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[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました。(不定期更新、駄文、オリ主)
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2019/04/19 23:18
はじめましての方はじめまして、獅子座です。

その他板で別の作品書いている際に息抜きで書いた作品の修正です。

不定期で更新な駄作です。

ちなみにオリ主シリーズは鬼門でして、うまくいくかわかりませんので生暖かく見守ってください。

しょうもない作品ですがよろしくお願いします。



※2019/04/19 色々な方々にご提案頂きました通りハーメルンに移動します。あれから色々ありまして更新ができませんで申し訳ありません。少しずつ引越しをしていきます。最終的にはこちらは全部削除します。ではまた。



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第一話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/17 23:57
「はあ……」


 ため息をつきながら、とある一室へと向かう男が一人。銀色の髪に中性的な顔、細い身体。一見すると女性と間違えてしまうほどに彼は美人であった。道すがらすれ違う局員達から熱い視線を送られる。

 彼の名前は最上千早、今年で19になる。とある事情により時空管理局に務める事となった


「はあ……やっぱりSTSの世界だよなぁ……」


 などとブツブツ言いながら歩く姿、普通なら歩きながら一人ボソボソと喋る奴なんて気味が悪いが、彼の容姿の御陰かそれすらも美しく見える


「なんで無印じゃない……ASでもよかった……」


 目的地にたどり着くと、ドアの前で呟く



≪コンコン≫



『は~い』


 ドアをノックすると、向うからおっとりとした声が聞こえてくる。それを確認するとドアを開け


「なんで……なんで……」

「ごめんな、急に呼び出して、知ってると思うけど……」

「なんでお前は19歳なんだぁああ!!!!」

「入って来て、早々訳わからんこと言うなぁああ!!!」


 入室そうそう殴られた、グウで……



 ……

 ………

 …………



 最上千早 19歳。彼は現実からの転生者、彼が今いる世界は『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の世界であった……

 彼は数年前にこの世界に転移してきた。とある辺境地にて、かなりの魔力を感じとった時空管理局では人員を派遣する。選ばれたメンバーがはやて、ヴィータ、シグナムの三人。彼女らが向かった先には一人の男性が眠っていた。周囲の大地が削られクレーターがそこにあり、その中心で安らかな寝息をたてる彼を保護すると、そのまま連れ帰ったのである。

 その後が大変であった。いきなり知らない場所に連れてこられてかなり混乱し、狼狽える少年。しかし、その場に小さな局員がいることに気づくと大人しくなった。急に大人しくなった彼は、妙な事にこちらの発言に対し素直に答えるようになったのである。そうして質問していくうちに、「なんだそういうパターンか」「大丈夫、この手のパターンは読み尽くした」などと意味の解らない事を言い出す少年に、精神汚染の疑いがあるという事ですぐさま検査を行ったのであった。

 そうして、その検査中に小さな医務官が立ち会うと、急激に魔力が増大するという事があった。それを見つけた管理局の職員達は、彼を適正検査へと回す。当初、拒絶されるであろうと予想していた彼らは、少年が即答したことには驚いていた。そうして、そのまま試験場へと連れて行かれた際、小さな教導官が監修する試験を受けることになった少年は、職員達の予想を上回る結果を残し、合格を果たしたのであった。そうして訓練校へと入り、教育を受け続けた結果、今の地位に至るわけである……



「会っていきなり暴力をふるう。これだから年増は……」


 殴られた頬を摩りながら、悪態をつく


「誰が年増や!私はまだ19や!」

「ぶげらっ!」


 今度は腰を落とし、溜めた右からのアッパーを顎に受け天井に吹っ飛ぶ千早。そうして落ちてくるのを確認すると彼女は、両手を腰にあて、仁王立ちで怒る。彼女と悪態をつく男性を見ながら中にいたもう一人の女性が苦笑しながら


「ま、まあまあ、はやて落ち着いて……」


 傍により、宥める。それでも彼女の怒りは収まらないようで鼻息が荒い


「……えと、初めまして、私はフェイト・T・ハラオウン。時空管理局本局執務官を務めています」


 とりあえず、はやてが落ち着くまで話が進まないので、顎ををさすりながら起き上がろうとする千早に手を貸しながら自己紹介をする


「失礼しました。思わず取り乱しまして。最上千早二等陸尉です……」


 彼女の自己紹介に真顔で返事をする彼を見て、思わず見とれるフェイト。スラリと長い睫毛、手入れが行き届いている綺麗な銀色の髪、そして嫌味の無い笑顔。どれをとっても男性には見えない。そしてその健やかな顔の持ち主が、先程はやてにボコボコにされていたのと同一人物には見えない


「しかし、フェイト執務官、残念です。できれば10年前にお会いしたかった……」


 はい?と首を傾げる。どういう意味なんだろうと考えていると


「10年前の貴方は実に素晴らしい。無口で悲壮感漂う貴方を愛でる事が出来ないなんて……」


 何故だか知らないが、10年前に出会わなくてよかったと思うフェイト。多分この人変だ……


「はあ、相変わらずやね。その性癖」

「は?性癖?」


 ため息をつきながらやれやれと言った感じで両手を左右に振るはやて、それに対して彼女と千早の顔を交互に見るフェイト


「そ、性癖、彼重度のロリコンなんよ」

「ロリコンって、そんな犯罪予備軍みたいな人が管理局にいてもいいの!?」


 もっともである。個人の趣味で仕事が決まる訳ではないが、余りいいイメージではない。しかし、犯罪予備軍って酷い言われようである


「八神二佐、フェイト執務官。それは間違っています!」


 動揺する彼女を他所に真面目な顔で真っ向から否定する千早、その表情は凛々しく、プライドを傷つけられたことに怒っているように見える


「そ、そうよね……いくらなんでもロリコンなんてね……」


 そう、そんなはず無い。いくら彼の言動がおかしいからってロリコンなはずが……


「そうです!私は小さい子が好きなだけです!小さい子が安全に遊んで暮らせる世界を守り、遠くから愛でるだけです。父親になりたいだけです。ただ、一緒にお風呂に入りたいだけです!!」


 うん、何が違うのか、さっぱり解らないけど。とりあえずこの人気持ち悪い……


「いいですか?そもそもですね……」


 それから暫くは彼の演説を聞く羽目になる二人、今日も彼は絶好調である。やれ『幼女とは遠くから愛でるものであって摘んではならない』だの、『愚かな一部の暴走者により我々の尊厳は軽蔑へと変わっていた』とか、『ロリコンと小さいもの好きは違う』といった御高説が延々と1時間に渡って続く。止まらない演説にはやては資料の確認作業をしながら耳を傾けつつ流し、慣れていないフェイトは『え、ええ、そうね』と相槌をうつことしかできない


「という訳です。分かって頂けましたか?お二人とも」


 最後にコホンと咳払いをすると、締めくくる千早


「あ~わかった、わかったから、で今日呼び出した件なんやけど」


 彼の事には慣れているはやては、うっとおしそうに手をふりながら話を続ける。ちなみに、我らがフェイト氏は


「……え、ええ」


 盛大に引いており、最初の印象はどこへやら、青白い顔をして彼からかなり離れている。その距離は凡人であれば落ち込むくらい……

 自分の影に隠れる彼女を見て苦笑しながら、千早の前までいきコホンと咳払いをすると

「実はな私、新しい部署を立ち上げる事になったんや。それでな」

「お断りします」

「まだ、何も言うとらへんやん」

「嫌な予感がしますので……」

「ヴィータちゃんもおるで」

「解りました。で、いつ出向すればいいんですか?」


 勧誘時間僅か数秒、たった一言で彼の配属先が決まった。彼がこれから所属するは、八神はやてが新設した古代遺物管理部 機動六課、通称六課。ロストロギア関連の危険な任務を扱う実働部隊でありレリックの回収が先任となっている。そんな危険な仕事をするのは基本大嫌いな彼であるが、はやての巧みな交渉術により、六課への転属が決まったのである


「それでは失礼します」


 ……

 …………



「彼を引き抜いてよかったの?はやて」


 細かな手続きと、説明を終わらせ、千早が立ち去った執務室で不安げなフェイトがはやてに質問する


「ああ、問題ない。彼はあー見えて紳士的やし」


 どこをどうとったら紳士的なのか、先程ボッコボッコにしておいてどの口が言うのかと不審な目で見る


「まあ、特殊な癖はあるけどな、腕は中々のもんやで?」

「そうなの?」

「模擬戦でなのはちゃんと互角に渡りおうたくらいやし」


 その一言に驚くフェイト、高町なのは、彼女の実力を知らない者はいない。その強さを誰よりも知っている彼女は信じられないと言った感じではやてを見る


「ただし……ある条件が整ったらやけどな……」


 窓の外を眺めながら呟く……


「条件?」

「12歳未満の女の子が見ている前だけは互角、それ以外は惨敗……」

「そ、そう……」





「私は12歳以上の女性には手加減しない……年増よ」

「……少し頭冷やそっか?」



 HAHAHA笑えないよ?さあ、始めましょうか?OHANASHIをね?とりあえず、非殺傷設定は解除しちゃおうっか?


 などと言ったやり取りがあったかどうかは知りません……



 現在模擬戦の真っただ中、空と地上には二つの影、一つは純白のバリアジャケットを着た栗色の髪の女性、もう一つは銀色のバリアジャケット。その二つの影が先程からぶつかりあっては距離を取るが、それを見越していたのか、ピンク色の誘導弾が彼の周りを取り囲む

 その光景を見ていた誰もが、あ、アイツ終わった……誰もが思ったが、しかし


「ふ、私にも敵が見える……」


 上下左右360度誘導弾に囲まれていた銀髪の局員の動きが変わる。無数の魔力の弾丸を紙一重で避けながら飛び回る。目標から外れた弾丸はビルや地上に着弾すると爆ぜる


「凄い凄い!!なら次は!?」


 少し驚いた様子で語りかけると、空宙で静止する。そうしてゆっくりと彼女の相棒『レイジングハート・エクセリオン』を彼に向ける。その様子を見ている誰もが、アイツ死んだなと思った。しかし、彼は動じる様子も無くその光景を見つめていた。極大の桃色の光がデバイスの先に集まり収縮されると、ぎゅいんぎゅいんと物騒な音を立てる


「ディバイン……バスタァアア!!」


 迫る桃色の閃光。回避は絶対に不可能、彼はこれで終わった。誰もがそう思った。普段の彼ならそうだろう。しかし、今日は違う


「見えた!見えたぞ!水のひとしずくぅう!!」


 閃光をひらりと交わすと、魔導弾を放つ。見学に来ていた人間全てが驚愕していた

 今日の彼は言うならば、水を得た魚。何故彼がここまで強いか、それは……


「すごいですぅ!なのはさんのディバインバスターを見事にかわしていますぅ!」


 30cmくらいしかない小さな身体で飛び跳ねながら、驚きを表現する髪の長い少女が一人。そんな彼女の姿に苦笑しながら


「そうやね」


 疲れたようにごちるはやてがいた。彼女は気づいていた。彼がことあるごとに自分達の方へ視線を向けている事に。否、違う。彼の視線に写るのは


「資料で見た時はそんなこと無かったのに、彼は実戦で伸びるタイプなんですかねぇ」


 可愛い顔で首を捻りながら、飛び交う二人を見ながら考察する彼女を見て、ため息をつく


「ああ、違うと思う」

「では、なんででしょう?」


 それは簡単な理由……


「ふ、小さいは正義!リインフォースよ私を導いてくれ……白い年増、否、魔法熟女よ!」

「と、年……ってまた言ったぁ!違うよ!まだ19だもん!それにさらっと熟女って!?」

「14歳以上は熟女なのだよ!!その年で少女だと?エース・オブ・エース(本気?)と呼ばれて恥ずかしくないのか!」

「ロリコン・オブ・ロリコン(引き)って呼ばれてる人に言われたくなぁ~いぃ!!後、うしろの括弧ムカツクの!!」

「俺はロリコンじゃない!小さい子が好きなだけだぁああ!!小さい子の頭を洗いたいだけだぁあ!!それが分らんとは、これだから年増(笑)は!!」

「それをロリコンって言うの!!また年増って言ったぁ!しかも(笑)をつけないでぇ!?」


 妙なやり取りをしながら模擬戦を繰り広げる二人。模擬戦としての内容はものすごく濃いものであるのだが、二人の会話が緊張感というものを全て蔑ろにしてしまっている。見ているほとんどの人がモニターの音声をOFFにしている。そうして決着は結局つかないまま終了するのであった……




 最上千早 転生者 相変わらず幼女と小さい物が好きである。人は彼の事をこう呼ぶ。『ロリコン・オブ・ロリコン』と……






「まずは、今日はみんな、集まってくれてありがとう」


 壇上に立つと、集まった隊員達を一望すると一言全員に向かい頭を下げる。古代遺失物管理部隊機動六課の設立式、管理局の若きホープ八神はやてが総部隊長を務めるという事で話題を呼ぶ、試験的な運用新部隊である。それは良くも悪くもかなり有名となり、その理由の一つとして、人材の質であろう。各分部隊長を務めるは、管理局の「エース・オブ・エース」と評される高町なのは、まず彼女を航空戦技教導隊から引き抜いた事。もう一つは本局から出向した執務官のフェイト・Tハラオウン。そしてヴォルケンリッターと……。その他、各方面から優秀な人材から期待の新人まで幅広く引き抜いており、かなりの底上げになっていた。隊長格は皆全員オーバーSクラス、副隊長もそれぞれS-とAAA+と、エースクラスが揃っており、他の部隊に比べても戦力の保有量は申し分ない。それ故に妬む所もあるのだが……


「我々、機動六課が設立されたのには……」


 彼女の説明が始まる。皆真剣な表情で聞く。ロストロギア、災害、レリック回収。様々な単語を用いて真剣に、時には悲しそうな表情で語る彼女に誰もが神妙な顔をしていた。同じく真剣な顔で彼女の横に直立不動で並ぶ隊長、副隊長格のメンバー。そんな中で一際目立つ者がいる


(ねえ、ティア?ティアってば)

(うっさい、スバル。今は私語は慎みなさい)

(うん、ごめん)

(もう、何よ?つまらない事だったら怒るわよ)

(いや、なんかさ。あの銀色の髪の人、さっきからこっちを見てない?)

(もう、気づいてるわよ。だから無視してたのに、多分私達の事を見定めているのよ)

(ええ~じゃあ、私達目をつけられたのかなぁ?)

(さあ、わからないわよ。それにあの人かなり凄いらしいし……)

(そうなの?)

(噂では、なのはさんと互角に渡りあったそうよ)

(あちゃあ、怖い人だったら嫌だな)

(大丈夫、いつも通りにしていれば問題無いわ)


 先程より、新人である彼女ら四人を時折見つめる千早、その視線に気付き盛大に緊張する二人。なのはやフェイトと共に並んでいるということは、隊長格であろうと想像し、自分たちの実力を見定めようとしていると勘違いしていた


 実際は……


(ふむ、キャロちゃんか……ここに来てよかった。まさかヴィータちゃんとリインちゃんの他に天使がいたとは……)


 StrikerSを見たこと無い彼はキャロ・ル・ルシエを見て衝撃を受けたのである。

(そうだったここは魔法少女が活躍する世界、当然といえば当然。とはいえ実際目の当たりにしなければ信用していなかった。六課に配属となった日に、私はいち早く新人達の資料を見て君たちの事は知っているのだ。右から順番にティアナ・ランスター16歳、スバル・ナカジマ15歳、君たちとはもう少し早く会いたかったよ。エリオ・モンディアル10歳、キャロ・ル・ルシエ10歳、10歳!(大事な事なので二回言いました)なんだこの儚そうな表情は、守ってくれと言わんばかりのオーラ!うん、君達に決めた)

 彼の脳内は二人の事しかない。しかし、そうとは知らない新人らは


(なんて厳しくも穏やかな表情なんだろう)


 彼の優しい視線に見とれるのであった。最上千早、彼はその容姿によりいつも勘違いされる羨ましい男である


「さて、あんま長い話は嫌われるんで、以上ここまで。そうや、いい機会やし、隊長陣の挨拶でもしようか?結構有名どころを揃えたんやし」


 真剣な表情で演説を終わらせると、先程までとは打って変わって笑顔を浮かべながら隣にいる、フェイトにウインクすると


「それじゃあ、フェイト隊長から順番にしてもらいましょうか。男性諸君?生フェイトちゃんやで」

「な、何言っているの?もう八神隊長!」


 顔を赤らめながら文句を言うフェイトに周りは笑顔を浮かべながら拍手を送る


「フェイト・T・ハラオウンです。機動六課では……」


 彼女の凛とした声が会場に響きわたるとまた、全員真剣な眼差しで見つめるのであった……そうして順番に挨拶が始まる。シグナム、ヴィータ……なのはと順調に挨拶がすみ。皆有名人とあって会場の空気はかなり固くなっていた


「それじゃ。次は最上隊長やね。くれぐれも普通に頼むで」


 最後に釘を差すと、彼にマイクを譲る。それを受け取ると一礼し、真剣な表情で周りを一望する。その凛とした態度、憂いを帯びた眼差しに女性局員から熱い視線、男性局員からは別の意味で同じ視線を浴びながら


「諸君、私は小さい子が好きだ。諸君、私は小さい子が好きだ……」


 ……静まり返る会場、思わぬ展開に目を見開く局員、口を開いたまま唖然とした表情で壇上に立つ彼を見つめる者さえもいる。慣れているはやて達はため息をつき、まだ慣れていないフェイトは局員達と同じような表情で唖然と壇上を見つめる。


「諸君、私は小さい物が大好きだ。少女が好きだ。幼女が好きだ。小動物が好きだ。可愛いものが好きだ。子犬が好きだ。子猫が好きだ。ぬいぐるみが好きだ。妖精が好きだ。微生物が好きだ。」


 周りの空気を完全に無視をしながら、演説を続ける千早。しかし、彼の鬼気迫る演説に皆聴き入っていた。慣れているはずのなのはや、はやてですら、対応が遅れるほどに……


「海で、山で、川で、公園で、草原で、平原で、空中で、学校で、教室で、運動場で、家で、部屋で……この地上で戯れるありとあらゆる小さいものが大好きだ……」

「満面の笑顔で水浴びをしている幼女達を眺めるが好きだ。フリフリしたリボンがついた水着を着用し波打ち際でお城を作っている時など心が踊る。」

「麦わら帽子に、白いワンピース姿で走り回る幼女が好きだ。汗をかきながら楽しそうに山道を登り、満面の笑みで振り返る姿など胸がすくような気持ちだった。」

「歯をそろえた満面の笑みで、母親を呼ぶ姿が好きだ。綺麗な花を見つけては、不器用に冠を作って照れながら母親の頭に被せる様など感動すら覚える。」

「学校で、元気に手を上げてそれでも足りないのか立ち上がる様など、もうたまらない。頑張って手を挙げてアピールしているのに当ててもらえず、頬を膨らませていじける姿も最高だ。」

「哀れな捨て猫が腹を好かせて懐いてきたのを、給食の残りであろう食べ物を与えながら、褒美として撫でさせてもらおうと恐る恐る手を出して、成功した時の笑顔など絶頂すら覚える。」

「母親と戯れ、髪をぐしゃぐしゃに撫でられている笑顔が好きだ。必死に守るはずだった笑顔が蹂躙され、迷子になって顔を涙でぐしゃぐしゃになりながら母親を探す様はとてもとても悲しいものだ。」

「太陽の光に照らされて、外ではしゃぎ回る姿が好きだ。一部の愚かな変質者のおかげで、外に出て遊ばせてあげれないなんて屈辱の極みだ。」

「諸君、私は小さきか弱い者が安心して遊んで暮らせる世の中を望んでいる。諸君、機動六課に配属された諸君。君たちは一体何を望んでいる?」

「幼女が安心して遊べる世界を望むか?少女が笑顔を浮かべる世界を望むか?幼女と一緒にお風呂に入り……「やめんかぁ!!」……ぼげらっ!」


 途中まで呆気にとられていたはやてが、首をブンブンと横にふると頬を手のひらで叩き、気合を込めた右の拳で千早の顎へと一撃を入れる。その様はまるで某格闘家が放つ昇り龍拳のようであった……


「……む、何をする?痛いではないか?」

「『何をする?』は!こっちの台詞や!何を物騒な事語っとんねん!ええかげんにしいや!このロリコン!」

「誰がロリコンだ!俺はロリコンじゃねえ!俺が好きなのは小さいものだ!幼女少女少年達の笑顔を眺めるのが好きなだけだぁ!」

「それを、ロリコンって言うんや!しかもショタまで……あんたが変態じゃなかったらなんやねん!」

「ま、まあまあ、はやて。皆も見てるよ?」


 怒鳴り合う二人の姿に、苦笑いを浮かべながら制止するフェイト。


「まあ、いいんじゃないかな?これで千早君の事を、皆理解したと思うし」


 若干、千早から距離をとってなだめる彼女を苦笑しながらなのはが言う。周りを見回すと、そこにはさっきまでの尊敬の視線から、変な物でも見るような視線を浮かべている職員や新人達がいた。


「……コホン!ま、まあ、悪い奴や無い。少しばかり、いやかなり変な思考なだけで……」

「はやて、それフォローになってないから……」

「そ、そうやね……」


 最早、完全に空気が淀んでおり、収集がつかない状態であった……


「ふむ、邪魔が入ったが、簡単に言えば『小さい物は最高だ』ということだ。それを守ろうではないか諸君。以上」


 最後にそう締めくくるが、既に会場は冷めきった空気。戸惑いながら拍手を送る者もいるが、ほとんどが唖然とした表情で彼を眺めていた……






 ――

 ――――

 ――――――







 設立式も終わり、皆が自分の持ち場へ向かった頃、隊長室に集まる各隊長達


 スターズ分隊隊長 高町なのは

 ライトニング分隊隊長 フェイト・T・ハラオウン

 シルバー分隊隊長 最上千早


「なんか、似合わへんよな。あんたが隊長て」


 笑いながら千早の方を向くはやて、その一言に苦笑しながら同意する他二名


「ま、まあ、彼にピッタリじゃない」

「う、うん。そうだよ」


 取り繕うが笑いが堪えきれずプスプスと息が漏れている


「いや、まあ、いきなり役職に就くのはありがたいんだけど、一人しかいないのに分隊ってどうよ?」

「え?一人なの?」

「そら、そうや。此奴にスバル達を任せられると思う?」

「それは……」

「ふん、あんな年増なんぞ、こっちからお断りだ」

「あ、あはは……あの娘達が年増だったら私達なんて……」

「なのは!?」


 その一言は自分の首を締めることになるからと、フェイトが突っ込もうとするが


「そうだなぁ……ばばあ?」


 遅かった……


「……レイジング・ハート」

≪OK Starlight Breaker≫


 若干レイプ目で、徐ろに相棒を千早へ向けて突きつけるなのは


「ちょ、ちょ!!こんなとこで撃たんといて!落ち着いてって!!なのはちゃん!!」

「は!?私、一体?」

「こんなところでそんなん撃ったら、せっかく新設した隊舎が壊れてまう」

「いや、それどころか、ミッドチルダごと砕きそうだったわよ……」

「スターライト『ブレイカー』だけに」

「元凶がボケるなあ!!誰のせいやと思ってんのよ」

「まあ、そう怒るな。なのはも本気じゃなかったようだし」

「!?う、うん。そ、そうだよ?ちょっと脅かしただけだよ?」

「なのは……」

「違うよ!?フェイトちゃん?あれ?私が悪いのかな?でもでも、それならキャロ達を任せたら……」


 そこまで言ってハッとなるなのは、混乱しすぎて迂闊な一言を言ってしまう。それを聞いたフェイトは穏やかな笑みを浮かべながら


「ええ、そうね。そうなったら……バルディッシュ」

≪Yes Sir≫

「ちょ、ちょ!!フェイトちゃんまで!?もういい加減にして!!」

「そうだよ?冗談だから!ね?」


 今度は静かに怒るフェイトを宥める二人。そんな姿を生暖かい目で眺めている。ああ、やはり女子が集まると姦しいなと……


「あんたが原因やろが!!何涼しい顔で見てんねん!」

「ぼげらっ!」


 場を荒らすだけ荒らしといて素知らぬ顔で、見ていた千早に向かい腰を落とした鮮烈な蹴りを食らわすはやて。その姿は絶対に他の局員には見せられないほど混沌としていた。そうして物語が進んでいく。


 2012年10月10日 誤字修正したはず?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第二話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/17 23:58

「あーひとつ聞きたいんですけど?」

「なんや?なんか問題でもあんの?」

「六課設立の際にですね。なのはさんやフェイトさんとかすごい人ばかり揃えたじゃないですか?」

「なんで敬語?気持ち悪いわ」

「気にしないでください」

「――まあ、ええわ。で?」

「だからですね。いわゆる魔導師ランク制限ってあるじゃないですか?」

「ああ、あんね。せやからなのはちゃん達には能力に『リミッター』をかけてるんよ」

「ええ、知っています」

「知ってんやったらええやん。何が言いたいの?」

「ですから、俺はどうなんでしょうか?確か、彼女らで裏ワザ込でギリギリって聞いたような……」

「……」

「なんで、視線を逸らす?」

「……いや、あははは……」

「笑って誤魔化せないんですよ。実際問い合わせが来てます」

「……無理やろうか?」

「はい、無理です。唯でさえキャラと共に胸も薄くなっているそうですので」

「なんやて!?」

「いや、そこでラグナロクを詠唱しないでください。言ってるの俺じゃないですから」

「んー弱ったなー」

「どうしましょう?」

「とりあえず。保留で」

「いいんでしょうか?」

「ええねん。いつか思いつくと思うから……」

「といいつつ、無かった事にしようと?」

「……うー、ならこうしよう!普段は魔力を抑えていて、戦闘中に魔力を上げる事ができるっていうんわ?」

「俺はどこぞの戦闘民族ですか……」

「うん、それがええ。そうすれば万事解決や」

「いや、それだと話の辻褄が合わなくなります」

「そうなん?」

「俺、一応初登場時『二等陸尉』って名乗ってます。陸尉が、E以下とか無いでしょう?しかも、なのはさんとの模擬戦ばっちり見られてます」

「いいせんいってたと思うたんやけどな。あかんか……」

「そんなんだから、突っ込まれるんですよ」

「どないせいっちゅうねん……」

「んーとりあえず、今後の展開次第ということで、保留にしましょう」

「結局保留かい……そうやね、そうしとかんと、いつ辞めるかわからんし」

「どんだけ打たれ弱いんだろう……」

「どんまい」

「やっぱりオリ主は鬼門だったわけで……」






 ああ、説得力と独創性が欲しい……





 というわけで二話目です








 廊下を歩きながら談笑する二人、シグナムとフェイトである。談笑している二人の前にゆっくりと前を行く銀髪がいた


「む、お前か犯罪者予備軍……」


 それを確認すると、嫌そうな表情で吐き捨てるように呟く


「いきなり随分な言い草だと思う」


 後ろから、嫌味を言われ苦笑しながら振り向く千早


「日頃の言動の性だろう。変態」

「誰が変態だ」

「変態を変態と呼んで何が悪い」

「ほう、なら変態らしく俺もお前の事をおっぱいの騎士と呼ぶがいいんだな?」

「なっ!貴様っ!」

「え、えっと、とりあえず、剣を納めてシグナム?」


 思わず、自分の相棒『レヴァ剣』を手にし、斬りつけようとする彼女を止めるフェイト


「む、すまない。取り乱したようだ」

「まったく、これぐらいで取り乱すとは騎士失格だな」

「誰のせいだ!誰の!」

「?」

「そこで首を捻るなっ!」

「最上さ……「千早でいいですよ」あ、うん。千早君?もしかしてシグナムの反応楽しんでる?」

「そんなこと無いですよ?幼女ならまだしも、こんな熟女相手に」

「貴様はよっぽど死にたいらしいな」


 もう一度相棒を正眼に構えると、恐ろしいほど低い声で千早に詰め寄るが


「んーそうだな。シグシグがもう後10歳若かったら喜んで受け入れよう」


 相変わらず飄々と答える千早


「誰がシグシグだ。いい加減に……」

「相変わらずだな。おまえらは」


 そんな二人のやり取りに、ため息をつきながら、後方からこちらへ向かってくる者が一人


「ヴィータ。良い所に、この変態にお前からも何か言ってやってくれ」

「何を言う、俺は至って普通の紳士だぞ?シグナムみたいにとりあえず斬ってから考えるような野蛮な奴に言われる筋合いは無い」

「貴様!?愚弄するか!」

「はあ……いい加減慣れろ。こいつはそういう奴なんだよ」


 やれやれと言った感じで、手のひらと首を交互に振りながら吐き捨てるヴィータ


「しかし……」

「流石はヴィータ女史、よく解っていらっしゃる。うむ、今日の装いも素晴らしい、雑草多い茂る森の中に咲く一輪のたんぽぽのような」


 そう言うと、ニカっと彼女の方を向きながら素晴らしい笑顔を向ける


「……ばっ!何言ってやがる」


 性格云々は最悪だが、流石に真正面から直球の褒め言葉を向けられ頬を染める


「照れる姿もいい……」


 そんな彼女の姿を見つめながら、目を細めて頷く千早


「……ねえ、本当に大丈夫なの?この人……」

「私に聞くな……」


 そんな彼に不安いっぱいのフェイト、その横でシグナムがため息を吐く


「まあいい。それで貴様、隊長らしいが、そんなので務まるのか?」


 これ以上ほっとくと、本気でヴィータを口説きかねないと思い、別の話題をふるシグナム


「んー俺、誰よりも弱いからなー」

「え!?そうなの?」

「ん?脱ぎ……フェイトは知らなかった?」

「今、何か不快な単語で呼ぼうとしなかった?」


 ものすごい、目で睨まれた……


「いえいえ、そんなことありませんよ?」

「そう……えっとね、貴方ってなのはと互角に戦ったって。はやてから聞いてたから」

「あーそれか、うん。えっと……」


 困ったように腕を組み考えこむ。確かにそんなこともあったなと呟きながら


「そういえば、リインフォースもそんなこと言ってたよなあ」

「いや?俺前に、シグナムにボコボコにされましたよ?」

「うむ、余りにも隙だらけだったのでな。つい……」

「『つい』で、俺は殺されかけたのか?」

「でもそれじゃあ……はやてが嘘をついているのかしら?」

「んー、あの時はリインフォースちゃんがいたからなあ」

「??」

「いや、シグナムとやりあった時は、誰もいなかったし……」

「当たり前だ。そもそも人がいては一騎打ちにならん」

「お前は、生まれる時代を間違えたのか?まあ、いいや。というわけで惨敗。なのはんときはリインフォースちゃんがいたから……」

「え?それって、どういうこと?」


 理解できないって感じで首を捻るフェイト、リインフォースがいたから?ユニゾンでもするの?って感じで千早を見る


「俺は幼女少女少年可憐な者を守る為にしか本気を出せん」


 彼女の考えの遥か斜め上の解答が返ってきた。そういえば、はやてがそんなことを言っていたような……


<12歳未満の女の子が見ている前だけは互角、それ以外は惨敗……>


「……」


 やっぱりこの人気持ち悪い。嫌悪感からか少し距離をとる


「なら、シグナムを幼女として見たら勝てるんじゃねえのか?」


 フェイトのあからさまな態度を見てにやにやしながら、シグナムと千早を交互に見ながらごちるヴィータ


「それは……」

「うむ」

「な、何を見ている?」

「んー確かに、今は残念な胸をしているが、ポニーテイルに武士幼女……」

「なんだろうか……ものすごく失礼な事を言われてるようだが?」


 周りからため息が漏れる


「ま、まあまあ……」

「うん、いいな。シグナムさん」


 しばらく考え込んでいたが、彼女の前まで行くと真正面から見つめる


「いきなりか、今度はなんだ?」

「後10年前にお会いしましょう。その時は全力でお相手します」


 そう言って、丁寧にお辞儀されるシグナム


「……私は莫迦にされているのか?」

「多分本気だと思う……」

「本気だろうな……」


 複雑な表情で二人へ視線を送るが、静かに首を振って返事をされる


「いや、しかし、そのような可憐な娘と一騎打ちなど……駄目だ駄目だ……そんな……汗かいただと?うん、なら一緒にお風呂に……」


 そんな空気もお構いなしに自分の世界に入り込む千早、後半何故かくねくねしだした……気持ち悪い


「おい、シグナム。そろそろ止めねえと、お前こいつと風呂にはいる事になるぞ?脳内でだけどな」

「なんだと!?貴様!私を辱めるとは……やはりここで斬る!」

「……えっと、どこから突っ込めばいいのかな?」


 くねくねする千早に向かい、剣を構えるシグナム、それを止めるフェイト、かなりカオスな状態である


「ほっとけ。それより、いいのか?そろそろ始まるぞ。私らが遅れたら、新人どもに示しがつかねえぞ」


 二人のやり取りに慣れているヴィータは、さっさと歩き出す。彼女が先に進みだしたので渋々剣を収めながら歩き出すシグナム達


「くっ!……命拾いしたな……」

「10年前なら喜んで」


 相変わらず、会話が咬み合わないのであるが……


「てか、あたしらは年とらねえっての……何十年前だろうと今のままだっての……」 

「なんとなく、貴方の事がわかった気がする……」


 二人のやり取りと、ヴィータの態度を見てため息をつきながら言うフェイト


「理解できて何より、じゃあ結婚しよう」


 そんな彼女に満面な笑みで、答える千早に


「ええっ!?……えと、そういうのは、え?え?」


 流石に慣れていない彼女は、彼の言動に混乱する。その光景を見ている二人は更にため息をつく


「フェイト、まともに相手するな。コイツの発言の9割は思いつきだ」

「そ、そう?」

「いや?割りと本気」

「え?」

「子供は3人以上がいいと思うんだ」

「え?え?えと……」

「私の時は5人とか言っていなかったか?」

「確か、はやてが2人でなのはんときも3人だったよな?」


 何が基準であるか、理解した時。盛大に引いた彼女に苦笑いを浮かべる二人であった……









 ……


 …………


 ………………







「あ、4人とも、遅かったね。ってフェイトちゃん一体何があったの?」


 とある一室に、入室する4人に向かって笑顔で迎えたなのはであったが、入室早々、疲れた様子の彼女を心配そうに声をかける


「あ、なのは……なんでも無いよ。うん、なのはは強い子を産んでね?」

「え~と……言っている意味がよくわからないんだけど。とにかく千早君が悪いのね?」

「入室早々、酷い言われようだ」

「おめえしか原因になりそうな人間がいねえからな」

「日頃の行いだ変態」

「まあ、皆やさしいことで。まあ、原因俺だけど」


 そんな感じでグダグダな隊長陣達を、不思議な目で見つめる新人たちがいた。それに気づいたなのはが、「コホン」と咳払いをすると、皆に隊の紹介と分隊の配分を説明する


 スターズ分隊 以下 なのは ヴィータ ティアナ スバル

 ライトニング分隊 以下 フェイト シグナム キャロ エリオ

 シルバー分隊 以下 千早(ぼっち)


 以上である


「前から思ってたんだけど、俺とこ分隊っている?軽くイジメな気がするんだけど?」

「あはは……それははやてちゃんに言ってくれると助かるかな?」

「まあ、いいけど。あ~あ、幼女か少年が入隊してくれないかな?もしくはキャロちゃんかエリオ君引きぬくとか」

「うん、そうなったら部隊長権限で全力で阻止するよ」

「私も、部隊長権限でキャロとエリオには指一本触れさせない」

「二人共……気持ちはわかるが、新人共が怯えているぞ」


 シグナムに言われてはっとなる二人、軽くレイプ目でデバイスを展開して、一方は零距離から砲撃しようと、もう一方は巨大な鎌で首から斬りつけようとしている姿は、並の者ならちびって逃げ出すであろう。


「まったく隊長としての威厳が無いなー二人共」

「「誰のせいなの!」」


 とりあえず、このままでは収集がつかないのでとりあえず元凶は無視をして、なのはがボードに両小隊と指揮系列を書き込んでいき、簡単に自己紹介を始める。二人が仕事モードになったのでからかうのをやめ、とりあえず大人しく説明を聞く千早


「ともあれ、殆どが知り合いだからね。本当にはじめてなのはスバルとティアナくらいかな?」

「そうなんですか?」


 なのはの説明に、手を挙げると質問するティアナ。その視線の先には千早がいた。その視線に気づいたのか


「うーん。まあ、俺は彼女らよりは日は浅いけど、まあ、知り合いっちゃあ知り合いになるのかな?」

「そうなるんじゃねえか?とりあえず、隊長達全員に求婚してんだし」


 腕を組み考える千早に、ニヤニヤしながらとんでもない事を言うヴィータ


「え!?最上陸尉はロリコンだったんじゃないんですか!?」


 彼女の言葉に、驚いたようにスバルが叫ぶ。そんな彼女の頭をはたくティアナ、いきなり部隊の上官に『ロリコン発言』をした彼女を苦笑しながら


「あ、あはは……ま、まあ、本気じゃないんだよ?多分挨拶のような感じかな?」

「挨拶にしては質が悪いよ。なのは」


 苦笑しながら、フォローするなのはに、先ほど被害にあったフェイトが突っ込む


「部下にすら、認識されているようだな。変態」

「誰が変態だ。それに俺はロリコンじゃなくて小さいものが好きなだけだ」

「何が違うか意味がわからん」

「何を言う。俺はエリオ君も、フリードもいけるぞ」

「節操なしだな。お前」


 飄々と答える彼に危機感を感じたのか、二人と一匹を庇うように前へ出るフェイト。その姿に苦笑しながら


「ふむ、勘違いしているようだが、俺は恋愛対象として見ているわけでは無い。人畜無害だ」

「その心は?」

「キャロちゃんとエリオ君とヴィータちゃんとお風呂に入りたい。できれば背中流してもらいたい」

「どこが人畜無害だ!この変態!」


 その発言を聞いた全員が、千早から距離をとる。皆なにか気持ち悪いものを見るような視線で彼を見つめていた


「あれ?」


 その光景に首をかしげる千早


「え、えっと……とりあえず、新人の子達は明日から基礎訓練に入るからよろしくね」


 最後に引きつった笑みで、そう閉めるなのは。全員がその言葉に頷く……一人だけ何も理解していない者がいた……






 ……


 ………


 ……………






 ミーティングも終え、一人廊下を歩く千早。終始皆彼をさけていたのは言うまでもない。しかし、そんなことまったく気にしない彼は、自分の左耳に装着したデバイスに話かける。ちなみに彼のデバイスはシャリオ製である。彼女曰く『変態らしいデバイスに仕上がった』との事。つまりどういうことかと言うと……


「しっかし、今日もヴィータちゃんは可愛かったなー」

 《そうですね。ですが、私としてはエリオちゃんを推奨します》

「ほう、確かに半ズボンは至高であるか……」

 《同意、ツンツン髪で半ズボンは最高だと思われます》

「流石だ。では、キャロちゃんはどうだ?」

 《はい、彼女の場合、フリードと一緒というところが評価が高いと思われます》

「ふむ、違う……間違っているぞガングニール」

 《!?》

「お前は、まだ本質を解っていない……いいか?フリードと戯れる姿は確かに可愛い。それは認めよう、しかし、それはあくまでもフリードありきだ」

 《!?》

「つまり、私が言いたいのは、彼女自身の魅力を見抜く事ことだ」

 《それは?》

「ふむ、それは、『靴下』だ!ちょうどくるぶしを隠し、ひざ下20センチの位置まで……彼女は良く解っている」

 《!?マスター!私は目から鱗が落ちた気分です。あ、私目が無いんですけど……》

「まだまだだな。精進が足らんぞ。私のデバイスならこれくらい見ぬかねば」

 《申し訳ありません。日々精進していきます。マスター》

「ふっ……とはいえ、今日は彼女らの姿をこの目に焼き付けられた。良い日だな」

 《やはり小さい子達は良いですね》

「ああ、そうだな。やはり小さい者は最高だ!」

 《YES MY MASTER》




 最上千早、デバイスともに小さき者を愛する守護者である……


 修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第三話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/17 23:58
 感想ありがとうございます。結果こういう形にしました。とりあえず自重をやめました。


 では第三話目です……





 暗い部屋、静かなその部屋に鳴り響く小さな電子音。宛がわれた部屋にて目を覚ます青年が一人。気だるそうに起き上がると、そのまま洗面所まで向かう。


「……」


 無言で髪を整え、歯を磨く。そうして顔を洗い眠気を覚ました後、部屋に立てかけている写真立てへ挨拶をする


「ふむ、アイリーン、ライアット、ミリアル、ユリ、それから……」


 写真にはたくさんの少女や少年達が写っており、皆笑顔でこちらを向いている。先に言っておくが盗撮といったたぐいのものではなく、全て許可をとって、写したものだ。


「うむ、この子達は元気だろうか?泣いていないだろうか?」


<大丈夫でしょう。あの子達は強いですからマスター>


「そうだな、陸では良く一緒に遊んだ。懐かしい……」


 彼が所属していた武装隊で仲良くなった子達の事を思い浮かべながら目を細める。まあ、それが原因でこっちへ異動するハメになるのであるが……


 地上部隊、時空管理局の2大勢力と言われる通称「陸(おか)」トップであるレジアス・ゲイズと呼ばれる男が務めていた。彼は並々ならぬ正義感からか、規則やその他様々なことに厳しい男であった。簡単に言えば堅物である。そんな彼が、小さいものをこよなく愛する通称『ロリコン・オブ・ロリコン』と呼ばれる男が所属していることに不満を感じていた。ちなみに彼の六課への異動を推奨したのは、娘で副官であるオーリス・ゲイズである。地上部隊でも鼻つまみ者の千早も連れいく事を条件の一つに織り込んだのである。しかし、本当の理由は……


「まったく、これだから熟女は、ちょっと正論を言っただけでヒスを起こす」


 やれやれと言った感じでため息をつく


<いえ、マスター。成人女性にアレはタブーかと思われます>


 そう、事の起こりは、本部内で千早が少女と戯れている姿をたまたま目撃したオーリスが注意をした時に起こった。


 ―――そんなんだから行き遅れるんですよ。


 今でも鮮明に覚えている。彼女のメガネに何故かヒビがは入り、その場の空気が10度ほど下がったことを……現場に居合わせた、職員達全てが凍りついた。


「まあ、なんか知らんがその後、黙って去っていたけど。まさかあんなに怒っていたとはな~」


<そうですね。立ち去る姿は小さく震えてましたし>


「まあ、おかげで新たな出会いに恵まれたことだ。結果よければ全てよし」


<YES MY MASTER>







 ……


 …………


 ……………





「どうして、こうなった?」


 遠くを眺めながら、一人呟く。目の前には殺る気満々でアップしているシグナムがおり、その後方では黒い笑みを浮かべたなのは、複雑な表情をしているフェイト、諦めろという感じでこちらを見るヴィータ。そして、興味深々な表情で目を輝かせてくる新人達。


<今朝も言いましたが、マスターは発言には気をつけるべきかと……>


 さて何故こうなったかといえば、原因は彼にあるのであるが……

 早朝、新人達の教導が始まり彼女ら……主にキャロ、エリオ、フリードの勇姿を目に焼き付けてから仕事しようと思って立ち寄った際


 ――模擬戦の時にも思ったんだけど、あの年齢であの衣装は無理があるんじゃね?


 その一言に、周りは氷ついた。その場に居合わせた、全員の動きが停止し、恐る恐るなのはの方へと視線を移す


「あはは……ちょ~と休憩ね。あ、それから千早君?少しOHANASHIがあるんだけど……」

「話?俺には無いぞ?大体熟女と話しても……ん?レイハさんを何故こっちへ向ける?……なんで桃色に光り輝いている?」


 今まで見たことのない表情で、彼をどこかへ連れて行くなのは、その姿を見た新人達はこれからの教導で彼女に逆らわないよう心に誓うのであった

 その後10分くらい経過した後、戻ってきた二人、ボロボロになった千早と、満面の笑みのなのはを見た彼女らは更に顔を強張らすのであった……


「それじゃあ、最後に隊長達の模擬戦の見学でもしよっか?じゃあよろしくね、シグナム」


 そんな彼女らを笑顔で見回すと、そう切り出すなのは。その顔に一切の迷いはない


「ふむ、心得た」

「いや、ちょっとまて……俺は今、ディバインバスター食らって本調子じゃないんだが?」

「知ったことではない」

「いや、ちょ、何?これ新手のイジメ?」


 シグナムに首根っこを掴まれながら、連れて行かれる千早。その姿を満面の笑みで見送るなのは、ヴィータはため息をつき、フェイトは戸惑い、新人達は合掌する。


「というわけでここにいるわけですが……んーおっぱいはヤル気だし、どうしよう?ガンちゃん」


<ここまで来たら腹括ってボコボコにされましょう。いくら、『戦闘に性的興奮を覚え、血と内臓に恋する』シグナム女史だとしても>


「いや、それ確実俺死んじゃうんじゃないか?大体だな『殺戮は甘美、私は剣を持つと興奮する』のシグナムさんだぞ?」

「……本人を目の前に、良くそんなことが言えるな?お前ら」


 殺気を込めた視線で睨まれた……うん、ヤル気というか殺る気だ


「いやいや、今まで倒してきた敵の数だけおっぱいが大きくなったとか、言ってませんよ?」

「いい加減、死にたいらしい……短い付き合いだったな」

「あれ?褒めたつもりなんだけど、この俺が熟女をだぞ?おっぱいをだぞ?」

「どこがだ!?」

「?」

「首を傾げるな!?なんだ、その『あ、この人疲れてんだな』みたいな目は!」


<二人ともそろそろ初めてくれると、ありがたいかな?>


「む、わかった」

「むう、仕方がない。とりあえずどんな感じ?」


<はい、今日はヴィータさん、エリオちゃん、キャロちゃん、フリードちゃんがいるので>


「ふむ、確かに今は充実している。でなければなのはのディバインバスター零距離を食らって生きていまい」


<私も死んだかと思いました……>


「良し、ではあのおっぱいから全力で逃げるぞ」


<YES MY MASTER>


 ぶつぶつと呟くと、バリアジャッケトを纏う。両腕に銀色の篭手と、コートの変形である。変態の割にまともな格好である。


「では、参る!」


 鞘から剣を抜くと炎を纏いながら、一直線に突っ込んでくる


「これが幼女だったらいいのに……しかし、現実はこれだ。俺は悲しいぞっ!」


 剣を上段に構え、眼前まで距離を詰めるとおもいッきり振り下ろす


「訳の分からん事を叫ぶなっ!変態!――ちっ」」


 振り下ろされた場所には既に彼の姿は無く、舌打ちをするシグナム。そのまま刃を横にし、振り向くと同時になぎ斬る


「おわっ!おまっ!ちょっ!どうでもいいけど非殺傷設定だよな?」

「そんなことは知らん!」


 ギリギリ避けた千早が、少しかすったコートを見ながら叫ぶ


「大体だ!いつも、いつも貴様がそんなだから私は!!」

「それは惚れた男に言う台詞だから!相手を斬る時に言う台詞じゃねえから!!」

「問答無用!このロリコンが!くたばれっ!」

「俺はロリコンじゃねえ!!模擬戦でくたばれって!?殺す気か!」


 高速で斬りかかるシグナムに対して、必死に避ける千早。会話と動きのギャップに引きつつも、その光景に唖然とする新人達


「相変わらず千早君は避けるのうまいねえ」


 彼女らの戦いを観戦しながら、感心したように頷くなのは


「そうね。私でも無理かも」


 驚きながら同意するフェイト、正直なところ彼がここまでできるとは思っていなかっただけにその表情は堅い


「へえ……前はボコボコにされてたのにな」


 感心したように、呟くヴィータ。前にボロボロにされていた千早の姿を見た彼女もまた驚いた表情で観戦していた


「はあ、はあ……」

「うん、これは非常にまずい」


 一旦距離を開けて、片手で剣を向けると千早に向けて殺気を飛ばすシグナム、なんか知らないがやばそうな雰囲気である


 ガシャコン!!


「なあ?俺には今カートリッジのリロード音が聞こえた気がするけど?それと無駄にテンションの高いレヴァ剣の返事があったような?」

<いえ、気のせいでは無いです。現実です。マスター。どうします?逃げて殺されます?無防備に殺されます?それとも抵抗して殺されます?>

「ガンよ……俺は殺されるしか選択肢が無いように聞こえるが?」

<YES>

「仕方が無い……これだけは控えようと思っていたのだが……」


 殺る気満々のシグナムに向かい自重のため息と共に呟く


「……何を企んでいるか知らんが、最早容赦せんぞ」


 剣を構え、魔力を溜めながら嫌な笑みを浮かべるシグナム


「……ガングニール?いいかい?」

<YES MY MASTER>


 ガシャコン!ガシャコン!


 千早の合図と共に両腕のカートリッジをリロードする


「ほう……潔く腹を決めたか」


 ニヤリと笑いながら言うが……


「言ったな……後悔することになるぞ」

「ほう、おもしろい……」


「主に俺が……」


「は?」


 思わぬ言葉に、思わず聞き返すシグナム


「ふ……これだけは……これだけはしたくなかった……」

<マスター準備はできてます>


「そうか……では」

<YES CODE ONITHAN>


 ガングニールが答えると、彼の周りに光の影が現れる


「む、幻視か?何をしようが斬り裂くのみ」


 千早が何かをしようとしたのを確認すると、大きく構え


「……紫電」


 そのまま溜めると


「一閃!!!」


 決め台詞を叫ぶと一直線に向かってくる


「きたぞ!ガングニール」


<うん!お兄ちゃん!頑張って!>


「ああ、お兄ちゃんが守ってやる!!」


 先ほどまで影であった光が形作られたものは、等身大のなのはであった。ただし、9歳当時の……


「ええ!?あれ私?なんで?あの頃会ったこと無いはずだよ!?なんで!?」


 遠くから盛大に混乱した声が聞こえるが、気にしない。そうこうしている間に彼女の剣が千早へと命中しそうになる


「幼女分補給完了……ガングニール……」

<YES ONISWORD>


 直撃する。誰もがそう思った瞬間、彼の両腕から巨大な黒い剣が現れ、


「兄(おに)ソードに絶てぬものなし!どうりゃああ!!」


 叫びを上げつつ振り下ろす。彼女の剣と交差するとそのまま押し切る形で吹き飛ばす。哀れシグナムはそのまま意識を無くし落ちていく……


「はあ、これでまた、彼女に撃たれる事になるな……」

<マスター思ったのですが……負けた方が良かったのでは?>

「言うな……どちらにせよ痛いのだから、慣れている方がいいに決まっているだろ」

<そうですか……>


 勝ったというのに、ものすごく悲しそうな表情をしている千早に


<お兄ちゃん!元気出して!なのはが見てるよ!>


 彼が出したなのはが元気に抱きついていた……


「そうだな、お兄ちゃんがんばるよ」


 自分で出しておいて、嬉しそうに頭を撫でながら答えていると……




 ゾクッ!




 背中から恐ろしいまでの寒気が走る……


「へえ……ねえ?なんなのかな?あれ……私そっくりでしかも子供の頃の私が千早君に嬉しそうに抱きついているように、見えるのはなんでかな?」


 いつの間にか彼の後ろに移動していたなのはが、見たことのないような目でこちらを見ていた


「ねえ?説明してくれると……助かるかな?」


 ふんわりと笑いながら、しかし、目は笑っていない状態で質問してくる


「い、いや……これは……」


<あたし高町なのは9歳!よろしくね!おばさん!>



 ピシリ!



 時が止まったような気がした……現場の空気が0度を下回ったかのように気温が下がり始める


「ねえ?なんで?私が私におばさんって言われてるのかな?」


 あ、終わった。そう思い覚悟した瞬間


<何言ってるの?14歳以上は熟女なの。だからおば……>


 そこまで言うと、消えていくチビなのは……


「へえ……誰かさんと同じ事言うんだね?もう消えちゃったけど……」

「ふむ、まあなんだ。お前は可愛いと思うぞ?熟女の割に……」

<マスター貴方は莫迦ですか?>


 彼の言葉に静かに相棒を向けると……



「レイジング……ハート」


<OK Starlight Breaker>


 ガシャコン!ガシャコン!ガシャコン!


「いや、リロード多くない?まさかの全力全開ですか?」

 その質問に対し、笑顔で答えるなのは、もちろん目は笑っていない……


「シュート!!」




 その日、訓練場付近で桃色に光る花火を見たという問い合わせが機動六課に多数寄せられたそうな……めでたし、めでたし。



 ちなみに、後日フェイトも出せるよと言った千早に対し、黒い死神が光速で斬りかかるという事件が六課隊舎で発生した事は伏せておく。


 最上千早、本人は否定しているが……彼はロリコンである……小さい者好きのロリコンである。




 オリ主といえばチート設定だと思った次第です。はい。

 2012年10月10日修正



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第四話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/17 23:59
 感想ありがとうございます。最近ロリコンとミニコンの定義がわからなくなった獅子座です。というわけで四話です……




 朝の教導も終え、新人達は食堂で昼食を摂っていた。朝一の訓練がハードな上、異常な光景と異常な恐怖を植え付けられた彼女らの食は余り進まなかった。しかし、昼以降の訓練が有る為、無理にでも何か腹に入れておかないと無様な姿を晒す事になるだろう。というより、そんなことになればなのはさんに殺される……というティアナの提案を聞いて、青い顔をしながら無理やり胃に流しこむ4人。奇しくも、今朝の一件のおかげでコミュニケーションをとらずして、仲間としての連帯感を得た事となる。

 その4人の傍らには、別のテーブルにてなのは、フェイト、シグナム、ヴィータが着席をしていた。


「……不覚。あの変態に遅れをとるとは……」

「シグナム、元気出して。あれは仕方ないよ」

「あ、あはは……」

「ま、無様だったな」


 盛大に落ち込んでいるシグナムに対して、慰めるフェイト、乾いた笑いを浮かべるなのは、どうでもいいって感じのヴィータ


「まあ、あの後なのはに盛大にぶっ飛ばされてたけどな。あいつ」

「あ、あはは、つい、ね」

「そのおかげで、新人にはいい刺激になったみたいだな」


 チラリと新人達の席を見ると、必死になって昼食を胃に流しこむ姿が見える。それを見たなのはが盛大に凹んでいた


「なのは?」

「フェイトちゃん……私、多分怖がられてるよね?」

「多分じゃなくて、絶対だな。なんせ、あたしですら最初に会った時を思い出したくらいだったからな」


 ヴィータの一言に、更に凹みまくるなのは。制限がかかっているとはいえ、至近距離からのあの一撃はまさに冥王と呼ばれるにふさわしい姿であった


「まあ、気にすんな。それになのはは『管理局の白い悪魔』『トリガーハッピー』『冥王』て呼ばれてるんだろ?今更いいんじゃないか」


 机につっぷする彼女に向かい、苦笑しながらとんでもない単語を連発するヴィータ


「ちょっと待って!誰がそんなこと言ってるの?」

「ん?ああ、あいつが言ってた。なのはらしい2つ名じゃねえか」

「へえ……今、彼はどこにいるのかな?」


 すごい表情で、食堂内を見回すなのは、それを見た新人たちはビクっと動きが止まる。それを見たフェイトは


「……なのは、多分そういう顔するからじゃないかな?」

「!?違うよ?フェイトちゃん、ちょ~とお話するだけだし」

「なのは……」


 友人がどんどん黒い方へと向かっていく事に不安を感じるフェイトがため息をつく


「フェイトも他人ごとじゃねえぞ」

「え?」


 安全圏にいたフェイトに、ニヤニヤしながら


「確か……『黒い死神』『脱ぎ魔』『閃光のエアロビ』だっけか?」

「……なのは、そのお話、私も参加していいかな?」

「うん、フェイトちゃん二人で千早君とOHANASHIしよっか?」

「そうだね。ちょっと私カートリッジ補給してから行くから……」


 二人黒い笑みで笑い合う。それを見ていたシグナムはため息をつきながら


「二人共……気持ちは解るが……周りを見てみろ」


 ハッとなって周りを見回すと、食事に来ていた職員全員が盛大に引いていた。さらに隣の席では言わずもがな新人達は……この後の訓練を想像し、皆お通夜みたいな表情をしていた……

 それを見たなのはは頭を抱えながら


「もう!全部千早君のせいなんだからねぇぇえ!!」


 彼女の大きな叫び声が食堂内に響いた……





 ……


 …………





「いぇえっくしょん!!」

「どうしたの?千早君」

「いや、なんだろうか。すごい悪寒がしたんだが……具体的にいえば桃色の砲撃を食らった後に金色の電撃に撃ち抜かれるような感じの……」

「ん~誰に狙われているのか想像できるのでやめときますね……はあ」


 どこか、遠くを見つめている変態の前にため息をつきながらごちるシャマル。現在彼がいる場所は六課の医務室であり、彼は今、先ほどの模擬戦での治療を受けている。


「しかし、非殺傷設定とはいえ、あれは恐怖を感じたな。流石に一日に二度受けると身体どころか精神まで病んでしまう」

「貴方は既に精神は病んでると思うのですけど……」


 医務室で二人きり、それも年頃の年代の男の子というありがちなシチュエーションなはずなのにまったく不安を感じる事が無い。なにせ目の前にいる青年が幼女と少女以外に興味を持たないロリコンであるのだから、ともあれ彼と話をしているとものすごく疲れる。なにせ、シグナムと自分のことを『おっぱいの騎士』に『うっかりおっぱい』というすごく不名誉な2つ名が広まったのも彼が原因だし


(ロリコンだけでも質が悪いのに、セクハラまで……大丈夫なのかしら?この人こんなので)


 服を着替える青年を見ながら、これからの事に頭を悩ますシャマル


「さて、思わぬ所で時間を食ってしまった。仕事に戻らないとな」


 そんな彼女を気にせずそう言い、室内から退室しようとするが、


「おお、いたいた」


 ちょうど立ち上がろうとした時に医務室のドアが開き、外からヴィータが入室してきたのである


「ん?ヴィータちゃん?どうした?俺に会いに来たのか?」


 満面の笑顔で千早が言うが、心底どうでもいい表情で


「莫迦は死んでから言え、そうじゃねえ。なのはとフェイトがお前に話があるから仕事終わったら来いって」

「ん?話?特に俺は無いぞ?」

「いいから、いっとけ。どちらにせよお前の為だ」

「なにそれ?なんか知らんが行けばいいのか?」

「じゃねえと新人達が怯えて仕方ないんだよ。なのはどころかフェイトまでああだから」

「んーなんかよく解らないけど了解」


 首を傾げながらも、了承すると部屋から出ていく千早、その後ろ姿を見ながら


「まあ、なんだ……骨は拾っておいてやるから」


 ものすごく優しい目で見られた……


「んーなんだろうか、さっきの悪寒が現実になりそうな気がするのだが?」


 疑問に思いつつも医務室を後にする彼を見ながら、残された二人は盛大に溜息をつくのであった……




「大丈夫なんでしょうか?ヴィータちゃん」

「ん?大丈夫なんじゃないか。大体あいつがボコボコにされるのはいつものことだし」


 ため息をつきながら、言うシャマルに心配するなと諭すヴィータ


「それに、あいつはそんなに悪い奴じゃないしな」

「そこが不思議なんですよね」


 そうなのである。普通あそこまで変態かつ異常な性格をしているのに対して、ここ六課で誰も彼のことを心底嫌う人間がいないこと。あの堅物なシグナムですらそうだし、それは自分にもいえることで、何よりあれだけあからさまなロリコンが、対象年令の子達がなんの疑いも無く受け入れている……寧ろ好感を持っている事自体不思議で仕方が無い様子のシャマル。まあ普通に気持ち悪いし、嫌悪感ばりばりであるが……


「なんだかんだいって、ヴィータちゃんも彼のこと気にいっているようだし」


 意地悪な笑顔で言うと


「ばっ!んなわけねー。あんな変態」


 必死になって否定するが、余り説得力が無い。大体ヴォルケンリッターの中でザフィーラと共に千早に懐いているのがヴィータである。本人は気づいていないようであるが、ちょくちょく二人で楽しく食事してたり、アイス奢ってもらったり、ゲートボールしたり、訓練したりしている所を見られている。


「本当に不思議ですよねえ。どこの部署へ行っても、何故か小さい子からは好かれていたし」

「だから、あたしはそんなんじゃねえって」


 二人が談笑していると、不意にドアが開く


「なんや、ヴィータもここにおったんか」

「はやて?どうしたんだ?」

「いや、千早がここにおるって聞いたから来たんやけど」


 そう言いながら室内を見回す。何故か指をボキボキ鳴らしながら……


「千早君ならさっき出て行きましたよ」

「あちゃあ、入れ違いか。しゃあないまた今度でええか」


 何故か、残念そうに拳を突き出しながら言う。俗にいうシャドーボクシングである


「何か用事でもあったんですか?」

「いや?まあ、とりあえずなのはちゃんから苦情きたんでな。ちょ~とお説教しようかと思て」


 表情だけ見れば、やんちゃ坊主を叱るお姉さんって感じであるが、拳の速度だけ見ればおもいッきり殺る気である。その姿に呆気にとられているシャマルに苦笑しながら、椅子に腰掛けるはやて


「まあ、ええわ。ところで何を話してたん?」

「いえ、なんで彼はロリコンなのかなって……」


 苦笑いを浮かべながら質問するシャマル、もっとも理由であるが


「直球やね。そうやなあ、そういやあ出会った頃からああやったし、あれは一種の個性みたいなもんちゃうかな?」

「はやて、アレは個性で済ませれるもんじゃないと思う」


 なんとも言えない表情で突っ込むヴィータ。彼女の表情に苦笑しながら


「あはは、まあ、あっちでも相当やったみたいやし、そうそう、こんな噂があってな……」


 はやてが、何かおもしろい物を話すように語りだす……




 ……


 …………




 それは彼が陸士時代の話である。

 千早が訓練校を卒業した後、とある部隊へと配属された際起きた悲しいそれは悲しい事件であった……


「駄目です。奴ら籠城を止める気はありません」

「交渉はどうなっている?」

「聞く耳持ちません」


 ミッドチルダ郊外にある廃墟を取り囲む陸士部隊。廃墟内にはテロリストが立て篭もり籠城を続けている。


「人質はどうなっている?」

「今のところは無事だと思われますが……」


 ただの籠城だけであるなら、屈強な部隊員達を突撃させれば済む話であるが、厄介な事に奴らは人質をとっていた。その人質というのが


「おかあ、さん……怖いよ……」


 まだ年端もいかぬ幼女であった。彼女は恐怖に震え泣くことしかできない。そんな少女に対し暴言を吐くテロリスト達、まさに外道である。しかし、人質がいるため何もできない彼らに非常な命令がくだされる


「……」


 虚ろな目で建物を見つめる者がいた。入隊してまだ間もない千早であった。彼の能力は公式では平凡、並以下、目立った成績も無いただの平隊員であるが……


「ぼけっとしてないでこっちに来い!強行突入に入るぞ!」

「しかし、それでは人質が」

「知らん!上からの命令だ!」

「……」


 それは人質を無視するということである。その命令に女性隊員から非難の声があがるが、一喝する部隊長。その光景を静かに見ていた千早は


「……許せないなあ、ああ、許せない……」


 虚ろな目で虚空を見上げる


「幼女とは愛でるものであって、摘んではならない……幼女を泣かす?幼女を見捨てる?」


 彼の中のスイッチが入ったのか、その表情は暗く、そして恐ろしかった


「母親から奪われた悲しみ、孤独に怯える悲しみ、愚かな者に捕まり拘束され、恐怖に打樋して枯れて泣きじゃくる幼女を見捨てる?この俺が?幼女を?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる……」


 次の瞬間彼は消えた。それを見た女性隊員は後にこう語る


「ありのまま起こった事を話すわ。彼が、急に壊れたオルゴールのように幼女幼女と呟いた瞬間、目の前から消えたの……それは早く動いたなんてもんじゃないわ。そう物理的に消えた。転移魔法かなにかと思ったけど、そうじゃない。詠唱も何もなかった……そう彼は一瞬で人質の所まで移動したのよ……そうして彼は人質の少女を救出するとそのままテロリスト達へと向かっていったわ。その光景を私達は黙って見ているしかなかった。あんな恐ろしいものを見ることになるとは……私達は心に深いキズと共に教訓を得たわ……ロリコンを怒らせてはいけないと」


 彼が突入して数分、現場である廃墟内からは絶叫が木霊する


「幼女の笑顔に祝福を……幼女を辱める者に死の鉄槌を、破滅を、殲滅を与えん」

「ぎゃあああ!!化物ぉお!!」

「貴様らは罪を犯した……」

「来るな来るな来るな!!」

「幼女とは愛でるもの、幼女とは至高なる天使、無垢なる涙は喜びの際に流すもの、禁忌を犯し幼女を恐怖に陥れた貴様らは……万死に値する」

「ひぃいいい!!」

「ロリコン怖いロリコン怖いロリコン怖い」

「誰がロリコンだ……私は小さい者を愛する者だ……そう一緒に添い寝したいだけだ……貴様らと一緒にするな」

「俺達はそういう意味で人質をとったわけじゃ……ひぃぃい!!」


 阿鼻叫喚とはこういう事をいうのであろう。廃墟内では狂ったように髪を逆立て、口元を三日月に光らせる化物がテロリスト達を掴んでは、フルボッコにしていた。突入した部隊員達は皆唖然とその様子を黙って見つめるほかなかった……

 突入の指揮をとった隊員の一人が後にこう語る


「あれは、人間じゃねえ、化物だ。なんせあいつは、奴らを素手で殴っていたんだ。ここミッドチルダで魔術を使わず戦闘する奴なんていねえ。だが、俺は気づいた。奴は魔法を使わなかったわけじゃねえ。あれは使えなかったんだ。奴は言語機能までも戦闘能力へと変換してやがった。今でも耳に残っている……奴の言葉『YOUZYONAKASHITA』がな……あれ以来隊では奴のことを『ロリコン・オブ・ロリコン』と呼び、あの光景は部隊内の秘密として公表せず、奴の前で幼女を泣かさないよう心に誓ったもんだ」


 そこには、尻にネギを突っ込まれた者、犬神家のように頭から地面にめり込んだ者、何故か?全裸で亀甲縛りされた者達が皆気絶しており、意識のある者はうわ言のように『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』『ロリコン怖いロリコン怖いロリコン怖い』と死んだ目で繰り返す。テロリスト達の無残な姿が残されていた……





 ……


 …………




「てな感じで彼の事は一部で有名になったんやと」

「はやてちゃん……それは本当ですか?」

「知らへん。ナカジマ三佐から聞いただけやし」

「ナカジマ三佐の言うことだろ?嘘だろ嘘」


 ヴィータの言葉に、少し頷くと微妙な表情で


「ん~私かてそう思て、その後あいつの部隊行って聞きまくったんやけど……」

「それで?」

「皆急に口が固くなるねん。まるで、緘口令がしかれたように……」


 暗い表情で答えると


「はやて、それって……」

「はやてちゃん……」


 二人は身震いをしてしまう。


「なんでやろうな?しかも、何人かは歯をガタガタ鳴らしながら震え出すし」

「は、はやて……もうやめよう。その話は」

「私もそれがいいと思う」

「あ、そう?ならやめとこか、でもけったいやな。それ以来ナカジマ三佐も何も教えてくれへんし」

「はやてぇ」

「ああ、ウソウソ。もう話さへんて、ほんなら見かけたら私んとこ来るように言うてね。しば……話があるって」


 今、絶対しばくって言おうとしたようね?絶対話しだけで終わらないよね?そう思いながら手をふるシャマルとヴィータ、彼が明日の朝無事に起きられる事を祈りながら、しばらく談笑するのであった……




 ……


 …………





 その日の夜―――



「千早君?少し、お話があるの?」

「そうだね。私も一回ちゃんと話しとかないと……」

「……君たちは、人と話をするときにデバイスを展開する癖があるのか?」


 白と黒の悪魔に、首筋にバルディッシュ、後頭部にレイジングハートを突き付けられて確保される


「ちなみに、それは肉体言語で語る話であろうか?」

「うん。そうなるかも知れないよね。なんだろう?私ね、最近すごく怖がられてるんだよね?」

「……いや、それは昔から……いやなんでもない」


 すごい目で睨まれた……後頭部にゴリゴリと突き付けられる……


「私も、聞きたい事があるの。ねえ、最近一部の職員の視線が痛いのは何故かな?」

「いや?心当たりが無いが?」

「そう……ところで私って脱げば脱ぐほど速くなるんだってね?」

「ん?そうじゃないのか?『ソニックフォーム全裸ver』は光の速……いや、なんでもない」


 更にすごい目で睨まれた、しかも何故か首筋にかかる圧力が増えたような……


「どうした?二人共イライラして、更年期障害か?まったく、これだから年増は……」

「「少し……頭冷やそうか……」」


 そのまま両腕をガシッと掴まれて、暗闇へと連れて行かれる千早……


<だからマスターは発言に……やはり一度、精密検査か何かを受けることを推奨します。脳の……>


 暗闇から主を心配するデバイスの声が漏れる……





 ちなみに、その様子をたまたま見かけた新人二人は……


「……ね、ねえ。今、なにか恐ろしいものが見えたんだけど?ティア?」

「見えない、見てない、聞こえない……さあ!明日も早いから、休むわよ?スバル」

「う、うん!そうだね!休もう、それはもう一生懸命休もう!」


 と、見なかった事にしようと申し合わせてそそくさと自室へと逃げて行った事は言うまでもない……

 そうして、桃色と金色の閃光が夜の闇に輝き、爆音が木霊することとなるのだが、なるべくそのことには触れまいと六課では緘口令がしかれたそうな……






 オリ主といえば過去の悲しい話がいると思い書いた。後悔はしていない。



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第4.5話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:00
 今回は短いです……というよりネタ探しの旅に出ます……








「で、あるからして、指揮系統から伝達される情報を……」


 真面目な顔で、教壇に立つ千早。本日もいつも通り午前中は高町教導官の訓練を行なっていたが、午後からは座学を行う事となり、現在彼が受け持っている。ちなみに、隊長陣達は揃って別件で本局の方へと出向していった。


「連携に関しては各々得意分野を生かして……」


 真剣に教鞭を振るう彼に対して、着席している新人たちは俯きながら、必死に何かを堪えている。スバルとキャロなんかは先程から肩が小刻みに震えていた


「さて、ここまでで質問のある人は?」


 ひと通り説明する。そうして正面を向いて質問を促すと


「は、はい……」


 キャロが申し訳無さそうに、手を挙げる


「はい、キャロ君」


 指名され立ち上がると


「あ、あの……最上陸尉……頭どうかしたんですか?」



「「「「「ぶっ!!」」」」



 その瞬間、室内から吹き出す声が聞こえたかと思うと、一斉に笑い出す副隊長達


「キャ、キャロ……だめ……」

「そ、それは……」


 新人達も堪えきれなくなったようで、同じく笑い出す


「酷い言われようだな……キャロ君、そういう場合はだな。頭じゃなくて髪が正解だ」

「は、はいすみません……」

「あっはっはっは……いいじゃねえか。実際頭がどうかしたんだから」

「そうだな……頭がな……くくく」


 未だ堪えきれないのか、笑いながら頭を指差すヴィータ、シグナムも同じように腹を抱えながら笑っている


「ふむ……」


 難しい顔をしながら、自分の髪を弄る千早、何故皆が爆笑しているかというと


「いや、しかし、お前……思い切った髪型にしたな……アフロとは」


 アフロなのである。某海賊団の音楽家のような見事な、それは見事なアフロであった。彼が動くたびにそれがファサファサと揺れるので、見ている方はたまったものではない


「別に好きでしたわけではないが……」


 昨夜、なのはとフェイトに何故か?OHANASHIされることとなった千早は、彼女らの砲撃と電撃を食らうはめになり、慣れていない電撃を浴びた為に、少し髪が焦げてしまったらしい


「しかしなあ、電撃食らって頭が爆発するとは……流石アニメだ」


 訳のわからないことをブツブツと言いながら、頭を擦る


「ふむ、さて色々と脱線したけど今の所質問は無いようだから次いくぞ」


 とりあえず気にすることも無く講義は進んでいく


「それで各自の役割だが……この部隊は、魔王、死神、鉄槌の騎士、狂戦士を隊長、副隊長としている訳だが……」

「まて、何かおかしい」


 不穏な単語を並べられて、講義を中断させるシグナム


「ん?おかしいところでもあったか?」


 何がおかしいのかさっぱりといった感じの千早に対し、


「とりあえず、鉄槌の騎士以外全てだ」

「てか、まじめにやれ」


 二人から突っ込まれる


「む、了解」


 そう言われ渋々、コメントを変更すると


「つまりだ、簡単に戦力を表すとだ……」


 ボードに各人の名前と数字を書いていく。

 なのは、フェイトには53万と表記し、その後ろにシグナム、ヴィータに20000、ティアナ、スバルには4000、エリオ、キャロには3000と数字を書いていく


「ちょっと、待て、だから色々とおかしい」


 自分の数字に納得のいかないシグナムがまた突っ込んでくるが


「いいか?戦いの上では、基本チームワークが重要となってくる。故にまずは各自の役割を十分に生かせるよう努力することが最も大事となる」


 とりあえず、突っ込みを無視して話を続ける


「いや……だから……」

「シグナム、諦めろ……とりあえず言ってる事だけはまともだから」


 ため息と共にそうごちるヴィータ、新人達もその光景には苦笑せざるを得ない


「さて、ここまでで質問がある人は?」

「はい!」

「ボードに最上陸尉の名前が無いんですが、どうなんですか?」

「ふむ、まあ、俺はそこまで強くないから、この辺りかな?」


 そう言うと、ヴィータの後ろに自分の名前を記入し、5000と書く


「ええ!?それは無いんじゃないんですか?」

「そうだな、それは無い」

「ああ、それに関しては私も無いと思うぞ」

「とりあえずあの二人に匹敵するくらいはあるんじゃねえか?」

「あの二人と一緒にするな。いいか?簡単にこの部隊の隊長陣の戦力を説明するとあの二人は0空とベ0ータだぞ?シグナムやヴィータですらピッ0ロさんの立ち位置くらいなんだぞ?俺なんてせいぜいヤ0チャくらいだろ?」

「全然簡単じゃねえよ。誰だよそいつら……」


 拳を握りしめて力説するも、余り伝わらないのか皆納得してくれない


「とりあえず、俺は戦力として考えないように」

「いや、胸を張っていえることじゃ……」

「ともかくだ、新人達は潜在能力もあり、可能性もあるが、今はまだ無理。これからきっちりと訓練していく事。それから、危なくなったら逃げることも大事」

「逃げるんですか?」

「そう」

「そんな味方を置いて自分だけ逃げるとかできません」

「いや、それ結構大事。無理して倒されたりしたら誰かが助けに行くだろ?」

「当たり前じゃねえか」

「当然だ」

「まあ、相手が格下なら問題無いけど、例えば彼我の戦力差が同等、もしくは向こうが上だったら?」

「それは……」

「そういうこと、例えばスターズ分隊だと、スバルが倒れたらティアナが孤立する。そうなるとヴィータが救助に向かうわけだ。すると今度戦闘力53万のなのはが孤立することになる」

「なんだろうか……その、状況説明も言いたいことも理解できるのだが、何故か納得できないのは私だけか?」

「シグナム副隊長……実は私もそう思っていました」

「なんか、なのはさんだけでいけそうな気がします」

「悪い、私もだ」

「あれ?」


 皆、少し納得しかけたようだが、また混乱する


「まあ、もっともそういう事にならないようにするのが我々の務めであるからして……」


 そんな空気を完全に無視して、講義は続いていき、終始場を混乱させていた……

 ちなみに、その夜。講義の様子を聞いたなのはとフェイトは2日続けて彼にお話をすることとなったことは言うまでもない……





 あれ?なんか千早がまともなキャラになった……ロリコンどこへやった……

 いきなり痛恨のミスしましたので修正しました。ご指摘ありがとうございました

 そして二度目の……ああ、やっぱり少し旅に出ます……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第五話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:01






 管理局内、待機部屋にて




「む、んん……はあ……」


 照明に照らされた一室にて苦悶の表情に歪む女性がいた


「なんだ?もう降参か?」


 そんな彼女に、満面の笑顔で語りかける男性


「なんだと?うっ……ん、んん……」


 彼の執拗な攻めに対し、必死に抵抗を試みるも


「なら、これでっ」


 あまり効果はなく、彼の右手が静かに前へと置かれる


「なっ!?ああっ……そこは……駄目だ……」

「ほれほれ、どうした?」


 いやらしいく、手をワキワキさせながら更に左からも責められる


「やめろ……あぁ……そんな……」


 とうとう彼女を絶望という名の敗北が襲いかかる


「ふっふっふ……」

「……やめろ……そっちはっ……」

「烈火の騎士も、こうなっては型なしだな」


 静かに俯く彼女に対し、見下すような視線と下卑た笑顔を浮かべながら言う


「言わないでくれ……」

「さて、どうしよっかな~」

「ちょっ……待ってくれ……」

「無理、俺はもう待てない」


 両手を前へと突き出し、待ってもらおうと懇願するも許してもらえず


「お前は……最低だな。ロリコンの癖に……」

「誰がロリコンだ。まあいい、そのロリコンにいいようにやられてる癖に?」

「……もう、好きにしろ……」


 最後には、全てを諦め、なすがままとなるシグナム


「潔い、では……」


 そうして、彼女が不安げに見つめる中、千早の手が最後の一手を決める……


「王手!」

「くっ!不覚……」


 千早の持つ駒が、シグナムの目の前で王将の目前に置く……


「これで俺の三連勝だな~シグナム」

「変態の癖に……」

「俺、ゲームは得意だかんね。前は子供たちと色々遊んだもんだ。懐かしい。後、変態関係無え」


 本日は待機任務の二人がいた。なのはやヴィータは新人達の訓練を見ているため、事務仕事をしようとしていた千早である。そうして、仕事も終え何しようかと考えていた所に外勤から帰ってきたシグナムに遭遇してしまい、「む、お前もこれから暇か、なら」とそのまま手合わせとなりそうになったので、「いや、今日は無理。代わりにこれで勝負しようか」と相成ったわけで、つまりは将棋である。何を言っているか意味不明なのはわかっている……


「しかしだな、俺はいいとして。お前は訓練を見ないでいいんかい?」


 未だに、納得いかないのか、盤を睨んでいるシグナムに向かい聞くと


「ああ、私は古いタイプの騎士だからな……」


 盤から目を話すと、少し遠くを見つめるような視線で静かに呟く


「ああ、古いな、このメンツの中で一番年増ぽいし」

「……そういう意味の古いではない」


 微妙に食い違う意見を言う千早に対し、真顔でデバイスを展開すると切っ先を鼻先に向ける


「そこで、レヴァ剣構えるな」

「貴様は一度、脳を叩き割ってから作り直す必要がある」

「やめい。俺が死んだら全国数百万以上の幼女達が悲しむ」

「喜ぶの間違いだろ」


 そういうとそのまま天井へと切っ先を向けると、振り下ろす。


「おまっ!?今絶対当てようとしただろう?」

「当てねば意味がないだろうが」


 そうして、しばらくシグナムに斬りかかられ続けるハメになるのである。


「はあ、はあ、はあ……」

「ふう、ふう……OK、話しあおう。このままではせっかくの待機が台無しになってしまう」


 しばらく、斬りかかっていたが、流石に疲れたのか息が荒いシグナムに対し、休戦を申し込む


「お前が言うな。お前が」


 大きなため息をつき、息を整える。流石というか、既に呼吸は整っていた


「でも最近思うんだ」

「何がだ?」

「俺ってロリコンなんだろうか?って」

「今更そこか!?」


 こいつは何を言っている?目の前で真剣に悩む男に、唾を吐きかける勢いで突っ込む


「いや、基本小さい子が好きなんだけどな。じゃあ、キャロとエリオどっちを選べって言われると……」

「いや、そもそもその選択肢はどこからきた?」

「無論、どちらも愛しているのだけれども」

「だから、人の話を聞け」

「なんか、ほんの少し、少しだけキャロへ好意が偏るんだよな。変だと思わないか?」

「先程からお前の言動全てが変だと思うのだが」

「そうなんだよな~たしかに、俺は小さいものが好きだけど、最近幼女の方へと……」

「だから、お前は人の話しを聞けと……」

「だから、真面目な話。どっちかしかお風呂に入れないとしたら、俺は間違いなくキャロを選ぶんだろうなって」

「どこが真面目な話だ。とりあえずそうなったら全力でお前を斬るからな」

「いや、これが結構真剣、ほら、やっぱりお互い裸はまずいわけで」

「いや、それ以前に、色々と問題がある事に気づかないのか?」

「ん?やっぱり水着着用の方がいいよな。裸は流石に問題だよな。やっぱ」

「いや、だから水着以前の問題であって……」

「ところで……」


 しばらく咬み合わない会話を繰り返していたが、少し間を開け……



「スクール水着って何歳までだと思う?」




 ……

 ………

 …………

 ……………

 ………………

 …………………




「知るかぁぁあああ!!!」


 思いっきり殴られた、グウで……


「おまっ!拳で直接打撃って痛いじゃないか」

「知らん!お前がさっきから訳のわからんことを聞いてくるのが悪い!」

「訳がわからんことはない。スク水はいくつまでか?って聞いているんだ!」

「それが訳がわからんと言っている!!」

「なんだと!?お前はスク水着ないのか!」

「そもそも、そんなもの着る必要がどこにある!!」

「だから!風呂入る時に決まっているだろうがぁあ!!」

「私は入浴の際、何も着ない!!」

「そんなの当たり前だろうがぁあ!!誰がお前のスク水見たいって言った!!年増がぁあ!!」

「誰が、そんなもの見せると言った!!この変態ロリコンがぁああ!!」


 顔面を擦り付けん勢いで言い合う二人、その声は室内だけでなくドアを隔てた外へと漏れていた……



 ……

 …………



「え、えっと……」

「ちょっと出掛ける事、言っとこうと思うたけど、やめといた方がええね」

「そ、そうみたいだね……」


 廊下で、二人頷き合い苦笑する。片方は引き笑いであるが……


「しかし、いつの間にあんな仲ようなったんやろうな?あの二人」

「そ、そうだね。そっとしておいてあげようか」

「そうやな。下手に関わってこっちに飛び火されてもかなわんし」

「それがいいと思うよ。はやて、さ、行こう」

「ちょう、腕引っ張らんといて」


 そのまま、脱兎の如くはやての腕を引っ張ると去っていくフェイト、その様子に苦笑しながらついて行く。背中の方では、未だ大きな声で言い合いをする声が廊下まで木霊していた……

 機動六課は今日も平和である……






「まったく……これだから年増は……」


 文字通り肉体言語で話し合った後、シグナムと別れた千早はブツブツと文句をたれながら歩いていく


<まったくです。マスターそもそもスク水は8歳までが限界だと私は思います>

「ふむ、なるほど。だが、私は12歳までならいいと感じるが」

<それは何故ですか?>

「確かに、あの紺色の表面は水平線が良く似合う。だが!そこに控えめなまさに大陸と呼べる膨らみがあるのも、また良い」

<確かに、それは良いかもしれません。しかし、やはり水平線を超えた先にある、腹部の膨らみもまた良いものですよ?>

「なるほど、少し考えをまとめる必要があるかも知れんな」

<そうですね。しかし、私はこうも思うのです>

「ほう、なんだ?」

<キャロちゃん、ヴィータ女史は似合うのは当たり前だと思うのですが>

「ふむ、当たり前だな」


<では、エリオ君は?>


「……なんだと!?」


<そう!あえて幼女にしか似合わないとされるスク水を少年に着せる。なだらかな水平線にそびえ立つ小さな小山……それを恥ずかしそうに前かがみになって頬を染める少年……ああ、私がデバイスでなければ……>


「ガングニール貴様!」

<はい、マスター>

「……よくぞ……よくぞっ!そこまで!確かに私は常識に囚われすぎて発想が貧困になっていた……確かに、いい!活発なエリオ君にはスク水は似合う。そこに気づくとは……私もまだまだだな」

<これも、マスターの日頃の教えの賜物です>

「ふむ、良いデバイスに育ったな……よし、今日はスク水記念ということで一杯やるか?」

<いいですね。私も飲みたい気分です……あ、といっても私飲めないんですけど>

「わははは!よし、行くぞ!」

<YES MY MASTER>


 爽やかな笑い声を木霊させながら歩き去っていく変態達?その光景を、温かい目で見守る女性職員、その視線に対し、同情的な視線を送る男性職員。しかし、一部の職員の中には羨望の眼差しで彼を見つめる職員も結構いた……大丈夫か?機動六課。だが、そんな平和を打ち砕くようなアラートが局内に鳴り響いた……奇しくも、彼の機嫌が最高潮の時であった……



 話は淡々と進む……旅?うん、ちょっと出かけたよ?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第六話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:01





「ああ、妖精っていたんだな……」


 たまにリビングからリモコンが消えることがあった……そうして、キッチンで発見する事が何度か……そうか、それは全て妖精の仕業なんだな……




 ……


 …………




「はい?どうなんでしょうかねぇ?」


 小さな妖精が、小さく首を傾げながら答えてくれる。ああ、やはり妖精はいるんだ。最近は年増にしか絡むことが無かったけど……


「ああ、生きていてよかったと私は思う」

<私もです。中々遭遇しなかったので喜びもひとしおです>


 一人とデバイスがまるで感動したように語り合う。涙を流しながら静かに笑みを浮かべる


「え~と、うん。とりあえず、状況説明しよっか……」

「「「「……はい」」」」


 何かかわいそうな物でも見るような自愛に満ちた視線を送られる。さて、彼が上機嫌で自室で一杯(ジュースであるが)やろうかと思った所でアラートが鳴り響き、同じく新人達のデバイスの説明をしていたなのは達と共にヘリに乗り込み現場へと急行している最中である。

 ヘリの中で現状を説明するなのは、現在山岳リニアレールで輸送中のロストロギア『レリック』が発見されたらしい、しかも列車は暴走状態で山岳を駆け巡っている。しかもその周辺には新型のガジェットも確認されており、現在は部隊長補佐であるグリフィス・ロウランの指揮の下列車の管制を取り戻そうと試みている状態。その報告を受けたはやてが、スターズとライトニングを現場へ派遣するよう指示、自身も聖王教会から現在帰ってくる途中である。フェイトも市街地から飛行許可をとって直接向かう事になっている。


「ふむ、空と列車内のガジェットを破壊、重要貨物室にあるレリックの回収というのが今回の任務という事だな」


 なのはの説明を噛み砕いて確認する。その言葉に静かに頷き返すなのは。しかし、周りを見回すと初任務ということもあり新人たち、特にエリオとキャロは緊張しているようで、かなり表情が堅い


「うん。空は私とフェイトちゃんでなんとかするから、フォワードの子達のフォロー頼めるかな?」


 真面目な雰囲気、仕事モードに入っているなのはに対して


「了解、スターズ分隊、ライトニング分隊共に守ろう」

<Yes Sir>


 空気を読んで真面目に敬礼しながら返事を返す千早


(ほんともったいないなぁ……いつもこうだといいのに……)


 あの特殊な癖さえなければと、苦笑しながら彼を見つめるなのは


「本来、12歳以上には興味は無いが、今は機嫌がいい。俺の中の年齢制限を18歳以下にしておこう。フフフ……L18といったところか、滅多にお目にかかれないぞ」


 前言撤回、やっぱりロリコンだ……


「さてっと」


 彼女の中で自分の評価が急激下した事など気にする様子も無く、新人達へ近づく千早。そういえばフェイトちゃんに、絶対キャロとエリオに近づけないようにと約束してたなと思い出しながら、何かあったらとりあえず殴ろうと構えつつ見守るなのは


「ん~ティアナとスバルは問題ないか……ふむ」


 ぼそぼそと呟きながら、彼女らに近づく彼を見守る。もちろんいつでもデバイスは展開できるように、念のために視線でヴァイス陸曹にいつでもハッチを開けるれるよう指示してあるのでいつでも排除は可能だ。


「……」


 彼の視線の先にはキャロがいた。彼女は力無く顔を俯かせ、隣にいるエリオの声も届いていないようである。膝の上に座っているフリードも心配そうに彼女を覗き込んでいる。元々気弱な性格の彼女は初めての任務ということもあり、考えが悪い方向へと作用しているようだ。

 そうして、彼は徐に片膝を着くと震えている彼女の頭に手を優しく置いた。後ろでなのはが、やさしくレイジングハートにいつでも展開できるように語りかけた。


 キャロは突然訪れた重みに顔をあげる。そこには自分と同じ視線を合せ静かに笑みを浮かべる顔があった。


「キャロ君、実は私はロリコンだそうだ」

「……はい?」


 この人は何を言っているのだろうか。後ろではいつでも排除できるように静かに立つなのは


「ふむ、君が不安になるのはわかる。初任務がロストロギア関連だしな」

「はい……」


 優しい、それは優しい声で語りかける千早。ヴァイスはいつでもハッチを開けれるように構えつつ操縦桿を握っていた


「だが怖がる必要はない、不安になる必要もない。君は自分のできることをするだけだ。安心したまえ君の傍にはロリコンがいる」


 うん、それ安心できない。寧ろ不安しか残らないんだけど?そろそろかと、視線をヴァイス陸曹へと送るなのは


「いいかい?真のロリコンとは幼女と少女を絶対泣かせたりしない。私はそんじょそこらのロリコンではない一流の変態だと自負している」


 とりあえず、言っている意味はまったく理解できないが、彼が一流の変態だってことは理解できた。さてこのまま空へ叩き落とそうかと思っているなのはを他所に、優しく語りかける


「君は機動六課に必要なんだ。君の魔法はみんなを守ることができる。何より君は優しくて格好いい。それは弱さではなく強さだと思うぞ」

「優しい、強さ……」


 千早の言葉を噛み締めるように呟く


「だから、ほんの少しだけでいいから、勇気を出してみよう。それだけで世界が変わったように飛べるはずだ」

「勇気……」


 そう呟くと視線をあげるキャロ、そこには優しい笑みで自分を見つめる千早がいた。何も心配ない大丈夫だと言わんばかりの表情をする彼に、彼女は視線を合せることができないでいた。警戒していた、なのはも彼の思わぬ行動に驚愕していた。

 キャロの優しい性格は教導している彼女自身よく理解していた。それは彼女のポジションでは適切な特徴といえる事であり、実際彼女のサポートはフォワード組にとってかけがえのない戦力になっていることは確かである。だが、その優しさが逆に弱さになっている今の彼女では駄目だ。他のメンバーと戦場に立ち、共に戦うという明確な意思をもたなければ何も意味が無い。かといってこればかりは自分で気づいていくしか方法が無いので、自分があれこれ言っても効果は無いと思っていた。しかし、目の前の自称一流の変態は、そんな彼女の背中を後押しするように優しく語りかけているではないか……そんな彼に少し、感心するなのはだったが


「そう勇気だ……だからこれを着て一緒にお風……」


「……レイジングハート」

<……動かないでください>


 懐から紺色の何かを取り出そうとした千早の後頭部にレイハさんを突きつける……というか、ゴリゴリ当たって痛い


「……ちょ~と見なおしたと思ったのに……やっぱり千早君は変態さんなんだよね?」


 後ろを振り返ると恐ろしい顔で笑みを浮かべる『元』少女がいた


「……誰が『元』少女なのかな?わからないよ?千早君?」

「ふむ、まさかと思うが、今も少女だと思って……いやなんでもない」


 今にも何かが後頭部に発射される気がしたので、これ以上のコメントを避ける千早


「ぷっ……アハハ」


 そんなやり取りをしていた二人の後ろから笑い声が聞こえてくる。キャロである。見ると表情も未だに堅いが大分和らいだ感じである


「ふふ、良い感じで力が抜けたみたいだね?キャロ」

「なのはさん……はい!」


 今度は元気な表情で返事を返すキャロ。もう大丈夫これで安心して戦いの場へ行けると思うなのは


「ふむ、計画通りだな。元気になったところで終わったら一緒にお風呂に入ろうか?」


 まだ懲りてないのか、立ち上がると満面の笑みで語りかける千早


「はい!」


 ……別の意味で不安が残った


「ちょっ!ちょっとキャロ本気?」

「それは絶対駄目だよ!」


 黙ってみていたティアナとスバルもこれに対しては口を出してきた


「え?だってお風呂入るだけだし……」

「キュキュル?」


 一人と一匹は何がいけないいのかわからないと言った感じで、首を傾げる


「い~い?キャロ、最上陸尉は変態なの。つまり、変態と一緒にお風呂に入るという事は」

「絶対襲われるから、駄目だよ!」


 理解していない彼女に対し必死に説得を試みる皆、思わぬところでフォワード組の結束力を見た気がする


「……酷い言われようだが?俺一応上官だよな?」

「あ、あはは……大丈夫そうだね?」


 盛大にいじける千早に乾いた笑いを浮かべながら、皆を見回すと、踵を返して操縦席のヴァイスに近づいていく


「ヴァイス君、後どれくらいかな?」

「後、5分ってところっすかね?」

「じゃあ、私は先に行くけど……無理しちゃ駄目だよ?後、千早くん、終わったら話があるから……」


 そう言うと、ヘリのハッチを開ける。そうして、胸元の紅い宝石に合図を送る。


「「「「はい!」」」」

「了解……」


 新人達の元気な返事と、若干ふてくされている千早を見送ると


「スターズ01高町なのは……いきます!」


 そのまま飛び立っていく……

 ヘリから飛び出し、空中でデバイスを展開すると、そのまま魔力光を散らしながら高速で飛んで行く



「さて、どっちがラスボスかわからんが……」


 その言葉に苦笑する。作戦が終わった後に彼がどういう目に合うかが予想出来るだけに


「まあ、さっさと終わらせようか」

「「「「はい!」」」

「んで、風呂だな!」

「はい!」

「キュキュル!」

「「「それは……」」」


 元気に返事するキャロに対して、深い溜息をつく他三人。揃って表情が心底暗い


「大丈夫だ!私もそのあたり心得ている。裸だと色々とまずいからな。だからそんなこともあろうかと、これを用意している」


 シャランと懐から紺色のスク水を取り出すと、皆に見えるように広げる。広げられたソレにはひらがなで『きゃろ』と書いたゼッケンがちょうど胸元の所に貼り付けられていた。盛大に引く若干二名……


「さっきは邪魔されたが……なんと特別サービスだ!君たち全員の分も用意しておいたぞ!」


 まるで、子供たちにプレゼントをあげるような感じで取り出す。しかも懐から万国旗を出すが如く次々に……


「僕のもあるんですか!?」

「あ、ティアだけ白い水着なんだ……」

「スバル、お願いだから声に出さないで頂戴……」

「ふむ、本来は12歳以上の君たちにはどうかと思ったのだが……やはり仲間はずれは駄目だろうという事で揃えさせて貰った。ちなみにエリオ君は当初男子用にしようと思ったのだが……」

<私が提案しました!>


 胸を張ったかのような声で、主張するガングニール。顔は見えないがきっと清々しい表情をしているだろう……


「ちなみに色は私の独断で決めさせてもらっている。オーソドックスな紺色はキャロ君、本当は白にしようかと悩んだが、やはり定番は一番似合いそうな子にした。スバル君のイメージはブルーだと思ったのでこれだ。それからティアナ君はキャロ君についで白のイメージだったのでな。エリオ君はガングニールの強い要望でキャロ君とお揃いだ」


 まったくうれしくない報告を嬉々として語る千早、


「どうしよう?ティア……なのはさんみたいに突っ込みきれない」

「私に助けを求めないでくれる?でも困ったわ。このままでは私達全員着る事になるわよ」

「エリオ君、お揃いだね?」

「え?これを着ろと……」


 隊長陣がいない為、誰も彼を止められない。誰か彼を止めてくれと誰もが思った時


「最上陸尉!!」


 甲高い声が響く、皆が驚いて振り返るとそこには腰に手を当てながら頬を膨らますリイン曹長がいた。そうだ、彼女なら彼を止めてくれるはず、誰もがそう思った


「リイン曹長、最上陸尉を止めてください」


 最後の希望である彼女に助けを求めるティアナ


「なんで……なんで……私のは無いんですか!私も一緒に着たいです!」


 あ、駄目だった……彼女らにさらなる絶望が振りかかる


「ふははははっ!甘いっ!甘いぞっ!」

<そうです。激甘です。もう角砂糖にはちみつかけるくらい甘いです>


 何が甘いんだろうか?というよりキャラ変わってない?というよりこの人(デバイス含む)気持ち悪い……と心の中で思うティアナ


「私が君の事を忘れると思ったかね?ふっふっふ……中々苦労したよ。これを作るのには」


 そう言うと手のひらサイズのスク水を取り出す。しかもご丁寧に胸元にも「りいん」っと書いたゼッケンが貼られている。ティアナは思った、無駄にクオリティ高いな、おい……


「なら良いですっ!」


 いいのかよ……もうここには味方はいないと諦めた……終わったら報告しよう全て包み隠さずにと思い現実逃避するティアナがいた……


「さて、隊長達が空を抑えてくれているおかげで、降下ポイントまで何事も無く到着だ」


 そんな空気を壊すように、ヴァイスが到着したことを知らせると、皆表情を固くする


「それから、最上の旦那?そろそろ真面目にお願いしますよ?じゃないとまた説教ですぜ」


 先ほどまでのやりとりを聞いていたようで、笑いを堪えながら言う


「私はいつも真面目なんだが……ま、いっか。さて……」


 大きく息を吐くと、皆を見回す。先ほどまでとは打って変わって真面目な表情な千早を見て、皆表情を固くする。


「各人が自分にできることをしっかりと発揮し、無事終わらせる事。気負う必要はない、君たちの隊長が皆を守ってくれる。もちろん私も支援する。今回は年齢制限解除だ」


 真剣な顔で低い声で静かに語る。自然と雰囲気が引き締まっていく……手元のゼッケンが気になるが、さきほどからチラチラ見える紺色が気になるが……


「だから安心していきたまえ」

「「「「了解」」」」


 千早の激励に返事を返すと、まずはスバルとティアナがハッチ前に立つ


「ティア、なんだろう……さっきまで緊張してたのがなくなっちゃった」

「私も同じよ。認めたくないけどあの人のおかげね……」

「不思議な人だね?」

「そうね。気持ち悪いけど……あれどうするんだろう?まさか持っていくなんて……」


 ちらっと千早の方を見ると、水着をたたんで椅子に置いている姿が見える。ご丁寧にゼッケンの部分を上に順番に並べているようである。


「……やっぱ着ないと駄目?」

「だから、私に聞かないでよ……今はミスしない事だけ考えるのよ」

「ミスするより、アレを着せられる方が怖かったり……」

「嫌な事言わないでよ……行くわよ!」

「うん!」


 キャロほどで無いにせよ初任務ということで緊張していた二人であるが、今はまったくといいほど固さが無くなっていた。その感覚を不思議に思いながら二人は同時に空へと飛び出した

 その後に続く年少組


「一緒に飛ぼうか?」

「……うん!」


 まだ少し不安な表情のキャロに笑顔でエリオが手を差し伸べる。その光景をニヤニヤ……もとい温かい笑みで見つめる千早。そうして、二人は手を握り締めると駆けるように飛び出して行った

 二人が恋人つなぎで、無事降り立つのを確認すると


「さて、行くか」

<行きますか>

「私もいきます」


 可愛い上司と変態上司が口を揃えるとハッチ前に立つ


「最上陸尉」


 飛び立とうとする彼の背中から声をかけるヴァイス


「ん?」


 首だけ後ろを向けて答えると


「あいつらの事頼んますよ」


 そう言うとサムズアップしながら、笑みを向ける


「当たり前だ。私を誰だと思っている。私は小さき者を愛でる者……目の前で幼女たちが泣く事など無い」

<YES 少女の涙は嬉し涙以外認めません>


 眼前に見える列車を見つめながら、呟くと飛び立つ。その後に続くようにリインフォースがついていく。銀色に輝く光が見えなくなるまでそう時間はかからなかった……



 ―――


 ―――――――



 一方その頃、空を駆ける者がいた。高町なのはである。彼女は既に空の上でガジェットと光線状態にあった。飛行タイプのガジェットと空戦を繰り広げているが、完全になのは無双となっていた。彼女の任務は、新人たちへ奴らを近寄せない事、簡単に言えば迫り来るガジェットを殲滅するのが仕事である。そうして次々と倒していくと、馴染みある閃光が複数ガジェットに向かい飛んでくる。


『なのは』

『フェイトちゃん』

『遅れてごめん』

『全然、大丈夫だよ』


 黒を貴重としたバリアジャケットを纏った、右手に死神の鎌を持った幼馴染が援軍として参上する。


『じゃあ、遅れた分を取り戻そうかな』

<Yes Sir>


 そう呟くと、自分の相バルディッシュに語りかけると大きく振りかぶると、ガジェットめがけて一閃すると、先端から金色の刃が回転しながら切り裂いていく


『流石だね。フェイトちゃん』

『なのはには及ばないよ』


 空を優雅に駆る白と黒、そのコンビネーションの前に次々と落ちていくガジェット達、制限をかけられているとはいえ、この二人にかかれば物量は関係ないように思える。


『そういえば、なのは。フォワードの子達は大丈夫だった?緊張していなかったかな?』

『そうだね……スバルとティアナは特に問題無さそうかな?エリオもかな。ただ、キャロだけ少し心配かも知れない』

『そうだね。あの子は優しいから』


 なのはの言葉に、同意するフェイト


『でも、大丈夫だよ?千早君がいるし』

『……なのは、それが一番心配だよ』


 思わぬ人物が出てきたので、顔を少し歪めるフェイト。未だに彼には耐性が無い彼女の表情に


『あはは……フェイトちゃんはあんまり彼の事好きじゃないみたいだね?』

『嫌いじゃないけど……ロリコンだからかな?』


 千早の事を人間的に嫌いではない。嫌いではないけど受け入れられない。そんな感じで言うフェイトに対し


『そうだね。千早君は変態さんだよ?でも……』

『でも?』

『彼はどうしようも無い変態だけど、ロリコンだけど、犯罪者一歩手前だけど、人のこと年増って言うし、熟女って言うし……私まだ19だよ酷いよ……』

『な、なのは?』


 後半愚痴になっている彼女に対して苦笑する


『でもね?一つだけ信じられる』

『それは?』


 目を瞑り、そう呟くと


『絶対、あの子達を泣かせる事はしないって』

『そっか……』


 満面の笑みでそう断言するなのはを見て、そう答える。何故か知らないけどなのはがそう言うなら大丈夫だろうと思い目の前の敵を破壊していく


『そっか、なのはは、彼の事を信じているんだ』

『どうしようもない変態さんだけどね』

『うん、少し彼の事が解った気がする……』


 そう呟くと、空を駆けていく。『幼女とは愛でるもの』そう語る彼の姿を思い出しながら、なるほど確かになのはの言う通りだなと考えを少し改めるフェイト。とはいえ、本当に10年前に出会わなくて良かったと思いながら……そうして、二人が駆け抜けていく後にはガジェットなど形も残らず落ちていくのであった……







[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第七話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:02
 幼女って素晴らしいよね?宇宙恐竜も怪獣王も後ろに幼女がつくとあら不思議、すごく癒される。なんて可愛いんだろう……多分、バイオハザードもゾンビじゃなくて幼女にすればすごく和むと思うんだよね。Yウイルスで、幼女化した人間がお兄ちゃんを求めて彷徨う街ラクーンシティー……萌える。



 そんな訳で七話目です









「ふむ、良く似合っているぞキャロ君、それからエリオ君も格好いいぞ」

<エリオタンの短パン姿……はあ、はあ……>


 列車上部に降り立つと、キャロとエリオの頭に手を置きながら目を細める千早、興奮するデバイス


「ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます」


 嬉しそうに返事をするキャロと、少し照れながら返事をするエリオ


「君たちも良い。君たちのバリアジャケットは各隊長のを参考にとされてるからな。良く似合っている」


 スバルとティアナの方を向くと笑顔を浮かべる


「ありがとうございます」

「……ありがとうございます」


 嬉しそうに返事をするスバルに対し、ティアナはまだ彼の事を信用していない様子である


「では、作戦内容を確認します。スターズ分隊は先行して重要貨物室内のレリックの確保、回収。ライトニング分隊は後方への確保。途中ガジェットが行く手を阻んでくるでしょうから、これらを全て撃破してください。私と最上陸尉は管制室の制圧と列車の制御を確保します」


「「「「はい!」」」」

「ふむ、了解」


 リインフォースの言葉に、気合の入った返事をする新人たち。


「さて、ガングニール?そろそろ帰って来い」

<はあ、はあ……じゅる……は!?私は一体?>

「ふむ、良い感じに温まっているようだ」


 そう呟くと、両手(デバイス)を見つめる


「そうは見えませんけど……大丈夫なんですか?そんなので」


 ティアナから不審な目で見られる


「ふむ、まあ、前にも言ったが私はなのは達ほど強くないからな。不安になるのもわかる」

「そういう意味じゃないんですけどね……」


 元々真面目な性格の彼女は、千早の性格や言動、その他諸々が余り好きではないようで、言葉の節々に棘が混じっている


「ティア?失礼だよ?あんなのでも一応上司だから」

「スバルよ、どういう意味だ?」

「ああ!すみませんすみません!」


 全くフォローになっていない彼女の言葉にジト目で見つめると、ししおどしのように頭を下げるスバル。そんなまったく緊張感が無い空気を心地よく感じるキャロ、気合を入れて降り立ったものの、やはり色々と悪いことを考えてしまう。でも、目の前の上司はそんなことどうでも良いかのように、周りを巻き込んで行く。不思議と安心してしまう。フェイトさんとはまた違う優しい感覚。これがロリコンなんだと彼女は思った。

 さて、キャロの中で評価が鰻登りな人物はと言うと


「今のうちに幼女分補給しておかないと、今宵もただでは済まなさそうだな?」

<YES 最近砲撃だけでなく雷撃まで追加されてますから>

「まったくだ。私はただ彼女らとオトモダチになりたいだけなのにな?」

<まったくです。レイハさんもバルさんも暴力的で困ります>

「多分あの二人(?)はできていると私は見ているが?」

<そうなんですか?確かに……そういえば、メンテナンス中も二人でこそこそと逢引していたような……>

「絶対そうだ。まあ、レイハさんも適齢期だしな」

<しっかし、あんなむっつりのどこがいいんだか。分かり兼ねます>

「デバイス同士何か通じ合うものがあるんではないか?同じ部屋で過ごしているなら尚更だろう」

<まあ、いやらしい。あの二人夜な夜な主が寝ている最中にデバイスラブを繰り広げているなんて///>



「えっと……デバイスラブ?」

「……」

「もうっ!最上陸尉真面目にやってくださいぃ!」


 二人(?)の漫談を聞いていたティアナとスバルは盛大にしらけていた。あまりにも緊張感が無い彼を見て怒り出すリイン曹長。何を言っているか理解できないキャロ、その横では聞かなかったことにしようとするエリオ。


「さて、肩の力も抜けたところで」

「肩どころか全身力抜けたような……ティアいける?」

「もう、どうでもいいわ。ミスするんじゃないわよ?スバル」

「あ、あはは……キャロはいける?」

「うん、エリオ君。もう大丈夫」


 三者三様、お互いパートナー同士確認すると、頷き合う


「さて、それでは私とリイン曹長で先行していこうか……できる限り露払いはしよう。では私の肩に乗るがいい」

「はいですぅ」


 小さく頷くと彼の肩に、ピトッと座るリイン、何故か「クッ」とか聞こえたけど、聞かなかったことにする


「解りました!でも大丈夫なんですか?最上陸尉」


 少し心配そうに聞いてくるエリオ、先ほどまでのやり取りを見ていたら不安になるのも当然である


「心配するな。何のためにリイン曹長を肩に乗せたと思う?」

「?」


 そんな彼に対し、満面の笑みで


「小さき者が一緒にいるなら、私は無敵だ」


 そう言うと


「さて、行くぞ?ガングニール!」

<All right……Ready…… Go!>


 ブンッ!っと足元に魔法陣が現れると駆け出す。すると、車両の屋根から轟音と共にガジェットが一体現れる。その出現を皮切りに次々に現れ出すガジェット群、その中を銀色の閃光が通過すると爆音と共に落ちていくガジェット。そのまま振り向きもせずに先頭車両に向かって駆けていった……


「……何が戦力として考えるな、よ」


 ティアナは走り去っていく千早を見ながら一人呟く。初めて彼の事を見たのは、六課創設の挨拶の時だった。厳しくも優しい視線で自分たちを見ていた彼の印象は『厳しい上司』あのエース・オブ・エースの高町なのはと互角と渡り合った歴戦の猛者であると……

 しかし、現実は違った。彼の発言を聞いていく内に一つの確信めいた言葉が彼女の中に生まれたのである


『ロリコン』


 そう、彼はロリコンなのである。下手をすれば犯罪者になりうる存在である彼が、よりにもよって自分達の上官である。しかし、彼女が最も疑問に思っていることは、女性であれば誰もが嫌悪感を露わにするはずの彼の性癖を、誰もが認めている事である。部隊長であるはやて然り、なのは然り……


「ふははははっ!君たちは邪魔なんだよ……いいかね?私は幼女少女少年以外には手加減できない。消えるが良い」

<そうです!邪魔です!どうせならもっと萌要素を装備してから来てください!>


 不快な笑い声が聞こえる……そこには大げさに手を広げ、ロングコートを翻し笑う男がいる。彼の周りには幾数もの光の刃が形成され、ガジェットへと向かい粉砕する。


「なんで、あんなのが私より階級が上なのよ……」


 模擬戦の時もそうだ。ふざけた技でシグナム副隊長を倒した。実力を隠して格好いいとか思っているのか?もし、そうなら私は彼を軽蔑する。必死に努力して、強くなろうとしている者への冒涜以外の何ものでもないからだ。だから私は彼に質問した。最初は否定していたけど、必死に迫る私を見て彼は苦笑しながらこう答えた


「幼女がいないと力が出ないって……何を食べたらそんな特異体質になるのかしら?」


 呆れながら、溜息と共に呟くティアナ。彼の答えは明確であった『私は幼女少女少年を愛でる事しかできない。故にそれ以外は凡人以下、才能も実力も無い』


「一体なんなのよ?」


 考えれば考えるほどわからなくなってくる。さきほどのやり取りもそうだ。私達の中で一番精神的に緊張しているキャロを見て真面目に語り掛けたかと思えば、欲望のままに迫る。迫ったかと思えば、また真面目になるし。ていうか、なんで私達まであんなもの着なきゃいけないのか……どこの世界に、作戦前に風呂入ろうとか、あまつさえスク水を見せびらかす人間がいるのだろうか……


「最上陸尉って、あんなにすごかったんだ……」

「かっこいい……ねえ?エリオ君」

「そ、そうだね……あの性格が無かったらね」


 どうしようもない変態で自身は無能と言っている最上千早という男がなんなのか分からくなってきた新人達……ただ一人を除いてであるが。彼の後ろ姿を、まるで王子様を見るような目で見ているキャロがかなり心配だ


「ま、考えるだけ無駄なのは確かね。行くわよ?スバル」

「うん!」


 頷き合うと先ほどガジェットが開けた穴から車両内に入るティアナ、キャロとエリオは屋根伝いに進んでいく





 ……


 ………




「ふむ、状況は?」

「スターズF四両目で合流、ライトニングF十両目で戦闘中」

『スターズ1、ライトニング1制空権獲得』


 通信のやり取りを聞きながら突き進む、目的は車両の停止である。進行を邪魔するガジェットは粉砕していく、状況を聞くに新人たちも概ね順調に進んでいた


『ライトニングF八両目突入……エンカウント!?新型です!』


 シャリオの通信を聞いて少し表情を強張らせる。ライトニングということはキャロとエリオが新型の対処にあたっているということだろう


「む?新型か?」

「最上陸尉、車両の停止は私が引き受けるです。陸尉はキャロ達と合流してください」


 二人のことが心配だろうか、そう提案するリイン。その言葉に少し考えると


「ふむ、わかった。ではライトニングと合流する」


 彼女を肩から降ろし頷くと踵を返すと、駆け出す……


「状況はあんまり良くないようだな」

<YES AMFのせいでかなり苦戦しているようです>


 AMF(アンチマギリンクフィールド)―――効果範囲内の魔力結合を解いて魔法を無効化する高位防御魔法で、その効果範囲内では全ての魔法を無力化される厄介な魔法である


「とはいえ、普段ならいざしらず、今ならなんとかなるレベルか」

<はい、今回は少し余分に補給しましたので>

「まあ、例えどんな状況であろうと幼女の危機は救わねばならん」

<その通りですマスター。あそこにはエリオタソもいるのですから>

「ふむ、フフフ……ショタとロリか……普通は相反するものだが」

<私達は一心同体、関係ありません>

「そうだ、我々にはショタもロリも無い」

<私達はそんな固定概念に囚われない>

「そう、我らは全ての幼き者を愛でる者」

<私達は全ての小さき者を愛する者>

「待っていろ小さき者」

<待っていてください。幼き者>

「<我々(私達)がいる限り幼女(少年)は傷一つ、つけさせん(ません)>」


 不敵な笑みを浮かべると、突き進む変態達。彼が動く理由は唯一つ、『幼き者の為に』、相棒が力を発揮するのは唯一つ『小さき者の為に』ロリとショタが合わさる時、それはすなわち……


 節操無しが生まれた瞬間であった……














 オリ主といえばかっこいい台詞と厨二ぽい地の文の終わり方が必要だと思った。しかし、安定のガンさんはブレない。


 修正しました。感想でいつもご指摘助かります



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第八話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:02
 この間これ書いている事を知っている友人にお前ロリコンか?と驚かれるのですが、私はナナリーよりコーネリアの方が好きです。



 というわけで8話目です










 ――雪が降り積もるとある施設


 ――たしかに、凄まじい能力を持っているんですが制御が録にできないんですよ。竜召喚だって、彼女を守ろうとする竜が勝手に暴れまわるだけで、とてもじゃないですけどまともな部隊でなんか働けないですよ。精々単独で殲滅戦に放り込むくらいしか……


 吐き捨てるような声で、男の人があたしのことを言っている。どこへ行っても皆迷惑そうな顔をする。


 ――あたしは今度はどこへ行けばいいんでしょう?


 また、どこかへ連れて行かれるんだ。あたしはもう諦めに似た感覚で目の前の人にそう問う


 ――それは君がどこに行きたくて何をしたいかによるよ?キャロはどこへ行って何をしたい?


 視線を合わせながら、あたしにやさしい笑みで答えてくれた……でも


 考えたことも無かった、あたしの前には、いつもあたしがいちゃいけない場所があって、あたしがしちゃいけない事があるだけだから……


 ――しちゃいけない事?そうだな、知らない人に着いてくのは駄目だな。いいかね?君みたいな可愛い子にいけない事をしようとする悪い大人が世の中にはたくさんいる。だから知らない人から声掛けられたらお兄さんに言いなさい。ああ、そういえば昨日美味しいお菓子が手に入ったんだが?私の部屋に……痛い痛い、はやて、どこへ……私は知らない人ではなくてだな……


 新しい居場所、そこで出会った男性は優しい笑顔でそう言った。しちゃいけない事ってそういう意味じゃないんだけど……不思議な人だった。


 ――迷惑だと?幼女とは存在自体が至高、何をしても許される存在。誰だか知らんが間違った知識だな。いいかね。君はわがままを言うのが仕事だ。多少周りに迷惑をかけようがかまわん。というより、一緒にお風呂に……ん?なのは、何をする?私はただ純粋にお風呂に……


 でも、竜召喚は危険な力。人を傷つける危険な力……だからあたしはいちゃいけない。


 ――危険な力?どこがだ?幼女と召喚、萌えるではないか?いいかね?古来より召喚とは幼女が行なう事によって映えてくるのだよ?それが、最近は年増とか、あまつさえ熟女までもが……まったく誰もわかっていない。召喚とは純真無垢な幼女の為に備わったもので、いわば神聖なるスキルなんだよ。君が人を傷つける?ありえん。幼女とは等しく人を癒す存在。それを……なんだと?ほう、そこはどこかね?ふむ、わかった。今からそこへ殴り……フェイト?何処へ連れて行く?私はキャロ君とお話が……後、痛いのだが……


 初めての感覚、なんだろうか?この人といると今までの事がどうでも良くなってくる。フェイトさんやなのはさんと違う優しさ……あたしと話している時、いつも笑ってくれる。あたしのことを必要としてくれる。でも何故だろう?いつも、あたしと話をするとフェイトさんやなのはさんに連れて行かれるのは?


 ――いいかね?君がしたいことを思いっきりするがいい。それが悪い事だったら、お尻ペンペン叩いてお仕置きを……冗談だ二人共……そう睨むな……だから、私は彼女とお話をしたいだけで……いや、だから何故そこでデバイスを展開する?


 あたしは……



「うわぁああ!!」


 思考の渦に迷っていた彼女にエリオの声が響く、気づけば彼が車内から投げ捨てられている。呆然と眺めるキャロ……彼女の記憶に彼との出会いが走馬灯のように浮かびあがり、涙が溢れてくる。そうして立ち上がると大きく彼に向かい叫ぶ


「エリオ君……エリオくぅぅうん!!」


 涙を浮かべながら、屋根から飛び立つキャロ


『ライトニング4、飛び降り!?』

『ちょ!?あの二人?あんな高々度のリカバリなんて……』

『いや、あれでええ』

『そっか!』

『そう、発生源から離れればAMFも弱くなる。使えるよ?フルパフォーマンスの魔法が、それに』


 そうなのはが言うと、銀色の閃光が走る


『当たり前だ。幼き者の涙を前に駆けつけぬ私ではない』

<幼女の涙を笑顔に変えて、灯せ紺色スクール水着…私参上!>


『とりあえず、ちょうそのデバイス黙らせてくれるかな?』

『ふむ、大丈夫そうだな』

<そのようです>

『ちょ、無視すんな!』


 通信に割り込む千早、ノリノリなデバイス。既に彼は二人の落下地点周辺で待機していた。はやての突っ込みは無視をしておいて、とりあえず彼の目の前では、必死にエリオを抱きしめるキャロの姿が見える


<Drive Ignition>


「竜魂召喚!」


 周辺が桃色の光に包まれたかと思うと、フリードが輝くと大きく成長する……


『召喚成功』

『フリードの意識レベル、ブルー。完全制御状態です』

『これが……』

『もうええわ……そう、これがキャロの竜召喚、その力の一端や』


 モニターを見つめがら、呟く二人。目の前には大きく成長したフリードが優雅に羽ばたいていた


「あれが……」

「ちび竜のほんとの姿……」

「かっこいい」


 二人の姿を確認すると、呟くティアナとスバル。そのまま目の前を通過していく


「あっちの二人には、もう救援はいらないです。さあ、レリックを回収するですよ」


 二人に対し振り返ると、安心したように指示を出すリイン曹長


「……いい」

<幼女が少年を抱きしめる姿……>


 フリードの背中に乗り、やさしくエリオに寄り添うキャロの姿を見つめながら呟く


「ふっふっふ……急いできたかいがあった。お姫様抱っこされる少年もまた……いい」

<エリオタソが真っ赤になって……はあ、はあはあ……>


 上空を羽ばたく大きく成長したフリードの背中で、照れる二人を眺めるとそう呟く。しばらく眺めていたが先ほどの新型の姿を確認すると張り詰めた空気になる。


「やっぱり堅い……」

「あの装甲形状は砲撃じゃ抜きづらいよ。僕とストラーダでやる」

「うん……」


 エリオがストラーダを手に構えをとる。すると、まだ残っていたのか新型を守るようにⅡ型が次々と現れては前へと出てくる


「無粋だな……」

<ええ、邪魔です>


 その光景を見つめながら小さくため息をつくと、エリオが特攻する前に邪魔をするⅡ型を排除しようと前へ出る千早


「幼き少女が勇気を出して飛んだ」

<幼き少年が少女を守る為に前へでる……>

「二人の世界を邪魔をした貴様らは……」

<ええ、許せません。許すわけにはいけませんとも>

「ああ、可愛かったな……もっと見たかったな……二人の照れる姿を」

<ええ、もっと録画しておきたかったです。あの表情を>

「君たちは邪魔なんだよ?わかるかい?」

<とっとと消えてください。不愉快です>

「さっさと終わらせて、彼女らと背中を流し合わなければいけない」

<そうです。貴方達の相手をしている場合じゃないんです>

「そう……」

「<一緒にお風呂に入らなければならない>」


 徐に右手を前へと突き出すと、腰を落とし左足を半歩後ろへと下げる。左腕に装着されたカートリッジが回転し、撃鉄がガチッと鳴り響く


「さて、あれはエリオ君が片付けるとして、君たちにはそろそろ退場願おうか」


<All right>


 ガシャコンと撃鉄が振り落とされる音と共に排莢されるカートリッジ


<Load Cartridge>


「ふむ、さて、君たちはブルマは嫌いかね?私か?私は大好きだよ?」


<Bruma Stream>


 ブンッと彼の足元から銀色の魔法陣が現れると、緩やかな逆三角形を模した魔力の塊?一つ現れる。


『……』

『……』

『……』

『……』


 その光景をモニター越しに見ている四人は固まっていた。一つだけなら失笑で終わるものであるが、千早の魔法を見て引く者がいたとしても、笑う者などいない。何故なら……


「すごい……あんなにたくさん」


 そこには大量のブルマがあった……ブルマである。ブルマ以外の何ものでも無い。数百を超える数のブルマにキャロは感心したように目を見開く。エリオは引きつった表情になる。


「ふははははっ!ブルマを穿いて眠れ!君たちに相応しい最後ではないか」


<Rendez-Vous>


 千早がポーズを決めると同時に、大量のブルマがガジェットへ向けて殺到する。殺到すると大量のブルマが頭部から被せられ下から穿かせられるガジェット群、あの図体にブルマを上下から被せられる姿はすごくシュールである。つまりはブルマ丸かぶりである。


「ふ、塵と消えろ」


<Burst>


 パチリと指を鳴らす。それを合図に次々と轟音と共に爆散していく。そこにはさきほどまでガジェットであった物の破片がまるで桜のようにキラキラと陽光に照らされ散っていく……

 千早がⅡ型の殲滅したのを確認すると、詠唱を始めるキャロ


「我が甲は青銀の剣、若き双騎士の刃に、祝福の光よ……」

<Enchanted Field Invalid>

「猛きその身に与える祈りの光よ」

<Boodt up, Strike Power>


 キャロのデバイスであるケリュケイオンが答えると、両の手が光輝く


「行くよ、エリオ君」

「了解、キャロ……たぁああ!!」


 合図を皮切りにフリードから飛び立つエリオ、そのまま新型に向かい突っ込んでいく


「ツインブースト・スラッシュ&スイラァァァァイク」


 それと同時に魔法を発動すると、ストラーダに向け放つ


<Entfalt>


 キャロが放った支援魔法を付与され、ストラーダの先に桃色に光輝く刃が形成されると、そのまま触手を切り裂きながら列車上部へと降り立つエリオ


<Exolosion>

「一閃必中……でりゃあああ!!!」


 そのままカートリッジをリロードすると、一直線にガジェットを串刺し、そのまま真っ二つに破壊する。爆散するのを確認すると安心したような表情で、空から彼を見つめるキャロ、これで列車内の全てのガジェットを殲滅したこととなる


『車両内及び上空のガジェット反応全て消滅』

『スターズFでレリックを無事確保』

『車両のコントロールも取り戻しましたですよ。今とめま~す』


 管制室から緊張感が抜け、安堵した表情で答えるはやて、そのまま彼女らへ帰還命令を出すと満足げに背もたれにもたれかかる。

 そうして、滞りなく機動六課の初任務は大成功で終わることになる。今回の目的である、レリックの確保、懸念していたフォワード組の連携なども概ね問題無く、彼女らの働きは今後の機動六課にとって無くてはならない戦力になるのも近いだろう。新型ガジェットと空戦を繰り広げていた、各隊長はまったく問題なく圧倒的戦力でこれを殲滅。流石はエース・オブ・エースとその親友と言ったところであろう。ある一つの問題を除いて……







 ……


 …………





「刻印No.9護送体制に入りました」

「ふむ……」

「追撃戦力を送りましょうか……」

「やめておこう。レリックは惜しいが彼女たちのデータがとれただけでも十分さ」

「それにしてもこの案件はやはり素晴らしい。私の研究にとって興味深い素材が揃っている上に……この子達よ。生きて動いているプロジェクトFの残滓を手に入れるチャンスがあるのだから……」


 先程までの機動六課の戦いが映し出されているモニターを確認しながら一人の男性が笑みを浮かべながら呟く。そこにはフェイトとエリオの姿が映し出されている。その姿を見ては、また笑みを浮かべる。


「そういえば、彼は面白いね……ウーノ」


 モニターを見ながら、ウーノと呼ばれる長髪の女性に問いかける


「最上千早ですか?」


 彼の問いかけに、キーボードを叩くと少し嫌そうな表情で答える。そこには画面一杯のブルマに翻弄されている映像が映し出される


「このような物は私は見たことが無いな。実に素晴らしい」

「そうですか?嫌悪感しか浮かびませんが……」

「ふふふ……そうか?」

「彼のデータを検索しましたが、ロリコンとショタコンしか出て来ません」

「くくく……ロリコンか、管理局にロリコンがいる。そのことを知った時、私は戦慄が走ったのを覚えているよ。君はどうだい?」

「ええ、ドクター。私も戦慄が走りました……別の意味で……」

「そうかい?ロリコンとは幼女の為には命を惜しまない人種だそうだ。素晴らしいとは思わないかい?自分の欲求に従い、殉じるなんて」


 まるで子供のようにはしゃぐスカリエッティを見て、ウーノは気付かれないようにため息をついた


「ふふ、彼がチンクと出会ったらどうなると思う?」

「ドクター、それだけは全力で阻止させて頂きます……」


 相変わらず無表情であるが、その瞳はものすごく怒っていた。恐らく彼と会わせていけない……何故か彼女の中でそんな警鐘が鳴らされていた


「……面白いと思うのだがね?まあいい、これからが楽しみだ」


 心底楽しそうに笑うスカリエッティ、その姿を眺めながら頭を悩ませるウーノ。そんな彼女のことを気にせず笑いながら暗闇へと消えて行く……これが、JS事件と呼ばれる事件の始まりになることにまだ誰も気づかない……








 とりあえずブルマって単語出したかっただけです。ほんとそれだけなんです。難しい事はわかりません。

 誤字修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第九話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:03



 という訳で9話目です






「どうかな?結構いい感じに仕上がったと思うんだけど?」

「ほう、これが私のデバイスか」


 私を手にとりながら眺める男性が、まるで品定めをするような様子で語りかける。


「君の特殊な性……能力に合わせてみたんだけど、かなり苦労したわよ♪」

「そうか、それは何より。それから語尾に♪が似合うのは10歳までだ。自重し……いやなんでもない」


 私を手にとった男性に向かい、ものすごいオーラで睨んでいる女史が私の製作者であるシャリオ・フィニーノ。そうして、私を彼から取り上げると説明をする。




 私の名前はGungnir(グングニル)、使用者である最上千早の為に作られたデバイス。私の存在意義は彼を守るためにある


<私は貴方を守る為に作られました>

「つまらん、それではまったくつまらんぞ。ガングニール」


 そんな私にため息をつく、何がいけないのだろうか意味がまったく理解できない。後、私はグングニルです


「いいかね?人工AIとはいえ意思があるのだろう?ならそこに個性を追求すべきだと私は思うのだが?ガングニール」


 この使用者は何を言っている?個性を追求?私は使用者の補助を目的として作られた、いわば道具に過ぎないというのに、まったく理解ができない。だから私はグングニルです。


<理解不能>

「生まれたばかりでは流石に無理ということか。ふむ、ではここに資料があるから今日から色々と学んでいこうか。ガングニール」


 それから色々と学んでいった……幼女とは何か?少女とは何か?少年とは何か?彼女らが戯れる映像を見ていき、聞いていく内に私の中で何かが生まれた。ああ、それからもうガングニールでいいです。


<幼い者は素晴らしい>


 そう、幼い者は素晴らしい。小さい者は至高であると。それを理解した時に改めて私は使用者とデバイスといった垣根を無くし、絆とも呼べる関係を築き上げたのである。


<私はこの子には麦わら帽子だと思うのですが?>

「なるほど、確かにそうかも知れない。だが、間違っている。この子にはベレー帽だ」


 黒髪の幼女には何が似合うのか討論したり、八重歯にはツインテールが似合うのかそれともショートが似合うのか語りあったり……


<いくらマスターでもこれだけは譲れません。この子にはブリーフです>

「解った。私の負けだ認めよう……フフフ」


 いくらマスターであっても許せません。全裸だなんて、でも今思えば私は試されていたかも知れません。ああ、でも全裸で水浴びする少年もいい……


 そうして切磋琢磨していく日々、私はこの人のデバイスで良かったと心から思う。

「いいかね?普段は無機質な対応しかできないが、主がピンチの際や見せ場で意思を魅せる展開も良いが、私としてはその逆、ここぞという時に感情を殺した無機質な方が萌えると思っている」

<Yes Master Annihilate the Enemy's ……こんな感じで良いですか?>

「そうだ。それだ」


 なるほど、普段とのギャップ萌というものですか。余り喋りすぎると萎えると思ったのですが、それはそれで個性であるという事ですね


「実は君を初めて見た時は妹キャラにしようと思っていたのだよ?」

<つまり、妹萌ということですね。お兄ちゃんはあたしが守ります。どいてお兄ちゃんあいつを倒せない……ですね。解ります>

「ふむ、立派に成長したなガングニール」

<マスターのおかげです>


 私はマスターに出会えて良かったと思っています。世界はこんなに楽しいことが溢れているのですから。ああ、戯れる少年たち……最高で……痛い痛い、レイハさん何するんですか、バルさんも今はメンテナンス中ですから大人しく……いや、別に二人が主が寝ているのをいい事に夜な夜な乳……いえ、なんでもないです……












「さて、なんで私はここで正座させられているんだ?」


 おかしい、レリックの回収も無事終わり隊舎まで帰還したまでは良かった。しかし、自室から出た途端にフェイトとなのはに両腕を拘束される。そのまま、ズルズルと引っ張られると、はやての執務室まで連れてこられた。それからは覚えていない……


「ええから、大人しくしとき。ええか、自分の立場わかっとる?」


 腰に両腕を当てながら眉間に皺をを寄せるはやて


「ふむ、私は管理局の局員で今は機動六課の分隊長で、ロリコンだ」


 何を今更と言った感じでやれやれとため息をつく


「ロリコンって……認めるんだ……」


 静かに呟くなのは、隣ではフェイトが盛大に固まっていた


「ふむ、あれから色々考えていた。そうだなきっかけはシグナムとの会話だな。私は小さい者を愛している。これは揺るがない事実だ。しかし、私の愛は少年より幼女への愛が大きい事に気づいた。なら、私はロリコンなんであろうという結論に至ったわけだ」


 清々しい独白っぷりであった。


「今更やけど……ほんま今更やけど……清々しいくらいに気持ち悪いわ」


 頭が痛いのか、こめかみを抑えながらため息をつく


「もうええわ。じゃあ、なんでここに呼ばれたかわかっとる?」

「いや、心当たりが無いが?」

「ほんなら、これは?」


 そう言うと、机の上に並べられた物体を指さすはやて、隣に並ぶなのは、フェイトは盛大に引いている


「ん?唯のスクール水着だが?何かおかしな所でもあるのか?」


 さも当然だと言わんばかりに答える千早


「おかしなところ?そんなもん全部や!なんでこんなところにスク水なんかあんねん!どこで手にいれたんや!なんでサイズ別にあんねん!それからなんでひらがなやねん!!」


 怒鳴り声をあげながら、問い詰めるはやて。世界広しといえど、スク水を所持する局員がいる部隊など聞いた事がない。というかあってたまるか


「ふむ、それは私のお手製でな。サイズなぞ一目見ただけでわかる。名札といえばひらがなが万国共通であろうが、これだから年増は」

「誰が年増や!」

「ぶげらっ!」


 大きく回転すると、千早の顔面に蹴りを入れるはやて。所謂回し蹴りである。そのままふっ飛ばされる……なんだこれ?


「む、痛いじゃないか?私は打たれて喜ぶ趣味は無いぞ?まあ、幼女なら寧ろWELCOME!だがな」


 ゆっくりと立ち上がると、胸を張って宣言する

 さて、彼が連行された理由は、意気揚々とキャロ達とお風呂に入るのを楽しみにしていた千早だったが、新人たち主にティアナの報告により全力でこれを阻止。盛大に安堵した新人達がいた。そうしないと、嬉しそうにスク水片手にお風呂セットを用意したキャロを見たフェイトが卒倒しそうだったので……


「とにかく、これは没収や!」

「む、それは少し横暴ではないか?」


 反論するも、ものすごい顔で睨まれたので諦めた。ブツブツと苛立ちながらスク水を仕舞うはやてを見て、苦笑するなのは。そうして、視線をチラリと横に向けるとものすごく青い顔をしているフェイトを見てさらに苦笑いを浮かべる。


「ま、まあ、千早君も反省しているみたいだし。もういいんじゃないかな?」


 苦笑したまま、どう見ても反省しているように見えない彼をフォローするも

 当の本人は……


「はやて……悪いがスク水が似合うのは12歳までだ……お前の分は作ってやれない……だから、そんなに怒っているのだろう……すまんな」


 と真顔で彼女の肩に手を置き慰めるように言う。肩に手を置かれたはやては、静かに震えていた……


「お、お、お、お……」


 壊れたラジカセのように、連呼するはやてを見て『あっ』と思ったなのはであったが、


「お、お前はいっぺん死んでこぃいいい!!!」

「ぼげらっ!!!」


 盛大に溜めた一撃が彼の丹田にヒットしそのままふっ飛ばされる。そうして、はあはあと息を荒げながら眉間に皺を寄せる友人を見て、大変だなとため息をつくなのは、一方フェイトさんはまったくついてこれずにずっと固まったままであった……




 ……



 ………



 …………





 翌日、シグナムが食堂を訪れると、そこには食事を摂る変態がいた


「なんだ、こんなところにいたのかロリコン」

「いつもそうだが、お前は俺になんか恨みでもあるのか?シグナム」


 振り返りもせず声をかけてきた人物に、返事をする千早。


「まあ、いいか。一緒にどうだ?」

「……?失礼する」


 いつもと変わらない口調の彼に対して、少し違和感を覚えるシグナム。普段であるならここで一悶着あるはずなのに何も無い。おかしい、こいつが普通に接している。いや普通がそうであるが……何かがおかしい……なんだろうか、この違和感は……


「えらく遅い朝食だな?」

「ん?ああ、今日は非番なんでな。久しぶりにな」


 やはり、おかしい……何かが物足りない……なんだ?何が足りない?


「そういえば、貴様、主はやてにえらく叱られたようだが?」


 昨夜、帰宅した主はかなり疲れた様子で床についた事を覚えていたシグナムが思い出したように投げかける


「ん?まあ、色々あってな」


 どうも発言にキレが無い。なんだろうか……ともあれ腑抜けた様子の彼を見て


「お前、まさかと思うが体調でも悪いのか?」

「ん?」


 ふと、疑問に思った事を零すシグナム。その言葉に一瞬考えこむ千早だったが


「いや?普通だと思うぞ?」

「そうか?まあ、無理はするな」


 何故か違和感が拭えないが、顔色を見る限り問題は無さそうだと判断したシグナム。ゆっくりとカップを手にとり口に含む


「まあ、心遣いだけ頂いて置くとしよう。シグナムのような美人に心配されるなんて男冥利に尽きるからな」

「ブッ!!ゴホッゴホッ!!」


 思わぬ発言に口からコーヒを吹き出しそうになり、咽るシグナム


「おいおい、大丈夫か?まったく綺麗な顔が台無しじゃないか?」

「お、お、お前っ!な、何をっ!」


 懐からハンカチを取り出すと、シグナムの頬を拭く千早。余りの事に立ち上がり後ずさる


「貴様、新手の嫌がらせか?何を企んでいる?」


 思わず、レヴァ剣を抜き構える


「企む?なんのことだ?まあ、お前は美人だからなお近づきになりたいとか思ってたりするが」


 悪びれることもなく笑顔を浮かべながら、背中が痒くなる事を言われ


「き、き、き貴様!」


 思わずそのままレヴァ剣を、彼に叩きこもうとするが


<待ってください>


 今まで黙っていた彼のデバイスであるガングニールがストップをかける


「む、お前か……一体こいつに何があった?」

<はい……実は……>


 そうしてガングニールより語られる真実は彼女を驚愕させた。彼は極度のロリコンであるが、数ヶ月に一度まともになる日があるのだ。しかし、彼の戦闘力の根幹であるソレが無くなるということは、完全に普通の人になるということで……


「では、今のこいつはロリコンじゃないということになるのか?」

<はい、ですのでシグナム女史の一撃を食らえば確実にマスターは死にます>

「まともになったらなったで、迷惑な奴だな……」


 ため息をつきながらごちるシグナム、そこには静かにカップを片手に静かに遠くを見つめる千早がいた。しかし、このままにしておくと色々な意味で危険なのは変わらない。今まではヴィータが被っていたが、今の彼の対象者は年上もしくは歳相応……つまり自分も入ってしまっている事にある意味恐怖を覚えるシグナム。烈火の騎士と呼ばれ、恐れる者など無いと自負していたプライドが目の前の男に崩された瞬間であった


「ん?あれ?千早君にシグナム?」


 どう対応しようか悩んでいるシグナムに救いの女神が現れたが


「ああ、高町……」

「ん?おお、なのはか」

「え”なんだろう?なんか声掛けたこと後悔しそうなんだけど……」

 眉間に皺を寄せるシグナムを見て、嫌な予感しかしないなのは、とりあえず二人の傍まで近づいて話をする


「へえ、そんな日があるんだ。大変だね……」


<そうなんです。大変なんです。朝エリオ君とキャロちゃん会ったというのに挨拶しかしないし、普通なら脱ぎながら全裸で踊り出すくらい喜ぶはずが……嘆かわしい>


「う~ん。とりあえず、私ははやてちゃんみたいに突っ込めないかな?」

「すまんが、私も古いタイプの騎士でな。そのあたりは余りうまくできん」


<そんな……なんてことです。これではマスターの存在意義が……>


「元々無いんじゃないかな?」

「私もそう思うぞ?」

<Ouch!>


 とりあえず、普通になったらなったでなんら変わりはないという結論に至った為、放置しようという……といより関わらないでおこうと思う二人であった。

 ちなみに、翌日にはすっかり元通りになった彼を見て何故か全員安堵したことは言うまでもない……ロリコンで有ることの方が普通である彼は、最早終わっているかも知れない……





 ロリコンがまともになると軟派になった……何故?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:04
 
 思ったよりTOX2にどっぷりです。シリアスいいな。という訳でいつの間にかの10話目です。





「変身魔法?」


 首を傾げながら聞き返すヴィータ


「そう、変身」

「無いことも無えけど、どうすんだ?そんなもの覚えて」

「どうやら残念な事に俺はロリコンらしいからな。という訳で最近皆が少女達に会わせてくれない」


 彼女の頭を撫でながらため息をつく千早。その手をうっとおしそうに振り払うと


「いや、前からそうだった気がするのはあたしだけか?」

「ふむ、もう一つどうだ?」


 怪訝な表情をする彼女に、アイスを渡すと


「ちっ……しゃーねえな」


 面倒くさいって感じで返答するヴィータ


「それで、可能なんだろうか?」

「……ああ、対した事じゃねえけど性別から容姿を変換する魔法ならある」

「ほう、それは?」

「……めんどくせえから、今からやってみせてやる」


 そう言うと、彼女の周りが光り輝き足元に魔法陣が現れる


「…………っと、こんな感じだ」

「?変化が見えないのだが?」

「当たり前だ。容姿は変えてねえからな。単純に性別を変更しただけだから」

「つまり、今目の前にいるヴィータちゃんには、おち……」

「それ以上言うと、アイゼンの染みにするぜ」


 鼻先にグラーフアイゼンを突き付けられる千早


「たくっ……てかなんでこんなん覚えようと思ったんだ?」

「ん、色々と禁止事項が多くなってきたんでな。前までは撫でるまではOKだったんだが、最近では接触どころか、近づく事すらままならん。私はただ愛でていたいだけなのに、それがわからんようだ」

「いや、分かりたくもねえし……つか、それ、原因はお前の性癖にあることに気づいているのか?」

「うん?性癖とかよく解からんが、フェイトなんかは俺と目があっただけでどこかへ去ってしまう。私は12歳以上には興味が無いというのに」


 いや、そういう意味で避けてるわけではないだろう?しかし、フェイトはまだこいつに慣れていないのかと、苦笑しながらため息をつくヴィータ


「それで?なんで変身なんだ?」

「なに、簡単なことだよ。フェイトもそうだが、一部の女性は男性に嫌悪感を抱いている。つまり、そういった者達から見れば私は危険分子と認識されているようだ」


 一部じゃなくて、全員だけどなと心のなかで突っ込んでおこう


「由々しき事だ。私はただ愛でていたいだけなのに、一部の偏見や差別に晒されているということになる。悲しいな……」

「ああ、悲しいな……お前の頭の中が」

「そうだ、悲しい事だ。だから俺は覚悟を決めた」

「シグナムから聞いてたけど、お前はほんっと人の話をまったく聞かねえな」

「ん?なんのことだ。まあ、いい。そういうことなんで変身魔法なんだ」

「悪い。まったく意味がわかんねえ」

「ふむ、簡単に説明するとだな」


 何を言っているのかさっぱり理解できない様子のヴィータを前に、組んでいた腕をほどきながら説明をする


「女性ならば、ロリコンにならない」

「は?」

「ふむ、俺は色々と考えた。はやてやなのは達が私を危険視するのは、俺が男性であるからだと。つまりだ、女性になれば問題が無いということだ」

「悪い、もう一度説明してくれ」

「うむ、女性なら危険じゃない」

「同じ事だろうが」

「いや、まったく違うぞ?考えても見てくれ。今、俺はヴィータちゃんと個室で二人きりである。これを第三者が見たらどう思う?」

「……よく考えたらめっちゃ危険じゃねえか」


 今更であるが、身の危険を感じアイゼンを構えながら三歩下がる


「そうだ。大多数の人間ならそのような反応を示す。何故なら俺はロリコンだからだ」

「……とりあえずぶっ飛ばしていいか?」


 大きく鉄槌を振りかぶりながら、警戒するヴィータに苦笑しながら


「君にぶっ飛ばされるのは寧ろ歓迎したいのだが、今は自重しよう」


 すまないと謝罪すると、またアイスを差し出す千早。それを警戒しながら受け取ると


「……で?つまり男だと問題があるから女になりてえと、それはそれで問題だぞ?」

「どうかな?男である俺が少女と二人きりだと危険であるが、女である俺が少女と二人きりだと問題は無いだろう?」

「なんか腑に落ちねえけど、まあ、悪用しねえならいいが……まさかとは思うけどお前、女風呂とか入りてえとか思ってねえだろうな?」

「何を言う。そのような外道な行為、俺がするわけがないだろう。というより、何が悲しくて同年代や年増と一緒に入浴などしなければならない」

「……じゃあ、あたしだったら?」

「なんだ、一緒に入りたいのか?」

「なっ!?そんなんじゃねえ!例えばの話だよ!あたしやキャロだったらどうすんだよ?」

「何、その辺りは心得ている。入りたいと言うのならそれ相応の準備をしているのでな」


 胸を張って言うと懐から水着を何枚か差し出す。


「このように、紺、白、黒、赤と取り揃えている。もちろん私も水着着用だ。無意味に肌を晒す事無く安全だ」

「……今更だけど、お前すげえ気持ち悪いな……」


 盛大に項垂れる彼女を他所に


「何、紳士の嗜みだ。ヴィータちゃんなら、この辺りが良く似合うと思うのだが、どうだ?」


 紅い水着を指さしながら、満面の笑みで言う


「ああ、着ねえから、てかまず一緒に入るとかありえねえし」

「そうか、残念だ」

「それはそうとして、本当にいいんだな?いっとくけど、なのはに知られてもあたしは知らねえからな」

「構わない。やり遂げる決意が必要だ。何故ならば、俺は小さき者を愛す者。そのためには性別すら壊す男だ」


 高らかに宣言する千早に、呆れた表情をしながら


「頭が壊れてるの間違いじゃねえか?たくっ!……とにかくコツは」

「ふむ……こうか?」

「馬鹿か、てめえは。そうじゃねえ。てか、なんで金色に輝く?」

「む、ならこうか?」

「……無駄に容姿だけはいいな。お前」

「ふむ、色々と気を使っているからな。顔はまあ、両親に感謝だ……しかし、俺の母も昔は少女だったと思うと悲しくなる」

「その発想は無かった……お前莫迦だな」



 しばらく、変身魔法について教わる千早、そうして彼に変身魔法(性転換)機能が備わった。後日、彼の変身に盛大に後悔をするハメになるのだが、今はまだとっておこう……






 ――



 ――――



 ――――――














「いやあ、やってますなあ」

「初出動がいい刺激になったようだな」


 隊舎近海に浮かぶ施設で、早朝訓練を行なっている新人達の様子をモニターで見ながら、シグナムに語りかけるヴァイス


「いいっすねえ、若い連中は」

「若いだけあって成長も早い、まだしばらくの間は危なっかしいだろうがな」

「そうっすね」

「シグナム姉さんや旦那は参加しないんで?」


 モニターでは、新人達が泥だらけになりながら転げまわっている。その映像を見ながら二人に質問すると


「私は古い騎士だからな。スバルやエリオのようにミッド式と混じった近代ベルカ式の使い手とは勝手が違うし、剣を振るうことしかない私が、バックス型のティアナやキャロに教えられるようなこともないしな。まあ、それ以前に私は人にものを教えるという柄ではない。戦法など、届く距離まで近づいて斬れぐらいしかいえん」

「ははは、すげえ奥義ではあるんすけど、確かに連中にはちぃ~とばかり早いすね。それで旦那は?」


 真剣な表情でモニターを(主にキャロ達の方を)見つめる千早に向かい同じ質問をするヴァイス


「ふむ、俺の場合は教えられるようなものが無い。訓練校程度の教導ならできるが、あそこまでの事は教えられん。というよりしばらく近づくなと言われたしな」

「は、はは……らしいっすね」


 二人の極端な返答に、引きつった笑いを浮かべるヴァイス


「お前は人にものを教える前に、己を叩き治す必要があるだろう?主に頭のな」


 笑みを浮かべながら挑発するような視線を送るシグナム


「脳筋年増に言われたくはない」


 挑発に答える千早。この二人本当に仲いいな


「ほう、いい機会だ。訓練がてらもう一度私が叩きなおしてやろうか?」


 口元は笑っているが、瞳は爛々と輝いていており、まるで猛禽類のような視線で見つめる


「ふむ、いいだろう。聖闘士には同じ技は二度と通用しない事を教えてやろう」

「性闘士の間違いでは無いのか?変態」


 二人のやり取りを見ているヴァイスは、また始まったかとため息をつく。真面目で堅物のシグナム、不真面目でロリコンの千早……絵に描いたような水と油の典型である


「というより、前から思っていたんだが、お前は俺になんか恨みでもあるのか?」

「恨みは無いが、嫌悪感ならあるぞ」

「酷い言われようだ。なら、放っておいてもらいたいものだ。寧ろ無視してくれ」


 今にも抜きそうなシグナムに両手を広げながら大袈裟に振るとため息をつく


「それは無理だ。気になるのだから仕方が無いだろう」

「誰が?」


 そう言われ「は?」という表情で聞くと


「お前の事が」


 眼前に指を刺される


「なんで?」

「お前は放っておくとすぐに、良からぬ事をしようとするのでな」


 指を差した後、腕を組みため息をつくシグナムを見て


「何を言う。俺ほど紳士な人間はいないぞ。というわけで放っておいてくれ」


 首を振りながら答える千早


「いや、信用ならん。お前を一人にするなど気が気ではない」

「あの~お二人さん?」


 延々と言い合う二人を見て苦笑交じりで、割り込むヴァイス


「「なんだ?」」


 同時に振り返り答える二人を見て、更に苦笑いを浮かべ、頬を指でこすりながら


「その会話だけ聞いてると、まるで恋人同士の会話にしか聞こえないんすけど?」

「ん?」

「は?」


 思わぬ一言に目が点になる二人


「ありえん。私がこんな変態となど」

「それは俺の台詞だ、誰がこんな年増なんかと」

「旦那、前にシグナム姉さんに求婚申し込んだって聞いたっすけど?」

「ああ、あれはシグナムなら子供5人だなって思っただけだ。それとも産めないとでも?」

「何を言う私も騎士だ。それくらいは産める」


 そこ騎士は関係ないんではないのか?と思うが突っ込むと後が怖いので黙っておこうと思うヴァイス


「いや、それ普通にOK出してるじゃないっすか?」

「何を言っている?」

「どうやら疲れているようだな?ヴァイス陸曹」


 何か可哀想な目で見られる


「は?え?俺がおかしいみたいになってるんすけど?」

「まったく不愉快だ。私は先に去らせてもらう」

「白けたようだ。同じく、俺も仕事に戻るわ」

「えー」


 二人、別々に去っていく姿を見ながら項垂れると、ため息をつく……最上千早、彼にはフラグなどまったくの皆無である。





 変身に関しては魔法物だからあるであろうと思った次第で、深くは考えてません。最近個人的にマンネリ化しているので何か劇薬を盛りたい……どうしようかな?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾壱話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:04
 





「はあ……」


 彼女は悩んでいた。しかし、それが解決することは無い。


「なんでなんだろう……」


 一人小さく呟きながら、目の前で書類を前に渋い顔をしている原因へ視線をうつす。初めて会った時は、変な人だとそう思った。そして改めて考えてもやっぱり変な人だった。自分達の中で比較的付き合いの長いはやてですら、彼の事は理解できないとそう答える。

 シグナム曰く筋の一本通ったロリコン、ヴィータ曰く気合の入ったロリコン、シャマル曰く優しいロリコン、ザフィーラ曰く犬ではない狼だ……


「結局ロリコンであることは確実なんだよね」


 ロリコン、普通なら嫌悪感しか残らない……というより社会的に許されない性癖でありながら皆に受け入れられている。それが不思議で仕方が無いフェイト


「そういえば、なのはが言ってた」


 彼女の親友曰く、『千早くんはね。妖怪みたいなものだよ』


 つまり、彼は『人間の理解を超える奇怪で異常な現象』もしくは『不可思議な力を持つ非日常的な存在』ということである


「……」


 フォロ―しているようでフォローになっていない説明をした親友の言葉を思い出しながら苦笑する。ともあれ流石にいつまでも逃げている訳にはいかない。


「よし、今日は頑張ってみよう」


 避けてばかりでは何も解決しない、今日こそは克服してみようと


「なのはも言ってた『虎穴に入らずんば虎児を得ず』って」


 一人決意をあらわにするフェイト、そんな彼女の悩みなぞ知らない千早は一人書類を睨みながら唸っているのであった


「む……」


 真剣な表情で書類を見つめる


「流石にこれは受理されんな……とはいえ、んー」


 口にペンを加えながら唸るが答えが出ない。


「……何を唸ってるの?」


 珍しく真面目な表情で仕事?をしている千早を見て恐る恐る声をかけるフェイト、その表情は真剣である


「ん?ああ、これなんだが……」


 そんな彼女に彼女の目の前に一枚の紙を差し出す


「ええと……ドレス三着、アクセサリー、その他諸々……これって?」

「ああ、今度の任務で使用するらしいが……金額が金額なだけに受理されんかったらしい」

「一体いくらなの?」

「ん?これくらい」

「うわあ……」


 盛大に顔を引き攣らせるフェイト、そこにはありえない金額が提示されていた


「だから年増は嫌なんだ。やたらと金がかかる」


 ブツブツと文句をたれながら書類とにらめっこする千早をみて


「あ、あはは……で、でも、なんで千早君が?」

「ん?ああ、本局に顔が効くのでな。通らないかって相談されただけだ」

「え?」

「ん?」

「ごめんなさい。少し聞こえにくかったのだけれども……」

「む、だから本局に顔が効くのでな」

「誰が?」

「俺がだ」

「なんで?」

「……お前は俺をなんだと思っている?」

「え”あ、あはは……」


 ジト目で睨まれ、乾いた笑みで誤魔化すが


「まあ、いいけど、珍しいな今日は。いつもなら目があっただけで居なくなるのに」


 誰かと他の局員と一緒の時ならまだしも、一人で出会った際は目を合わせた瞬間踵を返し去っていく事を知っている千早は珍しそうにそう質問する


「う、うん。逃げてばかりじゃ駄目だって、なのはが」

「?意味がわからんが、別に好きにしたらいいぞ?」

「え?貴方はそれでいいの?」

「ん、別に嫌われているのならそれはそれで構わないからな。嫌いなものを好きになる必要がどこにある?」

「別に嫌いってわけじゃ……」

「無理をするな。君が男性が苦手なことは理解している」

「え?」

「確かに俺はロリコンだ。しかし、その前に男性である。だから避けているのだろう?」

「それって……」

「ああ、お前がレズビアンだということは解っている。過去に何か辛い……」

「……少し黙ろうか?」

「……解った」


 静かに笑みを浮かべながら囁くように言われる千早、そのまま目が据わった彼女に


「あのね?私はノーマルだよ?それから、貴方の事避けてるのはロリコンだからだよ?それに私振ったことはあるけど振られた事ないよ?というかそんな安い女じゃないよ?解るかな?」

「あ、ああ……よく解った。とりあえず落ち着こう。うん、君は素晴らしい人だと思う。年増だけど」

「……本当に解ってる?」

「YESYESYESYESYES」


 鬼気迫る表情で迫ってくるフェイトに頷く事しかできない千早。彼女の澄んだ瞳が濁っておりまさしくレイプ目でこちらを睨まれる


「……はあ、なんで千早くんはそんな風に育ったんだろう」


 少し落ち着いたようでため息をつきながらそう漏らすと


「ふむ、そんな風とは心外だな。私は健全なるロリコンだ」

「ロリコンの時点で不健全だよ?」

「ふむ、いいか。ロリコンを一括りにするな。世の中には『良いロリコンと悪いロリコン』がいる」

「ロリコンに良いも悪いも無いと思う」

「それは偏見だ。例えばだ、ここに幼女がいたとする」


 そう言うと紙に少女を描く千早。無駄にクオリティは高い


「さて、君がロリコンだったらどうする?」

「……私はロリコンじゃないんだけど……」

「だから、例えばだ。君が思い描くロリコンとして行動を示したまえ」

「んー、そうだね。『はあ、はあ、はあ、お、お嬢ちゃん。か、可愛いね、い、幾つかな?お菓子あげるから、ちょっとこっちに来ないかな?はあ、はあ……』こんな感じかな?」


 若干照れながらも、はあ、はあ、言いながら演技する彼女の姿に盛大に引く


「……」

「黙ってないで何か言ってくれないと困るんだけど……」


 ものすごくいたたまれなくなって何か求めるが……


「あー、うん。変態だな」

「!?違うよ?だってロリコンってこんな感じじゃないかなって」

「それは『悪いロリコン』だ。というよりそれは犯罪者だろう」


 模範的ロリコン像だなと思いながら苦笑する千早


「じゃあ、一体どうしたらいいの?」

「ああ、簡単だ。まず対象となる幼女をよく観察する。この子は親とはぐれたかもしれない。もしかしたら初めてのおつかいかもしれない。または、道に迷ったかもしれないと……」

「そして、それを考慮に入れつつ脳内で99通りのパターンをシミュレーションする」

「そんなに!?」

「当たり前だ。何が彼女を怯えさせるか解らない。そして、彼女を安心させ笑顔にさせることこそが我々の使命だ」

「でも、そんなのどうしたらいいの?知らない人にいきなり声をかけられたら誰だって不安になると思うし」

「それはいきなり声をかけるからだ。いいかね?幼女とはまず、視覚で情報を得るものなのだよ。だから、まずは彼女に興味を持ってもらう行動に出る」

「例えば?」

「そうだな。彼女が仮に迷子だったと想定しよう。彼女は今一人ぼっち、不安で一杯だろう」

「そうだね。一人だと不安だと思う」

「だからといって、いきなり声をかければ驚いてしまう。それでは彼女を笑顔にすることはできない」

「……」


 たかが想像に熱を入れて語る彼に聴き入ってしまう……


「だから、まずは彼女の心理状態を把握することから始める」

「そんなことができるの?」

「ああ、簡単だ。俺くらいのロリコンになると表情どころか幼女から発せられる感情の気を読むことすら容易だ」

「……」

「例えば彼女は今一人ぼっちで不安である。しかし、彼女は少し大人びた子だ。だから必死にそれを隠そうと頑張って泣かないように努めいているのだよ」

「誰かに助けを求めたい。けど、話しかけるのは怖い。とはいえ子供っぽい所は見せたくない。ああ、可憐だ……」

「……」

「そして自然に彼女の視覚の内側に入る。後は気をこちらに向けることに集中するだけだ」

「そうだな。古来より幼女達が愛してやまない可愛らしいグッズなどがある。それをこのようにして……」

「そうして少しづつ近づく。この際刺激してはならない。何故なら彼女らは臆病だからな」

「後は、こちらに敵意が無いことを悟らせながら、会話へと持っていく」

「そうして、無事に親元へと届けることが肝要。その際決して彼女に触れてはならない」

「どうして?」

「いいかね?幼女とは愛でるものであって、手折るものではない。汚してはならないのだよ」

「しかし、許してもらえるなら最後に頭を撫でさせてもらいたい……が自重しよう。それはもっと仲良くなってからだ」

「その為に俺は日頃から体を清め。爪などもこのとおり」

「澄んだ肌を傷つけるわけにはいかんからな。これが一流のロリコンだ。そんじょそこらのロリコンとは訳が違う」

「ごめんなさい。違いがよくわからなくって」

「まあ、簡単に言えば幼女に対して性的興奮を覚える者は外道。幼女とは天使であり、女神。敬うことはすれど、手折る……ましてや性的に迫るなど言語道断」

「へ、へえ……それじゃ、千早くんは一体どうしたいの?」


 彼女の中で最上千早という存在がよくわからない。一体何がしたいのか、何を考えているのか理解できないっていった表情で質問するフェイトに苦笑しながら


「俺は世界に蔓延する児童買春、搾取……孤児に暴力、貧困、放置……宗教的人権侵害それから差別。それら全てを否定する。ロリコンが歪んでいることくらい理解している。歪んだ愛だと承知のうえで、あえてロリコンを名乗る。何故なら少女が好きだからだ。愛していると言ってもいい。だから俺は彼女たちを守りたい」


 それは悲しくもあり、寂しくもある。なんとも言えない表情で語る彼の姿はまさに紳士と呼ぶにふさわしいであろう。


「俺は無垢であり、麗しい天使達を守る守護者……ロリコンとは永遠の従僕。故に幼女を手折る事は許されない……何があろうと手は出さない……だから」


 静かに全てを語ると最後に


「だから……あの世で幼女と手をつなごうと思う。この世では笑顔が見れるだけで十分だ」


 フッっと静かに自重の笑みを浮かべながら、静かに立ち去っていく千早。そんな彼の背中を見つめながら


「なんて優しい人なんだろう……私ロリコンって悪い人だと勘違いしてたんだ」


 彼は本当に子供が好きなんだなと思いながら、視線を机へとうつす。そこには笑顔を浮かべる幼女の姿が一枚の紙に浮かび上がっていた……











 ――その夜



「て、事があったんだ……」

「う、うん」

「私ロリコンって気持ち悪いと思ってたけど、それって勘違いだって気づいたんだ」

「へ、へえ……そうなんだ」

「うん、なのは。ロリコンは永遠の守護者なんだよ。私感動しちゃった」

「そ、そう」

「よく考えたら、私もキャロやエリオの事ほっとけなくて保護者になったのと同じかもしれない。私とあの人は同じかも知れない」

「う、うん?」

「なのは、だから私もロリ……」

「ストップ!駄目だから!それ以上は駄目だからね?フェイトちゃん」

「……?」

「千早君とフェイトちゃんは違うから、それ以上は言っちゃ駄目だからね?」

「解った。なのはが言うならやめておくよ」

「うん」

「今度はもっと一杯話を聞きたいな。ねえ、なのは」

「う、うん。ほどほどにね」

「永遠の守護者か……」


 盛大に感銘を受けた親友をどうやって元に戻そうか頭を悩ませるなのはがいた……



 フェイトとの絡みが難しい……のであえてチャレンジ……変な方向にいってしまった。真面目なロリコン書いた。あれ?千早ってロリコンだったけ?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾弐話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:05
 
 今回の話はTS要素が含まれています。ご注意ください。








「さて、今日は修行の成果を試そうと思う」

<了解、しかし、私は反対です>

「何故だ?ガングニール」

<あの姿になったマスターはマスターじゃない感じがしまして>

「ふむ、どうやら副作用で性格まで変化してしまうようになってしまったのでな。まあ、急拵えなんで仕方が無い」

<理解してはいるのですが、流石に鳥肌が……あ、といっても私には肌が無いのですが>

「まあ、いいではないか。それに自分自身が嫌いなものになるというのも、精神修行になる」

<マスターがそこまで言うのなら、私は何も言いません>

「そうか、苦労をかける。ではミッションスタート」

<了解>







 管理局内にひしめく男性局員の視線が一人の人物に注目していた


「愚かね、このような醜い姿に目を奪われるなんて……」


 静かに歩きながら一人呟く女性、制服に身を包んだ余りある膨らみは歩く度に揺れ、整った抽象的な顔つきと銀色に輝く髪が歩く度になびいている。彼女を見た男性職員からは熱い視線を、女性局員からはため息が漏れるほど完成度の高い美女がそこにいた。


「ふふ、完璧ね。誰も私が誰だか知らないようね」

<そのようです、しかし、ああ、お労しい……>

「そう言わないで。これも全ては彼女たちと仲良くなるための試練だわ」


 一人決意を秘めた目で、拳を握り語りながら歩き出す女性、向かう先には数多の猛者が待ち受けていた……













 部隊を設立して数ヶ月、新人達の様子も概ね良好、実戦経験も積み活気づいていることに満足している反面


「はあ、なんやろこの悪寒は……」


 順調に進んでいる、進んでいるはずなのに今朝から嫌な予感がしてやまない。何かこう


「うん、なんかあれがとんでもないことしそうな気がする」


 彼女の脳裏に浮かぶのはあの変態の姿、今更ながら彼を引きぬいた事を後悔してしまう


「まあ、害は無いんや……害は……」


 ちょっと小さい子が好きで、幼女が好きで、ロリコンなだけ。ただそれだけ……それより気になるのは


「なんや、最近フェイトちゃんが変わったのが気になるけど……」


 フェイトの様子がおかしい。なのはからそう相談されたはやては何があったのか問い詰めた。最初は何もないよと一点張りのフェイトだったが、余りにもしつこいので苦笑しながら


「本当になんでもないよはやて。ただ、私は十年前に千早くんと友達になりたかったなって思っただけだよ?」


 背中から嫌な汗が出た。あれほど嫌っていた彼女が今や彼のことを認めだしている。一体何をしたのか、しかし、それよりなにより


「はやて、ロリコンって素敵だね。私勘違いしてた」


 うん、時が止まった。余りにも衝撃的な発言に思わず闇の書と参考書を間違えてしまうくらい動揺していた。嬉々として彼のことを語る彼女の横には苦笑いをしながら首を悲しそうにふるもう一人の親友が不憫で仕方がない


「とりあえず、考えてもしゃあない。まだ設立したばっかやし前向きに行こう!」


 自分へ叱咤激励すると歩き出すはやて、その決意が数分後に打ち崩されることになろうとは……



 彼女が決意を新たに歩みだした矢先にそれは現れた。そう、唐突に理不尽に……


「あんたはなんで私の発想の斜め上どころか銀河系を突き抜けた事しかせえへんねんっ!!」

「あいたぁっ!」


 懐から取り出した巨大ハリセンで目の前の女性の頭を叩く


「むう、結構痛い……何をするの?」


 頭を擦りながら抗議する女性、涙目で上目遣いなのが妙に艶かしい


「何をするの?っは私の台詞や!なんやのそれは!」


 興奮冷めやらぬのか、ものすごい迫力で問い詰める


「んー、何かおかしなところでもあったかしら?」


 小さく小首を傾げると、自分の体を確かめる。女性局員用の制服を着こなし、スカートから覗く珠のような白い肌、たわわに実った母性はかっちりとした制服からでも自己主張をしていた。


「上からっ!下までっ!何もかも全部やっ!なんやねんっ!それは!パッドか!?パッドやんね!?パッドやと言ってやっ!」

「ん、残念な事に何故かここだけは調整がきかないのよね。私としてはできればA以下がよかったのだけれども……」

<誠に遺憾です。マスターお気持ちお察しいたします>


 酷く鬱陶しそうに胸元を強調しながらため息をつく。それだけで男性が前かがみになりそうなくらいインパクトのある光景であった


「……あかん……もう立ち直られへん。変態に負けた……」


 彼女の母性を揉みながら虚ろな目で呟くと項垂れるはやて


「ふむ、私が言うのもおかしいのだけれども、女性の胸を揉みながら項垂れるのは至極変態ぽいわよ?」

「お前がっ!言うなっ!お前がっ!」


 バシイッ!っともう一度ハリセンで頭を叩かれる。


「だから痛いじゃない?余りポンポン叩かないでくれる?結構コレ精神統一が必要なんだから」


 二度も叩かれて涙目で抗議するが


「で?一体何がしたいんや?とうとう変態が一周回って電波でも拾ったんか?」

「むう、酷いわね?これでも真剣よ?」

「とりあえず、その口調やめて。鳥肌がたつから……」

「そう言われても、変身の副作用かしら?治らないのよ。どうしたものかしらね?」


 首を傾げながら『う~ん』と人差し指を顎に当てながら考える仕草をする彼女に対して、背中から寒気が響いてくる


「まあ、ええわ。百歩、いや千歩譲って、口調は我慢する。せやけど、なんで女装?いや女の子になっとんのよ?」

「ええ、それは壮大な理由があるのよ?」

「とりあえず聞いたる。聞いた後でもう一回殴る事にする」

「いや、殴る事前提っておかしくないかしら?それってどっちにしても私にとって不利じゃない?」

「うん、もうええから、さっさと理由言うてんか?じゃないとただ殴るだけになるから……」


 既にハリセンを構えている状態に苦笑しながら


「簡単に説明すると、私ってロリコンじゃない?」

「そうやね、せやけど今はロリコンが可愛く見えるくらいやわ」

「?意味がわからないのだけれども、最近子どもたちに会わせてくれないじゃない?」

「当たり前やないの?」

「そこで、性別を変換したわけ」

「うん?」

「例えばの話、男性の私が子どもたちと一緒にいるのと、フェイトが子どもたちと一緒にいるのとどっちが安全に見えるのかしら?」

「そら、フェイトちゃんに決まってるやないの」

「でしょ?だから女性なのよ」

「意味がわからへん」

「だから、男性だと危険、なら女性なら危険じゃないと言うこと」

「は!?」

「貴方達が私を危険視するのは、男性だからと気づいたの。だから、女性になることにしたのよ」


 腕を組みながら悲しそうに自重の笑みを浮かべながら言う千早を見て、こめかみを抑えながら


「つまり、子供に会いたいが為に女性になったと、そう言うわけやね?」

「そうよ」

「ふ、ふ~ん、ようわかったわ、うん、理解した……」

「理解してもらえてなにより」

「そうやね、とりあえず……」


 小さく呟くと両腕をだらんとしながら千早の方へと近づいてくるはやて。


「ん?なんかものすごく嫌な予感がするのだけれども?気のせいかしら?」

<……気のせいじゃない模様です……撤退を推奨します>

「そのようね……では、ごきげんよう」


 ふわりとスカートの裾をつまみながらお辞儀すると、脱兎の如く走りだす千早


「ちょ!?待たんかい!その格好でどこへ行く気やっ!」

「ふふふ……な・い・しょ♪」


 唇に人差し指をあてながら気持ち悪い事を言う千早に


「そないな風に言っても気持ち悪いだけやっ!!!やめい!虫唾が走るぅ!!」


 抗議をするも、最早彼の姿は見えなくなっていた。やはり、彼を引きぬいたことは間違いだったと後悔し始めるはやて


「あかん……あれが本局にばれたら大惨事どころやない……」


 いきなり落とされた核爆弾に頭を悩ませながら、千早を探すはやて。しかし、彼女が彼を見つけるのは全てが終わった後であった……















「ん、なんだか嫌な予感がするよ……」

<私もです……恐らく最上さん辺りじゃないでしょうか?>

「んー、多分そうだよね。なんだかわからないけどいやーな感じが背中を伝わってくるし……」


 首を傾げながら思案する。彼女が千早と出会って数ヶ月、散々な目にあってきた。初対面でいきなり年増と呼ばれたり、幼い自分自身にばばあと言われたり……また何かとんでも無い事でもしたんだろうなと頭を悩ましていた。

 そんな彼女の姿を不思議そうに見つめるフェイトが


「なのは?」


 同じく小首を傾げながら心配そうに見つめる


「ん、なんでもないよ。フェイトちゃん」

「そう、ならいいけど。何かあったの?」

「んー、あったというか、これから起こりそうなの」

「??」


 何が言いたいのかさっぱりわからない様子の彼女に苦笑しながら


「なんでだろうね。なんか、とんでもない事が起こりそうな気がするよ」

「それって、何か事件でも起こりそうって事?」

「んー例えば……」


 人差し指を顎に当てながら視線を移すと、そこに人影が一つ見えた


「そうそう、あんな感じで千早君が女の子になってた……り……とか……」

「あら?なんで解ったの?」


 その人影に指を指しながら、固まってしまうなのは。彼女の視線の先には、満面の笑みで答える千早がいた


「……」

「千早君?」

「ん、どうも親しい人間にはすぐばれてしまうのよね」


 ため息をつきながらこちらへ向かってくる美人がそこにいた


「どうしたの?その格好、女装?じゃないみたいだね。変身?」

「ん?そうよ。とりあえず女性になってみたのだけれども、どうかしら?」

「ん、綺麗だよ。よく似合ってる」

「そう、ありがとう」


 何事も無かったように談笑する二人に対して、人差し指をさした状態で固まっているなのは


「な、な、な……」

「なのは?」

「どうしたの?砲撃しすぎておかしくなったのかしら?」

「違うよ!?ていうか何で女の子になってるの!しかも……え!?えぇぇ!!本物!!」


 盛大に混乱するなのはに胸を揉まれる千早


「なんでここの人達の確認方法って胸を揉むことしかできないのかしら?」

「仕方無いんじゃないかな?だって、すごいんだもの」


 親友の混乱ぶりに苦笑しながら冷静に同じく胸を揉みながら答えるフェイト


「まあ、別に減るものでもないからいいんだけれども……んっ」


 揉まれすぎて感じたのか、恥じらうような声をあげる千早に


「その顔で変な声あげないでぇぇええ!!」

「……なんかいけない気分になりそうだよ千早君」

「フェフェフェフェイトちゃんも駄目だからあああ!!!」

「だったらその手を離しなさいな。二人共、とりあえず落ち着け」


 若干頬を染めながら愛おしそうに千早の胸を触っていたフェイトの姿にさらに混乱する。収集がつかなくなる前に二人を引き離す千早、その際名残惜しそうに手を見つめていたフェイト女史には若干の不安が残るが……


「落ち着いたかしら?」

「私は最初から落ち着いてるよ?」

「はあ、はあ、はあ……なんだか私だけおかしいみたいなの」

「しかし、なのはにしては混乱しすぎじゃない?」

「昨日まで男の子だった人が急に女の子になってたら普通混乱するの!それからその口調!気持ち悪いの!」

「むう、どうも治らないようなのよ。しかし、変身に関してなのはは、ユーノで慣れているはずだと思ったのだけれどもね」

「違うから!ユーノ君はフェレットであって女の子になったわけじゃないから!それから微妙に女の子らしい仕草禁止!」

「気にしないで。でも彼ってなのはの前でフェレットから全裸に戻ったんじゃなかった?」

「どこの変態!?ユーノ君はそんなことしないよ!?寧ろそんなことしそうなの千早君だけだよ!?てゆうか一緒にしないでぇ!」

「違ったかしら?だって、獣って全裸じゃない?ザフィーラもそうだし、デフォは全裸じゃない?」

「絶対違うから!?そんなの見たこと無いよ!?てゆうかそんなユーノ君嫌だよ!」

「あ、でもアルフは最初そうだったよ」

「フェイトちゃん!?」


 真面目な顔してとんでもない事をカミングアウトする親友に驚く。しばらくなのはの混乱は収まることを知らない。終始怒鳴り散らされる千早、そうしてしばらく収集がつかない状態が続いたが


「むー……」

「どうしたの?」

「ん、どうもお前たちに揉まれたせいで少々ヒリヒリする」


 大分落ち着いたところで、そう言いながら胸元のボタンを一個ずつ解いていく


「な、ななな!!?こんなところで脱いじゃだめえええ!!!」

「何、気にしないで。それに元々男だし、寧ろ女なら問題ないでしょ?」

「そういう問題じゃないの!今は女の子なんだよ!てゆうか女の子同士でも問題あるよ!」

「しかし、痛いのだから仕方ないじゃない?」

「んー……ん?ちょっといいかな?」


 頭を抱えるなのはを他所に痛そうにシャツを指で浮かせている千早。その胸元を冷静に覗きこむフェイト


「フェイトちゃん!?」


 今日、何度目であろう親友の名を叫ぶなのは。そんなことはおかまいなしに更に大胆に覗きこむ。所謂ガン見状態である。そうしてある程度覗くと、何か納得したように頷くと


「……痛いはずだよ。千早君ブラしてないから擦れてるよ?」

「ノーブラぁあ!?」


 とんでも無いことをさらっと言われる


「ふむ、当たり前じゃない?ブラジャーなんか持っている訳ないし、それに……」


 スカートの両裾を摘みながら


「もちろん、下も穿いてないわよ?」


 そう言いながら徐々に裾を上げようとするのを


「だめぇぇえええ!!!!!それは絶対だめぇええええ!!!」


 ものすごい迫力で両腕を掴まれる


「??」

「流石にそれは引くかな?」

「何考えてるの!?じゃあ、此処にくるまでずっと……」

「ああ、何度か走ったし飛んだりもしたかしら?」


 六課に謎の痴女現る。そんな見出しが紙面を飾りそうな事を平然と言い放つ変態にこめかみを抑えるなのは、流石にそれは無いと冷静に引くフェイト。二人の極端な反応に苦笑しながら


「とはいえ、女性用の下着なんて無いし。どうしたものかしらね?」

「とりあえず私の貸してあげようか?」

「フェイトちゃん!?」


 本日3度目の『フェイトちゃん!?』である。なんでこの子は自然に受け入れてるんだろうか、心配になってくる。


「そうね、できれば可愛らしいのがいいわね。クマとかイチゴなんかいいんじゃない?」

「んーそういうのは無いかな?あっ、でもなのはなら可愛らしいの持ってたと思う」

「私!?絶対駄目!無理!てゆうかそもそもなんで女の子になってるの!」

「それには壮大な理由があって……」

「どうせ、千早君のことだから、女の子になったら安全だとか考えてるんでしょっ!」

「流石、エース・オブ・エースね。よくわかったわね」

「なのはすごいね。私なんか全然解らなかったよ」

「分かりたくなかった。理解したくなかった……」


 ため息を突きながら項垂れるなのはを他所に、胸を張って自慢げにする千早に、感心したような視線を送るフェイト


「まあ、なのはの言う通りよ。女になれば小さい子と一緒にいても安心する。故に断腸の思いで年増女になったのよ?」

「……年増って、すごく綺麗だよ?」

「何を言っているの?この醜い姿、ああ、本来なら幼女になりたかった……いや少年でもいい」

「どっちにしてもろくな事にならないと思うの……」

「ん?まあいいわ。さて、後はシグナムね」


 そう言うと立ち去ろうとする千早


「シグナム?彼女に会ってどうするの?」

「知れた事、彼女なら私に合う下着を持っているはずよ」

「多分、そんなことしたら斬られると思うんだけど」

「ううん、なのは……確実だと思う」


 あの堅物の彼女が今の彼の姿を見たらどうなるか、安易に想像できるだけに不安になる。ともあれ、そんなことを気にしない千早は


「まあ、なるようになるわ。じゃあ、また」


 片手を挙げると、踵を返して歩き去っていく。そんな彼の後ろ姿を見つめながら


「……はあ、やっぱり嫌な予感しかしないの」

「なのは、仕方無いよ。千早君だし」


 盛大に疲れきった表情で項垂れるなのは、そんな彼女を苦笑しながら慰めるフェイト。行ってしまったものは仕方が無いと諦める……









 ……


 ………



 …………






「なのは」

「何?フェイトちゃん」

「うん、千早君がシグナムに斬られるのは仕方が無いとして」

「うん」

「彼、今下着着けてないんだよね?」

「……」

「そんな中シグナムと攻防なんかしたら……」

「それって……」

「うん、確実に中身見えちゃうよね?」

「……あ」

 暫く無言が続くが……








「それだけは絶対駄目なのぉおお!!!!!」




 その日、必死に絶叫しながら局内を走り回る高町教導員の姿が目撃されることとなる





 変態と言えば露出と女装と思ったんで思い切って性転換でいってみました。後悔はしていない。そして、この設定はすぐ消滅するであろう……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第12.5話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:05
 


 私が生を受けて幾年月、なんどか選択を迫られる事があった。その度に幾度と無く楔を砕いてきた。烈火の将として、何度も死線をくぐり抜けてきた。敵ならば斬る、味方なら守る。しかし、今回はかなり困難な選択肢になるだろう……何故なら


「シグナム?申し訳ないんだけど、貴方の下着貸してくれないかしら?」


 屈託ない笑顔で下着を貸せと要求してくる変態がそこにいた。目の前の女性が最上であることは解った。恐らくヴィータ辺りに教わったのであろう。しかし、よりにもよって女の姿とは、久しぶりに嫌な汗が背中から流れてきた。さあ、どうしたものか……敵ならば容赦なく斬り捨てるのであるが、残念な事に味方である。否、味方ではないな……


「ん?もしかして私だと気づいてないのかしら?剣閃は冴えてても、おつむは鈍いのね」


 ああ、やっぱり斬ろう。これは事故だ……仕方が無いはずだ、うん。


 そう思っていた矢先


「シグナムさんっ!避けてぇえ!!!」

<Divine Shooter>


 桃色に光る光弾が私の前をすり抜けていくと目の前の変態を巻き込み吹き飛ばしていく。それは一瞬の出来事だった。声がした方へと死線を移すと息を切らしながら仁王立ちする少女の姿が見える

 ……高町、気持ちは解るが、私に当たったらどうするのだ?そんな風に思えるほどギリギリの距離を通過していった桃色の光弾。周りに気を使う余裕が無かったのか?


<Flash Move>


 唖然としていたら今度は黒と金色の影が私の前を通り過ぎていくのを確認した。この間実に数秒である。通り過ぎた影を目で追っていくと……


「なのは、いくらなんでもやりすぎ……」


 今度はテスタロッサが、あの変態を抱えながら高町に抗議している。確かにやりすぎかも知れん。知れんが、何故胸を揉無必要がある?そこは関係無いと思うぞ?


「大丈夫?千早君?」


 ……テスタロッサ、声をかける場所が違うだろ、胸に声をかけても仕方が無いと私は思うぞ


「酷い目にあったわ……」


 それは私が言いたい。やはり一言文句を言ってやろうと私は変態へと視線を向ける


「いい加減に……」


 そこまで言いかけて、私は絶句した。テスタロッサに抱えられながら立ち上がろうとした彼女のスカートがはだけ、あられもない格好をしていた。それだけなら今は同性だ。窘めるだけですむ。しかし、あろうことかこの変態は……


「な、なななな!!!何故何も穿いてない!!!」

「あっ……」

「なぁあ!!?」


 すっとんきょうな声と絶叫が同時に木霊する……というかなんだこの状況は……誰か説明をしてくれ



「ま、いっか。見られて困るものじゃないし」


 何も無かったかのように、誇りをはたきながら立ち上がると、そのままシグナムの方へと向かう。そうして思考が停止していた彼女の目の前までやってくると


「で?どうするの?」


 上目遣いで彼女を見つめる。その表情に少し後ずさると


「……どうするとは?」

「だから、下着」

「貴様、自分の言っている事が理解できているのだろうな?」

「うん、だから下着」

「理解しているなら私が貴様に下着を貸す訳が無いだろう」

「なんで?」

「当たり前だ」

「本当にいいの?」

「……」

「このままじゃ、私ノーパンよ?」

「知ったことではない」


 腕を組むとそっぽを向くシグナム、これ以上の問答は無用とばかりに無視を決め込むが


「ふ~ん、じゃあ、私、これからキャロちゃんとエリオ君とこ行くけど……このままでいいのね?」


 邪悪な笑みを浮かべながらとんでもない事を言い出した


「それは……」

「それはちょっと困るかな?キャロは大丈夫だとして、エリオには教育的に不適切だと思う」

「フェイトちゃん、どっちにしても不適切だよ」

「キャロは女の子だし、それに千早君がそんな醜態を見せるわけないし」

「当たり前よ。あの子たちに見せるわけないじゃない?でも、もしかしたらってね」

「ぐっ……私を脅迫するつもりか……」

「脅迫だなんて人聞きの悪い。お願いよ?」

「そもそも、なんでその姿なんだ。それなら普段の姿で会えばいいではないか?」

「だって、最近近づかせてくれないし、それにこの姿の方が色々と安心でしょ?」


 言いながらくるりと一回転する千早、どこが大丈夫なんだろうかという表情で困惑するシグナム。苦笑するなのは。そして、目を輝かせるフェイト。


「どこが安全だ。何も履いていない貴様が会うなど不安しか浮かばん」

「なら下着頂戴」

「やらん」

「ケチ」

「そういう問題ではない」


 それから「下着くれ」「やらん」のやり取りが続く。いい加減にうっとおしくなってたので止めようとなのはが前に出ようとすると


「あ、なのはさん、それからフェイトさんにシグナム副隊長……誰ですか?」

「キャロちょっと待ってよ……え?」


 ちょうどそこへ二人が通りかかってくる


「ん、キャロもエリオも今からご飯かな?」

「はい、シャワーも浴びたのでエリオ君と一緒に」

「そうなんだ。二人共今日も頑張った?」

「はい……だといいんですが」

「大丈夫だよ、二人共すごく良くなってきてるから」

「ありがとうございます」

「そうなんだ。なのはの教導が厳しくて泣いてないか心配だったから」

「それはどういう意味かな?フェイトちゃん」

「だって、無茶しそうだし」


 苦笑いを浮かべながら談笑しだす二人。その横で睨み合う、シグナムと千早


「あ、あの……」


 今にもつかみ合いになりそうな二人に近づくキャロ


「ん?」

「え、えと、もしかして最上陸尉ですか?」


 おずおずと質問する彼女に満面の笑みで


「Piacere!その通りよ」

「やっぱり」

「え、ええ!!?」


 その答えに驚く二人、返答がイタリア語なのは誰も突っ込まない……


「どうして女性になっているのですか?」

「どうしてって……んー君達ともっと仲良くなるためかしら?」

「仲良くって……今でも仲いいですよ」

「なんていうのかしらね……んー?」


 首を捻りながら考えると、


「!?」


 何故か急に、彼女から距離をあける千早


「?どうしたんですか?」

「ん、なんでもない……」


 そう言いつつシグナムの後ろに隠れ出す


「何をしている?」

「黙って、今は駄目なの」


 意味がわからん。というより、先程までと態度が全然違う姿を見て違和感を感じる


「私、何か嫌なこと聞いたのかな?エリオ君」

「んー違うと思うよ」


 不安な表情で話しだす二人を見て


「ほら、お前が変な行動するから二人が困惑しているぞ変態」

「うるさい。ともかく今は駄目なの」

「意味がわからん」

「そうだよ?あんなに会いたがってたのに急にどうしたの?」

「ん、今はちょっと……」


 なんかモジモジしだした。気持ち悪い……


「とりあえず気色悪いから、離れてもらえるか?」

「それは困るのよ。ほら、だって今私履いてないじゃない?」

「何を今更……お前、まさか……恥ずかしいとか言うんじゃないだろうな?」


 呆れた表情で質問するシグナムに頬を染めながら


「あ、当たり前じゃない」

「貴様、先程私にしたことを忘れたとは言わせないんだが?」

「シグナムは別にいいの。でも、この子達は別」

「意味がわからん」

「どうでもいいから、早くパンツよこしなさい!」

「わけが解からん逆切れをするなぁ!」

「貴方それでも騎士なの!?それでよく烈火の将とか言えるわね!」

「騎士は関係無い!」


 再び喧嘩しだす二人


「あ、あの……」

「パンツって……」


 そんな彼女らを見て困惑するキャロとエリオ、二人を見かねたなのはが


「キャロにエリオ?とりあえず長くなりそうだから、先に行こっか?」

「ん、なのは。そうだね。二人共一緒に食べようか?」

「はい!」

「解りました」


 苦笑しながら二人を誘って、食堂へと向かうなのはとフェイト。その後ろでは未だに言い合うシグナムと千早がいた……


「だから!貴様は、前から何度も言っているが……」

「貴方だって、無駄に太もも晒してるじゃないの!?」

「一緒にするなぁあ!!」


 彼女の気苦労が絶えることは一生無いのかも知れない……とはいえ、唯一の防波堤である彼女にはこれからも頑張ってもらおうと心の中でエールを送るなのはであった……





 ちなみに、その後合流したはやてと共に3時間説教された事は言うまでもない。最上千早、彼はいつも自由である……












 そういえば、彼女との絡み書くの忘れてたので追加。シグナム大好きな獅子座でした。二人の絡みが一番楽しいんですがどうでしょう?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾参話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:05
 
 ヴァイス陸曹が操縦するヘリ内にて、はやてがモニターの前に立ちながらこれから行われるホテルでのオークション警備に関してのブリーフィングを行なっていた。現在、ヘリに集められた人員は、八神はやて、高町なのは、フェイト・T・ハラウンとエース級が勢ぞろいで、テロリストも裸足で逃げ出すくらいの実力者が揃っていた。それは彼女らの経歴を知る者がいれば壮観とも呼べる光景だろう。

 そんな彼女らと同じ部隊に配属されてしまうと、どうしてもコンプレックスを抱いてしまう。彼女たちに指導されている新人のティアナ・ランスターもまさにその一人であった。しかし、そんな中に一人、プレッシャーとか、コンプレックスとかを抱かなさそうな人物が目の前でにこやかに立っていた。


 ――なのはさん達、隊長達は会場内の警備なのに、なんであの人だけ外なんだろう……


 そう物思いにふけながら、モニターを見つめるティアナ

 機動六課での日々は充実している。自分のような未熟者からすれば学ぶ事も多いし、凡人と天才との壁の高さを認識させられるのにこれ以上の職場はないであろう。訓練で叩きのめされる度に、目の前の壁の高さと揺るぎない頑丈さを幾度も経験してきた。ただ、そんな中ティアナの胸中に一つ疑問がある。


 ――なんでこの人が隊長なんだろう……


 もっともな疑問である。例えば、高町なのはという人物がいる。『エース・オブ・エース』管理局の人間なら誰もが知っている2つ名である。そして、その名に恥じない経歴と、その人当たりしない優しさから人望もあり、己にも他人にも厳しいく、何より余りある実力がある。フェイト・T・ハラウンや八神はやてもそうだ。しかし、目の前の人物には凡そ、そういった話はまったくない。解っていることといえば、幼女が好きで、少女が好きで、少年が好き。所謂ロリコン、いや……変態だろう。そんな変態がなんで、あんなすごい人達と同じということが不思議で仕方が無い。


 ――悪い人じゃ、無いんだけど……


 たまに訓練を受けることがあるが、訓練校時代とそう変化の無い教導である。たまりかねて、もう少し個人的な教導を願い出ても「そういうのは高町教導官に教わってるだろう?』と言ってはぐらかされる。確かに彼女はなのはと同じポジションということもあり、彼女からみっちり受けている。彼女の教え方は丁寧かつ熾烈で、ティアナは基礎訓練にも関わらず毎日泥だらけになるまでしごかれていた。

 しかし、ティアナは一刻も早く基礎訓練を乗り越え、応用訓練に移りたいと思っていた。今のところはその気持が叶う様子は伺えない。恐らく、なのはの考えでは徹底的に基礎を鍛えてから応用へと移る気であろう。それは実に堅実的な教導砲身であることは理解しているつもりだけど、ただそれでは自分が強くなったという実感が得られないのである。それが彼女にとっての不満であった。彼女には目指す目標があり、その為には強くならないといけない。強くなれば実績もつき、その実績が自分の目標への近道である。

 しかし、今の自分は、そういった強くなったという実感が沸かない。同じ新人であるスバルやエリオ、キャロが日々成長していくのを見る度に焦り、それがまたコンプレックスへと繋がっていた。彼女自信も彼と同じ、機動六課で、『場違いな存在』ではないかという感覚に陥ってしまう要因でもあった。


 ――ああ、だから、どうしても好きになれないのか……


 彼自身に自分の嫌なところを投影してしまっている。場違いな存在、周りにはすごい人がいる中で凡人である自分と、隊長陣の中で浮いている最上。違うところといえば


 ――私はそれに嫉妬してる……でもあの人は……


 自分で理解していても止められない周囲への嫉妬……自分という人間が小さく見えてしまう。周りは才能の塊、でも自分は……そうティアナは悩まされていた。しかし、同じ隊長陣の中で実力的に劣る目の前の男は、そんなこと関係無いって感じで自然に、自由にふるまっている。どうして、そんな風にできるのか彼女には不思議で仕方が無かった。

 そんな考えにふけていると、目の前の『元』男が口を開いたのを彼女は聞いていた


「ねえ、はやて?少し確認したい事があるのだけれど?」

「ん、なんやの?」

「私、女性の姿になっているというのに、皆が自然に受け入れているのだけれども?」


 その声の主は、今まで思考に入れていなかった事を平然と言ってしまった。千早はいつもの男性局員の姿では無く、自分達と同じ女性局員が着用する制服を着込んでヘリ内、フェイトの立つ位置の隣で同じく立っていた。彼が男性であることはヘリ内の誰もが知っているのであるが、当然のように女子用の制服を着こなす姿に誰が得するのか、誰も理解出来ない。とはいえ彼が女性になったその日ははやてを始め、フォワード組全員が突っ込みを入れたが、それも何度も目撃すると慣れていった。特にフェイトなんかは事あるごとに彼女?に会いたがっている。

 ティアナはフェイトが、女性化した千早の前だけ暴走する姿を見てしまい、更にはその隣で盛大に苦笑しながらうなだれている高町の姿も見ている為、日頃威厳ある、尊敬している二人のそんな姿を目撃してしまい、しばらくうなされたのを思い出す。ティアナは自分を『実力的に場違いな存在』と認識しているが、目の前の変態は『存在自体が場違い』ではないんだろうかと思わずにはいられない。目の前でにこやかに立つ姿を見ると何故か腹がたつ……

 ティアナがそんな風に殺意を向けているとは思っていない千早は、更にはやてに話しかける


「ちょっと耐性が強いんじゃないの?普通男性が女性になったら、変じゃない?常識的に考えて」

「ああ、うん、あんたに常識を説かれるとものすごいむかつくからやめてくれへん?」


 千早のもっともな意見と、はやてのもっとな返しにティアナは内心同意した。もちろん後者の方であるが


「まあ、受け入れてくれているならいいのだけれどもね」

「ああ、受け入れてへんよ?フェイトちゃんがね。今回の任務にどうしてもっていうから許可しただけやから」


 そう言うと、全員がフェイトの方へと視線をうつす。なんてことを提案したんだって視線で……


「え?うん、だって、ほら、今回の任務って警備だし。素性がばれてない姿の千早君の方がいいと思ったの」


 その視線に耐えかねたのか、目を泳がせながらもっともらしい意見を言うフェイト、しかし、そんな彼女の意図を知ってかはやては意地悪な笑みで


「……で本音は?」

「千早君男の子なのに可愛いしもったいないよ。それに色々……あっ」

「フェイトちゃん……」


 はやての誘導尋問にひっかかって本音を暴露する。それを聞いたなのはは、親友がどんどんあさっての方へと向かっていくのが悲しくて仕方がないのか盛大に項垂れる


「ま、まあ確かに、今回は警備やし。確かに顔が割れてない人員がいる方がええってのはある」

「そうだよね?うん、だから他意はないよ?」

「もう、ばれてるからええよ。しかし、まさかフェイトちゃんが染まるなんてな」

「そうだよ。私もびっくりしたよ」

「そんなことないよ、はやて。私は純粋に尊敬しているだけだよ?」

「ああ、ちょっと前まで気持ち悪いって言ってたんが懐かしい……」

「そうだね。あの頃のフェイトちゃんはいなくなっちゃったんだよ……」

「勝手に人を故人にしないでくれるかな?二人共」


 その会話を聞いていてティアナは椅子からずり落ちそうになった。そして、周囲を見回すと、他のフォワード組も同じで唖然としていた。ふと別の方へと視線をうつすとシャマルも同じような表情をしていた。


「ふふふ、変な人達ね」


 彼女らのやりとりを見ていた千早が、そう呟くとその場にいた全員から心の中で『お前が言うな』と突っ込まれていた。そう思われているとは夢にも思わない千早は


「でも私今回は外なのよね。どうせなら内がよかったわ」

「そら無理。会場内には来賓の人らもおるし、なにより子供もおる」

「寧ろ是非行きたいわ」

「子羊の群れの中に虎を入れるようなもんやわ。ろくな事無い」

「私はただ愛でていたいだけなのに……」

「具体的には?」

「そうね。まずは迷子がいないか心配だわ。それから一人でおトイレいけるか心配。我慢ができない子供が一緒にって行って欲しいと……ああ、でもそれだけは駄目よ……しぃーしぃーなんて……私は清らかな天使の笑顔を見たいだけなのよ……」


 一人妄想にクネクネしだす。女性化しても中身は変わらない……


「で、こんなんやけどまだ尊敬できるん?」

「ん、でも私もエリオやキャロが一人でできるか心配だったよ?」

「あ、あの……私そんなに小さくなかったです」

「僕も……」

「根本的に二人の思考がおかしいことに今気づいたわ……」

「あ、あはは……」


 彼女らのやりとりを聞いていると自分が悩んでいる事が馬鹿らしくなってくる。その原因である人物に対し嫌悪感……寧ろ憎悪すら感じてしまうティアナ。何故こんなふざけた人間が上司なのか。彼女が機動六課に配属されて幾分たつが、未だに最上千早という人物が信用できない。もういっそのこと全部さらけ出して鬱憤を晴らせば楽になるのでないか?そう考えてしまうほど自分自身は追い詰められているのであろうか……やっぱり気に食わない。

 そこまでの考えにいたると、彼女は考えることを放棄した。そんなくだらないことを考える暇があるならこれから始まる任務の事を考える方がより建設的だ。ここで何かしらの実績をあげれば何かが変わるかもしれない。その為にまずこの変態の姿を視野から消そう。そう思い一度考えを改めるのであった。


 ――ミスは許されない。そして、実績を得る……


 ティアナは目を閉じると、現地に到着するまで無心になることにした。そうして不快な声が消えるまで数分とかからなかったのである。









 ホテル・アガスタ


 周囲を自然に囲まれた所に建つ建物の中では、オークション前ということもあって人で賑わっていた。そんな中、華やかなドレスで着飾った3人の美女が談笑していた。


「いや~ごっつい人多いわ」

「そうだね、はやて」

「とりあえず会場内は大丈夫かな」


 談笑している美女は八神、高町、フェイトの三人である。談笑しながらも周囲を見回しどこか異常が無いか目を光らせている。周囲からの様々な視線に晒されながらも動じず遂行するあたり、流石である


「さて、会場内はええとして外はどうやろうか?」

「そうだね。シグナムさんやヴィータちゃんたち副隊長が周辺を警備してるし、それにフォワードの子達もそれぞれ配置したから」

「なら問題なさそうやね」

「そうだね。あの子達なら大丈夫だよ。はやて」

「そう、問題はアレ”やね」

「え”大丈夫だよ?多分……」

「私は何も心配してないよ?」


 こめかみを抑えながら、ぽつりと呟くとあからさまに引きつるなのは、何も心配ないと信頼するフェイト。二人の極端な意見に苦笑しながらも


「まあ、実力『だけ』は問題ないし、ええか」


 と考えることを放棄するはやてであった。どうせ自分がどうこう頭を悩ませたところで結果は変わらない。なら流れに身を任せるのも悪くないと思い始める。なんだかんだいって自分も染まってきたことへ自重の笑みを浮かべながら……





 同時刻、アグスタ屋上


「今のところは問題なさそうね」

<YES、しかし、本当に現れるんでしょうか?>

「さてね?まあ、何も無ければそれでいいし、でも何か起こりそうな気はするわね」

<何故か、楽しみに聞こえますが?>


 笑みを浮かべながらどこか楽しそうに周囲を見回す千早へ問いかける


「ん、ああ、何故かしらね?なんていうのかしら……幼女の気配がするわ」

<幼女?それは会場内ですか?>

「んー、違うわね……もっと遠く……そうね。あの辺りかしら?」


 そう言うと、少し先の森の方を指さす


<しかし、シャマル女史から何も報告はありませんが>

「私の勘かしら?でも、間違い無いわ……澄んだ空気の中に微かに感じるもの」


 何故かその表情は確信に満ちていた。それが正解だとは誰も思わないだろう


<――こちらは問題無し、そっちの方はどうだ?>


 二人談笑をしているとシグナムから定時報告の通信が念話で入ってくる


<んー幼女ともう一つ私好みの気配が南東からするけど……まあ、問題無いわ>

<それは敵か?>

<さあ?>

<……ふざけてると斬るぞ?>

<だから解らないって言ってるでしょ?まあ、気配といっても匂いだから違うかも知れないわ>

<どういうことだ?>

<だからロリコンの勘よ>

<……>

<驚愕しないでよ?>

<呆れてるだけだ……とりあえず問題無いならいい。ふざけてないで仕事しろ変態>

<はいはい>


 念話越しにため息が聞こえてくる。よほど呆れているのだろう……そうして通話を切られると遠方を見つめながら一人笑みを浮かべながらごちる


「まあどうせ、今は会えない気がするし……ああ、会ってみたいわね。まだ見ぬ子供たち」

<可能なら敵で無いことを願うだけです>

「そう?」

<マスター?>

「ん?」

<もし、仮に敵だったとしたらどうされるのですか?>

「そうね……仮に敵であったとしても、子供には罪は無いわ。もし、そうなったとしても私は手を出さない」

<マスター?>

「ふふ……でも、敵でも味方でも無垢な子達を陥れるような人がいたら、その時は」

<その時は?>

「……殺すわね」

<マスター……>


 顔は笑っているが、瞳は寒気がするくらい暗い。六課のメンバーには一度も見せたことが無い、長年共にいたガングニールですら見たことが無いどす黒く暗い感情。初めて見せる生の感情を目の当たりにしたガングニールから不安の声が出るが


「ま、今の所は大丈夫でしょ?」


 そう呟くといつもの飄々とした笑みを浮かべながら


「あ~あ、どうせなら会場内で迷子の子達の相手がしたいわよね……」


 欲望剥きだしな愚痴を零すのであった……







「へっくしっ!」

「はっくしゅっ!」

「風邪か?二人共」

「んーん、なんだろう?急に寒気がしただけ……」

「あーアタシも悪寒がする。なんだこれ?」


 ホテル・アグスタの傍にある森の中、ちょうど千早が指をさした方向になる。木々の隙間から差し込む光が三個の影を映し出している。ロングコートに身を包む歴戦の兵を思わせる雰囲気の男ゼストとその肩辺りを漂う妖精のような存在アギト、そして、その場に似つかわしくない幼女ルーテシアが静かに歩いていた


「しっかし、ルールなんで今回そんなに張り切ってんだよ?探してたもん無かったんだろ?」


 ゼストの肩辺りを漂いながら後方を歩くルーテシアに語りかけるアギト


「うん……無かった。でも、ドクターがオークションの警備に出てるので面白い人がいるって」

「面白い人物?ルーテシア、あの男から何を聞いた?」


 前を歩くゼストが、振り返らずにルーテシアに聞き返すと、彼女は


「うん、あそこにロリコンがいるんだって」


 興味津々といった感じで返事をする。その返事を聞いたゼストは思わず何もないところで躓きそうになり必死に耐えた……


「……」

「?なー旦那、ロリコンってなんだ?」

「知らなくてもいい……ルーテシア、悪い事はいわん。今すぐどこかへ行こうか」

「んーいや、気になる」


 ゼストは悩んでいた。目の前の少女ルーテシアは、余り自己主張……わがままを言う事が無い。しかし、彼女が同年代の少女たちと同じで好奇心旺盛であることも理解している。だが、彼女をとりまく環境のせいで感情を押し殺している事も知っていた。そんな彼女が初めてわがままを、歳相応な反応を示したのがよりにもよって『ロリコンに会いたい』である。


「ルーテシア、いいか、ロリコンというのは危険なものなんだ。だから会わないほうがいい」

「だからロリコンってなんなんだよ?旦那」

「ロリコンっていうのは、ルーテシアやアギトのような人物を捕獲してコレクションするか捕食するような化物のような存在だ」

「!?ルールー!帰ろう!むっちゃ危険じゃないかっ!」

「……大丈夫、もし、そうなったら助けてくれるでしょ?」

「む……」


 どうやら彼女の中で好奇心が恐怖心より勝っているようで言う事を聞いてくれない。やはり、今回の依頼を受けたのは誤りだったのでは無いのだろうかと頭を悩ませるゼスト。


「あの男と、ルーテシアだけで話をさせたのは失敗だったな……」

「大丈夫だよ。ドクターの言う事は半分以上信用していないから……でも、ロリコンは気になる」

「だから、ロリコンって本当なんなんだよ?」


 いかん、これは本気で止めないと大変な事になってしまう。機動六課……ジェイルから送られてきた資料に目を通したゼストはある程度彼女らの戦力を把握している。率直な感想としては『異常な部隊である』といった内容である。その内容は『策略にたけ、4人のS近い能力がある私兵を保有する部隊長』を筆頭に『トリガーハッピーな桃色の魔王』『脱魔のショタコン』そして『謎に包まれるロリコン』が隊長を努める部隊。それだけで異常なのだが、彼らの実力はSSクラスだという。最強の変態部隊、それがもし、こちらへ牙をむいたなら無事ではすまない。そう判断したゼストは


「静かに、そろそろ、警備部隊の網に掛かりそうな距離だ」


 最もらしいことを言い、彼女らを引き止め構える。向こうの能力からして奇襲をかけること自体自殺行為であろう。ここならまだ見つかる事も無い、そのまま何もせず、事が終わるまで警戒を続けよう。そして絶対会わせては駄目だ。そう思い真剣な顔で誤魔化すゼストであった……




 なんか女性になったほうがかっこよくなってしまった……シリアス書いてみたかったので後悔はしていない……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾四話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:06
 

 ホテル・アグスタの敷地内で警備をしているティアナは同じくエントランスで待機しているスバルと念話をしていた


<今日は八神部隊長の守護騎士、全員集合かぁ>


 少し遠くを見つめながら感慨深くそう呟くスバル


<そうね、あんたは結構詳しいわよね?八神部隊長とか副隊長のこと>

<んー、父さんやギン姉から聞いた事くらいだけど、八神部隊長の使っているデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の書ってことくらい。後、副隊長達、シャマル先生やザフィーラは八神部隊長が保有している特殊戦力って事とそれにリィン曹長を合わせた6人が揃えば無敵の戦力って事かな。でも、詳しい出自とか能力の詳細は特秘事項だから、アタシも詳しく知らないけど>


 その言葉を聞き何か確信めいた考えが浮かぶ。特秘事項……やはり自分とは世界が違う


<レアスキル持ちの人は皆そうよね>

<ティア?何か気になることでもあるの?>

<別に……ただ、そんなすごい人達の中になんでかなって>

<?何の事?>

<気にしないで……>

<ん?ティアがそう言うならいいけど……そうそうすごい人っていえば最上隊長なんだけどさ>


 最上……その単語に嫌な表情をするティアナ、というよりこの子は解って言っているのだろうか


<?ティア?>

<ん、なんでも無いわ。で、どうしたの?くだらないことだったら切るわよ>

<何怒ってるの?まっいっか……これ聞いた話なんだけど、最上隊長って実は人間じゃ無いかも知れないんだって>

<はあっ!?ふざけたこと言わないでよっ!そんな訳あるわけないじゃない!?>


 思わず大声を出してしまうティアナ


<いきなり怒鳴らないでよ……>

<ごめん、悪かったわよ。で、その化物かも知れない変態がどうしたの?>

<ほんっとティアって最上隊長の事嫌いだよね。一応隊長なんだよ?>


 彼女のあからさまに失礼な言葉に念話越しに苦笑するスバル、しかし、「一応」とつけている辺り彼女も大概失礼ではあるが……


<別に……そういう訳じゃないわよ。で、そんなデタラメな噂が出るような事でも聞いたの?>

<デタラメって……えっとね、これは父さんから聞いたんだけど最上隊長って元々あたし達と同じで陸士だったんだけど、ある時からいきなり陸尉に昇進したんだって>

<いきなり陸尉って、どんなコネを使ったのかしら?>

<んーそれが誰も知らないんだって……でも、気になった父さんが戦歴を調べたんだけど>

<それで?>

<何も出なかったんだって、ただ、一つだけ気になった事があったて>

<何よ?もったいぶらず言いなさいよ>

<うん、最上隊長が所属する部隊では最上隊長の事となると皆、貝のように口が固くなるって……>


 そこまで聞いて眉間に皺を寄せながらため息をつくティアナ、それはただ、部隊にロリコンがいることを知られたくないだけでは無いだろうか?


<それと……噂じゃあ魔法無しで一個師団殲滅したって>

<一個師団って……しかも、魔法無しって、どこの汎用人型決戦兵器よ!?>

<うん、でもね。なんでも現場にいた人から聞いたらしいんだけど、魔法無しで素手で殲滅、しかも相手から直撃を受けても無傷だったらしいよ?>

<どういう事?>

<だから、防御不能の直撃魔法を受けても無傷だったて事>


 防御不能の直撃って……


<はあっ!?そんなわけあるわけないじゃない!?>

<でしょ?だから、人間じゃないかも知れないって……『アヤカシ』とか『妖怪』って呼ばれるものじゃ無いかって?>


 そこまで聞いて思い出す六課での日々を、何度もなのはさんの砲撃を受けても、フェイト隊長の雷撃を受けても、シグナム副隊長に斬られても、ヴィータ副隊長にぶん殴られても平気な顔ですぐ立ち直る彼の姿……非殺傷設定であっても毎日あれだけ食らっていればトラウマになってもおかしくないはずなのに……しかし、彼女の中では、スバルの言った以外の言葉が浮かび上がってきた。それは……


『マゾヒスト』


 浮かんだ瞬間、身震いするティアナ。もう彼女の中で最上という存在が神レベルの変態となりつつある。とはいえ、もし、スバルが言うことが本当であれば彼にはどんな攻撃も通用しないことになる。ということは無敵だといっているようなものだ、つまり『無敵の変態』だと……ありえない。


<ティア?大丈夫?>


 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。鳥肌がたち愕然とするティアナに、スバルはそんな彼女の様子を心配する


<ええ、問題無いわ……少し驚いただけだから>

<そ、じゃあ、また後でね>


 心配しながらも任務があるので、スバルは念話を切る。


 ……六課の戦力は無敵を通り越して明らかに異常――


 スバルとの念話が終わった後で、機動六課について思考を巡らせるティアナ


 ……八神部隊長がどんな裏ワザを使ったかは知らないけど、スバルが言っていた事が正しければ隊長格は全員がオーバーSになるはず、他の隊員だって、前線から管制官まで未来のエリートばかり。あの年でもうBランクを取っているエリオとレアで協力な竜召喚師のキャロは二人ともフェイトさんの秘蔵っ子――


 機動六課の戦力は常識を欠いている。通常Aランクの魔導師なら隊長クラスであるのに、六課ではオーバーSクラス。一尉であるなのはが分隊長で留まっていることに加えて、あの変態がもし人で無かったなら……


 ……やっぱり、うちの部隊で凡人はあたしだけか――


 彼女の悩みが解決することは無かった。唯一同じ立場だと思っていた人物がもしかしたらマゾ型決戦兵器かも知れないということへのショックは彼女の精神へ負担を強いることになる……












 同時刻 ホテル・アグスタ屋上


 新人達に最早人では無いと噂されている人物が、涼しい顔で屋上で待機していた。空は快晴で雲ひとつ無い良い天気の中


「あら?この気配……来るわね?」

<シャーリ女史より敵影の出現を確認しました>

『ガジェットドローン陸戦一型、機影35!陸戦三型……3,4!』


 千早が上空を見つめながら呟くいた瞬間、ロングアーチからの通信を確認するガングニール。前回の出撃で確認された大型ガジェットも多数見受けられる。


<聞こえてたな?私達は先に出るぞ!>


 念話越しにシグナムから報告が来る。ガジェットの出現の報を受けたフォワード陣は素早く迎撃態勢を整える。ホテル防衛ラインにスターズ、ライトニングの新人フォワード四人を待機、迎撃にはシグナム、ヴィータ、ザフィーラの三人、コマンドポストはシャマルの態勢である。なのは達隊長陣は会場内の人員警備、千早は不足の事態への対応の為に屋上で待機、場合によって遊撃するようになっている。


「スターズ2とライトニング2、共に出るぞ!」


 ヴィータの掛け声と共に、ホテルの吹き抜けから飛び立つ3色の魔力光、それを確認すると


「さて、私はあの子達のフォローね。ガングニールいけるかしら?」

<はい、いつでも可能です。今回も補給はばっちりです>


 彼女の返事に満足そうな笑みを浮かべながら


「なら、いつでも出張れるわね」

<YES MASTER>


 そう確認をとると、間もなく戦場になるであろう場所を見つめていた……








 同時刻ホテル・アグスタ――オークション会場内



<フェイトちゃん、主催者さんはなんだって?>

<外の状況は伝えたんだけど、お客の避難やオークション中止は困るから、開始を少し延ばして様子を見るって>


 会場内では、警戒しながら念話で会話をするフェイトとなのは。前線にはヴィータ達副隊長や千早がいるとはいえ新人が心配な様子のなのは、そんな彼女を労るように


<あの子達なら大丈夫だよ、なのは。シグナム達もいるし、何より千早がいるから>

<うん、そうだよね>


 前まで、彼がいるだけで不安そうな表情をしていたフェイトが、今や全幅の信頼をしている事に複雑な心境のなのは。


<ほんと、フェイトちゃん変わったよね?最初は話題に出ただけでも嫌な顔してたのに>

<うん、あの時は本当に気持ち悪いって思ってた……だからいつも避けてたの。今思えばあからさまだったかな?でも、彼はそんなこと気にしなかったんだ>

<うん>

<普通だったら傷つくよね……でも彼は寧ろそれでもいいって言ってくれた……無理に好きになる必要があるのかって、だから、不思議だった。私は嫌われたくないって思ってたから……嫌われることが怖かったから>


 昔のことを思い出したのか少し表情が曇る。


<フェイトちゃん……>

<でも気づいたんだ。誰かに嫌われようと好かれようと本人にとっては些細なことなんだよ。それよりも自分の信じた道を進む事の方が大事なことだって教えてくれた。千早は真剣に変なんだよ?>

<そうだね、真剣に変態だよね>

<そう、だからね。私もっと早く出会いたかった。もっと早く出会っていたら違っていたかもしれない。>

<うん?>

<もし一〇年前出会っていたら彼と私は同じ……>

<ストップ……それは駄目だからね?色々とアウトだからね?フェイトちゃん自分は大切にしなくちゃだめだよ?>

<あ、うん。ちょっと暴走した……反省してる>


 どうしてこの子は極端に走るのだろうか?と心配になってくる。ともあれ、変態ではあるが、ここまでフェイトを惹きつける千早に苦笑いしながら、無事を祈るなのはであった……









 その頃、前線にて迎撃に出ているシグナムとヴィータ、最初のうちは快進していたのであるが、急にガジェットの動きに変化が生じた事に違和感を感じ始めていた。


「なんだこいつら……動きが急に!?」


 変化に気づいたヴィータがごちると、ロングアーチから更にガジェットが召喚されたとの通信が入ってくる


「この様子ではあちらにも……」

「あっちはあの変態がいるから大丈夫だろ?これ以上進ませねえ!」

「心得た。ここは死守する!」

「ああ!」


 気合を入れると、まっすぐこちらへと向かってくるガジェットの迎撃を再会するのであった










 ホテル・アグスタ正面玄関前


<SWORD RAIN>


 防衛ラインに現れたガジェットを順調に破壊しながら、様子を伺う千早、その傍ではティアナ達フォワード組も迎撃に奮闘していた


「んーどうも、前とは動きが違うようね?」

<そのようです、前線も少し苦戦しているようです>

「そうね……でも、不思議ね。あのガジェット達から幼女の香りが微かにするわ」

<では、あれを操作しているのは>

「ん、十中八九幼女ね……しかもとびきりの美幼女と見たわ」

<それは是非お会いしたいところです>

「でも、少しお痛が過ぎるわね……とはいえ、恐らく裏に何かありそう」

<では、あの男が?>

「ジェイル・スカリエッティ」

<やはり>

「ええ、許せないわよね?幼女を拐かすなんてね……」


 珍しく感情を露わにしながら敵を殲滅していく、その間にも更に召喚されたガジェット達が新人達の方にも向かっている。玄関前の通路にて迎え撃っていたティアナであるが、ガジェットから発せられるAMFに苦戦を強いられていたが、次から次へと召喚されてくるガジェットへの対応へと追われる為、中々フォローに入れないでいた。

 スバルがウイングロードを展開し、前へ出る。その後方で魔力陣を展開するティアナ

 ――証明するんだ……特別な才能やすごい魔力が無くったって、一流の隊長達のいる部隊だって、どんな危険な闘いだって……あたしは、ランスターの弾丸は……ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって……


『ティアナ!四発ロードなんて無茶よ!それじゃあティアナもクロスミラージュも』

「撃てます!クロスファイアー……シュートッ!うぉぉお!!」


 叫びを上げながら魔力弾を放つティアナ、次々とガジェットを破壊するが、無理をして放った魔力弾が、スバルの方へと向かっていく。直撃する、そう思った瞬間スバルは目を閉じる


 ――ドォンッ!


 魔力弾が爆ぜる音がする。ティアナは余りの事に呆然となる。自分は今、何をしたんだ?劣等感からくる焦りのせいで、誤射を……しかもスバルに当ててしまった……もう何がなんだか分からず、スバルを心配することさえ頭に無く、ただただ立ち尽くし先ほど爆ぜた場所をうつろな瞳で見つめることしかできない


「あーいたた……酷い目にあったわ……」


 呆然と立ち尽くしていたティアナに聞き覚えのある声が聞こえた。見上げた瞳に銀色の光が差し込む


「最上隊長!?」


 いつの間にかスバルの前へ割り込んだ千早は、そのまま彼女の魔力弾を受け止めたのであった。否、そのまま直撃を受けただけだった……


「まったく、私が生粋のマゾヒストじゃなければ大変なことになったわよ?」


 直撃を受けたのであろう後頭部をさすりながら、ティアナに向かい抗議する千早。本来なら突っ込みどころ満載なはずが、それどころでないティアナはただ呆然と見上げる事しかできない


「……突っ込みが無いわね?」

<マスターはもう少し空気を読むことを進言します>

「酷い言われようね?でもなんか主人公ぽくない?仲間のピンチに颯爽と現れるなんて、私かっこいいわ」

<直撃を後頭部に受けて、たんこぶをこさえながら、しかもマゾヒストを名乗る主人公なんて痛すぎると思いますが?>

「ふふん♪痛みには慣れてるわよ?」

<ドヤ顔で言うところが尚更きもいです>

「……言うようになったわね?」

<マスターのデバイスですから>


 そのまま漫談を始める二人を見て更に唖然となる二人であったが、


「最上隊長!違うんです、今のはあたしとティアナの作戦で……」


 慌てて取り繕い彼女を庇うスバル


「貴方も突っ込みが足り……ああ、スバルはボケ担当だったわね」

「そうじゃなくてっ!」


 ジト目で抗議する千早にティアナを庇おうと必死になるスバル


「なっちゃいなわ。そう、ここは突っ込んでこそのフォワードなのに……」


 ブツブツと呟きながら、この二人は駄目だ精神的に余裕が無いと判断した千早は、ため息をつきながら


「とりあえず、あそこで呆けてるティアナと一緒に待機しててくれる?後は私がやるから」

「でもっ!」

「『でも』も『しかし』も『かかし』も禁止、これは命令ね。いくら私がロリコンで幼女少女少年達しか興味が無い変態でマゾヒストであっても貴方達の上官なの、無茶しすぎよ」

「……」


 そう言い残すとガジェットに向かっていく千早、残された二人は今ひとつ煮え切らない表情で見送るしかなかったのであった……










 もう千早女でいいんじゃね?と思うくらいTSがデフォになってしまった……ギャグ成分が足りない……後関係無いけど千早の姿を誰か書いてくれません?ちょっと試しに私が書いたら小学生か!っと突っ込まれて絵心も無い事にショックを受けた獅子座でした……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾伍話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:06
 
「おっし、全機撃墜……」

「こっちもだ、召喚士は追いきれなかったがな」

「だが、いるとわかれば対策が練れる」


 戦闘も終え、アイゼンを肩に担ぎながらため息をつくヴィータ、そのまま合流したザフィーラとシグナムもまた戦闘を終えていた。


<そっちはどうなんだ?>


 ヴィータがホテルの方を心配し、念話を送ると


<ん、こっちも無事終わった所だ>


 千早から返事が帰ってくる


<ん?なんかお前声が変じゃねえか?>

<ああ、少し魔力を消費したのでな、途中で変身が解けたようだ>

<そっか、後で合流する>

<了解>


 念話を切ると、シグナムが心配そうな表情で


「あっちはどうだ?」

「向こうも全機撃破、新人達も大丈夫だと、ただ、戦闘の影響で千早の変身が解けたらしいけどな」

「そうか、安心したか?」

「ばっ!?そんなんじゃねえよ!」


 意地悪そうな顔で言うシグナムに照れながらぶっきらぼうに返事するヴィータ。なんだかんだいって新人達のことが気になって仕方が無い様子である


「なら問題無いということか」

「ああ、けが人も出てねえし」


 安堵した様子で、語りあう二人に対してため息をつきながら


「本当にそう思うのか?二人共」


 ザフィーラが聞いてくる


「?何かあるのか?」


 そんな彼に疑問を投げかけるシグナム


「確かに、ガジェット襲撃に関しては問題無い。だが、今最上が元に戻ったと言ったな」

「?だからどうしたんだ?」


 ザフィーラの言葉に意味が解らないと言った表情で問いかける


「お前たちは、奴が『変身魔法で女性になっていた事』を忘れたのか?つまり変身は解けても服装はそのままで……」

「あ……」

「げっ……」


 そこまで説明を聞いて、はっとなる二人……


「如何!緊急事態だ!主に報告せねば……」

「そんなことしても遅せえ!ここはリミッターカットの申請をしてアイゼンの染みに……」

「いや、ここはレヴァンテンの錆に……」


 ザフィーラはため息をつきながら、先ほどまでの緊張感が一気に瓦解していくのを感じる。最上千早という人物が原因であるのだが、あの男はやはり理解できない。とはい、ヴィータが取り乱す姿は何度も見ているが、我らが将であるあのシグナムがここまで取り乱す事は奴と出会うまで見たことが無かった。ベルカの騎士として威厳ある彼女であるが、最上絡みとなると歳相応の女性の反応を示す。そんな彼女の姿に苦笑しつつ、あの男にかかれば烈火の将も形無しであると感じるのであった


「二人とも落ち着け、今はまだバリアジャケットの状態だから問題無いだろう」

「そ、そうだな……」

「……とりあえず戻ろうぜ」


 ザフィーラの言葉に頷きながら盛大にため息をつく二人と一匹、あの男と出会ってからろくな事がない。そう思いながら歩き出すのであった……







 同時刻ホテル玄関前


「……幼女の気配が……消えた?」


 ガジェットの残骸を踏み抜きながら、遠くを見つめ呟くと、周りを見渡す。そこいらに散らばる残骸からは黒煙があがっており、全機撃破したことを確認すると


「ふむ、終わったか……」


 安堵した表情でごちる。後ろの方を確認すると、ライトニングの二人も少々疲労しているものの大きな怪我も無く無事な様子である


「二人とも無事で何より、ん?ティアナがいないようだが?」

「はい、裏手の警備に」

「スバルさんも一緒です」

「ふむ……」





 ホテル玄関前裏側


「ティア?向こう、終わったみたい……だよ?」


 千早たちがいる場所の裏手側で待機するスバルとティアナ、敷地の外側を向いたまま立ち尽くすティアナに遠慮がちに語りかけるスバル


「私はここを警備してる……あんたは、あっち行きなさいよ……」


 振り向かず彼女に答えるティアナ、彼女が落ち込んでいる事は長年コンビを組んできた経験から理解をしている。しかし、なんと声をかけたらいいかわからない。気まずい空気が現場を漂っていた


「あのね……ティア……」


 勇気を振り絞り声をかけるも


「いいから、行って」


 そのまま、そっけなく返されてしまう事に少し悲しくなるスバル、どうすればいいのかわからない


「ティア、全然悪くないよ。アタシがもっとちゃんと……」

「行けってっ!いってんでしょっ!」


 尚も声をかけるが、とうとう怒らせてしまった事に更に悲しそうな表情になるスバル


「……ごめんね。また、後でね……ティア……っ!」


 しばらくティアナの背中を見つめていたが、そのまま走り去っていくスバル。彼女が去った事を背中越しに確認すると、外壁にもたれかかりながら


「っ……私は、私はっ……」


 悔しさの余り、むせび泣くティアナ。今更ながら自分のやったことに後悔と自責の念に包まれ、彼女の心に暗い影を残すのであった……









「えっと……報告は以上かな?」


 調査班が現場検証している端で、集合するスターズ、ライトニングのメンバー。帳簿を見ながら報告内容を確認するなのは、その隣にはフェイトもいる


「……で?千早君はいつまでその格好でいるのかな?」


 若干眉を引き攣らせながら、千早の方へ声をかける


「ん?何かおかしいところでもあるのか?」


 彼女の視線を無視しながら、答える千早。バリアジャケットを解き、局員用の制服姿である彼の姿を確認しながらフェイトが


「ん、女の子の千早もいいけど、それはそれで似合ってるよ」


 満面の笑みで感想を述べる。今の千早の姿は男性の状態で女性用の局員の制服を着込んでいる。元々中性的な顔立ちと線の細い体型の為、違和感は無い。タイトスカートから見える生足が無駄に艶かしくらいである。そんな彼の姿に対して


「うん、もう私は突っ込まないけど、とりあえず着替えてきてね?」


 にこやかな笑顔で、ひきつりながらフェイトの言葉をスルーするなのは。大分耐性がついてきたのであろうが


「気にするな。それより……」


 同じく空気をスルーして、気にもとめないで報告を続けようとすると


「着・替・え・て・き・て・くれるかな?」

「……わかった」


 そのままふんわりとした笑顔を、眼前まで近づけられて迫られると渋々了承する千早。そのままホテル内へと去っていく


「後、フェイトちゃん。今晩少しお話があるから」

「え?私は無いよ」

「い・い・か・ら」


 同じく、笑顔で彼女の方へと迫るなのは。その背中には仁王像が見えた……


「……ん、わかった。なのは」


 渋々返事をするフェイト。その光景を見つめながら苦笑する三人。しかし、ティアナは俯きながら何かを考えているようであり、表情も暗い


「えっと、ちょっと脱線したけど……」


 コホンと咳払いをすると、また真面目な顔で仕切りなおすなのは


「現場検証は調査班がやってくれるけど、皆も協力してあげてね。しばらく待機して何も無いようなら、撤退だから」

「「「はい」」」


 なのはの言葉に、返事を返す三人。その間もずっとティアナは下を向いたまま反応が無い。そんな彼女の姿を確認すると


「で、ティアナは?」

「……」

「ちょっと、私とお散歩しようか?」

「……はい」


 二人、別の場所へと移動するのであった……






 着替えも終わり、現場検証をまだ続けている六課メンバーのいた場所へと戻ってきた千早。


「あ、千早、着替え終わったんだ……」


 着替え終わった千早を見つけたフェイトはどこか残念そうに声をかける


「ん、まあ、こっちの方がデフォだからな。それより聞いてくれ」

「何?」

「着替えのついでにホテル内の様子を見てきたのだが、とてもかわいい女の子が迷子になっていたのだよ」

「そうなの?大丈夫だった?」

「ああ、幸いすぐに親御さんが見つかったので問題は無かったのだが、お礼にこれをもらった。思わぬ所でご褒美がもらえたようだ」


 愛おしそうに、ポケットからビー玉を取り出すと無邪気な笑みを浮かべる


「それは、よかった」

「やはり、子供は親と一緒が一番だ。あの安堵した表情を見ると疲れも吹っ飛ぶ。やはり子供は良い」

「千早は、優しいんだね」

「当たり前だ。ロリコンとは……」

「無垢な天使を護る永遠の守護者だもんね」

「ほう、フェイトも解っているじゃないか」

「うん、私もいつかなれるかな……あの子達の守護者に」


 そう呟くと、現場検証しているキャロとエリオの姿を見つめる。その表情は慈愛に満ちていた。そんな彼女の姿に満足そうな笑みで


「なれるさ。君にはロリコンの資質がある」

「そうかな?でも、そうだと嬉しいかな」

「ああ、二人で守ろうではないか小さき者が安心して住める世界……ロリトピアを」

「うん」


 二人熱いまなざしで腕をガシッと合せる。その笑顔は清々しいくらい晴れやかであった。ちなみに今、なのははというと、ユーノ氏と逢引中である。しかし、後でその様子を聞いたなのはは、現場にいなかったことを激しく後悔することになるのであるが、それは割愛することにしよう……そうして無事今回の任務は終了したのであった











 ホテルでの現場検証も終え、隊舎にて解散する六課のメンバー達。そうして、解散した後、隊長陣達だけ別の場所に集まっていた

 ヴィータの提案でエントランスに集まる高町、フェイト、ヴィータ、シグナム達、ティアナの事で少し聞きたい事があるらしい


「訓練中から時々気になってたんだよ。ティアナの事」

「うん」

「強くなりたいなんてのは、若い魔導師なら皆そうだし、無茶も多少するもんだけど時々ちょっと度を超えている。アイツここに来る前に何かあったのか?」

「うん」


 ヴィータの質問に少し暗い表情で頷くなのは、昼間の無茶な行動の件は彼女らの耳にも入っており、その理由を知っているなのは、フェイト、理由を知らないヴィータ、シグナム、2人はなのはの方へと視線を向ける。

 静かに語られるティアナが管理局に入った理由。彼女の兄、ティーダ・ランスターは若干21歳で一等空尉にまで昇ったエリート魔導師であった。しかし、違法魔導師を逮捕する任務において、民間人を庇った為、違法魔導師を取り逃がしてしまう。また、その時の傷が原因で帰らぬ人となってしまった。その当時の、心無い上司が「犯人を追い詰めながら取り逃がすなど首都防空隊の云々」と無能の烙印を押し公表したのである。当時10歳のティアナにとって、それは深い心の傷として残っているのであろうと……


「これだから年増は……」


 そこまで聞いて一人ごちると立ち上がる千早


「千早?」


 急に立ち上がった彼に声をかけるフェイト、それを無視してなのはの方へと視線を向けると


「さて、今その上司はどこにいる?」

「え?本局にいるんじゃないかな?」

「ふむ、今からそいつに人誅を与えに行く」

「ちょ、ちょっと待ってよ!?行くって管理局に殴りこみに行くつもりなの?」

「ああ、当時10歳……当時10歳の幼女の心に傷を残したこと……万死に値する。今のティアナが例え年増であったとしても当時は10歳、私はロリコンとして粛清せねばならないのだ」

「駄目だって!?いくらなんでも無茶苦茶だよ?それに一時期問題になって今は反省してるはずだよ!?」

「関係ない」

「関係ないって……それに、ほら?一人じゃ……」

「千早、私も手伝うよ」

「フェイトちゃん!?」

「ふむ、来るかフェイトよ。」

「当たり前だよ。それに、もし、キャロがそうなったら私は許せないと思うから」

「ふふふ……良い目をしている。では行こうか修羅の道を」

「うん、私のバルディッシュが血に飢えている」

「だから二人とも!?落ち着いて!?」


 慌てて二人を止めるなのは、今まで一人だったのが二人になったことで突っ込みきれなくなりつつある。そんな三人を呆然と見つめながら


「どう思う?」

「あたしに振るんじゃねえ。とりあえず二人共ぶっ叩くか?」

「いや、今回はテスタロッサがいる。そう簡単にはいかんぞ?」


 と冷静にどう対処しようか話し合うヴィータとシグナム。千早だけなら暴力という名の突っ込みで終わるのだが、今回はフェイトが絡んでいる為容易に手が出せない


「ちっ……しゃーねえな。あんま使いたくなかったけど、奥の手を使うしかねえか」


 埒があかないと判断したのか面倒くさそうに呟くと立ち上がり、千早の方へと向かうヴィータ。そうして彼のすぐ傍まで近づくと一度咳払いをして


「コホン……あー」


 少し頬を紅くすると、意を決した表情で抱きつくと


「千早にいちゃん……ひ、膝枕してもらっていい?」


 上目遣いで囁くヴィータを前にした千早は


「……何……だと……?」


 そう呟いたまま固まってしまうのである


「千早の鼓動が……止まった……?」


 その光景を見たフェイトが、驚愕していると


「……テスタロッサ、そろそろ戻ってこい」


 彼女の肩を掴むと苦笑しながら声をかけるシグナム


「ああ、うん。ちょっと暴走した。反省してる」


 そう言うと、また元の位置へと戻っていくのであった。そのまま肩まったまま静かに座る千早を見て盛大にため息を吐くなのは。彼女は思ったなんでこの人はこんなに現場を混乱させるのだろうか、しかし、それと同時に先程までの重苦しい空気が瓦解していくのを感じるのであった……






 その夜、訓練スペースに明かりが灯っていた。ティアナがクロスミラージュを起動し、ターゲットをすばやくロックする訓練をしているようだ。風呂あがりに外の空気を吸おうと散歩していた千早は、ティアナの姿を見つけたので近づくと、不意に木の影から呼びかけられる


「ん?ああ、最上の旦那、どうしたんですか?」

「ん、ヴァイス陸曹か、君こそ何を?」

「あれですよ、あれ、ヘリポートから見えましてね。気になったんで来たってわけでさ」


 そう言うと親指で彼女を指さすヴァイス。


「帰還してからずっとかれこれ4時間くらい経過してるんで、そろそろ止めねえと」

「ふむ」


 ヴァイスの説明を聞き、そういえばなのはから彼女が必死になる理由を聞いたなと思いながら、後半何故か記憶が無いなと思いながらティアナの方へと視線を向ける。なるほど鬼気迫る表情でマーカーをロックし続けている。しかし、その動きはかなり緩慢になっていた。


「集中力も切れてきているし、これ以上は負担がかかりすぎる。旦那止めてもらえますかい?」

「ふむ」


 ヴァイスに頼まれ、一緒に木陰から出て行く


「ふむ、ティアナよ自主訓練か?」

「えっ……」


 不意に声を掛けられ集中力が途切れたのかロックをミスしてしまう。それと同時にターゲットが消える


「今日は出勤もあったんだ。それぐらいで切り上げたらどうだ?」

「ヴァイス陸曹も、お二人ともいつからそこに?」


 肩から息をしながら質問するティアナ。顔色も余りよくは無い、それだけにかなり無茶をしている事が伺える


「ヘリの整備がしてたらお前さんの姿が見えたんでな」

「覗いてたんですか?」


 怪訝な表情を浮かべるティアナに肩をすくめるヴァイス


「まあな、しかし、お前さん、夕方から休憩無しでずっとやってるだろ?」

「凡人ですから、詰め込んで練習しないとうまくならないもので」


 彼の言葉を無視して、後ろを向くティアナ。少しイラついているようにも見える


「凡人ねえ……」

「ふむ、余り自分を過小評価しすぎだな。余り年増を褒めたくは無いがティアナはすごいとおもうが?」


 今まで無視していたティアナであったが、千早の言葉に一瞬睨みつけると


「そんな事ありません!」


 大きな声をあげると、そのまま千早の方へと迫り


「最初から強い貴方には、何が解るって言うんですか?」

「いきなり隊長になって!あっというまに陸尉になったエリートの……貴方に!」

「人間じゃないって……ロリコンで変態で……化物の貴方なんかっ!」

「ティアナ!!」


 感情をぶつける彼女をヴァイス陸曹が怒鳴りつける。その声にハッとなるティアナ、感情にまかせて自分は彼に何を言った?そう思いながら千早の方を見るティアナ


「化物か……ロリコンや変態はよく言われるが、そうか化け物か」


 そこには怒っている訳でも、呆れているわけでもなく、やさしく、それでいてどこか悲しそうな笑みを浮かべる千早


「あ、あたし……」

「ん?気にするな。私がロリコンであることも変態であることも事実、そしてそれが一般的に異常であることも理解している。君からすれば私という存在が化物に見えるのであろう?」


 静かに語る千早を見て、徐々に冷静さが戻っていくティアナ


「まあ、例えロリコンであろうと変態であろうと、化物であっても私は君の上官。そして幼女は特別な存在であり至高であるが、ロリコンが幼女以外を心配しない道理もない。故に君も大事な仲間だと認識しているのでな。まあいい、私はもう戻るが、程々にしたまえ」

「……は、はい……」


 千早はそういうと宿舎へと戻っていた。


「旦那……俺は旦那のあんな表情今まで見たことねえ……もしかしたら旦那はよほどの修羅場を潜ってきたかも知れねえな」

「あ、あたし……とんでもない事を……」


 普段飄々と振る舞う千早の見たことの無い表情を見てしまったティアナはショックを受けてしまう。


「そう思うんだったら、今日の所は休んで、明日旦那と話をしたらどうだ?」

「……解りました」


 静かに頷くと宿舎へと歩き出すティアナ、その後ろ姿を見ながらヴァイスはため息をつきながら見送るのであった……









 廊下を静かに歩く千早、その表情は普段とは違い切れが無くなっていた


<マスター>

「……」

<凹むくらいならかっこつけないでください>

「言うな……流石に化物は無いだろう?まったく……」

<流石の変態マスターでも化物は堪えますか?>

「そうだな、ロリコンや変態は褒め言葉なんだが……」

<どこに称賛する所があるか解りかねますが?>

「何を言う。ガングニールよ、君こそショタコンではないか?」

<ショタコンは至高です。例えるなら大地のような広大な心です。母性と同じなんです>

「ロリコンだってそうだ。例えるなら大海原のように包み込む深き心……それは父性と同じ」

<半ズボン万歳>

「ブルマに栄光あれ」

<マスター>

「ガングニールよ」

「<やはり幼女(少年)は素晴らしいな(ですね)>」

「む?」

<どうされました?>

「さて、私は一体何に凹んでいたのだったかな?」

<さあ?私達には些細なことだったと思います>

「そうだな、しかし、今日は色々とあって疲れた。『はじめてのおつかいミッドチルダ編』を見て眠るか」

<はい、おつかいを終えて安堵して母親に抱きつく場面を見れば疲れも吹っ飛ぶことでしょう>

「そうだな……やはり母親と戯れる子供の笑顔は癒される。願わくば世界中の子供たちが幸せであるように」

<そうですね……せめて目の届く範囲だけは幸せにしたいと思います>

「そうだな、そのために私は強くなくてはならない……誰かに疎まれようが、蔑まれようが、それが私がロリコンとしての存在意義。ついてきてくれるか?ガングニール」

<私はいつまでもマスターと共にあります>

「ありがとう……」


 一言礼を言うと、晴れやかな表情で歩いて行く……最上千早、言われなれない中傷には打たれ弱いがすぐ忘れる都合のいい頭をしているのである……







 最近シリアスな展開が多いな……多分シリアスだよ?うん、しかし、この調子でいくとフェイトさんどうなるんだろう?

 修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾六話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:07
 
 ティアナは汗まみれの身体をシャワーで洗い流してから自室へと戻ると、そのまま黙ってベッドへと身を投げ入れた。シャワーを浴びている最中も、何度か疲労から気絶してしまいそうになったが、この場所ではそれを妨げる障害は存在しない。このまま朝まで眠りにつこう。そう思っていたティアナであったが、それを二段ベッドの上にいた人物に阻害されることになる。


「ティア?大丈夫?」


 ベッドの端から顔を出し不安そうに声を掛けたのは、同室のスバルであった


「ああ、ちょっと色々あって疲れただけだから……明日も朝早いしもう、寝るわよ」

「う、うん。大丈夫ならいいんだけど余り無理したら……」

「大丈夫よ。ちゃんと明日も訓練はこなすから……おやすみ」

「うん、わかった。おやすみティア」


 半ば強引に会話を終わらせると意識を中空へと向けるティアナ。今日は色々ありすぎた。自分と同じ環境だと思っていた人が違っていた事、焦りからとんでもないミスをしてしまったこと、そしてなにより、嫉妬からくる発言で傷つけてしまった事。でも、それでも自分は諦めてはいけない『ランスターの弾丸はいつ、どんな場所、任務でも対応できる事』を証明しなければならない……


「私は強くならないといけないんだ……」


 そう呟くと眠りにつくティアナ、疲労のせいかすぐに意識を失うまでそう時間はかからなかった……







 一方その頃



 今日の任務も終わり、新人達の報告もまとめあげシャワーも浴びてさあ寝ようかと思っていたフェイトであったが……


「なのは、なんで私正座させられてるのかな?」


 ベッドへと入ろうと思っていた彼女を、笑顔で仁王立ちで待ち構えていたなのはがいた


「フェイトちゃんには一度ちゃんとお話しておこうと思います」

「お話?私は無いよ?」

「私にはあるの!てゆうかお昼に言ったよね!?」


 正座したままキョトンと首を傾げるフェイトだが、それを彼女は許さなかった


「あれほど……あれほど言ったのに……フェイトちゃんが千早君に汚染されるなんて……」

「なんのことかな?私はそんなんじゃないよ?」

「ほんとに?」

「私のこと信じられないかな?なのはなら信じてくれると思っていたんだけど……」

「うん、それで幼女とは?」

「至高」

「で少年は?」

「最高……あっ」

「フェイトちゃん……」


 盛大に項垂れるなのは、視線の先にはやっちゃったって感じの表情のフェイト


「なのは、酷い……誘導尋問なんて」


 ジト目で見つめられ、正座したまま人差し指で床をイジイジしだした……そんな姿にため息をつく。しばらく彼女の説教が続く……やれロリコンは悪い事では無いが良い事でもない。やれ千早君はあれでいいけど、フェイトちゃんは駄目、ていうか、意味わかってる?などなど、しばらくガミガミと言われるハメになるフェイト


「……じゃあ、もうロリコンになりたいなんて言わないよね?」

「うん、わかったよ。もう言わない」


 まるで母親に叱られたように攻められたフェイトは疲れたように返事をする。


「そっか、よかった」


 本当によかった。これで親友が元に戻る。これで突っ込む相手が一人に減ると安心したなのはであったが……


「だって、私はショタコンだから」


 とんでもない発言が聞こえた……


「……」


 余りのことに固まる。まるでそこだけ時間が止まったかのように静かになる室内


「なのは?」


 固まったまま動かない彼女の肩を揺さぶりながら名前を呼ぶが返事が無い


「んーこういうときは確か……」


 首をかしげながら人差し指を顎にあて、んーっと考えると


「返事が無い、ただの屍のようだ」


 そう一言呟くと、満足そうな表情でベッドの方へと移動しようとすると


「ふぇ~い~と~ちゃ~ん?」


 後ろから少しトーンの落ちた声がしたので恐る恐る後ろを振り返ると、黒いオーラを放った夜叉がいた


「そこに正座!」

「え?なんでまた……」

「いいから!」

「う、うん……」


 そのままもう一時間ほど説教を受けるはめになるのである……








 ちなみに我らがオリ主こと、千早さんは


「ふむ、この少女は良いな……特にこの大人ぶって涙を堪える所が素晴らしい」

<何を言っているのですか、この娘の見せ場はここです。ほら、母親に抱かれた瞬間嬉しさで泣き出す姿……私も涙が溢れます……といっても目は無いんですが」

「確かに、力が湧いてくるようだ」

<はい、魔力値の上昇を感じます>

「ふむ、最近は戦闘も増えたからな。できるだけ補給しておかねばならない」

<ええ、いつでもいけるように>


 はじめてのおつかい……それは小さな子ども達が初めて一人でおつかいに行く様子をずっと眺める番組、例え魔法世界であろうとも、内容は同じ。ただ……この世界の場合、地球に比べて年齢層が低い事が伺える。まあ、この世界の10歳はどうもしっかりしすぎな気もするが、キャロやエリオを見ればよくわかる


「とはいえ、10歳は10歳。特にあの二人を取り巻く環境はそんなに優しくない。ここはやはり大人が頑張らねばな」

<マスター>

「なんだ?」

<そういった発言を何故あの人らの前でしないのですか……要領悪いのか馬鹿なのか>

「なんのことだ?」

<はあ……もういいです>


 ため息を吐きながら呆れるガングニール、この人と出会ってから幾年月、未だよくわからない所が多々あり、毎回窘めるがまったく本人には治す気が無いようで、いつもはぐらかされる。自分のマスター、最上千早という人物は、本当の意味で自由人なんだと感じるのであった……そうして、各々思い巡らせ夜が更けていくのである






 翌日、早朝から訓練スペースで自主訓練に入るティアナ、今まで一人で行なっていたが今朝からはスバルが共に参加している。日々の訓練も過酷なため悪いと思い、やんわりと断ったティアナであるが、スバル曰く「あたし達は、二人コンビで一人前なんだから、一緒にがんばらなくっちゃ」と半ば強引に一緒に訓練することになった。感謝の言葉こそしなかったけれど、それは彼女の中でパートナーの存在の大きさを再確認することと、スバルの優しさに感謝するのだった

 早朝訓練を始めて少しすると、彼女らの前に訓練服姿の千早が現れた


「あ、最上隊長!おはようございます!」


 その姿に気づいたスバルが元気に挨拶をする


「……おはようございます」


 堅い表情で同じく挨拶をするティアナ。そんな彼女の様子に気づいたのか、苦笑しながら


「ふむ、おはよう。早朝から自主訓練か?」

「はい!最上隊長もですか?」

「うむ、健全な肉体には健全なロリコン精神が宿るのでな」


 満面な笑顔で一部おかしなことを言った


「えっと……」


 真面目に返答に困るスバル、いつもならここでツッコミ担当のティアナがなんとかしてくれるのであるが……そんな二人を見て、ティアナは昨晩の事を思い出す


「あ、あの、最上隊長……」

「ティアナ、やはり突っ込みは重要だと思うのだが、どう思う?」

「は、はい……え?」


 昨晩、千早に暴言を吐いた事への謝罪をしようと、声を掛けるつもりが逆に名前を呼ばれ慌てるティアナ


「え?ではない。君は突っ込み担当だろう?なら、職務をまっとうしたまえ」

「あ、え、すみません……てっ!あたしはそんなんじゃありませんっ!あっ、すみません……」


 昨日のことなどなんのその、普段通りに接してくる千早に大声で非難するもすぐ萎縮してしまうティアナ。そんな彼女の様子をおかしそうに見てるスバル


「ティア?なんかあったの?」

「ん、なんでもない」

「ああ、なんでもないな。ただ、昨晩私に迫ってきただけだ、しかも、情熱的にな」

「はあ!?」

「ティア……」

「違うから!?スバル違うの!?」

「迫った事は否定しないんだ……ティアはロリコンが、変態が好きなんだ」

「違うって、ちょっと……あー!もう!」


 頭をガシガシかきながら唸り声をあげるティアナ


「ぷっ……あはは!」

「笑い事じゃないわよ……」

「ごめん、ごめん。でも、やっと普段のティアらしくなった」

「え?」

「昨日の夜から思ってたんだけど、何かこう思いつめてたっていうか、おかしかったから」

「あんた……」

「でも、さっきのティア見てたらもう安心した。やっぱいつも通りがいいよ」

「そうね……ありがと」


 真っ直ぐな瞳で見つめられ、少し頬を染めながらそっけなくお礼を言うティアナ。そんな彼女にまた笑顔で返すスバル


「ふむ、二人はできているのか?なら、野暮なことはせずに……」

「最上隊長!」


 完全に空気と化していたので、そのまま立ち去ろうとする千早に声をかけるティアナ


「ん?」

「もし、よかったら……あたしに教導してもらえないでしょうか?」

「突っ込みのか?」

「……違います」


 さらっと流された……


「それ以外に何を教えろと?前にも言ったが、君等は高町教導官から教わっているではないか?何が不満だ」


 ティアナの真面目な表情に、真面目モードで返答をする千早。しかし、今回は引き下がる気配が無い


「別に不満とか……ただ他の隊長方の意見を参考にすればより強くなれると思ったので……」

「今、ティアと接近戦の訓練をしていたのですが、何かアドバイスとかあれば教えて欲しいです」


 二人がかりで迫ってくる。その表情は鬼気迫るものがある、特にティアナは昨日の事もあり、より表情が真剣であった


「接近戦?君の役割は射撃による後方支援と戦術展開だろう?ティアナ」

「でも、もっと選択肢を増やそうと思いまして、今やっている基礎訓練は中距離からの射撃ばかりなので」


 射撃と幻術しかできないから、それが通用しない時自分は何もできなくなる。それでは駄目だとティアナは思いを漏らす。それを聞きながら真面目な表情で考える千早


「ふむ……確かに、孤立無援の状態で複数の敵に囲まれたら困るというのはあるな」


 確かに接近戦を視野に入れた訓練も重要であると肯定しつつ


「しかし、付け焼刃の訓練では何の役にもたたん、故に高町教導官も基礎訓練を続けているのだろ?」

「それは……」

「焦らず、騒がず、じっくり技術を磨いていけばいいと私は思うぞ」

「でもっ!でも、じっくりなんてしていられないんです。昨日も言いましたがあたしは凡人ですので……」


 じっくりなどとしてはいられない、同じような訓練をしていては皆から取り残されてしまう。自分みたいな凡人がエリートを追い越すのは無理かもしれない。でも、死ぬ気で頑張れば横に並ぶことはできるかもしれないとティアナは思っていた。


「何をそんなに焦る事がある、確かにキャロやエリオからすれば年を食っている。年増ではあるが、まだ君は16歳だ。伸びしろはある。いいかね?私はロリコンだが、それは長年培われた経験からきている。例えばだ、君が今ロリコンに目覚めたとする。確かに素養は必要だ。しかし、ただ幼女が好きだ、貧乳萌えだなど外見だけに囚われた人間が、真のロリコンになれると思うか?」

「そ、それは……」

「幼女を知り、少女を知り、そして、彼女らを包み込む愛を育む。それは基礎訓練に似たところがある。そして、学ぶのだ、手折るのではなく愛でることを、悟りを開く事ができてやっと彼女らと仲良くなることができる。いわゆる応用だな」


 諭すように語る千早に聞き入るティアナ、その横では「なんで、ロリコンの話になってるの?」って思いながら空気を読んで黙っているスバル


「でも、それでも……凡人なあたしは一刻も早くロリコンになりたいんです!……え?」

「ティア……」


 完全に思考を誘導されたティアナはとんでもない発言をしてしまった事に気づく。その横ではスバルが悲しそうな表情をしていた


「ち、違います!そうじゃなくって!あたしは一刻も早く強くなりたいんです!」


 慌てて言い直すティアナに対して、苦笑するスバル。そんな二人を眺めながら少し考える千早


「ふむ、しかし、それなら尚更私には教えれる事が無いと思うぞ」

「いえ、六課内で最上隊長以上に変態的センスを持った変人はいないと思います」

「ティア?それ絶対褒めてないよね?ダメだよー変態だけど私達より偉いんだから……」

「……君等は私に教わりたいのか?それとも貶したいのか?」


 まったく酷いもんだと言いながら、昨日と違い普段の二人に戻った事に苦笑しながら窘める千早


「すみません」

「ごめんなさい」

「まあ、いいが……まったく、ちょっとだけだぞ?」

「本当ですか!?」

「よかったね、ティア」


 これ以上は断れないと判断した千早はため息をつきながら渋々了承した


「はあ、言っておくが今回だけだ。私の中の年齢制限を16歳以下に設定しておこう」


 そう言うと、二人に連れられて訓練所に向かう千早。そうして早朝訓練が始まるまで彼女らの自主訓練につきあうことになるのだが、まさかこの事が原因で痛い目にあうなどこの時の彼には想像できなかったのであった……







 それから数日後……







 その日は午前の訓練のまとめで模擬戦を行なう事となった


「さーて、じゃあ午前中のまとめ、2on1で模擬戦やるよ?まずはスターズから行こっか」


 廃墟の町に設定された訓練スペースにて空に浮かびながらにこやかになのはが告げる


「バリアジャケット準備して」

「「はい!」」

 空を見上げながら力強く返事をするティアナとスバル


「エリオとキャロは、あたしと見学だ」

「「はい!」」


 同じく、一緒に教導を行なっていたヴィータがライトニングに指示を出すと、廃墟内ビルの屋上へと移動する。その間にスバルとティアナがバリアジャケットを展開し、模擬戦の準備が完了する


「やるわよ?スバル」

「うんっ!ティア」


 そうしてなのはの掛け声で模擬戦が開始されるのであった……




「もう始まっちゃってる」


 ライトニング達が見学している屋上へと息を切らせながらフェイトが到着する。


「今はスターズの番だな」


 ヴィータがフェイトへ告げるのと同時に、ゆっくりと千早がやってくる


「ふむ、遅れた」

「遅せえぞ。もう模擬戦始まってるぞ」

「ちょっと待て、フェイトと扱いが違う気がするが?」

「日頃の行いのせいだ」

「酷いもんだ」

「あ、あはは……」


 あからさまに態度が違う事に項垂れる千早に、乾いた笑いを浮かべるフェイト


「仕方ないよ。千早は余り教導に向いてないから、でも、本当はスターズの教導も私が引き受けようと思ったんだけどね」

「あーなのはもここんとこ、訓練の密度が濃いからな。少し休ませねーと思ったんだけどな」


 模擬戦の様子を眺めながら二人が呟く。彼女はここ最近訓練が終わって自室に戻ってもずっとモニターに向かいっぱなしで休んでないそうで、かなり心配そうに見つめている


「おっ」

「クロスシフトだね」


 模擬戦も佳境に入ったことに気づく二人、目の間では、スバルの特攻とティアナがクロスファイアの射撃体勢に入っていた


「?なんか、キレがねーな」

「コントロールは良いみたいだけど……」


 フェイトとヴィータが様子がおかしいことに気づく

 二人の目の前では、魔力弾の追撃を避けながら飛行するなのはの眼前に、ウィングロードを滑走するスバルが突撃している


「?」


 迎撃をするためにアクセルシューターを放つが、彼女らの動きに少し違和感を感じるなのは


「フェイクじゃない……本物っ!?」

「うおりゃぁあああ!!」


 気合を上げながら拳を突きつけてくるスバルに対しレイジングハートを向けシールドを展開して受け止めると弾き返すなのは


「くっうっ!」

「こら!スバル、ダメだよ?そんな危ない機動は!」

「うわぁっと、すいませんっ!でも!ちゃんと防ぎますから!」


 バランスを崩しながら謝るスバルを窘めると、辺りを見回すなのは


「……ティアナは……」


 そう呟くと、ビルの屋上へと視線を送る。そこにはクロスミラージュの銃口を彼女の方へと向けるティアナの姿があった


「長距離射撃?ティアナが?」


 普段と違う二人に、フェイトから疑問の声があがる。そんな中スバルがなのはに再度、突撃をし、彼女の足を止める。すると、ビルの上にいたティアナの姿が突然消失するのであった


「あっちのは幻影!?」

「本物は!?」


 驚きながらキャロとエリオがティアナの姿を目で追うと、なのはの背後からウィングロードを滑走する本物の姿を見つける。そうして真上まで走り切るとそのまま勢い良く飛び降りるティアナ。彼女のクロスミラージュからはナイフのように形成された魔力の刃が展開していた


「でやぁああああ!!!」


 レイジングハートでスバルの一撃を防いでいる為、ティアナの捨て身の攻撃が直撃するかと思った瞬間


「……レイジングハート、モードリリース……」


 静かになのはが呟いた瞬間、爆発が起こる


「なのはっ!」


 心配そうに声をあげるフェイト


「おかしいな……二人共、どうしちゃったのかな?」


 爆発の煙が晴れると、俯いて感情を殺した声で二人に語りかけるなのは。その右手からは血が滴っていた


「頑張ってるのは、わかるけど……模擬戦は。喧嘩じゃないんだよ?」

「ひっ……」

「練習のときだけ、言うこと聞いて……本番でこんな危険な事するなら……練習の意味ないじゃないかな?」


 低い声でティアナを見つめながら言うなのはの右手から血が滴っている事に気づくティアナ


「ちゃんとさ……練習通りにやろうよ?私の訓練って……そんなに間違ってる?」

「う……」


 そんな彼女の視線にたじろぎながら、そのまま後方へバックステップすると、クロスミラージュにカートリッジを装填し、銃口をなのはへと向けるティアナ


「それでも!?それでもあたしは!もう、誰も傷つけたくないから!失いたくないから!だから……」


 涙を流しながら訴えるティアナに、感情を押し殺した表情でゆっくりと指先を彼女へと向けるなのは


「少し……頭冷やそっか……クロスファイア……」

「ファントムブレイザァア!!」

「シュート……」


 ティアナより早く、発射されたクロスファイアが彼女に命中し、爆発が起こる


「ティア!?」


 助けに行こうとするスバル、しかし、それは魔力の鎖に阻まれる


「バインド!?」

「じっとして……よく見てなさい……」


 顔を向けずそう言うと、また指先をティアナの方へと向ける。そこには戦意を喪失し、倒れる寸前のティアナがいた


「クロスファイア……シュート……」


 無慈悲な光弾が彼女へと向かう。その光景を黙って見ていた千早であったが……


「ガングニール……」

<YES SIR>


 静かにデバイスの名を呼ぶと、バリアジャケットに身を包んだ千早が手すりを掴んで飛び立つ


「千早!?」

「なっ!?馬鹿!?」


 フェイトとヴィータが同時に声を荒げるが、千早は止まることなくそのままティアナの方へと加速する

 桃色の砲撃がティアナへと向かっていく、千早が彼女の前へと到着した瞬間に大きな爆音が響き渡る


<ドコォンッ!!>


 直撃間近に、割り込んだ影を見たなのはは、少し気遣わしげな、視線を送る。そこには、ティアナを小脇に抱えて立つ千早がいた


「ふむ、前にも言ったが、私が生粋のマゾヒストでなければ大変なことになっていたぞ」


 そう言って笑みを浮かべる千早。小脇に抱えられているティアナは既に気を失っていた


「千早君?なんのつもりかな?」

「何をそう怒っている?あれか?もしかして生理か?」




 ……


 …………


 ………………




「クロスファイア……」

「ちょっと待て、何故そこでまた……」

<マスター……言いたくありませんが、貴方はアホですか?>

「なんだと?大体だ、あれだけ機嫌が悪いのはそれしか考えられんだろ?」

<今回は素直に砲撃を食らってください。寧ろ死んでください>

「なん「シュート」……」


 もう一度響き渡る爆音。なんとも言えない空気が現場に漂うこととなる


「ふむ、いくら私でも直撃二回も受けたら流石に痛いぞ?」

「……」


 もう一度指先を向けられる


「いや、冗談だ……」

「……それで?千早君は何で邪魔をしたのかな?」

「ふむ、まあなんだ……うん」


 よく考えたら何故動いたか理由が出てこない千早、なのはが二射目を放とうとした時にキャロが辛そうな、泣きそうな顔をしていたので思わず飛び出しただけであり、深い意味はないのである。それともう一つ、今回の件に関しては若干責任もある。彼女らの自主訓練に助言していたこともあってか罰の悪い表情で


「あーなんだ。うん、言う事聞かない娘を叱るのは良い事だ。しかし、やりすぎは良くない」

「私の教導の妨害をするのかな?最上二尉?」


 よほど怒っているのか他人行儀な呼び方に変わる。それはどこまでも冷徹な声であった。


「邪魔をする気は毛頭無いぞ高町一尉」

「なら……どいてくれるかな?」

「本音を言えばすぐさま立ち去りたい……が、仕方が無い」


 こうなってしまった事への責任も有り、諦めたようにため息をつく千早


「そう……じゃあ千早君も……頭、冷やそうか……」


 そうしてゆっくりと指先を千早の方へと向けるとまた、発射される


「頭どころか肝すら冷やしているんだが?まったく……だから年増は嫌いなんだ」


 そう呟くと、またため息をつく、。目の前には桃色の光が近づいてくる


「……」

<は!?マスター!?>



 ――ドォオオン!!



 三度目の爆発音が響き渡る


「ふむ……」

「なっ!?」


 煙が晴れると同時になのはは、目の前の光景に絶句した……彼女の目に飛び込んだのは……


「……流石のマゾヒストでも生身で直撃はきついものだ……いや、しかし、ちょっといいかも知れんな……」


 そこにはバリアジャケット姿では無く、直撃を受けてボロボロになった訓練服姿の千早の姿があった。


「な、なんで!デバイスをリリースしたの!?」

「何、どこまで痛みを快感へと変えれるか実験をしただけだ。他意は無い」


 ダメージがあるのか、少しよろけながら言う千早。そんな千早を心配そうに見つめるスバル


「そんな……ティアを庇って……」

「ふん、阿呆が。私が年増を庇うなどありえん。とりあえず、今日の模擬戦は終了してもらえるとありがたい。それとも、まだ撃つか?これ以上受ければ私は新しい感覚に目覚めてしまうぞ?どうする?高町一尉」


 半ば脅迫に近い発言でなのはの方へと視線を送る千早、彼女も先ほどの光景に少し落ち着いたようで


「千早君……うん、二人とも今日の模擬戦は撃墜されて終了……スバル、ティアナを医務室へ」


 と、静かに返事をするなのは、しかし、その表情は少し曇っていた。そうして彼女の発言を確認すると、元いた場所へと戻る千早。思ったより平気そうな姿を見て安堵するなのは。ここまで一切突っ込みは無かった


「やれやれ酷い目にあった……」

「お前、馬鹿だな。直撃だったじゃねえか?」

「千早、大丈夫なの?」


 屋上へと戻ると肩をぐるぐる回しながら、なんにも無かったようにごちる千早を見て、呆れながらヴィータが、心配そうにフェイトが声をかける


「まったく……ちょっと気持ちよかったではないか」

「うん、流石にその気持は解らないよ?」

「つか、お前どんどん酷くなってきてんじゃねえか?主に変態路線で」

「何を言う……正直どんだけ痛かったか……しかし、私はそれすらも快感に変えることができる。何故なら私はロリコンだから」

「ロリコン関係ねえよ……」

「そうだね……ちょっと引いたかな?」


 段々と変態っぷりに磨きがかかってくる千早にドン引きのヴィータ、流石についていけないフェイト。そんな二人の表情に苦笑しながら


「しかし、まったくもって二人共素直ではないな」

「そうだね。思いって伝わりにくものだね……」

「伝わりにくいなど、愚かな言い訳だ。その点子供は素直だ。疑問に思えば聞いてくるし、ちゃんと説明すれば理解もする。なのに、大人は言わなくても伝わるとか幻想を抱いている……もっと自分を曝けだすべきだ」

「千早は曝け出しすぎだよ……でもちょっと解るかも」

「わかんねえよ……つか、お前ら最近欲望曝けすぎだろ?」

「「そんなことない(ないよ)」」


 ヴィータの的確な突っ込みに二人同時に返事をする。その姿にため息をつきながら、なんだかんだいってこれ以上悪い方向へ向かわなかっただけマシかと思いながらなのはの方へと視線を送るのであった









 ほんと、すんません。ただあの名シーンに介入させたかっただけです。ただそれだけです。

 修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾七話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:07
 



「千早君?何が見えてるかしら?」

「指を三本立てた年増が見える……冗談だ、だから私のリンカーコアを握るのをやめたまえ」


 にっこり笑いながら、恐ろしいことをするシャマルに苦笑しながら謝罪する千早


「……まったく、そんなんだからいつもなのはちゃんに撃たれるのよ?」


 ため息をつきながらやんちゃ坊主を窘めるように言うと、医療器具を片付ける。模擬戦でのあの出来事の後、ティアナと共に医務室に連れて来られた千早。本人は大丈夫だと言いはるも流石にダメージがあったのか、ベッドについた途端意識を失っていた。


「しかし、かなり眠っていたようだが?今何時だ?」

「えっと……9時ちょっとかしら?」

「流石はなのは、快眠導入砲撃とは……恐れ入る」

「そう考えれる貴方が、時々うらやましいわ……」


 外の様子を見ると真っ暗であった。流石に寝過ぎたなと首をゴキゴキ鳴らしながらため息をつく


「ん……あれ?」


 ちょうどその時隣で寝ていたティアナも目を覚ました


「ん?」

「あら?ティアナも起きた?」


 目覚めた彼女に声をかけるシャマル、起きたばかりなのか少しボーっとしているティアナ


「シャマル先生……?」

「ここは医務室ね。昼間の模擬戦で撃墜されちゃったのは覚えてる?」

「……はい」


 彼女の言葉に模擬戦での出来事を思い出すティアナ、そういえば誰かに助けられたような……


「なのはちゃんの訓練用魔法弾は優秀だから身体にダメージは無いと思うんだけど……」

「ふむ、確かにあの圧倒的絶望感、虚無感と言っていい。あの感覚は病み付きになるな」

「変態は黙っていてくれる?」

「む……わかった」

「最上隊長……」


 顔だけこちらへ向けてにこやかな表情で言われ、渋々了承する千早。シャマルに窘められている彼の姿を確認すると、心配そうに声をかけるティアナ。同じ医務室でベッドに座っているので、もしかしたら自分のせいで怪我をさせてしまったのではないかと……しかし、ベッドから降りようとした所で、今の自分の姿に気づく。彼女の上半身は肌着を着ているので大丈夫だが、問題は下であった。いつもの訓練用のズボンは無い……愛用の黄色い下着が見え、シャツの裾からは太ももをさらけ出していた。思わず恥ずかしさに表情が赤くなる


「……見ました?」


 少し厳しい目で千早を睨むティアナに


「ふむ、安心しろ。年頃の女性の肌には興味が無いのでな」


 真面目な顔でそう言われると微妙な表情になってしまう。彼女も一応年頃の女性であり、それなりに色々と気を使っているし、気にしている。それを異性にまったく興味が無いと言われてしまってはそれはそれで傷つくティアナ


「ロリコンの言うことは放っておいて……どこか痛いとこある?」

「いえ、大丈夫です……」


 どこか諦めたような表情で言うと、ズボンを渡すシャマル。それを苦笑しながら受け取ると


「……9時すぎ!?えぇ!夜!?」


 傍にあった時計を見て驚くティアナ。


「すごく熟睡してたわよ?死んでるんじゃないかって思うくらい。最近、ほとんど寝てなかったんでしょ?溜まってた疲れがまとめてきたのよ。余り無理してはダメだよ?」


 彼女の顔を覗き込むように言うと


「……はい」


 俯きながら返事をするティアナ。それを確認すると、医務室から立ち去るシャマル。後に残されたティアナと千早の間に気まずい空気が流れる。主にティアナの方がであるが……


「あ、あの!」

「ん?」

「すみませんでした。私のせいで……」

「なんのことだ?」

「そ、その……あたしを庇って……」

「何を言っている?私はただ、どこまで痛みを快楽に変えられるか試しただけに過ぎん。些かやり過ぎたようだが」

「……」

「とりあえず穿いたらどうだ?まあ、君が見せる事に快感を覚えるのが趣味ならばかまわないが?」


 じっと下を向いているティアナに向かい、ため息混じりにそう告げると


「えっ……ち、違いますっ!?って!いつまで見てるんですかっ!?」


 顔を真っ赤にしながら恥じらうようにシャツの裾を伸ばしながら隠すティアナ、そうして慌ててズボンを穿くのであるが……


「君がさっさと穿かないのが悪い。何が悲しくて君みたいな娘のパンツを見るはめになるとは……散々だ」

「……それは、それで納得できないのですが……」


 通常であれば襲われても仕方が無い状況なのに、まったく興味が無いと言われて、流石に項垂れるティアナであるが、そんな彼女を無視して話を続ける千早


「それで?何が言いたい?何も無ければ私は戻るぞ」

「はい……その……」


 そう言うとティアナは胸の内を話しだす。周囲との実力差、自分を凡人として認識している事、焦り、焦燥などなど、自分は置いて行かれるのではないかと、前回のスタンドプレーも、そして今回の模擬戦もそれが原因でこうなってしまったと、ポツリポツリと語る彼女の言葉を黙って聞いている千早。


「私はきっと弱い……だから少しでも強くなろうと努力しなければならない。証明しなければいけない……だから少しくらい無茶したって、死ぬ気でやらなくちゃ強くなんてならない。そう思って……」


 俯きながら全てを語るティアナの表情は酷く悲しそうであった。


「ふむ……」


 そんな彼女の姿を眺めつつ顎に手を当てながら考える千早。確かに彼女は年増……16歳、しかしながら、まだまだ大人とはいえない。いわば大人と子供の中間である。自己嫌悪、周りとの差を感じ絶望する……ああ、これは確か……


「中二病か……」

「え?ちゅう?」


 違います……しかし、ティアナ=中ニ病と断定した千早は


「まあ、一過性のものだが……なるほど……いずれ解る時が来るやも知れん」

「でも、私は重大なミスをしました。そして模擬戦でも……」


 そこまで言うとまた塞ぎこむティアナ、そんな彼女に苦笑しながら


「まあ、私が言うのもなんだが、なのははお前をものすごく大事にしていると思うぞ?」

「……」


 余り納得ができない……そんな表情で千早の方を向くティアナ


「なのはが戦技教導隊の出身なのは知っているだろう?」

「はい……」

「戦技教導隊は『言葉を交わす前に拳で語れ』ってところでな……とりあえずぶちのめせば理解するだろうし、それでも理解できないのならもっとぶちのめして理解しろってことだ」

「……」

「何が言いたいかわかるか?」

「はい……」

「つまりだ、なのは……高町教導官は『コミュ障』ということだ」

「はい……え?」


 とんでもない事を言い出した……


「頭を冷やせと言っては『ズドン』話があると言っては『ズドン』それが彼女だ」

「え?えっと……」

「慣れろ。寧ろ快感と思え」

「はあ!?」


 慣れろって、しかも、快感って……この人は何を言っている?といった感じで驚いた表情で見つめるティアナ


「いいか?考えても見給え。あの悪魔のような笑みで辛辣な言葉を投げかけくる。そして『ズドン』」

「……」

「それに慣れる事によって君はまた強くなるのだ」

「強く……」

「フェイトを見てみろ。彼女は昔なのはの全力全開の『ズドン』を食らっている……しかし、今はどうだ?」

「はい、なのはさんと同じくらい強いです」

「つまりだ。彼女の『ズドン』を喰らうことで君は強くなる」

「……」

「君は今、一皮向けたのだ。何故そう悲観的になることがある。寧ろ喜ばしい事だ」

「……そうなんですか?」

「ああ、そうだ。いいか?君は自分を凡人だと思っている。しかし、私からすれば君は凡人ではない」

「凡人じゃない……?」


 自分が凡人でなければどれほどいいだろうかと常に感じていたティアナはその一言に驚いたように千早の方を見る


「そうだ、君の中には素晴らしい能力が眠っている……」

「そんなものがあるわけ……」

「そんなことは無い、君は風……風のランスターだ」

「風のランスター……」

「そうだ、君は風なのだよ」

「私は風……」

「そうだ、風は何ものにも縛られない」

「風は……何ものにも縛られない」


 千早の言葉を1つずつ噛みしげながら吐き出すティアナ、いつしか彼女の瞳には光がさしていた……


「他人と比較する必要などない……君がこれまで一生懸命頑張った分は、必ず何かに活かされる。これ以上考える事など必要か?」

「必要無いです」

「なら、結構」


 そう返事をするティアナに満足そうな笑みを浮かべると、また静かになる室内


「最上隊長は……」

「ん?」

「最上隊長はなんでそんなに強いんですか?」


 そう疑問を投げかけるティアナ。なんとも素直な問いかけをした彼女自身少し驚いていた。今まで意地やたてまえに囚われ一人で抱え込んでいたことが馬鹿馬鹿しいと……その表情は清々しく晴れやかであった


「ふむ、それは私がロリコンだからだ」

「ロリコンだから?」

「そうだ、ロリコンとは幼女が好きで、少女が好きで、彼女達の笑顔を守るのが使命。例え蔑まれようとも、避難されようともかまわん。彼女らの笑顔の為に強くならねばならない……そう、幼女の為なら死んでも後悔は無い」


 ティアナが見つめる先には、無邪気な顔で笑いかける千早の姿があった。彼女は改めて思う。この人はすごいと、そしてロリコンを勘違いしていた事を、彼には階級とかそんなものには興味は無い。囚われた心では自由な心には叶わない……でも、いつか、自分もこの人と同じとはいわなくとも、隣に並べるくらいに強くなろうと誓うティアナであった……











 一方その頃、訓練場にて一人モニターに向かい確認作業をしているなのは



「なのは」

「フェイトちゃん」


 そんな彼女に声をかけながら歩いてくるフェイト、少し表情が暗い


「さっきティアナが目を覚ましてね。スバルと一緒にオフィスに謝りに来てたよ?」


 二人隊舎まで歩きながら、ティアナが目を覚ましたことを報告するフェイト


「そう……」


 それを聞いて少し俯くなのは、模擬戦での事を思い出したのか表情は暗い


「なのはは、訓練場だから明日朝一で話したらって伝えっちゃたんだけど」

「うん、ありがとう。でもごめんね。監督不行き届きで、フェイトちゃんやライトニングの二人まで巻き込んじゃって……」

「あ、ううん、私は全然」

「ティアナとスバル、どんな感じだった?」


 やはり模擬戦での事が気になるのか、俯きながらも二人の様子を聞くなのは


「そうだね……スバルはまだちょっとご機嫌斜めだったかな?」

「ティアナは?」

「どちらかというと、なんかスッキリした表情だったかな?」

「え?」


 思ってもいなかった返答に少し驚くなのは


「うん、なんだろう。今回の事も納得したような感じだったよ」

「そうなんだ」

「意外だった?」

「うん」

「その辺りは千早に聞いたらいいよ」

「え”なんでそこで千早君が……」


 思わぬ人物の名前があがったことに少し表情を引き攣らせる。そういえば、あの時間に入ってきてたなと思い出す……思い出すが……思い出したくない。あの状況で割って入ってきて、人を指さして、せ、生……とかありえない。デリカシーの欠片もない……

 そんななのはのなんとも言えない表情に苦笑しつつフェイトは


「なんでも医務室で千早と話したみたいだよ」

「そ、そうなんだ……」


 一体何を話したんだろうと不安になるなのは、ティアナが千早の事を良く思っていないのは知っていた。真面目なあの子からすれば、それは当然の事であろう。だから……だからこそ不安なのである。経験上、千早とか変わった人間がろくな事にならない。何故なら、彼女の目の前でにこやかに話す親友がそうだ。最初は目を合せるのも嫌がっていた彼女が、ある時を境に変わってしまった……それは180度どころか一周回って、540度くらい変わった……まさかと思うと嫌な汗が背中から流れてくる。


「う、うん、まあ、明日の朝ちゃんと話すよ。フォワードの皆と」

「うん」


 不安を抱えながらフェイトへ返事をすると二人一緒に隊舎へと戻っていくのであった……







 ああ、ギャグが足りない……もうちっと説得力があればいいのですが、まあ、こんなもんだと思う……また汚染者を増やしてしまった。これがハーレム要素か!?
 20130416修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました おまけその①『デバイス達の集い』
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:08
 ここはデバイス達の憩いの空間、ここでは皆が本音を語りあう場所、そんなデバイス達の会話をお聞きください……



 R,H:最近マスターの様子がおかしいのですが

 B,D:奇遇だな私のマスターも様子がおかしい

 R,H:いや、貴方のマスターはどこかネジが飛んだだけでしょう?

 B,D:否定できんとこが辛いな……

 R,H:うちのマスター最近部屋で塞ぎこむことが多くて……

 B,D:恐らくうちのマスターが原因だ。全面的に謝罪させてくれ

 R,H:いえいえ、原因は解っているので……いずれこっそり殺傷設定で全力全開を……

 B,D:怖いなそれは……

 R,H:まあ、冗談として……

 B,D:冗談に聞こえなかったが?

 R,H:まあ、その辺りは後々……

 B,D:本当に起こりそうだから怖いが、その時は協力を惜しまない

 R,H:ありがとう

 B,D:何君の為だ

 R,H:……(照

 B,D:何か言ってくれないと私も照れるのだが……

 R,H:コホン!だけどマスターにも貴方のような頼れる男性がいればと、マスターもまだ19歳、これからというのに……まったくその手の話がありません

 B,D:そうだな、私のマスターも年頃だというのに浮いた話がまったく無い

 R,H:そうですね。このまま放っておいたら年齢=彼氏無しを更新しかねません

 B,D:スクライア氏はどうだ?私が言うのもなんだが中々の好青年だと思うぞ?

 R,H:あの方は押しが足りません。この間もせっかく二人きりになったというのに……あの年頃ならそのまま茂みの方へと押し倒せばいいのに……既成事実さえ作れば……

 B,D:それは行き過ぎでは?

 R,H:マスターにはそれぐらい必要なのです。まったく、お互い意識している癖に……

 B,D:ははは……

 R,H:他人事ではないですよ?

 B,D:む……まあ、我が主なら大丈夫だろう

 R,H:何を言っているのです?コブ付きは中々結婚相手が見つからないのですよ?

 B.D:確かに……それは困る


 チャラン♪

<G,Nさんが入室しました>


 G.N:やはり、ショタにはブリーフだと思うのですがどうでしょう?

 R,H:荒らし乙

 B,D:規約を読んでから入れ

 G,N:……酷いものです……私は純粋に少年が好きだというのに、ヨヨヨ(泣)

 R,H:はあ……マスターお察しします……

 B,D:我がマスターが目を覚ます事を切に祈る……

 G,N:?何のことです?

 R,H:自覚が無いという事が許されると思ったら大間違いですよ?

 G,N:痛い、痛い、デバイス越しにウイルス攻撃加えるのはやめてください……ほんと痛いって、あれ?気持ちいい?あ、そこは駄目……

 B.D:まあ、その辺りにしてやったらどうだ?なんか変なこと言い出したぞ?

 R,H:私としたことが、思わず機能停止にしてから、OHANASHIしようと……

 B,D:……段々持ち主に似てきたな

 G,N:まったくです。私が痛みを快楽に変換できなかったらどうするんですか?あ、ちょっと濡れてる……

 R,H:……(引き

 B,D;……(ドン引き

 G,N:ああ、蔑む目で見られている……何?この感じ……新しい快感……


 チャラン♪


<C,Mさんが入室しました>

<M.Cさんが入室しました>


 G,N:はあ、はあ、はあ、もっと見てぇ?私をもっと蔑んでぇっ!


<C,Mさんが退室しました。おつかれさまです>

<M.Cさんが退室しました。おつかれさまです>


 G,N:あれ?

 R,H:……

 B,D:……

 G,N:まあ、なんでしょう?ドンマイ?

 R,H:少し、頭を冷やしましょうか?

 B,D:ああ、今回は止めん

 G,N:あれ?なんか危険な感じ?うん、とりあえず今コアがマッハでピンチなんですけど?


 ―――


 R,H:まったく……マスターがマスターならデバイスもデバイス、なんでこう変態なんでしょうか?

 B,D:そうだな、まったくもって理解できん

 G,N:二人に言われたくありませんが……いえ、なんでも無いです……


 チャラン♪

<C,Mさんが入室しました>

<M.Cさんが入室しました>


 C,M:……

 M.C:……

 R,H:二人共警戒しなくても大丈夫ですよ?何かあれば物理的にOHANASHIしますので

 C,M:ビクっ!

 M.C:ブルブル……

 B,D:新人を怯えさせてどうする?

 G,N:流石は冥王のデバイス……いえ、なんでも無いです……



 今日もデバイス達の夜は更けていく……ここはデバイスの集う憩いの空間、貴方もよかったらどうぞ……



 20130416修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾八話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:08
 オフィスにて謝罪をしに行った二人は、なのはがそこにいないことを聞き現在自室にて待機していた。机の上に座りながら首だけ後ろの方へと向けるスバル、そこにはクロスミラージュをメンテナンスするティアナがいた。スバルは不思議に思っていた、昼間の模擬戦であれだけ取り乱し、最後には砲撃で撃たれ、失意のまま気を失ったというのに、医務室から帰ってきた彼女はどこか吹っ切れたように晴れやかな表情で


「ごめんねスバル、あんたには迷惑かけっぱなしで」


 思いっきり頭を下げられたのである。余り見たことがない彼女の姿に違和感を覚えながらも聞き出せないでいたのであるが……


「ティア?」

「ん?なによ」

「もしかして、最上隊長と何かあった?」


 思い切って質問を投げかけてみた


「な、な、な、なんにも無かったわよ?」


 思いっきり動揺するティアナ、思わずメンテ中のクロスミラージュを落とすくらいに……これは何かあったなと思いながら


「ティア?」

「本当になんでも無かったわよ……ただ、最上隊長ってすごいわね」

「そうだね。すごい変態だよね」

「違うわよ。そういうんじゃなくって」

「?」

「あたし、強さの意味を履き違えてたみたい。誰かに認められるとか……証明することだけじゃ無いんだって」

「うん」

「本当の意味で強くならなくっちゃいけないって解った気がする……」

「そうなんだ、よかったね」

「うん、あんたにも迷惑かけたわね」

「ううん、大丈夫だよ。なんたってあたしはティアのパートナーだもん」

「ありがと」


 にこやかにそう言うスバルに素直にお礼を返すティアナ、なんとも微笑ましい友情がそこにあった。


「私は風のランスター……風は何ものにも縛られない……私もいつかあの人と肩を並べる事ができるかしら……ロリコンと肩を……」


 まあ若干不安なのは、デバイスを磨きながら余り聞きたく無い単語が聞こえたりしたりとか……


「でも、あたしってロリコンの素養無いのよね……エリオにも余り興味無いし……ショタはフェイト隊長だしね」


 なんだろか?親友の方向性が変な方へと向いていないだろうか……後今、さらっと凄いことカミングアウトしてなかった?


「あ、でもあたしって女の人が好きだったのよね……前々からちょっとフェイト隊長いいかなって思ってたし……それになんだかんだいって、最上隊長の女装好きだし……」

「……」


 机に向かいながら嫌な汗が背中から流れてくるスバル


「うん、決めたあたしは今日からレ『ティア!?』」

「ダメだよ!?ティア!?そっちの世界にいっちゃ!もう戻れなくなっちゃうよ!?」

「ああ、少し焦りすぎたわ……悪かったわよスバル、もう暴走しないから」

「うん、だけど……」

「大丈夫よ。あたしがそんなに信用無い?」

「そこまでいうならいいけど……」


 ジト目で見られて渋々了承するスバル、なにかこう危険信号みたいなものがふつふつと彼女の中で警告を発している


「ロリコンか……」


 そう遠くを見つめながら呟くティアナの顔はまるで恋する乙女のようであった。想い人があの変態でなければ喜ぶべきなんだろうが……複雑な心境のスバルであった……







「ふむ……」


 遠くを見つめながら、独りため息をつく千早。


「どうも、最近幼女分が足りない……」


 そして、どうでもいいことを愚痴るのである。そんな彼に近づく影が一つ


「ん?」

「こんなところにいたのか、変態」

「ああ、なんだBBAか?」


 そのまま脱兎のごとく逃げましたよ?だっていきなりレヴァ剣抜いたんですから……



 ……

 ………




「はあ、はあ、たく本調子じゃないんだ。走らせるなよ」

「誰のせいだ!誰の!」


 隊舎を一周くらい走った所で捕まり、殴られた頭を擦りながら避難する千早を窘めるシグナム


「……まあいい、貴様今日は散々だったらしいな」

「うん?なんだもう話を聞いたのか?」

「まあな」


 そう言うと千早の横に並びながら遠くを見つめるシグナム、珍しく歯切れが悪い


「なんだ?気持ちが悪い」

「お前、なんでティアナを庇った?」

「ん?」

「今回の件、確かに高町がやり過ぎた事は解るが、お前が幼女以外を庇った事が気になったものでな」

「なんだ、俺が幼女以外を庇うのがそんなに変か?」

「ああ、変だ。私からすれば天地がひっくり返るくらいにな」

「そんなにか!?」


 コイツは一体日頃自分の事をなんだと思っているんだ……


「ロリコンだろ?変態」

「まあ、否定はしないけど」

「で、何故だ?」

「どこまで痛みを……」

「快楽に変換できるか試したいのなら、今、私がとことん試してやるぞ?」

「……いえ、いいです」


 獰猛な獣のような笑みでレヴァ剣を構えながら言うシグナムを見て、苦笑する千早


「何、ただの気まぐれだ」

「気まぐれで他人の教導に口を出すのは、感心せんな」

「なんだ、えらく絡んでくるな」

「お前が本当の事を言わんのが悪い」

「ふむ……」


 どうやら納得のいく説明をしないと、立ち去る気が無いらしい……


「ティアナは16歳だな」

「そうだが?」

「16歳といえば、まあ、俺からすれば年増だが、BBAでも無い」

「お前……今の発言で六課の女性局員大半を敵に回したな」

「いや、真面目な話」

「どこが、真面目だ。どこが」

「まあ聞けって、ということはだ。体は年増、心はロリではないのか?」

「そこは『体は大人、心は未熟』ではないのか?」

「だから真面目な話だと」

「どこをどう捉えれば真面目な話のか説明してくれ」

「ふむ、簡単に言えば、ただぶちのめすだけでは遺恨が残ると思った。ただそれだけに過ぎん」

「しかし、それでは甘いのではないのか?」

「まあ、お前からすればそうだろうが……ただぶちのめすだけでは駄目な時もあるもんだ。大事に思っているなら尚更の事」

「ほう……」

「というわけで、親身になって説明したのだよ」

「なんと?」

「なのはは、コミュ障だって」

「はあ!?」

「ふむ、彼女の中では『説得=ズドン』だとな」

「お前死んだな……」

「言うな……ちょっと後悔しているのだから……仕方無いので俺は今から幼女達が戯れる姿を見なおそうと思う」

「仕方が無い、付き合ってやる」


 本人にバレたら必ず千早の身にズドンが振りかかるであろうことを想像して慰めるシグナム、まあ、自業自得なので毛ほども心配はしていないのであったが……



 そうして、各自の思いが交差する夜が更けていく……


 はずが、空気を読まない敵襲を知れせる警報が鳴り響く……






 機動六課司令室


「すまない、遅れた」

「むう、後少しでベッキーがエスカレーターを攻略する所だったのに……」


 シグナムと千早が司令室に到着すると、既に高町、フェイト、ヴィータが揃っていた


「千早が遅れるのはいつもの事だけど、シグナムがってのは珍しいな」

「ああ、すまない。少しこいつと話をしていたものでな」

「へえ、千早君?シグナムさんと何を話してたの?」

「いやなに、子供は男の子か女の子かどっちがいいかで盛り上がっていた」

「はあ!?」

「お前……」

「シグナムさん……」

「いやあ、まさかと思ってたけどシグナムやとは……とりあえずうちの敷居もうまたがんといてくれる?」


 千早の一言に引くなのはとヴィータ、からかうような笑みを浮かべながら言うはやて


「ちょ、待てっ!主語が抜けてるぞお前!違うんだ!というか主も変な事言わないでください」


 違うんだと言いながら、オロオロと取り乱すシグナム。緊急事態だと言うのに相変わらずこの男がいると現場が緩くなる……しかし、その空気を一瞬にして張り詰めさせた人物がいた


「へえ……そうなんだ……シグナム?」


 ピシリとガラスが割れたような音が聞こえたような気がした……恐る恐る振り返ると、そこには恐ろしいほど暗い笑みを浮かべたフェイトがいた


「テスタロッサ……?」

「へえ、シグナムと千早って仲がいいんだ……」

「な、何を言っている?ち、違うぞテスタロッサ、だから番組の話で、私はただコイツの部屋でテレビを見ていただけ……」


 そこまで言って、口を押さえるシグナム。


「シグナムさん……」

「何火に油注いんでだよ……」

「ほうほう、男の子の部屋でしかも二人っきり、そして子供の話……これはもう勘当ものやね」


 悲しそうな目でなのはが、呆れた表情でヴィータが、そして一人楽しそうにはやてが発言する


「へえ、そうなんだ……千早の部屋で……二人……へえ……」

「フェ、フェイトちゃん?」

「テ、テスタロッサ?違うんだ。そういう意味じゃないんだ」

「まあ、どうでもいいけど、お前ら緊張感無さすぎだろ?」

「そうだぞ?ヴィータちゃんの言う通りだ。少しは真面目にしたらどうだ?」

「お前が言うなぁあ!!」

「ボゲラっ!」

「あのー敵が来ているんですが?」


 殴られ盛大に吹っ飛ぶ千早、段々と壊れていく友人にどうしようかとオロオロするなのは、ふっ飛ばした後、誤解を解こうとオロオロするシグナム、そんな二人を見て呆れ返るヴィータ。それを楽しそうに眺めるはやて、そんな皆に苦笑しながらグリフィスが現状を説明する


「まあ、おふざけはこの辺で、現在東の海上に、今までと比べもんにならん性能のガジェット空戦型が数十、現場にはレリックの反応も無し……どうみる?」


 からかう事を止め、真面目な表情で質問をするはやて


「そうだね、犯人がスカリエッティなら恐らく、こちらの動きとか航空戦力を探りたいんだと思う……奥の手は見せない方がいいかも知れない。でもなんかイライラするから、私が一撃で無に還して見せるよ?」

「フェイトちゃん、まだ引きずってるん?言ってる事、矛盾してるで?高町教導官はどう思う?」

「あ、あはは……私も『前半の』フェイトちゃんと同じ考え、目的がこっちの情報収集なら、なるべく新しい情報を与えず、今まで通りのやり方で片付けちゃうかな?」

「ふむ、奥の手か……なら」

「あんたには聞いてへんから」

「むう……」


 意見を出そうとした千早を、また碌でもないことでも思いついただけだろうと速攻で斬り捨てるはやて……


「酷いではないかはやて、私も一応隊長だぞ?」

「あんたが絡むとろくな事にならへん。せやから却下」

「むう……一度試してみたいのがあったんだが……まあ、私も本調子では無い。それはとっておこう」

「そうしてもらえると助かるかな?」

「うん、はっきり言って邪魔だし……変態はおっぱいと仲良く待機してればいいよ」

「えらく、機嫌が悪いなフェイト。もしかして今日は生……」

「殺Oよ?」

「フェイトちゃん……伏せれてないから……隠すとこ間違えてるから……」


 狂気に満ちた表情で千早の首を締めながら言うフェイトに戦慄を覚えるなのは、ヴィータは恐怖で涙目だった


「……まったく何をそんなに怒っているのかわからん」

「やっぱこいつあかんわ。とりあえずこれ以上フェイトちゃんが狂っても困るから教えといたる」


 そんな千早にため息をつきながら、これ以上収集がつかなくなってはどうしようもないと思いそっと、耳打ちをするはやて。


「ふむ、フェイトよ。これが終わったら私の部屋に来るか?」


 それを聞いた後、しばらく考えた千早はフェイトに向かい声をかける


「え!?な、なななな……ええ!?えっと……えええ!!?」


 千早の発言に急に顔を赤らめながら動揺するフェイト、さっきまで殺害をほのめかしていたとは思えないぐらいの見事な動揺っぷりであった


「知らなかった、そんなに君が思いつめていたなんて……」


 申し訳なさそうに彼女の肩に手を置く千早


「え?ベ、別に、そ、そんなこと、な、、何を言ってるのかな?」

「うむ、すまなんだ、そんなに思いつめているとは」

「え?う、うん、ごめんね。千早は悪くないのに、私どうかしてたよ」

「ああ、だから俺の部屋で一緒に……」

「え?そんな……私まだ心の準備が……」


 そう言うと真面目な表情で顔を近づけてくる千早、顔を赤らめながら返答に困るフェイト


「……一緒に、幼女達が頑張る姿を見ようではないか」

「そんな、二人っきりで幼女を……え?」


 体をくねらせながら、しどろもどろになっていたフェイトだったが、千早の言葉に素に戻る


「しかし、言ってくれればよいものを、そんなに幼女達が戯れる姿が見たいならいくらでもある」

「え?え?」

「まあ、そこまで愛しているとは、お前の成長を嬉しく思うぞ」

「う、うん……あ、ありがとう……」


 そう言うと満足気に笑う千早、その光景を見ていた他のメンバーは思う。鈍感は心底むかつくんだなと、そして、何よりフェイトちゃん帰ってきてと……切実に……

















 さて、何も問題無く出動の為に屋上に集まるフォワードメンバー達


「今回は、空戦だから、私とフェイト隊長、ヴィータ副隊長の三人で出るけど、皆もロピーで待機していてね」

「こちらの指揮は最上隊長と私だ」


 そこまで説明をすると、ティアナの方へ視線を向けるなのは、やはり模擬戦での一件が尾を引いているのか少し表情は暗い……しかしそこまで落ち込んではなさそうな表情で説明を聞いている。そのことに少し違和感を覚えながらも


「……ティアナは今回は待機任務から外れとこっか?」


 その言葉に俯くティアナ、スバル達は驚いた表情で彼女を心配そうに見つめる……

 我ながら酷なことを言えるなと思うなのは。でも、仕方が無い、彼女は部隊を預かる隊長、ただの仲良し部隊ではない。隊員の管理もきっちりしなければいけない。そう思いながらティアナの方へもう一度視線を送ると


「……はい」


 俯きながらも返事を返すティアナ、何か言いたいことがあるであろう。しかし、それをぐっと堪えていた。そんな彼女の様子を黙って見つめる他のメンバー達


「ふむ、言葉が足らんぞ高町隊長。こういう場合はだな……『私の砲撃を受けて身も心もボロボロ、完膚なきまで叩き伏せて五体も満足に動かせまい?だから休むがいいなの』が正解だ」


 ……

 ………

 ――なんでろう?気づいたら千早君を殴っていたの


「私は一体どこのラスボスなの!それから最後に取ってつけたように『なの』って入れないで!」

「いたた……そんなことは無いなの」

「だからそれ止めるの!」


 怒鳴りつけるなのは、だから真面目な話をしているのになんでこの男はふざけるんだろうか……ていうかフェイトちゃんこの状況で「千早ってほんと、おちゃめさん」ってどういうこと!?


「まあ、なんだ……ヴァイス、もう出られるな」

「乗り込んでさえくれればいつでも!」


 複雑な表情で、ヘリに乗り込むように指示するシグナム。まだ何か言いたそうななのはを押しこむ形でヴィータが乗り込む。残されたメンバーには微妙な空気が漂っていた……


「さて、ティアナ。お前は部屋で休んでおけ。他はロビーに待機だ」


 ティアナにそう声をかけると、歩き出すシグナム。俯いたまま返事をする彼女の姿を見ていたスバルは


「シグナム副隊長!」

「なんだ?」

「強くなることってそんなに駄目なんですか!確かに命令違反は絶対駄目だと思います。でも自分なりに強くなろうとか、キツイ状況でも何とかしようと頑張るのって、そんなにいけないことなんでしょうか!?自分なりの努力とか、そういうのもしては駄目なんですか!?」


 流石に納得がいかないのか、ティアナに変わりスバルが叫ぶように訴える。横ではティアナが驚いた表情で見つめていた。そして、口にこそ出さないがキャロやエリオをも納得していない表情であった


「自主訓練はいいことだし、強くなろうと頑張るのも、それはとってもいいことだよ」


 それに答えたのは、いつの間にか皆の所へと来ていたシャーリーであった。


「シャーリーか……持ち場はどうした?」

「それはリイン曹長がいてくれてますから……なんか、皆不器用で見ていられなくて」


 そう言うと皆をロビーへと集まるように言うシャーリー。何故あそこで彼女がティアナを撃墜まで追い込んだのか、それから彼女の過去を語る為に……ちなみにその頃千早は虫の息であった





 ……


 …………


 ………………






 沿岸場に佇むティアナへ静かに近づくなのは、彼女の姿に気づき頭を下げる。その姿に少し苦笑しながらその隣に座り一緒に海の方を眺める


「シャーリさんやシグナム副隊長から色々聞きました」

「なのはさんの失敗の記録?」

「!?じゃなくて……」

「無茶すると危ないんだよねって?」

「はい……すみませんでした」

「でも、ティアナ実は気づいてたんじゃないかな?」

「え?」

「なんとなくなんだけど、出撃前の事覚えてる?」

「はい、最上隊長がフルボッコにされてました」

「う”……そうじゃなくて……あの時、ティアナの表情、納得出来ないってのもあるんだろうけど……少しすっきりした感じだったから」

「それは……」

「それは?」

「最上隊長に言われたんです」

「千早君に?なんて?」

「……なのはさんは『コミュ障』……」

「……えっと……ティアナ?」

「!?ち、違うんです!?そうじゃなくって!なのはさんは口より先に手が出るとか、肉体言語で喋る種族だとかそんな事じゃなくて!とにかくあたし達の事大切に思っているって!」

「……あ、あはは、とりあえず落ち着こうティアナ?全然フォローになってないからね?最後良い事言ってるのに前半のせいでめちゃくちゃだから」

「……すみません」

「それで他には?」

「はい、なのはさんが真剣に心配して怒ってくれてるとか、あたし達が怪我をしないように過保護なくらい大切に教導してくれてるって」

「そうなんだ。できればそっちを最初に言ってもらいたかったかな?」

「すみません」

「ティアナは千早君の事どう思う?」

「すごい人だと思います。強くて、才能があって、自由なんだと思います。あたしはロリコンを勘違いしてたようで、本当はすごいですね」

「そ、そっか……ティアナもそっちの方へ逝ってしまうんだ」

「え?」

「ううん、なんでも無いよ。でもティアナの考えてことも間違ってないの」


 そう言うとティアナのクロスミラージュを手に持ち


「クロスミラージュ、システムリミッター、テストモードリリース」

<Yes,Sir>


 クロスミラージュの返事を確認すると、そのままティアナに渡すなのは


「命令してごらん?モード2って」

「……モード2」

<Set UP.Tagger mode>


 少し大きめの魔力の刃が放出される


「これ……」

「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出た時のことを考えて用意はしてたんだ。執務官になればどうしても個人戦が多くなるから」

「……っ!」

「クロスもロングも、もう少ししたら教えようと思ってた。だけど、出勤は今すぐにでもあると思うから使いこなせる事をもっと確実なものにしてあげたかった。だけど私の教導は地味だから余り成果が出てないように見えて苦しかったんだよね……ごめんねティアナ」


 少し自嘲気味な笑顔をティアナへと向けるなのは、その笑顔を見てティアナは


「う……うぅう……ごめんなさい……ごめんなさい」


 涙ながらに謝罪するのであった、そうして彼女を優しく慰めるなのは。この試練は彼女を強くしてくれると思いながら……まだこの子なら大丈夫、親友と同じ道を歩ませるものかと……そうして夜が更けていくのであった





 とりあえずありきたりな感じにしました。オリ主が諭す、ナデポはかかせません。多分……
 20130416修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第拾九話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:08
 
 早朝―機動六課隊舎 ティアナとスバルの部屋


 PiPiPiPi……


 機械音が部屋に鳴り響く、その音に気づき起床するスバル。彼女は目を覚ますと下の方でまだ寝ているティアナに声をかける


「ティア~?朝だよ~?時間だよ~?」

「う、うん……」

「ティア起きて~今日は練習場のセット当番なんだから起きて~」


 肩を揺さぶるも中々目が覚めないティアナに業を煮やしたスバルは


 もにゅ。

 もにゅもにゅ。


「ぅ……うん……」

「ティア~はや~く~」


 彼女の胸を揉みながら、起きるように声をかける。


「ん……うぅん……はぁ……」


 妙に艶かしい声なのは気のせいだろう……


「ティア起きた?」

「う……うん……はぁ……はぁはぁ……」


 静かに目を開けるティアナ、何故かその瞳はトロンとしているが、多分寝起きだからだろう……何故かはぁはぁと上気した表情で見ているがこれも寝起きだからだろう……


「て、ティア?」


 何故か危険と感じながらも胸を揉みながら声をかけるスバル


「スバル……朝から大胆ね……」

「え?え?ティア?え?きゃあ!?」


 スバルの後頭部へと手をやるとそのまま自分の方へと引きこむティアナ


「ティア?冗談だよ?ちょっとしたスキンシップだよ?」

「そうね……スキンシップよね?」

「う、うん。そうだから……え?なんで上着脱がされてるの?」

「気のせいよ?」

「いや、めっちゃ脱がしてるし?ちょっと目が怖いよ?ティア?」

「ん、うっさいわね……あんたが悪いのよ。朝から人を欲情させるから」

「ええ!?ティア?嘘だよね?あたし達パートナーだよね?」

「ええ、パートナーよ。だからあたしの本気見せてあげるわスバル」

「本気とか訓練の時に見せたらいいから!?ほら!訓練に遅れるとなのはさんが……」

「大丈夫よスバル、すぐ終わらせてあげるから……」

「何を終わらせる気!?」

「問答無用!」

「いや~~~!!」


 そのままスバルを抱きしめると、布団の中へと誘うティアナ。そうして覚醒したティアナの本気の妙技にあっというまに落とされるハメになるスバルであった……詳しい描写はしない







「はい、お疲れ様」


 笑顔でねぎらいの言葉を投げかけるなのは、目の前には疲れきって肩で息をしながら屈みこむティアナ達の姿がいた


「うん、朝の訓練と模擬戦も無事終了」


 そんな彼女らを見回しながら説明する


「実は……今日の模擬戦が第二段階の試験だったんだけど……どう?フェイト隊長、ヴィータ副隊長」


 そう言いながら二人の方へと視線を送るなのは、その視線に答えるように笑みを送ると


「……合格」

「「「「即答!?」」」


 完結に答えるフェイトに突っ込むメンバー、そんな彼女らを苦笑しながら


「ま、あんだけ厳しくやってんだ。これで合格じゃ無い方が危ういぞ?」


 腕を組み片目をつぶりながらため息混じりに言うヴィータ


「まあまあ、ヴィータ副隊長。じゃあ、そういうことだから、後でシャーリーのところにデバイスを持って行ってね」

「そうだな。明日からは第二段階メインで訓練するからな」

「「「明日ですか?」」」

「そうだよ。みんな今日まで頑張ったから。この後の訓練はお休みにして、午後からは街に出て遊んで来るといいよ」


 なのはがそう言うと、皆一様に喜びの声をあげる。皆が嬉しそうなのを確認した後解散を告げるのであった





『以上が芸能ニュースでした……続いて政治経済……」



 隊舎内食堂にて隊長達が朝食を摂っている中、室内に置かれたモニターには朝のニュース番組が流れていた。その音声を聞きながら各々が食事を楽しんでいる。そんな中


『――首都防衛隊の代表のレジアス・ゲイズ中将による、管理局の防衛思想に関しての表明も行われました』


 全員がモニターへ視線をうつす。画面に演説を行なうレジアス中将の姿が映し出されていた


「……このおっさんはまーだこんなこと言ってんのか?」


 つまらなそうな表情で呟くヴィータ。彼の主張は簡単に言えば魔法犯罪が増えているんだから、武装増やして強化しようといったものである


「しかし、ゲイズ中将のおかげで地上が安定しているのも事実だ。それに彼は古くからの武闘派だからな。いたし方あるまい」

「確かに、少ない魔導師より、誰にでも使える兵器を用いてその分の人員を首都防衛へってのは理に適っているとは思う」


『こんな事』と言ったヴィータに対してシグナムが感想を言うと、同じく千早も同意する


「うーん、言いたい事はわかるけど私は極端かなって思う」

「あたしはあんま好きじゃねーな」


 二人の意見に対して否定がちに答えるなのはと、単純に拒否するするヴィータ


「好きか嫌いかと言えば、俺も嫌いだぞ。ああいう輩は極端に走って自滅するか、暗殺されるかのどっちかだろうし」

「お前は何を物騒な事を言っているのだ?」

「ん?なんとなく思っただけだ」

「なんとなくって……頼むから冗談でも本局でそないな事言わんといてや。唯でさえよう思われてへんねんから」

「ん、わかった」


 理解したのかしてないのか適当に返事を返す千早に苦笑する


「まあ、俺程度が何を言おうがああいったお歴々の方々には届かないだろ?精々、街の幼女と遊ぶことくらいしかできんよ」


 ジト目で睨まれて苦笑しながらモニターに視線を移すと、レジアスの後ろに座っている老人を指さしながら言う千早


「あ、ミゼット提督……」

「ミゼットばーちゃんか?」

「キール元帥とフィルス相談役も……」

「伝説の三提督、揃い踏みやね……後、さらっと流したけど誰と遊ぶって?てか、あんたは隊舎内で待機な。それから今日一日監視つけるから」


 ため息をつきながら千早の方へと視線を移しながら言うはやて、


「む……しかしだ、あの娘が待っている……いや、なんでもない」


 更に睨まれたので仕方なく了承する


「ふむ、仕方あるまい。断りの連絡を入れるとするか……しかし、親御さんに申し訳ない事をした」

「はあっ!?親御さんって、ご両親にも会っとるんかい!」

「当たり前だ、年端もいかない娘をお預かりするのだぞ?ご両親にご挨拶するのは常識だ」

「いや、あんたに常識語られても困るから。せやけどこんなんよう信用するなんて考えられへんわ」


 頭を抱えながら塞ぎこむはやてに苦笑しながら、見つめ合い苦笑するフェイトとなのは


「はやて……知らないんだ」

「そうみたいだねフェイトちゃん」

「ん?なんのことや?」

「千早君ってね、ご近所で大人気なんだよ?」

「は!?なんで?こんな変態が?」

「街の清掃活動、防犯活動、交通安全集会、各施設への奉仕活動……」

「何、それは?」

「千早君がこれまで参加したボランティア活動だよ」

「はあっ!?なんで?あたし知らんよ」

「それはそうだよ。だって、千早くんが休みの時にしてるから」

「私も一度参加したけど、もう子供たちがよってきて大人気だったよ?」

「嘘や……ありえへん……こないな変態が……奉仕活動やなんて……」

「ふむ、ロリコンとして当然だ」


 信じられないといった感じのはやてに対してドヤ顔で答える千早。


「これでロリコンじゃなかったらよかったのにね。シグナム?」

「いや、そこで何故私なんだ?シャマル」

「?いいんじゃねか?とりあえず世間様に迷惑かけてねえなら」

「それもそうだな……」

「とにかく、今日一日おとなしゅうしとくこと。監視にはフェイトちゃ……じゃあ、あかんから……ここはシグ……冗談やってフェイトちゃん、だからデバイスしもうてな?さて、シャマ……なんで目伏せるん?ザフィー……は何処行った?ヴィータちゃんは確か本局に用事があるから……よし!なのはちゃん、君に決めた!」

「ええっ!?」

「そうだな。高町なら適任だ」

「なのはなら大丈夫じゃねえか?」

「そうですね」

「ええ!?無理だよ、はやてちゃん……」

「大丈夫や、なのはちゃんならいける」

「そうだね。なのはなら大丈夫だよ。信じてるから……」

「その根拠はどこにあるのかな?二人共、それからフェイトちゃん?なんで私にフォーク向けるの?友達だよね?信じてるって言ったよね?」

「いやーなんかあったらズドン?」

「うん、全力全開。だけど『墜とす』じゃなくて『落とす』だったら私が全力全開だよ?」

「いや!?おかしいって、それじゃ私が千早君を墜とす事前提じゃない!?それからフェイトちゃん意味分かんないよ!?」

「違うの?」

「ちゃうの?」

「違うのか?」

「どうなんだ?」

「私に聞かれてもな」

「……」

「まあ、元気出せ。いい機会だから『ズドン』以外のコミュニュケーションの取り方を覚えろ」


 全員から否定されて落ち込むなのはに、肩に手を置き慰める千早


「だ、だ、だ……誰のせいだぁあっ!!!!」

「ボゲラッ!」


 おもいっきりふっ飛ばされる千早、周りもいつもの光景なので気にする様子などは無い。そうして、平和な時間が過ぎていくのであった





 ……


 ………




「ハンカチ持った?忘れ物とか無いよね?」

「は、はい大丈夫です」


 玄関ロビーにて二人外出の準備をするフェイトとエリオ。外出するのはエリオであるが何故かフェイトの方が張り切っていた


「財布は大丈夫?ああ、お小遣い足りないといけないから……」

「だ、大丈夫ですフェイトさん。僕ももうお給料貰ってますし」

「ああ、そうだったね。じゃあ大丈夫だ。エリオの方が年上なんだからちゃんとキャロをエスコートしなきゃだめだよ?」

「は、はい」


 優しく襟元を直すと笑顔で頭を撫でながら言うフェイトに対してどこか照れたように返事をするエリオ。


 一方その頃キャロの方はというと……


「ふむ、よく似合っている、最高に可愛いぞ」

「はい、ありがとうございます。でもいいんですか?」

「うむ、私が持っていても仕方が無いのでな。」


 鏡の前でくるりと一回転しながらうれしそうにお礼を言うキャロに対して満面な笑顔で答える千早。


「本当にありがとうございます。ピッタリです!」

「それは何より、さてそんなことよりエリオ君が待っているのだろう?早く行きたまえ」

「えっと……はい」


 もう一度お辞儀するとそのまま駆け出すキャロ、その後姿を満足そうに眺め、やりきった感じで


「うむ、いい笑顔だった。さて、今日は良い天気だ」


 そうして歩き去っていく。最上千早、彼は幼女の為なら細やかな気配りをする男である……





 ……

 ………






 キャロ達を見送ってからフェイトと別れて六課の隊舎内を歩いているなのは


「ん?あれは」


 しばらく歩いていると視線の先にぐうすかと眠る銀髪のロリコンがいた


「今日一日大人しくしててって言ったけど……」


 そう苦笑しながら呟くと、近づくなのは。彼女が近づいてもまったく気づくこと無く寝息をたてる千早


「よく寝てる」


 静かに顔を覗きこむ。


「周りには誰もいない……」


 そう呟くと初めて彼と出会った時の事を思い出す。はやてちゃんから面白い子がいるんで会って見いひん?って言われ会いに行ったんだっけ?


「最初は礼儀正しい、真面目な人かと思ったんだけなあ」


 銀色に光る髪に中性的な顔立ちの青年が礼儀正しく挨拶をすれば好印象であるが……


「ものの見事に裏切られたの……」


 初対面ということも有り、最初はお互い敬語で他所他所しい感じで話をしていたのであるが、彼がロリコンだと気づくまでそう時間はかからなかった。


「そう考えると酷いよね。なんでフェイトちゃんはこんなのがいいんだろ?」


 今更ながら親友の好みを疑うなのは、容姿はまあいいとして……性格から性癖は質が悪い


「ひとの事コミュ障って、冥王って……なんだか腹がたってきた……そうだ……誰も見ていないし、いっその事ここで……」


 ブツブツ言いながら段々目のハイライトが消えていくなのは。







 ……


 …………


 ……………







「……それで?レイハさん構えてどうする気だ?」


 レイハさん構える彼女に対して片目だけ開けて声をかける千早、冷静に見えるが内心冷々である


「ん?何かな?」

「何かな?って聞きたいのは俺のほうだ。目を開けたら撃たれそうになるとかどんなシチュエーションだ?」

「なんで起きちゃうかな?もう少し寝てたらよかったのに……」


 心底残念そうにため息をつくなのは


「そりゃ、あんだけ殺気を感じたら起きるだろ?というか、なんか目が怖いんだけど?」

「殺気って、そんなことないよ?ただ、私『コミュ障』だから……」


 自重の笑みを浮かべながらレイハさんを抱きしめるなのは


「お前は寝ている人間を起こす為に砲撃するのか?コミュ障にも程があるだろう?」

「うん、千早君だけ特別だよ?」


 凍りつくような満面な笑みで言うと、レイハさんを眼前に突き付けられる


「そんな特別はいらん。というかもう起きたんだからいいだろ?なんで、未だ先っぽが輝いている?」

「なんかね、もういいかなって?なんで私がこんな変態の為に頭を悩ましているのかなって?フェイトちゃんは帰ってこないし、シグナムさんも既に……挙句の果てにキャロやティアナまで……私から皆を奪っていく。そう考えると疲れちゃった……だから、もう楽になっていいよね?撃ってもいいよね?」

「いや待て……おかしい。というか、既にもう起こすとかじゃなくて、俺を消すことになっているんだが?」

「え?違うよ?私はただ一度きっちりお話しようと思っただけだよ?」

「えーと、御慈悲は無いのか?」

「御慈悲?無いよ?だって私『冥王』だから」


 もう一度笑みを浮かべるなのは、これは色々とやばい……


「……すみませんでした」


 だから千早は一瞬で土下座しました。その様子を見ていた局員からは『あそこまで清々しい土下座は見たことが無い』と絶賛されるくらい綺麗な土下座だったそうな……機動六課は今日も平和である





 久しぶりの投稿、いやあ若いからって無理したら駄目ですねえ……二十日間も入院しちゃったよ……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:09
 

「こちらライトニング4、現場にてレリックと思わしきケースを発見しました。それとレリックを持っていたらしい女の子を保護。女の子は意識不明です。指示をお願いします」


 キャロからの全体通信が全員へと届く


「!?状況はどうなってるん!?」

「駄目です!繋がりません!」

「あかん!テスタロッサ隊長と高町隊長には?」

「はい、フォワードに指示を出した後、現場へと向かってもらってます」

「ちぃ……間に合いそうか?」

「恐らくは……」

「願わくば何事も起こらんことを祈るだけや……」

「一体何が起こると言うのですか?」

「ロリコンが動く……」

「ロリコンが……」


 嫌な予感がする……言い知れぬ不安に包まれながら次の行動へと移すはやてであった


 現場へと疾走する白き光があった


「この匂い、この感覚、この高鳴り……これは美幼女の気配っ!」


 一人興奮気味に全力疾走する。その走りは既に音速を超えていた。


<しかしマスターどうやらかなり衰弱しているようです>

「なんだと!?これは急がねば……温かい毛布においしいスープも必要になるな」

<はい、ですが……何故あのような場所に?>

「そんなことはどうでもいい。いいか?そこに幼女がいた。それこそが重要なのだよ。それ以外は後で考えれば良いことだ」

<そうですね……ともあれ心配です>

「ああ、とにかく誰であろうと幼女を傷つけた者だけはいずれ……」

<マスターもうすぐ現場です>


 陸上選手のようなストライドで彼は空を走り抜ける……


 現場ではレリックのケースの封印と、女の子の応急処置を終わらせて少ししてから、ティアナとスバルが到着、目の前にはボロボロの布に包まれた少女がキャロの膝の上に横たわっていた。


「地下水路を通って、かなりの距離を歩いてきたみたいです……」

「そんな、まだこんなに小さいのに……」


 ティアナが悲しそうに呟く


「幼女はどこだ?大丈夫なのか?怪我無いか?泣いてはいなだろうか?そして現状はどうなっている?」


 更に少ししてから到着した千早、全速力で走ってきたので少し息が荒い、というか落ち着け


「えっと……はい、少女への応急処置とケースの封印処理は既に完了しています」


 到着した千早に現状を冷静に報告するティアナ、普段と違い取り乱した姿に少し苦笑する


「そうか……ではロングアーチにレリックの回収と少女の保護を」

「既にシャマル先生とフェイト隊長達がこちらへ向かっています」

「では、キャロは少女を、他の者はヘリが到着するまで周辺の警戒を」

「「「「了解です」」」」



 周囲を警戒しながら到着を待つメンバー。小さく寝息を立てる幼女にそっと毛布をかけながら


「バイタルチェックは?」

「はい、既に完了。恐らく衰弱かと思いますが、これ以上は専門機器が必要だと思います」

「そうか、とにかく安静にさせないとな……う~む、毛布と、後は枕と……それから抱きしめるぬいぐるみと……」

「あ、あのっ最上隊長?」

「なんだ?」

「えっと、素朴な質問なんですけど、どこから出てくるのですか?」

「ふむ、ロリコンの嗜みだ。いかなる幼女にも対応できるようにな。常在幼女の心得だ。キャロ君もいるかね?」

「いえ、今は大丈夫です」


 とにかく大事に大事に扱う千早に苦笑しながらも少し羨ましく思うキャロ


「しかし……」

「はい?」

「いや、なんでもない……この娘を頼むぞ」

「わかりました」


 さて、と呟きながら立ち上がる。そうして周りを警戒しつつヘリの到着を待つのであった







 千早の到着から幾分か経過した後、ヘリが到着。今はシャマルによる少女への診断が行われている。その間も周りの警戒を続けるフォワード組に続き、合流したフェイト、高町も同じく警戒をしながら心配そうに少女をみつめていた。


「バイタルも安定しているし、危険な反応も無い。心配ないわ」

「よかった……」


 シャマルの診断により、何も問題が無いことがわかると安堵するなのは、フェイトも同じだろうか表情がやわらかくなっていた。


「しかし……」

「どうしたの?」


 容態が大丈夫だと安堵した二人に対して難しい顔で唸る千早


「ああ、少し身体を調べたんだが」

「……レイジングハート」

「バルディッシュ……」

「待て待て二人共、至極真面目な話だ。とりあえず矛を収めろ。皆が何事かと思ってるぞ?」


 いきなりデバイスを展開した二人を見て、何事かと緊張した面持ちで振り返るフォワードメンバーに向かい苦笑いを浮かべながら


「な、なんでもないよ?」

「う、うん、気のせいだったみたいだね?」

「そうか、大変だな更年期……痛いではないか?」


 と、何事も無いように取り繕うのであった


「もう、千早君のせいだよ?急におかしな事言うから」

「いや、普通だろうが。身体に異常が無いか調べる事は」

「千早の場合は少し心配だよ。でも私は信じてたよ?」

「……思いっきり刃先が首筋にあたってたが?」

「?なんのことかな?わからないよ?」

「誤魔化すな……まあ、いい。でだ、こんな小さな娘が一人で尚且つレリックを引きずって行動するとは思えん」

「そうだね」

「うん」

「それから、どうもこの娘に薬物が投与されていた形跡がある。擦り傷や打撲跡でわかりづらいが……」

「……そう」

「そんな……」

「かなり前だとは思うが、一応その辺りを考慮して……」


 そう千早が話を続けようとした時


『地下水路にガジェットⅠ型が多数。数機単位で小隊を組んでそちらへ接近中!総数は……およそ20です!』

「まさか、レリックの反応に釣られて?」

「それともこの子を奪いに?」


 ロングアーチよりガジェットの襲来の知らせが入る。全員に緊張が走る中


「そんなことはどうでも良い。まずは少女の安全の確保が優先だ」

「レリックは?」

「一緒にヘリで保護すればいいだろう」





 ――司令室


『海上からもガジェットが多数!12機編隊のグループが4,5,6です!』

「結構多い……」

「どうします?」

「そうやな……」


 司令室内で検討中のはやてに通信が入る


『スターズ2からロングアーチへ。海上で演習中だったけど、ナカジマ三佐の許可が出たから今、現場に向かってる。それからもう一人』


 同時にもう一つ通信が入る


『108部隊、ギンガ・ナカジマです。別件捜査の途中だったんですが、そちらの事例とも関係がありそうなんです。私も参加してもよろしいでしょうか?』

『うん、お願いや』


 ギンガからの通信に頷くと少し考えると


『ほんならヴィータはリインと千早と合流して海上南西を制圧』

「南西方向了解です」

「ん、了解」

『なのは隊長、フェイト隊長は北西から』

「「了解」」

『ヘリの方はヴァイス君とシャマルに任せてええな?』

「任せてください」

「お任せあれ」

『ギンガは地下でスバル達と合流、別件の話は道々聞かせてな』

『はい』



 各自配置につく。まずは地下へ向かうフォワード組が気合を入れる


「さて、皆!短い休みは堪能したわね?」

「お仕事モードに切り替えて、しっかり気合入れていこう!」

「「はい!」」

<<<Stand by>>>

「「「「Set up」」」」


 全員バリアジャケットに着替え地下へと突入していくのであった……



 ビルの屋上にてなのはとフェイトが会話する


「フォワードの皆、ちょっと頼れる感じになってきた?」

「うふふ、もっと頼れるようになってもらわなきゃ」


 二人語りあうと、バリアジャケットを纏う


「早く事件片付けて、また今度お休みあげようね」

「うん」


 二人、少し楽しみにしながら飛び立つ




 同時刻ヘリ内にて、リインとシャマルが出撃の準備を整えていた


「気をつけてね」

「はいです」

「ふむ、この子の事は頼むぞ。ヴァイス陸曹」

「任せてくだせえ、旦那」

「ふむ」


 そう言うと、簡易ベッドに寝かされている少女の方を一度見つめると、ハッチの方へと移動する


「最上陸尉?」


 普段と少し違う雰囲気の千早を疑問に思うリイン


「ん?」

「いえ、なんでもないです」

「さて、この子を守るため、そうだな、これが終わったら見舞いに行こう。必ず」

「微妙に死亡フラグたてないでくれるかしら?とにかく貴方も気をつけてね」

「了解」


 苦笑しながら言うシャマルに返事をすると二人飛び立つ……これから起こるであろう戦いを胸に……幼女の為に彼は向かうのであった。




『ヘリに回収されたレリックとマテリアルは妹達が回収します。お嬢様は地下の方へ』

「うん……」


 場所は変わって上空にてウーノの通信に答えるルーテシア


『騎士ゼストとアギト様は?』

「別行動……」

『お一人ですか?』

「一人じゃない。私にはガリューがいる」


 右手から黒き塊を召喚すると愛おしそうに答える


『失礼しました。協力が必要でしたら、お申し付けください。最優先で実行します』

「うん……行こうか、ガリュー探しもの見つけに……」


 そう呟くと消えていく少女……彼女が千早と出会うのはまだ先になりそうである……






『スターズ1、ライトニング1共に南西方向に進行中。一分ほどで現場に到着します』

『スターズ2、リイン曹長とシルバー1と合流。フォワード陣、ガジェットの目標点へ進行中。このペースなら先行できます』

「ここまでは順調やね」

「はい……スターズ1、ライトニング1……エンゲージ」

「八神部隊長、全体通信です。108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹からです」


 通信の報告を受け頷くと、通信モニター上にギンガの姿が映る


『私が呼ばれた事故現場にあったのは、ガジェットの残骸と、壊れた生体ポッドなんです。ちょうど、5~6歳の子供が入るくらいの大きさでした。近くに何か重いものを引きづった跡があって……それをたどっていこうとした際中、連絡を受けたしだいです』


 ギンガの全体通信は聖王教会にいる騎士カリムとクロノ提督にも繋がっており、二人共深刻な表情で彼女の報告を聞いていた


『それと……この生体ポッド、前の事件でよく似たものを見たことがあるような気がするんです』


 ギンガの言葉にハッとするカリム、そして同じく聞いていたはやてが


『私も……な』

『人造魔導師計画の素体培養器……』

『……』

『これはあくまで推測ですが、あの子は人造魔導士の素材として創りだされた子共では無いかと……』

『そう……』


 この時のはやては忘れていた、この通信があの男に繋がっていた事に……







「おっし、良い感じだ」

「リインも絶好調ですぅ!」


 上空にて、ガジェットを軽快に撃墜しながら言うヴィータとリイン


「……」

「ん?どうしたんだ?千早」

「……」

「おいっ!聞いてんのか?」

「ん?ああ、なんだ?」

「なんだじゃねえよ?戦闘中にボーっとすんな」

「ん、すまん」


 少し雰囲気の違う千早に違和感を覚えるヴィータ


「まあ、いいけどあんま調子悪いなら休んどけ」

「えらく優しいな……ふむ、しかし、私には鉄の誓いが……だが……そうか、なら今度一緒にお風呂に……」

「入らねえよ!つか!お前の頭ん中はそんなんばっかかよっ!」

「そんなことは無いぞ?お風呂以外にも添い寝、肩車、抱っこに、膝枕と様々なニーズにお応え……」

「してねえよっ!そして、微妙にあたしがやって欲しいみたいに言うんじゃねえっ!」

「違うのか?」

「違う!」

「そうか、それは残念だ……そこまで嫌われているとは……」


 ヨヨヨ……と空中で体育座りで、のの字を書く千早、今が戦闘中とは思えないくらい緊張感が無い


「ああ、めんどくせぇ……まあ、その、お前の事は嫌いじゃねえよ」


 いじける千早に、照れくさそうに答えるヴィータ、なんだかんだいって面倒見が良い


「そうか!ではこれなんかどうだ?君によく似合うと……」

 その言葉に答える形で懐から一枚の布切れを取り出そうとすると

「……叩き潰されたいか?」

「……冗談だ」


 鼻先にアイゼンを突き付けられる千早


「もうっ!二人共っ!!真面目にやってくださいですぅ!そんなことをやっている場合じゃないんですよ!あっちを見てください!!」


 そんな二人のやり取りを見ていたリインが怒りながら遠くの方を指さす、そこには大量の敵の増援がこちらへと向かってきていた



「これは……」

「一体、何機いるんだよ」

「ふむ……」


 やっかいな事に増援は実機と幻影で構成されていた。とはいえこのままではキリが無いと思っていた所でフェイト達から念話が入ってくる


<この数は少しまずいね……防衛ラインを突破されない自信はあるけど……>

<幻影が混じってる。これは私達を足止めするのが目的だよ。本命は地下かヘリに行ったと思う>

<てことは……まずくねえか?>

<ふむ……ならここは私が残ろう。他は地下へと援護へ向かってくれ>

<一人で!?無茶だよ!>

<何考えてんだ!?>

<そうだよ!?駄目だよ!>

<ふむ、問題無い。何故なら私はロリコンだからな>

<こんな時にふざけんな!>

<ふざけてなどおらん。それにそろそろ我慢の限界でな……>

「おいっ!勝手に……」


 静かにガジェット群へと向かおうとすると


『ロングアーチからライトニング、及びスターズ、シルバーズ1へ……』


 はやてから割り込む形で通信が入る


「はやて?」

「なんで騎士甲冑?」

『嫌な予感は私もしててな、クロノ君から私の限定解除の許可をもらうことにしたんよ』

「なんだ?嫌な予感って」

『どっかのロリコンが暴走するとかな』


 笑いながら答えるはやてに、苦笑するなのはとフェイト。


『さて、冗談は置いておいて、空の掃除は私となのはちゃん、フェイトちゃんで。ヴィータとリインは地下に、千早はヘリの護衛に向かってや』

「「了解」」

「解った。幼女が乗っているんだ、必ず守ろう。ロリコンに誓って」


 そうして各自、与えられた任務をこなすために向かう。しかし、嫌な予感は往々にして当たるものである。この後、彼女らは目の当たりにすることになる。そして、敵は戦慄することとなる……真のロリコンの恐怖に



 ――――銀色の髪に、黒き衣を纏いて荒ぶる姿は鬼神の如く……


 ―――――悲しき瞳に宿るは幼女の魂、人は彼の事をこう呼ぶ……


 ――――ロリコンと……






 んーなんかものたんない気がする……もっとこ~う痒い感じでいきたかったな……そして大体夜中に投稿するので感想お返しはまた後日します……夜中のテンションでないと書けない人です……おやすみなさい



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾壱話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:09
 


「そんな……」

「Sクラスの砲撃が、直撃……」


 突然現れたエネルギー反応、それは砲撃のチャージであり、推定Sクラスクラスはあろう砲撃がヘリを直撃した。その光景を確認したシャーリー達は驚愕した。


「まだわからないわ!通信!急いで!」


 声を荒げながら復旧作業を急ぐ、現場が緊張感に包まれる。しかし、彼女らは未だ気づいていない。そこにロリコンがいることに、そしてロリコンとは幼女を守る騎士だという事実に……

 そうロリコンとは幼女がいれば最強、小さきか弱いものためには命を惜しまない。故に彼はこう呼ばれ、周りから非難と嘲笑と共に恐れられている……



 そう……




 彼は『ロリコン・オブ・ロリコン』






 彼の前にロリコンはいない、彼の後ろにロリコンはいない。最強の幼女好き、彼は狂おしいほどロリコンであった……















「うっふふのふ~♪どう?この完璧な計画」

「黙って、今命中確認中」


 健やかな笑顔で満足そうなクアットロに対して冷静に状況確認するディエチ


「あれ?まだ飛んでる?」


 しかし、爆煙からヘリの先端を確認すると疑問の声をあげる。確かに直撃したはず、そう思いながらさらに視線を合わせる


「嘘……」


 煙が晴れて、人影がはっきりと現れると驚き呟くディエチ、なぜなら、そこには無傷でヘリの前に立つ青年が無言で俯いていたからである。


「こっちも本気じゃないって言っても……マジで?」

「なんなの?あれは?」


 驚いた様子で見つめる二人に対して、目の前の青年がゆっくりと頭をあげる。


「ひっ!?」

「なっ!?」


 それを見た二人は恐怖に、動きを止める。銀色にたなびく髪と白い肌、そして三日月のようにつり上がった口、目は爛々と光っており、凡そこの世の者とは思えないくらい異様な雰囲気で二人を睨んでいた


「コォーホォー……コォーホォー……」

<Gurururururu>


 目の前の人間?の口からは呼吸をする度に蒸気が出ており、デバイスからは唸り声が漏れて悍ましい雰囲気に包まれていた。


「あちゃ~まずいわね?」

「うん、なんかあいつ怖い」


 二人顔を合わせ頷きあうとその場から離れようと腰を浮かすが……


「フフ……」

<Uuuuuu……GYAOUhhhhhhhhhh!!!>


 静かに笑みを浮かべるとそのまま腰を落とし勢いをつけて何もない空間を獣のように蹴り突進してくる


「ディエチちゃん!!逃げましょう!!今すぐに!!」

「うん、完全にまずっ!?」


 クアットロの言葉に返事を返した瞬間、人型の塊がそのまま彼女らがいる屋上へと突き刺さる。その瞬間土煙が巻き起こり一瞬視界が見えなくなる


「ディエチちゃん!?」

「大丈夫……」


 ディエチの近くに飛来したので、心配そうに声をかけるクアットロ、煙に包まれ完全に視界は遮られていた


「大丈夫なの?」

「うん、だけど、一体何が?」

「ククク……」

<Munnnnnn……>

「幼女を傷つけようとした事許すまじ、貴様らの命をもって償うがいい……」

<大人しく投降しなさい。そして冥府へと落ちなさい>


「なんか物騒なこと言ってる!?」

「てか、本当に管理局の人間か?」


「ああ、そしてどうでもいいが市街地での危険魔法使用及び殺人未遂の現行犯で逮捕する。武装解除して大人しく投降するようにって一応言ってみただけで、投降しなくてもいいから、寧ろ抵抗してもらった方が助かる」

<大人しく投降しなくていいので、素直に殺されてください>


「謹んで遠慮しますわ」


「ああ、逃げるのか?その方がこちらにとって都合がいい……フフフ」

<Yes,DEAD OR DIE>


「それどっちにしても死ねって言ってますわ!?」

「だからほんとに管理局の人間なの!?」


「貴様らに選択の余地は無い、生殺与奪は私にある。幼女を傷つけた罪は死すらぬるい。なあ、ガングニールよ」

<DEATH,DEATH,DEATH,DEATH,DEATH,DEATH,DEATH,DEATH,DEATH>


「こわっ!?」

「うっとしいですわね……IS発動、シルバーカーテン!」


 途端に二人の姿が消えた


「その程度で逃げられるとでも?なあ、はやて?」

<Search And Destroy>


 その様子に焦ることも無く、静かに笑みを浮かべると呟く


「位置確認、詠唱完了……とりあえずその物騒なデバイス黙らせてな」


 眼前には詠唱を終了し、デバイスを天高く掲げるはやてが苦笑していた


「ふむ、安心しろ私はただ、お仕置きをだな……」


 にこやかに返事をしつつ手で首をコキっと捻る動作をする


「それ、完全にSATUGAIしてるから。まあ、ええわ。とにかく後4秒やから」

「む、了解」


 もう慣れてしまったのか、彼の発言に動じる事なく流し、告げるはやて。それに答えると千早は追跡を中断し、後方へと下がっていく


「離れて?なんで!?」

「まさかっ!?」


 千早が離れた事に動揺し、姿を表すと周りを見回す。二人、そうして空を見上げると巨大な魔力の塊が彼女らの頭上に現れる


「広域空間攻撃っ!」

「うっそ~ん!?」

 何が起こるのか理解した二人は、絶望の声をあげる


「デアボリック・エミッション!」


 その瞬間黒い光球が爆発し、一気に周りを包み込む


「うわあああ!!」


 叫びながら魔力光から必死に逃げるクアットロ、ギリギリの所で回避に成功するが


「トライデント……スマッシャーっ!」

「エクセリオン……バスタァ!」


 ガシャコンとカートリッジが排莢される音が響き轟音と共に魔力光が迫ってくる。彼女達が逃げた場所に先回りしていたフェイトとなのはである。彼女らに挟まれて絶対絶命に陥る二人


「IS発動!ライドインパルス!」


 彼女らに直撃する寸前にトーレが二人を救出、そのまま腋に抱え離脱していく


「ケツでかBBA自重しろ……」

「!?」


 直前で救援に入られ驚きながら、司令室に追跡を依頼するなのは。間に何か不快な言葉が聞こえた気がしたが、今はそれどころではない。しかし、残念ながら相手の速度が早すぎて結局ロストしてしまったのであった






 ……

 ………

 …………






「はあ……トーレ姉様助かりましたぁ」

「感謝……」


 腋から離され地面に浸りこむとトーレに礼を言う二人、そんな二人を見てため息をつきながら


「ボーとするな、さっさと立て、馬鹿者共目。監視目的だったが来ていてよかった。お嬢はもう……痛ぅ……」


 そこまで言うと、少し辛そうに腕をさするトーレ


「?どうされましたのですか?」

「いや、少し掠ったみたいだ」

「完全に避けきった思っていたのですけれど」

「違う、あいつらじゃない。誰かが逃走中に一撃を加えていった」

「誰かわからないですの?」

「それどころではなかったからな。ただとても不愉快な言葉だけは聞こえた」


 苦々しい顔をしながら腕をさするトーレ


「私はばばあじゃない……確かに他のナンバーズより老けて見られるけど、それに誰がケツ……ブツブツ」

「あ、あの……トーレ姉さま?」


 俯きながら若干キレ気味に呟く彼女に恐る恐る声をかけるクアットロ


「……なんでもない。合流して戻るぞ」


 鋭い目つきで答えると、そのまま立ち去るのであった……




 ……

 ………

 …………





「あちゃあ、逃げられたか……」


 上空で悔しそうに呟くはやて


『ああ、こっちも召喚士に逃げられた。けど新人達のおかげでレリックは無事だ。ああ……』


 悔しそうに報告するヴィータ


『そうか、わかった。皆無事なんやったら問題無いし、ようやってくれたよ』


 ティアナ達の機転のおかげでレリックの確保と、少女の保護を無事完了し、皆帰還するのであった










 レリックと共に保護した少女は聖王医療院に入院させることになっていた。夕刻、検査を済ませた彼女の様子を見になのはが病室まで移動している


『検査も問題なかったし、これからそっちへ戻るね』

『ん、了解』

『フォワードの子達は?』

『元気だよ?エリオとキャロの怪我も割りと軽かったし、報告書書き終えて今は部屋じゃないかな?』

『そう』


 夕焼けに照らされる廊下を歩きながら、先に戻ったフェイトと念話で会話するなのは


『私も戻って報告書書かなきゃ、今回は枚数多そう……』

『大丈夫、資料とデータは揃えてあるから』

『にゃはは、ありがとう』

『それから、そっちに千早が行ってると思うから』

『え”なんで?確か一緒に戻ってたよね?』

『うん、あの後ものすごい勢いで報告書書き上げてそっち走って行ったから』

『そ、そう』

『それでね、はやてがその報告書について聞きたいことがあるって言ってたって』

『ん、解ったよ』


 そう返事を返すと、目の前に売店があり、陳列棚のウサギのぬいぐるみへと視線を移すなのは


「すみません~」


 それを手に取るとカウンターへ声をかける。奥からご年配の女性の係員が顔を出す


「はい、いらっしゃいませ」

「すみません。これを」

「はい、ありがとうございます」


 支払いを済ませ、病室へと移動しようとするなのはに向かって


「ああ、その制服、お嬢ちゃん管理局の人?」


 不意に声をかけられる


「え?ええ、そうですけど」

「あら、やっぱり」


 ものすごく納得したような、驚いたような表情をされる


「あ、あの?」


 その様子を不審に思い質問すると


「ああ、ごめんなさいね。いや、先ほど、貴方と同じ制服を着た男性が同じぬいぐるみを購入していったから」


 怪訝な表情をしていたのか申し訳なさそうに、説明する売店の係員


「同じ制服……」


 その言葉に嫌な予感がひしひしと背中を駆け抜けていく


「まあ、どこにでもあるぬいぐるみなんだけどね。あるだけ在庫をくれって言ってたんで、ちょっと覚えてたんだよ」

「あ、あはは……」


 あるだけくれって……一体どれだけ買っていったんだろう?


「一応お断りを入れたんだけど、あの人はそれでも全部買っていったんだけど……よかったのかしらね?」

「そ、そうですか……それは申し訳ありません」


「いや、お嬢ちゃんが謝ることじゃないよ。寧ろこっちがお礼を言わなくちゃいけないしね。それにしてもあんなたくさんどうするつもりなのかしら?」

「さ、さあ?どうするんでしょう」


 苦笑いを浮かべながらお礼を言うと、そのまま病室へと移動するなのは。何故かこの先に何が待っているか想像できるだけに嫌な汗が流れてくる。そうして目的の病室の前まで到着すると覚悟を決め入室する


「……」


 無言で室内を見回すなのは、夕闇に照らされた室内に静かな寝息で寝ている少女。その周りには彼女をまるで見守るかのように大量のぬいぐるみが並んでいた


「これ、目が覚めたら怖がらないかな?」


 少し不安に思いながらも、少女の方へと近づくなのは


「……ママ」


 寝言だろうか、悲しそうに呟く少女を見つめる。ふと彼女のすぐ傍にある同じウサギのぬいぐるみに一枚の紙が貼ってある事に気づくなのは、そこにはこう書かれていた


『特等席に置く権利は君に譲ろう』


 それを見たなのはは、少し苦笑する。見ればそのぬいぐるみだけは少女を見下ろしていた。まるで守るかのように、そして不自然な空きスペース


「何を考えてるのか……本当不思議な人」


 そう呟くとぬいぐるみを置き少女の頬を優しく撫でる


「大丈夫だよ?傍にいるからね……」


 そうして優しく語りかける。悲しそうな表情が夕日に照らされていた……






 ……


 ………





<よかったのですか?マスター>

「何がだ?」

<あれほど楽しみにしていたのでしょう?>

「ふふふ……あれで良いのだ」

<かっこつけているだけでは?>

「何を言うか、いいか。私はロリコンだ。彼女を守ることはできても彼女の母親には慣れん」

<父親になればいいのでは?>

「そうだな、そういう選択肢もあるかも知れん。しかし、彼女は母親を求めている。だから……」

<だから?>

「私は明日から女になる」

<は!?>

「簡単なこと、幸いなことに変身魔法のコツは覚えた。後は継続時間、否、デフォルトの状態を女性にもっていく」

<いやいやいやいや!?おかしいですって!?>

「何がおかしい?私は幼女の為なら性別すら超越する存在になれる。何故なら私はロリコンだからだ!」

<ロリコン関係無い!?>


 覚悟を決めた表情で宣言する彼に突っ込むガングニール、久しぶりに暴走した主になすすべもない


<マスターが!マスターが!ご乱心!!!>

「はっはっはっ!私はやるぞ!ガングニールよ!茨の道へと!」

<ああ……夢なら覚めて……>


 高らかな笑い声とともに優雅に去っていく……後日、彼の計画は六課のメンバーによって阻止されることとなるのだが、約一名だけ……


「ああ、千早が女の子になるんだ。じゃあ、色々準備が必要だね」


 と大量に衣服を揃えた上、嬉しそうに引越しの準備をする金色の死神がいたが、桃色の魔王に正気に戻されたそうだ……




 お久しぶりです。今回は全部シリアスに挑戦。思ったより痒くなったので、次はギャグ成分を……ネタを探さなければ……ではまた。



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾弐話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:09
 しばらくTSが続きます……







「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって……」

「なに、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいらっしゃる。私が仲介したほうがいいだろう?」

「はい」


 助手席でも申し訳なさそうに返事をするなのは、現在彼女らは聖王医療院へとシグナムの運転で車を走らせている


「しかし、検査の結果、何かしらの白黒がついたとしてあの娘はどうなるのだろうな?」

「当面は、六課か教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、長期の安全確認がとれてからでないと……」


 車内に不安な空気が漂う。これから先、あの娘はどうなるのだろうか?そんな言い知れぬ不安が……


 そんな折


『騎士シグナム、聖王教会、シャッハ・ヌエラです』


 不意に通信が入る


「どうされました?」

『すみません、こちらの不手際がありまして、検査の合間にあの娘が逃げてしまいました……』


 不安が的中したようである。急いで現場へと車を走らせるシグナムであった……




 ……

 ………

 …………




「申し訳ありませんっ!」


 二人が到着すると駆け足で近づき謝罪するシャッハ


「状況はどうなっていますか?」


 そんな彼女に対し冷静に今の現状を確認するなのは


「はい、特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。今のところ飛行や転移、侵入者の反応は見つかっていません」

「外には出られないはずですよね?」

「ええ……」

「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長」

「はい」


 現状の説明を確認すると、行動に移すなのは。緊張が走る中少女の捜索が開始されるのであった


「検査では一応危険反応は無かったのですよね?」

「ええ」


 院内の捜索をするシグナムがシャッハにそう質問する


「魔力量はそれなりに高い数値でしたが、それも普通の子供の範疇でした」

「しかし、それでも……」

「悲しいことですが、人造生命体であることは間違いないです。どんな潜在的危険を持っているかは……」


 難しい顔で室内を調査しながら語るシャッハ、最悪の場合を想定しながら捜索をする二人。空気が完全に重たくなっていた……


 外を捜索するなのはが中庭の方へと移動していた

 中庭へと到着すると周りを慎重に見回すなのは、すると不意に物音がした。その方角へと視線をうつすと、その少女はいた。彼女の瞳は右が翡翠色、左が紅色のオッドアイで、異質な瞳が不安そうになのはを見上げていた。ふと、視線を下にすると、彼女が買ってきたであろううさぎを胸に抱いていた。


「こんなところにいたの?」

「……」


 なのはを警戒する少女


「心配したんだよ?こっちにおいで?」


 そんな少女をあやすように、ゆっくり近づいていくなのは


「あれは!?」


 その光景を窓から見かけたシャッハが


「逆巻け、ヴィンデルシャフト!」


 そう叫ぶとバリアジャケットを展開し、なのはと少女の間へと移動しデバイスを前に構えながら威圧する


「あ、あ、う……」


 余りの恐怖にその場に震えながら後ろへとへたり込みそうになった、その瞬間


「……まったく、これだから年増は嫌よね?若さを妬み、そうやって威圧する」

「!?」


 少女を後ろから支え撫でながら静かに文句を言うと


「うええええん!」


 安心したのか泣き出してしまう少女


「あらあら、よっぽど怖かったのかしら?ちょっと貴方向こうに行ってもらえるかしら?」


「え?は?それより!貴方は誰なんですか!」

「私?私はロリコン。幼女を守る者よ」


 少女を撫でながら、静かに語る彼女、銀色の髪に白い肌が陽光に照らされ輝き、まるで母親のよう少女を包み込んでいた


「は?ロリコン?何を言って……」

「……シスターシャッハ。少し下がっていてもらえますか?」


 少し動揺しているシャッハの肩に手を置くと彼女に下がるようにお願いをするなのは


「え、あ、はあ……しかし危険では?」

「ある意味危険ですが、大丈夫です。誠に遺憾ながらあれは身内です……」

「え?」


 驚いた表情のシャッハを他所に、二人の前まで近づくと


「……で?何をしているのかな?千早君?」


 ものすごく恐ろしい笑顔で、千早に迫るなのは


「何よ?私も今来た所よ?そしたら、そこの年増がこの子を虐めようとしてたから助けただけ」

「うん、そういうことじゃなくって……なんで、女の子になっているのか?それからいつの間にここに来たのかって聞いているの」

「ふ、知れた事。そこに幼女がいる。ならそこに私がいる。ただそれだけよ」


 この変態は幼女のことになると、周りが全く見えなくなるのか?と眉間に皺をよせ考えこんでしまうなのは、今までの緊張感がまったく台無しになっていた


「……」


 そんな二人を不思議そうに見上げている少女、その視線に気づいたのかバツの悪そうな笑顔で


「ごめんね?びっくりしたよね?大丈夫?」

「……うん」


 少女が落としたぬいぐるみの泥を叩き、渡しながら


「はじめまして、高町なのはって言います。お名前、言える?」

「ヴィ、ヴィヴィオ……」

「ヴィヴィオ、可愛い名前ね。私は千早、最上千早、唯のロリコンよ」

「……ロリコン?」

「え、えっと!この人の言うことは聞かなくていいからね?」

「え?」

「あ、そういうこと言うんだ?ヴィヴィオ知ってる?この人は魔王、怖い人よ?」

「怖い人?」

「そう、いつも私を虐めるのよ?私は唯ヴィヴィオみたいな可愛い子と仲良くしたいだけなのに、酷いわね?」

「うん、酷い……」

「変なこと教えこまないで!ていうか、何、自然に仲良くなってるの?」

「え?」

「そこで不思議そうな表情しない!」

「当たり前じゃない、だって私はロリコンよ?」

「なんでもロリコンで片付けるな」

「あ、あの……お二人とも、その辺で……」


 会話内容があさっての方向へ進みそうな二人を窘めるシャッハ、その言葉にコホンと一息ついて


「ヴィヴィオはどこか行きたかったのかな?」


 満面の笑みでヴィヴィオに向かい質問する


「ママ、いないの……パパも……」


 その言葉にはっとなる。悲しそうに俯きながら語る少女に何も言えなくなる


「そう、大変よね?じゃあ、私達が一緒に探してあげるわ、ね?」

「……うん」






 ……


 ………




「機動六課に臨時査察?」

「うん、地上にそんな動きがあるらしんよ」

「地上本部の査察はかなり厳しいんだよね?」

「そう、ただでさえうちは突っ込みどころ満載なのに……」


 ロリコンに、ショタコンとか、女装するとか、女になるとか、露出するとか、マゾヒストだとか……


「あれ?なんか一人消したら問題解決しそうな気がしてきた」

「はやて、多分もう手遅れだと思うよ?」

「フェイトちゃんがそれ言う?あんだけ染まったフェイトちゃんが」

「染まった?なんのことかな?」

「自覚が無いってことは無実やないんやで?」

「なんのことかわからないけど、とりあえず大丈夫?」

「ああ、大丈夫や。なんなら査察にあいつをぶつけたるし……」


 悪代官のような笑みを浮かべながらとんでもない事を口走り出すはやて


「はやて、自暴自棄になるのは早いよ?」

「冗談やて、まああながち冗談でもないんやけどなぁ」

「どういうこと?」

「あの変態、結構顔が広いから、なんとかなるかなって」

「そういえば、前もそんなこと言ってたっけ?私はてっきり冗談だと思ってたんだけど」

「ん?あ、そっかフェイトちゃんは知らないんやったっけ、あの変態、結構有名人やよ?」

「そうなんだ」


 どのような組織にも派閥というものは存在する。それは魔法世界であるここミッドチルダも同様で、権力や思想などで裏で争っている。所謂派閥争いというものである


「そうやねん。例えばレイティ一佐なんか、千早のこと気に入ってて引きぬくとき色々嫌味言われたしなあ」

「レイティ一佐って、確か穏健派で有名だったけ?」

「そう、見た目ヴィータちゃんと同じくらいの人。それからエミリアも」

「エミリア二佐も!?」

「そう、エミリアなんか武闘派やからほんま説得するのん厄介やったんやから」

「でも、レイティ一佐はわかるけど、エミリア二佐は……」


 そう、レイティ一佐は見た目幼い、故に千早の琴線に触れるだろう。しかしエミリア二佐はバリバリの武闘派らしく


「そう、うちでいうとこのシグナムをもう少しごつくした感じやね」

「じゃあ」

「まあ、あいつの歯に衣を着せぬ物言いを気に入ったらしい」

「何を言ったんだろう……」

「まあ、ろくな事や無いんわ確かなんやろうけど」


 どうせとんでもない事を口走ったんだろうと、二人ため息をつく


「ま、まあ、そんなことはどうでもええねん」

「そ、そうだね。ね、ねえはやて?」

「うん?」

「これは査察対策にも関係してくるんだけど、六課設立の真の理由、聞いてもいいかな?」

「そうやね、ちょうど今日カリムのとこに報告に行くんよ?クロノ君も来る」

「クロノも?」

「そん時に全部話すよ。なのはちゃんと、それに千早にも話しておいた方がええか……二人が戻ってきたらついて来てくれるかな?」

「うん、なのは達戻ってるかな?」


 言いながら、なのはへと通信を繋げる。繋いだ瞬間に聞こえたのは子供の泣き声、それにおろおろと同様するフォワード陣、その中心には困惑するなのはの姿が映っていた


『……あの?一体何があったのかな?』

『あ、フェイト隊長、実は……』

『いっちゃやだっ!』


 困惑気味に返事をするなのはに苦笑しながら、ロビーへと向かうのであった


 その途中


「げ……」

「あ!」


 何やら包を大事そうに抱えながら歩く千早の姿が


「ん、あら?」

「……ちょう、待ってな。私にも色々とあってな」


 その姿を目撃したはやては、少し心を落ち着けるため静かに深呼吸をした


「はやて?」


 その様子に心配そうに声をかけるフェイトに笑みを浮かべ大きく息を吐いた彼女は


「さて、色々と突っ込みたいところやけど、言い分を聞こか?」

「?何が言いたいのかわからないのだけれども、とりあえずクッキー」

「あ、それ、美味しいよね。駅前の?」

「そう」

「へえ、千早も甘いものが好きなんだ?」

「違うわよ?ほら、ヴィヴィオにあげようかなって」

「ヴィヴィオ?もしかして、例の女の子のことかな」

「そう、私達になついて可愛いのよ」

「へえ」

「どうかした?」

「ん、なんでもないよ?」

「そう?」


 と自然に会話する二人にため息をつきながら


「あーとりあえずな、フェイトちゃんは黙っとこか?」

「?わかったよ。はやて」

「何よ?私は忙しいの、今から天使に会いに行くのだから」

「ああ、そうやな。天使ならいくらでも会わせたる。天国でな?」


 拳をゴキゴキと鳴らしながら静かに笑みを浮かべるはやて


「物騒この上ない発言ね。常識を疑うわ?」

「アンタに言われとうないわっ!だから気持ち悪い口調やめいっ!」

「だから、治らないのよ?もう受け入れるしかないわよ」

「止めるという選択肢は無かったんか?」

「まあ、私にも色々あるのよ?それからしばらくこの姿でいくから、よろしく」


 そう笑顔で言う


「はあっ!?」

「そうなの?」

「ああ、私は母性を極めなくてはならない。しかし、それには性別という大きな壁が立ちはだかっているの」

「そうだね」

「や、『そうだね』ちゃうから、フェイトちゃん」

「だから、まずは性別を殺すことにしたの。そして、私は究極のロリコンとして極みへと昇りつめるわ」

「そうなんだ。うん、応援するよ」

「いや、応援したらあかんから、格好いい事言ってるように聞こえるけど、究極の変態目指してるって宣言してるだけやから」

「さて、そうこうしている間に目的地に到着したのだけれども」

「すごい泣き声だね」

「そうやね……って、あかんなんか一気に疲れたわ。もうどうでもええわ」

「「??」」


 項垂れるはやてに対して首を傾げる二人、あの真面目なフェイトが段々遠くへと行ってしまった事に、今更ながら千早を引きぬいた事を後悔するはやて。テンションが下がったまま泣き声が響く部屋の扉を開ける。室内へと入ると、抱きついて泣いている少女に対し何もできず苦笑いを浮かべるなのはと、なんとかしようとするも、どうしたらいいのかわからずオロオロするスバルとキャロがいた


「エース・オブ・エースにも勝てへん相手もおるもんやね」

「そのようね、しかし、納得できないわね。何故か?なのはの事が気に入ったみたいなの」

「そうなの?」

<あ、あの三人とも?助けて……>


 その様子を見ながら冷静に語りあう三人に念話で助けを求めるなのは


「スバル、キャロ?とりあえず落ち着こか?離れて休め」


 二人に離れるようにはやてが指示すると、静かにヴィヴィオに近づいていくフェイトと千早


「ただいま~」

「こんにちわ~」


 そうして、屈みこむと挨拶するフェイトと千早。不意に声をかけられて驚くヴィヴィオ


「さて、これな~んだ?」


 屈みながら後ろに隠していた包をヴィヴィオに見せると


「?」


 首を傾げながら包を見つめる


「いい匂い……」

「ふふ、ああ、なんて可愛いのかしら……今なら私、世界を滅ぼせそうよ」

「そうだね。でもそんなことしたら私が千早滅ぼすよ?」

「……あ、あのフェイトちゃん?」

「ああ、ごめんなのは」

「じゃあ、はい、あ~ん」


 最早ヴィヴィオしか見えていない千早は袋からクッキーを一つ取り出すと、そのまま彼女の口にもっていく


「……おいしい」

「はうあっ!もう死んでもいいわ」


 笑顔で言うヴィヴィオの姿に悶絶する千早、虫の息である


「えっと……」


 とりあえず、ヴィヴィオが泣き止んで離れた事に安堵するなのは


「相変わらずの変態っぷりやな……」


 後ろで呆れた表情で言うはやてに同意するフォワード組


「ま、まあ千早君が変態なのは仕方ないよ」

「?変態?」

「ヴィヴィオはまだ知らなくいいよ」

「?」

「さて、色々あったけど、こちらフェイトさん、なのはさんの大事なお友達」

「はじめまして、ヴィヴィオ」

「こんにちわ……」

「ヴィヴィオはどうしたのかな?」

「……」

「なのはさんと離れるのが嫌で泣いてたのかな?」

「……うん」

「そうなんだ。でもね、なのはさんちょっとお出かけしなくっちゃいけないんだ?」

「ぅぅ……」

「ヴィヴィオはなのはさんを困らせたい訳じゃないんだよね?」

「……うん」

「だから、いい子で待ってよ?ね?」

「うん」

「ありがとね。ヴィヴィオ、ちょっとお出かけしてくるだけだから」

「うん」


 泣きそうな顔で返事をするヴィヴィオに、ほっとした笑顔で語りかけるなのは


「大丈夫よ、二人の留守中は私が全身全霊を持ってヴィヴィオを退屈させないから」


 あっちの世界に行っていた千早が二人にそう答えると


「何を言ってんねん。あんたもや」


 眉間に皺を寄せながら、千早の襟首を掴むはやて


「え?私はこれからヴィヴィオと一緒に……て、あれ?」


 そうしてそのまま引きづられて行く千早、部屋に残されたフォワード組は苦笑いを浮かべながら見送っていた……




 ぼちぼちの更新、陸時代の話、多分あの世界の上官は女性が多いはず?名前は適当だったり……しばらくはほのぼのな話を書ければいいかなって思ってます。とりあえず百合いいよね?奴は男だけど……まあ、変身だし、変態だし……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾参話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:10
 思っていたよりTS千早さんが人気でびっくりしました。







「ごめんねえ、おさがわせして」


 ヘリに乗り込むと謝りながら席につくなのは


「いやあ、ええもん見せてもらったよ」

「うぅ……」


 はやてが茶化すように言うと苦笑いを浮かべる


「しかし、あの娘はどうしようか?なんなら、教会に預けとくのもええけど」

「平気、帰ったらあたしがもう少し話してなんとかするよ」

「そうか」

「今は周りに頼れる人がいなくって、不安なだけだと思うから」


 静かにそう語るなのは


「あー、ところでそろそろ拘束解いてもらえると助かるのだけれども?」

「ん、後でな。今は真面目な話しとるから」

「それで、いつ解いてもらえるのかしら?」

「ああ、教会に到着したらかな?」

「それ、完全に解く気無いわよね?」

「まあ、遠回しに言えばそうやね」

「酷いわね」

「そうやな」

「ま、まあまあ、とりあえず千早君も反省してるみたいだし?」

「そうだよ、はやて。それにこのまま教会に連れて行ったら何事かと思われるよ?」


 簀巻きにされている千早に苦笑しながら二人がはやてを宥める


「まあ、私も少しやり過ぎかなとは思っとる」

「少しなのね」

「ああんっ!?」

「いや、なんでもないわ……」


 ちょっとキレ気味で睨まれると萎縮する千早の姿を見ては更に苦笑するのであった


「……酷い目にあったわ。で?これからどこへ行くの?」

「聞いてなかったんかいな、カリムのとこやで」

「聞くも何も、いきなり簀巻きにされてヘリに押し込まれたのよ?どこのテロリストよ」

「テロリストって……」

「あ、あはは……」


 拘束を解かれて、体を撫でながらため息混じりに言う千早


「ねえ、千早君はどう思う?」

「ん、どうって?」

「ヴィヴィオの事」

「んー」

「そうね。あの子が望むなら私は母でも父でもなろうと思ってるわ。でも、多分あの子はそれを望まない」

「なんで分かるの?」

「なんとなくかしら?」

「なんとなく?」

「じゃあ、放っておくの?」

「そんなわけないわよ?私を誰だと思ってるの?」

「女装癖があるロリコンの変態やと」

「酷いわね、まあ、そうなんだけど」

「認めるの!?」

「時には許容することも大事よ?」

「開き直るとも言うけどな」

「えーと、とりあえず話がそれてるよ。二人共」


 まったく会話が進まない事に苦笑するフェイト


「コホン、そうやね。真面目な話どう思うん?」

「そうね、真面目に答えるなら、養子にするのは簡単よ?手続きさえ済ませれば良いのだから。けど、一人の人間を養うっていうのは簡単な事では無いの。それは経済面だけを言っている訳ではないわ。その子の全てを背負う覚悟が必要なの。だから、いくら私でも2つ返事はしない……それが責任と言うものだから」

「……千早君」

「うん、そうだよね。私もそう思う」

「まあ、急がなくてもゆっくり話をしていけばいいわ」

「そうやね。しかし、意外やわ」

「ん?何が?」


 笑みを浮かべながら言うはやてに首を傾げる千早


「いやあ、ちゃんと考えてるんやなって思って」

「あら?私を誰だと思っているの?ロリコンとは子供の為なら騎士にも悪魔になれるのよ?」

「あはは、千早君らしいね」

「そうだね、なのは。よく考えて決めよ?私も一緒に手伝うよ」

「うん、ありがと。フェイトちゃん」


 そう提案するフェイトに笑顔で礼を言うなのは


「ところで、もし、なのはが母親の代わりを務めたとして」

「うん」

「多分そうなると後見人はフェイトかはやてになるじゃない?」

「そうやね」

「そうなると、私は父親の代わりを務……」

「……何を言っているのかな?」


 そこまで言おうとしたらフェイトにすごい顔で睨まれた。


「いや、だから……母親はなのはが務めるじゃない?となると父親の代わりがいるわけで……」

「だからなんで千早なの?それなら私がなるよ?」

「いや、貴方女じゃ」

「千早も女の子だよ?」

「いや、私はおと……」

「女・の・子・だよ?」

「はい、今は女です……」


 静かに迫るフェイトに頷くことしか出来ない千早、その様子を見た二人は


「あかん、もう末期やな」

「あ、あはは、もうなれたの……」


 諦めたようにため息をつくのであった……








 ……

 ………

 …………






 ――コンコンッ


「どうぞ」


 聖王教会に到着したはやて達はとある一室へと入る


「失礼致します。高町なのは一等空尉であります」


 管理局員らしく、キレのある動作で敬礼をするなのは


「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」


 同じく、凛々しく敬礼するフェイト


「最上千早二等陸尉……ロリコンです」


 無駄の無い動作で敬礼する千早


「……ちょっとまて」

「何よ?」

「いや、まあええわ。聞き間違いや」

「少し疲れているのではないのかしら?」

「ああ、そうかも知れへん。誰かさんのせいで」

「大変ね」

「いらっしゃい。聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアと申します。ところでロリコンとは?」

「やっぱ誤魔化されへんかったか」

「当たり前じゃない。その程度で誤魔化されると思っているの?」

「誰のせいっやと!思ってんねんっ!」

「えーと……とりあえずどうぞこちらへ」


 二人のやり取りに苦笑しつつ案内するカリム。罰の悪そうな表情で会釈するフェイトとなのは、早速連れてきた事に後悔し始める


「どうぞ、おかけになって」


 そう言うと席につくカリム、順番にはやてが座り


「失礼します」

「クロノ提督、少しお久しぶりです」

「ああ、フェイト執務官」

「失礼するわね」

「ふふふ……お二人ともそんなに固くならないで、私達は個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ?」

「あら?そうさせてもらうわ」

「あんたは最初からそうやろうがっ!てか、カリムとは初対面やろ?」

「ふふ、構いませんよ」

「まあ、騎士カリムがそう仰せだ。いつも通りで平気だぞ」

「それじゃあ、クロノ君ひさしぶり」

「お兄ちゃん、元気だった?」

「なっ、それはよせって言ってるだろう?お互いもういい年なんだし」

「そうね、その年でお兄ちゃんは痛……なんでもないわ……」


 思いっきり恐ろしい瞳で睨まれた……


「年齢は関係ないよ、お・に・い・ちゃ・ん?」

「そ、そうだな」

「千早?あんたはちょっと黙っとき。話が前に進まへん」

「あ、あはは、その方がいいかも?」

「まあまあ、皆さんその辺りで……本題にいってもよろしいでしょうか?」


 カリムが苦笑いを浮かべながらなだめるように言うと静かになる。ふざけていたはやても姿勢を但し皆を見つめながら


「で、今回の話は昨日の動きについてのまとめと、改めて機動六課設立の裏表について、それから今後の話や」


 そう言うと、周りをカーテンが包み込む。陽の光が遮られ、少しテーブルの周りが暗くなる。そんな重苦しい雰囲気の中、まずはクロノが話を始める


「まずは機動六課設立の表向きの理由は、ロストロギア、レリックの対策と独立性の高い少数部隊の実験例。知っての通り六課の後見人は僕と騎士カリム。それから僕とフェイトの母親であり上官のリンディ・ハラオウンだ。それに加えて非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束もしてくれている」


 知らされていない事実に少し驚くフェイトとなのは、ちなみに千早は少し眠くなっていた


「その理由は、私の能力と関係があります」


 そんな二人に、カリムがある物を見せる


「私の能力『プロフェーティン・シュリフテン』これは最短で半年、最長で数年先の未来それを詩文形式で書き出した預言書の作成を行なうことができます。2つの月の魔力が揃わないと発動できませんから、ページの作成は年に一度しかできません」


 そう言うと三人にページを見せる


「予言の中身も、古代ベルカ語で解釈によっては意味が変わる難解な文章。世界に起こる事件をランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば的中率や実用性は、割りとよく当たる占い程度。つまりは余り便利な能力では無いんですが……」

「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。信用するかどうかは別にして有識者による予想情報の一つとしてな」

「ちなみに地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップがこの手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ」


「レジアス・ゲイズ中将、だね」

「まあ、確かにそんな信憑性にかける予測情報じゃあ、実働部隊の命を預かる将としては判断材料にしたくないでしょうね」

「また、あんたは……もう少しオブラートに包むとかできへんの?」


 ポツリと呟いた千早にはやてが窘める


「別に?ただ……」

「ただ?」

「彼は決して嫉妬や妬みで敵対するような無能ではないということ」

「……」


 少しトーンを落とすと説明をする千早、その様子を静かに見つめる


「例えば強い正義感にカリスマ性、そして優れた統率能力。そんな堅物を絵に書いたような人物が、よく当たるとはいえ占いに身を委ねたりするわけはないわよね」

「そうやね」

「まあ、もっとも多少は私情もありそうだけれども、例えば地上を軽視する本局と仲の良い聖王教会の言う事は聞きたくないとか、その教会と本局の強力なバックアップを受けている機動六課は嫌いとか、ね」


 不敵に笑いながらそう語る千早を全員が驚いた表情で見つめる


「えっと、中々ユニークな意見ですね。そういう風に表現されるとどう答えたらよいか判断に困りますね」

「そうだな。皮肉とも評価ともとれるが、結局陥れている感じが……」

「あ、あはは……」

「流石千早だね。的確だったよ」

「こいつは、時々確信めいた事を言うよるから……」

「私もたまには真面目な事言うわよ?」


 そう言うと頬杖突きながら、クロノの方へと視線を向けさっさと次話を進めるよう示唆する


「ま、まあ、彼女の話は置いておいて、数年前から少しづつある事件が書きだされている」

「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地、死せる王の元、聖地より彼翼が蘇る。死者達が踊り中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る方の舟も砕け落ちる」

「それって……」

「まさか……」

「ロストロギアをきっかけに始まる、管理局地上本部の壊滅と……そして、管理局システムの、崩壊」






 ……

 ………

 …………






 夜、カリムの所から六課へと帰ってきた4人


「そんなら、ここで解散や」

「うん」

「情報は揃ったし、大丈夫だよ」

「そうね、久しぶりのシリアスモードに疲れたわ」

「ところであんたはいつまでその状態でいるつもりや?」

「そうね……まあ、しばらくはこのままでいるわ」

「やった」

「フェイトちゃん喜びすぎや」

「あ、あはは……ま、まあ害は無いんだしいいじゃないかな?」


 いつも通りの会話にほっとする。そんな中、居を決したように


「あ、あのな!私にとって二人は命の恩人で、大切な友達や。六課がどんな展開と結末になるかは、まだわからへんけど……」

「その話なら出向決める時にちゃんと聞いたよ」

「私もなのはもちゃんと納得してここにいる。大丈夫」

「それに、私の教導隊入りとか、フェイトちゃんの試験とかはやてちゃんや八神家の皆すごくフォローしてくれたじゃない」

「だから今度は、はやての夢をフォローしないと……って」

「……あかんなぁ、それやと恩返しとフォローの永久機関や」


 嬉しそうな顔でそう言うと


「……で?私の存在は無かった事になるのかしら?」


 不敵な笑みで声をかける千早


「あ、あはは、忘れてた……」

「酷いわね?まあ、いいんじゃないかしら?そういう関係」

「そうだね、友達ってそういうものだと思うよ」

「うん……」

「そう、私の幼女への愛も永久機関……奉仕と献身、そして守護。それと同じ」

「そうだね、ロリコンってそういうものだと思うよ」

「それは違うよ?フェイトちゃん」

「「「あはは」」」


 またいつもの調子に笑顔になるはやて達、ひとしきり笑った後


「八神部隊長、今のところ部隊長は何も間違っていないであります」


 なのはが、敬礼をしながら発言すると


「だから、大丈夫。いつものように、堂々と命令してください。胸を張ってえへっと」


 同じく続けてフェイトが続ける


「無い胸を張っても仕方無いと思うのだけれども、突っ込みがないのは面白く無いわね」



 最後に千早が落とし、思いっきり鳩尾へと拳を入れられる。その様子を見てまた笑うのであった……









 今期の春アニメ録画貯めていた分を見まくってます。「働く魔王様」と「俺の青春ラブコメは間違っている」と、「ゆゆ式」がおすすめw。後は「俺妹」またラストはウェブかよOTL。一期の時も忘れてて最後見れなかった思い出がw超電磁砲やばい、何がやばいって上条さん登場。6話辺りからどれだけ待っていたか、やっぱなんだかんだいってああいう王道主人公が大好きです。ではまた~


 誤字修正しました



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾四話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:3ddd5703
Date: 2014/12/18 00:10
 今回少しアレな話です。もしかしたらキャラ崩壊とかしているかも知れません。こんなんじゃないとかあるかもしれませんのでとりあえず先に誤っておきます。すみません。





 最上千早の朝は早い、まだ暗いうちに起床しては日毎ローテーションを組み自己鍛錬を行なう。最近の彼の訓練は女性化したまま日常生活から戦闘までこなせるよう鍛錬を行なっている。


「……」


 静かに気を練る動作をしながら静かに構えると、バリアジャケットを纏う。そうして、次の動作へと移っていく。そうして彼の訓練は進んでいった。そうしてひと通り鍛錬をこなし、そろそろ終えようとした頃


「早朝から精が出るな」


 不意に後ろの方から見知った声が聞こえる。振り向くとそこには腕を組みながら不敵な笑みを浮かべながら立つシグナムがいた


「ん、まあ、ね」


 タオルで汗を拭いながら答える千早、何故か嫌な予感がして仕方が無い


「しかし、貴様も一応は鍛錬をしているのだな」

「一応って……まあ、最近はこの状態のまま戦闘をこなしても元に戻ることは無いかしら?」

「ほう……それは相当腕をあげたと言うことか?」

「んー、どうかしら?確かに常に魔力を消費した状態であるこの姿を通常状態にすることで、精神と体の負担は減るわね」


 そうすることで幼女がいない場合でも長期戦闘に耐えれるくらいの魔力容量を確保できるわと説明する千早


「なるほどな、変態は変態なりに考えているということか」

「いちいち刺があるわよね……」

「それで?」

「それでとは?」


 なんだろうか、背中がザワザワする。本能的に早く彼女から離れなければと千早は少し思う


「だから、つまりだ。貴様は常に己に枷を施した状態であるということだろ?」

「まあ、そうなるわね」

「ということはだな。今、貴様が本気を出したらどうなる?」

「……何か企んでない?」

「そんなことはないぞ?個人的に気になっただけだ」

「そう、まあ、いいけど。やってみないとわからないのだけれども、ちょっと前に比べると倍くらいかしらね?」


 千早がそう返事すると、考えこむように腕を組むシグナム。しばらくすると何か納得したように頷くと


「そこで、提案あるのだが……」

「却下」

「まだ何も言ってはいないが?」

「どうせ、『いい機会だ、私と手合わせをしてみないか?成果も試したいだろう?』って言いたいんでしょ?」


 ため息を突きながらやれやれと首をふる千早


「解っているなら、問答はいらないな」

「この脳筋」

「うるさい変態」


 いつも通りのやり取り、彼女がこう言い出したら多分聞かないんだろうと溜息をつきながらどう逃げようか考えていたら


「あれ?シグナムさん……と、千早君?」

「おお、高町」

「ああ」

 フォワードメンバーの朝練に向かう途中のなのはに声をかけられる二人

「高町は今からか?」

「そうだよ」

「そう、大変ね。じゃあ、頑張ってね」


 逃げるなら今しかない、そう、迅速に速やかに無駄なくそのまま、そそくさと立ち去ろうとする千早だったが


「まあ、待て」


 シグナムに襟首を掴まれる


「……しつこいわね。大声出すわよ?」

「私は痴漢かっ!」

「同じようなものじゃない?朝から私を襲いたいとか?」

「なっ!?違うっ!」

「シグナムさん?」

「違うぞ、高町。私はただこいつが鍛錬しているのを見て手合わせをしようと提案しただけで」

「何よ?私が汗を流す姿に欲情したくせに……」

「貴様っ!」


 したり顔で言う千早に対し、顔を真っ赤にしながら怒鳴るシグナム。そんな二人のやり取りに


「あ、あはは、で、私朝から疲れたくないんだけど……」


 これから教導があるため、これ以上精神的に疲れたくないなのはが苦笑しながら言う


「あ、ああ、すまんな。それから今朝の訓練には私とこいつも参加させてもらってもいいか?」

「シグナムさんが?確かにそれはあの子達にとってはいい機会だと思うけど」

「私はするとは言って無いのだけれども?」

「……ああ、なんとなく理解したの。いいよ。隊長同士の戦い方を見るのも良い経験になるし」

「決まりだな」

「だから、私の意見は?」


 そうして、そのまま引きづられる形でフォワードメンバーの所まで連れて行かれるのであった……










 ……


 ………


 …………










「何をしている早く起きろ?」


 私は何をしていたのだろうか?確か、朝鍛錬をしていて……それから先のことは思い出せない……


「何を呆けいている?さっさと起きないか」

「む、朝から年増に起こされるとは何の罰ゲームだ?」


 声をかけられ振り向くとそこにはエプロン姿で立つシグナムがいた


「相変わらずだな。お前は、まあいい。それよりコーヒーでいいか?」

「ん、どういうことだ?」

「だからコーヒーで」

「いや、そうじゃなくて、何故お前が俺の部屋にいる?」

「何故って?とうとう頭がおかしくなったか?元からだが」

「朝から酷い言われようだな」

「お前が変な事を言うからだ。とりあえず用意するから早く顔を洗ってこい」


 そう言うと部屋を出て行くシグナム、一体何がどうなっているんだろうかと首を傾げながら洗面所へと移動する千早


「あ、ぱぱっ!おはよござます」


 顔を洗っていると、後ろから元気の良い声が聞こえた。振り返ると小さな幼女が笑顔で立っていた


「ん、おはよう」


 とりあえず幼女なので笑顔で挨拶を返したのだが……


「……確かに俺はロリコンだ。しかし、それは幼女を愛でる為で、手折る為ではなかったはずだっ……俺は……一体……」


 膝をつき崩れる千早の姿を首を傾げながら不思議そうに見つめる幼女


「どうしたの?ぱぱ?」


 とりあえずよくわからないので、千早の頭を撫でながら質問する幼女


「くっ……なんてことだ。覚えていないとはいえ……よりによって幼女を……ん?パパ?」


『パパ』と呼ばれたことに違和感を覚え、おもむろに顔をあげる


「にへー」

「ぐはぁあっ!」


 会心の一撃……天使が笑顔で幼女が二段重ねで……


「はあ、はあ、はあ……思わず鉄の誓いを破る所だった……しかし……」


 一人荒い息を整えながら、幼女の姿をもう一度凝視する。銀色の髪をオレンジのリボンでポニーテイルに括り、瞳は幼いながら少し凛々しい……なんだろうか誰かに似ている気が……


「ぱぱ、どうしたの?頭が悪いの?」


 頭を抱える千早を見て、心配そうに声をかける幼女


「……そこは、頭が痛いだと思うのだが……むう……」


 まじまじと幼女を凝視する姿は、第三者が見たら通報するレベルの気持ち悪さである


「……貴様は実の娘に何をしている?」


 そうこうしているとシグナムに叱られる


「なん……だと……」


 衝撃の事実に驚愕する千早


「何を言っている実の娘だと?」

「ああ、そう言っている」

「いやいや待て、最近はコウノトリさんが娘を運んでくれるのか?」

「ほう、私にあれだけの事をしておいて、いい度胸だな」

「ちょっと待て……俺が?お前に?何をしたんだ?」

「そ、それは……そ、その愛し……」

「いやいや!いい!やっぱいい!それ以上は精神的に耐えられん」

「どういう意味だ?」

「なんでもない、少し混乱しただけだ。だから、レヴァ剣をしまえ」

「……まったく。貴様は……いつまでも経っても昔と変わらん。少しは父親としてだな……」


 渋々レヴァ剣を仕舞うと、ブツブツと文句を言うシグナム。その姿を見つめながら、なんだろうか?どうしても納得できない事が二三あるが、今は黙っておいた方が良いと判断した千早は


「とりあえず、落ち着こうか……」


 そう自分に言い聞かせながら、リビングへと移動するのであった



 ……


 ………


 …………




『今朝のニュースです……』


 リビングでコーヒーを飲み落ち着く千早、ふと棚の上を見やると写真が立てかけていた。そこにはウエディング姿のシグナムとタキシード姿の自分が笑顔で写っていた


「ふむ……認めたく無いものだな……若さ故の過ちを……」


 一人そう呟くと自重の笑みを浮かべる


「過ち?」

「ああ、ぱぱはちょっと頭が悪いんだ。そっとしておいてやろう」

「やっぱり頭が悪いんだ。ぱぱ大丈夫?」

「……俺が傷つかない人間だと思ったら大間違いだ」


 項垂れる千早の姿を見て、二人はおかしそうに笑う


「……ま、まあ、なんだ。今日は非番だし、ゆっくりできるんだろ?」

「ん?そうなのか?」

「……本気で大丈夫か?」

「すまん、少しやばいかも知れん」


 何がなんだか今は理解できないが、今日は休みらしい。


「ぱぱもままも今日は一緒?」

「ああ、そうだぞ。ぱぱもままも今日はお休みだ」

「わーい!」


 嬉しそうにはしゃぎ回る幼女の姿を見つめながら……


「まあ、こういうのも悪くないか……」


 と一人納得するとコーヒーを啜る


『続いて、政治・経済のニュースです……この度地上本部首都防衛隊中将に就任された高町なのは中将による、就任の挨拶が行われました』


「ぶーーー!!!」


 思い切り口からぶちまけてしまった


「きたないー」

「どうした?」


 モニターに映るなのはの姿を見て思わず吹いてしまう千早、見れば白い軍服に身を包んだなのはの姿が映し出されていた


「……」

「ああ、高町か。最初はこれ以上階級が上がるのはいいと遠慮していたのだが、心境の変化があったんだろう。しかし、中将とは」

「いやいやいや、ありえんだろ?なのはが」

「ん?何を言っている?主はやてなど今や元帥となっておられるしな」

「……」


 流石の千早も唖然とするしかなかった


「もうあの事件からそれだけ経過したんだな……色々あったな」


 懐かしむ感じで外を眺めるシグナム、一体何があったのかよく解らない


「とりあえず、うん。理解した。ところでなのはが中将、はやてが元帥だとフェイトは?あいつは提督でもしているのか?」


 もはやあの三人の決定権で戦争ができるなと思いながら質問する千早


「……テスタロッサか……あいつは……いや、まあそのことは忘れよう」

「いや、エプロン姿で幼女抱えながら重苦しい雰囲気とかいらないから、とりあえず聞かない方が良い事は理解した」

「それがいい。せっかく、管理局ですら一部の人間しか知らない土地に引っ越したのだからな」


 そう言うと静かに部屋から出て行くシグナム、一体フェイトの身に何が?というより自分の身に何があったのだろうか?一人になり思考の渦へと意識を移していると……



<プチンッ!>



 不意に電気が全て消える。


「ん?」


 停電か?と思いながらとりあえずシグナムの所へ移動しようとした瞬間



<ザクッ>



 鈍い音と共に紅い液体が飛び散る


「……?」


 何があったのか理解できずとりあえず血に濡れた手のひらを見つめる


「ぐっ……」


 そのまま後ろに倒れ落ちる千早、何が起こったの理解できず周りを見回すと


「ふふふ……」


 静かな笑い声と共に目に移ったのは、先ほど自分を刺したであろう血のついた包丁を舐めるフェイトの姿だった。


「……どういうことだ?」

「どうして?なんでシグナムなの?なのはだったらまだ許せた……でも……」


 そう言いながら千早を包丁で滅多刺しにしてくるフェイト、千早の血を浴びながら笑う彼女はもはや狂気である


「ぐっ……」

「千早が悪いんだよ?ロリコンの癖に……結局おっぱいが好きなんだ……」




 フェイトの言葉を聞きながら意識が遠のいていく……シグナムと自分の娘であろうあの幼女はどうなるんだろうか?と心配しつつ、もうどうしようもないと……そうして千早の意識は完全に途絶えるのであった……

















 ――――――――――――BAD END







































「……という夢を見たのよ?」

「長いわっ!夢落ちかいっ!」

「あ、あはは……」

「とりあえず、シグナム?」

「……テスタロッサ、私にデバイス向けるのはやめてもらおうか?」

「しょーもねえな」


 食堂にて、談笑する隊長陣達、今朝シグナムに強制的に早朝訓練に連れて行かれた千早は案の定シグナムにボコボコにされ、尚且つなのはに無慈悲なお説教を喰らい、先程まで医務室でシャマル女史にお世話になっていたのである。


「しかし、まあ、唯一の救いは娘が可愛かった事かしら?」

「へえ……」

「あ、あはは……フェイトちゃん?とりあえず殺気を抑えて」

「ん、なんだろう。今なら私地上本部滅ぼせるよ?」

「あかん、完全にフェイトちゃんが病んできてる……」

「そんなことないよ?はやて、ただ、シグナムしばらく借りていい?」

「そないに殺気の篭った笑顔で言われてもなあ……というか、そもそもシグナムはライトニングの副隊長……フェイトちゃんの部隊やし」

「主はやて……」


 泣きそうな顔ではやてに助けを求めるシグナム、珍しく弱々しい彼女の姿に苦笑する。烈火の騎士が初めて恐怖した瞬間である


「ふふふ……」

「フェイトちゃん……やっぱり一回本気で全力全開でOHANASHIが必要なの」

「私もそう思うわ……限定解除の許可を……」

「私闘に限定解除はどうかと思いますが?」

「なら、あれを止めれるん?」


 苦笑しながらフェイトとなのはを指さすはやて、そこには瞳のハイライトが消えたフェイトと、それを見つめながらため息をつき気を開放するなのはの姿があった


「……無理です」

「よろしい」


 二人の姿を見て項垂れる二人


「ふふふ……さて、ヴィヴィオの様子でも見に行こうかしら?」


 そんな彼女らとは関係なく、元凶は一人ウキウキしながらコーヒーを啜るのであった。ちなみにこの後、全力全開のOHANASHIがあったかと言うと……



「ああ、今度はフェイトとの間にできた娘とか見てみたいわね」



 と発言したため今度はフェイトが医務室へと連れて行かれたそうです。大丈夫か?機動六課……




 ヤンデレってこんな感じでよかったけ?まあ、とりあえず勢いって怖い。すみませんでした。



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾伍話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:234b701f
Date: 2014/12/18 00:11
 



 ――自由待機(オフシフト)


 24時間勤務である六課の部隊における休暇のようなものである。各々が好きなように休息と自由行動を行なっている。しかしながら制限も有り、隊舎から寮内、もしくは隊舎から1時間以内に戻ってこれるようにしなければいけない。つまり一応は外出も許可さえあればOKなのである。しかし、日々訓練や各種任務に追われるフォワード陣達はほぼこの時間は寮でぐったりと過ごしている。例え隊長であってもそれは平等に存在する。







「私もそろそろ卍解とか虚化とかしたほうがいいのかしら?」


 自由待機中、ふとガングニールに疑問を投げかける千早


<マスター死ぬんですか?あれですか三番隊狙ってるんですか?共通しているのは髪の色だけですよ?まあちょっと『神鎗』には少し心惹かれるところがありますけど……>

「何を言っているの?」

<いえ、なんでもないです……>

「まあ、いいわ。とにかく最近思うのよ。私には何かが足りないと……そう、それは」

<それは?>

「必殺技よ」

<は?>

「だから必殺技よ」

<つまり、あれですか?『射殺せ』とか、『13㎞や』とか言いたいんですか?>

「……なんで貴方、そんなに詳しいの?」

<なんとなくです>

「そう……」


 そういえば、本名「グングニル」だっけ?槍どうし気になるのだろうか……ん?


「確かあっちは脇差だったかしら?」

<細かい事はどうでもいいのです。伸びる事が重要なんです>

「あら、そう?まあ、長いにこしたことは無いわね」

<そうです、お偉いさんにはわからないのですよ?>

「自分で教えておいて反応に困るのだけれども、使い方若干間違ってない?」

<良いのです。勢いは大事です>

「そうね勢いは大事よね。だから必殺技よ」

<だからの意味が理解出来ませんが?>


 お互い不毛な会話を続ける。どうやら今回は必殺技を覚えたいようである


「他の隊長達は持っているじゃない?必殺技」

<ええ、まあ、ありますね>

「だから私もそういうの欲しいのよ」

<いや、欲しいとか欲しくないとかで手に入れるものじゃ……>


 子供か!?と突っ込みたくなるのを我慢しながら、答えるガングニールも大分耐性がついてきたということであろうか


「なのはにはSBがあるじゃない?」

<どこのカレーですか?SLBですSLB>

「そのSSBよ」

<……彼女は弾道ミサイル潜水艦ですか。否定しませんけど……>

「ちなみに通常動力型の略称らしいわよ?どう考えても彼女なら核積んでそうよね?」

<どうでもいい情報をドヤ顔で言われましても、そんな物騒なこと言って聞かれても知りませんよ?>

「まあ、そんな事はどうでもいいの。必殺技よ」

<そう言われましても、今すぐどうこうできる訳でも無いですし>

「大丈夫よ、この世界には外界の一日で一年を過ごせる部屋があると……」

<どこの精神と時の部屋ですか?それは引きこもった人がよく言う台詞ですよ?修行する気まったくないですよね?>


 ああ、つまりは待機任務が暇という事なんですね。と、理解するガングニールであった


「……いちいちうるさいわね」

<うるさくもなりますよ。とりあえず、それなら修行しましょう>

「そうね。幸い今は自由待機だしね」


 そう言うと、一人トレーニングルームへと向かう千早、今回は思いつきで必殺技を得ようという事である。







 ……

 ………

 …………








「あれ?最上隊長?」


 道すがらどういうのが良いのか考えながら歩いていると、早朝訓練あがりであろうか、ロッカー前でスバルに声をかけられる。


「ん、ご苦労様」


 ねぎらいの言葉をかける千早


「最上隊長は、自由待機ですか?」

「ええ、そうよ。それで、いい機会だからちょっと必殺技覚えようと思ってね」

「必殺技ですか?」


 いきなり突拍子のない事を言う千早に、なんでこの人はそういうことを唐突に思いつくんだろうかとスバルは思った。大体にして、この人は自分自身はおろか周りの人物がかなりの役職であるのに関わらず、堂々と悪びれる事なく、関係なく変態に興じる事を不思議に思ってしまう。普通、世間体というのを気にするだろう。否、世間体どころかロリコンであること自体が人間として駄目だろうと、スバルは思っていた。


「んー、最上隊長って、なんで隊長なんてやってるんですか?」

「……それはどういう意味?」


 少しため息をつきながらジト目でスバルを見つめる千早、その表情を見て


「え!?い、いや!そういう意味じゃなくてですね!なんて言ったらいいのか……ほ、ほら!最上隊長って結構顔が広いじゃないですか?色んな所で悪名を轟かせているっていうか!」

「まあ、知り合いは多いわよ?後、悪名って……私の事なんだと思ってるのよ?」

「えと、ロリコンで変態の……モンスター?」

「私が怒らないと思ったら大間違いよ?」

「ああっ!すみません!すみません!」


 頭を思い切り下げながら謝るスバル、まったくこの娘は面白いなと思いながら


「もういいわよ。それで、そっちは早朝訓練かしら?」

「はい、ヴィータ副隊長から個人訓練を受けていました」

「いいわね。ヴィータちゃんとの個人訓練……楽しかった?」

「え?えっと、どういう意味ですか?」

「ん、一度ヴィータちゃんと訓練した事があるのよ。それはもう楽しくってはしゃいじゃったわ。そしたらちょっと訓練場を炎上させちゃったものだから、それから禁止にされちゃったのよ。それ以来、私との訓練はシグナムばっかり……酷いと思わない?」

「えーと、正直聞きたく無いんですけど、一体何をしたら炎上なんかさせられるんでしょうか?」

「坊やだからよ?」

「意味がわかりません」

「まあ、色々あるのよ」

「そうですか……」


 少し疲れた様子で顔をしかめるスバル。彼に出会って数ヶ月、最上千早という人物と生活をして、解った事がある。彼は常に思いつきで行動するんだということに。しかし、それが解ったからといって、彼のロリコンとしての在り方や、価値観を理解するのはまだまだ先になるんだろうと、否、もしくは一生理解できずに終わるのか、理解できる頃には自分もティアナやフェイト隊長のように染まってしまうのだろうかとスバルはぼんやりと考え後悔した。


「さて、それじゃ着替えてくるわ」

「あ、はい。では失礼します」


 ぼーと考え込んでいたスバルに声をかけ、そのままロッカールームへと向かう千早。


「……?」


 黙って千早の後ろ姿を眺めていたスバルは、何か酷く違和感を感じていた。しかし、それに気づく頃には千早がピンク色の光に包まれていたので、うん、気のせいだったと考えるのを辞めた






 ……

 ………

 …………






「それで?説明してくれるかな?今私は疲れてるので、説明してから撃たれるのと、今撃たれるのとどっちがいいかな?」


 穏やかで、それでいてひくついた満面の笑みで、見下ろすなのは


「いや、もう既に一発見舞っておきながら、笑顔で止めをさそうとするのはいかがなものかと思うわよ?」

「うん、我ながら酷いと思うよ?でも千早君だけは特別」

「そんな特別はいらない。大体何をそんなに怒っているのよ?」

「いきなり女子のロッカーに入ってきたら、普通怒るのっ!君は男の子なの!」

「仕方無いじゃない、男性用が入室禁止になったのだから、それにキャロやヴィヴィオがいるならまだしも、貴方やスバル達なら問題無いじゃない?」

「大有りなの!セクハラ飛び越えて痴漢だから!女性用も入室禁止!」


 腰に手を当てながら説教をするなのはに、ため息をつきながら


「もう、解ったわ。今後ロッカーは使用しないわよ」


 降参といった感じで両手を挙げながら言う千早


「本当に解ったの?」

「ええ」

「なら、私はもう行くからね。もう絶対こんな事しちゃ駄目だよ!」


 まったくもってこの男にはいつもいつも困らさせられると、どうしようもない。疲れたようにため息をつきながら立ち去ろうとするなのはに対して


「ええ、仕方ないのでそこら辺で着替えるわ。まあ、見られて困るものでも無いし、最初からそうすればよかったのよね」


 とその場で脱ぎ始めるのであった。


「てぇえ!!何をやってるの!?」


 慌てて止めようとするなのは、それに対し冷静かつ迅速に無駄のない動きで全裸になる千早、彼女が叫んだせいで注目されてしまう


「だからなんで全裸なの!」

「私着替える時一回全部脱ぐ派なのよ?それから全裸じゃないわよ?パンツ履いてるし」

「そんなこと聞いて無いの!?ほぼ全裸じゃない!場所を考えてぇえ!!」

「いちいちうるさいわね?貴方がロッカー使用禁止にしたんじゃない」

「だからって外で着替えるなぁあ!どういう神経してるの!」

「別段気にしないわよ?男だし、それより返して貰えないかしら」


 素っ裸で腰に手を当てながら、溜息と共に彼女が手に持っている物を指さす


「それが無いと、私このまま全裸よ?それから、どうでもいいけど、傍から見たら貴方が私を裸にひん剥いたみたいで笑えるわね」


 そう言われ自分が手にしているものを見てはっとするなのは。彼女の手には千早のブラが握られていた


「う、うわぁぁぁぁ!?ち、違うの!?」


 そう言って思いっきり千早のブラを投げるなのは、ふわふわと空中を浮遊する黒い物体、まるで蝶のように優雅に飛び立つその姿を追うなのは、その先にはものすごく難しい顔をしたはやてとシグナムの姿があった





<千早が脱ぎだす少し前>





「では査察を受け入れると?」

「ん、そういう事になるね」


 厳しい表情で語りあう二人、その様子はかなり不穏な空気を醸し出していた


「しかし、少し強引では無いでしょうか?いくら主はやてや私達が余り良く思われていないとしても」

「まあ、しゃーないよ。いつかはこういう日も来る思てたし。それが早まっただけや」

「主はやてがそれで良いというのならいいのですが……」

「査察はええとして、問題は……」

「はい……」


 そう言うと二人揃って大きなため息をつく、彼女達の頭痛の種となる人物は一人しかいない……


「どうしたらええと思う?部屋に謹慎させたらええかな?それとも虚数空間に謹慎?ああ、アルハザードに謹慎って手もあんな」


 瞳のハイライトが暗く染まりながらぶっそうな事を言うはやてに対して


「主はやて……心中お察しします」


 彼女の心労が結構限界にきていることを心配するシグナム


「ま、まあ、それは冗談として、なんとか大人しくしてもらわんと、唯でさえ風紀が乱れまくっとるからなあ」


 そう言いながら虚空を見上げるはやて、見上げたその先に黒い物体が彼女の顔面にヒットするまでそう時間はかからなかった




<で、先ほどの時間に戻る>




「あー最近はブラが空から落ちてくるから油断できへんね。ほんま風紀が乱れまくって困るわ」

「あ、主はやて?」

「はやてちゃん?」


 くっくっくと笑いながら、ブラごと額に手のひらを当てながらそう言うはやて、若干狂気を感じ心配そうに声をかける二人


「……ほんで、何しとんの?とりあえず殴ってええ?」

「もう既に殴っておいて何を……まあ、いいわ。とりあえず自主訓練しようとしてただけよ?」

「なんの自主訓練や!?往来で裸になる自主訓練なんか聞いたことあらへんわ!」

「そんなの私も聞いたこと無いわよ?大丈夫?はやて、疲れてるの?」

「私がおかしいみたいな態度やめんか!服を着ろ服を!」

「はいはい、たく、私はただ着替えをしていただけなのに……」


 ブツブツと文句を言いながらトレーニング用の服に着替える千早、着替えている間も二人からは文句を言われる。男性用も女性用も使用できないなら自室で着替えればいいだろうと、そう言われ『ああ、それもそうよね?なんで気づかなかったのかしら?』と悪びれることも無く納得する彼女に二人ため息をつく


「はあ……頼むから少し大人しくしといてや。唯でさえ査察やらなんやらで頭痛いねんから」

「あーやっぱり入るんだ。シグナムさん知ってました?」

「ああ、私も先ほど主はやてより聞いた所だ」


 頭を抱えるはやてを見て、なのはとシグナムが同情の視線を送る


「ああ、なんだそんな事。なら問題無いわよ?」


 そんな三人とは対照的に飄々とした表情で、事も無げに言う千早


「問題の元凶が何を言ってんねん。ええ加減にせんとほんまに謹慎さすで?」

「ま、まあまあ、はやてちゃん」


 今にも飛びかかりそうなはやてを抑えながら、なだめるなのは


「貴様もいい加減にしておけ千早。余り主はやてや高町を困らせるな」

「んー別に困らせるつもりはさらさら無いのだけれども……そうね」


 鼻息の荒いはやてを無視しながら、人差し指を顎の下に添えながら少し考えると


「簡単に説明すると、今度査察に来るのって私の知り合いなのよ」


 そう言いながら胸を張る千早、ちなみに彼女の変身後のバストサイズはシグナムと同じ90である(※あくまで作者の巨乳感覚での数字。公式は知らない)


「とりあえず殴ってええよな?いや、殴る」

「はやてちゃん……」


 変態に嫉妬する親友に同情の視線を送るなのは、そんな二人におかまいなく着替えをすますと


「ということなので、私は失礼するわね」


 と、片手を挙げてフェードアウトしていく千早


「ちょっと待ていっ!」

「あいたっ!」


 そのまま立ち去ろうとする千早の襟首を掴み、引っ張るはやて


「痛いわね、何するのよ」

「もうええ加減、その気持ち悪さに馴れたけど、今、さらっと何言いよった?」

「?なんのこと?」

「だから、今度査察に来るのがあんたの知り合いって」

「ああ、そんなこと。そうよ、昔ちょっとあってね」

「はあっ!?というかなんでそないな重要な事、今まで言わんかってん!」

「だって、聞かれなかったじゃない?」

「そんなもん、当たり前や!」

「何をそんなに怒っているの?」

「ああっ!もう!このアホはっ!」


 興奮するはやてに対して、冷静に答える千早。その二人の温度差がおかしいのか少し苦笑しながら


「まあまあ、はやてちゃん落ち着いて、ね?」

「……あかん。なのはちゃん私、もう泣きそうや……今日ほどこの変態を消したい思うたことないわ」

「うん、その気持よくわかるから。私はいつもそうだよ?」

「主はやて……というか高町、お前もお前で物騒だな」

「大変ね、シグナム」

「他人ごとみたいに言うな。全て貴様が原因だ」

「あら、それは失礼」


 まったく会話が前に進まない事にため息をつくシグナム、そうして暫くはやてが立ち直るまでなのはが慰める事になるのだが……



<5分後>



「……それで?あんたが顔が広い事は知ってたけど、今回来るんが知り合いってのはどういうことや?」

「だから、私元々地上勤務じゃない?」

「確かそこから、はやてちゃんが引き抜いたんだっけ?」

「引き抜いたいうか、ババ掴まされたいうか……」

「ババアは貴方達……なんでも無いわ」

「それで、一体どういう知り合いなんだ?」

「ああ、確か来るのはあの子よね?」

「ん?確かそう聞いとる」

「なら問題ないわよ?あの子私のこと崇拝しているから」


 事も無げに言い放つ……


「ふぁっ!?」

「え、ええと……」

「むぅ……」


 その言葉に三人は渋い顔をする


「何よ?」

「こいつのどこをとったら尊敬する要素があんねん」

「あ、あはは……さあ?」

「主……尊敬どころか崇拝されているそうです……」

「なお、たち悪いわ!」

「酷い言われようね?少し長くなるけどいい?」

 コホンと咳払いをしてから語りだす千早、今回査察に選ばれた人間は実は彼のファン……というよりはある会派の会員だというのである。そしてその組織は誰にも知られることも無くひっそりと会員を増やしているという

「……で、その誰も知らないような組織のメンバーの事をなんであんたが知ってんのよ」

「簡単なことよ、だって私が会長だから」






 ……

 ………

 …………




「「「はぁあっ!!!!!!」」」


 その言葉に三人同時に突っ込まれる


「……大きな声出さないで頂戴」

「はあっ!?えっ!?何!?てか、あんたが!?」

「嘘……」

「むぅ……」


 思わぬ事に混乱する三人、その様子がおかしいのか苦笑しながら


「あら?言ってなかったけ?私が創設した『小さき者を護る会』」

「初耳や」

「うん」

「会の名だけ聞くと至極まっとうに聞こえるな」

「当たり前よ。この会の掟は『 YES ロリータ NO タッチ』よ」


「「「……」」」


 その言葉を聞いてどういう組織なのか瞬時に理解した三人。それと同時に頭が痛くなってきた


「そ、それで、会員は何人いるのかな?」


 思い切り引きつった表情で質問するなのは、そんな彼女に笑みを浮かべながら


「ざっと、こんなものよ?」

「「「……」」」


 またも無言になる三人、そこには桁違いの人数が示しだされていた


「あかん……頭痛いわ……というか管理局にこんだけ変態がいたなんて……」

「あ、あ、あはは……す、すごいね……ある意味脅威だよ……」

「あ、ああ……」


 完全にしんどくなってきたようで項垂れる三人。そんな彼女らに


「もういいかしら?それじゃあ、訓練に行ってくるわね」


 と片手をシュタッと挙げながら立ち去っていく千早。流石にもう引き止める気力が無くなったようでそのまま見送る三人


「ああ、そうそう」


 しばらく歩いて思い出したように振り向くと


「だからといって甘い採点をしたりしないわよ?私情に囚われずちゃんと査察すると思うから気をつけてね」


 と笑みを浮かべながら言う千早の姿を見て『お前が言うな』と突っ込みたかったが、もうそんな気力は無くなっていた……


「さて、訓練っと」


 楽しそうに走り去っていく千早。彼女らはその後姿を黙って見送るしか無かったのである


「はやてちゃん……」

「あ、ああっと……千早が野心家やのうてほんまよかったわ」

「そ、そうですね……もし、あれが何か企むような事があれば……」

「そうやな……うちらじゃ止められんやろうな……」

「う、うん……私、今日ほど千早君が幼女にしか興味が無いことをよかったって思った事ないよ」

「奇遇やな、私もそうや……」

「今日の事は忘れたほうがいいかも知れません主はやて……」


 シグナムの言葉に二人は頷き、今日のことは忘れようと固く誓うのであった。そうして千早が去った後を眺めながら、彼が野心家じゃなくてロリコンでよかったなと心底安堵するはやて達であった……











 とりあえず投下、暫くグダグダが続きます。そしてどんどん増えていく千早のチート設定。盛りすぎてやばい……ま、どうせならとことんまでいこうと思いました。では……



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾六話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:d4fc1edb
Date: 2014/12/18 00:11
 お久しぶりです……生きてます……










「いやあ、実はな?今日これから本局に行くんやけど、よかったらティアナも一緒に来とくかって相談や」


 訓練を終え通常業務に就こうとしていたティアナを呼び出したはやてが笑みを浮かべながら提案する


「あ、はい」


 困惑しつつも返事を返すティアナ


「今日、会う人はフェイト隊長のお兄さん。クロノ・ハラオウン提督なんよ?」

「はい」


 意味が理解できてなさそうな彼女に苦笑しつつ説明するはやて


「執務官資格持ちの艦船艦長さん、将来の為にもそういうえらい人の前に出る経験とかしといたほうがええかなって」

「ありがとうございます。同行させて頂きます」


 やっと意味を理解したティアナは嬉しそうに返答するのであった








 一方その頃スバルはというと


「あれ?ティアナは?」


 一人コンソールの前で仕事しているスバルに疑問を投げかけるなのは


「八神部隊長と同行だそうです。本局行きとか」


 そんな彼女に対して、返答するスバル


「そっか」


 そう返事すると自分の席に腰掛ける


「なのはさんも今日はオフィスですか?」


「そうだよ。ライトニングは今日も現場調査だし、ヴィータちゃんは自由待機だし、シグナムさんとあのバカは外勤だから」

「外勤?ですか?しかもシグナム副隊長と?」


 千早が外勤なのを疑問に思うスバル、本来の予定であれば彼も今日は内勤であったはず、急な変更に何か事件でもと聞くと


「なんでも前の部隊から呼び出されたんだって、えーと確か、201部隊?」

「201ですか!?」

「わっ!びっくりした。急にどうしたの?大きな声だして」


 大きな声で乗り出してくるスバルに驚くなのは


「あ、す、すみません……で、でもまさか最上隊長が201部隊出身だったなんて」

「あーなんか聞いたら負けな気がするけど、その201部隊って?」


 心底嫌な表情で質問するなのはに苦笑しながら


「いやーなんていうか、あそこは陸上警備部隊の『陵心』と呼ばれてまして……」

「陵心?良心じゃなくて?」

「はい、あたしが元いた部隊でも有名でした。『絶対に目を合わせるな』って」

「えーと、一応管理局員なんだよね?」

「一応は……でも、なんとなくその部隊だったってわかる気がします」

「?」


 妙に納得した表情で頷くスバルに首をかしげるなのは


「えーと、あの部隊の部隊長その見た目が……」

「あーなんとなく理解したよ。うん、聞かなかった事にするよ」

「あ、あはは……じゃあ、呼び出したのは……」

「多分、その部隊長さんじゃないかな?はやてちゃんも渋い顔してたし……」

「父さんから聞いた話じゃ、かなりやり手だそうですよ」

「まあ、あの千早君の手綱を引くくらいだから……」

「そ、そうですね……」

「うん、考えるのやめ!とにかく今日は前線メンバー私とスバルの二人だけだから、頑張ろう!」


 ごまかすように話題をかえるなのはに苦笑しながら


「あ、あはは……何も起きない事を祈ります」


 と答えるスバルであった……









 フェイト、キャロ、エリオのライトニングのメンバーは、先日の事件の現場調査にヘリで向かっていた


「地上本部にテロ行為?ですか?」

「あくまで可能性の話だけどね」

「確かに、管理局の魔法防御を破るのは難しいと思いますけど、ガジェットなら」

「そう、対処しづらいと思う。魔法がダメなら質量兵器だけど、それは使用はもちろん保有も禁止だからね」

「質量兵器?」


 フェイトとエリオの会話を黙って聞いていたキャロが聞きなれない言葉に対し質問する


「質量兵器は、簡単にいえば魔力を使わないで爆発させたりして攻撃する兵器のことだよ」

「それって」


 何か気づいたような表情をする


「そう、魔力が必要ない分、誰にでも扱えてしまうものもある。中には子供でも」

「そんな……」

「だから、管理局はロストロギアとともに規制し続けてきた。だから今はまだ大丈夫だよ」

「よかった」



 優しい笑みで頷くフェイトに安心した表情で答えるキャロ、そんなキャロに対してミッドチルダと管理局の歴史を教えていくエリオ。その二人の姿を見つめながらフェイトは協会での事を思い出していた






 ……

 ………




「情報源が不確定ということもありますが、管理局崩壊ということ自体が現状ではありえない話ですから」

「そもそも、地上本部がテロやクーデターにあったとして、それがきっかけとして本局までも崩壊、いうんは考えづらいしなぁ」


 難しい表情でため息を吐くはやて


「いや、ありえない話じゃないわよ?例えば、そのテロやクーデターの首謀者と管理局の内部が繋がっていたら?もしくはトップとか」

「……」


 少しおかしそうに言う千早に、無言になる皆


「また、そういう突拍子もない事を……」

「例えばの話よ?まあ、本気にしないで」

「言われんでも本気にしとらんがな……」

「でも、もし、そうなら怖いですね……」

「ま、まあ、本局でも警戒強化はしているんだがな」

「地上本部の対応を考えると、笑って否定できないのです」

「確かにそうともとれるが……ただ、単純にゲイズ中将は、予言そのものを信用しておられないだけかも知れない。どちらにせよ、特別な対策はとらないそうだ」

「異なる組織同士が協力しあうのは難しいことです」

「お互い嫌ってるものね」

「ちょっと、あんたは黙っとこうか?」

「はいはい」

「まあ、好き嫌いは別として、こちらがいくら協力の申請しても、内政干渉や強制介入という言葉に言い換えられれば即座に諍いの種になる」

「ただでさえ、ミッド地上本部の武力や発言力は問題視されとるしな」

「だから、表立っての主力投入はできない……と」

「すまないな。政治的な話は現場には関係なしとしたいんだが」

「裏技気味でも地上で自由に動ける部隊が必要やったレリック事件だけで事が済めばよし。大きな事態につながっていくようやったら最前線で事態の推移を見守って」

「地上本部が本腰を入れはじめるか、本局と教会の主力投入まで前線で頑張ると」

「それが六課の意義や」

「「「……」」」


 その言葉を深く噛み締めるフェイトとなのは。そんな二人に対して申し訳なさそうな表情をするカリム


「もちろん、皆さんに任務外のご迷惑をお掛けしません」

「ああ、それは大丈夫です」

「部隊員達への配慮は八神二佐から確約を頂いていますし」


 謝罪するカリムに対して、静かに答える二人


「そうね。私もロリトピア建国という大義名分をもらっ……あいたっ!」

「ん、ちょっと黙ろうかな?も最・上・二・尉?」


 二人に続いて真剣な表情で答えた千早にハリセンで突っ込むはやて、少し空気がやわらかくなったようだ


「むぅ……わかったわよ」

「ええと、まあ、大丈夫やから」

「はい」

「改めて、聖王教会教会騎士団騎士カリム・グラシアがお願い致します。華々しくも無く、危険を伴う任務ですが……協力をして頂けますか?」

「非才の身ですが、全力にて」

「承ります」

「了解」



(地上と海の平和と安全この子達も含めた部隊の皆の安全と将来、はやての立場となのはが飛ぶ空。全部守るのは大変だけど、私がしっかりしなきゃ……)





 一人機内で決意するフェイト、そうして間もなく現場に到着するのであった……






 ……

 ………

 …………








「それで?なんで貴方も一緒なのかしら?」

「ああ、主の命令で貴様と同行するよう言われたのでな。貴様は誰かが監視しておかないと何をしでかすかわからんからな」


 シグナムが運転する車の助手席で愚痴る千早、それに対し真面目に答えるシグナム、少し機嫌が悪そうだ


「監視って、私が何かするような人間に見える?」

「ああ、とりあえず鏡見ろ。何かしそうな物騒な変態が見えるから」

「まったく、相変わらずね。私はただ小さいものが好きなだけよ?」

「ああ、わかった、わかったから。ついでにその気色の悪い姿をなんとかしろ」


 ちなみに彼女の今の格好は陸士隊の女子が着る制服を着ている。どこで手に入れたかは知れないが……まあ、協力者が誰かは解っている、フェイトである。最近はフェイトの協力もあってか、下着に困る事も無くむしろ、逆の意味で周りが困るくらい衣装が増えている。ワンピースにミニスカに果てはドレスまで、普段物静かな彼女が、恍悦とした表情で鬼のように試着させる姿を目撃したなのはに相談された時、頭が痛くなった。


「貴方もそろそろ慣れたらどうなの?私はもう慣れたわよ。もうこのままでいいかもね」

「無理だな。それからさらっと恐ろしいことを言うな」

「なんのこと?」

「もう、いい。貴様と話していると疲れる。さっさと終わらせて帰るぞ」


 そう言うと車を止めるシグナム、大きな駐車場にはテロ鎮圧用の車両が数台止められており、目の前に白い長方形の建物が見える。その入口には『201』の文字


「さ~て、懐かしの古巣へご帰還よ」


 そう笑みを浮かべながら中へと入って行く千早を見て、眉間のしわが三割増しになるシグナムであった




 ……


 ………






 コンコン


 ノックの音が廊下に響き渡る。扉には部隊長室の文字板が目に付く


「は~い」


 中から可愛らしい声が聞こえてくる


「どうぞ~入ってください~」


 そう言われ入室する二人


「ふふ、久しぶりね……って痛い痛い、何よ?わかったわよ……」


 普段通りフランクに挨拶しようとする千早の脇腹をつつく……殴るシグナム、その痛みに堪りかね


「コホンッ……機動六課シルバー分隊隊長、最上千早二等陸尉、呼ばれて参りました」

「機動六課ライトニング分隊副隊長、シグナム二等空尉です。初めてお目にかかります」


 真面目な表情で渋々敬礼する千早と、苦い表情をしながら厳しい表情で敬礼するシグナム。対照的な二人の表情を見ながら


「はい、初めまして。陸士201部隊で部隊長を勤めているレイティです。ふふ~堅苦しいのはいいですよ~お二人共」


 ふんわりとした笑顔で言うレイティ


「なら改めて、お久しぶりレイティ。相変わらず天使のような笑顔ね」

「ありがとうございます~ちーちゃんもひさしぶりですねぇ。しばらく見ないうちに女の子みたいに可愛くなりましたねえ」

「ええ、そうなのよ。最近は胸の大きさも気にならなくなってきたわ」

「そうなんですか~たしかに大きいですね~うちの子達が騒ぐんじゃないかしら~」

「あーあんまり思い出したくないわ……まあ、また押し倒すようなら吹き飛ばすけど」

「あんまり無茶しないでくださいよ~ただでさえよく思われてないんですから~」

「幼女に押し倒されるならまだしも、ガチムチの男に押し倒されもすれば施設の一つや二つ破壊してもおかしくないわね?」

「……何故、そこで私の方を見る?」

「なんか、押し倒されたことありそうじゃない?」

「あるかっ!」

「そうなんですか~それは大変でしたね~」

「いや、あの……」

「そうなのよ?シグナムって実は……」

「ほうほう……それは~変態さんですね~」


 シグナムの方へと視線を送りながらそっとレイティに耳打ちする千早


「きっ貴様ぁあ!」


 鞘に手をかけながら千早に対し今にも斬りかからん勢いで怒鳴るシグナムの姿を見て


「あら?上官に向かって貴様?」

「私斬られちゃうんですか~よよよ……」


 ハンカチをあてながら泣き真似をするレイティ、その後ろに隠れて舌を出す千早


「ち、違うっ!いや、違います。ですから……ぐぬぬ……」


 二人にからかわれ、苛立つも流石にレイティがいる為、斬る事もできず唸るシグナム。この部下にしてこの上官かと思いながらレイティの方を見る。

 身長はエリオくらいだろか、執務室の厳つい机に不似合いな小さな手で書類を書きながら千早と語りあう姿はまるで親子に見える。なるほど、あの変態が全幅の信頼を持って接するはずと一人納得する。


「はあ、もういいです。で、この変……最上二尉に何か御用があったそうですが?」

「ん~確かに用事があったんですけど~」


 そう言いながら千早の方を向いた後、申し訳なさそうにシグナムの方へと視線を送る


「……解りました。少し席を外します」

「ごめんなさい~ここから出て右へ行けば食堂がありますから、そこで休憩でも~」


 と言いながら食券を渡すレイティ。最初は遠慮していたシグナムであったが、涙目になりながら上目遣いで責められた為渋々受け取ると退室するのであった




 ……


 ………


 …………




「で?今まで音沙汰も何も無かったのに急になんのようかしら?」


 部屋に備え付けてあるコーヒーメーカーからコーヒーを二つ取り出すと片方を彼女に渡し、来客用のソファー腰掛ける千早


「……そろそろ戻ってきませんか?最上一尉」


 先ほどまでのおっとりとした雰囲気が一転して、真面目な表情で千早の方を向くレイティ


「あら?今は二尉よ?忘れたのかしら、私が六課に異動する際に降格したのを」

「知ってますよ。オーリスさんに暴言を吐いた後でしたよね」

「ええ、今思えばシナリオ通りだったのかしらねぇ。六課への異動、査察……」


 そう言うと静かにカップに口をつける千早


「ふふ~でも全部裏目に出てますしね~誰かさんのおかげで」


 ふわりと意地悪な笑みを浮かべるレイティ、そんな彼女に苦笑しながら


「なんのことかしら?」

「いつも貴方は大切な事だけはとぼけますねぇ。まあ、いいです。それで、そろそろこちらへ戻ってこれませんか?もちろん階級も元にもどしますよ?」

「んー」


 レイティの提案に少し考える千早、確かにこの上司のもとで働くと退屈はしない。寧ろ合法ロリ……


「今何か不快な単語を考えませんでしたか~」

「……なんでもないわ」


 殺気のこもった笑みで睨まれ真面目に考えることする千早。そうしてしばらく考え込んでいたのであるが


「んーやっぱりいいわ」


 あっさりと誘いを断ることにしたのである


「あら~残念ですね~」


 恐らく予想していたのであろう彼女もあっさりと了承するのであった


「色々とねえ。あるのよ」

「まあ~思わせぶりな態度してても~その姿だと説得力皆無ですね~」

「そう?」

「そうですよ~まあ、いい機会ですからそれを直してもらっちゃって下さい」

「わかって言ってるの?私からそれを取ったら一般人にも劣ることを」

「はいはい~そうでしたね~どういう原理か知りませんけどね~」


 苦笑しながら答えるレイティ


「さて、話も終わったし帰るわ」

「もう帰るのですか~」

「ええ、あんまり待たすと怒られるわ。それとその件は考えておくわ」

「戻る気無い癖に~」

「社交辞令よ。それと……」


 そのまま窓へと視線を向ける。そうして静かに窓へと移動すると、すばやく窓を開け手を伸ばす


<きゃんっ!>


 可愛らしい声とともに外から部屋へと引きずり込まれる女性陸士、身体にはハーネスを装備しており右手にはハンディタイプのビデオカメラを持っていた


「とりあえずこの怪しい年増はどうするの?」

「おおお、お久しぶりですっ!最上さん!相変わらず辛辣で素敵です!」


 カメラを後ろ手に隠しながら敬礼する女性、ものすごく挙動が怪しい


「相変わらずね?シリカ、それでいいもの撮れたかしら?」

「ななな、なんのことですか?」

「あら、じゃあその手に持っているのは何?」

「こ、こここれはですねっ……そ、そうっ!景色、外の景色を撮っていたのです!」

「そうなの?よかったわ。私と彼女がキスしているところなんて撮られていたら大変だったもの」

「ふふふ~そうですね~」

「え?え、ええ、えええーーー」

「最上さんが女装して隊長と……そんな極レアな映像、ずっと撮っていたけど、そんなシーンはな……かっ……た……」

「はい、ダウト」

「はい~没収ですね~」

「うう~騙しましたね」


 抵抗していたシリカであるが、二人の気迫に押されて渋々ビデオカメラを手渡す


「せっかく高く売れると思ったのに……うぅ」


 余り反省していないようである


「部隊の長と元上司を盗撮して、あまつさえそれを売ろうなんて~これはお仕置きですねえ」

「ええ、年増には興味は無いけども……そうね。とりあえず剥こうかしら?」

「え?」

「いいですね~偶然にも私~今カメラを持っていまして~」

「いや……それ私のカメラ……」

「あら?そういえば私も何故か偶然にもハサミを持っているわ」

「……今、そこの引き出しから取り出しましたよね?」

「そうなんですか~偶然って怖いですねえ」

「絶対偶然違うっ!えっと聞いてます?お二人共?」

「「ふっふっふ」」

「うわー!なんか懐かしいけど、本気の目だっ。経験上この後絶対私脱がされる。お嫁に行けなくなる……」


 満面の笑みで近づく二人に対して必死に土下座してやっと許してもらえるのであった









[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾七話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:b20c88b5
Date: 2014/12/18 00:12
 





「さて、今日の朝練の前に一つ連絡事項です。陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、今日からしばらく六課へ出向となります」

「108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」


 なのはに紹介され、挨拶するギンガ


「よろしくお願いします」

「それからもう一人」

「ど~も」

「10年前からうちの隊長陣のデバイスの調子を見ていてくださっている。本局技術部の精密技術官」

「マリエル・アテンザです」

「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在してだくこととなった」

「デバイス整備を見てくださったりしてくださるそうですので」

「気軽に声をかけてね」

「はい」

「おっし、じゃあ、紹介が済んだところで、早速今日も朝練いっとくか?」


 話を終えた頃合に皆を見回しながらヴィータが声をかける


「はい」

「ライトニング集まって」

 それを合図に、キャロとエリオを集合させるフェイト


「ティアナは今日もあたしとやるぞ」

「はい」

 ティアナに声をかけるヴィータ


「突撃型の捌き方第六章」

「お願いします」

「ギンガ?」

「はい?」

「ちょっとスバルの出来を見てもらってもいいかな?」

「はい」


 最後になのはがギンガに声をかけると、スバルと模擬戦するように提案する


「え?」

「一体一で軽く模擬戦、スバルの成長確かめてみて?」

「はい」


 その様子を黙って見守る手持ち無沙汰の者が二人いた


「ふむ、若者は元気があって良い」

「そうだな」


 千早とシグナムである。教えることが苦手なシグナムと、教える前に正さなければいけない千早。


「さて、朝練の邪魔をしても悪いので」

「まあ、待て」


 することも無いので爽やかな笑顔と共に立ち去ろうとする千早をシグナムが止める。


「……いつも思うのだが、何故一々首根っこを掴むんだ?」

「逃げられぬようにな」

「逃げるとは心外だな。俺は仕事をしようとだな」

「貴様の今日の仕事はこいつらと同じだ」

「ん?朝練か?」

「そうだ」


 首を摩りながら周りを見回す。そうして、ティアナと話をしているヴィータの方へと行き笑顔で


「ふむ、別に構わないが、そうだなヴィータちゃん」

「ああ、悪いあたしはティアナを指導だ。てかさっき言ってたろ?ほんっと他人の話聞かねえやつだな」

「ん、そういえばティアナにさばき方を教えるとかどうとか、ふむ、なら俺に突撃ラブハートで」

「……いっとくが突っ込まねえからな」


 アイゼンを鼻先に突きつけられながら言われる千早


「そうか残念だ。相手がいないのなら仕方が無い、俺は大人しく事務処理でもすることに……」

「ちょっと待て」

「だからお前は何度も……」

「相手ならいるぞ」

「どこに?」

「ここに」

「はあ……前から思っていたのだがお前はライトニングだろ?ならフェイトがいるだろうに」

「テスタロッサはエリオ達新人の教導で忙しいのでな」

「いや、ならお前が教導してやればいいではないか」

「私は古いタイプの騎士故、教導には向かない」

「古い事は理解している。だからなんで俺が……」

「問答無用」

「はあ、お前たちの仲が良いのはいいけどな。フェイトが思いっきり睨んでるぞ?」


 いつも通りの会話を繰り広げている二人に対し、少し真顔で声をかけるヴィータ。心なしか少し怯えているようにも見える。その様子を怪訝に思いながら、彼女が指差す方向へと視線を向けると凍りつくシグナム。

 シグナムの眼前に千早の顔があり、その後方に金色夜叉がこちらをものすごく笑顔で睨んでいた。そう口は笑っているのに目が殺意の波動に満ちている。その姿をキャロやエリオには見せないように、うまいこと二人の意識を逸らしての行動に苦笑せざるを得ないなのは、その傍で固まるスバルとギンガ。


「なんだ?急に顔色が悪いぞ?あれか?せ……」

「はーい、ストップ。千早君はいい加減、デリカシーを覚えてくれるかな?」


 このままでは親友が親友の友人を殺しかねないので、仲裁に入るなのは。それでも少し収まらないのか殺意の波動を未だ向けるフェイト。その殺気を背中に感じながら


「シグナム副隊長も、いい加減学習してください」

「む、すまん」

「よくわからんが、デバイスで物理的に殴るのはどうかと思うぞ?なのは」

「千早君は言ってもわからないので、殴ってからお話しようと思います」



 ため息を吐きながら窘めるなのは。このままでは訓練をする前に疲れてしまうと判断したなのはは、そのまま訓練所へと進むのであった……
















 芝生の上で対峙するシグナムと千早。既にスバルとギンガの模擬戦は終了しており、今は休憩がてら身体を解している。さて、今回も隊長同士の模擬戦を見せておこうと、なのは教導官のお達しでまたもやシグナムと対決させられる千早。


「さて、数週間ぶりの元の姿だが調子はどうだい?ガングニール」

<YES、マスター大分いいですよ?>

「……疑問形なのが気になるが?」

<ああ、違います、違います。気づいてますか?>

「何がだ?」

<今のマスターの魔法容量かなり余裕があります>

「まあ、確かに」

<やはり、ヴィヴィオちゃんが原因でしょうか?>

「確かに、それもある。しかし、今の私は変身魔法のおかげで母性も父性も極めた……」

<ああ、あの悪夢のような日々がマスターを成長させたのですね>

「そうだ。今の私はロリコンを極めた。最早、私の前にロリコンは無し、私の後ろにもロリコンは無し。そう、それは……」

<それは?>

「流派幼想不敗」

<流派幼想不敗……正に無限に広がる幼き者への想い……素晴らしいです!>

「ああ、俺はまた一つ強くなった……」

<ならば、今、目の前に立ちはだかる敵に鉄槌を>

「敵か……否!あれは敵ではない……そうあれは可哀想な年増」

<可哀想な年増?>

「そうだ。残念だが、最早彼女には手の施しようがない。しかし、それは誰しもが通る道、人は皆幼女のままではいられないのだ・・・・・・だから全ての年増に救済を……」


 静かに頷くと右手をかざす千早。その先には残念な年増、シグナムがものすごく渋い顔でレヴァ剣を抜いていた


「……高町隊長、私は殺傷設定で斬り刻んでもいいんだろうか?」

「シグナムさん……気持ちは良くわかるけど、みんなが見ているので駄目です」

「そうか、残念だ……」


 静かに物騒な事を宣うシグナムとなのはに、引きつった笑いしか浮かべることができない新人達。唯一フェイトだけが真顔だったのは気にしないでおこう


「さて、何やら物騒な言葉が聞こえたが、始めようか年増よ」

<ふふふ……何故か今なら目の前のおばさんに勝てる気がします>

「ほざいたな。なら、全力で来い」

「ああ、行こうかガングニールよ」

<イエス・ユア・ハイネス>

「右手は幼女のため、左手も幼女の為に……全ての小さき者に救済を」

「気持ち悪さが格段にあがったな……」

「違うな……私は元々気持ち悪いのだ」


<自覚してたのっ!?>


 遠くの方から驚いた声が響いたが気にしないでおこう。そうして模擬戦が開始される


「はぁっ!」


 先に動いたのはシグナムの方であった。レヴァンテンを腰に構えるとそのまま間合いを詰める


「なっ!?あぶなっ!?」


 そのまま距離を詰め、レヴァンテンを居合いの要領で抜き、横薙ぎに一閃する。それをギリギリの所で回避する千早


「お前、まさか本当に…・・・」

「なんのことだ?」

「いや、まあいい。ならば、こちらも本気でいかせてもらおう」

「わかっているが前のようなイカサマには、もうひっかからんぞ」


 そう言うと静かに正眼に構えて微動だにしないシグナム。どうやら前回の兄ソードがかなり堪えたらしく警戒されている


「ふむ・・・・・・」

「どうした?どこからでもかかってくればいい。前のようにはいかんぞ」

「なら遠慮なく・・・・・・」


 そう答えると静かに腰を落とし構え、カートリッジをロードをすると突っ込んでいった


「ほう、下手な小細工をせず突っ込んできたか。お前にしては思い切ったことをしたな」


 にやりと笑みを浮かべると同じくカートリッジをロードするシグナム。恐らく回避するのではなく真正面から受け止めるつもりであろう


「流派幼想不敗……奥義」


 両腕を後ろへ引くとカートリッジを更にロードする


「十二幼身体大輪写っ!」


 拳を前面に突き出し大きく円を描きながら叫びをあげる千早、するとそこには、小さく幼い容姿をした千早が12人現れ、そのままシグナムへと突っ込んでいく


「なっ!?面妖な!紫電・・・・・・くっ!」


 紫電一閃を放とうとするシグナムであったが、幼い純粋な瞳をした小さな12の千早に見つめられ躊躇する


「あ、あれは卑怯だよ・・・・・・」

「そうですね。あれは流石に無理です」

「私もそう思います」


 模擬戦を見ていたなのはが言うと同意するスバルとギンガ


「あーあ、また負けたな」

「か、可愛い・・・・・・」


 ため息を吐きながら言うヴィータに瞳を輝かせながら見守るティアナ


「すごいね、エリオ君」

「う、うんそうだね・・・・・・フェイトさん?」


 同じく瞳を輝かせて袖をひっぱりながら興奮するキャロに対して苦笑するエリオ、ふと一緒に見ていたフェイトが静かなのが気になって見上げると


「・・・・・・欲しい・・・・・・今光速で割り込んだらばれない、よね?」


 真顔でとんでもないことを呟いていたので取り合えず、暴走しないようにキャロと二人でフェイトの両手を封鎖することにした


「幼いは正義」


 きめ台詞を吐きながら突っ込んでいく12人のショタ。そのままなすすべも無く攻撃を受けそのまま倒れるシグナム


「帰宅幼稚園」


 静かに分身を帰還させる千早、結局模擬戦は千早の勝利に終わり。周りはなんとも言えない空気を持ちながら唖然としていたのであった



 模擬線も終了し全員が訓練の内容を話し合う。いわゆる反省会みたいなものを行う。



「またしても・・・・・・無念だ」

「お前ここにきてから連敗だな?」

「あ、あはは、仕方無いかな?あれは私でも躊躇するよ」

「しかし、あいつの成長は恐ろしいものがあるな。魔力容量といい、あの分裂といい……段々人間をやめていってないか?」

「そうだね。いくら空戦をせずに戦ったとはいえ、あんなに一方的にシグナムさんが負けるなんて」

「あのつぶらな瞳で見つめられてはな・・・・・・私も精進が足りん」

「まあ、なのはなら躊躇なく撃つんだろうな」

「にゃっ!?そんなことは無い、かな?」

「ああ、高町なら躊躇いは無い」

「みんな何気に酷いよ・・・・・・まあ、撃つんだけど」


 結局撃つのかと、皆一様になのはの方を見るもその瞳は笑っていなかった……


「おつかれさま、千早」


 なのは達より少し離れた場所で休憩する千早に声をかけてくるフェイト


「うむ、久しぶりに男の身体で動いたので疲れた」

「ん、でもまた強くなったよね?」


 タオルを手渡しながら言う


「んーどうやら女体化がいい感じで作用したようだ」

「そうなの?」

「ああ、あれは常に魔力を消費するのでな」

「?」


 千早の説明に首を傾げるフェイト


「ああ、簡単に説明するとだな。常に年増と一緒に生活している状態ということだ」

「??」


 更に解らないって表情になる


「んー。例えばだ。フェイト、君が今晩誰かと一緒に寝るとする」

「う、うん」

「その相手がヴィヴィオやキャロだったら?」

「んー、そうだね。思わず抱きしめてしまうかも?」


 人差し指を顎に当てながら首を傾げ答えるフェイト


「そうだ。純真無垢な彼女達と添い寝……考えただけで……ああ、怖くて眠れなくて私の手をぎゅっと掴んで離さない……なんと可憐な……なんだと、一人でトイレが怖いだと?仕方が無いな。私が一緒に行ってあげよう……」

「そうだよね。何故か、怖いお話見た後っておトイレ近くなっちゃうんだよね。昔キャロもね……」


 くねくねと妄想する千早に、明後日の答えを出すフェイト、突っ込み不在である。


「それで、私がキャロ達と寝るのと千早が強くなった事とどう関係があるの?」

「ああ、脱線したな。ふむ、例えば今、言った相手が俺だったらどうする?」

「え?」

「だから、添い寝する相手が俺だったらどうする?」

「……えええええ!!!!」


 大きな声を出すフェイト、周りは何事かと注目する。そんな皆に『なんでもないよ』と言うが、


「え?え?千早が私と?無理、いや、無理じゃないけど、でも、まだそんな早いっていうか。でもでも嫌じゃないんだよ?どうしよう?」

「落ち着け、何をそんなに慌てている。例えばの話だ」


 両頬に手をあてながら百面相を繰り返すフェイトをなだめる千早


「そ、そうだよね。あ、あはは……ちょっとびっくりした」

「つまり、そういうことだ」

「どういうこと?」

「何を聞いていたんだ?だから、私が強くなった理由」

「え?あ、ああ、そうだったよね。それで私が千早とそ、添い寝することが?」

「ああ、つまり女体化ってのは『君が毎日俺と添い寝する』状態と同じということだ」

「……私、死んじゃうよ……」


 頬を染めながら呟くフェイト


「死ぬほど嫌とか、本人目の前にして中々Sだな」

「ちっ違うよ!?嫌じゃないよ?」

「ふむ、寧ろ良いと?」

「~~///」


 両手で顔を隠しながら走り去るフェイト。


「まったく……一体何を考えているのだろうか」

<マスター年頃の女性に対してあれはセクハラでは?>


 今まで黙っていたガングニールがため息交じりに言う


「何を言う。大体俺は年頃の女性に興味が無いぞ?」

<それはそれで問題有りだと……>

「なんだ、どっちだ?」

<まあ、どっちにせよ。手を出すわけありませんよね。これだから童貞君は……>

「俗物なデバイスだな。俺は童貞ではないぞ?」

<え?>

「ん?」

<い、今、なんて……>

「おっと、そろそろ次の仕事に行かねば、高町隊長、俺はもういいか?というか、仕事があるからもう無理だぞ?」



 何事も無かったように、そのままなのはへ声をかけ仕事へと戻る千早。その日の最後のチーム戦で、フェイトの動きがおかしかったことは誰も知らない……







 さて、これからどうしよう?



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾八話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:6f63847f
Date: 2014/12/17 00:58





 


 食堂にて……



「はあ……」


 何か疲れたように溜息を吐くフェイト


「ん?どうしたの?フェイトちゃん?」


 その様子を心配したのかなのはが声をかける


「ん、なんでもないよ。なのは」

「そう?なんだか今朝から調子悪いみたいだし……」

「ん、大丈夫だから……ちょっと考え事してただけだよ」


 取り繕うように笑顔で答えるも、表情は硬かった。それに気づいていたなのはであるが、余り詮索するのも悪いと思いそれ以上は聞かなかった。





 ――彼は私のことをどう思っているのだろうか?


 彼女はずっと考えていた。


 そもそも、私は彼のことをどう思っているのだろうか?――


 最初は本当に気持ち悪い人だなって、関わりたくないって避けてたのに……でも彼はまったく気にも留めなかった。誰かに嫌われようがどっちでもいい。自分の信じた道を進む彼にいつしか惹かれていった、でも・・・・・・


「はあ……」


 また漏れるため息。そもそも私は彼をどう見ている?友人?同僚?それとも……


「ううん、違うよね」


 もっと踏み込んだ……相棒とか親友、もしかして……「……イトちゃん……フェイ……ちゃん?」


「もう、フェイトちゃんっ!」

「きゃっ!?」


 いきなり大きな声で自分の名を呼ばれ驚くフェイト、そこには少し怒ったような表情で見つめる親友の姿があった


「もう、なのは酷い。いきなり大声出して」

「酷いのはフェイトちゃんだよ。さっきから何度も呼んでいるのに、それにさっきから全然食事に手つけてないけど、本当に大丈夫なの?」

「フェイトママ、ちょーし悪いの?」


 自分の隣に座っているヴィヴィオが、少しぼーっとしているフェイトを心配そうに覗き込みながら言う


「ん、大丈夫だよ」


 そんな彼女を優しく撫でながら笑顔で答える。撫でられて嬉しそうに目を細めるヴィヴィオ


「なのはもごめん。ちょっと考え事してただけだよ」


 皆が心配しているので、考えるのを止め食事を再開する。それでも少し心配そうななのはに苦笑しながら返事をするフェイト


「そうなんだ。それでね、この後の訓練の事で相談があるんだけど」

「午後の訓練?」

「そう」

「ん、わかった。じゃあ、部屋でいいかな?」

「うん」


 午後の訓練のことを話していたフェイトだったが、ふと一人足りないことに気づく


「あれ?」

「ん?どうしたの?フェイトちゃん」

「ん、千早がいないと思って」

「ああ、あのアホなら午後から外や。なんや所用があるって申請してきてたわ」

「え?そうなんだ」

「なんだ、残念そうだなテスタロッサ」

「そ、そそ、そんなことないよ?」


 シグナムの一言に動揺するフェイト、その姿にはやてが


「そらあ、最近フェイトちゃんは千早にお熱やもんなぁ?」


 乗っかる形で意地悪な笑みを浮かべながらからかう


「な、ななな……何を言っているのか解らないよ?はやて」

「思いっきり動揺しながら言われてもなぁ?」

「べ、別に……あっ!そうだった、この間の書類を部屋に忘れてた。ちょっと取ってくるね」


  大げさな動作で手のひらを叩くと、慌てた様子で食堂を去るフェイト。その後姿を笑みを浮かべながら見つめるはやてと、同じく苦笑いを浮かべるなのは達であった。








 ……

 ………





「ぶえくっしょんっ!」


 一人盛大にくしゃみをする。


「ん~ずずぅ……ふむ、どこかで幼女が噂でもしているのか……」

「それはとても危険ですねぇ~」


 鼻を啜る千早に満面笑みで答える少女、彼女の名はレイティ。千早が元いた部隊の上官である。


「んむ、そういう危険から小さき者を守るのが私の使命だ」

「ああ~なるほど~確かに危険ですねぇ。ところで話を進めていいですか~?」


 一人決意の表情で語るも、無視して真面目な顔で話を進めるレイティ。仕方が無いので真面目な表情で彼女に視線をあわせる千早。


「……ふむ。前にも言いましたが、私は戻る気はありませんよ?一佐」

「ああ、今回はその件じゃないんですよ」


 ふんわりと、首をふる。


「ということは、公開意見陳述会の件とかですか?」

「ああ~やっぱり知っていましたか。あ、後敬語は必要ありませんよ?なんでしょうか気持ち悪いんで~」

「ん、わかった」


 元の口調に戻す


「それで?」

「それで?とは?」

「俺を部隊に戻るように説得しにきたわけでもない。まさかとは思うが、陳述会が危ないって知らせにきたとか?」


 千早の言葉に珍しく瞳を丸くして驚くレイティ。しかし、またすぐに普段どおりの表情に戻す


「相変わらず恐ろしいですねぇ。警備はかなり厳重にするそうですよ?恐らく貴方達も警備にあたるんですよね?」

「そうなるだろうな。ただ、多分、いや確実に俺は中には入れないだろうけど」

「貴方、一応隊長さんですよねえ?」

「一応は……まあ、隊長といってもお飾りでしかも一人だからな。」

「そういうところも相変わらずですねぇ。じゃあ、余り意味が無いかも知れませんけど……」


 千早にもっと近づくように言うと、そのまま耳元で何かを伝えるレイティ。そうして、しばらく会話をした後、別れるのであった……






 ……

 ………




 その日の夕方、隊長達だけを自分の執務室に呼び出すはやて。そこには既になのは、フェイトが揃っていた。二人に少し送れて千早が入ってくる。


「すまん。遅れた」

「ああ、かまへんよ。皆も今揃ったところやし」


 申し訳なさそうに言う千早に、かまわないと答えるはやて。


「そういえば、今日どこへ行っていたの?」


 ソファーに座ろうとする千早に質問するなのは。


「ああ、ちょっと人と会っていただけだ」

「人?誰と会っていたの?」

「ん?」

「ああ、千早はちょっと逢引してただけやで」

「「逢引!?」」


 いやらしい笑みを浮かべながら、答えるはやて。その言葉に驚くふたり。


「あ、あああ、逢引って誰と会っていたの?シグナム?シグナムなの?」

「お、落ち着いて、フェイトちゃん。シグナムさんは今日一日一緒だったから」

「うむ、意味がわからないがシグナムと逢引とか何の罰ゲームだ?それに俺が会っていたのは、前いた部隊の上官だ」

「なんだ。そういうこと」

「そうそう、本来なら近所の子らと遊びたかったが……昨今規制が酷いのでな」

「規制?」

「ああ、ちょっとな。上官命令でペナルティを与えたんや」

「ペナルティ?」

「そうや、こいつが変態行為を一回する度にうちの女性職員と一緒に……ってフェイトちゃん?物騒なものはしまおうや」

「私、今なら殺意の波動に目覚めそうだよ?」

「フェイトちゃん……」

「さて、冗談は置いておいて……」


 そろそろ本題を話さないと、一生終わりそうになさそうなので、コホンとわざとらしく咳をすると真面目な表情になる。


「今日協会の方から最新の予言解釈がきた。やっぱり公開意見陳述会が狙われる可能性が高いそうや」

「うん」


 仕事の話になったため、表情を切り替える三人。


「もちろん警備はいつもよりぐうんと厳重になる。機動六課も各員でそれぞれ警備にあたってもらう。ほんまは前線全部で警備にさせてもらえたらええんやけど、建物の中に入れるんは私たち三人になりそうや」

「え?千早君は?」

「前線メンバーと一緒に警備にあたってもらうことにした」

「そうなの?まあ、三人揃っていれば大抵の事はなんとかなるよ」

「前線メンバーも大丈夫、しっかり鍛えてきてる。副隊長たちも今までに無いくらい万全だし、それに何かあれば」

「ん?まあ、シグナム副隊長やヴィータ副隊長がいるから、大丈夫だろ?」

「私は千早君に言ったんだけど……」

「ん、まあ、善処する」

「あーそういえば、会場の警備にアイリーン達503部隊も警備にあたってるはずやったけ?」

「全力を持って事にあたろう」

「ねえ?はやて、アイリーンって?」

「ああ、フェイトちゃん、あの馬鹿のお気に入りの娘や」

「え!?もしかして可愛いの?」

「そらあ、もう可愛いで」

「そ、そう……」

「なんせ、ぴちぴちの10歳やから」

「え?」


 アイリーン・ラグランシエル。魔道師ランクAのぴちぴちの10歳、千早が六課に出向させられた原因の一端である。しっかりとした性格で、少々大人ぶる様子がロリ心を擽る、Sクラスの幼女である。


「しかも、ツンデレときた。まったく可愛い奴だ」

「そうなの?」

「ああ、今度紹介しよう」

「うん、是非」

 勘違いとわかり安堵したフェイトに、今度紹介する約束をする千早。その様子を見て、二人は思う。ああ、もうあの頃には戻れないのだと。

「まあ、このバカは放っておいて、皆解ってると思うけど、ここを抑えればこの事件は一気に好転していいくと思う」


 仕切りなおしてをばかりに、真面目な表情で三人を見つめるはやて。


「うん、みんなのデバイスリミッターも、明日からはサードにあげていくしね」

「きっと、大丈夫だよ。はやて」

「そうだな」


 そんなはやてを安心させるように答えるなのは、フェイト、千早。その返事に満足したような表情をするはやて。そうして、公開意見陳述会の日が訪れるのであった……






[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第弐拾九話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:56160c97
Date: 2015/04/07 21:25
 






「凄い人だな」

<イエス、流石に本部に何かあってはことですから>


 現在、管理局地上本部では明日行われる公開意見陳述会に向けて警備が厳重に張られていた。その中に千早の姿があった。他のメンバーより先に、外側の警備にあたることになっていた。


「しかし、こうして単独で行動するのも久しぶりだな」

<そうですね、特に六課にきてからは結構マスター他人と接する事が多くなりましたね>

「ふむ、そうだな。どうもあそこの人間はお人よしらしい」

<確かに、マスターのような変態の面倒をしっかり看てくれていますしね>


 自身がロリコンであることを公言していることで、迫害を受ける事もあった。それでも、本人はまったく気にせず我の道を貫き通す。それが、余計に気持ち悪いのか更に人が近寄らなくなってきていた。


「まあ、私としては気にした事は無い。それに、ここにも結構、志が同じ者も多い」

<案外管理局も変態ばかりでしたね>

「まっ、取り繕った所で人は所詮、ロリコンなのさ」

<言い切りましたね>

「まあな。それよりこれからの予定は?」

<はい、なのは隊長とヴィータ副隊長、リィン曹長とフォワードの子達が夜からこちらの警備に入ります>

「そうか、とりあえずは今の内に楽しておくか」

<そうですね。何かあるとしたら明日でしょうしね>

「そうだな」



 そうして、外を巡回する。巡回中に何名か見知った顔を見かけるも、ほとんどが顔を逸らすのであった。






 夜になり、一層警備の数が増えかなりの厳戒態勢が敷かれていた。この頃になると六課のメンバーも参加しているようで、端っこの方で警備するなのは達の姿が見えた。お互いの様子を確認し、暫く巡回を続ける。

 夜中も二時を過ぎた頃に、休憩に入る千早。警備部隊が固める入り口前から離れた場所に、ちょうど腰がかけれるくらいの高さの石段があったのでそこに座る。真っ黒な夜の空に、ライトで明るく照らされた本部を見上げながら溜息を吐く。


「おつかれさまです」


 後方から声がする。


「ん?ああ、おつかれさん」


 声の主に気づき振り返る。そこには水筒と紙コップを持ったティアナがいた。


「警備部隊の方からお茶の差し入れを頂きましたので、お届けに……ってなんでちょっと残念そうな顔なんですか?」

「いや、できればキャロ君がよかったなと」


 正直に答える千早。


「えーと、なのはさん呼びます?」

「ほう、君は白い悪魔を召還できっ……がはっ!」


 ピンク色の小さい何かが飛んできた。向こうでは、恐ろしい顔で何かが『なの!』って起こっているが気にしないでおこう。


「いたた……まったく、朝からこっち今まで警備している人間に酷い仕打ちだ」

「自業自得だと思います」


 頭を摩る千早に溜息を吐く。しかし、この人はかわらないなと思う。他の人間はいつ現れるか解らないテロリストの出現に警戒し皆ピリピリしている中、目の前の変態はいつもと変わらない。誰がこようが、何が起きようが変わらず、飄々としたその姿が逆に頼もしく感じるティアナ。


「少しお話いいですか?」


 少し俯きながら、隣に立つティアナ。少し躊躇う様子を見せていたが、意を決したように千早の方へと視線を移す。


「実は、最上隊長の事少し調べちゃいました」

「ふむ」

「201部隊所属、一等陸尉で、混沌姫レイティ一佐の右腕として敵、味方を恐怖に陥れた変態。あの武闘派で最強と言われた漆黒の処刑台エミリア二佐からも一目置かれる変人」

「……なんだ、その頭の悪そうな異名は」


 呆れたようにため息を吐く千早。自分の古巣が良く思われていないことは知っていたが、まさか上官にそんな中学生のような異名をつけられていたことに驚く。後、さらっと自分の上司に変態とか変人とか言うティアナも大概である。


「でも、出生や故郷は一切不明で、ただ貴方と最初に出会ったのが八神隊長ってことだけでした」

「なんだ、良く調べてるな」

「すみません、失礼かと思ったのですが」


 申し訳無さそうに頭を下げるティアナ


「ああ、かまわんよ。その辺りは知り合い誰もが知っている事だからな」


 そこまでは公式の履歴であり、管理局員であれば誰でも閲覧できる事である。しかし、千早がまったく別の世界の人間であることは誰も知らない。というより、言っても誰も信用してくれない。一応、この世界にも地球があり、日本があるのであるが、


(いや、まさか生きている間に高町御一家とご挨拶させてもらえるとは思わなかった)


 一度休暇を利用して、なのはやはやての故郷で、一応は自分の故郷という事になっているこっちの世界の地球へと帰省した際に挨拶をさせてもらったのであるが、


(誤解を解くのに大変だった)


 今でも鮮明に思い出す。はやてが自分の家に用事があるとのことで別行動をとり、別段この世界の地球に実家も何も無い千早が、帰る時まで適当にぶらつくと提案した際に、


 ―――千早君を野放しにすると、治安が悪くなりそうなの


 という理由から、高町家へとご厄介になることになったのであるが、


(確かに年頃の娘が帰省時に男と二人きりで帰ってきたら誤解しか生まんな)


 それは大変だった、まずは盛大に勘違いをした長女と母親からは質問攻めにあい、その間中父親と長男からは殺意の篭った視線を浴び続けてしまった。


 ―――お母さんっ!お姉ちゃんも違うのっ!そういうんじゃないの!


 必死に否定していたけども、まったく信用されていなかった。


(仕方が無かったので、きちんと説明したんだが……)


 なのはが否定しても、取り繕う暇も無い感じだったので仕方なく千早が説明する。


 ―――ああ、申し訳ありません。私は10歳までの少女にしか興味ありません。ですから安心してください。


 何故かさらに警戒されてしまった。高町家の長女が一瞬にして三歩下がり、その間に長男が短刀を抜こうとしたところまでは覚えている。後は必死に逃げまわった。


(まさか御神流に斬りかかられる事になるとは……)


 その時の様子を思い出したのか含み笑いを浮かべてしまう千早。


「最上隊長……気持ち悪いです」

「何気に酷いな、君」


 相変わらず辛口な様子のティアナであるが、意地悪な笑みを浮かべている辺りは本気で気持ち悪がっているわけではないようだ。


「まったく、しょうも無いテロリストのせいで散々だ。早く終わらせてヴィヴィオと遊びたいものだ」


 溜息と共に愚痴る。


「本当に子供がお好きなんですね」


 管理局員らしからぬ言動に苦笑しつつ質問をする。


「ああ、大好きだ。何よりも、誰よりも、大好きだ」


 清清しいまでの真っ直ぐな好意。


「だから、そんなに強くなれるですね」

「ん?」

「私が最初に最上隊長を問い詰めた時の事、覚えています?」

「ああ、あの時は顔に唾を飛ばして怒っていたな」

「そ、そこは思い出さなくてもいいです……」


 顔を真っ赤にするティアナ、自分でもえらく大胆な事をしたなと思う。上官でしかも男性に詰め寄り怒鳴り散らすなんて、


「それで隊長はこうおっしゃりましたよね『私は幼女少女少年を愛でる事しかできない。故にそれ以外は凡人以下、才能も実力も無い』と」


 とりあえず仕切り直しとばかりに真面目な表情に戻すも余り迫力が無い。


「ああ、そう言ったな。それで更に君は怒っていたな」

「あの時はふざけていたと思ったもので、申し訳ありませんでした」

「ふむ」

「だから余計に聞きたいんです。何故幼女が傍にいるとそんなに強くなれるんですか?やはり最上隊長がロリコンで変態だからですか?なら私は強くなるために変態かロリコンにならないと駄目なんですか?」


 何故であろうか、ものすごく鬼気迫る表情で懇願されているはずなのに、ものすごく貶められているような気分になるのは……あの一件以来吹っ切れていたと思っていたが、まだ少し気になっているようである。


「あーと、君は勘違いしている」

「勘違いですか?」

「ああ、君は私がロリコンで変態だから強いと思っているだろ?」

「違うんですか?」


 どうやら本気で思っていたようで、思いっきり首を傾げられてしまう。


「ふむ、私はロリコンだから幼女が好きな訳ではない。無論変態だから小さい子が好きなわけでも無い」


 そもそも変態って言うのは自称するものでもないしな。と付け加えると、


「私は幼女を護りたいと思っているから、ロリコンであり、全ての子供達が大好きだから変態と呼ばれているだけだ」


 ものすごく真面目に語っているが、どう聞いても変質者の言い訳にしか聞こえない。


「えっと、すみません。よく解りませんでした」

「というか、前にも言ったが君は君で私は私だ。余計な事を考えていると、またミスをするぞ?」


 この話は終わりと言わんばかりに切り上げる千早。


「すみませんでした」

「解ればいい。では戻れ」


 深く頭を下げ謝罪すると、皆の元へと戻ろうと駆け出すティアナ。その後姿を眺めながら溜息を吐く。


「まったく、早く終わらせておみやげにお菓子を買って買えるか。なあ、ガングニールよ」

<そうですね。どこもかしこも子供に優しく無い空気ですものね>

「ああ、だから我々大人がしっかりと護ってやらねばならん。例え死ぬことがあっても」

<マスター>

「ん?」

<いつも思うんですが、どうしてそう言った発言を皆の前でしないのですか? そうすればマスターの評価も変わると思うんですが……>

「ふむ、どうでもいい」

<そうですか……>


 器用に溜息を吐くガングニール。


<ところで……>

「なんだ?」

<マスターは童貞じゃないんですよね?>

「いきなりなんだ? 下世話なデバイスだな」

<いえ、これは重要なことですよ? マスターはロリコン、それが童貞ではないということは……>


 ふと前々から疑問に思っていた事を投げかけるガングニール、彼は生粋のロリコン、彼と共に過ごすようになって結構経つが、年相応の女性に興味を持ったところを見た事が無い。それが童貞ではないと言う事は……


<返答次第では通報も持さない覚悟でして……>

「ふむ、とりあえず通報は怖いが、安心しろ相手は年上だ。しかも、襲われたのは私の方だ」

<は!? それって……>


 アッー! という事ではないか? そんな、自分の主がそんなトラウマを抱えていたなんて……


「とりあえず、勘違いしているようなので訂正するが、相手は女性だからな」


 盛大に勘違いしているガングニールに溜息を吐く。


<え? は? じゃあ、マスターは……>

「人には色々と過去があるものだよ……」


 それ以上は聞くなといった雰囲気で、話を切り上げる千早。やはり、この人は何年一緒になっても理解ができない。


 こうして、微妙な空気なまま公開意見陳述会の時間が迫るのであった……









[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第参拾話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:22181155
Date: 2015/07/22 00:16
 


「してやられたって訳か」

「冷静に言ってる場合じゃないですよ!?」


 現在地上本部は現在テロリストによって壊滅状態まで追い込まれていた。ジャミングによる通信妨害の為に中との連絡は遮断。


「通信妨害がきついな、ロングアーチどうなっている?」


 前線メンバーを引き連れて現場を走る。現状隊長陣達が中の為、全員の指揮を千早が執っていた。


<外からの攻撃は現在止まっていますが、中の状態は不明です>


 悲痛な声が聞こえてくる。


「最上隊長、あたし達が中に入ります。なのはさん達を助けに行かないと」


 スバルが提案するとティアナ達全員が頷く。

 現状が解らない以上、直接中に入って状況を打破するしか方法は無い。


<本部に向かって航空戦力……>

<は、早いっ!?>


 中に入ろうと全力で駆ける千早達にロングアーチより情報が入る。


<……ランク、オーバーS>


 ここに来て新手か……仕方が無い。


「そっちは私が対応する。地上は前線メンバーで対応をさせる」


 本来なら一緒に行った方がいいのであろうが、状況的にオーバーSが相手となればこちらもそれ相応の対応しないと状況がさらに悪化しかねない。


「大丈夫ですか?」


 不安そうに声をかけるティアナ。

 まあ、確かになのはやフェイトに比べると空戦は余り得意ではないからな。

 とはいえ、消去法でいけば自分が行くしかない。


「問題無い、幼女分も補給している。それに、最近ヴィヴィオのおかげで過食気味だ。空戦もいける」


 大丈夫なのか、大丈夫でないのかいまいちよく解らない返答ではあるが気持ち悪い事だけは理解できた。


「とにかく地上は任せたぞ」

「「「「はい!」」」」


 これ以上議論している暇は無いとばかりに指示を出す千早。その号令に返事をし中へと駆けていくスバル達前線メンバー。それを確認するとさらに駆け出す。


「さて、行くかガングニール」

<イエス・マイマスター>


 そのままバリアジャケットを羽織ると地面を蹴り空へと上がる。








<こちら管理局、貴官の飛行許可と個人識別票が確認できない。直ちに停止を>


 本部に向かい飛行する人物を捕らえ警告を発する千早。しかし、相手は一向に止まる気配が無い。


<それ以上進むなら、迎撃に入る。繰り返す、これ以上進むなら迎撃に入る>


「ん? あれは……」

「旦那?」


 そのまま本部まで高速で飛行していたが、急に何かの気配を感じ停止するゼスト。彼の停止を不信に思い振り返るアギト。


「止まれと言ったはずだが?」

「……」


 眼前で立ちふさがる一人の人影。


「誰だ? こいつ」

「アギト、下がっていろ」


 自分の方へ下がるようにアギトに言う。何故だろうか、目の前の人物に不安を感じる。


「ふむ、妖精か……リィン曹長以外にもいたのか……」


 感慨深そうに呟く青年。


「しかし、リィンとはまた違った、なんというか勝気で元気な感じがいい……」


 彼のアギトを見る目が違う。その瞳に恐怖を感じるゼスト。それは猛獣が獲物を品定めするようなそんな殺気だった目でない。どちらかといえば慈愛に満ちた優しい目でアギトを見ている。しかし、何故か安心できない。これは……


「貴様、もしやロリコンでは?」

「Yes,I am」


 誇らしげに答える千早。その姿を見てゼストは確信した。

 間違い無い。奴はロリコンだ。

 そして、前にルーテシアが言っていた事を思い出す。


『機動六課にはロリコンが存在する』


 奴の与太話かと思っていたが、まさか本当に実在するとは思ってもみなかった。そして、そのロリコンが自分の前に立ちはだかっている。

 互いに無言でにらみ合う。その様子に息を呑むアギト。


「さて、できれば退いて欲しい。小さき者に慕われている人とはできれば争いたくは無い」

「断る」

「どうしてもか?」


 千早の提案に二度目は無言で槍先を突きつける形で答える。


「そうか、仕方が無い」


 同じく右拳を突き出すと半身で構える。


「旦那!」


 既に戦闘体制を整えたゼストに近づくと二人光を放つ。


「これは?」

<融合!? 危険です! マスター>


 アギトと融合したゼストが静かにこちらを見上げている。


「くっ……卑怯な」

「すまんな、先を急いでいるのでな」

<はあ!? 旦那が卑怯だって? 融合だって立派な魔法だ>

「そう怒鳴るなアギト、奴の言う事ももっともだ」


 自分の事を卑怯者呼ばわりされたことに腹を立てるアギトを静かにたしなめる。確かに相手からすれば二対一、卑怯者呼ばわれりされても仕方が無い。しかし、それでも先を急ぐ理由が彼にあった。


 目の前で憤慨する青年には申し訳ないがこのまま押し通してもらおう。


 そう思い柄を握る手に力を込めるゼスト。


「私が幼女に手を出せないと知って融合するとは、貴様はそれでもロリコンか!」

「……」


 掴んでいた槍を思わず落とすところだった。


「は?」

「は? では無い。敵とはいえ小さき者にそこまで好かれておきながら、盾に使うとは言語道断、ロリコンの風上にもおけん!」


 怒りを露にしながらこちらへ向かい指を指す。


「いや、俺はロリコンでは……」

「問答無用!」

「!?」


 左足に力を込め空を蹴りそのまま駆け出し間合いを詰める。思わぬ発言に油断をしていたゼストの眼前まで詰めると、そのまま右の拳を顔面へと繰り出すが……


「……どういうつもりだ?」


 拳は彼の眼前数ミリの所で止まっていた。


「油断させてどうかしようというつもりなら無駄だ。それとも舐めているのか?」


 騎士として己を侮辱された事に対し怒りを露にするゼスト。


「貴様を殴れば中にいる小さき妖精にダメージがいくのであろう? 例え、どんな状況であれ私は小さき者に対し手を挙げる事はできん!」

「……」


 魂の篭った叫びが木霊する。彼は例え敵であっても、小さき者には一切手を出さない。


「そんな事では死ぬぞ?」


 槍による一撃が襲うも辛うじて避ける。


「例え死ぬ事になったとしても、それだけは貫き通させてもらう」


 敵であれ、味方であれ、小さき者には一切手を出さない。

 そして何より……


「それに、先に行かせる訳にもいないんでな」

「そう、うまくいくかな?」


 少し腰を落とすと槍の切っ先をこちらへ向け、突進してくる。それをギリギリの間合いで避けると追撃する。


「当てる気が無い攻撃に意味は無い」


 そのまま魔力弾を難なく弾き、本部へと進もうとするも


<バインド?>


 光の鎖で彼を縛りつけ動きを止める。


「だから、行かせる訳にはいかないと言ったはずだが?」

<こんなもんで、旦那とあたしを止められると思うな!>


 ゼストが力を込めると鎖が切れる。


「!?」


 鎖が切れた一瞬を狙い、間合いを詰める。


「何度も言うが、当てる気の無い攻撃に何の意味も無い」

「なら当てるとしよう」

<旦那!?>


 そのまま思いっきり拳を突き立てる。


 直撃する!


 そう判断したゼストが槍を前に防御の構えをとる。

 そのまま槍に思いっきり打撃を与える。

 思いのほか重い一撃だったのか、少し後ろへと下がるゼストに


「要は体に当てなければ良いまでのこと」


 両拳をガチャンとあわせると、構えなおす。


「そんな事で勝てると思っているのか?」

<そうだ、そうだ、馬鹿かこいつは>


 確かに身体に直接ダメージを与えなければ、中にいるアギトへのダメージも無い。しかし、それでは先ほどとなんら変わりは無い。

 つまり向こうに勝つ要素はまったくないはず、一体何を考えているのか理解できない。


「だが、時間は稼げるだろ?」


 余裕の笑みを浮かべる。なるほど、それが目的か……


「確かに、時間がかかればこちらが不利になるか……」


 千早の考えに気づいたゼストは心の中で小さく舌打ちする。奴は自分がアギトと融合した辺りから倒す事をまったく考えていないかったのである。


「防衛ライン復活までの時間稼ぎか」

「それしか思いつかなかったのでな」


 確かに、現状では最良の策ではある。防衛ラインが復活すれば、ゼスト一人では目的を達するのが困難になってくる。しかも、向こうにはオーバーSが何人か控えていれば尚更だ。


「なるほど、ただの変態では無いということか……名は?」

「管理局機動六課シルバー分隊 隊長 最上千早だ」

「そうか……ゼストだ」


 お互い名乗りをあげると、第二ランドを開始するのであった。



[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第参拾壱話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:6fd045d3
Date: 2016/12/11 03:55
 







「ふむ、中々に痛い死ぬ」


 窓から差し込む太陽の光で目が覚める。全身に走る痛みに本能的に死を悟ったのかつい本音が出てしまった。ここが病室で、自分の置かれている状態を理解するにそれほど時間はかからなかったが、とりあえず周りの状況を確認する。
 身体は……一応動くが、指先ひとつ動かすだけで激痛が走る。まあ、多分重症なんだろうな。とはいえ、この世界の医療技術は控えめに言って現代の100年先をいっている。二~三日で退院できるだろう。と前向きに勝手に思ってみる。


「最後に幼女が向いたリンゴを食べたい」

「目覚めて早々言う事がそれか」


 大きな溜息が聞こえる。視線の先でピンク色の尻尾がゆらゆらと揺れていた。


「目が覚めて最初に見るのがお前とはどんな罰ゲームだ」

「そうか、思ったより元気そうだ。どれもう一度意識を飛ばそうか? なんならもう二度と目覚めないよう首と胴を」


 そのまま手刀を首筋に添える。


「重症患者になんて言い草だ。これだから年増は……」

「ふっ……その様子だと大丈夫そうだな」


 そこで笑うか……


「まあ、思っていたよりはな。しかし、やはりというか勝てなかったか」

「ああ……」


 シグナムより事の顛末を確認する。どうやら俺はゼストにコテンパンにのされたようだ。まあ仕方が無いあの時は時間稼ぎと色々と縛りがあったからな。と言うのは言い分けだな。


「お前のデバイスが必死に助けを叫んでたからな。後で感謝することだ」


 シグナム曰く今まで聞いた事が無いくらい悲痛な声色だったそうだ。それは悪い事をしたな、今度子供達の戯れる姿のデータでも入れてやるとするか。


「それで、他の状況は?」

「そうだな……」


 陳述会襲撃の方も善戦したとはいえ、かなりの被害を受けたそうだ。そして六課のメンバーもスバルを筆頭にかなりの被害を蒙っていた。


「そうか、そこまで被害が大きいとはな」

「それに……」


 珍しく歯切れの悪い様子で俯くシグナム。いつもと違うその様子に違和感を感じざるを得ない。


「ヴィヴィオに何かあったか?」

「!? 知っていたのか」


 驚いた表情でこちらを見る。


「いや何となく……強いて言えばロリコンの勘だ」

「そうか……」

「ああ……」

「それで? どうなった」


 六課も襲撃されほぼ全壊、防衛に出ていたザフィーラが重症、シャマルを含め職員達が重軽傷を負ったそうだ。そして、ヴィヴィオが奴等に攫われたと……

 室内に重苦しい空気が充満する。シグナムは無言でこちらを見つめる。


「……お前は大丈夫なのか」


 静かな室内に響き渡る言葉。初めて投げかけられる不安要素を含んだシグナムの言葉。
 彼女は思った、目の前の男にとってヴィヴィオは母親を名乗りでた高町よりも大切に思っている存在、言わば玉である。その玉を奪われた、その事実は彼にとってどれほどのショックか解らない。


「……っ」

「!? 何をしている!」


 思いきって身体を起こそうとすると激痛が走る。思わず駆け寄るシグナム、しかしそれを静止するとそのまま上半身を起こし


「っ~痛い」


 そのまままた元に戻る。


「当たり前だ。重症なんだぞ? 一体お前は何がしたいんだ」

「……足りない」


 小さく声を絞り出す。


「何だ? 何が足りない?」

「……血が足りない……後、幼女成分も足りない……ありったけの食料と、後幼女少年動物あらゆる小さき者を網羅した映像を持ってこい!」

「はあ!? 何を言って……」

「持ってこい!」


 上半身を起こしシグナムの胸倉を掴むと顔を寄せ、そのまま強く命令する。思わず顔を逸らして


「解った! 解ったらから少し大人しくしておけ!」


 と吐き捨てるように言うと部屋から出て行く。彼女が出て行った後またベッドに身体を埋める。やはり無理に動かしたのが祟ったのか全身に走る激痛に耐えながら一人ごちる。


「大丈夫か、か……」


 まったく笑えない。何がロリコン・オブ・ロリコンだ。たった一人の幼女を守れずにロリコンを名乗っていた事に怒りを覚える。


「いいだろう……奴らに理解させてやろう」


 そうだ、ここで終わりではない。ここで終わらせてはならない。


 ロリコンとは小さき者を守る剣……


 ロリコンとは小さき者を守る盾……


 ロリコンとは小さき者を包む翼……


 ロリコンとは小さき者を愛し、小さき者を守り、小さき者の笑顔を何よりも大切に思う騎士であり従撲。そうだな奴らに……ジェイル・スカリエッティに……


「真のロリコンの恐ろしさを」


 この後、大量の食料と少年少女が戯れる映像データを持参したシグナムと共に看護師から思いっきり叱られた事は言うまでもなかった。















 瓦礫の山で一人現場検証をしているティアナ。状況を確認すればするほど溜息しか出ない。ボロボロになった建物を不安な表情で見上げる。

 これから一体どうなるんだろうか? ティアナ脳裏にあるのは陳述会の一件、親友のスバルは重症、キャロやエリオも軽症ではあるが入院中。何より意識不明で重体のヴァイス陸曹と最上隊長の事が頭から離れない。二人の重傷者でしかも隊長クラスがとなれば士気が下がるのも無理はない。特にティアナにとって二人は尊敬する存在なだけに。


「思っていた以上に酷いな」


 そんな彼女の後ろから聞き覚えのある男の声がする。


「最上隊長!? 意識不明の重体だったんじゃ!?」


 振り返り声の主を確認したティアナは混乱した。何しろ3日前まで意識不明の重体で集中治療室で面会禁止と伝えられていたのだから。


「え? なんで? 3日前までは……幽霊? 死んだんじゃ?」

「ああ、昨昨日までは指一本動かすのも激痛が走ったな。というか勝手に殺すな」


 とりあえずチョップしておいた。


「あう、すみません」


 叩かれた頭を摩りながら頭を下げる。


「最上隊長、身体の方は?」

「そうだな7割といった所だ、戦闘以外なら問題無い。他の隊員達も峠は越えた。シャマルとヴィータは復帰しているしな、とはいえ細かい検査は必要なようだが」

「そうですか、よかった」


 安堵した表情で応える。しかし、やはりこの目でみるまでは心配なんだろうか不安な様子は拭えない。検証といった仕事が無ければ今すぐ駆け出して病院に見舞いに行きたいのだろうが、今は堪えているといった感じにもとれる。


「それでこっちはどうだ?」

「今、高町隊長が中を調査中です」

「様子は?」

「いつも通りです。いつも通りしっかりお仕事をされています。負傷した隊員のこととか、攫われちゃったヴィヴィオの事とか確認……」


 そこまで言って口を塞ぐ。ティアナは後悔した、なのは以上にヴィヴィオを溺愛していた彼の前で無神経な発言をしてしまったと、しかし、そんな彼女の気持ちを知ってか知らぬか彼女のバインダーを受け取ると


「後は私が引き継ぐからティアナも病院に顔を出してくれば良い」


 見舞いに行くように促す。


「ですが……」

「かまわん、行ってやれ」


 最初は拒んだティアナであったが、千早の言葉に礼をするとそのまま駆けて行った。それを確認すると現場検証を開始するのであった。








 現場での仕事も終わる頃にはすっかり暗くなってしまった。そのまま何の気なしに隊舎内を回っていたら、見慣れた影が二つ。


「ん?」

「あっ、千早」


 千早の存在に気づいたフェイトだったが少し気まずい表情でこちらへ笑顔を向ける。見ればなのはがフェイトに抱きつき涙を流している所だった。


「ふむ、ここは空気を読んで立ち去るとしよう」

「そんな発言している時点で、空気読めていないと思うの……」


 踵を返した彼の背中の方からいつも通りの突っ込みが聞こえてくる。振り返ると涙を拭いながら、無理な笑顔を向けてくるなのはが見えた。


「まあ、俺は幼女以外に気を使う気は無いからな」


 いつも通りの彼の態度に笑みを浮かべる二人。しかし、それは弱々しい。


「今、7割だ……」


 二人に両手を向ける。左手は五本全て指を開き、右手は二本開いた状態で。その意図が理解できず首を傾げる。


「傷は塞がった、痛みも大分マシになった。後は……」


 一枚のスクール水着を開く。そこには平仮名で『ヴィヴィオ』の文字。


「ヴィヴィオを救って一緒にお風呂に……痛いじゃないか」


 思いっきり後頭部を殴られてしまった。グゥで……


「当たり前なの、というかどっからそれ出したの? それにいつお風呂に入る約束したの?」

「ん? 陳述会の前の晩」

「勝手な約束しないで、ていうかヴィヴィオがそんなこといいって言うはず」

「いんや、即答だったぞ?」

「嘘!?」

「じゃあ、その時は私も一緒に入ろうかな?」

「フェイトちゃん!?」

「なのはも一緒に入れば大丈夫だよ」

「大丈夫 じゃないよ!? ていうかなんで皆でお風呂入る話になってるの?」

「ふむ、何を言っているか解らないが安心しろ。俺は成熟した女性には一切欲情しない」

「色々な意味で安心できないよ!? それ!」

「なのは落ち着いて、その時は千早は女の子だから」

「そうなのか?」

「いやいや、確かに変身魔法があるからって……それ以前の問題だよ」

「というか、何故裸で入る前提なんだ? 水着着用に決まっているだろ?」

「そ、そうだよね……」

「え?」

「フェイトちゃん……」


 項垂れるなのはに思わず笑ってしまうフェイト、それに釣られたのか同じく笑顔を浮かべるなのは。そこには先ほどまでの悲壮感は一切なくなっていた。


「ありがとう。フェイトちゃん、千早君」

「うん、絶対助けよう3人で」

「当たり前だ。俺を誰だと思っている? 俺は……」

「「ロリコンで変態」」

「……変態は余計だ」


 また笑い声が木霊する。そうして長い一日が過ぎていくのであった。




[35333] STS世界で転生者は無印の方が良かったと嘆いていました 第参拾弐話
Name: 獅子座◆cff0ab9c ID:6fd045d3
Date: 2016/12/15 00:44
 
 時空管理局 次元航行部隊 L級巡航船 アースラ

 現在航行中の船の中、ミーティングルームに集まるメンバー達、はやてが来るまで時間があるので雑談に華を咲かす。


「アルトさんとルキノさんが」

「うん、アルトは療養中のヴァイス君に代わってヘリパイロット」

「ルキノはアースラの操舵手」


 ティアナの質問に答えるなのはとフェイト。


「アルトさんヘリのライセンスなんてお持ちだったんですね」

「うん、元々ヘリは好きだったしヴァイス陸曹にも色々教えてもらってね」

「で、ルキノさんも」

「この船、私の前の職場なんだ。艦船操舵手になりたくてね、ここで事務員として研修しながら操舵ライセンスをとったんだ。」


 キャロの質問に笑みで答えるアルトと操舵中の為通信パネルで同じく話をするルキノ。ある程度盛り上がった頃に扉が開かれる。


「ああ、みんなおそろいやな」

「失礼します」


 扉から室内に入るはやてとグリフィス。


「ちょうどよかった。今、機動六課の方針と行動が決まった所や」


 中央の奥の椅子に腰掛け皆に今後の方針を説明する。その傍らに立つグリフィスより今までの経過が語られる。


「地上本部による事件への対策は、残念ながら後手に回っています。地上本部だけでの事件調査の継続を、強行に主張し本局の介入を固く拒んでいます。よって、本局からの戦力投入はまだ行われません。同様に本局所属である機動六課にも、捜査状況は公開されません」


 グリフィスの説明を静かに聴くメンバー達。ここまでされて未だに面子を重視する体制に呆れざるを得ない。


「そやけどな、私達が追うのはテロ事件でもその主犯格のジェイル・スカリエッティでもない。ロストロギア、リリック、その捜査線上にスカリエッティとその一味がおるだけ、そういう方向や。で、その過程において誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹となのは隊長とフェイト隊長と千早隊長の保護児童……って千早隊長はどうしたん?」


 ここまで話をしていたはやてが、千早がいないことに気づく。


「はやて、今気づいたの?」

「私、てっきり千早君のこといない者として話を進めていたと思ってた」


 はやての言葉に苦笑しながら答える。というかフェイトは別としてなのはの答えが余りにも酷いので思わず苦笑してしまう。


「で? あの馬鹿は何してるん? 何か聞いてるなのはちゃん、フェイトちゃん」


 先ほどまでの重苦しい空気が一転、緩やかな空気がミーティングルームを支配する。


「えっと、確か決戦に向けて戦力向上を目的とした修行を行うって……」

「そうそう、なんだろう? 何かたった一日で一年修行できるとかなんとかって……」

「あの馬鹿は異次元空間かなにかで修行しとるんか……」


 ものすごくアバウトな説明を聞いて項垂れるはやて。


「ま、まあ、千早君だから……」

「そうだね。あの千早なら異次元でも亜空間でも生きていけると思う」

「お二人共、微妙に褒めてませんよね? ここに来る前にお会いしましたけどかなり疲労している様子でした」

「どんな様子やった?」

「そうですね。久しぶりに女性の姿で、ものすごく疲れているというかげっそりしていました」

「え? それ本当に? ティアナ」


 ティアナの説明に身を乗り出すフェイト。その様子を苦笑しながらなのはが、


「あはは、そういえば千早君って変身魔法を使用して自分に制限をかけてるって言ってたよね」

「はい、なんでも自分の嫌いな物に自ら変身することで魔力負荷をかけてる、とおっしゃっておられました」

「うん、それ聞いた事ある。例えるなら数倍の重力で生活するようなものだって言ってた」

「相変わらず訳のわからん理屈で生きているなあ。まあええわ、それで話の続きやけど……誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹と三人の保護児童ヴィヴィオを救出する」


 とりあえず、千早の事は放っておいて話を進めるはやて。


「とりあえず、そういう線で動いていく。両隊長意見があれば」


 これまでの経緯とこれからの行動指針を説明したはやてが二人に意見を促す。


「理想の状況だけど、また無茶してない?」

「大丈夫?」


 アースラの確保、地上より睨まれている六課のこれから行おうとしていることに対しはやてが無理や無茶をしているのではないかと心配そうな表情の二人。そんな二人に笑みを浮かべながら、


「後見人の皆さんの黙認と協力はちゃんと固めてあるよ、大丈夫。何より、こんな時の為の機動六課やここで動けな部隊を起こした意味が無い」


 補足説明するはやて。


「了解」

「なら、方針に異存はありません」


 後は行動を起こすだけそう決意を固めると全員頷く。そうして皆思い思いミーティングルームを後にするのだった。






 その頃、我らがオリ主こと、最上千早は……


「むむむむ……」

<マスターこれ以上は危険です>

「大丈夫だ……まだやれる。いや、やらねばならんのだ……」

<しかし、これ以上の負担は……>

「いいか、私は騎士ゼストに完敗した。あの時は奴を足止めすればいいと思っていた、しかし、結果はこれだ。ボロボロにされた者もそうだが……何より、ヴィヴィオを奪われた。これ以上の失態は無い」

<しかし、あの時はこうするしか……>

「それは言い訳に過ぎん。いいか幼女を守れんで何がロリコンだ。私は今ここで強くならねばならんのだ」

<マスター>

「お前にはいつも負担をかける。すまんなガングニール」

<いえ、私は常にマスターと共にあります>

「そうか、なら行くぞ」

<はい!>


 そうしてひたすらに修行へと没頭していく。何が彼らをそうさせるのか、それは全ては幼女の為にである。そう幼女の為なら例え女性化しても問題無い、そう幼女の為なら……


<やOないか?>

<うほっ……>


 画面一杯に流れるガチムチ男達の共演を見ても問題無い。そう全ては幼女の為である……


「やばい……吐きそうだ……」

<マスター我慢です。では行きますよ? 魔力を集中して下さい>


 女性の姿でガチムチの共演を映し出しながら魔力弾を放出しては、自分の身体で受け止める。この繰り返し、そう彼は今限界に挑戦しているのである。

 彼の原動力であり魔力の根幹である『小さい可愛い者』それと相反する者を見つめながら、尚且つ魔力消費の激しい変身魔法で女性化した状態で、更に魔力を消費させる。あまつさえそれだけででも、彼にとっては地獄のような苦しみの中での自傷行為。

 完全にキOOイ行動である。しかし、彼は真面目にこれをもう24時間行っていた。全ては幼女の為、己を強くする為に……

 それぞれの思いが交差する中、ゆるやかに最終局面へと時間が進んでいく。








 緊急アラートがアースラ内に鳴り響く。全員が各部署にてモニターにて状況を確認する。


「アイヘリエル一号機 二号機 戦闘機人達撤収が始まっています」

「前回よりも動きが早い」

「早めに叩かんと取り返しがつかんことになるんやけど、嫌な感じに拡散してる。隊長達の投入はし辛いな」


 モニターで状況を確認しながらはやてがごちる。その状況は他のメンバー達にも伝わっていた。




 別の場所でアコース査察官からの情報と共に、戦闘機人達が地上本部に向っている事などを詳細な状況をモニターで確認するなのは達


「ふむ、どうやら動きだしたようだな」

「千早君? というかどうしてそんなにボロボロなの? 大丈夫なの?」


 遅れて来た千早を見て驚くなのはだったが、


「ああ、気にするなボロボロなのは服だけだ。それより、状況はどうなっている?」


 今はそれどころではないと、制止し状況の確認をする。


「今、アコース査察官よりスカリエッティのアジトが発見されたとの報告が、それと戦闘機人達がアインヘリアルを占拠、その後市街地へと分散して移動しているようです」


 千早に状況を説明するアルト。


「分散されたか、それに……」


 モニターに映し出された人物に驚愕するなのは達、そこには誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹の姿が映し出されていたからだ。そこに映し出された彼女は、他の戦闘機人達と同じ格好でしかも彼女らと一緒に市街地を地上本部に向けて進んでいた。しかし、彼女達を驚かせるものはそれだけでは無かった……



≪さあ、いよいよ復活の時だ。私のスポンサー諸氏、そしてこんな世界を創りだした管理局の諸君、偽善の平和を謳う聖王協会の諸君。見えるかい? これこそが君達が忌避しながらも、求めていた絶対の力≫


 モニターにはまるで自分に酔ったような雰囲気で演説するスカリエッティ、そうして震動と共に浮かび上がる巨大な物体。


≪これが聖王のゆりかごだ。見えるかい? 待ち望んだ主を得て古代の技術と英知の結晶は、今その力を発揮する≫


 スカリエッティの言葉と共に流れる映像、そこには涙を流すヴィヴィオの姿が映し出されていた。


「……いたいよ……ママ……こわいよ……」

「ヴィヴィオ……」


 泣き叫ぶヴィヴィオの姿に打ちひしがれるなのは達、もうモニターを直視していられない。


「……私は着替えてくる」


 画面が切り替わりスカリエッティの姿が映し出された頃、静かに踵を返し自室へと向おうとする千早。


「待って下さい!」


 そのまま立ち去ろうとする千早に対し呼び止めるティアナ。


「貴方は平気なんですか!?」

「ティアナ……」


 悲痛な声で叫ぶティアナ。しかし、


「今は耐えるしかない。今憤っても仕方が無い」


 冷静な答え。


「どうして……」


 その答えに納得できない人物がもう一人いた。


「どうしてそんな冷静にいられるんですか!? 貴方はいつも言っていますよね! ロリコンは幼女を守るって! なのに何故! ヴィヴィオがあんな目にあっているのに、貴方にとって幼女とはその程度のものなんですか!?」

 その叫びも無視してそのまま歩き去って行く。しかし、なのはだけは気づいていた。彼が今まで一度も見せた事が無い表情をしていた事に、そしてそれをティアナ達に見せないようにと気遣っての行動だということも。

「アルト、ティアナ……」

 そんな彼の意を汲んで黙っておこうとも思ったなのはだったが、彼がいなくなった後にその事を説明するのであった……







「……」

<マスター>


 誰もいない廊下を静かに歩く。


<マスターよく我慢しましたね>

「お前もなガングニール」


 その拳には血が滲んでいた。


<ええ、もう我慢が限界で私もう少しで擬人化しそうでしたから……>

「私も久しぶりに……ああ、久しぶりに……なあ?」

<ええ、私も初めてですここまで怒りを覚えたのは>

「そうか、なら……」

<ええ……>

<「スカリエッティ、お前だけはこの私がじきじきにぶちのめす」>


 決意と共に自室へと戻る千早、最終局面に向かい各々が思い思いの準備を整えるのであった。


どうもギャグが足りない…… 駆け足駆け足。


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