ドヴァキン、ドラゴンボーン、彼の名は沢山存在する。
困っている人が居れば快く頼みを引き受け、悪い人が居ればとりあえず剣のサビにするような伝説からひょっこり現れた彼はなんと逮捕回数三十七回、膝に矢を受けた人たちにまたお前かと言われるのがほぼ日課の彼は今日も楽しくスカイリムの大地を闊歩していた。
そんなドヴァキンさんの趣味はドラゴン退治、驚くことに弓と腰にぶら下げた剣で退治して鱗や骨を剥ぎ取り、そこらの雑貨屋に売りつけて困らせるのが大好きなのだ。
ドラゴンを三匹ほど退治して、重い鱗や骨をリディアさんに持たせて今日もホワイトランの我が家へと帰ろうとプレートメイルをがっちゃがっちゃ鳴らして歩いていると平原のど真ん中に鏡を見つける。
「従士様、危険です」
リディアさんの警告なんざはじめから聞いておらず、ドヴァキンさんは嬉しそうに鏡へと触れるのだ。
「……リディア、腕が抜けない。ボスケテ」
案の定である。
リディアさんは深々と溜め息を吐くといつもの仕返しと言わんばかりにドヴァキンさんをグイグイと押し始める。
「アッー!? 何すんのよスケベ!」
突如オカマ言葉になったドヴァキンさんを無視してリディアさんは素敵な笑顔を見せて、こう言い放つのだ。
「一回ひどい目に会えばいいんじゃないですか?」
「このゴリラが」
「ふん!」
思い切り突き飛ばされたドヴァキンさんはそのまま鏡に吸い込まれ、不可思議な空間を通る羽目になってしまったのである、合掌。
土煙と砂利が飛び散り、少女の肌を傷つける。
砲兵一個中隊の砲撃を食らったような惨状を見せる中庭は戦場であったらぴったりの悲鳴と怒号が渦巻いている、とは言ってもこれはただの授業風景。
決して牛乳飲んで体操して出撃する空の魔王が現れた訳ではない、アカの戦車もいないし、流石に来ることはないだろう。
この惨状は全てルイズと言う少女が引き起こした物であり、怒号も悲鳴も罵声も小さな少女の体に全て襲いかかってくる、だが少女は気丈だ。貴族の誇りを小さな胸に、小さな胸を張って、そう、すっごく小さな胸を張って立っているのである。
「……なんだか物凄く失礼な評価をされた気がするわ」
まぁ、誰かに馬鹿にされるのはいつもの事だとルイズは考え、先ほど起こった大爆発の中心を眺める。とてつもない、何かを引いた感覚があった。言うなれば伝説に出てくるドラゴン……飛竜なんかとは比べ物にならない化け物を引いた予感がルイズにはするのだ。
「ちっくしょー! あのゴリラ女覚えてろよ! 裸にひん剥いてアヒンアヒン言わせたるわぁ!」
だが出てきたのはこ汚いヒゲのおっさんであった。
ルイズは思わずがっくり項垂れてしまう。
「ぜ、ゼロのルイズがおっさんを召喚したぞーーーーーー!!」
そしてモブの雄叫びでルイズの将来は確定してしまったのである。ゼロのルイズ改め、おっさん使いのルイズ誕生の瞬間である。