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[31354] 【ギャグ】逞しい桜さん (15禁) 
Name: みさりつ◆555902c4 ID:6298de81
Date: 2012/02/01 23:27
1話 逞しい桜さん


死んだと思ったら、生まれ変わっていた。

元々大学で就職に全く役に立たないオカルト寄りな民俗学をメインに学んでいたが聊か冗談が過ぎる話だ。

それはまぁいい、精々強くてニューゲームでも楽しんでやろうと思いきや生まれて10も満たない内に人生ベリーハードに突き落とされた。


魔術師の家だか良くわからないが、可愛らしい愛娘を妖怪蟲爺の元に養子に出すのは如何なものか。

魔術師の修行だと言われ日々気色が悪くおぞましい蟲を体内を弄られる日々。

養子に入ったその日いきなり蟲によるレイプ。

どこの18禁エロゲーだと。

全身を犯された時など何度発狂しかけたか。

崩れかける自我。

絶望。


今現在も蟲が体を這いずっている。

よくわからないがトウサカの魔術師からマキリの魔術師にするための肉体改造だとか。

マキリの胎盤にするための処置だとか。

ようは、私は養子という名目で家畜としてこの家に送られたのだ。













嗚呼、気色が悪い。






「桜やこれで今日は終わりじゃ、休んでよいぞ」


今日もとことん肉体と魂を陵辱されつくされ、ノルマが終わったらしく妖怪は蟲倉から去る。

薄暗い蟲倉の中ヌムヌメとした蟲の体液で全身と体内が汚れた私は裸であり、まずはシャワーでも浴びにいくことを決め、まだ肌寒い中、裸足で蟲倉から抜け出す。

涙を枯れるほど出し、目はチカチカとし、叫び続けたせいで喉はカラカラする。


体が火照ってくる。

改造は大分進んだらしく叔父の精を肉体が欲しているらしい。


妖怪が言うには私の肉体の改造のスピードは聊か予想外に進んでるらしく、あと数年で母体として完成をみるらしい。

なんでも陵辱に肉体が恐ろしいほど順応し始めているらしい。

ようはわたしの体は急速な成長期に入っているのだ。



体の火照りが苦しい。


楽になる方法は知っている。

シャワーを浴び終わったら、あの妖怪におじさんに私を抱いて貰うようにいっておこう。

せいぜい助手程度の雑用を任されたに過ぎないあの男も仕事の内といって抱いてくれるだろう。

魔道の素養がないあの男でもマキリの血を受けている。

しょうもない男の精でも鎮静剤ぐらいのかわりにはなるだろう


今受ける苦痛を耐えるためなら汚れても構わない。

もうすでに私は汚泥に漬かりきっているのだから。



しかし私は諦めてはいない。

これ以上もなく私は生きることを諦めないでいる。

私を汚泥に沈めてくれた奴等に一矢報いぬまま終わってはいられない。

私の今の自己は怒りのみで保たれているのだから。

理不尽に奪い貪りつくす奴等にやり返す。

ただそれだけ。


憎悪が私を生かす源である。



シャワーを浴びると体の表面上の汚れが落ちていく。

シャワーの温水を受けながら私は考える、どうやれば私はこの絶望から抜け出せるのか。


過去学んだ知識を探る。

「蟲…蟲といえばこどく。蟲毒といえば……中国の呪法に使われる、呪術のために人為的に作られる特別な生物の総称だったっけ」

中国では犬蟲、蛇蟲、狐蟲、蜥蜴蟲、蝗蟲などのさまざまな種類の蟲毒が伝わっているという。

家に富みを運んでくれる。

定期的に生け贄をささげないと、かわりに食われる。

剣や火では殺せない。

遠くに捨てても戻ってくる。

捨てるには、蟲毒がくれただけの財と同じ価値の財と共に、捨てなければならない、だったか。


「ん………そっか」

素人考えだが、可能かもしれない。


在る一つの方法を思いつく。















それから10年の年月が経つ。

今では立派な魔女に私はなっていた。

「おじいさま、貴方の薀蓄は本当に不味かったです」


企みは想像以上楽だった。

私が幼い頃に行なわれた聖杯戦争というある儀式で得た物を私の体に自分の本体共々植えつけようとした妖怪に対し
私は無防備にアヘ顔を浮かべたフリをして指で捕まえ食べた。

ニョッキよりも遅いお陰で簡単だった。

凄い慎重に慎重を重ねた魔術だったのだろう。

私はこの最大限のチャンスを生かした。


「補完の術はマキリの吸収の魔術と相性がとてもよくてよかった」

15歳で私は既にマキリの業を知識だけ極めていた。

あの妖怪の脳みそを踊り食いをして知識を直接食らったのだ。

「薀蓄とは美味なものってマンガで書いてたけど、流石に500年ものの外道の知識は美味しくないわね」

所謂、補完の術。

補完の術とは私が大好きだったマンガのキャラクターが魔女として第一歩を踏み出したときに使った業だ。

どうやらこの世界にもあったらしい。

この術の基盤は食べること

食べたものは血となり肉となる。

しかし、食物の要素によっては必要な栄養素は肉体のその部位によって異なる。

しかるべき処置をおこなえば、自らの足りない部分を補うことができる。

ワルプルギスの魔女さんは受胎告知の天使さんの薀蓄を食べていた。


「それにしても……ゲームの世界だったとはびっくり」

聖杯戦争と聞いて思い出していた、過去の知識。

月姫とらっきょは原作をちょろっと知ってたけど。FATEはよく知らなかった。

セイバーとか凛とかフィギュアで知ってたけど、桜ってキャラは登場していたのだろうか。

今更ならが、それだけが少し気になる。

ヒロインだろうか、それとも原作前に亡くなっているサブキャラだったのだうか、そもそも登場しているのだろうか。

ありきたりなヒロインの悲しい過去に登場する小道具キャラだったのかもしれない。

そんなものだろう。


「でも此処は現実な訳で、精々好きに楽しい人生を送らせて貰おうかな」


魔術というものは民俗学を専攻していた私には肌に合ったようだ。

学んで飽きない生涯学習目標だ。

「とりあえず、今日は届いた肉でも弄るかな、蟲で作ったキョンシー用刻印蟲試したいし」



































すみません妄想をただ書き連ねた文です。


仙木の果実というマンガを読んで思いついたネタです。

宵闇眩燈草紙のキャラクターのご老体的な桜ってどうだろうか、っていう思いつきで考えました。

黒桜ならぬ外道桜モノってないのかなーとか考えて書いて見ました。


原作発生時期。


桜さん

堅気には手を出さないが基本外道、主に死体のリサイクルで生計を立てている高校生。

マキリの伝で裏関係から死体を処理という理由で引き取りお金を貰っている。

最近、ゾォルケンの過去のオリジナルの遺骨を蟲倉から発掘し、500年モノの魔術師の骨だと喜び、売却し、懐ホカホカ。

とりあえず、長生きしたいから死徒にでもなろうかな、とか考え中。



しんじくん。

外道妹を恐れ、めったにマトウの家に帰らない。

家にいると寝ている間に色々絞られている。



ちなみに蟲毒を打ち破るには俗説としてその蟲を食べるとよいらしいです。

蟲のヒエラルキーのトップに立つという手法での解呪らしいです。







[31354] 2話上 姉と妹の関係 蛇足追加
Name: みさりつ◆555902c4 ID:6298de81
Date: 2012/01/28 18:28
「左団扇、左団扇、お金ってあればあるだけいいものですねー、今日なんか結構な土地の権利を頂きましたし、ふーん東北の方の土地かぁ……」


土地自体はあまり魔術的な意味を持たない普通の土地ですけど、旅行がてらで見に行こうかな。


最近、小さな頃から夢を見ていたあの二次創作クロスでに登場しまくるハーレム作成系エロゲ主人公の精を
めっきり家に帰らなくなった兄がよくお世話になっている家にお礼に伺うという名目で様子を見に行った初日に
こっそり拝借したらそんないいものじゃくて気落ちしたし、その気分転換で。

それでも魔術的な価値で言ったら、あの兄よりもいいものですけれど。

やっぱりエロゲの主人公だから、なんだろう。

中に●●されたら、一発昇天しちゃうとかそういうレベルの物だと思ったけど。

案外普通でした。


ま、現実はこんなもんでしょ。

ならば。


「じゃあ…エロゲのヒロインって性的な意味で美味しいのかしら?」
























高校一年生の夏休み妹に旅行に誘われた。

妹がやっているというお小遣い稼ぎのアルバイトで雇い主から避暑地には手頃な物件を頂いたそうだ。

そこの視察を踏まえた小旅行。

誘いに来た時には既に周辺の旅館に予約を取っていたらしい。

桜が今回の旅行に掛かる費用は全負担するとのこと。

魔術師の基本は等価交換。

姉として魔術師としてのプライドとしてそんな施しは受けられない、と断ろうと思いきや。

「いえいえ、姉さんには一つ仕事をお願いしたく参ったのですよ。
その物件を魔術師として鑑定をして欲しいのです、残念ながら私はあまりそういうのは得意ではなくて。
そこで冬木の優秀なセカンド・オーナーにその見識を発揮して貰いたいのです」


とのことなので快く妹の頼みを受けたのだが。









しかしよくよく考えると

「あんたねぇ……おかしくない?」

「あら姉さん、なにがおかしいのかしら?」

「なんで中学生がこんなもの貰うのよ!?おかしいでしょ!?」

妹が所有すると決まった物件は最初は小さな一軒家と聞いていたが。

なんと一軒家周囲の山丸々だった。

「おかしくはないですよ、一応御爺様の名義で頂いた物件ですよ、間桐は不動産やってますし、これもまた一つの勉強と頂いたものです」

すまし顔で言う妹。

中学3年生というには姉の私とは違う完成された豊満な女性の体。

傍から見れば私が妹で、妹が姉に見えるだろう。

それに妹の格好が拍車をかけている。

妹は着物を着ている。

それも和装には詳しくはないが大変値がはりそうな華美な着物。

最初見たとき、これ一着で宝石が沢山買えるのだろうと夢想するほど贅沢な品だった。

新幹線の個室(VIP席)に乗る前周囲の男性から欲情の視線を受けながら蟲惑的に微笑む桜。

周囲から何処の上流の御嬢様と想像を掻き立てるだろうその姿。

いや、あながち間違いではない。


歴史を重ねた遠坂と間桐のご息女が二人そろって優雅な避暑地旅行。


しかし、姉にではなく妹ばかりに男性の視線が行くのはどういうことだ。


少なからずプライドを刺激される。

この妹、事実上冬木一のお金持ちの家の娘だ。

なんでも株価取引やらなんやらで大儲けしているらしい。

あの間桐翁が党首としての金策の嗜みでやらせた所、大成功を収めているらしい。

「姉さんもパソコンの一つでも買ってみたらよろしいですよ?あれは大変便利です、先見性がある姉さんなら株式取引の一つや二つ簡単でしょうに」

この妹、皮肉を言っているのか。

最初仕事の詳細はFAXで送ります、と言われ

「FAXって?」

と聞き返した姉をクスリ、と嘲笑ったのは一生忘れない。


「それに魔術師が土地を所有するのはそんなに凄いことではないでしょう?だって冬木にもアインツベルンのお城がありますし
 あれに比べたらこんな小さな一軒家、大したものではありませんよ」


「大したものでもないのに、大枚はたいてこの私を雇った訳?」

札束が二つ作れるくらいの大金で雇ったくせに

「これは失言でした、実は私、本当のところ、姉さんとの復縁を望んでこの小旅行を計画したのです」

「え…」

「私たちも大分大人になり、姉さんはもう家督をお継ぎになっておられる
私も数年したのち家督を継ぐので昔、引き離された時のように逢ってはいけないという
言い付けも形骸化しておりますし、ここは一つ魔術なしでのプライベートなおつき合いをしたいなぁ、というのが私の気持ちでして」

嬉しい。

そうか、私達大人になってるんだ。

一々遠目で妹を見る必要もなくなるのか。

「お姉ちゃん」

そういって私にしな垂れかかる桜。

どこか甘い香りがする柔らかい桜の体が私に覆い被さる。

「なっ………桜なにを!?」

「今日の旅館は貸切なので、二人きりの露天風呂で裸のお付き合いをしましょう?
そのあと美味しい料理に舌鼓を打って、夜は一緒の布団で姉妹らしく恋について語り明かしましょう?」

ふう、と吐息を一つオマケで桜が私に耳打ちする。


ふふふ、と妖しく笑う妹に嬉しさよりも心臓のばくばくが止まらない姉の私であった。









「当旅館をご利用いただき誠にありがとうございます間桐さまと遠坂さまですね、本日は貸切とのことなので我が旅館全社員で貴方様方を迎えたいと思います」

「ありがとうございます、お爺さまが勝手に全客室を貸しきりましたけれど、何時も通りで構わないですよ、とりあえず未成年なのでお酒はなしでお願いします」

「承知しました、ではごゆるりとお過ごしください」

「ありがとうございます、ところで老舗の旅館と伺っているのですが、女将さんは大変若くて綺麗ですね」

「あら、ありがとう、でも御嬢さんの方が若くて綺麗ですよ」


「いえいえ、まだまだ中学3年ですし、お姉さんみたいな大人の女性って憧れます」

「ふふふ、貴方が男の子だったら口説き文句だったのに残念だわ」

「ふふっそうですね、そうだ、お姉さん明後日ぐらいに時間があれば少し観光案内を頼みたいのですけれど」

「勿論、構わないですよ、3泊4日全客室貸切、お仕事は貴方達のお世話ですもの、快く承りました」


なにやら妹が旅館に着いて早々にこの旅館の美人若女将と朗らかに喋っている。

横に立つ姉をほっぽりだして。

何故か腹が立つ。

「姉さん」

「なによ」

「なにかしら詰まらないことでもあったのですか?不機嫌そうなのですが」

「なんでもないわよ」

ふん、と私が顔を背ける。

その横で桜はニヤニヤ厭らしく笑っている。

そしてこう言う

「とりあえず、夕食まで時間があるので早速露天風呂に入りにいきませんか?」

「わかったわ、じゃあまず荷物、預けましょ」

なんだかとても面白くない。

私は姉なのにすっかりこの妹に操られているかのようだ。

精々風呂に行ったら妹の裸に思い行くままにセクハラでもしてからかって憂さを晴らそうと心に決めた。









うむ、姉の体は案外女子高生の年代の女の体としては在りえないほど均整が取れていた。

もっさりとせずにスレンダーでいて尚張りがある肉。

私が男であったらなら血が繋がっていようがペロリと頂いていただろう。


「………」

姉が顔を赤くして夕食を取っている。

魔術師の癖にとても初心で面白い。

露天風呂に入り即行で妹の成長を確認するという姉の権限で私の体を弄り検分してきたので、少し弄り返したらこの有様だ。

私は上機嫌で夕食をとっていた。


すでに私の目的は果たしたといえよう。

結論でいえばエロゲヒロインは性的な意味で多分美味しいのだろう。

姉がただの一般人でだったのなら、本当に頂いていたのだが、さすがに間桐の催淫の魔術をかけたら即座に敵対しあうことになってしまう。

ただ一時の好奇心で冬木のセカンドオーナーを敵には回したくはない。

それよりも他の部分でみれば姉の有用性は優れている。

調べなくても解ることだが、適当に都会に出て、やりたい盛りの男を構わず誘惑するだけで、精気や魔術の触媒が簡単に手に入るエコな私の魔術に比べれば
姉の魔術は金食い虫の宝石魔術。



日々かつかつ状態なので金銭を渡せば簡単に魔術的な依頼に乗ってくれるだろう。

妹ということでとてもこちらを信用しているのでこれからも等価交換さえ守れば、優先的に仕事を請け負ってくれるだろう。

私はどうやら直接的な荒事には向かない性質だったので、中々武闘派な姉ならば良い使いパシリになるだろう。


満たせぬ欲情はあの女将さんで解消しよう。

完全性交渉用淫蟲を使えばどんな身持ちが固い人妻だろうが未亡人であろうがイチコロである。


下種とは思わないで頂きたい、お互い最高に気持ちよく過ごせるのだから、別に蟲を孕ませたりしないし、魔術的な処置は記憶を弄って一夜の淫夢にするぐらいだ。


私がやった数日は夫婦の営みで奥さんの求め方が激しくて、夫の腰に多大なダメージを与える程度だ。

基本的に堅気には手は出さないのが私の信念だ。

どんなにムラムラしても処女の子には悪戯はしないし、恋人や思い人が居る子には手を出さない(基本的に)。


解りきっていると思うがちなみに私は両刀である。


触手プレイだろうが蟲プレイだろうがどんときなさいな変態である。



しかし、最近は一人で行なう淫蟲陵辱ごっこに飽き始めていた。

やりたい盛りであるはずなのに私を見るとすぐに逃げようとするので兄は絶対相手をしてくれない。

義兄妹背徳プレイとか面白そうなのに。

魔術で意識を奪い操ってプレイしてみたがああいうのはダッチワイフで遊ぶのと変わらない。



おっと考えが斜め上に旅立ってしまった


とりあえず今は処女で初心な姉の機嫌を直さないと。







明日には早速働いてもらうのだから、機嫌を直してもらわないと仕事に差し支える。



明日は楽しい楽しいお化け屋敷訪問





頂いた土地は、過去に連続殺人事件が起った曰つきの屋敷だというのだから大変楽しみだ。




強烈な残留思念類は蟲の餌に出来るかどうかは試したことがないからわからないので楽しみだ


これでも架空元素使いなのでそこらへんの怨霊など怖くもないので精々物見遊山で気分でいこう。
















多分……つづくか?





宵闇の五巻に出てくるような家を頂いた桜さん。

ちなみに桜さんは転生者ですけれども元男性ではありません。

百合趣味では在りません、快楽主義者です。

これから凛さんは烏さんなみにこき使われることになるでしょうが、お金は一杯貰っているので、そのことには気付きません。

気付いて毟り取ろうと頑張っても、実はそれも加味したもので雇われます。


現在おじいさんは党首としていることになっています。


はい、それは爺の皮を被った桜さんの蟲です。





多分聖杯戦争が始まったら参加せず漁夫の利を積極的に狙いにいくことまちがいなしの桜さん。

しんじくんと士郎くんの共闘という珍しい話になるでしょう


桜さん本人が本気で勝利目的で参加すれば物語的にぶっ壊れます。

勝手に一人で外出したイリヤちゃんが食べられます。


冬木市民が冬なのに蚊に刺され、そして疲れやすくなります。


しんじくん

士郎くんが本当の親友になる、というか唯一の逃げ場所。

魔術?え?関りたくないよ。

妹も関りたくないよ。

僕は食べられたくないよ。


でも令呪が宿る(植えつけられる)




蛇足





「やっぱり更地にしたほうが売れますよね」

「あんた最初ッから」

「いえいえ、そんなつもりはなかったのですけれど」

桜は厭らしく妖しく笑う。

どう育てられたらこんなふうに育つのか。

「やっぱり五大元素使いは便利ですね、こうも簡単にこの大きさの家を高火力で燃やせるとは」

私じゃ壊せても、無くせはできないですからね、と桜は言う。

私は桜の依頼で物件を鑑定したところ、その物件はとてつもないホラーハウス。

感想でいうなら底なし沼か蟻地獄。

入った瞬間から夏だというのに肌寒くなった。

今年はテレビで心霊系の特番を見る必要がなくなるほど心霊現象に遭遇した。


魔術師といってもまだまだうら若き乙女、トラウマになりそうなぐらい恐ろしかった。


私の心の怒りに火がつき、そしてこのボロ屋敷に私が持ちあわせていた宝石で放火した。

ぼうぼうと燃え上がる屋敷を見ながら私は横にたつ桜に言う。

「桜………」

「なんですか?」

「あとで依頼料割り増しで追加するからね」

「あれ?依頼書、見ませんでした?依頼料に諸経費含むと書かれていたはずですけれど」

「ふざけるなー!?」

こちとら、依頼料と同じくらい赤字になったのだ。

使った宝石自体は安物だが、魔力を含んだ血を与え続けた年月を加味すれば結構な損失だ。

「まぁまぁ、あとで旅館の売店でパワーストーンのアクセサリーでも買ってあげますから、お揃いで」

「そんなのいらないわ!?」

「じゃあこの土地をお安く売りますよ?ある意味で霊地ですよ霊が出る土地という意味で霊地ですけれど」

「それもいらない……まぁ今回は只で旅行できたと思えば…ってなによそれ!?」

桜の片手には白いスーパーの袋、そして袋が角ばっている。

もしや……。

「今燃えてるお化け屋敷のお化け屋敷になった原因ですよ、何故かスカスカな壁を壊したら出てきまして……」

60年ものかな、と私に開いて見せる。

骨だ、まるでばらばらにされたプラモデルのように骨が白いスーパー袋に入っている。

この妹は……。

「捨てなさい、今すぐこの屋敷と一緒に燃やしなさい」


「嫌です、元々これ目当てでしたし、悪魔になりかけていた程の残留思念の器になっていた骨ですよ、粉々にすればいい魔術の触媒の材料になりますよ?」

しかるべき処に売ったら今回の姉さんの依頼料くらいになるんじゃないですか?

と微笑む桜。

「もうやだこの妹」

「なにいってるんですか姉さん、優秀な魔術師である貴方の妹ですよ?」




次話は兄妹編





[31354] 2話下 兄と妹の関係
Name: みさりつ◆555902c4 ID:6298de81
Date: 2012/01/28 18:30
僕は間桐慎二 

今日も美味しく衛宮が作る夕食に舌鼓を打っていると
今日も暴力虎教師が僕の皿から何も言わずにおかずを奪っていく。

今日の夕食は天麩羅と刺身ととても豪華だった。

最初は怒鳴るほどイラついたが、もう慣れた。

美味しそうに海老の天麩羅を食べていく虎。

僕は海老が好きではないので気にしない。

虎は僕の海老天を捕食すると、こう言う。



「そういえば間桐君、今日妹さん帰ってくるんですってね」


それにしても小鉢の芋の煮っ転がしは美味しいな、衛宮が女だったら家の家政婦として雇ってやったんだが。



芋…



妹……



「ああっ!?」

アレがこの街に居ない安息の日々がいつのまにか過ぎ去っていたのだというのか!?

そうだあれが居なくなってから三日は過ぎて………って!?


僕は妹のことはヨクワカラナイ。

間桐桜

傍から見れば大変容姿は美しいだろう。

しかしあれば妖怪桜だ。

人の血を吸って美しく咲くという怪談の桜の化身そのものだ。


「突然叫んでどうした?お、慎二。まさか桜のこと忘れてたのか?」


忘れることが出来ればドレだけ良いのだろうか。

衛宮の発言に思わず怒りが湧く。

忘れたのではない、思い出さないようにしていただけだ。

あの妹という名の怪物を。


「駄目だぞ慎二、今日家に桜が帰ってくるんだろう?今日は家に泊まらないで家に帰って桜を迎えてあげないと駄目だぞ」

正論を述べる正義の味方を目指しているという、もっぱら学園では使いパシリ野郎が余計な事を言う。


「そうね、桜ちゃんが帰ってくるんだから今日は帰りなさい、間桐君」


先生が言うから絶対ね、と虎が言う。



糞、糞糞っ!


余計なこと言いやがって!



ぴんぽーん


突然、衛宮家の呼び出しフォンが食卓になり響く。


まさか


「あ、藤ねえ、おれ玄関行って来るよ、あと勝手に俺のおかず食べるなよ、慎二は見張っていてくれ」



そういって席を立つ衛宮。


僕は衛宮が向かった方に耳を澄ませる。


虎が衛宮のおかずを食い荒らし始めているが気にしない。


それよりも


「おお、いつもありがとうな!」

「いえ兄さんがいつもお世話になっているので、本当なら食費だけでもそちらに渡したいんですけど」


やっぱりだ、帰ってきやがった。



「いやいいんだよ、慎二は俺の友達で好きでやってるんだから、それに慎二の正直な意見の方がただうまいうまい食べる藤ねえよりも参考になるから気にしないでくれ」

「ありがとうございます!先輩!」

「ところで今慎二が丁度夕飯食べているけど上がっていくか?」


やめろおおおおおおおお!そんなこというな馬鹿衛宮!?

僕の最後の安住の地にそんな怪物入れようとするな!



「いえ、いまからまっすぐ帰ってお夕飯の準備しないと、しばらくお爺様もレトルトばっかり食べていたらしいので、今日はすぐ帰って作ってあげないと」


「あいつも家に帰ればいいのに……反抗期だっけ?」

「ええいつも家に居るとお爺様とケンカばかりしていて家に寄り付かなくて……」

嘘つくなよ、お爺様は話しかけても「みしょみしょ」とか「ぶんぶん」とかしか言わないマネキンだろうが!

この前なんか「たまに干さないと腐っちゃう」とか言って洗濯物の横の木陰に座らせて陰干しして放置してただろうが!

どうやってケンカするんだよあれと!?あんな合成皮革と!?

そのあと「あ、蛆わいちゃった失敗、失敗(笑)」とかいって間桐の家の地下室に引きずっていくのを僕はみたんだぞ!


「ねえ間桐君」

「なんですか藤村先生」

「もう夕飯なくなっちゃったし桜ちゃんと一緒に帰りなさい」

「え?」

気付けば虎は衛宮のおかずばかりか、僕のおかずまで食い荒らしていた。

殺意が湧いた。

「ちょうどいいじゃない?士郎みたいな男の子が作った手料理よりも可愛い妹さんの手料理の方がいいでしょ」

頼んで一緒に作って貰っておじいさんと一緒に食べなさい、と虎は言う。

どいつもこいつも正論ばっかり言いやがって……。

「そうだな慎二、そうしろよ家族で仲良く夕飯食べろって」

「いえ、いいんですよ兄さん、私の手料理って先輩ほど美味しくないし、そんなにおじいさまが会うのが嫌ならそちらに残っても………その…私、平気ですから」

いつのまにか現れやがった。

なに僕の親友のスソをそんなあざとく掴んでるんだよ!?


「桜ちゃんの手料理は美味しいわよ!」

「ああ、この前の蝗の佃煮は凄い美味しかったぞ!俺はあんなに美味しく作れないぞ」

こいつ、僕の知り合い達に何食わせてるのよ!?

「あれは素材が良かったんですよ、でもお兄さんが嫌だっていうなら……」

「慎二」

「間桐君」


くっそもう逃げ場はない……最後の安住の地は既にこいつの手に落ちていたのかっ!?



嫌だ


いや


「帰りなさい」

「桜と一緒に帰れ」


いやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ











結局


僕は桜と一緒に歩いている。

昨日までスキップするほど気分よく歩けたのに今は凄い足が重い。


なんだか今日の桜の機嫌はとてもよろしく、僕に一切話しかけてこない。


こいつ機嫌がいい時は僕に話しかけてこないし見向きもしない。

時たま突然意味の解らないことを言ってくるが

例 「兄さん、知ってます?肉食獣って獲物を狩った時一番最初に食べるのは肝臓なんですって」

  とか

  「ねえ兄さん百舌のハヤニエってしってます?」

  とか

よかった。

話しかけてこないし、機嫌が悪い時にぼくに向けるねっちょりとした視線とひたすらくすくすくすくすくすっていう笑いがない。


よかった。



桜の作る夕食はとりあえず衛宮邸でお腹いっぱい食べたと逃げて、即行風呂入って即行布団かぶれば……。

やり「ねえ、兄さん」すごせない


「な、ななななななんだいさ、さささくら?」

「今日の夕飯はなんだと思います?」

「な、なんだろう、教えてくれないか桜」

「蜂の子の野菜炒めと蝉のから揚げですよ」

栄養たっぷりですよ、と微笑む。


そして


「今日の帰り道いっぱいとれたんです」


いやあああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ




いもうとからはニゲラレナイ。






「ふふっ冗談ですよ」


はいコレ、と白いスーパーの袋を僕に渡す桜。

帰り道買ったであろう食材がつまったスーパーの袋。

よかった。

とスーパーの袋をみると普通の食材が――――。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


骨だった。



「すいません間違えました」

本物はこっちですと同じスーパーの袋を渡してくるとそこには本当の食材が入っていた。

「嘘だろ絶対!?」

「はいうそです」



こいつは、いつも僕を玩具にして遊んでいる。

昔からずっと。


僕を精神のギリギリまで追い詰めて遊ぶのだ。


苦しむ僕をみて妖しくくすくすくすと笑うのだ。







ちなみに今日の夕食はホイコーローとマーボー豆腐と中華スープだった。

大変美味だった。

しかし、僕の茶碗や汁椀に隙間ができるとお代わりをひたすらつぎたしていくのは如何なものか、僕を丸々太らせようとするつもりか。

まるでお菓子の家の魔女のようにねっちょりと捕食者の視線で僕をみながらお替りをつぎたしていく姿は恐ろしい。


横に座っているお爺様は「みしょみしょ」といいながらゼリーとスイカを食べていた。


桜はそれを静かに夕食を食べながら見て、ときたまニヤニヤしながら「ヘラクレス、やっぱりヘラクレス」とつぶやいていた。








お風呂にはいってさっぱりとしながら居間のソファーで明るい笑い声と夢みたいな朗らかな世界を演出するバラエティをみていると。

「はい兄さん、アイス」

といってハーゲンダッツの抹茶味を僕にくれた。

警戒しながら、それを口に運ぶと

「甘い」

「ふふ、美味しい兄さん?」


そしていきなり桜が僕にしな垂れかかってきた。

覆いかぶさるように。

意識を強制的にジャックするような甘い甘い香り。

胸に圧し掛かる暴力的な二つの丘。

首元に吐き出される彩りをつけたのならば桃色になりそうな吐息。

食べかけのアイスは落下してべとりとカーペットを汚していた。


「ねえ兄さん、私も食べていい?」


意識が飛んでいく、そして朝になったら僕はまたいつもどおり何も思い出せずに




くすくすくすくすくすくすくす

















うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!




僕が夏休みの大半、衛宮邸で過ごしたのは言うまでもない。


























ちょっとしたギャグ風味

兄と妹の関係。


桜さん

意外としんじくんのことはあまり嫌っていない。

子悪党っぷりと小物さ加減が面白くていつも玩具にしている。

昔優しくしてくれたおじさんにほんの少し顔立ちが似ているから、大切にしている。

とことん追い詰めても死にそうになったら引っ張りあげる。

性処理道具兼可愛いペット扱い。

ありえないが、もし子供が欲しくなったら種馬にでもするかな、とか考えている。


あげるお小遣いは申請方式。

必要な理由を言えばちゃんとあげている。

お弁当もつくってあげている



しんじくん

とりあえず高校卒業したら家出しようかな、と考えている。

結構貧乏。

小遣い欲しいと怖くて言い出せないので士郎くんと一緒にバイトしている。

これだけ虐げられながら、基本原作とあまり変わらない性格。



[31354] 閑話 桜さんの趣味ていうかSAKURA
Name: みさりつ◆555902c4 ID:6298de81
Date: 2012/01/29 20:38
桜さんの自由制作


夜遅くまで「世界最強虫王決定戦」のDVDを鑑賞をしていたくせに
夏休みであっても間桐桜の朝は早い。


そんな彼女の健康の秘訣はローヤルゼリー

得意の魔術で生育した蜂からとれる100%のローヤルゼリーを生で頂くところから始まる。

超純度のローヤルゼリーは精製された覚せい剤の末端価格に匹敵する高級品。

ローヤルゼリーは女王蜂を育成するためのものでありこれを授乳した蜂としてない蜂では体格に10倍の差がつくという。

別名、不老長寿の薬であり、今のところ桜はこいつを使ったエリキシルの作成を夢想している。

数年前からの彼女の密かな趣味は養蜂である。

柳洞寺に頼み込んで巣箱を柳洞寺の周辺にいくつか設置している。

この蜂達は柳洞寺にある霊脈から流れるエーテルを主食にした魔蟲であり、桜によって日々品種改良が行なわれすくすくと育ち極上の蜂蜜を作る金の卵だ。

リアル黄金の蜂蜜酒を作る気満々である。

自転車を朝早く走らせ柳洞寺に向かい巣箱を確認しにいくのが彼女の日課だ。


「おはようございます柳洞先輩」

「おはようございます間桐さん、今日も朝早く重畳です」

「はいどうぞ、お裾分けです」

朝早く読経を行い、柳洞寺周辺の掃除をしている柳洞一成に桜は養蜂で出来た蜂蜜でつくった飴の瓶詰めを渡す。

絶対にパン食はありえない柳洞寺の方々にはこうして採れた蜂蜜は保存が利く飴玉にして渡していた。

「いつもすまないな間桐さん、しかし凄いな、これを頂くようになってから、寺の修行僧の面々皆風邪を一切引かなくなった」

柳洞寺ではこれを万能薬として重宝しているとか。

最初のころ中学生の桜が養蜂をさせてくださいと寺に申し出た時は少し懐疑的だった。

しかし桜によって作り出されたミツバチたちは決して人は襲わぬ様に調整されており、文句の一つ出たためしがない。

「お褒めいただきありがとうございます、将来は養蜂家を目指しているので大変助かっています」

嘘八百だが、間桐桜は柳洞寺の人々からは今時珍しく将来をしっかりと見定めている子として見られていた。

一成の兄零観は桜を若年でありながら既に養蜂家として一流であると認めていた。

なにせ収穫の時でも一切防護服を着用せずにバンバンと巣箱から収穫作業を行なっている姿をみているのだ。

寺の人々も養蜂のことはわからないが何れ彼女は世界に羽ばたく養蜂家になるのではないか、と期待している。



巣箱を見終わった彼女はまた自転車を走らせ次の日課に向かう。

間桐の屋敷の地下室。

「ふふふふふふっ」

先ほどのおしとやかな笑顔をいつもの厭らしく妖しい笑い顔に変えると今日の成果を確認する。

地下室には数多の蟲の飼育箱が並んでおり、その一つずつを確認していく。


「サシバエちゃんはどうかな」

彼女が今もっとも期待しているのは、マキリの蟲の魔術で作成された蝿。


「このまえいい餌を沢山上げたからそろそろ成虫になったかな」


銘銘マジック・ナノ・ステイブル・フライ。

現在彼女が所有する最強最悪の魔蟲である。

体長1mm程度とチョウバエに似ているが魔術で改良したサシバエだ。

蚊とは違いオスメス共に哺乳類の血液を食料とするサシバエを小型化し、様々な毒や呪を媒介する魔蟲であり。

現在作られているのは一匹で80人殺せる毒を持つ世界最強の猛毒蜘蛛クロドクシボグモの毒を媒介し、人間がもし噛まれれば25分以内に死に至る魔蟲だ。

レンタルビデオ屋で「世界最強虫王決定戦」というキッズコーナーにあったDVDをみて思いついた、魔蟲である。


現在100万匹程飼育している。

餌は人間の死肉。

大変小さいので成人男性の肉一体分あれば数十年は持つという低燃費性。

そのほか神経毒や極度のアレルゲン物質搭載型とか色々作っている。


勿論桜本人には全く効かないという安全性。


本気を出せば都市一つ滅ぼせる。

本人も趣味に走りすぎたと作ってから後悔している。

一応セーフティとして虫の王を作成し王が死ぬか人一人殺害すれば自壊するように設定している。


次は次はと桜は飼育箱を開けていく。

失敗したら一つの飼育箱にまとめていれて蟲毒を作るので無駄が少ない。

最後の飼育箱を開けると

「ああっ!?成功してるわ!?」

桜は狂気乱舞した。

らららん、と一定のリズムを口走りながらそれをうっとりと眺める

「まさしくこれは王蟲だわ」


愛玩用に作成したジブリの風の谷のアレに出てくるアレである。


ナウシカどころか瘴気の原因となる土の化身のような桜だが、これは可愛いと思わざるおえない。

この前成功させたニホンオオムラサキの大量作成よりも喜ばしい。


「ああ、お爺様。あなたの薀蓄は大変役に立っております、こんどから貴方の皮の下はこの仔にします」



日々こうしてマキリ地下室王国は発展していくのである。


多分、これをみたら死徒だろうが魔法使いだろうがドン引きする光景だろう。













今回は桜さんの趣味のお話でした。


ゾォルケンもエロ蟲作ってないでこういうの作れば聖杯戦争余裕じゃね?

という発想によりお送りしました。


ちなみにSAKURAさんの性質はご老体と同じく「見て」「知る」ピーピング趣味が全てです。
NPCとしてはご老体と同じく町人Aあたりに配役しております。


真面目に原作に登場させたら収拾つきません。



[31354] 3話 幸も不幸も人それぞれなお話 しんじくんの日記
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:67764e4c
Date: 2012/01/29 20:57
いつの間にか夏が終わり季節は秋となっていた。

お爺様が二足歩行を止め、這うように四足で移動し始め、夜中出くわした時、相当びびって絶叫しそうになったが

「なんだお爺様か」

と胸を撫で下ろした秋。


衛宮と虎と楽しく焼き芋をした秋。


実りの秋。



とかどうでも良い





それよりもあれの様子がおかしいのだ。


あれとは勿論妹の桜だ。


やけに静かなのだ。

一時期「5千万の損失です」と突然呟いてから、大層機嫌が悪かったのだが、最近は嫌な予感がするほど静かなのだ。


不気味すぎるほど。



いつものニヤニヤ笑いも止め、無表情で静かに本や羊皮紙やら巻物やら読み漁っている。

気でも狂ったかのように毎日朝から晩まで時間があれば、ひたすらそれらを読み漁っている。

学校はどうしたのか、と聞けば

「出席したことにはなっているので大丈夫です」

と言う。

本の虫にでもなったのかと思えば気がつくと

お爺様を能面のような無表情を顔に浮かべて、無言でサンドバッグのように殴っていた。


間桐邸の庭には桜が大切に育てている桜の樹がある。

その大事な桜の樹の皮を爺様が勝手に食べていたのが大層気に食わなかったらしい。


お爺さまは殴られて首があらぬ方向に捩れようが


ただ「みしょみしょ」とだけ言う。







いい加減流石に傍からみているこちらの気が狂いそうだ。


僕に普段作ってくれていた弁当も弁当箱に万札をつめるという適当振り。

朝ごはんも作ってくれなくなり、最近の夕食も衛宮の家でのご飯以外はもっぱらコンビニ弁当になった。


不気味すぎる…いままで十年近く同じ家で過ごしていてこんなのは初めてだ。

今はひたすらコーヒーメーカーのようなものを自分の周りに置き、それを沸かして、飲むかと思えばバケツに捨てていく奇行を行なっている。

今日などバケツに捨てた黒い液体をフィルターに濾して再びコーヒーメーカーにかけている。
それを何れ水分が抜けてカチカチになりそうなぐらい繰り返している。

何の意味があるのだろうか?

僕には理解できない。

その後

「フィルター方式はよくないですね、ポンプで循環させてみようかな、とりあえずコレは捨てて―――」

などと、ぼそりと呟いてから。

「勿体無いから、こうしましょう」と言いながらその黒く濁った液体を


「みしょみしょ」と言っているお爺様の頭に垂らし始めた。

いや、ぶっかけだした。



黒い謎の液体を大量に浴びせられたお爺様が



少し

笑った気がした。


















それから一ヶ月近く、僕は妹から無視されている。

無視というよりもこちらをその辺の虫けらか何かのように興味を寄せずの無関心。

最初のうちは喜んでいたのだが、今となっては不気味すぎる。

もしや僕を地下室送りにするかどうか悩んでるのか?




まぁいい、とりあえず家に帰らなくても文句を言わなくなったので、この機会にこっそりと本格的に住処を衛宮邸に移し始める。

妹が反抗期になって間桐邸の空気は最悪です。(ここ十年間)

落ち着くまで兄の僕が大人しく引き下がれば大丈夫でしょう。


と口八丁で虎を丸め込み、衛宮の家に住み始めた。

虎はまるで自分もそうであるかのように

「女の子ってそういう時あるもんねぇ」と言う。


お前にあるわきゃないだろ。

そう、思わず言いそうになったが、ぐっと堪えて

「そうなんですよぉ……あいつも年頃だし」

「まぁ、そういうことなら」

という訳で



これで間桐から脱出が出来る。


僕はそう思った。














とか思っていたあの頃の自分を恨みたい。


冬になりそろそろクリスマスだなぁ、と思いながら平和に暮らし

久しぶりに怖いもの見たさで家に帰ると、僕の部屋が無くなっていた。

工房拡張とか循環器用の非実現型第六フルカネリ機関の模型を置く為とか、汚染腐食した死た――専用物置場とかの為に間桐の屋敷を改装したそうだ。

自分の部屋以外、全て取り壊してリフォームしたらしい。

そして生活に必要な設備と食卓と居間とテレビとソファーだけは残した、と言う。

桜が入ったら失明する部屋、入ったら死ぬ部屋、入っちゃいけない部屋などの説明を丁寧にしてくる。

ていうか「お前が寝る部屋と台所と洗面所と風呂とトイレと食卓と居間以外全部じゃねぇか!?」と突っ込みそうになるがやめ、タイミングを見計らう。



そして覚悟を極め、タイミングを見計らい僕は桜に

「これからはもう僕は衛宮の子だからここには帰らないから。別にいいよ、うん、そうした方がいいかも」

そう言おうとした。

その時

「だから、すいません兄さん……一年ぐらい私の部屋で一緒に暮らしてください」

気が向いたらリフォームし直しますから。

と謝られた。





謝ってる癖に反省を浮かべず、数ヶ月ぶりに妹は厭らしく妖しくニヤニヤと笑っている。

やはり僕には妹がワカラナイ、ワカラナイ。

一年後にまたリフォームするんじゃないのか?

気が向いたらってなんだよ。






お爺様は普段は自室にいるか、食卓にいて大根の葉っぱなどをひたすら食べている。

今の時間帯なら自室にいるはずなのだが食卓から動こうとしない。

自室がなくなった為、食卓の席から移動しない用に桜が設定したらしい。

これからお爺様はここからは動かないらしい。


「人間大の置物とでも思ってください」

と桜は微笑んでそう、言う。



お爺様は今日はみかんの皮を食べていた。


割り箸で突付いてみるといつも通り「みしょみしょ」と喋りだした。










ある日、いきなり桜が衛宮邸に泊まることを僕に禁じた。

流石に普段温厚な僕もブチ切れ、桜から10メートル以上離れてから怒鳴った。

すると桜が「おやおやまぁまぁ」と妖しく笑う。


その瞬間僕の意識が―――。














気がつくと僕は裸でベッドの中にいた。

金縛りにあったかのように体が動かせない。


横には桜がその15とは思えない、艶やかな女の裸体を惜しげもなく晒し、僕を跨いで座っている。

「ちょっと詰まってたことがあって……でもそれも解決してすっきりしたんですけど、気付いたら私凄い溜まってて」

開かれた僕の体を胸から舌で腹の方までなぞって行く。

そして脇腹辺りに接吻をちゅっちゅっと行なっていく

それが終わると僕の顎先を恐ろしいほど白く艶やかで冷たい指で上げ、首元に吸い
付くようなキスを落とす。


それだけで、もう僕は絶頂に達しそうな程の快感を覚え、同時に恐ろしくなる。


食われる、と。

なんとか逃げるため、いや、食われるまでの時間を少しでも延ばすために桜に問う。


「ところでなにが溜まってるのよ桜さん」

「何ってナニですよ」


その日、僕の童貞は奪われた。










それは想像を絶するほど気持ち良かった。












タオルケットに体を隠し、失われた過去を惜しみ

「もっと普通の人間と……」などとしくしく泣いていると


桜が哂う。





いつの話ですか?





そして


てゆうか、私以外はまだだったんですか?

それはそれは、良いコトを聞きました。

等と言いながら機嫌良さそうに珍しく、くすくすとではなく、からからと笑う。



「じゃあ、しっかり女の体の扱い方を私で練習してください、四十八手ぐらいなら一ヶ月もあればマスターできますよ」


もう一回です。

そう言って、桜が艶やかに厭らしく妖しく笑った。





この日から僕と桜の部屋から毎晩湿っぽい音が絶えることがなくなった。













はやく家出したい。









あとがき


ちょっぴりエロい話をお送りしました。

そろそろ型月板に移動しようかなと思います。

一発ネタで終わらせようかなとか思っていたのですけれど気付くとキーボードがするすると動く動く。

作者の思惑を超えて桜が勝手に動き出しました。



次回、姉と妹で過ごす、スイーツ(笑)ではなくスイート(笑)なお話。



[31354] 4話 ある聖夜の奇跡 上編
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/01/30 00:10
ある聖夜の奇跡 上編






悩めるジンギスカン達が街に群れだすクリスマスの日

私はバスで冬木から出て比較的栄えた街に赴き、目的であった、普段通いつめているペットショップで好みの水槽を手に入れ満足しながら

数日以内には届くのかぁ、わーい、これに腐界のジオラマ作って、王蟲ちゃん(手の平サイズより少し大きめ)で遊ぶんだー。

小さいナウシカのフィギュア(マスク装備)と王蟲ちゃんの抜け殻を置いて「まるで雪……」とか「私たちがマスクをつけずに入ったら5分で肺が腐ってしまう死の森なのに……」

とか言いながら楽しむんだ。

水槽は二つ買ったから、もう一つの方に酸の湖のジオラマ作って王蟲ちゃんにとがった小さな棒をいくつか態と急所を外して突き刺して

酸の湖にそのまま「わくわくじゃぶーん」って

突っ込ませて

「ごめんね、ごめんね…何もしてあげられない(笑)」って遊ぶんだー。

救出ミッション失敗!?

大海嘯モード!

確変決定!!


でんででん♪



とか言いながら遊ぶんだ。


そして、ああ……幼い時の記憶が蘇るわ……私もこんな風に地獄に突き落とされたっけ、と童心に浸ろう。



飽きたら標本にして鑑賞用にして玄関に飾ろう。



この前姉さんに全巻セットプレゼントしたんだっけ。



出来たら姉さんにも見せてあげよう、酸――ジオラマの方。



そんな事を考え


楽しみ、楽しみ、などと上機嫌で街を歩いていたら、

クリスマス一人でどうしたの?と、3人の男性達が予定空いてるなら遊ばないかと、声をかけてきた。

人の出会いは一期一会。


たまたま気の会う男性達と出会い、たまたま近くに有ったカラオケに急かすように私は腕を引っ張られ

たまたまカラオケの部屋が一つ空いていたので入室。

たまたま音楽の感性が同じで(これは偶々です)男性達の事をいたく気に入り。

(実際は私ひとり好き勝手に歌っていた、ただ男達は褒めていただけ)

たまたま変な味がする安っぽい酒をたっぷり飲まされ。



「体が熱い………」(とは言わないが)

的な素振りを出し


そんな感じでしっぽりと



実は明るいフリをしていますけど、クリスマスに先ほど彼氏に振られた哀れで初心な生娘のふりをして

私の処女を奪ってください

貴方達みたいな人たちなら良いですよ、大人の遊び教えてください、と言って


たっぷりとご奉仕して貰った。

自分が動くのが面倒だったらハジメテのフリをするのが私のジャスティス。

運動部で陸上していて破れちゃったんです、本当に処女なんですとか言いながら(それをからかう男達に顔を赤くして泣き出すオプション付き)


いやぁ楽しんじゃったよ。


この部屋の延長までしてヤルことヤッたら男達はたまたま酒を飲みすぎたのだろう

いつのまにか酔っ払って眠ってしまった。

眠った男達の精気をちゅうちゅう、と口直しの養命酒がわりに飲んでるんだが。

「いつも思うのですけれど、やっぱり美味しくないですね」

この特殊な製法で作られる、かるぴすじゅーす(謎の白い液体でも可)は私の口にはいつも合わない。

まぁ前世でも飲むのが大好きで飲んで発情するような娘にはついぞお目に掛かったことはないのだが。

「やっぱりこういうのって愛で飲むものなんですね、愛で」

でも美味しくなくても私しっかり吸う女ですから。

「まぁ、こういうことする人たちなんかに愛なんて湧くはずもないんですけれどもね?」

男達のバッグを調べるとビデオカメラやら極めセク用の薬やらがワラワラと出てくる。

薬だけ貰い、他は全て壊して、ついでに忘れずこの部屋の隠しカメラに簡単な魔術をかける。

昔ながらの怖いものには人は近づかない、という心理を利用した初歩的な人払い魔術。

あとで確認したらこわいこわい心霊映像が流れたと勘違いするのだろう。

そして壊れるカメラと謎の妖しい女の笑い声。

それを想像しながらニヤニヤする。

「こんな比較的に都会な街でこの時間帯のクリスマスにカラオケ店の部屋が空いてる訳ねー。じゃなくて、ある筈がまずあんまりないのですよ?」

グルだな、と最初にあたりをつけていたが、誰が犯人かわからないので入店した際、店員全員にしばらく精気を吸い悪夢を見させる蟲を憑かせていた。




たまにはこういう善行を積むのも悪くない。


まぁ、悪くない善良な人も中にはいるのだろうが。


気付かないのも罪なんですよ、と微笑む。



あと、激しくするか優しくするかの二択で悩んだが優しくする方に選んだ私。

服とか破れたらやだし、高いんですよ?いかにもおしとやかなお嬢様な衣装って。

それに

「このあと姉さんとクリスマスを楽しく過ごす予定ですし」


予約していたケーキをこれから買いにいくんです、貴方達とは二度と会わないでしょう。

と言いながら

私は哂った。




吐き気を催す程邪悪な桜さんと姉の楽しいクリスマスのお話。



遠坂凛は夜8時に来るという妹を楽しみにして

慌しくささやかな10年ぶりに過ごす姉妹二人揃ってのクリスマスパーティーの準備をしていた。

「作っておいてなんだけど、クリスマスに北京ダックって、常識的におかしくないかしら?」

いやいや、得意じゃなくても七面鳥ぐらい美味しく焼けたんだけど、いやいや、やっぱり。


ここは姉の出せる最高の料理をださないと……。

とか


「部屋の飾り付けをするべきかしら、いえ、下手な飾りは優雅ではないわ……」

とか

頑張っていた。


少し空周り気味なのは

凛はここ10年、クリスマスは言峰綺礼神父と教会で二人きりの糞面白くないミサにつき合っていた。


よく友達にクリスマス会には誘われていた。


だがしかし、妹があの家で孤独に過ごしてる時にそんなことは出来ない。

と、それらを全ていつも断り。

いつも聖夜の晩は妹の幸せを神様に願っていた。



ところがだ。


ついに




「姉さん、クリスマスの予定って空いてますか?」

「まだ決めてないけど?」

「じゃあ、一緒に過ごしませんか?昔みたいに」


とか言われちゃったんだもの


「姉として頑張るしかないじゃない!」


そういえば。

シャン・メリーを忘れていたわ、買いにいかなくちゃ。

お酒は飲めないです、でもシャン・メリーは好きです、と可愛いことを言う妹の事を思い出して近所のスーパーに行こうかな、と思いつくが

時間は7時をまわっている。

「まだ間に合うわ………でも桜も相当楽しみにしていたから、予定よりも早く来るかもしれない、いえ、でも………」


と悩める凛さんでした。




続く。










次回

流石に邪悪な桜さんでも好意に対し好意を返す。

偶然、安く買えたと嘘をついて渡す1000万のダイヤモンドの塊、プライスレス

姉のために着用した勝負服と勝負下着50万円 プライスレス

有名店に作らせた特性ケーキ8万円 プライスレス

一緒に飲みましょう、家にあったんです、と渡す紅茶の茶葉 10万円 プライスレス。





しかし、ところどころ捕食視線を姉に送るのは如何なものか。




リターンは貴方の曇りなき体が欲しい。


あとがき

わくわくじゃぶーん



[31354] 5話 ある聖夜の奇跡 下編
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/01/31 00:13
番外編


しんじくんのクリスマス。



僕は今幸せだ…


クリスマスの今日、僕は衛宮の家でささやかなクリスマスを過ごしていた。

クリスマス特番で始まった土曜ロードショーの「風の谷のナウシカ」をBGMに衛宮の作る美味しいご飯を頂いていた。

僕はふう、と溜息をつく。

最近、桜との夜のおべんきょうかいが終わったあとの長いフゥゥゥーという苦しい溜息じゃない。

これは幸せすぎて出る溜息だ。


「慎二、これ食ってみろよ、三日前からボリビア産の塩とハーブに漬けてたやつだ、ちょっとしたもんだぞ?」

「お姉さん幸せー!美味い美味い美味いぞぉー!!」

虎が嬉しそうな悲鳴を上げながら箸とフォークの二刀流で料理を平らげていく。


ちっ!


しっかり噛めよ!和食の鉄人の衛宮が作る、珍しいオール洋食のクリスマス料理だぞ?

学校の図書館にあった、「世界のクリスマス料理大全集」を態々この僕(強調)が借りてきて、衛宮に又貸したお陰で食える料理なんだぞ。

庶民が!


この有り難味をしっかり味わえよ!


僕なんか久々に美味しいディナーをゆっくり味わうために30回以外咀嚼してから、もの惜しげに口から喉にゆっくり嚥下しているんだぞ!?

胃の中に入っていく瞬間さえも、「この瞬間はたとえ、地獄に落ちても忘れはしないだろう」と感慨に浸りながら味わってるんだぞ。


それをこの虎が!

一口食べたと思えばすぐにゴックン?

お前は売れ残った豚の生肉(100g80円)でも食べてろよ。

珍しくこの僕が(強調)少ない小遣いから材料費を折半してるんだぞ?


幼い頃から衛宮の面倒を見ているからって金出さないで我が物顔で居やがって。


いつも見てるけどよ、お前はただの、肉食獣だ。

ただの虎だ。

いつか虎よりも恐ろしいモンスターに食べられて、弱肉強食を味わうが好い。


モンスター・ペアレントに食われてなぁ!?

弱肉教職者になってしまえ。


「ケーキは?ケーキは?」

そんな僕の思いと裏腹に慌しく幸せそうな顔で虎が衛宮を急かす。

「おいおい、早すぎるぞ藤ねえ、まずはしっかり夕飯を食べてからだろ」

衛宮が苦笑しながらそう、言う。

そうだ、衛宮の言う通りだ――クリスマスの醍醐味はお腹一杯夕食を食べてから最後にケーキを食べて
まるでケーキを腹一杯食べたような気分に浸るのがクリスマスの夕食の作法だろうが!

それもわからず、何を言うのか。

「にょほほほほー!お姉さんの別腹の安全装置はもう既に解き放たれている!」

「藤村先生、そんなこといってると―――この僕が衛宮の料理、全部、食べてしまっても構わないんですね?」

「なーにーぃ、そんなこと言ってると、ホラ!私がこの足を頂いた!」

僕の皿から衛宮が切り分けたばかりのローストチキンの足が虎に奪われ、捕食される。


はあああああああああああ!?

それ一番チキンの焼き加減が良く、そして照りが良さ気でハーブの風味が途轍もなく効いてそうな部分だったんだぞ!?

「うわ!そりゃないですよ先生、おい!衛宮!」

「わかったわかった、今切り分けるから、そんなに悔しそうな顔するなよなぁ」

「おい、わかってるんだろうな?僕のチキンは勿論―――皮は多めだぞ」

「はいはい」





あとがき




なんか書いててムカムカした。






まだ続きます。












   


聖夜の奇跡  下編

「いらしゃい………いえ、お帰りなさい、桜」

「ただいま、姉さん……11年ぶりに帰ってきちゃいました」


的な感じで私「カードキャプターさくらちゃんだと思った!?残念!桜さんでしたー!」が

姉が家の門を「レリーズ!」するのを見ながら

姉さんが一人暮らしをしている家に堂々と侵入する。

そして玄関先でこっそりと、「くんくん(クンカクンカ)」と、鼻を利かせてみると、姉のにほい(誤字に非ズ)しか感じられない。

ほほう、姉はここ数年近く、誰も家に上げていなとな?

ようはここは姉の秘所なわけだ



挿入っではなく這入っちゃではなく入っちゃったー。

うふふー。


などと麗しい処女でカワイイあの子の寝室に勝手に土足で忍び込む、レイプ魔の気分を味わいながら。

ありきたりにこう、言う。

「メリークリスマス!姉さん!」

「ふふっ。メーリークリスマス、桜……」

そうしたら、なんかいきなりくーんくーんと泣く子犬のような声で

「うれしい」

と呟いた。

おおう、うっすらと姉さんが嬉し涙で目を潤ませている。

そして

「嬉しくても涙は出るのね」

と、最近あんまり見ない一昔前の人情物のドラマの登場人物のように姉が泣いている。




マジオモシロ。


と、思わず、いつも口元に勝手に自然と浮かび上がってしまう笑顔が出そうになるので、我慢しながら

慌てたフリをして


「え、えっ泣いてるんですか姉さん?」

「ええ―――だって幸せなんですもの」

おかしいでしょ?

私がお姉さんなのに

と、姉が微笑む。

くうぅーやられた。


落ち着け、落ち着け

今、心のチ●コが思わず勃ちそうになったぞ。

こんな湿っぽい雰囲気を出されると思わず

















濡れ場に突入させてしまいそうになる。

だからこそ

「泣かないでください姉さん、これからはこんなことが毎日続くんですから、そんなことじゃ、脱水症状になっちゃいますよ?」

ウェットではなくウィットなジョークを効かせてみる。


そして二人でHAHAHAHAHAと笑い合う。


その後姉がくるり、と方向転換し

「じゃあ、あがって、あがって」

と恥ずかしそうに急ぎ足で居間に向かって行く
まるで産まれたてのバンビちゃんみたいな後姿をみて。




思わず口元が


にやり。


としてしまった。


うーん、なんか姉の姿を見てたら最初にやろうと思ってた計画があるんですけど。

やっぱり取り止めにする。

あの妖怪蟲ジジイが私を改造してきた時の事を綴った日記なんだけど


二人っきりのクリスマスも盛り上がりを姉に「今までどういう風に過ごしてたの?」などと聞かれた時にそれをおもむろに取り出して


「こういう風にですよ」

と、読ませ、軽く爆弾落として

「ごめんねぇ……ごめんね桜」

と顔をグシャグシャにして泣く姉の体を思う存分、いじくりまわして、玩びながら

「私、こんなに汚れちゃったんです、だから、ごめんなさい姉さん、私我慢できないなんで姉さんの体は綺麗なんですか?
なんで、そんなに一人楽しそうなんですか、私が楽しいとでも思ったんですか?あの間桐の家に養子にされて、その日に汚されたんですよ?
ずっと、ずっと、毎日、毎日、貴方が普段の日常を送っている間も学校に行って友達と楽しく喋ってる日も
毎日、毎日ですよ!?、この11年間ずっとですよ!?許せない、許せない、許せない!みて、私をちゃんと見なさいよ!
この私を、この私を!みてよ姉さん、みてよぉお!!みろよ!なんで目を背けるんだよおお!?
巫山戯るな、ふざけるな、フザケルナ、HUZAKERUなぁああああ!!
許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!許さない!はっあははははははっAHAっhahahaっ!!
ふふっふふふふふふふふふふふふ……そうだ、そうだ!こうしよう!私、姉さんを私のものにしよう、そうだ私のものに!
これから毎日毎日毎日毎日毎日毎日、私がされてきたことを一つずつ姉さんにしてあげよう!ああああああああああああああ!
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい、姉さんが姉さんが私の物になった!嬉しい!幸せ!……くすくす、くすくすくすくすくすくす。

姉さん―――――私は貴方を一生、離さない(黒桐風)」

とかヤンデレっぽく言いながら、思いつく限り作った淫蟲でを使って姉でリアル陵辱プレイ!?と、思ったんだけどなぁ。

そしてとことん絶望させてから、その記憶を消して

だが、心には傷は残ってしまった、消えない傷が……。

という状態にしてみようとか思ったんだけどなぁ。


「なんで、なんで私……何も悲しくないのに泣いてるの……?」

とか後日、姉が独り部屋でぽつんと、そんなことを呟いて泣いてるのを想像しながらニヤニヤしようと思ったんだけどなあ。




でも




なんか勿体無いからやめとこう。

まぁ、元々そんなことするつもりもこれぽっちもなかったけど。

だって私の信念は堅気と処女は(なるべく食わない)だよ?


ほんとだよ?



ちょっと面白そうだと思ったけど。

そういうのもいいかも、なんか憧れる、とか思ったけど。

どっちかというと私マゾだからなぁ、あとで虚しくなるんだよなぁ多分。

などと、益体にもない事を玄関から居間に続く廊下を歩きながら考えてしまった。

グフフ。

あっ、思わずよだれが。

おっと、ぐふふふふ。




私こと遠坂凛は背中で妹の桜が可愛く微笑む声を聞きながら本日のパーティー会場にエスコートする。

さっきはうっかり妹の前で情けない姿を見せてしまったが、妹も嬉しそうにしていたので、まぁ二人だけだし、よしとしよう。

なにがよし、とするのよ私は?

恥ずかしい。

勝手に顔が熱くなる。

今日の私はどこかおかしい。

ただ、妹と彼氏もいないからしょうがなく過ごす二人きりのクリスマスっていう何処にでもあるような日常を過ごせるだけで。


こんなにも楽しい喜ばしい気分になるんだろう。

いや、クリスマスだからだろう、こんな気分になるのは。

おかしくはないのだ、キリストが誕生した日なんですもの。


と遠坂の優雅さを保つために理論武装しつつ妹を招き入れる。

あっ桜、こっちに座りなさいよ、私の横に座って。

え、近い?くっつきすぎ?

でも元々テーブルが小さいせいよ、だってずっと一人だったから大きなテーブルなんかいらなかったんだから。

駄目よ、向こうに座ったらテレビが見れなくなるじゃない、桜、見たいっていったじゃない「風の谷のナウシカ」

「風の谷のナウシカ」は九時から始まるから、ご飯食べた後でも大丈夫?

なによ桜、この私に、姉の私に逆らうの?

そんな顔しても駄目、今日はあなたは此処なの、わかった?


もう


我侭なんだから。











桜です。

姉がイチャイチャしてきてツライ。












姉の横に座り、姉が作った料理を食べる前にシャン・メリーをワイングラスに注いで

「姉さんが乾杯の音頭をお願いします」

「ん………乾杯」



ちん、とワインを軽く逢わせ合い、飲む。

うん、やっぱりクリスマスの夜の飲み物はシャン・メリーと決まっている。

昔、シャン・メリーには少しアルコールが入っている、と親に言われて少し大人気分を味わい、暗示にかかり、本当に酔ってしまったあの昔を思い出す。

爽やかな炭酸を喉で味わうと思わず

「おいしいです」

と一言。

それに対し

「ふふっやっぱりまだ中学生ね」とまるで母親のように微笑みながら姉が赤ワインを煽る。


でも、シャン・メリーもいいけど、横に座っている姉さんの私の腕に微かに当たる、小ぶりで可愛いおっぱいも飲みたいなぁ、と思う。


それかその口の中に入っている赤ワインでもいいですけど。

などと思ってる間に

姉さんが前日から一生懸命用意しないと作れないほど手が凝っている料理を
私の為に用意したのであろう、桜の花びらの模様が上品にあしらった綺麗な皿に盛り付けていく。

ほっそりとした姉の白い腕が料理に伸びている。

その穢れ無き腕にちゅぱちゅぱして桜色の紋様をつけたいなぁ。

この皿みたいに。

とか思ってると


ふと、冷静になって考える。

あれ、なんか私今日、思考ががっつき過ぎてません?



いつもよりもおかしい自分に疑問を抱く。

うーむ。

これでは私は変態さんみたいではないか。


と、反省。


「ほら盛り付けわよ、食べてみて?」

「あっ姉さんのは私が」

「ん、お願い」

と姉がにっこり笑う。

その顔に―――――




適当に妄想しながら食事は進め、気付くと一時間経過していた。






そして風の谷のナウシカが始まるのでテレビをつけ、二人で画面に目をやる。


どうやら姉はマンガ版しか読んだことがないらしい。

だから、あの内容を二時間でどう纏めるのかしら、と興味心身でテレビ画面を見ている。

もし、アニメ版が漫画のダイジェスト映像だったら、姉はがっくりするのだろうか?

それとも所々の名シーンに感動できるポジティブ精神で楽しむタイプなのだろうか?

そして自分の想像と違った、声優さんの演技と映像に文句をつけるタイプなのだろうか?

私としては風の谷のナウシカのアニメと漫画は別物だと悟ったように切り離して考えてるので漫画2巻程度の進度で終わるアニメに不満はない。

せめて7巻のユパさまがクシャナ様を庇い、死ぬ直前に「血は…血はむしろそなたを清めた」というあのシーンと
7巻の最後辺りのクシャナさんの「私は王にはならぬ、すでに新しい王を持っている」のシーンの映像化はしてほしいのですけれど。

●リエッティだかアリ●ッティだかなんか作ってないで先にナウシカ完結させろよ、とか思ってませんよ?

アニメはアニメ、漫画は漫画。

そう、漫画なんか結構マイナーも良いところなんだから。

知らない方が多数なんですからね?

知ってて当たり前と勘違いするのは少数派の悪い考えですからね?






と考えながら、アニメを静かに鑑賞している姉をみるとユパさまがアニメで唯一活躍する剣戟シーンで、表情に喜色を浮かべていた。

私がもし、ここにいなかったら「ユパさまはやっぱり格好良いわ」とでも呟いて居たんだろうなぁ。


再来年、聖杯戦争が始まったら前世でフュギアで見たあのセイバーを姉さんが召喚したら、可愛らしいが凛々しい女版ユパさまとか思って喜ぶんだろうか。

興味がつきない。

そう思いながら。

私はテレビに真剣に齧りついている姉の為に
私は持ってきていた紅茶を勝手に淹れはじめる。

すると

「ちょっと!なにやってるのよ!?隣に居なさい!そして横で一緒に見なさい!」

怒られた。

姉は私と同じ時間を共有することに気を抜かないようだ。

こっそり超美味しい紅茶を入れて驚かそう、と思ったんですけれどねぇ。

態々、この日の為に「紅茶の美味しい淹れ方」の本を借りて勉強してたんですけれどね。

ああ、なんて簡単な超(笑)美味しいなのだろうか。

「ああ結局、良い茶葉じゃないと、本当に美味しい紅茶は飲めないんだ、小説とかでよくある安物ティーパックで超絶美味い紅茶って淹れるって不可能なんだ」

と気付かされた「紅茶の美味しい淹れ方」と銘打つ割に、9割茶葉の紹介で、本の末尾に淹れ方が載っていた本にびっくりしたのは良い思い出だ。

そして専門店に赴き「金ならいくらでもあります、とりあえず今の時期一番美味しいやつの一番高い値段のやつ」とまるで成金のように10万円支払った。

ちょっと馬鹿じゃない?私馬鹿じゃない?その美味しいって本当に美味しいの?

それってたかが一冊本を読んだ私に分かる美味しさなの?

とか考えたり。


それと実は騙されて店員に好い様に買わされてないか気になり、ついつい店員に本音を言わせる為に自白用の魔術を掛けてしまったのは最近やった私の失敗だ。

お茶とか興味ないから良く知りません。

だって、私の一番好きな飲み物は風呂上りに飲む炭酸ジュースだし。




気付くとナウシカも終わりエンディングが流れていた。

最後までエンディングのスタッフロールを見終わると



姉と漫画とアニメの相違点など漫画版の好きなキャラや漫画版のストーリーについての考察を真剣に話し合う。

姉さんが好きなキャラクターはクシャナ様らしい。
プライドが高い姉さんにとってあの誇り高きクシャナ様がお好きらしい。

うん好感が持てる。

ちなみにアニメ版では幼い時、蟲に手足を食われているという設定的に特に好感が持てる。

私は勿論、森の人。

あのストーリーにチョロチョロと少しだけスポットが当てられるくせに、結構重要な感じで意味深な感じがたまらない。(それに私蟲使いですし)

とか喋ってると2時間は経過していた。


もう次の日になっていたので二人で「早くクリスマスケーキを食べなければ!」と無駄に焦った。

姉はケーキを切り分け係

紅茶は私が入れようとしていたのだが、「おっそーい!手つきがなってないわ!」と怒鳴られ仕事をチェンジ。


こんやこんなでケーキを二人でパクつく。

どっちがサンタさんの砂糖菓子を食べるかで少々揉めたが、私が店で注文する際、素材として提供した私が養蜂で収穫した蜂蜜で作られた

滋養強壮特性ケーキは絶品だった。





ケーキを食べ終わると姉がこてん、と可愛らしく私の肩に頭を乗せて寝入ってしまった。

疲れていたんでしょうね、私と過ごすクリスマスの為に頑張って。

などと考えると、1ミリグラムも湧かないと思っていたが、情が湧いたので姉の可愛らしい寝顔を見て、おもむろにオデコにキスを軽く落とす。

そして私から既に失われた姉の黒色の髪に口付けをする。

そして姉を寝室に運んでやりベッドに寝かせる。

プレゼント交換は姉さんが起きたらで良いかと思ってると


ふと気付く

「あ、指に切り傷がありますね」

包丁で切ったようだが隠していたようだ。

ついつい

「ちょっと味見、味見」

と舐める。

舐めしゃぶる。

態とジュプジュプと音を立てたりして頭のピストン運動。

そして、ちゅぽちゅぽとかしばらくやってたのでエロい気分になってきた。


折角寝てるし。


このまま食っちまおうか。

と思ったが。

「今日は姉さんの下着を嗅ぎ、指で普通のオナニーで済ませましょう」

と自重。

疲れて寝入ってる姉を裸に剥いて、私も裸になって横に寝転がり、姉の裸を視姦しながら姉の脱ぎたてパンティのクロッチ部分に鼻を当て、くんかくんかしながら、ねっとりと濡れた【18禁】して

【18禁】して大人しく眠ることにする。




そして一つの結論を立てる

女同士でヤル場合、コックがないので、意識がないうちに襲っても楽しみ半減。

普通のレズプレイをしたいならそれでも良いだろう。

しかし所謂、格式高い百合プレイは心と心が通じ会わないとできない、と真理に辿り着く。



あと朝起きてお互い裸という状態にびびる姉を想像してニヤニヤする。















最後に


しかし、今日の私は結構おかしかった。

こんな人間臭い感情が発生するとは。

お爺様を食ったあの日の前以来だ。


でも今日はクリスマス。

こんな奇跡のようなことが起きても可笑しくはないはない、と微笑んだ。








その笑顔は普通の15歳の少女の笑顔だったかは桜本人にも分からない。













あとがき


桜さんがただの爽やかな痴女になってしまった………

しんじくんは、なすきのこ節を効かせました。

そして姉はセイバーを召喚する、と何故か勝手に決め付けている桜さん。

セイバーは最優のサーヴァント。

なら姉が召喚するんじゃね?

くらいは姉を買っている桜さんでした。


次回から何時も通りの妖しい厭らしい桜さんに戻ります。




クリスマスだから起きた奇跡です

ちなみに桜さんはアリエッティが放映する前に死んでます

ちなみにジブリについての文は作者の考えではありません。




今回はネタにネタを塗りたくったネタ回でした。




[31354] 閑話2 運命がちょっと動きだす日 上
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/01 00:09
私は姉から貰ったクリスマスプレゼントである無駄に透明で綺麗な繊維で出来た手袋を嵌めずに
手の内で玩びながらソファーでゴロゴロする。

俯きでソファーに寝転がっている、と巨乳の宿命か
私の胸に実った白くてピンクのぽっちがついたスイカの形が崩れ、痛みを感じる。

無駄に幼い頃エロイ改造をされた結果。
無駄に高感度なのだこのパイオツは。

わざわざ魔術の触媒探しのために電車に乗り、態と周囲にフェロモンをばら撒き、痴漢をして来る頭を禿げちらかし、脂が乗った中年親父などを摘んで食べている時など、私の胸に「がぶりんちょ」してくる手が近づく瞬間に「あ……触れてくる……(背筋ゾワワ)」とすぐわかってしまう。

軍事用、高感度レドームなのだ、私の胸は。

しかし、男の股間に設置されたミサイルやらバズーカやらマグナムやらデリンジャーやらが発射されて
かっ飛んできても、いつも撃墜はせず、最終防衛ラインの中に受け入れ、いつも爆発させている。

しかし、興が乗らない日などは邪魔でしかない。

天下り先の為の公共施設のようなものである。

公衆トイレになっていない今日の私にとってこの感度は聊か不快である。




うんしょ、うんしょとゴロンと寝返りをうつと、押しつぶされ、凹んでいた胸は反発を起こし
凸となる。

そして私の胸に乗ったサクランボがプルプル震える杏仁豆腐の上になる。

こうしているとクリスマス後に兄とヤッた生クリームぶっかけプレイが思い出される。

「ほら生クリームの上に桜の、桜の…桜ん坊が飛び出してますよ、兄さん食べて……
食べて!そして、その股間の暴れん坊を!桜のッ!花びらの中にある雌しべに入れて強制受粉させてえぇ!!」

とか言いながらヤッタ時、私だけは最高に楽しかったなぁ。

兄は何故か「このクリーム、衛宮の家で食べたクリスマスケーキの生クリームの味に似ている……ああ、楽しい思い出が汚されていく……。」

等と気落ちしてたなぁ。

まあ当たり前なんだけどね、兄が買ったクリスマスケーキのレシートを兄の財布から見つけて
思いついたプレイだったし。





やっぱり、クリスマスで売れ残ったケーキって安いですよね?




そして私は落ちこむ兄にこう、言った。

「そんなクリスマスケーキのことなんか(強調)よりも…さぁ、私のクリ●リスケーキを食べて……」

「ぎゃわーん!」


とかいって兄が泣き出したときは





嗚呼




本当に





楽しかったなぁ。



とか思いながら兄を弄繰り回して遊んで、そしてまんぐり返して遊んでる内にもう年末。


トイレに入ってるうちに兄に逃げられてしまった私は一人、溜息をつく。

トイレ行く直前まで兄の手首の動脈を「もう少し強く齧ったらどうなるんでしょうか?」

とか言って歯でかぷかぷしてたから、手錠外してたんですよね。

失敗、失敗。

「今年こそ新年の初日の出みるんだー!もう太陽の光も入らない此処から逃げてやる!」

と面白い叫びをあげて逃げる兄よりも兄が玄関に残していった。


「年末の12月31日はずっと新年の初詣の為の準備期間だから、衛宮と初詣の準備をするからお前は留守番な!」


と書き殴りのメモ用紙に律儀に書かれた「!」の部分に笑ってしまい、見逃してしまった。

十年近く観察してきたが、まだまだ私から逃げることを諦めていない。

あと何年で兄は諦めるのだろうか?

興味がつきない。


今直ぐに衛宮邸に行って回収してこようかな、と思ったが。

ここ十年近くで兄の精神ギリギリラインを見極めている。

そこまですると兄が本気で首を吊ってしまいかねないのでやめておく。




だが、わざとさらに追い詰め、家の庭の桜の樹に首を吊って人生を儚んで走馬灯を観始めて

「ヴぇみヤ……ゴベン」

とか呟いてる時にその首吊りロープをギリギリ間近で切り落とし

昇天する瞬間、堕天させてみるのもいいかもしれない。

「生きるってことは戦いなんだ!ですよ兄さん。そして戦いは数じゃないんですよ、兄さん?」

とか意味不明な名言を言ってみるのも、また一興。


とか思いながら


「12月31日から初日の入りまでの年末年始耐久「姫終わり&姫初め」プレイをするつもりだったんですけれどー」

とがっかりする。








閑話2 運命がちょっと動き出す日







兄のカチカチの棒をいじれなかったので。

結局、暇だったのでパソコンのマウスをカチカチいじることにした。

やふーで真っ先に天気情報を確認する。
















どうやら1月1日は天候が悪く、一日中曇りらしい。


くすり、と私は笑い、マウスをカチカチする。



その音で兄が寒さやら恐怖やらでカチカチしている光景を思わず浮かべてしまい

また笑う。


とりあえず、趣味でやってるブログをチェックする。

桜ブログというサイトだが、ただ庭の桜の樹を気が向けば撮影してのせる、という他愛もないブログだ。

という皮を被った、私がある実験の副産物で出来た、薬にも毒にもならない程度の魔力が籠もった道具をこっそりと販売するサイトである

多少霊感がある人なら、桜の樹の画像の裏に「【魔道具】売ります」と浮かぶ。

そしてブログにはメールアドレスが載せられており、興味が持った人が私に連絡してきて

話が合えば売る。

そんなサイトだ

過去に売れたことは数回しかない。


今まで売れたものは

「ちょっとご利益がある藁人形」

とか

「嫌いな人に食べさせると大人しくなるクッキー」

とか


そんな感じ。

いままで、魔術師から連絡が来たことはない。

そもそも穴蔵に篭もってアナクロに突っ走るアナログな方々にデジタルを使いこなすやつはまず、いない。



しかし今日は違った。



「あ、なんでしょうか、これ」


英文のメールが一つあった。

悪賢く賢い私はいとも簡単にそれを訳して読み上げる。


「ふむふむ―――ムカデが日本に逃げ込んだ、協力求ム―――。か」









バゼット・フラガ・マクレミッツは今年で最後と請けた仕事に辟易した。

「わざわざ日本に逃げ込むなんて、存外頭がキレるな……」

しかもこの時期だ……日本独自体系の魔術師達が最も活動するこの時期に逃げ込まれるとは

12月は日本で師走、と書く。

これは日本の魔術師も走り出す、という月でもあるのだ。


「厄介ですね……これは」

時計塔からある秘物を盗みだした、はぐれ魔術師が協会の追っ手から逃れ、協会が手を出しにくい島国である
あの日本に逃げ込んだのだ。

だが、現地の魔術師達からの協力は中々得られない。

日本人という民族は何か問題が起きた時の初動が悪い。

と、バゼット・フラガ・マクレミッツは悪態を吐く。


仕方ない、協力者なしで現地に行こう、と思っていたが。










「逃げこんだ場所は確か……グンマー・ケンだったか……あそこは日本でも特に異質という、噂がある」

情報収集のためインターネットで日本を調べていると、そんな噂がちらほら、と。

魔術に関係しない人たちでも異質、という。

謎と恐怖が満ちているグンマー・ケン。

確かに「グンマー」と口に出すと、どこか不気味な気分になる。











これは現地の魔術師の力がいる。

なんとかならないものかと思っていると

偶然にも魔術師がやっているブログに辿り着いた。

魔術的に全く価値もないアクセサリーを販売しているサイトだった。

ふむ、こんなことでもしないと碌にやっていけない貧乏な魔術師なのだろう、と

依頼料は高額ですと書かれた依頼書をタイピングし、とりあえず、マウスでドラッグすると浮かびあがる隠しURLに駄目もとでメールを送ってみると


「了承!(イエス!オフコース!」

とすぐ簡潔な返信がきたので、それだけを頼りに私は来日するために空港に向かった。












数年後


その時そのサイトを見つけていなければ、と何度も思い返すようになると。

今の私には分かる筈もなかった。









一方桜さんは


「あ、結構美味しい依頼だ………暇だし受けてみよう、折角のアクセスカウンター100回目のお客様だし」

と気軽にミッションを受けていた。

群馬県は日本でも有名な絹の産地。

蚕の一匹でも持って帰って家の蟲倉で繁殖させてみるのも悪くない、と桜さんはウキウキと観光旅行の準備を始めた。











次回


オオグンタマの貴重な産卵シーンが見られます

嘘です。

ついに動き出す運命。




聖杯戦争前に彼女は運命に遭難する。


冬だけに



あとがき

またまたネタ回でした。


まぁ作品自体ネタですけれど。


次回もお楽しみに。



[31354] 閑話2 運命がちょっと動きだす日 下
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/01 00:28
「おかしいですね、ネットの写真ではグンマー・ケンは見渡す限りのジャングルに土着の人食い人種が住まう未開の地だと………」


おかしいですね。

あなたの話すグンマー・ケンは普通の街のようです。




いきなり出会ってすぐに質問された時は思わず


素で

ハァ?

と聞き返してしまった。


なにそれ

え?

わざわざとなりの県である新潟県の駅で待ち合わせたのって、そんな意味の分からない理由なの?

何度も何度もほんとに?本当?

「違うんですか?」

と質問してくる外国人に



冗談を冗談と見抜けないやつはネットを使うなよ、と思った。



やっぱり空路は群馬県の上空で飛行機が粉々に爆散する可能性があり、危ないから韓国までまず移動、それから北海道函館空港から海路を使って新潟県って阿呆か。

どこのバミューダ・トライアングルだよ群馬は



出会ってすぐに私の年齢やらで少し揉め、そのあとすぐに群馬県について揉めたが、やっと本題に入る。



「仕事の概要を説明します、今回、時計塔から盗み出されたのは過去に「百足の怪物」と呼ばれていた死徒の遺物です。
100年前、聖堂教会と魔術協会の精鋭が協力して討伐した死徒とのこと、そしてその死徒の遺物は大変危険な物らしく、所有者を百足の怪異に変質させるらしいとのことです」

と、パンツスーツ姿で凛々しく、泣きボクロがチャームポイントなお姉さんが携帯電話を開き、その「百足の怪物」と呼ばれた死徒の遺物の画像を見せてくる。

それはムカデの形をした胴色の小さいキーホルダーのような人形だった。

まぁ可愛い。

私のピンク色の携帯のストラップにしたいです、などと考えている、と

「さらにこの百足に変質していく所有者は怪異と成り果てると、宵闇に紛れて多くの人を襲って行きます、しかし、探査能力が高い魔術師の眼を掻い潜る
ほど隠密性が高く、大変悪質。 まさに「百足の怪物」になります。」

ああ、靴を履こうと思ったら「ギャー百足が!」的な凶悪な隠密性なんですね。



「そして、最も恐ろしいのはその遺物にはある概念が含まれております、その名は【蛇蝎概念】です。それの概念とは、すぐに周囲の風土気候に完全に順応し
その地方地方に語り継がれる【蛇蝎の如く嫌われる】怪異になります。
過去にペストが大流行した欧州の農村で発現した時の事件ではあの「蝿の悪魔ベルゼブブの姿」をとり、ペストを媒介した蝿の群れを操り始めたそうです。」


このあたりは、かの有名なタタリに酷似していますね、と彼女は、言う。


そんなに面白じゃなくて、そんなに恐ろしいアイテムなのか。


だったら


「そんなものが奪われて、なんで貴女一人だけなんですか?」

んな生物兵器が盗まれたというのに。


と質問する私にバゼット・フラガ・マクレミッツさんは申し訳なさそうに
















「それは実は………百足と銘打つだけに被害は必ず100人で止まり、最後に所有者を食い荒らし、元のこの百足の人形に勝手に戻ります」



ああそういうことですか。


思考が冷たくなる。


私をあの蟲ジジイにただで売り渡した、あの魔術師の権化を思い出した時の思考。


憎しみではない。

ただ冷たく乾いた思考。

父が聖杯戦争で死んだ、と蟲倉の中で聞かされた時と同じ思考。


あの蟲ジジイに枕話で聞かされた時、言ったあの言葉が思い出される。


あの時



「ふぅん―――どうでもいいですよ、それよりもさっさとここから出してください、苦しいです」


と私はジジイに言い返した。


その言葉に蟲ジジイは



「流石じゃのう、流石名門の魔術師の娘じゃ、これはこれは素質がありそうじゃのう」

と哂ったものだ。







そんなとりとめもない昔を思い出し、鼻で笑う



はっ



最高にくだらない。




「ようは―――100人程度なら死んでも大したことはないってことですね」

「………そうなんです」

魔術師の癖に目の前の美人さんは溜息を吐く。

陰鬱そうに溜息を落とすその姿は美しい。

人間的というか、合理的ではない感情に囚われるあたり少し、最近、私との交流で心の贅肉を増やし始めぶくぶくと太り、人間味が増してきた姉さんを彷彿とさせる。

魔術師というよりも戦士。

あの似非優雅な私の遺伝子上の父親よりも紳士的。




しかも最初に顔あわせた時、私をみて眼を剥き

すぐに年齢を聞いてきたので

私の年齢が15と言うと

真っ先に

「これは大変危険な仕事です。今直ぐに踵を返して家に帰りなさい。貴女は魔術師の家か霊的な素質を持つ血を受け継ぐ小娘のようですが………
貴女が販売していたあの玩具―――あれは大変酷いものでした。そして酷く未熟で稚拙だ」

とか私が適当に作った未熟で稚拙な玩具をボロクソに言う。

まぁとある実験で作ったボロクソなんですけど、てゆうか言いすぎじゃないですか?

小娘っ!?コムスメって………前世と今生でも初めて言われたよ。



でもこれは


優しい大人の嘘だ。

なんて、こと。


はぁうあー


この人



凄い



綺麗。


私を見下す口調は冷たい、表情も冷たく見下してくる。

でも私は見逃さない。


その顔には人としての誇りがある。

待ち合わせた時間は3時半。

冬は日が落ちるのが早く彼女の顔には夕映えの朱が彩られていた


その凛、とした眼差し

引き締まった口元

綺麗な芯が通ったような声。




実に美しい。



凄い、なんかこの人のこと





途轍もなく大好きになっちゃいました。


なんで?


このコールタールの塊のような私が?

人を好きになるなんて。


おかしい。



いや違う。



そうだおかしくはない。





この人こそ私の




憧れの



お姉さまなのだから。








このまま勘違いされるのは嫌。


と思ったので、適当に回路を回して魔力を体に充実させる。

それだけで常人を越える人間が持つ、肉体性能の限界を引き出す。

この状態になれば、中身が入ったジュースのアルミ缶を板金のように潰せる握力が発生する。

至近距離で発射された銃弾の初速さえも視認できる動体視力。



私の中に入ろうとしたジジイをこれで捕まえ

「な…ん…じゃ…と……あれだけ嬲ってさえ…このワシを騙し通したか…驚いたわ……」

と断末魔をあげさせたこの魔力を。

ねえみてよお姉さま。







遠坂家でも稀に見るこの魔力量。

架空元素という、存在してるだけで魔術師に捕獲される程の希少な才能を持つこの私の魔力量はその才能に比例するかのように膨大。

アベレージという使い勝手の良さを姉から抜けば、姉の方がマキリになっていた程の魔力量なのだ。




まぁ私って




凄い運動音痴だから






こんな状態になっても出来るといえば蝿を箸で捕まえるぐらいしかできないのですけれど。


幼い時


ぴょーんっ!って私の膣内に飛び込んでくるジジイ本体に命の危機を感じて発現した魔力量なんですよ。

命を賭ければ限界なんて簡単に越えられるってよく言います。



そう


ようはこれは一言で言うと。


「火事場の糞力」


なんです。


しかも途轍もなく無駄な。


だってほら、発射された銃弾が見えても避けれるわけないじゃないですか。

人間は音速で動けませんよ?

そんな速さで動いたら全身自壊しちゃいます。

今、この状態で走ったら、私すぐ転んでしまいます。



だってほら



チョロQにジェットエンジン積んでも粉々の粉微塵になるだけですよ?

ボス・ボロットにブラックホールエンジン積んだって、出来ることは精々、精神コマンド【自爆】だけですよ?


とことん肉体の性能が上昇しても

のびた君ばりの運動音痴の私には無用の長物。

強化の魔術で肉体を強化するともっと悪化するという駄目さ加減。

使い勝手が悪いったらありゃしない。


もし喧嘩して、相手を殴ったら、相手に拳が到達する前にマッハで腕が体から分離します。

なんですか?

某格闘漫画の当てない拳の衝撃破?

だからなに?


マッハに達した私が相手よりもマッハに真っ先に死にますよ。


結論





私は荒事にはむいていない。





故に無用の長物。



喧嘩したら相手を蟲さんにパクパクして貰った方が1兆倍まし。




まぁその使い勝手の悪さで


マキリになったんですけれどもね?



とか考えながら「ふふん」とお姉さんを見返す。

それをみて

「見誤っていた、すまない、貴女には正式に依頼することにする、頼む―――ぜひ協力して欲しい」

とすぐに素直に謝るお姉さんに


うわ、綺麗だけど

すごい


可愛い。



などと


きゅんきゅんしちゃう私なのでした。



これって運命の出会いなんでしょうか?


人を好きになるって



幸せですね。











あとがき


初、外道じゃない桜さん登場の回

何故か合った初めて出会った瞬間、マリア像の前で黒髪の高校2年生からロザリオを奪い取るぐらい

一目惚れをした桜さん。

でも


実はまだ見えてこないしんじくん以上のダメットさに桜さんの鋭敏な嗅覚が反応して


一目惚れした、という勘違い中。


という裏話。



[31354] 6話 ハイパーSAKURAさんタイム 上
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/01 23:21
依頼の説明は群馬県内を歩きながら続けられる。

「私の目的は被害が出る前に百足の怪異の討伐、そして遺物の破壊の二つです」

「破壊しちゃっていいんですか?結構凄い魔具でしょう……回収は依頼されてないんですか?」




「ええ、協会側からは破壊を命ぜられています、そもそも、あれは時計塔に保存されていた、というよりも封印されていた物なのです」


なんか面白いですね、まるでハリウッドのアクション映画の設定のようです。

そう、封印された魔法の道具を巡って彼と彼女はボーイ・ミーツ・ガール!

そしてたかが二時間で恋に落ち、そして橋が落ちたりもするアクションシーン。

そして最後には濃厚なキスシーン。

さらにその後は

「いくのね……」

「ああ」

「私も……連れてって」


「駄目だ」

「何で?……危険だから?」

「そうじゃない」

「会ったばかりでお互いを知らないから?」

「違う」

「じゃあなんで?」





















「俺には妻も子供もいるんだ」

「そんなこと言ってるわりにはココがこんなにも元気よ?」

「……実は、今妻とは別居中だ、息子は俺の家にいる―――じゃあ、俺の息子に会ってくれないか?母親として」

「ええ……でもその前に貴女のムスコにあわせて!そしてわたしにカムインしてぇ!」


「OK!たっぷり俺のカムをお前に腹一杯入れてやるぜ!」


濃厚セクロスシーン。



とか馬鹿なこと思いながら私は説明を聞いたり聞き返したりする。

おふざけが過ぎると、このお姉さまに二時間以内に捨てられるかもしれないし。




「では貴女には、このグンマー・ケン内に居る、怪異の捜査協力をお願いしたい」

この日本という国の人たちはは何故か外の国から来た者を排斥し、怯え、珍しさでこちらを伺ってくる。

異質を認めず当たり前や常識というステレオタイプを信仰している民族である。

と、言う感想を抱いてしまうほど

日本に来てから大体はそういう感情を持つ視線を感じてきました、と

バゼット・フラガ・マクレミッツお姉さまは私にそう、言う。

じゃあ、私は視姦しますね、と思わず口に出しかけ

こう、言う

「ようは外国の人だと話しかけるだけで警戒されるので、代わりに日本人の私が周辺住民への聞き込みをする、というのが私の仕事ですか?」

なんか私の役立つ場面が少ないなぁ。せっかく、理想の人に出会えたのに。

アピールポイント少なすぎですよ。

なんか

人質とかに取られて足引っ張るフラグが立ちそうじゃないですか。

さっさとこの人をラブホテルに引っ張りたいのに。


うーむ。


ならば



じゃあ早速、良いトコみせちゃおう。


「ねえおね、じゃなくてバゼットさん。長々と説明させてもらって大変申し訳ありませんが……」

「なんですか突然」


















「もう見つけちゃいました、その犯人」


「は?」








NHKの朝の10分ドラマを一話で完結させるような行為だが、もう見つけてしまった。


だって、私蟲使いだし、指使いも凄いし、腰使いも凄い、勿論アソ(お下品)も最高なので見つけてしまった。


いや、だってさ








ポケモンで言うなら私トレーナーですよ?


ポケモントレーナー同士は出合ったらバトルが常識なんですよ?


まぁ、私は虫ではなく蟲トレーナーなんですけれども

レベルでいうなら

あちらさんがトキワの森の短パン小僧(キャタピーLv3)。

勿論私はジムリーダー(ストライクでひたすら影分身)どころか四天王(初代派の私には現在、虫ポケの四天王が登場しているのかは分からない)。

そりゃあ、楽勝ってもんですよ。

トレーナーのポケモンにモンスターボールを投げて捕まえるのが当たり前な私にとって、そんなの朝飯前のメシウマタイム。

楽勝です。

しかもトレーナー自身の私もわざを使えます。


まとうさくら(バグ)


かたくする

しろいこな



と持ちわざ二つでチャンピオン・ロード、クリア。


なつかしいなぁポケモン。

兄さんとよく通信対戦やったけ。

相手のポケモンのデータごとジェノサイドするバグ技のしねしねこうせんで
兄さんが大切に育てていたリザードン(Lv71)を殺したりしてよく泣かせてたなぁ。

楽しかったなぁ、と思い出す。




「ど、どうやって」

おお、目を見開き驚いた顔も素敵。


勿論

「企業秘密です」

と私は人差し指を唇に当ててにっこり、とする。


ちょっと活躍しすぎで



実はお前が犯人なんじゃね?




とか疑われるくらいの大活躍。


でもしょうがないじゃないですか、見つけちまったもんは見つけてしまったんですから。


これが私の本気のじつりきですよ。


自分のホームを離れたのなら相手のホームを自分の家にするぐらいの心意気がなければ魔術師なんてやってられませんよ。

RPGでも、まず人の家に入ったら箪笥の通帳と印鑑を探り当てるくらいは常識です。



ところで




群馬県民の血液は0型が多いですね。























ジェバンニが一晩でやってくれました?


なら


私は一時間でやってあげますよ。


今、もし私の手に握られた旅行鞄に耳を当ててみれば「みしょみしょ」という音が聞こえるかもしれません。



と、私は胸の裡で微笑む。

群馬県全体に大量の蚤を即行解き放ち捜査完了。

手の平分ぐらいで県民の人口くらい余裕で網羅できる。

ほんと使い勝手よすぎなマキリの魔術。

まるでデウス・エクス・マキナです。


ご都合主義はとてもとても大嫌いなんですけどね。


私は。



それにこういう風に魔術使うのも嫌いですし。

ドバー!ガー!ってミサイル発射して遠くの国を攻撃するような真似は大嫌いです。

私はいつも戦闘機同士でのドッグファイトを望みます。





勿論、頑張る戦闘機パイロットを後部座席で応援しながらポップコーンなどを摘みながらのドッグファイト観戦ですけど。



それに堅気と処女には魔術はなるべく使用しない私の主義に反します。









でも





早くしないと




今夜中に100人以上死んじゃいますからね?



流石に主義主張でほっとくのも後味が悪いからしょうがないでしょう?


どうやら百足さんは大変御空腹のようで既に50人はペロリと平らげてしまったようなのです。

しかも時期のタイミングが良すぎるのだ。


よりにもよって


日本中の多くの人が夜遅くまで出歩く


あの大晦日の夜に怪異に変貌したのだから。


今日は1月4日


すると大体一日16人ペースですか。


しかし、よくもまぁ、「百足の怪物」でしたっけ?

こんなにもよく日本の風土にマッチングしてしまうなんて。

そういえば日本は八百万の神々の国でしたね

本当に急がないと、大変よろしくない。


あと数日ほっといたら100人どころかその100倍くらい人が亡くなるでしょう。

ところで死徒に滅ぼされた処って【死都】って言うのでしょう?

これだと一ヶ月もかからずに【死都】になっちゃいます。

まぁその前に日本の退魔の方々が片をつけるでしょうが、その前に沢山犠牲者がでちゃいます。

だって外人さんが言うには日本人という民族はなにかあった時にその後の初動が遅いらしいのですから。






もう、最高につまらない見世物だ。


最高に機嫌が悪くなる。



なぜなら





神様なんて大嫌いなのだ。







これもグンマー・ケンとか意味分からないこと言う目の前のこの人の所為なんですけれどねぇ。


しかも、私の主義を曲げさせるなんて本当に愉快です。


これは依頼料だけじゃあ、全然足りない。





しかし、態々ここまでやってきた馬鹿の手助けもたまには悪くない

久々に魔術師としてではなく

魔女として本気を出しましょう。

あのクソジジイを食べた時以来の二度目の本気をだしましょう。

楽しみです。

などと、考え




にやり


と、私は厭らしく妖しく哂った。





6話 ハイパーSAKURAさんタイム 上


まさか

「グンマー・ケンに入国してから一時間もしないうちに犯人を見つけてしまうとは…何者だ?」

バゼット・フラガ・マクレミッツは目の前をまるで観光ガイドの様な気軽さでこちらを案内する少女に骨の髄から驚きを抱いていた。

最初に出会った時はただの普通の少女。

歩く街角で見かける日本独自の衣服を着用し友人と明るく笑い合っている少女達の一人に紛れ込んでも

その少女が恐ろしいほどの何かを持っているとはわからないだろう。

まぁ目の前の少女はその中でも目立つ存在なのかもしれないが。

優しく穏やかな笑顔を浮かべる少女。

彼女は同性の自分からしても十分に可憐である、と言い切れる。

面立ちも良く、一緒に歩いてると街の男性は彼女をみると一瞬、視線を固定する。

次に男性が目を向けるのは少女の躯だろう。

日本の女性は体格的に小柄が多いように見える。

その中でも彼女は豊かな女性らしい柔らかさを多く保有している。

まるで少女は咲き誇る一輪の美しい花どころか美しい花を多く咲かせる大樹。

彼女の名は日本の樹の名と同じらしい。

その名はさくら。


さくらという桃色の花を咲かせる樹は日本人が毎年春にその樹をみるために態々宴会を開いて集まりだすという。



まるで名は体を現すように彼女は美しい少女だった。


ならば少女を見る男達は言うなれば、彼女という花の極上で甘露な蜜に魅かれる虫のようなものだろう。



と、柄にもないことを考える。


私は詩も歌にも意に介さない、情緒を持たない女だ。


しかし、こんなことを考えるのもたまには悪くない。

と苦笑する。


私が小さな頃から読み聞かされていた御伽噺で憧れていた英雄達は詩と歌を愛し

時に命まで賭けていた。

そして名誉と誇りと譲れない誓約に命を賭していた。


これから命の危険がある場所に行くのだ、その戦士達に習うのも悪くない。


ならば彼らに習い。

名誉と誇りのため


目の前の花を守ってみせよう。


いくら才能があっても15の少女


なるべく危険がないように怪異の近くでは避難して貰おう、そう思った。



「しかし、今はもう日が沈んでしまっている……桜、案内するのはいいのですが……今、怪異と戦うのは分が悪い」

宵闇に紛れて人を襲う怪異だ。

わざわざ相手のホームで戦うのは大変危険だ。

しかも目の前の少女にも危険が及ぶだろう。




こちらも切り札を用意してきているが、安全な勝利は得られない、と私は目の前の美しい少女に言う。

すると


優しそうに微笑んでいたその顔が


妖しく、そしてまるでこちらをシャーレの中に入っている微生物を眺めるような目でこちらを見てくる。

私を観察してくる。


何故?



先ほどまであんなに可憐だった少女は



まるで宵闇の暗黒のような





全身に怖気が走る。


これは……死の気配だ。


額に冷たいものが流れるのを感じた。



気付くと私は全身に冷や汗を掻いていた。


今まで仕事をしてきてもこんな―――。





この娘はなんだ?



何者だ?





なんだこの怪物は





「さ、桜?」


「安全に昼間に退治するのはいいですけど――――今日退治しないと明日までに100人死んでしまいますよ?」


どうします?


と私に怪物は問う。


貴女の危険と今日の100の命。


どっちを大事にしますか?


そう、問い掛けてくるのだ。


問い掛ける間も目の前の怪物は私を嘗め回すような観察を止めない。







魔術師ならば安全を取るだろう。

合理的に考え、リスクを減らす。


そもそも彼女の言っていることは推論だ。

なるべくリスクは背負わない、それが魔術師だ。


しかし


「それは……本当ですか?」


「ええ―――本当です」


ならば


「桜」


「はい」



「――――往きましょう」


今日の私は魔術師などではない。










戦士だ。






すると目の前の彼女は

それはとても


とても美しく微笑んだ。


一番花に魅かれていたのは私だった。



そして彼女は私に近づき私の手を取りこう言った。






「そう―――言うと思いました」


そして私は手を引かれ、歩き出した。


そして彼女はこっちです、こっちです、とまるで子供のように、はしゃいで私を引っ張るので


思わず苦笑した。






まぁ悪くはない。









続く。







次回


魔女の本気。












あとがき


ダメット、タイガー道場逝き、逃れるの回。



選択枝をミスると容赦なくパクパクされてましたよダメットさん


ちなみに桜さんはダメンズウォーカーではありません。

ダメンズに首輪をつけて散歩するのが大好きなだけです。

そしてまだまだハイパーSAKURAさんタイムは続きます。



[31354] 6話番外 逆レイパーしんじくんジュゲム
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/02 19:05
番外編


逆レイパーしんじくんジュゲム。





「やっぱり衛宮の御節料理は美味かった」

僕が大好きな豚の角煮も作ってくれたし、充実した正月だった。

年末、間桐邸から逃げ出した後、迷わず衛宮の家に逃げ込み
衛宮の家のコタツの中でぶるぶる震えていた。


「ど、どうしたの間桐くん!?」

虎の癖に猫のようにコタツで丸くなって、体も丸くなりそうなぐらいな量の大量の蕎麦を啜っていた
虎も僕を心配する。

「どうしたんだ慎二!?その格好は!?」

素早く逃げるために周囲にあったパンツとズボンとYシャツを羽織った
僕の姿は季節感を勘違いした男だと思われるような防寒対策ゼロ状態である。



しかし






そんなものより防姦対策の方が重要である。

Yシャツも前面を閉じず、まるでヴュジアル系のギタリストの様相の僕は、取り合えず


「妹と喧嘩(ベッドの中で)して逃げてきた」



と嘘をついた。

まさかこんな平和な場所に

「妹に僕の白い血液がちゅーちゅーされそうになったから逃げてきた」

なんて言えないのだ。

僕はここではそんなことを言えない子なのだ

そんな爆弾を落としたら僕は家ない子になってしまう。

近親相姦とか

言える訳がない。

しかも逆レイプされてるなんて(妹は勃っているから和姦成立とか言っているが)

証拠として腕の妹が噛んだ痕をみせ、納得させる。

「とりあえず、ほとぼり冷めるまで……」

「そういうことならしょうがないわね、士郎、間桐くんのお蕎麦用意してあげて」

すると、虎がOKを出す、家主を無視して。

やっほー!

脱出完了である。

先ほど服を奪取されていた僕にとって鶴の一声、虎の雄たけびだ。

弟は姉には勝てないのだ。

兄の僕は妹に勝てないが。

「そうだな食ってけ、食ってけ、でもちゃんと仲直りするんだぞ」

と衛宮の寒空の下、待ち行く人々に「小学生か」とか笑われても

サムガリマセンニゲルマデワの精神が僕に終に報いてくれる。

あったかい家。

あったかいコタツ。

あったかいお蕎麦。





さっきまで「兄さん――あったかい」とか言われてたのが嘘みたいだ!


僕は……ここにいたい。


いたい



ずっといたい。

いたい





痛いのはもう嫌なのだ!


「ふ、ふん僕に食べさせるお蕎麦は勿論――――クロレラ麺なんだよな?」

「いや、いきなり無茶言うなよ、相変わらず慎二は我侭だよなぁ」

さっきまで、妹に我がままにされていた僕にもう少し優しくしてくれよ。

と、文句を思いながらも衛宮特製のお蕎麦を頂いた。

そして僕が羽伸ばしていると。







おい



手前

コタツの中で足伸ばしすぎ――――。



その後、初詣いったり、衛宮の御節料理の数の子は虫の卵に似ているから虎の餌にしたりした。



そして過ぎ去る日々

1月4日


流石に明日から学校なので家に帰宅。

ほとぼり、冷めてるといいなぁーとビクビクしながら家に帰る。

「桜ーただいまぁ……ん、いないのか?」

家に帰った瞬間に

醒めた目で股間をビクビクさせられるのかと思いきや

玄関に


つまらない用事でしばらく家を空けます。


あと


台所の戸棚におやつが入ってます、衛宮さんちにあげてください。

お歳暮、大事。


桜。


という簡潔なメモが残されていた。


「それはいいことをきいた………二つの意味で」

お歳暮、大事。かぁ



僕を大事にしない妹が珍しく気を使うという大事件が起ったが

衛宮にあれだけ世話になっていてお礼のひとつも出来ないなんて僕の沽券に関るしね。

僕の股間をあれだけ守ってくれたんだしね、と

僕はうきうきと戸棚を空けにいく。

食卓で寒さと乾燥で、正月の切り餅の焼く前のようにカチカチになっていた
お爺様を尻目に台所に向かう。

そして

戸棚を空けると

うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


って


「なんだ、お爺様か」


戸棚の中にはお爺様が収納されていた。

「もしゃもしゃ」

「こ、この鳴き声は………お爺様2号」

この前気付いたのだが、お爺様は5人くらい居るのだ。

この前妹が世界不思議発見を見ながら、お爺様をひとしくん代わりにして

「はいボッシュートォ!」

とか

「はい、このスーパーお爺様を賭けちゃいます」

とか

黒柳徹子と一人、勝負して遊んでいたのだ。

「私も魔女として貴女に勝ちます!」

とか、言いながら。



なんでも金色の着物をきたのがスーパーお爺様らしい。

赤い着物が2号らしい

食卓に座ってる紫の着物を着ているのが初号機。

そして青色のが0号らしい。

「もしゃもしゃ」

鳴き声も微妙に違うので見分けるのは簡単だ。

どこから出てくるかは見抜けないが。













「もしゃもしゃ」



「って!?衛宮の家にあげるお歳暮くってんじゃねぇええええええ!」

僕は咆えた!

お前死んでいいんだな!




すると


「もしゃもしゃ」

お爺様の灰色の老木のような手がにゅっと伸び、僕の目の前に何かを持ってくる。

お年玉。

と書かれた何かを渡してくる

「あ!今年のか!」

僕は毎年、お年玉をくれずにキャベツの玉を食べているお爺様からではなく

妹の桜からお年玉を貰っていた。

僕が大好きなリザードンの絵が書かれたお年玉袋はパンパンに膨れあがっている。

まるで普段、僕の玉をパンパンに膨れあがらせてきてパンパンさせてきた代わり、というように


「お、16万」

相変わらず、結構な大金をくれる。

しかも一年ごとに1万円ずつ増えていくのだ。

桜が機嫌の良い時にそのことについて聞いてみた。

「僕の年齢にあわせて金額あげてるんだろ?」





しかし


「いえ――――1年分の兄さんのレンタル延滞料金です」

と返されたのは、去年。


その言葉にビビリながら「無駄遣いしないでくださいね」という言葉に

ぶんぶん首を振ったのは勿論だ。


去年のお年玉は無駄遣いせず部活で使う弓道の道具を買うのに全部使った。


学校で自慢するために。


護身用の道具にするため神社で祈願もしてもらった。

勿論、役にたったことはない。


神様なんて大嫌いだ。







「今年――なんに使おうかなぁ」

と僕は夢を膨らました。


と、お年玉の袋をみていると


袋の裏に


オトシマエはつけさせてもらいます。

と書かれていた。


うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あ桜だああああああああああああああああああああ!?










あとがき


桜さんは結構お金に糸目をつけません

毎日風俗通いするよりも安い、安い、としんじくんに申請されたら
結構な額のお小遣いを上げてます。




人造蟲人間お爺様










[31354] 6話 ハイパーSAKURAさんタイム 中
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/03 21:31
「桜、今現在、何処に向かっているのですか?」

二人はどんどん人気の無い方へ方へと歩いていく。
そしてバゼット・フラガ・マクレミッツは気づいた。
自分の手を引っ張る少女がまるで案内しているのではなく、何かを探すように歩いているのを。

「ああ、別に探す必要はないんですよ」

「何故?」


「今、あちらさんを呼んでますから、折角、良い餌が二つもあるんですから。これを使わない手は無いですよ」


撒き餌もばら撒きましたし。

と目の前の少女はまるで当たり前のことの様に事も無げになく、取り止めもなく、そう、言う。

そして酷薄な笑顔を浮かべる。


無際限に冷然に、無際限に冷淡に、意図もなく、考慮もなく、凄惨に、哂う。

今更、思うのだが本当に何者なのだろうか?

齢15と言うのはそもそも本当なのだろうか?

100人は死にますよ、と言った時のあの憐憫もなく正義もなく、ただニュースを伝えるキャスターのように確固不動に無機質ながらも
妖しく厭らしく、笑ったあの顔は恐ろしかった。

その姿は人としてどこか壊れている。

どこか外れている。

同情や嫌悪などの負の感情を捨て去り、ただ外れた道を歩く少女。

全てを哂いながら、ただ全てを観察するような眼。


その性は恐ろしい、しかし恐ろしいほど有能。

此方を恐怖に満ちさせておきながらも、非常に美しく魅惑的。

少女は魔術師というよりも魔女だ。


今もなお、この少女に対して若干の畏怖を抱かずには居られない。

その繋がれた少女の手の手袋の下には獣の爪があるのではないか、と思わずには居られない


「つまり?」

「はい、そろそろ戦う準備をしていてください、そろそろ貴女がこれから戦う場所を決めますから」

なんだか、暗黒地獄に引っ張られるような気分になってきた。

少女が幾手もの怪異の集合体のように思えてきた。

「………貴女に最初から捜査協力ではなく―――解決を依頼しておけば良かったかもしれませんね」

恐ろしいほど純粋な感想を述べる。

「そうかもしれません」

「でも」

「私って弱いですから」









6話 ハイパー桜さんタイム 中



「此処は?」

夜道を歩いて二人が辿り着いたのは

「学校のグラウンドかなにかですか?」

砂埃が立ちそうな乾いた大地だった。

その眼の前には大きな建物がある。


「そう、みたいですね。うん、此処がベストかな、此処のような平地であれば闇に紛れて襲われてもその前に気付くでしょうし。
ふむ、ちゃんと人の手が加えられているから、地脈、霊脈を使った隠遁甲を防げますね。
それに方角もよし、天地干の関係に基づく吉凶象意である尅応として戦うのにはばっちりですね。
時間的に陰気の比重が多いので、不利なままですが、これで正面切ってに堂々と死力を尽くして、ね。」

ここまでが私の仕事ですかね、と。

「最後に一つ言っておきますよ、バゼット・フラガ・マクレミッツさん」

「なんですか?」

「決して油断はしないように、最初に貴女が説明していた概念に日本という国は、須くその性質を最大限に引き出しています。
荒魂としての怪異。和魂として日本の神様にもなった【大百足】という日本古来の【妖怪】、【八百万の神】という存在として力を得て
このまま時間が過ぎれば大災害を引き起こす怪物と成り続けるでしょう。故に、切り札は最初から利用したほうがよろしいですよ?」

そして

「貴女がもしあれを単独で撃破できれば、そうですね、大昔だったら英雄として語り継がれることになるぐらいの偉業になりますよ」

怖くなってきました?

やっぱり逃げますか?

と、少女は言う。
  
だが、バゼット・フラガ・マクレミッツは

「それは、悪くない」

と苦笑した。

「戦士として英雄になれるのだとしたら、挑むのも、また一興」

「ふふ、言いますね」

「敗れたらあとはよろしくお願いします、貴女のことです、何か手はあるのでしょう?」

「いやぁ、実はもうないんですよねぇ」

と少女は実に人間らしい15歳の美しい少女の困り顔で言い返す。

龍神や蛇神が退治できない神様なんて私には倒せません、と少女は笑う。

「なら、やるしかないじゃないですか」

「やるしかないんですよ?それもこれも貴女の所為ですよ?2日前ならまだなんとかなったんですからね」

「……私の所為?」

「はい、あなたが大ボケしなければ、私の仕事も早まったんですし、被害も20人程度で収まったんですからね?」

バゼット・フラガ・マクレミッツ、事実を伝えられ、後悔の念に捕らえられた。

「いや、そこ落ち込むところじゃないですよ、むしろ―――怒ってください」

「え?」

「気付かないのは罪ですけれども、あなたは気付きました、では、どうします?」

「どうする?」

「人として人の死を嘆くよりも、まず、人として奮起してください、私が間に合わないせいで亡くなった方たちの為に仇を取る、と
死んだ方たちは尚、怪異によって囚われています、そして眷属として隷属させられ、犠牲者を多く増やす要因にもなっています」


「後悔する、という言葉は後になって嘆く、というのが日本の言葉の意味です。
貴女は今はそんなこと気にして戦う暇なんてないですよ?
それよりもさっさと全力だせるようにしておいてください」
 
「了解」

そしてバゼット・フラガ・マクレミッツはまたもや苦笑。

「貴女がまるで依頼人みたいですね」

「何言ってるんです?私が依頼人だったら、そもそも盗まれる前に犯人は死んでいますよ?」

「今年から、協会の執行者やめて、貴女の執行者になった方がいいかもしれませんね」

この戦いが終わったら、そうするべきでしょうか、とバゼット・フラガ・マクレミッツは冗談を言う。

「それ、プロポーズですか?」

「え?」

「というか、貴女、今、凄い死亡フラグ、全力で立ててますよ?」

「死亡フラグって?」

「映画とかでよくあるじゃないですか?「この戦争が終わったら、俺、結婚するんだ」とかいって直ぐ死んじゃう人」

「ああ―――ははっ」

バゼット・フラガ・マクレミッツは何が面白いのか、声をあげて笑う。

お腹が痛いほど壷に嵌ったのか、笑いを止めない。

笑うバゼット・フラガ・マクレミッツを楽しそうに少女は見て


「じゃあ、私が貴女に生存フラグ立ててあげます」

と、言って少女は手を繋いでいたバゼット・フラガ・マクレミッツを引き寄せ、顔を近づける。

キスだ。


「な、なにを…っ!?」

「私がちゃんとみててあげるから、勝って下さい」

確かこんな生存フラグどっかの漫画であった気がします。
それに目の前に愛した人がいれば、負けない、とかそういうフラグも立ちます。

と、美しい微笑みを湛える少女にバゼット・フラガ・マクレミッツは

「なるほど、一つ勉強になりました」

「ん?」

と、嬉しそうにしている少女にこういう。

「あなたは少女というよりも美少女、というやつなのですね」

「………」

美少女である間桐桜は恥ずかしそうに赤面した。


「もう、からかうのをやめてください、本当に―――好きになりそうですから」


「ところで名前が桜というのは教えて貰いましたが、家名はなんと言うのですか?」

「時間です―――そろそろ来ます」
 
「……っ!」

二人が立つ乾いた大地に突然、常人では立つことが出来ずにそのまま息を引き取るような

瘴気が充満する。

バゼット・フラガ・マクレミッツと桜はお互いの手を離し、身構える。

「ところで私に勝算は?」

「何を言うんですか、勝てるとか勝てないとか負けるとか負けないとか、そういうのはもう終わってます」

「なるほど」

と言いながらバゼット・フラガ・マクレミッツは周囲に自らの切り札である、黒いボウリングの玉のようなものを背に背負っていたバッグから取り出し
自分の周囲の中空に浮かべる。

「それが貴女の切り札―――逃げなかったのはそれがあるからですか?」

「いいえ、逃げないのは私が強いからです」

「なるほど」

「では貴女は離れてください、そして援護はいりません、私の専門はルーンの刻印魔術による、近接戦闘なので」

「そうですね、私そういう魔術使えませんし」

といって少女はテクテクと瘴気が向かってくる方向の反対に歩いていく。

その姿に眼をやらずにバゼット・フラガ・マクレミッツは自らの最強の一撃をいつでも放てるように構える。

相手の一撃必殺が来る前に後から先に一撃で葬るために。

自ら最強の切り札を起動直前にし、右手を拳にして待つ。

そして瘴気の大本が姿を現した。


大百足

その名に羞じない、まるで山のような巨大な百足の怪異が現れる。

赤黒いその体色は人の血で染まったように毒々しい。

そして多くの人々を食らっただけ、禍々しい。

それでも尚、音も立てず静かにバゼット・フラガ・マクレミッツを食らうためにゆったりと這うように迫ってくる。



その周りには幾多の死者の魂を変質させ、大百足の眷属として50体の本体よりも小さな百足が取り巻いている。


狙うのは大本。


「アンサラー」

そして大百足が顎を上げ。

雪崩のように自分の餌に口を開いて迫る。




そして




バゼット・フラガ・マクレミッツは


「フラガラック(斬り抉る戦神の剣)!!」


生涯最強の一撃必殺を狙う。




















続く。









あとがき


桜さんの暗黒成分0でお送りしました。


魔女の本気、は次回に先送りですいません。


まずはダメットさんのダメットじゃないところを先に書きたかったんです。

でもなんか存在自体死亡フラグですよね。

普段駄目なヤツが自分の得意分野でとたんに格好つけるとか。



[31354] 6話 ハイパーSAKURAさんタイム 下 
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/03 21:36
「いやあ、本当にいるもんなんですねー。バトル漫画の様な人」

てゆうか、本当に人間なんですか?

実は人の皮を被ったターミネーターか何かじゃないですか?

洪水を人力のみで止めるようなものですよ?

つうか、神様と一歩も引かずに戦えるとか可笑しいでしょう?



と、200メートル先で繰り広げられている戦闘を見て純粋に驚愕する。


あれは

題名をつけるのなら、【神話の英雄と神話の怪物の戦い】だ。

最初からお互いの必殺の交差から始まった戦闘。

それは最早、間桐桜には理解できないものであった。


一応、魔力の肉体強化で動体視力を上げて観戦しているが

頭がついてこない。


そもそも、実はバゼット・フラガ・マクレミッツに勝算無し、と言われたら、尻尾巻くって逃げていたところなのだ。

そして、日本にある退魔組織に速やかに連絡していた。


大百足のアヤカシ。


アレは間桐桜の手に負えるものじゃない。

あの百足の俊敏さ頑丈さ生命力の強さは常軌を逸している。

蟷螂は人のサイズだと地上最強の生物になる、と、どこかの格闘漫画は言っていた。

アレはそれだ。


その超、大百足版。



もし間桐桜がアレの目の前に立ったものなら、瞬きをする前に殺されてしまう。

元々、間桐桜の本領は裏方で手薬煉を引いての陰謀戦。

もし魔術師と戦うのならば、魔術師が魔術回路を起動する前に毒でも飲ませて
人間が魔術師の機能を発揮する前に殺す、というのが間桐桜の対人戦闘方法だ。

ある程度戦闘が出来る、高位の魔術師ならばマキリの蟲達など只の害虫にしか過ぎない。

キンチョールを吹きかけるような気軽さで蟲たちは死に至る。

ようは普通の人が殺虫剤を持ち出す前に毒で殺す、ということ。

虫に気付かない時に刺されることは多いが。

刺すよ?刺すよ?と、ぶんぶん飛んできたらそれなりに対応は取れる。




蚊取り線香でも置いとけば良いのである。

だからこそ、凛おねえちゃんを荒事専門の魔術師としてパシッてるのだ。

五大元素使いっていいよね、どんなポケモン来ても弱点つけるとか。


まぁ、戦闘力はバゼット・フラガ・マクレミッツと比べれば

全属性パンチを覚えたエビワラー(Lv16)


程度なのだが。










「いやぁ、虫トレーナー勝負してたら100パー負けてましたよ」


こっちがストライク(Lv16)ならあっちはカイロス(Lv350)ぐらいの差がある。

と、私は思った。

そして前言撤回。


私のほうが短パン小僧(キャタピーLv3)でした。


一応持ってきてた、鞄に収納していた持ち運び用の蟲倉(お爺様3号機)じゃ絶対勝てなかった。

私の片手にぶら下がる旅行鞄の中で「みしょみしょ」と言って、怖がっている。

中身は王蟲ちゃん(戦闘用)なのだが、アレに比べればワラジ虫みたいなものだろう。

これでもサシバエちゃん(大群)の

どくどく

よりも対人戦闘では致死性は低いが


王蟲ちゃん(単体)の

とっしん


は中々強力だ。


軽自動車ぐらいなら穴を開けて突き抜けるぐらいは出来る筈なのだが。


いかんせん、ノーマルタイプなので微妙。


目の前で


ばぜっと・ふらが・まくれみっつ(えいゆう)

得意技

はかいこうせん(属性 宝具)


をくりだしている彼女にとっては鎧袖一触であろう。






ちなみに百足の好物は草鞋虫なのである。

昔、童話であったものだ。

百足の草鞋にワラジムシと。


本当に撒き餌にしかならなかったようですね。

一応ある程度、弱らせようと、ちょこちょこ攻撃させながらアレを呼び寄せたのだが、HP1も減らせなかった。

と、私は溜息をつく

「それにしても、バゼット・フラガ・マクレミッツさん――――貴女は本当に美しく強い」


彼女は戦っていた。

美しく、気高く、誇り高く、あれほどの怪物と正面切って威風堂々と。

卑怯な魔術師としてでは無く正々堂々とした戦士として。

彼女がもし、男であったのであれば、彼女の子供が欲しいところだ。

絶対に大切に育てて、小さな頃から「お父さんは英雄なのよー」と言い聞かせファザコン娘に仕立て上げるくらい。








私は所詮、精々、周囲をかき乱すことしか出来ない道化。

何もなしでのガチンコ勝負をしたら小学生にも負けるぐらい、弱いのだ。

醜く弱い。

目の前で死闘を行なっている主役にはなれない。

いや、道化役にさえ、なれない。

出来る配役は精々、幕を引く黒子ぐらいか。

「しかし、それでも荒魂の神性を得てしまったアレには中々苦戦するようですね」

宝具での攻撃は強力だが、穴を開けても破壊は出来ていない。

あの大百足は面制圧でないと倒せない。

必殺の攻撃をしても、アレは体全体含めて攻撃しないと再生されてしまう。


切り札がデイジーカッター爆弾くらいの広範囲攻撃であれば一撃で葬ることも出来たのであろうが。



流石にそこまで出来たら

題名を「神と怪物の宵闇の戦い」とかに変更しないといけない。


早々と切り札に諦めをつけ、彼女はルーンの炎などを駆使して戦っているが、いかんせん火力が低い。

50体の雑魚達は焼き払えるようだが、大本には大した効果がない。


このままではジリ貧だ。

人間には限界がある。

段々とバゼット・フラガ・マクレミッツの動きが精彩を欠いて来始めた。

切り札を使った消耗が現れてきている。

このままだと、矢がつき剣折れ、明日の朝日は見れないだろう。


ならば?


私はどうする?


決まっている。




「黒子らしく幕を引いてあげましょう」

好きになった人が目の前で戦ってるのに逃げるなんて阿婆擦れもいいところ。

私は魔女。

魔女とは昔から英雄に力を貸すと決まっているもの。

英雄の矢がつき、剣が折れたのならば。















新しい矢と剣を用意しよう。


往こう。

私は歩き出した。


「なに―――私にも切り札が無い訳じゃない」

さっきのは嘘でした、と

マキリサクラが旅行鞄をポン、と叩くと

旅行鞄に描かれていたリボンのマークが

ポウ、と光を帯びる。


「先ほど逃げる時、反復横跳びしながら歩いた甲斐があった………やっと起動しましたね。それに運良く空が晴れて月明かりが見えてきました。
うん、弦月には三日ほど足りませんが、そこはなんとかしましょう、とりあえず戦闘区域は南にして良かった」


月の光がマキリサクラを照らす。


「ありがとうございます三号ちゃん、貴女の犠牲は忘れません」


そして


「ようやくこれで改造終了です」







見せてやろう

私が憧れて止まない魔女らしい戦い方を

















6話 ハイパーSAKURAさんタイム 下


「……ちぃっ!限が無い!」

相手は実体を取っているが半分は既に神性として高次な概念として姿を変えていた。

概念的な存在を打ち破るにはそれを超える神秘でなければ打ち崩せない。

フラガラックでの攻撃は有効だが

攻撃範囲が狭い。

穴を開けても直ぐに再生されてしまい意味が無く、足止め程度にしかならない。

全身を強化し、人類の肉体性能を超える駆動を行い大百足の攻撃を避けながら

自分がもう、持たないことに気付きはじめていた。

「せめて中身の大本の場所が分かれば…っ!」

だが諦めていない。


バゼット・フラガ・マクレミッツは炎や雷のルーンで牽制をやめずに勝利を探そうとしていた。

狙いはフラガラック(斬り抉る戦神の剣)での「百足の怪物の遺物」の破壊だ。

それしか方法がないのは最初の一合で直ぐに解っていた。

しかし

「でかすぎる……何処にあるのかが分からない」

こちらも好きなほど切り札を切れるほど、人間をやめてはいない。

どうするべきか、一旦逃げるべきか

退くべきか悩んでいると


「くっ!?」


力の消耗で防いでいた瘴気に耐えられなくなり、体が思うように動かなくなってきた。

「アンスズ!!」

取り合えず、炎のルーンによる魔術を全力で行い、相手と間合いを取り、自分の進退を決める。


炎は1分ほど全力で燃やし続けることにして相手の動きを遮る。


とりあえず未だに安全地帯にいる。


とは、言えない少女の手を引いて逃げる、と決めることにする。

あれだけ大口叩いたわりに情けないが、仕方が無い

命を賭けてもアレは倒せない。



などと、バゼット・フラガ・マクレミッツは考える。





すると


「結構苦戦してますね………加勢しますか?」

「何故っ!?……来たんですか!」


横に妖しく厭らしい微笑を湛えた少女が立っていた。

「何故って……ほら、苦戦をしているようなので加勢に?」

「何を考えているんですか!?最早アレ私には勝つ手段はなく、倒せない!苦戦どころではない、敗戦です!」

「そうですか」

「私の魔術が持つ内に貴女だけでも逃げてくださいっ!貴女は私よりも若く才気があり、これから先に未来があります!」


そうバゼット・フラガ・マクレミッツは少女の愚行を窘めず、逃げるように言う。


すると


少女は

「これから先の未来ですって?ははっ―――はははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははっ!」


狂ったように笑う、哂う、嘲笑う。


そして




「―――バゼットさん、私のこれから先に未来があるっていいました?」


「いいえ、私のこれから先に、私の未来なんてものはありませんよ?」










「だってもう既に―――11年前のあの日から――既に私の未来は私の手の中にあるのだから」



「そして、これから先も私の手の中から未来が零れることは無いでしょう」


「これからも、これから先も――――私は、私の未来と共に在り続けるでしょう」


「だから、ねぇ、虫けらさん。私の邪魔ですよ?
私の未来がそこを通るんですよ?……。
だから――――――此処で死ね」


そう、言って。

少女は微笑み哂う。


「さて、ちょろっと本気を出しましょう、気張りましょう」


未だに燃え続ける大百足にマキリサクラは手を伸ばし口を開く。


「そして―――閉幕しましょう!黒子として!」


そして唱える。



『―――脆き者―――汝の名は女なりけるや?』


マキリサクラの腕から宵闇よりも深い影が


『――然り』

溢れ出す


『しかし我は全てを嘲笑い』

そして体を巡るように


『全てを喜びながら』


まるで繭のように

『虚ろな願いを願い続ける者』

マキリサクラを包む


『そして』

そして




『我は』







『その―――虚ろな願いを掴み取る』


彼女の黒衣となる。


それはマキリサクラの架空元素使いとしての魔術の起動ワードだった。

自らの架空元素・虚数の魔術による防護衣である。

彼女が使用できる唯一の彼女個人のみの戦闘用魔術。

その名も虚数術衣。

自らの負の想念にエーテルを持ってカタチを与えた術衣である。


『捕食せよ』

術衣の影が伸びだし、炎で怯んでいた、大百足を捕まえる。


バゼット・フラガ・マクレミッツとの戦闘で少なからず疲弊していた大百足を拘束する。

でも、これは下準備、肉は縊る前に押さえつけなきゃいけない。

「やっぱりきついですね、だから嫌いなんですよ、荒事は……胸が恐怖でワクワクします」


マキリサクラは妖しく厭らしく、笑う。

そして、こう、言う。


『起動』


突き出した手の反対にぶら下がっていた旅行鞄が光る。

そして、突然、∞マークの旅行鞄が割れる。

割れた瞬間に圧倒的な魔力が噴き出す。

まるで光の帯のごとく。

「折角、大金掛けて作った限定的な機関でやっとこの力かぁ、夢は遠いなぁ」

一本の矢が割れた鞄の中から飛び出す。

そして、ありったけの魔力を矢に集結させていく。

光の帯を矢は吸収していく。

「兄さんの無駄遣いも―――たまには役に立ちますね」

それは兄からくすねた物。

兄が去年買った、部活動の弓道で使う矢だった。



「わざわざ宇佐八幡宮の祈願なんて―――流石兄さん、馬鹿ですね」

と言いつつ、それを片手に持ち、ゆっくりと舐める

魔力を込めながら唾液を塗っていく。

妖怪大百足は一般的に人の唾が有効とされるが、しょせん唾は唾。

霊的加護がなければ、でんぷんを溶かすのが精々。


「巫女というには穢れすぎていますが……まぁこういうのは気持ちですからね」

概念ってのはそういうモノと、笑う。


マキリサクラの唾液に濡れ、手に持った矢は光を益して。

「では完成せよ!誉田別命の矢よ!」

一つの概念が産まれる。




「弓矢の冥加の概念付与武装」


『八幡の矢』




溢れる神聖な力に目を剥くバゼット・フラガ・マクレミッツ。

少女が突然戦線に飛び出し、助力を始めた時も大変驚いた。

まさか彼女が希少な架空元素・虚数の使い手だったとは、と。

しかし、その驚きも目の前でカタチ創られた莫大な量のエーテルに包まれたその矢に驚愕していた。

これはまるで

「そ、それはっ―――宝具なのですかっ!?」


「いえ、宝具の贋物の贋物もいいところでしょう、射幸の神楽を兎歩で代演、魔力に物を言わして無理矢理作っただけです。
ま、代行者達がよく使う一種の概念武装だと思っていただければ」

「それならば」

「ええ、目の前の百足ちゃんぐらいの怪物しか殺せませんが、効果は抜群です」

はい、とその矢をバゼット・フラガ・マクレミッツに手渡す

「矢があるのだけれど、弓は作れませんでした、今日が弓張月であれば作成できたかもしれませんでしたが」


弓はないのですが、大丈夫ですか?




バゼット・フラガ・マクレミッツにマキリサクラは問う。




「いえ――十分です」

これならば、倒せる。

と、確信に至ったバゼット・フラガ・マクレミッツは

まるで、弦のようにしなやかに―――。

矢を持った手で、投擲の用意をする。

「あと投げる時にこう言って、ください」

マキリは言う。

「なんと、言えば?」





「『南無八幡』と」

「分かりました」

大百足は暴れ狂い、マキリサクラの影の拘束を逃れる。

「くっ……!お願いします!」

自分の想念を破壊され、マキリサクラはフィードバックを受け、苦痛に顔を歪める。

剥き出しにした自分の影をビリビリと破かれているのだ。

本人には多大な負担がかかる。



バゼット・フラガ・マクレミッツはそれでも彼女に目を向けず、投擲の姿勢をやめない。



少女の助力を無駄にしない為に。



では、と全身をリラックスさせ、最大限の投擲を引き出せるようにしたバゼット・フラガ・マクレミッツは


投擲を開始する。






バゼット・フラガ・マクレミッツが矢を投擲する瞬間に。




『南無八幡』


と、唱えた。


すると


概念武装が起動し


バゼット・フラガ・マクレミッツという弓で投擲された矢は清浄な光を纏い発射される。

「いっけえええ!!」















光が奔った。


かつて大百足を討伐した藤原秀郷は唾を塗り、八幡神に祈念して射った矢で大百足を撃退した。


ならば



八幡の総本山宇佐八幡宮の祈願を受けた矢でマキリサクラが作った概念武装は

その神話を再現する。

名づけるならば「宝具 八幡祈念矢」


それは

大百足の目を貫き、神秘の力で大百足を食らう。

大百足の形を取っていたエーテルが強引にバラバラにされ、崩れていく。

暴力的なまでの焚殺。

強引に百足の瘴気さえも、かき消され


そして


カタチを失った大百足は大百足としての存在格を失い。

原型を見せる。





「やったか!?」

と、バゼット・フラガ・マクレミッツが吼える。












それは「やってない」フラグが立ちます。


と、思いながら、苦笑しつつ。

「本体みっけ」

それをすかさず逃さず、マキリサクラは影を使い、捕まえる。

そして


『強化』


した手で掴みとり。


小さなキーホルダーのような


それを












「はい、これでお仕舞いです」






「さようなら」

握り潰した。














次回


後片付けの回。

桜さんの被害総額1億円の回








あとがき



魔女の本気終了。

ハイパーSAKURAさんタイムはこれにて終了。


普段、金に糸目をつけない桜さんは
ハイパーSAKURAさんモードになると時間と金を湯水のように焼却炉に放り込んでしまいます。



そして


ハイパーSAKURAさんモードの「必殺!ブロッサム・フィンガー!」の回でした。

桜さんは出かける前に「百足――?なら、いちおうこれをもっていこう」的な生存フラグを立てていました。

桜さんの切り札は500年のジジイの薀蓄です。




あと数話で聖杯戦争編に突入となります。

次回もお楽しみにしてくれれば幸いです。

仕事の関係で更新スピードも落ちると思いますが 

よろしくお願いします。



[31354] 閑話3 あとかたづけ 桜さんの日記
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/04 11:20
あとかたづけ 桜さんの日記


あの学校のグラウンドで明日あたり、死体が沢山見つかる、というニュースが入るかもしれない。

とりあえず群馬と言えば草津温泉なので、飛び入りでなんとか泊まろうと思いきや
大規模な温泉開拓により最後の独自の源泉のアルカリ性の白濁の温泉は老神温泉がオススメらしいのでバゼットさん
と一緒にそっちの方に泊まりに行った。

すると

「水着はないのですか?」

などと、流石、外人。


「スパと温泉旅館を一緒にしないでくださいね?」

と、取りあえず出来るだけの殺意を籠めて睨んでおくと素直に裸で入浴してくれた。

なんというか無駄がない肉体だった。

若干、此方をちらちら見てくるのが気になったが、取りあえず疲れが溜まっていたので純粋に温泉を楽しむことにする。

強引に迫れば、体の左胸に小石サイズの穴が開けられるかもしれないので。

依頼料の追加は私との三泊四日の観光旅行です、と言った時のバゼットさんの顔が面白かったのでカメラで取っておく。

富士カラーのインスタントカメラがいつのまにか粉々になっていた。

恐るべし、執行者。

ていうか旅館の客室の襖の開け閉めで襖を大破させるってどんだけ、ゴリラなのか。

最初、押すドアと勘違したのか知らないが即行に障子に穴開けてるし。

木枠ごと穴が開くとか意味分からん。

魔力強化なしでそれって、本当に人なのかどうか、不安になったりした。

旅館のお土産コーナーで、概念武装として使い、少し壊れてしまった矢の変わりに竹刀が有ったので兄にお土産として買っておく。

5千円というお手ごろだったので丁度よかった。

なんで竹刀があるのか、と聞けば竹刀剣術の開祖でもある剣聖上泉伊勢守の故郷なので取りあえず置いてある、とのこと。

しかも上泉伊勢守はあの藤原秀郷の子孫らしいので驚いた。

なんという因果なのだろうか?

まるで世界のちょっとした不思議に足を踏み入れた気がする。

奇跡のように強力な概念武装の誕生はもしかしたらなにかしらの因縁があるのかもしれない。

そもそも、私は今回の依頼には適当な道具をかき集めて来ただけであったのだ。

まぁ、私の研究の一つである永久機関の贋物が大破してしまったが。
あそこまで小型の贋物を造るのにどんだけ金と時間が掛かったのかはわからない。

ま、数少ない現存する宝具の発動の拝見とはじめての概念武装の作成が出来たので、よしとしておこう。

ご当地キティちゃん一体を犠牲に私の新しい携帯ストラップも完成したことだし。

それに百足の中から薀蓄たっぷりな脳みそもこっそり手に入ったし。

取りあえず生き残った王蟲ちゃんに食わせ、帰ったらお味噌汁にして飲もう、と、うきうきした。





しかし、もう一つ興味深いことがある。


そもそもあんな、お遊びのブログに偶然辿り着き、今回の依頼をバゼットさんが私に頼んだのも全て
群馬を守るために「何か」が、私という存在を引き寄せたのかもしれない、とも考えさせられた。


齢100も経ていない私にはわからないが、大変面白い。

何れ、その因果律の観測さえも成し遂げよう、とやる気が俄然増した。

取りあえず、バゼットさんの「謎の世界グンマー・ケン」説は強ち嘘ではないのかもしれない、と結論をつけた。


そんな私を傍目に私の分の焼き饅頭を根こそぎ食べてしまったバゼットさんに文句を言っておこうと思っていたら
高カロリーで良い、とか言いながらバゼットさんが温泉の水割りをがぶがぶ飲みながら焼き饅頭をポイポイと胃袋に詰め込んでいくので
高塩分と高血糖で死なないかな、と思いながら放置しておくことにした。

ほぼ一日中魔術を使い続けさせられた私に何か言うことはないのか、と思ったが

とりあえず、明日行く吹割の滝でバゼットさんに「あれって遊泳OKですよ」とか言って東洋のナイアガラに叩き落そう、と考えた。


「日本の旅館に泊まれば最初に枕投げをするのが作法」とか、また間違った日本の知識で旅館の客室の壁をぶち抜き、私に隠蔽させた仕返しとして。

枕が私の顔を掠った時から耳の調子が悪くなったのも含めて。

少し遅い夕飯も食べ、腹が一杯になるとバゼットさんは睡眠を開始した。

散々旅館の物を壊して満足したかのように。

ガチでこいつ………駄目人間だ、と感想を抱いた。


でも、あわあわと慌てて、どんどん災害を引き起こしていく姿が面白いので許した。



目に見えるほど元気凛々と顔を変えたアンパンマンのように体力と魔力を回復させて行くバゼットさんに、本当に人間なのかなぁ、でもいいなぁ、体丈夫で、と思う。

人を殴ってナンボの仕事をしているだけ、ある。


しかし、清浄な力を持つ概念武装なんて物を作ったせいか、せっかく獲物が目の前に寝て居るのに、淫らな気持ちにならないことに腹を立てて不貞寝する。

どうやら「何か」がお礼として私のタバコ山盛りの灰皿の水並に溜まっていた穢れを禊払いしてくれたようだ。

しかも、この邪悪な私に少しだけ神性が宿ったのだ。

私の体に出所不明の清浄な気が流れてくるのだ。

多分、名づけるならば大百足退治の八幡祈念矢の巫女としての加護とかそういう感じ。


ちっ



余計な事を。


そういうのは大学生の可愛い巫女さんアルバイトに上げてくれ、と思いながら目を閉じる。



その晩、夢をみた。


ヘビとタツノオトシゴのデフォルメキャラクターにお礼を言われる、という


夢を見たかもしれない。


そして一言、あんまり淫乱なのはいけませんよ、と説教を一つ言われた。





本当に余計だ。



1月5日



朝になり目を覚ますと

蛇と龍の神様の癖に蛇足という言葉をしらないのかと、思いながら朝風呂に入る。

朝風呂からでるとバゼットさんが朝のバイキングで山盛り食べているのにゲンナリした。

料理の皿ごと持ってくるので取りあえず、叱っておく。


どんだけ周囲に迷惑を掛ければ気が済むのか。




とりあえず、吹割の滝で絶対バゼットさんを叩き落とすことにする。

あそこは竜宮伝説があるので丁度良い。

バゼットさんに期待しよう。

とりあえず滝壺にでも投げ込めば、神様達も迷惑がるだろう、と玉子焼きに舌鼓を打ちながら一人、哂った。




昼ごろ



バゼットさんが旅館のお風呂に入りに戻るらしいので一人観光。



目的の蚕を手に入れる。

そもそも今回の旅行の目的はこの為だったのに、どういうことでしょう、と一人嘆く。

姉のお土産に絹の下着上下セットを購入しておく。

やっぱりムラムラしない。


いつもだったら上下セットと中身も一緒にペロリ、とか考えるのに。

純粋に姉にいい物を着せてあげよう、と思い買ってしまった。


バゼットさんを滝壺に本当に突き落としてから
体に流れる出所不明の清浄な気が増してきた。

体に精気が充実する。


これならば、これから人から精気を絞り取る必要もないだろう。

ムラムラしない。






















嫌がらせか。







取りあえず冬木に帰ったら、蛇の天敵となる毒蜘蛛を繁殖させて冬木全域に解き放ってやろう、と決めた。



その後


人間国宝大隅俊平遺作展なるものがあるらしいので行ってみる。

自分のためのお土産として上野国新田住大隅俊平作の刀を購入。

日本の退魔関係の組織の末席の人がキュレイターとして働いていたので八幡祈念矢の残った部品と物々交換での購入。

残していてもしょうがない、というよりもこんな呪いのアイテムはさっさと捨てたかったのでキュレイターさんに渡すと

「ど、どこで…っこれを!?」

等と驚かれ、これとこれ、ちょーだい。それと交換するから、といったら直ぐに名刀を4本くれた。

中にはこっそりと来国俊の古刀が混じっていたのにこちらも驚いたが。

貴方達が遅いせいで、と思ったが、まぁ余計な面倒は増やしたくないので何か聞かれる前に退散する。


次に作る概念武装に丁度良い、とホカホカ気分で旅館に帰ることにする。

竹刀袋にたっぷりと詰まった刀は大変重かった。

20キロは流石に重い。

途中で来国俊の古刀を除いた大した歴史が無い刀は全部、王蟲ちゃんに食べさせた。

王蟲ちゃんの甲皮がとても固くなった。

王蟲ちゃんが概念武装蟲に進化した。

今度からこの子を繁殖用にしようと、決めた。





旅館に帰るとバゼットさんが落ち込んでいたので、慰める。


またなんかやらかしていたようだ。


色々後片付けをしてあげると助手としてスカウトされる。

後片付けしてる時も災害を引き起こすのでイタチゴッコに近い後片付けだったが。


戦闘の助手じゃなくて、日常生活の助手としてスカウトってどうなんだろう?

危ないところには連れて行きませんからと、言われ、思わず爆笑しそうになった。




ふむ


悪くないのかもしれない。

大分読み物も冬木から無くなってしまったし、秋口ぐらいから用意すれば


あの一大イベントの



聖杯戦争も間に合うだろう。


60年周期が早まっていたのはジジイの脳みそから聞いていたし。


既に大体の準備も終えた。


聖杯に叶える願いなどあるわけがない。
しかもあんな汚れたやつ。


でも聖杯自体が欲しいので参加することにする。

荒事は苦手なので、掠め取る気持ちで裏方に徹しよう。




元々、高校も態々サボるために姉の居ない隣町の高校に通うことに決めていた。

だって魔術でサボったら絶対怒られそうだし。


面白そうな日常があるような気がするが、兄さんに蟲をつけておいて鑑賞すれば、良い。

目の前の面白い人の傍にいた方が絶対面白いことの連発が待ち受けている気がする。




それに海外留学も悪くない。


いい加減、冬木で蟲や男や女で遊ぶのも飽きてきたころだ。

というか限界が来ている。

埃かぶったジジイの知識では完成しない物もある。


思考を切り替え、外の世界を知るのもいいだろう。

それに、ジジイの知識は大変不味かった。

美味い薀蓄を探すのもいいだろう。






















例えば時計塔の封印指定された脳髄とか。





は流石に無理だろうが



これからは魔術師の精気を絞るのもいい手だ。

体に流れる出所不明の清浄な気も日本から離れれば、多分大丈夫だろう。



わくわくしてきた。


ああ、もっと知りたい、見たい、聞きたい、という好奇心が溢れ始める。


この誘惑には抗えない。



「で、私の助手になってくれますか?」

いや、握られた手が痛いんですけど。

断ったら砕く気か。


でもいいでしょう。


こういうのも悪くない。


なにせ英雄が傍にいるのだ。

私に身に危険は起きないだろう。


では、どうする?


勿論


「いいですよ」

と、快く引き受ける。

ま、2月までは日本に居ましょうかね、と決める。



取りあえず兄さんにお礼を言っておこう。


ムラムラしないので純粋に。








痛い。


砕ける。



コアラか。















あとがき


桜さん海外に飛び出るの巻。


すげぇ超展開、と思われるでしょうが、桜さんは一皮剥けないと駄目だ、と思ってたので

桜さんをパワーアップの旅に出させようと決めてました。


だってほら、ご老体も海外ではソフィアちゃんでしたし。




日本の土地神様達「祝ってやる」

と桜さんに目をつけ始めました。

桜さんが周囲をあんまりにも突付きすぎるので
悪いことをしないように見張ろうとしてます。

ご老体の因果律のゆり返しに近いかもしれません。


帰ってすぐに冬木市の蛇達は絶滅するので出所不明の清浄な気が流れるだけですが。












ちょっとした説明


桜さんの旅行鞄 限定的に力を循環させ、増幅させる∞マークの鞄型限定的永久機関。

マキリの水の流動の魔術をカタチにしてみた物。

一種の個人使用の為の令呪ですね。

マキリの令呪運用技術で作られました。

しんじくんの日記で語られた家のリフォームで作られた魔術礼装。

装置の設置だけで数億円掛かってます。



八幡祈念矢



正式名称 


八幡七星祈念矢


射幸の神楽を七星の式に基づく兎歩で代演したのでこれが本当の名称。


ハイパーSAKURAさんタイム以降の矢自体のランクは実は相当低いです。

本体自体には歴史の重みがまるでないので。


精々、虫が近寄りにくくなる、くらい?



桜さんが本気のお遊びで作ったものなので。

桜さんの擬似永久機関のブーストと発射前の祈念祝詞の神楽。

それが上手くグルグル巡って神話再現がなされたのであの威力。


ちゅうかバゼットさんが全力で投擲したから阿呆みたいな威力になったのかもしれません。

あの時ばかりは大百足に対してのみサーヴァントの宝具並の威力となりました。

絶対に大百足は殺すEXランク宝具。


使い勝手が悪すぎます。


だから桜さんもさっさと捨てました。

虫が近寄りにくくなる、という効果は最高に相性が悪すぎるので、今回の話で少し苦労もしてます。

これから先、日本の術者が大切に使ってくれるでしょう。

美少女の唾液つきだし。


ストラップについて

あの遺物は実は百足に対する嫌悪感で起動します。

アレを手に入れるとムカデなどに這いずられる悪夢を見させられます。

そうして嫌悪感を膨らませられ起動。

そして所有者の負の想念を食い続け、所有者を食い殺そうとします。

負の想念が大きいほど巨大化します。

大体所有者の精神エネルギーの元の魂が無くなる頃に元に戻ります。

そこらへんの人の魂だと100人食べるぐらいしか持たないので100人で止まるというアバウトな物。

でも桜さんにそんなのは効かないです、普段もっとドギツいので遊んでる子なので。

所有者としてはぴったりです。

出所不明の清浄な気も流れているし。



ちなみに清浄な気が流れていると桜さんの口調が荒くなります。
機嫌も大荒れなので。



次回


姉妹喧嘩の回




[31354] 7話 レーシック姉妹喧嘩 【第一部終了】
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/05 20:14
番外 ハイパーSAKURAさんタイム使用後の反動




家に帰って、取りあえず味噌汁を飲んでから


「忙しい忙しい忙しい」


取りあえず、最近物凄く忙しい。

気軽に執行者の助手なんて引き受けるんじゃなかった、と後悔しているぐらい忙しい。

冬木市に毒蜘蛛を繁殖させる暇などない。

そもそも、地域密着型の蟲使いをやってる私は自分が今までしてきたことの後片付けで大変忙しいのだ。

放置していたら、不味い物ばかり。


「ああ、もう!めんどくさいったらありゃしない!」

清浄な気が性格上、相性が悪すぎるので、性格が捻じ曲がりそうだ。

「何か」のせいで私は大荒れだ。


「バゼットさんが私をスカウトしたのでさえ、「何か」の陰謀か!?」

私を日本から追い出すためなのかと、さえ疑ってしまうことが多い。

とりあえず今日は養蜂の巣箱の回収で一日中歩き回っていた。
お寺の方々が手伝いを申し出たが、危ないので断り、一人で後片付け。

勿論、蟲蔵で凍結させるためだ。

普段使役のため、自分の精気をたっぷりあげているのだ。

結構維持が大変なのだ。

日本から離れると蟲たちが、一斉に人を襲い始めるかもしれない。

そんなのバレたら姉に神秘秘匿の執行者を呼ばれかねない、もしくは代行者。




「くぅぅぅぅ!?ヤダヤダ!やだぁ!なんで私はあの場で契約した!?」

バゼットさんと、すぐに簡易式のギアスで契約してしまったのだ。

2月には貴女の助手になります、不束ものですがよろしくお願いします、的な。


いや

でも

手が砕けるのは勘弁して欲しかったし。


「ふ、ふふふふふふっ!私はねぇ!誰かに裏で左右されて生きるのが一番嫌いなんだよ!」

自分が思う通りに行かない、と切れる。

そこがまだまだ未熟な所でもある。


普段であれば、「こういうのも、これからの楽しみに比べれば、ちょろい、ちょろい。これはこれで一つの楽しみですよ?」

と妖しい笑いの一つでも浮かべる所であるが。

清浄な気のせいで、最悪な気分な状態が毎日続いているのだ。

今までストレス発散だったエロイ行為も清浄な気でヤル気が起きずにもやもやしている。

目の前に裸の美女がいて、発情して待ち構えているのにヤりたいのに何故か勃たない、とかそういう感じで。


そう


三大欲の中で最も比重を置いている物が奪われたのだ。

わかりますか?

「今から一ヶ月眠るな」って言われたようなものですよ?


「普段温厚な私でも怒るわ!」

絶対に呪ってやる!

「何か」さえも殺せる、いや―――完全消滅させるものを手に入れてやる。


駄目だったら竜神、蛇神の社を全て破壊してやる。

全国の竜神系列の神社に不審物置いていくぞ?

例えば、古い建築物が好きな凶暴な白蟻の巣箱とか。

数年は掛かりそうだが、このテンションなら、やらない、とは思えない。




憎悪が燃える。

11年前に間桐家に入った時並みに。


「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


間桐桜が怒りに燃え、吼える!

実際、自業自得なのである。


ちなみにしんじくんは絶対に家には帰らなかった。

「桜の機嫌が悪い時はわかる、僕がどうなるか解る。でもあれは………どうなるんだろう」

絶対御免、だと。



そして、ついにブチ切れた桜さんによって一日で冬木市の蛇は絶滅した。

強制的に大発生した10兆匹の小さな蝿で。



桜さんはそして、また忙しくなることに今は気付かない。

そして


「うわあ、どうしよ、増やしすぎた…………魔力使いすぎたし……後片付けが、進まない」














長いあとがきと長い補足。
  
土地神さま達「やっぱ、こいつ追い出そう」

「賛成」


黒子の癖に活躍しすぎ。



普段折角、こそこそやってたのに荒魂などを殺してしまったせい。

そりゃ、知れます。

黒子をやりたいなら


見せて、やろう

私が憧れて止まない魔女らしい戦い方を



「そして―――閉幕しましょう!黒子として!」

とか格好つけなきゃよかったんです。

見せてどうする。


桜さんも「英雄」認定されています。

「偉業を成し遂げたから英雄になるのではない、偉業を成し遂げると英雄にされるのだ」的な。

ちょろい、ちょろいと踏み潰した虫けらを気にしてなかったのが問題。

ご老体なら裏の裏の遠いところから上手く誘導して烏さんに殺させていたものを。

もしくは別人を装うとか。

しかも、知らずにとは言え、マキリサクラとして「何か」の力を借りてしまった。


故に等価交換の法則が働きました。


まぁ、巻き込まれ型主人公タイプの人間なら気にはしない、というか気付かないでしょうが。



桜さんは黒幕タイプの人間です。

厄介事の解決は更なる厄介事を生むものです。

まだまだ美味しいところだけ摘めるほど経験を積んでないのが敗因。

聖杯戦争で日本との相性の悪さが最大の敵になるでしょう。

堂々と参加するのなら問題はないけど、裏方で行くと邪魔されます。







まだ続きます。











「ふぅ」

1月中旬、なんとか落ち着いた。



これから住む場所は確保した。

イギリスに豪華な家を買ってしまった。

結局、ふと思いついたのだ。


蟲蔵全部そっくり持っていけば?




来週ころにはコンテナ船の中で蟲達も旅行するでしょう。



ちなみにビザは用意していない。

「ふっふーん。イギリス国籍買っちゃいました、あと大体の国籍」

もはや間桐桜を止めるものは居ない。
そして、一般的な海外渡航をする気が全くない。

ちなみに海外に居ても、間桐桜は隣町の高校に「進学」することなっている。

現在10人以上の架空の人間が各国で生活していることになっている。

シリジエアン・フルールさんとかセレッソ・マレフィニカさんとか。 

お気に入りはセレッソ。

バゼットさんに

「桜、行きましょう」

じゃなくて

「セレッソ、行きましょう」

の方が格好好い。

それを想像するだけでも

気分が良い。



それに

「出所不明な精気とやらの解決方法、見つかりましたし」

簡単な話であった。

どっかから汚水が水道に流れてくるのならば、清浄用のフィルターでも張ればいいのだ。

「11年前の破片が役に立つとは、思いもよりませんでした」



間桐桜は厭らしく妖しく哂う。

「これもまた私の実験が役に立ったということで、気分が良いですね」

11年前の破片。

「お爺様もいい物を残してくれました【この世全ての悪】の一部、なんて物を」

取り扱いを間違えれば大変なことになるが、毒は上手く使えば薬にもなるのだ。

「薄める作業は昔から考えてましたけど、「ラインの黄金」の加工はアインツベルンの秘儀ですからね
汚れた聖杯から永久機関の作成はとっくに諦めていましたけど」

桜は聖杯の器となる「ラインの黄金」で汚れた聖杯に循環器を作成し、流れる力での聖杯の利用を考えていた。

莫大な負のエネルギーを循環させ、莫大な「流れる」力を生み出す永久機関。

マキリサクラはそれが一番良い方法だと、思っていた。

しかし、一年でそれを狙うのは不可能とは完全に言い切らないが、大変難しい、ほぼ不可能に近い。

0に近い可能性に賭けるほど楽観主義でもない。

それをするには「ラインの黄金」で作成された肉体が必要なのだ。

アインツベルンの「ラインの黄金」で作成された肉体の挿げ替えは効果的かもしれないが、運用する知識も足りない。

薀蓄食ったって、重要な「経験」は得られない。

知識を知っていても体は動かない。


世の中そんなものだ。


考察をやめ、自分の魔術で作られた包帯に巻かれた左手の小指の指先を見る。

「はぁ、海外に出たら直ぐに切り落とさないと―――ってヤクザですか私は」



ようは、欠片を砕き、本当に微細な欠片で自らの小指の指先を汚染している。

大した汚染量ではないがそこに清浄な精気を送ればどうなる?

清浄な精気は汚染され中和されるのだ。

「それでも、これがないとしばらくは生活できないですね」

自分の臍の辺りから走る紐のような蚯蚓腫れを見る。

それは臍から左手の小指にまで繋がっていた。

人の精気を吸い取る蟲を補助具として丹田から小指に繋いでいるのだ。

臍の丹田に清浄な気が流れてくるのはすぐわかった。

人の構造上、此処が一番溜まりやすいのだ。

それでも精気のコントロールを失敗すると、すぐ破滅が待っている。

正直、一ヶ月ぐらい、我慢しろ、と自分に言い聞かせていたが、やはり我慢できなかった。

嫌なものは嫌なのだ。

左手の小指の指先は汚染され、そして蟲にも食わせて改造したので、最早切り落とす以外の方法はない。

それでも無駄な感情に支配されるなど真っ平御免、と微笑む。

肉体と魂は不可分な物。

しかし、もっと大切なモノがあるのなら肉体が破損し魂が削れても別に構わない。

「私にとっては今こっちの方が問題です」

最近、視力が落ちてしまった。

今まで暗い蟲蔵での作業ばかりしていたせいだ。

「正直、魔眼でも欲しいところなんですけど……作成に時間掛かりそうだからなぁ」

これはジジイの薀蓄の中にも最近手にいれた薀蓄にも無かった。

無いものを1から作るなんて無駄はしたくないのである。

近視というものは眼を動かす筋肉である斜筋に生じた緊張が原因である。

故にしっかり眼の筋肉の回復トレーニングでも行なえば治るものである。



「めんどい」

通販で買ってやるのは良いが、よくよく続かないのが通販というものだ。

ならば眼鏡っ娘かコンタクトレンズ。

ようし


「今流行のレーシックという物は面白そうです」

ま、後遺症とか何十年か後の範例とかないので危険だとか言われていますけど。

「水晶体なんぞ、いつでも生やせるし」

そこら辺はマキリの肉体改造技術の応用です、と笑う。

「それにエキシマレーザーですよ、エキシマレーザー、その言葉だけでも試す価値があります」

実際、ただレーシック手術を受けてみたいだけである。

前世では4.0と超人クラスだったので、周りがレーシック手術の話をしていて

「あれって凄いよねー」

「うんうん私0.1から2.0だって」


とか話してるのを聞いて羨まし?かったので。



それに手っ取り早い。

ほんの2、3日で手術は終わるのだ。

たかが、眼の筋肉のために、これ以上時間使いたくないですし。


「世の中、経験できることがあったら、やってみるべきです」

とりあえず予約とってー、とパソコンに向かい始めた。





7話 レーシック姉妹喧嘩 








「絶対駄目」

おや、おかしいですよ。


お爺様の言いつけで来月から海外留学です、と言ったら潔く

「寂しいけど……しょうがないわよね、そっちの方に口出しは出来ないもの」

と言っていたあの姉さんが


たかが、眼球の改造ごときで


「駄目!」

「なんでですか?」

「駄目な物は駄目」

「いや、だから……なんで、でしょうか?」

やっぱりあれですか、後遺症とかそういう―――。

「レーザーなんてものはね、現代科学によって生み出された未来の物なのよ?
過去に進む私たちにそんな物を利用した手術なんて必要ないわ
解る?桜……私達は魔術師なのよ?携帯電話とかパソコンとかそういうモノに慣れきっては
何れ魔術の衰退の原因に関るものなのよ?わかる?だから駄目」

ああ、デジタル駄目ですもんね……。

それに、古くなったパソコンを譲っても、まず最初に起動ボタンがわからない人ですものね…。

使い方を丁寧に教えたのに電源を落とすのにコンセント引っこ抜く人ですもんね……。

普通、中学校か高校に入ったら誰でもワードくらい習うのに、どうしてるんだろうかこの人。


「それを言うなら眼鏡とかコンタクトレンズは……」

あれも文明の利器だ。


「眼鏡はいい、でもコンタクトレンズも駄目」


な、何故に…。

「あれって直接眼球にレンズをつけるんでしょ?よく漫画で踏まれて割れるやつ」



姉さんから昭和の香りが。


「いや、今はソフトタイプというものがありまして、シリコンで「甘い!」へ?」

「眼鏡にしなさい」

「えー」

「じゃないと許さないから」

「じゃあ、お爺様の言いつけで「桜よ、レーシック手術を受けるのじゃ」と「嘘つくな!」……駄目ですか」

「さっきあんた、自分で受けようかな、とか言ってたじゃない」


そうだった。


あれは


予約を取った後日。


楽しみだなぁ、眼をレーザーで焼くの楽しみだなぁ、と街を歩いていた時の出来事。

偶々、街で姉に出くわし、これから何処にいくの?などと、聞かれた時のこと。

「あ、姉さん」

「桜、今暇?これから美味しいケーキがある喫茶店に行くんだけど」

貴女もどう?と尋ねられ。

「いえ、これからレーシック手術を受けようかな、と思いまして」

「しゅ、手術?」

「そうなんですよ、最近眼の視力が落ちちゃって、ちょっと」

「え?視力が落ちたら手術をするものなの?」


どうやら姉はレーシック手術を知らないご様子。


「いえ、レーシック手術というものはですね……」


と説明を重ねる内に姉の顔がどんどん深刻になっていき。


「だから駄目な物は駄目」

となりましたとさ。


禁止ワード

「私が手術をしようと私の勝手じゃないですか、どうして姉さんが駄目なら、駄目なんですか?」

とか、言うつもりはない。

どうせ怒鳴られるだけだし。

それか、泣かれるだけだし。

見てみたいけど、最近疲れてるからなぁ。

時間ないし。

フォローが面倒くさい。

必殺奥義、姉さんと別れた後に勝手に行く。



駄目だ…。

眼鏡以外駄目だ

今度あった時に「あれ、眼鏡かけてないじゃない?まさか…」

とか問い詰められ、結局怒られる。

言い訳に視力回復トレーニングを使うのは嫌だ。

どうせ

「そんなの続くわけないじゃない?」

「その通りでございます」

とか。






で、多分

今から

「そうだ、桜の眼鏡、買いに行きましょ?私、桜に何かプレゼントしたいし、この前、絹の下着買ってくれたからその等価交換ね」

姉が凄い楽しそうな顔して私の手を掴み歩き始める。

やっぱり。

こうなるか…。


でも、眼鏡……はちょっとね。

最近調子に乗って失敗ばかりで、あの憧れの魔女さんみたいに眼鏡掛けるの嫌なんですよね。


パチモンになった気がして。


私は本物になりたいのだ。

眼鏡は本物になった時にでも、とか子供っぽいこと考えちゃったりして。

ド外道目指してるから、眼鏡は装備しません、なんてこと姉にいえませんし。



うむ



逃げるか。



「どこにいくつもり?」


あ、このアナクロな姉は

ぐいぐいと引っ張られる。

するずると引っ張られる。

私と違い、文武両道の武闘派。

最近バゼットさんのインパクト強すぎたから忘れていた。


「はぁ……」

「なによ、私と眼鏡を買いに行くのが嫌なの?」

そうです。

「いえ、ちょっと財布に不安が」

「だから、私がプレゼントするって言ったでしょ?姉の言うことは聞くものよ?」

微笑んで、そう、言う姉に

嬉しさを感じる私。


まだまだ道は遠いなぁ、と感じる。

まぁ

結局、目指す場所が遠いのなら、遠くをみる物が必要なのだ。

それが何であろうと変わりはしない、魔女とはそういう考え方をするべきなのだ。

なに、何れこんな阿呆みたいな感傷も捨て去ってみせる、と私は苦笑した。



最近、私も人間っぽいことばっかり考えてるな、と思い微笑む。



なに、この世のありとあらゆる物、全て楽しんでこそ、人生なのだ。


見て聞いて感じることは無駄じゃない。


未来は私の手の中にある、と私は自分で言ったのだ。

ならば、今起きる全ての事象は私の未来なのだから、喜び楽しもう。


「で、姉さん―――予算の方はいかほどで?」

2万円堂とかだったら一生許さない。

これは本気で。


「ぐっ……」


姉が苦しんでいる……。










その姿は


ま、性的な意味で食べちゃいたいぐらい可愛い。

とかやっと、私の基本思考が復活してきました。


と哂う。



【ギャグ】逞しい桜さん (15禁) 



第一部 終了


あとがき






この回は桜さんが自分を戒める回。

一回脱皮してもう一回脱皮する前の話。

まだまだ未熟だなぁ、と実感する話でした。

黒幕もしくはド外道成長物語。


外道成分0のお話でした、つうかほんわか系を目指してみました。

ただ、眼鏡を買いにいくだけなのに。

普通のお話にしてみるだけで、ほんわか系ってなんでしょうか。

あと、眼鏡は結局姉特製のクリスタル眼鏡とかになりそうな気がします。




次回、ダイジェスト旅行記。


すいませんダイジェストさせて貰います。

宵闇7巻の寅蔵の「大変だったんだよ、色々」

的な感じでいきます。

聖杯戦争編終わったら書きます。



[31354] 閑話 ダイジェスト旅行記 2月から4月の間
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/05 20:10
憧れの地、イギリスへ旅立ち、いらない物を切り落として義指をつけた私ですが

高級住宅街のイギリスロンドン北部のハムステッドのBの511のランカスターグローブ辺りに居を構え、白くて中身が黒い家という日本に比べればお城みたいな家に住み始め、荷出しなどの作業を行い。

早速、エスプレッソなどが絶品な美味しいと評判なカフェネロにでも行ってコーヒーをテイクアウトして
近くのパーラメント・ヒルの公園でエスプレッソ飲みながら、かの有名なフィッシュ&チップスをモグモグしようかなぁ。

ロンドン北部だからあのハリポタで有名なキングスクロス駅でも近いから行こうかなぁ

と、ミーハー気分に浸れると思いきや、いきなり買ったばかりの人ん家のドアを壊し


「桜、行きましょう」


バゼットさん光臨。


「バゼットさん、今の私はセレッソ・マレフィニカですよ?商家の娘さんですよ?」

フランスのボンボンの娘さん設定ですよ、今の私は。

「それはすみません、ではセレッソ行きましょう」

「あ、時計塔ですか?私の紹介ですね、助手の」

「いいえ――――カナダです」

「は?」


やっと長い飛行機の旅が終わると思えば、また長距離渡航。

欧州から北アメリカ大陸へ。

カナダ北部のアラスカの間辺りに連れて行かれる、私でした。

とりあえず、そんなに寒くなかった。


わけないだろう。

最悪に寒いわ。

ここまで来たらオーロラみえるかも、とか思いました。

なんで貴女はスーツで大丈夫なのよ?


なんでも大禁呪の封印指定の魔術師が逃げ込んだらしくそれの追跡任務らしいです。

脳みそだけとってくればいいらしいです。


で、本場メイプルシロップを食パンなどにかけてモグモグしていた私ですが

危険があるところには連れて行かないって


嘘ですか?

おもいっきし、死にかけた。

レア魔術の封印指定者でした。

まず、生きた人間じゃ不可能な魔術であるはずなのに
人間のまま使いこなす固有結界使いと生きた英雄との戦いに巻き込まれました。














【固有結界・熊牧場】


あれは凄かった。

本気で死に掛けました。

バゼットさんも全く歯が立たないとか。

強すぎます。

でも結局、殺したのは私ってなんだろう。

しかも死因


蜂に刺されたことによる、アナフィラキシー・ショックって。


死に間際の一言

「鮭よりも蜂蜜が……食べたい」って阿呆かと。

そんなに蜂蜜が好きなのか。

この鮭が一杯捕れそうな川べりの戦いだけでも大長編小説書けちゃいますよ。

とりあえず、冬眠の途中でたたき起こされたクマとはもう、絶対に戦わないことに決めた。

捕った脳みそは少しペロペロさせて貰った。

うむ、美味でございます。




で、また飛行機でロンドンに帰り。

即行でインテリジェンス箒の捕獲を任された。

どこのファイヤー・ボルトだよと言う位
夜のロンドン市内を飛び回る箒。

封印指定された魔術師が逃げようとして焦り、間違って人格移植を箒にしたらしいです。

これは執行者の仕事なの?

と思いつつ。

マッハ・ギンヤンマで撃墜。

近接戦闘しか出来ないくせに任務受けるなバゼットさん。

上空にいる戦闘機と素手で戦うつもりか。


神秘秘匿のお礼に箒を貰いました。

これで歩かなくてすむ。



と、うきうきしていると

「明日から中国です」

「え?」


中国の雲南省に現れた仙人の捕縛任務。

おお、不老不死ですね、楽しみです、と思いきや

コレジャナイ的な不老不死だった。

植物にはなりたくない。

自然との一体化で本当に一体化してどうする。

とりあえず脳みそ分捕り、ルーンで植物を山ごと燃やし始めたバゼットさんを見ながら飲茶でも頂きながら

そう、思う私でした。


金華ハムと飲茶美味しいです。


あ、燃えすぎ。

隣の山に燃え移ってますよ。


私しーらないっと。

共犯?

いや、貴女の単独犯行じゃないですか。



とりあえず分捕った脳みそはペロペロした。


なんかしょっぱい。


また仕事。


「大地」の大勢の兄弟達に喧嘩を売った馬鹿を抹殺しにリトアニアに赴いた。

バゼットさんが抹殺完了すると

ジャルギリスの戦いが起きた場所でウルリッヒ・フォン・ユンギンゲンさんっていう人の剣を妖精さんから「大地が汚れるから処分して」、と譲りうける。

その時、王蟲ちゃんに一匹の妖精さんが一目惚れしたらしく
気付くと王蟲ちゃんの中で寄生結婚生活を送っていた。

母親として嫁は大切にしようと思い、契約をした。

どうやら本質は人間の住まいを守るタイプの妖精だったので
ロンドンに帰ったら家を守護してもらうことにする。

あんまり帰ってないし、あの家。

平易な語による教理問答、という本を読みながらシャコティスというケーキを食べる。

バームクーヘンに似ていて美味しい。
バームクーヘンよりも乾燥した食感だが、これはこれで。

でも形が武器みたいなので、ちょっと食べるのに躊躇した。



平原で一泊する。

夜空の星達を眺めていると

急にお米が恋しくなり、でも買う暇がなかったので、とりあえず
パンを千切って、持ち歩いていたカレー粉と野草の汁で夕飯を頂いていると

死徒が現れ、ゆずってくれ、頼む。と土下座された。


カレー粉が尽きたらしい。



戦闘モードを止めないバゼットさんも含めてみんなで夕ご飯。

自分が日本人だと言うと

「アナタ、シエルのダーリンの知り合いじゃないわよね?」

と、訳の分からないことを聞かれた。

シエルって誰だ。

どこかで聞き覚えがあるのだけど、忘れてしまった。


オカマのカレー吸血鬼と別れ、再びロンドンに戻る。

せっかくの死徒さんだったのに、捕獲し忘れた。

だって、あれ美味しくなさそうだもん。

カレー臭そう。



で、ロンドンに戻る。


妖精さんが狂喜乱舞していた。

どうやら私の蟲達はイケメンばっかりで、逆ハーレム状態らしい。

え?なにそれ。

羨ましい。

王蟲ちゃんとの結婚生活はいいけど、浮気はあんまりしないでね、と説教を一つ、言う。


家庭内暴力が起きたら私の家が壊れるから。





次の日また仕事。



船でバルト海からミンチ海峡の海を渡っていると

水棲人類ブルー・マンによる豪華客船連続殺人事件が発生する。

最終的に船が取り囲まれ、リズムゲーム勝負をする。

負けたら食われるってなんだ。

頑張ってくれ、同じ船に乗っているケルティック音楽合唱団の方々。

一人になったブルー・マンを試しにバゼットさんに殺して貰って
奪い取ったセイウチの牙で作られたチェス駒でバゼットさんとチェスなどをしながら
スコットランド式のアフタヌーンティーを楽しむ。

うむうむ。

ローランドで育つ、春の仔羊は美味である。

バゼットさん味わって食べてくださいよ。

「私が片付けますか、アレ」

「駄目ですって、うわぁ、皆さん怖がってますよ?
それにあの方達だって家族が居て養うためにやってるんだから」

「……そうですね」

「そうなんです、あれも一種の異文化交流、私たちが手を出していい問題じゃないんです」

「はぁ、セレッソには何時も諭される」

「気にしないでください、だってアナタの助手なんですから」

「それも、そうですね、ゲームも長くなりそうだし寝ましょうか」

「はい」


どうやらリズムゲーム勝負は人類側に勝利の天秤が傾いたようだった。

しかし、負けたことに腹を立て、襲い掛かってきたので

「バゼットさん―――往きましょう」

「用意は大丈夫ですか――セレッソ」

「いつでも」

「では、朝の体操と往きましょう!」

最近作った機甲蟲での初戦闘。

おお、やっぱり成功です。

命中するとみんな千切れてバラバラになります。

ライフル弾よりも速いので跳弾に気をつけてくださいね、バゼットさん。

イギリスに戻るころには全部駆除できました。

水棲人類ブルー・マンの絶滅により人魚さんが喜び、現れた。

バルログのランプを貰う。

これは電気代タダに成りそうなのでありがたく貰う。

それよりもアナタの生き肝が欲しい、といったら逃げられた。


ちっ



今から海に飛び込もうかな、海に毒を撒こうかな、とか考えていると


「欲張るのはいけないことですよ、セレッソ」

と、バゼットさんに怒られた。


散々皆殺しにして血で汚れたバゼットさんが怖かったので、諦める。


最近銃器の扱いを覚えてきた。

ド下手糞なのでとりあえず、普段手榴弾だけ持ち歩き、蟲に着けて飛んで貰っている。



ロンドンに帰ると3月に入っていた。

時計塔の人たちから遠巻きで見られる。

時計塔の講師の方々に説教をされる。

せっかくの幻想種がどうたらこうたら。

じゃあ、これ全部あげます、と生き残ったブルー・マンの子供をプレゼントすると、快く受け取ってくれた。


同年代の学生さんに会ったので挨拶をすると、逃げられた。

どんだけ執行者って恐れられるのだろうか、と思っていると

「いやお前もだ、お前も」

と、ロードなんちゃらさんに突っ込まれる。

バゼットさんの助手として雇われてすぐに時計塔の学生達に架空元素使いって言いふらして
私の体目当ての人間をカウンターでペロペロするのがいけなかったらしい。

眼には眼を歯に歯をの精神ですよ、と言うと。

あんまりウチの学生を減らさないでくれ、と説教された。

まだ3人なんですけど。

「正当防衛です」

「そのうちお前も封印指定食らわせるぞ」

「すいません」

と謝っておく。

バゼットさんに襲われるなんて勘弁だ。


王蟲ちゃんと妖精さんとの間に子供が出来ていた。

名前は私が決めて良い、とのことなのでオーマと名づける。

仮面ライダーみたいな子だったので。

すくすくと大きくなれよ、と孫を持つお祖母さんの気持ちになった。






大仕事も終わり、ちょっとゆっくり出来る、と思えばまた依頼が入る。




また封印指定者が逃げ出したらしい。

今度はドイツだ。

忙しすぎるぞ執行者。


ていうか、封印指定されたら大体みんな逃げるらしい。

と、バゼットさんが言う。

そりゃそうだ。

と、同時に今ドイツを騒がせている蘇ったハーメルンの笛吹き男の退治が任される。

なんでも、逸話の実体化が起きたらしい。

なんでも、ドイツに逃げ込んだ封印指定者の仕業らしい。

耳栓でも持ってけば、大丈夫だろう。

ヴェーザー川を眺めながらザワークラウトとヴルストをレストランで頂く。

うむ、あっさりしているがどっさりとしたボリュームだ。

と舌鼓。

そして夜はソーセージと地ビールだ。

と思ってると。

バゼットさんが狩猟犬としての嗅覚で何かに気付いたのか、何かを追いかける。

箒に乗って追いかける。

辿り着くと、そこは刑務所だった。

ハーメルン・テュンデルン少年院に犯人はいた。

なんか横に変なピエロみたいな男が立っている。

なんでも悪ガキに妻を犯され殺されたので悪い子は皆殺しにするらしい。

横に立つ、笛吹き男を利用して川で溺死させるつもりらしい。

なまはげか。

別に理由とかどうでもいいし

少年院の子供たちがふらふら、と行進して川に向かってるが、そんなの気にしない。


「残念ながら、私たちは正義の味方ではありません」

「貴方に懸けられた封印指定」

「執行者として」

「その助手として」

「「執行しに来ました!」」

とか、言ったかは知らないけど撃破。

おお、何気に凄い物が手に入った。

怪しい笛げっと。

これ、子供を強制的に溺死自殺させる概念ついてる。

ネズミにも効くらしいので、貰っておく。


うわ、この人、架空元素使いだ。

エーテルでの逸話の実体化を可能にしたらしい。

降霊学科の方達に睨まれ、封印指定。

ラッキー。



ペロペロ。




4月


春です。

メキシコは乾季で暑いです。

喉が乾くし、治安悪すぎ。

バゼットさんと私で何度マフィアとの抗争に巻き込まれたことか。

何でも麻薬組織に魔術師が関ってるらしく、過去に逃げた封印指定者が変なクスリをバラ撒いてるらしい。

夜に街を歩くだけでレイプ魔が出現したり強盗が出現するので鬱陶しい。

エロイ気分にならずにゲンナリする。

私、差別するつもりは有りませんけど肌が黒い方々はちょっと好きじゃないです。

強面すぎですし。

なんか嫌だ。


バゼットさんとホテルに泊まると襲撃にあうし。

出される食事には混ぜ物が入ってるし、最悪だ。

蝿を私たちの周囲にばら撒く。

悪意を持ってくる人たちに刺すように設定して、簡易結界を張る。


なんか凄いことになった。


悪意を持ってる人多すぎ。

やっぱり人払いの結界にしておく。

メキシコ人謎の大量死が起きそうなので。


全然捜査が進まない。


結局半月、麻薬組織を渡り歩いた。


犯罪組織から人の形をしたツァコルとビトルと呼ばれ恐れられ始めた。

街の市長から表彰された。

でも次の日、市長が暴漢に銃で撃たれ死んじゃったので、無意味なものとなった。




ロンドンから封印指定者はデマ、と連絡を受ける。


ゲンナリした。



続く。



あとがき


バゼット&セレッソのジェノサイド旅行記



[31354] 閑話 ダイジェスト旅行記 5月から帰国まで
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/02/08 00:36
閑話 ダイジェスト旅行記 5月から11月まで




5月

疲れたのでお休みを暫く頂く。
4日間は家でだらだらしている。
オーマくんを頭に載せ、読書中。
人の皮で作られた本等を読んでいた。

隣でバゼットさんもだらだらしている。

「家、ないんですか?」

ダンボールだらけで碌に片付けもしていない私の家で一人、ホットドッグをもしゃもしゃ食べている。
口元の辺りにちろりとケチャップが付いていますよ、と指摘しつつ、家に帰れば?と、聞く。



「基本そういうものはないです」

なんと、この人ホームレスというかホテル暮らしの人らしい。
普段あんだけ人とか粉々にする土木事業しといて

ダイアモンドカッターバゼットさんは家がないの?
と、指摘すると実家はあります、と返された。

いや、そういう意味じゃなくて。

まぁいいや、なんか執行者同士での飲み会があるので私も参加させられた。
殆ど誰も来ず、フォルテさん一人だけ来た。

なんでも協会屈指の風使いらしく、剣の腕は協会随一らしい。
魔術協会随一って……ひきこもり集団の中に体育会系が一人混ざってる様なものなんでしょうね。

体育会系はバゼットさんもだし。


戦闘魔術修める人たちって実は皆、執行者?


それはそれとして飲み会での席の話題は二人とも人を殴ってナンボの仕事をしているだけに血なまぐさい話ばかりだ。

私がいっちょ猥談などを、と思い経験した話を1ナノグラム程度喋ると二人揃って顔を赤くして俯く。

え?

あんたらさっきグロ話してたやん。

なんでそんな顔、赤から青にしてるの?

バゼットさんなに?

え?


なに初めての彼女に実は元彼がいてその彼女が元彼に開発されきっていた事を知る彼氏みたいな顔してるんですか?
セレッソ、貴方は少し自分を大切にした方がいい、とお説教。
いや普段掠ったら死ぬような仕事してるくせになにを言う。

しかも貴方、仕事で――――。


と平和な日々が少し続く。

フォルテさんは自分より強い人が好みとか言いそうなタイプだった。
何百メートルも先の相手を切れる剣士より強い人ってあんまいないんじゃないかな、と思う。
純正のシリアル・キラーにでも今度出遭ったらフォルテさんに紹介しよう。




なら、熊さん牧場使いが好みであったんだろうか。

いや、でもあれは―――。

やめよう、あれは死の恐怖。







次の任務が南米に行くかトルコに行くかの選択枝二つ
南米は先任がいて、その応援に行くらしいです。

南米、急遽。

と先任の人が言い残して、音信不通。


嫌な予感が珍しくしたのでトルコを選択。

うん、なんか私達よりも先に南米に行った人、なんか死んでるみたいですね。

なんか運が悪くて――――。

んな仕事寄越さないで欲しいです。
バゼットさんに南米行きは蹴ってもらった。

まぁいい、私たちはとり合えずトルコの山の奥地、村一つが魔術師によって人間牧場にされているらしいので、その牧場主の抹殺に出発。
なんでも抹殺対象者は人形師らしく、人形を一々作るよりも、人を栽培してパーツにした方が楽だ、という作るタイプの魔術師にしては発想が豊か。

人形師ってフィギュアの原型師みたいな人ばっかりだと思ってたんだけどなぁ。

とりあえず、人で作った人形で不気味の谷という心理に陥るか、見物。



現地には交通機関も碌になく、山々と絶景な景色が広がっている。
現地に行くため、他の村の交通機関となっているジープの運転手にお金を一杯渡して無理を言わせて行くことにする。

現地に着くと、バゼットさんが横に居なかった。

何故ですかっ!?

なんか、山に昇るジープを間違えたらしい。
今、他の村に着いたらしい。

全然、気付かなかった。

私一人だった。


「んー、待ってたら日が暮れるから、私が終わらせて上げましょう」

若干、和んだ。
やっぱり可愛いですね。
ラインをこの前の飲み会で繋げていたので、バゼットさんがあわあわしてるのがよく分かる。

今から行きますからっ!

とバゼットさんの連絡が入るが

「あ、落ちた」

バゼットさんが魔力で全身を強化し、猛スピードで走った所為で足場が砕けて谷底に落ちていった。

朝から5時間掛けてとろとろとジープで向かった現地付近に降り立つと
ジープの運ちゃんが

「帰りは自分で帰れ」

と、言い残し逃げた。

お金で無理を言わせて走らせただけでしたし、しょうがない。

でも、こんなところに女性を一人おいて逃げるのか。


ふーん。


「でも、そんなに慌てたら――――落ちろ」

ジープが谷底に落下。
ゴロンゴロンと景気よく落ちていく。




「じゃ、お疲れ様でした」

ひらひら、と私は谷底に手を振る。
お金を蟲に回収させてから歩き始める。




帰りは箒で帰るか、と一人ごちて、私は件の村に入る。
なんでも、村の人間は全てゾンビみたいになってるらしく、余所者をみつけると襲い掛かってくるらしい。

じゃ

「遠慮はいらないですね」

蝿をばら撒く。

「おしまい」


村の人々は蟲の大群に襲われ、蟲の大群が通ったあとには物言わぬ肉に戻る。

さぁ一緒に人形師さんも死んでる筈だから、脳みそ戴こうっと。





と思いきや、人形師登場。

なすすべも無く捕まる私。
なんかどっかの改造忍者みたいに強かった。

逃げられないように足を切り落とされ、腕を捥がれ、ダルマにされて転がる私。

「くはっ、貴様は魔術師か、全ての神経一本ずつバラして分解して、女だからな、子宮は取り出して私と掛け合わすか」

と笑い始める。














のを遠く離れた場所から蟲の複眼で作った双眼鏡で見ています。

「出てこないと思ったら、作業場にいましたか」

私の姿をした蟲倉兼、蟲人形を反撃モードにすることにする。

「凶暴でお腹を好かした育ち盛りの子達ですから、そうですね、頭と首以外美味しく食べていいですよ?」

『解除』

起動ワードを言うと、達磨にされていた私のそっくりさんが、蟲の群に変化し、一斉に男に襲い掛かる。

なすすべも無く、ボロボロとクッキーのように食べられていく男。

「さようなら……バゼットさんがいないので折角ですから舐める程度で収めず、みんな戴いちゃいましょう」

と、軽やかにステップを踏むが如く


「うわっ」


落ちる。






とりあえず箒に掴まり、なんとか這い上がり男の頭が有る場所に向かう。

次は足元に注意して行く。


「あ、生きてます」

「貴様………何故、私の真理への追究の邪魔をするのだ」

声帯とかどうなっているんだろうか。
首だけになっても流石魔術師、しぶとい。

ぴょんぴょんと跳ねて逃げそうだったので、横顔を踏みつける。

それでも口だけは達者なようで。

「貴様も私と同じようだな………ならば何故、貴様が私を殺して先に進む?」

同類?

「いや、なんか勘違いしてません?」

「何をだ、貴様の眼をみればわかる……人の道を外れても構わない、という魔術師の顔だ」

「答える気はありませんよ、どうせ貴方―――私に食べられるんですから」

貴方が何を考えているのか分かりませんが。

「私の舌でよく聞いてあげますよ?」


とりあえず魔力で肉体を強化して顎から下を踏み砕く。
味噌汁をつくる暇もないので、最近よくしている、脳の直接摂取を行なう。

「踊り食いは2回目です」


ぴちぴち、とまだ動いている。


生きが大変よい。


よく味わって食べる。
こういうのも、悪くはない。
生きた蟹から蟹味噌を穿って食べるようなものだ。

世の中、弱肉強食です。

ですが。

私は弱いですけど、食べるだけ専門ですから。
戦うのは誰かに任して、あとから美味しく戴きます。

と哂う。

ハゲタカとかハイエナのような事を考えるがうん、どっちかって言うとバゼットさんが狩猟犬だから、私はその飼い主ってところか。

首輪をつけたバゼットさん。
ああ、ぐいぐい引っ張られる私の姿が眼に浮かぶ。

ああ!駄目です、他所の子食べちゃ駄目!


とか、そんな感じになりそう。




「ふーん、あなた真理へのなんちゃら、とか言ってるわりに、やってることはお人形さんゴッコだけじゃないですか」

大したことしてない。
人間牧場まで作ったわりに、死徒に血を吸われた犠牲者みたいな物を作って満足してる。
真理の追究とかなんとかの為に人の道外れるんなら、もっとましな近道探してくださいよ。


とゲンナリした。

でも

「知識はそれなりですね」

舌鼓を打つ。

とりあえずバゼットさんを回収して帰ることにする。
蟹味噌で汚れた手と口は蟲達が綺麗にしてくれるので便利。
ドクター・フィッシュみたいなものです、とついでに口の中も綺麗にして貰う。

妖精の煙突は見にいきたいので無理をいって見に行った。

さすが世界遺産。
ハッティ人の青銅器がうんさか手にはいりました。

あ、なにこれ将棋盤?

なんか難しいルールですね。
でも王子を王に出来るって面白い発想。


6月


何もなかった。


何もなかったのだ。



7月


うん、何もないよ

ちゃんと証拠は隠滅したし、大丈夫、な筈。




時計塔、魔術の実験用の小動物、大丈夫だよね?




やっぱり見つかり、ロードなんちゃらさんに叱られる。
実験用だから私も実験しただけですよ?


「学生じゃないだろ?」

そうですけど、時計塔の備品ですよね?
一応、時計塔に所属してるんだからいいじゃないですか。
ちょっとお腹が空いたから、普段私を避ける学生達と交流を深めるためにジャパニーズ鍋パーティーしただけじゃないですか。
これも実験ですよ実験。

「どこが実験だ」

と、言われたので「魔法の三分間クッキングです」と返すと頭を叩かれる。
みんな鳥鍋、美味しく食べてたのになぁ―――でも、流石にボヤまで出したらバレるか。


過去に魔術用の小動物を自分で捕獲し、手が血まみれになり、糞で全身が汚れた苦労話をされる。
翌日、学生達にその話をあたり構わずばら撒くと、ロードなんちゃらさんの家に大量の動物が送られたらしい。


人気あるんだ。


でも養鶏場ごとって。





8月

夏休み

イタリア旅行、行ってきた。
本当にイタリア人は女好きなのか試してみた。










うん、精気いっぱい。

路地裏で盛ってると、横でシスターが盛っていた。

なんか他人の気がしなかったのでそのまま4Pに縺れ込む。

履いてないスタイル。

私も真似したいが、私はむっちりタイプなので違和感が……。
なんか凄い暴言をシスターさんに吐かれたけど
暴言言いつつも、ここはこんなに濡れ濡れですよーげへへ。


しばらくそのシスターに付き纏った。

ああ、なんか暴言最高。

容赦なく吐かれる言葉に

「いやぁ!ソレッソ、そんなに悪い子じゃないもん!」

などと、遊ぶ私。

ああ、そんなことないもん!

感じてなんかないもん!



とか、喚いて遊ぶ私。
そして暴言。









牛脂って――――誰が牛脂か。






ちょっと、ブチ切れそうになる。
流石にメス豚扱いじゃなくて、牛脂扱いされると腹が立つ私でした。
私の巨乳をスーパーの肉売り場で無料で貰える物扱いするとは何事か。
履いてないスタイルをもっと履いてないスタイルにしてやる。

はっはー。

きこえんなぁ

そんな言葉きこえんなぁ










は?


誰が―――。


こうしている内に一月たっていた。



9月

そろそろ帰る準備をし始める。
それと最近、遊んでばっかりいたけど久しぶりに大仕事が入る。


バゼットさん、OSV96アンチマテリアルライフルあれば大丈夫かな?
ロケットランチャーとか一杯持ってきますよ。
私撃つの下手だから……うん、私の蟲達に搭載しますよ。

航空支援用も一杯。
クラスター爆弾、効きますかね?


毒も勿論忘れません、前回の反省を生かして。

インド象だろうが鯨だろうが瞬殺できるやつ。

王蟲ちゃんも戦線投入します。
ヘリに積むやつとか、空の戦車に積むやつとか一杯載せます。




あと蜂蜜もっていきます。






【熊牧場】再び。


しかも御本人が再生怪人『熊』になって。

帰る準備とかやめて、もう帰ろう。
ああ、バゼットさん、あの存在自体が一撃必殺なので、いきなりフラガラック撃ちましょう、そうしましょう。
時速50キロなんで、気をつけてくださいね。








10月


熊さんは森の中に消えていった。
そろそろ冬眠の準備をするらしく、私達に餌を集めさせた。

許してくれた。

帰国一月前、慌しい日々が続く。

あの戦いで妖精さんを未亡人にしてしまった。
妖精さんは夫に代わって自分の子を実家で育てる、帰る。と言い出すので。
王蟲ちゃんを急遽作り直す。

個は全、全は個。

っていうタイプの子なので大丈夫だよ?
みんなおんなじですって。
だから、まだまだすくすく育っていく孫を私から奪わないで。

あ、逃げられた。

ま、友達一杯連れてきてくれたからいいか。
みんな出来ちゃった結婚していくし。





とりあえず、ロードなんちゃらさんに蜂の子を上げに行く。




11月


「楽しかったですよ、セレッソ」

「いいえ違います、私の名はサクラです。マキリサクラ、です」

「マキリサクラ……それが貴方の名前」



などと、しみじみとしながら別れの時。








「とりあえず来年の春、契約更新でいいですね、マキリサクラ?」

名前は完全に覚えたので、これで完璧なギアスを掛けれます、と哂うバゼットさん。


なんか貴方性格変わってません?

貴方の傍にいるとこうもなりますよ、とバゼットさん。


「痛い、モゲる」

「いいですね?」

「は、はい」


とりあえず、空港で分かれる。
すごいあっさりした別れだが来年またお仕事するので、別にいいだろう。


そして、セレッソとして日本に帰ることにする。



「姉さんには2年間留学するって嘘つきましたからね」

そう、来年の冬、私はイギリスに居ることになっている。
イギリス在住でそのまま聖杯戦争に参加。
絶対、協力要請とかさせられて巻き込まれそうですし。
令呪ばれたら教会で

「僕達、私達は正々堂々、聖杯戦争を戦い抜くことを誓います」

とか、やらされそうだし。













あとがき





ダイジェスト完了。

聖杯戦争編おわったらイタリア編書きたいですね。
知り合いが新婚旅行をイタリアにしたので。




[31354] 聖杯戦争編 予告
Name: みさりつ◆555902c4 ID:67764e4c
Date: 2012/03/05 23:46
聖杯戦争編 予告


僕こと間桐慎二は代々脈々と続く魔術師の大家の息子だ。

いや、ただそれだけだ。

僕は芸術が理解できていないのに絵を見るのが好きなだけだった。
芸術が理解出来ていてなお、妹は、間桐桜は絵を見るのが好きなのだ。


妖しく、そして凄惨な魔術の世界。
僕はあの世界に憧れと誇りを抱いていた。
しかし、違うのだ、あれは人である僕にとって、必要ない。
僕は妹は正直に言うと嫌いじゃない。
多分世の中に怪物が居るのであれば、あれこそ正真正銘の怪物。
彼女を見ていると安心する。


僕はなんて幸福なんだろう、と。



数年前か。


僕を生んだ母親は過去には居た。
間桐というげに恐ろしき害毒に囚われ、蜘蛛の糸に巻かれて死んだ母。

ああ、腐り果て見るも無惨な母の遺骨。

僕が家のソファーで寛いでいる時。
突然、妹はその亡骸を僕の目の前に放り投げ、こう言ったのだ。

「ねぇ兄さん、久しぶりのご対面ですけど……どうですか?」

と言いつつ、その亡骸の頭蓋を拾い上げ、手で割っていく。
まるで爬虫類のような白い手でまるで発砲スチロールを割るような気軽さで砕いていく。
パラパラと白い粉が、間桐家のカーペットに落ちていく。

まるでお菓子の食いカスのように。
そんな価値しかないのだと、告げるように。

なにを、しているのだろう。
別にいつも通りの妹の姿だが、今日は違った。

だからなにをしているのか、と聞く。

「ああ、コレですか?ちょっと燃料がたりないので薪代わりに」

まるで、今日の夕食を告げるような気軽さで妹は砕いたそれを、口に含み

「スカスカですね、兄さん」

ぽきぽきと卵の殻を食べるように咀嚼していく。
その顔には苦渋が溢れていた、そして美味そうに旨そうに食べていく姿は滑稽だった。
そう、生まれて初めて気付いた。

なんでそんなことをしなければ、生きられない。
なんでそういう風にしないと、楽しくないのか。



妖しく、不気味な光景が続いた。


僕は雨が嫌いだ、だから雨に濡れる子犬を見つけると、いつも思う。


辛いだろうに。

雨に打たれ続けなくては生きられないのだろう桜は。
晴れの日の日差しを受けず、ただ雨の中独り歩き続けなくては行けない。
一度濡れて汚れてしまったら、もう幾ら太陽の下に出ようとも濡れ汚れた事実は変わらない。
妹が基本的に魔術を知らない者と関らないのはその為だろうか。
学校という毎日交わす約束のような日々が続く普通の日常を毛嫌いしているのは。

学校?
必要ないんですよ?

そう、寂しそうに言ったその姿こそ、自分が穢れた事を実感させられるのだからと、言外に述べていた。


そう僕が思ってる、と桜に言えば。



「そんな殊勝なこと感じてるわけないでしょうに」

と哂われて返されるだろうが。

ていうか、そういう風に考えなくちゃ僕が報われないだろう?





僕はあれほど嫌っていた間桐の家に逃げ込んだ。

しかし、妹のような怪物は僕に追い縋り、僕の生命を奪おうとする。
僕にとって僕が持つ唯一、誇れるもの、命を。



「お前も粘るじゃねぇか、だがな……さっきみたいな奇跡はお前にはおきねぇよ、残念だが死んで貰うぜ」

青い全身タイツに赤い槍、目の前にするだけで殺意の強風により、只の人間である僕にとってそれは体をがんじがらめにし、心を凍らせる寒波。
赤い、赤い槍が、僕にゆっくりと迫る。
あの槍で雑草を刈るような気軽さで僕の首を撥ねる事が出来るだろう。

報われない。

このまま死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。


死ぬ。

「た、助けてくれ!桜!」

僕は神様でも誰でもない、あの妹に助けを求めた。



その瞬間。


妹が


「やはり巻き込まれましたね―――――なら、死なない程度に助けてあげましょう」

僕の脳裏で厭らしく妖しく艶然と微笑む。










光が溢れる。

僕の手の甲に奔る2本の引っかき傷のような痣が光る。
間桐の家の妹が僕の出入りを禁止した全ての部屋から光の帯が僕の手に集まり、爆ぜる。


目の前の青い男が突っ込んでくるトラックのような暴力ならば、その猛る光の爆発は台風。

男の目の前にその爆発が迫る。


そして現れ出でる、人のカタチをした怪物が、もう一人。




「なにぃ!?まさかっ!まただとぉ!?」


そしてこの日から僕は運命に巻き込まれる。

またってなんだ、またって。



一人の英雄の目的。


此度アーチャーとして聖杯戦争に招かれた一人の英雄は壊れた部屋の掃除をしながら溜息を吐く。

そうして思い浮かべるのだ。
自分の望みを。
「衛宮士郎の抹殺」
過去を振り返りながらその目的以外のもう一つの光景を思い出す。
世界と契約し、掃除屋になる直前の記憶。
世界と契約する瞬間に現れた一人の女の記憶。

あの女はこう言った。


「愚かですね、それを選ぶなんて……ヒーロー気取りさん。これでもう貴方は自分の理想からも見捨てられたでしょうに。
教えてあげましょう、貴方は確かに自らが持つ正義というシンプルで寄りかかっても崩れない指針を持って戦ってきた。
貴方は酷く直向で生きてきた。しかし、世界っていうのはね、直線じゃないんですよ?」

「世界はとても純朴で純粋に合理的に在るでしょう、そして貴方は何れその純粋さに耐えられなくなるでしょう」


「それでも、私は……正義の味方だ」

目の前に救える命があるなら、私自身など如何でも良い

「正義ねえ………独善で戦うならば、まだ救いは合ったんですけどね……処置なしです」

「何度も言うが、お前は此処で死ね」

「貴方の邪魔はしませんよ?私の目的はこれから得られる一つの聖遺物の回収ですから」

ああ、あの魔女だ。

いつ出会ったのだろうか、奴には。
己の正義の味方としての有り方を見定め、故郷を離れ、世界を転々とし始めた頃か。
魔術使いとして協会や様々な所から眼をつけられた頃に、自分と同じく眼を付けられた存在を知った。
マキリという魔女。
その女は詐欺の魔女とか第三者強盗の魔女などと呼ばれていた。
自分と同じく世界を股に掛ける女。

魔女が行なった悪行は魔術の世界に置いて悪名高い。

有名なのが、時計塔に保存された封印指定者の臓髄を全てが盗み出された事件。
ある時聖堂教会と魔術教会の大々的な争いが起り、その引き金を引く決定的な要因になった事件。
一つの姉妹喧嘩から始まった多くの怪物たちの争いの原因。


全ては魔女の手では行なわれていない。

が、多くの人々は確信していた。

あれは全て、究極の愉快犯マキリの所為だ。

魔女が間接的に関る物事は、殆どの人々の争いにより終結する。
しかし、奴はのらりくらりと一人争いの利益を貪り、人々から証拠が無いので捕まらない。

幾度も私は魔女を悪と断じて処断しようとした。

しかし

「私はここで終わるようだ……貴様を殺せないのは聊か残念だが」

「ま、そうでしょう。これから貴方は裏切られて死ぬようですから」

「君の姉には悪い事をした」

「あっはっはっは、どうやってもこれ以上悪くならない所まできといて、その台詞は無いでしょうに、そんなこと言ったら、法廷に上がる前に姉さんに殺されますよ?」

「はっ貴様もいい加減、姉に大人しく捕まったらどうだ」

「んー、姉さんにですか?嫌ですよ、世界最強のお爺さんに引き渡されるのは嫌です」

そういい残し魔女は箒に跨り姿を消す。

本当に残念だ。



絶対殺してやりたかったのに。

今回、自分が友に裏切られたのも絶対にあの魔女が関ってるだろうし。

とりあえず、奴の姉にこういって置こう。

「お前の妹、またやりやがったぞ」

と。

そして何時も通りに

「アレを私の妹と呼ぶな!」

と叱られてから死ぬとするか。


などと、生前を思い出す。

「………聖杯戦争の時期はまだ冬木にいたはずだ」








始まる聖杯戦争。


「慎二お前もマスターなのか!?」

「そうだけど、お前も!?ていうゆかお前!?僕の気持ちを裏切ったな!?お前もそっち側かよ!?」

「本当に魔術師じゃないのにサーヴァントを召喚したっていうの!?」

聖杯に願いを叶えるべく集まる魔術師達と、一般人一人。


聖杯戦争に参加するべく冬木市の教会に行く三人と英霊三体。


「おい衛宮」

「なんだ慎二」

「なんで僕だけ、あのエセ神父に何も声を掛けられなかったんだ」

ずっとこっちみてニヤニヤしてるだけで何も言ってこねぇ!




そして前哨戦。


「なんか余計なの居るけど、マスターなんでしょう?じゃあ死んで?」


「おおぉおおい!?なんで僕を真っ先に狙う!?」

「弱そうだからじゃない?」

「慎二、お前は俺が守ってやるよ」

「衛宮!お前だけはやっぱり、僕の親友だ!」



浚われるへっぽことワカメ

「やっぱり貴方足手まといね、同盟解消しましょうか?」

「お前、散々人のことコキ使っておいて最悪だな!?妹が妹なら姉も姉だな!?」

「桜と一緒にしないでよ!?ていうか貴方何もしてないでしょ!?」

「桜ってなんで二人にそんなに邪険にされているんだ?」

いい子だろ、と何も知らずにのほほんとしている衛宮士郎。

「いいなぁ衛宮は」



その裏で

「大体、計画は順調ですね」

「そうね………ところでコレなによ?」

「100万画素のデジカメです、可愛いあの子も盗撮します」

せっかくの英雄出演の映画なんですから、是非とも映像化しない、と哂う少女。

「じゃあ私はセイバー担当でいいわね?」

そして哂う魔女二人。




そして戦いは終盤へ


「やはりお前が裏に居たのだな、マキリ」

「なんですか弓騎士さん?私のこと知ってるんですか?」

衛宮士郎との死闘前。

二人は出遭う。

正義の味方と魔女。

「ああ、衛宮士郎の抹殺も私の目的だったんだがね……遠くない未来。
この世に災厄を巻き起こすだろうお前も此処で果てて貰う」

「なんか面倒な人ですね……ていうか未来?」

「魔女に掛ける言葉などない、多くの無辜の命を軽々しく玩び、破滅させておきながら哂う貴様は不愉快だ、消えろ!」

「まだやってないことで怒られても――――やるのかもしれませんが」

でも、とマキリサクラは妖しく哂う。

「何?」

「――――力とはこれ見よがしに振るう物じゃないんですよ、ヒーロー気取りさん」

きゃっ言っちゃった!

と喜ぶ、マキリサクラ。

「言ったな!?魔女め!」

「魔女で悪いですか?」


正義の味方VSハイパーSAKURAさん

勝利はどちらに?



そして金ぴか


「雑種にも劣る虫けらが、速く消えうせろ、不愉快だ」

「なんか最近嫌われてばっかですね、何が悪いんでしょうか?」


でも、お宝一杯ですね、いいですね。










聖杯の前で誰の願いが果たされるのか。


「ここに至っては貴方は用済みです、神父さん」

「それは此方もだ、マキリサクラ」

「なら」

「そうだな」

「「いっそこの場で千切れて消えろ!」」

向かい合う二人。

そして

「と言いたいところなんですけど……私は戦いません」

「なに―――!?」


「出番ですよ―――バゼットさん」

アヴェンジャー・ダメット登場。




そして終幕。


「あと片付け、皆さんよろしく」






予告編終了。



あとがき


ちょっと仕事の関係で長旅に出てくるので3月まで休業します。

3月から聖杯戦争編スタートします。

ルート的にごちゃ混ぜルートで行きます。




[31354] 第二部 プロローグ ピンクい魔女、帰郷
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:4d7b1387
Date: 2012/03/05 23:42
現在、空とは只見上げる物でもなく、鳥や虫たちにしか手が届かない侵す事の出来ない幻想ではない。
鉄を纏い、科学という知識を盾に人は空を飛ぶことを選び、空は侵された。


しかし彼女はまた別の方法で空を駆ける。

「ただいま」

御伽噺の様に空を箒で遊泳する。
飛翔するための力は科学の正反対を往く、忘れられた幻想。



風は冬の寒空、全てを凍らせるように吹き荒ぶ。
彼女が跨る現代から忘れられた旧さを体現したような箒の先端には括り付けられ、ぼう、と光る、これまた古風なカンテラ。
カンテラの炎がゆらゆらと箒の行く手を照らす。

「久しぶりの日本、ですね……此処よりも寒い場所を歩いて日々を過ごした事がありますが
やはり、故郷ですからね、此処の寒さが一番体に合ってるのでしょう、ああ、寒い」


おどけるように、軽々しく空に挑み、それでもいて尚、笑う。

手が寒さで震えるのを感じる彼女、悴んだ手が間違いそうになる。
科学であれほど慎重に挑む空だ、幻想でもいとも簡単に手に入る空ではない。

高度300メートルの空を往くには生身ではなく、魔術で武装した彼女でも中々の苦行。

「うーむ、幾ら努力しても寒さだけは防げないですか……ソロソロ降り立ちましょう、どうせなら人のいない場所が宜しいかな?」

箒に跨り彼女は思考する。
調子に乗って空を使い、冬木上空をエーテルで飛翔するのはいいが、着陸場所を考えていなかった。

両手で捕まえる箒の柄から右手を離し、人指し指を出し、くるり、と宙に丸を一つ描く。

『我、もし墓に片足を入れようとも、我は学ぶことを欲する』

それとともに、ダンテの一節を口ずさむ。

「態々寿命減らしてナビゲートって私も馬鹿ですねぇ、いくら此処一年で大分知識が着いたからって、こんな事で実践しなくてもいいでしょうに」

今も万札燃やして飛んでるようなものですし。

と、彼女は意地悪な継母の様に自分を笑う。

彼女が宙に描いた丸はまるで、空の星のように光を持ち、崩れ、淡い燐光を残して消え去る。
朝になれば消え往く星達のように。

すると、カンテラのぼう、とした炎が燃え盛り、彼女の往く手の導になるかの如く炎で描かれた矢印が点る。

「あっち?んーそうですか、冬木中央公園ですか?あそこ結構おどろおどろしくいいですね、良い判断です」

ではお礼、と彼女は自らの人差し指を口の中に入れ、思い切りよく、奥歯で齧る。
顎の力で噛まれた指は不細工な傷を作り、血を流し始める。
そして両手で箒の柄を再び掴み始めると、傷ついた指から血がどくどくと箒の柄に流れ出し、まるで当たり前の様に血が柄を伝い、カンテラに流れていく。

ぼう。

まるでカンテラが燃料を勢いよく注ぎ込んだように勢いよく燃える。
炎が機嫌よく喜ぶようにゆらゆらと揺れる。


「美味しいですか?たかが、鉄分」

痛いんですからね、それなりに働いて貰いますよ。

と言い

「では、スピーダっ!」

勢いを乗せて重力を伴い彼女は落下していく。
「寒っ!寒い!」と言いながら流れ星の様に地上にエーテルの光を纏い奔る。


その姿は御伽噺に残る幻想の魔女。











冬木の夜の街を走りぬけ、一通り空を満喫した彼女は着陸点にゆっくりと降下する。


「なにもかもが懐かしい、などと思いながら到着」

ぽす、と公園の芝生の上に箒から飛び降りる。

「あれ、ちょっと壊れてしまいましたね?」

箒が文句を言うようにミシミシと枯れ木が割れる音を立てる。
2メートルはありそうな長い箒の柄のカンテラが括り付けられている先端に亀裂が一つ。
カンテラの炎がその命の光を失うように消えていく。

「日本の空は好みじゃないって?いやいや頑張って?」

カンテラの火はプスプスと断末魔を上げ消える。

「あーあ」

せっかく熊本からここまで飛んできたのに…と一つ文句。

「結構高かったのに…日本に火蜥蜴っているんでしょうか?」

姉が持つ一級品の宝石以上に高価な魔術道具が一つ損失したにも関らず
彼女は嘆いているようで、全く反省も後悔もしていない。

「でも、楽しかった――――魔女の宅急便ごっこ」

その一言で十分、という様な価値の見方。


さようなら、と箒を地面に放り捨てる、命を失った箒はそのまま亡骸を見せたまま、何も物語らない。


彼女が地面に転がる箒に一振り手を振るうと、箒は灰になる。
それを一瞥すると芝生の上を歩き始める。

闇の中、草原の海の中を歩く彼女は酷く奇怪な格好をしていた。

年齢は既に成人を過ぎ去った様な大人の熟成された色気を持つ肢体をもっていた。
その体に巻きつくのは幾何学模様を施された黒いロングコート。

コートの下は桜色のスーツ。
ネクタイは巻かれておらず、Yシャツの首周りの襟に少女らしいフリルが着いたリボンが結ばれている。

それよりも気になるのは異様な程の髪の長さだろう。
絹のような弱さではなく、まるで青銅のような強さを持つ、艶やかな青の光沢を持つ髪。
地面に着くほどは伸ばされていないが、その髪は彼女の腰よりも下にまで達している。

瞳は新月の夜空の様な輝きを持ち、その上にアンティークの眼鏡を掛けている。
OLが職場の帰りにそのままハロウィンのパーティーに出るような出で立ち。


「最後の最後に介入をしようと思ってたんですけど、気が変わりました」

聖杯戦争の此度の参加者にバゼット・フラガ・マクレミッツの名を協会の監視役から

「お前の上司はどうなっている!?襲われた!どうにかしろ!」

のような連絡が入ったので、あの彼女が参加しているのを聞いていた。

「それにしても……もう既に敗北したとは、信じられません」

あの人間兵器が負けるなんて。
日常生活はともかく、一旦戦闘モードに入れば冷酷無比な人のカタチをしたギロチンの様な彼女が負けるのが信じられなかった。


「だとすれば、騙されましたか」

彼女はよく切れる名剣だが、それは戦闘に用いられる為の物。
日常生活では鋏の方が便利なのだ。
だからこそ、一旦、荒事でもない一般的な常識になると、疎いのではなく取り回しが利かない。
所詮彼女も23歳の女性だ。
人生経験が酷く偏っている。

「そもそもですね、私が協会の御偉い方達であったなら聖杯戦争に参加しろではなく――――聖杯戦争に参加する者を全て皆殺しにしろって依頼をしますね」

彼女は猟犬。
猟犬に獲物を食い殺せと命令するのが当たり前な話。
どこの誰が、ワンちゃん競技会に参加せよと命令するのか?

慣れないことさせるんじゃない。


余計な事をしたな協会も。

等と、マキリサクラは悪態を吐く。

「あの人の弱さは迷うこと、迷えば弱くなる。故に迷わないように思う存分、殺戮させて上げればよかったんですよ」

彼女と一年間近く居て思ったことがある。
鉄の様な、まるで戦闘以外全てにおいて駄目な人。



一度、どうして執行者となったのか、と聞けば。

いつのまにか、そうなっていた。

と寂しそうに告げた人。

素晴らしい人だ。
私が捨て去った少女らしさ、と言うべきか。
自己の存在の有り方に悩む人。

私はどうだ?

ああ、蟲倉に放り込まれてから、んなこと考える暇なかった。
殺されず、死ねず、ただ実験用のマウスごときの存在に身に堕ちてから。

人が想像する範囲の地獄に落され、本当の地獄よりも生ぬるい陵辱の日々。
丁度言い位、誰か助けに来てくれるかな、とか淡い希望抱ける地獄。
そして丁度良いくらい希望を持たせてくれたあの優しい人。


諦めることができない地獄。


幾たびの絶望と諦観の狭間。

どうせなら諦めが出来る地獄の方が良かった、そう思ったとき。

しょうもない、と思ったものだ。

別に半身不随にされた訳でもない、人前に出れない醜悪な怪物にされた訳でもない。

少々、整形手術されたようなものだ。

腕が動く、足が動く、多少頭も回る。

なら、やることは簡単なのだ、と。

仕返しをしてやればいい。

そう思って幸運にも自由を掴み取った私は全て開き直ることにした。

11年過ぎれば今や一端の蟲使いだが、私は元々大の蟲嫌いだったのだ。

前世は頭でっかち女で化粧の一つも出来ない万年処女だった私で
昔友達に見せられたレイプ物のAVを見て、ゲロった女だ。


人間は慣れる、経験すれば不得意も得意に出来る。
人にとって非日常な魔術も、今の私からすれば日常。

何事も楽しいから笑うのではなく、笑ってこなしていけば何れは楽しくなるものだ。

辛いことも、ほら、やりがい見出すとかそんな感じで。
不幸だからこそ幸せそうに笑う。

強く生きるのは簡単だ。






バゼット・フラガ・マクレミッツという私の可愛い可愛い人は
15で既に戦闘屋になったという。


幼き頃から何事にも熱を持てなかったという人、唯一持てたのは一つの御伽噺と言う人。

その御伽噺の英雄を召喚し、今回の聖杯戦争に参加した彼女。

ああ、油断が出て当然だ。

冷酷にして無情に行なっていた戦いという行為に何かの意義を見つけた彼女。

「可愛いかったんだろうな……召喚した英雄、白馬の王子様に会って色々あったんだろうなぁ」

あの人の少女らしさって、普段日常で何かやらかして落ち込んだ時のモードしか見たことがなかったんだですよねぇ。

年齢23歳のバゼットさんの心は13ぐらいの少女らしさに溢れてたのかなぁ。

「あ、心の処女取られたかも」

仕事の関係で性体験は済ませたらしいが、それは非処女とは私は思わない。
処女と書いてオトメ。
乙女は恋して大人になるとかそういう陳腐な過程を経て非処女となるもの。
恋した男性に抱かれて乙女は女になるのだ。

私の場合、性行為に楽しみを見出してるから、まぁビッチ?というよりも性豪。
ビッチはあれですよ、彼氏をNTRさせる人。
前の飲み会で粘膜結合のような物をしたけど、実はあれは不名誉だが、私の方が食われた。

力づくとかよくないです。
酔ってるからって普段ご飯を3分チャージ栄養補給するかの如く、食うのはよくないです。

楽しかったけど。


「合って即行に好きな人に股を開くタイプじゃないので、多分未遂…って早く行こう」

ラインから伝わる彼女の感情。






死にたくない。

死にたくない。





という、戦闘機械のような彼女らしくない感情が頭に響く。
死ぬ時まで勝機を戦意を失わない彼女らしくない、実に人らしい感情の発露。

それをゆっくりと味わうように彼女は微笑みを描きながら歩いていく。
目指すは冬木の幽霊屋敷。


「その前に一度、近所のアジトその4に向かって欠損部位を補う物を取りにいかなくちゃ、どうせまだ死なないですし」


くるり、と方向転換。

「うーん、このまま歩くと時間が掛かりそうですね………取りに行ってもらった方が楽の様です」

そしてまたくるり、とマキリサクラは典雅に回る。

その時彼女の黒のロングコートの裾から燐光が漏れ出す。
人魂の様に円の形を持った光。

蛍だ。

「三番をよろしくお願いします」

蛍が夜空を光を瞬かせながら夜空を浮遊する。
夜空の星達の仲間に入るかのように空を舞う。

「では、私は彼女の所に向かいましょう」

どうせ暫く、バゼットさんは戦争からご退場。
聖杯戦争の敵にはならない。
助けても別にいいだろう。

「でも、しばらくは落ち込んでもらいますか」

遠足に向かう少女の様にマキリサクラはハミングしながらその場を後にした。


第二部 プロローグ ピンクい魔女、帰郷




バゼット・フラガ・マクレミッツは己の命脈を保つためにルーンの力を必死に使い、片腕を亡くすという瀕死の状態でありながら
大量出血によるショック死から免れていた。
常人であれば片腕をなくすほどのダメージを受ければ多量出血により数分で死亡することもある重症。
魔術による傷口の停滞でなんとか意識を保ちながら逃げ延びた先の廃屋で這いずり回る。

今彼女にあるのは死の恐怖からの逃避の意志。
激痛に飲まれながら、死にたくないと言葉を吐く。


「死にたくない」

ああ、彼女は思った。
あれ程、私は戦ってきて、結局はただの人でしかないと。
結局自分が憧れてきた戦士のように誇り高く死ねず、常人だ。

自ら戦士になる時、死を宣告されながら戦士になった彼のようにはなれない。


「死にたくない」


命を繋いでいるのは魔術の力。
己に絶望している彼女にとってその権能は精神の衰弱を引き起こす。

肉体と精神の消耗は激しく、彼女は瞳を閉ざしそうになる。

その時。


廃屋の窓が割れる喧騒。
窓の格子ごとガラスが吹き飛ぶ。

粉々になったガラスがパラパラと舞い散る。


バゼット・フラガ・マクレミッツは意識を覚醒させ激しい音の鳴る方を見た。


「あ…なた…は」

よいしょ、と窓枠に残されたガラスを蹴り砕き、まるで猫のようにスルリと廃屋に侵入する者は

一年間近くバゼットの傍にいた一人の少女。

窓をなくし、廃屋内に風が吹き荒れる。

ぱたぱたと黒いロングコートが風に揺れる。
艶やかな髪が風に靡く。

そして少女はくるり、と風と一体化したように舞う。

少女のコートに付いていたガラスの小さな破片が風に吹かれながら舞い落ちる。
破片たちは月光に照らされ、まるで光の粒となり落ちていく。



「ああ寒い【修復】」

少女が一言言うと割れたガラスが元に戻り、風が止む。
靡く黒いコートも髪も静かに舞うのを止める。

基本的な魔術だが、その様は魔術師のバゼットから見ても、本当に御伽噺の魔法の様に見えた。




まるで御伽噺の魔法使いの様な少女の名は

「セレッソ……」

「いいえ、違います」

バゼットの口から搾り出された言葉を少女は否定する。

そして

「こんばんわバゼットさん、そしてお久しぶりです―――マキリサクラです」

少女は艶然と微笑みながら自らの名を名乗る。

ああ、やはりこの少女は綺麗だ。
自らを見る眼差しは海の様に深く、宵闇の様に暗く透き通っている。

どこまでも有りの儘、私を見る。

そして口元は微笑を称え、優しげにこう言う。

「とりあえず―――――助けましょうか?」

バゼット・フラガ・マクレミッツは最後の力を振り絞り、頷いた。

そして最後まで目の前の少女を見ながらゆっくりと瞼を閉じていく。




「急がないと死んでしまいますね……でも、可愛い寝顔ですね」


マキリサクラは安堵の表情を浮かべながら眼を瞑るバゼットの顔を優しく持ち上げ、バゼットの唇に自らの唇を落とす。
そしてゆっくりと舌でバゼットの口をこじ開け、息を吹き込んでいく。

息と共に送られるのは精気。

「ん……はぁ…ん」

寄せ合った唇から吐息が漏れる。
マキリサクラはバゼットの舌根を自らの舌で絡ませるように捕らえ、唾液と共に精気を送り続ける。
段々と、土気色になっていたバゼットの顔に赤みが帯び始め、不規則だった呼吸もゆっくりとした呼吸となっていく。
失われた片腕の傷はバゼット自身で塞がれていたので、まずは失われた生命力を補う。



「ん………」

ある程度の回復を見たのか口を離す。

「おっと」

バゼットとマキリサクラの口元に雫が糸を引き、ねとりと落ちる。

それを指で拭い、マキリサクラは一息吐く。

「はぁ……人工呼吸って疲れますね」

ちなみに人工呼吸はどちらかというとさほど重要ではない。
気道確保後の心臓マッサージこそ心肺機能停止した場合に有効である。
胸と胸、ようは左右の乳首の頂点を線で結び、その線の中心に両手を合わせ、力強く押す。
リズムは一分間に100回。

おすすめなのはアンパンマンマーチ。
相手の肋骨を砕く勢いで押しても大丈夫。

アンパンマンを歌いながら心臓に抉りこむ様に衝撃を与えるのだ。

アーンパーンチと。





「なんて阿呆なこと考える前に治療しなきゃ駄目ですね」

別に心臓止まった訳じゃないし。
マッサージはいらないです。
あとでお礼にいっぱいモミモミさせてもらいますけど。

と笑い、マキリサクラは架空元素による魔術を発動させ、バゼットの失った腕に魔力で架空の腕を作り上げる。

黒い架空の腕。

それに擬似的な神経までつくり、肩口の神経と繋ぎ合わせる。

「ま、応急処置ですけど、この上に偽腕を嵌めれば、術後の幻痛と拒絶反応も少しは抑えられるでしょう」

リハビリは自分でお願いします、とマキリサクラは微笑んだ。










あとがき

おひさしぶりです。

とりあえずリアルが忙しいので
これからはゆっくり更新となりますが、楽しんでもらえれば幸いです。


あと誤字修正でsage忘れてすいません。

お詫びに予告にちょこっと追加入れときました。







[31354] 第二部 一話 彼女が出来ました。
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:48559b97
Date: 2012/03/09 14:12
火にかけられた小鍋から湯気が立ち上り、調理特有の匂いがする。
食欲がそそられる、とまでは行かないが、美味しそうだ、ぐらいは期待できる匂いがする。

マキリサクラはその小鍋の前に立ち、鍋の中の具が焦げ付かないように適度に木べらをかき回していた。
たまにかき混ぜるのを止め、淡々と調味料を放り込んでいく。

マキリサクラは全て使い切るために遠慮なく瓶ごと、封を開けたばかりの粉チーズを全て放り込む。

「超高カロリーですけど、これはこれで」

そして再び、鍋をかき混ぜる。

客観的に見るなら適当かつ単調なことを繰り返している。
突き詰めていけば料理とは全てそうなると謂わんばかりに微笑みながら。

マキリサクラは一旦かき混ぜるのをとめグツグツと煮たった小なべから木べらを出し
木べらについたミルクと粉チーズで煮たライスを指で掬い、口に運び咀嚼する。

当たり前に味見だ。

そして調味料を再び手に取る、今度は黒胡椒とパセリの粉。
また適当に鍋の中に放り込み、木べらでかき混ぜ再び味見をする。

「ん、ワイルドな味です」

野性的という意味なのか、雑という意味なのかは食べた者にしかわからない。
口に広がる濃厚なチーズの風味と塩味にピリッとした黒胡椒の味。
それが組み合わさりシンプルでどんどん食べたくなるこの味は

「この時期にキャンプでもした時、寒空の下で食べたら美味しいですね」

という様な味のようだ。

マキリサクラ自身料理は得意とは豪語はしていないし、気が向いたら作るぐらいだ。
此処一年の衛宮邸での兄の料理修行を盗み見したが、兄と勝負したら今なら和食ならば負けるだろう。

普通、一人暮らし高校生は魚を切り身ではなく、一匹まるごと買いはしない。
今では鮭の切り身を量産できる兄には負ける。


「キャラ弁勝負なら負けないですけど」

一年前、兄にお弁当を作っていたことを思い出す。
嫌がらせで作っていた日曜日の朝に放映する女の子の為のアニメのキャラを模した数々の弁当を。
プリティでキュアキュアなキャラ弁を。
もしくはお邪魔な魔女のキャラ弁を。

「でもああいうのって極端な話、見た目に拘りすぎてあんまり美味しくならないんですよね」

カラフルさのために遠慮なく無視される美味さ。
兄がこっそり弁当箱を人に見られないようにしていた事を思い出す。
監視の魔術まで使い、弁当箱シェイクは許さなかったので兄がいつも生徒会室で仲良く友達と三人で食べていたのを思い出す。

小鍋の火を止め、二つの木の器にミルクリゾットを注ぐ。

「そろそろ目も覚ますようですし、一緒に食べましょうか」

食べる前に色々聞かれて、面倒なことになって、この料理が冷める未来を思い浮かべる。

「ですけど、それは許さない」

温かい肉まんはコンビニで買って直ぐにそのままハフハフしながら食べるのが一番美味い。
天麩羅は揚げたてが一番美味い。
このミルク粥はその類の料理。
出来立てが一番美味しい。

マキリサクラの万物に対する拘りが一つある。

それは美味い物は一番美味しい時に食べること。

この世に生まれてから、幼い自分が味わった屈辱の日々で許せなかったあらゆる行為の中の一つの事象。
蟲倉の修行の後で食べた、いつも作られてから何時間も経ち、冷めてちっとも美味しくなかった料理。

様々な苦痛の中で際立ったあの冷めた料理。

あれを食べるたびに憎悪が沸いた。

私を助けるとかいいながら、温め直さずあれらを優しく私に食べさせたあの叔父さん。
いい人だったが、アレだけは許せなかった。
しかも真冬に冷めた料理だ。
だから女にモテないのだと言ってやりたいほど許せなかった。
自分が飯も碌に食べられない状態でもせめて………せめて温めなおして欲しかった。
こっちもご飯だけが唯一の生きる楽しみだったのだ。
睡眠も蟲達のせいで気持ち悪かったし。

自分勝手な逆恨みに近いが、人とは時には下らない事に怒りを覚えるものだ。
こっそり温め直そうとしたら、危ないから火は使っちゃ駄目だよ、とか言われたし。
あの頃に間桐家には電子レンジが無かったための不幸。



前世で冬には態々、達磨ストーブを購入し、スルメを炙りながら熱燗を一杯やホシイモをストーブで柔らかくしてアツアツで食べるとか
コタツの中で冷凍蜜柑とか風情を味わってきたこの私には許せなかった。


最後に残る唯一人間らしい幸せを不幸のどん底に突き落とされたのだ。


間桐に養子に行く前は遠坂家らしい優雅な食事で過ごしてきたのだ。
お母さんの豚汁が特に美味しかった。
優雅に豚汁を飲む父親が面白かった。

で、あの叔父さんが死んだと聞いた時も

「本当にいい人だったけど、あれだけは……あれだけは」

もし、私が本当に人生イージーモードで間桐家に養子に入った瞬間下克上余裕だったら
あの叔父さんと結婚して温かい食事を振舞っていたものを。
お母さんにしたり顔で「やっぱり若い方がいいよね、お母さん」
とか即行子供作って、姉さんを叔母さん呼ばわりさせたり
喧嘩して遊ぶ日々だっただろうに。


「流石にそれは性格が悪すぎますね、面白そうですけど」


と言いつつ、料理の皿をお盆に載せ、片腕を失ったばかりで血が足りないバゼットさんの処に向かう

「ふーふーとかあーん、とかやるべきですかね」


第二部 一話 彼女が出来ました。



少し肌寒さを覚えバゼット・フラガ・マクレミッツは目を覚ました。
自分は今、裸でベットの中で毛布を被っていたようだ。

ベットの近くの窓から日が差し込み、中天に昇るのを見た。

ああ、朝かな。

なんて、益体もないことを想う。

そして胸の鼓動をなくした筈の腕を使い手を当てて感じる。

そして恐る恐る亡くしたはずの片腕を見ると。

「………ある」

「いいえ、それは贋物ですよ」

横から声が掛かる。

「おはようございます」

なんて当たり前のように朝の挨拶をする少女がお盆を片手に立っていた。
自分が普段着ているスーツに似ているが自分とは違い、スカートタイプでピンク色でその上に黄色いエプロンを着ていた。
彼女が持つお盆から、湯気が出ており、食事だと分かる。

「セレッソ…」

「寝る前に言いましたけど、マキリサクラ」

ぶっきらぼうに彼女は自分の名を言う。

「……サクラ」

様々なことが頭に浮かび今すぐ問い詰めそうになる。



「まずはご飯です、あといつもみたいに瞬間チャージはやめてくださいね、眠ってから三日間、なにも食べてないんですから」

胃がびっくりして吐いちゃいますよ?と少女は言う。

三日?

「サ「だから食べなさい」

「怪我をしているって自覚を持てないのは私の所為ですけど、今貴方は片腕を失ったばかりなんですよ?」

今混乱して暴れたら顔面にコレブチマケマスヨ、と睨む少女。

その迫力に負け大人しく体を起こし、彼女の方を向く。

「まぁ偽腕テストもかねて私が付けたばっかりの腕で食べて貰いましょうか」

木のスプーンを渡された。

手には温かいミルクの香りがする料理。
食欲は無かったが、空腹を覚え始めた。

私は目の前で美味しそうに料理を食べる彼女に習い、料理を食べることにする。

珍しくゆっくりと食べている間
何故か故郷の事を思い出した。

少女が作ったリゾットはとてもワイルドな味だったと、私にしては珍しく料理をゆっくり味わった。



食後、少女は客観的な今の状況を話し始める。

眠っていた自分がどうなったのか
そして最後に間桐桜は間桐の正統な跡継ぎで聖杯戦争の御三家の一人という話を聞く。

それは多分、貴女が聖杯戦争に参加した時には名前から分かったでしょうが、と少女は締めくくる。

上半身を起こしたまま話を聞いていたが

まだ自分の体について聞いていなかった。

少女に問うとこう言われる。

「立ってみれば分かりますよ」

言われベッドから出て立ち上がろうとする。

3日も眠り、軋んでいた体を無理矢理おこそうとすると、失っていない腕の方向に体の重心が傾き倒れそうになる。
そのまま床に足を付け、立ち上がろうとすると全身に力が入らず、前のめりに倒れそうになると、少女に手で押されベッドに倒れる。

そして体が言うことを聞かず上手く動けない。

「体が…」

「それはそうですよ、ほぼ3日前は死にかけだったんですから、あと魔術の行使は禁止ですよ」

「…………すいませんがサクラ――――何か着るものをください」

私は裸だった。

少し羞恥心が湧く。


「いいですよ」

貴女が眠ってる間に買ってきましたよ、と渡されるのは

編みタイツとキラキラした水着のようなものと兎の耳が付いたカチューシャ。

「これは?」

「バニースーツです」

この少女は全力で私を辱める気らしい。

冗談ですよ、冗談ですよ、と微笑みながらパジャマを渡す少女に戦慄を抱き、そして

「サクラ」

「やっぱり自分じゃ着れませんか」

では私がと、ゆっくりと着替えさせられた。

あまりの自分の情けなさに気が落ちる。



パジャマを着させてもらった後、失った左腕について聞いた。

仕様書を渡されると目を剥く。
作者の名前をみると。


「こ、これは封印指定された人形師の………」

「うちのお爺様と交換したやつです」

と訳のわからないことを言われた。

「ですが異常に軽いのは何故……」

重心がぶれるほどあまりにも軽い腕について聞く。

「今は必要ないでしょうけど、戦闘用なんですよね、これ」

少女によって改造されているらしい。
この腕に備えられた機能を聞く、と思わず本当の腕を失ってしまったのにも関らず喜んでしまう。
その機能はあまりにも

「ええ、貴女の弱点を補える物ですよ、それにしても貴女って本当に戦士ですよね」

「これならば」

「でも、駄目ですよ、すぐ戦いに行くのは」

ああ、知っている、暫くはリハビリの日々が待っている。
この腕を最大限に使いこなすためにはまず回復しなければならない。

「いっぱい寝て、いっぱい食べて、あと私とセックスしたりする自堕落な日々ですよ」

「は?」

可憐な少女から出る爆弾発言。
思わずスルーしそうになったが聞き逃せなかった。

「だから、セックス。私の得意な魔術的にこれが一番貴女の回復にいいですよ」

「…………」

わきわきと少女が両手を蠢かせる、一本一本のしなやかな指がまるで難解な曲で鍵盤を叩くピアニストのように動く。
こめかみ辺りに冷や汗が流れる。

混乱していると、横にイスを置いて座っていた少女が既に私の隣で横になっていた。

「正気ですか」

満足に動かせない私の胸元に指が這う。

「さぁ気持ち良くなりましょう」

少女は妖しく美しく哂う。

くすくすくすくすくすくすくすくす

少女は笑う。

私は思う。

戦争中の女兵士の捕虜ってこんな感じだろう、と。

逃げようとするがとりあえず、本当に動けない。
瀕死で目醒めたばかりでもあまりにも動けない。

まさか。

「そろそろ効いてきましたね、勿論ご飯にお薬盛っちゃいました。
この薬の薬効は体の機能を低下させ、全てを体力回復に向かわせるものですから安心してください」


安心できる訳がない。


「我が触診をとくと御覧あれ」







確かに気持ち良かった。
失ったランサーの事を忘れるぐらいに。






事後。

「サクラ、私商売変えようと思います」

「え、バゼットさん……貴女他に何か出来ることあるんですか?」

「ルーン石占いなら……」

所在なさげに落ち込むバゼットさんを見て私は笑う。
いつも通りのバゼットさんだ。
本質的にネガティブな彼女が落ち込むところを見ていると、こう難しい数式が解けたようなサッパリ感が得られて
大変愉快である。

私が暇つぶし用に買ってきたルーン文字が彫られている、市販の本の付録の石をじゃらじゃら弄っている。
自分を占って、悪い結果が出たのかさらに落ち込んでいる。


ああ、楽しい。

「とりあえず、バゼットさんは死んでいることにしときましたよ」

「………ありがとうございます」

なくした腕に使った以外のパーツは巧妙に細工し、あの屋敷内にぶちまけといたので暫く時間稼ぎにはなるだろう。
瀕死状態のバゼットさんの止めを刺しにくる追っ手は来ていない様なので、どうやらバゼットさんを裏切ったバゼットさんがいいなぁと思っていた、中年の神父は
細かいことをあんまり気にしないタイプみたいだ。

それとも片腕を失ったバゼットさんが再起し、復讐しに来ても大したことがない、とでも思っているのか。

教会側の神父の癖に中々面白そうな人物らしい。
聖堂教会の代行者と言ったらどいつもこいつも漫画に出てくるヘルシングの13課のような奴等だと思っていたが
実際バゼットさんの助手をやっていたとき出会った奴等もそんな戦闘マッスィーンだと常々思っていたが。
中々どうして変わり者だ。

バゼットさんから聞いた人物像の感想だが


世の中を舐めているというかなんというか。

話に聞くと妻子持ちらしい。
絶対碌な子育て出来ないタイプだ。


ジジイの記憶を見ていると、どうやら前回も参加していたらしいし。
碌な子育てが出来なかった我が遺伝子上の父親と一緒に。


本当に図々しい。

よく姉が愚痴を言う、姉の後見人らしいが、私会った事ないし。

実際、どうだかは分からないが。


ま、碌な人間じゃないだろう。



まぁ、私としては協会と教会の共同イベントなんていうドドメ色な聖杯戦争。
第一回目で聖杯が手に入らない時点で60年ごとにやるなんて阿呆の所業だと感じていた。
奇蹟は一度しか起こらないものだ、5回戦も続いてる時点で既に破綻している。

まぁ、既に本当に破綻してるが。


それでも

「まぁ、汚れていようがなんだろうが私が使うんですけどね」

もう私は大金を賭けた。
あの人形はお爺様のオリジナルの遺骨を支払って手に入れたもの。
糞ジジイの貧相なカルシウムの固まりだが、一応時価なんて付けられない程の価値を持つ。

しかもあれは元々は私のスペア用。
自分が死にそうになったら使おうとか考えていたわけだ。
態々、必死に前世のあるかわからない小説の知識を思い出しながら、頑張って買い取った品だ。



魔女とは等価交換を原則として動く物である。

いくら散財しようがどうでもよろしいが、散財した分が帰ってこないのは面白くないもの。
別に表立って参加するつもりはない、元々最後の最後に掠め取れればいいなぁ、ぐらいの面持ちでいたぐらいだ。


「長生きはしたいですしね」

「どうしたんですかサクラ、突然」

「これからの私達の身の振り方を考えていたんですよ」

口元がニヤリと動く。
なんてことだろう、なんて勿体無い事を仕掛けたのであろうか私は。
これから起こるだろうドタバタを近くで眺めずに過ごすなんて勿体無い。

「何を」

「アチラさんは最大のルール違反を行ないました。では?私達は?」

「……」

「私と最高のマナー違反をしませんか?バゼットさん?」

これからはバゼットさんのターンだ、私が最大限に助力しよう。
あれだ、私の可愛い子を裏切った中年男を最後の最後で横合いから殴りつけてやろうじゃないか。









勿論、殴るのはバゼットさんだが。



























蛇足




「色々よからぬことを考えてるところ、すみませんが……ところでサクラ、なんで私も含まれているんですか?」

「命救ったじゃないですか」

「う………」

「貴女はもう私に拾われちゃったんですよ?もう貴女は私の物です」

「物……って!?治療費ぐらい払えます!」

「死んどくことにしたって言いましたよね?貴女の口座やらなんやらとっくに凍結してますよ、どう払うんですか?」

「え………」

バゼットさんが混乱している。
可愛いなぁ。
伊達に助手をしていた訳ではありません。
助手になってから協会からの依頼料の管理等はバゼットさんが私に丸投げしていた。

実はというと春に契約更新ということなので、バゼットさんは私に丸投げしたままなのだ。

故に手続きはもうやってあげた。

やっぱり執行者って嫌われてるんですね、すぐに凍結してくれました。

「故に貴女は無一文で、殴ってナンボの仕事しか出来ない貴女は今、動けない……では?」

「あ、ああああ」

ぶるぶるとバゼットさんが壊れたファービー人形の様に口を半開きにして震える。

「あれですよ、よく言いますよ―――【金は命よりも重い】しかも貴女に使った金額は紙幣に換算しても貴女の体重よりも重い、じゃあ」

「貴女は……悪魔だ……」

「何いってるんですか、私は由緒正しき魔女ですよ?」

くたり、とバゼットさんがベッドに倒れこむ様子をみて、微笑む。



ああ、まだ処女で男性とキスもしたことがない姉さん。

私には可愛い彼女が出来ました。


心はまだですけど、身は買いました。

とか、いつか姉に言ってみたい。


そうだ、日本からイギリスを経由して国際電話をかけて言って見よう。
あの姉なら動揺して隙が出来そうだ。

心の奥底に出来た隙が此度のイベントで、遠坂家の血族縁のうっかりを発動させるかもしれないです。


ああ、私?


私は間桐ですから、うっかりなんてしませんよ?















あとがき

桜さんがついに始動。

立場逆転により
ジュネを助手にしたジャックのような桜さんになりました。

あとランサーNTR!



どうでもいいんですけど、ひさしぶりにジャイアント・ロボを見ていたんですが
熱くて最高に良いですね。

次回も熱くもないお話が続きます。




[31354] IF外伝 マセておしゃまで孕んだ幼女 上 悟
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:1bdafdc2
Date: 2012/03/09 21:23
身に宿る宿命から逃れ、望む恋心を捨て去って、独り生きていた。


「もしも桜に会うようなことがあったら、優しくしてあげてね。あの子、雁夜くんには懐いていたから」

3ヶ月ぶりに遠坂葵と遠坂凛に出会うと、もう一人の会いたかった子は既に遠坂家の子供ではなく
自分が逃げた、あの家の養子として引き取られたと聞いて間桐雁夜は足早に二度と見る気がしなかった故郷の景色を追い越すように歩いていく。
川を渡り、絶対に踏み入れることの無かった冬木の深山町に向かう。
自分が向かう先にどんな苦しみが待っていようとも、自分が只一人悲しませたくなかった女性のことを想うのならば

そう間桐雁夜は再び生家に帰ってきた。


間桐桜に会うために。

あの妖怪と対峙するために。


と思いきや




「あれ……」

生家の門前に向かう前に異常を感じた。

「桜ちゃん……?」

玄関先に他人と結ばれた愛していた女性の娘の桜が一人呆然と立っていたのだ。
まるで母親に悪戯をして怒られ、むくれる様に。
愛らしく頬を膨らませ何事かを口ずさんでいる幼女に自分が近づくと幼女は自分に気付いたようで。

「あ、カリヤおじさんだ!」

自分に気付いた幼女はフリフリと幼く細い腕を力いっぱい振って此方を歓迎するように迎えてくれた。

ああ、いつも通りの桜ちゃんだ、と安堵に息を吐く。
だが、その元気な様子は間桐の洋館の前では酷く似合わない。
おどろおどろしい暗さの中に一人立つ太陽光のような―――。

幼女がまっしぐらにこっちにその小さな足を懸命に急がせて此方に向かってくる。
その姿がどこか危うげなので此方も近づき、抱き捕まえる。

「わぁっ、カリヤおじさん久しぶりー。」

横抱きにして抱きかかえると小さな子供特有の高い体温が、寒空で冷えていた間桐雁夜を温める懐炉のようだ。
それを感じるように間桐雁夜は優しく胸に近づけて抱く。

「ああ久しぶり、桜ちゃん」

「ねぇ、カリヤさんお土産はー?」

「ああ、持ってきてるよ……って桜ちゃん大丈夫なのかい!?」

あまりにも普通に再会を喜ばれたので、一瞬、普通にお土産を渡すおじさんになりそうだった。

ちなみにませた女の子の凛以上に桜はませていた子だった。
お土産をくれるなら何処何処の銘菓が食べたいとかはっきりと言いつけるような可愛いらしい小生意気を発揮するような女の子。
間桐雁夜の抱き上げた手にぶら下がってるのは、東京のひよこ30個入り。

お菓子が大好きな子でよく姉の様に装飾品などよりもこういうもので凄く喜ぶ。

しかし、いつも姉に半分は食べられて悔しそうにする。
そして「お姉ちゃんはお姉ちゃんのお土産があるのに………でも、まぁ、しょうがないよね」
と仕方なさそうに微笑む子。

「あ、東京のひよこだ!食べたかった、牛乳と一緒に食べたいです」

と嬉しそうに抱き上げた手にぶら下がる、紙袋の絵を見て喜ぶ。

「ふっふーん、間桐さんちの子になったから、これからはお姉ちゃんにあげないで独り占めです…」

とませた表情で笑う子に

「大丈夫だったのかい!?」

色んな意味で、親元から離され、間桐の家に養子に入って大丈夫だったのかと抱き上げたこの女の子に問うと

「なにが?」

愛した女性の面影によくにた子は首を傾げて――――そしてハッとした顔になると
急に元気な表情を曇らせていく。

「ごめんなさい」

「え?」

突然、間桐雁夜を目を見つめて謝り出す。

「うーんと、カリヤおじさんって此処が実家でしょ?」

「ああ、うん」

訳も分からず、頷くと。


「全部壊しちゃった」

と少女はエヘヘと笑う。



本当に訳がわからない。

だが、目の前の洋館の玄関が少し開いているのでよくよく見てみると



中がまるで台風にあったようにグチャグチャになっていた。






え?









IF外伝 マセておしゃまで孕んだ幼女 上


うーん何が悪かったのか……幼女っぽいフリをして必死になんとかやりすぎた事を誤魔化そうとするが
無理なようだと、マキリサクラは諦めていた。


なんか生まれた自分の家が糞妖しい名家っぽさだったので二度目の生を怪しみながら満喫していた。
父親の年齢が実は母の一回り上とか、超怪しい。

前世で学んだオカルトの知識を駆使し、物心がついて過去の知識を思い出すと、自分の家を嗅ぎまわっていた。
二度目の人生で使うこの体はどうやら酷く霊感のようなものが強いらしく、怪しい物に触れるとたちどころ、それがどのようなものかはっきり理解出来た。

いや違う、理解出来るというよりも――――思い出せる。

うんうん、おかしいなぁ、とか考えながら過ごしていると、遠坂家の中から一つ宝箱を見つけた。

見つけた瞬間宝箱を開けるとさらに思い出した。

「ああ、うわ、え?なんで過去にきてるんでしょうか?………」

これ二度目だ、と。

『いやぁ、なんででしょうね?』

「あ、性悪ステッキ……貴女も?」

宝箱の中に封印されていた目の前の5千円くらいで売ってそうな玩具に問い掛ける。
この玩具、実は姉の最終兵器として使われた。

えーと。

どうやって使われたっけ。
確か、この前……ではないけど、また此処に生まれる前のこの前のことを思い出す。


死徒であるアインナッシュの苗をこっそり盗んで、促成栽培して、その長寿の実を食べようとか考えていて。
栽培の失敗をして別荘周辺に広大な砂漠を作ってしまったとか、そういうのやりすぎてあんまりにも私が調子に乗ってると思われ
ついに魔術協会、聖堂協会とか様々な組織が協力し合い、私を捕獲する作戦を実施したさいのことだ。
いや、別に調子に乗ってないのに、つうか私自身はやってないし。

全部上手く誘導して他人にやらせて、後から少し利益をちょろまかしただけなのに……。


アインナッシュの栽培だって他の人が勝手にやっただけだし……フカイ林って聞いて腐海の方だと思って苗をこっそり採取して
核廃棄物で汚れた土壌で育ててみたら、全然毒を出さないので、飽きて知り合いの魔術師にあげただけだし。

なんか長寿の実やらなんやらが出来るらしいのだが、凄い年月が掛かるらしいので成長を早める肥料とか提供しただけだし。

あわよくば、実をお礼にいくつか貰おうとか考えていただけだし。
失敗したのは私の説明を理解できずに失敗した人の所為だし。


いやぁ、本当は全部私の所為なんですけど。

でもなぁ、失敗だけはあちらさんのミスですし、私関係ナーイ。

とかいうような事を何度かやってると

全世界の怪しい宗教系団体から睨まれ、抹殺されそうになったが、のらりくらりと死んだフリを7回ぐらいして
また好き勝手にやってると、今度は宗教系団体達が協力し、私を抹殺するためにある作戦を立てた。

冬木第六次聖杯戦争を利用した私の抹殺。

私ならば聖杯をゲットするために絶対参加するだろうと確信していたのだろう、と皆さんは私の参加を睨み、私以外の参加者全員が協会の
選りすぐりだらけだった。

聖杯戦争は行なうが、お互い、マキリは見つけたら全員、そっちの方を優先しろ、という聖杯戦争。



それでも協力体制が甘いので上手く殺し合いに誘導し、これで私が聖杯ゲットだぜ!

と思っていると

現れたのは、始まりの御三家で唯一生き残っていた遠坂家の当主。

マキリは私に吸収されアインツベルンも聖杯戦争参加中に本拠地であるドイツの城も
聖杯戦争自体には参加しなかった私によって攻め込まれ、なくなっていた。


ちょうど強そうな人たちが召喚出来る時期だったので、それを使い攻め込んだから楽勝だった。
しかもアインツベルンは協会と交流を絶っていたのでヤッても誰も気付かないし、攻め込み知識の奪取の全部が終わったら
英霊さんには帰って貰ったので、聖杯戦争中誰かが勝手に敗退したんだろう、と気付かれなかた。
私の抹殺よりも参加者全員が聖杯に夢中になっていたから簡単だった。


というようなことが有ったので第六次聖杯戦争の御三家は姉さんだけ生き残っていた。


現れた姉は私を抹殺するため、この玩具を使い、究極形態マジ狩る姉さんに変身し、私を打ち破ったのだ。

聖杯に目がいっていたので油断した…。

英霊さんもいなかったし………。

しかも姉の横には死んだ筈の錬鉄の英雄が、英霊として立っていた。

「ひさしぶりだな……魔女。今日こそは殺してやる」

なんて反則。


ガチンコで勝てる訳ねぇ。


『あれは最強でしたね』

「その一角を担う物が言う台詞じゃないですよ…このっこのっ」

『うわぁっやめて茶色い汚い液体はやめてぇぇぇ!らめぇぇぇ!』


wwwwとか草を生やしていた玩具に片手に有ったコーヒー牛乳を仕返しにぶっ掛けて遊ぶ日々を過ごす私。

そんなことばかりしていると、丁度マキリの養子に入る時期にさしかかっていたらしく、母親が泣きはらした顔で私に明日から間桐さん家の子供になるのよ、と言うので

「あ、色々思いだしたけど、この体じゃ無理…」

養子に入ったら即行あの蟲ジジイを殺すかなぁ、と思っていたが無理そうだ。
またあの蟲プレイは最低一回はしないといけないのかぁ、貴重な私の処女が……せっかく二週目なのに、とか考えていると


『養子になる時、私を持っていきませんか?』

玩具が言う。


「あ、貴女使えますね、そういえば、まだ遠坂の体だし」

『魔法幼女とかやってみたいです、この前は魔法熟女だったので』


うん、6次の時には姉さん40越えだったしね。
その時、私は永遠の17歳やってましたけど。

早めに開催したけど本当なら60年後毎。

『魔法老女とか誰得』

「うん…」

でも面白そう。

見てみたかった。

とか思い、何か釈然としないまま、私はルビーちゃんをこっそり持って、次の日間桐の家に行った。

あとはお分かりでしょう。




「ああ、やりすぎちゃいましたね」

『やりすぎましたねー』

お母さんお父さんお姉ちゃんバイバイした間桐の家で最初の晩に、予想通りの妖怪ジジイのセクハラ。

勿論、全力全壊で迎え撃った。

並行世界から私の過去の全盛期モードを引き出してボコボコにした。
ジジイが出した蟲どもは直ぐ私の物となり、ジジイが混乱していたのが見物だった。

ある程度は反抗してきたが容赦ない攻撃で間桐の屋敷の内装ごと吹き飛ばし、即決着。

蟲倉に隠れていたジジイを引きずり出し、翌日朝の日差しに当ててゆっくりと殺してあげた。

「ジジイの干物完成!とか遊んで見たかったのに……」

「第三部のDIOの最後みたいにすぐ崩れちゃって面白くなかったですねー』

せっかくオヤツにしようと思っていたのに、ジジイが太陽の光に弱い死徒であることを忘れていた。
朝日で灰になってしまった。
まぁ一度食べたので、構わないが。

「でもどうしよう……」

調子に乗って屋敷内めちゃめちゃにしてしまった。

そうです、今の私は幼女。
マキリの血を引く人間を皆殺しにして、誰も頼る人間が居ないのです。

「おなかすいたー」

生命活動を行なうには寝る場所と着る物と食べる物がいるのだ。
それらを一緒に壊してしまったのだ。
まさか、遠坂家に戻るわけにはいかない。

寝るのはなんとかなるが、お風呂と着替えと食事が出来ない状態に陥った。

ついでにジジイの皮の予備も全部粉砕したので、それをきぐるみにして銭湯にもスーパーにも行けない。

金はあったが

そう、幼女は一人で買物も出来ないのだ。

「初めてのお使いも、もう出来そうにないし」

そろそろスーパーの店員が怪しんでいるところだ。
魔術師としてまだ体が出来ていないので暗示も使えないし。
そう、妹なので、魔術の勉強をさせて貰えなかったので、回路がまだ碌に開いてないのだ。

最強魔法幼女になれたのはルビーちゃんのお陰。
無理に昔の知識で今開くと体に無理が祟って自爆するし、最低でも1ヶ月ぐらいかけないと幼女の体が爆発する。



『もう一回変身しましょうよーそしたら町内に愛らしさを振りまいて買物できますよ?』

「嫌だ」

姉があれほど使いたがらない理由も分かる。
自分がやりたくもないキャラを強いられるのは、なんという苦痛か。

まぁ前回、魔法熟女に爆笑してお腹が痛くて、まともに反抗出来ずに死んだんですけど。

わかっていた。

この玩具のことは


だが

「語尾に「ニャん♪」とか嫌だ」

『可愛いですよー』

「可愛くても嫌です……可愛いのは好きだけど、私は可愛いのを愛でるのが好きなんです」

誰がにゃんにゃん猫耳魔法幼女さくらちゃんをやりたいというのか。

私は既に精神年齢○○歳だぞ。

ふざけるな。

「ロリババァキャラだったら許せた…」

『そっちですか!?』

「うん」

『今度はそっちでやりますよ?』

「えー貴女そう言いながら、またどうせ自分の好みを優先するじゃん?」

『YES!プリティでキュアキュア猫耳幼女!はうぅー!』

カードキャプターの方を最初要求したのだが、この玩具のプライドとかでそれは許されなかった。

『マスコットがいない!』

ので駄目らしい。

代用の蟲では駄目らしい。


「貴女とは本当にイイ友達になれそうですね……でも、お互いに自分が好き勝手にしたいがため、結局ぶつかり合いますけど」

『そうですねー』

ああ、どうしよう。



と、今日は初めてのお使い13回目で買ったスーパーのお惣菜でお腹を満たして
マキリの家の前で今日はお風呂はどこの銭湯で「初めての一人で銭湯」をしようかなー。

とか考えていると


救世主が現れたのだ。

しかも、まだ元気だったカリヤおじさんだ

しかもヒヨコ饅頭の紙袋もっとる。

絶対私の為に買ってきたやつだ。

牛乳はある、これで最高のオヤツタイムが私に。


『わたしにもクダサイ』

「どうやって食べるんですか?」




というような感じで私はおじさんにレスキューされ、中が荒れたマキリ家から脱出した。
その日、私の住む場所はカリヤおじさんのアパートとなったのだ。

全てを私の首にぶら下がっているペンダントの所為にしてなんとか誤魔化して。




その後







とある都内のアパート。



小春日和のある日、間桐雁夜は一人の女の子を助け出してから既に季節は夏になっていた。
あの日、桜ちゃんはあまりにもありえない奇蹟によって自らを救っていたのだ。

それが

『ねぇねぇカリヤさん、桜ちゃんの裸どう思いますぅ?』

今日も仕事を終え、都内に借りたアパートに帰宅すると、家でお留守番をしていた
桜ちゃんの手によって作られた妙に上手な手料理で夕飯の一時を過ごした。

まだ小学校にも入っていない小さな女の子にしてはありえない料理だった。

どうやらそれも今、お風呂場で体を洗ってあげている桜ちゃんの首に掛かっている不思議で不愉快な遠坂家の魔術礼装のお陰らしい。

ルビーと名乗る、意志を持つペンダントは間桐の養子になった時、桜ちゃんが偶然持ち出した物で
養子に入った日にあの妖怪ジジイに襲われ、その力を発揮したらしい。

それは並行世界の魔法の一部であり、どういう理論で構築されているかはサッパリだが
なんでも持ち主を変身させる力を持つらしく、桜ちゃんをその力で救ったらしい。

実際見せてもらったが、桜ちゃんが猫の耳を頭に生やし、空を飛んだことには大変驚いた。

『可愛い幼女の裸、ムラムラしません?』

だが、コレ、マジで捨てたい。

「誰がするか!」

「カリヤおじさん、目にシャンプー入った」

「ああ、ごめんごめん」

今髪を洗ってるあげていた桜ちゃんが「もう!ルビー!おじさんをからかわないで!」と怒る。

「今流すから」

「うん」

シャワーをかけ、髪の一本一本を丁寧に洗ってあげる。
洗い終わると桜ちゃんを胸に抱きかかえ一緒に浴槽に浸かる。

桜ちゃんは極楽気分で鼻歌を歌っている。
本当に小さいの女の子なので抱いていないと、浴槽に沈んで溺れてしまうのだ。

『ねえねえカリヤサン、浴場で欲「黙れ」

桜ちゃんの白いうなじから話しかけてくる、ペンダント。

こいつ、ことあるごとに自分をからかってくる。

オール下ネタで。

しかも自分が愛していた女性の子供を使った、下種な内容で。

桜ちゃんの教育に悪すぎる。

でも桜ちゃんは意味が分かっていないようなのでそれだけが救いだ。

だが、初めてこのアパートに桜ちゃんをおんぶしてこの家に泊めた初日。

このペンダントの

『イエェーイ!ヨウジョ誘拐コンプリート!おめでとうカリヤさん。これで性犯罪者ですね』

という発言だけは許せなかった。

あの日

自分が桜ちゃんに会った時、桜ちゃんが泣きながら

「もうどこにも帰る場所がないの……おじさん、助けて」

と言うので、冬木から離れた東京に攫う様に此処に住まわせて早5ヶ月。
最初は遠坂家に返そうとしたが、桜ちゃんは言うのだ

「お母さんとおねえちゃんのトコに帰ってもまたおとうさんに捨てられる」



確かにそうだ、魔術師の家の次女の桜ちゃんはどの道
いずれどこかの魔術師の家に送られ十年もすれば魔術師に妊娠させられ、子供を生むためだけに生きることになる。

そんなのは嫌だった。

だから

「おじさんと一緒に暮らさないか」

という言葉が気付くと出ていた。

すると、花のような笑顔を浮かべ

「うん、おじさんと一緒にいたい」

桜ちゃんは微笑んだ。

思わず泣きそうになったのは言うまでもない。
桜ちゃんは両親と姉を捨てて、自分と暮らすことを覚悟に決めていたのだ。
なんて、健気な子だろうか。

それをこいつは


「台無しだ」

『そうですかぁ?幼な妻ってよくないですかぁ?今は凄い未熟な果実ですけど』

茶化しやがる。

『惚れていた女性とそれを奪った男との間に出来た、母親によく似た美しくも可憐な幼女とか最高じゃないですか』

浴槽に沈めたら壊れないかな、コレ。

「もう、おじさんはそんな人じゃないもん!ルビー!めっ!」

『「めっ!」戴きましたー。はい、暫く黙りマース』

だが、持ち主の桜ちゃんの言うことだけは聞くらしいのでそれだけが救いだ。

「ごめんなさい、カリヤおじさん………」

浴槽の中、自分の胸に背にしてのっかっていた女の子が体の向きをくるり、と変え、自分に抱きつき悲しそうな表情でそう、言う。

それに慌てて

「いやいいんだよ桜ちゃん、大丈夫だよ、ちゃんと家にはいつか帰してあげるから、それまでの辛抱だよ?」

と言うとお湯に濡れ艶やかな髪ごと首を振り

「ううん、違うの……」

「なにが違うんだい?」

ちゃぷり、とお湯に沈んでいた細くてまだ幼い腕を間桐雁夜の頭に回し、まだまだ幼い可憐な顔を近づけ

「な、何を」

唇を合わせる。

キス。

顔を真っ赤にしながら眼を潤ませ一人の女性の顔で

「おじさんが好きなの、でも桜、まだ体大きくないからおじさんとえっち出来ないの」

亜wせdrftgyふじlp;:@!?

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい


なんかやばい。

「でもね、ルビーから教わったの……」

腕を放し、桜ちゃんは再びお湯の中に腕を沈め――――

「手と口なら……私でも出来るって」

ゆっくりと自分の男性自身にその小さく紅葉のような指を――――。

「てめえぇぇぇええええええええ!ルビーぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

『はいなんですか』



なに吹き込みやがった!?

その後、なんとか桜ちゃんを宥め、浴槽から出ることに寿命の半分を使った様な気がしたが
なんとかあのやばい状況から脱出が出来た。

これから桜ちゃんと同じ布団で就寝だ。

養子に出された日によっぽど怖い目にあったのか
別々の布団を用意していたが、毎晩自分の布団に潜り込んでくるので、最近では布団は一緒にしていた。


が今日は。

ルビーに騙された桜ちゃんは完全に言いくるめられたのか

えへへ、と可愛らしく微笑んでこう言う。

「おじさん、お布団の中で――――しよ?」

まだ起伏がない女の子の体。
しかし、輝くように白い肌。

パジャマとショーツを脱ぎ、布団の前で自分を手招く少女は
妖しく艶やか。

胸には桃色の二つのポッチ。
まだ毛も生えない、未熟な女性器の割れ目。

小学校にも言っていない、少女の裸。


そんなもの















やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい


やべぇ。




いままで、ずっと一人の女性の事を思って、碌に性に関して経験がなかった。
しかも、この少女と暮らし始めてから一度も性処理をしていなかった。

故に

幼くも美しい、目の前の少女に女を感じ、猛々しい男性の部分がぴくり、と動いたのに気付いた。

所詮こどものからだ、しかし、桜自身の妖しい性を意識するような雰囲気がそれさえも何か、危なげで美しい。






とりあえず、早く桜ちゃんを遠坂家に返さないと

大変なことになってしまう。


このままでは下種な変態になってしまう。


間桐雁夜は戦慄した。











続く。






あとがき

なんか感想で外伝やってくれとのことなので

上下の外伝を書いちゃいます。

聖杯戦争編さっさと書き終わってから書けよバーロー、とか言われそうだけど
今生まれた、妄想が止まらないのでコレを今書かないと、聖杯戦争編が終わってから書いたら
その妄想が薄くなる、と思ったので書きました。

xxx版は書く気はないので直接的な描写はないので15禁で。


ちなみに幼女モードSAKURAさんは完全に魔術で強くてニューゲームよりも目の前のカリヤおじさんでルビーと一緒に遊ぶ気満々。

等価交換の原則で、処女ぐらい別にいいや、的にノリノリ。
ロリに覚醒しそうで苦しむ可愛いおじさんと楽しく暮らします。

聖杯戦争編完結が遅くなる……。

誰だ余計なこと吹き込んだやつ。

「うわ面白そうかも」



思わず書いちゃったじゃないか


次回


性犯罪編と未来と悟り。
















[31354] IF外伝 マセておしゃまで孕んだ幼女 下 り
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:48244bec
Date: 2012/03/09 22:17
第四次聖杯戦争にカリヤおじさんは参加せず、私と穏やかな日々を過ごしていた。
そこらへんのライター業でどう私を食わせているのか、という疑問を抱くが。

現在、聖杯戦争を終えてからマキリの生き残りは海外にいる筈のあの兄となっている。

今や輝ける普通の小学生を満喫していた。

遠坂の体で生きるのは初めてだが、中々前回よりも運動能力が高くて楽しい。
おっぱいは別に間桐とは関係ないらしく、前回と同じ成長をしていた。
多分女性ホルモンの関係だろう、と思われる。
エッチなことを女性がすると女性ホルモンが分泌されるのだ。

しかし


今は小学5年生、立派なロリとして生きていた私は完全に忘れていた。

遠坂のうっかりはわが身に潜んでいることを………。


うん、一言で言うと

結局ルビーとの協力でおじさんを誘惑し、去年には遂に理想的な処女喪失を可能にした私は
毎日おじさんと愛欲に溢れたラブラブセックスしていたが、避妊を忘れていた。

いやぁうっかり、うっかり。

膨らみ始めた自分の子宮の位置をいとおしさで撫でると微笑む。


前回の初潮時期とは違うの忘れてた。

お赤飯炊く時期に気付かず、妊娠してまった。

ま、前回も子供を作らなかったので、これは未知な初体験で悪くない。

女としての幸せってヤツを享受するのもまた一興。
若干、早すぎるが、私の精神年齢から考えると、高齢出産なので問題なし
大分魔術師としても前回の10分の1程度の業を使用できるので、若すぎる母体での出産も大丈夫だろう。
遠坂なので蟲使いとしての技能は失われたがどうせ、前回で既に若返りの業を取得していたので
蟲使い技能の再取得はカリヤおじさんとこれから生まれる子の人生に付き合ってからでも構わないだろう。

いや、それとも蟲はやめて、前回、中途半端に終わった架空元素を極めて
架空元素使いとして大成しようかと悩む今日この頃。

おじさんが目の前で青白くなっているのを見て楽しむ。
うんうん、ちょっと悪いことしたなぁ、と口元に笑みがこぼれそうになるのを我慢する。
これで10歳を孕ました鬼畜になったもんねおじさんは

『いやぁやりすぎましたね』

「うんうん」

『ですが、これで私の次のマスターは決まりましたね』

「は?」

『え、嫌ですか』

「嫌だ」

誰が自分の子供にこんな玩具あげるか。
しかも産み分け的に考えて、大人と少女のセックスという
棒のサイズ的に満足いくセックスで絶頂しまくって出来た子だから
男の子だぞ、多分。
黒歴史大量生産愉快魔術礼装なんて誰が渡すか。

自分の子を魔法少女な男の娘になんてしたくねぇ。
一応、子に私の趣味に付き合わせず真面目に育てるつもりだ。
無垢な赤子に罪はないのだ。

そこらへんはまだまだ情を捨てきれず魔女として大成できていない私の未熟さだが



とか考えると、我が遺伝子上の父親って……。
私の母親をイカせれなかった、へなチン野郎だったのかも。
優雅なセックスに拘り過ぎて、情熱的じゃない感じなのかもしれない。

ああ、よかった、私は夜ではバーサーカーな人を選んで。

ふふっ

お母さんは前回と違ってまだ元気らしいので、自慢しようっと。
どうせ夫を亡くして夜の生活も独りでやってそうだし。

お母さんは確かに妻としては理想的だった女性だった。
愛情よりも忠節を優先する、まるで前時代的な女性。
だが、母としてはイマイチ。

自分の子が妖怪のトコいくんなら殴ってでも止めるべきなのだ。

それが子を持つ母だろう。


私はそうはならない、100年くらいは良い妻と良い母を演じてやろう。
どうせ、好き勝手に長生きできるんだし、こういう経験もしておくべきだ。






IF外伝 マセておしゃまで孕んだ幼女 下

副題 悟り







間桐雁夜は頭を抱えていた。



なんと



好きだった昔の女の娘を孕ませてしまった。

しかも小学5年生。

自分が行なったあまりに鬼畜な所業に戦慄する。
確かに現在愛している女性の桜の度重なる誘惑に耐えかねて手を出したのは自分だが
そこは人として一線を死守するべきだった。
いくら桜を育てるためとはいえ、仕事を増やして他の女性との関りなど捨て、録に性欲処理も行なえず
独りでの処理のさいも、糞ルビーのせいで悉く邪魔に入られ
あまつさえ桜が8歳の時には既に自分が寝ている間に桜の手によって色々され、何度か処理をされてしまったとはいえ

風俗にでも行けば良かった。

個室ビデオルームでも良い。

だが、去年のあの時は絶対ルビーが性欲増強剤を夕食に盛ったせいだ。
あの夜、気付くと布団の中で血と白い血で汚れた、産毛も生えない少女の丘。

「おじさんのモノにされちゃった」

と顔に蟲惑的で艶然とした表情を浮かべ、裸で息を荒くしていた少女に驚くと
自分も裸で、しかも男性自身が血と自分の白い血で汚れていた。

その時にルビーがこういった。

『魔法のお薬でカリヤさんがバーサーカーになりました』

ふざけんなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


ということがあった。




現実逃避から帰ると

胃が痛い……だが泡を吐いて気絶できない。

目の前で大事そうにお腹に手をやる少女を傷つけることになるからだ。
遠坂家よりも長い間自分と過ごした少女。
最初は葵さんのように穏やかな少女に成長していくと思えば、明るく天真爛漫さで自分の過去の傷を癒してくれた少女。
劣等感と後悔で生きてきた自分の希望だった。
ただ帰る場所をなくした、健気な少女ではなく、自分を愛してくれた小さな女性。
ルビーの策略とはいえ、こうなってしまったのは自分の所為でもある。

魅かれていた、惹かれていた。

自分を信じられなかった自分に100パーセントの信頼を寄せ、甘える少女。
何度か聖杯戦争が終わった後、父がなくなった母元に帰そうとしたことは何度かある。
がずるずると帰さなかったのは自分の意志だ。

しかも今、愛する小さな少女には新しい命が宿っているのだ
いくら鬼畜変態最低最悪ロリペド野郎と周囲から蔑まれようが

守ってみせる、と決意を新たにする。


でも


もう少し現実逃避していいかな……。







そんな風に苦悩する、男を見て二人(?)は

(とか考えてるんでしょうね、どう思います桜さん?)

(うん、意図的にそういう風にしたのに、カリヤおじさんって本当に駄目な子で可愛い)

(私としてはもう少し年齢的に我慢させた方が良いと思ったんですが)

(駄目ですよルビー、あのタイミングが一番美味しいんですから)

(それはどういう意味で?)

(バナナのサイズと私のアワビのサイズ的に)

(二次成長が入る直前こそ至高ですかー。私はもうちょい)

(なに言ってるのルビー、なのはちゃん9歳が一番可愛いでしょ)

(おおっ!流石桜さん、でも貴女の名前は桜なので12歳まで……)

(カードキャプター禁止しといて何を言う、ランドセル少女は9歳が良いのだよルビーさん)

(………)

(どうしたんですかルビー?)

(貴女こそ我がマスターに相応しい)

(ふふっありがとう)

(ところでマスター、安定期はいったらどうします?)

(勿論、ロリ妊婦お腹孕みセックス!)

(我がマスター。ますます尊敬致します、あなたの十全なサポートを行ないますのでお楽しみください)

(この前みたいに撮影よろしくお願いしますね、ルビー)

(では是非とも孕ませられた魔法少女のセックスよろしくお願いします)

(ええー。猫耳とかやですよ語尾ニャンとか安直すぎます)

(その安直さがいいんですよマスター。しかも同時にケモノ耳っ子妊娠中セックスが出来ますよ)

(な、なんだと……大したヤツだ)


などと楽しそうに歓談していた。




これは全て解き放たれた、この二人がこの世を席巻する100年前の話だ。
何れ、この二つの災厄はあの魔道元帥さえも

「こいつらは手が付けられん」

と最初は赤い月に挑んだ時並に怒りをもって相対することになるが
万華鏡の人も結構愉快な人なので何れ並行世界を旅する三人(?)が現れることになるかもしれない。

だがこのときはまだ原石である二人のお話だ。

原石は原石でも核燃料の原石だが。


「決めたよ……桜」

おじさんがどうやら決意を決めたらしい
なんか目が虚ろだが。
ヤケクソ気味だが

堕胎しろとは多分言わないだろう。


「おじさん……私、おじさんの子産みたい」

「ああ、勿論だよ、でもちょっと間違ってるよ」

「え」

「これからはおじさんじゃなくて雁夜と呼んでくれ」

おじさんは私を産婦人科に連れて行くために保険証を握り締めてそう言う。

「でも桜はまだ小さい女性だからとりあえず今すぐ病院だ!」

ヤケクソになってる。

「でそのあと僕は警察にいってくるよ」

おじさんの目が澄んだ水のようなレイプ眼になってる……。

あ、やば。

「ルビー……」

『お任せあれ』

とりあえず、色々問題発生しまくるので対策を練る。
妊娠中なので負担が掛かる魔術は使えない。
このまま行けば不味いので。
とりあえず、ルビーに頼んで暗示の魔術の用意を怠らないようにしないと、カリヤおじさんが社会的に死んでしまう。

この後普通に産婦人科に行き、警察に向かい、20歳の若奥様姿の私とちょっと年齢が上の夫という夫婦が警察署に惚気にきたと勘違いされ
雁夜の言葉に主語が足りず

「この子に子供が出来ました」

とか言うだけじゃ怪しまれず、初老の警察官に

「おや、めでたいねぇ」

と祝福され間桐桜がすかさず

「ええ、だから警察の方々も私の子が安心して暮らせるように街を守ってください、お願いします」

という会話で終わる。

で、後々その会話は初老警察官によってちょっと良い話として新聞社に投稿され
その新聞の編集にあたっていた本人が悲鳴をあげることになる。

そう、頑張った雁夜さんは今では一端の新聞社の編集者になっていたのだ。
モラリストでなければいけない記者の癖にペドだが。

胃液で胃を溶かしつくそうな状態となった夫と若すぎる少女が書店でたまひよを買ってるのをみてヒソヒソ声で喋る人々。

「ちょっルビー。暗示解かないでくださいよ雁夜さん自殺しちゃうでしょ」

『これも羞恥プレイの一環ですよ』

「雁夜さんの表情が虚ろ過ぎて、これから兄弟が出来る私と、お父さんに見えないでしょ」

『周知プレイです』

「誰が上手い事を言えと」

「やっぱりお父さんと…桜と俺はそれぐらい歳が離れているんだ、やっぱり俺は……」

「ここまで落ち込むと手が付けられないですよ、いい加減にしなさいルビー」

『やっぱりロリコンは犯罪と思いながら背徳な気持ちで生きて貰わないと』

「んー背徳感こそロリの魅力か……流石、ルビー」


「司法でも俺を裁けないのか……葵さん、凛ちゃん、俺を裁いてくれ…死んだ時臣は化けて出てくれ……」

「雁夜さん、流石に妊娠の挨拶は安定期に入ってからしましょうよ」

「……………」

あ、壊れた。

ま、次は里帰りかな


ああ

「楽しみです」

『楽しみです』








遠坂葵はずっと心残りがある、夫に先立たれ、残った娘と共に暮らしながらもう一人の行方を捜していた。
しかし、禅譲の家でも数年前から探しているが見つからない。
聖杯戦争中に多分居なくなった間桐の家に入ったあの娘。
あの聖杯戦争中には多くの人々が聖杯戦争参加者によって殺されたという。
間桐の家が一向に聖杯戦争に参加しないので、まだ生きていた夫が確認に行くと、なんと間桐家が襲撃に遭った跡を見つけたそうだ。
破壊された間桐の屋敷内には濃密な魔力の残滓が残っており、これはまさしく何処かの魔術師の手によって行なわれたと夫は言う。

娘の桜の行方が分からずしまいになり、夫もなくなり、姉の凛との二人きりでの生活が続き、静かに遠坂葵の心は蝕まれつつあった。
だが、立派に父の後を継ぐ為強く生きる凛を見て葵は諦めなかった。

今度こそ妻としてではなく一人の母として桜に接するために葵は娘を懸命に探した。

だが、遠坂家に入籍したせいか、葵は完全に一人の幼馴染を忘れていた。
ここでうっかりが発動した。
何年も冬木に帰ってこない幼馴染について調べなかったのだ。

故に


自分の娘が幼馴染の男性と愛しあい、子供まで作ってるなんて思いもしなかったのだ。


「お腹の子は雁夜さんと私の子供です」


「懐いていたとはいえ………雁夜くん…うう」

里帰りで故郷に帰ってきた二人の姿を見て、歓喜の渦に涙した瞬間。
自分の娘のお腹が膨らんでるのを発見し、驚愕のあまり、泡を吹いて遠坂葵は気絶した。

「ああ、やっぱり」

と桜は思った。
こうなるとは予測していたがここまで衝撃を受けるとは、流石お母さん、期待は裏切らないと小学生用に作った妊婦服姿の桜は微笑む。
その横目で

「お母さんっ!?桜っ!?え、えええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?
…………雁夜おじさん、貴様ぁああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ!?」

中国武術を駆使して遠坂凛が怒りの絶招を雁夜に放つ。
どんどんぼこぼこにされていく雁夜。

「よくも桜を!」

「ぐはっ!」

「変態!鬼畜!ロリコン!ペド!サディスト!最低!最悪!この蛆虫が!毒虫が!妹をよくもよくも
よくもよくもよくもよくも!許さない許さない許さないっ!」


「格ゲーの練習モードみたいですね」

『コンボが決まりますね、でもそろそろ止めないと』


「なんで私の技をっ!防がないっ!そうかっ!このマゾがあああああああああ
変態!変態!変態!変態!」

とりあえず止めないと10歳にして妊婦な未亡人になりかねないので
ルビーに止めて貰うことにする。

とりあえず、母が目覚めるのに数日の時は要した。
その間に私は父のお墓参りを済ませた。

雁夜さん?

勿論、姉に折檻されてます。
一切反抗しないので遂には気持ち悪がられ、今は冷たい眼差しで姉に監視されてます。
半径5メートルは女性に近づくなと。


大きなお腹のまま父の墓前に立つと
一人の神父にあった。

時臣の娘の桜だというと、神父は驚愕の眼差しで私のお腹を見つめる

「一つ聞くがよいかね………君は妊娠してるのかね?」

「はい」

等と会話すると、カルチャーショックを受けたらしく驚愕の眼差しを浮かべたまま何処かに消えた。
そして帰ってくるといっぱい魔術的なアイテムを暮れた。
祝福系のモノばかり。
中には安産の概念が掛かった出産服が混ざっていた。

なんでこんなによくしてくれるのだろうか、と思いながらホクホク気分で墓前を後にした。


その後


「ま、まさか……驚きのみで私の心が揺れ動くの……か」

「我が財から出産に関係する財を出せとは、突然なんだ綺礼、貴様まさか子供でも出来たのか?」

「違うぞギルガメッシュ……時臣の子に子が出来ていた…」

「意味がよく理解出来んぞ綺礼」

「だから、時臣の妹の方に子供が出来ていた、10歳だ」

「む……そうか、我の時代では珍しくもなかったぞ。だが、あまりにも早いと産まれず死ぬことが多かったがな」

「だからだ」

「………貴様、存外に人間らしいことをするな」

「これから産まれ出るものには罪はない、神職に預かるものとして祝福したのみだ…」

だが流石に祝福してよいものか、外道神父でさえも迷ったらしい。



桜がルビーを護衛に道を歩くと
多くの人々が驚愕の眼差しを浮かべ、桜の膨らんだお腹に眼差しを送る。

またまた遠坂家のうっかり発動し

冬木の町に10歳ぐらいの妊婦が居ると噂になる。
冬木の人々は、性犯罪によって少女が妊娠したのだと、思い、町内には性犯罪予防のため多くの大人達が子供が遊ぶ場所などを
パトロールするようになったという。




1年後



「お母さんですよー」

と赤子に笑顔を送る11歳の少女が遠坂家には居た。

「……おばぁちゃん…………ですよ」

「お姉ちゃん……ですよ……」

無事に子供は生まれ、初産を終えた少女は慈しみの笑みを自分の子を見る。




「お父さんですよ」

「こないで変態!」

「変態はくるな!」

遠坂葵と遠坂凛によって妨害を受け、間桐雁夜は母子に近づけない。
二人は汚物よりも穢れたものを見るマイナスの視線で男を睨む。
この娘と母は共同して我が妹と我が娘を守るため日々男を監視する。


「駄目ですよ二人とも、赤ちゃんをお父さんを見せてあげないと、愛し合って出来た子なんですから」

母の顔で微笑む幼き少女。

「ねえ、雁夜くん、貴女死ぬべきだと思うの」

「え?」

「こんな変態の子だって、将来大きくなったら私の孫の理樹になんて言うの?」

桜の子の名前は理樹という非常に可愛い男の子。
遠坂葵は責任とって死ぬべきだと思うの、と男を責める。




それを耳にした桜はこう言うのだ。

「お母さん」

「どうしたの桜、分からないことがあったらお母さんに直ぐ言うのよ?これでも二人育ててるんだから、お母さんに頼りなさい」

「そうだわ、桜。こんな変態なんかに頼らずお姉さんに頼りなさい!」

「うう……桜ぁ」

雁夜さんは此処一年でみるみるやせ細り、まるで前回の人生でみた、第4次聖杯戦争の時のように弱っていた。

表情だけ。

一応、二人には桜の遺伝子上の父として生かされていた。
最初の頃など姉に魔術のかかった手錠を嵌められ、生活していた。
そのせいで手錠つき安定期セックスを行なうことになったと桜は後に面白く可笑しく笑う。

だけど、あまりにも夫が弱ってるのを見て桜は言う。

「葵さん、凛さん、貴方達。私は今、間桐桜なのよ?言っておきますけど
私が雁夜さんに助けて貰わなかったら養子に入ったあの日の晩に間桐の蟲に犯され、胎盤にされていたんですよ?」

と爆弾を落とす。
しかもお母さんとお姉ちゃんと呼ばずに名前読み。

バンカーバスター級の衝撃が二人を襲う。

「あああああああああああああごめんなさい桜ぁ!」

「桜!いやぁ!駄目!」

「事実です」

したり顔でそう、言う桜に母と姉の二人は苦しみ悶える。

嘘はいっていない、本当の事実をいっていないだけ。
決定的な瞬間は自分でなんとかしたか、あ、嘘だっけ。

と二人を眺める。

ああ、面白すぎる。

子供が生まれてから一番雁夜に酷く当たっている遠坂葵にさらに爆弾を落とす。

「ねえ、お母さん雁夜さん」

「さ、桜、まだ私のことお母さんって呼んでくれるの?」

「桜、どうしたんだい」


「雁夜さん、お母さんよりも、若い方がいいよね?これからいっぱい子供つくろうね!」

「ぐはあっ!?」

若干まだ過去に対して思い入れがある雁夜さんにも爆弾を落とす。
言っておくが、浮気は許さない。

「妊娠中以来シテないから今日しない?、どうせならまとめて作りたいし」

次は女の子がいいなぁと無邪気に残酷に桜が笑う。

(うわぁ、流石のルビーちゃんもドン引きです)

(散々、私にプレイ内容とか勧めておいて何を言う)

流石に「私のお腹の中にいる子供にアナタのっ!ミルク頂戴っ!」

という台詞とかお前が言えっていっただろうが。
それを撮影しながら『エロ本で見たあのシーンが遂にリアルでっ!ルビーちゃん感激』

とか言ってたじゃないか。

(大概貴女も変態ですよ?)

(実際やる方が変態です)

(お互い様ということで)

(そうしましょう)


(それにしてもリッキー君は期待できる顔ですねー)

(そう思う?ふふっ実はね)

(なんでしょうか)

(この子、将来世界を狙えるぐらいの子になりますよ)

(まさか桜さん)

(妊娠中に全てのパラメーター極振りしましたよ、勿論)

(流石っマイマスター!)

(頭脳は記憶力が人より少し高いというぐらいだけにしましたけど、他の才覚はバッチしです、なんというか天然系天才タイプ?)

(頭脳を超天才にしないその心は?)

(私みたいな生意気な子供とか勘弁、後は育て方さえ間違わなければ、10年後には姉さえもドキッとするような絶世の美少年になること間違いなしです)

(オネショタ!?)

(ふふって魔女っていうのはね、十年、二十年後のことを考えながら生きるのよ?勿論、理樹には理想的な天然ハーレム主人公のような性格になって貰います)

(女性には絶対優しく、紳士で優雅でイケメンで文武両道な?)

(ま、実際皆そう育って欲しいですよね?行き過ぎると駄目ですが、あとちょっとマザコン気味にします、雁夜さんには冷たい感じに)

(いや、この顔だと絶対行き過ぎますよ、20年後に近い並行世界今、覗きましたけど)

(え、マジですか?)

(マジです、あとちょっと違うカレイドな世界で魔法美少年としても活躍してます)

(え、なにそれ、超みたい)



二人は世界を愉快に過ごすために語り合う。


その横で


「「このっ変態がああああああああああああああああああああああああああああ」」






とまぁ、こんなハッピーエンドもあってもいいんじゃないかな、と桜はニヤリと妖しく厭らしく




とても幸せそうに笑う。





外伝IF end












そして

「桜ちゃん!此処から逃げよう!」


「ハイ!」



二人と新しく生まれた一人は仲良く魔術師の家から逃げ出した。
雁夜は片方の手に息子を抱え、もう片方の手は少女と手をしっかり繋ぎ歩いていく。

本来とは違う、一つの未来。

強引な未来であっても幸せであるのなら構わない。


学ぶことは楽しかった。
外れた道を往くのも悪くない。

でも人を愛すこと、それは人間の性。

どうやら魔女になるのは本当に100年は無理だと思う。
だって、こんなにも繋がれた手は暖かい。

嗚呼、今どこか別の世界に私が生まれたら、こうして誰かに繋いで貰って欲しい。

ずっとずっと。


そうしたら、マキリサクラは妖しくも厭らしくもない


本当の笑顔で笑えるのだから。






fin





























あとがき


銀河美少年クラスの魔法美少年になる理樹君に幸あれ。

外伝終わりです。


ちょっと早足気味ですが……こんな感じです。

カリヤさんは正真正銘の鬼畜として生きることになりそうですが、死ぬよりもまし。


で許してくれるかな?

つっこみ役不在の本編が次回から続きます。


最後の台詞は雁夜さんに原作でもしIFがあるなら言って欲しかった台詞。
自分的に最高のロリとおっさんはひぐらしの赤坂さんと梨花ちゃんコンビ。

雁夜さんループしてくれないかなぁ。

是非とも

「桜ちゃん、君を助けに来た!」

とかやって欲しい。
雁夜逆行モノとか呼んでみたいですね。






[31354] IF外伝 天より他知るものなく
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:48244bec
Date: 2012/03/13 22:25
結局、遠坂家から出て私達はあの間桐の家を改装して冬木に住まうことにした。
間桐の家の当主は雁夜さんになるようにこっそり細工を施して置いたお陰で、今では冬木一の金持ち夫妻。

私は学校には通わず、家で小説家として執筆活動をし始めた新鋭の作家である雁夜さんと一緒にご飯、洗濯、お風呂、掃除、育児、セックスと忙しくも
普通の一人の奥さんとして生活していた。

一応周辺住民の方々にはカヴァーストーリーとして、家族を冬木の大火事で家族を失い、その後数年間どこぞの変態に監禁され孕まされ
唯一、血が繋がる叔父さんに引き取られ、子育てをしている幼い母として冬木住民には伝わってるので暗示もかけずに生活していた。


物凄い波乱万丈。


と笑うくらいのヘビーなカヴァーストーリーだが。


私には今、二人の子がいる
一歳の男の子の理樹と産まれたばかりの女の子の杏樹。
今日はたまには休んで気分転換しなさい、と言う雁夜さんに言われ、育児の休暇を与えられた。
理樹も杏樹も夜鳴きが酷い子で、最近はヘロヘロだったのだ。


実は前回で食らってきた知識の中に、ちゃんと子育てをした人間が居なかったのだ。
どいつもこいつも女なんて産む機械としか見做さない奴等だったので、当たり前な話だが。

周囲のママさん方は幼い私に対し、様々なことを優しく教えてくれ、助かっているが。
子育ては母親自身がやるものなのでただ話を聞いて最近やっている離乳食作りも全部自分でやっている。
親切なママさん方にレシピを沢山山盛り戴いているので結構楽だが。


そんな未知と初めての体験にヘロヘロしながら、私は楽しんで居た。
12歳の少女としてはまず日本では御眼にかかれないハードな生活だが、ここ2年、魔術は全てルビーにまかせっきりだった。
我が子達はどうやらステの強化をし過ぎた様で、霊感に優れ、私が魔力を回すと機嫌が悪くなるのだ。
本能的に自分の母親が人を捨てようとするのを敏感に感じるらしい。
泣き喚いて私を求め始めるので録に魔術も使えない。

100年ぐらいは魔女休業するから大丈夫なのになぁ。

そうは言っても赤子に言葉は通じないので意味がない。

ルビーまでも

『リッキー君とアンジュちゃんは私が全身全霊を賭けて見ておくので出かけてください』

と言うので今日は素直に休んで、前々から行こう、行こうと思っていた場所に行くことにする。



IF外伝 天より他知るものなく



てくてくと教会に続く石畳を歩いていく。
二人目も生まれたことだし、今日はあの魔術師らしい神父に会いに行く。

言っておくが浮気ではない。
雁夜さん以上に私と体の相性抜群な人は多分この世界には居ないのだ。
性豪として前回生きていたが今の私は究極の快楽を齎す人に出会ったので、男も女も今は性の対象として興味がないのだ。
昨日だって散々雁夜さんとヤリまくったので満足してるし。

2年前貸してもらった祝福された出産服を帰しに行くだけだ。
実はこの出産服、売っても値段が付かない宝具なのだ。
なんの気まぐれで私に渡したかはしらないが、子は二人で十分だと思っているので、それを帰しにきた。

教会の中に入る前に、我が遺伝子上の父の元に向かう。

墓前には相も変わらず母が花を定期的に添えているようで、道端で見つけた根から引っこ抜いたタンポポも必要ないようだ。
珍しい西洋タンポポじゃない日本種のタンポポだったが、これは家に持って帰って雁夜さんのコーヒーにしてあげよう。

墓前の前に立って、逆十字を切る。
死んだ男は外道を往く魔術師だ、十字よりも此方の方が相応しい。

「神の家の前で逆十字を切るとは、罰が下っても知らんぞ」

逆十字を切ると後ろから声が掛かる。
私は振り向きもせず、こう答える。

「聖堂教会と敵対する異端者である魔術師がキリストに召されるなんてなんて冗談でしょう?」

「確かにそうだな」

「結局お墓なんて今生きる人たちの為でしょう、忘れないための場所です」

「君はそう思うのか」

「いいえ、私には忘れないための場所なんて必要ないです、私は物覚えが良い子なので」

そうだ、前回だって私はそれなりに長く生きていていながら、誰一人としてお墓なんて作らなかった。
そもそも骨が残るような死に方が出来た人なんて一人もいなかった。

「くっ………2年前か、君に会った時も思ったが相も変わらず小気味が良いな」

「いいえ、ただ生意気なだけですよ」

「貴方のお名前は神父さん?」

私は振り向き、用意していた出産服を手渡す。

「いいや、名前はいらないだろう、神の家に居る私は神父だ、神父は神父でよい、名前などいらない」

いや、おもいっきし出産服尿やらなんやらで汚しといて名前も聞かずに帰すのはどうかと思う、と言うと。

「無事に産まれたか」

「ええ、この前は二人目です」

「ふ、二人目………まぁいい、祝福しよう」

「それはどうも」

「ん……ならば君には出産祝いをやらないといけないな」

「名前も知らない怪しいおっさんの出産祝いなんて貰っても迷惑なだけですが」

「それはそうだな……私の名前は言峰綺礼という」

「綺麗さん?」

「綺麗の綺に礼節の礼だ」

「ふーん、ロマンチックな名前ですね」

「それは褒めているのかね」

「褒めてますけど?貴方は濁点が付いたギレイさんが良かったんですか?」

「いいやこの名前で良かったよ」

「あっそう、で、その綺礼さんは出産祝いに何くれるんですか」

「これだ」

男は懐から一つの短剣を抜き出し私の手に乗せる。
一瞬、その短剣で殺されるのかとビビッたのは言うまでもない。
だってこの男聖堂教会の代行者やってた人だし、多分。

あれほど命を狙われ慣れていた私の背中にいつのまにか立っていた男だ。
それとも、もしや、危機感が衰えているのかと勘違いしたが、そうではない。

目の前の男はどこか人として壊れているのではなく、足りていない。
既に失われている、とでもいうのか、そういう空気を感じた。
そして渡されたのは魔術師の中でもポピュラーな魔術礼装だった。

「アゾット剣」

「お守りぐらいにはなるだろう?」

「へーほーふーん、凄い物騒なお守りですね、女の子にモテないですよ、綺礼さん」

白とアメジストの刀身を眺めているとふと、気が付く。

「やっぱいらん」

そしてすぐ綺礼さんに返す。

「人ぶっ殺した剣を渡すなんて何考えているんですか、この生臭神父」

私には分かるぞこの野郎、こいつこれでどこぞの魔術師殺しているな、グリップからこの神父の匂い、刀身からは

あ。


「あ、私の遺伝子上の父親殺したのはもしや、貴方?」

「…………わかるのか、遠坂桜」

「は?ナニ言ってんですか、大はずれですよ、私の名前は間桐桜です、しかもオカド違い」

「なにがだ」

「これ、貴方のことですから、元々は私の姉にあげるんでしょう?だったらそっちに渡してください、私は間桐なので」

神父は驚愕の表情を浮かべ懐に短剣を収める。
何故わかったか、はん、たかが40年程度の若造が舐めるなよ。

ひっさしぶりに魔女としての才覚が発揮される。
魔術師としてではなく魔女として神秘に関ってきた私には分かり始めていたのだ。
少しばかりのこの世の因果ってモノに。

神秘は人の想いと幻想だ。
ならば、魔女ならわかる、人の想いと幻想が。

「あのですね、マジで言いますけど、此処100年は怪しい世界のごたごたなんて関る気真っ平ごめんなんですよ」

「そうか………100年に一人の逸材の姉を既に超えているのか君は、案外、時臣も見る眼がないな」

「本当にそうですね、見る眼ないですよね………貴方みたいな男を信用していたなんて、人の見る眼がないですね」

「そうか、そうだな……残念だ、一目見たときから何れ、君の傷を切開してみたいと思ったが」

「切開は帝王切開で十分です」

二人目、難産で帝王切開でしたから切開はもう嫌です。
さっき帰した宝具、汚いから二人目では使わなかったんですよね。
ばい菌とか入りそうな気がして。

概念とかそういうの付いていても嫌なものは嫌なのだ。

もう病院とお坊さんは死ぬ前で十分です、しかも死ぬ気がないので絶対いらないです。

「ああ、最悪、サディストでマゾヒストな変態神父に出会うなんて」

「サドマゾ?」

「はい、もう貴方と周囲100メートルは一緒に居たくない位の匂いがぷんぷんします」

「そう言われたのは初めてだ」

「じゃあ、そうですね、貴方の周りには碌な人間いなかったんじゃないですか?」

人の不幸と自分の不幸で快感に浸れる変態なんてレアだなぁ、と私は言う。

「希少なのか私は」

「もう少しウェルダンだったら良かったんですけどね」

例えば痛いのも痛くするのも大好きなガチのSMマニアとか。

「焼き加減か」

「はい、数年前に真っ黒に焼かれれば良かったんですよ、貴方は、焼き加減中途半端です」

マキリの魔女は男の心臓を視ながらそう、言うのだ。
男は思った、それも悪くはない、と。


「そ、しっかり焼かれて、旅立てば良かったんですよ」

「どこにだ」

と、問われたのでマキリの魔女は天に指を指す。

それは天という意味ではない、と男は分かったのでこう、言う。

「アカシックレコードか」

「一つ老婆心で言いますが、貴方はね、もっと先を目指せばよかったんですよ」

学び、知り、それをさらに昇華させさらに学び、知る。
人間から外れた者共が目指す遠い地平線。
そこになら、きっと全ての答えがある。

男は問う。

「まだ遅くはないのか」

「は、ナマいってんじゃないですよ、あんた等が狩ってきたやつ等、全員ずっと目指しっぱなしでしょう?馬鹿みたいに」

「そうか、そうだな……だが、君は」

「うーん、一休憩中、此処100年は――――どうせいつでも目指せるんですから」

「おかしいな、君はまるで」

一度其処に行ったように言う。

「さーねー。どうでしょう………あ」

「なんだ?」

「雨が降る前の匂いがする、家に帰らないと」

「雨宿りなら此方ですれば良いだろう」

神の家に指を指す男。

「はっ!ナンパですか?こんないたいけな少女をナンパするなんてやっぱり変態です」

それにね、お前達外道はね、ずーっと私の餌だったんですよ。
でも今はお腹いっぱい、しかもあそこには多分、私よりも苛烈な何かがいる。
ダンジョンアタックは常に万全に。

攻め込むのは勝てる時のみ。

そういう風にしないと何時でも敗北は転がっている。
それに今敗北は出来ない。

「娘と息子が待っているので帰ります」

ああ、多分もう、泣いているだろうな、恋人なんかよりもずっとラインが繋がる我が子達だ。
帰りに二人が大好きなDVDでも借りて帰らないと。

てくてくと間桐桜は来た道を歩いて帰る。

最後に男に間桐桜はこう、言う。

「姉か貴方かどちらかは知れないですけど、まぁ頑張ってください」

それか、誰かか。

まるで未来を見通すように少女はそう、いい残して男の前から立ち去った。
それを見届けると男は教会の中に静かに入っていった。


IF外伝 天より他に知るものなく 了











あとがき

2週目桜さんの魔女としての現在レベル編。
ママとしてはレベルは低いというお話でした。

やべえ、外伝書くの楽しすぎる。



[31354] IF外伝 桜さん家
Name: みさりつ◆24f58f99 ID:48244bec
Date: 2012/03/11 00:33
「もう、駄目なようですね、流石に英霊を打ち破るのは人の身である私には無理だったか」

「ここまで私達を追い詰めておきながら何を言う」

「所詮魔女を名乗っていても、この程度なんですよ。だから私は駄目なまま………ここで終わるでしょう」


目の前に立つのは一人の英霊。
その隣に立つ女性。

「何度望んでも絶望する、何度挑んでも敗北する、何度試しても失敗する」

魔女はそう、笑う。

その笑顔に姉は問う。

「桜……貴方の望みって一体なんなの?根源に至って何を望むの?」

「何って、本当の魔女に成りたいからですよ、何者にも、運命にも縛られず、自由な……この世に産まれ、私は地獄に一度落ちた。
苦しかった、泣きたかった、悲しかった、諦めたかった……でも、諦めなかった、自由が欲しかったから」

「なにを言っているの?」


「自由を得てもそれは自由なんかじゃなかった、贋物だった、だってこんなに汚れ果てて、一人なんですもの」

最初に食べた知識は不味かったが、美味しかった。

ついつい禁断の果実のその美味しさに眼が行き、忘れていた。

その実の毒の強さに

あの蟲の怪物を食べた時、蟲の経験までも食べてしまった。
よせばいいのに、興味本位で知識だけで済ませればいいのに。

まだ、混ざるのをまともに防げなかった未熟な時の話だ。

まともに数百年の経験を体感したのだ。

無辜な人々を沢山殺戮してしまった。
たくさん犯して食べてしまった。


私は数百年の知識と経験と罪を食らったのだ。



でも耐えることが出来た、そんなもの鼻で笑うくらい大したことがない。
私には関係のないことだと嘲笑うことが出来るくらい下らない白昼夢にしか過ぎなかった。

穢れ、汚れ、誰からも見向きもされず、忘れさられても
本当に一人になっても別に構わない、私は自由だ。


自由があるならそんなもの要らない。


だが、毒の中にはもう一つ
さらに恐ろしい毒があった。


私の自由を奪う、決定的な毒が。













この桜はもう一つ語られる物語との違いが一つある。


それは目の前で雁夜が命を失い、蟲に食われていく姿を見ていたこと。
魔女として知識を食らう前に人として最後に触れ合ったのが間桐雁夜であった。
最後に人間らしく悲しみ、後悔した相手は間桐雁夜。
昔から好きだった女が他の男との間にもうけた娘。それを守る、というために命を賭け、その女にさえ、想いを穢され死んでいった男
叶わぬがひたむきな恋慕さえも汚した女の、その実の娘である自分の救済を最後まで望んだまま、死んだ男。


外道の知識を食らった日、間桐雁夜の知識の欠片を桜は偶然にも得た。
蟲の中で未消化だった脳髄を食らうことで


そして知ったのだ。


男の想いを




ああ、もし次があるのなら、私はこの男のために私の全てを投げ打ってみせよう。

あらゆる業を使って見せてでも。

例え、自らの魂が消失しようとも、報われぬあの男に相応しき報いを望もう。


その時



そう、想ってしまったのだ。


これから先の魔女としての最大の敵がこの想いとなることに同時に気付きながら。




そして、ある程度の年月が経つとすぐに故郷を捨て、世界に一人旅立った。













それから数十年、魔女は人を捨てようと努力を続けていた。

が、最後の最後で、いつも邪魔が入る。
いつも最後の最後に人が邪魔をする。

また、昔の後悔が、想念が邪魔をする。


私に残った人が邪魔をする。


どうすればよいのだろうか。

どうすれば、これを捨てられる?



様々な知識を食らってもわからない。

じゃあ、誰かに聞くしかない。


そうか。


そうか、アレなら教えてくれるだろう。








魔女が第六次聖杯戦争で聖杯を手中に収めようとしたのは過去の改変の為。


しかも自分自身が過去に移動し、自分の手による直接的な過去の改変。

アインツベルンに攻め入り、聖杯の運用技術を盗み出した。
願望器を根源に至る道具にするため。


根源を手中にしたならば、過去も未来も想うまま。

魔女は確信していたのだ。

「報われぬ男に相応しき報いを」

それさえ実現できれば、全ての情を捨て、完全な魔女と成り果てることが出来ると。

最後にして最初の一歩を邪魔をする、あの後悔がなくなれば
私は魔女として在るがまま自由に全てを知り、全てを超越することが出来る筈だ。




「と、思ったんですけどね……」


なんという大判振る舞いだろうか、こんな肉体年齢17歳の為に態々固有結界まで使い
不死者を傷つける概念が篭もる宝具の剣群。
世界から切り離されたせいで、お得意の侵食蟲が使えない。
長い年月を掛けて作り上げた最強の手札が無効にされてしまった。
空間破壊による攻撃が出来ない、あれは一度世界に侵食させないといけないのだ。
結構時間が掛かる魔術なので今落ちてくる、この剣群が私を殺す方が早い。
どうやら諦めるしかないようだ。


ぶすぶすと体をまるで空を裂くように剣が突き立っていく。

宝具の力で再生も出来ない。



死にますね、これは。


あまりの苦痛に笑いながら、倒れ伏し
視界が自分の髪に妨げられる。








ああ。








見てしまった。


最後に邪魔をするのは、また人だ。

それは幼き時、数年間家族だった者だ。

養子に行く時姉がくれた物だ。

大昔に渡されたリボン。


まだ、私の髪に結ばれていた。



そうか


ああ



あはっ




ははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははは


私は最後の最後まで愚かだった。


そうか、それならば、納得できる、

何故、失敗するのかが。





ははっ



私を殺すがいい、ヒーロー気取り。

指針としたモノは貴様と同じく贋物だ。



私もお前と同じ贋作者だ。
私は自身を偽り作り続けた贋作者だ。



だがな、英霊なぞになって後悔している貴様とは違い、私は最高に気分が良い。

最後の最後で知ることが出来た。





とても、とても。


大切なことを知ることが出来た。




嗚呼、あの時願っていた想いは間違っていなかった。


こんなにもまだ叶えたいほど。

あの時の想いは色褪せず、美しい。

まるで朝焼けのように、芽吹く緑のように、咲く花のように、散っていく花びらのように

どこまでも綺麗で美しい幻想だ。

枯れずに何度でも咲き誇る夢だ。


私は思い出せた。





だから後悔はない。


私はこんなにも人を愛している。




そんな


とても簡単なことに気付けたのだから。







殺してくれてありがとう。

殺されなければ気付かなかった。

美しい夢を最後に抱いて眠れる私は幸せだ。




そう思い、私は笑って殺された。





こうして第六次聖杯戦争は終結した。









蛇足


ま、本当は死ぬ前に気付ければ良かったんですけどね?

つうかさ、オーバーキルですよ?全部ヒドラの毒付きの剣とか。

お前はどんだけ私が嫌いなんだ。
自分が魔力使い果たして消えてでも実行するとか。

毒が多すぎて、不死を返却する前に魂が苦痛で消滅するだろうが。


ツイッター風に言うなら


私死に底、なう。


ピカー


あ、聖杯起動した。

最後の一騎揃ったんだ、今ので。


馬鹿め。

相変わらずへっぽこですね。

まぁいい、とりあえず死んで死にきれないほど痛いけど、動ける。
でも片足がやられた。


杖、なんでもいいから杖。



あ、こんなところにいい杖があるじゃん。

ここで魔力使い果たして気絶した姉さんのだけど、冥土の土産だ、構わないだろう。

これでなんとか動ける…。

まだ杖をつく年じゃないのになぁ。


まぁいい、これで


聖杯ゲットだぜ。


「てなことがありましたね」

『そういえばそうでしたね』


最近まで超忘れていた。

爆笑死が死亡原因だと思っていたが、違ったらしい。


『ふふ、笑止』

「誰が上手いことを言えと」






IF外伝 桜さん家


あれほど嫌っていた間桐の家は桜主導の基、全面リフォームされ
ファンシーな暖色で彩られた屋敷の周囲には子供が遊ぶアスレチック、バーベキュー用の固定設備
小さな屋内温水プール、バスケット場、家庭菜園用の畑などが用意され、敷地の周囲には門の様に並べられて桜の木が植えられ
春になると桜の花びら乱れる景色の中、子供をつれた桜の奥様友達とのお花見場所。
夏には子供たちが賑わう個人プール、バーベキュー大会開催地、個人花火大会開催地など
秋には焼き芋大会、芋煮会。
冬にはアスレチックを基礎としたカマクラ、バスケット場を凍らせたスケートリンクなど。
どこのアメリカンスタイルの富豪だよ、というぐらいのリフォームというか完全トランスフォームを行なった間桐家である。

内装も凝っており、あの蟲倉も魔改造され、地下室運動場、地下室シアタールーム、地下書庫、地下無料自販機設置場所と化した。
第三次世界大戦が起きようが大丈夫な緊急用魔術的地下核シェルターまであり、近々雁夜のためにワインセラーなどの酒置き場も設置されるそうだ。


全てが自分の妻(4年後入籍予定)の手によるお遊びである。
どれだけの規模の金額が掛かったかは雁夜には分からない。
あの不思議で不愉快魔術礼装の手により間桐の魔術の研鑽が全て売り払われた結果というが、私見によると妻が主導だ。
ルビーの手により並行世界の知識を入手したあの幼い女性に手により、常にこの家は住みやすく変わっていく。

それでも、まだまだ前回、行なわれた兄の生活を無視したリフォームよりもお金は掛かっていないです。


と意味の分からない事を桜は口ずさんだ。


その間桐家の中で一番普通でお金が掛かっていないのが自分の仕事部屋だと雁夜は思う。
デスクに小説の各種参考資料用の本棚が立ち並ぶ仕事部屋。


それさえも実は、雁夜の思惑を超えた部屋である。
この部屋にいる限り、通常の10分1疲労軽減、精神的圧迫10分1軽減、ひらめきUP
退室するさい雁夜限定妻に対する性欲増大機能、他エトセトラという機能がある謎仕様である。
魔術や風水等の知識を生かした桜の最高傑部屋である。
その隣には夫婦の寝室が設けられており、寝室にはスケベガラスのトイレ浴室付きであり
ベッドは特別仕様飛んでも跳ねてもギシギシしようがアンアンしようが完全防音キングサイズ、部屋も完全防音。
桜と雁夜以外入室不許可、邪魔するような巡航ミサイルが直撃しても無事という
特別仕様である。

別名プレイルーム。

まだ桜の子二人は幼いので様々なイージス機能付きの子供部屋で家族全員で川の字で寝ている。
あるボタンを押すとそのまま部屋ごと地下シェルター行きエレベーターが隠されている。

さらに桜と雁夜と子供二人に対する悪意、スケベ心、下心、浮気心、嫉妬心、雁夜に対する下心防止などの結界が屋敷周辺には張り巡らされ
まるで完全要塞である。

これを2年で作りあげた私ってマジ天才、と自らを絶賛する出来栄えらしい。


後の巣作りサクラ計画第一弾である。

魔術師殺しでも発見不可能なアインツベルンの本拠地並みの安全対策。


あらゆる事象を見極めようとした魔女としての桜の片鱗がこの家に盛りだくさんに詰まっていた。
その特別仕様に男は気付かず、今の本職である小説家としての執筆活動を行なっていた。
いつも通りこの後部屋を退室する時、幼すぎる幼妻に対するムラムラが発生し、寝る前のプレイルーム入室が待っている。

ある意味、究極の蟻地獄である。


だが、そんなことにも気付かず執筆活動を雁夜は続ける。

最近は新鋭の作家として売れに売れている。

それもそのはず、桜のあげマン魔術のお陰である。
処女の陰毛は弾除けになるというジンクスがあるのは皆さんご存知か?
あと、あげマンっていうのはご存知か?

ageマン、sageマンの概念はこうだ。
棒をその属性のマン○にぶち込むと見る見る打ちに運気変動。
桜は自らのageマンの処女を彼に奉げたのだ。

そりゃ売れに売れるもの。



その中

実は一番割りを食っているのは桜の実の母、遠坂葵である。
ここ最近孫を見れず、悲しむおばあちゃん。

間桐桜は年増で色々持て余した未亡人泥棒猫に無駄に警戒し、様々な気付かない嫌がらせを用意していた。
葵本人は昔ながらの異性の幼馴染という認識だが、桜は完全否定していた。

「異性の幼馴染同士は男と女の関係にならぬ筈がない」

という、意味の分からない否定論理。

「男と女の友情は成立しない」

という論理の新論理をモットーに桜は色々やっていた。
一度手に入れた男は逃がさないし無意識に逃れられないように頑張っていた。

だってさ、知識食らって知ったけど

私を助けようとした理由が


好きな女のこどもだからっていう理由だよ?

「絶対油断はしない」


いざとなれば、社会的に死んでもらうのも辞さない。

そう考えながら、今夜の夕飯なにつくろっかなーと幸せそうに桜は笑う。

そしてどこぞで掃除屋をやってる男に向け。

「ざまーみろ」

と一言。







あとがき


とことんエミヤと仲が悪い桜ちゃん12歳でした。

雁夜さんの最後を見なかった本編の方の桜さんの方が自由です。

でも逞しさなら本編を上回るな、この外伝桜は。





[31354] 二部 2話 上 桜さん準備中 SINJI覚醒(仮) IF 追加
Name: みさりつ◆45f3eed0 ID:a9391c8c
Date: 2012/08/22 01:47
僕は日常を愛している。
このまま、平和な日が続けば、僕は幸せだった。



学校帰り、放課後に衛宮にばったりあったので。
弓道部をケガを理由にやめた衛宮に僕は文句を言った。

そもそも、僕のせいでやめてしまったのだが。
怪我したくせに、弓道部に来てマネージャーのようなことをするのでついつい悪態をついていたらやめてしまったのだ。
僕は怪我した癖に来るなよ、と一応心配して言ったのに、衛宮の馬鹿は誤解したのだ。

お前がやめたせいで大変だ、とか言ったせいだ。

衛宮が弓道部の弓の整備をやるとか言い出したので、僕も手伝うことにした。

本当に衛宮はお人好しで、変なやつだ。

だが、こういうやつがいると、世の中平和だと思えて気が楽になるのだ。



その帰り。

僕はむしろ手伝わず愚痴を言っていたような気がするが弓の整備が終わり衛宮と帰ることにする。


「やべえよ衛宮!始まっちまったんだ!くそっ」

「何がだっ慎二!?」

「取り敢えず逃げるぞ!」

僕たちは学校のグラウンドで見てはいけないものを見てしまった。
聖杯戦争で行われる闘争を。

赤と青のサーヴァントが戦っているのを。

そしてつい、逃げるために音を立てたせいで気づかれ
青のタイツの男に追いかけられ。



僕は衛宮と二手に別れて逃げた。
お互いに生き残ってまた明日学校でと。







しかし、僕は家に帰って鍵をしめた。

だが、青い怪物は僕を殺しに来たんだ。

紅い槍、人を殺す道具。

ああなんて物騒なんだ、なんでお前らこんな風に僕の日常を簡単に壊すのだ。
許されるのか?

お前たちは、そんな風にして。

たかが、こんな者呼べるからって。


魔術師だからって

くそっ

そして




僕は思わず。


僕を殺そうとする。

この青い怪物の向こう側に叫んだ。

最後の負け犬の遠吠えを。



「ああ、ムカつくんだよお前らは、人として懸命に生きてもいない癖にどうでも良い昔のことばっかりに拘る。
前を見ていない、後ろばかり見ている、つまらないんだよお前たち、ああ嫌いだ、本当に嫌いだお前ら外道は。
自分達が、たかが古臭いお呪いか何か知らないが、横道外れて裏技覚えて。
それを知っている、使えるだけで他人を見下して、世界をつまらなくしてる。

お前らその程度で何様だよ。

こんな化物共呼び寄せやがって。

まともに生きれないくせに、まともじゃない力を拠り所にして、なにが偉いんだよ。

何が魔術だ何が聖杯戦争だ。

碌に真面目に普通の生活出来ない癖に、ふざけるなよ!


ああわかるさ。

それが魅力的だってこと。

僕もさ、それを知っていて憧れてたせいで、つまらなかったんだ。」




でももう、勘弁だ。


うちの妹みたいな化物が生まれるのを見たからさ。

教えてやるよ、懐古主義者ども。

僕の妹は容赦を知らない。

戦えば蹂躙するのみ。

どこまでも地獄だ。



だけど、弱い、けれど強い、最強の怪物だ。

地獄から生まれた地獄を歩く悪夢だ。

まともな道を最初から踏み外された悪夢から生まれた怪物だ。
外道を往き、外道を喰らう、怪物だ。

それを僕は横から物心つくころからそれを横から見ているんだ。




なんでかしらないけど、結構愛されてるらしいよ、僕は。

ま、レンタルされてる、だけだけどね。

僕という人間は妹のものらしい。




ああ、死ぬわけがない、僕はここで死なない。

目の前の外道が呼んだ怪物をきっと僕の妹は憎むだろう。
僕という普通の人間を殺すんだからね。

それは絶対に許さない。

そういうやつだ。


だからさ、見ているんだろ僕の妹。

だからさ、力を貸せよ、僕を死なせるな、

「あれぐらい倒せる武器をよこせ、お前が選んでお前が掴んだ裏技を魅せてくれ」

間桐慎二はボロボロだった、当たり前だ、戦闘機に人間は勝てない。

無様に這いつくばってそれでも死なない為に、生きるために立ち上がって
絶望的な速さで槍を回して余裕ぶる怪物に――絶望的に遅い拳を振るうのだ。


それは人間の嘆きと、人間の誇りだった。

それはただの人から生まれる英雄の拳。

でも、それでも―――届かない。




故に。



だからいる、武器が。

人間には戦闘機を撃ち抜くフルメタルジャケットが要る。

魔女は思う。


そして英雄未満の人間の耳にそっと囁く。


 

『あら兄さん、知らない間にいい男になったみたいですね。
良いでしょう、本当なら貴方に参加させるつもりは無かったんですけれど、決めました。
普通の人間の間桐慎二、貴方は結局目の前のそれを否定し続ける人間の中の人間。

貴方は死なない、私がいるのだから。

そして、貴方は英雄になりなさい。

戦争に英雄はつきもの。




そして魅せてあげてください。


私を含めた半端ものどもに

英雄はいつだって誠意一杯人間を生きた人間であることを。


貴方の叔父もそう言う人間だった。


だから今度こそ。


私の自由を貸してあげましょう。







ああ、本当に愛しいです、兄さん。

今すぐ、ベッドの中で睦み合いたいぐらいですよ。


これが終わったら、抱いてあげますよ。』







「それは魅力的だな桜、なんていうかさ、僕さ、最近彼女8人ぐらい作ったんだけれど、どいつと寝ても満足出来ないんだ。
お前ぐらいイイ女じゃないとこれから先、不能だよ僕は―――――」




なら、これから先は軽い前戯ですよ兄さん。



「ああ!激しくしてくれよ――――行くぞ!」


蹴り飛ばされ、拳は届かなかった、胃の内容物を吐き出しながら立ち上がり、叫ぶ。
それは決意と覚悟の叫びだった。

負けない、負けてやるもんか。

ただそれだけの叫び。


それがただの人間の最後まで諦めない叫び。


「さっきから舐めてんのか小僧。妄言ほざく口だけのただの小僧!お前には奇跡なんか起きない、俺の槍でその心臓をブチ抜かれな!」


青い、男が槍を振るおうとする。

しかし、彼は吼える。

痛みで目が霞んでもそれでも。

「そんなもんいらないよ僕はっ!奇跡なんかいらない!生きることがつまらなくなるだろう!?反吐が出る!―――だからお前らみたいな奇跡みたいな奴らは死ね!」


間桐慎二は拳を振るう。


それは蟷螂の斧、しかし、それは届かない弱い力という意味。

この言葉を生み出した者はそのあと言うのだ。

それが出来る者こそ勇者だと。




だからこそ。



彼の決意に奇跡は応える。


その振るわれる拳――右手には赤い文様が浮かび上がる。

たった一筋の絶対命令権。



ふふっ召喚。

さぁ、私の兄に相応しい人よ出なさい。

間桐の男の剣よ、現れ来たれ。


そして聖杯戦争よ――開始せよ!


魔女がただの人間を英雄にするために7つの剣の1つを渡した。


此処に最後のサーヴァントが召喚される。

そして彼を守るようにして男の前に立つのだ。
お前の代わりにじゃない―私たち英霊はこの瞬間から人のための剣になるのだと。


圧倒的なエーテルが間桐家のあらゆる場所から暴流のごとく集まり、そして剣を形作らせる。



「なにいっ!まただと!」

「またってなんだ、またって、じゃあ奇跡なんかじゃないだろ、だからさぁ――失せろよ、あんた、つまらないんだよ」

慎二は言うのだ。
目の前に現れた自分の剣に。


「いきなり悪いけど、目の前の奴ぶっ飛ばせ、お前!」


現れた赤い髪、紅い古の軍人装束。
彼女こそ7騎の一人―――ライダー。
歴史を担う伝説の一人。


「よくわかってるじゃないのさ、坊や」

ああ、なんだか、面白いじゃないの、と伝説の一人は笑う。


「僕は坊やじゃない、わかるだろう!?目の前のつまらないものが!?」


目の前にいる敵を英雄をつまらないモノと断じる、その気迫。


「最高だよ!まだ名前も知らない私の相棒、わかるよ。じゃあアンタもわかってんだろうね」


「ああ、わかるよ!まだ名前も知らない僕のサーヴァント!」


言うべきことはただ一つ。



「遠慮はいらない!派手にぶっ飛ばせぇえええええええええ!」



いいねぇ!

フラシンス・ドレイクは容赦なくカルヴァリンの砲塔をランサーに向け。




「了解!」

発射した。







そして第一夜の前哨戦が終わり、本選が始まる。



「派手にやっちまったねぇ」


間桐家のランサーが立っていた場所は綺麗に吹き飛んでしまった。
ランサー自体は、不利だと思ったのだろうか?
吹き飛ばしてから戻ってこない。

かの矢よけも通じない、衝撃と破壊を拡散する爆烈は避けることが出来なかったようだ。



「ああ、綺麗さっぱりだよ……僕の名前は慎二、ところでアンタの名前はなんていうんだ、相棒」


「私の名はフランシス・ドレイク、海賊さ」

「海賊か、そいつはいいや、このくだらないこれから始まるだろうバカ騒ぎ、精々派手に暴れてくれよ、フランシス。」

「くくっわかっている男じゃないか、シンジ、これからアンタとなら楽しくなりそうだ、この聖杯戦争、勝ったら聖杯使って酒でも飲むかねぇ」


美味しい美酒、飲ませてくれるんだろう?


「ああ勝利の美酒を飲ませてやるよ」

しょせんコップはコップだ、それぐらいの価値しかないだろう。
飲み終わったら乾杯を叫びながら割ってやろう。























「っていう感じでノンフィクション小説書こうっと、現実を元にした兄のフィクションですが」

私がノリノリで今日あったことを歪めながらジャプニカ学習帳にイラスト付きで小説を書いていると


「何を書いてるんですか」

バゼットさんが、相変わらず、変なことしてるな、コイツという顔で私を見る。

「ノンフィクションのフィクション兄さん小説です。聖杯戦争を題材にした最強格好良い兄さん(笑)の
一般人の癖になんとなくヒーローっぽい感じで優勝しちゃうストーリーです」

「一生、出版出来ない気がしますよ」

「私があとで、兄さんが無事生き残ったら、兄さんのトラウマ、もとい、ヘタレシーンを改訂した小説なので、これを兄に読ませて楽しみます。
兄さんが私に惚れてる設定で、最後は私と感動の対面を書きます」


「何がしたいんですか貴女は……」

「精神的な自慰ですよ?」



だって暇なんだもん。












2話 上は全部桜さんの妄想。






いや、大体昨晩あったことがら見てたけど、兄さんって肝心なところでヘタレで面白いですね。
せっかくあわやと言うところでサーヴァントさん呼んであげたのに、赤髪おっぱいお姉さんが出てきて。

「マスターかい?」

とか言う前に、自分を殺す化けものが増えたと勘違いして気絶してしまいました。

珍しく焦りました。

「うわぁ」

と純粋な声がでましたよ。


なんとかなりましたけど。

なんで巻き込まれるなんて面白、じゃない危ない目にあってるんですか。


この前なんかちゃんとイギリス経由で電話して


「日が沈んだ夜はしっかり間桐家で鍵を掛けてブルブル震えていてください。
それでなんとかなります。
それでもなんとかならないと

運が悪いと、即死です。

運が悪い人を見たら突っ込んでくるダンプカーみたいなのに跳ねられます。

だから、旅行でも良いですよ。

一ヶ月くらい遊ぶお金あげますから。

パチンコ雑誌の開運アイテム買って、開運して札束風呂入ってるおっさんの真似くらい出来ますよ」



と脅して上げたのに。

グアムとかの一ヶ月分の旅行券もいくつか送って上げたのに、今いる彼女さんと学校さぼって行けばいいのになぁ。
どうせ卒業しても私のペットとして働かないニート生活させるんだから。
学校なんて通わなくてもいいのに。

もう兄さんったら。
それでも何時も通り、衛宮さんちにいつまでも入り浸って、衛宮先輩とバイトしたりして


ほぼ同棲してる。


ああ、なんか見てて、モーホーの館です、あれ。





故に



メールで



件名 言うこと聞かないと。

送付画像 汚く割ってぐちゃぐちゃのスイカjpg


本文




兄さん





などとと、写真付きで送ってあげたのに。

聖杯戦争始まるよーって教えておいたのに。




そんなに衛宮先輩が好きなんですか?
日々を観察してると、柳桐さんちの子と衛宮先輩取り合ってますし。
返信してこないし、困っちゃう子ですねぇ。

早く兄さんの息子を私の桜色のアワビで包んで上げないと危険ですね。
茶色い菊の花を好きになられたら困ります。





取り敢えずメルメルしましょう。


件名 兄さん\(^^)/



本文


(((o(*゚▽゚*)o)))


頑張って。







と送れば、事実の大きさに慌てふためいて、みっともない感じで
すぐに返信してきて「助けてー桜ぁ!」という感じになるでしょうね。

それでも不安だなぁ、逃げる場所自体も結構危ない予感しかしないし。

私らしく蟲の知らせで。


すぐに私のムカデのストラップ付きの携帯の着信音がなります。

着信音設定が、モスキート音なので私には聞こえないんですけど。
それでも携帯さんがピカピカなってます。


「兄さんだ、多分」



くぱぁ、と開きます。

焦らすように。
そしてポチポチを弄ります。



そいて受信メールを見ると。

「あ、私に黙ってメアド変えてる……」



届かなかった。


ふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふ。



「電話……」


電話番号も変えてやがる。
お前は私の元カレか。



「どうしよう(笑)」





としか言いようがない。

兄の体内に入れている蟲でライダーを無理矢理呼び寄せさせた。
が、これからを考えると面倒だ。

魔力の供給方法は電池方式。


間桐の家に配置してあった仮想永久機関の全エネルギーを召喚時に全て注ぎこんだだけ。
毎日宝具ばんばん撃ってなきゃ、魔力は十全にあり、そうそう切れたりはしない。
多分サーヴァントのランク自体も最初はかなり高いだろう。


あれ16億円掛かってるし。


ま、兄の命と比べると些細なもんですよ、と何れ取り立てることを決めておく。

一般のサラリーマンが一生働いて2億ぐらいと聞くから、これから8倍働いて貰おう。



「んー。どう動かすかな」




ちゃんと返信してくれれば、もしくは電話が出ることができたら、生き残るアドバイスして上げたのに。

自ら精神的な生存フラグ折っていきますね。

少しは心を軽くするようなアドバイスして上げるのに。





ま。


今のメアドと電話番号ぐらい、10秒ぐらいでわかるんですけどね。


罰として携帯は解約してあげよう。

私って兄さん思いの兄さんの重い人なのだ。







まぁ、私の完全に盤上の上にいるので、ある程度誘導して、生き残るようにしてあげますか。

あの人完全に普通の人だし。
処女も童貞も全部奪ったけれど、あれ一般市民ですし。


本当に危なくなったら、腕ぶった切って、攫えばいい。

聖杯戦争終結まで一生分の人生の危機をフルタイムで毎日経験することになりますけど。


「アサシン。それぐらいできるでしょ?」


私が一人、ラスボスのように一人掛けのソファーチェアに座り、横に置いたテーブルに上にあるチェス盤の駒を弄るのを止め、膝に乗る幼生の王蟲ちゃんを撫で。
赤ワインが入ったワイングラスを手に取りグラスを揺らしながら問いかける。


「可能です、マスター」



すぐ返事が返ってくる。

まさに従者の鏡。


やべえ、凄い楽しい。




悪役ごっこ。

優雅(笑)



何かこれやれるだけで、聖杯戦争参加した目的終わった感じがする。

影の従者と女主人。

最高です。



「うんよろしい、あとで私がファックしてあげます、しっかりベッドの前でお顔の面をとってください、たっぷり愛してあげますよ、ふふ」


久しぶりにレズプレイ以外の出来る男の子だ。

私という、お嬢様を殺しにくる暗殺者がお嬢様に一目惚れしてレイプする、というプレイが出来て楽しい。




しかし。

まぁ、面倒なことになったなぁ。

私が立てた予測のうちの一つ、めんどい方だ。


でも保険は掛けてよかった。




真っ先に死ねる保険ですけど。

保険金詐欺用クラスのやつ。


どうせ人間死ぬとき死ぬからなぁ、いくら私が頑張っても、運が悪いと兄さん簡単に死ぬしなぁ。

ああ、最初から逃げないから余計なことに巻き込まれる。

所詮人間なんて運が良くて生きてるようなものなんですけどねぇ。

毎日が滅びと背中合わせの奇跡のような世界。

普通の日常を大切にする兄さんは気づかないだろうが。




「明日あたり隕石落ちてきて地球が滅亡しても私は驚きません」


世の中そんなもんだ。

今、この瞬間にも私は死んで可笑しくないぐらいの話だ。








問題は半端な一般人。



衛宮先輩です。

彼自体はどうでもいいんですけど。


あれ主人公さんですよね、あれへっぽこ魔術師なのにどっかバグってます。


アレ、噂に聞く抑止力の後押し受けているの?

という運のよさ。

兄の場合はある程度の奇跡を用意しておいた奇跡なんですが、あの人の生き残りかたはすごい。

姉に前に衛宮さんが好みのタイプで憧れてます、とか冗談言っていただけのどうでも良い人なのに

何故か姉に命を助けて貰っていた。



それだけでも、すごいんだけど。

何かで生存フラグでも立てていたのだろうか?




なんで、鉄板入りのポスター強化しただけで、宝具防御すんですか。

手加減していた?

いやいや。

私なら、蹴られた時点で死にますよ、あれ。


偶然蹴られてふっとんだ場所が召喚陣。

そしてなんとセイバーさん。

あの前世で見たフュギュアみたいな鎧きてたし、金髪少女だし。

16ぐらいの外人美少女だ。


ヘアの色も金なのかな。




うん。







取り敢えず情報の整理を行おう。


よく言う僅かな原作知識というやつと、虫じじいの記憶を元にした推測でこれだ。


セイバー アーサー。魔界村じゃないやつ マスターは衛宮士郎。
アーチャー 姉さんの 真名 不明
ランサー 光の御子 クーフーリン 元バゼットさんの今はクソ神父さんの 
ライダー フランシス・ドレイク 女とは凄い、新事実、兄さんの
バーサーカー ヘラクレス マスターは幼女。
キャスター 監視によると魔女、柳桐さんちが基地、マスター不明、真名 不明 こそこそしている。  
アサシンとバゼットさん 私の


そして

「イレギュラー。私の遺伝子上の父の元サーヴァント、英雄王、私の最大の敵」

前々から見つけて、基本シカトしてたんですけど。
あれ、なんか凄い邪魔。

この時点で私の中で聖杯戦争に掛かる方針は決定した。

あれはやばい。

英霊クラスのレベルじゃない、私が見た中であれほど強いのは熊牧場使いぐらいしかいないぞ。
絡め手も通じなさそうだし。


どうにかしないとダメだ。

盤上を力づくでひっくり返せる者こそ。

盤上を動かす人間にとって、最も恐ろしい。


「それを抜かして」

私の大敵は絡めてが基本のキャスターと火力型のヘラクレス


ヘラクレスはどうでも良い。

マスター自体に油断があるからだ。

お嬢ちゃん、お外で遊ぶのは良いけどね。
一人で歩いちゃいけないよ、こわいこわい、変態さんがいるんだから世の中には。


それよりも

監視ができない完全に隠密モードのキャスターが怖い。
相手は伝説に残る魔術師だ、戦闘ではなく魔術戦のプロフェッショナル。
情報戦に出ることも出来ない。

私と同じプレイヤー。

正直小娘の私じゃ相手にならん。
私の絡め手が粉砕される可能性が最も高い。



アサシンで暗殺させようかと悩んだが、相手も勿論、警戒しているだろう。
虫さん達に爆弾持たせて、超高度から現代兵器で空爆してマスター狙いで爆破してもいいのだが。
細菌兵器を撒いていいもいいし。
あそこの水道だけ毒が出るようにしてもいいし。



でもあそこは寺の人がいるから駄目。

そもそもマスターが寺にいるかもわからない。

確実性ゼロなのだ。


他のマスターは虫さん使えば、今この瞬間に皆殺しに出来るのに。




毒殺用、後期型マジック・ナノ・ステイブルフライ 100兆匹の大群で

全て打ち落とせますか?

今この時も警戒心のない方々。

魔力反応も微々たるもの、戦争中ずっと魔力回路回して神経尖らせている人間でもないと不可能。
そもそもあれは魔術で動かす現代細菌兵器。
普段から虫除けでもしないと防げない。

そして気づいた頃には死ぬ類の毒だ。
マスターが人間である限り殺せる。

誰も彼も工房で大人しくする魔術師じゃないですからね。
工房にいればそれは出来ないが、工房から外に出た魔術師はただの人間。
おもちで喉を詰まらせて簡単にいつでも死ねる人間。


なにせ、アサシンでも気づかないと太鼓判押してくれたものである。


キャスターでもない限り気づくことはない。
工房があそこにあっても、居るとは限らない。

難しい。




理想的なのは


「手を組めればいいんですが……どんな人かも知らないですからね。どうしましょうかアサシン」

「私から言わせれば、マスター。貴女は最も優れたマスターだ」


「油断や過信を作る台詞ですよアサシン。油断は破滅を招き寄せ過信は思考停止を作ります」

こら、と私はアサシンを叱る。


「私は別に強いワケでもありません。ただの魔女、基本的に他力本願です、しかも貴方との相性も良いですしね。
これで貴方が正々堂々戦う暗殺者だったら、即終了です。
もし、正々堂々とか言い出す、サーヴァントだったら、即自害させます。
これは決闘ではなく、戦争です。
軍事力、資源を使う戦略戦が基本です。
私たちは狩る側ではありません、私たちは弱く、強くはない。
だからこそ弱ければ弱いほど、故に強敵がいれば一生懸命になれると言うもの。
でも、卑屈になる必要はありません、卑屈もまた眼を曇らせます。
私たちは私たちにある力のみで戦争に勝利する。
それを忘れないように注意し合うこと、それが大事です。」

怪しい家に呪文を唱えながら籠る魔女。

ただそれだけです。


「斥候は彼らに任せましょう、今のところ私たちは何もする必要はないでしょう、方針を決めます。
彼らに2騎とイレギュラーの撃破を行なってもらいましょう。
わざわざ表に出る必要はありません、必要になったら、出れば良いのです。

兄さん、士郎先輩、姉さんの三人の動きは読めます。
取り敢えず、バーサーカーを倒すまで同盟を組みました。
兄は私の手の内、故に情報は筒抜けです。

しかし、バーサーカー、キャスター、イレギュラーの動き、神父さんの動きはわかりません。
それでも三体のサーヴァントチームがいますので、彼らが戦争の中心。
チームである彼らを狙う3つの敵。
故に対処が出来ます。

バーサーカーなんて、マスターがなんか士郎先輩狙いですからね、良い条件です。

私たちが行うとすれば、調整です。
最大目標のイレギュラーの撃破、そのためには彼らに掛かる絡め手や策謀を防ぐのが私たちの仕事です。
チームが仲間割れをしないようにするのも大事です。
あと他の3つがチームにならないように気をつける。
私たちは影、一度でもその影を察知されぬように動きましょう。
アサシン、貴女は決して見つからないことを厳命します。
そうです、そもそも私たちは居ないのですよ」

「それが暗殺者というものだマスター」

「ふふ、今更ですか?」


私が私として勝つにはどうしたら良いだろうか?

私は自分の眼球の奥にある複眼で次々と進む映像を蟲たちから受け取りながら、聞きながら考える。


選手宣誓を三人で行い帰り道の争い。


どうやら、バーサーカーとの戦いを痛み分けで終えた彼らは衛宮邸で休んでいる。
凛おねえちゃんは既になんだか人んちゴソゴソ物色している。


取り敢えずそうですね。

「取り敢えず姉さんにイギリスから電話をして思考誘導しますか。
情に訴える妹なんて似合いませんが、頑張りましょう」

取り敢えず、兄の助命運動を行う。
3人で組んで戦うように仕向ける。




それが第一条件クリア。


普通は問題になること。

兄さんから私の悪辣さが露呈しても問題なし。






言いたくても言えないでしょうし。



姉さんも無理矢理魔術の自白はさせません。

適当に今のうちに嫌とか言えばいいのです。



ま、自白の魔術掛けられたって。



お爺さまが居て私が居て兄がいる。

そんな家族の記憶を用意しています。
魔術が掛けられれば起動する記憶。

兄は私がいないうちに偶然巻き込まれた、それで良い。

お爺さまは行方不明。


だって姉さんが全てを知ってしまえば、姉さんは間桐を憎むでしょう。

もう、居もしない、私を作った間桐をね。

下手したら兄さんも殺されるかもしれないし。


「それはないですかね……」

ふふ、姉さんだもんね。


ほんと魔術師じゃない、魔法少女みたいな姉さんだもん。

姉さんprpr。




あとがき


チラ裏のリリカルなのは書いてて遅れました。

今回は桜さんの参戦編 3話です。





IF チートって作者的にこんな感じさ編。



zeroで衛宮切嗣がサーヴァントSAKURAのマスターだったら。

聖杯ゲット後。

何故か私は座に座っていた。

どうせ座るのならゴザに座りたい。


「こんにちはマイマスター、毒殺専門のセイバーです」

「え、あえ?ああ……アーサー王、なのか?」

「いいえ、違います」

聖剣の鞘で召喚したのに何故だ。

「私は男の剣を扱う専門ですので」

私は性剣の鞘ですので。

そう言って妖艶に笑うサーヴァント、何処にでもいる少女のようでありながら蠱惑的に微笑んだ。。





衛宮切嗣がサーヴァント・セイバー(ゴザタイプSAKURAさん)を召喚するちょっと前。


雁夜さん悟りエンド後の桜さんも遊びにきてるよ?編


「ふむふむ、やっと私の目的が叶う場所に来れたということですか」


日本の海域付近の太平洋の大海原のど真ん中に一人で水面に立つ怪異は踊る。


その踊りは夜行演舞。
その存在は自己を極限まで「個」として絶望的なほど塗り固められた奇跡の極限。
膨大な未来と膨大な過去、いやそんな言葉だけではな足りない。
永劫にして刹那の、死すらも死ぬだろう無限にして有限の狭間。

根源

アカシックレコード。






とまぁいろいろあるが、そもそもアレに形などない。





「 」に至りて掴み取るものは無し。
奇跡を掴み取るには奇跡を知る者には掴めない。
人という矮小な存在では認識できないものなのだから。

カタチを与えた瞬間にそれは消える。

そういうものだ。

神は天上にいまし、世はこともなし。
そんなものが人を左右するのならば、人は神の性格で遊ばれ消えてゆく。
泥人形のように好き勝手に作り直されて、何度も何度も潰され、形を変えられる。


ならば悪魔の方が何倍もましだ。
彼等は人間が大好きなのだから。




人はただ闇雲に足掻き、各々好き勝手に生きればよろしい。
運命や宿業など、フォークの先で刺して、口に頬張り、甘い、苦い、酸っぱい、辛い。
そういう風に味わいを楽しみ嘲笑えば良い。

そんな風に生きて死ねばよい。

しかし

そのくせ人間というやつは誰も彼も死にたがりません、そりゃあ、そうでしょう、そうでしょう。


自由に森羅万象を眺めるからこそ、世界は美しい。

些細なことで苦しみ、己のちっぽけさを世界の広大さを見て、極上の生の実感を得るが良い。

それが出来ぬ、外れもの人は私の舌に乗るが良い。
歯ごたえを噛み締め、味蕾で味を見極めようぞ。

己で毒薬を飲み、首を掻っ切るぐらいなら、私が愛してやろう。

汝達は醜く美しく、何処までも私を飽きさせない。

こんなにも苦海で生き、溺れながらも泳ごうとする姿は、私でさえ、これ以上虐める気にもならない。

哀れと思い、手で救い上げてもよし、沈めてもよし、私の手のひらから逃れるならば、眺めてやろうぞ。

何処までいけるか、そろりそろりと後ろからついていき、影を落として暗雲となろうか?
それとも懐中電灯を当てて道を太陽で照らしてあげようか?
ふうふうと北風作って、衣服を剥いでやろうか?虫眼鏡でじりじりと暑くさせ、芳醇な果実で喉を癒させるのも、動物のように服を脱がせ裸の快楽を味あわせるのも良い。


そんなような怪物。

どこぞの月の聖杯のごとく、それは観測存在だ。



結局のところマキリの魔女が掴み取るのは結局の所、自分の裡の宇宙。
それが魔法というやつだ。

己の解釈でしかソレを操ることは不可能。
それでも結局の所、ヒトカケラでも手にすることが出来れば、それは窮極である。

彼女は掴んだ。

宇宙を


それは


個人で運営する宇宙

彼女自身が一つの宇宙である。

そういう存在だマキリサクラとは。

長い長い久遠の果てつにに独立した完全なる個。

全は個、個は全である宇宙から生まれたアンノウン。

その存在をどこまでも「個」として存在させることにより「 」の中の異物となり、はじき出され、ついに己の起源となる目的の場所に帰ってきた。
外宇宙の果てから来る、流星として。




「やっとこさ棒渦巻銀河であるこの天の川銀河系第三惑星地球にこれましたねぇ、いやはや、大気圏突入を行なった時に間違ってアメリカ大陸付近に落ちちゃいましたから
わざわざ日本まで来るのに時間が掛かりました、地球に降り立った瞬間にテンション上がって高次元存在から実体になってから大変でしたね。
さっきなんて移動中ゲッペラーさんとぶつかってしまいましたし」


まぁここら辺は誤差のうち、と魔女は笑う。

ちょっと座標設定間違ったら同じハピタブルゾーンでも昔のジュラ紀だったし。

「ほんとにこれがあってよかった」

魔女が己の手に掴むはフリルが着いたリボン。

ほぼ人を超越し、超高次元存在となったマキリにとって物質に宿る因果、または縁によって座標を設定するのは簡単である。

元々そういう風なものを観測したいがために魔法に至ったのだから。

「人間やめちゃうとジュラ紀でも、まぁいっか、数百万年まてばいいし、とか思ってましたけど、いざ人間になると心臓バクバクの危ない危ない危ない、ですよ」

こういって嗤う彼女自身結局のところ第六魔法存在「マキリ」の触覚の一部でしかない。
自己の完全なる独立によりあらゆる森羅万象から自由となる魔法存在であるマキリが因果を持つには弱体化もしくは細分化が必要だ。
本体の細胞を隕石のようにころりと落とすことでしか世界とは関われない異邦の怪物なのだから。
既に一つの異次元的な概念と化した、未発掘の現象存在マキリにとって生命とは小さすぎる。

海水から肉体を構成することで生物になって、やっと南米のどっかにいるやつと同じレベルの存在だ。
実は人間の形を保っているだけで、100年軸の精神しか持てない人間と比べると気が長すぎることが失敗である。

現在の肉体での戦闘能力は海に浮かぶクラゲ程度であるが、そもそも1700000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000×10乗歳(適当)の彼女にとって戦いとは何かさえも昔過ぎて思い出せない。


本人のスケールがでかすぎて細かいことよくわからない。
どんどん弱体化させていくことで人間らしさを手に入れていくが、どこらへんから人間というのがよくわからない。


人間やめてしまうと、人間に関わる時間軸を持つのが難しいのである。

下手すると滅んだあとに人間どこどこーとか言っちゃうのだ。

根源とやらの根源、そのまた根源とかそういうものを旅してきたのだ。

万華鏡の爺さんもわざと人間らしくしているのはこういうのを防ぐためだろう。
奴らは人間を辞めずに帰ってくる、人の海を好む。



故に人間である。


今帰ってきた怪物は





「さて、名乗りましょうか、世界さん、私の名前はマキリと申します、貴方たちの法則で生かして貰いましょう、抑止の怪物は呼ばなくてもいいですよ?
別にこの惑星を破壊するつもりできたつもりはありませんし、ま、ちょっとした旅行ですよ。
しっかりと人として形をとってサイズダウンしましたし、もう世界を破壊できるほどの力はありませんよ。
目的が終わればこの射出存在が壊れたら座に吸収して構いません、お得ですよ?
ありゃあ、座にもう登録してくれたの?
それはそれは手が早いことで、なになに、もういるとな、いやまだいない。


最高の愛憎を飴玉のように口の中で転がせる、ああ、別の私は羨ましいなぁ。

私にも甘いものが欲しくなってきました。

だから少し――――活動してもいいですよね?」


鼻歌を口ずさむように海原を歩きながらそう言うと、その影法師のような人影は消える。

結局は聖杯は穢れていた。
遥か彼方の未来と過去から来る異星の怪物を呼び寄せていた。
善悪の彼岸より生まれ、ただ、ただ俗な享楽を求める。

しかし彼女はどこまでも人間を愛している。












第四次聖杯戦争の1年前の桜ちゃん(真)の枕元




「こんばんわ」

「誰……」

遠坂でなくなろうとしている桜という少女にとってそれは摩訶不思議な存在だった。
己がほかの家の子供になると知らされた夜、一人で寂しさと悲しみで一杯の時に現れた夢のような存在。
なんなのだろうこの場所は―――確か夜、寝る直前まで姉と同じ布団の中にいたはずだ。

「ここはどこ」

「うんお姉さん、ちょっと君の夢の中にお邪魔してみたの。ここは君の脳みそが休憩している時に見る、世界だよ」

白い、白い、白い、何もない場所に二人は居た。

自分と、メガネを掛けた、綺麗な女性。

あったこともないお姉さん。

なんだか優しそうで、でも凄く怖いお姉さん。
その姿は至って平凡でありながらどこにでもいそうでどこにも居ない。
でもどこかでみたような気がする
桜にとって美人な優しそうな女性という形を持ったメガネを掛けた、美人の学校の先生のような女性。

桜がそう思うとメガネを掛けたお姉さんは軽く苦笑する。

「うむうむ、やっぱり私のことはよくわからないでしょ、桜ちゃん。結局の所私って、君とは元がどっかで違うのよね、起点である元がどっか変なのよね。
うん、魂?存在?いや、そんな推測を立てても詮無いことだね、私のことなんかどうでもいいわ、貴方が私ではないことこそ、救いなのよね。
だから私が居ても、捻れない。」

「ねじ…?」

よくわからないことを言うお姉さんだ。
桜は思う、夢だと言うのなら生まれて初めて会うこの人は誰なんだろう、と。

「ねぇ、桜ちゃん、貴方はこれからどんな大人になりたい?私は魔法使いなのよ、どんな願いでも叶えることが出来る凄い魔法使い、そう覚えてくれるかな」

「名前は?」

「魔法存在『愛』それが私。愛を感じ、愛することだけが私の全て、私は愛を愛している、だからあなたも愛してあげるわ、桜ちゃん。
さぁさぁ、汚い汚い虫さんいっぱい、いっぱい、肌に乗られれば、ぞろりと鳥肌たって、気持ち悪くて泣きそうなこれからの桜ちゃんを私が救ってあげましょう。
醜く自分に泣く愛さないものも、金貨一枚の裏表という事実しかないモノに欲が眩むお父さんにも捨てられても、ああ、愛しましょう。
こうして、寂しく泣いている女の子、助けず、何が魔法使い、なにが正義の味方でしょう、人生劇の一幕の黒子として舞台に踏み台を置いて激流から遠ざけてあげましょう
ガラスの靴を用意して、灰かぶりのお姫様にでも、してあげましょう。なにせ、なにせ、私はあなたを知っている。ああ知っているのですよ桜ちゃん。

知らぬ存ぜぬなら放っておいて、すれ違ったときにでも、愛してあげましょう。

でも貴方には


奇跡、キセキ、それを授けてあげましょう。

光の中で輝けるように泥だらけで一日遊んで、ご近所を夕暮れ時に歩いてカレーライスの香りを嗅いで、お腹ペコペコで、今日の夕餉を楽しみにするような
平和の一瞬が君には永遠続けばよろしい。

平和を託しましょう貴方の中にしか居ない平和を、それは他人には叶えられない、でも手助けをできるでしょう」




さぁ願いなさい、と彼女は嘲笑った。

彼女の名は

「私の名はSAKURAさんギャラクシー。相棒はギャラクシー・ルビー。
愛と平和の魔法使いです」









[31354] 二部 2話 下 なぁなぁな感じの桜さん準備中 
Name: みさりつ◆32598cb4 ID:16a569a4
Date: 2012/09/22 00:50
調教済みバゼットさんのお話。



リハビリ期間ということで、筋トレを行い、汗を流すために風呂場に向かうと


「あの、サクラ…なにをしているんですか、風呂場でトマトを潰してその写真を撮るなんて行為、正直、意味がわかりませんよ」


彼女が居た。

風呂場には潰れたトマトが転がっており、横には、人のパーツだろうとひと目で分かる、指やら足やらが転がり、ドロドロと排水口に血が流れていく。
正直いうと、ここ数日共にいるが、彼女がここまで、化け物とは思わなかった。
最早上司でなくなり彼女の奴隷に成り下がった私に、いままで影で行なっていた行為を隠しもしない。
なるべく不快なモノを見せないように気を使っているというが、偶然見えるこのようなモノでも眼を背けたくなることが多々ある。



「次に兄に送るメールの送付画像の作成です、ふむ、インパクトにかけますね?
そうだ、トマトの中身を人間のヤツに変えましょう。
より、リアル感が出るかもしれません、はて、この場合リアル感が増すというよりも、なんなんでしょうか?
あ、ちなみに今潰したやつも前回潰したスイカのやつも、ちゃあんと私のペットの餌にしますからね。

どっかの国のトマト祭りみたいに無駄にしませんから。

いくら傷んでいるトマトでも、アレはちょっとって感じがするんですよ私は?

加工すれば、どのぐらいのトマトジュース作れるんだろうか、とか勿体無いなぁって思っちゃいます。

あと此処、風呂用じゃなくて、死体洗い場用ですからね、また間違えましたね、バゼットさん。

まぁ私のせいなんですけどね、此処が迷いやすいのは。

今度、風呂場に行きたい時は、「体を水で流したい」じゃなくてもっと具体的に考えて歩いてください。」



「はい、気をつけますよ、サクラ」







彼女は食人鬼でもサイコパスでも猟奇的でもない、それは酷く合理的な魔術師としてのカタチだ。



そもそも人間を辞めた魔術師に、グロテスクだの、倫理から反しているとかそういう言葉は意味はない。

人として嫌悪感を感じるべきだろうが、なに、彼女は正真正銘の人でなしの怪物だ。

むしろ、彼女の「お気に入り」として貞操を奪われる程度ですんだ、それでよしとしておこう。

私が彼女の「敵」だったのなら、今頃この風呂場の浴槽に浮かぶ肉の一つになっていたのだ。
運悪くも彼女という怪物の目に適い、ただの資材になった魔術師達もどうせ似たような、むしろもっと「人でなし」なことを行っていたのだから。
基本的に世の中は弱肉強食である。
良い匂いをさせる肉は捕食者である彼女に食われる。
私としては彼女が彼女がある程度の度合いの「人でなし」を好む怪物でよかったと心底思う。

彼女は基本的に彼女の見定める普通の人間。


血の匂い、堕落の匂いがしない人間を殺さない。



そうではなければ、私は絶望して壊れたかもしれない。
既に私は彼女に逆らうことができないようにされている。
彼女がなりふり構わない、正真正銘の人でなしであったのなら、彼女がいる場所にいる人という人は、地獄の釜に落とされ彼女に食われるだろう。
彼女の真価を知った今では私は思う。

何故彼女は今まで葬ってきた封印指定達のような会話もまともに出来ないような壊れた狂気がないのだろうか。
一点のみの方向性に向かう狭窄さがないのだ。
彼女の場合、その視点の広さ、深さは、眼を見張る。
まぁ、多分私の推測だが、彼女の場合、世の中を甘く見ている、舐めているではなく。


甘くて美味しいから味わって舐めて咀嚼する。

とでも言うのか。



「本当に気をつけてくださいよ、此処、感染症とかの危険があるんですから。一応、あとで診察しますからね?
さっさと普通の風呂場に行ってください、オマタもゴシゴシ洗うんですよ、指もしっかり挿入れて、シャワーも当てながら、頬を染めて、切なげに……奥までしっかりと。
風呂場にカメラありますから、あとでちゃんと洗ってるか確認しますからね、まずは指を爪の間もしっかりと洗剤で洗うんですよ?
一応保護用の指サックも脱衣場に置いてありますから、試してください。うん、これ命令ですから、絶対遵守なギアスな感じで」


「はぁ…わかりましたよサクラ、私で良ければ」


「ふふ、愛してますよバゼットさん、大好きです……ま冗談ですから、そんなマジにとらなくても良いですよ、でもあなたみたいな人間の乱れるところなんか
垂涎ものです、ZIPでよこせよ、とかそんな感じです。あ、そういえば今日のお昼ご飯何がいいですか?鍋とかいいですよね?あとこの前契約しているドイツの酪農家からソーセージ届きましたから、炙り焼きにしておつまみにして一杯やりましょうか、黒ビールですよ黒ビール。」

そう言って私に近寄り
私の唇に脳ごと犯されるような暴力的で背徳的な、彼女の唇が当てられる。
性を知らないものさえも、欲情し、性欲を引きだたせる、ねっとりとした唇の愛撫。
交わる吐息、此方の舌に絡みつく、彼女のピンク色の美しくも残虐な舌。
背筋からせり上がってくる快感の波。


「ん…ふ、あ……」

思わず声が出る。
体が痙攣するように気持ちよさでガクガクと足元が震える。

「気持ち良いですか?」


微笑んでいる彼女に私の顔は熱くなる。


「はい」



性に関しては絶望するぐらい怪物だが。


ほとほと困るのが、それが嫌でないことだ。
彼女に犯され、弄られ、与えられる快楽。
自己を律することにかけて常人を超える私でさえも、抗えない、快楽。
彼女に魂ごと侵され、全てを奪われ、溶かされていくようだ。
そして彼女を奪いたいとさえ思わせる。
常人なら、廃人になっても可笑しくないほどだ。
なにせ、彼女に誘われると、嬉しくなってしまう己がいる。


「お風呂上がったら、寛いでていいですよ、私もコレ終わらせたら、風呂入って、用意しますから、食品用の冷凍庫に手作りのアイスクリームありますから食べていいですよ」

「いいんですか?」


食事など栄養補給に過ぎない、そんなことを思っていた時もありました。

彼女、料理はある程度出来る程度だというが。
彼女の場合、食材を作る達人だ。
ドイツから届いたという食材も彼女の知識が加わり育てられた特殊な食材。
なんでも混ぜられる餌が魔術的なものであり、その肉はこの世の美食家をうならせるものだという。

ハニーポークソーセージ。

そんな名前だったか。

食する、という動物的な本能を呼び覚まし、人間として味わうという理性を刺激する食材達。
この私でさえも操られたように食事を待ちわびてしまう魔的な晩餐。

或る意味、彼女に囚われてから、私は楽園の中にいるような気さえもする。
人間として堕落する快楽3欲地獄だが。

食べて寝て性交する日々なのだ、今の私は。


「ええ、カルシウムいっぱいとってくださいね」


そして私は悍ましい風呂場をあとにして普通の風呂場に向かう。

歩きながら、ああ、私は完全にしくったとがくりと肩を落とす。


なんで、あんな怪物に出会ったのだろうか。


「まずは借金返さないと………」

借金を返さないと、彼女の言うことは「なるべく」聞かないとダメなギアスが掛かっている。


しかも新しく貰った腕は眼を見開いて呆然とするような高性能な兵器だ。
私の弱点を補う、広範囲兵器であり生身で戦車を粉々にできるものなのだ。

自分の新しい腕をみる。


コレは物凄いのだが、こんなものポンと人にやる神経がやっぱり化物だ。
この腕一本で十分封印指定されそうな気がする。
コレを作るのに、数日とは、本当にニンゲンなのか?
折空観兵器、現代原子物理学兵器だというが、こんな危険な広範囲を消し飛ばせる衝撃を吐き出せる腕など、何に使えというのか。
一種の超能力を宿らせた空間破砕の権能があるというが、兵器だけに平気に使えないではないか。



仏教語でいう「折空観」
物質とは全て元素の集合体、四大元素以外は全て分解することが可能である空であり。
修験者ならば、瞑想の修錬により、四大元素の観測も可能らしく、一種の超能力であり、それを体空観にすれば、元素を操るのも可能などという、こうした理論を言う。

仏教版の超能力だ。

修錬して出来るなら、出来る奴の脳みそをシステムに組み込めば、機械と一緒、所謂仮想ドライブというが、何処でそんなものを手に入れてくるのか。
さる「生身の金剛杵」を原料に作った兵器だというが、バゼットにも良く理解出来ない。
この腕に宿る術式の起動をさせるには魔力を込めるだけでいいと言う。




なんだか、これ、起動すると人の泣き声――断末魔がするような―――気にするのはやめよう。

「お坊さんの癖に仏の顔は三度までという言葉を知らない人のです」

だから――ホトケさんにしました。

とか私は知らない。




この彼女のことだ、どうせ命ごと奪ってきたに違いないだろうし。


彼女の兄という不幸な位置に生まれた男は彼女曰く、本当に普通に生きているらしいのだが。

なんだその奇跡は。

普通の人間は彼女の傍で生きられるほど丈夫ではないはずなのだが。

そんなことよりも取り敢えずどれくらい働けば、借金分チャラになるだろうか、とバゼットは悩んだ。











桜さんの準備中 下


「人間のやつもちゃんと、研究用、観賞用、食材用に分けてますから、このトマトに使うやつはC‐123番のやつにしますかね?
これ肉が硬くて硬くて、あんまり使い物にならなかったんですよね、言うなれば、生ラムじゃなくてマトンみたいなものですか。
くさ、じゃなくて熟成期間を設けてから餌にするべきでしたか」



『材料保管、貯蔵庫移動、c123、実験開始』


そう言ってマキリサクラはバスルームの中で、スケベ椅子に座りながら、顎に手を当てて考え込む。
彼女は風呂桶に保管していたモノを適当にボンボン自分の影に放り込んでいく。
それは酷く鍛錬という鍛錬で培われた、こわばった堅い男性の右手だった。

それが

くしゃくしゃ

と咀嚼される。
紙を適当に丸め込むような音がバスルームに響き渡る。

今彼女が行っているのは、現在までに培った、いや奪い取った、知識を利用しての使い魔の改造実験だった。
試したい知識、実践する技術をこうして彼女は行っている。
彼女はある程度人体を調律する技能を得た現在では、彼女は一つ人としての欠落を生み出した。

彼女は眠らない。

睡眠という人としての安らぎをこうした実験を行う時間の為に捨て去っている。

こうした行為は彼女からすれば唾棄すべき行為だ。
しかし、今は忙しい時期。

姉たちの動向の監視、アインツベルン結界付近の監視、教会の監視、魔術協会の監視
冬木の街の監視。

あらゆるところに眼を置き常時の攻撃態勢を撮り続けている。

そのほか盗聴盗撮行為を最低5ブロックを同時に行っている。

アサシンを召喚してから幾分か楽になったが、彼女は手を抜いたりはしない。
彼女の魔術師の始まりは油断から始まっているのだから。

世の中全てに疑問を持つ抜け目のない人間ならば、過去間桐の蟲蔵の家畜になるような愚は起きない、と考えていた。
様々な魔術師達の脳髄を喰らい、手に入れた知識がその過去のレールから外れる方法を教えてくれていた。

あの遠坂の男に決められた道、選ばされた道。
ホルマリン漬けにされる才能を気づかない愚かさ。最初から足掻く方法も知らなかった間抜けな自分。


知ることも出来ないどうしようもない過去に現在こうしていれば、なんて。
もう一度やり直せたら、なんて、くだらない。


それを一瞬、どこまでも正確にシミュレートした時の自分自身が許せない。


ああ、それは敗北だ。


それは私という未来を否定する。
それは停滞を招き、未来への禍根となるだろう。





日々を楽しく謳歌するのは選ばれた者のみの行為。
奇跡のような幸運を持ち、何も知らずに幸せの中で死んでいく。

彼女は最初から不運の中にいた。


だけれど。


「妄想って楽しいですねぇ」

人間の肉を弄り回しながら彼女は考えていた。
大分捗ってきた現在と何も知らずに喚き、不幸を呪った過去を見比べて、ニヤニヤと彼女は妄想を膨らまして遊んでいる。
過去があるからこそ未来は面白い。
それを思考実験で変化させて遊ぶのも一興だ。

彼女は不幸を嗤うために奇跡を暴き、知ることを選んだ魔女である、そんなのは快楽の一つで悩むことでもないのだ。



ううむ、と彼女は思い出す。

姉が衛宮邸に居を構えた時点で彼女は所謂、空き巣を行なって姉のプライベートを覗いて大変気分が良いのだ。

姉が衛宮の家で眠った夜。

姉の生理周期調べたりとか。
オナネタ探したりとか。
姉の家にある機械系の家具を全て壊れやすく弄って、次回の家電の買い物に付き合わされるような伏線をつくったり。
トイレに盗聴器おいたり。
意味もなく姉の寝室で遊んだりとか。
前の自分の寝ていた場所を汚して掃除したり。
ゴミ箱探ったり、ストーカーごっこして遊んだ。






あの去年のクリスマスで姉の家に仕掛けを施しておいてよかったと考える。

それに読み物が沢山あって面白い。

並行世界の魔法へ至る知識の研究資料とか、盗みまくりである。
メモとか全部コピー機で印刷させて貰った。
その読み物を呼んで妄想が逞しくなっているわけである。







そもそも聖杯戦争をわざわざサーヴァントを呼び出したことは偶発的な兄の巻き込まれ事件であることが発端である。


ある程度予測のうちだが、ここまで面白い方に巡るとは、世の中楽しい。

その流れを見て、必要だな、と思ってアサシンを手に入れたまで。
昨年から世界を少し回って得た知識の量と、冬木という狭い街での小さなイベントで得られる知識比べるのなら世界だ此処まで本身を入れる必要はなかった。

「一通り全部かっさらって、最後に聖杯手に入れれば満足だったんですけどねー。でもすっごい楽しいなぁ、このイベント、ワクワクします。
クーフーリンとかTSアーサー王とかヘラクレスとかTSフランシス・ドレイクとか夢の共演だなぁ。
あら、アサシン……拗ねない拗ねない、貴方だって、あと数年すれば、貴方の一族がモデルのゲームが発売するんだから。
アサシンの癖に忍ばず騎士とガチンコで戦える最強なアルタイルさんとか大人気ですよ」


前世では発売していたが、今は知らない。
元々、洋ゲー系が趣味だったのでフォールアウト3が発売しないかもしれないこの世界にちょっと不安を覚えるマキリである。
昔はストレス解消でやってたなぁとちょっぴり懐かしくなるのである。

何気なく今持っているゲーム機を思い浮かべる。
姉の家に64持っていき、遊んだクリスマス二日目。


最初はテレビゲームを馬鹿にしていた割に

姉はマリオパーティーで可愛くきゃあきゃあ言いながら、コントローラーのスティックをへし折っていた。

「ふ、ふふっそんなところで隠れて拗ねてないでもうちょっと傍に居なさいアサシン」

「マスター、私は拗ねてなどいない」

アサシンがお風呂場の隅で影となり、私を見守っている。
なんでかいつもイジケテルようにみえるのは私の気のせいであるが、そう見えるのである。
アサシンの癖に2mあるし。
大きいくせに気配がないとか、そうとしか思えない。

「でもあなた、多分一番現在のサーヴァントの中で私的に最高ですよ、双子で一人の暗殺者とか、まるでカムイ伝です」

そういって今日のアサシンの情報を読み取る。


アサシン


真名       ハサン・サッバーハ

マスター     マキリサクラ

性別身長体重 男 2m15cm 85kg

属 性      秩序・悪
   
パラメーター   

筋力:C
耐久:D
敏捷:A
魔力:E
幸運:C
宝具:C

クラス別能力

気配遮断 A+

保有スキル

投擲(短刀):B

風除けの加護:A

同調:B

宝具 妄想偏在

この宝具は過去二人で一人の暗殺者であった彼の同時存在を作らせる。
どのような場所でもいつでも片方と入れ替わることを可能とする。
同調のスキルにより片方とリンクすることが可能。


二体の同性能のアサシンを保有することが出来るが、片方を殺害された場合、この宝具を失う。
完全に一体どちらかに吸収することで、敏捷と気配遮断のスキルを飛躍的にA++まで上昇させるが一時的であり、その後この宝具を失う。
二人で一人なので、一体分の魔力で活動することが出来る。


なお、性質上、他者に視認出来る場所に同時に存在することは出来ず一体に戻る。

自爆攻撃が可能である。






「うん、シフト制で片方休んで片方働く、効率的ですね、どことなく屁理屈こねたような宝具だし、エコな感じでいいですね。
しかも、宝具使ってからの令呪のバックアップで最速隠密のステルスサーヴァントの完成じゃないですか。
前回のアサシンが強すぎるんですって、そんなに落ち込まないでください、ほらほら、お外で頑張ってるお兄さんも落ち込んじゃいますよ?
せっかく8時間勤務制にしてあげたんだから、今は休んでください。
それに一人ずつ私が可愛がってあげれますし――――まぁ80人対私での企画物AV的な輪姦プレイとか憧れますけど、白濁風呂とか体もたない感じの」

ステータスはしょんぼりだけれど、私ととことん相性が良いサーヴァントである。
聖杯の目的も鬱陶しいものでもないのが幸運である。

彼は双子の兄弟として生まれたアサシンであり、二人で一人として育てられたそうである。
全てを共有し、暗殺者として生涯を全うしたらしい。
そこに不満はないそうである。
が、一人のアサシンとして完成したいという思いもあるらしく、偏在することをやめ、一人前になりたいそうである。


奥さん一人を内緒で二人で共有するという、半人前人生だったので。




「俺らは二人で一人で最高のアサシンだ、でも一人ずつでも十分凄いアサシンだぞ、なんだよこの宝具!?
俺らの別々の個性が抹消されているじゃねぇか!?ふざけんな座!?別々にしろや!」

的な感じの目的……。


そしてもの凄い弱点がありますけどね。


「貴方たち実は凄い仲悪いですね、一人で二人なのに、お互い同じ場所に居たくないとか、二人同時で戦いたくないとか、没個性が嫌とか。
でも、個性ありますよ、貴方の場合おっぱい好きですよね、あっちはお尻が好きだし、愛撫の集中場所とか偏ってます――――案外過去バレてんじゃないですか奥さんに」

「………やめてくれ、聞きたくない」

流石に究極の穴兄弟でもそこらへんまで打ち合わせが出来なかったという話である。
まぁ常識的にそこまで共有しないのが人として最低限度である。

「ふふ、可愛いなぁ、伝説的な暗殺者の割に、人間らしくていいじゃないですか、ふふふふふふふふふふふ、どっちが愛されたか確かめたいとか。
あははっはははははははははははははははははははは。
ふぅ、多分、きっとどっちも愛してくれたと思いますよ、貴方達の一人だけの妻は。だって、浮気も出来ないくらいに片方は常に待機という形で傍に居てくれたんですからね?」

或る意味理想的な夫婦生活じゃないか、とマキリは思う。
愛する男が二人いて、片方ずつ交代して愛してくれて、傍にいる。



「ま、確認は聖杯とってからしてください、私の推測は当たりだと思いますから、ふふっその間中東の貞操観念が強く残る貴方たちを順番に楽しく抱いてあげますよ」

「しかしながら、マスター、貴女は休んでいるのか?その状態を維持するのは辛くはないのか?」


「いえいえ、こんなの呼吸するのと一緒ですから。楽しいですし」

過呼吸にならないように注意はしている、問題ないのである。


「そもそも、貴女は、私を呼び寄せる必要があったのかと、私は疑問を覚える、今こうしている私にな」


「必要だから居るのですよ、アサシン、意味もなく呼ぶほど私は馬鹿ではないのですよ、ふふっ確かに貴方たちの仕事を8割私が奪ってますけど。
でも、せっかくこのシャバに居るんだから貴方たちは楽しみなさい、私に忠誠を誓う者へのご褒美ですよ、眠って、美味しくご飯を食べて、私とヌルヌルとセックスするぐらいの楽しみはあってもいいじゃないですか、物事への感覚器官はあるんですよね?だったら勿体無いですよ?あれ、まさかアサシンだけに麻薬でも吸いたいですか?良いのありますよ?このあとご飯食べたあと薬キメてヤリますか?」


「そういうことではく…………もっとサーヴァントらしく扱えと言いたかったのだが」

「うーん、別に気にしなくてもいいじゃないですか、しっかり働いてくれるし、等価交換ですよ」


ほらほらと私は着衣を乱し、アサシンを傍に招き、己の膨らみを弄らせる。
大きくて形が良い、私のボインにそろりそろりと手を入れ揉みしだくアサシンに微笑む。
仮面の下は暗殺者になるために改造され、無残だが、それでも複雑そうな表情に見えるだろう。
己と同年代の少女ならば悲鳴を上げるような情景だが。

私は楽しく老若男女抱ける、ようはシチュと心の在り方であるのだ。




初物大売出しセールされて相手が蟲だったし、私。


「貴女は邪悪だ」

「邪悪でしょうね、キリストもイスラムも仏教もヒンドゥーも悪魔扱いするような、ん……あっ、あっ……上手です。
だけれど、それがどうしたって感じな気がします、でもこういうのも悪くないでしょう、あ……ん」

「そうだな、マスター」

己は騎士たちのような輩から醜悪と唾棄されてきた暗殺者。
しかしながら、私はこの聖杯戦争で最も優れたマスターに選ばれた。


本当に、悪くない。





アサシンは17の少女の美しい体を愛撫し続け、そう思った。






私たちは既に聖杯を手にする前にこの女に満たされ始めているのだから。

















あとがき


ソフトないのチートとかいうよりも、ゲーム機ごと乗っ取る気マンマンな桜さんをお送りしました。

今回短めですね、次回はしんじくんサイドです。

あと東京バ●ル最近買ってやったんですが……(´・_・`)



沢城み●きが声だしするエロゲだと思ったのに………。


そのテンションを次回のしんじくんに回してやる、的な感じでいきます。
それがこの作品での間桐慎二の存在理由。
声優ネタでアララギさんinシンジとか天道切ない…in慎二とか、ないのかなぁ





次回もお楽しみに

ちなみに聖杯戦争中基本的にこんな感じ


「サクラ、次の巻は何処にありますか?」

「ああ、ソレも、続きまだ出てないんですよ……ベルセルク」

「………貴女が私に読ませる日本の漫画は全部続きが出てないのですが、気のせいですか?」

「面白いから、いいじゃないですか。まぁソレあと10年経っても完結してないんですけど」

「………取り敢えず、貴方が読んでる本を貸しなさい」


「いいですけど、これ、読むとき精神防壁張らないとペロリと食べられますよ、読む、ようは脳に情報を取り込むさいに、その読み手の体の神経を通ることにより起動する。
まぁ大陸の風水みたいなもんですね、ソレが脳みそを破壊します、普通の人が読んでも大丈夫なんですけど、私たちみたいなちょっとばかし神経が普通じゃない人間にとっては毒です。ウェルズの火星人がバクテリアに弱いとかそういうもんです。この現象を起こすためだけの本ですし読んでも面白くないですよ?
脳の血管切れるような本なんて、そっちの漫画の方がいいですよ?ほらほら次に読ませたい漫画あるんですから、ハンターハンターとか面白いですよ?」

「そのハンターハンターとやらは完結してるんですか?」

「10年経っても完結する気がありません」

「なんだか、私は嫌がらせをされている気がするのは気のせいですか?」

「さっき提案したイヤラシイことを拒否するからです、ならば、ということで嫌がらせで楽しんでます、もやもやとしません?続きが来ない漫画って、ねえエッチしませんか?そのモヤモヤをスッキリさせるために」

「……流石に3人はちょっと………しかもアサシンのサーヴァントと」

「私と2Pならいいんですね?私ムラムラしてきました。」

「あの……サクラ、あなた、ホントに聖杯戦争やる気ないんですね、あと貴方の横に積んである、アニメのDVDをみせてください続きが気になります。
セルに勝てるんですか、Z戦士たちは?ゴハンは?」


「いいですよー、あっそうだ、明日カラオケ行きません?アニソンとか歌ってみませんか?」


「からおけ?……構いませんが、そんなことしてて大丈夫なんですか?」

「なんとかなりますって―――多分」






しょうもない外伝2




「ふむ、此処にある読み物も飽きてきましたが、暇つぶしに良い面白いものが見えるじゃないですか」

セイバーのクラスを持つサーヴァントが見るのは屋敷の外で胡桃狩りをしている一人の男とその娘の様子だ。
黒い幾何学模様のロングコートの下、オフィスガールが着るようなピンク色の制服のまま椅子に寄りかかり窓、辺で体の力を抜くようにだらけ、眼下を楽しむ。

17、16だろうか、その容姿は少女のようで、熟された女性のようにも見え、年齢が一定しない、不詳の女。
セイバーとして召喚された割には、鎧も、盾もなく、彼女の姿からは戦う者の匂いがしない。
持つ宝具自体も益体のないモノであり、その利用方法も戦いとは無縁であり何も意味がないものが多い。


例に上げるなら、目に付くのがこれだ。


秩序のコイン 凡ゆる運命に影響されない、その世界の物理法則のみに従うコイン。




などというふざけたものだが。

彼女のクラスはセイバーでは間違いない。

一応、宝具の中に剣がある。


井上真改2尺3寸



ランクC

なんとなく趣味で所有していた剣。

とか意味不明な説明付きだが。



殆どセイバーとしては役にたたないようなハズレだが。

彼女の力はそんなことでは計り知れない。

アイリスフィールとしては彼女がキャスターとして呼ばれていたら、どんなことになっていただろうか。

そんな想像が尽きない。





「何を見ていらしたんですか……魔法使い殿」

「いえいえ、敬語はいりませんよ、現在はただのサーヴァント、魔法は使えませんから、というか使ったら私は此処にいなくなっちゃいます。
使えない状態の私の一部が座に回収されたんですから、今はただの魔女ですよ。」

此度呼ばれたのは、なんでしょうね、どうせ、散々やらかしたからですかね。

第六の魔法使いの彼女はだらりと窓辺に身を寄せ、ふてくされていた。
彼女は過去に宝具類を趣味で集めていた、そのウチの一つ聖鞘をある男が死んだあとちょっぱったのだが。
眺めるのも飽きたので、元の泉に投げ込んで捨てて、代わりに妖精郷の王様から頂いたモノの一つで賭け事をして遊んでいたところを呼ばれてしまった。


秩序のコイン。

まぁ、所詮2分の1の物事を決める時に使っていたのだが。

あらゆる運命とは無縁なこのアイテムは彼女にとっては便利なものだ。

これで幸運を好き勝手に操れる輩と心底面白おかしく賭け事をしていた。

キワモノ部類でしょうがなく座に押し込めることで世界を守ろうとする世界のせいで、現世に呼ばれることが今までなかったので好き勝手にやっていたところを奇跡的に召喚された。
そもそも彼女の性質的に座なんて椅子にしか過ぎない。
好き勝手こそ彼女の本質。





これも因果の揺り返しかな、とマキリはにやりと笑う。
使い慣れない美術品をセイバーとして振り回さなきゃならんとは。



彼女は手の平から一羽のカラスアゲハを作り出し、少し、窓を開けてそれを解き放つ。
あの男と少女を見るのもいいが、こちらのお姫様も見ていて面白い、故に使い魔に私の代わりに片方を見てもらうことにする。
あの男、私の外道具合をよく知っているらしく、私をアレだ、便利な毒薬ぐらいにしか見ていない。
まぁ別に不愉快なぞ、感じてはいない。
人は何を考えても良い、自由な権利がある、いや考えるのは自由。

ま、此処の当主爺はあの蟲爺に似ている気がするので、近々遊んでやろう。
ああいう爺に頭下げられるの楽しいし。
魔法魔法魔法魔法魔法とうるさいが。

丁寧にも私のワガママで彼女自身が淹れた紅茶が彼女の手で運ばれてくる。


「どうぞ、なんと呼べば?」

「お好きにどうぞ、お姫様、なんなら、ババアでも構いませんよ、貴方に比べりゃ、私はそういう年齢なんですから、所詮呼び名なんて記号程度ですよ」




アイリスフィールは彼女の為に用意した紅茶を運んで、コトリと、窓辺に置く。
本来なら、彼女はそんなことをする必要のないお姫さまだ。


しかし彼女の場合は私みたいな美人の女性が淹れたお茶が飲みたいそうで、慣れない手つきで彼女の為に紅茶を淹れた。

王冠つきの瓶のコカ・コーラが置いてあるような場所であればそっちが飲みたいそうだが。

いつも楽しげにしている御仁で面白いおかしいお話をしてくれるので、ついつい我が儘を聞いてあげたくなるとアイリは思う。


「ふむ、私にはお茶の味は詳しくありませんが、多分旨いんじゃないですか?」


「あら、ありがとうセイバー」

「これから、日本に行ったら、観光案内してあげましょう、いろんなもの食べて、色々教えてあげましょう。
まずは私の吸収スキルで、キャスターぶんどって、聖杯ゲット、それでいいですよね?」

「はい、お願いします、セイバー、楽しみです」

「ふむ、クラス名よりもこうお呼びください、我が儘ですけどー御老体とね」

「はい、御老体」

「可愛いなぁ、アイリちゃんは、ねぇねぇ、一晩どう?」

「それは…ちょっと」


こういう冗談好きな御仁だが。

彼女はきっと私たちを救ってくれる。
かの騎士王であったなら、というIFを求める気持ちも起きないほど、彼女は優秀なサーヴァントである。




そんなアイリの期待と裏腹に切嗣は彼女を持て余している。

なにせ、彼の得意とする戦法以上の策謀をいくつも思案する謀略者。

彼女の過去を聞いて嫌気を感じている。

彼女が英霊になった理由とか。

むしろなんでコレ俺のサーヴァントなんだよ、と。

基本マッチポンプで自分で都市一つ破壊されるような事件の原因を作り、それを解決するとか、そういうのばっかり。
一応、数億の人類を救っているが、その危機も彼女の所為だ。
プラマイで言えば、1を捨てさらに数万を捨てて、強きを挫き、弱きも挫いてから利益を貪る歩く大迷惑。





そのあと結果的に救いを齎す悪魔である。

お前がいなければ世の中平和になるのでは?

と聞けば


「貴方が居ても居なくて変わらないと一緒ですよ、ちゅうか60億いるんですから、そん中に私居ても大して変わらんって。
たかが60億分の1ですよ私。
それにね、いくら救っても、減った数は戻りません。
生きて死ぬなんて誰でも出来る簡単なものなんですよね、私の場合。
それは一人一人自分で大事にする、それが人ですよ。
風邪で寝込まないようにうがいするのも。
地雷を踏まないように歩くのも、同じこと。
どうせなら、レッドアニマル助けたほうがよっぽど良いと私は思います。
世の中そういもんですし、100の知らない人間よりも一匹のパンダちゃんの方が私は好きですよ。
そうですねぇ、10億ぐらいにして自然増やした方が多分、人類長生きしそうでは?
折角魔術師なんですから、その技能を生かしてミサイルのボタンポチポチ押して
危ない国滅ぼすとかいいかもしれませんよ、50億犠牲にして10億ぐらいを老衰させるとか、おすすめです、オススメってだけですよ、これから数十年後に起きる可能性が高い水不足による各地で勃発する紛争とかの前に」



などという、心にもない発言。


彼女の行ってきた悪魔的な手法は勉強になるほど相性は良いが、はっきり思想が合わないとはこれ如何に。


あとステータスと保有スキルが酷い。
確かに最強かもしれないが、クレイジー。


それを何十回も確認して、それから毎日、現実逃避で娘と遊ぶ切嗣である。





セイバー(性棒使い) 性バー


真名       いっぱいある

マスター     衛宮切嗣

性別身長体重 女 165cm 46kg スリーサイズ ぼんきゅっぼん

属 性      自由 不真面目
   
パラメーター   

筋力:E引越し会社の正社員ぐらい
耐久:Eそれなりに丈夫
敏捷:E基本歩くことしかしない、急がないでゆっくり歩くのがポリシー。
魔力:Oっぱい あればある。
幸運:そういうの関係ないし、どうとでもなる。
宝具:沢山ある

クラス別能力

なし

保有スキル

性技:A 大体の存在を性的絶頂に導く技能、彼女と性交した場合、大体が虜になる。


自由:EX あらゆる概念を無視することができる、彼女を傷つける場合、純粋な物理攻撃のみが意味をもつ。
宝具等の概念的な効果を受けず、物理的な干渉のみ攻撃としてダメージを受ける。

自由行動:EX 世界の干渉を受けないことを可能とする、魔力なしでマスターの言うことを聞かないで現界し続ける等のことが可能。

黄金率:B 基本的に金に困らない、少し探す手間を掛ければ手に入る。

吸収:A 他者を喰らうことで、Bランクまでのスキルを奪い取る。

不真面目:A 面白いから大体オッケーにする技能、物事をなあなあで終わらせる、やる気がない。

変態;A 姿かたちを変える、すべての性癖に対応する。

魔術;A 昔取った杵柄を使う、蟲魔術と物理現象を操る魔術が堪能である。


宝具 

彼女の逸話的に、こういうのある?と聞けば大体あるが、大抵、刀剣類は売っぱらっているので武器は少ない。それでも大抵あるけども記憶にないので。
此度の聖杯戦争では刀一本がメインウエポンである、不真面目スキルにより、これ以外武器を使うことができない。



秩序のコイン 

上記説明あり。

ただのコインであるが、彼女のお気に入り。



逸話

世の中を面白おかしく生きた人間。

多くあるが、説明不要。


追記


迷惑ですのでキャスターでは召喚できないようになってます。
彼女で世の中危なくなると思ったら座に回収しますので手綱をしっかりお願いします。


設定

セイバー

真名 間桐桜 

IF外伝聖杯ゲット後の彼女が自由になったあとの一部を座に吸収した存在。





[31354] しょうもない外伝3 ネタ注意 最低系桜さん
Name: みさりつ◆32598cb4 ID:16a569a4
Date: 2012/09/23 02:09
みさりつのしょうもない話



最低系を素でいく、ネタ。

なんか唐突に舞い降りた電波。







外伝3




「なんて脆弱な!馬鹿にしているのか!?ただ一合も交わせぬとは、御身は本当にセイバーなのか?」


倉庫街での戦闘は失敗に終わる。
切嗣としては彼女の戦闘能力を確認するための前哨戦だ。





彼女が過去に強者を鎧袖一触で打ち破ってきた様は圧倒的だった。
彼女の戦いはどこまでも、苛烈で静かなまるで、チェスのよう流動的なもので、思わず、憧れたほど。
彼女は己の目的を達成するために、己が殺し続けた中には普通の人間はいなかった。
どんなに絶望的な差がある者と戦う時でさえ、己の為に犠牲にはしない。
使う手は、どれもこれも、まともとは言えない。
邪悪にして外道に染まり、それでさえ、其処には誇りがあったとさえ、思える。
そこには運が悪い人間も居て死んでいった者もいたが、それでも、彼女はそれを人間として扱っていた。
ゴミの様に腐り、朽ち果てていく人間も、聖者のように美しく死んだ者。
平等に、どこまでも、死んだ人間として扱った。

最初こそ、彼女は一部の視点でみれば、悪の権現、外道の存在、と思った。
しかし、数々の過去を覗きみたところ、彼女はどこまでも誇り高く、多くの邪悪を打ち破った、正真正銘の英霊。

魔術師食い、悪食の魔女、マキリ。


それが邪悪な彼女の誇りなのか、と思い、彼女がたまたま一人で、星占いをするために夜空の下、独り微笑んでいた時に問うた。





「それで―――君は、己の中にある誇りを実現し続けたのか?」


「ん、ああ、アレですか、私はね、ソレが呪いでしたよ、一言で言うならば、効率が悪い無意味な行為でした。
何度も何度も私を魔法から遠ざけた原因なんですよね………三つ子の魂百までもとは言いませんが、人間、家畜に成り下がると、餌の一つの善し悪しで品質に影響が出るとかそんな感じです。


私の場合、最初に不味いの食べて、次に御馳走食べたんですよ。

ご想像のとおり、人間の脳みそですけど。

あれは凄く、涙が出るくらいの、御馳走でした。
思い出の味ですね。
その味は、酷く愚かしく、バカで、しょうもない味なんですよ、情けないし、無意味で何もできない、それ以上に悪くする味だったと言いましょうか。
それでも、それは――――私は思ったんですよ、もう一度、もう一度と。

最初は全然気づかなかったことだったんですけど、ある程度、経験を積んだとき、私はその無意味な無意識に気づきました

それを自覚した瞬間から私は絶望しました。
大切なことは気づかない方が良いかもしれません、それは縛るんです。


でも物事を決める、ある程度の指針になっていたことを認めましょう。

これは誇りではないのですよ、マスター。

そうするのが当たり前、何処で何をしていても人間は呼吸します。
呼吸をやめたとき、死ぬ。

それが人。

私は人を捨てたかった。

けれど、それでも――――そんなこと、どうでも良くなるくらいに大好きだったんですから。


そして意味もなく辿りついて此処にいるんですよ。

今の私なら「もう一度」が出来るかもしれませんけど、私は、多分、何もしないと思います。

それは私の物じゃないので。

うん、そうですね、精々、それは当事者になった別の誰かに頑張ってもらうことだと思いますよ、私は所詮、お化けですからね。
そいつは殺したくなるほど羨ましいヤツですけどね。
とか、こう、タラタラしそうになります。

今回は素直にあきらめましょう。

で。


貴女は正直いって私のブッコロリストに記載されるタイプの人間ですけど。




でもイリヤちゃんに約束しましたからね――――――ママとパパを守ると。






子供っていいですね、私に子供がいたらどんな風になるんでしょうかね?


ふふっちなみにイリヤちゃんはパパは狡いから嫌いだそうです。

そのとおり大当たりですよ!極悪ですよね?マスター?」





「ああ、君も僕も極悪だよ」


「ならば――マスター、私は聖杯の寄る辺に召喚されし者、剣騎士にして剣を持たず、夢幻の剣の使い手。
我が剣はどこまでも見えず、聞こえず、触れること叶わぬ虚空の剣、しかし、どのようにしても勝利する剣。
我が勝利は汝、我が呼び手に必ずや献上することを誓おう、そして我が真名は――――魔切、如何様にしてでも必ず魔を切る、そう謳われた邪剣である。
此処に誓約は成った―――――ふふ精々、楽しんでください、ちなみに誓った相手はあなたじゃなくて、イリヤちゃんにですからね?此処テストにでますから――OK?」


「OK」




この瞬間から最強最悪のマスターとサーヴァントが揃った。
百戦錬磨の正義の味方の手には百戦錬磨の剣がある。
どちらも折れず曲がらずの頑固物。
何度折れかかろうが、摩耗しようが、そんなコトは気にしない奴らである。
諦めの悪さでそこらへんはカバーする、大馬鹿二人のコンビである。

「知らないよ、僕は世界平和が欲しいんだ、だから邪魔だよ、死ねよ」

「イリヤちゃんの為に付き合ってんですから、貴方の理想とかどうでも良いんですけどー」








そして、一人の少女の父親に対する愛で救われるだろう。
願い叶わずとも。必ず、救いが残る話である。
此処にバッドエンドは無粋である。


「き、ききき聞いてないぞ!セイバーぁああああああああああああああ!」


「だから、イリヤちゃんの願い叶えるって最初に言ったじゃないですか、バカじゃないですか?
あらあら可愛い、可愛い、お嬢ちゃんですね?へぇ桜ちゃんっていうの?お友達欲しくない?
ペット飼ってるんだね――きゃんきゃん吠えて女々しくて情けないけど、うんお姉さんが桜ちゃんの代わりに可愛がってる間、新しい友達のところで遊んできてね。
―――――気にしないでくれて良いですよ?」




それはただ、それだけの話である。







SAKURAZERO ちょっとダイジェスト版。

意地悪に行く。









目の前で戦う少女のような艶やかな女性は砕けた剣を持って、苦しそうに立っている。
相手のサーヴァントはありえない、と驚愕し、そして怒る。


最初の交戦で、たった十秒もせず、夫のサーヴァントが砕けたのだ。







第四回目の聖杯戦争でセイバーとして此度召喚されたモノは三回目のアヴェンジャーに匹敵するほど、弱く、脆い。
アイリスフィールはまるで足元が宙に浮かぶような、ショックを隠しきれなかった。
いや、そもそもショックを受けることではない。
彼女は衛宮切嗣にも自分にも、こう言っていたではないか。

「私は長生きしただけのババアなので、あんまり荒事はちょっと、というかマジ弱いですから」








しかし、自分の夫は言っていた。



僕のセイバーは最強のサーヴァントだよ、心配はいらない。
だから、アイリはそんなことしなくてもいいんだよ。


いやいやアイリちゃんとデートしたいですから、ね?

いやいや、お前は何、人の嫁になついてんだよ死ねよ。

とかなんかセイバーと争ってたが。




だから信じてみよう、アイリスフィールはそう思い、彼女を見続ける。



そして立ち上がるセイバー。
そして言うのだ。

「ふむ、貴方がそう言うならばそうなんでしょう。
――――で、それがどうかしましたか?
いちいち気障な台詞ばっかりで飽き飽きしちゃいますよ?
そんなので女にモテるとか思ってんですかねぇ、顔はいいですけど、まぁモテるでしょうけどね。
モテモテ地獄修羅地獄行きな英霊オディナさん?
それにサーヴァントなら奴隷らしく、忠義やらなんやらワンワン吠えないで、このまま追撃して即殺すればいいじゃないですか?
そっちの方が飼い主も嬉しいですよ、多分」




「ふっその程度の腕前で我が忠義を侮辱するか―――此処で果てるかセイバー?」

「そっちこそ、舐めてんじゃねぇよ――――若造」


「口だけは達者だな、脆弱なセイバーよ。口だけ、だがな。
このまま我が魔槍にて果てて出直せ、それが相応しいだろう」

ランサーは己の目論見、目的を最初から躓かせた、セイバーに怒りが沸き、言葉も辛辣になる。




そして


「はん、手前は槍じゃなくて、どっかのメス犬と腰でも振って孕ませとけ―――ああそういえば、あなた主から女寝取って、孕ませてましたね」


爆弾を投下した。


「は―――」


セイバーの突然の話題の変換に虚を突かれるランサー。


「ホント駄犬ですよね、そういうの?
どの口で忠義とかほざいてんの?
流されてんじゃん、ふらふらじゃん?
子供まで作ってんじゃん?

主の女に惚れられた?その瞬間――――切腹しろよ、責任とって。

一回許されて、そのあと助けてー、死にたくないーでしょ?


輝いて死ねばいいと思いますよ。ピカーンってね、ついでにハゲれば?

もっと輝きますよ、あとその汚い黒子、レーザー治療してあげましょうか?

ピカピカに黒一点なので、邪魔ですよね?」




「せっセイバー!?」

アイリスフィールも思わず止めるほど汚い口調の唐突な罵り。



そして続く罵り。

「駄犬駄犬駄犬、忠義とか口だけでホントは他人の寝取るの好きなんでしょ?」


それにはさすがのランサーは




「貴様ぁあああああああああああ!」






キレた。



「はいはい駄犬は血が登りやすいですねぇ、アソコもおったてるの早そうですね」



「死ねぇ!」


「やーだ」



挑発、挑発、挑発。

を繰り返す、桜さん。



フェ○とかなんてのはマキリは勿論大得意にして性技の達人である。
口癖の悪さだけは死んでも変わらぬである。
お口だけで、相手をイかせるなんて序の口である――――口だけに。
ちゅうかランサーイケメン、一晩一緒したい、感じであるとマキリは思った。
まぁイケメンだからね、一晩くらいは共にしても良いというぐらいなのだが。
かつてこれほどまで、小学生レベルの悪口をこのイケメンは言われたことがあるだろうか?
しょうもない悪口なのだが、あまりにもしょうもないので、ランサーは激しく、怒り絶頂である。

確かに、個人での戦闘能力はマキリは破格の弱さを誇る。

そのレベルは名刀持ってるくせに、こんにゃくも真っ直ぐに切れないぐらいである。



小学生にも完敗する切れた運動神経。

名刀井上真改は彼女にしてみれば、重くてしょうがない、鉄の棒だ。
傍から見るとヘタをすると自分を切ってしまうほど、持ち方が危なっかしいだろう。

一応、剣術の知識ぐらいは持ち合わせているが。




知識だけである。






それはセイバーになろうが変わらない。

しかしながら、彼女の固有スキルは魔法が溢れ落ちたものである。

そのスキル『自由』は伝説の名槍をただの名槍にする。

自由は全ての物事から自由になるスキル。

そのスキルに穴を開けるには同じ第六魔法でなければ届かない。


怒り心頭になったランサーの突き出す豪速の槍は容赦なくマキリに突き刺さる。




何度も何度もズタズタに穴を開けられるが、スキル『昔取った杵柄』の魔術により、再生する。


ただ、体に穴があいただけで、死ぬほどマキリは弱くはないのだ。

脳みそ、心臓に穴が開こうが、死にはしない。

何度も何度も刺突するランサーに辟易しながらも挑発はやめない。






マキリは確かに最強である。


でもそれは防御面であり。



「はいはい、痛い、痛い、ほれっと」


マキリはシングルアクションで簡単な攻性魔術を放つ。
それは圧倒的な魔術の錬磨による魔弾。






「そんなものっ!」


あっさりと魔槍にかき消される。


「あれま、効かない、効かない、駄犬強いです」


じゃあ次、と大きな水球を周囲に浮かべ発射する。
水の弾丸。




「ふざけるなああああああああ!」



あっさりとこれまた弾かれる。

弾けた弾丸は大きく周囲に飛び散り、まるで、空中に浮かぶ噴水のようだ。






このマキリ。




攻撃手段がランサーに対してZEROである。



お得意の魔術自体で自己再生することは出来るが、ランサーの魔槍により彼女の魔術は粉砕される。
『自由』のスキルは彼女の内界そのものに影響させることは可能だが、外界に及ぼすほど、反則ではないのだ。
キャスタークラスで召喚されていれば、その反則も可能だが。

ようするに、彼女がやってることと言えば。


ランサーに破壊される魔術をバンバン打つという花火での囮。
どれもこれも、Cランクに匹敵する。
そこらの人間なら粉々に出来る大盤振る舞いだが、それは布石。



(マスター、さっさとランサーのマスターを捕らえなさい)

(無茶を言うね、セイバー、殺すなら出来るが、捕えろとは……)

(今じゃなくてもいいんですからね、取り敢えず、弱らせるのが今回の目的です、このランサーの供給、二つの内一つ減らすんですよ?
それさえ出来れば、なんとかしてあげますから)


マスターにさえ隠している、マキリの謀略が蠢く。
元々御三家の当主、間桐桜だ、アイリスフィールのことも勿論ご存知だ。


切嗣とお母さんとずっと一緒に居たいな、だから、セイバー絶対に守って、絶対だよ?


それを叶えるのが、彼女の契約である。

目指す目的は、聖杯戦争の解体だ。

ふん、可愛い女の子の願いぐらい叶えてみせるのが魔法使い。

そんなことが出来ない程度で魔法使いは名乗らない。





なに、そんなに難しいことじゃない。




全てのマスターとサーヴァントを生かさず殺さず手に入れるなんて


軽い、軽い。

アフターケアも、ばっちり考えてある。




ついでに雁夜おじさんも助けてあげましょう。


とか考えているところが俗物的だが。



なに、余裕があるなら、とことん遊ぶのが、彼女の快楽主義だ。







ついには全身を幾度に貫かれ、何度も死ぬような苦痛を味わいながら、マキリは余裕の笑みさえも浮かべている。

何時もどおりに妖しく、厭らしく、くすくす、とニヤニヤと、意地悪な継母のように嗤い哂い嘲笑う。

ランサーという怪物を相手に、踊るように蝶のように舞い、何度も死んでいく。

そして何度も生き返る。



時には槍に突かれ、くるくると回り死ぬ。

まるで、針に糸を通すように簡単に体に大きな穴を開けて派手に血を撒き散らしながら

「ふふふあはははっ!」

哂う、哂う。

何処かしら美しく白い肌に咲かせていく紅い血はヴェールごとくエロチズム。

扇情的に艶やかに踊り、踊り、笑っている。

そして


死んで死んで死んで




何度も生き返る。


死ぬのも生きるのも『自由』だと言わんばかりに。




死と生を繰り返す、魔女の夜行演舞。





アイリスフィールはその姿を美しいと思った。



ランサーとそのマスターも影から伺う者達もその姿を―――悍ましく、美しいと感じた。


そして皆が想う。







なんだこの化け物は?


一方的に刺殺を繰り返す、ランサーはあまりの呆気なさとあまりにもな悍ましさに大きな傷を受けていた。

その傷とは焦燥だ。

己の武威を当たり前に受けて死ぬ。

わざわざ、誇りある魔槍で貫く必要もないほど―――脆いのだ、このサーヴァントは。

それがランサーに大きなダメージを与えている。



この化け物は言葉を言わずとも彼に言うのだ。

そこらへんの木の棒で力任せに殴られているのと一緒。



お前はただ、殺しているだけ。




くだらない。



その程度なの?



ま、所詮殺し合い。

全部一緒なんですよ、こんなもの。

石投げて殺すのも魔術も、槍も剣も斧も矢も全部一緒。


所詮手段だよ。


あんたの誇りある、魔槍による魔技もさ。

人殺しの道具。






と強引に洗脳するかのようにそういう光景を無理矢理創りだす。


そして











「弱いものいじめ楽しいですか?
ふふ、英霊さんなんだからもう少し寛容になってくださいよ。
哀れな哀れな私のような女の子を甚振るなんて本当に。
――――ほんと汚いですね、駄犬。」


イヤラシイ一言と共に。


ランサーは穢された。

これは誰がどう見ても弱いもの虐め。

弱いモノに貶され、いかれ狂った強者の弱いものに対する、執拗な攻撃。





無残にも、本来の誇りをそういうものとして穢されていく。



美しい技で振るわれる槍の軌跡が鈍る。

確かに、このような操り言葉に絆されるほど彼は弱くはない。

こうして弱いサーヴァントを何度も殺すことも悪くはないのだ。

彼は何も悪くない。

相手が意地汚く何度も生き返るだけで。

どのように優れた技を放っても、それが殺せないだけ。

それだけで。


何度も何度も槍を突いて突いて、刺して刺して殺し続けているだけなのだ。


でもそれは醜く見える。

まるで男が女を乱暴に包丁でグサグサと何度も刺し殺すような、死んでいるのに何度も刺すような荒れ果てた情景と錯覚させられてしまう。






「ぐ………う」


音を立てるようにぴきり、ぴきりとランサーを確実にとびきり胸糞悪くさせる。



ランサーを強引に汚す、穢す。



なんという邪悪。


それは精神のレイプだ。

そういう手法は彼女の基本的な技術。

ド外道を元気るんるんに往く彼女の悪戯である。

彼女にいきなり、真名なんて明かすからこうなるのだ。
かの騎士王なら、こうはならない。

高潔に威風堂々と名乗り上げた戦士。

対峙するのは女だてらの麗しい、剣騎士


美しい、誇りある、忠義の為の戦いの幕をあげるだろう。





相手はそうではない奴で、とことん意地悪なババアだ。

綺麗なほど、汚れやすい物事をよくわかっている。

静粛な厳正な儀式で粛々としているところで、空気を読まない言動を行うような行為である。

しかも確信犯。

例を上げるなら、成人式で偉い人が喋っているときに馬鹿が「イエーイ!」とクラッカーをぱんぱんと大音量で鳴らすような行為。


そんな行為が華々しい命懸けの戦いに混ざると、どうなるか。




最高に胸糞悪く腹立たしいものだ。

ぶっ殺してやりたくなるだろう。

そう思えばお分かりいただけるだろう。

そのぶっ殺したい相手を何度も何度も殺す。



その役をランサーを強制的に仕立て上げる。



そして、ランサーは疲弊し、思わず、膝をつく。


それを血まみれで眺めて。






汚れきった怪物であるマキリは嘲笑う。

いやぁ、私と相性の良い敵でよかった。

いきなり、あの英雄王だったら、どうしようかと、思ってました。


私ってSもMもイケル、ド変態ですよ。

変態さんに簡単に名前教えちゃダメでしょ?

夜道に痴漢されちゃいますよ。


ま、元々、知ってますけど。

私と同じく、聖杯戦争で暗躍してたヤツ食ってますし。

というか、あの虫、この時代生きてたね、ああ、忘れてた。





うん絶対、また食べようっと。




不味いけどクセになる味でしたし。
例えるなら500年漬けた味噌汁?


とか考えながら。


この戦闘を彼女らしく楽しんでいた。





(何が時間稼ぎだ……セイバー、君は外道だ、それに手加減してくれ、魔力が馬鹿にならない、供給やめるぞ僕は)

(いやぁ、私って弱いですからね、基本的に他力本願なので。
―――私が勝つんじゃなくて、相手に負けて貰う戦い方が基本戦法なので
あと、供給やめないでくださいね、マジで死にますから、折角、このまま、他の所をつついて精神汚染して何度も何度も汚して穢して、再起不能にするんですから)


(それにアイリに何みせてるんだ!?彼女は純粋なんだぞ!?)

(危ないポールダンスですよ、こんなもの)





「綺麗だわ、凄い、綺麗、セイバー、綺麗だわ……まるで」


純粋なアイリとやらには物凄く好評だったようだとマキリは微笑む。
もうノリノリでエロティックに死んだり生き返ったりしていたわけである。

なんという、技術の無駄使いとか、己でテンションを上げていく。


「わかってるじゃないですか、アイリちゃん、これは生と死の繰り返しのエロスです。私みたいな可愛い」


「手品みたい!」


「え――――てじあっ!ぐふ……あれ、あれれ、『自由』スキル……が……効果が!?」



「あとCGみたいね!」



「しーじーっ!?げほ、やべ、テンション下がった―――不味いっ!?」


悪意なき、純粋な言葉がマキリを抉る。
膝を突いて、マキリは大きく、吐息をぜぇぜぇとさせ始める。

元々肉体よりも精神に依存する魔法存在は味方からの忌憚のない発言により大きなダメージを受ける。
彼女は己のベストコンディションでしか、この『自由』スキルは使えない。



(どうしたんだっ!?)

(いやはや、とんだ伏兵がいたものです、過去そうでしたけど、ああいう天然モノに私って弱いんですよね、私は元々「流れ」を観測するのが好き――ようは、なんかノリとか
そういう系が大好きというタチで、それを乗りこなすタイプなんですけど、ああいう予測不能な純粋な善意での言葉が胸に来るというか――苦手なんです)


マキリは酷く赤面した。



そう、そういうタイプの人間との付き合い、ようは純粋天然な人との付き合いが全くもってなかったので苦手なのだ。
ああいう風にのほほんとした言葉を聞くような場所は汚れた私にはふさわしくないとか、拗ねていた少女時代もあったわけで。
そういう人をからかって騙すのは好きだが、突然、思わぬ反撃を喰らうと、少し、思考停止するのだ。

それが日夜にやにや物事を思考し続けるマグロのような思考の回遊がデフォルトのマキリにとって。


絶大的なダメージとなる。


(一時撤退です、一瞬の思考停止により、『自由』スキルが崩れ始めました、このスキル、「私」を保つことで発動するスキルなんですよ!)

(意味がわからないぞっ?あっアサシン!)

(っ!?)

(ピンチだ!助けてくれ!コイツ分身するぞっ!?)

(ちょっえ)








どうしよう。



マキリはちょっと不味いな、この展開と思う。




そして、からからと笑った。




―――面白すぎて。





あとがき







すいませんでした、オディナさん。



とか言いたくなるぐらい悪意100パーの意地悪桜さんでした。


外道麻婆神父、早くも愉悦の覚醒秒待ち、興奮しちゃってさらっとアサシン投入。


「なんかあれ見てて楽しいワロスww」
















ネタですから。




ちなみに




実は汚したくないなぁとか思っちゃう、そういう人が逞しい桜さんにとって好みのタイプ。


普通に生きてて、ひたむきな人で真面目で天然な人が好き。




某幸運EXのとか。

そこまでにしておけよ藤村の大河とかが本人も意図せず好み。


とか考えている。





[31354] 超短編 逞しいKARIYAさん 蛇足追加 若干diesクロス
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/03 16:52
超短編 KARIYA



1948年のイスラエル建国から半世紀近く続くパレスチナ紛争はまだ現在も続いている。
難民が多く、情勢は不安定、いつ争いの火が燃え上がり、地獄が生まれるか分からない場所。

だが案外、見たかぎり今は平和なんだよなぁと思いながら。
そのパレスチナの小さな街の中で今日の昼食を食べつつ



「日本にかえって生卵と醤油でご飯がくいてえ」






雁夜は胸もとにずっしりとかかる、商売道具を見てため息を付きながら日本語を呟いた。



イスラム原理主義組織によって成り立つ組織の動き次第ではイスラエル軍の攻勢により、今現在いるパレスチナの小さな街が一瞬にして廃墟になる可能性もある。
そしてそんな目に見えた平和の瓦解がありふれた世界の住民たちは貧しかった。
1日約2ドル以下での生活強いられる貧困率は全体の中でも9割近いらしく、やせ細った人々が多い。
こんな文句、日本語以外で言えば、まぁ罰があたりそうだ、と雁夜は思った。
今日のお昼ご飯はパレスチナでは本来生産されないお米の料理で、地中海性気候ならではのズッキーニの中身をくりぬいて米を入れ焼いたもの。
正直口に合わない。
なにせ、ダシがない食事だ。
クミンやらカルダモンの舌がピリピリとするようなスパイスが風味や味を決める食文化地方だ。
どうあっても、純正日本人の雁夜にとってお米の使い方に文句を言いたくなるような味付けだ。
いまなら俺、一生ご飯と味のりと味噌汁で生きていける、とか考えてしまう毎日の食生活である。
せめて魚でも…とか考えるが、ここらではイスラエルの関係で漁業制限がかけられており、魚は高級品。
こんな廃墟のような街では目にすることも出来ない。
そもそも、新鮮に保存する機器もないのだここらの貧しさは。



「どうしたカリヤ」


「ああ、腹いっぱいだ、ほらお前も食え食え」

ピリリとしたスパイスの舌触りにため息が出てくるので、半分を残し、横に立つ少年に皿を向ける。


「ダメだ、俺はアンタの護衛だ、仕事はしっかりする、お金一杯もらった。」

「いやいい、ほれ、銃をかせ、俺がお前と交代するからよ」

雁夜がテーブルから立ち上がり、少年が肩にかけている、突撃銃を奪うと少年にほれほれと席に座らせる。
この少年は雁夜がこの土地に来たときに雇った少年兵だった。
彼は、ある少年兵を育てるキャンプで銃の打ち方を学んだ、ありふれたここいらなら何処にでもいる少年。
なんでも、自分の居場所が皆殺しにあって逃げてきて、それからずっとふらふらとしている、とのこと。。
顔つきからすると生粋のアラブ系住民で彫りが深く、ヘタをすると、雁夜よりも、顔つきだけなら、年をとっているように見える。

最初この土地に来たとき、真っ先に身ぐるみを剥がしにきた勇敢な少年だったので、雇った。

「う、まだ口を動かすと、痛い、カリヤ……どこにそんな細いのにそんな腕力があるんだよ」

「お前が俺のカメラを分捕ろうとするから悪い、つうかひょろひょろ言うな」

雇うまでの話は長くなるので省略するが、とりあえず返り討ちにぼこぼこにした。
慣れたものである、人をぼこぼこにする経験で彩られた人生を生きているのだ。
ちなみに甘酸っぱい思い出を彩る顔とスタイルが好みの女の子の幼馴染の葵には「雁夜くんはワイルド過ぎて厭、というか近づかないで、妊娠する」とか言われてフラレた。
他の子との噂とかで俺の悪行を知っていて冷たい視線で。



だってしょうがないじゃん、育ち悪いし。

あの妖怪爺が実の父親だし。

グレて当然だろうと思う。
もう一人の家族である兄貴も欝が入ったように怯えて鬱陶しいし、陰気な家だった。
湿ってて、なんかグロイし、猟奇的で汚い感じの実家。
ある程度物心がついてからは何時もその狭い世界にイライラしてた。
つうか20世紀の世の中で未だにああいうのってどうだろうか。
魔術。

「古臭いよなぁ、どうせなら世紀末も近いし、北斗神拳みたいなの教えてくれる実家がよかった、いやそれも嫌か」

気づいたら今はこうして色んな広い世界を一人歩いている。

胸に抱くこのカメラと一緒に。

日本ではフリーの戦場カメラマン扱いらしい。
この前、写真集を自費出版した。

題名は世界の国々とかありふれた感じの。

世界中を実家の資産を食いつぶしながら旅をして撮りだめた写真をまとめたやつだが、なんか自分は荒んでいる場所が好きならしく
写真集の中には銃とか、戦争とか貧困とかそういうものをイメージさせるものが多く、帯を作ってくれた雑誌社の知り合いは

背表紙に戦場カメラマン間桐雁夜の世界観とか書きやがったし。


だが


まぁしょうがないか、と思いながら、街を眺める、そこには人々の生の息吹が混沌とし渦巻いている。
生きるために食べるために必死に毎日を生きる人々。
日本ではすぐには目にできない、懸命さ。
明日の為に、明日の為に、とただ生きるひとの強さを感じて胸にくるものがある。
そういう生き方ってものをしないヤツのところで育った俺にとって、この光景は好きだ。
綺麗なものじゃない、埃にまみれた世界だ。
血とか、暴力とか溢れているし、それを美とは思わない。
でも好きで、気がつくとよくカメラを手にしそれを記憶として残す作業をする。

なんかそれだけをするのが俺の人生のような気がする。

太陽と青空の真下、通りすぎるように。

こういう風になったのは確か、ええと突撃銃の重さに身を預けながら思い出す。


「確かキャンプファイヤーだな、あれは愉快だったな」



自分が十代の頃やった、妖怪退治の記憶を呼び覚ます。










間桐雁夜の声優はルネ山だったそうです。





ある日、間桐の屋敷が盛大に燃えた。
火事である。


「火事だ家が大火事だー凄い大変だ、どうしよう、父親がまだ家にいるのにー」

「なんでそんな棒読みなの!?雁夜くん!?」

冬木の街でも記録に残るぐらいの火事である。
それはある家だけの大火事、その家は庭が広く隣家に燃え移ることがなく被害は一件で済むものだが。
特筆するのは、その火事の炎の火力である。
まるで、火事というよりも爆発。
間桐の屋敷は圧倒的な紅蓮の炎に燃えていた。

12時過ぎの真昼間、太陽がさんさんと輝く夏の日。
その日一杯炎は燃え続いたと新聞に載った家一軒のみの大火災。

野次馬やら、マスコミやら、沢山駆けつけその家を取り囲むように炎を眺めて。

それはさながら

「キャンプファイヤーみたいだな」

ぼうぼう、とぱちぱちと、燃えている、ずっと眺めていたら、なんか眠くなってくるな、と雁夜は思った。

「だから、どうしてそんなに冷静なのよ!?」

幼馴染の家が盛大に火事なので駆けつけた葵は幼馴染の冷静さに混乱する。

「そりゃ、家族は全員逃げてるし、大丈夫だから、どうせ中にいるのは怪物だけだしさ―――まるで映画のクライマックスだよなぁ、葵ちゃん」


兄貴は外のスナックで酒でも飲んで酔いつぶれてるだろうし。
とさも当然かのように言う男はまるで―――はっ、と葵は思った。

「貴方なの……この火事……」

葵は震えながら雁夜に問いかける。

「おれじゃない」

「いいえ、顔凄いニヤついてるでしょ、なんか凄い悪そうな顔だし」

口元が水を含んだように膨らんでいるし、絶対爆笑一歩手前である。

そして「ふぃー」と口元の膨らみをなくし、スッキリとした表情で炎を眺める幼馴染に葵は絶対このひとがやったと確信した。
実父の愚痴やらお兄さんの文句をよく漏らしていたが、ああ、ついに此処まで来たのか。
なんて恐ろしいのだろうか、引き合わされた時から知っていたが、間桐雁夜という男の子は生まれながらにして首輪やら鎖に繋がられるのが大嫌いな生粋の狼少年だった。
いつか何かやるのだろうな、と心の底で府に着くものがあったのだった。


「偶然ガソリンスタンドに補給する油積んでるタンク車が事故ってウチに突っ込んで起きた火事だし、しかもあとで、盗難車両ってことがわかるから誰も悪くないんだ」


いや、そんな楽しそうに言われても。

「いやそれはおかしいわ」

「しかも家には今年の冬に向けて、灯油をいっぱい保存してあったから、燃えまくるのもしょうがないんだよ」


ああ、内部からも途中から吹き出すように燃えたのはそのせいか。
今も水を必死にかけている消防士さんの活動をめいいっぱい邪魔するような行為。
火に油を最初から設置しているとは。


「いやぁうまく連鎖したわ、地下まで燃えたなこれ」

「……警察いったほうがいいんじゃないの雁夜くん?」

出頭の意味で、問いかけると

「さっき真っ先に今イギリスにいるトッキーには電話で話を付けてある、このあと警察や消防の捜査は入らない、仮にも魔術の家なんだ。あれだ、魔術秘匿だ、適当な火災理由を並べて新聞に載るさな」

「トッキーって……貴方、あれだけ嫌がられてるのにその渾名で呼ぶのね」

彼に始めて雁夜が出会った時に名づけた渾名だが、そう呼ばれると、あの彼の口元がヒクつくのが目に付いた。

馴れ馴れしいと雁夜はよく文句を言われるが、一向に変えない。
彼の実年齢を知ってからどことなく彼をおじさん扱いするし。

そんな彼を容赦なく電話一つでこき使うなんて、あいかわず最悪の男の子だ
彼は焦って飛行機で明日にも来日させられるだろう。

ああ、可哀想と葵は思った。

力関係を思えば、遠坂にとって間桐雁夜は取るに足らない若造だが、手には余る、根っからのチンピラだ。
魔術の家の次期当主としてそれなりに対等として雁夜を見ないといけない彼はチンピラ扱い出来ずにいつも困っている。

うん、と言いながら突然雁夜は煙草をズボンのポケットから取り出し、ライターで火をつけ、吸う。
野次馬のひとりが、何か嫌そうに彼をみる。

不謹慎すぎる。


「葵ちゃん、そろそろ帰ったら?」

そして突然言うのだ。


「え?」

「どうせ予測だとあと6時間は燃えるし、このまま明日の朝になるぜ?」

「そうね、なんかバカらしくなってきたわ」

この幼馴染のやることに目くじらをたててもしょうがない。

「そろそろ眠いだろ?」

「ええ、眠いわ、ところで雁夜くんは今日どうするの?」

これからどうするのか、家、燃えてるし。

「今日は知り合いの女の子のとこに泊まるわ、ていうか葵ちゃんち」

「私の家!?」

「―――今夜は寝かせねぇぜ?」

「厭よ」

この幼馴染を泊めるのは嫌だ。
不良とかチンピラとかそういうのが名前の前につく男の子だ。
葵の友達もこういう軽さに被害を合っていると言うし、危険だ。



「駄目か?」

人の肩に手をかけ、自分を抱き寄せ耳元に囁く雁夜。
ぞわり、とする。

「い、や!」

最初の頃は凄い怯えさせられたり混乱させられたがいつの間にか文句を言えるまで成長したのだ。
この男は気に入った女の子にちょっかいを掛けるのが大好きなのだ。

いい加減、なれる。

「そっ、ならしょうがないか、別の子んとこに泊まるか、あ、野次馬の中にいたわ、丁度良いわ、慰めてもらおっと」

「いい加減にしなさいよ雁夜くん!人のむむむむむむ胸!」

抱き寄せて自然に人の胸に手をやり、なんと大胆に人の胸を揉む馬鹿野郎。
思わず悲鳴をあげる。

野次馬の視線が「不謹慎」と訴えてくる。

「ごめん、つい揉んでた」

ほら、普通揉むだろ?と軽口。

じゃあ、バイバイサヨナラと

そう言って私から離れると野次馬の中に消えていく。



それを見て私は、はぁとため息をつく。

そしてああいう男の子はホント駄目だわ、などと思う。






その後、雁夜というまだ16の少年は名ばかりの間桐次期当主となった。
元当主は地下ごと燃えてしまったので、もう間桐は大部分の魔術を失った。
そして名ばかりの当主は兄と共に残された資産で毎日遊んでくらすことになる。

それに思うところがある、遠坂は魔術回路がある彼に魔術の道を用意することになった。
御三家の一つが潰えるのを防ぐために、できる限りのことをしたのだ。

それから時計塔で雁夜は学ぶことになったという。

折角、情けで2年間、魔術を教えてから入学までさせたのに、その少年は結局途中で時計塔を中退し、今では世界中をふらふらとし、写真などを撮っているそうである。

遠坂家当主の頭を抱え続けなければいけない問題となった。
それなりに才覚を出していたのに彼の期待は見事に裏切られた。

兄の方は間桐から開放されたおかげでアルコール依存症から抜け出し、真面目に働いているそうである。













おわり。







筆の回復超短編


妖怪は見事に燃えて死にました。
火葬場の火力以上の大火事で。


間桐雁夜、きーやんとかルネ山系ボイス。
第4次頃には最低限魔術の技術があるということなので、桜ちゃんを引き取らされる。

いい加減落ち着け、という意味での養子。


トッキーは出来の悪い息子を持った真面目な父親のような感じである。

聖杯戦争に参加せず、押し付けられた女の子と遊んで暮らす。
それでも街の平和を守るために、面白そうだと聖杯戦争参加者の邪魔を行うこととなる。
サーヴァントなしで。

よくわからないデザートイーグル捌きで、マスター陣狙い。



「貴様、よくも!」



「だからぁ、どうしたよ?器物損壊はいけねぇよ、迷惑なんだよ。
いい加減お前ら年食ってんだから、妄想はやめとけよ。

魔術とかああいう自慰行為。


ほらあれだ、ハイアットホテルの一階のケーキ屋のケーキとかウチの娘が結構好きだったんだ。
とかいう事情も無視だろ、ならお前らの事情も知らねえよ。

俺が思うに正義ってのは大多数の迷惑か少数の迷惑なんだよ。
俺は勿論少数派なんだ、ということで、お前ら凄い迷惑ちゅうことで、それをぶん殴る少数派迷惑の俺は正義じゃね?
それに――――手前らのオナニー見せ付けられるのはキモイんだよ。」

「主を離せ!」

「黙れよ幽霊、俺はこいつと話してんだ―――お、間違った」


「ぎゃああああああああああああああああああああ」


「すまんすまん、この銃引き金軽くてよ、つい引いちまった、で、誰がこんなアホなことしてるか俺に教えてくんね?」

「誰が貴様など―――ぎゃあああああ」


「主!?貴様あああああああああああああああああああ!」

「いや、動くなって、引き金もっと軽くなるぜ?で、其処にいる赤毛のねぇちゃん、こいつの代わりに教えてくれよ」




ケイネスさんは貧血で一時退場。





「私の存在そのものが生まれていきてはいけないと言うのか」


「真面目に生きていない奴のことを、オレは絶対認めねぇ、ほんと生まれて来なければ良かったんだよお前、でもまだ生きてる。なら、ここいらで死ねよ、そこのやつも」


「君可笑しいね、ほんと殺意が沸く、ここまで人を殺したいと思ったのは始めてだ」


「ああ、手前ら目が死んでる同士、手を組んでもいいぜ、ほらまとめてかかってこいよ」


神父&切嗣の共同戦線VS雁夜。




とかどうだろうか。


とは大体こんな感じ。




蛇足



休日の昼下がり。


「雁夜くん一週間ぶりね、うまくいってる?」

「やっぱ子供のせいか、デカイ肉の塊とか飲み下すの苦手なんだな。
この前、豚丼作ってやった時、ダメだしされた。
ちゅうか、お前んとこ普段、何食してんの?」

お前が作ってる料理のレシピ寄越せ、と最初に言う幼馴染に葵は微笑む。
あら結構良いお父さん、いや、良い婚約者をやっている。

間桐の魔術の延命の為に娘の桜は養子として出された。
最初にその決定には思わず、「無理!絶対桜、将来ぐれるわ」と叫びたくなったが、魔術の家の掟だ。
葵は逆らえる筈もない、だけれど、よくよく考えると、彼以上に桜を大事にしてくれる養子先もなかった。

でも、彼の血筋を残す為に送るといった、夫の決定に、少し疑問を覚える。
こんな男を桜の将来のお嫁さんにするとは……。


「お母さんのご飯がいい」

「だとさ、お姫様はやっぱり母ちゃんが恋しいんだよ、どうせ、間桐なんてのはあってないようなもんだし。
子供らしいイベントで今度お泊り会とかどうよ、菓子やら映画のビデオやら用意してやっからさ、それぐらいいんじゃね?」

「それは……」

「はっ、そういやもうすぐか、あの乱痴気騒ぎは……俺には関係ないけどな、そもそも参加する切符は俺には絶対現れないし」

雁夜は確信しているかのようにそう、言う。
この男は魔術師あらず、と夫に言われているように本当に魔術師の名誉など意に返さないだろう。

だけれど、彼には才能があった。
圧倒的な精神力、肉体の強さ、そして血と肉と暴力の耐性。
彼には期待はしていない、諦めたといっていい。
間桐の水ではなく、反対の炎の属性を持つこの男は古き血を重ねた間桐の最後でありながら、最も新しい間桐の才能を持つ。
夫曰く「100年に一人の才能」と嫉妬さえも込められた言葉を葵は覚えている。
炎の魔術の技術ならば夫の先を遥かに超えた才能。

たかだか二年でこの男は魔術を会得し、時計塔入学先で入学者内ですぐさま上位に食い込んだ、天才肌。

それでも雁夜らしく、結局「飽きた」といって中退。

夫はまるで、出来の悪い息子を持つかのように苦渋を感じざるおえないのだ。
異例と言っても良い、今回の養子。
名ばかりの間桐の当主。
それでも特殊な才能と特異な才能を持つ、桜と雁夜。
夫は結局魔術師らしく、二人の次代に大きな期待を寄せているのだ。

でも、無理でしょうね、葵は思う。
この男は結局のところ、一つのところで収まらないのだ。
魔術の家の子供らしくない、自由な気風、どこにでも飛んでいけるかのような、葵にとって憧れさえも抱かせた。

「お前んちも火事になるか?」

と問いかけられたとき、ちょっとは考えたりしたし。



男として興味は抱きたくない人物
抱けば

「誘ってんの?」

とその日の晩に貞操を食われかねないし。

でも桜にとって彼は良い父親になるだろう、結局もう一人の娘の凛の可能性は魔術師のみ。
桜はきっとこの男の下でのびのびと普通の少女として育てられるだろう。

それはなんて、不安のない夢なのだろうか。


ほれ、と背中に担いでいた桜を下ろし、母のところへ桜を向かわせる。

「お母さん」


「あら桜、元気でやってた?」

「おじさんのごはん、美味しくない」

「あらあら、しっかり食べないとダメよ?」



渡された桜は相変わらず変わっていない。
あら、でも、ちょっと髪を切ったみたいね。
髪の長さは変わらずともボリュームが減っている。
まるで凛のように髪が二つに結ばれている。

「貴方が切ったの?」

「ああ、髪か?ま、お客さんはおねえちゃんと同じ髪型をご所望でね、オマエの髪質じゃ無理じゃん、と言っても聞かねえ。
結構我が儘だぜ」


魔術師の娘の髪を容赦なく切るとは、相変わらず、適当ね、と思うが。

「我が儘を聞いて上げるくらいは良いお父さんをやっているのね、ああ、なんだか安心したわ、あなたって一生ふらふらしてそうだし」

「よせよ、それに俺に父親なんか向かないさ、精々出来て、友人だ、こっちは年食ってるからな、我が儘ぐらい聞いてあげてるだけだ。
なにせ、俺、イイ男だし、ふらふらしないと世の中のお姉様方が嫉妬するのさ」


「そう………ふふ」

「ま、まだこいつホントガキだし、暫くデカくなるまでは精々面倒見てやるさ」

そういって雁夜は桜の頭をわしゃわしゃと撫でる。
酷く強引ななで方に桜は不快だったのか嫌そうにその手を振り払おうとする。

「嫌い、おじさん嫌い」

「うっせ、そろそろ行くぜ、桜、今日はクリスマスの玩具買いに行くんだろ、今日はお兄さんがサンタさんだ」

「おじさんは本当に嫌い」

「未だに根に持ってんのか、サンタさんはいないって泣かしたの、ほれ、ごめんなさいしただろ、お詫びに好きなもん買ってやっから。
ケーキも好きなの選べ、ちゃんと年齢分ロウソク立ててやっからよ」

「雁夜くんそれ誕生日よ」

「あ、そうだっけ?じゃあな、凛ちゃんとトッキーによろしく」

「雁夜くん」

「何?」

「これから先こうやって桜を私や凛を合わせるのは無理になりそうよ」

「ああ、マジか、ホント、めんどいねそりゃ、お姫さんが夜泣きするだろ」

ホントそういう時期か、と雁夜は嫌そうに顔を歪める。
彼にとって魔術とは古臭い、と一言で断ち切るものにしか過ぎない。
じゃあなんで魔術を覚えたのか、と問うたことがあったが。

知らないより知っておいた方が有利なんだよこういうの。

と答えた男。

「泣いていないです」

「じゃあ、元気でね桜も、雁夜くんも……」

「あったかくなったらまた会えるだろ、じゃあ、そういことで、凛ちゃんにお年玉来年も送るから、楽しみにしとけ、っていって置いてくれ」

「毎年ありがとうね、雁夜くん、桜、じゃあ良いお年を」

「良いお年を、お母さん」

「ほらいい加減街行くぞ」


そう言って彼は桜にヘルメットをかぶせ、バイク、ツェンダップKS750型のサイドカーに桜をのせバイクにまたがる。

「相変わらす、それ乗ってるのね、バイクにしては燃費が悪いとかいってなかったけ?」

「ああ、燃費悪いけど、なんかこれ強そうだろ、てっことでこれ、俺はエコとかしらんし。
それにもう一台の方サイドカー取り付けられねえし、このエコとはほぼ遠いエゴバイクでしばらくは桜とお出かけだ、今度こそじゃあな」

そういって二人はバイクに乗って去っていく。
その途中二人の会話が聞こえる。

昼飯どうするよ。

そばがいい。

麺類かー、ん、寿司は?

そば

はいはい、寿司な。回らないやつ、お母さんに会うためのおめかししてんだし、派手にいこうぜ

そ ば!

金払うの俺だしぃ、決定権俺だよ、俺。てっことで寿司な、ああ、今日なんかマグロ食いたかったんだよな、俺根っからのクジラだし。
生もの嫌いでも、お前は卵とイクラとウニでも好きなだけ食べればいいじゃん、つうか寿司屋なら蕎麦あるぞ、普通。

ほんと?

お兄さん嘘つかないー。

嘘を信じる子供にサンタさんいないって教えてあげたし。

とか聞こえてきて、葵はくすりとする。


なんだ、案外お似合いかもしれない。

「でも教育に悪いわね……雁夜くん」


でも、ああ、本当に彼でよかった。







end










「お兄さん、超COOL………だ、ね、やっと見つかったオレの探してたもの」

「当たり前だ、で、チンカスみたいな手前はさっさと死ねよ、何自分のモツ弄って悦に入ってんのよ、マジきめぇ」

「はは、キメェ、の」

「ああ、きめぇ、てことで死ね」

パン、と間桐雁夜は龍之介の脳髄に弾丸をぶつける、デザートイーグルは容赦なく龍之介の頭を粉々にする。
空気を歪めるほどのデザートイーグルの発射、ハンドキャノンと呼ばれるそれは当たり前の威力を発揮していた。

間桐雁夜は単独で、キャスター陣を打倒した。
マスターとなる殺人鬼が食事を手に入れに行く僅かな隙。
常に傍にいるといっても、所詮は人と幽霊、人の生命維持活動を行わない幽霊とのコンビは結局のところ必ず隙がある。
キャスターの方はこの瞬間にもこちらに向かい、消滅する間まで、暴れるだろう。
雁夜は死んだ男を人気のない港まで死体をバイクで運んで海に放り投げる。

「あとは知らない、これじゃ、殺せねぇし」

ただの銃弾じゃ、キャスターといえども殺せないだろう。

俺一般人だしー参加者じゃないしーと言いながら煙草を吸いながら、哂う。
吐き出した煙は冬の夜空に溶けるように消えていった。


雁夜はバイクにまたがり姿を消す。
まるでこれから起こることから逃げるように、しかし、悪いと思わず堂々と。

「あとはウェイバーちゃんに期待するか」


雁夜はあの弄りがいのある少年を思い浮かべる。
此度の聖杯戦争で最も期待している少年。

勝つなら、アイツが一番マシな結果を出すだろう。

トッキー?

ああ、あれ、絶対負けるし。

なにせ

「どいつもこいつも目が死んだやつばっかりだしな、ぜってぇ録でもないな、ありゃあ、つうか二人も俺にポイント取られているヤツ等なんかどうせ無理だしな」

協会から呼び寄せられたバーサーカーのマスター

キャスターのマスター

その二つとも間桐雁夜が屠った。
何話は簡単だ。

サーヴァントの維持に魂食いを行なっていたカスと殺人鬼。

街に住まう市民としてのボランティアだ。
勿論ゴミはゴミ箱に、という庶民発想。
魔術を使わない、ただの市民としての警察行為。

証拠も残らないようにしている。

ウェイバーはそのことについて知っているが、あれはならしょうがないで済ませる、庶民らしさがある。
知り合いが死んだ、その復讐だ、とか言えば、その気持ちを思いやってくれる。
イスカンダルというヤマト世代の雁夜にとって何か微妙になる名前のサーヴァントもむしろ

「なんと豪気な、勇者よのう、雁夜よ、我が配下に加わんか」

とか雁夜の行為を褒めちぎるぐらいだ。

雁夜は聖杯戦争をやっていない、ただ、正当防衛での殺人を行っている。

「夜あぶねえよなホントこの街」

なら拳銃のひとつやふたつ、自衛で持つのならしょうがないだろう。
全部偶然出会ったキ○ガイをぶっ殺してるだけなのだ。


「ということで、精々頑張りな、めんどくせえキチ○イども」



港から離れた、ところでは大きな騒音が鳴り響く。

大怪獣決戦といったところか。




「ま知らん、かえって、ラーメンでも食うかな」

具もあるし。

と龍之介から奪った食料品が入ったスーパーの袋に入ったもので冬の夜に合う温まるラーメンでも作ることにする。

桜が起きていると私も私もと言うだろう。
一人食べたら、朝にはずるい、と膨れるだろう。

なら、もう寝ているだろう、桜をたたき起こして、二人で深夜の夜食とすることにする。


「んーとネギ、インスタントラーメン、あ、ウィンナーとツナある、これで煮込み風だな、ああ、腹減った」


聖杯戦争参加者に対する救済なく終わる。
勿論冬木は炎上するし、人は沢山死ぬ。

それでも桜は幸せになる。


将来腹グロにグレるけど。





ウェイバー協力ルートによる冬木市民救済ルート





ブロードウェイ・ブリッジでのアーチャーとライダーの最後の戦い、ブケファラスが刃に倒れた瞬間。


「ひゃほうっっと」

「何!?」

「加勢にきたぜ、イスカンダルとウェイバーちゃんよぉ!――――文句はねぇよなこの瞬間俺は手前らの最後のレギオンの一人ってことで」


「雁夜!?」

「カリヤ!?なんと無謀なことを!」



イスカンダルとウェイバーの最後の死闘に横槍を入れた男
イスカンダルが無謀にもアーチャーに突撃を繰り返そうとする瞬間、二人を攫うようにバイクに載せ一気に加速する。
そのバイクはセイバーが載っていたバイクよりも遥かに大きいモンスター・マシン。


「これ、3ケツだよな、事故るな、これ。ってことで、お前が運転しろライダーなんだろ?つうかお前、デカくてバランス崩れる」

「そりゃいいが………」

器用に運転をライダーに任せ、ちゃきり、と音を立てるデザート・イーグルを構え後部方向に向け発砲する。
ウェイバーはその弾丸に炎の魔術が宿っていることを見て、驚く。
こいつ、魔術師だったのか、と今の今まで気づかなかったと。


「はっお前らがなんかしんみりしてたからイラついただけだ、何諦めてんだよ、お前ら。
現実見ろよ、たかだがこの程度で単身突撃敢行とか、普通一時撤退するだろ?
お前、元々軍勢率いてた王様だろ、で、最後まで勝ち続けるんだろ?勝機を読もうぜ」

「なるほどなぁ、ま、そうだわな」

「何、納得してるんだライダー!?」



「雑種が、逃げられると思っているのか?」

突然の横槍に一時混乱させられ、顔に手榴弾をぶつけられ、宝具の発射を停止させられたギルガメッシュは冷静に、いや冷えた怒りを向ける。
その背後には

「おうおう、こりゃやべえな、一発でも喰らえばお釈迦だな、ま、食らってやる必要はねぇけど」

イスカンダルに発射した以上の宝具の山。


「何処に逃げるんだ、カリヤよ、あやつ逃す気ないぞ」

イスカンダルとしては突然の乱入に思うところがなかった訳ではないが。
最後の味方を名乗る男が現れたのだ。
突撃しても勝算はなかった、ここで諦めるのも勿体無いか、と思いこの敗走をしょうがないので受け入れる。

「簡単だ、アイツが追いかける気のなくす場所に逃げる」

「どこだよっそれ!?」

「ん、ココ」

そうして指を指すのブリッジの下。
そして遠目に見えるのは下水の穴。

泳げというのか、コイツ、この真冬に―――。


「あいつは、超必殺技使ったばっかりだ。ならMPも減ってんだろ?なら無駄な広範囲攻撃も何度もできねぇだろうよ」

そして


「おい、イスカンダル!飛べ!」

後ろから横に指を向ける雁夜。

「おいおい、大丈夫であろうな」

「知らん、運が良かったら、助かるだろ、つうか俺がこんなリスクおかしてまで助けに来たんだ、お前らも多少のリスクを受け入れろよ」

「カリヤ、何故ここまで」

「簡単だ、俺はいつだって最後に勝ちを狙う、お前ら以外の勝利は冬木の一市民として嫌な予感がするんだよ、だから助けるだけだ」

「世のため人のために、か、ならばこの征服王、最初に征服し、何れ我が民となる冬木の民の為―――最後まで戦い抜こうぞ!」

ライダーがバイクを曲げ一気に橋のガードレールに突っ込んでいく。
そのガードレールを魔力が篭った弾丸で破壊され、障害物を失い一気に空へと飛び出す。

「うわあああああああああああ!」

「ははっ面白いぞ!此度の戦は!」

ライダーはウェイバーを抱きかかえたまま落下していく。
雁夜は最後までアーチャーに向け発砲したまま落下する。

「真冬の川にダイビングだ、精々風邪ひくなよ?取り敢えず、隠れながら下水溝に入れ、なんとかなんだろ」

「なんとかなるのか―――いやカリヤおぬしがなんとかするのか!?」

落下中の三人に対する宝具の掃射をこの間桐雁夜はなんと、魔術による銃の弾丸で、逸らすなどいう、魔技を当たり前かのように行っている。
音速の弾丸と音速の宝具がぶつかる。

こやつ、ほんと人間なのか、と思わせる神業の連発にイスカンダルさえ驚愕する。


「なんでそんなことできんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「できるからやってんだろ?ありゃ矢なんだから何かに当てれば、止まったりするだろ、物理的な話だ、ちょっとはくるもんくるし、痛えけど」

余波により、体から血を流しながら、笑いながら、それでも死なない程度に彼等は傷を負っていく。
聖杯の奇跡よりも奇跡のような男だ、とイスカンダルは思いながら、これから先のことを考える。


宝具も全て破壊され、ほぼ死に体の現状。

なんとなく、この男の手を借りればなんとかなる気さえもした。

そして、三人は冬の川に落下した。



「やっぱ3ケツは事故るな」


「無様だな雑種」

「いっとけ―――あとでわかるさ」

どっちが無様か、な。







最終戦








「このままだといかんぞ!聖杯から泥が吹き出る!止まらん」

「折角セイバーもアーチャーも共倒れさせたのにこれか、やっべぇな――――まぁなんとかするか、サーヴァントは無理だけどコレならなんとかなるか―――」







アセトアミノフェン アルガトロバン アレビアチン エビリファイ クラビット クラリシッド グルコバイ
ザイロリック ジェイゾロフト セフゾン テオドール テガフール テグレトール
デパス デパケン トレドミン ニューロタン ノルバスク
レンドルミン リピトール リウマトレック エリテマトーデス
ファルマナント ヘパタイティス パルマナリー ファイブロシス オートイミューン ディズィーズ
アクワイアド インミューノー デフィシエンスィー シンドローム



固有結界【悪性腫瘍・自滅因子】

「固有結界!?」

「ま、そういうこと、俺の炎ってのは結局、自滅、身を滅ぼす意味での燃焼なんだよなぁ――おらよっ燃え尽きろ!」


泥がただ、燃えていく、身を食い合うように、ただ、ただ燃える。
それはまるで泥が引きこもるように、周囲に一切の余波を残さず。

その固有結界の効果は本人でさえよくわかっていない。

使えると知っていたから使った。

そもそも、この泥に有効かどうかも知らない。

ただ、己の魔術回路が消えていくのが分かる。

一生これから先、魔術は使えなくなるだろう、と確信するが

雁夜は気にしない。

どうせ、普段使わないし。

なら、別になくてもいいだろ、こんなもん、と哂う。

これで少しの気休めになるんなら全部持っていけ。


「まとめて、レスト・イン・ピースだ」



「そうは――させんぞ!間桐!」

「聖杯は……渡さない!」



「ちぃ―――お前らまだ生きてたのかよ、いい加減死ねよ!?ウェイバー!しょうがねぇ、お前が泥をなんとかしろ!」

「なんとかしろって!?」

「簡単な話だ、ありゃ破滅しかないんだろ、なら願え―――穏便にぶっ潰れろってな、俺はこいつらをなんとかする」


「カリヤ…余はどうする?」

「王様は勿論後ろでずっしりと構えるフルバックだ―――ウェイバーを守れ、大丈夫だ、俺も、ウェイバーも運が最高にイイんだ、お互い死にはしねぇ結果に落ち着くさ」


「ああ構わんが、間桐雁夜、死ぬなよ、余は是非ともお前と肩を並べ酒宴を饗したいのだ、そもそも何故おぬしほどの豪傑が聖杯に選ばれなかったのか不思議だ」

「そりゃあ、あんなクソ溜めなんか願い下げだからな―――良い男の俺にあんなモノ必要ねぇんだよな、これが」

「ふむ、そうか、ならば彼奴等には負けんだろうな、おぬしならば」

「ああ、俺は負けない」







結末。

冬木は守られた、泥は泥のみお互いを焼き尽くし、まるで泥の量の重油が燃える程度の被害で収まった。



「間桐雁夜……」

「……」

「お前ら仲いいのな、二人共生き残るとか、で、どうするよ、もう聖杯はねぇぜ、まだやるか?」



「聖杯は…いや、いい……アイリは死んだ…無駄死にさせてしまった。僕は―――」

「いい年してポエミィすんなよ――うぜぇよ、自分語りとかマジうぜぇ、俺はオマエのことなんか最後まで知らねぇよ」

そう言って切嗣を殴り飛ばす。
弱っていた切嗣は気絶する。
聖鞘の加護で死んではいない。

「我々にとってこの結末は予想外だ、このような――――「しぶといんだよボケ」がはぁっ」

言峰の方も雁夜に蹴り飛ばされ、気絶する。


「ああ、すっきりした、で、まぁ、なぁなぁで終わって良かったなホント、俺のおかげだな、ウェイバー。アレ下手したら冬木なくなったりするやつだったろ?」

「ああ、そうだけど――――なんかライダーが真っ黒になってるんだけど」

ウェイバーを守り泥を浴びたライダー。
それを見て。

「泥浴びたのか―――で?」

「受肉はしたがいいが、まるで二日酔いだ……気持ち悪いぞこれは…ぐぐぐぐ」

まるで信号機のようにイスカンダルは黒くなったり元に戻ったりを繰り返している。

「何か大丈夫じゃね、アレ浴びてそれなら、大丈夫だろ、慣れれば―――さて帰るか、取り敢えず、牛丼屋にでも行って、腹膨らませるぞ」

「あのさ雁夜、あの固有結界で、泥が燃え尽きたけれど、あれはなんだったんだ」

「知らん、つうか始めて使ったし、そして一生使えないしな、いいだろなんとかなったし、それはそれだよ」

「一生?」

「魔術が使えなくなった、しかしなぁ、なんで折角ハリウッド張りに活躍したのに。
ヒロインのひとりもいないんだ、ああつまんねぇ。
冬木のお姉様全員からキスの嵐とかあってもいいだろ、なぁ、おいウェイバー。」


「いや別にいらないけど……そういえば、そもそも雁夜は何がしたかったんだ?」


魔術が一生使えなくなった、と軽く言い放つ男に呆れながら、そもそも
自分たちに手を貸した理由を聞く。


「そりゃ、あれだよ――――今回は俺が主人公っしょ?
なら戦いがあるなら俺が勝たねぇとダメだろ
いつだってヒーローやんねえとな、男なら。」

それは正義の味方という意味ではなく。


最後まで間桐雁夜らしく、かっこよく決めるという意味だ。

彼的には人間として、ただ災害に立ち向かっただけに過ぎない。
彼ができる一番マシに収まる結果を作っただけ、

その過程で

ケイネス、ソラウのランサー組は結局、裏切られながら死んだ。

アイリスフィールは消えた。

衛宮切嗣の願いは叶わなかった、これから先はイリヤを助けようとするが出来ずに終わり。
災害も起きなかったので衛宮士郎を引き取らず、結局一人孤独に救いを求め続け、死ぬ。

言峰綺礼は数日後、あえなく、泥を浴びなかったので数日後負傷が元に亡くなる。

遠坂のトッキーはちなみに後ろから刺されてとっくに死んでいる。


最初から生き残る運命にあったウェイバーだけが生き残る。

多少のオマケで葵は助かり、イスカンダルが残った程度の展開だ。




やなことが起きるなら、そりゃ防ぐだろ、平和な市民生活の為に、といった軽いノリ。

そんなノリで聖杯戦争参加者の願いを彼は踏みにじった。


彼は結局いつだって大多数の「人間」なのだ。
「魔術師」という少数を容赦なく切り捨てた、というよりも関知しなかった。




「なんだよそれ――」

「ぐぎぎぎ、それよりもおぬしら余を心配しろっ……」

「取り敢えず、やっぱ桜が心配してるから、牛丼買って俺んちで食おうぜ」







フィナーレ。









「何処をほっつき歩いてたの、おじさん、馬鹿なの?私を一人置いて出かけるとか、誰がご飯作ると思ってるの?――カップ麺、飽きた」

「ああメシ作るの俺だな―――すまんちょっくら、世界平和活動してた」

「ああ、テロですね―――後ろの人たちは何?おじさんの恋人?ガチムチ系とスリム系のダブルコンボ?」

「んなわけねぇだろ、ほら牛丼、たべるか?」

「また夜食―――。雁夜さんのせいで私、将来牛になります、責任とってください」

「それは十年経ってからだな。あと、オマエの育ち具合だ」

「えっち―――じゃあいっぱい食べます」


「精々くえよ沢山、待ってやるからさ」

「ねぇ」

「ん?」



「おかえりなさい、雁夜さん」


「おう、ただいま、桜」





どっとはらい



超やっつけ仕事ですんません、これ以上は無理。






















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