じゃ~突撃前衛を御願いします」

『わかりました』

『なら、白銀は"制圧後衛"になるわね』

「そ~ッスね」


此処で初めて出て来たのが"強襲制圧"と"制圧後衛"と言う単語。

どちらもバズーカ仕様 専用であり、背中に折り畳んだ武器を背負うので、
両手にしか他の武器が持てず、急遽 新しいポジションが必要になった事で生まれたのだ。

"強襲制圧"は両手に一丁づつ87式突撃砲を持ち、出来る限りの弾倉を持つ仕様。

強襲掃討と同じで弾倉は8/4だけど、前途の通り突撃砲が2丁減っている。

ハイヴ外だと"制圧支援"のミサイルが有るから、地上でバズーカを持つのはこの仕様のみなんだけど、
位置付けが前衛寄りだから、ほぼエースパイロット専用の仕様と言っても良い。

……んで"制圧後衛"はバズーカを除くと、両手に支援突撃砲を一丁のみしか持たない仕様。

機動力の低下する"制圧支援"のミサイルランチャーはハイヴ内では無意味なので、
そのポジションが自動的にバズーカを背負った"制圧後衛"に変わる事になる。

弾倉は砲撃支援の半分の6個で、しかも長刀が無いけどポジション的には問題ないだろう。

むしろ たった4発しかない弾で、どれだけ多くのBETAを巻き込め、
かつ味方を巻き込まない状況で使えるかが問題になる。 ……要は判断力が重要って事だ。


『戦域管制はどうするの? 形ぐらいなら やってあげても良いわよ』

「う~ん……」

『何なら涼宮でも使っても構わないけど』

「いや、大丈夫ッス」

『そう。 なら始めるわよ~?』

『了解』

「何時でもどうぞ」

『状況開始~』


ゆーこさんの暢気な声と同時に、視界が網膜投影によってヴォールク・データに切り替わる。

そして現れるのは既に見慣れたハイヴの内部。 ポジション的に まりもちゃんの機体が俺の正面に居る。

これは初めてのシチュエーション……それはそうと、今回も何気に失敗は許されないんだよね。

だから今回も有名なパイロットの台詞を肖ってみようかな~と今頃になって考えていると……


『少佐、今回は私が先導ですか?』

「えぇ。 ペースは任せますんでガンガン進んじゃって下さい」

『は、はい(……私を信頼してくれるんですか? 少佐)』

「軍曹?」

『では――――神宮司軍曹、吶喊します!!』

「!?」


≪――――ゴォッ!!!!≫


何と まりもちゃんが意外な言葉を叫んでハイヴの奥へと突入して行ったのだ!!

まさか他の人からガン●ムの名言が聞けるとは……まりもちゃんは真面目に言ったんだろうけどね。

けど御陰でテンションが上がってきたぜッ! とにかく これ肖るパイロットは決まってしまった。

そうなれば もはやクリアなど出来て同然……何せ、互いに乗っている機体は……


「俺の、不知火だからな」


いや、俺と ゆーこさんの結晶……なんだケド、そう考えると恥ずかしくなってしまう。

……って、ンな事を考えているうちに まりもちゃんのS型がどんどん先に進んで行っている。

ウ●キ少尉の"あの台詞"を言った辺り、何だか凄いヤる気になってるみたいだな~。

そりゃ反応炉が破壊できる初めてのシミュレーターなんだから、志を考えると当然なのかもね。

筐体に入る前に見学者の娘達を見てみたら妙に期待してた様だし、皆の期待に応えてやるとするか!!


「よーし、反応速度・出力共にデータ上では最適だッ」

『!?』


――――ぶっちゃけ良く判らないけど、肖ったパイロットに成り切ったつもりで言っちゃったんだ☆


「(へぇ……初っ端に動いて無いと思ったら、やっぱり機体の目利きをしてたのね)」

「始まったようですね、副司令」

「伊隅? そう言えば、あんたは二人の2機連携を見るのは初めてだっけ?」

「いえ……何度か訓練に付き合って頂けているので、その時に拝見しました」

「ふ~ん」

「それに他の者達にもログは見せておりますが、新兵器での攻略は初見になります」

「そりゃそうよね」

「しかし……本当に可能なのでしょうか? 反応炉の破壊は」

「あら、あたしが設計した武器の性能に偽りが有るとでも言いたいワケ?」

「!? そ、そう言う訳では御座いませんが――――」

「まぁ……確かに今までのBETAに対する戦果を考えると話が飛躍し過ぎだし、
 そ~考えるのも無理もないかもね。 ……でも、あんたは目の前で見て来たんでしょ?
 新OSを積んだ不知火S型が、今までの常識を次々と覆してゆくのを」

「……そうですね。 光線級のレーザーを空中で避け、3機の武御雷を相手に完勝し、
 シミュレーターとは言え、ヴォールク・データにおいて2機連携で反応炉まで辿り着いた」

「だったら戦術機が反応炉を破壊する武器を持ってたってオカしく無いと思わない?」

「た、確かに」

「とにかく、あんた達が歴史を変えるのよ? 今のは その一環なんだから、よく見ておきなさい」

「――――はっ」

『……っ……』

「あらあら~、それにしても榊達なんて食い入るように見ちゃってるわねぇ」

「それは元A分隊も同様のようですが――――」

「(ねぇねぇ遙ッ、バズーカだってバズーカ~!)」

「(水月ってああいう武器、好きそうだよね)」

「(そりゃそうよ~、何せ一度に沢山のBETAを倒せるのよ!? でも……う~ん)」

「(あっ……そうだね、使い分けが難しそうよね)」

「(使うとすれば私のポジションを誰かに譲る事に事になりそうねぇ……どうしようかな~)」

「(えっ? な、悩むトコ其処なんだ……)」

「……全く速瀬ときたら、何時もこれだ」

「まぁ、気に入って貰うに越した事は無いんだけどね~」




……




…………




ハイヴ内を問題無く進んでゆく俺と まりもちゃんの不知火S型。

バズーカを除く俺の主武装が支援突撃砲のみだろうが、多く使っているのはサブ射撃の方。

よって弾倉は互いに半分も減らないうちに、最後のフロアへとやって来れていた。


「う~ん、少し数が多いかな……」

『そうですね』

「すんません、支援突撃砲には余り慣れてなくて」

『そんな事は有りません、私こそ少佐が先に進むよりは遥かにペースが遅かったですから』

「はははっ、お互い様って事ですね」

『では少佐……どう切り抜けましょう?』

「そりゃ~"コイツ"を使いますよ」

『えっ』

「バズーカには、こう言う使い方も有るんですッ!!」

『あっ、少佐!?』


≪ゴォーーッ!!≫


"こう言う状況"だからこそ使うべきなんだけど、言いたいから叫んじゃったんだ☆

俺は前衛の まりもちゃんの機体を飛び越えると同時に、背のバズーカを組み立てるよう入力。

そして宙に浮いた状態で支援突撃砲とバズーカを入れ替えると、ソレを両手に構えて射撃する!!


≪――――ボヒュッ!!≫


「対ショック!!」

『り、了解ッ!!』


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


十分な飛距離で着弾した弾丸は、多くのBETAを飲み込んで激しい爆音を響かせた。

その際、俺は直ぐ様 逆噴射で まりもちゃんのS型の背後に降り立ち、機体を屈ませながら後方を警戒。

一方 強化改造された盾を持っている彼女の機体は、俺を爆風から庇う様に踏ん張ってやり過ごす。

……実を言うと俺は何度か同じ射撃を、シミュレーターで行っているので、
この距離なら大した反動が来ない事は判っていたんだけど、お手本の最中と言う事から、
まりもちゃんの所まで下がって、ワザワザ盾役を任せてみたのだ。

バズーカの設計のついでに盾まで強化したのは、反応炉を破壊した時や今みたいな状況で、
残骸等が飛んでくる事から味方守ってあげる為なんだし、実践しとかないとね~。(14話参照)


「思ったより平気でしたね」

『えぇ、必要無かったのかも知れません』

「とにかく道は開けましたよ、同じ要領で進んじゃいましょう」

『了解!』


――――迫り来るBETAの壁が崩れた事で、安易に俺達は匍匐飛行によって反応炉に到達できた。


「さっさと壊しますよ!? でも距離が有り過ぎると一発じゃ無理かもしれないんで……」

『はいっ、任せてください!』


標的(反応炉)はその場から動かないし、もはや周囲にBETAは少ない。

つまり極めて安全に射撃が可能であり、俺のS型は まりもちゃんの機体を後方に地面でバズーカを構えた。

ちなみに両手にバズーカを持ちながら移動するとマルチ・ランチャーが撃てないので、再度持ち替えている。


「これで……ダウンだッ!」


≪――――バヒュッ!!≫


『対ショック入ります!!』


≪ズガアアアアァァァァンッ!!!!≫


念の為しっかりロックオンして射撃すると、俺は直ぐ様 数十メートル後退する。

すると横から まりもちゃんのS型が割り込み、再び互いに衝撃に備えるべく身構える。

ソレと同時に盛大に吹き飛ぶ反応炉と周囲のBETA。 その様子を遠目から見て俺はボヤいた。


「またイチローか」

『はい?』


――――い、いかんいかんッ! 今はパイロットを肖ってるんだ、関係ないネタは言うべきじゃ無かった。


「よ、良し! 早速今の戦闘データを、S型にフィードバックだっ!」

『!?』

「まさに研究の成果だな、状況予測がダイレクトォ!!」

『……ふふふっ、少佐ったら。(まるで子供みたいにハシャいで……けど、少佐は本当に……)』

『終わったみたいね、ご苦労様』

「何とかなりましたよ」

『少佐、お疲れ様でした』

『それじゃ~さっさと出て来なさい』


反応炉を破壊した事実が生まれた時点で、ヴォールク・データは完全に終了する。

最初は反応炉にさえ辿り着けないで終わってたけど、遂に此処まで進む事ができたんだ。

これは素直に嬉しいな……よって若干興奮しながらも、俺は筐体から出てきたんだが――――


「少佐ッ、凄いです!」

「か、感動しました~っ!」

「うぉあっ!?」


先にモニターの前迄 軽い足取りで進んで行っている まりもちゃんの尻……いや、
背を追っていると、入れ違いで見学していたハズの涼宮(妹)と築地が近付いて来た!

何やら瞳を輝かせながら……って、近付き過ぎだろうが! 抱き付いて来んばかりの勢いではないかッ。

しかもエロスーツ姿だし、直視はマズいッ! このままだと興奮してたのも有っておっきしちゃうお( ^ω^)

よって視線を逸らすんだけど、二人の後ろには彼女達を追って来たと思われる柏木の姿が有った。

結果 必然的に目が合ってしまったので再び視線を逸らすと、自然と彼女のおっぱいを見てしまい、
別の意味での興奮度が更に上昇っ! 見ちゃダメなんだろうけど、悲しい男の性なのよね……


「今や少佐は、私達の目標です!」

「えいっ!」


≪ぴとっ≫


「――――!?」

「なっ!? た、たたた多恵っ! なに少佐に抱き付いてるのよ!?」

「えへへ~」

「失礼よッ? 離れないと――――」

「別に良いんじゃないの~? 少佐は嫌ってワケじゃ無さそうだし」

「少佐ぁ……だ、ダメじゃ無いですよね~?」

「んっ? いや……別に構わないさ」

「……だってさ。 ほら、茜も真似してみたら?」

「は、晴子ッ!?」


そんな事を考えているうちに忍び寄って来た築地が、何と俺の左腕に右腕を絡めて来た!

見た目よりも大胆な娘なんだなぁ……それはそうと案の定、柔らかくて大きなモノが腕に当たっている。

本来の感触じゃ~無いんだろうけど、軽く触れればエロスーツの上からでも それなりにリアルなんだね。

その奇襲にカラダを強張らせてしまった俺に対する築地の表情も反則だ、抱き締めてキスしてぇ~。

しかも、今にもムスコが立ちそうだ。 これで変態少佐の誕生か……最悪ゲームオーバーじゃね?

そう洒落にならない事を思って絶望していると、顔を真っ赤にして何故かテンションが上がっている涼宮(妹)。

……って事は……や、やっぱり涼宮(妹)と築地はレズなのかッ!? 築地の今の行動に妬いてたんだろうしさ。

それはそれでアリなのはともかく、涼宮(妹)の御陰で何とか俺は息子の暴走を抑える事が出来た。


「……ッ……」

「涼宮?」


≪――――ぎゅっ≫


すると口を"~~"の様に結んでいた涼宮(妹)が、静かに俺の右手首を左手で握って来た。

正直 意味不明だけど、築地に対抗するつもりだったんだろうか?(一方 柏木は苦笑している)

……しかし涼宮(妹)は真面目だから"この程度"に留まった……ってトコかなぁ?

まぁ どれにしろ男として悪い気はしないし、ゆーこさん達と再び御対面といきますか~。

涼宮(妹)と築地がくっ付いている状況はヤバい気もするけど、これも良い機会かもしれない。

例え女の子に抱き付かれて様が、俺が動揺しない立派な少佐である事を目に見せてやるのさッ!


「やっと戻って来たの? 遅いわよ~しろが……ね"?」

「(つ、築地!? 何であの娘がァ――――)」

「(あっ、茜まで~……)」


よって涼宮(妹)と築地をそのまま、ゆーこさん達の所へ戻って来ると、全員が俺達を見て驚愕した!

B分隊の方へと戻っていた まりもちゃんと榊達も同様で、やっぱりマズかったのかな~?

そう今になって後悔していると、いち早く今の状況から立ち直った神村と葛城が、
以前の速瀬と似た様な不適な笑みを浮かべたと思うと、こっちに小走りで近付いて来て――――


「茜ェ・築地ィ~ッ、先輩を差し置いてズルいぞぉ~?」

「アタシも少佐に抱き付く~っ!」

「こ、こらッ! 貴様等何を――――」

「ぅえっ!? ち、ちょっと待っ……」


≪――――むぎゅっ≫


う、うおおおおぉぉぉぉっ!? 何やってるんですかッ、御嬢さん達!!

伊隅の言葉を無視して、神村が胸に・葛城が俺の首に両腕を絡めて来たんですけど!?

しかも神村はともかく……か、葛城のデカいおっぱいが当たっているッ。

助走をつけられた事からフニャリとした弾力も伝わり、左腕には相変わらず築地の胸の感触。

それに涼宮(妹)もドサクサに紛れて右腕に絡んで来てるし……こ、これはピンチじゃないかっ!

や、ヤバい……興奮を抑えるのに必死で、遂に頭がクラクラして来たぞ~?

……嗚呼ッ、オルタ世界の女の子達のスキンシップ……恐るべし精神攻撃だぜ……ガクッ。


「うぅっ」

「え!?」


≪――――どたっ≫


ンな訳で涼宮(妹)の力に押されるようにして、彼女の間の抜けた声と同時に俺は左側にブっ倒れてしまう。

それダケなら まだ良かったんだけど、築地・神村・葛城を一緒に巻き込んでのダウンだ。

……つまり俺は4人のおっぱいに挟まれる感じで倒れてしまったワケで、
その幸せな感触を味わうのと同時に、既に朦朧としていた意識が飛んでゆくのを感じていた。


「あいたたた~っ、酷いよ茜ちゃ~ん」

「そ、そんな……私は別に強くは……」

「……ッ……」(気絶)

「あれっ、少佐ァ~?」

「ヤバッ。 亜衣、後は宜しく~!」

「白銀、ちょっと白銀ッ?」

「…………」(気絶中)


≪――――ダッ!!≫


「白銀少佐! ど、どうしたんですかっ!?」

「大した瞬発力ね まりも、それより白銀のバイタル・データのログの確認を急いで」

「わ、判りました!」

「そ……そんなッ、私の所為で……」

「多分、アンタの所為じゃないわよ?」

「えっ?」

「しかし副司令、今の一環には繋がったのでしょう?」

「まぁ そうとも言えるわね。 伊隅、一応 医療班への連絡をスタンバって置きなさい」

「――――はっ!」

「……涼宮・妹。 白銀少佐を敬愛するのは良いが、少し自重した方が良いぞ」

「!?」

「相変わらず意地悪な事を言いますね、美冴さん」

「これは本心だ。 もはや白銀少佐は、我々には欠かせない方なのだからな」

「す、すみませんでした……」




……




…………




「ふ~ん……思ったより大した事じゃあ無かったみたいね」

「良かったです」

「ど、どうだったんですか!? 神宮司軍曹ッ」

「落ち着いて下さい、涼宮少尉。 恐らくは……」

「"過労"ってトコかしら?」←不正解

「――――!?」

「だから、涼宮ダケの所為じゃないわ。 白銀本人の健康管理不足でもあるし、
 何度もコイツの指導を受けた、まりもや伊隅にも責任が有るって事になるわ。
 それにこの あたしにも……ね。 ……そうよね~、まりも?」

「は、はい……私は白銀少佐があそこまで動けるのが普通だと思っていました。
 常識的に考えてみれば、普通の衛士が訓練する度合いを大きく超えていたと言うのに……」

「ソレでも"今の程度"で済んでる事 自体 異常なんだけどね~」

「そうですね。 ……では、私は訓練兵達の指導に戻ろうと思います」

「わッ、私は白銀少佐の様子を……」

「涼宮。 それよりも今は伊隅達と同じ様に、リプレイを見ていなさい。
 代わりアンタの姉の方を呼んで来てくれるかしら?」

「!? は……はい」

「あたしの代わりにはピアティフを呼んどいてあげるから、今のうちに勉強しときなさい」

「り、了解!」

「……(これで涼宮姉妹は、白銀の虜ってトコロかしらねぇ~?)」

「お姉ちゃ……いえ、涼宮中尉!」

「えっ?」

「あのっ、副司令が御呼びでした」

「な、なんだろ~?」


≪ともかく……なかなか教え甲斐が有ったよ、俺も負けてられないな≫


「(白銀少佐、それはこちらの台詞です。 私も頑張りますから! ……でも)」


≪常識的に考えてみれば、普通の衛士が訓練する度合いを大きく超えていたと言うのに……≫


「(過労になる程迄に……何が少佐を"そうさせる"んですかッ? 私は……それが知りたいです)」




……




…………




「……っ……」


意識が若干 回復する。 ……俺はどれ位 気を失っていたんだろうか?

何やら仰向けに寝かされていた様で、後頭部には柔らかい感触がしている。

寝ているのはベッドじゃ無いな……周囲の音からしてシミュレータールームの長椅子か?

だったら後頭部の感触は何なんだッ? そう思いながら瞼を開いてみると……


「あっ。め、目が覚めたんですね」

「えッ? 涼宮中尉!?」

「き……気分は如何ですか?」

「お、御陰様で良い感じッス」

「そうですか……良かった」


えぇ、違う意味で いいですともッ! 何せ涼宮(姉)が膝枕をしてくれてるんですから!

でも俺なんかの膝枕は嫌なのか、彼女は困った顔をしながら俺を気遣ってくれる。

これって絶対ゆーこさんの差し金だよな……だけど、今回ばかりは嬉しい配慮だったぜ。

……とは言え、涼宮(姉)が嫌であれば何時までも感触を味わってるワケにはいかないよね。


「有難う御座いました、邪魔であれば離れますけど?」

「だッ、大丈夫です! みんなの訓練が終わるまでは、安静にして置いて下さい」

「そ……そうッスか。だったらお言葉に甘えさえて貰います」


しかァーし! 涼宮(姉)が良いと言うなら太股の感触を存分に堪能しようではないかっ。


≪――――ごろりっ≫


「……あっ」


≪――――ぐりぐり≫


「んっ……ぅ……」


俺は適当に寝返りをうったり、顔を涼宮(姉)側の方に向けて股間に"もふもふ"したりして、
彼女の感触を堪能しまくる。 ……時より彼女が漏らす声がたまりませんな~。

そんな中 基本的に目を瞑っての行為だったけど、甘い声が気になって瞼を開いて見ると……

何故か瞳をウルウルとさせながら訓練の様子(モニター)を眺めている涼宮(姉)。

な……泣きたくなる程 嫌だったんですかっ!? しまった、調子に乗りすぎてしまった様だッ。

よって俺は素直に寝て置く事にし、何時の間にか涼宮(姉)の代わりにオペっていると思われる、
イリーナちゃんの尻を眺めながら時を過ごす事にしたのでした。


「(あぅ~……恥ずかしいけど、何だか幸せだよ~)」【ヘブン状態!!】


≪えっと……ど、どうやら少佐は"過労"だったみたいです≫


「(それに、体が疼いちゃうなんて……少佐は疲れてるダケなのに……)」【ヘブン状態!!】




……




…………




……数時間後。 しっかりと休めた俺は、夕食後の訓練を終わらせ通路を歩いていた。

今回の参加者は まりもちゃん・伊隅・涼宮姉妹。 涼宮(妹)が加わったのは正直 意外だったなあ~。

ちなみに今回俺は軍服姿でアドバイスをしていたダケだ。 強化服に着替え様としたら止められたのよね。

それはそうと……今日は何だかんだで、更にオカズの候補が増えてしまったZE。

特に有力だったのが涼宮(姉)・葛城・築地あたり。 今となっちゃ気絶しちまったのも仕方無い気がする。


「――――ちょっとッ」

「!? ……速瀬」


そんな事を思ってスタスタと歩いていると、俺の行く手を速瀬が塞いで来たッ!


「え……え~っと……」

「????」

「……うッ、うぅ……」


こ、こりゃ一難来たか? そう思って心の中で身構えながら足を止めたんだけど、
十秒ほど経っても速瀬はモゴモゴとするダケで、ど~してか何も言って来ない。

う~ん……そう言えば"あの一件"から一度もシミュレーターで相手をしてやって無かったんだよね。

最近は指導やらテストやらで忙しかったから忘れてたなぁ……正直 悪い事をしたかもしれない。

……だけど俺は上官なんだし、速瀬は今みたいに正面から"勝負しろ"と言い難いんだろうな。

だったら速瀬を宥めるしかない。 俺は真面目な表情を維持しながら、ゆっくりと彼女に近付いた。


「……悪かったよ」

「へっ?」

「以前は闘(や)ってやると言いながら、なかなか相手ができなくってね」

「!?!?」

「でも……生憎 今日も無理なんだ。 ……許して欲しい」

「んなっ、ななななな……」

「????」


――――今日は無理しちゃうと、後で まりもちゃん達に怒られちゃうからね。


≪ね、ねぇ……茜。 アイツは……白銀少佐は平気だったの?≫


≪えっと……ど、どうやら少佐は"過労"だったみたいです≫


「……(考えてみれば……皆の為にも、コイツに負担を掛けるワケにはいかないのよね……)」

「速瀬?」

「えっ? い、いや……気にして無いわよ。 アンタが凄く忙しいのは……誰もが解ってる事だし」

「そう言ってくれると助かるよ」

「だ……だからッ!」

「!?」


"だから"と言う台詞に俺が首を傾げると同時に、速瀬が急接近して来て――――


≪――――ちゅっ≫


ふおおおおォォぉぉ……ッ!!(EXたま調) ……く、唇にキスされちゃいましたよっ!?

ちょ、おまっ……何でチュウされたんですか!? これって"今の状況"とどう言う関係が有るんだよッ!

白銀のファースト・キッスは鑑の為に極力取って置くつもりだったのに、速瀬に奪われてしまうとは……

そんな彼女は俺の唇から顔を離すと、真っ赤になりながらも軍服の袖で唇をゴシゴシと拭う。

……って、拭う位なら最初からキスなんてすんなよッ! 今ので全部 台無しですよ!?


「今回は……こ、コレで勘弁してあげる」

「すまない」

「!? な、何で謝んのよッ! そんじゃ~お休み!!」

「……ッ……」


う~む……良く判らないけど、シミュレーター対戦の代わりがキスって済んだって事なのかな?

だったら辻褄が合うし、それで済むなら幾らでもチュッチュしてやろうではないかッ。(ヤケクソ)

正直 速瀬は怖いがソレを除けば普通に可愛いから、鑑には悪いけど機会が有ったらキスOKだぜ。

余談だが反射的に謝ってしまったのは、例え速瀬にキス☆されようが、
既に俺の今夜のオカズは"あの娘"に決まっていたので、申し訳なく思ってしまったからだ。

……そんなうちに速瀬は全速力で走り去ってゆき、アッと言う間に見えなくなったので、
俺は舌でも入れて置けば良かったな~と、邪な事を考えながら自室を目指すのだった。




……




…………




≪し、白銀少佐っ……もっと"もふもふ"してくださ~い≫


「ハァハァ……遥タン、君がナンバーワンだ……ウッ!」


≪涼宮中尉ッ、君は膝枕なんぞで感じていたな!? お仕置きしてやるぞ!!≫


「……少佐ぁ……こ、こんな事ダメなのにっ。でも……止まらないよぉ~」


――――白銀と涼宮(姉)は我慢できなくて、つい お互いに犯っちゃったんだ☆




●戯言●
メインヒロインの初チョメチョメは涼宮(姉)となりました。膝枕が何故かクリティカル。
次回はTEのあの人が無理矢理登場します、ちなみに日本人以外のTEキャラは出ません。
そろそろ大きなイベントまで10日を切りました。コールサインも決めたので明らかになります。


■これはひどいオルタネイティヴ(用語ver2)■


●強襲制圧
バズーカ仕様専用のポジション(その1)。武装はフォールディング・バズーカに加えて、
87式突撃砲×2(36ミリ/120ミリ・予備弾倉8/4)そして65式近接戦闘短刀×2のみ。
レーザー照射を回避する等 非常に高いスキルが求められる為、現在 白銀専用ポジションとも言える。


●制圧後衛
バズーカ仕様専用のポジション(その2)。ハイヴ攻略専用であり、制圧支援が必然的にシフトする。
武装は打撃支援に酷似しており、武装はお馴染みのフォールディング・バズーカに加えて、
87式支援突撃砲×1(36ミリ・予備弾倉6)そして65式近接戦闘短刀×2のみ。
現段階でこのポジションが決定しているのは、風間・高原・鎧衣のみ。次点で神宮司軍曹かな?


●92式多目的追加装甲・改
その名の通りディフォルトの戦術機用の盾を香月副司令がハイヴ攻略専用に改造したモノ。
コストが若干上がるが、強度が飛躍的に上がっている。……とは言え、レーザー照射には耐えられない。
BETAの直接攻撃には多少は有効だが、バズーカの爆風から味方を守る為の存在と言える。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ22(+第207衛士訓練部隊)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/10/02 22:28
これはひどいオルタネイティヴ22




2001年11月19日 午前


PXで朝食を済ませた俺は自室に戻り横になると、数時間 昼寝をして過ごしていた。

今現在は目が覚めたので、両腕を枕にして天井を眺めながら考え事をしている。

……ぶっちゃけ、もはや珠瀬事務次官がやって来る日まで俺の"やる事"は無いんだよね。

新OS(β版)・不知火S型による実戦データ・模擬戦データに加えて、
B分隊やA-01が利用しているサブ射撃システム&バズーカのシミュレーターテストも終了。

自分で言うのも何だけど"結果"は有る程度 出したから、何日かノンビリするのも良いかなと思った。

とは言っても……娯楽が皆無なオルタの世界で、現代社会の俺が出来る事なんて寝る事ダケだ。


「それに、昨日は涼宮(姉)で散々 抜いたしなぁ……」


日中での睡眠は確かに"ノンビリ"する事に繋がるんだけど、折角のオルタ世界なんだしね。

これ以上 正史を変えたくなかったら大人しくしてるのが一番なんだけど、
全てが終わったら故郷に帰れるかもしれないし、二度と"こっち"には戻って来れないだろうから、
海外旅行の最中なのに一日中寝て過ごすのを惜しむ形で、俺は上半身を起こした。

……んでもって俺が死ぬのは勿論の事、傲慢だけど女の子達が一人でも死ぬのも嫌だ。

後者は流石に避けて通れない道かもしれないが、ああして置けば良かったと言う後悔はしたくない。

だから、やっぱり正史に影響しない程度で悪足掻きをしよう……そう考えて俺はベッドから離れた。




……




…………




2001年11月19日 午後


一旦 脱いだ軍服に着替え身形を整え自室を出て、遅れた昼食を済ませると、
自然な流れでシミュレータールームに行き着いてしまい、先ずはB分隊の様子を眺める。

どうやら吹雪F型5機で12機のAI中隊の相手をする様で、たった今それがスタートされた。

同時に軍服姿の まりもちゃんが何やら叫び始め、B分隊は指示に従い戦術機を展開させる。


「御剣・彩峰ッ、障害物とシールドを盾に列を合わせて前進しろ!
 敵が見えたらバルカンでの牽制を怠るなッ! 余裕が有れば射撃で撃破するんだ!」

『20702了解! 敵機はまだ確認できていない』

『!? エンゲージ・オフェンシブ、1機倒したよ』


御剣を左・彩峰を右のツートップで互いにシールドを左手に、瓦礫を壁にして進んでゆく中、
真っ先に1機の不知火(旧OS仕様・サブ射無し)と接触した彩峰が頭部バルカン砲を放ち、
右手の36ミリで回避行動を取った敵機の硬直を狙って瞬時に撃破する。


『2機出て来た!? 20701、バンディット イン レンジ・フォックス2ッ!
 くっ……御免なさい、片方は外したわ! 彩峰 残りは御願い、私は奥を牽制するから!』

『判った。 ――――遅いッ』


1機 居たと言う事は、必ず近くに同小隊の不知火が潜んで居るという事になる。

よって姿を現した2機の不知火に中距離から榊が120ミリを放ち、片方に直撃させた。

両方には命中しなかった様だが、既に彩峰は長刀に持ち替えて頭部バルカン砲で怯ませつつ斬り掛かっており、
コックピットを両断後 直ぐ様キャンセルを入れて後方水平噴射し、再び突撃砲を右手に盾を構え前方を警戒する。

……敵は4×3小隊編成なので、何処で残り1機の不知火が狙っているか判らないからだ。


『鎧衣、こちらに3機潜んでいたッ! 手前は片付ける故そなたは奥の2機を頼む!!』

『20705了解~!』

『はああぁぁ……っ!!』

『インレンジ、フォックス3ッ!』


一方 別小隊を確認し、頭部バルカン砲と36ミリで後衛の2機を牽制しつつ、
自然と突出して来た前衛の不知火に、隙を見て斬り掛かる御剣の吹雪F型。

そして遅れてやって来た2機が御剣の機体に銃口を向けた直後、
瓦礫の間から支援突撃砲を覗かせていた鎧衣の射撃を中距離から食らい互いに大破した。

良い狙撃ポイントを瞬時に発見する判断力……白銀の操縦技術ダケが自慢の俺にとっては、
鎧衣の戦い方はマジで勉強になる。 勿論、他の娘達も俺に無い物を持ってるけどね。

けどフォールディング・バズーカを背負っている状況や、今みたいに戦術機が相手じゃ無いと、
物量が取り得のBETAに対して、鎧衣の判断力は極めて有効じゃ無いのが惜しい限り。


『20704、スプラッシュ! これで2機やっつけました~っ』

「(何と言うハンターシフト……!!)」


んでもって長距離からのジャンプ・スナイプで、御剣&鎧衣・彩峰&榊が互いに相手をしていた、
各フライト(小隊)の4機目の不知火のボディを貫いた珠瀬。 これで2小隊が全滅した事になる。

さ、流石だぜ……そんなB分隊の訓練の様子(モニター)を、俺は口をアングリと開けながら眺めていた。

初の実戦はクーデターにおける対人戦だから、出来る限り戦術機を相手させる様に、
まりもちゃんに指示したのは俺なんだけど……彼女達の進歩の良さに驚きだ。(顔には出さない)

11月10日に初めてシミュレーターを始めたとは思えませんな~、流石ゲームの世界の超人達。

まぁ 正史でも戦術機適性検査からクーデター迄のシミュレーター訓練の期間は2週間程度だし、
"このオルタ世界"だとゲームとは違って訓練三昧の日々だろうから、上達が早いのも頷けるケドね。

だけどソレでさえBETAの物量は油断したらアッサリと死ねるレベルだろうから、頑張れB分隊。

……そう心の中で応援していると、何となく気配を察したと思われる まりもちゃんが俺に気付いた。

訓練の真っ最中なので流石に声を掛けては来なかったが、彼女は すぅっと息を吸い込むと……


「良し、残り4機だッ! 殲滅しろ!!」

『了解!!』

「今は少佐も見ているぞ!? 良い所を見せてやれッ!」

『……ッ!?』


俺の存在をバラしてしまう まりもちゃん。 ……別にプレッシャーを与えなくっても良いのに~。

けどB分隊は少佐様が来るとヤル気になる娘ばかりの様なので、動きが見るからに冴え出した。

う~ん、そろそろマジで個別指導をしても良いかもね。 でも何時のタイミングにするべきかな……


「(し、少佐……過労で倒れた筈なのに、どうして?)」

「(それ程まで我々の為に……ッ!)」

「(見てて、少佐)」

「(わ……私ちゃんとジャンプ・スナイプ、練習してますよ~?」

「(ボクも地形を活かすダケじゃないって所を少佐に見せなくっちゃね)」


そんなワケで、B分隊とA-01の間を行ったり来たりするダケの時間を過ごし始める俺。

個人技においての直接的なアドバイスは ともかくとして、
"複数の人間"に同時に教える事に関しては まりもちゃんと伊隅の方が慣れてるだろうしね。

反面俺の教官としてのスキルはド素人に近いから、自分が二人の指導の様子を見て勉強する事も兼ねている。

そう考えると殆ど空気だな俺って……でも、A-01も妙に覇気が出たみたいだし良しとしよう。

……ちなみに伊隅達はヴォールク・データの真っ最中で、そろそろ中層に近付くと言ったトコロだ。

今は強襲前衛の一条&神村のポジションを突撃前衛に変えて盾を持たせ、
制圧支援の風間と高原はハイヴ攻略用の"制圧後衛"仕様に変更し、バズーカを背負っている。


『い、いいいい伊隅大尉~ッ』

「何だ涼宮。 血相を変えて」

『白銀少佐が御覧になっていまひゅ!』

「いまひゅ?」

『は、遙~なに噛んでんのよッ?』

『そう言う速瀬中尉こそ動揺されている様ですが?』

『宗像ッ、アンタこそ!』

『むぅっ……計られましたか?』

『ああああ茜ちゃ~んっ、白銀少佐が見とるっとばよ~?』

『お、落ち着きなさいよ多恵ッ』

『!? そ、そんな事より大隊規模のBETA接近中です! 数・距離共に約1000ッ』

「来たか。 ――――高原!」

『はい、ヴァルキリー12・フォックス1ッ!』

「衝撃 来るぞ!? ヴァルキリー2・3・5・6、対ショック態勢に入れッ!」

『了解!!』×4


結局 今のシミュレーションで反応炉まで辿り着いたのは、夜の訓練を行っていた伊隅+涼宮(妹)と、
技量が抜きん出ている速瀬……そして宗像が盾になって守った風間の4機のみ。

しかし、初めて反応炉まで到達できたダケでなく風間のバズーカによって破壊できた事から、
彼女達は非常に嬉しそうであり、涼宮(姉)なんて飛び上がって喜んでいた。 足の怪我とか大丈夫?

まぁ これなら全機無事でクリアも夢じゃない。 俺は希望を感じながら、空気との一体化を続けていた。




……




…………




≪!? し、白銀さん……イキナリ後ろから入れるなんて……なッ、何をするんですか?≫

≪ふっふっふっ。 このまま指導と戦域管制を続けるんだ、神宮司軍曹≫


――――今日は まりもちゃんの尻で最もムラムラした事から、俺の今夜のオカズは決定的となった。


≪あっ、んあぁっ……く、訓練中でッ……私 教官なのに、こんな事っ……≫

≪ほらほら、指示はどうした~? それに、そんな顔だと皆にバレてしまうぞぉ?≫


「(し……白銀さん、御免なさい~ッ……でも、せめて頭の中では……)」


――――白銀と まりもちゃんは同じシチュエーションを妄想して、つい犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月20日 午前


……最初は只のコミュニケーションのつもりだったんだケドね。

霞に起こされてからPXへ向かう途中、月詠さんと斯衛トリオを見掛けたので食事に誘った。

それを快くOKしてくれた迄は良かったんだけど、食事中に俺が何となく振ってみた話題。

"後で一緒に訓練しませんか?"という言葉に、斯衛トリオ(特に神代)が激しく食い付いて来たのだ!

其処で月詠さんに助け舟を求めてみると、彼女も付き合って欲しかった様子で"こうなって"しまう。


「白銀少佐、宜しく御願いします」

「御願いしますッ!」×3

「は、はぁ……」


エロスーツ姿の月詠さん+斯衛トリオが、俺の指導を受けるべく凛々しく並んでらっしゃる。

そのうち月詠さんのボディラインは凄まじく、強化装備のカラーが赤&黒では無かったり、
築地や葛城で耐性を付けていなかったりしたら、間違いなくおっきしちゃってたんだお( ^ω^)

それに斯衛トリオも、10代半ばにしては出てるトコは しっかり出てるよな……特に戎が凄い。

あと3年も経てば相当エロくなるだろう、神代と巴も成長中だろうし将来が楽しみだZE。

いや……少女である今の姿も素敵だが、彼女達は髪型で損している。 特に巴、どうなってんだソレ?


「イリーナ中尉、毎度すんませんけど御願いします」

「わ、分かりました」

「それじゃあ、何から始めようかな……う~ん」

『…………』


戦域管制や設定等については、今回もイリーナちゃんに任せる事にした。

食事中に何度か目が合ったので斯衛の技術に興味が有ったんだろう、こりゃ丁度 良かったね。

……さておき、聞いた話によると昨日 月詠さん達は、新OS仕様のシミュレーターの利用の権限と、
俺&まりもちゃんのログを、イリーナちゃんから受け取っていたらしく、
シミュレータールームの隅でひたすら新しい機動概念における訓練していたらしい。

俺はB分隊とA-01の間を往復してたダケだったから、月詠さん達には気付かなかったのだ。

それはそうと、何から教えようかな……この4人って設定ではトンでもないレベルの衛士だった筈。

A-01の技量を上回っている可能性も高い……となれば、昨日で多くを吸収したんだろうし、
俺が指導する必要って有るのかな~? 彼女達ならサブ射撃なんて教えなくても身に付けそうだし。

だとすれば"アレ"しか無いよね。 俺は考える素振りの後、指示を待つ月詠さん達に向き直る。


「良し決定。 さっそく始めますんで、皆 筐体に入ってください」

『――――はっ』


速い足取りで歩いてゆく4人に続き、強化装備姿の俺も遅れて筐体に入る。

すると瞬時に出て来る月詠さん達とイリーナちゃんの顔。 ヤる気がヒシヒシと伝わってくるぜ。

その気持ちに押されながら、俺は苦笑いで既に考えた今回の予定を口にする。


「これからヴォールク・データを俺達5人で攻略します」

『――――!?』

「イリーナ中尉、設定の入力を」

『はい。 月詠中尉達のポジションは昨日ログの仕様を反映させます』

「俺は制圧後衛で」

『了解』


まぁ 月詠さん達くらいのレベルで新OSを使うなら、ヴォールク・データぐらいが丁度良いよね。

……と言うか、他のシミュレーションとヴォールク・データの難易度の差が桁違いなダケだ。

だから深い意味も無く選び、全員生存でクリアを目指すべく今日の訓練を頑張る事にした。

そんな俺の言葉に月詠さん達は驚いた様子だけど、イリーナちゃんにとっては"何時もの事"なので、
冷静にポジションの設定をしてくれる。 バズーカについての云々も一昨日で把握済みらしい。


『(成る程、白銀少佐。 我々を試すおつもりか)』

『(ハイヴ攻略シミュレーションは自信無いけど、頑張らないとな……)』

『(確かに大まかな技量を測るには、最も適した訓練ね)』

『(な、何だか実戦の時よりも緊張しますわ~ッ)』


ポジションにおいて俺の仕様は言うまでも無く、月詠さんと神代は突撃前衛。

巴と戎は強襲掃討とハッキリと役割が分かれていて、非常に分かり易い。

正直A-01みたいに、12人分のコールナンバーとポジションを覚え的確な指示を出すのは、
今の俺じゃ無理だろうから これも良い機会だ。 俺に必要なのは技術じゃなくて統率力だからね。

ところで"統率"と言えば陣形が重要となる。 陣形とくれば、俺が真っ先に考えてしまうのは……


「イリーナ中尉、網膜投影を切り替えちゃってください」

「分かりました。 では状況――――」

「でもシミュレーション自体は陣形とかを練ってから始めますんで、
 ヴォールク・データ開始直後は指示を出すまでハイヴ内の時間を止めて下さい」

「は、はい……では変更します」


≪――――ぱっ≫


月詠さん達が頭上にハテナマークを浮かべる中、視界が見慣れたハイヴの入り口に切り替わる。

俺の不知火S型の正面には月詠機と神代機と思われる2機不知火S型が立っており、
左右には巴・戎のS型がそれぞれ仁王立ちしている。 ……えっ、何で武御雷じゃ無いのかって?

事情として帝国軍の傑作である武御雷のマスター・データは、
国連軍である横浜基地には無く、例え有ったとしても俺との訓練では使え無いらしいのだ。

まぁ それよりも、彼女達が新OSの機動を勉強するに当たっての資料が不知火S型のログだけだったし、
他にも"サブ射撃"の概念に感心していたり、新OS仕様の武御雷の機動が、
今の月詠さん達では機敏過ぎて掴めてなかったりと、色々と理由が有って今に至っている。

さて……ンな事よりも陣形だったな、俺はキリッとした表情に改めると月詠さん達に言う。


「じゃ~陣形です。 月詠中尉は俺の正面に」

『はっ(少佐の雰囲気が変わった?)』

「巴と戎はそのまま俺の左右に」

『はい』×2

「神代は俺の背後に」

『了解ッ』


――――これにより俺を中心に十字の陣形が完成したが、月詠さんは困惑の表情だ。


『あの、白銀少佐。 これには一体 何の意味が?』

「良いか皆。 我々は"インペリアルクロス"という陣形で戦う」

『インペリアルクロスッ?』×4

「シールドを装備した月詠中尉が前衛、両脇を巴と戎が固める。
 神代は俺の後ろに立つ。 俺のポジションが反応炉を壊せる。 注意して戦え」

『……ッ……』

「ま、まぁ……俺の位置の衛士が御剣とかだと思って戦えば良いです。
 ペースは月詠中尉に合わせますんで、今のところはバズーカの爆風にだけ気をつけて下さい。
 気になった点が有ったら、攻略中にガンガン指摘していきますんで」

『り、了解しました』

「イリーナ中尉、準備OKですよ?」

『あっ……その前に少佐』

「どうしました?」

『そろそろコールサインを決めて下さい。 今回は5機編成な事ですし』

「んぁ~、そうでしたねぇ。 月詠中尉は何か希望とか有ります?」

『お任せします』

「う~む……」


実を言うとコールサインが中々 決まらなくって、イリーナちゃんには何度も保留にして貰っていた。

でも今後 指揮官機として戦う可能性が有る以上……いい加減に決めて置かないとね。

俺は散々悩んだ結果 幾つかコールサインを絞っており、この瞬間に一つを選ぶべく考える。


『(白銀少佐を冥夜様に想定して戦うと言う事は……)』

「だったらコールサインは――――」

『(我々 斯衛が主を警護するべき存在であると解っておられ、
 今の様な"聞いた事も無い陣形"を教えてくれたのだろうか?)』

「――――で御願いします」

『分かりました』

『(やはり計り知れぬ方だ……其処まで我々の事を考えて御教授して下さるとは)』


余談だが、当然インペリアル・クロスは俺がやりたかったダケなので深い意味は無い。

しいて言えば珠瀬の戦い方を見てムラムラしちゃったからなんだ☆ 文句ならB分隊に言ってね?

……ともかくコールサインは伝えた。 いい加減ヴォールク・データを始める事にしよう。

俺は操縦桿を握り締めると、新しく即位した皇帝の様な気持ちで根拠も無く叫んだ。


「やるぞ!!」

『り、了解!』×4


――――実際にハイヴに潜った時は、ル●ン高原送りみたく無駄死にしません様に~。




……




…………




「月詠さんッ、もっと急いでッ! いちいちBETAを相手にし過ぎです!!」

『くっ……』

「巴は必要以上に弾幕を張り過ぎだ! 悪戯に敵を引き寄せるダケにしかならないッ!」

『は、はい!』

「戎も多用するのはサブ射撃の方にして、倒すより避ける事に集中するんだ! その為のS型なんだからな!?」

『わ、分かっていますけど難しいんですの~っ』

「神代はその調子だッ、BETAの攻撃を避ける意外は味方のフォローだけを心掛ければ良い!!」

『了解!(……と言うか、少佐が凄すぎて私のする事が無いんだけど)』


先行する月詠さんと斯衛トリオを支援突撃砲でフォローしながら、俺達はハイヴを進んでゆく。

そんな彼女達は流石の技量なんだけど、聞いた話によるとヴォールク・データは4人でも中層手前が限界との事。

理由としては旧OSの限界も有るけど、何よりBETAを相手にし過ぎていたのが原因だ。

元々旧OSだと白銀でもBETAを振り切って反応炉まで到達する事は不可能だったから、
彼女達の常識では殲滅しながら進んでゆくしか無く、その方法でも正攻法ではハイヴを落とす事は出来ていない。

例え俺&まりもちゃんのログに反応炉に到達できた事実が有ろうと、戦術機で迂闊に"跳べない"様に、
月詠さんでさえ"敵を倒しながら進む必要が有る"と言う価値観が頭から抜けないのだ。

いや……むしろ彼女の様なトップクラス衛士だからこそ、こびり付いた価値観を拭い難い。

ソレは月詠さんに指導されてきた斯衛トリオや まりもちゃんも同じで、だからこそ俺のS型にアッサリ負けた。

だから もはや俺達 一握りの衛士が乗るS型は"今迄の戦術機"じゃ無く、全く別の代物って事を解って欲しい。


『前方の左通路より終結した大隊規模のBETAが本道へと移動中の様です。
 距離・数共に約500。 出現まで残り30秒、接触まで90秒切ります』

「あちゃ~、今から突っ込んでも通り抜けれそうも無いか。 月詠中尉、どうします?」

『有る程度 蹂躙してでも通り抜けるしか無いかと』

「そうなんですけど、悠長に相手してると同じ事の繰り返しです」

『では……少佐の兵器をッ?』

「えぇ。 バズーカを使います、BETAの壁を吹っ飛ばして進みますよ!」

『本道にBETA出現! 接触まで残り60、59、58……』

「さっさと撃たないと爆風がヤバいな……後5秒で出来る限り下がって対ショックに入って下さいっ!」

『少佐は どうなされるのです!?』

「何とかしますよ! アルカディア01、フォックス1ッ!」

『アルカディア03ッ、私の横に並べッ! 4・5は後方のBETAを警戒しろ!!』

『了解!』×3


≪ズガアアアアァァァァンッ!!!!≫


俺は前方跳躍噴射するとバズーカに持ち替え、迫り来るBETAに対し照準を合わせ射撃する。

その際 叫んだ"アルカディア"と言う単語が俺が選び抜いたコールサインだ。

最初はゲームのモノや白銀の恋愛原子核を肖った"ハーレム"等にしようと思ってたんだけど、
流石に後者はヤバいだろうし、結局ソレに近い意味の"アルカディア"で手を打った。

意味は理想郷……俺的には下心での意味だけど、オルタの人達にとっては真面目に受け取ってくれるだろうしね。

それはさておき、月詠さん達が指示通り下がって対ショックに入ったのを確認すると、
自分も手頃な位置に居た要塞級の触手を回避しつつ、壁に利用して宙で爆風をやり過ごした。

勿論 コイツを相手にしている暇は無いので さっさと斯衛の4機と合流するべきなんだが、
俺は何となく支援突撃砲を右手に、左手で短刀を抜くと要塞級の硬い装甲に刃を突き立てる!


≪――――ガキッ≫


「くッ、今一度」


≪――――ガキッ≫


「な、流し斬りが完全に入ったのに……」


二度攻撃するが、全く力を入れさせていないので簡単に短刀は弾かれる。 ですよねー☆

何となくやってみたかったダケなので、俺は何事も無かった様に短刀を戻して月詠さん達と合流した。

良かった……4機とも無事だ。 けど推進剤 等が漏れて無いかは判らないし、確認して置くか。


『これが……バズーカの威力ですか』

『あ、あんなモノが有ったなんてッ』

『凄い武器ね……』

『使いこなす白銀少佐も流石ですわ』

「アルカディア02、大丈夫でしたか!?」

『は、はい。 被害はありせんでした』

「そうッスか。 じゃあ再度 陣形を維持しつつ、どんどん進んじゃってください!」

『了解!』


――――こうして俺と月詠さん達との午前の訓練は、4時間に渡って続けられた。




……




…………




2001年11月20日 午後


『アルカディア01、反応炉の破壊を確認。 状況終了』

『や、やった~っ!』

『今度はお前も残ったな』

「良くやったぞ~、神代」

『あ……有難う御座いますッ』


昼食を挟んだ午後も、俺は月詠さん達の訓練に付き合っていた。

一回目に反応炉に辿り着けたのは俺ダケで、最初は彼女達の"価値観"を拭うのに四苦八苦してたけど、
それが削られて来ると一気に進行の効率は上昇し、前回の攻略では俺と月詠さんが反応炉に到達。

そして今回の攻略では神代も最低限の被害で到達でき、彼女は両手の拳を握り締めてガッツポーズしていた。

可愛い……恐らくコレが神代の素なんだろう。 年を考えたらそんなモンだよね、何だか微笑ましいぜ。

……だけどクリア後に出て来た巴・戎の表情は非常に悔しそうだ。 5回挑戦して全て大破してるしね~。

でも陣形(インペリアルクロス)を強制して、真ん中=御剣なんて言い出したモンだから、
全員が俺を守る事も頭に入れていたみたいで、それが巴と戎が撃破された事にも繋がってるんだよね。

今更 全く関係無いなんて言えそうも無いし、彼女達の技量の底上げの為だと考える事にしよう。


『く~っ、あんな所でミスするなんてッ』

『も……もう一度 御願いしたいですの』

『ふふん、雪乃・美凪。 私が一番乗りだったな~?』

『調子に乗るな神代ッ、全ては白銀少佐の援護の御陰だろう?』

「はははっ、別に良いじゃないですか。 立派なモンですよ」

『し、白銀少佐……』(キュン)

『……(や、やっぱり巽の奴 本当に……)』

『……(私も その気持ちを肖ってみるべきなのかしら~)』

「月詠中尉。 巴と戎はやる気みたいですけど、6回目はどうします?」

『少佐が宜しければ、私も御願いしたいです』

「そうッスか。 だったら――――」

『白銀少佐』

「どうしました? イリーナ中尉」

『たった今 香月副司令から回線が入りました。 直ぐ出頭する様にと』

「ありゃ~」

『それでは……』

「悪いッスけど此処 迄ですね、すんません」

『と、とんでもありません』

『では一旦システムをダウンさせます』

「御願いしま~す」


ともかく引き続き当初の予定である全員生存でのクリアを……と思っていると、突然の伝言。

どうやら ゆーこさんが俺を呼んでいるらしく、イリーナちゃんが美化させている様だけど、
困った様な表情から、大方"さっさと来い"と言うメッセージだったんだろう。

正直 熱くて楽しい一時だったんだけど、ゆーこさんに呼ばれちゃ仕方無いよね?

よって俺は溜息を漏らしながら腰を上げ、筐体を出て再び月詠さん達とナマで顔を合わせた。




……




…………




「それじゃ~後は頑張って下さい」

「はいッ! 白銀少佐に対し敬礼!!」

『――――っ』


ゆーこさん空気読めと言ったトコだが軍服に着替えて、執務室に赴き"お仕事"を貰う為、
シミュレータールームを後にする俺に、斯衛4名とイリーナちゃんは敬礼して見送ってくれる。

今日も思わぬイベントが起きたけど、ヘタクソな指導で今迄の価値観を拭えたダケでも、
月詠さん達の技量の"限界値"と言うモノが大きく上がったハズだ。

後はログでどんどん学んで貰って、いずれは帝国軍 全体の技量を上げる事にも繋げて貰いたい。

……けど新OSは渡せないから暫くはど~しよ~も無いけどね。 政治と言うのは難しいのですよ。


「それにしても、インペリアルクロスだなんて……」

「私には好ましいモノだったと思います。 将軍家に仕える我々にとって、まさに相応しい陣形でしたから」

「ですが月詠中尉。 白銀少佐は"それだけ"の意味であの陣形を教えたのでは無いかと」

「どう言う事です?」

「インペリアル。 つまり"トパーズ"の宝石言葉は御存知ですか?」

「……いえ」

「トパーズとは"直感・喜び・社交性・人間関係・感情的すれ違い"を意味します。
 故に彼は貴女達が仕えるべき存在と、只単に守り・守られるダケの関係ではなく、
 "それ以上"の深い絆を築いて欲しかったのではないでしょうか?」

「――――!?」×4

「あくまで推測ですが……もし正解であれば、少佐は即座に"貴女達だけ"の陣形を考え出したのではないかと」

「……(ま、まさか……白銀少佐が、冥夜様の事 迄をも考えていたとはッ……)」


≪……月詠中尉! これは どう言う事なのですッ?≫

≪!? め、冥夜様……お止め下さいッ。 我々にその様な言葉遣いなど――――≫


「(もしや"あの時の一件"で……我々と冥夜様との距離関係を、全てを察したと言うの事なのだろうか?)」

「月詠中尉?」

「……っ……失礼しました。 ……ピアティフ中尉は、白銀少佐を良くご存知なのですね」

「そッ、そう言う訳では……」

「少し羨ましいモノですね。 お前達も そう思うだろう?」

『――――っ』←頷く斯衛トリオ

「つ……月詠中尉っ!」

「ふふふ、これは失言でしたか。 では……引き続き訓練を行いたいのですが、お付き合い頂けますか?」

「構いません」

「(どうやら私は白銀少佐を大きく見誤っていた様だ。 それに何だ"この気持ち"は……?)」

「よ~し、やるぞ~!」

「おぉーっ!」

「何だかヤる気が出て来ましたわ~」


――――この後ゆーこさんの命令で、俺は思わぬ仕事を請け負う羽目になるのでした。




●戯言●
今回は土日月と絆Dayだったので更新が遅れました、8月は13000前後のポイントが9月は50000に。
いやそれは冗談で、月詠さんに対しての勘違いネタを練るのが非常に難しく、書くペースが極端に遅れました。
そこで暖めていたロマサガの陣形ネタを使いましたが、今後他の陣形を使う時が有るかもしれません。
B分隊はハンターシフト、第19小隊はインペリアルクロスが鉄板かと。4人しか居ないけど(ダメじゃん)
コールサインも決定、みんな大好き理想郷。次回こそTEキャラが出ます、11話の戯言の件も……


●第207衛士訓練部隊●
軍曹 20700 迎撃後衛(基本的に何でも可能)
榊  20701 強襲掃討
御剣 20702 突撃前衛
彩峰 20703 突撃前衛
珠瀬 20704 砲撃支援
鎧衣 20705 制圧支援・制圧後衛(ハイヴ攻略)・砲撃支援(対戦術機)


●伊隅戦乙女隊●
ヴァルキリー01 伊隅 A小隊長 迎撃後衛
ヴァルキリー02 速瀬 B小隊長 突撃前衛・強襲制圧(本人の希望あり)
ヴァルキリー03 宗像 C小隊長 迎撃後衛
ヴァルキリー04 風間 C小隊員 制圧支援・制圧後衛(ハイヴ攻略)・砲撃支援(対戦術機)
ヴァルキリー05 一条 C小隊員 強襲前衛・突撃前衛(ハイヴ攻略&対戦術機)
ヴァルキリー06 神村 A小隊員 強襲前衛・突撃前衛(ハイヴ攻略&対戦術機)
ヴァルキリー07 葛城 C小隊員 打撃支援
ヴァルキリー08 涼宮 B小隊員 強襲掃討
ヴァルキリー09 柏木 B小隊員 砲撃支援
ヴァルキリー10 築地 B小隊員 強襲掃討
ヴァルキリ-11 麻倉 A小隊員 打撃支援
ヴァルキリー12 高原 A小隊員 制圧支援・制圧後衛(ハイヴ攻略)・砲撃支援(対戦術機)


●追記●
同日22時頃、大きな誤字が有ったので修正しました。すいませんorz



[3960] これはひどいオルタネイティヴ23
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/10/09 19:42
これはひどいオルタネイティヴ23




2001年11月21日 午前


昨日の午後の訓練の途中で呼び出され、ゆーこさん から与えられた仕事。

それは予想を上回るモノであり、俺を朝っぱらから憂鬱な気分にさせてくれている。

だってオルタ本編と全然関係無い依頼なんだもん……正直やりたくなかったのよね。

でも ゆーこさんに頼まれちまった事だし断るワケにもゆかず、ノリで引き受けてしまった。


「……成る程、その様な用件だったのですか」

「えぇ。 ですんで今日の立会いを月詠中尉に御願いしたいんスけど」

「ふむ……何故そんな役割を私に?」

「え~っと、中尉には新OSとS型の開発に携わって貰ってますし――――」

「そんな、携わるなど……」

「"彼"と同じ帝国軍の人間が側に居てくれるダケで、互いの緊張も解れると思いますからね」


今現在 朝食を終えた俺は、斯衛トリオと一緒に通路を歩いていた月詠さんに声を掛け、
3人に席を外してもらうと、昨日与えられた"仕事"の内容を説明し協力を求めている所だった。

その"仕事"が何かと言うと……ゆーこさんが帝国軍に"揺さぶり"を掛けた事により、
"釣れた獲物"に対する交渉だ。 簡単に言えば、本来 彼女の担うべき仕事の"代役"と言うワケさ。

でも……かなり嫌味ったらしい釣りをした様で、新OSやサブ射撃の無い戦術機を、
強気にもポンコツ呼ばわりする等して、ワザとプライドを傷付ける言い方をしたらしい。

よって多くの"お偉いさん方"は激怒してしまい、もはや興味を持つドコロか、
元より悪女みたいな認識を持たれている、ゆーこさんに対する敵意を悪戯に上げたダケに過ぎなかった。


≪どいつもこいつも、バカばっかで嫌んなるわよね~。
 口頭とは言え たった2機の戦術機でBETAを蹂躙しつつ反応炉へ到達 兼 破壊ができて、
 単機で3機の武御雷に勝つS型のデータを安い見物料で"見せてあげる"って言ってんのに≫


……まぁ ゆーこさんの性格を考えると、どんな言い方をしたのかは大体予想がつく。

失礼だけど月詠さんみたいな実直な人間だと、きっと頭に血が上って話にならないレベルだろう。

けど……唯一 興味を持ったのは帝国軍技術廠(しょう)の、第壱開発局・副部長だそうな。

彼女の嫌味に耐えたと言う事は、なかなか……いや、かなり温厚な精神の持ち主なんだろうね。

そんな副部長の人に、ゆーこさんはダメ押しとも言える"ある台詞"を聴かせてしまったらしい。


≪ふ~む……まぁ、関係ないのに期待はしませんよ≫(15話参照)


――――正直、鼻水が出そうになっちゃったんだ☆


ニヤけながら彼女の取り出したテープレコーダーから発された、白銀の何気ない言葉!

これが"最後の試験"だったらしく、副部長の人はソレすら流して"俺"との接触を望んだらしい。

……って何で俺なんですか!? ゆーこさんがするんじゃないの? そう聞いてみると、なんとっ!

何時の間にか俺は新OS・S型・新兵器・新システムの発案者、及び開発責任者にされてしまったようだ。

"発案者"ってのは強ち間違っては無いかもしれないけど、"開発責任者"って何でやねんッ!?

どう考えても頑張って作ったのは ゆーこさん&霞なんだけど、面倒臭そうな様子で彼女が曰く。


≪あたしは そろそろ本業に戻るわ、広げた風呂敷はアンタが畳みなさい≫


――――マジで冗談じゃないので素で慌てて見せると、ゆーこさんは"シテヤッタリ"といった表情で言う。


≪ふふん。 そんなに大袈裟な話じゃないから、安心して良いわよ~?
 いくらXFJ計画の発案者である第壱開発局・副部長だからって、
 彼の鶴の一声で直ぐ様、新OSやS型が帝国軍に広がっていくワケじゃないわ。
 あくまで"これから"の交渉をやり易くする為に今のうちにネマワシをして置こうって事。
 勿論……何らかのデータを渡す代わりに"それなり"の見返りは貰うけどね~≫


……つまり今回の交渉は影で呼び掛けたモノであり、元から公に晒す気は無かったらしい。

正史と違って今のタイミングで"有名人"にされてしまうと思った俺はいっぱい食わされてしまったZE。

こやつめ、HAHAHA。 ……と言う訳で安心して引き受けてしまったが、朝になったら気付いた。


――――俺が副部長の人と交渉しなくては いけない時点で、面倒事を任されたダケと言う事に。


ぶっちゃけ新OS等の今後の戦果を考えると、影でコソコソしなくても、
圧倒的な支持を得れると思うんだけどね~。 原作のXM3でのトライアルの時点で大反響だったし。

ゆーこさんの"これからの交渉をやり易くする"ってのも確かに一理有るんだけど、
帝国軍に"揺さぶりを掛ける"って言ってた時点で止めておくべきだったかもしれない。

悪くは無いんだけど、俺が正史とは違う事をしなくちゃならない可能性が有るって時点で怖いしね。

でも彼女は恐らく……新OS等の素晴らしさを誰かに見せびらかしたかったんだろう。

かと言って自分は忙しいから無理……よって俺が代役。 気持ちは良く判るんですが勘弁してください。


「……分かりました。 そう言う事であれば、御引き受けしましょう」

「有難う御座います、それじゃ~今日は御願いしますねッ?」

「はい」

「"お客さん"は13時頃に来るそうです。 名前は……確か巌谷(いわや)中佐だったかな?」

「!?」

「(知り合いかな? まぁ何でもイイや)俺はイリーナ中尉と準備をして来ますんで、
 月詠中尉は出迎えの方を御願いできますか? 場所は……え~っと……」


しかしながら、了承してしまったからには会わなくてはならず、俺は案の定 焦っていた。

いくら副部長の人が温厚な性格だからと言って、"あんな台詞"を述べた俺を良く思ってはいないだろう。

だから交渉の失敗も考えられるワケで……そうなったら ゆーこさんに嫌われちゃうワケで……

結局チキンな俺は月詠さんの力を借りる事にし、副部長の人と俺の仲介的な位置付けを担って貰い、
イリーナちゃんも昨日のうちに捕まえ、今回の件についての説明を任せる事にした。

よって月詠さんにOKを貰った直後、"お客さん"を待つ部屋の場所を教えると、
駆け足で その場を走り去った。 ……今思ってみれば慌て過ぎだったかもね、情けねぇ有様だぜ。

俺がチキンだって事、バレないと良いなァ~。 月詠さんが勘が鋭い人だってのを忘れてたYO!


「白銀少佐……あんなに急いで。 まるで、少年の様……いや実際は、その通りなのだが」

『…………』

「……やはり、自分の発案したモノが世に認められようとしているのが、嬉しいのだろうか」

『…………』

「――――どう思う? お前達」

『……ッ!?』

「神代」

「は、はい!」

「私は席を外しシミュレーター訓練の準備をしていろと"命令"した筈だが、何故覗いていた?」

「そ……それは……」

「巴・戎。 お前達も居ると言う事は、覗くのを止め様とした者は一人も居ないと言う事になる」

「うぅっ」

「も、申し訳ありません~」

「先程の話は十分"機密"に当たるだろう。 つまり、これは列記とした命令違反だ」

『――――!?』

「故に お前達には相応の処分が必要なところ……と言えるのだが?」

「ま、真那様! 私が御ニ人の様子を見ようと言い出したのですッ」

「巽!?」×2

「修正が必要であれば"私のみ"をっ!」

「……ふっ……まぁいい」

「えっ?」

「"あの時"私の気配を察した少佐の事だ、お前達の存在など筒抜けだった だろう」←不正解

『……っ……』

「だが彼は気付く素振りさえ見せなかった。 その気持ちに感謝する事だな」

『は、はいっ!』

「では午前のシミュレーター訓練は予定を変更し、私は管制のみを行う。 今度こそ準備に移れ!」

『了解!!』

「……(しかし伝説のテストパイロット、巌谷中佐が見えるとは……これは興味深い)」




……




…………




2001年11月21日 午後


温厚な人(巌谷中佐)が俺達と会うのは"お忍び"と言う事なので、準備には迂闊に人の助けを借りれない。

よって俺とイリーナちゃんダケでブリーフィング・ルームに色々と資料を持ち込んだりする。

ちなみに今は余りブリーフィング・ルームは使われていないので、部屋の手配は比較的楽だった。

しっかし、これぞ"仕事"って感じだよな~。 しかもイリーナちゃんみたいな娘と作業できて嬉しかったぜ。


「さ~て、後は"お客さん"が来るのを待つだけッスね」

「は、はい」

「あれっ、イリーナ中尉。 ひょっとして緊張してます?」

「そうかもしれません……何せ噂 高い方が見えるのですから」

「はははっ。 まぁ 大丈夫ですって、気楽にいきましょう」

「そ……そうですね(流石は白銀少佐ね……私も肖らないと)」


そんなワケで彼女と昼食を摂り終えると、ブリーフィング・ルームで"お客さん"の到着を待っていた。

何やらイリーナちゃんが緊張してる様だけど、何せ ゆーこさんの挑発に耐え切った人だ。

今更 怖がる必要は無いだろう。 最初は焦ってたけど、今は月詠さんも居てくれる事だしね!

そう自分に言い聞かせて大人しく待っている中、ようやく午後1時を回って数分経つと……


≪――――コンコンッ≫


「は~い」

「月詠中尉であります。 巌谷中佐を御連れ致しました」

「御疲れ様です、入って貰って下さい」

「はっ。 ……どうぞ」


≪――――ガチャッ≫


「!?」

「ふぅ~む……君が香月副司令の言っていた……」

「……っ……」

「中佐」

「おっと、失礼。 日本帝国陸軍中佐、"巌谷 榮二"だ。 宜しく頼む」


!?!? な、なななな なんだかヤクザっぽい人が来ちゃったーーーーっ!!!!

オールバックで厳つい目付きな上に、顔の左側に大きな傷跡が有るダンディ~なオジサマ。

ちょっ、誰だよ"温厚な副部長の人"って言ったのは!? あっ……俺でしたね、すいません。

正直 凄い怖そうな人なんですけど……いやいや、人を見掛けで判断しちゃダメだよね?

でも、やっぱり俺の"例の台詞"を根に持ってそうで怖くなってきた……顔には出てないけどNE。

さておき、 巌谷さんは俺を興味深そうな様子で眺めてたんだケド、
付き添いと思われる綺麗な"お嬢さん"に促されると、破顔しながら右手を差し出してきた。


「はっ、こちらこそ! 私は国連太平洋方面第11軍・横浜基地所属――――」

「"白銀 武"少佐だろう? 君の話は香月副司令から聞いているよ」

「そうでしたか」

「……おっと。 相手の名乗りを妨げるのは失礼だったな、非礼を謝罪しよう」

「いえ、お気遣い無く」

「有難う。 では……改めて」


――――浅く礼をしてくれた後、再び巌谷さんは右手を差し出して来たので、俺は握手を交わした。


「……そちらの方は、どちら様で?」

「おっと、そうだったな。 篁中尉」

「はっ。 私は日本帝国斯衛軍中尉、"篁 唯依"であります!」

「彼女は私の娘でね~。 副司令に許可を頂いた事から、今回の訪問に付き添わせて貰っている」


"良くぞ聞いてくれました"と言わんばかりに顔を綻ばせる巌谷さん。 ギャップが凄いな~。

それはそうと、どっちも知らない人だと思ってたが今思い出した! この娘はTEのキャラだったハズ。

斯衛軍と言っても月詠さんとは違って巌谷さんと同じ帝国軍の軍服姿だけど、そう言う設定なんだろうね。

さておき……流れ的に この"お嬢さん"とも握手する必要が有るのかな~?

そう思っていると、仏頂面で自己紹介を済ませた彼女はさっさと一歩下がって巌谷さんの後方に控える。

むぅ、何だか気難しそうな娘だなァ……それにしても、俺は二人の事をホントに何も知らない。

苗字が違うのに"私の娘"と言う事から、既に結婚しているのかと思ってしまう程 無知なんですけど。

いや……TEには白銀とは違う別の主人公の男が居て、篁がヒロインって事くらいは知ってるんだけど、
ソレが何年何月何日に始まってるのかも解らないから、もはや今の知識ではどうにもならないのだ。


「タカムラ?」

「はははっ、安心してくれ。 苗字は違うのは、私が彼女の父親代わりだからだよ」

「あぁ……成る程~」

「ち、中佐ッ」

「おっと。 すまんすまん、白銀少佐が気になっていた様だからね」

「!? いや、別に そんな事は無いッス。 ちっとも」

「……ッ!」

「そうかい?(唯依ちゃんは君を嫌悪している様なんだが……)」

「それじゃ~イリーナ中尉」

「はい」

「……(気に入らない相手とは言え、突き放されると悔しくもなる……と言う事か)」


ヤクザさん、いや……巌谷さんの義理の娘サンって事は、色目を使うとヤバいだろうね。

ヘタな事をして懐から出したピストルで射殺されちまったら堪ったモンじゃない。

だから謙遜して興味が無い事を強くアピールするんだけど、篁にさっきから睨まれてる様な気がする。

良く解らないけど俺は下心なんて抱いてませんよッ? ……とにかく、話題を逸らそう。


「はじめまして、巌谷中佐・篁中尉。 私は横浜基地臨時中尉、イリーナ・ピアティフです」

「これはどうも御丁寧に」

「巌谷中佐、貴官の武勇は聞いております。 御会いできて光栄です」

「……武勇?」


巌谷さんと握手を交わすイリーナちゃんの言葉で、俺は頭上にハテナマークを浮かべた。

そんな"最近ダラしねぇ"俺の顔を見て、"歪みねぇ"月詠さんは意外そうな表情をした。

な、何がどうしたんですかッ? そう思って首を傾げると、何故か篁が俺に詰め寄って来る!


「白銀少佐は……巌谷中佐の事を御存知無いのですかッ?」

「えっ?」

「正直に答えてください!」

「普通に知りませんけど?」

『――――!?』


いや……ホントですよ? TEの設定なんて1%くらいしか理解してませんから。

それなのに巌谷さん以外の3人が"なんだってー!?"と言う台詞を顔に書いたような表情をした。

も、もしかして凄く有名な人だったんですかッ? ……って事は、ゆとり佐官ですか俺って?

それは流石にヤバいかも……ちゃんと"お客さん"の事は勉強して置くべきだったね。

そう今更になって猛省していると、篁が興奮気味に巌谷さんの数多くの武勇伝を語ってくれる。


「信じられません! 良いですかッ? 巌谷中佐と言う方は――――」

「ま、待ち給え篁中尉」

「叔父様は黙っていて下さいッ!」

「……はい(あちゃ~。 唯依ちゃん……見事に釣られちゃったよ)」


簡単に纏めると、巌谷さんは かつて斯衛軍所属の開発衛士(テスパ)として"瑞鶴"の開発に携わり、
模擬戦に於いて当時最新鋭のF-15C(イーグル)を撃破する等、高度な操縦技能と戦術勘を持ち、
帝国斯衛軍が誇る歴戦の勇士にして、伝説のテストパイロットと言われているらしい。

大陸での戦闘で負った顔の傷は自身への戒めとして消していないらしく、篁の尊敬する御人らしい。

だから衛士であれば誰でも知っている様な有名人だったって事で、俺はやはり無知だったみたいです。


「――――と言う事です、解りましたか!?」

「はぁ……御丁寧にどうも」

「ふん!」

「……(まさか今の事で帰れなんて言われないよな? 唯依ちゃんを連れて来たのは俺なんだが……)」


10分前後掛けて説明し終えると、篁はズンズンと後退し再び巌谷さんの後ろに控える。

うぅ……尊敬するオジサマの事を知ってなくてゴメンね? かなり機嫌が悪い様子だ。

俺は心の中で彼女に謝りつつ、本題に入るべく苦笑いしながらイリーナちゃんに声を掛けた。


「ゴホン。 じゃ~イリーナ中尉、例のデータを」

「はい(……そうよ、"交渉"は始まっているの。 私も白銀少佐の翻弄を見習わないとッ)」


≪――――ぱっ≫


篁の説明中、既にスタンバっていたイリーナちゃんがスクリーンに"とある画像"を映す。

それは不知火S型の静止画&断面図であり、彼女は事細かく新しい概念であるサブ射撃……

つまり頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャー、そして"サブ射撃システム"についての説明を行い、
巌谷さんは感心したような声を何度も上げ、篁も興味深そうに視線を泳がせていた。

月詠さんも若干"驚き度"は劣るだろうが同様であり、俺も細かい設計は知らないので勉強になっている。


「……この"不知火S型"の武装は熟練の衛士が相手で有る程 極めて有効であり、
 こちらがベテランの衛士が操縦する迎撃後衛 仕様の不知火を30秒で。
 そして、こちらが突撃前衛 仕様の不知火を、僅か15秒で沈めた映像です」

「むぅ……(こりゃ唯依ちゃんでも分が悪いかもな)」

「……(わ、私なら絶対……こんな迂闊に倒されたりは……)」


イリーナちゃんの言葉で次にスクリーンに流れたのは、俺がまりもちゃん&速瀬と戦った時の動画。

シミュレーターなので"白銀フラッシュ"や"バルカン!"と言う恥ずかしい台詞は聴こえないのが幸いだ。

どちらも空中のカメラで撮影したような視点で、まりもちゃんと速瀬の不知火を撃破した映像が流れる。


「……そして、こちらが実戦での白銀少佐の視点による映像です」

「!? し、信じられん……!」

「こ、光線級のレーザーを……避けてるッ?」

「生憎サブ射撃の火力や、間も無く解説させて頂く"新OS"については、
 この映像ですと白銀少佐の機動の方が遥かに目立つ事から、今は操縦技術のみを御覧下さい」

「まさか、恐れ入ったな」

「……くッ……」


――――計画通り。 事前にイリーナちゃんに御願いしてたから、俺の恥ずかしい音声は消してあるのさ!


「では次の映像切り替えます。 これは模擬戦で3機の武御雷(白)を相手に、
 白銀少佐の搭乗する不知火S型が勝利したモノであり……」


俺の実戦データの披露が終わると、今度は斯衛トリオとの戦いの様子に切り替わる。

その所々で映像を停止させ、新OSによる"先行入力"や"キャンセル"の説明を進めてゆくイリーナちゃん。

そして最後は巴に行った"コンボ"から繋げた戎に対しての射撃で締められ、更に映像が切り替わる。

今回 最大の"目玉"である まりもちゃんとの2機連携によるヴォールク・データのリプレイであり、
バズーカによる反応炉の破壊をクリア条件としている事もあって、全ての"おさらい"と言った内容だ。

流石にハイヴ攻略なので30分以上に亘(わた)る映像になり、イリーナちゃんの解説も皆無なんだけど、
巌谷さんは真剣な表情でスクリーンを眺め、篁も食い入るようにスクリーンを見つめている。

イリーナちゃんと月詠さんも黙って眺めているので、俺も空気を読んで"脳内反省会"と洒落込んだ。

ちなみに……コレも無駄な音声は切ってあるので、安心して眺める事が出来ているのでした。


「……以上で これらが白銀少佐が発案し、開発に至った全ての資料となります」

「ふむ……」

「……(まさか同じ戦術機から此処まで新しい"可能性"を見出し、実現させていたなんて……!)」

「改めて見ると俺も勉強になったな~。 月詠中尉はどうでした?」

「もはや何と言うか……聞かずともお解かりでしょう?」

「はははっ、それなら良かったです」

「……(だったら、私達が"やって来た事"は何だったと言うのッ!?)」


≪パチパチパチパチッ……≫


「……素晴らしいッ、本当に素晴らしい!!」

「お、叔父様ッ!?」

「どうしたんスか?」

「これぞ、私の求めていたモノかもしれん。 これ程 感動したのは初めてだッ!
 香月副司令が"99型電磁投射砲"を玩具 呼ばわりしたのも、これなら納得できると言うものだ」

「……ッ……」

「ゆーこさん……相変わらず あの人は何て事を……ねぇイリーナ中尉?」

「ま、全くですね」

「本来"不知火"とは極めて困難な要求仕様を実現する為、量産機としては異例な程、
 突き詰めた設計が成されている。 従って"通常"は考慮される筈の、
 発展性の為の構造的 余裕についても極限まで削ぎ落とされている事から、
 多く寄せられた"94式改修要望"も、ほぼ全てが実現不可能だった。
 ……しかし"不知火S型"における新武装は新しい概念の兵器であり、大規模な改修を必要とせず、
 全ての"94式改修要望"に置いて、サブ射撃の活用性は上回っていると言って良いだろう」

「随分と評価してくれたモンですね」

「当然だ。 それに……ハイヴ攻略に置いて我々が選ばざるを得なかった策が、
 "99型電磁投射砲"の運用によるBETAの殲滅による侵攻・及び制圧だ。
 だが君の立案では、新OSによって戦術機に新たな機動概念を実現させる事により、
 我々とは逆にBETAを無視して"進む事"を考えた。……またそれダケで無く、
 新たな兵器・バズーカの開発により、少数の戦術機で反応炉を破壊すると言う、
 極めて高い"可能性"を見出した。これが実現するのであれば、まさに"革命"と断言して良い。
 しかも我々の案とは遥かに低いコストでの攻略が可能だろうし、もはや面目丸潰れだな」

『…………』

「んっ? どうしたのかね?」

「あ、いや~……なんか、其処まで褒められると恐縮ッスね」

「そんな事は無い、これは素晴らしい事だぞッ? 君は もっと誇りを持って良い。
 私こそ良い物を見せて貰った。 これだけでも来る価値が有ったと言うモノだよ」

「い、巌谷中佐っ!」

「何だ? 篁中尉」

「確かに見せて頂けた映像や資料は、私も感動すら覚えました。
 ですが考えても見て下さい……中佐は"それで宜しい"のですかッ?」

「……どう言う事だ?」


≪ふ~む……まぁ、関係ないのに期待はしませんよ≫


「幾ら あからさまな煽りであろうと、"彼ら"は我々の血の結晶を侮辱したのです!」

『!?』

「これから同じ志を持つ者 同士 協力し、新たな開発を行ってゆく為には、
 先ずは"あの件"についての謝罪を求めるべきでは有りませんか!?」

「――――篁中尉ッ、貴様は自分の立場を理解しているのかッ!!」

「えっ」

「我々は香月副司令の恩恵により、この場で情報を提供させて頂いているのだッ!
 それと言うモノの、先程からの非礼は何事だ!? 今直ぐ白銀少佐に謝罪しろ!!」

「!? で、ですが――――」

「さっさとするんだ、これは命令だッ!」

「……っ……」

「まさか同じ事を言わせる気か!? 次は無いぞっ!?」

「し……白銀少佐。 も、申し訳……ありません……」

「は、はぁ」


成る程。 篁は ゆーこさんの煽りや俺の"あの台詞"を巌谷さんと聞いていたから、
俺達の事を良く思って無かったんだね。 ……まぁ、真面目そうな娘だし仕方無いもかもな。

今のも巌谷さんの研究を大切に思っての気持ちの表れなんだろうが……彼の事の言う事も最もだ。

煽られようが巌谷さん側が望んで来たって事なんだし、俺達が気を遣われる側なんだよねぇ。

もし見せた資料や映像に興味が無ければ交渉決裂なんだケド、かなり評価してくれたみたいだし、
こりゃ大丈夫っぽいな。 考えてみりゃ巌谷さんの言った通り凄ェ代物だし、ネガティブに考えて損した。

……さておき、巌谷さんに檄を飛ばされた篁は見るからに不服ながらも俺に向かって頭を下げる。

嫌な事なら無理にしなくても良い派なんだけど、俺は空気を読んで謝罪を受け入れた。

そして篁が頭を上げると同時に、巌谷さんは超怖かった表情を緩めると、俺に向かって言う。


「白銀少佐、気を悪くしたのなら本当に済まなかった。
 彼女はアラスカから戻って来てから、ずっとこの調子なのだよ」

「戻ったって、どう言う事スか?」

「ここ一週間程前に、特殊任務で色々と済ませ終えてね」

「ふ~む……それなら、差し詰め――――」

「……ッ?」


……と言う事は彼女って、TE終了後の篁って設定なのかな? 主人公との関係はどうなったんだろ。

おっ!? 解った……このオルタ世界じゃ、元からTEの主人公なんか居なかったんだよ。

そうじゃ無かったら絶対にくっ付いて主人公が側に居る筈だし、白銀と会う可能性なんかも無いんだ。

そう思って俺は何となくダークな空気を変えるつもりで、首を傾げる正面の篁を他所に、
ウザそうな笑みを作りながら、巌谷さんに向かって今"浮かんでしまった"事を言った。


「アラスカで"失恋"でもしたんスか?」

「あ"っ」

「――――っ」


≪バシンッ!!!!≫


『な……っ!?』

「……痛ゥ~ッ……」

「……(本当に容赦無いんだな……白銀少佐は……)」


俺の言葉に巌谷さんがマヌケな声を出し、篁の表情が険しくなったと思うと、
彼女は無言で右手を振り上げ、その直後 左頬を激しい痛みが襲った。

同時にイリーナちゃんと月詠さんも驚愕して声をハモらせたりして、
何故か右に動いた顔をそのまま、キョトンとする俺。 これは篁に……ビンタされたのか?

……って事は。 僕ちゃん"修正"されちゃったんですかァーーーーっ!?

何てこった、何故 俺はビンタされちまったんだ? TEのメイン・ヒロインが失恋とか有り得ないだろ。


「あ、あぁ……あっ……」

「……クッ……これが"若さ"か」

『――――!?』


自問するも答えが浮かばない俺は、その場のノリで某グラサン大尉の名台詞を言ってしまう。

対して篁も自分が"仕出かした"事を ようやく理解したか、瞳を大きく見開いた。

直後 震えながら一歩 一歩 後退すると、同様に正気に戻った巌谷さんが再び険しい顔を向ける。


「……篁中尉」

「!?」

「貴様は……自分が何をしたか判っているのか?」

「!? そ、それはっ……」

「(図星だった様だけど、これは幾らなんでも……)」

「(白銀少佐の選択次第では交渉は決裂し、巌谷中佐の責任問題にもなろう)」


……あぁ、そうかっ! きっと篁は、さっきから無礼だった俺の態度が気に食わなかったんだろう。

何せ巌谷さんは俺の上官だ。 "~ッス"って言葉遣いをしてた時点で失礼な事だったんだよ!

国連軍と帝国軍で所属は違うから何か違う気もするけど、篁が俺をビンタする理由はソレしかない。

巌谷さんは見た目に反して温厚だから気にしてない様子だったケド、篁にとっては許せない事だったんだ。

こりゃ~目から鱗だね……俺の非礼に対して、彼女の叔父を想って での決死の行動には完敗だよ。


「……認めたくないものだな、若さ故の過ちと言うモノは」←自分に言ったつもり

『――――!?』

「(やられた……完璧に こちらの"負け"だな。 瞬時に唯依ちゃんが抱えているモノに気付き、
 それを交渉に利用するとは……とんだ策士だよ。 正直 奴を甘く見過ぎていたな)」

「お、おじさま……わッ、わたし……私は……」

「黙って其処へ直れ、白銀少佐に代わって修正してやる」

「……っ……」

「ちょ、待ってくださいッ!」

「白銀少佐、何か?」

「修正なんて とんでもないです。 悪いのは俺なんですから、許してあげてください」

「しかし今のは どう考えても此方が――――」

「……彼女は他人を信じなかったダケです」

「!?」

「信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ」


――――グラサン大尉を肖って、つい言っちゃったんだ☆ もはや話の辻褄は全く合っていません。


「白銀少佐、君はまさか……」

「……(篁中尉が荒れていた理由に最初から気付いていて、それであえて平手を受けた……?)」

「……(今の言葉で合点がいった。 確かに互いを信じなければ、最初から協力は成り立たない)」


――――篁を除いて訝しげな視線を向けてくる巌谷さん達。 可愛そうな人で御免なさい。


「と、ともかく今の平手は無しって事で御願いします」

「ふむ……被害者本人がそう言うのであれば仕方無いが……」

「では、話の続きといきましょう」

「そうだな(……雰囲気が変わった?)」

「今回の情報を提供した事による見返りについて、こちらから要求するモノは――――」

「……(はてさて、どんな無理難題を押し付けて来る事やら)」


特に誤魔化す事も無く話題を強引に切り替えた俺は、ゆーこさんから告げられた要求を言うべく口を開く。

ソレを飲んでもらうのが俺の"仕事"であり、今から巌谷さんにはしっかりと接する事にした。

篁にまた強烈なビンタを食らうのは御免だしね……でも、今や仲良くなるのは絶望的かな~。

何だか交渉中 篁はず~っと暗そうにしてるし、巌谷さんに怒られたのがショックだったのかもね。


「(白銀少佐……どうして、私を許してくれたんですか……?)」




……




…………




「ふ~い」

「お疲れ様でした白銀少佐」

「イリーナ中尉こそ、長々と説明有難う御座いました」

「いえ……そんな……」

「何にせよ、交渉が旨くいって良かったですね~」

「はい、良い関係が築けた様ですし」


……2時間後。 無事 巌谷さんとの交渉を済ませた俺は、イリーナちゃんと通路を歩いていた。

ちなみに月詠さんは斯衛トリオと何事も無かったかの様に訓練を再開している。

さておき、俺の……いや、ゆーこさんの要求とは、非常にシンプルな内容だった。

フォールディング・バズーカの提供は今後の実際の戦果 次第であり、
新OSについても今後予定されている大規模なトライアルを先に済ませないと無理だけど、
不知火S型の設計データに限ってはくれてやるから、XFJ計画の傑作である不知火・弐型をF型仕様、
できればS型仕様で組んで、出切るだけ早く何機か横浜基地に回せと言うのがこちらの要求である。

これはサブ射撃の新たな概念を考えると、"こっち側"の方が気前が良いと言えるかもしれないが、
ゆーこさんは年内でのOOユニット完成の暁には、早期にオリジナルハイヴを潰す事を目論んでいる。

だから"それから"の損得までは考えておらず、早い段階で強力な戦術機部隊を編成したいらしい。

まぁ 俺としてもクーデター時に、決起軍にS型が配備されたりしない限り何の問題も無いからOKだ。

そんな"不知火FⅡ"or"不知火SⅡ"は恐らくバズーカを背負ったエースパイロット専用機となる。

元ネタを考えると"不知火FⅡ"の方が聞こえが良いけど、後者であれば正に鬼に金棒だろう。

ソレ以外は前にも述べた"これからの交渉をやり易くする為のネマワシ"について、
予め箇条書きにされていた事を告げたダケで、俺が読むに当たっても厳しそうな条件は無かった。

でも何故か巌谷さんは"それだけ?"みたいな顔してたな……武御雷も何機か頂戴って言うべきだったか?


「とにかく、俺は ゆーこさんに結果を報告しときますよ」

「そうですか」

「そんじゃ~お疲れ様でした」

「――――はっ」


≪……彼女は他人を信じなかったダケです≫


「(最初は白銀少佐が交渉を有利にする事ばかりを考えていると思ってたけど、
 やっぱり……まだまだ私は彼の事を理解していないのね……)」


≪信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ≫


「(……まさか白銀少佐が巌谷中佐の事をあえて知らない様に振る舞っていたのは、
 始めから察していた篁中尉の心の蟠りを取り払う為だったなんて……)」




……




…………




「し、白銀少佐!」

「……篁中尉」


イリーナちゃんと別れスタスタと通路を歩いていると、俺は篁に呼び止められた。

あれっ、帰ったハズじゃ無かったのかな? 何だか息を切らしてるし、ど~したんだろ。

やっぱり もう一発ビンタさせなさい! ……とかじゃ無いよね? 相変わらず顔には出ないが警戒する俺。

けど、そんな心配は無意味だった。 篁は勢い良く頭を下げると、そのままの姿勢で言った。


「先程は……本当に申し訳ありませんでした!!」

「えっ?」

「御陰で目が覚めましたッ。 本当に有難う御座います!」

「????」


……い、いや……悪いのは巌谷さん相手に言葉遣いを自重しなかった俺なんですけど。

きっと篁は非が俺に有るとは言え、ビンタした事を謝罪しに来たんだろう、何で良い娘なんだ。

目が覚めたってのが良く判らないけど、まさかSっ気に目覚めた~とかじゃないよね?

そう思いながら複雑な表情で篁を見下ろしていると、面を上げた彼女と視線が重なった。


「――――あっ」

「ん?」

「い、言いたかった事はそれだけですっ。 それでは失礼します!」

「篁中尉、帰りは気をつけて下さいね」

「は……はいっ!」


篁は俺に敬礼して下さると、小走りで去って行った。 最初の印象と違って随分と可愛いじゃないか。

……きっと態度を改めた俺の事を認めてくれたんだろう、巌谷さんも良い娘さんを持ったモンだね。

TEのキャラだし、これから会う機会は少ないと思うけど……彼女には死なないで欲しいな~。

そんな事を思いながら俺は その場で篁の後姿を見送ると、何となく窓の方へと歩いて外を眺めた。

すると何処のメーカーかも判らない黒の高級車が止まっており、恐らく巌谷さんの車だろう。

国産車かな? どっちでも良いか~。 よって方向転換すると、俺は再びエレベータを目指した。




……




…………




≪――――ガチャッ≫


「只今 戻りました」

「お帰り。 謝罪は済ませたのかい?」

「はい、叔父様」

「しかし……俺の目も節穴になったモンだな、彼はハナから唯依ちゃんの事を考えて接して来てたとはね」

「だとすると、白銀少佐は……」

「ああ。 俺達が煽られながらも横浜基地行きを決めた時点で、仲良してくれるつもりだったのさ」

「それなのに、私は彼の態度に我を忘れて……」

「そう言う事。 もしアレが本当の釣りだったらと思うと、肝が冷えたモンだよ」

「ご、ごめんなさい」

「しかしな。 恐らく……"関係ないのに期待はしない"と言うのは彼の本心だったんだろう」

「!?」

「だからこそ自分自身の頭で考え、BETAに対抗するべき最高の手段を発案した。
 その"全て"が今日 拝ませて貰った情報だったって事さ。全く 若いのに大したモンだよ、白銀少佐は」

「そう……ですね」

「案外 部下や同僚より、ああ言う男の方が、唯依ちゃんには向いてるかもしれんなァ~」

「お、叔父様ッ!」

「違ったか? 流石に"娘"を見る目は、霞んで無いつもりなんだが」

「ど……どう言う事ですか?」

「しらばっくれるな、満更でも無い感じだったんだろう?」

「……ぅ……」

「ゴホン。 ならば篁中尉、貴様に2度目の"特別任務"を与える」

「えっ!?」

「明日より貴様は、帝国技術廠の代表として――――」




……




…………




2001年11月22日 午前


「さ~て、今日はどうするか」


巌谷さんとの交渉成立により 更なる戦力アップを望めそうな事から、
あの後 ゆーこさんは俺を軽く労ってくれ、コーヒー(本物)を再び御馳走してくれた。

よってコーヒーを飲もうが気分良く眠りに着けた俺は、翌日の朝食後 気分良く通路を歩いている。

昨日は精神的な意味で頑張ったし、午前は昼寝でもして午後に誰かの訓練に付き合おうかな~?

2日前は寝る間を惜しんでいだと言うのに俺はアバウトな気分で、一旦 自室へと向かっていると……


「白銀少佐!」

「!?」

「お、お早う御座います」

「へっ?」

「……ッ……」

「もしかして、篁中尉?」


突然 何者かが俺の行く手を阻んで来たので速瀬だと思って警戒すると、なんか違う女性だった。

でも何処かで見た気がするので"じ~"っと眺めていると、視線を逸らされた辺りで篁だと解る。

ど~してか国連軍の軍服を着込んでおり、彼女は再び俺に視線を合わせると凛々しく敬礼しながら言った。


「はいっ! 巌谷中佐から与えられた特別任務により御伺いし、
 本日から国連軍・横浜基地に臨時中尉として着任 致しました"篁 唯依"です!」

「えぇ~っ」

「香月副司令に許可を頂き、これから白銀少佐の下で帝国技術廠の代表として、
 "不知火S型"による機動や戦法を、実戦も踏まえて学ばせて頂きたい次第でありますッ!」

「おぉ……」


昨日の ゆーこさん……何か隠してると思ったら"こう言う事"だったのかよ。

オルタ世界に飛ばされて記念すべき1ヶ月後……何故か思わぬフラグが成立されたらしい。

運命の悪戯が重なったのか、今 初めて"篁 唯依"と言う待望の俺の"部下"が加入したのである!


「(白銀少佐、私はもう過去は振り返りません。 貴方がそれを教えてくれたから……)」


――――ともかく これで今日の予定は決まったな。 俺は口元を歪ませながら、篁に敬礼を返した。


「(そう言えば忘れてた……唯依ちゃんのホワイトファング隊と武御雷、どうするかな~?)」




●戯言●
今回は非常に四苦八苦しました。少々スランプ気味、此処まで読んでくれた皆様 有難う御座います。
ちなみに唯依姫はゲスト出演みたいな存在と考えて頂ければ幸いです。簡単な経緯は登場人物紹介にて。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ24
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/10/23 01:55
これはひどいオルタネイティヴ24




2001年11月22日 早朝


「さて、そろそろ出発だな」

「わざわざ御見送り有難う御座います、叔父様」

「気にするな。 ところで移動手段は?」

「雨宮中尉に運転を」

「そうか。 ……彼女も残念がっていた だろう? 折角 久しぶりに会えたと言うのに、
 ホワイトファング隊の再結成を考えようとしていた直後の横浜基地への異動だ」

「そうですね……」

「唯依ちゃんは帰ってから御立腹で、接する機会も少なかった様だしな~」

「か……返す言葉も有りません」

「まぁ、運転を任せる辺り蟠りも解けたんだろう?」

「はい。 昨夜のうちに」

「なら良いが……見るからに緊張している様だが?」

「そ、そう見えますか?」

「やった事がやった事だしなァ」

「!?」

「図星か」


≪……認めたくないものだな、若さ故の過ちと言うモノは≫


「(そう言えば、あの時の白銀少佐の言葉……最も過ぎて今でも忘れられない……)」

「すまん、出発前に言う事じゃなかったな。 許してくれ」

「……はい」

「その代わりと言っちゃなんだが、昨日 香月副司令に異動の許可を貰う際、
 何気なく彼についての情報を聞いてみたんだが――――」

「そ、それはっ?」

「モテるらしい。 もう圧倒的に」

「は?」

「だが相手は天才衛士だからな……恐れ多いのか知らんが、誰も告白できんらしい」

「あの……な、何故そんな事を?」

「聞いた相手が彼女だからな」

「……納得です」

「それに可愛い"娘"の為にも、彼の情報を仕入れておくのは当然だろう?」

「お、叔父様ッ!」

「とにかく、そんなワケで……これからの唯依ちゃんの位置付けが、最も白銀少佐に"近く"なるんだ」

「!?」

「何せ今の彼には部下が一人も居ないらしいからな。 理由は何となく察せるが……
 その"代わり"を務める事ができれば、大きく前進が出来ると言う事だよ」

「…………」

「悪い、冗談が過ぎた」

「いえ……告白や前進など意識するつもりは無いですが……」

「うん?」

「白銀少佐には大きな借りが有ります。 今は判っている事が少な過ぎますが、出来る限り御役に立とうかと」

「ふむ。 ……あくまで手堅く落とすと言う訳か」

「でッ、ですから――――」

「篁中尉」

「えっ?」

「気持ちは判るが白銀少佐にも同じ様な対応では不味いぞ?」

「あっ……(そうか、叔父様は私が白銀少佐の話術に翻弄されない様にする為に……)」

「では、頑張ってきてくれ。 我等が帝国軍の為」

「はい。 そして――――」

『日本の未来の為にッ』




……




…………




2001年11月22日 午前


「楽にして良いですよ、篁中尉」

「――――はっ」

「ところで、何でいきなり?」

「それはですね」


突然 国連軍の臨時中尉として現れた"篁 唯依"は敬礼後、今までの簡単な経緯を説明してくれる。

……どうやら巌谷さんが中佐権限で篁に横浜行きを"命令"した事から成り立ったらしい。

よって昨日の内に私物を纏め、つい先程 横浜基地に到着すると、部屋で着替えて俺を探し当てた様だ。

これは"命令"だし拒否権は無い様なモノだから、篁が俺を認めてくれた後で本当に良かったッ!

もし嫌われてたままだったら、逆にこれからの仕事の効率が落ちてたかもしれないからね~。

んで本当なら色々と手続きが行われるハズなんだけど、巌谷さんが真っ先に連絡を取った、
ゆーこさんがアッサリ許可した事で、こうも早く篁の横浜入りが決まってしまったらしい。

考えてみれば"死人"の白銀を翌日に少佐にしちゃったんだし、ホント彼女の仕事の速さは異常だね。


「成る程、大体の事は解りました」

「ではこれを」


頷く俺に対し篁は懐から一枚の紙を取り出すと、無駄の無い動きで差し出して来る。

それを受け取って目を通してみると、俺が横浜基地に受け取った書類と良く似ていた。

内容は簡単だ。 篁が自分で言ってた通り、彼女が俺の部下として配属される事が書いてあったのだ。

既に俺は篁の言った事を信じてしまってたんだけど、彼女の配慮も妥当と言える。

"こっち"の常識を考えると、突然の異動だ。 そもそも篁の再登場なんて、全く予想してなかったしね~。

だから配慮に感謝しつつ書類を返すと、彼女は受け取ったソレを大事そうに懐に戻した。

そう言えば同じ様な書類どうしたっけな? 多分捨てた。 もしバレたら"ヤギさんに食われた"とでも言い訳しよう。


「把握しました。 それじゃ~施設の案内でもしましょうか」

「よ、宜しいのですか?」

「一人で回ると結構な時間になりますからね。 それよりも、篁中尉の部屋にでも行きます?」

「――――!?」


それはそうと、篁が俺の部下に成ってくれる! これは非常に嬉しい"誤算"だった。

ポーカーフェイスの為 相変わらず顔には出てないけど、若干テンションが上がってる俺。

だから可愛い部下の為に案内は勿論の事、"引越し"の手伝いも喜んでやってあげたい気分さッ。

上官としての威厳もなんのその。 よって軽い感じで言ったんだけど、篁は何故か驚愕していた。


「あれっ、篁中尉?」

「そ……そのッ……」

「????」

「まだ、荷物が……届いて、おりませんので……」

「あ~ッ、そうでしたか」


≪気持ちは判るが白銀少佐にも同じ様な対応では不味いぞ?≫


「……(な、何て事ッ? わざわざ叔父様が警告してくれていたと言うのに……)」

「だったら案内ですね、付いて来て下さい」

「は、はい(……私物は少ないし、もう持ち込みは済んでいる)」

「此処からだとPXが近いかな~?」

「(それは彼も解っている筈。 なのに、あんな言い訳しか出来ないなんてッ。
 私は既に白銀少佐に試されている……だから衛士として、冷静にならないと)」


しまった、考えてみりゃ図々し過ぎたよな~。 そもそも篁は"私物を纏めた"としか言ってない。

だから届いてない事も考えられるんだったよ、本人もそう言ってるし迂闊すぎだろ俺!

くそ~、イキナリ篁に引かれちまったのか? どうやら再登場がイキナリ過ぎて判断力を欠いていた様だ。

そうだクールになれ白銀っ! 俺はミントよりもCOOLな白銀トゥエンティー・エイトだぞ!?

……俺はそう気を改めると、頼れる上官になるべく案内を開始した。 目指すは言った通りPXなんだぜ?




……




…………




「さっきの場所がシミュレータールームで――――」

「……(あれは訓練兵? 見られている)」

「こっちで着替えます、女性用のロッカーはあっち」

「……(他にも既に多くの視線が……やはり白銀少佐は慕われているのね)」

「シャワー室はロッカールームの中に有ります、蛇口の閉め忘れに注意してください」

「……(これに彼が気付かない筈が無い。 それなのに、何故こうも丁寧に説明してくれるの?)」

「トイレは結構 近くに有ります、ホラあそこ」

「……(私としては嬉しい。 でも、他の人達にとっては……)」


案内を始めて1時間以上が経ったけど、未だに俺は施設の案内を続けていた。

たった今はシミュレーター訓練をしている まりもちゃん+榊達を遠目に歩きながらの敬礼も済ませている。

さておき篁にとっての"理想の上官"を目指して なるべくフレンドリーに接してるつもりなんだけど、
彼女は小声で相槌を打ち続けるダケで、特に手応えを感じなかったりする。

こう言う対応より、もっと威厳が有る方が良かったのかなぁ? 篁って真面目そうだしね。

……でも今更 変えるのもアレだし、そもそも性分じゃ無いからどうするかなぁ……

!? そうだッ。きっと篁は、部下を連れて歩く俺と自分に対する皆の視線が気になってるんだろう!

別に俺はもう慣れてるから良いけど、彼女にとっては初めての経験と言っても良い。

つまり俺の案内が退屈って事じゃないんだ~ッ、そう無理矢理ポジティブに考える事にした。

けど篁には案内じゃ大した評価は貰えないっぽいし、午後の訓練で見直して貰うとしよう。

そう思いながらハンガーで案内を締めるべく、見覚えの有る視線を流しながら通路を歩き続けていると……


「あーッ!」

「えぇっ?」


――――正面 右側の十字通路から現れた速瀬&涼宮(姉)が、俺と篁の存在に気付いた。


「白銀少佐、あの二人は?」

「ゆーこさんの特殊任務部隊。 二人とも中尉ですよ」


イリーナちゃんのお友達の二人とかは始めは訝しげな視線を俺と篁に向けながらも、
擦れ違い様に立ち止まって、通過してゆく俺たちに敬礼してくれたけど、今回 初めて足を止める事となった。

何せ"こうなった"ゲームの展開上、篁も関わる可能性が高い"ヴァルキリーズ"の人間だ。

こりゃ自己紹介する必要が有るかもしれない。 だから俺達は前途の会話を小声に、二人の側で立ち止まったのだ。


「あ……貴女は?」

「ど、どちら様ですか~?」

「篁中尉」

「はっ! 私は本日から国連軍・横浜基地に臨時中尉として着任 致しました"篁 唯依"です」

「配属は"俺の部下"って事になる。 もしかしたら任務を共にするかもしれないから、宜しくしてくれ」

『――――!?』


速瀬はともかく涼宮(姉)も居るので、篁の前だし敬語にしようか迷ったけど、今みたいな言葉遣いになった。

んで篁は二人が(国連軍的に)先任中尉って事で丁寧な口調で自己紹介を行った様だ。 ……うん、流石ですな。

すると明らかに驚いた様子の二人。 ……あれっ、もしかして篁も巌谷さんみたいに有名人なんですか?

そう思って首を傾げると、先に"ハッ"と正気に戻った涼宮(姉)が一歩前に出て敬礼する。 何故か違和感が……


「はじめまして。 私は涼宮 遙、階級は中尉。 戦域管制を担当しています」

「わ……私は速瀬 水月、同じく中尉。 ポジションは前衛」

「涼宮中尉と速瀬中尉ですね。 以後 お見知り置きを」

『……っ……』


――――A-01で有る事は隠した様子。 俺の部下だしバラしても構わないけど、妥当な線だね。


「どうしたんだ? 二人とも」

「あ、あのさ。 部下って事は、やっぱ……」

「これからは一緒に行動されると言う事ですか?」

「んっ? 常にとは いかないだろうけど、そうなるかな~」

「!?」

「……(今の反応ッ)」

「……(篁中尉は~)」


――――俺は当たり前の事を言ったつもりなんだけど、速瀬&涼宮(姉)ダケでなく何故か真横の篁も驚いた様子。


「と、ところで……二人は何処に行く途中だったんだい?」

「……ッ……」

「これから全員で……実機訓練を行うんです……元A分隊のS型5機も、搬入された様ですから……」

「成る程、だからシミュレータールームには居なかったのか」

「はい」

「が、頑張ってくれよ?」

「……はい」


何だか嫌な予感がしたので話を逸らしてみると、速瀬は応えずに涼宮(姉)が返答してくれる。

けど涼宮(姉)は何だか目が怖く、何故か俯いて震えている速瀬は前髪で表情が確認できない。

こ、この二人さっきから何か変だぞッ!? ……と言うか何で涼宮(姉)の方が怖く感じるんだろう。

何故か寒気も感じる……よって無意識に一歩引いてしまった直後、速瀬が突然 俺に突進して来た!!


「どっせぇい!!」

「ぐほおぉっ!?」

「確保ォ~ッ!」

「なっ! 何をするだァーッ! わからんッ!」


≪だだだだだだっ!!!!≫


「待って水月~っ」

「ちょっ、離せって!!」

「うっさいッ! アンタが悪いのよ!」

「篁中尉ーっ、助けてくれェ~!!」

「……え?」


速瀬はラグビーのタックルの如く俺の腹部に肩をブツけて来ると、
振動で噴出す上官をそのまま、両手を俺の腰に回してカラダごと右肩で担いでしまう。

すると そのまま物陰の方へと走り出し、暴れようにもタックルのダメージの為、全く抗えなかった。

よって折角の部下に助けを求めてみるも、状況が飲み込めずポカンと その場で立ち尽くす篁。

ば、万事休す……そんな朦朧とする意識の中、パタパタと速瀬(+俺)の後を追って来る涼宮(姉)の姿が有った。


「や、やめろ……何をする気だッ?」

「決まってんでしょお~?」

「御免なさい白銀少佐……水月は貴方を……」

「……アッーーーー!!!!」


獲物を狙う肉食獣の様な表情の速瀬と、落ち着いているが怖い雰囲気の涼宮(姉)。

二人は物陰で尻餅を着き壁に背を預けている俺を見下ろしていたと思うと急接近してきた!!

直後 既にオチ(気絶し)かけていた俺は、絶叫と共に意識を失った。一体 俺が何をしたって言うんだ……




……




…………




――――10分後。


「……少佐……白銀少佐!」

「うッ……」

「気付かれましたかッ?」

「あ、あれっ? どうしたんだ俺」

「良く解りませんが、速瀬中尉に連行されていました」

「!? そう言えば あの女郎……タックルかまして来やがったんだったな……」

「は、はい。 物凄い瞬発力でした」

「すんません、格好悪い所 見せちゃって」


速瀬のテロ行為により気を失った俺は、篁に揺さ振られて目を覚ました。

仰向けに倒れていた場所は"十字路"から20メートルすら離れていなかった様だけど、
篁が俺を発見した時には、既に速瀬と涼宮(姉)の姿は無かったらしい。

分かり易い場所に倒れており、たった20mの距離を探すのに10分は長いと思うけど、
彼女は5分ほど固まってからその場から動いたので、発見に時間が掛かったみたいだ。

きっと篁の"常識"では上官にタックルしたと言う事実を受け止めるのに時間が掛かったんだろう。

有る意味BETAが奇襲してくる事よりも希少なシーンだったと思うしね~。

けど情けない事には変わらないので苦笑すると"そんな事は有りません"と言って肩を貸してくださる篁さん。

そして そのまま物陰から出ると、自然と照明に俺達の顔が照らされるんだけど……


「!?」

「……っと、どうしました? 中尉」


――――唐突に篁が慌てて俺から跳び引き、バランスを崩しそうになったので踏ん張る。


「あ、あのっ……白銀少佐の御顔に……」

「俺の顔に?」

「き……きき、キッ……」

「????」

「き、キスマークが沢山ッ……付いて……!」

「え"ぇ~っ!?」


――――彼女の言葉に両手で顔を触ってみるが、鏡でもない限り確認できるハズも無い。


「……(あの二人は、それ程まで白銀少佐をッ?)」

「篁中尉」

「は、はい!」

「ちょっと顔を洗って来ます」

「……どうぞ」


冷静な振りをして去りつつトイレで鏡を見てみると、言われた通り俺の両頬には多数のキスマークが有った。

間違いなく速瀬のヤツだな……シミュレーター対戦に付き合わないツケにしては多過ぎだろ~。

幾らでもチュッチュしてやろうとは考えてたけど、一方的にされるのは どうかと思うんですけど。

あっ!? 良く比較してみると、少しだけ違う形のが有る……涼宮(姉)、やっぱ貴女も便乗したんですか?

薄れた記憶を辿ってみれば"わ、私もやる~"とか言ってた気がする。 感触を味わえなかったのが歯痒い。

けど事実ダケでも嬉しいかもしれないが、顔は洗わせて貰うッ。 このままじゃ仕事にならないしね。


≪だが相手は天才だからな……恐れ多いのか知らんが、誰も告白できんらしい≫


「(確かに叔父様の情報は正しかったのかもしれない。 ……でも)」


≪どっせぇい!!≫

≪ぐほおぉっ!?≫


「(何かが、根本的に間違ってる気がします……)」




……




…………




2001年11月22日 正午


「どうでした篁中尉? 横浜基地は」

「流石は国連軍の最前線基地でも有って非常に興味深い造りでした」

「そうッスか」

「……白銀少佐、わざわざ有難う御座いました」

「はははっ。 そんなの"仲間"なんだし当然ですって」

「――――!?」

「ともかく飯にしましょう。 其処の席が良いかな?」

「は、はい」


気を取り直して俺は篁をハンガーへと案内し、S型についての軽い説明をして締めた。

すると丁度良い時間になったのでPXに向かうと、鯖味噌定食を頼んで彼女と並んで席を目指す。

そんな中、篁は器用にもお盆を片手に案内の礼をしてくれるが、9割方俺が好きでやった事だ。

だから"仲間"という単語を強調してみると、彼女は本日数度目の驚愕をしてしまう。

やっぱ初日で戦友扱いは図々しかったかなぁ? でも昨日みたいに俺の気持ちを買ってくれるのを信じよう。

よって篁の反応を流すと俺は空いた席に座り、彼女も隣に腰掛けた。 多少躊躇ってた気がするけど気にしないZE。


「それじゃ~午後はシミュレーター訓練でもしましょうかね」

「……あの」

「あれ、何か予定でも有ります?」

「そ、そうではないのですが……」

「????」

「(やはり――――見られている)」

「篁中尉?」

「!? あっ、その……私に対する口調なのですが」

「口調?」

「はい、恐縮ですが柔らか過ぎる気がします。 ……どうか」

「あぁ~」

「……(情けない話だけど"こんな場所"でも同じ接し方をされると、私が耐えられないかもしれない……)」

「解りました、いや解った。 少し砕けて話す事にするけど良いかな?」

「あ、有難う御座います」

「礼なんて要らないよ。 俺の方こそ悪かったね」

「!? い、いえ……そんな……」


な、成る程……篁ってそんなに真面目な娘だったのか。 あえて敬語を使わないで欲しいなんてッ。

今まで何となく白銀の年齢より高そうな女性には敬語を使うようにしてたけど、彼女にとっては不快だったのか。

こりゃ失態だったね……だから"これから"改めて宜しくする感じで、俺は素直に謝った。

まぁ 身近な人間と砕けて接せる方が、ある意味"あっち"の人付き合いに近いし悪くは無いんだけどね。

それはさておき、何度か目が合ったイリーナちゃん。 遠慮せずに一緒に飯を食いに来ても良かったのにな~。


≪信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ≫


「(私は何て愚かだったの……周囲の目ばかりを気にして)」


≪俺達が煽られながらも横浜基地行きを決めた時点で、仲良くしてくれるつもりだったのさ≫


「("悪かった"と言われたという事は、私の推測が間違いでは無かったんだろうけど……
 白銀少佐が私を"試して"いようが無かろうが、どっちでも良い事だったわ)」


≪はははっ。 そんなの"仲間"なんだし当然ですって≫


「(今の私に出来る事は、彼の期待に応える事だけ……でも)」

『……ッ……』

「(ピアティフ中尉。 彼女も"先程の二人の中尉"と同じ目をしていた)」

「さっきから黙ってどうしたんだ? 篁」

「あ……いえッ、何でも有りません!! 午後の訓練は宜しく御教授 願いますッ!」

「う、うむ。 任せてくれ」


――――凄いやる気だな篁。 こりゃ俺も気合入れて指導しないと、仲良くやるのは難しそうだぜ。




……




…………




2001年11月22日 午後


昼食後、予定通り俺と篁は強化装備に着替えるとシミュレータールームで向かい合っていた。

TEでの彼女のエロスーツは黒とオレンジっぽいモノだった気がするけど、
臨時中尉とは言え再び国連軍の人間となったので、俺と同じ黒と青を主体とした強化装備を着ている。

……良く解らなければ、A-01の強化装備と同じモノを想像してくれれば良いと思う。

しっかし篁って、マブラヴじゃ最も"現実"に近い日本人の顔をしてる上に美人だから、
俺にとっては眩し過ぎる娘だな~。 エロスーツの主体が黒ならともかく、青なのがボディの魅力を引き立てる。


「あ、あの……少佐。 そちらの方は?」

「軍曹達にも紹介しておくべきですね。 ……篁」

「はっ! お初にお目に掛かる。 私は本日 帝国斯衛軍より、臨時中尉として着任した"篁 唯依”中尉だ」

『!?』

「諸君と共に戦える事を誇りに思うッ」

「位置付けは俺の部下って事になるんで、宜しくしてやってください」

『…………』

「……(やっぱり"同じ瞳"ね……彼女達も白銀少佐を……)」

「……(そ、そんなッ。 白銀さんに、部下……がッ……)」

「神宮司軍曹~?」

「あっ……し、失礼しました! 篁中尉、私は訓練部隊の教導官を務めている"神宮司まりも"軍曹です」

「貴官の事は白銀少佐から御聞きしている。 素晴らしい技量を持っていると」

「き、恐縮です」

「……(それに彼女達5人も、訓練兵とは思えない動きをしていた様な気がする……)」


――――向かい合う前に、何となく篁を まりもちゃん達に紹介したのは さて置いて。


「良し、記念すべき第一回目の訓練といこうか」

「はいッ」

「その前に聞きたい事が有るんだけど」

「何でしょう?」

「帝国技術廠が開発した"99型電磁投射砲"……ソレを運用して でのヴォールク・データ。
 大まかで構わないから、一体どれくらい"潜れたか"を聞きたいんだ」

「そ、それは……」


俺の質問に対し、篁は"自分達"が行っていた基本的なハイヴの攻略方法を話し出す。

まぁ 最初は月詠さん達でさえ中層手前が限界だったし予想はついてたけど、反応炉に到達する事は無理との事。

何故なら巌谷さんが言ってた通り、"99型電磁投射砲"でBETAを殲滅しながら進む方法だからだ。

よって篁の中隊ダケで何万ものBETAを倒し切れるハズは無く、やはり中層にさえ辿り着けないらしい。

けど大隊や連隊規模で運用すれば必ず制圧が見える……と言う考えだったらしいが、
そんな矢先にS型・バズーカ仕様の存在を知らされ、結果こうして彼女は国連軍に異動して来たのだ。

そうなった今、巌谷さんは"99型電磁投射砲"の開発を"攻略"では無く"防衛"目的の運用に切り替えた様子。

確かに"攻略"だと多くを運用する必要が有るダケじゃなく、大半が自決するんだろうからコストが掛かり過ぎる。

だから篁には今までの"常識"を完全に忘れ去って欲しい。 俺の部下として戦ってくれるなら尚更だ。


「それじゃ~早速 篁の動きを見せて貰おうかな」

「動き……とは?」

「単機でヴォールク・データを流して欲しい。 これからの参考にね」

「!? り、了解しました」


――――だから頑張って指導する。 初めて得た"仲間"が生き残ってくれる様にする為に。




……




…………




……2時間後。 俺は強化装備姿のまま、篁の戦域管制を行っていた。

戦域管制と言っても只の指導だ、思ったままのアドバイスを続けてるに過ぎないんだよね。

一方 篁はイキナリの新OSでの攻略でも有ってか、初回は1割も進まないウチに大破する。

やはり今までの価値観が拭えず最も無視するべき要塞級と遭遇すると、相手にした最中 突撃級の奇襲を受けたのだ。

それはアドバイスを一切 行わなかった所為でもあり、2回目から色々と口を挟んでみると……


「"足場"を作るのはマルチ・ランチャーだッ! 120ミリだと反動で推進剤を余計に食う!!」

『わ、分かりましたッ!』

「要塞級は避けるな、むしろ通り抜けて壁として使え!」

『く……っ!?』

「後30秒で本道に大隊規模のBETAが出てくるぞ!? 今の腕だと詰む、急げ急げーーッ!」

『と、通り抜けないと――――しまった!?』

「ありゃ~、やられちまったか」

『……ッ……め、面目ないです』


たった五回目で中層あたり迄 進んで大破。 月詠さん達と同じで飲み込みが早すぎるッ。

でもペースは まだまだなので急かした結果、素通りし様とした要塞級の触手を受けた篁。

う~む……何だか俺が悪かった気がしないでもないけど、BETAに狭い道 塞がれたらダメなんだよね。

その時はバズーカが有れば問題ないから……そう考えると急かさずに中断するべきだったのか?

いや、無いなら無いでバズーカ開発前みたいに誘導して切り抜ける方法も有るし……何が正しいんだろう。

……ダメだ。 やっぱり俺は指導には向いて無いよッ、一緒に訓練するのが一番だよね!?

考えてみれば まりもちゃんや伊隅に教えた時も互いに筐体の中だったし、その方が調子が良い筈ッ。


「いやいや大したモンだよ」

『そ、そうですか?』

「考えてみ? 篁はもう自分の"記録"を塗り替えてるんだぞ~?」

『!? ……確かに』

「俺が采配ミスってなけりゃ、もうちょっと先に進めたかもしれないけどね」

『そ……そんな事は有りませんッ、白銀少佐の御指導の賜物です!』

「嬉しい事 言ってくれるじゃないの」(阿部さん調)

『え?』

「ゴホン。 ともかく、次からは俺との2機連携でやろうか……良いかい?」

『は、はいッ! 勿論です!!』


――――だから残り2時間、俺は端末と筐体を往復しつつヴォールク・データを共にした。


「よしッ……開始だ! よろしく!!」

『よ、宜しく御願いしますッ』

「拠点を叩く!!」

『!?』

「返事はァ~!?」

『り、了解!!』


ちなみに俺の仕様は強襲制圧、篁は十八番らしい突撃前衛。 だけど俺の方が前だったりする。

それに妙にテンションが最も上がっていたので、好きなゲームの台詞を口にしてしまった。

拠点じゃなくって反応炉だろ!? 当然 妙な顔をされたので、無理矢理 返事をさせたけどねッ。


「(そうだった……所詮ハイヴは、数多く有るBETAの拠点の一つに過ぎない。
 やっぱり白銀少佐は、根本的に考え方が違う……私も いい加減見習わないと……)」




……




…………




――――あれから2時間弱経ち、俺と篁はPXを目指し通路を並んで歩いている。


「お疲れ様~、篁中尉」

「有難う御座いました、白銀少佐!」

「今回の訓練はどうだった?」

「……悔しいですッ、結局 反応炉へは辿り着けませんでしたから」


後者は彼女の言う通り僅か3回のトライで反応炉に辿り着いたのは俺ダケだったが、
篁はちっとも"悔しそうな顔"をしていなかった。 ……むしろ上機嫌と言って良いだろう。

俺が全面的に先行した2機連携とは言え、自分の戦果に非常に満足できたらしい。

瞳はキラキラと澄んだ輝きを華っており普通に可愛く、今迄の真面目な雰囲気がちっとも感じられない。

た、篁ってこんな表情もできるんだな……流石はTEのヒロインだけは有るぜッ。

思わず見惚れてしまった時も有ったけど、気を取り直して俺もニヤけながら歩いていると……


「――――おっ」

「あれは……」

『…………』


十字路の左右から、まりもちゃん・イリーナちゃんが それぞれ姿を現した。

けど2人の表情は篁と正反対で沈んでおり、トボトボという擬音が良く似合う歩き方をしていた。

そんな様子を目の当たりにして、俺は無意識のうちに声を掛けてしまったのでした。


「さ~て、篁中尉の着任に乾杯~ッ!」

『乾杯!』


――――そんな 夕食に誘った まりもちゃんとイリーナちゃんは、何故か喜んでいる様な気がした。


「(篁中尉の歓迎を兼ねての誘いだったとは言え、やっぱり白銀さんは女心が分かってるわ)」

「(私の気持ちに応えて頂けないのが悲しいですが……貴方の決意を考えると……)」

「(彼女達への配慮……流石は白銀少佐。 でも神宮司軍曹とピアティフ中尉が羨ましいかもしれない)」




……




…………




≪キスなんかで済ませるなッ、俺のモノもしゃぶれ!!≫


≪なっ、なんで……なんでアンタなんかのを……≫


≪水月~……そんな事 言って、独占し過ぎだよ~≫


「速瀬、涼宮……パチュリー、ウッ!」


――――白銀は2人にキスされた事を良い事に、3Pを妄想して つい犯っちゃったんだ☆


「(うぅ……だってアイツ、全然 相手してくれないんだもん……)」


「(キスしちゃった、白銀少佐にキスしちゃった……あぅうぅ~っ)」


――――んでもって白銀にテロった2人も、今夜は我慢できなくて つい犯っちゃったんだ☆




●あとがき●
長らくお待たせした上に一度書き直した割には、こんなクオリティですんませんorz
気になさっていた方が多かったですが、篁中尉は途中で抜けたりはせず最後まで居る予定です。
ラストの謎の台詞については、ググってみるかニコ動でゲイティブフェイスでも見て下さい。


暁せんべい氏による素晴らしい不知火S型・強襲制圧 仕様。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=1887074
(↑のHomeを押しても見れます)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ25
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/10/31 02:49
これはひどいオルタネイティヴ25




2001年11月23日 早朝


「……ッ……」


起床のラッパが鳴る前の時間に、俺はごく自然な感覚で目を覚ました。

しかしカラダは一切動かさず、壁に掛けて有る時計に視線の焦点を薄目で合わせる。

当然 元から顔も時計側に向けていたので、薄目の確認でもあるし俺が起きているとは分からないだろう。

さておき始めは覚醒の直後だからボヤけてはいたが、直ぐ時刻は起床のラッパの15分程前と言う事が解った。


「(今日は遅いな……)」


なぜ目が覚めた上に、眠くない状態で起きないのか? ……それには理由が有る。

"何時も通り"であれば30分前には霞が起こしに来てくれるからであり、
既に起きてるとワザワザ来てくれた彼女に対し、何となく申し訳ないからだ。

別に俺が部屋に居なかろうと咎められる言われは無いけど……霞の好感度は極力 下げたくないんだよね。

近いうちに共同生活するようになって、飯を"あ~ん"って食わせてくれる、
たまんねぇイベントが有った気がするんだけど、今の状況じゃソレに至れるか自信が無いのさ。

だから目が覚めてしまった時は狸寝入りする事で、霞の気遣いをダイレクトに受け止める事にしていた。

まぁ、大抵は目が覚める前に霞に起こされるんだけど……目が覚めた場合は"こうしてる"ってワケだ。


「(今日も顔文字作ったりしてんのかな~?)」


……でも、今日は来ないみたいだ。 霞が起こしに来なかったのは例外を除くと今回で2回目。

確か1回目は18日に顔文字にハマってしまった事から、ゆーこさんの執務室に篭ってたんだよな。(21話参照)

よって同じ事が理由で来てないってのは十分有り得る。 ……って事はやっぱ好感度が足りてないのか~?

徐々に霞が退室する迄の時間が伸びていたので手応えを感じてたんだけど、顔文字に負けるのはショックだ!

今日は一日中 NEW部下・篁の指導をするつもりだったんだけど、午後は霞と遊んでおくべきかッ?

いや、どっちにしろ着替えてから考えるか。 ……けどラッパが鳴るまで彼女が来るのを待つ事にしよう。

着替えてる時に入られるとキャラによっては良いフラグになると思うけど、霞が相手だと速攻 逃げられそうだしね。


≪――――ッ!!!!≫


しかし期待も空しくラッパは鳴ってしまい……これで起される事は無くなってしまった。

よって俺は仕方なくガバッと体を起こすと、端座位になって右手を股間に伸ばした。


「良し……いい子だ」


んでイチモツをトランクス越しに握り締め、バー●ィがザクⅡ改を操縦している時みたいな台詞を言う。

相変わらず全く硬くなっていない。 今や霞を安心して部屋に入れられるのも"この為"だ。

"こっち"来たばかりの時は白銀の体に俺の精神が順応してなかったから朝はギンギンだったけど、
原作通りの白銀ボディに慣れ、毎晩せがれ弄りをも始めるようになった事により無難に朝を迎えられている。

思ってみれば祝勝会の後、速瀬に絡まれて自重できたのは、やっぱり"白銀"の御陰なんだろうなぁ~。

そんな事を考えながら俺は朝の支度を5分で済ませ、既に少佐の階級証を付けた国連軍の軍服姿になっていた。

着慣れたクリーニング済みのモノで、速瀬に"もんじゃ焼き"を浴びせられたのと同じ軍服とは思えない。


「――――ッ」


時間の余裕は十二分に有るので、俺は鏡に向かって敬礼の予習をし始める。

最初は自分の素人目から見てもダサかったけど、今は"それなり"には成ってる気がするな。

まりもちゃんや篁の凛々しさと比べれば心意気の違いでボロ負けだろうが、見た目に限ってはマシってワケさ。

ところで話は変わるけど……少佐にもなると"責任"ってのが有るんだよね~。

流石に管理職とまではいかないけど、少なくとも横浜基地の殆どの人間が日中 着込んでる、
灰色や青のジャケットすら着る事ができないのだ。 イリーナちゃんや御友達の娘らが着れないのと同じ要領でね。

……と言うか着れそうな空気が全く感じられないから、俺がチキンでも有って そう思ってるダケなんだけど。


「!? 行くか」


そう敬礼の練習を続けながら他愛の無い事を考えていると、若干外が騒がしくなった気がした。

あれっ? おかしいな……最短で着替えたのに人通りが多いのか? 珍しい事も有るモンだね。

それはそうと、起床のラッパは"起きろ"と言う合図だから、俺は霞に起された上に既に支度を終えていても、
一人ぼっちで朝飯を食うのを覚悟して、そのまま二度寝したりする事が地味に多い。

個人的に寝てる時に目覚まし等で起こされるのは癪だから一度覚醒してるんだが、霞に起されるのは別だ。

軍人としてはどうかと思うけど、今の微妙な立場や ゆーこさんのフリーダムな性格に助けられている。

……とは言え、やっぱり外の話し声が気になって来たな……何らかのイベントでも発生しちまったのか?

放置しちまったらヤバそうだな、よって"俺"は鏡の"白銀"と頷き合うと、踵を返してドアのノブに手を掛けた。


≪ガチャッ≫


「うぉっ?」

『……!?』


直後 思わぬ"二人"が目に入り、"イベント"と言っても正史とは全く関連しないモノだったのでした。




……




…………




――――起床のラッパより10分前。


≪たったったったっ……≫


「(……今日は遅れてしまいました。 顔文字、奥が深いです)」


≪たったったったっ……≫


「(到着です、走って疲れました)」


≪――――ぴたっ≫


「すぅ……はぁ……(白銀さん、今日も私が起します)」


≪コツッ≫←踏み出す霞


「何をしている?」

「!?」

「なっ……(子供?)」

「……ッ……」

「済まない、驚かせてしまったか?」

「……いえ」

「そ、そうか。 それなら良いんだが――――」

「…………」

「……(何か妙ね……似ている)」

「……?」

「……(ソビエト連邦陸軍の二人と……)」

「誰かに……似ていますか?」

「!? あ、あぁ……知人とな」

「……そうですか」

「申し送れた。 私は昨日より臨時中尉として国連軍・横浜基地に着任した"篁 唯依"だ」

「社……霞です」

「社か、宜しく頼む」

「はい」

「……ッ……」

「…………」


≪じ~~っ……≫


「……(ま、間が持たないわね……)」

「篁さんは……帝国軍の人だったんですね……」

「んっ? あ、あぁ……良く知っていたな」

「そして、白銀さんの……部下……」

「!?」

「……違いますか?」

「い、いやっ……違わないが」

「――――篁さん」←目がマジ

「な……なんだ?」

「こんな時間に……貴女は何をしに来てるんですか?」

「そ、それは」

「何をしに来てるんですかッ?」

「うぐっ(……な、何なのこの娘はっ?)」

「分かります……"白銀少佐"が出てくるのを、待っていたんですね? 例え何十分経とうが……」

「な、なななっ!?」

「……(あれ、私は何で"こんな事"を言ってるんでしょうか?)」

「……(まるで私の"全て"を見透かされているような……何者ッ?)」

「……(こんな感情、初めてです。……わかりません)」

「し、癪では有るが……社の言う通りだ。 では社は白銀少佐に何の用が?」

「!?」

「社?(反応が有った。やっぱり、彼女も少佐に……)」

「……ッ……(私は白銀さんを起しに来た。"それだけ"なのに……)」

「どうした?」

「……(どうして今、この人に言うのを躊躇っているんでしょうか?)」

「……(起こしに……来てたのよね? 野暮な事を聞いてしまったかしら)」

「わ、私の用は――――」


≪――――ッ!!!!≫


「むっ!? これは……」

「ラッパが……鳴ってしまいました」

「もう、そんな時間か」

「はい」

「むぅ……」

「間に合いませんでした」

「……ッ……」

「白銀さん、間違いなく起きました」←若干 威圧感

「わ、悪かった」

「だから……せめて挨拶します」

「挨拶?」

「はい、待ちます」

「待つのか」

「待つんです」

「付き合っても構わないか?」

「構いません」


――――5分経過。


「……成る程、新OSは其処まで考えて作られているのか」

「はい」

「まさか社のような年齢の者が開発にも携わっていたとは……」

「意外……ですか?」

「そんな事は無い、立派なモノだ。 しかし」

「……?」

「其処まで話してしまって良かったのか? 着任したばかりの私などに」

「大丈夫です。"白銀さんの部下となる人"であれば、知る権利は有る筈ですから……」

「!? そ、そうか」

「ですから白銀さんの事……助けてあげてください」

「――――了解した」


≪ガチャッ≫


「うぉっ?」

『……!?』

「あ、あれ……何で霞と篁が其処に居るんだッ?」

「……白銀さん、おはようございます」

「白銀少佐! お早う御座いますッ」

「お、おはよ~」


≪大丈夫です。"白銀さんの部下となる人"であれば、知る権利は有る筈ですから……≫


「(白銀少佐の部下と言うダケで其処まで信用される。 途轍もないカリスマが有るのね)」

「(……"覗いて"解りました。 篁さんは、きっと白銀さんの力になってくれるヒトです)」




……




…………




自室の扉を開いた俺を出迎えたのは意外にもウサギとカメ……いや霞と篁だった。

何故か並んでこっちを向いて立っており、霞は若干 瞳を見開いた後に挨拶したダケだけど、
篁は まりもちゃんみたく俺に向かって凛々しく敬礼しながら挨拶してくれる。

この二人の反応は定石っぽいんだが……ど~してこの二人が一緒に居たのかが謎過ぎるぜ。


「もう一度聞くけど、ど~して霞と篁が其処に居るんだ?」

「はっ。 白銀少佐を此処で御待ちしていたところ、社と鉢合わせまして」

「……お話しながら待ってました」

「へぇ~」


……と言う声しか出てこない。 霞はともかく篁って真面目過ぎるにも程が有るだろ常識的に考えて。

上官の俺が出てくるまで待ってるつもりだったなんて……迂闊に昼寝もできないではないかッ。

でも俺がダラけていたダケとも言う。 やっぱ命に関わるんだからマジでいく方が良いのかな~。

そうすると鬱展開になった時ズルズルとヘコんじまいそうだし、やっぱり俺は俺のペースでいこう。


「挨拶できました」

「良かったな、社」

「はい。 ……では」

「霞、行くのか?」

「――――またね」


≪たったったったっ……≫


……そんな事を考えていると、霞は例の如く手を"最低限の動作"で振り小走りで去って行った。

彼女が走っている姿は余り見た事が無いが、恐らく人に目撃されるのを避ける為の行動だろう。

ゲームでは普通に上層を歩いていた気がするけど、こんな時間に俺の部屋に来た意味を誤解されると困るのだ。


「白銀少佐、彼女は一体?」

「簡単に言うと ゆーこさんの助手ってトコかな」

「それでは……」

「うん、ああ見えて"デキる娘"だよ」

「良い娘でしたしね」

「おっ。 分かるかい?」

「少し話しましたから」

「どの程度?」

「新OS等の開発にも携わっていたと……」

「へぇ……だったら随分と懐かれたモンだな~」

「そ、そうなのですか?」

「たぶんね」


俺には彼女のリーディングは効かないけど、心を読まれる篁が人見知りする霞を相手に並んで俺を待ってた位だ。

つまり篁は腹黒さを全く持っていない。 TEを良く知らない俺にとって、霞と彼女の接触は良い誤算だったな。

霞が"俺"をどう想っているのかは相変わらず解らないけど、きっと篁の事は100%悪く思って無いだろう。

性別が同じな事も地味に響いているのかな? ともかく霞の良い"お姉さん"としてやってけるかもしれない。


「では社は何故白銀少佐を起こしに来ていたのです?」

「そ、それは……(鑑の記憶の所為なんだけど、それを言っちゃ不味いよな~)」


≪では、社は何故白銀少佐を起こしに来ていたのです?≫


『!?(何処かで篁さんが……白銀さんに"私の事"を聞いている気がします……)』

「それは?」

『……ッ……(勝手に覗いちゃダメです、でもっ……)』

「霞は……俺の妹みたいなモンだからかな?」

「妹?」

「だから"お兄さん的な存在"の俺を毎朝起こしに来てしまうのです」

「お、起こしに来てしまうのですか」

「来てしまうのDeath」

「……(彼女が白銀少佐を"お兄さん"と呼ぶ様子……生憎 想像できないわね……)」

「納得してくれたかい?」

「は、はい」


≪――――お兄さん、お兄さん、お兄さん、お兄さん≫


『!?(こ、この篁さんのイメージ……どうやら白銀さんは私の事を……いもうと、みたいに……)』


≪お兄さん、お兄さん、お兄さん、お兄さん――――≫


『……ッ……(たける……お兄さん、良い響きかも……しれません……)』


彼女が ゆーこさんの助手であっても、正直なトコロ俺を起こしに来る意味は無いと感じるのは当然の事。

だから適当な事を言って誤魔化すんだけど……霞の気持ちを考えず、つい妹分とブッちゃけちゃったんだ☆

恐らく霞は嫌だろうけど……何せ俺の心は読まれないのだ。 他の言い訳が思い浮かばなかったダケでもある。


「じゃあ、PXに行こうか」

「そうですね」


――――勿論この時の俺は、篁経由で霞に"言い訳"が漏れていたとは夢にも思っちゃいなかった。




……




…………




2001年11月23日 午前


≪――――ガタッ≫


「ご馳走様、それじゃ行こうか~篁」

「はい少佐。 ……それでは」

「あっ」

「……ッ……」


PXにやってくると、俺・篁・まりもちゃん・イリーナちゃんと言うメンバーで朝食を摂った。

皆 昨日で仲良くなったので会話はソレなりに弾み、篁は まりもちゃんにも敬語を使う事となる。

何故なら俺が二人に敬語で話しているからであり"エア・リード"に定評の有る篁には感心するね~。

その篁の"やる気"に今日も応えてやろうッ。 この気持ちを唐突に比喩してみると――――




『提供:森●製菓』(及びドイツ:ス●ーク社)

――――私のオネエサンが作ってくれた、新しい戦術機。

それは不知火S型で、白銀は少佐でした。 その機動は甘くてクリーミー……いや速くて正確で、
こんな素晴らしい戦術機を作って貰えた私は、きっと特別な存在なのだと感じました。

今では私が教える側。 篁に教えるは勿論3次元機動。 何故なら彼女もまた、特別な存在だからです。




まさに……そうだね、ヴェルタース・オリジナルだねッ!

こんなカンジで決心したって事で、会話にひと段落つくと、俺は速いペースで掻揚げうどん(大盛り)を食い始めた。

すると俺を横目に篁も慌てて蕎麦(普通盛り)を口に掻き入れ俺と同時に立ち上がると、
並んで座っている まりもちゃんとイリーナちゃんに一礼し、後に続いて来てくれた。

う~む、本当は一番 最初に食い終える事で篁が俺を待つのを避ける為だったんだけど、
彼女のペースに押されて、つい反射的に立ち上がってしまった。 ……どうでも良いけど、全員麺類ね。

今度はもっと皆で談笑できる時間を延ばせる様に調節しよう。 コミュニケーションも仕事のうちだし。

……そんなワケで俺と篁が立ち去った事で、テーブルには面食らった まりもちゃんとイリーナちゃんが残った。


「……(白銀さん……)」

「……(白銀少佐……)」


≪チラッ≫ ←視線を交わす まりも&ピアティフ


「……はぁ」×2


―――― 食器を返却しチラッと二人を見てみると、何処か寂しそうだった。 やっぱり話し足りなかったのかな?




……




…………




……15分後。

グラ●ィウスのオプションの様に付いて来る篁を背後に、俺はシミュレータールームに向かった。

そして互いにロッカールームに入り着替え終えると、やはり先に済んだらしく篁の姿は無い。

今のうちに端末の設定でも弄っておくかな~? そうスタスタと歩きながら考えていると――――


「巴ッ左だ!」

『と、突撃級? しまったっ!』

『雪乃!?』

「馬鹿者ッ、余所見をしている場合か戎!」

『き、きゃああぁぁっ!!』

「神代……後方で巴と戎が撃破された。 後は出来る限り進む事を考えろ!」

『――――了解!』

「!? 本道に連隊規模のBETAが出現したッ、数は約2000!」

『くそっ、こんな所で殺られて堪るか!!』


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


なんと先客がおり、オペっていると思われる月詠さんのケツ……いや後姿が目に入った。

どうやら斯衛トリオが3人でヴォールク・データを行っているようで、中層で巴のS型が大破。

ソレに気を取られた戎も要塞級の触手の餌食となり、残りは強襲制圧 仕様の神代機ダケとなってしまう。

けど神代はフォールディング・バズーカを駆使して下層手前 辺りまでは進んでいたが、
4発を打ち切り弾切れとなると、二丁の突撃砲とサブ射撃を使ってでの最後のスパートを掛ける。

……しかし頑張ったモノの、やがて神代もBETAに飲み込まれて撃破され全滅。

よって"状況終了"となり月詠さんが眺めるモニターに3人の顔が現れると、
今がチャンスと俺は彼女に近付いて声を掛け、同時に篁がエロスーツ姿でロッカールームの方から歩いて来た。


「月詠中尉」

「……ッ……白銀少佐、それに篁中尉も」

『!?』×3

「おはよ~ッス」

「つ、月詠中尉。 私は……」

「話は既に聞いております」←噂的な意味で

「そうですか」

「(なら改めての紹介は要らないかな~?)……ところで、訓練中でしたか?」

「はい」

「随分と早い時間ッスね。 俺達も急いで来たつもりなんですけど」

「……我々は出来る限り午前のうちにシミュレーターを行い、午後に振り返る事にしているのです。
 帝国斯衛軍の自分達が日中ずっと、此方で訓練の場を借りている訳にも ゆきませんから」

「成る程」

「先程の様子は御覧に?」

「えぇ、途中からですけどね。 詳しく言えば巴がヤられちゃった辺りからかな?」

『……ッ……』×3

「正直もうちょい頑張って欲しいトコでしたね~」

「申し訳ありません」

「なんだか教えた時より動きが硬い気もしましたけど、何か有ったんですか?」

「その、技術はむしろ上がっているとは思うのですが……私の采配や、皆の判断力に問題が有るのだと思います」

「どう言う事です?」


――――首を傾げる俺に対し、珍しく眉を落とす月詠さん。 オルタ側じゃ珍しい表情かもしれない。


「先日は白銀少佐の指示の御陰で理想的な攻略ができたのですが、
 私達の判断ではどうにも旨くゆかず……色々と試したにも関わらず手詰まりな状況なのです」

「ログを見ても難しい感じですか?」

「はい。 例えると百聞は一見に如かず……むしろ"百見は一触に如かず"とでも申しましょうか」

「ふぅむ(……考えてみりゃ、4時間しか付き合ってないしな~)」

『し、白銀少佐ッ!』

「うわっ、びっくりした」

『あのッ』

『御願いが有るのですが~』

「お前達ッ?」

「……"御願い"って?」

『それは――――』


何となく予想が出来てしまったが、俺はモニターに視線を移すと再び首を傾げる。

すると俺を(内心でのみ)ビックリさせた神代が、斯衛トリオの代表として真剣な表情で口を開く。

その内容はやはり"予想通り"だったけど、良い機会だし断る理由は無かった。




……




…………




――――30分後。


俺は相変わらず まりもちゃんの指導を受けているB分隊を横目に(Aー01は今日も実機訓練)、
月詠さん・斯衛トリオ・篁の不知火S型5機が陣形を維持してハイヴ内を駆け抜ける様子をモニターで眺めている。

陣形とは勿論"インペリアル・クロス"で月詠さんを先頭に、中央には"制圧後衛"の神代機が配置。

彼女の左右を"強襲掃討"の巴と戎が固め、篁は月詠さんと同じ"突撃前衛"で神代の背中を追っている最中だ。

……で俺はと言うと、彼女達の管制をやってたりする。 強化装備だと目立つので軍服姿に戻って。

それはそうと嗚呼……冗談抜きでド素人なのに何故こうなってしまったんだろう。

昨日の篁との訓練で管制には懲りてたから、本来なら一緒に動きながら指示するつもりだったのに~。

でも6機は中途半端な上、何より"インペリアル・クロス"を使いたかったから誰か余らせる必要が有った。

だから俺が管制するしかなかったワケで……月詠さんは采配に自信が無いって言ってたし無理って事で……

仕方無いと言っちゃ仕方無いんだけど、マブラヴのエース5人に対して管制&指導を同時になんて無理過ぎるよ!!

よってヤケクソになりながらもヘタクソの管制と、"自重"と言うリミッターを外した指導を行っている。


「皆は自分の技術を当てにし過ぎている。戦いはもっと有効に行うべきだ」

『…………』×5

「その"方法"については、これから指示してみるが……その前にコレだけは言っておこう。
 俺達の敵はBETAなのか? それとも反応炉なのか? ハイヴの攻略では後者で有る事を忘れないで欲しい」

『はっ!』×5

「では状況開始ッ! 今回は反応炉に到達する事を目標とする!!」

『了解!』×5


――――適当にブ●イト艦長の名言をミックスした俺の台詞からヴォールク・データが開始され、早くも中盤。


「左翼! 弾幕薄いぞ、何やってんの!?」

『り、了解ッ! アルカディア04・フォックス3!』


――――俺の怒声に、要撃級を死角に左から迫る戦車級の大群に気付いた巴がチェーンガンをバラ撒く。


「戎ッ、対空砲火なにしてんのーっ!」

『!? アルカディア05・フォックス2!』


――――ノリで叫んだ台詞の意味を理解し、天井から落ちてくる突撃級3体に120ミリをブチ当てる戎。


「前方の敵に集中砲火だ!!」

『(確かに この要塞級は仕留めるべきか)アルカディア02より各機へ! 私は囮になる』

『アルカディア06、フォックス2!』


――――正面の要塞級を月詠さんは無視し、彼女に気に取られている隙に篁の120ミリと各機の36ミリで撃破。


「大量のBETAが来るぞ!? 神代、ガンダ……バズーカでスタンバっておけッ!」

『了解ッ!!』

「フォールディング・バズーカ。 ……ってぇーーい!!」

『アルカディア03、フォックス1ッ!!』


――――絶妙なタイミングで放たれたバズーカの一撃で、盛大に吹き飛んだBETA達。


『くッ! しまった!?』

『篁中尉~ッ!』

「アルカディア05、構うな! 奥に進む事ダケを考えろッ!」

『は、はい』

『くぅっ……不甲斐ない』

「篁も落ち込むなッ! 撃破されもせずに、一人前になった奴が何処に居るものか!!」

『!? も、申し訳ありません』


――――下層で慣れていない篁機が咄嗟な反応の遅れで撃破されたが、無理が有る励まし方をする俺。


「反応炉に到達。 作戦成功だ、良くやった!」

『ふぅ……(まさか白銀少佐が戦域管制となったダケで、こうも簡単に到達できるとは……)』

『バズーカ……やっぱ凄い武器だな~』

『い、何時の間に其処まで使いこなせる様になったの? 巽』

『良く解らない……けど』

『ふふふっ、白銀少佐の御陰だと言う事は私でも解りますわ』

『そ、そうだな。 指示が凄い的確だったし……』

『月詠中尉、面目ないです。 盾を持つ私が撃墜されてしまえば、
 今の様に反応炉に到達しても破壊に危険が伴うと言うのに……』

『とんでもありません。 初めて連携を組んだとは思えない程の腕で有ったかと』

『あ、有難う御座います』

「……ッ……」


……結果。 初めてのガチ管制&指導の戦果は上々で、4機を残して彼女達は反応炉に到達した。

唯一 脱落した篁は、撃破された直後は非常に悔しがっていたケド、今は昨日みたいに瞳に輝きを放っている。

月詠さん+斯衛トリオも、篁と共に和気藹々とした会話をしていて非常に良い雰囲気なんだが……

ブ●イト艦長に成り切った事を思い出すと……死ぬ程 恥ずかしいです。 だからモニターから視線を逸らす俺。

そんな自分でリミッターを外して置きながら後悔する俺を気にして、月詠さんが声を掛けてくれた。


『……白銀少佐、どうなされました?』

「すんません」

『はい?』

「ちょっと急用を思い出しました、今日は篁中尉と5人で訓練してくださいッ」


≪――――ダッ!!≫


『あっ』

『白銀少佐ッ!?』×3


だけどね月詠さんッ! その"優しさ"が逆にキツいんですよ、俺のハートはデリケートなんですから!

よって俺は恥ずかしさの余り、その場から猛ダッシュで逃げ出してしまった。

グスン、5人ともマジで御免なさい……特に篁。 月詠さん達と、ゆっくり訓練していってね!!!


『……(ま、まさか……私の衛士としての腕は白銀少佐の目に適わなかったのッ?)』

『……(篁中尉と共に訓練しろと言う事は……うかうかしていると追い抜かれると言う事か)』


≪篁も落ち込むなッ! 撃破されもせずに、一人前になった奴が何処に居るものか!!≫


『……(いえ違う。 彼は常に"皆"の事を考えてくれている……だから、私に出来る事は……)』

『では、引き続きインペリアル・クロスでの訓練を継続しよう。
 目標は5機とも健在での反応炉の破壊だ。 今日中に必ず成功させるぞッ!』

『――――了解!』×4

『……(白銀少佐の部下として、少しでも彼に追い付く事に務めるだけ)』

『良しッ、次もヤるぞ~!』

『巽』

『何だ雪乃?』

『す、少し私とポジションを代わらない? 順番的には、次は私じゃ……』

『私も代わりたいですわ~』

『だ、ダメ! ダメだッ。最初のはともかく、今回は私が白銀少佐 直々に受けたポジションなんだからなっ!』

『えぇ~っ?』×2

『……(それにしても、神代少尉も"彼女達"と同じ目をしているわ……はぁ)』




……




…………




2001年11月23日 午後


シミュレータールームから逃げ出した俺は自室に直行し、昼過ぎまで枕を涙で濡らしていた。

そして目が覚めると遅れた昼食を一人で摂り、スタスタと執務室を目指している最中だったりする。

篁達の様子を見たいのも有るけど、少なくとも今日一日は無理だ。 恥ずかしさが未だに拭えない。

ちなみに何故、執務室を目指しているのかと言うと……理由は簡単。 例えるのであれば、そうだな~。


――――仕事が無いって言われた時に、じゃあ学会活動できるじゃない!


「クンツォ!」


――――否。 訓練できないって言われた時に、じゃあイベント進行できるじゃない!


これなんて杉名ミク? つまり訓練が恥ずかしいって事で、俺は ゆーこさんに"仕事"を貰いに行くのだ。

タマパパ関連のイベントには若干早いから、何かオリジナルのイベントでも隠れてれば幸いって感じ。

無かったら無かったで構わないし帰って再び寝よう。 たまにはグウタラな日も良いよねッ? 良いよね!?


≪ガシューッ≫


「失礼しま~す!」

「…………」


――――そんな感じで無理矢理テンションを上げて執務室に(勝手に)入ったんだけど~。


「ゆ~こさん?」

「……ッ……」


≪カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ≫


――――入室して来た俺に見向きもせず、一心不乱にキーボードを叩くゆーこさんの姿が有った。




●戯言●
霞と唯依さんの接触とヴェルタース・オリジナルのネタがやりたかったダケの回です。
先日より更新は早かったみたいですが、今回も微妙なクオリティで申し訳ないorz
意外と御指摘なかったブライトネタは偶然の産物です。そろそろ重要イベントはじまるよ!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ26
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/11/22 04:34
これはひどいオルタネイティヴ26




2001年11月23日 午後


「あの~」

「…………」


≪カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ≫


継続する音を背景に、俺はタジタジとしながら ゆーこさんに声を掛けた。

けど ゆーこさんは俺が眼中に無いのか、微塵にも反応せず作業を続けている。

何かタイミング悪かったかな……こりゃ"仕事"を貰えそうな雰囲気じゃないぞ。

表情はディスプレイで隠れて見えないんだけど、今 迂闊に邪魔したら殺されそうな気がする。


「ん~☆」

「…………」


……よって その場で首を捻る俺。 だが道化師のノリと言う、遊び心は忘れない。

一方 俺が入室して30秒経過しようが、案の定ゆーこさんは俺を空気としか思っていない様子。

ワザと無視されてる可能性は低いと思うけど、もし そうだったら相当 切羽詰まってるって事になる。

だとしたら原作の白銀より"俺"の行動の方が彼女に貢献できていなかったって事になるんだよな……

それはマジで無いと思いたいけど、俺が来た時点で原作とは"別"となったオルタの世界に"確実"は無い。

きっと普段の ゆーこさんが"今の彼女"なのかもしれない。 原作でも彼女の深い内面なんか晒されて無かったし。

かと言って自問自答しても、勝手に自分の満足のゆく答えを無理矢理 探し出すに過ぎない。

けどソレはソレで良いって事で考えるのは中断する事にしたんだけど、"今これから"はどうしよう?

邪魔しちゃ悪そうな雰囲気とは言えど、このまま退室するのはちょっとなぁ……なら、こうするか。


≪――――ボフッ≫


俺は相変わらず続くリズムの良いタイピング音を聞きながら、ソファーの方へ歩くと無造作に座った。

……そう、彼女が"作業"を終えるまで待つ事にしたのだ。 何をしてたのか気になってたしね。

その後 何か"仕事"を貰えれば、篁達に訓練を無理矢理 切り上げた言い訳もできるってワケだ。


「はぁ……」

「…………」


良い座り心地なので無意識のうちに溜息をつき、パソコンに隠れている ゆーこさんの方向を見る。

でも全く"作業"が終わりそうな様子も無く、今度は天井を仰ぎ続け目を閉じ……そのまま数分。

タイピング音は未だに続き、凄まじいブラインド・タッチ……良く手が疲れないな、ゆーこさん。

しかし暇だ……暇すぎる。 もしかして、このまま彼女には良く有りそうな徹夜ってパターンですか?

だったら いずれ諦めて戻る事になるんだろうけど……それなら此処で暇を潰すより篁達の所へ……

いや、まだ体感的には5分だ。 見切りをつけるには早すぎるし、せめて1時間は待ってみよう。

ソファーの感触が気持ち良いから寝てしまうかもしれないが、そんな俺に対する彼女の反応も"イベント"になる。


「んっ……戦術機のカタログ?」


されど理想は ゆーこさんの作業終了後、俺が何食わぬ顔で"仕事が欲しい"と告げる事だ。

よって起きている必要が有り、何か暇を潰すモノが無いかと辺りを見回すと資料の山を発見。

ソレを漁ってみると流石は娯楽の無い世界、俺の関心を惹くようなモノは殆ど無く、読んでも眠気が増すダケだろう。

少なくとも現代日本の新聞の方が100倍楽しめる。 それ以前に文章の書き方が漢字が無駄に多くて"古い"。

けど唯一 俺が興味を感じたモノが戦術機のカタログ……では無く設計資料の様な分厚い本が数冊。

これも正直"文章"では楽しめないだろうけど、戦術機と言う人型メカの作り方が細かく載っている。

腕のパーツはこうなっていて、足のパーツはこうなってる……みたいな、
プラモデルの説明書を死ぬ程 バージョンアップさせた様な内容で、ペラペラと捲るダケでも面白い。

もし現代に持ち帰ったら何か賞でも貰えるかもね。 ンなワケで、俺は暇を潰すモノを手に入れたのでした。




……




…………




――――2時間後。


≪パラッ≫


「……むっ?」


何度か一瞬タイピング音が止まる事が有り、その度に ゆーこさんの方を向いた俺だったけど、
彼女が意識していないにせよ全てフェイントで、冷めた(と思われる)コーヒーを口にしたり、
トントンを自分で肩を叩いたりしていたダケで、謎の"作業"が終わったのでは無かった。

結局2時間も経っちまったけど、幸い設計資料を見つけた御陰でガン●ム好きな俺は時間を潰せてたが……

たった今 流し読みし終えた資料の次に手にした本を開いた直後、俺は本を裏返しにしてタイトルを確認する。


「この本、前に読んだなぁ……」


言葉の通り、全部 読み終えちゃったみたいなんだ☆ くっそ~、2時間も待ったのに終わらねぇのかよ。

携帯が有ればネットで幾らでも時間を潰せるのに、これ以上 何をして待ってれば良いんだッ?

此処まで待つと逆に引っ込みがつかなくなってしまい、勝手に一人でムキになっていると……


≪――――カタンッ≫


「ふぅ……」

「!?」


トーンの違うタイピング音をラストに"続いてた音"が途切れ、ゆーこさんの溜息が漏れた。

そうか、とうとう終わったんだッ……タイミングが絶妙に良くて助かったよ。

よって立ち上がると、ゆーこさんは ようやく俺に気付いた様で顔をこちらに向けてきた。

……やっぱり無視してたんじゃなくって、眼中に無かったのね……複雑な気持ちだけど安心したZE。


「あっ、白銀。 居たの?」

「居ましたよ~、2時間も前からね」

「そう……気付かなかったわ」

「あんなに夢中になって何をしてたんですか?」

「ふふんッ、見てみなさい」

「はい」


彼女は疲れた表情を僅かに含めながら その場で胸を張ると、近付くよう催促する。

対して俺は言われた通り ゆーこさんに近付いて彼女の後ろに回り込んだ。

そして何やら表示されているディスプレイのモニター。 なんだコレはと覗き込んでみると――――


「アッラァー!!」


≪――――ガタンッ!!≫


「白銀、何ズっこけてんの?」

「ちょっ! こ、これって……!!」

「戦術機よ?」


アーロッ!! ソレが何か判明した直後、俺は道化師のノリで盛大にズッコケてしまった。

何故ならメモ帳の様なファイルには"アスキーアート"で不知火S型の様な戦術機が描かれていたからなのだ!

ちょっ……おま……どんな"重要"な作業をしてんのかと思ったらAA作ってたのかよ!?

しかし凄い進歩だなオイ、5日前に3行使って作るウサギのヤツを教えた ばっかだって言うのに……

絵はヘタクソな筈の彼女が、もう50行以上使って戦術機のAAを完成させるか普通に有り得ないんですけど。

しかもAAの職人は基本的にエディターを使って作るのに、手打ちでヤるとか尋常じゃ無いZE。


「す、凄いな~……何時の間にこんな……」

「気分転換に試してみたら、なんか旨くいっちゃったわ」

「"気分転換"?」

「察しが良いわね」

「は?」

「"並列処理装置"って言えば解る?」

「ぇあ? あぁ~……もしかして、行き詰ってます?」

「癪だけど、その通りよ……アンタと会って暫くしてから どうしてか急に進展したんだけど、
 最後の最後で止まってるの。 後ひとつ"何か"を閃けば全てが整うって言うのにッ」


≪――――ドンッ!!≫(デスクを叩く音)


俺は気分転換で あんなAAが作れる事が凄い……と思った意味で言ったんですけど。

どうやら違う捉え方をされた様だ。 まぁ、俺にとっては都合の良い展開だけどね。

しかし帰還イベント無しで"最後の最後の方"まで進んだって凄くないか? 何が彼女をそうさせたんだろう。


「まぁ、後 一歩なんですよね?」

「言った通りよ」

「其処まで進んだんなら、焦る事なんて無いんじゃないスか?」

「ふん、アンタは気楽で良いわね……むしろ完成しそうだからイライラするのよ」

「ですよねー☆」

「ひっぱ叩かれたいのッ?」

「サーセン」

「妙ね、何で謝られてるのにムカつくのかしら?」

「気のせいですって~、きっと疲れてるんですよ」

「まぁ……そうかもしれないわね」

「そうですって」

「……ッ……」


……少しだけ、妙な沈黙が続く。 こりゃ仕事とか貰えそうな雰囲気じゃないな~。

でも"その為"に2時間も待ったんだし、空気を読まずとも言っちまうしかないってね。

だから俺は ゆーこさんの論文に対する"必死さ"を、ひとまず置いておく事にしたんだけど。


「あの……ゆーこさん」

「――――ハッ!?」

「うわっ、びっくりした。 どうしたんです?」

「……そう言えば白銀……あんた前、"量子電導脳"とか言って無かった?」

「え、えぇ。 そんな事を言った気がしないでもない気が」(19話参照)

「"あの時"は単なる誤魔化しだったとは言え、聞き流した私はどうかしてたわね」

「どう言う事です?」

「"量子電導脳"の存在は"並列処理装置の理論"の完成を無しに絶対に有り得ない。
 あんたがソレを口にしたって事は、あたしが知らない"何か"を知ってたって事なのよッ!」

「そ~なのか~」

「"そうなのか"じゃ無いでしょォ!?」


≪――――ぐぃっ!!≫


「おわっ!」

「よくも隠してたわね!? さっさと吐きなさいッ! "量子電導脳"を知ってるアンタが知らないハズ無いわ!!」

「ご、誤解ですって! 無意識で自然に口に出たダケの単語だったんですよ~っ!」

「無意識ッ? 何でよ!?」


≪ガクガクガクガクッ!!≫


「き、ききききっとループの"記憶"が混ざってるるるるんだと思います~っ!
 ししし知ってたらあああ会った時に、いいい言ってますって……って言うか揺らさんといて!」

「だったら その"記憶"の中から思い出しなさい! 早くッ! さっさと!!」

「そ……そんな直ぐ出てくるモンじゃ無いですってば~!」

「うるさいッ! 何とかしなさい!! アンタが少しでも思い出せば"完成"するのかもしれないのよ!?」


そういえば言っちまってたなぁ……ゆーこさんの気を逸らす為に何の考えも無く。

此処で"白銀の元の世界"の事を告げれば原作のイベントが進むんだろうけど、俺は言う気にはなれなかった。

何せ帰還イベントには一週間以上早いし、数式を持ち帰るのは更に先になるからだ。

だからこのタイミングで"往く"のは俺にとって賭博になる。 だから誤魔化すしかないのさ。

……それはそうと、どうですか? 今の状況。 そういや興奮してる ゆーこさんって斬新。

彼女は両手を俺の両肩に置いてガクガクと揺さ振っているのですが、白銀のガタイを考えてください。

ゆーこさんの両手ダケで動くハズもなく、カラダ全体を使わないと揺らす事などできません。

よって密着されており、大きなおっぱいが某(それがし)に ぼよんぼよんと当たっているので候。

ちなみに俺は早漏。 ……いや今のは洒落だけど、このままだと普通におっきしちゃうんだお( ^ω^)

もはや理論の事など何処へやら。 どうにかして"この状況"を全力でスルーしなければならない。

しかし傍から見るとドラマの修羅場。 同年代と思われる美女が必死に俺にしがみ付いて体を揺らしてくる。

正直……限界です。 んっ? そんなウチに疲れたのか揺らすのが止まったぞ? 今がチャンスだッ!


「はぁ……はぁ、はぁっ……」

「……ッ……」

「し、白銀……さっさと思い出しなさい、思い出すのよッ」

「……ま」

「ま?」

「マホトォーーッ!!」

「――――んんっ!?」


彼女が疲労した今……この状況で俺がするべき事は、なお衰えない口を封じる事。

だから白銀は、つい ゆーこさんにキスしちゃったんだ☆ 口を塞ぐなら他に方法が有るだろって?

冗談じゃねぇッ! こんな美女に(違う意味で)迫られて此処でキスさえしない奴なんて原作の白銀一人で十分だ!!

もし ゆーこさんに体を迫られたら俺は鑑の存在と格闘しつつも、身を委ねてしまうかもしれないけど、
責め側となった俺に"キス以外する気がない時点で"進展はしないから、得意何も問題は無いさ☆

しかし大人のキッスUMEEEEE!!(味的な意味で) 速瀬には悪いがレベルが違いすぎるんだぜ。


「…………」

「んっ、ちゅ……んぅっ」


キスしてしまった直後から数秒は、ゆーこさんは雰囲気に飲まれてしまった様で俺に唇を弄ばれた。

そりゃブチュっとイかれるとは思って無かっただろう、仕方無いとは言え彼女もオンナなのですな。

けど10秒ほど経つと彼女のカラダが一気に堅くなり……"しでかされた事"を理解したのだろう。


「――――っ」

「あっ」


そうなると噛まれたり引っ掛かれたり、股間に膝の一撃を食らう前に離れるに限る!

初めて会った時は、引き際を誤って強烈なビンタを貰っちゃった事だしね~。(2話参照)

よって唇を離し無事に距離を取ると、いかにもタイミングを外した様子の ゆーこさんの姿。

いわゆる口を開き"鳩が豆鉄砲を食らった様な顔"をしている。 これも貴重なワンシーンかもしれない。

しかし彼女の表情が怒りを表すのも時間の問題だろう、切羽詰ってた質問に唇で応えてしまったんだからな。

ぶっちゃけ非戦闘員のクセに ゆーこさんって迫力有って怖いんだよね……ソレに押されたら最期。

此処で更なる判断を誤ってはヘタすると脳を解剖してでも俺の記憶を探り出す暴挙に出てくるかもしれない。

だったらどう回避するのか? ……答えは簡単。 彼女の怖い顔を見ない様にすれば良いのだッ。


≪――――くるっ≫


「ゆーこさん」

「な、何よ?」

「少しは落ち着きましたか?」

「……ッ……一応はね」

「なら良いんですけど、俺はマジで覚えてませんから勘弁してください」

「……そう。 だったら、もう どうし様も無いって事?」

「違いますよ」

「えっ?」

「ゆーこさんの考えは半分は当たってると思います。 "量子電導脳"って単語が無意識に出たって事は、
 間違いなくループの記憶に有るって事ですから、いずれ何かの拍子で思い出すかもしれません」

「――――だったらッ」

「えぇ、勿論 真っ先に報告しますよ。 どんなに些細な事で有ってもね」

「ふん。 結局アンタ頼みって事なのね……もう少しだったのに」


今現在の俺は腕を組みながら、ゆーこさんに背を向けて喋っている。

恐らく今の彼女は非常に怖い顔をしているだろう、口調は落ち着いているが突き刺さる視線に冷や汗が垂れる。

でも意外と"マホ●ーン"の効果が有った様だ……再び捲くし立ててくる感じは無さそうだZE。

だから更に自分のペースに持ってゆくべく、俺は冷静を装いつつ変わらず背を向けたまま語り掛ける。


「そう一人で抱え込まないでくださいよ」

「!?」

「そんでもって"頑張り過ぎ"ですよ~? どれ位かって言うと、簡単な事に気づかなかった程に。
 俺が"量子電導脳"について漏らした事なんて、少しでも気持ちに余裕が有れば"あの時"問い質(ただ)せた筈です」

「…………」

「だから、もう少しは俺を頼ってください。 ループの中じゃ互いを支え合った仲でも有るんスからね?」

「し、白銀ッ!」


俺は首だけ左に向けると、流し目で一瞬ダケゆーこさんを見つめた直後にウィンクした。

正直 自分でも無いと思います。 ……でも調子に乗って冒(険し)っちゃったんだ☆

だけどコレも意外と効果が有ったみたいで、彼女の頬が何故か紅くなってしまう。

あっるぇ~? 何時もの様に皮肉と言う名の罵倒をされて、この緊張感を解きたかったのにッ!

そうか、きっと 今のゆーこさんはマジで疲れてるんだよ。 俺の"思いつき"の誤魔化しに翻弄されてるんだぜ?

シラフの彼女に"こんな事"したら間違いなく解剖されてただろうね、こりゃ良い教訓になったYO。


「まぁ……とにかく今は寝てください。 俺はコレで失礼しますから」

「そう言えば、アンタは何で訪ねて来たの?」

「……ッ……特に用は無かったんスけど……何か"心配"だったからですよ」

「!?」

「生憎、的中だったみたいですけどね~」

「…………」

「んじゃ~篁達との訓練に戻りますんで――――」

「白銀、あんた……(訓練を中断してまで?)」

「な、何ですか?」

「……いえ、いいわ。 行きなさい」

「(ホッ)ほいほいッス、バイバイキーン☆」


≪ガシュウウゥゥーーーーッ≫


誤魔化しに誤魔化しを重ね、俺はスタスタと歩いて執務室を出て行こうとする。

ラストの台詞は正直 自分でも死ねば良いと思ったケド、それだけ俺は調子に乗っていたのだ。

だって面白い様に ゆーこさんを誤魔化せれるんだもの! 不謹慎だけど彼女が疲れてて良かったZE。


「(……やっぱりホントなのかもね、あたしが"別の世界"の白銀に抱かれた事が有るのって)」


……でもスイマセン、ぶっちゃけます。 俺が"調子に乗ってる様に見える"のには理由が有ります。

俺のテンパりも尋常では無く、さっきからオティンティンがおっきしちゃってたからなんだお( ^ω^)

あんな美人とディープ・キスしちゃって おっきしないワケ無いんだお、同時進行でおっぱいも当たり続けてたし。

だから後ろを向いたのも、9割はオティンティンを見られない様にする為だったんだお、黙っててゴメンお。

でも男なら仕方ないんだお……きっと無駄にCOOLになれたのも、テンパりを通り越しちゃってたからなんだおっ!


「(だから頼っても良いのかしらね? どっちにしろ、白銀が"思い出して"くれないとダメそうだし……)」


――――勿論 執務室を出てから、俺が股間を押さえて全速力で その場を後にした事は言うまでも無い。


「……あっ、そうだわ。 寝る前に社に私の戦術機(AA)を見せてみようかしら?」


――――すまん ゆ~こさんッ、時期が来たらちゃんと"思い出してる"から解剖しないでねっ!?




……




…………




――――10分後。


「(えいしゃおらああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!)」


無事 執務室を脱出した俺はエレベータで上層に昇ると、男性用トイレで"踏ん張って"いた。

その結果は快便ッ! "こっち"にやって来てから、最も御通じの"切れ"が良かったのだ。

実は今迄 便秘気味だったんですよね……"こんな世界"に飛ばされたら新陳代謝も悪くなりますって。

でも ゆーこさん相手に"ねんがん"の大人のキッスを味わえ、ソレを誤魔化し通せた事で、
俺の"ストレス"のパラメータ(ねーよ!)が今回のイベントで一気に減ったのだっ。

しかも結局 新しい仕事は貰えなかったとは言え、今日 篁達とまた訓練しちまっても良い程 清々しい気分だ。


「ふぅ……」


経験無いから分からなかったけど、人間って便秘が解消するダケでこんな調子良くなるんですな~。

ちなみに凄いテンションで力んでしまっていたが、勿論 心の中で叫んだんですからね?

普通に生活する中、口に出して踏ん張る事って無いでしょ? もし大声でしか踏ん張れなかったら変態だし。

……それにしても、横浜の基地のトイレでは思うところが有る。 何故なら洋式トイレが極端に少ないのだ。

此処 最近は今みたいな和式トイレなんぞ使った試しが無いので、足が正直疲れてしまうのです。

でも逆に"踏ん張り"易い感が有る……ってのは置いておくが、やっぱり洋式の方が良いよ……


「んっ?」


――――だが俺は極めて重要な事に気づく。 これらの和式トイレは、御剣や篁達も使うのだ。


「有りだな」


≪ジャアアァァ~~ーーッ!!!!≫


俺は短い思考でそうボヤくとトイレの水を流し、手を洗うとトイレをCOOLに後にした。

えっ、大声で踏ん張ら無かろうとお前は変態だって? すまん、許してくれ自重する。

オカズにはスるかもしれないけどなッ! 逝き過ぎた趣味は無いから、御小水の方ですけどね?




……




…………




何食わぬ顔をしてシミュレータールームに戻って来ると、やはり午後でも篁達は真面目に訓練していた。

戦域管制を付けずに攻略しており、今回は どうやら篁と神代のみを残して最深部に到達している。

しかもバズーカを持つ神代が残って居るので反応炉の破壊も成し遂げており、もはや俺 要らね~んじゃね?


『くっ……中々 旨くゆかぬモノだな』

『月詠中尉、やはり5機とも健在となると難しいですね』

『まだ戻って来ないのかなぁ? 白銀少佐……』

『さっきからソレばっかりね、巽』

『私達で3人の中で最も動きが良いのは貴女なのは認めますけど、そんな気持ちではダメですわ』

『わ、わかってるよ……だけど』

「呼んだか~?」

『白銀少佐ッ!?』×5


しかし何故かこの反応ッ。 普通に嬉しくて涙が出そうだったんですけど。

……まだボクには帰る場所が有るんだ、こんなに嬉しい事は無いっ!

よって抑えようとしていたテンションが更に増し、俺の自重と言うリミッターは再び解除されたのでした。




……




…………




――――30分後。


『!? 少佐、要塞級が!』←月詠

「月詠中尉は囮に、俺が仕留めますッ」

『了解』

「巴と戎は最低限の弾幕を張りつつ通過、BETA達は極力無視しろ!」

『了解!』×2

『わ、私は?』

「(俺の背後の)神代は……黙って俺に付いて来い!!」

『はいっ!』


もう管制は勘弁なので、俺以外の5名に安易な管制をさせつつヴォールク・データを攻略している。

現在インペリアル・クロスの中央は"強襲制圧"の俺で固定され、これは自分にも良い経験になってるのよね。

何故なら、バズーカ開発後のヴォールク・データだと"制圧後衛"仕様のS型ばっか乗ってたからだ。

そんな俺のテンションは前途を理由に最高潮であり、神代に引かれるんじゃないかと言う台詞を口にしたり……


「えいしゃおら、えいしゃああああぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!」


≪ボヒュッ、ボヒュッ!! ――――ドゴオオォォンッ!!!!≫


"踏ん張った時"には心の中で叫んだ台詞と同じ様な掛け声で、要塞級に120ミリを放つ俺。

しかも一発目は外しているし……当てるだろ、この距離なら普通。 リミッターを外してるのに恥ずかしいZE。

いわゆる滑空砲が"要塞級に一発目で当たらず、誤魔化してニ発目で倒す国連軍の少佐"ってヤツですよ。

でも月詠さん達は華麗にスルーしてくれたので、俺は今のところは気にせず指導を行っていったのでした。


「(こ、これが白銀少佐の本気……? 操縦しつつ指導する様子は初めて見たけど、気迫が違うわ)」

『篁ッ! 声が止まっているぞ!?』

「す、すみません! 要塞撃破ッ、接近するBETA無し。 後方を警戒しつつ陣形を維持し前進せよ」

『了解!』×5


――――でも篁が少しだけ黙ってたって事は、俺のミスに気付いたか? 御願いだから引かんといて~っ!




……




…………




「今日は有難う御座いました、白銀少佐」

「お疲れッス、月詠中尉」

「ふふっ。 結局 今日一日、シミュレータールームを使ってしまいましたね」

「気にする事 無いですよ。 むしろ頑張って貰える方が、国連軍である横浜基地の衛士達には刺激になります」

「それでは少佐の立場が……」

「そう思う連中には言わせて置きゃ良いんです、むしろ俺が黙らせてやりますよ(フラグ欲しいし)」

「……ッ……(やはり、冥夜様が惹かれるのも解る気がする様な……)」

「中尉?」

「い、いえ……何でも有りません。 では、これにて」

「はい」

「敬礼」

『――――っ』


既に夕飯の時間を過ぎた辺りで訓練は切り上げられ、俺は篁達5名と向かい合っていた。

訓練の結果は上々で、俺は管制を行わなかったので"俺以外の5名が健在"での攻略は無理だったにせよ、
俺を含める5機が健在での反応炉の破壊には何度も成功し、管制を行うのは4人のうち一人なので、
5機無事でのミッション・コンプリートは回数違えど、全員が経験していたと言うこの上ない戦果ッ。

こりゃ ゆーこさんも喜ぶだろうし、俺自身としても非常に良いスキル・アップになったZE。

よって良い雰囲気の中、月詠さんと斯衛トリオが凛々しく敬礼して颯爽と去ってゆく。

……何故か神代ダケが一度だけ振り向いて視線が合うと慌てて視線を逸らしたが、もっと訓練したかったのかな?


「篁、お疲れ~」

「白銀少佐こそ、本当に御疲れ様でした」

「……ッ……」

「し、少佐?」


さておきシラフに戻った俺は、正直 死にたかった。 まだ"少佐キモい"と言われる方が救いが有る。

あの有り得ないテンション……艦長以上に恥を振り撒いてしまった事を苦悩していたのだ。

だから苦虫を噛んだ様な顔で篁を見てしまうと、彼女は心配そうな上目遣いの表情で俺を見上げて下さる。

とっても良ぇ娘や、マジ今夜辺り妾で欲しい。 けど鑑の存在を考えると無理だし、その"優しさ"がやはり苦しい。


「そんじゃ~……着替えてくるよ」

「あっ……」

「また明日な篁ッ!」

「は、はい!」


≪――――ダッ!!≫


「まだ"認められていない"のね……だったら今日は、もっと訓練しないとッ」


よって俺は再び その場から逃げ出すと、コソコソとしつつさっさと晩飯を食う。

そして白銀(俺)は自分の部屋へ行きシャワーを浴びると2時間眠った。

そして……目を覚ましてから暫くして、"えいしゃおら"を思い出し……また泣いた……


「ゆーこさぁんッ、らめええぇぇっ!!!!」


――――けど白銀は泣いた後、ゆーこさんの おっぱいとキッスの感触を思い出して、つい犯っちゃったんだ☆




●戯言●
大変長らくお待たせしましたorz それなのに短いです、申し訳ありません。白銀28の変態っぷり炸裂。
本当はさっさと午後を終わらせるつもりだったのですが、先生とのフラグを立てたくてつい書いちゃったんだ☆
そんでもって例のネタをやりたかっらんだえいしゃおらああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ27
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/11/25 18:05
これはひどいオルタネイティヴ27




2001年11月24日 早朝


「白銀さん、白銀さん」

「ん~っ?」


≪ゆさゆさゆさ≫


「起きて下さい」

「ふぁあ……もう朝か」

「おはようございます」

「あぁ、おはよ~霞ィ」


昨日 霞は御存知の通り来なかったが、今日は何時もの様に起こしてくれた様だ。

無表情ながらも大きな瞳が覗き込んでおり、俺は意識を覚醒させながら視線を霞に合わせ挨拶する。

"ゴッツンコ"を避ける為カラダはまだ起こしておらず、彼女が引くのを待っていると……


「――――ッ」

「(あれっ?)」

「……白銀さん?」

「いや、何でもないよ」


"何時も"と違って霞は俺から視線を逸らしてから、"素早く"姿勢を元に戻したのだ。

普段なら もっとノンビリとした動作だったハズなんだが……何か有ったのだろうか?

でも勘繰り過ぎだよな、日に日に霞が俺のカラダを揺らす回数が増えてるのを気にする位に。

だから深く考えない事にして、上半身を起こして伸びをすると、霞がまだベットの側に立っていた。


「あの」

「どした?」

「…………」

「右?」


……用が有るのかな? 多分そうだろう。 言いたい事が無ければ、既に彼女は部屋を出るべく動いている筈。

よってソレが気になった直後、霞は二文字ダケ言葉を漏らすと無言で首を軽くドアの方へと捻った。

釣られて俺も視線を移すと……其処には何とッ! 室内には"第三者"の姿が有ったのだ。


「あっ」

「篁?」


――――霞と一緒に入室していたのか篁がドアの前に立っており、俺と視線が合うと敬礼の姿勢をとる。


「お、お早う御座います白銀少佐ッ!」

「あぁ おはよ~。 ……って何で篁が其処に居るんだ?」

「あっ、あの……それはそのッ……」

「……私が誘いました」

「霞が?」

「や、社ッ!」

「はい。 今日も お部屋の前で会ったので"一緒に起こしましょう"と」

「そうだったのか~(実際 起こしてくれたのは霞ダケみたいだけど)」

「い、いけなかったでしょうか?」

「別に構わないよ、むしろ朝から篁の顔を見れて嬉しいさ」

「!? ……ご、御冗談を」

「HAHAHA、ともかくバッチリ目が覚めたよ」


ふ~む……篁が居ようと動揺しない辺り、俺も順応も成長したもんだな~。

流石にEXみたいに御剣が半裸で潜り込んで来た時は別だろうけど、もう結構な日にちが経過してるしね。

ちなみに今更だけど、俺は寝る時は外では着れない国連軍の青い制服を寝巻き代わりに使っている。

正直 空調を使ってないから地味に寒いんだよね、一応 古いタイプのエアコンと換気扇はあるけど。

まぁ その他にも理由が有り、霞に起こされたり何時 誰が部屋に入って来るか解らないのが大きい。

でも極端な話"せがれ弄り"中に布団を剥ぎ取られたら自殺モンだろうが、それダケに関しては自重できない。

ソレをしなければ何時 女性を襲ってしまい、ゲームオーバーになるか分からないからだ。

べ、別にヤりたくて自慰ってるワケじゃないんだからね!? ただストレス発散してるダケなんだからっ!


「……白銀さん」

「ど、どした?」

「香月博士が呼んでいます」

「おっ、ホントかい?」

「はい。 朝食の前に大至急 来るようにと」

「昨日も顔を出したんだけど、何の用かな~?」

「わかりません」

「まぁいいや、分かったよ。 なら一緒に行こう」

「は、はい」


≪たたたたっ……バタンッ≫


霞が立っていた まま だったのは篁が居たからだと思ってたけど、そうじゃなかったらしい。

ゆーこさんが呼んでるだとッ? ま、まさか"やっぱり解剖したくなった"とかじゃ無いだろうな!?

いや……ちゃんと誤魔化せてたし大丈夫だと考えよう。 ポジティブ、ボジティブ。(言い聞かせ)

そう自分を自分で勇気付けていると、霞は小走りでさっさと部屋を出て行ったしまった。

……そろそろドアに頭をブツける時が来るかッ? 可愛そうだが、俺はソレが好感度上昇の合図だと思っている。

さておき、こうして部屋に残されたのは、俺と篁。 彼女は何気に状況が飲み込めていないようだ。


「篁」

「は、はい!」

「先にPXに行っててくれ、直ぐ戻るからさ。 多分だけど」

「では、私は供には……」

「ごめんな、機密とかで無理かもしれない」

「そ、そうですか。……そう、ですよね」


違うかもしれないけど、オルタネイティヴ計画に関連する用件だと篁を連れて行く事はできない。

正直 来て貰いたいトコだが……この辺のケジメはちゃんとツけないと この先やってけね~もんな。

篁もソレを分かってるだろう。 でも、やはり残念なのか眉を落としている。 ゴメン可愛い抱きしめたい。


「そんな顔すんなよ」

「えっ?」


≪――――ぽんっ≫


「俺まで悲しくなるだろ?」

「……ッ……」


しかし そんな事はできないので、俺は篁に近付くと右手を頭に添えるダケに留めた。

そしてナデナデとしながらウザそうなスマイルを浮かべると、固まっている彼女に言葉を続ける。

ちなみに"俺まで悲しくなる"と言う台詞は、当然コレ以上 篁の可愛い表情を見せられると我慢が辛いからだ。

……よって たった今の俺の顔には、若干 笑みが消えてしまっていたかもしれないZE。

実際には ちっとも悲しくも辛くも無いし、むしろこの表情でご飯3杯はイケちゃいますよ?


「じゃあ、そろそろ着替えたいんだが」

「!? すすすすみませんッ! 直ぐに出ますから!!」

「ちょっ」

「し、失礼致しました!」


≪ガチャ――――バタンッ!!!!≫


……でも、別に居ても構わないけど? そう笑い掛けようとしたした瞬間、篁は大いに慌てて退室してしまう。

しっかりと敬礼はしてくれたモノの顔は真っ赤で、アホみたいに素早い動作でドアを開いて閉めた。

彼女の設定は全く知らないけど、真面目なダケじゃなくて純情なのか。 ヘタな事をしでかさないで良かった。

とにかく着替えるか……俺はカメラ目線(何処だよ!?)でオドけたポーズを取ると朝の支度を開始した。


「はぁ、はあッ……」


≪――――俺まで悲しくなるだろ?≫


「(あの御顔……そう、白銀少佐は皆を元気付ける為に"ああして"私達に振るまっている。
 思えば叔父様も そうしてる気が……だったら、私も少しは明るくしないと駄目ね……)」




……




…………




――――15分後。


「……またね」

「あぁ、またな~。 ……で、作るのか?」

「作ります」

「はははっ、まぁ 頑張れよ?」

「はい(……香月博士に、負けていられません)」


エレベータで地下に降り一緒に歩いていた霞と別れると、俺は引き続き執務室を目指す。

霞は どうやら昨日の ゆーこさんの戦術機(AA)を見たようで、早速 自分も負けじと何か作るらしい。

コレって何かのフラグ、圧し折ったりしないだろうな? いや、霞が何かに打ち込むのも一興か。

……余談だが、朝の支度を終えて自室を出てくると、其処には兎ダケで既に篁の姿は無かったりした。


≪ガシュウゥーーーーッ≫


「お邪魔しま~す」

「来たわね白銀」

「はい」

「其処に座んなさい」

「……ッ……」

「何してんの?」


執務室に入ると予想通り ゆーこさんが待っており、ソファーに背を預けながら足を組んでいる。

そうなると此処で挨拶をするのが上司に対しての礼儀だろうが、俺は その場で立ってる事しか出来なかった。

何故なら今の 彼女を見て"思った事"が有ったからで、失礼な事にも気付かず挨拶無しに言った。


「ゆーこさん、ひょっとして寝ました?」

「寝たけど?」

「どれ位?」

「どれ位って……10時間前後かしら」

「へ~」

「考えてみれば、そんなに寝たのって久しぶりな気がするわ」

「そっかあ、寝たんですか~」

「何よ、アンタが寝ろって言ったんじゃない」

「そういや~そうでしたね」

「それが どうかしたの?」

「いえ何となく。 それだけッス」

「ふ~ん(……あたしは、アンタこそ気張り過ぎるなって思うけどね)」


実を言うと、何度も会っているハズの ゆーこさんが めっちゃ"綺麗"だったからだ。

"美しい女性"と言えば月詠さんや まりもちゃんも含まれ、ゆーこさんと同等のレベルの高さだろうけど……

ゆーこさんってちゃんと睡眠を取ってりゃ こんなに"変わる"のか……その違いに驚いてしまった。

確かに前までの ゆーこさんも死ぬ程 美人だったけど、今は隈も無いし更に魅力が上がっている。

多分 "今"のゆーこさん相手だったら、揺さ振られて胸を押し付けられた時点でおっきしちゃってたお( ^ω^)

……けど 身に付いたポーカーフェイスで そんな思考を微塵にも表情には出さず、
内心でもCOOLを努めると、俺はスタスタと何歩か前に出て ゆーこさんに向かって軽く手を仰いで言った。


「おはヨーグルト」

「んなっ!?」


≪――――ズルッ≫


「な、何してるんです?」

「……ッ……」

「ゆーこさん?」

「い、いきなりバカな事 言うから呆れたのよ」


別にMでは無いが、何時もみたいに ゆーこさんに手痛い一言を頂くのがテンプレっぽい流れだと思ったんだ☆

でも"おはヨーグルト"なんて古過ぎるから豚を見るような視線を向けられるかもしれず、地味に"賭博"だった。

しかし解剖さえされなければ、別に"そんな目"で見られても悪くはない気もするが……否ッ。

俺は場の雰囲気を更に和ませようとしたダケで、断じてMでは無いのだ。 それはそうと、この"反応"って。


「あれ……ひょっして今の、面白かったですか?」

「……ッ……癪だけど、結構キタわね」

「…………」←無表情で唖然

「な、何でアンタは冷めた顔してんのよッ!?」

「いや~別にそんな気は」

「はぁ……アンタを相手にするとホントに調子狂うわ。 もういいから、さっさと座んなさい」

「ほ~い」


なななな……なんとっ! 今ではオヤジギャグに入る一言が、意外な結果を齎(もたら)せた。

ギャグを言った直後、キマっていた ゆーこさんが擬音が聴こえそうなレベルのダメージを見せたのだ!!

おいおいッ、そのギャグ面白かったのかよ!? ダメ出しされるドコロか全く逆の結果じゃないですかッ。

そうか……考えてみれば娯楽が無いし"お笑い芸人"さえ存在しないんだ、古いギャグでもウケる筈だよ。

霞みたいな娘だったら効かないだろうけど、現代の芸人のネタは逆に"進歩し過ぎてる"のかもしれないな。

こりゃ新しい発見だ。 俺、BETAを倒したら御笑い芸人になるんだ。 いや"続けれる"か解らないし冗談です。

さておき……色々と脱線してしまったが、ようやく本題がスタートするらしく、座って ゆーこさんの言葉を待つ。


「(でも おはヨーグルト……ヨーグルト。 ……ぷっ!)」

「ど~したんです?」

「な、何でも無いわ。 ……で、用件なんだけど」

「もしかして理論、完成しました?」

「なワケ無いでしょ? でも、それに繋がる事かもね~」

「それは?」


――――その用件が済んだ後、篁がPXで飯を食わずに待っていたのは感心を通り越すって話。

何だか無性に犬が飼いたくなってきた。 篁はその責任を取って、俺のペットになるべき。

ゴメン、嘘だから勘弁してッ! けど……そう言えば動物って"この世界"だと どうなってんだろうねぇ?




……




…………




2001年11月24日 午前


――――ブリーフィング・ルーム。


≪実はアンタの"刺激"になる良い事を思いついたのよ≫


正直、ゆーこさんが唐突に"思いついてしまった事"は俺の予想を遥かに超えていた。

いくら俺に"理論完成に繋がる情報"を少しでも思い出させる為に組んだ事とは言え……

ソレはどうだろうと思います。 ……って言うか、最初から知ってるし無意味なんですけど。


「集まったわね? 皆」

「香月副司令に対し敬礼」←武

『――――っ』

「白銀~、敬礼は要らないって言ってんでしょ?」

「そうッスか」


極端な話ゆーこさんの発案は無意味な事でも有るので、横に控える俺は仏頂面だった。

彼女は俺の正体を知らないし、人類そのものが切羽詰ってる状況だから仕方無いっちゃないんだが……

なんだか腑に落ちないのだ。 ……まぁ、特別イベントだと思って割り切れば良いか~。

そんな俺の心情はさておき、彼女は苦笑いしながら俺に視線を移すと、集められた女性達に再び向き直る。

篁・月詠さん・イリーナちゃん・伊隅・速瀬・涼宮(姉)・宗像の7名。 皆 俺の言葉に応え敬礼を終えていた。

しかし当然 彼女達は何故 集められたかは解らず、神妙な面持ちで ゆーこさんの言葉を待っている。


「早速だけど、明日あんた達には実機で"模擬戦"をやって貰うわ」

『――――ッ!?』

「戦場は市街。 戦うのはA-01の不知火S型12機に対して~」

「ふ、副司令っ? それって どう言う事――――」

「水月ッ」

「う"っ……」

「せっかちね~速瀬。 まぁいいわ……で、相手をするのは"白銀達6機"よ」

『――――ッ!?』


12on6で模擬戦やるよ~?(某魔王調) そんな事を告げられた直後、二度目の驚愕をする7名。

そりゃそうだ……明日戦う事ダケさえイキナリなのに12対6。 普通に考えて、とんでもない話だ。

これで解ったろ? ゆーこさんが"思いついた事"とは、俺に無茶な戦いをさせて刺激を与える為だったのさ!

この拍子で何か思い出してくれれば良い。 ……彼女は"その可能性"を切に願っていたりする。

勿論そんな事は伊隅とイリーナちゃん以外には言えないケド、単純に"刺激"と言う意味では、
俺より速瀬達への方が影響が強い気もする。 ……ってか俺には意味が無いから当たり前だけどね~。

それはそうと驚愕する中、ある意味 最も"良い性格"をしている宗像が軽く手を上げて口を開く。


「あの~、副司令」

「発言? 許可するわよ」

「その模擬戦には、何の意図が御有りで?」

「そうね……S型のテストは 以前の実戦で終わってるから、今度は"新OS"の最終テストみたいなもんね。
 そろそろβ版を卒業させて、出来るだけ早い内に世界に広げてゆきたいと思ってたから」

「ふむ、新しいOSの……」

「それと同じように新OS……"XM3"を積んだ"精鋭"が乗る"武御雷"に、
 どれだけA-01の不知火S型が通用するかが知りたかったのもあるわ」

『――――ッ!?』

「だから白銀達6機のうち、4機は第19独立警護小隊の武御雷。
 白銀と篁は不知火S型で戦うわ。 ……でも不知火S型の数が足りないのも有るから、
 篁は まりものS型を借りる。 既に承諾は(拒否権は無いし無理矢理)させたわ」


"……篁にも専用の武御雷が有るけど、流石にソレの運搬は間に合わなそうだしね"

そう付け加えて、ゆーこさんは驚愕する伊隅達をニヤニヤとしながら眺めている。

宗像も同様のようで、彼女の返答にどう反応すれば判らないと言った顔をしてるなァ。


「……ッ……」

「伊隅達を舐めてる つもりじゃないけど"6対12"にしたのはソレで丁度良いバランスだと思ったから。
 普通に考えたら勝負にならないと思うけど、互いに戦う衛士も戦術機も今迄のレベルとは違う。
 だから12機であろうと"半数の戦術機"に虚を突かれて全滅する可能性も有るって事。
 勿論 白銀達が倒される事も十分 考えられるけど、どう転ぶか分からないから試してみたいのよ」

「試す……」

「互いの戦域管制は涼宮とピアティフが行うわ、どっち側のかは説明する必要は無いわね?」

「はい」

「そんなトコかしら。 宗像、他に何か聞きたい事は有る?」

「いえ、有難う御座いました」


ゆーこさんは そんな事を言ってるが、やはり殆どの理由は俺に思い出させる為だろう。

まぁ……とうとう名の出て来た"XM3"も重要だし、強ち間違っても無いのかもね。

それと月詠さんや斯衛トリオが乗る"サブ射撃の無い武御雷"に対する不知火S型の戦果は俺も気になるしな。


「じゃあ伊隅」

「はっ」

「早速 皆に言って作戦でも練る事ね。 当然 勝つ気でやるのよ?」

「そのつもりです」

「じゃあ解散。 ……って、重要な事を忘れてたわ」

「重要な事~?」


首を傾げながら問う涼宮(姉)。 ひとつひとつの動作が可愛らしいな彼女は、けしからんッ。

しっかし……"重要な事"ってなんぞ? ソレについては俺も聞かされて無いんですけど。

一方 涼宮(姉)の言葉に"良くぞ聞いてくれました"と言わんばかりのカオで口を開く ゆーこさん。


「勝った側には"御褒美"をあげるわ。 伊隅達は全員 階級をひとつ上げてあげる」

『――――ッ!?』

「速瀬、何か不満~?」

「ちちち違いますってっ! 不満どころか~」

「い、良いんですかぁ?」

「勿論よ。 あたしの部隊なんだし、ちゃんと昇格させる権限は有るんだから」

「えっ? 権限じゃなくて、その……」


いやいやいやッ、涼宮(姉)はそういう事を聞いたんじゃ無いんだと思うんですけど。

でも考えてみると……新OSも新しい機動の概念すら無い、今の衛士の平均レベルは正直良いモノでは無い。

ぶっちゃけ俺・篁・月詠さん・斯衛トリオの6機で組めば、BETAみたくウジャウジャと来られない限り、
かなりの数の撃震を抑えれる自身が有るしな。 一個中隊 程度ならば何のそのだろう。

つまり、そんな"俺達"を抑えられる中隊を指揮する伊隅は少佐にしてやっても良いって事か?

A-01は全機が新OS仕様の不知火S型と言う今の段階では超チート編成だが、
ゆーこさんは俺達6機をソレだけ相手にするには厳しいモノだと評価してくれてるんだろうね。

……そんな事を空気化しながら考えていると、ゆーこさんは話を続ける。 彼女のニヤニヤは止まらない。


「細かい事は気にしなくて良いわよ。 ……で、白銀達についてなんだけど。
 生憎 月詠中尉ら4人を昇格させる権限は、当たり前だけど あたしには無いわ。
 それは篁も同様。 帝国斯衛軍で中尉で有る限り、臨時大尉と言う階級には成れない」

「香月副司令……御生憎ですが、我々には その様なモノを考え下さらなくても宜しいのですが」

「そうですッ。 "XM3"と言う新たなOSのテストとなる模擬戦を行わせて頂けるダケでも……」

「私も国連軍所属とは言え臨時中尉の身ですから、階級について特には……」

「あらピアティフも~? だったら〝御褒美"が貰えるのは白銀ダケになっちゃうわね」

「べ……別に俺も要りませんけど?」


――――中佐に成るのも良い気もするけど、3人とも遠慮しているので空気を読んだ俺。


「だったら、こうしようかしら?」

「えっ?」

「白銀達に負けたら、伊隅達4人は白銀の言う事を"何でも"聞く。 それで決まりよ!」

「なっ!?」

「え"ぇーッ!?」

「そんな~っ!」

「なんとッ」


……な、なんだそりゃああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!(太陽に●えろ調)

何考えてんだ、ゆーこさん……流石は天才だ、こりゃ刺激有るって事になるわ~。

もしマジで記憶が無かったとしたら、きっと"今の一言による驚き"で根こそぎ思い出しちまってるYO。

勿論 俺ダケでなく7名の女性達も同様で、伊隅・速瀬・涼宮(姉)・宗像は流石に驚愕を声に表してしまう。

篁・月詠さん・イリーナちゃんも驚いてはいるが、口に出さなかった だけマシって事ですな。


「アンタ達。 負けても12人全員が聞かなきゃならないワケじゃ無いから安心しなさい。
 それと"何でも"って言っても、無茶過ぎたり個人個人への命令は禁止にしとくから」

『……ッ……』×4

「それじゃ、今度こそ解散~。 準備とかの手筈は現在進行形で進んでるから、互いに勝つ事ダケを考えなさい」

「ゆ、ゆーこさん……」

「白銀。 悪いけど忙しいの、またね~」


≪――――バタンッ≫


何にせよ、俺でさえ納得がいかないぜッ。 伊隅達4人となれば尚更だろう。

だって"何でも"って言ったて、原作を考えりゃエロい命令なんぞ夢のまた夢だろうがッ!(そっちかよ)

そう脳内で叫びつつ声を掛け様としたが、ゆーこさんは さっさと退室してしまった。

よって俺ら8人が残され気まずい雰囲気になってしまったので、此処から"逃走"しなければならない。


『…………』×3

「篁・月詠中尉・イリーナ中尉」

「は、はいっ!」

「な……何か?」

「白銀少佐ッ?」

「早速 作戦を練る事にしよう。 だから、行かないか?」

『り、了解』×3


ショック(?)で未だに固まってる伊隅達を放置し、学校の体育館移動の様なノリで退室する俺達。

勿論 先生的なポジションは俺ね? ……まぁ、そんな事はど~でも良いですねー☆

しっかし、とんだイベントが発生したモンだなぁ……やっぱ白銀の影響力って凄いって事なのね。


「(さっきは驚いてしまったけど、負けても白銀少佐の事だから無茶な事は言わない筈。
 でも戦うからには勝つ事を考えないと……どちらにしろ、全力で挑む必要が有るわね)」

「(絶対に勝って"階級"を上げるわよッ! そんでアイツに並んで もっと構ッ……いや違う違う、
 言いたい事 言いまくってやるんだから! 負けたら負けたで仕方無いから、従ってやるけどッ)」

「(う~ん……どうせなら、勝ったら私達も白銀少佐に何か"御願い"できれば良かったのにな~)」

「(勝てれば大尉か、悪くは無い。 だが負けても少佐の目に私がどう映っているかの参考にはなるかもな……)」


――――恐らくヴァルキリーズは全力で勝ちに来るだろう、俺に邪な気は無いけど条件が条件だしな。

特に速瀬は……ってか4人とも冗談じゃねェだろうし、厳しい戦いになりそうだZE。

とにかく勝ちに行くか。 ま~"このイベント"で今日明日を使っても問題ないし、もう深く考えない事にしようっと。




……




…………




2001年11月25日 午後


『……以上がA-01に置けるメンバー・ポジション・配置・特徴等についての情報です』

『…………』×5

「ふむふむ」


今現在、強化装備に着替えた俺はシミュレータールームに多数ある筐体の中で腕を組んでいた。

篁・月詠さん・神代・巴・戎も操縦桿は握らず、次々と表示されるモノを見ながら所々で頷いている。

何故なら筐体の外でイリーナちゃんがA-01の情報を細かく教えてくれている為であり、
外よりも"この方法"で作戦を練る方が実際の訓練に移る時、別の場所から動く手間も省けるしで好都合なのだ。

網膜投影が便利だとか、イリーナちゃんにとって説明が安易だったりするのも理由として挙げられる。


『これが、A-01……噂には聞いていましたが、非常にバランスの取れた部隊の様ですね』

『それを我々6機で相手にする事になるとは……』

『……ッ……』×3

「イリーナ中尉」

『は、はい?』

「今度は最も戦果の高かったヴァルキリーズのヴォールク・データのリプレイを流してください」

『……了解しました、画面を切り替えます』

「よろしく~」


恐らく特殊任務部隊A-01は、俺達6機が勝てる可能性がゼロと仮定すると、
"今の段階"じゃ地球上でも最強の中隊と言っても過言じゃ無いかもしれない。

それと同じ事を篁達も感じているのか、彼女達の難しそうな表情が説明後も潰えていない。

だけど先ずは現実を見て微塵にも油断して良い相手では無い事をトコトン解って貰うべきだ。

よってイリーナちゃんの説明が終わると、今度は動画を流して貰いA-01の連携の良さを見て貰う。

その結果は……一条・神村・葛城・麻倉・高原を除く7機を残しての反応炉の破壊ッ!

原作では顔も出ず死んでしまう娘達が揃って脱落してしまったが、頑張れば十分 生還できるレベルだろう。


『リプレイ終了します』

「へぇ~、少し見ないうちに成長したモンだな~」

『…………』×5

「じゃあ篁は どう戦えば勝てると思う?」

『そ、それはッ……』

「う~ん、月詠中尉は どうです?」

『申し訳有りません……私も解りかねるところですが、白銀少佐には何か策が?』

「策って程のモンじゃ無いですけどね~。 なら……神代はどうする?」


――――巴・戎と視線を移すと互いに首を横に振ったので、最後は神代に問う。


『あの、えっと……誰かを囮にして、少しでも枚数的な不利をどうにかするって位しか』

「んっ? 概ね正解かな~」

『えぇっ!?』

「正直、普通に戦ったら絶対負ける。 だから今回ばかりは"個人技"も重要になると思う」

『個人技……』

「だからソレで枚数的な不利を覆せる動きが出来れば、後は同じ様に実力で何とかなるハズだ」


俺が勝手に思うからして、ヴァルキリーズで突出して技量が高いのは伊隅と速瀬。

この二人に限っては、篁と斯衛トリオがタイマンに持ち込まれれば撃破される可能性が高い。

逆に俺と月詠さんが戦えば勝てるだろうけど、"その状況を"作る為に俺達は動く必要が有る。

しかしタイマンをするにも勝負を一瞬で決めなければ仲間がやって来ちまうから、厳しい制限時間も有る。

だから難しいけど 旨く立ち回って2機でヴァルキリーズの1機を奇襲するのが理想と言えるだろう。


『白銀少佐、注意すべき衛士は おりますか?』←月詠

「そうだな……特に速瀬はヤバいですね、直感ってのがハンパじゃ無いッスから」

『!? で、では白銀少佐でも手に余る衛士なのですかッ?』

「悪い篁、分かんないな。 前に相手をしてから結構 経つし……でも」


≪――――チラッ≫


『し、少佐?』

「いや……何でも無い、ともかく速瀬と伊隅あたりは成るべく早く撃破するべきだな。
 出来れば闇討ちに近い形で"仕事"をさせずに仕留めたいトコだけど……」

『……(今の私への視線……つまり速瀬中尉には及ばないって事なのね……くッ)』

『それが最も厳しいと言う事ですか』

「その通りです」


……んでもって元A分隊は今後伸びるとは言え、今は経験不足だから2機掛かりでも正攻法で皆 撃破が可能だろう。

宗像・風間・一条・神村・葛城もスーパー・チルドレンの斯衛トリオと比べれば各々の技量は劣るので、
ぶっちゃけ単機での脅威は薄いんだが……何より怖いのは12機によるヴォールク・データで鍛えた"連携"なので、
あくまで"釣り"で1対2やタイマン・奇襲に持ち込める状況を作り出さないと、まともに戦えないのだ。

せめて篁が来るのが もうちょっと早けりゃ勝率は若干上がっても良かったんだけど、
今 彼女は新OSと不知火S型に慣れようとしている状態なので、無理はさせれないんだよな~。

だから心配になって、話の途中で篁に意味深そうな視線を向けてしまい彼女は少し驚いた様子……メンゴ。

でも何せS型&新OSに触れて2日か3日だからな……そりゃ気遣いもしたくなるってモンだよ。

けど篁は凄いぞッ? こんな短期間で反応炉に辿り着ける技量になった時点でハンパじゃ無いってマジで!

それらの事を考えながら個人の技量についても述べ終えたんだけど、篁達は未だに難しい顔をしているな~。


『…………』×5

「まだ勝てる気がしないかな?」

『そ、そう言う訳では無いのですが……』

『囮を使う作戦に置いて、具体的な案は有るのでしょうか?』

「月詠中尉、それは後で詳しく説明しますよ。 だから、今から個人技を学んで貰います」

『個人技? いえ……了解しました』

『白銀少佐の、個人技ッ……(楽しみだな~)』

『顔が緩んでるわよ? 巽』

『!? う、五月蝿いなッ! いちいち指摘する事じゃ無いだろ!!』

『否定はしないんですのね』

「こらッ、授業中に私語はイカんぞ~?」

『す、すみません!』×3

『……(はぁ、こんな流れで勝てるのかしら? ……でも)』

『……(不思議と"負ける気もしない"のは、何故なのだろうか?)』


――――こうして午後の大半の訓練は"外す"のと"回す"のを中心に、個人技の指導に費やされた。

篁達は俺が教える新しい概念の操縦技術には、何度も驚愕してくれてたんだけれども。

彼女達の上達の早さに、その後 俺も同じ様なレベルの驚きを心の中でする事が多々有ったのでした。




……




…………




「(う~ん、どうするか)」


……やがて訓練を終えると、俺は6名で遅れた夕食を摂って自室へと戻った。

考えてみれば、最初は"あんなメンバー"で飯を食う事になるなんて夢にも思って無かったよな~。

それはそうと、ベットに潜り込んだ俺は なかなか寝付けなかった。 いや……緊張してるワケじゃない。

ホラッ、ゆーこさんが言った"俺が勝ったら伊隅・速瀬・涼宮(姉)・宗像に何でも命令できる"って褒美の件。

実際に勝ったら"どんな命令"をしようか思いつかなくて、今になっても真剣に悩んでいるのだ。

正直 香月先生……4人と、Hしたいです……と言いたいトコロだが、それだと他の娘全員に失望されるだろう。

だから勝った褒美なんて最初から有って無い様なモノであり、むしろ少佐として良い命令をしなきゃならない。

くっそ~……どっちかって言うと勝ちの方が薄いのに、何でこうも無意味な悩みを抱えなけりゃならないんだッ?


「もう止めた~ッ!」


一応2時間ばかし目を閉じて横になりながら考えたけど、結局思い浮かばなかったので諦めた。

もう良いや……勝ってから考える事にしよう。 負けたら負けたで伊隅達は昇格できるんだしね~。

そうなると寝る事で今日は締められるワケなんだが、皮肉にも何時もの"アレ"を思い出してしまう。


「篁、俺の戦術機の中でションベンしろ。 ……アッーー!!」


――――白銀は昨日のネタ候補を思い出して、つい唯依タンで犯っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月25日 午前


今朝は起こして貰う時、霞と篁の二人が俺を覗き込んでいて多少ビビったり、
その時も何だか照れてる感じがした霞が、引き続きAAを作ると言い残し走り去って行ったのは些細な事として。


≪――――ズシンッ!!!!≫


「こちらアルカディア01、到着及び準備完了~」

『アルカディア02、目的地に到着した』

『アルカディア03よりCPへ。 04、05と共に到着ッ』

『アルカディア06、同じく到着しました』

『CP了解。 ……どうやらA-01も準備が整った様です』

「みたいッスね」

『各機・前回同様、ペイント弾の予備弾倉は半分となっているので注意して下さい』

『了解!』×6


≪ヒュウウウウゥゥゥゥーーーーッ≫


俺ら6名は戦術機に乗り込むと、以前 斯衛トリオと戦った戦場に向かい初期配置でスタンバっていた。

……まだ陣形は組んではおらずバラバラで、篁の機体の正面に俺のS型。 俺の右に月詠さんの武御雷(赤)が。

そして月詠さんの機体の背後に神代の武御雷(白)を真ん中に、左右に巴と戎の戦術機が仁王立ちだ。

ちなみに整列も特にしてはおらず、斯衛トリオさえ綺麗に並んでいるワケでは無く上下左右にズれている。

そんな斯衛達の武御雷においては、頭部バルカン砲も胸部マルチ・ランチャーも無く、
横浜基地のシミュレーターには武御雷の機体データが存在しないので、
新OS仕様で乗るのは初だろうが、此処に来るまでの十数分で"それなり"馴染んだらしく流石と言ったトコロだ。

んでもって横で並んで匍匐飛行して判ったけど、新OSが有る時点で武御雷はバケモノ機体っぽいDeath。

さておき仕様としては俺・月詠さん・神代が突撃前衛。 他3名が強襲掃討と言う非常にシンプルな編成になった。

当然勝つ為に考えた格機の仕様だけどね。 ……と考えているうちに何時の間にか開始時間が近付き、
味方5名とイリーナちゃんのバスト・アップが同時に投影され、誰もが緊張した表情をしている。


『状況開始まで残り5分を切りました。 今はA-01に声は漏れていませんが、
 戦闘中はCP将校の言葉以外は全て漏れる様になってしまうので、御気をつけ下さい』

『了解ッ』×6

『またレーダーには全ての機体の位置情報が表示される様です』

「マジっすかッ!?」

『は、はい。 私もつい先程 副司令から告げられたので』

「あの人ってば……顔出して無いと思ったら、そんな余計な事を……」


声が敵にも漏れちまう。 これについては、どっちかって言うと俺達が有利になるルールだろう。

致命的な事を漏らすと秒殺される危険性が高いのは、断然 俺ら側かもしれないけどね~。

けど厄介な事になったな……障害物を盾に戦うのは同じだけど、位置が全部バレちまうのか。

そうなると"闇討ち"ができなくなるし、伊隅の統率力 次第だとボロ負けも有り得る……

逆に俺達も数を盾に奇襲される危険は極端に減るけどね。 結局は どっちもどっちだな。

だから今更ビビってなんかいられないけど、篁達の表情は先程よりも更に強張ったモノとなった。

流石に泣き言の類である台詞は口に出さない様だけど、何となく顔に書いてある気がする。


『残り4分切りました』

「あっちは……レーダーを見ると綺麗に並んでるよな~」

『はい、白銀少佐の読み通り"同じ編成"で来るみたいですね』

「そりゃ~12機だからね、前日に突然フォーメーションを変える事なんかできっこないさ」

『ふむ。 そうならば、各機の配置は……』

『中央で固まる4機は、前から速瀬中尉・涼宮少尉・築地少尉・柏木少尉かな?』

『でしょうね。 そうなると右翼は神村少尉・麻倉少尉・伊隅大尉・高原少尉ね』

『では、左翼は一条少尉・葛城少尉・宗像中尉・風間少尉で間違いないですわ~』


丸見えのレーダーによる配置を見ながら、月詠さんが首を捻った直後。

彼女の言葉を代行する様に神代・巴・戎がA-01のフォーメーションを"読んで"しまった。

これは正解だろう、俺は微妙に記憶が曖昧だったけどね。 ともかくソレを活用しない手は無い。


『残り3分です』

「イリーナ中尉、A-01全機にマーキング……番号振りを御願いします。
 どうやら変更は無いみたいなんで、ヴォールク・データの時の編成と照らし合わせる感じで」

『承知しました』

『月詠中尉、これで少しは やり易くなりましたね』

『その様です』


俺がイリーナちゃんに前途の事を頼むと、瞬く間にレーダーに表示されているA-01の○に番号が振られる。

こりゃ分かり易い……極端な話、01と02に極力"仕事"をさせない様に動けば良いって事だ。

逆に伊隅達は焦っているかもしれない。 たった今②、速瀬の機体が動こうとして留まったしな~。

気持ちは判るけど、流石に こんな状況で無理に陣形を崩すとグダグダになっちまうだろうから自重した様だけど。


『残り2分、60秒を切った時点でカウントダウンを開始します』

「は~い。 じゃあ皆バラけよう、整列はしてなかったから問題無いとは思うけど念の為にね」

『了解』×5


≪――――ズシンッ、ズシィィンッ!!≫


俺の言葉に6機の戦術機が本当に"適当"にバラけ始める。 逆に陣形を組んで勘繰りさせるのも良かったけどね。

これに関しては俺達もレーダーが丸見えだってルールなのは知らなかったから、
即席で翻弄オンリーが目的による"ダミー陣形"は考えて無かったので仕方ないってワケだ。

けど今の遣り取りで少しで有れ更に"勝ち"が見えたのか、若干 篁達の表情が緩んだ気がする。

……かと言って"緊張"と言う感情が表情の大半を覆っている事には変わらない。

月詠さんだと緊張じゃなくって、ただ単に真面目に意気込んでるダケだろうけど、ソレでも雰囲気が重い。


『状況開始まで60秒切りました、カウントダウン開始』

「…………」

『59、58、57、56、55……』

「(――――良しッ!!)」


一方、俺も脳内では超絶に緊張しているので、こんな気合では普通に負けてしまうだろう。

だから"勝つ為"に、やはり また有名パイロットを肖らなければならないッ。

ちょっとマニアックだけど、"あの人"でも使うか……負けたとしても得れる事ばかりの訓練だし別に良いや。

よって俺は唐突に右手の突撃砲を、既に ゆーこさんによって改良された盾に打ち付けた!!


≪コオオォォォォンッ!!!!≫


『!?』×5

『30、29……えっ?』


力は殆ど入れておらず、まるで高価な"壷"を鳴らすように 軽い動作で大きな音を響き渡らせた。

それにより、表情が強張っていた篁達は目を見開いて戦術機 自体を俺のS型の方へと向けて来る。

しかし俺は既にキャラに"成り切って"いたので、反応をスルーし彼女達に微笑み掛けると口を開く。


「良い音色だろ?」


――――今此処に、優れた策謀家として活躍した某"突撃機動軍大佐"が誕生した。


『!? うぅっ……』

『どうしたの? 晴子』

『あ、茜……なんだか私、急に頭が悪くなった様な気がするんだけどッ』←⑨の柏木さん

『はぁ~? 何 言い出すのよ、こんな時にッ!』




●戯言●
本格的な戦闘シーンな予感。ホントはタマパパのイベントまでキング・クリムゾンしても良かったのですが、
折角今迄一日づつ進めていたので、今回の6on12を行う事で補う事にしちゃったんだ☆
次回からは●大佐に肖った彼の活躍に御期待ください。 ……って、意地悪な私は全部伏字にしてしまいましたね。
これでは誰も肖るキャラが判らないと思いますが、次回ほぼ全ての彼の名台詞を言わせるつもりなので御安心を。
ちなみに前回のWCでのボヤきは伏線でした。そしてプロデューサーさん、12機ですよ12機ッ!




●横浜基地・突撃機動部隊(暫定名称)●
アルカディア01 白銀 突撃前衛 不知火S型
アルカディア02 月詠 突撃前衛 武御雷(赤)
アルカディア03 神代 突撃前衛 武御雷(白)
アルカディア04 雪乃 強襲掃討 武御雷(白)
アルカディア05 美凪 強襲掃討 武御雷(白)
アルカディア06 唯依 強襲掃討 不知火S型



[3960] これはひどいオルタネイティヴ28
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2008/12/14 03:54
これはひどいオルタネイティヴ28




今回の模擬戦のルール
①敵のオペレーターの言葉以外は全て漏れる
②レーダーが丸見え(機体・仕様・衛士は確認が必要)
③戦闘エリアから出ると無条件で大破となる
④ペイント弾の予備弾倉は全機 本来の半分


●横浜基地・突撃機動部隊(暫定名称)●
アルカディア01 白銀 突撃前衛 不知火S型
アルカディア02 月詠 突撃前衛 武御雷(赤)
アルカディア03 神代 突撃前衛 武御雷(白)
アルカディア04 雪乃 強襲掃討 武御雷(白)
アルカディア05 美凪 強襲掃討 武御雷(白)
アルカディア06 唯依 強襲掃討 不知火S型


●今回の伊隅戦乙女隊●
ヴァルキリー01 伊隅 迎撃後衛 A小隊長
ヴァルキリー02 速瀬 突撃前衛 B小隊長
ヴァルキリー03 宗像 迎撃後衛 C小隊長
ヴァルキリー04 風間 砲撃支援 C小隊員
ヴァルキリー05 一条 突撃前衛 C小隊員
ヴァルキリー06 神村 突撃前衛 A小隊員
ヴァルキリー07 葛城 打撃支援 C小隊員
ヴァルキリー08 涼宮 強襲掃討 B小隊員
ヴァルキリー09 柏木 砲撃支援 B小隊員
ヴァルキリー10 築地 強襲掃討 B小隊員
ヴァルキリ-11 麻倉 打撃支援 A小隊員
ヴァルキリー12 高原 砲撃支援 A小隊員




2001年11月25日 午前




一部の人間(伊隅と速瀬)を除くA-01が、俺達6人より間違いなく劣っている事。

それは各々の"個人技"であり、更に述べれば"対・戦術機"による訓練の熟練度だ。

地球に置いて人類・共通の敵がBETAと言うのは周知の事実なんだけど、
少数 生産機である武御雷に乗る帝国斯衛軍は、互いに戦う事で技量の向上を図る傾向が強いらしい。

だから前にも述べたように、①と②以外の不知火S型が2機で各機に掛かろうとも一応は問題ない筈。

特に元A分隊の5名は対BETAによる連携を重点的にしか鍛えてないし、最も対人経験不足と言える。


『各機前進ッ』

『――――了解!!』×11


……でも、2機が3機。 3機が4機になるに連れて、彼女達の脅威度は爆発的に上昇する。

簡単に言えば1機で2機は捌けても、2機で4機を捌くのは簡単にはいかないと言う事だ。

そう考えると6機で12機と"まとも"にブツかったりしたら、勝てる要素など無くなってしまう。


「全速前進だ!」

『――――了解!!』×5


しかしながら、無謀と思える戦いであれど勝てる可能性を信じて挑むしかないのさッ。

んで たった今 状況が開始され、A-01は陣形を維持しつつ此方に迫って来ている。

まぁ、予想通りだけど……正攻法こそが今まで鍛えた"連携"が最も生きるし、妥当なトコロだよな~。

だから最も厄介である"連携"を、俺達はどんな手段を使ってでも崩さなくてはならない。


≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


俺は篁達には"全速前進"と叫んだけど、ラインを上げるのは6機のうち3機だけ。

残り3機は固まりながらA-01と同じペースで進軍しており、前衛との距離が開いてゆく。

一方 前衛の3機は各々が散開し、正面左の伊隅が纏めるA小隊、
正面の速瀬が纏めるB小隊、正面右の宗像が纏めるC小隊のルートを遮る様に距離を詰める。

それにより、7:3の比率で俺達が戦域を確保した状況で3機の戦術機がA-01と接触する!

追い詰められたら負けが見える"こちら側"にとっては、初っ端のライン上げは かなり重要だ。


『ヴァルキリーマムより各機へ。 敵機"3体"が接近中です』

『どう言う事だッ? 残り3機の動きはどうなっている?』


『随分と後ろに居るわね、何 考えてんのかしら?』

『いきなり不可解な行動をしてきたモノですね』

『来るからには食っちゃうけど良いのよねェ~?』

『そうなると我々は、4機で1機の取り合いになりそうですが?』


速瀬は"随分と後ろに居る"と言ってるけど、後方3機の進行ペースはA-01と同じ。

要は先行してる3機の進行速度が速すぎるダケであって、彼女達はラインを"上げられて"いるのだ。

さておき、涼宮(姉)と伊隅を他所に、速瀬と宗像は原作の実戦でも冗談を言い合うダケ有って、
俺達の妙な動きをシッカリと警戒しつつも、前途の様な会話を交し合っている。

だけど空気を読まなくて悪いが、考える時間なんぞ作らせる気は無い。 ……負けちゃうしね。


『!? は、速いです! B小隊との接触迄5、4、3……』

『なんですってぇ~!?』

『あ、あれはッ――――』


≪ズシイイィィンッ!!!!≫


そんなうちに着地による振動と音を大きく響かせ、いち早くB小隊と接近した味方機。

間も無く残りの2機も左右のA小隊・C小隊と接触する事になるだろう。

対して このスピードは流石に予想外だったか、速瀬が驚き涼宮(妹)が敵機を見て嘆いていた。


『――――武御雷ッ?』×4

『……ッ……』


速瀬・涼宮(妹)・築地・柏木の前に現れた戦術機とは、武御雷(白)だった。

4人は判らないだろうけど中の人は"神代"で、盾を左手に突撃砲を構えている。

それが何を意味するのか一瞬 速瀬達は考え様としたようで、撃ち合いは直ぐには始まらなかった。

これは神代にとってはチャンスなんだけど、彼女にも想う所が有ったのだろうね。

その際……俺はハッキリと聴こえた。 神代が敵には決して察せられない程度に息を吸い込んだのを。


『お、おらおらおらああぁぁっ!!!!』

『!? 散開~ッ!』

『くっ!?』

『ひゃあっ!』


≪ドパァンッ、ドパアァンッ!!!!≫


――――気合と共に連続で放たれた120ミリを、咄嗟に回避する後衛の柏木を除く3機。


『ちょっ……ど~言う事? あんな相手 居たっけ?』

『わかりません! それよりも多恵、弾幕ッ!』

『うんっ!』

『ヴァルキリー9、バンディット・イン・レンジッ!』


『落ォちろおおぉぉっ!!!!』


≪ダパパパパパパパパッ!!!!≫


『ちっ! やっぱ武御雷だけ有るわねェ』

『は、速いッ』

『当たって、当たって~!』

『う~ん、この距離じゃ牽制にしかなりそうもないなァ』


武御雷の十八番である機動性を活かしつつ、雄叫びを上げながら4機相手に弾幕を張る神代。

突出した速瀬の実力を考えた"本来"であれば、簡単に撃墜されても可笑しくは無いんだけど、
何処ぞのオルガを真似させた彼女の気迫に押されたのか、B小隊は思わぬ苦戦を強いられている。

それを元A分隊3名は"大きな"実力差と錯覚し、速瀬も感染したか御得意の"突撃"に移れない。

正直 神代のやってる事は只の"引き撃ち"なんだけど、翻弄による時間稼ぎが元からの狙いだったのさ。

ラインはジリジリと下げられてはいるが、いくらサブ射撃の有る不知火S型であろうと、
武御雷(白)の機動力には到底 追い付けないので、4対1でも銃撃戦が一応は成り立っている。


≪――――ズシンッ!!≫


『……(巽は始めたようね)』

『こちらヴァルキリー6(神村)、こっちにも"白い武御雷"が現れました!』

『ヴァルキリー1、了解ッ』

『ヴァルキリーマムよりA小隊へ。 ヴァルキリー6を盾に前進しつつ、
 敵機 発砲後ヴァルキリー1は右から、ヴァルキリー11(麻倉)は左より展開せよ』

『了解』×2

『続いてヴァルキリー12(高原)へ。 牽制射撃のみを行い、退路を断て』

『了解~!』


……一方、巴の武御雷(白)が伊隅の指揮するA小隊と接触すると同時に。


≪――――ズシンッ!!≫


『……(私も覚悟を決めなくてはなりませんわ)』

『!? ヴァルキリー5(一条)です、同じく白い武御雷を確認』

『ヴァルキリー3(宗像)了解。 さて どうするか……』

『ヴァルキリーマムよりC小隊へ。 同様にヴァルキリー5を盾に前進し、
 交戦開始 直後ヴァルキリー3は左から、ヴァルキリー7(葛城)は右より展開し挟撃せよ』

『了解ッ』×2

『続いてヴァルキリー4(風間)へ。 前途の指示と同様に、敵機に牽制射撃を行え』

『了解しました』

『また、3機の武御雷の武装は突撃前衛・強襲掃討・強襲掃討と確認。
 及び音声により、突撃前衛 仕様の"白い武御雷"に搭乗する衛士は神代少尉と判明。
 残りの戦術機の仕様 及び衛士は、確認次第 直ちに情報を転送します』

『――――了解!』×8


右に展開していた戎もC小隊と接触し、彼女等 2人も間も無くA-01と交戦しようとしている。

その際 伊隅や宗像の指示は何も聞こえないのに"了解"と僅かなウチに言っているという事は、
多分 CP将校の涼宮(姉)が直ぐ様プランを立てているんだろう。 ほんの十数秒の間で大したモンだね~。

脅威は12機による連携ダケだと思いがちだが、涼宮(姉)の存在もA-01に欠かせない存在だ。

まぁ、正攻法で来る事には変わらないだろうけど……地味に精神的ダメージを食らった様な気がする。

だけど"こちら側"も意外性での攻撃力はこんなモンじゃ~無いZE。 何故かと言うと、神代ダケじゃなく……


『何だか知らないけど、貴女も瞬殺ぅ!!』


≪――――ドヒュッ、ドヒュウウゥゥッ!!!!≫


『貴女達ッ、邪魔ですわっ!!』


≪――――ドパァンッ!! ドパッ、ドパアアァァンッ!!!!≫


『えぇっ!? ち、ちょっと待っ……!!』

『120ミリを連射!? 回避しますッ!』


巴は何処ぞのクロト、戎も何処ぞのシャニを肖り、気合と共に激しい弾幕を降らせた!!

神代は"突撃前衛"なので突撃砲は一つだが、巴と戎は"強襲掃討"な事から、
二丁でより激しい射撃ができており、初っ端は120ミリ滑空砲の6発×2丁全てを躊躇無く撃ち捨てた。

ソレを直撃されれば流石に盾を持っている不知火S型でも防ぎ切れないので、
突撃前衛(元は強襲前衛)であるA小隊の葛城・C小隊の一条は、慌てて回避せざるを得なかった。


『はああぁぁぁぁっ!! 滅・殺!!!!』

『ああぁぁっ!! ウザああぁぁいんですのっ!!』


≪――――ダパパパパパパパパッ!!!!≫


その隙を逃さず、神代とは違い徐々に前進しつつ弾幕を張り続ける巴と戎。

位置取りは前方の神村&一条機の胸部マルチ・ランチャーの射程外ギリギリと、絶妙なポジションを維持。

そんな巴の攻撃を無難に捌けそうな技量を持つ伊隅でさえ、予想外の彼女達のキャラに集中力を欠いている。


『ヴァルキリー1より、ヴァルキリーマムへ! あれは"誰"だ!?』

『た、大尉達と交戦中の衛士は巴少尉……そしてC分隊 前方の衛士は戎少尉です!』

『ふむ。 斯衛軍の衛士と言うのは皆 あんな風に"変わる"んですかね?』

『そんな話は聞いた事も無いぞ? 宗像ッ』

『私もです……っと、それどころじゃ無いですね』


今の神代達は"こちら"の人間から見れば、BETAに対する恐怖で錯乱した衛士の様に見えるかもしれない。

ぶっちゃけ俺もパイロットを肖っているのを除外すれば、バラ撒いてるのはペイント弾だし、
トライアルにてBETAの奇襲でテンパり、バーサク状態になった白銀みたいに見える。

……でも彼女達は"正常"であり、俺の指示によって"言わされてる"ダケなんですよね~。


『怯むな、相手は1機だッ! 応戦しつつ包囲しろ!!』

『了解!』×3


――――さておき交戦から約30秒、ようやく連携が機能し始めた伊隅のA小隊。


『こちらも各機応戦だ。 弾幕は近いうちに止むだろうが、その前に決めるぞ』

『了解!』×3


――――同じくC小隊……若干A小隊より回復は遅い様だけど、"こちら"のラインは下げられてゆく。


「……(良し、行きますよ~?)」

『……ッ……』


一方、後方で進行中の俺&篁の不知火S型と、月詠さんの武御雷(赤)の3機。

いずれもA-01には絶対に"判別されない"様に、瓦礫の障害物に隠れながら進んでたけど、
一時的とは言え敵全機の注意が完全に3機の武御雷(白)に向いている今、もはや その必要は無くなる。

更に秒数が経過し、後方の俺達の存在による脅威を思い出してしまう前に奇襲を掛けなくてはならないのだ。

正直 神代達の肖りが効かなかったら一気にキツくなっちまったんだろうけど、
やはり"実直そうな斯衛軍の少女達のキャラが急激に変わる事"に対する耐性は伊隅達には無かった様子。

だから その"一瞬のチャンス"を最大限に活かす為、俺はバストアップが表示されている、
篁と月詠さんに対して口パクして、二人が真剣な表情で頷いたのを確認すると、
S型を大きく跳躍噴射させ、直ぐ様 匍匐飛行に切り替えると、B分隊と交戦中の神代機へと急ぐ。

その際レーダーを見ると、篁と月詠さんも昨日の夕食時にPXで立てた作戦の"第二段階"へと移っている。


≪――――ガチッ、ガチ!!≫


『な、何だよ!? 撃てないじゃないかッ!』←未だに肖り中

『神代機・滑空砲 弾数ゼロの模様』

『遙ァ~、そんなの言うまでも無いってば』

『くそっ……この馬鹿 戦術機……』←流石に小声

『(今 何て言ったのかしら?)ともかく、ようやく追い詰めたわよォ~?』

『……ッ……(36ミリも"これ"を撃ち切ったら終わりか……)』

『多恵。 相手は武御雷だし、まだ油断しちゃ駄目よ?』

『わかってるよ~』

『さ~て、もう何処にも逃がさないよーッ』


……状況開始から約1分後。 時間稼ぎをしていた神代機が、速瀬達に追い詰められているようだ。

レーダーを見るに速瀬が神代の真正面、こちら側から見て左から築地・右から涼宮(妹)が包囲。

そして後方の柏木は、神代の120ミリが使えなくなった事から、
若干 距離詰め見晴らしの良いポイントで狙撃体勢を取っていると言ったトコロか。

しかも、合流を急ぐ俺の正面には5階建て分くらいの瓦礫が積み上がっており、
神代はソレを背にさせられていると予想でき、ほぼ"詰んでいる"状況なんだろうね。

これ以上 後退は出来ないので、背後の瓦礫を飛び越えて下がろうにも柏木の狙撃が脅威。

正面には一番 厄介な速瀬が居るし、左右に逃げようにも築地と涼宮(妹)の弾幕の回避は困難だろう。

……だけど未だに突撃前衛に置ける武御雷の白兵能力を警戒しているのか、
胸部マルチ・ランチャーの射程内 迄は現在進行形で前進している速瀬でさえ近付いていない。

サブ射撃はむしろ接近戦でのカウンターに有効なんだけど、ハイヴ攻略シミュレーターに置いて、
BETAを捌く事ばかりで利用していた為か、何気に"この1分間"では殆ど利用していなかった様だ。
(一応 武御雷に乗る面子には弾幕を張る時に限りサブ射撃の射程内には極力入らないよう指示した)

これも予想していた事だし助かってるけど、クーデター戦ではメイン射撃と同じくらい活用して欲しい。


『……(これで神代少尉は撃破できそう。 ……でも最初3機の敵が迫って来た時、
 B小隊の正面に来るのは てっきり"白銀少佐"だと思ったのに……)――――ハッ!?』

『ヴァルキリー8・9・10ッ、墜とすわよ!?』

『了解!』×3

『ま、待ってくださいッ! 各小隊に向かって後方の3機が急接近して来ます!!』


さておき たった数十秒とは言え、"俺達の存在を忘れさせる"のが斯衛トリオの最も重要な役割だった。

神代達のキャラに不釣合いな罵声を言わせたのも、元々の技術と機体ダケでは役不足だったからなんだよね~。

んで今 聴こえていた話の内容から速瀬たちB小隊は、"神代のみ"に対し油断しない様 注意を払っている。

……つまり"第一段階"の作戦は"成功"であり、最も早く3機の存在に気付くのは涼宮(姉)あたりだろう。


『CPよりアルカディア1へ。アルカディア3迄の距離は200、150……』

『良しッ!』


≪――――ブァッ!!!!≫


『B小隊に敵機出現ッ! 戦術機は不知火S型……し、白銀少佐です!!』

『!?』×4


先程からA-01のサブ射撃の使用頻度 等、早口で戦況を知らせてくれている、
イリーナちゃんのオペを聞きつつ、俺は初っ端の"全速前進だ!"以外の台詞を此処にきて始めて喋った。

その"意図的"である2文字が聴こえたっぽいB分隊は今 ようやく"思い出した"ようで、
言葉は発さずとも此方に注意が向いたのは、既に彼女達を"見下ろしている"俺には十二分に理解できる。

何故なら俺は正面の瓦礫を跳躍噴射で飛び越え、神代機の頭上あたりでB分隊に銃口を向けているからだ。


『あいつ……!!』

『くっ、眩し……』←茜

『はははっ! 上を取ったぞッ、リーダ……(違った)……滑空砲・発射!!』


≪――――バヒュッ!! バヒュッ、バヒュウウゥゥッ!!!!≫


すッ、凄ェ……俺の不知火S型。 落ちながら戦おうとしてる!?

そんな冗談はさておき、言う必要も無いのに つい大声で射撃をアピールしちゃったんだ☆

でも完全に神代から"俺"へと注意が移ったみたいだし、意味は有ったのかもしれないね~。


『あぶなっ!?』


瓦礫を"飛び越えている"為か俺の機体は神代の頭上を通り過ぎ、速瀬のサブ射撃の射程内に入っている。

だけど幸い速瀬は"空中の敵にサブ射撃を放つ"価値観は無かった以前に、
思った以上に驚いてくれたのか、突撃砲による射撃さえも行っては来ていない。

それを好機と俺は輝きを放ち続ける太陽を背に、S型の左腕を延ばし邪魔な盾を除けつつ、
棒立ちしていた速瀬に頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャーを連射する。

対して彼女はサブ射撃を"この瞬間"思い出したのかと思う程、咄嗟な右水平噴射で回避行動に移った。


『こ、このっ!』


また神代機を向かって右から包囲していた涼宮(妹)は、僅かなタイムラグの後 当然の如く、
現れた敵機にチェーンガンを両腕で射撃して来たが、フットペダルを連続で踏み込んで浮きつつ回避。

そんな俺の機体の右腕に持たれている突撃砲は"もう片方"の強襲掃討をしっかりと捕らえていた。

"彼女"も涼宮(妹)より更に遅れながらも、チェーンガンを放とうと二つの銃口を向けて来るんだが……


『ひ、ひゃああぁぁーーっ!!!!』


≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫


『ヴァルキリー10、コックピットに被弾・大破』

『た、多恵!?』

『……うぅッ……そ、そんなぁ~』

『戦いを"まとも"にやろうとするから、こういう目に遭うのだよ……築地ッ!』

『こっのおッ! よくもやったわねぇ!?』


銃口を此方に向けている"ダケ"の動作しかしていないS型に、攻撃を当てる事なんぞ容易い。

迫り来るBETAが相手であれば光線級がチャージ済みでもない限り被弾の恐れは無いけど、
相手が戦術機と言う事となると、僅かな判断の遅れで命が無くなるのさッ。

よって後衛の柏木を除く3機のうち、最も判断が遅れた築地が俺の120ミリの餌食となった。

ゴメンね~ロリ巨乳。 実は最初から俺の狙いは君だったんです、速瀬と涼宮(妹)の技量を考えるとNE。


『!?(少佐、旨く動いてるなァ……下がらないとダメか~)』


現在は再び銃撃戦が開始され、予備弾倉の少ない速瀬は今になってサブ射撃を駆使して。

涼宮(妹)は相変わらず適正距離を維持しながら、俺に弾幕を放って来ている。

結構 激しいな……神代より後ろには下がれないから、これで柏木の狙撃が加われば厄介になる。

よってドサクサに紛れて120ミリを⑨に向けてロックオンすると、彼女は射程外に後退してくれた。


『貰ったぞッ!』

『し……しまった!?』

『ヴァルキリー11、動力部に被弾・大破』


―――― 一方、巴が足止めしていたA小隊を月詠さんが奇襲し、向かって右側の麻倉(打撃支援)を仕留め。


『其処ォ!!』

『う、嘘ぉぉっ!?』

『ヴァルキリー7、メインカメラ損傷・戦闘継続不可能』


――――全く同じ要領でC小隊を抑えていた戎に割り込み、篁が同じく打撃支援の葛城を撃破した。


『ヴァルキリーマムより各機へ。 ……と、突然の奇襲によりヴァルキリー7・10・11が撃破された模様』

『ヴァルキリー1、把握済みだ。 流石は白銀少佐、やってくれるッ』

『しかし、まだフライト(4機編成)が崩れたに過ぎませんが?』

『そうだな宗像。 此処で退く訳には いかん!』

『敵全機の位置・仕様・衛士が判明、直ちにマーキング配布します。
 各小隊は敵エレメントを包囲しつつ前進・合流し、9機にて6機を個々撃破せよ』

『了解!』×9

『状況報告。 状況開始より90秒が経過』


ちなみに機体大破や経過時間を告げてくれるのは、イリーナちゃんのお友達No1(姉)。

この役を任せるに当たって、ジャンケンで負けたお友達No2(妹)が指を銜えているのを、
姉の報告に置けるバストアップが表示される度に見えるのはさておき。

どうやら伊隅達は、このまま3vs2が始まると思ってるんだろうが……そうは問屋が卸さない!


「もう良いぞッ、一旦 下がれ!!」

『!? で、でもやっぱり私も少佐の援護を――――』

「退けッ、神代!! 今の御前の任務はガンダ……奴等を倒す事では無い筈だッ!」

『り、了解っ』


俺は神代の武御雷(白)に下がる様に指示し、速瀬達B小隊の前に立ち塞がる。

その時 言った台詞なんだけど……即席で肖ってるから、つい間違えちゃうんだ☆

対して何故 数的不利を選ぶのか理解できないっぽい速瀬が突撃砲を向け警戒しながら言う。


『アンタ……どう言うつもりなのよッ?』

「戦いとは、駆け引きなのだよ!!」


≪――――ゴォッ!!≫


『く、来る!?』

『上等!! 茜・晴子、絶対に仕留めるわよッ!』

『り、了解!』×2


俺は自分でも意味不明な事を言いながら、B小隊に向かって前進する。

実は……各小隊で最も脅威なのは速瀬の小隊で、4機編成だと一人で勝てる気は全くしなかった。

武御雷の様な高機動メカに乗ってないと、不知火より若干 鈍足なS型じゃ逃げる事さえ出来なかった筈。

でも3機なら何とか俺 単機で戦えるッ。 ソレだけで組んだ今回の"2段階目"迄の作戦だった。


『アルカディア1、B小隊3機と交戦中。 各機作戦の第3段階へ移行せよ』

『アルカディア2了解した。 ……巴ッ』

『はいッ。 アルカディア4、後退します!』

『戎少尉、此処は私が!』

『後武運を御祈りしますわ~』


イリーナちゃんの言葉で、篁達のレーダーの位置にも変化が見られる。

各小隊の足止めをしていた斯衛トリオが俺・篁・月詠さんとバトンタッチして後退を始めたのだ。

その全速後退に追撃を掛け様にも、ラインを下げずに俺ら3機が弾幕を張るので不可能。

そもそも追いつけないし、A-01は目の前の1機の戦術機と交戦するしかなかった。

しかも向かって左側のA小隊を相手にする月詠さんは、徐々に左に伊隅達を誘導しつつ戦い。

俺の遥か右側で交戦中の篁も宗像達C小隊をラインを下げず右の奥に誘導しつつ戦っている。

これに何か思うところ有るんだろうが、各敵小隊は3機連携を崩すワケにはゆかず左右に展開してゆく。


『ヴァルキリーマムより各機へ! A小隊・C小隊 共にB小隊より距離が離れ過ぎています!』

『妙だな……一体 何を考えて後退したんだッ?』

『大尉、3機の白い武御雷は後方で合流する つもりの様ですが?』

『成る程……再び時間稼ぎをさせつつ、各小隊を合流した武御雷3機を加えた"4機"で潰してゆくつもりか』

『それが妥当な線ですかね』

『良いか神村・高原ッ。 そろそろ右側はエリア外になる!
 エレメントで左から背面に回りこめッ、赤い武御雷の前方は私が抑える!!』

『了解!』×2

『ヴァルキリーマムよりC小隊へ。 ヴァルキリー5(一条)は前進。
 右よりヴァルキリー3・4は迂回し、篁機を三方から包囲せよ』

『了解!』×3


速瀬達はともかく、A小隊とC小隊は伊隅と宗像以外 全く喋っていない。

余計な事を言わない様に、事前から伊隅に指示されているんだろう。

たった今は月詠さんを抑えるべく伊隅は指示を出したけど、宗像は言わなかった事から、
きっと涼宮(姉)が代弁したんだろう。 篁に"やる事"は伊隅の指示した方法と同じだと思うけどね。

……って、味方の心配をしてる場合じゃねぇっ! 何気に避けるのが精一杯だ!!

やっぱりサブ射撃ってチート過ぎだな~、速瀬は闇雲に撃ってるっぽいが近付けないぞッ?


『このっ、このォ!!』

『な、何で当たらないのッ?』

『武御雷よりは遅い筈なのに~!』


ペイント弾と言うのがシュールだけど……俺も速瀬も同様に、適正距離でサブ射撃を撃ち合っている。

互いに予備弾倉の少ないチェーンガンの消費を抑えて戦っているのも同じだ。

だけど俺は涼宮(妹)と柏木にも狙われているので、執拗に弾幕を張って来る涼宮(妹)に対し、
たまに速瀬より若干弾数の残っている36ミリで牽制する事で、辛うじて戦線を維持できているのだ。

つまり36ミリが無くなったら一気に押し込まれる……そうなる前に、この状況を打破する必要がある。


『ヴァルキリー9(柏木)、予備弾倉 交換まで残り5発・4発・3発……』

『(ゆーこさんを図に乗らすワケには いかんのだよッ)』

『ゼロッ!』

『(今だ……っ!!)』


≪ゴオオォォォォッ!!!!≫


――――よって、唐突に速瀬に向かって吶喊した俺。 勿論、考えが有っての事だ。


『……っ!? でも、これで……!』

『ちぃっ!』


速瀬は軽く動揺しつつもマルチ・ランチャーを放ってくるけど、驚いたのも無理はない。

左右にピョンピョン跳びながら射撃していたダケのS型が、急に突っ込んで来たんだしね。

対して俺は突撃しながらも前屈みになりつつ、盾を斜めに構えてグレネードのペイント弾を受け流す。


≪――――パアアァァンッ!!!!≫


『アルカディア1、盾損失・左腕小破』


"まとも"に受けたら盾ダケじゃなく機体ごと持ってかれそうだけど、被害は最小限で済んだみたいだ。

その代償としてブッ壊れた盾はパージされ、現在進行形で爆風 代わりに弾けたペイントが視界を覆ったが。

俺は前進を止めずに速瀬に距離を詰める中、イキナリ涼宮(妹)機に銃口を向けると……


≪――――チャキッ≫


『えっ!?』

『そらッ!』


≪――――ダパパパパッ!!≫


『きゃあっ!』


……速瀬を援護"しようとした"彼女を36ミリで牽制し回避行動を強制し。


『晴子ォ!』

『ゴメンなさい、丁度 今リロードちゅ……!?』

『ぬぉぉっ!!』

『くっ!?』


≪ガシイイイイィィィィンッ!!!!≫


リロード状態なのを見計らって俺が"行動を起こした事"に勘付いた様子の柏木。

彼女のマヌケな声と共に俺は頭部バルカンを速瀬にバラ撒きつつ接近し、長刀を振り下ろした。

柏木は良いポジションで構えていたので、前方水平噴射するダケの俺なんぞ良い的だ。

其処で少数編成の特権……イリーナちゃんに柏木のリロードの瞬間を特定して貰ったのさ!

自動で行われるのでタイムラグは2秒も無いんだろうけど、撃つべき時に撃たせないダケで全然違う。

だから速瀬に斬り掛かれたワケなんだけど……流石はエース。 シールドに阻まれちまったッ。

直前のバルカンに怯まずにシールド防御して来るとは、考えては いたけど予想通りでは無い。


『!? 中尉ッ、気をつけて!!』

『今更遅いぜ!!』


――――けど"考えてはいた時点"で対処法は有り、俺は涼宮(妹)の声と同時に次の行動に移る。


≪ドパパパパパパッ!!!!≫


『くぅっ!』

『駄目だ、この距離じゃ誤射しそうで撃てないよッ』


俺は速瀬にゼロ距離の頭部バルカン砲を撃たせる前に、直ぐに格闘をキャンセルすると、
突撃砲に持ち替えつつ速瀬の正面から、跳躍噴射を駆使して彼女から向かって直ぐ右に回り込む。

そんなS型の向きは速瀬の側面。 つまり彼女を左斜め後ろで援護していた涼宮(妹)を、
"外した"事によって送られたロックにより、再び射程内に捕らえていた。

同時にラストのマガジンに変えた ばかりの36ミリを涼宮(妹)のS型に打ち込み、支援する余裕を与えない。

これで後は速瀬を倒すダケ。 右腕の武器は突撃砲だし、左腕の盾じゃあ右側面からの攻撃は防げまい!

涼宮(妹)には夕食後の訓練で、格闘をキャンセルして射撃を外し ループさせる技術は披露したから、
俺が"何をする"のかを大まかに察したみたいだけど、速瀬は"回す"事は知らないだろう。

だから、旨くゆけばB小隊は全滅させられるか!? 俺って凄ェッ! そう考えた矢先……!!


『こんのぉっ!!』


≪――――ガコオオォォンッ!!!!≫


『ぐあっ!?』


≪ズウウウウゥゥゥゥン……ッ!!!!≫


ようやく此方を向いた速瀬に再び斬り掛かろうとした直後、何故か俺は"吹っ飛ばされて"いた。

その為ダウンしてしまい地面が揺れ、同時に俺の頭がダイレクトにシェイクされる。

は、速瀬のどの銃口も"こっち"を向いてなかったから油断してた……まさか、タックルしてくるとは……

この長刀は突かないで振り下ろす様に出来てるから、"潰す"には最も適した対処方法をされたってワケだ。

ゲームでも格闘にタックルが強いのは同じなんだけど、"こっち"でもされるとは思わなかったぜ……

速瀬はカンがいいのかッ? それともあの新しいタイプの奴なのか!? いや、そんな肖り よりもッ!


『茜ェ!!』

『はいっ!』


≪ダパパパパパパパパッ!!!!≫


『うわっ!? とっとっと……!!』


ダウンしたのを好機と、涼宮(妹)が今までの牽制の御返しするような勢いで弾幕を張って来た!!

よって俺はS型を立ち上がらせる途中の無理な体勢で、主脚でケンケンする様な感じで後退し回避する。

だけど、左から"ロックオンされた"と言う数度目の警報が鳴ったと思った直後に――――


≪パアアァァンッ!!!!≫


『……ッ……アルカディア1、両脚部損傷。 移動及び噴射行動不能』

『あははっ』


敵機の単純な移動進路を予測して、柏木が射撃を俺のS型の左足に命中させたのだ。

くそ~ッ、柏木さんってば嬉しかったのか"あははっ"って無意識に口にしちゃってますよ!?

でもビクンビクンッ……白銀は速瀬も含めて予想外の彼女達の健闘に、ゾクゾクしちゃったんだ☆

それはそうと"両脚部損傷"って事は実際なら貫通して右足もダメージを食らっちまうって事みたいだね~。

ともかく此処までかよ……今の被弾によりガクンと戦術機の両足の制御が効かなくなったのを感じた。


≪ぐらっ……≫


『白銀少佐ッ!?』


――――それにより崩れ落ちようとする俺のS型。 同時にイリーナちゃんの驚く声が耳に響く。


『や、やったの!?』


――――格好悪い姿を見せてゴメンよ……けど、最期に俺は涼宮(妹)の油断を見逃さなかった!!


『……(不知火S型は、元は俺専用に開発して貰った戦術機だ……)』

『ふふ~ん。 ナイスよ、晴子~』

『ホントは上半身を狙ったんですけどねェ』

『……(だから香月 副司令への……)』

『えッ(ロックオン?)』

『俺には男としてのメンツがあるんだよッ!!』


≪――――ボヒュウッ!!!!≫


『き、きゃああぁぁぁぁっ!!!!』

『茜ェ!?』(速瀬)

『うっそぉ~ッ』(柏木)

『!? ヴァルキリー8、致命的損傷・大破』


≪ずううううぅぅぅぅん……っ!!!!≫×2


『ぐっ!?』

『うぅ~っ』


まさに鼬(いたち)の最期ッ屁。 俺は倒れる直前に、180ミリを放って涼宮(妹)のS型に直撃させたのだ!

正直"計画通り"に ゆくのなら速瀬を堕としたかったんだけど、避けられる気がして止めて置いた。

しかし油断し過ぎだぞ涼宮(妹)達。 確かに俺の"異常"な機動は、脚がなきゃ出来無いとは言えどもねェ。

まぁ……ソレだけ俺の機動が目立ったんだろう。 だから"射撃のみ"に対する脅威が不足したってか~?


『成る程……油断大敵って事ォ?』

『そうですね~』


もう俺の役目は終わった。 今ので速瀬と柏木の警戒はするだろうし、後は撃破される事を待つしかない。

仕事は100%こなせなかったけど、不思議と悔しくは無かった。 ……色々と得れたしね。

だから倒される前にアレだけは言って置こう。 殺られるからには、言わなければ肖った意味が無いZE。


「……イリーナ中尉! このデータを、副司令に届けてくれよっ?」

『し、少佐?』

『止めよッ!』

「これは……"いいもの"だァーーっ!!」


≪――――ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫


『アルカディア1、致命的損傷……た、大破』


(戦術機の)頭がパァーン!! その直前に白銀は詰んだから、つい言っちゃったんだ☆

一応 適当にキャラを合わせたんだけど、深い意味なんて全く無いからねっ?

でもイリーナちゃんのお友達No1(姉)が引いてる気がしないでもないけど、後悔はしていない。


『(何だとッ、白銀少佐が撃破されたのか!?)』

『(やっぱり速瀬中尉は それ程の……だけどッ)』


≪イリーナ中尉! このデータを、副司令に届けてくれよっ?≫


『(最期に聴こえた言葉……まるで勝負の結果よりも……)』

『(少佐は更に先の事を考えて、今の模擬戦に臨んでいたと言うの?)』

「戦いは この一戦で終わりでは無いのだよ……」←もはや自棄

『(!? い、今のは……間違い無いッ!)』

『(そうなれば、与えられた"役割"を果たさないとっ!)』


状況開始から僅か2分……早くも動かないS型のコックピットの中で、戦いを傍観する羽目になった俺。

う~ん。 一応 隊長なのに最初に撃破されちゃったって事で、何だか恥ずかしくなってしまった。

だから対・B小隊的な意味で、またパイロットの台詞を肖ってしまうと……あら不思議☆

急に月詠さんと篁の動きが冴え出してるし、もはや面目 丸潰れっぽい気がするんですけど。

もう帰ろうかなァ……だけど制御を解いて貰う様に言うのもアレだし、見るしかないか~。

そうヘコんでいると、俺を撃破した速瀬と柏木の前に3機の戦術機が急接近して来たッ!

言うまでも無いだろう、神代達だ。 その姿を見ながら俺は心の中でまた自重しない台詞を肖った。


「(さて……来て貰おうか、神代)」

『よ、よくも少佐をッ!!』

『今度は私達が相手です!』

『覚悟は宜しいですの~?』


≪――――ズシッ、ズシイイィィンッ!!!!≫


そうだった! 撃破されて自棄になってしまっていたが、俺は大事な事を忘れていたッ。

3機になり、ようやく本来の実力が出させる斯衛トリオの"奥の手"を見ない訳にはいかない。

こんな"段取り"にしたのも、これから披露されるモノを"拝みたかった"為だと言っても過言では無いのだ。


『おおおおぉぉぉぉっ!!!!』

『なっ……(捨て身!?)』

『大尉!?』×2

『アルカディア2、ヴァルキリー1。 致命的損傷・大破』


―――― 一方 作戦通り月詠さんが"道連れ"にする形で白兵により伊隅を撃破するも、僚機の射撃を受けて大破。


『(このタイミングで、当てに来る筈ッ!)』

『これで止めを……えっ!?』

『み、美冴さん!?』

『アルカディア6、ヴァルキリー3。 致命的損傷・大破』


そして篁は宗像に着地硬直を意図的に晒したところを、強引に反撃して彼女と相打ちになった。

これが作戦の"第3段階"の終了を意味し、俺・月詠さん・篁は各敵小隊の隊長を倒す事が目的だったのさッ。

でも……俺だけ目的 果たせて無くね? べっ、別に悔しいだなんて思ってないんだからね!?(涙)


『ヴァルキリーマムより各機へ。 月詠機と篁機を撃破、しかしヴァルキリー1・3が大破した模様』

『ふ~ん、大尉と宗像が? でも……これで残りは目の前の3機ってワケか』

『どうします中尉、合流した方が良くないですか?』

『そうね~、晴子は距離も有るし下がんなさい。 私は逃げれそうも無いから』

『えぇっ? だけど……ッと、了解しました~』


≪ブワァッ!!!!≫


『ヴァルキリー4・5・6・9・12は直ちに合流し、ヴァルキリー2は戦線を維持せよ』

『了解!』×6


柏木が速瀬への援護を打ち切って後退する。 実戦なら見捨てないだろうけど、今じゃ妥当だな。

斯衛トリオのうち2人居れば速瀬を抑えるのは十分だから、1機が流れた時点で柏木は抗えないからね。

よって2機とも撃破されて最悪4対3になるよりも、彼女を下げて5対3を選んだんだろう。

それは こっち側にも好都合……3対2だと速瀬の火事場の馬鹿力で誰かが撃破される恐れが有るけど、
3対1となると、武御雷(白) 3機全ての連携力を単機に集中させる事ができるからな。

つまり"アレ"の出番だッ。 故に何時の間にか斯衛トリオは、戎を正面に・巴・神代と縦に並んでいる。

斯衛トリオを警戒する速瀬から見れば、1機の武御雷(白)のみが自分に向いている様に見えるだろう。


『……(妙ね、何をする気なの?)』


――――もはや言うまでも無いけど、今の斯衛トリオは"白い三連星"と断定できる。


≪ズゴオオオオォォォォーーーーッ!!!!≫


『絶技ぃ~っ!!』

『わっ!?』


――――3機並んで同時に距離を詰め出した直後、1番手の戎が180ミリを両手から放って左に離脱し。


『噴射ぁーッ!!』

『くっ……!』


――――2番手の巴が速瀬が避けた進路を読み、右に離脱しながらも36ミリでの射撃を継続させ。


『気流殺ゥッ!!』

『えぇっ!?』


――――36ミリを盾で防がざるを得なかった速瀬機に急接近し、神代が長刀を振り下ろした結果。


≪ガシュウウウウゥゥゥゥッ!!!!≫


『ヴァルキリー2、胸部切断・大破』

『!? ヴァルキリーマムより各機へ。 ヴァルキリー2が大破。 合流後、武御雷3機を殲滅せよ』

『了解!』×5


――――速瀬はジェット・ストリーム・アタックにより撃破される。 流石に踏み台は無理だったか。


『あちゃ……大尉、すいませ~ん』

『幾ら何でも、今のはアッサリ殺られ過ぎじゃないですか?』

『む、宗像ァ!?』

『ほら もっとこう……さっきの白銀少佐みたいに』

『こらッ、死人がベラベラと喋るな。 大人しく戦況を見届けろ』

『やれやれ速瀬中尉……怒られてしまったでは ないですか』

『アンタの所為でしょうがッ!!』


――――宗像、君はホントに怖い者 知らずだな。 だけど俺を評価してくれたのは有り難いZE。


『ヴァルキリー2を撃破。 引き続き作戦の"第4段階"を継続せよ』

『了解!』×3


そうだった、そうだった。 此処で俺達が立てた"作戦の段階"と言うモノを説明しておこう。

……まず1段階目は巴・神代・戎がA・B・C小隊の注意を少しの間ダケでも良いから向ける。

次に月詠さん・俺・篁が各小隊を奇襲し、必ず一機を仕留め、その後 武御雷(白)と囮役をバトンタッチ。

そして第3段階は相打ちでも良いから、伊隅・速瀬・宗像の3人の小隊長を撃破する事。

最後に、残った斯衛トリオが3×2機編成となったA-01を合流前に全滅させるって寸法だった。

俺が速瀬を堕とせなかったって事で柏木達を合流させちまったけど、まぁ……そんなモンですよね。


「さて、結果はどうなるのかな~?」

『奴等を信じるしかないでしょう』

『そうですね』

「まぁ……どっちも応援しましょう。 得れたモノは多かったですしね」

『!?』

『……ッ……』

「ど、どうしました?」

『い、いえ』

『何でも有りませんッ!』

「???? なら良いんスけど」

『(やはり白銀少佐は"勝ち"には こだわっていなかったか……)』

『(むしろ、撃破された事を嬉しく思っている様な……けどッ)』


≪俺には男としてのメンツがあるんだよッ!!≫


『("あの時"の気迫……一体どれが彼の"本心"なのだろうか?)』

『(今の私には"それ"を知る権利は無い。 でも、いずれ……)』

「……ッ……」


月詠さんと篁……き、急に押し黙っちゃって何が有ったんですか!?

必死で戦ってたのに"どっちも応援しましょう"って言ったのがヤバかったのかな~?

今の戦況とか何も見ずに考え込んでるみたいだし、好感度ダウンってヤツなのかッ?

やっぱり言動には注意した方が良いのかなァ……篁と月詠さんに限ってはホント自重しないとね。


『くっ……す、すいません……』

『ヴァルキリー4、致命的損傷・大破。A-01全滅、状況終了』

『はぁっ、はぁっ』

『や、やった……』

『勝ちましたわッ』


――――そんな俺の考えを他所に、何時の間にか模擬戦は白銀陣営の勝利で終わっていた。


『うぅっ……全滅……12機の不知火S型が全滅……3分も持たずに~……』

「涼宮中尉」

『はぃいっ!?』

「悔やむ必要は無い。 ……君はよくやったよ」←今の台詞的な意味で

『し、白銀少佐……』(キュン)

『……~~ッ……』×3

「!? か、神代・巴・戎も良く戦ったぞッ?」

『はいっ!』×3


相手を褒めちゃダメって判ったばかりなのに、涼宮(姉)の台詞を聞いた結果がこれだよ!!

だ、だけど俺はだな……涼宮(姉)が自分の采配の所為で負けたと思わない為に、声を掛けたダケなのさッ。

それよりも斯衛トリオに睨まれてしまったので、慌ててフォローを入れる羽目になってしまった。

……だけど次は篁・月詠さん・イリーナちゃんにも睨まれ、結局 敵味方・全員を労う事となった俺だった。




……




…………




2001年11月25日 正午


――――2時間後。


「お帰りなさい……まぁ、予想通りの結果だったわね~」

「…………」


たった3分の戦いとは言え、さっきは勝てて良かったッ! 肩の荷が一つ下りた気分だよ!!

事後処理の後 横浜基地に帰還した俺は着替えると、清々しい気分で廊下を歩いていた。

この後はPXでノンビリ篁達を待って、祝勝会と言う名の昼食と洒落込もうではないか。

歩みを進める中、何故か執務室に居る筈の ゆーこさんの声が聴こえた気がしたけど、空耳だろう。


「何よ、無視するつもり~? 後悔するわよ?」

「はいスイマセン。 何の用ッスか?」

「ブリーフィング・ルームに来なさい。 もう他の娘達には来るように伝えて有るわ」

「さ、さいですか……」


ふっ……実は気付いてたけど、意図的に ゆーこさんをスルーしようとしてたのさ。

だってホラ……勝ったら"どんな命令"をするか決めて無かったし、時間が欲しかったんですよ!

でも皆を集めちゃたって事は行かざるを得ないし、即席で考えるしか無いっぽいね~。

俺は歩き出した ゆーこさんの背中を尻を眺めつつ追いながら、深い溜息を吐いたのでした。


≪涼宮中尉……君には俺専属のオペレーターに成って欲しい位だよ≫


「白銀少佐が真っ先に褒めてくれた~、水月には悪いけど嬉しいよお~っ」


―――― 一方、着替える必要の無い涼宮(姉)は、ついトイレで自慰っちゃってたんだ☆




●戯言●
微妙な戦闘シーン。もっと描写を細かくしたかったのですが、要点だけ書く事にしちゃいました。
次回は白銀28が伊隅大尉ら4人に命令したりタマパパ関連のイベントを予知したりします。
年末は忙しくて1月16日まで連休が有りませんが更新頑張りますので見捨てないで下さい@w@



[3960] これはひどいオルタネイティヴ29
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/01/11 03:35
これはひどいオルタネイティヴ29



2001年11月25日 正午


「(う~む……)」


模擬戦に勝てて一難 去ったワケなのに、再び俺はピンチに陥っていた。

お解かりだろうけど、伊隅・速瀬・宗像・涼宮(姉)に対しての"命令"が未だに思い付かないからだ。

勿論エロいのは真っ先にダメ。 つまり"少佐っぽい"命令をする必要が有るんだけど……

今回 真っ先に撃墜されたのが俺なので、更に"命令"のボキャブラリーが減ってしまった気がする。

だけど良い事を言えば彼女達とのフラグに繋がりそうなので、必要以上に悩んでいる俺。

しかしながら、もう時間が少ない……今となっては ゆーこさんの尻を眺めさえもせず考えている。

この歩行ペースだと目的地まで早くても5分は掛かるし、ソレまでに決めようと思っていると……


「……(黙って歩くダケって言うのも、退屈ね)」

「…………」

「白銀」

「はい?」


――――折角 本格的に考え様と思ってたのに、話しかけられちゃったよ!?


「もう模擬戦のデータは見たわよ?」

「えっ、そうなんスか?」

「なんかピアティフが真っ先に届けてくれてね~」

「!?」

「十中八九、アンタの影響だと思うけど」

「じゃあ……そ、そうなると……」


≪……イリーナ中尉! このデータを、副司令に届けてくれよっ?≫


「何よ?」

「聞いたんですね、俺の台詞……」


≪これは……"いいもの"だァーーっ!!≫


「そんなの、リプレイを見たら嫌でも聴こえるわよ。 それに何か問題でも有るの?」

「別に無いですけど……」

「それよりもピアティフったら、いきなり連絡を寄越して来たから何事かと思ったわ」

「仕事熱心なんですね~」

「アンタが名指し したからじゃない」

「いや、別にそういう意味で言ったワケじゃ無いんスけど」


……あの台詞はパイロットを肖っていたダケで、深い意味は全く無かったりする。

けどイリーナちゃんは引くどころか、俺が言った通りデータを既に届けてくれてたのね。

これは墓穴だ~ッ、ゆーこさんがデータを受け取って無けりゃ話し掛けても来なかったろうに!


「だったら どう意味よ?」

「えっと、無意識のうちに……かな?」

「ふ~ん……成る程ね」

「……("成る程"となッ?)」

「でも、それじゃピアティフも報われないわね~」

「????」


俺の適当な誤魔化しに対し、それっきり口を開かず歩みだけを進めるダケになった ゆーこさん。

あれっ、もしかして納得してくれたのか? ……いやいや、流石に有り得んだろ それはッ。

きっと"成る程"ってのは皮肉だ。 只単に、俺との会話が時間の無駄と判断したんだろうね~。

悔しいが仕方ない。 命令の事に頭が一杯で、彼女の対応にまで頭が回っていなかった俺のミスだろう。


「(白銀は模擬戦に乗り気じゃ無かったみたいだけど、殺られ際のあの言葉……
 "無意識のうち"に出たって事は、BETAに少しでも抗おうって決意が体に染み付いてるって事ね)」


――――そんな事を考えて ゆーこさんの尻を見てるウチに、ブリーフィング・ルームに着いちゃったんだ☆


「(自分じゃ判って無いみたいだけど、白銀 以上に後先 考えてる衛士なんて居んのかしら?)」


――――結局"命令"は決まらなかった。 "あの台詞"を肖った事がこうも響くとは計算外だったYO!!




……




…………




……15分後。


「皆、揃ったわね」

『はっ!』


ヒラヒラと手を振る ゆーこさんを前に、以前の7名が彼女に対して敬礼する。

そんな篁・月詠さん・イリーナちゃん・伊隅・速瀬・涼宮(姉)・宗像の動作を軽く流しながら、
ゆーこさんは大まかな結果を述べ始める。 皆が知っている事だけど、物事には順序ってのが有るしね。

……一方、俺は ゆーこさん左斜め後ろに控えていて、未だに最期の抵抗として案を考え中だ。


「結果は知っての通り白銀達の勝ち。 内容については皆 知ってるだろうし省くわ。
 でもXM3を完成させるに当たっての資料としては、十分な内容だったとは言っておこうかしら」

『…………』


――――って省くのかよ!? 相変わらず非常識な人だな……少しは考える時間をくださいッ。

ちなみに、この部屋に入った時は涼宮(姉)とイリーナちゃんしか居なくて、何故か涼宮(姉)は顔が赤かった。

大方 俺の"命令"を恐れているのか、或いは以前"もふもふ"したのがトラウマになっているのか……

そんな"もぢもぢ"する涼宮(姉)を見て、俺は更に葛藤する羽目になってしまう。 反則だ、普通にエロいぞ。

しかもイリーナちゃんは ゆーこさんと今回のデータ云々の難しい話を始めてしまった事から、
寂しく棒立ちしてたんだけど、涼宮(姉)の視線が気になって考えるドコロでは無く、
邪な気持ちは無いとアピールせんが如くチラ見してくる彼女の視線を、流す術しかなく今に至る。


「それじゃ、白銀」

「はい」

「言った通りアンタに"御褒美"よ。 伊隅達4人に好きな事を"命令"しなさい」

「はぁ」

「……ッ……」×4


顔だけ此方に向けて言う ゆーこさんに促されて一歩前に出ると、伊隅達が明らかに動揺した。

同時に篁達の顔も強張り、俺も仏頂面だった。 ……だってまだ、決まってないんだもん☆

だったら もう優柔不断でも何でも良いや、フラグ成立の可能性が消えるのは残念だけど、
ヘタな命令をしたら折れる可能性のほうが高そうだし、決めれなかったって事で無しにしようっと。


「大抵の事は大丈夫よ? 白銀」

「……いえ、やっぱ止めときます」

「!?」×7

「何ですって?」

「だってホラ、 俺の戦果は大した事 無かったですし真っ先に撃墜されたのって自分じゃないですか。
 一応 決めはしましたけど(嘘)、やっぱ無理に"言う事を聞かせる"のは――――」

「ま、待ちなさいよッ!」

「ままま待って下さい!」

「速瀬!?」←伊隅

「涼宮中尉ッ」←宗像

「な、なんぞ?」


――――なんだか知らんけど、突然 聞いた通りの2人が凄い剣幕で迫って来た。


「"何も命令しない"なんて、それで済ませるつもりなの!?」

「ダメですッ。 戦果はどう有れ白銀少佐は勝ったんですから、遠慮なく言ってください!!」

「えぇっ? だけど何も言わない方が、そっちにも都合が良いんじゃ……」

「それじゃダメなの!!」

「駄目なんですっ!」

「そ、そうなんですか……(びくびく)」

「(全く……それじゃ白銀少佐に"無理な命令をされたい"って言ってる様ものじゃない……)」

「(もはや2人が少佐に惹かれているのは決定的だな、私も御咎め無しと言うのは若干 癪だが)」


これは予想外。 どうやら、速瀬と涼宮(姉)はちゃんと罰ゲームを受けたいらしい。

顔は可愛いけど流石は軍人だな……負けは負けだって事から、命令されないと気が済まないのね。

そう考えて伊隅と宗像の方を見ると同じ考えみたいだし、参ったな……続いて ゆーこさんに視線を移す。


「白銀。 あたしもそんな つまんない事で済まさせないわよ? さっさと言いなさい」

「は、はあ……」

「……ッ……」×7


だけど微塵にも助けにはならず、ゆーこさん+7名の視線が俺に集まって来てしまった。

ど~する、ど~するよ? ど~すんの俺!? こんな事なら、ラ●フカードを用意しておけば良かったぜ。

あああぁぁ……だったら仕方ない。 後方には最後まで有ったけど、結局はボツにした案でゆこう。

俺は覚悟を決めると、キリッと真面目な表情(心は"やる男"調)を必死で装いながら口を開く。


「伊隅・速瀬・宗像・涼宮」

『――――ッ』

「だったら命令させて貰うよ。 ……だけど、結構無茶な事になると思う」

「!?」×4

「(む、無茶な事……一体 何を言われるのかしら?)」←唯依

「(雰囲気が変わった? だとすると過酷な……最初 少佐は指示するつもりは無かった様であったし、
 ひょっとすると速瀬中尉と涼宮中尉の行動は浅はか だったのかもしれんな)」

「(全く予想できないわね……やっぱり私は、ちっとも白銀少佐の事を理解できていないんだわ)」

「4人とも、良いか?」

『……ッ……』


俺の言葉にカラダを強張らせる伊隅ら4人、篁ら3人も神妙な面持ちをする中 ぶっちゃける。


「絶対に――――死なないで欲しい」

「!?」×8

「俺の命令は、それダケさ」

「白銀……死なないでって……それだけ?」

「はい、それダケです」


い、言っちゃったよ。 真面目な顔して"死なないで欲しい"……だってお(笑)

でもオルタの世界だとBETAと戦い続けて"絶対に死なない"なんて滅茶苦茶難しい事なんじゃなかろうか?

それはそうと、自分で言ってて何て"甘い"発言かと思う。 "現実は甘くね~んだよっ!"

……と一蹴されても文句は言えないだろう。 けど勘弁してくれッ、それ以外 思いつかなかったんだよぅ!

期待させておいてごめんね!! そう心の中で速瀬と涼宮(姉)に詫びる事にした俺サマ。


「(私たち斯衛……いえ衛士は少しでも多くのBETAを倒し、いずれ戦場で果てる存在なのに……)」

「(よもや"死ぬな"とは……無茶な命令だとは思うが、白銀少佐が言われると……)」

「(きっと彼は……これ以上、自分の"仲間"を失いたくはないのね。
 そう考えると今回で、伊隅大尉達を認めてあげたと言う事なのかしら?)」

「ふ~ん……死ぬな、ねぇ。 厄介な事を守らなくちゃならなくなったわねぇ、アンタ達」

「……ッ……」×4

「ちょっと、伊隅まで どうしたの?」

「はっ!? い、いえ……何でも有りません」

「俺が言うのもなんだけど、無理そうなら別に断ってくれても良いよ?」

「!? 何 言ってんのよッ、それが命令なんでしょ? だったら何が何でも生き残ってやろうじゃない!」

「そうだね。 私も頑張って死んじゃわないようにしますっ!」

「涼宮~、アンタは速瀬と比べると100倍は死に難いんだから意気込むなら別の所にしなさい」

「むしろ涼宮中尉はCPにおける采配で我々を死なせないようにするべきでは?」

「あうッ」

「それじゃ~伊隅、白銀の条件を飲むってワケね?」

「元より選択権など無いでしょう?」

「それもそうね」

「んじゃ~俺はこれで。 疲れたんで休ませて貰いま~す!」

「あっ……白銀少佐……」


なんと意外にも反論が無かったので、今がチャンスッ! 俺はさっさと逃げ出す事にした。

途中で篁が俺の名前を呼んだけどスルー。 うぅ……こりゃフラグ成立には結び付きそうも無いな~。

でも今の命令でA-01が色々と自重してくれれば、戦死は避けられる筈だとポジティブに考えよう。


≪……バタンッ≫


「あ~あ、つまんない。 少しは女ったらしい命令を期待してたのに」

「副司令」

「どうしたのピアティフ、何か思うところでも有った?」

「は、はい。 白銀少佐は以前――――」




……




…………




「まりもがシミュレーター訓練中に自爆した時、白銀が錯乱した事が有った~っ?」

「御本人からは"忘れて欲しい"と言われたのですが……」(13話参照)

「それって何時の事?」

「2週間程 前だったかと思われます」

「……(し、少佐にそんな事が……)」

「……(だからこその、彼女等4人への"命令"だったと言うのだろうか?)」

「ですが少佐は錯乱されながらも、BETAを蹂躙しつつ反応炉 迄 到達されていました」

「その辺は、流石は白銀ってトコねぇ」


≪命令だ、復唱してくれッ! 御願いしますから!!≫


「(成る程……"あの時"の白銀少佐は、BETAを全滅させるダケでなく私達全員を守る事も考えていたのね)」


≪良いから命令だ!! お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!≫


「(必死に何 言ってんだって思ったけど……ひょっとしてアイツは"仲間"を自分の命よりも大切に……)」


≪もし涼宮中尉にも必要な状況だったら、当然 俺は同じ事をしたよ≫(17話参照)


「(戦いダケじゃなくって少佐は水月に対してみたいに、仲間を"死なせない"為なら手段は選ばないのね。
 女性として複雑だけど、私はソレでも構わ……って、どうして そんな事ばっかり思っちゃうんだろ~?)」


≪……いや、断る理由は無いよ。 参加させてくれないか?≫(16話参照)


「("あの時"は案外 釣れる方だと思ったが、私と祷子に対して何かを感じた訳では無く、
 A-01全ての"今後"を案じて祝勝会に参じたダケに過ぎなかったと言う事か……恐れ入る)」

「まぁ~、白銀の事はそれぐらいにして……とにかく解散にしようかしら。
 伊隅。 午後は此処で"打ち上げ"が有るから全員に来るように言っておきなさい」

「了解」

「月詠中尉、あの3人の娘達も連れて来るのよ? 今回の主役みたいだし」

「畏まりました」

「あの」

「ピアティフ、まだ何か有るの?」

「白銀少佐の事はどうしましょう?」

「う~ん……放って置きなさい、"疲れた"とか言ってたし」

「!? ど、どうしてですかッ? それなら、私が御声掛けに――――」

「篁」

「は、はい?」

「貴女……知ってる? 白銀が先月の22日に此処(横浜基地)に配属されてから、
 合計"何百時間"戦術機での訓練や戦闘を繰り返してるのか」

「……ッ……」

「涼宮」

「はい。 あの、白銀少佐は一週間前……過労で倒れた事が有るんです」

「えぇっ!?」

「ですから、無理には」

「そ~言う事。 判った?」

「わ、分かりました(……くっ、なんて愚かな発言をしてしまったのかしら)」


――――この瞬間から、ヴァルキリーズの隊規の一つが無謀にも"決して戦死するな"に変わったらしい。




……




…………




2001年11月25日 午後


今日は色々と墓穴を掘ってしまったので、俺は昼を抜いて暫くの間 自室で寝た。

そして適当な時間に目を覚ますと、PXにへとやって来たんだけど……篁達やA-01の姿は一切無い。

まぁ、それも良いか……今は顔を合わせ辛いしね。 時間そのものが若干遅いっても有るけど。


「あれっ?」

「…………」


≪どよ~ん≫


食事を受け取って席の方へと歩いてゆくと、一人でポツンと蕎麦を食っている女性の姿が!

……地味に久しい まりもちゃんだ。 篁を紹介して以来になっちまうかな~?

それはさておき、何故か暗そうにしている。 目の錯覚だろうけど、肩にキノコが生えてる様に見える程。

きっと模擬戦の事は知ってたけど参加させて貰えず、自分のS型だけ ゆーこさんに持ち出された事から、
仲間外れにされたと思ってヘコんでいるのかもしれない。 ……此処は声を掛けるしかね~な。

俺も一人での夕食は寂しいし、周囲に人も居ないしで"例の名前"で話し掛ける事に決めた。


「まりもちゃん」

「えっ……あっ、白銀少佐!?」

「コンバンワ、隣 座りますよ~?」

「ははははいッ。 どうぞ」


――――すると どうでしょう、まりもちゃんのテンションが見違えたので、調子に乗った俺は。


「それじゃ~明日はB分隊の指導に付き合いますよ」

「は、本当ですか? 是非 御願いします」

「了解~」

「(きっと篁中尉も来るでしょうけど、彼が来てくれるダケで私は……)」


――――つい安請け合いしちゃったんだ☆ まぁ、最近 放置しちゃってたし丁度 良い機会かもね~。


「イキナリだし、榊達 驚きそうですね」

「ふふふっ、そうですね。 呆気に取られる様子が目に浮かびます」


――――余談だけど後日、今日の"打ち上げ"が有った事を篁の口から聞いた俺は、地味に凹んだ。




……




…………




2001年11月26日 早朝


「今回は早かったわね」

「どもッス」


今朝も霞と篁に起こされると、霞の口から ゆーこさんが俺を呼んでいると言う話を聞いた。

その理由は想像できるので、篁に先にPXで待つように指示すると、
執務室に向かう途中で未だにAAを作っているらしい霞と別れ、今は ゆーこさんと対面している。

ちなみに今 結構眠い。 昨日まりもちゃんと長い事 話してた上に、日課の対象を神代達にしちまったからだ。


「……で、昨日の件は"刺激"になった?」

「えぇ。 なりましたよ、御陰で ひとつ思い出しました」


――――別に刺激にはなってないし、思い出す以前に知ってたんだけど、俺は空気を読む。


「本当? だったら教えなさいッ」

「えっと……期待には副(そ)えないんで申し訳ないんスけど」

「あら」

「11月28日。 珠瀬事務次官が来訪して来る日に、HSSTが横浜基地に落ちて来ます」

「……っ!?」

「えっと、どれだっけ……エドワーズから那覇基地に向かっている、再突入型駆逐艦……かな」

「……ッ……」

「同時に遠隔操作による突入角の変更を試みるも駄目。
 自爆コードも受け付けず、ハッキングも重ねて無理って寸法です」

「ホントなの?」

「勿論です」

「全く、とんでもない事を"思い出した"モンねぇ」

「思い出してなかったらゾっとしますよ」

「折角00ユニット完成が見えたと思ったのに」

「はははっ、横浜基地が消えちゃえばソレどころじゃ無いッスよ」

「まぁ……"この辺"は無事でしょうけどね」

「でも死にますよ? 一万人くらい」

「でしょうね」

「狙いは珠瀬事務次官だと思います、オルタネイティヴ5の発動を望む連中の差し金でしょ」

「彼が易々と避難するような人間じゃないって事を判ってる分、タチが悪いわね」

「全くッスよ」


俺って頭良い~ッ! A-01との模擬戦って言う新しいイベントを経験した結果、
何かを"思い出さないと"いけなくなったけど、28日の件を都合よく思い出す事にしたのだ。

細かい内容は知らないから"白銀"の記憶を頼って情報を淡々と伝えたんだけど……

正直、新潟の件よりも唐突過ぎるよな……でも、思ったより ゆーこさんは疑っていないみたいだね。

これも"信用された"って現われなのかな? ともかく今は話を続けるとするか~。


「"前の時"は、どう対応したの?」

「それは……確か1200ミリOTHキャノンって有りますよね?」

「そんなのも有ったわね」

「確か……HSST打ち上げ用のリニアカタパルトの先端に、整備リフトを固定。
 其処にアイツだったら……吹雪かな? 吹雪とOTHキャノンを配備。
 んで衛星データリンク・間接標準による"極長距離狙撃"を行うって寸法です」

「無茶苦茶ね……」

「考えたのは ゆーこさんですけどね」

「じゃあ"アイツ"って誰?」

「珠瀬です」

「成る程ね」

「でも今回は必要無いですから、事前にサッサとブッ壊しちゃってください」

「何で?」

「多分 無理っぽいからですよ。 珠瀬は最初 超ビビってましたけど、
 訓練兵として一緒だった"頼り無かった俺"に励まされて、何とか成功させたってトコでしたし」

「ふぅん」

「高度60キロ、距離500キロ。 何度も成功するモンじゃ有りませんって」


まぁ、今の俺が必死に説得しても良いんだけど……良い意味での"熱い展開"にはできっこない。

アニメやゲームだと効果音や音楽までもが空気を読んでるから、雰囲気が出るに過ぎない。

なのに俺なんかが珠瀬をヤケになって励ましてみろ? きっと"こんな風"になっちまう。




……




…………




「何 言ってんだ珠瀬、諦めんなッ!」

「そ、そんな事 言ったって……無理なモノは無理なんですっ!」

「頑張れ頑張れ出来る出来る、絶対出来る!! 頑張れ、もっとやれるってッ!」

「……ッ……」←ドン引き




……




…………




……そう、大方 松岡 ●造みたいなノリの励まし方しかできないだろう。

このゲームの名前がマブラヴ・ヒートネイティヴとかなら別だろうケド、やっぱ正史通り壊して貰おう。

アンリミなら大変なイベントなんだけど、オルタじゃ予知さえ出来れば何の問題も無いしね。


「じゃあ先手を打って置くしか無いって事ね」

「はい、御願いします」

「全くもう……また仕事が増えたじゃない」

「思い出して無かった時に起こる事態よりはマシですって」

「そうなんだけど癪ね」

「まぁ、そう言わないで下さいよ。 ゆーこさんが模擬戦を組んでくれた御陰でも有るんですから」

「ありがと」

「じゃあ話は変わりますけど、XM3については どうなってます?」

「HSSTの件を優先させるから後回しになるけど、昨日のデータを元に最終調整をするつもりよ」

「そうですか」

「アンタから思う所は有る? 参考にしてあげても良いわよ」

「う~ん……何点か有るんスけど、明日に回しても良いですかね?」

「どうして?」

「今日 一日、B分隊の訓練を見るんですよ。 その時、まりもちゃんや榊達の意見も取り入れようと思って」

「へぇ……(やっぱ考えてんのね、こいつ)」

「だから明日って事で」

「分かったわ、なら午後の適当な時間に来て」

「了解~」

「HSSTに関しては任せときなさい」

「有難う御座います。 でも、睡眠はしっかり取ってくださいね~?」

「アンタから言えた口なの?」

「言えた口ですよ」


――――ゆーこさんの"睡眠時間"が俺よりも短いのは間違い無いだろうしね。


「あたしはアンタこそ もっと休めって言いたいんだけど」

「何 言ってんですか~、俺はちゃんと休んでますって」

「休んでる人間が突然 倒れたりはしないものよ?」(21話参照)

「あ、あれはタマタマですよ、たまたま」


――――疲れてたんじゃ無くて、築地達の おっぱいに興奮して倒れたダケだし。


「"たまたま"そうならないように休めって言ってるんだけど? 生憎 私は倒れた事は無いわよ」

「それについては言い訳しませんけど、もう大丈夫ですって」

「根拠は?」

「有りませんけど、年末年始が過ぎる迄は大丈夫だと思います」

「人事みたいに言われても、納得できないんだけど?」

「……ッ……」

「白銀?」


う~ん、なんだか随分と食いついてくるなあ。 無駄に心配する俺が鬱陶しかったんだろうか?

でも彼女に休んで欲しいのはマジ。対して俺は疲労で倒れたワケじゃないから、つい言い返してしまう。

そんな中で ゆーこさんの口から出た"ひとごと"と言う単語を聞いて、俺は遂に自重できなくなってしまった!


「……人事の様にと言ってますけどね、俺は自分自身を"客観的"に見る事が出来るんです」

「えっ?」

「貴女とは違うんですッ」

「!?」


――――アタックチャンスッ!! 後者の台詞は そんなノリで発音するのがコツなんだ☆

当然 言いたくなったダケなので深い意味は全く無い。 しかも喧嘩腰な台詞なので、言ってから後悔。

それはそうと、コレって"あの年"の流行語大賞でも良かったんじゃないかって思うんですけど。


「だ、だから心配しないで下さいよ。 それじゃ~失礼します!」

「…………」


≪ガシューーーーッ≫


昨日 自重しようって決めたのに、相変わらずだな俺って……もう死のうかな。

何だか最初は呆気に取られてた ゆーこさんの顔が即 怖くなったし、此処は離脱するに限るッ。

よって俺は執務室を出ると、全力で駆け出した。 ちゃんと結果は出すから許していってね!!


≪俺は自分自身を"客観的"に見る事が出来るんです≫


「アイツ……自分が倒れる事までも計算に入れて、無理に体を動かしてるとでも言いたかったの?」


≪――――貴女とは違うんですッ≫


「でも、あたしには"それ"が出来てないから余計な気遣いをして来た……何だか敵わないわね」




……




…………




……1時間後。


「本日 御指導して下さる、白銀少佐に敬礼ッ!」

『――――っ』

「突然だけど、今日は俺がガンダ……教官だ。 宜しく頼むよ」

『はいっ!!』

「(白銀少佐……一体どんな指導をされるのかしら? それにしても突然の話だったわね)」


PXで篁と合流した俺は強化装備に着替えると、予定通りシミュレータールームに赴いた。

そして軍服姿の篁&まりもちゃんを左右に、凛々しく敬礼しているB分隊5名と向かい合っている。

予定は主に じっくりと個人指導……そう安請け合いしたワケなんだけど、俺は再び葛藤していた。


「(いきなりで焦ったけど、遂に この時が来たのね……頑張らないとッ)」

「(厳しい表情をなされている。 も、もはや異性として意識している場合では無いな)」

「(少佐……待ってた)」

「(あわっ、あわわわわっ……どどどどうしよう~っ)」

「(やけに軍曹の機嫌が良い気がするけど、どうしたのかな~?)」


――――だって、榊達がスケスケ・エロスーツ姿なのを忘れてたんだもおおぉぉんっ!!!!




●戯言●
A-01に対しても命令は勘違いフラグのみ利用しました。期待させてごめんね!!!
今回は修●と元総理の台詞云々のネタがやりたかったダケなんだ☆ だから20KBと短いです。
次回、ようやくB分隊のターンです。相変わらず大したフラグは立たないと思いますけど。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ30(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/01/17 04:11
これはひどいオルタネイティヴ30(前編)




2001年11月26日 午前


様々な訓練(?)でマブラヴ世界の女性達に対して耐性を付けてきた俺だったが。

流石にスケスケ・エロスーツ姿の御剣・彩峰レベルが近距離に居るとキツさが否めない。

……いや、普通の反応だろ? むしろ大丈夫な男連中や開発者の頭の中を知りたいんですけど。

でも一人で興奮してたとして、俺ダケが奇特な反応をしているとに思われるんだろう。

少佐なら尚更で"この世界"だと、例外は有るだろうけど全ての国連軍の女性衛士が、
スケスケ・エロスーツを着る運命だと言う常識が有る事から、俺は頑張って耐えねばならない。

何度もループしているハズの俺が耐性が無い振る舞いをし、ソレが ゆーこさんの耳に入れば、
勘の鋭い彼女が"俺そのもの"の存在に勘付き、信頼の二文字を失う可能性も有るんだ。

考えてみれば、榊達はスケスケ・エロスーツを着た当初は恥ずかしがっていたし、
完全たる常識では無いんだろうけど、今は既に受容している事から、やはり軍人と言ったトコロ。

今は俺&篁が突然乱入した事から多少、動揺している様子だけど、
傍からまりもちゃん指導による訓練を見た限り、恥ずかしがっている様子は既に見えなかった。


「それじゃ~最初は……珠瀬の様子から見るよ」

「にゃ!?」

「軍曹は設定とかを御願いします」

「了解しました」


――――そんなワケで俺は最初に見てあげる娘を、最も無難と思える珠瀬にした。


「篁はどうしてる?」

「特に御指示がなければ、指導の様子を見せて頂こうかと思いますが」

「オッケー。 暇だったら自主トレしてても良いからね?」

「!? そ、そんな事をする訳には……」

「なら早速始めよう、珠瀬・駆け足!」

「は、はい~っ!」


珠瀬 壬姫:俺的 難易度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆




……




…………




――――15分後。


「白銀機、命中~」

『珠瀬機……命中しました~っ』

『た、互いの命中を確認。 それでは標的の位置を更に50メートル延ばします』


お互いに別の筐体に乗り込んだ俺&珠瀬だったけど、ぶっちゃけ"指導"は行っていなかった。

では何をしているのかと言うと、互いに吹雪F型に乗り込んだ事を想定して"対戦"を行っている。

勿論……普通に戦えば俺が間違いなく勝ってしまうので、狙撃限定による戦果を競っていた。

内容としては平地に要撃級の"的"を無造作に配置し、互い狙撃して命中させる度に、
更に50メートル距離を延ばして、どちらが先に外してしまうかと言うモノだ。

狙撃は片膝を着いた態勢で行い、流石に実際の戦況的な理由で伏せ撃ちはしていない。


「アレも当てたのか? やるな~珠瀬」

『し、少佐こそ凄いですッ』


そんな今現在、既に常識的にオカしい射程まで伸びてしまっているので、
まりもちゃんは焦りながら設定を続けている。 見ている篁と榊達も驚いてるんだろうか?


「(信じられない……)其処の、確か……榊と言ったな?」

「は、はい。 何でしょうか?」

「あの珠瀬と言う者は、本当に"訓練兵"なのか?」

「その通りです。 狙撃の腕に関しては、私達は足元にも及びません」

「ふむ……狙撃のみとは言え、白銀少佐とあそこまで競える訓練兵が居るとは……」

「……(私は白銀少佐にあそこまで"狙撃"の腕も有ったのが驚きだけど)」


――――そして淡々と互いの狙撃が続く。 そろそろヤバいぞ、外してくれ珠瀬~ッ!


「良しッ、命中した!」

『あ……当たりました~』


ちなみに狙撃合戦を選んだのは、只単に俺の腕が珠瀬にどれだけ通用するのか知りたかったからだ。

俺が負けても相手は極東一のスナイパーで有る珠瀬なので悔しくないし、勝った珠瀬は自信に繋がる。

また珠瀬が"本調子"で俺に負ける事は有り得ないけど、"緊張"によって負けたとしても、
相手が少佐であり自分の実力を過信していない珠瀬であれば悔しくも何ともないだろうしね。

でも狙撃が続くに連れて少しだけ勝ちたくなってきた。次は当てれるか微妙だけど、適当に頑張ろう。


『目標を配置。 それでは状況開始』

「……さてと」

『……ッ……』


相手の吹雪F型の狙撃の様子は見えず、"別の空間"でシミュレーターに挑んでいる俺と珠瀬。

当然 弾数は初っ端から1発であり、時間制限は30秒。 命中の有無は自分から告げていた。

設定を担当している まりもちゃんは射撃直後に結果が分かっているんだろうけど、
空気を読んで俺と珠瀬の口から結果が言われるまで黙っており、こうして今に至っている。


≪――――パアアァァンッ≫


ふ~む……硬い前腕だけど、適当に撃ったら一応 当たってたみたいだ!

さて、珠瀬はどうなったかな~? 次は間違いなく失敗するだろうし、出来れば外して欲しいけど。

そう考えながら、俺は あくまで無難に当てたように装いながら汗を拭って言った。


「うしっ、白銀機 命中ッ」

『…………』

「珠瀬~?」

『うっ……あ、あぅあぅ……』


この反応……どう考えてもハズレです、本当に有難う御座いました。

普通に"外れた"と言ってくれて全然 構わないんだけど、珠瀬は恐縮してしまったらしい。

演技だったら俺に相当な精神的ダメージになるんだけど、彼女に限ってソレは無い。

今は見えていない顔も拝めれたら更にバレバレなんだろうけど、声ダケで外れた事は察せる。

ソレを良い事に、俺は再び"自重"と言うリミッターを外して珠瀬に"ある台詞"を言う事にした。


「ふふ……珠瀬さん……結果を教えてくれませんか? ……ハズレ、なんでしょ?」

『!? は、はい……外しちゃいました~』

「ははっ……やっぱりね。 見当はついてたけど、案の定 引いた撃ち方……」

『うぅッ』

「周囲の目を気にしてばかりの発想――――猫な考え……」

『ね、猫って?』

「いわゆる"緊張し過ぎ"って事だよ。 珠瀬は まだまだ あんなモンじゃ無いんだろ?」

『……そ、そうですね~。 あと200メートルくらいはいけたかもしれません』

「だったら今度は頑張って、俺を負かしてくれよ~?」

『にゃっ……は、はいッ。 頑張ります~!』


――――マジかYO!? 俺は無理、絶対 次で外してた自信あるし。


「むぅ、やはり白銀少佐の勝利か……」

「流石の珠瀬でも無理だったみたいね、"緊張してた"なんて理由に成らないわ」

「でも……普通はやらない」

「だよね~、みんなの中で何の要素が白銀少佐や軍曹に勝てるかって言ったら、
 唯一 考えられるのが壬姫さんの"狙撃"の腕ぐらいだもん」

「!? それなのに、あえて最も負ける可能性が高い勝負に挑んだ……それが白銀少佐の"狙い"か?」

「その通りで御座います、篁中尉」

「恐縮ですけど、軍曹も珠瀬のスナイパーとしての技術は並の衛士の実力を遥かに凌いでいると仰います」

「……けど訓練兵には負けれない」

「うん。 士気やメンツにも関わっちゃいますから、普通はやりませんよね~。
 それ以前に、少佐ぐらいの階級の人がボク達を相手にしてくれる事 自体 無いのが普通ですけど」

「しかしリスク承知で挑んだ……と言う事か(……それだけ自信が有ったのね、流石は白銀少佐だわ)」


計画通り、珠瀬はあんまりヘコんでないな。 俺にとっても彼女に勝つのは自信に繋がった。

……となると勝負は終わったし、ちゃんとした指導に移る必要が有るな~。

ちょっと不安だけど珠瀬が相手なら余裕だろう。 そう考えながら俺は、珠瀬のバストアップに告げる。


「良し。 前座はこれ位にして、今度は"操縦"について見るよ」

『お、御願いしますッ』

「珠瀬は一旦、筐体を出てくれ。そうしたら――――」

『はい?』

「――――俺の筐体の中に入って来てくれ」

『え……ええぇぇ~~っ!?』




……




…………




――――更に15分後。


「……落ち着いたか?」

「は、はひっ」

「そんなら珠瀬、ジャンプ・スナイプを見せてくれ」

「はぃい~!」


今現在、俺の膝には珠瀬が乗っかっている。未だに顔が紅いけど、これでも落ち着いた方だ。

勿論 指示した直後、彼女は驚愕して まりもちゃんも何故か焦り捲ってたけど、
訓練兵に即席で俺の操縦技術を教える方法なんぞ、コレしか思い浮かばなかったのよね。

でも方法が方法なので10分間は珠瀬を宥める必要が有ったけど、ようやく状況開始となる。


≪……ブワァッ!!≫


なんだかヤケクソと言った感じで珠瀬は吹雪F型を飛び上がらせる。

そして降下直前に、既に構えていた両手の支援突撃砲で、
中距離で佇んでいる3体のうち1体の要撃級に36ミリを1発命中させた。

直後 着地すると、再び跳躍して同じ事を繰り返し、3体全ての要撃級を仕留めるに至った。

その後 的を小型である"光線級"にしてみると、同じ要領で3発とも各光線級に命中させた珠瀬。

ぶっちゃけ普通に凄い。 小型の光線級に至っては俺でも百発百中は困難なのは間違いないのに。


「……ほほ~」

「ど、どうでしたか~ッ?」

「流石だな、見事なジャンプ・スナイプだよ」

「でも今のは~」

「分かってる、空中で"1度に3発 当てる"のは無理なんだろ?」

「は……はい。 今の方法だと一番 失敗しないので……」

「珠瀬」

「えっ?」(びくっ)

「君は何か勘違いしているぞ?」

「????」

「まぁ、見ていなさい」

「あっ……あわわわ」


恐らく今から俺が披露する技術は既に まりもちゃんから教えられているだろう。

だけど百発百中の自信が無いから3回跳躍して披露した……その気持ちは理解できる。

しかしながら珠瀬は賞金稼ぎのスナイパーでも無いし、BETA相手に求められるのは弾幕だ。

ソレは支援突撃砲でも例外では無く、俺は珠瀬の両腕を包み込むように操縦桿を握る。


「フッ……」

「少佐?」

「おっと、なんでもない。 じゃ~俺がやって魅せるぞ?」

「は、はい(……今の少佐白銀、何か嬉しそうだったけど……)」

「それっ!」

「……ッ……(さっきの私の技術が、少しは白銀少佐の目にかなってくれたのかな~?)」


余談だけど今の俺の"笑み"の意味は、珠瀬と密着しても全くムラムラと来なかったからだ。

故の余裕の現れ……だけど可愛いことは可愛いな~、髪を落としてたりしたら少しはヤバかったか?

いやイカんイカん、白銀は珠瀬ともイクとこまでイクし、余計な事を考えるのはよそう。

よって気分を改めつつ俺は吹雪F型を跳躍噴射させると、フットペダルをベタ踏みしながら連続発砲。


「オッケイ、全滅」

「あ、あれっ?」


≪――――ズシンッ≫


俺は空中に浮きながら、10発以上の36ミリを3体の光線級に放っていた。

百発百中? 何それ美味しいの? ……まさに、そういった感じでの射撃だったのだ。

だから2~3発ほど外しているし、珠瀬のとった行動とは正反対のモノだったと言える。


「俺は なにも1発を確実に当てる事を考えてるワケじゃない、これで良いんだよ」

「そ、そうなんですか?」

「実戦だと必要なのは弾幕だしね、そもそも要撃級にもなると頭にでも当てないと、
 36ミリ1発じゃ倒せない以前に、浮きながら百発百中は無理だろ?」

「は……はい」


しかしながら珠瀬は要撃級に対しての射撃では、全て顔面に36ミリを命中させていた。

マジ凄いんスけど珠瀬さんッ、でも俺の顔に出なかったのは何時もの通りであります。

ま、まぁ……ワシャワシャ迫って来る要撃級には流石に無理だよね? だから気にしないのさッ。


「考えてもみろって、チェーンガンならバカスカ撃つんだ、無理に節約する必要なんて無いさ」

「成る程~」

「それじゃ~今の要領でやってみてくれ」

「わ、わかりましたっ」


……こんなカンジで俺は珠瀬の指導を行っていった。 居心地が悪そうな まりもちゃんスマソ。

けど御陰で珠瀬は非常に集弾率の高い空中での狙撃支援の技術を身に付けてくれたようだ。

さて置き、支援突撃砲ってホント豆鉄砲だよな……距離が伸び過ぎると威力も下がるし。

こりゃコストが上がるけど支援狙撃銃ってのも提案してみるか。 珠瀬みたいな当てれる衛士専用で。


「んじゃ~次は鎧衣、入って来てくれ」

「はいっ!」


鎧衣 美琴:俺的 難易度 ★★★★☆☆☆☆☆☆




……




…………




「敵は3機、この状況だと どうする?」

「え~っと……前衛の敵2番機を頭部バルカン砲で牽制しながら後退しつつ、
 中衛の敵1番機を120ミリで仕留めます。 敵3番機の狙撃は頑張って避けます」

「じゃあ やって見せてくれ」

「はいッ」


――――15秒後。


「残念、1番機には当たらなかったな」

「避けられちゃいましたね~」

「2番機が接近して来てるけど、どうすんの?」

「敵1番機の36ミリが怖いので、無理に動くよりは長刀を盾で防ぎます」

「そんで? ……まぁいいや。 軍曹、動かしちゃってください」

『了解』


――――15秒後。


「成る程、防いだら頭部バルカン砲でメインカメラを狙って無力化させたか」

「この距離だと外しませんからね~」

「誤射を避けてた1番機が思いっきり36ミリで狙ってるけど、次は?」

「開いた右手を使って敵2番機を盾にします」

「あぁ……何故か右手の突撃砲を背中に納めたのは その為か!」

「はいッ」

「でも、どうやって反撃すんの?」

「え~っと」

「まぁ、それも楽しみにしておくか。 軍曹、時間 時間~」

『はい』


――――15秒後。


「へぇ~、衛士の命が心配で射撃を中止した瞬間に、2番機を離して120ミリで応戦か」

「あはは……また外しちゃいましたけどね~」

「気にしなくて良いさ。 でも、何時の間にか3番機が左に回りこんでるけど?」

「構わずに敵2番機を狙い撃ちます」

「当たるのか?」

「両手でしっかり狙って、当てますッ」

「硬直を取れば当たりそうだけど……左の3番機は無視できないぞ?」

「それはですね」

「!? いやいやいや、言わなくて良いや。 軍曹~」

『……了解』


――――15秒後。


「うは……左手の盾をパージして左肩に立て掛けて3番機の36ミリを防ぎつつ、
 両手でしっかりと2番機を狙って撃破とか……そいつの反撃も寸前で避けたし旨く動いたモンだな」

「どっちかって言うと、ボクは避ける方が得意ですからね~」

「確かに120ミリ1発くらいなら今の盾で防げるし、良い判断だったと思うぞ?」

「有難う御座いますッ」

「残りの3番機はどうする?」

「此処まで来たら、頑張って撃破するしかないです」

「だよな~、じゃあ軍曹」

『は、はい』


……そんなワケで、鎧衣は無事 吹雪F型を操り高AIのノーマル不知火3機を単機で全滅させた。

戦術機相手じゃ有り得ないと思うけど、制圧支援 仕様でミサイルを撃ち切った武装での戦いだ。

いわゆる武器は突撃砲(36ミリ/120ミリ・予備弾倉2/2)と短刀2本のみってワケだからね?

んで何をしていたのかと言う詳細は、彼女は俺の膝の上でシミュレーターに勤しんでたのは同じだけど、
15秒が経過する度に まりもちゃんに時を止めて貰い、"次の行動"を どうするか聞き出していたのだ。

珠瀬に対してと同様に、鎧衣の"判断力"に興味が有ったからなんだけど、今の発想は無かったわ。


「どうでしたか? 白銀少佐」

「……ッ!」

「少佐?」

「んっ……いや、今のは感心してたダケだ、他意はないぞ?」


ぐおっ……鎧衣がイキナリ"ぐるん"っと振り向いて、めっちゃビックリしたんですけど。

さっきの珠瀬と大きな差は無いスタイルだから油断してたけど、やっぱ美少女なんだよなぁ……

珠瀬は振り向いて来なかったからドキッとしなかったけど、同じ事をされたらヤバかったZE。

よって俺は一瞬 体を強張らせちまったけど、誤魔化す様にして鎧衣を褒めてあげたんだけれども。


「そ、そうなんですか!? 有難う御座いますッ!」

「おわっ! ちょっと自重しろ、顔が近いぞ!?」

「あっ、すいません」

「……分かれば宜しい、じゃ~本題に移るか。 何か教えて欲しい事は有るかい?」

「えっと、それじゃあ……やっぱり少佐の機動を……」

「任しとけ!」


だけど流石は鎧衣。 少佐様に褒められて嬉しかった様で、興奮気味に顔を寄せて来た。

くそっ……俺は多少は意識してたのに、鎧衣は全く"密着"する事に動揺してなかったみたいだなあ。

思えば会って間もない白銀に人工呼吸したり・裸で暖めたりした娘だし、仕方ないんですけどね。


「(ふぅ~、凄く緊張したけど……何とか動けて良かったあ~)」


≪んっ……いや、今のは感心してたダケだ、他意はないぞ?≫


「(でも、やっぱりボクってダメだなぁ……褒めて貰ったからって、上官に"あんな態度"で……)」


――――この後の操縦による指導では、意外と鎧衣は大人しかったりした。


『状況終了します』

「少佐、有難う御座いますッ」

「ノープロブレム。 んじゃ~次は榊ね?」

「は、はいっ!」


……ちなみに、鎧衣の件で"新しい案"を思いついてしまった俺様。

彼女が盾をパージさせて真横からの攻撃を防御してたけど、肩にシールドが有っても良いかもね。

特に両手で武器を構える珠瀬みたいな娘が乗る戦術機には、両肩に有っても邪魔にはならなくないか?

思い出してみれば不知火って肩にデッパリが有るから、前から其処に何か付けれそうな気がしてたし。

そんな事を思いながら頭の後ろで両手を組んでリラックスしていると、中々 来ない次の人。


「……??」

「……ッ……」

「どうした? 早く入って来いって」

「や……やっぱりですか?」

「うん」

「り、りりり了解しましたッ」


――――さぁ、これからが本当の地獄だ……ッ!! 下半身的な意味でね☆


榊 千鶴:俺的 難易度 ★★★★★★☆☆☆☆




……




…………




珠瀬の狙撃・鎧衣の判断力は素晴らしかったので、もはや榊の指揮能力を測るダケ無駄だろう。

勿論、良い意味で。 ……だから最初から操縦についての指導をする事になったんだけれど。

榊のスタイルは珠瀬&鎧衣と比べると桁外れに良い。 だから、めっちゃ遣り難かったりする。

俺に何処ぞの小説のボヤき高校生の様に、眼鏡属性が無いのが唯一の救いだったな~こりゃ。

それ以前に榊の身長的に普通に操作性が悪い。こりゃ難易度にプラス1した方が良かったっぽいな。


「オッケー、良い感じ。 もうちょいペダルを踏む感覚を早くすれば完璧かな」

「は、はいッ」

「ホラ、こんな要領で……空中で真横に水平移動する方が狙いも有る程度は定まり易いし」

「成る程……ッ……こんな感じでしょうか?」

「その方が断然 良いな、後は慣れだから とにかく練習だね」

「了解」

「じゃ~次は射撃も同時にやってみようか」

「同時に……ですか?」

「難しくは考えなくて良いさ、強襲掃討だと両手で定位置に弾幕さえ張れれば良いから」

「そ、そうですか。 そう言う事で有れば……」


―――― 一応、有る程度は我慢しつつ俺はポーカーフェイスを活かして指導するんだが。


「……榊」

「少佐ッ」

「んっ……なんだい?」

「えっ? あっ……それは少佐の方から」

「いやいや、俺は後回しで良いから榊が言ってくれ」

「いえ、少佐がッ」

「……ッ……」

「!? す、すいませんッ!」

「いや、別に謝らなくて良いんだけど……きっと互いに同じ事を思ったんだと思うよ?」

「だとすると、やっぱり……」

「"遣り辛い"よねェ?」

「は、はい……決して嫌では無いんですけど、この体勢では操作性が……」

「だよな~、普通に悪いよね~」

「も……申し訳ないです」

「だから謝らなくて良いって、しっかし どうするかな~?」

「それは何とも……」

「ま~考えて置く事にするよ。 ところで、続けるか? 嫌だったら中断で良いけど」

「いえ、あのッ! 本当に嫌だったと言う訳では無いので、止める必要はないですっ!
 あくまで私が本来の操縦をするのが普段より難しいダケで有って――――」

「はははっ、分かってるよ。 それなら、もう少し続けようか?」

「お、御願いしますっ!」


榊は やっぱり真面目で良い娘だなァ、本当は嫌なのに必死で違うとアピールしてくれちゃって。

俺の膝に座る時、妙に躊躇い続けてたし……相手が上官な事も有って妥協してたみたいだけどね。

でも……そんな誤魔化し方だと"本当は嫌"って言ってる様なモンだぞ? 少し"おべっか"がヘタだな~。

とは言え操縦性が悪いのは榊の魅力を差し引いても間違いない……これは考えて置く必要が有るな。


「大体 こんな感じかな……お疲れ、榊」

「はぁ、はぁっ……あ、有難う御座いました」

「……ッ……」

「!? し、白銀少佐ッ」

「ぇあ?」

「不甲斐ないミスも有って、本当に申し訳ありませんでした!」


確かに状態が状態だったので、榊は思ったように動けない事が多々あった。

でも俺も榊の肌の感触に耐える事ばかりを考えていたので、正直 失礼な指導だったかもしれない。

それはそうと疲れた様子で振り返った榊も、ソレなりに色っぽくてヤバかったではないかッ。

デカい眼鏡なのに、"ふとまゆ"なのに……これで眼鏡外して髪下ろしてたら絶対 耐えれなかった筈。


「気にしないでくれ、今ので"良い案"が浮かんだしさ」

「良い案……ですか?」

「そう、良い案」

「それは どの様な――――」

「榊くん」

「えっ?」

「その前に重いし顔が近いしで、離れてくれると嬉しいんだけど」

「えっ!? す、すすすすみません少佐ッ!」

「はははっ、さっきから謝り過ぎだぞ~榊」

「あうっ」


……も、もうダメぽ……失礼な事を言ってしまったが、何気に膝が痛くなっていた。

よって"良い案"の誤魔化しも兼ねて榊を退け、俺も一旦 筐体を出ると小休止する事にした。

ちなみに その"案"とは、今までの様にカラダを密着した操縦・指導をしなくても、
別の筐体で"同じ動き"をしてくれる様なシステムを開発するのが良さそう……って案なのよね。

誤魔化したのは精神的な余裕が無く榊に説明するのが面倒だったダケで、他に深い意味は無い。


「(はあぁ~っ、白銀少佐に鎧衣と珠瀬とは違う所を見せたかったけど……やっぱり無理よぉ)」




……




…………




「んじゃ~次は彩峰と御剣だな」

「……うん」

「ははっ!」


ヘロヘロと筐体を出てきた後、二人を見て声を掛けると……彩峰は複雑な表情で静かに頷く。

対して御剣は何故か直立不動になって敬礼のポーズを取り、互いのリアクションの違いが笑えた。

それにしても次に指導するのは彩峰か……彩峰を個人指導……巨乳不思議娘と密室で訓練……だと?


「ちょっとダケ休みたいから、二人は今のうちに心の準備でもしといてね?」

「ん……大丈夫?」

「何故 疑問系」

「気のせい?」

「だから何故 疑問……まぁいいや疲れる、んで御剣は平気かい?」

「も、もももッも、問題 有りませぬッ!」

「おま……」


――――何で真っ赤なんですか御剣 冥夜さん……問題 有り過ぎそうで困るんですけど、主に俺が。


「(な、何て羨ましい訓練なのッ? 私も御願いすれば、白銀さんに同じ指導をして貰えるのかしら?)」

「(きっと神宮司軍曹も、私と同じ事を考えていると思う……でも流石に私が耐えれそうも……)」


――――んっ? 何だか まりもちゃんと篁が視線が気になるけど、そんな事より話を戻して。


「……ッ……」

「(なんか……ドキドキして来たかも)」

「(くぅ~っ、どどどどうすれば良いのだ!? こ、これでは間違い無く訓練にならぬっ!)」


長椅子に腰掛けつつ、妙にソワソワしている彩峰と以前の涼宮(姉)の如くキョドっている御剣を見てい俺。

当然 焦点を合わせているのは"おっぱい"であり、疲労している今……目を逸らす考えすら無かった。

果たして俺は二人と肌を合わせて捌き切れるのだろうか? しかし答えは既に解っている……そうッ!


「…………」


彩峰 慧:俺的 難易度 ★★★★★★★★★★


御剣 冥夜:俺的 難易度 ★★★★★★★★★★(計測不能)


――――"☆・絶・対・無・理・☆"……と。




●戯言●
今回の訓練で白銀は たまで支援狙撃銃・美琴で肩部シールド・委員長で訓練での新システムを発案します。
次回の彩峰と冥夜との訓練でも新たな武装を考え、以後の戦いで実装する予定です。(恐らく最後の発案)
さておき今回は試験的に前後半に分けてアップする事にしました。本作においては初の分割になります。
読者様的には"多少長いけど更新が遅い"のと"短いけど更新多少早い"のどちらが良いでしょうかね?
最近は一日で一話~二話使うのが基本になっているので、後者だと今回の様に中途半端な所で終わるかも。
以後クーデター編にもなると一日分が凄い遅れてしまうので、御意見を方向性に活かそうかと考えてます。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ30(中編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/01/21 01:11
これはひどいオルタネイティヴ30(中編)




2001年11月26日 午前


――――小休止から10分後。


「さて彩峰、そろそろ始めるぞ?」

「はい」


予想外だろうけど、指導の再開は立ち上がった俺の口から告げられた。

覚悟はまだ ちっとも出来ていないんだけど、空気を読もうとした結果として今に至る。

いやだって……俺以外の7人が全員 直立不動で訓練の再開を待ってるんだもん。

つまり俺が休んでいる限り何時までも その時間が続いてしまうので、気まずかったからだ。


「そんじゃ~行くか」

「…………」


若干 未だに膝が笑っているけど、再開を告げてしまったからには動かねばならない。

彩峰への個人指導に関して思うトコロは多々あるけど、とにかく今は何も考えない事にしている。

10分間で唯一 考えた対抗 案はソレだけなんが……意識しまくるよりはマシだろう。

そんなワケで彩峰より先行して筐体に先行し、入り口の手前でクルりと振り返ってみると……


「うおっ」

「……ッ?」


――――予想はしていたけど、真後ろに彩峰が立っていた。


「彩峰」

「はい」


少しだけ思ったんだ……振り向いた時、彩峰が居なければな良いな~って。

もし居なければ別の筐体に入っていったってワケで、密室・密着指導を回避できたのにッ。

それはそれで彼女は俺との密着がイヤだって事になるから多少はショックだけど、
俺の精神的負担を考えると、それはソレで構わないと思うしね。

……でも彼女はおり、無表情で首を傾げて来たので、野暮とはいえ言ってみるんだけども。


「やっぱり別々の」

「ダメ」

「ですよねー」

「…………」


――――即効でダメ出しを食らってしまったZE。彩峰もやはり軍人の娘であり、志しも軍人だ。

ちなみに上官に対し"ダメ"とハッキリ言ってたのは、以前みたく他の者が近くに居ないからね?

榊とか相手じゃ有り得ないだろうけど、彩峰は俺の砕けても良い的な思考を察している。(9話参照)

それはそうと、やっぱり同じ筐体に入るのか……こりゃ~覚悟を決めるしか無いみたいだな~。


≪どかっ≫(座った音)


「特等席にどうぞ」

「……うん」


――――若干のディレイの後、俺の膝に腰を降ろす彩峰。当然、必然的に歯を食いしばってしまう俺。


「……ッ……」

「……(今 強張った?)」

「準備OKだな。 軍曹~」

『はい』

「それじゃあ設定は――――」

「……(照れてる筈は無いから、やっぱり……疲れてる?)」


≪やっぱり別々の――――ダメ≫


『では、網膜投影 開始します』

「は~い」

「……(でも私は断った。……嫌な女だ)」


――――やるしかないな。 彩峰と密着したまま訓練なんて、頭が沸騰しちゃいそうだよぉっ!!




……




…………




――――15分後。


「次は……クイック・ドローの方法を教える」

「クイック・ドロー?」

「つい さっき見たクイック・ストライク。 彩峰は射撃で怯んだ相手に斬り掛かるのは凄く上手い。
 だから、その逆の……格闘から射撃に繋げる動きを今度は学んで欲しい」

「はい」

「彩峰は斬ってからの判断が若干遅いからね。今回は、その辺を重点的に教えよう」

「御願いします」

「え~っと……本来なら斬って防がれたら直ぐ敵の裏を取ったり、
 撃破したら別のヤツにロックを移したり……要は単に斬り掛かって終わりってワケじゃ無いって事だ。
 先ずは斬って突撃砲に繋げるのと、頭部バルカン砲に繋げるのを見せるから、繰り返してみてくれ」

「了解」


もしかすると、初の実戦 以上に神経を使って彩峰の指導をしている俺。しかし経過は順調。

これもオルタ世界の科学有ってこその快挙……"網膜投影"と"強化装備"が優秀過ぎ。

膝に彩峰が乗っかっているので、普通なら操作以前に前が見えないから指導なんて不可能。

……だけど、網膜投影の御陰で密着指導が成り立っているので考えてみれば複雑な心境だ。

それはさておき。 網膜投影の影響で、彩峰の後ろ頭が見えず"投影された視界"に集中できるのだ。

設定によっては"薄く"でき、操作を教わる彩峰は薄くしてるんだろうけど、俺は投影を濃くしているのさ。


「持ち替えは それで良い! 其処で立ち止まらないで、どう動くかだな~」

「はい」

「まぁ、コツだけでも覚えてくれれば良いよ」

「……ッ……」


そして強化装備の存在。 名前だけ有って、俺を襲う彩峰の肉感を遮断してくれるのだッ。

訓練なのに無駄に強度を上げてしまっているけど、ホラ……今の状況を見てくれ。

普段はノホホンとしている彩峰さんだけど、必死こいて俺の機動を学習しています。

当然 無理な体勢なのでカラダが揺れ捲るワケで、そんなに御尻を押し付けられると……ねぇ?


「ふ~む」

「くっ……」

「なかなか成功しないなァ」

「……難しい」


斬撃後の棒立ち射撃が続く。 確かに移動を兼ねるクイック・ドローは訓練兵にとっては至難だろう。

武器を持ち替えるダケじゃなく、レバーとフットペダルも同時に操作しなきゃならないし。

しかもサブ射撃のマニュアル操作も使いこなすとなると、任官した衛士でも難しいのよね。


「まぁ、体勢が体勢だしね」

「そうだけど……」

「でも……ちょっと"力み過ぎ"かな、引いて踏めば良いだけなんだし意味無いぞ?」

「……ッ……」


――――そんな中、頑張って長刀を振り回す彩峰を見ていて思うトコロが有った。


「話は変わるけど彩峰」

「……ッ?」

「長刀って、使い辛く感じてないか?」

「!?」

「あえて言えば、直接 殴った方が良かったりとか」

「…………」

「違うか? 正直に言ってくれて良いぞ」

「……そうかも」


そう言えばさァ、彩峰って斬るより"殴る"方が向いてるって前から思ってたんだよね。

だから何となく良い機会だし聞いてみると、肯定の返事が聞こえたので予想 通りだった。

彼女の最期や御剣の卓越した刀の扱いを考えると、彩峰が殴る為の武器を持っても良い気がしたのさ。


「そっか。 だったら、考えてみる必要が有るかもな~」

「どう言う事?」

「何か彩峰に良さそうな武器が無いかって思ってね」

「……武器……」

「ま~、頭の隅にでも留めて置いてくれ。 そんなワケで、続きといこう」

「どんな武器?」

「それは後の御楽しみにってね」

「ん~」

「ホラ、気になるのも分かるけどさ」

『そうだぞ彩峰ッ、早く訓練を再開しろ!』

「…………」

『な、なんだ その目はッ!?』

「……何でも(軍曹……きっと、妬いてる)」

「ホラ、怒られちまったぞ~? 再開再開」

「了解」


予想外の俺の言葉に、彩峰は見るからに興味を示した様子だ。

でも俺が"今の事"を言ったのは、彼女に"確認"をしたかったダケに過ぎない。

つまりカラダの限界は刻々と迫っており、引き続き密着指導を続ける事にするのでした。


「(……冗談には聞こえなかった)」


≪何か彩峰に良さそうな武器が無いかって思ってね≫


「(どうして訓練兵の私に? やっぱり、少佐は他の人間とは何かが違う……)」




……




…………




「ふぅ……コレぐらいで切り上げるとするか」

「はい」

『状況終了します』

「良し、お疲れィ~!」

「んっ」


気合による指導が続き、一通り終えると俺は彩峰の頭をワシャワシャと撫でた。

終わった、やっと終わった~っ! ……と言葉では発せないので、そう言う意味の表れなのです。

ちょっとスキンシップが過ぎるかもしれないけど、密着し続けた事に比べれば些細な事だZE。

対して彩峰は全く抵抗する事なく受けると、静かに筐体を出て元の場所へと戻って行った。


「……はぁ~……」

「少佐」

「なんだい、篁?」

「あの……御体は大丈夫なのでしょうか?」


続いて俺も ゆっくりと皆の下へと戻り……再び長椅子に腰掛けた時。

今迄 全く介入して来なかった篁が俺の側に寄って来ると気遣って下さる。

流石に疲労が顔に出ちまったかな~? 休憩してから一人挟んだダケなので膝はまだマシだ。

反面 精神的なダメージがマジでヤバい。 実は"股間"が さっきから痛いんだお( ^ω^)


「はははっ、問題ないよ」

「そ、そうは仰いますが……明らかに御疲れの様子では……」

「心配しなくても大丈夫だって」

「しかし――――」


何故 股間かと言うと、彩峰と密着した事実が有った時点で おっきしちゃってたんだお……

でも強化装備の強度を上げた事から阻まれて、オティンティン曲がっちゃってたんだおッ。

正直 我慢するの死ぬ程キツかったんだお……でも、次は御剣が待ってるんだお、どうするんだお。

いや……その前に心配してくれる篁の相手だお、普通に しんどいけど、格好良く魅せるお……


「篁」

「は、はい?」

「漢には……何が何でも"遣らなければならない時"ってのが有るんだよ」

「何が、何でも……」

「今は その時なんだ。 分かってくれ」

「……ッ……」


もう僕 末期だお、たかが訓練なのに。 実戦でも無いのに何 言ってんだお(;^ω^)

でも内心的には実戦よりも切羽詰ってるから、許して欲しいんだお……勘弁してお。

それよりも、未だに充血してる下半身を ど~にかする必要が有るお、これじゃインポになっちゃうお……


「……次、御剣」

「う、うむッ」

「平気?」

「な……ななな何を言うか彩峰、要らぬ心配をするでないッ」

「それなら良いけど」

「な、なんだ?」

「ヘタな心意気で遣ると……不味いよ……?」

「!?」

「そうよ御剣。 はっきり言うけど貴女、尋常じゃなく緊張してるわ」

「くっ……」

「御剣さん、深呼吸 深呼吸~。 私が言えた事じゃないかもしれないけど~」

「あははっ。 そう言う冥夜さんを見るのも新鮮だよね~?」

「よ、鎧衣……貴女って人は……」


――――はっ!? そうだおッ、溜まっちゃったんなら ソレをど~にかすれば良いダケなんだお!!


「白銀少佐」

「何ですか? 軍曹」

「私から見ても御疲れの様に見受けられますが……このまま続けられますか?」

「勿論ですよ、御剣だけ仲間ハズレにする訳にも いきませんしね」

「はぁ……」

「でも、その前にトイレ行って来ますね~?」

「は、はい。 行ってらっしゃいませ」


――――つまり、おトイレで抜いちゃうんだおッ!! 時間も稼げるし名案だお( ^ω^)


「……ッ……」

「篁中尉、どちらへ?」

「!? す、少し様子を……"万が一"と言うことも有りますので」

「……そうですか」


≪白銀少佐は一週間前……過労で倒れた事が有るんです≫


「……(涼宮中尉の言った事を考えれば、今の様子……可能性は十分考えられるわ)」

「……(私も白銀さんが心配だけど、行く訳にもいかないし……ほんと損な役回りね)」


――――そんなワケで訓練中だって言うのに、彩峰の尻の感触を思い出して抜いちゃったんだ☆




……




…………




――――15分後。


「ふぃ~」


……やぁっ! 今日はパッション広場に来てくれて、どうも有難う!!

お兄さんの事は情熱、パッション。 "パッション白銀"って呼んでね♪

それじゃあ、今日は情熱的に訓練をしよう! そうだね、先ずは3次元機動だねッ。

はいはい御剣さん。 早速 俺が魅せるから、こうやって長刀をんん"~~っ!!


――――そんなノリで実際には絶対にできないけど。


「彩峰タン、ハァハァ~っと」


もし出来る環境なら(どういう環境だよ)可能なテンションで、一旦 軍服に着替えた俺は、
用足しの"ついで"に息子も宥め終え、ズボンのチャックを戻しながら鏡の前に立っていた。

そして手を洗って続いて顔も洗って熱を冷ます。 トイレの水道は汚い? 気にしないで下さい。

んで予め持って来たタオルで顔を拭き終えると、何となく鼻をホジった後で気合を入れる。


「良し……いける、御剣のもヤれるッ」

「…………」←たった今、トイレの入り口から唯依が顔を覗かせる


ラストは最大の難関である御剣との密着訓練だけど、文字通り 後一人だけッ。

股間がヤバい事になっちまってたけど、"抜いた"今 再び復活する可能性は低いだろう。

だとすれば彩峰を耐え抜いた俺にとっては脅威ではない……そう断定した時。


≪――――とろッ≫


「んぉっ?」

「……ッ?」

「チッ……」

「(何か様子が……)」


何やら鼻に違和感を感じた。 ……でも原因は直ぐに判った、血の匂いがしたからね~。

いわゆる"鼻血"が出たらしい。 大方 興奮による熱と、迂闊に鼻をホジったのが原因に違いない。

でも、ほ~んのチョットだけホジったダケだ。 舌打ちしてしまったが、こんなの直ぐに止まるだろう。

よって少しだけ天井を仰ぎ、口腔内に"血"を溜めると無造作に洗面台に吐き出した。


「――――ペッ」


≪びちゃっ≫


「……なッ!?」

「んん~っ?」

「!? う、ぅあっ……」

「篁?」

「……(今のは……"血"!?)」


その直後 気配……と言うか声がしたので振り向いてみると。

全く予想外である篁さんが、トイレ(男子専用)の入り口から顔を出していたではないかッ!

ま、まさか部下として俺に付いて来たのか!? オプションっぽいとは思っていたが、まさか其処まで……

はっ!? だとすると鼻をホジってた事は当然、自慰ってたのも勘付かれたとか……なななな無いよな?


「……(やべぇ……俺"終わった"かも)」

「……(ま、まさか白銀少佐は其処まで煩って……)」」


――――折角テンション上がってたのに、寒気を感じた。篁のフラグがバキ折れる恐怖 的な意味で。


「御剣、少しは落ち着いた?」

「うむ……どうやら私は気負い過ぎだった様だ。 すまぬ、皆」

「……始めはドキドキしたけどね」

「白銀少佐の"真剣"な様子を側で感じると、こっちも真剣に取り組まなきゃって思うよ~」

「うん、緊張なんて吹っ飛んじゃうよ。 冥夜さんみたいな人だったら特にね~」

「そ……そうか。だと助かるのだがな」

「……(な、なんだか居心地が悪いわね……白銀さん、早く戻ってこないかな……)」


――――と、ともかく一難 来てしまった。 御剣の前に、今の打開を考えないとね~。


「…………」←唯依お見合い中

「…………」←白銀お見合い中


≪漢には……何が何でも"遣らなければならない時"ってのが有るんだよ≫


「……(流石に考え過ぎ……よね? 御願い、そうで有ってッ!)」




●戯言●
彩峰のターンが終了。次回は冥夜のターンになりますが、唯依姫のターンとも言うかも。
今回彩峰の指導において、ナックル&パイルバンカーを発案します。フロントミッションあたりのを。
冥夜においても一応何か発案します。その新たな用語と人物紹介補足は30話終了時にて行います。
また皆様の意見を参考にして"短いけど更新多少早い"傾向で行こうと思います。今後とも宜しく~。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ30(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/01/28 12:16
これはひどいオルタネイティヴ30(後編)




2001年11月26日 午前


「…………」

「…………」


俺の後をつけて来た篁に"見られてしまった"のは、この際 仕方なかったと割り切るしかない。

……では"何処まで"見られてしまったのかを手っ取り早く聞き出す必要が有るってワケだ。

血を吐き捨てたトコまでならセーフ、鼻をホジってたトコだと結構 痛いとは言え巻き返せる。

だけど和式トイレのドアに背を預けて一人呻き声を上げてたのを聞かれてたら間違いなくアウト。

最初はナニをやってるか判らなくっても、少し考えれば真面目な篁であろうと直ぐ勘付くだろう。

よって俺はドキドキとしながらも、例の如く真面目な表情(ポーカーフェイス)で口を開く。


「篁」

「は、はい」

「何処まで見てたんだ?」

「そッ……それは――――」

「正直に答えてくれ、命令だ」

「!?」


もしかすると何時も俺を気遣ってくれる篁は、"勘付いた"としても誤魔化すかもしれない。

でも……その優しさは流石に痛い以前に、彼女の胸に留めたままでは金輪際 距離は縮まらないだろう。

だから篁が忠実なる軍人である事を利用して、"命令"する事により真実を問う事にした。


「頼む」

「(私は見てしまった……白銀少佐の"見てはいけないモノ"を……)」

「……ッ……」

「(声を出してしまったし、彼は気付いていながらも私に聞いている)」

「…………」←心臓バクバク

「(もし此処で嘘を言ってしまえ、信頼を失う……それだけは避けないとッ)」

「篁?」

「あっ……す、すみません。 私が見たのは、少佐が血を吐き出したところ……からです」

「!? 間違いないんだな」

「はい」


予想外の許容範囲に、間違いないか問い質すと、真剣な表情で頷く篁。

この様子……嘘をついてるワケじゃ無いみたいだな~。 やったぜ、これで一安心だッ。

血を吐いた場面は見られちまった様だけど、これは何とでも言い訳できるだろう。

人間鼻血は勿論、強く歯を磨き過ぎたり、舌や口腔内を噛んだりすれば血くらい出ますから!

でも篁の上官としては格好悪いので、鼻血とは言わない事にし、俺は苦笑いをしながら言う。


「は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね」

「!? そ、そんな……"みっともない"だなんてッ」

「ともかく、今見た事は忘れてくれ。 何とも無いからさ」

「……ッ……了解、しました」

「そんじゃ~行くか、御剣たちが待ってるしね」

「は、はい」


――――この時の俺は篁にヤバい場面を見られていなかった事から、調子に乗り直ぐ歩き出してしまう。


「(忘れてくれ? 今の事を忘れなくてはいけないんですかッ? 白銀少佐っ……)」


≪は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね≫


「(それに、どうして貴方はそんなに"笑って"いられるんですか? ……どうしてッ!?)」


……そんな俺の後を追う篁の気持ちを、"この時"の自分は ちっとも考えちゃいなかった。

もし、俺が居た世界であれば"さっきの事"を家族に見られていても正直に"鼻血出ちゃった"と告げる。

例え適当に誤魔化したとしても、気にも留めてくれないだろう。 本当にヤバかったら自分から言うしね。

けど……"こっち"だと驚愕しても仕方なくって、篁は"誤魔化し"を重く受け止めてしまっていたみたいだ。


「さっさと着替えてくるよ、篁は先に行って待っていてくれ」

「……わかりました」

「今度は覗かないでくれよ?」

「!? の、覗きませんッ」


――――んで彼女の心理を微塵にも読めてなかった俺は、つい言っちゃったんだ☆




……




…………




2001年11月26日 正午


「お待たせ御剣。 んじゃ~始めるか」

「はっ!」


……篁と別れてから10分後。

再び強化装備に着替えた俺は、まりもちゃん達6名を他所に御剣と向かい合っていた。

時間的には昼を回ってしまったので、御剣 以外は休憩に行って良いって言ったんだけど、
篁は勿論 全員が最後まで見学する事を望み、こうして今に至っている。

それにしても先程まで御剣はキョドっていた筈なのに、今は真剣な表情で俺を真っ直ぐにみつめている。

う~む、凛々しい……でも案の定スケスケ・エロスーツ姿、実にシュール。 開発者、出て来いマジで。


「付いてきてくれ」

「はっ!」←実はヤケクソ


≪――――ガチャッ≫


「それじゃ~俺の膝に座ってくれ」

「……ッ……」

「嫌なら良いよ? いやホントに」

「い、嫌などとは思っておりませぬッ」

「なら来い、ド~ンと」

「……ッ!(いざっ)」


≪――――どんっ≫


「ぐぉっ!?」

「!? い、如何なされましたッ?」

「いや、ど~もしないけど……そんなに力強く座らなくっても良いだろ?」

「……ッ……し、失礼致しました」


流石に一番 気合入ってるな~御剣は。 今の力強い着席も、ヤる気の表れなんだろう。

でも、それだと俺の精神力が持たない……今の尻の弾んだ感触ダケでなく、
彩峰よりも背が高い事から操作性は更に悪くなってる上、揺れるポニーテールが俺の鼻を弾く。

つまり御剣 自重しろってワケで、情けないながらも目の前の彼女に向かって苦笑しながら言う。


「……御剣」

「な、何でしょうか?」

「少しリキみ過ぎだ、肩の力を抜いてくれ」

「!?」


――――勿論、ヤる気 出し過ぎって意味ね? 熱くなるのは問題無いが、主に俺が辛くなるのさ。


「そんなんじゃ、訓練に成らないぞ?」

「し、承知致しました」

「深呼吸」

「すぅ……はぁ……すぅ……はぁっ」

「そうそう、ソレで良いぞ~」

「はっ、有難う御座います(……やはり珠瀬の言う通りだ。"緊張"などしている場合ではない)」

「んじゃ~改めて。 軍曹、また設定の方を御願いします」

『了解』

「えっと……まずは――――」


≪少しリキみ過ぎだ、肩の力を抜いてくれ≫


「……(白銀少佐は我々の事を真剣に考えておられるのだ。邪な気持ちなど持っては失礼に値しようッ)」


――――この後 御剣は本当に冷静に取り組むようになってくれた。 言ってみるモンだな~。




……




…………




『目標 全ての撃破を確認』

「はぁ、はぁ……」

「ふ~む」

「い……如何でしたでしょうか?」


御剣の指導を行うに当たって、俺が最初に見たかったのが吹雪F型における彼女の"戦い方"だった。

よって まりもちゃんに数十の動かない標的(戦術機)を配置して貰うと、
自由な方法で御剣に"全て"を撃破して貰い、それが完了した直後が今現在なのです。

ちなみに撃破には数分を要し、御剣は若干 疲れた様子で頭越しで俺に感想を聞いてくる。

もし、こっちを振り向かれていたらキスしちまいそうで怖い……それだけ息遣いが色っぽく感じた。


「素晴らしい……の一言に尽きるかな?」

「ま、誠ですかッ?」

「うん。 "長刀の扱い"に関してはね」

「……そうですか」


御剣が色っぽいのはさて置き、彼女の長刀 捌きはもはや"芸術"の域に達していた。

細かい動きが必要とされる格闘に置いては、ゲームのように攻撃のモーションが皆 同じってワケじゃない。

操縦桿を操る事によって格闘のモーションも様々で、複数の"テンプレ"の動作のうち、
状況に応じて最適な動作を戦術機に取らせて、はじめて長刀による攻撃が実現するのだ。

当然 無理に突こうとしたり、斬ろうとしたり、払おうとしても"的確"な状況でなくては大きな隙を晒す。

だけど御剣は状況に応じて最良の攻撃を続け、流れるような連続斬撃で全ての標的を破壊したのだ。

しかも、彼女が戦術機に取らせた動作は"テンプレ"による攻撃パターンだけでは無かった。

各衛士は自分の"コックピット・システム"に攻撃・回避等の動作を新しく組む事により、
搭乗する戦術機に自分だけの"オリジナル動作"を取らせる事が出来るらしい。

主に前衛を担う斯衛軍の熟練衛士などは"生身"で体得した剣術を戦術機にも活かそうと、
大きな手間を掛けて"オリジナル動作"を組む事が多いらしく、それを御剣も行っていたのだ!!

それはなんと5パターン以上にも及び、大方EXでいう無現鬼道流剣術か何かの動作なのだろう。

コレに関してはプログラミング等に疎い俺には全く理解できない領域であり、
テンプレによる長刀の攻撃パターンしか使っていなかった俺には、御剣の進歩には唖然とするしかなかった。


――――まさに"天性"だな……その単語が何の蟠りも無く頭の中を過(よ)ぎってしまった。


思ってみりゃ最期の戦いで御剣が"あ号標的"に武御雷(紫)で挑んでた時、
テンプレ攻撃動作じゃ有り得ない動きで触手を捌いてたし、アレも"オリジナル動作"だったんだろう。

こりゃ~佐渡島ハイヴ突入ぐらいの時期になったら、俺も長刀での戦いだと御剣に負けちまうかもな。

そんなワケで素直に御剣を褒めると安堵した様な雰囲気がしたけど……彼女は理解しているハズだ。

あくまで素晴らしいのは"長刀の扱い"のみであり、御剣が学ぶべき点は今回 他にあるのさ。


「でもチェーンガンによる攻撃は一切してなかったよな?」

「はっ」

「勿論120ミリでの射撃もナシだった」

「……ッ……」

「唯一 使ったのが"頭部バルカン砲"の牽制か~」

「も、申し訳ありませぬ……"自分の最も得意とするべき手段で撃破せよ"と仰いましたので」

「うん、確かに そう言ったし問題無いよ。しっかりとサブ射撃は活用してたみたいだしね」

「はっ。 以前 ご指摘 頂きましたので、積極的に使用する事にした次第です」(18話参照)

「便利なモンだろ?」

「はい、突撃砲を持たずとも射撃を行えるのですから」

「だけどな~御剣」

「はい?」

「突撃前衛と言えど、射撃は欠かせない手段だ。 頭部バルカン砲が幾ら便利でも、
 弾数は少ないしBETAの物量相手で多用すると、直ぐ使い切っちまう」

「……ッ……」

「だから今回は徹底的に近距離射撃についてを学んで貰うぞ?」

「り、了解ッ」


う~む、なんだか俺もマジで頑張らないとな~。 207B分隊、マジで恐るべし。

特に御剣の進歩は驚異的だ。 11月10日に初めてシミュレーター訓練を始めたのに、
2週間ちょいで白銀大佐ですら重点的に活用しなかった"オリジナル動作"を組んでるんだぜ?

考えてみれば、御剣の剣術もワザワザ確認する必要無かったんだよな……

何の為に珠瀬の射撃・鎧衣の判断力を確認した結果、榊の指揮能力の確認をスルーしたんだろう。

さておき。 こりゃ長刀の扱いについては教える事は何も無い……むしろ、俺が教えて欲しいぐらいだ。

けどソレでオシマイとなると空しいので、多少は御剣が苦手にしていると思われる射撃。

……そして、他の娘と同様・俺の最も得意とする"機動"における指導を行ってゆく事にしたのでした。

!? べ、別に悔しくなんてないんだからねッ! 俺は十八番の機動だけで十分 戦えるんだからっ!


「(流石は白銀少佐……私の不得意とする技術を見抜かれておられる)」

「(御剣……白銀さんにアソコまで言わせるなんてッ……流石は……)」

「(珠瀬・鎧衣・榊に彩峰……そして、御剣……この娘達は一体ッ?)」




……




…………




「しっかりとロックして撃てッ、長刀とは違うんだ!!」

「くっ!」

「!? 御剣、早まるなっ!」

「し、しま……っ!?」


≪――――ドオオォォンッ!!!!≫


『吹雪F型、滑空砲 直撃。大破』

「……ッ……」

「御剣」

「は、はい」

「長刀に持ち替えて斬り掛かるタイミングは良かったけど、敵が怯んでなかったぞ?」

「な、何故なのです?」

「弾がバラけ過ぎてたんだよ、クイック・ストライクをするにしても、
 事前の射撃がちゃんとした"牽制"にならないと、まるで意味が無いんだ」

「頭部バルカン砲では旨くいっていたのですが……」

「そりゃ~命中精度も良いし、敵のAIがサブ射撃の概念を認識して無いからね」

「うッ」

「だから高AIが相手になると、チェーンガンによる牽制はより精密に撃ってから、
 接近戦に繋げる必要が有る。そうじゃないと今みたいにカウンターの射撃を食らって御陀仏だ」

「……未熟でした」

「ま~、長刀ばっか振り回してたみたいだし仕方ないって。 とにかく練習だな」

「承知」


御剣の射撃の腕は決して悪くは無い。 まりもちゃん いわく、並の衛士の腕 以上は有るらしい。

つまりBETA相手であれば、問題なく銃撃戦をこなす事は可能なんだが……

彩峰などと比べてしまうと大きく劣り、クイック・ストライク(QS)を仕掛けても返り討ちにされるだろう。

……QSとは旨く射撃を当てて相手を怯ませれば、格闘で一気に畳み掛ける事が出来る常勝手段だ。

速瀬みたいなトンでもなく勘が良い衛士が相手なら、返されたりもしてしまうのはさておき。

反面、射撃をミスれば無防備に長刀で突撃しているトコロで反撃を受けてしまう諸刃の剣となる。

つまり反撃を食らう恐れがあれば封印するしかなく、射撃と格闘は別々の攻撃手段と割り切るしかなくなる。

それはそれで新OSの機動を活かせれば十分 強い事には変わりないんだけど、
沙霧大尉みたいな衛士が敵で出てくる事を考えると、学んでおいて損は無い……と思う。

胸部マルチ・ランチャーが有れば、ベテランのまりもちゃんを30秒で撃破したみたいに、
大分 QSの難易度は下がるんだけど、正史を考えると榊達がクーデターで乗るのは吹雪F型だろうしね。

そもそも正史通りにゆけば榊達は死なないんだけど、つい いらぬ保険を掛けてしまう俺なのでした。


「おっ? 今のは良い感じだったな」

「感謝を。 ……ですが、難しいものです」

「そうかい?」

「いささか……剣を振り戦うのが性分故」

「せめて"当て易い武器"が有れば良いんだけどな……威力が微妙でも怯ませれる……」

「ですが、そんな武器が……」

「――――有るかも」

「えっ?」

「いや……考え付いたダケなんだけどね」

「さ、左様ですか」

「ま~、ゆ~こさ……副司令に提案してみるよ」

「ふむ……」

「御剣の御陰で閃いたよ、アリガトな~?」


≪――――さわっ≫(頭を撫でた)


「ぅあっ」

「一応、楽しみにして置いてくれよ?」

「か、畏まりました」

『……少佐』←低い声で

「はい?」

「う、うわっ!?」


≪ズガアアアアァァァァンッ!!!!≫


『吹雪F型、大破。 白銀少佐、真面目にやってくださいッ』

「すんませ~ん」

「あうっ」


彩峰に続いて御剣の時でも、またまた"新しい案"を浮かんでしまった俺。

あまり彼女の戦闘スタイルとは関係無いけど、考え付いたのは御剣の御陰で間違いない。

だから嬉しくなって、つい頭を後ろから撫でちゃったんだ☆ しかも戦闘中に行うという暴挙。

でも御剣の動きが止まってしまったのは予想外で、距離を詰めて来た不知火(高AI)にアッサリ撃破された。

その際の まりもちゃん……何故か 顔を膨らませていた表情に不覚にも萌えてしまったではないか。


「……(こ、この手の感触……忘れませぬッ。 いずれは、もう一度……)」


――――それにしても、今回は良く耐えたな俺。まぁ、御剣のヤる気を考えると妥当な結果かな~?




……




…………




2001年11月26日 午後


「それじゃ~俺は そろそろ失礼するよ」

「御指導して下さった白銀少佐、及び篁中尉に対し敬礼ッ!」

「――――っ」×5

「行こうか、篁」

「は、はい」

「……ッ……」×6(羨ましそうな視線)


長い戦いの末、ようやく榊達の指導を終えると、PXで俺達8人は遅れた昼食を摂った。

話の内容は主に今回の指導の質問であり……篁とまりもちゃんも気になった点を聞いて来る。

そして一時間ほどが経過すると"お開き"となり、俺と篁は敬礼を受けつつPXを去って行った。

んで今はスタスタと通路を歩いており、相変わらず篁が俺の後を付いてくるんだけども。


「篁、今回のを見て どう思った?」

「……ッ……正直なところ、全員が訓練兵とは思えないレベルで有ったと思います」

「そうだろうね」

「特に珠瀬の狙撃と御剣……の剣術。 一流の衛士ですら あの様な真似はできないかと」

「うんうん」

「しかし、何故 あの様な訓練兵が存在するのです?」

「B分隊の娘達の"腕そのもの"は偶然の産物だよ」

「…………」

「今の質問を"別の意味"で捕らえると、榊達は"ワケ有りな部隊"って事になるけどね」

「!? で、では やはり"あの方"は――――」

「篁。それ以上は いけない」

「……ッ……」

「…………」←互いに歩行継続中

「は、話は変わりますが白銀少佐ッ」

「なんだい?」

「これからの予定は……有るのでしょうか?」

「う~ん、そうだなァ」

「…………」


歩きながらの会話の中、唐突に篁が別の話を切り出す。 ……どうやら、午後の予定が気になるらしい。

よって俺は足を止めて考える素振りを見せるんだが……正直、部屋に戻って寝たいんですけど。

御剣の指導に関しては予想より楽に乗り切ったけど、それでも常に"半立ち"だったし股間が痛かった。

つまりヘロヘロなんスけど、真面目な篁の手前 サボるワケにもいかないし、何か考えるしかないな。

そう明日が不安ながらも覚悟を決めながら、篁の方を振り返りつつ口を開こうとすると……


「やっぱり手堅くシミュレーターでも――――」

「いけませんッ!」

「うわっ、びっくりした」

「し、白銀少佐は……御疲れなのでしょう?」

「んっ? まぁね」

「では……これ以上 無理をせずに、今日は御休みになってくださいッ」

「えぇっ? でも、俺は……」

「御休みになってください!!」

「はい」


予想外にも、篁は俺に休む様に言って下さった。 何故か凄い勢いで。

そう言えばさっきから体調を気遣ってくれてたし、無理に頑張る必要は無かったのね。

でも……何で篁の瞳が若干、潤んでるんだろう。 ひょっとして彼女自身が休みたがってたのか?

まぁ、どっちでも良いや。 さっさと寝たかった俺は、篁の勢いにアッサリと首を縦に振った。

ともかくコレで気持ち良く休めるぞ~っ! そう思って彼女と暫しの別れを切り出そうとしたんだけど。


「では、参りましょう」

「!? お、おい篁……何で腕を掴むんだ?」

「休むと決められたからには、一刻も早く御部屋に戻って欲しいからです!」

「えぇ~っ?」

「さあッ(ちゃんと戻られるのを確認しないと、何処で無茶をされるか分からない)」


――――何故か俺は篁に右腕を引っ張られるようにして自室に戻る羽目になった。


「(うおッ……思ったよりも力 有るんだな~)」

「("あの件"は他言しても迷惑になるだけ。 だから、せめて私が……)」




……




…………




――――数時間後。


『それでは18時に夕飯をお持ちしますので、そのまま御休みになっていて下さい』

『あ、あのな~篁。 其処までして貰わなくっても……』

『御休みになっていて下さい!!』

『はい』


そんな篁との遣り取りを最後に、俺は電気を点けたまま寝巻き(青い制服)姿でベッドに横になっていた。

今現在は目が覚めてしまい18時も近いので、両腕を枕にして見慣れた天井と睨めっこをしている。

それにしても、篁も疲れた上官の為とは言えアソコまで世話を焼いてくれるとは思わなかったZE。

俺を自室に引っ張り込むと、シャワーを浴びて着替えるまで部屋の外で待ち、
しっかりと俺がベッドに横になるのを確認してから部屋を離れるとか、何処の介護職員だよ。


≪――――コンコンッ≫


「白銀少佐、起きておられますか?」

「あぁ。 ついさっき、目が覚めたとこ」

「では、失礼して宜しいでしょうか?」

「いいよ~」


しかも食事を持ってきてくれるようで、噂をすればなんとやら。

篁がノックの後、鯖味噌定食を片手に持って器用にドアを開くと入室して来た。

そして消灯台にソレを置くと、俺の反応を伺うのか一歩下がって こちらを見ている。


「有難う」

「……いえ」

「(う~ん)」

「……ッ……」


そんな篁に対し俺は上半身を起こすと、とりあえず礼を言うんだけれども。

まさか全部 食い終わるまで居るって~のか? 何処まで世話好きなんだ篁は。

やっぱりホームヘルパーみたいな……だとすれば、なんだかソレに甘えたくなっちゃったんだ☆


「篁」

「は、はい?」

「食べさせてくれないか?」

「……ッ!?」


介護と言えば、食事介助。 俺は心身 共に健康だけど、自重せずに言ってしまった。

でも……驚愕する篁の顔を見て、直ぐに自分がアホな事を言っているのに気付いた。

そうだよそうだよ、食わせてとか無いってマジで。 最後の最後で墓穴を掘ってどうするんだ全くッ!

10秒ほどの思考時間で そう思い直した俺は、一旦 篁から離した視線を再び向けると……


「!!」

「……ッ……」


なんとッ、何時の間にか篁が鯖を乗っけたスプーンを突き出して来ていた!!

だけど中腰の彼女は、顔が赤い上にスプーンを持つ右手がプルプルと震えている。

んもうっ! 恥ずかしいけど俺に指示されたから実行するなんて、唯依タンったら真面目杉。

こりゃ冗談が過ぎたな……でも、此処は食わないと篁は ずっと"このまま"の体勢かもしれないので。


「ぱくっ」

「!?」


白銀は嬉しくなって、つい食い付いちゃったんだ☆ 腹も減ってたし、もはや不可抗力だ。

モグモグモグ、ごっくん。 ……うむ、美人に食べさせて貰う料理って こんなに美味いのね。

対して篁は俺の行動に目を見開いて硬直しており、スプーンがポロりと地面に落ちそうになるけど。


「おっと」

「あ……」


――――難無く落下 途中のスプーンを掴むと、俺は篁に苦笑しつつ口を開く。


「はははっ、やっぱり止めとこうか」

「そ、そそそそうですねッ」

「ごめんな? 無茶な事 言っちゃって」

「いえ、そんな……」

「んじゃ~頂かせて貰うよ、マジで有難う」

「では、御体の方は――――」

「安心してくれ、今日はもう一歩も部屋を出ないよ」

「そう……ですか。では、私はこれで失礼致します」

「ほいほい」

「――――ッ」


≪バタンッ≫


端座位になって鯖味噌定食を食いながら、ヒラヒラと手を振る俺に対し、敬礼して退室する篁。

う~む……少し勿体無い事したかな~? あのまま篁のキョドりっぷりを見るのも一興だったかも。

でも、さっきはテコでも動かない様子で俺をベッドに横にさせたのに、
さっさと出て行っちまったって事は、やはり相当 食わすのは恥ずかしかったんだろう。

だとしたら当たり前な結果だし、俺は口の中身が無くなると無意味に一言 嘆くのだった。


「スイーツ(笑)」


――――この後 微妙に悩んだけど、結局 御剣の尻の感触も思い出して抜いちゃったんだ☆




……




…………




≪ガチャ――――バタンッ≫


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」


≪どくん、どくん、どくん、どくん……≫


「白銀少佐の……あの時の言葉……」


≪食べさせてくれないか?≫


「(最初は驚いたけど……あの人も"人間"であり、17歳の少年なのよ?
 誰かに縋ったり頼りたいと思うのは当たり前。ほんの僅かであれ、そんな様子が見えたのにッ)」


≪はははっ、やっぱり止めとこうか≫


「(……何も出来なかった。それに緊張を察され、また"悲しい笑顔"をさせてしまった……)」


≪――――ボフッ≫ ←ベッドに身を投げた音


「(私は……臆病だ)」




●戯言●
短くして感想数が減っても、創作(妄想)活動できるじゃない!そんな事を思ってた気もしたんですけど、
も~う……ほんっと~にびっくりした~、感想が逆に増えた時は頭がパァーンとなって、
何が何だか分からなくなっちゃって……今後もこんな感じで走らせて、頂きまイ"エエ"ェェ!!!!

冥夜の訓練ではケンプファーのアレを発案する事になりそうです。次回27日にて。
んでナックルは背に収められそうに無いので使い難い反面アレックスのアレと相性良さそうです。
でもパイルバンカーって突撃砲とも長刀とも相性が悪そうですね、色々と考えている最中です。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ31 2009/02/08 00:31
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/17 17:57
これはひどいオルタネイティヴ31




2001年11月27日 早朝


「…………」

「…………」


――――白銀少佐の個室前。


「(今日も来てしまった……)」

「篁さん」

「!? や、社か……おはよう」

「おはようございます」

「んっ、どうした? 少し眠たそうに見えるが……」

「……ッ……」←AA作成の為 寝不足

「違ったか?」

「いえ、正解です」

「そうか」

「でも……そう言う篁さんこそ、寝ていない様に見えます」

「うッ。 じ、実はその通りだ」

「お互い様ですね」

「そうだな……(我ながら情けないわ……白銀少佐の事が気になって眠れなかったなんて……)」


≪白銀少佐の事が気になって、眠れなかったなんて……≫


「!?」

「どうした? 社」

「な、なんでもありません」

「なら良いんだが……」

「……ッ……」

「(これから どうすれば……良いのかしら? この娘は彼を起こしに来ている。
 でも白銀少佐には今日も休んで頂いた方が……かと言って"あの事"を言う訳にもいかない)」

「篁さん……どうしたんですか? お部屋に、入らないんですか?」

「あぁ、その事なんだが……」

「……?」

「(くっ……なんて説明すれば良いのッ?)」

「……(篁さんは、私に何か隠して――――――――


≪漢には……何が何でも"遣らなければならない時"ってのが有るんだよ≫

≪は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね≫

≪ともかく、今見た事は忘れてくれ。 何とも無いからさ≫


 ――――――――!?)……っ……」

「ん……社、顔色が悪いぞ?」

「(そ、そんな……まさか白銀さんは"病"を?)」

「どうしたんだ?」


≪知ってるんですね……私の事を……≫(以下5話参照)

≪うん。 "因果律量子論"って知ってる?≫

≪はい……詳しくは 説明できませんけど……≫

≪なら話が早いや。 なんかさ、その影響で"違う世界"から"純夏"に呼ばれちゃったんだわ≫

≪……呼ばれた……?≫

≪そう、呼ばれた。 だから"違う世界"で社の事は知ってたんだ≫


「(香月博士は、白銀さんは何度も"同じ世界"を繰り返していると言っていた……)」

「社?」

「(もしかすると"それ"が原因で白銀さんの肉体が……ガタガタになっている?
 でも、病を患っているとしても……最初の身体検査で簡単に分かってしまう筈。
 だとすると……極度の疲労や精神的な苦痛を、無理矢理 押し留めているんじゃ……)」

「社ッ」

「あっ……」

「どうした、本当に大丈夫か?」

「だ、大丈夫です」

「なら良いんだが……」

「……ッ……」


≪――――ガチャッ≫


「えっ?」

「早く入りましょう、篁さん。 こんな場所で話していては……怪しまれて、しまいます」

「わ、分かった」

「(どうして気付かなかったんでしょうか? 白銀さんには、少し休んで貰わないと……)」

「(ま、まぁ……白銀少佐は放って置くと起きて行ってしまいそうだし、入ったほうが良いわね)」




……




…………




2001年11月27日 正午


「……ッ……」


一体、何時間 寝たんだろうか? "再び"意識が戻った俺は、瞼を開くと上半身を起こす。

時計に目を移すと正午を回っており、"こっち"に来て こんなに長く寝たのは初めてかもしれない。

その御陰で気分はハレ晴れとしていて絶好調。 流石は白銀の若い肉体、都合良くできてるモンだぜ。


「ふァ~あ」


けど自然な流れで欠伸が出てしまい、目尻をコスると"午前中の事"を思い出す。

……そう、以前の様に霞と篁が俺を起こしに来てくれたんだけど、何故か更に休む様に言われたんだ。

心配性の篁なら仕方ないかもしれないけど、予想外にも霞も強く寝て置くように勧めて来たのよね~。

"強く"と言っても、俺の事を無表情で見つめて静かに告げてきたダケなんだけど、
それはそれでパンチが効いており、結局 篁の後押しも有って午前中も休む事になったのさ。

午後は ゆーこさんとのXM3&新兵器についての話し合いが有るから、流石にダメだけどね。


「んぉっ?」


そんな事を思いながらベッドから離れようとすると、何やら真横に障害物が有った。

よって視線を移すと……何故か椅子に腰掛けた霞の姿が有り、彼女は舟を漕ぎながら寝ている。

そうだったYO。 休む事を肯定すると、篁は昨日の夕飯の食器を持って退室したんだけど、
霞は俺の反対を押し切って"寝るのを確認するまで見てます"と言い出したのだ。

てっきり俺が寝たら退室すると思ってたんだが……イキナリの姿にビックリしてしまった。

だけど落ち着け……いずれは"うささん"と下着姿で白銀のベッドに潜り込んで来る事も有るんだ。

思わず抱きしめたくなってしまったけど、ここは我慢して起こしてやるしかあるまいッ。


「霞~」

「すぅ……すぅ……」

「霞ちゃ~ん」

「……がね……おにい……さん……」

「霞ってば~」←聞こえてない

「――――ッ」

「目ぇ覚めたか?」

「は……はいっ」

「ありがとな、ずっと付き添ってくれてさ」

「い、いえ」


思った以上に簡単に目を覚ました霞だったけど、瞳を"まんまる"にして中腰の俺を仰いだ。

直後 立ち上がり、何故か頬を染めながらすすすす……っとドアの方まで距離を詰める。

もしかして、自分も寝ちまう予定は無かったのかな? 以前 寝顔を見られて恥ずかしがってたし。

まぁ、気にしないで置こう。 俺は何も見なかった事にして、優しいつもりな視線を向けながら言った。


「それじゃ~着替えるから、外で待っててくれるか?」

「わ、わかりましたッ」


≪――――ガンッ!!!!≫


「なっ!?」

「~~ッ……」


正史イベント発生!? 霞は部屋を出てゆこうと左手でドアを開いた直後、角に額を強打した。

う~ん、時期が早い上に何だか原作と違っている気がするけど、それは さて置いて。

まるでボクシングでクロスカウンターを食らった様に崩れ落ちそうになる霞だったけど、
何とか右足で踏ん張りを利かせると、俺に背を向けたまま額をコスっている。

小刻みにプルプルと震えているあたり相当痛いんだろうけど、俺は言わなければならない。


「だ、大丈夫か霞!」

「……っ……平気……です」

「でもな~、そう言う時には何かリアクションが欲しいぞ?」

「りあくしょん……ですか?」




……




…………




「それじゃ、言ってみ?」

「あが~」

「もう一度」

「あが~、あが~」

「…………」

「これで、良いんですか?」

「うむ。 何も言わないよりは断然良くなったぞ~?」

「そうですか……(白銀さん、少しは元気に成ったんでしょうか?)」


――――言わせてから気付いた。 ぶっちゃけセンス無ぇぞ白銀!!




……




…………




2001年11月27日 午後


着替えの為に霞を外で待たせていたモノの、俺は彼女を先に執務室へと行かせた。

何故なら腹が減っており、PXでの一時を霞と過ごすワケにはいかないのを思い出したからだ。

そう……飯を食わせてくれるイベントには若干早いし、周囲の目を考えるとちょっとね~。

霞は当然 納得していない様子だったけど、互いの立場をアピールする事により何とかなった。

んで遅れた昼食を済ますと、自室で溜まっていた書類を整理していた篁と合流し――――


「失礼しま~す」

「し、失礼致しますッ」

「来たわね白銀。 それに……篁も?」

「…………」←霞

「今回 話し合う事に関しては、篁が居ても問題無いっスよね?」

「まぁ、そうなんだけどね」


――――そのまま緊張気味な篁を引き連れて、俺は執務室に向かう。

すると俺と彼女を待っていたのはお馴染みの ゆーこさんと、先回りさせた霞の姿だった。

直後 予想通り篁を連れて来た事を、ゆーこさんは妙に思った様だけど、それには理由がある。

何せ新しい"兵器"を色々と提案するつもりだし、横浜基地の(兵器)開発部門ダケじゃ回らないだろうからね。

よって俺は篁が"この場"に居る事を さも当然の様なつもりで、イマイチ納得して無さそうな彼女に言った。


「帝国技術廠のチカラも借りれば、スムーズにゆくと思うんですよ」

「何が?」

「兵器の開発が……ですよ。 榊達との訓練で色々と浮かんだんです」

「へぇ、面白そうじゃない」

「じゃあ~、順を追って話します」

「お願い」

「(叔父様とのパイプ役とは言え……まさか"此処"に来れるとは思わなかったわ)」

「まずはXM3で調整して欲しい点なんですけど……」

「(それだけ白銀少佐は私を? とにかく、帝国技術廠の代表としての役割を果たさないとッ)」




……




…………




……俺・ゆーこさん・篁・霞での"会議"は1時間以上続いた。

喋っていたのは殆どが俺と ゆーこさんだったけど、以後 篁と霞も重要な役割を担うのだ。

俺は提案するダケだったけど、篁は一部の兵器の開発を帝国技術廠に依頼し、
霞は横浜基地・兵器開発部門の設計等を手伝い、ゆーこさんは全ての纏め役となる。


「それじゃ~簡単に纏めといこうかしら」

「御願いしまっす」

「先ずはXM3。 アンタが速瀬に食らったって言う"タックル"を含めて、
 簡単な入力で新しい射撃や格闘の動作を行えるように組み込んで置くわ。
 β版からXM3に置ける互換性の調整は言われなくても やるから安心なさい」

「はい」

「そのXM3を使ってシミュレーター訓練をするに当たっての"新システム"なんだけど、
 "シンクロ・システム"で良かったのかしら? 他の衛士が操作する機動データを、
 訓練する衛士が"全く同じ動き"を操作せずとも体感できるって言う……」

「えぇ。 例えば俺と同じ動きを教えるとするなら、口で話したり見て覚えて貰うよりは、
 実際に体感して貰う方が100倍は分かり易いと思いますからね~。
 そのシステムを作って貰わないと、昨日みたいに膝に乗せなきゃなんないですし」

「まぁ……ソレで衛士の錬度が上がるなら、作らざる得ないわね」


――――これは榊との訓練で考えついた事だ。コレで鑑と殿下 以外は膝に乗せないで済む。


「次に前衛ポジション用の"01式 拡散突撃砲"と砲撃支援 専用の"01式 支援狙撃砲"。
 コレに関しては篁を通して、巌谷中佐達に開発を頼むけど構わないわね?」

「はっ!」

「随分前から停滞してたみたいだけど、平気なの?」

「全く問題ありません、今となっては非常に理に適っている兵器だと思いますので」

「そりゃ~心強いな。頼むよ篁?」

「は、はい」


――――前者は御剣・後者は珠瀬との訓練で考えついた、ショットガンとライフルだ。

ショットガンは突撃砲のチェーンガンの部分を連射の効く散弾に改良&変更。

んでライフルは支援突撃砲を改良して72ミリ~90ミリぐらいの弾丸を発射する仕様にする。

実を言うと……ショットガンやライフルって言う兵器の開発は、以前から帝国軍でも進んでいたらしい。

だけどショットガンは扱い難さから、普通にチェーンガンで36ミリをバラ撒いた方がマシ。

ライフルは物量相手に一体づつ狙ってどうする? そもそも当たるのか……って価値観から、
ロールアウトされる迄には至っていなかったんだけど、XM3の開発による衛士の技量の上昇を見込んで、
ゆーこさんは俺の話しに乗ってくれ、篁も感化されたのか巌谷さんに開発を頼んでくれる様だ。

よって"拡散突撃砲"が完成すれば、対戦術機ダケでなく多くのBETAを捌く事ができ、
"支援狙撃砲"とくれば、支援突撃砲で豆鉄砲しか撃てなかった珠瀬のポテンシャルを最大限に活かせる。

光線級はともかく、36ミリでは簡単に殺せない重光線級を次々に仕留めれる珠瀬は心強いだろう。


「じゃあ……後は"92式 肩部多目的追加装甲"と"殴る兵器"なんだけど」

「やっぱり難しいですか?」

「当たり前よ。前者は元が有るし、都合の良いように設計すれば良いけど、
 ナックルとガドリング・ガンについては"言われた通り"に作れば問題無いの?」

「御願いします」

「えっと、右手にナックルを握らせて左腕に36ミリのガドリング・ガンを内装する。
 本来なら殴って戦うなんて馬鹿らしいけど、その為に"サブ射撃"が有るし……」

「全然オッケーって事です。 まぁ……接近戦に置いて長刀を振り上げるよりも、
 そのまま殴る方が早く攻撃できますしね~。彩峰とかは そう言う戦い方が得意だと思ったんです」

「成る程ね。それに"ガドリング・ガン"が旨く機能すれば……なんだったかしら?」

「パイルバンカーです」

「そう。 ソレも追加で右腕・前腕に付ける事も考えてあげるわ、感謝しなさい」

「は~い」


――――肩部シールドは鎧衣への指導。ナックルとガドリング・ガンは彩峰への指導で考えついた。

でも前者はともかく後者の概念は皆には無かった様で、最初は訝しげな顔をされたモンだ。

何せナックルもパイルバンカーも背中には納めれそうも無いし、活用が難しそうだからね~。

だけど左腕に内装する36mmガドリング・ガンの開発を提案した事で、ゆーこさんが折れてくれた。

結果を出さなければ覚悟しなさい……って言われて怖かったけど、彩峰なら使いこなしてくれるだろう。

勿論 俺も使いこなせる様にして、パイルバンカー実装まで辿り着かないとな。何せ男のロマンですからっ!


「……っと、これぐらいね」

「そうですね~」

「じゃあ、あたしはXM3の"仕上げ"に移るけど、社はナックルとかの設計を適当に始めて。
 終わったら直ぐに手伝うから、まずは好きな様に考えてみなさい」

「わかりました」

「それじゃ~御願いしま~す。 行こうか篁」

「は、はい。では香月副司令、失礼致しましたッ!」

「霞~、またな~?」

「……またね」


とにかく、コレで話し合いは終わった。また色々と正史に反する事をしちまったけど、何を今更。

戦力アップを計るに越した事は無いし、現代日本の"俺"として動いた結果がこうなったダケだ。

要は開き直っちゃったんだ☆ そんなワケで邪魔しちゃ悪いし、執務室を出てゆく事にしたんだけども。


「あぁっ、そうだった」

「何?」

「お空の"お掃除"は済みそうですか~?」

「……ッ……ふふん、滞りないわよ?」

「有難う御座います」

「(お空の……お掃除?)」


――――忘れてると困るので"例の件"の確認を済ませると、首を捻る篁と共に退室するのでした。


「さてと……これから忙しくなるわよ? 社」

「……ッ……」

「どうかしたの?」

「いえ……何でもありません。お仕事、始めます」

「頼んだわよ?」

「はい」

「(この娘も、白銀の御陰で随分と変わったわね~)」

「(白銀さんに"あれ"を見せる事……すっかり忘れていました……)」




……




…………




……5分後。


「さ~て、XM3の完成が楽しみだな~」

「はい」

「悪いね篁。 書類の整理も終わってないのに、仕事を増やしちゃってさ」

「!? き、気にしないで下さい。私が行うのは巌谷中佐に"伝える事"だけですから」

「そう言ってくれると助かるよ」

「それにしても――――」


エレベータで地上へ戻った俺と篁は、目的も無くスタスタと通路を歩いていた。

そんな中 話す内容は、自然な流れで"さっきの話"となり、他愛の無い言葉の交し合いが始まる。

同時に今後の予定も考え始め、篁は"仕事"が幾つか溜まった様だし一旦 別れるのが妥当だろう。

反面……提案が済んだ上に、篁と霞の御陰も有ってか十二分に休めた俺は、
B分隊やA-01の訓練の様子でも、今やってれば見に行こうかな~と思っていると……


「なんだい?」

「今更では有りますが白銀少佐。本当に流石……ですね」

「流石~? どうしたんだよ、いきなり」

「その……お供させて頂く中で驚いた事は多々有るのですが、まさか訓練兵達への指導を、
 ほんの3~4時間 行ったダケで、あそこまで色々な兵器等の案が浮かんでしまうなんて……」

「買い被りだよ、大した事じゃないって」

「そんな事は有りませんッ!」

「うわっ、びっくりした」


――――何故か褒められるが案は簡単に浮かんだ為 謙遜すると、篁は俺の言葉を強く否定し歩みを止めた。


「それに引き換え、私は……」

「篁?」

「……わたし……は……っ……」

「お、おいっ?」

「(此処 一年以上、何一つ……出来ていない……)」

「!!??」


≪すーーーーっ…………≫


篁が立ち止まってしまったので振り返ってみると、俺は彼女の"表情"を見て驚愕した。

何とッ! 真面目な表情ながら篁は静かに涙を流しており、しかもソレを拭おうともしていない。

ちょっとちょっと、どう言う事だよコレ!? 泣き方が泣き方だし、普通に意味が分からん。


「(白銀少佐は こんなにも務めているのに……本当に……情けない)」

「た、篁……何で泣いてるんだよ~」

「……え?」

「気付いてないのか? 目を擦ってみろよ」

「そんな事……あっ! わ、わわわわ私ッ……どうして、こんなっ……」

「一体 何があったんだよ?」

「な、何でもありませんッ!」

「…………」


どうやら、篁は自分が涙を流していた事に気づいていなかったらしい。

だから俺の指摘でようやく気付いた様で、ぐしぐしと袖で慌てて涙を拭っている。

その理由を聞いてみると……何でもない? いやいや、それは無いだろ~奥さん。

篁が涙を流した理由は理解できないけど、何でもないのが"嘘"と言う事は間違いないZE。

全く……上官が心配しているのに嘘は良くないぞ~篁。 よって俺は仏頂面で彼女に歩み寄った。


「白銀少佐、これは見なかった事に――――」

「…………」←唯依に接近


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「し、白銀少佐?」

「……ッ……」


≪ぺろっ≫


――――篁がミエミエの嘘を言うモンだからブチャ●ティを肖って、つい頬を舐めちゃったんだ☆


「……っ!?」

「この涙は! ……嘘をついている味だぜ? 篁 唯依」

「えっ? なっ……う、ぅあっ……」

「頼む、本当の事を言ってくれないか?」

「!? は、はいっ……」

「(覚悟は良いか? 俺はできてる)」


思えば㌧でもない事をしてしまった気がするけど、篁は素直に涙を流したであろう理由を話してくれた。

どうやら……彼女は俺があまりにも頑張ってるモンだから、劣等感を抱いていたらしい。

正直ソレは意外だった。 俺は俺のペースでやってたダケなんだが、予想以上に評価してくれてたみたいだ。

ダメならダメで逆にもっと創価……いや、評価さるべきとアピールしてた俺が目に浮かぶけどね。

さておき。 篁が劣等感を感じる必要なんて微塵にも無いので、上官として慰めてあげないとな~。

俺は彼女に評価されていた事で調子に乗ってしまい、強気にも篁を正面から抱きしめてしまった。


≪――――ぎゅっ≫


「あっ」

「心配するな、篁。 君は良くやってくれているよ」

「し……白銀、少佐……」

「だから気負う必要なんて無い。 これからも、今の調子で頼むよ」

「……ッ……」

「(や、柔らけ~)」


慰めの言葉の後、更に図に乗って篁を引き寄せると、彼女も俺を抱き返してくださる。

それによって押し付けられる胸……デカい事はエロスーツ姿を見て判ってたけど、
軍服姿だと目立たないとは言え、コレは巷で言う着痩せするタイプってヤツですか?

何にせよ、大して下半身が疼かないって事は、俺の耐久力は順調に上昇中の様だな~。

しかしながら。長い事 当てられていると流石に無理だろうから、そろそろ離れる事にするお( ^ω^)


≪――――ぱっ≫


「あ……」

「それじゃ~篁。頑張れるね?」

「は、はいっ! 御心配お掛けしました!!」

「そんなら、お互いに"仕事"に移るとしようか?」

「了解しました。では白銀少佐ッ、私は これで失礼致します!」

「うん」


思わぬ"役得(スキンシップ)"も有り、俺は篁と別れると その場で溜息をついた。

以前から不安だったけど、ど~やら篁との関係は良い方向へと進んでゆきそうだな。

んなワケで俺も御仕事 頑張りますか~っ! ……そう気合を入れ、歩き出そうと向きを変えた時。


「…………」

「…………」

「……!?」


20メートルほど離れたところの、給水装置の真横にある長椅子に腰掛け、
寛いでいたと思われる2人の女性……速瀬と涼宮(姉)の姿が目に入ってしまった。

当然 俺が気付いたので2人もこちらを見ており……いや、まさか さっきから見ていたのかっ!?

確信は無いんだけど、無表情で俺を捕らえている2人の視線が そう物語っている気がしたのだ。

な、何だ何だ? 何故だか寒気がしてきたぞ!? 此処は逃げるべきか? そう思っていると……


注:AAはイメージです

  ( ゚д゚ ) ←水月
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /


――――俺を凝視していた速瀬が。


注:AAはイメージです

  ( ゚д゚ ) ガタッ      
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /


――――唐突に立ち上がり。


注:AAはイメージです

 ⊂( ゚д゚ )
   ヽ ⊂ )
   (⌒)| ダッ
   三 `J


――――俺に向かって走り出して来た!!


「そぉい!!」

「ぬるぽ!!」


≪ガッ!!!!≫


そんな速瀬が怖かったので逃げ出そうとした俺だが、アッサリと追いつかれ。

後ろからのタックル(リアタックル)を食らい、顔面からブッ倒れる羽目になってしまった。

狙われた場所は腰から下あたり。 両腕を回して締め付ける、見事なタックルですた。

その為か顔面のダメージが大きく動けないでいると、コツコツと俺に歩み寄る音がしてくる。


「ありがとう、水月」

「楽勝よ、楽勝っ!」


――――有る意味速瀬より怖い存在……涼宮(姉)だ。


「それじゃあ」

「来なさ~い」

「痛ててててっ……な、何を……ちょっ!?」


直後、抵抗する間も無く……俺は速瀬の馬鹿力に引き摺られる様にして、
物陰へと引っ張り込まれてしまった。 ま、まさか……再びツケを払わされるんですか!?

つい最近、模擬戦で相手をしてやったじゃないかっ! 一体 何が不満だって言うんだ……

篁とのスキンシップを見られた事は恥ずかしかったモノの、関係ないだろうしワケ判んね~よ!!

そんな必死で襲われる理由を考える俺だけど、顔面の痛さで意識が朦朧とし始めており、
次に2人が告げた言葉は、前途の理由により聴き取る事はできなかった。

覚えているのは……そう。 以前の様に肉食獣の様な雰囲気を纏っている速瀬。

そして冷静だが何故か速瀬以上に怖い涼宮(姉)が、同時に接近して来たトコ迄だった。


≪……ずいっ≫×2


「さっきは魅せ付けて くれたじゃな~い」

「白銀少佐、酷いです。 私と水月は……」

「ま、マジで2人とも止め……JAOOOOOOOO!!!!」




……




…………




――――んで1時間後。

物陰で気絶していた俺を、偶然 通りかかったイリーナちゃんが発見してくださった。

その結果……結局 御仕事はせずに自室に戻った俺は、篁の胸の感触を思い出して自慰っちゃったんだ☆


≪心配するな、篁。 君は良くやってくれているよ≫


「んっ……く……ふぁっ……」


≪だから気負う必要なんて無い。 これからも、今の調子で頼むよ≫


「(白銀少佐……私は、貴方の……事を……)」


――――んでもって唯依タンも、白銀少佐の甘いマスクを思い描いて犯っちゃったんだ☆




●戯言●
顔文字はともかくアスキーアートをSSで使って良いのか結構迷っていたのですが、
速瀬中尉の例のAAが私がイメージした情景とあまりにも酷似していたので、使ってしまいました。
更新には一週間以上掛かってしまいましたが、次も頑張るんだJAOOOOOOOO!!!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ32
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/02/19 03:33
これはひどいオルタネイティヴ32




2001年11月28日 早朝


「白銀さん……おはようございます」

「ああ、おはよ~霞。毎度毎度 有難う」

「……いえ」

「それにしても――――」


本日はアンリミでは大きなイベントが起こる、国連の視察団&珠瀬 事務次官が来訪する日。

しかし正史通り"対策"はしているので、全く慌てる必要は無いってワケだ。

それはそうと。今日も例の如く霞に起こされると、互いに何の変哲も無い挨拶を交わす。

そんな中……視線をドアの方へと移した直後、"気になる点"が有ったで早速 話を切り出す。


「はい」

「何でイリーナ中尉が"此処"に居るんだ?」

「!? し、白銀少佐……これは……」

「つい先程……白銀さんの部屋の前で、会ったんです」

「へぇ~」

「も、申し訳有りません。"先日の件"で心配だったモノですから……」

「……あぁ、そうだったんスか」


今話した通り、今日はイリーナちゃんが篁の代わりに立っていたのだ。

よって先ずは霞に聞いてみると、特に参考にならない当たり前の回答が返って来る。

だけどイリーナちゃんの言葉により、瞬時に彼女が"居た理由"を理解できた。

……そう。昨日 速瀬と涼宮(姉)に気絶させられた後、俺を起こしてくれたのが彼女だったからだ。

イリーナちゃんは妙に慌てた様子で気遣ってくれていたけど、原因が原因なので適当に誤魔化していた。

その結果、心配でワザワザお見舞いに来てくれたってワケだね~。こりゃ嬉しい限りだZE。

かと言っても、霞は例外だが上官の部屋に本人の許可無く入って来るのは良い事じゃない。

ソレをイリーナちゃんは理解しているのか妙にオドオドしており、相変わらず可愛いな~チクショウ。


「御迷惑……でしたよね?」

「ンな事 無いですって、わざわざ有難う御座います」

「そ、そんな……お礼など仰って頂かなくっても……」


≪は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね≫

≪!? そ、そんな……"みっともない"だなんてッ≫


「……(白銀さんは こうやって"元気"に振舞っているけど……)」

「ところで篁の姿が見えませんけど、来てませんか?」

「えっ? あっ……はい、彼女にも御部屋の前では会ったのですが――――」


≪な、何が有ったんですか白銀少佐!? そんな所で倒れてるなんて……≫

≪いやいや。何でも無いんで気にしないでください、イリーナ中尉≫


「……(肉体に異常が無いの吐血し、例え休んだとしても倒れてしまう……と言う事は……)」

「ですが?」

「――――"本日は雑務に専念したい"と言う伝言を預けると早々と立ち去られました」

「へぇ……でも、何でッスかね? 起こすくらいの時間は有っても良いのに」

「……ッ……」

「い、イリーナ中尉?」

「知りませんっ」

「へぇあ」

「……(やっぱり、白銀さんは……大きな"精神的負担"を抱えている?)」


イリーナちゃんの言葉によると、篁は自分の"仕事"を片付けたい様だ。

新兵器開発に繋がることだから是非とも頑張って欲しいとは言え、ちょっとダケ残念な気がする。

可愛い部下が居ない的な意味で……そう考えながらイリーナちゃんとの会話を進めると……

何故か頬を膨らませてソッポを向いてしまったので、意味が判らず時報的な声をあげた俺だった。


「……(だとすれば……今日こそは白銀さんに見せないといけません)」


――――それにしても相変わらず無表情な霞は、果たして何を考えているんだろう?


「霞は篁の事について何か知らないか?」

「…………」←リーディングでの記憶を辿っている


≪心配するな、篁。 君は良くやってくれているよ≫

≪し……白銀、少佐……≫

≪だから気負う必要なんて無い。 これからも、今の調子で頼むよ≫

≪……ッ……≫


「か、霞?」

「全く知りません」

「へぇあ」

「……(驚いたわ、この娘が話す所を こんなに見れるなんて)」




……




…………




2001年11月28日 午前


「おはようございま~す」

「失礼致します、香月副司令」

「あら、どうしたの? 珍しい組み合わせね」


霞とイリーナちゃんに起こされると、昨日と同じ様に先ずは霞を地下に戻らせるよう言った。

対して案の定 納得していない感じの霞だったけど、彼女は一つダケ"条件"を出して来る。

それは"見せたいもモノが有るので、後で必ず来て下さい"と言う内容であり、
普通に承諾すると、イリーナちゃんとPXで朝食を摂った後に執務室にへとやって来て今に至る。

実は今日は午前から基地内に待機命令が出ているので勝手に出歩いて飯とか食っちゃ拙いんだけど、
色々と詳しいイリーナちゃんは午前はPXは無人な反面、厨房は通常通り機能している事を知っており、
バカ広い食堂で"2人っきり"の食事を摂る羽目になって、京塚のオバハンに呆れられたモンだ。

こんな事なら誰であろうと多少は自室にストックしてる物でも食う方が良い気がしたけど、
イリーナちゃんが妙に勧めて来たからなぁ……まさか狙ってたとか? そんなワケ無いよね~。

さておき。正直イリーナちゃんを執務室に連れて来て良いのか疑問だったケド、
何だか話を切り出そうとした時、何となく俺の言いたい事を察した、
彼女の悲しそうな表情で話を切り出し辛く、つい後先考えずに連れて来ちゃったんだ☆


「えっと、霞が何か見せたいモノが有るって言うんで来ました」

「あら、そうなの社?」

「……はい」

「でも、その前に白銀。他に"気になる事"が有るんじゃないの?」

「気になる事って何ですか?」

「何ですかって……"オソラノオソウジ"よ」

「あぁ、確かに気になりますね~」

「全然そう見えなかったけど?」

「ゆーこさんが しくじるワケ無いってのは、最初から分かってますからね」

「はいはい ありがと。とにかく、見るだけ見て頂戴」

「了解~」


執務室に入ると、霞がイリーナちゃんの気配を読んだのか、デスクの前で ゆーこさんとウサギが立っていた。

ゆーこさんは相変わらず綺麗だ。最近は隈も無いみたいだし、寝てくれてるみたいで有り難いZE。

そんな事を思いながら会話を進めてゆくと、ゆーこさんは俺に近付いて何やら"写真"を手渡して来る。

この辺りの技術は進歩していないのか綺麗なモノでは無いけど、HSST爆発の瞬間を撮られている写真。

嗚呼、何十億もしそうな駆逐艦が無駄に……そんな事を思う俺の後ろから、イリーナちゃんの声がする。


「も、物凄い爆発だったようですね」

「そりゃカーゴの中身は爆薬が満載だったから。それも海上運送がセオリーのデリケートなやつよ」

「しかも電離層を突破した後は、フルブーストするように設定されていた……」

「どう考えても、まともな航行プログラムじゃないわね~」

「フルブースト……加速すれば激突直前のHSSTの速度は、音速の数倍に跳ね上がる。
 その軍用装甲駆逐艦・耐熱対弾装甲の強度を持って直撃させれば……」

「地面は最低20mは抉り、カーゴの爆薬によって基地は壊滅するってワケで――――」




……




…………




――――5分経過。


「しかし、未然で防ぐ事が出来て何よりでしたね」

「そうね。余計な大仕事の"大の文字"が抜けたダケ、それなりに有り難い事だわ」

「はい。この情報をリークしてくれた方には感謝です」

「全くよ、誰だか"知らない"けど」

「……(ワザとらしく仰ってはいるけど、情報提供者は恐らく……)」

「……ッ……」

「白銀、さっきから何 見続けてるのよ?」


写真を食い入るように見る中、ゆーこさんとイリーナちゃんのウンチクが始まっていた。

成る程……HSSTには、そんな工作がされたってワケですな。こりゃ勉強になったわ~。

そんなパーフェクト・ウンチク教室は5分で終了したワケなのだが、俺は段々と腹が立って来てしまった。

横浜基地を壊滅させるとかアホだろ、人類滅亡確定だろうが、考えた奴 首釣って死んじまえ!!

あ~あ、ホント嫌になるぜ。こんな連中が居るから白銀が何回ループしても世界を救えないんだよ。

そう怒りを覚える中、何時の間にか"自重"のリミッターを外した俺は、写真を見てボヤいてしまう。


「ふんっ」

「白銀少佐?」

「白銀さん?」

「白銀?」




「……汚ねぇ花火だ」

「!?」×3




――――サイヤ人の王子・ベ●ータを肖って、つい言っちゃったんだ☆


「(い、今の白銀少佐はまるで別人の様に……でも、怒りを感じるのは無理もないわ)」

「(白銀さん、本気で怒っています……今の感情は何故か読めました……)」

「(初対面の時でさえ何も感じなかったのに、今は寒気がしたわね。これが白銀本来の"殺気"ってやつ?)」

「ゆーこさん。コレ、返しますね」

「え、えぇ」

「そんじゃ~霞、何を見せてくれるんだ?」

「!? い、いま見せますっ」


≪たたたたっ……≫


流石に"汚ねぇ花火"ってのはNGだったかな~? 見たまんまを言ったダケなんだけどね。

でも さっきのウンチクによると、機内事故で死んだ事にされたHSSTの乗員も居たらしいし、
花火扱いは不謹慎だったな……3人が複雑な表情で俺を見ているし、こりゃ~いかんぞっ!?

よって冷静な様子を頑張って保ちながら、無理矢理に話題を変える事にした俺なのでした。

すると霞はデスクの裏に回りこむと、デスクトップ・パソコンを操作し、直ぐ俺に手招きをした。


「どれどれ~?」

「一体 何を見せるってワケ?」

「すみません……ピアティフ中尉は……」

「……ッ……ざ、残念です」


霞の手招きに応え、彼女の後ろに回りこむべく右にへと動く俺。

そして、ゆーこさんも気になるのか左から霞の後ろに回りこんでくるんだけど……

イリーナちゃんは動く前に霞に静かに制されたので、大人しくその場で待っている様だ。


「開きます」

「……ッ!?」×2


こうして、霞が開いたファイルから出てきたモノとは――――


「こ、これって……霞が作ったのか?」

「白銀の為とは言え、良くやるわね……」


――――白銀と鑑が笑顔で立っているAAだった。


「……クッ……」

「し、白銀さん?」

「わ……わりぃ霞、少し感動しちまったよ」

「!? それなら元気……出ましたか?」

「あぁ、凄ぇ出たよ。良いモン見せてくれてアリガトな?」

「は、はい」

「……(白銀少佐が感動を? い、一体どんな……)」


恐らく鑑の脳味噌と関わる事により、得たビジョンを必死にAAで表現したんだろう。

これって職人技ってレベルじゃね~ぞっ!? よってナチョナルに感動して涙が溢れてしまった。

きっと"白銀"本人の特性もあるんだろう、袖で拭わなければ雫が毀れちまう程の症状に陥っている。

そんな涙を拭う中、視線を移すと……イリーナちゃんの顔に"超 気になる!"と書いてあるではないか。

まぁ~、大丈夫だよな? 微妙なところだとは思うけど、霞が自分のAA見られて恥ずかしく無ければ……


「イリーナ中尉ッ!」

「えっ?」

「中尉も見て問題無いっスよ? こっちに来て下さい」

「よ、宜しいのですかッ?」

「白銀さん……それは……」

「んっ? 霞がダメなら仕方ないけどね」

「……(それは自分の弱みを知られるよりも、今後 蟠りを抱えるピアティフ中尉の事を……)」

「霞?」

「いえ、白銀さんが構わないのであれば……見て貰ってください」

「サンキュ~。じゃあイリーナ中尉」

「は、はいっ」

「……(でも"効果"は有りました……"感動"してくれたんですから……)」

「どうです、凄いでしょ?」

「これは……絵? ……っえ、えぇっ? 文字!?」←両手でディスプレイを掴んで凝視

「あ~あ、予想通りねぇ」


――――そんなワケで5分後、イリーナちゃんもAAにハマる事になっちゃったんだ☆


「(アスキーアート、凄い発想……それにしても、きっと あの娘が"マウアー"と言う人なのね)」←不正解




……




………………




2001年11月28日 午後


「ほぉ、君が"たま"の言っていた……」

「はっ! 国連太平洋方面第11軍・横浜基地所属、"白銀 武"であります!! 階級は少佐です!!」


あれから執務室で俺・ゆーこさん・霞・イリーナちゃんで数時間に渡り、
新兵器についての構造とかについて話し合った後、俺はイリーナちゃんを後ろにタマパパと対面していた。

無理して彼と会う つもりは無かったけど……退室の際、ゆーこさんからタマパパが俺の事について、
"機会が有れば会いたい"と言っていたらしいので、予定時間を逆算して彼の位置を推測してくれた、
イリーナちゃんを引き連れて探索し、B分隊に基地内を案内されていたタマパパを発見し今に至る。

まぁ~、此処で彼に会っておかないと二度と見れないかもしれないしね。一応"良い機会"って事さ。


「ふむ、その若さで……君の事は"たま"から良く聞いているよ」

「そうなのですか」

「あわっ、あわわわわっ……」


チラリとタマパパの後ろのB分隊+まりもちゃんを見てみると、珠瀬が顔を真っ赤にして震えている。

……あれっ? 手紙の嘘は解消してるから分隊長を偽る必要なんて無いのに、何でキョドってるんだろう?

榊の機嫌が妙に悪そうだったり、鎧衣のカオに涙の跡が見えるのは、
"父親に似て頑固で融通が利かない"だとか"珠瀬より平坦な娘"だとか言われたからだろうが……

そうかっ! 今のみたいに俺が指摘する以前に書いちゃった事がバレたのを未だに気にしてるんだろう。

リアクションがオーバー過ぎる気もするけど、きっと少佐である俺にもバレないか心配なんだろうな。

その可能性は低いから安心して良いぞ珠瀬~? 俺が勘付こうが元から知ってるし意味ないしね~。

そんな事を思いながら俺を興味深そうに見ていたタマパパは俺に近寄ると、唐突に肩を叩いてくる。


≪――――ポンッ≫


「白銀君」

「はい?」

「"たま"からの手紙に君の名が出てきた時は、本当にそんな人間が存在するのか疑問に思ったが、
 先日 香月博士に詳しい話を聞いて、君しか……君以外には居ないと思ったよ」

「ぇあ?」

「式は何時が良いのかね?」

「シキ?」

『――――!?』×7(中尉+軍曹+B分隊)

「はふぅ……」


≪ドタッ≫


「た、珠瀬!? しっかりしろッ!」

「解らないかね? "結婚式"だよ」←小声

「結婚式……でありますか」

『――――!?』×6


タマパパの爆弾発言に俺以外の全員が驚愕し、珠瀬が倒れ御剣が膝を折って彼女を気遣っている。

それにしてもイキナリ結婚式……ねぇ。 いくら俺でも彼が言う事が冗談って事くらいは分かりますよ?

確かEXのラストだと珠瀬と逃げるシーンで怒り狂ってたし、嫁にくれるなんて絶対 有り得ないって。

オルタの展開でも最後は冗談だったと笑ってた気がするから、俺は心身ともに冷静に対応できている。

よって無意識に彼の言った単語を復唱してしまうと、再び珠瀬以外が驚愕。膝を折っている御剣までもが。


「そうだ……君ならば良かろうッ! たまを宜しく頼むよ……!」

「えっ?」

「(こ、此処で白銀さんが肯定してしまえば……)」

「(白銀少佐は、珠瀬と結婚しちゃうって言うのッ?)」

「(な、ならんっ! そんな事が有ってはならぬ!!)」

「(何か嫌だけど……どうしようもないかな……)」

「(う~ん、お似合いかもしれないけど、残念な気もするな~)」

「(か、彼の心には まだ別の人が居る……だから、大丈夫だとは思うけど……)」


迫真の演技だな~タマパパ。原作でも同じだったけど、間近で見ると更にそう見えるな。

しかしながら。彼の気持ちを知っている俺は、変わらず冷静さを無難に維持できている。

だから真剣な表情で両手を肩に当てられようとも、頼りになる少佐なのも変わらないんだけど……


「傍で支えてやってほしいんだ……これから、末永くね……」←真剣な表情

「わかりました、任せてください」

『――――ッ!!!?』×7(中尉+軍曹+B分隊)


≪ばたっ、へなっ、がばっ!≫


「……おや? 何が有ったと言うのかね?」

「ちょっ!? み、皆どうしたんだよ!?」


鎧を纏ったタマパパの"珠瀬を頼む"という言葉を肯定した直後、前後で妙な音がした!

よって周囲を見てみると、彩峰と鎧衣 以外の皆が不可思議な状況に陥っている。

まりもちゃんとイリーナちゃんはブッ倒れ、榊と御剣はヘタりこんでしまい、
珠瀬は逆に勢い良く立ち上がり、彩峰と鎧衣は立位は維持しているが妙に寂しそうな雰囲気だ。


「ふ~む……(彼は噂以上に慕われているようだな)」

「まり……じゃなかった。軍曹、軍曹ってばッ!」

「……うッ……」

「何が有ったんスか? いきなり倒れて」

「し、白銀少佐……」(じわっ)

「はい?」


――――ちょっ、まりもちゃんってば何で泣いちゃってるの? まさか生理痛っ?


「ぐすっ、末永く……お幸せに……」

「はぁあ~? なにアホな事 言ってんですか軍曹ってば」

「!? あ、アホな事って……少佐は珠瀬との"結婚"を承諾されたじゃないですか!!」

「…………」←唖然

「……ッ……そ、それなのに……うぅ……」


この反応……もしかして、まりもちゃん達は今の"遣り取り"を真に受けていたのか?

そう捉えて周囲を見てみると、珠瀬以外の5人も悲しそうな表情で俺を眺めている。ぶっちゃけカオス。

あっ! 珠瀬が再び倒れた様だ……けど気にせずタマパパと目を合わせた直後、急に笑いがこみ上げて来た。


「……ぷっ」

「くくくっ」

「し、少佐ッ! 事務次官!! 何がオカしいんですか!?」

『わっはっはっはっは!!!!』

『!?』×6

「やだな~軍曹~ッ。結婚だなんて、そんなの"冗談"に決まってるじゃないですか!」

「じ、冗談?」

「その通りだよ……最初は彼の器を量る為に言ってみたんだが、全くの無意味だった様だな。
 逆に彼女達が"言葉通りの意味"で捉えてしまったらしい。全く計算外も良いところだよ」

「はははっ、まぁ……そんなトコですよ、軍曹」

「うぅ……そ、そんな……あんまりです白銀少佐~……」

「文句なら珠瀬事務次官にどうぞ~」

「!? そ、それよりも白銀少佐ッ!!」

「んっ? どうした~御剣」

「珠瀬の脈拍が危険な状況に陥っているのですが――――」

「何だって~ッ? 榊、医務室に行って誰か呼んで来いっ!」

「は、はい!」

「なっ!? し、しっかりするんだ"たま"ああぁぁーーーーっ!!!!」

「……半分はアンタの所為」

「彩峰、自重」

「サーセン」


――――こうして最もタマパパの冗談に翻弄された珠瀬は、奇跡的に一命を取り留めたのだった。




……




…………




「……それでは、諸君等の一層の活躍に期待する」

「敬礼!!」

『――――っ』×5


駆逐艦に戻るにあたり、基地司令と共に基地内を回っていた視察団の人達と合流する直前。

まりもちゃんの号令で凛々しくタマパパに敬礼するB分隊の様子を見届けると、俺は その場を後にした。

そんでイリーナちゃんと夕食を共にし、今現在は通路を2人でスタスタと歩いている最中だ。


「一時は どうなる事かと思いましたね」

「ですね~。血圧は200以上いってましたし」

「とは言え、家族としての絆は一層 高まったと見受けられます」

「えぇ。でもまぁ……上官としての役割は"次回"もああして再開を楽しんで貰う事ですね」


――――当たり前の事とは言え、コレは難しい事でもある。正史なら珠瀬は近いうちに死ぬしな。


「あ、あの……ところで」

「はい?」←歩行停止

「"家族"を持つと言うのも、良い事かもしれませんよ?」

「えっ? それってどういう――――」

「……っ……」


≪――――がしっ≫


「!?」

「……(また口付けたい……でも、彼には まだ"別の人"が……)」

「イリーナ中尉?」

「あっ……な、何でも有りません。失礼な事をしてしまって、申し訳有りませんでしたッ」

「いや、別に気にしないッスけど」

「そ、それでは白銀少佐……今日はお疲れ様でしたッ」

「お疲れで~す」


う~む、イリーナちゃんにイキナリ両肩を掴まれてビックリしてしまった。

顔がアップだったし、直ぐに放してくれなかったらチューしてしまったかもしれない。

んっ……でも待てよ? イリーナちゃんって以前 別れ際にキス☆して来た事 なかったっけ?

だとすると……もしかして今、躊躇っていたんじゃないのか? そうとくれば男として此処は……


≪――――ダダダダッ!!!!≫


「えっ――――んんっ!?」


≪ズキュウウウウゥゥゥゥンッ!!!!≫


――――イリーナちゃんの唇を奪う他 無かったんだ☆ 変な擬音がしたけど気にするな。


「ぷは~っと」

「あっ……」


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「以前 不意打ちを食らっちゃいましたからね、これは"お返し"ですよ」

「し、白銀少佐……」【ヘブン状態!!】

「それと、2人っきりの時は別の呼び方でも良いですよ? それじゃ~また明日ッ!」

「……ッ……はい、また明日……しろがね、さん」【ヘブン状態!!】


こうして、唐突に暴挙に出た俺はウザそうな笑みを浮かべると その場を走り去っていった。

勿論キスする直前には速瀬&涼宮(姉)が居ない事をしっかり確認したので心配ないんだZE。

ともかく、コレで今夜のオカズは決定だ。 イヤッフウウウウゥゥゥゥッ!!!!(マリオ調)




……




…………




2001年11月28日 深夜


≪イリーナ中尉、今のダケじゃ物足りないだろ?≫

≪ど、どう言う事ですか?≫

≪今夜は俺の部屋に泊まっていきなって事だよ≫

≪!? わ……わかりました≫


「イリーナちゃん……ンギモヂイイイイィィィィ~~ッ!!!!」


――――そんな今夜は、白銀は言うまでも無くイリーナちゃんで抜いちゃったんだ☆


≪今夜は、寝かさないんだぜ?≫ ←ウザそうなスマイル

≪嬉しいです……白銀さんっ……≫


「……くぅッ……好き、好きです……白銀さんっ……」


――――んでもってイリーナちゃんも、白銀とのキッスをオカズに犯っちゃったんだ☆




●戯言●
何気にピアティフ中尉の自家発電で〆るのは初めてかもしれませんね。
12・5事件まで一週間を切りました、その辺からほのぼの展開が多少は減る……のかな?
最近 冥異伝にハマってしまった反面、絆が資金不足で給料日まで中断です。早く値下がりしないかな。
ちなみに。白銀28の口癖のうわっ、びっくりした……はトミーをイメージして頂ければ幸いです。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ33
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/04/10 04:03
これはひどいオルタネイティヴ33




2001年11月29日 早朝


「朝です。 ……おはようございます」

「おはよ~、毎度毎度 有難な? ……って、昨日も同じ事 言ったっけ?」

「…………」

「んっ? どうかしたのか? 霞」

「……いえ」

「それなら良いんだけど」


今日も起床のラッパが鳴る30分前に霞が起こしに来てくれ、同じ様な挨拶を告げたんだけども。

俺をみつめてくる彼女のカオに若干 違和感が有ったので自然な流れで指摘してみる。

パッと見は相変わらずの無表情なんだけど、今の俺ならば僅かな違いが判るのであるッ。

だけど2文字で否定する霞。 妙に機嫌が悪い気がするけど、思い過ごしだと良いんだが……


「…………」

「そ、そう言えば今日は篁もイリーナ中尉も居ないけど……霞は何か知ってるか?」

「篁さんは居ませんでしたけど……ピアティフ中尉とは、お部屋の外で会いました」

「会ったって事は来てたのかッ? じゃあ外で待ってくれてたり?」

「……いえ、戻られました」

「なんで?」


≪以前 不意打ちを食らっちゃいましたからね、これは"お返し"ですよ≫

≪し、白銀少佐……≫

≪ついでに、2人っきりの時は別の呼び方でも良いですよ? それじゃ~また明日ッ!≫

≪……ッ……はい、また明日……しろがね、さん≫


「……っ……」

「か、霞?」

「ちっとも知りません」

「へぇあ」

「ばいばい」

「ちょっ!? 霞ッ」


≪――――バタンッ≫


よ、予感が的中してしまった! やっぱり霞は機嫌が悪かったらしい。

昨日の篁と言い今日のイリーナちゃんと言い、2人が何故 部屋に入って来なかったかは、
口頭では聞かなくてもリーディング能力を使えば簡単に分かると思うんだけど……

言ってくれないって事は、本来ならば霞がリーディングそのものを避けた可能性も考えれる。

だけど どちらにせよ、小走りでドアの方へとゆき"ばいばい"と言って退室した事から、
何処かで霞の事を傷つけてしまった事は明白……AAまで作ってくれたのに、何でだ~っ?

もっと遊んでやるべきだった? それとも、AAをもっと褒めまくるべきだったのか?

それとも沢山の"兵器開発の仕事"を押し付けてしまった事を怒ってたりするんでしょうか?

何にせよ、これから霞に関するイベントが多いってぇのに困った事になったな~。

だけど悔やんでも仕方ない。霞のフラグが折れようと、最低でも俺が生き残ればクリアなんだ。

……って霞が白銀と頑張ってくれないとオリジナルハイヴの攻略に支障が生じるんだったね。

こりゃ~どうにかして機嫌を良くして貰わないとな~。そう決意を新たにする俺だった。




……




…………




「(――――篁さんと言い)」


≪だから気負う必要なんて無い。 これからも、今の調子で頼むよ≫


「(――――ピアティフ中尉と言い)」


≪それと、2人っきりの時は別の呼び方でも良いですよ? それじゃ~また明日ッ!≫


「(白銀さんは、酷い人です。……でも)」


≪全く知りません≫

≪へぇあ≫


「(――――昨日と言い)」


≪ちっとも知りません≫

≪へぇあ≫


「(――――今日と言い、私はどうして"あんな事"を言ってしまったんでしょうか?)」


≪白銀さんは、酷い人です≫


「(あれ? それにしても……今どうして私は、白銀さんを"酷い人"と思ったんでしょう?)」




……




…………




2001年11月29日 午前


「……熱~っ……」


≪ズルズルズルズル~≫ ←蕎麦を食べる音


「あっ、白銀少佐よ! 珍しく一人だわ」

「ちょっと、茜ちゃん待って~ッ」

「今はマズいんじゃないの~?」

「ど、どうしてよ多恵・晴子? 御挨拶をする位なら……」

「ごめんね。何だか声を掛けて良い雰囲気じゃ無い様な気がしたんだよ~」

「それに ど~せ茜の事だから、朝食も同席しようかと思ったんでしょ?」

「は、晴子!?」

「ホント茜は白銀少佐の事がお気に入りだよね……」

「そうだね~遼子。そう言えば、速瀬中尉と涼宮中尉も そんなカンジらしいよ~?」

「!? み、水鳥! それって本当なのッ?」

「うん。噂で聞いたダケなんだけど、2人掛かりでアタックした事も有るみたい」

「そ、そんな……それで、どうなったの?」

「知らな~い」


≪――――ずるっ≫ ←コケた茜


「ところで白銀少佐~、何が有ったんだろうね~?」

「少なくとも、私達が測れる様な領域じゃないって事は確かだねェ」←そうでもない

「だ、大丈夫かしら……また倒られたりしなければ良いんだけど……」




……




…………




「……ッ……」


≪スタスタスタスタ……≫


朝食を摂った俺は、篁が居ないので一人で通路を歩きながら"これから"事を考えていた。

ちなみに飯も霞の事が有って負のオーラを振り撒いていたので、一人寂しく食ったのは御愛嬌。

さておき。 白銀の情報によると、次のアンリミでの大きなイベントは"天元山の噴火"らしい。

これと"HSST落下"の2つのイベントを未然に防いだ時……クーデターが起きる事になる。

天元山の件については御剣と急接近するイベントが有るから やってみるのも良いんだけど、
あくまで"この世界"はオルタだからなぁ……強制退去して貰う以外の選択肢は無さそうだね。

ひょっとして救助活動をしても"HSSTの件"ダケでクーデターは起きるかもしれないが、
その流れを作ってしまえば"アンリミでもオルタでもない世界"に変わってしまうかもしれない。

開き直った感は否めないけど兵器開発やら模擬戦を勝手にやるならともかく、
流石にオルタ一つ目の重大イベント(クーデター)に繋がる指示を"行わない"のは大きな賭けになる。

だから心の中で天元山の御婆さんに謝りながら、俺は擦れ違う人に敬礼しつつ歩き続ける。


「……?」


しかし、今日は何か忘れている気がする……正史のイベント的な意味で。

思えば昨日のタマパパ関連のイベントや兵器開発に意識を傾け過ぎてたからな~。

ぶっちゃけオルタをプレイしたのは2年くらい前だし、細かい流れは分からないんだよね。

即ちアンリミの流れは白銀の記憶で覚えてるけど、オルタの未来は"俺"しか知らない。

よって"俺"の曖昧な記憶を頼りに進めてゆくしか無く、ソレが不安を募らせてしまう。

まぁ……この時期のイベントと言ったら ゆーこさん関連なのかな? 多分そうだろうな~。

そうなると……都合良く篁も居ないし、また執務室に顔を出そう。"何か"が起こるハズだ。


「そうだ、京都へ行こう」


――――そんなJRのCM的なノリで、俺は地下へと続くエレベータを目指すのでした。




……




…………



「ウィーッス……って、ありゃ?」


≪し~~ん……≫


地下では人目は殆ど無いので、ポケットに両手を突っ込んでスタスタと歩く。

だけど執務室が近くなってくると口ではダラしないが、背筋は伸ばして入り口を開いてみると。

部屋の灯りは消えており、真っ暗。 ど~やら、ゆーこさんは不在のようだった。

こりゃ~予想外だったな。 彼女が此処を留守にしてるなんて考えても無かったZE。

だけど ゆーこさんも人間、そりゃ不在な時くらいは有るってね。そう考えながら入室する。


「――――あっ」

『……ッ……』


その直後っ! 俺は自分の記憶の中から、今が"どんな状況"かを探り当てた。

詳しくは分からないけど、確か"鎧衣課長"が気配を消して潜んでいるのは間違いない。

全く気配を感じないのは流石と言ったところだけど、オルタを知る俺を欺くのは不可能。

よって彼が俺の背後に回ろうとする前に、入り口の方へと後退して振り返り一言かます。




――――ファック・ユー♂(TDN調)




……って、違う違うッ! イキナリ喧嘩 売ってどうすんだよ!?

彼もオルタをクリアする為には必要不可欠な存在なんだし、自重しなきゃイカん。

ヘタすりゃ射殺されてしまうッ! それならまだ掘られた方がマシってもんだ。(何処を?)

だけど自重のリミッターは解除したままで、俺は右手で"鉄砲"を作るとソレで顔を隠し、
"くるり"と左から振り返ると、左手の人差し指を突き出して見えぬ相手に向かって言った。


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「鎧衣、貴様ッ! 見ているな!?」

『――――ッ!?』


≪ひゅううぅぅぅぅ~~……≫


「…………」

『…………』


カリスマ吸血鬼を肖って、つい言っちゃったんだ☆ 直後に十数秒の沈黙が続く。

……ありゃ、ひょっとして俺の勘違いだったか? 鎧衣課長の登場は今日じゃ無かったのかな。

何時までもポーズを維持するのは疲れるんですけど。 そう思ってJOJO立ちしていると……


「……ッ……」

「成る程……噂と言うのも案外、捨てたモノでもないな」

「おっ? やっぱり居たんですね」

「そもそも私の様な人間になると、噂などで物事を解釈する訳にはいかなくてね」

「噂って、どう言う事ッスか?」

「気配は完璧に消したつもりだったんだが、まさか察せられるとは思わなかったよ」

「は、はあ」

「それにしても"君という人間"が本当に存在するとはなあ。その顔は作り物じゃないのかね?」


いやいや、聞いてくださいよ人の話……流石は鎧衣の親父さんって感じだな~。

それはそうと。闇から姿を現したのは、予想通りサブキャラの"鎧衣 左近"だった。

ゲームと同様にナイスミドルなオジサン。俺も将来はこんな様にシブくなりたいモンだね。

そう思いながら左近さんを眺めていると、何となく彼が俺に歩み寄ろうとしている気がした。

……確か、死んでいるハズの俺が居る事を妙に思ってるんだっけ? なら先手を打たないとッ。


「御生憎ですけど、作り物なんかじゃ無いですよ」

「確かなのかい?」

「そうですって、ホラホラ」←自分で両頬を引っ張る

「ふ~む、作り物にしては良く出来ている様だな」

「だから違いますってッ、ちゃんと見て下さいよ!」←更に引っ張る

「はははは、冗談だよ"シロガネ タケル"君」

「へぇあ」

「噂では完全無欠の天才衛士と言われていたが、思ったよりも面白いな君は」

「そ、そりゃどうも」

「ところで、何故 私の名を知っていたのかね?」

「そりゃ~俺は、ずっと水面下で動いてましたからね。鎧衣訓練兵の父でもある、
 鎧衣課長……"鎧衣 左近"の名前くらいは知ってて当たり前ですって」

「成る程、それは1本取られたな。では……何故 君は生き残れた?」

「!? そ、それは……」

「喋り過ぎよ、白銀」


≪――――ぱっ≫ ←照明が点いた音


さ、流石は"切れ者"と呼ばれる左近さんだ。何時の間にか彼のペースに引き込まれてしまった。

ぶっちゃけ"俺が何で生き残れたか"について、詳しい言い訳は全く考えて無かったしな~。

生憎チートで復活している事がバレるところだった。ゆーこさんの御陰で助かったZE。

何時の間にか執務室に戻って来た彼女が、背後から灯りを点ける事で話を打ち切ってくれたのだ。


「……ゆーこさん」

「これはこれは香月博士」

「相変わらず礼儀 知らずね、帝国情報省は。貴方が来るなんて話は微塵にも聞いて無いわよ」

「いやあ申し訳ない。噂の"彼"との出会いを心待ちにしていたのでね」

「俺と?」

「それとこれとは話が別よッ」

「おっと、話が反れてしまったな。シロガネ タケルくん、何故 君は今こうして――――」

「止めなさい!」

「うわっ、びっくりした」

「ふ~む、何か隠す理由でも有るのですか? 香月博士」

「……違うわよ。噂じゃコイツは天才衛士なんて言われてるのかもしれないけどね。
 まだまだ青臭い"ガキ"なのよ? たかが興味本位で過去のトラウマを聞いてくる奴を相手に、
 わざわざ思い出して応える義理も理由も無いのよ。 ソレが初対面の怪しい奴なら尚更ね」

「おやおや、それは手痛いですな」

「そうよね? 白銀」

「……ッ……はい、そうなんです。ともかく色々有って生き残れたんですよ。
 んで今は衛士になって頑張ってBETAと戦ってます。この辺で勘弁してください」

「何だか腑に落ちないが、今はそれで良しとしようか」


何時の間にか天才衛士とか過大評価されてたんだな俺って……いや、9割は白銀の御陰だけどね。

それなのに ゆーこさんは酷い誤魔化し方をしてるけど、このフォローは正直 助かったわ。

なんだか白銀は可哀相だけど、俺は痛くも痒くも無い。 そもそも志しが子供以下だしな~。

……さておき。無理矢理に俺の生死を誤魔化すと、ゆーこさんと左近さんで何やら会話を始める。

だけど最初は左近さんに掴み所の無い話ばかりをされ、彼女のイライラが次第に募ってゆく。

結果 超怖い目付きで彼女に"御託は要らないわよ"と言われると、全く動じずに左近さんは答える。


「――――XG-70の件ですよ」


!? あぁ~、確か"スサノオ"とか言う巨大メカになるヤツだっけ?

米軍が開発したけど00ユニットの鑑じゃないと扱えない、現時点ではポンコツ兵器。

だけど俺が知ってるのは左近さんにとって不自然だろうから……今は空気を読んで黙っていよう。

一方、唐突に鳥の生態やら無意味な話題を語ろうとして、ゆーこさんに却下される左近さん。

う~む……この人の言動は天然なのか、或いはフザけてるのか全く分からんね。

ドラマで有名な"杉下 右●"さんと話術の対決をしたら、どうなるのか見てみたい気がする。


「実は最近、帝国軍の一部に不穏な動きがあるようでしてね」

「ふ~ん」

「唐突に"戦略研究会"なる勉強会が結成されたんですよ」

「あっそ」


ちょ……ゆ~こさんヒドス。貴重な情報だと思うけど、案外 彼女は勘付いてるのかもね。

当然 俺も何となくは知っているので相変わらず黙っていると、左近さんは話を続ける。

簡単に述べれば、オルタネイティヴ4の成功を邪魔しようとする連中が、
ゴキブリの如く裏で這い回り、これから起こり得るクーデターすら画策して、
BETAに対する最初で最後の勝つる手段を、愚かにも潰しに掛かろうとしてるって事だ。

全くッ。クーデター軍も、反オルタ勢力も、国連内部の別勢力も皆 纏めて死ねば良いのに。

だけど叶わぬ事。 奴等を殴り倒せないのは残念だけど、サクっとクーデターを鎮圧して、
反オルタネイティヴの連中には少なくとも桜花作戦が終わるまでは大人しくして貰うに限る。

彼らは保身に必死だとは言え……何もスキ好んで宇宙に行きたいワケじゃないんだ。

万が一にも落ちないと思ってるオリジナルハイヴを潰しさせすりゃ喜んで俺達を称えてくれる筈。

しかしながら。例えオルタネイティヴ4を成功させようとも期待していないらしく、
XG-70を開発した米国はソレを出し渋っている。……国連加盟国で有るにも関わらずだ。

まぁ……確かに今の状況は酷いけどね。人類が一つしか奪還していない幾つもの"ハイヴ"に囲まれ、
数百万のBETAが犇(ひしめ)いているとされるオリジナルハイヴを落とす事なんぞ、
現実的に考えれば不可能だし、落とせるんだ! ……と豪語すりゃ~御目出度い奴だったり、
幸せな奴だったり・イカれてる奴だったりと捉えられちまっても仕方ない気はする。


「……で、それだけ? そんな事を言いにワザワザ足を運んで来た訳じゃないんでしょ?」

「はっはっはっ、お見通しでしたか。それでは本題に入りましょう」


ところで話は変わるけど、ゆーこさんと"オルタネイティヴ5推進派"の戦いは、
アンリミでは白銀の知識不足で頻差で"後者"の勝利で"世界"が終わってしまった。

……理由は簡単。 ゆーこさんの00ユニットの開発が間に合わなかったからだ。

オルタネイティヴ5推進派としては横浜基地にHSSTをブチ落としてブッ壊し、
例え完成しても勝てる望みの薄い、オルタネイティヴ4の存在そのものを消そうとした。

んで"掃除"が済んだら適当に誤魔化して宇宙にオサラバするつもりだったんだろうけど、
予想外にも珠瀬がHSSTを堕としたので、彼らは内心ハラハラしてたんじゃなかろうか?

とは言え実際には"頻差"じゃなく、ゆーこさんが00ユニットを完成させる為の理論は、
"こちら"の価値観では根本的に見出す事はできず、手の届かない距離にゴールは有った。

だけどオルタネイティヴ5推進派はンな事は知らないので、HSSTを落とす無茶をやったと。


「実は2度ほど"奇妙な命令"が発令された様でしてね」

「……ッ……」

「ひとつは帝国軍、もうひとつは国連軍 宛です。御存知 有りませんか?」

「何が言いたいの?」


しかし"今回"はアンリミでは無くオルタの世界。オルタネイティヴ5推進派にとっては、
珠瀬がHSSTを撃ち落してしまう事 以上の予想外な展開に直面する。

ループした"白銀"の介入により、HSSTが不穏な動きをした直後に撃墜されてしまったのだ。

それは御空の旅行に行きたい連中をピリピリさせると言う結果に繋がったらしい。

……だけど、左近さんにとっては重要な方は寧ろ"帝国軍への命令"の方だと言う事。

アンリミでも今回でも気付けなかったけど、HSSTの落下については、
"何らかの理由"で彼女が勘付く可能性も、ほんの僅かとは言え有るのだから。

一方BETAはどうだ? 奴等の行動を読める人間なんぞ存在するワケが無いんだ。


「前者の件は最初は"社 霞"が察したかと疑ったが、死んだ筈の彼が此処に居る……」

「お、俺?」

「(不味いわ……やっぱり白銀に疑いを掛けてきたわね)」


……よって勘の鋭い左近さんは予想通り疑いの矛先を俺に移し、鋭い視線を向けてくる。

う~む、やっぱ俺がBETAから逃げ延びた事は信用してくれてなかったのかもね。

白銀が怪しいって? すごく……正解です……されど認めるワケにもゆかず、どう答えようか迷う俺。

確か白銀はアンリミだと"スーパー・エリート・ソルジャー"だとか言って誤魔化してたんだっけ?

だったら俺も同じ手を……いや、此処は"俺だけ"の特権を活用させて貰うとしよう。


「改めて説明して欲しいものだね、シロガネ タケルくん」

「ふっ……バレちゃあ仕方無いですね」

「白銀!?」

「実は俺って"この世界"の人間じゃ無いんです」

「ほほぅ、自ら認めるというのかね?」

「はい。実を言うと、"この世界"は人間が作り出した壮大な"ゲーム"なんですよ」

「は、はぁ~?」←副司令

「ゲーム?」

「……そう、ゲームです。俺は"元々居た世界"に数多く有るゲームの中で、
 "この世界"を舞台としたゲームをプレイした多くのユーザーの1人に過ぎないんです」

「…………」×2

「だから"この世界"の展開も知っている。当然BETAが何時 攻めて来るかも……ね」

「…………」×2

「つまり! 俺は"この世界"を救う為に白銀に憑依した、正義のヒーローだったんですよ!!」


≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


「…………」×2

「あれっ? どうしたんですか? 御二人とも」

「……さて、私は次の職務に移るとするか」

「ふ~ん。思ったよりも、おはやい御帰りなのね」

「はははは……美女に引き止められるのは悪い気はしませんな。
 ですが、これ以上の追及は無意味でしょう。この辺りで失礼させて頂きますよ」

「はいはい、ご苦労様」

「娘サンに会ってやるのを忘れないで下さいよ~? 鎧衣さん」

「……ふむ……君には1本取られてばかりだな、シロガネ タケルくん。では……またの機会に」

「だから返答を下さいってば~ッ!」

「答えは、YESだよ」


わはははは、やっちゃったぜ☆ ゆーこさんと左近さんに自分の正体をバラしても~た。

でも計画通りだ……全く信用されてない。そもそもTVゲームすら無いんだし、
まだ白銀の"スーパーエリートソルジャー計画"の方が現実味が有るってモンだZE。

よって"誤魔化し"としての効果はX-GUNだった様で、場が一気にシラけた様子だ。

結果 左近さんは帽子を整えると退室し、ゆ~こさんが呆れた表情で俺を見つめて言う。


「全くアンタって……良くあんな"誤魔化し"が出せたもんね」

「ちょっと信憑性が無さ過ぎましたかね?」

「呆れる程にね」

「そりゃどうも」

「褒めて無いわよ」

「さいですか」


≪――――ボフッ≫


自重せずマイペースな俺の横を素通りすると、ソファーに身を投げる ゆーこさん。

予想以上にシラけさせた度合いは大きかったらしい。 あぁん? 最近ダラしねぇな。

けど"俺"の記憶では、イベントはコレで終わらない。 左近さんとの遣り取りで思い出した。

非常に重要な事を言うタイミングが"今"な為、床に落ちている紙を無造作に拾うと彼女に近寄る。


「あ~あ、なんか白銀の所為で今日はヤる気が無くなっちゃったわよ」

「……そうも言ってられないかもしれませんよ?」

「えっ?」

「また"思い出した"んですけどね、これの図面に見覚えが有って――――」




……




…………




2001年11月29日 午後


あれから俺は、ゆーこさんに"白銀の元の世界"の彼女が"理論"を完成させている事を言った。

するとシラけてた彼女は一変し、もっと"詳しく話せ"と再び乳をギュウギュウ押し付けてくる。

そんな中 何とか情報を伝え終えると、明後日には俺を"あっち"に飛ばす装置を準備するとの事。


「……マズったな……」


まぁ、コレはオルタで覚悟していたイベントなので、無難に消化するつもりだ。

だから置いておく事にしておき、現時点での俺は通路を歩きながら"別の件"を思い直していた。

……それはHSSTを撃墜して貰った事。原作……オルタでも堕としてたんだっけ?


≪でも今回は必要無いですから、事前にサッサとブッ壊しちゃってください≫(29話参照)


考えてみれば監視してプレッシャーを掛ければ不穏な動きそのものを回避できたんじゃ?

俺が"壊す"って事を強調しなければ……何も知らない乗員を死なせる事は無かったかもしれない。

くそっ……そう考えると、もっと ちゃんと考えてから"思い出した事"にしとくべきだったな~。

それに俺は榊のオヤジさんも見殺しにするだろう。正史を重視する無能な俺に罪悪感が募る。

オカしいな、涙が流れない……ひとつも嬉しくは無いのに。これも白銀大佐の御陰ってヤツかよ。


「……(部屋には居なかったし、少佐は何処に……あっ)」

「俺が……殺したのか……」

「!? し、白銀少佐ッ?」

「うわっ、びっくりした。 ……って、篁か」

「は……はいっ! 白銀少佐、昨日と言い今朝と言い……顔を出さず申し訳有りませんでしたッ」

「はははっ、そんなの構わないって。……で、連絡の方はどうなったんだい?」

「滞りなく済んでおります。よって近いうちに兵器の試作品の作成に移るそうです」

「有難う。"不知火 弐型"についての話は何か有った?」

「現在S型仕様を組み始めている最中との事です。一週間以内には一機 完成すると」

「その一機って、やっぱり……」

「はい。巌谷中佐は是非とも白銀少佐に搭乗して頂きたいと仰っていました」

「ホントかい? 嬉しいね。だったら、俺のS型は篁にプレゼントしちゃおうかな~」

「!? あ、あぁぁあ有難う御座います……」

「……ってワケで、明日からは また手が空くって事で良いのかな?」

「そ、そうです。故にまた、御一緒させて頂きますッ」

「まだ"仕事"が終わってなければ、そっちを優先させて良いからね」

「問題ありません。……そ、そもそも……私が伺えなかったのは……少佐の所為なんですから……」

「――――えっ?」

「な、何でも有りませんっ」


ラストは後者が小声だったので聞き取れなかったけど、篁は自分の役割を果たしてくれた様子。

しっかりと兵器開発を委託してくれ……不知火・弐型の作成状況も教えてくれた。

こちらの要求は弐型を"何機"か回せって事だったけど、色々とオトナの事情が有るんだろうね。

でも地味にF型じゃなくS型で作ってくれてる様だし無問題。俺はS型の弐型に乗りたかったしな。

それはそうと……何か上目遣いで俺を見上げる篁が超可愛いんですけど。何が有ったんですか?


「そうか。なら良いんだけど……」

「…………」

「篁は頑張ってくれたみたいだならな~、今回は特別にナデナデしてやろう」

「あっ……」


――――だから白銀は我慢できなくなって、つい髪を撫でちゃったんだ☆


「HAHAHA。それじゃ~篁、明日からも また頼むよ?」

「…………」


篁の頭を十数秒 撫でた俺は、ウザそうなスマイルを最後に彼女の元を立ち去った。

俺の行動に呆れているのか彼女は その場から動いて無かったけど、許しておくれやす。

ともかく。前途の件の為、少しブルーな気分だったけど篁と会えて元気が出たぜ……感謝感謝。


「……ハッ!?(わ、私は……敬礼もせずに何て失礼な事を……それに……)」


≪俺が……殺したのか……≫


「(あの言葉……彼は本当に……"多くの事"を背負っているのね)」


≪篁は頑張ってくれたみたいだならな~、今回は特別にナデナデしてやろう≫


「(なのに私の方が励まされてばかりで……全く、自分が情けないわ……)」




……




…………




……そんなワケで、篁と会わなければ自重して今夜は普通に寝てたんだろうけど。


≪篁、お前は今夜は俺のペット……即ち犬だ。良いなッ?≫

≪は……はい≫

≪こらッ、今言った事が理解できなかったのか!? 返事はッ?≫

≪わ、わんわん≫


「レミリ、アッーーーー!!!!」


――――篁の上目遣いが可愛過ぎて、つい抜いちゃったんだ☆(ヒャハハハハハ)




●戯言●
左近さん登場、そして白銀が自分の正体をバラすと言う波乱(?)の展開となりましたが案の定。
さておき。そ、そろそろ70万PVと感想数1000が近付いている……だと?
マジで最初(書き溜めてた頃)は12話の所で終わらせる気マンマンだったのですが、
此処まで書き続けられているのは皆様の御陰です。今後も改めて宜しく御願い致します。


●追記●
歌詞引用の指摘を受けまして、間違いないので該当部分を削除しました。
本家で指摘して頂いた方、本当に有難う御座います。御陰で直ぐ気付けました。
管理人氏や読者様にはご迷惑をお掛けしました。本当に申し訳有りません。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ34
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/03/26 08:07
これはひどいオルタネイティヴ34




2001年11月30日 午前


今日も例の如く霞に起こして貰ったけど、今朝の来客は"3名"だった。

お気付きの通り霞に加えて篁とイリーナちゃん……我ながら妙なフラグを立てちまったモンだ。

考えてみれば、既に何人かを抱き締めたダケじゃなくキス☆までしちゃってるんだよね。

でも前者は上官として部下を励ます為・後者はスキンシップだし問題無いだろう、多分だけど。

いや……大丈夫じゃないと鑑を怒らせてしまうし、ベットインだけは避けないといけないな~。

彼女達は頼れる上官とは思ってくれてるみたいだけど、流石に"抱かれたい"とは思って無いだろう。

初の実戦を終えての祝勝会の翌日、大慌てした速瀬の態度を思い出せば理解は容易い。(17話参照)

そんな裸で迫られた"あの時"は勿論、ゆーこさんやイリーナちゃんにキスしちまった時は、
本気で押し倒そうと思ったぐらいだから、要は俺が極力 欲望を抑える必要が有るってワケだ。

"あっち"じゃ女性に襲い掛かって犯罪者になるアホがニュースで良く晒されてるけど、
自分は絶対にそう言う区別が出来てる人間だと信じて疑わなかった。

だけどソレは自意識過剰だったのか? そもそも唐突にキス☆しちまう時点で異常だしな~。

そう考えると速瀬や涼宮(姉)も一緒だからマシとは言え、とにかくオルタ世界はヤバすぎる。

BETAが暴れてるって時点で十分ヤバいが、女性陣が美人・美少女ばかりってのが特にね。

横浜基地の外の人間は知らんから良く分からんけど、少なくとも基地内は醜い人間 自体居ない。

心が汚いって意味じゃ御剣の武御雷(紫)の件で絡んで来た2人組みを考えれば存在するが……

冷静に考えてみると、BETAや戦術機 云々より最もサプライズなのが人間達の容姿なのだ。

さておき。俺は3人を部屋の外で待たせて、さっさと着替えるとPXを目指したんだけども。


「…………」

「…………」


――――この日イキナリ、俺は予想外なイベントに直面する。


「ちょっ、霞?」

「……どうぞ」


霞が何故か"PXまで付いて来た"時点で、何だか嫌な予感はしていたんだよ。

その予想通り、彼女は俺の注文した鯖味噌定食を食べさせようと箸を突き出して来ている。

オーマイゴッドッ! 有るのは知ってたけど、対策を考えるのをすっかり忘れてたYO!!

このイベントが起きたって事は、霞は少しは 俺の事を慕ってくれてるってワケなんだが……

そうだった。ゆ~こさんの計らいで彼女との"共同生活"が始まってしまうんだよね~。

まぁ、先にベッドに侵入されなかったダケ良しとしよう……と言いたいトコロなんだけども。


「い、いや霞さん」

「……食べてください」

「だから、その」

「あ~ん」

「……うぅッ……」

「あ~~ん……」


――――俺は素直に霞の"恩恵"を受ける事が出来なかった。


「…………」

「…………」


何故なら、同席している篁とイリーナちゃんが居るからなんだもんっ!!

ちなみに正面に2人は座っており、霞は当然 俺の直ぐ左で食い物を挟んだ箸を伸ばしている。

もし篁とイリーナちゃんが普通に飯を食っていれば、躊躇い無く食い付けるんだが……


「(や、社のこの行動は"お兄さん的な存在"な白銀少佐に対するモノなのかしら?)」

「(……ッ……ど、どうしてこの娘が白銀さんに"こんな事"を……!?)」


篁の方は普通に驚いて こっちを見ていると言った感じなので、まだ良いんだけども。

イリーナちゃんの方のショックが大きかった様で、何でレイプ目みたいな顔してんですか!?

始めは"嫌な予感"がしたにせよ、霞の実際の行動を見て嬉しかった気も多少はしたんだけど、
今となっては未然に防げば良かったと後悔しちまっている自分が居る……

オルタでも素直に食い付けなかった白銀の気持ちも解るぜ、何か原作と違う空気なカンジだけどね。

ともかく! 白銀も結局 食ったハズだから俺がするべき行動なんぞ一つしかないワケであって。


「ぱくっ」

「!?」×2

「……ッ……」


――――素直に食べさせて貰うしかなかったんだ☆


「どうした? 霞」

「い、いえ……何でも無いです……」

「そうか?」

「…………」


篁のプレッシャーは無いから良し、んでイリーナちゃんの事は悪いが気にしない事にしよう。

でも更に予想外の事が起こる。無表情だった霞が、俺が食い付いた直後に瞳を見開いたのだッ。

もしかして霞の恥ずかしかったのかな? ……と思ったら再び無表情で二口目を出してくる。

だったら気のせいかもしれないね~。 そんなワケで、パクパクと何口か食べていると……


「……ッ!!」


≪――――ガタッ≫


「あれっ? イリーナ中尉」

「し、失礼しますっ」


≪たたたたたたっ……≫


「あっ、ちょっと!」

「ピアティフ中尉ッ! どちらへ!?」


体感で一分後。唐突にイリーナちゃんが席を立ち上がり、その表情は何故か悲痛なモノだった。

直後 俺と目が合うと軽く頭を下げて、手を付けてない料理をそのままPXを後にしてしまう。

そんな行動に俺は勿論、篁も意外だった様で声を掛けるけど、今や遅しと言ったトコロだ。

一方 霞は手の動きを止めた様で箸を何時の間にか置いており、眉を落として俺を見上げている。


「……すみません」

「ぇあ?」

「怒らせてしまいました」

「!? いや……大丈夫だよ」


霞は何故か俺に謝り、イリーナちゃんが怒ってしまったという衝撃の事実を告げる。何故に!?

少佐が公の場であるPXで謎の少女に対し、安直に飯を食わせて貰う迂闊さがヤバかったのか?

ワケが分からんけど、リーディング能力を持つ霞の言う事が間違っているハズが無いのは明白。

よって彼女を追いかけたい気にもなったけど、残念ながら今は霞とのイベントの最中なのだ。

そうなると……此処は頼れる"部下"にフォローを御願いする他は有るまい、我ながら名案だね~。


「白銀さん?」

「……篁」

「は、はい」

「悪いが、彼女の事を頼む」


――――要は部下に丸投げとも言う。だけど俺は真面目な表情で誤魔化している。


「!? わ、わかりました」

「悪いねホント」


≪霞は……俺の妹みたいなモンだからかな?≫


「御気になさらないで下さい(……彼女は"あの事"を知らない為に勘違いしてしまった)」

「有難う。そう言ってくれると助かるよ」

「いえ(……私も"知らなかった"事を考えると、白銀少佐も酷な事をするわね)」

「霞、食わせるのは もう良いよ。ソレだと自分のが食えないだろ?」

「……迷惑、でしたか?」

「(でも今の真剣な表情……彼はピアティフ中尉の存在を間違いなく大切に思っている)」

「いやいや。"同じ事"をしてくれてたんだろ? 迷惑なんかじゃ無かったって」

「そ……そうですか」

「(だとすれば白銀少佐の部下として、彼女の蟠りを取り払わなければ……)」

「――――うわっ」


俺は霞を納得させると、彼女のペースに合わせてゆっくりと食事を再開する。

その様子には……リスが木の実を頬張るような、何とも言い難い愛くるしさを感じてしまう。

一方 素早く食事を口に流し込んだ篁は、イリーナちゃんが残した食器をも持って立ち上がる。

少しダケ目を放した隙に素早いな……そういう意味で自然と驚きを口に出してしまった。


「それでは白銀少佐、私はこれで失礼しますッ」

「うん」


敬礼と共に篁は お盆を両手に立ち去ってゆく。話の分かる部下でホント助かるね~。

それにしてもイリーナちゃんの立ち去り様……考えてみればオルタの榊達のような雰囲気だった。

……って事は彼女一人ダケとは言え原作の再現になったのか? そうなると俺の事を……あれっ?


「白銀さん」

「!? ど、どうしたんだ? 霞」

「……お箸が進んでいません」

「あぁ~悪い、少し考え事をしていてね」


何となく良い答えを導け出せそうだった時、霞に声を掛けられて正気に戻った俺。

むぉっ!? なんだか再び眉を落としていらっしゃるし、ちゃんと彼女の相手をせねばッ!

不安になるのも仕方ない、何と言っても霞は"此処"で食事をするのは初めてなんだしね~。

よって鏡で練習しているウザそうなスマイル(0円)で微笑み掛けた俺なのでしたが……


「そう……ですか(……やっぱり、ピアティフ中尉の事を……)」

「と、ところで霞……設計の仕事は順調か?」

「あっ……はい、今のところは滞りありません」

「そうか。だったら午前は――――」


やっぱり元気が無い様に見えるので、午前中は霞と再びトランプ等で遊ぶ事にした。

兵器の設計についてはXM3の開発よりも楽らしく、快く承諾してくれた彼女に感謝だZE。

反面 篁を放置する事になってしまうが勘弁してくれッ! 霞とのイベントの最中なんだよ~。


「……それ、ダウトです」

「ぐふうっ!?」


――――白銀に電流走る!! まぁ……相変わらずトランプは全敗したワケなんだけども。

何度か霞が俺のジョーク(例:霞はホント可愛いなァ等)で照れてくれたりしたので手応え有り!

無事に午前のイベントを消化できた様なので、気分良く地上へと戻ってゆく俺なのでした。


「(白銀さん、甘えてばかりで御免なさい……でも、凄く暖かいんです)」


……余談だが後日。さっき一口も飯を食わずに食事を放置したイリーナちゃんなんだけども。

偶然 京塚のオバハンに怒られているのを目撃し、彼女はペコペコと頭を下げていた。

要は折角 作った食事を残すなって事であり……流石に頭が上がらない様子に萌えますた。




……




…………




2001年11月30日 午後


地上に上がって一人で飯を食った俺は、篁の姿を噂を頼りに探して歩き回った。

すると案外 早く見つかり、彼女はイリーナちゃんと月詠さん達を交えて訓練に励んでいる様子。

場所は当然シミュレータールーム……ソレを確認すると俺は安心して その場を立ち去れた。

……ちなみに後日。イリーナちゃんのフォローをしてくださった篁に、
"社は白銀少佐の妹の様な存在である為なのです"と彼女に述べ納得させた事を聞く事になる。


「良~し」


ソレはさて置いて。俺はコソコソと広いグラウンドの前にやって来ていた。

以前は207B分隊がせわしなく訓練していた場所であるが、今は人影すら皆無である。

今は何やら基地内での動きが活発だからな~、シミュレーター訓練も筐体の取り合いみたいだ。

大方 S型やXM3や新兵器の事が何処からか漏れて噂になったのかな?

それとも珠瀬事務次官が来たのがデカい? 巌谷中佐ってのも有るな、人目にはついてたしね~。

まぁ、何でも良いや。正史よりも横浜基地がヤル気になってくれる方が俺も助かるしな。


「いっちに~、さんし~」←実はコイツの御陰


現在 俺が着ているのは国連軍の軍服では無く、寝巻きにも使う青のジャケット姿である。

何故ならカラダを思いっきり動かしたかった為であり、その場で屈伸などを始める俺サマ。

考えてみれば"大きな運動"をしたのは、初日に瓦礫の周りを走り回った時ダケなんだよね~。

後は戦術機に乗る以外で……って言うか、乗るのと運動とは別だと思うので殆ど皆無だった。

思えば速瀬に襲われた時は手も足も出なかったし、体はムキムキでも体術はからっきしかもしれん。

よって今日は良い機会だし、肉体そのものを鍛えようかと一人でグラウンドにやって来たのさッ。

銃の使い方は白銀大佐が覚えてたけど、カラダの使い方は俺自身も把握してないとヤバい。

可能性は極端に低いとは言えど、生身で闘士級とかと戦う場面が有るかもしれないしね……

伍長ズみたいには絶対なりたくないから、俺は俺なりの遣り方でカラダを動かしてみる事にしよう。

ンなワケで立ったままの柔軟体操を済ませると、前後左右の安全を確認して最初の行動に移る。


「ラン・ラン・ルー!!」


――――1度はやってみたかったので、つい遣っちゃったんだ☆


「最強☆トンガリコーン」


――――そして意味不明な事を言いながらデングリ返しをする。


「明日っからまた日・月・火ッほら、水・木回って金・土ッ!
 日曜~、僕ら日々を楽しんで生きてこう!! ……もういっちょっ!」


――――んでもって何系でもないCMの、うろ覚えのダンスを一人寂しく踊る。


「ふぅ~……さてと」


こんなカンジで"こっちの世界"では理解できない動作を続けている自重しない俺。

されど手応えは十分であり、カラダの冴えが元の肉体よりは断然違うではないかッ。

こりゃ~BETAにも武器次第じゃ勝てるかもしれないな、ビビらなければの話だけどね~。

さて置き。今度は激しいのもヤってみるようかな? このカラダなら大丈夫だろうしな。

俺はトントンと軽くジャンプをすると一直線に走り出す! ……気分は新体操の選手だ。


「ほっ!」


――――先ずは、そのまま勢いを殺さずにロンダート(側転の逆を向いて着地)し。


「しっ!」


――――直後、大きな跳躍によるバク宙して無事に着地。

コレも大丈夫だったか……だけど一瞬の動作とは言え凄い集中力を使ってしまった。

ようやくだけど厚着だし少し汗も出てきたな~。よって汗を拭って視線を移すと……


「あ"っ」

「!?」

「ぐ、軍曹?」

「……ッ……」


少し距離を置いて、例の教官用のジャケットを着て立っていた まりもちゃんが目に入った。

ま、まさか ずっと見てたのかッ? 初っ端 辺りのは目撃されてないだろうけど……

とにかく確認が必要だな。 対して まりもちゃんは俺が気付いたと分かると此方に近付いてくる。


「どうして こんな所に?」

「B分隊の娘達には今日明日と整備訓練を行わせているので、午後は暇が出来まして……」

「まりもちゃんも体を動かしに来たってワケですか?」

「はい、教えるばかりでは体が訛ってしまいますから」

「成る程~」

「少佐……いえ、白銀さんは何故此方に?」

「全く同じ理由ですよ。戦術機に乗ってるダケじゃ体が訛りますからね~」

「それで"今の動き"……ですか」

「何か思うところでも?」

「は、はい。何と軽い身のこなしかと……」

「大した事じゃないですって」

「いえ、流石は白銀さんです」


――――まりもちゃんはそう言ってくれるけど、オリンピック選手なら目を瞑っても出来る事だ。


「俺の"動き"はどの辺から見てました?」

「たった今のジャンプ? のような動き……だけですね」

「そうッスか」(ホッ)

「で、ですので……あの……」

「何ですか?」

「私にも普段、白銀さんが行っている生身での訓練を教えて頂けないでしょうか?」

「え"ぇあ!?」

「!? む、無理にとは言いませんけど……」


危ない危ない教祖様の動きや、一部カットしたレスリングの動きは見られていなくて一安心。

よって今度は彼女と走り込みやら簡単な事をして、デートと言う名の訓練にでも移ろうとした矢先。

まりもちゃんは"俺の指導"を受けたい様で、そうとなったら話は違ってきてしまう。

俺はインストラクターでも何でも無いのだ。戦術機ならまだしも、何を教えりゃ良いんですか!?

実際確認はしてないけど、まりもちゃんって身体能力は抜群って聞くし……ベテラン教官だぞッ?

何か適当に誤魔化して立ち去りたくなったが、上目遣いで見ないで下さい萌えるじゃないか。

そうなれば期待に応えなくてはならないッ。故に何か、何か無いのか~と必死に考えた結果。


「まりもちゃん」

「は、はい?」

「"ラジオ体操"って知ってます?」

「いえ……何ですか? それは」


――――ビンゴッ! 発端は1920年代らしいが、この世界には存在すら無かったか!!


「いえ、忘れてください。じゃ~早速始めましょうか?」

「あ、有難う御座いますッ! では何を教えて頂け……」

「白銀体操 第一!」

「えっ?」

「腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動~っ」

「えっえ?」

「イチ・ニー・サンシ・ゴーロク、手足の運動~っ」

「えっあッ」


今の子供達は知らないが、現代社会の俺みたいな年の大人は誰でも知っているラジオ体操。

だから在り来たりなモノなんだけど、こっちの世界には"無い"為か まりもちゃんは動けない。

勝手に進めてゆく俺の動きを、何とか真似しながらギコちなく体操していると言ったカンジだ。

ソレは俺にとって笑える……鬼軍曹である彼女が、ラジオ体操をまともに踊れていないのだから。

概念がな無いから当たり前なんだけども、何だか霞みたいな愛くるしさを感じてしまった。


「深呼吸~っ、大きく息を吸い込んで吐きます」

「(見た事も無い一連の運動……しかも、一つ一つの動作に無駄がない)」

「ゴ~・ロク・シチ・ハチ」

「(自分で御考えになったのかしら? 流石は白銀さんだわッ)」


――――こんなカンジで何度か繰り返すと、ラジオ体操第一を大体 把握した まりもちゃん。


「どうですか? ラジオ体操……じゃなくて、俺の考えた体操は?」

「幅広い人が行える非常に凡庸性の高い運動だと思いました。本当に素晴らしい発想です!」

「そ、そりゃどうも」

「それでは白銀少佐、"第2"も御教授 御願いしますッ!」

「ぅえっ!?」

「……ッ……(階級を考えると図々しいにも程が有る……でも……)」


――――流石に第2は覚えていないので、今もTVでやってる"みんなの体操"で誤魔化しました。




……




…………




……30分後。

俺は何故かまりもちゃんを押し倒す様に倒れており、顔が彼女のオッパイに挟まれていた。

その直後の心境はP&Gの●ールドのCMの様に、ヘヴンな状態だったんだけども。


「…………」

「…………」


しでかした事を理解し始めると緊張感が増す。何故こうなってしまったのだろうか?

"みんなの体操"を教え終えると、まりもちゃんが相変わらず感心して褒めてくれたんだ。

だから調子に乗って体操選手並みの側転やら宙返りを彼女に見せようと意気込んでしまった。

よって彼女を正面に走り出すと、側転から前方転回(バク転の逆)を何度も繰り返し、
まりもちゃんの直ぐ前あたりで着地して、格好良く終了しようと思った直後……


「あ~っ、何してるんですか~!?」

「よ、鎧衣?」

「えぇっ!? ……うわっ、とっとっ!!」

「きゃあっ!」


≪――――ばたんっ!!≫


マジで空気読めよ鎧衣。

まりもちゃんに質問が有ったB分隊(ジャケット姿)が、彼女を探しに来てしまったのだ。

よって驚いた俺は着地を失敗してバランスを崩してしまい、近くに居たまりもちゃんにダイブする。

そして今に至るってワケで……胸の感触は非常に気持ち良いが、少し高い代償になるかもしれない。

……けど案外まりもちゃんはアッサリと許してくれた。嫌われちまうかと思ったんだけどね~。

されども"しでかした事"は誤魔化す為に、B分隊に言ってしまった"一言"がマジでヤバかった。


――――これも良い機会だし、誰か俺と一勝負してみるか?


「!? 白銀少佐ッ、是非1本御願い致します!!」

「……私も勝負したい……」

「ち、ちょっと待て。落ち着くんだ2人とも」


予想以上の反応であり、御剣と彩峰が俺と生身の"模擬戦"をしたいと言い出して来たのだ。

それを当たり前の如く止めてくれるハズだった まりもちゃんは、何故か戦力にならなかった。

普通なら軍曹がダメって言うから別の機会ね~……で済むだろ? なのに何故かこうなる。


「軍曹、恐縮ながら御許可をッ!」

「……御願いします」

「えっ? あ、あぁ……別に良いんじゃないのか?」

「ちょっ、軍曹!?」

「感謝を。 では先ずは私だ、構わぬな彩峰?」

「良いよ」

「白銀少佐、これを」


――――そう言いながら御剣は模造刀を手渡してくる。何処から出したんだよソレ。


「はぁ、仕方がない……相手をしてやるか」(メキボス調)

「榊。合図を頼む」

「え、えぇ」

「お手柔らかに頼むよ? 御剣」

「生憎、本気でゆくのが礼儀と思いますゆえ」

「ですよねー☆」


これって負けたら凄い格好悪いんじゃないんだろうか? 訓練兵に負ける少佐(笑)になってしまう。

まぁ……最悪、何もかも優れてるってワケじゃ無いって事で旨く誤魔化す事にしよう。

御剣は戦術機の剣術がアレだったし絶望的か? そう思って彼女との勝負に挑んだが……


「はじめ!!」

「……ッ……」(ピコーン)

「(これは、どう言う事だ? 何も考えずに構えている様に見えるが)」

「はあァ!!」


[無拍子]


≪――――どかっ!!≫


「ぐっ!?」

「!? い、1本……」

「あれっ? 俺の勝ちだな~御剣」

「そ……そんなッ……」


意外にも意外。何となく"閃いてしまった技"を使ったら、簡単に一本を取れてしまった。

技と言っても軽くステップして御剣が少し気を取られた直後、一気に踏み込んで胴を打つ。

やっぱ白銀のカラダって凄ェわ……んで、次の相手は彩峰との格闘だったんだけれども。


「ドリャッ!!!!」

「……ぅっ!?」


≪――――ピタッ≫


面倒なのは嫌だったので鉄拳の最速風●拳の真似事をやってみると近い動きができ、
右手(実際は右か左か知らないけど)のアッパーを彩峰の顎の寸前で止めた時点で俺の勝ちが確定。

よって結論、白銀大佐てらスゴス。御剣と彩峰との生身の戦いで負ける事は、まず無さそうだ。

普通に考えりゃ~100m走の時点で世界一の男性が世界一の女性に負けたりもしないしね~。

戦術機の操縦にもなれば御剣と斬り合って勝てる気はしないけど、やはり男女の差はあるのかァ。

だから流石にEXの鑑のパンチや月詠さんの忍術みたいなトンデモ能力は、オルタには無さそうだ。

例外として速瀬の馬鹿力だけは本物だけどな……アイツなら闘士級を素手で殴り殺すんじゃね?


「勝負アリだ、彩峰」

「……ッ……」

「これが実戦だったら御剣は内臓破裂どころじゃない。それに彩峰も顎が砕けてるな」

「お、恐れ入りましたっ」

「全然 動けなかった……やっぱり、強い」

「そんな訳でだな。刀を使っての殺し合いも、己の肉体での決闘の訓練もカタを覚えるんじゃない。
 "確実に殺せる一つの技"だけを極限にまで鍛えて置くんだ。勿論、戦術機同士の戦いでもね」

『…………』×5

「こら貴様らッ! 少佐の助言に対しての返事はどうした!?」←正気の戻った軍曹

『り、了解っ!!』×5


――――信じられるか? 確実に殺せる云々の台詞は、ギャルゲーのキャラの台詞なんだぜ?


「(し、白銀少佐は本当に凄いわね……生身であれ御剣と彩峰が何もできずに負けるなんて)」

「(今回は身の程を知りました、白銀少佐。それに、軍曹に嫉妬した己の愚かさを悔やむ限りです)」

「(ちょっと、自信……無くすかな……でも、英雄って言うのは本当に居るものなんだ……)」

「(はぅあう……パパったら、アソコまで凄い人と結婚だなんて……
 冗談でも言っちゃダメだよお……絶対に私が白銀少佐と釣り合う筈なんて無いし~)」

「(昨日 会いに着てくれた父さんは白銀少佐の事を知ってるみたいだったけど、
 ボクの所為で"ああなっちゃった"し、ちょっと聞き辛いなぁ……う~ん)」


何はともあれ、B分隊の娘達は俺を見直してくれた様で良かった~ッ。

これで まりもちゃんに"しでかした事"も霞んでくれると有り難いんだけどねェ。

だけど今の2連戦ダケで終わらせるのもアレなので、俺は彼女達もラジオ体操を披露。

結果 未だに完全には慣れていない まりもちゃんを加え、5名の素人が追加……と、
非常にシュールな光景であろう"ラジオ体操教室"がスタートしたのでした。




……




…………




……1時間後。


「またも御指導して下さった白銀少佐に対し敬礼ッ」

『有難う御座いました!!』×5

「まぁ~あの体操は一人でもできるし簡単なヤツだから、体を動かす前はやってみると良いよ?」

『――――はっ!!』×5

「本当に申し訳有りません少佐、折角 御一人で訓練なされていたのに……」

「HAHAHA。全然 問題無いですって、それじゃ~また」

「お、御疲れ様でした」


まりもちゃんが凄く申し訳無さそうにしてたけど、俺にとっては楽しい一時でした。

"こっち"で美人・美少女と励むってのは今迄 何度か有ったけど、今回は斬新だったしね~。

んでオルタと違って佐官になってるから、B分隊と接する機会が少なかったし良い機会だった。

よって俺は敬礼してくださる6名の元を満足気に後にする。……走るの頑張ってくれB分隊。


『…………』×5

「……さて、御剣・彩峰。私の言いたい事は分かっているな?」

「はっ」

「すみません」

「本人の許可あれど、訓練兵が上官に……しかも佐官に勝負を挑むとは何事かッ!?
 連帯責任としてグラウンド20周!! 当然 愚行を止めなかった私も走る。では開始だ!!」

『――――了解!!』×5




……




…………




……んで俺は、合流した篁・イリーナちゃん・月詠さん+斯衛トリオと合流すると。

一緒に飯を食いながら、彼女達が行った訓練の内容をフンフンと聞きながら質問にも答える。

そして最後にイリーナちゃんの蟠りが解けた事を確認すると、安心して自室に戻るんだけど。


≪白銀さん、気持ち良いです……もっと吸ってくださいッ≫


「ハァハァ……まりもちゃんのオッパイ……チッチュしたいお……」


――――例の如く、まりもちゃんの胸の感触を思い出して抜いちゃったんだ☆


≪ホラ、まりもちゃんの此処……こんなにカチカチになってますよ?≫


「(白銀さんに倒された時、頭が呆然としてしまった。やっぱり私は彼の事を……)」


――――んでもって、白銀に押し倒された軍曹も白銀で自慰っちゃったんだ☆



[3960] これはひどいオルタネイティヴ35
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/03/30 03:38
これはひどいオルタネイティヴ35




2001年12月01日 早朝


……今日で早くも12月。この世界に来て、既に半分以上の日数が経過している。

これから後 一ヶ月のうちに、クーデター・甲21号作戦・横浜基地襲撃・桜花作戦……と、
アホみたいなペースで連戦が待ち受けている。普通に考えると無茶にも程が有るよな~。

それなのに白銀大佐でもなかった彼がクリアできたのは、天運に恵まれたからなんだろう。

何せ数え切れないくらいループしてたんだし、唯一"あの物語"が鑑と世界を救えたって事になる。

極端に言えば……ミスれば簡単に死ねる総戦技評価演習やクーデターでのリセットは勿論、
横浜基地に入る段階で伍長ズに射殺される可能性も十分に有ったってワケだ。

だったら"俺"はどうなるんだろう? そりゃ決まってるだろう、仲間全てを救うルートだよねっ?

ぶっちゃけ生き残る自体が厳しいと思うけど、白銀大佐の勇気に途轍もなく励まされている。


「…………」

「すぅ、すぅ……」


さておき。昨日は霞との"あ~ん"イベントが有ったけど、俺は早くも追加イベントの真っ只中。

今朝は霞が起こしてくれる前に目が覚めたので時計を見てみると、何時もの時間が過ぎている。

よって妙に思ってカラダを起こしてみると、何か違和感が有ったのでソレに目を移してみた。

すると、どうでしょう? 黒の掛かったスリップ姿の霞が"うささん"を抱えて寝てるじゃないですか!

ヤベェ……超絶に愛らしい。 うささんコノ野郎、俺と代われ。ちなみに抱いてるのヌイグルミね?


「……フッ」


しかし、どうだろう。これは予測できていたモノなので、俺は大きく動揺する事は無かった。

良かった……やはり俺は"こう言う面"に置いては自重できる様だ。……余裕すら浮かんでくる。

そうだよそ~だよ、こんな可愛い寝顔をする少女を襲える訳が無いじゃないですかっ!

故に軽く自然な笑みを浮かべながら霞の髪を撫でたりしていると、何故か急に寒気を感じた。


「!?」


≪くるっ≫ ←素早く振り向いた白銀


「…………」

「…………」


――――第一印象はトーテムポール。

少し開いたドアから顔ダケを出した篁とイリーナちゃんが俺を見ていたのだ。

ちなみに上が篁で、下がイリーナちゃん。身長差とか些細な事が関係しているんだろうね。

……って"何か見られちゃいけないモノ"を見られた様な気がする!! どうすれば良いんだ!?


「…………」

「…………」


≪――――バタンッ≫



流石に対応が遅れて焦っていると、2人は無言でドアを閉め視界から消えた。

篁は昨日と同様に普通に驚いたカンジのままで、イリーナちゃんは再びレイプ目でした。

……あれっ? 昨日 再会した時は治ってたのに何でまた発症してるんですかッ?


「うぅ~む」

「んっ……」

「あっ、霞」

「……おはようございます」

「おはよう。いきなりだったな~霞、御陰で見られちまったぞ?」

「す、すみません」

「良いって良いって、とにかく着替えていてくれ」

「はい……」

「さ~てと」

「……(思ったより薄い反応でした……残念です)」




……




…………




……30秒前。


「(ま、まさか社が白銀少佐と一緒に寝ていたなんて……)」

「……ッ……」

「(彼と社との義兄妹としての関係は、思った以上に進展していたのね)」

「篁中尉!!」

「えっ?」

「あれは、あれは一体どう言う事なんですかッ!?」


≪ガクガクガクガク!!≫


「お、おおぉおっ落ち着いてください! そそそそれにゆゆゆ揺らさないでくださッ」

「あの娘の事を知っているのは私の方が長いんですっ! それなのに一緒に寝るだなんて――――」


≪――――ガチャッ≫


「うわっ、びっくりした」

「!? し、白銀さん……」←唯依の前では既に容認

「何だか篁が参ってますけど、何してんです?」

「こ、ここここれはですねッ」

「落ちつけイリーナ中尉……心を冷静にして考えるんだ」

「!?」


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「こんな時どうするか……2・3・5……落ちつくんだ、素数を数えて落ちつくんです。
 素数は自分の数でしか割る事のできない孤独な数字……貴女に勇気を与えてくれる」

「……ッ……な、7・11・13・17・19・23・27・29……あっ」


――――って、何で間違えてるんですかイリーナちゃん。確かに俺も直ぐには出てこないけど。


「大丈夫か? 篁」

「も、問題無いです」

「イリーナ中尉も落ち着きました?」

「は……はい(そうだわ、何せ"白銀さん"じゃない……)」

「話は篁に聞いてんですよね? その通りの事ッスから、今回の件も深く考えないで下さい」

「わ、わかりました(……あの娘に信頼されるのも、彼なら難しく無いわ……私がそうだった様に)」

「それなら良かった。んで、今日の俺の予定なんスけど――――」

「はい?」×2


……誤解も解けた様だし、この今朝の霞の件については問題無いかな?

素数 云々に関しては全く説明にはなって無いだろうけど、イリーナちゃんは自己完結した様子。

だったらOK。少し心苦しい気はするけど、今日も2人には俺を抜いて訓練して貰う事にしよう。




……




…………




4人での朝食を終え、渋々と言った様子の篁&イリーナちゃんと別れた俺と霞。

だけど今回の"特殊任務"は最重要なんだよ許してくれ……イリーナちゃんは別に良いかもだけどね。

んで俺と霞は地下にエレベータで降りると、待ってましたと言わんばかりの ゆーこさんと対面。

昨夜の深夜に電力供給の為に停電が有ったらしいけど些細な事、下準備は万端らしかった。

それからトントン拍子で最終調整も進み……ゆーこさんと霞に見送られて"この世界"から一旦消える。


「――――さいなラッキョ」

「!?」

「……っ?」


ぶっちゃけ怖いイベント。だけど自重せず真剣な表情で、2人にバカな暫しの別れの挨拶をした。

霞は意味が分かって無いのか反応を示さなかったけど、ゆーこさんはズルっとコケてしまう。

"こっち"じゃチャマゴはまだ使えるんだな……そんな満足感を得ながら俺は白銀の世界に旅立つ。


「ども~、ゆーこさん……じゃなくって香月先生」

「えっ? あんた……白銀よね?」


結果 無事 白稜柊学園の裏手の丘で意識を取り戻した俺は、こっちの ゆーこさんと無難に接触。

白銀の記憶を頼りに、余計な感情をスルーして彼女と会う事ダケを考えたのだ。

帰還イベント関連じゃ鑑を中心に、色々なEXキャラと接する機会が有った気がするけど、
オルタ世界に戻っちまえば全てが白紙に戻る。だから……余計な感情移入は避けるべきなのさ。

接すれば接する程 皆の記憶がオルタに吸われるっぽいしな、全ては数式の回収が全てだ。

んで……完成寸前の論文を見せると"こっち"の ゆーこさんも興奮して俺に抱き付いてくる。

そして必然的に俺を襲うオッパイの感触と、キッスの嵐。……嗚呼、役得って言うか生殺し?

さておき、3日後 以降には完成を約束してくれた、香月先生。こっちの都合で回収させて貰おう。


「さ~てと」


簡単だけど、僅か1時間で任務完了。後はオルタの世界に戻るのを待つダケだ。

……しかしながら、白稜柊に留まっていてはEXのキャラと再会してしまうハズなんだよね。

特に鑑に姿を確認された時点で逃げられない。逃げたで逆に気になり、記憶の流出が早まる。

よってキスマークをしっかり拭った俺は、細心の注意を払って学園を立ち去ったのだった。


≪――――ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「面白ぇッ! バルジャーノン……っぱねぇ!!」


……そして時計を確認しつつ、残り1時間半弱の間。(元からの制限時間は3時間)

郵便局で持って来た数十年前の硬貨を現金に換えると、俺はバルジャーノンを遊んで過ごした。

EXに来たら一度はやってみたかったんだよね~。正直2001年のゲームじゃね~ぞコレ。

ちなみに今後 配備される新武装の事を考えて、カイゼルやシャオ・ミュンには乗らなかった。

主に殴る兵器……ナックルやパイルバンカーっぽい武装を持つ機体を使ってゲームを楽しんだりする。

だけど1時間半なんてゲームをしてりゃアっと言う間。俺は大至急トイレに駆け込んで時を迎えた。




……




…………




2001年12月01日 午後


――――気付いたらオルタの世界に戻って来た俺を、行きの様に ゆーこさん&霞が迎えてくれた。


「それで、どうだったの?」

「例のアレは3日後には完成するそうです」

「そう……ご苦労様」

「……ッ……」(ふらっ)

「ちょっ、霞?」


≪――――がしっ≫


「……っ……」

「どうしたんだ、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です」(どきどき)

「なら良いんだけど、まさか……あァっ!?」

「気が付いたわね? 白銀(……それにしてもワザとらしいわね)」

「ん~っ、詳しくは説明できませんけど、俺が"あっち"に戻るに当たっては、
 霞の存在が必要不可欠で、しかもカラダに凄い負担が掛かってたりするんですよね?」

「その通りよ」

「……くッ……」


"こっち"に戻って来るや否や、倒れそうになった霞を胸に抱いて、たった今 思い出した。

そうだよ……霞のリーディング能力が帰還には必要で、絵とか描いて俺を繋ぎ留めていたんだ!!

なのに俺って奴ァ~後半はバルジャーノンで遊んでたダケ……なんてダメ人間なんだ……

こりゃ~ワビの入れ様も無いぜ霞ッ。よって申し訳ない気持ちで彼女を抱き締めてしまう俺。


≪――――ぎゅっ≫


「!? し、白銀さんッ?」

「霞、すまなかった……しんどかったよな?」

「そ……そんな事は」

「心配する必要は無いわ、白銀」

「ゆーこさん?」

「あんたが帰還する。要は社が"こうならないと"人類に未来は無いの。……判ってるでしょ?」

「そりゃ~そうですけど」

「白銀さん……私なら、大丈夫です」

「そう言ってくれると助かるよマジで」


……俺がバルジャーノンをしている。つまり霞は俺の"遊んでいる風景"も描写していたのだ。

しかも神経を磨り減らしながら……こりゃ~申し訳なくも思いますってホント。

帰還イベントをこなさないとクリア不可能ってのは分かるけど、それにしても遣り方が有るだろ。

こりゃ~今夜は反省して自慰抜きだな。そう無駄な決心しながら、俺は霞を胸から放した。


「……あっ」

「それじゃ~、ゆーこさん」

「何?」

「俺はこれで失礼させて貰います。霞……ゆっくり休んで置いてくれよ?」

「は、はい」

「ゆーこさんもね?」

「五月蝿いわね、言われなくっても分かってるわよ」

「すんません。……じゃ」


――――こうしてEXの彩峰の様にシュタッと右手を立てて退室する俺なのだった。




……




…………




「…………」

「社、カラダの方は大丈夫?」

「まだ少し目眩がしますけど、大分 落ち着いたみたいです」

「ふ~ん、昨日の午後の実験の時から妙だったけど……予定よりも随分 負担が無いわね」

「これも……白銀さんの為ですから」

「あらあら、アイツも果報者ね。でも……白銀は分かってて"あんな事"をやってたみたいよ?」

「えっ?」

「あっちの世界での"ゲーム"ってヤツよ」←霞がスケッチした画用紙を手に取りながら

「――――あっ」

「……社。アンタがリーディング能力を使えるって事は、白銀は知ってるって言ってたわ。
 だから少し頭を捻れば……いえ、白銀なら帰還するに当たって社に負担が掛かるのは分かっていた」

「…………」

「だから、あえてアイツは元の世界のゲームで遊んだ。社に"それ"を見せる為に。
 情報量が途轍もなくなってアンタの体に負担が重なろうと、更に兵器を充実させる為に」

「!?」


≪と、ところで霞……設計の仕事は順調か?≫


「これが"どう言う事"か分かるかしら?」

「……ッ……はい」

「久しぶりに"戻れた"って言うのに、アイツも生真面目なヤツよね~」

「そう、ですね。"元の世界"で親交が有った人達には、全く会おうとしていませんでした」

「少しくらいは許されるって言うのにね」

「だったらッ」

「社、どうするつもり?」

「……設計を再開します、資料は十分ですから(……それに、昨日も遊んで貰いましたし……)」

「ダメよ」

「えっ?」

「アイツは休めって言った。だから、今日は休みなさい」

「!?」

「下手に誤魔化して、新兵器の為に社に負担を掛けた事を隠したアイツだけど、
 其処までは望んでいない筈よ? ……だから、大人しくしていなさい」

「はい……う、うぅっ……」←嬉し泣きっぽい

「(全く白銀の奴、何で あたしが社を泣かせなきゃならないのよッ?)」




……




…………




「白銀少佐~ッ」

「篁か」

「戻られたのですね」

「あァ、今回の"特殊任務"は無事に済んだよ」

「そうですか……良かったです」

「そっちは どうだった?」

「月詠中尉は捕まらなかったので、ピアティフ中尉と共に途中まで訓練を」

「首尾は?」

「そ、それに関しましてはPXで如何ですか?」

「あァ良いよ?」

「有難う御座います(……し、白銀少佐を食事に誘うダケで何故 緊張してしまうのかしら?)」

「イリーナ中尉はどうしてんの?」

「残念ながら、職務が残っているそうで遠慮されました」

「そっか~。昨日も俺の指示で遣らせちまったし、負担だったりしてねェ?」

「!? それは無いかと思いますッ」

「何で?」

「申せません」

「へぇあ」

「で、では少佐」

「んっ? そうだね、行こうか」


地上に戻った俺がスタスタとPXを目指して歩いていると、後ろから篁が声を掛けて来た。

どうやら2人での訓練がイリーナちゃんの私用で中断されたらしい。まぁ~、仕方ないね。

だったら夕食の時間には多少 早いけど……適当にダベりながら部下と飯とゆくべきかな?

何か篁が可愛い気がするけど気のせいだろう。そう思いながら歩き出そうとすると――――


≪――――ッ!!!!≫


「!? こ、こりゃあ……」

「ぼ、防衛基準体勢2ッ!?」

「いきなり何が有ったんだ?」

「分かりません、とにかく確認を急がないと――――」

「そりゃ正論だな、来い篁ッ」

「り、了解!」


まさかの防衛基準体勢2。 今更 驚かないけど、新たなイベントってワケですな。

出撃な予感しか しないんですけど、切り抜けるしかない。今は心強い部下も居る。

よって俺は再び地下へと降りるべく執務室を目指し、篁も慌てて俺に続いてくれた。




……




…………




「来たわね? 白銀、ついでに篁も」

「さっきぶりッス」

「篁臨時中尉、参りました」

「霞は何処へ?」

「流石に出て来たけど、部屋に戻して休ませてるわ」

「そうですか……で、何が起こったんです?」


――――まさかクーデターじゃ無いよな? 早すぎるし、洒落にはならんが想定外 過ぎる。


「佐渡島のBETAが再度 新潟から進行して来たわ」

「!? マジっすか」

「数は同様に、約5000。第34・55機動艦隊が迎撃中だけど、全滅も時間の問題ね」

「うげッ」

「そ、そんな……」

「前回の新潟上陸で、佐渡島ハイヴへの警戒は強まったみたいだし、発見自体は遅くは無いレベルよ。
 でも全体的に帝国本土防衛軍の動きは鈍いわね……これも"誰かさん"達の所為かもしれないけど」

「……誰かさん?」

「ゴホンッ。さておき、BETAの進行ルートは横浜基地なんですよね?」

「前回と同じなら、そうなるわね」

「だけど、今回は待ち構えてたワケじゃないんで結構ヤバい」

「その通り。まだ第12師団が新潟で食い止めてくれてるけど、そろそろ後退するわ。
 だから狙われている"此処"は、司令から早めに"デフコン2"へ移行する様に指示が降りたの」

「成る程~」

「…………」

「でも第14師団も援軍に間も無く到着するから、一応 放って置いても殲滅は可能ね」

「そうなると被害は?」

「あくまで予測だけど、前回の軽く3倍かしら」

「!?」

「そりゃ~困りますね」

「国連軍は痛くも痒くもないけどね、被害ダケで考えればだけど」

「でも……放置したらしたで国連軍 使えね~って思われるワケですね?」

「そう言う事」

「…………」×3


――――少しだけ緊迫した沈黙が続く。この空気は今になっても全く慣れていない。

それはそうと。ゆーこさんは目が"行け"と言っており、右隣の篁は両目に"期待"と書いてある。

なんだよぉう!! だったら最初から答えなんて一つしかないじゃないか~っ! 俺まさに、合掌。


「……篁、出れるか?」

「!? は、はいッ!」

「ゆーこさん、戦術機の具合はどうです?」

「アンタと篁の不知火S型は直ぐに出れるわ、25日に模擬戦をやって以来だしね」

「フォールディング・バズーカは?」

「配備済みよ。仕様はどうするの?」

「強襲制圧かな~?」

「そう。だったら変更は必要なさそうね」

「篁は"迎撃後衛"で構わないよな?」

「はいッ」


――――篁は格闘戦を得意としてるけど、中隊長の時期も有ったので実は"迎撃後衛"が十八番らしい。

XM3に慣れてきた今となっては伊隅にも匹敵する腕を身に付けており、マジで信頼できる部下だ。

しかし思った以上に突然のBETAの奇襲に動揺していない篁。流石は専用・武御雷を持つ武人だね。

だけど2機ダケで出撃ってワケじゃないよな? 他にも味方は欲しいので当然の流れで言ってみる。


「A-01は出れるんですか?」

「無理よ」

「ぇあ?」

「無・理」

「な、何でッスか?」

「最近あの娘達、実機訓練ばかりしてるから整備が追いついてないのよ」

「ちょっ……おま、訓練で戦術機が出れなきゃ本末転倒じゃないですか~」

「ど、同意です」

「五月蝿いわね。あたし専属の部隊なんだから、あたしが使い時に動かせれば問題無いのよ」

「へぇあ」

「ふふん、でも半分は冗談よ? 要は"今直ぐ"出れる機体が少ないって事。
 A-01は結構 遅れての出撃になるわね。……最速で2時間ってところかしら?」

「そ、そうッスか」

「2時間……」

「でも微妙なトコよね、下手したら戦闘が終わっちゃうかも」

「ふ~む」


こりゃマズいな~、何だか俺と篁ダケで出撃する羽目になりそうだ。

結構 押されてるみたいだし、国連軍からも多少は援軍を出す事にはなるみたいだけど……

ぶっちゃけA-01やラプターでも無い限り、XM3未搭載の友軍機なんぞ足手纏いでしかない。

ソコで現在、世界最強クラスのA-01との共同戦線といきたいトコなんだけど、
2時間後ってなんだよマジで……だったら2機で大抵の時間を戦わないとダメじゃないかッ。

だとすれば……そうだッ。整備する戦術機の数を減らして、時間を短縮すれば良いんじゃね?


「白銀?」

「……だったらA-01で出撃するのは"5機"で構いません」

「どう言う事?」

「涼宮達……元A分隊の5人を俺に預けてください、"死の8分"を耐え抜かせて見せますよ」

「!?」

「ともかく、ノンビリはしてられませんし俺達は行きます。なるべく急いでくださいね~?」

「……分かったわ」

「行くぞ篁」

「は、はいっ」


≪ガシュゥーーーーッ≫


よって俺は涼宮(妹)達……元A分隊に僚機として頑張って貰う事にしたのでした。

彼女達は初の実戦が、俺の立ち会えないクーデターだしなぁ……しかも誰か死ぬっぽいし。

だから俺のフォローが利く"今回"を初の実戦にして貰う事にし、それを耐えれば後も大丈夫だろう。

決して最近 会っていないA分隊の娘達とのフラグを立てたかったからではない、違うよマジで。

一方、どうやら ゆーこさんは許可してくれた様で、俺が退室する時には既に受話器を取っていた。


「もしもし、ピアティフ? A-01の不知火S型・5機の整備を、
 30分以内で終わらせるように指示しなさい。番号は……8から12よ」




……




…………




2001年12月01日 深夜


……戦術機のコックピットに乗り込んでから、既に時間の感覚なんぞ無かった。

何故なら直前まで仮眠しているからだ。これも仕事直前までは寝ている俺のサガってヤツです。

ちなみに篁や涼宮(妹)達にも直前までは寝はせずとも、気持ちを落ち着かせている様に指示している。

的確な指示かどうかは知らんけど、俺は"こっち"の初の実戦では寝ていたので同じ事をさせた。

生憎、白銀大佐の初の実戦は謎だ。オルタならトライアルのアレだし役に立たないしね……

さて。本来なら勇気付ける為に積極的に話し掛けるべきなんだけど、何せ元A分隊に対しては、
俺が直接 指名して初の戦場に引っ張り込んでいるので、今になって罪悪感を抱いちまってたりする。


『ヴァルキリーマムより各機へ、間も無く予定・防衛ポイントに到着します』

「!? アルカディア01、了解~」

『アルカディア02、了解』


そんなボケーッとしている中、唐突に涼宮(姉)の顔が網膜投影されて状況を告げてきた。

この通り、今回のCPは彼女が担当してくれている。イリーナちゃんは生憎、今回お留守番だ。

その涼宮(姉)の凛々しい声に俺は、咄嗟に意識を覚醒させて応答する反面、
篁は既に起きていたかのように冷静に応答する。流石は斯衛と言ったところだが……


「……ッ……」

『ヴァルキリー01、応答せよ』

「涼宮?」

『!? う、ヴァルキリー01、了解ですッ!』

『茜~、いくら臨時の"ヴァルキリー01"に成ったからって動揺し過ぎだよ?』

『そ、それは分かってるんだけど……御免なさい、隊長失格ね』

『茜ちゃん、そんな事 無いよ~?』

『多恵ッ?』

『今回はBETAが相手、でも茜ちゃんは伊隅大尉の役目を臨時に任された方に動揺してる……』

『!?』

『……つまり、茜はソレだけ余裕って事』

『道中、さっきから"その事"ばっかりだもん。だからBETAの事なんて怖くないってね~?』

『り、遼子・水鳥……』


良いのか悪いのか、涼宮(妹)はコールサインが伊隅と臨時で変わった事の方に緊張しているらしい。

居残り組みのA-01について何気なく涼宮(姉)に道中で聞いてみたら、
速瀬が『納得できないわ!!』とヤケに喧しかったらしいのは、後が怖いケドさて置いて。

どうやら仮眠は十分に取らずに仲間同士で元気付け合ってたみたいだな、素晴らしい友情だね~。


『これは……どうやら、心配は要らないかもしれませんね』

「ご尤も」


≪――――ですが、白銀少佐≫

<んっ、涼宮中尉?(秘匿回線だ)>

≪あの娘達が緊張していない筈は有りません、どうか……少佐が励ましてあげてください≫

<やっぱ、そうだよな~>

≪すみません。私の立場からは、決して言えた事では無いんですけど……≫

<はははっ、問題無いって。上官としては当たり前の事を忘れるトコだったよ>


この時点で各 不知火S型7機は、迫り来るBETAを迎えるべく展開し始めている。

安直な陣形としては、先ずは俺と篁が並んで元A分隊の正面に無造作に配置。

そして元A分隊は打撃支援の麻倉を中心に、左に涼宮・高原。 右に築地・柏木が一列に並ぶ。

仕様としては大体が一緒だけど、制圧支援の高原のみ整備が間に合わず"砲撃支援"になっている。


『……とうとうね』

『そうだねェ』

『だ、大丈夫だよね?』

『どうだろ?』

『ちょっと、遼子ォ?』

「――――君達なら大丈夫さ」

『!?』×5

「涼宮達の訓練の様子は、今迄 十分に見て来た。だから、俺は皆を信じている」

『し、白銀少佐……』←茜

「勿論……実戦で初めて組む涼宮中尉の管制や、篁の相方としても腕もね」

『はぅう』

『有難う御座います』

「だから……良いかヒヨッコ!? お前達を信じる"俺"を信じろッ!!」

『!?』×5

『(流石は白銀少佐、やっぱり頼もしいよ~)』

『(私も白銀少佐を信じていれば、きっとBETAを……)』

「返事は~?」

『り、了解ッ!!!!』×5


――――今言わずして何時言うのだッ? だからつい、言っちゃったんだ☆

しかし震えるぞハートッ、燃え尽きるほどヒート!! 元A分隊の顔つきが目に見えて変わった。

そうなると俺のテンションも上がってきてしまう。……だけど、俺は冷静にいかないとダメかな?


『……ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズへ。約500体以上のBETA接近中、距離1000。
 先陣は白銀少佐と篁中尉が務めるとの事。支援に徹し、前方のBETAを駆逐せよ』

『ヴァルキリー01、了解』

「来たか……先行する、後ろは頼んだぞ篁っ!」

『任せてくださいっ!』


こうして、二度目の実戦が開始されようとしており、前回と違って今回は心強い仲間が居る。

よって俺は篁の頼もしい言葉と共に、前回と同様の数のBETAの群れに突っ込んでゆく。

……っと、その前に早速 肖らないと。当然考えてますよ? 教官役としてピッタリの人をね~。


「戦いは一瞬で決まる、迷いがある方が負けだ!!」

『――――了解!!』×6


成り切るに当たって地味に噛みあわない事を咄嗟に言ってしまったが、空気を読んでくれる6人。

そう……今此処に、ニンジン嫌いの1号機パイロットの"教官役"の某大尉が誕生してしまったのでした。

ぶっちゃけ死亡フラグ満載の人かもしれないが、今回は一年戦争の位置付けっぽいし大丈夫なハズ。

そんなうちに戦闘は開始され、ヒラリと全機が回避した突撃級を無視して、俺は更に前進する。

後方では涼宮(妹)達が背後から突撃級を慎重に蹂躙中……そんな中、早くも篁が思うトコロ有った様子。


≪!? 少佐ッ、いきなり出過ぎでは!?≫

<大丈夫だ、篁>

≪ですがっ≫

<今は"この数"相手を殲滅するダケじゃなく、涼宮達に"死の8分"を乗り越えて貰うのも重要なんだ>

≪では……や、やはり涼宮少尉達を連れて来たのは……≫

<御名答(半分は自分の為だけどね~)>

≪!?≫ ←秘匿回線が聞こえている涼宮(姉)

≪ど、どうして其処まで……≫

<何も問題無いさ。ともかく、奴らは全滅させて皆 無事に生還して貰う>

≪……ッ……≫×2

<――――だから、俺が居る>

≪!? ふふっ……やはり、白銀少佐には敵いませんね≫

≪が、頑張ってください白銀少佐っ(やっぱり格好良いよ~)≫

<有難う>

≪("だから居る"……彼は始めから戦死者を出す事など微塵にも考えてはいなかったのね)≫

<(秘匿)通信終わり。後ろは変わらず任せる>

≪了解!(今は白銀少佐を信じて付いて行く……それだけを考える事にしないとッ)≫


――――そんなウチにBETAをフルボッコ中。僚機一機で撃墜数が雲泥の差だ。


「アルカディア01よりヴァルキリーマムへ。最も光線級の密度の高い座標を頼む」

『ヴァルキリーマム了解、直ちに特定します』

「生きてるな、涼宮少尉!?」

『は、はいッ! 皆 無事です!!』

「涼宮、やったな。帰ったらビールを奢ってやる」

『!? で、でも……まだまだ油断できませんッ』

「そりゃ~1本取られたな」

『うひゃああああぁぁぁぁーーーーっ!!!?』

「言ってる傍から!?」

『ハルにゃん助けてくんろおおぉぉ~~っ!!!!』

『ヴァルキリー02了解。多恵、危ないから発砲するの止めてくんない?』

『ご、ごごごごめんしてけろ~~っ!!』

「築地、戦車級のシャワーくらいでびびるなッ!!」

『あの……シャワーって言うか、2匹ダケですけど?』

『うぅううッ、右脚をヤられたかも……スキャンします~』

「アルカディア01了解。築地、ダメそうなら其処で待機していろ。終わったら、回収してやる」

『あ、有難う御座います……でも~』

『わかったわかった、傍に居てあげるってば』

「だけど築地……あまり脅かすんじゃない。それと涼宮、麻倉、高原ッ!
 何時もの通りやれば良いんだ、お前達は殺られはしないよ」

『り、了解ッ』×3


――――築地機が戦車級に噛み付かれていたが、柏木が頭部バルカン砲で仕留めてくれたらしい。

それにしても"ハルにゃん"っておま……テンパり過ぎだろ~ロリ巨乳。まぁ、仕方ないけどね。

だけど、噛み付かれてるのに遠方に36ミリをバラ巻いてたダケだったし、無駄弾が多すぎる!!

そして無駄口もだ!! ……って言いたいにも有ったけど、この状況じゃ可哀相なので止めた俺。

さておき。6割以上のBETAは処理したけど……後方には要塞級・(重)光線級が控えている。

また築地の機体が小破したので無理はできず、安全を確認するまで組んでいた柏木が護衛に入った。


『ヴァルキリーマムよりアルカディア01へ。解析終了、マーキング投影します』

「把握ッ! 02、対ショック準備!!」

『了解!!』

『!? と、跳んだ……』


≪――――チャキッ≫


涼宮(妹)が何か言っているが、そりゃ~跳びますとも。

そんな直後に視界が真っ赤になり、前回と同じレベルのレーザーが飛んで来るが、
ヒラリと回避すると背中で組み立てたフォールディング・バズーカをインターバル中に構える。

狙いは涼宮(姉)がマーキングしてくれた中心……其処に狙いを定めて初の"テスト"に移った。


「誰が一番暴れたいと思ってるんだ、バカヤローーッ!!!!」

『!?』×7


≪ボヒュ――――ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


そして着弾。ノロノロと迫って来る要塞級も纏めてバズーカの一撃で葬り去ったのでした。

言ってしまった台詞については気にするな。十分暴れてるけど、つい言っちゃったのさ☆

さてさて。爆風はやはり激しいモノだったので、篁機の背後に着地して遣り過ごし前方を確認。

数は……恐らく中型種 以下が50にも満たないだろう。そうなると後は掃除を済ませるダケだ。


『ヴァルキリーマムより各機へ。よ……要塞級・光線級・重光線級の消滅を確認』

「こりゃ~期待通りの威力だったな、篁」

『そ、その様ですね』

「こちらアルカディア01、これより追撃戦に移る。全機、続け!!」

『アルカディア02、了解』

『ヴァルキリー01、了解!』

『ヴァルキリー04、了解ッ』(麻倉)

『ヴァルキリー05、了解~』(高原)

『ヴァルキリー02、了解……多恵、大丈夫だった?』

『うん、問題無いみたい。ヴァルキリー03、了解~っ!』


……こうして間も無く、元A分隊の初の実戦とフォールディング・バズーカのテストは終了した。

結果 涼宮(妹)達は大きな自信に繋がり、バズーカもより使い易く改良されて配備されるだろう。

だけど横浜基地に帰ってからが怖いな……速瀬が。まぁ、涼宮(妹)を生贄に遣り過ごす事にするか。

そう勝手な対策法を考えると、俺は再びコックピットの中で仮眠するべく意識を手放した。




……




…………




「くぅ~っ、ようやく初の"新型"で実践だと思ったのに留守番なんて冗談じゃ無いわよォ!!」

「残念ながら、涼宮少尉に"抜け駆け"を食らってしまいましたね」

「うが~っ!!」

「しかも、これは白銀少佐の差し金らしいですよ?」

「んが~っ!!」

「み、美冴さん。これ以上 速瀬中尉を怒らせてどうするんですか?」

「どうしてって……面白そうじゃないか」

「……はぁ」


――――今回は溜息の後、カメラ目線でウインクをする風間少尉を最後にさようなら~。




●戯言●
感想サウザンド記念!と言うことで早めに更新。ですが急いだ結果、最も手を抜いた回とも言うorz
フォールディング・バズーカとくればガソダム0083、上官とならばサウス・バ●ング大尉。
そう考えた結果、安直ですがこうなりました。本来は元A分隊と訓練させるダケだったんですが、
別に実戦でも良くね?……と思って無理矢理BETAを動かしました。脅威度が上がった的な意味で。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ36(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/04/08 22:44
これはひどいオルタネイティヴ36(前編)




2001年12月01日 午後


――――いきなりだが戦闘が終わり仮眠を始める前の遣り取りで、こんな事が有った。


「要撃級・撃破ッ! ……これで終わりか?」

『ヴァルキリーマムより各機へ。残存BETA殲滅完了、全戦術機・帰投』

『り、了解!』

『ふ~っ、やっと終わったねェ』

『あうぅ~……怖かったよぉ~』

『でも作戦時間は15分だったよ』(麻倉)

『えぇ~、それダケだったの~?』(高原)


バズーカの発射から僅か5分後、全てのBETAを片付け今回の作戦は終了した。

やっぱり"この瞬間"が一番 安心するね。特に涼宮(妹)達にもなると相当な達成感が有るだろう。

ついでに"(地球)国連軍圧勝"とデカデカと投影してくれると更にテンションも上がるんだけどな~。

むっ!? でもこれって、ひょっとすると良い案かもな。シミュレーターだとヤる気に繋がるかも。

例えば俺と篁に負けて"A-01敗北or完敗"とか出されたら、伊隅や速瀬なら凄い悔しがるだろう。

勿論 俺もね。完敗した時の悔しさなんて尋常じゃない以前に、"実戦"じゃとっくに死んでるしね。

そんな事を考えてるうちに、元A分隊の安堵の会話が続く。皆のバストアップを見るからには健在だ。

そのうち最も落ち着いているのは麻倉であり、唯一 誰とも2機連携を組まずに支援に徹していた。

築地は柏木に助けられていたので言わずともながら……涼宮(妹)は高原と組んでいたので、
自分の判断で動いていた麻倉は彼女の性分も重なり、時間を気にする余裕が戦いながらも有った様子。


『それと撃墜数は茜がトップ……』

『わ、私!?』

『勿論、少佐と中尉を覗いてだけど』

『しっかし終わって早々 撃墜数 云々だなんて、余裕だねェ遼子~』

『遼ちゃん凄~い』

『違う……これも少佐と中尉の御陰』

『!?』×4

『2人が居てくれたから……私達は生き残れて、"こんな事"も言えてる』

『……(確かに少佐達やお姉ちゃんが居てくれたから、凄く安心して戦えた……)』

『ふむ……(それは私も同じね、白銀少佐とエレメントを組めたから"あの数"相手に……)』

「はははっ。随分と旨い事を言うじゃないか、麻倉」

『す、すみません』


――――視線を逸らすクール系の麻倉。ヴァルキリーズの一員だけあって、やっぱ可愛いなあ。


『だが皆500以上のBETAを相手に立派なモノだ。戦い様も初の実戦とは思えなかったぞ?』

『そうですね。みんな、良く頑張ったよ?』

『有難う御座いますッ』×5

「うんうん。誰も漏らして無かったみたいだし、次回も期待できそうだな~」

『!? そ、そんな事を言わないで下さいよ少佐ッ』

『アハハ。まぁ、自然じゃない? 聞いたところによると結構"そういうの"って多いらしいしさ』

『…………』←築地

『私は普通に平気だった』

『私も私も~。何ソレって感じだよね~?』


実戦後に続く他愛も無い会話の中で、つい彼女達が余裕そうに見えてオモラシ云々の話題を出した俺。

原作だと まりもちゃんすら漏らしたとか言ってた気がするけど、やっぱり平気だったっぽいな~。

別に漏らそうが"この世界"だと初の実戦を乗り切ったダケで十二分に凄いんだけど、
漏らさないに越した事は無いので、まさに大健闘。素の俺なら漏らす以前に100%死んでた筈だ。

実を言うと"この話題"は言い出してから後悔してしまったんだが、引かれてなくて良かった~。

……と安心して何となく視線を移してみたら、涼宮(妹)が何だか意識してしまった様だ。


『全くもう、白銀少佐ったら……』

「悪い。不愉快に感じたなら謝るよ」

『!? あッ、いえ……私の方こそ失礼な事を……』

『だったら"そんな顔"しないでよ茜~、こっちまで恥ずかしくなってくるよ』

『は、晴子ッ』

「まぁ~今のは忘れてくれ。とにかく皆、良く頑張ったぞ~?」

『――――はいッ』×4

『……~~っ……』

『多恵、どうしたの? こんな時 一番 喜びそうなのって貴女なのに』

『ぅえっ!? ち、ちちちちゃんと喜んどるっとよッ? あまり言葉に出ないダケで――――』

『なら良いんだけど』

『わ、わーいっ、勝った~生き残れた~っ!』

「…………」


……だけど俺は見逃さなかった。築地は俺が話題をだしてから、ずっとダラダラと汗を流していた事を。

元A分隊は仲良しの為か、いちいち互いのバストアップを表示させずに会話してるっぽいけど、
俺はエロスーツの魅力に更に慣れる為にも、会話の時は大抵 相手の姿を表示させていたのだ。

ともかくコレで今夜のネタは決まったな……だけど自粛してたんだった、霞の為にも我慢せねば。


『(うぅううぅ、やっぱり私だけ……恥ずかしくって死んじゃいたいよ~)』


――――今夜は自重する予定だけど築地の表情に萌えて、つい白銀はボッキしちゃったんだ☆




……




…………




2001年12月01日 深夜


『白銀少佐』

「んっ……涼宮中尉?」

『間も無く横浜基地に到着します』

「ようやくか~。わかったよ、有難う」

『い、いえ』

「涼宮少尉達は?」

『まだ眠っている様です。最初は色々と話していたんですけど……』

『まぁ、致し方ないでしょう。何せ初の実戦を経験した後なのですから』

「全くだよ」

『と言う事で……あの娘達にはギリギリまで寝て貰おうと思っています。
 それでは、白銀少佐と篁中尉は先に戦術機をハンガーに納めてください』

「おっけい」

『了解』


……戦術機の中で揺られる事、数時間。そろそろ日付が変わろうとしている時刻。

行きは急ぐ為にブッ飛ばしてたみたいだけど、帰りは この通り車両の移動は遅かった。

御陰で半分 寝かけていたが……涼宮(姉)の言葉に目を覚ますと俺は戦術機の機動準備に入る。

涼宮(妹)達とは一緒のグループで戦場に向かったんだけど、彼女達は遅れての収納になる様子。

だからリンクも切っており、今の会話は聞かれていない。涼宮(姉)の優しさが伺えますな。


≪――――トッ≫


「それじゃ~S型の事は任せますよ?」

『はっ!』


愛機をハンガーに納めコックピットから出ると、直ぐ様 整備を担う人間達が戦術機に取り付いた。

完全に余談だけど……俺の機体を整備してくれる人達は、選びに選び抜かれた人材らしい。

整備の腕は勿論ながら機密保持の徹底が出来たりと、別の意味でも信頼の置ける頼もしい人達だ。

けど皆が揃って男性なのが残念。……って冗談は置いといて、ようやくの帰還に溜息を吐く俺。


「ふ~っ」

「白銀少佐!」

「篁」

「……ッ」←無言で接近中


……すると今までの訓練と同様に、黒と青 主体のエロスーツ姿の篁が小走りで近付いて来た。

彼女の(本当は まりもちゃんの)機体は俺の真横に納めてたし、予想通りの行動ですな~。

とは言え……篁も無事で本当に良かった。生で彼女を見て今更ながら嬉しくなってきた俺。

よって"俺の価値観"では当然な行動……右手を上げて"ハイタッチ"をしようと篁に歩み寄るが……


「HEY!」

「……え?」

「…………」

「…………」


≪ひゅううぅぅ~~っ≫


なんとォ!? 篁は意味が分からなかった様で、俺の前で立ち止まるとハテナマークを浮かべた。

ソレにより右手を上げた俺と首を傾げる篁……両方エロスーツ姿なので傍から見るとシュールだろうね。

そのまま10秒経過……う~ん、どうしよう? 高く上げた右手を どう持ってゆくべきなのか。

誤魔化したら誤魔化したで訝しげな視線を向けられそうだし、こうなったら"この手段"しかないッ!!


「……!!」


≪――――ぽんッ≫


「!?!?」

「…………」

「ぅあっ……」


俺は丁度良い位置に有った篁の頭に右手を乗せ、そのままナデナデと撫で始めた。

柔らかい黒髪の感触が心地良い。対して篁は最初に驚愕した後、何故か顔を真っ赤にしていた。

ひょっとして恥ずかしいのかな? そりゃ~そうだよね、年下の男に頭を撫でられてるんだから。

いくら相手が上官だとは言え……誰かに見られたら恥ずかしいと思うのは仕方ないだろう。

既に何人かの人間(整備する人)には目撃されてるし、咄嗟な事だとは言えアホな事をしたモンだ。

しかし撫でてしまったのは仕方ないので、半ばヤケクソになって篁の頭を優しく撫で続ける俺。

少なくとも、何か言葉を返してくれるまではコレを続けているつもりだったんだけど……


≪なでなでなでなで≫


「(ひょっとして……白銀少佐は私を労ってくれているの?)」


≪なでなでなでなで≫


「(少し恥ずかしいけど、心地良い……ッ……しかし、物足りない気もする……)」


≪珠瀬は一旦、筐体を出てくれ。そうしたら――――≫

≪はい?≫

≪――――俺の筐体の中に入って来てくれ≫

≪え……ええぇぇ~~っ!?≫


「(……とは言え彼に、私も"あの様な訓練"を行いたいと言い出せないのは勿論……)」


≪確保ォ~ッ!≫

≪なっ! 何をするだァーッ! わからんッ!≫

≪待って水月~っ≫

≪ちょっ、離せって!!≫


「(速瀬中尉や涼宮中尉の様に、大胆な行動をとれる勇気も……私には無い)」

「????」


≪なでなでなでなで≫


「(だから、私が少佐に"望める事"と言ったら――――)」

「……篁?」

「あ、あのっ!!」

「なんだい?」


篁の頭を撫で始めてから約30秒。未だに何も反応が返ってこなかったんだけども。

ようやく何か言ってくれる様で、俺は彼女の頭から手を放した。少し名残惜しいZE。

対して俯いていた為 前髪に隠れて表情が見えなくなっていた篁は、しっかりと俺を見ながら言う。


「……も、もっと……撫でて……くださいッ……」

「!?」

「(――――これくらいの事しか無い)」

「は、はははっ。そんなの御安い御用さ」


≪なでなでなでなで≫


なんか予想外だけど……篁は頭を撫でられるのが御気に召していたらしい。

しかも御願いされた時の表情が超可愛かったんですけど。場所が場所なら抱きしめてましたよ?

まぁ、きっと撫でられた事で叔父でパパでもある巌谷さんを思い出してしまったんだろう。

何だか俺も恥ずかしくなってきてしまったが、上官として篁のホームシックを温和してあげるか。


「…………」

「…………」


≪なでなでなでなで≫


――――そのまま1分程、ハンガーに佇む愛機の前で篁の頭を撫で続ける俺。

そろそろ整備の人達から変な噂が立ちそうな気がしたけど、触り心地が良いので止める事は無い。

篁も その場から動こうとしないので、もう暫く今の状況が続きそうな気がしたけど……


「……ッ……」

「あっ、軍曹」

「えぇっ!?」


何時の間にか篁の後方に エロスーツ姿のまりもちゃんが立っていたのに気付いた。

よって頭から右手を離すのと同時に、驚きながら勢い良く後ろを振り返る篁さん。

う~ん、今は治ってるけどまりもちゃん……俺が気付いた直後はレイプ目だったんですけど。

イリーナちゃんと言い涼宮(姉)と言い流行ってんのか? 横浜基地症候群ってヤツだったり?

だがソレは勘繰り過ぎってヤツだろう。よって俺は当たり前の反応を まりもちゃんに示す。


「(や、やっぱり……進展してしまっているのね……)」

「どうしたんです? こんな所で」

「(うぅっ……神宮司軍曹に見られてしまうなんて……)」

「!? そ、そろそろ帰還されるとの事でしたので、不躾ながら御迎えにあがりました」

「へぇ」

「白銀少佐、篁中尉ッ! 御無事で何よりです!!」


≪――――ビシッ≫ ←敬礼の擬音


「有難う」

「感謝します」


凛々しく敬礼する まりもちゃんに対し、俺と篁も軽く敬礼を返して礼儀に応える。

その後の遣り取りで、まりもちゃんがエロスーツ姿だったのは出撃の可能性が有った為と解った。

よってB分隊もエロスーツ姿でスタンバってたらしく、今は着替えて自室に戻っているとの事。

だけど俺らが出撃していた事は知らなかったが、まりもちゃん のみ知っていたので迎えに来たと。

つまり彼女が此処に居るのは独断であるらしく……休んでくれて良いのに真面目な人だよね~。

まりもちゃんは教官の仕事ダケじゃなく自主トレも毎日してるので、俺より断然 睡眠時間は少ない。

そうなれば……さっさと休んで頂くに限るな。丁度 篁も居るし、彼女にも休息が必要だ。


「じゃ~篁、軍曹と着替えて今日はもう休んでくれ」

「よ、宜しいのですか?」

「部下を差し置いて、俺が先に休むワケにもいかないしな」

「ですが――――」

「それにS型を実戦で初めて乗った事から、軍曹に伝える事も色々と有るだろ?」

「!? そう言う事であれば……」

「では白銀少佐、私は篁中尉と?」

「えぇ、篁に色々と教えて貰って下さい。生とシミュレーターじゃ手応えも違いますからね」

「了解しました」

「それでは……白銀少佐も、しっかりと御休みになってく下さいね?」


≪――――ずいっ≫ ←武に接近する唯依


「篁?」

「……どうか、御願いします」

「わ、分かってるよ」

「有難う御座います。では神宮司軍曹」

「はい」


篁は去る前に俺の右手を両手で包み込み、哀願する様に休めと言うとハンガーを立ち去った。

そんな彼女に まりもちゃんも続き、俺の事を相変わらず気遣ってくれる篁には感謝ですな~。

今度はもっとジックリ頭を撫でてやるとしようか。できれば違うトコロもナデナデしたいけどね。

そう無表情で邪な気持ちを抱きながら、俺も帰って寝ようかな~とか考えていると……


≪おおおおぉぉぉぉ……っ≫


「!? A分隊か」


≪パチパチパチパチ……ッ≫


遅れて涼宮(妹)達のS型5機が戻って来た様で、ソレを迎えた整備の人達から歓声が上がる。

しっかりと5機健在……しかも殆ど無傷で帰還したんだ。そりゃ~大健闘だし喜びもするよなァ。

そんな事を思いながら遠方からA分隊の機体を眺めていると、涼宮(妹)達が姿を現してくる。

何だか恥ずかしそうにしていて微笑ましいな。……まぁ、ルーキーだし仕方ないんだけどね~。

ンなうちに整備の人達の賛辞から逃れた涼宮(妹)は、他の仲間と合流しようとしてたっぽいが……


「あ・か・ねェ~っ?」


≪――――がしっ≫


「きゃっ!? は、速瀬中尉ッ?」

「先輩を差し置いてA-01の隊長として出撃した気分はどうだった~? んン~ッ?」

「ち、ちちちちょっとッ! そんな所を掴まないでくださっ」

「何処を掴もうと揉もうと勝手でしょ~? それより質問に答えなさいよ~っ?」

「ひっ! そんな所ダメッ……ふあっ!?」


イキナリ現れた(一応)エロスーツ姿の速瀬に襲われ、先ずは背後から抱きしめられた。

次に速瀬の両手は涼宮(妹)の両胸に伸ばされ……モミモミと容赦なく揉みまくられる。

対して涼宮(妹)は何とか逃れ様とするが、俺でさえ抜けれない速瀬を抗うのは無理な様子。

全く速瀬め……出撃できなかったからって涼宮(妹)を苛めるとは。良いぞ、もっとやれ!!


「まぁ、詳しくは更衣室でジックリ聞かせて貰おうじゃな~い?」

「わ、分かりましたから"こんな所"で止めてください~っ!!」

「ふむ。やはり面白いモノが見れたな」

「ご愁傷様ですね、涼宮少尉」


――――涼宮(妹)達を迎えたA-01は速瀬を含めて宗像と風間のみ。後者2人は何故来たんだ?


「あ、茜ちゃん……ハァハァ……」

「多恵~、そんな事より助けてあげれば~?」

「無理だよ晴子」

「そうそう、ああなった速瀬中尉を止められる人なんて居ないってば」

「ダメ、ダメだよ……そんなにしたら茜ちゃんが壊れちゃうよぉ……」

「あははは、アレを見て興奮する多恵もどうかって思うけどね」

「でも、今の多恵なら何とか出来るかも……」

「あっ! 多恵!?」


――――んっ? 涼宮(妹)を無理矢理 連行しようとする速瀬の前に、築地が立ちはだかった。


「待ってください!!」

「ん~っ? 何よ多恵?」

「それ以上 茜ちゃんの おっぱいを揉むなら、私のを揉んでください!!」


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


「は、はァ~? 何 言ってんのアンタは」

「ダメなんですか? だ、だったら脱げば良いんですとねッ? 今脱ぎますとから!!」

「寝てろ!!」

「むきゅっ!?」


≪――――どさっ≫


しかしパチュリーウッ。チョップを食らい遭えなく地面に倒れ、涼宮(妹)は連れ去られてしまった。

その後をニヤニヤしている宗像と溜息交じりの風間が続き、倒れた1名と立ち尽くす3名が残される。

恐らく他のA-01の面子も元A分隊を別の場所で待っているんだろう、PXや更衣室あたりでね。


「多恵~大丈夫ゥ?」

「予想通り無理だった」

「さっきと言ってる事が逆だよ遼子~?」

「(フッ……白銀 武はクールに去るぜ)」


――――ともかく良い感じで涼宮(妹)が犠牲になってくれて良かった。

ちなみに速瀬に気絶させられた築地は、柏木達が肩を貸しているし大丈夫だろう。

速瀬が警戒すべき存在なのは相変わらずだが……ひとまず安心してハンガーを離れるのだった。




……




…………




≪コッコッコッコッ……≫


さっさと軍服に着替え終えた俺は、自室を目指して通路を静かに歩いていた。

時間が時間なので人影は殆ど無いな……既に日付は変わっているだろうしね~。

とにかく寝よう。ナンダカンダで疲れたから、最低8時間は寝ていたいモンだが……


「白銀少佐!」

「ん?」

「待ってください~っ」

「涼宮中尉か」


後ろから声を掛けて来たので振り返ると、涼宮(姉)がパタパタと走って来ていた。

相変わらずエンカウント率に定評が有る白銀。生の彼女も少し苦手だけど、クールに対応しよう。

俺は立ち止まって彼女の接近を待つんだが、若干距離が有った為 涼宮(姉)の接近は十数秒を要した。


「はぁ、はぁ……良かった、間に合って」

「どうしたんだよ? そんなに急いでさ」

「あのッ。どうしても今 言って置きたかった事が有って……」

「言って置きたい事?」

「白銀少佐っ! 今回は茜達を助けて下さって、本当に有難う御座いました!!」


≪――――ばっ≫


そう言って勢い良く頭を下げてくれた涼宮(姉)。わざわざ追い駆けて来て有り難い限りだ。

だけど大袈裟すぎじゃないか? ……と言ってみると、前例を考えれば全然 大袈裟じゃ無いらしい。

そもそもA-01が一度の任務で一人も戦死者を出さなかった事が11月11日で初めてだったのだ。

涼宮(姉)の境遇から例えると、総戦技評価演習で事故って衛士生命が絶たれたダケじゃなく、
同期の仲間も死んで、その後の実戦にもなると速瀬以外の同期が一人も残らなかったとの事。

A-01と言う特殊任務部隊に所属するに当たって、抜きん出た技量・手厚い整備とバックアップ……

それらが有っても一度の任務で一人以上が死ぬ事が"当たり前"だったと……う~む、それなら納得だ。

初の実戦を経験する5機を含めた、たった7機で500以上のBETAを被害無しで全滅させる……

確かに涼宮(姉)の価値観から考えれば素晴らしい戦果だろう。ワザワザ礼を言いに来るのも頷ける。

俺にとっては築地が多少ピンチだった時点で反省すべきなんだけど、ホント今迄 辛かったんだな~。

ちなみに涼宮(姉)は車両を降りて直ぐ俺を追い駆けてきたので、まだ速瀬達とは合流していないとの事。


「とにかく涼宮中尉も お疲れ。結構 走ってたみたいだし、ゆっくり休んでくれよ?」

「は、はい。有難う御座います」

「それじゃ~コレは御礼だよ」

「……えっ?」


俺にとっては涼宮(妹)達を生かすのは当然の事だったけど、褒められて悪い気はしない。

だから調子に乗ってしまい、周囲の気配を確認しつつ彼女に"とある事"をするべく近付いた。

対して警戒する涼宮(姉)だけど、何度も彼女に"されている事"なので今更 自重する気は無し。


≪ちゅっ≫


――――だから つい頬に、労いのキッスをしちゃったんだ☆


「!?!?」

「HAHAHA、それじゃ~御休み」

「……あ、あう~ッ……」

「涼宮中尉?」


≪――――どさっ≫


「…………」

「ちょっ!? 涼宮、涼宮!!」


だけど、どう言う事でしょう!? ダメージが大きかった様で、ブッ倒れてしまう涼宮(姉)。

あっ……(ストッキング越しに)パンツ見えてる。いや、それはそうと 放っておくのはマズいなコレは。

瞳を鳴門にして倒れている様子は可愛いが、やはりCPとして神経を磨り減らしていんのだろうか?

それに加えて俺を追ってのダッシュだ。だから俺のキスは些細なキッカケだったんだよ、たぶん。

ともかく彼女の部屋に送り届けないとな……でも鍵はどうする? カラダを弄って探すのもアレだし……


「!?」


そんな事を思って涼宮(姉)を見下ろしていると……整備の人達なのか、或いは衛士達なのか?

複数の話し声が接近しているのに気付き、一刻も早く倒れている彼女をど~にかしなくてはならない。

当然 今回の襲撃で俺達 以外で出撃した国連軍の衛士も存在するのはさておき、俺は腰を落とすと……


≪――――ひょいっ≫


「思ったよりも軽いな……良しッ!!」


直ぐ様 涼宮(姉)を"お姫様抱っこ"し、見つかる前に"この場"を全速力で走り去ったのでした。

見られた時点で俺の評価がゴッソリ下がりそうだしね~。そりゃ必死になりもしますって。

よってRED ZONE……いやTAKERU ZONEっぽいMADを脳内で流して駆ける俺だった。




……




…………




≪――――ぼふっ≫


「ふぅ~」

「…………」


……数分後。 無事 誰にも見られずに自室に辿り着いた俺は、片手で器用に鍵を開ける。

そしてベッドに涼宮(姉)のカラダを丁寧~に降ろすと、溜息をついて汗を拭った。

う~む。つい連れ込んでしまったが……判断は間違っていない筈とは言え、これから どうしよう?

俺は腕を組みながら、いずれ目を覚ました彼女にどう対応しようか考えつつ見下ろしていると……


「んんッ……」


≪ごろっ≫


「……ッ……」

「むにゃ……」


≪くねくね≫


「うぐっ……」


涼宮(姉)の気絶は睡眠に変わった様で、息を漏らしながら"もぢもぢ"と寝返りをうっている。

そんな彼女の下半身 辺りがエロく……少しだけムスコが反応してしまったじゃないですかッ!

何気に国連軍のスカートって短いからなァ、ストッキング率が高いのは"この為"なんじゃなかろうか。

……さて置き。こうも無用心な寝顔を晒されると、何だか悪戯したくなっちまったんだぜ?


「んぅ……白銀……少佐……」

「!?」

「……本当……に……むにゃ、有難う……ございました……」

「す、涼宮……」


……だけど涼宮(姉)の寝言を聞いて俺は良心を取り戻すに至った。マジで自重しろよ俺ッ。

セクハラなんてバレたらフラグ・ブレイクも良いトコロだ、コレばかりは我慢しないとね。

よって涼宮(姉)には このまま寝て貰う事にし布団を掛けると、俺は上着を脱いで椅子に腰掛ける。

そしてバスタオルを羽織ってデスクに突っ伏し、学生時代を思い出しながら眠るのでした。


「……それと……すぅすぅ、少佐の事……好き、です……」


――――ちなみに涼宮(姉)が今の言葉を嘆いた時、武は既に夢の中だったと言うオチ。


「そう言えば大尉~」

「何だ速瀬?」

「遙が なかなか戻って来ませんね、どうしたんでしょうか?」

「さてな。ひょっとすれば既に休んでいるのかもしれん」

「だったら私達も そろそろ休みません~?」

「ふむ、そうするか。……涼宮達は本当に良くやった。それでは解散ッ!」

『――――はっ!!』×11




*神宮司軍曹とピアティフ中尉は嫉妬心を抱くとL5状態になりますが無害です。

*速瀬中尉と涼宮中尉は2人揃うと危険ですが、1人で白銀と遭遇するとデレデレになります。




●戯言●
思ったよりも長くなったので前後半に分ける事にしました。次回は早めに更新します。
一応 涼宮(姉)のターンですが、大したフラグは立ちません。しかしクーデター3日前でコレかよ!
余談ですが作者は戦場の絆を3月一杯で引退する事にしてます。やっぱ500円ってのがちょっと……
VerUp後の戦績は676勝476敗18分(全て連邦将官戦)。残念な故に野良だと全然勝てないので泣けます。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ36(後編) 2009/04/14 04:28
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/17 17:53
これはひどいオルタネイティヴ36(後編)




2001年12月02日 午前


「う~ん……」


……意識が覚醒し瞳を開けると、何故か"真っ暗"だった。

だけど、ソレは机に突っ伏して寝ていたからだと瞬時に理解し上半身を起こす。

そして時計に目を移してみると午前10時。結構 眠っちまったっぽいな~こりゃ。

なのに変な姿勢で寝てたから少しカラダが痛い……そう思って後ろを見てみると。


「…………」

「あわわわわ、あわわわわ」

「……ッ?」

「どうしよう~、どうしよう~」


ベッドで寝させていた涼宮(姉)が、ひたすらオロオロと室内を往復していた。

どうやら俺よりも早く目を覚ました様だが、一体 何をしてるんだ~? 彼女は。

見るからに慌てている様子は非常に可愛いけど、これは声を掛けざるを得ない。


「涼宮」

「!?」


≪――――びくうっ≫


「何してんの?」

「あっ、あぁ……白銀……少佐~ッ……」

「What?」

「ご……ごご、ごっ……」


――――挙動不審の涼宮(姉)は、青い顔だが頬辺りを染めると言う器用な表情で俺を見つめると。


「ごごごご?」

「ごめんなさいッ、ごめんなさいっ、ごめんなさい!!」


――――唐突に物凄い勢いで頭を下げると、ひたすら謝り続けて来たのでした。




……




…………




「ほ、本当に申し訳有りませんでしたッ」

「いや だから」

「気絶したダケじゃなく、介抱して頂くどころか少佐のベッドまで使ってしまうなんて……」

「そんなの全然 気にしなで良いってば」


……5分後。デスクの前の椅子に座り、右足を左膝に乗せてリラックスする俺の正面で。

ようやく落ち着いた涼宮(姉)が、見るからに申し分けなさそ~な顔をしながら立っている。

どうやら室内を往復していたのは……俺より先に目を覚ましたモノの謝罪をせずに立ち去れない。

だけど俺が目を覚ましていない事から謝れず、相手は上官なので無理には起こせない。

しかも覚醒した俺にどう"対応"しようか言葉が纏まらない……だから ひたすら焦っていたそうな。

う~ん……CP将校では有るまじき行動なので、昨日の凛々しい彼女とのギャップが凄すぎるぜ。

それにしても、今朝は誰も俺を起こしに来なかったのが不幸中の幸いと言えるだろう。

霞は言われた通りに休んでくれて、篁とイリーナちゃんは昨夜の疲れで来なかったってトコかな?


「で、ですけど御迷惑を掛けてしまって……」

「迷惑でも何でもないって。だから もう、忘れてくれ」

「よ……宜しいのですか?」

「勿論さあ☆」


きっと今の彼女は、勝手に倒れた上に少佐 自ら彼の部屋まで送って貰い……

ベッドを御借りして朝まで暢気に寝ていた事が、申し訳なくってたまらないんだろう。

しかし殆どは俺の所為だ。調子に乗ってキス☆なんてしなきゃ涼宮(姉)は気絶しなかった。

だからベッドで寝て貰った事を気にする必要もないし、勝手に部屋に連れ込んだのも俺だ。

つまり全面的に俺が悪いんだけど、彼女は自分が悪いと思っているので俺の罪悪感が募る。

そうとなったら、今回の事は速瀬の件と同様……全て忘れて頂くに限る。都合の言い話だけどね。

よって首を傾げる涼宮(姉)に対し自重せず"勿論"と促して、顎でドアの方を軽く仰いでみる。

"宜しいのですか?"と言うのは忘れて良いのか? ……と言う意味だろう、当然オッケーなんだぜ?


「(そう言えば……)」

「…………」

「(今は少佐と私だけ……こ、これってチャンスなのかも……)」

「…………」

「(私の彼への"気持ち"は気付かれちゃってる筈だし、聞いてみようかな~?)」

「涼宮?」


――――だから涼宮(姉)が退室するまで待ってたんだけど、彼女は なかなか動かなかった。


「あ、あのっ」

「何だね?」

「……~~っ……」

「????」

「私の事は……だ、抱いて……頂けなかったんですね……」

「ゑっ?」


――――もぢもぢと告げる涼宮(姉)の表情に、ほぼイキかけました。


「……(い、言っちゃったよ~っ!)」

「ちょっ……抱かなかったって、どう言う事?」

「水月……いえ、速瀬中尉の様に……」

「あの速瀬を、抱いたって?」

「は……はい」

「この俺が?」

「そ、そうです」

「…………」

「…………」


……10秒経過。


「整理しよう。君の認識だと、速瀬は俺とセックスした事になっていると?」

「……ッ……」←無言で頷く


――――いつの間にか立ち上がっている俺に、上目遣いで頷く涼宮(姉)。

それが死ぬほど可愛過ぎたので、ほぼイキました。……勿論、脳内での話だけどね?

それはそうと、一体 何で速瀬との関係が そうなってるんだ!? 有り得ないだろマジで!!


「いやいやいやいや!! 何言ってんだよ、そんな事 してないってッ!」

「えっ? で、でも水月はそう言ってましたけど……」

「誤解も良いトコだよ!! "あの時"は只 速瀬と抱き合って寝たダケで――――」

「!? それなら やっぱり~」

「違う違う!! 誤解しないでくれッ、それ迄には経緯が有るんだよっ!」

「あの……く、詳しく聞かせて頂けませんか?」

「そ、そのつもりだよ」

「……(ど、どう言う事なの~? もしかして、私は信じられない勘違いをしちゃってたんじゃ……)」




……




…………




……15分後。俺は ひたすら誤解を解く為に、必死で涼宮(姉)への説明を行っていた。

流石に"もんじゃ焼き"を吐かれた事は言わなかったけど、酒を無理矢理 飲まされた末、
ドアの角に顔面をブツけられて気絶&ホールドを食らい朝まで逃げれなかった事は言った。

対して涼宮(姉)は複雑な表情ながらも把握してくれ、コレで彼女への誤解は解けたってワケだ。


「大体は理解してくれたかい?」

「は、はい」

「良かった。……って事で、俺と速瀬は何も無かったんだよ」

「…………」

「そうは言っても、抱き合って寝てた時点で"何も無い"ってのとは違うかもしれないけどねェ」

「……ッ……最もですね」←想像したらしい

「うぐッ」

「あっ!? す、すみませんッ」

「いや……間違いないし、そう思うのも仕方ないさ」

「そ、それにしても水月ったら……自室まで送って頂いた少佐に何て失礼な事を……」

「はははっ、酔っ払いに罪は無いってね」

「そう言って頂けると、水月安心できると思います……でも、本当に御免なさい」

「涼宮中尉が謝る事じゃないさ」

「あ、有難う御座います(……でも、水月を止めなかったのは私だったんだよ~っ)」


会話を続ける中、思った以上に速瀬の行動に責任を感じてくれている涼宮(姉)。

……それに速瀬に"夜の件"の記憶が全く無かった時点で非常に助かっている。

酒の影響で"とんでもない台詞"をホザいちまった事で、速瀬が脱ぎ出したのも俺の所為だし。


「しっかし、もう"こんな時間"か~」

「!? い、いけないッ」

「どうしたね?」

「作戦を終えてから、未だに伊隅大尉達に顔を出していませんでした」

「まぁ、俺を直ぐに追いかけて今に至るワケだしね」

「それと……今日の正午に再び"祝勝会"が有るんです」

「祝勝会?」

「はい、今回は茜。涼宮少尉達が無事 生還できましたから……」

「成る程」

「定かどうかは知りませんが、バズーカの実戦テストも行った事から、
 その関係者の方達も見えるかもしれない……と言う話です」

「まだ時間は……余裕が有るね。それなら行くしかないかな?」

「少なくとも、私は少佐が見えるのを歓迎します」

「有難う。だったら顔を出してみるよ」

「私も行かなきゃ……でも、その前に大尉達に……」

「だったら早く行った方が良い、皆 心配してるんじゃないかい?」

「うぅッ」

「じゃあ、急いだほうが良いよ」

「そ、そう……ですね。それでは、私は これで失礼しま……」

「ちょっと待った!!」

「えっ!?」(どきんっ)


――――別れる直前、俺は涼宮(姉)に大事な"任務"を授ける事を忘れていた!!


「一つ、君に頼みたい事が有るんだ」

「な……何でしょうか?」

「えっと、その~ッ」

「……ッ……」(どきどき)

「……速瀬中尉の誤解を解いて置いて欲しいんだけど」

「!?」


――――その"任務"に対して彼女は、なんだかガッカリした様子で承諾してくれた。何故に!?




……




…………




2001年12月02日 正午


「白銀少佐ッ」

「篁」

「昨日は御疲れ様でした!」←敬礼しながら

「君もね」

「昨夜は……良く御休みになられましたか?」

「お、御陰様でね」


祝勝会の準備が出来ていると言う以前と同じ部屋を目指し、通路を歩いていると篁と遭遇した。

どうやら俺を迎えに来る途中だった様で、相変わらず上官の事を気遣ってくれる良い部下ですな。

そんな篁の言葉に後ろめたさを感じる俺だったけど、気を取り直して祝勝会の部屋に入ると……


「見事な活躍だったそうだな、白銀少佐」

「い、巌谷中佐ッ?」

「叔父様」

「――――ッ」←咄嗟に敬礼する白銀&唯依

「はははっ、約10日ぶりと言ったところかな?」

「何故 中佐が此方に?」

「我が娘の久しい出撃での生還を祝ってね。それと君との関係も確認して置こうかと」

「はぁ」

「!?」

「この娘は生真面目だから少し不安だったが……いやはや心配は無い様だ。
 上手い具合で躾けてくれているみたいだし、いっその事 このまま結納……」

「お、おおお叔父様ッ! 違うでしょう!? 御聞きした話では――――ッ」

「そうだった、そうだった。実は新OSやバズーカの実戦データを見に来たのさ。
 それに香月副司令と唯依ちゃん交えて、弐型や新兵器についての打ち合わせもする予定だ」

「そうだったんスか~」


……何故か巌谷さんが登場。相変わらずカオは怖いのに笑顔が妙に似合う人だ。

しかし生真面目な篁を相手に こんな冗談を言うとは……流石は義理とは言え父と言う事か。

俺だったら嫌われるのが怖くて絶対に言えないよ。それはそうと、巌谷さんに続いて……


「私がど~かしたのかしら?」

「!? ……ゆーこさん」

「昨日は御疲れ様でした、白銀少佐・篁中尉」

「イリーナ中尉までッ」

「香月副司令。貴女が開発したバズーカは素晴らしい戦果だった様ですな」

「ありがと」

「ゆーこさんも祝勝会に参加ですか?」

「私は そんなに暇じゃ無いわよ。用が有るのは巌谷中佐の方」

「な、成る程」

「だから借りるわよ? 篁、貴女も来なさい」

「……了解しました」


ゆーこさん&イリーナちゃんも登場。だけど祝勝会をするのでは無く、仕事をしに来た様だ。

よって巌谷さんと篁は連れて行かれる様で、2人は ゆーこさんの後を追い部屋を出て行こうとする。

だけど俺は咄嗟に浮かび上がった"案"を言う為に……4人のうち1人を呼び止めるべく口を開く。


「巌谷中佐ッ!」

「何だね?」

「呼び止めて申し訳ない。ひとつ、頼みたい事が有るんですよ」

「頼みたい事? 良いだろう。君の望む事で有れば、なるべく聞く様にするが?」

「えっと……榊 内閣総理大臣の事なんスけど」

「なっ!?」


以前から何とかしたかったけど、ぶっちゃけ巌谷さんくらいしか頼める人が居なかったんだよな。

左近さんは左近さんで殿下の事で忙しそうだし頼めそうも無い上、俺が動いても無駄っぽいし……

巌谷さんも忙しいと思うけど、可能性が有るダケでもマシだ。榊には中途半端で申し訳ないけどね。

んで巌谷さんは俺の頼みを聞き終えると、難しい顔をしながら3人と合流するべく立ち去って行った。


「(白銀少佐……其処まで読んでいるとは……だが、可能性は十分に考えられるな)」




……




…………




「あっ! 少佐が来てる」(水月)

「そうだね」(遙)

「……ッ……」

「(水月ったら、やっぱり……)」

「……~~っ……」←ウズウズしている

「ねぇ水月、今 白銀少佐に食って掛かろうとか思ったでしょ?」

「ギクッ」

「ダメだよ? 絶対に」

「わ、分かってるわよ。でも……遙だって私と"同じ事"したこと有るクセにッ」

「あうっ」

「でも、アイツはアイツで怒ったりも罰したりもしない。"最初"以上の事も未だに……」

「!?」

「ハァ……」

「あ、あのね? その事について なんだけど……」

「えっ?」

「――――水月は白銀少佐に抱かれてなんか無いよ?」

「!!!?」


≪いやいやいやいや!! 何言ってんだよ、そんな事 してないってッ!≫


「(水月には悪いけど、私は"あの時"安心しちゃってたと思う……でも)」


≪私の事は……だ、抱いて……頂けなかったんですね……≫


「(ソレを知らずに、私ったら何て事を……気付かれてるのは知ってるけど、恥ずかしいよ~っ!)」




……




…………




「……と言う訳で、水月は彼と何も無かったの」

「そ、そんなあ~っ。でも、ちゃんと血の跡が残ってたし……」

「ソレは水月が白銀少佐に鼻血を出させたから付いたダケだよ」

「……~~ッ……」

「だから、水月は"勘違い"してたって事」

「!?」

「これで"平等"になったね~?」

「うっ、うぐぐぐ……」

「(でも、それなら白銀少佐の"噂"って間違いだったのかなぁ?)」←登場人物 参照

「――――あ"っ!?」

「ど、どうかしたの?」

「……私がアイツに抱かれて無いって言うのは分かったけど、遙は一つだけ見落としてるわよ?」

「見落としてるっ?」




≪……安心してくれ≫(以下17話 参照)

≪え?≫

≪一度で満足して無かったのなら、何度でも闘(や)ってやるさ≫

≪んなッ!?≫

≪どうしてもって言うんなら、今からでも良いんだぞ?≫

≪なッ、ななな、ななななな……っ!!≫




≪……悪かったよ≫(以下22話 参照)

≪へっ?≫

≪以前は闘(や)ってやると言いながら、なかなか相手ができなくってね≫

≪!?!?≫

≪でも……生憎 今日も無理なんだ。 ……許して欲しい≫

≪んなっ、ななななな……≫




「アイツは最初から私が"抱かれてた"って思い込んでたのを知ってたんだからッ!」

「え、えぇ~っ!?」

「……悔しいけど、私は……アイツの掌で踊ってたんだわ……」

「だったら何で私の時には慌ててたんだろ……?」

「遙が私の事でトンでもない勘違いしてたモンだから、合わせてくれたんじゃないの~?」

「――――はうっ」(ふらり)

「ちょっ!? 気持ちは判るけど、倒れないでよ遙ッ!」

「ご、ごめんね」

「じゃあ……妙なのは、何で私の"思い込み"を"そのまま"にしてたかって事ね」

「う~ん。そう思わせてた方が水月が大人しくしてるからじゃないかな?」

「どう言う事よッ?」

「最初の水月……白銀少佐に凄い反抗的だったじゃない。彼は気にしてないみたいだったけど、
 他の人から見たら絶対に許されない。しかも、水月は"その所為"で死に掛けたんだよッ?」

「うっ……」

「だから、それを心配に思って少佐は……水月の誤解を解かずに、あえて自分に"夢中"にさせた」

「!?」

「そうすれば水月は大人しくなって、後は真面目に訓練に打ち込むダケになる」

「……クッ……」

「2人で襲い掛かっちゃった時も有ったけど、それも想定の範囲内だったんだよ。
 私達は一応 場所を選んでたから少佐は抵抗しなかったし、篁中尉が気にしない様にも……」

「…………」

「だから騙されてたのは癪だと思うけど、少佐の事を怒らない方が……」

「……そっかあ」

「水月?」

「あはははっ。何時の間にか私って……アイツの事を"好き"になちゃってたのねェ」

「!!!?」

「な、ななななに驚いてんのよッ? 遙だって とっくにそうだったんでしょ~が?」

「あぅう~っ」

「だから……コレで遙の言う通り、本当の意味で"平等"になったって事ねっ?」

「!? そ、そうだね」

「だからッ」×2

「負けないわよ!?」

「負けないよぉ~?」




……




…………




≪――――ぞくっ≫


「何だ このプレッシャーはッ?」


祝勝会が開始され、それなりにレベルの高い料理を食ったり飲んだりしながら、
適当に やってくる"お偉いさん"達を遣り過ごす中……俺は涼宮(妹)の姿を発見する。

同時に何か"寒気"を感じたのでニュータイプを肖って独り言をホザいたのはさて置き、
今回の主役である彼女は ようやく仲間やインタビュー等に解放された様子だ。

見るからに疲れた様子なので心苦しい気もするが、その瞬間を見逃すワケにはいかないな。


≪涼宮、やったな。帰ったらビールを奢ってやる≫


上官として嘘はつけないしね~。いくら肖りで出た、労いの言葉だったとしてもだ。

全く期待されてなかろうと、こう言う気遣いが出来ずして"あっち"じゃ先輩を語れないしねェ。

よって俺は予めキープしていた年代物のワインを片手に、背後から近付いて声を掛けるんだが。

予め"この後"の会話では、特に涼宮(妹)とのフラグは立たなかった……と言って置くとしよう。


「ふぅ……」

「涼宮」

「し、白銀少佐!?」

「やらないか? 一杯」


――――そんでアホ毛を直立にしながら振り返る彼女に対し、つい阿部さん調で言っちゃったんだ☆




……




…………




2001年12月02日 午後


……一方、ゆーこさんが留守にしている執務室のデスクトップ・パソコンに置いて。


≪カタカタカタカタ……カタンッ≫


「……できました」


――――"社 霞"の設計した最新型の格闘機……不知火・カスタムのデータが誕生していた。


「これを見て白銀 お兄さんは……」


≪!? それなら元気……出ましたか?≫

≪あぁ、凄ぇ出たよ。良いモン見せてくれてアリガトな?≫


「また……褒めてくれるでしょうか?」




●戯言●
朝から修羅場にはなりませんでしたが、また勘違いを重ねてしまう2人の中尉の図。
不知火・カスタムの元ネタはグフ・カスタムそんまんまです。武器の構造は違いますけどね。
そのテストに置いて、彩峰・水月・神村・神代と候補が多いです。(根っからの長刀使いは除外)
あと、あまりにも誤字が多いので番外編を若干修正しました。音楽を流して読んでいってね!?



[3960] これはひどいオルタネイティヴ37 2009/04/24 06:26
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/25 00:10
これはひどいオルタネイティヴ37




2001年12月03日 午前


昨日は大して酒を飲んでいなかったし、戻ったら速攻で自慰って寝たので目覚めたのは早かった。

そんなカラダを起こした俺の真横には、一昨日(12月1日)の早朝と同様に、
何時の間にか霞がベットに進入して来ていたので、無理に布団を剥がずに其処から降りた。

そして彼女が目を覚ます前に着替えてから声を掛けると、さっさと部屋の外に出て待つ事にした。

すると案の定 篁&イリーナちゃんが待っていたので雑談する事10分……霞がドアを開けて出て来る。

相変わらずの無表情だったけど、俺と一緒に寝ていた事を遠まわしに2人の女性に指摘されると、
俯いて少しだけ頬を染める様子が何時もの如く可愛く、俺のハートを刺激するのでした。

さておき。今日も自然な流れでPXで朝食を共にする事となり、各々の食事が進んでゆくと……


「では白銀少佐、今日も唯依ちゃ……篁中尉を借りるとするよ?」

「はぁ……」

「申し訳有りません、白銀少佐」

「んっ? 其処は謝るトコじゃないだろ? 特別任務の一環みたいだし」

「それはそうですが……」

「ですよねェ? 巌谷中佐」


――――巌谷さんが食事に乱入して来て、実は今日も篁と"仕事"をするのが決まっていたらしい。


「あぁ。昨日は香月副司令らと"帝国技術廠と横浜基地"での打ち合わせをしたダケだったが、
 今回は技術廠内での話し合いをするんだ……そろそろ新兵器の"試作品"の完成も近いしな」

「試作品ですか~」

「篁中尉から聞いた話によると君は"支援狙撃砲"を最も早く御所望の様だが、良かったのかね?」

「はい……って事は……」

「12月5日迄には必ず間に合わせよう」

「!?」

「生憎"拡散突撃砲"の試作品の完成は遅れてしまいそうだがね」

「いや、凄い助かりますよ。有難う御座います」

「……(叔父様は12月5日に間に合わす事に拘られていたけど、何を意味するの……?)」

「……(成る程。"事件"が起こると言うのは、其の日だと言う意味なのかしら)」

「……(良く分かりませんが、私の設計したモノは5日に間に合わなそうなのが残念です)」

「なんのなんの。御陰で最近は充実した研究をさせて貰っているよ」

「そうッスか」

「出来る事なら、此処で最近 生まれた殆どの兵器やシステムの開発責任者である、
 白銀少佐も交えて色々と話し合いたいトコロだったんだが――――」

「……ッ……」(とととっ)

「!? 霞っ?」


巌谷さんが そう言い出した時、唐突に霞が俺に小走りで近寄って来ると、
左腕に抱き付く様に自身の両手を絡め、彼を静かに見据えていた。


「はははっ。そうすると、その娘に恨まれてしまいそうだし、諦めるとするよ」

「すみません……中佐」

「ちょ……霞~っ、別に恨んじまうワケじゃないだろ?」

「そうですけど……(今の巌谷中佐は、結構"本気"で そう思っていました……)」

「フッ。それに白銀少佐は、別の事で忙しそうだしな」

「あぁ~、そうでした。霞も新しい兵器の設計を終えたみたいなんですよ」

「ふむ……確か"殴る兵器"と言うモノだったかな?」

「そ、そうです」

「生憎どの様なモノか想像がつかんが、御目に掛かれるのを楽しみにしているよ」

「……はい」

「では また会おう。篁中尉、行くぞ?」

「はッ。それでは白銀少佐」

「巌谷中佐・篁中尉に対し敬礼」(白銀)

「――――っ」×5


篁は巌谷さんと一足先にPXを去る事となり、互いに敬礼すると2人は歩き出して行った。

巌谷さんの登場は予想外だったけど"支援狙撃砲"の配備がクーデターに間に合うのは有り難いぜ。

チェーンガンと違いピンポイントの狙撃がし易いし、120ミリみたく威力もデカ過ぎない。

つまり対人間とも言える戦術機において、甘ったれな俺の武器に最も適してるってワケだ。

そう考えてみれば……マブラヴの世界に来たのは、正直 良かったのかもしれない。

憧れのガン●ムの世界に来てパイロットになってれば、人を殺しまくってたっぽいし、
もしオールド・タイプだったとしたら、序盤あたりに噛ませ犬となって宇宙の塵になってた筈。

それなのに、間も無く始まる対人戦……敵はBETAなのに、アホばっかで困るぜ冗談抜きで。

流石の白銀大佐も"人"を殺した事は無いっぽいし、明後日は大丈夫なのかな~?

まぁ……殿下と皆で逃げさえすれば良いワケだから、それが旨くゆけば原作みたく戦う必要も無い。

だから何時も通りネガティブな考えは忘却するべき。そんで今夜もちゃんと自慰って寝よう。


「……そう言えば、此処の食事はヤケに美味かったな」

「な、何を唐突に?」

「いや~、ウチも見習って置くべきかと思ってね」

「そうかもしれませんが……今は そんな事を考えている場合では有りませんッ!」

「すまんすまん、許してくれ。此処の所 充実しているモノだから、冗談が過ぎてしまっていかんな」

「叔父様は帝国軍・中佐なのです、特に公で私を からかうのは止めてください!!」

「分かっているよ。また昨日みたく、頬に紅葉を貼らされては堪らんからな」

「あぐっ……」




……




…………




……30分後、執務室。

霞が操作するデスクトップ・パソコンを、俺・ゆーこさん・イリーナちゃんが覗き込んでいる。

普通なら大型スクリーンに映すトコロだけど、準備が面倒らしく地味に原始的な回覧だ。


「これが"新しい戦術機"ってワケね?」

「な、何なのですか? コレは……」

「右手に打手……"ナックル"を握らせ、右腕に打針……"パイルバンカー"を装着。
 そして左腕にガドリング砲を内装させた戦術機です。結果……より白兵能力が向上しています」

「背中に何か背負ってるみたいだけど、何なのコレ?」

「前衛なので……バズーカの爆風に耐えれる様にシールドを背負わせています。
 よって、74式可動兵装担架システム等、余計なモノは全て外しているんです……」

「へぇ~っ、イメージ通りだ。流石だなァ霞」


≪なでなでなでなで≫


――――完成が嬉しかったので霞の頭をグリグリ撫でる俺。自重せず、つい犯っちゃうんだ☆


「あ、有難う御座います」(どきどき)

「これは使えるの? 社」

「はい……ですけど、敵を直接"殴る"戦術機となるので……扱いが非常に難しいと思います」

「少なくとも、往来の戦術機では無理そうですね」

「その通りです。されど……XM3が有る今となれば、必ず使いこなす事ができるでしょう」

「そうなると……やっぱり白銀」

「OKッス。早速テストを開始しますよ?」

「生憎 今日は社もピアティフも使うから、アンタ一人になるけどね」

「ありゃ、そうなんですか?」


最近ゆーこさんは……いや、横浜基地の一部の人間が妙に忙しそうにしてる気がする。

きっと彼女も5日(明後日)に"何か"が起こると理解していて、影で色々と動いているんだろうね。

一昨日BETAの襲撃が有った事で、十分 今の横浜基地は忙しい状況って言えるんだけど……

更に忙しくなろうがクーデターの対策もしないと、後々もっと面倒になるし仕方ないって事だ。


「……ごめんなさい」

「すみません、白銀さん」

「一人でも全然 良いですって。もし誰か居れば、適当に誘ったりすれば良いダケですし」

「じゃあ頼むわね? ……ところで、社」

「はい?」

「この不知火S型の頭に付いてるのは何なの?」

「……"うさみみ"です」

「外しなさい」←即答

「……ッ……」


≪じ~~っ……≫


流石にウサミミの戦術機は無いと思うけど、あえて霞が傷付かない様に指摘しない事にしてた俺。

だけど ゆーこさんの容赦ない一言を食らい……霞は俺に頼り気な視線を向けて来た。眉を落として。

それを最初に受けた時は"断れないオーラ"に抗う事は出来なかったけど、今は耐性が付いている。


「霞……悪い事は言わない、コレは外そう」

「さ、流石に白銀少佐も この戦術機で出撃するのは恥ずかしいでしょうし……」

「あが~」

「(むしろ、乗るのは彩峰あたりになるんだけどなァ)」

「(残念ですけど白銀さんに撫でて貰えました……良かったです)」




……




…………




2001年12月03日 午後


……俺は執務室を離れてから、実は素直に一人で訓練を始める気はサラサラ無かった。

よって直ぐ様"人を探し"をする事にして、その対象は何と言っても"彩峰 慧"である。

何せ格闘といえば彩峰。彩峰といったら格闘と言っても良い程、彼女の格闘能力に優れている。

だから不知火・カスタム(勝手に命名)のテストをして貰うのにはウって付けってワケなんだが……


「おいィッ!?」(リミッター解除)


横浜基地内を何時間探しても……肝心の彩峰が見つからず、俺は怒りが鬼になった。

基本的に白銀のエンカウント率は高いから、直ぐに見つかると思った自分の浅はかさが愚かしい。

最終的には速瀬や神村で妥協しようかな~とか思ったけど、シミュレータールームを覗くと、
何時もの様に12人+CP将校で訓練していたので、流石にA-01は格が違った。

しかし不味いな、このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだが……そう絶望する中。


「(あれは白銀少佐ッ? 良~し、姉さんとの距離を縮めるチャンスだわ!)」

「……ッ……」

「あのっ、白銀少佐……」

「……何いきなり話し掛けて来てるわけ?」

「!?」

「あ"っ」

「私そんなつもりじゃ……ご、ごめんなさいッ!!」(脱兎)

「ちょっ、ごめッ」


唐突に話し掛けられてしまったのでブロントってしまうと、泣きながら走り去る金髪の女性。

嗚呼……何時ぞやのイリーナちゃんのお友達No2(妹)ではないかッ! よって俺の後悔が有頂天。

思わず追い掛けようとしてしまったが、結局 俺は少し手を伸ばす事しか出来なかったのでした。

やっぱり、今回の肖りは諸刃の剣 過ぎたかな? だからもう止め様と思っていると……


「あっ……白銀少佐ッ」

「どうして こんな所に?」

「珍しいですわね」

「……それ程でもない」(謙虚)


通路を曲がって来たと思われる斯衛トリオが出現ッ! 俺が居た事に驚いている様子だ。

フフフッ……やっぱり俺は10代属性のリアル少佐属性だから、一目置かれる存在。

こうして滅多に来ない様な場所に行くと、皆が俺に注目する。……って言うのは冗談で。

何時の間にか彩峰を探して斯衛トリオみたく、客系の人達が住んでいるエリアに来てしまった様です。

実を言うと巌谷さん&篁とも擦れ違って首を傾げられ、誤魔化すのに少しダケ苦労してたりする。

……そんな事を考えているうちに、3人は俺に近付いて来て彼女達を見下ろす羽目となった。

対して正面の神代が何やらモヂモヂしているのが気になったが、向かって左の巴が口を開く。


「何か此方のエリアに御用でも?」

「んっ……まァ、そんなトコかな」

「それは何ですの?」

「別に大した事じゃないさ。それよりも、君達は何処へ?」

「自室に戻っている途中なダケですわ」

「基本的に私達の訓練は午前のみですから」

「成る程ね。じゃ~月詠中尉は何を?」

「真那様は、冥夜様の訓練の御様子を見に行かれています」

「されどコッソリと……ですわ」

「はははっ、あの人らしいねェ」


――――答えてくれるのは何故か巴と戎だけ。真正面の神代は何故か黙っている。


「……ッ……」←神代

「(あっ!? 巽ッ、思えば これってチャンスじゃないの?)」

「(ち、チャンスって?)」

「(そうですわ! 訓練を御願いするのであれば、今しか有りませんわね)」

「(貴女の態度も悪いわよ? 黙ってるダケじゃ何も伝わらないし)」

「(だ、だけど……少佐にも都合ってモノが有るだろッ?)」

「(ソレはその通りですけど、言うダケなら只ですわよ)」

「(うぅ~ッ)」

「……ッ?」


なるべく会話を盛り上げるべく努める俺だったが、何やらボソボソと話し合っている斯衛トリオ。

それを見て何だかハブられた気がしてしまい……想像を絶する悲しみが白銀(俺)を襲った。

しかし顔には出さずに首を傾げて反応を待っていると、ようやく神代が頭を上げて来るんだけど。


「あ、あのっ」

「んっ?(……待てよ、考えてみりゃ神代も格闘が得意っぽいんだよな……)」

「えぇと……その~っ」

「(言うのよ巽ッ)」

「(其処で躊躇ってどうしますの!?)」

「――――神代少尉ッ」


≪がしっ≫ ←両肩を掴んだ音


「ぅえっ?」

「(い、いきなり何を思ったの!?)」

「(まさか、タイムアップですの?)」

「……話を遮って済まないが、ひとつ御願いがあるんだ」

「な、ななな何ですかッ?」

「俺と一緒に訓練してくれ!!」

「え、えぇ~っ!?」×3


――――彩峰とのテストを諦める事にして、つい神代を誘っちゃったんだ☆


「くしゅんっ……風邪?」


――――余談だが彩峰は皆と野外で生身の訓練していたので、見つからなかったのでした。




……




…………




「それじゃ~悪いけど、神代を借りて行く事にするよ?」

「は、はい」

「何を言い出されたかと思えば、新兵器のテストを行いたかったのですわね」

「不味かったかな?」

「いえ、そうでは無いですが……新たな概念の格闘兵器……ですか」

「どんなモノかは良く分かりませんけど、それなら確かに巽が適任だと思いますわ」

「そうなのかい? 神代」

「通用するかは分かりませんが……わ、私は幼少の頃から剣術より体術の方を習っていましたから」

「ほう、経験が生きたな」

「……ですから、巽の事を宜しく御願いします」

「是非 有効に御使い下さいまし」

「!? お、お前等なあッ」

「はははっ、まあ~期待させて貰うよ。そんじゃ~行こうか? 神代」

「……ッ……は、はいっ!」


――――こうして思わぬテスト仲間を見つけた俺は、巴と戎に軽く手を振って歩き去った。


「流石よね……白銀少佐は」

「どう言う事ですの? 雪乃」

「きっと巽は"あのまま"じゃ言い出せなかった。だから彼から巽を誘ってくれたのよ」

「!? そ、そうなれば最初から?」

「……そう。少佐の立場から言えば"あの娘ダケ"を誘うのは無理だろうし、
 "新兵器のテスト"を口実に、気を利かせて下さったのね」

「成る程~。それでは、巽は更に……」

「衛士として"伸びる"でしょうね」

「うぅうう~、それは羨ましいですわ~ッ!」

「それは同意ね。……でも私は、あくまで"衛士として"羨ましいダケなんだからねッ?」

「雪乃も素直では有りませんわね~」←ジト目




……




…………




……30分後。


≪――――ズシンッ≫


『これが格闘武器を装着した戦術機、不知火・カスタム……』

「まぁ~俺が勝手に そう呼んでるダケだけどね」

『やっぱり、違和感を感じます』

「そうか? 見事な仕事だと感心はするが、何処も可笑しくは無い」

『白銀少佐が言われるなら、そうなんでしょうけど』

「そりゃ有難う」


神代を誘えた事から ようやくテストを行えようとしており、互いに強化装備に着替えると、
既にシミュレーターに放り込まれていた、不知火・カスタム(S型)に搭乗した。

……だけど俺はともかく、神代には新しい概念の武器なので使い方が良く分からない様子。

よって教えてやるしかないのだ。考えてみれば、"これ"の使い方を全く知らない衛士が、
どの様な過程で使いこなせる様になってゆくのかも、貴重なデータになるんだしね~。


『じゃあ、先ずは どうすれば良いんですか?』

「とりあえず盾を構えてるから、適当にナックルで攻撃して来てくれるかい?
 長刀と同じ要領で、トリガーを引けば殴ってくれる様に設定は変えてあるからさ」

『了解』

「…………」


≪ズシンッ……ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ!!≫


――――ともかくテスト開始だ、ようやく封印が解けられた!!

さて先ずは神代に攻撃して来るように指示し、俺のカスタムは左手に盾を持ち構えた。

基本的に不知火・カスタムは盾は背負うんだけど、今回はテストの段階なので何でもアリなのさ。

対して神代機は走り寄って来ると徐々に加速を付け、右腕のナックルを繰り出してくるッ!!


『はぁあっ!!』

「……ッ!?」


≪――――ガコォンッ!!!!≫


『あ、あれっ?』

「なかなか良い攻撃だ。でも、それじゃ~要撃級は殺れないんじゃないか?」

『す……すみません』

「いやいや、初めてだし仕方ないさ。続けて試してみてくれ」

『はいッ』

「そうだな~、俺を一歩でも後退させれたら合格って事にしよう」




……




…………




――――5分後。


『これでッ!』

「うおっ!?」


≪ガコオオォォンッ!!!!≫


『や、やったッ?』

「流石に無理だったか……今ので合格だね」

『それじゃあ、次は……?』

「今度は俺の番だな。防御して居てくれ、神代」

『……了解』

「テストでも一瞬の油断が命取り。ちゃんと防いでくれよ?」

『!? わ、分かってます』

「行くぞッ!?」


≪――――ブワァッ!!!!≫


『……!?(す、水平噴射ッ?)』

「メガトンパンチッ!!!!」


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


『う、うわああぁぁっ!!!!』

「……(俺パンチング・マシンで100とか普通に出すし)」

『痛ッ……な、なんて威力だ……』

「ど~よ? 走って加速を付けるよりも、噴射を駆使して殴るのを基本とするんだ」

『な、成る程……でも少佐、本当に今回が"初めて"のテストなんですかッ?』

「少なくとも俺のログには無いな」

『……くッ……(流石は白銀少佐だな……やっぱり私とは格が違う)』

「とにかくテストを続けるぞ~?」

『り、了解ッ(……だけど、折角 誘ってくれたんだ。期待に応えなきゃ……)』

「そうだなァ。今度は神代が今の要領で――――」




……




…………




――――こうして俺と神代は、数時間掛けて不知火・カスタムのテスト&訓練を行っていた。


『このォッ!!』

「バックステッポォ!!」

『えっ!? うわッ!』


≪ブゥンッ!!≫


「ふはははっ、そう簡単に当たってやるワケにはいかないな~」

『くっ……避けるなんて聞いてませんッ!』

「そう言われても、立ってるダケじゃどう抗ってもブッ飛ばされるしなァ」

『でも、只でさえ速い少佐に打撃を当てるのは無理が有るんじゃ……』

「其処で左腕に内装されているガドリング・ガンとかを有効活用するんだよ。
 生憎 殴るダケじゃロクに連携も組めないし、戦術機が相手だと何もできずに蜂の巣にされる。
 相手がBETAでも、サブ射撃やコレで牽制してから殴るのに繋げるのが基本かな?」

『そ、そうですね』

「こんな風にねッ!!」


≪ドパラタタタタタタタタ……ッ!!!!≫


『わッ!? ち、ちょっと待っ……』

「――――追撃のグランドヴァイパァ!!!!」


≪ガコオオオオォォォォンッ!!!!≫


『が……っ!?』

「更にダメージは加速した!!」




……




…………




『白銀少佐。今度は避けなくて良いんですか?』

「あァ、さっきは遣り過ぎちゃったからね~」

『"パイルバンカー"を直撃させて良いんですよねッ?』

「まぁ、ダメージの検証もテストのウチだしな」(口実)

『じゃあ……行きますよ!?』

「……ッ……」

『せええぇぇいっ!!!!』


≪――――ザグッ!! ……ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「オゥフッ!!!?」


神代が水平噴射で殴り掛り、ナックルが命中する直前にパイルバンカーを半分ダケ射出する。

コレで早くも盾が中破したと言うのに、もう一度トリガーを引くことで"全て"が射出された!!

それによって俺の不知火・カスタムはバラバラになり、神代機は逆噴射で衝撃を殺し距離を取った。

……正直、例えシミュレーターで有っても二度と食らいたく無いと思いました。(リアル話)




……




…………




『まさか、盾ごと戦術機をバラバラに出来るなんて……』

「今の衝撃で死ぬかと思ったぞ」

『実際に死にますねアレは』

「当てる場所を選ばないと そうなるね」

『ところで……白銀少佐』

「なんだい?」

『攻撃する時に言っている"台詞"は一体 何なんです?』

「俺のログには何も無いな」

『あ、有りますってば!!』

「バレてたか。でも衛士なら思わず言いたくなる時ぐらい有るよね?」

『そんな事は――――』

「ARUYONE?」(パッション調)

『あ、有ります』

「だろッ? つまり言いたくて言うんじゃない、言ってしまうのが衛士」

『必須なんですか……』

「それはそれとして」

『うぇ?』

「次のステップ……オサライにしよう。高AIのS型を相手に戦ってみるとするか」

『高……AIッ……』

「大丈夫だよ、2機連携だし何とかなるって」


……そうは言っても、最近 作られた高AIのS型は非常に強力だ。数で劣れば並の衛士では辛い。

何せ"死"を恐れないからな。格闘に繋げるにしても、しっかりと遣らないと反撃で殺される。

最初は御剣や彩峰でも、ちゃんと牽制が命中していなかった事から反撃で撃破される事が多かった。

中身が人間であれば牽制に驚いて動きが止まる事が多々有れど、AIには全く通用しないのだから。

それに思い出してみればBETAも多少 射撃に怯んでた気もしたし、実戦には必ず活きるだろう。

でもアイツらは鉢合わせた時に、頭がおかしくなって死ぬのを克服するのが一番大変なんだよね。

さておき。高AIの強さは神代も理解しているのか、慣れない兵器に不安そうな顔をしていたけど、
俺と2機連携を組める事を聞いて安心した様子だ。無駄に可愛く見えたのは気のせいだろう。


『そ、それじゃ~私が設定の変更をして来ますッ!』

「そうか? 悪いな、生憎 管制が掴まらなくってさ」

『全く問題無いです。では敵の不知火S型の数は何機にしますか?』

「9機で良い」

『き、9機~ッ?』

「大丈夫だ。黄金の鉄の塊で出来ている俺達のS型が、無人兵器に遅れをとる筈は無い」

『!? そ、そうですね……じゃあ9機に設定しますッ!』

「宜しく頼むよ?」




……




…………




≪――――ドゴオオォォンッ!!!!≫


「うしッ、9機目撃破だ!!」

『…………』

「んっ? 神代、お疲れ~」

『あっ!? お、御疲れ様ですッ』

「大体こんな所かな? そろそろ終わりにしようか」

『……っ……もう こんな時間か~』


9機の戦術機を相手にするにあたって一回目は神代は撃破されてしまったが、2回~4回目と生存。

だけど戦闘終了後に3回連続で見つめられたから、頃合かと思ってテストを切り上げる事にした。

それにしても神代は流石 原作キャラであり、斯衛の衛士だ……学習能力が並じゃ無かったねマジで。

A-01と言いB分隊と言い、絶対 半年後辺りで俺を越えるだろ……汚い流石 原作キャラ汚い。

そんな妬ましさは良いとして……俺が筐体からノンビリ出て来ると、既に神代が待ってくれていた。


「有難う。良いデータが取れたよ」

「とんでもありませんッ」

「それでも俺が感謝してるのは確定的に明らかだよ」

「し、白銀少佐……」(キュン)

「だから君にはジュースを奢ってやろう。15分後に、また此処でね?」

「!? り、了解しました!!」


――――そんなワケでPXでの夕食では神代との反省会も併用し、充実した時を送ったのでした。




……




…………




……不知火・カスタム(S型)のテスト終了から2時間後。


「あっ!? お帰りなさい巽」←実は相部屋な斯衛トリオ

「うん……ただいま」

「ねぇねぇ。何処までゆきましたの~っ?」

「ま……まさかキスしたとかッ?」

「ば、ばばば馬鹿を言うなッ! そんな事してるワケ無いだろ!?」

「でも……白銀少佐の周りには"そう言う噂"を良く聞きますわ」

「そうなのよね」

「期待して貰って悪いけど、惚気た事は一切無かったよ」

「あらら~」

「ふ~ん」

「だけど良いんだよ。機会が有る時ああやって指導して貰えれば、私は幸せなんだと思う」

「…………」×2

「な、何だよッ?」

「巽……貴女」

「自分で言ってて恥ずかしく有りませんの?」

「う、五月蝿いなッ! ともかく私は白銀少佐が好きなんだ、何か文句有るかァ!?」

「ぐっ……」

「其処まで大きく出られると、何も言えませんわね……」


――――この様に3人の少女達が思春期 真っ盛りな会話をする一方で。


「きた、神代きたっ! メインディッシュきたッ、これで自慰る!! ……アッーー!!」


――――(実は)斯衛トリオの憧れの白銀少佐は神代をネタに自慰ってたのは勿論の事だが。


「あの時の白銀少佐の蔑む様な表情……く、悔しいけど感じちゃうッ!」

「まただよ(笑)」←相室のお友達No1(姉)


――――ピアティフ中尉のお友達No2(妹)も、ドMな所為か自慰っちゃってたんだ☆




●戯言●
最初は彩峰とテストさせる気 満々だったんですが、毎度 感想を下さる方の中で、
謎の電波を飛ばしてくる方の所為で神代になってしまったじゃないか、どうしてくれるんだ。
そしてブ●ントさんネタを意図的な誤字の無い程度で使いました。流石にSSなので自重。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ38
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/10 00:10
これはひどいオルタネイティヴ38




2001年12月04日 午前


「さてと早速 飯に……って、霞は来ないんだっけ?」

「はい、昨日 白銀さんがテストしてくれたデータを参考に調整を……」

「大変だな~、じゃあ頑張ってくれよ?」←頭を撫でながら

「は、はい」


今日も下着姿で進入して来なさった霞。んでもって外で待っていてくれた篁&イリーナちゃん。

これは現実では当然ながら、原作でも有り得ない展開。鑑に勘繰られなければ良いんだけどね~。

まぁ、ヤバいと思ったら白銀(俺)の愛を必死にアピールしよう。……でも……それで良いのか?

自分で決めて置いて己の女々しさに嫌気がさしちまうけど、何だか鑑の事を考えると切なくなる。

これもループを繰り返している白銀の精神……そして、原作でマジ泣きした俺自身の影響だろう。

さて置き。少し照れた様子で霞は自分の"仕事"を行う為、その場を走り去ってゆくんだけれども。


「……んっ?」

「……ッ……」×2


何故か訝しげな表情で、俺を見つめて来ている篁&イリーナちゃん。……な、何事ですか?

速瀬や涼宮(姉)を初めとして、妙に最近こんな目で見られる事が多い気がするんだけど……

でも この2人は違う理由だと思うし、此処は既に人目のある廊下だから迂闊な行動だったんだろう。


「あはははっ……そんなワケで、3人で行こうか?」

「は……はい」

「御一緒します」

「(羨ましく思ってしまった……やっぱり、私は白銀少佐に……)」

「(思えば私は……白銀さんに頭を撫でて貰った事が無いのよね)」


――――こうして俺は、当初の予定とは全く違う面子で御剣とのイベントに臨む事となる。




……




…………




……雑談しつつ歩き数分後。3人でPXへとやって来ると、俺はB分隊の面子を探し始める。

すると即 見つかり、何時もの席に榊・珠瀬・鎧衣のみの姿が有った。予想通り人数が少ないな。

原作と人数が合っているかは覚えて無いけど、御剣と彩峰が居なかったのは記憶に有るので無問題。

つまり例のイベントの進行は可能だろう。俺は心の中で軽く気合を入れると、足を踏み出した。


「(……良しッ)」

「あっ、白銀少佐」

「どちらへ?」


そんな俺の行動を意外に思ったか篁&イリーナちゃんが声を掛けてくるが、俺は止まらない。

申し訳ないが、俺が彼女達に声を掛けるのは必然的なモノ。だから、こればかりは譲れんのさ。

悪く言えば後ろの2人の方が規格外なのだ。背中の視線が痛いけど許してください。(土下座)


「よォ、榊」

「何か……えっ? し、白銀少佐!?」

「あわっ、あわわわわっ」

「篁中尉にピアティフ中尉もッ?」

「け、敬礼!!」


≪――――ガタッ!!≫


「皆、お早う」

「お早う御座いますッ!」

「今日は朝飯を一緒に食いたいんだ、迷惑じゃ無きゃ ここら辺の席……良いかい?」

「め、滅相もありません」

「有難う。それじゃ~篁とイリーナ中尉も」

「わ、分かりました」

「……失礼します」



先ずは榊に話し掛けると、予想通り普通に慌て……珠瀬は しどろもどろになってしまう。

鎧衣は性格の為か多少 瞳を見開いたダケで、3人は揃って立ち上がると敬礼して下さった。

相変わらず彼女達は俺を慕ってくれているので有り難い。俺は全然 偉い人間じゃ無いのにマジで。

まぁ自虐はさて置き。俺が榊達に介入したのは御剣(+彩峰)のイベントを起こす為だ。

だけどB分隊はイキナリ俺が乱入して来たと思ってるダケだろうし、少佐っぽい事を言わなければ。

よって最初は誰も何も喋らず若干 重苦し気な雰囲気の中、俺は考えを纏めると口を開こうとする。

ちなみに完全に余談だけど、俺の左右に篁とイリーナちゃんが座り、正面に榊ら3人が移っている。


「榊」

「な、何でしょうか? 少佐」

「訓練の方は順調か?」

「あっ……はい。私の口から言うのも恐縮なのですが、それなりには」

「ヘぇ」

「今迄は叱られてばかりでしたけど……最近は軍曹からも、お褒めの言葉を頂いてます~」

「特に冥夜さんと慧さんの能力は、熟練の衛士を越える程だって言われてましたよ~?」

「ちょっと珠瀬・鎧衣ッ、調子に乗るんじゃないの!!」

「にゃっ!?」

「ご、ごめんなさいッ」

「いや、別に謙遜しなくても良いさ。B分隊が"往来の訓練兵"と比べれば、
 途轍もない訓練データを弾き出してるって事は、周知の事実なんだしね」

「あ、有難う御座います」

「…………」←唯依

「でもまぁ……調子には乗っちゃダメだぜ? 横の中尉にドやされるぞッ?」

「は、はあ」

「少佐ッ!」

「あははは、ゴメンゴメン……ところでなんだが」

「何でしょう?」

「皆、此処最近2度も佐渡島ハイヴからの襲撃を受けたって事は知ってるよな?」

「は……はい、存じております」

「その時なんだけどな、涼宮達A分隊……いや、元A分隊も出撃したんだ」

「――――!?」×3

「結果は見事5人全員が生還さ。だから、涼宮達には大きく差を付けられた事になっちまったな」

「そう……ですか。茜達がとうとう……」

「で、でも良かったですよね~?」

「うん、悔しいけど全員が"死の8分"を乗り切れたのは凄い事ですよ~」

「……そう言う事だ。だから訓練で幾ら調子が良くても、任官して実戦を経験する迄は、
 ずっと半人前のままなのは変わらない。それを常に念頭に入れて置いてくれ」

「…………」←腕を組んでウンウンと頷いている唯依

「……あと、明日にでも実戦に繰り出されるかもしれないって言う危機感もね。
 2度有る事は3度有るって言うだろ? BETAは時と場合を選ばない……良いなッ?」

「はいッ!」×3

「敬礼!!」


≪――――ガタッ≫


「おいおい、ソレは良いって」

「(流石は白銀少佐ね、今まで類の無い訓練兵への指導。一体何処でこの様な方法を覚えるの?)」

「(褒めたと思えばライバルでもある元A分隊の活躍をダシに更なる上を目指させる……成る程ね)」


俺の言葉に更に"やる気"を出した様子で、再び立ち上がって敬礼する3人の訓練兵。

特に榊はA分隊の途轍もない前進にかなり火が点いた様子。瞳に炎が見えますよマジで。

だけどスマン3人とも……俺は一ヵ月半前あたりは平和な日常に埋もれた腰抜けでした。

そんな俺が今更何を言ってるんだと再三思うけど、実戦も経験してるし勘弁してくださいッ。


「!? こ、コレは一体ッ?」

「おっ? 御剣か~」

「遅かったわね」

「す、すまぬ」

「彩峰は?」

「生憎 分からぬが……もう少しで来るだろう」

「そう」

「とにかく座れよ」

「はッ! し、失礼致します!」


――――そんなこんなで御剣さん登場。これでイベントは更に加速した!!




……




…………




「……モグモグ」

「…………」×6


俺が黙々と鯖味噌定食を口にしている事から喋らないので、再び沈黙が続く朝食の一時。

しまった。榊ら3人との会話は考えていたけど、御剣が来てからの話題を考えていなかった。

こんな事ならA分隊 云々の話は、御剣が来るまで取って置くべきだったのかな~?

篁&イリーナちゃんが喋ってくれるのにも期待してたんだけど、今回は活躍してくれない様子。


『――――ニュース速報をお伝えします』

「(来たッ!?)」

『中部地方に位置する天元山の火山活動の活発化に伴い、不法帰還者の救出作戦が――――』

「……ッ……」←冥夜


そう"どうしたモンか"と思う中、PXに置いてあるテレビから待望のニュースが流れて来た。

お気付きの通り、アンリミでは白銀らB分隊が初めて戦術機を使った任務を行った大きなイベント。

だけどオルタでは民間人・全員が強制退去を食らい、御剣が不満を露にしていたのが印象深い。

よって俺が考えている対策とは、俺の階級を考えて彼女が何も言って来なければソレで良し。

もし何か不満が有るようであれば……ちゃんと最大の敵・BETAを蔑ろに出来ない事を諭す。

オルタの時の白銀は実戦経験が無かったし説得力が無かったけど、今は少佐だし違うしね~。


「(少佐……これで一安心ですね)」

「(そうだね)」

「(かなり心苦しい気はしますが……)」

「(だけど、篁は解ってるよな?)」

「(はい。2度目のBETA上陸から2日も経っていないと言うのに……)」

「(不法帰還など許されないと言う事ですね)」

「(その通りッス、イリーナ中尉)」


……ニュースが流れる中、住民が保護された事実が流れると真横の篁が小声で話し掛けてくる。

実を言うと、昨日(3日)の朝に霞に不知火・カスタムの"お披露目"をして貰った時、
ついでと言ったカンジで ゆーこさんに天元山の噴火の件について聞かされていたのだ。

その時"国連軍には強制退去させるよう指示しちゃったけど良いわよね~?"と言われ、
当然 俺は良い判断ですね……と頷き、ソレを巌谷さんと篁にも打ち合わせの際に口にしたとの事。

故に篁は今回の件を知っており、若干 住民に対する同情も有った様だけど、
巌谷さんみたいな人の娘(仮)であれば どちらを優先させるべきかは当の昔に理解している。

しかしながら住民が無事保護された事には安心した様で、今の様に俺に話を振って来たのだろう。


『――――再三もの避難勧告にも応じない、不法帰還者に当たっての対応に関し、
 内務省の一部からは、放置も已む無しとする意見も上がりましたが――――』

「ふんッ(この状況で気楽なモノだ)」←唯依

「……ッ!?」


≪――――ダンッ!!≫


「御剣?」

「み、御剣さん?」

「冥夜さんッ?」

「……ッ……」


……そんな中、とうとう御剣が反応を示す。意外にも、かなり御立腹の様だった。

たった今は偽善ぶった内務省の意見を鼻で笑ったっぽい篁の態度を"別の意味"で捉えた様で、
御剣さんは口に含んだ後のコップを勢い良くテーブルに叩き付け、その勢いで水が散った。

その行動を目の当たりにして、残りのB分隊3名は焦りを感じながら彼女に視線を移す。

少なくとも上官が3人も目の前に居るのに取る態度じゃない。……やれやれ、仕方ないですなァ。

こりゃ~しっかりと諭してやるしかないね。ちゃんと説明して置けば分かってくれるだろう。

俺はそう考えると、機嫌が悪そうに飯を再開している御剣に話し掛けるタイミングを伺うが……


「どうした? 何か言いたい事が有るなら言ってみろ、御剣 訓練兵」

「(なぬッ!?)」

「どう言う事です? 篁中尉」

「言葉の通りだ。今のニュースで何か思う所でも有ったのだろう?」

「……ッ……」

「そうでなければ、直ぐ今の行いを白銀少佐に謝罪しろッ!」


俺が何か言い出そうとする前に、篁が険しい顔をして御剣に今の行いの指摘をした。

あちゃ~……考えてみれば、彼女にとっては黙って置けない事だったね今のヤツは……

何だか嫌な予感がする。そう焦りながら御剣を見てみると、しっかりと篁を見つめ返しながら言った。


「では、言わせて頂きましょう……篁中尉は、今の報道が真実だと御思いで?」

「何が言いたい?」

「軍は国民の生命財産の保護を第一とする立場を、あくまで貫き任務に当たるべし。
 昨日の帝国軍・国連軍との共同作戦にて、その様な人道的 救出は行われたのですかッ?」

「……違うだろうな。全ては"強制退去"という言葉を霞ませる為の御託に過ぎんだろう」

「!? それが分かっておいて、何故 中尉は今の様な態度をされたのですかッ!」

「……貴様」

「み、御剣……幾ら何でも失礼よッ?」

「そうですよぉ」

「冥夜さん……」

「(し、白銀さん……どうするんですか?)」

「(少し様子を見ましょう)」 \(^o^)/

「……この"日本"には……代々この国を必死で守り続けてきた方々がおられました。
 その方々は誰に頼まれたワケでも無く……自らが住み続けるこの国土の為に、
 時には命を掛けて尽くして下さったのです。時には自分を犠牲にする事も厭わず……」

「…………」

「それ故、私が守りたいのは人々です。日本の魂を……志を守りたい。人居ない国は無いのだから」

「しかし何もせず火山を噴火させれば、貴様が守りたい人間は死ぬぞ?」

「――――私は避難された方々が亡くなるかどうかは、正直あまり問題では無いと思っています」

「なんだと?」

「命が有れば良いと言う単純な問題では有りませぬ。彼らは危険を承知で、あえて戻ったのです。
 選択は彼らに委ねるべきであり、そもそも死ぬならば旧天元町でと御考えだったのでしょう」

「…………」

「そんな彼らを避難させても待って居るのは、食糧の配給もままならない難民キャンプ。
 自分の最も大切なモノが、自分の意思とは無関係に奪われてしまう事が許される筈は有りません」

「……そうか、貴様の言いたい事は分かった」

「感謝を」

「では、私から問わせて貰おう」

「……はッ」


この辺の台詞については全く覚えてないけど、御剣らしいっちゃ御剣らしいな~。

しっかし、ぶっちゃけ過ぎだろ御剣。今の報道に何時もの冷静さを完全に失っている。

そんなうちに篁と御剣は立ち上がっており……もはや見守ることしか出来ない小心者な俺様。


「例え住民が果てる覚悟で故郷に戻ったとしても、放置できる筈は無い。
 そうなれば当然 軍が派遣されるが、命の危険に晒される兵達の事はどう考える?」

「軍人は民の生命を守る為に在ります。危険を冒すのは必然でしょう」

「都合の良い話だな。我々は故郷での死を望む国民の意思を尊重する上に、
 命を懸けても守り通す様、動かねばならん……と言う事か?」

「その通りです」

「先日BETAが2度目の上陸を果たしたのは周知の事実だろうが、
 それでも尚……敵に背を向けながらも民を救わなければならんと言うのだなッ?」

「……はっ」

「この……大馬鹿者がァッ!!」


≪――――バコッ!!!!≫


「がっ!?」


≪ガシャアアアアァァァァンッ!!!!≫


「み、御剣さん!?」

「冥夜さんッ!!」

「ぅあ、ぐっ……」


最後の問いに御剣が若干 躊躇して頷いた直後、かつてない怒り顔で彼女を殴り飛ばした篁さん。

結果 椅子やテーブルをブチ撒けながら吹っ飛ばされた御剣は、何とか上半身を起こす。

……凄く……痛そうです。そして当然ながら、周囲の人間達は何事かと俺らを見てやがります。


「今後 貴様のような衛士ばかりが生まれれば……人類の負けは見えているな」

「!?」

「そんなチンケな考えで国民の魂と志が守れる程、BETAとの戦いは甘くないッ!!
 国民の汗と涙の結晶で生まれた一機一機の戦術機が……一人一人の衛士が恐怖と葛藤しながら、
 必死で仕留めた一匹一匹のBETAが積み重なり、必ずや人類に勝利を齎すのだ!!」

「……っ……」

「良いかッ!? 肝に銘じておけッ! 本来の目的を見失った人類に、決して栄光は無い事を!!」

「し、しかしッ」

「それ以前に……実戦経験すら無い訓練兵の貴様が、白銀少佐の前でソレを言うか!?」

「なっ?」

「既に全てを失いつつも尚、戦い続ける者の気持ちを……考えた事が有るのかと聞いているッ!」

「!!!?」


≪ひとつは"仲間"……もうひとつは"家族"さ≫


「どうした!? 答えてみろッ、御剣 訓練兵!!」

「うっ……(そう言えば、白銀少佐は故郷を……)」


≪けど今は……どっちも居ないんだけどね≫


「くっ……冥夜様」

「今は行かないほうが良い。彼女が殴られたのが癪なのは、百も承知だが……」

「しかし巌谷中佐ッ」

「娘には俺から言って置くよ。後は白銀少佐のフォローに期待しよう」


≪……お前の守りたいモノが、守れるのを祈っているよ≫


「み、御剣……大丈夫?」

「……ッ……(そ、それなのに私は……何と言う事を豪語してしまったのだッ!?)」


≪――――ダダダダッ!!!!≫


「あっ!? 御剣さん!!」

「冥夜さ~ん!?」

「はぁっ、はぁっ……」


……結果。立ち上がると その場を走り去ってしまった御剣と、肩で息をする篁が残される。

ナンダカンダで篁も興奮していたらしい。……って言うか、俺の名前をダシにしないで下さい。

それはそうと何ですか? この展開。彩峰もまだ来てないし手紙 関連のイベントが台無しじゃないか!

ともかく誰かが御剣を追う必要が有るっぽいんだけど、やっぱり俺しか居ませんよねぇ~?


「篁」

「!? し、白銀少佐ッ……あの、その……」

「うん?」

「どうやら大事にしてしまった様で、何とお詫びしたら良いか……」(おどおど)

「ん~」

「民を思う彼女の言葉も理解できるモノだったのですが、ついカッとなってしまって……」

「いや、良いって。ちょっくらフォローしてくるから、この場を治めたら適当に訓練しててね?」

「わ……分かりました」

「じゃあイリーナ中尉」

「はい。篁中尉と共に居ります」

「白銀少佐……」

「あわわわわっ」

「ぼ、ボク達はどうすれば~?」

「そうだったな。軍曹と一緒に指導をしてやってくれ、篁」

「了解しました……ですが、もう一人 訓練兵が居たと思いますが?」

「彩峰は時機に来ると思うから、合流したらしたで始めて置いてよ」

「は、はい」

「そんじゃ……行って来る!!」


≪それ以前に……実戦経験すら無い訓練兵の貴様が、白銀少佐の前でソレを言うか!?≫


「(本当は白銀少佐は気にしていなかったと思う。けど、私の方が彼を気にし過ぎて……)」

「(全く……篁中尉は白銀少佐の事を気遣い過ぎね。話だと"こんな人"じゃ無かった筈なのに)」

「(しかし私は"あの方"になんて事を……嗚呼、自分が撒いた種だけど……あ、頭が痛い……)」

「(これも白銀少佐に対する想いの成せる業? それは私も見習うべきなのかもしれないけど)」


――――くっそ~、予想外にも程が有るぜッ!? でもゾクゾクしちゃう、もっとやれ!!(涙)




……




…………




「此処か……」


俺は通行人(軍人)の情報を頼りに御剣を追い、彼女が自室に戻っている事を聞いた。

う~む……思った以上にヘコんでそうだよな……自分の志を全否定されちまったんだし……

しかし今のタイミングで御剣が使いモノにならないのは非常にマズい。何としてでもフォローせねば。


≪――――コンコンッ≫


「…………」


≪……し~ん……≫


「御剣、俺なんだけど?」

「!?」


≪――――ガタン! ガタガタッ……ガチャッ≫


「…………(何故に)」

「お、お待たせ致しましたッ」

「んんっ? おまッ、もしかして泣いて……」

「!? い、いえ……ここここれはですねッ」

「まぁ、それは良いんだけど……あんまり気を落とすなよ?」

「えっ?」

「篁にあんな事 言われたのはショックだったと思うけどさ」

「…………(何故 私の方の気遣いを……)」

「どうした?」

「し、白銀少佐は……不快には思われなかったのですか?」

「んっ? 何の事だ?」

「……ッ……お、お優しいのですね」

「それ程でも無い」(謙虚)

「ともかくッ! 先程は見苦しい所を御見せして、本当に申し訳有りませんでした!!」


≪――――ばっ!!≫


御剣の姿は服装(青いアレ)等は何も変わっていないけど、表情が明らかに沈んでいた。

少なくとも涙で枕を濡らしていたのは一目で分かり……ヘタクソな誤魔化しを図ろうとする御剣。

対して俺は軽くスルーして彼女を気遣ったりすると、御剣は勢い良く頭を下げて叫ぶように謝罪する。


「いやいや、全然 大丈夫だって。俺よりも、御剣はどうなんだ?」

「わ、私……ですか?」

「BETAは蔑ろに出来ないから国民は結局リスクを背負うだけ。それには納得できないんだろう?」

「確かにそう……なのですが、国や故郷・家族を失いつつも戦っている者が多いのは事実です」

「例えば俺みたいに?」

「は……はい。篁中尉の言葉で理解 致しました……当初の非礼に関しても……御許し下さい」

「だから俺は気にして無いって。だから、御剣も安心してくれ」

「し、少佐ッ!?」


≪――――ギュッ≫ ←抱き締めた音


「俺達は近いうちに佐渡島のハイヴを落として、必ず平和な日本を取り戻す」

「!?」

「勿論……いずれは全てのハイヴを落としてBETAを地球上から追い出すんだ。
 だから国民の皆には、もう少しの間 我慢して貰うダケだ。だったら御剣の目的も果たせるだろ?」

「……ッ……」

「流石に気の遠い話かもしれないけど……希望はしっかり持ってくれ。
 御剣が考えていた事は未来を見ていない。BETAは必ず殲滅"する"んだ」

「そ、そうか……そう……ですねッ」

「良いかっ? 世界の平和は俺達 衛士が取り戻すんだよ!!」

「はい……はいッ!!」


な……何ですか? この熱血展開。自分でも臭い台詞を言ってると思うけど、乗ってくれる御剣。

彼女は みるみるウチに先程の沈んだ表情を感じさせない笑顔に変わり、俺のテンションも上がる。

それによりミッション・コンプリート……ついさっき抱き締めてしまった事は誤魔化す事にしよう。


「その意気だ。さて……元気が出た様で何よりだよ」

「!? こ、これも白銀少佐の御陰です」

「じゃあ……行けるな? 訓練。もう始まってると思うぞ?」

「そ、そうでした。急がなければッ」

「頑張れよ? んなワケで俺はコレで――――」

「し、白銀少佐!!」←真っ赤

「どした?」

「こ……これからは、私の事は"冥夜"と及び下さい!!」

「なぬ?」

「そそそそれではッ」


≪――――ダダダダッ!!!!≫


最後に何故か御剣は名前で呼ばれる事を望むと、恥ずかしいのか凄い速さで走り去っていった。

良く分からんけど気にしないで置こうっと。原作でも普通~に"冥夜"って呼んでたしね。

ともかく御剣……いや冥夜の事はもう大丈夫なのは間違いない。クーデターでも安心だろう。

よって俺は満足気にその場を後にしようとしたが……通路の曲がり角に差し掛かった時……


「!?」×2


≪――――ドンッ≫


「おわっ!?」

「あっ……すみません」

「……って、彩峰か~」

「少佐」

「何でこんなトコに居るんだ?」

「さっき……御剣が走っていったのを見て」

「見て?」

「見失った」

「ダメじゃん」

「そだね」

「その時は、どう見えた?」

「何だか……普通じゃなかった気がした」

「やっぱ そう見えたよな……けど、もう大丈夫だ。さっき落ち着いたってワケで訓練に向かったよ」

「そうなんだ」

「そうなのさ」

「…………」


≪じ~っ……≫


……何と彩峰が今のタイミングで登場。榊とは違う、本当の意味でライバルな冥夜が気になった様だ。

だから問題が解決している事を告げるんだけど、彩峰は何故か"その場"を動かす俺を見ている。

本当なら冥夜を追って訓練に行くべきなのは決定的に明らかなんだが、彼女の意図が理解出来ない。


「どうした? 彩峰」

「……噂で聞いた」

「えっ、何を?」

「新しい武器が開発されてるって」

「あ~……パイルバンカーの事か?」

「名前は判らないけど、殴るって兵器の筈」

「うむ、正解だな」

「…………」


≪じ~っ……≫


――――成る程、把握した。もう手紙のイベントなんてスルーだ、訓練イベントに置き換えちまおう。


「……彩峰くん」

「にゃに?」

「丁度良かった、不知火・カスタムの2度目のテストに付き合ってくれ」

「了解」

「即答かよ!」

「少佐……行こ?」

「!? 何故さり気なく腕を組む」

「気のせい」

「気の所為もクソも無い気がするんだが……」

「いいから、いいから」

「全く……今回ダケだぞ?」

「サーセン」


そんな訳で、手紙のアレを完全放置して急遽2度目のテストをする羽目になった俺。

まぁ……任官してる衛士に続いて、訓練兵が始めて使うってデータが有っても損は無いか~?

そう勝手に判断すると、素直に彩峰に腕を引っ張られてしまう俺なのでした。

えっ……人目も有るんだから少しは抗えって? そんな事を言われても、心地良いから無理なんだ☆


「申し訳有りませんッ! 御剣 冥夜 訓練兵、只今戻りました!!」

「御剣……(この表情、白銀少佐は彼女を元気付けてくれた様ね)」

「!? た、篁中尉……先程は……」

「こらッ、何をモタモタしている!? さっさと着替えて来いッ!」

「こ……心得ました!!」

「もうッ、全く。御剣ったら心配させて……」

「えへへへっ……でも安心しました~」

「それにしても、慧さん何処行っちゃったのかなァ?」

「(い、一体 私の居ない間に……何が有ったって言うのかしら?)」←まりも




……




…………




……十数時間後。


「月詠中尉。どうやら、我々の出番は無かった様だな?」

「はい……白銀少佐が、冥夜様の心の支えになり始めている事は確かな様です」

「う~む。しかし、白銀少佐か……果たして彼に欠点など有るのだろうか?」

「……(あれ程の男であれば、殿下が興味を持たれる可能性も有るかも知れんな)」


――――ちなみにクーデターは5日の何時 発生か覚えてないので、結局 自慰りませんでした。


≪俺達は近いうちに佐渡島のハイヴを落として、必ず平和な日本を取り戻す≫


「……ッ……白銀少佐ァ……ど、どうし……てっ……」


≪勿論……いずれは全てのハイヴを落としてBETAを地球上から追い出すんだ≫


「……わ、私は……こんな……事を……くぅッ……」


――――だけどンな事を知らない冥夜タンは、白銀少佐の事を思って自慰ちゃったんだ☆(人生初)




●戯言●
自分でも意外。篁中尉に御剣訓練兵を殴らせてしまいました。カミソリレターは勘弁して下さい@w@
まぁ2人の中尉がイベントに加わるのに同じ通りじゃアレなんで、変えようと書いていたらこの有様。
故に説教臭い内容になったので不快感を抱かれる方が多いと存じますが、その場合は面目有りません。


●追記●
同日20時、許容出来ない誤字が有ったので修正しました。時間を空けての修正上げ申し訳ないorz
……と思ったら20時で修正したと思ってた箇所が直っていませんでした。御迷惑お掛けしました。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ39(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/12 20:01
これはひどいオルタネイティヴ39(前編)




2001年12月05日 早朝


「白銀さん、白銀さん」

「う~ん」

「あの……起きてください」

「……ッ……霞~、もうそんな時間かァ? ……ってイリーナ中尉!?」

「す、すみません。御休みの所を」

「いやいや、それは良いんスけど……まだラッパの時間には早くないですか?」

「そうなのですが、香月博士に起こす様に言われまして」

「ゆーこさんに?」

「はい。それに少佐ダケでなく、全戦闘員に即応体制で自室待機と言う指示が出ている所です。
 間も無く警報が有ると思いますが、既に伊隅大尉や神宮司軍曹は部隊の者を起こしているでしょう」

「……って事は……(クーデターか)……思ったよりも早かったんだなァ」

「えっ?」

「あっ、いや……こっちの話です。ともかく、面倒な事になりそうですねェ」

「そ、そうですね(……気付かれていたのね、私は ついさっき知ったのに……)」

「お~い霞ィ、起きろ起きろ~」

「んっ……?」


遂に迎えた運命の日なんだが、意外にも滅茶早い時間にイリーナちゃんに起こされて始まった。

彼女に起こされた時点で既に原作から外れているのはさておき、こんな時間から起こるのかよ……

こんなアテが外れるならもう一度原作をプレイしてりゃ~良かったぜ。今更言っても無駄だけどね。

まぁ、発生しちまったからには消化させないとダメなので、俺は横で眠る霞を何時もの様に起こした。

これも原作とは違う筈……そのうち霞は俺が起きている時に部屋に来たりしないだろうな~ッ?

そうなると自慰れなくなってしまうじゃないかっ! そんな邪な心配をしつつ俺の一日がスタートする。


「霞。今日は日本のピンチだぞ? 起きて顔を洗ったら、歯を磨いて着替えるんだ」

「……はい」(ふらふら)

「こっちこっち。あんよがじょ~ず、あんよがじょ~ず」

「…………」←実は朝に弱い霞


≪ジャアアァァ~~ッ……≫


――――少女洗顔中。


「これタオルね? んでヌリヌリ……っと。ほれ歯ブラシ」

「……ありがとうございます」

「……ッ……」←言葉が出ないピアティフ中尉


――――少女歯磨中。


「ガラガラガラガラ……ペッ。そんじゃ~……自分で着替えるんだな?」

「……はい」

「…………」

「イリーナ中尉、一旦 出て貰って良いですか?」

「えっ? り、了解しましたッ」


≪――――バタンッ≫


……AFをやっていれば知っていると思うが、実は霞は朝に弱いのである。

決まった時間に起きるのであれば問題ないんだけど、今みたいに早く起こされると覚醒が遅い。

だから今みたいに手伝ってやってるんだけど、何故俺がこんな事をしなきゃらんのだ……

いや、彼女が警戒を解いてくれている証拠だと考えれば問題無い。本当の妹みたいで可愛いモンだ。

既に自分用のマグカップや歯ブラシを持って来ている時点で確信犯だと思う気もするけどね。

さて置き。まだネボけているのか既に霞が着替え初めているけど、俺も直ぐ着替えるとするか。

此処でイリーナちゃんダケを退室させたのは、考えてみれば霞は"着替える"と言っても、
俺とは違って衣服を着るダケなので露出度のアップが無いからだ。俺は背を向ければ問題無いしね~。

ともかく……今回が初めての介助だったとは言え、上手い具合で手伝えれて良かったZE。


「(あ、あの娘……あんなに自然に白銀さんと……なんて羨ましい……)」


≪――――がちゃっ≫


「お待たせしました~」

「い、いえ」

「ところで、ゆーこさんは今 何処に?」

「地下の作戦司令室かと思われます」

「成る程(……じゃあ、先ずは其処に行けば良いのかな? 流れが分からないなァ)」

「……(納得されている? ……と言う事は、やっぱり状況を理解しているのかしら?)」

「イリーナ中尉は何が起こってるのか知ってます?」

「はい……存じておりますが……」

「大方 帝都守備隊が中心になって、クーデターでも起こしたんスよね?」

「!? お、御流石です(……まさか既にピンポイントで知っていたなんて……)」

「まぁ、ちゃっちゃと鎮圧するに限りま……」


≪――――ッ!!!!≫


「……っ……来た様ですね」

「防衛基準体制2か……」

「はい」

「……ったく空気読めよッ」←直前の台詞を遮られた的な意味で

「!?(こ、この気迫……そうよね、味方同士で戦う羽目になるだなんて、彼みたいな人だったら……)」

「あの……白銀さん」

「終わったか? 霞」

「は、はい……すみませんでした」

「良いって良いって。それよりも……何が起こったか分かるよな?」

「…………」←黙って頷く霞

「しっかし どうしたんだ? 何だか顔が真っ赤だぞ」

「!? な、何でも無いですっ」

「お、おい」

「(不覚です……幾らなんでも、アソコまで手伝って貰ってしまうだなんて……)」


≪すたたたたたたた……≫


「何故に」

「……(恥ずかしかったのね。余りにも自然に見えたから勘違いするところだったわ)」

「まぁいいか、それじゃ~地下に降りましょうか?」

「あっ……はい。私も其方に用が有ります」


んでイリーナちゃんとダベっているウチに警報が鳴り響き、今から横浜基地が無駄に忙しくなる。

これから何百人の血が流れ、何百機の戦術機が失われるんだろう? 無駄金ってレベルじゃね~ぞ。

ソレを考えるとクーデターの連中はマジ死ねと思うが、殿下と出会えるだけマシを考える事にしよう。

ともかく ゆーこさんに会いに行くか。走り去る霞の行動が謎だったが、きっと遣る事が有るんだろう。




……




…………




2001年12月05日 午前


……面倒臭い話だと思うけど、中央作戦司令室で起こった事を簡単に説明しておこう。

到着直後の現場にはラダビノッド司令・ゆーこさん・タマパパ・巌谷さんの姿が有った。

彼らは何やら言い合っており、そのうち巌谷さんは傍観を決め込んでいたのはさて置き。

内容としては珠瀬事務次官が国連と米軍をさっさと投入させてクーデターを鎮圧しようと言う反面、
司令とゆーこさんが"介入するなら段取りを踏んでくれ"と反論していと言ったカンジだった。

此処で特に ゆーこさんは色々と思うトコロが有ると思うんだけど……俺が考えるには、
米軍は受け入れたくないけど、そうも言っていられない。けどソレには最低限の準備をしたいから、
国連安全保障理事会の正式な手続きを行ってからにして……と時間稼ぎの意味で反論してたんだろう。

まぁ、この辺りの意図は原作者 然り本人しか分からいと思うので信憑性は全く無いけどね。


「ところで、巌谷中佐が何で此処に居るんスか?」

「ははは。少々クーデター軍の連中に目を付けられてしまってな、此処で厄介になっている」

「……って事は……」

「俺なりに、やれるだけの事はやってみたよ。旨くいったかどうかは知らんがな」

「わざわざ目を付けられた位ですし、大丈夫ですよきっと」

「そうだと良いんだが……未然に防げる事も出来ただろうに歯痒い限りだよ」


話を進める ゆーこさん達を眺めながら、巌谷さんと そんな話をしていたのは余談として。

タマパパとワカモト……(おいやめろ馬鹿)……いや、司令が去ると次に現れたのは左近さん。

彼は少しダケゆーこさんと前みたいな意味の無い会話を交わした後、此方に情報を提供してくれた。

流石に名前は出なかったけど、沙霧達は首相官邸を初め多くの主要機関を制圧したのは勿論、
今で言うテレビ・マスコミ関係や資源の有る施設も殆ど占領し、帝都をほぼ掌握してしまったとの事。

当然 殿下の居る城は斯衛軍が守っている様だけど……流石に戦闘は開始されていない。

だけどクーデター軍に紛れ込んだアホの意図的な誤射で近いうちに戦闘開始となるだろう。

マジでエラい事だわこりゃ。そんなクーデター(笑)の裏には米軍と国連が絡んでいるのは間違い無く、
大方 互いのオルタネイティヴ5推進派が手を組んで帝国軍の連中を操ったのは間違い無いらしい。

まぁ、簡単に言えば自分で帝国軍にクーデターを起こさせた米軍が、自分の軍でソレを鎮圧して、
アジアの発言権を奪い取って、オルタネイティヴ5(笑)を実現させようとしてるってワケだ。

まさに漁夫の利だね。……汚い、流石米軍 汚い。日本に原爆ってレベルじゃね~ぞ?

でも、ぶっちゃけオルタネイティヴ5推進派の連中はさっさと宇宙に消えろと思うんですけど。

その方が余程 地球に優しいだろう。でも予算も膨大だろうし、同時進行は無理なんでしょうね。

ともかく。今回は米軍の野望を潰しつつ、クーデターを画策した日本のアホどもを潰すのが目標だ。


『あはははッ、これで日本のダニが沢山減ったわね。さ~て、帰って寝なおそうかしら?』


……つまり、この様に ゆーこさんに何処ぞの皇帝みたいな台詞を言わせればオッケーなのです。

彼女なら本当に言いそうなのは さて置き、左近さんは何時の間にか険しい顔をしていた。

あぁ……俺が"今現在のイベント"で唯一 記憶に有る事 関連の台詞ですね? 分かりますとも。


「君はこれだけの豪華メンバーが、偶然 此処に集まったとでも思っているのかね?」

「……(シラネ)」←AA略

「ふむ(……成る程、その表情……彼女達を利用した結果、犠牲にするなら容赦しないと言う事か」

「し、白銀少佐……」←空気だったピアティフ中尉

「……(つまり、アンタは行動次第じゃ あたしにも牙を剥く可能性が有るってワケね?)」

「さて、お喋りが過ぎたな。では白銀武、これを……」


EXで最初から居る5人のB分隊のメンバー。これがマブラヴの顔……メインキャラと言う認識だ。

だから当然の様にアンリミに居てオルタにも最初からってカンジだから、偶然と言うか必然だろう。

ンな訳で取って付けた様に親とか血縁とか意味深げに言われても実感が湧きません、マジなハナシ。

そんな事を考えながら左近さんを眺めていると、彼は懐に手を入れて……これは間違いないッ!!


「――――鎧衣課長」

「むっ……何だね?」

「これをあげますよ」

「!? これは……君なのか?」

「いえ"ゆっくりたける"です」(紙粘土製)

「ゆっくり?」

「夜なべして作りました。貰って下さい」


――――見ろ、見事なカウンターで返した。土産を渡そうとするから、こうやって痛い目に遭う。


「そ、そうか。では……さらばだ」

「ちなみに捨てると呪われますよ?」

「!?(なんと……私が言いたかった事も御見通しと言う訳か、恐れ入ったな)」

「…………」←夕呼


……実を言うと、このカウンターの為ダケに"ゆっくりたける"を作った俺だった。

ちなみに渡したのは腋巫女バージョンで、魔法使いの方みたいにウザそうな顔はしていない。

ソレの効果が有ったかどうかは全くの謎だけど、左近さんはズれた帽子を正すと去って行った。

うむッ。それなりに手間は掛かったけど、少しダケ驚く顔をさせたので勝った気分だッ。

よって意味も無く達成感を覚えて汗を拭っていると、ゆーこさんが黙って俺を見ている。


「ゆーこさん」

「何?」

「ゆっくりたけるキーホルダー……要ります?」

「頂戴」

「あっ……わ、私もできれば……」

「はいはい、どうぞ中尉」


――――実は何個か作っていた。訓練も夕食を終えた20時以降、暇な時が結構有ったのだ。


「ちょっと、コレ何でムカつく顔してるの?」

「それは別(魔法使い)バージョンなんですよ。でも慣れれば可愛く見えますよ?」

「……ッ……そうかもね、言われてみれば……なかなか……」

「こ……こちらは可愛いですね」

「ソレは鎧衣課長に渡したのと同じなんですよ」

「白銀少佐、俺にはくれないのか?」

「すんません。3個しか作ってないんです」

「むっ、それは残念だ」

「……って そんな事よりピアティフ、皆は集めてあるの?」

「はい」←空気中に召集済み

「なら善は急げよ」

「ではブリーフィングルームに」

「うィ~っす」

「本当に残念だ」

「…………(汗)」←武


――――こうして4人で司令室を出て行く際、大事なことらしく2回言われました。なんでやねん!!




●戯言●
何方か描いて下さい(誰得)そして当たり前の様に居る巌谷中佐。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ39(中編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/14 23:55
これはひどいオルタネイティヴ39(中編)




2001年12月05日 早朝


「揃ってるみたいね」

「敬礼ッ!」

『――――っ』


俺・ゆーこさん・イリーナちゃん・巌谷さんの4人でブリーフィングルームに入ると、
207B分隊の5名+まりもちゃん……そして朝 姿を見せなかった篁の姿が有った。

彼女達は俺らの入室と同時に此方に向き直ると、揃って敬礼する。全く同じ凛々しい動作で。

そのうち声を出したのは まりもちゃんダケなのは さて置き、当然 此方も敬礼し応える。

だけど ゆーこさんに限っては、ヒラヒラと面倒臭そうな表情で右手を振る事で流していた。


「……ッ……」

「んっ?」

「!!!?」

「(……冥夜?)」


ゆーこさんは相変わらずだ……きっと一生こんな性格なんだろうね~と苦笑していると。

何となく冥夜と目が合ってしまった瞬間、光の速さで視線を逸らされた。昨日と同様 赤面して。

ははァ~ん、大方 人生で始めて異性に名前で呼ばれる様になるのが恥ずかしかったのかねェ?

EXでオマエと呼ばれて繰り返しブツブツとツブやいていたみたく……何か違う気もするけどな。

……そんな意味の無い事を考えていると、イリーナちゃんを斜め後ろに控えさせ、
俺達 全員の正面に立っている ゆーこさんに、まりもちゃんが おずおずと何か話し掛けようとする。

まぁ疑問に思うのも最もだよな。訓練兵たちに、副司令 直々にブリーフィングするとか有り得んし。


「ふ、副司令……あの、何故 我々にこんな機会を?」

「自惚れさせる気は無いけど、アンタ達が相応の部隊だからよ」

「それでは どの様な任務に宛がわれるのですか? やはり実戦投入に……?」

「近いうちに分かるわ」

「はあ」

「とにかくピアティフ、皆に資料を配って」

「畏まりました」


イリーナちゃんの手によって全員に資料が行き渡った直後、ゆーこさん宛てに通信が入る。

どうやらラダビノッド司令からの様子……状況が状況だから追加情報なのが有力だろうね。

それにより ゆーこさんとイリーナちゃんが退室し、残った俺達は資料を読んで過ごす羽目になった。

しかし相変わらず読み難いな……日本語の資料。脳内で白銀大佐に聞かんと意味不明なモノも有る。

……とは言え今後 命に直結する事も書いてあるかもしれない。よって空気と資料を同時に読む俺。

嗚呼、やだな~こう言う沈黙って。ゆーこさんとイリーナちゃん、早く戻って来ないかな~?




……




…………




≪コッコッコッコッ……≫


「博士」

「何? ピアティフ」

「白銀少佐や巌谷中佐……そして神宮司軍曹にも来て頂いて置いた方が、
 再びブリーフィングルームに戻った際、円滑に事を進めれたのではないかと思ったのですが」

「篁はともかくとして、纏めて説明すると訓練兵が知らなくても良い情報が入るって事ね?」

「は、はい。重要な情報に限っては後に少佐・中佐の口からなら中尉に言って頂けるでしょうし」

「まぁ~良いじゃない。そこを旨く説明するのが あたしたちの役目よ?」

「!? そ……そうですね、私達の口から合間を見て白銀少佐に話すのも良いですから……」

「そう言う事」

「……(意外だわ、香月博士がこんな非効率的な事を考えるなんて)」

「しっかし、なかなか良いわねコレ。白銀の顔っぽいのに……」←キーホルダーを見ながら

「……(この"ゆっくりたける"……丸っこい白銀さんの顔で、薄っぺらい紙粘土なのだけど)」


≪ゆっくりしていってね!!!≫


「暇が出来たら気分転換に、これのAAを作ってみるのも悪く無いかしら?」

「……(何故か裏にマジックで"ゆっくりしていってね"と書いてあるわ)」

「とにかく 焦らず往くに限るわ。なんか そんな気分なのよ今は」

「はあ(最初は可愛いマスコットかと思ったけど、この状況の為に作ってくれたのね……私達の為に)」




……




…………




……2人の留守中、資料を読み始めて数分後。


「クーデターの首謀者は帝国本土防衛軍・帝都守備 第1戦術機甲連隊 所属の沙霧 尚哉 大尉……か」

「!?」←彩峰

「まったく……全国のナオヤさんに謝れっつ~の」

「……ッ……わははは、相変わらず発想が凄いな君は」

「有難う御座います中佐」

「いや、褒めてないぞ?」


未だに続く沈黙の中で、俺は書いて有った沙霧の名前をポロっと口に出してしまった。

それにより僅かながら彩峰の息が漏れた気がしたので視線を移してみると、彼女は眉を落としている。

ふむ……昨日のテストじゃ"沙霧"のサの字も話題に触れなかったから、この後フォローしないとね。

だけど今は大人しく資料を読み進めるしか無く、更に十数分後 ゆーこさん&イリーナちゃんが戻る。


「それじゃあ最新の情報よ、有り難く聞きなさい」

「キャーユーコサーン」

「白銀……ナメてんの?」

「サーセン」


重い雰囲気を穏和しようと、つい言っちゃったんだ☆ でも今は流石にコレ限りにして置こう。

……さて、ゆーこさんが先ず述べたのは後 2時間もすれば横浜基地は米軍を受け入れるという事。

そして仙台臨時政府が鎮圧部隊を編成中。んでもって各地の新しい戦闘情報がチラホラ。

ソレらに関してナントカ艦隊やらナントカ師団やらナントカ連隊やら色々と挙がってたダケでなく、
日本の地名も沢山 出て来てサッパリ理解できませんでした。ゆーこさん喋るの早過ぎですマジで。

ゲームだと飯食ったりググったりしながら自分のペースで進めれてたから多少は理解できてたが……

真面目に聞こうとしていても俺の耳に念仏。それなのに篁とか何 頷きながら聞き入ってるワケ!?


「最後に首相官邸で起こった事に関してなんだけど……」

「!?」←千鶴

「ピアティフ」

「はい」

「(予想通りだなァ、榊が……)」

「これに限っては正確な情報は出ていません。内閣の人間が複数 殺されていると言う話も有らば、
 予め この出来事を予測していたのか、既に逃れていると言う情報も曖昧ながら漏れています」

「クーデター軍の連中が事実を隠蔽してるのか、第3者が何らかの工作をしてるのか。
 詳しい内容に関しては分からないわね。まぁ……あたし達にとっては どうでも良いけどね~」

「……ッ……」


話は変わり榊の親父サン(首相)関連となるが、ワザとらしくアバウトな態度を取るゆーこさん。

一方 今度は彩峰に続いて榊のカラダが強張り……仲悪しとは言え父の安否が心配なのだろう。

だけど榊は訓練兵なので、真面目な彼女は口を挟めない。"今回"は冥夜を殴った篁ダケでなく、
イカつい事に定評の有る巌谷さん(笑)も居るのだ。当然 発言直後まりもちゃんも真っ先に注意する筈。

それに榊 自身も真実を聞くのが怖い……と言う事から言葉に詰まっているのかもしれないね。

……だけど、コレは明らかに正史とは違う流れだ。曖昧・隠蔽・工作……何それ美味しいの?

即ち原作では間違いなく榊首相は沙霧 自らが国賊とみなして殺しており、情報も直ぐ伝わった。

故に榊の親父さんは、きっと生きて……そう考えて咄嗟に巌谷さんに視線を移してみると……


「(ふっ……やれやれ)」


≪バチコーン!!≫


「――――!?」←武


溜息混じりに腕を組みながら俺にウィンクした巌谷さんの姿が目に入った。しかし何だ今の擬音は?

それはそうと、巌谷さんの画策が旨くいったみたいだね……何をやったかは分からんがGJだZE。

榊首相が100%無事かまでは期待できないけど、今の巌谷さんになら掘られても良い気がした。

いや、冗談ですよ? ……そうケツを押さえる中。イリーナちゃんがインカムに手を添えながら言う。


「間も無くの様です」

「あらそう。じゃあ、まりも」

「了解……映像 出ます」


≪……ヴンッ≫


「…………」×11

『親愛なる国民の皆様、私は帝国本土防衛軍・帝都守備連隊所属……沙霧 尚哉 大尉であります』


指示を受けた まりもちゃんの手で、正面のモニターに白い軍服を着た男が映し出される。

名乗った通り誤変換に定評の有る沙霧だ。そんな彼の声明が開始されるんだが……

ゴメン、睡眠不足だから寝て良い? 実は資料を読み始めてから睡魔に襲われていた俺だった。




……




…………




……クーデター軍の代表・沙霧の声明が流れる中、俺を含めて各々は様々な反応を示していた。

イリーナちゃんは無表情でモニターを眺めており……恐らく沙霧の台詞を頭に叩き込んでいる様子。

巌谷さんは腕を組みながら訝しげな表情でモニターを見上げていて、顔が普通に怖かったです。

篁も沙霧の言葉にイライラしているのか、腕を組んで瞳を閉じながら声明を聞き流している。


「(し、白銀さん……たまに顔をあげるダケで、俯いて殆ど動かないわ)」←まりも


次にB分隊。まりもちゃんも何だか無表情で見ている。やっぱ冷静なのは良い事ですよねェ?

んで分隊長の榊は親父サンの事も有り、睨み付ける様にモニターを凝視し聞き入っているけど……

彩峰は対照的に眉を落としながら俯いて声明を聞いている。思ったより重傷なのかもしれない。

一方 冥夜の表情はコロコロ変わっている。何せ彼女も一部、沙霧と同じ事を言っていたのだから。

まぁ彼女のフォローは大丈夫だよな? そして珠瀬と鎧衣だけど、ボヘ~ッと普通~に見ていた。


「(アイツも相当 腹が立ってるみたいね……そろそろ切り上げ時かしら?)」


最後に ゆーこさんだけど……ずっと、つまらなそうにポリポリと頭を掻きながら聞いているダケ。

しかも……モニターは結局一度も見ず終いらしかった。ホントど~でも良い内容だったんですね。

ちなみに俺は どんな様子だったかと言うと、半分 立ちながら眠ってました。まだまだ寝足りません。


「……これ以上は時間の無駄ね。まりも、切って良いわよ?」

「はい」


≪――――ブツッ≫


「御剣」

「はっ」

「あたし達 人類 共通の敵は何?」

「BETAでありますッ」

「じゃあ、BETAの巣が一番 近い場所は何処?」

「甲21号……佐渡島ハイヴであります」

「今 また其処のBETAが5000攻めて来たらどうなると思う?」

「!? そ、それは――――」

「あっと言う間に大惨事よ……ヘタすりゃ日本が堕ちるわ。つまり、死活問題どころじゃない。
 なのに、あの連中は綺麗事ばかり並べて そんな簡単な事にまで頭が回っていない」

「……(い、今の私には耳が痛い限りだ……)」

「あ~あ、ホント嫌になるわ……事を起こしてでの都合の悪い事は全部ひっくるめて無視。
 挙げたらキリが無いし、相手にするダケでも馬鹿らしいったらありゃしないわねホント~に。
 自分達には正義が有るから、万が一にでもBETAは攻めて来ないだろうとでも思ってんのかしら?」

「……ッ……」

「……っと、愚痴が過ぎたわね。そんなワケで、今回の相手は"こんな連中"よ? まりも」

「はっ」

「それで今回はアンタ達(B分隊)を使う際、白銀と篁を随伴させるわ」

「!?」

「何よ嫌だった?」

「い、いえ……それは むしろ嬉し……ではなくてッ! やはり戦線……あっ……いえ、了解しました」

「それで良いのよ。言ったでしょ? "近いうちに分かる"って」

「は……はい(悔しいけど、知る権利が無い限りは何も言えないわ)」

「じゃあ、話を続けるわね? 巌谷中佐」

「はッ!」


≪――――ザッ≫


「知ってる娘も居ると思うけど、彼は帝国軍技術廠の第壱開発局・副部長。
 先月の22日から横浜基地に臨時中尉として着任してる篁の上官に当たるわ」

「巌谷 榮二だ。お初にお目に掛かる」

「敬礼!」←まりも

「――――ッ」×5

「さて、今回 貴様等と随伴する2人の件だが……白銀少佐には、日米共同開発計画。
 "XFJ計画"で開発された不知火・弐型に搭乗して貰う事になる」

「えぇっ!?」←武

「そ、そんなッ」←唯依

「ちょっと、何でアンタも驚いてんの?」

「えっ? い、いやだって……(もう出来たのかよ!? ……って言うか乗るのッ?)」


俺が驚愕しているウチに、何時の間にかイリーナちゃんがモニターに弐型の全身図を映していた。

これって、どう言う事なの……新型に乗れるのは嬉しいけどさ、もしかしてブッつけ本番?

物凄ェ不安なんですけど、スサノオも普通に乗りこなした白銀はコレくらいやらんとダメなのね。


「だがこれは往来の不知火・弐型では無い。不知火S型のサブ射撃を取り入れた"最新型"だ。
 しいて言えば……うむ、不知火SⅡ型と言ったところか。また、新たな武装のテストも行って頂く」

「あぁ、ライフルですか~」

「うむ。"01式 支援狙撃砲"……支援突撃砲の改良型だ。その威力は飛躍的に上がっている。
 いずれは砲撃支援の主要武器として運用する予定だが、これら件に関しては自己紹介の"ついで"だ」

「!?」×5

「あ……あの、巌谷中佐」

「神宮司軍曹だったな? 発言を許可しよう」

「御言葉ですが、理解 致しかねます」

「貴様の教え子は訓練兵の身。それなのに相手はBETAでは無く"人間"と言うフザけた初陣だ。
 SⅡ型や新兵器の事迄 頭が回らないのは勿論、自分の身を守る事すら困難なのが確かだろう」

「…………」×5


――――この瞬間、巌谷さんは真剣な顔から破顔し表情が180度変化した。


「だから"君達"は細かい事は忘れてくれて良いと言う事だ!」

「……ッ!?」×5

「実戦では訓練で叩き込まれた事を忘れず行動し、各々の死力を尽くす事ダケを考えろッ。
 そう健闘する君達を、SⅡ型に搭乗する白銀少佐……そして篁中尉が必ず守ってくれる!!」

「……(お、俺が? ……いや、そりゃ~守るけど)」

「初の実戦では生き残る事に意味がある。それが上官の手を借りたモノで有って何が悪い?
 勿論 頼り過ぎてもイカんが、衛士の初陣など そんなもんだ。……当然、俺の場合もな」

「……(巌谷中佐はまさか、この娘達を安心させる為に機体の説明を……ッ?)」

「そう言う訳で、貴官の教え子の頼もしい味方となる戦術機を簡単に紹介させて貰ったと言う訳だ」

「な、成る程……理解しました。有難う御座います」


ふ~ん。ただ顔見せ(自己紹介)するダケなのもアレだから、ついでに今回が初陣となる、
榊達を巌谷さんなりの遣り方で激励したってワケか……なかなか味な真似をするねェ。

これで俺の巌谷さんに対するポイントが飛躍的に上がった。凄い肩書きを持っているダケ有るぜ。

その気遣いを理解したのか、B分隊の緊張が結構 解けた気がする。特に榊と彩峰あたりが。


「それと、もうひとつ」(キリッ)

『…………』←再度 緊張したB分隊の面々

「君達は娘と年齢が近そうだな。良ければ唯依ちゃんの友達になってやってくれ」

「!?」×5

「WAO」←武

「(な、ななな何を言って……!?)」←唯依

「神宮司軍曹。俺からの話は以上だ」

「!? か、畏まりましたッ。皆……聞いたな!? 貴様等は5人ダケで戦うのではないっ!
 私は勿論の事、白銀少佐に篁中尉をはじめ大勢の方達の後ろ楯が有る事を決して忘れるな!!」

「はい!!」×5

「……これで自分から言う事は終わりました、香月副司令」

「ふ~ん、じゃあ終わりね。……まりも」

「はっ。これから全員 戦術機のフィードバック・データ等の調整に移り、
 終了後は即応体制で待機していろッ。それでは解散とする!!」

『――――了解ッ!!』


まりもちゃんの言葉に対し、返事+敬礼で答えたB分隊のメンバー5名は、
俺の方に向き直って再度敬礼すると、ブリーフィング・ルームを出てゆこうと歩き出す。

しかし俺は先程の展開から若干2名ほどに言いたい事が有る。……フラグ的な意味で。

全く同じ流れにするのは俺の階級や記憶の所為で不可能だけど、形ダケはこなさなくてはッ。


「榊・彩峰」←小声

「は、はい?」

「……何?」


当然 上官に呼ばれた事から動きを止める2人。それが意外だったのか驚いている様子の榊。

対して冷静にタメ口を使う彩峰。ちなみに俺&榊にしか聞こえない程 小さな声で喋ったので無問題。

それに関して榊は性分から言いたい事が有りそうだったが、今回も流石に言葉を飲み込んでいた。


「先に屋上に行って待っていてくれ、少し話が有る」

「!? えっ? でも……」

「……分かった、行く」

「素直で宜しい。榊も ちゃんと来るんだぞ?」

「と言う事は……2人同時に御話が有るのですか?」

「そうだけど、都合でも悪いのか?」

「やらしい」

「なっ、なんで そう言う考えになるのよ!?」

「おいィ……話がズれちまってるぞ?」

「!? す、すみません。了解しました……参ります。勿論 都合など悪く有りませんからッ」

「じゃあ宜しく~」

「チッ」

「あ・や・み・ねェ?」

「ほらほら、それは出てってからにしとけって」

「うぐっ……」

「……(少佐の事だから、声を掛けてくれるって思ってた……でも、何て言ってくれるのかな)」




……




…………




……まりもちゃんに続いて ようやく榊と彩峰も退室すると、俺はゆーこさんに向き直る。


「ゆーこさん、俺達はどうすれば良いんスか?」

「篁は巌谷中佐と新型のチェックをするみたいだから、アンタはシミュレーターでもしてなさい」

「そう言う事だ。急に悪いな白銀少佐」

「別に謝罪は要りませんけど……クーデター中に訓練しなきゃダメなんスか~?」

「そ、そうですッ! 完成が間に合ったのは流石ですが、この状況で乗り換えるだなんて!!」

「貴様に発言は許可していないぞ? 篁中尉」

「クッ……」

「時間に余裕なんて有るんスか?」

「あの娘達が居ない今だし言うけど、アンタ達が"出る"のは暗くなってからの予定だから問題無いわ」

「まぁ、それなら良いんですけど」

「だったら あたし達は行くわよ? 適当に始めていなさい、白銀」

「し、白銀少佐なら2時間もあれば調整は可能だと思います……頑張って下さい」

「イリーナ中尉……」

「では(……不知火SⅡ型……勿論、白銀少佐の様な人でなければ急な搭乗は反対していたわ)」


コレに関してもエラく原作と変わっちまったな……新型と新兵器が納品されたどころか、
クーデターの真っ最中にシミュレーター訓練で慣れてからSⅡ型を実戦投入……だとッ?

まぁ……篁&巌谷さんが居る時点で規格外だし、SⅡ型に関してはその余波って考える事にしよう。

それにしても、やけに巌谷さんは詳しそうだな……影で動いてくれた事が影響している線が強そうだ。

ンな事を考えているウチに ゆーこさん&イリーナちゃんが退室し、巌谷さん&篁も続こうとする途中。


「白銀少佐、コレが"不知火SⅡ型"の簡単な資料だ。軽く目を通して置いてくれ」

「はい」

「そして君が乗っていた不知火S型だが、そのまま神宮司軍曹が乗る事となる予定だ」

「了解ッス。伝えておきますよ」

「では篁中尉、俺達はハンガーに……んっ?」

「……叔父様」(ゆらり)

「ど、どうした?」

「公で私を からかうのは……止めてくださいと言ったじゃないですか!!」


≪――――ドスッ!!!!≫(ボディブロー炸裂)


「ごふぅっ!?」

「それに白銀少佐に更なる負担を……少し其処で反省していて下さいッ!」

「あの……す、すまん……本気で痛かったんだが……」

「知りません。それでは白銀少佐、後ほど御会いしましょう」

「OK、いっておいで~」


擦れ違い様、巌谷さんに100ページ程の"SⅡ型"の資料を手渡されたので、
凛々しく敬礼して退室する篁と軽く言葉を交わしつつ、軽く目を通す事にした結果。

数十秒後のブリーフィング・ルームには俺と鳩尾を押さえて蹲る巌谷さんの姿が残った。

少し前に何か見落とせない出来事が有った気がするけど、俺のログには何も無いな。

嗚呼、しかし この人……最後にB分隊に告げた言葉が無きゃ完璧だったのに、無茶しやがって。


「……ふ、ふふふッ……逞しい娘に育ってくれて俺は嬉しいぞ? 唯依ちゃん」

「でも本当の親父さんには今夜辺り祟られるんじゃないスか?」


――――そう頭を掻きながら彼に前述の台詞を残すと、俺は資料を片手に屋上を目指すんだけど。


「あっ……まりもちゃん、まりもちゃん。何か俺のS型を そのまま乗って良いそうですよ?」

「えっ? ほ、本当ですか?」

「まりもちゃんの以前のS型は、何時の間にか ゆーこさんが篁のにしちゃってますからね」

「あうッ……」

「それについては ゆーこさんだから諦めて下さいとしか言えませんけど……考えてみれば、
 俺のフィードバック・データを少ない調整で乗りこなせるのって貴女しか居ないんですよ。
 だから是非とも乗ってください。無理そうなら速瀬にでも無理矢理 押し付けますんで……」

「と、とんでもありませんッ! あああ有難う御座います!!」


――――途中で まりもちゃんと遭遇したので先程の事を言うと、何か凄い喜んでくれて驚きました。




●戯言●
あれ? これって当日だよね? んで巌谷さんのターン。どうしてこんなになるまで放って置いたんだ!
なんだか区切りが良かったので中編になってしまいましたが後編は速瀬や涼宮(姉)とかも出ます。
ちなみに実際に有ったとして私が一番欲しいのは、ゆっくりまりもです。かすみとゆうこも捨て難い。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)①
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/17 05:05
これはひどいオルタネイティヴ39(後編)①




2001年12月05日 午前


「もう来てたみたいだな、2人とも」

「と、当然ですッ」

「遅い」

「ですよね~、そしてスマン」

「ちょっと彩峰……貴女さっきから、いい加減にしなさいよ!」

「相手は少佐だから大丈夫?」

「それを俺に振るのか……?」


ハンガーへと走る まりもちゃんを見送り屋上へとやってくると、榊と彩峰が既に待っていた。

何だか榊がイライラしているみたいだが……その理由は簡単に理解できる。自重しろヤキソバ娘。

でもデータを聞くに、相性は なかなか良いらしい。これも正史の設定を変えた事になるんだろう。

……そんな2人はエロスーツに専用のジャケットを着込んだ姿。別に強化装備ダケでも寒くないんだが。

しっかし、こんな速い時間に既にエロスーツ着ちまってトイレとか面倒臭そうだな……関係無いけどね。


「それで白銀少佐、私達に何の御用でしょうか?」

「…………」

「あァ、それなんだが……先ずは彩峰」

「はい」

「お前の父親・彩峰中将は、光州作戦での敵前逃亡で酷いレッテルを貼られちまってたんだよな?」

「!?」

「そんな彼の部下であった沙霧がクーデターの首謀者だったから、ソレを気にしてるんだろ?」

「……バレてた?」

「表情見て特定 余裕でした。それに、来てんだろ? ソイツからの手紙が何枚もさ」

「……ッ!?」

「な、何ですって? だったら彩峰……貴女……」

「……ッ……ち、違う……手紙は来てたけど、私は……」

「分かってるさ、読んでないんだろ?」

「!? う、うん……」

「何で分かったみたいな顔だな~?」

「…………」

「簡単さ。お前は父親に失望している……それなのに彼を慕う人間が訪ねて来たりしていて、
 既にストレスで寿命がマッハ。しかも彼に息子の様に可愛がられていた沙霧の手紙まで来る」

「……(寿命がマッハって……何?)」×2

「だから、ソレまで読んだら彩峰は精神的にキツい。だから読まない……そうだな?」

「……正解かも?」

「そりゃ~良かった」←疑問系はスルー

「けど……それがどうかしたの?」

「彩峰ッ!」

「いや、いい」

「ですが白銀少佐――――」

「いいんだ」

「……くッ……」


……今現在の彩峰は、色々な思考がグチャグチャになり、その結果アバウトになっているんだろう。

以前 親しかった沙霧がクーデターの首謀者だったと思いきや、上官に真実を追究されている。

もしかすると、手紙の件を黙っていた自分は投獄されるのではないか? ……ンな事も考えてるのかも。

だから多少 敵意を感じる視線が向けられる。矛先を俺に向けるのは間違っているが、ストレスの影響か。


「それなら本題だ彩峰」

「何?」

「――――気にするな」

「!?」

「そもそも彩峰中将は逃げ遅れた民間人を救う為に、BETAに背を向けて味方を見殺しにしたんだろ?
 ソレなのに、先日の天元山に関してはどうだ? 国が取ったのは、民間人を多少 強引だけど救い、
 軍の負担も極めて低い合理的な手段だった。……コレに関しては何も問題は無いよな?」

「うん」

「榊は どう思う?」

「えッ? その……避難した国民には申し訳無い限りですが、ソレも少しでもBETAに備える為。
 今回の負担は必ず我々 全ての衛士がBETAを殲滅し、平和を齎す事で応えたいと思っています」


……訓練兵で有る私が言えた事では無いですが……そう付け加えて榊は話を締めた。

彼女の表情は真剣であり、心から そう思っているんだろう。やっぽ榊首相の娘と言ったところだねェ。

仲が悪いらしいけど……天元山での件の決断は彼のモンだろうし、根本的な思考は一緒なのかもな。

よって榊の返答に満足気な表情と気分で彩峰の方を見ると、彼女も今の言葉に異論は無い様だった。


「宜しい。その一方……彩峰中将の場合は民間人を助けて味方を見殺しにするか、
 味方を撤退させて民間人と自分達も死ぬかの瀬戸際に立った結果、民間人達の命を選んだ。
 まぁ……俺もあんまり詳しくないから、後者の場合は中将が死ぬワケじゃ無いかもしれないけど」

「……それで?」

「比べてみろって。彩峰中将の場合は選択肢が2つに1つで、どっちにしろ多大な犠牲が生まれた。
 対して天元山の方はどうだ? 不法帰還者の命を犠牲にするか、救助する衛士の命を危険に晒すか。
 その2つダケじゃなく、民間人も衛士も危険を伴わない選択肢も有って……今回をソレを選んだんだ」

「…………」×2

「――――彩峰。もしオマエの親父さんだったら、どの選択肢を選んだんだ?
 不法帰還した民間人を溶岩に溶かしたか? それとも衛士を戦術機ごと溶かしたのか?」

「……違う」

「だとしたら何だ? 沙霧みたいに、人類にとっては最善だった選択肢を批判して――――」

「違うッ! 父さんは そんな事はしない!! ……あッ」

「彩峰……」

「そうか、だったら簡単だろ?」


ワザとらしく言う俺の台詞が全て終わる前に、父親と沙霧が"同じ"である事を否定した彩峰。

その自分の行動を、彼女自身も驚いている様だ。隣にいる榊も彩峰が叫んだのが意外だったらしい。

まぁ、彩峰の親子の細かい事情なんて知らないけど……今の彼女の反応が見れれば十分だ。

よって俺はウザそうな笑みを浮かべながら彩峰に近付くと、軽く左肩に右手を添えて言った。


≪――――ポンッ≫


「……っ……」

「つまり沙霧はお前と親父さんとは違う。彩峰の名を免罪符に、履き違えた理想を追ってるに過ぎない」

「少佐……」

「……何でも知っているように見えるけど、俺は別に全て理解してるワケじゃないよ。(本音)
 沙霧が何故リスクを考えて迄お前に手紙を送ってるのかも、実際の彩峰の本心がどうなのかも。
 それに、沙霧が本当に自分の意思でクーデターを起こしたのか? なら影で糸を引いてたのは誰だ?
 結局は何も知らない。……だけど、今 起こっている事がアホらしいって事は分かってるつもりさ」

「ハッキリ言うね」

「あ、アホらしいって……」

「俺は素直だからよ? 言いたい事は正直に言うし、沙霧が目の前に居たら殴る」

「……ふふっ」

「んっ? 何か可笑しかったか?」

「!? べッ、別に」

「そんなら良いが……実戦 頑張れよ? ちゃんとフォローしてやるからさ」

「本当?」

「たぶん」

「薄情者」

「はははッ、冗談だよ」

「……でも……有難う」

「うん?」

「今回の任務で、自分の気持ちにケリをつける。実際 彼と鉢合わせる可能性は低いだろうけど……」

「…………」×2

「国連軍の衛士として、ちゃんと仕事をこなす。それを成し遂げるのが、今回の私の戦い」

「うむ、良い心意気だ」

「……ども」


どうやら彩峰は……現実と戦う決心がついた様子。これで彼女は安心と言ったところかな?

故に満足した俺は彼女の頭をグリグリと撫で、彩峰はそれを(多分)心地良さそうに受け入れてくれた。

そうなると次は榊か。首相は生きてると思うけど、完全に無事だと分かっていないぶんフォローし難いぜ。


「んじゃあ、榊」

「は、はいッ」

「お前に関しては分かりやすいな。榊首相が心配なんだろ?」

「……ッ……そ、そうですが……心配しないで下さい」

「何で?」

「それは……私は訓練兵だとは言え衛士だからです。私情など軍人にとっては関係有りません。
 わざわざ少佐が心配してくれるのは嬉しい……ですけど、気遣って頂く必要は――――」

「お前 頭悪ィな、娘が親の心配をしないのはずるい」

「えぇっ?」

「す、すまん。今のは聞き流してくれて構わないが……確かに榊の考えは間違ってない」

「それならッ」

「けどな、頭 硬過ぎなんだよ。何の為に彩峰と、榊を交えて"今の話"をしたと思ってんだ?」

「!?」

「凄く心配な癖に……軍人なのを理由に誤魔化すのはズルい?」

「そう言う事だ」

「うぐっ……」


――――初っ端の反応は、予想通りと言ったところ。しかし問屋が卸さないんだZE。


「んで、どうなんだ?」

「……ッ……し、正直なところ……父が気になって仕方ありませんでした」

「素直で宜しい」

「……大丈夫なの?」

「俺は生きてると思うぞ」

「!? ど、どうして そう言い切れるんですかッ?」

「奴等が本気なら(正史がそうだったし)本来 榊首相を斬って即 世間に知らしめたハズだ。
 それなのに発表が無い。だとすれば生きてるとしか考えられないだろ、常識的に考えて」

「でもッ!!」

「分かった分かった、教えてやるよ。実は榊首相を生かす為に、巌谷中佐が裏で動いてくれたんだ」

「い、巌谷中佐が……?」

「あァ。実際に何をやったのかは知らんけど、あの人なら旨くやってくれたと思うぞ?」

「進言したのは少佐?」

「ちょっ……おま、何で知ってんだよ」

「当たってたんだ」

「か、カマ掛けられた!?」

「……(白銀少佐は私が抱え込まない様に、自分にも彩峰中将の話を聞かせてくれた?)」

「やっぱり何でも知ってるんじゃ」

「いやいや、知らないって」

「……(それ以前に、私の為に巌谷中佐に進言をしてくれるなんて……)」

「妬ましい」

「いや、それキャラ違うから!」

「……(自惚れてるみたいだけど、少佐なら本当に"私の為"にやってくれたと思える……)」

「それよりも少佐」

「!? しまった、そうだった。彩峰、お前もう喋んなッ」

「…………」←妬ましそうな視線


榊は普通に真面目……ヘタすりゃ篁 以上だから、五月蝿くなる前に巌谷さんの名前を出した。

すると黙り込んでしまった榊。こりゃ地雷でも踏んじまったか? そんなウチに彩峰との漫才開始。

いかんいかん、これでは話が進まないZE。よって彼女を黙らせると榊の反応を待つんだが……


「少佐っ!」

「なんだい?」

「御気遣い有難う御座いましたッ、大分落ち着けた気がします」

「100%無事とは、まだ言い切れないけど?」

「……ッ……それでも訓練兵の私に、其処まで白銀少佐が尽くしてくれたのです。
 分隊長として相応の働きをしませんと、仲間達に示しが付きませんから」

「なら良かった」

「それに――――」


≪既に全てを失いつつも尚、戦い続ける者の気持ちを……考えた事が有るのかと聞いているッ!≫


「それに?」

「!? い、いえ……何でも有りませんッ(少佐と比べれば私の境遇なんて、まだまだマシなのよね……)」

「なら流すけど、榊くん」

「は、はい?」

「例え残念な結果だったとしても、俺の胸くらいなら貸してやるから安心しとけよ?」

「なっ!? え、縁起でも無い事を言わないで下さいッ!」

「悪い悪い、冗談だよ」

「し……白銀少佐は若くあれど立派な佐官なのですから、その辺りの発言を……」

「(……でも、拒否はしないんだ)」

「だから悪かったって、それより彩峰に負けるなよ~?」

「と、当然です!!」

「……ッ……」←凄く何か言いたそうな彩峰

「それなら2人とも大丈夫だな~? 任務での健闘に期待する!」

「――――はっ!」×2


思ったよりも榊は大丈夫だった様で、どうやら今の間で自分なりの答えを見つけたらしい。

別に大して気の利いた事は言ってなかったんだけど、見るからに肩の力は抜けているみたいだ。

だったら、冗談抜きで大丈夫そうかなァ~? そうなれば……早くも このイベントは終了ですね。


「じゃ~急いでハンガーに行くんだ。"冥夜達"が待ってるだろうしさ」

「!?」×2

「んっ……ど、どうしたの?」

「少佐」←武の至近距離に接近

「うわっ、びっくりした。……何なんだよ?」

「私も名前で呼んで良いよ」

「あ、彩峰ェ!?」

「……ダメ?」

「いや、別に構わないが」

「それなら宜しくね。……じゃ」

「あァ、またな~?」


原作の様に軽く手を立てて屋上を去ってゆく彩峰……いや慧。そして当然の如くケツを眺める俺。

そうなると必然的に俺と榊が その場に残され……彼女は何故か俯いて震えておられます。

やっぱり不安になっちまったのかな~? そう考えているうちに顔を上げた榊は何故か真っ赤だった。


「……榊?」

「し、ししし白銀少佐ッ! 私の事も……!!」


――――んで榊が言ってきた事は言うまでも無く、正史に反し2人を名前で呼ぶ事になったのでした。




……




…………




……5分後。


「アイツもまだまだガキですよ?」

「も、戻って来て早々 何を言っているのだ? 彩峰」

「えっと……榊さんは、まだ少佐のところなんですか~?」

「もう戻ると思うよ」

「それにしても慧さん、さっきより大分 覇気が戻ってるみたいだねッ」

「……わかる?」

「むぅ……やはり白銀少佐は、我々の事など御見通しと言う事なのか」

「妬ましい」←気に入った様子




●戯言●
彩峰「妬ましい」……何か言わせくて書いちゃったんだ☆ 後編②は極力 早めに掲載したいと思います。
そして暁せんべい氏がまた描いてくれました!! みwwなwwぎwwっwwてwwきwwたwwぜww
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=4279420 ゆっくりしていってね!!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/05/25 02:35
これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②




2001年12月05日 午前


彩峰&榊と別れた俺は、駆け足で強化装備に着替えるとシミュレーター訓練を開始する。

凄く眠いので非常に しんどいが、コレばかりは命に直結する事なので疎かにできないのだ。

しかも、やる事はふたつ有り、先ずは俺の新機体として搬入されて来た不知火SⅡ型に慣れる事。

そんでもって、新兵器のライフル……支援狙撃砲を使いこなせるようにならなくてはならない。


「戦闘レベル・ターゲット確認。……排除開始」


≪――――ドパアアァァンッ!!!!≫


其処で真っ先に行ったのは、ライフルでの射撃だ。主に光線級を配置し、直立で構え中心を狙う。

コレに関しては……弾丸が小さかった支援突撃砲と比べると大分 仕留め易くなっているな~。

カス当たりでも威力の御陰で致命傷を与えられるので、無理に集中して中心を当てる必要が無いのだ。

恐らく要撃級が相手でも、顔面ではなく付け根の辺りを狙った方が効果的にトドメを刺せそうだ。


「霞。次は戦術機を相手にするから設定を宜しくな?」

『……はい』


30分後……"狙撃そのもの"のコツは掴んだので、次は動きながらの戦いを学ばなくてはならない。

よって今回は人間が相手だし、高AIの戦術機を複数配置してライフル仕様のSⅡ型で戦う事にする。

ちなみにクーデター戦の武装は"支援狙撃砲"と背中の長刀1本のみ。弾幕はサブ射撃頼みになるね。

さて置き。新型の不知火SⅡ型だが……腰の細さは相変わらずだけど、全体的にゴツくなっていた。

だけど機動性は下がるドコロか武御雷に迫る性能で、燃費も非常に良く長期戦にも耐えれそうだ。

流石に装甲に置いては武御雷に遠く及ばないみたいだけど、当たらなければ どうと言う事は無いしな。


「ちなみにだけど」

『えっ?』

「たまに変な事を言ってる時が有ると思うけど、俺の癖みたいなモンだから気にしなくて良いからね?」

『わ、分かりました』


んで……そんな俺の訓練を、何故か霞が手伝ってくれていた。手間が省けて非常に助かるZE。

誰に聞いたかは知らないがシミュレータールームにやってくると、彼女が待っていてくれたのだ。

正史では今の訓練自体がイレギュラーなので登場に驚いたが、どうやら俺の役に立ちたかったとの事。

まぁ、原作でも待っているダケなのが悔しかったとか言ってたし……必然的なモノだったのかもね。

実際には謎だけど、何であれ有り難かったので、つい霞の頭を撫でちゃった☆のは言うまでも無い。

いや、ホント助かってるんですよ? MA☆JIで睡眠不足な俺には筐体と端末の往復すら骨なのだから。


「ふん。そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」

『敵5番機・頭部大破……戦闘継続 不可能』


……よって管制をしてくれる霞の手を借りてシミュレーターを進める事で、効果的に新型に慣れてゆく俺。

戦術機のAIを相手にするに当たっては、極力コックピットを狙わない様にするのを第一に考える。

甘い話だけど戦術機が戦術機を破壊するダケでもアホらしいのに、命も奪うのはちょっとなあ……

状況によっては 止むを得ない場面も有りそうだけど、やっぱ頭・腕・脚を狙っての無力化が一番だよね?


「敵1番機 撃破ッ! よし、これで全部……」

『!? 白銀さん』

「んっ? どうしたんだ? 霞」

『何やら外が騒がしい様です』

「何が有ったんだ?」

『……分かりません』


そんなコンナで訓練を続ける事、約2時間。時刻としては……朝8時はとっくに回っている位かな?

丁度 訓練の区切りが付いたあたりでタイミング良く、霞が外の異常を察して俺に教えてくれた。

大方"あのイベント"だろう。 面倒臭いけど、行くしかないっぽいな……SⅡ型には大体慣れたし……


「とにかく、見に行ってみるよ」

『そうですか……』

「霞~。アリガトな? 凄く助かったよ」

『い、いえ』

「良ければ一緒に来るか?」

『すみません。残念ですけど……香月博士には無理を言って出て来たので……』

「そっか」

『白銀さん』

「うん?」

『今回の事件が落ち着いたら……また、遊んでください』

「もちろんさあ☆」

『あ、有難う御座いますッ』


――――俺このクーデターが終わったら、霞とトランプするんだ。


「それ死亡フラグだから!!」

『えっ?』

「い、いや……何でも無い。んじゃ~霞、お疲れッ!」

『……またね』




……




…………




……俺は佐官と言う面倒な階級なので、仕方なく軍服に着替えると横浜基地の外を目指した。

そして到着してから周囲を見渡すと、横浜基地を囲んでいる帝国軍の戦術機甲部隊(笑)の皆様。

もはや解説する必要は有るまい。BETAをそっちのけて米軍の行動を監視するってワケか……

いや、良いんだよ? 俺はBETAが攻めて来ないは知ってるからさ。勝手にすると良いよ、マジで。

それにしても……はて? コレを確認してから何が有ったんだっけ? イマイチ思い出せないZE。


「……白銀少佐」

「んっ? 冥夜か」

「!?」

「どうした?」

「い、いえ……ななな何でも有りませぬッ」

「なんだイキナリ可笑しなヤツだな~」

「も……申し訳ありません」

「いやいや、気にしなくて良いよ。それにしても、何やってんだかコイツら」

「…………」

「優先するのはBETAじゃなく、ましてやクーデターでも無い。まさか米軍に御熱心とはね」

「…………」

「冥夜」

「は、はい?」

「今回は何も言わないんだな」

「……ッ……確かに……以前の私であれば申したでしょう」

「以前の自分なら?」

「はっ。BETAが人類の共通の敵であれど、考えが違えば道も違えると……しかし」

「しかし?」

「ソレでは決してBETAに勝つ事は出来ぬでしょう。確かに……自らの志を曲げずに果てる事は、
 その者にとっては悔いが無かったのかもしれませぬ。ですがッ! そんな衛士達の思考の末に負け……
 やがては抗えず死んでゆく国民達は余りにも不憫でありましょう? 余りにも……理不尽です」

「成る程……冥夜もようやく分かってきたみたいだな、後でジュースを奢ってやろう」

「か、感謝を」

「……(素で受け止められた!?)」

「しかし冥夜様。見ての通り、それダケでは無いのも事実です」

「月詠中尉?」

「確かに仰られていた事は最もですが、人間とは簡単に纏まれるモノでは有りません。
 故に国家主権を始め各々の志を尊重しつつ尚、我々はBETAに抗わなくてはならないのです」

「こりゃまた無茶な事を……」

「ハッ!? 月詠、神代・巴・戎……そなた達、この様な所で何をしているッ!?」


しかしエンカウント率に定評のある白銀。適当に歩いたのに、到着した場所は正解だったらしい。

故に冥夜が登場したと思うと、月詠さんと斯衛トリオまで正史通りに現れてくれたのでした。

直後 冥夜は殿下を警護しない彼女達に食って掛かり、俺が止めに入ると正気に戻って謝罪する。

そんで この後は今回の帝国軍の包囲についての討論でも始まったんだっけ? だとしたら面倒だ。

……いや、面倒と言う以前にマジで限界になって来ちゃいました。主に睡眠不足 的な意味で。

よって原作とは違って冥夜と月詠さんとの討論が始まろうとしていた時、俺は踵を返してしまう。


「あ……」←神代

「……ッ」←月詠

「むっ?(後ろ?) ……え!? し、白銀少佐……どちらに?」


ソレによって声を漏らしたと思われる神代と、月詠さんの僅かな反応によって、
冥夜が背後で立ち去ろうとしている俺に気付いた様で、振り返ると声を掛けて来たので足を止めた。

正直なところキツいので無視したかったんだけど、それじゃ~フラグに影響を及ぼすかもしれない。

其処で今となって思い起こせば適当 過ぎる一言を告げるべく……俺は振り返らずに口を開いた。


「寝る」

「!?」×5

「それじゃ"御剣"……調整しっかりやれよ?」

「は、はい」

「…………」


≪――――ザッ≫ ←立ち去る武


「……くッ」

「め、冥夜様……」×3

「彼は一体何を?」

「恐らく……今回の帝国軍の対応に、余程 呆れられたのだろう」

「!?」

「しかし妥協はされていた様子。よって過ぎし事を とやかく考えるよりは休んだ方がマシなのだろう」

「…………」×4

「月詠」

「はッ」

「私の言っていた事に思う所が有った様だが、ソレは そなたの立場や先程の言葉を考えれば理解できる。
 人類が団結してBETAに抗うのが いかに難しい事かも、この包囲を見れば分かっているつもりだ」

「…………」

「故に今更 志そのものを曲げろとは言わぬ。されど彼の様な者の気持ちを少しでも理解してくれ」

「!? 冥夜様……(やはり、あの男を……)」

「ふっ……可笑しいものだな。何故 涙が出るのだろう?」




……




…………




「ふ~っ」


……冥夜達から無事に逃げ出した俺は、睡眠を取るべく給水装置の近くの長椅子に腰掛けた。

この時の気分はロ●サガ2の皇帝。きっと王座に腰掛けた彼らも、こんな心境だったんだろう。

さて置き。流石に部屋に戻って寝るのはアレだし……座ったまま寝る事にしたのであります。

ホントなら長椅子に横になって寝たいんだけど、立場的に恥ずかしいので自重する事にする。

まぁ、コレなら緊急時にも対応できるし良いよね? そもそも夜まで出撃しないんだし無問題だ。


「ぐ~……」


≪どさっ≫


――――だけど限界だった白銀は即効で爆睡し横に倒れ、寝顔を晒しちゃったんだ☆




……




…………




……1時間後。


「あ~っ!?」

「どうしたのォ? 亜衣」

「ホラ綾乃、アソコアソコ」

「!? あ、あれは……」←優理子

「白銀少佐~ッ?」

「ぐ~っ……」

「寝てるよ?」

「寝てるねェ」

「寝てるわね」

「ショッカァ……ブッ飛ばすぞ……」

「……ッ……」×3


≪――――ゴクリ≫


「!? ちょっと綾乃、なんか目が怖くなってたよ?」

「そ、そう言うアンタだって! ……って優理子、何スケッチしてんの!?」

「な……何となく、貴重な絵だと思って……」

「そう言えば優理子って絵が得意だったんだよね~」

「……って言うか、何処から出したのよ? スケッチブック」

「黙ってて、集中できないわ」

「……ッ……」×2


≪じ~っ……≫


「な、何なのよ? 気が散るんだけど」

「私にも……1枚 描いてくれない?」

「アタシにも~ッ!」

「仕方ないわね……まぁ良いわ」




……




…………




……また1時間後。


「!? お、おい……アレ」

「どうしたの? 巽」

「あら、白銀少佐ですわね~」

「もしかして……寝てるのかな?」

「ホントに寝てたみたいね」

「冥夜……犯らせろ~……」

「!?」×3

「……ぐぅぐぅ……」

「や、殺らせろって……」

「もしかして……夢の中でも戦っているのかしら?」

「そ……そうみたいですわね」←揃って疎い斯衛トリオ

「……もう一回~っ……」

「……ッ……」×3


≪――――ゴクリ≫


「そ、それにしても……」

「見る限りは暢気な寝顔ね」


≪――――パシャッ≫


「えっ!? み、美凪……お前 何してるんだよッ!?」

「写真撮影ですの」

「あ、貴女……いくら写真が趣味だからって……」

「何を仰いますの? 趣味だからこそ、今を逃す手など有りませんわ」

「……ッ……」×2

「もう一枚~っ」


≪――――カシャッ≫


「その……み、美凪……」

「今回は1枚コレで宜しいですわよ? 巽」←5本の指を突き出しながら

「分かったよ……だから頼む」

「わ、私も良い?」

「あら? 雪乃も欲しいとは意外ですわね」

「べ……別に良いでしょう!?」

「まぁ、少し待っている事ですわ」




……




…………




……更に1時間後。


「……ぐが~っ……」

「…………」←水月

「…………」←遙


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「……寝てるわ」

「……寝てるね」


≪――――ゴクリ≫


「おやおや御二人とも、肉食獣の様な目付きをされて何を見ているのです?」

「げェっ! む……宗像!?」

「あわッ! あわわわわわっ」

「あらっ? 白銀少佐が何故こんな所で御休みに……」

「速瀬中尉、涼宮中尉。まさか無防備な白銀少佐に手を出そうとしたワケでは無いですよね?」

「ななな何言ってんのよ……当たり前でしょ~ッ?」

「そ、そそそそうだよ~」

「フッ……ならば宜しいのですが、果てさて どの様な寝顔を……」

「美冴さんったら、あんまり人の寝顔は見るモノ……じゃ……?」

「……むにゃ……」

「……ッ……」×2


≪――――ゴクリ≫


「宗像、風間……まさかアンタ達も……」

「む~っ……」←ジト目の遙

「!? そ、そうでは無いですが……いささか私には刺激が強かった様で」

「あどけない寝顔ですね、つい見惚れてしまいました」

「なッ……あ、案外はっきりモノを言うわね風間……」

「有難う御座います」

「それ褒めて無いと思うよ~?」

「其処が祷子の良い所なのです」

「あぁもうッ! もう少佐の事は良いから、さっさと行くわよ~!?」

「はぁ~い」




……




…………




2001年12月05日 午後


「考えてみれば寝過ぎた」


昼寝の御陰で十分な睡眠を取れた俺は、再びブリーフィングを終えた後 通路を歩いている。

目指すはハンガー。約2時間後……19時40分の出撃に備えてSⅡ型の最終調整をする為だ。

任務の詳細は相変わらず ゆーこさんが早口に言う為 搭ヶ島離城の警備をする事 位しか理解してない。

けど それで十分だ。後は其処に殿下が登場するので、彼女をSⅡ型に乗せて逃げれば良いダケだしね。

んで月詠さん達、斯衛軍・第19警備小隊が同行し、篁は不知火S型に乗って俺のサポートに当たる。

まりもちゃんも正史と違って撃震ではなくS型に搭乗しつつ……B分隊の指揮を直接 執ってくれる様だ。

彼女の指示を受けるB分隊も吹雪F型に乗ってる上に技量も付いてるしで、安心して任務に当たれる筈。


「……それにしても、副司令」

「何なの? ピアティフ」

「"例の件"は白銀少佐に伝えなくて宜しかったのでしょうか?」

「それに関しては仕方ないわ。例え白銀ダケに話しても何処で情報が漏れるか分からないし、
 リークされた様に画策するのもタイミングが重要なのよ。そのくらい……分かってるでしょ?」

「は、はい」

「だからコレばかりは――――」

「ゆーこさんッ!」

「!? 何よアンタ、ハンガーに行ったんじゃなかったの?」

「そうだったんですけど……実は大事なコトを忘れてまして」

「何を忘れてたの?」

「えっと……何も言わずに女性用の強化装備を貸して欲しいんですよ」

「!?」×2

「う~ん、御剣あたりのサイズが妥当かな~?」

「……(こ、コイツ……やっぱり……)」

「……(既に勘付かれているなんて……)」


そして勿論ッ! 正直……半分忘れてたけど、殿下用の強化装備も用意して貰えるし準備は万端だ。

よって後は前述の通りSⅡ型の調整を済ませるダケ。先に行った篁も俺を待っている事だろう。

だけど、実際には出番が無い事を期待せざるを得ない。戦わない事に越した事は無いのだから。


「……おっ?」

「白銀少佐」

「あわわっ」


……そんな事を考えながら早足で歩いていると、前方に速瀬&涼宮(姉)の凶悪コンビが出現するッ!

う~む、この2人が一緒に居る時は嫌な予感しかしないんだけど……流石に今回は思い過ごしみたいだ。

近付いてくる俺に対して直立して敬礼してくださったので、俺も手前で立ち止まって敬礼で応えた。


「2人とも……これから出撃かい?」

「うん。あと30分もしないウチにね」

「今回は相手が相手なので複雑ですけど……」

「仕方ないね」(アニキ調)

「そう言う事~」

「じゃあ……速瀬中尉」←真面目な表情

「な、何よっ?」

「……死ぬなよ?」

「!? アンタもね」


≪――――ピシガシ、グッグッ≫


「へへッ」

「あはっ」


そして会話を進める中、何故か速瀬とポル●レフと花●院がやってたアレの再現をする事が出来た。

元ネタを知っている俺はともかく、どうして速瀬が知ってるのかってツッコミは無しなんだぜ?

さて置き。一連の動作を終えた俺がニヤりと口を歪ませると、速瀬も満更じゃ無さそうだったが……


「……う~っ」

「うぉっ!?」

「は、遙ッ?」


――――れみ・りあ・うー☆ 指を銜えて此方を見ている涼宮(姉)の視線が、鋭く突き刺さった。


「そ……それじゃあ、俺はコレで失礼するよ」

「へっ? あっ……うん」

「……~~ッ……」


ひょっとして羨ましかったのかな? でも結構チカラを入れてするモンだから涼宮(姉)じゃ難しそうだ。

よって今の一連を誤魔化す様に此処を離れようとする俺だったが……彼女は未だに不服そうだった。

マズいZE。速瀬の俺に対する評価は多少 上がった様だが、涼宮(姉)のフォローを何かしなければ!!


≪くるっ≫


「そうだ、涼宮中尉ッ!」

「えっ?」




「勝利の栄光を……君に!!」(敬礼しながら)




「!?」×2


――――そんなワケで涼宮(姉)を元気付けるつもりで、つい赤い人を肖っちゃったんだ☆


「それじゃあ、俺は急ぐからッ!」


≪だだだだだだ……っ!!≫


「……はふぅ」(ふらり)

「ちょっ……は、遙!? こんな時に倒れるなんて反則よっ!?」

「だ、大丈夫だよ……ちょっと目眩がしたダケだから……」

「ソレが危ないと思うんだけどッ?」

「そんな事 無いってば~。私……頑張るよ~っ?」【ヘブン状態!!】

「なら良いけど……早くその緩んだ顔 直しなさいって!」


しかし……咄嗟だったとは言え恥ずかしい台詞を言ってしまった事には変わり無いZE。

正直 名指をして迄 告げた意味など有ったんだろうか? 2人とも見るからにポカーンってしてたし。

嗚呼、きっと"シ●アのモノマネが許されるのは小学生 迄だよねー!?"とか思われちまったんだろう。

そう思うと居ても立ってもおられず……俺は全速力で走り出すと、2人の視界から消えるのでした。




……




…………




……同時刻・ハンガー。


「白銀少佐、遅いな」

「そ……そうですね」

「……んっ?」

「……ッ……」

「ふ~む」

「な、何ですか? 叔父様」

「もしかして……まだ悔しがってるのか? 彼のS型を引き継げなかった事で」(33話参照)

「!? ち、ちちち違いますっ!」

「それなら俺の腹は未だに痛くは無い筈なんだが……」

「うぐっ……そ、それに関しては何度も謝ってるじゃないですかッ!」

「おっと、そんな事より来た様だぞ?」

「!?!?」


――――そして合流した(挙動不審な)篁&巌谷さんの直ぐ傍には、不知火SⅡ型が逞しく佇んでいた。




●戯言●
駄目だ、この横浜基地……早く何とかしないと……



[3960] これはひどいオルタネイティヴ40①
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/06/01 01:54
これはひどいオルタネイティヴ40①




●横浜基地・突撃機動部隊(暫定名称)●
アルカディア01 白銀 砲撃支援 不知火SⅡ型
アルカディア02 唯依 迎撃後衛 不知火S型
アルカディア03 月詠 突撃前衛 武御雷(赤)
アルカディア04 神代 突撃前衛 武御雷(白)
アルカディア05 雪乃 強襲掃討 武御雷(白)
アルカディア06 美凪 強襲掃討 武御雷(白)


●第207衛士訓練部隊●
軍曹 20700 迎撃後衛 不知火S型
千鶴 20701 強襲掃討 吹雪F型
御剣 20702 突撃前衛 吹雪F型
彩峰 20703 突撃前衛 吹雪F型
珠瀬 20704 砲撃支援 吹雪F型
鎧衣 20705 砲撃支援 吹雪F型


暁せんべい氏による白銀少佐の搭乗機"不知火SⅡ型"砲撃支援・新式仕様
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=4469636




2001年12月05日 午後


駆け足でハンガーに到着してからは、巌谷さんと篁を交えてSⅡ型の最終調整を済ませる。

その後 新たな愛機となったSⅡ型に乗り込むと、俺はS型に搭乗する篁と共に横浜基地を出発した。

……勿論そのままの進軍では無く"戦術機そのもの"の消費を抑える為に車両に乗ってでの移動だ。


「――――まりもちゃん」

『!? し、白銀少佐……』

「任務を共にするのは初ですね、宜しく御願いしま~す」

『えっ? はい、こちらこそ……あッ……それよりもっ!』

「うわっ、びっくりした」

『任務中はその"呼び方"で私の事を……えっ、秘匿回線……?』

「はははっ、そう言う事です」

『す、すみません。白銀さんの事ですから、その辺りは愚問でしたね』

「いやいや、買い被りすぎですって……注意はしますけど」(本音)

『……ッ……と、ところで白銀さん』

「はい?」

『不知火SⅡ型……凄いですね……』

「それほどでもない」←言いたかったダケ


当然 まりもちゃん達207B分隊&月詠さん達19警備小隊も同行しており、合計12機となっている。

1ダースとなれば中隊規模だけど、残念ながら俺達は部隊を2つの小隊に分けて作戦を行う事になる予定。

片方は まりもちゃんが纏める207B分隊。まりもちゃんを20700として榊 以下01と続いてゆく。

ちなみに、まりもちゃんを20701としないのは、コールサインがズれてしまえば俺が分かり難いから。

折角 シミュレーター訓練に付き合う事で慣らして置いたのに、コレだと呼び間違える事も有りそうだしな。

ついでに思うのは、俺がSⅡ型をトバして殿下と逃げ切っちまうならB分隊は待機で良くないかって事だ。

冥夜のフィードバック・データを蓄積させた強化装備も借りたから多少の無理は利きそうだからねェ。

……とは言え今更 言えた事でも無いし、色々な意味で成長して貰うには欠かせない任務になるだろう。

そう考えると難しいよね……相手は人間なので全く戦わせずに任務を終わらせてやりたいが、
ソレはそれで多くのイベントやフラグをスルーする事になっちまうんだから理不尽としか言えない。

だったらノロノロと逃げて囲まれて、説得してる時の空気読めない射撃を阻止する方向で行こうかな~?

だけどモタモタしてると敵味方の被害が次々と膨れ上がってしまう。敵はともかく……味方が可哀相だ。

首謀者の沙霧様 御一行や、空気の読めないイルマだっけ? ……を助ける為に犠牲を拡大させるのも癪。

そうなると即効で殿下と逃れて沙霧の戦意を喪失させた上に投降させ、敵味方 無事で済まさせるに限る。

嗚呼だけどソレだと榊達の経験が……あァんっ! 考えれば考える程、頭の中が混乱しちまうザマス!!

こ、こうなったら"行き当たりバッタリ"でゆくしかない。大丈夫さ、今迄 何とかなってたんだしね~。

選択肢 有りのADVをプレイしていれば確実にバットエンドになりそうな考えだけど、気にしないでくれ。


「……~~ッ……」

『白銀少佐。……あっ』


……こんなカンジでコックピットの中、腕を組んで瞳を閉じ考え込んで待機している俺だったが。

回線を開いたのか篁の声がしたので目を開いてみると、少し驚いた様子の彼女の姿が正面に有った。

相変わらず俺の視線は真っ先に おっぱいにいってしまうが、冷静な表情の維持も変わらず出来ている。

ちなみに俺の不知火SⅡ型の武装は"支援狙撃砲"と"74式長刀"で、篁の仕様は迎撃後衛だ。

んでもって言うまでも無いと思うけど、まりもちゃんの機体はS型で榊達が吹雪F型に乗っている。

月詠さん達4人は当然 武御雷(赤)+(白)で、仕様は以前A-01と模擬戦した時と同じなようだ。

そんな彼女達は今回 俺の指揮下に入ってくれており、模擬戦と違い篁がアルカディア02となった。

ぶっちゃけ指揮は まりもちゃんに丸投げしたいトコロだが、階級の御陰で俺は纏め役にされている。

さて置き篁さん、おっぱい凄いですね。それ程でも……有りますがなっ! ……って今は自重しよう。


「どうかしたの?」

『えっ? あっ……すみません、いきなり秘匿回線を開いてしまって』

「別に構わないよ、物凄く暇だったし」

『そ、そうでしたか(……暇と言われる割には、考え事をしている様に見えたけど……)』

「だけど流石に行動中は止めてくれよな?」

『わ……分かっています』

「それで用は何だい?」

『……(それに、今となっては凛々しく……)』

「篁~ッ?」

『!? と、特に用と言うワケでは無いのですが……雪が降って来た様なので……』

「雪? ……あァ、ホントだ」

『…………』


現在の状況だけど……箱根に位置する塔ヶ島 離城に到着した俺達12人は、戦術機を車両から降ろすと、
そのまま各機を適当に展開させて "後方警備任務"と言う名の待機をしている。

大体の時刻は22時を回って何十分か過ぎた辺りで、すこぶる暇だった為 俺は前述の考え事をしていた。

此処までの道中は適当に回線を開いて全員と話をしてたけど、警備開始となると自重せざるを得ないしな。

そんな中 降り出す雪に、篁から秘匿回線……前者はともかく彼女と会話できるのは嬉しいんだぜ?

けど正史だと今のタイミングでの会話 相手は冥夜だったと思うんだけど、内容を覚えていないのは勿論、
目の前の女性は篁だ。しかし、彼女が話したい事は雪に関しての話題じゃあ無いぐらいは分かる。

だったら何なのか迄は知らんけど……篁の視線が離城の方を向いたので、俺は瞬時にティンと来て言う。


「そう言えば」

『は、はい?』

「妙に この辺って綺麗だよな~。あの建物や民家が そのまま残ってるしさ」

『……ッ……そうですね。日本はBETAに一度 占領されていると言うのに』

「確か斯衛軍が踏み止まって其処を守ってたんだっけ?」

『はい。しかし横浜ハイヴを制圧する迄 小規模な戦闘が何回か発生したダケだったと……』

「何でBETAが寄り付かなかったんだろうな?」

『流石にBETAの考えている事など判りません』

「それは同意」

『では何故 此処を斯衛軍は守っていたのでしょう? 考えてみれば自殺行為としか思えません』

「う~ん、確かにな~。たまたまBETAが寄り付かなかったから良かったモノの、
 普通に考えれば皆殺しにされてた事は間違い無い。だとすれば其処はきっと……」

『絶望的な状況の中でも守り通す価値の有る、重要な場所だったと言う事なのでしょうか?』

「間違いないね」

『ですが……』

「流石に命を安く使い過ぎだよな、少なくとも俺はそう思うぞ?」

『……ッ……』

「まぁ、そんな事をとやかく言っても仕方ないけどね。今回の件にしてもそうだ」

『はい。今頃 帝都では……』

「戦闘中ってワケだ」

『反面、此方は静かですね』

「怖いくらいにね」

『それにしても、本当に……愚かなッ……何故 味方同士で……』

「…………」


何故かBETAが潰さなかった、箱根の芦ノ湖に突出したカタチを成している塔ヶ島に佇む離城。

もし その"理由"が分かれば凄い発見になると思うけど、少なくとも桜花作戦の後だな~言い出せるのは。

主に時間的な問題で。……まぁ、結局期待は出来そうも無いしスルーする方向で片付けてしまおう。

んでもって其処に留まった命知らずな斯衛軍に対しての皮肉も、今となっては重ねて置いておき……

御気付きだろうが既に1時間程 前に戦闘は開始されている。クーデター軍が喧嘩を売ったのだ。

聞いた話によると……正史通り帝都城を包囲していたクーデター軍の歩兵部隊のアホ達が、
斯衛軍に発砲しちまった事で、大乱闘スマッシュ・ブラザーズが開始されてしまったらしい。

言うまでも無く反オルタ4&オルタ5推進派 辺りの差し金だろうね、いい仕事してますよ全く。

ソレに対し当然 沙霧から戦闘停止命令も出されたみたいだが、帝都周辺での戦闘は留まる事を知らない。

これで彼らの理想は早くも終了ですね、余りにも利用され過ぎでしょう? 志ダケは買っても良いけど……

いや、BETAが狙ってるのにクーデター起こす時点で問題外か。……ってか、この時点で諦めろよ沙霧。

さっさと鎮圧しないで横浜基地に来た帝国軍もアホだし、ゆーこさんが凄くマトモな人に思えて来た。

そう考えれば、篁やら まりもちゃんやら……俺は非常に部下に恵まれている立場なのかもしれないね。

だとすれば今回の任務も気合が入るってモンだ。よって妙にソワソワしている篁を宥めるのも朝飯前ッ。


『……殿下は……御無事なのでしょうか……?』

「大丈夫だよ」

『そ、そうですよね。斯衛軍は精鋭揃いですから……』

「いやいや、違うって。"俺達"が守るんだし大丈夫って事だよ」

『えぇっ!? それは どう言う――――』

「すぐに解るさ」

『す……直ぐッ?』

「おっと、ちょいと長く話し過ぎたかな? そろそろ定時連絡が来そうな予感」

『……っ……』

「じゃあ切るけど……今回も期待してるぞ? 篁」

『!? は、はいっ』


≪――――プツンッ≫


「ふ~っ」


俺の言った事が言った事だったので大慌てする篁だったが、俺は半ば強引に秘匿回線を切った。

同時に溜息。今回の件は"この世界"に来てから最大のイベントとも言えるので、色々と考え過ぎて疲れる。

まぁ、今の会話でヤる気は上がったからヨシとしよう。……深く考えるのもコレっ切りにして置くか。


『白銀少佐~』

「戎か」

『定時連絡ですわ、異常 有りませんの?』

「異常なし。そっちは?」

『同じく異常なしですの』

「了解~」

『それでは、また後で――――』

「ちょっと待ってくれ」

『!? ……何か?(ま、まさか写真の件がバレてしまいましたのッ?)』

「いやゴメン……やっぱり何でも無いや、お疲れさ~ん」

『そ、そうですか? では』(ホッ)


秘匿回線を切ると、入れ替わりに戎の通信が入る。最後尾の06から01の俺に回ってきたのだ。

その際の別れ際に"戎はこんな時でもその口調なのか?"……と聞きたかったけど、其の言葉を飲み込んだ。

間違いなく性分なんだろう。しかし月詠さんさえスルーしてると言う事は、斯衛の常識では普通なのか?

いや、オルタの世界では彼女の様な口調を疑問に思うと言う概念が無いんだろう。一つ勉強したZE。


「珠瀬~」

『えっ? し、ししし白銀少佐~ッ!?』

「暇だったから秘匿回線 開いちゃいました」

『ひ、暇だったからって……』

「俺は少佐だからよ? 部下の気配りも得意だし、秘匿回線は許可無しで開く」

『あっ……(きっと、少佐は私を励まそうと思って……)』


――――そんなワケで俺は考えるのを止め自重を解き、ちょくちょく皆と話す事で時間を潰す事にした。




……




…………




2001年12月06日 深夜


「はやくきて~、はやくきて~」


……待機 開始から数時間後、時刻は1時を回って30分以上が経過していた。ぶっちゃけ暇 過ぎる。

任務と関係ない会話は道中でもしていたので1時間程でネタは尽きてしまった以前に、
流石に度が過ぎる秘匿回線は階級的にマズいので、再び自重する事となってしまったのだ。

いや……ソレは まだ良いとして、正確な時刻を微塵にも覚えていないので気を張り過ぎてたのがキツい。

無駄な考え事は止めたけど、皆(月詠さん以外)と会話する中でも離城への注意は疎かにしていなかった。

会話を完全に自重する様にしてからも日付が変わった辺りからは特に警戒していたので普通に疲れた。

よってメイン盾を求める貧弱一般人の様な心境で、キーパーソンを待ち続けているしかなかったんだが……


「んっ!?」


――――戦術機のモニターが離城から出てくる3つの人影を捉えた。これは……間違いない、殿下だ!!


「もう着いたのか!? 早いッ! 来た、メイン殿下 来た!! ……これで勝つるっ!」


俺は嬉しかったのか、別に早くも無いのに意味不明な事を叫ぶとオープン回線で篁に通信を繋ぐ。

……対して篁はイキナリ俺の顔が出て来た事に驚いた様子で、瞳を大きく見開いていた。

同時に今の直後 篁が僅かに漏らした声に対して、数人の反応が有ったみたいだがソレは些細な事。


『白銀少佐?』

「人影を複数 発見した。確認に向かうのでフォローを頼む」

『こんな所に人が? あっ!? ま、まさか――――』

『た、篁中尉……どう言う事なのですッ?』

「直ぐ解りますって軍曹。……それじゃ~皆もバックアップを宜しく」

『――――了解』×11




……




…………




……待ちに待った殿下との対面となるけど、コレはやはり出ダシが重要となるだろう。

正史通りだと彼女とは今回の作戦 限りだが、今じゃ何が起こるか分からないし追加イベントに期待だ。

故に俺は気付かれない様に3名の影と接近し……ワザと枝を踏み音を立てる事で注意を向ける。


≪――――パキッ≫


「……ッ?」

「誰ですか!?」

「殿下、私の後ろへ!」

「はい」

「(あれっ?)」

「…………」×3


直後 俺は跪いて危害を加えるつもりが皆無だと言う事をアピールするんだけど……

聞こえて来た声に違和感を感じた。何故か女性の声が3つも有り、2つは何となく予想できる。

先ず1つは殿下のモノ。もう1つは侍従のオバハン……それでも最後の1つは何なんだろう。

非常に気になるトコロだけど、面を上げては台無しになってしまう。よって俺は頭を上げずに言った。


「煌武院 悠陽 殿下ですね? お初にお目に掛かります」

「そなたは……?」

「国連軍 横浜基地所属・白銀 武 少佐と申します。お目に掛かれて光栄であります」

「国連軍の衛士ですか……まさか……」

「殿下、御注意を」

「ふむ(確かに見るからに怪しいが……この言動は……)」


殿下に対する最も畏まった方法なんぞ知らない。俺なりに勝手に考えて台詞を喋っている。

しかし"ふむ"と言った女性が誰なのかが非常に気になるZE……早く確認させてください。

だからと言って動いちまうワケにはいかんのよね。もう少しダケ我慢するしかないですな~。


「"我々"に敵意は有りません。貴女を御守りする為に此処に居ます」

「!?」×3

「詳しくは……鎧衣課長に説明して貰えれば分かって頂けると思いますが?」

「鎧衣に?」

「なっ……」


≪――――ガサッ≫


「やれやれ、香月博士はおろか……君まで全て御見通しだったと言う事かね?」

「鎧衣……」

「恐れながら殿下、彼が私の申していた衛士です。最も……こうも早く出会えるとは予想外でしたが」

「となると……」

「御安心ください。少なくとも敵では有りません」

「そうでしたか……えぇと、白銀?」

「はっ」

「其処まで畏まらずとも良いです、面をお上げなさい」

「――――ッ」


山勘で左近さんが潜んでいると踏んで彼の名前を出したら、本当に居た様だ。全然気付かなかったZE。

それはそうと……やっと許しが出たかッ! 封印が解けられた!! ……と言う心境で頭を上げる俺。

すると飛び込んで来たのは私服姿の殿下と侍従のオバハンに、苦笑しながら俺を見ている左近さん。

そして もう一人は……あれっ? どっかで見た事が有るぞ、誰だっけ? イマイチ思い出せないな~。

何故だか知らんが赤の強化装備を着ている上に、アサルトライフルを手にしながら俺を睨んでいる。

既に銃口は俺に向いていないけど……あァ、この強化服って月詠さんのと同じヤツじゃないか。

この瞬間に理解したけど、多分 マヤ……"真耶"さんじゃね? AFに出てくる"御剣 悠陽"に仕えてた人。

トレードマークの眼鏡が無くて、纏めてた髪下ろしてるから気付くのが遅れた。何で此処に居るんだよ?

そう思いながら彼女に視線を向けていると、キツそうな表情を変えずに俺を見ながら口を開いてくる。


「……私に何か?」

「あっ、いえ……誰かなァ~と」

「早くも目を付けたのかね? 白銀 武」

「違いますって!」

「それなら良いが……彼女は君も御存知な月詠中尉の従姉妹だよ」

「やっぱり」

「月詠 真耶だ。貴官と思われる者の話を鎧衣課長から聞いていたが、本人で間違い無い様だな」

「じゃあ何故 此処に?」

「わたくしの護衛ですが……何かおかしな点でも?」

「そう言う意味じゃ無いんスけど」


――――流石に"正史じゃ居なかったから登場してるのが疑問だ"とは言えないよな~。


「先日2度目のBETAの襲撃が有ったばかりだからな、彼女が護衛として選抜されたのだ」

「兵士級が潜んでいる可能性は十分に考えられるからな」

「そう言う事だよ」

「成る程~」

「しかし此処まで来れば その脅威も無いと踏んで良さそうだ」

「はい。衛士も多数 居る様ですし」

「……月詠、そなたに感謝を」

「も……勿体無い御言葉です」

「ところで、白銀 武」

「何ですか?」


真耶さんの登場の理由はBETAに対する警戒の表れか。確かに左近さんダケじゃ兵士級は危険だよな。

いや……普通に勝つかもしれないけど、殿下を守り抜く意味ではって事ですから誤解しないでね?

同様に強化装備 姿の彼女であればAFじゃ忍者みたいな動きしてたし勝てると踏んで良いだろう。

正史じゃ今BETAに襲われる可能性なんぞ微塵にも無いが、可能性が無いとは言い切れないしね~。

そんな事を思っていると左近さんにHQの場所を聞かれたので答えると、彼は暫く考え込んでしまった。

しかも険しい顔をしている。う~ん、確か俺達が居る事は知らなかったんだよな? それは好都合の筈。

だけどクーデター軍の動きが予想以上に早い事から、逃亡は難しいので俺達をアテにする様だが……

左近さんは それ以降の事も考えているんだろう。近いうちに米軍も護衛にやってくるんだしな~。

されど俺には細かい事情は理解できない。何も考えずに殿下を乗せ、沙霧達から逃げるダケなのです。


「殿下。どうか彼らと御一緒 下さい。緊急時 故に何卒ご容赦を」

「……分かりました」


んで話はドンドン進み、殿下は俺のSⅡ型のコックピットに乗って伊豆半島の端まで離脱する事となった。

続けて会話した結果 脱出をリークされた事が自演だった事も分かり、その辺りは原作通りだと思う。

んで他にも騒ぐ侍従のオバハンを宥めたり、発砲した奴の正体について話したりと会話イベントを続ける。

ソレらに関して色々と思うトコロ有ったけど……既に無駄に考え込むのは止める事にしたので流しとくか。


「さて我々3人は車両へ向かおう。殿下を頼んだぞ?」

「は~い」

「……ッ……」

「月詠。気持ちは嬉しいですが」

「心得ております。戦術機が無い私に出来る事は、もはや何も有りません」

「しかし そなたが居てくれて頼もしかった事は紛れも無い事実です」

「有難う御座います……では、白銀少佐」

「はい?」

「私からも頼む。どうか、殿下を御無事に」

「り、了解」

「……(癪では有るが、あの鎧衣課長の気配に気付く程だ……途轍もなく出来る男なのだろう)」

「白銀、世話になります」

「とんでも有りません。光栄ですよ……殿下☆」


≪――――ニコッ≫


何だか真耶さんが頼り気な視線を向けてくれた。思ったよりも印象が良かったと踏んで良いのかな?

よって誰も居なくなった事も有り、調子に乗ってしまった俺は殿下に"白銀スマイル"を披露してしまう。

キラッ☆ ……の様に痛いポーズは取っていないが、以前 鏡で見た時 自分でもウザそうなのは理解できた。


「…………」

「…………」


≪ひゅううううぅぅぅぅ~~っ……≫


――――そして塔ヶ島を駆ける一陣の疾風。"ブルーゲイル"とでも呼んで貰おうか?


「……(何と眩しい笑顔なのでしょう……)」

「殿下……どうしたんですか?」

「!? あっ、いえ……何でも有りません」

「そうですか。それでは早速 部下に連絡を入れますんで、少々時間を頂けますか?」

「どうぞ」

「篁・軍曹 聞こえるか? こちら白銀だ。見ての通り"煌武院 悠陽"殿下 以下、4名の身柄を確保」


やべっ……引かれちゃったのかな~? 俺は早くも後悔しながら殿下に待って貰うと皆に連絡を入れる。

コレに関しては全員に今の状況の監視を頼んでいたので、イチイチ説明する手間が省けて非常に良かった。

んで通信を終えると……殿下は引き続いて俺の顔を眺ており、やっぱり警戒されたかと思ったが……


「…………」


≪じ~~っ……≫


「で、殿下?」

「その……白銀」

「????」

「そなたの顔は、思ったより丸くは無かったのですね」

「まる?」

「――――この様に」

「そ、それはッ」


≪ちゃりんっ≫ ←"ゆっくりたける"キーホルダーを取り出した悠陽


「予想外です」

「ちょっ……何で殿下がソレを持っているんです!?」

「その、道中で鎧衣が そなたと思われる者の事を"コレ"を見せながら話したので、
 少々興味が湧いたところ……"欲しければ差し上げましょうか?"と申したので……」

「す、捨てたら呪われるって言ったのに」

「まあ……どうしましょう? 困りました」

「いや、嘘だったんで別に良いんスけど」

「そうなのですか」

「そうなのDeath。……まぁ、例え本当でも殿下の為に呪われるなら彼も本望ですよ」

「ふふふっ、そなたは聞いていた以上に面白い人ですね」

「鎧衣課長に聞いた事だったら本気にしちゃダメですよ?」

「そうですか。それでは、これから知ってゆく事にしましょう」

「……ッ……」

「白銀?」

「あっ……いや、殿下も想像してた方とは大分 違うなァ~と」

「それでは、お互い様のようですね」

「みたいです」


思い過ごしだったのは良いけど、殿下のイキナリの言葉に度肝を抜かされてしまった。何で持ってるの?

しかし"ゆっくり"のウザさに ゆーこさんはおろか殿下 迄 惹き付けてしまう魅力が有ったとは驚きだZE。

ソレはそれで彼女が警戒心を解いてくた様で良かったが、何だか違う意味で不安になった俺なのでした。


「(シロガネ タケル……殿下は道中、私が君の事を話した結果 非常に興味を持たれた様だ。
 そして、その相手に早くも出会えた事に喜びを感じている。……精々 気に入って頂く事だな)」

「ふむ……白銀 武……あの若さで少佐とは……」

「(しかし、もう一人 興味を持ってしまった女性が出た事は予想外だったがね)」




●戯言●
感想で真耶さんの登場を希望された方が居られたので出演して貰いました。コメント有難う御座いました。
BETA襲撃2回→もしかしたらBETAに襲われるかも?→真耶さん護衛……と言う感じで無理矢理。
設定では既に配属転換されている様ですが、今回を機に彼女が護衛に選抜され元の位置に返咲いた的で。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ40②
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/06/05 02:47
これはひどいオルタネイティヴ40②




2001年12月06日 深夜


『ヴァルキリー・マムよりヴァルキリーズへ。現在 帝都を離れた決起部隊が此方に進行中』

「ふむ……殿下が脱出したという話は間違いない様だな」

『え~っと、戦術機の数は10・20・30……って、この範囲で40以上ォ!?』

『いささか多い気がするのですが?』

「速瀬・宗像、何を弱気になっているッ」

『まぁ 全部を相手にするワケじゃないだろうし、そう言う意味じゃ~無いんですけどねェ』

『むしろ速瀬中尉なら、望むトコロなんじゃないんですかァ?』

『そ~言う事よ葛城。むしろ暇で暇で仕方なかったわよ』

『されどクーデター軍の動きが早すぎますし、不自然かと思いましてね』

『どうやら何者かによって情報がリークされた為の様ですが……?』

『そうです風間少尉。しかし意図的なモノでしょう』

「……と言う事は涼宮。殿下 自ら囮役を買って出たと言う事か?」

『可能性は高いでしょうね』

「ならば、奴等の足止めをするのが我々の目的と言うワケだな」

『その通りです。……ッ……間も無く2個中隊と接触します、距離は約5000。匍匐飛行にて接近中』

『――――っ』×5

「どうした、緊張するのか? 涼宮達は」

『!? は、はい……今回の相手は人間ですから……』

『あははは、いくら実戦を経験した身と言えど流石に』

『だ、だだだだけど手加減なんかしとったら、こっちが殺られちゃうかもしれんし……』

「心配するな、私達とて人間と戦うのは初めてだ」

『!?』×5

「あの白銀少佐も初めてだと言われていた。だから条件は同じだと言う事を忘れるなッ!」

『り、了解』

「良し、それでは何時もの"アレ"といくか」

『おっ? 良いですねェ~。遙も続きなさいよ?』

『う、うん』


「では……死力を尽くして任務にあたれ!!」

『死力を尽くして任務にあたれ!!』×12


「生ある限り最善を尽くせ!!」

『生ある限り最善を尽くせ!!』×12


「決して"戦死"するな!!」

『決して"戦死"するな!!』×2


≪――――イイイイィィィィン≫


『!? 来ましたッ、距離約1000!! かなりの速さですっ!』

「戦術機の数は?」

『やはり2個中隊です!! うち不知火6機・撃震が18機ッ!』

「そうか……全員 聞いたなッ? 我々が守っているんだ、1機たりとも通すなよ!?」

『了解!!』×11

「では兵器使用自由、ヴァルキリーズ……散開ッ!」


≪勝利の栄光を……君に!!≫


『(きっと今頃……少佐も頑張ってるんですよねッ? 私達も頑張りますから!)』

『(考えてみれば何で遙にダケ言ってたんだろ? 今はソレどころじゃないかァ)』




……




…………




――――同時刻。


「それでは殿下」

「はい?」

「早速で申し訳 有りませんが、コレに着替えて頂けますか?」

「それは強化装備?」

「えぇ、女性用なので"そのまま"の姿よりは断然 楽になると思います」

「それは最もでしょうが……」

「殿下?」

「何故 女性用の強化装備を そなたが?」

「う"ッ」

「……されど、今は その様な事を気にしている場合では有りませんね」

「そ、そう言う事です」

「では」


殿下と戦術機に乗り込む事となった俺は、篁にブリーフィングの司会を丸投げし護衛に集中している。

一方 篁は良い顔をしていなかったけど……流石に両立するのは難しいので納得して貰うしか無かった。

よって早速 取って置きの強化装備を殿下に手渡すと、彼女は予想通り妙に思った様で首を傾げた。

確かに俺が女性用の強化装備を用意してるのは変ですよね~、未来を予測してないと不可能だしさ。

しかし そんな事を言えるハズもなく俺は返答に詰まるが、殿下は簡単にスルーすると後ろを向いた。


「!?」


≪――――くるっ≫


その直後 俺も後ろを向いて立っていると、5秒ほど間を置いてDA☆TU☆Iを始める音がした。

こ……これって脱いでるんですか!? 本当は立ち去ろうと思ったのに、肝が据わってらっしゃるッ!

流石は殿下ですな。"悠陽(AF)"の時では白銀を人質にされた時、躊躇いも無く脱いでたしね~。

だけど、既に着替え始めてたって事は俺は此処に居ていても良いのかな? だったら、このまま待つか。


「んしょ……」

「……ッ……」


≪ごそ、ごそごそっ≫


正直に言います。凄く……振り向きたいです……だって背後には日本一 美しい裸体が有るんですよ?

けどバレてしまえば信頼をゴッソリ失う。それダケは避けなければならないので自重するしか……

だったら立ち去るのが一番なんだろうケド、不思議と僕の足はそのまま動かないんだお(^ω^;)


「(今迄の者であれば、本来 直ぐに立ち去る筈ですのに……)」

「(見たいお、殿下の裸体を この目で見たいんだお……)」

「(何故 白銀は"その場"に? それだけ わたくしの護衛に努めていると言う事なのですか?)」

「(だけど"肝心な所"が見えた時点で、殿下に気付かれるのも必至なんだお……)」

「(それ以前に そなたにとって其処に居るのが"普通"だとすれば、わたくしは異性として……)」

「(だから、心の中で裸を想像するんだおッ!)」

「(いえ。そんな事を考える事態 筋違いの上に わたくしらしく有りませんでしたね)」

「……ッ……」

「(鎧衣の話では非常に頼りになる人間との事。やはり任務に忠実なダケだと考えて良いでしょう)」

「(ゆ……悠陽タンの裸体……ハァハァ……)」


――――そんなワケで、僅かな効果音を頼りに殿下のお着替えシーンを妄想しちゃったんだ☆


「白銀」

「!? はいッ?」

「待たせました」

「お……思ったよりも早かったですね」(妄想の時間的な意味で)

「これでも96時間ながら、実機の搭乗経験は有りますから」

「納得です。それでは、其方を向いても結構ですか?」

「どうぞ」

「有難う御座います」


≪――――くるっ≫


「……ッ……」←ちょっと恥ずかしそう

「おぉ」

「な、何でしょうか?」

「ピッタリみたいで良かったです」

「えぇ。僅かに上が緩くて下がキツくは有りますが、此処まで合っているとは驚きです」

「ふ~む(メモメモ)」←脳内で


――――殿下は冥夜より若干ヒップが有るのね。ウェストは同じらしく、流石は双子と言ったところ。


「しかし本当に何故? 偶然にしては出来過ぎていませんか?」

「そ、それは……」

「…………」


≪じ~~っ……≫


「……殿下と似たような"体格"の女性が(一応)私の部下に居るからですよ」

「!?」

「"彼女"が誰かと言うのは、直ぐに分かると思います」

「…………」

「殿下?」

「……そう言えば、そなたの部隊に……赤い武御雷が含まれていましたが……」

「はい」

「"そう言う事"……なのですね?」

「なのDeath」

「ふむ。それでは何故 紫の――――」

『白銀少佐ッ』

「あっ」

「どうした? 篁」

『殿下の御様子は如何でしょうか?』

「丁度 良かった、今 着替え終えたトコロだよ」

『そうですか。……では1分後にブリーフィングを開始します』

「分かった」

『では』


≪――――プツンッ≫


「……殿下、聞こえてましたか?」

「はい」

「ですから……あのですね、武御雷の事は」

「心得ています、今は時間が無いのでしょう?」

「すみません」

「よい。わたくしこそ、話を逸らし過ぎました」

「それでは殿下、私のHI☆ZAに御乗り下さい」(キリッ)

「……ッ……」

「ど、どうしました?」

「いえ……失礼します」


≪――――どんっ≫


「ぐっ……」

「し、白銀?」


考えてみれば彼女の強化装備 姿なんて始めて見たな……冥夜と似たスタイルであれ魅力的だZE。

勿論 胸のラインは特にクッキリ見えるので、色さえ抜ければ全裸同様なのはエロスーツの仕様だ。

よってか、つい さっき妄想してしまった事による股間の熱が未だに冷めない。自重するべきだったよ。

それに殿下の多少 恥ずかしそうな表情が俺の興奮を加速させる。……が、相変わらず顔には出さない。

そんな中 勘の良い殿下は……自分のサイズに合うエロスーツから、冥夜の存在まで察してしまった。

こりゃ~問い質されちまうかな? そう思っていると篁から良い意味で空気の読まない通信が入った。

まぁ、正直なところ……殿下には悪いが今はソレどころじゃないし、彼女もソレを判っている様子。

だから武御雷(紫)の件は後回しにする事にして、エロスーツ姿の殿下を自分の膝に乗せるんだが……

ムスコの熱が依然として残っていたので、少しダケ呻き声をあげちゃったんだ☆ 無意識のウチに。


「いえ、なんでも有りません」

「……そうですか」

「殿下、ブリーフィング前に この錠剤を」

「感謝します(……やはり、疲労しているのですね……それなのに、任務の為に わたくしを……)」

「さて、そろそろですかね~?」

「(聞いた話では新OS・戦術機のテストを行ったダケでなく、BETAの侵攻に2度とも出撃。
 その上 部下達の訓練に付き合う等、この上 無く人類の為に貢献しているとか……)」

『アルカディア02より各機へ。それでは、ブリーフィングを開始します』←武が居るので敬語

「あぁ、その前に篁」

『はい?』

「(しかも、その若さで……勝手ながら親近感が湧いてしまいます……しかし……)」

「ソレに殿下も参加する事になったから宜しく」

『えぇっ!?』

「何か問題でも有るのか?」

『い、いえッ……了解しました』

「(わたくしは政威大将軍の身。邪な気持ちは これ切りにしませんと……)」

「殿下……殿下ッ?」

「!? ど、どうしたのです? 白銀」

「間も無くブリーフィングが始まりますよ?」

「そうでしたね……参加させて頂きましょう」


≪――――ヴンッ≫


『……ッ!?』×11

『(姉上……)』

「(冥夜……)」

「篁、宜しく」

『は、はいッ』


――――こうしてブリーフィングが開始されたワケだけど、皆 緊張していた。当たり前だけどね。




……




…………




……数分後。


「ではアルカディア03から06は、俺のSⅡ型を中心にインペリアル・クロスを組む」

『了解』×4

『(ま、まさか"この陣形"で殿下を御守り出来るなんて……)』

『(し……信じられない……)』

『(何だが夢の様ですわ~)』

「背後はアルカディア03……月詠中尉に任せますよ?」

『はッ。この命に代えても』

「俺達"5機"の前方は207B分隊が、榊を中心にV字型に展開してくれ」

『了解』×5

「更に その正面をアルカディア02(唯依)と、20700(まりも)が先行する。
 各機の進行は2人に合わせる様にしてくれ。速度は殿下の状況を見て俺が指示を出す」

『了解』×2


俺達はブリーフィングを終え、間も無く塔ヶ島を出発しようとしているトコロだった。

目指すは伊豆半島の南。流石に被害ナシで横浜基地を目指すのはキツいので、海路から逃れるのだ。

もしA-01も同行してくれてたら、決起部隊をフルボッコにしつつ帰還できたかもしれないけどね。

……でも万が一と言う事も有るのでスタコラサッサに限る。敵の戦術機を壊す事さえ勿体無いのだ。

今から どうなるかは予想 出来ないけど……まぁ、トラブルが起きたら その時に考えれば良いだろう。


「白銀」

「何ですか? 殿下」

「面倒を掛けますね……本当に……」

「えっ?」

「特に そなたの様な衛士にとっては……無駄な戦い以外 何物でも無いでしょう」

「いやいや、そんな事 有りませんって。少なくとも俺は光栄に思ってますよ? 勿論 皆も」

「しかし……」

「それ以前に"今回の件"が無かったら私達と殿下は出会えなかったんですよ?」

「!?」

「はははっ、ちょっと不謹慎ですけどね☆」


≪――――ニコッ≫ ←白銀スマイル


「(やはり、何と眩しい……つまり、既に"起こった事"を需要しているのですか?)」

「殿下?」

「(故に このような状況でも他人を励ませる。自分の事を顧みず わたくしの心配を……)」

「どうしました?」

「!? い、いえ……何でも」

「なら出発しますけど、殿下は深い事は気にせず大船に乗った気で居てくださいね?」

「……ッ……ふふふっ、分かりました。そなたの言う通りにしましょう」

「その意気です! ……じゃあ、神宮司軍曹。そっちの大体の指揮は任せますよ?」

『はいッ』

「では横浜基地・突撃機動部隊……発進する!!」

『了解ッ!』×5

『第207衛士訓練部隊、我々も行くぞ!!』

『了解!!』×5


≪――――ゴオオォォッ!!!!≫


「全速前進DA!!」

『はっ!!』×11


――――んなワケで とうとう移動開始なんだけど、今度は"成り切った気持ち"で言っちゃったんだ☆


「殿下、大丈夫ですか!?」

「……ッ……意外と負担は少ない様ですね」

「それなら良かったッ!」


≪それでは殿下、私のHI☆ZAに御乗り下さい≫

≪……ッ……≫

≪ど、どうしました?≫

≪いえ……失礼します≫


「(それにしても……"あの時"僅かに感じた感情は何だったのでしょうか?)」




●戯言●
課長に白銀のチート的な噂を聞いていた殿下は彼に興味津々。その為無駄に勘繰ってしまうのであった。
しかし殿下との台詞回しは鬼門ですね、かなり悩みました。その為、短い内容です……すみませぬorz



[3960] これはひどいオルタネイティヴ40③
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/06/11 02:49
これはひどいオルタネイティヴ40③




2001年12月06日 深夜


殿下を保護し塔ヶ島を出発した俺達は伊豆半島 最南端・やや東に位置する下田を目指していた。

今現在は伊豆スカイラインを進行中で、熱海から西に伸びる東海道本線を通過した辺り。

……勿論 普通に道路を沿っているワケではなく、所々ショートカットして距離を稼いでいる。


『!? アルカディア02より各機へ。追撃中の敵部隊に帝国軍の防衛線が突破された模様』

『――――ッ』×5

『落ち着け、お前達!! 陣形を維持しろッ!』

「その通りだ榊。まだ一部が突破されたダケだし、焦る必要は無いさ」

『わ、分かりましたッ』

『それに白銀少佐』

「何ですか? 軍曹」

『この位置の中隊は、やはり……』

「えぇ、きっと"当たってる"と思いますよ?」

『皆 無事で居てくれると良いのですが』

「今は信じるしかないッスね」

『良いか貴様等!? 踏み止まっている部隊の為にも、この程度しっかり こなして見せろ!!』

『了解!!』×5


≪おい雪乃、今の話って……≫

≪A-01の事じゃないの?≫

≪その線が強いでしょうね~≫


俺達の後方では激しい戦いが繰り広げられており、どちらかと言えばやはり劣勢だ。

されど活躍している部隊も存在し、クーデター軍のマーカーを次々と消している箇所も有る。

大方 伊隅達A-01が防衛しているからだろう。このまま全員が無事に生還する事を願いたい。

今は……徐々に"こちら側"に後退しつつ、未だ流れてくるクーデター軍を迎撃している様だ。




……




…………




――――15分後。


「それにしても殿下」

「はい?」

「それなりに飛ばしてますけど、大丈夫ですか? ホントに」

「……ッ……」

「で、殿下?」

「おかしなものですね」

「えっ?」

「この速度……本来 今のわたくしであれば、耐えれるモノでは有りませんのに……」

「と言う事は?」

「少々 カラダに障りはしますが特に問題 有りません」

「確かに……バイタル的にも異常 無い様ですね」

「これも冥夜の"フィードバック・データ"の効果でしょう」

「!? ……気付かれてましたか」

「それに――――」


……一方 殿下の状況だけど、正史と比べれば かなり"良い"様子で、顔色も悪くは無い。

でもクーデター発生から全く寝てないらしいから、相応の疲労は残ってるみたいだけど、
これも強化装備の御陰。冥夜の姉ダケあって、性格は違えどデータが肉体に合っているらしい。

また殿下 自身も何気に207B分隊以上の搭乗経験が有るので、経験が活きてるねマジで。

だけど……こんな状況で役に立つってのは皮肉なモンだし、殿下も複雑な心境だろうな~。


「それに?」

「白銀の操縦が"巧い"のも大きいでしょうね」

「……私の?」

「はい。この速度で着地しても衝撃が余り来ないので、とても不思議です」

「この機体には新OSが積んでありますからね。その恩恵だと思います」

「まあ」

「え~っと、例えば新幹線……いえ、高速で走る何かに乗って居るとします」

「はい」

「ソレがもしオープンカー等で有れば、風圧で目を開ける事さえできないでしょう。
 されど車内や船内だと不思議と食事をする余裕さえ出る。今そう言う操縦をしているんです」

「!? し、しかし戦術機で其処までは……」

「確かに難しいでしょうね~、でも慣れれば こうやって衝撃を最低限に留められますよ?」

「……驚きです」

『アルカディア02より各機へ。次の山も跳躍噴射で飛び越えますッ! 間隔は1000!』

「アルカディア01了解。……殿下、堪えてくださいね? 強く踏み込みますんで」

「分かりました」

「(……良しッ)」


≪ダンッ!! ――――ブァッ!!!!≫


「くっ……(ですが、やはり思ったよりは……)」

『着地後は再び400……いえ500間隔にリンク。タイミングはアルカディア02に同調』

「流石は篁だな~、しっかりやってくれている」

「彼女も斯衛軍の者の様ですね」

「はい。今は私の部下をしてくれています」

「鎧衣の話では……臨時中尉として巌谷中佐より派遣されたとの事ですが?」

「その通りです」

「また以前は、アラスカで特殊任務に努めていたと……」

「うわ、あの人そんな事 迄……一体 何処から仕入れて来るんだろう」

「ふふふっ、わたくしも不思議です」←チラっと武を見ながら

「ですよね~☆」←ウザ・スマイル

「……あッ……」

「殿下?」

「な、何でも無いですッ」

「……(う~ん)」


ちなみに、こうやって他愛の無い事を話す時は他の皆には会話が聞こえない様にしている。

しっかし……殿下はホント余裕だな~、いや其処 迄では無いとしても笑顔すら有るんだから。

でも"何でも無い"と幾度か言われてるのが気になるな……変なフラグじゃ無きゃ良いんだけど。

やっぱ今みたいな"スマイル"が良くないのかな? 殿下は普通に可愛いが、俺は止めて置くか。


「ところで白銀」

「何でしょう?」

「先ほどの件ですが……」

「武御雷(紫)の事ですか?」

「はい。冥夜は何故――――」

『!? あ、あれは……!』

「どうしたんですか? 軍曹」

『アルカディア02より各機へッ! 前方に機影多数です!!』

『この距離でもレーダーに映らない……何てステルス性能なの!?』

『そんなぁッ!?』

『ど、どどどどうすれば――――』

「鎧衣・珠瀬、落ち着けっ! アレは"味方"だ、気にせず進め! 篁ッ」

『は、はいっ。このまま陣形を崩さず正面の山をショートカット、間隔は再度1000!』

「全機・間違っても銃口を向けるなよ~っ!?」

『了解!!』×11

『(そ、そう言えば白銀さんの言う通りだったわ。あんな性能の戦術機は日本に無いし)』


≪――――ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


『あら、なかなか勘の良い人が居るみたいじゃない』

『此方 米軍・第66戦術機甲大隊!!』

『後は我々に任せて置きなさい、決して追いつかせはしないッ!』

『そうだ……それで良いッ! 速度を落とさず通過するんだ!』


『!? アルカディア02了解、御協力 感謝します』

「さて、ようやく米軍も介入か……殿下、いけますか?」

「よい。わたくし達が少しでも急ぐ事で犠牲も減りましょう」

「有難う御座います。じゃあ、篁」

『はっ』

「殿下は大丈夫だから本気出して良いぞ」

『……ッ……わ、分かりました。……各機・最大戦速! 600間隔でリンク!!』

『――――了解!!』×11


そんな中、殿下が再び"冥夜が武御雷(紫)に乗って居ない事"を俺に問い質そうとして来た時……

真っ先に"アンノウン"の存在を確認した最前列の まりもちゃん&篁が声をあげ、動揺するB分隊。

しかし まりもちゃんの"ステルス"と言う単語で、俺は瞬時に米軍機……ラプター辺りと理解した。

よって根拠も無しに味方だと叫ぶと篁は気を取り直して皆に指示を出し、引き続き指揮を努める。

コレで殿下との話の件が後回しになったのはともかく……何だが順番が違ってる気がするな~。

曖昧な記憶によれば米軍の援軍より先に、迫り来るクーデター軍から通信が入る的な意味でだ。

きっと それなりの速度を維持していたので、奴等との距離が大して縮まっていなかったんだろう。

強力なA-01が踏み止まっているのも有るし、全て正史より良い状況に動いていると言って良い。

……でも本来 彼女達は もっと違う場所でコッソリと戦ってた様な気がするんだけど、
大方ゆーこさんがS型の対戦術機の実戦テストも兼ねて"それなり"の場所に放り込んだのかもね。


「それにしても」

「はい?」

「流石ですね……白銀」

「どうして です?」

「あれは米軍の機体で間違い無かった様ですが、それを確認もせずに分かるとは……」

「いえ、別に分かったと言うワケでは無いんですけど」

「……ッ……どう言う事です?」

「例えクーデター軍であれ奴等は絶対に攻撃 出来ません。先ず通信から入れて来るでしょうから」

「成る程、それを見越して……(やはり今の操縦と言い、非常に優れた衛士なのですね)」

「そう言う事です」

「……(それに皆の落ち着き様と士気。それだけ彼は信用されていると……)」

『――――横浜基地・突撃機動部隊 及び第207戦術機甲小隊に告ぐ』

「んっ?(この声は)」
 
『私は米国陸軍・第66戦術機甲大隊の指揮官……ウォーケン少佐だ』

『!?(し、白銀少佐ッ)』


そんなカンジでA-01の事を考えつつ、擦れ違ったラプターを気にしていると新たな通信が入る。

マブラヴに置いて数少ない男キャラの"ウォーケン少佐"からだ。原作通りマッチョな人ですな~。

対して現在 指揮をしている篁は俺に無言で視線を投げ掛けて来た。……勿論 意味は理解できる。

彼女には俺が本来するべき役割を押し付けているダケなので、彼への対応は俺がするべきなのだ。


「(OK~)初めましてウォーケン少佐。私は国連軍・横浜基地所属、白銀少佐です」

『ふむ、貴官が其の部隊の指揮官か?』

「そうです」

『では指揮官に告ぐ。この先の亀石峠インター・チェンジを抜け約4キロ程 南下した場所で、
 既に補給の準備が整っている。先程の中隊が時間を稼ぎに向かったので、速やかに合流せよ』

「アルカディア01、了解。……篁ッ」


ゴルフは全くしないが、其処には確か伊豆スカイラインCC(カントリークラブ)が有った筈。

けど"この世界"には無さそうな上に、有ってもBETAの所為で崩壊してそうだけどな。

……でも補給する場所としては良いかもしれないね。原作だと普通に通り過ぎた場所だろうけど。

さて置き。心強い援軍・ウォーケン少佐の有り難い指示の後、俺は小声で篁に声を掛けた。

何故なら一応 纏め役は俺なのだが、臨時で篁に指揮官を任せている事を伝えて欲しかったからだ。

殿下の様子を気遣いながら指揮するのは、白銀大佐ならまだしも俺のスペックじゃ厳しいからね。

そんな俺の心境を、篁は頷いてくれた事から理解してくれた様だ。出来の良い部下で本当に助かる。


『はっ! ウォーケン少佐、私は国連軍・臨時中尉、篁中尉です』

『……何かね?』

『現在 殿下と同乗中の白銀少佐に代わり、部隊の指揮を努めさせて頂いております』

『コールサインは……アルカディア02だな? 了解した。こちらはハンター01だ』

『畏まりました』

『……(なかなかの大和撫子だな)』

「じゃあ、ついでに殿下も」

「えっ?」

「(ポチッとな)」


≪――――ヴンッ≫


『なっ!?』←ウォーケン少佐

「(白銀、何故 突然この様な?)」

「(これから世話になりますし、殿下 自ら挨拶するのも良いと思いまして)」

「(成る程……その通りですね)」

「(余計な事だったら、すみませんでした)」

「(いえ、そなたの心遣いに感謝を)」

「(勿体無い御言葉です)」


――――実は今の不意打ちでウォーケン少佐の驚く顔が見たかったなんて言えないZE☆


『……ッ……』

『少佐?』←イルマ

『……殿下、拝謁の栄誉を賜り、恐悦至極に存じます』

『ちょっ……少佐、今は進軍中ですよッ!?』

『うぉっ!?』


≪――――ガクンッ!!≫


「ウォーケン少佐?」

「如何なされました?」

『な……何でも有りません。しかし何故 殿下が?』

「有り難い事に、強化装備を御借りしているのです」

『成る程(……其の部隊には頭の切れる者が居た様だな)』

「……っと、今現在 亀石峠ICを通過。目的地まで後3キロ」

『ハンター01了解。此方は今 到着した所だ。貴官らの合流を待つ』

「アルカディア02ッ」

『はい、間隔は500刻みに変更。ラスト3以降より減速開始せよ!』

『――――了解!!』×11


それにしてもウォーケン少佐の驚き様は予想以上だったな、危うく事故りそうになってたし。

……って言うか、戦術機での移動中にイキナリ目を閉じて挨拶するのは ど~かと思いますよ?

やっぱAFと同じでオルタ世界でも彼は"殿下 自身"に魅力を感じていたのかもしれないね~。

大方"こっち"でも翻訳機 無しに普通に日本語を話せそうな気がする。文化にも無駄に詳しそうだ。


「さ~て、もう少しの辛抱ですからね?」

「感謝を(……白銀、そなたは……)」


≪先程の中隊が時間を稼ぎに向かったので、速やかに合流せよ≫

≪アルカディア01、了解≫


「はははっ、あくまで"一時的に"ですけど――――」

「……即答していましたね?」

「えっ?」

「!? な、何でも有りません……操縦に集中なさい」

「は、は~い」

「(そなたの技量と今の わたくしの状況を考えれば、補給せずとも逃げ切れる筈です)」

「(やったお、補給できるお……そろそろ股間が限界だったんだお……)」

「(しかし素直に補給を受けると言う事は……やはり仲間達を心配しているのでしょう)」

「(これも殿下のオシリの感触が気持良過ぎるからなんだお、まさに日本一の尻だお……)」

「(冥夜を含む訓練兵の皆さんダケでなく、篁中尉も肩の力を入れ過ぎな様でしたから)」

「(だから補給は願っても無い事だお、原作でも有った線が強いけど、覚えてない分 嬉しいお!)」

「(それに……そなたの事です。わたくしの体調の事も気遣ってくれているのでしょう?)」

「(さてさて後1500メートル……3回ジャンプしたら到着してしまうお、戦術機って便利だお)」

「(されど米軍 衛士達の危険が嵩むのは事実。なのに何も言えぬ わたくしは、本当に無力ですね)」


――――こうして股間の痛みに耐えながら操縦する中、待機している米軍 部隊が見えてくる。


「おっ? 見えて来ました」

「米軍の戦術機も見えますね」

「とにかく補給を受けれそうで良かったです、丁度 トイレに行きたい所だったんですよ」

「……っ……」

「で、殿下?(ヤベぇ、外したか!?)」

「いえ、感謝します白銀」

「????」

「(今のは冗談で わたくしを元気付け様としてくれたのでしょう? そなたは本当に……)」


"感謝します"ってのは護衛に対する御礼だろうから……も、もしかしてスルーされたのか!?

地味にショックを受けた感が否めない。やっぱ"スマイル"は勿論 冗談も控えた方が良さそうだね。

改めて考えてみろって……彼女は政威大将軍だぞ? 俺にとって雲の上の存在なんだ、自重・自重。

故に脳内で殿下を堪能する事で済まさざるを得ない。とにかく到着後はトイレに特攻だお(^ω^ )


『全機停止ッ! 米国陸軍の指示に従い、速やかに補給を受けよ』

『――――はっ!』←武 以外

『貴様等、何ださっきの機動はっ! 今迄 何を習ってきたんだ!?』

『も、申し訳有りません!』

『(確かに不甲斐ない……姉上の前だと言うのに……)』

『(殿下、ずっと少佐の膝に……妬ましい)』

『(うぅ……コレでも頑張ってたんだけどな~)』

『(さっき塔ヶ島で父さんっぽい人が居た様な気がしたんだけど、気のせいだったのかな~?)』

『5人とも補給中、戦術機を出て私の所に集合しろッ!』

『了解!!』×5

「それにしても、はりきってるな~篁と軍曹」

「ふふふ、いずれにせよ頼もしい者達ですね」

「御尤も」

『(くっ……白銀少佐は任務に努められているダケなのに)』

『(どうして こんな……きっと私は殿下に対してまで……)』


――――勿論この時の俺は、篁&まりもちゃんが単に嫉妬してたダケな事に気付く筈も無かった。




●戯言●
ウォーケン少佐のターン。次回も白銀×殿下で適当に会話しつつ、逃避行が続きます。
しかし会話の内容を考えるが非常に難しい件。空挺作戦? 其処はライフルの出番ですね。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ40④
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/06/14 06:03
これはひどいオルタネイティヴ40④




――――補給が開始された直後、俺は殿下を交えて篁と通信を行っていた。


「被撃墜比が00対36だとぉ~!?」

『は、はい』

「なんとまあ……」

「流石はA-01だな、1機も殺られてないなんて」

『これはXM3による技量は勿論の事……特に不知火S型の性能がモノを言っていた様です』

「ほ~っ」

『特に"サブ射撃"の効果は抜群で、2個中隊が殆ど何も出来ずに全滅したとか』

「まぁ、そうなるだろうな」


――――まりもちゃんが30秒、速瀬が15秒で殺られちまった位だしね。


『現在は……やはり此方側に後退していますね』

「帝国軍の動きは?」

『防衛戦を突破されはしたモノの、残存兵力で合流しつつクーデター軍を追撃しています』

「そうなると、巧くいきゃ~奴等を米軍と挟めるってワケか」

『はい。より逃走が安易となるでしょう』

「成る程ね」

『それでは私はウォーケン少佐との打ち合わせが有りますので』

「分かった、有難う」

『……(その御言葉ダケで十分です、白銀少佐)』


≪――――プツンッ≫


「……だそうですよ? 殿下」

「ふむ」

「殿下?」

「Aー01……鎧衣からは香月副司令の私兵と聞きます」

「御存知でしたか」

「はい。それにしても、この戦果……素晴らしい部隊の様ですね」

「はははっ、私を堕とす程の衛士も居ますからね」

「また そなた達と言い、もし皆が居なかったと思うと些(いささ)か無茶な脱出でした」

「まぁ~運も実力のウチって言いますからね、殿下の選択が最良の未来を導いたんです」

「そなたが"この強化装備"を用意していた事もですか?」

「も……勿論ですよ。正直に申しますと私は可能性が極力低いと思いながらも、
 御剣訓練兵の存在を考えて殿下の強化装備を用意させて頂いたのです」(大嘘)

「な、なんと」

「我々が塔ヶ島に配置された事から、香月副司令は"真相"を知っていたかもしれませんが、
 彼女は私 如きでは考えている事が解りかねる人なので、断定は出来ませんけどね……」

「ならば そなたは……」

「はい。どちらにしろ、それを知る権利は私には無かったでしょう」

「……ッ……」

「どうされました?」

「(この瞳……嘘を述べている様には思えません。ならばコレは確かに最良の未来と言う事に……)」


≪あっ……いや、殿下も想像してた方とは大分 違うなァ~と≫

≪それでは、お互い様のようですね≫


「殿下? 殿下ッ」

「……(つまり、そなたとの出会いは運命……そして冥夜との再開も……)」

「脈の頻度が!? ま、まさか御体が――――」

「!? いえ白銀、少し考え事をしていたダケです」

「そうでしたか」

「し、しかし……少し熱くなって来ましたね」

「確かに(俺の下半身は以前からバーニングしっぱなしなんですが?)」

「では……少し風に当たりましょう」


――――俺が その言葉にアッサリ頷き、ホイホイ付いて行ったのは言うまでもないんだ☆




……




…………




「うおっ? 少し風が強い様ですね」

「反面 雪は減りました」

「寒くないですか? 殿下」

「強化装備の恩恵でしょう、どうと言う事は有りません」

「でも顔は冷えますよね」

「そ、それは好都合です」

「????(……好都合?)」


……実際に伊豆スカイラインCCは存在していた様で、補給は駐車場 跡で行っている。

しかしBETAが通り過ぎた相応の被害が出ており、施設はもはや使い物にならなそうだ。

そんなCCの外れの丘に俺と殿下は来ていたが……彼女の為とは言え早く抜きたいんスけど?

されど今は殿下の傍を離れるワケにはいかないので、結局は我慢するしかないかもしれない。

月詠さんあたりに今ダケ護衛を頼むのも良かったかも知れないけど、もう遅いんだZE……


「それより白銀」

「何でしょう?」

「冥夜の事なのですが……」

「……ッ……」

「何故 武御雷に乗ってくれていないのでしょう?」

「殿下は どう御考えです?」

「それは……あの者は今迄わたくしからの贈物を、快く受け取った事は一度も無かったので……」

「必然なモノだと?」

「はい」

「――――それは違いますよ」

「!?」

「何せ任官すらしていない訓練兵ですからね、使いこなす事さえ無理な話ですよ」

「ですが先程の操縦を見る限りでは……」

「ふ~む、恐らく殿下は"世間知らず"の様ですね」

「世間……知らず?」

「例え技量が有ったとしても、乗れるワケが無いでしょう? 常識的に考えて下さい。
 訓練兵と言う立場的に普通に無理。シミュレーター的にもデータが不足していて無理。
 そして維持費も嵩む上に国連軍の衛士ともなれば、どう考えても"乗れない"でしょう?」
 
「は、はあ」

「良いですか? 紫の武御雷と言えば将軍機です。そもそもソレを国連軍に届けるのが――――」

「……(考えてみれば……叱りを受けるのは何年振りでしょう?)」


此処で説教タイム開始。殿下 相手に何やってるんだ俺……でも彼女の考えはスルーできない。

冥夜にイキナリ武御雷(紫)を押し付けて、ソレに乗っていないのを不思議がるってどうよ?

日本の全てを担う"政威大将軍"としては有り得ない世間知らずっぷり。だから正直に言った。

……対して殿下は少し表情を強張らせてしまったけど、黙って俺の説教を聴いて下さっている。

んでもって武御雷(紫)を贈るのを許可した部下に"お前はアホか"と言ってやりたいが無理な話。


「――――と言う訳で、殿下の行いは逆に御剣を遠ざけてしまっていたんです」

「そ、そんな……なんとした事でしょう」

「しかし無礼な事ばかりを述べてしまって……申し訳有りません!!」

「よい。わたくしも愚かでした」

「……(フラグ折れてないよなァ?)」

「ところで"その時"の冥夜は何と申していたのです?」

「ハッキリと"乗る気は無い"と言っていました」


≪私め等にでは無く、白銀少佐の様な より優れた衛士に御与え下さい!!≫


――――こんな事も言ってたけど、殿下が本気でヘコみそうなので黙って置こう。


「そうですか……やはり、わたくしの事を快く思っていない様ですね」

「どうして、そう思われるんです?」

「白銀は冥夜から わたくし達の事を聞いていますか?」

「いえ」

「ならば……話して置きましょう」

「何故 私などに?」

「そ、そなたには聞いて貰いたいのです」

「…………」


確か冥夜は殿下の事を微塵にも嫌っていないと思うけど、意外とネガティブだな~彼女は。

だから違う事を分からせてあげたかったケド、どうやら冥夜との関係を話してくれる様子。

……でも何だか大便がしたくなったので断りたかったが、上目遣いの殿下に負けてしまった。

可愛い過ぎだろ常識的に考えて……だから、場所は違えど原作 通り耳を傾けるしかなかった。

まだ大丈夫だ、ケツを〆れば少しは我慢できる。股間も相変わらず熱を持っているけど、
腕を組んで俯きながら話を聞いていれば治まる方向に持って行けそうだ……密着してないしね。

そんな殿下の話の内容は……今北産業で説明してやろう。(正直あんまり聞く事に集中出来なかった)


①殿下と冥夜は双子。うち冥夜は忌児(笑)とされ御剣家に養子に出された為 話した事すらない。

②冥夜は幼い頃から殿下の影武者みたいな存在として教育され、政治の道具としても扱われた。

③今 冥夜が国連軍・横浜基地に居るのは、日本が人質として献上した為であるとも言えるらしい。


――――大体こんなトコロかな? この辺は全然 覚えていなかったので、勉強したZE。


「……と言う事なのです」

「成る程~」

「故に冥夜は わたくしに失望しているダケでなく……恨みすら感じているかもしれません」

「へっ?」

「ですから姉としての資格すら、今のわたくしには無いのです」

「いえいえ、それは無いですよ」

「えっ?」

「そう言えば、普段の彼女の様子を話していませんでしたね」

「は、はい」

「けれども、まだ出合って2ヶ月にも満たないので些細な内容ですが――――」

「……ッ……」

「真面目で努力家な上に冷静沈着。戦術機の操縦も長刀に関しては天性の実力を持っています」

「まあ」

「そして世界の平和を真剣に願っています。反面……色々と経験が薄い為に甘さが否めず、
 上官に食って掛かった結果 殴り飛ばされ、枕を涙で濡らした事もありましたが――――」

「!?」

「殿下の事を大切に思って居る事は確かだと思います」

「そ、そうなのでしょうか?」

「はい。出会った時から……いえ、彼女は今でも誇りを持って生きていますからね。
 つまり自分の人生に一切 不満を持っていない。よって殿下を恨んでいるハズが有りません」

「…………」

「だから元気を出してください。私はこう見えても"仲間"を見る目は有ると思いますから」

「仲間……ですか」

「部下と言う名の仲間ですかねェ」

「ならば、冥夜が少し羨ましいですね」

「!?」

「白銀」←上目遣い

「な、何でしょう?」

「つまらぬ話を聞いてくれた そなたに、心より感謝します」

「れ……礼なんて要りませんよ」

「されど何と言うか……喉に詰まっていたモノが取れた様な気がしてなりません」

「ホントですか? なら柄にも無い事を言った甲斐が有りましたよ~」←本音

「ふふふっ、そなたは本当に面白い人ですね」

「有難う御座います」


≪ビュウウウウゥゥゥゥ~~ーーッ≫


「きゃっ」

「風が強くなってきましたねェ」

「その様です」

「……っ!?」←大便フラグ☆

「どうしました? 白銀」

「申し訳有りません殿下、少し席を外します」

「そうですか……」

「直ぐに戻りますので、戦術機の中で御待ち下さい!!」

「わ、分かりました」

「それではッ!」


≪――――ダダダダダダッ!!!!≫


殿下に姉妹 云々の話を聞いてる中で思い出したが、俺は"ある物"を託して貰わねばならない。

ソレはヘンテコな人形だった気がする。会話をせずとも一緒に過ごした証ってヤツだったかな?

今は強化装備 姿なので持っていない様だけど、普段は肌身離さず所持している線が強い。

……何せ会う可能性が無い筈だった冥夜に"託したいモノ"を、イキナリ出したんだからねェ。

だから"後で渡したい物が有ります"と言って貰えればOKだったんだけど、悲劇が俺を襲う。

突然の風によって、我慢していた便意が急激に膨れ上がったのだ! ……これは洒落にならんッ。

よって天秤をトイレにカツンと傾けてしまうと、俺は全速力で その場を走り去るしかなかった。


「(突然 何かを思い出した様な……きっと"仲間"達の様子を見に行くのでしょう)」

「殿下」

「!? そ、そなたは月詠?」

「はっ、真那で御座います」←跪きながら

「……聞いていたのですか?」

「いえ……たった今 伺った所ですが、白銀少佐に勘付かれてしまった様です」←不正解

「成る程。やはり流石と言った所ですね(……わたくしは気付きませんでしたし……)」

「しかし軽率でした。御話の妨げとなってしまい、誠に申し訳有りません」

「よい。白銀は わたくしばかりに構っている身分では無いでしょう」

「し、しかし」

「では こう考えなさい。白銀は そなたにわたくしの護衛を任せてくれたと」

「!? ……そう言う事ならば」

「ならば月詠、戦術機に戻るので共に」

「御意(……何時の間にか其処まで殿下に買われるとは……それに、私への配慮も……)」


≪いくら必要だったからって俺が今迄 裏で動いていたのは確かですから、
 疑うのも仕方無いですよ。 全ては御剣の事を想っての事なんスよね?≫(20話 参照)


「……(白銀少佐……)」


≪信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始めた。 人間を間違わせていたんですよ≫(23話 参照)


「……(冥夜様が惹かれる者)」


≪むしろ頑張って貰える方が、国連軍である横浜基地の衛士達には刺激になります≫

≪それでは少佐の立場が……≫

≪そう思う連中には言わせて置きゃ良いんです、むしろ俺が黙らせてやりますよ≫(26話 参照)


「……(クッ、何故こんな事ばかり? 今日の私は どうかしているッ)」

「月詠。行き先が逆ですよ?」

「えっ!? こ、これは失礼を――――」

「(ふむ……冥夜と月詠は、どうやら彼を慕っている様ですね)」




……




…………




「う~……トイレトイレ~ッ」


今トイレを目指して全力疾走している僕は、ごく一般的な国連軍衛士。……ってこのネタ久しぶりだな。

されど余裕が無いので割合するのはさて置き。途中で見覚えのあるキャラと出くわしてしまった。

……ウホッ! 良いオッパイ……彼女はクーデター関連のイベントで最も空気の読めないキャラ。

確かイルマ・テスレフ少尉だったかな? 都合が悪く正面から歩いて来たので、足を止めざるを得ない。


「あら? 貴方は……」

「見覚えないですかね~?」

「……あぁ! 突撃機動部隊の指揮官だったかしら?」

「建前はそうなりますね。白銀 武 少佐です、どうぞ宜しく~」

「えぇ、こっちこそ宜しく~……じゃなかった、此方こそ宜しく御願いしますッ!
 ……でも、何時もそんな口調なんですか? 少佐。……私の階級は少尉ですよ?」

「はははっ、生憎コレは性分なんですよイルマ少尉――――ッ」

「!?」

「じゃなかった、ハンター2でしたっけ?」

「……ッ……そ、そうです……名前はイルマ。イルマ・テスレフ……」

「重要な名前なので、2回言いました」

「????」

「……(しまった、先に言っちゃったZE☆)」

「……(ど、どう言う事? 初対面なのに……)」


折角のエンカウントなのに、俺は便意を我慢していた所為でイキナリ墓穴を掘ってしまった。

対してイルマ少尉は驚いた様子。無理もないよな……初めて見る相手が自分の名を知っていたんだから。

そうなると、直ぐ様"偶然 知っていた"と言い訳したいトコロだが、彼女は見るからに警戒していた。

何だか誤魔化せそうな雰囲気じゃない。俺がウォーケン少佐の名を知っていたのならともかく、
彼女は恐らく米国の工作員だ……唐突に名を当てられて不審に思わない筈が無いんだ。

だとすれば"流す"しかないよね~? コレで横槍を諦めてくれりゃあ、儲けモノだと思うしな。

でも考えてみれば無事 逃げ切れば説得イベントすら無いし、此処は やはりポジティブにいくか!


「ところでイルマ少尉」

「は、はい?」

「トイレは何処ですか?」←実は適当に走ってた

「えっと……あちらに有る大型トレーラーの中に……」

「そうか、有難う」

「いえ(……まさか、偶然よねッ? それよりも厄介だわ、こうも優れた部隊だとは思わなかった)」

「じゃあ今回の任務、必ず成功させましょう」

「はっ! 勿論です」

「では失礼~っ」

「……(それに白銀少佐か……所詮は噂だと思ったけど、有能なのは間違いないみたいね)」


――――ちなみに先程のミスのより便意が和らいだので、無事トイレには間に合いました。




……




…………




……補給終了から十数分後。俺達は順調に逃げ続けており……次のICを通過したところだった。

戦況も優勢で米軍は決起軍に対し被撃墜比1:8を維持している。確か原作は1:7だった筈だ
俺たちの進行の速さも有って相手は焦っているらしく、米軍の力を存分に発揮する事が出来ている様子。

ちなみにA-01は何と00:48と言う戦果なんだが、消耗が激しいので既に南に引きつつある。

それは米軍も同じであり、俺たちの進行に合わせて徐々に後退している。何せ決起軍の物量は圧倒的だ。

誰がリークしたのか知らんが、他の陽動を無視して殆どの敵 戦術機が伊豆に集結してるらしい。

だから今は撃墜比で圧倒的に上回っていようと、モタモタしていると物量に飲み込まれてしまう。

反面 決起軍も味方部隊に挟まれたら終了なんだが、若干 展開が遅い為その僅かな時間が重く圧し掛かる。

さて置き俺もトイレの"ついで"に抜けたので、本調子に戻っている。……オカズは当然 殿下の尻さ☆


『冷川ICを追加。これで安心と言ったところか』

「そうですね~、ウォーケン少佐」

『しかし……妙ではないですか?』

「何故です? 軍曹」

『あまりにも決起軍の動きが良かった気がします。まるで此方側の動きが分かっていた様な……』

『そ、それでは我々の中に"裏切り者"が居ると?』

『何を言い出す? 軽率な言葉は慎めアルカディア02ッ』

『す……すみません』


――――余談だが護衛の戦術機はウォーケン少佐を含めて12機の中隊。全てラプターなので心強い。


『しかし……今となっては関係無い事だがな』

「関係無い?」

『情報によれば……奴等は殿下が脱出された事は知っていたが、逃れた場所までは分かっていなかった。
 しかし、殿下が此処に居(お)られ……白銀少佐の戦術機に同乗されている事を特定しているかの様に、
 決起軍の増援は伊豆半島に集まり、素早く部隊を展開させた。だが……既に我々には結果が有るのだ』

「結果……とは?」

『幾ら情報を得ようと目的を達成させねば意味が有りません。成功と言う"結果"が全てなのです。
 富士教導隊の増援は厄介でしたが、我々は冷川ICを抜けました。任務は成功と言って良いでしょう』

「成る程」

「(殿下が相手なら極端に口調 変えるんだよな~、この人)」

『白銀少佐、殿下の様態はどうだ?』

「若干"心拍数"が上がっていますが、問題無い……ですよね?」

「!? は、はい。気にせずとも良いです」(どきどき)

『ハンター01了解。だが各機 若干速度を落とせ、速度はアルカディア02にリンクする』

『了解!!』×23

『……(お、叔父様……私は何時の間にか大役を……)』


――――そんな篁の脳裏に"頑張れ!"と微笑む巌谷さんの笑顔が過(よ)ぎったとか過ぎらなかったとか。


「白銀、感謝します。これで無事に済みそうですね」

「…………」

「わたくしが逃れれば決起軍も降伏し、無益な戦いも治まりましょう」

「…………」

「ですが其の前に、そなたには頼みが……ッ……白銀?」

「……来ます」

「えっ?」

『!? アルカディア02より各機へッ! 北方より帝国軍・671航空輸送隊の接近を確認!!』

『671……!?』

「知ってるのか雷電ッ……じゃなかった。軍曹?」

『は、はい。恐らく厚木基地の――――』

『まさか……空挺作戦か? 馬鹿なッ、有り得んぞ!?』

『国連軍・及び米軍の指揮官に告ぐ。我に攻撃の意図非ず……繰り返す、我に攻撃の意図非ず。
 直ちに停止されたし……貴官らの行為は、我が日本国主権の重大なる侵害である。繰り返す――――』

「な、なんと……」

「光線級の脅威すら無視して来ましたか。相当 切羽詰ってたみたいですね」


しかしながら、そう簡単には逃がしてくれない。地上で逃れ様と空からの増援が迫って来ていた。

それも戦術機が2機搭載できる輸送機が20以上……恐らくアレらに沙霧も乗っているんだろう。

……ってか、今のって沙霧の声だよな~。お前らは"親愛なる国民の皆様"の家族を何人殺したんだよ。

この作戦と言い今回のイベントは突っ込み所が多すぎて困る。それよりも、この状況を待っていたッ。

篁達が慌てながら俺に頼り気な視線を向けて来るし、此処は上官として期待に応えてやるとしよう。


『し、白銀少佐~ッ!』←唯依

『クッ……不味いぞ? このまま南下しても挟まれる。むしろ友軍との合流さえ難しくなるな』

「……ッ……」

「白銀……」

『だが此方は2個中隊。無理にでも突破するしか――――』

「アルカディア01より各機へッ!」

『!?』×23

「全機・最大戦速!! 速度はハンター01に同調だッ!」

『やはり突破すると言うのか? 白銀少佐』

「其の通り。少し方法は違いますけどね!」

『……どう言う事だ?』

「俺がこの"支援狙撃砲"で後退しつつ輸送機を堕とします」

『な、なんだとッ!?』

『そんな事が出来るんですか?』←イルマ

『けど"支援狙撃砲"……その射程ならば近付かれる前に……』

『撃墜が可能と言うワケですか? 篁中尉』←月詠

『は、はい……きっと白銀少佐の腕を持ってすれば……』

『良いのか白銀少佐? 殿下の様態に危険が生じる可能性が有るぞ』

「信用なりませんかね?」

『いや、貴官の噂は先程 部下達から聞いている。しかしだな……』

「よい。わたくしは白銀を信用しましょう」

『殿下ッ!?』


――――ぶっちゃけ反対されても無理矢理しようと思ったけど、殿下が賛成してくれて驚いたZE。


『わ、私も白銀少佐であれば何とかしてくれると思います!』

『私もです、ウォーケン少佐ッ』

『……私も賛成』

『そ、そうです~っ! 白銀少佐の狙撃は"世界一"ですから!!』

『ボクもライフルを持ってたなら、降下前に堕とす方が良いと思いますよ~?』

『お、お前達……発言は控えろとアレ程だな……』

「(まりもちゃんも苦労してるね~)」

『ふむ……(それ程 彼は信用されていると言う事か)』

『どうします? 少佐』

『……先ずは南への突破を最優先事項とする。ハンター01を中心に各機左右に展開しろ』

『了解!!』×11

『その一環として白銀少佐のプランを採用する。出来る限りのAN-225(輸送機)を堕とすんだ』

「アルカディア01了解。では後ろ向きで前進しつつ輸送機を狙うッ!」

『う、後ろ向き……』←唖然とするイルマ

『白銀少佐』

「何ですか? 月詠中尉」

『狙撃時も変わらず我々4機を随伴させて下さい』

「勿論そのつもりさ。インペリアル・クロスで殿下を支えてくれ」

『はっ!』×4

「篁と軍曹は榊達を頼む」

『はい!』×2

『それでは作戦開始!! 正念場だ、切り抜けるぞッ!』

『――――了解!!』×23


≪ズゴオオオオォォォォーーーーッ!!!!≫


先頭のウォーケン少佐の合図により、24機の戦術機が唐突にスピードを上げて前進した。

その一番 後方には、後ろ向きでライフルを構える俺のSⅡ型を中心に4機の武御雷が周囲を囲んでいる。

勿論 俺のSⅡ型は後ろ向きながらもしっかりと間隔と速度を合わせており、銃口を輸送機に向けている。

こんな操縦は米軍の衛士からすればアホみたいだろうが、ハイヴの攻略をするに当たっては基本操作だ。

そんな事を考えているうウチに輸送機がどんどん近付いてくる。そろそろ射程内だが降下はしていない。

しっかしデカい的だよなコレ。珠瀬が"世界一"とか言ってくれてたけど……大した技量は要らなそうだ。


「間も無く敵 輸送機を捕らえる。次の跳躍噴射から狙撃を開始」

『ハンター01了解』

「……白銀」

「はい?」

「あれを"堕とす"と言う事は、やはり……」

「……ッ……」

「いえ、失言でした。"こんな時"に述べる事では無かったですね」

「大丈夫ですよ、殿下」

「えっ?」

「俺は人は殺さないッ! その怨念を殺す!!」

『!?』×23


――――でも一応 何かに肖りたかったので、つい聖戦士に成り切っちゃったんだ☆


「(白銀……やはり そなたは、わたくしには輝いて見えます)」

『(もっとキミみたいな衛士に早く会えてれば、私は故郷を違う形で……)』




●戯言●
次回"性戦士タケバイン"に御期待下さい。その40は次回で終わりですがクーデターは折り返し予定。
まだ全然フラグがたってませんから。それにしてもウォーケン少佐が輝いているなあ……良キャラだ。
ちなみに今の殿下のポジション:妖精。普通に再動とか復活とかの精神コマンドを使えそうな感じが。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ40⑤
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/07/02 03:10
これはひどいオルタネイティヴ40⑤




――――間も無く射程内に入りそうな輸送機に銃口を向けながら後退する中、俺は早口に叫んでいた。


「殿下ッ! 後ろ向きで行ってますけど、大丈夫ですか!?」

「特に問題有りません」

「そうですかっ! それなら良いんです!!」

「何せ頼もしい者に……背を預けているのですから」←小声

「えっ? 何ですって!?」

「な、何でも無いです」

「(まぁいいか……)それでは次は高く飛ぶッ! 護衛4機はリンクしてくれ、高度は100だ!!」

『了解ッ!』×4

『分かっているとは思うが白銀少佐ッ、出来る限りの輸送機を堕とせは言ったが、
 あくまで我々の目的は、殿下を無事に御送りする事だと言う事を忘れるなよ!?』

「分かってますッ! (原作みたいに)囲まれるのは御免ですからね!!」

『ふむ、聞くだけ野暮だった様だな。……では我々は変わらず最大戦速でゆくぞっ!』

『了解!!』×18

「殿下、少し踏ん張ってくださいッ!」

「……っ!?」


≪――――ブワァッ!!!!≫


俺は"次の跳躍噴射から狙撃を開始"と言う予告通り、SⅡ型を強く踏み込ませ斜め後ろに跳躍する。

それに護衛の武御雷4機も合わせてくれ、5機の戦術機が噴射を活用しながら空中で制止する事となった。

うちライフルを構えている俺のSⅡ型は……正面の輸送機を射程内に捉えており、絶賛ロック・オン中。

対して敵さんはロックされている事にすら気付いていないのかもしれない。それも仕方無いけどね~。

ともかく某聖戦士となってしまったからには肖らなくてはならない。殿下が居ようと俺は止まらないZE。


≪……キュピピピピピッ……≫


「一撃で仕留めて見せるッ!」

『そうよ、やっちゃえ~っ!』←白銀の心の声

「(今 何故か余計に口を動かしていた様な気が……)」

「アルカディア01、フォックス2ッ!」


≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫


――――そんなうちにライフルを発砲し、弾丸は正面の輸送機に吸い込まれていった。


「なっ!? これは何が起こった!?」

『沙霧大尉ッ、どうやら敵戦術機から攻撃を受けた模様です!!』

「馬鹿な……何処にそんな兵器が……」

『わ、分かりません』

「このまま飛行継続は……無理そうだな」

『はい、手遅れになる前に降下してください』

「其方は大丈夫か?」

『大尉の脱出後に離脱します』

「分かった。では……私は降下するが、各機は怯まず目標を包囲せよッ!」

『了解!!』


やはり意図的に直撃を避けて置いた為か、射撃を当てた輸送機から2機の戦術機が降下された。

だけど輸送機のパイロットは無事 脱出できるのかな? 今は其処まで考えてる暇は無いけどね。

しかしながら死なないに越した事は無いので、慎重に狙いをズらしつつ狙撃を続けてゆく。


「俺の射撃力だって、パワーアップしているんだ!!」


――――つい"シャゲキチカラ"と叫びそうになってしまったのは、言うまでも無い。


≪ドパァァンッ!! ――――ドパアアァァンッ!!!!≫


『!? 4番機・5番機も堕とされた模様です!』

「クッ……敵機の特定は出来たか?」

『どうやら1機の戦術機がライフルで"狙撃"しているとの事です』

「……と言う事は新兵器か。謎の兵器を使う中隊も居た様であるし、やはり一筋縄ではいかんな」

『はい。特に3個中隊を全滅させたその中隊に対しては、同志達が必死に追撃している様です』

「あくまで我々の目的は殿下の確保だと言うのに……」

『多くの同士が倒されていますからね。意地にでもなっているのでしょうが、
 今は米軍に阻まれて追撃が出来ておりません。合流に向かっている援軍をも待たないので……』

「被害は甚大と言う訳か。……ッ……7番機・8番機も堕ちた様だな」

『相当な手馴れな様ですね。しかし、いずれも無事に降下が可能……不幸中の幸いですね』

「まさか……(偶然にしては妙だ、意図的なモノなのか?)」

『大尉?』

「いや、何でも無い。とにかく我々も前進だッ、距離は有るが望みを捨てる訳には いかん!!」


――――空中で後方噴射をしながら狙撃を続ける事で、半分近くの輸送機を落とす事が出来た。


「(やはり移動の操縦のみ秀でている訳では無かった様ですね……)」

「良しッ、このくらいで止めて置くか~」

「何故です白銀? まだ半数以上残っていますよ」

「百も承知ですっ! 狙撃は終了した! 護衛各機 最大戦速ッ、離されるなよ!?」

『了解!!』×4


狙撃に掛けた時間は約30秒程度ダケだったが、俺は切り上げると"後ろ向き"を止めた。

その直後、若干 距離が離れたウォーケン少佐達を追い、月詠さん達も陣形を維持したまま続いた。

この行動に殿下は何か思うトコロ有った様だが、そんなウチに残り半数以上の輸送機が迫る。


≪ゴオオオオォォォォーーーーッ!!!!≫


「あっ!? 通り抜けられてしまいますよッ?」

「分かってます!」


――――此処は"分かってる!"と罵倒したい気分だが、肖り過ぎずに自重する俺。


「これは いけません。狙撃なさい白銀!」

「申し訳ないッスけど出来ませんね~」

「何故です!? わたくしの体調を気遣うのであれば無粋ですよ?」

「殿下が大丈夫そうなのは分かっているんですけど……」

「ならば遠慮する事は有りません、抜けられてからでは遅いのですよ!?」

「……ッ……」


どうやら殿下は引き続き狙撃して欲しかったらしい。……だけど大人の事情が有るのよね。

先程ウォーケン少佐が言った通り、俺らの任務は殿下を無事に南(下田)まで送り届ける事だ。

それなのに彼が、殿下を乗せる不知火SⅡ型での狙撃を許可してくれたのは、
俺の腕を信用してくれたのは勿論だが、俺が自重してくれそうな男だと察してくれたからだ。

……つまり俺なら殿下が極力 危険を晒さない最低限の狙撃で留めるだろうと、
今迄の同行から理解してくれた為であり、俺はその期待通りに狙撃をストップしたのである。

正直もっと留まれば8割方 堕とせたかもしれないけど、ウォーケン少佐の意図を無視できない。

例え あのまま狙撃しまくった事で良い結果に導けたとしても、後にお偉いさんに五月蝿く言われるのだ。

"殿下を乗せた機体で無茶をした"と言う事実は変わらないワケだしね~。面倒臭いよねマジで。

まぁ、常識的な価値観で勝手に解釈したダケだから"こっち"だと良かったりするかもしれないけど……

護衛対象である殿下 本人が狙撃を続けろ~ってのはヤバいくないですか? 立場的な意味で結構。

原作じゃ"武御雷を持て!"とか言ってたし、やっぱり冥夜と心の芯は似てるのかもしれないね。

しかし無理なのさ。俺も留まった方が楽だと思う分 癪なんだけど、殿下は大人の事情を理解していない。


「聞いているのですか? 白銀ッ」

「――――耳元で怒鳴るなっ!!」

「!?」

「失礼。さて……飛ばしますよ? 踏ん張っててくださいね」

「は、はい」

「……(通信切って無かったら死活問題だったな~危ねェ危ねェ)」

「……(その様に怒鳴られたのは初めてです、しかし白銀は……それだけ わたくしの事を?)」


だから殿下が理解しれくれる為にも、つい言っちゃったんだ☆ だけど無意味な肖りによる暴言の方を。

ぶっちゃけ時間が無いから説明するのは不可能な為、咄嗟に何か言おうと思った結果がコレだよ!!

こりゃ~好感度が下がったかな? そんな事を思ってるウチに輸送機が頭上を通り抜けてしまった。


≪――――イイイイィィィィンッ!!!!≫


『むっ、抜かれたか!』

『ですが少佐、大分数が減っていますね』

『その様だ。あれだけの間に良くやってくれたモノだ』

『敵戦術機、降下して来ます!! 数は24機……2中隊規模ですッ!』

『止むを得ん、突破するぞ!? 我々が先行する、アルカディア02ら各機は殿下を死守しろ!!』

『アルカディア02了解』

『20700了解(……此処は腕の見せ所ね)』


そして戦術機が輸送機より降下されると、正面に20以上の赤いマーカーが広がってゆく。

全て不知火なので、恐らく決起軍の中では精鋭が集まっているんだろう。減らして置いて良かったZE。

40機以上にもなれば流石に踏み止まる事も考えるが、俺たち24機は止まらず正面を突き進む。

そのうち、いち早く敵を射程内に捉えたウォーケン少佐・イルマ少尉らのラプター数機が、
120ミリを発射して不知火を散開させる。降下して間もないので、彼らの陣形はバラバラだ。


≪ドパァァンッ!! ――――ドパアアァァンッ!!!!≫


『くそっ……さかしい米軍どもめ!!』

『今は持ち堪えろッ、大尉たちの合流を待つんだ!!』


敵は迂闊に攻撃を出来ないので120ミリは回避し、チェーンガンは引く事で時間稼ぎをしている。

されど敵の24機の戦術機は左右に展開してこちらを包囲しようと、無駄なく動いている。

反面 正面が手薄になったんだけど、生憎ラプター……いや、米軍の衛士は"突破"が苦手っぽいな~。

正面のラインは徐々に上がってはいるモノの、それは敵が攻撃を自重しているからに過ぎないのだ。

つまり36ミリをバラ撒きながら"力押し"をしているダケ。しかし今回の敵の目的は時間稼ぎなので、
今迄の脳筋BETAの様な決起軍みたいに敵が突っ込んでは来ず、敵機を堕とせないでいる。

あくまで今迄のラプターの戦果は迎え撃つ事で挙げたモンなので、逆のパターンだと そうはいかない。

同数のガチンコな戦いならラプター中隊が勝つだろうけど、相手が合流を待っているダケな分 不利だ。

その状況を 数十秒のうちに理解したのか、ウォーケン少佐とイルマ少尉の会話が再び聞こえてくる。


『敵は思ったより慎重みたいですね……』

『ふむ、後続との合流を待っている様だな』

『今は後方3000より1個中隊の戦術機が接近中です!』

『12機? 狙撃を受けて脱出した戦術機はもっと多かった筈だが?』

『はい。しかし不意な事態により、トラブルを起こした戦術機が多々 有った様です』

『成る程な(……直撃を意図的に避けた上……それを見越したと言うのか? いや考え過ぎか)』

『とは言え36機もの戦術機に挟まれると危険です。此処は やはり強引にでも……』

『そうだな。ハンター01より中隊各機――――なっ!?』


≪――――ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


『20700、吶喊します!!』

『アルカディア02、続きますッ!』


≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫×2


『何なんだッ、あの動きは!?』

『し、しまった……ぐわっ!!』


ラプター中隊が躊躇っている中、まりもちゃんと篁のS型が彼らをを飛び越えて敵機の正面に現れる!

直後 敵にとっては強引な体勢で120ミリを発射し、各機の射撃は2機の不知火に突き刺さった。

まりもちゃんの120ミリは頭部、篁の120ミリは脚部に命中。敵の衛士は運が良かったねマジで。


『(流石に反応できないみたいね)』

『(まだ2機……これからだッ!)』


――――ともかく俺も負けてられないな。俺はSⅡ型を軽く跳躍させると再び狙撃する。


「南無三!!」


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


『きゃああああぁぁぁぁっ!!!!』

『ま、またか!? ……うわっ!』

『何処だッ! 何処から攻撃して来た!?』

『そ……それよりも、来るぞ!!』


――――輸送機と違って的が小さいので、慎重に狙いを定めて肖りつつ2機の不知火を無力化する。


『遅いッ!』

『この!!』


≪ボヒュッ!! ――――ボヒュゥゥッ!!≫


『!? この兵器は例の中隊の……!!』

『こ、此処にも装備している戦術機が有るなんてッ!』


俺の狙撃によって更に怯んだ隙を逃さず、2機の不知火S型が距離を詰めてサブ射撃を放つ。

それに初見の衛士が反応出来る筈も無く、次々と無力化させられてゆく決起軍の衛士達。

この戦果に驚いていたのはラプター中隊も同じだった様で、俺は3機目を狙撃しながら声をあげる。


「ウォーケン少佐、今がチャンスですよ!? 突破しちゃいましょうッ!」

『正面の敵は私と中尉に任せて下さい!』

『其方は左右の敵を御願いしますっ!』

『!? そ、そうだな。左右に弾幕を張りつつ突破するぞ!!』

『……(素敵だわ白銀少佐……でも、その所為で……)』

『こらハンター02、何をボーッとしている!? 聞いて居たなら復唱しろッ!』

『す、すみません! 左右に弾幕を張りつつ突破します!!』

『私は左をやる。右は任せるぞ!』

『了解!!』

『(……妙だな、我が部隊の女達の反応が揃って悪かった様な気がするが)』


――――更なる狙撃で4機めを堕とした時、まりもちゃんと篁が完全に前方を制圧していた。


「道は開けた様ですね」

「そうみたいです」

「……(こうもアッサリと……初めから、更なる留まりによる狙撃の必要は無かったのですね)」

「殿下?」

「何でも有りません。それより白銀」

「は、はい?」

「先程の無理な願いを謝罪しましょう」

「あ~っ……私の方こそ、失礼な事を言ってしまいまして申し訳ないです」

「よい。わたくしが愚かだったのです」

「そんな事 無いですって。それじゃ~もうひと踏ん張りですよ?」

「はい」


――――そんな会話をしているウチに、回り込んで来ていた4機の不知火が左右から迫って来ている。


『くそッ……このままでは抜かれる!』

『させるなッ! 殿下を確保しろ!!』


≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫×4


「来た!? アルカディア04、先導してくれッ!」

『は、はい!』

「アルカディア03、06と右の2機を御願いしますッ!』

『了解です。戎!』

『畏まりました~』

「05は左の2機を足止めしつつ前進だッ、止めは俺がやる!!」

『了解!!』←雪乃

『し、白銀少佐! 私達は……!?』

『榊達はウォーケン少佐達に付いて行け、けど必要な場合は必ず援護をするんだぞ!?』

『――――了解!!』×5


殿下を狙っていると言う事なので、此処はB分隊に任せても力を発揮できそうな場面だ。

しかし訓練兵で有る榊達に戦わせるのと、既に戦果を挙げている殿下の乗る機体で応戦する事……

この2つを脳内の天秤に掛けて瞬時に判断してみると、B分隊には無理をさせない結果となる。

よって斯衛の皆様に活躍して貰う事となり、月詠さんと戎は瞬く間に右から迫った不知火2機を撃破。

一方 俺のSⅡ型も2機の不知火を抑えるべく後ろ向きに後退しつつ、巴には両腕による弾幕を張らせ、
それにより硬直を晒した敵機の頭部を狙ってライフルヲ発砲。……結果は もはや言うまでも無かった。


「ムダだっ!」

「そうです……無駄です!」


――――それにしても この殿下ノリノリである。早く何とか……いや、別にこのままでいいや☆


「良しッ、抜けれた!」

「まさか被害 無しとは……」

『貴官の御陰だな、白銀少佐』

『恐れ入りましたね~』

「俺は援護したダケですよ、軍曹と篁中尉の吶喊の御陰です」

『有難う御座います』

『(あ、後でまた……撫でて貰えるのかしら?)』


そんなワケで まりもちゃんと篁の技量と、機体の性能が決起軍の動揺を誘い突破に至ったのでした。

被害は殿下の言う様に無かった様で、敵2中隊は24機から数を6機にまで減らし追撃を諦めた様子。

ウォーケン少佐のラプター中隊は後半は左右から向かってくる敵機を迎撃しつつ前進していたので、
前半と違って性能を活かした戦いが出来ており、反面 正面を抜かれた決起軍は打つ手が無かった。


『未だ追撃は止んでいないが、伊豆スカイラインを抜けた後 更に南東に進めば……』

『相模灘 付近で友軍と合流出来ます。其処まで来れば後は海岸沿いに南下してゆくダケですね』

「成る程……っと……殿下、体の調子はどうですか?」

「少し気が緩んだ所為でしょうか? やや芳しくない気分です」

「……との事ですけど?」

『了解した。ではアルカディア02、先導を任せる』

『はっ』

「アルカディア01より各機、殿下に支障の無いペースでリンクしてくれッ!」

『了解!!』×23


――――ちなみに俺が真っ先に堕とした輸送機の中に、沙霧の不知火が収納されていたらしい。




……




…………




「……ふぅ……」

「大丈夫ですか殿下。少し休憩します?」←実はまた抜きたいダケ

「必要有りません」

「へぇあ」

「それよりも……わたくしが僅かでも早く離脱する事で、無益な争いを終わらせなければなりません」

「御立派です」


相模灘 付近で2中隊のストライク・イーグル隊と擦れ違った結果、もはや追撃の心配は皆無となった。

後は殿下の体調を気遣いづつ下田を目指しているダケであり、任務は成功した様なモンだと言って良い。

されど未だにクーデター軍は諦めてはおらず、伊豆半島の各所で戦いが繰り広げられて居るらしい。

コレを止めるには殿下が離脱したという事実が必要なので、無理はせずとも休憩 等はしていなかった。

マジで冥夜の強化装備 様々なのはさて置き、沙霧の乗った輸送機は直撃させた方が良かったのだろうか?


「いえ、立派なのは そなたの方ですよ」

「私がですか?」

「わたくしの立場は生まれてからのモノですが、そなたに関しては努力による賜物なのでしょう?」

「それは~(流石にチートとは言えないよな……)」

「申さずとも良い。鎧衣に話は聞いています」

「だ、だったら手間が省けて有り難いですね」

「故に誇るべき存在なのは白銀なのです」

「何と言うか……随分と評価して頂けたみたいですね~」

「そ、それは白銀が非常に頼もしく……」(小声)


≪――――ブゥンッ≫


『ハンター01より国連軍の各機へ。突然の通信で済まない』

「ウォーケン少佐ッ?」

「!?!?」←悠陽

『どうなされたのですか?』

『(妙ね……まるで苦虫を噛んだ様な表情……)』←唯依

『非常に言い難いが……たった今、米軍 司令部は既に殿下の離脱 直後の対応を決定した』

「それは?」

『まさか……』←真那

『内容は米軍・全部隊の撤収だ。殿下が下田に到着された"瞬間"に下される事となる』

『――――!?』×12

『(アイツら……殿下が簡単に逃れた腹いせに"こんな命令"までするなんて……)』


何だか殿下が重要な事を言いたそうだったけど、コレって"例の人形"の件だったのかな?

そう考えればウォーケン少佐 空気読めって言いたいトコだったけど、彼の言葉に俺は驚愕した。

殿下が目的地に着いた"瞬間"に撤収って何だよ!? まだ帝国軍は米軍と協力しつつ戦ってるんだぞッ?

それは、未だに踏み止まる帝国軍 衛士達……そしてA-01の絶体絶命の危機を示していた。


「もしかして来る? 出番」

『あ、彩峰……貴女 秘匿回線とは言え、何て不謹慎な事を……』


―――― 一方、出何が無かったB分隊の5名は無駄に気合を入れていたので不完全燃焼だったりする。




●戯言●
これで40話は終了です。後半は白銀vs沙霧となるかもしれません。たぶんですけど。
簡単な流れは交戦中に米軍が帝国軍を見捨てて撤退→決起軍キレる→矛先がA-01とかに行く。
その状況で白銀が起こす行動とは……?次回は影の薄かった207B分隊がメインになるかな?


http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=4935533
新たな支援絵を描いて下さる方が降臨ッ! 忠犬・篁中尉……だと……ッ?



[3960] これはひどいオルタネイティヴ41(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/07/13 01:30
これはひどいオルタネイティヴ41(前編)




「…………」

「…………」


ウォーケン少佐から予想外の"米軍の撤収"を聞かされた俺と殿下は、その後の道中 無言だった。

本来であれば俺が何か言いたいトコロだったけど、司令部が決めた事を彼に言っても仕方がない。

それにBETAでは無く日本内での馬鹿らしい争いに米軍衛士の命が危険に晒されているのだ。

原作でもウォーケン少佐は其の事で理不尽に思っていた事からキレてるシーンが有ったしな~。

またヘタレな俺は彼の様なイカつい人に凄まれると失禁しそうなので、口を挟めなかったとも言う。


『……ッ……(くっ……どうして白銀少佐は何も言ってくれないのッ?)』

『……(言いたい事は多々有るが、今は様子を見るしか無い様だ……)』


んで隙を見て榊……いや千鶴や月詠さんのバストアップを確認してみると、案の定だった。

凄~く何か言いたそうな顔をしている。されど俺や殿下が何も言わないので黙っている感じか?

何にせよ下田に着くまでは この調子で行くしかないな……米軍が真っ先に撤退しても望みはある。

彼らが撤収しようと"殿下が逃れた事実"で、潔く諦めてくれる可能性だって有るのだから。

そんなワケでポジティブを意識してSⅡ型を操縦していると、ようやく殿下が口を開いてくる。


「……白銀」

「はい?」

「先程の言葉、どう思いますか?」

「ちょっと……拙い事になるかもしれません」

「具体的には?」

「多くの帝国軍衛士の危険が生じるかと」

「わたくしが無事に逃れたと言う事実が有ったとしても……ですか?」

「えぇ。随分と巧くいった上に被撃墜比も圧倒的に此方が少ないですからね」

「つまり……」

「どう考えても相手側が不完全燃焼です。矛先が別に行っても不自然じゃ無いでしょう」

「……ッ……」

「いや、あくまで予想ですけどね……とにかく、潔く諦めてくれる事を祈るしか無いかな?」

「そう……ですね。"最良の未来"を信じましょう」

「御願いします」


――――う~む、こりゃ決起軍が諦めなかった場合は俺が動かないワケにはいかなくなったな~。




……




…………




……更に十数分後、俺達は特に問題も無く下田へと辿り着いた。


『ハンター01よりHQへ。最優先事項の伝達を行う』

『HQ承認、報告せよ』

『今現在"煌武院 悠陽"殿下が下田へと到着した。一刻も早い受け入れを頼む』

『了解……最寄の部隊を迎えに向かわせる。ハンター01各機は2番艦に搭載せよ。任務 御苦労だった』

『聞いたな? 中隊各機、速やかに移動しろ』

『了解!!』×11

『白銀少佐、我々は これまでだ。失礼する』

『間も無く迎えが来ますので、後は彼らの指示に従ってください』

「はい、有難う御座います」←棒読み


ウォーケン少佐によるHQへの報告後、此処で早くも彼等とは御別れとなってしまった様だ。

本来なら礼を言った後、外に出て握手でもしたい所だったけど、状況が状況だからなァ……

先の事を気にし過ぎていて、彼とイルマ少尉の言葉に感情の篭らない返事しかできなかった。

う~ん、珠瀬とイルマ少尉の会話を覗くイベントは経験 出来なかったけど彼女が死なないダケ良いか?


『――――ではHQより米軍 全機へ告ぐ』

「始まるみたいですねェ」

「はい」

『護衛対象である"煌武院 悠陽"殿下の離脱を確認。全機 戦闘を中止し直ちに離脱せよ。
 "煌武院 悠陽"殿下の離脱を確認。全機 戦闘を中止し直ちに離脱せよ。繰り返す……』
 
「これから、どうなるのでしょうか? 白銀」

「分かりません。とにかく様子を見ましょう」

「……それしか無い様ですね」

「あっ、迎えが来たみたいですよ?」

「……(そう言えば道中では"アレ"を渡し損ねてしまいました……)」




……




…………




――――同時刻。


『オイオイ、凄いな~あの中隊……何なんだッ?』

『国連軍よねェ? 一体 何処の部隊なのかしら?』


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


『ぐわああぁぁっ!!!!』

『くッ……つ、強い……』


≪――――ズシンッ≫


「ふん、出直して来なさい!」

『ふむ……一時は どうなる事かと思ったが』

「米軍の御陰で良い感じで時間稼ぎが出来る様になりましたね~」

『けど無理はしないで下さいねェ? 速瀬中尉。皆 弾倉が殆ど残って無いんですから』

「分かってるわよ~葛城」

『されど我々も踏み止まる事で、米軍の被害が減るのも事実です』

『そうですね美冴さん。そろそろ殿下も逃れられるでしょうし……』

『もうひと辛抱と言う事だ。各機 引き続き無理のない範囲で米軍の援護を――――』

『!? ヴァルキリー・マムよりヴァルキリーズヘ! どうやら殿下が無事 下田へと辿り着いた様です!』

『えぇっ!?』←茜

「嘘ォ~っ? 随分と早いじゃない!」

『直接 護衛に当たったのは横浜基地・突撃機動部隊……そ、それに第207衛士訓練部隊との事……』

『成る程、白銀少佐達が随伴していたのか。それならば納得できるな』

「白銀少佐が? う~ん、何だか複雑ねェ」

『で、でもでもッ! これでもう、人間と戦わなくて済むんだよねッ?』

『そうだね~多恵、実際BETAより戦術機の方が よっぽど神経使ったしさァ』

「まぁ良いか。面倒な戦いも終わったし、さっさと戻って――――」

『そんなっ!? ヴァルキリー・マムより各機へ!! 米軍機が次々と離脱して行っていますッ!』

『何だと!?』

「ちょっと、一体どう言う事なのよ!?」


≪――――ヴンッ≫


『……悪いが我々の任務は殿下が脱出するまでの時間稼ぎをする事なんだ』

『殿下が無事 逃れた今、これ以上 戦闘をする理由は無いのよ』

「だ、だからって……目の前の敵が諦めなかったら どうするつもりなの!?」

『コレは司令部が下した命令なのさ。アンタ達も軍人なら……分かるだろ?』

『ごめんなさい!』


≪――――プツンッ≫


「あっ!? ちょっとッ」

『これは……拙い事になったな』

『撤収と言っても、遣り方が有ると思うのですが?』

『(オルタネイティヴ5推進派の差し金か……)状況はどうなっている? 涼宮』

『……ッ……米軍の唐突の撤収に状況は理解 出来ている筈ですが、決起軍の追撃は止まっていません』

『そうか』

『特に米軍と共闘していた帝国軍 部隊が危険です。当然 私達も……』

「!? 言ってる傍から来るわよっ!?」


≪――――ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


『クソッ、糞おおぉぉっ!! 米軍めぇぇ!!!!』

『殺してやる!! 其処を退けええぇぇっ!!!!』

『いや……奴等は"例の中隊"だッ! 同士の敵を討たせて貰う!!』

『ははははっ、殿下が無事 逃れたなどデマに決まっている!!』

『そうよ!! 米軍は恐れをなして、尻尾を巻いて逃げたダケなのよッ!』

『何が国連軍だ……米軍の犬どもめッ、皆殺しにしてやる!!』


≪――――ズシンッ!! ズシンッ、ズシンッ!!≫


「ちょっ……流石に多すぎない? 宗像」

『確かに洒落になりませんね』

『一部 正気でない人間も居る様な気がするのですが……』←祷子

『あわわわわわっ、レーダーが真っ赤だよ~っ!』

『くっ……涼宮、全速で指揮車を後退させろ!!』

『で、ですがッ』

『中には理性を失っている奴も居るっ! 例え非戦闘員でも見つかれば殺されるぞ!?』

『しかし指揮者の速度では逃げ切れるかどうか――――』

『つべこべ言わずに さっさと後退しろ!!』

『!? り、了解ッ!』

『ヴァルキリー01よりヴァルキリーズ各機、左右 広範囲に散開しCPを守りつつ後退しろッ!
 これは一機一機が多くの戦術機を釣らなければ犠牲者を出さずに逃れる事は不可能だ!!』

『了解!』×11

『た、大尉っ! 私達の事は良いですから……!!』

『馬鹿者!! 白銀少佐から受けた"命令"を忘れたのか!?』

『……ッ!?』


≪絶対に――――死なないで欲しい≫


「生憎だけど、私達は全員 生きて戻んなきゃダメなのよッ!」

『涼宮!! 分かったのなら復唱しろっ!』

『お姉ちゃんッ』

『わ……分かりました。全速で後退します!! ヴァルキリー各機は陽動を御願いしますッ!』

『了解!』×12

『(そうだよ……し、白銀少佐に本当に抱いて貰える迄は絶対に生きなくちゃ!)』

「(アイツの事だから、引き返して来るのかな~? でも今回は頼らないわよッ!)」




……




…………




……数分後、米軍・艦内。


「……ッ……」

「あちゃァ~」


あの後 米軍の戦術機 小隊が俺達12機を迎えに来て、艦内に案内してくれると言うので後を追う。

そして導かれるままに1番艦 内部に愛機を納めると、俺は殿下と決起軍の反応を調べる事にした。

方法は簡単。1番艦の内部に存在するHQのデータにリンクさせて貰って、伊豆の地図を見るダケだ。

そんなマップによる状況は、やはり芳しくなく……殿下 脱出の事実あれど、追撃が止んでいない。

決起軍に対し殿下の離脱は帝国軍の口から告げられたが、米軍が さっさと撤収したと言う、
あまりの"ナメられっぷり"に多くのクーデター軍の衛士が逆上してしまい、攻撃を止めない模様。

されどラプターを主軸とする米軍に追いつけるハズも無い結果、矛先が帝国軍に向いたと言う感じだ。

この半数を占める決起軍の怒りの追撃に対し、沙霧 大尉の対応は今現在では確認が取れて無いとの事。

流石に彼が逆上して追撃を続けたりはしないと思うけど、ソレが正解なら不憫でならないねマジで。


「わたくしが逃れたと言うのに……未だに争いが絶えぬとは……」

「むしろ悪化してますねコレ」

「このままでは、多くの帝国軍 衛士の命が……」

「少なくとも手前で決起軍を抑えている部隊は放って置くと根こそぎ全滅しそうですね……」


殿下が逃れた事実により、クーデター軍は もはや後が無い。全滅or投降するのも時間の問題だろう。

されど各所で米軍と共闘していた帝国軍 部隊には唐突の仲間の撤収により決起軍の矛先が向いている。

つまり北より決起軍を挟むべく追撃している援軍との合流を待たずに全滅してしまう可能性が極めて高い。

ソレはA-01も同様であり、彼女達は途轍もない戦果により最も危険に晒されていると言って良い。

ちなみに、どれ位 危険かと言うとマップを見る限りでも他の危険な帝国軍部隊の2倍近い戦力……

数で言えば50以上の敵に追われていた。出撃 直後ならともかく、消耗している今じゃヤバそうだな。

とにかく状況は把握したぜッ! ……って考えているウチに、未だ膝の上に居る殿下が俺に顔を向ける。

別にもう退いても良いと思うんだけど、この感触も間も無く終了なので、俺は黙って彼女の言葉を待つ。


「……どうする事も出来ぬのですか? 白銀ッ」

「…………」

「これが わたくしの導いた"最良の未来"と言う事なのですか!?」

「大丈夫ですよ」

「えっ?」

「このままで"最良の未来"に成らないので有れば、我々が 未来を変えれば良いんですよ」

「そ、そなた達が……?」

「はい。とにかくボヤボヤしてる訳には いきません、皆を集合させましょう」

「一体……何を考えて居るのです?」

「あはははっ、直ぐに分かりますって」

「……(生憎 想像がつきません……そなたは、その笑顔の裏に どれ程の……)」

「アルカディア01より各機へ。直ちに戦術機から出て集まってくれ、場所は――――」




……




…………




……1分後。


「みんな集まったね?」

『――――はっ!』×11


身近な詰め所に篁たちを集めた俺は、エロスーツ姿の殿下を横に彼女たちと向かい合っている。

……実を言うと、ウォーケン少佐から撤収の話を聞かされた直後から、俺はずっと考えていた。

ソレは決起軍が逆上し味方が危険に晒されたら"俺"は どう動くべきか? ……と言う事をである。

結果 首尾 良く考えを纏める事が出来た事から、今まさに"作戦の内容"を彼女達に話そうとしてるのさ。


「其の前に……殿下の護衛任務ご苦労様。御陰で――――」

「白銀少佐ッ」

「悪い悪い。なら早速 本題に入るが……」

『……ッ……』×12


作戦を告げる前に労いの言葉を掛けようとすると、篁に制されたので止めるしかなかった。

そんな彼女の表情は"不機嫌"を現しており、他の面子も米軍の行動への怒りは勿論の事……

帝国軍 衛士達の事も心配そうであり、特に冥夜は勝手に出撃してしまいそうな程 表情が険しい。

鎧衣でさえソワソワとしてるみたいだし、こりゃ~拙いな。一秒でも早く話を進めなければッ。

故に俺は原作を肖った作戦を伝えるべく口を開く。正直 オルタやってなかったら考えもしなかった筈。


「これより手短に最寄で危機に陥っている国連軍 中隊の救出……及び決起軍 説得の作戦を告げる!」

『――――ッ!?』×12




……




…………




……切羽詰って居るので雑談(フラグ立て)が全く出来ないまま、更に5分が過ぎた。


「準備 出来たか? 冥夜」

「は、はいッ」

「お~っ? なかなか似合ってるじゃないか」

「!? こ、この様な時に そんな事を仰らないで下さいっ!」

「悪い。冗談だよ」

「……じ……冗談……でしたか……」


――――其処で何故ガッカリした表情をするんですか? 御剣 冥夜さん。


「ともかく今回は大役だぞ? やれるよな?(原作じゃ出来たし問題無いと思うけど)」

「や、やってみましょう。それで多くの命を救えると有らば……」

「それにしても皆 理解の早い娘達で助かったよ」

「それは白銀少佐の作戦が素晴らしいからだと思いますッ」

「おいおい……世辞にも程が無いかい?」

「その様な事は有りませぬ! 殿下に似る私を恐れながらも身代わりとする等、
 初めは驚愕こそ致しましたが……"この方法"以外で争いを治める事 等できませぬ」

「そうかな~?」

「無論ですッ。殿下の御言葉を受ければ、幾ら今の決起軍とは言え目が覚めるでしょう!!」

「まぁ、皆が協力してくれるからには試して見るしか無いね」

「はい!」


艦内のハンガーにてスタンバイしているSⅡ型のコックピットの前で、俺は冥夜を待っていた。

そんな直ぐに やって来た待ち人は殿下が着ていた私服を着込んでおり、彼女とは別な色気が有るな~。

さて置き……作戦の内容とは先ずはA-01の救出。勿論 帝国軍 衛士たちの命も大事だけど、
彼女達を一人でも死なせる訳にはいかない。よって"説得"の前に最優先で救出して離脱して貰う事にする。

それを成功させた後は何処かに居る沙霧を発見して、殿下に変装した冥夜によって説得させるのだ。

今はウォーケン少佐どころかイルマ少尉も居ないから、横槍も無いだろうし安心して接触できる筈。

彼が米軍の撤退で逆上する人間ならソレ迄だけど、やってみる価値は有るよな? きっとだけどね……

そんな気持ちで軽~く冥夜に声を掛け彼女が頷くと……未だに強化装備姿の殿下が姿を現した!!

初めは冥夜に変装させると言っても自分が説得すると反論してた彼女だったけど、
諦めてくれたと思ったんだけどな……エロスーツのままって事は多少は未練が有るのかもしれない。


「!?(あ、姉上……)」

「冥夜、先にコックピットの中に」

「か……畏まりました」


≪――――たたたたっ≫


「気を遣わせてしまった様ですね」

「大丈夫ですよ。……それで、何の御用ですか?」

「そなたに頼みたい事が有るのです」

「頼みたい事……?」

「これを冥夜に渡して下さい」

「"人形"……ですか」


――――御存知の通り例のヘンテコな人形だ。正直 忘れてたけど彼女は どうしても渡したかった様子。


「これは あの者とわたくしが共に過ごした証なのです」

「身の回りの品で持ち出せた唯一のモノ……って訳ですね?」

「その通りです。そなたは本当に鋭いですね」

「偶然っスよ(……と言うか原作知ってるし)」

「本来ならば たった今 わたくしから渡すべきだったですが……」

「誰が見てるか分かりませんからね。直接 渡す事は難しいですし気にする事 無いですよ」

「……ッ……そなたに感謝を」

「私こそ感謝を」

「白銀?」

「すみません、言ってみたダケです」

「まあ……ふふふっ」

「あははははは……」


――――そんなこんなで受け取った人形を右手に、左手で頭を掻きながら笑い合っているんだけれども。


「……ッ……」

「!?」


≪――――どっ≫


「……(暖かい)」

「で、殿下っ!?」


突然 殿下に正面から抱き付かれたんですけど、一体 全体どう言う事なんですか奥さんッ!?

これって彼女が此処で人形を冥夜に渡すよりヤバい図だと思うんですけど……誰も見てないよな?

篁たちは皆 既に戦術機の中だから良いけど、米軍の誰かに見られたらスキャンダルになってしまう。

よって周囲を全力で見回したくなった俺だったが、空気を読んで殿下を抱き締め返すしかなかった。

お、おっぱいが とっても柔らかいお……折角 完全に治まったのに、またおっきしちゃったお(^ω^ )


「…………」

「…………」

「……白銀」

「はいィ?」


――――暫しの抱擁の後、殿下は俺の胸から顔を放すと此方を上目遣いで見上げながら嘆いた。


「死んではなりませんよ?」

「勿論さあ☆」←ウザスマイル

「!? で、では……わたくしはコレでっ」

「御気をつけて~」


どうやら殿下は俺の事を心配してくれていた様だ。往来じゃ無茶な作戦だし、それも仕方ないかもね。

しかし抱擁までしてくれるのは予想外だったな……しかも周囲に見られるリスクを躊躇わずにとはッ。

きっとソレが"殿下"なんだろうね。リスクを気にせず思い切った激励を行う彼女には脱帽であります。

それなのに俺はボッキしちゃったりスマイルしたり、挙句の果てには押し倒そうと思ったりと最低だZE。

ならば殿下の期待に応える為にも、最低限の犠牲でクーデターを終息させるしか無いってワケだ。

よって俺は殿下が走り去ったのを確認すると、消えゆくオッパイの感触を名残惜しみながら、
冥夜の待っているSⅡ型のコックピットに入り、俺を見た直後に頭を下げてくださる彼女に対し……


「冥夜、ただいまっていう」

「お帰りなさいま……えっ?」

「コレ、殿下からの御守りっていう」

「!?!?」


――――アッサリと人形を冥夜に渡す事で彼女の仰天した様子を楽しみ、緊張感を拭い去ったっていう☆




●戯言●
次回は色々とネタ満載で行く予定です。沙霧とイルマ?勿論ちゃんと……だがでっていう!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ41(中編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/07/28 19:03
これはひどいオルタネイティヴ41(中編)




「……冥夜、固定はこんなトコロで大丈夫か?」

「問題無さそうです」

「それなら良いけど……頑張ってくれよな?」

「頑張る? 私は此処で座っているダケです。死力を尽くすのは、むしろ少佐の方でしょう」

「あぁ~(そう言う意味で捉えたか)」

「わ、私も別(膝)の意味で死力を尽くす必要も有りますが……」←小声

「いやさ、今は強化装備を着てないから何時もより断然 揺れが激しく感じるだろ?
 いざ説得だ~って前にグロッキーしてたら大変だから、頑張ってくれって事だよ」

「!? 成る程」

「その点は大丈夫か?」

「はっ、元より心配 御座いませぬ。それに耐える事は これより身代わりを担う私にとって、
 必要最低限の任務です。元より意識を保てぬ事など考えておりませぬ故……」

「ほほ~、なら余計な世話だったね」

「と、とんでも有りませぬッ。御心遣い感謝 致します」

「けど……ソレでも厳しいのは確かだから、なるべく無理な機動は抑えるようにはするよ」

「重ねて感謝を」

「じゃあ、皆と通信をするから少しダケ待っていてくれ」

「分かりました」


俺は冥夜を膝に乗せると、殿下の時と同じ様にベルトみたいなのでカラダを固定する作業を済ませる。

そんな彼女は殿下から借りた私服の姿なので、これから激しい"揺れ"に襲われる事になるだろう。

ジェットコースター等の揺れが当たり前だった俺や白銀ならともかく、彼女は戦術機に乗って間もない。

よって"説得前に意識を失う"のが一番 怖かったけど、本人の言う通り彼女の志がカバーしてくれる筈。

何せ自分が沙霧を説得しないと、帝国軍は助けられても決起軍は救い様が無くなるんだからな~。

そう考えれば責任感が強い冥夜であれば、任務終了後に倒れてでも気力で説得 迄 漕ぎ着けるだろう。

沙霧を見つけられなければA-01や帝国軍の救出のみで諦めるしか無いけど、その時はその時だZE。

そんなワケで冥夜の気持を無駄にしたくねぇなァ~……と思いながら、俺は仲間達との回線を開いた。


「お待たせ。皆 準備は良いかい?」

『――――はっ!』×10


すると計10人もの女性達のバストアップが出現し、俺の言葉に対し各々が真剣な表情で応える。

メンバーは今更だが冥夜を除くB分隊4名+まりもちゃん。そして月詠さんら斯衛4名+篁ってトコだ。

そんなウチ……まりもちゃんと後者の5名は何時でもイケるZEと言った様子なんだけど、
やはりB分隊の4名は真剣そうな表情がらも、僅かに"緊張"による硬さが含まれていた。

よって時間は無いのは確かなんだけど、彼女達が墜とされては困るので上官として声を掛けるべく言う。


「しっかし、ちづ……榊や珠瀬あたりは反対すると思ったんだけどな~」

『え、えぇえ~っ?』

『私が反対……な、何故なんですかッ?』

「榊は"任務は終わったんだから留まっておくべき"とか言うと思った。珠瀬は緊張的な意味で」

『白銀少佐~ッ、壬姫さんの事 見くびり過ぎですよ~?』

『……珠瀬は出来る娘』

「ありゃ? だったら俺の見る目が無かったみたいだ。悪かったね珠瀬」

『!? と、とんでも無いですっ! でも、私だって誰かの役に立ちたいんですッ』

『榊については同意だったけど』

『あ、彩峰ェ!?』

「彩峰 自重。榊もイチイチ反応するなって」

『サーセン』

『す……すみません』

「んで実際のトコロはどうなんだ?」

『反対も何も仰っていた様に任務は"終わった"のですから、むしろ留まる理由が有りません。
 撤収命令が下されたのは米軍のみですから、手が空いている我々は一刻も早く救出に向うべきです!』

「ですよねー☆」

『……ですが……』

「どした?」

『少し前の私であれば、確かに反対していたのかもしれません……国連軍の衛士と言う立場に固執し、
 "与えられた任務 以外は軍人として行うべきでは無い"と、帝国軍 衛士の状況を省みずに……』

「だけど、今は違うんだろ?」

『はい。これからの作戦は軍人 以前に人として行うべき事だと思っています』

「良い考えだと感心するが、何処も可笑しくは無いな」

『あ、有難う御座います』

『妬ましい』

「其処は妬むトコロ違うから!!」

『あはははっ、何だか全然 緊張感が無いね~?』

『…………』


ちょっ……鎧衣、それは思ってても言うなよ!! まりもちゃんが無言で睨んでるだろッ!?

しかも視線には気付いて無いみたいだし、相変わらず空気を読まない奴だ。良いぞ、もっとやれ。

だけどB分隊の緊張が解けたのは確定的に明らか。よって俺は次に月詠さん達に視線を変えた。

何だか蚊帳の外だったし声を掛けるべきだと思ったからだ。彼女達には少しダケで良さそうだけどね。


「月詠中尉達も すんませんね、余計な戦いに付き合わせる事になっちゃって」

『それは申されるダケ野暮と言うものです。我々も榊 訓練兵と同じ考えですから』

「でも"彼女"が殿下の身代わりになるってのは危険だとは?」

『……否定はしませんが、冥夜様が そう決められたので有れば依存ありません』

「じゃあ、むしろ望むトコロって感じッスか?」

『仰る通りですね。殿下には大変 恐縮ですが、より力が入ると言うモノです』

「ですよね~」

「……(月詠が何を言っているかは分からぬが、そなた達に感謝を)」

『決起軍など、冥夜様を乗せる白銀少佐の手を煩わせるまでも無いです!』

『直ぐ様 例の国連軍 中隊を救出し、沙霧 大尉の説得に繋げましょうッ』

『是非 先陣は私達に任せて頂きたいのですわ~っ!』

「まぁ、俺の機体は無理な機動は出来ないしライフル持ちだから……それが無難だね」

「……(頼むぞ皆……決して命は落としてはならぬぞッ?)」←人形を握りながら

「そんで篁は――――」

『!?』

「――――言うまでも無いかな?」

『は、はい! 月詠中尉らと同じ"突撃機動部隊"として先陣を担わせて頂きます!』

「頼んだよ~?」

『はっ!(言うまでも無い? そう言って頂けたと言う事は……私を信頼してくれているんですか?)』

「なら全員 心の準備はOKだね? 良し……全機 急いで出撃するぞッ!」

『――――了解!!』×10

「と言っても各員、成るべく目立たない様に"出る"様にしてくれ!!」

『難しい注文』

「まぁ~、気持ち目立たない様にって感じで良いさ」

『彩峰ぇ。そろそろ、いい加減にして置けよ?』←まりも

『サーセ……ごめんなさい』

『ふふん、相変わらずね貴女』

『……ッ……(妬ましい)』


≪篁≫

≪は、はい?≫


『……(と言う事は、また彼が私に縋りたい・頼りたいと言う素振りを見せてくれるのかしら?)』


≪食べさせてくれないか?≫(30話・後編 参照)

≪……ッ!?≫


『……(だったら今度は……その瞬間を絶対に逃さない様にしないとッ)』




……




…………




冥夜の吹雪F型の中に強化装備姿の殿下を残し、1番艦を(気持ち的に)コソコソと出ると、
流石に11機 編成にもなるので、当たり前の如く米軍の皆さんには気付かれた様だった。

しかしHQは何も言っては来ず、大方 多少の後ろめたさは感じているのかもしれない。

"行くな"と言われようが完全論破してやるけどね。いや、そんな時間は無いし適当にスルーになるか。


≪――――ヴンッ≫


『白銀少佐』

「あれっ、ウォーケン少佐」

『突然の秘匿回線すまない。やはり行く様だな』

「えっ? あぁ……そりゃ仲間が殺られるのを黙って見てるワケには いきませんからね~」

『……そうか』

「それで、何の用なんです?」

『其の前に妙に思ったのだが、吹雪が1機 欠けている様だな』

「えっと、ソレなんスけどね……」


――――俺は超手短に冥夜を殿下の身代わりにする"作戦"について説明してしまった。


『成る程……凄まじい発想だな』

「有難う御座います」

『いや、別に褒めて無いが……とにかく武運を祈る』

「そりゃど~も……って、肝心な"用件"は何なんです?」

『そうだったな。今更 私が言えた事では無いが……』

「…………」

『米軍の衛士 全員が、今回下された撤収を本意と思って居る訳では無い事ダケは理解して欲しい』

「Hai!」

『なッ……』

「何 意外そうな顔をしてるんです?」

『め、命令とは言え行った事が行った事だ。指揮官として小言の2・3は覚悟していたんだがな……』

「やだな~、命令を下したのは あくまで司令部。ウォーケン少佐に当たる気は無いですって」

『大したものだな。どうやら私は貴官を見くびり過ぎていたらしい(……特に年齢でな)』

「買い被りですって。――――それじゃあ」

『うむ。忙しい所 すまなかった』

「いえいえ」


≪――――プツンッ≫


『白銀少佐、何か有ったんですか?』←唯依

「いや……気にしないでくれ。とにかく急ごうッ!」

「……(ウォーケン少佐が何を言われていたのかは分からぬが、やはり非は上層に有りか)」


HQから通信が来たらどう対応しようかな~とか思いながら機体を慎重に操作していると、
意外にもウォーケン少佐から秘匿回線が入り、どうやら俺たちを気遣わずにはいられなかったらしい。

確かに彼の性格を考えると、このままサヨナラとなっちゃ~後味が悪い思いをしそうだしねェ。

よって彼の謙虚さに感謝で応えると、何か言いたそうな膝の上の同乗人を気にせず操縦を続けるのだった。


「少佐、何時までも機体から出て来ないで何をされて居たんです?」

「テスレフか。突撃機動部隊の指揮官と少し話を……な」

「彼にですか? どうやら再出撃した様ですけど」

「どうやら、取り残された部隊の救出に向うらしい」

「やっぱり そうでしたか」

「それも、何とも斬新な作戦でな」

「"斬新な作戦"……とは?」

「簡単にしか聞いてはいないんだが、何と殿下の身代わりを……」


――――けど迂闊にもウォーケン少佐に"作戦"の内容を話した事で、意外な展開を生んでしまう事となる。




……




…………




……5分後。


≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


「……ッ……」

「冥夜、大丈夫か?」

「今の所は特に(……やはり操縦が御上手だ)」

「そっか。でも少し強張り過ぎだ、自然にしてる方が楽だと思うぞ?」

「わ、分かりました」


――――勿論、強化装備 姿じゃない為により強い尻の感触を和らげる的な意味で。


「……さて、もう半分くらいは進んだと思うんだけどな……」

「行き先は此方で正しいのですか? 白銀少佐。私は何も見えませぬ故」

「う~ん、さっきマップを見た様子だと合ってると思うんだけどね」

「!? 考えてみれば、HQとのリンクは既に途切れている……」

「そう言う事。だから戦術機の周囲 数百メートルしかない索敵に頼るしかないってワケだ」

「そ、それでは……」

「大丈夫だよ。何とかして見せるさ(……たぶん)」

『白銀少佐!!』

「うわっ、びっくりした。あれっ? 君は……」

『えへへっ』

「イリーナ中尉の友達No2ッ!」

『!?』


≪――――ずるっ≫


米軍に頼らず出撃したのは良かったけど……今の俺達には"司令塔"と言うモノが無いのだ。

先程までのHQは言わずともながら、最初にリンクしていたHQも今の騒動で忙しいのか繋がらない。

よって1番艦内でコピーした地図を頼りに進むしか無く、それダケ時間が無い俺達は急ぐ必要が有った。

でも数分で大きな状況の変化は無いだろうし、索敵内に戦術機が入れば直ぐに救出に移れる。

だからA-01を見つけれるのを信じて進むしか無かったが……突然 回線に入り込んできた女性が!!

確かイリーナちゃんのお友達No2(妹)であり、そのままを口にすると彼女は軽くコケた様子。


「お友達No2さん?」

『そ、そんな呼び方しないで下さいッ! テレサって名前が有りますから!!』

「あぁ、テレサ中尉でしたね。……で、何ですか? 今 忙しいんスけど」

『此方 状況 故に臨時で立ち上げた国連軍のHQです。A-01の地点へと誘導します、白銀少佐』

「おっ? そりゃ有り難い! じゃあ、御姉さんも?」

『はい、他にも緊急出撃している国連軍の管制に当たっています』←実はジャンケンに勝った

「成る程」

『ではっ! このテレサ・ウォーケンに御任せ下さい!!』

「んじゃあ、早速 宜しく御願いしま~す」

『了解しました。それではHQよりアルカディア・207各機へ――――』

「……あれっ?」←何かに気付いた

『(白銀少佐、戦闘中には是非 罵倒する様な鼓舞をッ!)』




……




…………




……管制に入ってくれたテレサ中尉に誘導されつつ、A-01との合流を目指して3分後。

広がったレーダーの範囲内の前方に、少数の青マーカー 及び大多数の赤マーカーが現れた。

ちょっ……もはや50機ってレベルじゃね~ぞ? こりゃ洒落にならんでしょ……皆 生きてるのか?


『!? 目標 捉えました、距離 約2000ですッ!』

「12機とも無事なんスか!?」

『直ぐに確認します。 ……はいッ、未だ健在な様ですが かなりの戦術機に追撃を受けている模様!!
 中には10機以上に追われている者も居ますが、何とか応戦しながら徐々に後退していますッ!』

「応戦しながら? ……どう言う事なんだ?」

『分かりかねます(彼女達の部隊はシークレットな事が多いのよね。今はソレは関係なさそうだけど)』

「篁は どう思う?」

『生憎 私も……A-01の実力であれば振り切れる気はするのですが』

「だったらスピードを上げるしかないな。悪いが冥夜、思いっきり飛ばすぞ?」

「ご遠慮なく」

「各機 最大戦速だ、遅れるんじゃないぞ!?」

『――――了解!!』×10

『(嗚呼、少佐 格好良い~っ!)』←テレサ




……




…………




「チッ……これが最後のマルチ!!」


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


『ぐわああぁぁッ!!』

『くそっ! また やられたのか!?』

『一体 何なのよ、あの武器は!!』

『それよりも本当に不知火なのか!? あの動き、有り得ないぞっ!』

『とにかく囲むんだ、留まる気みたいだからな!!』

『そして米軍を根絶やしにするのだッ! 我々は まだ"終わった"訳では無い!!』


≪ドパパパパパパパパッ!!!!≫

≪――――ドォンッ!! ドオオォォォンッ!!!!≫


「くっ……こちらヴァルキリー01ッ、10機を相手に何とか後退中! そっちはどう宗像・風間!?」

『少々 厳しい……どころでは無いですね』

『しかし、下がり過ぎると涼宮中尉が……』

『ですから何としてでも此処は!!』

『無茶しないでよ優理子ッ、アンタが死んでもアウトなんだからっ!』(葛城)

「大尉の方は!?」

『そろそろ限界かもしれんな……いっその事、涼宮達を抱えて でも離脱するか?』

『……やるなら付き合いますよ?』(麻倉)

『か、神村さ~ん! 弾が切れちゃったんで、これ以上の支援は無理ですよぉっ!』(高原)

『あァ~もうッ、どうすりゃ良いってのコレ!?』


≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


「!? しまった……抜かれた!? 茜・築地・柏木ッ、アンタ達 何してたのよッ!」

『す、すみません~っ』

『こっちは自衛で精一杯で……』

『お、お姉ちゃん!?』


≪ズシンッ、ズシンッ!!!!≫


『コレ程しぶとい相手となれば……』

『管制を潰せば終了だろうッ!?』


≪――――ガチャッ≫


「は、遙ァ~!? 誰でも良いから何とかしなさいッ!」

『風間・柏木ッ! 我々の事は良い、絶対に撃たせるな!!』

『り、了解!』×2

『え!? は、背後に敵機……!?』

『そんな……指揮者を120ミリで狙うと言うの!? 間に合わせないとッ!』

『囲まれてるから狙撃は出来ないよッ、振り切ってから当てなくちゃ……』

『抜けられたのは5機……これ迄なのか?』←みちる




≪――――カカカカッ!!≫




『それほどでもない』




≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫




『な、なにっ!? 腕が……何処から撃って来た!?』

「えぇ~っ? う、嘘でしょ……」

『――――白銀少佐!?』×13




……




…………




……やはり米軍より国連軍の方が頼りにされている。


部下達への激励や突然の通信 等で俺はA-01の支援に遅れてしまったんだが、
彼女達も精鋭部隊と言う事で何とか決起軍の追撃に耐えてるみたいだった。

ところがアワレにも前衛が崩れそうになってるっぽいのが、リンクでの会話で聞こえて来た。

どうやら弾が無いらしく「はやくきて~はやくきて~(Cv水鳥)」と泣き叫んでいる彼女達の為に、
俺はSⅡ型の噴射を最大限に使って、普通なら まだ着かない時間で急遽 参戦すると……


『もう着いたのか!?』(Cv美冴)

『早いです!!』(Cv祷子)

『来たッ! 少佐きた~!』(Cv晴子)

『白銀少佐が来てくれたわ!!』(Cv茜)

『……これで勝つる!!』(Cv水月)


……と言う大歓迎は残念ながら無かったのだが、120ミリを構えていた敵の不知火は、
アワレにも武器を右腕ごと失っていた。勿論、謙虚にも急所を外してやったのは言うまでも無い。


「もう勝負ついてるから」

『うわっ!? さ、避けろ!!』


そんな冗談はさて置き、ギリギリ間に合った様だな……今の射撃で此方に注意が向いた様で、
涼宮(姉)が乗っていると思われる指揮者は俺達の機体の横を無事に通り過ぎて行った。

全く……逃げる車両の背後から120ミリ当てるとか、爆死ってレベルじゃね~ぞ? 決起軍ヒドス。

しかし殺す事は出来ないので適当にライフルで牽制すると、彼らが散開したのを確認した後……


「アルカディア03!」

『はっ!』


≪――――ゴォッ!!!!≫


『なっ……武御雷』

『は、速いッ!?』




[ムーン・スクレイパー]




月詠さんに声を掛け、その瞬間に彼女の武御雷(赤)が5機の不知火に向って突っ込んだ!!

対してスピードに反応できない横並びしている5機に、半月を描くように一太刀で全機を斬るッ。

……ちなみに技の名称は、今の攻撃が余りにも似ていたので付けたダケだから気にしないでね?


『そ、そんな……』

『馬鹿なァ!?』


≪――――ズドドオオォォッ!!!!≫


そんな月詠さんの技が決まった直後、5機の不知火は時間差で頭部が大破した。

直後 仰向けに倒され地面を震わせると、月詠さんは何事も無かった様に体勢を直す。

よって最も前に出た彼女の機体の真横までSⅡ型を動かすと、篁の機体も俺の横にやってくる。


≪ズシンッ!!!!≫×3


すると何故か神代達の武御雷(白)3機が俺らの正面に……そうか、冥夜が居るから守ってくれるのね。

ふ~む……左に月詠さんの武御雷(赤)・右に篁の不知火S型・そして正面に武御雷(白)が3機か。

背後には何時の間にか まりもちゃんの不知火S型と吹雪F型5機も来たし、
こうなったら俺は無理に戦うワケには いかないな……いや、無茶は出来ないって意味でだよ?

A-01も涼宮(姉)が乗った車両を逃がす目的で徐々に後退せざるを得なかった様子だし、
速瀬 辺りなら俺達の援護くらいなら喜んでしてくれるだろう。……既に立場が逆な気がするけど。

よってライフルで支援する程度で俺の仕事は済みそうだ。それだと冥夜の負担も少ないしね~。

そんなワケで俺は"ある御方"の存在を考えつくと、先ずはソレに成り切る事にしちゃったんだ☆


「では唯依さん、真那さん!!」

『!?』×2


――――正直2文字 必須な為 名前で呼ばなくてはいけなので、少し不安だったんだけど。


「懲らしめてやりなさい!!」

『……はっ!!』×2


――――僅かなタイムラグで原作みたく応えてくれた。2人は斯衛だし、やっぱ大丈夫でしたね☆


『(し、白銀少佐が名前で!? それだけ私を……)』

『(何故か滾(たぎ)るッ! 悪くは無い気分だ!!)』

「(月詠……妙に張り切っているな。私や あの3人にしか分からぬだろうが……)」




●戯言●
どうにかイルマ少尉のフラグを考えようとした事で無駄に2週間も費やしてしまいました。
よってタイトルの様な無理矢理な展開になりそうです。次回は更新を早くしたいですね。
ちなみにピアティフの友人姉妹がウォーケン少佐の妹だと言う事は初めから決めていました。




●おまけ●
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=5243261
タニシ氏による、何だか犬っぽい神代少尉。恐らく20話のイラストだと思われます。

http://www002.upp.so-net.ne.jp/shinjigate/itadakimono-cg-siranui-c.htm
暁せんべい氏による、社霞が設計した不知火・カスタム。(不知火S型・白兵改造仕様とも言う)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ41(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/08/16 04:00
これはひどいオルタネイティヴ41(後編)




――――突撃機動部隊の戦闘開始直前、米軍2番艦内のブリーフィング・ルームにて。


≪ガチャッ≫


「ふむ……」

「どうでした? 少佐」

『…………』←名無しの米軍 女性衛士3名

「司令部より正式に許可が下りた」

「ホントですか!?」

「うむ。案の定 私は出撃できんが、お前達の4機であれば構わんらしい」

「やったねッ、イルマ!」

「これで少しは帝国軍の、私達に対する印象が良くなるかもね」

「でも良く司令部が許可してくれましたよね~?」

「…………」←イルマ

「それは私も同意だ。十中八九・却下されると思ったからな」




……




…………




――――数分前。


≪あの~、ウォーケン少佐……一つ提案が有るのですが≫

≪なんだ? テスレフ≫

≪"このまま"では後味が悪過ぎます。どうか再出撃の許可を下さい≫

≪!? 貴様 何を言っている? 命令を無視する気かッ?≫

≪そのつもりは有りませんが、このまま事は済んでも米軍の為には成らない気がするんです≫

≪お前の言いたい事は分かる……しかし私の独断では到底――――≫

≪う、ウォーケン少佐ッ!≫

≪本当に"このまま"で良いのですか!?≫

≪あの国連軍の者達は再出撃したと言うのに!≫

≪貴女達……(アメリカ人ではない事からの正義感? それとも……)≫

≪……むぅ……≫

≪ウォーケン少佐ッ!≫×3

≪分かった。取り合えず司令部に提案はしてみるが……許可が下りなければ諦めるんだぞ?≫




……




…………




「しかし僅か4機の出撃とは言え司令部にも話が分かる者も居た様だ。直ちに帝国軍の支援に向かえ!」

『了解!』×4

「小隊長はテスレフ少尉が勤めろ。では諸君らの武運を祈るッ」

『はっ!』×4

「(まさか許可が下りるとは……私の代わりに彼女達が白銀少佐の力になれれば良いのだがな)」


≪――――バタンッ≫


「……(決起軍の首謀者を"説得"するって言う白銀少佐の作戦……)」

「よぉ~し、気合が入ってきたわ~ッ!」

「護衛ダケで御終いじゃ~ストレス溜まったからねェ」

「シロガネって少佐の本当の腕前も見てみたいし、頑張らないと!!」

「……(それが成功すれば"自滅"は狙えない……だから私が奴等に命令を受けた……)」

「ちょっとイルマ、何ボーッとしてんの!?」

「ホラぁ!! 急ぐ急ぐッ!」

「!? あはははッ、ごめんごめん。いきなり小隊長を任されたから緊張しちゃってね」

「その言いだしっぺはアンタなんだから我慢しなさい! でも……ありがと」

「……(覚悟はしてたけど、やっぱりもう1度……皆に会いたかったな……)」




……




…………




『はあああぁぁぁっ!!!!』(唯依)

『ふんッ、そんなモノか!?』(真那)


俺の黄門様を肖った台詞を叫んだ直後、篁と月詠さんが決起軍に突っ込む事で戦闘が開始された。

……そして2~3分の間。その場での狙撃で彼女達を慎重に援護しつつ、戦っていたは勿論の事。

もし命の危険性が有れば、冥夜には悪いけど無理な機動をして助けに入る事を念頭に入れてたんだが……


『な、何なんだッ! コイツ等は!?』

『うわああああぁぁぁぁっ!!!!』


≪ズウウウウゥゥゥゥンッ!!!!≫


「……やだ……何これ……」

「!? 今はどの様な状況なのです? 白銀少佐っ」

「問題無いね。篁達が決起軍を圧倒してるよ」

「あ、圧倒している?」


そう。単語の通り戦況は俺達が圧倒的に優勢となっており、今現在は斯衛トリオが制空権を独占。

彼女達3機が素早い機動で宙を舞いながら射撃し、確実に敵機を無力させ注意を引き付ける一方、
地上では篁と月詠さんが前者は射撃・後者は斬撃 主体で暴れまわる事で、マーカーが消えるわ消えるわ。

何と言うか……まさに"水戸●門"や"暴れん●将軍"のチャンバラシーンの様な"圧倒的さ"が有る。

つまり俺は黄門様のように"その場"から殆ど動かず、適度に狙撃するダケでマジで問題無さそうなのだ。

ちなみに此方に流れて来た敵機もB分隊にアッサリと沈黙させられている。(殆どがまりもちゃん機にね)


「やっぱ戦術機の性能の違いが戦力の決定的差では無い……ってワケでも無かったみたいだな~」

「????」

「いや……性能ダケじゃなく腕もこっちの方が上だし、其の台詞の使い方は間違ってるか?」

「ど、どういう意味なのです?」

「いや、こっちの話……ともかく、この状況を切り抜けたら沙霧大尉を探さないとな」

「はい(……相変わらず難しい事を仰る。私は まだまだ知識不足の様だ……精進せねばッ)」


――――この一方、伊隅・ヴァルキリーズも4機のS型が反撃にへと移っていた。速瀬は確実だろうね。


『よくも好き勝手やってくれてたわね!? 倍返しよッ!』

『こらヴァルキリー02! 此処は白銀少佐達に御任せして――――』

『ふっ、ダメですよ大尉。こうなった速瀬中尉は誰にも止められません』

『あったり前よッ! 仲間を殺されかけて大人しく引き下がれるモンですか!!』

『やれやれ。ならば各機 残弾数をリンク……良し、ヴァルキリー2・3・4・8以外は後退しろッ』

『了解!!』×7

『速瀬・宗像・風間・涼宮は若干 踏み止まって白銀少佐達を支援するんだ!』

『りょうかァ~い♪』

『おや……私もですか? しかし好都合と言うモノです』

『はい。あの方達には、もう少し痛い目を見て頂かなくては』

『よくも……よくも お姉ちゃんに銃口を……!!』

『(あ、茜ちゃん怖い……でも、カッコイイ~ッ)』

『お前達、手荒な真似はするなよ? 白銀少佐達の戦いを見習っておけ』

『そんなの分かってますって! 行くわよォ茜~ッ!』

『はいっ!』

『(愚問だったか?)……では我々はCPを護衛しつつ後退するぞ!?』

『了解!!』×7


この場に残ったヴァルキリーズは、速瀬&涼宮(妹)・宗像&風間の2機連携が2組っぽいな~。

しっかし、何だか俺が支援狙撃をしていたエリアの辺りで戦い始めてるし仕事がまた減ってしまった。

普通に有り難いっちゃ有り難いんだけど、これでは黄門様では無くハチベエになってしまいそうだ。

そんな無意味な事を考えながら適当にスコープの視界に入った敵機の腕や頭をブッ飛ばしていると……


『!? 白銀少佐ッ』

「なんだい? テレサ中尉」

『沙霧大尉の"位置"が特定できました!!』

「ホントか!? でかしたッ!」

『では位置情報を転送します(……出来れば"遅いぞバカヤロー!"とか言って欲しかったな~)』

「……んッ……案外 近いんだな」

『その様ですね。しかし交戦中では無い様です』

「良しッ、それなら好都合だ。アルカディア01より各機へ!」

『!?』×10

「沙霧大尉が近辺に居るらしい!! 作戦の第2段階……御剣による"説得"に移るぞッ!」

『そうだった、説得を……ですが白銀少佐っ』

「うん?」


――――未だに戦闘を続けている中、若干手を緩めた篁の言葉に月詠さんが続く。


『"この状況"は どう抑えるべきなのです?』

「ソレは手短に教えるから必ず言った通りにしてくれッ! 良いか篁!?」

『り、了解しました』

『……(ふむ、一体どの様な……)』

「冥夜も ちゃんと聞いといてくれよ? 一度しか言わない……っていうか"言えない"からさ時間的に」

「は、はい」




……




…………




……1分後。


「テレサ中尉、オープン・チャンネルの域を可能な限り広くしてくれ!!」

『分かりました!!』

「じゃあ作戦開始だッ! 5秒後にオープンに切り替えるぞ!?」

『了解ッ!』×10


≪ドパアアァァンッ!!!!≫


『お前達……静まれェ!!』


――――この瞬間で"演技"と言う名の作戦開始。先ずは俺が狙撃を命中させた直後 唐突に叫び。


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


『静まりなさいッ!』


――――マルチ・ランチャーで決起軍の小隊長機の不知火をブッ倒した篁も勇ましく決起軍に吠え。


≪ガシュウウゥゥ……ッ!!!!≫


『静まれ静まれ、静まれェ!!』


――――今回最も激しく敵戦術機に吶喊し、腕を斬り飛ばした月詠さんも威圧する様な言葉を叩き付けた。


『くそッ、強過ぎる……』

『何なんだよアイツ等~』

『こ、このままじゃ……』

『だからって、もう……』


それにより決起軍の衛士達は、士気が著しく低下してしまい俺達から距離を取って此方を見上げる。

ついさっき迄は俺ら側が一方的に攻勢に出てたダケだから、普通に手を休めても似た展開にはなった筈。

しかし"説得"に繋げる為には前述の"静まれ"と言う台詞が不可欠で有り、理由は説明する迄も無いよね?

ちなみに前述で"見上げる"って表現が有ったのは、この俺のSⅡ型が丘の上に聳え立って居るからなのだ。

そんな俺の機体の左右には、何時の間にか篁の不知火S型と月詠さんの武御雷(赤)が控えており、
前方には斯衛トリオが更に壁を作っていて、少し距離を置いて まりもちゃん達5機が敵を警戒している。

こうなるとスケ・カクは言わずともながら、風呂の人・風車の人・怪力の人は斯衛トリオになるのか?

だったら"うっかりな人"は……まりもちゃん。助けられた村人達のポジションはB分隊になるね~。

そんでもって黄門様が冥夜で俺は監督みたいな感じだと思う……って、今はソレどころじゃなかった!!

ともかく舞台は創られたんだ。決起軍は戦意を喪失してるし、予定通り"演技"を進めてゆくべきだね。


「此方におわす方を、どなたと心得る!?」


ポジションは違うけど俺は今の台詞の直後、唐突に戦術機のコックピットを開いて冥夜の姿を曝け出す。

そんな彼女は手短ながら俺の指示の甲斐が有り、しっかりと決起軍を見据えて勇ましく直立していた。

もう何処をどうみても殿下です、本当に有難う御座いました。見事な切り替えの早さに俺の感心が鬼になる。


『!? う、嘘だろ……』

『"あの方"って……ッ!』

「恐れ多くも征夷大将軍・煌武院 悠陽 殿下に在らせられるぞ!?」


≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫(+あのメロディ)


『!?!?』×∞

「者ども殿下の御前で有るッ、頭が高い控えおろう!!」

『……ッ……』×∞

『(ハァハァ、勇ましい少佐……素敵……)』←勿論テレサ


述べた通り冥夜は立ってるけど、俺は彼女の後方で膝を折りながら決起軍に吠えて居るのはさておき。

今迄 自分達が牙を向けていた部隊のうちの1機に、煌武院 悠陽 殿下が同乗していたと言う事実……

ソレは余りにも驚愕だった様で決起軍の衛士達は唖然としている様子。まぁ、無理もないかもしれない。

圧倒的に不利だったと言えど下手すりゃ殺してたかもしれないし、コレで怒りも治まれば良いんだけどね。

だけど反応が無いと困るとは言え、今の台詞は"例の人物"にも当然 聞こえてるワケで有って勿論……


『何をしている、お前達!!』

『さ、沙霧大尉……』

『えっと、その~ッ』


≪――――ズシンッ!!!!≫


『戦闘停止の命令も聞かずに貴様等は誰と戦っていたのだ!? 殿下が居られるのだぞッ!』


目標人物である沙霧大尉が1体の随伴機と共に登場。原作で言うチクりを受けて現れた大名みたいだ。

そんな彼が此方に跪いた事により、他の衛士達も慌てて戦術機の膝を付かせた。抜群に酷似してるZE。

さて置き……彼は怒らずに戦闘の停止を呼び掛けていたのか……コレは評価できると言っても良いな。

クーデターを起こした時点でマイナス数億点だけど、米軍の勝手ぶりも酷かったし一概には妬めない。


『へぇ~、良く治めたモンね~』

『ふむ……流石な采配でしたね』

『これで私達の役目は終わった様です』

『そうね』

『なら帰還しましょう、速瀬中尉ッ』

『オッケー。それにしても茜ぇ? 中々悪く無かったわよ~?』

『!? あ、有難う御座います!』


―――― 一方、速瀬ら4機のヴァルキリーズは何時の間にか空気を読んで後退して行っていた。


「帝国本土防衛軍・帝都守備連隊所属 大尉……沙霧 尚哉」

『ははっ!』

「そなたは役職の名の通りBETAより国民を守る立場に有りながら、共に戦うべき仲間に刃を向け、
 国に・国民に・財産に大きな負担を掛けた。そなたの所業この煌武院 悠陽……しかと見届けました」

『……ッ……それに関しては もはや返す言葉、御座いませぬ。我々は理想の為に決起した筈でした。
 しかし過ぎて見れば この様な有様ッ。我を忘れ一部の帝国軍衛士を殺戮したダケでなく、ましてや……
 ましてや殿下に矛先を向ける事になろうとは……コレでは示しがつかぬ以前の問題に存じます』

「つまり、そなたは自分達の"敗北"を認めると言う事なのですね?」

『はい……これ以上、無駄な血を流す必要は有りませぬ』

「それでは、この無益な"争い"は終了としましょう。宜しいですね?」

『はっ。しかし殿下……私は構いませぬ故、部下達の命だけは何卒……』


冥夜の言葉に痛々しい表情で早くも切腹の姿勢を取る、コックピットを開き姿を現していた沙霧大尉。

色々な意味で凄ェ奴だ……公の場で躊躇い無く自殺するつもりか? それじゃ~何の解決にもならないぞ。

せめてBETA諸共 自爆する方がマシなのは勿論、そんな事をさせる為に"説得"をしに来たんじゃ無い。


「お待ちなさい」

『!?』

「既に"争い"は そなたの宣言で終了しましたが、そなた達"そのもの"の話は聞いておりません」

『お、恐れ入りますが殿下……どの様な意味で?』

「今からでも、そなたの"国"に対する真意を聞き……わたくしが応える機会を設けましょう」

『誠……なのですかッ?』

「この"煌武院 悠陽"の名に置いて誓います」

『……ッ……殿下、この様な謁見の機会を授けて頂いた事……至極光栄に存じます』

「よい。では先ず……そなたが事を起こした理由を聞きましょう」

『畏まりました。それは――――』


何故 既に戦いを治めてから沙霧大尉に対する"殿下"の説得を始めるのか? それには当然 理由が有る。

本来であれば決起軍が諦めた時点で終了なんだけど、なるべく"綺麗な決起軍"な状態で〆て欲しいから。

つまり只単に降伏させるダケでなく、沙霧大尉らが冥夜に"完・全・論・破"され退場するのであれば、
再び戦地に赴き決起軍を宥めた"殿下"の株が上がるダケでなく、彼らも僅かにながら救われるのだ。

決起軍と帝国軍が"自滅"すると言う米軍の思惑通りにならないのもデカいし、メリットばかりが目立つ。

殿下が再出撃機に同乗するダケで十分 冒険だから、説得したところで危険度に大きな差は無いしね。

いや、そもそも"殿下"じゃなくて冥夜だからソレ以前の問題だけど……傍から見たらのオハナシですよ?


「……くっ……其処まで、其処まで国や民の事を考えながら、何故……そなたはッ」


そんなウチに着々と沙霧と冥夜の会話は続いており、彼の言葉にやがて冥夜は涙を浮かべ始める。

当然今は後姿オンリーしか見えないけど、原作をプレイしている俺は何となく分かってしまっていた。

沙霧大尉の言葉の内容は以前の冥夜の理想論を更に酷くしたモノなので、悲しくなって来たんだろう。

自分以上の信念を持っていながら完全に彼の取った行動が矛盾している。だからこそ涙が止まらない。

俺は時代劇の肖りの所為で今でも緊張感が欠けてるんだけど、冥夜は真剣に彼の話を聞いているのだから。


「――――何故そなたは"仲間"に刃を向けたのですか!?」

『!!!!』

「いかなる強い信念が有り……先程の"暴走"は第3者(米軍)の所為で致し方ない事で有ろうと……
 そなたが"事を起こした"時点で、わたくしや民の事を思った結果だと本当に言えるのでしょうかッ?
 BETAと言う脅威が有りながら、味方同士で殺し合う必要が何処に有ると申すのですか!?」

『……ッ……』
 
「それが"正義"として許されるので有れば、天元山に置ける政府の対応を批判する権利が、
 そなた達に有るとでも言うですかッ? いえ、有ろう筈が無い……許される筈が有りません……
 ソレを一番 分かっていながら、そなたは道を誤った。……自分の大切なモノが無関係に奪われる。
 それは確かに許されませんが……本来の目的を失った人類に、決して栄光は無いのです!!」

「……(今のは篁の受け売りも混ざってたみたいだな~)」


やはり雰囲気は似ても流石に原作と同じ会話にはならないけど、冥夜の真心の説得は一味違うぜ。

沙霧大尉も"殿下"の涙の訴えには相当 応えた様で、今更ながら己の過ちに気付いたと言った感じだ。

こりゃ~"完・全・論・破"も時間の問題かな? そう思いながら冥夜のケツあたりを眺めて居ると……


「(あれっ……テレサ中尉、こっちに近付いて来てる機体ってもしかして……)」←超小声

『!? 米軍の小隊……機体はラプターの様ですね。良く再出撃が許可されたモノです』

「(直ぐに解析してくれません?)」

『はい、えっと……ハンター02以下4機。ログを見るに先程 白銀少佐達に随伴していた者達でしたり?』

「(正解です。こりゃ不味い事になったな~)」

『ど、どういう意味なんですかッ?』


このタイミングでイルマ少尉 登場かよ~!? 空気を読まないにも程が有るだろマジな話ッ!

大方 俺らの"作戦"を何処からか知ったイルマ少尉が"上"にチクった結果、再出撃して来たってか~?

それにしてもテレサ中尉が居て良かったなマジで……ラプターのステルス性能の所為で、
もしレーダーを広げてくれて無かったら、友軍とは言え気付くのが大幅に遅れるトコだったZE。

されど気付けた御陰で"対策"が出来る……ちょっと危険だけど、丸く治めるのは"あの方法"しかない。


「(時間が無いんで手短にします。ヴァルキリー02に秘匿回線 繋げて貰えます?)」

『えぇっ? それは何故.』

「(良いから早くしてくれッ、機体のリンクじゃどうにもならないんですよ!!)』

『り、了解(……ハァハァ)』←少し濡れちゃった☆


≪――――ヴンッ≫


「(速瀬中尉)」

『きゃっ!? な、何よ……イキナリッ?』

「(すまないけど上官命令だ、直ぐ涼宮機と2人で引き返して来てくれ)」

『は、はあァ~?』

『私と速瀬中尉で……ですか?』




……




…………




……30秒後。


『あ、あれぇ~?』

『どう言う事なの?』

『戦闘……終わっちゃってる?』

「残念だけど、そうみたいね」

『嘘ォ~ッ』

『わ、私達 何の為に此処まで……』

『どうすんのよ? イルマ』

「終わったモノは仕方無いわね。少し近付いて様子を見るわよ?」

『えっ……良いの?』

『まぁ、有る程度なら大丈夫なんじゃない?』

『米軍は帝国軍を見捨てたワケじゃないって事も伝わるだろうしね』

「そう言う事~(……旨く抑えたモノね……だけど、それじゃ駄目)」


速瀬に素早く"頼み事"と言う対策を済ませると、俺は何事も無かった様に冥夜の随伴を継続していた。

そんな彼女は沙霧大尉をほぼ論破した様で、再び彼は切腹の姿勢……この点に関しては学習してね~な。

だけどコレは冥夜が止めるだろうから構わないんだが、今後の"全て"は1機のラプターの行動に有る。

突然 米軍がステルスに紛れて やって来たのに気付いたっぽい人間は敵味方 共に居たみたいだけど、
今は"殿下"の説得の真っ最中なので誰もが空気を読んでおり、動こうとした戦術機は無かった。

しかしイルマ少尉にとってはソレが好都合……争いが治まった雰囲気をブチ壊すには持って来いの状況だ。


≪――――チャッ≫


『(……決起軍は壊滅し……日本の内争は、混乱のうち終結する……)』

『え? ちょッ』

『イルマ?』

『貴女 何を……』

『(この……一撃でッ!!)』


≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫


――――静寂を突き破る120ミリの咆哮。咄嗟に反応したのは、やはり篁と月詠さんだった。


『ハッ!?』

『なに!?』


――――しかし戦術機を動かす事 迄は流石に出来ず、考えられない射撃を防ぐ術は全く無い。


「申し訳有りません、殿下!!」

「えっ!?」


――――つまり沙霧大尉に放たれた120ミリを防げるのは俺しか居らず。だから射線に割り込む!!


「掴まれ冥夜!!」

「う、うわああぁぁっ!?」


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


イルマ少尉の射撃直前。俺はコッソリとシートに戻って座っており、既に操縦桿を握っていた。

よってSⅡ型の左腕の掌で120ミリを受け止める様に操作した直後 地を蹴って冥夜に飛び掛かり、
瞬間的に"御姫様抱っこ"をすると、そのまま彼女を庇う様にして宙に脱出し落下して行った。

生身だったら重傷だろうけど、強化装備を着てるし大丈夫な筈。とにかく冥夜は無傷で守らねばッ。

しっかし……冥夜も気が動転しているのか、俺の事を強く抱き締め返してくれてるし、
"こんな状況"じゃなきゃマジで最高なのにな~。落ちたら結構 痛そうだしテンションを上げて置こう。

もっと抱いて抱いて、強く抱いて!! 君と飲みたいロイヤル・ミルクティイイィィーーっ!!!!


≪――――ボキッ!!!!≫


「アールグレイッ!」

「ぐぅっ!?」


そして左肩から着地した俺。この音は折れたか……かなり痛いけど、冥夜は何とか守ったぞ……

倒れたSⅡ型も左腕が弾け飛んだダケでライフル等は無事だ。我ながら上手に動かせたモンだぜ。

だけど意識が妙にヤバいな……頑張れ俺。さっきの"対策"が成されるのを確認する迄は耐え抜くんだ。

くっそ~……もし俺が"RIKISHI"なら此処で怪我どころか生身で世界も救えるんだけどな~。
(*HARITE等 最強の技を多く持つRIKISHIにとってはBETAとの戦いなど遊戯に等しい)

さて置き反動で転がる様に俺の腕から離れた冥夜は状況が掴めていない。だけど今は構ってやれないZE。

俺は"うつ伏せ"になった状態からゾンビの様に上半身を起こすと、イルマ機の方向を霞んだ視線で見る。


『うッ……あ……(し、失敗……したの?)』

『ば、ばばばば馬ッ鹿じゃないの!? アンタ!!』

『何て事しデかして くれてんのよッ!』

『しかも殿下の居た機体に当たっちゃってんじゃない!!』


≪はははっ、生憎コレは性分なんですよイルマ少尉――――ッ≫


『……(まさか、白銀少佐は始めから"分かって"いたって言うの?)』


≪じゃなかった、ハンター2でしたっけ?≫


『……(だから体を張ってサギリとミツルギを守った……どうして、其処までして……!!)』


≪じゃあ今回の任務、必ず成功させましょう≫


『……(それなのに、ワタシ……わたし……はッ……)』

『こんのおおぉぉーーーーっ!!』


≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫


『えっ!?』

『まさか本当に……フザけんじゃ無いわよォ!!』


≪――――ガシュゥッ!!!!≫


俺に射撃を"止められた"のは予想外だったのか、棒立ちしているイルマ少尉のラプターに対して。

背後から素早いスピードで強襲して来た速瀬の不知火S型が、突撃砲を持っていた右腕を斬り飛ばす。

そう……俺が速瀬にした"上官命令"は、イルマ少尉が事を起こしたら素早く無力化させる事だったのだ。


『い、イルマ!?』

『茜ェ!!』

『了解!!』

『う、後ろからロック・オン……何時の間に……?』

『既に捉えています、動かないで下さいッ! それとも貴女達も共犯なのですか!?』

『ちちちち違う違うッ……か、勘弁してよ』

『何で"こんな事"になっちゃうの~ッ?』


随伴していた3機のラプターは、同じく素早く後ろを取った涼宮(妹)機が左右の突撃砲……

そして胸のマルチ・ランチャーで全て捉えており、(しないと思うけど)反撃する余裕を与えない。

そんなウチにイルマ機にタックルをカマした速瀬は、彼女をコックピットから引き摺り出し身柄を拘束。

んでもって自分のコックピットに引き摺り込むと、涼宮(妹)機と共に素早く離脱して行ってしまった。

うむうむ……大成功だZE。イルマ少尉は戦意を喪失していた為か全く抵抗する様子が無かった上、
篁・月詠さん・沙霧大尉を含む周囲の者達も未だに唖然としていた為とは言え、流石は一流コンビだね~。

ちなみにイルマ少尉を拘束させたのは、今回の件で彼女は消されてしまう可能性が非常に高いからだ。

よって身柄を奪ってしまえば米軍も"返せ"と言い難いだろうし、唯一 彼女を救う方法だと思ったのです。

とにかく落着なのかな? 出来れば本物の殿下を見送るまで意識を保ちたかったけど……マジで限界な予感。

何時間か"寝た"とは言え今まで結構 神経を使ってたし、もう少し休んだ方が良いのかもしれない。

まぁ……一応は許容範囲までは見届けたし、気絶させて貰おう……って、冥夜が何か言って来ている。


「し、白銀少佐……白銀少佐!! しっかり なさって下さいッ!」

「う……うぅッ……」

「何故あの様な無茶を!? わ、私などの為に……!!」

「……め、冥夜……」


――――うわあ。意識が朦朧としているので何を言ってるか分からないけど、凄い泣いちゃってる。

そんなに沙霧が哀れだったのかな? 少しは拭った方が良いと思うんですが、溢れてます溢れてます。

こりゃ~何か言ったほうが良いな……えっと、なんて言おう……宥める言葉が妥当なんだろうが……


「は、はい?」

「ふッ……パイロットと言うのは……因果な人種だな……」

「!?!?」

「……ッ……」←気絶


――――だけど宥める様な言葉など掛けずに、つい久しぶりに片腕のパイロットを肖っちゃたんだ☆


「し、白銀少佐ああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

『御剣……御剣ッ! 白銀少佐は……白銀少佐は大丈夫なのか!? 応答しろ御剣ィィ!!』

『……(強化装備を纏っていない冥夜様に篁中尉の言葉は……それ程まで彼女は白銀少佐の事を……)』

『……(し、白銀少佐と御剣が……だけど頭が真っ白になって何も対応が浮かばない……何故なのッ?)』

『……っ……アイツと訓練兵の娘、大丈夫なのかな?』

『白銀少佐の事だから無事だとは思いますけど……(今は任務を全うしないと……)』


クーデター終結後にテレサ中尉から聞いた話によると、皆 俺の気絶直後は顔面蒼白だったらしい。

ひょっとして……俺の行動も空気読めて無かった!? ニセモノとは言え殿下を抱えて飛び降りたし。

考えてみれば沙霧より殿下の命を優先させるべきだから無茶過ぎたね……反省する事にしよう。(リアル話)




●戯言●
クーデター偏ほぼ終結。イルマ少尉の引き入れの方法に関して最も難儀し、非常に時間がががが。
んで結局 思いついたのが今回の様な内容です。ヴァルキリーズが居てくれて本当に助かりました……
ちなみに白銀28が初の負傷となりましたが、全てはラストの台詞を言わせたかったダケです。謝罪。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ42
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/08/27 00:58
これはひどいオルタネイティヴ42




――――原作の佐渡島ハイヴの作戦に置いて、伊隅の最期の場合。


「……もう一度……基地に咲く桜が見たかったな……」

『伊隅大尉いいぃぃーーーーっ!!!!』




――――それに対して、もし俺の場合はどうなるかと予想してみると。


「……死ぬ前に……お台場のガン●ム像が見たかったな……っていう」

『白銀少佐ああぁぁーーーーっ!!!!』




――――まぁ、こうなると思うけど洒落にならないのでンな冗談はさて置き。


「……ッ……」


クーデターにて戦術機から落下したのを最後に意識を失った俺は、ハッと目を覚ますと体を起こした。

そして目をコスってから周囲を見渡すと、どうやら一人部屋の病室っぽいが……何処かは分からない。

まぁ、十中八九 横浜基地だとは思うけどね……窓から見える外の景色(空は暗い)がソレっぽいのだ。

ちなみに窓とは逆側(入り口側)にはカーテンが有るんだけど、その僅かな隙間から個室と直ぐ判断できた。

されど些細な事であり、カーテンの手前にはベッドの真横の椅子に背を預けて眠る少女の姿が有った。


「……霞……?」


俺が漏らした様に、何故か霞が傍に居てくれた。こうなると横浜基地なのは確定的に明らかだな。

若干 気付くのが遅れてしまったが、彼女は存在感が薄い事に定評が有る……のは さて置いて。

目覚めた時に誰かが居てくれるってのは やっぱり嬉しいよな~。何時もの朝とは違う嬉しさが有る。


「――――痛ッ!」


よってベッドから離れ霞に近寄ろうと考えた直後、左腕に痛みを感じた。そう言えばそうだったZE。

やっぱり折れちまったのかな~? ふ~む……もし折れてても指とかは普通に動かせるっぽいから、
桜花作戦までは気合で戦術機には乗るつもりだけど、こりゃ沙霧大尉を守る為にと言えど早まったかな?

まぁ良いか、今更考えても遅いし。しっかし……目を覚まして肩に痛みとかアニメ展開だな~ホント。

だけど悪い気はしない。だったら霞も寝てるし肖らせて貰おう、大多数のキャラが言いそうな台詞を。


「……すぅ……すぅ……」

「フッ……死にそびれたか」

「何 言ってんのよ? アンタ」

「!?」


≪――――ジャッ≫


「目を覚ましたみたいね」

「……ゆ、ゆーこさん……」


すると肖った直後に ゆーこさんの声が聞こえ、カーテンを開いて登場。……凄く……恥ずかしいです……

霞に注意を取られ過ぎてカーテン越しの気配に気付かないとは迂闊だった。戦場だったら死んでたな~。

嗚呼、ゆーこさんの表情も妙に硬い様だし"相変わらず痛い奴ねコイツ"とか思われてたりして。ガッデム!


「早速だけど、何から知りたい?」

「……今の日付と時刻ですかね」

「12月06日20時30分。アレから12時間以上経ってるわよ?」

「ありゃ~、だったら殿下は」

「下田から横浜基地に移って暫く休んだ後、夕方頃には また海路を使って帝都に戻ったわ」

「め……御剣や篁達は どうしてます?」

「A-01含めて全員無事よ。全員で殿下を見送った後は自室で休んでるんじゃない?」

「そうですか、良かった~」


――――余談だが鎧衣は巌谷さんが裏で手を回してくれた御陰でMPに連行されなかったらしい。


「テレサに聞いた話だと御剣と篁は かなり錯乱してたみたいよ? 宥めるのが大変だったって」

「へぇあ? 何でッスか?」

「自分の胸に聞いてみなさい」

「……お胸さん、お胸さん。何故2人は錯乱してしまったのですか?」

「あたしの胸に聞いて ど~すんのよ」

「サーセン」


――――霞は未だに寝ており、軽い冗談を挟みながら俺と ゆーこさんの会話は続いてゆく。


「(相変わらず誤魔化し方が巧いわね……)それで他に聞きたい事は?」

「俺のSⅡ型の具合ですね」

「巌谷中佐によると、左腕は使い物にならなくなったみたいだから直ぐ修理に当たるみたいよ? 」

「だったら怒られちゃいますかね~?」

「そうでも無いわね。むしろSⅡ型の"良いデータが取れた"って喜んでたわ」

「へぇ」

「120ミリを食らっても左腕の犠牲のみで凌げる事も出来るんだって」

「そ、そっちの話ですか……」

「次は?」

「イルマ少尉の事ッスね」

「来ると思ったわ」

「何だか"怪しかった"んで、速瀬に撃破のついでに捕らえる様に指示しちゃったんですけど」(嘘)

「今は大人しく牢屋の中よ。後始末で色々と忙しいし、尋問は後日にする予定よ」

「はあ」

「吐かせても工作員の一人に過ぎない彼女の持ってる情報なんて たかが知れてるでしょうけどね。
 だけど良い"拾い者"だし精々オルタネイティヴ4の"後押し"として利用させて貰う事にするわ」

「まぁ、穏便にしてあげて下さいね。彼女にも事情が有ったんだと思いますから」


――――この人ならマジで殺してしまう可能性も僅かに有るので、一応だけど釘を刺して置く。


「へぇ……アンタが一番 恨んでも良い立場なのにね。何せ怪我をさせた張本人じゃない」

「話した限りじゃ悪人には思えませんでしたから。大方"上"に命令されて嫌々やったんでしょうし……」

「見事な偽善ね」

「それほどでもない」

「褒めて無いわよ」

「ですよね~」

「……(ホント調子狂うわね、コイツ……)」

「沙霧大尉らについては?」

「全面降伏後は帝国軍に連行されて行ったわ。アイツ等が どうなるかは"あっち"が考える事ね」

「そうですか」

「聞きたい事は もう無いの?」

「無いッス」

「(自分の怪我の事を聞かないのは、どう言うつもりなのかしら?)」

「忙しい中、有難う御座いました~」

「……ッ……全くよ。じゃあ、私は行くわよ」

「は~い」


左手の事も凄く気になるけど、ソレは医者に聞いた方が詳しそうだしね……霞も知ってるかもしれないし。

それ以前に俺は寝起きと言う事で男のサガ……つまり股間が膨らんでいたので、話を切りたかったのだ。

しかし無理に切っても彼女に悪いし、俺も状況を大まかに知りたかったしで会話を続けるしかなかった。

だから俺の怪我の事は二の次って事にして、ゆーこさんも滅茶苦茶 忙しいんだろうから締める事にする。

勿論、ゆーこさん登場前に霞 対策として曲げた右足で布団の"山"を作る事により勃起を隠し続けている俺。

この格好も不自然だから早く退室してくれ……良しッ、カーテンを潜ったのでOKかと油断すると……


「ああ、言い忘れたけど――――白銀」

「!? な、何ですか?」

「"死にそびれた"とか言うコトバ……社の前じゃ冗談でも言うんじゃ無いわよ?」

「へっ?」

「誰かさん達と同じで、この娘もタンカで戻って来たアンタを見て かなり動揺してたの。
 今は暢気に寝てるけど社も昨日から長い事 起きてたのよ? ずっとアンタの傍に付いたりもしてね」

「そうだったんスか……」

「篁とか"その他 大勢"も何度も此処に顔を出すモンだから、諦めさせるのに苦労したそうよ?」

「へぇ~」

「だから立場も有るし、発言には注意しなさいって事。分かったわね?」

「了解です」

「……(全く冗談じゃないわ、今アンタに死なれたら"数式"は どうなるのよッ?)」

「仕事頑張ってくださいね~?」

「当たり前よ……(!? まさか、既に白銀はループする気でいるって言うの? )」


≪フッ……死にそびれたか≫


「(だとしたら、不味いわね……アイツが既に"この世界"を見限った事からの無茶だとしたら……」


≪聞きたい事は もう無いの?≫

≪無いッス≫


「(今 自分の腕の具合について訪ねて来なかった事も頷ける。分かっても結果は変わらないんだから。
 負傷した左腕は大丈夫って聞いたけど、今の白銀がソレを"どうでも良い"と思ってるならアウトね)」


≪わざわざ目を付けられた位ですし、大丈夫ですよきっと≫(39話前編 参照)

≪そうだと良いんだが……未然に防げる事も出来ただろうに歯痒い限りだよ≫


「(巌谷中佐との会話から白銀のループの中でクーデターは起こっていない。……そう考えてみれば……
 あたしか"別の誰か"が防ぐ必要が有った。だから白銀は"このループ"を快く思っていないのは当たり前)」


≪ともかく……これから一緒に頑張りましょうね? ゆーこさん≫(2話 参照)


「(それなのにアソコまでの采配が出来た白銀は確かに異常……ハンパじゃない洞察力が有るヤツね。
 けど問題は其処じゃなくて、白銀は"あの時"から あたしに期待しつつ、目利きもしてたんだわ。
 アイツを負傷させた米軍の工作員に気付かなかったのも不味かった……簡単に予測できた筈なのにッ)」


≪ちょっ……おま、訓練の所為で戦術機が出れなきゃ本末転倒じゃないですか~≫(35話 参照)


「(そんな白銀の"評価"は良くないみたいね……だけど殿下に会え工作員を捕らえた事により利点も有る。
 また新しい戦術機が手に入るかもしれないし、旨く交渉して白銀を留める事にしなきゃならないわ)」


≪ふッ……パイロットと言うのは……因果な人種だな……≫


「(だから早まらないで見てなさい? 白銀。アンタのループは必ず今回で終わりにしてやるわ……!!)」

「(い、居ないよなッ? もう居なくなってくれたんだよな!?)」


≪只今 参りました、香月博士≫(BETA新潟上陸後)

≪ご苦労様ピアティフ、それで白銀は何か言って来たの?≫

≪いえ……少し考えられる素振りはされましたが、直ぐに帰還されました≫

≪そう。もしかすると、気付いてたのかもしれないわね~≫

≪しかし、何故A-01に"あの様な作戦"を?≫

≪頭の良いアンタになら解るでしょ? きっと白銀も察したから何も言って来なかったのよ≫


「(だけど勿論、あたしなりの"遣り方"で――――ね)」


ベッドから離れようとした直後、ゆーこさんが再びカーテン越しに声を掛けて来なさった!!

あ、危ねェ危ねェ……もし隙間から覗かれたらアウトだったZE。弱みを握られる的な意味で。

それ以前に さっきの台詞は偶然ゆーこさんに聞かれちゃったダケだから別に言われなくても……

いやいや、聞かれる気は無い発言だとしても"聞かれた時点"で真に受けられるんだし注意しないとね。

そんなワケでしっかりと彼女が去ったのを確認してから、俺はコッソリと病室を出て行くと……


「(素晴らしい尻だぜ冥夜……あオオオォォォォーーーーっ!!!!)」


――――トイレに走り込み股間の興奮を治める為、昨日の感触を思い出して抜いちゃったんDA☆


「(そうね……先ずは即 米軍に切られたって言う3人の衛士ってのを拾ってみようかしら?)」




……




…………




……10分後。


「……んぅッ……」


≪――――ぱちっ≫


「(つい……寝てしまったみたいです……えっ? し、白銀さんが……居ない!?)」


≪――――ガタッ≫


「(一体 何処に……ま、まさか……)」


≪きょろきょろ≫


「(ずっと気絶していた事を悔やんで居ても立っても居られず、此処を抜け出してしまった?)」


≪し、白銀少佐ああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!≫

≪御剣……御剣ッ! 白銀少佐は……白銀少佐は大丈夫なのか!? 応答しろ御剣ィィ!!≫


「(いくら外傷は無くても、あんなカラダで無理をして……どうして其処まで無茶を……)」


≪たたたたたっ≫


「(皆さんが……私が一体どれだけ心配したと思ってるんですかっ!?)」




……




…………




……同時刻。


≪ぺたぺたぺたぺた≫


「さて、もう一件イクか~」


浴衣みたいな患者の服(+自室から持ち出されたっぽいトランクス)を着用した姿の俺は、
スリッパの乾いた音をペタペタと鳴らしながら通路を歩いており、新たなトイレを目指していた。

ついでに左腕には前腕から肩辺りまで包帯が巻かれており、三角巾で腕が吊られている。

……どんなカンジなのかは、原作で負傷してた涼宮(妹)を想像してくれると良いだろう。眼帯は無いけど。

そんでもって、顔面には擦り傷が多かったらしく大袈裟にも頭には包帯が巻かれている上に、
更に頬にもシップが2枚貼ってあり、トイレで鏡を見た時"誰コレ!?"と驚いてしまったモノだ。

さて置き。自慰ったのは良いけど一回じゃ足りない、だけどトイレに長居すれば怪しまれるだろう。

よって再度ハッスルする為、前述の様に"次のトイレ"に移ろうと鼻歌交じりで歩いてたんだが……


「!? ――――白銀さんッ」

「うぇっ!? か、霞……?」


≪たたたたたっ≫


「……ッ!!」

「ちょっ……」


≪――――どっ≫


突然 目を覚ましたっぽい霞の声が聞こえたので、振り向こうとする前に背後から抱き付かれてしまった。

反応が遅れちまったのは思わず直立不動になってしまったからで、そりゃ~振り向くのを躊躇うって。

何せ考えてた事がアレだったし……って言うか、嫌なタイミングで気付かれちまったモンだな~。

用が済んだら普通に病室に戻って霞を起こしてから診断結果でも聞こうと思ってたのに……運が悪い。

それにしても"彼女にしては"随分と俺の事を強く掴んでいる。十数秒 経っても力は緩んでいない。


「何処に……行こうとしてたんですか?」

「そ、それは」

「白銀さんは、病人さんなんですよ?」

「……(病人に"さん"付け!?)」

「どうして そんなに……無茶しようとするんですかッ?」

「と、とりあえず霞。両手を放してくれないか?」


――――今の俺は薄着だし、この状況は人に見られると色々とヤバい気がするんですけど。


「……ダメです」

「じゃあ、どうしたら良いんだ?」 

「逃げませんか?」

「えっ?」

「素直に私と戻ってくれるのなら……放します」

「オッケー分かった。だから落ち着いてくれ」


――――続いて自慰れないのは残念だが仕方あるまい。そう考えて答えると霞は手を放してくれるんだが。


「……ぐすッ……」

「!? か、霞……何で泣いて……」

「白銀さんの所為です」

「やっぱり?」

「ですから……ッ……勝手に、居なくならないで下さい」

「わ、悪かったよ」


何と振り返った俺の目に飛び込んで来たのは、涙を拭っていた霞の姿だった。何事ですか? コレは。

どうやら俺の事が心配だったらしく、目が覚めたら居なくなっていた事で かなり焦ってしまったらしい。

もしかして腕の怪我、かなり酷かったんですか!? 痛みも僅かだし大した事 無いと思ってたんだが……

これは迂闊だった……もしかしたら取り返しのつかない事をしちゃったとかッ? とにかく戻るしか無い。

よってライトハンド・クイッケンは後日にして、謝罪を込めて霞の頭を撫でつつ病室に戻るのだった。


「(……意外と素直に戻ってくれました。自覚はしてくれてるみたいで良かったです)」


――――余談だが病室で看護士を呼んで診察室に着く迄、霞は服の裾を握って殆ど放してくれなかった。




……




…………




……30分後。


「何だ心配して損した、大した事 無くって良かったよ」

「……そうですね」


今回の腕の怪我についての診断結果を医者に聞いた俺は、霞と一緒に上層の通路を歩いていた。

何だか名無しの女性看護士が俺の顔を見るなり何故か顔を真っ赤にしてたけど、それは些細な事として。

現在は一応 軍服姿……上着のみ羽織っており、後は自室で療養してれば時期に左腕は治るらしい。

それより診断結果だったな~。どうやら肩の脱臼+骨に僅かなヒビが入ったダケで済んだっぽい。

まさに強化装備サマサマ。アレが無けりゃ~骨が折れるどころか使いモノに成らなくなってたの事。

きっと涼宮(姉)みたいになってた だろうね……技術が進歩してる分 無くなるよりマシなんだが……


「さて、これから どうするかな~?」

「ですけど……白銀さん」

「分かってるよ、でも腹が減ったから晩飯だけ食わせてくれ。終わったら大人しく部屋に戻るよ」

「なら良いんです」

「霞も一緒に来るよな?」

「は、はい。それでしたら――――」

「ちなみに自分で問題無く食えるからな?」

「…………」

「食えるんだからな!?」

「あが~」


――――ちなみに大事なコトなので2回言いました。こんな目立つ格好で冗談じゃ無ェぜ!!




……




…………




……15分後。


「ふぅ~、ごちそ~さん」

「……御馳走様でした」

「戦いの後の飯は最高~ってね」

「はい、今日も美味しかったです」


俺は主人公属性の少佐属性だから一目置かれる存在。たまにPXに行くと皆が俺に注目する。

……と言うのは冗談で、何時も飯を食いに来てる少佐様(笑)が見た目の酷い怪我をした上に、
滅多に来ない霞を連れて来て居るから、多少はチラチラと周囲の人間達に見られながらの食事となった。

しかし何時もの事だし俺以外にも怪我をしてるっぽい軍人も居たしで、気にせず食事を終えていた。

不幸か幸いか篁達やらA-01の面子は居らず、きっと自分達の仕事で忙しいor休んでるんだろう。


「じゃあ、貰った薬を……」

「どうぞ、白銀さん」←水を差し出しながら

「有難う霞」

「……いえ」


しかし"この世界"は凄いよな、数個の飲み薬ダケで痛みもヒビも数日で引いてしまうそうなのだから。

確かに現代日本でも痛み止め やカルシウムの薬は普通に沢山有るけど、効果の違いが雲泥の差だ。

やっぱオルタ世界の絶望的な状況を考えると、医学の研究に置ける費用は俺の世界を1とすると、
此方は10以上は有るんだろう。ロボットの研究に関しては1に対し1000以上有りそうだしな~。

反面 テレビとかの家電製品やゲーム等 娯楽に対するコストは殆ど使われていないっぽい分、
其の辺りは全然進歩していないが……マジ"この世界"だと馬鹿にできない。だって仕方無いじゃん。

そんな事を一瞬のウチで考えると俺は2錠の錠剤を口に放り込み、霞にコップを受け取り水を飲む。


「ゴクンッ」

「…………」

「……ッ……おっ……」

「白銀さん?」

「オクレ兄さん!!」

「!?!?」


――――そして成るべく声を抑えて"ネタ"に走る。クスリを言えば、やっぱコレでしょうッ?


「マイ・ネーム・イズ・オクレ」

「そんな……し、白銀さん……まさか」

「うん?」

「お兄さんが……居たんですか?」

「ゑっ?」

「初めて知りました」

「あっ……いや、コレはね?」

「????」


――――ちなみに霞の誤解を解くまで30分掛かりました。(ちなみに結局クスリともしてくれなかった)


「ネタが薬なだけに」

「今日の白銀さん……何か変です」




……




…………




……ようやく誤解を解いてから、更に15分後。


「なあ、霞」

「何でしょうか?」

「地下に戻らなくて良いのか?」

「まだ大丈夫です」


医師が安静にしてろと言うので俺は自室を目指して歩いているんだが、霞が まだ後を付いて来ている。

まさか……初っ端から一緒に寝るとかじゃ無いよな? そりゃ~嬉しいんだけども、厄介でも有るぞ?

もし認めて"それ"が定着してしまえば金輪際 抜けなくなってしまうじゃないかッ! それは不味い……

だから彼女の真意を聞いて何とかしないと、ストレスで痛い目を見て病院で栄養食を食べる事になる。


「……まだ?」

「白銀さんが休んでくれるのを確認するまで、戻りません」

「(ホッ)何だそんな事か~。確認なんてしなくても、ちゃんと寝るから大丈夫だって」

「ダメです」←やや怒った様子で

「へぇあ」

「白銀さんは皆さんが どれだけ心配していたか分かっていません」

「分かってないって……たかが脱臼(+ヒビ)だろ~?」

「やっぱり分かって無いです……けど、直ぐに気付くと思います」

「どう言う事だ?」

「お部屋の前まで行けば分かりますから」

「ちょっ……お、押すなって」

「……(私も予想外ですけど、彼女達の様子を見れば……)」


最初から寝るのと途中からベッドに紛れ込んで来るのとは実際そう変わらないけど、俺としては大違い。

だからアッサリ彼女の考えが知れて安心したZE。流石に一緒に寝たいワケじゃ無かったみたいだな~。

よって前者で済みそうなワケなんだけど、良かれと思ってヘラヘラしてしまうと何故か霞が怒っている。

う~む、医者に2~3日 安静にしてれば治るって言われた今、心配する要素は皆無だと思うんだが……

確かに仕事が重なった事による疲労が全て抜けてるとは言えないけど、これから安静にするワケだし。

まぁ、考えても仕方ない無いか~。だから霞に弱い力で背中を押されつつ、自室へと向ってゆくと……


「なっ!?」

「…………」


――――俺の部屋の前に長椅子が幾つも置いてあり、其処にはヒロイン達の姿が有った。


「なん……だと……?」

「(流石に驚いたみたいです)」

「……霞」

「はい?」

「何時の間に俺の部屋は診察室になったんだ?」

「白銀さんが倒れたからです」


とある長椅子には元A分隊5人が肩を寄せ合って眠っており、涼宮(妹)の膝に頭を乗せる築地は幸せそう。

もう一方の長椅子ではB分隊の面々が眠っているが、元A分隊とは違って全員が肩を寄せ合っておらず、
腕を組んで船を漕いでいる冥夜・彩峰……いや慧に寄り掛かって寝ている珠瀬と、寝方は様々だった。

んで少し離れた長椅子には 篁・まりもちゃん・イリーナちゃん・ウォーケン姉妹の5人が寝てるし……

対面の長椅子には速瀬が半分を独占して寝ている反面、涼宮(姉)と伊隅は静かな寝息を立てていた。

ま、まさか……まさかとは思うけど……皆が俺を心配して? マジで震えてきやがった……鳥肌モンです。


「だからって、こんな……」

「白銀さん」

「えっ?」

「これで分かってくれましたか?」

「……ッ……」

「皆さんが、どれだけ心配していたのか……」

「……十二分にね」

「病室には斯衛の人達も訪れていました」

「へぇ~」

「巌谷中佐や他のA-01の方々も……」

「それに――――」

「分かった分かったッ、もう勘弁してくれよ」

「じゃあ……ちゃんと休んでくれますか?」

「勿論さ、コレだけの人数に怒られたら流石に疲れちまう」

「それなら良いんです」

「でも……どうすんだ? 此処の連中」

「このままにしてあげて下さい。最低限の職務が済み お医者さんに病室を追い出されてからは、
 ずっと此処で白銀さんを待っていたみたいですから……それに、今 皆さんが目覚めてしまったら、
 白銀さんが休めなくなってしまいます。だから、今は療養する事ダケを考えてくれませんか?」

「は、把握した」


そうか~、自分なりに出来る範囲で適当に頑張ってたけど、こうも皆を心配させちまってたんだな……

必死で生きている皆には遠く及ばないだろうけど、やっぱり少佐と言う立場から無茶は良くないね。

ともかく今は このまま寝て貰う事にしよう……特に速瀬が目を覚ましたら面倒臭そうな気がする。

それに篁と冥夜は特に俺の事を心配してくれそうな性格だから、安心して貰うのに手間取りそうだ。

まぁ、気絶した直後の事はテレサ中尉にでも聞けば良いし、今は俺も休むという選択肢しか残ってないな。


「それでは……」

「お休み~、霞」

「お休みなさい」


≪……バタンッ≫


「ふう~っ……あれ?」


よって自室に入った俺は、何時の間にか感動の所為で漏れていた涙を拭うと大人しく寝る事にした。

例の如く鍵は開いたままにして置いて有るので、今回は行為中に"万が一"と言う事も考えられるからな~。

ちなみに予想できた人も居るだろうけど外の状況を考えると中々 寝付けず、病室を出た事を後悔した。


「(残念ですけど……流石に今回 お邪魔するのは止めて置くべきですね)」

「…………」

「(それより狸寝入りしてた人も居る様ですし、今のうちに撤退です)」


≪たたたたたっ≫


「(速瀬がタイミング悪く起きたら止め様と思って来たけど)」

「……むにゃ……遙ァ、もっと飲ませなさいよ~っ」

「(どうやら心配無かったみたいね……けど)」

「……すぅ……えへへ……白銀少佐~、こんなに大きくして~♪」

「(す、涼宮は一体どんな夢を見てるって言うの?)」


―――― 一方 白銀少佐を好んで止まない涼宮(姉)は、彼を(夢の中で)想って濡れちゃってたんだ☆




●白銀→女性●(6文字以内)
副司令:解剖しないで
ウサギ:妹みたいだ
軍 曹:挟まれたい
オペ娘:お尻撫でたい
篁唯依:犬飼いたい
テレサ:ムラムラする
↑の姉:????
御 剣:真面目だな~
 榊 :ふとまゆ
彩 峰:ヤキソバ
珠 瀬:ゴル娘13
鎧 衣:空気読め
涼宮妹:アホ毛
柏 木:おっぱい
築 地:おもらし娘
麻 倉:????
高 原:????
伊 隅:メイン盾
速 瀬:RIKIYA
涼宮姉:なんかエロい
宗 像:ユリーズ1
風 間:ユリーズ2
殿 下:極上の尻
月 詠:アルカイザー
真 耶:絶対忍者だろ
神 代:期待してるぞ
雪 乃:凄い髪だ……
美 凪:金髪ロール


●戯言●
出番の無かった霞のターン。白銀28が自慰りに行ったダケなのを、まだ働くのかと勘違いしてたり。
そして白銀の独り言を真に受けて無駄に勘繰る副司令の図。アンド当方のSS1周年有難う御座います。
よってヒロインの大多数が白銀28を心配して擬似ハーレムっぽい感じで締める事にしてみました。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ43(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/09/10 23:51
これはひどいオルタネイティヴ43(前編)




2001年12月07日 午後


"このまま安静にして置いて下さい"と言う医師のコトバの通り、俺は長い時間 眠らせて貰った。

途中2度ほど目が覚めたけど、贅沢にも再び寝直す事で気付いた時には正午を回っていたりする。

時刻は13時過ぎか……流石に覚醒してしまった俺は、シャワーを浴びると軍服に着替える事にした。

別にもっと休んでも良いんだと思うけど、再び休むのは今後の予定を聞いてからでも遅くは無い。

勿論 ゆーこさんにね? 昨日の"あの時"は俺がボッキしてた事も有ってジックリ聞けなかったしな~。


「――――良し」


そんなワケで左手に極力負担を掛けない様 気をつけつつ、着替え終えると鏡と睨めっこする。

何処も変なトコロは無いよな? 反面 昨日はロクに手入れもせずにPXに行ったのが悔やまれるZE。

迂闊にも寝癖が有ったらしく、指摘してきた京塚のオバハンに背中を叩かれつつも直されたしな~。

しかも目立ってしまったので"参ったな~"って笑って誤魔化したら周囲の軍人の皆さんに笑われた。

うぅ……俺って一応 少佐なのに普通に笑われる辺り馬鹿にされてる? クーデターでも"やからした"し。

まぁ、今まで散々 視姦やらセクハラ紛いな事やってたし自業自得か~。前科を思い出せばキリが無い。

!? いかんいかん、密室で一人っきりだったのが長かった所為かネガティブになってしまっていた。

昨日の事を考えてみるんだ白銀ッ! 篁達が心配してくれたダケでも十分ではないかっ……って言えば。


「!?」


≪――――ぴたっ≫


チェックが終わり部屋を出ようとして、ドアのノブに手を掛けようとする寸前に動きを止めた俺。

も、もしも外が"昨日のまま"だったらどうしよう? 流石にソレは無いと思うけど……忘れてたZE。

でも取り合えず念の為……ゆっくりと扉を開いて顔ダケを出して外の様子を伺ってみると……


「(篁!?)」

「…………」


≪――――ぱらっ≫


幾つも有った長椅子が1つに減っており、そんな最後の長椅子(inドアの真横)に腰掛けている女性の姿。

俺が脳内で叫んだ様に"篁 唯依"であり……彼女は俺に気付かず戦術機 関連を思わせる本を読んでいる。

ま、まさか前回 以上に"何時出てくるか分からない"俺を待ち続けているとは……感心を通り越して驚きだ!

そして感動と同時に申し訳ない気持ちにもなってくる。俺が寝ていなければ待ち続ける事も無かったのに。

全く唯依タン真面目 杉……そんな事を篁を見下ろしつつ考えていると、静かにドアが閉まった音が響いた。


≪バタンッ≫


「「あっ」」


――――その直後ドアの音に視線を仰いだ篁と目が合い、俺と彼女の声がハモってしまった。


「お、お早う御座います白銀少佐!」

「お早う篁……って今は もう昼だけどね」


――――苦笑いしていた俺に慌てた様子で直立し、敬礼して下さる篁。言葉を選んでくれた様で有り難い。


「どうですか? 御体の調子は……」

「御陰様で大した事は無いよ」

「は、はあ」

「俺の怪我の具合ついては聞いてる?」

「えっと……安静にしていれば、数日で完治すると言う程度には……」

「そう言う事。心配かけて悪かったね」


――――聞いた話によると、篁は俺が気絶した直後は錯乱してたって話だったしね。


「と、とんでも有りません。少佐は気付いていながら、私は"あの時"何も出来ず……」

「あれは仕方ないって。作戦中 伊豆スカイラインCCでテスレフ少尉と鉢合わせなかったら、
 俺も全然 察せて無かったと思うし……篁は何も悪くは無いさ、むしろ良く遣ってくれたよ」

「しかし御怪我を……」

「120ミリを受けたのもワザとだったから、被害は片腕ダケで済んで怪我も軽傷。
 何も問題無いだろ~? むしろ巌谷中佐にはSⅡ型 壊してゴメンナサイって心境だし」

「そ、そうですか……」


――――何だか納得してくれて無い様子。此処は話題を変える方が正解かもだが、直ぐには思いつかない。


「(う~ん)」

「"この件"に関しても、何とお詫びして良いか」

「……この件って?」

「白銀少佐が病室で休まれていなかったのは、理由があるんです」

「理由?」

「それは……」


よって何と言おうかと迷っていると……ネガティブな表情のまま篁は予想外の事実を告げて来た。

……どうやら俺が入院(?)にならなかったのは、冥夜を始めとする面会希望者が多すぎた為らしい。

成る程。作戦を共にした面子に加えA-01+イリーナちゃんらオペ娘ズにもなれば30人近いよな~。

それに ゆーこさん+霞を始めとする名無しの非戦闘員の人も来たらしく、少佐の軽傷に大袈裟ですよね。

だけど面会希望者を追い出しても、皆が俺の病室の近くで待つ始末なので患者に迷惑が及んでしまう結果。

ゆーこさんは"白銀が目を覚ましたら自室に行かせる"と無理矢理 面会希望者を俺の部屋の前で待たせた。

当然 反対意見が出たらしいけど"アンタ達が喧しい所為だ"と一蹴されてしまい、前日の夜に至った。

流石に月詠さんら斯衛ズとかは残っていなかったみたいだけど、改めて皆の気遣いに目頭が熱くなる。

別に馬鹿にされる少佐だって構わないぜッ! 部下達に こうして気遣われてる時点で勝ち組だもんね!!


「……ッ……成る程、良く分かったよ」

「(やはり呆れられている)」

「どうやら随分と大事に成っちゃってたみたいだね」

「面目ないです……本来であれば私が少佐に安静に休んで頂ける様、努めるべきだったのですが」

「聞いたよ。結構 焦ってくれたみたいだね」

「うぅッ」

「めい……御剣も随分だったって」

「は、はい。ですが米軍少尉を捕らえた速瀬中尉に直ぐ通信を頂きまして」

「速瀬に?」

「先程の被弾は意図的なモノらしいので、心配は要らない筈……と」

「へぇ」

「米軍少尉を捕らえた作戦も咄嗟のモノだったと聞きましたが」

「うん」

「それダケ彼女は……白銀少佐を信頼されていたのですね」

「あははは、まぁ上官命令だしね」

「ですが――――(できれば私に命令を……)」

「ですが?」

「!? な、何でも有りませんッ」

「まぁ、カラダの方はホント何とも無いからさ。これ以上 気にしないでよ」

「……少佐が そう仰られるのなら」

「そんな事よりも」

「はい?」


元より俺の怪我は軽傷……それも無茶を遣ったからの自業自得だし、マジで全然 問題無いのだ。

しかし問題は篁だ。彼女は何時から"此処"で俺を待っていたんだろう? そっちの方が気になって仕方無い。

恐らくトイレ以外は殆ど此処に居たんだろう。俺の直属の部下とは言え巌谷さん関連の仕事は良いのか?


「篁は ずっと此処に居たのかい?」

「……ッ……は、はい」

「ホントかよ!? だったら直ぐ寝た方が良いだろ、俺は この通り大丈夫だから」

「私も御心配 要りません。睡眠も此方で取れておりますから」

「へぇあ」

「本来であれば、意識を保って置くべきだったのですけど……情けない限りです」

「(そう言う問題じゃ無いんだが……)SⅡ型 関連の事は良かったのかい?」

「そ、それは巌谷中佐に気遣って頂きました」

「気遣うって?」

「白銀少佐の……お、御傍に居るようにと」

「ありゃりゃ」

「(す、ストレート過ぎたかしら?)」

「巌谷中佐に……か~」


マジかよ、巌谷さんって結構 厳しいんだな~。篁も そんな事でも"命令"されちゃ逆らえないしね。

だとすれば篁が此処に居たのも納得だ。本来であれば直ぐにでも自室で休んで欲しいトコだけど……

中佐である巌谷さんの指示となれば篁を帰すワケにはいかない。もう少し頑張って貰うとするか。

今は午後に入ってるし、即効で ゆーこさんと会話と言う名の"仕事"を終わらせて休んで貰うとしよう。

しっかし、篁は何故"もぢもぢ"としているんだろう? 普通に可愛いが涼宮(姉)みたくエロスも感じる。

やっぱ溜まってるのかな~? だったら俺 自身の為にも今日の"イベント"は早く終わらせないとならん。

そんな事を考えながら篁を見下ろしていると、何故か彼女は言葉に詰まっている。何この可愛い生き物。


「あっ……うぅっ……」

「篁」

「えっ?」

「顔が紅いぞ」

「そ、そうですか?(もしかして……酷い顔をしているの?)」

「だったら"仕事"の前にシャワーでも浴びてきたらどうなんだい?」


――――これは帰れない篁に対する俺の上官としての気遣いだ。この配慮が人気の秘訣。(嘘)


「よ……宜しいのですか?」

「俺は寝起きだし、落ち着いてから行っても構わないしね」

「……ッ……」

「でも待ってる間に医者に"処置"して貰ってるのも良いかな? 包帯とかの」

「!? それでしたら其方を優先して頂いた方が……」

「いやいや、待ってるから浴びて来なよ。女性としてソレは不味いだろ~?」

「あぅうッ」

「それじゃ~行って来てよ」

「わ、分かりました」


――――此処で締めれば部下ダケでなく女性への普通の配慮だったろうが、俺は少しダケ自重を怠った。


「俺の部屋のシャワーに」

「!?!?」

「(言っちゃったよ、てへっ☆)」

「えっ? あ、あぁああのっ……」

「何だい?」←開き直り

「――――ハッ!?」


≪食べさせてくれないか?≫(30話 後編 参照)


「(もしかすると、今 白銀少佐は私に心を開いてくれている……!?)」

「た、篁さん?」←ちょっぴり後悔

「(それなら今のチャンスを逃すワケには……でも心の準備がッ……)」

「嫌なら別に構わないんだけど」

「えっ!? い、いえ……有り難く使わせて頂きますッ!」

「さ、さいですか」

「それでは白銀少佐、お邪魔させて頂きますね!?」

「うん。バスタオルとかは好きに使って良いからね~?」

「あ、有難う御座いますッ!!」

「…………」


≪ガチャッ――――――――バタンッ!!!!≫


「(ま、まさか こんな形で……でも白銀少佐になら……!!)」

「オワタ」


俺の自重しない言葉に対し、オーバ・アクションを執った篁は高いテンションで自室へと消える。

嗚呼 何故よりによって俺の部屋で浴びろと言ってしまったんだ……主に洗面用具が無いじゃないか。

それ以前に完全に職権乱用。されど従ってくれた篁に申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。

本当は嫌だったんだろうけど上官命令と言う事で逆らえず、脳内で格闘しながらも従ってくれたんだろう。

巌谷さんに知れたらブッ飛ばされそうだな~。着替えの現場とか覗いてみたいけど死にたくないし我慢だ。

よって自重しなかった自分を呪いながら、篁が座っていた長椅子に腰掛つつ戦術機の本を読む事にした。


「(これが白銀少佐の使っていた石鹸・シャンプー……)」


≪ゴクリ≫


「(いやいや違うわよッ! 私はこれから……だから清めて置くダケなんだから!!)」


――――対して白銀に抱かれると思い込んでた唯依タンは、テンパりつつも濡れちゃってたんだ☆


「(ハァ~……覗きてェ。でも駄目なんだよなァ)」

「(……白銀少佐が入って来てない? ……と、と言う事は……)」




……




…………




≪篁~。背中を流してやるよ≫

≪し、白銀少佐……何をなさるんですか!?≫

≪お前は何を言っているんだ≫

≪!?≫

≪最初から"こうなる事"を承知で入って行ったんだろう?≫

≪ち、違います……ふあぁああぁあ……っ!!!!≫


「良し……今夜のオカズはコレで逝こう」


≪――――ガチャッ≫


「白銀少佐」

「うわっ、びっくりした」

「た、只今 終わりました」

「意外と時間が掛かったね」

「そ、そそそそれはッ」←何分か白銀を中で待ってた

「いや冗談だよ」

「!?!?(……さ、察せられたの!?)」

「それよりスッキリしたかい?」

「お……御陰様で」

「確かに断然 綺麗になってるね~」

「……ッ……」


≪――――ぐらっ≫


「ちょっ!?」

「えっ? あッ……す、すみません白銀少佐!!」


篁を待つ事 約20分……"待ち人"が静かにドアを開いて登場し、俺は彼女の方へと視線を向けた。

其処で軽く冗談を言ってしまうが、女性なので髪の手入れ等に時間が掛かるのは当たり前の話だ。

されど男物の洗面用具しか使って居ないと言うのに風呂上りの篁はマジで美人としか言えないんですけど?

よって当たり前の事を言った直後、篁が唐突に倒れそうになり咄嗟にカラダを支えた。当然 右腕のみで。

はて……変な事は告げて無いからノボせてたのかな? きっと用具の所為で手間が掛かっていたのかも。

だったら篁にはホント面倒を掛けてばかりだな~、其の為 俺は自然と彼女を抱き締めてしまっていた!!


「篁」

「あっ……」


≪――――ぎゅっ≫


「悪かったね。君の気持ちに答えて あげれなくって」(嫌だったのに的な意味で)

「!?」

「きっと……さっきの俺は どうかしてたんだよ」(自室でシャワーを浴びさせた的な意味で)

「(と、と言う事は……彼は私の気持ちを知りつつも、あえて入って来なかったと言うの?)」

「……本当に すまなかった」

「し、白銀少佐……謝らないで下さい」

「だけど」

「もう良いんです、私は何とも思っていませんから」

「……有難う」


≪それじゃ~行って来てよ≫


「(始めは私に心を委ねようと誘ってくれたんだろうけど、途中で思い留まったのね……)」


≪俺の部屋のシャワーに≫


「(だけど、その促した"事実"が有ったと言うダケで私は嬉しかったのかもしれない)……でも」

「篁?」

「わ、私が"必要"な時は遠慮なく仰って下さい!!」

「…………」


抱き締めた直後は下心などは一切 持たず、篁に対して真剣に謝罪していた。たまにはシリアスも良いよね?

そんな彼女も軽く俺を抱き締め返して下さると"何とも思っていない"と仰ってくれ、互いの体が離れた。

この後 篁から出た言葉が"必要"な時は遠慮なく命令しろって事? マジ俺の為に命掛けてくれるんですね。


「何時でも……覚悟は出来ていますからッ」

「そうなのかい? だったら その時は……」


≪――――ぐいっ≫


だけど無茶な命令をして彼女を死なせる気はサラサラ無いし、むしろ無茶 自体させたくないな~。

……とは言え指示を彼女は望んでいるので、上官として遣り応えの有る仕事を回してやるべきですね。

そんな事を思いながら俺は新たな決意を胸に、篁の顎に右手を添えると真剣な表情で彼女に言う。


「……ぁ……」

「9回で良い」(謙虚)

「!?!?」

「(コレで信頼を取り戻せたのは確定的に明らか)」


≪――――ばたんっ≫


「ちょっ!? ど、どうしたんだ篁~っ!!」


しかしながらキメ台詞の後にブッ倒れてしまう篁。コレばかりは不意 過ぎて防ぐ事が出来なかった。

やっぱブロントるのは"この世界"じゃキマらないっぽいな……彼女が倒れた理由は良く分からないけどね。

それよりも"信頼関係"は結局どうなったんだろうか? ともかく篁が目を覚ますのを待つしかないな~。

よって倒れた篁を自室のベッドで休ませる事 更に20分。ようやく"白銀"の一日が始まろうとしていた。


「(……お、叔父様……やはり白銀少佐は計り知れない方です……)」

「(面白そうだし唯依ちゃんに適当な事を吹き込んじまったが、白銀少佐なら手堅く揉んでくれるだろう)」


――――この数日後 横浜基地・某所で、娘に鳩尾を強打され地面に伏す巌谷中佐の姿が有ったそうな。




……




…………




……30分後。


≪コッコッコッコッ……≫


あの後 篁から"目を覚まして私用が済んだら顔を出せ"と言う ゆーこさんからの伝言を受けた俺は、
先ずは医者に処置を して貰うべく昨日の病錬を目指しており、その真横を篁が歩いている。

包帯の"処置"が終わればPXで飯を食い、執務室を訪れるのは"その後"と言う事になるね~。

そんで ゆーこさん(+霞)と会ったら未だに心配してそうな冥夜達の所にでも顔を出すとしようかな?

さて置き。傍を歩く篁に対し、前から御願いしてみたかった事を切り出すべく歩きながら声を掛ける。


「ところで篁」

「は、はい?」

「これからタカムラじゃなくて"唯依"って呼んで良い?」

「えぇっ!?」

「時と場合は選ぶからさ」

「……ッ……」


――――理由を強いて言うならば、只単に名前で呼び合う方が"良い関係"が築けると思ったからだ。


「嫌だったら無理にとは言わないんだけど」

「い、いぃえッ! むしろ嬉し……では無く、少佐がそう望まれるのならッ」

「なら俺の事も"武"って呼んでよ。んで謙虚だから呼ぶときは"さん付け"で良い」

「わ……分かりました」


ふっ……いくら生真面目な篁と言えど、始めは受けた"命令"として俺を名前で呼んでくれるとは言え……

いずれ その良さに気付いてくれる筈。同じくらい真面目な千鶴も名前で呼んで欲しいって言ってたし。

でも篁にとっちゃ些細な信頼関係の構築にしか過ぎないかもしれんから、俺自身が頑張るべきなんだけど。


「じゃあ、これからも宜しく頼むよ~? 唯依」

「こ、此方こそ御願いします。……た……武さん♪」←遠慮がちな笑みで


――――巌谷さんに"唯依ちゃん"って言われてるダケに、妙に嬉しそうにしてるのは気の所為かな~?


「全く白銀と篁のヤツ、何時になったら来るのかしら?」

「でも……何だか2人から優しい感情が伝わって来ます」

「妬ましいわね」

「香月博士?」

「えっと、何となく。彩峰がボヤいてたから」

「……良く分かりません」




●戯言●
篁中尉のターン。最近 武×唯依の線が強くなって来てるかな?。
今回短いですが次回は何時もより早めに更新できると思います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ43(中編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/09/20 09:43
これはひどいオルタネイティヴ43(中編)




「武さんは先に席で待っていてください、私が御食事を持って来ますから」

「分かった。宜しく頼むよ」

「そ、それではッ」

「俺は掻揚げ うどんの大盛りね~?」


唯依を随伴させつつ医師の再診察&看護士による処置を終えた俺は、食事の為にPXにへとやって来た。

すると早速 唯依が"飯を持って来てくれる"と小声で言って下さったので、素直にソレに甘える事にするか。

再び左腕が三角巾に吊られている状態と言えど、正直 白銀の右腕でなら余裕で"お盆"は持てそうだが……

彼女が未だに俺を心配してくれているのは明白。つまり断ると怒られそうなので無茶はダメってワケさ。

よって昼過ぎと言う時間的にPXは空いている為か、早速 京塚のオバハンの方へと向かって行った唯依。

そんな彼女の尻……いや、背中を見送りつつ冷水 片手に適当な席に着くと俺はテレビを眺めて待機する。


「あの……すみません」

「おやっ? 貴女は唯依ちゃん? よく来たねェ~」

「……(以前 叔父様と共に訪れた時、何時の間にか呼称が其の様に……)」

「ご注文は何だい?」

「掻揚げ うどんと(武さんも好きな)鯖味噌定食を……」

「あいよっ! 今回は特別に上等な味にしてやるから待ってな!!」

「は、はい」


――――そのまま待つ事3~4分後。


「ほら特性 掻揚げと鯖味噌、あがったよ!!」

「有難う御座います(……美味しそう)」

「ところで唯依ちゃん」

「……何ですか?」

「妙に嬉しそうな気がするけど、どうなんだい?」

「!? な、何故ですか?」

「初めて此処に来て武に紹介された時は表情が硬いったら無かったからねェ。肩に力を入れっぱなしで」

「うぅッ」

「いや~その反面 巌谷さんと一緒に来た時、唯依ちゃんの父親なのに気さくな人で面食らっちまったねェ」

「……(わざわざ引き返して食事の美味しさを褒めたりと、叔父様に面食らったのは私も一緒です)」

「……って話が逸れちまったね。それで結局、何か良い事でも有ったのかい?」

「はい、まあ……クーデターでの任務も成功しましたし、横浜基地の環境にも慣れて来ましたから……」

「な~に言ってんだい。大方"武の件"に関して良い事でも有ったんだろう?」

「!?!?」

「あっはっはっは、案の定みたいだねェ」

「……っ……ど、どどどどうして そう思われたんですかッ!?」

「待ってる間 何度も武の方を見てニヤニヤしてたじゃないか。そりゃ指摘したくもなるよ」

「あうァッ(……まさか、無意識のうちに そんな失態を……)」

「……武は あの若さで本当に良くやってるよ。昨日も寝癖を付けて此処に来てたりしてねェ」

「ね、寝癖?」

「皆クーデターの一件でストレスが溜まってたのか、昨日 此処(PX)も空気が悪くて見てられなかったよ。
 ソレが分かってた武は私にワザと寝癖を指摘される事で笑いを取ったのさ。雰囲気を和らげる為にね」

「そんな事が……」

「しかも病み上がりに。こっちとしては助かったけど、相変わらず自分を省(かえり)みない子だねェ」

「ど……同意です」

「でも唯依ちゃんと一緒に居る様になった頃から分かったのよ。武も確実に肩の力が抜けて来てるって」

「!? ほ、本当ですか?」

「武も此処に来た時は温厚に見えて近寄り難い雰囲気が有ったからねェ。唯依ちゃんと一緒で」

「……(雰囲気は同じと言っても、武さんと私では格が違い過ぎると思うけど……)」

「だけど今となっちゃ~こんなに"可愛い娘"を侍(はべ)らすようになっちまってるじゃないかいッ!」

「!? き、ききき京塚 曹長ッ!! ――――あうっ!?」


≪――――ばしんっ!!!!≫ ←カウンター越しに唯依の肩を強打


「他の人との交流も多くなってるみたいだし、今の武は以前と比べれば安心して見ていられるよ!!
 これも唯依ちゃん達の御陰なんだからね!? さ~ッ、そろそろ麺が伸びちまうから早く食べな!!」

「それより……す、少しは手加減してください」

「何言ってんだい、武はビクともしないのにさ」

「……ッ……肝に銘じておきます」

「それじゃ~武に宜しく言っといておくれよ?」

「はい(……全く敵わないわね……でも"良い事"について深く聞かれなかったダケ……それに……)」

「……(良いかい唯依ちゃん? あの若さで身を削る武の事を……しっかりと支えてやるんだよ?)」

「……(――――母がもし生きて居たのなら、あの様な暖かさが有ったのかしら? でも武さんは……)」

「ふァあ……(テレビつまんねェ、暇潰しにすら成らんわこりゃ……それにしても唯依 遅いな~)」




……




…………




……30分後。


≪ガシューーーーッ≫


「こんちわ~」

「失礼します」

「ようやく来たわね? 待ったわよ」

「すんません、さっき目が覚めたばっかでして……」

「さっき?」

「はい」

「…………」←無言で霞を見る夕子

「…………」←無表情で頷く霞

「ゴメンナサイ、私用と言っても時間を掛けすぎました」

「申し訳ありません。私の責任でも有ります」

「ふぅん」

「……もっと掛かった可能性も有ったみたいですけど」(ぼそ)

「!?!?」

「何 言ってんのよ? 社」

「な、なんでも無いです」

「突然どうしたんだ? 篁」

「お、おぉお気遣い無く……」

「ともかく本題に入るわよ? 時間が押してるんだから」

「"時間が"って?」

「今 言った事が聞こえなかったの?」

「サーセン」

「(まさか……ぐ、偶然よねッ?)」


唯依と先日の戦いについて話しながら遅めの昼食を終えると、俺は彼女と共に執務室を目指した。

そして中に入ると……ゆーこさんと霞が並んで待っており、恐らくウサギが気配を察したのだろう。

俺達が地下にやってきた時点でセキュリティ的な意味でも ゆーこさんには伝わってるんだろうけど、
彼女一人の場合は大抵 仕事に集中してるから、今迄 待ち構えてくれていた事は殆ど無かった。

さて置き。ゆーこさんの言葉に何か違和感が有ったけど、口を挟んだら怖い顔をされたので自重しよう。


「じゃあ、先ずは榊達 訓練兵の事ね」

「そう言えば演習も とっくに終えてるし、そろそろ任官式ってヤツですか?」

「えぇ。正確に言えば"第207衛士訓練小隊 解体式"よ」

「成る程~……んで、ソレは何時始まるんですか?」

「明後日よ」

「となると9日になりますね~」

「当然アンタにも出席して貰うからね?」

「言われなくても出ますってば」


――――何せ まりもちゃんダケでなく"俺達"が手塩に掛けて指導して来たメインキャラ達だしな。


「まりもにも今日中に伝えておくわ」

「あれっ? 未だに軍曹が知らないって変じゃないですか?」

「何でよ?」

「アイツらの教官なんですから、とっくに予定の目処は知ってると思いました」

「まぁ、榊達が元A分隊の連中みたく"普通の訓練兵"なら……ね」

「普通のって……あぁ~」

「まだ他の4人ならともかく御剣は特にワケ有りだから、演習を終えても任官は未定だったのよ。
 でも何時までもシミュレーターで遊ばせて置くにはアレだし、どうにかはするつもりだったけど、
 色々と面倒臭くなりそうからB分隊の任官については後回しにしてたの。だから まりもは知らない」

「!? されど"今回"の事件で……」

「めい……御剣の"正体"が察せられちまったと?」

「そう言う事。殿下と御剣を"すり替えた"説得も"あのまま"問題なく終われば良かったんだろうけど、
 アンタが沙霧大尉を庇った所為で、仮面が剥がれた"殿下"を その場に居合わせた人間は妙に思った。
 だから近いうちに御剣の正体や価値もバレて来るだろうし、御陰様で心置きなく解体 出来るって事」

「手痛い皮肉っスね~」

「で、ですが副司令ッ! 白銀少佐の判断は間違っていなかった筈です!!」

「……私も そう思います」

「2人とも……」(じ~ん)
 
「別に責めてるんじゃ無いわよ。この御時世 殿下と御剣が入れ替わったってハイヴが落ちる訳でも、
 例の数式が解けるワケでも無いし……むしろ"余計な手間が省けて助かった"とでも言えば満足?」

「……(数式?)」

「なら構わないんですけど、そう言えば榊首相は無事だったんですか?」

「えぇ、健在よ? 少し身を隠した程度で捕らえるのは諦めたみたい」

「随分とアッサリ諦めたみたいですねェ」

「何処の誰のチカラを借りたか知らないけど、奴等 随分と計画的に細かい段取りを組んでたみたい。
でもイキナリ身を隠されて躓いたとは言え……決起軍としては捕らえるべき人間だった筈よ?
 されど結局 捨て置いたって事は、大方"何処の誰かさん"に急かされでも したのかもしれないわね」

「予定が狂うと面倒だから2度目のBETA上陸 直後でも御構い無しとはホントやってくれますよ」

「全くだわ。結局メリットなんて実戦データやB分隊の任官の件 程度よ」

「まぁ、さっさと気持ちを切り替える限りますよ。コレで暫くは"邪魔"も入らなくなるでしょうし」

「そうよね」

「……はい」

「????」


――――俺の言葉に ゆーこさんと霞が頷くが、オルタ5推進派の事を良く知らない唯依は首を傾げていた。


「なら次は、アンタが隊長をしてる……突撃……何だったかしら?」

「"突撃機動部隊"です。暫定的な名前ですけど」

「それそれ。今の所 白銀・篁の2人ダケだから近いうちに人員を増やすべきだと思うんだけど?」

「月詠さん達は数に入ってないんですか?」

「入らないに決まってんでしょ? そもそも"あの時"は臨時だし、国連軍と帝国斯衛軍の衛士が、
 いざハイヴを攻略しますって時に、同じ中隊に所属して周囲が納得するワケ無いじゃないの」

「いや~、其処は ゆーこさんの力で何とか」

「(昨日の事も有るし、何とかしてやりたい気も有るんだけど……)無茶 言うんじゃないわよ」

「へぇあ」

「白銀少佐……」

「分かってるって、言ってみたダケだよ」

「だったら話を戻すわよ?」

「はい」

「白銀・篁。実際のところ、アンタ達の部隊は非常に評価されてるわ」

「ゑっ?」

「ど、どういう事なのですか?」

「先ずA-01の戦果を考えて見なさい」

「伊隅達の……ですか?」

「あの娘達 不知火S型の中隊は、何と一機も撃墜される事無く5個中隊以上の決起軍を倒した。
 だけど その"謎の戦術機・中隊"は、その後 追い詰められてしまった……その後に何が起こったの?」

「俺・篁・月詠さん達・軍曹・B分隊が介入しました」

「そう。驚異的な戦果を上げた"謎の中隊"よりも更に優れた部隊が存在する。ソレがアンタ達よ」

「……今では専ら国連軍・帝国軍・斯衛軍……米軍でも噂されているみたいです……」

「えぇ~っ!?」

「そ、それは幾ら何でも買い被り過ぎなのではッ?」

「確かに噂に尾鰭が付いてるの否めないわね」

「参ったな~」

「別に公にはしないわ。……でも、そんな噂の部隊の"人数"が2人だけって言うのは変だと思わない?」

「うッ……確かに」

「……(わ、私は出来れば武さんと2人ダケの方が……)」

「……(私も近いうちに衛士を目指すべきなんでしょうか?)」

「だから今のうちに人員を確保したいって事」

「成る程~。じゃあ任官したB分隊を加入させますか?」

「却下ね」

「な、何でッスか?」

「言ったでしょう? アンタの部隊の実力はA-01以上……少なくとも同等の部隊なのよ?
 それなのに任官した ばかりの連中を入れて ど~すんのよ、あの娘達はA-01に入れるわ」


まぁ、千鶴らB分隊とかは元々 晴れて任官されればA-01への加入が決定してるんだったな~。

いや別に"晴れて"とは言えないのはさて置き。00ユニットの素体としての役割も担ってるんだっけ?

"鑑 純夏"が居て俺が生きてる時点で"素体"になる可能性は無いけど、千鶴達がダメとなると……


「だったら神宮司 軍曹はOKですか?」

「えぇ、まりも だったら構わないわよ」

「今は教官ですけど?」

「暫くは訓練兵の受け入れも無いし、直ぐにでも元の階級に戻ってもらうわ」

「良いんですか? そんなに簡単に決めて。軍曹って進んで教官になったんですよね?」

「野暮な事 聞くんじゃ無いわよ」

「へぇあ」

「でも3人じゃまだ部隊としてはダメね」

「どうするんですか?」

「一応 候補なら3人居るわ」

「ホントですか!? 誰なんです?」

「元 米軍の衛士よ」

「米軍のォ~?」

「!? ま、まさか……」

「アンタ達が決起軍を説得してる時 横槍を入れて来て、速瀬が捕まえた衛士が居たでしょ?
 そいつと一緒に来てた3人の米軍衛士なんだけど。今は米軍をクビになって横浜基地に居るわ」

「えぇ~っ? もう米軍に切られたんですか?」

「でも何故 横浜基地に?」

「情報を見てみたら皆 訓練校をトップクラスの成績で卒業してたし、無職にするには惜しいでしょ?
 3人ともアメリカ人でも無いし(白銀の名を出したりして)餌を撒いたら見事に食い付いて来たわよ」

「ほほ~っ」

「しかし副司令ッ!」

「篁。あたしは白銀に言ってるの」

「うぐっ……(駄目……落ち着かないと、また武さんに出会う前の私になってしまう……)」

「興味が有れば明日 以降にでも会ってみたら?」

「確かに気になりますね。そうする事にしま~す」

「それに、あと一人 丁度 良さそうなのが居たわね」

「もう一人?」

「テスレフ少尉よ。いえ元 少尉かしら?」

「あぁ~っ……(忘れてたZE)」

「テスレフ少尉?」

「あれっ? 篁は知らないっけ? ハンター2の事だよ」

「!? 確か……作戦中では主にウォーケン少佐のサポートをしていた……」

「うん。実は彼女が沙霧大尉を撃ったんだ」

「そ、そんなっ!? まさか彼女が……しかも候補と言う事は……っ!!」

「一応 衛士としての実力は その辺の米軍衛士と比べ物にならない筈よ?」

「アメリカ人 国籍でも無いのにウォーケン少佐の直属を担ってましたしねェ」


でも原作じゃ珠瀬を庇ってアッサリ死んじゃった気がするし、裏で画策した故での直属だったのかな?

されどウォーケン少佐のラプターも沙霧に簡単に墜とされちまったから、むしろ米軍衛士の実力不足?

いや……沙霧大尉や直属の衛士が強過ぎたとも言える。考えてみれば彼らとは戦わなかったんだよね~。

もし戦ってたと思ったら一機や二機は殺られてたかもしれない。最強クラスの衛士とか言われてたしな。

それは さて置き。ゆ~こさんが評価してる位だし"この世界"でのイルマ少尉は相当の実力者なんだろう。

スタイルも抜群だし是非俺の部下として頑張って欲しいトコロだが……唯依が案の定 納得していない。


「……ッ……しかし副司令、幾らなんでもソレでは白銀少佐の立場が……」

「テスレフに関しては多分 問題無いわよ? あたし達 以上に米軍の隠蔽 工作が執拗だったから。
 速瀬が捕まえた時も少なくとも決起軍と帝国軍には顔を見られて無かったし……あまつさえ、
 月詠中尉達やまりも達にも機体のステルスとテレサの工作で、狙撃犯が彼女だとは気付いていないわ」

「テレサ中尉の工作って?」

「あの娘はウォーケン少佐の妹なんだけど、テスレフとは顔見知りだったみたいなの」

「成る程(……あの一瞬で良く遣るなァ)」

「ソレが無かったら候補には入らなかったわね。でも工作はテレサの独断だから処分はアンタに任せるわ」

「何故 俺に」

「あの娘が喜びそうだから?」

「其処は褒めるトコロじゃないんですか?(……そもそも何で喜ぶんだ?)」

「何でも良いから言っときなさい。形としてケジメは必要なのよ」

「は、は~い」

「まあテスレフを使わなかったとしても別の意味で役に立って貰うから、その辺は気にしなくて良いわ」

「だったら尚更 放って置けないじゃ無いスか~」

「どうするかはアンタの都合ね」

「う~ん……」

「……(た、武さんは既にテスレフ少尉を許していると言うの?)」


≪修正なんて とんでもないです。 悪いのは俺なんですから、許してあげてください≫(23話 参照)


「……(そうよ……私がハタいてしまった時も寛大な心で……だから私も彼女を許さないと……)」

「それでテスレフを入れたとしても7人かしら?」

「中途半端ですねェ」

「人数的には許容範囲だけど、アンタに心当たりは有るかしら?」

「そんな事 言われてもなァ……う~ん……」

「……(此処はチャンスかもしれないね。白銀を留める事に少しは繋がるかもしれないわ)」


正直なところイルマ少尉を仲間にできれば満足なんだけど、話を振られたからには考えなくては成らん。

でも別作品のキャラは皆 決まった役職とかに付いてそうだし、何より記憶が曖昧なので直ぐ出てこない。

TEについても唯依を始め主人公の名前すら知らなかったんだよね。なのに部下で居るって凄くないか?

だったら望みが有るとすればTEキャラかな~? ダメなら諦めも安易だろうし……ゆーこさん含めて。


「特に居ないんですけど、強いて言えば……」

「誰よ?」

「アラスカに……凄い姉妹? ……とか居た様な気が……するんですけど~」

「凄い姉妹ですって?」

「アラスカの姉妹……」

「……篁さん……御存知なんですか?」

「えっ? いや知らないぞ?(……幾らなんでも有り得ない。そもそも武さんと接点が無いわ)」

「ともかくソレ位ですねェ」

「まぁ、良いわ。今後また人材を見つけたらアンタに品定めさせるわよ? そのつもりで居なさい」

「了解ッス」

「最後に今回、一番 言いたかった事なんだけど……もう時間が無いし明日の朝にするわ。
 生憎 篁が此処に居ると話せない内容だから、丁度 良かったかもしれないけどね~」

「……ッ……」

「(だったら数式の事か……)何か予定でも有るんスか?」

「あたしにじゃ無くってアンタにだけど」

「!? き、聞いてませんけどッ?」

「コレを見なさい」

「この用紙をッスか?」


≪――――ガサッ≫


「こ、これは……?」←唯依

「し……"白銀少佐・面会予定表"……何なんスか? コレ」

「見ての通りよ? 午後からアンタの見舞いをしたいって連中が来るわ。病室は以前の場所」

「え、えぇ~~っ!?(時間が押してるって"こう言う意味"かよ!?)」

「決まった時間に一人づつ面会者が訪ねて来るから、さっさと行きなさい」

「俺もう入院する必要 無いんですけど?」

「自室に招くワケにも いかないでしょ? アンタの都合より段取りが重要なのよ」

「段取りって……(何なんだよ、このイベント……)」




白銀少佐 面会予定表

16:00~(各15分)

① 神宮司まりも 軍曹

② 月詠真那 中尉

③ 月詠真耶 中尉

④ 伊隅みちる 大尉

⑤ A・ウォーケン 少佐

⑥ 巌谷榮二 中佐




「あ、あの……私はどうすれば?」

「好きにしたら良いんじゃない?」

「篁。凄い悪ィけど立ち会ってくれないか?」

「!? は、はいっ!」←凄く嬉しそう

「やれやれ……それじゃ~失礼しま~す」

「えぇ」

「……またね」


≪ガシューーーーッ≫×2


「行ったわね」

「行ってしまいました」

「社。直ぐアラスカの"凄い姉妹"について調べなさい」

「分かりました」

「アイツが言った位だから、きっと"何か"有る筈よ」

「はい。白銀さんの為に頑張ります」




……




…………




……午後4時前・通路。


「分かりましたか? テレサ中尉」

「…………」

「いくらイルマ少尉が知り合いだったとは言え……工作をして黙って居るのは良くないです。
 結果 彼女を俺の部隊に引き込む事も可能になって来たけど、問題は其処じゃ無いんですよ?」

「…………」

「理解してくれました?」

「……はい」


ゆーこさんの画策で突然6名の人達と"面会"する事になってしまった俺は、以前の病室を目指していた。

勝手に考えるに、幾らなんでも全員(30名以上)とは面会できないから一部の人間に絞られたんだろう。

何故か真耶さんとウォーケン少佐が居るのに驚いたけど、今更 後には引けないので仕事として割り切るか。

いや……むしろ話す機会を貰えて良かったとポジティブに考えよう。特にオルタには出ない真耶さん辺り。


「じゃあ、俺は行きますけど……んっ?」

「…………」


≪じ~~っ……≫


「な、何ですか? テレサ中尉」

「……"修正"はされないのですか?」

「ゑっ?」

「私は罪を犯したのですよ? その"処分"をされるのが白銀少佐ですからッ」

「ですから?」

「修正は妥当な処分だと思います!」

「ちょっ……そ、そんな事が出来るワケないでしょ? もっと自分を大切にして下さいよ」

「ですがッ」

「処分を任されたのは俺で、その俺が下した判断はコレだけ。だから殴る必要なんて無いんです」

「……ッ……」

「テレサ、白銀少佐もこう仰ってるじゃない。諦めなさいよ」

「そう言う事」

「うぅ……わ、分かりました~」

「じゃあセレナ中尉・テレサ中尉ッ! 俺は急ぎますんで、コレで失礼します!!」

「さようなら~」

「頑張って下さい」


≪すたたたたたたっ……≫


そんな病室へ向う途中にウォーケン姉妹と遭遇し、丁度良いのでテレサ中尉に工作の注意をしたんだけど。

俺が"指導"を終えると無言で右頬を出して来たテレサ中尉。何と殴って欲しいらしく、何と言う軍人……

オペ娘と言えど"修正"を望むなんて、見上げた根性だねマジで。されど俺はチキンなのでマジ御免なさい。

つまり女性の顔面を殴れるハズは無く適当に誤魔化すと逃げる事にし、先に行かせた唯依の後を追った。

対してテレサ中尉は手を振ってくれ、名が明らかになったセレナ中尉にも励ましの言葉を頂いたのでした。


「……っ……」

「何て言ったら良いか……残念だったわね? テレサ」

「嗚呼、ハァハァ……あえて私を殴らなかったのね……嗚呼ッ……」

「まただよ(笑)」

「やっぱり白銀少佐は素敵だわァ、私もイルマみたいに尋問されたいな~♪」

「全く貴女の性癖は……姉として恥ずかしいわよ」

「むっ? それはコッチの台詞よ姉さん。今日も"履いてない"癖にッ!」

「!?!?」

「全くもう、バレたら私だって恥掻いちゃうでしょ!? いい加減止めてよッ!」

「で、でも……白銀少佐に何時 バレてしまうかと思うと……」【ヘブン状態!!】

「姉さん白銀少佐が来てからホント変わっちゃったよね~?(私は元々だけど)」

「……(それ以前に、一番 恥を掻くのは私だと思うんだが……)」←隠れていたウォーケン少佐

「う、五月蝿いわね……それよりも兄さんは何処へ行ったのかしら?」

「そう言えば消えちゃったよねェ? 白銀少佐と面会できるなんて羨ましいなァ~」

「……(やれやれ、優秀だったとは言え2人を国連軍に行く様に勧めたのは正解だった様だな)」


――――この日の夜ウォーケン姉妹は、言うまでも無く白銀をオカズに自慰っちゃったんだ☆


「しっかし、何で巌谷さんが交ざってるんだろう」

「……嫌な予感しかしません」(ぼそ)

「唯依?」

「武さんッ」←真剣

「えっ?」

「シャワー云々の件は……何卒 内密に御願いします!!」

「!? 勿論だよ」

「あ、有難う御座います」

「(きっと巌谷さんにバレない様に気遣ってくれてるんだな? ホント良く出来た部下だぜ!)」

「(叔父様が武さんにバラしてしまう私の失態は多々有る。でも……あれダケは隠さないと……)」


――――そして相変わらず擦れ違う2人。及び面会 開始時間(まりも入室)まで残り10分。




●戯言●
例の姉妹の登場は確定では有りません。とりあえず何時何処で出しても良い様に伏線を張ったダケです。
全てはゆーこさんの頑張りに掛かって居るので彼女を応援してね!そして妹以上に姉を変態にしてしまった。
次回の後編は各 面会キャラと白銀との会話が中心になると思います。兄さんが居るツッコミは無しよ!?



[3960] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/10/07 07:49
これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①




2001年12月07日 午後


「う~ん……」

「……ッ……」


――――尚、面会するに当たって白銀少佐はベット上にて対応されたし。


「あのさ唯依」

「は、はい?」

「これって腰掛けてもOKだよね?」

「……平気かと思います」


ゆーこさんに渡された用紙に"そんな事"が書いてあったので、紙を手に唸る俺&横から覗き込む唯依。

結果 僅かな会話で"ベッドに端座位になった状態で面会する"事に決め、唯依は俺の横に直立している。

俺も立っていても構わないんだけど、軍人として書かれた事は守らねばならない……ゆーこさん怖いし。

……まぁ、実際 俺は見くれの様に負傷した事になってるから、言われた様に"段取り"が重要なのだろう。


「…………」

「…………」


≪コンコンッ≫


「どうぞ~」

「はっ! 失礼致します!! ……ッ」

「……(やはり私を見て僅かに……)」

「昨日の早朝 以来ですね~? 軍曹」

「は、はい! 先日は本当に御疲れ様でした!!」

「そっちこそ」

「御体の方は宜しいのですか?」

「あはは。見た目は"こんな有様"ですけど、3日もすれば治るみたいです」

「!? それを聞いて安心しました……何せ……」

「何せ?」

「あの娘達が予想 以上に心配するモノですから毒され、万が一と言う事も考えていました」

「だったら早く安心させてやるに限りますね~」

「そうですね」


16時ピッタリになると、ドアをノックして まりもちゃんが素早く入室し凛々しく敬礼して来る。

対して俺も座って敬礼を返すと、僅かに彼女の瞳が開いた気が……ひょっとして立つべきだった?

嗚呼、確かに座ったまま敬礼なんて聞いた事 無いしな~。でも用紙に書いて有るからダメなんだよね!

よって まりもちゃんに心の中で謝りつつ会話するんだが、彼女の入室 直後から気になっていた事が有る。

それは彼女が先程から"とある物"を持っているからで……会話の区切りを見計らって聞く様にした。


「ところで」

「はい?」

「その"花束"は何ですか?」

「えっと……不躾で申し訳有りませんが御見舞いの品です」

「ほ~」

「受け取って頂けますか?」

「勿論ですよ。……でも、良く拵えられましたね~?」

「あの娘達が摘んで来たのです。……僅かに私が用意したのも混じっていますが」

「見事な花束だと感心するが、何処も可笑しくは無いな」

「あ、有難う御座います。きっと皆も喜びます」

「……(そ、そう言えば私も御見舞いの品を用意して置くべきだったわ……!!)」

「篁」

「……(神宮司軍曹 達は当たり前の様に……反面 何て気の利かない部下なの? 私は……)」


そう花束。まりもちゃんは敬礼もソレを片手に行っており、別に花は好きじゃないけど気遣いは嬉しい。

しかも摘んで来たとか……PXには流石に花なんて売ってないから必然的に"そうなる"んだろうけど……

G弾ボコボコ撃ち込まれて自然がオワタ此処 横浜基地で良く見つけたよな……凄過ぎだろ常識的に考えて。

んでもって まりもちゃんや珠瀬ならともかく、慧らが野花を探すのは想像 出来ないので何だか笑える。

決して"花束"と言う程の多さでも無いんだが……この品に対する感謝の気持ちは留まる事を知らないッ。

そんな事を近寄って来た まりもちゃんから花束を受け取った直後に考え、俺は篁を見て声掛けしていた。


「篁? 篁ってば」

「!? す、すみません……何でしょうか?」

「……コレ頼めるかい?」

「あっ……はい、分かりました」

「すみません篁中尉。余計な手間を」

「いえ構いません」


――――俺から花束を受け取った唯依は、洗面台へと歩むとソレを空の花瓶に納める作業を開始した。


「ところで話は変わりますけど」

「はい」

「そろそろ207B分隊が任官する事になるみたいです」

「!?」

「ようやくってトコですかね~?」

「そ……そうですね。思えば長かったです」

「解体式は近いうちに有るみたいなんで、軍曹にも予定の報告が来ると思いますよ」

「そうですか」

「其処で軍曹の"待遇"なんですが」

「……私の?」

「B分隊は任官したらA-01に配属されるんスけど、軍曹には俺の部隊に入って貰います」

「えぇっ!?」

「ありゃ。やっぱ嫌でした?」

「と、とんでも有りませんッ! 御招き頂けて光栄です、白銀少佐!!」

「何と」

「今や白銀少佐の纏める"突撃機動部隊"は世界有数の戦術機小隊だと専らの噂ですッ。
 よって入隊の暁には、その"名声"に恥じる事の無い働きをさせて頂く所存であります!!」

「…………」×2

「(う、噂って……)」

「(恐ろしいわ……)」

「(ついに……ついに白銀さんと"本当の意味"で一緒に戦える時が来たのね……!!)」


――――何だか興奮してる まりもちゃんだけど、入隊は只単に人数が足りない為だとは言えないZE。


「HAHAHA、まぁ期待させて貰いますね~?」

「はっ! ……えっ?」


≪ぽんっ≫(頭に右手を添えた音)


「でも……少し肩の力を抜いた方が良いですよ?」

「!?!?」

「……(やはり神宮司軍曹も彼を……でも今は振り向くダケ野暮と言うモノね)」

「軍曹~っ?」

「……ッ……」【ヘブン状態!!】

「軍曹ってば」

「あっ!? すすすすみません!! 助言を有難う御座いましたッ!」

「いや助言って程のモンじゃ」

「そ、それでは白銀さんッ! 私はコレで失礼致します!!」

「榊達に宜しく言って置いてください"まりもちゃん"……って」

「!?(し……しまった、動揺して人前で彼の事を……!)」

「……(さん付けて呼ばれたから、つい言っちゃったぜ☆)」

「……(後出して"ちゃん付け"されたのも、きっと白銀さんの咎め……浮かれ過ぎにも程が有るわッ)」

「……っ……」


≪た、武さん♪≫

≪何だい? 唯依ちゃん≫(キリッ)


「今のは失言でした。も、申し訳有りません」

「いやいや、こっちこそ迂闊でした」

「……(ま、まさか神宮司軍曹を"あんな呼び方"で……何て羨ましい……)」

「では改めまして私はこれにて」

「わざわざアリガトでしたァ~」


≪――――バタンッ≫


「ふ~っ」

「…………」

「へぇあ」


俺の部隊に配属される事を まりもちゃんが大袈裟に喜んでくれた事から、調子に乗った結果がこれ。

つい立ち上がって頭を撫でてしまったダケでなく、唯依が居るのに"まりもちゃん"と呼んでしまった。

"白銀さん"は全然OKだが"ちゃん付け"はマズいだろ……されど先にフォローを入れてくれる軍曹サマ。

いっその事 唯依が居る時は公認にしようかな? そう考えるも まりもちゃんは素早く退室してしまう。

よって苦し紛れに汗を拭う仕草をしてみると、何時の間にか近くに戻って来た唯依。一歩 後退する俺。


「…………」

「ゆ、唯依さん?」


≪ぷく~っ≫


――――ビビッて腰を引く俺を見上げながら頬をフグの様に膨らませる唯依。怖いが可愛いんですけど。


「座ってください。武さん」

「はい(……すっかり忘れちゃってたんだ☆)」

「次は月詠真那 中尉ですね」

「そうだねェ」

「次は守る様にしてください」

「わ、悪かったよ」

「……(あからさまな嫉妬……自分でも分かっている筈なのに……)」


唯依に言われてベッドに再び腰掛けると……彼女は次の面会の時間まで口を訊いてくれなかった。

あちゃ~、こんな事になるなら頭撫でたりするんじゃなかった! まりもちゃんにも嫌われたっぽいし。

だったら次はマジで自重だな。相手も月詠さんだし真面目に対応しないと俺の寿命がマッハになりそうだ。




……




…………




……数分後。


「そろそろかな?」

「その様です」


≪コンコンッ≫


「ど~ぞ~」

「失礼します」

「いやはや先日はどうも」

「此方こそ」


まりもちゃんと同様 時間通りに月詠さんが入室し、敬礼と共に当たり障りの無い挨拶を交わす。

ちなみに俺はベッド上で敬礼しており、月詠さんは何故か黒いビニール袋を持って訪れて来ていた。

今現在ではビニール袋を地面に置いており、その際には"ゴトリ"と謎の音が室内を響かせている。


「そう言えば神代達は何をしてるんですか?」

「我々は何時もと変わり有りません。今朝もシミュレーターを利用させて頂きました」

「へぇ……熱心なモンですね」

「いえ必然です」

「必然って?」

「あの状況で"動けた"のは白銀少佐のみでしたから……まだまだ私達には危機感が足りなかった様です」

「……(そもそも俺以外 気付かないのは仕方無いんだが……)」


――――あのハプニングを防ぐ勘を得るのは流石に無理と分かっていても、更に精進する気持ちって事か?


「我々4名のうち一人でも狙撃に反応出来ていれば、SⅡ型で沙霧大尉を庇った白銀少佐……及び、
 同乗する冥夜様に危害が及ぶ事など有りませんでした。もはや斯衛としての面目が有りません」

「……(大体当たってそうだな~)」

「故に神代達は白銀少佐の容態が気になって居た様ですが、今は私も含め鍛え直すべきかと存じまして」

「いやいやいや、反応 以前に突然 現れた米軍機を怪しいと思ったから対応 出来たダケですって!(嘘)
 流石にイキナリ発砲されたんじゃ~俺だって庇えませんでしたよ……って言うか不可能だと思います」

「……(イルマ少尉の事は隠しているのね)」

「な、成る程。唐突にラプターが4機 現れた時は"そんな事"など思いもしませんでした」

「だから勘じゃなくて"偶然"気付けたダケですってアレは」

「いえ。流石は白銀少佐です(……冥夜様や殿下が認められるのも頷けると言うもの)」

「買い被りすぎですよ。むしろ月詠中尉には"冥夜"を危険に晒してスイマセンって心境ですし」

「!?」

「……(し、しまった! つい"冥夜"って言っちまったぜ☆)」


≪――――ザッ≫ ←跪く真那


「……って何 やってるんですか中尉!? 頭を上げてくださいよッ」

「つ、月詠中尉?」

「白銀少佐」

「はい?」

「先ずは謝罪 致します。初めて御会いした時からの数々の無礼……本当に申し訳有りませんでした」

「別に気にしてませんって」

「また"あの件"に置いては自分の体も省みず、冥夜様の身を守って頂いて感謝しております」

「ソレも俺が同乗させたダケなんで当たり前とゆ~か何と言うか」

「そして"1人の仲間"として接して頂けている事……貴方の存在無しに今の冥夜様は無かったでしょう」

「お、大袈裟ですって」

「買い被っているつもりは有りません。今の冥夜様にとって、もはや白銀少佐は欠かせない方です」

「それほどでもない」(謙虚)

「……ッ……ふふふ、貴方は本当に……(面白い人です)」

「それより顔を上げてくださいって」

「はい」

「ともかく、めい……御剣は絶対に死なせたりはしませんから、大船に乗った気で見守って下さい」

「白銀少佐。もう私の前で冥夜様の呼称を気にされなくても結構ですよ?」

「そうッスか」

「私の事も好きに呼ばれて結構です。……元々の階級も有りますから」

「えっと、じゃあ……真那さん?」

「――――ッ」(ドキュン)

「あっ? いや、もう一人"月詠さん"が居るみたいですし」

「いえ……そ、そう言う事で無くとも構いませんのでッ(……何だ? 呼ばれた直後 胸の辺りが……)」

「なら良かったです」


イキナリ真那さんに跪かれてビックリしたが、原作と同様に彼女は白銀の事を認めてくれた様だ。

しかも"月詠中尉"でなく名前で呼んで良いらしく……やっと許しが出たかッ、封印が解けられた!!

ぶっちゃけ前述の通り単純に真耶さんと会ったから"真那"にしたんだけど、許してくれた様で安心です。

呼んだ直後 一瞬とは言え表情が硬くなってた時は失禁しそうになったが、要は結果が全てなのだから。


≪た、武くん♪≫

≪何です? 唯依さん≫(キリッ)


「……(こ、コレも悪く無いかもしれない……)」

「さて。こんな我々とは言えどXM3等の恩恵も有り、技量は全体的に上昇している様です」

「ソレは間違い無いと思いますよ~? 決起軍に対する戦果も凄まじかったですしねェ」

「ですが斯衛軍……いえ帝国軍に置いての実装は、まだまだ先の話になりそうですね」

「その辺は大人の事情ってヤツですよ」

「となると……やはり人類によるハイヴ攻略の鍵は、横浜基地が握っている事になります」

「そうなるのかな~?」

「はい。よって歯痒い限りですが、我々は冥夜様達を影で支える事しか出来ません」

「……真那さん……」


――――そう言えば桜花作戦で冥夜達を見上げるダケだった彼女達は どれだけ癪だったんだろうか?


「例え冥夜様が死地へと赴く事になろうとも……(その可能性は十二分に有る……だが……)」

「……ッ……」

「……("この方"であれば冥夜を本当に守ってしまうのでは無いだろうか? 先日の様に……)」

「大丈夫ですって」

「えっ?」

「さっき"俺が言った事"を思い出してくれません?」


≪ともかく、めい……御剣は絶対に死なせたりはしませんから、大船に乗った気で見守って下さい≫


「!? あ、あれは――――」

「冗談だと思いました?」

「そう捉えた訳では……ッ……いえ。冥夜様が遂に衛士となられる事から、いささか不安も有った様です」

「見事な忠誠だと感心するが何処も可笑しくは無いな」(キリッ)

「そ、それ程でもないです(……時より彼は凛々しく発言する……それが本来の"白銀少佐"なのか?)」


――――まさか真那さんから今の返答が来るとはッ。さて置き、そろそろ頃合だし気になった事を聞こう。


「ところで真那さん」

「何でしょう?」

「その黒いヤツに入ってるのは何なんですか?」

「これは……盆栽ですね」

「ぼ、盆栽ィ~?」

「神代少尉が拵えたモノでして、白銀少佐に是非 渡して欲しい……と」

「だったら神代って」

「はい。盆栽を育てるのが趣味なんです、あの娘」

「…………」×2




……




…………




こうして真那さんとの面会が終わり彼女が退室すると、当然の如く残される今回は動かなかった俺と唯依。

そんな病室の端の棚には花束が活けられた花瓶が置かれ、その横には神代の盆栽と若干シュールな光景だ。

されど盆栽を育てるのって難しい筈。だったらB分隊に重ねて神代にも後で礼を言っとかないとならんね。

でも見舞いに盆栽は縁起が悪いんじゃなかったっけ? いや人がバタバタ死ぬ"こっち"じゃ関係無いか~。

ンな事を思って座ってる中、真那さんとの会話中ブツブツ呟いてた唯依が壁の時計を見ながら口を開くと。


「時間ですね」

「把握」


≪コンコンッ≫


「どうぞォ~」

「失礼」


――――先程の まりもちゃんと同じく、今度は立派な花束を抱えた"月詠真耶"さんが入室して来た。


「なぁなぁ雪乃~ッ、大丈夫だったかな~? 受け取ってくれたかなぁ?」

「平気なんじゃない? 白銀少佐の趣味はともかく、貴方の腕は一流だし」

「と言うか巽……さっきから何度目ですの? 同じ事を聞いて来るの……」

「だ、だって盆栽って良く考えてみれば やっぱアレだろ~? 怒られないかって」

「けど本当の意味で"ゆっくり療養して欲しい"って意味でも有るんでしょ?」

「確かに以前から白銀少佐は頑張り過ぎな気がしましたから、良いメッセージだと思いますわ」

「だけどォ」

「そんな情けない顔しなくても平気よ。真那様も良い灸だと思って渡す事を承諾してくれたんだから」

「最初は"コレで少佐が少しでも自重してくれれば私は満足だよ(キリッ)"……とか言って置きながら、
 今更になって其処までオタオタするのなら、最初からアレを渡さなければ良かったですのに」

「(この娘達は全く……それよりも次は真耶か。やはり殿下の白銀少佐に対する信頼は大きかった……?)」




●戯言●
やっと真那さんのフラグを立てられた&篁中尉が便利すぎる件。今回は短いので次回は極力早めに。(確実)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/10/10 22:26
これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②




――――やって来た真耶さんは赤の斯衛服に以前と同様髪を下ろした姿で、今回は眼鏡を掛けている。


「こんちわ~、月詠中尉」

「あ、はい。こんにちは」

「……(一体 彼女は……? 月詠 真那中尉の姉妹なのかしら?)」

「それよりも先日は御世話様でした」

「月詠中尉も無事だったみたいで良かったです」

「其方は怪我をされた様ですが」

「それは大丈夫です。見た目に反して至って軽傷ですよ?」

「ふむ」

「月詠中尉は どう言った経緯で帝都まで?」

「…………」

「……月詠中尉?」


――――クーデター終結後、煌武院 悠陽 到着後の横浜基地にて。


≪月詠。そなたも無事で何よりでした≫

≪勿体無い御言葉です≫

≪戦いも決起軍による全面降伏で終わったと、米軍の者達から聞きました≫

≪左様で≫

≪されど白銀が負傷した様ですね≫

≪彼が?≫

≪では≫

≪!? お待ち下さい……どちらにッ?≫

≪白銀が負傷した様なのですよ?≫(注:大事なコトなので2度仰いました)

≪ですが殿下。御疲れでしょうし、今は御容赦ください≫

≪……ッ……そうでした。己の立場は理解せねばなりませんね≫

≪申し訳有りません≫

≪よい。では月詠?≫

≪はっ≫

≪せめて、そなたに"代わり"を願えますか?≫

≪代わりと言う事は……いえ、畏まりました≫

≪嗚呼、白銀。大事で無ければ良いのですが≫

≪……(!? い、何時の間にそれ程まで……)≫




……




…………




「……(コレで殿下も御安心なされると言うもの)」

「どうしたんです~?」

「!? 失礼。私は密かに横浜基地へと逃れた後、殿下と共に一度 帝都へと戻って今に至ります」

「……(ま、まさか……彼女は殿下の側近!?)」

「成る程~」

「殿下は白銀少佐達に対し誠に感謝されておりました。全ては"そなた達の大義"だと」

「勿体無い言葉ですねェ」

「では白銀少佐。どうかコレを」

「花束 凄いですね、有難う御座います。じゃあ篁」

「は、はい」


何故か若干 途中で考える仕草が見られたけど、真耶さんは眉一つ動かさず冷静に受け応えている。

そんな彼女から唯依は花束を受け取ると再び洗面台で花瓶に納める作業を始め、尻を眺めながら思う。

……な~んか唯依ってBETAとか居なかったら華道部に入って普通に生け花とかしてそうなキャラだね。

こんな御時世だと言うのに、当たり前の如く花の手入れをする様がそう思わせた。……まさに大和撫子。


「さて置き。帝都の方は どんな感じです?」

「流石に未だ事後処理すら済んでいない状況ですが、早い段階で元の落ち着きを取り戻すでしょう」

「まぁ、斯衛は優秀な人達ばっかですからね~」

「それ程でも有りません」

「えっ?(謙虚だ……やっぱ従姉妹だな~)」

「いくら斯衛が優秀と言われ様と、今回 殿下の身に"この上 無い危険"が及んだのは事実ですから」

「へぇあ」

「それに白銀少佐達の存在が無ければ最悪 殿下の身が決起軍に抑えられていた事でしょう」

「…………」

「となればソレは我々 斯衛にとって死に等しき屈辱。故に私 個人に置いても非常に感謝しております」

「うわっ! 大丈夫ですって、頭を下げて貰わなくても」

「……はっ」

「えっと……ともかく、殿下は実権を取り戻せるんですね?」

「それは間違い有りません」

「……ってなると沙霧大尉達の処罰も殿下の判断って事になりますか?」

「!?」

「彼らの腕ダケは間違い有りませんから、今度はチカラの使い所を間違わせないで欲しいです」

「……(正直 私は奴等は許せん。しかし白銀少佐は実際 見(まみ)え負傷までしたと言うのに……)」

「説得は影武者によるモノでしたけど、アレで沙霧大尉らも目が覚めたと思いますから」

「……(既に殿下に活かして頂く事を考えているとは恐れ入る……流石は殿下が一目置く方だな)」

「月詠中尉?」

「!? そ、そうですね……私も同意です。人類共通の敵は、あくまでBETAなのですから」

「そう言う事~。ホント無駄な被害が出ちゃいましたけど、引っ張らず気持ちを切り替えるに限ります」

「はい(……耳が痛い言葉だな。まるで心を読まれていたかの様だ)」

「……(武さんは既に其処まで……いえ私の切り替えが遅いダケ。今は同じ人間を憎んでる場合じゃない)」


――――真耶さんと会話を続けて居ると、何時の間にか作業を終えた唯依が戻って来ていた。


「篁中尉」

「はい?」

「殿下の護衛に置いて、同じ斯衛である貴官にも感謝 致します」

「!? な、何故 私に?」

「白銀少佐の代わりに貴官が部隊を指揮していたと伺っておりましたので」

「そ……そうでしたか。恐縮です」

「そんな著しい戦果を上げた横浜基地・突撃機動部隊……叶う事なら私も肖りたいモノですね」

「あァ~、それなら暇な時とか有ったら横浜基地まで来て下さい」

「は?」

「事前に知らせてくれたら、幾らでも教えさせて貰いますから」

「――――ッ!?」




……




…………




≪ところで殿下≫

≪何でしょう?≫

≪その……白銀と言う男は、どの様な者だったのでしょうか?≫

≪えっ? えぇと……年が同じダケ有り中々話し易く聞き上手なうえ……≫

≪いや、その様な意味では無く!≫

≪……ッ!? コホン。そ、そうですね……まだ未熟な わたくしが"評価"するのも何なのですが、
 同乗した限り非常に戦術機に負担の掛からない操縦をしていました。殆ど酔わない程に≫

≪ふむ≫

≪ライフルによる射撃に置いても、全て敵衛士を生かしつつ戦術機を無力化する手腕を持っており……
 更に驚いたのが篁を始め真那達も今迄の戦術機では考えられない機動で決起軍を翻弄していましたね≫

≪な、何と……≫

≪恐らくアレらも白銀による指導から成ったモノなのでしょう。鎧衣から聞いた話によると、
 彼は"新OS・S型・新兵器・新システムの発案者、及び開発責任者"……らしいですから≫

≪どれも理解し難いですが……非常に興味深いですね≫

≪はい。近いうちに情報の提供を促して見るのも良いかもしれません≫

≪されど、そう簡単に彼が首を縦に振るのでしょうか?≫

≪ソレは……分かりかねますね。あの香月副司令の右腕でも有る様ですし≫




……




…………




「だから遠慮なく……って、月詠中尉?」

「そ、それは誠なのですか!?」

「うわっ、びっくりした」

「!? し……失礼しました」


勿論XM3云々の恩恵は斯衛の人達にも受けて欲しい。しかし大人の事情で直ぐには無理だろう。

しかし殿下の側近で有る彼女くらいには教えても良いと思うので、当たり前の事を言ったつもりだった。

すると、その直後! 冷静なハズだった真耶さんは、唐突に一歩 足を踏み込むと驚きを露にしたのだ。

これは思わぬサプライズ。よって普通~に驚いていると、彼女は眼鏡の位置を直しつつ姿勢を正す。


「いえ別に良いんスけど」

「……(私とした事が取り乱すとは……しかし、何故"ああなって"しまったのだ……?)」

「まぁ、今のは嘘じゃあ無いんで気が向いたら連絡ください」

「はい(……いくら簡単に許可されたとは言え……"私自身"も嬉しく感じてしまったと言うのか?)」

「そんな所ですかね~?」

「ふむ。では白銀少佐」

「何スか?」

「いずれ殿下との面会を希望されるのであれば、遠慮なく帝都まで来られて良いとの事です。
 生憎ながら殿下自身が訪れる事は難しいかもしれませんが……出来る限りの協力はされると」

「ホントですか!? じゃあ、困った時は頼らせて貰いますよ~?」

「ふふふっ……ッ……失礼。では私は之にて失礼させて頂きます」

「遥々と有難う御座いました」

「お気をつけて御帰り下さい」

「はい。御気遣い感謝致します」


≪カチャッ――――バタンッ≫


無難に面会を済ますと真耶さんは浅く頭を下げ、最初と同じ様に凛々しい雰囲気のまま退室して行った。

出来れば名前で呼べるようにしたかったけど、また会える可能性を残せたみたいだし良しとするか~。

真耶さんが来るのは勿論、殿下の方に赴いて良いってのは間違いなくフラグにへと繋がるだろうしね!!


「ふぅ~」

「お疲れ様でした、武さん」

「サンキュー」

「……(涼しい顔をされている。殿下の側近との面会なダケで私は神経を磨り減らしたというのに……)」

「ところで唯依」

「えっ?」

「花の手入れ凄いですね」

「そ……それ程でも無いです」




……




…………




……謙虚な唯依の受け応えから左程 掛からずに伊隅が入室して来る。何だか久しぶりに近くで見たな~。

先月の25日の模擬戦 以来だろう。(28話 参照)ヤケに詳しいなって? 経過は毎日メモって有るのだ。

それはともかく。先ずは軽く挨拶を交わし合うと、早くも彼女は手に持っていたモノを差し出してく来る。


「早速ですが白銀少佐。コレを受け取って頂けませんか?」

「これは色紙?」

「はい。皆の"寄せ書き"が記して有るダケの粗末なモノですが」

「いや~ッ、そんな事 無いですって。でも……どうして?」

「機体の恩恵で最初こそ順調だったモノの、終盤は甚大な被害は免れない撤退戦で有ったにも関わらず、
 我々は誰一人も欠ける事無く生還できました。故に何と言うか……その記念とでも申しましょうか……」

「ほほ~」

「されど白銀少佐に渡しても筋違いと思われるかもしれませんね」

「確かに折角のヴァルキリーズの記念品を受け取るのは、ちょっと僅かに気が引けるんですけど?」

「しかしですね。皆が白銀少佐に受け取って欲しいと言う意見で一致したのです」

「!? じゃあ伊隅大尉も同じ考えだったと?」

「……ッ……は、はい。S型の発案に加え、我々を救ってくださったのも白銀少佐なのですから」

「……(伊隅大尉も"こう言う顔"が出来るのね……)」

「だったら受け取らない訳には いきませんね~。有難う御座います!」←ウザ・スマイル発動

「と、とんでも有りませんッ」


――――何と予想外にもヴァルキリーズ12人全員のサイン入り色紙ゲットだぜ!!(違うって)


「他の皆は今日は何を?」

「特に何も予定は有りませんが、整備やシミュレーター等 行っている者も居る様です」

「速瀬がシミュレーターを遣ってるってのは簡単に予想がつきますけどねェ」

「ふふふっ。速瀬中尉は またもや白銀少佐に助けられた事が癪だった様です」

「全く素直に喜んでくれりゃ良いのに」 

「……(しまった、つい……速瀬にバレたら怒鳴られてしまうわ)」

「まぁ、熱心なのは良い事ですけどね」

「はい(……けど白銀少佐は妙に話し易い人だから、つい余計な事まで喋ってしまう……)」

「ともかく、コレは部屋に飾らせて貰いますよ~?」

「!? そうして頂けるので有れば……皆も喜ぶと思います」

「伊隅大尉も喜んでくれますよね?」(キリッ)

「……ぅッ……も、勿論です」

「あははっ、そりゃ~良かった」


――――ヤベぇッ! 俺キメェ!! 念願のサイン入り色紙の所為で舞い上がっちまってる様だ。


「……(ど、どう言う事? 何故か白銀少佐の顔を"まとも"に見れなくなっている……)」

「じゃあ他のヴァルキリーズの皆にも"有難う"って言って置いて下さい」

「……っ……」

「伊隅大尉?」

「えっ!? は、はいッ! 了解しました!!」

「うわっ、びっくりした」

「では白銀少佐、私は そろそろ失礼させて頂きますッ!」

「えっ? ちょっと、まだ早いんじゃ――――」

「では!!」


≪ガチャッ――――バタン!!≫


「へぇあ」

「……(余程 伊隅大尉には"あの時"の武さんが頼もしく映っていたのね……自覚も無しに)」

「……やだ、なにこれ……どう言う事なの……?」

「次はウォーケン少佐になりますね」

「……(スルーかよ!!)」

「一応その色紙も立て掛けて置きましょうか?」←非常に冷たい表情

「よ、宜しく御願いしま~す」




……




…………




……10分後。


「まさかウォーケン少佐が来てくれるとは思いませんでしたよ」

「生憎 上からの命令でな」

「命令ですか~」

「おっと、気を悪くしないでくれ。此処に要るのは本意だ……貴官には謝罪したかったからな」

「何とォ」

「先日は……本当に すまなかった。テスレフの意図に気付けなかった私に全ての落ち度がある。
 もし貴官が庇わず説得が"ぶち壊し"になってしまったら、取り返しのつかない自体になった筈だ」

「そんな責任を感じなくて良いですって。俺が気付けたのは偶然ですから」

「ふむ。しかし、それダケでは無い」

「どういう事です?」

「私がテスレフを疑わなかった事から、御剣 訓練兵に殿下の代わりを担わせる事を喋ってしまったのだ。
 "あれ"さえ無ければ奴が横槍を入れてくる事は無かった。無論、貴官に怪我をさせる事も……な」

「まぁ……アソコでイルマ少尉が動かなかったら、違う場面で"同じ事"をしてたのかもしれません。
 最悪 代償として本人やら他人やらの命が無くなったり……だから犠牲者が無かった分、マシですって」

「だ、だがな」

「俺の怪我も全然 大した事 無いんで気にしなくて良いです。何せ3日程で治りますから」

「そうか。ならば これ以上は止めておくが……」

「はい?」


――――5人目のウォーケン少佐は会話の合間に視線を棚の方に移す。有るのは盆栽と2つの花瓶+色紙。


「何か気の利いたモノぐらいは持ってくるべきだったんだがな」

「別に構いませんって」

「……(思ったより甘いな……いや、既に気持を切り替えていると言う事か)」

「ところで」

「何かな?」

「どうしてスーツ姿なんスか?(AFを思わせるんだけど)」

「むっ? コレはだな……いかんせん米軍の者と勘付かれては居心地が悪くなりそうだからだ」

「成る程~。しっかし何でワザワザ少佐を見舞いに来させたんでしょうかね~?」

「……余り大きな声では言え無いんだが、我々に全ての責任を押し付けたかった為だろうな。
 あの"一件"はテスレフの独断であり……止められなかった3人の随伴した衛士達にも非が有ると」

「そして"横槍"をした者達を纏めていたウォーケン少佐にも、気付けないのは仕方ないにしても、
 多少は責任が有るので、せめて謝罪しに行け……ってワケですか? 違ったらスイマセン」

「いや……察しの通りだ」

「だけどイルマ少尉達の出撃を許可したのはウォーケン少佐じゃ無いんですよね?」

「うむ、だが軍人として命令は聞かねばならん。降格しなかったダケ良しとしなければな」

「ポジティブに考えましたね」

「そうでも思わんと遣ってられんよ」

「ですよねー☆」

「……(うぅ、話しに入る事すら出来ない……)」


そう言って苦笑するウォーケン少佐は意外と話し易い人だった。男同士ってのが大きいのかもしれない。

しっかし背広姿って事で便利アイテムの翻訳機を使ってる様子が無く、日本語ペラペラなんですね~。

考えてみればイリーナちゃんは勿論、セレナ中尉・テレサ中尉も普通に話してたし天才ばっかだな此処。


「では……話は変わるが」

「何ですか?」

「テスレフら4人は横浜基地に居ると聞く。処遇は決まったのか?」

「それは~ッ」

「口止めされているのなら無理に答える必要は無いぞ」

「えっと……イルマ少尉らは近いうちに俺の"突撃機動部隊"への加入を考えています」

「!?」

「まだ決まったワケじゃ無いんですけどね。いかんせん人数不足なモンで」

「だが流石に……いや、それも有りかもしれんな」

「遊ばせて置くには惜しい人材って聞きますからねェ」

「うむ。非常に優秀な連中だと思うぞ(……確かに処分されるよりは、断然マシと言えるだろう)」

「はははっ、ウォーケン少佐の御墨付きなら期待できそうです」

「それならば……彼女達を頼む。決して私の言えた義理では無いんだが、仲間でも有ったしな」

「勿論、善処しますよ」

「すまない」

「いえいえ」


そう言ってウォーケン少佐は俺に軽く頭を下げた後に近付いて来ると、無言で右手を差し出して来た。

対して意図を理解した俺は立ち上がると、右手を差し出して握手をする。流石に座ってする気は無いZE。

見た目に反してホント良い人だわ彼。イルマ少尉たちの心配もしてるし……こりゃ~頼まれるしかないわ。

ともかくコレで無難に済んだのかな~? よって、そろそろ会話を切り上げ様かと考えて居ると……


「では白銀少佐」

「はい?(……お開きかな?)」

「唐突で済まない。私と一緒に写真に写って貰いたいんだが……構わないだろうか?」

「シャシン~?」

「此処にキャメラは用意してある」

「キャメラって言うな!」(小声)

「むっ? 何か言ったか?」

「な、何でも無いッス」

「では篁中尉。撮影を頼めるだろうか?」

「えぇっ? あっ……了解しました」

「スイッチは此処だ。シャッターも自動だから安心してくれ」

「は、はい(……写真撮影……そ、その手が……)」

「しっかし何で俺と写真なんて?」

「そ、それはだな……っ……只単に私の趣味だ」

「成る程」

「では白銀少佐・ウォーケン少佐。と……撮りますよ?」

「オッケー」

「宜しく頼む」


≪――――カシャッ!!≫




                / ̄ ̄\
              /  ヽ_  .\
              ( ●)( ●)  |     ____
              (__人__)      |     /      \
              l` ⌒´    |  / ─    ─  \
             . {         |/  (●)  ( ●)   \
               {       / |      (__人__)      |
          ,-、   ヽ     ノ、\    ` ⌒´     ,/_
         / ノ/ ̄/ ` ー ─ ‘/><  ` ー─ ‘ ┌、 ヽ  ヽ,
        /  L_         ̄  /           _l__( { r-、 .ト
           _,,二)     /            〔― ‐} Ll  | l) )
           >_,フ      /               }二 コ\   Li‐’
        __,,,i‐ノ     l              └―イ   ヽ |
                    l                   i   ヽl
             2001年12月07日 戦友(とも)と一緒に




そんな訳でイキナリだったけど、俺はウォーケン少佐と共に彼のカメラで撮影された。唯依の手によって。

ポーズとしては互いに肩を組んでベッド上に腰掛けた状態となっており、特に相談せず自然にこうなった。

何だか予想外の趣味を持ってたんだなァ……でも全然OKだ。出来れば俺も一枚 欲しいくらいだったし。

でも欲張るのは良く無いから我慢する事にして、ウォーケン少佐は唯依とも握手すると退室して行った。

う~ん……彼ともまた共闘できれ良いんだけどなァ。米軍だから無理だとは思うけど、願うダケなら只さ!

さて置き。後は巌谷さんダケだから気が楽……じゃ無いか。唯依との一件がバレない様に注意しないとね。


「(……いくら妹達の頼みとは言え、我ながら柄にも無い事を頼んでしまったモノだ)」


≪し、白銀少佐と写真に写れだと!?≫

≪ねッ? 良いでしょ~? 兄さん!≫(テレサ)

≪カメラは此処に有りますからっ!≫(セレナ)

≪何故 いちいち私が……自分達で頼めば良いだろう≫

≪そ、そんな恐れ多い事 出来るワケ無いじゃない!≫

≪どうか御願いします兄さん……後生ですからァッ!≫


「(当然 私の姿は"切り抜かれる"んだろうが……折角なので私にも一枚 焼き回しを頼むとするか)」


――――余談だが撮影を終えた後、唯依は再びブツブツと呟いていた。巌谷さんが入室するまで。


「……(是非 武さんと一緒に写真を……それよりコッソリ撮影して……いえ、先ずは取り寄せを……)」

「……(き、今日の唯依は大丈夫なのか? もしかして、この随伴の所為で疲労が限界を超えてたり?)」




……




…………




……数分後。


「巌谷さんも来てくれたんですね~」

「ははは。偶然 ピアティフ中尉が君への面会を受け付けていたのを見てな。便乗させて貰ったよ」

「SⅡ型の件に関してはスイマセンでした(……何千万か無駄にした事になるし……無いわ~)」

「クーデターでの任務内容に関しては全て唯依ちゃんに聞いて居るからな。あの程度なら全然構わんさ」

「有難う御座います」

「謝罪など要らんよ。むしろ此方が礼を言いたいくらいだ」

「ありゃ」

「我が娘に"晴れ舞台"を用意してくれて……ね」

「そっちですか!?」

「お、叔父様ッ!!」

「いや冗談だよ。ともかく御陰様で"01式 支援狙撃砲"の正式採用が早まるだろう」

「ほほぉ~」

「ショットガン……"01式 拡散突撃砲"もトライアル迄には間に合わす事が出来そうだよ」

「トライアル?」


――――原作を知る俺は当然知っている事なんだけど、此方では知らされていないので首を傾げた俺。


「おっと、白銀少佐は知らなかったかな? 香月副司令が近いうちに開こうとしているんだ」

「次世代OSが公になる時が来るってヤツですか?」

「その通りだ。早くて10日には行われるだろう」

「ふむ(……"だろう"って事は完全には固まっては無いんだな。色々と開発させちまってたし)」

「それを機にSⅡ型も披露される様ですね」

「うむ。例の"カラーリング"で拡散突撃砲と共に出す予定だ」

「成る程~」

「香月副司令 側も"殴る兵器"を装備した不知火を御披露目する様だし、今から楽しみで成らんよ」

「その頃には俺の怪我も完治してると思います」

「で、ですが白銀少佐は……」

「勿論 無理をさせる気は無いさ。その場合は唯依ちゃんに頑張って貰うよ」

「はいッ!」


考えてみればトライアルの事まで全然 頭が回って無かったな~。でも未来を知ってた分、必然だよね?

間も無くクーデターが発生って時にトライアルの事なんて気にしてられっか。忘れてたダケとも言うけど。

反面 正史の白銀は知らなかったからこそ、"この時点"でトライアルの存在を理解していた……と思う。

そう考えてみれば多少XM3の御披露目は遅れるかもしれないけど、日数には余裕が有るし許容範囲。

まりもちゃんが食われず無難にトライアルを終える事が出来れば、白銀が逃避する事も無いのだから。

いや……もし食われ様が既に実戦を経験している俺は今更 逃げる事は無いだろうけど……って自重しろ。

そんな事を考えるの自体 問題外じゃないか!! トライアルは成功にて〆られるんだ、何の躓きも無くね。

……と久しぶりに真面目な考え事をしながら、巌谷さんの言葉に威勢良く応える唯依を眺めて居ると……


「さて置き今朝の唯依ちゃんなんだがね」

「!?」

「はあ」

「最初は俺と新武装についての打ち合わせをしてたんだが、見るからに君の事を心配していた様でね」

「ほ~」

「お、叔父様ッ!」

「元から10分程度で終わらせる予定だったんだが、俺が行く様 許可を出すまでソワソワしっ放し。
 そりゃァ~ホント可笑しい有様で、白銀少佐にも見せてやりたかったモンだな。わははははっ!」

「な……ななな何を言うんですか!? 今は面会の場だと言うのに……!!」

「良い部下だと感心はしますが、何処も可笑しくは無いですね」

「あっ……(笑われない? わ、私の気を察してくれたの……?)」

「ほお」

「だから、もっと違う事を聞きたいんスけど」

「!?!?」

「むうッ……良いだろう、ならば取って置きの話を"幾つか"してやるとするか!!」

「……(ひ……酷いです武さん、叔父様……でも)」

「もう10年以上 前の話なんだがな~」

「……(ワクワク)」

「……(武さんに私の事を もっと知って貰うのも……悪く無いかもしれない)」

「実は唯依ちゃんはな。それなりの年まで おねしょを――――」

「!!!!(でもソレは絶対ダメですよ叔父様ああぁァーーーーっ!!!!)」


――――無論 巌谷さんによる秘蔵の情報は、唯依の人権を考慮して省略する事にします。




……




…………




……シャワー云々の件に関しては、巌谷さんが はっちゃけていた所為で話題にすら成らず助かりました。

つまり(自分にとっては)滞りなく巌谷さんとの面会も終えたので、大人しくベッドの上で横になっていた。

何故なら例の用紙に面会後は此処で休めと書いて有ったからであり、飯は看護士が持って来るとの事。

ちなみに唯依と巌谷さんが退室した直後に"うわらば!!"と断末魔が聞こえたが気にしないで置こう。

言える事は巌谷さん御愁傷様……それダケだ。完全に自業自得だが、リスクを考える限りマゾなのか?


「ないわ!」


ともかくコレからも忙しくなりそうだZE。数式の回収にトライアル……やや間を置いて佐渡島かな?

いやその前に千鶴達……特に冥夜を安心させてやらないとダメな上に、イルマ少尉らとの交渉も待ってる。

されど不謹慎とは言え楽しみでも有るかもしれない。サ●ヤ人でも無いのにワクワクしてるって事は……

ようやく"この世界"に慣れて来た今、白銀大佐の恩恵も有って今後も頑張れる気がして成らない為だろう。

けど油断はマジで死に直結するし……特にトライアル以降は気合を入れなおさないとダメっぽいね~。


「こっちの穴も綺麗に洗ってあげるよ? 唯依たん……アッーーーー!!!!」


――――けど夕飯を終えた後 病室の施錠をした白銀は、予告通りのネタでつい抜いちゃったんだ☆


≪何時でも……覚悟は出来ていますからッ≫

≪そうなのかい? だったら その時は……≫

≪……ぁ……≫

≪9回で良い≫(謙虚)


「……あぅッ……くぅ……これで4回……けどもうダメ……ハァハァ、9回なんて……む、無理……」


――――んでもって白銀の言葉を別の意味で捉えた篁中尉も、今夜は5回も自慰ちゃったんだ☆




●戯言●
全てはあのAAを貼りたかった為の面会だと言っても過言では有りません。これで当分AAは自重します。
しかし肝心のAAがズれていますが本家の方はちゃんとしたのを貼りますので、勘弁していってね……orz




●追記●
感想で気付きましたが、伊隅大尉の面会の部分を切り取って投稿していた様です。(恐らくコピペのミス)
御陰で思い出しながら書き直す羽目になってしまいましたorz 元から短めだったのに助けられましたね。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ44(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/11/11 20:38
これはひどいオルタネイティヴ44(前編)




2001年12月08日 午前


「…………」


≪――――コッコッコッコッ≫


病室で自然に目を覚ました俺は、看護士の簡単な処置を受け地下の執務室を目指している。

そんな俺は何時もの軍服姿に三角巾を左腕に掛けており、頬のシップ等は既にお役御免だ。

さて置き今日は重要な"数式回収"のイベントだ。これが失敗すれば全てが"終了"となっちまう。

そう考えればヘタな実戦より以前の俺なら緊張してた だろうけど、今はもう慣れたモンだ。

2度の実戦とクーデター乗り越えた俺にとっては、(白銀の)過去への帰還など朝マック前よ!

……だから午後には新たな部下候補との面会も有るしで、さっさと回収を済ませるに限るぜ。


≪ガシューーーーッ≫


「おはようございま~す」

「おはよ。待ってたわよ」

「今日は"数式の件"ですよね?」

「察してたの? だったら話が早いわね」

「そりゃ一番 重要な事ですから。準備はもう出来てるんですか?」

「当然よ」

「電力とかも?」

「問題無いわ。癪だけど十分蓄える時間は有ったから」

「あァ……クーデターが起こったから一週間も空きましたしねェ」

「あたしとしては電力なんて どうでも良いから、さっさと往って欲しかったんだけどね」

「今更ボヤいても仕方ないですよ。じゃあ早速 行くとしますか~」

「頼むわ(……意外とヤル気ね。見限ったって言うのは考え過ぎだったのかしら?)」


――――そんな会話を交わすと俺は ゆーこさんと執務室を出て"例の装置"の場所を目指した。




……




…………




……目的地で有る広い部屋に辿り着くと、目の前に有るのは以前も利用したバカでかい装置。

何やら(俺が入る)円柱の形をした箱の上に太いリング状のモノを掛けた様な感じの見た目だ。

我ながら表現が意味不明なのも さて置き、部屋には霞の姿も有り準備を済ませていたらしい。

今度も倒れたり しなきゃ良いんだけどな~。俺は そんな事を思いながら肩の三角巾を外した。


「白銀さん」

「うん?」

「……これをどうぞ」

「(白稜柊の)制服か? 有難う」


――――そう言えば"前回"は軍服姿で行ったから凄く恥ずかしかったのを覚えている。


「社。準備は済んだ?」

「……もう少しです」

「そうよね。本来なら準備が終わり次第こっちが白銀を叩き起こす予定だったし」

「なんか怖い単語が聞こえた気がしたんスけど?」

「気のせいよ」

「へぇあ」

「あの……香月博士。此処が少し……」

「今見るわ」

「じゃあ俺は着替えて来ま~す」

「そうしなさい」

「ちなみにですけど」

「何よ?」

「俺が"戻る"のは前回と同じで短い時間で構わないッスから」

「!?」×2

「じゃ~また後で」


――――何故なら長ければ長い程"俺(28)"が平気なのか危ういからだ。チキンでサーセン。


「白銀……あいつ……」

「折角"会える"のに、どうしてなんでしょうか……?」

「"前回"を考えると社の為なのかもしれないわね」

「……ッ……」




……




…………




……俺が別室で ゆっくり着替えを済ませて戻って来ると、既に最終調整は終了した様だった。

何故なら既に ゆーこさんが装置の入り口で腕を組んで立っていたからであり……その一方、
霞はソレを操作すると思われる機械の前で、現れた俺を神妙な雰囲気(無表情ね)で見ている。

う~ん……考えて見れば霞は大丈夫なのかなァ? 前回は3時間ダケでも倒れちまったし。

きっと"この装置"の準備とかで既に疲れてるんだろうし、此処は声を掛けざるを得ないZE。


「霞ッ」

「はい?」

「俺は何時間 戻れるんだ?」

「ろ……6時間に設定しています。それなら電力には十分 余裕が有りますけど……」

「使わないに越した事は無いなァ」

「そ、そうですね」

「ソレよりも"今回"は大丈夫そうか? 6時間って言ったら前の2倍だぞ」

「でも……遣らないと いけません。コレには全人類の命が掛かっていますから」

「なら別にブッ倒れようと構わないってか?」

「…………」←無言で頷く


≪――――ザッ≫


「前にも同じ事を言ったと思うけど、それは余計な心配よ? 白銀」

「……ゆーこさん」

「社も生半可な覚悟で"此処"に居るワケじゃ無いの。あたしとアンタと同じでね」

「はあ(……いや俺は貴女達の足元にも及ばないと思うんですが)」

「ともかく遣りなさいよ? 社」

「勿論です(何せ――――


≪俺が"戻る"のは前回と同じで短い時間で構わないッスから≫


 ――――白銀さんが只でさえ私の"負担"を減らす様にしてくれたんですから)」

「なら愚問でしたねェ。でも倒れない様に頑張れよ? 霞」

「それは……」

「……(やっぱり倒れる事が前提なのか? だったら――――)」


≪躊躇うなよ、躊躇うなよ霞ッ!≫


「!?」


≪どうして其処で(言葉に)詰まるんだ、其処で!!
 もう少し意気込んでみろよッ! ダメダメダメダメ躊躇ったら!!
 周りの事 思えよッ、応援してる俺の事 思ってみろって!!≫


「……ッ……(し、白銀さんの事を想う?)」

「社?」


≪(00ユニット完成まで)後 もうちょっとの所なんだからッ!
 俺だって何回もループしてる中で、しじみ……いや世界を救うぞって頑張ってんだよ!!≫


「(しじみ?)」

「ちょっと社?」


≪意識 保ってみろ、必ず目標を達成できるッ! だからこそネバー・ギブ・アップ!!≫


「……ッ!?」

「白銀も黙って ど~したのよ?」

「伝わったか? 霞」

「は、はいッ」

「お待たせしました ゆ~こさん。早速 行って来ますよ」


そう言えば強く念じれば霞に思いが伝わるのを思い出して、熱血漢を肖って彼女を激励した。

他の人間に実際に声を出して言う気は皆無だが、心の中で励ますのなら躊躇いは無かったさッ。

相手が霞だと言うのがアレだったが……彼女の純粋な性格も幸いして効果が有ったと思われる。

何故なら今の霞は(`・ω・′)←こんな顔をしているからであり、遣る気マンマンそうなのだ。

だが実際には言葉を発さず無言で見合ったダケな為、ゆーこさんはハテナマークを浮かべてた。


「???? 行くんなら別に良いけど……社。何が有ったの?」

「……心の中で、白銀さんに元気を貰いました」

「ふ~ん。何かと思ったら そう言うワケだったのね」

「それでは出力を上げます」

「お願い」

「……(戻って来た白銀さんを ちゃんと迎えられる様に頑張ります)」

「……(それにしても社の"あんな顔"は初めて見たわね)」


――――こうして俺は数式回収の為、二度目の"白銀の世界"にへと旅立って行った。




……




…………




……6時間後。


≪――――ゴゥンッ≫


「ふ~っ」


11月26日の(恐らく)3日後以降である2度目の"あちら"にて行う事は当然 数式の回収。

また残った時間で"鑑 純夏"が大怪我をしない様にと、体育館の念入りな点検 及び改修。

そして まりもちゃんを狙うストーカー対策を月詠さんに御願いする事で未練は終了となった。

本編終了まで2度と"あちら"には行かない予定なので後者の2個は意味が無いかもしれないが、
原作を知っている俺にとっては欝フラグは極力 回避して置きたいので後悔はしていない。

ちなみに俺は"EXの白銀"となっていたので当然EXキャラ達との接触も有ったけど、
原作の白銀の様にボロは殆ど出さず、無難な学園生活の午前を過ごす事に成功していた。

余談だが月詠さんは休み時間に冥夜が呼べば5秒で現れるし、数式は昼休みに回収している。


「白銀!!」

「どうぞ~」

「……ッ!」

「は、早っ」


――――さて置き。直ぐ迫って来た ゆーこさんに数式を引っ手繰られると霞が近付いて来た。


「……白銀さん」

「霞。大丈夫だったみたいだな? 偉いぞ~」

「あ、ありがとうございます」

「俺こそ有難う。戻って来れたのは霞の御陰だよ」

「……ッ……」(ふらり)

「!? だ、大丈夫か?」

「……流石に疲れました」

「だったらベットに連れてくから休んで――――」

「いえ……このままで大丈夫です」

「でも」

「こ、香月博士と大事な お話も有るでしょうから」

「確かに そうだったね」

「……(役得です)」


――――そんなワケで直ぐには休まず俺に肩を預けている霞。対して数式を凝視してる副司令。


「……ッ……」

「ところで……ソレど~でした? ゆーこさん」

「そうそうッ! これッ、これよ!! あたしはコレを言いたかったのよ!!」

「!?」←霞

「うわっ、びっくりした」

「し・ろ・が・ねぇ~?」(ゆらり)

「は、はい?」←1歩後ずさる

「もうサイッコーーーーよォッ!!!!」

「どわっ!?」

「あが~っ?」


≪――――がばぁっ!!≫


「色々 有ったけどコレで"完成"しようよ!? 御褒美にキスしてあげるッ! ん~っ!」

「ちょっ!? おおお落ち着いてくださいって!!」

「これが落ち着いてられる!? 無理。無理な相談よッ! アンタも喜びなさいよ!!」

「そ、そんな事 言われたって困りますよ~っ!」


どうやら数式は彼女の求めていた内容を記していた様で、霞を突き飛ばして抱きついて来た。

直後 押し付けられる豊満な胸とキッスの嵐。彼女が綺麗なのも有ってダメージが深刻だぜッ。

しっかし余程 嬉しかったんだろうな~。そう考えているウチにキッスの乱舞は続いている。

ヤバい……このままでは俺の股間が性欲でマッハ。今は この状況を何とかしなくてはならん。

其処で今 思ったんだが、最近は どうにも自慰行為ダケではストレス発散が難しくなって来た。

つまり自慰のみでは彼女達の魅力を相殺するのがキツいのです。なら何をすれば抗えるのか?

ぶっちゃけ"ゆ~こさん!! 俺だ~! 結婚してくれっ!!"とか本人に言えれば違うと思う。

だが俺は少佐様 以前に上司なうえに色々と抱えている彼女に"そんな事"は言える筈が無いッ。

勿論 部下達に対しても"鑑 純夏"の存在から言えるワケが無く、ネタを本気にされても困る。

ならば……此処は"王様はロバの耳"作戦を行うと共に今の状況を切り抜けるしかあるまい!?

ま~AFでも"同じ元ネタ"をパロってたし大丈夫だよな? 当然"こっち"でバレる心配は皆無。

よってキッス弾幕に耐えつつ俺は何とか真面目な表情を造ると ゆーこさんの両肩を掴んだ。

そして彼女のカラダを引き剥がす為にも、半ば強引に両腕を押し出す様に力を入れる俺サマ。


≪――――がばっ≫


「あっ」

「…………」

「白銀?」

「ゆーこさん」

「な、何よ?」


――――んで彼女が落ち着いた事を確認すると、俺は"24"の嘘字幕を肖って口を開く。








「Security」≪貴女は≫








「has its」≪俺の≫








「price」≪嫁だ≫








「!?!?」

「そう言う訳です」


言った自分でも"どういう訳"だか全く分からないが、これぞ言葉のマジックだぜ!!

"嘘字幕"として印象深い名台詞を言えば、実際には別の事を告げているとしても、
"貴女は俺の嫁だ"と脳内の言葉を喋った気になれるッ。よってストレスが減った気がします。

同時に ゆーこさんの密着も防げたし切り抜けたと言って良いな~。実際ギリギリだったけど。


≪Security has its price≫


「(し……白銀は今 何を言いたかったの? 意味は直訳で"セキュリティ対策の費用"……
  つまり今の あたしの行動も何処かで見られてる可能性が有るから気を付けろって事?)」

「まぁ、今の行動は慎むべきだと思いますよ~?
 数式を手に入れても冷静→作戦が充実→被害が非常に少ない→彼氏ができる。
 俺に抱きつく→誰かに見られる→弱みを握られて後に影響する→いくえ不明」

「"彼氏"とかバカにしてんの?(察しの通りみたいね。後者の意味がイマイチ分からないけど)」

「サーセン」

「ともかく……今のは確かに あたしも悪かったわ」

「分かってくれれば良いんです。心地は良かったんですけど」

「フォローなんかしても何も出ないわよ」

「ですよねー☆」

「けど礼も言っておくわ。コレで近いうちには00ユニットも完成する」

「遂に悲願達成ってヤツですね~」

「馬鹿言いなさい。ソレから全てが始まるのよ」

「御尤も」


……確かにそうだ。考えてみるとアンリミじゃ始まる前に終了しちまってたんだよな~。

その00ユニットに関して思うトコロが有るんだけど、今の段階では後回しにして置こう。

簡単にヒント言わせて貰うと"鑑 純夏"が浄化装置を使えばBETAに情報が漏れる事だ。


「……それで話は変わるけど、"別の件"で何か聞きたい事は有るかしら?
 今は機嫌が良いから大抵の事なら答えてあげるわよ? 勿論 例外も有るけど」

「う~ん……今は良いです、午後は例の"3人組"とイルマ少尉と会うって決めてるんで」

「そう」

「ンな事より さっきから霞が倒れたまま動かないんで、介抱しても良いですかねェ?」

「お願い」

「おいィ。大丈夫か~?」

「……ッ……」←うつ伏せに倒れていた霞

「今 運んでやるからな~?」

「はい……(妬ましいです)」

「そ、そんな目で見ないでよ社」


――――ちなみに霞を運ぶ時は"ねんがん"の御姫様抱っこが出来たぞ! んで顔も拭きました。




……




…………




……15分後。


「武さんッ!」

「唯依か」

「こ、こんにちは」

「うん。こんちわ」

「今朝は任務だったのですか?」

「あァ。極めて重要なね」


≪生憎 篁が此処に居ると話せない内容だから、丁度 良かったかもしれないけどね~≫


「そうでしたか(……きっと昨日言われてた事ね)」

「とりあえず遅れた飯にしようと思うんだけど良いかい?」

「は、はい。御一緒させて下さい」

「じゃあレッツ・ゴーっと」


こうして無事 数式を回収した俺は上層に戻ると、走って来た唯依と運良く合流を果たす。

そして飯を食うべく並んで通路を歩いてゆくと同時に、今回の"帰還"に手応えを感じていた。

コレならきっと米軍3人娘とイルマ少尉との交渉も旨くゆくだろう。そんな気がしてならない。


「(ゆ、唯依ちゃん……白銀少佐を発見したからって何も俺を突き飛ばさなくっても……)」


―――― 一方、別の通路では床にキス☆してる巌谷さんが居たけど気にしない事にしました。




●あとがき●
絆・息抜きSS・本作の予定立て・仕事 等で更新が遅れましたが次回は早く更新できそうです。
しかし再熱した絆代がの此処 数ヶ月、毎月6桁いって俺のサイフが金欠でマッハなんだが……

宣伝「不知火・カスタム(+神代少尉)」
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=6654888



[3960] これはひどいオルタネイティヴ44(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/11/17 03:24
これはひどいオルタネイティヴ44(後編)




(今回はマブラヴ・ヒートネイティヴと言っても良いかもしれません)




2001年12月08日 午後


「白銀少佐!」×2

「ん? あれは――――」

「先日は管制もしてくれた……」


PXにて唯依との昼食を済ませ、そろそろ動こうかと互いに立ち上がり食器を戻した時。

2人の見知った顔の人間が俺達の前方に現れ、見るからに自分等を探していた様子だった。

その"2人"は小走りで傍までやってくると、両人ともニコニコとしながら口を開いてくる。


「テレサ・ウォーケン中尉でありますッ!」

「姉のセレナ・ウォーケン中尉です」

「あぁ、どもども」

「――――ッ」←黙って敬礼する唯依

「香月博士から"お話"は聞いていますよ~?」

「元米軍の衛士3人はブリーフィング・ルームで待っています」

「へぇあ?」


……とイキナリ"そんな事"を言い出したウォーケン姉妹に首を傾げる仕草を取ってみると。

2人は ゆーこさんから指示を受けて、俺が例の衛士達と面会する下準備をしてくれたらしい。

そう言えば霞を連れて大部屋を出る際に"機嫌が良いから遣ったげるわ"とか言ってたんだった。

しかしイリーナちゃん辺りが準備してくれると思ったら、この姉妹が行ってくれるとは意外だ。

されど考えてみれば、イリーナちゃん以外となると"この姉妹"しか"例の事情"を知らないよな。

よって妥当なトコロなのかと顎に手を添えて思って居ると、テレサ中尉は微笑みながら言う。


「どうして私達が? ……と思われて居られたりしますか~? 白銀少佐」

「えっ? まぁ多少ですけど」

「ふっふっふ。ならば説明しましょう! 何故なら――――ァ痛ッ!?」

「本日より少佐が纏める"突撃機動部隊"の管制他 云々を私達が担当する事になった故です」

「なんと」

「……(やはりソレだけの評価を……でも私は……)」

「うッ……ち、ちょっと姉さん!! 叩くのは良いけど、話を遮らないでよッ!」

「馬鹿言いなさい。上官相手に何か企んだような目で言う事じゃないでしょ?」

「も~っ、姉さんは生真面目なんだから~ッ」

「いや問題無いですよ? 俺も堅苦しい事は嫌いなんで」

「うふふ。白銀少佐なら そう仰られると思いましたけどね」

「ともかく早速 御案内いたしま~す!」

「有難う」

「さあ篁中尉も」

「はい(……セレナ・ウォーケン中尉……とても綺麗な人ね)」


……確かにヴァルキリーズに対しての涼宮(姉)みたいに、ウォーケン姉妹の様な存在は必要だ。

正直イリーナちゃんが担当してくれると思ったが、彼女は ゆーこさんの秘書で多忙だったね。

そうなるとこの姉妹が管制してくれるのは妥当かもしれない。優秀な事には変わらないしな~。

イルマ少尉ダケでなく米軍3人娘との接点も有りそうだし、もし そうなら連携も安心だろう。

よって2人の部隊参加を喜びつつテレサ中尉の尻……いや後を追うんだが、ふと疑問が浮かぶ。


「(一応"前から"の意味で姉さんの事を"生真面目"って言ってあげたけど……)」

「あら……篁中尉の黒髪は近くで見ると、とても美しいんですね」

「そ、そうですか? 特に意識はしてませんけど」

「(実は……今だと思いっきり逆なんだよねェ……)」


――――思ってみればセレナ中尉は少し前はストッキングだったよな? 今は生足なんスけど。


「それにしても、やっと仕事らしい仕事が出来そうですよ~」

「……どう言う事なんスか? テレサ中尉」

「兄の推薦で横浜基地に臨時中尉として着任した迄は良かったんですけど、
 私達よりも優秀なイリーナに全部 大事な役割を持って行かれちゃってましたから」

「じゃあ、今迄は何をしてたんですか?」

「主に"上"から零れて来た仕事を適当に片付けていたダケですよ~」


――――余談だが彼女の言う退屈そうな"仕事"は、俺が10人居ても処理出来ないレベルでした。




……




…………




……5分後。


「此方ですッ」

「おィ~っス」


≪――――ガチャッ≫


「!?」×3

「みんな揃ってみるみたいだね」

「そりゃそうですよ~」

「……ッ……こ、この人は……?」

「まさか……白銀少佐か!?」

「!? そうよッ! 少しダケだけど見た事が有る……!!」

「け、敬礼!!」

「――――ッ」×2


雑談をしつつ歩く唯依とセレナ中尉を背後に、テレサ中尉に案内された部屋の扉を開くと……

ブリーフィング・ルームの中に居たのは予想通り3人の元米軍衛士で、既に国連軍の軍服姿だ。

彼女達は何やら3人で輪を作っており、俺達の入室に気付くと慌てて並んで此方に敬礼した。

左から金髪ポニテで青目の人。中央は赤い髪の色黒の人。右は青い短髪の少し背の低い人だ。

勿論どの女性も美人であり、年齢はイルマ少尉と同じらしい。……良い関係が築けると良いね。

俺は敬礼を返しながら そんな事を思いつつ左隣に立っているテレサ中尉に小声で話し掛けた。


「……ところで、彼女たちには何処まで話してるんです?」

「私の口からは"白銀少佐から話しが有る"としか言ってないです」

「成る程。じゃあ……もう国連軍の軍服を着込んで居るのは?」

「恐らく香月副司令が色々と口実を作って着せてしまったんだと思います」

「ふむ……」


≪3人ともアメリカ人でも無いし、餌を撒いたら見事に食い付いて来たわよ≫


――――そう言えば ゆーこさん"あんな事"言ってたな~。餌が何だかは分からないけど。


「…………」×3

「じゃあ……えっと、とりあえず自己紹介でも して貰えます?」


――――俺が再び顎に手を添えながら前述の台詞を言うと、左の金髪の女性が一歩踏み出した。


「はっ! 私はライト・ラーニング少尉であります!! 欧州出身のフランス人ですッ!
 ポジションは主に突撃前衛を担っております!! 貴官に御会い出来て光栄であります!!」

「!? ご、御丁寧にどうも……じゃあ次は……?」

「はっ! 自分はフレア・フレイドル少尉と言いますッ! 南米出身のブラジル人です!!
 ポジションは主に中衛全般を担当して居ます!! 主にスリーブスと2機連携を組みますッ!」

「スリーブス?」

「はっ! 私がスリーブス……ブリザ・スリーブス少尉です!! 北米出身のカナダ人ですッ。
 フレイドルと同様、主に中衛を担当! しいて言えば互いに強襲掃討を担う事が多いです!!」

「ほ、ほほ~っ」


3人の熱気が意外に感じた俺は思わず一歩 引いてしまった。右隣の唯依も押されている。

先ずリーダー的存在っぽいラーニング少尉は物静かなタイプに見えたのに結構な音量で自己紹介。

ポニーテールを震わせながら凛々しく口を開く その姿は、まさに熱血の2文字を表していた。

続く多少色黒のフレイドル少尉は見た目が熱血っぽいので左程 違和感は浮かばなかったんだが……

一見 何処ぞの零号機パイロットに似た雰囲気と思われたスリーブス少尉も、紹介では表情が一変。

前の2名と同様に眉を吊り上げ、凛々しく直立しながら同じ様に自分をアピールしたのだ。

よって意味も無く背後のセレナ中尉の方を見てみると、彼女も俺に小声で話し掛けてきた。


「白銀少佐」

「ぇあ?」

「彼女達は"少し"熱い所が有り、実戦経験も乏しいですが非常に優秀な衛士達です」

「(少し……?)」

「ですが"今回"の件が大きく裏目に出た事がショックだったのか、やや覇気が無いですね」

「ありゃ(……これで何時もより無いの!?)」

「……ッ……」←似たような事を思った唯依

「確かにそうですね~。どうにか元気付けて あげれれば良いんですけど」

「……( ゜д゜)」

「――――ッ」×3

「……(゜д゜ )」


そんなボソボソと唯依を他所に3人で話して居ると、米軍3人娘はソレが気になったか……

何やら眉を落として不安そうな表情を造っており、つい先程とのギャップが凄まじいんですけど?

また可愛く感じてしまったので彼女達を撫でる様に見てしまうと、ラーニング少尉が口を開いた。


「あ、あの……ところで白銀少佐」

「えっ? 何です? ラーニング少尉」

「我々は何の用件で……此処に呼び出されたのでしょうか?」

「妥当な質問ッスね」

「勿論。米軍を追われた私達を拾って頂いた事から、どんな過酷な任務を与えられ様と――――」

「いやいやいやッ! そんな死刑宣告みたいなモンをしに呼んだんじゃ無いですから!!」

「そ、それでは如何な御用で……?」

「……ッ……」×2


オドオドした様子で話すラーニング少尉と同様に不安そうな表情で此方を見る残り2名の少尉。

う~む。ラーニング少尉のネガティブな発言を考えると覇気が無いと言うのは間違い無いらしい。

ならば熱い自己紹介は何だったのかと問いたいトコロだが、深く気にしない様にするしか無いな。

ともかく今は目の前の3人を何とかして励ます事から始めた方が良いのかもしれないけど……

彼女達は聞いた話によると、イルマ少尉と共に自ら志願して帝国軍を援護しに来たは良いが、
既に戦いが終わって居たダケでなく彼女に出し抜かれた結果、米軍を追い出されてしまった。

BETAの事を真剣に考え、早く無益な戦いを終わらせようと出撃したと言うのに……不憫だ。

そう考えれば今ネガティブに考えているのも仕方ないかもしれない。だとすれば如何に励ます?

……そうだッ! 彼女達3人は根は"熱血"なんだから、ソレを俺も肖って励ませば良いのかも!

俺は一瞬のうちに前述の事を考え付くと、既に"某熱血漢"に再び成り切る事にしてしまった。


「……世間はさあ……冷たいよな~。 みんな君達の思いを感じてくれ無いんだよ」

「!?」×3

「どんなに頑張ってもさ、何で分かってくれないんだって思う時があるよねェ?
 ……俺だってそうだったよ。 以前は早く戦術機に乗りたいって言ったってさ――――」

「……ッ……」×3

「――――"お前じゃ早過ぎる"って言われたんだ」

「!?(こ、これは武さんの過去の話? こんな所で聞けるなんて……)」

「……(彼の事を調べようと思っても何も分からなかったけど、そんな過去も有ったんだ……)」

「……(イリーナの予想した通り、彼が此処に至るまで途轍もなく長い道が有ったのは確かね)」


――――勿論 今の台詞は"でっちあげ"なのは さて置き、盛り上がるのは次の言葉からだ!!


「でも大丈夫ッ! 分かってくれる人は、この横浜基地に居る!!」

『――――ッ!?』

「だから……そうッ! 俺について来てくれ!!」


≪――――バッ!!≫


「……ッ……」×3


そのキメ台詞を最後に俺は両腕を握り締めて前に突き出すポーズを取った。結構恥ずかしいです。

また元ネタ通りならバタンと真後ろに倒れなければならないが、セレナ中尉を巻き込むので却下!

しかし……コレで良かったのか? 米軍3人組は驚いた表情で固まっているんですわ? ……おっ?

よって更に恥ずかしくなってしまった為……俺は頭を掻きながら誤魔化す様な感じで弁解に移る。


「ま、まぁ簡単に言うと今日から君達は俺の部隊に入るって事だよ」

「え……えぇ~っ!?」

「自分達が……し、白銀少佐の部隊にッ?」

「……ほ、本当なのですか?」

「そりゃ~"その為"に呼んだんだし」

「や……やったァ!!」

「ついさっき"もしそうだったら良いな~"って話してたんですけど――――」

「ま、まさか現実になるなんて……!」


……すると大袈裟に喜ぶ容姿は大人の3人娘。俺の部隊ってマジそんな人気だったんですか?

メンバーは今現在だと僅か2人だよ? でもラーニング少尉なんて涙を浮かべて喜んでいる始末。

そうなると俺は調子に乗ってしまうではないかッ。故に自重のリミッターを再び解除すると……

今度は飛び上がったりして乳を揺らしていたラーニング少尉に近付いて彼女の肩に手を添えた。


≪――――ぽんっ≫


「!? あっ……」

「悔しかっただろ? 分かるよ」(キリッ)

「えっ?」

「思うように行かない事、沢山有ったよな? 苦労して石川……じゃなくて米軍に入った後、
 いざ目の前に美味しそうなカニ……いや日本に奴等が侵攻して来たとしても出撃出来ない!!」

「!?(……た、確かに……あの時は歯痒い思いを……)」←黄

「……(けどダメだった。結局 日本は救えずに多くの人間が死んだんだ)」←赤

「……(でも一番 悔しかったのは……彼みたいな人間なのかもしれない……)」←青

「でも我慢しなきゃイケない時だって有るんだよッ、人生 思うように行かない事ばかりだ!!」

「うぅッ」

「クゥッ」

「……っ」

「でも"此処"で頑張れば必ずチャンスが来るッ! ――――頑張れよ!?」

「は……はいッ!」

「が、頑張ります!!」

「了解しましたっ!」


どうやら再度 俺の"熱"は彼女達に伝わった様でラーニング少尉は目の前でガッツ・ポーズを取り。

フレイドル少尉も両腕の拳を握り締めつつ叫び、スリーブス少尉は凛々しく敬礼し応えてくれた。

成る程~。彼女達を励ますのは"このネタ"を使えば安易なのは確定的に明らかとなったZE。


「……(さ、流石は武さんね……)」

「……(こんなに簡単にライト達の蟠りを取り払っちゃうなんて……)」

「……(どうやら心配するダケ無駄だったみたいだわ)」←だがノーパンである


な、何だか左右と背後の視線が痛い気もするけどコレも新たな部下との信頼関係の構築の為!

だから好きで松岡ったワケじゃ無いんだ……まぁ再度 誤魔化すに限るな。今更感が有るけど。

故に俺は何事も無かった様に後ろを振り返ると、唯依に向って真面目な表情を造って口を開く。


「じゃあ今度は、こっちの自己紹介の番かなァ?」

「!?」×3

「先ずは……頼めるかい? 篁中尉」

「は、はい! 私は帝国軍より臨時中尉として着任している――――」




……




…………




……3時間後。


「以上で情報の提示を終わります」

「こ……こんなッ……」

「す、凄すぎるよ……!」

「これらを全て白銀少佐が……?」

「あははは。別に全部が俺ってワケじゃ無いですって」


自己紹介後3人が俺の部隊に編入すると言う事から、先ずはS型 等の情報を教える事にした。

内容は主に以前イリーナちゃんが巌谷さん&唯依に対して行ったモノと同じだ。(23話 参照)

勿論ソレらはラーニング少尉達には衝撃的だった様で、空いた口が塞がらないといった様子。

ちなみに情報の掲示はセレナ中尉 主導の下、テレサ中尉の補佐によって行われている。


「そんなワケで3人には、近いうちに合流する神宮司軍曹……いや中尉か大尉 辺りかな?
 ……に新しい概念の操縦 云々を教えて貰う事になると思うんで、頑張ってください」

「り、了解!」×3

「テレサ」

「は~い。資料を配るから近日のトライアル迄には暗記して置いて下さいね~?」

「はっ!!」×3

「されどトライアルでは見学になると思いますので、其処は御了承下さい」

「畏まりました。篁中尉」

「少し残念だけどなァ~」

「同感。でも我慢も大切」

「理解してくれてる様で何よりッスよ」


そんな情報収拾を終えた資料 片手の3名は、非常に物分かりの良いデキた娘達だった。

情報提示&解説中は次第にヒートアップして色々と口を挟んで来るのが予想出来たんだが、
ひたすら黙って真剣にモニターを凝視しており、俺の方が雰囲気を崩したくなった程である。

きっと資料を読んでソレでも分からない事が有れば聞くつもりなんだろう。こりゃ頭が下がる。


「それにしても……もう夕食の時間が近いみたい」

「えぇっ? も~そんな時間なの? 姉さん」

「少し張り切って説明し過ぎてしまったみたいだわ」

「だったら夕食にするかな~?」

「でもぉ、白銀少佐と篁中尉は3時間弱 前には食べられたんですよねェ?」

「いや……別に問題無いよ? 同席するダケで3人の質問に答えられる事も出来るし」

「そうですね。3人には少しでも多くの知識を仕入れて貰いたいですから」

「!? あ、有難う御座います!! 白銀少佐・篁中尉ッ!」

「うわっ、びっくりした」

「ら、ラーニング少尉……出来れば耳に響かない程度にして欲しいのですが……」

「あうっ。ご……ごめんなさい~っ」

「すみません。ライトったら以前から"こんな感じ"なんですよねェ」

「私も人の事は言えません……直ぐに熱くなってしまう癖を……直さないと……」

「まあ賑やかで良いじゃないか。なァ唯依~?」

「そ、それはそうですど……ぅあっ?」

「…………」×5


≪じ~~っ……≫


「ど、どうしたんです? 特にテレサ中尉とセレナ中尉ッ」

「別にぃ~?」

「何でも有りませんわ」

「と、とととところで白銀少佐ッ!」

「私の事も"フレイドル少尉"なんかじゃ無くって、フレアって呼んで下さいよ~!」

「……私も……ぶ、ブリザで良いです……」

「へぇあ」

「……ッ……(もう、皆の前で……武さんの馬鹿……)」

「嗚呼……これから白銀少佐と御食事……嗚呼ッ……」

「ち、ちょっとちょっと姉さん。帰って来てよ~ッ、まだ逝くのは早いよォ?」


……そんなワケで思った以上に元米軍3人娘と仲良くなれた俺達は、PXで会話を弾ませた。

そんなライト少尉・フレア少尉・ブリザ少尉の志は やはり俺のモノを大きく超越していた様子。

既に名前で呼んで良い様に成ったのは さて置き。ライト少尉は失った故郷を取り戻す為に。

フレア少尉はコレ以上 南米でウダウダしては居れず、本気で世界を救う為に米軍に入ったらしく。

ブリザ少尉はユーラシアで戦死した兄の仇を討つ為に、生まれつき弱い体ながら衛士となれた。

皆 何と言う努力の末でのエリート……こりゃ~俺も負けてられないね。色々と頑張らなければッ。

よって彼女達の歓迎会も兼ねた食事で、結局イルマ少尉の件が後回しになってしまったが……

思ってりゃライト少尉らは彼女の所為で米軍を追われたとも言えるし、今は急ぐべきじゃないな。

ンな訳で唯依達6名と別れた俺は、明日の任官式の事とかを考えつつ眠りに着くんだけれども。


「ゆーこさん……数式の礼は霞も入れて3Pにしましょう……アッーーーーッ!!!!」


――――今夜は勿論 数式回収 直後の ゆーこさんの胸の感触を思い出して抜いちゃったんだ☆


「ご、御免なさい白銀少佐ァ……セレナは下着も履かない変態なんですぅ~っ!」

「(私はネタが無いよぅ~……でも何だか姉さんの声で濡れてきちゃったよ……)」


―――― 一方セレナも白銀少佐を想って自慰り、結局テレサも姉に続いちゃったんだ☆




●あとがき●
先日から立てていた予定通り、イルマ少尉との面会は後日に引っ張ります。
次回は久しぶりに冥夜をはじめ207B分隊の話を書く事が出来そうですね~。
いやはや今回もつまらなくて本当に面目ない。でも回転は上げ様と思うので御勘弁をorz




●オリキャラ補足●
□テレサ・ウォーケン□
幼い頃から天才といわれる頭脳を持つ才女だが、能天気な上に極度のドMと言う変態。
見た目は金髪セミロングヘアの美人で年齢と身長はピアティフ中尉と同じ位で仲も良い。
白銀少佐には何時襲われても良いが、今は普通に会話が弾んでいるので満足している。
アルフレッドに対しては軽い弱みを握ってたり、泣き落としをしたりと遣りたい放題である。

□セレナ・ウォーケン□
テレサ以上の天才で一部の技術はピアティフ中尉を上回っていると評判である。
見た目はロングヘアの美女。身長はテスレフ少尉と同じ位で、多少面識も有るようだ。
以前は生真面目で完璧な人間だったが、白銀少佐に恋した結果 何故か露出癖が出た。
妹のテレサは彼女に関しては頭が上がらず、口でしか逆らえない。兄さんも同様らしい。

□ライト・ラーニング□
元米軍娘の一人目。見た目は金髪ポニテ&青目の美人。身長は伊隅と同じ位で胸は中の上。
見た目に反し生真面目な熱血漢で心無い人にはカマトト振っていると捉えられる事も有る程。
しかし本人は全く気にして居ない。ちなみに欧州出身な為3人娘の中ではリーダー的な存在。
米軍衛士にしては珍しく突撃前衛を担当している。よって速瀬中尉とは気が合うかもしれない。

□フレア・フレイドル□
元米軍娘の二人目。見た目は赤髪セミロングでやや色黒。身長は彩峰と同じ位で胸は普通。
南米よりBETAとの戦いを求め米国に入軍した努力家で、頭脳も人並み(白銀)以上に有る。
ちなみに3人とも日本語を多彩に操るので、最早 人並みドコロでは無いのはさて置いて。
見た目 通り典型的な熱血漢であるが、任務には忠実。だが流石に前の件は我慢ならなかった。

□ブリザ・スリーブス□
容姿は青髪ショートで綾○レイの様な癖毛が有る。体格は茜程でカナダ出身の珍しい衛士。
見た目通り普段は無表情で冷静そうに見えるが、BETAに対する思いは熱く直ぐ破顔する。
彼女達の年齢は皆テスレフ少尉と同じだが、身長が低いので本人は若干ソレを気にしていた。
しかし横浜基地に来た事で居心地が良くなったらしい。珠瀬を見ると抱き付きたくなる程に。

――――よって3人娘の共通点は皆が"熱血属性"だと言う事。名前は雷・炎・氷を司っている。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ45
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/12/04 11:35
これはひどいオルタネイティヴ45




2001年12月09日 午前


「おはよ~霞」

「……おはようございます」

「しかし凄いな。昨夜も気付かなかったぞ?(……潜り込んで来た的な意味で)」

「そ、それ程でも有りません」

「さ~て。今日は任官式だな」

「……(やっぱり私では魅力に欠けるんですね)」


――――元米軍の衛士3人との接触を済ませた翌日。何時もの様にベッドに潜り込んで来た霞。


「武さん、お早う御座いますッ」

「!?」

「おはよ~唯依。それとイリーナ中尉?」

「えっ? は、はい。お早う御座います……白銀さん」

「じゃ~早速 皆で飯にしましょうか~」

「そうですね」

「(た、篁中尉……何時の間に互いの呼称を……)」

「じゃあ霞。仕事 頑張れよ?」

「はい……またね」


そして例の如く部屋の前で待っていた2人の中尉と対面し、朝から忙しいらしいウサギと別れ、
元気の良さそうな唯依&何だか違和感を感じたイリーナちゃんを連れつつ食事の為PXを目指す。

するとPXが近付く辺りで3人の人間の姿が有る。そう……ライト・フレア・ブリザの部下達だ。

実は今になって朝食を摂るメンバーが増えてしまったので、待ち合わせ場所を決定していたのさ。

原作の白銀達は既に決まった席に自然と集まっているカンジだったけど、今回の"俺達"は異なる。

このように指定した時間にPXに近い位置に集まってから、全員で飯を食う事にしているのだ。

他の衛士の小隊達も各々の"集まり方"をしている様で、例えば伊隅達は皆の部屋が並んでるので、
先ずは全員で廊下に集まってからPXを目指したりするらしい。……完全に余談だけどねコレ。

ついでに言うと、セレナ&テレサの姉妹は朝から仕事が有るらしく遅れて来ると言ってました。

ま~ともかく。いち早く俺達の接近に気付いたのはブリザ少尉であり、俺と目が合うと口を開く。


「あっ……タケルさん」

「!? お、お早う御座います白銀さんッ!」

「時間ピッタリですね~大将!」

「おはようブリザ少尉。それに2人も元気が良いねェ」

「は、はい! それダケが取り得ですからッ」

「アハハハ。私は性分ってヤツですかね~?」


……ちなみに昨日は自分の事を好きに呼んで良いと言った結果、この様に成っているとです。

ライトはクソ真面目なので俺の事は苗字で呼びたいらしく、何とか"少佐"付けダケは避けた。

反面 自分の事は名前で呼んで欲しいらしく、よってか他の面子が俺を何と呼ぼうが気にしてない。

んで褐色肌のフレアは、まるで彼女の性格を表している様とは言え まさかの"大将"と来たモンだ。

そしてブリザなんだけど……意外にも名前を希望。いや外国人にとっては普通だし問題無いZE?

さて置き。既に俺達はPXに辿り着いており、俺が何を食おうか迷う意味で足を止めると、
自然な流れで唯依とイリーナちゃんが先にカウンターへと歩き御好みの注文を済ませている。

しかしライト達3人は足を止めており、ソレを気にして俺は顔を向けると彼女達に声を掛ける。


「…………」×3

「どうしたんだ? 皆。早く注文しなよ」

「は、はいッ。すみません」

「う~ん、どうすっかな~」

「私はパンとかにしよう……かな」


……待てよ? 考えてみればライト達って昨日は話して ばっかで余り量を食って無かったなァ~。

ブリザの言葉でソレを思ったのも さて置き。日本に住む事となった今、洋食ばかりじゃ体に悪い。

彼女達にとっては洋食が普通だとも言うが、イリーナちゃんや姉妹を見習って欲しいのである。

故に"こんな事"で有ろうとライト達には例の人を肖る方が良いと思うのでリミッターを外し言う。


「いや待てッ! 君達!!」

「!?」×3

「お米食べろッ!!!!」


――――フッ。彼女達が部下で居る限り"マブラヴ・ヒートネイティヴ"はまだ続きそうなんだ☆


「(そ、そう言えば昨日のライト中尉達は情報収集に熱心で殆ど食事をしていなかったわ)」

「(セレナさんとテレサに聞いた話だと、捕らえられてからは殆ど食事と口に……流石ね)」

「じゃ……じゃあ私はカレーライスにしようかな~?」

「私は昨日 大将が食ってたサバミソ定食ってのを……」

「わ……私は……どれにしよう……」(チラッ)

「えっ? な、なら餡かけチャーハンとか……良いんじゃないか?」←適当

『!?!?』(武とブリザ以外の全員)

「じ、じゃあソレで……御願いします……」

「あいよ~っ! 中々通だねアンタ!!」

「(有るのかよ!?)」


――――余談だがブリザが頼んだ餡かけチャーハンは、何故か以後PXの人気メニューとなった。




……




…………




……30分後。


「他に何か聞きそびれている事は有りますか?」

「えっとえっと……次はですね~ッ!」

「任せるよライト。私達の聞きたい事は全部アンタが言ってくれそうだし」

「……うん」


飯がひと段落つくと……今は米軍3人娘が昨日の様にイリーナちゃんに色々と質問していた。

何を隠そうOSや兵器について最も詳しいのは 副司令を除いて俺でもウォーケン姉妹でも無い。

つまりイリーナちゃんであり、無知を晒すのが怖くて全く会話に参加できない俺にも勉強になる。

何せ説明も非常に上手だからだ。当然ながら唯依も感心した様に彼女の説明に聞き入っていた。

ちなみに食事はとっくに終わっているが、任官式の時間は まだ先なので余裕が有るのである。


「見つけましたよ~? 武くゥ~ん!」

「皆さん、お早う御座います」

「どもども。テレサ中尉とセレナ中尉」

「もう用は済んだの?」

「うんイリーナ。御陰で大分 早起きな上に遅くなっちゃったけどねェ」

「御一緒させて頂いて宜しいですか?」

「では此方にどうぞセレナ中尉」

「有難う唯依」


そんな中 仕事を終わらせたウォーケン姉妹が登場。相変わらず姉妹で性格のギャップが激しい。

また聞いての通り俺以外の人間関係でも違いが出ている。セレナ中尉が唯依を名で呼んでたりね?

まぁ~コレから同じ小隊の仲間として戦うんだし、堅苦しい関係は止め様と言うのが俺の考えだ。

つまり唐突にセレナ中尉が唯依を名で呼んだ訳では無く、その流れを俺が作ったという事なのさ。

ンなワケで姉妹も混ざった8人で再び会話を進めてゆき……暫くして俺は頃合を見て皆に告げる。


「それじゃ~"時間"が近いかな?」

「はい。そろそろの様ですね」←唯依

「あァ~、それって"任官式"の事ですよね~?」

「ぇあ? テレサ中尉も知ってたんスか? じゃあ……」

「私も存じています」

「セレナ中尉もッ?」

「何せ私達が遅れたのは其の為なんですからねェ」

「!? でも千づ……榊達の件を何で2人が……?」

「それは207B分隊ダケでなく、別の方達も今回の"主役"だからですよ~?」

「……どう言う事です?」

「ふっふっふっ。何故なら その方達とは――――ァ痛ッ!?」

「神宮司軍曹とライト少尉達の"突撃機動部隊"への編入式も兼ねるからです」

「えぇ~っ!?」×3

「な、なんだってーっ?」←棒読み

「(さ、遮られて悔しい……でも感じちゃう……っ!)」

「香月副司令は"突撃機動部隊"をA-01とは違って公に売り出すつもりの様ですので、
 今回の解体式にて緊急に神宮司 軍曹達の編入式も同時に兼ねる事に成ったのです」

「そ、そうだったんスか~」

「本当に急な命令だったんで、少し手間取っちゃいましたけどね~」


――――本来"少し"で済む仕事じゃ無いんだろうけど、朝から今の間で終わらせる2人って凄ス。


「だけど ゆーこさん……一昨日"別に公にはしないわ"とか言ってたクセに……」

「まぁまぁ。副司令の気変わりなんて何時もの事じゃないですか~」

「武さんが直接 出席するワケでも有りませんしね」←だがノーパンである

「!?(て、テレサは性格からしてともかくセレナさんまで……!?)」

「そんな、私達の為に……何から何まで有難う御座います~ッ!」

「嬉しいねェ。米軍を首になった時が嘘みたいだよ」

「……か、変わりに……これから本当に頑張らないとッ」

「でも……もし更に"新たな衛士"を加えるとなると、また同じ様な編入式を行うのですか?」

「(確か速瀬中尉が捕らえた……)どうなの? テレサ」


――――興奮している3人を他所に、唯依が最もな疑問を述べた。今もう一人 候補が居るしね。


「えっと……今回は あくまで突撃機動部隊の名を横浜基地に"認識"させる為のモノですから、
 一度行うダケで良いそ~です。また頃合を見て適当な日にアピールして行けば良いわ~って」

「相変わらず例の件 以外は適当だよな~」

「うふふっ。でも香月副司令らしいですわ」

「細かい事は言わないで大抵な事は全部任せてくれるんで、遣り易いですしね~♪」

「いや、それって……」

「……(ま、任せてくれるって……まさかテレサ中尉は……気付いていない?)」

「……(ハァ……テレサは自分が評価されている"実力"を全く意識してないのが玉に傷ね)」


――――俺的には任せられる人材だからこそ ゆーこさんが近くに置いてると思うんですけど?

きっとテレサ中尉を黙って見ている唯依&イリーナちゃんも同じ事を思って居るんだろう。

まぁ良いか。そんなモンでも無いと"天才"語れないかもしれない。ゆーこさんも奇特な性格だし。


「嗚呼、ででででも緊張して来たかも……前の時は将官クラスの人なんて居なかったし……」

「!? い、言うなよライトッ! 私まで意識しちゃうだろ!?」

「……ッ……に、兄さん……私の晴れ舞台を……見守っていてくださいッ」

「しかしBETA相手に大丈夫なのかな~? ライト達」

「初の実戦で有るクーデターでは全く作戦に支障は無かった様ですし、問題無いと思います」

「せ、セレナ中尉……何故そんな自信気に?」←唯依

「……(そう言えばテレサとセレナさんは彼女達と顔見知りだったみたいだけど……?)」

「あの娘達は、こう見えても生半可な心意気で"此処"に居る訳では有りませんから」

「私はライト達を信じてますッ! だから"白銀少佐"……皆を宜しくお願いしますね~っ?」

「あ、あァ……分かってるよ」

「……(ライト達は実は関わってみると優秀ながら凄い小心者だって分かるんだけど……)」

「……(クーデターじゃ~持ち前の性格で何とかなったとは言え、流石にBETAはねェ)」


そうだよな~。猫の様な可愛さの反面、狙撃に秀でる珠瀬みたく人を見掛けで判断してはいかん。

ライト達は一見 凛々しい一流の衛士な反面、熱血属性なので何だか違う気がするのはともかく。

たかが編入式で こんな"頼り気無さそうな様子"だけど、実戦なら相手がBETAに変わろうが、
別に俺が熱血漢を肖らなくても手堅く戦ってくれるんだろう……彼女達 持ち前の"熱さ"でねッ!

それに確かフレア以外は肉親をBETAに殺されてるし……志は俺を遙かに越えてるのは明白だ。

故に彼女達は頼れる味方だとポジティブに考える事にして、俺は席を立つと御盆を持ち歩き出す。


≪――――ガタッ≫


「それじゃ~そろそろ行こうか?」

「はい!」

「い、行きましょ~っ!」

「ご……御一緒します」

「私は生憎ソレには出席できませんね」

「そうなんスか? イリーナ中尉」

「はい。巌谷中佐と明後日のトライアルに関しての打ち合わせが有りますので」

「成る程~ッ」

「叔父様と……私は行かないで良いのかしら……?」

「ふふふっ、問題有りません。それにソレは巌谷中佐の命でも有るのでしょう?」

「あうッ」


そんな会話をしたりして俺の後に唯依・イリーナちゃん・ウォーケン姉妹が続いてくんだけども。

ライト・フレア・ブリザの3人は未だに席に座ったまま悶えて居るので俺は振り返って口を開く。

全くマジで大丈夫か!? この米軍トリオはッ! だがポジティブを心掛けた今もう何も思うまい。


『(――――だけど)』←ウォーケン姉妹

「3人とも何やってんだよ」

「!?」×3

「さっさと俺に付いて来~いッ!」

「り、了解!!」×3

『(武くん(さん)ならライト達を必ず守ってくれるわよね……っ? 元々その気みたいだし)』


――――ライト達が相手だと必然的に言葉が熱血っぽくなってしまう。以後 気をつけないとね!




……




…………




……30分後。


「そろそろ時間の様ですわね」

『(うむ……)それでは、コレより国連太平洋方面第11軍・横浜基地衛士 訓練学校……
 第207衛士訓練小隊 解体式……及び横浜基地 突撃機動部隊・編入式を執行する』

「……ッ……」×9


デカい体育館の様な所……って言うか講堂(?)でラダビノット司令と副司令(ゆーこさん)を前に、
9名の衛士達が2列に整列している。ちなみに前列がB分隊5名で後列が まりもちゃん達4名ね?

そんで ゆーこさんの横には当たり前の様にウォーケン姉妹が居て、今回は式の補佐をしている。

何だかソレを見ていると"ホントは凄いぞウォーケン姉妹!!"のフレーズが浮かんで来てしまう。

また原作と違って周囲には俺と唯依を始め、見た事も無いor有る士官の方々の姿も多々 有った。


「では榊 千鶴 訓練兵」

「――――はっ!」


初っ端の司令の訓示が終わると、先ずは千鶴ら訓練兵(B分隊)の解体式から行われる様で、
順番に名を呼ばれると直接"少尉"の階級章みたいなモンを渡され、彼女らは喜びを噛み締める。

場が場なので見た目は真面目&凛々しい様子にしか見えないけど、雰囲気がそ~感じさせるのだ。

勿論 教え子の晴れ舞台みたいなモン故に、俺も同様だ。彼女達には良い迷惑かもしれないけどね。

……補足するけど、千鶴達は事前に解体式が有る事を聞かされて居るのでサプライズは無かった。


「神宮司 まりも 軍曹」

「――――はっ!」

「貴官には突撃機動部隊への編入と同時に、中尉への昇進を言い渡す」

「有難う御座います!」


一方まりもちゃんは複雑な心境だろう。確かに嬉しくは有れど……同じ式の主役なのだから。

また何だか彼女にしては大尉 辺りになると思った事から、階級が低い様な気がしたけれど、
後に聞いた話によると事前に自分から ゆーこさんに"中尉で良いです"と進言していたらしい。

自分がまだ未熟的な意味で。謙虚だよね~? 俺も"大尉で良い"とか言うべきだったんだろうか?


≪大尉に昇進するのも良いけど……ソレだと白銀さんと一つしか階級が違わないじゃない≫

≪ソレがど~かしたの?≫

≪彼や篁中尉の実力を考えると私の能力じゃ勿体無いわ。だから中尉で十分よ≫ ←真実

≪はいはい、分かったわよ御馳走様≫


さて置き……意図を知らない俺は"まりもちゃんが中尉って低いな~"と当然の如く思っていた。

されど次はライト達の番となるので、一旦 疑問はスルーして米軍娘達に注意を向ける事にする。

元軍曹を知る周囲の士官達も同じ疑問を抱いてそうだが、今度は敵意の篭った視線が向けられた。

僅かとは言え雰囲気で分かる。帝国軍よりはマシだが米軍は国連軍でも評判を落としてるからな。


「ライト・ラーニング少尉」

「――――はっ!」

「貴官には国連軍への任官と共に、突撃機動部隊への編入を言い渡す」

「畏まりました!」


しかしライト達は熱血属性なので嫌な雰囲気を大声で吹き飛ばしてしまった。五月蝿かったけど。

……とは言え今回の編入式に置いては周囲の士官達の目には、真面目で誠実でヤル気 満々な上に、
凛々しくも有る女性衛士としか映らなかった様で、若干 彼女達の評価が上がった様に見えた。

ソレはフレア&ブリザに対しても同様であり、ブリザは普段は暗いのに公では性格が変わるね~。

そんな事を考えているうちに異例とも言える殿下の祝辞に移っており、周囲は若干 騒然とした。


「(さ、流石は元米軍とは言え一流の衛士ダケ有るわね。私達も負けてられないわ!)」

「(気迫がまるで違う……私も見習わねばッ! し、しかし白銀少佐と同じ……羨ましいモノだ)」

「(妬ましい)」

「(うぅ……3人とも凄そうだなぁ……私なんかで役に立てるのかなぁ?)」

「(あれ~? ブリザ少尉は基地で見掛けた時は少し暗い雰囲気だったのにな~)」


――――でンな感じで解体式&編入式は終わり、無事 正史のイベントが終了したのでした。




……




…………




……更に30分後。


「築地の様にデカデ~カッ、殿下の様にプリプ~リ♪」


たかが解体式(+編入式)であろうと正史のイベントを一個消化できたと言うのは気分が良いモンだ。

よって一人で(小声で)歌を唄いながら歩いている俺は、現在一人である。考えてみれば珍しいね。

何故かと言うと、唯依はイリーナちゃんと打ち合わせをしている巌谷さんの様子を見に行き……

(なんだかソレって未だに親離れ出来ない娘みたいで笑えるのは置いといて)ウォーケン姉妹は、
解体式&編入式の準備に引き続き、突撃機動部隊の編成による手続きが多いらしいので傍に居らず。

ライト達は早速 家族や友人に"国連軍に編入した事"を手紙や電話で伝えるらしく慌しく去った。

まりもちゃんは……生憎 分からないけど、恐らく"元"B分隊と喜びを分かち合っているんだろう。

聞いた話によるとトライアルは明後日らしいし、今はシミュレーターしかする事が無いんだよね。

だからと言って今更イリーナちゃんらサポート役 無しで行う気は起きず、一人散歩していると……


「ムスゥコがみなぎるんジャー♪ フフンフーン♪」


≪――――ダダダダダダッ!!!!≫


「白銀少佐~ッ!」

「うわっ、びっくりした」

「はぁっ、はぁっ……」

「どうしたんだよ? 冥夜」


後方から駆けて来たらしい御剣 冥夜が出現。……そうだった、遣ろう遣ろう思って忘れて居た!

負傷した俺の事を彼女は唯依と同じ位 心配してくれたらしいから、安心させて置くって事をだ。

いかんいかんッ。冥夜のカオを近くで見てから気付くなんて何たる不覚……解体式でも見たのに。

だから息を切らす彼女に色気を感じながらも、何と話を切り出そうかと無表情で悩んで居ると。


「あ、あの……唐突ですが今夜 何か予定は御有りなのでしょうか?」

「!?!?」


――――どうやら俺の今日のイベントは"アレ限り"では無かった様です。あれっ? 勃ってきた。




●戯言●
前回のアップ後に風邪を引いてしまってSSを書く集中力が無くなって遅れてしまいましたorz
ゲームする余裕は有ったんですが、皆様も風邪には注意してください。職場で超流行ってます!!


補足①
米軍3人娘は皆が小心者ですが、誤魔化す為の熱血っぽさを見て皆が一流と勘違いしています。
ブリザは公の場や戦術機に乗ったりすると性格が変わります。魔装機神のエリスみたいなモン?
補足②
ホントは強いぞアーマータイガー!! ……じゃなかった、ウォーケン姉妹!!


●呼称(女性→白銀)●
唯依→武さん
ピアティフ→白銀さん
テレサ→武くん
セレナ→武さん
ライト→白銀さん
フレア→大将
ブリザ→タケルさん(無口で最も日本語に慣れていない為)
まりも→白銀さん


●突撃機動部隊での呼称●
武→唯依=唯依
武→ピアティフ=イリーナ中尉
武→姉妹=(名前)中尉
武→米軍3人娘=(名前)少尉
武→まりも=神宮司中尉(一対一じゃない場合)

唯依→武以外=(名前)少尉or中尉
唯依→まりも=神宮司中尉

ピアティフ→セレナ=セレナさん
ピアティフ→テレサ=テレサ
ピアティフ→他の人=(苗字)少尉or中尉(いずれ名前に変わる予定)

テレサ→武以外=(名前)
テレサ→セレナ=姉さん
テレサ→まりも=神宮司中尉

セレナ→武以外=(名前)
セレナ→テレサ=テレサ
セレナ→まりも=神宮司中尉

米軍3人娘→唯依=唯依(武が強制的に許可した)
米軍3人娘→ピアティフ=ピアティフ中尉
米軍3人娘→姉妹=(名前)中尉
米軍3人娘→まりも=神宮司中尉

まりも→唯依=篁中尉
まりも→ピアティフ=ピアティフ中尉
まりも→姉妹=(名前)中尉
まりも→米軍3人娘=(名前)少尉

まりも「…………」



[3960] これはひどいオルタネイティヴ46(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/12/07 06:52
これはひどいオルタネイティヴ46(前編)




≪それで……俺に何の用なんだい?≫

≪単刀直入に申しますッ! 今宵を私と共に過ごして頂きたいのです!!≫

≪――――いいですとも!!!!≫

≪!? あ、有り難き幸せ……ッ!!≫


……俺が勃ってしまったのは冥夜の表情を見て、前述の妄想をした為なのだが。

勿論そんな事を彼女が言って来ないのは分かりきって居るので気持ちを切り替える。

しっかし向こうから来るのは予想外だったな……ともかく質問に答えなければッ。


「特に予定は無いけど、それが ど~かしたのかい?」(キリッ)

「えぇと、そのッ」

「????」

「実は……私達が任官できた事から今夜"ぱーてぃー"と言うモノを行う事になりまして」

「パーティー?」

「……はっ。参加者も少なく些細なモノですが、京塚 曹長が提案して下さいました」

「京塚のオバチャンが~?」

「はい。夜8時からPXを貸し切って盛大に行おうと申しておりました。
 ……とは言え人が居なくなってから開くので、必然的にその時間になると言うダケですが」

「成る程。……それで、他には誰が来るんだい?」

「神宮司 軍曹……いえ神宮司 中尉です」

「ほほ~っ」

「…………」

「……って、あと神宮司中尉だけなの?」

「は、はい」

「じゃあ俺を入れても、たったの8人じゃないか」

「そうなりますね……いかんせん急に行われるモノですので」

「ふむ」

「しかし私達に色々と御教授して下さった白銀少佐にも、是非 参加して頂きたいと存じまして」

「…………」

「し、白銀少佐?」


冥夜の言葉からすると、先ず解体式を終えてPXにやって来た千鶴達を京塚のオバハンが捉まえた。

そして"今夜アンタらを祝ってやるよ!"とか告げて強引に今夜の段取りを組んだってトコロかな?

だったら元B分隊 合わせて7人しか参加者が居ないのも頷ける。決まったのは つい先程の様だしね。

……とは言え"公"で行えるパーティーってのはコレが最初で最後になるんじゃないのか? マジな話。


「……ッ……」

「あ、あの?」


既に千鶴達は例え戦死してもオモテには事故死として扱われる、A-01への入隊を済ませている。

よって家族や友人を交えて今のメンバーでパーティーを開くのは"今夜"限りと言っても良いのだッ!

一応A-01も祝勝会を行ってたけど、一部の士官や関係者を集めたシークレットなモノだったしな~。

それに考えてみれば正史だと彼女達は このまま仲間達を次々と失い、果てには自分も死んでしまう。

なのに折角 任官した事でのパーティーが、俺含めて僅か8人など幾らなんでも可哀相な気がする……

俺が白銀と成っているからにはハナから誰も死なす気は無いとは言え、どうにか盛り上げたいなァ。


「う~ん……」

「……(や、やはり無理なのか? だが迷っておられると言う事は望みは有る……?)」

「どうすっかなァ~」←腕を組みながら

「……(しかし白銀少佐は多忙な方 故……やはり無理に参加して頂く訳には……)」

「そうだ――――」

「し、白銀少佐ッ!」

「ぇあ?」

「申し訳有りません。其処まで悩まれる様でしたら結構ですので……」

「!? いや違うってッ! 参加するか・しないかで悩んでたんじゃ無いよ」

「と、と言う事は……?」

「ダメも何も全然OKだって。是非とも参加させて貰うよ」

「ま……誠ですかッ!?」

「うん」


――――思考する中 俺の様子を別の意味で捉えた冥夜に対し、参加を告げると突如 晴れた表情になった。


「有難う御座います! 皆も喜ぶ事でしょうッ」

「だと嬉しいね~」

「で、では私は早速"この事"を皆に報告しに……」

「いや待て冥夜!」

「えっ? ……あ!」


俺が今夜のパーティー参加すると言う事を聞いたので、冥夜の用は済んでしまったみたいだ。

……しかし彼女が登場した事で、済ませようと思って居た"俺の用"を消化しなければならない。

ソレは冥夜を"安心させる"と言う事であり、俺は無意識のうちに振り返ろうとした彼女を抱き締めていた。

後に考えてみれば俺の事を心配してくれてたハズの冥夜が"その話題"に今 触れて来なかったので、
別にワザワザ抱き締めて安心させ様としなくても良かったんじゃね? ……と思ったけど今や遅し。


≪――――ぎゅっ≫


「…………」

「白銀……少佐?」

「冥夜」

「は、はい?」

「心配掛けて済まなかったな」

「!? そ……そんなッ……私の方こそ本当に……」

「いやいやアレは不可抗力だし冥夜は一切 悪く――――」

「違うのですッ!」

「へぇあ?」


――――俺が抱き締めた事で体を預けてくれた冥夜だったが、唐突に顔を上げ此方を涙目で見据えて言う。


「今の温もりで……白銀少佐が怪我の事を悪く思われていない事は……理解しました」

「だ、だったら何で?」

「白銀少佐は"この様に"私の事を気に掛けてくれたと言うのに、今 私は逃げ出そうとしたのです!!」

「逃げ……出す?」

「はい。作戦を共にした事から……私の立場として御怪我の程を伺うのは必然……されど……」

「もし俺が怒ってたって思うと聞き辛かったと?」

「そ……その通りですッ」

「…………」

「(やはり呆れられている……私には白銀少佐の温もりを頂く権利など……)」

「プッ……はははっ、冥夜らしいな~」

「!? ど、どう言う事なのですかッ?」

「"そんな事"で謝る辺りね」

「ですが私には重要な……えっ!?」


……冥夜のキャラを理解している俺は微塵にも不快感は感じず、俺は再び彼女を抱き締めた!!

もう冥夜タンったらネガティブ過ぎ。こう言う細かい事を誤魔化すのは抱き締めるのが一番だNE。

対して2度目の奇襲に再びカラダを強張らせる冥夜だったが、10秒もしないうちに力は抜けていった。

よって安心なワケなんだが些細な事を引き摺る 冥夜を見て、白銀は またリミッターを外しちゃったんだ☆


「肩の力を抜け」

「!?」

「……そんな しゃちほこばってちゃ、普通に出来る事もやれやしないぞ?」

「うッ……」

「お前は良くやったよ。正直 驚いた」(殿下の代役 的な意味で)

「…………」

「冥夜が敵味方を救ったんだ。思わぬ"誤算"が有ったけど、誰も責めるヤツなんて居ないよ」

「白銀……少佐……あッ……」


――――俺は何処ぞの黒い剣士を肖った台詞を告げると、冥夜を手放しスマイルを浮かべて言った。


「……って事で、今後も宜しく頼むよ? 少尉殿」

「!? は、はいッ! 畏まりました!!」


≪――――バッ!!!!≫


「見事な敬礼だと感心するが、何処も可笑しくは無いな」

「そ……それ程でも有りません」

「んで話は変わるけど」

「は、はい?」

「"こう言う時"は俺の事は名前で呼んで良いよ? 同じ年齢なんだし」

「えっ!? し、しかし――――」

「お前 同い年ならず、年上からも何時も敬語 使われる奴の気持ち考えた事ありますか?
 ……マジで泣きたくなる程 悲しいんで、止めて貰えませんかねぇ……?(リアル話)」

「!? そ……それでは何と御呼びすれば……?」

「タケルで良い」(謙虚)

「た、たたたたける……殿?」

「"殿"って何だよ殿って。普通に呼び捨てで良いって。勿論 敬語も要らないからな?」

「では……タケル……で宜しいのですか?」

「50点」

「い……いや、タケルで良いのか?」

「上等!」

「……タケル……タケル……タケル……」

「おいィ? 何いきなりブツブツ言い出してる訳?」

「!? す、すすすすまぬ……余りにも唐突であった故ッ」

「はははっ。俺にしても凄く新鮮だよ」


――――ゲームでは普通に"タケル"だったけど、今は冥夜の"白銀少佐"に慣れすぎてるからねェ。


「そ、そうで有ろうな。いかんせん白が……そなたは少佐なのだから」

「うんうん。だからさ~、同年齢の友達なんて出来ないし参ってたんだよ。殿下みたいに」

「姉上の様に……?」

「殿下は"あの年齢"で日本を背負ってる。だから皆が敬い崇めるしで、友達なんて出来ないだろ?」

「しかしソレは宿命ゆえに致仕方ないであろう? 姉上もソレを理解している筈だ」

「確かにね。……でも一緒に話して分かったんだ。殿下も俺と"同じ"だってね」

「むぅ……タケルが そう思ったのであれば、そうなのであろうな」

「多分ね~」

「それにしても――――」

「ぇあ?」

「た、タケル……もしや、この様に砕けて会話をすると言うのは私が初めてなのか?」

「う~ん。基準がイマイチ分からないけど、此処で同年齢の相手と"こう話す"のは冥夜が初めてだなァ」

「なんと!? ……で、では……何故 私なのだ?」

「"切っ掛け"が全然 無かったからだよ。今迄さ」

「そ、そうか……ではこの"切っ掛け"に、感謝をしなければな……」

「俺こそ有難う」

「榊達に……悪い気もするが」(ぼそ)

「???? 何だって?」

「な、何でも無いぞッ!」

「ンな訳で今夜は宜しくな? 良かったら唯依達も連れて来ようか?」

「ユイ?」

「あァ~。篁中尉達の事だよ」


――――しまった。墓穴を掘ってしまったが、砕けた関係な今 冥夜はスルーしてくれるだろう。


「!? そ、それは確かに有り難いかもしれんが……」

「いや。やっぱり止めて置こう」

「タケル?」

「ともかく任官 オメデトさん。20時には必ず行くから千鶴達にも伝えて置いてくれ」

「(千鶴……)わ、分かった……待っているぞ?」

「あァ。そんじゃ~また後で」

「――――タケルッ」←赤面しながら

「うわっ、びっくりした」

「また……この様に話して貰って良いか?」

「勿論さあ☆」

「……ぅッ……か、感謝を。それでは私はコレにて失礼致しますッ!」

「うん。また後でな~っ? それと制服似合ってるぞ~!?」

「――――!?」


そんなコンナで冥夜との会話が終わり、俺の最後の言葉にコケそうになるも彼女は走り去ってゆく。

何だか考えた以上に距離が縮まった気がするな~。冥夜を始めB分隊とは階級の差がネックだったんだが……

今や冥夜とタメ口で話せる様に成ったって事は、千鶴達とも原作と同じ様に話せる可能性が出来たって事だ。

よって俺は"正史に少し近付けた"のを嬉しく思うと同時に、20時に始まるパーティーの事を考える。

唯依達を連れて行く事を言ったら何故か冥夜は遠慮したい様子だったけど……身内を呼ぶのなら……!!

限られた時間で俺の手腕で何人 集められるか分からないが、元B分隊の為にも頑張るしか有るまいッ!


≪ダダダダダダ……ッ!!!!≫


「コードナンバー028~♪」


――――そう思った直後 何処ぞのOPを自分に重ねながら、俺は横浜基地内の廊下を走り出して行った。




……




…………




≪……マジで泣きたくなる程 悲しいんで、止めて貰えませんかねぇ……?≫


「(……タケル……やはり、そなたは年相応の悩みを持っていたのだな)」


≪……でも一緒に話して分かったんだ。殿下も俺と"同じ"だってね≫


「(それに姉上も……もしや姉上はタケルの"友"となった故に彼はソレに気付いたのだろうか?)」


≪御剣も、いずれ解る≫(10話 参照)


「(……だが……)」


≪誰にでも……失いたくない"モノ"があるのさ≫(同上)


「(私はタケルの辛い過去を知らぬ。……少なくとも、まだ聞く勇気は無かった……)」


≪……って事で、今後も宜しく頼むよ? 少尉殿≫


「(故に先ずはタケルと肩を並べる衛士に成る事が最も重要……そして再び2人になれた暁には……)」

「(……俺……明後日のトライアルが終わったら……また冥夜と、さっきみたいな会話するんだ!!)」


――――ちなみに忙しない状況だったので、何となく死亡フラグっぽい事を脳内で言っちゃったんだ☆


「!? ……ッ……妬ましいです」←リスみたいな仕草で

「何よ社。貴女も彩峰のボヤきが気に入ったのかしら?」




●戯言●
恐縮ながら10KB程度しか書いていませんが、区切りが良いので@w@
今回は超久しぶりの冥夜のターンです。う~ん、最近は前後半が多いなあ。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ46(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/12/20 00:54
これはひどいオルタネイティヴ46(後編)




2001年12月09日 午後


≪コッコッコッコッ≫


「……う~む……」

「…………」×3


B分隊任官のパーティが開始される予定の時刻の直前……つまり20時の約10分前。

横浜基地内を数時間 走り回った俺は、会場であるPXを目指して歩いていた。

そんな俺は腕を組みながら唸っており、自分の行動が"結果"を出してくれたか気になっている。

何せ……先ず千鶴の身内は榊 内閣総理大臣。しかもクーデターが起こったばかりで多忙っぽい。

一応"ある人"にアプローチを頼んだんだが、僅か数時間で呼び寄せてくれる可能性は極めて低いと思われる。

んで慧の父親である彩峰中将は今更 知ったが死んでしまっているらしく、存在すらしていない。

他に親しい人間といえば沙霧大尉しか思い浮かばないが、帝国軍に拘束されている時点で参加は不可能だ。

いや……元々参加させる気は全く無いけど、彼女の祝いの場に呼ぶとしたら何となく出て来たダケだよ?

また珠瀬の身内で真っ先に浮かぶのはタマパパなんだけど、事務次官だし此方も厳しいZE。

イリーナちゃんに一声掛けてくれる様には頼んでみたが……時間的に厳しいのは確定的に明らかである。

そして鎧衣なんだが……彼女の父である左近さんも神出鬼没なので来るかどうかは微妙なんスよねェ~。

彼に関してのアプローチは(非常に嫌そうな顔をされたが)ゆーこさんに頼んだ。しかし後悔はしていない。

コレも原作と比べて殆ど関わってやれなかった彼女たちの為なのだッ! それに確実に参加する者も居るぞ!?


「(そろそろ着いちゃうわよ? 巽ッ!)」

「(早く言わないと時間切れですわ~っ)」

「(な、なんで私が……仕方ないな)――――あのッ、白銀少佐!!」

「んっ?」

「えっと……そ、その……」

「なんだい?」


歩みを進めPXが迫って来ると、唐突に背後から声を掛けられた。……その相手は神代 巽。

そう……前述の"確実に参加する者"とは神代・巴・戎の3名であり、二つ返事でOKしてくれた。

多少探すのに手間取ってしまったが、誰も連れて来れないのを防いだダケ俺的には大収穫と言えよう。

されど何ぞや? 腹を括ってパーティーに臨もうとする直前のタイミングで声を掛けられるとは思わなかった。

よって足を止めて振り返った俺なんだが……ま、まさか急用が出来ちゃったとかですか~!?

何だか神代がモゴモゴとして言い辛そうにしてるから、最悪のパターンを想像してしまった。

もし不参加だったら面目無さ過ぎにも程が有るぜ……とは言え相変わらず顔には出ていないけどNE。


「私達を誘って頂いて……あ、有難う御座います」

「ゑっ?」

「有難う御座います!!」×2


――――心の中でうろたえていた俺に、神代に続いて頭を下げた巴と戎の2人に正直 驚いてしまう。


「何だよ神代……唐突に改まってさ」

「で、でも白銀少佐に感謝するのは当然の事なんですッ」

「だから何故に?」

「その……冥夜様は あの様な方ですから自分達を誘っては下さらなかったでしょうし」

「白銀少佐が声を掛けてくれなかったら施しの存在にも気付かなかったと思います」

「ですからパーティーに参加する前に、一言 お礼の言葉を述べたかったのですわ~」

「ほぅ」

「巽が!」×2

「!? ちッ、ちょっと待て!! ななな何で私ダケなんだよ!?」

「おいおい、人を指差して良いモンじゃないぞ~?」

「そうですね……失礼しました」

「では白銀少佐~、行くとしませんか~?」

「そうだね」

「……ッ……(は、ハメられた!?)」


なるほどナルホド。斯衛トリオは礼が言いたかったダケだったのね……ビックリさせてくれちゃって。

確かに冥夜の性格を考えると積極的に自分の祝いの場に人を誘ったりはしないだろう。オルタ世界だと尚更だ。

よって彼女に仕える身である神代達にとって、ソレに参加できるのは礼を言うほど喜ばしい事だったのか~。

そう心の中で納得していると、自分も礼を言ったというのに発言の全てを神代に押し付けた巴と戎。

見るからに強引な振りだと思ったけど、対して顔を真っ赤にする神代……乗ってやるとは空気が読める娘だな。

生憎 面白いネタでは無いので反応はしてやれず、俺は軽く受け流すに留める事にした。

されど俺の受け止めを当然のように受容している巴と戎。け、計算づく……だと? なかなか侮れない娘らだ。

……さて置き。コレで用が済んだらしく、俺はニコニコした戎に袖を引っ張られながら歩みを再開した。


「そう言えば、真那さんが帝都に行ってて来れないのが残念だよな~」

「!?」

「んっ? どうしたんだ戎。急に立ち止まって」


――――と言うか唐突に振り向かれると、頬を膨らましながら袖から手を放されたんですけど?


「なッ、何でもありませんわ~っ」

「???? ……なら良いんだけどさ」

「(た、たたた巽ッ。貴女も名前で呼んで貰える様に聞いてみれば?)」

「(なら雪乃が言えば良いだろ!? どうせ便乗する気なクセにッ!)」

「(うぐっ)」

「(くそ~っ、真那様はどう遣ったんだろう? ……ズルいよぉ)」




……




…………




……数分後PXにて。


「久しぶりだな我が娘よ」

「あははは。……と言っても10日振り位だけどね~?」(33話 参照)

「暫く見ないうちに背が伸びたのでは無いのか?」

「う~ん。0.05ミリ位は伸びたかも知れないけど、今日は前より少し高い靴を履いてるからだと思うよ」

「ふぅむ成る程……それは盲点だったな」

「それにしても、どうして父さんが此処に?」

「シロガネ タケル君から香月副司令 経由で促されてね」

「!? し、白銀少佐が……?」

「うむ。しがない貿易会社の人間 如きが国連軍の少佐殿の誘いを断ってしまう訳には ゆくまい?
 よって忙しい中こうしてワザワザ駆けつけたと言う事だ。大事な息子の様な娘の祝いの場でも有るしな」

「……父さん……」

「ちょっ!? 人を悪者みたいに言わんで下さいよッ! 鎧衣もちょっとは疑問に思え!!」

「軍属でない年上の者の苗字を呼び捨てにするとは、少佐と言う階級はそれ程 立派なのかね?」

「いやいや貴方に言ったんじゃ無いですって!!」

「ややこしいな。ならば娘の方は名前で呼べば良いではないか」

「なぬ~っ?」

「えぇっ!?」


斯衛トリオを背後にPXに辿り着くと、其処に居たのは先ずB分隊が全員+まりもちゃん。

そしてカウンター越しで料理を作っている京塚のオバハンと良く見る厨房の職員さんが数名。

きっとB分隊のパーティーでの調理を手伝ってくれるんだろう。有り難い限りですな~。

さて置き……何とPXには既に左近さんの姿も有り、娘と絶賛会話中だった。

けど2人の性格 故にか会話に参加し難い雰囲気が有ったとは言え……ついツッコミも兼ねて割り込んでしまう俺。

そして早くもペースを掴まれてしまったのか、何時の間にか鎧衣(娘)を名で呼ぶ流れになってしまった。

流石に父親の前で娘さんを名で呼ぶには抵抗が有るけど、左近さんからの性格からして大丈夫かな?

そうなれば原作通りにゆく為にも名で呼びたいトコロだが……鎧衣(娘)の気持ちはどうなる?

いや、俺も涼宮姉妹みたく鎧衣(娘)なんて表現は嫌ですよ? そう思いながら彼女の方を見てみると……


「――――ッ!?」

「……ッ……」←上目遣い


≪じ~~っ……≫


「(り、臨戦態勢!?)」

「さあシロガネ タケル君。呼んでやり給え」

「ちょっと周囲の視線が気になるんですがねェ?」

「私の知った事では無いよ」

「うぐッ」

「何を躊躇う。君は親の目の前で娘に恥を掻かすつもりかね?」

「既に色々な意味で掻いてる気が……」

『…………』←鎧衣親子

「分かりましたよ……美琴ッ。今度からは、こう呼んで良いかい?」

「は、はい~ッ!」

「やれやれ。親の目の前で随分と図々しい青年だ」

「いやいや半分はアンタの所為でしょ!?」

「(父さんと白銀少佐、仲が良さそうだなあ~。どう言う関係なんだろう?)」


――――呆れた様子で溜息を吐く左近さんに叫ぶ様なツッコミを入れる一方、冥夜が斯衛トリオに気付いた。


「!? そなた達……」

「冥夜様……」×3

「白銀少佐と来たと言う事は……そう言う事なのだな?」

『…………』←黙って頷く斯衛トリオ

「ならば致仕方有るまい。良く来てくれたな(……白が……タケルに感謝せねば)」

「はいッ! 冥夜様……任官おめでとう御座います!!」

「神代……」

「この日が訪れる事、私達は待ちわびておりましたッ!」

「巴……」

「今後の衛士としての武運を心より御祈り申し上げますわ~っ!」

「戎……そなた達に感謝を」

「勿体無いお言葉ですッ!」×3

「いや今回は畏まらずとも良いぞ。肩の力を抜いてくれ」

「そうそう。パーティーってのは そう言うモンだぞ~?」

「わ、分かりました」

「仕方ありませんね」

「いえいえ。たまには息抜きも必要ですわよ~? 雪乃」

「……(戎は余り何時もと変わってない気がするけどな……)」


――――こう左近さんに取られたペースを取り戻す為に冥夜達の会話に割り込んだが、更に別の場で動きが出る。


「此方です総理」

「総理と呼ぶのは止めてくれ給え巌谷君。今や内閣は殆ど機能していない状態だからな」

「ですが……」

「それに私は総理ではなく"父"として足を運んだのだ。其処を履き違えて貰っては困る」

「はッ。失礼致しました」

「!? あ、あれは……」

「榊 内閣総理大臣!?」

『!?!?』

「(なん……だと?)」


≪――――ザワッ!!!!≫


巌谷さんが連れて来た男性を見て、まりもちゃんが呟き冥夜が叫ぶ事で皆に電流が走った様に見えた。

俺は僅かながらも期待していたので顔には出なかったが、殿下の時よりは動揺しているのかもしれない。

政威大将軍と言われてもシックリ来ないが内閣総理大臣は現代日本のトップとして当たり前の如く存在するしな。

それはそうと……来ちゃったのかよ!? 千鶴に対して申し訳 程度の祝いになればと巌谷さんに頼んだのにッ!

でも無理だろうから彼女に"やっぱダメだったよ"と延べる事で、多少は感謝して貰えればOKだったんだが……

まさかワザワザ娘の為に姿を現すとはね~。時間が時間じゃ無かったら大騒ぎになってる事だろう。

そんな注目の的の榊 総理は下側に淵の入った丸い眼鏡(千鶴のより小さい)を掛けており、やはり似ている。

年齢的に彼女と違って冷静そうな雰囲気を感じるが、そうでもないと"この世界"の首相は務まらないだろう。

そんな事を思いながら榊 総理を眺めて居ると、娘を発見した彼は無言で彼女の方へと近付いて行った。


「あっ……」

「久しぶりだな」

「う、うん」

「暫く見ないうちに色々と成長した様だ」

「そんな事……」

「衛士としては"これから"なんだろうがな」

「……ッ……」

「――――ともかく」

「!?」

「心配を掛けたな」

「……お父さんッ」


父と(恐らく)久しぶりの再会を果たした千鶴は、軽く言葉を交わすと静かに彼の胸に顔を埋めた。

きっと泣いてしまってるんだろう。彼女は父に反発して徴兵免除を蹴り、遂に衛士となったんだが……

流石に命が失われる可能性が大となれば心配だったらしく、彼を見て安心するが余り涙が零れたと。

その親子再会の様子は普通に感動的であり、俺を含め皆 2人の様子を静かに眺めているしかなかった。

されど何時までも"このまま"では話が進まないので、俺は満足気に息を漏らしている巌谷さんに声を掛けた。


「巌谷中佐 巌谷中佐」

「何だね?」

「良く総理が此処に来れましたね」

「私も君に頼まれたから促したダケで有って大きな期待はしていなかったんだがな」


――――唯依が千鶴の立場だったら巌谷さんが総理ポジションでも確実に来てたと思うのは置いておいて。


「なら何で?」

「鎧衣課長と言いソレだけ白銀少佐の影響力が強いと言う事なんだろう」

「はぁ」

「しかし良い光景だな」

「そうですねェ」


いやいや俺的には良く"僅か数時間"で手間隙掛からず連れて来れた事を聞きたかったんスけど?

でも話して貰っても長くなりそうなのでスルーする事にするが……千鶴と総理の様子は良いモンだ。

原作であれば総理は死んでしまうし、自分の故郷の事をも思い出すしで少しジワっと来てしまった。

もし彼が死んでしまっていれば今の総理のポジションが俺に変わったのにと言う複雑さも僅かに込めて。


「!?(……少し悲痛な表情を……そうか。彼は今より若くして全てを失ってしまった様だからな……)」

「……(眼鏡を取ってる千鶴に抱き付かれているとは少し羨ましいZE畜生~ッ)」

「……(だが其処が唯依ちゃんのつけ込む隙だと思うんだが……まだまだ先の事だろうなァ)」

「ふむ……君が"白銀 武"か?」

「!? はっ! そうであります!!」

「噂は私の方まで届いている。娘が良く世話になった様だな」

「それ程でも有りませんッ!」

「私への配慮やクーデターでの采配に置いても……だが今は聞ける雰囲気でも無さそうだな」

『…………』←その他大勢の皆様

「み、みたいですね」

「後に君とは腰を据えて話してみたいモノだ」

「まぁ今回は私などより娘さんと積もる話でもして下さい」

「うむ……折角 招待された娘の祝いの場だ。そうさせて貰うとしよう」

「有難う御座います」

「礼を言うのは此方の方だ。感謝する白銀少佐」

「はッ! 勿体無い御言葉です」


――――総理に礼を言って貰って感動した勢いで敬礼を返すと、彼は右手を差し出して来た。


「……(さ、流石は白銀少佐ね……七光りが嫌で避けてた私と違って"対等"にしか見えない)」

「暫し表舞台からは姿を消さざるを得なく不甲斐ない限りで申し訳ないが、今後の活躍を楽しみにしている。
 やがて再び表だって務める機会が有れば、出来る範囲の支援をさせて貰うつもりだ。"白銀 武"君」

「き、期待して待たせて頂きます」

「それにしても……君の影響力は巌谷君の言う様に本当に凄いのだな」

「はい?」


後に小耳に挟んだ話によるとクーデター後、榊 総理は自ら実権を殿下にへと移す様 配慮していたらしい。

クーデターを起こしてしまった事の責任を取ったらしいが、こうして命が有るダケで全然良いですよねェ?

さて置き握手を終えて一歩下がった榊 総理は妙な事を言い俺の後方に視線を移したので、振り返ってみると……


≪たったったったっ……≫


「お~い、たま~っ! ようやく任官出来たそうだな~っ?」

「ぱ……パパ!?」

『た、珠瀬事務次官ッ!』

「(いやアンタは来ちゃマジで不味いだろ!?)」


――――手を振りながら満面の笑みでタマパパが走って来る。コレで招待を考えた全員が来てくれました。


「……ッ……」

「……(慧?)」

「うお~ッ、たま~っ。出撃としたと聞いてパパは心配したんだぞ~?」

「い、いいい今は止めて~っ! 皆が見てるよ~ッ」


――――よって今回のパーティーは大成功かな? ……と感じたが慧が少し寂しそうに見えた。


「ふむ……(これも彼の人徳が成せる業……か)」

「どうしたの~? 父さん」

「何でも無いぞ。それよりツチノコの存在の有無の考察を続けるとしよう」

「うんっ!」

「……(流石に殿下には声を掛け無かった様だが……有り得るな)」




……




…………




……30分後。


「どうぞ~」

「ありがと」


全員がPXに集まったという事で、パーティーは慎ましく開始されており数十分が経過していた。

参加者をオサライすると先ずB分隊5名。俺・中尉・斯衛トリオ・課長・総理・事務次官・京塚さん達。

……んでもって何故か ゆーこさんも遅れて参加しており、俺は彼女に酒を注いで機嫌を取っている。

されど他のメンバーの様子が気になっているので、周囲を見渡す事による各々の様子観察は忘れない。


先ず冥夜は巴と戎を左右に座り、笑顔で話し掛ける2人に対して苦笑しながら受け応えている。

んで千鶴と珠瀬と鎧衣……いや美琴は互いに父親との会話を未だに続けており、その話が潰える事は無い。

ちなみに美琴は先日 左近さんと顔を合わせていたが、その時は僅かな時間ダケだったらしい。

ソレは(もう面倒だから呼称コレで良いや)たま も同じだ。先日は事務次官の来訪で有って親子の面会とは違う。

そしてまりもちゃんは何故か居座っている巌谷さんと話しており、時折 互いに笑みも見られている。

傍から見れば巌谷さんが彼女を口説いている様に見えなくも無いが、戦術機に関しての情報交換だろうね。

何せ まりもちゃんは技量が俺の知る限りでは最も高く、知識に関しては俺以上に有るからな~。

そして慧は……何故か神代と会話していた。恐らく不知火・カスタムをテストした者同士だからだろう。

互いの戦い方も妙に合っている事から、気が合うのかもしれない。う~ん、意外な事実の発覚ですねェ。


「ところで」

「何よ?」

「なんでゆーこさんが居るんです?」

「あたしは"一応"まりもの任官祝いで来たのよ。時間を無理矢理作って」

「あァ……成る程~」

「アンタひょっとして榊達の事しか考えて無かった?」

「!? せ、正解です」

「総理ダケじゃなく事務次官まで連れて来たのは評価できるけど、詰めが甘かったわね~」

「うぐッ」


――――正直 盲点だったZE。冥夜の言葉でB分隊ダケのパーティーだと思い込んでしまっていた。


「まぁ安心しなさい。流石に要人相手に絡んだりはしないから」

「それにダブルオー的な意味で今は"忙しい"ですね~」

「そう言う事」

「じゃあ俺ちょっと行って来ま~す」

「はいはい」


全ての酒を注ぎ終えると、俺はビンを片手に立ち上がりソレをカウンターに返すと方向転換。

そして会話が終わり冥夜達と合流した神代と擦れ違いつつ、一人となってしまった慧に近付いてゆく。

実は"このタイミング"をずっと計っており、ゆーこさんも分かって居たのか酒のペースを合わせてくれていた。

妙な所で気が利くよねぇ? 彼女ってば。……それはそうと、慧は俺に気付き少しダケ瞳を見開いていた。


「少佐?」

「よォ~、楽しんでるか~?」

「まぁまぁ……かな。何時もより食事も美味しいし」

「それなら良かった」

「……ねぇ」

「何だね?」

「凄くない?」

「なにが?」

「総理ダケじゃなく事務次官まで来てる」

「確かに凄いよな~」

「呼んだのは少佐でしょ?」

「そうだけど後者は半分以上の成分が親バカの成せる業だったと思うぞ。あと今は少佐じゃなくて武でいい」

「……ッ……武……」

「今度は何?」

「私達……頑張れるかな?」

「そりゃ~勿論。既にラストまで進んで生きて帰るか死ぬかの瀬戸際のレベルって辺りまで鮮明に分かるぞ」

「!? なんか……詳しいね。それに……幾ら何でも過大評価し過ぎだし……酔ってる?」

「付き合わされて多少」

「やっぱり」

「そっちこそ何だよ? 妙に弱気じゃないか」

「だってホラ……今日 武の部隊に任官した3人……」

「あァ~、ライト少尉達の事か?」

「うん。始めは米軍の衛士って事でバカにしてたけど……強いと思う」

「BETAとの実戦は経験してないから何とも言えないけどね(……しかしハッキリ言うなコイツ)」

「でも……気迫が私達とまるで違った」

「気迫ねェ」


≪貴官にも国連軍への任官と共に、突撃機動部隊への編入を言い渡す≫

≪はっ! このブリザ・スリーブスッ、己の肉が骨から削ぎ取れるまで戦います!!≫

≪――――ザワッ!!!!≫

≪(ブリザめ……強化し過ぎたか?)≫←勿論 武


「前の2人はともかく、あの人ダケは大人しそうだと思ったんだけど……」

「……(そう言えば極めつけのブリザの台詞が士官達の評価を上げてたんだったな~)」

「私は緊張してて、ハッ……ってしか言えなかった」

「いやソレが普通だから」

「妬ましい」

「またそれかッ! ともかく気にするなよ」

「けど」

「大丈夫大丈夫。腕は全然 変わらないから自信持てって。ライト少尉達と違って若いんだし」


――――と言うか米軍3人娘の実際の腕の程は明日確認するから分からないけどねェ。


「あっ」

「ん?」

「今の言葉で自信ついたかも?」

「なら良かった(……ってか疑問系……)」

「私はまだ若い」キリッ

「そっちかよ!?」

「それよりコレ美味しいよ?」

「どれどれ~」

「(……武……有難う)」

「(さっき迄の話は"それより"扱いかよ……まァ良いか)」


こうして身内も知人も来なかった彩峰を元気付けるのも兼ねながら、彼女と残りのパーティーの時間を過ごした。

生憎 俺の"余計な世話"の効果が有ったかどうかは疑問だったが……何時もの会話が出来て居るので大丈夫か?

しかし慧が"こう感じた"とはなァ……ブリザの台詞は熱血な性格から来たモンだろうが、勘違いって恐ろしいね。


「いやはや、神宮司中尉も其処までXM3に精通していたとは」

「ふふふっ。殆どは白銀少佐の受け売りですが」

「されど彼から仕入れていない意外な情報もあって有益でしたよ」

「恐縮です中佐」

「では難しい話など終いにして、どうですかね? 一杯」

「い、いえ私は……」

「そう言わずに。彼も飲んでいる様ですし、今は無礼講の場ですよ?」

「(白銀さんも)……ッ……だ、だったら御言葉に甘えて……」

「待ちなさい!!」

「香月副司令ッ?」

「生憎だけど、この娘は酒癖が悪いから飲ませるのはオススメしません事よ?」

「むっ……そ、そうなのか?」

「生憎お酒を飲んだ後の事は覚えていた試しが無くって……良く分かりません」

「どうやら命拾いした様ね~、巌谷中佐」


≪――――ぞくっ≫


「わ、わはははは。そんな大袈裟な」

「そうよ夕……そうですよ副司令ッ」

「とにかくコレは、あたしが頂き~っ。ゴクゴクゴクゴク」

「おぉ~、良い飲みっぷりですな」

「では巌谷中佐もどうぞ」

「おっ? すみませんな神宮司中尉」


――――ちなみに ゆーこさんがパーティーに来た理由は殆ど"この為"だったらしい。狂犬の名を忘れていたッ!




……




…………




「それじゃ~最後は3本締めで終えましょうッ!」

「面倒臭いわねェ」


≪ワイワイ ガヤガヤ≫


「(……戻って来てみれば、こんな事を……)」


壁|‐゚) ←月詠さん


「(冥夜様……楽しまれている様子で何よりだ)」


壁|ミ


「(……だが……)」

「よォ~っ!!」


≪パパパン パパパン パパパン パン≫


orz ←月詠さん


「(……私も……参加したかった……)」




……




…………




……2時間後。


「ねぇ放置プレイッ? これが噂の放置プレイなの!? 姉さん!!」

「絶対に違うと思うから落ち着きなさい」

「嗚呼……折角 編成の手続きを終わらせてたのに~っ! 何時 訪ねて来てくれるの!?」

「五月蝿いから早く寝てよテレサ……御願いだから」←されど勝負下着である




●戯言●
今回は突っ込みどころ満載で私も無理が有ると思った事が多々有ります。特に総理とか事務次官とか。


暁せんべい氏によるウォーケン姉妹です。こんな容姿を想像して御読み下さい!
http://www002.upp.so-net.ne.jp/shinjigate/itadakimono-cg-walken.htm

タニシ氏によるライト・ラーニング少尉です。フレアとブリザも気になります!
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=7660249



[3960] これはひどいオルタネイティヴ47(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/01/26 07:13
これはひどいオルタネイティヴ47(前編)




2001年12月10日 早朝


「すぅ……すぅ……」

「まただよ(笑)」


何時の間にかオナジミになってしまったが、自然と目が覚め視線を移してみると、
布団の中に"持ち前の影の薄さ"を活かして何時の間にか進入して来た霞がスヤスヤと寝息を立てている。

12月01日から始まり、まだ片手で数えられる程度の回数でしか無いが俺も慣れたモンだ。(35話 参照)

されど朝起こしたり飯を食べさせてくれるのは良いとして、何故 彼女はベッドに潜り込むんだろうか?

前者は"鑑 純夏"の脳をリーディングして浮かんだビジョンを自分が再現しようとしたからだろうが……

確か後者は原作だと ゆーこさんに命令されて遣ってたハズ。……でも俺は そんな話は聞いてないぞッ?

よって俺に話を通さなかった線が強いのかな? 彼女が潜り込んで来た その日に数式回収に旅立ったし。

でも"数式"は既に回収しているので霞が"此処"で寝ている意味が良く分からん。まぁ……眼福だし別に良いか。


≪――――ガチャッ≫


「武さん……あ、あのッ」

「お、おはようございます」

「おィ~ッス。おはよう」


そしてネボけている霞の支度を手伝いドアを開くと、出迎えてくれるのは2人の美人さん。

言うまでも無く唯依とイリーナちゃんであり、霞と同様コレも定着してしまいそうな気がする。

唯依は真面目さから来てるっぽいのでともかく、イリーナちゃんが訪れているのは妙なんだが……

きっと俺を慕ってくれているんだろう、何気にキス☆もしてるし。……すみません調子こきました。


「今日は霞も朝飯を ど~だ? 忙しくなかったらで良いけど」

「大丈夫です……私がするべき"明日"への仕事は殆ど終わっていますから……」

「だったら決まりだな」

「はい、お兄さん」

「……ッ!?」(ドキュン)

「(お、お兄さん!?)」×2


――――ちちちちょっと霞、何を言っているだァーッ!? 激しく動揺したが相変わらず顔には出てない俺。


「霞」

「は、はい?」

「ゆーこさんに何か言われたか?」

「いえ特には(……私が篁さんの思考を読んだダケですし)」(25話 参照)

「そっか~」


≪社。数式の回収は終わったけど、これからも白銀の所で寝たければ好きにしなさい(……靡けば儲けモノね)≫


「……(何か嗾けられた様な気はしましたけど)」

「まあ、お兄さんって呼びたきゃ好きに呼んで良いぞ? 変な誤解されるのは御免だけどね」

「あ、有難う御座います」

「別に礼なんて良いって。……じゃあ、2人とも行こうか~?」

「はいッ」×2


≪まぁ、細かい事は気にしなくて良い。 とにかく"呼ばれた"からには純夏を助ける。
 そんでもって、BETAをやっつける! ……だろっ?≫(5話 参照)


「(相変わらず白銀さんは、優しくて冷静な人……でも、やっぱり私には魅力が……残念です……)」

「(社の言葉に対する武さんの反応……彼の言った通り、彼女は武さんの妹みたいな存在なのね)」

「(白銀さんの部屋を訪ねてしまうようになったけど……何も言われないという事は構わないのかしら?)」


……まさか、このタイミングで霞に"お兄さん"と呼ばれるとは予想外だったぜッ。萌え殺す気ですか?

されど唯依とイリーナちゃんも居るので、今は兄貴風を吹かせて霞の頭を撫でたり出来そうな空気じゃない。

今後2人で遊んだ時に十分モエモエする事にして、既に待っていると思われる まりもちゃん達と合流しよう。
(ちなみに まりもちゃんはトライアルに参加する元B分隊の指導が残って居るので午後は空いていないらしい)

そんなワケで自然とライト・フレア・ブリザに妹分 改め社 霞を紹介する事から始めようとしたんだけれども。


「た、大将。その娘は どちらさんで?」

「霞~ッ。自己紹介」

「はい……初めまして……社 霞です」

「(ど、どうして こんなに可愛い……いえ幼い娘が横浜基地に……?)」←ライト

「!?!?」

「……って、どうしたのよ? ブリザ」

「かッ、可愛い……!!」


≪――――がばぁっ!!!!≫


「ブリザ少尉ッ?」

「あが~っ」


……ブリザにとって霞の可愛さはツボだったらしく、イキナリ抱き付いてしまうハプニングが有った。

コレは自重しろと言いたいトコロだが、俺も"本当の意味"で霞の姿を初めて見たら同じ事をしたかもしれん。

また正気を取り戻したブリザは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたので、特に責める事はしなかった。

そんな彼女も背丈は涼宮(妹)と同じ位とは言え、しっかり霞の顔を胸で挟んでいたので侮れないぜッ!!




……




…………




2001年12月10日 午前


朝食を終えると霞&イリーナちゃんと別れ、俺達8人はシミュレータールームに集まっていた。

メンバーは俺・唯依・まりもちゃん・ウォーケン姉妹・米軍3人娘となっており、今後お馴染みとなるだろう。

何気に元B分隊も別の場所で自主訓練中。明日のトライアルに備えて まりもちゃんが与えた課題を行っている。

さて置き。今現在は正面のライト・フレア・ブリザは勿論の事、俺と左右の篁&まりもちゃんも強化装備姿だ。

正面の3人は距離があるのでともかく、左右の2人は真横に居るので女の色気がヒシヒシと伝わってくるZE。

んで……今から何をするのかと言うと……大まかなライト達3人の技量を測ろうと言うワケだ。主に俺が直々に。


「じゃあ、早速 君たち3人が"どれ位"かを試させて貰うよ」

「――――はっ!」×3

「そうだな……先ずは一人づつ俺が相手をしよう」

「えぇっ!?」

「大将が直々に? そりゃ有り難いですけど……」

「し、勝負になるのかな……?」

「(確かに一理 有るわね)」

「(私も30秒 持たなかったし……ハァ)」

「はははっ、大丈夫だよ。俺はXM3無しの撃震に乗るから、不知火S型とだと勝負にはなるだろ?」

「そう言う事ならば……」

「ま、負けないように頑張りますよ!」

「き……緊張します」


相変わらず熱血なのか小心者なのか良く分からない反応をする3人だけど、俺も十分に緊張している。

何せ一人の相手をしている時に6人のギャラリーの目に入るのだッ。しかも誤って負けると恥ずかし過ぎる。

よって撃破されても何とでも言い訳の利く"撃震"を選択するまで落ちぶれた俺を、どうか許してください。


「武くんは撃震を選択……ねぇ、姉さんコレって~」

「一昨日のデータ掲示に続いて、彼女達の常識を根本的に覆すつもりのようね」

「う~ん……テクニック次第では旧OSの撃震でもXM3仕様の不知火S型を撃墜できるって?」

「えぇ。機体の性能は間違いなく重要だけど、彼の生み出した新たな機動概念は体でも経験しないとね」

「カラダで体験……何だか卑猥な響き」

「馬鹿な事 言うんじゃないの。あと流石に今は"くん付け"は止めなさい」

「は~い」


――――先ずはライトが相手になる様に指示すると彼女は筐体の中へと入ってゆき、俺も視線を背に続く。


「如何見られますか? 神宮司中尉」

「それは勝敗に ついての話ですか?」

「両方の意味で……ですね」

「勝負については不知火S型に大きな分があるでしょうが、少佐の意図は解りかねます」

「そ……そうですよね」

「でも不思議と白銀さんが負けるような気はしません」

「!? 確かに性能差を考えると、S型でなくとも撃震が不知火に抗うのは殆ど不可能なのですが……」

「はい。例え撃破されても不思議には感じないでしょうが、彼なら理屈無しに何とか出来ると思えるんです」

「信頼しているのですね、武さんを」

「生憎 篁中尉ほどでは有りませんが」

「じ、神宮司中尉ッ!」

「ふふふっ。私も早く少佐と共に戦場に赴きたいモノです」

「うッ……(そ、そう言えば以前 頭を撫でて貰っていた所を……)」(36話 前編 参照)

「ともかく、今は様子を見て意図を考えるしか有りませんね」

「は、はい」

「……(きっと私達にも伝えたい"何か"有るんだわ。しっかり見る事にしないと)」




……




…………




……俺が乗る機体は撃震。不知火S型と比べてしまえば( 凸)とガン●ムくらいに差が有るだろうねェ。

されど負けないに越した事は無いので気合は入れるべき。よって搭乗機はアレでも肖る者は強い人にしよう。

見た目ダケなら撃震は旧型の量産機とは思えなくらい格好良いしね。いや戦術機が全体的にイカついのだ。


「なっちゃいないッ! 本当になっちゃいないぞ!?」

『そ、そんなッ!? この性能差なのに捉えられないなんて……!!』

「酔舞……(再現江湖デッドリーウェイブッ!!)」

『くっ!? し……しまった!!』


――――さて置き。模擬戦&肖りが始まると俺は突撃前衛 仕様のライトの機体を何とか"爆発!!"し。


「どうしたッ? 俺は此処だ、此処に居る!!」

『くそ~ッ、一発くらい当たってくれたって……』

「とぉおっ!(ダークネスショット!!)」

『うぁっ!? 嘘だろッ? あ、あの体勢で当てられるなんて……!!』


――――必死の思いで両手の36ミリによる弾幕を掻い潜った苦し紛れの反撃でフレア機を墜とし。


「ほ~らほら、もっと良く狙わないかッ!」

『一昨日聞いたキャンセル……白銀少佐は、その機体でも"似た様な事"が出来るの!?』

「逃がしはしないぞ!!」

『くぅっ!?(……ダメ、まだまだ乗りこなせないみたい)』


――――運良く接近戦を警戒して180ミリを多用して来たブリザも、射撃を避けつつ硬直を取って仕留めた。


「ブリザ機 致命的損傷・大破。状況終了」

「ホントに勝っちゃった。やっぱり凄いね姉さん」

「……全くだわ」

「戦闘中は相変わらず雰囲気が変わってるけど、其処が また良いんだよね~」


ちなみに最も撃破に苦労したのはライト機。主に接近戦を挑んで来たのでマルチ・ランチャーが脅威だった。

でも適した使い方をまだ分かっていなかったので、唐突に宙で"変な機動"をする事で彼女の注意を誘い……

撃震を加速させ一気に距離を詰め、彼女がマルチ&頭バルを使う"判断"を下す前に仕留めたと言うワケだ。

それが幸いしてかフレアとブリザは接近戦を警戒してくれたので、後は"師匠"の肖りも有り何とかなりました。


「さ、流石は"白銀少佐"ですね」←唯依

「はい(……いくらサブ射撃の概念に慣れていないとは言え……)」

「……(ライト少尉達の腕は消して悪くは無かったと言うのにッ)」

「……(気迫も断然 私達とは違う。やっぱり彼が潜り抜けた道は……)」


――――しかしながら、模擬戦が終わったというのに肖りによる"熱さ"が消えていなかった結果。


「さあッ、次々と掛かって来んかぁ!!」

『!?』×3

「何なら3機同時でも構わないぞ!?」

『そ、それなら勝ち目は有るかもッ!』

『アハハハ。こうも実力も自信も違いすぎると清々しいねェ』

『もう……恥は忍んでいられません』


――――その場のノリだけで3機同時に相手にすると言い出してしまい、普通にライト達が乗った事で。


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


「ぐはっ!? な、何だと こんな馬鹿な……この、白銀 武が……!!」

『白銀機 致命的損傷・大破。状況終了』

「見事だ。そのセンス、やはり野(や)にして置くには惜しかった……」

『あ、有難う御座います!』

『流石に勝てて当然だと思いますけどねェ』

『……(でも自信には……繋がりました)』


当然 勝てるハズも無くアッサリと墜とされちゃったんだ☆ 威勢良く言った反面 恥ずかし過ぎる。

内容としては何とかフレアとブリザの射撃を避けている最中、ライトに距離を詰められたカンジです。

でも苦し紛れに3人を労って締めてみる。俺と落とせたのは君達の連携が凄過ぎるダケなんだ。コレ決定。


「成る程……(流石は武さんね)」

「ま、まさか彼女達に"自信を付けさせる為ダケ"に自ら勝てない勝負に挑むなんて」

「本来 斯衛であれ佐官にもなると立場的なモノもあり、下仕官と1対1で戦う事さえ稀です」

「それなのに部下の為に自ら負けようとするなど、私が同じ立場でも行ったかどうか……」

「されど戦うからには実戦と同じ様に全力で挑む……あの人らしいです」

「あの気迫は3体1でさえ覆すモノを感じました(……初めて白銀さんの機動を見た時の様に……)」


ともかく相手をしてみたトコロ、大体ライト達の技量は涼宮(妹)達 以上 宗像&風間 未満と言ったトコロ。

二十歳を越えている年齢にしては宗像&風間と比べると分が悪いが、逆にA-01が凄過ぎるとも言える。

まぁ米国からアメリカ人でも無いのに日本での戦いに漕ぎ着けたのは簡単な経緯じゃ無いだろうし仕方ないか。

……とは言えシッカリ鍛えてやれば問題なくヴォールク・データもクリア出来るレベルなのは間違い無かった。

原作だと皆が死ななくてすんだ技量だった言うのに、様々なトラブルで戦死してしまっている印象が有ったな~。

つまり未来を知る俺の采配 次第で彼女達は一人も死なせずに済ませるに限る。旨く行くかは全く知らんけど。

さて置き。肖った人が人だったので小さくなって筐体を出てくると……唯依がパタパタと近付いて来ますよ?

強化装備姿なので目のやり場に困るのも さて置き。彼女は合成茶の入ったペットボトルを差し出してくださる。


「武さん、御疲れ様でした」←小声で

「おっ? 有難う」

「……どうでしたか? 彼女達は」

「ゴクゴクゴク……流石に元米軍のエリートだけ有って悪くは無いね。早速ヴォールク・データに移ろう」

「分かりました」

「飲む?」

「け、結構ですッ」


――――俺の言葉に顔を真っ赤にする唯依。彼女を からかう巌谷さんの気持ちが何だか理解 出来る気がする。


「3人とも少し休んだら次のステップに移るよ~?」

「はっ!」×3

「ちょっと気の早い話かもしれないけど、ヴォールク・データの攻略を始める事にする。
 でも初っ端は それぞれ俺達3人の背中を追ってくれるダケで良い。慣れたらフォローもして貰う」

「で、出来るのかな? あのヴォールク・データをッ」

「まぁ焦らず行こうよ~ライト」

「最初は……後を追うダケで良いそうだし……」

「じゃあ、先ずは誰が俺の後ろに付くかだけど?」

「!? そ、そそそそれなら私が希望したいです!!」

「勝手に決めるなよライトッ! 大将の後ろは私が――――」

「あ、あの……私もタケルさんの……」

「おいおい。俺は一人しか居ないんだZE?」


続いてヴォールク・データに移ろうとする中、俺の背後のポジションを巡って言い争いを始める3人娘。

どうしたこうなった? どうしてこうなった? でも普通に嬉しいな、俺の部下が こんなにも増えたのだから。

以前 連携を組んでいる様子を羨ましそうに眺めていた自分が嘘の様だ。よって今の光景は逆に微笑ましい。

そんな現在の俺は先程の肖りの恥ずかしさでナイーブになっていたのか、思いもしない事を呟いてしまった。


「"仲間"……か……」

「……ッ?」×2

「……もう再度と……そう思っていたんだがな……」(by黒い剣士)

「!?!?」×2


――――ちなみにコレは無意識で言った台詞な上、唯依&まりもちゃんに聞かれた事にも気付かなかった俺。


「と言う訳で白銀さんッ! 私が背後に位置取らせて頂きます!!」

「何が"と言う訳で"か分からないけど、ライト少尉だね? 了解・了解」

「ちぇッ、仕方ないな~。宜しく頼みます"篁 中尉"」

「……ジャンケン……負けてしまいました」

「……(私達と同じ事で決めたのね)」×2

「……(今の武さんの言葉……き、聞き間違いじゃ無いわよねッ? 仲間を もう"二度と"なんて!!)」

「……(さ、流石に心の中に閉まっては置けないわ。夕呼にも伝えて置こうかしら? 今の言葉……)」

「んっ? 何ボーッとしてるんだ? 唯依。フレア少尉の事 無視しちゃダメだって」

「えっ!? あっ……す、すみません」

「ホラまりもちゃ……いや神宮司 中尉も」

「し、失礼しましたッ」




……




…………




……3時間後。今回は時間も無いと言う事で、ライト達は俺達の背を追いハイヴ内を進む事だけを心掛けた。

しかし最初は必要最低限の機動にすら翻弄され付いて行けず、BETAに撃破される事が多々有ったのだが……

次第に不知火S型に慣れ始めたのか、下層までは付いてくる事が出来る様になっていた。流石ですね~マジで。

されど今は反応炉への到達は勿論、連携への組み込みも当然 無理だが、訓練を重ねて成長して貰うしかない。


「さて……今回は こんなトコかな~? 俺達は午後に予定が有るから抜けちゃうけど、
 ライト少尉たちは昼食を終えても引き続きハイヴ内での"機動"に置いて訓練を続けて置いてくれ」

「了解!!」×3

「セレナ中尉・テレサ中尉。宜しく御願いしますね?」

「畏まりました」

「任せてくださ~い」

「じゃあ、反省会も兼ねて皆で飯にしようか?」

「……ッ……」×2

「んっ? 今度は どうしたの? 2人とも」

「えっと、その……武さん。私達には急遽 私用が出来まして」

「昼食は後ほど摂ろうかと思っています。申し訳 有りません」

「仕様って何さ?」

「!? そ、それは――――」

「まぁ良いか。午後には遅れないでくれよ?」

「はいっ!」

「それでは失礼します、白銀さん」


昼食を断り、敬礼後 去ってゆく唯依&まりもちゃん。そう言えば訓練の合間に何かボソボソ話してた気がする。

も、もしかして隠れて俺が"痛い奴"とか言ってたんじゃ!? 彼女達に限ってソレは無いだろうが気になるZE。

しかしCOOLな俺は深く訪ねない事を選択すると、2人は並んで その場を歩き去って行ったのだった。まる。




……以下2時間前の出来事。




≪――――ヴンッ≫


『突然の秘匿回線すみません、神宮司 中尉』

『篁中尉?』

『今日の朝食時での話によると、神宮司 中尉は香月 副司令と友人関係で有るとの話ですが?』

『一応そうですけど……それが何か?』

『先程の武さんの言葉で思う所が有り……その件で副司令に取次ぎを御願いしたいと思いまして』

『!?』

『何と言うか……あの言葉で彼の事が"どうしても"もっと知りたくなったんですッ』

『は、はあ』

『しかし直接 尋ねるのは躊躇われるので……副司令に聞いてみようかと……その……
 彼に聞かず、彼女には聞くと言うのも可笑しな話なのですが……それしか思い浮かばなくって』

『……(篁中尉も私と同じ事を考えて居たのね)』

『ですからっ』

『分かりました。午前の訓練が終わったら取り次いで見る事にしましょう』

『ほ、本当ですかッ?』

『正直なところ、私も非常に気になりました。……白銀さんの"あの言葉"……聞き違いでは有りません。
 今は皆を柔軟に受けて止めて居るようにしか見えませんが、過去に一体どんな惨状があったのか……』


≪9回で良い≫(謙虚)


『さ、されど今の武さんは私たちを受け入れてくれている。そう思って良いんでしょうか?』

『その答えも踏まえて副司令に尋ねてみるのが良いかもしれませんね』

『そうなれば、神宮司中尉ッ』

『はい。取り合えず今は訓練に集中する事にしましょう』




……




…………




……15分後。


「ハァ。お腹空いちゃったわね」

「此処の食事は美味しいからね。今から楽しみでならないよ」

「餡かけチャーハン……また食べたいです」

「でも、横浜に拾って貰って正解だったわねッ」

「あァ。大将に付いて行けばハイヴ制圧も夢じゃないさ。そうだろ? ブリザ」

「は、はい……タケルさんは……尊敬できる人です……」


午後はクーデターで知ってのとおり、イルマ・テスレフを俺と唯依で面会し味方に引き込でしまう予定だ。

突撃機動部隊 加入の暁にはライト達が五月蝿そうだけど、ソレさえ凌げば部隊は更に強力になる筈。

よって俺が危険な目に合わなくてもハイヴを落とせるのだッ! ゴメン嘘、皆は俺が必ず守るぜ?(キリッ)

ちなみに今は皆が着替え終えるのを待った後、昼飯を食うべくPXにへと向っている最中なんだが……


「ね、ねぇテレサ」

「何よ? 姉さん」

「今回もバレてない? バレてないわよね?」

「気になるなら直接 本人に聞いてみれば?」


――――午後や今後の実戦の事で頭が満杯な俺は、案の定 後ろの5名の話など全く耳に入らなかった。




●戯言●
仕事やら絆(+動画)やら浮気やら書き直しやらで大幅に更新が遅れてしまいました、面目ないです。
次回は副司令らの勘違いが炸裂&イルマさんの出番です。次回の更新は急ぎます。相変わらず微妙ですがorz
また呼称が所々変わっている時が有りますが(例:米軍3人娘→唯依=唯依)意図的なモノであります。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ47(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/01/29 14:19
これはひどいオルタネイティヴ47(後編)




2001年12月10日 正午


――――横浜基地 地下19階・香月 副司令の執務室にて。


「ふ~ん。珍しい組み合わせで何の用かと思ったら、白銀がそんな事を……ね」

「は、はい」

「本当なの~? まりも」

「篁中尉の言った事に間違いは無いわ。それとも私達が冗談を言ってるとでも思う?」

「……どうやらホントみたいね」

「香月副司令ッ!」

「何よ? 篁」

「どうか教えてください! 武さ……白銀少佐は過去にどんな道を歩んで来られたのですか!?」

「さっきの言葉からすれば過去に仲間を全て失い、以後 一人で戦う事を決めた"筈"に見受けられるけど……」

「しかも"あの若さ"で……全く想像がつきません」

「それなのに白銀さんは良く笑うし冗談も言う人。ひょっとして今の彼は仮面を被っているダケに過ぎないの?」

「…………」

「副司令!」

「夕呼っ!」

「――――それは教えられないわ」

「!?」×2

「残念だけどアンタ達2人が知れる権限は無いわ。どうしても知りたければ直接 本人に聞いてみる事ね」

「うぐっ(た、武さんに断られる事を考えると……)」

「くぅッ(……駄目……無理よ……聞ける筈が無いわ)」

「ふふん。その度胸が無いなら諦めなさい(……そもそも、あたしが勝手に話を作るワケにはいかないし)」

「……ッ……」×2


≪フッ……死にそびれたか≫(42話 参照)


「でもね。白銀が"此処"に来てから死に急いでいたと言うのは確かよ?」

「えぇっ!?」

「何せ最初は誰とも介(かい)せず一人で黙々とシミュレーターを続けてたみたいだから」

「で、でもソレだけで決め付けるのは大袈裟では……?」

「そうでも無いわ。篁は知らないでしょうけど、何せピアティフの……管制やらサポート云々を任せたのなら、
 横浜基地じゃ右に出る者は居ない程の技量が有る"あの娘"の誘いをも断って単独で訓練を続けてたのよ?
 アイツなら(ループの事も有るし)ピアティフの技量は一目で測れるハズなのに、何故 受け入れなかったか?」

「白銀さんが死に急(せ)いていたと言う推測が確かだったからね」

「!? じ、神宮司中尉ッ!」


≪初めて御会いしてから……私には少佐が死に急いでいるようにしか見えませんでした≫(13話 参照)


「……(ピアティフ中尉は最初から見抜いていたみたいだけど)」

「で、では今の白銀少佐は何なのですか? 私達を受け入れてくれていると踏んで良いのでしょうか?」

「そうなんじゃないの?」

「!?」×2

「確か まりも。アンタは結構早い段階で白銀に操縦を教わってたわよね?」

「え……えぇ、そうね」

「(そ、そうだったのッ?)」

「つまり、貴女の衛士としての技量は"初対面"で白銀の目に適ったのよ」

「適った?」

「そう。アイツは横浜基地に来てから最初は他人を塞ぎこむつもりだったけど、その"決意"を揺るがしてまで、
 アンタは育て甲斐の有る衛士と読んだのよ。生憎30秒で殺られた事で一気に失望された可能性も有るけど」

「あうッ(……今のが本当なら凄く嬉しいけど、何だか複雑ね……)」

「でも最も大きいのは"あたしが"白銀の提案を飲んだ事かもね」

「ど、どう言う事なのですか?」

「白銀をとうとう"オモテ"出すに当たってアイツは色々と兵器やシステムについて提案をして来た。
 例えばマルチ・ランチャーやらXM3やら……それは今迄の戦況を覆せる可能性を秘めたシロモノ。
 アイツはその実装に希望を見出した事から、丁度良い技量を持った まりもに目を付けた可能性も有る」

「……ッ……」×2


≪中隊長を経て教官となりながら、私も全く成長していなかったと思いまして。
 ハイヴ攻略を想定した機動概念 及び新戦術機など、考えた事がありませんでしたから≫

≪それは大丈夫です。 皆 同じですし、知らなかったら今から知ってゆけば良いダケですよ。
 あと……不知火S型は、こんなモンじゃないです。 新OSが完成すれば、
 例え単機だろうと反応炉まで辿り着ける可能性を秘めていると思いますよ?≫(9話 参照)


「……(そう言えば不知火S型について語る白銀さんの表情は本当に誇らしげだった)」

「また訓練兵としては卓越した数値を出していたB分隊の連中もアイツの興味を引いたかもね」


≪しかしな。 恐らく……"関係ないのに期待はしない"と言うのは彼の本心だったんだろう≫(23話 参照)


「……(辛い頃の武さんは、きっと叔父様の言う通り上層に様々な案を出しても無視されていたのかもしれない)」

「そんな色々な事が重なって、白銀はアンタ達を受け入れても良いんじゃないかと思ったんじゃない?」


≪だからこそ自分自身の頭で考え、BETAに対抗するべき最高の手段を発案した。
 その"全て"が今日 拝ませて貰った情報だったって事さ。全く 若いのに大したモンだよ、白銀少佐は≫


「……(だから必死にBETAと戦い続け、やがては少佐まで登りつめ提案を通した。もはや……英雄ね)」

「まあ~、どれも推測に過ぎないから間違いなく"そう"とは言い切れないけど(……一応 釘は挿して置くべきね)」

「でもソレが本当ならッ」

「今の白銀さんは……?」

「間違いなく突撃機動部隊の面々は白銀の"仲間"って事になるわね。背中を預けられる衛士と言う意味での」

「!?」×2

「けど白銀も白銀で自分の気持ちの変わり様に驚いてるのかもね。……無意識で呟いてた言葉って事だし」

「な、ならば白銀少佐は……もう死に急いてはいないんですね?」

「ハッキリ"そう"だとは言えないわ。アンタ達を仲間とは認めていても命を投げ出す無茶をするかもしれない」

「確かにクーデターでは無茶を……だったら私達の役目は……」

「そうよ? まりも。ようやく念願の"仲間"になれたんだから、アイツが先走らないように助けてやんなさい」

「そ、そうよね? 助けられるんじゃなくって、むしろ逆の役割を目指さないと……」

「はいッ。白銀少佐は今後の世界の為にも、命に代えても私達が守ります!!」

「ふふん。そう言う事だからアイツの過去を本気で知りたければ、一つや二つ借りを返してからにしなさい」

「分かりました!」

「確かに気が急いちゃったみたいだわ」

「なら もう用は無いでしょ? あたしは忙しいんだから出て行きなさい」

「――――了解ッ!」×2


≪ガシュウウゥゥーーーーッ!!!!≫


「やれやれ。やっと行ったわね……それにしても、白銀が"あんな事"を言ったなんて」


≪……もう再度と……そう思っていたんだがな……≫


「つまりアイツは自分でも気付かず"この世界"で生き延びる事を意識している可能性が高くなったわね。
 アイツの"全て"は鑑なんだろうけど、まりもや篁に対しても満更じゃ無くなってるのかもしれないわ。
 まあ……いっそ社でも速瀬でも構わない。精々 白銀を留めるよう頑張ってくれると良いんだけど」


≪――――ギシッ≫←椅子に座る音


「(……でも……)」


≪だから早まらないで見てなさい? 白銀。アンタのループは必ず今回で終わりにしてやるわ……!!≫


「(考えてみれば数式さえ回収すれば良いのに、何で あたし……ああも白銀に こだわってたのかしら?)」




……




…………




2001年12月10日 午後


昼食を摂り終えウォーケン姉妹&元米軍3人娘と別れると、俺は予定通り唯依と合流したんだけれども。

その際 何故か鼻息が荒かった唯依だったが、何だか怖かったので気にせず目的の場を目指す事にした。

そうすると何時の間にか彼女の興奮も冷めていったんだが……もしかして、あの日? いや流石に無いわ。

……さて置き。目的とは言うまでも無くイルマ・テスレフとの面会であり、今更ながら緊張して来ました。

ともかく。独房に到着すると名無し男女の監守が"彼女"の居る場所まで案内してくれた。凄い丁寧な口調で。

んで目的地の手前まで来たワケなんだが、恐らく"これから"の会話は"彼女"に聞こえてしまっているだろう。


「此方になります少佐殿ッ!」

「案内有難う。彼女の様子は?」

「(嗚呼、噂に違わず素敵……)えっと、大人しくしており特に問題は有りませんが……」

「せんが?」

「食事に殆ど手を付けておりません。衰弱した様子は、まだ見えておりませんがね」

「なんと~」

「最悪 演技の可能性も有ります……我々も同伴 致しましょうか?(も、もう少し傍で彼の顔を……)」

「いや大丈夫だよ。君達は席を外してくれ」

「はっ!」

「では失礼致します(うぅ……残念だわ)」

「鍵は受け取ってる?」

「はい。既に預かっています」


――――そんな会話の遣り取りを終えると2人の監守は去ったので、鉄格子に向き直る俺と唯依。

すると(夕焼けは差していないが)原作で美琴が放り込まれた独房の様な内部に、やはりイルマ少尉は居た。

彼女はベッドではなく地面に体育座りをしており、背中を壁に預けている。その表情は隠れて読み取れない。

また毛布を背中から被っており……うぉっ!? 長ズボンに黒いシャツを着てんだけど、ブラしてんの!? コレ。

毛布の間から胸の谷間がハッキリと見えるんですけど? よってドキドキと見下ろして居ると、唯依が喋り出す。


「イルマ・テスレフ少尉で間違いないですね?」

「…………」

「(それにしてもデケえ)」

「聞こえてますかッ?」

「……聞こえてますよ」

「(おっぱいデケえ)」

「貴女にコレから白銀少佐から話しが有ります」

「そう……でもその前に……今の私は只のイルマですよ?」

「(まじデケえYO!)」

「そうでしたね……(多少は心が折れて居るのかしら?)……では白銀少佐ッ」

「えっ? あァ……じゃあ、鍵を開けて其処から出してあげてくれる?」

「!?!?」×2

「あれ? どうかしたの?」

「(最初から"そう来る"なんて……やっぱ武さんは考えている事が違うわ!)」

「(ど、どう言う事? 小言も皮肉も偽善も言わずに、真っ先に私を外に出そうとするなんて……)」

「唯依。聞いてる?」

「!? か、畏まりましたッ(……ともかく考え有っての選択に違いないわね)」


≪――――ガチンッ≫


「えっ……嘘でしょ? ホントに……?」

「さあ早く出て下さい。でも妙な気は起こさない様に」

「そんな気は無いけど……えぇと」(チラッ)

「……ッ……」←視線を逸らす武

「(何? なんなの? こんな"選択"考えもしなかった……彼は何を考えてるのッ?)」

「(意外過ぎて声も出ない見たいね。自傷気味な相手には確かな選択かもしれない)」


イルマ・テスレフさん。恐らく強化装備姿のまま連行された事からブラジャーしてないっぽいです。

だから此処で見下ろしながら会話をするのは得策ではない。このアングルでは谷間が深く見えてしまうのだ。

つまり股間の熱に直結し交渉ドコロでは無くなってしまう。しかしデケえな、栄養は乳で補給してんですか?

よって出てくる牢屋から出る彼女を直視する事が出来ない。なら興奮が冷めるまで見ないようにするに限る。

くっそ~。エロスーツには慣れて来たのに、生乳ではダメみたいだ……こりゃ盲点。鍛錬の練り直しだな~。

でも生乳を見れる訓練相手なんか居ないじゃんッ! そもそもラブシーン・イベント起こさないと不可能じゃん!!

まあ そんな事は今は置いておくとして、交渉はジャケットとか着て貰ってから行えば良いか~。厄介だNE。




……




…………




……10分後。


「…………」

「…………」

「…………」


俺は予め要していた部屋の中央にあるテーブル越しにイルマ・テスレフと椅子に座り向かい合っていた。

真横には唯依が何らかの書類を片手に立っており、俺の話の切り出しを待っている。それは"彼女"も同じ。

だけど俺は中々 話を始められないでいた。彼女にジャケットを羽織らせたのに、前は締めていないからだ。

しかし最初に"胸 隠してくれない?"なんて言うのはイキナリ不穏な空気になりそうだから避けたいんだよね。

でも言わなかったらイルマ・オッパイが気になって集中出来そうにないし……どうする? どうしよ? マジで。


≪どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ≫


「(このままじゃ おっきしてしまうお……だったら最後の手段だおっ!)」

「(た、武さんが無言で彼女を見たまま5分……何故 私まで"この空気"に押されているの?)」

「(クッ……わ、私が こんな年下のコの沈黙に押されている……震えが止まらない……ッ!)」

「――――イルマ・テスレフ"少尉"」

「は、はいッ?」

「単刀直入に言おう。俺達の部隊に入って、共にBETAと戦って欲しい」(キリッ)

「!?!?」

「(い、いきなり!?)……書類なら既に揃っておりますので、貴女のサインで直ぐ編入が決定します」

「……ッ……で、でも……私には残した……」

「それは問題無い。既に交渉を済ませ貴女の家族の身柄は近隣で預かっている(……遣ったの俺じゃないけど)」

「え、えぇっ!?」

「でも米国から日本に住まいが移って居るので、より危険な地に送られたとも言うけどね」

「もし断られるのであれば内密に貴女を開放しますが……衛士としての生命は社会的に断たれる事となります」

「だけど家族を本当の意味で"その手"で守りたいのであれば、俺達に協力して欲しいんですよ」

「……守る……」


本当はジックリ交渉するつもりだったが、デンジャラスな谷間が視界に入り続けるはキツいモンがある。

目を逸らして話すと言う選択肢も礼儀的にハナから無いので、俺はさっさと交渉 自体を終わらせる事にした。

だったら おっきして恥を掻く事も無いお( ^ω^) 断られたら断られたで別に良いお、家族は大切なんだお。

対して問題のイルマさんなんだけど、本題に入った直後から驚きっぱなし。あまりに唐突過ぎて呆れてるのかな?


「……(頷かせる為に言いたい事は多々有るけど、今の武さん以上の言葉は必要なさそうね)」

「……(分からない……分からないよ。どうして説得をブチ壊そうとした私を其処まで……)」

「…………」←谷間に耐え切れなくなって視線を逸らした武

「(見限られる!?)わ……分かりましたッ! 私を突撃機動部隊に編入させて下さい!!」

「!? ……本気なんだね?」(訳:本当に宜しいのでしょうか?)

「は、はいっ! ……でも……何故"あんな事"をした私をッ?」


――――此処で まさかの申し出&予想通りの質問。後者の返事は予め用意しているのでシッカリ締めよう。


「俺と同じ様な道を歩んで欲しくないからですよ。それに……」

「そ、それに?(だったら彼の家族は……もう?)」

「貴女は"あのまま"消えゆくには余りにも惜しい女性だったからですよ」(もちろん原作の死に方 的な意味で)

「え……っ!?」(ドキュン)


≪つまり、貴女の衛士としての技量は"初対面"で白銀の目に適ったのよ≫


「(じ、じゃあ武さんは最初からテスレフ少尉の事を……?)」

「だから"あの件"に関しては気にしなくて良いです。今度は力の使い所を間違えないで下さい」

「は……はい。なら怪我に関しては……」

「もう治ってますし、この程度ソッチが気に病む必要は無いですよ」

「(だったら私は どうだったの? す、凄く気になる……でも私は叔父様の命で此処に来た……)」

「じゃあ唯依。早速書類を渡してくれる?」

「(それ以前に初対面で頬を叩いてしまったから、目に適ったのは少なくとも最近かもしれない)」

「唯依? 唯依ってば」

「(だったら私は まだまだ……)!? す、すみませんッ! では此方にサインを――――」

「了解……(何だか断れる気がしなかった……でも、彼に付いて行けば本当に人類を救えるかもしれない……)」

「書き終わったら早速 強化装備に着替えて訓練に行きましょうね?」

「わ、分かりました」

「いや、その前に飯かな~?」

「横浜基地の料理はとても美味しいんですよ? テスレフ少尉」

「はあ……(い、何時の間にか雰囲気が変わった? けど懐かしいわ……この暖かさ……)」




……




…………




……1時間後。


「!? い、イルマぁ~ッ?」

「お前何でこんな所に居るんだよ!?」

「フレア……駄目、抑えてッ」←戦術機に乗っていないので普通なブリザ


あれからPXでイルマ(脳内呼称決定)に食事を摂って貰いながら、横浜基地の簡単な概要などを話した後。

再び着替えてライト達の訓練に合流したんだけど、ライトとフレアは思わず彼女に掴み掛かろうと動いた!

でも、それも仕方ないよね……彼女等3人はイルマの所為で米軍を追い出されたと言っても良いのだから。


「イルマ少尉。彼女達に貴女の故郷の事を話してあげて欲しい」

「えっ? 此処で皆に……ですか?」


――――されどライト達には彼女を受け入れて貰わねばならず、俺はイルマに前述の"命令"を下してみた結果。


「うっ……うぅ、グスッ……イルマァ~、貴女も辛かったんだね~ズビッ」

「そ、それはお互い様よ。ライトだって国をBETAに……と言うか篁中尉、ハンカチ持ってませんか?」

「うくッ……悪いイルマ。私はオマエの事 誤解しちまってたみたいだ」

「もし許してくれたのなら有難う……フレア」

「イルマさん。今度 悩みがあったら相談してください……頑張って力になりますから……」

「相変わらず優しいのね? ブリザは(……戦術機に乗ってる時は逆だけど)」


話させた内容としては、思えば原作で"たま"に言ってた内容と同じフィンランド云々だったんだが……

ライト達はエラく同情しアッサリとイルマの事を許してしまい、突撃機動部隊の人間関係は良好な様である。

よって午後の訓練も順調に進み・締める事ができ……俺達は明日に控えるトライアルに備えるのでした。


「(階級も並んでしまったし、神宮司 中尉に負けてられないわ……武さんの為にも精進しないと……!!)」




●あとがき●
イルマ少尉 加入。トライアルに進みたく急いで書いてしまったので今回も微妙です。
話は変わりますがオルタのコミックの理不尽な乳のデカさに違和感かんじまくりです。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ48(前編) 2010/02/20 03:44
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/02/23 04:16
これはひどいオルタネイティヴ48(前編)




2001年12月11日 午前


――――横浜基地 地下19階・執務室に続く通路にて。


「今は ゆーこさん、何してるかな? 霞」

「きっとパソコンに張り付いて居ると思います……何せ……」

「とうとう数式が手に入ったんだしなァ」

「はい。それに……トライアル関連での"手続き"も多く有りましたから」

「此処ばかりは忙しいのも仕方ないか~」

「そうかもしれません」


イルマ・テスレフが加入した翌日の朝。つまり重要なイベントであるトライアルが行われる当日。

先ずは霞・唯依・まりもちゃん・イリーナちゃん・ウォーケン姉妹・米軍3人娘・イルマら11名での朝食後、
ウサギを除く9名と分かれ俺は2人で執務室を目指していた。偉く大所帯になってしまったが嬉しくも有る。

ちなみに唯依が抜けたのは、巌谷さんとのトライアルでの打ち合わせの為。……主に不知火SⅡ型について。

何故なら俺達"突撃機動部隊"は今回トライアルの選手(?)としては出場しないんだが、別の大切な役割が有り、
唯依はデモンストレーター・カラー(カイゼルver)のSⅡ型に搭載して新機体の"御披露目"を行うからだ。

どうしてEXのカイゼル・カラーかと言うと、俺が"戻った"際に楽しんだバルジャーノンのプレイ風景を、
能力で"観ていた"霞が反映させたっぽいからであり、意図は分からないが彼女が絡んでいるのは間違い無い。


≪何なの? 社……この妙なカラーリングは。何か意味が有るの?≫

≪機体性能に関しての意味は全く有りません……でも……≫

≪でも?≫

≪白銀さんが行っていた"あちら"でのシミュレーターで見た機体のモノを真似てデザインしてみたんです≫

≪ふ~ん(……もしかして、白銀が喜びそうだったから遣ったとか?)≫

≪……ダメでしょうか?≫

≪まぁ、悪く無いんじゃないの? 塗装はまだ だろうし、巌谷中佐に話は通しとくわ≫

≪あ、有難う御座います≫


……さて置き。話を戻すと唯依は"帝国技術廠"本来の仕事の為 一旦 俺の傍を離れているってワケだ。

んで まりもちゃんは俺の部隊に入っては居るモノの、トライアルに参加する元B分隊の所に行っている為。

イリーナちゃんは何時もの如く ゆーこさんに丸投げされたと思われる今日のイベントによる職務の為に。

更に米軍3人娘は飯を食って直ぐウォーケン姉妹に連れて行かれてしまった為、彼女達も別行動となってます。

そしてイルマは身柄を確保されていると言う家族に会う為に、護衛と言う名の監視付きで近隣に出向いている。


≪それでは伍長。引き続き警戒を怠るなよ?≫(キリッ)

≪はっ!≫

≪御任せください、少佐殿!!≫

≪そう言えば先日は迷惑を掛けたね?≫

≪と、とんでも有りませんッ!≫

≪此方こそ副司令の直属とは知らず、申し訳有りませんでした!!≫

≪なんのなんの~≫

≪(ま、まさか突然現れたイカれた小僧が凄腕の衛士……しかも少佐だったなんて)≫

≪("アレ"は演技だったのか……ちっとも気付かなかったし、凄い人だったんだな)≫


――――見送りの際 顔を合わせた伍長ズが何かボソってた気がしたけど、べべべ別に気にしてないモンねっ!


≪彼女を頼んだよ? 速瀬中尉・涼宮少尉≫

≪あ~あ、ホントはトライアルに出たかったんだけどなァ~≫

≪生憎 彼女の事情を知っていて、手が空いてるのは私達2人しか居ないし仕方ないですよ≫

≪ははは。まぁ、他のヴァルキリーズのメンバーに比べたらマシなんじゃないかい?≫

≪う~ん……確かにそうかもね~。トライアルに参加するドコロか誘導や案内を遣らされるみたいだし≫

≪多恵達、大丈夫なのかなぁ?≫

≪それじゃあ、イルマ少尉。分かってるとは思うけど≫

≪は、はい。この様な機会を頂けて感謝しています(……夢みたい)≫

≪だから妙な気は起こさないでよね~?(勿論"コイツ"にもね!)≫

≪白銀少佐の期待を裏切るような真似はしないでください≫

≪そう苛めてやるなって。それじゃ~戻ろうか? 霞≫

≪はい(……どうやらテスレフ少尉は"大丈夫"みたいです)≫


察しの通りイルマの監視&護衛役は速瀬&涼宮(妹)であります。他のA-01のメンバーは実は事実を知らない。

コレもテレサ少尉が手を回していたからであり、ホント最高の形でイルマを引き入れる事が出来たモンですな~。

それも ともかく。俺は俺で自分の役割の確認の為に ゆーこさんが居る執務室を目指しているワケであります。

何気に俺は"今回"のトライアルで何が行われるかを殆ど知らない。正史は大まかに分かるがソレだけじゃねぇ?

色々と追加イベントを起こしちまってるから、ただ単にXM3の御披露目ダケじゃ無いのは確定的に明らかッ!

原作ではBETA強襲で出撃したと思われるA-01が ゆーこさんの気紛れで案内役などに回されているのだ。

だからイザと言う時に旨く立ち回れず誰かに死なれると困るので、忙しかろうと執務室に御邪魔しちゃうのさ!!

……って思って居るウチに到着した様で、俺は霞を差し置き走り出すと遠慮する事なく自動ドアの方へと向った。


「おはよ~ございまァ~す!」

「……失礼します」


≪ガシュウウゥゥーーッ≫


「…………」

「ありゃ?」

「……(どうやら"忙しい状況"の博士みたいです)」


≪カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ≫


執務室に入ると、予想通り作業中の ゆーこさんの頭がパソコン越しに見えた。そして俺達には気付いていない。

やはり数式入手が響いて居るのか極めて集中している様子。以前(26話)も似たような事が有った気がするZE。

生憎その時は2時間も待たされてしまったが、今 其処まで待っていては大事なトライアルが開始されてしまう。

よって見るからに"邪魔すんな"と言うオーラを漂わせている彼女の……極端な話、邪魔をしなければならないッ!


「霞ッ」

「え?」

「GO!!」

「……ッ」


――――だけど怒られるのが怖いから、霞にお願いする事にしちゃったんだ☆ ファ●マ入店音の採用を要求する!




……




…………




"GO"と霞に言った時、強く頭の中で"ゆーこさんの作業を止める事"を訴えたので彼女は行動に移してくれた。

しかし……5分が経過しても状況は一向に変わらなかった。声掛ける霞も大変だろうが俺も暇すぎて足がダルい。

何せ見守っている間 足を微動すらさせてないからな……ってか、そろそろ諦めて俺が動くしかないのか……?


「あの、香月博士」

「…………」

「白銀さんが話したい事が有ると……」

「…………」

「こっち……見てください、博士」

「…………」


≪カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ≫


「~~ッ」

「(う~ん、ダメそうだな)」


霞に十分頑張ったと感じた時、彼女も諦めたのか眉を落として俺の方に視線を向けて来た。ゆーこさんの真横で。

早い話 肩にでも手を置いて少し揺すれば作業を中断させれたんだろうが、其処までの度胸は無かったみたいだ。

まぁ、俺も以前 怖くて邪魔出来なかったから仕方無いけどね。……とは言え今回は霞の行動を無駄にしたくない。

よって……以前から"遣りたかった事"も有ったので、俺は霞の視線に対し頷くと静かに ゆーこさんに近付いた。


「……(良~し)」

「……(今 博士がしている作業は途轍も無く重要なモノなので無理でした……それでも白銀さんはあえて?)」

「……(やっちゃうぞ☆)」

「……(凄い度胸です。やっぱり白銀さんは尋常じゃない器量があるんですね)」


――――そして横から片手を伸ばすと、指をキーボードの[Q]と[A]に沿え。


≪カタタタタンッ≫


――――そのまま右にへとスライドさせた!!








くぁwせdrftgyふじこlp








「ふじこ?」←夕呼

「ふじこ?」←霞

「(ミスらなかったZE)」

「……って白銀? アンタ何時から居たの?」

「5分前に。さっきから其処に霞も居るじゃないスか」

「すみません」

「あら そうだったの? ソレより何よ? 折角 集中してたのにッ」

「普通にゴメンナサイ。でも"今日"トライアル以外で何が施されるのかを教えて欲しいんですよ」

「そう言えば耳に入れて無かったかしら?」

「"篁"達から大体は。でも新しいS型の手配とかシンクロ・システムとか新武装やら色々と有るじゃないスか」

「……ッ……」

「(博士……やっぱり作業を邪魔されたのを怒っている?)」

「("姉妹"の件については間に合わなかったから、此処は見返りを詳しく説明してやる必要が有りそうね)」

「ゆ、ゆーこさん?」

「まぁいいわ。先ず邪魔した事は多めに見てあげる」

「有難う御座います」

「礼はまだ早いわよ。それよりも一度しか説明しないから良く聞きなさい」

「Hai!」

「……ッ……(相変わらず調子 狂うわねコイツ)」

「どうしかしたんスか?」

「何でも無いわ。じゃあ先ずは新しくアンタ達の部隊に配備される戦術機についてだけど」


どうやら例のネタはスルーされてしまった様だ。何も知らないと分かるハズないから、ま~仕方ないね。

とは言え ゆーこさんは怒らなかったので安心しつつ彼女の有り難い説明を聞けるに至る。時間にして10分。

流石に彼女の前ではメモなんて格好悪い真似はしたくないから、28ビットの脳で記憶するのが大変でした。

自分のIQの低さに嫌悪。結局 大まかに行われている"正史と違う事"をホント大体 理解したに過ぎなかった。


「ふ~む」

「……と言った感じだけど、何か分からなかった事は有る?」

「特に無いです」←例え聞いても理解出来ない的な意味で

「流石ね(……癪だけど、あたしからの"見返り"は予想 出来る範囲だったみたいね)」

「それほどでもない」

「じゃあ あたしは作業に移るわよ?」

「はい。詳しくは実際に見てみる事にします」


――――正直 彼女の話は難しくてマジ理解 出来なかったので、これは必然的なモノだ。


「そうしなさい……っと言い忘れたけど白銀」

「何ですか?」

「会場じゃ余り目立たない方が良いかもしれないわよ?」

「それって――――ま、まさかッ」

「そう言えば白銀さんは公(おおやけ)では"新OS・S型・新兵器・新システムの発案者、及び開発責任者"……」

「あと"その他"諸々ね(……突撃機動部隊の隊長だとか)」

「へぇあ」

「ま~先日(クーデター)での噂も有って相当な人数が来るみたいだから、逆に大丈夫なんじゃない?」

「どのヘンが大丈夫なんだか詳しく聞きたい気分なんですけど?」

「前言撤回するつもり? さっさと行きなさい、最後に御披露目も有るんだから」

「り、了解~。じゃあ失礼しま~す」

「もう少しで一区切りだし、余裕が有ったら あたしも見に行くわ」

「ほ~い」

「……またね」

「オゥ霞。また後でな~っ?」


≪ガシュウウゥゥーーッ≫


「行ったみたいね~」

「……行かれました」

「それで"読めた"の?」

「相変わらず細かい感情の変化は……」

「そう(……それだけ心身 共に常に冷静だと言う事ね)」

「…………」

「それにしても社?」

「はい?」


≪カタタタタンッ≫








くぁwせdrftgyふじこl








「……コレって何かの暗号なのかしら?」

「わかりません」

「意味は無いとは思うんだけど、アイツの事だし……う~ん」

「……ッ……」

「ふじこ?」

「ふじこ~」




……




…………




……15分後。

エレベータで地上エリアに戻った俺は、唯依たちと合流する事もなくトライアルの様子を見に行く事にした。

たまには一人で行動するのも、目立たないし良いモンだな……さて置き、やはり正史とは違い催しが多い。

ぶっちゃけた話、衛士達が競ったり戦ったりする"トライアルそのもの"ダケがメイン・イベントでは無いのだ。

まるで東京・ビックサイトのイベントに参加する企業のブースの様モノが数箇所有り、各所に人が集まっている。

原作では参加&見学人数が良く分からなかったが、現代のイベント程でなくとも俺が目立たないレベルの人数。

よって注目を受ける事も無さそうで安心しつつ、俺はトライアル&催しの様子を眺めてゆく事が出来ていた。

んで前述の通りXM3を原作と違い、格段に理解しているA-01のメンバーが催しに参加させられており……


「それでは、続いて"キャンセル"を活用したクイック・ドローについてを……」

「画面切り替えます」


―――― 先ず涼宮(姉)が一条の補佐の元XM3全般の説明を大型モニターの画面を指しながら行っていて。


「不知火S型に内装されている胸部マルチ・ランチャーは、ほぼ反動無くグレネードを放てます」

「射出箇所は此処。予備弾薬が詰め込まれている場所は其方……右胸ですね」


――――違う場所では風間が宗像の補佐を受けながら不知火S型の性能についての説明を行っている最中で。


「次の順番待ちの方どうぞ~ッ! 通常のXM3・三次元機動 体感の筐体は此方になりまァ~す!!」

「ヴォールク・データ。ハイヴ攻略シミュレーターのシンクロ・システム体感は大変混雑しておりまして、
 要点ダケを抑えた約5分間となりますので御了承下さい!! ポジションは予め係の者に御報告を!!」

「ハイヴ体感は1時間待ちと大変混雑しております、お急ぎの方は通常の体感コーナーに並んでくださ~いッ!」

「わぁっ!? ち、ちょっと押さないで下さい!!(……と言うか何で私達がこんな事しなきゃダメなのォ!?)」


「うおおぉぉっ!! な、何なんだよアレ!? 凄ェ……凄ぇよッ!!」←オランダ男

「ねぇミュン、アンタも遣ってみなよ!! 絶対に度肝 抜かれるからさッ!」←ルーマニア女

「そ、そんなに凄いのか……? アレ」

「おう!! お前も入ってみろってッ! "柄じゃない"なんてモンじゃね~からよ!!」←ノルウェー男


――――手間隙駆けて運搬されたシミュレーター筐体が並ぶ箇所では神村と葛城が案内を行っており。


「……その為 爆風に巻き込まれないようにする為にも"多目的追加装甲・改"の運用も非常に重要です。
 それでは……コレでフォールディング・バズーカについての解説を終わりにしたいと思いますが……
 続いて"この武装"を使用するに当たって生まれた"新しいポジション"の説明に移るので少々お待ち下さい」


――――更にA-01では最もインテリとも言える伊隅が一人でバズーカの講義を行っていまして。


「支援狙撃砲と拡散突撃砲は終了だな……良し篁中尉、次の画面に切り替えてくれ」

「はい中佐」

「では御待ちかね。不知火SⅡ型の解説に移らせて頂きましょう」

「(衛士達は驚愕の連続ね。きっと他の場所でも……でも無理もないわ)」


仕舞いにゃ巌谷さん&唯依が帝国技術廠が開発した兵器の説明を行っている。当然 何処も人で溢れています。

うち唯依は数度の説明によるループを終えれば、俺と合流して3機の戦術機の"御披露目"に参加するのだ。

ウチ1機は唯依が乗る不知火SⅡ型(カイゼル・カラー)。んでチェーンガン部分を改造した拡散突撃砲を装備。

次に2機目は俺が乗る不知火・カスタム。正式名称は不知火S型・白兵改造仕様なのは さて置きまして。

3機目は まりもちゃんの乗る不知火S型・砲撃支援 仕様。当然クーデターで活躍した支援狙撃砲を装備だ。

……とまァ。ゆーこさんの言った通り、正史とは違って様々な催しが追加されてるみたいだな。良かったZE。

トライアルも覗いたが、其方も凄い人だかりで何故か国連軍が期待値より かなり良い成績を残している様です。

コレだと原作のメンバーは勿論 名無しの衛士達も"奇襲"で死ななくて済むのかな? マジそうなってクダサイ。

そんな見学は2時間にも及んだんだけど、幸い誰とも目が合う事が無かったので、滞りなく全体を見渡せた。

ちなみにトライアルとは少し関係 無い事だけど、先程 ゆーこさんに聞かされた事で"良い事"を挙げてみよう。


≪そうそう。ラーニング・フレイドル・スリーブスのS型は既に搬入を済ませて配備させて置いたわ≫

≪ま、マジっすか!? あぁ~、だから今朝2人(ウォーケン姉妹)に連れて行かれてたのかッ≫

≪そう言う事。今回はトライアルとは無関係だし今頃 フィードバック・データの調整でもしてんじゃない?≫

≪(……コレで無茶な提案をする手間が省けたな)≫


つまり早くも米軍3人娘は愛機を入手できたワケで、ゆーこさんの素早い仕事には感心せざるを得ない。

本来なら後の"強襲"を考えて撃震でも吹雪でも良いから、無理にでも機体を3機拵えて貰うつもりだった。

佐渡島まで次の出撃が未定な現段階だと"今回"がライト達に初のBETA戦を経験させるのに適してるからね!

……とは言え旧式の機体では不安なので当然フォローするつもりだったが、S型なら心強い事この上ないZE。

流石にイルマ少尉の不知火S型は昨日の今日なので配備されていないが、そう掛からず搬入されてくるだろう。

そんな事を思いながらスタスタと歩いて居ると、集まった多くの人々の案内役をしている"4人"の姿も見えた。

残りのA-01のメンバー築地・柏木・麻倉・高原であり、時間が経過している今 少し暇が出来た様で……


「あっ、白銀少佐だ~!」

「えッ? 何処何処っ?」

「え"ぇあっ!?」


≪――――ザワッ!!!!≫


「あ、あれがXM3を開発したシロガネ タケル!?」

「今回のトライアルの主役とも言える、かの有名な……?」

「世界最強の中隊・突撃機動部隊の隊長でも有るって言う?」

「ず、随分と若いが……同じ名前なダケなんじゃないのォ?」

「"白銀少佐"って呼んでたし間違い無いでしょ? それにアレらの性能を見せ付けられると……ねぇ?」

「俺達"シロガネ少佐"に教えを受けたって言う新任の少尉らに手も足も出なかったんだよな~」


目が合った築地が僅かに乳を揺らしつつ手を振り、柏木が反応すると一気に周囲から注目されてしまったッ!

し、しまった!? 俺とした事が油断していたZE!! 折角ゆーこさんに釘を挿されたと言うのに……!!

気がつけば……注目っ! 白銀……衛士達の……注目の的っ! 流石の白銀も今回の油断は……猛省……っ!


≪……ざわ……ざわ……≫


周囲の衛士達(男女比率3:7くらい)が何を言っているかは分からないが、これは恥ずかしくて敵いません。

考えてみれば こんなに注目されたのは生まれて初めてじゃないだろうか? 無駄に女性が多いのも困ります。

よって今の状況に(心の中で)苦笑いするしかない状況の中、俺は人ゴミの中で見知った顔を見つけた!!


≪ダダダダッ!!!!≫


「(来てくださいッ!!)」

「(えっ? 白銀さん!?)」


――――それは"まりもちゃん"であり、俺は走り出すと擦れ違い様に口パクで彼女に意図を促した。


「あっ……少佐 行っちゃったね、遼子」

「みたい」

「多恵~、いきなりアレは不味かったんじゃないの~?」

「や、やっぱり だべか? アハハハハ」




……




…………




……3分後。


「ふ~っ。此処まで来れば大丈夫かな?」←息切れ無し

「ハァハァ……一体……どうなされたのですか?」

「ちょっと手違いで注目を受けちゃいましてね~、逃げる羽目になっちゃいました」

「な、成る程(……大体 予想がつくわ)」

「すみませんね、勢いダケで付いて来るように促しちゃって」

「構いません。私も白銀さんに お伝えしたい事が有りましたから」

「それは?」

「あの娘 達の事です」


場の流れで まりもちゃんと人気の無い場所まで逃れると、俺は彼女から元B分隊の戦況を聞けた。

的を狙ったりする"競技"は原作との違いが良く分からないが、上位クラスと同程度。流石に大差はつかない様子。

……とは言え国連軍の技量の向上が影響している様で、コレは正史には無かった様な気がしないでもない。

されど模擬戦の戦果には目を見張るモノが有り、1回目と2回目は急遽 拵えられた相手とは言え中隊に圧勝。

彼らは仮想敵としてXM3に始めて触れる衛士ばかりを相手にしていたが、先ず最後に当たった元B分隊に惨敗。

2回目は別の仮想敵の中隊が相手だったが、前情報で1回目の元B分隊の戦果を知っていながらも完敗している。

まりもちゃん曰く、彼らは今頃 空き時間で涼宮(姉)の講義を受けてるではないかと誇らしげに語ってくれた。

成る程……千鶴達の訓練の成果は抜群な様で安心したZE。きっと正史じゃ最初から中隊 相手でも無いだろうし。

まぁ頭部バルカン砲って言うチート武器も使ってるし妥当とは言え、頑張っているのは心より評価したいNE。


「それで まりもちゃんは"御披露目"が近いから一旦 席を外したと?」

「はい。後は全てが終わった後、あの娘達の評価に移ろうと思います」

「ほほ~っ、ご苦労な事ですね。中尉として新しい仕事も多いってのに」

「そ、そんな事は有りません。此処 最近は充実していますから」

「なら良かったです」(ニコッ)

「……ぅうッ……ところで……し、白銀さん」←小声


そんなワケでトライアル&イベントの様子は大体 把握したし、そろそろ"奇襲"に備えるべきなのかな~?

考えてみれば何時BETAを嗾けてくるか分からないし、腹減ってきたけど早く準備しておくべきかもしれん。

生憎 今回は"御披露目用"の機体なので実弾を積めないから、気持ち的な意味でだけどね。変に疑われても困るし。


「(……良し)」

「まだ"御披露目"には時間が有りますから……よ、宜しければ一緒に催しを見て……」

「まりもちゃん」

「は、はいっ?」

「俺そろそろ不知火・カスタムの中で待機してます。調整とか念入りに行いたいんで」

「あうっ。そ……そうですか」


――――あれ!? な、其処で何で悲しそうな顔をされないとダメなんですかッ? まりもちゃ~ん。


「だから一人じゃ暇なんで一緒に行きませんか? 気の早い話ですけど」

「!? と、とんでも有りませんッ! 参りましょう!!」

「(成る程、俺と考えてる事は同じだったのか~)」

「(やっぱり白銀さんは私の事を理解しているわ……その気遣いだけで十分です)」




……




…………




……2時間後。


『コード991発生ッ、繰り返す!! コード991発生!!』

『だ、第二演習場よりBETA出現ッ! 正面に要撃級を4体確認!!』

『HQ了解。準備完了次第 即応部隊を向わせる、エリア2各機は敵の侵攻を阻止せよ』

『それって何時なんだよ!? こっちは丸腰なんだぞッ!』


飯は戦術機の中での栄養食で済ませ、不知火S型・カスタムの調整も終わらせ まりもちゃんと話していた最中。

"御披露目"の時間が近付き、同じく強化装備に着替えてリンクに入ってきた唯依も会話に参加してたんだけど。

遂に予想通り"異変"が起きる。忙しない通信内容を聞いての通り、BETAが何処からか出現したのだッ!!


『来て見れば騒がしいわね……何か有ったの?』

「聞いての通りですよ、ゆ~こさん」

『あらあら。随分と空気を読まないBETAどもね(……相変わらず冷静なヤツだわ)』

「(……自演乙)」

『武さ……白銀少佐ッ! ど、どうされるのですか!?』

『このままでは皆が……でも私達も実弾が無いし……』

『(さあ、白銀は どう動くのかしらね~?)』

「ふむ……なら此処は ひとつ」

『…………』

「俺がやってみるか」(既に肖り開始)

『!?!?』

『どう言う事よ? 白銀』

「えっと……俺が単機で足止めをするんで、ライト少尉・フレア少尉・ブリザ少尉の出撃準備を急いでください」

『えぇっ!?』×2

『……本気なのね?』

「当たり前ですよ。大した数じゃ無さそうですし、皆を下がらせてください」

『聞いてたわね? ピアティフ』

『は、はい……ッ……HQよりエリア2の全機、ハンガーに後退せよ!!』

『了解!!』

『おっ? 良いのか!? 下がるぞ!!』


≪――――ヴンッ≫


『白銀少佐~っ!』

「あッ、テレサ中尉。カスタムに"例の兵器"は入ってるんですよね?」

『は、はい……既に』

「有難うセレナ中尉」

『白銀少佐ッ! 無茶です!!』

『いくら何でも非武装でなんてッ!』

「大丈夫ですって。ガドリング・ガンがペイント弾でも"ナックル"と"パイルバンカー"が有りますから」

『しかしハイヴを通り抜けるのと、基地を守るのとはワケが違いますッ!』

『そ、そうです白銀さんっ! 無理ですよ、慣れてない機体で……考え直して下さい!!』

「ふっ。この俺に無理なんてコトバは言っちゃいけませんよ」

『――――ッ』

「この男"白銀 武"……無理を通してみせるッ!!」


≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


――――正直 実戦で格闘なんてした事ないし凄い怖いんだけど、たい焼き屋さんの気合で何とかしてみせるぜ!!




……




…………




……第二演習場・エリア2。BETA出現地点にて。


「ド根性ォーーーーッ!!!!」


≪――――ズシンッ!!!!≫


『えっ!? 白銀少佐ッ!』

『な、何故ゆえ此方に!?』

『(それに、その機体……)』

『き、来てくれたんですね~!』

『それにしても、少佐の機体が左手に持ってるモノは何なんですか?』


"不知火・カスタム有る限り、俺は死んだりしねぇ!!"


恥ずかしながら そんな事も豪語して唯依と まりもちゃんの心配そうな視線を背後に出撃した俺は、
後退している最中だと思われる元B分隊の前に着地した。勿論BETAは間近に迫って来ている。

美琴は相変わらず勘が良いのは さて置き。何故か千鶴達は他の部隊より若干 逃げ遅れている様だった。

何かオカしいな……彼女達ほどの技量であれば、既にハンガーに逃れていても不思議じゃないのに。


「おい皆、指示が聞こえなかったのか? 何でモタモタしてんだッ」

『そ、それが――――』

『彩峰が殿を務めると言って聴かないのです!』

『だから私は大丈夫』

『"だから"って意味 分からないですよ~』

『早く逃げようよ慧さ~ん』

『無理』

「あ~ッ、ともかく千鶴達は下がれ!! 早くしろッ!」

『わ、分かりました!!』

『クッ……彩峰ッ! 少佐の足を引っ張るでないぞ!?』

「お前もさっさと戻れって!!」

『……駄目……私も残る』

「何でなんだよ!?」

『だって』


≪既にラストまで進んで生きて帰るか死ぬかの瀬戸際のレベルって辺りまで鮮明に分かるぞ≫


『彩峰さん~』

『慧さんッ!』

『此処で逃げたら……武の期待には応えられない』

「なっ!?」

『だから』

「ざけんなッ! そんな意地にならなくてもな……一つにはなれるんだよ……」

『えっ?』


≪――――ズシンッ!!!!≫








「そうだろ 慧ッ!!」








『!?!?』

「(言っちゃったぜ☆)」

『……ッ……』

「(しかし流石にカスタムでもバベルノン・キックは無理だな~)」

『それって告白?』(ぽっ)

「違うわい!! 良いからバカヤロウ逃げるぞ。いや逃げろ」

『了解……チッ』

「舌打ちすんな~ッ!」


――――んなワケで緊張感の無い初めての不知火・カスタム(S型)の実戦テスト(+御披露目)が始まるのでした。




●あとがき●
一応 任官祝いでの彩峰との会話は伏線でした。MEGARO●ANIAを流せば気分が味わえるかもしれません。
それと霞のブリハマチ動画は何時ニコ動にアップされるんですかねぇ? ずっと正座して待ってるんですが(チラッ)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ48(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/03/04 12:24
これはひどいオルタネイティヴ48(後編)




2001年12月11日 午後


「不知火3機(ライト達)の準備はまだか!? テレサ中尉ッ」

『ま、間も無く終了するそうですっ!』

「セレナ中尉……BETAの数は!?」

『少佐機の索敵内で小型種含め約50ッ。戦術機の脅威となるのは、その半数以下の模様。
 重光線級 及び要塞級の姿は確認できていませんが詳細は不明です! 現在 確認中との事!』

「じゃあ早めに調査を宜しくッ!」

『了解しました!!』


今現在 味方が完全に後退する中で元B分隊と合流してたので、僅かながら交戦まで余裕が有った。

その合間に考えるが、やはり"意図的"な奇襲ダケ有ってBETAの数は少なそうだ。精々100程度だろう。

また流石にバカでかい重光線級・要塞級を運んでくるのは無理だった様子。……隠し通せないだろうし。

いや、要撃級や突撃級を察せられずに横浜基地まで連れて来れた時点で凄い事だと思うけどNE。


『(武さん……どうして、またそんな無茶をッ!)』

『(……とは言え、あの白銀さんの自信なら……)』


……さて置き。未だにリンク中である唯依と まりもちゃんのバストアップに視線を移してみると、
苦虫を噛んだ様な表情で視線を泳がせていた。恐らく今の状況から飛び交っている情報を把握しているんだろう。

2人のメイン武器は互いにペイント弾&ナマクラなので出撃できず、それ以外する事が無いとも言える。

でも正直な話 実弾装備であればヴォールク・データをクリアできる2人の技量だと、単機でも殲滅が可能な筈。

俺が11月11日に介入した事で、例え原作より奇襲してきたBETAの数が増えていようと……だ。

されど実弾装備でなく、BETAの数が正確に分からない事から唯依と まりもちゃんは必要以上に焦っている。

特に後者を考えれば仕方ない。もし生身で兵士級1匹と遭遇した時点で、周囲に100の小型種の存在を考える。

しかしながら。俺は今の"奇襲"が人間の手によるモノだと言う事を知っているので、無謀と思える行動に移した。

勿論 知っていない奇襲で有れば実弾装備に変更されるまで動きませんよ? 千鶴達の状況にもよったけどNE。

……とは言え。射撃手段 皆無で出撃した事には変わらないので、今の俺の緊張っぷりは実はハンパじゃない。

何せ実戦で白兵戦などした事は無く、今回は更に難しいと思われる格闘武器で戦うからな……当たり前の話だ。


「草とか……食ってみようかな……」

『えっ?』

「いやセレナ中尉。ライト少尉達に繋げて貰って良いかい?」

『た、直ちに』


……ってイカン、ビビってギャグマンガ日和ってる場合じゃない。俺は援軍となるライト達の確認を急いだ。


≪――――ヴンッ≫×3


『(いきなり実戦なの!? ま、ままままだ心の準備が~ッ)』

『(ひょっとして、これって"捨て駒"なんじゃないのか? やっぱり米軍の私達は……)』

『(大丈夫、私達ならやれるッ! でも……やっぱり怖いよ兄さんッ……)』


すると予想通り極めて緊張&焦っている様子のライト・フレア・ブリザの3人。これは無理もないね~。

何せ新たな戦術機を宛がわれて慣れない故に調整している中、イキナリBETAが出たので抑えろと言われた。

しかも数が分からず俺含めて僅か4機で初の実戦ともなると恐れるなと言う方が無理はハナシだ。

流石に甘ちゃんだった頃の白銀よりはマシなんだろうが、リンクを繋げ3人のバストアップを見るに、
ライトとフレアは まだマシと言ったトコロだけど、ブリザは歯をカタカタと鳴らしている。

彼女の性分もBETAとの初戦では発揮されなかったらしい。リンクに入った俺も眼中に無いみたいだし。

う~ん。今後の実戦より今回の方が安易だと思ったけど、奇襲って状況が相殺されちまったかな?

……とは言え今を切り抜ければ今後の大きな自信になるのは間違い無い。此処は抗って貰うしか有るまいッ。

こうなったら恥ずかしいけど……俺の為にも・彼女達の為にも、此処は"熱血"展開で往くしか無いよね!?

よって迫り来るBETAを待つ一瞬の間に考えを纏めた俺は、大きく息を吸い込むと迫り来る敵に吠えた!!








「来いいいいぃぃぃぃっ!!!! BETAああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

『!?!?』×3








うん。キング・オブ・ハートを肖ってつい叫んじゃったんだ☆ 既に来てるだろってツッコミは無しだぜ!?

されど効果は有った様で、米軍3人娘の瞳に間違いなく"光"が灯ったのを確認できた。

一方 俺の方には現在進行形で数体の要撃級がドカドカと地面を踏みしめながら距離を詰めて来ている。

相手に感情なんて皆無なのは分かっているが、多少は挑発になったのかもしれないNE。

また要撃級に目が行きがちだが先陣として戦車級も接近中であり、ナックルでコイツらを捌くのは無理が有るな。


「ここから先は行かせはしないッ! キング……いや国連軍少佐の名に掛けてぇ!!」

『た、武さん!?』

『白銀さんッ!!』

「みんな纏めて叩き潰してやるッ!!」


――――ソコで俺は戦術機の左手からハンド・グレネイドを戦車級の群れに放り投げつつバック・ステップした。


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


『な、何なの!? あの武器は……!!』

『さっき2人(ウォーケン姉妹)に言ってた"例の兵器"って……』

『へぇ~、何時の間にか持たせてたのねェ』


今更なのだが実はコッソリと ゆーこさんに"ハンド・グレネイド"と言う兵器を開発して貰っていた。

しかし状況が状況なのに他人行儀だな ゆーこさん……されど彼女らしくも有るので気にしない事にして。

コレは早い話 転がすタイプの手榴弾。時間差でタイミング良く爆発させる事でザコ(戦車級)を蹴散らすのだ。

要撃級は一体 撃破できりゃ上等だけど、不知火・カスタムは左手に武器を持たないので丁度良い兵器と言える。

左腕にはガドリング・ガンが装着されてるけど、今はペイント弾なので戦車級に対する手段が皆無だったしね。

いかんせん左膝あたりに数個しか装着できていないんだけど、緊急用の兵器として今後も重宝するだろう。

メインとして使ってゆくには数が少なすぎるとは言え……今回 程度のBETAの数なら全く問題無いZE。

ともかく。文字通り戦車級らは"叩き潰せた"ので、今度は俺は要撃級を抑えるべくカスタムを前進させる!!


「ぬううぅぅん……とォりゃぁあッ!!」


≪――――ズドオオォォンッ!!!!≫


要撃級は前腕が厄介でガドリング・ガンで牽制もせずに正面から殴りに行っても間合いの問題で厳しいだろう。

故に前者の台詞で素早く先頭の要撃級の側面に回り込んでおき、後者の叫びで攻撃したのは言うまでも無い。

されど側面もゴツゴツした印象が有りピンポイントに殴る箇所を定める必要が有ったが、効果は抜群のようだ。

短距離ながら思い切り加速しナックルが命中した直後、逆噴射で反動は殺したモノの要撃級の肉は弾け飛ぶ!!


「ヒュ~ッ、凄ェよ殴ってるぞ!? 何なんだアレッ!」

「あ、あんな戦い方 初めて見たわ……!!」

「ミュン。お前は驚いて声も出ねぇって感じか~?」

「……(あと5分で"予約"した時間だったのに……)」


――――俺の戦い方を多くの衛士達が見ているのか、通信越しにザワつきが聞こえてくる。


『ライト機・フレア機・ブリザ機 準備完了。発進せよ』

『り、了解ッ』×3

「(もう済んだのか!? はやいッ!)」


一方ライト達がテレサの指示の元 出撃した様で、レーダを見るに各々の戦術機が此方へと近付いてきていた。

されど彼女らの表情には先程 灯った光が損なわれており、周囲の状況に流されて出撃したと言ったカンジだ。

俺の肖りにより魅せたモノだけじゃ甘かったか? BETAの数は普段と比べれば極めて少ないけど拙いZE。

既に十分 恥ずかしいんだけど仕方ないか……俺はライト達が合流して来る前に"新たな行動"に移る事にする。

それは現在 相手にしている最中の残りの要撃級(5体ほど)を放置し後方の突撃級の方に向かうと言うコトだった。

奴等は一度か二度の"突撃"を既に逃れている衛士達に回避されたのか、要撃&戦車級より若干 後方に居たのだ。


「バルカァァンッ!!」


――――その際 素通りする要撃級にペイント弾の頭部バルカン砲を当て、真っ青にして置く事も忘れない。

無論 BETAとの戦いに慣れないライトらに、敵の位置を分かりやすくさせる為だ。ほ、本当なんだからね!?

いやスイマセン嘘つきました。されど意味の無い威嚇であれ効果が有った様で、増援を無視して俺を追う要撃級。


『さ、流石に突撃級は"あの武装"ダケだと厳しいんじゃ……』

『もう十分です白銀さんッ! 後は"彼女達"に任せて退いてください!!』

『やはり その方が宜しいのでは? 白銀少佐ッ』

「大丈夫ですよ、セレナ中尉。ここは士気を上げます」

『し、士気を――――!? 突撃級5体、時速160kmで接近中!!』


≪ドドドドドドドドッ!!!!≫


「俺は此処だ……っ!!」


此処は廃墟な為 若干スピードを落として突撃して来たデストロイヤー級の突撃をヒラりと跳躍噴射で回避し、
自然と背後に回り込めたカタチとなった俺。ふ~む……やはりBETAは横浜基地 内部に興味は無い様だ。

何せイキナリ解き放たれたみたいだし、とりあえず"対人探知"の網に掛かった戦術機を襲っているってカンジか?

俺はタネが分かっている故にそう判断できるがコレは好都合。第三者には旨く奴等を引き付けてると思われる筈。

……とは言え。まだBETAは増えるだろうし一匹一匹 殴り殺すのは無理が有る。集中力が絶対に尽きるだろう。

ガドリング・ガンの実弾が有れば楽勝なんだけど、無いモノは仕方ないので今の俺には時間稼ぎしか出来ない。

されど間も無くライト達が到着するので、彼女達が火力に物を言わせBETAを蹂躙すればソレで全ては済む。

しかしながら生憎 現状では彼女達が奮えそうもないので、今まさに前述の通り"新たな行動"をするってワケだ。




≪ズシイイィィンッ!!!!≫




――――そんな事をジャンプ中に考え終え着地すると、俺は再び拳で語る熱血漢に変貌していた!!




「俺の この手が真っ赤に燃えるッ!! 勝利を掴めと轟き叫ぶゥ!!」




――――突撃級が此方に再び向き直ろうとする中、俺は不知火・カスタムの右前腕を意味も無く縦に構えさせた。




「行くぞ!? ばああああぁぁぁぁくねつ!! パイル・バンカアアアアァァァァッ!!!!」




≪ガコオオオオォォォォンッ!!!!≫




直後 地面を蹴り突進させると突撃級に急接近し、タイミング良くトリガーを引き針先を側面の装甲に突き立てる。

されど36ミリの一点集中や120ミリの連射でもなければ通らない装甲は尋常では無く貫通とはいかない様子。

俺に来る今の反動による衝撃もハンパじゃないが、この程度で怯んでいてはキング・オブ・ハートは語れない!!




「ヒイイイイィィィィト・エンドッ!!!!」




≪バガアアアアァァァァンッ!!!!≫




『!? と、突撃級の装甲が……!!』

『話は白銀さんに聞いていたけど、本当に殴ったダケでッ』

『へぇ~(社も なかなかの機体を設計したモンね)』


≪うおおおおぉぉぉぉっ!!!!≫


「うっわ~、何なのアレ!? あんな倒し方 聞いた事 無いよ~ッ」

「そうだね……水鳥。ありえないよ」

「は、ハンガーで見た時は"まさか"って思ったけど……ホントだったんだべか……」

「速瀬中尉が見たら小躍りしそうだよねェ」


パイル・バンカーによるパンチの命中後、再びトリガーを引く事により更に射出された先っちょが、
既に食い込ませていた突撃級の装甲を更に貫き、結果 側面の装甲をバラバラに砕いて対象を絶命させた!!

それにより、どうと倒れた突撃級を見た直後……通信越しに物凄い歓声が聞こえ、俺の恥ずかしさが募る。

興奮してくれるのは嬉しいがソレだけの数に見られてたって事なので、顔は真剣だが内心 泣きたいですマジで。

しかし現実 逃避してしまえば原作の白銀の二の舞になってしまうし、俺は頑張って意識を保つと再び行動に移る。

早い話 残った突撃級らから一旦 距離を取り、ライト・フレア・ブリザに効果が有ったかを確認するのだ。


「三人ともッ!」

『!?!?』×3

「今のでBETAは怯んだぞ!? 一気に殲滅しろッ!」

『り、了解っ! ライト・ラーニング少尉、行きます!!』

『私だって……でやああああぁぁぁぁっ!!!!』

『……ッ……BETA――――殺す!! 殺しますッ!!』

『アルカディア04・05・06交戦開始しました』

「みたいですね」

『それでは白銀少佐……此処は もう無理をなさらずッ』

「分かってますよ。これで"大丈夫"みたいですし後退しま~す(……正直チビりそうですしおすし)」

『!? そ、そうですか(……やっぱり"士気"を上げると言うのはライト達の為だったのね)』

「じゃあセレナ中尉は彼女達の管制をしっかりと御願いしますよ?」

『も、勿論ですッ!(あの気迫であれば全てのBETAを倒せたでしょうに、もっと好きになっちゃった……)』

「じゃっ」←彩峰調

『あ、あの~っ!』

「……何ですか?」

『先程の鼓舞……す、素敵でした』

「それほどでもない」(キリッ)

『――――ッ!?』←唯依&まりも


どうやら俺の恥ずかしい攻撃はライト達の士気の上昇に繋がった様で、彼女達は勇ましく吶喊すると……

接触 直後からライトは斬り・フレアは舞い・ブリザは撃ち、物凄い勢いでBETAを蹂躙している様子。

しかも"魅せる何か"も有り見ている衛士達の評価も良さそうだ。実戦もこなせているし、まさに完璧だぜッ。

よって心底 安心した俺は労ってくださるセレナ中尉に対し、調子に乗ってキザっぽく振舞って居ると、
何故か唐突にリンクに割り込んで来た唯依と まりもちゃんの2人。今ので驚いてホントにチビるトコだったYO。


「うわっ、びっくりした。いきなり何事っすか~ッ?」

『た、武さんッ! 私達にも出撃準備を最優先で御願いします!!』

『このままでは"御披露目"どころか有耶無耶になってしまうじゃないですかッ!』

「ゆ、ゆ~こさん……どうします?」


――――ビビッてしまった故に露骨に副司令に助けを求める俺。汚い……流石 白銀 汚い。


『副司令ッ!』

『夕呼っ!!』

『な、なんで あたしに振るのよ? まぁ、良いんじゃない? テレサ』

『は~い。直ちに指示を出しま~す』

「……(へぇ~、今の言葉からすると俺にはそんな権限すら有るのか?)」

『(でも見事な采配だったわね……アイツの部隊は勿論、あたし側でも基地側でも利益ばかりの結果になりそう)』

『(や、やっぱり露骨だったかしら? ……武さん……呆れてる……)』

『(だけど"あんな勇士"を魅せられて見てるダケなんて御免だわッ)』

「……(ウホッ! 良い階級!!)」

『(また何よりの利点は白銀が"留まる意思"を更に残せたと言う事。これ程の結果もアイツは予想外でしょうね。
 新兵器の開発や横浜基地の衛士達の監視で始まって、それら全てが良い影響を与えた事から出た今の結果は)』


そんなワケでライト達3機に続いて唯依&まりもちゃんも準備完了後 出撃し、多少のBETAを撃破していた。

勿論 全機 損傷さえする事も無く、米軍3人娘ダケで7~8割のBETAを殲滅した。コレはマジで大きいZE。

何せ実戦を乗り切ったダケでなく"突撃機動部隊"の元米軍衛士3名の評価そのものが大きく上がったのだから。

話によれば此処には各地から多くの衛士が来ていたみたいだし、彼らが噂を広めてくれれば言う事ナシだな~。

ぶっちゃけベテランの衛士であれば"今回の数"なら殲滅できたと思うけど、インパクトがモノを言ったのだろう。

ちなみに俺もガドリング・ガンやらサブ射撃やらを実弾に変えたら再出撃したが、戦いは ほぼ終了してました。




……




…………




……戦い終結から5分後。俺は戦術機の中で唸っていた。


「むぅ~」

『た、武さん?』

『どうしましたか?』

「コード991が解除されたみたいですな」

『その様ですね』

『思ったよりもBETAの数が少なくて良かったです』


傍に居るのは唯依&まりもちゃんの御披露目 戦術機。大活躍のライト達3機は既に基地に帰還している。

此処で余談だが、2人の呼称が畏まっていないのは互いの会話は他に漏れていないから……なのは さて置き。

いかんせん活躍し過ぎてしまったみたいだ。余りの余裕の勝利に ゆ~こさんは催しは再開させると言っていた。

流石にトライアルは中止せざるを得なかったが、此処で油断していたからこそ"悲劇"は起きてしまったのだ。


「いやいや。それでも、まだ油断は出来ませんよ?」

『えっ?』

『ですが少なくとも戦車級 以上のBETAは間違いなく……』

「じゃあ――――小型種は?」

『!?!?』

『あっ……』

「実機テストのついでに俺は哨戒を続けてます。2人も継続する事」

『は、はい!』

『り、了解ッ』

「移動は常に2機連携で。それに戦術機からは絶対に出ない事……コレは命令だから此処一帯は宜しく~ッ」

『はっ!!』×2

「じゃっ」←再び彩峰調


≪――――ブァッ!!!!≫


『……くッ……私は斯衛の衛士でありながら、とんでもない過ちを冒すところでした』

『これでは教官の経験も返上ですね……小型種であれ生身の人間にとっては脅威……』

『それなのに武さんは圧勝であれ慎重に……(それなのに私は大事な実戦で嫉妬などッ)』

『じ、自分が情けないです(きっと白銀さんは"今の油断"によって仲間を失った経験が有るのね)』


正直な話 此処まで勝った挙句あのBETAの数なら油断するのも当たり前。そりゃコード991も解除されるわ。

でも俺は"万が一"を当たり前の様に経験した白銀の事を知っているので、姑の様に思われようと哨戒を続ける。

本来さっさと戻って彩峰の頭でも小突いてやりたい心境なんだけど、最大の欝イベントは絶対に回避せねばッ。

ひょっとしたら哨戒中の歩兵が襲われたりしてるかもしれないし……正史とは関係ないけど死なせては勿体無い。

よって唯依&まりもちゃんには嫌がらせの様な任務を与えてしまったが、今夜のオカズあげるから勘弁してね!?




……




…………




……1分後。


「!?(あれは……帝国軍のッ?)」


≪――――ズシンッ≫


「(不知火が2機? ……何してんだ?)」


不知火・カスタム(S型)の性能を楽しみ……いやテストしつつ哨戒していると、俺は意外なモノを発見する。

何と廃墟のド真ん中で2機の不知火(帝国軍仕様)がスタンバイ状態で佇んでおり、コックピットが空いていた。

そう言えば帝国軍からもルーキー・ベテランがトライアルに参加してたんだったな……絶対数は少ないけど。

クーデターの一件で"それなり"に国連軍との関係は良くなったって事で、予定よりも多く来ていたらしいが……

何をしているのか分からないので、俺は静かに不知火・カスタムを着地させると遠方から様子を伺う事にした。


「……でも私はッ……のカタキを……筈だったのに……!」


どうやら2機の戦術機の付近に2人の女性が居るっぽくて、一人がもう一人の女性の肩に手を添えていた。

何を言っているかは全く分からないけど、奇襲の影響で体調でも崩して仲間が気遣っているカンジかな?

此処はエリア2では無いが多少はBETAが流れて来てたみたいだし……そうなると片方の娘は新米か~。

あれれっ? だったら今の状況って何か似てないか? その答えを出すのに時間は掛からなそうだったが……


≪ピピピピピッ≫


「(――――兵士級!?)」


"様子を伺う"と言う選択をしてた結果、網膜投影の情報がBETAの存在を唐突に示してくれた!! 数は2体。

一方2人の帝国軍衛士は気付いていないので、咄嗟に助けるべくガドリング・ガンを兵士級に向けたのだが……

この弾丸はバラけ易く"彼女達"を巻き込む危険性を白銀大佐が脳内で知らせてくれたので、俺は思い止まる。

そこで俺は不知火・カスタムを前方噴射させ不知火(帝国軍仕様)との距離を詰めると、案の定2人が気づいた!


「えっ……ひっ!? 嫌ぁぁ!!」

「兵士級!? うわああぁぁ!!」


――――幸い俺の機体に気付いた事で背後から接近する兵士級にも気付いた様だが、それダケでは抗えない。


≪ズシイイイイィィィィンッ!!!!≫


――――よって不知火・カスタムが到達した直後にコックピットを開け、反動そのまま刀を片手に飛び降りると。


『!?!?』

「(約束されたッ!)」


≪ザシュウウゥゥッ!!!!≫


――――先ずは俺の降下に気付いた片方の兵士級の顔面をブッた斬って絶命させつつ、強化装備の恩恵で着地し。


『……!!』

「(勝利ィィ~っ!)」


≪ドシュウウゥゥッ!!!!≫


此方に振り向こうとした兵士級の首を着地の反動を活かした全力斬りで跳ね飛ばして何とか切り抜けたのでした。

欲を言えば斬った時の台詞は全力で叫びたかったんだけど、帝国軍の方々の前なので何とか自重しますた。

しっかし生身でBETAと戦う事になるとは思わなかったZE……案の定、普通に漏らすところだったんだ☆

ともかく不意打ちが成功して良かったな~。普通に対峙してたんじゃ腕の1本や2本どころか命の危機だった。

それに流石はオルタ世界。もし俺が哨戒に力を入れていなかったら、この名無しの帝国軍衛士は死んでいた筈。

コレは正史に影響は無さそうだとは言え……普通に可愛いし命が助かって良かった。素直に喜ばしい事だね~。

……そんな事をBETAの返り血を拭いながら思い、咄嗟による肖りの"続き"を言おうと思っていたんだが……

どっかで見た様な気がしないでも無い尻餅を着いている方の黒髪&長髪の女の子が、意外な事を言って来た!!








「お兄様?」

「へぇあ?」








恐らく俺の目は点になっていたと思う。どうしてこうなった? どうしてこうなった? 何このイベント!?

思えば この新たな"出会い"が空白にならずに済んだオルタ世界のイベントに繋がる羽目になったんだよな~。

だけど今の俺は聞き間違いだと言い聞かせる事しか出来ず、気を取り直して何処ぞの英霊を肖っちゃったんだ☆


「ゴホン。問おう……貴女が帝国軍のルーキーか?」


――――ちなみに怪我が治ったばかりで再び無茶をした事で、霞&唯依に怒られてしまったのは言うまでも無い。




●戯言●
まさかのブラコン。そして、ようやく出せたFateネタ。彼女の登場で正史の空白が埋まってゆきます。
位置付けはサブキャラですが良い所出の斯衛の方なので"あの方"が再び出たり。横浜は……紅く燃えている!!

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=9097420
「唯依さん、真那さん!!懲らしめてやりなさい!!」の台詞でコレを描いてしまうタニシ氏に敬礼ッ!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ48.5
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/03/06 20:21
これはひどいオルタネイティヴ48.5




――――彼女の名は"七瀬 凛"。




彼女は五摂家にも多少の縁(ゆかり)が有る名家に生まれたのだが、ハジメから斯衛としては教育されなかった。

何故なら凛には"兄"の存在があり、周囲の誰もが彼が"七瀬家を背負って立つ衛士"となると期待を集めていた。

そんな彼の背中を見ながら彼女は育ってゆき……英才教育に追われ何時も忙しそうにしながらも、
暇を作っては何時も一人ぼっちな自分の遊び相手をしてくれる彼の事が、彼女はたまらなく"好き"だった。

故にか世間の"常識"を知らぬ程 幼かった頃の彼女は、将来は彼の"お嫁さん"になろうと本気で思った事も有る。




――――しかし、3年前の夏・BETA首都圏進行時による兄の戦死。




3600万人の人間が犠牲となった"悲劇"に置いて、大切な者を失ったのは凛とて例外では無かった。

話によれば兄は逃げ遅れた者を助ける為に立派に果てたとの事だが、それで彼女が納得する筈は無い。

先ずは兄が死ぬ位であれば逃げ遅れた者達が死ぬべきだったと考え、殿を指示した軍をも激しく憎む。

されどソレが無意味な事と悟ると一年後……彼女は全ての矛先をBETAに向け、イチから衛士を目指す。

それは"斯衛"としてでは無く、"帝国軍衛士"としてBETAを殺戮する事ダケを目的とした志願であった。

正直 将軍を守る為の存在と言う斯衛には何の魅力も感じず、少しでも多くのBETAを殺し死ぬ事が目標。

そして……天国の兄の所へ逝き、彼に褒めて貰うと言う事が"その時"の凛が選んだ最高の幸せとも言えた。

当然"七瀬家"の事情も二の次で、周囲からの反対を押し切っての事だが……五摂家からの口出しは一切無し。

本来"白"の武御雷が与えられる事となる武家に置いて新たな跡取りを"斯衛"とする管理は万全にすべきだが……

彼女の境遇を考えれば仕方無しと思ったか? 真実は謎だが"この時点"の日本は本当に"大惨事"だったのだ。

再び"明星作戦"に置いて本州を取り戻せたにせよ、もはや日本の地は彼女の心の様に枯れ果てていたのだから。




――――されど2年以上の時を経て"七瀬 凛" は衛士としては目覚しい成長を遂げていった。




始めは某 白銀の様に近い体力の無さであったが、全ては彼を凌ぐBETAに対する執念で全てを切り抜ける。

無論 彼女と同じタイミングで志願した衛士の卵達もBETAに対する怒りは並外れたモノだったのだが……

それダケ凛の兄に対する想いは強く、戦術機の適正検査に置いては歴代一位に近い成績を残し周囲を驚かせた。

当然 将軍家も彼女の進歩に目を光らせていて、頃合を見て是非 帝国斯衛軍に加わって貰おうと思わせた程だ。




「日本を変える? ……生憎 まだ私は訓練兵ですし、今はBETAにしか興味が有りません」




ここダケの話 凛が上層に嫌悪している事を知る故に、裏ではクーデター軍をも彼女を狙っていたのはさて置き。

国内の"くだらない争い"の所為で彼女のストレスが募る中……ようやく某B分隊と同じタイミングで任官した時。

横浜基地にて国連軍によるトライアルが開始される事を聞き、凛は数少ない代表のメンバーとして選出された。




「ボク 伊隅 あきらって言いますッ! 宜しく御願いしますね!?」

「……えぇ」




どうやら帝国軍からはベテランの中隊と新任の小隊が派遣される様であり、彼女は後者の面子として選ばれた。

正直 面倒であったが、初のBETAとの戦いに置ける哨戒戦に置いては丁度良いモノだと凛は冷たく笑った。

その際 人懐っこい"伊隅 あきら"と言う少女がイライラとさせてくれ、自慢の姉達の話が非常に不愉快だった。

長女は帝国内務省に勤務していたり、次女は国連軍に居たり、三女は帝国陸軍の中尉と言う話は何の意味がある?

彼女含め残り2人の衛士も自分が(一応)武家と言う事を知っているのか……妙に畏まっているのも気に食わない。

だがトライアルが終われば面々は赤の他人に戻る。戦場で背を合わせるのなら別だが、好きに戦わせて貰おう。

勿論 確実に勝つ為に"ニ機連携"はしっかりと組むつもりでは有るが、内心では他人を信用などしてやるものかッ。




――――そう思い臨んだトライアルでの模擬戦だったが、何と彼女達は初戦から敗北した。




『グレイトォ!! こりゃクレイジーだぜ"新OS"ってのはッ!』←オランダ男

『可哀相だけど、ヒヨッコ相手じゃ負ける気がしないね~』←ルーマニア女

『おいおい余り苛めて やるんじゃないよ? そこそこ手強かったじゃないか』←ベトナム女

『それよか戻ったら早速"体感コーナー"ってのに行ってみよ~ぜ!?』←ノルウェー男




凛は勿論 あきらも残り2人の新米衛士も決して悪い腕は持っておらず、帝国軍の熟練衛士にも抗える程の筈。

それなのにベテランとは言え国連軍の小隊に惨敗……国連軍の質の向上には油断するなとは言われていたが、
コレは極めて予想外だった。それは あきら達も同様であり、まさに"ぐう"の音も出ていなかった様子。

しかし反面 同じく新米の国連軍の小隊5機は国連軍の中隊に圧勝しており、帝国軍の中隊も惨敗している!?

コレは凛を激しく驚愕させ、放って置けないと言う心境で付いて来る あきらと2人で説明ブースを行き交い、
戦果の理由を調べてゆく中……何度も聞いたのが"白銀少佐"と言う名前。そして常識を覆す数々の発想や兵器。
(余談だが あきらはバズーカの講義をする伊隅みちるの姿を発見して声を掛けようか本気で悩んだりした)

それらを考えれば自分が いかに"井の中の蛙"で有ったかを痛感し、何とも言えない"悔しさ"が浮かんでくる。

また最強の部隊でも有ると言う"突撃機動部隊"の隊長"白銀 武"は自分と左程 年齢も変わらないそうだし……

まだ見ぬ"少年"に凛は劣等感をも意識し、結局あきらに押されるようにハンガーに戻されると次の模擬戦に臨む。




――――だが次からの相手は互角以下であり、凛は段々と調子を取り戻しつつあったのだが!?




『コード991発生ッ、繰り返す!! コード991発生!!』

『だ、第二演習場よりBETA出現ッ! 正面に要撃級を4体確認!!』




『そ、そんな!? 何でBETAが来るんだよ~ッ!』

「……BETA……」

『七瀬さんッ! 早くボクたちも逃げないと――――』

「……ぅぐっ……」

『ほ、ホラ早く!! 一体こっちに来てるってばっ!』

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

『!?!?』

「死ねッ! 死ね死ねェ!! 死ね死ね死ね死ねええぇぇーーーーッ!!!!」


精神が不安定な状況に置いてのBETAの強襲が、彼女の緊張の糸の様な"何か"を千切るのには十分であった。

エリア2では無い故あきら以外の2機は速やかに離脱したが、棒立ちする凛を心配しあきらも その場に留まる。

しかし仲間やトライアルの事など全てを一瞬で忘れ、凛は狂った様に流れて来た要撃級にペイント弾を乱射する。

されど"水鉄砲"で僅か一体の要撃級であれ倒す事など出来ず、いずれは壁を背後に豆鉄砲を撃ち続けていた。


「な、なんでッ! 何で死なないの!? どうして……!!」

『そんなの効くワケ無いじゃないかッ! 早く逃げてよ、早く!! 死んじゃうよッ!!』


≪――――バコォンッ!!!!≫


「きゃああああぁぁぁぁッ!!!!」

『七瀬さん!? くっ……こうなったらボクが……』


視界を塞いでもBETAには全くの無意味であろうが、多少のペイント弾による牽制が幸いしたのだろうか?

彼女が必死で抗おうと左腕を出していた結果、辛うじてシールドを犠牲に七瀬機は弾き飛ばされるダケで済む。

また相方が今の凛であれ仲間を大切に思う あきらの性格が幸いし、要撃級は一旦 伊隅機に注意を移した。

コレは凛が軽い脳震盪を起こした事も幸いしており、時間稼ぎに置ける緊張感により あきらが息を呑んだ時!!


『り、了解っ! ライト・ラーニング少尉、行きます!!』

『私だって……でやああああぁぁぁぁっ!!!!』

『……ッ……BETA――――殺す!! 殺しますッ!!』


≪――――ドパパパパパパパパッ!!!!≫


『な、仲間が……来てくれた……?』

「……ッ……」


エリア2で奮闘する白銀機の援軍として駆けつけた3機のうち一体が目の前の要撃級を一瞬で撃破ッ!

そして、まるで(実際その通りなのだが)凛・あきらの2機が眼中に無いかの様に舞いBETAを蹂躙していった。

よって極めて危ない場面が有ったとは言え……2人の帝国軍・新米衛士は初の実戦で命が助かったのである。




――――こうして戦いが終結すると、2人は"その場"でコックピットから出て哀愁に耽っていた。




「……結局 私は……自惚れていたダケだったんだ……」

「…………」

「アレだけ期待を集めて置きながら……周囲を蔑ろに振舞って置きながら……あんな有様なんて……」

「し、仕方ないよッ。誰だって最初から大活躍できるヒトなんて居ないし……」




――――今の言葉と共に あきらは遠慮がちに凛の肩に手を添えたが、彼女の自傷は続いている。




「……それでも……1匹のBETAさえ倒す事が出来なかった……」

「それは今回は実弾じゃ無かったし――――」

「でも私はッ! お兄様のカタキを……アイツらを殺してカタキを討つ筈だったのに!!」

「わわっ」

「その為ダケに全てを捨てて衛士になったのにッ! 何だったの!? 何だったのよ今迄の私は……!!」

「……七瀬さん……」

「ねぇ? どうしたら良いの? 私はコレから……どうすればカタキを……うぅッ……うぇえっ……」

「(あ、あの七瀬さんが泣くなんて……)」


コレは"七瀬 凛"が衛士となって余りにも早すぎる挫折。思えば衛士となる前の挫折も数えればキリが無かった。

されど衛士としての才能が開花されてからは、周囲に反感を買いながらも実力ダケで黙らせていたと言うのにッ!

この凛の初の実戦に置ける生命は、期待していなかった"筈"の周囲の働きが無ければ守られる事は無かったのだ。

しかもBETAを捌くどころがペイント弾をバラ撒いた挙句 危機に陥り、終いには漏らしながら気絶する始末。

最初は"そう言う衛士"を馬鹿にしていたと言うのに……彼女は自分が本当に情けなくて情けなくて仕方なかった。

よって衛士を目指してから初めて流れた、兄を失ってから枯れ果てた筈の悔し涙。その流れは留まる事が無い。

対して あきらも自分は大した事は出来ず泣きたい気持ちだったのだが、予想外の彼女の涙に驚いてると……


「えっ……ひっ!? 嫌ぁぁ!!」

「兵士級!? うわああぁぁ!!」


――――謎の機動音に互いが振り返ると、2体の兵士級が襲い掛かろうとして来ていたのだが!?


≪ズシイイイイィィィィンッ!!!!≫


『!?!?』

「…………」


≪ザシュウウゥゥッ!!!!≫


――――何処からか"降って"来た強化装備 姿の男性が、後方の兵士級の顔面をアッサリと縦に両断すると。


『……!!』

「…………」


≪ドシュウウゥゥッ!!!!≫


――――"そちら"に注意を向けた前方の兵士級をも極めて無駄のない動き かつ冷静に首を飛ばして絶命させる。


「(す、凄いッ!)」


コレには腰が引けていた あきらには驚愕であった。まさか銃も無しにBETAを倒す事が出来るとはッ!

しかも彼は体液を噴出しながら倒れる兵士級の返り血を気にもせず、頬を拭いながら周囲を警戒している。

まだ衛士としての経験の浅い あきらで有ったが、彼女は一目で分かった。彼は国連軍の"凄腕の衛士"なのだと。

実際その通りなのだが、あきらは彼がエリア2のBETAを引き付けていた衛士と言う事までは分かっていない。

されど一瞬をも油断&隙を感じさせない(尿を我慢しているダケの)表情が そう感じさせ、大きな恩をも浮かんだ。

もし彼が兵士級を倒してくれなければ、自分の頭は奴に齧られていた筈なのだから……今 思えば恐ろし過ぎる。

ならば今は彼に礼を言わなくてはならない。可能であれば要撃級から助けてくれた衛士にも……と考えていると。








「お兄様?」

「へぇあ?」








――――あきらの後方で恐怖により尻餅を着いていた凛が、彼を見て思いがけない事を呟いたのだったッ!

何故かと言うと目の前の"衛士"は凛の兄とソックリだったからで、彼女は無意識のうちに言ってしまったらしい。

あきらにとっては本当に そうなのかと思うと同時に、その時 見せた男性の呆気に取られた表情が印象的だった。

最初は怖いイメージが強かったのだが、思ったより良い人なのだろう……当然 その洞察は間違っていなかった。




「ゴホン。問おう……貴女が帝国軍のルーキーか?」


「えっ?」

「あぅ?」


≪シーーーーン……≫


「あぁ~ッ、失礼。な、何でも無い……アルカディア01よりHQへ。今だ2体の兵士級を確認……」




……先程 見た彼の勇士は見間違えだったのだろうか? 彼は若干 頬を紅くしながら何故か誤魔化す様に通信。

その最中 あきらは凛に視線を移してみると、何故か彼女は片手で胸を抑えながら通信中の衛士を見上げていた。

この時"七瀬さんにも今みたいなカオが出来るんだなぁ~"とか考えたので、何となく緊張が解けた気がしたが……




「(……も、漏れちゃった……)」




――――解けたのは"緊張の糸"ダケでは無かった様で、あきらも多くの衛士と同じ運命を辿る事となった。




「良し。直ぐ警戒が強化されるみたいだから、君達は戦術機に戻って帰還してくれ」

「あっ、はい」

「……ッ……」

「君は……どうした? 立てないのか?」

「そ、そうみたいです。……腰が……抜けてしまったみたいで……」

「だったら肩を貸すよ」

「!? あ、あああ有難う御座いますッ」

「何なら俺の機体の中に入って戻るかい?」

「えぇっ!?」

「はははっ、冗談だよ」

「……あれ?」(イラッ)




――――ともかく、コレが帝国軍・新米衛士2人の恩人・白銀少佐との初めての出会いだったのである。




●戯言●
う~ん。たまには こう言うのも良いかなあ……ベタベタな境遇で恐縮ですが勘弁していってね!?
色々と無茶ですが実のところ此処で書かれる事の殆どは以後の本編の一人称では語れないので書く事にしました。
しかし感想[1674]氏に彼女の存在が読まれるとは思いませんでした。久しぶりのニュータイプの方ですね。



[3960] キャラクター注目度ランキング(~2010年03月09日)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:1391bf9d
Date: 2010/03/09 18:23
これはひどいオルタネイティヴ


キャラクター注目度ランキング(~2010年03月09日)








このコーナーでは今迄(48.5話+番外編)で、どのキャラが最も注目されていたのかを、
1690にも置ける感想に置いて判断したいと思います。本家の感想&投票掲示板に置いても、
キャラクターの登場を示唆する声が上がっていますが、それは除外することにしています。


……では主な得点の獲得条件・ルールは……


①一回の名指しで一人一票(1点)。複数名を上げていれば全員に配布。多すぎれば独断で絞る。
②(既に登場済みのキャラが)可愛かった・もっと出してほしいと言う意見が出ても1点は1点。
③(まだ登場していないキャラで)出して欲しい・出るのが楽しみだと言う声が出てもプラス1点。
④キャラの名前が名指しで出ていなくても、明らかに(このキャラだと)分かれば1点を獲得。
⑤感想レスや白銀のネタにウケて頂いた事での感想は除外。姉妹やトリオに関しては複数回で1点。
⑥純粋な人気投票ではなく人気=感想で名が挙がる数と言う意味では無いと思うので あしからず。
⑦ユウヤ・ブリッジスと他TEキャラも名が挙がっていても一部のキャラを除いて除外しています。
⑧麻倉・高原・A-01オリキャラ3人・米軍3人娘も そこそこ点を得ていますが対象外です。
⑨勿論 普通に集計すれば白銀(主人公)がぶっちぎりの1位なのですがつまらないので除外します。
⑩名指しが有れど例えば"(キャラの名)より純夏を出して"と言った場合 前者は0点。純夏が1点。








――――以下20位に届かなかったキャラ達の発表。








柏木 晴子5点
何気に初の一票は感想750以降。彼女の関わったネタは⑨くらいなので仕方ないですね。

戎 美凪6点
シャニと言う濃いキャラを肖ってはいたが、神代に全て美味しい所を持って行かれてしまう。

鎧衣 美琴6点
左近さんとは別々の集計なので伸び悩む。インパクトは父親の方が高かったようです。

風間 祷子7点
大体は宗像とセットで登場し名が挙がった。出番が少ないので妥当な注目度ですな。

伊隅 あきら8点
登場が確定になったのは最新話(1話限り)だったので、8点でも多めだと思います。

巴 雪乃8点
トリオの中では一票が最も早かった。神代・戎と比べると真面目なダケで個性が無い。

珠瀬 壬姫8点
そこそこネタは入っていた筈ですが、名指しで書き込んでくれた方は少なかった様子。

フィカーツィア・ラトロワ9点
TEキャラの中で登場を促す声が紅姉妹に続いて多かった。ユウヤと違って活躍して欲しい意味で。

宗像 美冴9点
決定的なフラグを未だに立てる事が出来ず今でも難しいので伸び辛い人だと思います。

築地 多恵9点
おっぱいが"いっぱい"で初の1票。おもらし・要所のナマり台詞ダケではインパクトに掛けた様だ。

鎧衣 左近10点
初票は登場時にて。娘よりもキャラが更に濃く良い仕事をするので注目度が僅かに高かった模様。

月詠 真耶10点
感想1050以降で初の1票を獲得。作者はソレで彼女の登場を決めてしまっていた。

伊隅 みちる11点
出番は決して少なくは無いが全体的に地味な人気の印象。面会イベントで少々伸びを見せる。

涼宮 茜12点
一票は築地よりも遅く、感想450以降である。焦点が当たった出番は一度限りだったしなあ。

七瀬 凛14点
あきらと同様このタイミングでの新キャラ登場はインパクトが有った様子。今後の注目に期待。








――――以下ベスト20~11の発表です。








第20位……沙霧 尚哉20点「白銀少佐と言ったか? ……彼には……完敗だな……」

初期から彼の処遇を期待する声を頂いていました。それらの意見は除外するか悩みましたが、
極端に"ぶっ殺せ!"みたいなコメントで無い限りは1点を入れていたら こうなってしまいました。
ちなみに彼ダケなく皆に言える事ですが、20点=感想板で20回コメントが有ったと言えます。








第18位……巌谷 榮二21点「見違えるように活気が出てくれたな。コレも彼の御蔭か?」

初登場では唯依ばかりが注目されてしまった為、彼の名が挙がる事は殆ど無かったのだが、
ゆっくりたけるに固執する様が妙に評価され伸びる。現在は横浜基地に居座っている事により、
唯依とセットで登場することが多く、彼女に殴られては点数が伸びてゆく。決してMではない。








第18位……榊 千鶴21点「任官したのは只の通過点。このままでは終わりません!」

父とセットで付けているので若干高めです。最初は彩峰・御剣と比べると目立たなかったが、
彩峰と同様クーデターでの会話で それなりの伸びを見せ、沙霧と巌谷さんに追い上げを見せる。
そして任官パーティーで榊 総理が登場すると、2人に並んで この順位に食い込みました。








第17位……鑑 純夏22点「……(今は何も喋っちゃいけないんだって。つまんないよ~)」

まだ本編には一度も登場していないが流石はヒロイン。何度も登場を示唆するコメントがあり、
一応 中堅クラスの得点である。彼女には悪い事をしているので、登場後は上位に入って頂きたい。
トライアルが終わったので間も無く登場すると思います。安定期に入った彼女はどう思うのか?








第16位……アルフレッド・ウォーケン24点「あいつらは私に何か隠し事をしている様だが?」

登場前も登場直後も平凡な注目度であったが、AAネタで人気大爆発。ぐんぐん順位を伸ばす。
2人の妹が居たと言う事もポイントが高かった様子。おや? 偶然 順位が3人並んでいますね。
ちなみに同率16位で紅姉妹(24点)が入っていますが、今の段階では対象外にして置きます。








第15位……テレサ・ウォーケン34点「姉さんの事……兄さんが知ったらショック死するかも」

名無しでの全女性キャラ初の自慰で始まり、ドM設定で既に10票前後を獲得しいていた模様。
クーデターに置いてウォーケン少佐の妹と分かると更に伸び、その名が感想で目立ち始める。
姉がオチ担当となってからは姉妹で注目され得点を稼いだ。姉が本気で心配になってきている。








第14位……セレナ・ウォーケン36点「見られないのは計算済みです。でも手間は掛かってます」

テレサと同様、露出狂と言う性癖が確立した直後に大きな伸びを見せはじめ、作者を驚かせる。
更に"だがノーパンである"で掴みはOK。読者さんから"パンツ履け!"と言う声を多々受けた。
最初はテレサに大きく引き離されていたが、しつこいネタでの反応も加わりそのまま追い抜く。








第13位……イルマ・テスレフ40点「あの娘……ミツルギにも、後で謝っておかなきゃね……」

感想1100前後で初1点獲得でしたが、クーデター中に安否を気遣う声が非常に多かったです。
原作で死んでしまう事から来るモノだったのでしょう。速瀬に捕らえられてからは暫し放置され、
面会を示唆する声を何度か頂いており、いざ再登場でのオッパイの反響もなかなかのモノでした。








第12位……御剣 冥夜41点「むぅ、思えばタケルには負担を掛けてばかりだ……不甲斐ない」

一度 神代に追い抜かれるが訓練イベントで抜き返したり、彩峰とも競ったりもしていたが、
いずれにも最終的に引き離されてしまった。ただ単に出番の無さが問題だったと思いますが、
登場した時はしっかりと点を稼いでいました。されど白銀のネタに飲まれる場面も多かった?








第11位……彩峰 慧46点「ん……11位? ……ッ……妬ましい……でも、まあいいか」

要所での会話ネタで安定した評価を得て冥夜を抑える。クーデター前の妬ましいで異常に伸びる。
大抵 彼女が登場した時は白銀と漫才をするので、萌えイベントの様なモノは殆ど無かったが、
さり気なく読者さんの書き込みの中に名が入っていた感じです。今後も このスタイルで行こう。








――――以後ベスト10~4の発表です。








第10位……月詠 真那47点「コメントをと言われても困るのですが……悪くは無い気分です」

初登場後インペリアル・クロスで急激に点が伸び始める。クーデターでも出番が多くの点を獲得。
そして面会イベントに続いて任官パーティーでのorzで何と冥夜を追い抜き。彩峰からも逃げ切る。
とにかく彼女は立場上 落とし辛いので既に傾いている冥夜より声が上がったといった印象です。








第9位……神代 巽48点「9位で良いですッ!(し、白銀少佐に9位だし こう言えって……)」

定期的に神代電波を飛ばしてくれる方の御蔭で安定して伸び、なんと真那さんと競り勝った。
大体カスタムでの訓練イベントにて上位に食い込んだとは言え、この順位は一人の方によるもの。
感想履歴を有る程度 見れば分かると思いますが、彼女がカスタムのテストを出来たのも……?








第8位……涼宮 遙59点「……うぅッ……水月~? 後で……お話しようか……?」(ニコッ☆)

初登場で結構インパクトが有るネタにされてしまった速瀬と違って その際はチョイ役でしかなく、
遅れたスタートとなったが初オナでA-01で2位の地位を確立させ、赤坂ネタで一気に伸びる。
一気に票を得たタイミングはその2点のみだったが、速瀬と共に登場しては点を稼いでいった。









第7位……煌武院 悠陽62点「七? 冥夜には悪い事をしました。ですが わたくしも友人を……」

出演していないのに既に10点越えで登場。そのまま短期間でトップクラスの伸びを見せる。
連載2ヶ月程度白銀と接し続けていたので妥当と思えるが、7~8話程度でコレは立派ですね。
されど殿下・殿下と読者さん達には言われており、冥夜と違い悠陽と書かれた事は殆ど無い。








第6位……イリーナ・ピアティフ65点「彼女達に負けたのであれば、仕方ありませんね」

最も最初に白銀28と接し惚れてしまったり勘違いしたりするので、原作で脇役でありながら、
初の実戦後でまりもを抜かす。しかし その後追いつかれるが、マウアーネタで競り勝つも、
後半 出番はあれどインパクトの有るネタに欠け読者さんからの注目度が上がらなかった様子。








第5位……社 霞76点「白銀さんが何か反応を示してくれるまで……ねばーぎぶあっぷです」

終始安定して伸びる。当然クーデターでは伸び悩んだがその後のイベントで一気に巻き返した。
彼女が絡んだネタは多いと思うのですが、はっちゃけた白銀の方に注目が集まっていた次第です。
今後もチョイ役で白銀28の周囲をウロチョロとしつつ注目を集めていくに違いないでしょう。








第4位……香月 夕呼83点「ま、まりもに負けた……ですって? クッ……油断してたわね」

顔文字ネタあたりでまりも・霞を大きく引き離し、その後の白銀とのキス☆で更に伸びる。
しかしクーデター(実戦)で長い事 出番が無く まりも&唯依に追い抜かれ2位から4位に落ちる。
されど白銀28が帰還してからは勘違いや会話ネタで順調に得点を伸ばしていっていました。








――――以後ベスト3の発表です。








第3位……神宮司 まりも89点「中々の評価ですね。ですが、まだまだ中尉として精進します!」

序盤のダントツトップ。途中霞に追いつかれるがウラキネタや体操ネタで引き離し先生を追い抜く。
それから出番は決して多くは無いのに何故かモリモリと点を伸ばしていった、隠れた人気キャラ。
正直なところ、この順位は予想していませんでした。今迄の経緯 次第では一位になってたかも。








第2位……速瀬 水月103点「ふふん。まあ1つや2つ障害が無いと面白くないもんねェ?」

海本さんの肖り&もんじゃネタで人気急上昇。後者でピアティフを抜かし、以後独走体勢に移る。
そしてAAネタで更に伸び感想1400前後で100点を達成。その際の唯依の得点は80前後。
されどクーデターが終わっても出番が少なく、作者の武×唯依 発言も有って遂に追い抜かれる。








第1位……篁 唯依121点「彼と傍にいる事で自然と私にも注目が集るのですね」(キリッ)

実は初期から登場を促す声が有った。登場前は僅か2点だったが、主演直後からぐんぐん伸びる。
そのまま爆発的に上がってゆき感想1100前後で2位に浮上! その後 若干水月に離されるが、
感想1450前後で100点達成。更に番外編の恩恵などもあり、水月を追い抜き一位に輝いた。








感想を遡り全て集計したら合計8時間くらい掛かりました。普通に1話分書けてたと思いますorz
最初は速瀬が逃げ切るモノだとばかり思っていましたが、唯依姫の伸びが尋常じゃなかったです。
それにしても過去の感想を振り返ってみるに此処まで来れているのは本当に皆様の御蔭であります。
では今後とも"これはひどいオルタネイティヴ"を宜しく御願いします。白銀の戦いはコレからだ!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ49 2010/03/14 07:03
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/03/15 12:47
これはひどいオルタネイティヴ49




――――原作にて最大の欝イベントの幕開けとなるトライアル。




それが"この世界"ではどうなったかと言うと、結論を述べれば大成功で幕を閉じた。……何せ戦死者ゼロだし。

勿論BETAの襲撃が有った事で騒然ドコロか大騒ぎになったが、BETAの全滅から約1時間の休憩の後。

やはりトライアルは中止となってしまっているが主にA-01がコンパニオンよろしく働く催しは再開され、
その前に俺の小型種の発見で機械化強化歩兵の追加出撃は有ったモノの、新たな脅威は結局 生まれなかった模様。

それにしても……XM3を始め新しく生まれた様々な概念は、参加した人達に物凄い支持を得ていたな~。

トライアルでの戦果は勿論の事だが、俺達がBETAを迎撃した時のインパクトも凄かった様で、
襲撃後の催しでは前半を更に越える衛士達が各ブースに詰め掛け、伊隅達はヒィヒィ言いながら講義をしていた。

何せ ゆ~こさんは先程の俺達6機の戦闘時の映像を、襲撃は自演と言う事から安易に撮影できていたらしく、
BETA襲撃に居合わせなかった多くの衛士達にも、直ぐに拵えた各所のモニターで見せていたからだ。

……実は俺がBETAと戦っていた時に聴こえた歓声はアレでも一部だったらしい。結構 耳に来たんだけどNE。

もし"例の台詞"も全員の参加者に聴かれていたら暫く立ち直れなかったと思うけど、カメラの映像で助かったぜ。

しっかし用意周到過ぎですよねェ? 全くもう。原作みたくグダグダになってもソレはソレで反省出来るってか~?

また特にバカみたいに人気の有った(千鶴との訓練でパッと浮かんだダケの)シンクロ・システムの担当であった、
神村と葛城なんて泣きそうな顔になりながら案内を続けてたし、彼女らには悪いが成果が出ている様で嬉しい。

"こっち"に来てから何とか正史より戦力を充実させようと俺なりに頑張って来た"つもり"だったんだけど、
まりもちゃんが死なないドコロか偶然助けた帝国軍衛士の様に"誰も"死なず、反響と言う結果も残す事が出来た!

だから喜びを抑え切れない俺を許してくれ~。正直トライアルは今迄の実戦より緊張するイベントだったけど、
クリア出来た今 多少は余裕を持って良い筈なのだから。色々と神経使ったクーデターが過ぎてから日も浅いし。

それに原作みたく俺は"EX世界"には戻らないから、極端な話 自室でゴロゴロして休養する事も可能なのだ。

勿論 何人かの部下が入った今そんな余裕は無さそうだけど、今のウチに連休を取って置くのも良いかもしれん。

考えてみれば白銀が"こっち"に戻ってからは彼に休む暇なんぞ何一つ無かったしな~。肉体・精神 全ての意味で。

だから俺も桜花作戦が終わる迄はハードスケジュールだろうし、今からの数日は大事に消化していかないとね~。




――――そんな頭が痛くなる思考は さて置き、俺が帝国軍衛士を助けた直後の話をしよう。




俺がCPに連絡を入れた後 腰を抜かしていた方の女の子の肩を貸したりしていると、直ぐに2機の戦術機が来る。

それは唯依&まりもちゃんであり、まだ小型種の存在を恐れていた俺にとって非常に頼もしい存在に見えた。

だけど……何でだったんだろう? 突然 支援狙撃砲と拡散突撃砲の銃口を向けられた時はビビりましたよマジで。

よって咄嗟に網膜投影してみたら以前の様にレイプ目だったし……まりもちゃんダケでなく唯依までもがだぜ?

恐らく小型種が残ってたって事で気を引き締めてたんだろうけど、チビるドコロかデカい方が出そうになったよ。

しかもハンガーに戻りコックピットを出ると唯依に結構な剣幕で迫られる。主に無茶な出撃をしたと言う事で。

……とは言え俺が一人で出撃した事で皆が助かった事は分かっていたらしく、主に怒ってた感が強かったけど、
悔しそうな・心配そうな表情も見え隠れしてたので、素直に謝る事で許して貰いました。トイレ行きたかったし。


≪――――ですがッ≫

≪へぇあ?≫

≪あれダケは許容できませんッ! 操縦は百歩譲って良いとして、病み上がりの生身でBETAと戦うなど!!≫

≪で、でも"あの時"は帝国軍の娘がヤバそうだったし≫

≪分かっていますッ。分かっていますけど……武さんはもっと自分を大切になさってくださいッ!≫

≪えぇ~? だけど≫

≪言い訳は結構ですっ! とにかく後の事は私達に任せて、武さんは医師の診察を受けるべきです!!≫

≪いや別に何とも≫

≪受けるべきです!!≫

≪は、はい≫ ←チビっちゃった☆

≪(コレは全て私達の不甲斐なさから来た結果。だから私や篁中尉が言えた事じゃないけど、それ程まで彼を?)≫


しかし戦術機を飛び降りて兵士級を斬ったと言う"無茶"は許して貰えなかったらしく、俺は途中退場となった。

別にBETAと生身で交えたのは10秒も無かったから何とも無いんだけど、ホント上官思いの部下ですね~。

まあ初の実戦の様に短い時間で神経を使ったのは間違い無かったので、其処は素直に唯依の言葉に従う事にした。

決して唯依さんが怖かった訳では無い。チビってしまったのも只単に我慢の限界を超えてたダケだろう。(キリッ)

よってクーデターの前に宣言した通り、診察の後は霞と2人でトランプする事にしました。(39話 後編②参照)


≪えっと……これとこれが揃って、これとこれも……≫

≪あ、ありのまま今 起こった事を話すぜ! "俺は神経衰弱で2枚のカードを捲ったと思ったら、
 何時の間にか勝負がついていた"……な、何を言ってるか分からね~と思うが俺も何をされたか――――≫

≪どうしましたか?≫

≪えっ? あァゴメン。そ、それより霞……裏返ったカードの傷ダケで絵柄を丸暗記するのは反則だぞ?≫

≪白銀さんが悪いんです(……また私を心配させましたから……)≫

≪へぇあ≫

≪今度は"ぽーかー"か"ぶらっくじゃっく"がしたいです≫

≪ダメッ! それだって丸暗記してたら俺が圧倒的に不利じゃないか! 此処は"スピード"に限るだろ!?≫

≪ふじこ~≫

≪うむうむ。やっぱり"あが~"よりソッチの方が良いぞ?≫


――――こうして俺と霞が和んでいた一方、伊隅達は2名を除き全員 疲労困憊の為 翌日は休暇となったとの事。




……




…………




2001年12月12日 正午


「それじゃ~皆。午後のシミュレーター訓練も頑張って下さいね?」

「はっ!」×8


昨日の診察で一応 医師には大事を取った方が良いと言われ、ソレを唯依の報告する事で昼過ぎまで寝た俺。

んで部屋には霞が迎えに来てくれたので、午前中に訓練していた唯依たち8名と合流して全員で昼食を摂る。

その8名とは唯依・まりもちゃん・ライト・フレア・ブリザ・イルマ・ウォーケン姉妹と言うのはさて置き。

昨日 家族との再会を果たせたイルマは改めて俺達に感謝しつつ皆に負けないように頑張りますと仰ってくれた。

よって俺も午後の訓練に参加したいトコロだったんだけど、ゆ~こさんに呼ばれていた為 先送りとなってしまう。

まぁ丁度良かったけどね~。"これから数日間"の俺の予定を聞く為に昨日みたく執務室には行こうと思ってたし。

彼女が俺への指示を何も考えていなければ自分で考えるが、勝手な事をして今更 信頼度を落としても困るのだ。

そんなワケで俺はPXで唯依達を見送ると、霞と共に地下のエレベータを目指すべく歩き出そうとしたが……


「ねえ、ちょっと」

「すみません!」

「えっ? 速瀬中尉と……」

「涼宮少尉です、少佐ッ!」


――――2つの声に呼び止められて振り返ると、背後には速瀬と涼宮(妹)が立っていた。相変わらず美形だな。


「こりゃまた珍しい組み合わせだな」

「そりゃ~昨日の件で私と茜ダケ休暇を貰えなかったしね」

「BETAの襲撃が有ったと言うのは驚きましたけど、大事にはならなかったらしくて安心しました」

「……ッ……そうね」


≪聞いたな!? 全員 実弾を酵素弾倉に変更しろッ!≫(15話 参照)


「(もしかすると速瀬中尉は……真実を"察して"いるのかもしれません)」

「それで何か用かい?」←何時もの如く速瀬に警戒中

「えっと、それなんだけど」

「突撃機動部隊の様に私達も訓練をっていきたいトコロなんですけど、お姉……涼宮中尉も居ないので……」

「2人じゃ無理が有るのよね~。"新人"をシゴこうとも思ったけど、勝手な事したら大尉に怒られちゃうし」

「それ以前に千鶴達も先ずはBETAに置ける座学が先ですから、今日は休みですよ?」

「はいはい。分かってるわよ」

「成る程……だから皆の訓練に混ざりたいってワケかい?」

「早い話がそう言う事ね」

「唐突な事なので、決して無理にとは言いませんけど……午前は ずっと傍から見ているダケだったので……」

「霞」

「はい」

「コレって俺が判断しても良いのかな?」

「問題無いと思います」

「そっか……だったら行ってくると良いよ、折角の時間が勿体無さそうだし」

「ホント?」

「あ、有難う御座います」

「連携に置けるヴォールク・データの攻略はA-01の方が遥かに巧いし、色々とアドバイスしてあげてよ」

「勿論よ! 任せといて~」

「それでは速瀬中尉ッ!」

「えぇ。急ぐわよ茜~? それじゃ少佐!」

「うん。俺が許可出したって言えば大丈夫だと思うから、喧嘩しないで頑張ってくれよ?」

「当然~」

「ではッ」

「敬礼!!」×2


昨日はイルマの護衛&監視をしていた為、速瀬と涼宮(妹)は休暇が無かったらしく手持ち無沙汰だったらしい。

故にシミュレータールームで衛士達の様子を眺めていたダケだったらしく、俺の姿を見て声を掛けて来たとの事。

う~ん……流石のヤる気だ。以前 俺も一人で眺めてた時が有ったけど、仲間に入れて貰う勇気なんて無かった。

だからアッサリと許可してしまうと、速瀬と涼宮(妹)は嬉しさ交じりで敬礼しPXを走り去って行くのだった。


「よっぽど体を動かしたかったんだろうな~」

「そうみたいです」

「分かった?」

「とても強く……伝わって来ましたから」

「納得納得」

「それは重要な事だから……2回言ったんですね?」

「うむ。霞も段々と分かって来てるみたいだな。ジュースを奢ってやろう」

「9杯で良いです」


――――後日ゆ~こさんに"最近 社が意味不明な事を言うんだけどアンタの所為でしょ?"と怒られたりした。




……




…………




……数分後 何時もの執務室にて。


「来たわね? 時間通りじゃない」

「それほどでもない」

「褒めて無いわよ。それより……会う事を選んだのよね? ピアティフ」

「はい現在 待合室で待機しています」←小声なので白銀には聞こえていない

「そんなワケで白銀。アンタには"プレゼント"が有るわ」

「プルセニド?」

「何処の下剤よそれ。とにかく案内してあげて」

「畏まりました」

「社。アンタも行くのよ?」

「……はい」

「全く話が見えないんですが?」

「良いから行ってきなさい。あたしは忙しいんだから」

「そ、それでは白銀さん」

「んぁ? 了解ッス中尉……行くしか無いっぽいですね~」

「その"プレゼント"の使い道はアンタが好きにすると良いわ」

「生憎 俺は便秘とは無縁なんですけどねェ?」

「だから下剤じゃ無いって言ってんでしょ!?」

「HAHAHA。繰り返しはギャグの基本ですから」

「(……流石は白銀さんです)」

「(香月博士が翻弄されるなんて)」


なんだか執務室に入ったと思ったらイリーナちゃんの案内で地上に蜻蛉帰りする羽目になりましたでゴザルの巻。

意味不明だけどワザワザこっちに俺を呼んだって事は、ついさっき"プレゼント"ってヤツの目処が立ったのかな?

イリーナちゃんが昼食の時に居なかったのも"この為"なのだろう。しかし俺の為に何を用意してくれたんですか?

出来れば全裸の美少女だと嬉しいんですけど……ゆ~こさんの事だし新しい戦術機か何かだと思って良いだろう。

霞が付いて来るあたり新しく開発した彼女のオリジナル兵器の可能性も有るし、既にワクテカが止まらないZE。

そんな嬉しさの余り、うっかり痛いギャグを残して俺は2人の女性と執務室を去り、地上の待合室に辿り着いた。


「此方です」

「待合室?(……って書いてある)」


≪ガチャッ≫


「!?(ほ、ほほほ本当に来たッ)」

「あれ?」

「……~~ッ……」


――――すると待合室には一人の女の子がソファーに座らず待っており、予想外の"プレゼント"に俺は驚いた。


「えぇ~っと、君は帝国軍の……?」

「は、はいッ! 昨日は危ない所を救って頂いて本当に有難う御座いました!!」

「それでは白銀少佐。私はコレで(……後は白銀さん次第ね)」

「ちょっ? イリーナ中尉、待ってくださいって」

「何でしょう?」

「もしかして"プレゼント"って……」

「恐らく彼女の事では無いでしょうか?」

「どうして、こうなったんです?」

「白銀さんの采配と博士の考えによるモノでしょう」

「う~ん」


≪ゴホン。問おう……貴女が帝国軍のルーキーか?≫


「(何せ白銀さんは性格に難は有るとは言え、帝国 随一の逸材である"七瀬 凛"の本質を初対面で見抜いた。
 だから香月博士は手間を掛けて白銀さんと彼女の面会の機会を設け……彼女が望めば突撃機動部隊に……)」


俺はともかく ゆ~こさんが考えたのなら仕方無い。プレゼント発言については何か意味が有るんだろう。

そうなると、その"意味"を察する必要が有るんだけど……振り返ると この帝国軍の娘は俺を"お兄様"と呼んだ。

つまり彼女は俺が死んだ兄とソックリとかで誤解している? ソレはマズい事だから面会の機会を設けてくれた?

本来 帝都に戻っている筈の衛士を留めるのって手間が掛かりそうだし、それが俺への"プレゼント"だったのか?

正直 正解なら期待外れも良いトコロだけど、後々クーデターでの落ち武者が再度 翻しても困るので喜んどこう。

よって今 俺に与えられた ゆーこさんから任務は彼女の誤解を解いてスッキリした気分で横浜を去って貰う事だ!

空白の数日間の最初の展開がコレなのは微妙だと思うけど、与えられた仕事は頑張って消化しなくてはならん。


「とりあえず其処に掛けてくれ」

「は、はい」

「霞もな?」

「……分かりました」


――――イリーナちゃんが退室した後 彼女を座らせると、俺と霞も正面のソファーに腰を降ろした。


「それで、え~っと」

「!? 失礼致しました。私は帝国陸軍所属"七瀬 凛"少尉であります!!」

「御丁寧にどうも。俺は横浜基地 突撃機動部隊 所属"白銀 武"少佐で……」

「同じく横浜基地 所属……"社 霞"少尉です」


――――互いに自己紹介をするが、流石に起立して での名乗りになった。順番がズれていた様だ。


「……(日本人じゃない……それに若い……)」

「昨日の件に関してカラダは何とも無かったのかい?」

「えっ? あッ、はい……今は何ともありません」

「そりゃ~良かった」

「ですが白銀少佐こそ、聞いた話によると単機で陽動を引き受けたダケでなく生身で兵士級を……」

「はははっ。それに関しては部下に"無理をするな"と怒られてしまったよ」

「!? で、では御怪我を……?」

「いやいや問題無いさ。それとも何か患(わずら)ってる様に見えるかい?」

「……(白銀さんはズルいです……そんな言われ方をすれば、指摘なんか出来ません)」

「そんな事は……ッ……!?」


≪お兄様……今日も遅くまで訓練をされていたのですか?≫

≪はははっ。それに関しては部下に"無理をするな"と怒られてしまったよ≫


「!?(……成る程……白銀さんは今は亡き七瀬さんの兄と……)」

「……(やっぱり似ている……年も雰囲気も違う筈なのにッ)」

「んっ? どうかしたのかい?」

「い、いえ。何でも」

「なら良いけど……何故 君が"此処"に居るんだい?」

「それは今朝 撤収の準備をしていた所、ピアティフ中尉に声を掛けられまして……」

「掛けられまして?」

「様々な面で活躍されている白銀少佐が、私との面会を求めている……と仰っていました」

「ほ~っ」


――――別に求めてはなかったけど、聞いて置いて良かった。此処は話を合わせるしか有るまい。


「それで……私の方もシッカリ御礼を申して無かったので、面会に関しては喜んで応じさせて頂きました」

「ふ~む」

「し、しかも……驚くべき事に……」

「うん?」

「私が望むのであれば既に"根回し"は済んでいる様なので、そのまま国連軍に所属する様に……と」

「なぬっ!?」


唐突の衝撃的な事実を聞き咄嗟に霞の方を見てみると、彼女は既に知っていたらしく静かに浅く頷いていた。

だ、だったら別に教えてくれたって良いじゃないか……でも読めたぞ~? つまり こう言う事なんだな!?

ゆーこさんが手間を掛けて面会の場を設けたんだから、旨く交渉して七瀬を味方に引き入れろと言う事かッ!

確かに新たな仲間……期待のルーキーが増えるのであれば嬉しいが、コレじゃプレゼントじゃなくて只の任務だ。

自分で務めた結果で得る仲間がプレゼントなんて聞いた事ないが……ゆーこさんだったら仕方無いと瞬時に納得。

一方 正面に座る七瀬は妙にモジモジとし出した。昨日 別れた時の彼女は凛々しく真面目な雰囲気だったのにッ。


「し、正直な所……其処まで私を評価して頂けるとは思えませんでした」

「(なァ霞。七瀬って凄いのか?)」←以下小声

「(聞いた話によると……戦術機の適正はB分隊の皆さんを越えていたそうです)」

「(だったら普通に優秀だな~)」

「(トライアルでは惜しい結果だった様ですが……XM3の恩恵を考えれば、当たり前だと思います)」

「(だろうね)」

「(それと七瀬さんは……武家の人みたいです)」

「(なら斯衛の人間? だったら幾らなんでも無理なんじゃ?)」

「(既に根回しが滞りなく済んでいる事から……色々と事情が有ったのではないでしょうか?)」

「(その辺は七瀬の口から聞くしか無いか~)」

「(……そうですね)」

「白銀少佐?」

「あァごめんゴメン。えっと……七瀬 少尉?」

「はい?」

「"あの時"俺の事を妙な呼び方をしてたけど?」

「!? そ、それは……少佐が戦死した兄と似ていましたので……本当に失礼しました」

「いや、構わないよ」


――――そう言いながらペコリと謝る七瀬。何だ最初から誤解なんかして無いじゃないか……アホかよ俺。


「それにしても」

「何だい?」

「昨日 色々と見させて頂きましたが……本当に衝撃の連続でした。アレは全て少佐が御一人で?」

「いや別に」

「はい。全ては白銀さんの発案によるモノです」

「(う、ウサギさん!?)」


――――俺の戦った時の台詞を思い出すと、衝撃ドコロか"笑劇"の単語の方が妥当だと思うんですけど?


「正直 アレらを拝見して目が覚めました。私は何も成長していなかった……衛士を目指した時の様に」

「…………」×2

「自惚れた話ですが、先日 任官し階級を得てからはBETAに負ける気などせず、自分に自信を持っていました。
 なのに国連軍との模擬戦に負けた挙句、奇襲では情けない有様。正直 全てを捨てて逃げ出したい気分でした」

「(原作の白銀と全く同じだなァ)」

「ですが其処で私を救ってくれたのが白銀少佐でした。あれほどの"可能性"を持つ衛士が共に戦ってくれれば、
 必ずやBETAを地上から根絶やしに出来る。あ、貴方に肩を預けていた時……自然とそう感じたのです」

「随分と評価してくれたね」

「!? そ、それは此方の台詞です。突然ピアティフ中尉に今回の誘いを頂けた時には耳を疑いました。
 あれ程のブザマな有様を見せた私を、国連軍はワザワザ"根回し"をして でも必要として頂けるなんて……」

「…………」×2


――――要するに七瀬は偶然ゆーこさんの目に適った様だ。意外にも突撃機動部隊の戦力の充実に御熱心な事で。


「ですから……白銀少佐さえ宜しければ、どうか私を部隊の末席に加えて下さいッ!」

「良いぞ」

「ほ、本当ですか!?」

「でも俺の突撃機動部隊は何か勝手に"世界最強クラス"の中隊とか言われてるけど、頑張れるのかい?」

「勿論ですッ! 命を掛けて務めさせて頂く次第です!!」

「はははっ。それダケやる気が有れば十分だね。だったらコレから宜しく頼むよ?」

「は、はい!! 此方こそ御願い致しますッ!」

「(今の七瀬さんは大丈夫みたいです。いずれは家に戻りケジメを付ける様ですし……)」


――――こうして握手をした事でアッサリと"七瀬 凛"が加入した事となり、コレで部隊のメンバーは8人だ。


「ところで……あ、あのッ」

「今度は何だい?」

「何故 白銀少佐は私に目を掛けてくれたのでしょうか?」

「……っ!?」

「ピアティフ中尉の話によると"そう言う事"でしたので……」

「(ど、どう言う事だよ霞~?)」

「(……言葉通りだと思います)」


此処で更なる事実が発覚する。何時の間にか七瀬は、俺が望んだ事から面会するに至ったと思ってる様子ッ!

いや考えてみれば最初から そう言ってたじゃないか……兄と言う誤解を解く為の口実だと勘違いしてたけど。

無難にゆくなら ゆ~こさんの権限で彼女を呼ぶべきなのに、白銀の名を勝手に使ってくれちゃって全くもう。

別にソレはソレで構わないんだけど、頼むから事前に教えて置いて欲しい。少佐とは言え素は凡人なんだから。

しかも迂闊な返答ではイキナリ信頼度が減ってしまいそうだったので、俺は必死になって言葉を選んでいる。

されど合理的な答えは浮かばず……結局 色々なストーリーで使われていそうな台詞を使う事にしたのでした。


「何故なら君は似ていたのさ」

「えっ?」

「以前の俺と……ね」

「!?!?」×2


≪――――バタンッ≫


「……(白銀さん……)」

「や、社少尉。今の言葉は……?」

「本当の事だと思います。白銀さんは貴女と同じ様に首都圏侵攻で、"全て"を失って衛士を目指しましたから」

「なっ!? それに そんな短期間で国連軍の少佐にッ?」

「……(本当は違う意味なんでしょうけど、今の私にはコレが精一杯です)」

「だ、だったら悪い事を聞いちゃったのかしら……?」

「そんなコトは無いと思います」

「!? そ、それよりも白銀少佐を追わなくちゃッ!」

「はい」


現実世界であれば只の痛い誤魔化し方なんだけど、"こっち"ならば無駄に格好良く捉えて貰えるかもしれない。

また言っている事は原作の白銀を考えれば間違っていないので、俺は固まる霞&七瀬を残して待合室を去った。

今思えばコレから彼女を連れてシミュレータールームに行く事になるので無意味な退室でしか無かったんだけど。


「ふぅ~っ」

「…………」


≪じ~~っ……≫ ←物陰から


「誰だッ?」

「!? そ、その……え~っと」

「んっ? 君は確か昨日の……」

「は、はい!! ボクは帝国陸軍 第133連隊 所属の"伊隅 あきら"と言いますッ!」

「あァ七瀬と一緒に居た衛士か~。……って……伊隅?」

「もしや……国連軍に居る姉の事を御存知なのですか?」

「うん。色々と世話になってるよ」

「そ、そうだったんですか~」


≪ガチャッ≫


「白銀少佐!」

「あっ、七瀬」

「七瀬さんッ」

「い、伊隅さん……どうして此処に?」


部屋を出て溜息を付いていると、物陰から七瀬の元同僚と思われる女の子が覗いていた。恐らく伊隅の妹だろう。

何故 彼女が此処に居るかは疑問だったけど、そんな事を考えているウチに七瀬が現れたので、
其方に一旦 注意を向けると、伊隅(妹)はポリポリと頭を掻きながら苦笑している。普通に可愛い仕草だ。

それにしても一人称 自重。思えば伊隅は違うゲームのヒロインだし、第二のボクッ娘が居ても不思議じゃない。


「えへへ……七瀬さんの事が気になって、つい」

「でも帝国軍の部隊は帰還してる筈じゃ……?」

「他の皆はね。でも一人ダケで帰るんじゃ七瀬さんが可哀相だし」

「あ、貴女……(あんなに冷たく接していたのに……)」

「七瀬~。良い仲間を持ってたじゃないか」

「……ッ……そ、そうみたいです」

「有難う御座います、白銀少佐っ!」

「でも伊隅には悪い事をしたかな~」

「えぇっ? どう言う事ですか?」

「だって七瀬はもう、国連軍の一員だしさ」

「!?!?」

「ごめんなさい。わざわざ待ってて貰って悪いけど、そう言う事なの」

「そ、そんな急に~ッ? えっと……そうだ、手続きとかは!?」

「此処の人達は皆 仕事が速いから些細な事だと思うぞ?」

「あうッ」

「(むしろ香月博士の事です。面会を組んだ時点で七瀬さんは……国連軍の人間になっていたかもしれません)」

「だから伊隅さん……あの時は有難う。これからは気持ちを切り替えて頑張るわ」

「え、えぇ~っ?」


――――七瀬は伊隅(妹)に近付いて両手を手に取るが、彼女は"どうしてこうなった"と言わんばかりの表情だ。


「では白銀少佐」

「わ、分かった。早速 訓練中の俺達の部隊の所に案内するよ」

「……ッ……」←四女

「白銀さん……それでしたら私は……」

「うん、アリガトな霞。気をつけて戻るんだぞ~?」

「はい……またね」

「またな。そんなワケで伊隅も暗くならないウチに――――」

「あ、あのっ!」

「伊隅さん?」

「どうかしたか?」

「お願いしますッ! 宜しければボクにも……ボクにも訓練の様子を見学させて下さい!!」

「へぇあ」

「貴女……」


此処で まさかの伊隅(妹)の横浜基地2泊。一人で帰らせるのは可哀相だとは思ったけど、コレも予想外だった。

でも訓練を見学させて良いのか? ……と聞かれれば首を捻るトコロだったんだけど、俺はアッサリと許可した。

何故なら伊隅(妹)に泣きそうな顔をして叫ばれ・哀願されたので断る事が出来なかったのでした。反則だろアレ。


「(伊隅さんの見学を許可されたという事は、白銀少佐は彼女にも才能を感じたのかしら?)」




……




…………




……15分後。シミュレータールーム。


「そんなワケで今日付けで突撃機動部隊の一員となった七瀬さん」

「皆様 始めましてッ! 帝国軍より転属した"七瀬 凛"少尉です!!」

「……ッ……」×3

「そ、それでコッチが今回の訓練を見学&体験する事になった……」

「"伊隅 あきら"少尉です!! 国連軍では姉が御世話になっておりますッ!」

「色々と言いたい事は有ると思うけど、質問は後で聞く。ともかく今は訓練に集中しよう」

「了解ッ!」×8

「セレナ中尉・テレサ中尉も特にシークレット的な事はしなくて良いんで宜しく~」

「はいっ!」×2

「(す、凄い威圧感ね……特にあの3人。流石は白銀少佐の部下)」

「(やっぱり噂は本当だったんだ。此処で頑張ればボクも……?)」


七瀬・そして伊隅(妹)を強化装備に着替えさせると、早速 訓練中の唯依たちに2人を紹介したんだけれども。

何故か唯依と まりもちゃんに加えて速瀬までもが僅かにレイプ目を披露。3人とも目が合ったら止まったが、
七瀬と伊隅(妹)がチビったら どうしてくれるってんだ……もっとヤレと言いたいが、イキナリの士気低下は困る。

けど2人は動揺した様子も無く自己紹介を終え、以後モメる事も無く10人(+2名)での混合訓練が開始された。

ちなみに俺は訓練には参加していない。唯依に加えて七瀬までにも自重するように気遣われてしまったからだ。


「(最近噂になっていた帝国軍の"七瀬 凛"……彼女をも味方に引き入れるなんて、流石は武さんね)」

「(また つまらない事で白銀さんに怒りを感じた。どうしちゃったんだろ? 私ッ)」

「(アイツの周りにはホントに自然と人が集まるのね~。ソレに私も含まれてると思うと何だか癪だわ)」


――――んで今回の訓練に置いて10人ものエロスーツ姿の女性達が居た御陰でオカズには困ったんだけど。


≪そ、そんな……白銀少佐ッ。こんな大事な時にオシリを触らないで下さい!≫

≪何を言うかセレナ中尉。ワザとらしく生足を見せびらかす君が悪いのだッ!≫

≪!? や、やめて下さいッ! 其処ダケは――――≫

≪こ、これは……履いていなかったのか!? 飛んだ変態だったんだな君は!!≫


「あの人は、きっと履いてないと思うんだ。BOY♂NEXT♂DOORァッーーーー!!!!」←大正解


――――結局はテレサと一緒にオペってたセレナさんの生足&尻の誘惑に負けて自慰ちゃったんだ☆


「ハァ……たまらなかったわ、今日の武さんの視線」

「そ、そろそろ いい加減にしてよ~姉さん」

「見られないのは計算済みよ。でも手間は掛かってるけど」

「これ以上 続けると武くんに報告しちゃうわよ~?」

「御願い止めてよッ! そんな事でイチイチ言われたら私もうトイレとか部屋でしかパンツ脱げないじゃない!!」

「いや、ソレが普通だから(……もう諦めようっと)」




●戯言●
七瀬 凛の突撃機動部隊 加入が確定となりました。伊隅あきらは現在悩んでいる段階ですが早いウチに決めます。
次回は"空白の数日間"の2日目になります。たまには実戦以外でも白銀を外出させても良いかもしれませんね~。
ラストのオチに関しては某氏に感謝致します。あとageませんでしたが先日ランキングなるものも作っています。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm9994431
今更ですが戦●の絆が良く判らない方の為にリプレイ動画を撮ってみました(どれが私かは一発でバレるでしょう)
実は白銀28のアドバイスで横浜基地の衛士達も、こんな感じでヴォールク・データ等のリプレイを見ています。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=9258708
タニシ氏によるブリザ・スリーブス少尉です。イメージに合っているので是非彼女をイメージしてください。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ50 2010/04/08 07:58
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/04/10 03:15
これはひどいオルタネイティヴ50




2001年12月13日 早朝


――――横浜基地・白銀少佐の個室へと続く通路にて。


≪コッコッコッコッ……≫


「(……今日から本当の意味で、私の新しい一日が始まる……)」


≪んなっ!? 七瀬、貴女また勝手な行動をして……!!≫

≪敵機2体撃破、このまま一気に潰します≫

≪クッ……(相変わらずの協調性の無さね)≫

≪それよりも部隊の展開が遅いですよ? その程度では話になりません≫


「(今迄の私は本当に自分勝手だった。何時も敵を作ってばかりで……)」


≪おい、アイツ……"七瀬 凛"だぜ?≫

≪確か武家の人間だって言う物好きなヤツだろ? 只の小娘に見えるが≫

≪見た目はな。だが戦術機の"適正"はトップクラスだったらしい≫

≪……だが ありゃ早死にするぞ。訓練部隊の評判は最悪だったみたいで、上も配属に困ってるそうだ≫

≪あァ。イザと言う時じゃ~誰も命を張って守ってくれんだろ≫

≪別に本人が構わないと思ってんならソレで良いんじゃないか?≫


「(それなのに今回の情けない結果で、今頃 私は帝国軍の笑い者になっているでしょうね)」


≪だから伊隅さん……あの時は有難う。これからは気持ちを切り替えて頑張るわ≫

≪え、えぇ~っ?≫

≪では白銀少佐≫

≪わ、分かった。早速 訓練中の俺達の部隊の所に案内するよ≫


「(けど私は白銀少佐や伊隅さんの御陰で変われた。今度からは心機一転して頑張らないと!)」


≪コッコッコッコッ……≫


「(だから……わ、私が朝から白銀少佐を部屋の前で待っていても不自然じゃ無いわよねッ? ……そう……
 帝国軍からワザワザ私の事を引き抜いてくださったんだもの。むしろ、朝の御挨拶をするのは当然だわ!)」


≪――――カツンッ≫(到着した凛)


「そ、それでは今日は私が最初に入りますので……」

「どうぞ篁中尉……あらっ? 七瀬少尉」

「!? ピアティフ中尉と篁中尉……ど、どうして 御二人が其処にッ?」

「それは……私は武さッ、いや白銀少佐が心配なので毎朝 様子を見に……」

「し、心配?」

「(間違っては無いけど何か誤解を招きそうね……)私も似た様な理由です」

「ゴホン。では七瀬少尉は何故 此処に?」

「え、えっと……私は白銀少佐に朝の御挨拶を出来ればと思って伺ったのですが……」

「ふむ……"朝の挨拶"と言っても昨日話した"待ち合わせ場所"でも行えると思うが?」

「うッ。ま、不味かったでしょうか?」

「そ、そう言うワケでは無いんだが……(武さんの部屋を訪ねる女性はコレ以上 増えて貰いたくないわッ)」

「まあ仕方ないでしょうね。七瀬少尉は白銀さんに御執心な様ですから」

「!? ぴ、ピアティフ中尉ッ!」

「ふふふっ、違いましたか? 恩を受けたと言う意味で述べたのですが」

「あぅうッ」

「(や、やっぱり七瀬少尉も……武さんを?)」

「(それにしても"あの評判"の彼女を早くも此処まで……白銀さんの魅力は無限大ね)」


――――コレにより必然的に起きた十数秒の沈黙の後、呼吸を整えた七瀬少尉が口を開く。


「ともかく……私が此処に居ても宜しいのでしょうか?」

「決めるのは私では無いが、白銀少佐は何も言わないと思う」

「では篁中尉」

「はい。起きられる前に入室しましょう」

「えぇっ!? も、もしや部屋の中に入るのですか?」




「――――ユウッ!!!?」




『!?!?』×3

「今のは……た、武さんの声!?」

「間違い有りませんね(……初めて聞く名前ね、一体 誰の事なのッ?)」

「し……白銀少佐の身に何か有ったのでしょうか?」

「分からない。それよりも、早く確認しないとッ!」


≪……ガチャッ!!!!≫




……




…………




――――もう20年以上も前になるだろうか?


「(はやくかえって、今日こそはカン●タを やっつけるんだ!!)」


俺がガキんちょの頃、既に"テレビゲーム"と言うモノが非常に流行っており当然 自分も例外では無かった。

だけど両親は厳しかったのでファミ●ンをプレイできるのは一日長くても2時間 程度でしかなかった気がする。

……とは言え友達たちも同じ条件だったので、その日もライバル達と少しでも差を付ける為に急いで帰宅した。

そして家の中に転がり込むと躾に五月蝿い母の小言をスルーして、高鳴る胸の鼓動をそのままゲームを起動する。


――――しかし俺を待っていたのは大冒険では無く、幼い当時にはキツ過ぎた"トラウマ"であった。








『おきのどくですが ぼうけんのしょ1は きえてしまいました』








初めてその音楽を聞いた時、全身に寒気が突き抜け……当時の俺には理解できない"鳥肌"と言うモノがたつ。

しかし本当の問題は其処では無く……手塩に掛けて育てた、自分の分身が帰らぬモノになってしまったと言う事。

勇者の平仮名は"ゆうしゃ"故"ゆう"と言う単純な名前を付けたが、それでも俺には掛け替えの無い存在だった。

よって俺は お菓子を手に"どうしたの?"と首を傾げる背後の母親の存在に気付く事も無く悲痛な叫び声を上げた。


≪がばっ!!!!≫


「――――ユウッ!!!?」

「!?!?」

「はあっ、はあっ、ハアッ……ゆ、夢か……?」

「し、白銀さん?」


其処で夢は終わったが内容が内容だったので体を勢い良く起こしてしまい、額からは汗が滴り落ちるのを感じる。

う~む……一昨日生身でBETAを相手にしたからだろうか? 初代トラウマとも言える夢を見てしまうなんて。

思えば"こう言う事"はこっちに来てから初めてだな~、今考えると微笑ましい記憶だから別に堪えてないけどね。

……とは言え"悪夢に魘(うな)されて目が覚める"と言うシチュエーションに、ウサギの存在を忘れ自重を怠る俺。


「指先がッ……チリチリする」

「えっ?」

「口の中は、カラカラだ……」

「……ッ?」

「目の奥が熱いんだッ!」

「……!?」


――――頭を抱えつつ成り切ったキャラは、台詞の通りエア●スを殺された金髪トンガリ頭である。


「……あ"っ」

「……ッ……」


その朝の肖りが終了したので満足気に視線を移してみると、瞳を大きく見開いていた霞さんと目が合ってしまう。

今日も黒いスリップ姿が可愛いな~、まかり間違えば大事な部分も見えちまいそうで……って違うだろ俺!?

寝ボケていた所為で今に至るまで霞の存在をスッカリ忘れていたッ、これでは再び痛い奴だと思われてしまう!


「か、霞……おはよう」

「……おはようございます」

「/(^o^)\」

「……(魘されていたダケでも問題なのに、やっぱり白銀さんは……体に途轍もない負担を抱えている?)」

「……(ヤベェ!! い、今ので絶対に"寒ッ"とか思われてますよ!?)」

「……(夢と負担に関連性が有るかは分かりませんけど、これは大変ですッ。どうして其処まで無茶を……!)」

「あのな? 霞……今のは元の世界で流行った"中二病"ってモンから来る冗談で……」


――――故に何とか今迄の様に、可哀相なモノを見る様な視線を向ける霞の誤解を解く為 務めようとするんだが。


≪……ガチャッ!!!!≫


「武さんっ!」

「白銀さんッ」

「白銀少佐!」

「……皆さん」

「\(^o^)/」


場の空気を読まず唯依・イリーナちゃん……そして何故か七瀬が入室して来た事で俺の言い訳の機会は潰えた。

恐らく"ゆうしゃ"の名を叫んでいたのを聞いていたんだろう。そりゃ~何事かと思いますって常識的に考えて。

されど只でさえ霞の事でテンパっていた俺に気の利いた挽回など出来る筈もなく、無言で着替えて退室しますた。

故に俺は自室に4名の女性を放置すると言う謎な行動を取る事になり、涙を拭いつつ まりもちゃん達と合流した。




……




…………




「や、社。一体 武さんの身に何が有ったの?」

「……率直に言えば……白銀さんは夢で魘されていました」←既に着替え済み

「では"ユウ"と言う人物に心当たりは?(流石に香月博士の事では無いでしょうし)」

「分かりませんピアティフ中尉……でも問題は其処では有りません」

「ど、どう言う事なのですか?」

「重要なのは……夢で魘される程 白銀さんのカラダに大きな"負担"が掛かって居ると言う事です……」

「!? で……では、やはり武さんが無理に戦術機を操縦したりBETAを生身で相手した事が影響している?」

「……いえ……白銀さんの"肉体そのもの"は……何度か行われた精密検査により極めてクリアな状況です。
 兵士級を斬った事でさえ、確かに骨への負担を考えると危ない事では有りましたが……些細なモノと言えます」

「となると――――」

「はい……白銀さんは当初から大きな"精神的な負担"を抱えています」

「せ、精神的な負担……?」

「!? そんなッ、一昨日 初めて御会いした時から そんな素振りは微塵にも……」

「篁さんと七瀬さんは御存知では無いですけど、白銀さんは先月の18日に過労で倒れた事が有ります。
 それ以外にも……共に行動する事が多かった篁さんなら心当たりは多々有るのでは ないでしょうか?」


≪は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね≫

≪!? そ、そんな……"みっともない"だなんてッ≫

≪ともかく、今見た事は忘れてくれ。 何とも無いからさ≫

≪……ッ……了解、しました≫


「た、確かに……訓練の合間に血を吐かれていた事も有ったわ(……トイレで)」

「なっ!? ほ、本当なんですか!?」

「すみません中尉。武さんには口止めをされていたので……」

「そ……それ程まで白銀少佐は……(それに引き換え私はッ)」

「よって白銀さんは極めて危険な状況です……このままでは、いずれ命を……」

『……ッ……』×3

「ですから……今の白銀さんには、もっと休息が必要だと思います」

「そ、それなのに武さんは今日も私達の為に訓練の指導を……?」

「思ってみれば……立ち去る際の白銀さんは、何かに耐えるような表情が窺えましたね」

「な、何て事なの……? 白銀少佐は更なる負担を承知で私を引き抜いて下さっていたなんて……」

「とにかく今は白銀さんを追いましょう。無駄な心配も……あの人には負担にしかなりません」

「わ、分かった」

「それにしても今回は白銀さんの精神的 負担の軽減が課題ですか……由々しき問題ですね」

「な……何か私にも出来る事は無いのでしょうか?」

「(最も効果が期待できるのは00ユニットの完成なんですが……"純夏さん"になるまでの負担を考えると……)」




……




…………




……まりもちゃん達と合流して食事を始め、少し経つと霞たち4人が現れたので総勢13人での食事となった。

メンバーとしては俺を含む中隊8人の衛士+イリーナちゃん+ウォーケン姉妹+ウサギの何時もの面子に加え。

昨日 訓練に混ざった"伊隅 あきら"の姿も有り、多少 遠慮がちそうな仕草をしつつも朝食を共にしてたけど。
(即ち俺+霞+唯依+まりもちゃん+イリーナちゃん+元米軍3人娘+イルマ+ウォーケン姉妹+七瀬+あきら)


「神宮司 中尉の お話は本当に参考になりますッ!」

「そ、そうかしら?」

「はいっ! 流石は姉の教官を務められた方です!!」

「コレとソレとは違う気がするんだけど……」

「えっとえっと、今度は戦術機についての――――」

「……(し、白銀さ~ん)」


俺が"神宮司 中尉は伊隅(姉)の教官をしてたんだよ"とウッカリ暴露してしまうと、伊隅(妹)の様子が豹変!!

何時の間にか まりもちゃんの隣の席にトレーごと瞬間移動(比喩)すると、瞳を輝かせながら質問攻めを開始した。

よって まりもちゃんは食事を含む暇を殆ど与えて貰えず、かと言って突き放し辛い様で対応に困っている様子。

その為 此方に情けない表情で助け舟を求めて来るんだけれども、笑顔で誤魔化して俺は視線を他の面子に移す。


「ブリザってさ、何気に毎日 牛乳飲んでるよね~?」

「流石に その年じゃ背は伸びないんじゃないかァ? ウリウリ」

「ち、違うよ只の日課だもん……それより頭から手を離してフレア……」

「諦めなさいよブリザ。フレアが人の話 聞かないのは何時もの事なんだから」


「あはははっ。イルマ~、それって酷くない?」

「う~ん。でも大将は胸がデカい方が好みなのかね~? 私タッパはともかく大きさには自信無いんだよな~」

「は……話を聞いてよ……って論点がズれてるよ……」

「何時の間にか身長の事がバストの話になってるわね」


――――元米軍3人娘はブリザを中心に並んで座り、ライトとフレアが弄ってるのをイルマが傍から眺めている。


「(ねェ姉さん。今日も履いてないの~?)」

「(今日は薄いのは履いてるわよ、だけど貴女は違うんでしょう?)」

「(!? で、でも私はストッキング履いてるから大丈夫だもんッ!)」

「(ふふふ。見られても平気な様に小細工するよりは"必ず"見られない様に計算する方が興奮するわよ?)」

「(さ、流石に其処までの度胸は無いわよ……そもそも想像だけで十分イケちゃうし……)」

「(そうよね。ロクに計算しないで見られちゃったら貴女なら興奮し過ぎて病院送りになりそうだし)」


――――またウォーケン姉妹は小声で何やら話しており、恐らく仕事関係の事に違いないZE。


「…………」

『( ´д)ヒソヒソ(´д`)ヒソヒソ(д` )』


そして遅れてきた4人組の霞・唯依・イリーナちゃん・七瀬なんだが、何やらヒソヒソと話してるんですけど?

普段なら霞と唯依が俺の左右に座るんだが、彼女達は途中参加 故に席の配置が何時もと変わってるとは言え……

他の人が口を挿(はさ)めない様な独特な空間を4人で作っており、完全に俺は12人全員にハブられてしまった。

霞ら4人を除く8人はともかく、きっと寝起きの事で"やっぱ白銀少佐って痛いですね"とか言い合ってんだろう。

チクショーーーーッ!!!! こんな羽目になるんだったら、不躾でも良いから言い訳でもしときゃ良かった!!


「あの……白銀少佐」

「へぇあ?」

「お早う御座います」

「あァ。おはよ~です、伊隅大尉」


――――そう絶望しつつ内心 号泣しながら飯を口に含んで居ると、お盆を持った伊隅(姉)が俺に話し掛けて来た。


「……ッ……」←無言で片手の敬礼

「お構いなく。それで、ど~したんですか?」

「その、見知った顔がおりましたので」

「成る程……って事はやっぱり……」


伊隅に対応しつつ軽く視線を移してみると、離れた場所で朝食を摂っているA-01の面々が此方を見ている。

恐らく動向を窺っているのだろう。ちなみに元B分隊の5名は、まだ合流していないので朝食は別の箇所だ。

さて置き。伊隅(姉)の言いたい事は十二分に分かるので、俺は話に夢中になっている妹様の方に視線を移した。

そして再び姉の方に視線を戻すと彼女は静かに頷いたので自分も苦笑しつつ頷くと、伊隅(姉)は妹に近付く。


「(うぅ。何時まで経っても食事が進まない……)」

「それではッ、次は内緒で姉の訓練兵 時代の事を御聞きしたいんですけど――――」

「あきら」

「えっ? もォ何ですか~? 今 大事な所なんだから……ってぇ、みちるちゃぁぁああん!!!?」

「貴女 今、神宮司中尉に何を聞こうとしてたのかしらねェ?」(ニコリ)

「う、ぅあァっ……あぅうッ」

「聞き違いで無ければ、私の汚点でも探ろうとしてた様に思えるけど~?」

「ひぃっ!? ご、ごめんなさああああぁぁぁぁい!!!!」


≪ガタンッ!!!! ――――ダダダダッ!!!!≫


「あっ……逃げた」

「(た、助かった)」

「白銀少佐ッ!!」

「!? 了解~っ!」


問い詰める伊隅(姉)の表情は笑顔ながら非常に怖く感じたのか、妹の方は立ち上がると一目散に逃げ出した!!

対して まりもちゃんが安堵して俺がポカンと彼女の後る姿を見送って居ると、唐突に何かを叫んだ伊隅(姉)。

その"何か"が自分の事であると認識した直後、俺は自然と立ち上がって伊隅(妹)の事を追い駆けてしまっていた。




「待てぇ~ゐッ!」

「えっ!? は、速……!!」




――――シロガネが。




≪がばああぁぁっ!!!!≫




――――捕まえて。




「制圧ッ!」

「うわわわわっ!?」




――――画面端ィ~ッ!!




≪びたんっ!!!!≫




3行目は関係無いが俺は瞬く間に追い付いた伊隅(妹)に背後から飛び掛ると、覆い被さるように倒し確保した!

それにより伊隅(妹)の逃亡はアッサリと失敗に終わり、俺は彼女を小脇に抱えて戻ると伊隅(姉)に差し出した。

確保した際ウッカリ帝国軍の軍服越しに片方の胸を揉んでしまったが不可抗力だろう。そうに違いない!(キリッ)

故に深く考えない事にするのでヨシとするとして、まりもちゃんはジト目で伊隅(姉)を見上げながら口を開く。


「伊隅大尉。咄嗟とは言え白銀少佐を嗾ける様な言葉は感心できませんよ?」

「うぐッ……そ、それに関しては謝罪 致します。白銀少佐」

「いや、別に構わないスけど?」

「有難う御座います。コホン……では あきら、久しぶりに姉妹で語り合いましょうか?」

「へっ? で、でもボクは――――」

「問題無いでしょう? 喋る事に夢中で食事には殆ど手を付けて無かったみたいだし、丁度良いと思うけど?」

「し、白銀少佐~っ?」

「いや折角だし話してきなって。神宮司中尉に聞いた事に関しては頂けないけど、会うのは久しぶりなんだろ?」

「それは、そうですけど……」

「だったら尚更だ。コレは良い機会だと思うべきだよ」

「わ、分かりました……ごめんね~? みちるちゃん」

「ふふふっ、判れば良いのよ。白銀少佐に感謝する事ね」


……そんな会話を終えると、伊隅姉妹は2人で開いたテーブル席に移って向かい合うと何やら談笑を始める。

しかし最初は伊隅(妹)が姉に対し後ろめたさを感じていた様だったけど、いずれは妹の方にも笑顔が戻った。

ソレにより何事も無かった様に食事の一時が再開したので、適当に まりもちゃんと会話を進めていたんだけど。


「何だか形容し難い空気になってるわね~? 白銀」

「あっ、ゆ~こさんじゃないスか」

「えっ? 夕……副司令ッ?」

『!?!?』


≪――――ガタッ!!!!≫


『敬礼!!』

「はいはい。そんなのは要らないから」


何処からか ゆ~こさんが現れ彼女の名を漏らすと、皆が直立して敬礼したので俺と霞も若干遅れて敬礼する。

ソレに周囲は何事かと視線を向けて来たが、ゆ~こさんが面倒臭そうに制したので畏まった雰囲気は消え失せた。

故に皆が着席すると彼女は伊隅(妹)の居た席に腰を降ろし、足を組み俺に視線を向けながら何時もの調子で言う。


「案外アッサリと見つかって良かったわ、A-01と同じ位 特定し易いわねアンタ達」

「褒め言葉って事で良いんスか? それ」

「好きに判断しなさい」

「それよりも、どうしたんです? ワザワザPXに迄 来ちゃって」

「勿論 用が有るからよ。そうじゃ無かったらイチイチこんな喧しい所になんて来ないわ」

「ですよねー☆」

「ハァ……以前 アンタが言ってた"携帯電話"とか言うの、ホントに作って持たせとこうかしら」

「出来ればアイ・フォーンで御願いします」

「実物 持って帰って来て出直しなさい」

「!? あァ~、しまった。そう言えば何で色々と持って帰って来なかったんだろう」

「全くよ。あたしも忘れてたけどね」

「(ね、姉さん……2人とも何の事を言ってるの?)」

「(サッパリ分からない……さ、流石は副司令と武さん……)」

「でも ゆ~こさんが此処に来るぐらいなら、何時もみたく誰かに伝達を頼めば良かったのに」

「頼むって誰によ?」

「だ、誰にって……そりゃ~霞やイリーナ中尉に……」


――――そう適当に答える俺に対し、ゆ~こさんは つまらなそうな表情をしながら足を組み直すと口を開く。


「ソレが出来てれば苦労してないわよ」

「へぇあ?」

「社もピアティフも其処の姉妹も、み~んな朝食は白銀と一緒に摂りたいって言うんだもの」

『!?!?』

「なん……だと?」

「朝食を終えれば動けるんだろうけど、それより早く伝えたかったから あたしが来てあげたってワケ」

「でも別の人に頼めば良かったダケなんじゃ?」

「そうもいかないの。案外 少ないのよ? ピアティフ達と同じレベルの権限を持った人間って」

「な、成る程~ッ」


ゆ~こさんの言葉に納得しつつ視線を霞たちに移してみると……皆が恥ずかしそうに頬を染めて俯いていた。

霞・イリーナちゃん・ウォーケン姉妹は仕方ないとして、他の面々も照れている仕草をしてるのは何故だろう?

きっと仲間ハズレが嫌だったん だろうけどね~。気持ちは分からなくも無いけど、妙に皆 子供っぽいんですな。

だったら俺が部隊の伝言役でも構わないんだが、隊長で有る俺と食事を摂りたいと言う心遣いは疎かに出来ない。


「(な、なァ……ライト。大将と副司令って随分と仲良いんだな~?)」

「(そ……そうね。何だか普通の友人同士みたいな気がするんだけど)」

「(タケルさんは普段の調子。それが副司令相手でも同じなんて……)」

「(ウォーケン少佐と話してた時も違和感なかったし、ホント凄いわ)」


「ともかく。わざわざ伝えたい事って何なんですか?」

「せっかちね……ちょっと待ってなさい」


「(や、社。香月副司令は武さんに何を言うつもりなの?)」

「(分かりません……ひょっとしたら、新たな任務かもしれないです)」

「(!? そうなれば、白銀さんに更なる負担が掛かってしまう……)」

「(で、でしたら私達が白銀少佐の変わりを担うようにしないとッ!)」


――――ゆ~こさんに"待て"と言われたからには、そうするしか無いので そのまま待つ事 数分後。


「香月副司令、食事をお持ちしました」

「ようやくね。待ったわよ~?」

「申し訳有りません。生憎 混み合っていた模様で……」

「えぇっ!? あ、貴女は――――」(唯依)

「月詠 真耶……さんですか?」

「はい。7日以来になりますね? 白銀少佐」

「今日は13日だから……6日ぶりですか~」

「そうなります」


ゆ~こさんに頼まれていたのか、自分と ゆ~こさんの食事を両手で持って来た"月詠 真耶"さんが登場した。

……とは言え彼女をハッキリと分かるのは俺と、面会時に面識の有った唯依ダケなので他の皆は困惑の表情。

だがソレも無理はない。真那さんの方なら ともかく新たな斯衛(赤)が現れるなんて予想できる筈もないしな~。

当然 俺も面識が有るダケで彼女が何の目的で出現したか分からず、ニヤニヤとしている ゆ~こさんに言う。


「どうして真耶さんが此処に居るんスか?」

「それは極端な話"煌武院 悠陽"殿下がアンタに用が有るからよ」

『!?!?』

「ウボァーッ! そ、それは余りにも極端 過ぎるでしょう?」

「それもそうね」

「となると……真耶さんは殿下の遣いで横浜基地に来たって事スか?」

「はい。先日のトライアルでの概要は殿下の御耳にも入っておりまして」

「クーデターで殿下を身を挺して守ったダケじゃなく、トライアルでも革命と言える概念を多く見い出し、
 あまつさえ武家でも有る七瀬を救ってくれた事を直々に御礼したいそうよ? 良かったわね~、オメデトウ」

「で……ででで殿下が私なんかの事で頭を下げてくださるるるるなんてッ」(ふらっ)

「!? し、しっかりしろ七瀬ッ!(……それにしても榊 総理の事と言い、武さんの影響力は本当に凄いのね)」

「いやいや"オメデトウ"って……ど、どうすれば良いんスか~? オレ」

「殿下は白銀少佐との面会を求められております。故に是非 帝都に赴き謁見をして頂きたいのです」

「そう言う事~。どうするの? 白銀。アンタが決めなさい」

「えっ? なら勿論 御受けしたいトコなんスけど……訓練とかは どうすりゃ良いのかな~と思いまして」

「――――白銀少佐ッ!」

「唯依?」

「訓練の事でしたら私達に御任せ下さいッ! 白銀少佐は帝都にて殿下との御面会を!!」

「……白銀さん……私も、訓練の御手伝いをしますから……」

「霞ッ?」

「そうです白銀さん。謁見を済ませれば何日か帝都でカラダを休めるのも良いでしょうし」

「イリーナ中尉まで!?」

「わ、わわわ私も今後 白銀少佐の足を引っ張らない様に訓練に務めますので……!!」

「悪いけど七瀬~。アンタも白銀と一緒に帝都に行って貰う事になってるからね?」

「がくッ」

「また先程 真那の方と相談 致しまして、神代少尉が白銀少佐と共に行動します」

「あの娘が? ……ど~してなんスか?」

「私は一足先に帝都へと戻りますが、斯衛の案内役は必要でしょうから」

「七瀬はあくまで"招待される側"だしね~(それと片方の月詠は御剣に御執心だし)」

「う~む、納得。それにしても随分と速く来たモンですねェ」

「一刻も早い白銀少佐の承諾の確認が殿下の御望みでしたから」

「は、はあ」

「……(私も斯衛なんだけど……今は国連軍の臨時中尉なのが悔やまれるわ……)」

「まあ出発は明日って事になってるから、今のウチに訓練で伝えたい事は言って置きなさい」

「了解です」


――――そんなワケで俺の帝都訪問が決定してしまい、七瀬と神代が付いて来る模様。どうしてこうなった!?


「あァ。そう言えば伊隅の妹の方」

「はいッ?」

「アンタも今日付けで既に"突撃機動部隊"配属になってるから、しっかり訓練に励むのよ?」

「え、ええええぇぇぇぇ~~~~っ!!!?」

「ゆ~こさん……い、何時の間にッ」

「ま、まあ白銀さん。夕呼ですから」

「把握」

「ふふふっ。良かったわね? あきら」

「うぅ~ッ。トライアルが始まってから何だか色々と有り過ぎて、夢でも見てるみたいだよボク……」

「逃避は よしなさい。それより折角 白銀少佐が目を掛けて下さったんだから、無駄にしちゃダメよ?」

「!? そ、そう言う事なら……白銀少佐の為にも頑張るよ~ッ!」

「……ッ……どうして……こうなった……?」

「ふじこ~」


そして ゆ~こさんの計らいで伊隅(妹)も突撃機動部隊に加入し、俺の部隊の衛士は総勢9名となったのでした。

しっかし七瀬はともかく、彼女は大丈夫なのかな~? まァ昨日の動きを見る限り大丈夫か、眉毛とかも太いし。

また前述の通り明日 帝都に赴き殿下と面会する事になったので、今日も筐体に入らず訓練の指導を中心に行った。

その際 唯依と七瀬の気合が抜群で、他の6名も負けじと頑張ってたのが印象的だった。オラに元気を分けてくれ。

んで訓練が終わって ゆ~こさんに呼び出されると武御雷の一機や二機は貰って来いと言われました。無理だって!


「あ、あああ明日は私が白銀少佐を案内すすすするんだなッ?」

「ちょっとは落ち着きなさいよ巽……」

「そんなに緊張するんでしたら私が変わってあげましょうか~?」

「――――だが断る」

「も、戻った!?」

「んもうッ。こうなったら巽が居ない間に絶対ヴォールク・データの戦果を追い抜いて見せますわ~!」

「お前達……此処はPXだと言う事を忘れるなよ? ……頼むからッ」




●戯言●
間が空いてしまった割には1日進んだダケですが、色々とイベントが発生。最も重要なのは伊隅(妹)の加入?
また最近 会話の特徴を把握する為 再びAFをプレイし分かりましたが神代を今まで"かみしろ"と読んでましたorz

http://www.nicovideo.jp/watch/sm10264423
前回の戦●の絆のリプレイ動画に続いてPODの中を撮りました。機体は迷いましたが王道のガンダムで!!

http://www002.upp.so-net.ne.jp/shinjigate/itadakimono-cg-buriza2.htm
新たな絵師せきぐちさんによる国連軍の軍服姿のブリザ・スリーブス少尉です。わざわざ有難う御座いました。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=9879725
タニシ氏によるフレア・フレイドル少尉です。コレで米軍3人娘 全員の容姿が確定しましたね!(微エロ注意)



[3960] これはひどいオルタネイティヴ51(前編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/04/18 14:51
これはひどいオルタネイティヴ51(前編)




2001年12月14日 午前


――――七瀬に続いて"伊隅 あきら"が新たな仲間として加入した翌日の朝。


「さてと。それじゃ~そろそろ来る頃かな? 後の事は頼みましたよ~?」

「は、はいッ」

「皆の事は御任せ下さい」

「伍長達も先日が先日なんで気合入れてといて下さいね?」

「ははっ!」

「気を引き締めて務める次第で有ります!」


……今現在の俺は、横浜基地の入り口で2人の伍長を近くに唯依&まりもちゃんと向かい合っていた。

御存知の通り急遽 帝都にて殿下と会う事となってしまったので、コレから出発するので御座います。

ちなみに此処に来るまでの経緯としては、先ず朝に霞・唯依・イリーナちゃんの何時もの3人に加え、
何故か七瀬まで霞 以外の2人と一緒に俺の部屋を訪ねて来ており……その4名の顔を朝ッぱらから拝んだ。

しかし何故 4人にも……どうしてこうなった? そう霞 以外の娘らに小一時間 問い詰めたいのはさて置き。

朝食は昨日と同じ13人のメンバーと食い、あの時は特にハブられる事も無く会話を弾ませる事が出来た。

余談だが前回の訓練の時に、俺 不在中のカリキュラムは既に話し合っていたので今朝は必要 無かったです。

何と言うか彼女達は俺が必要最低限の事を喋るダケで直ぐに話を纏めてくれるので無知な自分には本当に助かる。


≪あ、あの……白銀少佐ッ≫

≪んっ? あァ、神代少尉か≫

≪今回は宜しく御願いします!≫

≪こっちこそ≫


そんで飯を終え食器を戻したタイミングで神代が声を掛けて来たので、其処で霞たちとは敬礼しあって別れ、
見送りに来たいと言う唯依&まりもちゃん+同伴する七瀬&神代を連れて横浜基地の入り口まで向かい今に至る。

神代は俺から受け取った"白銀が少佐に成る際に受け取っていた必要無いハズの車のキー"を手に、
七瀬と一緒に一足先に車を用意しに行ってくれている最中であり、そろそろ此処にやってくると思うが……

此処で待っている間、昨日ゆ~こさんと話した事をちょっとダケ説明して置こう。細かい内容は抜きにして。

何とですね……彼女は俺が好きな様に交渉して良いと言ってました。"お手並み拝見ね"とニヤニヤとしながら!

一応トライアルでは様々な貴重なデータを"魅せ"まくりはしたが、今後 極めて重要な交渉の材料となるので、
紛れ込んでいたと思われる帝国軍の人間には、ログすら持ち出されない様に国連軍は細心の注意を払っていた。

ソレをアッサリ俺に丸投げするとか……当然ゆ~こさんには問い質したけど、俺を信用してくれてる……のか?

そうだったら凄く嬉しいんだけど、00ユニットは間違いなく完成するしミスした事を理由に解雇されないよな?

だから俺は普通に緊張してしまっており、この気分は好きになれない。まァ……何度も経験して慣れたけどね。

よって成るべく彼女が許してくれそうな情報の提示ダケで僅かであれ戦力の更なる向上を目指す必要が有る。

だけど……ゆ~こさんは"武御雷の一機やニ機は貰って来い"って言ってたし"流石にキツいですよ"と問うと……


≪別に無理にとは言わないわ。でも戦力は多くなるに越した事は無いでしょ~?≫

≪そ、それは御最もですけどね……武御雷のS型への改造は"こっち"ですれば良いんですし≫

≪分かってるじゃない。でも本来の目的は殿下との面会なんだから、気楽に行きなさい気楽に≫

≪殿下と謁見する事 時点で気楽で済みませんってば≫

≪それもそうね(……ま~武御雷は期待するダケ無茶な話だけど、コイツなら旨く交渉できるかもね)≫

≪んじゃ~そろそろ晩飯なんで失礼しました~≫ ←逃げたダケ


こんなカンジで別に戦果が無くても構わない様な流れに出来たので、其処で撤退して保険を作りました。

……その後 晩飯を食う際 皆が食事に手を付けずに俺の帰りを待って下さっていて感動したのも さて置き。

俺に様々なデータを預けてくれたのは彼女は口を滑らせたダケと言う事にして、出し惜しみを心掛けるか。

流石に武御雷(黒)12機あげるから○○のデータを頂戴! ……とか言われたら考えるかもしれないけどね。

でも"どの辺り"までの情報提供が可能か分かっていそうなイリーナちゃんやウォーケン姉妹が一緒に来るなら、
話は全然 違ってくる思うんだけど、神代は知識は有れど斯衛であり七瀬は加入した ばかりなので理解不足……

よって結局は俺が"全て"の判断をするしか無く、考える度に頭痛を感じてしまうが深く考えるのは止めよう。


≪――――ィィィィイイイインッ≫


「白銀少佐~ッ!」

「お待たせしました!」

「おっ? ご苦労さん」


……そう自己完結していると車を調達して来た七瀬が現れ、運転していたと思われる神代も近付いて来る。

ありゃ? てっきり緑っぽい屋根無しのジープみたいなのを予想したんだけど、白い普通自動車じゃないか。

俺なんかにタダ同然で寄越す車なんてポンコツだと思ってたけど、見た目も悪く無いしコレは意外だったZE。

それにしても忘却の彼方だった一応の俺の車を、まさか殿下に会いに行く為に使う事になるとは思わなかった。


「では出発 致しましょう!」

「運転は私が行いますッ!」

「有難う神代少尉。では行ってきま~す」

「白銀少佐に対し敬礼!!」×2

『――――ッ』


こうして出発となり、唯依&まりもちゃんと同様 伍長ズも敬礼するので負けじと俺達側の3名も敬礼で応えた。

んで車に乗り込むんだけども……七瀬は若干 動きが遅れていた。何だか唯依と視線を交わしてた気がしたな~。

しかし俺の勘など当たった試しが無いので、特に気にする事もなく後部座席で七瀬が入ってくるのを待った。


「(頼んだわよ? ……七瀬少尉……)」

「(出来る限り務めてみます、篁中尉)」




……




…………




……昨日の午後、篁中尉の自室にて。


「失礼します篁中尉……何でしょうか? 大事な話とは」

「率直に言うわ。武さんについてよ」

「えっ!?」

「彼は明日 帝都に赴く……そのうち突撃機動部隊で行動を共にするのは貴女しか居ない」

「な、何を仰りたいのですか?」

「つまり武さんを支える事が出来るのは、貴女ダケなのよ」

「!?!?」

「そ、そんなに大袈裟に捉えなくても良いわ。それよりも貴女も知ってるでしょ? 武さんの体の事は」

「あッ……はい。い、今は肉体よりも精神的な苦痛が強いと今朝 社少尉が言っていましたが……?」

「そう。だから今回の謁見の合間には、武さんには出来る限り体を休めて貰いたい……ソレを貴女に頼みたいの」

「頼みたい?」

「きっと彼の事よ……殿下との謁見が終われば直ぐ様 横浜基地に戻ってしまって、訓練に途中参加する筈。
 でも今迄はクーデターでの怪我などを理由に無理は避けて来たけれど……これ以上は彼を抑えられない」

「……(お兄様に遊んで貰いたくって訓練を止めるのを促した事も有る私には耳が痛い話だわ)」

「なのにクーデターは完全な無駄な戦いだった。だから激戦となるのは"コレから"と言う事になる」

「!? となれば……今の時点でも無理をしていると言うのに、コレ以上 カラダに負担が掛かってしまえば……」

「武さんは――――間違いなく死んでしまう」

「そ……そんなッ……」

「だから七瀬少尉。出来るだけ武さんに休息を促して」

「私に出来るのでしょうか?」

「――――御願いッ!」

「!?(な、涙を……篁中尉は"それ程"白銀少佐が心配だったのね)」

「勿論 武さんの"決意"には……私達の言葉など意味を成さないのは分かってる……」

「……ッ……」

「だけど、このまま見てるダケなんて……うぅっ……私には耐えられないッ!」

「篁中尉……」

「ごめんなさい。みっともない所を見せてしまったわ」←涙を拭いながら

「そ、そんな事は有りませんっ! 白銀少佐を気遣う気持ちは……とても良く伝わりました!!」

「あ……有難う」

「ですから――――」


≪何故なら君は似ていたのさ≫

≪えっ?≫

≪以前の俺と……ね≫

≪!?!?≫×2


「七瀬少尉?」

「私の様な新参者の言葉に耳を傾けて頂けるか どうかは分かりませんが、白銀少佐を亡き兄と思う気持ちで、
 休息を促してみようかと思います。彼に受けた恩の御陰で……今の私が有ると言っても良いのですから……」

「そ、そう……其処まで考えてくれたのなら後は何も言わないわ(……何か引っ掛かるけど)」

「ところで」

「何かしら?」

「その……篁中尉の話し方に先程から……」

「やっぱり違和感が有った? 実は武さんに貴女に対する口調を変える様に言われていたの」

「な、成る程……そんな事を」

「武さんは そう言う少年らしい所も多いのよ?」←少し得意げに

「それなら……やっぱり"あの事"は本当なのですね」

「あの事?」

「訓練の休憩の合間に神宮司中尉に御聞きしたのですが……衛士訓練部隊の総戦技評価演習に同伴した時、
 晴れて合格が決まった訓練兵達と一緒に、日が暮れる迄 遊び続けていたと聞きました」(12話 参照)

「!?!?」

「始めは白銀少佐の武勇を聞くに半信半疑でしたが、今の篁中尉の話で間違い無いと――――」

「七瀬少尉ッ!」

「えっ!? ど、どうしましたか?」

「詳しく聞かせて! その話っ!」

「(篁中尉は私の目標とする衛士だと言っても良い……だけど今回で少し分からない一面も見えてしまいました)」




……




…………




――――時は戻り横浜基地近郊の道路を走る車内にて。


「どうしたんだ? 七瀬。ボーッとして」

「!? い、いえ……何でも有りません(……昨日の話を思い出してたとは言えないわッ)」

「そうは見えないな~。やっぱり緊張してるんだろ?」

「うッ(……考えてみれば白銀少佐の件ダケでなく、私などが殿下に御会いする事ができるなんて……)」

「やっぱりか。まァ肩に力を入れる必要は無いさ……俺は既に例の事件の時 実際 殿下と会ってるんだけど、
 普通に"話せる人"だったし硬いイメージを持ってるなら見当違いだと思うぞ? 大きな声じゃ言えないが」

「そ、そうなのですかッ?」

「うん。だから問題なのは周囲の人達の威圧感とかになるかな?」

「はあ」

「いかんせんソレに俺は慣れてるってワケじゃないけど、帝国軍に居た七瀬なら大丈夫だと思うよ」

「だと良いのですが……(ひょっとしてコレは私の事を励ましてくれているの?)」

「間違い無いって。そんなワケで気楽にイこう気楽に。ゆ~こさ……副司令も そう言ってたしね」

「……ッ……(ダメよ! 出発早々 私が心配されてしまうなんてッ)」

「んっ? 七瀬?」

「いえ、お気遣い有難う御座います。ですが白銀少佐も今回を機に羽を伸ばす気持ちで――――」

「羽を伸ばす?」(ピクッ)

「あっ!? そ、その……すみません。今のは失言でした」

「いや別に気にして無いけど」


現在 神代は運転しており、七瀬は真横に座っているので自然と俺は後者の娘と会話して暇を潰す事となる。

そんな話し掛けようとした時の彼女の横顔には見るからに硬さが有り、当然の如く其処を指摘したんだけども。

やはり訓練兵上がりで殿下と会うのは緊張する様子。原作の白銀も同じ立場だったけど、価値観が違ったしな~。

されど何故か七瀬は此方の事も気遣って下さり"羽を伸ばす"と言う台詞に つい反応してしまった。駄目な意味で。

何せこの空白の数日間は前から休みたい思っており、イリーナちゃんの言ってた事を思い出してしまったのだ!


≪そうです白銀さん。謁見を済ませれば何日か帝都でカラダを休めるのも良いでしょうし≫

≪イリーナ中尉まで!?≫


……でも彼女が冗談で"あんな事"を言うハズも無いし休んでも良いのか? 実際のトコロはどうなんだろう?

だけど七瀬は直ぐに言葉を慌てて撤回したので、やっぱり自重する方が良いのかな~? なら謁見後は蜻蛉帰り?

う~ん、そもそも帝都で体を休めるって事になると七瀬と神代と泊まる事にもなるし何より聞こえが悪いZE。

よってソレに関しても深く考えない事にして、休めそうな空気なら便乗すれば良いか。疲れてるのはホントだし。

そんな事を無表情で七瀬を見つつ考えていると……彼女は何処かしらアセアセとした様子で話題を変えて来た。


「と、ともかく……私は神代少尉を見習わなくてはなりませんね」

「…………」


≪ブロロロロロロロロッ……≫


「ソレは俺も思った」

「(私もお兄様が居なければ、神代少尉くらいの年で戦場に出ていたのかしら?)」


今 七瀬の言った通り、神代は先程から会話には混ざらず無言で運転を続けるという見習うべき行動をしていた。

いや斯衛ならソレが普通なのかもしれない。むしろベラベラとダベっていた事と月詠さんにチクられたら困るな。

だから無駄な会話は切り上げる様にして殿下と謁見する時の対応や その後の交渉について適当に考えて置こう。


「(うぅ~……白銀少佐と同伴するダケじゃなく殿下に拝謁できるなんて……昨日からずっと緊張しっ放しだよ。
 嗚呼 緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張
 する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する白銀少佐
 緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する」

「ところで七瀬。帝都には後どれ位で着くカンジだい?」

「間も無くかと思います」

「そーなのかー」


んなワケで"その会話"を最後に俺は顔を逆に方に向け、外の景色を眺めながら帝都への到着を待つ事にした。

そんな目の前には見渡す限りの廃墟が広がっており……真・女神●生の世界崩壊後の音楽が脳内に響いてくる。

流石に横浜基地と帝都を繋ぐ道路は多少は整備されていて、多少の車とは擦れ違ってはいるけど……酷いモンだ。

訓練や実戦の時は気にする余裕は無かったけど、この視点だと実感するので何だか哀愁を感じてしまっていた。


「……(す、素敵な横顔ね……って、わわわ私は何て事を考えているの!?)」

「(何でエロ漫画ってツボった作品に限って一話限りなのが多いのかな~?)」


――――でも白銀は"今後"の事はちっとも考えずに、つい現実逃避と洒落こんじゃってたんだ☆




●戯言●
今回は短くて(11KB程度)すみません。次回は成るべく早く更新しようと思います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ51(中編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/05/25 05:31
これはひどいオルタネイティヴ51(中編)




2001年12月14日 午前


≪ガオオオオォォォォンッ……≫


「(脳内BGMは"魔界●想"も捨て難いなァ)」 注:無印Ⅱの曲である

「(ハァ。白銀少佐……私と一つか二つしか違わないのに、国連軍の少佐だなんて……)」

「(うぅ、私が案内以外で白銀少佐の役に立てる事って有るのかなぁ?)」


若干 現実を突き付けられてブルーな気分に成り掛けながらも、俺は他に する事が無いので外を眺め続けていた。

すると帝都が近付くに連れて、冥夜も口にした"難民キャンプ"と呼ばれる集落っぽいのを幾つか通り過ぎる。

流石にテントなどでは無く仮設住宅(プレハブ)っぽい家で暮らしているみたいだけど、やっぱ悲惨なんだなァ。

それと比べてみると……横浜基地の衛士生活の方が まだマシな環境な気がする。BETAと戦う事を除けばね。

しっかし北日本 以外の生き残りの日本人は皆、あんな生活をしてるのか? だとしたら同情せざるを得ない。

また国連軍とは違って一度ズタズタになった帝国軍の衛士達の環境も気になったので、俺は視線を七瀬に向けた。


≪――――くるっ≫


「(誰もが気にしてると思うけど一体、どれ程の道を……) あっ!?」

「んっ? どうしたんだ~?」

「な、ななな何でも有りませんッ」

「だったら良いんだけど……七瀬」≪キリッ≫

「はい?」

「君は……ッ……いや、悪い何でも無い」

「えっ? そ、そうですか……」


振り返ると七瀬と合う目線。普通に驚いてしまったが、耐性の有る今 全く顔には出ていないのは何時もの事。

とは言え やはりマブラヴのキャラは可愛い過ぎて目と目が合う~瞬間 好きだと気付きそうになっちゃったんだ☆

さて置き。俺は先程 思ったとおり七瀬に訓練兵時代の生活などを聞いてみようと思ったけど、直ぐに考え直す。

何故なら俺は少佐な上に ゆ~こさんに特別な待遇を得ているので、衛士達の中では かなり恵まれているっぽい。

でも給料は一体どうなってるんだよ!? ……と聞きたいが俗に言う入社後の"試用期間"さえ過ぎていない上に、
買ったら何十億もしそうな戦術機を預けてくれているのに加えて、SⅡの腕を壊してしまった経験が有るし、
極めつけは ゆ~こさんに給料をくれる様に言うのが怖いので年収が今のトコロは0円なのも保留する事にして。

今の事を質問された七瀬は階級の違いから快く応えてくれそうに無いと思ったので、結局 問わなかったのでした。

よって七瀬にお馴染みのウザ・スマイルをしつつ謝罪すると、ちゃんとした反応も見ずに再び視線を外へと移す。


「(い、いけない……さっきから白銀少佐の横顔を見ていた事は、当に気づかれていたんだわッ)」


≪――――君は俺の過去が気になるのかい?≫


「(それに経緯を気にしていた事まで……やっぱり私なんとかとは背負っているモノが根本的に違うのね)」

「七瀬」

「!?!?」

「今の事は本当に気にしなくて良いからね?」

「……ッ……わ、分かりました。こちらの方こそ……すみません」

「有難う」


――――しかし数十秒後チキンな俺は何か挽回したくてウズウズしてしまい、その一言を最後に口を閉ざした。


「(そうよ……他の人間達と同じ様に少佐の過去など気にせず、仲間として内面を知るようにしないとッ)」

「…………」

「…………」

「あっ、白銀少佐……見えて来ました。アレが帝都です」

「!? ……すごく……大きいです……(遠くで聳える城が)」

「勿論ですよッ。何せ日本の象徴ですから!」

「成る程……それじゃあ帰る時は記念撮影しとかないとねェ」

「ほ、ホントですか!?」

「(とはいえ白銀少佐は面白くも有る人ね……わ、私も見習った方が良いのかしら?)」

「肝心なカメラが無いけど」

「ガクッ(……だったら見得張らないで、素直に美凪から借りて置けば良かった……!!)」

「(それにしても……神代少尉って"こんな性格"だったの?)」




……




…………




……第一帝都東京に進入するも、周囲の建物を通過し(一応)俺の車は一直線に殿下が待つと言われる城を目指す。

ソレを最初は只の城だとバカにしていたけど、実際 戦術機が出入りするダケ有ってアホみたいにデカく広い。

流石に横浜基地の広さには負けるが、コレは最早 城ではなく要塞と言って良いかもしれない。凄いモン見れたぜ!

そんな殿下城(命名)は以前にクーデター軍とドンパチやった事も有ってか、多少は相応の損傷が残っている様子。

しかし歯車は元に戻って居るのか殿下城の敷地に入り、多くの戦術機や車両の脇を通過すると、車は停車する。


「白銀少佐、御待ちしておりました」

「……真耶さん」

「!?!?」

「ぇあッ、いやいや! すみません。出迎え有難う御座います月詠中尉」


車を出ると真耶さんが俺を出迎えてくれたが、殿下城の凄さに興奮していたか唐突に彼女を名で呼んでしまった。

対して凛々しかった真耶さんは少しダケ目を丸くさせたけど、俺は何事も無かった様にキリッとして敬礼する。

ま、マズった……昨日ゆ~こさんと真耶さんが現れた時も名で呼んだけどツッコまれなかった事に油断してたぜ!


「そう言えば昨日も名で呼ばれた気がします。あの時は副司令の雰囲気に呑まれ些細な事と認識しましたが」

「すみません、ウッカリしてました(……其処は敬礼ダケで流して欲しかったんですけど)」

「ふふふっ。あの者の事を考えれば"ややこしい"でしょうし、場を選ばれれば許容 致しましょう」

「そ、そりゃどうも」


――――なんだか真那さんと比べると早く打ち解けてしまった気がする。違和感はAFの性格の所為だろうなァ。


「……七瀬少尉も良くぞ参られた」

「よ、宜しく御願いします」

「神代少尉も案内 ご苦労だった」

「はっ!」

「では御案内 致します……此方へ」

「は~い」

「(し、白銀少佐って凄いなぁ……真那様ダケでなく"この人"にも此処まで信用されるなんてッ)」

「(敵ばかり作っていた私と違って、人望も途轍もなく有るみたいね……本当に自分が情けないわ)」




……




…………




……斯衛軍はクーデターが有ってか未だに忙しい様で、大して俺達は注目される事も無く城内を歩めている。

正直なトコロ国連軍は嫌われてそうだったので幾つもの敵意を向けられたら失禁すると思ってたダケに安心した。

よって思ったよりも早い殿下との"再会"が間近に迫っており、俺のワクワクは留まる事を知らないんだぜ?

何せ説得での出撃前に別れた限りだから最悪 原作と同様クリアまで会えないだろうし、このイベントは嬉しい。

それに殿下の事だから負傷した俺を心配してくれてる筈。色々と密着しながら話したり戦ったり……あれっ?




≪(見たいお、殿下の裸体を この目で見たいんだお……)≫




≪(これも殿下のオシリの感触が気持良過ぎるからなんだお、まさに日本一の尻だお……)≫




≪ふ~む、恐らく殿下は"世間知らず"の様ですね≫




≪……っ!?≫←大便フラグ☆




≪――――耳元で怒鳴るなっ!!≫




≪勿論さあ☆≫←ウザスマイル




……いや、今 考えてみれば非常に無礼な事の連続だったかもしれない。先ずは常に股間はバーニング状態を維持。

また世間知らず呼ばわりした上に、一対一の際は護衛を放棄してトイレに行く為に彼女の元を離れてしまい……

聖戦士を肖っていた時は暴言を吐いてしまったダケでなく、極め付けはドナ●ドのノリで阿呆な別れ方をした。

振り返れば普通に無かったですよね~? 嗚呼。殿下も考え直したら"白銀ってやっぱキモくね?"とか感じるかも。

ソレが当たっていれば新たなフラグなんて期待 出来ず、淡々とした謁見にしか成らないじゃあ~りませんか!!

だから期待する時点で殿下には失礼だったな……真耶さんの柔らかさを見るに他人に告げて無いのが幸いだね。

よって気を引き締めて"彼女"との再会に臨む事にしよう。そう思いながら歩み、目的地が近付いてくると……


「ほう、お前が"白銀 武"か?」

「!?!?」


≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


「……中将……」

「あッ……わわ」


な、ななな何だか巨大なオッサンが出ちゃった~っ! 誰この人!? 神代は"中将"とか呟いて七瀬はビビッてる。

しかし斯衛で中将とか、どれダケ偉いんだ~? 月詠家の赤でさえ白に対してかなりの"壁"が有るってのに……

それより七瀬だ。彼女は斯衛を蹴って帝国軍の衛士を目指しており、今となっては国連軍の人間になっちまった。

よって背後に居る事から表情は見えないが僅かに漏らす声で、後ろめたさで動揺しているのを察する事が出来る。

されど目の前のデカいオッサンは俺達のリアクションを気にする素振りも無く破顔して言う。(俺は無表情のまま)


「儂は紅蓮 醍三郎。最近まで"煌武院 悠陽"殿下の護衛を担っていた者だ」

「(――――まんまグレ●ダイザーじゃねぇかッ!!)」

「最も……例の一件で再び"その者(真耶の事)"が側近に戻る事となったがな」

「恐縮です」

「始めまして紅蓮中将、以後お見知り置きを御願い致します」≪キリッ≫

「うむ……白銀よ、貴官の話は殿下から聞いておるぞ?」

「……はッ……光栄であります」


殿下が真耶さんには俺の"自重しない言動"を告げていない! ……と思い込む事で無理矢理 安心していたが、
紅蓮中将には言ってしまったのだろうか? あと侍女のオバハンも居るだろうし……再び不安になって来た。

しかし中将は相手が国連軍の少佐なのに"貴官"と言って下さったので、俺に敵意を感じてるワケじゃ無さそうだ。

さて置き。後から聞いた話によると真耶さんは以前から殿下の側近だったが、以前のBETA侵攻で配属転換。

けど殿下の護衛を兼任してた中将がクーデター時 彼女と脱出する余裕が無かった為 真耶さんが復帰したとの事。


「そして貴様は"神代"の者だったな?」

「はっ! 巽であります」

「ふ~む……先日 見た時と比べると、目の色も雰囲気も若干 変わっておる……(その雰囲気とは……)」

「ち、中将?」


≪――――チラッ≫


「(何故に俺の方をチラ見したし?)」

「成る程のう、女子たる者 それも成長の一環よ。くれぐれも後悔せぬ様 努めるが良い」

「!?!?」

「どうしたんだ~? 神代」

「えっ? あのッ、その……助言の程 感謝致します中将殿」

「わっはっはっは。大した事は言っておらんよ」

「(でも見たダケで気付かれちゃうなんて、流石は紅蓮様だ……)」

「ふむ……(恐らく僅かに先の"予定時間"までの時間稼ぎだろうが、紅蓮中将らしい計らいだな)」

「(ぐ、紅蓮中将……凄い威圧感ね……だと言うのに、白銀少佐は全く動じる様子が無い……)」

「――――となると貴様が"七瀬 凛"だな?」

「!? は、はいッ! 国連軍・突撃機動部隊 所属の"七瀬 凛"少尉であります!!」

「ほう……その威勢の良さは兄と良く似ておる。いや以前の噂を聞くに"元に戻った"と言うべきか?」

「お、お恥ずかしい限りです」

「な~に今更 文句を言う程 器の小さい人間は斯衛には存在せんよ。だが負い目を感じているので有れば、
 所属している軍が何処であろうと、精一杯 戦うのが貴様の役目だ……国民の為に果てた七瀬の為にもな」

「……ッ……畏まりました」

「では紅蓮中将」

「むっ? そうであった。これより先"煌武院 悠陽"殿下が御待ちである……粗相の無い様になッ」


こうして紅蓮中将は一通り 俺達4人に話し掛け終えると、襖を開け視線のみで奥に行くように促して来た。

そうならば進んでゆくしか無いワケだけれども、背後に気配を感じるので後を付いて来ているみたいだなァ。

ハァ……敵意が無い様で安心したZE。そう言えば名前で分かったが、この人もマブラヴのキャラでしたね~。

逆に名無しの背景とかで"こんな人"が居る方が恐ろしいと思うから、ある意味 此処で出てくれて良かったな。

ともかく。更に通路を歩いてゆくと既に開いた襖が見えたので通り抜けると……其処には神々しい姿が有った。


「おぉ~っ」

「……綺麗」


その殿下の姿を見て思わず息を漏らしてしまった。クーデターの時とは違い頭に簪(カンザシ)をした正装だし。

また左右がオルタのラスト辺りで彼女が外の景色を見ていた様な造りになっており、吹き抜けになっている。

そんな正面には侍女のオバハンを横に控えさせ殿下が直立していて、此方が跪くと彼女はニコやかに言った。


「白銀に七瀬……そなた達を 待っていました」




……




…………




……30分後。

俺・七瀬・神代・真耶さん・紅蓮中将・殿下・侍女の人……の僅か総勢7名で臨む事となった殿下との謁見。

でも俺達は ともかく……殿下側の護衛は実質 紅蓮中将と真耶さんの2人ダケなので少ないと思う。(神代は別)

だけど紅蓮中将さえ居れば"別に良いんじゃね?"と感じてしまうのが"こう言うキャラ"の怖いトコロですね~。

さて先ずは堅苦しい挨拶から始まり、クーデターでの功績による賛辞を俺の怪我の気遣いを交えて告げられると、
次に3年前のBETA首都圏進行時に七瀬家の当主を失わせてしまった事を、殿下が頭を下げて七瀬に謝罪する。

対して七瀬も"自棄になった自分にも非が多々ある"と慌てながらも返した事で、殿下の注意は俺の方に向いた。

ゆ~こさんが言ってた様に、武家として認められてる七瀬の命をトライアルで救ってくれた事の礼に繋げたのだ。

勿論 俺などには勿体無い言葉なので謙虚に受け止めたけど……肝心の問題は"その後"殿下が申し出た事だった。

今後の話は"戦術機"関連……即ち交渉みたいなモノとなるので、この様な神聖(?)っぽい場所で話す事じゃない。

故に期待 出来そうな昼食の賄(まかな)いを挟み、場を改めて話す事にする様で一旦 お開きになる筈だったが……




「……白銀」

「で、殿下」




\ デデーン /




――――何故か今 現在 俺は殿下と"2人っきり"で殿下城の一室で見詰め合っています。




「皆には我侭を言ってしまいましたね」

「いえいえ、気になさらないで下さい」

「そなたに感謝を」

「では殿下……私に御用とは何なのですか?」≪キリッ≫


俺達3人が真耶さんの案内で立ち去ろうとした際、殿下が"俺と2人切りで話をしたい事が有る"と言ったのだ!!

それを聞いて侍女のオバハンが真っ先に反対したが、紅蓮中将と真耶さんは殿下の意見に肯定的な素振りだった。

また俺もクーデターで一緒だったと言う事でOKを出すと、適当な近場の部屋に案内され今に至るというワケだ。

無論 征夷大将軍で有る彼女に邪な気持ちを抱く気は一切 無いし、何処で誰が潜んでいるかも分からないので、
早くイベントを消化してしまおうと思っていたが……何で照れた素振りを見せるんだろう? 可愛いじゃないかッ。

それに何か距離が近くない!? だけど下手したら首が飛ぶので、冷静な表情を維持して言葉を待つんだけれども。


「それが……分からないのです」

「えぇ~っ?」

「以前から そなたに"何か"を告げたくて仕方なかったのですが、不思議と言葉には表せないのです」

「???? ど、どう言う事ですか?」

「すみません。白銀の顔を近くで見れば……自然と出て来る様な気がしたのですが……」

「結局 出て来なかったと?」

「は、はい」

「(……やだ……なにこれ……どう言う事なの……?)」

「しかし喉まで出掛かっている気はするのです」

「ふ~む……」


――――つまり出て来そうで出て来ない"何か"を俺が表すのが今のイベントの達成条件と言う事か!?


「困りました」

「だからと言って私が殿下と2人で居ても良かったんですかねェ?」

「それに関しては問題有りません。ああ見えて"あの者"も そなたの事は評価していますから」

「さいですか……(侍女の人の事かな~?)」

「しかし未だ表せないとなると、白銀に機会を設けて貰った意味が……」

「殿下ッ」

「はい?」

「その"表せない事"に関して、何かキーワードは有りますか?」

「きーわーど?」

「喉まで出ていると言う事は重要な単語の一つ位は有るでしょう?」

「そ、それは……そうですね……しいて言えば"友"……でしょうか?」

「ホモ……いや"友"ですか……」≪キリッ≫

「はい」


――――この時点で何故か殿下が頼り気な視線を送って来ているので、彼女の姿とのギャップを感じてしまう。


「その"友"と言う単語から真っ先に連想する"更なる単語"は?」

「……憧れ……」←半ば無意識に

「!?!?」

「……ッ……どうしたのです? 白銀」

「い、いえ何でも……それよりも、何となく仰りたい事が分かってしまったかもしれません」

「ま……誠ですかッ?」

「はい(……何せ少佐の俺が冥夜の件で、既に経験済みだからな~)」


≪お前 同い年ならず、年上からも何時も敬語 使われる奴の気持ち考えた事ありますか?
 ……マジで泣きたくなる程 悲しいんで、止めて貰えませんかねぇ……?(リアル話)≫


「では、わたくしが"告げたかった事"と言うのは……?」

「ソレって私の口から述べてしまっても宜しいんですかね?」

「構いません。むしろ……そなたから言って欲しい気もします」

「そうですか」

「……ッ……」


此処で気付いた人も多いだろうが、彼女の立場……友と言う単語への憧れ……俺が以前 冥夜に述べた事。

それらを考えると、殿下が"言葉で表せなかった事"とは"言いたくても口に出せなかった事"とも例えられる。

しかし彼女は少し考えれば簡単に出て来そうな内容だとは言え、脳の一部が口に出す事を抑制していたのだろう。

ならば俺が変わりに告げるしか有るまい!? よって俺はリミッターを解除すると、某 第3部の高校生を肖った。


≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫


「……貴女"煌武院 悠陽"は……いわゆる征夷大将軍のレッテルを貼られている……
 生まれた時から必要 以上の教育を受け、未だ日本を背負う人間として努める日々が続いている現状……
 威張るダケの能無しなんて日本に沢山存在するが、貴女が そんなんじゃ日本は2度と立ち上がれねェ。
 なのに自分の命が可愛いからとヘコヘコと頭を下げに来る様な、汚い人間の相手は しょっちゅうよッ!」

「し、白銀……」

「だが、そんな貴女にも憧れと言う物が有ったッ! "友"とは損得 関係無しに言いたい話が出来る相手の事だ!!
 されど殿下だーっ! 簡単に作れるモンじゃ無ェ!! あァ~~ん……貴女の"立場"は征夷大将軍ってワケで、
 年の近い人間は皆 揃って謙(へりくだ)るし、何よりソレが当たり前だしで難しかった……だから――――」

「……あッ……」

「俺が裁――――いや自分と"友達"になりませんか?」

「!?!?」


≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


いやいや裁いて どうすんだ裁いて。それよりも殿下が"告げたかった話"とは俺と友達に成りたかったと言う事。

考えてみれば、こうも神々しい姿ながらも彼女は17歳。なのに友達が一人も居ないと言うのは確かに寂しい筈。

……とは言え自分の立場から考えを抑制していたが、歳 同じくして少佐の俺との出会いで望みが高くなった。

だけど実際に口に出すのは無意識のウチに躊躇われたが、相手の口が述べれば無問題と言うのが俺の推測である。

そんなワケで最後は殿下の手を取ったりしながら、彼女の一人目の"友達"になる事を促してみたんだけれども。


「ダメでしたかね~?」

「……ッ……」

「殿下?」

「そ、それなのですッ! それなのですよ白銀!!」


≪――――ぐいっ!!≫ ←白銀の両手を握る音


「うおっ?」

「わたくしの告げたかったのは、まさに"それ"だったのです!!」

「は、はあ」

「流石は白銀ですッ。私が口では表せなかった事を、こうも簡単に察してしまうとは……!!」

「では殿下……私と"友達"に成って頂けるので?」≪キリッ≫

「!? は、はい……不束者では有りますが、宜しく御願い致します」

「いやいや、ソレは友達に言う台詞では無いでしょう?」

「そ、そうなのですか?」

「先ずは名で呼ぶ事から始めましょう。私の事は遠慮せず"武"と呼んで下さい」

「……ッ……で、では……武様」

「まさかの様 付け!?」

「い……いけませんか?」

「そ、そうでは無いんスけど……(考えてみればAFだと殆ど全員に"様付け"だったっけ……?)」

「ならば わたくしの事も"悠陽"と呼んで頂けませんか?」

「えぇっ? 流石にソレは立場的にヤバ――――」

「武様」

「は、はい」

「"そなた"は わたくしの"友"なって下さるのでは無かったのですか?」


しまったッ! 場のノリで友達に成ろうと言ってしまったが名で呼ぶ事からのリスクを考えて無かった!!

それに思ってみれば妙に殿下の俺に対する言葉遣いが柔らかくなってるが……コレが彼女の素なので仕方ない。

ソレよりも、そんな哀願する様な視線を向けないで下さい……断れないじゃないか。良いぞ、もっとやれッ!


「……ッ……じゃあ"悠陽"」

「――――っ」≪ドキュン≫

「これから改めて宜しく頼むよ? 余り多く"今みたいな機会"が有るってワケじゃ無いけど……」

「ぞ、存じております。ですが武様と言う"友"が出来た事は、わたくしにとって大きな収穫となりました」

「それなら良かったよ……でも、お互い くれぐれも場は選ぼうね? 下手したら立場が危ないからさ~」

「ふふふっ。分かりました」

「じゃあ、友達になった事で一つ御願いが有るんだけど」

「何でしょう? 遠慮なく仰って下さい」

「なら先ず其処に立って」

「はい」

「そのまま両手を左右に広げて」

「こうですか?」

「――――"天津神 アマテラス"が一体 出た!!」(メガテン調)

「???? 天照?」

「いや、何か似てると思ったからさ」

「(こ、この わたくしが かの有名な"天照大神"などと……武様は其処まで わたくしの事を?)」

「悠陽?(今のギャグはウケなかったかな~? 原作を知ってる筈 無いし当然か)」

「アマテラス……アマテラス……アマテラス……」

「ちょっ!? 冥夜と被ってるけど何か違うッ!」

「!? す……すみません、わたくしとした事が」

「アハハハッ。じゃあ、そろそろ俺は行くよ? 何時までも2人だと流石に怪しまれるだろうし」

「そうですね。それでは武様……後ほど御会いしましょう」

「うん、またね~」


こうして俺と殿下……いや悠陽はノリで"友達関係"となってしまい、別れ際に見た彼女の笑顔が印象的だった。

荒んだ"この世界"にやって来てから、ひょっとしたら一番の笑みだったかもしれない。流石"征夷大将軍"だぜ!

しかし"気を引き締めて彼女との再会に臨む"と言う話は何処へやら。変なポーズまで取らせちゃったし全くもう。

でも友達になってるし問題は無いよね~? 場所を選ぶのがアレだけど、彼女に元気が出たのなら良しとするか。

されど俺の何気ないネタは悠陽の心を大きく動かしていたらしい。原作には間に合わなかったみたいだけどNE。


「(天照大神……太陽の象徴。もし新たな戦術機を造る機会があれば、考えて見るのも良いですね)」

「殿下。奴めが出て来た故に参りましたぞ?」

「そうですか……紅蓮」

「何か?」

「そなたには世話を掛けてばかりですね」

「とんでも有りませぬッ。むしろ孫の成長を見ている様で生き甲斐を感じておりますよ」

「ふふふっ。ならば安心です……それよりも午後の交渉は旨く済ませなければ成りません」

「そうですな。可能であらば儂も誰もが評価すると言う"あの者"の腕を拝みたいと思っております故」

「では紅蓮はシミュレーター等の準備を滞り無く。どんな希望にも応えられる様にして置くのですよ?」

「畏まりました!」

「恐らく交渉次第では、今後 斯衛軍の未来が変わるかもしれません。それを念頭に交渉に臨むのです」

「ははッ(ふ~む。クーデターで大きく成長されたとは思ったが、奴に抱いていた蟠りが取れた事により更に?)」


――――"悠陽"の要望から15分後、ようやく戻って来た俺を七瀬と神代が心配した様子で待っていてくれた。


「あッ、白銀少佐!!」

「(一体 何を話してたんだろう?)」

「2人とも……そんな所(廊下)で待ってたのか?」

「はい、月詠中尉に待合室には案内して頂きましたが……」

「すみません」

「神代。謝る必要なんて無いって……それより変な目で見られなかったか?」

「あ、あはは……擦れ違った方達には多少ですけど」

「私は良いんですけど、七瀬少尉の方が それなりに」

「やっぱり!」

「ですが部下として当然の事だと思っていますから、白銀少佐は気に成されないで下さい」

「……なら何も言うつもりは無いけど……余り気を張りすぎるなよ?」


≪――――ナデナデ≫


「あぅうっ」

「……クッ……(羨ましい!)」

「んっ? 神代?」

「!? あッ……と、とにかく待合室の方に御案内 致します」

「有難う」

「それと昼食は今から45分後との事です」

「把握した」

「(ヘブン状態)……!? ま、待って下さ~いッ!」


待合室から2人が待っていた上層の通路までの距離はソレなりに有ったので、此処は2人の気遣いに感謝だ。

本来は真耶さんが迎えに来る筈だったが、彼女の手間を省く意味で七瀬と神代が代わりに来たって話だけど……

七瀬のリスクを考えると労ってやらせざるを得ない。だから頭を撫でちゃったのも仕方ない事だと思うんだ☆


「白銀少佐、再度 お迎えに上がりました」

「ご苦労様で~す」

「(こ、こここ今度は殿下との御食事だなんてッ)」

「(コレも滅多に無い機会だよ……でも、何で白銀少佐は平気そうなんだよ~?)」←友達だからである


――――そして待合室で暇を潰す事30分、真耶さんが迎えに来てくれた事で午後の予定が開始される。




●戯言●
先月は絆のイベント戦で休日の殆どを費やし、最近までは長期の風邪に掛かってしまって更新が遅れました。
未だに完治はして居ないので最近 何とか更新した作品と同様に非常に曖昧な出来です。面目有りません@w@
さて殿下とのフラグがビンビンに立ちましたが、JOJOネタが遣りたかったダケとも言う。だから満足!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ51(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/06/26 00:51
これはひどいオルタネイティヴ51(後編)




2001年12月14日 正午


「会食の場は此方で御座います、白銀少佐」

「どれどれ……」


……待合室に やって来た真耶さんに案内され、俺達3人は歩く事 数分。

やがて殿下城の中層 辺りに位置する、とある部屋の入り口に辿り着いた。

恐らく此処で悠陽達と飯を食うのだろう。礼儀作法には自信が無いけど、ボロを出さない様にしないとな。

そう考えながら真耶さんが襖を開けるのを待っていると……大体 予想通りの光景が飛び込んで来た。

現代世界でも見た事が無かった立派な懐石料理が並んでおり、キラキラと新鮮な輝きを放っていたのだ。

ちなみに料理を挟んで向こう側の席には、悠陽と紅蓮中将が座布団の上に座っており……

何時もの侍女の人と、何時の間にか回りこんでいた真耶さんが悠陽の傍に控えている。


「来た様ですね。待っていましたよ? 白銀」

「うへ~ッ……」

「どうかしましたか?」

「えっ? い、いや……何でも無いです」

「ともかく座るが良い。見ての通り昼食の準備は終わっておるのでな」

「そうですか。ならば御言葉に甘えまして」

「し……失礼 致しますッ」

「あ、あの……殿下。私も頂いても宜しいのでしょうか?」

「そなたも客人なので遠慮は要りませんよ? 神代」

「……ッ……恐縮です」

「よい。では月詠?」

「はッ。不躾では御座いますが、会食の前に先ず私から今回の料理について説明させて頂きます」


紅蓮中将に促され座布団の上に座ると、真耶さんが静かに咳払いをして料理の解説に移る。

成る程……姿こそ赤の斯衛服だけど"こう言う機会"での役目はAFの彼女と同じだな。

食事のセットの数も5つしか無いので、真耶さんと侍女の人は食わないのだろう。

流石に紅蓮中将の分は有るみたいだけどね~。それに神代のも用意してくれてたみたいで安心した。


「……そして次に、この魚がオーストラリアより新鮮さを一切 損なわせず取り寄せた一品で御座いまして……」


さて置き。真耶さんのスーパー・解説タイムは続いてゆき、次第に料理に手を付けたくて堪らなくなってくる。

う~む……オルタの世界じゃ絶対に御目に掛かれないと思ってたLvの料理だった為なんだけど、そうだよな~。

BETAの手が掛かっていない海外から素材を取り寄せれば、腕次第で一流の日本料理にも化けるってか……

とにかく感心が止まないんだZE? ……だとすれば、七瀬と神代も感動しているだろうね。


「…………」

「…………」

「!? おいおい七瀬・神代……涎を拭け、だらしないぞ?」

「――――ハッ!?(わ、わわわ私は何と言う事を!?)」

「すッ、すみません!! 殿下の前で とんでもない粗相をッ!」

「ふふふっ、見なかった事にして置きましょう」

「なになに。儂も先程から我慢しておったのでな、仕方あるまいて」

「全く……貴方がソレで どうするのです? 紅蓮中将。ともかく2人とも"その者"の事を見習いなさい」

「あぅうッ」

「も、猛省致します……御容赦ください」


前述の理由で左右の2人が気になり視線を移してみると、何と互いに(少しダケだが)涎を垂らしていたッ!

よって無視できるハズもなく真面目を装い指摘すると、真っ赤になって口元を拭う七瀬と神代。

ソレを見て悠陽と紅蓮中将は気にしない素振りを見せ……真耶さんは瞳を閉じ蚊帳の外に居たんだけど。

侍女の人に追撃のグランドヴァイパー(小言)を食らい、左右の2人は若干ヘコんでしまった様だ。

されど何気に、やはりオバハンは俺の事を評価してくれてるんだと改めて実感したのも さて置き。


「……(悠陽ッ)」

「……(武様?)」


実は……俺だって普通に危なかったんだZE……俺も少し遅かったら涎がダラリと出ていたに違いない。

何せ"死ぬ前に一度は食べてみたい"レベルの料理が目の前に有るんだからな……それに俺 刺身って好物だし。

んでもって現代日本で生きてた時でさえ、少なくとも定年を迎えるまで食う予定は無かったモノとなれば尚更だ。

その為 この場を拵えてくれた悠陽に非常に感謝する事に結び付き、俺は彼女に熱い視線を送った。

まさかオルタ世界で此処までの料理を御馳走してくれるなんて……悠陽ーッ! 俺だー、結婚してくれー!!

そんな俺のアイ・コンタクトは説明を再開した真耶さんの台詞が終わるまで続いたのでした。


「以上で紹介の方を終了させて頂きます」

「(悠陽っ! 早く食って良いって合図 頂戴、合図!!)」

「……ッ……」

「殿下?(ハリー、ハリー、ハリーッ!)」

「白銀」

「はい?」

「先程から そなたの言いたかった事は分かっています」

「へぇあ」

「未だ難民として飢えに苦しんでいる者達が居る中で、この様な料理を摂るのは不服だと申したいのですね?」

「ゑっ?」←あまり聞いてなかった

「!?(そ、そんなッ!)」

「……(ソレに引き換え私は……すみません冥夜様・真那様)」


――――視線は悠陽に向いているが、話 自体は良く聞いてない俺。イキナリ何 意味不明な事 言ってんの?


「その気持ちは十二分に理解しております。ですが……白銀には気を休める時も必要かと思うのです」

「……(何でも良いから早く食わせて欲しいんですけど?)」

「白銀 武よ」

「はッ。何でしょうか? 中将殿」

「言って置くがな……殿下は何時も この様な料理を摂られている訳では無いぞ?」

「へっ?」

「早い話 お前達と左程 変わらぬモノを食していると言って良い。無論 我々も普段は合成食だ」

「では、そうなると……」

「うむ。貴官は余程 殿下に気に入られた様だな……それ故に今回の謁見を設けるに当たっては、
 会食に出す料理に置いても、直ちに"一級品"を用意する様にと張り切られ今に至ると言う訳よ」

「ふむ」

「ぐ、紅蓮ッ! 話が違いますよ?」

「!?(この殿下の表情……)」

「……(まさか白銀少佐をッ)」

「わっはっはっは。いかんいかん、コレは内密でしたな」

「全く。ともかく遠慮は要りませんよ? 食しなさい白銀」

「では」


――――何だか分からんがGOサインが出た様だ。ヒャア!! もう我慢できねェ、食うぜ!!(刺身を)


≪パクッ≫


「!?!?」×6

「……クッ……凄く……美味しいです……」


やっと許しが出たかっ! 来たッ、メイン料理来た!! ……これで勝つる!!!!

その通りのテンションで醤油を付けて一切れの刺身を食うと、自然に例の台詞が出てしまった。

この歯応え……そして味。どう考えても大好物の刺身です、本当に有難う御座いました。

一方 悠陽の方を見てみると、何故だかパアァーッと表情を晴らしてたりして驚いちまったZE。


「!? そ、そうですか……そうでしたか! ならば わたくし達も頂きましょう」

「そうですな」

「い、頂きますッ」

「モグモグモグ。うわぁ……ホント美味しいよ」

「2人とも。ゆっくり味わって食うんだぞ?(特に俺がだけど)」

「はいっ!」×2

「(思えば此処まで笑われた殿下は始めて見たかもしれんな……白銀少佐には恐れ入る)」

「月詠。遠慮は要りません、そなたも食しなさい」

「まさか断る などとは言わんな?」

「いえ。お気遣い有難う御座います」

「(嗚呼 武様……わたくしへの"友"としての心遣い感謝いたします)」


ともかく俺が刺身を食った事で会食が ようやくスタートされ、幸せな一時が続いたのでした。

それにしても始まってから間も無く、横の襖が開いて琴や舞が披露されるとは思わなかったな……

しかも演奏したり踊ったりしてる女の人の中で、良く見たら何名か途中で擦れ違った方達と顔が一致しましたよ?

あ、あれェ? オカしいな~、思い出して見ると青い斯衛服 着てた人も居る気が……でも流石に気の所為だよね?

また反対の襖からは斯衛軍・給仕 仕様とも言えそうな姿をした人達が追加の料理を運んで来てくれるし……

後から聞いた話によると、最初 目の前に広がっていた料理はアレでもコースの一部だったらしい。信じられんッ。

だかトンでも無く有意義な時間だったワケで……唯依も給仕 仕様だったら あんな姿をするのだろうか?

だったら是非……と、そんなバカな事を考えつつ。気付いた時には全ての料理を食い尽し会食は終了となった。




……




…………




……食事を終え悠陽と別れてから10分後。

再び真耶さんに案内され、今度は悠陽城(改名)の下層辺りの部屋に案内された。

今度は どちらかと言うと西洋チックな造りとなっており、今回のメイン・イベントの始まりだ。

されど今回は悠陽と"友達"になった事が最も重要なんじゃないかな~、と思うのは さて置き。

次は主に戦術機 全般に置ける交渉を行う事に成っているので、案内された部屋で準備に掛かる。

その"作業"とは主に俺が説明する事から、質問されても直ぐ答えられる様に机に資料を並べているのだ。

でも逆にイリーナちゃんとかウォーケン姉妹とかは記憶力が凄いから……信じられるかッ?

今や何も見ずに、俺が介入する事によって生まれた兵器やシステムの殆どを説明 出来るんだぜ?

だから見栄なんか張らないで、素直に ゆーこさんに泣きついてイリーナちゃんを借りとくべきだったかな~?

そう思いながら前に広がる十数冊の資料を七瀬と神代を左右に眺めて居ると、更に10分後 待ち人が入室する。


≪ガチャッ≫


「失礼致します」

「待たせた様だな?」


―――― 一旦 部屋を出て行った真耶さんが、紅蓮中将を連れて来たのであります。悠陽は流石に居ないんだな。


「いえ(そもそも、全然 暗記 出来てないし)」

「ふむ(この資料の数……此方に提供 出来る情報は数多く有ると言う事の見せしめか。やりおるな)」

「……(だから もっと待たせて良かったのにッ!)」

「……(そうなれば狐の騙し合いでは不利かも知れんな……殿下は慎重にと申されたが……)」

「それでは紅蓮中将」

「うむ。儂が斯衛を代表して貴官と交渉させて貰う故、宜しく頼む」

「此方こそ宜しく御願いします」

「では白銀少佐も御掛け下さい」

「有難う御座います、月詠中尉」


真耶さんの声掛けで先ず紅蓮中将が若干 地面を揺らしつつ椅子に腰を降ろす。

そして俺も彼女に促されたので椅子に座り、七瀬・神代・真耶さんは互いの背後に立っている。

よってテーブルを挟んで紅蓮中将と向かい合う形で大事な交渉がスタートされた。


「では白銀少佐。単刀直入に申そう」

「はッ」

「今 国連軍が斯衛軍に提供できる情報を可能な限り頂きたい」

「!?」

「無論 此方から出来る限りの見返りも提供する手筈は出来ておる」

「\(^o^)/」


うん、それ無理♪ この時 俺は既に交渉を行う対象にしては、相手が悪過ぎると判断しちゃったんだ☆

そんな怖い……いや真剣な顔で迫られたら頭が働きませんってッ! 巌谷さんの時でさえギリギリだったのに。

でも"あの時"は最初から大体の事は ゆーこさんに指示されてたから旨くイッたに過ぎないんだよね。

ソレに思い出してみれば、俺は真耶さんが面会に来てくれた時 致命的な事を言ってしまってたんだよな。


≪あァ~、それなら暇な時とか有ったら横浜基地まで来て下さい≫

≪は?≫

≪事前に知らせてくれたら、幾らでも教えさせて貰いますから≫

≪――――ッ!?≫


……つまり、此処で俺が情報の提供を躊躇ったら嘘付きだって事になるんだよね!!

あの時の真耶さんは妙に食い付きが良かったし、今更ながら迂闊な事を言ってしまったモンだ。

紅蓮中将が何を考えてるかは分からないけど……"あの台詞"を彼女から既に聞いている可能性が高い。

そうなると彼の要望に応えないとイケないワケで、諦めムードに入った俺に対し紅蓮中将がダメ押しする。


「どうされた? 白銀少佐」

「……フッ」

「し、白銀少佐?」

「やっぱり……(実際に披露を?)」


――――そうです失敗だよ神代。俺は今から考えていた交渉 内容の全てを投げ出して、緊急 手段に入るのだッ!


「貴方の考えは分かりましたよ中将」

「ふむ……と言う事は?」

「今から斯衛の人達に2機連携でヴォールク・データを攻略する様を御覧に入れます」

「!?!?」×2


そう。交渉が旨く ゆかないと思った時は、考えを放棄し言葉より行動で示して相手の判断に任せるのさ。

例え斯衛軍にとっては革命的 戦果であるシミュレーターの内容を魅せても、大した見返りを貰えずともね。

だから紅蓮中将と真耶さんにはシテヤッタリって所なんだろうけど、大袈裟に驚いた素振りを見せちゃって!

多少はフレンドリーに成ってくれたんだから手加減して下さいよ……そんなに甘くないってのは分かるけど。

よって横浜基地に戻ったら ゆーこさんに怒られるがの確定と言う事でテンパってしまったのだろうか?

シミュレーター開始前だと言うのに、無意識のウチに俺は"自重"と言うリミッターを解除してしまっていた。


「おぃ"七瀬"ェ」

「は、はい?」

「俺と神代の"強化装備(特攻服)"は有るんだろうなァ?」

「えっと……指示された通り車のトランクの中に……」

「上等ォ~。なら直ぐ取りに"逝って"来いッ」

「わ、分かりました」

「……と言う事は……良いのだな? 白銀少佐」

「勿論。最高の"ショー"を御見せしますよォ?」≪ビキビキ≫

「そッ、そうか」


――――席を立ち背を向けていた俺に声掛けて来る紅蓮中将に顔ダケを向けて応えると、案の定 引かれました。


「おィ"神代"ォ!! シミュレータールームに"案内"しなァッ!」

「り、了解しました!」


≪ガチャ……バタンッ≫


「ふ~む、成る程な」

「紅蓮中将。い……今の白銀少佐の意図は?」

「恐らく儂の"気"を察したのだろう。此方は真髄に彼の見出した情報を求めて居ると」

「では中将の最初の一言で、彼はヴォールク・データの攻略を魅せる迄の価値が有ると瞬時に判断した?」

「うむ。間違い有るまい」

「それにしても……立ち去る前の気迫……」

「まさか儂とした事が寒気を感じるとはな。流石は多くの戦場を生き抜いた猛者よ」

「はい。普段の温厚さからは考えられないモノでした」

「ともかく此方側も万全な状態でシミュレーターに臨んで貰わねば成るまい。最終チェックを怠るなよ?」

「心得ております」

「ところでだが」

「何か?」

「残された資料の様な書物は どうする?」

「……後に お届けして置きましょうか?」

「好きに扱っても良いと言う事かもしれんが……いや、偽りを記す等 試されている可能性も考えられるな」

「では直ちに詰めてしまいましょう」

「うむ。それにしても面白い男が現れたモノよ、殿下が魅かれるのも頷ける」

「はい(……既に気付かれていたか)」




……




…………




……30分後。


「お待たせしました、白銀少佐!」

「オウヨ」


シミュレータールームの入り口にて道を聞きながら現れた七瀬(思えば迂闊だった)から強化装備を受け取ると、
神代と共に着替えに行き(勿論 別の場所で)、七瀬と待つ俺に2~3分遅れて彼女が駆けて来た。

相変わらず将来性を感じさせる健康的なオッパイだと感心してしまうのはマジで ど~でも良いとして。

生憎 XM3とS型に触れて間もない七瀬は着替えておらず、今回は戦域管制を行って貰う。

普通 任官したばかりで管制なんぞ出来ない筈なんだけど、七瀬も常識外のスペックらしく形位は出来るとの事。

そんな色々な意味で成長が楽しみな七瀬なんだけど……彼女は何故か俺の事を先程から無言で見上げていた。


「間も無くですね、白銀少佐」

「ま~、リラックスして遣ろうぜ? 神代」

「はい!」

「……ッ……」

「ところで。さっきから どうしたんだ? 七瀬」

「!? え、えっと……その……白銀少佐ッ」

「何さ?」


≪勿論 武さんの"決意"には……私達の言葉など意味を成さないのは分かってる……≫

≪……ッ……≫

≪だけど、このまま見てるダケなんて……うぅっ……私には耐えられないッ!≫

≪篁中尉……≫


「先程から大した事が出来ず……本当に面目ありません」

「おいおい何 言ってんだよ? 謝罪なんて要らないって」

「ですが――――(私は篁中尉の言われた事を全くッ)」

「それは大丈夫です、七瀬少尉」

「か、神代少尉ッ?」

「白銀少佐の負担に成るような動きは絶対に しません。だから安心して見ていて下さい」

「お~っ? 随分と言う様に なったじゃないか」

「す、すみません」

「其処で謝るなって。だったら先行は任せるから、頑張ってくれよな?」

「分かりましたッ」

「……(私を安心させる為に? 有難う。神代少尉)」

「……(白銀少佐が無理をしている事は知っている。それを止める事は出来ないけど、少しでも私達が……)」


何故か謝られてしまったが、謝罪するのは俺の方なんですけど? ヴォールク・データの披露に巻き込んでるし。

されど2人の謎の気遣いに少しダケ テンションが上がった俺は、シミュレータールームに足を踏み入れた。

すると俺と神代が入る筐体の周囲や晒しモニターには多くの斯衛の皆様が待っており、内心驚いてしまった。

相変わらず顔には出てないけど、食事の時と同じ様に神代と七瀬の方を見てみると……やはり案の定。

実際に操縦しない七瀬はまだマシだけど、神代は青までも混じっている事から少し顔が同じ色になっている。

ついさっき迄 自信 有り気な表情だったのに……俺は普通に我慢できる程度だけど、流石に緊張するのか?


『――――ザワッ』

「来た様だな? 白銀少佐」

「えっ? あッ、はい。それにしても凄い数ですねェ? 中将」

「うむ。殿下の お墨付きも有る貴官の腕を一目 見ようと多くの者が集まってくれた様だ」

「……(う、嘘だろ……崇司家に九條家、それに斑鳩……此処まで白銀少佐に影響力が有ったなんてッ)」

「あれっ? ちょいと失礼。お~い神代ッ」

「……(だとしたら、私のミス一つで突撃機動部隊は勿論、白銀少佐の評価がガタ落ちになるんじゃ……)」

「イキナリど~した? 大丈夫なのか?」←五摂家の事が良く分かってない

「!? え、えっと……その~、改めて考えると余り無い機会なので……」

「やっぱ緊張するのか?」

「……ッ……」≪コクリ≫


俺の言葉に頷いたまま俯く神代。良く見ると小刻みに震えており、実戦よりも今の状況がキツいってか~?

何か間違ってる気がするけど、上下関係が厳しいオルタ世界じゃヘタなBETAより斯衛の方が怖いのかもね。

でも俺は何とも思わないのは さて置き。交渉ダケでなく"この件"でも失敗したら死ねるので何とか励まさないと!

……とは言え。既に失敗街道を進んでいる事から、この人数を見ても今更 感が有り動じてないとも言える。

しかし無意識のウチに神代がピンチな事にハプニングを感じていた様で、抑えていた自重が解かれていた。


≪――――ビキッ≫


「だが神代ォ。安心しな……"攻略(クリア)"出来んのは確実だからヨォ?」(#^ω^)ピキピキ

「で、でも実際には何が起こるか……」

「それにな?」←明後日の方向を見ながら

「えッ?」








「"事故"るのは……"不運(ハードラック)"と"踊(ダンス)"っちまった時だけだからよ……」








        !        ?        !        ?








『――――ザワッ!!』

「ハードラックとダンス? ……えッ?」

「つ、つまり俺は悪運が強いって事だよ。こうして生き抜いて少佐になってんだから、この程度じゃ躓かないさ」

「……白銀少佐……」

「だから今回も絶対に巧くいくッ! だから安心して突っ込んで行け!!」

「!? わ……分かりました!!(そうだッ、今回は白銀少佐が後ろに居るんだしな!)」

「じゃあ、先に筐体に入って"待機し(スタンバッ)"てろよ!?」

「了解!」

「オゥ、七瀬ッ! "バール"……じゃなかった、データ入れて来い!!」

「は、はい! 直ちに実装させますッ」

「では中将。そろそろ始め様と思いますんで、宜しく御願いしますね?」

「うむ……期待させて貰うぞ?(運も実力のウチか……やはり只者では無い様だな)」


――――こうしてヴォールク・データに挑む事になったけど、意外な見返りを持ち帰る事が出来ました。








●戯言●
まさかの武×神代。次回"特攻の武"が始まりますが、所詮シミュレーターなのでサックリ終わると思います。
でも最近 間が空いてしまう事が多いので、次は早めに更新する事を意識しなければッ。あと風邪 長引き過ぎ!

  ∧_∧ パーン
 ( ・∀・)
   ⊂彡☆))Д´)

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=11439119
此方タニシ氏による23話の挿し絵です。大感謝!! 武×唯依なので是非 御覧下さい。何か違うかもだけど。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ52
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/07/27 04:27
これはひどいオルタネイティヴ52




2001年12月14日 午後




――――お前ら"グシャグシャ"にしてやんよォッ!!!!




――――あまり調子こいてっと"ひき肉"に しちまうよ?




――――"スピード"を"ナメ"るんじゃねーゾ……"神代"ォ!?




先程 肖ったネタを考えれば前述のテンションが必須だが、考えてみれば多くの斯衛の前でソレは有り得ない。

しかも真那&真耶さんより階級が高い人達が沢山居るとなると、出来るワケが無いさ。当たり前でしょ!?

筐体の中に入って静寂が訪れる事で冷静に戻った結果がコレ。悠陽も後で見るし此処は自重しないとね。


『よ、良し……"やる"っきゃないッ!』

「…………」


そんな事を考えつつ網膜投影された神代のバストアップを見ていると、俺とは逆に気合を入れている様子。

う~ん、彼女の方が余程 主人公してる気がするんですがねェ……ソレが何だか悔しく感じてしまった。

よって神代のテンションに影響されて多少の肖りは続けて行こうと、結局 自重は怠る事にしたのでした。

相変わらず表情ダケは変えずに そんな事を考えて居ると、仏頂面の俺を気にしたか神代が目を合わせて来る。


『し、白銀少佐?(……今のが喧しかったのかな……)』

「神代ォ」

『はい?』

「あまり先走ンじゃネーゾ? 無理に特攻(ブッコ)んでく様子を見せられちまうと……
 奴等にヤられた傷が疼くんだよゥ……ソレがシミュレーターのモンでもよ」(ギリッ)

『!?(そ、そう言えば香月副司令が、少佐はBETAに襲われたけど、奇跡的に逃げ延びたって……)』

『白銀少佐……(やっぱり彼は篁中尉でさえ量れない程の過去を持って居そうね)』

「だから七瀬ェ」

『えっ?』

「幾ら戦っても……死んだ"兄妹(ブロウ)"には"到達(とど)"かない……分かるな? もし"それ"が見えても、
"無理"に捕まえに逝こうとすんじゃねー~ぞ? ……例え次の実戦でBETAが怖く見えなくっても……だ」




        !        ?        !        ?




『わ、分かりましたッ』

『……(白銀少佐は既に過去を受容してるんだろうな……だから悪評が有った七瀬少尉が素直になるのも……)』

「ともかく本番じゃ無いが正念場だ。この結果で交渉の具合も変わるから頼んだぞ? 2人とも」

『はいッ。大した管制は出来ないと思いますけど』

『私は慎重に行くべきでしょうか? それとも急いだ方が……?』

「だったら前者で頼む。その方が色々と魅せれそうだしさ」

『分かりました』

『それでは――――』

「おゥ……回線開いてくれ……"仕掛け"んゾォ?」(ビキッ)

『り、了解!』

『……(コレは只 攻略するダケじゃ駄目なんだ……考えてみれば交渉の一環なんだしな)』


ちなみに今現在の会話は斯衛の皆様には聞こえていない。情報提供側 故にソレくらいの自由は此方にも有る。

でも公で肖っちまうワケにはイかないので"この場面"くらいではビキビキとした台詞を楽しんで置く事にする。

されど長くは続かず七瀬に指示を出すと、やや久しぶりだと思われるハイヴ内の画面が網膜投影された。

正面には神代の不知火S型が聳えており……俺の機体も今回は不知火S型。武御雷(白)とSⅡ型は御休みだ。

何故なら不知火でも"あの戦果"を出せると言う事を魅せ付け、今の概念が定着してしまっている斯衛の人達に、
"もしアレが武御雷やSⅡ型に変われば一体どれ程になるのか?"と言う興味を湧かせて欲しかったからだ。

その"興味"が膨れ上がる程に此方の情報による料金の支払いを高くしてくれそうだからなァ。≪キリッ≫

いやスミマセン嘘です……コレは真耶さんに豪語した事から、しなくて良かったのに遣る羽目になったダケで……

更に魅せれる武御雷(白)とSⅡ型を採用しなかったのも、俺のせめてもの抵抗だったとダケは言って置こう。

つまりハイヴの攻略を先に見せる事 自体 交渉は"負け"なんだけど、少ない情報で色々と魅せ様ってワケなのさ!

しかしながら。反応炉への到達ダケで良かれどバズーカを背負っている俺の矛盾を許してくれ、ゆ~こさん。


≪――――ズシンッ≫


『白銀少佐・神代少尉……準備は宜しいですか?』

「オッケー」

『何時でも良いです』

『それでは状況開始して下さい!!』


≪――――ゴォッ!!!!≫


「中央ルート、拠点を叩く!!」

『了解ッ。援護します』


――――ちなみにネタとも言える俺の発言に、今となっては普通に乗ってくれてる神代なのでした。




……




…………




……10分後。


『正面に要塞級5体を確認ッ! 他 小型・中型種が多数です!!』

「問題無い。左右に分かれて突破しよう」

『了解』


多くの斯衛の人達が見学していると言う事で若干 緊張しながらも、俺のS型は神代機を先頭にハイヴ内を駆ける。

その際 何かする度に周囲からは驚きとも言える歓声が聞こえるので、当然 悪い気はせず操縦を続けてゆく。

されど俺にとっては今のBETAの湧き具合は……都内の歩道を自転車で走行する程度の難易度でしかない。

更に今見たく要塞級が数体 出現しようと、車が正面から現れた程のレベルでしかなく端に寄って徐行するダケだ。

急ごうと思えば別に減速しなくても大丈夫なのはさて置き。そう考えてみれば俺の腕も成長したモンだな。

伊達に単機で最深部の反応炉まで辿り着いてないZE。当然 神代は俺と同じかと言えば違うかもしれないけど。

実際に行うのはゴメンだけど、シミュレーターで"出来る"と言う事実が有るダケで自慢話には成るだろう。

そんな事を考えながら要塞級の左を触手を余裕で避けつつ通り過ぎ着地すると、正面に一体の要撃級が!!


「!? 明日の"朝刊"に載ったゾ!? オメーッ!」


≪――――ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


「ふ~む月詠。あれがマルチ・ランチャーと呼ばれるサブ射撃か?」

「はい……こうも瞬時に要撃級 一体を無力化させてしまうとはッ」


『(さ、流石 白銀少佐は色々と魅せてるな……私は攻略で精一杯なのに!)』

『(今 言ってた事は良く分からなかったけど、やっぱり白銀少佐は私達とは次元が違い過ぎるわ……
 トライアルでリプレイを見た時は必死に操縦してるんだと思ってたけど……こうも余裕が有るなんて)』


迂闊にも考え事をしていた時 要撃級のグロい顔みたいなのが見えたから、ついマルチを撃っちゃったんだ☆

別に撃破しなくても良いのに勿体無い事をしてしまった。実際に使ってしまったらコストの無駄だったZE。

しかも自重せずに肖ってしまったし……幾ら余裕とは言え集中しないとダメですな。ゆ~こさんに怒られる!!

よって俺は神代機と合流すると、引き続き彼女のペースに合わせてシミュレーターの攻略を継続するのだった。




……




…………




……ハイヴ内・下層。


「もうそろそろ反応炉か?」

『そうだと思いますッ!』

「ようやくゴールって訳か。少し時間が掛かっちゃったかな?」

『す、すみません白銀少佐。私のペースが遅い所為で……』

「問題無いよ。推進剤も弾倉も往来より多少 減ってる程度だしね」

『!? で、ですが旅団規模のBETAが正面を塞いでおり此方に進行中です!!』

「ふぅ~む」


「な、何と……アレでペースが遅いだとッ? むぅ……神代め、何時の間に其処まで……」

「白銀少佐も反応炉 手前まで辿り着ける時点で驚異的な戦果だと言うのに、未だに余裕すら感じます」

「うむ。どうやら儂らは歴史的 瞬間を目にしているのかも知れんなッ」

「だとすれば、横浜基地には更なる概念と技術が……非常に興味深いです」


そろそろ時間の感覚が麻痺して来た時。勘とBETAの数ダケで反応炉が近い事を何となく察した俺と神代。

どうやらソレは正解だった様で、まるで波の様に此方に押し寄せてくるBETA達。マジでキモいんですけど?

本来なら此処まで集まってしまう前に突破してしまうんだけど、神代のペースが思いの他 遅かったのだ。

御陰で また何度か自重せず肖った上に無駄にトリッキーな動きで弾を消費してしまったが……それは自己責任。

恐らく神代は"慎重に行くべき"と言う俺の指示を全うしたに過ぎないんだろう。よって彼女に非は無いのだ。

一方。斯衛の皆様から見ると俺達の突破は絶望的だと捕らえたらしく、固唾を呑んで見守って下さっている。

また"もう十分進んでいる"と言う声も聞こえるが、俺は まだフォールディング・バズーカを一発も撃ってない。

目立つ武器なんだけど俺と神代の機動ばかりに目が行ったのか、最大の火力兵器への注目が疎かになってますよ?

それ故に此処はバズーカを使って切り抜けるしか無いんだが、若干 不安そうな表情をしていた七瀬が口を開く。


『BETAは まだ増えて師団規模!? 此処は幾らなんでも引いた方が……!!』

『でも今更そんな事は出来ません』

『そ、それなら どうすればッ?』


≪――――ガキンッ≫


「いや……"カンタン"だぜ?」

『白銀少佐。あの辺りの座標を狙うのが良いかと』

「分かった。じゃあ適当に誘導しててくれ」

『はい!』


精々地上のバズーカでは小型種を含めて敵を100~200体 倒せれば上出来だ。一方ハイヴ内ではどうなるか?

今見たく密着しつつも器用に距離を詰めて来る相手であれば、一気に倒せる数は500体を軽く越えるだろう。

されど中型種が500体であれど無視するのは楽なので、此処は進行の大きな妨げとなる要塞級に標準を向ける。

コイツを一匹倒すダケで瞬時に埋まらぬ大きな穴が空くので、其処を一気に抜けて反応炉に辿り着けば良いのだ。

要塞級は足がトンガっており仲間を巻き込む可能性を考えるのか、周囲は中型種の密度が低いのもポイントだな。

そんなワケで既に神代が迫り来るBETAの波に臆する事無く向かってゆき、やや左の方に敵を集めている最中。

俺は彼女に言われた通り、戦術機を浮遊させつつ右の方にバズーカを向けると標準を適当な要塞級に合わせる。


≪キュピピピピピッ……≫


「では対ショックッ!」

『了解!!』


そして発射となるワケだが……急に俺は まだ記憶に新しい例の"球技のラスト"を思い出してしまった。

折角 肖ろうと思ったのに左程 成りきれなかった事による怒りだろうか? いや魔が差したダケだろうね。

だって誰もが"よくやった"と言うモンだから言い辛かったんだもん。だからオルタ世界で叫ばせて貰おう。




「駒●この野郎おおおオぉぉぉぉーーーーッ!!!!」

『!?!?』




≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫




結果 何となく叫んだ事は微塵にも意味は無かったのは さて置き。

神代の誘導により予め向かって右側のBETAの数が減少しており、更に其処にバズーカを撃ち込んだ事で、
戦術機が通る"穴"が開き……俺は真っ先に其処に向かい落ちて来る中型種を低空噴射で避けながら"突破"する。

一方 俺に気を取られているBETA達を良い事に神代機も跳躍噴射で"穴"を通ってアッサリと抜けてしまった。

こうなれば奴等が追いつく筈も無く、俺はダメ押しにと2発目のバズーカを振り返って撃つと更に奥を目指す。


『し、信じられないッ! 師団規模のBETA完全に振り切りました!!』

「やれやれ。でもコレで終わった様なモンだな」

『でも白銀少佐……今 叫ばれたのは……?』

「今は"どうでも良い"だろ神代ォ? とにかく"奥"に行くべ?」(ビキッ)

『は、はい』


――――コレから反応炉を破壊する迄5分も掛からなかったが、今のは只の誤魔化しなのは言うまでも無い。




……




…………




……5分後。


『アルカディア01、反応炉の破壊を確認ッ。状況終了します!』

「有難う。次も宜しくな?」

『こ、此方こそッ(良かった……私の動きは白銀少佐の許容範囲だったみたいだ)』


ヴォールク・データを終えると、そんな絆っぽい一言ダケを漏らした俺は、筐体を出て先ずは神代と合流した。

何はともあれシミュレーターは成功。ラストは集中し過ぎて斯衛の皆様の声を聞く余裕は無かったけど……

今は沸くに沸いている状態だろうッ。何て言ったって彼等が決して成し得なかった事を遣ってしまったんだしな!

よって交渉の事なんぞ忘れ、余裕を持って七瀬 及び紅蓮中将&真耶さんの方へと戻った俺達だったのだが。


「うおッ」

「えっ?」


≪……シ~~ン……≫


「…………」←中将

「…………」←中尉

『…………』←斯衛の皆様


く、空気が重いだとッ? てっきり以前の涼宮(妹)達の様にテンションが上がってると思ったのに!(21話 参照)

紅蓮中将は勿論 真耶さん迄 難しい顔をしてるし……ひょっとして結果よりも俺の"態度"の方が悪かったのか?

そりゃ~自重を怠った自覚は有るけど、誇り高き斯衛の皆様の前で不良に肖ったのはマズかったのかな~?

だとしたら此処は戦略的撤退をするしか無いぜッ! 嗚呼 畜生、どうして俺は こうも要領が悪いんだろう……


「紅蓮中将」(キリッ)

「……!?」

「以上が我々が"現段階"で出せる情報の全てです」

「う、うむ」

「それでは神代・七瀬……行くぞ?」

「はいッ!(私は本当に運の良い斯衛の人間だ……白銀少佐と出会えて良かった……)」

「!? ま、待って下さい白銀少佐~!」


よって俺は心の中で号泣しながらクールを装って立ち去る事にし、浅く礼をするとスタスタと歩き出した。

ソレに神代と七瀬も続いてくれ、途中で2人の足音が止まったので退室 間際に振り返り頭でも下げたのだろう。

ともかく。紅蓮中将を始め斯衛の皆様には怒りを静めて貰い、後は運命に身を任せるしか無いみたいですね。


「行ったのか? 月詠」

「はい。立ち去られた様です」

「そうか……クッ……」

「!?(紅蓮中将が涙を?)」

「儂は かつて此処まで人類の"希望"を見出せた事は無い……まさか"これ程"のモノだったとはな」

「……見学に来た者達も同じ様に捉えている様ですね」


「し、信じられない……まさか2機の戦術機がハイヴを落とせるなんてッ」

「これなら勝てるッ! 必ずBETAに勝てるぞ!?」

「早速 我々もヴォールク・データを行うぞッ! あの国連軍の衛士に負けてられん!!」

「お、お前 泣いてるのか? ……えっ……俺も何故 無意識のウチに……」




『――――ウオオオオォォォォッ!!!!』(ガタン)




「やれやれ……部外者には見せられん光景だのう」

「どうやら白銀少佐は気を遣ってくれた様ですね」

「うむ……"白銀 武"か……計り知れぬ男よ」

「ですが信頼できる方だと思います」

「言うまでも有るまい。ともかく我々も"それなり"の見返りを用意せんとな」

「畏まりました(……傍で白銀少佐の"武"を学べる真那が少し羨ましいかもしれん)」




……




…………




……30分後。


「待たせてしまって済まぬな」

「申し訳有りません。白銀少佐」

「いやいや全然 構わないスよ」

「では早速だが……月詠?」

「はい」


強化装備から軍服への着替えを済ませ、七瀬と一緒に神代を待ってから先程 交渉を行った部屋に戻る。

そして何時の間にかダンボールに詰められていた資料を気にしつつ、3人で反省会をして時間を潰して居ると。

予想通り紅蓮中将&真耶さんのコンビが現れ、中尉の方は何らかの書類を数枚 持ってでの登場だった。

そんな2人の謝罪を軽く受け流すと、真っ先に真耶さんはテーブルの上に一枚の用紙を此方に向けて置いた。


「コレは……発注書ですか?」

「うむ。武御雷(黒)のな」

「えっ?(……って事は……)」

「……ッ……(ま、まさか!?)」

「白銀少佐。ソレに希望される"数"を お書き下さい」

「ぅえ!? い、良いんですか~ッ? 黒とは言え"あの"武御雷でしょう!?」

「構わんよ。貴官が魅せてくれたモノは"それ程"の価値が有ったのだ」

「よって……此方には万全な状態と言える武御雷(黒)を、直ちに無償で用意する手筈が既に整っています。
 生憎 修理を含めた全ての維持費を負担する事は出来ませんが、白銀少佐で有れば旨く使って頂けるでしょう。
 されど武御雷(黒)を有効活用し、その戦果のデータの提供 次第では修理費用 等も提供させて頂く所存です」

「は、はあ」

「では遠慮は要らぬぞ? 書いてくれ」

「だったら9機で良――――ッて」


思わずノリで謙虚なナイトを肖ってしまうトコロだった。無償で武御雷(黒)を提供してくれるってどんだけ~?

しかし俺の自重の無さをピンポイントで水に流してくれるって紅蓮中将は見かけによらず心の広い方だったのね。

でも9機も頼んだら維持費が高そうなので此処は慎重に考えなくてはならない。場合によっては罠になりそうだ。

……う~ん……とは言え俺達にはSⅡ型やS型が有るし……S型に改造してもコストが高そうだし……難しい。


「(そう言えば奴めの"突撃機動部隊"は9名と聞いておったな)」

「(私達の予想は9体だった。しかし白銀少佐は"何か"を考えている?)」

「(……わ……私に武御雷なんて乗りこなせるのかしらッ?)」

「(この見返り……斯衛は白銀少佐を完全に認めちゃったみたいだな……流石過ぎるよ)」

「き、決まりました(……嗚呼……次は発注だ……)」


――――よって真剣に発注する武御雷(黒)の数を考える中、俺の頭の中に浮かんだのは冥夜達5名の姿だった。




……




…………




……数時間後。


『そうですか……殿下とは会食を……』

「ソレがまた凄かったんですよ~? イリーナ中尉」

『ど、どれ程のモノだったのですか?』

「うろ覚えなんスけど、オーストラリアから取り寄せた素材も有ったみたいで――――」


アレから殿下と(何故か)七瀬&神代の強い勧めも有り、予想外にも俺達は殿下城に一泊する事に成ってしまった。

その為 俺は個室・七瀬と神代は相室を与えられており……今は室内の電話を使って横浜基地に連絡を入れている。

其処で俺が掛けた番号は ゆ~こさんへの直通だった筈なんだが、偶然 居たらしいイリーナちゃんが出てくれた。

……しかし直ぐ ゆ~こさんに代わって貰っちまうのも芸の無い話なので、時間を忘れて雑談を行う事 十数分。


『ヴォールク・データのタイムは……白銀少佐の過去の平均時間と比べると何時もより遅かった様ですね』

「かなり慎重に攻略しましたからね~。でも色々と魅せる事が出来ましたよ」

『な、成る程。では披露した中で特に反響が高かったと思われる技術は……』

『ちょっとピアティフ。何時まで話してるのよッ!』(ボリューム小さめ)

『――――あッ』


此処で辛抱ならずイリーナちゃんから受話器を引っ手繰ったと思われる ゆ~こさんの声が聞こえて来た。

実は何時 割り込んでくるのかとワクワクしてました。その際イリーナちゃんは悲しそうな息を漏らしている。

さて置き。案外 交渉が結果オーライで調子に乗っていた俺は、何時ものノリで彼女に受け応える事にした。


『もしもし、白銀?』

「ドナルドです☆」

『はァ?』

「いえ流してください」

『それよりも本題よ。"結果"は どうだったの?』

「上出来かは分かりませんけど、武御雷(黒)を5体 貰えました」

『!? へぇ……やるじゃない』

「アイン乙」

『何ですって?』

「い、いや何でも無いです。それでコッチが出したデータが――――」

『ピアティフとの話で聞こえてたわよ。不知火S型の2機連携によるヴォールク・データで良かった?』

「ソレで正解です。マズかったですかね?」

『特に問題無いわよ? 結果を見れど肝心なXM3が無い限り実現は無理だから』

「なら安心しました」

『でも、何で"5体"なの? 巧く使って損傷させなければ維持費も嵩まないと思うけど?』

「えっと……榊達の機体のコストの削減になるかと思いまして何となく決めました」

『……ッ……成る程ね。近いウチに急かしてS型を組ませる予定だったけど、思ったより気が利くじゃない』

「それほどでもない」(謙虚)

『じゃあ、そのまま榊達を武御雷(黒)に乗せるって事で良いのね?』

「はい。でもアイツらは吹雪F型の仕様に乗り慣れてるんで、出来ればF型に改造して貰えればな~って」

『別に悪くは無い提案ね。なら段取り位は組んで置くから ゆっくりしときなさい』

「かたじけのぅゴザル」

『はいはい。それじゃ~あたしは忙しいから切るわよ?』

「大丈夫ッス」

『……うぅッ』(ボリューム小さめ)

『何よピアティフ~。話なんて白銀が戻って来てからすれば――――』


≪――――ガチャンッ≫


ちょっとだけハラハラしちまったけど、ゆ~こさんも思った以上に満足してくれたみたいで良かったZE。

妙に電話越しのイリーナちゃんが可愛く感じてしまったのは さて置き。明日も悠陽と顔を合わせるのかな?

唯依達 突撃機動部隊の事や"純夏"がどうなっているのかを考えると早く横浜基地に戻りたい気もするけど、
まだ時間に余裕は有るし、次に何時 会うか分からない悠陽達とのイベントをジックリと消化して置かないとね。

ともかく。唐突に武御雷(黒)が支給される事で驚く冥夜達の表情を思い浮かべつつ、俺は受話器から手を離した。


「白銀少佐は……大変 大きな収穫を得られた様ですね」

「えぇ。コレで整備の連中も更に忙しく成りそうだわ」

「しかし武御雷(黒)をA-01に組み込むのは多少 違和感が有りませんか?」

「確かに一理 有るわね。その辺も踏まえて、また白銀と相談しなくちゃ」

「……(何時の間にか白銀さんは香月副司令の信頼をも得てしまったのね)」

「まァ事は順調に進んで居ると言って良いわ。後は00ユニットの調節 次第」

「ソレも白銀少佐の働きが関わるのですね?」

「癪だけど、そうなるわね。もしかしたら殺され兼ねないけど」


――――また今回の"交渉"での結果は、A-01でも突撃機動部隊でも無い新たな小隊の誕生を意味したらしい。




……




…………




……そして待ちに待った殿下 城内での就寝タイム。

俺にとっては久し振りとも言える、霞を始め誰の介入も無い安らぎの時間である。

其処で脳内に思い描くのは当然 悠陽の事。特に友達となった瞬間の表情は最高でした。


「悠陽タン……ハァハァ……まだまだイケるッ!」

「(嗚呼……武様・武様・武様……)」


\チャーハン!/ \チャーハン!/ \チャーハン!/ \チャーハン!/


「キャノン砲ォ♂ーーッ!!」(自慰弾 発射)

「(で、でも駄目です……武様が わたくしで"そんな事"をする筈が無いのですからッ!)」


――――だから甲斐甲斐しく奉仕してくれる悠陽をオカズに、つい抜いちゃったんだ☆


「(今日で また白銀少佐について分からない事が増えてしまった……でも、尊敬できる人なのは変わらないわッ)」

「(も、もし白銀少佐が良いって言ってくれたら父さんと母さんに紹介して置こうかなァ? 念の為に、一応……)」








●戯言●
お待たせして面目ありません。どうも理不尽な暑さに筆が進まず、こうも間が空いてしまいました@w@
この後 横浜基地に戻れば、ようやく全く出番の無かったヒロインを出す事が出来そうです。やったね!!
ちなみに拙作のメイン部隊はA-01・突撃機動部隊・冥夜達5名の新たな小隊と分かれさせる事にしました。
此処でA-01に新たな5名が加入してしまうと17機 編成と非常に中途半端になってしまうからです。

自重せずに作ってしまった東方戦場絆
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11440628
宜しければノリの良いコメントとか御願いします。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ53
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2010/10/06 05:34
――――佐渡島ハイヴの最下層(反応炉)にて。


「クッ……これまでか……」


今回の攻略に置いて想定以上のBETAの数が居た事で、ラストは部下達の制止を振り切って単機で突入。

結果フォールディング・バズーカで反応炉を破壊できた事 迄は良かったが、SⅡ型をトラブらせてしまった。

な~に、実際 爆風によって飛んで来た"何か"が当たったダケなんだけど、戦術機にとっては致命傷となる。

今迄 散々爆風には気をつける様に訓練して来たつもりだったんだが……実戦で活かせないとは情け無い。


『そ、そんな……武さんッ! 嫌……嫌ああぁぁ!!!!』

『お義兄様ああああぁぁぁぁ!!!!』

『2人とも、もう無理よ!! 今は脱出する事に集中してッ!』

『ボクだって嫌だよ……でも此処で無駄死にするのは もっとダメだと思うから……』


癪だがBETAの死体に背を預けている不知火SⅡ型から、殆ど死に掛けている通信に耳を傾けると……

唯依&七瀬の悲痛な叫びとソレを宥めつつも撤退しているっぽい まりもちゃん&伊隅(妹)の声が聴こえる。

何だか危なっかしいが彼女達は勿論、イルマと米軍の3人娘も健在っぽいな……体を張って良かったZE。


「……やっぱり、今回もダメだったよ……」


されど俺の命は間も無く尽きる運命……今まさに迫り来ている、戦車級の餌食になってしまうのだろう。

恐らく地上のBETAは反応炉の破壊により周囲のハイヴに撤退を始めていそうだが、地下は別なのだ。

俺を追い掛けて来ると言うのはハイヴを破壊しても変わらず、移動が出来なくなった自機に逃れる術は無い。

嗚呼……こんな羽目になるなら調子に乗って【オトリになる】【ここは任せろ】とか言うんじゃなかった。

白銀(俺)が死ねば部下を生かしてもループするんだろうから、色々と積み上げて来たって言うのに台無しだ。

それに白銀はともかく"俺"の意識が引き継がれる保証も無いから、きっと俺は死んでしまうんだろうな。

目が覚めれば"俺の世界"に戻ってくれていれば夢で済まされるんだが……楽しめたにせよ残念 極まりない。


「次はコレを見てるヤツにも、付き合って貰うよ」


そんなワケで俺は死を目前にしている為か思考回路がオカしくなった様で、自然と意味不明な事を呟いていた。

されど意味は無く聴こえて来るのは戦術機の装甲を食い破ってくる音ダケ……間違いなく戦車級だろうね。

ならば取り除いていた自爆ボタンを押して、痛みも無く死にたかったな~とか思った瞬間、俺の意識が飛ぶ!!




――――神は言っている。




――――此処で死ぬ定めでは無いと。




「ここでタイトルです」








これはひどいオルタネイティヴ53








2001年12月15日 午前


「……と言う夢を見たんだ」


此処で一泊する事で借りた殿下城の個室で目を覚ました俺は、何やら縁起の悪い夢を見ていた様だ。

それに関して七瀬の俺に対する呼び方が変わってたり、純夏が絡んでなかったりツッコミ所が多いのはさて置き。

佐渡島の攻略が ようやく人類初の反撃って事になるってのに……正直 洒落にならんでしょコレは……

だけど肖るネタによっては どう遣っても生きて帰れないのが分かったダケ、俺にとってはプラスと考えよう。


≪コンコンッ≫


「白銀少佐、いらっしゃいますか?」

「お迎えに上がりました」

「んっ? 七瀬と神代か……悪い今 開ける」


≪――――ガチャッ≫


「お、お早う御座いますッ」

「お早う御座います。白銀少佐」

「あァ……2人とも おはよう」


色々と思うトコロ有るのだが、何時もの軍服に着替えて顔を洗った直後 七瀬と神代が迎えに来てくれた。

よって扉を開けるんだが……その直前に時計を見てみると、どうやら若干 起きるのが遅かった様である。

コレも"あんな夢"を見たり、寝る直前に"あんな事"をしてしまった為だ。よって俺の表情は少し硬かった。

後者を詳しく述べると俺は昨夜 抜いた時、ティッシュの携帯を怠り自慰弾を布団に誤射してしまったのだ!!


「(今日の白銀少佐……す、少し表情に違和感が有るわね……)」

「("あの時"は豪語しちゃったけど、やっぱり昨日の操縦は白銀少佐に負担を掛けてたのかなぁ?)」

「すまないな。少し寝坊をしてしまったみたいだ(5~6分 程度だけど)」

「い、いえ! 気になされる程では有りませんッ」

「まだ朝食の時間には余裕が有りますから……」

「だったら良かった」


誤射した直後の俺の動揺っぷりは半端じゃ無く、先ずは慌ててティッシュで自慰弾の全面回収に努める。

だが跡は残ってしまったので水道で綺麗にした上に幸い付属して有ったドライヤーで乾かす作業を行った。

その数時間に及ぶ的確な処置により痕跡を残さない事に成功したが、ゴッソリと睡眠時間が削られてしまう。

コレも(妄想の中での)悠陽が魅力的だったのが全ての原因なんだ! ……と責任転嫁するのは さて置き。

それに加えて"あんな夢"を見てしまったので、仏頂面していると言う自覚が十分 今の俺には有ったのである。


「(やっぱり間違い無い、篁中尉の言われていた様に……命を削って迄 白銀少佐は……)」

「(こんな様子だと……とてもじゃないけど"紹介"させて貰うのは無理そうだよ)」

「ともかく行くとしよう。そう言えば朝食も殿下達と摂るみたいだしな」


その為 俺は表情が硬いまま今の台詞を呟くと、七瀬と神代の横を素通りして言われてた場所を目指そうとする。

寝坊したとは言え まだ多少時間は有るんだけど、真耶さんの事なら既に俺達を待っているに違い無いのである。

しかしながら。七瀬にとって俺の態度は無視できないモノだった様で、背中越しに彼女の声が聴こえて来た。


「し、白銀少佐!!」

「(……七瀬少尉?)」

「むっ? どうしたんだ? 七瀬」←背を向けたまま

「あのッ! 何処か調子が優れない様な事は無いでしょうか!?」

「俺の調子が?」

「えっと、はい……少々顔色が優れない模様でしたので……」

「それに白銀少佐ッ。私も七瀬少尉を同じ事を思いました!」

「えぇッ? 神代もなのか?」

「は、はい。余計な事だったら、すみません」


ふむふむ……どうやら七瀬と神代は、俺の仏頂面を意外にも"体調不良の為"と捉えてしまった様である。

ただ単に自分の"馬鹿さ加減"に呆れていた上に、追撃のネガティブ思考によるモノに過ぎないのだが……

今の態度は2人(特に七瀬)に気を遣わせてしまったダケだったらしい。よって心配無い事を伝えるべく口を開く。




「大丈夫だ、問題無い」

「!?!?」




――――振り返った俺は無駄に爽やかな笑みを作って そう告げた事で、七瀬と神代は一瞬ポカンとしたのだが。


「しッ……しかし白銀少佐! 我慢されてはカラダに障ります!」

「別に我慢してる訳じゃ無いんだけどなァ」

「そのッ、あの……私は幾つか滋養強壮の薬を持っていますので……宜しければ……」

「…………」


俺が痩せ我慢をしてると思ったのか、七瀬は納得せず動揺しながら此方を気遣って下さる。仕草が可愛いZE。

されど体調不良を訴えたとしても今はカラダを休ませれる状況では無いので、弱音は吐く訳にはいかない。

対して七瀬も七瀬で上官を気遣う事を止めず、軍服から幾つかの錠剤のセットを取り出し此方にアピールする。

ふ~む……コレすら突っぱねたら逆に不快感を与えてしまいそうだ。其処で俺は再び2人に背を向ける事にした。


「白銀少佐!!」×2


――――すると七瀬ダケでなく神代も俺の名を(何故か強く)叫んだので、彼女達の期待に応えて返事をする。




「……七瀬」

「えっ?」

「一番良いのを頼む」

「!?!?」×2




実を言うと七瀬の提案は願っても無かったりする。"此方の世界"の薬は何気に非常に効果が高いからだ。

されどオルタ世界の薬の効果など分からないし調べる余裕すら無いので、全く手を出す事が出来なかった。

体調不良を訴えて医務室で薬を貰うにしても、唯依達を心配させてしまいそうでソレだと上官失格だしね。

でも前から疲れは溜まっていたので此処で七瀬に薬を分けて貰えれば、今後を楽に乗り切る事が出来るだろう。

よって七瀬の提案を飲む事にしたんだが、彼女は俺の言葉に驚いたと思うと表情がパア~ッと明るくなる。


「で、でしたら白銀少佐ッ! お好きな薬を選ばれて下さい!!」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、余り詳しくないんだ。良ければ効果を教えてくれないかい?」

「も……勿論です!!(良かったッ、私の言葉に耳を傾けてくれるなんて……コレは大きな収穫だわ!!)」

「それでは私は先に待ち合わせの場所に向っています(……此処は七瀬少尉に任せて置こう)」

「あァ悪いね神代。説明して貰えたら直ぐ行くよ」

「そ、それでは白銀少佐ッ。先ずこの薬の効果はですね?」




……




…………




……10分後。


「すまないね。こんなに貰っちゃって」

「構いません……私は以前から処方されているので、数は余っていますから」

「そうか。なら良いんだけど……七瀬は以前から こんなに薬を飲んで居たのか?」

「はい、当時は体が弱かったので。ですが衛士に成ってからは力も付いたのか、飲む量は減っています」

「成る程。薬が余ってるのは其れが理由でも有るんだ」

「そうですね」

「ともかく神代を追おう。今頃 真耶さ……月詠中尉と待ってると思うしさ」

「わ、分かりました」


アレから七瀬に彼女が持っていた薬についての説明を受け、俺は十数個の錠剤を分けて貰えるに至った。

その際メモを取っていたら七瀬は目を丸くしており、恐らく上官の記憶力の無さに呆れていたのだろう。

されど今の俺にとっては意外なアイテムを得れたと言う喜びが遥かに勝っており、つい自重を怠ってしまう。

よって背を向けて歩き出そうとする仕草を見せながら、俺は何時の間にか"裏声"で馬鹿な事を呟いていた。


「アニノカタキヲトルノデス」(小声)

「……ッ!?」


≪――――びくんっ!≫


「???? どうしたんだ? 七瀬」

「い、いえッ(今の声は……何なの!? 白銀少佐が言ったなんて事は有り得ないから、私の幻聴ッ?)」

「…………」

「(白銀少佐と出会ってから"お兄様"の事は吹っ切った筈なのに……やっぱり何処かで仇に固執している!?)」


対して今の台詞に七瀬がオーバーなリアクションをした事は背中越しにも伝わって来たので視線を移す。

すると自分を両腕で抱きかかえる様にして周囲を見回している七瀬が居た。どう考えても俺の所為なんだ☆

彼女は本気で動揺してると思うんだけど、傍から見ると唐突に"邪気眼"が発生した様に見えなくも無い。

う~ん。やっぱり俺が自重を怠るとロクな事に成らないな……故に心の中で反省しつつ七瀬を宥める事にする。


「七瀬(……話をしよう)」

「!?!?」

「どうしたんだ? いきなり険しい顔になってるけど、大丈夫か?」

「えっ? そのッ……ふと兄の事を思い出してしまいまして……(この人に誤魔化しは効かないと思うから)」

「そうか、まァいい」

「す、すみませんッ」

「だが俺達と出会う迄は、七瀬にとって兄の死は"昨日"の事だった だろうけど……」

「……お兄様……」

「――――今の君に取っては"明日"の出来事だ」

「!?!?」


≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫


此処は本当なら肩に手を当てるか抱き締める等して安心して貰うトコロなのだが、俺は特に手は出さなかった。

台詞に置いては自分でも意味不明な事を言った自覚が有り、見た目は格好良く装っているが告げてから後悔する。

要するに"言ってみたかったダケ"であり、そろそろ七瀬は本気で切れても良いんじゃ無いかな~と思ったが……


「(つい言っちゃったんだ☆)」

「(やっぱり私は……"幻聴"が聴こえる程まで お兄様の死を諦め切れていなかったのね……だけどッ……
 今は"明日の出来事"と言う事は、諦めなくても良いから昨日より明日を見る事で希望を見出せと言う事?)」

「七瀬?」

「(……真意は分からないけど……流石は白銀少佐、言葉に"深さ"を感じるわ)」

「お~い」

「!? あッ、申し訳有りません。今度は此方を気遣わせてしまって……」

「大丈夫だ、問題無い」(2回目)

「有難う御座います。何となくですが……私の方も気分が晴れた気がします」

「大した事を言ったつもりは無かったけど、それなら良かったよ」(ニコッ)

「……ぅッ……で、では いい加減 神代少尉を追いましょう」

「了解~」

「(やっぱり"お兄様"とは似てる様で違う……だって、こんなにも私の事を"安心"させてくれるのだもの)」


こうして真耶さん&神代と合流した俺達は、再び悠陽&紅蓮中将と会いコレまた豪勢な食事を堪能した。

流石に悠陽の顔を見た時は罪悪感が再発した為 表情が強張ったが、真面目な場面なので好都合だろう。

そして朝食を終えると、午前の時間を使って昨日のシミュレーターでの詳しい情報を更に斯衛に提供したり、
逆に武御雷(黒)についての資料を渡され頭を使う等して過ごし、何時の間にやら横浜基地に引き返していた。

本当なら、もう一度 悠陽と2人っ切りになって"友達"としての会話を楽しみたかったが……仕方ないね。


「(次は佐渡島ハイヴを攻略した後にでも、付き合って貰うよ)」

「(武様……もう一度"お話"したかったですが、あの表情を見ると気が引けてしまいました)」




……




…………




2001年12月15日 午後


――――横浜基地 内部の十字路にて。


「それじゃあ七瀬、神代。今回は有難う」

「と、とんでも有りませんッ!」

「此方こそ色々と学ばせて頂きました!」

「HAHAHA。なら俺は副司令の所に行くから、そっちの報告の方も頼んだよ?」

「はいッ! それに篁中尉達への報告後は、直ぐ様 私も訓練に参加しようと思います!!」

「やる気が有って結構 結構」

「あの、白銀少佐。私は"どの辺り"まで喋っても良いのでしょうか?」

「神代も……あの席に同伴してた時点でアソコで有った事は言って良いと思うぞ?」←投げ槍

「り、了解しました(……でも慎重に言葉は選ばないと)」


昨日と同様 神代の運転で横浜基地に戻って来た俺達は、伍長ズに出迎えられると内部に入って通路を歩く。

そして俺・七瀬・神代は互いに帰還後の目的が違う為……途中で別れる事となり自然と敬礼をし合った。

それぞれの報告する人物は聞いての通りであり、先に唯依達と会うのも良いが ゆ~こさんの方が優先される。

ソレに一つ"聞きたい事"も有るしな……よって俺は2人に背を向けると、真っ先に執務室を目指すのだった。


≪ガシューーーーッ≫


「白銀少佐、只今 戻りました~」

「お帰りなさい」

「今話 大丈夫ですか?」

「大丈夫よ? 問題無いわ」

「――――副司令は言っている」

「はぁ?」

「い、いえ……何でも無いです。じゃあ早速コレを見てください」

「武御雷(黒)のモノ?」

「そうなりますね」


静かな空間で足音を響かせつつ歩み、執務室に入ると何時もの様に ゆ~こさんがパソコンと向かい合っていた。

そんな ゆ~こさんは直ぐ作業を中断し此方に注意を向けてくれた為、俺は彼女に近付き持っていた書類を渡す。

対して書類を受け取った彼女はソレを広げて目を通す事 2~3分……俺は もう少し待つと思ったのだが……


「へぇ……武御雷(黒)5機をくれるとは聞いたけど、専属の整備班 付きな上に損傷による負担も請け負う。
 それに改造や迷彩も好きにしても構わないなんて……アンタは余程 斯衛に良い印象を与えれたみたいね」

「特にヴォールク・データをクリアした時は皆 感動してたみたいスから」

「一流の衛士にとってはソレが"普通"だと思うけどね。ウチの衛士達も見習うべきよ」

「ま、まァ"演習の件"での対応はソレなりに柔軟でしたから、進歩してると思いますけど?」

「今はアンタに免じて"そう言う事"にして置くわ」

「有難う御座います」


――――やはり書類に対する理解の速度が半端じゃ無い、俺は車の中で ずっと唸りながら目を通してたのに。


「それで……この武御雷(黒)5機は榊達に与えるって事で構わないのね?」

「はい。ソレで御願いします」

「でも そうなると問題が生じるわ。分かってると思うけど、予定通りA-01に組み込むのは得策とは言えない」

「ですよね~。斯衛側は"XM3搭載機の武御雷(黒)5機のみ"が叩き出した戦果とデータが欲しいんでしょうし」

「そう言う事。ソレに対してアンタは どう考えてるの?」

「全く別の部隊として構成するしか無いですね……今のA-01は丁度良い隊員数だったりしますし無難かと」

「だったら部隊名を考えて置きなさい、最後に聞くから」

「最後に? ……ってか、何で俺が決めないとダメなんですか?」

「だって面倒臭いもの」

「へぇあ」

「それに他にも迷彩やら改造やら決めて貰いたい事が有るんだから、ちゃっちゃと行くわよ?」

「だ、だから何で俺が!?」

「あたしは今 結果を知った ばかりなんだから無理だし、アンタが責任を持って決めるのが普通でしょ?」

「うぐッ……で、でも72通りの考えが有るから……どう纏めれば良いのか……」

「(やっぱり考えてたのね……)ソレなら一個一個 決めてゆけば問題無いわ」

「だったら構いませんけど、ダメだったら遠慮なく却下して下さいね?」


こうして俺は ゆ~こさんと色々と打ち合わせを行い、入手した5機の武御雷(黒)の"扱い"を決める事にした。

先ずは全ての武御雷(黒)に国連軍の機体と分かる様にブルーのラインを入れる事を提案すると、彼女は許容。

また千鶴の機体が隊長機と一目で分かる様にブレード・アンテナっぽいのを付ける様に御願いすると其方もOK。

そんでもって"改造"はS型(頭部バルカン砲+胸部マルチ・ランチャー)仕様にするとコストが高そうなので、
F型(頭部バルカン砲)仕様にするのはどうかと告げてみると、コレに関してOKしてくれたのは自然だとして。

調子の乗って部隊名を、FMを肖って"快速反応部隊"と名付けてみてもアッサリ許可しちまったのは意外だった。

ソレによって俺は恐らく彼女は"機嫌が良い"のだろうと断定し、先程も述べた"聞きたい事"を告げる決意をした。

……余談だがブレード・アンテナっぽいのに関しては、千鶴機を発端に以後 全世界で流行ってしまう羽目となる。


「まァ"こんな所"かしら?」

「すんません。色々と無理を聞いて貰えたみたいで」

「面白そうな発想も有ったし大丈夫よ(……色々と借りも有るしね)」

「……ところでイキナリ話が変わって申し訳無いんスけど」

「何よ?」

「――――"00ユニット"は完成したんですか?」

「!?!?」

「え、えっと……数式を持ち帰って1週間 経ってるんで、少し気になりまして……」(びくびく)

「白銀(コレに関しては正直に言うしか無いわね)」

「はい?」

「00ユニットは御陰様で完成したわ……でも、同時に"鑑 純夏"は死んだ」

「……ッ……」

「直接 手を下したのは あたし。BETAは生きたままバラバラにしたダケ」

「そうですか」

「(唐突に聞かれるのは意外だったわね……でも思いの他 落ち着いてる?)」

「(良かった完成してたのかッ! 今のタイミングで聞いて正解だったZE)」

「どう? 白銀。あたしに殺意でも感じたかしら?」

「いや全然」

「なっ!?」

「"純夏"が00ユニットとして生まれ変わらない限り人類は勝てないんです。文句なんて言う気は無いですよ」

「そ、そう」

「でも……00ユニットの名を呼ぶ時は"鑑"か"純夏"って言って貰えると、俺としては嬉しいですね」

「!? ……ッ……ぷっ……ふふっ。恐れ入ったわ……アンタって、あたしが思ってた以上に"大人"だったのね」

「そりゃ(永遠の)28歳ですから。最初に言ったの忘れてました?」

「確かに覚えてるけど、それ以上にって事よ」

「えぇ~っ、酷いなァ。だったら老けてるって事じゃないッスか」

「アハハッ、御免なさい。ともかく00……鑑が完成したと知ったのなら、話は早いわね」


突然 話を極めて"重要"なモノに変えた事で怒られるかと思ったけど、ゆ~こさんは普通に完成を告げてくれた。

また原作通り命を奪われても良い様な台詞を言いそうだったが、その前に彼女を許してしまう事で未遂で終了。

ソレに関しては彼女の方が意外だった様で、ゆ~こさんは笑みさえ浮かべており普通に見惚れてしまいました。

しっかし一週間で完成させてしまう仕事の速さに感心してしまうのは さて置き。彼女は ふと表情を改めた。

対して言いたい事は有る程度 予想が出来る。原作と違って、今の"純夏"は肉体を取り戻した直後だと言う事だ。


「……どう言う事ですか?」

「仮の肉体を得たとは言え、鑑の精神は極めて不安定。今の ままじゃ何も役目を果たせないわ」

「何となく予想はつきます」

「どう? 鑑に会ってみる? アンタにとっては辛い再会かもしれないけど」

「……う~ん……」

「別にムリに行く必要は無いわ。少しは何らかの変化が有るかも知れないけど、今 必要なのは時間よ?」

「それでも……会って見ようと思います、少しでも安定して貰えれば儲けモノですし」

「ふぅん。だったら止めないけど、気を付けなさい? 今は社が見てるけど、拘束を解けば手が付けられないわ」

「そんなの望む所ですよ。良し……早速 行って来ますねッ?」

「あっ……」

「それじゃ~失礼しました!!」


≪ガシューーーーッ≫


「(折角だし少しは気の利いた事を言いたかったけど、やっぱり鑑か……少し妬けるわね……)」

「(純夏の完全復活が早まれば、キャッキャウフフのイベントも早まるぜッ! 燃えて来た!!)」




……




…………




……数分後。以前 純夏の脳味噌が浮かんでいた"例の部屋"の前まで来ると、霞が俺の事を待ってくれていた。

何故なら此処を目指す際 心の中で霞の事を強く呼んでいた為であり、即ちリーディングの有効活用である。

さて置き。対面した霞は眉を落として"どよ~ん"とした表情をおり……間違いなく純夏が関わっているんだろう。


「白銀さん(……私の名前を呼んだのに加えて、鑑さんの死を知った事も教えてくれました)」

「霞。純夏の事なんだが……どんな感じだ?」

「え、えっと……今は取り付く島が無いとしか言えません……」

「そうか。だったら尚更 純夏を宥めて やらないとな」

「あっ! ま、待って下さい白銀さんッ」


≪ガシューーーーッ≫


『うああああぁぁぁぁッ!!!!』

「うわっ、びっくりした」

「(白銀さんには……出来れば"こんな鑑さん"を見て欲しく無かった……)」

『殺すッ! 殺してやる!! 殺す殺す殺すッ! うがああああぁぁぁぁッ!!!!』

「……ッ……」

『バラバラにしてやる!! 八つ裂きにしてやる!! 皆殺しにしてやる!! 死ね死ね死ねええぇぇッ!!!!』

「(やっぱりショックを受けている? 無理も有りません……一番大切な人が"こんな様子"なんですから……)」


入り口を潜った直後 見たのは、赤味の掛かった長髪にトレードマークのアホ毛を生やした"鑑 純夏"の姿だった。

しかし彼女は悪の組織に掴まったライダーの様に大の字になって拘束され、天井に向って謎の奇声を上げている。

当然 不安定な状態である純夏は俺達の来訪に気付く筈も無く、ひたすら見えぬ"何か"と戦い続けている様だ。

そんな彼女の姿は灰色のスポーツブラ+パンティ姿であり……流石に軍服を着せれる状況じゃ無いってワケか。

対して俺はガチャガチャと拘束に抗いながら叫び続ける純夏を見て、心配そうな様子の霞を横に次の様に呟いた。




「歪みねェな」




――――その台詞は"レスリングシリーズ"の巡回を欠かさなかった俺には自然な物で有った事は言うまでも無い。




「???? 白銀さん?」

「霞。すまないが、純夏の拘束を解いて やってくれないか?」

「えっ!? そ、それは危険です……今の鑑さんは動く者 全てを敵と認識していますから……」

「大丈夫だ、問題無い」(3回目)

「……ぅッ……ですけど、力も尋常では無く幾ら白銀さんでも抑えきれるかどうかは……」

「頼むよ霞。俺は純夏の全てを受け止めて やりたいんだ(……勿論 性的な意味で!)」

「!? ……わ、分かりました……でも無理と分かったら直ぐに応援を頼みますからね?」

「そう成らない様に頑張ってみるよ」


其処で俺は純夏を宥める為 霞に拘束を解いて貰う様に依頼し、彼女は部屋の隅に有るスイッチに手を伸ばした。

その直後の拘束娘の行動は大体 察する事ができ、少なくとも肌と肌が触れ合ってしまうのは必然となるだろう。

勿論 胸が当たったり逆に尻を触ってしまう場合も有るだろうが、コレも純夏を宥めるには仕方無い事なのだ。


≪――――ガチンッ≫


『!?!?』

「…………」


≪――――ばさっ!≫


霞の手によって拘束が解かれた純夏は、ガバッと上半身を起こすと俺と目を合わせ……激しい殺気を放って来る。

そして立ち上がると肉食獣の様に俺を威嚇するので……それにビビりながらも俺は上半身の軍服を脱ぎ捨てた。

本来で有れば今の純夏の様に下着姿になっても構わないんだけど、霞が居るので上着ダケで妥協するしか無い。

そうなると、くれぐれも破られるのには注意しないとな。彼女が自分の下着に手を掛ける分には良いんだけどね!


『ふうーっ、ふうーっ、ふうーっ!!』

「マルチ☆ゲイ☆パンツ(やらないか?)」

「(えっ? Why don''t you get fucked?)」

『みんな……殺すッ……殺す殺す殺す殺す!!!!』

「構わん、H行こう!!」

「(Come on, let''s go? やっぱり……白銀さんは本当に鑑さんを救う気で……)」

『うがああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!』

「♂いざぁ♂」


――――こうして本格的マブラヴ・オルタレスリングが開始されるのでした。全ては純夏の姿が悪いんだよ!!








●戯言●
本来もう少し早く更新できたのですが、エルシャダイの登場により全面的に書き直す事になってしまいました。
今回は遂にメインヒロイン純夏の初登場となったんだが、レスリングネタで大丈夫か? 大丈夫だ、問題無い。
何せ誰でもマブラヴの女性キャラとはレスリングしたいと思いますから。また次回 冒頭もレスリングネタです。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=12745070
タニシ氏による17話での挿絵です。多謝! 差分に年齢制限が有るので御了承の上 注意して御覧下さい。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ54
Name: Shinji◆9fccc648 ID:1391bf9d
Date: 2011/03/29 08:19
――――あんな事を言ってアレだが誤解しないで頂きたい。純夏を迎え撃とうとする俺の内心は冷静だった。


『みんな……殺すッ……殺す殺す殺す殺す!!!!』

「構わん、H行こう!!」

『うがああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!』

「♂いざぁ♂」


いくらバーサーカーモードの某洗脳ファイターの様な気迫を持っていようと、彼女の肉体は女性である。

よって冥夜と慧に真剣に対峙すれば、普通に楽勝だった俺がシッカリと相手にすれば容易に捉えられるだろう。

速瀬が相手の時に多々有ったアレは……只単に俺が女性相手だと言うことで油断していた事にしといてください。

さて置き。純夏をガッチリ捕まえたとして、どうすれば彼女は落ち着いてくれるのかが問題となってくるな。

暴れる酔っ払いや精神障害の人の相手とは同じ様に思えて相場が違う。彼女は肉体を得たばかりの人間なのだ。

そう考えれば、やはり好き放題に暴れさせて置いて精神とカラダが順応してくれてからの接触が妥当だが……

霞に大見栄を張ってしまったからには抗わなければならず、まァ俺は否"白銀"なら何とかしてくれるだろう。


≪――――純夏。正気に戻ったんだな?≫

≪うんッ! タケルちゃんの御陰だよ!!≫


つまり主人公 特有のNA☆DE☆POを発動させる事により、純夏は奇跡的に心を取り戻してくれるのだ!!

無論お約束として、俺が彼女を捕らえても中々正気には戻ってくれず……色々と抵抗されたりもするだろう。

んでソレを見て霞が当然 心配するが、あえて苦戦してる様に見せつつ。安心させる為に声を掛けるのも忘れない。

そうなれば一連の動きで俺と純夏の肉体が必要以上に触れ合ってしまうのは必然であり、密着は不回避である。

故に不可抗力と言うヤツであり、最後は迷惑を掛けた"お仕置き"と言う事で"ダーク♂潮干狩り"でもしたいな。

意味がわからない人はググってね? ……って我ながら完璧過ぎる予定だZE。ともかくレスリングを始めよう。

そう一瞬の間で考えると、俺は此方に突撃して来る純夏のカラダを受け止めるべく その場で構えるのだが……


『死ねええぇぇ~~ーーッ!!!!』


≪――――ドゴオオォォッ!!!!≫


「うごふっ!?」


――――純夏のタックルが余りにも強烈過ぎて"それ以前"の問題だったみたいなんだ☆








これはひどいオルタネイティヴ54








2001年12月15日 午後


「……ぐあッ!?」

「し、白銀さん!」


≪――――ドドォッ!!≫


「ゲホッ……ま、マジかよ……」

『……!!』


当初の予定では突っ込んで来た純夏のカラダを捉えて寝技に持ち込もうとしていたんだが……何故どうして。

俺は彼女の体当たりを耐えれるドコロか数メートル吹き飛ばされてしまい、仰向けにダウンしてしまった。

どう考えても女性が出せる威力じゃないぜ……当然 経験は無いけど、まるで車に撥ねられた様な感覚だった。

俺がヤワい元の肉体だったら死んでたんじゃないか? マジで。脳のリミッターが外れると此処まで強くなるのか。

よって"どうしたモンか"と思いつつ、若干 止まり掛けた呼吸に冷や汗をかきつつ上半身を起こそうとすると……


≪ダンッ!!!!≫


「なっ!?」

『がああぁぁッ!!!!』


唐突に上半身を仰向けに"戻されて"しまい、同時に後頭部に痛みを感じながらも何が起こったのかと確認を急ぐ。

どうやら俺は素早く距離を詰めてきた純夏にマウント・ポジションをとられた様であり、コレは致命的だった。

まさか此処まで彼女のカラダが凶悪だとは……って、その当たり前の様に振り上げた拳は……避けられねえ!!


「ちょ、待ッ」

『死ねェ!!』


≪――――ゴキッ!!!!≫


「グハッ!? あァん……ひどぅい!」

「……(Oh what are you doing?)」


予想外な事態の連続で何に置いても反応が遅れてており、純夏の右腕から繰り出されるのグーパンチを受けた俺。

同時に左頬に衝撃が走り血の味が広がるが……幸い当たり所は良かった様で、一歩間違えれば前歯が危うかった。

彼女のコブシはそれ程の威力であり、マジで洒落にならんッ! そう思っているウチに純夏は左腕を振り上げる。


『死ね……死ねッ!!』

「(やっぱり白銀さん相手でも殺意が……)」

「(あ、危ねェ!!)」


≪――――ガコオオォォンッ!!!!≫


『……ッ!?』

「(う、嘘だろ……相当 頑丈な床な筈だぜ!?)」


先程のは運が良かったダケだが、次も食らって五体満足で居られるか不安だったので何とかコブシを避けた俺。

その為 純夏のパンチは床に直撃したのだが……信じられない事に若干とは言え地面をヘコませてしまっていた。

コレが火事場の馬鹿力ってヤツか? それよりも今の影響で純夏の左腕が見るからに脱臼でもしてしまった様子。

でも純夏は再び右腕を振り下ろそうとして来ており、コブシに血が滲む等の左腕の痛みを微塵にも感じさせない。

俺も俺で馬乗り&おっぱい目の前に有る良いアングルと言う役得を楽しむ余裕すら無く普通に必死になっている。


『がああああぁぁぁぁッ!!!!』

「ちぃっ!!」


≪――――パシッ!!≫


『!?!?』

「純夏……落ち着けッ! 落ち着くんだ!!」

『……グッ……うぅ……!!』

「俺だッ! 武だよ!! 分からないのか!?」


此処で彼女の右腕を避けてしまった方が"両腕"を使えなくする事で有利な展開になりそうな気もしたが……

男としてソレは出来ず何とか左手で純夏のパンチを受け止めると、無駄だと分かっていても説得に移る。

だけど……相変わらず凄い力であり、右手で彼女の左肩を抑える事で何とか耐えれていると言った状況だ。

無論 抵抗は現在進行形で続いていて……俺は不利な態勢も有ってかガリガリと体力を削られてしまっている。

そんな中。今度は純夏は天井を仰いだと思うと頭を振り下ろし……って、今度は頭突きかよ!? ヤベェ!!


≪――――がばぁっ!!!!≫


『うぐっ!?』

「ナウい♂息子」

「(Now even score? ……これでオアイコだ……と言う意味……)」

「いかん危ない危ない危ない……」


流石に今の純夏の"頭突き"をモロに食らったのなら、俺の脳味噌が弾け飛んでしまうのは間違い無いだろう。

よって今は純夏の左腕での抑制も無い事から……彼女の"体重ごと"と言ったカンジで純夏を放り投げる。

しかも殆ど上半身のチカラだけでだ。白銀の肉体と相手が頭を振り下ろす前だと言う偶然が状況を打破できた。

でも今の動作でスタミナを大きく削られてしまったが、純夏は左腕が使えないのでイーブンと言ったトコかな?

つまり"仕切り直し"であり、立ち上がった純夏も何を思ってか此方を鋭く睨みつつ……様子を伺っている。


「し、白銀さん……やっぱり人を呼んだ方が……」

「大丈夫だ。問題ない」

「……ッ……で、ですけど……」

「あくまでソレは"最後の手段"にしてくれ。何とかして見せるさ」

「!?(やっぱり間違いないです……病み上がりなのに、白銀さんは例え重傷を負ってでも純夏さんの心を……)」

「一番 良い対応を頼む」←言いたかったダケ。

「わ、分かりました(でも……ソレには私の"能力"も不可欠……そう言う意味なんですね? 白銀さん)」


――――今は苦戦を装っているドコロか素で逃げ出したい心境だが、霞が見ているので未だ見栄を張っている俺。


『……ウウゥゥ……ッ!!』

「ビビルわぁ、マジビビるわぁ……」

『殺す……殺す……殺す……』

「ああ? 俺んち?」

「……(I don't wanna hurt you……君[鑑さん]の事を傷付けたくない……)」


現在は純夏が拘束されていた台を中心に、互いにユックリと時計回りをしながら威嚇し合っていると言った感じ。

正直 十分頑張った気もするけど、助けを呼ぶ判断は全て霞に委ねてしまったので今は遣るしか無いですな~。

でも左頬の痛さで泣きそうなのが否めないが……今の一連で目が覚めたし、次こそは冷静に純夏に対応しよう。

今思えば余りにも甘く見過ぎていた。だが"本気"に成った白銀で有れば左腕が使えない彼女に抗えるだろう。

故に先程 隙を突かれて喉を噛み千切られなかったダケでも幸いだった……と言う事まで考える余裕が出来ている。

どうよ? 見てくれ今の俺の途轍もない集中力……方向性が相手のパンツを狙う人達みたくもなってるけどね☆


『がああああぁぁぁぁッ!!!!』

「カモン、チ●ポお兄さん」

「(Come on I wanna see more of this? ……来い……もっと[君の力を]見せてくれよ……?)」


≪――――ドッ!!!!≫


『うゥ……!?』

「どけよおめぇ!」

『があァッ!?』

「(Do get out of the way?)」注:そのまんまの意味です。


此処で威嚇の後 再び突っ込んで来た純夏だったが……今度は万全に備えた俺を弾き飛ばすのは無理だった様だ。

やはり左腕の所為で全体的に威力が落ちている模様。勿論 決して弱くは無い力だが……何とか成る突進でした。

其処で俺の何時もの悪い癖が発動する。つい"言いたくなった"ので、純夏の尻を掴みつつ投げてしまうと言う。








「くりぃむしちゅー池田?」








『!? ウッ……ぐっ……』

「(What's you doing? Get up?)」


≪――――何やってんだ純夏ッ! 立て!!≫(直訳)


『ふぅーーっ、ふぅーーっ、ふぅーーっ!』

「(鑑さんの記憶から……白銀さんと喧嘩をしている事も多々有りました……今はソレを思い出させようと?)」

『殺してやる……殺してやる……殺してやる……』

「今のは流石に怒ったか? 純夏。謝るから、もう暴れるのは止してくれよ」

「(でもダメみたいです……もう止めて下さい……それ以上無理をしたら白銀さんのカラダが……)」

『八つ裂きに……してやるッ!!!!』

「うおっとォ!!」


≪――――ガシッ!!!!≫


地面に転がった純夏は直ぐに起き上がると、涎を垂らし荒い息をつき此方を見上げ……折角の美少女が台無しだ。

コレはコレで絵になっているのは さて置き。馬鹿力の彼女だが、ひょっとしたら肉体が付いて来て無いのかな?

そうなると精神とは反対にカラダは悲鳴を上げているのは間違いなく……そろそろ純夏を休ませてあげないとね。

とは言え拘束を解いて彼女を暴れさせているのは俺なので、普通に純夏に申し訳ない気持ちになってしまった。

こんなんじゃNA☆DE☆POどころじゃ無いからな……今の段階では心を取り戻させるのは不可能だろう。

よって今 俺が"するべき事"は純夏を再び拘束して時間を置いて再び接触する事でファイナルアンサーとしよう。

まァ直前の"突撃"を受け止めれた事から次でも大丈夫だったので、当身でも食らわせようかと組んだ時 考えたが。


『がああァァッ!!!!』


≪――――ドスッ!!≫


「!?!?」


――――此処で まさかの膝蹴りによる"金的"である。ちょっと純夏さん、八つ裂きとは全然 関係無いやん!!


「おッ……お前 人のモノを……」

「(Oh my shoulder? ま、まさか今ので白銀の負傷した肩がッ!?)」←白銀の背中しか見えていない。

『……ッ……』

「うげっ!?」


≪――――ぐぃっ≫


純夏への当身を一瞬でも躊躇っちまった結果がコレだよ!! 弁解の余地は……もはや無いとしか言えません。

コレにより思わず前屈みになってしまうと、ソレを好機と見てか純夏は"右腕"ダケの握力で俺の体を持ち上げる!

つまり右手で俺の首を鷲掴んで宙吊りにしていると言う事であり、このまま俺を窒息死させようとしているのだ。

し、信じられん……片手で俺を持ち上げるとか、量子電導脳のリミッター解除にも程が有るだろマジな話で!!

おいおいおいッ! コレって本気でヤバいんじゃないのか!? そう考えているウチに既に意識が朦朧としている。


「!? し、白銀さん!!」

『アハハハハッ! 死ねっ! 死ね!!』

「がっ!? ぎっ! ぐああぁぁ!!」

「ま、待って下さいッ! 直ぐに"助け"を呼びますから……!!」


此処で"落ちて"しまえば命を失う気がするのだが、相手は純夏なので"強引な手段"に出る事ができなかった。

まだ其処まで頭が回っていないのだろう……故に俺は彼女の腕に両腕を沿え何とか呼吸を保つ事しか出来ない。

今 思えば蹴りでも拳でも放てと思ったが、此処で活きるのが"一番良い対応"を頼んだ霞サマの存在である。

しかしながら。俺の不屈の肖り魂も未だに健在だった様で、今の状況で全く関係無い事を考えていたりした。


「ま、待ってくれ……霞ッ……」

「えっ? で、でも"このまま"では白銀さんの命が――――」

「だけど……それじゃ……ダメなんだ……」

「ど、どういう事なんですかッ?」

「頼む……純夏に……リーディング……してくれ……!」

「!? い、意味が……意味が分からないですッ! どうして今 鑑さんの心を読む必要が有るんですか!?」

「やってくれ……霞ェ……ゲホッ!」

「そんな事を遣ってる暇は有りませんッ! 直ぐ助けを呼びます……どうせ何も"見えない"んですから!!」








「いいからリーディングだ!!!!」

「!?!?」


――――此処でまさかの脳内"ゴリ顔"である。同類と思われる"プロジェクション"じゃ無いのは発音の関係です。








『死んじゃえ……』

「ぐううぅぅ!?」


今のは霞の方を見て叫んだ為 余計な体力を使った事から、変わらず首を絞めてくる純夏に抗うのが難しくなった。

嗚呼。最期まで肖るのを止めなかったな俺……まァ白銀も純夏に殺されるなら本望だろう。ループしちまうけど。

それ以前に助けを呼んでも間に合わない事が分かっていた為に、無理に言いたかったダケの事を喋ったのかもな。


「(白銀さんは"この状況"ですら鑑さんの心を知る事を選んだ……自分の命を顧みずに……!!)」


≪頼むよ霞。俺は純夏の全てを受け止めて やりたいんだ≫


「(ソレは確かに世界を救う為には1秒でも早く必要かもしれません……でも私は……私は……)」


≪悪かった、寂しい思いをさせて。 だから、今度は霞も一緒に海へ行こう≫(13話 参照)


「(もっともっと白銀さんと……"お兄さん"と……一緒に居たいんです……!!)」


≪――――イイイイィィィィン――――≫


『!?!?』

「あれっ?」

『……ッ……』

「す、純夏?」


……遂に意識を手放そうとした時。突然 腕の力が無くなったので目を開くと純夏は目の焦点が合っていなかった。

いわゆる"レイプ目"であり、俺を宙吊りにしたままの状態で制止していて……全く微動だにしないのである。

何が起こったのか全く理解できんが……おっ? コレってひょっとするとNA☆DE☆POのチャンスなんじゃね?

其処で俺は呼吸困難で震えながらも、何とかと言ったカンジで右手を純夏の頭に持っていって手を添えると……


≪――――びくんっ≫


『……あ……』

「うおっ!?」

『何処だろ? ……此処……』

「痛てッ!(まさか……NA☆DE☆POが発動したってのか?)」


――――彼女は一度 大きく揺れたと思うと俺を地面に落とし、此方を見下ろす純夏は確かに瞳の輝きが有った。


『あれ? あれあれ? ……タケル……ちゃん?』

「なっ!? す……純夏……なのか?」

『そっちも……タケルちゃん……なんだよね?』

「そうなるんだと思う」


嘘ッ!? 特に何かした覚えは無いんだが、何故 手の力が緩んだんだ? しかも凶暴化が治まってるじゃないか!

だけどまだ油断は出来ないので、純夏の問いに在り来たりな返事をしつつ俺はゆっくりと立ち上がり呼吸を戻す。

そして心の中で警戒するのは忘れないが、じ~っと純夏を観察していると……徐々に彼女のカオが赤くなった。


『そ、そんなに見ないで……恥ずかしいよ。いつの間にか"こんな格好"してるし』

「んっ? あァ……悪い悪い」

『……痛ッ……』

「どうした?」

『えっと……どうしてか分からないけど左手が痛くって』

「軽い脱臼だと思うから気にしなくて良いと思うぞ」

『それって大事だよぉう。タケルちゃんの薄情者~ッ』

「俺が純夏に対して薄情だなんて何時もの事だろ?(原作をプレイする限り)」

『うぅ~ッ、否定できないかも』

「……えっと……ともかく……純夏」

『なに?』

「なんつーか、色々と辛かったんだよな? 遅くなって正直すまんかった」

『……~~ッ……』

「純夏?」

『……うぅッ……ひぐっ……』

「ど、どうした?」


どうやら純夏は先程の暴れっぷりを覚えていないらしい。ソレは全然構わないんだが……いや、むしろ有り難い。

だけど今の彼女は自分の境遇をどれだけ理解しているんだろうか? 意識が戻るの早いし、俺 逃避もしてないし。

よって頭を掻きつつ、何となく白銀の事を待ってた事ぐらいは分かってるだろうなと推理して軽く頭を下げた俺。

対して純夏の瞳は既に涙をを流しており……更に鼻水までも垂らしていた。その感情は凡(おおよ)そ理解できる。


『タケルちゃああああぁぁぁぁんっ!!!!』

「おわっ!?」


≪――――どッ≫


『タケルちゃんッ! タケルちゃんッ! タケルちゃん!! うああああぁぁぁぁ!!!!』

「ど、どうしたんだよ? 落ち着けって!!」

『グスッ……ずっと逢いたかった!! 逢いたかったんだよ!? わああああぁぁぁぁッ!!!!』

「……純夏ェ」


彼女は脳ダケとなりながらも因果を変えてしまう程 白銀を想い待ち続け……遂に待ち人が目の前に現れたのだ。

それが余りにも嬉しくて俺に抱きついて来たのは理解できるが、その想いの"重み"は到底 俺では量れないぜ。

だとすれば今 自分に出来るのは知ったかぶった慰めの言葉を掛けるのではなく、純夏の好きにさせて置く事。

何なら一晩中でも構わない。俺は"今の状況"で有れば楽しんでる筈の胸の感触すら忘れ彼女を抱き締めていた。


「("あちら"の白銀さんと鑑さんの沢山の思い出の一括プロジェクション……成功して良かったです……でも。
 私のアレは"きっかけ"に過ぎず……白銀さんが必死な思いで鑑さんの頭に触れた事が大きかったと思います)」




……




…………




……10分後。


「落ち着いたか?」

『う、うん……ごめんね? タケルちゃん』

「別に謝る事でも無いって」

『えへへ。有難う……痛ッ……』


思ったよりも早く純夏は泣き止み、どうやら俺と此処まで抱き合えた事で一気に安心してしまった様だ。

よって たった今 彼女は俺から離れ……まだ自分の姿が恥ずかしいのか上目遣いで俺の様子を伺っている。

滅茶苦茶 可愛いじゃないか。他の娘達と違って完全に相思相愛だと分かっている分 俺も意識してしまう。

だったら、この流れでベット・インするか~? いやいや流石に話が飛躍し過ぎだな。そう思っていると……

急に純夏が頭を抱えたと思うと地面に倒れそうになったので、俺は咄嗟に彼女の肩を抱いて声を掛けた。


「大丈夫か? 純夏」

『どうしてかな……何だかッ……頭が痛いよ……』

「無理もない。目が覚めたばっかだしな」

『そ、それに……凄く眠い……もっとタケルちゃんと……いろんな事……話したいのに……』

「だったら目が覚めたら幾らでも話そう。病人は安静にしてるのが一番だ」

『タケルちゃんが優しい? あははッ……明日は雨なのかなァ』

「サラりと失礼な事 言うなって。ともかく休んどけよ」

『うん……ッ……そうさせて貰うね……おやすみなさい……』


確か"00ユニット"って頭蓋のODL? ……の浄化とか言うヤツを一定期間で遣らないとダメだったよな。

恐らく純夏が瞬く間に寝てしまったのも、ソレが関連してるのかもしれない。詳しくは全く分からんけど。

まァ普通に考えても暴れたり泣いたりで肉体疲労を考えれば眠くもなるだろうし、深く考えるのは止そう。

そんな事を考えながらヒョイっと純夏を持ち上げると、俺は彼女を別室のベットで寝かせてやり充実感に浸る。

興味本位で純夏と会う事を決めてしまい、結果 殺され掛けてしまったが……正史より遥かに早く純夏が復活した。

つまり より有利に今後の展開を進めてゆく事が出来ると言う事であり、コレも霞の"一番良い対応"の御陰だな。

冷静に考えてみると、何を遣ったのかは知らんが純夏の動きが止まったのは間違いなく霞が絡んでいる筈である。

何故なら言うまでも無いが"あの部屋"には俺とアイツを除けば霞しか居なかったのだから。ホント命拾いしたぜ!


「鑑さんは……休まれたみたいですね」←部屋に入ってきた霞

「あァ。見ての通りさ」

「まだ信じられません……あれ程まで不安定だった鑑さんが……こうも早く覚醒するなんて……」

「コレも霞のフォローの御陰さ」

「すみません」

「へっ?」

「"あの時"白銀さんはリーディングをしろと言ったのに……私は逆の事をしてしまいました……」

「!? そ、それって……"プロジェクション"の事か?」

「はい」

「ふむ」


ヤベェ!! 俺とした事が肖るコトしか考えてなくて、プロジェクション(投影)の事をすっかり忘れてたぜッ!

いやプロジェクションの意味は知ってたけど、"あの時"非常に有効な手段と言う事に気づかなかった意味でね。

コレで霞が指示通りにリーディングしか行ってくれなかったら俺って死んでたんじゃね? 彼女の機転に感謝だ。

そう思いながら相変わらず感情を余り表に出さず霞に感謝の視線を向けていると、何故か表情が曇り出している。


「(やっぱり快く思っていない)……ですけど私は……私はッ」


≪――――じわっ≫


「私は? ……って、何で泣いてんだ!? 霞」

「白銀さんにこれ以上ッ! 無理をして欲しく無かったんです!! ……うぅうッ……グスッ」

「ちょっ!? だからって何で――――」

「……ッ!!」


≪――――ぽすっ≫


純夏はともかくだけど、霞が"その場"泣いてしまった理由が全く理解できず俺は慌てて彼女に近づいた。

すると霞は俺に(彼女にしては)大胆にも抱き付いて来たので、予想外の行動に受け止めるしか無かった。

恐らく彼女にとっては"俺が純夏にボコられていた"時点で相当ハラハラする程の事だと感じていたのだろう。

う~む。そう言えばクーデターの後も俺を心配して泣いてくれたし、此処は落ち着いて貰うしかあるまい。

よって俺は俺の胸に顔を埋めて泣いている霞の頭を撫でながら……優しい(つもりの)言葉を投げ掛けてみる。


「霞」

「な、何ですか?」

「とりあえず"この後"は今の事を ゆーこさんに報告して、俺は御医者さんに頬の傷を診て貰うよ」

「……ッ……」

「(やっぱり怒ってる!?)それで今日は唯依達とは会わないで寝る。それで勘弁してくれないか?」

「だ、大丈夫です(結果が伴ったとは言え……私は白銀さんの決死の意思に背いたと言うのに……)」

「それなら良かった。じゃあ暫く……こうしてようか?」

「はい……(純粋に結果を喜んでくれた上に……逆に私の事を気遣ってくれるなんて……)」

「しっかし俺のシャツ。随分と濡れちゃったなあ」

「(……"お兄さん"な筈なのに……私がソレで我慢 出来なくなったら……どうするんですか?)」


こうして霞に何とか許しを得れた俺は、霞が泣き疲れて寝てしまったのを確認した後 執務室に直行する。

其処で話したのは当然 純夏の完全復活の件で有り、ゆーこさんは流石に驚いた様で目を丸くした。(ドヤァ)

でも純夏と俺が負傷した事を告げると、詳しい事は明日と言う事で即 受診の手続きを済ませてくださる。

以前の負傷では霞ダケでなく他の皆にも心配を掛けてしまったので、今回は大事になるのを予防してくれたのだ。

そして簡単な診察を済ませてしまい……電話で訓練を行っていた唯依達に休む事を伝え俺は寝床に着いた。

しっかし只でさえ悠陽と会ったりイベントの連続なのに、追撃の純夏の復活で更に考え事が増えちまうけど……

明日 改めて整理してみる事にしますか。時間は正史と比べれば佐渡島までタップリと有るんだからな~。


≪タケルちゃあ~ん♪≫

≪白銀お兄さん……♪≫


「新日暮里ッ!!」(Two can play it)


――――意味は2人諸共だッ! そんなワケで今晩は純夏と霞をオカズに、つい抜いちゃったんだ☆


『…………』

「まさか鑑を安定させるドコロか、こうも早く心を取り戻させるとはね……ほんと見上げたモンだわ」

「すぅ……すぅ……」

「それに様子を見に来てみれば……鑑の横で社を寝かすなんて、随分と味な真似をするじゃない」

「むにゃ……しろがね……お兄さん……」

「はァ~。この娘達を見てたら何だか眠くなって来たし、あたしも此処で寝させて貰おうかしら?」








●戯言●
大変長らくお待たせ致しましたorz SSを書いたのが約5ヶ月振りだった事も有って酷い内容で面目ありません。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ55
Name: Shinji◆9fccc648 ID:1391bf9d
Date: 2011/04/02 07:48
これはひどいオルタネイティヴ55




2001年12月16日 午前


――――横浜基地 地下19階・執務室。


≪ガシューーーーッ≫


「どうも~、おはようございます」

「おはよ。昨日は良く寝れたの?」

「御陰様でグッスリでしたよ」

「そう」

「ゆーこさんは……やっぱ寝てる暇は無いってヤツですか?」

「当たり前よ。鑑を"ああしてくれた"以上オチオチ休んでなんてられないわ」

「ですよねー☆」

「……とは言っても以前までとは違って"良い意味"で……だけどね」

「ふぅむ」

「あら? 今回は"寝た方が良い"とか言わないの?」

「いや~、流石に現段階での俺が言えた立場じゃないですからね(……霞に心配を掛けた的な意味で)」

「ふ~ん(やっぱり無理してるって自覚は有ったのね……でも鑑が復活した事で素直に休む事にした?)」


……今朝 目が覚めた時……ベッドの中には霞は居らず、室外に唯依・イリーナちゃん・七瀬の姿も無かった。

何故なら後者の3人は昨日の電話で"起きたら再び執務室に行くから先に訓練していて欲しい"と指示したから。

でも霞が来なかった理由は分からず、昨日の遣り取りを考えるに俺にユックリ休んで欲しかったのかもしれない。

また純夏が起こしに来るという可能性は今日は無けれど、意識が戻れば高確率で有ると思うので先が心配だ。

何せ彼女と俺は(一応)相思相愛と言う事になっている。故に仲間として俺を気遣う為に訪問してくれる3人。

そして純夏 復活の為の一環として俺のベッドに侵入して来る霞の存在を純夏は快く思ってはくれないだろう。

よって彼女が起こしに来ると思う前日に誤解の無い様に言って置くなど、メンタル管理には最新の注意を払おう。

いや……霞ダケは純夏が復活した事により侵入して来なくなるので大丈夫か? ちょっと残念な気もするけどね。

さて置き。俺は支度を済ませて何時もの軍服に着替えると、再び執務室に赴いて ゆーこさんと面会していた。


「ところで」

「なによ?」

「霞は今 何をしてるんですか? 一応 2~3分前に脳内で"もう少しで着くぞ~"って言って置いたんスけど」

「……その所為ね」

「へぇあ?」

「さっき迄 あたしの手伝いで此処に居たんだけど、急に"鑑の様子を見に行く"とか言って行っちゃったわ」

「何故にッ」

「自分の胸に手を当てて聞いてみなさい(……何だか顔を合わせるのが恥ずかしいみたいだったし)」

「お胸さん・お胸さん? どうして霞が急に純夏の様子を見に――――」

「だから あたしの胸に聞いて ど~すんのよ?」

「サーセン」

「ふん。許して欲しけりゃコーヒー淹れなさい」

「了解です」




――――閑話休題。




「砂糖は2本ね?」

「スイーツ(笑)」

「すいーつ?」

「こっちの話です……ではどうぞ」

「ありがと」

「……ってか、普通にスミマセンでした。霞に関しては何だか邪魔しちゃったみたいで」

「今日の社は早起きだったから別に問題無いわ」

「早起きって?」

「丁度 区切りが良かったって事。そうじゃ無かったら出て行こうとしても引き止めてたわよ」

「成る程」

「それで……まだ色々と整理したい事が有るんでしょ?」

「すんません」

「気にする必要は無いわ。あたしもアンタに部隊くらいは任せて貰えないと体が持たないから」

「それじゃあ、もう一度 榊達の武御雷(黒)5機についてなんですけど――――」


……こんな流れて互いにコーヒー(俺は遠慮して砂糖ナシ)を啜る中、ゆーこさんとの今後の整理を行ってゆく。

とりあえず昨日 彼女と武御雷(黒)について話した事を箇条書きしてみよう。(昨日の段階でメモっている事だ)


1:搬入される武御雷(黒)は5機で、到着次第F型(頭部バルカン砲 仕様)に改造して元B分隊に支給する。

2:迷彩は国連軍の機体と分かる様にブルーのラインを入れて、隊長(千鶴)機にはブレード・アンテナを付ける。

3:部隊の名称は"快速反応部隊"で決定しており、正史の様にA-01には組み込まれず独立の部隊なる。


以上の内容が昨日ゆーこさんと話した事だが、昨日の今日で新たに追加されたらしい情報が幾つか有る。

先ずは武御雷(黒)が搬入される時期なんだけど……何と明日の午前には到着する様で、良い仕事してますね。

よって俺には明日その武御雷(黒)を元B分隊に紹介して欲しいらしく、コレに関しては引き受けるしかなかった。

しかしながら。千鶴達は伊隅に講義を受けている真っ最中だったので急遽 別の人材が必要になってしまう。

ソレは武御雷と言う機体の使い勝手を知る人間で有り、流石に巌谷さんや唯依に講師を任せる事は難しい。

其処で ゆーこさんは真那さんに伊隅とタッチする事を依頼したのだが、始めは良い顔をされなかったらしい。

何故なら中に冥夜が居る事から上官として当たるのが躊躇われた様で……彼女の忠義を考えれば仕方ないか?

でも武御雷(黒)を提供した斯衛として対等に近い形で講義すると言うのを条件に真那さんは快く承諾したとの事。

加えて斯衛トリオも支援に当たる事となり、暫く元B分隊は驚きつつ必死で武御雷(黒)での訓練を続けるだろう。

そして地味に重要なオペレーターに置いては……恐らく千鶴達は突撃機動部隊の補佐に当たる予定なので、
セレナ中尉かテレサ中尉のどちらかに管制を任せる予定らしい。また状況によりA-01の裏で動くとの話も。


「榊達についてはコレくらいね」

「大体把握しました」

「まぁ……あの堅物になら任せても"使える"レベルにはしてくれそうね」

「さり気なく酷ッ!? でも月詠中尉 程の衛士なんて、そうは居ないと思うんで榊達も幸せモンですねェ」

「…………」

「あァ。伊隅大尉が上官な時点で十分 恵まれてるかな?」

「アンタが言うと嫌味にも聞こえるわね」

「それほどでもない」

「褒めてないわよッ」

「では続きまして俺の部隊についてなんスけど」


既に全世界の衛士の皆様が知りつつ有ると言う突撃機動部隊なのだが、俺としては まだまだ未完成といえる。

何せ俺・まりもちゃん・唯依はともかく、他の6人の仲間は新しい概念を知って間もないって段階だからな……

"飲み込み"は唯依による電話での報告によると凄い早いらしいんだけど、まだ俺が指導した期間は非常に短い。

よって今後の俺の予定としては突撃機動部隊のスキルアップを最優先にするという事で同意してくれました。

だけど併用して純夏との触れ合いもハイヴ攻略には絶対に外せないんだけど、ソレは後で説明する事にします。

ちなみに今更だが……突撃機動部隊のポジショニングも非常に重要で、暇な時間で考えた結果こうなっている。


アルカディア01 強襲制圧
白銀 武(少佐) 不知火SⅡ型

アルカディア02 突撃前衛
篁 唯依(中尉)

アルカディア03 突撃前衛
神宮司 まりも(中尉)

アルカディア04 砲撃支援
イルマ・テスレフ(少尉)

アルカディア05 突撃前衛
ライト・ラーニング(少尉) 

アルカディア06 強襲掃討
フレア・フレイドル(少尉)

アルカディア07 強襲掃討
ブリザ・スリーブス(少尉)

アルカディア08 制圧後衛
七瀬 凛(少尉)

アルカディア09 制圧後衛
伊隅 あきら(少尉)


……この通りバズーカを持っているのは俺・七瀬・伊隅(妹)であり、イルマ機には当然ライフルを持たせている。

また俺の機体だけカイゼル・カラーの不知火SⅡ型であり、主に中央の最前線で敵を釣りつつ指示を出す感じ。

その背中を突撃前衛のライト機が追い……バズーカを撃った時とかは彼女の機体の後ろに隠れて遣り過ごす予定。

更に後ろ(電卓の2の位置)にはイルマ機が配置され、左右の正面には それぞれ唯依機とまりもちゃん号を設置。

そんな2人の中尉の背後……電卓の4の位置にフレア少尉・6の位置にブリザ少尉が弾幕を張る事で前衛を支援。

最後にフレア・ブリザの後ろに七瀬・伊隅(妹)が それぞれ支援突撃砲で最低限のフォローをする事で奥を目指す。

ちなみに拡散突撃砲やら不知火・カスタムやらハンド・グレネイドやらの本格的な実戦投入は佐渡島以降の模様。

なワケで。突撃機動部隊は"こんな感じの編成"で訓練を行っているのであり、頑張れば余裕で攻略できるだろう。

でも目標達成には ともかくトレーニングが欠かせない。故に時間が必要なので正史以上の猶予の増加は有り難い。


「言った通り突撃機動部隊については、全部アンタに任せるからセレナとテレサを旨く使いなさい」

「そうさせて頂きます(……そうしないと俺ダケじゃ無理だし!)」

「じゃあ、次の作戦の予定に置いても大まかに説明して置く必要が有りそうね」

「お願いします」

「大体 予想できてたと思うけど、当然目標は佐渡島ハイヴ。近いウチに"甲21号作戦"が発令されるわ」

「それは何時ですか?」

「鑑の"不安定さ"を考えれば今月の25日か26日辺りが妥当だと思ったんだけど」

「なんか旨くいっちゃいましたからねェ」

「えぇ……だから、そうね……1週間後には部隊を万全に整えて置きなさい」

「了解です」

「同時にアンタには鑑の相手も任せるわ……ソレが あの娘にとって一番良い薬に成りそうなのは間違いないから」

「承知の上ッすよ」

「その鑑は伊隅達と作戦を共にする予定よ。でもアンタも知っての通り訓練は必要最低限で済むから心配無いわ」

「純夏は脳に限ってはスーパー・ウルトラ・グレード・デリシャス・ワンダフル・ブレインですからね」

「……否定できないのが鑑の凄さよ?」

「把握済みです。それで……今の純夏のカラダはどんな感じなんですか?」

「そうね……未だに目を覚ましてないけど社が"見る"限り相変わらず安定してるらしいわ」

「ほむ」

「だから2~3日もしないウチに目を覚ます筈よ」

「そうですか。その時は遠慮なく呼んで貰って構わないんで御願いしま~す」

「元よりそのつもりよ」

「じゃあ纏めますと……先ずは元B分隊は月詠中尉達に任せて、俺は突撃機動部隊のスキルアップに集中する。
 そして純夏が目を覚ましたら、周囲にも気を遣いつつ出来るダケ一緒に居る事にすれば良い感じですかね?」

「肯定よ」

「じゃあ暫くはその方向でって事で……早速まりもちゃん達の訓練に混ざる事にしますよ」

「でも白銀」

「へぇあ?」

「午前中の間は休んで置きなさい。コレは命令よ(……社がさっきから"言って"って頼んで来てるのよね)」

「えっ? 俺的には十分に休んだんですけど――――」

「同じ事を2度言わせるつもり?」

「わ、分かりましたよ……それじゃ~失礼しました~っ!」


≪ガシューーーーッ≫


成る程……佐渡島への侵攻はクリスマス辺りだったと思ったけど、一週間後と言う事は23日辺りなのかな?

正史を考えれば其処まで短縮は出来なかったみたいだが……7日も訓練に打ち込めると言うのは有り難いZE。

本来もっと余裕が無かった筈だからな。でも作戦が早まる可能性を考えて5日間くらいを目安にして置くか?

さて置き。流石に ゆーこさんの時間を取り過ぎてしまったか、何処かしら彼女は機嫌が悪そうな感じがした。

故に逃げる様に執務室を去った俺は素直に自室を目指したのだが……部屋に戻った時 意外な人物が待っていた。


「……白銀さん」

「へっ!? 霞?」

「ま、待っていました」

「何で霞が此処に――――」

「あの……香月博士に……部屋で休まれる様に言われましたか?」

「んっ? 言われたけど?」

「でしたら……いま此処で横になるんですよね?」

「あァ。(怖かったから)御言葉に甘えて……って昼迄の間だけど?」

「だったら……あ、あのッ」

「???? 何なんだ?」

「す、少しだけ一緒に寝ても……構いませんか?」

「なん……だと!?」


―――― 予想外の人物とはウサギッ娘。そんな彼女の言葉に俺が首を縦に振ったのは言うまでも無かったんだ☆


「(鑑さん……すみません……もう少しだけ"お兄さん"と……一緒に寝かせて下さい……)」

「(か、可愛過ぎるだろ常識的に考えてッ! でも後少しで打ち止めに成るんだよなァ~)」




……




…………




2001年12月16日 午後


――――数時間後。シミュレータールームにて。


「あッ。武く~ん!」

「ども、テレサ中尉」


霞と一緒に昼寝と洒落込んだ俺は、再び ゆーこさんを手伝うらしい彼女と別れると唯依達の場へと足を運んだ。

それにしても……霞と寝るのをOKした直後、イキナリ服を脱ぎ始めた時は普通に襲いそうだったよマジで!!

しかし我慢したのかは聞くだけ野暮。よって俺は軍服の上着ダケを脱ぐのみに留め、とにかく寝る事に集中する。

何故なら俺も脱衣という行為をしたり、睡眠を意識するのを怠ったりすると"その気"になっちまいそうだから。

でも霞は普通に(多分)兄的存在な俺と一緒に寝たいダケだと思うので自重するしか無く今に至っているのである。

さて置き。どうやら唯依達はヴォールク・データの真っ最中の様であり、セレナ中尉のオペの元 下層を攻略中。

だったら邪魔は出来ないな~……とか思ってるとテレサ中尉が俺に気付いたので、彼女の所まで歩くと横に並ぶ。

どうやらテレサ中尉は見学中らしく、皆の訓練の様子を手持ちのボードにメモとかを取りながら眺めていたのだ。


「もう御用は済んだんですか?」

「えぇ。コレで暫くは俺を含めた突撃機動部隊のスキルアップに集中できそうですよ」

「そうなんですかァ。だったら早くヴォールク・データを全員無事で攻略したい所です」

「当面はそれが課題ですねェ……それで、今はどんな感じですか?」

「え~っと……最初は みんな唯依と神宮司中尉の動きに付いて行けずに半分も進めてませんでしたけど、
 何度も何度も繰り返していくウチに、まれ~にイルマや凛が反応炉まで何とかたどり着けていますね」

「えっ? 凄いじゃないですか」

「でも現段階じゃ武くん達みたいに味方の支援は勿論、敵が沸いても冷静で居る事は難しいみたいです」

「……って事は……」

「どうもBETAに囲まれ過ぎると、鑑賞してた従来の対応通りには出来ず無駄に重火器を使用するのは勿論、
 乱用したフォールディング・バズーカの弾が尽きれば凛とアキラは今は無理と自爆に走るケースが多いです」

「成る程~ッ」


テレサ中尉とそんな話をしながらモニターを眺めていると……現在ハイヴの下層で生き残っているのは4名。

それは唯依・まりもちゃん・七瀬・ブリザ少尉であり、他の4人は途中で脱落してしまったのは言うまでも無い。

どうやらテレサ中尉の話によると、先ずはライト機とフレア機がバズーカ持ちの2人を庇う様に敵を釣って自爆。

そしてイルマ機も機体の性能で切り抜けれる沸きで諦めて自爆し、伊隅(妹)も七瀬を庇って要塞級の餌食となる。

でも別の攻略では伊隅(妹)やイルマが生き残るのは勿論の事……死因が爆風の破片など、様々な結果が有る模様。

う~む。此処で疑問に思うのは、やはり途中で諦めて自爆を多様している事だな……俺は正直な所 真似できない。

何故なら俺が"個人的に詰んだ状況"に直面した場合、必死で抗ってテンパった結果 自爆する前に死ぬと思うから。

だから何度も実感してるけど、まりもちゃんと言い彼女達と言い自分の命を投げ出す事なんて朝飯前なんですね。


≪はい……お願いしますッ! 次は間違っても自決など考えません!!≫(13話 参照)


けど俺の大切な仲間達なんだし元軍曹と同様、簡単に諦めて自爆すると言う事は金輪際 止めて欲しいよな~。

一つの命と戦術機で数百のBETAを木っ端微塵に出来るのは確かに凄いけど、バズーカの方が安いのだから。

だけど志は買えるし何て言えば納得してくれるのかなァ? ……そう考えてモニターを見ている事 更に数分後。

どうやらヴォールク・データは何とかと言った感じで前述の4人が生き残ったらしく、各々が筺体から出てくる。


「お疲れ様でした。神宮司中尉」

「其方こそ、篁中尉(戦果は徐々に上がって来ている……でも腑に落ちないわ……)」

「いやあ、下層は難関でしたね」

「(ミストさん!?)」

「……ぇっ……た、武くん?(急に怖い顔をッ)」


――――此処で難しい顔をしている まりもちゃんの横を歩いていたイルマ少尉の言葉が俺の表情を強張らせた。


「でもさあイルマ。今回は"4人"も残ったのよ?」

「そうだねライト。ちょっとダケ私達が脱落するのが早かった気がしたけど」

「けど……2人とも以前より多くのBETAを道連れに出来たし……良かったと思うな……」

「七瀬さん。あの時は弾が切れてたボクの方が囮になって正解だったよね?(自爆の前に殺られちゃったけど)」

「そうね。アレからも何度かバズーカの弾が残ってないと無理そうな場面も有ったから」


「じゃあ、今度はもっと良い場所で果てる事を考えなくっちゃ!!」

「私も"あの程度"なら いずれは何とか出来る様な技術を身に付けたいわ」

「アンタ達だけには格好良い思いはさせないぜ? ライト・イルマッ!」

「えっと……でも……出来るだけ全員で、反応炉まで行く事も……考えないとダメなのかな……?」

「ですけどブリザ少尉。今のボク達の実力じゃ厳しいですから、自決の事は常に考えて置かないとダメですよ~」

「篁中尉と神宮司中尉に比べれば遥かに及ばない技術を考えると……途中で足を引っ張る事は出来ませんからね」


「(ち、ちょっと姉さん……これって何かヤバい気がするんだけど……?)」

「(少し不味いかもしれないわね。イリーナから聞いた話によると、武さんは仲間をコレ以上……)」

「(でも……此処で黙ってる方がイルマ達の為なんだよね……?)」

「(そうね。彼の部下となる以上は、命の大切さを痛感して貰わないと)」


――――そして今の会話を耳にした事で、つい肖りたくなったので俺は自重せず言った。(大体イルマ少尉の所為)








「こんなに俺と みんなで、意識の差が有るとは思わなかった……!!」








「!?!?(し、白銀さん!?)」

「……あッ……け、敬礼っ!!」


≪――――ザザッ≫


今の俺の名台詞で特に驚いたのが まりもちゃんであり、唯依は慌てて号令を掛けると皆が俺に敬礼してくれた。

しかしながら。肖り中だった為、敬礼に何も反応を示さず先程の台詞について先ずは伊隅(妹)に問い質してみる。

問うべきは自爆・自決を否定すると言う事であり、既に納得して貰う事が前提と言う事をかなぐり捨ててます☆


「伊隅」

「は、はい?」

「君は何故 追い込まれたら自決する事を考えるんだ?」

「えッ? ……えっと……無理だと思ったら無駄死にするよりは、多くの敵を巻き込んだ方が良いと思って……」

「でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない」

「!? ど、どう言う意味ですか?」

「BETAの物量は圧倒的なんだ。タカが100匹や200匹倒した所で結局は無駄死に にしかならないぞ?」

「あうッ」


「では七瀬。中尉達が足を引っ張る事を理由に、君が自決して喜ぶとでも思っているのか?」

「!? た、確かに喜んだりはしないと思いますけど……ソレで作戦が失敗しては元も子も有りませんから……」

「それは根本的な理由には成らないよな?」

「……ぅッ……で、ですが今の私にはアレ程のBETAを捌き切る技量は有りませんので……」

「でもソレも質問の答えには成らないよな?」

「で、では白銀少佐……私達は何か悪かったのでしょうか?」

「そんな事も分からないのか? これじゃ、俺……皆と訓練したくなくなっちまうよ……」

「!?!?」








「今はBETAに劣勢で絶対的に衛士が不足している……それなのに最近の衛士と来たら……!!
 囲まれたら直ぐに責任を放棄して自殺する事を選ぶなんて、こんなの普通じゃ考えられないッ!」








「あっ!(分かったかもしれないッ)」

「ど、どうしたのよ? ブリザ」

「それよりも大将が……(凄く怒ってる?)」

「た、武さん……(最初から不味いとは思ったけど、予想以上に……)」

「(……最悪のタイミング……何もかも、私の浅はかさが原因だわッ)」








「まともな衛士なんて……世界には数える程しか居ないんだよ……」








「――――タケルさんッ!」

『ブリザ(少尉)!?』

「……どうしたんです?」

「あ、あのッ! タケルさんは……私達が自決を選ばざるを得ない技量しかない事に怒っているんじゃ無い……
 シミュレーターでは例え敵を巻き込めずに散ろうと……最後まで抗い続ける事を考えるべきなんですね?」

「…………」

「つまり、直ぐに諦めてしまって自決を選んでしまっては……何時まで経っても技術は進歩しないと言う事……
 よって人類に残された時間・そして衛士が限りなく少ない今の現状では……そうしないとBETAに勝てない」

「あァっ!?」

「(ようやくライト達も気付き始めたみたいね~? 姉さん)」

「(でも少し惜しかったわ。後は神宮司中尉や唯依の機転に期待しましょう)」

「今のタケルさんの言葉で分かりましたッ! ですから……改めて私達を鍛え直しては頂けませんか!?」


イルマ少尉の所為(決め付け)でミストさんを肖ってしまった俺は、取り返しのつかない事を言ってる気がする。

だがブリーザ様(違うって)が俺の言いたい事を"100%"理解してくれた様で、彼女の鋭い洞察力に感謝した。

故に素直に彼女の言葉に頷く事で午後の訓練を始めれば、後は俺が旨く指導する事で戦死者ゼロが狙えたが……








「訓練するなら勝手にやってくれッ! 俺は部屋に戻る!!」

『!?!?』








俺はどうしても"この台詞"を言いたくて踵を返してシミュレータールームを出て行く選択をしちゃったんだ☆

貴方って本当に最低の屑だわ!! ……いや、自分で言ってどうする? そんなの普通じゃ考えられない……!!

さて置き仏頂面で自室に戻った直後。俺は頭を抱えると、以前(25話)と同様 枕を涙で濡らしたのでした。

こんな上官に従う価値なんて無いッ! 私達はもう白銀少佐の下で戦いたくない! ……って絶対思われたよ!?


「た、武さん……いけないッ!」

「待って下さい、篁中尉!!」

「神宮司中尉!?」

「すみませんが……此処は私に任せてくれませんか?」

「で、ですが――――」

「今の白銀さんの"怒り"の責任は私に有るんです……どうか……」

「……クッ……分かりました、御任せします。それでは、やはり武さんは……?」

「はい。白銀さんは一人で戦う事を決めていた中 折角 私達を大切な"仲間"と認識し始めてくれたと言うのに……
 "以前の私の考え"を思えば何処かでライト少尉たちの考えも否定する事が出来ず、仲間として失格でしたね」

「……って事は七瀬さん……ボク達は、さっきから見当違いの攻略をしてたんじゃ……?」

「きっと攻略できる・できないかの"結果"では無くて先ずは諦めるか・諦めないかの"気持ち"の問題だったのね」

「ふ、フレア~? ……それじゃあ……」

「あァ……大将が怒ったのもムリも無かったって事だよ……」

「それにタケルさんは……私達が思っている以上に……険しい道を進んでいるんだと思う……」

「な、何だか……目から鱗ね」←自覚は無いが元凶の人。

「ともかく今は武くんと神宮司中尉が戻るのを待つしかないわね~」

「では時間が勿体無いので、直ちに別視点で鑑賞を行い戦術の検証を行いましょう」

『了解!』×7

「(まァ……姉さんは何時もの如く履いて無いんだけど)」




……




…………




……部屋に戻ってから数分後。


「霧が濃くなってきたな……」


≪――――コンコンッ≫


『あの、白銀さん……私ですが……いらっしゃいますか?』

「えっ!? ちょ、ちょっと待って下さい」


様々なフラグをバキ折った事を後悔し軽く泣いた後、ベッドに寝転がりながら現実逃避していると突然の来客。

声からして まりもちゃんであり、俺は勢い良く起き上がると瞬時に鏡をチェックして何時もの表情でドアを開く。

すると現れた彼女は何時もの凛々しさが抜けていて、むしろ可愛い感じだったんで思わず見惚れてしまったが……

俺と目が合うと直ぐ様に瞳の色を改め、勢い良く頭を下げると同時に叫ぶように予想外の事を言ってくれた。


「白銀さんッ! 先程は本当に申し訳ありませんでした!!」

「うわっ、びっくりした……って、ど~して謝るんですか?」

「白銀さんは誰よりも仲間を大切にする人だと言うのに、私は彼女達の行いを咎める事をしなかった為です!!」

「行い……って、自爆を多様してた事ですか?」

「はいッ! 私がもっと早く皆に指摘していれば、白銀さんが"過去"を思い出してしまう事も無かったのに……」

「……過去……ですか……」


はてさて。呟く様にオウム返しを しちまったが、白銀の"過去"の話なんて まりもちゃんにした事 有ったっけ?

全く覚えていないので(無表情で)彼女を見下ろしながら思い出そうとしてるんだが、どうも記憶に見当たらない。

よって、そのまま まりもちゃんと睨めっこしていると……何故か徐々に彼女の表情が"不安"を表して来ていた。

そして妙に可愛い。だけど、ちょっと魅力的な人が居ても暴走鎮圧は下着姿の霞の侵入時代で慣れてますッ!!

とは言え……そもそも何で謝られているかが分からないので、何をどう答えて良いのかサッパリ分からないZE。

ならば謝られた事は普通に許すに限るな~。むしろ悪いのは肖る為ダケに気違った事をホザいた俺なのだから。

故に上手く交渉して先程の発言を無かった事にするしか有るまい。そう考えを纏めると俺は彼女に一歩近づいた。


≪――――ザッ≫


「し、白銀さん?」

「俺の過去の事は どうでも良いんです。重要な事じゃない」(キリッ)

「でも――――」

「ですから気にしないで下さい。だから俺の先程の発言は忘れてくれませんか? 少し悪く言い過ぎました」

「……と言う事は……"私達"を許して頂けるんですかッ?」

「許すも何も悪いのは俺の方です。むしろ恥ずかしい位でしたよアレは」

「!?(つまり白銀さんは最初から気にしていなかった? ……だとすれば……)」

「そんなワケで俺は戻ろうと思いますんで、シミュレーターを本格的に始めましょう!」

「……("以前"私が自決を選んだ直後の時の様に……今回も"突発的な何か"だったのかしら?)」

「……って、聞いてます? まりもちゃん」

「えっ!? あッ……はい。此方こそ改めて宜しく御願いしますッ、白銀さん!」

「(良かった……気乗りしてないのかと思ったぜ……)」


俺は当然だが思ったよりアッサリまりもちゃんの方も許してくれて助かったな……やっぱり志の方が勝ったのね。

ともかく。彼女に加えて唯依も許してくれるのなら、後は結果を残せれば他の娘達も自然と付いて来てくれる筈。

其処は"白銀大佐"に任せれば大丈夫だろうし勝手にポジティブ思考になってた為か、俺は少し調子に乗っていた。

こんな気持ちの切り替えの早さ……普通じゃ考えられない……!! ……って何時まで覆ってんだ俺の視界の霧は。


「……ッ……」

「あれ? どうかしました?」

「え、えっと……白銀さん」

「はい?」

「まだまだ力不足かもしれませんけど……私達は"仲間"なのですから、遠慮なく頼ってくれて良いですからね?」

「そりゃ勿論です」

「ほ、ホントですか?」

「そりゃもう。支えてくれる人が傍に居れば俺だって成長しますよ、まりもちゃん!」

「!? そ、それを聞いて安心しました……では私は一足先に訓練再開の旨を皆に伝えて置きますね?」

「お願いしま~す」

「そ、それでは!(許してくれるどころか"そんな事"を言ってくれるなんて……本当に反省しないとね……)」


≪――――バタンッ≫


「ミストさんの迷言で話が上手く締まるなんて、普通じゃ考えられない……!!」(いい加減にしろ)


こうして安心したっぽい まりもちゃんは、その通りな表情で此方に敬礼して下さると俺の部屋から出て行った。

しかし今回の肖りも違う意味で本当にヤバかったな……最近は性欲の抑制に必死で他を疎かにしてしまっている。

よって俺は金輪際 無駄な肖りをしない事に決め、仲間達と全ての任務で生還する事を深く胸に誓うのであった。

そうなれば今後 俺は多くのフラグを回収して、ヒロイン達とキャッキャウフフしまくる事は確定的に明らか。

故に此処で俺の新たな人生を語るのは嫉妬される前に終了とさせて貰うが、全ては丸く収まったと言って置こう。

さて置き。これで最後になるが、俺はトイレを済ませるとまりもちゃんを追うべく部屋を出る前に一言 呟いた。








「なワケ無ェだろ!?」








――――分かってたと思うけど当然 依然として俺の物語は続き、肖りの自重も止まる事を知らないんだ☆








●戯言●
皆様の感想が嬉しかったので無理矢理 更新しました。流石にエイプリルフールには間に合いませんでしたけど。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ56
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2011/05/16 11:26
これはひどいオルタネイティヴ56




2001年12月17日 早朝


――――白銀少佐の個室にて。


「……ぐ~っ」

「白銀さん……白銀さん……」


≪ゆさゆさ ゆさゆさ≫


「……ッ……」

「朝ですよ……白銀さん……」


≪ゆさゆさ ゆさゆさ≫


「…………」

「まだ……起きません……か?」


≪……ゆさゆさ……ゆさ……≫


「…………」

「…………」


≪――――し~ん……≫


「……(朝か?)」

「……しろがね……お兄さん……」(ぼそ)

「何?」

「!?!?」

「あァ……霞か。おはよう」

「お、おはようございます」


ミストさん無双だった次の日の朝……寝ていた俺は意外にも"久しぶりの感触"を受ける事で、意識を覚醒させた。

それが何かと言うと何時ものように(スリップ姿の)霞が布団に入り込んで来て俺が自然と目を覚ますのでは無く。

当初の彼女の様に"早起きした霞"が俺を揺する事で"目を覚まさせてくれる"と言ったモノだった。正直 予想外。

よってネボけつつ眉をコスったりしながら彼女に朝の挨拶の言葉を掛けると、何故か霞は目を丸くさせていた。

コレは薄いリアクションと言えるが、実を言うと霞にとっては地味にオーバーな感情表現と言っても良いのよね。

はて……? 何か気に障る事とかしたっけ? 生憎 昨夜は一緒に"お昼寝"した事をオカズにしてしまったが違う筈。

俺が体を起こす前に何か言っていた様な気はしたんだが……まァ良いか~。今は霞との会話を続けるとしよう。


「ところで霞」

「は、はい?」

「今日は何で普通に起こしに来てくれたんだ? それと"うささん"凄いですね」

「それほどでもないです」


――――彼女は俺を両手で揺すって起こしていたが、今は既に椅子に置いてあった"うささん"を胸に抱えている。


「んで前述の返答は何故に?」

「それは……今は肉体を得た鑑さんが居ますから……」

「純夏が居るから?」

「私が"あんな事"をしては、流石にダメだと思ったからです」

「……あ~ッ……」

「現状の鑑さんは……何時 目を覚ましても良い程 安定していますから……」

「成る程ね」

「……(良い事なんですけど……ちょっと僅かに残念です)」


今の言葉で大体 把握した。恐らく霞は……目を覚ました後の行動が分かり切ってる純夏に遠慮したのだろう。

そりゃ~ソレを知ってるのは当然だよな。何せ毎日毎日 純夏の"脳味噌"にリーディングとかしてたんだから。

つまり幼馴染が俺を起こしに来た時に"きわどい霞"が布団の中に居ては、修羅場になる事を恐れたってワケだ。

う~む。本当なら今日辺りに俺から言うつもりだったんだが、霞の方から止めてくれるとは良い判断してるぜ。

だけど、そうなると彼女は早く添い寝を切り上げたかった? 思えば霞は純夏の行動を真似してたダケだったな。

改めて考えると霞には心配かけまくって怒らせちまった自覚が多々有るので、まァ妥当な展開と言ったトコロか。

普通に寂しい気もするけど、今は純夏の感情を安定し続ける事が最優先なのでネガティブに考えるのは止そう。

よって俺は気を取り直すとベットを離れ"うささん"を両手で抱える霞を見下ろした後、ドアに視線を移して言う。


「入り口に唯依達は居たのかい?」

「いえ……誰も居ませんでした……」

「"能力"を使ってみるに、向かって来たりとかもしてない系?」

「……何が"系"なのかは分かりませんけど……向かってもいないみたいです……」

「そうか~」

「白銀さんが何か……言ったんですか?」

「あァ。今日も午前中は別の用があるから、朝は部屋まで来なくても良いってね」

「武御雷(黒)の事ですか」

「その通り」

「では……これから忙しくなってしまいますね」

「元からな気もするけど、純夏の事も有るし"大きな戦い"も迫ってるからね」

「……ッ……」


此処で話が変わるが、昨日の"あの後"はシミュレータールームに戻り唯依達と普通に訓練して一日を終えました。

その時の俺は皆に不快な思いをさせてしまった事から必死で、頑張ってSⅡ型で先行しつつ指導もこなした気が。

故に特に肖る事も無く"白銀大佐"の力も借りつつ隊長としての役割を続け、皆の評価は上々だったと言っとこう。

でも"あんな事"を言って流石に朝の挨拶をして貰うのは気が引けたので……今朝は断る事にして今に至っている。

口実にした武御雷(黒)の事は別に朝に会うダケなら差し支え無いのだが、純夏の事を考えると遠慮するしかない。

霞が俺のベッドに紛れ込んでいる以前に、部屋の入り口に3人もの女性が居ては精神に支障が出る可能性が有る。

唯依達は真面目に俺の事を気遣ってくれているダケとは言え、自惚れる気は無いが絵的にはハレームなんだよね。

だから、このまま起床時は一人で居られる様に持ってゆきたいが……フラグ構築が出来なくなるのは歯痒い限り。

……とは言え此処まで来て死にたくないので諦めが肝心かもな。そんな事を考えつつ霞との会話を続けていると。

霞が何やら眉を落として俺を見上げており、嗚呼 可愛いなチクショウ!! ……って今は萌えてる場合じゃない。


「んっ? どうしたんだ? 霞」

「……白銀さん……」

「なにかね?」

「こうなってはもう、一緒に寝る事は……難しいかもしれません」

「!? た、確かに……そうだなァ」

「えっと……そ、その……残念……でしょうか?」

「そりゃもう」

「……ッ……(相変わらず優しい人です)」


――――当たり前の事なので即 肯定するが、唐突 過ぎる質問に焦った。対して霞は再び目を丸くさせている。


「……霞?」

「でしたら……これを」

「うささん?」

「はい、うささんです」

「コレが ど~かしたのか?」

「それを私だと思って……置いてあげてください」

「!?!?」

「だ、ダメですか?」

「そんなワケ無いだろ? それ位だったら お安い御用さ」

「有難う御座います」


予想外にも霞からのプレゼント来たコレ!! コレを霞だと思う云々は築いたフラグを考えると冗談だろうが……

何時も侵入して来る時には決まって抱いて寝ていた、大切な"うささん"を貰って良いと言う事は俺が予想するに。

今後 純夏の復活の影響で霞と遊ぶ機会が少なくなるにしろ、それなりの関係で締めれたって事ではないだろうか?

正直 霞とは もう少し遊んであげたかったけど、原作と違い唯依や七瀬……そして悠陽との関わり合いに加えて。

もはや後戻り出来ない程のイベントを構築させてしまったので、結果 色々と時間が無く純夏の復活も早まった。

まァ人類勝利の鍵である"彼女"の復活が早い事は、精神の安定に余裕を費やせるって事で良い話なんだけど……

それはそれで霞や悠陽の様な娘との関わり合いが出来難くなるのは、過ぎた今から考えると残念かもしれない。

……とは言え全てを終わらせて俺が"そのまま"なら後に取り返せば良いので、こんな事を考えても仕方ないZE。

そんな無駄な事を思いながら受け取った"うささん"と視線(目の部分)を合わせると、ふと思うトコロが有った。


「(ウサギ? そう言やウサギとくれば――――)」

「…………」


≪魔法の言葉で~♪≫


「……ッ……」

「白銀さん?」


≪ガシンッ、ガシイイィィンッ! ガシイイイイィィィィン!!!!≫


「…………」

「あ、あの」


≪エイシィ~♪≫


「隊の名前……」

「????」


――――今思えば俺の部隊の名前(突撃機動部隊)はともかく、快速反応部隊はマイナー過ぎたかも知れない。


「"攻強皇國機甲"小隊とかも良かったかなァ?」(ぼそ)

「……何を言っているんですか?」

「えっ!? い、いや……こっちの話だよ」

「そうですか」

「じゃあ、モタモタしてるとアレだから早く支度を済ませて純夏の様子を見に行くとするかッ!」

「それが済めば次は元B分隊の皆さんに……」

「うん。アイツらに武御雷(黒)を御披露目してやるとするよ」

「……ッ……そ、それでしたら白銀さん」

「んんっ? 今度は何だい?」

「その"御披露目"と言うモノに……私も付いて行っても良いですか?」(チラッ)

「もちろんさァ☆」


――――この上目遣いを見た瞬間が"もうロリコンで良いや"と思った時である。故に再び即答なのであった。


「!?!?」

「……むッ?」

「(ま、まさか今のも"良い"と言ってくれるとは……思いませんでした)」

「霞さん?」

「(今迄 散々……白銀さんの"決意"に水を差す様な事をして来たのに……私は甘えてばかり……)」


≪――――じわっ≫


「ちょっ!? 何で其処で泣くのッ?」

「……ぅッ……」

「か、かかか霞。何か俺 悪い事したか? 何処か気に障ったんなら謝るからマジで!!」

「いえ……な、何でも有りません」

「モロに泣いちゃってんのにッ?」

「少し寝不足だったダケなので……気にしないでください」

「……むぅッ……だ、だったら良いんだけど……無理するなよ?」

「分かっています。では外で待っていますね?」

「あァ。直ぐに行くよ」

「(やっぱり私は……白銀さんの事を……? それよりも、付いて行くからには役に立たないといけません)」


≪――――バタンッ≫


あ、ありのままに起こった事を話すぜ!? 俺は今 霞の願いを肯定したと思ったら急に涙を流された……以下略。

う~む。実は言ってみたダケで……本当は俺と仕事をしたくなかったのか? 眠いって言ってたくらいだしね。

だったら今後からは即答するのは止めた方が良いかもね~。どう考えても気づくのが遅すぎだろうと思うけど。

しかしながら。彼女は(`・ω・′)←こんな顔をしていた為"やる気"は有る様なので、此処でキャンセルは不味い。

故に仕方無いので霞には今日の相方に成って貰う事にしよう……主に武御雷(黒)に詳しくない俺のカンペとして。




……




…………




アレから2時間後……先ずは霞と共に"安定してはいるモノの意識を戻さない純夏"の様子を見に行く事にしたが。

白銀の元々の性格も有るのか、先日が信じられない"眠りっぷり"を披露する彼女にイタズラしたくなったけど、
霞に遠まわしに止められて未遂で済ませた後……遅れた食事を済ませ今は"ある女性"と通路で向かい合っていた。

俺の隣に控えるウサギが珍しいのか、霞を若干 気にしながら"仕事"の報告をする人物は"伊隅 みちる"大尉だ。


「それで、今 榊達は何処に?」

「先程ハンガーに向かわせました。今頃は目を丸くさせているかもしれません」

「そりゃ~吹雪F型の後続機に"あんなの"が支給されるんですからね~」

「ですが驚いたのは私も同じです。まだ4日前に"あの娘"が"突撃機動部隊"に入ったばかりだと言うのに……」

「言うのに?」

「こうも白銀少佐に影響力と言うか……行動力が有るとは流石としか申せません」

「けど話を持って来てくれたのは副司令ッスよ。俺は殿下と会って食事をしたダケですって」

「は、はあ(……相変わらず読めない人ね)」


何故 彼女と会話をしているのかと言うと、最近まで元B分隊への"指導"云々は彼女が担当していたからである。

だが俺が武御雷(黒)を5機ゲットしてしまった事からA-01とは別の部隊を編成せざるを得なくなってしまい、
伊隅の口から"過程の途中だったが別の人物に指導を委託する事"を告げて貰い、こうして今に至ると言うワケだ。

千鶴達からすればマジで意味が分からないだろうけど、コレも俺が余計な事をした所為なのは間違い無いだろう。

そう考えれば驚かせて申し訳ない限りだが……原作の不知火より遥かに良い機体に乗れると言う事で勘弁してね!

また当然 伊隅ダケでなく多くの人達が武御雷(黒)の登場には驚いたらしく、元B分隊と成れば言う迄も無い筈。

故に今からハンガーに行った直後の事を考えると楽しみでも有るな。千鶴達と対面するのもトライアル以来だし。


「ところで大尉達の"調子"は どんな感じなんですか?」

「調子と言いますと?」

「シミュレーターの結果 的な意味でッスけど」

「……ふむ……そうですね……皆 先日(クーデター)でのS型の戦果に自信も付いたのか、上々と言った所です」

「具体的には?」

「以前の段階ではリスクの多い前衛役が毎回 何機か撃破されてしまう事が多かったのが最大の反省点でしたが、
 最近の攻略となると2回に1回は脱落者を一人も出さずに反応炉を破壊できる程にまで成長してくれています」

「ほほ~ッ。じゃあ近いウチに100%犠牲者を出さずにクリアできる様にしたいモンですね」

「勿論です。それが最前提であり、何より白銀少佐の"命令"でも有るのですから」




≪絶対に――――死なないで欲しい≫(29話 参照)




「HAHAHA。今思えば無茶な命令をしちゃいましたねェ」

「いえ。こうも希望を見出せた今や、易々と死ぬ訳には参りません」

「その意気です……伊隅大尉……」

「有難う社」

「……(私も人の事を言えませんけど……大尉が微笑む様子を見れるのも、やっぱり白銀さんの……?)」

「……って事で既に聞いてると思いますけど、実際にハイヴに潜るのも近いと思うんで頑張って下さい」

「承知しています。言ってはなんですが、委託の件も有りますしコレで私も本格的に訓練を行えますね」

「でもハイヴだけじゃ駄目ですよ? 突入前は当然 平地戦ですから、そのシミュレーターも忘れないで下さい」


――――自爆に巻き込まれる伊隅はともかく、特に要塞級に殺られた柏木は念入りに鍛えて欲しいトコロだ。


「仰る通りです。他の皆は"例の件"を存じませんから、平地戦の訓練を示唆する声も何度か有りましたし」

「なら言う迄も無かったですかね~?」

「とんでもありません。"白銀少佐が仰っていた"と付け加えるダケで皆の意気込みも変わりますから」

「俺の事(階級)を? ……成る程~ッ……」

「……(納得している? 御見通しと言う事かしら?)」


考えてみれば原作の伊隅は逃避していた白銀に講義も行いながら訓練をしていたし、過労ってレベルじゃね~ぞ?

だとしたら真那さんに千鶴達の指導を押し付けて、伊隅に余裕を持たせたって~のは正解だったかも知れないな。

第19独立警護小隊の皆様には申し訳ない限りだが……冥夜の存在から彼女達が乗り気だったのが幸いと言える。

さて置き。A-01の隊長である伊隅(姉)にはマジで期待しまくりなので、何か士気が上がる様な事を告げねば!


「……(だとすれば……原作から軽く拝借して……)」

「白銀少佐?」

「白銀さん?」

「……っと何でも有りません。ともかく伊隅大尉」

「は、はい?」








「約束ですよ? 必ず生き残って、一緒に基地に咲く桜を見ましょう」≪キリッ≫








「――――ッ!?」

「(伊隅大尉の感情が……乱れた?)」

「(う、嘘ッ? まさか白銀少佐も……"私と同じ事"を想って戦っているとでも言うの!?)」

「あれっ? どうしたんスか?」

「(それ以前に考える仕草が有ったと言う事は、私の考えていた事さえ既に察していたッ?)」

「伊隅大尉ってばっ!」

「あの……大丈夫ですか?」

「!? い、いえ……何でも。失礼致しました」

「ともかく返事を聞かせて欲しいんですけど?」

「……ぅッ……」

「(死ぬ直前に考えてた事を肖った台詞だし、何らかのフラグにはなったか?)」

「わ、分かりました。必ず最後まで生き残りますから……白銀少佐も無理をしないで下さいね?」

「と~ぜんですって。それじゃあ、俺達はコレで失礼しま~す!」

「あッ……はい」

「(詳しくは分かりませんけど……今ので伊隅大尉の"生きたい"と言う感情が、更に高くなったみたいです……)」


う~む、予定よりも伊隅(姉)の反応が薄かったな。こう言うのは"ここぞ"と言う時じゃなきゃ意味が無いのかッ?

ならば無駄に臭い台詞をゲロったと言う気恥ずかしさしか残らないので、俺は此処から逃げる様に去る事にした。

対して伊隅(姉)は無言&直立で敬礼しつつ俺&霞を見送っている為、背中に刺さって来る視線が痛かったとです。


「(まさか白銀少佐は"あの娘達"の様に、私をも意思を自分に向けさせる事で生への執着を持たせるつもり?)」

「(……でも……"もう一つの感情"については……深く考えない方が正解かもしれません)」≪チラッ≫


≪抜けられたのは5機……これ迄なのか?≫(41話 中編 参照)


「(確かに"あの時"の私は隊長で有りながら諦めが良過ぎた上に大きな隙を晒していた……そう考えれば……
 突撃機動部隊と同様に"次回の作戦"では重要となるA-01の隊長でも有る私に釘を刺すのも妥当と言える)」

「お~い霞ィ! 置いてくぞ~?」

「ま、待って下さいッ」

「(だとすれば素直に"乗ってみる"のも悪く無いかもしれないわね……望みは皆無だけど望むダケなら只だし)」


此処で何故か霞が一旦 伊隅の方を振り返って足を止めたので、何か彼女に思うトコロでも有ったのだろうか?

例えば最近はA-01の訓練の様子すら見に行ってすら無かったので、今の会話で来て欲しくなったとか……

そうでなくとも彼女達の方には佐渡島の攻略を考えれば必ず顔を出す必要が有るから予定に入れとかないとな。

でも速瀬&涼宮(姉)のマンセル攻撃が未だにトラウマに成り掛けてるから、行くなら行くで慎重にゆかないとね。




『年下のクセに馬鹿にしやがってよぉぉぉ!! 何が"へぇあ"よ平和でしょオラァァァ!!!!』




――――実際は俺の方が年上なんだけど、暴走した速瀬に"こんな事"とか言われたら流石にヘコみそうだし。




……




…………




……霞と歩みを進める事 数分後。俺達は千鶴達の所(ハンガー)に向かう途中での通路で赤い服の人と合流した。


「どうも。お早う御座います真那さん」≪キリッ≫

「おはようございます」≪ペコリ≫

「お、お早う御座います。白銀少佐」

「……って今は"この娘"が居るんで"月詠中尉"の方が良かったッスかね? すみませんでした」

「お構いなく」

「(むしろ満更でも無いみたいです)」

「そう言えば紹介が まだでしたかねェ? ほら霞」

「……社 霞です……よろしくおねがいします」

「は、はあ。此方こそ」

「主に戦術機の開発 云々を担当していましてね……S型やXM3も彼女が居なければ存在してないってトコです」

「!? それは何と言う――――」


本当はXM3やら新兵器やらよりも同等かつ"それ以上"の事にも関わっているんだけど、真那さんには言えない。

それ以前に霞をこうも人前に晒しても構わないんだろうか? 人見知りするって言うキャラも何処へ行ったんだ?

なんか ゆ~こさんも純夏が復活しそうって事で、霞に対する配慮すら俺に全部 投げている様な気がするし……

全くもうッ! もし霞が左近さんみたいな"凄腕"に誘拐されそうになったら どうするんだ? 俺じゃ守れないぞ?

まさか俺を護衛役で置いてるって事じゃないだろうな? いや流石にソレは無い以前に危険なら霞が察するだろう。

さて置き。やはり真那さんで有っても目の前の"子供"が有り得ない技術を持ってるって事に驚いているみたいだ。

まれに俺の傍や横浜基地に居るのを見た程度なのに、その辺の技術仕官よりも凄い"結果"を既に残してるんだし。


「やっぱ意外ですか?」

「え、えぇ……少々驚いております」

「HAHAHA。無理も有りません」

「……でも……」

「んっ? どした~?」

「白銀さんみたいな"有り得ない人"も居ますから……私なんて大した事はしていません」

「!? ……ふふッ……それは確かに一理 有りますね」


――――手の甲を口元に当てて微笑む真那さん。もはや最初に出会った時の面影は無いと言っても良いなコレ。


「2人とも酷ッ! それよりも真那さん」

「何か?」

「快く引き受けてくれたとは伺ったんスけど、本当に大丈夫だったんですか? 指導の件」

「はい。むしろ我々の知識と技術が僅かでも彼女達に……人類の反撃となる作戦に役に経つのであれば本望です」

「ふ~む……って事は少しは"作戦"の話を聞いてました?」

「僅かながらピアティフ中尉より。いずれ帝国の方からも通達が有るでしょうが」

「成る程~。ともかくソレ迄に最善を尽くすとするに限りますねェ」

「仰る通りです……と言う訳で、今後 宜しくお願い致します。社様」

「……え、えっと……私は階級を正式には貰っていないので……中尉にそんなに畏まって頂けなくても……」

「謙遜される事は有りません。貴女の成されている事は間違いなく私達の希望の糧となっているのですから」

「……ッ……」

「故に自信と誇りを持つ事で、いずれは部隊を率いる気持ちで……」

「ふ、ふじこ~ッ」


――――EXの如く優しい表情で言う真那さんに対して、此処で何故か俺の後ろに隠れてしまうウサギさん。


「社様……?」

「すみませんねェ真那さん。霞は少々 人見知りする性格でして(……直前まで忘れてたけど)」

「そうでしたか」

「あと褒められるのに慣れてないってのも有るかもしれません。まァ色々と訳有りって事で」

「……ごめんなさい」

「此方こそ出過ぎた事を申した様ですね」

「それほどでもない」

「其処で何で白銀さんが……応えるんですか?」

「お約束だから気にするな。じゃあ早速 冥夜達に紹介しに行くとしますか」

「はい(……つい白銀少佐と会話していると、今の危機的な状況を忘れてしまう……本当に不思議な方……)」

「(やっぱり私は白銀さんや香月博士 以外の人は苦手かもしれません……でも慣れる様にしないと――――


≪悪かった、寂しい思いをさせて。 だから、今度は霞も一緒に海へ行こう≫(相当 期待している様子)


 ――――鑑さんの事も有りますし、白銀"お兄さん"と一緒に居れる機会が更に少なくなってしまいます)」

「(そう言や"此処"に来てもう2ヶ月近くか……HDDの中身削除したいなマジで)」← 一方完全に忘れている白銀


何故か微妙に俺との歩く距離が近くなった霞と、すっかりキャラが変わった真那さんと3人でハンガーに来た時。

先ず目に入るのは数多くの戦術機が並んでいる光景であり……それらに目を移しながら更に歩くと目的地に到着。

言わずともながら5機の武御雷(黒)が納められているエリアで、予定の通り"彼女達"の姿も有ったんだけれども。




「ど、どう言う事なのよッ? コレって」


「何故5機もの黒い武御雷が……私達の"吹雪F型が有った場所"に有ると言うのだ……?」


「それに国連軍のマーカーが付いてる」


「はうぁうあ~……だ、だだだだったら……ひょっとして、ひょっとすると!?」


「それより、この武御雷ってF型に改造されてるみたいだねーッ?」




各々が武御雷(黒)を見上げながら、まるで初めて白銀を紹介された時と同じ様な顔をして心境を口々にしていた。

相変わらず空気の読めない事をヌカしている"美琴"でさえ、表情は普通に驚いており目を泳がせてしまっている。

そんな彼女達の洞察は当然 正解で有るので、俺が太鼓判を押す事により"半信半疑"を喜びに変えて貰わないとね!

よって俺が足を止めた為に空気を読んで待っている霞と真那さんの視線を感じながら、俺は足を一歩 踏み出した。


「みんな揃ってるみたいだな」

「えッ!? し、白銀少佐?」

「それに――――(月詠!?)」

「ともかく……敬礼な流れ?」

「はわわっ」

「足元に気をつけないと危ないよ~? 壬姫さん」

「敬礼っ!!」

「――――ッ」×4


すると(美琴も含めて)皆 予想通りのリアクションの後に整列すると、此方に敬礼するので俺も当然 真似をする。

一方 真那さんは言わずともながらだが、霞のギコちない敬礼がチラ見した限り妙に可愛かったのは予断として。

俺の言葉を待つ僅かな(整備音を背景とした)沈黙が、妙にギスギスして感じたので俺は再び暴挙に出てしまった。




≪パチンッ!≫




「……話をしよう」

「!?!?」×7




――――即ち"エルシャダる"と言う事であります。こうなったら、もう後戻りは出来ないんだぜッ!?(後悔)








●戯言●
今のウチに霞の好感度を上げておきます。んで早くて次。遅くても次の次には彼女が完全復活すると思います。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ57
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2012/08/02 01:56
これはひどいオルタネイティヴ57




2001年12月17日 午前




≪――――パチンッ!≫




「……話をしよう」

「!?!?」×7




指パッチン後(見た目だけ)真剣に口を開いた俺に対し、周囲の空気が重くなったのを感じた。

何故なら千鶴達5人(全員エロスーツ)は勿論の事 左右の真那さん&霞もカラダを強張らせたからである。

なんだよ~ッ、俺の行動はギャグでしか無いのに皆ノリが悪いなァ……って無茶振りは大概にして置こう。

俺の言葉に彼女達がどう感じようとも、肖ってしまったからには"肖り通す"しか無いのだから。

よって俺は少しだけ時間を取って考えて置いた台詞を、いま考えていそうなワザとらしい仕草で言う。




「この機体の開発計画の開始は1991年……いや、1992年だったか……? まァいい」




正直"瑞鶴"の後継機選定の開始が91年で、92年が"飛鳥計画"スタート故に どっちでも良いのだ。

……って、そんな事は斯衛の方達の前だと口が裂けても言えませんけどね。特に真横の人とかにも成ると。

尚 俺みたいなアホでも武御雷(黒)を手に入れる様に交渉した位だし、多少の設定や歴史は理解できている。




「俺にとっては つい昨日だが、この機体としての歴史が始まるのは多分……明日の出来事だ」




≪どやぁ……≫




「…………」×7




「(う~ん。新しい機体を乗るに当たって経緯の把握も大切だけど、それは二の次と言う事かしら?)」

「(成る程……既にタケルにとっては武御雷すら過去の機体か。だが相変わらず難しい事を言うのだな)」

「(良く分からないけど……私達に"あの機体"が配備されるって事で……間違い無さそうかな……?)」

「(はぅあう……た、たけるさんが紹介してくれるって事は……やっぱり憧れの武御雷を私達に?)」

「(あの武御雷~ッ、一機だけ頭に見慣れないアンテナみたいなモノも付いてるけど、何なのかなぁ?)」


「(ふむ。この武御雷は国連軍に属された事で、新たな歴史を踏み出した機体……流石と言う発想ですね)」

「(こうやって白銀"お兄さん"のお仕事の様子を見る事で……私も色々と学ばなければいけません)」


――――うわぁ。何だか皆 難しい顔をしてるじゃないですかッ! 深く考えなくて流してくれりゃ良いのに!!


「……と言う訳で本日を持って……元207B分隊長 榊千鶴 少尉」

「は、はいっ!」

「貴官を新たに設立する独立小隊"横浜基地・快速反応部隊"の小隊長に任命する」

「(か、快速……反応部隊ですって?)」

「榊ッ」

「返事」

「!? す、すみません! 了解しました! 謹んで御受け致しますッ!」

「結構結構(ナイスなフォローだ冥夜&慧)」

「そ、それでは……質問をさせていただいても宜しいでしょうか? 白銀少佐」

「良いぞ?」(心が寛大)

「有難う御座います。えっと……何故 私達の"吹雪F型が有った場所"に武御雷が有るのでしょうか?」

「大方 予想した通りだと思うぞ?」

「むぅ。だとすれば、やはり我々に――――」

「肯定だ御剣。"快速反応部隊"の設立に当たり、君達には黒の武御雷が支給される事と成ったんだ」

「!? で、でも~……コレって帝国斯衛軍の機体ですよ~? ちょっとやそっとじゃ手に入らないんじゃッ」


――――両手の肘を折り拳を握って言う"たま"。常識的に考えて一般人が思いつく当たり前の疑問だろう。


「……コストも……吹雪F型の比較じゃない筈……」

「それにボク達は最近まで訓練兵だったんですよ~?」

「(早い話 悠陽から貰ったとか)残念ながら詳しくは今 話せないが、榊達の実力も 然る事ながら、
 国連軍と帝国軍……互いに利害が一致して此処に配備されたとダケは言って置くよ。
 だから細かい事は気にせずに新しい戦術機……武御雷F型に慣れる事を考えた方が良いだろう。
 折角 吹雪F型に馴染んで来たってのに申し訳ないけどな。殆ど別の機体に感じるだろうし」

『……ッ……』

「尚 君達は現在 副司令の権限で(気は乗らないが)俺の即時対応部隊としての位置付けと成っている。
 場合によっては俺達"突撃機動部隊"やA-01と共に作戦を行う事も有ると思うから宜しく頼む」

『了解!!』

「そんな訳で。そろそろ気に成って仕方無いと思っている様だから紹介しよう。先ずは月詠中尉から」

「はっ!」


≪――――ザッ≫


「武御雷は国連軍の機体じゃ無い事から、流石に俺だと実戦を踏まえたアドバイスをするのは難しい。
 其処で第19独立警護小隊の"彼女達"が暫くの間、快速反応部隊に対しての講師役を担ってくれた」

「先日の作戦(クーデター)では こう言った機会すら有りませんでしたが、改めまして月詠真那 中尉です。
 今回は香月副司令の命の元、武御雷 操縦に関しての指導役を務めさせて頂きます。以後お見知りおきを」

『……!!』

「皆が違和感を得ている通り彼女は武御雷を提供した斯衛として、対等に近い形で接してくれる事になる。
 だから緊張を解いて指導を受けて貰って構わない。かと言ってダラける事は問題外なので頑張ってくれ」

『はっ!!』

「(め、冥夜様まで口をアングリとされるとは……)それでは続いて紹介致します。神代・巴・戎ッ!」

『…………』


――――真那さんが斯衛トリオの名を呼ぶと、気配を消していた3名が物陰から現れて千鶴達の正面に並ぶ。


「白銀少佐が"彼女達"と述べられていた通り、私の他 皆様も御存知の"この3名"も今回 指導に当たります。
 まだ若輩では有りますが武御雷に対する知識は深い故、分からない事が有れば何でも聞くと良いでしょう」

「宜しく御願いします!!」×3

「第19独立警護小隊の皆とは何度かシミュレーター訓練を行った事が有るが、当然 実力は折り紙つきだ。
 例の事件での戦果も記憶に新しいけど、全員が不知火S型 搭乗でハイヴの反応路 到達を達成している」

『……ッ……』

「だから其の辺についても遠慮なく知恵を授かっても良いだろう。今回は"そう言う空気"で遣れるからさ」


「(香月副司令は……そして白銀少佐は……本気で私達を戦力として活かす事を考えてくれているのね)」

「(まさか月詠達と この様な形で接する時が来るとはな……正直 複雑では有るが感謝せねば成るまい)」

「(任官したからには後には戻れないけど、この上ない待遇って所かな……? でも私は武御雷より……)」

「(ほ、本当に以前は触ろうとして怒られそうだった機体に乗れるんだッ! 不謹慎だけど楽しみだよ~)」

「(へぇ~ッ。月詠中尉って前は殆ど表情が変わってなかったけど、あんな顔も出来るん人だったんだね)」


――――配属変更・武御雷の支給・月詠さん達の指導。既に元B分隊の面々は驚くのを通り越している模様。


「まァ思う所は多々有るだろうが引き続いて。社 臨時少尉」

「はい」


≪コツンッ≫


「何回か姿を見た人も居るだろうけど、この社は副司令の元でXM3や新武装の開発の中枢を担っていた」

『!?!?』

「(思わず振り返ってる斯衛トリオも含めて)驚いちまうのも無理はないが確かな事だ。人は見かけによらない。
 他にも特殊な任務に携わってて姿を現す事は少なかったけど、今は落ち着いた為 会う機会も多く成る筈だ」

「や、社 霞です……先日 臨時少尉として任官しました……」

「けど見ての通り人見知りする性格だから優しく接してくれると助かる。皆と同期とも言えるから仲良くな?」

「ぅッ……」

『…………』


≪じ~ッ……≫


――――皆の凝視に霞の小さな背中が更に縮んで見える。後で頭撫でてやるから、もう暫く頑張るんだッ!


「!? ……よ……宜しく御願いします……」


≪ぺこり≫


『…………』

「少佐」←シュタっと

「何だ?」

「頭……撫でても良い?」

「ダメ」

「妬ましい」

「彩峰ッ!」

「はははッ。じゃあ引き続いて彼女に武御雷(黒)の概要を説明して貰おう。その知識の深さに驚く無かれッ」

『…………』

「それでは皆さん。今より白銀少佐に代わり……武御雷・国連軍仕様の説明を手短に行わせて頂きます……」




……




…………




――――よしわかった説明しよう。これは武御雷だ。




――――見ての通り継ぎ目すら無い、美しいフォルムだろ?




――――どんな素材で出来ているのか調べれば分かるだろうが……すまない。俺には興味が無いんでね。




俺が機体の説明役だったら必ず混ぜたい台詞だったが、そもそも知識が足りないので実現には至らなかった。

それにしても……約10分という時間だが霞がアレ程 喋ったのを見たのは初めてかもしれない。

先程の月詠さんの様に一人の人間と向き合うのは苦手っぽいが、仕事と割り切れば案外 頑張れる模様。

当然 説明していた内容には文句の付け様も無く、月詠さんでさえ感心した様に話を聞いていた。

F型に改造されている事で僅かに変わった仕様すら説明し、彼女達の指導に役立てる配慮も有ったからだ。


「……以上で お話を終わります」

「御疲れ様~。では社 臨時少尉に敬礼」

『――――ッ』

「……ふむ」

「どうしました? 中尉」

「いえ何と言うか……御見逸れしましたね」

「はははッ。そうでしょう? 自慢じゃ無いけど彼女は俺の100倍は頭良いッスから」

「……白銀少佐……本当に何の自慢にも成ってません……」

「言ってくれるな臨時少尉。ともかく今から各員 新しい機体のフィードバック・データ等の調整に移ろう。
 んじゃ榊と月詠中尉・御剣と神代少尉・珠瀬と巴少尉・鎧衣と戎少尉の組み合わせで作業に当たってくれ」

『了解!!』

「そんでもって彩峰は俺とだ。社少尉には端末越しで皆のフォローをして貰うから宜しく頼んだ」

「……はい」


俺の口から告げられた組み合わせで、皆がハンガーに佇む各々の武御雷のコックピットの中へと入ってゆく。

その際 冥夜と真那さんが一度 視線を合わせて複雑な表情をしていたが、コレは妥当な采配だと思っている。

幾ら階級の蟠りが抜けてるとは言え、今2人を合わせるのはクーデターで悠陽を冥夜と同乗させる様なモノ。

よって同じ小隊長ポジと言う事で千鶴と真那さんにしたワケで有り、皆も何となく察してくれているだろう。

さて置き。

俺と慧を一緒にしたのは斯衛の4人の性格だと、彼女を無難に相手に出来そうな人が浮かばなかったからだ。

……かと言って彼女は時と場合を選んで"白銀語"を使う事は分かっているが、まァ消去法と言ったヤツです。

戎とは口調の関係で何気に合う気もしたんだけど、慧と彼女だとポジションが正反対だから仕方無かった。

そんな事をトテトテと端末に走る霞の背中を見ながら思っていると、何時の間にか目の前に慧が立っている。


「…………」

「うぉおッ」


「何処見てるの?」

「おっぱい」


「!?!?」

「あッ、いや。聞かなかった事にしてくれます? いやマジで」


――――いかん条件反射でセクハラ発言してしまったが、慧は一瞬 瞳を見開くダケで直ぐに口元を歪ませる。


「相変わらずだね」

「な、何がだ?」

「そう言う冗談?」

「何故 疑問系……」

「いやね。私だし」

「納得」

「……でも」

「うん?」


≪じ~ッ……≫


「…………」

「どした?」


ぶっちゃけ相手が慧じゃ無かったら死活問題な発言だったと思うので、強化装備+おっぱいの魅力 恐るべし。

う~ん。唯依達で おっぱいには見慣れていた筈だったんだけど、極上の乳に対する耐久は未だに疎かの様だ。

特に築地のをリアルで至近距離で見たら前屈みは必至だろうからイルマ・オッパイで鍛錬する必要が有るな。

そう新たな決意を胸に秘めていると、慧は何か思うトコロが有るのか無表情で此方を眺めて来てたんだけど。


≪――――プイッ≫


「ちょっ!? 何そのリアクション!?」

「別に」

「……ってスタスタ行くなって!! 慧さ~んッ!」

「…………」

「や、やっぱり今のは癪だったんだろッ? 絶対そうだろ!?」

「今のとは違う」

「……今のと?」


≪――――ピタッ≫


「乗りたかった」

「んあっ?」

「カスタム」

「あ、あぁ~ッ……(納得)」

「トライアルで特に思った。私には"あの機体"しか無いかなって」

「だが大人の事情ってのが有ってだなァ」

「それは分かってる。其処まで馬鹿じゃない」

「そ、そうか」

「武は本当に凄いと思う。まさか"武御雷"が来るなんて」

「貰えたボクもビックリです」

「でも上手く活かせるのは御剣かな?」

「まァそう言う機体だし……って事は」

「差が埋まらない」

「!? お前……何気にライバル視してたんだな。冥夜を」

「意外だった?」

「今気付いた位だしな。つまり武御雷に乗れるのは嬉しいが、カスタムの件が潰れてモニョモニョすると?」

「その擬音はどうかと思う」

「ほっとけ!」

「でも胸に蟠りが有るのは確か」

「そのデカさだしな」

「……殴るよ?」

「すいませんでした。ちなみにスイッチ其処な? 大体は吹雪の管制ユニットと同じだから」

「分かってる」


一旦 足を止めた慧だったが直ぐ再度 歩み出しており、こんな会話を交わしつつコックピットに入ると。

彼女はシートに座って操作を開始し、俺は目移りしている慧に予習した記憶を頼りにアドバイスを送る。

それにしても慧が冥夜をなァ……千鶴との対立が早期に消えた事で、同じポジションのアイツを気にしたか。

他人に察せられる程には意識しなかった様だが、今思えば俺って他人同士のイザコザには無配慮だったなァ。

掘り返せば慧が冥夜に対抗意識を持っているみたく連携に影響しそうな事も出て来るかもしれないが……

彼女の件に関しては其処まで問題ない以前に癪な事は今 俺がフォローすれば良いとして、他はどうしよう?

支障が有りそうな問題児は俺が知る全ての衛士で考えても直ぐには出てこないので気にしても仕方無いかもな。

だとすれば優先されるのは慧のケアか……対抗意識の影響で実戦で無理されても困る為 ちゃんと行わねば。

思い出してみればトライアルで奇襲された時に踏み留まろうとしてたし、些細な事のようで違うかもしれん。

よって黙々と作業を始めた慧に対し、正面で屈んでいる俺は考えを纏めると彼女の手付きを目で追いつつ言う。


「正直な所 冥夜の剣技は完成されている。確か"無現鬼道流"だったか……免許皆伝でも持ってるんだっけ?」

「…………」

「その技術は既に戦術機にも活かされていて、吹雪F型でもモーションが再現される様にアイツは組んでいた」

「…………」

「機体が武御雷に変われば更に化けるだろう。反面 慧には腕は有るが技術が無い。使うのはテンプレ動作だ」

「…………」

「とは言えXM3の恩恵でバリエーションは増えたが何かが足りない。その考えを覆したのがカスタムだった」

「…………」

「即ち話を整理すると。武御雷が配備された事で暫くはコイツで戦う。でも冥夜の方が活かせそうなのが癪と」

「最近は御剣も射撃を多用するようになった」

「ほほぅ」

「…………」


――――未だに作業は止まらないが聞いてはいるのは間違い無い。この通り一度だけ返事も戻って来たしな。


「冥夜の長刀に射撃が備わり最強に見える……って事か」

「…………」

「其処でなんだが」

「…………」

「もし慧が習いたければだが。俺が考えたモーションってのを特別に教えてやっても良い」

「!?!?」


≪――――ずいっ≫(急接近)


「どわッ!?」

「ホント?」

「えっ? あ、あァ……冥夜みたく剣豪 視点じゃ無いけど衛士としての観点でって意味で良ければ」

「大丈夫?」

「其処でも疑問系かよ。まァそれを見て どう捉えるかは慧 次第ってトコだな。構わないか?」

「それで良い。だから見せて魅せろ早く今すぐ急いで。どんな動き?」

「いやいや。どっちみち此処だと無理だろ。シミュレーターのデータに俺が作ったモーションが入ってる」

「……ッ……」

「正直 変な動きだから誰にも見せて無いが、考えて見るとオマエみたいな衛士になら使える気がして来た」

「だったら何時になる?」

「なにが?」

「その訓練」


ぶっちゃけ俺が突発的に慧に御披露目してやろうと思ったのは、例のゲーム(戦●の絆)の攻撃モーションだ。

でも大半が普通の連続攻撃だが、中には格好良いモーションも有るので暇なときに適当に組んだヤツが有る。

その作成ソフトのMMDっぽいのを ゆーこさんに作って貰えないかと頼んだら、早い段階で組んでくれた。

其処で改めて ゆーこさんを変態だと思ったのは さて置き、平和になったら戦術機を躍らせるのも悪く無い。

……かと言っても、特殊なモーションを作ろうが俺に実戦で活かす度胸は無く観賞用に留めるつもりだった。

しかし慧が顔には出さないが悩んでるっぽかったので、何となく晒してみようかなと思ったら御覧の有様だ。

彼女は屈んでいる俺の正面まで来ると四つん這いになって俺の顔を見上げ、その距離は かなりの近さである。

凄い速さでの行動だったので、表情には殆ど変化が無いが彼女の必死さが窺える一面と言えた。

だが上目遣いな為にムダに可愛く見えてしまう自分が憎いッ! 背後からのプリケツ見るよりはマシかもだが。

……って慧に久し振りに萌えている場合では無い。

言ってしまったからには披露せねば成らず、忙しい身とは言え新たなイベントの開始としようか。

いや……純夏の事を除けば皆 優秀な為に訓練では多少 口を挟むダケで済むし、そうでも無いかもしれない。


「だったら今日の夜にシミュレータールームに来てくれ」

「夜に? 許可はされてないと思うけど」

「いやな。定期的に隊長クラスで行ってる訓練が有るんだ。最近 俺はサボってるけどな」

「良いの?」

「まァ俺の所為で始まった様なモンだから1度くらいは問題無いさ。其処でモノにしてくれると助かる」

「分かった」

「じゃあ調整に戻ろう。時間は待ってくれないぞ?」

「……武」

「何だ?」

「座って。其処に」

「へっ?」

「膝に座って遣る」

「なん……だと?」

「ちなみに"お触り"し放題」

「!?!?」


――――とは言え霞の(リーディングの)監視も有るので、気合で我慢する羽目に成ったのは言う迄も無い。




……




…………




……実機の調整にタップリ時間を費やして終えると、快速反応部隊+斯衛4人+俺+霞で昼食を摂った後。

未だに霞が付いてくる中 俺は唯依達と合流すると強化装備には着替えずウォーケン姉妹を横に指示を飛ばす。

何故なら俺は やはり病み上がりだったと言うダケでなく、自分が先行してしまうと上達し難いらしいからだ。

でも"頼もしいのは間違い無い"と皆 申し訳無さそうだったが、今は本調子に戻る為 無理せんで欲しいとの事。

まァ先日"あんな暴言"を吐いてしまった為 口実なのは確定的だろうけど、思い返すと最もな意見である。


■横浜基地 突撃機動部隊■

前衛:唯依・まりもちゃん・ライト

中衛:俺・フレア・ブリザ

後衛:イルマ・七瀬・伊隅(妹)


……大まかに分けて このポジション訳なのだが、昨日 後半の練習での俺の位置は前衛より更に前方での囮。

これは流石に遣り過ぎで有り、大人しく電卓の5の位置で努め様にも病み上がりをダシにされれば今に至る。

しかし殿下城でのヴォールク・データ&純夏とのバトルは体に堪えたのは間違い無く、素直に受け止めました。

七瀬を助ける為に兵士級を斬ったダケで唯依には結構 怒られたし、ヘタにバれちゃっても後が怖いからね。


「篁・神宮司中尉。ライト少尉が付いて来れてないから少し減速だ。彼女のフォロー役も遅れるし支障が出る」

『り、了解ッ』

『すみません』

『クッ……機体は動いてくれるんですが、逆に操作が追いつかないなんて……』

「大丈夫だ問題ない。あとフレア・ブリザ少尉は弾幕が多目かな? 擦れ違い"ついで"に撃つのも無駄になる」

『あちゃ~、間違い無いですねェ。アタシのミスです』

『うぅん……多分 私の所為。近くにBETAを見ると"つい"撃っちゃってたから、フレアも釣られて……』

「早いウチに改善してくれると有り難い。イルマ少尉は隙の大きい"ライフル"は緊急時以外 撃たない様に」

『04了解。構えての移動も段々と慣れて来た気がします』

「七瀬・伊隅少尉は独断では絶対にバズーカは撃たない事。指示の元 前衛の対ショックが整ってからだ」

『は、はい!!(何もかもが新鮮で理解が追い付かないけど、とにかく集中して……ひたすら奥へ潜るッ!)』

『うぅう……付いて行くのがやっとだよ~ッ』

「作戦開始から15分が経過。平均 弾倉消耗率2.5%……進行率は……」

「……ッ……」≪カタカタカタカタカタカタ……≫


正直 何となく気付いた他愛の無い事しか言ってないけど、素直に聞いて下さっている8名の皆様。

尚 真横のセレナ中尉は状況報告を行っており、更に横でテレサ中尉が凄い速さでキーボードを叩いている。

後者に関しては皆の為に以前の訓練との違いを纏めた報告書を作る作業の一環らしいが、指示してませんよ?

だけど彼女にとっては朝飯前らしく、受け取った俺は苦笑い……改めて天才の渦中に自分が居るのだと痛感。

また霞も唯依たちが訓練している様子を口を半開きにしたまま眺めており、とりあえず内線の番をさせている。


≪――――ガチャッ≫


「はい。此方 突撃機動部隊……現在訓練中です」

『あら? 社が出るとは思わなかったわね』

「……香月博士……」

『今 白銀は其処に居る?』

「外で皆さんに……指示を出しています」

『それなら好都合ね。ちょっと替わって』

「はい(……まさか)」


≪パタパタパタパタ≫(足音)


「突撃機動部隊 各機。人が持つ唯一絶対の力……それは自らの意思で、進むべき道を選択する事だ」

『……!!』

「だから皆は常に仲間にとって最良の未来を思い、自由に選択していけ……んっ? どうしたんだ? 社少尉」

「香月博士から内線です」

「マジでか? 直ぐ出る」


――――唯依達には悪いが俺はセレナ中尉と視線を合わせた後、内線の方へと駆けると受話器を手に取る。


『もしもし? 白銀?』

「あァ。やっぱり今回もダメだったよ」

『駄目って何が?』

「流してください。それで俺に何か御用で?」

『鑑が目を覚ましたわよ』

「う、嘘ォ!? 早~ッ!」

『耳元で五月蝿いわねェ……それに同意はするけど』

「前みたいに暴れたりしてないですか?」

『いいえ全く。今は其処のソファーでアンタの"ゆっくり"を眺めてるわ。あげないけど』

「か、替わって下さいッ」

『話が終わったら訓練に戻るなら良いけど、アンタと鑑。それで我慢できるのかしら?』

「だったら直ぐに行きます!!」

『よろしく~』


≪――――ダダダダダダッ≫


「そんなワケで社少尉ッ。副司令に呼ばれたから行って来る! シミュレーターの流れを勉強して置けよ?」

「わ、分かりました」

「セレナ中尉・テレサ中尉。皆には良い結果を期待していると伝えて置いてください。すみません急で」

「はい。行ってらっしゃいませ(……ご主人様。なんちゃって)」

「任せて置いて~!(でも……凄い剣幕だったけど何を話してたのかしら?)」




……




…………




2001年12月17日 午後


「彼女の頼みは断れないよッ! 上司は絶対だからネッと!!」


≪ガシューーーーッ≫


もう少し水先案内の大天使を肖ろうと思って張り切っていたが、呼び出されてしまっては仕方無い。

更に純夏が絡んでいると成れば蔑ろにするワケにはゆかず……俺は全速力で執務室を目指した。

そして自動ドアを潜れば ゆーこさんの言った通り国連軍の制服を着込んだ純夏がソファーに座っていた。

だけど"ゆっくりたける"は持ち主の近くに戻っており、連絡を取った事で素直に待っていた模様。

その純夏は俺が入室するや否や笑顔で立ち上がって此方に近付き、手前で立ち止まると両手を胸に言う。


「タケルちゃん」

「純夏ェ」

「えいっ♪」

「おっと」


≪――――ぎゅっ≫


「エヘヘ」

「目が覚めたんだな」

「うんッ」

「何処か痛む所は無いか?」

「まだ左手が少しダケ。でも殆ど大丈夫だよ」

「そうか」

「…………」

「んっ?」


――――純夏は暫くの間 抱き付いており俺は彼女の背中に片手を添えてたが、やがて視線が気に成ってくる。


「どうしたの?」

「見られてる」

「あっ!?」

「はいはい。御馳走様」

「コイツが空気読めて無くてスイマセン」

「ご、ごめんなさい!」

「別に謝る程でも無いわよ。とにかく復活してくれて良かったわ」

「有難う御座いますッ」

「いきなりセキュリティを抜けて此処に来た時は驚いたけどね。しかも第一声が"白銀に逢いたい"だったし」

「あぅうッ」

「まるで脳味噌ダケだった時と同じ思考じゃないですか~やだ~」

「そ、その方が普通に考えたら自然だもん!!」

「ともかく。予定よりも大幅に早く覚醒したって事で、人に戻った鑑に対しての環境が まだ整って無いわ」

「……って事は?」

「今の鑑は宿無しね」

「えぇえ~っ!?」

「アイツは最初から言う事を聞かなかった……俺の言う通りにして置けばな。まァ良いヤツだったよ」

「何でもう亡き者にされてるの!?」

「なんとなく?」

「酷いよ~ッ!」

「ふ~ん。やっぱりアンタ達って社が覗いてた通りの遣り取りするのね」

「ははは。何だか勝手に口が先走っちゃうんですよ」

「で、でも……まァ……此処でも"タケルちゃんらしい"んだなって安心できた気もします」

「計画通り」

「絶対ウソだ~っ! ……って何だよ その顔ーッ!」

「はいはい。そんな訳で暫く白銀に鑑を預けるわ。(再浄化が必要の)72時間以内には終わるから頼むわね」

「ゑっ?」

「殆ど無いけど私物は後で社にアンタの部屋に届けさせるわ」

「だったら一緒の部屋なんだ~ッ。よ、宜しくね? タケルちゃん!」

「……仕方無いね」(兄貴調)

「あら? 何だか顔は納得して無さそうだけど?」

「はい。主に純夏の寝相が心配かつ不安で……」

「えぇっ? わ、私って悪い方じゃないと思うけど?」

「冗談だ。何より今ので添い寝に抵抗が無いって事を理解させて貰った」

「!? タケルちゃんの卑怯者~ッ」


――――全く一つ一つのリアクションがオーバーなヤツだ。流石に現実なのでアホ毛は動いていないけど。


「話は纏まったわね? それじゃあ(浄化)装置の調整に行くから鑑の事は任せたわよ?」

「任せてください。お義母さん」(キリッ)

「殺すわよ」

「サーセン」

「最後に聞いたげるけど何か問い残した事は?」

「えっと。霞に付いてた"アレ"は純夏に適用されてるんですか?」

「????」

「なかなか良い質問ね……答えは"ナシ"だけど、其処を抜けてこそ鑑は"完璧"に成ると思ってるわ」

「納得。そんな訳で純夏。無闇に人の心を読んだりするなよ?」

「!? うんッ! 私どんな事が有っても絶対に読まないよ!!」

「アカン純夏ェ……それは失敗フラグや……」

「じゃあ今度こそ失礼するわね?」

「は~い」×2


≪ガシューーーーッ≫(夕呼退室)


「タケルちゃん!!」

「うわっ、びっくりした。何だよ?」

「そんなに信用無かった~? ちゃんと約束は守るよッ」

「結構結構。ところで純夏」

「な~に?」

「ゆ~こさんって相当な美人だよな?」

「えっ? そッ、そう……だね……」

「だが俺が頭の中で本当に"そう"思ってるかは分からないから気に成るだろ?」

「!? けど……其の手には乗らないもん」

「まァ言うだけ無駄なんだけどな。純夏が本当に"読んでる"かは顔に出さなけりゃ分からね~し」

「ソレはそうだけど……」

「ともかく気をつけてくれ。今の話は忘れて貰っても構わないよ」








≪――――でも夕呼先生の搾乳なら ちょっと見たいかも≫








「!?!?」


≪ドゴオオオオォォォォッ!!!!≫(ボディブロー炸裂)


「げふぅっ!?」

「な、ななな何て破廉恥な事を思っとるかーッ!!」

「……って純夏! たった今"読むな"って釘を刺したばっかりじゃね~かッ!」

「あッ。つい」

「"つい"じゃね~よッ! 安心して妄想したのに何て事しやがる!?」

「ご、ごめんね! ……って開き直らないでよ!! そんなの考えたタケルちゃんが悪いんだよ!!」

「問答無用!!」


≪――――ズビシッ!!!!≫(チョップ直撃)


「あいたーーーーっ!!!!」

「分かったか!? 妄想するのは誰の迷惑にも成らないが、人の心を勝手に読むってのは悪い事なんだッ!」

「うぐっ! そ、そうなんだけど今の気持ちを読んだら何となく殴らなきゃ駄目って思っちゃったんだよ!」

「其の御蔭で昼食ったモン全部出すトコだった だろうがッ! まァ今回は許してやるからマジ注意しろよ?」

「……ッ……わ、分かったよ……御免なさい」

「仕方無い許してやろう。じゃあ次の段階に進むとするか」

「どうするの?」

「互いの情報交換だ。勝手に脳味噌が覚えてる事が多いと思うけど、食い違いが急に出ると困るからな」

「色々と考えると頭が痛く成っちゃうんだけどなあ」

「その際は撫でて癒してやるから安心しとけ」

「!? ぜ、絶対だよ~ッ?」


俺は相変わらずオーバーなリアクションを続ける純夏とソファーに座ると比較的に長い会話を始めた。

その内容は後で語るとして、暫くは彼女と一緒の時間を過ごす事に成ってしまったでゴザルの巻。

だ、だとすれば早めに一線を越えて"安定"させちまう事も考えるとして……今はリーディングが曲者だ。

ワザと強く(ネタ的に冒険したが)ゆーこさんの事を想う事で、強引に純夏に"読ませて"釘を刺したが……

霞と同様 俺の浅い感情は読まれないみたいだが、冥夜達 繋がりでアンリミの濡れ場が出てしまうとヤバい。

それが伊隅(姉)・柏木の戦死に繋がって来るワケだし……此処は気合を入れて純夏を預からないと成らん。


「ところで純夏」

「なあに?」

「俺 夜にも訓練しに行くけど、今から部屋で待てるよな?」

「出来ればタケルちゃんと一緒に居たいよぅ」

「おいおい。例え話だが仕事に行く旦那を待つのは妻の務めだろ? 夜は一緒に寝て やっから我慢しろよ」

「むぅ……全くもう……仕方無いなァ~ッ。えへへへ」


――――口では"こんな事"を言ってるが、御気に召したか今の純夏の表情は緩みまくっていて普通に可愛い。


「だが夕飯は一緒に連れてってやる。突撃機動部隊の皆に紹介したいしなァ」

「うんッ!」←情報交換で把握済み

「コラコラ。此処(執務室)じゃ良くても外だと腕を組むのは禁止だからな? 他人っぽく振る舞ってくれよ?」

「やっぱりダメ?」

「良いか? 鑑君。俺は少佐様。純夏は階級証から見て叩き上げの少尉。ドゥ・ユー・アンダースターン?」

「は……はぁ~い」

「だけど純夏?」

「えっ?」

「"今度"はずっと一緒だからな?」

「も、勿論だよ!!」


――――こうして2時間程の情報交換の末。俺は唯依達に内線を入れると純夏と並んでPXへと向かった。








■戯言■
読者の皆様 大変長らく御待たせ致しました。1年以上開いてしまいましたが57話を投稿させて頂きました。
本来1年 経った時点でプロット(適当)は完成していたので執筆は開始していたのですが、やはり旨くゆかず、
何回か書き直した末ようやくマシな内容に成ったので掲載に至りました。楽しめなければ私の力量不足です。
ですが此処に来てようやく純夏を完全復活させるという目標の一つを達成したので少し安心もしております。
さて彼女の登場で直ぐにでも幾つかの波乱が起こってしまう事でしょうが、もう暫くの間お付き合い下さい。


■追記■
TEアニメ版1・2話のリハビリSS、ナイトソロで嵐山中隊護衛も宜しく御願いします。
ニコニコの宣伝動画→sm18426255



[3960] これはひどいオルタネイティヴ58
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2012/09/01 14:35
これはひどいオルタネイティヴ58




2001年12月17日 午後




≪コッコッコッコッ……≫


「純夏」

「うん」


純夏と並んでPXを目指す事 数分後。

特有の騒がしさと共に到着を察した俺は、一言 告げると彼女は浅く頷き一歩下がった位置で歩みを進める。

そしてPXへと到着するとピークは過ぎていた為か其処まで人は多く無く、席の埋まりは6割程だった。

しかし唯依たちの姿は無いので席の周辺に目を移してみると、広い空間の隅に11名の女性達の姿が有った。

ウチいち早く俺に気付いたのは唯依&まりもちゃんで……此方が発見した時には既に近付いて来ている。

それに続いて他の娘達も寄ってくるワケなのだが、彼女達の後方を見てみると。

何故か霞はブリザと手を繋いでおり、トコトコと歩み寄って来るのが可愛く見えました。


「こんばんわ。白銀少佐」

「訓練お疲れ様、篁中尉。経過は順調だったかい?」

「恐らく滞り無くは。詳しくはテレサ中尉が報告書を作成されるとの事です」

「把握。じゃあ大まかな話は食事をしながら聞こうか」

「はいッ! ……あッ……?」

「(見慣れない鑑さんの存在で……皆さんの心に疑問が走ったみたいです……)」


――――さて置き。

俺&純夏の前まで来た面々は当然 最初は俺ダケに注意を向けていた。

よって"もう一人"の存在に気付いた時には、既に注目は自分にでは無く純夏に移っていた。

それに対して俺はワザと首を傾げていると、おずおずと唯依の横のまりもちゃんが口を開いた。


「あ、あの。白銀少佐」

「何だい? 神宮司中尉」

「其方の者は?」

「まァ気に成るよな? では自己紹介して貰おう。鑑少尉?」

「はいっ!」


≪――――ザッ≫


「(こ、これが……"あの"鑑さん? 何て"らしい"感情……)」

「始めましてッ! 私は本日より国連軍 横浜基地に着任した"鑑 純夏"少尉です!!」

『!?!?』

「皆さんと配属は違う部隊に成りますが、精一杯 務める所存ですので今後 宜しく御願しますッ!」

「述べての通り、鑑少尉は伊隅大尉ら"A-01"にゆく事が決定している」


――――打ち合わせ通りキリッとしている純夏の方を向いて、そう俺が言うと次はライトが口を開いた。


「白銀少佐。何故 彼女を私達に紹介されたですか?」

「うん? 何が疑問でも有るのかい?」

「い、いえ。個人的に興味が有ったダケです。すみません」

「謝罪は別に必要ないけど……早い話 鑑少尉は今後 人類の"切り札"に成るとも言える存在だからだ」

『!?!?』

「だから必然的に知る以前に近い内に作戦を共にする事にも成るだろうしで、紹介するに越した事は無いさ」

「お、おいッ! 切り札って……」

「どう言う意味なんだろう……?」


――――驚きで言葉が出ない模様のライトを尻目に、フレアとブリザが顔を見合わせて首を傾げている。


「白銀少佐ァ~?」

「おっと口が滑ったか。悪い鑑少尉。皆 流石に気に成るだろうが流してくれ。詳しくは機密だからな」

『…………』

「では突撃機動部隊の皆にも自己紹介をして貰おうかな? 右から順番に良いかい?」

「わ……私から……ですか?」

「肯定だ。社臨時少尉」


純夏のチートっぷりを仄(ほの)めかしたのは半分ワザとだが、別に そんなの関係無ェ!

スサノオ搭乗 云々では色々と誤魔化す必要が有りそうだし、そもそも嫌でも注目度は上がるだろうからな。

……とは言え原作では佐渡島 攻略時は純夏の存在はシークレットだったけど、今 考えれば良かったのかな?

特に何も言われなかったので普通に一緒に行動して自然に紹介してしまったが、早まった可能性も有る。

だが純夏には人間らしい扱いをされて欲しいし、唯一ラザフォード場を制御 出来る天才とすれば良い筈だ。

まァそれも置いておいて。

突撃機動部隊の皆と純夏を赤の他人で終わらせる気は無いので今度は唯依たちにも名乗って貰おう。

尚 並び順は右から霞・伊隅(妹)・七瀬・フリザ・フレア・ライト・イルマと続いている。

即ち最初に自己紹介をするのは霞で有り、意外にも今の純夏と彼女の面識は無かったりした。


≪――――コツッ≫


「社 霞……臨時少尉です……技術仕官と言う役割を担っているので……戦う事は出来ません……」

「……ッ……」

「(……純夏?)」

「(タケルちゃんの話によると"脳味噌"だった私に色々と声を掛けてくれた……私の恩人とも言える娘)」

「……宜しく御願します」

「(やっぱり読もうとしてるのか~?)」

「(私と同じ能力を持ってるらしけど……とにかく可愛いなァ。でもタケルちゃんを どう思ってるんだろ?)」


――――"宜しく御願します"とギコちない敬礼をした霞に対し、純夏は何も反応しないので俺は声を掛ける。


「ゴホン。鑑少尉~?」

「あッ……こ、此方こそ宜しくです!」

「それでは続いて頼んだ」

「はいっ! ボ……わたしは伊隅 あきら。階級は少尉。ポジションは制圧後衛です!!」

「伊隅はトライアルでの実力が評価され、香月副司令の鶴の一声で13日付で当部隊に配属となった」

「き、恐縮ですッ」

「…………」

「尚 横に居る"彼女"も同じタイミングで突撃機動部隊に加入している。ポジションも同様だ」

「(何だか良く分からないウチに国連軍に移されちゃったんだ。でも今は充実してるみたいだね)」


――――純夏は今度は伊隅(妹)をネットリと見つつ無言で敬礼を返したが、一応 俺はスルーして次を促す。


「……っと紹介は本人に任せるべきだったね。良いかい?」

「はっ! 私は"七瀬 凛"少尉。以前は帝国軍に所属していましたが、現在は国連軍の恩恵で此方に居ます」

「はい。詳しい話は白銀少佐から聞いています」

「そ、そうですか(……其処まで白銀少佐が話されていると言う事は、やっぱり只の少尉では無さそうね)」

「(へぇ~。タケルちゃんに助けて貰ってから、彼を今は亡き"お兄さん"に重ねてるんだ)」

「ちなみに七瀬は斯衛の"赤"としての立場も有るからモメ事は起こさないように」

「起こしませんッ」

「結構。じゃ~どんどんイこう」


――――今と関係の無い話だが、七瀬が国連軍に移った直後は彼女の身内が多少 横浜基地を出入りしていた。


「わ……私はブリザ・スリーブス少尉。カナダ出身です。ポジションは強襲掃討を担わせて頂いています」

「(この人も"お兄さん"がユーラシアでの戦いで死んじゃってるんだ……後 背の低いのを気にしてるみたい)」

「ちなみにブリザ少尉は社臨時少尉が"お気に入り"らしいね?」

「あうッ。す、すみません」

「いやさ。彼女は人見知りする性格だから、仲良くしてくれて有り難いって意味だよ。そうだろ?」

「はい……ブリザ少尉は……優しい人です……」

「か、霞ちゃんッ」


初対面でブリザに抱き付かれた霞だったが、"読んで"みても悪意は皆無で守りたいって感情が強かった事から。

俺との意図しない(下着姿で侵入して来るって意味での)スキンシップも有ってか、今は満更でも無いらしい。

よって今の発言をした霞だったが、ブリザが感動してテンパっているので横のフレアが一歩踏み出して言う。


「そんでアタシはフレア・フレイドル。同じく少尉で強襲掃討。ブリザ・ライトと同じで米軍に居たんだ」

「フレア少尉は見てくれは全然 違うが、ブリザ少尉と共に中衛としてブレの無い援護をしてくれる」

「アタシとブリザの持論なんだけど……ポジションの動きが統一されてる方が、味方が動き易そうだからね」

「な、成る程~」

「あとブラジル出身だから踊りの事なら任せてよ。鑑少尉はダンスとかは遣るのかい?」

「やらないです……(何だか軽いノリだけど、家族から勘当されて迄 生きて戻る事を誓って軍に入ったんだ)」

「はははッ。いずれは披露して欲しいモンだね」


――――此処で少し明るい雰囲気に成った事が若干 引っかかったのか、今度はライトが前に出て口を開く。


「さて続いて名乗らせて頂きます。私はライト・ラーニング少尉。ポジションは突撃前衛です!」

「よ、宜しく御願しますッ」

「ライト少尉のポジションはラプターの事も有り本来後衛だったが、適正 通り前衛に変えたら化けてくれた」

「今は機動性に劣る不知火の反面 新OSの恩恵も有り少々戸惑っていますが、精一杯 務めている所存です!」

「(凄く元気そうに見える人だけど……故郷のフランスでは全てを失ってる)」

「彼女の真面目で誠実な所は、俺ダケでなく横浜基地の人間も見習うべきだな。そんじゃ~次いこう」

「(出身地を名乗らないって事は聞くだけ野暮って事だよね? それに……私も負けないようにしなきゃ)」


≪――――コツッ≫


「イルマ・テスレフ少尉です。ポジションは"ライフル"による砲撃支援。フィンランド出身です」

「(故郷は消えちゃってるけど……家族の人達が無事か逆かで、少しの違いは有るんだね)」

「彼女はワケ有りの加入となったが、詳しい話は差し支えの無い範囲で鑑少尉には話している」

「そ……そうですか」

「(その際"タケルちゃんに遣ってしまった事"は凄く後悔してるみたい。顔には余り出してない様子だけど)」

「七瀬少尉の事情と同様 話してしまっているのは彼女が"それだけ"の位置付けと言う事を理解して欲しい」

「分かりました」

「ゴホン。では続いて神宮司中尉とゆきたい所なんだが……」


コレで霞・伊隅(妹)・七瀬・ブリザ・フレア・ライト・イルマと少尉7名が紹介を終えた所で。

残りは まりもちゃん・唯依・テレサ・セレナの中尉4名と成ったワケなんだが……

先程からコロコロと表情を変えている純夏の様子を見ると、こりゃ絶対に間違い無いんだZE。

純夏は彼女達の心を無意識ウチに読んでしまっており、それを本人自身が違和感を得てないっぽい。

それに対して純夏の表情の変化に、唯依たちは初対面による緊張の為だろうと妙には思ってない模様。

つまり(当たり前だが)俺にしか分からない違和感なのだが、即効で誓った事を破りやがって……!!

コレは"慣れ"or"頭のアレ"が無いと恐らく勝手に読んでしまうのかもしれんが、コレ以上 読まれるのは拙い。

次に控えている4人……皆 付き合いが長いと言う事で、純夏に話してない俺の汚点を知られる可能性が有る。

だが霞は(詳しくは知らないけど)頭のアレが色々と防いでいるみたいなので良いとして。

特に唯依には怒られてばかりなので、純夏に良い男でキメていた俺のイメージを壊されてしまうではないかッ。

思えば まりもちゃんのオッパイにダイブしたり唯依の頭を撫で回したりも してるし……早急に対策せねば。

よって純夏には"勝手に読んでた"と言う非も有るしで、まりもちゃんの紹介の前に行動に出る事にした。

まりもちゃんが前に踏み出そうとする前に、俺が唐突に霞の方にへと近付いたのだ。

対してウサギさんが大きな瞳をパチクリとさせながら、意外な行動をした俺を見上げて呟く。


「……白銀少佐?」

「社臨時少尉。ちょっと来るんだ」

「は、はい」


――――何時に無く真剣な俺の(意図的な)表情に、霞は素直に後を追い6~7メートルほど皆と離れた。


「良いか? 霞。正直に答えてくれ」←以下小声

「????」

「純夏は……今の紹介でイルマ少尉達の感情を読んでたのは間違い無いな?」

「……ぁッ……そ、そうだと思います」

「有難う。それじゃ~社臨時少尉。元の場所に戻ってくれ」

「り、了解しました」


霞が小走りに伊隅(妹)の横にへと並んだのを見届けつつ、俺も純夏の方へと戻ると今度はコイツを見下ろす。

しかし やっぱり"読んでしまった"と言う自覚は無いのか純夏もウサギと同様 首を傾げているダケだった。

ちなみに霞に確認したのは"念の為"であり、万が一読むのを自粛していたらマジで申し訳無い為である。

……とは言え余計な配慮だった様で、此処は俺の名誉の為にも皆の前で純夏にオシオキするしか有るまい!?


「あの……白銀少佐?」

「少し紹介は待ってくれ。神宮司中尉」

「は、はあ」

「どうしたんですか~?(何だかタケルちゃん怖い顔してるけど……)」

「…………」
















■白銀 武■


必殺技表

アームロック 236P

アームロック 623P

アームロック 214K


超必殺技(2ゲージ消費)

アームロック 236236P

アームロック 214214K
















「きゃっ!?」

「……ふんッ」


≪――――ばっ≫


特に意味は無いが とりあえず上から2番目辺りにして置こうと思いつつ、俺は素早く純夏の腕を取る。

そして技名通り"アームロック"を掛けるべく動くワケなのだが、純夏は意味が分からず殆ど無抵抗だ。

まァ仕方無いので御愁傷様と心の中で詫びつつ、ネタ故に"このように悲鳴を出せ"と心の中で強く願う。


≪――――ギュッ≫


「が!? がああああッ!!!!」

『!?!?』

「痛っイイ!! お、折れるぅ~ッ!!」

「…………」←力量 追加

「がああああぁぁぁぁーーーーッ!!!!」

「し、白銀少佐……それ以上は いけません」

「……ふむ」


――――此処で十分満足のゆく純夏の絶叫が聞けたのと、霞の方からも念じた台詞が聞けた事で腕を離した。


「はぁ、はぁ、はぁ……アイタタタ……」

「うわぁ~ッ♪」

「テレサ……涎 拭きなさい……」

「あのッ。白銀少佐……な、何故 鑑少尉に其の様な仕打ちを?」

「篁中尉。彼女は皆が自己紹介していたと言うのに、落ち着きが無く目を泳がせてただろ? 当然の処置だ」

「(そ、そうだった……此処は2人ダケの時とは違って皆の目が有る。故にケジメを付けるのは必然だった)」


≪……も、もっと……撫でて……くださいッ……≫(36話 後編 参照)


「(なのに私は周囲の事を考えずに武さんに夢中だった事が……でも彼は周囲の気配で良しとしてくれたのね)」

「そんな訳でだ。少しは頭が冷えたか? 鑑少尉」

「うぅぅぅ……は、はいィ~ッ……すみません」

「良いか? 自己紹介する時はな。誰にも邪魔されず自由で……何と言うか救われてなきゃ~ダメなんだ」

「!?(そ、そっか……やっぱりタケルちゃんには分かってたんだ……だから怒って私に"お仕置き"した)」

「独りで。静かで。豊かで……ブツブツ」

「……(そうだよ。数え切れない程"繰り返した"タケルちゃんは言葉の重みが違う。気を引き締めなきゃ)」


――――当然の如く純夏が痛かった場所を撫でつつ訝しげな視線を向けるが、原作でも意味不明だし無問題。


「そんなワケで脱線して済まなかった。神宮司中尉。注目も集まったし後は手短に頼むとしよう」≪キリッ≫

「り、了解っ! ……私は元横浜基地・衛士訓練学校・教導官"神宮司まりも"であります」

「彼女は更に以前は帝国陸軍大尉で中隊長。19歳で富士教導団に抜擢された経緯を持つエリートだ」

「以後 宜しく。鑑少尉(エリート……白銀さんに比べたら私なんて……やっぱり中尉として精進しないと!)」

「はいッ(絶対に……見ない……見ない……見ない……)」←白銀の無意識にフラグ超回避の図


「私は帝国斯衛軍"篁唯依"臨時中尉。突撃機動部隊の副隊長を務めさせて頂いています」

「クーデターの際は俺の変わりに努めてくれてたよ。尚"特別任務"に関しては既に大体説明している」

「そ、そうですか(切り札 鑑少尉……七瀬の時に違和感を感じたけど、やはり普通の少尉とは違う権限が?)」

「宜しく御願しますッ」

「…………」←無言で敬礼を返す唯依


「続きまして私はセレナ・ウォーケン。アメリカ出身。オペレーター担当で階級は中尉です。お見知り置きを」

「そして妹のテレサ・ウォーケンですっ! 同じくオペレーター。応援しか出来ませんけど頑張ってま~すッ」

「2人は主に訓練・実戦 問わず"突撃機動部隊"の管制役を担ってくれている」


――――個人的には原作キャラのイリーナちゃんでも良かったけど、純夏の関係で忙しいっぽいんだよね彼女。


「尚BETAとの実戦……作戦の際は私かテレサのどちらかが"快速反応部隊"の管制を行う予定です」

「現在 講師を担当している月詠中尉達との情報交換は欠かさず行う事にしていま~す」

「本来は片手間に出来る事じゃ無いと思うけど……其処は2人は優秀って訳だから宜しく」

「了解(この人達も気になるけど……見ない……見ない……見ない……)」

「そんなワケで。もう堅苦しい空気は仕舞いにして、皆で食事に移るとしようか」

『はいっ!!』

「(ゴメン……ゴメンね? タケルちゃん。今度こそ気を付けるから、私の事を嫌いにならないで……)」


未だに周囲の衛士や整備兵etcの注目が止まない中、俺は努めてスルーするとスタスタとカウンターに向かう。

そうすると純夏を含め若干 遅れて皆 俺に続き……背後には以外にも純夏では無くて唯依が居るようである。

まァ"いつもの"ポジションなんだけど、純夏の足取りが重そうだったのは流石にアーム・ロックが効いたか?

……かといって自分で他人の様に振舞えといった手前、此処でフォローするのは難しいので後で謝るしか無い。


「オバちゃん こんばんわ~ッ」

「あァ武。今日も遅かったね? 何にするんだい?」

「そうだな……何か"最近のおすすめ"とかホワイトボードに書いて有った合成"餡かけチャーハン"で」

「餡かけチャーハンだって? 悪いねェ。ソレは一日100食しか無いんだよ」

「!? が~んだな……出鼻を挫かれた」

「何なら予約して置くかい? 明日食べるならだけど」

「予約するッ! そう言うのも有るのか」


――――本来なら"お持ち帰り"と言いたかったドコロか対象は霞か"たま"にしたかったが どうでも良い話だ。


「それなら決まりかい?」

「いや~、俺だけ贔屓するのは拙いでしょ。聞かなかった事にして置きますよ」

「武が そう言うなら仕方無いね。だったら改めて何にするのさ?」

「一発 焼肉でも入れていくか。ンじゃ豚肉定職で。そして豚汁も良いけど……此処はナメコ汁で決めよう」

「あいよ~ッ! なら唯依ちゃんは どうするんだい?」

「わ、私も同じモノで御願します」

「あはははっ。そう言うと思ったよ」

「早く御飯 来ないかなぁ? 焼き肉といったら白い飯だろうがッ!」←肖ってるダケ

「それにしても武は元気そうだねェ……何か良い事でも有ったのかい? 唯依ちゃん」

「さ……さあ?(可能性が有るとすれば鑑少尉が絡んでそうだけど……今は様子を見たほうが良さそう……)」




……




…………




……1時間後。


「ぃよう」

「ばんわ」

「早速 行くとすっか」

「うん」


何時の間にか俺のポジが電卓の5に固定されていた事を妥協しつつPXで情報交換しながらの飯を終えると。

唯依たちに朝は"くれぐれも"部屋の前に来るなと遠回しに命令し、無難に解散すると自室で純夏と落ち合う。

そして部屋に付属して有る(ゆーこさんに半ば強引に押し付けられた)デスクトップ・パソコンを純夏に見せる。

つまり俺が訓練から戻って来るまで、勝手に(随時更新して)放り込まれているデータを回覧させるのだ。

反面 俺は窓みたいな神OSが無いオルタ世界の現状 操作しても面白くも何とも無いので只の箱である。

だが純夏は問題なく操作 出来るから問題無く、俺は素直にメモ帳(アプリに有らず)を愛用しましょうかね。

さて置き。

例の(昼寝したり速瀬に襲われたりした)給水装置の横の長椅子に座っていた慧と待ち合わせをした俺は。

今現在 無難に彼女と合流でき、善は急げと並んで早足にシミュレータールームを目指していた。


「そう言えば午後はどうだったんだ?」

「教室で講義かな……質疑応答メインの」

「成る程。概要は霞が教えてくれてたしなァ」

「かすみ?」

「おっと口が滑った。まァ立場上 多少は仲が良い関係だとは言って置く」

「妬ましい」

「その台詞 好きだよなオマエ。それより どうだったよ? 武御雷は」

「良い機体だよ。(実機でも仮想でも)どっちでも良いから……早く動かしたいのが本音?」

「今回は流石に不知火S型で遣るけどね」

「別に構わない」

「謙虚で結構」

「……ども」

「そんな訳で到着……ってアレ?」

「筐体は動いてないけど……(明かりが点いてる?)」


≪――――コツンッ≫


最近は忙しくて出ていないが、噂によれば まりもちゃん・イリーナちゃん・伊隅(姉)・涼宮(姉)・速瀬。

この5人は俺が居ない時でも、余裕が有る時は自発的に集まって夜の訓練を行っていたらしい。

だけどクーデター以降 疲れも有るだろうし、流石に誰も追加の訓練は行っていないと思われたが……

静かでは有るが電気が落ちておらず人影を発見でき、俺達の足音で"其の人間"も此方に気付いた様だ。

尚その人物は僅かに点いた照明の中、机の前に座り(持ち運び出来るが重い)ノートパソコンを叩いていた。


「!? し、白銀少佐?」

「イリーナ中尉だったんスか。こんな時間に此処で何を?」

「そ、それはッ」

「どう言う事?」

「其処で不機嫌そうに成るなっつーの。取り合えず時間が勿体無いから着替えて来い」

「……武は?」

「俺は必要ない」

「別に一緒に着替えても良いよ?」

「グッ……却下。さっさと行けっつーの。俺はかーちゃんの奴隷じゃないっつーの」

「意味不明」

「自分でも そう思ったから此処は流してくれ。はいはい。さっさと行く」

「(妬ましい)……了解」


――――慧の不意打ち発言で苦しい事を言ったが、彼女の背を押して着替えを促すと残ったのは2人ダケだ。


「ウチのアホが失礼しますた。それで何を?」

「えっと……いざ訓練を行おうとした時に私の様な者が居なくては不便だと思ったので……」

「!? そ、それって毎日此処で待機していた様に聞こえるんスけど!?」

「大体 当たっているかと」

「マジっすか。神宮司中尉からはクーデター以降は行って無いって聞いてたんですけどねぇ?」

「私が勝手に待っていたダケに過ぎません。生憎 残った仕事を片付けるにも問題無い環境でしたから」

「とは言え最近の流れだと、話を交わさずとも暫くは"お休み"して置くのが定石だったと思うんスけど」

「間違い……有りませんね」

「……っと毎晩 待機しててくれてたのに"こんな事"言うのは失礼だったか。面目無い口が滑りました」

「気にしないで下さい……でも……本当は……」


――――この時点でイリーナちゃんは俺の正面に立っているが。どうしてか急にモジモジし始めました。


「本当は?」

「い、何時か白銀さんが此処に来てくれるかもしれない……ソレが理由で待っていたのかもしれません」

「ゑっ!?」

「……ッ……」

「じゃあッ。まさか此処に居たのは、俺が来るかもしれない"可能性"が有ったからだって言う事ですか?」

「は……はい。お互いに遣る事も有るでしょうし"この様な機会"で無ければ"まとも"に会えないと思いまして」

「イリーナ中尉なら簡単に予想 出来るかもしれませんけど、俺が来る確率は凄まじく低いってのに?」

「それでも不思議と構いませんでした。よって私の足は"この時間"に成ると自然と此処を目指していたんです」

「さ、さいですか」

「御迷惑……でしたよね?」

「いやいやッ! とんでもないですって。ワザワザ俺の為に申し訳 無かった感が強いです」

「有難う御座います」

「考えてみればマトモに有ったのは殿下に会いに行った日 以来でしたよねェ?」

「はい。それと お話し出来たのは同日の夜の電話が最後です」(52話 参照)

「ふぅ~む(毎朝 来てくれてたし……たった3日がヤケに長く感じるモンだな)」

「白銀さんッ」

「えっ? 何です……うぉっ!?」


≪――――ぎゅっ≫


「……ッ……」

「イリーナ中尉!?」

「すみません……少しの間だけ……」

「り、了解ッス」


まさかの登場&あまりの忍耐に驚く中、イリーナちゃんは唐突に俺の胸に飛び込んで来ました。

冥夜や唯依の様に胸の質量は左程 感じないが、俺が女性に抱き付かれて股間が疼くのは何時もの事。

――――うおォン!! 俺は まるで人間火力発電所だッ! ……そんな冗談はさて置いて。

只 黙って自分の胸に顔を埋めている彼女の顎を浮かせて、以前みたくキス☆もしたくなった俺であったが。

純夏の存在を考えれば少なくとも彼女とベッド・インする迄は流石に迂闊な事は出来ないので自重しよう。

よって お友達とのスキンシップは進展させず、彩峰が着替えている時間ひたすら微動せず興奮を抑える俺。


「(今は こうしていたい。久々に2人きりに成れた事で……私の気持ちを察してくれたんですね……?)」

「(手が何も出せないとは最悪やでカズヤぁ……!! しかも脳内音響の曲が"夕暮れ"なんですけど!?)」


≪――――イイィィン……≫


「あッ……」

「(静かだし自動ドアの音で直ぐ分かるのが幸いだったか)そろそろ離れましょう」

「……分かりました」

「じゃあ続きは"また今度"って事で」

「!? は、はいッ」←フラグ継続

「戻りました」

「早かったな。それじゃ~早速始めるか」

「御願します」

「イリーナ中尉は今回は俺一人で平気なんで、もう戻って貰って良いですよ」

「(此処で野暮はダメね……)畏まりました。電源の切り忘れには注意して下さいね?」

「気を付けます。それと皆 忙しいって事で"この時間"の訓練は終了させて下さい」

「("また今度"と言ってくれたし)白銀さんが そう仰られるので有れば、特に問題は無いかと」

「そうッスか。じゃあ御疲れ様でした~ッ」

「では失礼致します」


――――ペコリと頭を下げて立ち去るイリーナちゃんの背中を見送ると、俺は彩峰のへと向き直った。


「それじゃ~ビシビシ行くから覚悟しとけよ!?」

「……ぽっ」

「其処デレる所 違うッ! それ以前に今のはノリだから気楽に遣ろうぜ?」

「分かった」

「先ずはモーションを魅せてやる。ガッカリするなよ? ……って何処にデータ入ってたっけなァ……」

「(やっぱり着替えてないのは"負担"に成るから? なのに教えてくれる……流石に邪はダメかな……?)」


今イリーナちゃんに抱き付かれて分かったが、やはり此処は着替えなくて正解だったかもしれない。

流石に筐体内の密室で"完全に2人きり"って成ると、彼女に我慢できるかマジで自信ないからな~。

よって俺はイリーナちゃんを意図的に戻らせ、自分が管制役を担う事で切り抜ける事にした次第です。

だけど少し勿体 無かったかな~? ……とか思いつつ、俺は特別シミュレーター訓練の準備に移るのでした。




……




…………




「ど、どうだ? この2つのモーション」

「機体を一回転させて……長刀で斬撃……?」

「正確に言うと今のは横払い・振り下ろし・勢いを殺さず回転斬り……の3連撃だな」

「最初のは?」

「横払い・回転斬り・振り下ろしの3連撃。回転斬りの順番を入れ替えたダケだよ」

「何の意味が有るの?」

「少し負担に成るが背後の様子が一瞬だが窺えるからだな。レーダーより信憑性が有るのもデカい(嘘だが)」

「!? 確かに斬ってる最中はレーダーを見ている余裕は殆ど無い。戦いに慣れれば別かもしれないけど」

「でも慣れて無ければ自分の目で見てる方が動き易いだろ? 初っ端から回転斬りするのは危ないけどなァ」

「……よく思い付いたね。コレ」

「何度も戦場に行けば自然に思い浮かぶ手段さ(……そもそも長刀を持った実戦は一度も無いんですけど)」

「早速 体験しても良い?」

「あァ。最初は目を回すかもしれないから気張って行けよ?」

「やってみる」


――――30分後。


「段々慣れて来たみたいだな(……と言うか順応 早過ぎるだろ……合ってたのかな?)」

「うん。良い感じ」

「だが無難な状況な時は遣るなよ? あくまで敵が増えた時の状況の判断用だ。マンセル時は例外だが」

「マンセル?」

「"two-man cell"の意味ね。二機連携の時の状況判断で行うなら特に問題無いって事だ」

「成る程」

「まだやるか? 口挟みまくって良ければだが」

「勿論やるよ。頂いてくよ? この技」≪ニヤリ≫

「お、おうッ」

「(御剣には負けられない……私にしか出来ない事を遣れる様にするんだ)」


――――更に30分後。


「回転斬りには慣れたが"回す"のは まだまだ だなァ」(この技術は16話 参照)

「神宮司中尉に"触り"は聞いたけど、理解が難しかった」

「生憎だが彩峰のは射撃を"外して"も敵の正面に戻って来てる"ゆとり外し"だ」

「ゆとり……」

「斬り掛かってからのクイック・ドローの後に側面か背後を取って見てくれと言ったろ?」

「方法が全然 分からない……どうすれば良いの?」

「特別に"くの字外し"と"三角外し"を教えてやるよ。言われた通りに操作してみてくれ」

「了解」

「(膝に乗せた方が教え易いんだが無理な話……霞に"シンクロ・システム"で実装させて貰って置くか……)」

「(斬ってる時でさえ"併用できる行動"を考え出すなんて、やっぱり武は天才だ……教えてくれて良かった)」


――――1時間経過。


「そろそろ消灯だし切り上げるとするか」

「もうこんな時間……?」

「"回す"のも大体出来る様に成ったな。でも"外した"後の選択肢の一つなダケと言う認識は忘れるなよ?」

「はい」

「んで見た感じ最初のモーションは気に入ってくれた様だが、二次配布は禁止だからな?(恥ずかしいし)」

「分かってる(……新しい交渉材料に使うんだよね? 私は その第一人者って事かな? この場合2番目か)」

「ともかく不躾だったが御疲れさん。冥夜の事は其処まで気にするなよ? 十分 付いて行けると思うから」

「んッ」←頭をグリグリされている

「よしよし。それじゃ~片付けてから帰るから、彩峰も着替えたら戻って寝ろよ?」

「……手伝おうか?」

「大丈夫だ問題無い。そもそも俺はともかく新任少尉は寝る時間だ」

「チッ」

「だ、だから其のままスタスタ行くのは止めろってッ! 地味に傷付くだろ!?」


≪此処に並んだ大量のBETAがすべて敵として立ちはだかって来る≫

≪このワザとらしい光線級!!≫

≪ラストの2匹……アレが効いたな≫

≪ほ~良いじゃないか。そう言うので良いんだよ、そう言うので≫


慧に指導をするに辺り、全く意味も無く(孤独の)グルメりながら約2時間ほど。

大したフラグも立てずにシミュレータールームを出た俺は、一直線に純夏の待つ自室を目指した。

う~む……出来れば早めにラブ・シーンに持って行きたいが、ああ言うのは段取りや空気が重要だからなァ。

少なくとも脳内で"告白"が流れている様な雰囲気が必須なんだろうけど、俺のテンションで大丈夫なのか?

だとすれば純夏が自分の肉体にコンプレックスを抱える迄 待ってから鬱ブレイクする方が良いかも知れない。

そんな事を考えつつ通路を歩き自室まで戻って来た俺は、ノックするが返事が無い為 ゆっくりとドアを開く。


≪――――ガチャッ≫


「お~い純夏。帰ったぞ~?」

「…………」(凝視)

「純夏~?」

「あッ……タケルちゃん。お帰りなさい」

「んっ? まだパソコンを見てたのか?」

「うん。思ったよりも情報量が多くて」

「純夏のスーパー・ブレインなら一瞬だと思ったんだけどな」

「そうなんだけどさ。何だか"勝手"に理解すると何だか私じゃないナニカが居るみたいで気持ち悪いの」

「ふむ。だから素でも理解出来てから次に進んでたって感じだったり?」

「大体そんな所かな~。両方で分かった方が妙にスッキリするんだよね」

「だけど素だと文字がやたら読み難くないか?」

「"あっち"の知識なら間違い無いね。でも"こっち"の私の知識も有るし大体は大丈夫みたい」

「そう言えばそうだったな。俺は少し違うから何気に知識は浅いんだ」

「アハハハッ。だけど旨く遣れてるみたいで感心するよ」

「それほどでもない」

「と、ところで……タケルちゃん?」

「何かね?」

「ちょっとタケルちゃんの戦闘データって言うのを見てたんだけど……滅茶苦茶スゴいね」

「どこが?」

「だって光線級のレーザーを避けてるし。普通に有り得ないよ」

「シミュレーターだと俺以外にも避けれてる人も居るんだが?」

「でもソレって光線級の索敵内に出ちゃって、本当に止むを得ない時での回避の練習でしょ?」

「えっ? そうなの?」

「"そうなの"じゃ無いよ~ッ。ワザと視界に入って避けてから射撃するなんて、タケルちゃんダケだよ?」

「ふ~ん。まァ俺は何度も(白銀大佐が)"繰り返してる"からな。カラダが勝手に覚えてるんだろ」

「!? 確かに普通は即死だけど、繰り返せるタケルちゃんだから直感的に回避する事が出来るんだッ!」

「多分そうなんだろうな。(実際は全部だが)半分は勝手に操縦桿 握った手が動いてたカンジだったし」

「だ、だったら今迄タケルちゃんは どんな戦いを……」

「それはな?」




≪――――くっそおおおおぉぉぉぉーーッ!!!!≫




≪――――クソッ! 何故だ!? 何故勝てない!?≫




≪――――BETAァ!! 貴様は俺のォッ!!!!≫




「!?!?」

「伝わったか?(某中尉の肖りが)」

「えっ? あッ! ゴメンね!? 覗くつもりじゃ無かったんだけどッ」

「別に問題無いよ。今の俺が本当に体験した経験ってワケじゃね~し」

「で、でもPXで怒られたばッかりだったのに……」

「2人きりの時は良しとしてやるよ。常に読まれるのは勘弁だけどな」

「……ッ……」

「ともかく今日は寝ようぜ? だが腹がペコちゃんだし、夜食でも食って一息つくか?」


此処で適当に白銀の戦死☆シーンを脳内で描いてみたが、純夏の能力は有る意味 優秀すぎるのかもしれない。

彼女に架空の状況を意図的にイメージさせる様な発想をする様な人間は、俺以外には居ないだろうが……

恐らく純夏の脳内には悔しそうに叫ぶ声と共に、レーザーで爆発した俺の機体が鮮明に浮かび上がった筈。

だとすれば……俺が冥夜や悠陽あたりを縛って笑顔強制ダブル・ピースをさせるシーンを脳内で描いたり。

裸で拘束されて"Fucking slaves, get your ass back here!!"とか叫んでゲイ動画に出演する自分を描いても。

全て純夏に伝わってしまい、過去の俺が本当に経験した事の有るシーンだと勝手に思い込んでしまうだろう。

そう成れば本人から認識した誤解を口頭で どうにかするのは難しく、純夏が自閉してしまうのも時間の問題。

しかし逆に前述の某中尉みたく真面目に逝った事実を観せれば、同情してブルーに成った彼女を励ませる筈だ。

ンな事を考えつつ"読んでしまった"事を大慌てで謝罪する純夏を安心させる為 対応すると彼女は眉を落とす。


「……わたし……床で寝た方が良いのかな?」

「はァ~? 何 言い出すんだよ? 唐突に」

「だって"この姿"に成ってからも、タケルちゃんに凄い迷惑 掛けてるし。何だかゴメンねって言うか」

「"読んだ"事なら お互い様だろ? 俺も俺で純夏の観たくない事を思い描いたのも悪いんだし」

「だ、だけどッ!」

「それ以前に今回の俺の迂闊さで、純夏が頭抱えて倒れてた可能性も有ったんだ。大丈夫だったか?」


≪ぽんっ≫


「あッ……」←NA☆DE☆PO状態

「これ以上 俺の死ぬ所なんて見たく無かったよな?改めてマジで悪かったよ」

「き、気にしてないよ」

「それは良かった。んじゃまァさっさと寝ようぜ? シーツを交換するから手伝ってくれ」

「!? じゃあ私が遣るよッ。其の間に夜食でも食べてて?」

「いやシャワー浴びて来る事にするわ。腹は純夏の顔を見たら一杯に成っちまったZE」(キリッ)

「うぅ~っ。不思議と今のタケルちゃんは口が上手過ぎるよぅ……」

「何回目に逢えたと思ってんだよ。伊達に長く生きてるワケじゃ無いってね」

「でもでも。苦労てるのに落ち着いてるタケルちゃん……何だか別人みたい」

「(ギクッ! それ以前に只のポーカーフェイスだっての)買い被り過ぎだって」


――――其の言葉を最後に動揺を隠しつつ、ヒラヒラと手を振ってシャワー室に向かうワケなのだが。


「タケルちゃ~ん? 私も浴びてきたよ~?」←ワザとらしく裸ワイシャツ

「…………」

「あれっ? 寝ちゃってる……余程 疲れてたんだ……」

「……ぐぅぐぅ……茂美怖いでしょう……」


流れによっては純夏の姿を見て勃起してしまう事を恐れ、シャワー室に背を向けて側臥位になっていたが。

あまりにも今日は頭を使い過ぎた為か、待っているウチに睡魔に襲われてしまい意識をアッサリ手放して。

ふと目が覚めてチラりと後ろを見てみた時……俺には触れずにシャツの端を握って寝る純夏の姿が有った。

う~む……普通に可愛いじゃないか……俗に言う"守りたいこの寝顔"ってヤツなのかな? 元ネタは笑顔ね?

ともかく明日はA-01に紹介する予定なんだが、純夏が旨く速瀬らと馴染んでくれる事を祈るしか有るまい!








●戯言●
白銀28が意図しない純夏の"劣等感フラグ"の強制回避を行う事によって直結イベントは今回回避されました。
何だか白銀と純夏がイチャイチャするように成って別のSSに変わった気がしますが、コレが本来の目的。
ですが純夏一筋ではなく佐渡島に向け他のキャラのフラグも回収します。尚フレアの一人称をアタシに変更。
また白銀の脳内での謎の英語はニコ動で"Evan様"と調べると分かるかも。ガチムチネタは絡ませ辛いです。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ59 2012/10/29 15:03
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2012/11/03 14:33
これはひどいオルタネイティヴ59




2001年12月18日 早朝


……今や慣れた朝……自然と覚醒する意識……

"本来の白銀"の恩恵により、俺は瞳は閉じていながらも目を覚ました様だ。

それはそうと……何時もと口調が全く違っているのは……

白銀の嫁……不遇の真のヒロイン……SUMIKAの存在が大きい……

Yesterday nightの添い寝では先に寝てしまったので……特に何も起きなかったとは言え……

途中に目を少し覚ました際……半裸の"成熟"した女性が傍で寝ていると言うCrazyな事実。

DokiDokiしなかったと言えば嘘で有り……心頭滅却な意味で今日は"ラグーン語"でキメる事にしたのさ……

……思えば直ぐに興奮に負けてMasturbationに走る事が多かったが……

こうやって心情でCoolに成る事により……邪な感情そのものを抑えるに至れるかもしれない……

……とは言え……いずれはSUMIKAと結ばれる事は必須だが……YUIを初めとした美女達。

まかり間違って嫉妬させる以前に……ダメな隊長なので、その際は誤解でしか無いんだろうが……

自閉モードは避けなければOutなので、冷静にYOKOHAMA基地の日常を送るのも悪くないさ……

昨日までの俺にGOOD BYE。WELCOME 今日の俺。明日には戻ってると思うけどな。


「タ~ケ~ル~ちゃん?」

「…………」

「あ~さ~だ~よッ!?」

「…………」


……そんな事を目を閉じながら考えていると……俺を呼ぶ声が部屋の中に響く……

コレは間違いなくSUMIKAのモノ……原作(EX)通り幼馴染を起こす事から始まったか……

正直 半裸だったら目のやり場に困る所だが……此処は覚悟を決めるしか無いのさ……


「こら~ッ、起きてってば~!」

「はいよっと」

「えぇ!? う、嘘ッ! タケルちゃんが直ぐに起きた!!」

「何で そんなに驚いてんだよ」

「"以前"の記憶だと10回に9回はマトモに起きてくれなかったんだけどなあ」

「だったらネボけて胸をモミモミした方が良かったのか?」

「…………」

「其処は否定する所だろうが!」


俺の心配を他所に……SUMIKAは既に国連の軍服に着替えていた……

……そんな彼女が俺の博打的な冗談で恥ずかしがった事で、不覚にも萌えてしまったが……

生憎 早朝にノロけている時間は無い……よって俺は軽くSUMIKAを小突きつつ起き上がると……

恐らく見ているだろうと予想しつつも、彼女に背を向けて着替えを開始したのさ……


「ところでタケルちゃん。今日は何をするの?」

「先ずは ゆ~こさんに純夏の事を報告だ。少し思う所が有ったからな」

「わ、私 何か悪い事した?」

「悪い意味じゃ無ェよ。むしろ良い意味での訪問だ」

「それなら良いんだけど……」

「んで報告が済んだら配属されるA-01に馴染んで貰う為に、紹介ついでに彼女達の訓練に参加して貰う」

「えぇ~っ!?」

「嫌そうな顔すんなって。今回は見学ダケにして置くから……って、そもそも純夏に訓練は必要無いしな。
 んで俺が言うのもアレだがクセの強い人が多いけど、我慢したらキスしてやっから絶対"読む"なよ?」

「!? し、仕方無いなァ。大変な世界の為にも頑張ってアゲるよ。タケルちゃんのキスは要らないけどッ!」

「ははは。ヌカしよる」












――――Now Loading












奈落の底へ落ちても良い。
そんな覚悟をキメつつ、戦う is 敗北ネ!!
矛盾を抱くハートを
闘志に転換する is COOL&HOT!!












――――Completed












2001年12月18日 午前


昨日の今日だが……俺はPXでYUI達 突撃機動部隊のMemberとの朝食を終えると……

彼女達に霞を預けて……共に訓練に混ざる様に指示し……

……地下19階の執務室……香月副司令の元をSUMIKAと共に訪れたのさ……

ODL浄化の猶予は72時間あるとの事だが……来た理由としては……

俺は勿論 香月副司令も予想外のSUMIKAの安定……微塵にも感じなかった不安要素……

コレは些細であって重要で有り報告の価値が高く……"彼女"の判断によってはMission……

……原作では(恐らく)12月25日だった……"甲21号作戦"……

その日程や内容に……何か変化が(良い意味で)起こるんじゃないかって思った訳さ……

"今回"でも(55話で)香月副司令は……25日か26日だとハッキリと言っていたが……いや……

理由としてはデッカい……もっとBigなモノが有る……"此処"に来てからずっと思っていた事さ……


「おはようございま~す」

「失礼しますッ」

「あら? アンタ達。まだ呼んで無かった筈だけど?」

「いや~、モノがモノなんで申し送りは必要かと思いまして」

「人と物みたく言わないでよ~ッ」

「漢字をポジティヴに変換しとけ」

「はいはい。それで何が言いたいの?」

「では早速。純夏が目を覚まして直ぐですけど、もう作戦を動かし始めても良いんじゃないですかね」

「……それだけ"安定"してるって事?」

「少なくとも俺は太鼓判を押しますよ。ODLの浄化の前にも始めちゃっても構わないって程に」

「ふぅん。かなり強く出たわね。まァ遣ろうと思えば出来なくは無いわ」

「マジッすか!? ……とは言え……"だったら始めましょ"とはゆきませんよね?」

「当然。鑑の存在は見て得られる範囲の情報では、到底 全てを計れない。素人目にも成れば尚更よ」

「いや~ッ。でも結構 重大な意見が有るんで、それを聞いてから判断して頂ければと」

「????」

「興味深いわね。言って御覧なさい」

「その前に今の純夏の機能……いや生命を維持する為には現状BETAの技術を頼るしか無いんですよね?」

「不服ながらね」

「だったら その際BETAに情報って流出しません? どれ位かは分かりませんけど」

「――――ッ!?」

「仰る通り素人なんで明確な根拠や仮説は無いんですけど、そっちで判断して活かして貰えればなと」

「それも"ループ"の記憶の一つなの?」

「いえ。此処まで漕ぎ着けられたのは初めてなんで違いますが、可能性は十分は有ると思ったダケです」

「ふぅん……」

「なになに? どう言う事?」

「俺の頭脳だと詳しい説明は無理だよ。けど只一つ言えるのは……早く敵の本拠地を叩いちまわないと、
 純夏の存在もBETAに対策されちまう可能性が高いって事だ。それ以前に情報筒抜けってのがヤバい」

「……ッ……」

「だから どうします? ゆ~こさん。主に今後の予定とか」

「今日中には答えを出すわ」

「そうッスか。どんな作戦に成っても精一杯 遣りますんで、面倒だと思いますけど宜しく御願いします」

「……えぇ。悪いけど忙しくなりそうだから、出てって頂戴」

「分かりました~。じゃあ行くぞ純夏」

「う、うんッ」

「…………」

「おっとっ! 忘れる所でした。最後に もう一つダケ」

「……何?」


……此処で俺は立ち去る直前……某ドラマの刑事の様な仕草で振り返ると……

右手の人差し指を立てつつスタスタと近寄り……"どやFace"で口を開いたのさ……

そう……コレは恒例のAYAKARI……遣りたかったダケに過ぎないが、欠かせない俺のPlaying……

真面目に受け入れるとオカしくなっちまう……BETA犇く現実……それい抗う俺のRebellion……

対して香月副司令は……俺の驚愕のInformationにペースを損ねてるのか、気にする素振りすら無いじゃんか。


「BETAに情報が流出してしまう。それは場合によっては逆手に取れるとも思うんです」

「!?!?」

「忙しい所すみませんでしたねェ。では今度こそ失礼しました~」

「…………」


≪――――ガシュッ≫


「タケルちゃん。アレだけで良かったの?」

「まァゆ~こさんだし、要点だけ言えば何とかしてくれるだろ」

「でもさァ。今の話が本当だったとしたら、私って対策されたら必要なくなっちゃうの?」

「バカ言え。その前に"全て"を終わらせるように"あの人"なら予定を組んでくれるだろ」

「だけど……」

「其処はネガティヴ禁止だ。少なくとも俺は"純夏"という存在は絶対に必要だ。冗談でも そんな事言うな」

「ご、ごめんなさいッ」

「……お前がBETAに何をされたのかも、脳味噌を見た限り理解している」

「!?!?」

「だがソレに負い目を感じるのも論外だからな? だったら俺なんて繰り返した中での醜態なんて半端ねェよ。
 当然 今の俺の意思に反して他の娘とも……なのに、それを承知で俺を受け入れてるって事で良いんだろ?」

「う……うん。私タケルちゃんの心が読めちゃうもん。だから凄く大切に想ってくれてる事……分かるから」

「そうかい」

「あッ……」


≪――――コツンッ≫


……YOKOHAMA基地・地下19階……誰も居ない静かな通路……

此処でSUMIKAに話しかけられる事は……Expectationの範囲だったさ……

だけど……彼女の表情が例のネガティヴEventを連想させ……俺の不安を煽った……

恐らくだが……俺が香月副司令に情報を伝えた事で……早くフラグが立っちまったんだろう……








……冗談じゃねぇ……(脳内で適当なポーズを取りながら)








今では……Truthの俺でも大切な存在となった"純夏"……

"この姿"の彼女と接するのは……数日にも満たないShortな付き合いだが……

……そんな娘に……あんな痛々しい思いをさせて堪るものかよ……

よって俺は臭いセリフを終えると無意識なウチに足を止め……それに合わせた純夏に近付くと……

何事かと戸惑う彼女に……Seriousな表情で語りかけたのさ……


「俺の心を抉る……お前の微笑み。暖かい眼差し。今 俺は一人じゃないよな? My Important」

「……タケルちゃん……」


≪――――ぎゅっ≫


「魂の咆哮……真実の雄叫び」

「うん。タケルちゃんの鼓動……凄くおっきいよ……」

「だけど此処じゃ叫べないし愛せない。続きは後でな(……残念だが今はPASSさ……)」

「は、はい」

「フッ。懲りないヤツほど愛は深く、愚かな人間こそ欲望は深く……果てしなく傷だらけの青クセえHeart」

「???? それってタケルちゃん自身の事?」

「一応な。ちょっと浮かんだ事を口に出してみた」

「何だか嫌らしい気もするけど……わ、私は格好良いと思うよ?」

「そう言ってくれるのは嬉しいが目が泳いでるぞ?」

「!? ほ、ほんとタケルちゃんには敵わないな~ッ」


……しかし……こんな状況でも結局AYAKARIをしちまった……冗談じゃねぇ……

とは言え今日は『ラグーン語』で脳内思考すると決めた……だから実際にもPoemを挟むのさ……

俺のSoulが最後まで残るか分からない現状……どんな状況でも楽しみを忘れない……それが俺のRual……

ともかく香月副司令は俺の話を聞いた後……殆ど"だんまり"だったが……全てを委ねるしか無いさ……


「(情報が流出する? 確かに素人でも浮かぶ考え。鑑と作戦の事ばかりに目が行って盲点だったわね。
 以前みたく"普段なら気付いたんじゃないか"と言わなかった辺り……心底 呆れてたのかもしれない)」


≪まるで脳味噌ダケだった時と同じ思考じゃないですか~やだ~≫


「(昨日は少しノロけている様にも見えたけど、見当違いも良い所……アイツは今も神経を研ぎ澄ましてた)」


≪そうッスか。どんな作戦に成っても精一杯 遣りますんで、面倒だと思いますけど宜しく御願します≫


「(だから言われる迄も無く滞りの無い作戦で……かつ白銀の眼に適う鑑の扱いをする。どう出るべきかしら)」












――――Now Loading












流れるランプ、吠える機動音
挙動の限界を超えた三次元機動
これを芸術と呼ばずして何と呼ぶ!!












――――Completed












2001年12月18日 午後


≪――――ズシンッ≫


執務室を離れた俺と純夏……外ではCoupleでは無くHigher officerと部下と言う関係……

……とは言え俺より耐性の無い純夏は……時より俺の手を握ろうとする仕草が有ったが……

ワザとらしく視線を向けると慌てて手を引っ込め……何事も無い様に振舞う姿にMOEを感じたさ……

それはともかく……俺は伊隅(姉)と落ち合うと、少し名残惜しそうな純夏をA-01に預け……

訓練の真っ最中のYUI達と合流し……先ずはヴォールク・データのCaptureを見学する事にしたのさ……

……さて純夏をA-01に丸投げにしてしまった事だが……大きな賭博とも言えるかも知れない……

何せアイツが"読んで"しまった暁には……俺の様々なDisgraceful behavior……多くの"醜態"が知られる……

……冗談じゃねぇ……だが……それは今の純夏なら受け入れてくれる気がするからRestorationは容易……

逆に"読まなかった"ら"読まなかった"で……互いのConnectionには問題無く……自信を持って送り出した……

決して速瀬や涼宮(姉)を警戒しているからでは無し……また困惑の視線を受けるのが苦手なダケさ……

まァ……それはともかくだ……昼の反省会を挟んで、午後は俺もTrainingに参加したワケなんだが……


『シミュレーター終了。アルカディア全機・反応路に到達。お疲れ様でしたッ』

『やった~!! 凄い凄いッ! コレって初めての快挙なんじゃないですか!?』


……早くも七瀬・伊隅(妹)を含めた9人で反応路に到達だと……冗談じゃねぇ……

俺は何一つ分かってなかった様だ……毎日此処に集まってる彼女達が何を考えていたのか……

……何故こんなに熱くなっているのか……そうさ……作戦まで持て余した時間を埋める為に来てたのは……

自分一人ダケ……みたいだった……ってのは冗談だが……予想以上のYUI達の頑張りに驚きを隠せない……

MistさんのAYAKARI……その所為で今後の進展に結構なフォローが必要かと地味に焦っていた反面……

純夏の存在から集中できる余裕が無い危機感……だからアイツを伊隅(姉)に預けたワケでも有ったが……

……どうやら……要らぬ心配……俺の目に届かない所で皆は団結し……予想以上の纏まりを魅せていた……

それに結果が伴い……攻略のEndと同時に安堵の言葉を漏らすセレナ中尉と、興奮するテレサ中尉……

また多大なる達成感を得たYUI達の漏らす溜息を聴いた俺はもう……どうにかなっちまいそうだった……

この"嬉しさ"を表現するなら、どう現せば良いのだろうか? ……そう……恒例のAYAKARIの時さ……


「…………」

『え、えっとッ! 遂にやりましたよッ? 白銀少佐!!』

『はいっ! 正直 少佐の指示による恩恵も大きかったですけど……コレで目標に大きく近付けました!!』

「…………」

『うッ……(ど、どうして? 表情が何時もより硬い……武さんは怒っている?)』

『!?!?(考えてみれば白銀さんなら単機でも反応炉まで行ける……と言う事は今回は只の通過点……?)』


……対して……唯一バストアップを表示させていたYUIとMARIMOちゃんが何か告げて来てるが……

空気を読まずにダンマリの俺……既に考えたモノに成り切ろうとしている所だったのさ……

Impressionで表情を硬くしている様子を別の意味で感じ取った様だが……今は耳に入っては居ないのさ……








「凄い一体感を感じる。今迄に無い何か熱い一体感を」


『――――!?』×11(衛士8名+ウォーケン姉妹+ウサギ)








「風……何だろう吹いて来ている確実に……着実にッ。俺達の方に!」

『た、武さん……?(突然どうしたのかしら?)』

「此処まで頑張ってくれたなら中途半端は止めるよ……とにかく最後まで遣ってやろうじゃん。
 データリンクの画面の向こうには沢山の仲間が居る。決して一人じゃない。信じよう。そして共に戦おう」

『……えぇと……』

「あッ……すいません まりもちゃん。一人で熱く成っちゃって。皆 短期間で此処まで頑張れるなんて……
 正直な所 目から鱗ですよ。幾ら体調的に問題や皆の声が有ったからって、コレは面目無かったですね」

『!? そ、そんな事は有りませんッ! 私達が此処まで遣れるのは白銀少佐の御蔭ですよ!!』

『ライトの言う通りですって大将!!』

『た、タケルさんも……私達を改めて認めてくれたみたいで……嬉しく思います……』

「有難う」

『……(私は遣った事が遣った事だから、彼が何と思っていようが付いて行くつもりだけど……
 今の言葉に私も含まれているって捉えて良いのなら……こんなに嬉しい事は無いかもしれない)』

『ともかく。まだまだボク達の訓練は始まったばかりって事だよね?』

『そうよね。白銀少佐。続いての指示を御願いします(良かった……更なる生きる気力の糧になって頂けてッ)』

「分かった。じゃあ今度は時間や消耗の縮小を狙おう。工作員や邪魔は入るだろうけど、絶対に流されるなよ」

『――――了解!!』×8

「(誰もが白銀さんに力に成ろうと意気込んで、訓練に打ち込んでいる……その調子です……頑張って下さい)」












――――Now Loading












俺達、出会うのが運命だった。
偶然なんかじゃない。
熱い血をたぎらせ、息も絶え絶えに
Yokohama as Muv-Luv Alternative!!












――――Completed












純夏が今頃 旨く遣れてるかを気にしつつ……突撃機動部隊での訓練を行う事 数時間……

久し振りに9人でミッチリと連携を行えた俺達の塩梅は……取り合えず上出来だと言って置くさ……

……とは言え……テンションが上がると俺はJICHOUを疎かにしてしまう事が多々有り……


「ライトッ! 三次元機動はバランスが全てじゃ無いぞ!?」

『それでは……何ですか!? 白銀少佐ッ!』

「おう!! 操縦の秘訣は"3つのK"よッ!」

『……3つのK……?』

『(は、初耳だわッ!)』←唯依

『(凄く興味深いわね)』←まりも








「おぅよッ! 3つのK!! 気合! 気合!! 気合!!! それでAllRight!!」

『!?!?』×11








「そぅら!! 行くぞ!? 今回もブッ飛ばす!!」

『は、はいッ! わああああぁぁぁぁ~~ッ!!!!』

『ちょっ!? 大将・ライトッ! 飛ばし過ぎだって!!』

『何言ってるのフレア!? 置いてッちゃうよォ!?』

『今のブリザは人が変わってるから、言っても無駄みたいね』


≪キイイイイィィィィーーーーンッ!!!!≫


『ど、どうしますか? 神宮司中尉』

『フフッ……行きましょう。白銀少佐が追い求める場所まで』

『ボク達も負けてられませんねッ! ねぇ? 七瀬さん』

『えぇ。アクセルを一度でも離したら其処で終了……WarrierならGoalまで全開……か』


『ラグーン語』の原作では逝っちまうキャラの名言を使っちまうなんて……冗談じゃねぇ……

……だが……特に米軍3人娘の遣る気を煽るのに……あのネタは十分だったと言う訳さ……

まァ……急かし過ぎでの全員 到達は一度も無かったが……それに伴う技量は身に付いたと思うじゃんか。

更に"今度はミスしない"……皆がそう口を揃え、より遣る気に成ったみたいで……プラスが多かったのさ……

……さて置き……俺は純夏との合流が有るので軽いミーティングを済ませて今日は解散したんだが……

早々と去ってしまった霞を気にしつつ……男性と言う事でサッサと着替えを済ませ、更衣室を出ると……

何故かエロスーツのYUIが俺を待っていたのだ! ……まさかの不意打ちだと……冗談じゃねぇ……


「武さんッ!」

「んっ? どうしたんだ? 唯依」

「すみません。一つだけ改めて確認したい事が有りまして」

「……確認したい事?」

「はい。差し出がましい事かもしれませんが」

「特に問題ないよ。何だい?」

「え、えっと……先程の言葉は真実だと捉えても宜しいのですか?」

「先程の言葉?(またオウム返しだと……冗談じゃねぇ)」

「決して一人じゃない。信じよう。そして共に戦おう……武さんが仰った言葉です」

「!? 今思えば恥ずかしい事を言っちまったモンだねェ」

「そんな事は有りません! あッ」

「うわっ、びっくりした……っと」


≪――――ぽすっ≫(胸にDiving)


「す、すすすすみませんッ!」

「はははッ。大袈裟だなァ。とにかく"アレ"は紛れも無い真実だよ(……顔が近い……冗談じゃねぇ……)」

「本当……なんですね?」

「うん」

「……!!」

「へぇあ?」

「つまりッ。私達を……ぅッ……本当に……本当の意味でッ。大切な仲間と……認めて……!!」

「ちょっ!? な、何で其処で泣きが入っちゃうのさ!?」

「わ、分かりません……自分でも……武さんに受け入れて貰えた事が……こうも嬉しいなんて……!」

「……唯依ェ……」

「あッ!?」


≪――――ぎゅっ≫


「栄光に向かって臨む者と闇に向かって臨む者。彼らは口を揃えて吐き捨てた」

「そ、それは?」

「結末が問題なのでは無いと。大切なモノは今……この時。この瞬間なのだと」

「この瞬間……(まさか朽ち果てる時……?)」

「残念ながら悪い意味で……だけどな。価値のある敗北なんて戦場には転がっていないのさ」

「……ッ……(やっぱり)」

「だから そう成らない為にも、頑張って戦い抜こう。最後まで生き残って結末を見届ける迄」

「!? は……はいっ! はいッ!!」

「それじゃ~御疲れさん。明日も宜しくね?」

「た、武さんも ゆっくり休んで下さいッ。くれぐれも体調は万全に! 自愛されなければ怒りますから!」

「分かってるよ。それじゃ~早く着替えて来なされ」

「了解しました!」


≪たたたたたたっ≫


あのゲームのPoemが効果抜群だった……だと? ……それにしても良い尻……冗談じゃねぇ……

それ以前にYUIが俺を仲間として此処まで認めていた……嬉しくて どうにかなっちまいそうだった……

……更にはTearsを止め処も無く流して迄 喜んでくれた事も有り……思わず抱きしめちまったが……

嬉しさがの方が圧倒的に勝っていた事で……何時もの興奮は不思議と殆どしなかったさ……

ともかく彼女のフラグは未だに折れていない事は明確……純夏には悪いが可愛過ぎて困ったモンだ……

……だが……此処は全てが終わった後のHaremに期待するしか無く……俺はPXを目指す事にしたのさ……












――――Now Loading












冷えきっちまったアスファルトに
熱い薬莢を落とす俺達
それは闘いの記録。俺達の生きた証。












――――Completed












……衛士達の集う食堂PX……1杯の水とお決まりのMenu……

噂好きの衛士達の取り留め無いヨタ話……

同じ戦場を戦う……只それだけの事で……俺達は繋がっている……

……此処に来れば……何とかなる……

冷めちまったスープだって……自分以外の誰かの温度は伝わるから……

……Post eXchange……軍基地内購買……そんな場所さ……

まァ……Poemは良いとして……俺はPXの席で伊隅(姉)・涼宮(姉)・純夏と落ち合った……

生憎 他のMemberは空気を読んで……別の場所で食事を摂っているのさ……


「そんな訳で……本当に凄かったんですよッ? 鑑少尉は!」

「そうなんスか? 伊隅大尉」

「はい。我々のヴォールク・データの様子を見終えるや否や、的確な采配の指摘が出来るとは驚愕でした」

「あの水月が口を挟めない程、納得のゆく意見でしたから」

「アハハハ。只単に先日見た突撃機動部隊の攻略データと照らし合わせて、思った事を言ったダケです」

「初見で言えれば苦労しないよ~。流石は白銀少佐に劣らぬ天才衛士って所でしたね~ッ」

「それに……白銀少佐の幼馴染か……(まるで私の……)」

「あれ? 其処を強調しちゃいますか? 伊隅大尉」

「!? し、失礼しましたッ」

「でも確かに鑑少尉が、自分が白銀少佐の幼馴染って紹介した時は皆ビックリしましたね。私達も含めて」

「うむ。私も聞かされていなかったからな」

「俺と同じ水面下で頑張って来た人間って事ですよ。最近ようやく同じ様に公で務める事が許されたんです」

「成る程。それならば衛士としての技量にも期待 出来そうですね」

「また水月が悪い癖を出さなきゃいいけど……」

「其処は伊隅大尉が厳しく言ってやって下さい」

「……(そもそも私……戦術機なんて乗った事 無いよぅ……)」

「承知しております。それでは今後とも宜しく頼むぞ? 鑑」

「は、はいっ!」

「……(それ何てメガテン?)」

「では白銀少佐。そろそろ我々は失礼 致します」

「"先程"の話によると大きな作戦が近い様ですしね……ゆっくり休まれてください」

「其方こそ訓練の戦果は万全に御願いしますよ~?」

「鑑の助言も有りますし、必ず間に合わせましょう」

「それでは~ッ」


4人でA-01の訓練内容を確認する意味でのMeeting……そしてDinnerを終えると……

……伊隅(姉)はキリッと敬礼……涼宮(姉)はペコリを御辞儀をして"この場"を去って行ったのさ……

さて……純夏が事前に自分が俺の幼馴染だと紹介したいと告げたのは意外……結局 認めた俺も俺だが……

後々知られるだろうし妥協する事にした……のは余談として……後は大方 予想通りの内容……

期待した通りコイツは……伊隅(姉)達の心を一切Readingしなかった様で、特に不安定な様子は感じない……

……だが……それを再確認する意味でも、俺は まだ残った食事を頬張ってる純夏に声を掛ける……

ちなみに純夏は明確な軍人……Servicewomanでは無い為か……食べる速度は余り早くないのさ……


「とりあえず純夏」

「もぐん?」

「今回は合格点だ。ちゃんと"読まなかった"みたいだな。偉いぞ?」

「ぅんと……まァ……する迄も無かったからねェ」

「???? どう言う事だ?」

「深く考えなくて良いよ……ゴクンッ。御馳走様~ッ。ともかくタケルちゃん。ちゃんと御褒美 頂戴ね?」

「おッ、おう」

「……って手を握ったりしちゃダメだったんだ。早く部屋で思いっきり握りたいな~ッ」

「誤解される様な発言も控えてくれると俺としては有り難い」

「仕方無いなァ」

「また腕を決められたいのか?」

「!? 御免なさいッ! 気をつけます!!」

「分かれば宜しい」

「……ハァ……」

「今度は何だ?」

「な、何でも無いもんッ」

「変な奴だなァ」

「……(同じ女の子だから"読まなくても"分かるんだ……部隊の皆タケルちゃんの事が好きなんだって……)」

「とにかく戻るか。色々と御節介な人達も居る事だし」

「うん(……それでもタケルちゃんは……私ダケを見ようと誓ってる……こんなに幸せで良いのかな……?)」


こんな感じで……俺と純夏の2日目は終わりを告げ……YOKOHAMAの夜は更けてゆく……

……今朝の報告の後の件で距離は更に縮んだ気はしたが……まだPerformanceには至らなかったけどな……

よって……明日は香月副司令の采配を聞いた後……再びに互いに訓練に励む事に成るってワケさ……

YUIとの一件は予想外だったが……ヴォールク・データを完遂した事は非常に大きな収穫だったぜ……

ともかく……今は純夏と"前"だけを見て俺は進んでゆく……Originalハイヴの攻略とHaremを夢見て……


「あッ……武さん……んんぅ……たけるさああぁぁんっ……!! ……ぁッ……ハァハァ……ふぅ……」








Base YOKOHAMA……俺達のBattlefield……








……醒めちまったこの基地に……熱いのは……俺達のTies……








「(……はぁ……まさか"ホッペ"だったなんて、ガッカリだよぅ……)」








●戯言●
今回の描写の意味が理解できなかった方はレーシング・ラグーンのプレイ動画でも見て頂ければ幸いさ……
本来 入れたかったPoemの大半が挟めませんでしたが、次回は恐らく普通の心理描写に戻るかと思います。
ODL浄化による情報の流出に関しては都合よく利用しようと思いますが、ご都合主義で御願いするじゃんか。
何気に11話の後書きの頃から考えていましたけどね。しかし篁さん。もし純夏居なきゃこの時点で……?



[3960] これはひどいオルタネイティヴ60 2012/11/02 17:30
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2012/11/03 14:34
これはひどいオルタネイティヴ60




2001年12月19日 午前


――――俺の気持ちは纏まったと言わせて貰おうッ! この気持ち……まさしく愛だ!!


「一晩で作戦とか纏められたのかなぁ? 香月先生」

「ソレを聞く為に今、こうやって向かってるワケだろ?」

「そうだね」

「まァ……あの人が考えた内容なら何の問題も無いって」


昨日の朝と同じ様に純夏と並んで通路を歩き、地下19階の執務室を目指す中 考える。

終日シリアス路線で往くと決めながら、結局 頻繁にPoemや肖りを挟んでしまったが……

夜に御褒美(キス☆)を謙虚(遠回し)な"つもり"で催促して来た時の純夏の様子を見た瞬間。

あれっ? コレって押し倒しても全く問題無いんじゃね? ……と思ってしまったワケで有ります。

だってホラ……上目遣いで見つめる瞳と、非炭素擬似生命体ながら湯気すら感じた染まった頬。

何かしら期待しているのだと察せないハズは無く、後は俺の押し次第だった~って事だ。

だがクリスマス・プレゼント……"サンタウサギ"の事が どうも引っ掛かって一歩を踏み出せなかった。

既に純夏はOKとは言え(今更だが)原作に沿ったイベントを起こしてからの方が、彼女は喜ぶだろう。

それに ゆーこさんに"告げてしまった"情報の件も有るし、作戦内容を聞いてからの方が良いってね。

……しかしだ……純夏の白銀に対する想いは理解 出来ているとは言え、何か引っ掛かるモノを感じる。

脳味噌に成る過程で大変なメに遭わされた事や、自分が人間では無い事での劣等感・及び嫉妬では無く……


「……信用……してるんだね?」

「純夏に対して、程じゃ無いさ」

「えっ?」

「えっ?」


我が突撃機動部隊・そしてA-01を初めとする、国連軍衛士・及びオペレーターの面々ダケでなく。

今見たく ゆーこさん や霞みたいな娘達にも思うトコ有るっぽいんだが……正直 良く分かりません。

昨夜は結局 頬にキスしたダケだったが、ガッカリした感じながら案外アッサリ納得し寝床に着いた純夏。

妙に思わないのかと言われれば嘘になるけど……其処までの蟠りでも無いし、深く考えるのは止そう。


≪ガシューーーーッ≫


「ども~ッ、お疲れ様で~す」

「お邪魔しますッ!」

「……来たわね? ……丁度良かったわ」

「……すぅ……」


思考タイムを終え挨拶しつつ執務室に入ると、デスクの前には目にクマを作った ゆーこさんの姿が。

そして視線を移すと手前のソファーには舟を漕いでいる霞の後頭部が見え、眠気と格闘しているのだろう。

そんなウチに既に ゆーこさんは立ち上がって此方に近付いて来ており、右手には用紙の束が握られている。


「アンタはコレを読みなさい。特別に見せてあげる」

「ど、どうもです」

「鑑はコッチよ。余計な所は覗くんじゃないわよ?」

「分かりましたッ」

「はァ……ちょっと休憩……」


≪――――ボフッ≫


俺は ゆーこさんから作戦の資料っぽいのを受け取ると霞の左隣に腰掛け、反動で自然と肩を預けたウサギ。

対して正面のソファーに腰を落とした美女のスカートの短さはソレで良いのかと、若干 現実逃避をしつつ。

デスクの方を見ると純夏が情報を得る為に、椅子に腰掛けパソコンと向かい合っていたので俺も資料を読む。

……とは言え……分かってはいたが相変わらず"こっち"の文章は読み難くて、理解が難し過ぎるんだぜ……

ゆーこさんが作った不知火S型のマニュアルは見易かったけど、フィルターが掛かると此処まで読み辛いのか。

恐らく"この資料"を上層部に"このまま"提出する故での内容だから当然なんだろうが、己の頭の悪さが憎い。


「……うぅむ……」

「何なら英語版も有るけど~?」

「要らぬ心配でゴザル」

「そう」

「……~~ッ……」

「何か思う所は有った?」


ちょっ!? ゆ~こさん無茶振りし過ぎッ! 初っ端はペラペラ捲って見たけど、まだ目次の段階だって!!

でも天才の彼女や霞は勿論の事、今の純夏も"この程度"の資料なら簡単に概要を把握しちゃうのかもね。

……とは言え俺は戦術機の技量と知識は有れど、一般の解読スキルはTRPG的に初期値なので所謂 素人。

どう頑張っても ゆーこさんの期待に応えれる様な意見は出せない筈だったんだけど……おかしいぞ……?

日本語オンリーの筈なのにイマイチ理解できない資料だが、目次を見た時点で俺でも気に成る点が有った。

それが"気の所為"では無い事を再確認する為に、何度もペラペラと資料を捲くる事で無駄に時間が過ぎてゆく。

だけど ゆーこさんは静かに俺の様子を見守ってくれており、その配慮に感謝しつつ動揺を隠して口を開く。


「作戦は……3日後……12月22日で確定ですか」

「そうよ。都合が悪い?」

「いぃえ特に。シミュレーターでの戦果は上々ッスから」

「らしいわね。伊隅とウォーケンから報告は受けてるわ」

「突撃機動部隊は、被害無しで反応炉まで行けた事も?」

「えぇ。そのデータは今回の作戦をより現実的なモノにさせた。反抗勢力を黙らせる大きな素材にも成ったわ」

「結構な事です。まァ2日も有ればA-01も同様の戦果が期待出来るかと」

「それは頼もしい限りね。全く今迄の戦術機は何だったのかしら?」

「此処2ヶ月で変わったモンですな」

「ホント僅かな間でね。他人事みたいだけど大体アンタの御蔭で」

「ゆーこさん達の要領が凄まじく良かったのもデカいッスよ」

「ありがと」

「ともかく。現状の横浜基地に駐屯する国連軍の特殊部隊2個中隊+α……つまり榊達の戦力が有れば、
 在日国連軍 及び帝国本土防衛軍の大規模 共同作戦により、佐渡島ハイヴの攻略は十二分に可能だと」

「そう言う事」

「……だから……"XG-70"の運用は今回は無しって訳ですか?」

「そうよ。期限の24日の前でも有るし無理に使う必要も無いのよ」

「へぇ~(やっぱりかよ!? ……冗談じゃねぇ……)」


――――そう。目次ダケに有らず資料には"スサノオ"の事なんぞコレっぽっちも記されちゃいなかったんだ。


「詳しくは伏せてるけどアンタの意見を採用して、作戦前に鑑のODL浄化の際にはダミーの情報を覆わせる。
 効果が有るかは全くの不明瞭だけど……それは別にドチラに転んでも関係無いわね。問題は"その後"の展開」

「……と言いますと?」

「BETAが此方の情報を読み、ソレを踏まえた"戦術"を活かした侵攻をして来るという事が本当か否か……
 ダミーが通用しようが・しまいが今回で明らかになる。後から気付くより事前に予想 出来る分 始末が良い」

「仮に"ダミー"が通用しなかったとしたら?」

「佐渡島のBETAの数は従来通り。アンタ達には結構な負担が掛かるでしょうね。死人も出るかもしれない」

「……ッ……」

「まァ其処は許容の範囲って所かしら? でも得られる戦果は計り知れないわ」

「ぐ、具体的には?」

「"XG-70"の存在を察してるなら隠す必要は無いわね……って言うか、今の時点で教えるつもりだっけど。
 アンタの言う"凄乃皇・弐型"は佐渡島ハイヴ攻略。"甲21号作戦"終了後の鉄原ハイヴ攻略に試験投入する」

「!?!?」

「本来なら25日に佐渡島での試験投入後、結果次第で継続して甲20号でも運用するつもりだったけど……」

「今回の結果次第では、直ぐ様"オリジナル・ハイヴ"の攻略も余儀無くされるって事ッスか?」

「えっ? ……アンタ……見上げたモノね……もう其処まで読んでるワケ?」

「(原作知ってるし)御互い様ですよ。それより甲20号を先に攻略する理由を聞いても?」

「そうねぇ~。朝鮮半島一つを開放するダケで、最終的に残り20年が25年にも増えるとすれば?」

「(確かに桜花作戦の後……人類は完全に勝ってない……)遣らない手は無いって事ですか……」

「御手柄よ? BETAの先手を取る。白銀の情報が無ければ此処まで先を見据えるなんて、不可能だったし」

「さ、さいですか。つまり"計り知れない戦果"ってのは其の辺の事までを考えての結果って訳ですね」

「えぇ。それ以前に……本来なら後5日で あたしの戦いは完全な敗北で終わったんでしょ? 冗談じゃないわ」

「全くですよ。ともかくッ! ちょっとばかし気合を入れる必要が有りそうスね。主にフルスロットルで」

「まァ……どんな結果で有れBETAに遅れは取らせないから、今のアンタは目先の事だけ考えてなさい」

「了解しました」

「鑑~ッ。そろそろ見終えたかしら?」

「あっ!? ハイッ! それは直ぐに済みましたけど……その……」

「どうしたの?」

「……純夏?」

「何で所々に"顔文字"が入ってるんですか?(しかも可愛いのが多いよ?)」

「あ"ッ!?」

「ははははっ。寝不足ってのは怖いモンですね」

「う、五月蝿いわよッ!!」


作戦の内容は原作と同じ通りの作戦概略が有力なので、特に気にしない以前に資料を見ても違いが分からん。

それに原作での流れも詳しくは全然覚えてない為、ブリーフィングでのイリーナちゃん辺りの説明に期待だ。

いやソレよりもデスよ……甲21号作戦で、スサノオの投入無しなんぞ全く予想してなかったんですけど!?

ゆーこさんが決めた事だから、最初で勝負が決まってるのが戦争だし……戦力的にも問題無いのは分かるさ。

でも絶好調な純夏のスサノオのラザフォード場を盾に、ヒャッハー出来ると思った俺の予定が大幅に狂った。

BETAが偽の情報に釣られてくれれば其処まで苦労はしないと思うが……まともに遣り合うとすれば……

突撃機動部隊・A-01・快速反応部隊……皆が五体満足で、勝利の祝杯を挙げる事が出来るのだろうか?

……とは言え純夏が無事なら俺さえ生き残れば……って、間違っても そんな考えは持っちゃいけない!!

ゆーこさんの事だから100%犠牲を前提としてそうだけど、此処が正念場……俺の実力の魅せドコロ。

そう……"この世界"に原作以上のテコ入れをしてしまった責任は、全力で取らなくちゃならないんだぜ……

自分でも不思議なモンだ……最初なら仕方無いで誰かを諦めてたかもしれないが、今は一人も死なせたくない。

極力 犠牲は無くとは最初から思ってたけど、何処かで流石に無理だ・間違いは起こると感じていたんだ。

だけど今は皆 俺に付いて来てくれるし、他の部隊の皆の訓練の戦果は上々……卓越した技量を持つ面々。

後は俺の采配で幾らでも死亡フラグは回避出来る筈……それを信じて本番に備えるしか無いってワケさ……

さて連日の徹夜で精神に支障を来たしていたのか、ゆーこさんが純夏の指摘に顔を真っ赤にさせたりする中。

純夏は色々な意味で重要なODLの浄化の為に連れて行かれ、俺は霞を別室で横にすると執務室を出て行った。












――――Now Loading












なあ、どうして?
息がつまる
せつなく輝くSakuraの吹雪
魅せられた衛士、数知れず












――――Completed












2001年12月19日 午後


≪――――コトンッ≫


「完成したのさ……」


やがて各部隊に先程の作戦の説明が有る事から、俺は言葉を濁して唯依達には自主訓練の指示を出した。

それに対して各々は何故か俺の辺りをウロウロする素振りを見せていたが、やがて立ち去って行った。

更に唯依とは何故か目が合わず、避けられている様な気がしたが……確かに昨日は調子に乗り過ぎたかもね。

対して俺はテクテクと自室に戻ると、一人で作業に集中し紙粘土で"ゆっくりたける"サンタverを作り上げた。

無論 純夏に渡すプレゼントであり……放り投げられたら潔く土下座し謝って、サンタウサギを作るとしよう。

さて置き。時計を見ると既に時間が近付いており、俺がブリーフィングルームに着いた頃には13時5分前。

尚 其処は凄い人口密度であり、部屋の入り口で後姿を晒していた まりもちゃんが ふと俺に気付いた模様。


「(……良い尻でゴザルな)」

「白銀少佐ッ!」←以下小声

「ま……神宮司中尉」

「えっと……一体 今から何が? かなりの人数が集まっていますけど」

「早い話が人類の反撃。とうとうハイヴの攻略に移るってカンジです」

「!?!?」

「それよりも整列しましょう。ホラ皆も早く~ッ。A-01が前列・俺らは その次・最後は榊達で!」

「り、了解」


そして13時。正面にはラダビノッド司令・ゆーこさん(+化粧)・イリーナちゃん・ウォーケン姉妹の姿が。

ついでに俺も何故か ゆーこさんの横に立ってるんですけどね……純夏はA-01に紛れてるのに何でやねん。

……しっかし……改めて見ると此処に来るまで、相当な戦力を残せた&増やせたと言うのを実感できるな。

原作だと此処の時点で俺・涼宮(姉)・純夏を入れても14人だったけど、今は2倍以上の衛士が立っている。


「諸君。本日未明……国連軍第11軍司令部及び、帝国軍参謀本部より"甲21号作戦"が発令された」


――――先ずは原作では最初で最後の白銀の部隊とも言えるヴァルキリーズこと"A-01"。


ヴァルキリー01 迎撃後衛 A小隊長 伊隅 みちる

ヴァルキリー02 突撃前衛 B小隊長 速瀬 水月

ヴァルキリー03 迎撃後衛 C小隊長 宗像 美冴

ヴァルキリー04 制圧後衛 C小隊員 風間 祷子(バズーカ持ち)

ヴァルキリー05 突撃前衛 C小隊員 一条 優理子(元 強襲前衛)

ヴァルキリー06 突撃前衛 A小隊員 神村 亜衣(元 強襲前衛)

ヴァルキリー07 打撃支援 C小隊員 葛城 綾乃

ヴァルキリー08 強襲掃討 B小隊員 涼宮 茜

ヴァルキリー09 砲撃支援 B小隊員 柏木 晴子(ライフル装備)

ヴァルキリー10 強襲掃討 B小隊員 築地 多恵

ヴァルキリー11 打撃支援 A小隊員 麻倉 遼子

ヴァルキリー12 制圧後衛 A小隊員 高原 水鳥(バズーカ持ち)


この面子にCP将校の涼宮(姉)と純夏を加えた計14名構成で、全機が不知火S型と言う最高クラスの中隊だ。

言わずともながら既にズタボロだった11月11日以降、戦死者が一人も居ない為メンバーの入れ替えは皆無。

更に2機がフォールディング・バズーカを装備し、ヴォールク・データ完全攻略も後一歩まで迫っている所だ。

また以前 俺を仕留めた腕を買われたのか何時の間にか拵えられたライフルが柏木の機体に配備されてるし……

原作通りの流れで進んでいれば、俺 要らないんじゃね? ……と言う戦果を十分に叩き出る部隊と言えよう。


――――さてラダビノッド司令が有り難くも作戦の事を何やら仰っているが、俺の(脳内)部隊整理は続く。


アルカディア01 強襲制圧 白銀 武(不知火SⅡ型+バズーカ持ち)

アルカディア02 突撃前衛 篁 唯依

アルカディア03 突撃前衛 神宮司 まりも

アルカディア04 砲撃支援 イルマ・テスレフ(ライフル装備)

アルカディア05 突撃前衛 ライト・ラーニング

アルカディア06 強襲掃討 フレア・フレイドル

アルカディア07 強襲掃討 ブリザ・スリーブス

アルカディア08 制圧後衛 七瀬 凛(バズーカ持ち)

アルカディア09 制圧後衛 伊隅 あきら(バズーカ持ち)


次に成り行きで結成された上に、まかり間違って世界最強の(辛うじて)中隊とされてしまった突撃機動部隊。

正気かと思われるカイゼル・カラーの俺の不知火SⅡ型を隊長機に構成される、白銀と愉快な仲間達である。

一応 噂に違(たが)わず人数的に辛うじて世界初のヴォールク・データの中隊編成での攻略を成し遂げている。

実を言うと"この戦果"がスサノオ無しでの甲21号作戦の踏ん切りを ゆーこさんに付けさせた一番の理由だ。

当然 米軍は喧しかった様だけど、兵器は鉄原(チョルウォン)の攻略で活かしてやるって事で黙らせた模様。

それにしても……原作では まりもちゃん死んじゃってるし、本来 原作で戦うの俺ダケ……ハハッ、ワロス。

TEのヒロインっぽい唯依・イルマを初めとする米軍衛士4名・更に2人の加入は誰が予想 出来たのか?

……とは言え皆が大事な存在なのは変わらないし、千鶴達に仲間が大切と豪語したからには有言実行するさ。

ついでに捕捉して置くと、唯依の横には当たり前の様に巌谷さんが立っておりモニターを真剣に眺めている。


「(さっきから武者震いが止まらん……何気に俺は、歴史的な瞬間に立ち会っているのかも知れんな……)」


20701 強襲掃討 榊 千鶴(ツノ付き)

20702 突撃前衛 御剣 冥夜

20703 突撃前衛 彩峰 慧

20704 砲撃支援 珠瀬 壬姫(ライフル装備)

20705 制圧後衛 鎧衣 美琴(バズーカ持ち)


「(……遂に……遂に此処まで辿り着いたんだわ……!!)」

「(タケルに感謝せねばな。今の私に蟠りなど何も無い)」

「(上等。武に教わった技……必ず活かして見せる……)」

「(と、とうとう憧れの武御雷に乗って実戦……頑張らなくっちゃッ!)」

「(凄い人数だなァ。きっとタケルの御蔭で此処に立ってる人も多そうだね。今のボク達みたく)」


そして決して忘れちゃダメなのが、マブラヴの代名詞とも言える横浜基地"快速反応部隊"の5名である。

機体は僅かに見劣りするが桜花作戦を完遂 直前まで生き延びた事から、生存力はピカイチと言えよう。

原作とは違って立場的に"踏み込みが足りん"状態だった為、冥夜に例の告白を言わせる可能性は皆無だが……

あのイベント=死亡が確定する為に問題外で有り……出来る事なら留守番させたい程 好きな人達ですマジで。

……とは言え今回の作戦では自由に動けるポジの為、有効活用すれば被害を減らせる事は確定的に明らかだ。

此処で余談だけど彼女達のコールサインはまだ決まって無いらしいが……後に俺が決める羽目に成りました。

更に彼女達には今回の作戦を踏まえての最終 調整も必要な為か、此処には特別に真那さんの姿も有る。

つまり俺の正面に立っている衛士+αは総勢29名と成り……後にハブられた霞が不貞腐れてたのは内緒だ。


――――さて置き。面倒かもしれないが、大まかな作戦の内容も不躾ながら説明しなきゃね。


初っ端のフェイズ1は、国連宇宙総軍の装甲駆逐艦隊による対レーザー弾(AL弾)の軌道爆撃に続いて、
佐渡島周辺に展開する帝国連合艦隊第2戦隊が、同様にAL弾で長距離飽和攻撃を行い徹底的な面制圧を行う。

フェイズ2は、西側の真野湾より突入した帝国連合艦隊第2戦隊が艦砲射撃にて、旧八幡~旧高野、
旧坊ヶ浦一帯を面制圧したと同時に、帝国海軍・第17戦術機甲戦隊が上陸し雪の高浜から橋頭堡を確保。

更にウィスキー部隊(西部方面部隊)を順次揚陸させ戦線を維持しつつ、旧沢根へ西進し敵増援を引き付ける。

尚 橋頭堡(きょうとうほ)ってのは敵地 等の不利な地理的条件での作戦を有利に運ぶ為の前進拠点って意味ね?

んでフェイズ3は、東側の両津湾沖に展開した国連太平洋艦隊と、帝国連合艦隊第3戦隊が制圧砲撃を開始。

同時に帝国海軍・第4戦術機甲戦隊が旧大野を確保……続いてエコー部隊(東部方面部隊)を順次 揚陸させる。

その先行部隊が戦線を構築し、主力は北上して旧羽吉からタダラ峰跡を経由し旧鷲崎(佐渡島の最北)を目指す。

此処でフェイズ4と成る事で司令の声の元、説明役は ゆーこさんに代わり第6軌道 降下兵団が再突入を開始。

降着した後 佐渡島ハイヴ内部へ突入、第4層への到達を確認後ウィスキー部隊を順次投入して占領を目指す。

一方エコー部隊は突入作戦の支援に当たり、海底からのBETAの再上陸に備える。(広さは半径10キロの為)


「作戦の段取りは以上よ。詳しくは資料に目を通して頂戴。それを踏まえて何か質問は?」


此処で原作の話も含まれるが、突入部隊が成功すれば俺達は情報収集が任務との事だが反応炉はどうすんの?

恐らく"その時"に指示が出るっぽいから質問はしないけど、流石に破壊無しでの占領は無理だと思うのですよ。

だけど誰もが"無理"だと思っていても口には出さないダケっぽいから、俺も空気を読む事にしましょうかね。

んで原作通り予想外のBETAの数の場合は、本来スサノオが荷電粒子砲を地表構造物にブッ放す訳だが……

今回はスサノオ自体を使わないので、強引にバズーカでBETAを薙ぎ払って反応炉をテロって帰る感じか。

改めて考えると最悪な展開に成ったら骨が折れそうってレベルじゃねーぞ……そう考えつつ、黙っている俺。


「……副司令」

「はい。伊隅」

「少々脱線し恐縮なのですが、鑑少尉は作戦に参加させるのでしょうか?」

「う~ん。流石に今回は不知火S型の配備が間に合わなそうだから、後方で控える事に成りそうね」

「畏まりました」

「ざ、残念ですね~」

「(ワザとらし過ぎるぞ純夏ェ……)」

「でも鑑の衛士としての知識は作戦に役立つ筈よ? 形振りなんて構わず、この娘の意見は糧としなさい」

「了解ッ!」×13

「……(持ち上げ過ぎだよぅ……)」


――――無論"甲20号作戦"では大いに役に立って貰うだろうが、一応 何らかの役目には担わせるとの事。


「他に質問は有る?」

「……はいッ」

「何かしら? 篁」

「我々2個中隊・及び1個小隊の内……ハイヴに"直接"突入するのは"1個中隊"との事ですが……コレは?」

「記しての通りよ。A-01か突撃機動部隊……BETAとの交戦後に、損害の少なかった方を突入させる」

『!?!?』

「尚 技量は認めるけど"快速反応部隊"は2個中隊のバックアップに当たるから、ハイヴ突入の予定は無いわ。

 つまり2個中隊の壊滅は"甲21号作戦"の失敗に直結すると言っても良い。だから精々死力を尽くす事ね」

「り、了解しましたッ!」

「ふふん。まァ訓練通りに動けば朝飯前の筈よ。それで……他にも何か有るかしら?」

『…………』

「無い様ね。それでは司令?」

「うむ。諸君らの健闘に期待する!! 以上 解散ッ!」

「敬礼!!」

『――――ッ』


俺を含め皆 何か言いたい事は有るだろうが……既にサイは投げられちまったんだ……とにかく遣るしか無い。

よって恐縮ながらの俺の言葉に ゆーこさんを含め全員が凛々しく敬礼すると、言葉通り解散と成りました。

すると直ぐ"3日後は突撃機動部隊との共同戦線か~! 負けてられないわねッ!"と言う声が響いたと思うと、
"速瀬中尉は獰猛で一番に足を引っ張る筈……と鑑少尉が言っています"って煽りも聞こえたが放置するとして。

俺は俺で突撃機動部隊の面子を集めると、資料を(俺も踏まえて)熟読する事を指示し再度 解散したのでした。


「ね、ねぇ……茜ちゃ~ん……」

「白銀少佐。凄く険しい顔してたよねェ?」

「やっぱり普段は温厚な人だけど……(アレが白銀少佐の本来の……)」

「とにかく水鳥……正念場……」

「うん。鑑さんのアドバイスも有るし、絶対に間に合わせないとッ!」

「ほぉらアンタ達ッ! 遅れるんじゃないわよ~!?」

『……了解ッ!』












――――Now Loading












汚く、えげつない敗戦なんか
忘却の彼方へ葬り去りてえ。
……誰しも眠れない夜を体験するものさ。
そんな時はhamaへ来な。
FIGTING ALL NIGHT TOGETHER!!












――――Completed












2001年12月19日 夕方


――――横浜基地 全体が黄昏色に染まる、何とも中途半端な夕暮れ時。


「うぉッ。思ったよりも寒いなァ」

「大丈夫? タケルちゃん」

「平気か? そっちこそ」

「大丈夫だよ~。そもそも風邪は引かないカラダだし」


唯依達に伊隅(姉)達に千鶴達……3日後の作戦に向けて、彼女達との関わりは欠かせない要素だろう。

だけど大規模作戦のプレッシャーは俺にも大きく圧し掛かっており……生きて帰る為の大きな糧が欲しい。

よって互いの部隊のミーティングを終えて自室で純夏と落ち合うと、やや恨みがましい視線を受けつつも。

俺は純夏を基地の外へと連れ出し、校舎裏では無いが事前に選んで置いた近場の"丘"へと共にやって来た。

白銀の記憶によると……純夏はサンタを待つ為に、こういう場所に通っていた時期が有ったみたいだ。

サンタウサギを渡したのも"その頃"らしく、作戦が近い現状……コレをプレゼントするのは今しか無い。

本当なら何日か早いんだろうが"こんな事"迄テンプレで良いのか!? 俺は俺で純夏の事を想っているんだ。

だから渡したいときに渡すッ! それで良い!! まァ純夏が受けて入れてくれなきゃアウトなんですけど。


「でも息は白いじゃんか。何なら羽織るか? 軍服2枚重ねだとシュールだが」

「アハハッ。大丈夫だよ。事前にタケルちゃんから貰ったマフラーが有るし」

「そんなら結構……とッ……ところで……リボンの調子は問題無さそうか?」

「えっ? えぇ~っと……確か"バッフワイト素子"だっけ? 良く分からないよ」

「そ、そうか。あと折角 調子が良いってのに、甲21号作戦の件に関しては残念だったな」

「んぅ? 張り切っては居たんだけどね……タケルちゃん達の方こそ、結果によっては大変みたいだけど……」

「まァ今の戦力なら大丈夫だから心配するな。データを把握してる純夏になら分かるだろ?」

「……だけど……」

「ともかく本題だと言わせて貰おうッ! 突然ですが此処で問題です」

「い、いきなり!?」←例のビックリポーズ

「そう構えるなって。ちょっと早いけど……純夏にとって"クリスマス"と言えば何だ?」

「クリスマス? ……えぇとッ……タケルちゃんとの……約束……かな……?」

「じゃ~その"約束"ってのは? 思い出して見てくれ。小さかった頃を」

「……プレゼント……」

「御名答。そんな訳で不躾だが進呈しよう。"ゆっくりたける"キーホルダー(クリスマスver)をッ!!」


――――実際の所 先日の腋巫女verの白銀フェイスに、サンタ帽子を被せたダケでしか無い。


「えっ? わッ、わわっ。可愛い~ッ!」

「な、なん……だと?」

「だってホラッ! このマヌケな顔……タケルちゃんソックリだもん!! すっごく面白いよ!?」

「おいィ?」

「あはっ! あははははっ! ふふっ……えへっ、えへへへ……」

「……気に入って貰えた様で何よりさ……」

「顔が笑ってないよ? タケルちゃん」

「へぇあ」

「とにかく……有難う……何でだろ……ヘンテコなプレゼントの筈なのに……凄く嬉しいよ……」

「生憎 作戦の時は別行動だからな。ソレを俺だと思って持って置いてくれよ?」

「……うん……言われなくても そうするもん……」

「勿論 戦いが終わったら真っ先に純夏の元に戻って来る」

「……ッ!?(やっぱり其処まで私ダケの事を……!!)」

「だ、だから……"その時"にだな?」(小声)


――――純夏の事を抱きたい。俺の都合だ苦情は勘弁。故に意を決して、そう告白しようと思った矢先!!


「タケルちゃん!!」

「!? な、何だッ?」

「~~ッ……」

「大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ?」

「え、えぇっと……突然で悪いんだけど……私の御願い……聞いてくれるかな?」

「俺に出来る事なら何でも」


空気を読まずに唐突な大声で、俺の言葉を(意図的にでは無いっぽいが)遮った純夏。

やっぱり流れ的に死亡フラグにしか成らないのがダメだったんですか!? あえてブレイクを狙ったのに!!

最悪やでカズヤぁ!! どうやら俺の葛藤も虚しく、直前の言葉は純夏には届いて無かった様である。

その為 内心では軽くヘコみつつも潔くキリッとして"御願い"を待っていたが、次の言葉に俺は耳を疑った。








「それなら……私の事……だ、抱いて下さいッ」

「!?!?」








――――その純夏の強烈なカウンターに、冗談抜きで思考が停止してしまった俺。しかし追撃は続いてゆく。


「あ、あはははッ……やっぱり驚いちゃったよね? ……でも……"御願い"は それダケじゃ無いんだ……」

「…………」

「私ね……少ない時間で分かっちゃったの……タケルちゃんは……多くの人達を支えているって事を……」

「…………」

「それなのに……タケルちゃんは……私ダケを見てくれている……それは確かに嬉しい……嬉しいけど……
 "以前"の私みたく……沢山の娘達が同じ思いをする……私ダケが幸せに成っても……それはダメだと思う」

「…………」

「だから……私以外の娘達も、出来る限り幸せにして下さい。それでも……私を一番最初に愛して下さい。
 ……巡り合えた幼馴染が……タケルちゃんの想いを全て受け取れない娘だった……それでも良ければ……」

「純夏ッ!」

「ふぇっ?」


≪――――ぎゅっ≫


「愛してる!」

「んぅっ!?」

「……ッ……」

「ぷっ、はぁ」


正直な所 目の前の純夏が何を言っているのか、この時点での俺は全く理解 出来て居なかったと思う。

だけど……顔を真っ赤にさせて告白する その様は誰よりも愛おしく……俺は自然と純夏を抱き締めていた。

同時に始めてのガチな口付けを行い……意外と互いの唇は早く離れたが、暫しの沈黙の後 純夏が口を開く。


「…………」

「タケルちゃん」

「うん?」

「……こんな私を好きに成ってくれて……有難う……」

「泣くなよ馬鹿(……だけど……)」

「でも……う、うぅう~ッ……!」

「(この気持ち……まさしく愛だ)」←再確認


――――俺は嬉し泣き(?)している純夏を再び抱き寄せると、途中まで肩を寄せ合い丘を後にしたのだった。


「……冗談じゃ……ないです……」

「社?(珍しい……寝言かしら?)」


――――尚 翌日、良く覚えてなかった告白の件(くだり)を聞き直してみたら、純夏(全裸)に殴られました☆


「グフッ……冗談じゃねぇ……」

「それはこっちのセリフでしょ!? 何で覚えてないんだよーッ!」








●戯言●
白銀28が今に掛けて部隊を魔改造してしまった事により、何と佐渡島はスサノオ無しで挑む事になりました。
原作考えると無理ゲーですが、御都合主義を働かせて無難に進めようと思います。すいません許して下さい。
さて此処で遂に白銀28が純夏と結ばれましたが、彼女が白銀の中の人に気づく事は100%有り得ません。
ですから欝な展開には間違っても成りません。それにしても案の定 締まらない2人……冗談じゃねぇ……
また純夏が彼の気持ち(愛)をグラハム並に受け止めた為、ハーレムルートの道が開通。本人気付いて無いけど。
ラグーン語は執筆に3倍の時間が掛かりましたが私が浅はかでした面目ない。Poemも今回限りで終了にします。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ61
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d
Date: 2012/11/07 21:35
これはひどいオルタネイティヴ61




2001年12月20日 午前


――――純夏に告白しようと思ったら、逆に告白されていた。(例のテンプレ略)


"あの時"は冷静に考える様な余裕が無かった以前に、思考停止してしまったので記憶も曖昧。

只ひとつ覚えているのは、純夏が余りにも愛おしくて自制が効かなくなり抱き付いてキスした事ダケだ。

それも意識していた唯一の女性と言う事で、今迄の女性達と違って萌えによるヒートアップが半端なかった。

だけど"その際"の純夏の台詞を覚えてない俺……今 改めて考えて見ると締まらなかたってレベルじゃねーぞ。

対して純夏も凄まじく恥ずかしかったみたいだが、彼女は正確には人間では無い為 記憶障害とは無縁だ。

00ユニットが"白銀の他の娘とのアッー!なループでの経験"を読む事で起こる症状は例外なのは さて置き。

純夏の告白を受け入れた後は冷静には成れた為、無駄に知識ダケは有ったので無難にエスコート出来たが……

余りに詳し過ぎても純夏に誤解されそうなので、其の辺は当然 気を付けて抱きましたとも。ウェヒヒヒ。


≪コッコッコッコッ……≫


「……ッ……」

「純夏~。早く機嫌直せって」

「ふんだ! 知らないもんッ!」

「悪かったって言ってるだろ~? だから何を言ってたのか、もう一回 教えてくれるダケで良いんだよ」

「"あんな事"2度も言いたくない!」

「其処を何とか」


さて惚気はコレ位で止めて置くとして、無事(?)朝チュンを迎えた俺と純夏だったのだが。

昨日 覚えていなかった"告白"での内容を真っ先に聞いた所、何故か滅茶苦茶 機嫌を悪くされました。

幸い一発 腹パンを食らったダケで済んだとは言え、最初はフラグ的な意味でヤバかったのかと動揺した。

だが純夏の膨れっ面の表情からは明らかに"激怒"ではなく、恥ずかしさが大半を占めると読み取れた。

よって渾身の告白を相手が覚えてなかった事が癪だったのかと、悪くは思うが其処まで気しない様にして……

今は恋人とも言える純夏の反応が、只単に面白くて可愛いのでプリプリと横を歩く彼女に再度 言うのだが。

そろそろPXが近くなる今頃になって、純夏は俺の正面で此方を向きつつ後ろ歩きして不機嫌そうにも言う。


「なら簡単にしか言わないッ。私ばっか構っちゃダメって事だよ!」

「はぁ?」

「後は自分で考えてね? ホラホラッ。部隊の皆が待ってるよ!?」

「お、おいィッ? 押すなって!」


≪――――ぐぃぐぃっ≫


あまり自分を構い過ぎるな……だと? 純夏は告白の時にワザワザ"そんな事"を言ったのか~?

要約されていると言う事なので、俺ばっかり頼りにしないで頑張る……とでも解釈すれば良いのだろうか?

そう認識しつつ考えて見れば、其処まで純夏に付きっ切りだったのかなァ? 思わず足を止めて考える。

しかし何時の間にか俺の後ろに回り込んでいた純夏が、グイグイと背中を押して来やがりました。

遠くに唯依達 突撃機動部隊の姿が確認できてるって言うのに……俺かッ? 足を止めた俺が悪かったのか?

本来なら腕をキめてやる所だが、純夏に対する罪悪感の為か此処は素直に前進するしか無かった。

すると案の定 唯依達が少佐+新任少尉の様子を妙に思う素振りを見せているが、既に後の祭と言えよう。


「それじゃ~タケルちゃんは、早く神宮司先生達の所に行くッ」

「えっ? お前は どうすんだよ?」

「私は伊隅さん達と朝ゴハン食べて来るよ。まだ色々と改善点が有ったから言う事 沢山有るし」

「だ、だったら しゃ~ないが……(既に俺の立場が無いんですけど)」

「分かってくれた? 私 頑張るからタケルちゃんも、ちゃんと仲間を引っ張ってアゲなちゃ駄目だからね?」

「!? まさか純夏から"そんな言葉"が聞けるとはなァ」

「それって どう言う事だよ~?」

「褒めてるんだよ。目覚めて間も無いのに立派なモンだ」

「ち、調子狂うなぁ……とにかく、また後で会おうね?」

「おぅ。無理はするなよ?」


……驚きだ……原作では白銀にベッタリな純夏が、この段階で他の人間の為に自分から勤めてくれるとはね。

そんな笑顔で手を振りつつ俺の元を去り、ヴァルキリーズの集団へと走ってゆく純夏。

やがて聞こえてくる元気な挨拶……強ち"構い過ぎるな"って俺の解釈は間違ってなかったのかもね。

こりゃ~A-01は純夏に任せて置けば当日までに滞り無いシミュレーターの戦果を残してくれそうだ。

一方 俺と純夏との関係の誤解(実際には正解)は突撃機動部隊の面々に既に誤魔化し不回避に陥っているが。

此処は潔く腹を括ろうと考えつつ表情を(真面目に)改めて唯依達に近付き、朝の挨拶を交わすのだった。




……




…………




……十数分後。今現在は速瀬に背中をバシバシとされている純夏を遠目に、PXにて絶賛朝食中である。

メンバーとしては俺を含めて何時もの9人の衛士+ウォーケン姉妹の11名に加えてイリーナちゃんが居る。

けど霞は居らず……睡眠を挟んで未だ ゆーこさんの手伝いをしてるらしく、ブリザ少尉が残念がっていた。

対してイリーナちゃんも同じような理由で忙しかった様だが、今回はテレサ中尉が朝食に誘ったらしい。


『……ッ……』

「(うぅ~む)」


それにしても……何ですか? ……この空気……冗談じゃねぇ……やっぱり俺と純夏の関係が気になるのか?

朝の挨拶の際にキリッと表情を替えた為、必然的に"言えない空気"と成り余計な心配だったかと安心したが……

いざ飯を食い始めると……皆が揃って口数少なくチラチラと此方を窺っているでは、あ~りませんかッ。

普段ならテレサ・フレア・伊隅(妹)辺りが無意識に、なんだろうが会話を弾ませてくれてたんだけど……

比較的 冷静っぽいセレナ・フレア・イルマを除きイリーナちゃん迄もが凄く何か言いたそうにしているのだ。


「……伊隅」

「は、はぃいっ!?」

「何か俺に言いたい事でも有るのかい?」

「!? それは~ッ」

「なら七瀬は?」

「え……ぇえとッ……」

「別に遠慮は要らないんだけど」

『…………』

「では私からっ!」

「どうぞ。テレサ中尉」

「あのですねッ? そのぉ~、鑑少尉が白銀少佐の"幼馴染"と言う噂は……本当なのでしょうか?」

「俺とアイツが……ですか? 何処でソレを?」

「専ら噂になっておりまして。ですから先程のマウァ……いえ鑑少尉との遣り取りで確信を……」


――――遠慮がちそうに告げるテレサ中尉の言葉に、隣のイリーナちゃんも おずおずと続いた。


「成る程。まァA-01に彼女が"そう紹介した"事で、直ぐ様 広まっちゃったんでしょうねェ」

「……と言う事は……や、やはり……武さんの……?」

「うん。アイツは俺の幼馴染で、まァ腐れ縁ってヤツですな」

「それが……何故 今に成って軍にッ?」

「俺はノウハウを実戦で学びましたが、アイツは"ある兵器"をモノにする為ずっと英才教育の日々でしたから、
 今のイママデ任官が延期されてたんですよ。神宮司中尉。BETAにヤられた傷が深かったのも有るかな?」

「は、はぁ……」

「本来 軍に入ったからには私情を挟むのはアレだったんで黙ってたんですけど、言っちまったみたいですね。
 そんなワケで改めて宜しくしてやって下さい。七瀬と伊隅は年も近いだろうから……友達にでも成ってくれ」

「断る理由は有りません」

「はいッ。何だかBETAに散々なメに遭わされたみたいですけど、一緒に頑張りたいですね!!」

「(まさか00ユニットで有る彼女に、そんな境遇が有ったなんて……運命とは残酷なのね……)」


――――伊隅(妹)の言葉に皆が頷くが唯一 純夏の正体を知るイリーナちゃんは、少し複雑そうな表情だ。


「戦術機やBETAの事にも滅茶苦茶 詳しいから、機会が有ったら聞くと良いですよ? セレナ中尉」

「フフフッ。それは興味深い限りです」

「そ、それにしてもォ」

「あァ。鑑少尉って凄いんだな……大将に其処まで信頼されてるなんてね」

「う……羨ましいな~」(小声)

「ともかく。白銀少佐の幼馴染と言う事で同等……若しくは それに近い実力を持っていると言うのなら……
 人類の切り札……失礼ながら初めは半信半疑でしたが信憑性が沸きました。非常に頼もしい存在の様ですね」

「う~ん……そうなんですけどイルマ少尉。煽てると調子に乗るんで程々に~ッ」

「("あの女性"をマウアーと言う人だと思っていた私……だからこそ白銀さんには……もう失って欲しくない)」

「(アイツ呼ばわりしながらも、無条件で信頼する様な間柄か……私も……早く武さんと出会えていたら……)」


――――結局"こんな感じ"で純夏を改めて紹介した俺だが、恋人と言えなかった女々しさを許して頂きたい。




……




…………




……気を取り直して更に十数分後。

何気に久し振りに冒頭から参加する(最終)訓練を行う為に、一人寂しく着替えて更衣室を出てくると。

シミュレーターの端末の前にはセレナ中尉が居て何やら操作を行っており、安産型の後姿が眼に入る。

また彼女と同様 着替える必要の無いテレサ中尉が、少し離れた場所に有る長椅子に腰掛けていた。


「あッ、武くん! 早かったね~」

「ど~やら一番 乗りみたいスね」

「男の子だしねェ」

「そう言う事です」

「とりあえず、面倒臭い事は姉さんに任せて此処に座って」

「かしこまり~。ところでテレサ中尉は手伝わないんで?」

「私はコレから予定が有りますからね」

「予定……?」

「22日の突撃機動部隊の管制は姉さんが遣りますけど"快速反応部隊"の方は私が担当する事に成ったんで、
 もう少し経ったら月詠中尉と打ち合わせを するんです。だから私は手を貸さなくて良いからって姉さんが」

「成る程~ッ」

「ところで。御暇そうですし姉さんのスカートでも捲りましょうか~? 面白い反応が見れると思いますよ?」

「あ、後が怖いので遠慮して置きます」

「だよねぇ~」

「残念ながら」


――――何言ってんのテレサさん!? 是非とも御願します……と言いたい所だが、冗談を真に受ける訳にも。


「だったら……暇ついでに私の独り言でも聞いて貰っても良いかなァ?」

「御安い御用ですよ」

「私こんな性格だから、結構ハッキリとした事 言うかもしれないけど?」

「独り言を咎める気は無いですよ」

「では遠慮無く。ゴホンッ」

「(今の俺はObjectさ……)」

「……以前の……2ヶ月くらい前の私って……もう何と言うか、全部 諦めてたんですよねぇ……」

「…………」

「此処まで人類が追い詰められた時点で、もはや勝ち目は無い。地球がBETAに支配されるのは時間の問題。
 香月副司令は私達に伏せて何やら大事な計画を立てていた様だけど、知りたい気は勿論 聞く気も無かった。
 失敗に転んでオルタネイティヴ5に移行しても、私の家族は拒まない限りは宇宙に旅立つ事が出来るから」

「…………」

「だから失礼ながら必死で戦ってる衛士の人達は……何 無駄な努力をしてるんだろって馬鹿にしてましたよ。
 特にXFJ計画やクーデターでBETAを無視して戦術機同士で戦って何の意味が有るのかって呆れました。
 どんどん状況は悪い方向に進んで行ってるのに、足を引っ張り続ける人類。地球を奪われて当然ですよね」

「…………」

「だけど兄さんと姉さんは反攻に協力的だったし、私も只食いする気は無いから仕事は無難にしてたけど……
 そんな釈然としない消化試合の中で出会ったのが"白銀 武"と言う若い衛士。あの時の驚愕は、忘れない」

「(驚愕?)」

「地球上にハイヴは26存在し、うち一つのハイヴは奪還したモノの犠牲は大きく人類に大きな蟠りを残した。
 つまり根本的な解決には成っておらず、ヴォールク・データの戦果は相変わらず平行線で成長していない。
 だから相変わらず私の考えは変わっていなかった。正直 横浜基地に移る様に言われた時は面倒でしたよ」

「…………」

「脱線しちゃいましたね。ともかく全然 遣る気が無かった私は目を疑いましたよ。正直濡れちゃいました」

「!?!?」(19話 参照)

「姉さんに"その事"聞いた時は半信半疑でしたけど……単機で反応炉まで辿り着ける事が出来るなんて……
 今迄の価値観が粉々に砕け散った瞬間でしたね。現金な話ですけど、今の私が在るのは全て彼の御蔭です」

「…………」

「何せ彼は期待を全く裏切らずに、次々と今の常識を覆してくれましたから。普通 武御雷3機に勝てますか?

 不知火単機で。有り得ないですよね? くだらないと思ってた戦術機同士の戦いも……アソコまで極端なら、

 素直に賞賛せざるを得ません。同時に反抗の糸口も見えた所か、ハッキリと広がってゆくのを感じました」

「…………」


――――恐らく彼女は頭が良過ぎるから諦めも早かった。ゆーこさん みたいな超天才なら別だったっぽいが。


「だから今は最期まで抗おうと決めた。最後まで地球に残って、彼が何処まで辿り着けるか見てみたいから。
 生憎 見守る事しか出来ないけど……彼なら大丈夫だろうと信じてます……ッと以上で独り言は終了です!」

「ふぅ~む」

「怒っちゃったかな? やっぱり」

「いえいえ。独り言なら仕方無いですよ」

「……あぅッ……(この笑顔が反則……)」

「それにしても何で唐突に?」

「今迄の私ってサイテーだったけど、良い機会だし武くんには私の本心を知って貰いたかったからかなー?」

「さ、さいですか」

「あッ。そんな事を言ってるウチに皆が来たみたいだよ?」

「えっ?」

「(ままよ~ッ!!)」


――――右隣の彼女の言葉に釣られる様にして視線を左に向けるが、それと同時に右頬に何かが触れた。


「ちょっ! テレサ中尉!? 誰も来てないって言うか今のって……!」

「それでは私ッ。そろそろ待ち合わせの時間なので失礼しますね~!」

「テレサッ!? あぁああ貴女 武さんに何て事をッ!」

「セレナ中尉!?(何時の間にッ)」

「こんなのはタイミング次第だよ? 姉さん。じゃあ頑張ってね!? 武くん!」

「お、おうよッ」


≪たたたたたたっ≫


「すみません……妹が失礼な事を」

「別に気にしてませんよ~?」

「で、では隣……宜しいですか?」

「お構いなく」

「……ッ……」

「(近い!?)」


……最初から全部 諦めて生きていた……か。

例えば ゆーこさんなら限り無く絶望的とは言え、自分の計画が失敗すれば人類が滅ぶと分かってる。

一方テレサ中尉の様に"既に人類は抗う術が無い"と割り切って生きている人は どれだけ居るのだろうか?

少し考えて見れば分かる事なのかもしれないが、そう思ってもない者は帝国と米国には非常に多そうだ。

例えば大きな地震が起ころうとも……まさか火山や津波に、自分が飲み込まれて死ぬとは思わないが如く。

また"滅びるのは分かってるけど戦ってor殺されて死ぬ"と言う覚悟を既に してる人もザラに多そうだよな。

唯依・まりもちゃんも初め、俺が知る殆どの衛士が"そんな人間"に含まれてるだろうし……何それ怖いッ。

しかしながらだ。今はオルタネイティヴ4の悲願を成した ゆーこさんと、鑑 純夏と言う切り札が居る。

そして色々と常識を破壊してしまった俺もオマケで付いてるし、明らかに2ヶ月で株価が変わっちまった。

よってテレサ中尉の染み付いていた価値観を拭えたので有り……今のキス☆は、御褒美だったと捉えよう。

だが一昨日の唯依と言い……教えてくれ純夏……俺は本編終了まで後何度 彼女達の魅力に耐える必要が有る?

少なくとも俺が衛士で在る以上避けては通れそうも無い為、其の辺のオルタの常識は受け入れるべきなのか。

ぶっちゃけ既に面倒だからイチイチ考えてないけど、未だに皆のエロスーツ姿は見るに耐えないエロい意味で。

……さて置き……今度は何時の間にか作業が終わったっぽいセレナ中尉が、俺の右隣に着席したのだが。

俺は何も無い正面を凝視しているが、僅かな息遣いがハッキリ聴こえる程 彼女の距離が迫ってるのが分かる。

一体何を始めるんです? ……とは言え俺が特に動かないのは、考えずとも何を されるか理解してるからだ。


「…………」←ノーパン+勝負下着(上だけ)

「(ゴクリ)」

「白銀少佐ッ! お待たせしました!!」

「!?!?」

「……伊隅と七瀬……か。そろそろ来る頃だと思ってたぞ?」

「流石に御早いですね……未だに強化装備には馴染めていなくって……」

「はははッ。俺も最初は似たようなモンだったから気にする事は無いさ」

「そ、そうなのですか?」

「当たり前。何なんだよコレ~ッて何度も頭の中で思ったね」


残念ながらフラグ追加ならず。しかし純夏に対する負い目を考えると、有難う&馬鹿ヤロウ神様。

まァ仕方無いので立ち上がり対応すると、恥ずかしそうにモジモジする七瀬の後ろにも他の衛士の姿が見える。

詳しく(胸以外を)観察すると、唯一ブリザが自分の体の一部を(無意識っぽいが)恥ずかしそうに隠していた。

う~む……此処で人間観察をしてれば当分は飽きそうも無いが、また速瀬に絡まれたりしたら嫌だし無理か。


「そ、それでは白銀"少佐"?」

「えぇ。始めるとしますか~」

「中隊整列!!」


――――俺がセレナ中尉と視線と言葉を交わすと、唯依の声で彼女たちは直ぐ様4人×2列に並んだ。


「あ~ッ。皆も周知の通り明後日には佐渡島に赴いてBETAと一戦 交える事に成った。出発は明日の夜」

『…………』

「よって今日中には荒削りな所は全て直して置きたい。午前中は主にハイヴ攻略を中心に攻めるから宜しく。
 だけど開幕は平地戦だから相場が違う事は忘れ無い事……AL弾で光線級は殆ど居なくなるは思うけどね」

『…………』

「此処で注意点を。今回はA-01と快速反応部隊との共同作戦になり、ハイヴに侵入するのは1中隊だ。
 でも対抗意識は絶対に持たない様に。あくまで共に協力する仲間だと言う事を念頭に任務に当たってくれ」

『…………』

「な、何か質問は有るかな?」

『…………』


ちなみに前列には左から唯依・まりもちゃん・七瀬・伊隅(妹)の日本人4名。

後列には左からイルマ・ライト・フレア・ブリザが前列の4名の隙間から見える様に立ってるんだけども。

何時もなら俺の どんな言葉にも威勢良く応えてくれてた面々が、揃って表情を硬くして黙っている。

コレは正直 予想外で有り、こう言う時は誰を肖れば……って流石に佐渡島を前にフザけられませんよ!?


「特に無い様ですね。白銀少佐」

「そ、そうなのかい?」

『…………』

「尚シミュレーター開始の準備は全筐体 整っております」

「なら各員 中に入るんだッ! 報酬分くらいは働け!!」

『了解!!』


意味が分からないが此処で引いてしまってはダメな気がするので、せめてもの肖りの台詞を叫ぶと。

ようやくシラフ(?)に戻ったらしく唯依達は表情を改めると、敬礼の動作の後に筐体の中に入ってゆく。

その妙な様子に当然 違和感を得たので黙って彼女達の背中を眺めていたら、横からセレナ中尉の声がした。


「どうされたんですか? 皆さん行かれましたが」

「えぇ……何だか緊張してるな~って思いまして」

「本気で そう仰ってるんですか?」

「も、勿論。流石に明後日ってのは早過ぎますかね?」

「そんな事は有りません。武さんが いらっしゃる今。彼女達は多少の緊張はせど恐れ等は無いでしょう」

「だとしても妙に……」

「クスッ。其処まで心配なら、自分の顔を鏡で確認されると良いですよ?」

「!?!?」


――――其の言葉に慌ててトイレまで走って鏡を凝視すると、俺の頬には先程のキス☆の跡が残っていた。


「それでは早速ヴォールク・データを開始しよう」

『今回も"気合"で突っ切るんですねッ? 白銀少佐!!』

『ほ、本番でも……旨く出来るかなぁ……?』

「いや。アレは君達ライトやブリザの遣る気を煽る為に言った事だから冗談だよ」

『ガクッ! そ、そんな~っ』

『……ぁうッ……』

「はははっ。悪い悪い。でも特に2人は見違える程 動きは良くなってただろ?」

『代わりにボク達が慌てて撃破される事が多かったですけどね~』

『ライト少尉とブリザ少尉には恐縮ですが……少し安心しました』

「まァハイヴ内は直径100mから200mの広さだ。どんな状況に成ろうとも幾らでも対処方法は有る」

『だから間違っても自決はしない……(以前 白銀さんを錯乱させてしまった様に……)』

「そう言う事です。じゃあ先ずは軽く流そう! 何か良い方法や試したい事が有ったら遠慮なく言う様に!」

『――――了解!!』


≪人が持つ唯一絶対の力……それは自らの意思で、進むべき道を選択する事だ≫


『(武さんは既に殆どの概念や攻略を確立させながらも……更に上を目指しているのね)』←以下 日本人4名

『(そうよ。白銀さんにとって佐渡島の攻略は新たな検証に過ぎない。でも私達は只 戦うダケでは駄目)』

『(白銀少佐は私の様な新米の意見でも、真意に受け止めてくれる……本当に器の広い方……まるで……)』

『(ボクが今回の作戦の中心部隊に居るなんて未だ夢でも見てるみたいだよ……とにかく遣るしか無いね!)』


≪だから皆は常に仲間にとって最良の未来を思い、自由に選択していけ≫


『(私が遣ってしまった事は許されるモノでは無いけど……次の戦いの命で償うと言っても彼に怒られそう)』

『(自分が考え付いたアイデアが戦術機の歴史を可能性が有る。難しいと思うけど、白銀さんの為にもッ!)』

『(苦労して米軍に入ったのは良かったけど、堅苦しいったら無かった。大将と出会えてホント良かったよ)』

『(最初は祖国の為に死ねれば……良いと思ってた……でも今は少しでも長くタケルさん達と一緒に居たい)』

「ヴォールク・データ開始。反応炉を完全に破壊する! 出来るな!? 出来なければ……只 死ぬダケだ!!」


――――まァセレナ中尉の言葉を信じ余計な心配を止めた俺の采配は、無難なモノだったと言って置こう。




……




…………




2001年12月20日 午後


「純夏~、帰ったぞ~?」

「お帰りなさい、タケルちゃん!」


午後の平地戦 中心による訓練をも終えた俺は、唯依達と別れると足早に住み慣れた自室に戻って来た。

仕上げは上々で、それなりに広くて光線級が皆無なヴォールク・データの攻略は ほぼ完璧とも言って良い。

逆に平地戦は不安要素は まだ残っていたりする。光線級の存在が有る限り完璧と言う事は不可能なのだ。

俺は何度も爆死させられた経験が有るから、何故か体が勝手に避けると言うチートが有るが基本は飛べない。

だけど原作の様に"想定の範囲外"の事が起こる場合に危険は限られ、其の場合の采配は白銀大佐に頼れば良い。

彼はハイヴ攻略の経験は殆ど無いが、防衛戦を中心とした市街戦や平地戦は誰よりも多く経験しているのだ。

幸い俺は少佐だし最終的な判断は委ねて貰えてるしで、最悪 純夏に泣きつけば俺達を導いてくれるだろう。

よって明日の午前はフリーと言う事にして有るので……俺は他の部隊の様子を見に行き、午後は機体の調整だ。

さて置き。俺が既に居た純夏に声を掛けると、どうやら またパソコンを見ていた様で笑顔で此方を振り向く。


「お互い御疲れさん。どうだった? 伊隅大尉達は」

「う~んと、ヴォールク・データは早めに切り上げて平地戦が中心だったね。バズーカの運用を確認する感じ」

「ありゃ? だったら対抗 意識を持っちまってたって具合か?」

「雰囲気的にはね。でも実際はタケルちゃんの部隊の負担を減らしたいって想いの方が強かったと思うよ?」

「ほほぉ」

「あっ! コレは別に読んだワケじゃ無いからね?」

「分かってるさ(……リボンの恩恵も有るしなァ)」

「まァ伊隅さん達は"ああ言う戦況"の方が慣れてたみたいだし、特に問題は無かったね」

「そっか。純夏が"そう捉えた"んなら大丈夫そうだ」

「でも何かとタケルちゃん(実際は達)の事を気にし無ければ、私も"こんな気分"に成らなかったのにな~ッ」

「???? こんな気分とな?」

「えぇいっ!」

「うおッ!?」


≪――――ぼすっ≫


最終訓練に立ち会った際の報告をしてくれていると思ったら、急に"その場"でモジモジとし出した純夏。

対して意味が分からず首を傾げていると、唐突に体当たりされてベッドに押し倒されてしまった。

コレって逆の方が絵に成ると思うんだが……性的な意味に限る……と無意味な事を考える空気を読まない俺。


「タケルちゃん?」

「うん?」

「こ、今夜も欲しいんだけど……良いかなァ?」

「!? エロエロな奴め」

「うぅう~ッ……だってタケルちゃんの事 大好きなんだもん……」

「冗談だって。むしろ望むトコロだ」

「だ、だったらエッチなのは御互い様だね?」

「カラダは十代だからなァ。それ以前に"この状況"で拒めるかっての」

「でも明日の事も有るし、程々にしないとダメだからねッ?」

「どの口で言ってんだっつ~の!!」


――――そんな訳でつい犯っちゃったんだ☆ 尚1ラウンド目が終了した後、訓練の詳細は改めて聞きました。


「……白銀少佐……今日も来てくれなかったか……」

「巽ッ。貴女 此処毎晩ずっと同じ事 言ってない?」

「ハァ。何だか佐渡島での作戦が思いやられますわ」








●戯言●
オルタ10年後の未来で斯衛の新米衛士になって月詠さんにセレン・ヘイズ並みに罵られるゲームをやりたい。
マブラヴやってるとセレン・ヘイズは純夏の髪型(リボン無)で灰色の髪をしているのだと脳内変換されます。
快速反応部隊のコールサインは無難に名称に準じて決めるか、AC関連 最後のチャンスな為 悩んでる段階。
ACはネタになる台詞が多すぎて構成に困ります。好きな台詞:こちらシューティングスター。あとは任せろ!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ62
Name: Shinji◆b97696fd ID:a039902f
Date: 2013/02/17 10:44
これはひどいオルタネイティヴ62




2001年12月21日 正午


――――今日も今日で大事な一日なのだが、初っ端から盛大にヤらかした。


「……んぉ~ッ……朝……って12時!?」


≪ガタンッ!≫


何時もなら朝のラッパで気付くどころか、純夏が居るので寝過ごす事など考えていなかったのだが。

自然に目を覚ましたトコロで時計を確認すると、12時を少し回っていたではあ~りませんかッ。

コレを例えるとすると単純で、何時もの仕事を控えた8時起きな筈が4時間寝過ごしたって感じだろう。

それを同僚の負担に直結すると社会人として謝って済む問題では無いと瞬時に察した為、
俺はベッドから転げ落ちてしまうと、強打した頭部をコスりながら ゆっくりと立ち上がった。


――――(昨夜の事も有り)全裸で。


「やっべ。寝過ぎたよコリャ……!」


だが立ち上がってからの動作は素早いモノで、瞬く間に着替え終えると洗面所に駆けて仕度を済ます。

最早 急いでも遅いのだが、気持ちの問題ってヤツです。

よって俺は部屋から出ることは無く、静かにデスクに腰を降ろすと暫しの沈黙の後 呟いた。


「……結局5回もしちまったZE……」


朝のラッパが鳴らなかったり、純夏が居なかったりした理由は後で考えるとして。

単純に目を覚ますのが極端に遅れたのは、間違いなく"アレ"が原因なのは確定的に明らか。

幾ら純夏が可愛い過ぎたとは言え、少佐と言う以前に"この世界"の状況的に情けな過ぎる寝坊の原因であり、
無意識にオデコを机に当てて体を伏せ、更に暫しの間項(うな)垂れてしまう俺であった。

反面 既に姿の無い純夏は自分の肉体の性能を差し引いても元気に早起きしたと思えてしまうのは さて置き。

改めて考えて見ると俺は白銀 以前に、普通にエロゲーの主人公よりも性欲が高いのでは無いだろうか?

何せオルタで彼は純夏と一度"した"ダケで、それ以上のエロ行為には至らなかった筈。

アンリミなら何年かの間に盛る時期も有っただろうが、そっちの俺だったら子供は既に生まれていた だろう。

……嗚呼……毎日のように自慰った挙句、いざ犯れれば3日目で寝坊とか……マジで自己嫌悪してしまう。

だが求めて来たのは一応 純夏だし……オリジナルと違ってアイツがエロ娘だったからと考えて置こう。


「俺は悪くねぇっ!」


そんなワケで俺は何処ぞの主人公の名台詞を(小声で)叫ぶと、デスクから立ち上がり部屋を出ようとするが。

何時の間にかドアにセロテープで貼られていた純夏の書き置き(紙)により、即 全ての謎を解明できた。

決戦を控えた今 彼女は俺に休んで欲しかったらしく、チートな能力を使って自室のラッパだけ止めたそうな。

むしろ今日みたいな時だからこそ、基地を満遍なく歩いて皆の様子を見ようと思っていたんだが……

過ぎてしまった事は仕方無いので、純夏にはデコピン一発で許してやるとするか。

尚 純夏 自身の予定の事も書いてあったが、それはPXに向かいながら読むとしましょうかね。




……




…………




≪コッコッコッコッ……≫


「ふ~む。原作と違って、こうも積極的に関わってくれるとはねェ」


純夏の書き置きを廊下を歩きつつ全て読み終えると、乱雑に折り畳んでポケットに仕舞い込む。

どうやら彼女は早いウチに ゆーこさんの元へ行った後、今度はA-01と機体の調整を行う予定らしい。

最終訓練は既に終えているが、頭脳チートな純夏にとっては戦術機のアラを探すのは勿論の事。

フィードバック・データを個別に弄る事も簡単に出来るらしく、既に伊隅(姉)達から絶大な信頼を得ている。

……とは言え余りにも優秀過ぎると疑問を抱かれるので、旨く"それらしく"振舞う様には言ったが……

べッ、別に純夏に依存しちゃって皆に俺の事を忘れられるのが怖いワケじゃ無いんだからね!?

ともかく。伊隅(姉)達の様子を見に行くワケにはゆかないドコロか話が拗(こじ)れそうなので任せるしか無い。

只 速瀬のスキンシップにより純夏の"秘密"がバレてしまわないかが気掛かりだが、着替えないし大丈夫か。

さて置き。今現在 俺がノコノコと目指しているのは前述の通りPXだ。

本来で有れば午前に何処かしらに廻ってからの昼食に成る筈だったが、遅い朝食と言う名の昼飯でゴザル。

それにしても明日の作戦が作戦 故に、予想した通り人影は少なく……PXとて例外では無いらしい。

何せガヤガヤとした何時もの騒動が全く聴こえて来ておらず、此処まで人とも擦れ違っていないからだ。

だからPXでは珍しく一人で飯を……って思っていたんだが、手前の方の席で見知った顔が2人座っている。


「……白銀さん」

「か、霞?」

「!? お早う御座いますッ! 白銀少佐!」

「それに唯依も。こんな所に居たのか」

「はい。この社に自室で御休みだと聞いたので……」

「2人で……待っていたんです」

「(どうして霞が知ってたんだ?)」

『(今朝 鑑さんと会った時に聞きました)』←プロジェクションの応用

「………………成る程」

「????(な、何かしら? 今の間は)」

「それよりも。聞いての通り寝坊だ。遅れて本当に悪かった」

「と、とんでも有りませんッ。昨日 今日は出来るだけ休む様に言われたのは白銀少佐ですし」

「今の白銀さんにとっては……休むのも仕事のウチだと思います……」

「そう言って貰えると助かるよ。ところで他の皆は何をしてるんだい?」

「把握しておりますので説明します」

「宜しく頼むよ」


PXで俺を待ってくれていたのは"何か"を持っている霞と、元気に挨拶してくださる唯依。

霞は可愛さに反して天才なので明日に備えた全ての仕事を終えており、作戦終了まで手が空いていた為。

唯依も出発までは霞と似たような状況らしいけど、俺の様子が気に成っていたらしく相変わらず真面目な娘だ。

俺が言うのも何だが本来の常識では生きて帰ってくる事すら困難なので、巌谷さんと居ても良いのになァ。

尚 彼女から突撃機動部隊の皆の様子を聞いたトコロ、各々の予定は以下の通りだった。

まりもちゃん→ 溜まった書類の整理

イルマ → 外出して家族と会っている

ライト → イルマに付き合っている

フレア → ポジション(強襲掃討)が同じブリザと動きの最終調整

ブリザ → フレアと同様

七瀬 → 実家に帰っている

伊隅(妹) → 七瀬に付き合っている

ウォーケン姉妹 → 一足先に出発している

……と以上の事を手短に教えてくれると、唯依は席を立ち上がりつつ言う。


「それではッ。何を召し上がりますか? 私が取って来ますからッ」

「唯依は食べちゃったの?」

「は、はい。すみません」

「其処で謝ってどうすんのさ。まァ(断るのもアレだし)鯖味噌定食を頼んでも良いかな?」

「畏まりました!!」


≪――――ダダダダダダッ≫


「げ、元気が良いな~ッ」

「……白銀さんが見えた事が、嬉しかったのかもしれません」

「(だったら此処に居たのも部下としてッ?)真面目な唯依らしよいなァ」

「はい(……何だかズれている気がしますけど)」

「霞は霞で、どうして此処に?」

「えっと……明日への準備は万全だと、香月博士に暇を頂いたので……」

「今は俺に会いたかったと?」

「は、はい」

「まさかの正解!?」

「……ッ……」


此処で何故かモヂモヂとする霞。恥ずかしがる所だったのか? 揺らいでしまうではないかッ。

それにしても今の彼女は、先程から両手で持っていたモノで顔を隠しているんだが……

見た感じ一冊のコピー本っぽくて……表紙のイラストは何処かで見たAA……って事は……まさか……


「……なァ? 霞」

「えっ?」

「以前遊んだのは何時だったかな?」

「12月11日の午後です」

「即答!?」

「……トライアルの後でした」

「そ、そうか」

「ソレが……どうかされたんですか?」

「うん? 霞が良ければ"どうか"と思ってね。今そんな気持ちになった」←サラマンダー調

「!? い、良いんですか?」

「その本を使って"遊ぶ"事を期待していたんだろ?」

「……ッ……」≪コクリ≫

「流石に明日からは忙しいドコロじゃ無さそうだしな。気張り続けるのもアレだし、こんな流れも悪くないさ」

「あ……有難う御座います」

「はははっ。相変わらず素直だな~霞は。俺が遣りたいダケだし礼は良いよ」

「白銀少佐ッ!」

「んっ?(丁度良い。唯依にも参加して貰うか)」

「え、えっと……厨房は機能そのものはしている様ですが……
 状況が状況との事により、鯖味噌定食が出来るのは10分程 掛かってしまうそうです」

「ほむ」

「即お出しできる食事も有るとの話ですが?」

「……いや待つよ。それ迄に一っ走りしてくる」

「えっ?」

「白銀さん?」

「"遊び仲間"を連れてくるって事さッ!」

「あ、遊び? 仲間? ……えぇっ?」


≪――――タタタタタタッ≫


「直ぐに戻る!!」

「!? た、武さんッ?」

「…………」

「ハッ!? ちちち違うぞ社ッ! 今のは口が滑ったダケで――――」

「本当に口が滑ったのなら……違うも何も無いと思います……」

「うぐっ!?」

「それよりも……一緒に遊ぶのですから"その方"が良いでしょうし……私の事も"霞"で良いです……」

「そ、そうか。なら本当に?」

「はい。唐突に走り去ってしまうのは予想外でしたけど……」

「一体どんな"遊び"をするのかしら?」

「分かりません(……表情を見たダケで期待していると分かります)」

「それに連れて来る人とは?」

「(行き先は地下?)……まさか……」

「???? か、霞?」

「何でも有りません。とにかく……先程の衛士についての話は……次の機会でお願いします」

「そ、そうしましょうか(……実を言うと近い内に衛士に成りたいと思ってるらしいのよね)」

「そんな訳で……篁さんは今の時間に……"この本"に目を通して頂けますか?」

「コレ? 確かに最初から気に成っていたけど――――クトゥルフ神話TRPG?」


どうやら唯依は部屋に来ない様に"命令"していたので前述の通り俺が心配ながら此処で待っていたとの事。

ちなみに今までは霞の訪室の事もあり、ワザと鍵を開けていたが今現在はガッチリと閉めている。

万が一 新参者の純夏と寝ている時にイリーナちゃんや唯依に入室されたら困るからね~。

対して霞は言っての通り純粋に暇だから、出来れば俺と遊んで欲しくて此処で待機していた模様。

其処で唯依と鉢合わせ、仕事の話をして時間を潰して今に至ったとの事。

その為か何時の間にか仲良くなった様で、霞は相変わらずだが唯依は彼女を名前で呼ぶ様に成っていた。

純夏とA-01の関係ダケでなく、どのキャラの組み合わせでも互いの仲が進展するのは良い事ですな。

クーデターみたく逆のパターン……影で不仲に成って足を引っ張り合うのは、流石に勘弁だけど……

少なくとも俺の知る女性全員は、皆 手を取り合ってBETAに抗おうとする様な団結力を持っている。

つまり余計な心配ってワケで、俺は霞に脳内で"横浜基地の地下に行く"とダケ告げると走り去るのだった。




……




…………




……約10分後。

"遊び仲間"のスカウトを終えて戻って来た俺は、今は出来立てホヤホヤの鯖味噌定食を前に座っている。

そんな俺の正面には唯依が居り、先程は熱心に霞作の"ルールブック"を読んでいたんだけども、
俺が連れて来た人物の存在が存在なので、今は姿勢を正して余計な事は喋らないようにしている。

真横の霞も流石に初っ端は目を丸くさせていたが、来てしまったモノは仕方無いと状況を受け入れていた。


「全く。本当に"遊ぶダケ"の為に この あたしを連れ出すだなんて、どう言う神経してんのよ?」

「まァ良いじゃないッスか。丁度 暇そうにしてた様ですし」

「どの口でホザくの? あえて言ったげるけど明日は甲21号作戦よ? あたしは副司令よ? 分かってる?」

「でも今は そんな事はどうでも良いんです。重要な事じゃない」

「はァ?」

「俺が来た時ゆ~こさん、熱心にAA作ってましたよね? だから少なくとも忙しいワケじゃ無いでしょ?」

「ぐっ……」

「????(アスキーアート? 何の事かしら?)」

「……(篁さん……知ったらきっと戻って来れなくなります……)」

「そもそも戦争ってのは始まった時点で勝敗は決まってるんです。だから時には遊ぶ余裕も必要ですって」

「!?!?」

「???? ゆ~こさん?」

「……博士?」

「は~ッ……全く。そうやって良く(白銀の世界だと)"納得せざる得ない"様な言葉が出て来るモンだわ」

「BETAに対しては其処まで計れないドコロか考え方によっては禁句ですケドね」

「口に出してる時点で既に手遅れよアンタは」

「ですよねー☆」

「(やっぱり武さんのBETAに対する考えは悟りの域に有る……だからこそ私達で更なる一体感を……!)」

「とにかく。来てくれたからには付き合って下さいよ。区切りの良い所 迄で良いんで」

「まァ社の(パソコンで)打ったソレには興味が有ったからね。良いわよ? 遣ってやろうじゃない」

「やっと許しが出たかッ!!」

「……封印が解けられました」

「!? や、やった~ッ」

「無理に乗る必要は無いと思うわよ? 篁」

「……ッ……」

「それに無駄に構えなくても良いわ。あたしは気にしないでルールを理解してなさい」

「り、了解しました」


話しての通り連れて来たのは ゆ~こさんであり、残念ながらイリーナちゃんは掴まらなかった。

其処で何故 彼女達を誘ったのかと言うと……単純に非戦闘員の方が都合が良く感じたからで他意は無い。

でも見知った非戦闘員で明日の事を抜きにして誘えそうな人って この人位しか思い浮かばなかったのよね。

巌谷さんみたいな人に遊ぼうとか言ったら殴られる筈だし、ゆ~こさんの適当な性格に助けられていた。

……とは言え少しでも嫌な顔をされたら口には出さず直ぐ退散するつもりだったが、AAを作っていた彼女。

つまり遣る事を終え何時間かは暇だったのは確定的に明らかであり、半ば強引に腕を引いて今に至る。

んで今更ながら食事を始めるワケなのだが、唯依の学習を煽ったゆーこさんが頬杖をつきながら口を開く。


「それにしてもテーブルトーク・ロールプレイングゲームねェ?」

「モグモグ……所謂サイコロなど専用の道具を用いた、対話型の卓上遊戯ってヤツです」

「……架空の世界でプレイヤーが冒険する遊び……考えた事も有りませんでした……」

「(気に成る話だけど、今はルールを理解することに集中しないと……)」

「でも遊戯にしては随分と設定が細かいわね。ルールの概要を理解するのに10分も掛かったわ」

「そ、それって長いんスか? 短いんスか?」

「私は前者だと思います……オハジキやオテダマに説明など1分も掛かりませんから……」

「しかも"クトゥルフ神話"と言うTRPG全体の範疇の一つのルールでしょ? 本当に奥が深い遊びね」

「俺が随分と考えて構成した(事に成っている)ルールを10分で理解されるのもアレなんですがねェ」

「私は発想された事 自体 凄いと思います……そう言う想像力が無ければXM3も生まれませんでしたし……」

「(00ユニットが完成して)甲21号作戦にも辿り着かなかったって事よ?」

「はははッ。其処は素直に褒められたって事で喜んで置きますよ……ゴクンッ」

「……此処にダイズとサイコロも有ります……」

「社アンタ……何時の間に そんなモノを作ってたの?」

「遊ぶ為のネックは"それ"だったけど、問題無さそうだな」

「……不躾な形で……少し恥ずかしいですけど……」


尚クトゥルフ神話を選んだのは、ファンタジーよりも近未来の脅威に抗う方が恐怖耐性が上がると踏んだから。

またダイズは霞の手作りであり、10面だろうと20面だろうと簡単に画用紙に形を書ける霞のチート頭脳。

しかも一度ダケしか言っていない様々な複雑な設定を瞬時に脳内で整理してルールブックする霞さんマジ天才。

脳内の神話生物のイメージをリーディングさせた時は泣いてしまったが、良い意味で刺激には成ったらしい。


「ともかく。ゲーム・マスターは誰が遣るの? やっぱり白銀? あたしは今からシナリオなんて作れないわ」

「別に構いませんけど……(ゆーこさんをGMするのダケは絶対に避けた方が良さそうだしなァ)」

「……いえ……私がシナリオを理解してますので……ゲーム・マスターは私が担当したいです」

「社が? 良いの? 色々な役割を演じる必要も出てくるのよ?」

「まァ遣りたいなら構わないんじゃ無いんですか? 俺も探索者で初心者2人のサポートに回りますよ」

「はい。幾らGMだからと言って無理に探索者は死なせたく無いので……皆さんを助けてあげてください」

「ふん。癪だけどプレイヤー達で協力しないとクリアは難しいのがクトゥルフらしいし、楽させて貰うわ」

「それなら早速ゆ~こさんから探索者を作って下さい。唯依もルールブックを読み終え次第 取り掛かる。
 俺は2人のキャラクター・シートを見てから全体的にバランスの良いスキルを取って臨む事としますよ」

「……(博士も博士で既に自分用の探索者を作っていたみたいで、一瞬だけ嬉しそうな顔をしていました)」




……




…………




……約1時間後。

俺が食い終えた飯を片付けて戻って来た辺りで唯依が探索者の作成に移り、ゆ~こさんは探索者を提出。

相当な回数ダイズを振り直したらしいから、それによって作成したキャラシートを大事にしていたらしい。

全く10分でルールを理解してしまったのに、ソレ以上の時間を費やして探索者を作るとは皮肉なモノだ。

尚 サポート役の俺に限っては、能力値はダイズで決めたがスキル・ポイントは割り振らずに残している。

また霞の考えた"シナリオ"とは本家のと同じであり、当然 俺も理解しているが此処は黙って置くとしよう。

さて舞台としては――――BETAが居らず平和となった世界の日本。

しかし大きな脅威は去りながら陰で暗躍する者達が絶える事は無く、人類は常に滅亡の危険に晒されている。

ソレが"クトゥルフの呼び声(CoC)"で有り、それに抗うのがプレイヤーで有る俺達"探索者"と言うワケだ。

……とは言え実際の"クトゥルフ神話"の事を霞達は理解しているハズは無く、ラヴクラフトも存在して居ない。

故に そう言う化け物が出て来ない様に どうにかしたり、場合によっては戦いますよ……程度の認識である。

しかしながら。BETAが犇(ひしめ)く現状そもそもゲームの範疇で有るし、世界観の把握ダケで十分だ。

だがリーディング能力を持つ霞はともかく、平和な世界など知らない2名に舞台を説明するのは骨が折れた。

その為 何時の間にか1時間が経ってしまったワケだが、上手く唯依に元の世界の事はボカせれたみたいだ。

まァ雑談としても良いネタだったので無駄では無かったのは さて置き。オマチカネの探索者の発表である。


「(ゆ、遊戯だからと思って作ってしまったけど……武さんは認めてくれるのかしら?)」

「それじゃ~あたしの探索者からで良いかしら?」

「……御願いします」

「どれどれ?」




――――――――――――――――――――――――――
香月 夕呼 (女) 職業:元医師 年齢:28歳
STR:08 DEX:08 INT:18 アイデア:90
CON:08 APP:16 POW:18 幸 運:90
SIZ:12 SAN:90 EDU:21 知 識:99
H P:10 M P:18 回避:45 DB:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]
投擲:75% 隠れる:50% 精神分析:99% 
運転:50% 変装:33% 信用:99% 医学:99%
心理学:99% 物理学:50%
――――――――――――――――――――――――――




「す、凄い能力値ッ」

「でも現実の あたしと同じでサポート役の探索者ね。戦闘と探索はアンタ達に任せるわ」

「……戦闘面は投擲と……回避が若干高い程度ですね……」

「それと"元医師"ってなんスか?」

「運動神経は見ての通り無いから、動きを読んで直感で避ける感じって事で余ったスキルポイントを振ったわ。
 元医師なのは恵まれた頭脳を活かしてエスカレーター式で有名な大学病院の医者と成ったのは良いけど、
 色々と面倒に成って退職……今現在は趣味の物理学を研究しながら非常勤で稼いでいるって事にするわよ」

「折角の医者を辞めてしまったのは勿体無い気がしますけど……」

「いえ……忙しい立場だと探索に時間を割けませんし……そう言ったキャラメイクもゲームの醍醐味です……」

「な、成る程」

「ほほぅ霞。なかなか分かってるじゃないか(怖いから年齢にはツッコまないで置こう)」

「ちなみに投擲の時はメスを投げるわ。そう言うのも面白そうだし」

「!? そう言う意味で霞は"戦闘面"と言ったのですね」

「……はい」

「ともかく主要技能は安定してて良い探索者ッスね。次は唯依のを見せてくれるかい?」

「!?!?」

「篁さん?」

「あッ。いぃえ……私の探索者はコレですッ!」




――――――――――――――――――――――――――
白銀 唯依 (女) 職業:警官 年齢:20歳
STR:12 DEX:16 INT:16 アイデア:80
CON:12 APP:14 POW:11 幸 運:55
SIZ:10 SAN:55 EDU:13 知 識:65
H P:11 M P:11 回避:85 DB:0
――――――――――――――――――――――――――
[技能]
組み付き:80% 拳銃:50% 応急手当:80%
聞き耳:80% 追跡:40% 目星:99% 跳躍:70%
法律:33%
――――――――――――――――――――――――――




「白銀……?」×3

「……ッ……」

「どう言う事なんだい?」

「えぇとッ。探索者を作った際は互いの"繋がり"をも考える必要が有ると言う事ですから……そ、その……」

「あえて苗字を変えて……白銀さんの家族だと言う設定にしたんですね……」

「へぇ~。年齢は20歳みたいだけど、アンタの探索者は どうなの? 白銀」

「28歳ですね(今回はリアルの年にしてみたのだ)」

「!? そ、それだと……私の探索者は……武さんの妹と言う事に成ります……けど……?」

「良いんじゃないかい? でも唯依が そう言う発想をするとは思わなかったよ」

「す、すみませんッ」

「いや謝らなくて良いって。代わりに旨くロールプレイしてくれよ?」

「……(私も肖りたかったですけど、それだとGMが居ない……残念です……)」

「設定としての"白銀 唯依"は正義感に溢れる実直な人間で、一般市民の安全の為に警察官と成りました。
 組み付きの技能が高いのは学生の頃に合気道を学んでいた為で、何度か犯人を捕まえた実績が有ります」

「探索の能力が相当高いわね。戦闘も可能だし欠点は幸運とSAN値の低さ程度かしら?」

「俺が目星の技能に振る必要は無さそうだなァ」

「ですが あくまで勘が鋭いダケなので、専門的な探索は行えず戦闘でも いささか決定力が有りません。
 故に其処を武さんにフォローして頂ければと思います(……容姿が高くなったのは不可抗力よね?)」

「把握。んじゃ~俺も技能にポイント振るんで少し待って下さい」

「お手並み拝見といこうかしら?」


――――ゆ~こさんのキャラが回復役・唯依が探索役と成れば残っている役割は一つしか有るまい!?




――――――――――――――――――――――――――
白銀 武 (男) 職業:私立探偵 年齢:28歳
STR:16 DEX:10 INT:10 アイデア:50
CON:14 APP:10 POW:16 幸 運:80
SIZ:14 SAN:80 EDU:16 知 識:80
H P:14 M P:16 回避:66 DB:1D4
――――――――――――――――――――――――――
[技能]
キック:79% マーシャルアーツ:79% 鍵開け:79%
写真術:50% 図書館:89% 説得:40% 値切り:40%
――――――――――――――――――――――――――




「(……容姿が低いです)」

「(APPが不足してるわね)」

「(武さんっはもっと……)」

「(APPだけは妥当なトコか)能力とプロフィールは見ての通り。経歴としては……う~ん……そうだなァ……
 大学を卒業後 腕っ節を活かす為 探偵事務所に就職。6年の実績で得た資金でマンションをローンで購入。
 憧れの事務所を得れて遣る気に成っている所かな? 宣伝は してないので時間は確保できるって事で宜しく」

「……分かりました」

「やはり戦闘技能を多く取ってくれたのですね」

「でも探偵? ……っぽい技能は少なくない? 私立探偵って言うの自体 良く分からないんだけど、
 感じ的に調べ物や尾行とかの方が多い職業なんじゃないの? 其処まで口も上手く無いみたいだし」

「2人の不足している技能を優先的に取った結果ですからねェ。まァ探偵って言っても色々有るんですよ。
 この探索者は直感は無い上にコソコソするのが苦手なのでボディーガードや鍵屋の代わりをしています」

「……確かにBETAが居なくなろうと、護衛の需要は高そうですしね……」

「何をするにしても人手不足は間違い無いでしょう」

「ふ~ん。それなら別に構わないけど……白銀の探索者は何で中途半端な技能の取り方をしているの?」

「!? た、確かにッ」

「コレッすか? 成功率が80%だとダイズじゃ十の位で8を出しても一の位で0を出さないと意味が無い……
 逆に十の位が7だと確実に成功ですし俺はコッチの方が好きってダケです。完全に気持ちの問題ですケドね」

「ふぅん。案外 考えてるのね」

「……一応1%が生死を分ける事も有るゲームですから……」

「そう意味では実戦と変わらないのかもしれませんね」

「そんなワケで早速"セッション"に移りましょうか~?」

「あッ。もう一つダケ良いかしら? 白銀」


――――最も"リアル言いくるめ"の頻度が高そうな ゆ~こさんの追撃が始まってすら無いのに続いてゆく。


「な、何ですか?」

「アンタの探索者が新しく持ったって言う探偵事務所は、まだ経営が成り立ってないんだっけ?」

「正確には買ったばかりで始動して無いって感じですね」

「そう? だとしたら その探索者ってEDUは有ってもINTは低いし一人で経営は無理なんじゃない?」

「!? それなら誰かを雇ってるって事で……ん?」

「妥当な回答ね。それなら丁度 都合の良い探索者が居るんだけど?」(チラッ)

「……そう言う事ですか……」

「????」

「良いんですか? ゆ~こさん。非常勤しながら物理学を齧ってるって設定じゃ?」

「特に問題無いわ。そもそもゲームだし、探索者同士で繋がりを持ってた方が導入も楽なんでしょ?」

「だとしたら学生時代からの腐れ縁って感じにします? 事務所は医者を辞めてから手伝ってくれる感じで」

「関係を掘り下げる必要も無いし そんなモンで良いわ。物理学の研究は仕事の合間に遣らせて貰うけど」

「……香月博士の探索者の頭脳はピカイチですから……全く問題無く併用が出来そうですね……」

「むしろデスクから動かずに利益を出しそうッスよね」

「だ、だったら私は週に一度は兄の探偵事務所を訪れていると言う事で御願しますッ!」

「良いぞ」

「有難う御座います!!」

「うわっ、びっくりした」

「(……素直な感情が伝わって来ます……本当に"お兄さん"達とさんと一緒に居ると暖かい気持ちに成れる)」

「何度も脱線させて悪かったわね。それじゃ御手並み拝見とさせて貰うわよ? 社」

「わ、分かりました……それではGM役としてセッションの進行をさせて頂きます……」


正直ゆ~こさんに探偵事務所で働いて貰えればなと言うのは俺から切り出そうと思ったんだが意外だったなァ。

どう説得しようか迷っていたんだが、ゲームだと言う事で既に割り切って考えているのかもしれない。

だが怖いのは彼女の"リアル言いくるめ"でGMである霞が困ってしまう事なので其処もフォローしてやろう。

それに初心者 探索者が死なないようにもロールプレイしないとダメだし、楽しそうでは有るが注意が必要だ。

……とは言え今回の時間ダケで終わらないのは分かり切っているが……新しい参加者を募るのも悪くない。




……




…………




……舞台は2042年1月の横浜……

BETAが地上から駆逐されてから、既に20年の月日が経ちましたが……

未だBETAの残した傷跡は大きく……人々は忙しない毎日を過ごしています。

しかし人類は皆 希望に満ちており、それは警官として市民の為に務める"白銀 唯依"も例外では有りません。

現在の日本はユーラシア大陸とは違い……表向きは平穏な生活が戻っていると言えますが……

警官で有る彼女の視点では小さな喧嘩や犯罪が常に絶えず、本当の平和を取り戻す為に頑張っています。


『先ずは唯依の探索者の導入から入るみたいだな』

『み、みたいですね』

『それにしても40年後の横浜とは思い切った設定にしたわね』


そんな未だ肌寒い横浜の冬……何時もの様に出勤した交番で、白銀 唯依は上司から指示を受けます。

何やら現在の配属を解かれたらしく、今から東京都 千代田区・霞ヶ関に有る警視庁を訪れよとの事。

対して"白銀巡査"は心当たりが無く意味が分かりませんでしたが、上司からは多少 皮肉を言われました。

恐らく二十歳で有りながら本庁に行く事になったと思われ、異例の出世に嫉妬でもされたのでしょう。

……とは言え白銀巡査は極めて優秀な警官であり……親戚に"巌谷 榮二"と言う警視が居ます。

幼い頃に両親が事故死した白銀巡査にとっては父親の様な存在でしか有りませんが、無理も有りません。

犯人逮捕の実績を数多く残し、特に警視の"お気に入り"と成れば近くに置こうと誰も文句は言えません。

ですが他人の目など気にも留めていなかった、地域密着型の実直な警官であった白銀巡査は……

むしろ近所の市民との別れの挨拶を交わせない事の方を気にしつつも、特別な任務なのだと受容。

気を改めて本庁に赴くと、やはり彼女を待っていたのは……自分ダケでなく兄の恩人でも有る巌谷警視でした。


『ほほぅ(……早速 巌谷さんを出してきたか)』

『!? な、何故 中佐が?』

『TRPGでは身近な人間をNPCとして使うのは、良く有る事らしいわよ?』

『そう。まれに良くある』

『???? まれに……?』

『ソレって矛盾してるんじゃないの?』

『まァそれよりも唯依。ロールプレイだ』

『わ、分かりました』

『(社が"こんな役"を担う事に成るなんて……鑑の事と言い本当に侮れないわね)』


エリート中のエリートとも言える巌谷警視……彼が生まれた頃はまだBETAの存在は残っていましたが……

BETAの絶対数が減るに連れてマフィアやテロリストの類(たぐい)が少しづつ息を吹き返して来ました。

某基地ではBETAよりも人間同士の争いの方が際立っていた最近の現状……新たな脅威は人間とも言えます。

故に人間・災害その大小の規模に関わらず、全ての脅威から市民の安全を守るのが彼ら警官・刑事の役割……

巌谷警視は小さな頃からその重要性を察し……優れた行動力と頭脳で瞬く間に出世し今の地位に有ります。

犯人逮捕の際に付けられた傷は初見の方は驚く事 必然ですが、プライベートでは至って気さくな男性です。


『(某基地って何処やねん?)』

『……ッ……』

『(篁にとっては今や他人事では無いわね)』


――――何気にオルタ世界でマフィアは勿論 霞ヶ関の警視庁もアレなんだが、ゲームの為か突っ込みは無い。


「良く来てくれたな。白銀巡査」←霞が喋っている

「お……お久しぶりです。巌谷警視(真面目な設定みたいだから、それらしくしないと駄目ね)」

「活躍は耳にしているぞ? 最近また引っ手繰り犯を捕まえたんだってな」

「……それ程でも有りません。私は警官として当然の事を行っているに過ぎませんから」

「相変わらずな様だな。俺としては怪我でもされないかと心配だよ」

「お言葉ですが多少の生傷など勲章です」

「ふむ。無粋だったか」←2人とも女性なので何時もの"からかい"が無い

「それよりも何故私を唐突に本庁に? 余程の理由が御有りなのだと見受けられますが?」

「うむ。では本題とゆくが……白銀巡査には今から旧初台駅に行って来て欲しい」

「旧初台駅? 地下鉄のですか?」

「あァ。昨日 新宿駅の駅員から通報が有ったんだが、用事が有って行ったところ、
 ホーム付近に大量の血痕が有ったそうだ。誰か死んでいたのかも現状では分かっていない」

「そんな大きな事件成らば何故 横浜で務めていた私を呼ばれ、巌谷警視は動かれないのです?」

「其方で動きたいのも山々なんだがな……生憎 俺達は例の連続 失踪事件で忙しいんだよ」

「……連続 失踪事件?」


初台駅は1978年に京王新線が開通した際に、同線に並行する京王線から移転したモノですが……

移転後も新宿駅~笹塚駅間のトンネル内部に旧ホーム跡は残され、場合によって特殊通路として使用されます。

……かと言って滅多に人が来ないと言う事から、ホームレスの姿も見え事件に関わっているかもしれません。

さて置き。警視の言う"連続 誘拐事件"の事を白銀巡査が知っているかは【知識ロール】を振ってください。




『白銀 唯依』知識【65】⇒出目【04】クリティカル




正義感に溢れる白銀巡査は世間を騒がしている些細な事件は勿論……指名手配犯の特徴迄 常に掴んでいます。

よって彼女は多発している失踪事件の事も存じており、巌谷警視の言葉で直ぐに思い出すに至りました。

被害者は数十人にのぼっているが被害者同士の接点は無く、恐らく夜中に一人で居たトコロを狙われている。

しかし今の所 有力な手掛かりは掴めてはいない事から、この事件には大規模な情報規制が掛けられています。

それなのに情報を把握している彼女の話を聞いた巌谷警視は、感心しつつも追加の情報を教えてくれました。


「成る程……流石に詳しいな。だが更に もう一つ。その失踪事件の現場は初台駅の周辺に集中している」

「!? ど、どう言う事ですか?」

「明らかに前述の血痕も事件に関連しているだろう。また失踪者は何故かホームレスが大半なのだ」

「……何とも理解し難い事件ですね……」

「うむ。だが其処まで場所が絞られている今 直ぐに洗い出せるとは思うんだが……」

「吉報を期待しております」

「では話を戻すが……当然 駅員の通報に置いても情報規制を掛けていてな。実際 動くのは君ダケだ」

「先程も申しましたが何故いち婦警に過ぎない私に そんな不可思議な事件の捜査を任せられるのです?」

「此処で白状してしまうが、残念ながら我々警察は表立って事件の解決に当たる事が出来んからだ」

「!?!?」

「大きな声では言えないのだが、何やら新宿辺りで軍隊がキナ臭い動きを見せていて……癪な事にだ……
 奴らは今回の事件に置いて警察には不干渉を強制しており、被害者を増やさん様 警戒しか出来んのさ」

「そ、そんな事が許されるのですか?」

「本来 許容などしたくは無いぞ。だが警察と軍隊が表立って争ってしまえば国民が驚きマスコミが騒ぐ。
 よって今回の通報で警察が動いた事が知られれば必ず警戒される。よって貴官に独断で動いて欲しい」


BETAが駆除された事で半世紀以上に渡っていた、地球の衛士達の戦いは既に終わりを告げました……

つまり現在は月を完全に制圧する作戦が現在進行形で続いていており……戦いの舞台は変わっているのです。

一方 地球に残された軍隊の質は残念ながら落ちていて、一部の国は人間同士の争いを影で煽っている程。

そんな平和を蝕む存在が日本にも居り……巌谷警視は今回の2つの事件に彼らが絡んでいると踏んでいます。


『(所謂 軍のティターンズ化ってヤツだな)』

『(本当に有りそうなのが難儀な設定ね……)』


「独断で……そんな大役を任せて頂けて光栄ですが、私一人で務まるのでしょうか?」

「無論 一人で行かせる気など無いさ」←勿論 霞が喋っている

「どう言う事です?」

「身近の人間に調査の"専門家"みたいな人間が居るだろう? 君も良く知っている者の筈だ」

「……!!」

「引き受けてくれるな?」


――――そう言った巌谷警視の手には多数の万札が握られていました。では此処で篁さんパートを終えます。




……




…………




……続いて白銀さんと香月副司令『今回は香月で良いわよ』……香月さんのパートに移りましょう。

ローンで購入した2F窓側のマンションを構築し、遂に本日より営業開始となった白銀探偵事務所。

しかし"白銀 武"は完全に行動派の探偵の為、実際の所 運営に漕ぎ着けたのは殆ど"香月 夕呼"の御蔭です。

たった今でも彼女がキーボードのエンターキーを一度押せば、即ネット上に情報が公開され依頼に繋がります。

……とは言え今の警察は勿論 日本には慢性的に人口が足りず……探偵は非常に需要の高い職種と言えます。

白銀さんの様な腕っ節の強い探偵と言うダケで、警察の行えないボディーガードや調査の仕事で有れば、
窓の看板の効果のみで口コミで噂が近所に広がってゆき、何日かすれば自然と依頼は入ってくる程です。

よって白銀さんは楽天的に営業を考えていますが……香月さんは初っ端から忙しなくさせようと企んでいます。


『うわッ。なんかもう設定を作られてる!』

『確かに あたしらしいとも言えるけど……』


――――ですが香月さんが隠してキーを押そうとした瞬間、入り口のドアをノックする音が響きました。


「おっ? 早速の依頼人かな~?」

「妙ね。何も宣伝してないのに早過ぎるわ」

「そんな事 無いって。工事してたし知ってる人は知ってるだろ? 夕呼」

「……ッ……最もな話ね」

『(さり気なく呼び捨てに出来た! 前から一度 言ってみたかったんだZE)』

『(そういえば同じ年齢って設定だったわね。元々白銀の年とは言え何だか遣り難いわ)』

「工事中は近所の人達に挨拶巡りもしたし、当然の結果ってね」

「そう。それなら"コレ"は必要 無さそうね(……篁パートを考えると忙しくするのは控えた方が良いし)」

「???? 何の事だよ?」

「こっちの話よ」


≪――――ガチャッ≫


「(そろそろ良いかしら?)御邪魔します」

「何だ~唯依じゃないか」

「私では不満でしたか? に……兄さんッ」←僅かに声が裏返っている

『(……少し妬ましいです……)』

「そんな事は無いさ。でも次の非番はまだ だった筈じゃ?」

「確かに早いわね~。ひょっとして"オニイサマ"が心配で仕方無かったのかしら?」

「!? もうッ。こ、こう……?『夕呼が妥当でしょ?』夕呼さん、からかわないで下さい!」

「(ソレはそれで歓迎だったが)だとしたら何の用なんだい?」

「もしかして"依頼"かしら?」

「流石(こう呼ぶのは気が引けるけど)夕呼さん……御名答です。実は御二人に正式に依頼が有って来ました」

「ほほぅ。記念すべき第一回目の依頼が、まさか妹からのモンとはねェ」

「別に断っても良いのよ? (もうままよッ)武。何だか嫌な予感しかしないわ」

『そ、それだとゲームが進みませんよッ?』

『……何時もの冗談だと思いますけど……』

『"何時もの"って地味に傷つくんだけど?』

「初のお客さんを追い払って どうすんだよ? とりあえず座ってくれ。詳しい話を聞くよ」


そう白銀さんに促された篁さんは彼の正面に有るソファーに腰掛け、香月さんもデスクから立ち上がると、
面倒臭そうに頭を掻きながらも白銀さんの隣に座りました。『何だか あたしの扱いが悪くない?』

それから一呼吸 空けると、篁さんは神妙な面持ちで口を開こうとします。『日頃の行いってヤツですよ』

彼女の真剣な表情で明らかに部屋の空気が変わりました。『そ、それよりも続いてロールプレイします』


「実は今回の依頼は……他でも無い巌谷警視の依頼なのです」

「!? 叔父さんのッ?」

「へぇ。そう来るとはね」

「率直に述べると内容は"旧初台駅"で発見された血痕の調査と、第三者からの護衛と言う事になります」

「護衛なら任せてくれって所なんだけど、血痕だってェ?」

「調査との両立を考えれば、医者だった あたしの知識も貸して欲しいって事?」

「はい。そうなりますが……無論 護衛は兄さん頼りでは無いと申して置きます」

「はははッ。どっちが守られるか分かったモンじゃないなァ」

「それにしても依頼料は随分と弾んで貰えたのね」

「え、えっと……コレが前金の依頼料と成ります」


……そう先手を打たれると必然的に高くしないと……『そう言う手がッ』『お金は余り役に立たないけどな』

篁さんは百万円入っている封筒を取り出すと、それを静かにテーブルの上に置きます。『あら? そうなの?』

その高額な報酬を見て2人は やはり只の依頼では無いと言う事を察し、気を引き締める事にしたみたいです。

よって詳しい話を聞いた後は皆さん所持品を慎重に決めてください。それから旧初台駅に向かって頂きます。


『あァ"所持品"なんてのも有るのね?』

『でもGMを困らせる様なのは勘弁って事で』

『それなりに融通は利かせる様にはしますので、好きに選んでください……』

『だ、だとしたら私が持てる銃は……拳銃の技能は高くないけど……』




……




…………




……それから3時間。

導入を終えた俺達は互いの呼び方に違和感を得つつもゲームを進めてゆき、様々なイベントを経験してゆく。

初っ端の所持品の吟味から始まり、駅員との接触・自衛隊との交戦・獣人間との遭遇・各々の自由行動……

そんな中で霞が俺の脳内で設定していた"グール"の描写を涙目で説明していた時は不覚にも萌えたりして。

ようやく中盤へと差し掛かる辺りと同時に盛り上がっても来るのだが、此処に居る4人全員が感じていた。

楽しみと同時に展開も進むに連れて"この状況"だからこそ、そろそろ切り上げないと いけないと言う事を。

個人的には朝まで掛かってでも1セッション終わらせても良いのだが、もっと早く考え付くべきだったか?

いや……そもそも遊びは桜花作戦が終わってから遣れよと言う話なので、このゲームは早くも終了ですね。


「さ~て。時間も時間だし、そろそろ終わりにしましょうか~」

「そうねェ」

「……はい」

「も、もうこんな時間ッ」

「昼食後の遊戯としてはイササカ楽しみ過ぎましたかね?」

「其処は言わない流れでしょ? 白銀。全く何やってんのかしら あたし……」

「すみません……私の我侭です」

「お互い様ね。此処まで役割を演じ切る事に集中してしまうと思わなかったです」


――――ロールプレイに置いてはエロスーツの事も有るのか、唯依は余り恥ずかしがらずに行っていた。


「まァ盛り上がって来たトコですけど、続きは次の機会って事で。それと新しい探索者を誘っても良いかも」

「3人で4人の自衛隊と"まとも"に戦ってたら間違いなく全滅しただろうし、それは視野に入れるべきね」

「戦闘メインのシナリオみたいッスからね~」

「ロールプレイ次第で補正は掛かるし、医学ダケ取ったら後は あたしも戦闘重視にした方が良かったかもね」

「ゆ~こさんの探索者が戦闘したら"グリフォンネイル"とか余裕でして来そうですね」

「何よ? それ」

「……白銀さん……流石に無理が有る技だと思います……」

「霞も知っているの?」

「(社は白銀のイメージを読んだのね)」

「まァ霞からアウトが出たので流して下さい」

「…………」←出来れば知りたかった唯依

「それより次回は どうしましょうかねェ?」

「生憎 目処は無いけど、今回は社がアソコまで沢山 喋るのを見れたダケでも良い見世物に成ったわね」

「ぅッ……」


――――話を拗(こじ)らせつつニヤけながら言う ゆ~こさんに対し、ルルブを胸に顔を隠すウサギさん。


「そう言えば霞? 大丈夫だったの?(やはり副司令を前に名で呼ぶのは慣れないわ)」

「皆 口調は同じだったけど初っ端の巌谷さんが余りにも特徴を掴んでたから、ずっと自然に受け止めてたな」

「だからと言ってねェ。流石に疲れたんじゃない? 社」

「いえ……特には……只の遊びの範疇ですし……何より皆さんの戦いに比べたら……」

「それ以上 言っては駄目。貴女の様な娘は遊ぶ事も必要よ?」

「まァ調整とかを頑張ってくれた御褒美と受け止めりゃ良いさ」

「そう捉えれば あたしも足を運んだ甲斐が有ったと言うモノだわ」←没頭してしまった言い訳

「……有難う御座います……」

「とッ! 終わったばかりで申し訳有りませんが、私は巌谷中佐の元に伺おうと思います!」

「確かに出撃前だしね。忘れずに行って来なよ」

「はい! またのセッションを楽しみしていますッ!」


≪――――タタタタタッ≫


「生き残れたらの話だけどね」

「洒落に成らん事 イワンで下さい。後を頼みますとかダメですよ(ビックファイヤーの為に)」

「……(そう言いますが香月博士も次を期待してるみたいです。白銀さんは……相変わらず良く分かりません)」

「冗談よ。ならアンタはどうするの? 白銀」

「俺は……適当に気に成ってる人を当たってみますよ」

「あら? 此処に来てノロケ?」

「!? 純夏に聞かれちゃ洒落じゃ済まないですから止めて下さいって!」

「そう言えばゴール・インしたんだっけ?」

「……ッ……」

「そっちも純夏 以外の人達に漏れたらガチで困るんで、勘弁してくれませんかねェ……?」

「何よ? 隠していて欲しいなら早く言いなさいよ(でも他の娘を惹き付けてる自覚は有るのね)」

「す、すんません」


原作の2人は関係を特に隠して無かったけど、リアルで経験した感……イチャつくのは御法度な気がする。

横浜基地の中って思ったよりカップルっぽいの少ないんだよね……子作りとかマジで何処でやってんだろう?

……とは言え俺と純夏でガッツリ犯ってたので、只単に視界や耳に入らないダケで旨く隠しているのかもな。

しかしながら思いっきりキス☆したりされたり、撫でたり抱きしめたりもしてたが……まさか俺らだけ!?

だ、だからこそコレ以上 周囲の士気を下げちゃダメだよね? そんなワケで隠し通したいので有りますッ!

面倒臭い事は桜花作戦の後まで置いといて、此処は横浜基地の空気を読んで純夏にも改めて自重して頂こう。

何気に並んで歩いてる時は腕を組んだりして来なかったし"此処"のアイツは其の辺は分かってるかもしれない。

それはそうと……この後のイチャイチャ以外の基地でのイベントは月詠さんと何か話していた事しか思いせん。

後は船っぽいトコで伊隅(姉)+柏木の死亡フラグが立った的な意味での会話が有った様な気がしないでもない。

そうなれば今は月詠さんを探しつつブラブラするのが妥当かな? 相変わらず適当な考えで嫌に成るけどね。


「まァ遊びも冗談も此処までにして。あたしも社と戻るわ」

「白銀さん……有難う御座いました……」

「うん? 何度も言うなって。それよりも良い子で留守番してるんだぞ~?」

「……ぁ……」


≪なでなでなで≫


「アンタねェ? 社が言われるにしては2~3年遅くない? その言葉は」

「やっぱりですか?」

「私は別に構いませんけど……」(ぼそ)

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「……等と供述しており」

「はいはい。あたしが野暮だったって事ね?」

「!? い、行きましょう博士」

「ちょっ? 引っ張らないでよ」

「あえて言うが出撃前である」

「うっさいわね。何時もの事だったでしょ? 気張んなさい!」

「(待ってます白銀さん……また私の頭を撫でて下さい……)」


こんなワケで一人残された俺は、食器を片付けると同時に京塚のオバハンに激励されつつ此処を後にした。

意外にもTRPGなどで遊ぶ事と成ってしまったが、あの ゆ~こさんと生真面目な唯依すらハマったのだ。

よって俺の知る限りの衛士やオペレーターの娘達の殆どが興味を示してくれる可能性が高いのは間違い無い。

今回は(俺以外は本当の恐ろしさを良く分かっていない)クトルゥフが題材だったが、基盤の種類は様々だ。

……とは言え原点と成ったSWの時点でファンタジー世界を舞台とするので、彼女達には革命的かもしれん。

本来"全て"が終わった後に真っ先に思いついた遊びはシミュレーターの筐体を活かした対戦ゲームだったが、
漫画すら存在しないオルタ世界の現状……今回の成功を踏まえれば、娯楽のネタは幾らでも出て来そうだぜ。

生憎 今年一杯は考える余裕は無さそうだが、恐らく一生掛かっても元の世界の素晴らしさは伝えられないな。

だが下手したら俺が"それら"のネタで肖りつつ戦闘していた事を知られそうなので、心に留めて置くけどな。

桜花作戦を終えて消えたりしなければ正直戦いたくないので、他の仕事でも紹介して貰おうと思ったが……

"あちら"の偉大な作品をひとつ拝借するダケで食ってける気がする。ゆ~こさんをスポンサーにすれば尚更だ。

しかしながら。生き残れなければ何も始まらず、俺の最期も分からない現状……考えても虚しく成るなァ。

2つの意味で生き残ってればウハウハなんだが、その明るい未来を考えれば"向こう"の事も考える必要が出る。

全くTRPGは楽しめたが"あっち"が懐かしくなるとは皮肉なモンだ。だから"この思考"は早くも終了ですね。

そんなワケで。PXを背後に立ち止まって思考していた俺は、真那さんを探すべく改めて歩き出す訳なのだが。


「白銀少佐」

「ファッ?」


――――考えを止めて歩き出そうとした直後に真那さんが現れて声を掛けて来た。斯衛トリオの姿は無い模様。


「少々御時間の程を宜しいでしょうか?」

「別に構いませんけど……もしかして待ってたんですか?」

「はい。どうしても御話したい事が有りまして」

「!? それなら俺達がPXに居る時ずっと?」

「御察しの通りだと思います(……今立ち止まっていたと言う事は、私の気配は当に察していたのだろうし)」

「……ジーザス……」

「????」←実は待ったのは10分程度

「と、とにかく此処では話せないっぽいですね。場所を変えましょうか」

「恐れ入ります」

「んで道中で榊達の話を聞いても良いですか?」

「勿論です。私も そのつもりでしたので」


なんてこったい!? 俺達が遊んでる間に彼女は ずっと終わるのを待っていたとはッ!

考えて見れば月詠さんが何か俺に言いたい事が有るってのは分かってたんだから、早く起きとくべきだったな。

正直 忘れてたダケとも言うが……すみません責任は純夏に負わせます。だが真那さんが怒ってないのが救い。

よって彼女に心の中で謝りつつ千鶴達の話を聞くワケだが、待機で数時間を無駄にして良かったのだろうか?

斯衛トリオの姿が無いので恐らく神代達が指導をしているんだろうが……此処は逆に考えて良いっぽかった。

イキナリ武御雷を乗りこなした原作よろしく、元B分隊の皆は真那さん達の教えをガッツリ吸収している。

性能は白よりも劣るが……イキナリ乗った正史と比べると、頭バル仕様+教習付きの黒なら それを上回れる。

つまり真那さんが席を長時間外しても良い程 千鶴達の準備は万端なのだと、都合良く解釈する事としよう。


「…………」

「…………」


≪コッコッコッコッ……≫


長い距離を歩いているので思考も長くなり、今更だが……俺は そんな千鶴達を羨ましくも思っている。

実感は無いが俺の階級は初っ端から少佐だったので、誰からも戦術機を始めとする指導を受けていない。

困った時は"白銀大佐"頼りだったので正直 必要は無いんだけど、される側の方が絡みが増えた筈だよなァ。

……とは言え"このスタート"じゃ無かったら俺はSⅡ型に乗れてないし、唯依とも会う事は無かったんだ。

つまり訓練兵スタートでしか得られんフラグは多々有るが、今の俺でしか得られなかった事も有るのだ。

よって今更 別ルートを考えても意味は無いのだが……誰かに指導を受けると言うのは最後のチャンスか?

正直 真那さんからも教えを請いたかったナ~とは、ゲームをプレイした人なら誰もが思ったハズである。

俺も俺で リアルで会って見ると一度で良いから何らかの助言は貰いたいって気持ちは更に加速してたが……

ドチラかと言えば教える立場だった為 立場上 難しかったのは勿論 タイミングを掴む余裕すら無かった。

けど作戦が始まれば殆どの人達とは当分ゆっくりとは話せず、ソレは真那さんも例外では無いと言う事だ。


≪――――ピタッ≫


「…………」

「白銀少佐?」

「なァ……真那さん」(キリッ)

「は、はい?」


――――そんな訳で俺は無言で歩いている中 意を決すると立ち止まり、元々な真面目な表情を更に改めると。


「バトル(スケベ)しようや……」

「!?!?」


立ち止まるとは思わなかったらしく珍しく目を丸くさせていた真那さんに、ズバリ言い放ったのでした☆

尚"バトル"と言ったのは今更 指導を請う様な状況では無い為、作戦の肩慣らしの"ついで"に助言を貰うのさ。

そして脳内変換した単語は、何に誘うにせよ女性にエロスーツを着て貰う時点で俺としては罰ゲームな為だ。

まァ率直過ぎる誘い文句であり、大半の理由は"言いたかったダケ"なんだけど……やっぱりダメだったかな?


「あッ。例の話については ちゃんと聞きますんで、その辺は大丈夫だから安心して下さいね?」

「……ッ……(以前から彼とは戦いたいと思っていた……まさか、その意図を汲んでくれたッ?)」


――――でも少し不安だった俺に対し少しの間を置いた後、結局 真那さんは首を縦に振ってくれたのでした。


「ほほぅ。随分と遅いと思ったら、そんな面白そうな事をしていたのか。けしからんな」

「も、申し訳有りません」

「いやなに。白銀少佐ダケでなく香月副司令との"付き合い"とも成れば俺に咎める事は出来んよ。只な?」

「はい?」

「次の遊戯の機会は未定との話だが、今度は是非 俺も参加させて貰うとしようッ」

「えぇっ!?」

「唯依ちゃんが"年下で有る彼の妹"と言う設定でロールプレイをしていた? こんなに興味深い話が有るか?」

「だ、だから言いたくなかったんですッ」

「遅刻した上に上官命令だ。吐いて貰わんと困るさ(……全て言ってしまう辺りが唯依ちゃんらしいが)」

「面目有りません。ともかく……何としてでも生きて帰って見せます。まだ成したい事は多々有りますので」

「その意気だ。こんな戦いに参加して貰うとは夢にも思わなかったが……此処まで来たら存分に戦って来い」

「はっ!(……武さん……私は貴方の御蔭で此処まで立ち直る事が出来ました……)」



[3960] これはひどいオルタネイティヴ番外編
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/04/14 02:45
これはひどいオルタネイティヴ 番外編 =白銀大佐の正体=




*今回の話は本編と全く関係が有りませんので御了承ください。




――――2001年12月29日。


甲21号作戦の成功において、ヴァルキリーズ12名+"鑑 純夏"が全員生還したダケでなく。

"白銀 武"が纏める突撃機動部隊……所属するのは白銀少佐・神宮司大尉・篁中尉。

そして元B分隊の榊・御剣・彩峰・珠瀬・鎧衣、計8名も生還し互いに喜び合ったのも束の間。

帰還 直後、過労により白銀少佐が倒れて数日後……大多数のBETAが横浜基地を強襲。

それにより横浜基地は反応炉の機能を停止せざるを得なくなり、絶体絶命の危機に陥っている。

白銀少佐は"この未来"を知っていたが、倒れてしまった結果 ソレを告げる事は叶わなかった。


「くっ!? コイツらもう、こんな所にまでッ!」

『涼宮が旨くやっていると信じたいが……急ぐぞ速瀬ッ!!』

「はいッ、しっかり付いて来てくださいよ? 大尉ィ~っ!?」

『愚問だ!!』


今現在は、伊隅大尉と速瀬中尉のS型が反応炉を目指して基地内を駆け抜けていた。

反応炉 停止にあたって、涼宮中尉が歩兵と共に制御室び向かってはいたが、
BETAによってケーブルが食い千切られており、至急 伊隅と速瀬が向かう事となったのだ。

余談だが仕様としては伊隅が迎撃後衛・速瀬が強襲制圧でバズーカを背負っている。




……




…………




……一方、横浜基地・上層では、神宮司大尉ら7機が未だに地上でBETAと交戦中だった。

結果 多くのBETAを釣りながら横浜基地から離れつつ誘導しているが、状況は芳しくない。

月詠中尉ら4機の武御雷も誘導役を請け負い素晴らしい戦果を上げているが、
たった10数機で誘導できる数は限られており、半数以上のBETAの基地への侵攻を許している。

また残りのA-01の面子も上層でBETAの進入を死守するべく、当然 奮戦中であろう。

しかし彼女達の守れる場所は広くはなく、少なくとも100以上のBETAは中層を抜けた。

後は他の国連軍衛士に任せるしか無いが……残念ながら過度な期待できなさそうだ。


「くぅっ! 数が多すぎる!!」(まりも)

『アルカディア03、フォックス1ッ!』(唯依)

『アルカディア08、フォックス1~!』(美琴)

『爆風が来る!? 御剣・彩峰ッ、対ショックに入って!』

『了解!』×2


≪ドゴオオォォッ――――ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


『流石の威力だが……』

『今ので弾が切れちゃったよ~』

『右に同じだ』

『うぅ、こんな時に白銀少佐が居てくれたら……』(壬姫)

『!?』×6

「馬鹿者ッ、弱音を吐くな珠瀬!!」

『ご、ごめんなさい~っ』

「(けど……白銀さんが居ないダケでこうも旨くゆかないなんて……)」

『(本当に、私達にとって白銀少佐の存在は大きかったのね……)』


――――白銀少佐が居ない故に不安。そう感じたのは神宮司大尉や篁中尉とて同じだった。


『まりも』

「!? と、突然どうしたのですか副司令?」

『白銀が目を覚ましたわ』

『……ッ!?』×7

『ま、誠ですかっ?』

『大丈夫なのかな……?』(彩峰)

『全く問題無さそうだったわ、生憎アンタ達の加勢はできないけどね』

「そ、それでは……」

『あと"一息"~よ? その調子で誘導を続けて。そろそろBETAは尻尾巻いて逃げると思うから』

『!?』×7


――――唐突に告げられた白銀少佐の復活。それにより突撃機動部隊の士気は明らかに上昇した。


「皆、聞いたな!? 白銀少佐も最善を尽くしてくれているッ、私達も負けるな!!」

『了解!』×6

『珠瀬ッ。私が要撃級を引きつける! 狙撃砲で光線級を片付けろっ、
 これ以上 基地にレーザーを撃たせるな!! 御剣・彩峰、私に続け!!』

『心得ました、中尉!』

『了解』

『あらあら、誘導じゃなく逆に攻勢に出るだなんて……白銀も果報者ね~』

「ち、茶化さないで下さい副司令ッ」




……




…………




「クソッ……急げ、急げ!!」


仲間たちが奮闘する中、ようやく目覚めた白銀少佐は梯子を物凄いスピードで降りている。

目指すは反応炉の制御室……彼は香月博士に涼宮中尉が地下に向かったと聞いて驚愕した。

未来を知る彼には分かるのだ。放って置けば、確実に涼宮中尉の命が無くなると言う事を。

それは彼にとって許せない事だった。此処まで仲間達と戦い抜いた今、最後まで守り抜きたい。


≪イルマッ、プーさん蹴るなああぁぁーーっ!! 何処を撃とうとしてるううぅぅッ!!!?≫

≪(ば、バレてるッ? どうして分かったの~!?)≫


――――今迄 白銀少佐はクーデターでイルマ少尉・ウォーケン少佐ダケでなく、沙霧大尉をも救い。


≪純夏。頑張ったら抱きしめてキスして朝まで可愛がってやるから、絶対 自閉ンなよ?≫

≪えぇっ!? タケルちゃん……ほ、ほほほ本当に!? だったら頑張る頑張るーーっ!!≫


――――甲21号作戦では柏木少尉と伊隅大尉の戦死を見事な采配により回避していたのだ。


「涼宮(姉)の処女を奪う前に死なせてたまるかーーーーっ!!!!」


故に白銀少佐はフラつく身体をなんのその。全速力で彼女の元へと急いでいた。

鑑少尉とベット・インして彼女の運命を救った今、後は"ジェノサイド・ハート"を倒すのみ。

そうすれば彼は"戻れれば"それで良し、ダメだったら平和になりつつあるオルタ世界を堪能する。

彼は実は鑑少尉 以外の女性には好かれていないと思っているが、恋愛原子核の可能性……

それを信じてヒロイン達とのフラグ頑張って立てつつ、いずれは全員の処女を奪おうと必死である。

ぶっちゃけ邪な気持ちを抱く最低 野郎だが、表面上は命を掛けて戦う彼の本心に誰が気付こうか。

……ちなみに"ジェノサイド・ハート"とは"あ号標的"がダサいと言う理由で白銀が付けた名前である。




……




…………




……反応炉・制御室。


≪――――ぞくっ≫


伊隅大尉と速瀬中尉によってケーブルが接続され、再度パスワードを入力しようとした涼宮中尉。

だが後方に途轍もないプレッシャーを感じ、前進の毛が逆立つ様な危機感が全身を襲った。

同時に体中の毛穴から滴りを感じる汗……涼宮中尉は自分の境遇を一瞬のうちに理解した。


「!?」


――――背後に歩兵を残殺した闘士級が居る。つまり、自分の命は後10秒も持たない。


「ひっ」


たった数秒だが、途轍もなくゆっくりと流れる錯覚を感じる涼宮中尉の残された時間。

振り返った直後……彼女に見せびらかす様に歩兵の生首を長い鼻で掴み漂わせる闘士級。

つい数分前までは生きていた頼もしい護衛。彼らは引き裂かれ、引き抜かれ殺害された。

それを見て憎悪・恐怖・怒りなど……様々な感情が涼宮中尉の脳をグチャグチャにする。

結果 導き出された答えが、自分も彼ら同じ運命を辿ると言うこと。仲間・家族・任務など全て残して。


「嫌ッ」


――――彼女とて、元より死ぬ覚悟はできていた。しかし、これでは"無駄死に"になる!!


「(死にたくない!!)」


――――故に彼女は生きたかった。もはや無駄な願いだと言う事は分かっていても。




……




…………




「うおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


……必死こいて制御室を目指す中、其処の入り口に闘士級の姿を確認した直後。

俺は雄叫びを上げつつアサルトライフルを発砲しながら走り、2匹のクソ野郎を蜂の巣にした。

初めて生身で遭遇した事なんぞ どうでも良い。一秒でも早く"あの中"に入らねばならない。


「どけええええぇぇぇぇっ!!!!」


仲間が殺られた事を妙に思ったのかどうかは知らんが、もう一匹 出てきた闘士級も仕留めた俺。

同時に弾切れになったアサルトライフルを投げ捨てる。弾を込めている時間さえ惜しい!!

当然 走り続けており、殺された歩兵の屍を乗り越えながらカタナを抜きつつ制御室に入った。


『!?』

「んなくそおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


≪――――ガシュウウゥゥッ!!!!≫


直後 軽く跳躍し振り返った闘士級の頭部を、両手で振り下ろしたカタナでカラダごと二分する。

闘士級は人間から見るとゾウぐらいデカいのに、全く白銀大佐の肉体ってどんだけだよ……

それよりも……居た!? 後 少し遅れてたと思うとゾっとする、涼宮(姉)は生きてたようだ!!

無理も無いけど状況が理解できていない様で、大きな瞳をパチパチとさせながら俺を見ていた。

ふ~っ、まさに間一髪だぜ。しかし"この状況"が絶妙だったので、つい白銀は成り切っちゃったんだ☆




……




…………




「えっ、あッ……」

「……間に合った」




――――数え切れない世界で後悔した。




『お、お姉ちゃッ』




――――いつも、気づく時には手遅れだった。




『遙……一緒に……孝之に逢いに行こうね……』




――――俺がずっとずっと、一番 伝えたかったコトバを言うよ。




「涼宮」




「君を」




「助けに来た!!」




……




…………




「少佐ァっ!!」

「む……ッ!?」


決め台詞を聞いて涼宮中尉が涙を零した直後、白銀少佐は背後に気配を感じて振り返る。

すると新たに数匹の闘士級が、敵味方の死体を踏みしめながら制御室に進入して来ていた。

それに臆する事無くカタナを構え直した白銀少佐は、涼宮中尉を守る様に立ちはだかる。


「ま、まだこんなにッ……」

「遙ッ! 伏せていろ!!」

「は……はいっ!」

「おおおおぉぉぉぉっ!!!!」


涼宮中尉が頭を抱えて地面に伏せると……其処に残ったのは、
一人の女性を守るべく数日振りに復活を遂げた、一人の男ダケであった。

そんな"白銀 武"の決意は、本来 生きた18年と言う浅い年月では培えぬ重みがある。

涼宮中尉 自身は知らない。しかし彼女の"別の意思"は言葉に出来ない何かで理解していた。


――――これは百年にも勝る"白銀達"の"ループ"の誓い。


――――そして、数十万人にも勝る"ユーザー"の哀しみ。


あの日あの場所に自分が居たなら彼女をBETAから救えたのに……と後悔し続け。

いずれは仲間達を救える奇跡を信じて……"白銀大佐"は我が身を鍛え続けていた。

そして白銀少佐の強い意志が、奇跡を待つ白銀大佐の想いが……遂に奇跡を起こすッ!!

一度しか起こらぬ奇跡が2人の男を、2001年10月22日の横浜基地に間に合わせたのだ!!


「くたばれええええぇぇぇぇっ!!!!」


≪――――ドシュウウゥゥッ!!!!≫


そんな生身の白銀の手刀は演舞で氷柱を叩き割り、何枚も重ね合わせた瓦を粉微塵にする威力がある。




……




…………




「まァちなさぁ~いっ!!」

「――――ぐぇっ!?」

「まだまだ飲むのよォーッ? 付き合いなさいよぉ~」

「こっ、こらッ……放せってッ!」




≪――――どかっ!!≫


「ぐっ!?」

「!? い、1本……」

「あれっ? 俺の勝ちだな~御剣」

「そ……そんなッ……」




「ドリャッ!!!!」

「……ぅっ!?」


≪――――ピタッ≫




……




…………




……しかし訓練 等での白銀大佐は、相手が怪我をしない様にする為に手加減していた。


「うりゃああああぁぁぁぁっ!!!!」

「す、凄い……」




――――その手加減を白銀は。




――――初斬から止めるッ!!!!




『!!!?』


≪ブシュウウゥゥッ!!!!≫




――――だから一撃で撃沈する。




――――微塵ほども容赦なく!!




――――その威力はまさに。




――――斬鉄剣ッ!!!!




≪どしゃっ≫


「ぜぇぜぇッ……ようやく片付いたか~」

「……ッ……」

「涼宮中尉、何処か怪我してないか?」

「……う、うぅっ……」

「おいおい、大丈夫か? マジで」


……そして一分後。全ての闘士級は白銀少佐に仕留められ、制御室に静寂が戻った。

よって彼は汗を拭って溜息を吐き涼宮中尉を気遣うが……彼女は立ち上がろうとしない。

ひょっとして腰を抜かしてしまったのか? そう思って涼宮中尉を心配する白銀少佐だったが。


「白銀少佐ぁ~っ!!」

「おわあっ!?」


――――どうやら大丈夫だった様で、彼女は渾身の力を込めて救世主に抱き付くのだった。




……




…………




……あれから30分後。涼宮中尉によって反応炉は停止され、横浜基地は何とか守られた。

最悪 速瀬中尉がフォールディング・バズーカで反応炉を破壊する事が考えられたが、必要なし。

戦死者もA-01・突撃機動部隊共におらず、正史より遙かに強力な戦力で桜花作戦に移れるだろう。


「遙……ホントに良かったね、無事で」

「有難う水月。これも武さんの御陰だよ?」

「んなっ!?」

「えっ、何?」

「い、いいい今"武さん"って……」

「えへへ。"あの時"これからは そう呼んで良いよって言われたんだ~♪」

「うぐっ!? そ、そう言えば何だか遙が少佐に抱き付いてた様にも見えてたんだけど……?」

「そ、それは秘密だよ~」


実は彼女……抱き付いた直後は白銀少佐の胸で大泣きした経緯が有り、
涼宮中尉に萌えた彼が自分を名前で呼ぶ事を"つい許可しちゃったんだ☆"と言うワケだ。

詳細は決して語られる事は無かったが、それは女性陣に大きな衝撃を生んだのだった。

よって、直ぐ様 速瀬中尉は白銀少佐に自分を名前で呼ぶように強制し……勘違いした白銀少佐は、
元B分隊含めた、ほぼ全員を名前で呼んだり呼び合ったりするべきと思い実行に移してしまう。


「長い事 待たせて悪かったね。これからもよろしく頼むよ? 唯依」

「こ、こちらこそ……た……たける、さん」【ヘブン状態!!】


――――そろそろ白銀少佐の"ハーレム"結成の日も、近いのかもしれない。




●戯言●
まさかの番外編(手抜き)。涼宮(姉)とのフラグは後編では大して立たないので御詫びで書きました。
はっきり言って赤坂ネタをやりたかったダケで、基本的に本編とは全く関係ないので御了承ください。
でも本編の白銀大佐は大体こんなカンジの理由でデタラメのスペックを持っていたりします。
本編でも同じ描写が有るかもしれませんが、横浜基地ピンチの可能性が無い故での29日でした。



[3960] これはひどいオルタネイティヴ番外編②
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2009/10/15 18:11
*前回と同様に駄文なので面倒臭かったらスルーしてください。








●今回の話に置ける本編との相違点●


①当作品 登場前の"篁 唯依"は香月副司令のタチの悪い嫌味とも言える"皮肉"を聞いていない。

②上記の理由の為、2001年11月21日(23話)には巌谷中佐しか横浜基地に来ていない。

③女性キャラ達の白銀少佐に対する好感度は若干だが低い。(一応 皆が彼を好いてはいるのは同じ)

④今回の番外編の決定的な違いですが、まだ秘密。もし気になったらスクロールしていってね!








2001年11月22日 午前


昨日の巌谷中佐との"交渉"に置いて大成功を収めた白銀少佐は、一人で基地内を歩いていた。

目指すは執務室。今日付けで早くも横浜基地で研究を進める事となった巌谷中佐と会う為だ。

それは巌谷中佐が、白銀少佐が今迄 発案していった兵器・OS等について非常に評価した事から、
スポンサーを加えるメリットを考えた香月副司令が彼の横浜基地入りを決めてしまったのである。

そして更に もうひとつ大きな理由も有るのだが……それは間も無く分かる事になるであろう。


≪ガシューーッ≫


「失礼しま~す」

「おはよ」

「来た様だな」

「ホントに此処で研究するんですねェ」

「まぁ……彼の技術を考えると御堅い連中には勿体無過ぎるから、精々こっちで働いて貰う事にするわ」

「期待には応える様 努力するつもりですが、帝国軍とは良好な関係を御願いしますよ?」

「分かってるわよ」

「ところで、何の用なんスか? 俺 専門的な知識は無いんで正直、役に立たないと思いますけど」

「あぁ、その件じゃ無いのよ」

「白銀少佐。今日から君に任せたい娘(こ)が居てね」

「はい?」


巌谷中佐に そう言われ白銀少佐は記憶の片隅からマブラヴの登場キャラを漁るが、特に出てこなかった。

よってTEキャラ等 別作品のキャラが出るのかと首を傾げて考えていると、巌谷中佐は視線を変える。

その先を白銀少佐も追ってみると、意図的に気配を消していたのか"もう一人"の人間が存在していた。

この瞬間 彼は"ほう……"と感心すると共に、きっと優秀だろうし部下なると良いな~と期待したが……


「さあ唯依ちゃん、白銀少佐に挨拶なさい」

「はいっ!!」

「……ッ!?」


――――姿を現した"人間"の姿を見た直後に驚愕したが無理もない。


「わたしは日本帝国斯衛軍少尉、"篁 唯依"でありますッ!」

「(お、女の子だとォ!?)」


――――何故なら。


「特別任務により御伺いし、本日から国連軍・横浜基地に臨時少尉として着任 致しました!!」

「…………」(ポカーン)

「驚いて声も出ない見たいねェ」

「それも仕方無いですな」


――――その人間とは。


「君」

「はい!」

「年は幾つなんだい?」

「10歳です!」

「\(^o^)/」


――――"幼女"だったのだから。








これはひどいオルタネイティヴ 番外編②


=もしも"篁 唯依"が幼女だったのなら=








――――篁 唯依、10歳。


実戦経験は無いが彼女は非常に優秀な少女であり、先月付けで既に斯衛の少尉として任官している。

よって実戦を踏まえた訓練へと臨ませたい所だが……10歳と言う年齢が"恐怖"に抗えるのだろうか?

確かに帝国軍では神代少尉 達の様に若くして実戦を経験する者も多いが、流石に早過ぎるとも言える。

されど10歳と言えど優秀であれば実戦で活躍して欲しい反面、優秀な人材を失うリスクは否定できない。

今は無理でも更なる年月を隔てる事で、優秀な衛士となってくれる可能性が有るのも最もな話なのだ。


「そう言えば巌谷中佐、貴方の義理の娘は非常に優秀だったって噂だけど?」

「まだ実戦経験も無い10歳ですがね」


――――正直なところ巌谷中佐は悩んでいた。


10歳の娘に過酷な経験させたくないが"上"は貴重な人材は直ぐにでも実戦を経験させるべきと話す。

されど"少女"である篁少尉をBETAとの戦いに耐えれる様 指導できる人材を寄越すのは彼らは躊躇う。

もし死なれてしまった時の責任を負いたくは無いのだろう。いくら優秀とは言え前例が無いのだから。

そんなワケで八方塞がりな状況だったが、香月副司令との交渉の末 横浜基地で研究を進める事となり、
巌谷中佐は頭脳にも優れる篁少尉を自分の"臨時補佐"に回す事で実戦の経験を先送りさせようと考えた。

任官した事で彼女に役職を持たせられる為 問題無い。よって我ながら娘には甘い……そう思って居ると。


「だったら白銀に任してみては如何かしら?」

「!? 彼ですか? ……いや、彼ならば……」


篁少尉の噂を僅かながらも知っていた香月副司令が意外な提案をして来た。彼に義理の娘を任せればと!

ソレに対して当然 巌谷中佐は精神面でのリスクを伝えたが、香月副司令は白銀少佐を強く勧めて来た。

この事から余程 信用できるのか……と彼は白銀少佐に対する評価を更に上げたが、コレには理由が有る。

香月副司令は残された時間を知っている為、10歳であれど役に立たせるべきと言う考えなダケなのだ。

例え白銀少佐に任せた結果 命を失おうが関係無い。こう言う価値観でないと遣ってられない立場とも言う。


「ま、まぁ……とりあえず今日から宜しく頼むよ? えっと……」

「唯依で良いです!」

「じゃあ唯依。早速 基地を案内するよ」

「ありがとうございます!」


……さて置いて。香月副司令の言葉を真に受けた巌谷中佐は、義理の娘を横浜基地へと呼び寄せた。

昔から彼女の世話役だった雨宮少尉は寂しがっていたが、篁少尉はむしろヤる気になっていたとの事。

何故なら彼女はBETAの醜さを知らないので、新たな指導者との訓練の開始を心待ちにしていたらしい。




……




…………




……数日後。


『白銀機・篁機、反応炉に到達』

「よ~し、旨くいったな」

「し……信じられませんッ」

「それはコッチの台詞だよ。こうも飲み込みが早いなんてね」

「これも白銀少佐の指導の御陰です!」

「サンキュー」

「もう一回、もう一回やりましょうッ! 白銀少佐!!」

「はいはい。分かったよ」

「今度は もっと早く到達して見せます!」


イリーナ・ピアティフ中尉の管制により白銀少佐&篁少尉はヴォールク・データを行っていた。

結果は前述の通りであり、2機連携で既に反応炉への到達をクリアすると言う驚異的な結果を残している。

始めは白銀少佐から見ても"価値観"の所為で篁少尉は並みの衛士に見えたが、次々と技術を学習しており、
特に彼女を自分の膝に乗せて操縦を教えても股間が反応しない上に、幼女な為 操作が安易なのが大きい。

そして同じ理由で"価値観"がそれ程 確立しておらず、新たな概念を柔軟に受け取める事が出来ていた。

篁少尉にとってはイキナリBETAが犇(ひしめ)く光景を目にして最初は絶句していたが、今はこの通り。

勿論 白銀少佐に対する信頼も鰻登りであり、共に行動してゆく事で更に彼女の想いは加速してゆく。




――――とある朝。


「霞~、朝だぞ? 起きろ起きろ」

「……ッ……」

「俺は着替えて先に待ってるからな?」

「……はい」


≪――――ガチャッ≫


「白銀少佐ッ! おはようございます!!」

「うわっ、びっくりした」

「先日は良く御休みになられましたか!?」

「そ、それなりにね」

「おはよう……唯依」

「おはようございますッ! 霞おねえさま!!」

「……ッ……」←顔が紅い霞

「それにしても毎朝 早起きで感心するね~」

「それほどでもありません!!」

「霞も少しは唯依の謙虚さを見習わないとダメだぞ~?」

「あうッ(……妬ましいです)」




――――とある実戦……と言うか二度目のBETA襲撃。(35話 参照)


「ておおおおォぉぉぉーーーーっ!!!!」(ザ●ィーラ調)

『要塞級 沈黙。篁少尉、座標転送します』←遙

「はいッ! 座標特定、ロックオン完了!!」

「撃て~唯依!!」

「フォールディング・バズーーカアアァァーーーーッ!!!!」(某魔王調)


≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「あ、あれっ……もう終わったの?」(以下 元A分隊の方々)

「大丈夫~? 多恵」

「何とか大丈夫っとよ~?(……でも、やっぱり漏らしちゃったぁ……)」

「それにしても可愛いのに凄いよね~? 唯依ちゃんって」

「凄いのは白銀少佐も同じ……って言うか、私たちの出番……コレだけ?」




……




…………




……更に数日後の午後。


「さて、今日の訓練も終わったし飯にしようか」

「はい!」


元気に俺の横をトコトコ歩いている、俺の部下となった"篁 唯依"ちゃん。なんと10歳で衛士との事。

(`・ω・′)←こんな顔でミニサイズの国連軍・軍服姿で登場した時は どうなる事かと思ったけど、
いざ教えると非常に優秀。物覚えが速く涼宮(妹)ら元A分隊との実戦もアッサリ達成してしまった。

まさにスーパー幼女ですな。これで成長したら どれだけ立派な衛士になるのか楽しみでならない。

幼いのに真面目 過ぎるのが玉に瑕だけど、それはそれで可愛いモンだ。鎧衣と同じで瞳に輝きが有るしね。

……そんなワケで今日もシミュレーター訓練を終え、自然と2人でPXへとやって来たんだけども。


「そう言えば聞いたか~? 白銀少佐の……」

「あぁ。斯衛軍のガキの事だろ? 新しく部下になったって言う」

「フザけんじゃねぇよなァ? 何で"あんなの"が国連軍のヒーローと一緒に居るんだ?」

「いくら優秀とか言われてるにしても、ガキに戦術機が宛がわれるなんて……」

「しかも俺らが触らせてもくれない新型なんだろ? 七光りが有るヤツは羨ましいぜ全く!」

「先日の件で実戦も経験したらしいが、大方 白銀少佐に守ってもらったダケなんだろうしな」


――――あちゃ~、何処にでも居るんだな こう言うアホ。そう思いながら唯依ちゃんの方を見てみると。


「……ッ……」

「……(やだ、なにこれ……かわいい)」


プルプルと震えながら涙を滲ませ、口を一文字に閉じて耐えている。可哀相だが可愛くも感じるZE。

思ったより打たれ弱いんだな……完全無欠な幼女だと思ってたけど、子供らしい一面も有ったようだ。

されど此処はフォローしてやらないとね。とは言え陰口 叩いてる2人組みの士気も下げたくないし……

そう考えているウチに自然と足を進ませた結果、言うべき事を見つける前に彼らは俺に気付いた様子。


≪――――ザッ≫


「…………」

「えぇっ!?」

「し、ししし白銀少佐ァ!?」

「……君達」

「は、はいッ!?」

「何で有りましょうか!!」




「あまり私を怒らせない方がいい」(#^ω^)ピキピキ




「!?」←幼女

「も、ももも申し訳有りませんでしたァ!!」

「今のは撤回させて下さい、篁少尉~ッ!!」

「二度目は無いからね~?」

「り、了解であります!!」×2

「じゃあ、行って良いよ」

「はっ!!」×2


≪――――ダダダダダダッ!!!!≫


「ふぅ~ッ、やれやれ」

「…………」

「俺ならともかく唯依の悪口を……あんなの気にするんじゃないぞ?」

「…………」

「とにかく飯にしよう」

「……はい」

「(成る程……白銀少佐になら唯依ちゃんを託しても良さそうだ)」


何だか2人組みの衛士は予想以上に大慌てしてたんだけど、元より俺の"階級"が高いからだろう。

よって、さっきの台詞は"あっち"だとギャグでも有るから大丈夫だった筈。根拠は無いけどポジティブだ。

そんな事を思いながら御盆を手に走り去ってゆくアホらの背中を見送った後、唯依ちゃんに視線を移した。

すると彼女は紅い顔で俺の事を数秒 見上げた後……大人しく席に着いて食事を始めたので俺も続いたが。

その後 一日が終了した事で途中で別れる際、唯依ちゃんに口から"とんでもない発言"を聞く事となった。


「じゃあ唯依、御疲れ~」

「……ッ……」

「さっきの事はホント忘れた方が良いぞ?」

「……あ、あの……白銀少佐ッ!」

「んっ? どした~?」

「こ、今夜から白銀少佐と一緒の部屋で寝させてください!!」

「!?!?」


――――思えば、あの言葉が唯依ちゃんの"告白"だと言う事に気付くのに10年経っても気付かなかった。




……




…………




……2時間後。


「それじゃ~唯依。おやすみ」

「は、はい。おやすみなさい」


≪――――カチッ≫


本日から強引に白銀少佐の部屋で寝る事となった篁少尉は、自分の個室から布団を持って来ると、
ソレをせっせと床に敷いて其処に正座し、白銀少佐を見上げながら就寝の挨拶をしていた。

直後 白銀少佐によって消灯されると同時に彼女は布団を被り、白銀少佐もベッドに横になった。

……その際の彼の心境は正直 安心。密着しても別に良いのだろうが、ソレでは"抜けない"からだ。

勿論 バレるつもりは無いので彼女の寝息が聞こえてから自慰るつもりであり、全く懲りない野郎である。


「(ね、眠れないッ……どうして……)」


反面 別の布団で寝ると言うのに篁少尉は眠れない。幼い彼女には その意味が分からないのは勿論……

何故 彼の部屋で寝る事を望んだのかも分からず、カラダを小さく丸めて ひたすら白銀少佐の事を考える。

白銀 武……彼は彼女にとって王子様のような存在であり、今の自分が居るのは彼の御陰と言っても良い。

何せ尊敬していた斯衛の衛士達さえ出来なかったヴォールク・データの攻略の達成ダケでなく、
ヤる気が有る反面やはり恐ろしかったBETAとの実戦も彼の存在の恩恵で生還できてしまったのだから。

トドメに夕食時に置いて、彼は自分の事で本気で怒ってくれた。顔は笑っていたが血筋が全てを物語る。

実際は勘違いだった……のは置いておいて、ともかく篁少尉が自覚無しに好意を抱くのは仕方なかった。


「(……まりもちゃんのオッパイ……ハァハァ……)」

「(白銀少佐……わからない……どうして……わたしは……)」


――――でも そんな幼女の想い人で有る白銀少佐は、寝付くのも確認せず自慰っちゃってたんだ☆




……




…………




……翌日。


「――――ッ!?」

「ん~っ?」


俺は何やら声にならない叫びを聞き目を覚ました。そう言えば唯依ちゃんが居たんだったね……

ちなみに今日から霞は起こしに来ないらしい。最初はヘソを曲げてたけど事情を知って納得してくれてる。

確か自分は"お姉さん"なので譲ってあげるとか言ってたな……対して唯依ちゃんは素直に喜んでいた。

霞も以前 彼女に"おねえさま"と呼ばれたのが余程 嬉しかったらしく、その日なんてスキップしてた気が。

そんな微笑ましい事を思い出しつつ視線を下に移すと、何故か唯依が泣きながら丸めた背を向けていた。


「ひッ、ひっく……グスッ……うぅ……」

「ちょっ……何が有ったんだ? 唯依」


――――コレは只事じゃないッ! そう思って近付いてみると。


「ひっ!? あのッ……えっと……ぅっ……」

「……(まさか……!?)」


――――何と唯依は"おねしょ"をしており、それが原因で泣いていた様だ。


「……ッ……」

「……(う~ん)」

「……(何て失態を……ぜ、絶対に失望された……もう、わたしは横浜基地に居られない……)」

「……(萌え~)」


これは予想外。年齢を考えれば仕方ないんだけど、優秀とは言え やはり幼女だったんですね~。

よって今は一旦 距離を置いて、正座して涙目になって俯いている唯依を見下ろしながら考える。

どうフォローしたモンかな……極力傷つけたくないから、此処は慎重に選択肢を考えないとダメだね。

されどストレートに行った方が良さそうだ。そう考えた直後、既に俺は唯依ちゃんを抱き締めていた。


≪――――ぎゅっ≫


「!? し、少佐ッ……汚いです!!」

「そんな訳あるかよ」

「えっ?」

「昨日の夕飯の時と言い、むしろ"子供っぽい一面"が有って安心した位だ。それ位が丁度良いよ」

「!?」

「だから唯依は"それで良い"んだ。だから泣き止んでくれ」

「ご、ごめんなさい」

「謝る必要も無い。むしろ全力で甘えて良いぞ?」

「……ッ……だ、だったら!!」

「どんと来い」

「もう少し……このままで、おねがいします……」

「9分で良い」

「!? そ、そんなに……汚いですよ?」

「問題無いよ。むしろ唯依の方が気持ち悪くないか?」

「相殺されてるので大丈夫です」

「成る程~」

「…………」

「(流石に脱ぐのは自分で遣らせた方が良いよな~?)」

「(……わたしは……貴方が好きみたいです……白銀少佐……)」


あの後 何故 唯依ちゃんが漏らしてしまったのか聞いてみると、緊張して寝られなかった為らしい。

そう言われると俺って唯依ちゃんが起きてる時に自慰ってたのか……勘付かれなくて良かったZE。

ともかく"あの件"から更に彼女は衛士として成長し、オルタの終焉に辿り着いたとダケは言って置こう。




……




…………




……時は急速に加速し10年の年月が過ぎ、今や白銀少佐は28歳……精神年齢は38歳となった。

一方 幼女であった"彼女"も美しい女性へと成長しており、擦れ違えば振り返えられる程のレベルらしい。

さて置き。部隊も移っており、米国合衆国アラスカ州 国連太平洋方面第3軍・ユーコン陸軍基地にて。


「以上で皆の質問は終わりですか?」←唯依

「だったらブリーフィング終了となるけど……良いかい? ユウヤ・ブリッジス」


長い月日が流れた故 少将へと昇格した"白銀 武(28)"は、日本から遥々アラスカ州にへと赴いていた。

異例の若さで将官となった彼は全人類にとっての"英雄"であり、もはや全ての衛士達の憧れの的である。

ソレは目の前の衛士達も同じであり、少将で有りながら未だに進んで最前線の戦場で活躍する白銀 武……

そんな"伝説"とも言える彼が指導してくれる事に感動しつつ、名指しされたユウヤは直立不動で応える。


「はっ! 有りません!!」

「じゃあタリサ・マナンダル」

「無いです!」

「次にヴァレリオ・ジアコーザ」

「右に同じでありま~す」

「んじゃ~ステラ・ブレーメル」

「あ、有りませんッ! 有難う御座いました!!」


そんな白銀少将を10年間支えて来たのは篁 唯依"中佐"であり、彼女も異例のスピードでの昇進だ。

白銀少将と同様に"10歳で実戦を経験した"等 伝説も数多く存在し……彼女を知らぬ人間も皆無である。

巌谷中佐も現在は中将となっており、香月司令(現大将)は既に宇宙(そら)での戦いを想定しているらしい。

その為 地球全てのハイヴ制圧後 直ぐ宇宙へ発てる様 準備を進めている為、まだハイヴは多く存在する。

よって地上・宇宙 兼用の新世代機を開発しつつ地球のハイヴを制圧してゆく段取りを組んでおり、
"それら"の実戦テスト等を全て担われたのがアルゴス試験小隊 及び"突撃機動部隊"なのである。

言うまでも無いが"突撃機動部隊"とは世界最強の中隊であり、ハイヴ攻略を物ともしない事でも有名だ。

さて置き。篁中佐を横に白銀少将は最後の人物に視線を移した。(注:彼らの年齢の時間軸は唯依と同じ)


「なら最後に……ヴィンセント・ローウェル。まだ有るかい?」

「お前は質問し過ぎなんだよッ」←ユウヤ

「うるせえ。え~っと、プライベートな事とかはダメなんですかね?」

「何でも構わないと言っただろ~?」

「じゃあ……白銀少将殿は何故"一人身"なんでしょうか?」

「!?」×5

「お前 相手を考えろよッ! 白銀少将なんだぞ!?」

「何 言ってんだタリサよ。さっき お前が話題にした事だろ~が」

「ち、違っ! ……違いますから!!」

「……ッ……(やっと、やっと"あの台詞"が言える時が来た……!!)」

「あ、あの……白銀少将?」←ステラ

「……(ヤバッ、流石に怒らせちまったかな?)」

「た……武さん?」

「それはだね」

「――――っ」×6




「他に食べる方法を知らんからさ。だから未だに嫁さんも貰えん」




――――されど白銀少将は今になっても、肖るのと隙が有らば自慰るのは全く自重していなかった。




……




…………




……1時間後。


「全く。お前ってホント馬鹿だな、何であんな質問したんだよ!」

「"何でも構わない"って言ったからじゃね~か」

「だからと言ってだな!!」

「でもユウヤ。お前も思っただろ? 雰囲気的に聞けそうな人だったって」

「そりゃ、まあ……もっと厳しい性格だとは思ったけどな」

「とは言えさっきの白銀少将はクールだったな~、何だか凄ェ納得しちまったよ」

「10年前は本当に地獄だったらしいからな……それ位の心意気じゃないとダメなんだろ。お前と違って」

「手厳しいねェ。ともかく頑張ろうぜ? ユウヤ」

「当たり前だ、俺はあの人に憧れて衛士になったんだからな」

「俺だって感無量だよ。これから楽しくなりそうだぜッ!」


……一方 同時刻。本日の仕事を終え自室(共同)に戻った白銀少将と篁中佐(20)はと言うと。


「――――武さんッ!!」

「どうした? 唯依ちゃん」

「何故あんな根も葉もない事を言ったんですか!?」

「そりゃ~久しぶりの部下達だからね。少しはカッコ付けたくなりもするさ」

「でも既に何人かの子を身篭らせているクセに……」

「お、公に出来ないんだから仕方ないだろ? 殿下が結納するのは唯依ちゃんを先にって言うんだから」

「わ……わわわ私は武さんが そんな冗談を言う限りは結婚する気は有りませんッ!」

「そんな事 言われても性分だしなあ……」

「だったら直してください!!」

「うわ~ホント気の強い娘になっちゃって。以前は可愛かったのに……ホラおねしょの時なんて――――」

「!!!!」


≪――――ドスッ!!!!≫


「ぐふぅっ!? ……おまッ、またもや少将様を……俺って偉いんだぞッ……」

「武さんは一級中佐の私の足元にも及ばない貧弱少将。その貴方が私の過去を暴露した事で、
 私の怒りが有頂天になったッ! この怒りは暫く治まる事を知らない!!」(完全感染)

「どわっ!? か、勘弁してくれ唯依ちゃ~んっ!」

「ダメです許しませんッ! 其処に直りなさい!!」


≪どたどたどたどた……!!!!≫


流石に10年もの付き合いになると、俗に言う白銀語(ver28)が完全にうつってしまった篁中佐。

そんな彼女は恥ずかしい過去……とは言え彼を愛す事となった一件を口にされ背中に炎を浮かべる。

対して慌てて逃げる白銀少将は必死で有ったが、篁中佐は今の状況がずっと続けば良いなと思って居た。

確かに愛する彼に抱かれたい心境も有るが、まだまだ兄とも言える彼の背中を追って行きたいのである。

別に結婚しても・しなくても鑑少佐を始め白銀少将を慕う女性たちは彼に抱かれる事が可能なのだから。

つまり一夫多妻制度。篁中佐が白銀少将との結婚を決する事で先ずは"煌武院 悠陽"と結納し、
続いて彼も篁中佐が結婚し、更に他の娘達が籍を入れる事で公になるか成らないかの違いだ。

よって篁中佐は表情は怒れど、心は笑いながら今を生きる。何時までも何処までも……白銀少将と一緒に。


「(……武さん……何時か貴方に釣り合える女性に成った時……私の事を抱いてくださいね?)」


――――アラスカでは新たな波乱が生まれる筈。されど2人が結ばれる日は、そう遠く無いかもしれない。




●戯言●
……俺は不良だからよ? 支援絵貰えれば番外編を書くし、感想を参考にして名台詞とかも言わせる。
タニシ氏の"おもらし絵"や[1479]氏の感想がなければ書きませんでした。良い息抜きが出来て感謝です。
↓全ての発端はコレ↓
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=6600956
↓追撃のグランドヴァイパー↓
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=6648322
↓まさかの不知火S型・白兵改造仕様&オルガっぽい神代少尉↓
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=6654888




●おまけ●
ムシャクシャして作った。
http://kissho.xii.jp/1/src/1jyou94089.jpg 『なに俺の視界に入って来てる訳?』
http://kissho.xii.jp/1/src/1jyou94090.jpg 『なに瀕死の俺を追っかけて来てる訳?』



[3960] これはひどいオルタネイティヴ番外編③
Name: Shinji◆9fccc648 ID:1391bf9d
Date: 2010/11/04 17:45
――――今回はTEによる途轍もない独自解釈とオリ設定が含まれて居るので予め御了承の上 読んで下さい。
























これはひどいオルタネイティヴ 番外編③


もしも本編で来たのが篁中尉では無く"紅の姉妹"だったら。(不快感を感じたら此処でバックを!)
























2001年11月20日 午後


白銀少佐が横浜基地にやって来て早くも一ヶ月近く過ぎた頃。(22話のラスト)

既に彼は新OS(β版)・不知火S型による実戦データ・同機で武御雷(白)3機を相手にした模擬戦データ、
そしてシミュレーターとは言えバズーカで反応炉を破壊した事実を創ると言う数多くの偉業を果たしていた。

されど彼はオリジナルハイヴを潰した白銀"本人"の方が凄いと思っているので自覚が皆無なのは さて置き。

神宮司軍曹との2機連携でのヴォールク・データ攻略後"何処かに揺さ振りを掛けるわ"と言った香月副司令。

その彼女に月詠中尉等4名との訓練中、突然 執務室に呼び出され……言われた台詞に白銀少佐は驚愕する。


「不知火S型の複座型の開発~ッ!?」

「えぇ。アラスカに有る国連軍基地と共同で行うわ」


神代少尉ら3名と戦った様に新たなイベントが"物語が脱線しない程度"に有ると考えていた白銀だったが。

只でさえ自分の考えは原作から逸れていると思って居るのに、新たな戦術機の開発が行われる事になった模様。

……とは言っても原型は不知火S型なのだが、複座型を知らない白銀には新型と殆ど同じようなモノである。

よって新たに覚える事が増える&いい加減 女性陣とのフラグ乱立に力を入れたい等の理由の為 彼は力無く言う。


「い、今は"そんな事"に力を入れてる最中じゃないと思うんですけどねェ?」

「そんな事~?」

「えっ!? ホラ……(ゆ~こさんが)只でさえ色々と忙しいんですし、今以上 携わる必要は……」

「大丈夫よ」

「へぇあ(一刀両断!?)」

「(過労で倒れた位だし白銀が)多忙なのは認めるけど、ちゃんと考えてるから」

「考えておられる……と仰いますと?」

「心配しなくてもアンタが"結果"さえ出してくれれば後は こっちが旨く纏めるから安心しなさい」

「で、でも俺 複座型なんて初めて ですし第一"パートナー"が居ないんスけど?(好感度的な意味で)」

「……(やっぱり他に白銀の目に適う衛士は居ないのね……まりもや伊隅達は今の立場的に無理だし)」

「だから俺は無難に まりもちゃんと一緒に、榊達の訓練に付き合ったりする程度で――――」

「(けど"あのレベル"なら必ず満足する筈)……白銀」

「は、はい?」

「明日アンタに新しく2人の衛士を預けるわ」

「マジで!?」

「その娘達と一緒に不知火(複座型)の開発に力を入れなさい。アンタに言うのも何だけど腕は一級よ?」

「……ってか"娘達"って事は、両方とも女性なんですか?」

「そうだけど?」

「御任せ下さい、この白銀 武……必ずや副司令の期待に応えて御覧に入れます」(キリッ)

「期待してるわよ?("一級"に反応したって事は大方 知ってたのかもしれない)」

「ところで早速ですが、2人の名は何と言うのでコザルか?」

「え~っと、確か……(ワザとらしい態度だけど、やっぱり白銀への釣り餌には十分だったわね)」


――――勿論 白銀は"女性衛士"と言う単語ダケに多大な期待と興味を抱いたのは言うまでも無かった。


「ねぇ。ここって どこなのかな~? あたらしい しごとって なに?」

「……クッ……所詮 私達は国連軍の"道具"に過ぎないと言うのかッ?」

「???? どうしたの? クリスカ」

「イーニァは何も心配しなくて良いんだ……必ず私が守るから」




……




…………




2001年11月21日 午前


香月副司令から新たな任務を受けた白銀少佐は、執務室で部下となると言う2人の女性衛士を待っていた。

その際 早く来てしまったので空いた時間で色々と聞いてみると、彼女は複座型に相当な期待をしている模様。

何故なら例の2人を複座型を乗せBETAを蹂躙さたら、右に出る者は居ない程の戦果を叩き出すらしく、
当然 同乗せずとも一流な事から、その2人に白銀少佐の機動概念を学ばせれば更に化ける可能性が高い。

また複座型は扱いが非常に困難でコスト並みの戦果が出し難いが、色々な案を見出した白銀の頭脳が有れば、
一般の衛士2人の搭乗でも安定した戦果を出せるように成るアイデアを浮かべてくれると考えて居るらしい。

だが2人の女性衛士に対する成長と評価はともかく、複座型の運用方法を白銀(笑)に期待すると言う後者は、
ガン●ムの機体とかパイロットとかを適当に肖るダケで運良く結果を出して来た彼にとっては良い迷惑である。

されど彼は部下(しかも女性)が増える事は嬉しいし、複座型の新開発がエターなっても別に"あ号"は倒せるしで、
もし失敗したら"やっぱり無理だったんだ☆"と謝る事で済ませれば良いや~とかポジティブに考える事にした。

よって軽い気持ちで副司令・社 霞と共に待つ中、ピアティフ中尉が例の2人を執務室に案内して来るのだった。


≪ガシューーーーッ≫


「お待たせ致しました、香月博士」

「御苦労様」

「!?!?」

「(白銀さん……"嘘だろ"って……)」


その2人を見た直後、白銀の瞳が一瞬 大きく見開かれた……ダケだったが、社 霞は彼の珍しい感情に違和感。

"見た目"は常に無表情ながら、自分と遊んでくれる際 笑顔を浮かべている時でさえ感情は読めないのだが……

この様にハッキリとした感情が白銀に現れるのは珍しく、やはり"紅の姉妹"の事を知っていたのだろうか?

ならば自分が そうである様に彼女達も"オルタネイティヴ計画"によって生まれた存在なのだと察してしまった?

彼は恐ろしく勘が鋭い為 既に気付いたに違いない。だが彼は全てを知っても柔軟に物事を受け止める事が出来る。

それは社 霞が白銀に懐いている理由の一つであり、色々と訳有りの姉妹だが彼なら何とかしてくれるだろう。

根拠は無いが強ち彼女の期待は間違いではないのは さて置き。リーディング中断後の白銀の思考は こうである。




「(――――嘘だろ!?【此処までリーディング】……滅茶苦茶 可愛いじゃないですかッ!)」




執務室に招くと言う事実が有るダケで予想が出来ていたが、此処までの美少女が(しかも2人)来るとは!!

いや執務室と美少女は関係無いやんと自分でツッコミながら、白銀は興奮を抑えつつ"紅の姉妹"を黙って見る。

その際 彼がいち早く興味を示したのは2人の頭に付いていた"アレ"であり、心の中で僅かに首を傾げていた。


「ソビエト陸軍中尉、クリスカ・ビャーチェノワです」

「…………」

「イーニァ」

「あっ。おなじく イーニァ・シェスチナちゅうい です」

「貴女達を待っていたわ。遥々と良く来てくれたわね」

「……いえ」

「シェスチナ……か」

「……!?」


≪――――チラッ≫


「(白銀ッ?)」

「(白銀さん?)」×2


対してクリスカと名乗った女性は表情が硬く、少女(イーニァ)は何故か白銀を見上げていた為 自己紹介が遅れた。

されど2人の感情には気付かず白銀は、今のクリスカの言葉で"彼女達はソビエト人なのか~"とか今更 気付く。

そうなるとAFでは霞はロシア人とか言ってたし、この3人は故郷が同じ……其処で導き出される結論は一つ。

よって白銀は(意味も無く無意識に)イーニァの苗字を呟いた思うと(自覚は無いが)ワザとらしい仕草で霞を見て、
再び"紅の姉妹"の方へと視線を移した。当然ソレに夕呼と霞・そしてピアティフが違和感を感じない筈は無い。


「成る程……な」

「!?!?」×4

「ふぇ?」


――――だが頭のアレはソビエトで流行っている。それが今の一連で彼の導き出した無意味な答えだった。


「(何と言う良センス……姿を見たダケで見惚れてしまった。このファッションは間違い無く流行る)」

「(雰囲気だけで社とシェスチナが"同じ"だと察したのかしら? 生憎 説明は不要みたいね)」

「(2人とも安心してください……白銀さんなら、絶対に貴女達の力の使い方を間違わせたりしません)」

「(ビャーチェノワ少尉の警戒心が高まっているけど、白銀さんには きっと考えが有りそう)」


「(こ、この男……"読めない"!? だが"あの娘"から伝わって来る思考は どう言う事なのだッ?)」

「(あなたも わたしたちと おなじ……えっ? このひとは しんようできる? うん そうかもしれないね)」


「……って自己紹介が遅れたわね。国連軍 横浜基地 副司令の香月 夕呼よ」

「ははッ(……やはり私達を利用する気か……其処まで開き直れる辺り、最前線の司令官らしいとも言えるな)」

「自分は国連軍 横浜基地 少佐・白銀 武です」

「イリーナ・ピアティフ臨時中尉です」

「……社 霞です」

「このウチその白銀が貴女達の新しい"上官"って事になるわね」

「そ、そう言う事だから宜しく頼むよ?」

「はぁ~い」

「……クッ……で、では副司令。我々は白銀少佐の元で どの様な任務を担うのでしょうか?」

「最初は複座型 不知火の開発衛士をして貰うわ。近いウチに3人の誰かを僚機にして実戦投入も行う予定よ」

「それに(正史だと)12月下旬 辺りに佐渡島のハイヴとか行くかもしれないから頑張ろうな?」←対イーニァ

「うんっ!」

「まさかの同意!?」

「じゃあ、早速だけど貴女達の実力でも見せて貰おうかしら?」

「畏まりました(……ともかく私達は心を許す訳には行かない。衛士としての格の違いを見せてやるッ!)」




……




…………




……数時間後。

シミュレーターのヴォールク・データにて、クリスカはイーニァと共にSu-37UBチュルミナートルに搭乗。

そしてイーニァに火器管制処理 等を任せ、彼女は操縦を担当する事で圧倒的なBETAの蹂躙を開始し始める。

ソレは まさに理不尽な扱いを受けているクリスカの心情を表しているかの様な内容であり。まさに鬼神であった。

何せ近付いてくるBETAを手当たり次第に(しかも正確)撃破しながら強引に前進して行っているからであり、
流石の白銀少佐も(心の中で)ドン引きし、戦域管制を一応 担当しているピアティフも表情が引き攣っていた。

されど単機で万単位のBETAを倒し切れるワケが無く、最後は囲まれクリスカは自爆ボタンを押して散った。

結果 攻略は不可能だったが……この2人が100組も居れば事実上 蹂躙前提でのハイヴの制覇は可能であろう。

だが野暮な考えで有るのは勿論として、2組とも居ない存在だからこそ彼女達は"紅の姉妹"と言われているのだ。

よって自分達の真似が出来ない彼が、複座型の開発衛士を務められる筈が無い。ソレがクリスカの考えだった。

つまり今迄 此方を利用して来た上官達の様に、色々と命令するダケに留めて無駄に踏み込んで来るのは止めろ。

イーニァが"謎の少女"の能力も有って"新しい上官"に何故か懐いている様だが、私は認めるワケにはいかない!

そう改めて決意しながら特別筐体から出て来ると、再び姉妹は副司令・少佐・中尉・社 霞と向き合ったのだが……


「はいはい、御苦労様」

「如何でしたでしょうか?」

「あたしからはノーコメントよ」

「ふぇ?」

「なッ!」

「白銀。アンタは"どう見た"のかしら?」

「ん~☆」


ワザワザ横浜基地の副司令が見に来たと言うのに、いち国連軍少佐に評価を振るのは姉妹にとって意外だった。

心が読めないので力量は計れないが、その一連ダケで余程 目の前の新しい上官は副司令に買われていると察せる。

それに……何故だろうか? かなりの戦果を挙げたと言うのに、全員のリアクションが妙に乏しい気がする。

だが必然である。今ドナルドのノリで言葉を選んでいる彼は、一人で姉妹を越える"結果"を出せる衛士なのだ。


「まぁまぁ……かな?」

「!?!?」

「えぇ。そんなところよね~」


……対してイーニァは"あなたは もっと すごいんだ~すごいね~"とか言って目を丸くしているに留まったが。

クリスカはトボけた様子の白銀が自分達 以上の戦果を出せる事が信じられず、酷評に驚愕するしかなかった。

コレは彼女の"価値観"で考えれば仕方無いのだが、求められるのは撃破の戦果ではなく攻略の結果なのである。

正直 白銀は暴れまくっていた"紅の姉妹"の戦果を非常に高く評価しており、当然 部下としても申し分なかった。

もし今後XM3を導入させた機体に搭乗し、新たな機動概念を取り入れれば確実に怖いモノ無しになるだろう。

だからこそ、今の価値観を拭い去って欲しく……無理に戦って果ててしまう様な"結果"を残して欲しく無い。

故に本来で有れば褒めたいトコロだったのだが、白銀は好感度ダウンを覚悟して先程の"評価"を下したのだ。

一方 先程から(おっぱいの所為で)自分と目を合わせようとしない彼に対し、クリスカは更に疑惑を募らせた。

その視線に気付いて居るのか気付いていないのか、彼は軽いペースを崩さない。(普通に気付いていません)

一体 何処まで自信が有るのだろうか? 全く"読めない"が、クリスカは僅かな期待をも無意識に抱いていた。


「じゃあ、今度は俺がS型で魅せましょうか?」

「それも良いけど何だか つまんないし、複座型で試したら?」

「おいィ……俺は複座型どころかチェルミナートルとか言うのに乗った事すら無いんですがねぇ?」

「なら操縦は どっちかに任せて火器管制とかの方を遣れば良いんじゃない?」

「で、でも初めて会ったばかりの人間にパートナーってか、仮にも"命"を担わせるのは――――」

「!? だったら、わたしが しょうさと のるっ!」

「イーニァ!?」

「(り、立候補……だと?)」

「へぇ~。本気なの? シェスチナ」

「はい!」

「な、何を言ってるんだッ。今はシミュレーターが終わった ばかりだし、無理して遣る事は……」

「だいじょうぶだよ。"そのこ"が いってるんだもん。ほんとうは クリスカも きこえてたんでしょ?」

「確かに"社 霞"が先程から……しかしだな……」

「しょうさと いっしょにシミュレーターを やれば、わたし ハイヴの さいご にまで いけるんだって!
 すごいよ? わたしとクリスカが いくら がんばってもダメだったのに、しょうさなら じつげん できる」

「……ッ……(にわかに信じ難い話だ……とは言え、それが本当なら……)」

「だから わたし、ためしてみたい。クリスカと ずっと いっしょにいる ためにも さいごまで いきたい」

「!? い、イーニァは卑怯だ……そう言われては反対できない じゃないか……」

「えへへっ。ごめんね~?」

「白銀。シェスチナは試したい みたいだけど、どうするの~?」

「俺が一人で到達してソレを真似するんじゃダメなのかな? シェスチナ」

「わたしが こうりゃく したいんですっ!」

「の、乗るの初めてなのに期待され過ぎでしょ……どうなっても知らないからなッ?」

「では早速 準備に取り掛かります」

「御願いしますイリーナ中尉。それと霞 プロジェクション自重!」

「す、すみません」




……




…………




……十数分後。

イーニァの強い希望もあり、彼女と一緒にチェルミナートルに搭乗する事に成ってしまった白銀だったが。

"体が密着する"と言う最悪の展開を回避出来る造りになっていた事から、心の中で胸を撫で下ろしていた。

されど複座型 未経験の彼の焦りは募る。只でさえ慣れていないのに、最低でも下層に行く必要が有るのだ。

もし無理だったらイーニァがガッカリしてしまいそうだし、旨く彼女を誘導しなければ信頼の2文字を失う。


『白銀少佐・シェスチナ中尉。戦闘準備完了しました』

「ち、ちょっと待ってください。なんだコレ、随分と近接戦に特化してんだな……ブレード多過ぎだろ……」

「だいじょうぶ? しょうさ」

「それと噴射 云々の設計どうなってんだ? コレ。不知火の跳躍ユニットと全然違うし……ブツブツ」

『白銀。細かい事は考えなくて良いわよ? 大体の操作はシェスチナが遣ってくれるから』

「いやいやッ! そんな無茶苦茶 言われても……機体の状況を把握しない事には……」

『はい、状況開始~っ!』


≪――――パッ≫


「ちょっ!? ゆ~こさん何時から管制になったの!?」

「がんばろうね!? しょうさっ!」

「クソッ! 仕方無ェな……構わん、H行こう!!」

『(Come on, let''s go? それよりも、雰囲気が変わった?)』


此処まで色々と無茶なテストや模擬戦や実戦を繰り広げて来た白銀であったが……今回も超の付く無理難題だ。

されど実際の白銀はスサノオ初乗りでオリジナルハイヴ攻略しちゃったし、似たようなモノだと割り切った様子。

しかしながら。肖らなければ遣ってられない様で、火器管制は勿論 早速 真っ赤になるレーダーを見つつ叫ぶ!


「ドッキングセンサーッ!」


――――そんなワケで複座型な事も有ってか、まさかの"厨戦機エロガイム"の登場である。




……




…………




――――ヴォールク・データin上層。




「シェスチナッ! 早速だけどBETAは無理に相手にするな!! どんどん前に進めっ!」

「えっ? う、うん!」

「機動性なら……チェルミナートルだって!!」

『(ば、馬鹿な!? 早くもチェルミナートルの性能を把握したというのかッ?)』

『(やっぱり白銀ね。複座型 程度 簡単に理解してるじゃない)』




「しょうさっ! ずっと とんでたら ねんりょうが すぐ なくなっちゃうよ!?」

「勿論 跳躍噴射に留めて着地だ! 俺がマーキングするから其処のBETAを倒して もっかい飛べ!」

「りょうかい!」

「変な所に当てるな!」

「!?(いま しょうさから……つよく かんじた?)」

『(イーニァは操縦経験"そのもの"は私よりも浅い。其処さえも読んでいる?)』

『(此処でイーニァさんが撃つ場所を間違えたら失敗します……だから強く感情を込めているんですね……)』




――――ヴォールク・データin中層。




「おおきいのが けっこう いるよ!?」

「要塞級か……相手にするダケ無駄だッ! さっさと抜けちまうぞ!?」

「はい!」


≪――――フオオオオォォォォンッ!!!!≫


「その程度の触手(ビーム)なら……」

「あたら(効か)ないよ!!」

『へぇ。ひょっとして相性が良いのかも知れないわね』

『……ッ……(た、確かに"あんな"イーニァを見るのは……)』




「!? こんどは おおきいのが いっぱい います!!」

「流石に無視できないなッ。180ミリで一体殺って、突破しよう!!」

「うん!」

「良いか? 動力部(弱点)ダケを狙って……」

「いっけぇぇーーっ!!!!」




――――ヴォールク・データin下層。




「もうすこし、もうちょっと!」

「続けて行くぞ!? シェスチナ君ッ!(もう非現実的に進んでるけど)」

「!? ちがう、わたしイーニァ……イーニァだよっ?」

「いやいや、此処まで来てんのに訂正を求めてる場合じゃ無いだろ!?」

「だってイーニァなんだもんっ!」

「志が低いぞ、シェスチナ君!!(あとAFのOP曲 思い出したぞ)」

「あうっ」

『(私と同じ本当の苗字……イーニァさんはシェスチナとは呼んで欲しく無いみたいです)』

『(だけど戦場で"甘え"は許されない。流石は白銀さんね)』




「うおっ!? 流石に無理か!?(今のOS的な意味で)」

「だ、だめ……もう むり!!」


≪――――ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫


「なんと!? やるっ!」

「いやぁん」

『チェルミナートル・大破。状況終了します』

「……(それにしても、何と言うミ・フェラリオ。ポジション的に逆なんだけど)」

「(おこってる?)……ご、ごめんなさい」

「へぇあ」

「わたしが とちゅうで あんなこと いわなかったら……さいごまで いけたかも しれない」

「えっ? いや……俺でも今のOSなら中層迄が限界だったし、十分な結果だったと思うよ?」

「……でも……すごく てきかくに しじ してくれたのに……」

「気にするなって立派なモンだ。それにしてもチャ? チュ? いやチェルミナートル……複座型って凄いんだな。
 いくら負担が減ったからって、此処まで潜れるとは思って無かったよ。流石は"紅の姉妹"ってトコロだねェ」

「あ、ありがとうございます」

「まァ 今回はダメだったけど、次は最後まで行こうぜ? イーニァ」

「ふぇ?」


≪――――ポンッ≫


『白銀。何時までもイチャついてないで出て来なさい』

「何故そう見える……」

「ねぇクリスカっ! すごかったでしょ!? いま もどるからねっ?」

『……クッ……(まさか指示ひとつで此処まで……ならば、私は今迄 何を……)』




……




…………




……2回目のヴォールク・データの終了から15分後。


『状況開始します。2人とも宜しいですか?』

『何時でも どうぞ』

「問題 有りません」


今度は市街戦のマップで白銀少佐の不知火S型とクリスカ中尉のチェルミナートルが距離を置き向き合っていた。

状況を見るに対戦直前の様であり、白銀少佐&イーニァ中尉が出て来て間も無く香月副司令が提案したのである。

何故ならイーニァは彼を信用した様だが、クリスカはパートナーへの依存が高く彼を認めていなかったからだ。

故に今の思考の違いによる結果ダケでは無く腕"そのもの"の格差をハッキリと付けてしまおうと副司令は考えた。

結果クリスカは見事に釣られたが、白銀にとっては冗談では無い。何せ"あの戦果"を出したチート衛士が相手だ。

しかも自分もXM3を積んではダメならしく、タイマンでは勝てる気がしなかったので"マジ勘弁"な状況だった。

されど香月副司令が機体選択の際に今回は"S型"と言う単語を隠していた事を耳打ちされるとアッサリ同意する。

かつて2人の凄腕の衛士が白銀少佐に秒殺された様に、クリスカも"サブ射撃"の存在を知らなかったのだから。


『さぁ……楽しませてくれよっ!!』

「クッ、私が相手では役不足か!?」


――――此処で"貴様等の攻撃パターンなど御見通しよ"と言わんばかりに白銀はクリスカを翻弄する。


≪ガシイイイイィィィィンッ!!!!≫


『うおっ!? ……へへっ、やってくれたな……』(言いたかったダケ)

「(またシールドで防がれたのか!? だが私の方が確実に押している!!)」

『コイツでトドメだッ!』

「ちぃっ!(……しかし何だ? さっきから白銀少佐から感じる威圧感は……)」


だが実際のトコロ白銀少佐の旧OSによる技能はクリスカ中尉に劣っており、普通なら彼の負けは確定していた。

即ち"サブ射撃"が無ければ今の彼は"実力も無いのに良い機体に乗せて貰える人"に過ぎない。(エリート兵の事)

しかし多少の勝負は出来る様なのでサブ射撃の使用は"詰む"状況まで温存し、クリスカとの戦いを続けている。

対して完全に自分が優勢な筈のクリスカは、白銀少佐の"肖り"による根拠の無い自信に冷や汗が全く潰えない。

"トドメだ"とか言われて放たれる180ミリにも全く当たる気がしないが、彼の気迫に常に押されていたのだ。

其処で考えるのが自分は"手を抜かれている"のでは無いか? ……と言う事であり、その予感は見事に的中する。

盾を破壊し36ミリの弾幕を潜り抜けつつ接近できた今、彼に もはや防御する手段は無いと思われたのだが!?




『踏み込みが足りん』

「なっ!? うわッ!!」


≪――――ドオオオオォォォォンッ!!!!≫


『ビャーチェノワ機・致命的損傷、大破。状況終了』

「そ、そんなッ」




"勝った"と油断した直後、思わぬ(胸部マルチ・ランチャーによる)反撃でアッサリと逆転負けしてしまった。

この敗北と"踏み込みが足りん"と言う台詞にクリスカは理解した。始めから自分は試されてるダケだったと。

まさに"完敗"であり、此処まで優れた衛士が世界には存在するのだと彼女は痛感するしか無かったのである。

対して白銀少佐は失禁寸前であり、予想以上のチェルミナートルの踏み込みに反撃が間に合わないと思っていた。

つまり"撃破されると思ったのに切り払いが発動した"心境であり、下手すれば負けていたのは彼だったのだ。

ソレも凄まじいクリスカのレバテクに、距離を離しすぎてサブ射撃を放てば避けられると思った事が強かった。

よって勝ったモノの完全に押されてたし、チート(サブ射撃)による結果だった為 筐体から出た白銀は対応に困る。

一方クリスカも彼を認めるべきなのか……とは言えイーニァに対する想いは当然 蔑ろに出来ず迷って居ると……


「……と言う事だし、ひとまず複座型に乗るのはシェスチナと白銀に決定かしら?」

「なっ!? ま、待って下さい!!」

「何よ? ビャーチェノワ」

「確かに白銀少佐の実力には感服しましたッ! ですが複座型の搭乗ダケは私とイーニァに担わせて下さい!!」

「ふぅん。あたしの見た限りでは白銀の方が余程 良い"結果"を出したと思うけど?」

「そ、それは そうですが……私の方がイーニァの事を ずっと理解していますッ!」

「大きく出たわね。つまり、白銀より貴女の方が"その娘"を活かせるって事で間違い無いのね?」

「はい!! ですから――――」




「……寝言は寝て言いなさい(我ながら旨い事を言ったわね)」




「!?!?」

「考えて見なさい? アンタの"遣り方"はハイヴのBETAを馬鹿の一つ覚えみたいに殺して進んでゆくダケ。
 そんな方法でハイヴを単機で攻略 出来るとでも思ってんの? 何人もアンタみたいなのが居れば話は別だけど」

「……ッ……」

「それに対して白銀はアンタの"大切なパートナー"に何を優先させた? BETAを無視して進む事でしょ?」

「あっ」

「"あっ"じゃ無いわよ。フザけてんの? アンタは出来もしない目的の補佐を死ぬまで担わせたダケなのに、
 白銀は惜しいトコロで撃破されたとは言え、シェスチナに最期まで生きて帰る希望を捨てさせずに務めた」

「――――!?」


≪志が低いぞ、シェスチナ君!!≫


「(……しょうさは そこまで わたしのことを かんがえてて くれてたんだ……)」

「ねぇ。ソレでもビャーチェノワは白銀よりもシェスチナの事を"活かせる"とでも言うつもりなのかしら~?
 訓練を重ねて での初めてのハイヴ攻略で中層にも行かないウチに自爆ボタン押してアッサリと心中する事が、
 ハイヴを破壊して生還する事を考えて攻略する事よりも勝るって言うんなら、ちゃんちゃらオカしいんだけど」

「クッ……ぅうっ……」


香月副司令の横槍と容赦の無い毒舌により、クリスカは反論すら出来なくなってしまい拳をキツく握り締める。

まさか自分が正しいと思って当然の様に行っていた事が、イーニァの戦死の回避に全く結び付いて無いとは!!

ならばクリスカと"ずっと一緒"に居る為に白銀少佐との同乗に立候補したイーニァの方が余程 想ってくれている。

よって今迄イーニァの為に・祖国の為にと頑張って来たのだが何もかもが無駄に成ってしまった様な気さえした。

彼女の価値観で言えばハイヴで敵を無視するという時点で無茶なのだが、事実を得た以上は受け止める他 無い。

結果 イーニァは自分よりも白銀少佐に託す方が良いのではないか? ……と言うネガティブ思考に至ってしまう。


「(おっぱいデカ過ぎ!)」

「……ッ!?」


≪――――ダダダダッ!!!!≫


「あっ、クリスカ?」

「ゆ~こさん……流石に言い過ぎでしょうが……」

「何よ? 本当の事 言ったダケなのに。ビャーチェノワが打たれ弱いダケなんじゃないの?」

「つまり俺の代わりに悪役に成ってくれたんですね? 分かります」

「まァ、嫌われ役は慣れてるしね(……アンタの負担が少しでも減れば安いモノだし)」


其処で藁にも縋る思いで白銀少佐に視線を移したクリスカ。彼が否定さえしてくれれば、イーニァは奪われない。

だが彼は(おっぱいを直視できない意味で)複雑な表情で視線を逸らした為、やはり彼も同じ考えだったのだろう。

ソレが決定的となり、彼女は その場に居た溜まれず(強化装備のまま)シミュレータールームから走り去った。


「白銀さん……今は彼女を……」

「しょうさ。わたし クリスカが いっしょじゃないと やだよぉ」

「あァ、分かってるさ。放って置くワケには いかないよ(……あの格好じゃ恥ずかしそうだし)」

「ではシミュレーターは終了ですね」

「そうね。ピアティフ、後は御願い」

「畏まりました(……白銀さんの事なら大丈夫でしょうし、今後の戦果が楽しみね)」




……




…………




……十数分後。

白銀少佐は走るに走り(人気の無い)給水装置の傍の長椅子に腰掛けているクリスカ中尉を ようやく発見した。

彼はリーディング能力を持たない為 掛かった負担は相当なモノだったので、心なしか呼吸も荒くなっている。

それ故に必然だったのかもしれない……クリスカの発音し難い苗字をシッカリと言えなかったという失敗も。


「ビャーうまぇあチェノワ!!!!」←噛みました☆

「し、白銀少佐ッ?」

「こんな所に居たのか……ぜぇぜぇ、随分と探したぞ」

「……ッ……す、すみません」

「早く戻ろう。今頃シェスチナは着替えて待ってると思うぞ? あと霞も君と話がしたいって言ってたよ」

「…………」

「でも結構 疲れたから歩きだと助かる……って、何してんの? 戻らないのか?」

「白銀少佐」

「何ぞや?」

「……何故、私を追って来られたのです?」

「そんなの"仲間"なんだから、当たり前だろ?」

「!?!?」

「……ってか、ゆ~こさ……いや副司令の言った事を気にしてんのなら、止めた方が良いと思うけど?」

「…………」

「そもそも今迄の概念じゃアレが普通だったと思うし、間違ってたら今から直せば問題ないじゃないか」

「ですがッ」

「ビャーチェノワ?」

「ですがっ! 私は……そんなに簡単に他人を"信用"出来る程 柔軟を考えをした人間じゃ無いんです!!」

「んなっ?」

「私とイーニァは今迄 多くの人間に利用されて来ましたッ! 計画によって生まれたと言う存在が為に!!
 だから軽々しく"仲間"という言葉を発さないで下さい!! 先程から私と目さえ合わせないと言うのにッ!」

「…………」


イーニァは素直な事も有ってか、社 霞のアシストにより比較的 簡単に"白銀 武"と言う存在を信用してしまった。

ヴォールク・データを複座型に同乗して挑み、素晴らしい結果を残せた事も大きいだろう。(しかも旧OSで)

だが(おっぱい的な意味で)自分と一切 視線を合わさない彼をクリスカは未だに信用する事が出来なかった。

それも仕方が無い。此処一年2人は軍に利用され続けており、彼女はイーニァの負担軽減で精一杯だったのだ。

そんな中 存在意義で有る"衛士としての技量"を上回る衛士で有る"白銀 武"と言う存在が彼女を不安定にする。

彼は正当な理由でイーニァを奪う存在……なのに自分を仲間と言う上に、思考が一切 読めないのだから。

よって溜まっていたモノを無意識に吐き出してしまい、白銀少佐は そんな自分を見下しているに違いない。

されど彼の行動は予想外なモノで有り、何とクリスカの瞳をシッカリと見つめながら静かに近付いてくる。

彼女は てっきりリーディング防止だと思っていたので更に動揺するが……その上 彼は自分を抱き締めて来た!


≪――――ぎゅっ≫


「なっ……し、少佐!?」

「今度は俺が思ってる事……分かるか?」

「……あッ……」

「どうだい?」


≪――――絶対に守る!! 絶対に裏切らない!! 絶対に助ける!! 絶対に死なせない!!≫


「!? ど、どうしてッ?」

「ただ単に"気張り"を解いたダケだよ。暑苦しい事 思ってるのは自覚してるから恥ずかしいダケさ」(嘘)

「ならば……今迄の仕草は一体……?」

「一応 上官に成るんだから格好付けたかったに過ぎない。読ませないのは苦労した中で見つけた知恵だよ」

「(つまり、白銀少佐は……私達よりも余程 辛い道を歩んで来たと言うのか?)」

「だから他人を信用 出来ないとか悲しい事 言うなよ。少なくとも俺は絶対に君を裏切る事はしない」

「……ッ……」


白銀少佐にとってクリスカ中尉のダイナマイトなボディは視界に入るダケでも股間の負担になってしまう。

よって意図的に目を合わせていなかったのだが、信頼を大きく損ねていた様で自分の判断を猛省していた。

しかも何時までも強化装備 姿のクリスカに恥をバラ撒かせるワケにはいかないので、遂に彼は決断する。

一瞬とは言え強い負担は掛かるが目を合わせて彼女に近付き、抱き締める事で他人の目に入るのを減らそうと!

結果おっぱいの感触が彼の精神を蝕んでゆく事になるが、コレでクリスカの姿が隠れるのなら安いモノだ。

さて置き。その後 強く"念じた"事を彼女に読ませる事で彼は信頼をマイナスからゼロに戻せればと考えている。

対して抱き締められているクリスカなのだが……何時の間にか"今の感触"を心地良くさえ思ってしまった。


「ビャーチェノワ?」

「あっ! す、すみません! 何時までも何も言わずッ」←白銀から逃れながら

「別に構わないが……今後どうなんだい?」

「はッ、此処は白銀少佐に賭けて見ようと思います。イーニァの事も……わ、私の事も」

「それなら改めて部下として頑張ってくれるって事かな? 宜しく頼むよ、ビャーチェノワ」(ニコッ)

「……ッ……」

「えっ? ダメ?」

「其処は"クリスカ"で……御願いしますッ」

「へぇあ」

「む、むむむ無理にとは申しませんので!」

「いや、全然良いけど? さっきから言い難いって思ってたし」

「よ……よく言われます」

「ですよねー☆ ともかく いい加減 戻ろう。それと今は俺の上着 羽織ってた方が良いと思うよ?」

「か、感謝します(……イーニァ……私達は彼に付いて行けば幸せになれるのかもしれない)」


……結果 クリスカは初めて出会うタイプと言える、白銀少佐に自分達の運命を託してみようと決めたのだった。

普段は冷静沈着に装っている反面、心に誰よりも熱い感情を秘める若き天才衛士。偶然 自分ダケが知った彼の顔。

そんな彼と共に戦ってゆく結果、クリスカとイーニァは更なる成長を遂げ凄まじい戦果を上げてゆくに至る。

時にはクリスカが白銀と共に複座型に搭乗し、場合によっては彼が僚機を務めイーニァと共にS型を操り戦う。

この柔軟なポジションの変更により戦いを続けてゆく3名は、何時の間にか"ネプチューン"と呼ばれる様になる。

コレを香月副司令から伝えられた時 白銀少佐は盛大にズッコケていたが、その理由は未だに理解 出来なかった。




……




…………




2001年11月25日 早朝


――――白銀少佐の自室。


「白銀さん、白銀さん」

「……ぐ~っ……」

「白銀さん、起きてください」

「う~ん、もう朝か霞~? ……って、ななな何でクリスカとイーニァまで居るんだよ!?」

「ふにゃ……まだ ねむいよぉ? タケルぅ」

「それに霞とイーニァは百歩譲って良いとして、クリスカまで何て格好してんだッ!?」

「あ、あの……コレには深い理由が有りまして……」


その日 白銀は驚愕した。何故かスリップ姿の霞に加えて、下着姿の"紅の姉妹"までベッドに入り込んでいたのだ。

経緯は至って簡単……紅の姉妹に対抗意識を燃やした霞が、先ず早い段階で黒のスリップ姿で彼のベッドに侵入。

続けてイーニァの提案によりクリスカと一緒に白銀の部屋に入って来た2人だが、寝ている霞の姿を見て驚愕。

だが大胆にもイーニァも霞に対抗して下着姿に成ると、同様に白銀のベッドに侵入して添い寝する事に決めた。

一方クリスカは反対したがイーニァを放って置いて退室するワケにもいかず、結局は彼女も同じ選択肢を選んだ。

よって地面には2人が脱ぎ散らかした軍服が転がっており、今は誰が見ても誤解されそうな状況になっている。


「良いから服を着ろって。誰かに見られたら洒落に成らないぞ?」

「す、すすすすみませんッ」

「あっタケル……おはよぉ」

「おはよ。取り合えず離れてね? お兄さん暴走しちゃうから」

「お早う御座います、イーニァさん」

「えへへ。かすみも おはよ~」

「全くイーニァ……上官を名で呼ぶなと何度も……」

「今のオマエが言っても全然 説得力 無いぞ? クリスカ」

「うぐッ」

「やれやれ。今日はA-01との模擬戦だってのに、こんなんで勝てるのかねェ?」(28話 参照)

「だいじょうぶだよ~」

「その通りです。まだ複座型 不知火が未完成とは言え、私達3機が負ける道理は有りません」(キリッ)

「だ~から格好付けて無いでクリスカは早く服を着てくれよッ! 男として我慢してんのが辛いんだって!!」

「か、畏まりましたっ!」

「さいきんの クリスカ……なんだか たのしそう だね」

「はい。クリスカさんからは暖かい感情が流れています」

「いや、君達もノホホンとしてないで早く服着てね?」


何はともあれ"紅の姉妹"が白銀少佐の部下に成って間も無いが、今の状況を見るに旨くいっている様である。

特にクリスカはXM3搭載機の不知火S型によるハイヴの単機攻略を魅せられた事で、白銀に心酔した程だ。

此処 数日で彼が人間的にも信用できる事が確定的に成ったし、命すら預けても良い存在になるのも近いだろう。

故に此処から"紅の姉妹"の新しい戦いが始まってゆく。2人が本当の意味での幸せ……即ち平和を掴み取る為に。


「(横浜基地に来れて本当に良かった……イーニァの為にも、白銀少佐と社の為にも頑張らなければッ)」

「(これからタケルと かすみとも、ずっと いっしょに いられたら いいなぁ)」

「(グフッ、純夏ェ……すまない……どうやら俺は此処までみたいだぜ……)」←性的な意味で


――――だが白銀少佐にとっては言うまでも無く"此処からが本当の地獄だ!"的な危機感を募らせていた。








●戯言●
理由は申しませんが無性に新作を投稿したくなったので、エターならせる予定だった番外編を修正投稿しました。
改めて読み返してみるとマジ滅茶苦茶です。選択肢によってはコレが本編に変わる可能性が有ったんですよね~。
ちなみにエル●イム関連のネタの一部に[1341]氏の書き込みを肖らせて頂きました。感想有難う御座いますッ!


http://www.nicovideo.jp/watch/sm12594998
合計35機と決起軍と帝国軍の戦い並みにMSが落ちるという面白い戦場の絆の(祭り)動画が撮れました。
それと今更ですがブリハマチの霞たん動画を投稿された方 御疲れ様でした。マイリス余裕でしたから!!



[3960] これはひどいオルタネイティヴ(登場人物+用語)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a
Date: 2010/10/10 03:07
これはひどいオルタネイティヴ(登場人物紹介)




マブラヴの設定に基本的に順ずるので必要以上に細かい解説はしませんが、
拙作に置いて主人公の心理描写ダケでは語れ無い事などを此方で解説します。
この登場人物紹介リストに限り、新作投稿の度にチョビチョビ更新させて頂きます。
(2008年09月26日 初版)
(2008年10月02日 御剣 冥夜を追加)
(2008年10月09日 篁 唯依を追加)
(2009年01月30日 鎧衣 美琴&巴 雪乃&戎 美凪を追加)
(2009年04月14日 涼宮 茜を追加)
(2009年05月10日 巌谷 榮二を追加)
(2009年06月01日 煌武院 悠陽&月詠 真耶を追加)
(2009年12月03日 ライト・ラーニング&フレア・フレイドル&ブリザ・スリーブスを追加)
(2010年10月09日 七瀬 凛&伊隅 あきら&イルマ・テスレフを追加)




■横浜基地 司令部■


●白銀 武(本性)●
言わずと知れた主人公で17歳の肉体だが、現代社会の28歳の青年(自称)が憑依している。
そんな主人公は仕事中は部下が相手であっても敬語で喋る&人を苗字で呼ぶクセが有り温厚な性格。
問題のBETAに対しての恐怖は彼の肖りと"白銀本人"のループによる順応で何とかなっており、
白銀のループでの最高階級は大佐。全て実戦のみで成り上がっており、超一流の衛士と言える。
身体的な能力も驚異的で、火事場の馬鹿力を出せば小型種を生身の剣撃で一刀両断する始末である。
だが男性比率が圧倒的に少なく、美女・美少女ばかりの横浜基地の現状には未だに慣れていない様子。
その為、毎晩の様にキャラの誰かをオカズにして"せがれ弄り"を行い欲望に耐える毎日を送る。
現代社会では本人はそれなりにモテるのだが、性格がド天然(重要)なので婚期を何度も逃しているようだ。
またとあるゲームにハマっていて全国レベルの腕を持ち、概要がシミュレーターと似ているので歓喜。
最近は篁中尉達が部下となったので張り切っており、真面目な彼女らに認めて貰おうと必死になっている。
特技は何時の間にか身に付いたポーカーフェイス。そして口癖は「うわっ、びっくりした」である。


●白銀 武(外面)●
3年前のBETA首都圏進行時に"全て"を失った経験が有るらしく執念ダケで軍人となり、
若くして少佐の地位を持つ天才少年。巧みな話術による交渉に優れ、頭脳に置いては随一である。
衛士としての腕もトップクラスであり、彼が仕留めたBETAは旅団規模を越すと言われている。
あえて一人で黙々とシミュレーター訓練を行う様子は他人を全く寄せ付けない雰囲気があったが、
普段は非常に温厚で口調も優しく、階級を後ろ盾にし無い所為か女性ファンが非常に多い。
だが彼の"宿命"を僅かであれ背負う事は恐れ多く、誰も迂闊に声を掛ける事ができないのだが、
かつて無い"少年佐官"と言うジャンルを持っている為、恋愛原子核と言うスキルも相まって、
多くの女性のオナペットにされている。なんと横浜基地の女性数の10分の1。(30歳以下限定計算)
周囲には彼が女性を抱く事には躊躇いは無いが、能率的に必然な場合に限られており、
欲望の為に性交を行う事は無いと勝手に決め付けられている。当然本人は全く気付いていないが。
現在は世界最高レベルの小隊と言える突撃機動部隊の隊長を担っており、周囲の期待を集めている。


●香月 夕呼●
この世に二人と居ない程の頭脳に優れた天才物理博士。武が遠慮なく思った事を相談できる人。
だが彼女も武がループの影響で重い宿命を背負っており、普段のフザけた様子は演技だと思っている。
始めは全く信用さえしていなかったが、徐々に信じても良いかな~とか思って来てたりする。
顔文字に関しては革命的だったらしく御陰で全ての作業効率が飛躍的に高まってゆく事となった。
武にキス☆されてからは少しダケ化粧に力を入れるようになる。ようやく完成ね、でかしたわ白銀!!
00ユニットの完成に伴い武の事をほぼ信用したと言って良く、自覚は無いが結構 惹かれている。


●社 霞●
初対面の武に自分の能力を察せられてしまったが、彼は全くそれを気に掛ける様子が無く、
思い切ってリーディングして見ても同様であった事から、早くも武に懐いてしまった。
しかし武の宿命を考えると甘えるのが躊躇われ、まだ思い切った行動に出れないハズだったが、
此処 最近は彼のベッドに下着姿で紛れ込む等して好意を(彼女なりに)積極的にアピールしている。
ちなみに彼女のリーディングは憑依した主人公には殆ど無意味。彼から強く念じないと伝わらない。
また香月副司令と同じく顔文字に どっぷりハマる。お気に入りは"オワタ"と"ウサギ"さん。
故に仕事も進み白銀少佐を感動させたAAを作成したダケでなく、能力で理論の回収に貢献した上、
不知火・カスタムを設計したりと天才的な頭脳を惜し気もなく披露している。また頭を撫でて下さい。
武には純夏と言う大切な人が居る為 妹ポジで満足してるが"お兄さん"とは恥ずかしくて呼べない。


●イリーナ・ピアティフ●
全キャラでも最も武と早く接触する女性であり、最も早く彼を好きになってしまう人。
エレベータで彼女との暫しの別れを惜しむ武の表情を違う意味で受け取る。(いわゆる一目惚れ?)
その後 彼がPXで部下を見殺しにした事を悔やんでたり、一人で黙々と訓練をこなしている事を知り、
放って置けない気持ちになってゆく中、唐突に武のシミュレーター訓練に誘われて歓喜する。
最近は彼が自分に心を開いていると感じ結構 幸せだったが、もう少し進展したいとも思っていた。
故に篁中尉の登場で嫉妬心が煽られレイプ目を披露した上……対抗するべく朝の訪問を続ける事に。


●セレナ・ウォーケン●
ウォーケンの妹でピアティフよりも年上のロングヘアの美女。それなりに良い年だけど処女らしい。
おっとりとした性格でギャルゲーのヒロインとして出ても食っていけるレベルの容姿をしている。
身長やスタイルはテスレフ少尉と同じ位で、多少面識も有るようだ。ちなみに眉毛は太くない。
テレサ以上の天才で一部の技術はピアティフを上回っていると評判であり、副司令にも評価されている。
親友のピアティフの事を応援しているが、旨くゆけばお零れを貰っちゃおうかな~とか思ってたり。
ちなみに部屋は妹と同室である。最初から個室を持っているB分隊が異常なんです、きっとだけど。
以前は生真面目で完璧とも言える人間だったが、白銀少佐に恋した結果 何故か露出癖が出た。
妹のテレサは彼女に対しては頭が上がらず、口でしか逆らえない。アルフレッド兄さんも同様らしい。
現在は妹と並んで"突撃機動部隊"のオペレーターを担っている。互いにモチベーションは十分だ。


●テレサ・ウォーケン●
ピアティフと同い年のセミロングヘアの美人。眉毛はやっぱり太くない。(いい加減にしろ)
幼い頃から天才といわれる頭脳を持つ才女だが、能天気な上に極度のドMと言う変態。
また自分の恵まれた才能を全く凄いと思っていないが、出来ない人間を卑下する事はしない。
セレナと同様ヴォールク・データを頑張る武にアッサリ惚れてしまうが告白は出来ず、
遠くで彼を見ているダケで幸せであった。彼女のオナペット?武に決まってますってば。
武がA-01と模擬戦を行った時は、姉にジャンケンで負けてオペレーターができず涙目。
しかし、その御陰で武にとって姉よりも彼女の方が印象に残ったと言うのだから皮肉なものだ。
今や白銀少佐には何時襲われても良いが、今は普通に会話が弾んでいるので満足している。
アルフレッドに対しては軽い弱みを握ってたり、泣き落としをしたりと遣りたい放題である。




■横浜基地 突撃機動部隊■


●鑑 純夏●
執筆中


●神宮司 まりも●
衛士としての腕は武を100とすれば75ぐらいは有る凄腕。武を心から尊敬している。
異性としても意識しているが、下仕官な上に彼より結構年上だと思っているので一歩引いている。
代わりにB分隊を頑張って指導したり、みちるに武に叩き込まれた事を教える等して、
彼の期待に応えるべく尽くしている様子。……余談だが特に描写が無い日であっても、
武が暇な時は一時間であれ二時間であれ訓練に一対一で付き合ってあげているって事にしてください。
初めて白銀少佐を想って自家発電した翌日は自己嫌悪。んで篁中尉が羨ましくてたまらなかったが、
突撃機動部隊への編入を済ませた今、彼女の"やる気"は元207B分隊を超えている様子。
現在は謙虚にも中尉として配属された為、唯依の補佐に当たるポジションを担っている。


●七瀬 凛●
近々任官予定の帝国軍衛士だったが、トライアルにて元々定評の有った実力を白銀少佐に買われ、
本人の強い希望も有り"突撃機動部隊"に配属となる。衛士として適正はトップクラスだったらしいが、
協調性が無い上に死に場所を求めている様な印象が強く仲間と呼べる人間が一人も居なかった。
それも大好きだった兄が戦死した事が最大の原因であり、当時のBETAに対する憎悪は凄まじく、
少しでも多くのBETAを殺すに殺して自分も兄の場所へ逝こう……と考えていたからである。
されどトライアルで敗北した上にBETAの強襲によって自信を喪失し欠けてしまったが、
白銀少佐に助けて貰った事により、以前の温厚な性格を取り戻し彼を兄の様に慕う事となる。
ちなみに彼女は五摂家にも多少の縁が有る名家の生まれだが、ケジメは全てを終えてから取る様だ。


●伊隅 あきら●
伊隅四姉妹の末娘。帝国陸軍第133連隊クラッカー小隊に所属される予定の衛士であったが、
実力を評価され国連軍のトライアルに参加した際、何時の間にか横浜基地に配属されてしまう。
だが突撃機動部隊にてXM3を始め驚異的な戦果を望める可能性を知った時、考えは一転する。
自分の運命に感謝し、友達となった七瀬を始めとする仲間達と出来る限り頑張る事を誓ったのだ。
だが次女と再会した時に恥ずかしい一面を見せる事が有ったが、それでも彼女は嬉しそうだった。


●イルマ・テスレフ●
元米軍対日派遣部隊の衛士でフィンランド人。実力を評価されウォーケン少佐の補佐を担っていた。
されどクーデターに置いては、家族の待遇を人質に米国の工作員としての顔も合わせ持っており、
殿下(冥夜)の説得を受ける沙霧機に発砲するも、武機が体を張っての行動により失敗に終わった。
結果 速瀬機に拘束され生きる事を諦め掛けていたが、武に勧誘され衛士としての命を取り戻す。
家族も香月副司令の鶴の一声により横浜基地周辺に保護されている為、もはや米軍に未練は無し。
今は人類の反撃に最も近いと思われる"突撃機動部隊"への配属に満足していて、やる気は十分だ。
だが武達の仲の良さに意外性と面白味を感じており、普段はニコやかな表情で仲間達を眺めている。


●ライト・ラーニング●
元米軍娘の一人目。見た目は金髪ポニテ&青目の美人。身長は伊隅と同じ位で胸は中の上。
見た目に反し極めて真面目な熱血漢で心無い人にはカマトト振っていると捉えられる事も有る程。
しかし本人は全く気にして居ない。ちなみに欧州出身な為3人娘の中ではリーダー的な存在。
米軍衛士にしては珍しく突撃前衛を担当している。よって速瀬中尉とは気が合うかもしれない。
ちなみにライト・フレア・ブリザの3名は皆が小心者。されど公では持ち前の性分(熱血)により、
非常に凛々しい衛士に見える為、一流の衛士だと勘違いされている。されど根本は優秀です。


●フレア・フレイドル●
元米軍娘の二人目。見た目は赤髪のショートでやや褐色肌。身長は彩峰と同じ位で胸は普通。
南米よりBETAとの戦いを求め米国に入軍した努力家で、頭脳も人並み(白銀)以上に有る。
ちなみに3人とも日本語を多彩に操るので、最早 人並みドコロでは無いのはさて置いて。
見た目 通り典型的な熱血漢であるが、任務には忠実。だが流石に前の件は我慢ならなかった。


●ブリザ・スリーブス●
容姿は青髪ショートで綾○レイの様な癖毛が有る。体格は茜程でカナダ出身の珍しい衛士。
過去に衛士としてユーラシアで戦死した兄の意思を継ぐ為、弱い体ながら努力の末 今に至る。
見た目通り普段は無表情で冷静そうに見えるが、BETAに対する思いは熱く直ぐ破顔する。
……と言うか彼女は公の場や戦術機に乗ったりすると性格が変わります。(魔装機神のエリスみたいに)
彼女達の年齢は皆テスレフ少尉と同じだが、身長が低いので本人は若干ソレを気にしていた。
しかし横浜基地に来た事で居心地が良くなったらしい。珠瀬を見ると抱き付きたくなる程に。




■特殊任務部隊A-01■


●伊隅 みちる●
執筆中


●速瀬 水月●
非常に死亡率の高い突撃前衛として何度も出撃し、全て無事に生還した経緯を持つので、
自分の実力に自信を持っていたが、武の不知火S型に秒殺され以後 彼をライバル視する様になる。
しかしヴォールク・データでの戦果を見せ付けられ、その後の実戦で我を忘れて危機に陥ってしまうが、
助けに現れた武に救われ何とか生還するモノの、自分を責める意味合いで祝勝会でヤケ酒。
その勢いで武に抱かれてしまったと思い込み、やる事が無い時は常に彼の事を考える毎日を送る。
今となっては武と再びシミュレーター対戦をする事など、ど~でも良くなっている様子。
典型的なツンデレであり、ようやく白銀少佐に惚れている事に気が付いた今は果たしてどう動くのか。
そんな彼女ではあるが……勘の鋭さは鎧衣を凌ぎ、白銀少佐とも渡り合える腕前を持っている。


●涼宮 遙●
水月が武をライバル視した結果 出過ぎた事を心配し、武の女性に関する噂を真に受け、
彼女を抱いて貰う事で同時に心の蟠りを取り払って貰おうと親友の暴飲を止めなかった策士。
しかしソレを武に全て見破られていた事に驚き、彼とは目を合わせられない程意識する事となる。
最近は少し水月が羨ましいかな~と考えて思い止まる事が何度か有り、認めたら負けだなと考えていた。
故にもう意識しない様にする為にも、水月に武と接近するよう煽る事で誤魔化そうとしていたが、
彼に膝枕をした事により母性本能を刺激されてしまい、全ヒロイン初の自家発電を行ってしまった。
ちなみに彼女は自分の脚にコンプレックスを抱いており、戦地に赴く仲間達との距離を感じていて、
いくら戦域管制として務めようと距離感が縮まる事は無いと思っていた。しかし模擬戦の敗北後、
上官の白銀少佐に"よくやったよ"と真っ先に褒められ、それは彼女にとってこの上ない喜びなのであった。
クーデターに置いては彼に救って貰ったと言う印象が強く、機会が有れば彼の役に立ちたい心境だ。


●宗像 美冴●
執筆中


●風間 祷子●
執筆中


●一条 優理子●
オリキャラその1、強襲前衛。一人称は私。身長は高くCカップ。19歳だが黒い長髪の美人。
優しい性格をしているが切れ長の目が少し怖く見えてしまい、それは本人も気にしている様子。
お嬢様キャラとは言え戦場では非常に冷静沈着であり、小隊長に向いた高い適性を持っていたのだが、
前衛が不足しているA-01において、自らポジションをシフトした経緯が有る実直な衛士。
ちなみに趣味は絵を描く事。休暇の時は一人で外に出て良い景色を見つけてはスケッチしている。


●神村 亜衣●
オリキャラその2、強襲前衛。一人称は私でBカップ。一条と同期で黒髪のショートヘア。
部隊のムードメーカーであり、どんな時にでも明るく無駄に悩みを抱え込まないタイプ。
速瀬と並べば若干 見劣りするが、始めから前衛として訓練されている彼女の能力は優秀である。
オリキャラ3人組の中では最も白銀に好意を持っている。21話で真っ先に抱き付いたのも彼女。


●葛城 綾乃●
オリキャラその3、打撃支援。一人称はアタシ。同じく一条と同期で茶髪のポニーテール。
宗像と同様 人をからかうクセが有り勝気な性格をしているが、心の芯は意外とナイーブだったり。
故に初の実戦で二人の同期が死んだ時は暫く立ち直れなかった過去を持つが、衛士としての腕は一流。
なかなかの巨乳(Dカップ)なのだが、本人は邪魔としか思っていない。ちなみに巨乳第3位。


●涼宮 茜●
言うまでも無く遙の妹であり、水月に憧れている少女。元207A分隊の分隊長を務めていた。
任官して間もない段階でありながら、協調性・機動・指揮・射撃・判断力・知識などなど、
全てに置いて優れている衛士だが、それを鼻に掛ける事は無いので仲間に非常に信頼されている。
それがB分隊に先駆けての総戦技評価演習の合格へと繋がったのは間違い無いだろう。
しかしソレらが実戦での生還に繋がるワケでは無く、最も重要なのはBETAを恐れぬ精神力。
つまり心の弱さは茜の欠点の一つでも有り、数が数だったので当初は非常に不安であったが、
同時出撃した白銀少佐&篁中尉の御陰で全員が生還。この上ない自信となり今後へと繋がってゆく。
また姉と水月の自分が好意を抱く白銀少佐への気持ちを知るが、彼への興味は全く潰えていない。


●柏木 晴子●
執筆中


●築地 多恵●
茜ちゃん大好きッ娘。正直 戦いに向いた性格をしていないが、何度も茜に励まされた結果今が有り、
彼女の御陰で今後の実戦で戦える程の志と、茜に負けない程の衛士としての腕を身に付けている。
その強襲掃討としての腕は茜に全体的に劣るが、機動・回避のみに限って若干 秀でているようだ。
武に対して茜が好意を抱いている事には既に気付いており、茜が彼を好きなら自分も武の事が好き。
最初はそんな単純な理由であったが、彼女も驚異的な実力を持つ武に次第に惹かれ始めている。
ちなみに驚いたら動物みたいな悲鳴を上げる事が多く、テンパると謎めいたナマリを出すクセがある。
そして、ぶっちぎりの巨乳第1位。茜と並ぶと彼女の3倍~4倍はおっぱいの質量が多く圧巻である。
21話で白銀がブっ倒れた時は実は危険であり、彼女のおっぱいが世界を救ったのであります。
正史では2度目の実戦で戦死しているのでクーデターが山場となっていたが、良くやったぞロリ巨乳。


●麻倉 遼子●
執筆中


●高原 水鳥●
執筆中




■横浜基地 快速反応部隊■


●榊 千鶴●
執筆中


●御剣 冥夜●
不憫な境遇に生まれながらも自分の武人としての志に誇りを持っていたのだが、若くして少佐であり、
過去に計り知れぬ程の深い"心の傷"を負っている武に、自分の甘い志を豪語してしまった事を悔やむ。
その為 罪悪感で眠れない夜を過ごしたが、武は全く気にしてない様子で逆に自分を元気付けてくれた事から、
彼の優しさに応える為、更に励む心意気である。出来れば武にまた抱き締められたく、頭を撫でて貰いたい。
長刀の扱いに置いては天性と言えるが、近距離射撃の適正は彩峰に劣っている。今は白銀少佐が目標。
もはや彼には頭が上がらず、原作の様に互いに親しく名前で呼び合う日は来るのであろうか?
クーデター終了後は自分を庇ってくれた白銀少佐の事ばかり考えており、ようやく彼と接触するが……


●彩峰 慧●
白銀語を最も多用している不思議少女+巨乳第2位。武の斬新な性格をエラく気に入ったようだ。
ソレがどれくらいかと言うと、彼の為にも千鶴との和解を決意させてしまう程である。
革命的な食事である"やきそばパン"に釣られた事もあり、武を自分の理想とする上官だと考えている。
協調性の無さは解消されているので穴の無い能力だが、長刀の扱いは冥夜と比べると劣っている。
5人組の中では唯一白銀にタメ口を利く上に、隙が有れば彼女なりに甘えたりして彼を焦らせており、
クーデターに置いては白銀少佐の事を全面的に信頼した結果、いずれ彼の部隊に入る野望を抱いている。


●珠瀬 壬姫●
武が相当好みな男性だったようで、初対面の時に見つめられて失神すると言う経験を持つ。
白銀少佐は自分の頭を撫でて欲しい男性No1。ちなみにNo2は当然タマパパなのです。
現在はジャンプスナイプ(JS)を必死に特訓中。手紙の嘘は既に解消しているので大丈夫。
狙撃の腕は武を遥かに凌ぐが、彼と一対一だったり密着する時に限り本来の力を出せない。


●鎧衣 美琴●
本人の自覚は無いが、207B分隊のムードメイカー。空気が読めない事に定評が有る。
しかし勘が非常に鋭い上に、咄嗟な状況による判断の選び方においては右に出る者は皆無。
総戦技評価演習においては彼女の存在無しでは、満点による合格は到底 有り得なかった。
さておき。勘の鋭さにおいても本人は自覚していないので、無駄に勘繰り他人を傷つける事はない。
最近は父親と再会できた事により武と少しダケ進展できた為、鼻歌を唄う様子が目撃された。




■帝国本土防衛軍■


●煌武院 悠陽●
日本帝国 国務全権代行である政威大将軍 殿下。日本の未来を真面目に考えている純粋で誠実な人。
しかし僅かながら天然属性が入っており、ゆっくりたけるを白銀と本気で重ねたりして彼の度肝を抜かす。
双子の妹で有る冥夜の事は何時も気に掛けていると同時に、実は友達が欲しいと言う年相応の悩みを持つ。
そんな中、クーデター発生と難儀な目に遭う際……鎧衣課長に(名を伏せた)武の事を聞き興味が湧くが、
早くも彼に出会えた事で留めていた"天然"さが表れてしまった様だ。でも普段は真面目な人なんです。
12月14日の武の帝都訪問に置いては、初めて友達(しかも異性)が出来た事により凄く嬉しかったとか。


●篁 唯依●
特殊任務より一時 帰国したモノの、何故か彼女は非常に不機嫌で他人を近付けない雰囲気を保っていた。
そんな帰国から一週間にも満たない時、巌谷中佐が香月副司令のメッセージを受けている場面に立ち会うが、
アラスカでの努力を彼女に全否定された様な事を煽られ、トドメとして食らった武の"台詞"に怒りを覚えた。
巌谷中佐は彼女の気分転換になればと横浜への"お忍び"を誘うが、唯依の"不安定さ"は予想以上であり……?
ちなみにアラスカでユウヤがクリスカ&イーニァと仲良くしているのを見て自分が失恋したと思い込み今に至る。
実際の所 勘違いで何も進展はしておらず、今でもユーコン基地ではS型等には及ばぬ戦術機開発が進んでいる。
余談だがオリジナル設定?として結構ファザコン気味。娘側だけに限ったハナシじゃ無いんですけどね。
現在は白銀少佐の部下となるが"とある場面"を目撃した事によって、彼の細かい言動にも注意を払う事となり、
そうしてゆくうちに彼女は白銀少佐を気遣うあまり、御剣 訓練兵を殴り飛ばすと言う暴挙に出てしまう。
よってメインキャラとしては登場が最も遅い位置付けだが、全キャラの中で最も白銀を好きなのは彼女である。
此処最近は専ら穏やかな表情で白銀少佐の傍を追う姿が確認されている。即ち良く笑う様に成ったと言う事だ。


●巌谷 榮二●
帝国軍技術廠・第壱開発局副部長を務めている帝国陸軍中佐。イカつい顔だが笑顔が似合うオジサマ。
伝説の開発衛士(テストパイロット)と言う肩書きを持っており、言わずともながら唯依の義理の父親。
娘を溺愛している為、彼女の幸せを強く望んでいるが……自分の手の届く距離に置き可愛がるよりは、
モノ影で進展を見守る様なタイプであり、今の白銀少佐と篁中尉の関係がまさにソレと言えよう。
当然BETAに対する意気込みは人数倍高く途轍もない技量を持つ白銀少佐を強く買っている。
何故か最近 居心地が良さそうに横浜基地内の通路を歩く姿が目撃されており、真相は不明である。
だが彼の御陰で千鶴の父が助かった事は明らかで、コレは途中まで諦めていた白銀の嬉しい誤算であった。


●鎧衣 左近●
執筆中


●紅蓮 醍三郎●
執筆中


●月詠 真那●
執筆中


●月詠 真耶●
冷徹では有るが忠義に厚い帝国斯衛軍の中尉。従姉妹である月詠"真那"との関係は現在は不明。
元々は悠陽の側近だったが、彼女の日本離脱時の撤退戦に出撃した事で配置転換となっていた。
しかし再び元の鞘に戻ろうとするも、色々と問題が有って復帰の目処は立っていなかったが、
クーデターを機に悠陽の推薦も有って彼女が護衛に抜擢された。……勿論 正史では同行していない。
だがBETAの2度目の襲撃が4日前と言う事で最悪の事態を考え、彼女が護衛に付いたのである。
ちなみに武への第一印象は、ああ見えてソコソコ良かった。最初から跪いていた事を評価したのだろう。
また鎧衣課長を強く買っているので、彼もが認める白銀少佐に今回は掛けてみようと思った様子。


●神代 巽●
オルガ。斯衛トリオのリーダー的存在で、色黒で男勝りな少女。主にリスクの高い前衛役を担っている。
始めは武に対する敵意が月詠に続いて強かったのだが、彼の不知火S型に敗北すると同時に、
肖ったキャラの威圧感を真に受けて恐怖してしまう。その感情は彼女にとって初めてのモノであり、
柄にも無く本気で落ち込んでいたが、武の優しさ(勘違い)に気付いて自信を取り戻すに至る。
月詠を含む斯衛4人組の中ではフォールディング・バズーカの扱いに最も秀でているようだ。
斯衛トリオの中では突出して白銀少佐に好意を抱いている。ちなみに盆栽弄りが趣味で熟練度も高い。


●巴 雪乃●
クロト。斯衛トリオの2人目であり一番 真面目。(パイロットの台詞を肖った後、自己嫌悪する程)
3人の中では近距離射撃の腕が最も高く、今の段階では当然 彩峰や榊以上の能力を持っている。
ちなみに冥夜・壬姫に続いて奇特な髪形な娘の一人。よって機会が有れば触れたいと武は考えてたり。


●戎 美凪●
シャニ。斯衛トリオの3人目であり戦術機の扱いに置いては、中距離射撃・狙撃が最も得意らしい。
神代・巴と同じ年齢にしては肉体が発育しているので、武にとって最も将来が楽しみな娘だったり。
そんな彼女の趣味は写真撮影。何時も持ち歩いており何処から取り出すのかは一条と並んで謎である。
原作では「~ですわ」とか「~ですの」の口調では無かったと思うが、只単にその方が作者が書き易い為。


●沙霧 尚哉●
執筆中
















これはひどいオルタネイティヴ(用語)




(2009年01月30日 初版)
(2009年04月14日 不知火・カスタムを追加)
(2009年05月17日 不知火SⅡ型を追加)
(2010年10月09日 部隊名の説明&武御雷(黒)F型&ハンド・グレネイドを追加)




●オリジナル動作
衛士が"コックピット・システム"に攻撃・回避等の動作を新しく組む事により、
自分が搭乗する戦術機に"自分だけの動作"を取らせる事を言う。
主に前衛を担う斯衛軍の熟練衛士などは"生身"で体得した剣術を戦術機にも活かそうと、
大きな手間を掛けて"オリジナル動作"を組む事が多いらしく、御剣 訓練兵も行っていた。
正直な話ですが、ロボットアニメ(特に1stガンダムとか)を見ていると、
このようなシステムを使わないと到底 操縦桿を操るダケでは動かせそうも無いので。


●快速反応部隊
榊 千鶴少尉を隊長機に5機の黒い武御雷で編成された国連軍の特殊部隊。
元ネタはフロントミッションサードであり、大漢中(中国)の華蓮団の部隊名。


●強襲制圧
バズーカ仕様専用のポジション(その1)。
武装はフォールディング・バズーカ(弾数4発)
87式突撃砲×2(36ミリ/120ミリ・予備弾倉8/4)
そして65式近接戦闘短刀×2のみとなる。
レーザー照射を回避する等 非常に高いスキルが求められる為、
現在 白銀少佐専用のポジションとも言える。別名アサルト・ブラスト。


●胸部マルチ・ランチャー
戦術機の左胸に装備する武装。
無動作で小型のグレネードを発射できる。
弾速は遅いが広範囲に爆発し威力は中程度。
速瀬中尉のように直撃してしまうと大ダメージ。
陸戦型ガンダムの武装で非常に有名。


●サブ射撃システム
サブ射撃のマニュアル操作には相当な技量が必要であり、
戦術機が様々な硬直で両手による攻撃が不可能な場合、
オートでサブ射撃が発射できる状況に切り替わるシステム。
当然自動でオートに切り替わる以外の場面でもサブ射撃の使用は可能。
マニュアル操作が可能な衛士はこのシステムは最初からカットしている。


●不知火・カスタム
右手にナックル(打手)を握らせ右前腕にパイルバンカー(打針)を装着し、
左腕をガドリング・ガンを内装させたパーツに丸ごと変更した不知火。
背中にはシールドを背負っており、74式可動兵装担架システム等を根こそぎ外している。
パイルバンカーの扱いは非常に難しく、殴り掛かりナックルが命中する直前に、
トリガーを引く事で射出され……その威力は絶大な為に厚い装甲を貫通する。
故に白兵能力が突出しているが、近距離射撃においてもガドリング・ガンがある為に強力。
しかし遠距離射撃が一切できない為、光線級との相性は非常に悪い。


●不知火・カスタム(S型)
不知火・カスタムにサブ射撃が加わったタイプ。接近戦では死角が無く非常に強力だが、
やはり遠距離攻撃が可能な武器を持たないので、光線級は同様にも苦手である。
しかし乗りこなす事ができれば突撃前衛を凌駕する戦果を期待できるだろう。


●不知火S型
頭部バルカン砲と胸部マルチ・ランチャーを追加した不知火。
機動性は不知火より5%低下しているモノの、
前者の武装を両手を使わずに、ほぼ反動無しで使用できる。
初見で相手をする衛士にとってはまさに外道の性能。
S型とは白銀のイニシャルで、ガンダムでは指揮官用の意味。
非常に凡庸性が高い為、A-01や突撃機動部隊の主力機となっている。


●不知火SⅡ型
TEの不知火・弐型にサブ射撃が加わったタイプ。
機動性は武御雷に迫り、燃費が非常に良いので長期戦にも耐えられる。
しかし装甲は武御雷と比べると、往来の不知火と同様に薄いので被弾は許されない。
またコストも高いので、確実に戦果を出せる衛士の搭乗が求められる機体だ。
現在は白銀少佐の専用機(デモンストレーター・カラー)が1機のみ存在している。


●制圧後衛
バズーカ仕様専用のポジション(その2)。
ハイヴ攻略専用であり、制圧支援が必然的にシフトする。
武装は砲撃支援に酷似しており、フォールディング・バズーカ(弾数4発)
87式支援突撃砲×1(36ミリ・予備弾倉6)
そして65式近接戦闘短刀×2のみとなる。
現段階でこのポジションが決定しているのは、風間・高原・鎧衣。
次点で神宮司軍曹と神代少尉かな? 別名ブラスト・リアガード。


●武御雷(黒)F型
帝国軍の高性能 戦術機・武御雷を頭部バルカン砲 仕様に改造した機体。
そのウチ隊長機で有る榊機には分かり易いようにブレード・アンテナが付いている。
また国連軍機と判別し易い為、各機にはブルーのラインが入っており、
更に肩には"快速"と言う2文字が(白銀28の趣味により)書き込まれている。


●頭部バルカン砲
戦術機の額の左右に装備する武装。
射程は短いが無動作で低威力のバルカンを発射できる。
ガンダムシリーズの代名詞の武器。
何故か戦場の絆では食らえば簡単にダウンしてしまう。


●突撃機動部隊
白銀少佐が隊長を務める近日誕生した横浜基地の精鋭部隊。
何時の間にか噂に尾鰭が付いて世界最強の部隊と言われている。
武にとっては勿論の事、所属して間も無い凛やあきらには良い迷惑である。
元ネタは機動戦士ガンダム。ジオン公国軍のマ・クベの部隊です。


●ハンド・グレネイド
転がすタイプの手榴弾で、BETAに反応して中規模の爆発を起こす。
正式な実戦配備が決定していない不知火・カスタム専用の武装である。


●フォールディング・バズーカ
折り畳んで背負うバズーカ。被爆を考え爆風を抑え威力に特化している。
意味はタンパク質が特定の3次元構造に折り畳まれる現象を言う。
弾数が4発だが反応炉を破壊できる威力を持つ。(弾数はスパロボFを参照)
ハイヴ内であれば迫り来るBETAの壁を崩したり、
地上戦で誘導により集めた敵を一層する(要空中)等 様々な局面で使える。
反面 長刀と突撃砲が計2個しか持てず状況の見極めも必要なので、
ほぼエースパイロット専用の武器となる。現在 香月博士が頑張って開発中。
元ネタはGP-03ステイメンの同名称の武器だが、
原作と違って片手では無く両手で持つのでオリジナルより大きい。


●吹雪F型
頭部バルカン砲を追加した吹雪。機動性の低下は殆ど無し。
乗っている衛士は未熟でもサブ射撃システムの存在により、
硬直が発生しようと無動作で反撃してくるので侮れない。
F型とは後期生産型と言う意味で、元ネタはザクFⅡ。
207B分隊専用の機体が5機存在していたが、現在は乗り手が居ない。


●01式 支援狙撃砲
白銀少佐が珠瀬訓練兵への指導中に考えついた狙撃専用の単発ライフル。
87式支援突撃砲を改良したワケでは無く、新しい武器として誕生した。
完成の暁には、砲撃支援が持つ長刀をこの武器に変更する予定。
構造は暁せんべい氏の不知火SⅡ型のイラストを参考にして下さい。


●01式 打針
白銀少佐が彩峰訓練兵への指導中に考えたついたパイルバンカー。
威力を最大限に活かすには、十分な助走とタイミングが重要である。


●01式 打手
白銀少佐が彩峰訓練兵への指導中に考えたついたナックル。
元ネタはフロントミッションの物を想像してください。


●36mmガドリング・ガン
白銀少佐が考えついたナックルと相性が良いと思われる兵器。
元ネタはガンダムNT-1のアレであり、原作の90mmとは違い36mmである。
不知火・カスタムの左腕に"装着"されているので、構図はアレックスのと違います。
参考→http://www002.upp.so-net.ne.jp/shinjigate/itadakimono-cg-siranui-c.htm


●01式 拡散突撃砲
白銀少佐が御剣訓練兵への指導中に考えついたショットガン。
87式突撃砲のチェーンガンの部分を改良する予定らしい。
すみません、チェーンマインじゃないんです。


●92式 肩部多目的追加装甲
白銀少佐が鎧衣訓練兵への指導中に考えついた肩部シールド。
砲撃支援・新式仕様との相性が良さそうである。


●92式 多目的追加装甲・改
その名の通りディフォルトの戦術機用の盾を、
香月副司令がハイヴ攻略専用に改造したモノ。
コストが若干上がっているが、強度が飛躍的に上がっている。
……とは言え、光線級のレーザー照射には流石に耐えられない。
BETAの直接攻撃には多少は有効なのだが基本的に使わず、
バズーカの爆風から味方を守ると言う、重要な役割を担う盾である。



[3960] これはひどいオルタネイティヴⅡ(原案)
Name: Shinji◆d038b4be ID:4c5b1f7d
Date: 2022/03/24 21:32
これはひどいオルタネイティヴⅡ 原案




とても御無沙汰しております、最新話の投稿では無くて申し訳ない。

今後、RPGツクールで作成しようと思っているフリーゲームの原案です。








【あらすじ】


マブラヴ・オルタネイティヴの世界の白銀武に憑依してしまった主人公(28)だったが、肖りとか原作知識とかで彼なりに色々と頑張った結果、無事に純夏と結ばれる事ができ、原作のキャラ達を誰一人死なせる事なく『桜花作戦』を成功させるに至った。

多くの女性キャラのフラグを建てていたので、めっちゃ名残惜しいがコレで元の世界に帰れると思いきや、あら不思議、白銀武の肉体は消える事無くオルタの世界に留まっていた。

原作でも有ったっぽい光に包まれていた時、幻覚かもしれないが、現実世界で自分の姿で年始に自宅でゴロゴロしている様子が見えた気がしたので、それなら元の世界の家族を心配させていないと確信した彼は、改めてオルタ世界で生きてゆく事を誓った。

それに対して、泣くのを我慢していた純夏と霞が大喜びしたのは言うまでもない。




その後、主人公は自分にケジメを付ける為に、神宮司まりも・篁唯依を始めとした、共に戦った仲間達に、自分の秘密を暴露した。

自分は18歳の白銀武ではなく、本来の精神は28歳の別の人格であり、しかも死ぬ度にループしまくっていて、自分でも良く分からない存在になっている事を明かしたのだ。

正確には『因果律量子論』が関わっているのはさて置き、本来死人だったにも関わらず『BETAに捕まっていたが奇跡的に逃げ延びた』等と彼女達を騙していた事には変わりなかったが、全員のヒロインたちが主人公の境遇に同情してくれ、かつ諦めずに人類の勝利に貢献してくれたのを心より感謝してくれた。

唯依や冥夜の様な実長な人間は更に惚れ直し、まりもに至っては、実は年齢が近かった事で、年上を気にして距離を置こうとしていた事を思い直させるにも至った。

ついでに参戦直後に大活躍した純夏も便乗して、自分が人間ではない事をカミングアウトしたが、『量子電導脳』と言われてもパッとしないし、各々の評価は良い意味で変わらなかった。

(本作の純夏は00ユニットではなく、凄乃皇を操縦できるエースパイロットしてA-01に配属されていた)

こうして、改めて人類の戦いが続いてゆくと思われたが……




————桜花作戦の成功を機に、アメリカが大きく動いた。

オルタネイティヴ計画の失敗を想定していた米国は、宇宙への離脱の準備を既に開始していたが、その莫大な資産を戦術機関連のマーケティング買収へと移したのだ。

全てはBETAを駆逐した後、世界の主導権を握る為の先行投資である。

そんな米国の本気に勝てる筈もなく、XM3やヴォールク・データの戦闘記録を始め、白銀武が提案した『頭部バルカン砲』や『フォールディング・バズーカ』等の数多くの版権を買収されてしまい、それは国連軍と技術開発で連携していた『帝国軍技術廠』とて例外では無かった。

主人公の視点では、生き残るのに必死過ぎて予算の詳細など知る由もなかったが、実はとんでもなく切羽詰まっていた様で、改めて言われてみれば当然である。

高性能な戦術機が次々と配備されたのも、主人公の部隊が突出して優秀だったからに過ぎず、特に凄乃皇に至っては値段では表せないレベルの負債となっていた。




……かと言って、主人公は仲間達とBETAと戦い続ける事にした為、既存の技術のシェアは握られてしまったモノの、アメリカと同じ国連軍に所属しているので影響は少ないと思っていた。

米国の戦術機部隊が買収した技術を活かし、数の暴力で大陸を蹂躙してゆくスタイルに変わった事で、どっかのニュータイプよろしく、主人公達には窓際部署に追いやられるが如く横浜基地配属の継続が決定されていたが、純夏の近くに居られる為、むしろ主人公にとっては好都合だった。

(本作では横浜ハイヴが停止していないので、ODL浄化が可能で純夏が生き残っている)

別に高性能機を取り上げられた訳でも無いし、たま~に温い戦場に派遣されつつ、純夏が生きてゆく為に必要な72時間毎のODLの浄化さえ行ってくれれば、彼にとっては十二分。

唯依や水月など不満を口にする仲間は当然居たが、新たな兵器の開発等、BETAと直接戦う以外にも遣りようは幾らでも有るのだ。




————しかし、米国は『鑑 純夏』(00ユニット)の身柄をも買収しようとした。

脅威的な破壊力と防御力を持つ凄乃皇型を活かせば、数万ものBETAを容易に蹂躙できるので、米国の世界の主導権獲得に一気に近付くのだが、00ユニットの存在なしには不可能。

逆に言えば、00ユニットが無ければ凄乃皇はデカいだけの役立たずなのである。

(凄乃皇は桜花作戦でロストしているので、活かすには新たに生産する必要が有る)

対して、権限を持つ『香月 夕呼』と純夏本人は幾ら金を積まれても断固として拒否。

夕呼は『勝手を知らない者が使えば直ぐに機能停止するので、想定以上に苦戦した際の切り札として使うべきだ』と訴え、純夏も理不尽な戦闘や事故が原因で、折角巡り合えた武や仲間達と永遠に別れてしまうのは避けたかった。

だが強固な姿勢を崩さない米国に対し、呆れた夕呼は国連軍に辞表を叩き付けて現在の地位を捨てた。

シェアの(強制)売却で莫大な利益を得ていた夕呼には、手元の資産を全て費やせば純夏を渡さない事が出来たのだ。

無論、00ユニットとしての純夏にも値段で表せない価値が有るが、重要なのは本人に従う意志が有るかであるし、夕呼にとっては初めから買収に抗える計算だったらしい。

純夏がその気に成れば国連軍のシステムを無茶苦茶にする事も可能なので、米国の強行姿勢は初めから脅しに過ぎず、彼女達が認めない限りは素直に諦めるしかなかったのだ。




それらによって、夕呼は国連軍を去る事となったが、主人公の選択肢も一つしかない。

同じく辞表を提出して国連軍を去り、『以前の冥夜の立場』みたく横浜基地に人質とも撮れる状態で暮らす事となった純夏を、本当の意味で取り戻す戦いを始める事にした。

国連軍の力を借りる事無く『何処かのハイヴ』を占領する事によって、純夏のODLの浄化を可能にするのが最終的な目標だ。

一方、2人の突然の離脱に周囲は困惑したが、仲間達は事情を知ると野暮・水臭いと漏らしつつ次々と国連軍を除隊。

人によっては、ある程度の準備と言う物が必要となるが、続々と合流してくれる事だろう。

米国の行いに反感を持っていた帝国軍の後ろ盾も、『煌武院 悠陽』の名を元に容易に得る事ができ、チート人間とも言える夕呼と武の快進撃が始まると思われたが……




ゼロから独立部隊を創り上げると言うのは、想像以上に難しいモノだった。

基本的に収入は、戦術機の運用による、企業などから依頼された場所のクリアリングに加え、BETAを撃破した際の死骸から発生した資源を売却する事によって発生するが、その為にはユーラシア大陸の場所を転々としなければならず、その為の手間は語るまでもない。

主人公は最初は某5121小隊っぽいとワクワクしていたが、移動やプレハブ建設に必要な人手や労力を目の当たりにして猛省する羽目となる。

(余裕ができた最近になって、死骸の活かせる箇所を特定した為、相場が決定した設定とする)

稼ぎ頭の戦術機にしても、最初に運用できるのは帝国軍が譲ってくれた撃震がたったの2機のみ。

しかも、XM3や頭部バルカン砲などは買収されてしまったので、帝国軍に所属している以上は購入しなければ使用できず、新たな技術を開発しようにも資金が圧倒的に不足していた。

純夏のODLの浄化の費用も発生するが、それは夕呼が内職で得た報酬によって賄われており、悠陽や巌谷中佐も『もしもの時は資金を提供する』と公言してくれてはいるが、既に様々な支援を受けているので、そこまで甘える訳にはいかないと言うのが総意だ。

所謂、完全にゼロからのスタートとなるが、主人公としてはRPGの冒頭と思えば割と希望の有るスタートと言え、やはりヒロイン達を良い意味で勘違いさせるのだった。








【システム】


簡単に述べると、各地を転戦してBETAを倒しまくって資金を稼いでゆき、戦術機を増やしたり新しい兵器を開発したりして部隊を大きくして、自力でハイヴを制圧するのを最終目標とするRPGとなります。

当然BETAが相手となりますが、設定的に攻撃を一発でも受けたら絶対に助からないので、HP=推進剤となり、敵の攻撃は全部回避しているのを基本とします。

また、防御=機動性(1回の回避で推進剤が減る量を減らす)、素早さ=回避性(敵の行動を読んで推進剤を減らさずに避ける確率を増やす)となり、HP=推進剤がゼロに成ったらパイロットは事前に脱出して必ず生還します。

また、アクティブ・タイム・バトルの場合は戦術機によって回ってくるターンが速くなりそうです。

(撃震は遅めだが、吹雪や不知火は普通、ラプターは早い、武御雷はめっちゃ早い、など)

この強引な設定は、夕呼先生が米国に買収されずに残しておいた、武の提案で純夏と極秘開発していた00ユニットを活かした最先端の技術であり、純夏は横浜基地で主人公達の戦闘を常にモニタリングしている為、推進剤が尽きて戦術機から切り離されて脱出する『改造されたコックピット』を、ラザフォード場で戦闘域を出るまで保護してくれます。

勿論、00ユニット=純夏のチートが無なければ何の意味もない技術ですが、極めて便利だと思っており、この二次創作では今更此処まで来て誰も死んで欲しく無いので、この様な形で利用します。

様々なRPGでの『部隊が大きく成ってくれば全員で蹂躙すれば良いじゃん』とかの疑問も、設定で純夏の保護できる人数を強引に決めれば、例えば常に4機編成だとしても納得できると思います。

しかし原作的に、戦闘中は推進剤や弾薬を増やす手段は殆どなく、推進剤が尽きて脱出したら同機が復帰するのはまず不可能になるので、BETAが相手と言う事で連戦を強いられる仕様上、バランスとしてはなかなかシビアになる予定です。




また『これはひどいオルタネイティヴ』に置いて、純夏以外で主人公に好意を持っているキャラは多いので、物語が進めば他のヒロイン達とのラブ・シーンが発生します。

(この作品に置いて、純夏は他のヒロイン達の武に対する好意は必然だと思っている設定です)

生憎人数が多すぎますが、絵師さんにskebみたいなので依頼して少しづつ描いて頂く予定です。








【序盤の登場キャラクター】


■白銀 武■

主人公。元国連軍少佐。現在は帝国軍臨時少佐。及び帝国軍・特別遊撃小隊・隊長。

ソリッド・スネークが如く伝説の天才衛士と呼んでも過言では無い人間だったが、ループしていた『原作白銀』の能力は失われてしまっている。

RPG冒頭の典型・システムの都合とも言えるが、それでも謙虚な人間性から周囲の信頼は厚い。

(ヒロインによっては、不調なのに撃墜されないからと無理して戦っていると思われる)

夕呼先生があんな性格なので、半分強引に押し付けられた形の、小隊のトップである。

基本的に喋らない主人公にする予定です。(スキルを使ったりしたら肖りテキストは有るかも)

彼の偉業は義理の妹である唯依を通してユウヤ・ブリッジスの様な人間にも伝わっている。




■香月 夕呼■

元国連軍少将。現在は帝国軍臨時大佐、及び帝国軍・特別遊撃小隊・司令官。

特別遊撃小隊の縁の下の力持ちに加えて、純夏の維持費を稼ぐ為に内職ばかりしている。

(ODL浄化の際に得た情報を流せば無償で良いと言われているが、それは拒否している模様)

今回はあまり頼る事が出来ないが、予算に余裕が出来れば兵器の開発に動いてくれるようになる。

それでも、原作の地獄のハードワークよりは遥かにマシな状況みたいであり、新しい生活をそれなりに楽しんでいたりする。

一日の平均睡眠時間は、何と原作の頃に比べて4時間も伸びた。




■篁 唯依■

元国連軍臨時中尉。現在は帝国斯衛軍中尉、及び帝国軍・特別遊撃小隊・隊員。

初期メンバー。ゲーム開始直後の状況説明や、初戦闘でのアドバイスをしてくれる役割。

まだまだ小隊の規模が小さいので(システム的に)ヒロイン達の合流が遅れる中、桜花作戦の終了直後からも、ずっと武の傍で彼を支え続けていた献身的な女性。

全てが白紙に戻ったスタートと成りながら、彼と共に戦える事に誇りを感じている。




■神宮司 まりも■

元国連軍中尉。現在は帝国陸軍臨時中尉、及び帝国軍・特別遊撃小隊・隊員。

初期メンバー。結果としては嬉しかったが、訳も分からず夕呼先生に連れて来られた被害者。

武と実の年齢が近かった事に喜んでいながら、隙あらば夕呼先生に色々と手伝わされるので特に武との関係は進展していない。

戦術機が2機しか無いので、冒頭はプレイヤーの好みで主に唯依と彼女の何方かを乗せるかを選ぶ事に成る。




■社 霞■

元国連軍臨時少尉。現在は帝国軍臨時少尉、及び帝国軍・特別遊撃小隊・所属。

初期メンバー。夕呼先生の手伝いができる数少ない天才なので、強引に連れて来られた。

兄の様な存在として慕う武の傍に居られて嬉しいが、横浜基地から動けない純夏に対して後ろめたさも感じている。

ゲーム的にどんな役割を担わせるかは未定だが、キャラ的にゲーム進行のヒントを教えてくれるとかが良いかも。

システム的には誰も死なないので、複座型を開発できれば戦闘に参加させる事も可能かもしれない。




■イリーナ・ピアティフ■

元国連軍臨時中尉。現在は帝国軍臨時中尉、及び帝国軍・特別遊撃小隊・所属。

初期メンバー。PT編成や補給などの窓口を担当してくれるキャラの予定。

夕呼先生が引き抜こうとする前に国連軍に辞表を提出していたりと、地味に行動力が有る。

活動開始して間もない武が死に物狂いで訓練していた様子は、彼女の心を大きく動かしていた。




■鑑 純夏■

国連軍少尉。メインヒロイン。

72時間ごとのODLの浄化がネックで横浜基地を動けないが、それで得たBETAの位置情報を提供してくれたりと、特別遊撃小隊を陰で支えてくれている。

繰り返すが設定上『横浜基地から離れられない』のが本当に悔やまれる。

操るべき強力な兵器とエネルギーが無ければ普通の少女な為、初期メンバーとしても使いたかった。

逆にゲームが最終段階になると、専用の兵器でオルランドゥの如く大暴れしてくれるだろう。

ちなみに、武達が戦闘をしていない時は、PXで京塚のオバハンの元で元気に働いている。





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