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[29520] クレイジーフェイス【現実→異世界憑依 最強】
Name: キタキタ◆e4b16b22 ID:e3f7bd53
Date: 2011/08/30 12:31




 大きな影が太陽の光を遮ったことを覚えている。
 次の瞬間には全身から重力の感触が消え去り、上か下かも判然としない方向へと堕ちた。

 いつ終わるとも知れない落下現象に晒されながら断片的に脳内を過ぎる非常識な戦場の風景があった。
 それは誰かの記憶のようだ。その誰かは、鋼鉄のような鈍い輝きを纏った蠍や燃え盛る体毛に覆われた獅子、エナメル質の甲殻に覆われた空飛ぶ蛇などの非現実的な怪物たちが跋扈する世界を旅していた。人間を遥かに上回る巨躯を誇る怪物たちを旧世代の戦闘のように剣や槍を駆使して駆逐していく姿は、神話や幻想で語られる英雄を見ているようだった。しかし、どの風景にもその誰かの姿ははっきりと映っていない。視界の端に武器を握る手や怪物を蹴り飛ばす足などが僅かに見えただけで、顔は見えなかった。その視界は、まるで自分自身がその誰かの目を通して見ているような感じだった。

「アンタは、何でそんなに虚しいんだ」

 自分と英雄が同一化したような錯覚を覚えると同時に、その英雄の心が流れ込んできたように感じた。
 それは絶望的なまでの孤独。
 圧倒的な暴力の化身たちを相手に己が身一つで戦い、傷付き、死に瀕することも厭わず武器を揮い続けるかの英雄は、人の身でありながら人に許された限界を軽々と凌駕してしまっていた。英雄は強くなろうとして強くなった存在ではなかった。ただ今日を生きるため、明日を迎えるという当たり前のことが英雄にとっては生死をかけた戦場だったというだけだ。生まれ育った環境が英雄を鍛え上げた。それこそ自らの弱さを徹底的に駆逐するかのように英雄はいろいろなモノと戦っていた。

『……もう飽きちまった』

 それは英雄の末期を物語る呟きだった。
 英雄は多くの戦いを越えた果てに絶望的なまでの孤独を背負うこととなった。
 人として生まれた彼は、最後の瞬間まで人として生きるようと努力していたが、彼はどこまでいっても英雄であり、ただの人にはなれなかった。
 英雄は多くを救ったが、それ以上に多くを殺し、多くを奪っていた。それは英雄が生まれ持ってしまった性質でもあり、生まれ育った環境がその性質を磨き上げていった結果でもあった。英雄とは優れた存在ではあったが、人としては決して道徳的な存在ではなかったのだろう。彼の目を通して見る世界は敵意の嵐だった。実際にはそんなはずがないのに彼は世界中全ての視線から蔑視されていると感じていた。何がそこまで彼を歪めてしまったのかは分からない。もともとそのような感性を持って生まれてしまっただけなのかもしれないが、そうだったとしても俺は彼に同情してしまった。




 何処ともしれない奈落へと墜落する中、俺は彼の存在を羨んでいた。













 神よ 慈悲を与えたまえ

  弱きものを赦し正しき光の下へ導き清めたまえ

     生なる喜びを与えたまえ

  尊き原初の愛よ 

     護りとなりて全てを救いたまえ









[29520] 序章01 鬼畜転生
Name: キタキタ◆e4b16b22 ID:e3f7bd53
Date: 2011/08/30 12:32


 目が覚めると時代掛かった部屋の中央に寝転んでいた。
 窓から差し込む光には夜明けの香りが感じられる。その向こうに見える風景に見覚えがない。この部屋も自分が暮らしなれた部屋ではない。

「……なにがどうな、ふぉろぉ!!」

 目覚めのまどろみと異常事態を認識する作業により停滞していた俺の思考は、下半身から発した、より正確に言えば俺のナニで感じ取った違和感によって叩き起こされた。
 就寝中だったと思われる俺の身体にかけられていた薄手の布を勢いよく引き剥がすと見慣れない鍛え上げられた筋肉質な戦士の身体があった。とりあえず、思考はそこで一時停止する。社会人となってからデスクワークが増えていたこともあり、学生時代と比べればぶよぶよといってよいほどに堕落しきった贅肉に包まれていた腹が最盛期よりも遥かに強靭さを伴った筋肉によりコーティングされている。あまりに理想的な腹筋だったので筋肉の伸縮動作を行ってみた。

「ふぃゃっ!?」

「ふぉあっ!?」

 突然変異した自分の身体に気を取られていた俺の思考が、股間に再来した未知の感触と誰かの悲鳴によって呼び戻された。

「ごめんです! ごめんなさいです!!」

 呼び戻された思考が確認したのは、怯えきった様子の少女の姿だった。
 もちろんこの少女の存在に覚えはない。さらにいえば、俺は全裸で眠っていたらしい。頭を抱え込んで怯えながら半泣きしている少女もまた全裸でそこに居たらしい。

「……ちょ、な、ふえぇ!?」

「きゃぅ」

 見ず知らずの少女と全裸で同衾していたらしいことに覚醒した意識はふたたび混沌へと叩き落される。
 とりあえず、自分の大腿部に跨るように座り込んでいる少女を多少乱暴に退かして引き剥がした布に手を伸ばして解放感に包まれている愚息を隠すように腰に巻いておく。ちなみに股間が妙なぬめりに包まれていることが事態の危険性を素早く脳内に叩きつける。

「あ、アンタ、なんなんだ一体!?」

「ごめんです! ご主人様、ごめんなさいです! 赦してです!」

 これが酔った勢いで及んでしまった間違いだったとしても危険性は低くならないが、アルコールを怨敵と定めている自分が前後不覚になるほど飲酒するということはない。なので目覚める前の自分が目の前の少女と致したであろう行為は、こちらの思考を混乱させる何某かの薬物が用いられた可能性がある。そこまで考えて、改めて少女の存在を改めて確認する。明らかに怯えた目でこちらを見ている。一糸纏わぬ身体を隠そうともせずに泣きながら許しを請う少女は、俺が知っている人間ではありえなかった。頭の天辺から足先まで、座っている状態を鑑みても明らかに常人より小さい。目測でも1m未満であることは明らかだ。しかし、それは幼さからくる矮躯ではない。全身のバランスは間違いなく、成人のそれであり、メリハリのあるとても整った体型である。まるで大人をそのままサイズダウンしたかのような身体だ。

「赦してです、ご主人様。次はちゃんとするから赦してです……」

 違和感の塊であるミニマム女は、怯えた表情のままそう言って恐る恐る俺に近付こうとする。
 ここまでされては誰でも気付く。このミニマム女と俺が納まっている人間との関係は、明確な上下関係だ。それも人権を無視した絶対服従をミニマム女に強いていたらしい。

「とりあえず……、何か着るモノを」

「は、はいです」

 ガクガクと震えるミニマム女の姿を見ているうちに落ち着きを取り戻すことができた俺は解放的過ぎる現在の状態をどうにかしたくなった。
 感情が大きく揺れている者が他に居ると逆に落ち着くことができるようだ。
 ベッドから降りたミニマム女はそれほど広くない部屋を飛び回り、あちこちに脱ぎ散らかしていたらしい服を集めている。

「……飛んでるよ」

 ミニマム女は、人が歩くことと同じレベルで浮遊する生態を有しているらしい。
 現在の部屋やミニマム女の空飛ぶ姿はある程度の世界観を理解するには十分足りる。
 目覚める前に脳裏を過ぎった情景を踏まえれば、現在俺が置かれているのは異なる世界……なのだろう。
 もともと理詰めで考える性分ではない俺は、早々に現在の状況に置かれた経緯を推察することを放棄した。ひとりで思案したところで解答が得られるような状況ではない。そのような無駄なことに思考を割くよりも現状を把握することを優先した方が何倍も有意義だ。


 外国の歴史モノ映画に出てきそうな古臭いデザインの服に着替え終えるとミニマム女も同じように……かわらず全裸のままだった。
 落ち着いた状態で改めてミニマム女を観察する。このような場面がある架空の物語でのお約束のように見目麗しい女性だ。炎のような長い赤髪が翼のように背中まで伸びており、怯えて震える紅い瞳。そのくせ顔の造形は東洋風。紅い髪や瞳が凄まじい違和感を与えるが、人工的な色は感じられないせいかさらに違和感が増している。喉元や三本の線が花を象った刺青が刻まれている。
 おかしなことにその刺青は現在の俺の身体にも刻まれている。それも一箇所ではなく両肩と両腿、左胸に同じ刺青がある。鏡で確認したわけではないので他の部分にも刺青があるかどうかは分からない。

「え~っと、とりあえず服を着てもらえないかな?」

「えっ!?」

 身体は現金なモノで目の前の据え膳にむしゃぶりつきたいといきり立っているのだが、一般人のモラルというか理性というか、とにかく本能の滾りを見せている愚息を隠すために手近にあった椅子に腰掛け、木製の丸テーブル越しに浮遊するミニマム女も服を着るように促したのだが、どうにも反応が妙だ。俺の言った言葉が理解できないのではなく、信じられない、あり得ないといった驚愕の表情でミニマム女は固まり、しばしの沈黙を挟んでおずおずと困ったように口を開いた。

「あぅ……服を、着るですか?」

 俺の言葉に戸惑っている様子のミニマム女は全裸のまま隠すところも隠さずにオロオロしている。

「服……持ってないの?」

「? はいです。ご主人様……アルマに、服、要らない、言った、です」

 途切れ途切れに紡がれる言葉に愕然とする。
 なんと素晴ら、じゃなくて、鬼畜なご主人様なんだ。
 どうやらアルマさんというらしい女は衣服を与えられていないようだ。仕方がないので“ご主人様”とやらの服の中からかわりになりそうなモノを適当に着るように頼むとまた驚いた様子を見せるアルマさんに辟易しながら外の町並みに視線を向けた。

「本当に地球じゃなさそうだ」

 どうやら俺たちが現在居る部屋は地上数メートルの高さにあるようだ。
 眼下に広がる町並みは西洋風で石造りの建造物が目立つものの、古めかしさは感じない。むしろ築何年も経っていない新しい建物がほとんどのようだ。
 それだけならば地球の別の国だとか、その国の過去の世界だとか思えたかもしれないが、眼下の通りを闊歩する人種が明らかに地球人とはいえない身体的特徴を有する者たちがいる。一番目立つのは一対の角を生やした人種だ。形こそ様々だが、被り物に見えず、額から生えている人物もいたため柔らかい皮膚が硬質な角に変わる境目も自然な感じだった。他にも動物みたいな耳を持った人種やアルマさんみたいに小柄で浮遊する人種も見えた。
 そんな異世界情緒豊かな光景にひとつの違和感があった。通りを行きかう人々の何人かに一人は頭から目深にフードを被っている。フードを被っていない人は男性体が多く、女性体は極端に少ない。フードを被っていない女性体は年配の方や幼いと思われる者たちだけ。年頃だと思われる女性体の顔はまったくといっていいほど見られなかった。この世界か、この地域では年頃の女性体は顔や肌を見せたらいけないという規則か、戒律でもあるのだろう。そんな中でアルマさんに全裸を強要していた“ご主人様”とやらは相当に破戒的な人物だったのだろう。

「これで、良い、です?」

 いちいち消え入りそうな声を発するアルマさんの問いかけに振り返り、人心地つけた。“ご主人様”のモノだと思われるTシャツと同じようなつくりの服を被ったアルマさんは、首元や袖口を結び、大き過ぎる服がずり落ちないようにしている。

「間に合わせとしては十分だね。お金があれば、後でちゃんとした服を買いに行こうよ」

 外の様子を見る限り、アルマさんと同じ体格の人種用の衣服も多様にあるようだったので普通に商店などで購入できるだろう。
 そんな俺の提案をやはりアルマさんは驚愕の表情を浮かべていた。

「買うって、アルマの服をです?」

「ああ。アルマさんも全裸が趣味というわけじゃないでしょう?」

「ち、違うです!」

 慌てて否定するアルマさん。身体は小さいのに外見は大人な感じなのでわたわたおろおろする様子は違和感がある。しばらくテンパった様子のアルマさんを眺めていたが、落ち着きを取り戻したアルマさんが深呼吸をしてから意を決したように問いかけてきた。

「ご主人様……本当にご主人様、です?」

 さきほどから存分に戸惑っていたアルマさんはようやく違和感を異変と理解したようだ。

「私は、君のご主人様じゃないですよ。私の名前は、槍馬 桐。さっき目が覚めたらこの身体になっていたんだ」

「ヤリマクィリ、さんです?」

 たどたどしい口調で俺の名前を繰り返したアルマさんだったが、彼女の口調だと「犯りまくり」と聞こえてしまう。
 
「ヤリマ、キリね。槍馬の方が苗字、ファミリーネームと言った方が分かるかな? 桐の方が私個人の名前だよ」

「じゃあ、クィリ、さんで良いです? クィリさんは、本当にご主人様、違うです?」

「ああ、違うよ。君のご主人様の身体を乗っ取った形になるのかな? 私が憎ければ憎んでも良いですよ。さすがに死ぬのは怖いから殺さないでもらえると嬉しいけど」

「そ、そんな!? アルマ、人を殺したいなんて、思ったことないです!」

 それは僥倖。まあ俺個人の主観では鬼畜なご主人様だったようなのでアルマさん的には無問題なのかもしれない。

「アルマさんが私を恨むかどうかはとりあえず保留としておいて貰って、現状の説明をしてもらえると嬉しいな。特に世間の風習や君のご主人様の人柄や職業、君との関係も教えてもらえると助かるな」

「あ、はいです。ご主人様いなくなった、寂しいけどクィリさんも大変そうで、アルマできること頑張るです」

 寂しいと言ったその口の端が笑っているのを俺は見逃さなかった。

「今居る町、メルクリオのコルペンド言います。アルマのご主人様、グリム言いました。ご主人様は、5年前に天地戦争で勝利した地上人側の英雄です。地上五大国の現五王から超越特権を認められた超越者の1人です。戦後は、ハンターズギルドに所属して各地を転々としながら魔物を倒したり、商隊の護衛をしたりして生計を立てているです。ちなみにご主人様は、無階級のハンターです」

 アルマさんによるとこの世界、というか、俺の主観で言う【地球】に該当する名称として【エスパシオ】という世界名があり、5年前まで【天地戦争】と呼ばれる世界大戦のような戦争があったらしく、現在は世界各地で復興事業が進められているらしい。確かに外の町並みは活気というより、乱雑さの割合が多い賑わいがある。この世界エスパシオには、地球と同じような大陸と海の他にも遥か上空に浮遊する大陸があったようだ。地上五大国である【メルクリオ】、【プラネタ】、【ベヌス】、【マルテ】、【ルーナ】と対を成すような配置で五つの浮遊大陸があり、これまたお約束のように浮遊大陸と地上大陸の間はかなり険悪な関係にあったようだ。二つの勢力が武力行使による戦争を始めたのが12年前で、圧倒的な制空権を有していた浮遊大陸側の切り札である飛行機械をグリムが奪取したことにより戦局は一変したという。その飛行機械を奪取した際もグリムはかなり卑劣な手法をとったらしいが、詳しくは説明してくれなかった。

 グリムとその他四名の英雄達の活躍により、浮遊大陸の五王が惨殺された後、すべての浮遊大陸は海へと堕とされることなった。どういう方法で浮遊大陸という規格外の超巨大構造物を堕としたか世間には知らされておらず、グリムを含めた五人の英雄と地上五大国のトップくらいしか真相は知らないというのが通説らしい。
 現在では、浮遊大陸の住民達は地上大陸のあちこちに散らばっており、このような世界観にしては珍しくある程度の人権を認められて普通に暮らしているらしい。アルマさんも浮遊大陸の住民だったらしく、大戦中にグリムの契約奴隷として捕らわれたとのことだった。

「契約奴隷……ここにも奴隷制度があるのかい?」

「浮遊大陸には、あったです。地上五大国はその成り立ちから人身売買や違法な奴隷雇用は禁止されてるです」

「それじゃあ、アルマさんは?」

「それは、ご主人様、特別だったです」

 何を思い出したか哀しそうな表情になるアルマさん。
 現在でこそ超越特権を認められているグリムは、戦時中に多くの違法な行為に及んでいたらしく、【契約奴隷】は浮遊大陸にあったという特殊な技法を用いることで強制的に支配することができるモノらしい。しかも、その効力は永遠のモノであり、死後もその契約に縛られることになるらしく、術者の魂を表したとされる紋章を刻まれることで契約は成立する。紋章は術者と対象者の同じ位置に刻まれるとのこと。ひとつの契約に付き、ひとつの紋章が刻まれ、同時契約数は術者の魂の質や強度によって増減するという。現在のグリムの身体には、8つの紋章が刻まれているようだ。それはつまりアルマさんも含めて8人の生涯を縛り付けているということ。

「アルマさん以外の人たちは?」

「皆、ご主人様の命令でギルドの仕事、してるです。アルマ、強くないからご主人様のお世話する役、です」

 苦しそうに言うアルマさん。この契約は当人同士でも解除することができず、無効にするには術者が死ぬしかないらしい。大戦の英雄にして超越特権を認められているグリムを浮遊大陸の出身であるアルマさんや他の人たちが殺したらかなり重い罪に問われることになるらしい。しかも、グリム自身が文字通り一騎当千の生きたバグキャラのような強さを持っていることで現実的に契約の無効化は不可能であるとアルマさんたちは諦めているそうだ。

「でも、これからは苦しくない、思うです。クィリさん、ご主人様より、良い人です」

 諦めの中に僅かな希望を見出したように言うアルマさんの言葉に俺はため息を吐いた。
 アルマさんはお人よしっぽい人だけど他の人はグリムの代わりに荒事ができる人たちらしい。もしグリムが別人になっていると知ったら俺、殺されるんじゃないか?

「大丈夫、です。クィリさんのことアルマ、皆に説明するです」

「それは……ありがたいね」

 アルマさんが力強く拳を胸の前で握って見せるが、どうにも線が細すぎて頼りなさげだ。あと声も小さい。
 それにしても、俺はこれからどうするべきか。
 このままグリムとして生きるか、それともどこぞの隠れ潜んで静かに暮らすか。元の世界に返る方法を探す、というのも在り来たりで何か意欲がわかない。そもそもどのような経緯でこうなったかも分からないし、それを追求する気もない。個人的にはこういった世界観は好みの部類だ。許されるのなら旅をしてみたいものだ。魔物とやらもどんな種類がいるのかも見てみたい。

「そうだな。とりあえず、この町を見て――」

 普通に考えれば非常識なことだろうが、現状を受け入れた俺は観光でもしようかと思い始めていたところに突如として部屋の天井が崩壊した。

「ふぉあ!?」

 崩壊した天井から瓦礫とともに振ってきた人影が金属特有の鋭い輝きを纏った大剣を携えて突進してきた。

「死ね」

 一言。殺意、というのはこういうものなのかもしれないと思った。
 腰掛けた椅子から立ち上がることもできずに呆然とする俺に向かって襲撃者は凶悪な形状の大剣を振り上げた。

「ラウラ、ダメです!」

 動けない俺を庇うように飛び出すアルマさん。
 命の危機に走馬灯がみえることもなく、迫り来る刃がスローモーションで見えるわけでもなく、自然と手を前に差し出していた。
 差し出された手は俺の利き腕である右ではなく、左手だった。







[29520] 序章02 英雄になろう
Name: キタキタ◆e4b16b22 ID:873d9b58
Date: 2011/09/05 22:41



 異世界エスパシオに転移してきて数時間が経過した。
 エスパシオにあるメルクリオという国の中にあるコルペンドという商業都市の一角にあるハンター専門の宿屋の一室である。
 ハンターというのは俺の主観でいえば某有名ハンティングゲームのような職業だと把握している。ありていに言えば何でも屋であるらしい。
 エスパシオにやってきた俺が入り込んだグリムという人物は、このハンターという職についており、その中でも数少ない無階級のハンターであるらしい。ハンターは彼らを統括するギルドから与えられた任務を一定数クリアしたら段階的に階級が上がり、個人指名の任務を依頼されるようにもなり、実りの良い任務を受けやすくなるらしい。ちなみに階級は第一階級から第八階級まであり、第一が頂点で第八が新米という感じだそうだ。そんなランク付けがある中でグリムという人物が持つ無階級というのは、第一階級ランクの任務をこなせるだけの実力があることと【無階級】と指定されている魔物を倒すこと、その後にギルドの幹部会で承認された場合になれる階級だという。グリムの場合、5年前に終結した天地戦争時の功績と任務外で【無階級】の魔物を倒したことで自動的にこの階級に据えられたそうだ。

「そんな最強のハンターが奇襲に対応できないわけもない、ということか。それでもあんまりだと思うな。あのままだったらアルマさんも怪我をしていた」

 崩壊した天井とただのガラクタと貸した机やベッドが散乱する部屋の真ん中で俺は、1人の女を正座させている。

「も、もうしわけ、ありませんでした」

 ぼろぼろに砕けた鎧を纏っている女の顔には大きな痣ができており、唇や鼻腔には出血が見て取れる。
 最初に天井を突き破ってきたときの殺気はなりを潜め、最初のアルマさんのように怯えた様子で身体を小さく震わせていた。まるでこれから訪れるであろう絶望に耐えようとしているようだ。おそらく、えろいことをされると思っているのだろう。アルマさんから聞いたわずかな情報からでもグリムという男の性質は最悪だったことが窺えるのでこの女の怯えようも納得できる。

 突然の奇襲にグリムの身体が咄嗟に反応して女の攻撃を片手で防ぎ、カウンターの要領で右拳を女の顔面に撃ち込んでいた。
 女の顔をグーで殴るという最低な行為を無意識とはいえ行ったことに俺自身驚きで思考が止まりそうになったが、女が返す刃で斬りかかってきたのですぐに逃げ出そうと思ったのだが、身体が逃げることを許さず、身に降りかかる危険を排除するように拳や足が動いた。

「命を狙われたわけだから君を殴ったことに関しては謝罪しない。金輪際、私の命を狙わないと約束してくれるなら今回は見逃すけど、どうする?」

「あ、え……それだけ、ですか?」

 これまたアルマ同様に驚きに表情を引き攣らせている。

「痛いの痛いの~とんでけ~です。……ラウラ、気付かないです?」

 女の周りを浮遊して傷が治るという不思議で鮮やかな火の粉を振りまいていたアルマさんが、ラウラと呼ぶ女に微笑む。
 ラウラという女は、アルマさんの言葉に改めて俺を頭から爪先まで嘗め回すように何度も見直す鎧女は、しばらくするとなにやら呪文のようなものを唱え始めた。

「コンスルタ――。失礼する」

 言って鎧女は、俺に向かった人差し指を向けた。
 一瞬、何某かの攻撃でもされるのかと身構えたが、さきほどの襲撃と違って身体は思ったとおりに動かなかった。それと間をおかずに鎧女の指先から幾条もの文字の羅列が宙を駆け、俺の身体を包み込んだ。見たこともない文字の羅列を俺は何故か理解できていた。どうやら人体限定の解析術式のようだ。

「……馬鹿な」

 何が馬鹿な、なのだろうか。
 俺を調べ終えた鎧女、ラウラは信じられないモノを見るように俺を見た。

「肉体・精神・魂に変化はない……変化がないにも関わらず、【ラベル】が書き換えられているだと?」

「【ラベル】……?」

「意思をもつ者を定義する三つの要素。その外側に記される存在自体を証明する真名のことだ。貴殿は、本当にグリムではないのだな?」

 貴殿、ときたか。
 数分前まで半泣きで侘びを入れていたとは思えないほどの早代わりっぷりだ。

「私は槍馬 桐。つい数時間前にグリムさんの身体にはいっちゃっただけだよ」

「つまり、グリムの存在は貴殿に塗り潰された、ということか。……ヤリマクィリ殿」

「ま、そういうことになるんだろうな。それでもやっぱり自由になるために私を殺すつもりかな?」

 それにしてもこの世界では俺の名前は言い辛いのだろうか。また「犯りまくり」って言われた。

「そうだな。契約そのものは我々を縛り続けるだろうが、契約刻印を通しての命令でなければ強制力は発生しない。ヤリマクィリ殿は、我らを縛るつもりはないというのだな?」

「ヤリマ キリ、ね。もともとそんなつもりはない。君みたいな人に襲われるなら尚更だ」

「ぅ、すまない」

 俺の愚痴に神妙な面持ちで謝罪するラウラの様子にこれからのことを考える。
 グリムには、あと6人もの契約者がいる。その全員がラウラのように襲ってくる場面を想像して寒気がした。
 今回は突発的なこともあってグリムの身体が反射的に動いて事態を収拾してくれたが次もうまくいくとは限らない。それに問答無用で女の顔面を殴るような反射行動も辛い。別にフェミニストを気取るつもりはないし、本をただせばグリムという男の自業自得であり、襲ってきたラウラはおそらくその被害者だ。中身が俺じゃなければかまわないのだが、同情はできても命まで奪われるわけにはいかない。少なくとも死ぬ苦しみを味わうのが俺だというのならごめん被る。

「それにしてもグリムのラベルを書き換えるほどの存在質を持った者がいるとはな。知っているか? 存在証明の真名である【ラベル】を書き換えるには、術者と対象者の間に存在質の共鳴と術者側の圧倒的な存在強度が必要なのだ。本来ならば死に瀕した強者が生き延びるためだけに弱者の存在を奪う術式なのだ。クィリ殿はよほど強大な存在質を持っているようだ」

 なにやらだいぶ勘違いされているようだが、彼女の言うとおりなら俺はグリムという人間を此の世から消し去ったことになる。これでは事故のようなものだ。その気もないのに他人を死なせてしまうというのは気分が良いものではない。

「――ちょっと待ってくれ。その【ラベル】を書き換える術式とやらがあったとして、私はそんな術を知らないし、魔法?みたいなのはまったく使えないんだけど?」

「「……」」

 至極当たり前のことを伝えると異世界の方々は、何故か言葉を失いって固まってしまった。漫画的な描写をすれば石化して罅割れている状態だ。完全無欠の地球人だった俺が超常現象を引き起こす能力を持っているわけがない。このエスパシオにはそういった超常現象が基本的なルールとして許容されていたとするならば、必然的に俺がグリムになったのは、エスパシオ側のルールが引き起こした現象であるといえる。

「ま、そんな術がこの世界にはあるんだろ? だったら何某かの偶然が重なって自然現象として同じような結果が出たんじゃ――「ありえん!」「ありえないです!」」

 俺の勝手な結論に地元民たちは異議を唱える。

「人間や動物に限らず、生あるモノの【存在】に関わる法則のすべては【核神】の中でも【プラティード】の管理下にある。たとえ、偶然が重なったとしても【核神】の監視から逃れることはできない! それが許されれば世界法則が意味を成さなくなるではないか!?」

「意味を成さない、と言われてもねえ」

 ラウラは激情家っぽいから大声を張り上げてもそれほど驚かないが、おっとりしてそうなアルマさんまで怒ったような表情で叫ぶから何事かと思ったが、聞き覚えのない単語を用いられてもどう反応してよいかわからない。

「……というか【核神】や【プラティード】って何?」

「「……」」

 俺の問いに二人はまたまた固まってしまった。
 二人は呆気に取られたように口を半開きにして数秒間の停滞を経た後、右手で握り拳を作って胸にあてた二人は、アルマさんが人他指し指で、ラウラは握り拳を突き出して深呼吸をした次の瞬間、

「「ノッ プェデ スゥェールゥッ!!」」

 なにやら凄まじい効果音が入りそうな不思議ポーズを示し合わせたかのようにキメていた。
 思考では理解できない単語だったが、ニュアンスとして「ありえねぇ」とか「非常識」だとかそんな感じの最上級っぽいものだと感じた。
 二人の急なキャラ崩壊に今度はこっちが唖然となるが、二人も相当に困惑している様子だった。

「本当に【核神】を知らないというのか!?」

 そう叫ぶラウラは、まるで世界の終末を迎えたような表情で俺を怒鳴りつける。

「知らないモノは知らないとしか言いようがないな」

「知らないじゃ済まされないです、クィリさん!」

 ラウラに続いてアルマさんまで怒っている。何故だ?

「いいですか、クィリさん? 【核神】は、エスパシオの【存在】を支える絶対法則です。【プラティード】はその中で最も厳格な法則です。これはどの【核神】にも当て嵌まることですけど、自身が司る法則には絶対の規律を強いているです。この【核神】が決定付けている法則から逸脱することは、エスパシオの【存在】として許されないことです。もし【核神】が定めた禁を破れば、どのような【存在】であろうとエスパシオから徹底的に排除されるです」

「あ~……とりあえず、長台詞ご苦労様です」

 アルアさんの真面目で強めな口調に晒されながらも説明の内容を半分も理解できなかった。
 核神とやらが、エスパシオの神様みたいなモノなのは分かる。どうやらエスパシオは全体として多神教っぽい。地球と同じように世界に存在する様々な法則に超常の存在を当て嵌めているのだろうか。いや、魔法のようなモノがあるのだから正真正銘の【神】として存在するのかもしれない。

「ま、神様が実在するなら結論は簡単だ。そのプラティードさん? その核神さんが何かしたんじゃないかな」

「「ノッ プェデ スゥェールゥッ!!」」

 理解できないことは適当に結論付けて放置する俺の主義を否定するように再び絶叫するエスパシオ人たち。

「先ほども言ったが、人間同士のラベルの書き換えはプラティードの独壇場だ。そのプラティードが敷いた法のひとつに顕現法則たる【命神】との対話術式を構築できる者のみにその恩恵を与えるというものがある。つまり、少なくとも【核神】の顕現法則を引き出せる者でなければ、ラベルの書き換えは起こりえない」

 つまり上書きした側である俺がその何たらという術を持っていなければ、現在の状況はありえないということらしい。

「起こりえない、ありえないと言われてもな。その法則も、核神も……君たち、エスパシオのルールだろう? エスパシオの人間じゃない私に適用されても困る。もともとそういったモノは嫌いな性質だからな」

 物事はなるようになるし、なるようにしかならないのだ。神様がなんたらといった説明付けはまったくもって意味がない、というか個人的にすさまじくどうでも良い。

「……ちょっと待て。クィリ殿は今、エスパシオの民ではないと言ったか?」

 俺の発言にラウラが怪訝な様子で問い返してきた。

「確かに言ったけど、ラベルとかいうのを確認した時に気付かなかったのか?」

「いや、しかし……アルマ。お前はどう思う?」

 神様が実在するような世界でも異世界人発言は受け入れられないものなのだろうか?
 ラウラに問われたアルマさんは最初の頃のおどおど弱々な雰囲気がかなり薄れ、視線もかなり鋭くなっているように感じる。

「……確かに前例はないです。ですけど、プラティードの顕現法則と対話したのがクィリさんではなく、ご主人様だったのなら……説明はつくです」

「それこそありえん! あの自己中心的な鬼畜外道が自ら肉の欲求を捨て去り、解脱することを願うはずがない」

「ご主人様は確かに良い人じゃないです。でも……悪いだけの人じゃなかったです」

 ラウラの否定に同意しながらもアルマさんは哀しげに顔を伏せた。
 アルマさんはグリムのことをそれほど悪く思っていないのか。8人居るという契約奴隷の中で1人だけずっとグリムの傍に置かれていたことでストックホルム症候群にでもなってしまったのだろうか。エスパシオにきて数時間しか経っていない俺にそこら辺の精神状態まで理解することなど不可能だけどな。
 そんなアルマさんの発言に我慢ならないモノがあったのか、ラウラがアルマさんに掴みかかった。

「っ! アルマ……貴様は、彼奴が我らにしてきたことを許すつもりか? リネア様の墓前でもグリムを許すと貴様は言えるのか!?」

「そういう話じゃないです!」

 俺の主観にある女性の平均的な身長を大幅に上回るラウラに掴みかかられたアルマさんは、俺に見せていた怯えた様子を微塵も見せずにラウラを睨み返している。おそらく、グリムという男がやってきたことは世間一般の倫理において悪とされることなのだろう。ラウラの反応からグリムはお約束のように性的なことを彼女達に強要していたのは確かだと思う。俺が目覚めたときにアルマさんがしていたこともグリムが言いつけていた習慣だったのかもしれない。男としては羨ましい限りだが、俺はグリムほど奔放にはなれない。ファンタジー世界のキャットファイトなら金を払ってでも見たいと思うが、なにやら雲行きが怪しい。俺は精神的に打たれ弱いのだ。こういった場面はあまりみたくない。
 二人とも第一印象から想定していたよりも大分強気な性格らしい。ぶるぶる怯えていたアルマさんにしても、襲撃しといて瞬殺されてびびりながら正座していたラウラにしてもグリムという恐怖の対象がいなくなったことで本来の彼女達に戻り始めているのかもしれない。ま、彼女らの下の性格なんて知らないけどな。

「…………」

「…………」
 
 睨み合う二人のこう着状態に手持ち無沙汰になったことと現状の考察に無駄な頭脳労働を行った俺は至極疲れてしまった。経緯はどうあれ、異世界という環境は俺にとってはご褒美以外の何物でもない。そんな状況をギクシャクした人間関係で無為に過ごしたくはない。

「んんん~ッ、ガンホーッ!!

 ズドオォォン!!

「ひゃひっ!」

「きゃぃっ!?」

 左の握り拳を天高く掲げ、右手を腰部で握り締め、左足を壊れた机の上に乗せて心からの咆哮でこう着状態の二人に俺の存在を再認識させた。なにやら予想以上に効果音が出てしまったようだが気にしない。

「色々考えてくれるのは感謝すべきかもしれないが、当事者である私は現状の解明を求めていないということを忘れないで欲しい。二人は、同じ境遇の仲間なんだろう? いなくなったご主人様グリムのことより、これからの自分達のことを考えるんだ……って、何をしてるんだ?」

 険悪だった二人を宥めようとちょっと良いこと言った気になっている俺の言葉を完全に無視した二人が慌しく動き始めている。
 俺にボコられてボロボロになった鎧を脱ぎ捨て、部屋の隅に置かれていた小箱から綺麗な黒色の宝石を取り出したラウラが呪文を唱えると俺を襲ったときよりも凶悪なシルエットの全身鎧がその恵まれた肉体を隙間なく覆い尽くした。

「私が先行する。アルマは下で依頼を受けてきてくれ。それとクィリ殿に機獣の説明と対機獣武装アポトーシスを頼む」

「わかったです。ラウラも気をつけてです。新種が混じっている時は、第二階級セグンド以上の到着を待つです」

「了解している」

 完全武装したラウラは矢継ぎ早に指示を出すと大穴の開いた天井から文字通り飛んでいった。
 アルマさんはアルマさんでラウラが黒い宝石を取り出したのと同じ小箱から真珠のような石を取り出して呪文を唱え、ラウラと色違いの鎧を身に纏った。

「ごめんなさいです、クィリさん。違う世界から着たばかりのクィリさんにお願いするのいけないと思うですけど、この町コルペンドにいる第ニ階級セグンド以上はご主人様だけです。第三階級テルセーラのラウラだけじゃ既存種しか対処できないです。理不尽なお願いだと思うですけど、機獣を追い払うのを手伝って欲しいです」

 いきなりな展開にちょっと唖然。
 さきほどただの効果音だと思っていた大振動はどうやら魔物が町を襲おうと近付いていることを示す音だったようだ。内心「お助けイベントきちゃったよ」と泣きが入ってしまっているのだが、腐っても外道英雄の身体、外の喧騒とピリピリした肌の感触から無性に暴れたい気持ちが強まってきているのが分かった。

「……言っておくが、私は生死をかけた戦いなんてしたことがない。途中でビビって逃げたりするかもしれないが、それでもいいかな?」

「はいです。無理を言っていることはアルマも分かってるです。クィリさんは、第二階級セグンド以上のハンターが到着するまで守ってもらうだけで良いです。途中でクィリさんが逃げてもアルマは怒りませんです。でも、ちょっとだけでいいですからアルマたちに力を貸して欲しいです」

 翼のように広がる紅い髪と同じ赤い瞳が俺を見つめる。
 ここから先は、本当の異世界になるだろう。場所的な意味ではなく、心理的な意味での異世界だ。
 地球人の俺にとっては未知の世界。
 目覚める前に追体験したグリムの戦い方ははっきりと覚えている。身体にも力が漲っている。心にも抑えきれない高揚がある。

「わかった。私もできる限り頑張ってみるよ」

「ありがとうです! それじゃあ、これをもってラウラのところに行ってくださいです。アルマも下で依頼を受けてからすぐに追いかけるです」

 満面の笑みで喜びを表してくれたアルマさんから手渡された武器。それは怪物と戦うにしては些か以上に歪な形状の武器?だ。

「これは、ご主人様が一番好んで使っていた対機獣武装アポトーシスです。きっとその身体が使い方を覚えているはずです」

 ずずずいと俺に“歪なアレ”を押し付けてくるアルマさんに仕方なく受け取ってみたら物凄く手になじむ感覚があった。

「……とりあえず、行ってみる」

 武器?を受け取った俺はそれだけ言うと窓から屋外階段へと飛び移ってラウラが飛んでいった方角へと駆け出した。

「あ~あ。いいのかな、こんなんでさ」

 肉体的なテンション上昇と反比例するかのように精神の高揚は急激に下降線を描き出している。
 まあ、なるようにしかなるまい。
 とりあえずは、この世界を満喫するためにも眼前のイベントを完遂してみよう。















 ・戦闘内容

  ミッション【序章 都市防衛戦】

  ターゲット【異世界の怪物】

  勝利条件【10ターンの間、怪物の都市侵入を阻止する】

  敗北条件【怪物の防衛線突破、及びキリorアルマorラウラの死亡】

  特殊条件【固定武装『対機獣武装アポトーシス:タイプ“釘バット”』








 次回【戦闘開始!】







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