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[37347] 【ゼロ魔×スカイリム】おっさん使いのルイズ
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/09 09:42
 始めましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりでございます。
 ボンバーマンです、暇つぶしの為に書き始めました、よろしければ読んでくださいませ。


仕事が洒落にならない位には忙しいので基本不定期更新
とまぁドヴァキンさんがハルケギニアを満喫するだけのお話です

どうやら変な人と名前が被っているらしく変更致します



書いていたネット小説が無断転載されているのでそれに関する法的処理が終わるまで掲載は厳しいと思います



[37347] 出会い編
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/04/24 09:41
 ドヴァキン、ドラゴンボーン、彼の名は沢山存在する。
 困っている人が居れば快く頼みを引き受け、悪い人が居ればとりあえず剣のサビにするような伝説からひょっこり現れた彼はなんと逮捕回数三十七回、膝に矢を受けた人たちにまたお前かと言われるのがほぼ日課の彼は今日も楽しくスカイリムの大地を闊歩していた。
 そんなドヴァキンさんの趣味はドラゴン退治、驚くことに弓と腰にぶら下げた剣で退治して鱗や骨を剥ぎ取り、そこらの雑貨屋に売りつけて困らせるのが大好きなのだ。
 ドラゴンを三匹ほど退治して、重い鱗や骨をリディアさんに持たせて今日もホワイトランの我が家へと帰ろうとプレートメイルをがっちゃがっちゃ鳴らして歩いていると平原のど真ん中に鏡を見つける。

「従士様、危険です」

 リディアさんの警告なんざはじめから聞いておらず、ドヴァキンさんは嬉しそうに鏡へと触れるのだ。

「……リディア、腕が抜けない。ボスケテ」

 案の定である。
 リディアさんは深々と溜め息を吐くといつもの仕返しと言わんばかりにドヴァキンさんをグイグイと押し始める。

「アッー!? 何すんのよスケベ!」

 突如オカマ言葉になったドヴァキンさんを無視してリディアさんは素敵な笑顔を見せて、こう言い放つのだ。

「一回ひどい目に会えばいいんじゃないですか?」

「このゴリラが」

「ふん!」

 思い切り突き飛ばされたドヴァキンさんはそのまま鏡に吸い込まれ、不可思議な空間を通る羽目になってしまったのである、合掌。






 土煙と砂利が飛び散り、少女の肌を傷つける。
 砲兵一個中隊の砲撃を食らったような惨状を見せる中庭は戦場であったらぴったりの悲鳴と怒号が渦巻いている、とは言ってもこれはただの授業風景。
 決して牛乳飲んで体操して出撃する空の魔王が現れた訳ではない、アカの戦車もいないし、流石に来ることはないだろう。
 この惨状は全てルイズと言う少女が引き起こした物であり、怒号も悲鳴も罵声も小さな少女の体に全て襲いかかってくる、だが少女は気丈だ。貴族の誇りを小さな胸に、小さな胸を張って、そう、すっごく小さな胸を張って立っているのである。

「……なんだか物凄く失礼な評価をされた気がするわ」

 まぁ、誰かに馬鹿にされるのはいつもの事だとルイズは考え、先ほど起こった大爆発の中心を眺める。とてつもない、何かを引いた感覚があった。言うなれば伝説に出てくるドラゴン……飛竜なんかとは比べ物にならない化け物を引いた予感がルイズにはするのだ。

「ちっくしょー! あのゴリラ女覚えてろよ! 裸にひん剥いてアヒンアヒン言わせたるわぁ!」

 だが出てきたのはこ汚いヒゲのおっさんであった。
 ルイズは思わずがっくり項垂れてしまう。

「ぜ、ゼロのルイズがおっさんを召喚したぞーーーーーー!!」

 そしてモブの雄叫びでルイズの将来は確定してしまったのである。ゼロのルイズ改め、おっさん使いのルイズ誕生の瞬間である。



[37347] 逮捕
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/04/24 09:41
 トリステイン魔法学院を発見した!
 脳内にそんなテロップが流れた後、経験値が入るが……今はそれどころではないだろう。おっさんおっさんと失礼なガキどもが伝説のドヴァキンさんを馬鹿にしているのだ、これはちょっとお仕置きが必要だろう。
 ドヴァキンが伝説と呼ばれるのにはそれだけの訳がある、死んでも蘇ったりとか、従者となった者がMODの関係で死ななかったりとか、そもそもこいつ自体百年近く生きているはずなのにちっとも老いなかったりとか、衛兵が洒落にならない位強い癖に膝が急所だとかあるのだが……それは置いておこう、ドヴァキンさんは大きく息を吸い込むのだ。

「Fus Ro Dah!」

 ドヴァキンさんが大きく口を開き、そう叫ぶと衝撃波がドヴァキンさんを馬鹿に……むしろルイズを馬鹿にする生徒達の一団に飛んで行き、彼らを大きく弾き飛ばす。
 そう、これがドヴァキンさんが伝説と言われる大きな理由、ドラゴンの能力であるシャウトを自由自在に使えるドラゴンボーンの力なのだ。

「おっさんがシャウトを召喚したぞ!」

「あれが伝説のドラゴンボーンか……」

「可哀想な母……新たな住処がひどく遠くに感じる」

 シセロが居たような気がしないでもないが、混乱の中からそんな声が聞こえる。
 馬鹿どもを吹き飛ばして多少はスッキリしたドヴァキンさんだが顔色はよくない、どうせ来るのだ、奴らが。

「スタァァァァァァァァァァァプ!!!!!!!!!!!!」

 ドヴァキンさんにも負けない大声を張り上げ、どこから来たのかさっぱり分からない奴らがドヴァキンさんに話しかける。

「貴様はトリステインの民に対して、罪を犯した。何か釈明はあるか?」

 言う事は誰も一緒だなとドヴァキンさんは鼻で笑い、首を横に振る。

「ないよ、好きにするといい」

 衛兵はドヴァキンさんが抵抗しないのを確認した後、その太い両腕に縄をかける。
 ドヴァキンさんは懐かしい感触に何度も頷いて、引っ張る衛兵の後ろに続いて歩いていくが……衛兵の前に小さな少女が立ちふさがった。

「待ちなさい! その人は私の使い魔よ、連れて行くのは許さないわ」

 そう、ドヴァキンさんを呼び出したルイズである。
 ドヴァキンさんは思わず眉を顰めてしまった、なんでこの子は自分の事を使い魔なんて呼ぶのだろうか、それにそんな話し方では。

「昔はお前のようなメイジだったが膝に矢を受けてしまってな……」

 ほら、通じてない。
 どこの世界でも衛兵の急所は膝らしく、魔法使いだろうと冒険者だろうと膝に矢を受けてしまったら衛兵になるルールが存在するらしい。
 衛兵は無視してドヴァキンさんを引っ張り、牢獄へと連れて行こうとしてしまう。プライドの高いルイズの事だ、無視は許さんと言わんばかりに衛兵の肩をむんずと鷲掴み。

「ちょっと待ちなさいよ!」

 と怒鳴った。

「スタァァァァァァァァァァァァァァプ!!!!!!!!!!」

 しかしそれ以上の声で怒鳴られてルイズは尻餅をついてしまう、そしてどこからともなく衛兵達が現れてルイズを取り囲む。

「お前はトリステインの民に対して罪を犯した、何か釈明はあるか?」

「え? え?」

 ルイズは何がなんだか分からないと言わんばかりの表情を浮かべて取り囲む衛兵達を見つめる。衛兵達はそんなルイズの様子を釈明なしと受け取ったのだろう、ルイズを抱え上げてドヴァキンさんと同じように連行するのであった。

「なによ……なんなのよコレーーーーー!?」

 ルイズの哀れな叫びが魔法学院に木霊する、しかし屈強な兵士達はルイズを抱え上げたまま、何事もなかったようにトリスタニアへの道を歩くのであった。



[37347] やっぱりエルダースクロールは囚人からだよね
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/02 12:11
 皆様はお約束と言うものをご存知であろうか、古代ローマの時代、演劇の科目にてチキンで頭を叩かれてオチにすると言ったお約束からしむらーうしろーまで、日本の歴史より遥かに長い歴史を持つのがお約束である。
 そしてドヴァキンさんのお約束、エルダースクロールのお約束と言えばこれであろう。
 囚人スタート(はぁとまぁく)
 そう、ドヴァキンさんの新たなエルダースクロール……いや、ハルケギニアスクロールはここからスタートするのである。

「なんで私がこんな目に~……うう、助けてお母様、ちい姉様ぁ」

 同室のルイズは牢獄に入ってから三日間、ずっと寝ても覚めても泣いている。ドヴァキンさんは勝手知ったるや他国の牢獄状態なのでそこそこ囚人生活をエンジョイしているのだ。黴びているとは言えパンも出るし、腐っているとは言えスープも出る。
 腹痛なんてバッドステータスのないドヴァキンさんは腐っていようが黴びていようが関係ないのだ。ルイズの方はしっかりと当たったらしく垂れ流しではあるが。

「嘆いても始まらないぜ、三日も同室なんだしさ、そろそろ自己紹介とかして貰いたいなぁ、ちいさなレディ。あとズボン履いてください、ムラムラします」

 糞尿塗れのズボンは片隅に捨てられており、ルイズのは丸見えである。繰り返す、丸見えである。
 とまぁそんな下らない冗談は抜きにして、ルイズは寝藁を器用に編んで腰蓑を制作してそれを巻きつけた、新しいスキルかとドヴァキンさんはその様子をしげしげと眺めてルイズの頬を赤く染める、そっち見てたわけじゃない。

「る、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」

 と、恥ずかしがりながらルイズは自分の名前を教えてくれる。

「そうか、俺は……そうだな、ドヴァキンと名乗っている、謙虚だからさん付けでいい」

「そう、ドヴァキンね。本名は?」

 得意げにドヴァキンと名乗った彼に対し、ルイズは軽く流して本名を訊ねる、ドヴァキンさんはそんなルイズを見て軽く舌打ちをしてゆっくりと口を開く

「…………ない、と言うか覚えてない」

 ドヴァキンさんは腕を組み、少しだけ寂しそうにそう言った。
 名前などとうの昔に忘れている、忌まわしきアルドゥインにあったあの日から前の記憶がないのだ、冒険者に名前など求められなかったし、世界中の皆を彼の事をドヴァキンか冒険者と呼ぶ。故に名前など必要ないし訪ねられたのは産まれて初めてだ。ゲームシステム的に尋ねられたら困っちゃうし。

「そう、じゃあ私が名前をつけてあげるわ。サイトなんてどう?」

「犬みたいな名前だな、お断りだ」

 とまぁすっかり気を使われてしまった。

「ま、あんたはいい鎧を着てたし、そこそこの身分を持った騎士なんでしょう。少しは仲良くしてあげてもいいわ」

 ドヴァキンさんが少し関心するとルイズはその評価をがっくりと下げる高慢な物言いをしてくれた、ドヴァキンさんは呆れながら彼女を見つめ。

「お前友達いないだろ」

 と言った。
 どうやらこれがクリティカルヒットだったようでルイズは目に見えて狼狽え始めた、腰蓑がワサワサと揺れている、突如頭にキタキタと言う単語が浮かんでしまったがこちらの世界に来られるといい迷惑なので脳内から削除しておく。
 ともまぁ十代半ばの女の子、しかも艶かしい足をチラチラとさせるとドヴァキンさんとて冷静ではいられない、とにかくこの煩悩を沈めなくてはと唸っていると鉄格子から何かが差し入れられた。

「女の方に手紙だ」

 どうやらルイズに対する手紙のようでルイズは狼狽えているので変わりに手紙を受け取り、封を開ける。中身は……どうやら知っている文字ではない為に読むことは出来ない。

「ルイズ、君宛の手紙だ」

 そう言って渡してやる。

「ちょっと! 何勝手に読んでいるのよ!」

「ダメだったのか?」

「ダメに決まっているでしょ!」

 怒られてしまったので反省したフリをしておこう、案の定ルイズの怒りは収まったようで寝藁に座って手紙を読み始めた。
 両膝を立てて座っている為に丸見えである、彼女は一体何をしたいのであろうか、ドヴァキンさんの子種でも欲しいのだろうか。とは言っても最近シャウトを使う幼子が大量発生し、スカイリムの社会問題と化しているのでこれ以上はちょっと、と思うドヴァキンさんであった。

「嘘よ……こんなの嘘よ……」

 家族からの手紙を読み終えたのにルイズはブルブルと震えて手に持った手紙を取り落としてしまう、一体何事であろうかとドヴァキンさんは首を傾げた。

「どうした? 家族の誰かがベゼスタ顔にでもなったか? ……それは絶望するよな」

「違うわよ! 何よベゼスタ顔って!」

 目に涙を貯めながらでもツッコミを怠らないルイズ、ドヴァキンさんはちょっとルイズを従者にしたくなってしまう、だってスカイリムってツッコミどころ満載なんだもん。主にムアイクとか。

「わ、私、廃嫡だって……これ、絶縁状なの」

「…………………………それって困ることか?」

 この世の終わりと言った表情を見せるルイズに対してドヴァキンさんはキョトンとしている、そもそもドヴァキンさんは身一つから始まって死体から武器や装備を拾い、冗談抜きのゼロから伸し上がった英雄である。そもそもドヴァキンさんのヴァイタリティとただの少女のヴァイタリティを一緒にしてはいけないと思う、ドヴァキンさんは財産を失ってもなんとでもなるし。

「だって、私は何も持ってないのよ?」

「……人間産まれた時誰でもそうじゃね?」

 案外まともなドヴァキンさんの言葉に、ルイズは面食らう。
 小汚いおっさんにもそれなりの……と言ってはなんであるが、歴史がしっかりと存在するのだ。ドヴァキンさんはニヤリと笑い、ルイズの頭に手を置いて口を開くのだ。

「全裸から始める生き方、教えてやるよ」

 そう言って笑うドヴァキンさんは、そこそこ気のいいおっちゃんに見える。

「……まず何をするの?」

「素手で野盗をぶっ殺します」

「無理よ! 私殺されちゃう! それに可愛いから売られちゃうわ!」

「安心しろ、その前にレイプが先だ」

「どこに安心しろって言うのよ! このドヴァキン野郎!」

 とまぁこんな感じで打ち解ける事が出来た、結局ルイズは貴族では無くなり、ドヴァキンの後ろに着いていくのであった、このコンビはハルケギニアに旋風を巻き起こす。
 アンリエッタに迷惑かけたり、ウェールズに迷惑かけたり、レコンキスタに迷惑かけたり、ジョゼフに迷惑かけたり、と言うか大体の人に迷惑をかける大冒険の幕が切って落とされるのだ。

「ルイズの脱処女って奴だな」

「いきなり訳わかんない事言ってんじゃないわよ! はじめてはお花畑で王子様とって決めてるの!」



[37347] メインクエスト:空腹の少女
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/04/24 09:41
 釈放、それは犯罪者が自由になる事と同義だ。
 結局最後の親心と言わんばかりにルイズの親が圧力をかけてくれたようで収監されてから一週間で出所出来たあたりが素晴らしい。
 トリスタニアを発見したと脳内でモノローグが流れ、経験値が手に入ってしまう、これ以上レベルアップしたら一体全体誰と戦えばいいのであろうか、とドヴァキンさんは不安になりつつもトリスタニアの大通りを闊歩するのだ。
 とりあえず今必要なものは金であろう、今持っているぴかぴかでチャリチャリの金貨(シセロ談)では買い物は出来ないようだ、お店では使えないよと鼻で笑われ、両替商には渋い顔をされて偽造を疑われてしまう。西の海岸に流れ着いた旅人と言うことにしておいた、ルイズに命を救われて彼女の身辺を守ることを一生誓った異国の騎士……なんて物語を作ってしまった、この辺りスラスラ嘘が出てくるあたり流石話術カンストである。

「うーむ、こりゃ外で獲物でも狩った方が早いだろうが……」

 外には沢山の命がある気配がする、それを狩りとるのも楽しそうだが……まずはルイズだ、一週間下痢に苦しんで大分消耗している、暖かいベッドと栄養満点の食事が必要であろう、今も噴水の前にあるベンチでぐったりしている。ソブンガルデに行くのが早いか、ドヴァキンさんが食べ物を買ってくるのが早いか……これは勝負となるだろう。

「いいな、ルイズ。ここで大人しく待っているんだぞ、はちみつのかかったパンとスープ、それに暖かいベッドを調達してきてやる」

 虚ろな目でこちらを見上げたルイズはコクリと頷いた。
 彼女に井戸から汲んだ水を革袋ごと渡し、ドヴァキンさんは駆け出すのだ。目指すは服飾店だ、旅の行商人とでも言えばいいだろう。
 そう考えてトリスタニアをかけずり回っていると懐に手が入ってくる。

「フン!」

 入ってきた手をノルド族自慢の怪力で治らないよう器用に握りつぶし、先を急ぐ。殺さないだけ有難いと思って欲しい。
 五人ほどのスリを再起不能にしたドヴァキンさんはようやくお目当てのお店を見つけ、中に入り、交渉して追い返されてしまった。なんでもギルドと呼ばれる利権団体がおり、そこを通さないと売り買い出来ないらしいのだ。

「……この国めんどくせー」

 当初の目論見が外れたドヴァキンさんは肩を落としてトボトボと石造りの街を歩く、流石にルイズを放置して山賊退治と洒落込む訳にも行くまい。

「あ、兄貴! あの野郎です!」

 先ほど指を折られた男が大男を引き連れて、ドヴァキンさんを指差しながら叫ぶ。

「ほぉ、あの小汚い野郎がお前の指を折ったのか……そこのおっさん! 面貸して貰おうか!」

 そして大男がずいっと前に出て、舌を向いて考えこんでいるドヴァキンさんに強く言い放つ。

「うーん、どうしたもんか。こりゃマジでノクタールごっこをするしかないのか」

 だが相手はドヴァキンである、誰かが何か言っている最中に全力ダッシュするのはいつもの事なのだ、完全スルーにて歩いていってしまう。大男は震えながら懐から杖を引っ張り出す。

「この元貴族のロキール様を無視するなんざ……いい度胸だぜ!」

「ん? ロキール? ロリクステッドの?」

 何かを考え込んでいたドヴァキンさんはクルリとロキールの方を振り向く、だが居るのは大男と先ほど指を折ったスリだけだ、思わず首を傾げてしまう。

「ロキールなんて居ないじゃないか」

 ソブンガルデにもいなかったし、ここにも居ないのだ。
 ドヴァキンさんの言葉にロキールと名乗った大男は肩を震わせる、ドヴァキンさんに杖を向けて、我ここにあらんと大きな声で叫ぶ。

「ここに居るのがロキール・ド・ロリクステッド様だぁ! ファイアボール!」

 ロキールは呪文を既に完成させていたのだろう、向けていた杖から大粒の火球がドヴァキンさんを焼きドヴァキンさんにしようと襲いかかる。キョトンとした表情でそれを見つめるドヴァキンさんを勝利を確信したロキール、ドヴァキンさんに火球が命中し、破裂音を立てて彼の体を燃え上がらせる。

「はっはっは! メイジに平民が勝てるかよ!」

 燃え上がるドヴァキンさんと高笑いするロキール。

「なんだ、街中にも山賊が居るじゃないか。ラッキー」

 燃え上がるドヴァキンさんは嬉しそうにそう言って一歩前に踏み出す、しかしスカイリムのロキールもこっちのロキールも運が悪い、相手はドラゴンの炎を食らっても薬をガブ飲みすれば元気一杯なドヴァキンさんなのだ。杖の端っこから飛ぶ小さな火球などドヴァキンさんにとっては夏の日差しと変わらない。

「Wuld」

 小さな呟き、それと共にロキールの前には笑顔のドヴァキンさんが居た。ドヴァキンさんの手にはスキル上げで大量生産した鉄のダガー、神工レベルのドヴァキンさんが鍛えて磨いだ芸術品のようなダガーナイフである、鋭い刃は真っ直ぐにロキールの胸に伸び、容易く心臓を貫いた。

「あ、あひゃぁぁぁぁぁぁ……」

 声もなく、ぐったり項垂れたロキールと情けない悲鳴を上げるスリの男。
 ドヴァキンさんはダガーナイフをそのままに、ロキールの体を横にして体を漁る、持っている木の枝に価値はないと判断し、懐にある革のサイフを取り出して中の金貨を検める。

「ひぃふぅみ……銀貨十二枚と銅貨三十枚か、おい」

 中に入っている財貨の価値はわからないがとりあえず多いに越した事はないと判断し、腰が抜けているスリの男に声をかける。

「ひぃ……殺さないで」

 スリの男は至って常識的な反応を見せる、やりやすくていいとドヴァキンさんは微笑む。

「お前らがアジトに貯めている金を全部寄越せ、それで手を打ってやる」

 ここでドヴァキンさんが出した要求は非常に人道的で英雄らしくないものだった、スリの男は頷いて逃げるように駆け出す。その後ろをドヴァキンさんがスキップで追いかけると言った不思議な光景が広がり、スリの男はスラムに存在する小屋の中へと転がるように入っていき、一つの宝箱を急いで差し出して来た。

「こ、これで全部です!」

「ふーん、じゃあもういいか。死ね」

 宝箱を受け取ったドヴァキンさんはそう言うと同時に男の頭にへと斧を振り下ろした、肉が潰れ、骨が砕けて脳を犯す素敵な音色を聞いたドヴァキンさんは鼻歌混じりにそこの小屋へと入っていく、やっぱり嘘を着いていたようで机の上に金貨が何枚か並べてある。
 おそらくあれでゲームでもやっていたのだろう、ドヴァキンさんは全部もってこいと言った、奴は嘘を吐いた、だから死んだのだ。
 ドヴァキンさんは蛮族でいらっしゃる、嘘はいけない。
 とりあえず手に入れた金貨や銀貨、銅貨を懐に詰め込んでルイズの元へと急ぐのだった、今日はワインにはちみつをかけたパン、それに鹿のシチューあたりでメニューは決定だなとルイズの喜ぶ顔を想像してドヴァキンさんは走るのだ。




報酬:ルイズ
ガンダールブのパークを手に入れました



[37347] サブクエスト:トリスタニア
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/04/26 13:00
 ルイズが尻からカレーを出す病気を治してから一週間、人の適応力と言うのは凄まじいものである。元々魔術師ではなくこちらの方に才能があったのか、ただ度胸が素晴らしいだけかは分からないがルイズはしっかりと冒険者生活に適応してみせた、一日風呂に入れないだけでぴーぴー喚いていた女が今は三日位入らずとも平気そうな表情を見せている、ただ。

「……強烈な牝のにほひがする」

 夜の運動会に誘っているのか誘っていないのか……恐らく後者であろうがプンプン年頃の女の香りがするのだ。しかも強烈に、だから今のルイズはゼロでもおっさん使いでもなく悪臭のルイズと呼ぶべきであろう。

「……そんなに臭うかしら、ちょっと水浴びしてくるわね」

 とまぁルイズも年頃の女の子だ、山賊から奪った野営地の近くにある泉に替えの毛皮の鎧を持って歩いて行ってしまう、ルイズは貧弱すぎて金属系の鎧がつけられない、まぁそれは仕方ないだろう。
 フルプレートを身に纏って全速力で走れるスカイリムの民がおかしいのだ、それにしてもドヴァキンさんは平和だなと空を見上げる。ドラゴンも飛んでないし、街道を普通にサーベルタイガーとか熊が闊歩していない。フォースゥーンだっていないし、ハルケギニアはレコンキスタのものだぁ!とか言って斬りかかってくる輩も少ない。

「……退屈だ、だが悪くない」

 ドヴァキンさんのステータスが下がりました!レベルが20に制限された!

「……ん? なんか今厄介な事になったような気がする」

 とまぁドヴァキンさん弱体化イベントが終わってからルイズが水も滴るいい女になって戻って来た、具体的に言うと牝の匂いはまだするが薄くなって丁度よくなった、つまりは股間がいきり立つ。ドヴァキンさんの小さなドヴァキンさんも元気一杯だ。

「戻ったわよー」

 手ぬぐいで髪を拭きながらのご帰還だ、ちなみにルイズの髪は切られて肩位の長さになっている。

「おう、こっちも肉が焼けたぞ」

 ドヴァキンさんはそんなルイズを笑顔で迎えてやる。

「……鍋しかないのにどうやって肉を焼いたのか、いつも不思議なのよね」

 ルイズさんはそうやってドヴァキンさんを半眼で見つめるがスカイリムの技術と言うことで納得して欲しい。ドヴァキンさんだって鍋の前で肉と塩を持ってどうやって焼こうかと悩んでいたら出来てしまったのだ。つっこみいくない。

「ま、気にすんなよ。そのあたりはムアイクがぼやいてくれるさ」

「ああ、あの猫ちゃんね」

 ハルケギニアを放浪する猫ちゃんである、向こうと違ってこっちでは普通の猫なのだ、喋るけど。
 ルイズと朝食を済ませ、本題に入る為に口を開く。

「んで、魅惑の妖精亭から頼まれた鹿狩りだけど、本当にお前一人で大丈夫か?」

 ドヴァキンさんも心配なのだろう、指についた塩を舐めながら訪ねて見る。

「馬鹿にしないでよね、これでもちゃんと弓は扱えるんだから」

 ドヴァキンさんの心配をよそに、ルイズは得意げだ。
 まぁドヴァキンさんを的に訓練したから弓兵並の命中率を誇ってはいるだろうが……如何せんトリステインは治安がよくない、山賊に出会った薄い本的な展開は勘弁してほしいのだ。

「……ま、そうなったらそれまでだな。よし、じゃあ任せたぞ、俺は学院の方に遊びに行ってくるからさ」

「大船に乗った気で待っていなさい!」





サブクエスト「魅惑の看板料理」が開始されました。





 トリスタニアから歩いて半日の山中にて、ルイズは楽しそうに鼻歌を歌いながら歩いている、自慢であった白磁のような肌をブッシュ(大統領でも婦人でもない)が切り裂いても気にしていない。お付きの人もなく、誰に文句を言われるでもなく、本当の自由をルイズは満喫していた。
 自分の師であるドヴァキンさんはこう教えてくれる『お前は自由だ、自由だからこそ責任は全て自分にのしかかる』この責任と言うのは自分の命であろうと聡明なルイズは結論づける、それでも楽しいものは楽しいのだ。カバンには自信作であるお弁当のサーモンサンド、水代わりの蜂蜜酒を割った物、それに頼りにならない魔法ではなくドヴァキンさんが強化した狩猟弓を手にずんずんと進んでいくのだ。

「ふぁ~すきすからはっじまるぅ~♪」

 それにしてもこのツンデレ、ご機嫌である。音を外しながらものんびりと山中を歩いていると鹿は何匹か見つける事が出来たが……依頼は雄鹿を仕留めてほしいと言うもの、雄の硬い肉がいいソーセージになるのだと言う。
 だが生息地はもう近いのだろう、ルイズは腰を落としてブッシュに隠れながら先を急ぐのだ。

(居た!)

 目標はのんびりと草を食んでいる、実にのんびりした風景だが……この辺りはドヴァキンさんを召喚した影響で秩序から混沌へ属性が傾いたルイズである、担いでいた弓を構えて矢を弰るのだ。
 弦が引き絞られて僅かな音を出す、鹿は耳を何度か動かして顔を上げた。驚くべき野生動物の聴力よ、だが生憎こちらは風下だ。匂いを嗅ぐ事も出来ないし、次にあんたが聞くのは自分の心臓を鉄の矢尻が貫く音だけよ、とルイズは胸中で格好つける。
 ギリギリまで引き絞った弦をゆっくりと手放した、木の反発力によって矢は押し出されていく、鳥の矢羽根が揚力を産み出して矢は目標へと向かって飛翔する。
 分厚く頑丈な鹿の革、遥か古代の石を使っていた人類は仕留めるのも一苦労であったろうが……この辺りは人類同士で殺しあった技術力だ、頑丈な革を貫いて目標の心臓を鉄が叩いた。
 力強く鼓動を打っていた、長く走る事に特化した心臓は容易く人類の英知である鉄の矢尻によって貫かれて鹿は三歩歩いて音を立てて倒れた。

「やったわ! えっへん! 見なさいよ、ドヴァキン! 私にだって……あ」

 喜色満面で振り返り、ルイズは思わず頬を赤く染めた。
 ドヴァキンは居ないんだった、随分あの小汚い男に懐いてしまったとルイズは後頭部を照れ隠しにポリポリと掻いた。何しろ今も後ろから―――へぇ、やるじゃないか。えらいぞルイズ―――なんて言葉が聞こえるのだ、しかもあの人懐っこい笑顔付きで。無論幻聴ではあるが、それほどの存在になっているのだ、たった一週間でドヴァキンさんはルイズに受け入れられてしまったのである、話術カンストは伊達じゃない!
 自分の父親位には懐いてしまったルイズは恥じ入りながら鹿の解体を始める、ドヴァキンさんから習った解体術だ。

「えっと、確か……穴が空くほど見つめるのよね」

 言われた通りにジッと鹿の死体を見つめてみる。
ガサッ
鹿の肉
鹿の角
鹿の革
全部取る [E]

「なんか出たわ! 頭になんか出たわ!」

 ルイズ、カルチャーショックの巻である。
 とりあえず全部取る! と強く念じると急に背中に背負ったリュックサックが重く感じた、恐る恐るリュックサックを覗いたルイズはアングリと口を開けた。
 見るからに新鮮な肉と綺麗にはがされた革と角が整頓されて入っていたのである、とりあえず自分の体を触ってどこかに異常がないか調べるルイズ。

「お乳が無いわ! ってそれは元からよ!」

 そう叫ぶとルイズの頭上でカラスが鳴いた、なんだか妙に虚しくなってしまう。

「私、一人で何をやっているのかしら……。おうち帰る」

 来たときとは裏腹にしょげて帰るルイズをお猿が木の上から見つめていた。



報酬:七十スゥ
ルイズの弓術スキルが51になりました、レベルがあがった。




基本的にサブクエはルイズちゃんが消化します



[37347] メインクエスト:学院の至宝
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/02 12:03
「……何事?」

 ドヴァキンさんが学院に遊びに来た。
 それはいい、それはいいのだが……学院はてんやわんやであった、塔の壁は崩落しているし、けが人も大量に出たそうだ。

「ふーむ……こりゃ俺が手を貸した方がいいっぽいな」

 ドヴァキンさんは今までの旅である法則を発見していた、それは英雄級の活躍をするやつがいなくては何も解決しない事だ。これを歴史の動点と名づけた、ちょっとかっこいい。ストームクロークと帝国軍の争いもドヴァキンさんと言う戦略兵器を手に入れた方が勝利したのだ。

「この世界の英雄と言えば……アイツだろうな」

 今頃鹿狩りの最中であろう相棒に思いを馳せる、恐らくこれはルイズがどうにかするイベントなのだろうとドヴァキンさんは結論づける。ルイズにはしっかりと英雄の資格があるのだ、それはおいおい語るとして。
 ドヴァキンさんの頭の中に太鼓の音とモノローグが流れる、しっかりとクエストが開始されたのを確認してドヴァキンさんは感覚を研ぎ澄ませる。自分の直感が今どこに向かうべきか教えてくれる。幾度も道しるべとなり、ドヴァキンさんを英雄の道に引きずり込んだ感覚を信じてそちらの方に向かってみるとどうやら学院内にあるようだ。

「ふむ……不思議な建築洋式だな、スカイリムでは見たことない、あ。本ゲッチュー」

 恐らくこの騒動で吹き飛んだ誰かの本であろう、この世界に慣れたのか、アップデートパッチが飛んできたのか文字を読めるようになったドヴァキンさんはその本のタイトルを見つめる。
【ルイズのポエム集】
 こんな事が書いてあった。

「なになに? 私はレモンちゃん、とっても甘酸っぱくて……………………ぶっふぉ」

 思わず吹き出してしまう、後でルイズに見せつけて遊ぼうと心に決める。

ダンタタタン!
サブクエスト:ルイズの羞恥が開始されました!

 とまぁそれはあとのデザートにとっておこう、今はメインディッシュだ。とかなんとかやっている間に目的地に辿り着いてしまう、ドアノブに手を伸ばすが……鍵がかけられている、生意気な。
 得意の鍵開けでさっさと解錠して中に踏む込む。

「土くれのフーケを捕まえようと言う気概の持ち主はおらんのか?」

 お取り込み中だった。

「はい!」

 そこで挙手をしたのはドヴァキンさん、元気よく返事をして手を挙げると部屋の中に居た人間全てがドヴァキンさんを見つめる。完全に部外者を見る目ではあるが間違っていない、ドヴァキンさんは部外者だ。だがクエストが開始されてしまうと絶対に巻き込まれるのがドヴァキンさんクオリティだ、大人しく受けて報酬をもらっておいた方がいい。

「君は……ミスヴァリエールが召喚した使い魔の」

 禿げた男がメガネを上げながらドヴァキンさんの事を珍しそうに見つめている。

「ドヴァキンだ、よろしくな。禿げた御仁」

 ドヴァキンさんは蛮族でいらっしゃる、だが有効的である、利害が一致する内は。
 禿げた男に手を差し出して握手を求めると彼は逆の左手をとった、ドヴァキンさんの評価が下がった! 禿げた男の死刑カウントダウンが始まった!

「やや、これは珍しいルーンですな。メモメモ」

 とまぁ失礼な男だとドヴァキンさんは評価して正面にいる偉そうなヒゲの御仁を見つめる、見た目からして魔術使いであろうと予想出来るが如何せんスカイリムの世界で魔術師は……その、弱い。

「君が、代わりに行ってくれると言う訳かね?」

 老人の魔術師がそんな事をドヴァキンさんに訪ねてくる、どうせ断ってもおいおい行かなくちゃいけなくなるんだろうし、それにドヴァキンさんはニヤリと笑って交渉を始める事にするのだ。

「報酬次第だな、俺の善意に期待すると言うなら諦めろ」

「……ちなみに、これくらいでいかがかね?」

「もう一声だな」

「……ならば二百エキューでどうじゃ!」

「よし、契約成立だ」

 と、まぁ短い会話で契約が成立したドヴァキンさんと老人は硬い握手を交わし、ドヴァキンさんはこのクソクエをさっさと終わらせる為に背を向けてドアへと歩き出した。

「待って!」

 が、どうやらまだまだ話は終わらないらしくドヴァキンさんへと声をかける女性が一人、褐色の肌と燃えるような赤毛が魅力的な女性だ。

「貴方、ルイズの行き先を知らない? 親が昨日学院に探しに来ていたのよ! ルイズが行方知れずだって!」

 ドヴァキンさんとしては聞き逃せない魅力的な睦言を彼女は叫んだ。

「……ルイズは廃嫡されたはずだが」

「そんなわけないでしょう! ルイズの逮捕だって不当逮捕なんだから!」

 それを聞いたドヴァキンさんは顎に手を当てて、ヒゲを摩り始めた。
 どうやらドヴァキンさん以外にルイズの価値を理解している奴がいるようだ、だとすれば牢獄に居る間にルイズを引き込みに来たり、ルイズが朦朧としている時に攫ったり出来たはずなのだが……とドヴァキンさんは深く考え込む。
 まさかこちらの世界に闇の一党が存在するわけでもあるまいし、デイドラの気配だって薄いのだ、居ないと言う訳ではないがまさかこちらに信奉者が居て、そいつらに命令したと言うわけでもあるまい。

「……まさか、星霜の書がこちらにも? いや、その物はなくとも似たような効果を持った秘宝があってもおかしくない、未来を知った過去の人間、星霜の書とは違う未来を見る魔法具」

 ドヴァキンさんはブツブツと呟きながら自分の考えを纏める。
 その様子を褐色の女性は静かに見つめ、彼の結論を待っているようだ。

「君、名前は?」

「あ、あたし? き、キュルケよ」

「そうか、キュルケ。この件はルイズの親に君直々に伝えてほしい、ルイズは俺が保護している。後にそちらにルイズをしっかりと送り届けるとドヴァキンが言っていたと言伝を頼む」

 そう言い切るとドヴァキンさんはさっさとその場を後に歩みさってしまう、キュルケと名乗った女性はドヴァキンさんの後を追い。

「貴方はどうするの?」

 と訪ねてきた。

「泥棒退治」

 とだけ答えたドヴァキンさんは走り出してどこかへと行ってしまうのだ、すれ違いでミスロングビルが校長室に駆け込むのが見える、暫くぼーぜんと立っていたキュルケだが、ドヴァキンさんから頼まれた事を思い出して急ぎ足で伝書鳩の小屋へと向かうのだ。



[37347] メインクエスト:学院の至宝2
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/02 20:35
 心が道しるべとなるドヴァキンさんは学院の厩舎で馬を強奪……いや、お借りして自分の心が指し示す方向へと馬を走らせる。軍馬でもないのにフルプレートを着込んだ男を乗せて馬は走るのだ、ぶっちゃけ背中に乗っているこの男が怖いのだろう。
 何しろいつも、例え殺人を犯すときでも穏やかなドヴァキンさんの気配が剣呑なのだ。
 余談ではあるがドヴァキンさんは一般人から見ると悪である、気に入らない奴の脳天に斧をプレゼントするし、気に入った女とは人妻でもネンゴロになる、ドヴァキンさんの冒険譚はドラゴンが気に入らないから人間の味方に着いていただけなので、実は英雄から最も程遠い人物なのだ。
 故にドヴァキンさんは蛮族でいらっしゃる、そして自分の手から何かを奪うやつには容赦しないのがドヴァキンさんだ、つまりはルイズはドヴァキンさんの嫁……ではなさそうだが綺麗な玩具くらいの認識なのだろう、それを奪う事は万死に値するのである。

「……あいつちゃんと鹿狩り出来てんのかな、転んで泣いてやしないか?」

 前言撤回、出来の悪い娘のような認識である。
 蛮族思考とは言えど、ドヴァキンさんにも人の心はあったのだろう。

「しかし……なぁ、馬よ。俺の可愛い可愛いルイズをいじめるやつとか不届き千万だよなぁ?」

「ぶるる!?」

 急に話を振られた馬は『え、そこで俺に話しふんの!?』と驚いている、ドヴァキンさんは大量生産したダガーを馬の首に当てて。

「な?」

 と同意を求めた。

「ヒヒィーーーーーーーーン!」

 命の危機を感じた馬は高らかに鳴いて返事をする、よしよしと頷いたドヴァキンさんは思わず目的地を通りすぎてしまう。

「おいおい、そっちじゃないぜ。馬刺しがいいか? それともハムか? 嫌なら戻れよ」

 理不尽すぎる、馬は暴君を背の上に乗せながらそんな事を思う。
 この男はいつか馬の住むハルケギニアを滅ぼしてしまうのではないかと本能的に危機感を覚えてしまう、とにかく馬としても馬刺しもハムもお断りなので急いで彼が示す方向へと首を向けて走り、止まる。

「よくやった、堅実な仕事には相応しい報酬を」

 とドヴァキンさんは馬にりんごを与えてくれた、人が食べるような甘く品種改良されたりんごは馬を喜ばせた。

「そこに居ろよ、帰りも乗っけてくれたらもう一個……いや、もう二個くれてやる」

 ドヴァキンさんはそう言い放つと馬はりんごの味を覚えたのだろう、頷いて木陰に寄り添ってドヴァキンさんを待つようになった。
 ここで帰っていたら始末してドヴァキンさんとルイズの夕飯になったのだが……まぁ、今日はルイズの戦利品と冒険譚を酒の肴にする事で勘弁してやろう。
 ゆっくりと目標である炭焼き小屋へと接近する。

「Laas Yah Nir」

 囁くように叫んだ龍の言葉により、ドヴァキンさんの目には様々な生物がオーラとなって映し出されている、人型はいないと判断して小屋の中へと踏み込むと埃が舞い上がってドヴァキンさんを苛立たせる。目標は調べるべくもないだろう、埃を被っていないあの小箱だ。
 その小箱を蹴り開けるとドヴァキンさんにとってはなんの変哲もない、極小サイズの魂石は転がっていた、小動物の魂でも閉じ込めたのか極小のマジカを中から感じる。

「……宝箱を考えた野郎はクソだな、開けるといつもがっかりする」

 なんてボヤいて魂石を懐に仕舞いこみ、ドヴァキンさんはその場を後にするのだ。
 どうでもいい話だが、このお話のボスとなるフーケさんは魔法学院でがっくりと項垂れていたのであった。


報酬:新金貨で二百エキュー



[37347] 幕間 ついでにサブクエ
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/02 21:56
「どうよ、ドヴァキン! 私一人で出来たのよ!」

 野営地に帰るとえらいでしょうと言わんばかりに小さな胸を、そう、大変小さな丘のような胸を張ったルイズが出迎えてくれた。

「えらいえらい、そら、ご褒美だ」

 ドヴァキンさんも勝手知ったるやルイズの心なのでご褒美に金で出来た指輪をプレゼントしてやる、石はエメラルドを使った高級品で目の肥えたルイズを納得させるには十分の出来であった、ちなみにこちらの世界で同じものを買おうとしたらエキュー金貨で七千枚は必要になるそうな。

「も、貰っていいの!? 本当に!?」

「ああ、実直な仕事には相応しい報酬を……だ」

 ドヴァキンさんの言葉を聞いたルイズはそれをいそいそと左手薬指に嵌めて、焚き火に向かって翳してみている、キラキラと焚き火を反射するエメラルドの光がとても綺麗だ。

「えへへへ……ドヴァキンから貰ったゆっびわ~♪」

 ルイズのご機嫌は最高潮だ、ドヴァキンさん的には勝手に鉱山から鉱石を掘り出して勝手に人ん家の溶鉱炉を使ってインゴットを制作し、勝手に人ん家の鍛冶場で生成した物なのでそこまで喜ばれるとなんだかなぁと鹿のシチューに口をつける。あの指輪は元をたどってしまえば全部他人のものなのだが……まぁ気にするはずもない、ドヴァキンさんだし。

「さて、ルイズ。心してよく聞け」

 ルイズがひとしきり喜んで、冒険譚を自慢げに話して、冷めたシチューと硬くなったパンをかっこんでからドヴァキンさんは重々しく口を開いた。

「お前を殺したいと思っている奴がどうやら居るみたいだ。心当たりは?」

「……私はね、ゼロのルイズなのよ。魔法の才能もゼロ、両親からの期待もゼロ、名声もゼロ、誰かに恨まれた事も、誰かを恨んだ事もないわ」

 ドヴァキンさんの問いにルイズはドヴァキンさんすら一瞬怯える暗い瞳を見せた、劣等感の塊、卑屈になって卑屈になって、それでも昔は貴族の誇りが……父や母の名誉が押しとどめていたどす黒い感情が漏れたのだ、圧縮に圧縮を重ねており恐らくアルドゥインのそれよりどす黒い感情だろう。

「いちいち卑屈になるんじゃない、お前の価値は俺が一番理解している。誰がなんと言おうが俺だけはずっとお前の味方だ。お前が俺を背後から刺さない限り」

 そう言ってやるが……ルイズは自分と出会うべきではなかったと、デイドラですら殺せなかった自分を、いつか滅してしまうのではないかと、そんな予感がするのだ。

「まぁ、覚えがないなら断定は簡単だ。お前、多分未来を知る過去の人間あたりに命を狙われてる。それかここを知っている異世界人だ、デイドラみたいなもんだな」

 ケラケラとドヴァキンさんは笑う。
 異世界人だろうがデイドラだろうが過去から来た遺物だろうがドヴァキンさんの敵ではない、どんな強い力を持とうと、どんな絶大な能力を持っていようとドヴァキンさんは絶対に殺せない、ドヴァキンさんが世界に必要とされる限りドヴァキンさんは殺せない。

「……デイドラはよくわからないけど、何か手を打たなきゃいけないのね」

「そう言う事だ、でだ。ルイズよ、お前一回貴族に戻るか?」

 ドヴァキンさんが明日の夜飯どうする? と言った軽さでそんな事を尋ねるとルイズは手に持っていた蜂蜜酒の瓶を取り落とした。

「……嫌よ、絶対嫌よ! 戻るもんですか! 誰があんな所にもどるものかぁ!」

 短くなった髪を振り乱し、ルイズはそう叫ぶ。
 ドヴァキンさんは何度かコクコクと頷くとルイズの肩に手を置いた。

「んじゃ、戻らんでいい。いいが一度お前の生家に帰るぞ」

「嫌だって言ってるでしょ!」

 ドヴァキンさんの手を振り払い、ルイズは野営地の隅っこへと駆けて行ってしまう、ルイズの抱えている闇はデイドラ位に深いのかとドヴァキンさんは頬を指で掻く。しかしこいつの親御は一体全体ちっぽけなルイズに何を背負わせたのだろうか、相当な馬鹿である。自分と同じものが子供に背負えるとでも考えたのだろうか、それだったら死んだほうがいい、と言うかドヴァキンさんが殺す、目障りだから。

「とーちゃんとかーちゃん、嫌いなのか?」

 ドヴァキンさんは距離を保ったまま、その場にしゃがみこんでルイズに訊ねる。

「嫌いよ! 大嫌い!」

 ルイズの闇夜を切り裂くような声が返事として帰ってくる。

「そりゃどーして」

 とりあえず理由を聞かなくちゃ始まらないとドヴァキンさんは大きめの声でルイズに訊ねる。

「だって……私は、魔法を使えない、ありのままを受け入れて欲しかったのに、お父様とお母様は私を落胆したような表情で見つめるの。好きで産まれたわけじゃないのに、私に期待するの」

 好きで産まれたワケじゃない、つまりは大貴族に好きで産まれた訳ではないと言ったことであろうとドヴァキンさんは予想をつける。

「それはひどいなー」

 なんとなく分かる、ドヴァキンさんも似たようなものだった。
 お前はドラゴンボーンだとか、それだけで期待されるのも苦痛だった、結果ドヴァキンさんは最初は紳士的だったものの、こんな蛮族へと変貌を遂げたのだ。

「勝手に期待して、勝手に失望して、失敗すればみんなで私を罵るの。ゼロのルイズ! ゼロのルイズ!! ゼロのルイズ!!! 皆そればかり……私が、何をしたのよ。皆勝手よ、勝手すぎるわよ……」

 ルイズの慟哭、ドヴァキンさんは最初の頃を思い出して思わず苦笑してしまう、勝手に押し付けて勝手に期待して、できなければ罵るか殺しにかかってくる。もう奴らは生きてやしないがドヴァキンさんを罵っていた頃はとても楽しかっただろう

「だよな、ムカつくよなー。てめぇらは最初から与えられた物に食いついていればいいし、困ったらお前に押し付けてスッキリすればいい、誰も彼も助けて貰って当たり前、助けられないと奴らは口を揃えてこう言い放つ、お前はどれだけひどい奴なんだ! 死ね! 腹立つよなぁ」

 ドヴァキンさんは苦笑しながら頷きながらルイズの話に合わせてやる。

「そうよ、どうして私がこんなに合うのよ」

 言い切ったのだろう、ルイズの小さな胸の中ではまだ色々渦巻いているだろうが、だから一つだけ、彼女の救いとなればいいとドヴァキンさんが長い旅路で得た答えの一つを教えてあげる事にした。

「あいつらは、お前が怖いんだ」

 それを聞いたルイズはキョトンとした。

「普通魔法を失敗したら何も出ないんだろう? 予想だがな。んで、お前の魔法は爆発するんだろ? 最初出会った時になんとなくわかった、即ち奴らはこう感じているんだ。お前が偉大な魔法使いにでもなりやしないかってさ」

 ドヴァキンさんはまるで自分の事のようにそんな事を話す、ルイズは野営地の隅っこから四つん這いで恐る恐るとドヴァキンさんに接近する。

「理性では勿論お前を馬鹿にしている、じゃないと奴らの精神が持たないから、英雄も偉大な人物もはじめは絶対に変人奇人として扱われる、勿論俺もそうだった。俺とお前は凡人とは違う、奴ら全部が百年努力してもお前一人の一秒には勝てないんだ。だからいじめてスッキリする、わかりやすいだろう? お前に代えはない、奴らの代えは人類が絶滅するまで沢山ある、わかったか? お前は特別なんだ」

 ドヴァキンさんはまるで冗談をいうような口調でそんな事を宣う、だがこれは事実だ。
 実質問題ルイズは将来的にそんな役割を要求される。

「ふふ……変なの。わかったわ、ドヴァキンがそこまで言うなら、家族に一回会ってみようと思う。それからこれからを決めてもいいのよね?」

「おう、いいんじゃないか? ルイズの自由さ」

 ドラゴンが人を惑わす話など聞いた事がないが、導く話なら古今東西どこにでも存在する、ルイズはそんな中の一人、ドラゴンの化身に導かれて英雄への道を駆け上がる少女、そんなルイズの冒険譚。

「さて、ルイズの機嫌も直った所で、ちょっとした余興をな」

「え、なになに? まだ何かあるの?」

 意地悪なドラゴンに対して、少女は詰め寄る。

「じゃじゃーん」

 そしてドラゴンが取り出したのは即死呪文でも書かれている方がましな本、題名はルイズのポエム集。

「ちょ! それはダメよ! それだけはダメなのよぉ!」

 少女の恥ずかしがる声が一晩中野営地の近隣に響いた。



[37347] メインクエスト:ヴァリエール卿の憂鬱(上)
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/23 05:17
 最近の世の中は便利になったと思う、何しろただの山賊が立派な軍馬を三匹も飼っていたのだからこれをいただかない手はない。
 とは言え、ドヴァキンさんの表情は険しい、何故ならルイズが調子に乗っているから。

「ふふーん、私だって得意な事の一つ二つはあるのよ」

 などと得意げに語るルイズは馬の上だ。
 男顔負けの見事な乗馬ではあるが、これじゃうるさくてかなわない、かと言ってルイズにレースでも挑んでみろ。
 ドヴァキンさんの権威は失墜してしまうだろう、だからドヴァキンさんは懐に手を突っ込んで、ルイズ限定に効く魔法の本を引っ張り出すのだ。

「トリスタニアまで届く大きな声で、読んじゃうぞ?」

「ごめんなさい」

 素直に謝ったルイズに免じてレモンちゃんポエムは懐に再び封印しておく、ちなみにここは既にヴァリエール領の街道で、そんな所からトリスタニアまで声が届く訳が無いと諸兄はお考えであろう、人型の姿に騙されつつあるがドヴァキンさんは歩くドラゴンだ、不可能は殆どない。
 やれるものならやってみろなんて言うとドヴァキンさんは本当にやる、だいたい最近の楽しみがルイズを弄り回す事なのでやるなと言われてもやってみたいのが内心なのだ。

「ねえドヴァキン」

 隣で馬を歩かせているルイズが不安そうな声を出し、俯いている。

「……家族に会うのは、やっぱり怖いか?」

「うん」

 ドヴァキンさんの言葉に素直に頷くルイズ。
 そんな彼女を見て、ドヴァキンさんは手を伸ばしてはルイズの頭をワシャワシャっと撫でてやる、気持ちよさそうに目を閉じるルイズに優しい言葉をかけるべく思案を巡らせて口を開く。

「そうだな、落胆されるかも知れないし、お前はもしかしたら幽閉されるかも知れない」

 撫でている手から体をすくませたのが伝わってくる。

「それでも、お前は姿を見せて安心させてやれ」

 ドヴァキンさんが居たスカイリムは内戦中であった、子供を探して欲しいと見知らぬババアに縋り付かれた事が何度もある。
 親と言うのはいくつになっても子供の事が心配なのだろう、ただし馬鹿は除く。

「閉じ込められたら、そうだな。王子様には到底見えない俺が攫いに行ってやるさ」

「浮浪者に攫われるお姫様ってやつね」

「ロマンの欠片もねぇ一言だな……」

 せめて悪い騎士に攫われるお姫さま位は言って欲しかったドヴァキンさんではあるが、仕える者のいない騎士ほど格好がつかないものもないだろう。

「ロマンがなくてもいいのよ、私は現実主義者だもの」

 得意げに笑うルイズにムカついたのでレモンちゃんポエムの封印を解き放つ。

「ほぉ、現実主義者」

「……それ出すのやめてよね」



[37347] メインクエスト:ヴァリエール卿の憂鬱(中)
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/25 17:45
 剣呑は雰囲気が辺りを支配している。

「ですから! 私は貴族に戻る気などありません!」

 原因は可愛らしいルイズ嬢のこの発現である、先ほど、似たような言葉を聞いたルイズママとルイズパパは二人揃って卒倒してしまい、暫し会議は中断となってしまった。

「ならん!」

 そしてその雰囲気に火に油どころかナパーム弾をブチ込むが如く、ルイズパパは怒鳴るのだ、そりゃ手塩に育てた愛娘が貴族をやめるなんて言い出せば必死で止めるだろう。
 おまけに原因は山賊のような筋骨隆々の男と来ている、止めない親だったらドヴァキンさんはこの場で皆殺しにしていたであろう。

「大体、あんな粗野な男とくっつくなんて、ワシは許さんぞ!」

「お父様はドヴァキンの良さをわかってないのよ!」

「いくら良い奴でもあんな蛮族みたいな男は許さん! まだ平民の犬のような少年を連れて来た方がマシだ!」

「そんなフニャチン野郎私の方からお断りよ!」

「ふ、ふにゃち……どこでそんな言葉を学んだのだ! ダメだと言ったらダメだ!」

「あーらお父様、娘がまだ純真だと信じていたのかしら? 残念ね! 人は汚れる者なのよ!」

「ええい、そこの蛮族だな。そこの蛮族が汚したのだな!」

「ドヴァキンよりもっと前よ! そもそも体はまだ汚れないわよ!」

わーわー、ぎゃーぎゃー。
 すっかり話がずれ込んでしまっている親子の会話をドヴァキンさんは部屋の隅で寝っ転がりながら眺めている、どうやらルイズはしっかりと愛されているようで家族全員が集結してルイズの行く末を決める大議論をしている。
 思わず大きな欠伸が出てしまう、親子の熱い戦いを見つめ続けるのも飽きてしまった。

「お暇そうですね」

 どこかに遊びに行ってこようかな、なんて考えているとドヴァキンさんの頭上から声がかけられる。

「……ルイズそっくりだな」

 声をかけた御仁はどうやらルイズの姉であったようでふんわりとした鳶色の髪と顔立ちはルイズをそのまま大きくしたような姿だった。

「ええ、ルイズの姉ですから」

 柔らかく微笑んだ女性はドヴァキンさんの隣に緩やかに腰を下ろすと軽く咳をして見せた、どうやら病気らしい。

「ケホッ……ケホッ……失礼しました」

 病弱そうな表情で微笑む、ルイズの姉とやら、そう言えばルイズの話に出てきたカトレアと言う名前の女性もこんな見た目で病弱だと聞いていた。

「いいや、気にしないでいい。あんた、俺に構ってくれたしこれやるよ」

 そう言ってドヴァキンさんが差し出した薬は疾病退散の薬、拾った草をゴリゴリして生み出した全ての病に対する特効薬である。

「まぁ、ありがとうございます」

 緩やかに受け取ったカトレアはそれを飲んで一息ついて微笑んでみせた。

「まぁ、体が楽になりましたわ……あ、あれ、本当に楽に……」

 お世辞でも言うつもりだったのだろう、しかしタムリエルの技術を馬鹿にしてはいけない、飲んだその場で効くのがタムリエルのお薬なのだ、タムリエルでは病死はないのである。
 ドヴァキンさんは困惑の極みにあるカトレアを横目で見て、さらにカバンから薬を引っ張り出す、体力回復にスタミナ回復、さらには本編には一切登場しないがルイズ用にドヴァキンさんが丹精込めて作った下痢止めを並べて見せる。

「……いくらで買う?」

 ちょっとしたいたずら心でそんな事を尋ねてみるとカトレアは目を輝かせて走り出していった、先程まで言い争いをしていたヴァリエール一家がポカーンとした表情で走り出したカトレアを見送っている。

「あ、ああああああああ、あんた。ちい姉さまに何をしたのよ!」

 ルイズが飛びかからんばかりの勢いでドヴァキンさんの胸ぐらを掴み、唾を飛ばしながら怒鳴る。

「お薬を飲ませただけさ」

 と言って差し出したのはムラムラリンΔ、ルイズにいたずらで飲ませたえっちな気分になるお薬である。

「なんて事したのよーーーーーーー!!!!」

「わっはっはっはー」

 がっくんがっくんとドヴァキンさんを揺らすルイズ、このパターンは嘘をついてからかわれているとまだ学習しない辺りがルイズらしい。

「き、君、私の娘に何をしたのかね」

 そしてルイズパパが怒りに顔を真っ赤にしつつ、体を震わせながらそんな事を尋ねてきた。

「さぁ、何をしたでしょうか?」

 にまぁと邪悪に笑って見せるドヴァキンさんに対して、ルイズパパは杖を抜き放って見せた。
「おや、それはなんのつもりですかな?」

 主語は恩人の俺に対して。

「貴公が恩人であっても、娘に悪行を働く輩を野放しにはできぬ!」

 そんな風に静かに叫んだルイズパパは口の中で呪文を唱えつつもドヴァキンさんが襲いかかってきたらすぐさま対応出来るように膝を曲げる、だが彼の表情は険しい、恐らく年のせいで若い頃のように動けるかどうか不安なのであろう。

「そうか、そうか」

 そしてドヴァキンさんは腰の剣に手を伸ばして。

「別に危害は加えてねーよ、ほれ」

 鞘ごと外すと、ルイズパパの足元に放り投げて見せた。
 戦う気はないと言う意思表示、ルイズパパはそう受け取って杖を収める。
 武器を持たなければ戦闘力はない、普通の一般人ならそうである、ただしドヴァキンさんは逸般人である、素手でもドラゴンを殴り殺せる男は武器があれば早く殺せる程度でさして代わりはないのである。

「では、娘に何を……?」

「それは娘さんに聞きな、俺は遊びに行ってくるから」

 とドヴァキンさんは言い切ってさっさと部屋を出て行ってしまうのだ。
 それから五分位で金貨箱を担ぎ、息を切らせたカトレアが飛び込んできたが、ドヴァキンさんが居た辺りにはプレゼントフォーユーと書かれた紙と沢山の薬、それと用法と効果が書かれた紙が転がっているだけであった。
 どうでもいいが今回起こした気紛れに対する報酬は夜に忍び込んできたむっちり美女だったと言う。



[37347] メインクエスト:ヴァリエール卿の憂鬱(下)
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/25 21:15
 相変わらず、ルイズとルイズパパの言い争いは白熱しているらしいとはカトレアからの情報だ、何がしたいのかここ一週間、ずっとドヴァキンさんにくっついて来ている。

「えい♪」

「ぶぎゅああああああああ!?」

 今も楽しそうにドヴァキンさんから貰った両手斧でオークを殲滅している、魔法使えよぅ……。
 ともかく、このカトレア嬢はルイズの代役としてはそこそこだ。
 弓による援護がない代わりに、斧を使った近接戦闘を行い、敵の攻撃をフルプレートを纏った鎧で受け止めている、あれが大砲の弾すら弾き返すドヴァキンさん謹製の伝説的なスチールプレートで無ければとっくに死んでいるのだが……まぁ気にしないでいいだろう。

「ドヴァキンさん、見てくださいましたか? わたくし、オークを一人でやっつけたのですよ」

「ああ、うん」

 どうにもやりづらい、ルイズと違ってからかってもおしとやかに笑っているだけだし、最初は動物の血で泣いていたルイズと比べて、カトレアは全身を敵の血で真っ赤に染めてもケロリとしている。

「体を動かすのは、楽しいですね」

「う、うん」

 ドヴァキンさんが押されている。
 ルイズをからかって、商会を騙して、ドラゴンを説得するドヴァキンさんの話術が一切通用しない怪物、それがカトレアなのだ。
 そもそも、カトレアはまともにドヴァキンの話を聞く気がないのだ、このカトレア嬢、タムリエル在住だった頃のドヴァキンさんと同じく極混沌と言った属性を有していらっしゃる、つまり、自分のやりたい事以外絶対やらない、やりたい事は他人に迷惑がかかろうがやり遂げる。
 第二のドヴァキンさん爆誕の瞬間だった、それに元々才能があったのか、メキメキと戦いの腕をあげてきているのだ。
 夜、あの儚い感じで喘いでいた美女とは思えない変貌ぶりである。

「そろそろお昼にいたしませんか? 狩ってきたんです、わたくし、血の滴るお肉なんて初めてです♪」

「あ、はい」

 差し出された生肉を受け取って、ドヴァキンさんはそれを齧る。
 齧りながら、

(気まぐれの報酬にしては高くつきすぎたなぁ)

 なんて考えて、思わず溜め息を吐いてしまった。
 ルイズの姉だからいつも通りに行方不明にする事は出来ないし、そもそもこいつはそれが分かって着いて来ているのだし、撒こうにもいつの間にか背後にいるし、どうしようもない。

「……これが、詰みか」

「ですね」

「……………………おのれ」

 ドヴァキンさんを玩具に出来る人物など、二つの世界を合わせても数える程しかいないだろう、デイドラですら欺くドヴァキンさんは困りきってしまう。
 おしとやかな顔をのっけながらワイルドに肉を齧るカトレアを見つめて、ドヴァキンさんは忌々しそうにそう言った、何を言っても無駄なのはわかっている、自分がそうだから。

「……ん?」

 ドヴァキンさんは怪訝そうな表情をすると顔を上げて辺りを見渡し始める、微弱な気配を感じているのだ。
 敵、にしては殺気も何もかもが無さ過ぎて、通行人にしては気配を意図的に消しすぎている、そして明らかにこちらを観察している。

「……密偵か?」

 それにしては随分と疎かな気配の消し方だ、首を傾げていると目の前に両手で木の枝を持ち、真剣な表情でこちらを伺っている白いドレスを着た女性が通った。

「……あれ、誰?」

 思わず素に戻ってカトレアに尋ねてしまう。

「アンリエッタ姫殿下です」

 トリステインオワタ。
 ではなく、一国の姫があんな冗談みたいな真似をして何故こちらを伺っているのだろう。

「……よし、無視しよう」

 ドヴァキンさんは思わず決意してしまう、アレと関わったらロクな目に合わない気がする、今日は帰ってルイズを慰めて、ご飯食べて寝ようと決めてカトレアを無理矢理自分の傍へと引き寄せる。

「あ、ドヴァキンさん、まだお昼ですよ? もう、えっち」

「ちげーよ、帰るんだよ、あれは関わっちゃいけない部類だよ、デイドラクラスだよ」

 デイドラに関わる、どうなるか諸兄ならわかるだろう。
 数々の冒険譚で助けられたドヴァキンさんの勘はにぶっちゃいない、あれは関わったらロクでもないことになるタイプだと判断したドヴァキンさんはカトレアを抱えてさっさと撤退してしまう、残されたアンリエッタは少しだけ寂しそうだ。



 さて、未知でありたい者の遭遇から五日、ようやくルイズとルイズパパとの談義は終わったらしく、ドヴァキンさんを引き連れてルイズはゆっくりとヴァリエール街道を通っていた。

「なぁルイズよ」

「なぁに、ドヴァキン」

「……あれ、お前のかーちゃんだよな」

 アレとドヴァキンさんが指差した方向に居るのは古臭い騎士服をきて、蝶の仮面を纏った女性、カリーヌ・デジレさんである。

「ちがうぞ、私はなぞの騎士! ヴァリエール卿!」

 最早謎でもなんでもない。

「違うわ、あれはヴァリエールの草原に出る妖精さんよ。そう言う事にしておいて、お願いだから」

 ルイズは歯を食いしばり、拳を血がにじむ位に強く引き締めてそんな事を言い放つ、ドヴァキンさんはなんとなく察してやり、ルイズの肩を優しく抱くのであった。

「私はなぞの騎士だ! 断じて妖精さんではない!」

 そしてカリーヌさんも引かない、ドヴァキンさんが困り果てて、ルイズが現実逃避をし始めた頃にルイズパパが急いで馬を駆って駆けつけてくれた。

「こら、カリーヌ! ルイズに迷惑をかけるんじゃない!」

 ぽかりと軽くカリーヌの頭を叩いたルイズパパ、ルイズはそんな父を頼もしそうな目で見つめている。

「うっ……痛い……」

 ぶたれたカリーヌは叩かれた部分を押さえてそんな切なげな声を出してルイズパパを見つめる。

「ぶった……サンドリオンがボクをぶった!」

 ボク? とルイズは首を傾げる、恐らくいつもと一人称が違うのであろう、だがそんなちっぽけな疑問などこの後に起こる事に比べたら大したことではない。

「サンドリオンがボクをぶったぁぁぁぁぁぁぁ! ぶええええええええええええええええええ!!!!」

 ドヴァキンさんのシャウト並、もしくはそれ以上の大きな声でカリーヌは泣き出したのだ、思わず両耳を押さえてしまうドヴァキンさんとルイズ、そしてオロオロしだすルイズパパ、もといサンドリオン。
 気のせいか泣きじゃくるカリーヌの後ろにルイズにそっくりな少女の幻影が見える。

「ああ、カリン。その……すまなかった、だから泣き止んでおくれ」

 ルイズパパも困りきってしまい、一生懸命にカリーヌを慰めている。
 ドヴァキンさんは溜め息を吐くとルイズを抱えてその場を後にするのだ、もう相手にしていられない、この家族カオス過ぎである。
 一年後にルイズの弟が誕生したらしいと噂を聞いて確かめるのは別の話。



[37347] サブクエスト:妖精のお願い
Name: 爆弾男◆54f29dc4 ID:773cdfc8
Date: 2013/05/30 22:51
 ルイズは元々お嬢様である、しかも大公爵家のご令嬢であるからして王宮作法や茶会作法などには異常に長けている、故に普段のルイズが行っている仕事などはドヴァキンさんの野盗退治や護衛などとは全く逆の仕事を行っている。

「暇だな」

 そしてルイズの仕事は食いっぱぐれがない、稼ぐ量はドヴァキンさんの方が上ではあるが日々の糧などは完全にルイズ頼りになってしまう。
 ニートに片足を突っ込んでいるドヴァキンさんは魅惑の妖精亭の二階でそんな事をボヤいた、間借り代を支払ってちょっとした宿代わりにしているここはお世辞にも綺麗とは言えない環境であるが、ルイズに不満はないらしい。

「ちょっとぉ、ドヴァキンちゃん。手伝って欲しい事があるんだけどぉ」

 まるでシェオゴラスの領域から出てきたような御仁、魅惑の妖精亭店主のミ・マドモワゼルが遠慮がちに声をかけてきた。

「ん、スカロンさんか。何か用?」

「んもう! ミ・マドモワゼルって呼んでちょうだい!」

 この見た目だけで判断されそうな御仁とドヴァキンさんの仲はトリステインで一番か二番を争うくらいに良好だ、ドヴァキンさんを自分の都合で利用しない奇特な人物と言ってもいい、ふと親友であったレイロフを思い出してしまうが……流石に怒られそうなのでレイロフに謝罪をしておく。

「で、なんか用なの?」

 ドヴァキンさんはルイズの匂いがするベッドから起き上がると体を大きく伸ばして、彼、または彼女に軽い調子で尋ねる。

「あ、そうなのよぉ~。夕飯豪華にするから、お使いに行って欲しいの」

「うん、いいよ。今日の夕飯にソーセージおまけしろよ」

「山盛りでつけちゃうわ!」




 ドヴァキンさん、初めてのお使いはこんな感じで開始された。
 どうにも魔法学院のシエスタなる姪っ子に流行りの服を送りたいとの事、これで山盛りソーセージが夕飯に追加される、なんて生き易い世界なのだろうか。
 お使いに行く前に洗剤が切れていたからついでに補充してやろうと商店に寄ってみると妙に質素な店主が対応してくれた。

「商品を見せてくれ」

「みんなはガラクタって呼ぶけど、俺は宝物って呼んでる」

 売りたいのか売りたくないのか分からないセリフを言われてドヴァキンさんは洗濯用石鹸を購入し、さっさと学院に向かおうと王都前に駐留する馬車に接近するのだ。

「乗ってくかい?」

「ああ、学院前まで頼む」

 ちゃりちゃりの銀貨を渡して後ろの荷台に乗り込むと御者が声をかけてきた。

「魔法学院へは始めてか? あそこの女子生徒のスカートは一見の価値有りだ」

「不敬罪でしょっぴかれる前に早く行け」

 どうして馬車の御者と言うのはあっちもこっちもおしゃべり放題なのだろうか、確かにトリステイン魔法学院の女子制服はミニスカートだ、だがしかし、ミニスカートより見るべき所があるとドヴァキンさんは断言する。
 トリステインの文化にブラジャーはない、そこで地肌にそのままYシャツを着ているのだ、つまりポッチが出て透ける、そう、ポッチが透けるのだ!

「エロイのう」

「エロいよなぁ」

 ドヴァキンさんはいつの間にか隣に座っている人物の言葉に相槌を打ってやる。

「……なぁ、アズラ。お前なんでここに居るんだ?」

「なんだ、妾が居てはいかんのか」

「いかんでしょ」

「安心しろ、幻影だ」

 どうやらこの世界でもデイドラは信仰されているらしい、デイゴンとか来てしまったら世界がヤバイ、ルイズも薄い本に出る事になってしまう。

「何、今日は旧友に警告をしに来ただけだ」

 旧友、これほど信用ならない友人認定もないもんだ。

「あのルイジュとか言う小娘に関わっていると……貴様死ぬぞ」

「ルイズな」

「小娘の名前なんぞどうでもいい、だが……あの小娘の力は危険だ」

「俺に消せってか?」

「そこまでは望んでおらん、だが忘れるな。この世界で貴様を滅する事が出来るのがあの小娘だけであると」

「俺のラスボス化フラグですね、わかります」

「ふっ、精々そうならぬように気をつけるのだな、ドヴァーキン、我らがデイドラに立ち向かう勇者よ」

「……何百年前にも居ただろ、クヴァッチの英雄がよ」

「フフフ」

 アズラは言いたいことだけ言うとさっさと消え失せてしまった、残されたのは憮然としたドヴァキンさんとアズラの発する気配にビビリまくった御者だけだ。

「ナイチンゲールよ」

「もうええわ」

 ノクターナルまでこんにちはしやがった。
 結局今日だけでアズラ、メリディア、ノクターナル、ナミラがお見えになった。
 原因は恐らく彼らのクエストをクリアした際に要求した報酬、一晩相手にしろが効いているのだろう、自分でもつくづくアホだと思う。
 とは言え無事に学院に辿り着いたドヴァキンさんは、スカロン氏の姪っ子を探す為にあちこち適当に歩き始める。

「シエスタ、だっけか」

 出立前に聞いた名前、お昼寝を冠する変わった名前を持つ女性を探す。
 黒髪に大きめのお乳なんて特徴で探しているが……どうにも姿が見えない、正直このパターンにも覚えはある。

「……こりゃ別のところにお使いさせられるフラグだな、夕飯は抜きか」

 そんな自嘲めいた事を呟いたドヴァキンさんは食堂の方にシエスタの所在を尋ねる為に足を運び、案の定彼女は実家に帰宅しているとの情報を得てしまう。
 ドヴァキンさんのちっぽけな冒険はまだまだ続きそうだ。


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