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[27457] 【Bルート完結】せいびのかみさま【IS 転生チートオリ主】
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2012/02/26 15:05


 これはIS(インフィニット・ストラトス)の二次創作SSです。以下の点にご注意ください。

・転生チート男オリ主が出てきます。ISには乗りません、多分。
・女オリキャラが出てきます。
・メインヒロインは束さんです。ぶい。
・色々と設定がおかしい部分があります。問題が発見され次第修正します。
・他SSとオリジナルISその他のネタ被りが発生する可能性があります。
・ぶっちゃけISSS見てたら我慢できなくなって書きたくなっただけです。
・更新が超不定期です。
・他作品のパロディが大量に含まれています。

 以上が許容できる方はお進みください。

第一話:2011/04/29 投稿
第二話:2011/04/29 投稿
第三話:2011/04/29 投稿
第四話:2011/05/04 投稿
番外編:2011/05/04 投稿 ※削除しました
第五話:2011/05/04 投稿
第六話:2011/05/05 投稿
第五話:2011/05/06 修正
番外編:2011/05/07 投稿
第七話:2011/05/07 投稿
第六話:2011/05/08 修正
番外編:2011/05/09 投稿
第八話:2011/05/11 投稿

2011/05/11:その他板へ移動しました。

第六話:2011/05/11 修正
第九話:2011/05/15 投稿
第九話:2011/05/15 修正
第十話:2011/05/21 投稿
第十一話:2011/05/22 投稿
第十一話:2011/05/23 修正
番外編:2011/05/25 投稿
番外編:2011/05/27 修正
第十二話:2011/05/28 投稿

2011/06/01 現在メインPCが手元に無いので更新ができません。今暫しお待ち下さい。

第十三話:2011/06/05 投稿
第十四話:2011/06/17 投稿
第十五話:2011/06/25 投稿

2011/06/29 作業用PCを新調しました。

第十六話:2011/06/29 投稿
解説1:2011/07/20 投稿
解説2:2011/07/20 投稿
第十七話:2011/07/20 投稿
第十八話:2011/07/20 投稿
第十九話:2011/07/20 投稿
番外編:2011/07/21 投稿
番外編:2011/07/29 修正
番外編:2011/07/29 修正
第十七話:2011/07/29 修正
第十八話:2011/07/29 修正
第二十話B:2012/02/16 投稿
第二十一話B:2012/02/25 投稿
第二十一話B:2012/02/26 修正
第二十二話B:2012/02/26 投稿
解説3:2012/02/26 投稿




[27457] 第一話「そうだ、宇宙行こう」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/29 14:50



 第一話「そうだ、宇宙行こう」


 やあ! 皆大好き転生チートオリ主だよ! 今日も元気にニコポ祭りだ!

 ……ゴメン。あんまりにもアレだったんで嘘ぶっこいてみた。
 改めましてこんにちは。佐倉源蔵、今年で十四歳です。転生チートオリ主です。マジで。
 新ルールの「神様ルーレット」で見事チート頭脳とIS世界への転生を果たしました。

 束と同い年で。

 え、それ意味なくね? 公式チート頭脳に勝てるわけなくね? とか思ったね、三歳ぐらいの時に。
 その次の日には幼稚園で篠ノ之って名前の女の子見つけました。ゆかりんヴォイスの。

 いやー、ホント性格ぶっ飛んでるよねアイツ。最初一ヶ月ぐらい凄かったもん、目つきとか。虫けらを見る目ってあーゆーのなんだね。
 でもそれさえ乗り越えれば楽しいよ。まだ子供だったからかあっさり身内カテゴリーに入れたし。あと可愛い、これ正義だよね。
 やることもぶっ飛んでるけどね。あの回転するジャングルジム、グローブジャングルだっけ? あれ改造したりするし。幼稚園児なのに。
 巨大な球体がパンジャンドラムみたいに火噴いて転がってく様はトラウマもんだよね。片手で止めた挙句投げ返してくるのも充分トラウマだけど。

 え、千冬さんですけど何か?

 まあそんなこんなで元凶束、扇動俺、鎮圧千冬のトライアングルが出来上がる訳ですよ。これがまた面白い。
 ただまあ、他の連中が騒ぎの規模についていけなくなって束の身内カテゴリーが増えなくなっちゃったんだけどね。別にいいけど。
 そんなこんなで二人との付き合いも十一年目! で、今は何をしてるかって言うと―――、

「………。」
「………。」
「………。」

 織斑家のリビングで頭抱えてます。俺達の前には織斑パパと織斑ママの言い訳が書かれた紙。要するに夜逃げだね。
 あ、今思い出したけど二人ってホントは高校の時に知り合うのか? 原作読んだ時にそんな記述があったよーな無かったよーな。まあいいや。

「……どーする?」
「どうもこうも……私が『二人』を守って行くしかあるまい」
「だよねー。ゲンゾーもそれくらい解るでしょ?」

 そりゃ解るけどさ。でもここ日本よ? 普通に考えれば警察行きの問題でしょ。住居はあるけど保護者無しってケースは珍しいだろうけどさ。
 ……ん? ああ、解ってるよ。この世界の千冬は『五人家族』だ。いや、二人抜けて今は三人だけどまあそれは別に良いや。
 イレギュラーの名前は『織斑千春』、数字に季節と織斑家ルールに則ってるのがよく解るね。一夏の双子の姉なんだそうだ。
 俺と同じ転生者かどうか探りを入れてみたがどうにも解らん。まあヘイトでもない限り敵に回る事は無いだろうから放置。

「まあ、いざとなったらこの天才束さんがなんとかしてあげるから!」
「束には敵わんが俺も神童と呼ばれた身だ。何か問題があったら言ってくれ」
「束、源蔵……ありがとう」

 ありゃりゃ、こりゃ大分参ってるな。普通俺達が天才だの神童だの言ったら何だかんだでツッコミ入れてくれるんだが……。

(ね、ね、ゲンゾー)
(ああ、解ってる。こりゃ何か気を逸らせるようなイベント作らねーと駄目だな)
(ゲンゾーも中々解ってるね。そう、イベントが無ければ作れば良いんだよね!)
(だよね!)

 しかし何が良いかな、と居間でテレビを見てる双子に目を向ける。最初はこっちに興味があったみたいだが、今はテレビに夢中だ。
 因みに一夏はまだ箒ちゃんとはあまり仲が良くないらしい。姉の繋がりで多少は面識があるみたいだが、子供の足じゃここから神社って遠いしな。

 あ、そうだ。皆想像してみてくれ。千冬と束のセーラー服。徐々に女性として主張を始める胸の膨らみ。うん、良いね。最高。

「……ん?」

 ライトブラウンの地毛を弄りながらテーブルに突っ伏すと、二人が見てるテレビが目に入った。宇宙特集……だと……?


「そうだ、宇宙行こう」




 時は流れて約一年。俺達は中三に、一夏達は六歳になっていた。ついでに言うと今は高校受験も終わった三月半ば、当然主席入学ですよ。束が。
 ダカダカと唸りをあげてキーボードが文字を吐き出し、俺と束の前のブラウン管モニターにそれが溜まって行く。
 しかし、俺は『右腕一本』だからどうしても束より遅くなってしまう。まあ仕方ないか。

「おーい、中二病ー。そっち準備良いー?」
「誰が中二病じゃ誰が。そっちこそ終わってなかったら乳揉むぞ」
「焼き殺されてもいいなら良いよー?」

 何とも物騒な内容だが、現在俺達は世界初のIS【ハミングバード】の最終チェック中だ。まあ、今はまだ開発コードもロクについてないんだが。
 それにこの程度の罵詈雑言はデフォですよ僕達。ゆかりんボイスでナチュラルに罵倒される日々って割と楽しいんですよ、知ってました?
 なんて手を休めずに考えてると、ハミングバードを着込んだ千冬が呆れたように声をかけてくる。

『全く……源蔵、いい加減にそれは止めろ』
「馬鹿な! 俺からセクハラをとったらメガネしか残らんではないか!」
『……随分と偏った肉体構成だな』

 あ、ツッコミ諦めやがった。もっと熱くなれよヤンキー予備軍。これから物理的に熱くなるがな。

「それにしても、まさかこの束さんがこの程度の物を作るのに一年もかかるとは思わなかったよー」
「まあ一応学生だしな。理論と実践の差ってやつだ」
『……むしろ一介の中学生がどうやってこんな装甲材を持ってきたのかが気になるんだが』

 そこは内緒ですよ。ちょちょっと帳簿を弄っただけですよ。

「それよりなによりちーちゃんちーちゃん、どっか変な所とかある?」
『いや、大丈夫だ。それに往還自体は何度か試したからな、慣れたものだ』
「デブリが怖いが、そんな装備で大丈夫か?」
『それは設計した本人が言う台詞ではないだろうが……』
「俺がまともに作ったのなんざブースターぐらいだよ。他は束に聞け」

 全く、神様にチート頭脳を貰った筈なのに束の方が頭良いって何だよそれ。乳に脳味噌でも詰まってんのか?

「ゲンゾー、少し頭冷やそうか……?」
「ヒィッ!?」

 やめてやめて天地魔闘の構えやーめーれー!
 と、手を上下に構えた束がぴたりと動きを止めた。その視線の先には俺の頭皮。ヅラじゃねーぞ?

「……あれ? ゲンゾー、背伸びた?」
「ん? ああ、そーいや追いついてきたな」

 この時期の人間と言うのは大体女子の方が成長が早い。それに追いつくように男がグーングーン伸びて行く……なんかMSみてぇ。

「ま、そんな事どーでもいっか。今回ので技術蓄積も充分できたし、次はもっと武装とか載せれそうだよー」
「……ああ、こないだ作ってたのはそれか」

 白騎士ですねわかります。今回のでまともな話題にならないって解ってんだな、お前さん。
 もう有人大気圏離脱&再突入もクリアしてんのに話題にならないとかね。因みに今回は手近な廃棄衛星をバラす予定です。

「さて、漫才やってる間に打ち上げ時間だ。千冬、準備は良いか?」
『ああ―――では、行って来る』
「いーってらーっしゃーい」

 ドゴン、と音の壁をぶち抜いて巨大なブースターが尾を引いていく。その風に揺られて長袖の左腕部分がバタバタとはためいた。
 ……学生のみによって作られた単独大気圏離脱可能なパワードスーツ、これが話題にならない筈が無い。ならば何故話題にならないか。
 簡単な話、話題にしてはいけないのだ。だってパーツの九割以上が盗品だし。普通に作れば何億ってレベルだからね、ISって。

「……よし、じゃあ次はゲンゾーの番だね」
「は?」
「―――だから、それ」

 ぴ、と束は俺の左腕を指差す。表面上はいつも通りだが、やはりこの話題になるとどこか空気が硬くなる。

「いや、別にもう慣れてきたし」
「嘘ばっかり。ノート取るの手伝ってるの誰だと思ってるのさ」
「……まあ、可能なら治したい所だけどな」

 先月の初回起動実験時、妙にハイになってきて徹夜した俺達は揃って配線を一つずつ間違えたまま起動。ギャグ漫画かってレベルで大爆発が起こった。
 その時に束を庇ったら左腕が吹っ飛んだ。こう、スパッと。どうも作業並行してやってて中途半端に搭載してた装甲の縁で見事にやってしまったようだ。
 まあそんな訳で現在俺は左肘から先が存在しない。これがまた中々に不便だったりするが、束にはこの程度で止まってほしくは無い。

「技術蓄積もできた、ってのはこっちの意味もあるからねー」
「成程。じゃ、一つ頼むわ」
「まっかせて! 最高の手に直してあげる!」

 なんか漢字が違う気がするがスルーで。



「で、何してくれちゃってんの君達」
「んー……お披露目?」

 あれから一ヵ月後。何か空が騒がしいと思ったらやっぱり予想通りやってくれちゃったよこん畜生。おーおー白騎士頑張ってます。
 あ、そうそう。遂に一夏達が篠ノ之道場に入ってきたよ。俺も一応入ってるよ、弱いけど。っつーか柳韻さん強すぎ。聖闘士かってレベルだよあの人。
 しかし学校帰りに異性の家に上がりこむ、という心躍るシチュエーションの筈なのになんとも無いのは機材でこの部屋が埋め尽くされてるからだろうか。
 なんてことを『左手』で柿ピー食いながら考える。そしてどうしてお前はこっちを見ずに掌を差し出してくるのか。

「ちょっとちょーだい」
「はいはい」

 一瞬ナニでも乗せてやろうかと思ったがまず間違いなく細切れにされるので止めておく。ただでさえサイボーグなのにこれ以上怪我してたまるか。

「この線ってミサイルだよな。何発出てる?」
「2341、だね」
「キリ悪いしあと四発撃っちまえよ」
「んー、良いよー」

 頑張れホワイトナイト。俺達は君の活躍を柿ピー食いながら見守ってるよ。あ、寒いからコタツ入れて。



 そんでもって現在年末、16歳。ここ暫く束がどっか行ってます。失踪癖はこの頃からなんだなー、と現実逃避。
 だってさ、

「ですから私はあくまで篠ノ之束の助手として開発に携わっていただけでコアの製造法なんて知らないんですよっつーかこれ何度目だこの糞豚が!」

 一息で言い切り、ぢーんと若干古めの受話器を電話本体に叩きつける。今度は国某省(誤字に非ず)だ。毎週決まった時間に電話かけてくるんだね、歪みねぇな。
 束っぱいの代わりに電話応対の毎日ですよ。一日五回は確実に鳴るし、その度に同じこと言わないといけないし。でもまだスーツにグラサンが来ないだけマシか。

「だぁーもぉーめんどくせぇーなぁー! 束ーっ! 早く帰ってくるか乳揉ませろボケェーッ!」
「やだー」
「ってうぉおっ!?」

 某最強地球人の真似を窓から外に向かってやったらその相手が現れた。何を言ってるか解らねぇと思うが俺もよく以下云々。

「ただいまー」
「はいお帰り。世界情勢凄いことになってるって言うか随分と楽しくなってきてるけど」
「おぉー、頑張った甲斐があったねぇ」

 頑張ると世界がめちゃくちゃになる、なにこのフリーザ様並の天才。

「腕の調子は?」
「ああ、上々だ。最近は変形機能とかつけて遊んでる」
「相変わらず頭のネジ飛んでるねー」

 や か ま し い わ 。お前だって似たようなもんだろ。

「あ、そうだ。コア一個よこせ。趣味に走った機体作るから」
「良いけど、まだ男性開放はできてないよ?」
「良いよ良いよ、どういう戦い方するか考えてニヤニヤするだけだから」

 ほい、と世界が求めて止まないコアの一つを手渡される。これ一つで一軍に匹敵するんだから驚きだよね。
 それとこの世界のISは千冬のパーソナルデータを元に作ったせいか、やっぱり女性しか扱えなくなっていた。
 束の奴が『不可能なんてない』って豪語するキャラ付けしてるのが原因で束の気まぐれとか思われてるんだよね、世界中に。
 まああと何年かあれば一時的に開放するのは可能だろうし、白式が大丈夫なのは白式の意思による物だろう。

「……って言うかゲンゾー、また背伸びた?」
「応、遂に180の大台に乗ったぜ。そっちこそ乳デカくなったな、揉ませてくれ」
「そんな流れるような土下座されてもねー」
「そしてナチュラルに人の上に座るって凄いなお前」

 体格差を利用した谷間覗きから見事なDOGEZA。その背中に束がちょこんと座る。あの、動けないんですが。

「しかし今外務省は大変らしいぞ。やれよこせだのやれ情報開示しろだの」
「ふっふーん。まあ束さんが本気を出せばこれくらい楽勝だよ! 最近ゲンゾーはどんな感じ?」
「日本政府から声はかかってるけど、お前が前例として逃げてくれてるから俺は刺激しないようにって最小限の干渉で済んでる」
「おー、そっかそっか。流石は束さんだね!」

 物凄く情けない格好のままで黒幕っぽい会話をする。あ、でも尻の柔らかさが心地いいので継続決定。うん、駄目人間だね俺。

「っつーかそんなどーでもいい事聞いてどーすんだよ」
「あれ? 解った?」
「何年幼馴染やってると思ってんだよ。あとたまには家に顔出してやれよ、箒ちゃんがお前の扱いについて悩んでたぞ?」
「なにぃっ!? 待っててね箒ちゃん! 今から束おねーちゃんが遊びに行ってあげるからねっ!」

 言うが早いが束が窓から飛び出していく。来る時も来る時だが玄関使えよ馬鹿野郎。

「あ、出席日数足りてないって言うの忘れてた」

 知ーらね。



 はーい皆さんこんにちは。一年ぶりの佐倉君だよー? なんて言ってられる状況じゃないんだけどねー、っと危ない危ない。

『無事か、源蔵!?』
「何とか。いやー、いい加減に大ピンチだねー」
『……もう少し緊迫感を持ったらどうだ貴様は』

 そんな事言われてもねぇ。こちとら高校生で国のお抱えになった人間ですよ? こんな襲撃なんて日常茶飯事ですよ。
 大体ここ数ヶ月、グラサンスーツが山盛りで来てるんだぞ? 何でエージェントホイホイ(巨大ゴキホイ)が一日で全部埋まるんだよ。
 因みに最近まで来なかったのは日本政府が頑張ってたからなんだそうだ。やるじゃん、日本人。

「で、亡国機業の連中か。相変わらず手荒だねぇ」

 っつーか何で外人がIS使ってんだろーね。建前上はまだ国内にしか無い筈なのに。

『全くお前といい束といい……私の周りの天才はこんな連中ばかりか』
「んー、でもまあ千冬がこっちに来てて助かったよ。他の連中に【暮桜】を使わせる訳には行かないしね」

 白騎士の次に作られた織斑千冬専用IS暮桜。装備こそ刀一本だが、それを補って余りある機動性と頑強さを併せ持った傑作機。
 そもそも格闘戦のデータ取り用に作られていた機体だったが、白騎士事件時の銃器使用率の低さと俺のロマンと束の気まぐれでこうなってしまったのだ。
 まあ、元々千冬って機械あんま得意じゃないしね。ISの操作がイメージメインなのもそのせいだし、多分銃器も苦手なんだろう。
 ……俺が一零停止だの何だのの銃器使用に関する項目をノンストップで講義したのがトラウマになってる可能性もあるが。

『それもそうだな。私としてはさっさと調整を終わらせて帰りたい所だったが』
「それに幾ら調整で直せるとは言え変な癖がつくのも嫌だし、慣性制御も最低限に抑えてるし……ぶっちゃけここの人間じゃ使いこなせないよ」
『ん? ああ、そっちの話か。まあ慣れてしまえばどうと言う事は無い』

 ホントバケモンだなテメー。きっと俺でも無理だぞ、最近鍛えてんのに。

『……何か不快な気配を感じたが、今は何も言わないでおいてやる』
「そんな理不尽な。で、そろそろ行ける?」
『―――ああ、完璧だ。相変わらず良い腕だな』
「お褒めに預かり恐悦至極。じゃ、頑張ってな」
『任せろっ!』

 最終調整を済ませた千冬が銃火の中をカッ飛んでいく。その音を聞きながら俺は机の影に身体を預けた。

「しかし、まだ【零落白夜】が無いんだよなぁ……まあ、【第二形態移行】してないからなんだろうけど」

 そろそろなる頃だとは思うんだけどね。ほら、なんかビカーって光ってるし。



 ういっすお疲れオリ主だよ! 現在僕はアラスカに居ます! 何でかって?

『それではここに【IS運用協定】の締結を宣言します!』

 そう、アラスカ条約だよ。しかも束の奴が居ないから俺が代わりに色々とやらされてるんだ。ふざけんじゃねえよ。

「えーっと、【国際IS委員会】の設置と国別のIS所持数の規定に特殊国立高等学校……通称【IS学園】の設立、と。あと【モンド・グロッソ】もか」

 中々に面倒な事が山積みである。ねえ世界の皆さん、僕まだ未成年なんですけど。あえて一人称変えちゃうくらいめんどくさいんですけど。
 あとパーティーの席でナチュラルにワイン勧めてくんなよ。こちとらスーツも親の金だぞこの野郎。ここんとこ苦笑以外の親の顔見てねーぞこの野郎。

「まぁ、まだ暫くは動けないか。学園も土地と建物何とかしないといけないし、モンド・グロッソ終わってからかな。なぁ束」
『あ、あれれー? 何でわかったのー?』

 ヴン、と低い起動音をたてておっぱい、もとい束を映した空中投影モニターが姿を現す。わからいでか。

「お前が接触してくるなら、ホテル戻って来たこのタイミングかなーと思ってな」
『むむむ、ゲンゾーに行動パターン読まれるとは束さんもまだまだだねー。精進精進』
「心にも無いことを言うのはどうかと思うぞ。精進って単語を辞書で引いてみろ」
『ゲンゾーにだけは言われたくないなー』

 何を仰る。俺ほど欲望に忠実な人間はそう居ないだろ? おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかとりあえず揉ませろ。

『そう言えば今度出てくる桜花、だっけ? ゲンゾーが作ったんだよね』
「ああ。可もなく不可もなく、ついでに拡張性もあんまりない機体に仕上げてみました。ぶっちゃけハミングバードの方が強いぞ」
『懐かしー。他の国のも一通りやったんだよね?』
「ああ、イタリアの【フォルゴーレ】、イギリスの【ブルーハリケーン】、アメリカの【ダブルホーネット】にドイツの【ヴァイサー・ヴォルフ】……フランスと中国はまだかかるな」

 どれもこれも後に第一世代と呼ばれるであろう機体達だ。とりあえず今までの兵器の延長線上って考えだろうしな。
 そして世界がモタついてる間に俺は一人で第二世代を作るのだよ。フゥーハァーハァーハァーハァー。

『フランス? あそこってそんな会社あったっけ?』
「まだどこも作っちゃ居ないがデュノア社の動きが活発になってる。数年以内に国のお抱えで参入してくる筈だ」
『ふーん』

 現在IS条約に加盟しているのは日本、中国、CIS(ロシア含む)、中東IS連盟、インド、イスラエル、パキスタン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、ギリシャ、北アフリカ諸国連合、南アフリカ、ナイジェリアの18ヶ国と3地域だ。多分もう増えないだろ。
 それを現在所在がハッキリしている467個のコアをそれぞれ割り振り(議論すると年単位で揉めそうなんで俺が勝手に決めた)、勝手にドンパチしたらあかんよーとか書いてあるのが今回の条約な訳だ。

「あとはまあちょこちょこマイナーチェンジしたやつを各国に、って感じかな。汎用性を無駄に高くして発展を遅らせてやる」
『万能兵器ほど弱い物は無い、だっけ? 暴論だと思うよ束さんは』
「やかましいわい。ある程度共通したフレームに違う武器を載せて多様化、ここに量産機のロマンがあんだよ」
『ふーん』

 流すなボケ。

「そんな訳でパーツ変更による多様化ってテーマに気付けばそれが第二世代、【イメージ・インターフェース】使った特殊武装試験機が第三世代って所かな」
『イメージ・インターフェースって……【ちーちゃん用簡単操作できる君】の事?』
「それそれ。武装に転用しようと思えばできるからな。本当は寄り道なんだが歴史の発展には必要な寄り道だから無問題」
『じゃあパーツ変更無しで全領域・全局面対応可能なのが第四世代?』
「だな。第一世代でもある程度は可能だが、IS同士の戦いを目指すのは第二世代からだし」

 因みに今の俺の頭の中には『第五世代』の構想もあるんだが、それは暫く保留だ。きっと束に追い抜かれるだろうし。
 あとこの特殊武装ってのはアレだ、【単一仕様能力】を汎用化した物。零落白夜が出てきてからポコポコ出てきたんだよね。シンクロニティ?

『んー、全領域対応……あ、そうだゲンゾー、暮桜が進化したって本当?』
「ん、ああ。コアと操縦者の意識シンクロが一定以上になった劇的な形状変化……第二形態移行、って呼んでるけど」
『うーん、我ながらよく解らない物生み出しちゃったねぇ。で、何か変な能力が出たっても聞いてるよ?』
「誰だよリークしたの……攻撃対象のエネルギーを0にするとんでもない技だよ。ブレードが変形してエネルギー刃が出てくるようになった」

 ま、原作通り捨て身技なんだけどね。暮桜が勝手にブレードに雪片って名前付けちゃうし。暮桜さんマジ厨二病。

『ほうほう……他のISで再現はできないんだよね?』
「ああ、だから単一仕様能力って呼んでる。っつーかぶっちゃけお前に解らん物は俺にも解らん、ことISに関しては特にな」
『おやおやゲンゾー、当然の事を言っても褒めた事にはならないんだよ?』

 ムカつくこの小娘。畜生、通信じゃなけりゃ押し倒してあひんあひん言わせてやんのに。

「知りたけりゃ自分の目で見る事だな。来年には丁度良さそうな祭りも有る、たまには顔出せよ」
『うん、そーする。あーでもちーちゃん怒ってるかなー』
「怒ってるだろうな。まあアイアンクロー食らっても愛が滾ってるだけだと考えれば良いさ」
『おおう、ナイスアイディア! じゃ、そーゆーことでー』

 相変わらず破天荒なお姫様だこと。



 良い感じに一夏がフラグ職人やってます。どーも、ゲンゾーです。まだまだプロローグだよ。
 今日は第一回モンド・グロッソがあったよ。ちなみにイタリアだよ。

「そんであっさり優勝してるコイツは本当に人間なんだろうか」
「ふむ、辞世の句はそれでいいな?」
「ごめんなさい」

 ヒュパァァァンと見事なDOGEZAを繰り出し、目の前の最強人類の魔の手から逃れる。

「知らなかったのか? 私からは何人たりとも逃げられんぞ」
「なにその大魔王って痛い痛い痛い痛い、やめれ」
「やはり吊り上げんと威力が出ないな……」

 何この人恐ろしい。幸いにも俺の身長が190超えてたお陰で威力が下がっていたようだ。

「と言うか本当に伸びたなお前は……」
「何だ惚れたか? だったら是非束と3Pをだな」
「やっちゃえちーちゃん」
「心得た」

 どうしてこのタイミングで出てくるかなこの兎娘はってだから痛い痛い頭蓋が軋んでるーっ!

「久しぶりだな、束」
「ひっさしぶりー! ゲンゾーは相変わらずオープンな変態だねー」
「ふむ、それには同意するが迷惑度ではお前の方が遥かに上だと言う事を忘れるなよ?」
「痛い痛い痛いー! やーめーてー!」

 こ、これはまさかのダブルアイアンクロー!? とか考えちゃうくらい痛いです。そろそろ離して。

「それで束、どうしてここに居る? 優勝を労いに来た、と言うわけでも無かろう?」
「そうだぞ。それにどうして兎キャラなのにバニーガールで来ない」
「黙れ」

 ぎゃあ。ねえ、なんか出てない? 俺の頭から出ちゃいけない物とか出てない? それくらい痛い。

「んー、なんか箒ちゃんがお引越しするって聞いたから。大会見に来たってのもあるけど」
「ああ、それか。その情報は正しいぞ、要人警護プログラムとか言うものだそうだ」
「ウチの親はそれ使って日本中の観光地転々としてるらしいよ。誰かが場所のデータ弄ったのかね」

 それ警護できないよね、ってツッコミは無しだ。俺からのささやかな親孝行なのだから。

「んんー、そりゃ参ったねー。箒ちゃん盗さ…保護用カメラも新しくしないと」
「しかしこれで箒ちゃんは『幼い頃別れた幼馴染』という珍しい属性を得る訳か……嫌いじゃないわ!」
「……本当にお前らは相変わらずだな」

 そういう君もね。顔が笑ってるよ、苦笑だけど。



 さて、今度は一気に二年だ! はっはっは、一年ずつだと思ったか!? ネタがないだけなんだけどな!

「精々【打鉄】と学園ができたってぐらいだしなー」

 しかもまだ学園は完成してねーでやんの。国際IS研究基地として見れば充分完成してるんだがな。

「……ん?」

 と、緑茶飲みながらニュースサイトを眺めていた俺の手が止まる。そこには大規模な列車事故の記事。

「オルコット家の頭首が死亡、か……大変だな、あの子も」

 とは言えここに居てできる事はそう多くない。IS絡みの事でなければ俺はただの若造なのだから。

「鈴もちゃんと転校してきたみたいだし……そろそろ楽しくなりそうだ」

 誰にとってか、は言わんがね。ふっふっふっふっふ。



 とりあえず第一話です。期間が長いので話を細切れにしてあります。この辺はバトルが無いんでパッパと飛ばします。
 第一話って言ってますがまだプロローグ前半みたいな感じですからねー。本編キャラも喋ってるのが2人だけと言う事実。
 っつーか条約加盟国とか第一世代とか考えんの超楽しいんですけど。どの国がどの国に肩入れしてるとかね。

 それと何か原作で矛盾してるように感じられる設定が幾つかあったのでわざと無視している部分があります。ご注意下さい。

 源蔵は基本的に束と同ベクトルの人間です。若干マイルドになってるくらい。あとエロスと一夏弄り。
 釣り合いを持たせるために束と同レベルのキャラにしてみました。あと原作にちょこちょこ介入します。
 特徴は長身メガネとサイボーグ。現時点で「神の手(ゴッドハンド)」等の異名を持ってます。チートキャラですから。
 千春については本編開始後に。これもまた別の地味なチート能力持ちです。

 尚、このSSは可愛い束さんを目指しオリジナルISで満足する事以外は考えていません。ではまた次回。




[27457] 第二話「物語の始まりだ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/29 03:25



 第二話「物語の始まりだ」


 やぁ、佐倉源蔵だよ。今回は若干長めだよ、機体解説と『アレ』があるから。

「で、どうだ? 各国の機体の見立ては」
「んー、自信満々に第二世代って言ってるけど……【夕紅】の敵じゃないな。汎用性を求めすぎてる」

 まあそうなるように第一世代を組んだんだけどね! 量産機のロマンはカッコいいけど特化型には負ける運命なのさ!
 あ、暮桜は研究所行きになりました。ぶっちゃけ無くても勝てる相手ばっかりだし、たまには機体のタイプ変えないとな。
 ここ数年の訓練のお陰で千冬もまともに銃器扱えるようになってきたしね。あ、もっかしてやまやのお陰か?

「そんな事は解りきっている。詳細を話せと言っているんだ」
「ワーオ傲慢。でもそーだねー、どこも俺が渡した機体の発展系ばっかりだ」

 イタリアはフォルゴーレを発展させて【テンペスタ】ってのが出来上がってる。コンセプトはスピード特化で良い感じだけど、操縦者の技量が追いついてないな。
 イギリスがブルーハリケーンからの【メイルシュトローム】、【ミューレイ】って会社が作ったらしい。コンセプトは丁度アメリカとイタリアの中間くらい、別名器用貧乏。
 ドイツはヴァイサー・ヴォルフを研究して【シュトゥーカ・ドライ】。重装甲重装備とISとは思えない設計だがこういうのは大好きだ。単機での制圧能力を重視してるっぽいし、ひょっとしたら一番の強敵かも。火力だけなら現行の第二世代では最高峰だね。
 しかし、今度EUの方で【イグニッション・プラン】とか言うのやるって聞いたから期待してたけど……やっぱりまだまだだな。

 アメリカがダブルホーネットを突き詰めて作った【ビッグバード】は良いね、【クラウス】社の設計で『とりあえず銃載せとけ』って考えがよく解る。流石はアメリカ、大雑把過ぎてもう大好きだ。その分機体が大型化して機動性が犠牲になってるのはご愛嬌。
 日本に限っては俺が直々に打鉄を作ってやったけどね。夕紅ばっかりじゃアレだし、原作通りの堅実な仕様にしておきました。【倉持技研】と【ハヅキ】社の連中がやさぐれてたのが印象深かったね。

「他も似たり寄ったり。中国やオーストラリアなんかは第一世代の改良型で来るつもりみたいだな」
「舐められているのか純粋に開発が間に合わなかったのか……選手には同情を禁じ得ないな」
「どう見ても後者です本当にありがとうございました」

 結局デュノア社も間に合わなかったっぽいな。その代わりインナーはスウェーデンの【イングリッド】社との2トップみたいだが。アレか、デザインか。

「まあ何かトラブルでもない限りは大丈夫だろ。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「そうだな。しかし一夏達ももう中学生か……ようやく目を離しても心配がなくなったよ」

 それで今度の事件でまたブラコンが再発する、と。可能な限り手は尽くしたつもりだが、それで大丈夫だろうか……。



 現在時刻朝の八時、って言ってもイタリアの標準時だから日本は現在午後四時。もうすぐ日が暮れる頃だ。
 ついでに言うと現在俺はキーボード相手に格闘中。左手の超高速タイプ機能も長時間の使用によるオーバーヒート直前だ。

「源蔵、まだか!? まだ一夏は見つからんのか!?」
「落ち着け、って言っても聞かないよなオメーは。現在日本に残してきた端末で全力捜索中、ついでに千春は無事だぜ」
「当たり前だ、これが落ち着いていられるか! これで千春まで無事でなかったら貴様を磨り潰している所だ!」

 ドアがぶっ壊れんじゃねーかってぐらいの勢いで千冬が作業室に入ってくる。お前、一分前も同じ事やってたよな。
 あれから数日、決勝戦当日に当然のように一夏誘拐イベントが発生しやがった。無事であると知っているとは言え、その知識もどこまで役に立つか解らないのが怖いな。
 可能な限り監視をつけておいたが、結局は機械頼みだったのが仇になった。俺特製の『お守り』を一夏が家に放置しちまったのも痛いな、発信機入りなのに。

「現在各国にコネ使って捜索依頼中。それとやまや、千冬抑えてろ。作業の邪魔だ」
「む、無理ですよぉ~! あぁもう代表補佐なんてやらなきゃ良かった……」

 チッ、使えん乳眼鏡だ。これから暫くテメーはやまやで固定な。
 こないだだって無茶やってバイパスぶっ壊しやがったし。あれ直すのに何時間無駄にしたと思ってんだ。

「ハァ……千春の様子は?」
「メールの文面からは落ち着いた感じがするな。今は俺の家で隠れてるそうだ」
「そうか……まあ、お前の家なら安全だろう」

 伊達に何年も各国のエージェント達をホイホイで粘着液塗れにしてないからな。特に女だった時は思わず一眼レフを取り出してしまうくらいの芸術品だ。

「それにしても、お前のお守りとやらには何が入っているんだ? 発信機は想像がつくが……」
「トリモチ入りスタングレネード。一発限りだが千春は運良く使えたらしい」
「そうか……ハァ」

 さっきから溜息が多いぞ馬鹿者。少しは落ち着け……と考えてる俺の方がおかしいのかね、この場合。

「っと、ビンゴ! ドイツ特殊部隊さんからのお便りだ! 位置情報来たぞ、カッ飛べ千冬!」
「解っている!」
「……間違いなく協定違反ですよねぇ。それに決勝戦、不戦敗になっちゃいます」
「ハッハッハ、君と俺達が黙っていれば良いだけの話さ。それに千冬にとっては名声などより身内の無事の方が嬉しいんだよ」

 そういうものなんですか? と聞かれたのでそういうものなんですよ、と答えておく。実際はただのブラコンなんだが。

「とりあえずドイツさんにはこれで借り一つ作っちまったな、早い内に返さんと」
「どうするんですか?」
「んー、高官さんに緑の乳眼鏡をプレゼント、とか」

 おーうマヤさんIS起動しちゃ嫌ですよーう。

「まあそれ考える前に政府に何て言い訳するか考えようぜ」
「……あ」



「第三世代機……ですか?」
「ああ。ドクター佐倉の事は知っているだろう、彼から齎された技術だ」

 私、セシリア・オルコットがその名前を聞いたのは14歳になる頃でしたわ。先日から学び始めたISの教官が珍しく私を呼んだので何事かと思いましたわよ。
 ―――佐倉源蔵、またの名を『神の手』と呼ばれる世界最高峰のIS開発者。かの『大天災』篠ノ之束と共にISを作り出した『世界で最もISに詳しい男』。

「各国の第一世代ISを作り、第二回モンド・グロッソでも傑作機と名高い打鉄を世に出したもう一人の大天才……大天災の前に世界は彼に追いつく必要がある、とも言われているな」
「……正直、話を聞く限りではあまり好ましい人物とは思えませんわ。現在の風潮の責任の一旦は彼にある、とも言われてますわよね?」
「公の場で女の尻に敷かれていればそうも見えるか……功績に目を向ければ篠ノ之束と同等かそれ以上の物なのだがな。まあ、それは別に良い。それよりも今は第三世代機の話だ」

 そ、そうでしたわね。つい極東の猿の事などが話題になってしまって本来の話題を忘れてしまう所でしたわ。
 ……うぅ、やはり貴族たる振る舞いをする為とは言え、他人の事を猿などと呼ぶのは気が引けますわ、対策を考えませんと。

「現行の第二世代機と組み合わせたハイローミックス構想らしいが……注目すべきはむしろこの斬新な切り口だろう、読んでみろ」
「えっと、『思考操作技術による思念誘導攻撃機操作に関する基礎理論』……?」
「まあ早い話が【遠隔操作技術】だ。IS丸ごとと言う訳には行かないらしいが、研究するに値すると上は判断したらしい」

 遠隔操作……!? 無人機と並んで不可能と言われる技術ではありませんか!
 それにこの武装、まるで我が国で唯一発見された単一仕様能力【帰還者】を兵器化したような……。

「それにしても、どうして彼はこのような物を? 彼は強烈な日本贔屓と聞いていますが」
「それがどうも妙でな、世界各国にこれと同レベルの理論がばら撒かれているらしい。未確定情報だがドイツにも何らかの理論が渡っているらしい」
「一体どうして……?」

 私は渡された分厚い書類に視線を落としますが、当然ながらこんな事務的な文面からでは何も解りませんわ。一体何を考えていると言うの……?

「それがな、どうもこの理論は政府関係者に『本人から手渡し』されたらしい」
「で、ではドクター佐倉は欧州に居ると? 先日開校したIS学園に籍を置いていると聞いていますのに」
「ああ、昨年の夏頃から欧州各地で存在が確認されている。全く、神か悪魔のつもりか……?」

 教官のその言葉に、私の背筋がゾクリと震える。そうだ、彼はあの大天災と同種の存在。コアこそ作れないと聞くが、それに付随する技術では世界一であるかもしれないのだ。
 そして今彼が行っているのは、私達の第二世代の水準を『上から引き上げる』行為。まるで神か悪魔のように悪戯に知恵を与え、どうするのかを眺めるという行為。

「恐らく、そう遠くない内に第三世代ISの開発が始まるだろう。そして、その操縦者は恐らく君になる」
「なっ!? ど、どうして私なんですの!? 確かに光栄な事ではありますが、サラ先輩ならまだしも代表候補生でもありませんのに……」
「彼にとってこの国の情報を盗むなど造作もないのだろう。ご丁寧にその理論の一番最後に最適と思われる操縦者の事まで書いてあるぞ」

 心臓が高鳴り―――否、震え上がる。嫌な想像が頭の中を駆け巡り、そうであってほしい心とそうであってほしくない理性がせめぎあって指を震わせる。
 やっとの思いでページをめくると、そこは既に最後の一枚。分厚い紙の束を留めているクリップがカタカタと音を立てていた。

「……一体、何者なんですの?」
「さて、な。私はモンド・グロッソの時に一度だけ見た事があるが、その時の感想は『掴み所が無い』奴だった……気をつけろよ」
「……はい」

 ―――その数ヵ月後、私は彼と相対する事となる。そして、美しき蒼い雫とも。



「よっ」

 ……面倒な奴に出会ってしまった。

「無視すんなよボーちゃんよぉー」
「……私の名はラウラ・ボーデヴィッヒです」
「うん、だからボーちゃん」

 ―――面倒だ。

「まあそれはともかくラウラ君、どうよ最近調子は」
「上々です。これも教官のご指導の賜物です」

 相手をするのは非常に面倒だが、その頭の中身は間違いなく一級品だ。かの大天災と肩を並べると言うのも頷ける。
 新技術の研究のみならず整備や改良に強く、整備を依頼した我々の部隊のISが見違えるように性能が向上した。
 この性能を独力で引き出そうとするならあと数年、もしくは世代の更新が必要だろう。一体なにをどうやっているのか。

「して、ドクトルは何か私に用でも?」
「あーいや、こっちでの仕事もそろそろ終わりだしな。挨拶しとこうと思って」
「―――っ」

 彼――我々は畏怖と敬意を篭めてドクトルと呼んでいる――の仕事、それは日本代表IS操縦者織斑千冬専属整備士。それが、終わる。


 つまり、教官の仕事も、終わる。


「まあ、千冬の方はもう少しこっちに居るが、俺はこの後ロシアとフランスに行かねばならんのでな。だから早めの挨拶だ」
「そうでしたか。他の者にはもう?」
「ああ、クラリスには早く帰れとまで言われちまったよ。そんで漫画を送れ、と。まさかあそこまではまるとはな……」

 ドクトルは同じ部隊の一員である筈の私よりも皆と仲がいい。それに思う所が無い訳ではないが、私とて彼とこうして普通に会話している。
 ……眼帯をつけるようになってから、連絡や命令以外でまともに喋った相手は教官とドクトルだけだ。教官には私から近付いたが、ドクトルは気付けば今の位置に居た。
 そうして立場上無為に追い払う事もできず、仕方無しに応対していたらこの有様だ。恐らく、生来の喋り上手なのだろう。

 ―――ッ。

「……悔いの無いように、教わる事全部教えてもらえよ」
「え……?」
「そんないかにも『教官と別れたくないですー』って顔されても困るんだっつーの。もう少し前向きに生きてみろ」

 ぽん、とすれ違いざまに軽く頭を叩かれる。思わず反射で投げ飛ばしそうになったが、言われた言葉の意味を考えるとそうもいかなかった。

「とりあえず第三世代機の理論は置いてってやる。きっと気に入ると思うぜ?」
「……ありがとうございます」
「応、達者でな」



 ……ある日、私は新型機が出来ているらしいラボへ来ていた。沢山のサードパーティーを巻き込みながら、まともに完成しなかったあの機体が。
 更衣室で着替えていると噂が聞こえてきた。何でも新しい研究員が来て一日で山ほどあった問題点を解決していったそうだ。随分と下手な冗談だな、って思った。

「って言うかロシア経由でドイツから来た日本人って何なのさ……」

 確かドイツの機体はシュトゥーカ・ドライで……ロシアはフランカー、だったっけ?
 防御と近接戦に特化した単一仕様能力【流体装甲】を持っている機体がある以外は大した事ない機種らしいけど……。
 なんて考えている間にいつもの研究室に辿り着いちゃった。いつもここは空気がピリピリしててあんまり長居はしたくない。

「失礼しまー……」
「ハッピィブゥァァアスデェェェイッ! おめでとうっ! 君は今日新たに生まれた! そう、ラファールよっ!」

 おそるおそる扉を開けた私を出迎えたのは大音量でよく解らない事を言う声で―――、


 そこに、兵器という名の芸術品があった。


「ああ、君がシャルロット君だね? はじめまして、佐倉源蔵だ。好きに呼んでくれ」
「あ、え、えと……シャルロット、です。はじめまして」
「いやはやこんな機体が作れる自分の才能が怖い、とテンプレをかましたところで解説だ。コイツは【ラファール・リヴァイブ】、第二世代機だな」

 叫んでいた人はゲンゾウ、と言うらしい。どこかで聞いたような名前だけど……どこだっけ?
 よく解らないテンションをしたその人は私が考え事をしている間もつらつらとスペックを述べていく。
 それを聞く限り、決して突出した能力は無いけど全てが高水準で収まっている、といった印象だった。

「特に操縦の簡易化と素体の高性能化による汎用性の向上は素晴らしいの一言だな、まあ操縦系は各国のデータから俺が作ってるんだから当たり前だが。
 他にも多方向加速推進翼を四つも搭載してるが、コイツは航空力学に基づいて可能な限り低燃費で済まそうって考えだ。低燃費って大事だよな」
「はぁ……」
「ま、要するに何が言いたいかってーと、最後発機なんだからこれぐらいの性能ないとやってらんねーよなって話」

 台無しだった。

「ま、これでヴァンのハゲ進行も止まるだろ。最近アイツどんどん頭薄くなってるからなぁ……」
「―――ッ!」
「ん、あ……あー、悪い。ちょいと軽率だったな」
「い、いえそんな……」

 ヴァン。それはヴァンサン・デュノアの愛称。そしてそれは、私の『父さん』の名前。
 そう呼ぶって事は、この人は父さんと仲が良いんだ……もしかしたら、ううん、きっと全て知っているんだろう。

「まあお詫びって訳じゃないが、一つ君にプレゼントだ。ついてきな」
「え……?」

 その全てを知っているであろう目には軽蔑や同情の類の感情などなく、眼鏡の奥で悪戯っぽく光っているだけだった。
 ……そう思うと、言動の一つ一つが全てわざとらしく見えてくる。考えている事は行動の通りなのだろうけど、必要以上に感情を露わにしているように見える。

「さ、着いたぜ。カスタム機……と言うか厳密にはラファールの別プランだな。使いやすさを重視したんで本採用は向こうになったって訳だ」
「これって……」
「ああ。その名も【ラファール・リヴァイブ・カスタム】、拡張領域の拡大と一部パーツの変更で若干ピーキーだが第二世代としては最高峰の性能だ」

 その戦衣装は先の芸術品よりも洗練されており、何よりも野暮ったいネイビーカラーから鮮やかなオレンジへの変更が目を引いた。
 それに私はほぅ、とため息をつき……要するに見惚れてしまったのだった。

「他にもプランはあるが……まあ後はそっちの都合で変えてくれ。でもこの【黒の棘尾】、通称『要塞殺し』は変えない事をお勧めするな」
「……どうしてですか?」
「決まってるだろう―――ロマンだよ」

 ……まあ、悪い人じゃない、のかな?



「アイッ! シャルッ! リタァーンッ! ちなみにここ数回の会話は全部外国語ナンダゼッ!」
「……はぁ」

 何だ何だテンション低いなイィィィチ夏クゥゥゥゥゥゥゥゥンッ! こちとら流体装甲のデータからナノマシン制御作ってデータ送り返した所なんだぜフゥワッフゥッ!
 睡眠時間が足りんぞ、睡眠時間がぁぁぁっ! どーせあの研究所じゃ流体制御なんざできんだろうがなぁっ! 今作ってる機体も流体装甲止まりらしいし!

「あー、とりあえず座ったら?」
「そうだな、そうしよう」

 自分でもあんまりだと思うテンションに一夏がドン引きしているので元に戻す。全く優しい子だ。千冬はもーちょいこういう所を見習うと良い。
 あ、コイツ双子葉類とかアホな事考えてやがる。なんでこう考えがバレるのかね、コイツは。

「突っ込まんぞ」
「え、な、なにが!?」
「慌ててるのがアホな事考えてる何よりの証拠、と。箒ちゃんへの手紙があれば今のうちに預かっとくけど」
「あ、じゃあお願い。でもまさか手紙もロクに出せない状況なんてな……」
「しょーがねーだろ。俺と違って束の奴は完全に失踪してんだから」

 要人警護プログラムの一環で日本中を転々としてる篠ノ之家だが、先日遂に親父さん達と箒ちゃんが離れ離れになったらしい。
 幸いにも情報管理がザルなので会いに行く位は簡単だがな。っつーか警護なんだからこんな簡単に会えちゃ駄目だろってくらい簡単だ。
 で、俺はと言えば原作中トップクラスに情緒不安定な掃除用具娘の精神安定に奔走している。具体的には一夏からの手紙を渡す事だが。
 あとたまに一夏と剣道の稽古をしてたりする。バイト三昧と言っても月に一日ぐらいだったら問題無いしな。

「ホント、何やってんだかあの人は……」
「だがそれが良い、とは昔の偉い人の言葉だ」
「誰だよ……」
「まあそれはともかく千春はどーした?」
「さぁ? 鈴と遊びに行ってるんじゃないか?」

 って事はまた何かしらの作戦の用意でもするつもりか。原作と違って箒との交流があるから適度に乙女心(笑)が刺激されてるみたいだな。
 なんて考えてると客人の来訪を告げるチャイムが鳴る。ようやく来たかミスターバレット、もといダダンダンダダン。

「誰がターミネートマシーンのテーマっすか、誰が」
「「お前」」
「……俺、なんで一夏の親友なんかやってんだろ」

 それはきっと見ていて楽しいからさ! 君にはハーレム非構築系のオリ主になれる才能がある! いずれ挨拶だけで年上眼鏡っ娘落とすしね! 死ね!

「で、源蔵さん。例のブツは?」
「ん、ああ。ホレ」
「いやー、持つべき物は開発者の兄さんだよな」

 ニュアンスが近所の兄ちゃんって辺りに一夏のブラコン魂を見た。と考えながら月末発売予定のディスクをハードにセットする。

 その名も【IS/VS.SP】。スペシャルエディションの名に相応しく売り文句が『佐倉博士完全監修!』である。っつーかこれで最初の合わせて23種目だぞ。
 元々IS/VSは第二回モンド・グロッソをゲーム化した物であり、某巨大掲示板で『優遇商法』と新しい言葉を生み出した問題作だ。当然ながらKOTYにノミネートとかしたんだがまあ詳しい事は原作読め。
 このバージョンの最大の特徴は『機体エディット機能』を搭載した事である。流石に俺のようにネジ一本までこだわるのは不可能だが、シュトゥーカ・ドライにテンペスタの推進系乗せて強襲仕様とかが可能だ。俺も一回やったら強度不足で空中でバラバラになったが。
 そんな訳で大まかなパーツ単位でのオリジナルIS作成機能は本作品の目玉となり、最初の情報からドカンと某F通に掲載された。ぶっちゃけ俺監修って事より扱いがデカかったのは若干ムカついたよ。これでも世界的権威なんですが、俺。
 更に第一回大会の詳細なデータを俺経由で入手できたので容量が許す限りぶち込んである。勿論千冬のデータも入っており、暮桜が選べるってだけで予約が殺到してるらしい。ブリュンヒルデの人気恐るべし、だな。
 ついでに言うと俺完全監修なんで初期キャラの強さに操縦者の腕は入っていない。だから暮桜が割と弱い。でも某F通のインタビューでその事言ってあるから問題ないだろ。問題ない……よな?

 あと、隠し要素としてハミングバードのデータを入れてあるのは内緒だ。常時超高速戦闘みたいになってるから非常に扱い辛いが、それさえ超えればキャノンボールなら負けなしだぜ!

「うおおおおっ! マジでエディットできるぜオイ! よし、ビッグバードとシュトゥーカをミックスだ!」
「なにそのトリガーハッピー仕様」
「もしくはレッツパーリー。まず間違いなく飛べないな」

 まああいつらはISっつーか男のロマンですから。絶対開発チームにそういう連中いるから。

「一夏は当然ドノーマルの暮桜だよな?」
「え、いや、どうだろ……」
「ゲームとは言え戦術眼を鍛えるには丁度良いはずだ。千冬がどう考えてどう動いてどう勝ったか、それを知る良い機会だろ」
「じゃあ、まあそういうことなら……」

 そしてこれを足掛かりに織斑一夏改造計画がスタートするのだよ! 厳密にはもう始まってるけどな! ファファファ!



 珍妙な鐘が鳴り響き、授業の終わりを告げる。やっぱチャイムはキンコンカンコンだろって思うのは俺が日本人だからだろうか。
 なんて考えるのは鈴も中国へと引っ越していった次の夏。丁度期末テストの直前だ。このクラスの担任は理系がそれはそれはお粗末なので特別に授業を代わっている。

「ほい、そんじゃ今日はここまで。明日は実体弾の弾道計算についてやるからなー」

 うえー、と非常に女子らしくない声が聞こえてくる。その気持ちは痛いほどよく解るが、悲しいけどここって学校なのよね。

「よーし解った、こりゃ今度の期末のメインになるな。覚悟しとけよー」
「えぇーっ!? そんなぁーっ!?」
「ぶーぶー! 横暴だー!」
「そうだそうだー! 酷いよ源ちゃーん!」
「今度の薄い本佐倉先生総受けにしてやるー!」

 うっせぇ黙れ。っつーか最後のは俺有名になってからちょこちょこ出てるから。ちょっとどっかの代表と握手とかするとすぐ実況スレ立てやがってこの野郎。
 折角なら俺のホモとか千冬ばっかじゃなく束のエロ描けよてめーら。買ってやるから。

「そうか仕方ないな。上位五名くらいまでには一日目と二日目のサークルチケットを進呈してやろうと思ったんだが……旅費その他諸々全部俺持ちで」

 ぴた、と教室の空気が凍る。はっはっは、知ってんだぞ? 寮の中で薄い本が爆発的に市民権を得ている事ぐらい。

「やるしかないわ! 今日から合宿よ!」
「この殺伐とした空気……嫌いじゃないわ!」
「そう かんけいないね」
「ゆずってくれ たのむ!!」
「ころしてでも うばいとる」

 何をする貴様ら。っつーか誰だ今本気で殺気出してきたの。

 ……しかし、女尊男卑の世の中とは言え未だに世界最大の同人誌即売会は男がメインだ。いや、こんな風潮だからこそ、か。元々は女性参加者の方が多かったんだしな。
 メカミリからの派生でISジャンルが当然のように独立し、既に二日目西1全域が指定席だ。当然ながら俺の考察&1/8フィギュアサークルは半オフィシャルなんで壁配置。
 他にも企業とか色々顔突っ込んでるからチケットは割と手に入ったりする。それを期末頑張ったで賞として生徒に振舞って何が悪い。俺の分は確保してあるし。

 でもさー、幾らISスーツがエロいからってコスプレ絡みで問題起こすのやめてくれない? 準備会から真っ先に俺ん所に連絡来るんだけど。喧嘩とか俺に言われても困るから。

「ねぇ、山田先生。そう思いません?」
「佐倉先生……主語抜きでいきなり声をかけられても困るんですが」
「そこはホラ、その眼鏡で何でも見通すって設定で」
「設定って何ですか設定って!」

 相変わらず片手間で弄れて楽だなコイツは。



 やまやを弄りながら昼食を取り、自分の城である第一多目的工作室――通称『注文の多い整備室』――へと戻る。午前に実機の授業があると整備実習が入るが、今日は特に無いのでのんびり出来る。
 と、珍しくプライベート用のケータイが唸る。誰だ、と開いた画面には酢豚の文字。鈴か。

「応、どーした? アレか?」
『解ってるなら話は早いわ……源さん、何アレ』

 恐らくアレと言うのは先日『佐倉源蔵著 ISパーフェクトガイドブック 入門から応用まで』と一緒に送ったアレの事だろう。

「上手く使えって書いてあったろ? なら上手く使えよ」
『あのねえ! 【空間圧作用兵器】なんてどう考えても第三世代兵器じゃない! どうしろってのよ!』
「そいつを渡せば第三世代機ができる。優秀な成績を残せば国家代表になれる。そうすれば一夏もメロメロですよ旦那」

 どうよこの見事な三段論法。

『う……そ、それホント?』
「まあ少なくとも奴のシスコンは治るだろうな、千冬に勝てば」
『出来るかぁっ!』
「あきらめんなよ! 俺だって気温30度近い外に一歩も出ないでクーラーにあたってんだから!」
『あんたこそちったぁ外に出なさいっての!』

 むぅ、怒られてしまった。一体何処に問題があったのやら。きっと全部ですね解ります。

「ま、そいつ使うつもりなら学園に来ると良い。日本に来れば一夏にも会えるしな」
『むぅ……ま、まあ考えとくわ。ありがと、源さん』
「どーいたしまして。年末までには決めとけよ、推薦状出すのって時間かかるからよ」
『うん。じゃあまたね、一夏達によろしく』

 これでラストの仕込み終了……と。あとは本番だけだな。



 寒い。クッソ寒い。帰ってコタツで寝たい。いやホントに。

「まーそーも言ってらんない訳で。はい皆さんこんにちは、代表候補生の皆さんですね? 佐倉源蔵と申します、と」
「「「「「………。」」」」」

 返事ぐらいしろや。こちとら掻巻無しで行動してんだぞ。まあ別に良いけど。
 ふむ、ちょろい、酢豚、根暗眼鏡は居るな。オッケーオッケー、ここ一つ変わったよ。
 ……正直、シャルロットとラウラも呼ぼうか考えたが流石の一夏さんもキャパオーバーしちまうよなと考えてやめた。

「それじゃあ各人手元の資料にあるように動いて下さい。終わり次第一般入試始めるんで」
「「「「「はいっ!」」」」」

 元気があって大変よろしい。んじゃ俺は試験用の打鉄とラファールの準備があるんで戻りますよ。

「源さんっ!」
「佐倉先生、だ。試験の時くらいはそう呼べ」

 と思ったら声をかけられたので文句と共に振り返る。しかし鈴、お前相変わらずちっこいな。

「あ、えと……教本とか、ありがとう」
「どーいたしまして。しかしお前凄いな、IS歴一年未満で代表候補生なんてそうそう居ないぞ?」
「大したこと無いわよあれくらい。あの教本もだいぶ役に立ったしね」
「それでも実技クリアせにゃならんだろ。そこは完全にお前の努力と才能の結果だよ」

 べふ、と頭を撫でてやる。体格差からか非常に撫でやすい位置にあって良い。殴られたが。

「ったく、いつもいつも撫でんなって言ってるでしょ!」
「いやぁ、つい。一夏だったら良かったのか?」
「え、いや、えと、だめってことはないんだけど……」

 流石一夏さん。妄想だけで好感度上げやがったでぇ……。

「とりあえずさっさと戻って試験受けなさい。今日は割と忙しいんだよ俺」
「あ、ごめんなさい」
「まー頑張りな」

 ばっははぁーいと背中越しに手を振る。まあ鈴の成績ならまず大丈夫だろう。セシリアと良い勝負かな。



 さて、ここからが問題だ。現在朝の九時二十六分、そろそろ試験が始まる時間であり、運命が動く時間だ。
 要するに一夏が迷い込んできてる訳だが、このシーンってかなり切羽詰ってたのね。あと四分で女子ゾロゾロ来るぞ?

「お、来た来た」

 一応設置されてる監視カメラに一夏が映り、打鉄が低い起動音を上げ始める。あ、他の先生達気付いた。

「はいはいお邪魔しますよっと」
「え、げ、源兄ぃ!? どうしてここに!?」
「俺ISの学者さん、ここIS学園の試験会場、どぅーゆーあんだーすたん?」
「あ、あいえすがくえん……?」

 起動させた本人である一夏を放って皆が騒いでいる。そりゃそーだろーな、一夏って男だもん。でもきっとこれ束の差し金だもん。
 だって本当は『動かす予定が無かった』この打鉄が昨日起動してたし。どう考えても束が性別ロック解除したって事だよな。
 ……むしろ個人的には『関係者以外立ち入り禁止』の部屋にどうして入ってきたかが気になるぜよ。一夏君。

「静粛に! この件については私が預かる。以後この事については国際IS委員会からの発表があるまで口外厳禁とする! 良いな!?」
「「「は、はいっ!」」」
「では時間が押している、さっさと起動試験を始めろ。私は彼を別室へ連れて行く、何かあれば連絡したまえ」

 わかりました、という声を背中に聞きつつ一夏の首根っこを掴んで部屋を出る。うん、やっぱこの部屋立ち入り禁止なってるよ。

「まあ、試験会場がここになった段階で薄々気付いてたんだけどな。そっから束の仕業だったんだよなー、きっと」
「えと……源兄ぃ、離してもらえると助かるんだけど……って言うか束さん?」
「そ。まあ部屋に着くまで待ってろ、と言いたいが一つだけ良いか?」

 一夏の首根っこを左手で掴んだまま右手はドアを指差す。さあ読め。

「お前何で入って来てんねん」
「あ……」
「気付けド阿呆」



 カクカクシカジカジカサンマンエン

「とまあ、こんな具合だ。何か解らない事は?」
「えっと……俺、これからどうなるんだ?」

 ほほう、早速そこに思考が及ぶか。教育してやった甲斐があるというものだ。

「そーだな、最悪の場合解剖されてホルマリン漬け」
「げっ」
「まあそりゃ最後の手段だろ。とりあえず一ヶ月以上は政府か国際IS委員会の護衛と言う名の監視がつくかな」
「……それも嫌だなぁ」

 そう言うな。俺だってIS発表直後はそんな感じだったんだから。

「とりあえず珍しいケースだし、一回試験受けてみるか? 丁度別口のアリーナが空いた所だ」
「試験って……ISの?」
「ああ、試験官と一対一で戦う至極シンプルなもんだ。別に負けても問題ないぜ、勝てる奴なんて一年に一人いるかどうかだから」

 と言いつつ今年は既に二人勝ってるんだよね。お陰でやまやが絶賛沈鬱中だが。
 っつーか代表候補生五人と連続で戦った上にこんなジョーカーだもんな。そりゃ壁にぶつかりもするか。

「ん、じゃあまあ少しだけなら……」
「オッケー。ホントは保護者に連絡とらなきゃならんが、まあ千冬だったら事後承諾でも問題無いだろ」
「……また殴られるよ?」
「それもまた一興。んじゃ着いてきな」

 ―――さぁ、物語の始まりだ!



 やっとプロローグ終わった……長ぇ……。

 チート全開で介入しまくってみました。でも修正力みたいなのが働いてる気がしないでもない。
 源蔵の行動は大体原作通りに進んでいきます。物語を変えるのは実働部隊である千春の役目。

 本編は誰の視点で行くか……いきなり変わってる部分があるんでその辺にご期待下さい。
 次回の更新は、まあGW中には……。



 痛い!

「……どういうつもりだ」
「どうもこうも、言ったままの意味だっつーの。原因は不明、束なら何か知ってんじゃねーの?」
「はぁ……どいつもこいつも」

 あ、そーいえば千春がIS学園受験してたっけ。よし受からせよう。えこひいき万歳。

「現在国際IS委員会が発表の準備中。機体は倉持の所に良さそうなのがあったから唾付けといた」
「待て、まさか専用機を与えるつもりか!?」
「データ取りにはそれが一番でしょ。それに万が一の時に手元に無いなんて事にならないようにしないと」
「それはまあ、そうだが……」

 今ごろ委員会は上から下への大騒ぎだろーなー。明日からまた暫く忙しくなるなー。

「騒動が落ち着いたらどこの所属にするかでまた揉めるだろうな」
「そうだな……束め、今度会ったら絞り倒してやる」
「えー、だったら俺にやらせてよ。鎹作ってくるから」
「死ね」





[27457] 第三話「私の名前は、織斑千春」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/30 15:55



 第三話「私の名前は、織斑千春」


 はぁ、とため息をつく。昔からため息をつくと幸せが逃げるなんて言われているが、生憎と今この状況で俺に幸せが残っているとは思い難い。
 がたいと言えば今ここの生徒で一番ガタイが良いのは俺なんじゃなかろうか、といつものウィットに富んだジョークも不発気味だ。

「皆さん、私がこのクラスの副担任の山田麻耶です。山田先生、って呼んでください。
 ―――決して、断じて、絶対に! 『やまや』なんて呼ばないで下さい、良いですね?」

 そう言う服のサイズが合っていない先生は俺の目の前、つまり俺は最前列のど真ん中だ。もしこのクラスが苗字順なのだとしたら、このクラスには相当な数のあ行がいる筈だ。

「……くん? 織斑くん? 聞こえてますかー?」
「え、あ、はいっ!?」

 っといけねぇ。いつの間にか自己紹介が始まっていたらしい。先生に促され、慌てて教室の中心を向いて立ち上がった俺は一瞬フリーズする。

「うっ……」

 教室中から集まる視線、視線、視線……普通の高校生活でも最初はこうだろうが、こと俺の場合は事情が違う。だって俺以外全員女子だからな。


 ―――特殊国立高等学校、通称IS学園。
 ありとあらゆる兵器を凌駕する『何故か女性しか使えない』最強の鎧、インフィニット・ストラトス。略して『IS』の操縦者を育成する世界唯一の機関。それがここだ。
 細かい所は省くが、ISは女性にしか使えない。つまりそれを教えるこの学園も当然ながら女子校な訳だが、俺は生物学的にも社会的にも男、MAN、MALEである。

 つまり現在俺は『1学年約120人中1人だけ男子』という双子の姉がよく読む小説のようなシチュエーションに陥っているのだ。けどな、千春。これ、ちょっとした拷問だぞ?


「えっと、織斑一夏……です」

 やめろ! そんな期待するような目を向けるんじゃない! 俺は源兄ぃとは違うんだよ! 千春も千春でどの挨拶がインパクトがあるか、とか考えなくて良いから!
 助けてくれ、と言わんばかりに窓際で一番前の席に目を向ける。ゆっくりと目を逸らされました。ひでぇよ。
 ならお前だ、と言わんばかりに『廊下側の前から三番目』の席を見る。今度は顔引き攣らせながらだよ。ブルータスお前もか。
 畜生、こうなったら男は度胸! 何も浮かばない時はこうしろってばっちゃが言ってたって源兄ぃから教わった!

「以上です!」
「もう少しまともな事は言えんのかお前は」

 スパーン! と俺の頭から快音が鳴り響く。こ、この角度、速度、そして回転角はっ!

「り、呂布なりーっ!」
「それは本人が言う台詞の一部だ馬鹿者」

 パコーン! と更にもう一発。でも源兄ぃに聞いたぞ、世界最強だって。ついでに陳宮が束さんで高順が源兄ぃだって言ってた。

「で、何で千冬姉がここに? 源兄ぃが居るからもしかしたらとは思ったけど……」
「織斑先生と佐倉先生、だ。公私の区別をつけろ戯けが」

 メコッ、と今度はグーがっ! グーが脳天にっ!

「おごぉぉぉ……」
「席に着け―――さて、諸君。私が織斑千冬だ。私の仕事は貴様らを泣いたり笑ったり出来なくする事だ、覚悟しておけ」

 一瞬の静寂の後、黄色い大歓声が響き渡る。嬉しいのか? けどちょっと待てお前ら、今千冬姉凄い事言ったぞ!?

「冗談だったのだがな……まあ良い。自己紹介を続けろ」

 千冬姉も大分源兄ぃに毒されてるなぁ、と思いながらクラスメート達の自己紹介を聞いていく。ん? 代表候補生って何だっけ? えーっとガイドブックガイドブック、っと。



「やっと休み時間か……」

 ふぅ、ともう一度ため息をつく。授業自体は予習範囲に収まっていたから問題は無かったな、特に『解らない所は無かった』し。

「少しいいか?」「ちょっといい?」
「へ?」

 下ろしていた視線を上げると、そこには見慣れた二つの顔。いや、この組み合わせで見るのは初めてか。
 そして何故いきなり睨み合ってんだお前らは。俺に用があるんじゃないのか?

「私はこいつに話がある、下がってもらえるか」
「ご生憎様、私もコイツに話があんのよ」

 何このギスギス空間。

「えーっと、箒? 鈴? どうしたんだ一体」
「一夏、誰だコイツは!」「コイツ誰よ一夏っ!」
「え、えっと、こっちが篠ノ之箒でコイツが凰鈴音、お互い話したことあるだろ?」

 それぞれ呼んでない方を向いて喋る。小学一年からのファースト幼馴染と小学五年からのセカンド幼馴染だ。
 直接の面識はない筈だが鈴の事は箒への手紙に書いた事あるし、鈴には手紙書いてる所見られた事あるしな。名前だけはお互い知ってるはずだ。

「そうか、お前が……私が一夏の『最初の』幼馴染、篠ノ之箒だ」
「そっか、アンタがねぇ……私が『つい最近まで居た』幼馴染、凰鈴音よ」

 何この空気。何でこんな剣呑としてんだよ、まるで鍋やってる時の千冬姉と源兄ぃじゃんか。

「あ、箒」
「ん、な、何だ?」
「………。」

 箒が視線をこっちに戻すと少し驚いたように表情を崩す。あと鈴がこっち睨んでくる。何なんだよお前。

「手紙にも書いたけど、中総体優勝おめでとう。ホントは応援行きたかったんだけど千冬姉が許してくれなくてさ」
「あ、当たり前だ馬鹿者、平日なのだから学業に励むべきだ……願をかけた甲斐があったな」
「………。」

 ん? 何か最後の方が良く聞こえなかったな。そしてドンドン鈴の表情が怖くなっていく。だから何なんだよお前。

「そういうそっちはどうなのだ? 鍛錬は続けているか?」
「あー、まあボチボチって所かな。源兄ぃに言われてなかったら途中で辞めてたかもな」
「そ、それは駄目だ! 全く、幾らアルバイトをするとは言え三年間帰宅部で過ごすのはどうかと……」
「ン、ンンッ!」

 箒と話してるといきなり鈴が咳払いをする。何だ、喉風邪か? 季節の変わり目は風邪ひきやすいからなぁ。

「あ、そう言えば鈴って代表候補生なんだな。こっちに居た頃はISの勉強してる感じじゃなかったし、一年でなったって事だろ? 凄いな」
「ま、まあね! それにしてもこっちに来る準備してたらビックリしたわよ、アンタがIS動かせるなんてさ」
「俺も驚いたよ。源兄ぃが居なかったらさっき千冬姉が来た時もパニックになってたかもな」
「………。」

 今度は鈴と話していると箒の視線がドンドン冷たくなっていく。ホント何なんだよお前ら。

「わかんない所とかあったら任せなさい。どーせアンタの事だから教本間違って捨てたりするんじゃない?」
「し、しねえってそんな事! それに源兄ぃに解説本貰ったからな、特に解らないって部分は無いぜ」
「ああ、パーフェクトガイドブックってやつ? あれって後で見直すとかなり良い出来なのよね、あのまんま教本にしても良いってぐらい」

 一回電話帳と間違えて捨てそうになったのは内緒だ。あのタイミングで解説本届かなかったら間違いなく捨ててたぞ。

「い、一夏っ、私も貰っているぞ。それに……姉さんからもな。だからどうしてもと言うなら私が教えてやろう」
「ああ、やっぱり束さんからも来てたんだ。後でそれ見せてくれよ」
「う、うむ! ならば昼休みにでも―――」
「さっさと席に着け馬鹿者共が」

 バババーン! と出席簿アタックが鈴、箒、俺の順にヒットする。え、何で俺まで?

「もう始業のチャイムは鳴っているぞ。今度はグラウンド十周してきたいか?」
「い、いえっ!」
「すいませんでしたっ!」

 周りを見ると確かに全員座っている。いつの間にチャイム鳴ったのかは気になるけど千冬姉、ここグラウンド五キロあるらしいじゃん。フルマラソン超えてるじゃん。

「それでは授業を始める。山田先生、お願いします」
「はい、解りました」

 あと後ろの方で誰かが立ったり座ったりしてた気がするけど気のせいかな?



「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」

 入学初日からいきなり授業があるというスパルタな校風に気疲れを起こしていると、後ろから声をかけられる。
 そっちを向くと、見事な『お嬢様』といった感じの外国人がこっちを見下ろしている。あ、タレ目だ。好きなサイヤ人はターレスなんだろうか。

「まぁ! 何ですのそのお返事は! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言う物があるのではないのかしら?」
「悪いな。えーっと……オルコット、だっけ?」
「ええ。イギリス代表候補生、入試主席のセシリア・オルコットですわ。以後お忘れなきよう」

 へぇ、ここって入試の順位まで出すんだ。競争意識を高めるため、とかそんな感じなのか?

「そうか、よろしく。で、何の用だ?」
「これだから下々の者は……ですが、貴族とは寛大さも求められる者、その態度については大目に見て差し上げましょう」

 何だコイツ。生きてる貴族って初めて見たけど何かムカつくな。どことなく演技臭いし。

「そーか、そりゃ大変だな」
「……馬鹿にしていますの? 唯一男でISを操縦できると聞いていましたけれど、期待外れですわね」
「俺に何かを期待されても困るんだが……」

 IS関係だと精々源兄ぃのコネを頼れるぐらいだ。千冬姉はそういうの嫌いだし、束さんは論外。

「まあでも、私は優秀ですから。貴方のような人間にも優しくして差し上げますわよ。解らない事がありましたら、泣いて頼まれれば教えて差し上げても良くってよ?」

 ……はて? 何やら教室の両脇から不穏な気配がするんだが。

「何せ私、入試で教官を倒した二人の内の一人ですから。そう、エリート中のエリートなのですわよ」
「あれ? 俺も倒したぞ、教官」
「はぁ!? あの場に居合わせた者の中にしか居なかった筈ですわよ!?」
「呼んだ? イギリスの代表候補生さん」

 あ、鈴だ。そう言えば鈴は中国の代表候補生なんだよな。って事は、もう一人ってのは鈴の事か?
 そして何故箒は俺の隣に来てるんだ? あと何かオーラが出てる気がするが気のせいだろう。うん。

「あら、もう一人と言うのは貴女でしたの。中国の代表候補生さん」
「そ。それで一夏も教官倒したって本当?」

 いきなり話の矛先をこっちに変えるなよ。何かオルコットが凄いこっち睨んでんだけど。

「倒したっていうか、いきなり突っ込んできたのを刀で受け止めたら動かなくなったんだけどな」
「ふ、二人だけと聞きましたが……」
「女子ではってオチじゃないの? ってゆーかそれって私達の入試終わってすぐ言われた数字じゃん。あの時まだ一般の試験始まってなかった筈よ?」
「代表候補生でもない者に教官が倒せる筈ありませんわ!」
「ま、それもそうね。ってゆーか落ち着きなさいよアンタ」

 そうだ、確か源兄ぃが代表候補生がどうとか言ってたっけ。って事はあの前は鈴達がやってたのか。何だよ、教えてくれたらもう少し早く会えてたのに。

「これが落ち着いていられ―――」
「授業を始める、早く席に着け」

 チャイムが鳴り終わる前に千冬姉が教室に入ってくる。それまで思い思いの場所に居たクラスメート達は慌てて自分の席へ戻っていった。そりゃ殴られたくないもんな。

「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明だが……その前に再来週行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めないといけないな」

 対抗戦? 何か面倒そうな行事だな、まあ俺以外なら誰でも良いけど。

「クラス代表者とはそのままの意味だ。会議や委員会への出席も行ってもらう、クラス委員長と言えば解りやすいか。
 クラス対抗戦は各クラスの実力推移を測る物であり、競争による実力の向上を促す物だ。一年間変更はしないのでそのつもりで」

 うわー、そりゃ面倒そうだ。なる人はご愁傷様。

「さて、自薦他薦は問わんぞ?」
「織斑君が良いと思いますっ!」「右に同じっ!」「以下同文っ!」「前略中略後略!」

 ……そう言えば源兄ぃが言ってたっけ、お前は客寄せパンダだって。

「マジかよ……」
「織斑、辞退は認めんからな。さて、他に立候補は? いないならこのまま―――」
「待って下さい! 納得いきませんわ!」

 机を叩く音に反応してそっちを見ると、オルコットが勢いよく立ち上がっていた。その証拠に髪の毛ドリルが揺れている。

「そのような選出、認められませんわ! 大体、男がクラス代表など良い恥さらしではありませんか!
 まさかこのセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰いますの!?」

 なにこのひと。

「実力から行けば代表候補生である私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で勝手に決定されては困りますわ!
 第一、私はわざわざ極東の島国までIS技術の修練に来ているのですわ。見世物のようなサーカスをする気は毛頭ございません!」

 な に こ の ひ と 。
 トリップ入ってて若干怖いんだけど。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で―――」

 何だとコラ、そっちだって大したお国自慢もないだろ。
 と立ち上がろうとする所に声が被さる。

「ったく、黙って聞いてれば散々言ってくれるじゃないの。それと知ってる? 誘導ミサイルが当たらないようにバレルロールを繰り返す機動を『サーカス』って言うのよ」

 その声の主はもう一人の代表候補生である鈴だった。
 お前、それはためになる知識だけど今のは俺が言う所だろうが! 中途半端に腰浮かしちまったじゃねーか!

「そ、それに何が文化後進国だよ。イギリスなんか世界一料理がまずい国で何年覇者だっての」
「なっ……! 貴方、私の祖国を侮辱しますの!?」
「先に言ったのはアンタでしょ。あ、織斑先生。私立候補します」

 そうだよな、代表候補生だからクラス代表ってんなら鈴もそうだよな。
 なんて意識を鈴に向けていたらオルコットの怒りのボルテージが更に上がっていた。

「貴方! 話を聞きなさい! ああもう解りましたわ! 決闘です!」
「おう、良いぜ。四の五の言うより解りやすい」
「ふむ、ならばその意気込みは試合で見せてみろ。一週間後の月曜の放課後、第三アリーナで凰を含めた三人で総当たり戦を行う。各員はそれぞれ用意を―――」

 怒気をぶつけ合う話し合いが終わり授業が始まると教室内の全員が思った時、プシュッと空気が抜ける音がして教室のドアが開く。

「おいーっす、ちょいと失礼ー……っと、何だ? ねるとんゲームか?」

 二ヶ月ぐらい早いか、と言いながら入ってきたのはIS開発の世界的権威だった。



 一夏と鈴とオルコット君が立っている。時間から見ても代表決めの真っ最中だろう。
 フッフッフ、同じクラスに捻じ込んだ甲斐があったな。これでもう鈴は2組なのでいないなんて言わせないぜ! グーグル先生にもな!
 唯一気になるのは酢豚の約束と対抗戦だが、まあそこは何とかなるだろう。暫く忙しいぜ、一夏君よ。

「……何かありましたか、佐倉先生」
「いえ、専用機持ちに必要な書類を渡しに。ついさっき用意できたそうで、あと四組にも持ってく所です」

 視線が怖いぞ千冬さんよ。防音しっかりしてるから中で何話してたか聞けないんだって、ここ。

「そうでしたか、では授業を始めるので手早くお願いします。ああ、良い機会なので自己紹介でもどうぞ」
「んじゃ遠慮なく。技術部長の佐倉源蔵だ。二年以降の整備科、三年の開発科と研究科は俺の下につくことになる。一年は整備実習の時に俺が見る事になるな」

 以後お見知りおきを、と締める。俺だって真面目な挨拶くらいできんだよ、束じゃあるまいし。

「そんじゃあ凰君、オルコット君、こっちに」
「あ、はい」
「はい」

 二人が席を離れるのと同時に一夏が腰を下ろした。こういう空気は読めるんだけどなぁ、コイツ……。

「必要な書類に記入して今週末までに学生課の窓口に自分で提出するように。提出するまでは自主練習だけじゃなく授業でも展開は禁止だからな、面倒な事になりたくなかったらさっさと出してくれ」
「解りました」
「解りましたわ」

 二人とも代表候補生だしこういうのは慣れてるんだろう。が、セシリアの様子が若干おかしい。

「……オルコット君」
「な、何でしょうか?」
「お前また変な事言って喧嘩売ったろ」
「う゛っ」

 ビンゴ。初めて会った時と何も変わってないぞコイツ。もうセ尻アッー!・掘るコックと呼んでやろうか。最低だな。
 あと鈴は何事もなかったかのように席に戻って書類の確認をしている。早いなお前。

「自尊心を持つなとは言わんが、もう少し冷静に判断できるようになれ。それでもガンナーか?」
「申し訳ありませんわ……」
「それとインターセプターも使え。稼動ログ見たがありゃ酷すぎる。副兵装も使いこなせない奴は三流以下だぞ」
「うぅ……」
「返事はどうした返事は。それとティアーズの稼働率だが……」
「っ!」

 流石にいじめすぎたか。もう完全に俯いちまってる。でもギリギリ三割ってこれホント酷いぞ?

「男なんぞにここまでボロクソに言われたくなかったら腕を磨け。そして俺を見返してみろ」
「……はいっ!」

 やれやれ、SEKKYOUなんて柄じゃないんだがな。あと涙声やめて。クラス中からの非難の目線が痛いの。

「あー、それと織斑君。君には専用機が用意される事になった、受領の際は君にも彼女達と同じ書類を書いてもらうのでそのつもりで」
「あ、はい。解りました……って、専用機!?」

 こっちが仕事用の口調なので自然と一夏の口調も事務的な物になる。そういう切り替えは大事だよね。ラストは駄目だけど。

「貸与機の空きがなくてね、それならいっそ専用機を持たせた方がデータ取得も楽だろうって事。週末には届くらしいが……」
「……えと、ありがとうございます、で良いんですかね?」
「んー、むしろ一人謝らないといけない可能性があるが、まあその辺は君次第だ」

 逆恨みだしね。全く、どっちか最初から俺に預けろっての。そーすりゃ今頃どっちかは完成してたのに。
 ちなみに貸与機ってのは学園側が成績優秀な生徒に在学中だけ預ける学園所属のISだ。卒業時にコアは返却する必要があるが、稼動データは職場へ送られるので色々と役立つのだ。

「はぁ……」
「それじゃあ俺はこれで。何か知りたい事があれば大抵は第一多目的工作室に居るから聞きに来るといい」
「はい、解りました」

 ……やれやれ、また薄い本描かれそうだな。けど、これでも一応兄貴分なんでね。
 ぽん、と無造作に一夏の頭に手を置く。この十五年、ある状況下で何度もやって来た行動だ。

「女所帯の中に男一人って辛さはお前より知ってるつもりだ、愚痴ぐらいは聞いてやるさ」
「……ありがとう、源兄ぃ」

 ホント公私の区別ができねー奴だな、と考えながら乗せた手を離してデコピンをかましてやる。ここで左手使ったらKYだよね。あー使いたい。

「佐倉先生、だ。そんじゃあ励めよ少年少女。目指せISの星、ってな」



 その人は不思議な人だった。会って半日も経ってないけど解る。私の隣に居るこの人は変な人だ。そう確信している私の顔が彼女の眼鏡に映っている。

「ん? どしたの簪。そっちの番だよ?」
「ううん……何でも……えと、『雑草などと言う草はない』」
「『今まで食べたパンの枚数を覚えているのか?』」
「か、か……『カッコイイからだ』」
「えーっと『ダリウス大帝こそが正義だ』」
「それ、違う……ズール皇帝……それにスパロボだよ、それ……」
「あれ? そうだっけ? じゃあねー『騙して悪いが仕事なんでな』」
「……『泣きたい時は泣けばいいんだよ』」
「『避けろナッパ!』」
「それも……違う……前後逆……」
「あちゃー、それじゃ私の負けで」

 ……どうして私は名言しりとりなんかやってるんだろう。

「にしても先生遅いね。どーしたんだろ」
「さっきの、時間……お腹痛そう……だった」
「ああ、それじゃトイレか。なら仕方ないね」

 私と同じ位の長さの黒髪がふわりと揺れる。少し癖の入った髪は頭を揺らす度にそれに合わせてよく動く。
 織斑千春。それがこの子の名前。織斑なんて苗字はそうある訳じゃない。それはつまり、

「……出来の良い姉を持つと大変だよねー」
「ッ!?」

 バレた!? でもどうして!?

「よくいるんだよね、『気になるから聞いてみたいけどコンプレックスに思ってたらどうしよう』って悩んでる子。同じ顔してたもん」
「あ……その、ごめん……」
「良いの良いの、私は気にして無いから。でも、差し支えなければでいいんだけど……簪もなんかあるの?」

 ―――ッ。

「その顔は肯定、って事で良いのかな。詳しくは聞かないけど……出来の良い姉を持つと大変だよねー」
「……うん」

 会話が途切れる。けど、それはどこか心地良い沈黙で、

「うーっす、お邪魔ー」

 先生の代わりに白衣を着た男の人が入ってきた。誰?

「……あれ? アクニャ先生は?」
「さっきから戻ってきませーん」
「多分トイレだと思いまーす」
「何やってんだあの人は……まあ解った、隣のクラスの邪魔にならないようにな」

 クラスの皆が答える。だからこの人は誰なんだろう。

「ああ、俺は佐倉源蔵。ここの教師だ。整備系の授業は全部俺の受け持ちだからな、基礎ちゃんとやっとかないと後で泣くぞ?」
「佐倉先生、それで何かあったんですか?」
「ああ、織斑君か。えっと、更識簪って子は?」

 え? 私? それにこの二人、面識があるのかな……?

「私……です……」
「ああ、君か。これ、専用機持ちの子に配ってる書類だ。今週中に必要事項を全部書いて学生課の窓口まで持ってきてくれ、それ書かないと使用はおろか整備もできないからな」
「っ……はい。わかり……ました……」

 封筒を受け取る時、左手でそっと右手の中指に嵌められた指輪に触れる。

「ああ、それと『千春』。お前に後でプレゼントがある、期待しておけ」
「……まさか」
「そのまさか、だろうな。何、お前にしか出来ん事だ。えこひいきも多分にあるが素直に受け取っておけ」
「はぁ……束さんと言い源ちゃんと言い……」
「なぁに、簡単な話だ。俺にえこひいきされたかったら俺に気に入られるようになれ、ってな」
「相変わらず最低ですね」

 はっはっはっはっは、と佐倉先生が笑う……それは全然似ていないのに、あの人の笑顔を連想させられた。
 その後ろで教室のドアが開き、どこかスッキリした様子の先生が帰ってきた。

「何してるんですか、佐倉先生」
「ああ、アクニャ先生。いえ、ちょっと書類を渡しに」
「……ああ、専用機の。と言うか佐倉先生は授業、無いんですか?」
「指示だけ出してきました。時間が必要な作業でしたし、この書類は他人に任せられない類の物なんで」

 ……そうだ、佐倉先生ってあの人に似てるんだ。掴み所が無いって言うか……。

「そんじゃま励めよ少女達。コンダラ引けとは言わんがな」
「佐倉先生、今時そんなネタ解る女子高生なんか居ませんって」
「でもお前解ってんじゃん、って俺が教えてんだもんな。んっじゃなー」

 佐倉先生はひらひらと手を振って教室を出て行く。それを尻目にアクニャ先生が授業を始めようとしていた。
 でも、私はその前に聞いておきたい事があった。

「……ねぇ、今の人……知り合い?」
「うん。大天災に惚れた大天才、あとブリュンヒルデの幼馴染……やれやれ、出来の良い身内を持つと大変だよね」
「……うん」

 大変だって言ってるけど、その表情はとても静かな笑顔で……私も、そう在りたいと思った。
 だから、私はこう言った。

「千春……もう一回、自己紹介していい?」
「……私の名前は、織斑千春。改めて、これからよろしく」
「……うん。私は、更識簪。よろしく」



 気がついたら一日で出来たでゴザル。休日パねぇ。

 しかし千春殆ど動いてねぇ。詳細は専用機持ちになってからかな……。
 あと簪のキャラ解んねぇ。六巻の途中で止まってんだよなぁ……今週中に把握しとかねば。ミスあったらその時に修正します。






[27457] 第四話「友情、努力、勝利」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/04 00:10



 第四話「友情、努力、勝利」


 ようやく私の出番ね……ってそんなメタ発言してる場合じゃない、か。初めまして、織斑千春よ。
 皆さんご存知、織斑一夏は私の双子の弟。国語の成績が若干悪くて恋愛関係になると物凄い発想の飛躍をする恋愛台風。
 正直ラヴ・ザ・スタンピードとかに改名しても問題ないんじゃない? あ、でも眼鏡分が足りないか。それむしろ私の担当だし。
 私の見た目は至って簡単。姉さん―――織斑千冬をショートカットにして身長を何センチか下げ、眼鏡をかけて雰囲気を優しくすれば出来上がり。
 そんな私は今、同じクラスの更識簪って子とお昼を食べに食堂へ来ている。そして目の前には何故か顔に紅葉をつけた不肖の弟。負傷だけにね。

「で、どうしたのアンタ。鈴も一緒に居るかと思ったんだけど」
「いや、何か怒らせちまったみたいでな……」
「また何かやらかしたのね。とりあえずアンタが悪いわ」

 速攻で結論を出し、簪と一緒に一夏と同じテーブルに着く。ここの食堂って凄いお洒落よねー。

「話も聞いて無いのに決め付けんなよ!」
「経験を踏まえて言っただけよ、そんでアンタが悪いんでしょ?」
「……そうなる、のか?」

 私に聞かれても困るっての。と言うか隣で黙々とご飯食べてる箒の顔見てれば大体解るわよ。

「そうだな。横で話を聞いているだけでも大まかな事情は解ったし、第三者の意見を言わせて貰えば全面的に一夏が悪い」
「だってさ」
「はぁ……何だってんだよ」

 この子はこと恋愛に関しては病的なまでに吹っ飛んだ思考するからねー。事実は小説よりも奇なりって言うけど、確かにまだ一夏以上の思考回路したキャラには出会えてないわ。

「それはそうと千春、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「箒もね。師匠達はお元気?」
「ああ、いや……最近は会えていない。辛うじて源蔵さんが手紙を運んでくれるくらいでな」
「そっか、ゴメンね」
「い、いや、こちらこそ最近は千春に手紙を出していなかったしな。構わない」

 一夏には週一ペースで送ってたのにねー。気づかれてないとでも思ってるのかな。

 ……佐倉源蔵。私の目の前に居る篠ノ之箒の姉である篠ノ之束と共に世界最強のパワードスーツ『インフィニット・ストラトス』を作った大天才の片割れ。
 と、世間一般の認識ではそうなっている。けどそんな評価は私達から見ればちり紙以下の価値しかない。因みに私は昔からなんとなく源ちゃんと呼んでいる。

 背は高くおおよそ2m、髪は色素が薄くライトブラウン、IS開発中の事故により左肘から先が義手、視力が悪く眼鏡をかけている。外見はこれくらいかな。
 昔篠ノ之道場に通っていた名残か肉付きは良く、こないだまでたまに一夏と竹刀を振っていたので人並みには腕も立つ……けど、中身が酷い。
 束さんにベタ惚れなのは良いけど真顔で堂々とセクハラ発言をするのはどうかと思う。やれ乳触らせろだの尻揉ませろだの、挙句の果てにはヤらせろだの。
 正直な所、束さんが失踪したのって源ちゃんから逃げるためなんじゃないかと思う。でもたまーにまんざらでもなさそうな顔するんだよね、天邪鬼なのかな。

 それ以外の性格は兄貴気質とでも言うのだろうか、他人の面倒を見るのが好きらしい。昔から私達の面倒見てたからかな?
 そのせいか頼られる事は多い(主に一夏と弾)けど、それ以上に場を引っ掻き回すのが大好きらしい。束さんと違って最後の一線は見えてるらしいけど。
 ただその分厄介になった問題の矛先が大抵私達に向いてるのは勘弁してほしい。頭がいい人間って皆こうなのかな。

「なあ千春、その子は?」
「ん? ああ、同じクラスの子。親睦を深めるために一緒にご飯をね」

 っと、いつの間にかボーっとしてたみたいだ。いけないいけない。簪の紹介もしとかないとね。

「……更識、簪」
「俺は織斑一夏、よろしくな」
「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 ……あれ? ちょっと待って? 簪、なーんか雰囲気おかしくない?

「よう。こりゃまた変わった組み合わせ……でもないか」
「あれ? 源兄ぃ、どうしてここに?」
「俺だってたまには学食くらい来るさ。座っていいか?」
「どーぞ。簪、ちょっとだけ詰めて」

 あと佐倉先生な、と源ちゃんが私の隣に座る。お盆の上には山盛りの生姜焼き定食が乗っていた。

「そんで鈴の奴は……まあ、その顔見れば一発だわな」
「げ、源兄ぃまで……はぁ」
「後で鏡でも見てみな。綺麗に手形付いてんぞ」

 喋りながらも源ちゃんは箸を止めない。あっという間に山盛りの生姜焼きが消えていく。

「で、どうした。昔の約束でも忘れてたのか?」
「いや、その……鈴の料理の腕が上がったら酢豚を毎日食わせてくれるって約束だったんだけど……」
「「ぶふっ!」」

 味噌汁を飲んでいた私と簪は揃ってむせる。炎じゃなく味噌の匂いが染み付きそうだった。

「……あー、一夏。お前的にはどういう約束だったんだ?」
「どうって……店に行けば食わせてくれるって話じゃないのか? 料理が上手くなったら、って厨房に立てるようになったら、って事だろ?」
「……これだよ」

 解る。その気持ちは凄いよく解る。一夏、流石にその勘違いは無いわ。簪も凄いジト目で睨んでるし。
 ……と言うか、本当に当人達しか知らないような事を知ってるんじゃないかと思うくらい勘が鋭いわね。源ちゃんって。

「そんでクラス代表ってどーやって決めんだ? そういう話だったろ?」
「ん、ああ。今度の月曜に三人で総当たり戦だってさ。そう言えば千春のクラスの代表って誰なんだ?」
「ん」

 お椀を置いてから隣に座っている簪を指差す。おお、驚いてる驚いてる。まあ一組って騒がしいのばっかりみたいだし仕方ないかな。

「自己紹介の時に先生がうっかり専用機持ちで日本の代表候補生だって漏らしちゃってね。それで自動的に」
「へぇ! そうだったのか。それなら強―――何だよ、そんな睨んで」
「……別に」
「ちょ、ちょっと簪? どうしちゃったの?」

 簪は理由もなく人を睨んだりする子じゃない。どっちかと言えばオドオドビクビクするタイプだし、その反動か正義のヒーローに憧れてる所がある。それなら相応の理由があるはずだけど……。

「しょーがねーわな。結局ここの入試の時に機体が間に合わなくて教官に負けて、今度は目の前の男のせいで開発が凍結同然なんだからよ」
「っ!」
「開発に関与して無いから知らないと思ったか? 生憎とここに来るISの情報は自然と俺の所に集まって来るんだよ」

 源ちゃんの一言に簪が反応する。それもそうだ、こんな性格だけど源ちゃんはIS研究の権威でこの学園の全ISを管理しているんだから。
 ……参ったなぁ。仇の双子の姉でわざわざ相席させるとか嫌がらせ以外の何物でも無いわよこれ。失敗したなぁ……。

「でも倉持ん所も馬鹿だよなー。出来もしないのに無理やり手ぇ広げて、結局どっちも間に合ってない。どっちか俺に預けてりゃ最悪でもそっちだけは完成してたろうに」
「あー……えっと、ゴメンな? なんか、俺のせいで……」
「……別に」
「まあそうツンケンすんな。コイツだってモルモットなんだし、自分の意思でそうなった訳でもないしな」

 モルモットって……確かに合ってはいるけどさ。やっぱり源ちゃんって束さんと同種の人間だよね、解り辛いけど。

「それに罪を憎んで人を憎まず、って言うだろ。一夏の場合罪を犯したわけでもないし、こうやって自分が存在する事の余波を見て罪悪感を抱いている。ここは許してやるのがヒーローってもんだろ?」
「!」
「いや、そこは普通ヒーローじゃなく大人なんじゃ……って、簪?」

 何か眼鏡の向こうが輝いてるんですが。え、何? 本当に勧善懲悪系がツボなの?

「はいごっそさん、と。お前ら、ISの勉強ついでにコイツの機体完成させるの手伝ってやりな。けど、色々と事情があるから無理強いはしないようにな」
「あ、ああ……って言うか相変わらず食うの早いな、源兄ぃ」
「お前らが遅いんだよ。昼休み終わっちまうぞ?」

 ほんじゃなー、と空のお盆を持って源ちゃんが去っていく。どうして一番遅く来て一番早く食べ終わるのか。
 けどまあそれは別にいい。いつものことだし。それより聞かなきゃいけない事がある。

「ね、簪……未完成って、ホント?」
「……うん。動かすだけなら、できるけど……色々、足りない……」
「あっちゃー……それで、言いたくなければいいんだけど……事情って?」

 多分、ここから先は完全に簪個人の問題だ。それも感情論とかそういう類の。しかもこの説得を失敗したら四組は確実にアウトだろう。

「その……お姉ちゃん、この学校の……生徒会長、なの」
「……人呼んでミス・パーフェクトとかそんな感じ?」
「………(コクン)」

 うわっちゃー、コンプレックスだよ……私にも昔はあったからよく解るわ。一夏とか源ちゃんとか見てたらどうでもよくなったんだけどね。

「色々あって……ロシアの、国家代表で……IS一人で作ったり……」
「凄っ」

 さっきから一夏と箒は口を挟めないでいる。と言うかこの状況で口を挟めるのはただの馬鹿か紙一重の馬鹿だ。
 でもなー、源ちゃん見てたから解るんだけど、ISって一人で作れる物なのかな? 源ちゃんですらパーツの納入がどうとか騒いでたし。

「それで……私でも、頑張れば……できるかなって……」
「出来るわけねーだろこの根暗眼鏡が」
「っ!?」

 いつの間に戻ってきたのか、源ちゃんが簪の死角にドアップで近付いていた。
 ……源ちゃん、簪いじめたらある事無い事束さんにチクるよ?

「確かに【ミステリアス・レイディ】は二年の更識楯無が一人で『組み上げた』フルスクラッチタイプの機体だが、何もパーツ一つ一つから作ったって訳でもねーぞ。
 第一、あれの最大の特徴である『ナノマシンによる流体制御』は俺が作ったもんだ。武装は殆ど【モスクワの深い霧】からの流用だしな」
「え……? そう……なん、ですか……?」
「ああ。機体構成も高レベルに纏めてあるが、それも時間と才能をフルに使った結果だ。ついでに今現在も微調整を繰り返してる。
 お前はそれに相当するだけの時間を使って機体を組み上げるつもりだろうが、その間にクラス代表が必要な行事なんざ全部終わっちまうぞ?」

 大きいのは一学期に集中してるからな、と源ちゃんが鼻を鳴らす。そりゃ無理だ。
 いくら簪が天才的な腕だとしても三ヶ月程度じゃできっこない。それができるのは私達の目の前に居るこの人くらいだ。

「それに俺を見てみろ。確かに螺子一本から機体を全て組み上げる事は可能だが、普段はそんな事絶対にやらん。面倒だし、何より効率が悪い。
 じゃあどうする? 簡単だ、人を頼れば良い。一人じゃ半年かかるもんでも単純計算で二人いりゃ三ヶ月、三人いりゃ二ヶ月だ」

 実際はそんなに簡単じゃないだろうけど、源ちゃんが言ってる事は全て正しい。
 結果のために感情を捨てる、科学者的な思考とでも言うんだろうか。

「特にお前はクラスの代表、三十人の期待を背負ってるんだ。だが、それは同時に三十人分の苦労を背負ってるって事でもある。だったらその分は皆に迷惑かけたって良いんだよ。
 それに関係なくても自分から突っ込んでくる奴には特大の迷惑をかけてやれ。それ相応の働きをさせて見せろ」

 それになにより、と源ちゃんが席から離れる。

「これこそ勝利の三原則」
「―――友情、努力、勝利」
「そーゆーこと。そんじゃま急げよー? 時間ねーぞー?」

 しかし説教臭くなっていかんな、と今度こそ源ちゃんが食堂を後にする。説教臭いのは昔からだと思うけど。
 私達は流石にこれ以上時間をかけるといけなかったから殆ど食事は終わっていた。その中で簪が口を開く。

「……千春」
「ん? なーに?」
「……手伝って、くれる?」
「勿論」

 ここでやらなきゃ女が廃る、ってね。それと簪、私達の目の前に居るアイツを甘く見ちゃいけないよ?

「なあ、更識……いや、簪」
「……な、何?」
「俺にも手伝わせてくれ。どうであろうと結局は俺の責任なんだし、ISの勉強にもなるしな」
「……う、うん」

 これだよ。しかもいきなり呼び捨て。既に簪の頬が赤くなりかけてるのは見なかった事にしておこう。



 ようやく一日の仕事を終えて俺の城に戻ってくる。多目的工作室がある整備科棟に隣接した小ぢんまりとした一軒家、そこが現在俺が住んでいる場所だ。
 当然ながら学生寮、教員寮の両方から離れているこの場所は多少うるさくしても怒られないのが良い所だ。若干移動に時間がかかるがそれも数分の差だしな。

「それにしても今日は疲れたな……SEKKYOUしちまったし……んぁ、電話? しかも一夏? もしーん!」
『い、いきなり叫ばないでくれよ源兄ぃ。ビックリするだろ』
「悪い悪い。んで、どした? そろそろ寮にいる時間だと思うが」
『やっぱり知ってたか……源兄ぃ、もしかして部屋割りも知ってるのか? 何でか箒と一緒なんだけど……』

 知ってると言うか俺が原作どおりにしたんだけどね。だってそっちの方が面白いだろう?
 千春は簪と同じ部屋になってもらいました。マジ眼鏡部屋。

「知らない奴と一緒にするのもどうかと思ってな。まあ暴れようがナニしようが備品壊さなきゃいいよ、俺としては」
『えっと……既にドアに穴が……』
「……そう言えばここってドアに鉄板とか仕込んでないんだよな。いや、まさか鉄板ごとぶち抜いたのか!?」

 とか唐突に現実逃避してみる。普通にドアを木刀でぶち抜くだけでもありえないんだけどね。

「で、それより何より早速やらかしたのか? 勘弁してくれよ……監督責任こっちに来るんだからさぁ」
『えっと……ゴメン』
「とりあえずやまやか千冬に報告だな。あいつら一年寮の担当だから」
『あ、そうなのか。そっか、寮監ならたまにしか帰ってこれないのも仕方ないな』
「そーいや言ってなかったな。まあとりあえず今日はもう寝ろ、明日も早いぞ」
『ああ。おやすみ、源兄ぃ』
「応、おやすみー」

 電源ボタンを押して通話を終える。全く、やっぱりやらかしてくれたか。実にいいね、すばらしい。

「で、『六花』。お前はどう思う?」

 見る限りは『誰もいない』机に声をかける。誰かの前でこんな事してたら黄色い救急車呼ばれちまうな。

『どう、と申されても情報が不足しているため回答は出力できません』
「ハハッ、それもそうだな。だがきっと長い付き合いになる相手だ。覚悟しとけよ、色々と」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……全く、まだまだお子様だなお前は」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……風呂入って寝るか」

 べ、別に相手をするのが面倒になった訳じゃないんだからね! とか言ってみる。キメェ。



 七巻が見つからんでゴザルよー! 簪のキャラがわからんでゴザルよー!
 仕方ないんで気にせず進めようと思います。週末までには何とかしたいなぁ……。

 源蔵、SEKKYOUをするの巻。あと酢豚イベントスタートの巻。でもまだ一日目の巻。
 なんかこのペースでやってたら束さん出てくる前に力尽きそうなんでサクサク進めようと思います。
 4巻の話は束さん祭りになる予定です。だってメインヒロインですから。

 所でふとゾイドのスラッシュゼロ見たんですが、やっぱゾイドの重量感って半端無いですね。
 ISで一番足りないのは歩きモーション時のあの重さかもしれないです。




[27457] 第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/06 00:37



 第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」


 さて、入学式から一週間が経った。まあそれは良い。一夏が竹刀でべちべち叩かれたり弐式をどこから手をつけていいのか解らなかったりしたが予定調和だ。
 結局簪君(更識妹って呼んだら泣かれて千春にボッコボコにされた)は解らない所は俺に頼るらしい。うん、これでも先生だからね俺。頼られたら全力で動くよ。

「……で、まだ来ないの?」

 俺は一夏の専用機【白式】が来るのをモノレールの発着場で待っていた。その隣には眼鏡を光らせた千春が座っている。

「おっかしぃよなぁ……今日の昼には着くって言われてたんだが……」
「もう放課後よ? 一夏達はもうピットに着いてる頃だろうし、オルコットさんだってとっくに準備してる筈よ?」

 そんな事俺に言われても困りますがな。ぶっ壊れてても手元にあれば何とかできるが、手が届かない場所だとどうしようもない。
 っつーか束が手ぇ加えたらしいし、そのチェックでもやってんのか? やめろよそういう徒労。

「それで源ちゃん、一夏の専用機のスペックってどんな感じ?」
「佐倉先生、な。ホントはまだ授業残ってるんだわ俺。でも受領は指導部か技術部、あと経理部及び渉外部の部長クラスじゃないと駄目だからさ。
 で、スペックだったな? 簡単に言えば暮桜の焼き直しだ。速くて堅くて刀が一本、以上」
「……それ、大丈夫なんですか?」

 先生として話しているので千春も生徒としての口調に直す。こういう所ってこの双子似てないよね。

「んー、元々零落白夜を再現する為の機体だったんだけど計画が頓挫してな。そんで色々あって束が手を加えて完成させたんだ。
 実体剣を包むエネルギーフィールドがどうしても再現できなかったらしいが、束の手にかかればそんなもんさらっとクリアできるだろ」
「零落白夜って……姉さ、織斑先生が現役時代に使ってたISの技ですよね?」
「ああ。相手のシールドエネルギーに干渉して対消滅するエネルギーを発する技だ。
 競技用ではリミッターをかけてあるが、全開放状態だと一瞬でISが待機状態まで戻るんだ。おっそろしい技だぞ」

 威力測定の時に危うくやまやが真っ二つになる所だったからな。少しぐらい乳削ればよかったのに。

「そんで話を戻すが、白式は格闘戦オンリーの機体だな。やれる事は近付いて切る、それだけだ」
「……凄いとんがった機体だって言おうとしたけど、よく考えたら姉さんってそれで世界最強になってるのよね」
「だが高機動型の割には堅いし、乗り手次第でどこまでも強くなれる機体だな。中々楽しみだ」
「……スルーしたのは姉さんが怖いから?」

 うん!

「やれやれ……こんな風に見られるから貰い手が見つからないのよ。幼馴染なんて良いポジション持っといて……」
「いやぁ、俺としては束の方が好みなんで。千冬も好きではあるけど」
「それもそれでぶっ飛んでるけどね。やっぱり源ちゃんも学者ってこと?」
「多分なー。お、来た来た」

 誰か(主に世界最強の人間)に聞かれてたら色々と面倒な事になる会話を切り上げ、ようやく姿を現したコンテナを見る。

「佐倉博士ですね。それでは白式、確かにお渡しいたしました」
「んー。何か凄い遅れたけど何で?」
「……その、ウチの主任がごねまして。最後まで反対してたんで大人しくさせて持ってきたんです」
「それで大丈夫なの? 日本最高峰の研究所」

 多分駄目だろうな。あとどう大人しくさせたかが気になる。まさか×××板行きの方法じゃなかろうな。

「よし、手伝え千春。【一次移行】はオートでやればまず三十分前後はかかるからな、一秒でも早く装着させてやらんと」
「りょ、了解! それじゃあありがとうございました!」
「え、ええ。こちらこそ遅れてしまい申し訳ありませんでした」

 千春と一緒に糞重いコンテナを運ぶ。ああもう、授業みたく外なら牽引車使えるのに。

「っと、そういえば源ちゃん」
「なんだよ。佐倉先生だって何回言えばわかんだ」
「私の専用機ってまだなの?」

 ああ、なんだそれか。やっぱり千春も気になるのか?

「ガワだけならもう完成してるよ……そうだな、今日夕飯食ったら整備棟に来な。そろそろ良い頃だろ」
「……何か物凄い嫌な予感がするんだけど」
「なぁに、ちょいとばかし調整が難しくてな。それにホレ、一人だけ先にゲットしたら後ろめたいだろ?」

 特に未完成のもん渡された奴と同じ部屋だと特にな。



 一夏改造計画の甲斐もありラストにビシッと決めた以外は殆ど原作通りになった一夏対セシリア戦。
 二戦目は初心者の一夏に配慮してセシリアと鈴なのだが、ちょいとここで思い出してほしい事がある。

 一夏はさっきブルー・ティアーズを切り払った。うん、これはいい。原作通りだ。
 そしてISには自己修復能力が備わっているが、パーツが全損した場合は再生できない。うん、これもいい。
 さて、この二つの要素が合わさるとどうなるか? うん、そうだね、プロテインだね。

「………。」
「……申し訳ありませんわ」
「別にいいさ、こうする事が俺の仕事だからな。ただ、元々調整に時間がかかるBT兵器をこの短時間で完璧に直さないといけないんだよなぁ……」
「ぐっ……」

 そう。いくら予備パーツがあるとは言え、ブルー・ティアーズの調整をしなければいけないのだ。

「しかもさっきの試合、インターセプター使ってれば勝てたよなぁ……」
「うぐっ……」
「一次移行してないズブの素人をいたぶった挙句に負けるんだもんなぁ……」
「せぐっ……」

 一応整備科の生徒達には課題を出してあるから問題ないと思うが、こちとら無断欠勤してるようなもんだ。
 手前ふざけんな馬鹿野郎、と言いたくもなる。だってバレたら減給もんだし。いや、注意だけかな。

「……でもさ」
「?」
「良い目、してたろ? 一夏の奴」
「……はい」

 ちょろいなイギリス代表候補、流石イギリス代表候補ちょろいな。
 そして今から戦う相手はそんな所は既に通過している相手だ。こりゃ勝ち目がない。

「―――よし、調整完了! ちゃちゃっと行って来い!」
「はい、ブルー・ティアーズ、セシリア・オルコット! 行きますわっ!」

 さぁて、何秒持つかな?



「おいーっす、不順異性交遊やってるかー?」

 次の試合に向けて千春、箒、簪の三人と白式の調整をしていると源兄ぃがピットに入ってきた。何言ってんだアンタ。

「何ってまあ、ナニだけどよ」
「こんな所で考えてる事読まれた!?」
「それぐらい楽勝だっつーの。で、どうだ? コイツは」

 いつも通りの源兄ぃは不意に優しい目をして白式の装甲に触れる。
 それは普段の悪戯好きな兄貴分ではなく、どこか……そう、まるで娘を見る父親の目のようだった。

「そうだな、最高だよ。射撃武器がないってのはちょっと驚いたけど」
「武装が試作品同然だからな。だが高出力のエネルギー体でできてる刃だから、大抵の物は一撃で切り落とせるぜ」
「やっぱりそうなのか……」

 とは言え競技用に最大出力は抑えてあるが、と源兄ぃは言って空間投射モニターを一つ呼び出した。

「さて、それじゃあ鈴に勝つ為に一つアドバイスだ。言っとくが鈴は強いぞ、相性的な問題で」
「鈴のISってどんなのなんだ?」
「中国の第三世代型【甲龍】だ。基本的には近接型だがフロートユニットを丸ごと空間圧作用兵器【衝撃砲】に使ってるのが特徴だな」

 衝撃砲? 名前からして射撃武器だってのは解るけど……って、それかなり相性悪くないか!?

「そう、かなり悪い。しかも衝撃砲は砲弾及び砲身が不可視なのが特徴でな、射角もほぼ360度。ただ突っ込むだけじゃ勝てないぜ」
「砲弾も砲身も見えないって……それじゃどうやって避けんだよ」
「勘。まあオルコット君との試合を見る限りは稼働率も40%かそこらだろうし、気をつけるのは射角制限が無いくらいだろ」

 勘って……まあ鈴の事だから結構簡単に見破れそうだけどさ。

「それで佐倉先生、策って?」
「ああ。離れたら勝ち目がないし、かと言って常時接近戦ができるほど優しい相手でもない。なら最大の一撃をぶち込むしかない」
「確かに零落白夜は当たれば終わりだけどさ……そう簡単にはいかないだろ?」

 理屈は簡単だ。けど世の中簡単なことほど難しいからな。どうすりゃ良いんだよ。

「ああ。だから玉砕覚悟で常時零落白夜って手もあるな」
「手『も』って事は、先生の策は違うんですか?」
「当然。その名も【瞬時加速】―――千冬が現役時代に得意としていた技だ」



 頭の中で源兄ぃに言われた事を反復しながらピットを出る。そこにはさっきまで試合をしていた筈なのに疲れが見えない鈴の姿があった。

「一夏! 今謝るならちょっとは手加減してあげるわよ!」
「手加減なんざいらねぇよ。でも約束を勘違いしてたって事は謝る。悪かったな」
「な……べ、別にそんなうわべだけ謝られても嬉しくなんかないわよ!」

 何だ? 鈴の奴……まあ、確かにそうかもな。意味は自分で考えろって言われちまったし。

「さて、それじゃあ準備は良いか? さっさと始めようぜ」
「第一これじゃ折角の計画が―――って通信? 誰よこんな時に! 一夏、ちょっと待ってなさい!」
「あ、ああ」

 何かボソボソ言ってたと思ったら誰かから通信が入ったらしい。相変わらず忙しい奴だな、鈴は。

『―――。』
「……そう、そうよね。約束した時点で気付かなかったんだもんね、確かにそうだわ」
『―――。』
「うっ……わ、解ったわよ。それじゃ切るわよ? いい加減始めたいし」

 さっきから妙に顔を赤くしたままの鈴が通信を切ってこっちに向き直る。やっぱり忙しい奴だな。

「一夏、こないだは殴ったりして悪かったわね」
「殴ったって言うかビンタだったけどな」
「そこ突っ込む所違う! っとに……それじゃあ、お互い謝ってスッキリした所で始めるわよ!」
「ああ!」

 お互いに武器を構えた所で試合開始のブザーが鳴る。わざわざ待っててくれたのか。

「たぁぁぁっ!」
「背中で吐いて……吸って……ぶっ飛ぶっ!」
「っ!?」

 一度エネルギーを吐き出し、それを吸引。そのまま勢いをつけて吐き出す事でスペック以上の加速を行う事が出来る技だ。
 源兄ぃに教わったのはイメージと『最初の一手にこれを使う』こと。どうせ手が無いのはバレてるんだし、最初の一撃で決められなければ負けだと思えとまで言われた。

「はぁぁぁぁっ!」
「瞬時加速!? でもっ!」

 加速しながら零落白夜を起動。鈴も一瞬驚くが、手に持った大刀でカウンターを取りに来た。
 けど負けるか! 源兄ぃに教わったこの台詞の通りにするだけだ!

「踏み込みと、間合いと、気合だぁぁぁぁっ!」



 総当たり戦の結果は一位鈴、二位一夏、三位セシリアの順になった。が、ここで一夏以外が代表になると困るので鈴には色々と吹き込んでおいた。これで代表を譲るだろう。
 ……しかしまずいな。少し一夏を強化し過ぎたか? セシリアが折れても困るし、ゼフィルス戦までに何とかしないとな。

「でも惜しかったね。やっぱり青竜刀と正面から打ち合ったのがまずかったのかな」
「青竜刀じゃねぇ! ありゃ柳葉刀だ! ゴテゴテしすぎてて解り辛いが柄の長さが決定的だ!」
「……武器マニア」

 で、現在俺の城には客人二人。千春と付き添いの簪である。はっはっは、その称号は褒め言葉だぜ?

「それじゃあ千春、コイツが俺からの入学祝いだ。受け取ってくれ」

 ドアのロックを外し、その中へと歩を進める。ここには小さいながらもIS整備には充分なガレージがあるのだ。

「これが……私の、機体」
「綺麗……」
「あんがとよ。コイツの名前は【六花】、雪の結晶の別名だな」

 そこに鎮座しているのは俺が丹精込めて作った『第五世代概念実証用第三世代機』である。

「よし、早速一次移行始めるか。今回は俺が手動でデータ入れるから十分ぐらいで終わる筈だ」
「は、はいっ」

 事前に借りておいたISスーツ(管理科に変な目で見られた)を千春に投げて寄越し、六花に繋げてある端末を起動させる。
 入学時の身体測定で解っている範囲のデータを入力しながら待っていると、数分で着替え終わった千春が六花の装甲に触れていた。
 その表情は硬く、緊張か興奮かそれともまた別の何かが渦巻いているような顔であった。

「よし、そんじゃ乗ってくれ。データの微調整するから」
「あ、はい!」

 言われるまま千春は六花に乗り込み、シートに身体を預ける。六花は自動的に搭乗状態へと移行し、リアルタイムでデータの取得を始めていた。
 そのまま誰一人として言葉を発する事無く数分が経ち、俺は空間投射ディスプレイをかき消す。

「ほい調整終了、と。超速いな流石俺」
「………。」
「………。」
「……はいスンマセン。ナマ言ってマジスンマセン」

 こういう無言の圧力やめてホント。胃がキリキリするから。おっかしいなぁ……束なら許される言動なのに。

 ―――第五世代概念実証用第三世代IS、六花(リッカ)。
 この機体は第二世代の特徴である装備変更による用途の多様化を突き詰め、固有装備ごとの性能の特化を目指している。
 故に素体の状態では多少足が速いだけの機体であるが、勿論俺お手製の機体なので白式に若干劣る程度の速度は出せる筈だ。
 だが、この機体の最大の特徴はそこではない。伊達に第五世代の概念実証機ではないのだよ。


『おはようございます。独立型戦闘支援ユニット、六花です。操作説明を行いますか?』


「……しゃべ、った?」
「シャベッタァァァァ」

 千春も簪もポカンとしているので合いの手を入れておいてやる。

「……う、動けぇぇぇぇ! で、良いの?」
『はい。流石は我がマスター、完璧な返答の入力に感謝の意を表します』

 そして千春は中々にメタトロンに毒されていた。まあ俺のせいなんだけどさ。

「あの……これ、って……」
「ああ、IS『六花』に搭載されている戦闘補助用人工知能『六花』だ。背中側の腰のちょっと上にそいつのメインユニットがある、そこだけは絶対に守れよ」
『私としては絶対防御を発動させたい所ですが現状では不可能です。よろしくお願い致します、マスター』

 六花の起動を完全に確認し、俺は機体に接続されている全てのプラグを排除する。その間も限りなく白に近い水色のボディがライトの光を受けて輝いていた。
 形状は殆ど俺の設計通りだが、全体的に流線型になっている。それと尻の後ろ側にあったフロートユニットが外側へと移動している。六花自身が必要だと判断した結果だろう。
 千春はバイザーに覆われた顔を巡らし、着け心地を確かめるように手を握っていた。下半身にブースター系が集中しているせいかドレスを着ているようにも見える。

「見ての通り、コイツの最大の特徴は戦闘支援用AIを搭載している事。そいつとの意思疎通のレベルがそのまま強さに反映されると言っても過言じゃないな」
「意思の疎通……」
「ホレ、お前他人と打ち解けるの早いだろ? だったらAIでも行けるかなと思ってな」
『よろしくお願いします、マスター』
「う、うん……」

 どうも難しく考えて緊張しているようだが、別にそう構える必要は無いさ。女の子らしくお喋りでもしてなさい。

「さて、そんじゃあ機体特性の説明だ。まず固定武装は腕部パーツの内側にナイフが一振りずつ。最後の武器だな」
『武装展開:特殊複合ナイフ』

 俺の説明に合わせて六花がナイフを展開する。手首の部分に柄が来る設計になっているので、片手で展開するのは少しばかしコツが居る筈だ。

「それと量子展開用武装には六銃身型のGAU-19をベースに改造したガトリングガンが二丁、銃剣付きでな」
『武装展開:GAU-IS』
「きゃっ!」

 千春がナイフを仕舞ったのを確認し、今度は展開用の武装の説明に入る。急に重さが生じて驚いたのか、千春が一瞬倒れそうになる。
 が、ISのパワーアシストがあればこの程度は何も問題は無い。すぐに持ち直して重さを確かめるように振っている。危ないっての。
 これは本来なら固定武装として使用する物だが、集弾率を気にしなければ片手で運用可能だ。銃剣は殆どおまけだが直接殴るよりはマシだろう。

「細かいデータは後で確認するとして、次は基本的な機体性能だな。コイツはこの状態だと高速戦闘型になるが、このままだと真価を発揮できない。六花を積んでる意味が無いからな」
「このままだと……?」
「そう。両肩と腰、あと背中にジョイントがあるのが解るか? そこに換装パーツを装着する事で様々な場面に対応できるようになるぞ」

 それじゃあパーツセットのご紹介だ、と指を慣らして大型の空間投射モニターを出す。

「現在完成してるパックは四つ、設計が終わってるのが二つと構想段階が二つ。ただし試合用のISは転換容量が規制されてるから一度の戦闘で使えるのは二つ、ギリギリ三つだけだな」
「どうして一つ分増えるの?」
「手持ちのガトリングと予備の弾を全部抜けば丁度一つ入るんだよ。ただ弾切れになったらナイフしか使えなくなるから、その辺は考えないと駄目だけどな」

 まず一つ目、と言ってパックの詳細を表示する。

「ガトリングパック『レインダンサー』、コイツはGAU-8の改造品をジョイント部に六つ搭載する大火力仕様だ。その分機動性は犠牲になるが毎分4,200発×6の銃火に反撃できる奴なんざそう居ない」
「毎分25,000発以上……!?」
「ただマガジンの方も改造済みなんだが、2,000発ちょいしか入んなかったんだ。だから無補給だと30秒で弾切れになる」

 何をそんなに詰めてるんだお前は、という視線が二人から来る。そう怒るなって。

「だから予備のマガジンもセットで量子化してあるんだって。それに一気に全部撃つ必要は無いしな」
「まあ確かに……」
「……凄いけど、尖りすぎ」

 的確な評価ありがとうございます。それじゃあ次。

「ミサイルパック『メテオストライク』、コイツは一つのジョイントに八発の誘導ミサイルと一発の対IS用小型巡航ミサイルを搭載してる。合計五十四発のミサイルが隕石のように降って来るぞ」
「これって……山嵐?」
「ああ、そう言えば弐式にも似たようなの積んであったな。アレよりは一発ごとの誘導性は低いが、六花の火気管制があるから遜色ない命中率が期待できる筈だ」

 それに何より殆ど機動力が低下しない、というのが良い。パック全体の中でも火力と速度のバランスが一番良い。

「タッグ組む機会があればお前ら二人でやってみろよ。百二発のミサイルパーティーの始まりだぜ?」
「……ちょっと、良いかも」
「うん、良いかも」
『流石は我がマスター、中々に病的ですね』

 はいそんじゃ次ー、と表示データを切り替える。今度は先の二つに比べて大分スマートな印象のパックだ。

「レーザーパック『レーザービーム』、今完成してる中では一番の速度を誇るが、継戦能力は一番低いな。カードリッジ式のレーザー砲を六門装備してる」
「レーザー兵器って……オルコットさんのBT兵器みたいな?」
「そうそれ。まあアレは思念操作がメインだからレーザーはオマケなんだがな。単発の威力ではこのパックが最高だが、最大威力で撃つと十発も撃たない内に弾切れになるので注意、と」

 勿論予備のエネルギーパックも同梱してあるが、それでもやはり心許無い。ではどうする? こうする。

「ただここのエネルギーパイプを繋ぐ事で機体側のエネルギーを使う事も可能だ。使いすぎると自滅するが」
「ふむ……その辺は戦術との擦り合わせって事?」
「そうなるな。まあ余程無茶な戦い方しない限りは特に問題ないだろ」

 それじゃあラスト、と最後のファイルを開く。今度は今まで三つのパックの特徴が合わさった形だ。

「腰にガトリング、背中にミサイル、肩にレーザーを装備したミックスパック『スタンダード』だ。勿論特徴らしい特徴は無いが、問題が一つ。コイツを使うと手持ちガトリング用の弾を半分に減らさないといけないんだ」
「どうして?」
「元々最初の三つは使用容量に若干の差があるんだが、別種の装備を一つのパックに入れると使用容量が跳ね上がるんだよ。だからコイツは若干使う容量が大きいんだ」

 もう一つ別種の装備を一つに纏めたパックがあるが、そいつも多分容量が大きくなる。
 もしそれとスタンダードを同時に使うとなると、手持ちガトリングの予備弾はゼロになってしまうだろう。

「どれを使うかはお前の自由だが、このパックは基本的に六花側からの操作で動かす事になる。そこは注意しろよ?」
「え? って事は……」
「最悪の場合、足の引っ張り合いになるって事だ。そうならないようにお互いの性格を知っておくのも大事だぞ」
「わ、解った」
『よろしくお願いします、マスター』

 コイツは元々『六花』の戦闘経験を蓄積させる為の機体だからな。他にも色々と積んではいるが……まあそれは良いか。

「他にもガードパック、ワイヤードパック、ファストパックなんかがある。追々作ってくから、まあ期待しとけ」
「は、はい。よろしくお願いします」
「お願いされました、と。ああそうそう、手持ちガトリング以外の装備も設定し直せば使えるからな。変えたくなったら言ってくれ」

 今は開発コード『多目的拳型エネルギー発生器』『X型高機動ブースター』『プレートバスター』『カスタムシールド』の四つが企画中だ。どれから作ろうかな。

『まずは私とマスターの相互理解に勤めるべきと判断します』
「そうだね。よろしく、六花」
『よろしくおねがいします、マスター』

 と、俺が思索に耽っている間に話が進んでいたようだ。おお、もうこんな時間か。いかんいかん。

「それじゃそろそろ終わりにするか。待機状態にしてみ」
「はい―――とわっ!?」
「千春……!?」

 難なく千春は六花を待機状態にするが、着地時に何かがあったのかすっ転んでしまった。どーした?

「あてて……な、何これ!?」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……ダブルメガネ?」

 どうも六花は眼鏡を待機状態に選択したらしい。それも今まで千春が使っていたようなシンプルな物ではなく、妙にメカメカしいデザインだった。
 ……と言うか、ぶっちゃけMP3プレーヤー付きのサングラスである。色は機体色と同じ限りなく白っぽい水色だ。

「あれ? これ、度も入ってる……」
「……そう言えば、千春……目が悪いんだっけ……?」
「うん。でもこれ凄いわ、ちゃんと見えるもん」
『ありがとうございます』

 今まで使っていた眼鏡は予備にするらしい。そろそろ戻った方が良いぞ、千冬に怒られる。俺が。

「それじゃあ源ちゃん、ありがとうね」
「どういたしまして。書類は明日渡すからな」
「う……簪が書いてたアレ?」
「アレ。経験者が居るんだから細かい事はソイツに聞け」

 とっとと帰れ。俺はまだやる事残ってんだよ。

「……それじゃあ、先生……おやすみなさい」
「おやすみー」
「応、寝ろ寝ろ……っと、忘れる所だったな」

 二人の姿が闇に消えた後、俺は机に置いておいたケータイを鳴らす。
 滅多にかけないその番号は数回の呼び出し音の後、その主へと声を届けた。

『もすもす終日~? どったのゲンゾー』
「終日お前を愛してるー。いやちょっとな」
『(ブツッ)』

 あ、切りやがったあの野郎! ふざけんじゃねえよ! リダイアル連打連打連打ァッ!

『……それで? コアでも欲しいの?』
「ああ。ちょっと面白い機体を作ってな、それ用にもう一つ欲しいんだよ」
『どんな感じの? こっちで基本的な調整はやっとくけど』

 どんな感じか、か。そうだな……。

「AI用に調整って出来るか? コア自体の意思は希薄な方がいいな」
『オッケー。けどその代わりに最近の箒ちゃんとちーちゃんとはるちゃんといっくんの様子を教えて貰おうじゃねえか、げははははは』

 うーむ、精一杯ダミ声にしてるのが可愛らしいとか考えてしまう俺は重症なんだろうか。

「良いぜ、それじゃあ―――」

 さて、今日も寝るのは遅くなりそうだな。



 うおぉー! オリジナルIS考えんのマジ楽しい! 尖がった性能のIS最高!

 衝撃砲の稼働率とかは完全に独自設定です。もう少し上の性能があってもいいと思うんだ、第三世代機は。
 そしてこのSSの『第五世代機』は……もう解りますね。原作でも度々出てくるアレです。閣下には反対されそうですが。

 そしてラストにフラグ立てる馬鹿。お前のせいかよって言う。



 トチ狂って三次ネタやらかしましたがご指摘を頂いたので削除致しました。
 不快に思われた方が居られましたらこの場を借りて謝罪致します。申し訳ありませんでした。




[27457] 第六話「こんな事もあろうかと」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/13 21:23



 第六話「こんな事もあろうかと」


「おはこんばんちわー」
「お、おは……?」

 六花を千春に渡してから数日。何か呼ばれたので一夏達がたむろしてる第二整備室へと足を運ぶ。
 そこには一夏達は居らず、簪が弐式の設計図と睨めっこしていた。

「あれ? あいつらどーした?」
「えと……操縦の練習に……」
「煮詰まったから気分転換?」

 コクン、と力を失ったように簪が首を縦に振る。んー、割と重症っぽいねー。

「そんで何ができねーんだ?」
「あ……か、荷電粒子砲の……出力調整が……」
「あー、ハイハイ。あれムズいんだよなー」

 参考にできるデータがあると大分違うんだが、生憎と手元に無いんだよな。取るのもちょっと時間がかかる。

「それと……マルチロックオンの、システムも……」
「まだ出来てないんかい。そんな完成度で大丈夫か? 対抗戦、来月の頭だぞ?」
「うぅ……」

 大丈夫だ、問題ない。と返して欲しかったがそんな余裕もない、と。参ったなこりゃ。

「因みにB案とかって作ってるか?」
「……B案、ですか?」
「そ。現状の案が何らかの都合で通らなかった場合の策だ。今の場合だと荷電粒子砲以外の武装とか、マルチロックオン以外の方法とか」

 ふるふると首を横に振る。んー、まあ学生だし仕方ないか。これから覚えておこうな。

「オーケー。なら俺が考えてた案はどうだ? これなら今日中に最終調整まで行けるが」
「え……?」
「こう見えても先生だからな。生徒が困ってるのを黙って見てられるほど薄情じゃねえんだよ」

 指を一つ鳴らしてディスプレイを表示する。そこには現在の形と少しだけ違う弐式の姿があった。
 そう言えば簪の眼鏡ってディスプレイなんだよな。懐かしいモン使ってんなー。

「荷電粒子砲の代わりにパック換装用のパーツを装備するんだ。六花と共通の規格だから汎用性は高いぜ」
「六花と……」
「とりあえず六花に使えるパックは全部使えるし、火力が欲しいなら……そうだな、プラズマ砲かマイクロウェーブ砲とかどうだ?」

 ……あれ? マイクロウェーブ砲って条約禁止武器だったっけ? まあいいや。

「でも……ロックオンシステムは……?」
「ああ、簡単な話だ。IFF積んで味方以外の全目標を一斉にロックオンすればいい。簡易的にだがマルチロックオンできるぞ」
「あ……!」

 どうしてこんな簡単な事に気付かないのか。少なくともコアネットワーク使って擬似IFFとか再現できるだろうに。

「あの……じゃあ、それで……お願い、できますか?」
「ああ。ただ俺も忙しいんでな、ずっと見てられるって訳でもない。そこは勘弁な」
「いえ……ありがとう、ございます……」



「はぁ、はぁ、はぁ……」
「何……これ……!」

 無事に簪の打鉄弐式も完成し、万全の状態で望んだクラス対抗戦。
 第一試合の対戦カードは俺対簪の専用機持ち同士の戦いだった。そこまでは良い。

「避けろっ!」
「く……ぅ!」

 だが、その試合の最中に謎の全身装甲のISがシールドを突き破って現れた。
 コイツはまずい。よく解らないが白式がそう言っている……気がする。

「お前は一体、何なんだぁっ!」



 ……あれ? これってまさか俺のせいですか?
 レッドランプに包まれた観客席で食いかけのポップコーンを処理していると電話が鳴る。千冬だった。

『佐倉先生!』
「解ってる。えーっと投射型モニターはまだ掌握されてないか。んじゃ緊急避難要綱1の2。
 『敵性と思われるISの学園への単機襲撃』っと。はいスタート」

 教員権限を使い生徒の避難を開始する。が、その流れもすぐに止まってしまった。
 理由は簡単。避難経路が塞がれたから。と言うか俺もアリーナから出れませんがな。

「チッ、悪いがアリーナ内の見取り図くれ。あとリアルタイムの一夏達の状況も」
『解った。山田君がそちらの端末へ送っている筈だ』
「お、来た来た。オッケー、そんじゃ一旦電話切るぞ」
『ああ、こちらでも何とかしてみよう』

 さてと、シールドレベルが4だから余程の状況じゃなきゃこっちには流れ弾は来ない。はいOK。
 んじゃ次は一夏達か。通信繋がるかな?

「一夏ー、簪ー、聞こえるかー?」
『源兄ぃ! 聞こえるぜ!』
『こちら更識……聞こえます……っ!』

 よーし通信は掌握されてないな? なら問題ない。

「これから俺が技術部長権限でお前達の競技用機能制限を開放する。お前らもうエネルギーヤバいだろ?」
『え!? た、確かにヤバいけど……そんな事出来るのか!?』
「俺を誰だと思ってやがる。それにな、技術屋にはこういう時伝統の台詞があるんだ」
『伝統……ですか?』

 ああ。耳かっぽじってよく聞きな。


「こんな事もあろうかとぉ! お前らの機体調整した時に機能制限外せるようにしといたのさぁ!」


 暗証番号認証、指紋認証、静脈認証、音声認証、全開放承認。

『すげぇっ! エネルギーゲージが二倍になりやがった!』
『凄い……こんなに……!』
「ただ気をつけろよ。その分のエネルギーはお前達を保護する最後の砦だ。それが無くなったら本当にお終いだぞ」
『『了解っ!』』

 一夏の左手が開閉を繰り返している。この状況で浮かれるとかアホかアイツは……。

「それと簪、IFF弄って一夏をロックオンしないように注意しろよ」
『はい……!』

 よし、これでコイツらはオッケーっと。そんじゃ次はこっちの生徒か。
 確か千冬達と一緒に居たよな、箒ちゃん達。ならあの子らに頼むか。

「あー、こちら佐倉。凰君、オルコット君、聞こえるかい?」
『こちら凰! 聞こえてるけど何も出来ないわよ!』
『こちらオルコット。悔しいですが凰さんと同じですわ……』

 ありゃりゃ。既に千冬にお叱りを受けた後か。でもな、そうも言ってられんぞ。
 ―――ゲートロックへの強制介入を開始。現在データを書き換えています。

「悪いが凰君、観客席の六番ゲートまで来てくれるか? それとオルコット君は千春と一緒にピットに出といてくれ」
『観客席? この非常時に何考えてんのよ源さん!』
『そうですわ! それにピットに出た所でゲートが閉鎖されていますわ!』
「黙れ。俺はお前達個人と話しているんじゃない、代表候補生と話しているんだ。返事は?」

 代表候補生ともなれば半分軍人みたいなもんだ、この言葉の意味に気付けない事は無いだろう。
 ―――ゲートロックへの強制介入失敗。データがコンマ一秒単位で書き換えられています。

『りょ、了解!』
『了解しましたわ!』

 二人との通信を切り、ついでに一応試みていたロックの解除をやめる。やっぱ物理的にやるしかないな。

「よーしお前らそこどけ離れろー。今からドアぶっ壊すから」
「先生! 助けてください!」
「お願い源ちゃん!」
「解った解った。とりあえず限界まで離れてろ、危ないからな」

 ドアに群がっていた生徒達を引き剥がし、俺は白衣の袖を捲る。
 やれやれ、あんまりこれやりたくないんだよな。危ないし。

「……俺のこの手が光って唸る! このドア壊せと輝き叫ぶっ!」

 最初の一言を音声入力し、左の義手が限界を超えて運転し始めた事を確認する。既に若干熱いが気にしたら負けだ。
 装甲の一部が開き、その隙間から何かちょっと人体に悪い感じの光が溢れ出る。決してコジマなアレではない。

「ひぃっさぁつっ! シャァァァイニングッ! アァァァァァッム!」

 誰も殺してないがな、と心の中でツッコミながら思い切り左手をドアに叩きつける!

「ぶち抜けぇぇぇぇぇっ!」

 左腕の全装甲が展開し中に仕込んであった緊急用ブースターが露出。そのままブースターに点火する。
 左腕の残った部分まで吹っ飛びそうな衝撃に耐えつつ、少しずつ歪み始めたドアに力を込め続ける。

「フィニィィィィィィィッシュ!」

 指先が入るくらいまで歪んだドアに小指から捻じ込み、全身からひねるように左腕を突っ込ませる。よし入った!
 手首と肘の中間ぐらいまでがドアを抜いた事を確認し、俺は肘のロックを解除する。このままだと巻き込まれるからな。
 何に? 当然アレにだよ。

「爆破ッ!」

 頭を抱えて身を丸め、爆風に飛ばされるように観客席を転がっていく。あ、コレ痛い! 凄い痛い!

「ふぅ……よし、穴は開いたな」

 頭を軽く振り、人の肩幅程度の穴が開いた事を確認する。やっぱり自爆装置はロマンだが危な過ぎるな。別のにしとこう。

「ちょ、ちょっと何よこれ! 源さんでしょやったの!」
「ご明察。悪いがIS展開してこの穴広げてくれるか? 責任は俺が取るから」
「……まあ、緊急回避って事よね。もう深く考えるのやめるわ」

 それが一番だな。と駆けつけた鈴と二人で納得する。あ、でも火器使うなよ? 俺ら吹っ飛ぶから。



 めっこめっこと微妙な擬音を出しながらドアをぶっ壊して避難経路を作る。力仕事に使われる甲龍が泣いてる気がした。
 本当なら観客席全てを開放しておきたい所だが、生憎と時間がない。俺の移動経路確保って事で勘弁してもらおう。

「お、来てるな。じゃあ予備の腕付けてる間にIS展開しとけ」
「……まさかまたぶち抜く気じゃないでしょうね?」
「さーて何のことやら」

 ピットの工具入れの裏に置いてある予備の腕を装着し、動きを確認する。よし、問題ないな。
 ……自分でやっといて何だけどさ、至る所に腕が隠してある学校って嫌だよね。

「どうして工具入れに義手が入ってますの……?」
「こんな事もあろうかと、ってやつさ。それと技術部長権限で競技用機能制限を開放する、六花はレーザービームへの換装を」
『よろしいですか、マスター』
「うん、お願い」
『了解しました』

 どうやら六花は順調に育ってるみたいだな。今回の戦利品と合わせて……まあ、臨海学校には形になるかな。

「それじゃあ各員最大火力でここのシャッターぶっ壊してみようか。機能制限開放した今なら簡単にぶち抜けるぜ」
「やっぱり……」
「責任は源ちゃんが取ってくださいよ」
「……まあ、ストレス解消には良さそうですわね」

 何か一人台詞がおかしかった気がするがまあ良いか。どかーんとやっちゃえ。

「龍咆、最大出力!」
「スターライトmkⅢ、ブルー・ティアーズ……デッド・エンド・シュート!」
「六花! レーザービーム、フルバースト!」
『思いだけでも、力だけでも。ですね』

 後半になるにつれておかしい気がしたが無視する事にしたぜ!
 三人分の火力は如何にIS用ゲートと言えどもオーバーキルだったらしく、爆炎と共にその殆どが吹き飛ぶ。爽快な光景だ。

「よし、それじゃ行って来い!」
「「「『はいっ!』」」」

 俺が声をかけると三人はスラスターを吹かせてアリーナへと飛んでいく。俺に出来るのはここまで、かな?

「っ!」

 はい違いましたー! って言うかちょっと箒ちゃん! お前生身でどこ行く気だよオイ!

『一夏ぁっ!』

 と言うかいつの間にマイク盗んでますか君は。これ始末書もんだぞコラ!

『男なら……男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!』

 ビシッと決めたつもりか? けどゴーレムの不揃いのセンサーアイがこっち向いてますよね箒ちゃんよぉ!

「啖呵は良いけどその後の事考えろ馬鹿娘っ!」
「きゃあっ!?」

 箒ちゃんの腰を抱えて全力でピット内へと走って戻る。って撃ってきた! 原作になかったよなこの攻撃っ!

「どっこいしょぉぉぉぉっ!」
「っく! 源蔵さん、何を!?」
「馬鹿野郎! そりゃこっちの台詞だこの掃除用具! 生身でISの前に出るとか死にたいのかお前は!」

 ピットの隅へ転がるように退避し、箒に説教をかます。SEKKYOUとか言ってられる状況じゃないぞ今のは!

「いいか、俺にとって『篠ノ之箒』って個人は『篠ノ之束の妹』でしかねぇ。解るか? 惚れた女の妹に怪我なんざさせたらアイツに会わせる顔がねぇんだよ!」
「―――っ、す、すみません……」
「……まあ、解ればいいさ。悪いな、こっちこそ怒鳴り散らしちまった」

 そもそもこの状況が束のせいだってのは一旦置いておこう。いつか身体で返してもらうから。

『佐倉先生! 織斑君が!』

 と、ピットの上にある管制室からやまやの声がする。スピーカーの制御取り戻したのか?

「何だ、まさか敵のビームの中突っ込んだとか言うなよ!?」
『そ、そのまさかですぅ!』
「……勘弁してくれ」

 何のために過剰なくらいの増援送ったと思ってんだよ、あの馬鹿。
 ……まあ良い。とりあえず残骸の回収だな。



 IS学園名物地下50メートル研究所。まあ名物と言うか「なぜ作ったし」レベルの代物なんだが。
 そこに今回の襲撃者が横たわっていた。流石に過剰戦力との戦いでボロッボロだがコアは無事だ。ならば良しとす。
 と、この部屋唯一の扉が開いた。機密保持の都合上仕方ないんだろうが、これって機材出し辛くてしょうがないんだよね。

「源蔵、居るか?」
「んあー? ああ、千冬か。解析結果聞くか?」
「ああ、頼む」

 来たのは千冬だった。って事はそろそろ一夏が目ぇ覚ました頃か。解りやすくていいな、このブラコンとシスコンは。
 一夏も何か知らんが完全に簪フラグ立ててたし、原作より面白い事になってそうだ。が、悲しいけど今って勤務時間中なのよね。

「メインフレームボロボロ、駆動系ズタズタ、胴体部分に至っては穴だらけだ。コアが無事なのが不思議なくらいだな」
「……それで?」
「ビーム関連は南アフリカ製のパーツ、足回りはメキシコ、基礎フレームは中東のかな。あくまで勘だけど」

 勘なので当然ながら報告書には書けない。が、それを当てにして動けるのが人間だ。

「全く……こんな物が作れるのはやはりアイツだけだな」
「だろーね。センサーはオーストリアとイスラエルの両方の特徴があったし、何よりそん中に詰まってる物が異質すぎる」
「……と言うか、この状況の物を見てよく判別がつくな、お前は」

 台座に並べられているゴーレムのパーツ群を眺めて千冬がため息をつく。確かに素人目には何も解らないだろう。
 ビームの熱で変形した物、柳葉刀で真っ二つにされた物、ガトリングガンで蜂の巣になった物etc…。

「まあ、熱で変形したとしても特徴ってのは残るもんだからな。見せる奴に見せれば解るさ」
「そういうものなのか?」
「そういうもんだ。あ、コアは技術部預かりにして良いか? 時間かければ解るかも知れん」
「本当か?」

 すんません嘘です。このコア使いたいだけです。

「……まあ、一介の教師が何を言っても無駄か。それでは頼みます、『佐倉博士』」
「ええ、頼まれました。『ブリュンヒルデ』」

 さぁて六花。待ってろよぉ!



 ゴーレムさん出番殆どないでゴザルの巻。と言うか前線に出ないせいかサクサク進む。

 とりあえずここで一巻相当分終了。打鉄弐式が原作と比べて若干火力不足です。でもその分燃費その他は良い。
 次は遂にあの二人が登場します。戦闘描写は二巻分だと……千春視点で一回ですね。マジ少ねぇ。まあ良いや。
 どうせパックのお披露目回だし。何気にラウラの天敵だったりします、お楽しみに。



 ……源蔵に他のSSの機体解説モドキとかやらせてみたい今日この頃。




[27457] 番外編「機体解説:強羅」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/07 02:40


 注意!

 ここから先はその他板の『葉川柚介』氏の『IS学園の中心で「ロマン」を叫んだ男』とのクロス要素があります。
 筆者の拙い文章力で解説を行っております、読まれた方が不快に思われる箇所があるかもしれません。

 また番外編ですので本編とは一切の関係はありません。ご注意下さい。




 機体解説:強羅


「んぁ? ああ、どーした? 機体の解説? まあ良いけど……どれよ?

 ……『アレ』か。解った。


 日本企業の蔵王重工製第二世代IS『強羅』。全身装甲が特徴的な機体だが……コイツを一言で表すと『ロマン』だ。むしろそれしか無い。
 パッと見は新手の勇者ロボ、モチーフは日本らしく鎧武者かな。機体のタイプとしては重量級パワー型。足は遅いがパワーは第三世代と比べても遜色ないな。
 性能自体は遠近両方に対応してるが、主な使用者は射撃寄りだな。まあ速度が低めだからある意味当然か。亡国機業の連中に使われたら無駄に悪っぽいデザインになりそうだ。
 アンロックユニットを持っていないが背中に羽がある。mktnウィングって奴だ。ごめん嘘。


 まず内蔵武装は右腕のロケットパンチとカメラアイから発射するゴウラビーム。どっちもある程度のチャージが必要で使い勝手はあまり良くないな。
 ……そんなものはロマンの前には関係ない? それは俺も大好きだがそれ言うとまともな解説にならないから以下それ禁止。
 ロケットパンチは回転力させて威力を高める事が可能だ。速度はそれなりに速く、後付け装備のドリルと組み合わせる事でドリルブーストナッコォとなる。ナックルじゃない、ナッコォだ。
 ゴウラビームは内蔵火器としては珍しいビーム兵器だな。初見で至近距離だと避けるのは至難の業……誰だ今サイクロプスっつった奴は。

 
 続いては使用装備についてだ。ぶっ飛んでるぞー。

 アナ……ゴホン、アルゼブラ社製マシンガン、カンタータ。威力は高いが集弾率は悪いな。まあ六花のGAU-ISも似たようなもんだしなー。文句言ったら肥溜めにぶち込まれそうだし。
 ビームマグナム。コイツも威力は高いが取り回し辛い一品だ。ただ同サイズのビーム兵器の約四倍(当社比)の威力を出せるのは凄いと思うぞ。
 ドリル。もう何も言うことは……解ったよ。実用性皆無の円錐螺旋だ。先端以外が先に触れてしまうと逆に自分の方が危ないと言うリスキーな武器でもある。細かい事は物理勉強しろ。
 バット『黄金』。金色に輝く野球用のバットだ。それ以上でもそれ以下でもない。が、あえて言うならバスターホームランとかも好きだぞ、俺は。
 大口径キャノン。ようやくまともな武器が出てきたな……強羅と同じ蔵王重工製のグレネード砲だ。量子展開時に独特の変形機構があるのが特徴で、全長は3メートルちょいだ。


 次はパッケージの紹介だ。こっちもぶっ飛んでるな。

 重量型火器パッケージ『パーティータイム』。普通のISならまともに歩けないどころか自重で潰れかねない重量と大火力だな。
 内訳はクローシールドと内蔵ガトリング二門が左右に一つずつ。因みにガトリング自体はGAU-ISと全く同じ物だ。集弾率って言葉が馬鹿らしくなる弾幕が見れるぜ。
 あと全身にマイクロミサイルパックと両肩に八連装ミサイルコンテナが一つずつ。パッと見だと追加装甲に見えるミサイルパックには3発から9発のミサイルがギッシリ詰まってる。被弾したら自滅するな。
 トドメとばかりに背部マウントには大口径ビームキャノン、エメラルドバスターを搭載している。PICもシールドバリアも展開できなくなる、ある意味最悪にして最高のエネルギー効率を誇る武装だ。
 ……まあ、足を止めて撃ち合いをするなら良い仕様だ。相手の攻撃一発当たったら誘爆するけど。

 次は何考えて作ったんだパッケージ、もとい超攻撃特化型パッケージ『不知火』だ。独自にサブジェネレータを搭載しており、使用後のエネルギー消費は殆どない。かといって継戦能力に優れている訳ではないがな。
 まず背部増設ブースターの空我。超加速にはチャージが必要だが最高速度は銀の福音の瞬時加速にも迫るぞ。加速しながらパージする事で質量弾として使用可能、パージアタックの一種だな。
 大出力拡散ビーム砲、岩窟砲。左腕に装着する本体エネルギー供給型ビーム砲で、最大出力で撃つと砲身が焼き切れる不思議な武器だ。粒子加速器の発注間違えたんじゃないか?
 電磁加速式射突型ブレードの古鉄。右腕に装着する直径8cmの超大型パイルバンカーだ。もう杭と言うか既に『砲』だな。因みに拳銃換算だと315口径×1000mmという化け物でしかない数字を吐き出すぞ。
 まず間違いなくどれも強羅以外ではまともに使えないな。いや、六花のアームズでもギリギリ行けるか? 使わせる予定は無いが。

 そんでもってこれはむしろパックじゃなく一つの装備って言ったほうが良いのかな。まあ良いや。
 大型近接武装コンテナ『弁慶』。強羅にしては珍しく近接武器が揃っている箱だ。基本背負いっぱなしだが格闘戦の邪魔にはならないらしい。
 大剣の大鉄塊……それは剣と言うにはあまりにも以下略。そもそも剣に鉄塊なんて名前付けるか? 変形機構とかも特に無いし、ただ巨大な鉄の塊だ。
 双剣、マンティスライサー。蟷螂の刃のような二振りの小太刀だな。ただ火器と違って色々と仕込めないのか、これも普通の武器だ。
 クローの虎爪。武術でも中々見られないタイプの武器だが、これもやはり普通の武器だ。ああ、耐久力は見た目の割にそこそこあるな。
 あと目玉の溶断破砕マニピュレーター、光神。特大の特殊前腕装甲だ。色々と俺の光指と一緒なのは秘密な。あと試合でこれ使ったらレギュレーション違反で反則負けとられそうな気がする。
 他にも長柄の武器があるらしいが使ってる映像は手に入ってないな。アタッチメント式って仕様にはあるが、耐久性大丈夫なのか?


 次は操縦者に関してかな。

 強羅の第一人者にしてグレオンの申し子、通称『ワカ』23歳。その筋の人間にはカルト的な人気を誇る最高のトリガーハッピーだ。グレオン的な意味でも体形的な意味でも。
 身長が低いせいか強羅を展開するとどこかスパロボチックな格好になるがそれもまた良し。たまに装備で全身見えなくなる事もあるがそれも良し。
 カラーリングは大体黒とかグレー。どことなく試作機か二番機的な雰囲気だが、むしろ都市迷彩なのか?
 名言に「ビームは、まずいです…」「正面から行かせてもらいますよ、それしか能がありませんから」「全てを焼き尽くすだけです!」「面妖ですね、変態技術者どもが…」等がある。
 っつーか最後のは面と向かって言われた。ちょっと目覚めかけたのは秘密だ。

 もう一人は『神上真宏』。別名に『妖怪ロマン男』『ロマンでご飯三杯いける』『むしろロマン食って生きてるんじゃね?』がある、まあ要するにロマン馬鹿だ。
 カラーリングはワカとは違って非常にカラフルな機体だな。ファイヤーパターンからファイバ○ドを連想するのは俺だけかな。俺だけだな。
 最近は更識さんちの娘さんと仲が良いらしい。爆散しろ。あと束の谷間に鼻の下伸ばしやがった。うん、爆散しろ。


 ―――で、最後はこの機体最大の謎『合体機構』についてだな。

 まず最初に確認された右腕と武装のみの合体だが、コイツに正式な名称はついていない。まあ悠長な事してられる状況じゃなかったしな。
 何と言う事でしょう、雪片が5メートルクラスの大刀にモデルチェンジ。それに強羅の右腕を合わせる事で無理矢理振らせているのです。まあコイツはコレくらいで良いか。

 次は本命の全身合体だな。名前は『白式・荒神』。白式・雪羅をベースに右腕が強羅の物になって雪片がまた巨大化してるな。
 アンロックユニットに強羅のようなファイヤーラインが走った他、全身のカラーリングも変更されている。俺はトリコロールっつーかクロスボーンみたいな印象を受ける。
 エネルギー射出口が巨大化してスラスター出力が上がってるな。あと胸部装甲は強羅の物に、ヘッドセットには兜と一本角が追加されている。

 ……もう何がどうなってるんだかサッパリ解らん。と言うかアレだ、こういう時にこそこの言葉を使うべきだな。ロマンだ、と。
 攻撃防御移動、全ての出力がただ加算しただけじゃないくらいに上昇している。これは恐らくコアが2つ存在する事による相乗効果だろう。
 ついでに言うと反応速度も上がってるな。人間の限界ギリギリまで引き上げられてる。正直、体に悪いと思うぞ、コレ。
 それにホラ、何よりリスクのない合体は燃えないからな。回数制限とか時間制限とか。操縦者に来るタイプのは使う人間としてはノーサンキューだろうがな。
 現在確認されている技は超巨大零落白夜『ギャラクシーソード』。名前はモチーフにした技からだが、これもまたとんでもない出力を発揮している。多分全力なら星が真っ二つになるんじゃないか?


 ……疲れてるのかな、俺。凄く電波受信しまくった気がする。
 だがまあ、ロマン度と攻撃力の相似関係は一考の余地ありだな。何故かどれも攻撃力が高いのが強羅の特徴だ。
 あと強羅のコアだが、純粋だな。むしろ純真と言うべきか。正義を愛する子供のような思考をしている。良い傾向だ。少なくとも猪の白式よりはずっと良い。

 ああ、もうこんな時間か。それじゃあ俺はアームズパックとか『G・B』とか色々作らなきゃなんねーから、この辺で勘弁してくれ。んじゃな」



 ……長ぇ! ちょろっと書いて終わりにしようと思ったらビックリするほどの密度と長さになったでゴザルの巻。
 これも愛、いや、ロマン故か。どうでもいいですがモンブランケーキはあんま好きじゃありません。栗は好きなんですが。

 書くに当たって本文を参照しつつ書いています。なのでむしろ解説と言うかただのまとめみたいになってますが……。
 そして自然と混ざるネタとロマン。なんだこれ。呪いか、呪いなのか。ロマンと言う名の呪いなのか。

 あとようやく七巻を入手しました。なので現在書いてる話が書き終わり次第、修正と番外編『弐式開発記』をやろうと思います。殆ど原作通りですが。





[27457] 第七話「カッコイイからだ!」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/07 23:32



 第七話「カッコイイからだ!」


「……最近、学園側の俺に対する扱いが酷いと思うんだよ」
「は、はぁ……」

 気温も上がってきた六月。俺は最寄の国際空港まで足を運んでいた。理由は簡単、二人の転校生の受け入れである。
 ……あのさぁ。何で技術部長って肩書き持ってる人間がパシられなきゃいけないわけ? しかも何でわざわざ転校生迎えに行かなきゃ行けないわけ?
 それに最近何故か俺ばっかアリーナの整備やってる気がするし。重機動かすのってケツに来るんだよ?

 で、俺の隣には明日からの転校生。シャルロッ……シャルル・デュノア君が旅行用のキャリーバッグを持って立っている。
 大人気ないとは解っているが、こちとら愚痴ってないとやってられないのである。ラウラ来るまで時間あるし。あ、座れば?

「で、どうだ? 最近そっちは」
「そうですね……大きな事は何も。リヴァイブは少しずつ手を加えてますけど」
「何だ、まさか黒の棘尾外したとか言うなよ?」

 黒の棘尾<ブラック・テイル>、全ての第二世代武器中で最高の火力を誇るパイルバンカーである。装弾数一発。
 まあ要するに原作で使っていた【灰色の鱗殻】と同種の武器なのだが、やっぱり中途半端に何発かあるよりはロマンがある。
 どうせ原作通りの仕様になってるんだろうが……そう言えば何で機体名英語なんだろ。ラファール・ラニメ・クチュン・ドゥ、とかじゃねーの?

「そのまさかです。流石に一発きりじゃ使い勝手が悪すぎるので灰色の鱗殻って武器に変えときました」
「何だよぉー、そこにロマンがあるんじゃねーかよぉー」
「ロマンにこだわって負けたら元も子もないじゃないですか」

 馬鹿野郎! ロマンのない勝利など米のないカレーライスだ! それただのカレーだ! ナンでも食ってろ!

「全く、これだから『女の子』はロマンが解らんと言われるんだ」
「―――ドクトア。『僕』は『男の子』ですよ」

 ……全く。ヴァンの野郎、ここまで徹底的にやらんでも良いだろうに。どうせすぐバレるんだし。

「そりゃ学園行ってからの話だろうが。それに俺は知ってるんだし別に良いだろ」
「……そう、ですかね?」
「ああ。もし辛くなったら俺ん所に来い。人目気にしないで済むぞ」
「……ありがとうございます」

 と言うか身体測定とかあるの思いつかなかったのか? 俺が担当になってなけりゃ一発でアウトだったぞ?

「それにしても日本語上手いな。前会った時よりずっと綺麗な発音だ」
「ありがとうございます。それなら学園でもやっていけそうですね」
「まあ問題ないだろ。むしろもう一人の方が……あ、来たな」

 国際線の到着を知らせるアナウンスが鳴り、俺と『シャルル』はベンチに下ろしていた腰を上げる。

「もう一人ともお知り合いなんですか?」
「ああ。お前に会う少し前にドイツに居てな、その頃に」
「そう言えばそうでしたね。ドクトアってやっぱり凄い人なんですね」

 はっはっは、褒めろ褒めろ。あと無自覚なハニートラップを仕掛けようとするな、それは一夏にやれ。

「お、居た居た。おーい、ラウニャー」
「……私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒだと何度言ったら」
「って事でコイツがもう一人の転校生。仲良くしてやってくれ」
「は、はい」
「………。」

 おいおい、そんなに睨むなよ。照れるじゃないか。

「それじゃあラウラ、荷物はそれだけか?」
「はい。必要な装備は別途で本国に申請しますので」
「そうか。じゃあ行きますか」

 踵を返して駐車場へ。そう言えば最近、護衛のグラサンスーツが居ないんだけど何で? 政府さん、僕要らない子?

「でもなー、最近は色々と頑張ってんだけどなー。コア無しで動くアシストスーツとか」
「何なんですかいきなり」
「………。」

 IS学園の校章をボンネットにデカデカとペイントしたランチア・ストラトス、通称『ISカー』で高速をひた走る。
 因みに二人乗りの車なので助手席にシャルルとラウラの二人を乗せている。二人とも小柄なのでギリギリ乗れているが料金所が怖い。

「いやさ、とある国の政府とか色んな所からの要望でね。流石にIS以上とは言わんがデッドコピーとかは作れないか、って」
「できてるんですか?」
「試作品はね。コアの謎動力は再現できないからシールド系はほぼ全滅だけど」

 何気にエネルギー系大火力砲の次にエネルギー使ってるんだよね、シールドって。特にエネルギーシールドとか。

「シールドが無いって……空気抵抗とか大丈夫なんですか?」
「まあモロに受けるわな。あとPICと武装量子化も全面カットだな、コストが割に合わん」
「確かにその辺ってISの中でも金食い虫ですからね……」

 お、流石に自分の家がどこで資金使ってるかとかは知ってるんだ。まあテストパイロットだしな。

「だからいっそ飛ばさないでレスキューとかに使うって方向性になると思う。あとは機械化歩兵か」
「……分隊支援火器の個人使用等ですか?」
「ああ。他にも使い道は色々とあるが……例えばコレだな」

 俺はフロントガラスに指を一つ鳴らす。と、車の内装が全て消えて外の景色を映し出し始めた。
 正確には内装に合わせてモニターが起動し、車に搭載されたセンサーから入手した映像を映してるだけなんだが。

「わっ!?」
「これは……」
「こーやって運転用の視界確保、とかな。ハイパーセンサーと空間投射ディスプレイのちょっとした応用だ」

 シートやハンドルがいきなり空中に浮いているのは中々に恐怖心を煽るが、慣れてしまえば全方向が見れてむしろ安全だ。
 当然ながらこの改造は日本政府には秘密だったりする。8ナンバーの車検料は魅力的だが果たしてこれで取れるかどうか。

「本当なら腕生やしたいんだが時間がなくてな。変形機構入れると車としての耐久性が怖くてさー」
「「………。」」
「なぜそこで黙る。あとはエアバッグ代わりにカードリッジ式のエネルギー積んだバリアーかな」

 多分一個で車一台買える値段になるけど。誰が買うんだそんなモン。

「他にもPICとスラスターをバイクに乗せて空飛ばしたりとか、色々やってんだよ」
「はぁ……」
「………。」

 何だろう、この『凄いんだか凄くないんだかよく解らない人』を見る目は。
 あとラウラそっぽ向くな。お兄ちゃん悲しい。

「あ、そうそう。デュノア君の寮の部屋だが、織斑一夏と同じ部屋になるらしいぞ」
「っ!」
「……はい。解りました」

 お、ようやくラウラも反応したな。お前さ、軍事と織斑家以外ホント興味ないよな。

「ある一部が壊滅的に鈍感な事を除けば基本的には気の良い奴だ。仲良くしてやってくれ」
「……その一部が凄く気になるんですけど」
「はっはっは、生徒の個人情報をそう軽々と教えられる訳がないだろう?」
「どの口が言いますか!?」

 この口。どーせ一日で解るような事だし別に良いじゃんよ。



 今日から本格的に実機での授業が始まるらしいんだけど……あれって山田先生か?
 って、こっちに落ちてくる!? まずい!

「ひゃぁぁぁ~! どいて下さぁ~い!」
「うおぁっ!?」

 ドゴーン、と結構前に俺がやったようにグラウンドにクレーターが出来上がる。
 俺はギリギリで白式を展開したが、結局衝撃を殺しきれずに山田先生ごと転がってしまった。

「あいたたたた……先生、大丈夫ですか?」
「は、はい……あの、織斑君……その、手が……」
「へ?」

 手? 左手は頭を抑えてる。じゃあ右は? 何か柔らかい物を掴んでいる。もとい握っている。
 ……胸部装甲だ。そうだ、これは胸部装甲なんだ、衝撃吸収素材の。だから俺は悪くない!

「っ!?」
「ふふふ……次は当てますわよ?」

 立とうと身体を起こした直後に二筋の閃光が俺の前を横切る。この色はセシリアのビームだ。
 そ、そりゃそうか。事故とは言え先生の胸を思い切り揉―――って何だ今のガシーンって!

「一夏ァッ!」
「ちょ、お前それ洒落にならねぇっ!」
「問答―――無用ぉっ!」

 鈴の甲龍が持つ柳葉刀――青竜刀って言うと源兄ぃに怒られる――、双天牙月が連結されてこっちに投擲される。
 真正面から投げられたそれを間一髪で回避するが、確かあれって戻って来るんだよな!?

「って、アレ?」
「……戻って来ない?」
「あったしはぁ~荒野のぉ~はっこび屋さぁ~」

 見失わないようにハイパーセンサーを使いながら目で追うと、何故かいつもと違って直進を続ける双天牙月。
 そしてその先にはコンテナを満載した牽引車を運転する源兄ぃの姿が。暢気に歌なんぞ歌ってます。

「ってそんな場合じゃねぇー! 源兄ぃ! 逃げてぇー!」
「でありま……ってうおぉ!?」
「駄目ですわ! この角度では!」

 セシリアがライフルを構えて撃ち落とそうとするが、角度が悪いのか撃てていない。
 俺も瞬時加速を使って双天牙月を追いかけるが、当然ながら間に合わない。

「舐めんなオラァッ!」

 ……けど、源兄ぃはやっぱり俺の想像の上を行っていた。
 牽引車から飛び降りて、自分から双天牙月めがけて走り出した!?

「キャアァァァーッ!」

 クラスの誰かがこの後の惨劇を予想して悲鳴を上げる。だが、俺にはハッキリと見えていた。

 まるでスローモーションになったような世界で、双天牙月の刃が目の前を通り過ぎた瞬間に源兄ぃの左手が伸びる。
 そのまま柄に指を添えて身体を捻りながら手首を返し、竹とんぼのように回る双天牙月の下へと潜り込んでいく。
 そして指先の力だけで双天牙月の軌道を調整し、自分の頭上へと持ってくる。その慣性を殺さないように手首、腕への動きが大きくなる。

 ……気がついた時には源兄ぃ自身が何度か双天牙月を回し、ゆっくりと回転速度を下げている所だった。

「この凶暴チャイナが……何しやがるんだ、よっ!」

 いや、それだけじゃない。速度を落としつつも源兄ぃは双天牙月を振りかぶり、こちらへ投げ返してくる。
 ただ流石に腕力が足りなかったのか、それは何メートルか飛んだ後に地面へ深々と突き刺さっていた。

「ふぅー……っとに危ねぇな。おいやまやテメー、ラファール展開しといて何ボーっとしてんだよ」
「わ、私だって撃ち落とそうとしてました! ただ射線上に佐倉先生が居たから撃てなかっただけです!」
「まあ良いか。オイ鈴! テメー後で始末書と反省文と本国への報告書だぞ! 解ったな!」

 鈴を指差してから停車していた牽引車に源兄ぃが乗り込む。その迫力に俺達は何も言えなくなっていた。

「……凰、オルコット。お前達の相手は山田先生だ。良いな?」
「は、はい……」
「源さんの相手させられるよりはずっと楽だわ……」

 俺も同感だよ。と鈴の呟きに頷いていると、牽引車を操作して源兄ぃが千冬姉の後ろに移動してきた。
 牽引車には六つのコンテナが連結されており、前の三つに『打鉄』、後の三つに『疾風』と達筆で書かれていた。

「へい訓練機お待ち。打鉄三機とラファール三機」
「どうも。大丈夫でしたか、佐倉先生」
「織斑先生の鉄拳に比べりゃ、尖ってるだけの鉄板なんざ布切れと大して変わりませんよ」

 そして源兄ぃはどうしてこういう余計な事を言うんだろうか。千冬姉に攻撃されるの解ってるだろうに。
 あ、源兄ぃのTシャツにも『打鉄』って書いてある。見た感じだとコンテナのと全く同じだし、プリントの柄なのかな。

「げほっ、ごほ……まあ回転角と突入角度さえ解れば簡単ですよ。物理の勉強です」
「……相変わらずですね、佐倉先生は」
「人間そう簡単に変われるもんじゃないって。あ、そろそろ終わるな」

 源兄ぃが空を仰ぎながら言うと、丁度鈴とセシリアが山田先生にグレネードでまとめて吹き飛ばされた所だった。結局模擬戦見てなかったな。



 シャルルの班のメンバーが千冬姉にまとめて頭を叩かれているのを横目に眺めていると、源兄ぃが俺の班へやってきた。

「うっす。どうだ調子は」
「まあまあかな。やっぱり皆飲み込みが早いよ」
「まあ物珍しさだけで入学できてるお前とは違うからなー」

 うっ……確かに言われてみれば俺以外、全員が全国クラスのエリートなんだよな。千春だってそうだし。双子なのに……。

「そう言えば打鉄の設計したのって源兄ぃなんだよな?」
「ああ。第二世代機の国内コンペがあった時に正体隠して応募したらブッチギリで採用された」
「何やってんだよアンタは……」

 俺達の班が打鉄を使っていたので、ふと源兄ぃが関わってた事を思い出して尋ねたらしょうもない答えが返ってきた。

「ちなみにラファールも色々あって最終的に俺がやった。元々はデュノア君の機体に近い設計だったんだが、安定性を高めるために今の形に変えたんだ」
「へぇ……じゃあシャルルのやつの方が元々の形なんだ。ラファールのカスタム機って聞いたけど」
「ああ、あれもあれで俺がちょっとばかし手を加えてるがな。純粋な主機出力だとカスタムの方が高いぜ」

 そうか、じゃあ世界で使われてるISの殆どは源兄ぃ製って事なのか? あ、でも専用機は流石に違うか。

「そう言えば源兄ぃ、ISって装着する時にガニ股になるのは直せないのか? 俺はともかく女子がそのせいで歩き辛そうなんだけど」
「って言われても、元々歩く為に作った脚部じゃないからなー。足なんて飾りですって言った阿呆も居るくらいだ」

 当然ながらそんな輩は粛清しておきました、と笑う源兄ぃ。だから何やってんだよ……。
 確かに宇宙開発用のスーツに脚はあまり要らないだろうけど、今は地上で動く事もあるんだし少しは考慮して欲しいかな。

「あ、源兄ぃ。そう言えば一つ聞いておきたかったんだけどさ」
「ああ、何だ?」
「何でISってこんなゴテゴテしてるんだ?」

 あ、何か今押しちゃいけないスイッチ押した気がする。
 だって源兄ぃの目が光ってるもん。こういう反応の時は大抵しょうもない理由の時だ。


「それは……カッコイイからだっ!」


 ……やっぱり。



「と、言う事が昨日ありましてですね」

 タッパー丸ごと酢豚の昼飯とかその午後の俺の受け持ちの授業とかもありましてですね。
 因みに今日は3と4組の授業の日でしてね。あとここは原作同様1学年は4クラスでしてね。じゃないと俺が死ぬ。過労で。

「はぁ……」
「昨日一夏が言ってたのはそれだったのね……」

 今日は早めに準備して待っていると千春と簪が一足先に出てきた。自前のスーツ持ちって早いんだよな。
 簪は原作通りの黒地にオレンジのノーマルな物だが、千春は少しばかし形が特殊だ。
 紺地に白とカラーリングは一夏と同じだが、首元が開いており肩周りが大きく露出している。

 ―――要するに競スク型だ。無論俺の趣味だが、決して無意味と言う訳でもない。
 六花は肩にパックのジョイントがあり、それを支える可動型の装甲が肩に装着されるので露出していようが問題ないのだ。

「因みに俺は千冬みたいに甘くないぞ? 騒いだら島一周させるからな」
「何キロあるのよ……」

 それは秘密だ。

「でもさー、あの子らも大変だよねー。政府の意向だか何だか知らんがあんな激戦区に放り込まれてさ」
「確かに一組は専用機持ちばかりだけど……激戦区?」
「鞘当的な意味で。訓練機の圧迫が無いから転入自体は楽なんだけどさ、条約絡みで国との交渉がまた大変なんだよ……どこも一枚岩じゃないし」
「いや、いきなり政治的な話を出されても困るんですが……」
「だって事実だしなー」

 軍部が転入良いよって言ってるのに外務省が駄目だとか言い出したりするしね。お前ら仲良くせいっちゅーねん。

「その点日本は気楽だよな。一番動かしやすい代表候補生を同じクラスにしないし」
「……? 私……ですか?」
「タカくくってんだよな、他の国に行く訳無いって。ここの生徒会長の事忘れてんのかね」
「ゴメン源ちゃん、話が見えない」
「だから、ハニートラップ要員だよ。和名だと色仕掛け」
「い……っ!」

 ぼんっ、と簪の顔が赤くなる。自分が一夏にそうしてるシーンを想像したんだろうか、エロい奴め。
 あと千春さん、怖いんで睨まないで下さい。そうしてると千冬にそっくりなんだよオメー。

「って言うか源ちゃん、仕事は? 他のクラスの授業とかあるんじゃないの?」
「生憎と今は三年の開発科と研究科の時間でな。元々あの連中は頭良いからほっといても勝手にやってんだよ」
『それは大丈夫と言って良いんでしょうか?』

 六花よ、暫く見ない内に随分とツッコミが上手くなったな。あと急に喋るな、ビビるから。
 ん? ああそうか。簪がまだ帰ってきてないのか……って、まさかお前らこの状況に慣れてるのか?

「あとこっちの組は専用機持ちが少ないからな、俺も操縦を教える側に回るんだよ」
「え? 源ちゃん操縦できたっけ?」
「別に操縦できなかろうがイメージを伝える事はできるんだよ。それに、俺を誰だと思ってやがる」
『変態ですね。技術を持った』

 変態に技術を持たせた結果がこれだよ! ってやかましいわ。

「何をやってるんですか、佐倉先生……」
「ん、ああ。アクニャ先生。おはようございます」
「……おはようございます。織斑さん、更識さん、済みませんが一つ模擬戦を頼まれてくれませんか?」

 朝っぱらから憔悴した様子のアクニャ先生が現れる。ストレスはお肌の大敵ですよ。
 しかしこの二人の模擬戦か、良いね。面白そうだ。

「解りました。簪ー、そろそろ戻ってきてー」
「で、でも私……おっきく、ないし……え、だがそれが良い……? ―――ハッ、な、何?」
「模擬戦だって。操縦の前にどういう物かを見せたいんだって」
「あ……うん、わかった……」

 一体簪の中で一夏はどんな奴になってるんだろうか。すげぇ知りたい。
 あと千春のスルースキルが異常なまでに鍛えられている件について。

「それで、まさかアクニャ先生がお相手を?」
「まさか。二人にやらせますよ」
「なーんだ。久々に『闘牛アクニャ』の暴れっぷりが見れると思ったのに」
「む、昔の話ですよ。昔の。あははははは」

 嘘つけ。榊原先生と酒飲み行って『組』一つ壊滅させたって聞いたぞ、元スペイン代表。

「あ、そう言えば佐倉先生」
「ん? どうした織斑君」

 簪と準備運動をしていた千春がこっちを向く。まだ始業時間ではないが、他の先生の目があるのでちゃんと切り替えをしているのが偉いな。

「どうしてISのインターフェースってイメージ操作なんですか?」
「開発時のテストパイロットが誰だったか考えてみな。ホラ、あいつ結構機械に弱いじゃん。お前ん家にDVDデッキ置いたらその前で三時間唸ってただろ」
「……聞かなきゃよかった」

 今頃一組の教室では担任がくしゃみをしているだろう。



 やれやれ、聞くんじゃなかった。しょーもなさすぎるわね。

「千春……そろそろ……」
「オッケー、それじゃ六花。行くわよ」
『諒解』

 ああ、今日はそれなのね。解った、付き合ったげるわ。

「鬼に逢うては鬼を斬り」
『仏に逢うては仏を斬る』
「ツルギの理、ここに在り!」

 一度左手で顔を隠し、握りながら思い切り前に突き出す。その手を開いた瞬間、私は光に飲み込まれた。

『六花・グラップラー、展開完了』

 それは簪にも見せた事の無い、新たな力。だって昨日完成したばっかりだしね。
 肩、背中、腰のジョイントから1メートル以上の鉄の塊が生えたような姿。それが今の六花の姿だった。

「あれ……? それ……」
「新しいパック。楽しもう、簪」
「……うん。それじゃあ……先、行ってるね……」

 既にガードパックの『フォートレス』を見せた事があるせいか、簪は一言で納得してくれた。

「へぇ、早速そいつ使うのか。相性はあんま良くねぇぞ」
「大丈夫です。って言うか、弐式は全体的に隙が無いから相性もへったくれも無いですよ」
「それもそうか」

 始業のチャイムが鳴るのと同時に空へと飛び上がり、20メートルほどの距離をとって打鉄弐式と向かい合う。
 簪の背面装備は大出力の可変速ビームランチャー【V.S.B.R.】か……遠距離に持ち込まれたら駄目ね。

『制限時間は十分、外に出ないようにね』
「はい!」
「はい……!」
『それじゃあ、試合開始!』

 アクニャ先生の合図と共に私は前へ出る。それと同時に六花側の制御で手の中にGAU-ISが収まる。ナイスタイミング!

「ダダダダダダダダァーッ!」
「当たらない……!」
『もーうまーんたーい、です』

 反動を抑えるためにGAU-ISを腰溜めに撃つ。本来ならそれでも集弾率は悪いけど、生憎と私は一人じゃない。
 そう、六花がパワーアシストに回すエネルギーをリアルタイムで調節してくれている。特に今回は接近するまで六花の出番は無いしね。

「この……! コンテナ1、展開……発射!」
「げっ!」
『熱源8、接近中。ミサイルです』
「まだ……ヴェスバー、高速モード……!」

 本来ならマルチロックシステムにより『敵の迎撃を回避しながら追尾する』ミサイルだが、簡易マルチロックシステムで稼動している現在は純粋な追尾弾だ。
 簪はマニュアル入力によりそれと同等の攻撃が可能だが、現在装備している背面パックの都合によりそれをするのは多少手間がかかる。
 が、別に牽制として使うならわざわざ難しい制御を行う必要は無い。第一、八発程度のミサイルが直撃してもシールドエネルギーは大して削れないのだ。

「六花! ミサイルは私が迎撃するからビーム射撃警戒!」
『了解。V.S.B.R.内に高熱源確認、射撃可能まであと約3秒』
「早いっての! ……よし、迎撃完了!」
「遅い……!」

 両手の装甲を量子化して外し、マニュアルでヴェスバーを高速モードへ切り替えて射角調整まで行う。直後、空に二筋の光が走った。
 粒子ビームを高速で放ち、貫通力を持たせるタイプの射撃。パーツの破壊ではなく絶対防御の発動を狙った攻撃である。

「次弾発射まであと何秒!?」
『二十秒と推測―――警告、熱源16接近中。ミサイルです』
「ああもう埒が明かない! 突っ込むわよ!」
『了解。エネルギー調整をパワーアシストからスラスターへ変更します』

 接近戦を警戒しているのか、簪はアウトレンジからの攻撃しかしてこない。
 が、今の装備でそれを選択していると言う事は、両手をその制御に使っていると言う事だ。
 それなら一度接近してしまえばこちらの勝ちは間違いない。ならば突っ込む。どうせ大した威力じゃないし。

「来た……!」
『警告、近接用装備を確認。作戦が読まれています』
「問題なし! 六花、メガアーム展開!」
『了解。以降アーム制御へリソースを割り振ります』

 弐式が対複合装甲用超振動薙刀【夢現】を持っているのが見える。確かに簪は接近戦でも強いけど、それはお互いに腕が二本だったらの話。
 六花が肩、背中、腰のロックを外し、『グラップラー』の真の姿を見せる。バシャ、という音と共に折り畳まれていた『六本の腕』が開放された。
 近接重量型ISの主腕出力並みのパワーを持つサブアームによる格闘戦、それがアームズパックの真骨頂だ。

「マシンアーム……!?」
「行っけぇぇぇぇっ!」

 簪が気づくがもう遅い。弐式の機動性は高いけど、グラップラーパックはそんなに重くない。だからこの距離なら逃げられない!

「しまった……!」
「六花!」
『一番、二番、敵IS主腕拘束完了。三番、四番、五番、六番、攻撃開始』

 四本爪のアームがガッチリと弐式の腕を掴み、機体を密着させて夢現の間合いよりも内側に入る。この距離なら薙刀は逆に使い辛い筈だ。
 私もGAU-ISが使い辛くなったので量子化し、左腕に格納してある特殊複合ナイフを展開。超至近距離で簪めがけて振るって絶対防御を発動させる。
 その間も目まぐるしく背中と腰のアームが弐式のアーマーを殴り続け、あっという間にシールドエネルギーがゼロになった。

『バトルオールオーバー、バトルオール痛っ!』
『なにやってんですか佐倉先生! ……試合終了。勝者、織斑千春。二人ともご苦労様、降りてきて』



 千春が簪に接近戦を仕掛け、運良く捕まえる事ができたので勝負は千春の勝ちになった。
 まあ試合の運びとしては遠距離で戦う簪と近距離戦に持ち込もうとする千春の組み合わせになったし、タイプが噛み合わない場合の試合としては良い感じだったろう。
 で、今は何をやってるかっつーと、

「通常兵器でISを倒す事は実は不可能じゃないぞ。まあ、一個師団で足りるかどうかは解らんが」

 何故か戦術講義みたいな事になっている。アルェー?
 俺は首をかしげながらも次の生徒にラファールに乗るように指示する。まだ授業中なんだぜ。

「でも佐倉せんせー、ISにはシールドバリアーがあるじゃないですかー。攻撃は当たりませんよー?」
「当たりはしないがエネルギーは減る。ゼロになれば動けなくなるからそれでアウトだよ」
「でも機動性を高くすれば当たらないんじゃないですか? そうすればエネルギーも減りませんし」

 んー、まあ中学出た直後じゃこんなもんか。

「飽和爆撃って知ってっか? 絶え間なくミサイルやら何やらをぶち込み続けるんだ。そうだな……ざっと48時間ぐらいか」
「えー、きっと大丈夫ですよー」
「そりゃ機体はな。だが中身が持たん。丸二日爆音と衝撃に包まれてみ、まずアウトだ」

 若干想像し辛いが、爆発音や振動というのは割りと精神に来るモノだ。
 そりゃ想像できる経験なんざ無い方が良いが……この学園の生徒である以上はそういう事も考えなきゃならん。

「でも先生、そもそもそんな攻撃受け続けるとかならないんじゃないですか?」
「ネックはそこなんだよなー。逃げられたらお終いだし、そもそも一体だけとも限らんし。三体以上一緒に居るとさっきの作戦効かないし」
「ふーん」

 あ、興味ないのね君達。先生ちょっとショック。
 とか黄昏てたらさっき送り出した子が戻ってくる。はい次ー。

「それよりセンセー、聞いて下さいよー。こないだ私、町でイケメン見つけたんですよー」
「……またその手の話題か。で、連絡先の一つでも聞いてきたのか?」

 部活か何かで上級生から『アレ』を聞いたのだろう、確かこの子は一度もその手の相談はしてこなかった筈だ。

「えーまー。それでセンセー、こういう事の相談に乗ってくれるって先輩に聞きましたけどー」

 全部ビンゴかよバッキャロウ。別に乗りたくて乗ってる訳じゃねーんだよ。ファッキン。

 ……ここIS学園には、俺を含めて常時居る男が片手で足りるくらいしか居ない。
 更に気楽に相談ができる相手、となると更に減る。この時点で一夏はただのパンダだからアウトだ。
 そこで轡木さんか俺かになる訳だが、そこは花の女子高生。悩みなんて色恋沙汰と体重の事が八割である。
 で、年齢の関係上、色恋沙汰が俺へと回ってくるのだ。彼氏持ちはむしろ既婚者の轡木さんの方へ行くが。

「……そんで聞きたいのは何だ? 細かい所は俺にも解らんぞ」
「んー、男の人ってどういうのが好きなんですかー?」

 知るかボケ。

「むしろ『絶対に許せないのは何か』を本人にそれとなく聞くのが一番だぞ」
「えー、何ですかそれー」
「個人の嗜好ってのはそれこそ千差万別でな。そいつ自身の事を知らん事にはどうしようもない」
「おっかしいなー……センセーに聞けば大丈夫って聞いたのにー……」

 だから知るかボケ。

 ……こちとら最初期からISに携わってるせいか色々な異名を持っている。左手がサイボーグだから『神の手』とかな。
 そしてその中に『整備の神様』というのがある。俺が弄った機体は他の連中が弄るのより遙かに性能が上がるから、だそうだ。
 そりゃIS技術広めたの俺達だからな、俺達が作業しやすいように規格作ってんだよ。それもある意味当然だ。
 そしてここからが問題なんだが、当然ながらそんな異名も学園内に広まっている。そりゃそうだ、IS絡みの話なんだから。
 けどどこがどうなったのか『整備の神様』のご利益が『恋愛成就』になっている。どうしてこうなった。

 まあ、理由はおおよそ察しはつくが。

「男ってのは単純なもんでな、余程の事がなけりゃ女の事は嫌わない……いや、嫌えないようにできてるんだ」
「そうなんですかー?」
「そうなんですよ。だから多少小奇麗にしてれば嫌いはしないさ。あ、でも高慢な奴は大抵嫌われるぞ」
「んー、わかりましたー。あとでそれとなく聞いてみますー」

 この学園の生徒ってこのレベルのアドバイスで十分なんだよな。顔は全員良い方だし、ここの生徒ってだけでかなりのステータスだし。
 だから最低限の事を言ってやるだけで上手くいく。そしてアドバイスに乗ってやった結果が『恋愛成就』な訳だ。どうしてこうなった。

「そう言えば先生。先生って好きな人とか居るんですか?」
「ん? まあ居るけど」
「え!? 誰!? 誰ですか!?」
「やっぱり同僚の先生!? それともまさか禁断の愛ですか!?」
「轡木さんですねわかります」
「アッー!」

 うん、後半黙れ。

「違うってーの。まあ、名前だけならお前らも知ってる奴だぞ」
「え? 名前だけなら……誰?」
「んー……有名人ですか?」
「そりゃあなあ。世界的な有名人だし」

 うーんうーんと悩む俺の担当の女子達。やはりこういう話題の食いつきは半端じゃないな。

「束だよ、篠ノ之束。幼馴染なんだ」
「あぁー。確かに有名人だわ」
「ちょっと腑に落ちないけど……でも失踪してるって聞きましたけど」
「まあ何処にいるかは解らんがな。連絡つけるだけならできるし」

 と言うかケータイが繋がるって事は電波が何とかなる所に居るって事か?
 あ、でも基地局ハッキングすりゃいいのか。犯罪だがそれくらいサラッとやってそうだ。俺だってできる。

「そう言えば先生って篠ノ之博士と一緒にIS作ってたんですよね。もしかしてその頃から?」
「もっと前からだな。小学校上がる前くらいか」
「早っ」
「性格はその頃から全然変わってねーよ。身内にゃトコトン甘いがそれ以外の人間にはトコトン冷たい」

 まあ俺も人の事は言えんがね。この学園に居るのも全世界に干渉しやすくする為だし。
 肩書き使った正攻法って強いからね。ぶっちゃけ他人の評価とかどーでもいーっす。

「……ん?」

 はて、何か忘れてる……いや、この微妙な違和感は違うな……。
 ……あれ? 俺こないだ箒に何て言った? あれ? えっと……。

「うわっちゃぁ……」

 そーだよ、アレ禁句じゃん……ったくメンドクセーなあの掃除用具は。



 そして唐突に終わる。今回試験的に戦闘描写を入れてみました。んー、あんまり長くならん。

 源蔵はある意味では束以上の狂人です。狂ってる事に周りが気付かない事が最大の問題。
 ただ転生チートなので転生前の人格をベースにまともな仮面を作ってます。作れちゃってます。

 あと今回、原作で束さんが殆ど運動してないのに動けてるように源蔵も人間離れした事してます。
 物理の勉強したってあんな事できないよ! 出来る訳無いよ! と物理はほぼ毎回赤点だった人間が言ってみます。


 次は七巻絡みの設定を修正した後、源蔵視点メインで弐式開発記になると思います。なのでこの先は少々お待ち下さい。では。





[27457] 番外編「弐式開発記」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/09 23:17


 ※この話は第六話の途中に入ります。
  原作の時系列としては鈴が転入してくる前で……あれ? マジで? そんな早いの?



「サプラーイズパーティー!」
「は?」
「………。」
「……何やってんだ、源兄ぃ」

 夕飯食って整備室の様子を見に来たら変な目で見られたでゴザル。ノマッキッ! やべぇ死にてぇ。
 と言うか一年の専用機持ち(と掃除用具)が全員集合していた。何、お前ら暇なの?

「まあ見回りついでにどんな様子かな、と。どうだ?」
『正直作り直した方が早いのでは、と皆様考えていたけど口にできなかった状況です』
「ちょ、六花っ!」
「うぅ……」

 六花の辛辣な表現に倒れこむ簪。フロートユニットの前後ぉぉぉぉん!に着いたジェットブースターが床にぶつかってちょっとへこんだ。

「まあ中途半端に直すよりはそっちの方が良いと思うがね。どーせ完成してからも弄るんだし」
「そう……ですけど……」
「まーちょっと見せてみ」

 何も出来ないくせにメインコンソールを占領していた一夏をどける。代表候補生の二人ならともかく何故お前が座る。
 まー本格的な整備実習は夏休み終わってからだから、今の時期なら出来ない事は何もおかしくはないんだがね。

「えーっと……駆動部の反応がコンマ下1桁で遅い!? コア適正値13.64%!? 何だこりゃ!?
 火器管制は打鉄のまんまだし、シールドエネルギー出力も高すぎるぞこれ。主機はリミッターかかってるし……」
「そ。もうどこから手をつければ良いのか解んないくらいチグハグなのよ」
「流石に私もこんな状態のISはどうすれば良いのかサッパリでして……」

 だろうな。こりゃもう整備科でもかなり上位の連中じゃないと何して良いか解らないレベルだ。
 それにこの面子の中で一番ISに詳しい代表候補生組がお手上げなんだ、他の連中もそうだろう。

「この調子なら全部ガッツリ作り直した方が早いな……あ、B案使うなら装甲形状も変えないといけないぞ」
「あの、システムの最適化とかは……」
「ロクなモン積んでねーのに最適化とか意味ねーから。あと特性制御……速度重視だからスラスター類だな」

 この分だと機体制御もドノーマルの打鉄だろうし、メインスラスターの出力と姿勢保持スラスターのチェックも必要か。
 高速用のシールドバリアーも搭載してないかもしれないし、バリアーの展開ポイントも弄らないとな。PICの緩衝領域からずらしとかないと反転しちまう。

「えーっとそうなると偏向重力推進角錐を……前に五か六かな? 後はメインの反応次第で脚部弄って……反重力制御も危ない気がする」
「……箒、解るか?」
「わ、私に聞くな!」

 はいはいハーレム作って腎虚で死ね。ハイパーセンサーは基本的に独立した物だから弄らなくて良し、と。
 ウイングスカートは少し削っとくか。腰溜めに撃つ形になるから……ヴェスバーだな。あとはまあ六花の余りパーツで良いだろ。

「スラスターと各部ブースター、装甲に量子展開装備、内蔵火器も見直しだな。殆ど全部じゃねーか」
『残りはハイパーセンサーと競技用リミッター程度ですか』
「コ、コアとか通信系は大丈夫だから! 簪、そんなに虚ろにならないで!」

 次々と修正点が明らかになり、まとめに入った所で簪の色素が完全に抜けた。真っ白に燃え尽きた感じだ。
 けどねお嬢ちゃん、まだ終わってないんだよ。

「マルチロックオンは……後回し。推進ユニットコントロールシステムは最優先で直さんといかんな、機動性重視だし。
 エネルギーバイパスオペレーティングシステムをシミュっとく必要があるし、シールドバリアーの制御システムも弄らないと駄目か」
「か、簪! 大丈夫か!? 傷は浅いぞしっかりしろ!」
「……う、うん。大丈夫、織斑君……」

 途端に険しくなる女性陣(-千春)の視線。まあ役得の代償って事で。等価交換ですよ。

「参ったな……データチェックとパーツの新造も必要か。流石に手が足りんぞこれは」
「そんな……」
「ああいや、今日中に済ませるなら、って意味でな。俺一人でも週末には完成するぞ」

 それくらい時間あればこのレベルの機体なら1から作れるがな。あ、でもコアの習熟時間が必要か。

「じゃあそれで良いんじゃないの?」
「いや、男に二言は無い。今日中と言ったからには今日中に終わらせてやる」
「どうやってだ? 手が足りないって言われても俺達じゃ邪魔になるだけだと思うけど」

 フッフッフ、俺を舐めるでない。不摂生してるからマズいぞ。

「簪は一旦コイツ仕舞って第一多目的工作室に移動。あと千春はこの連中呼んでくれ。一人か二人来ればいい」
「っ! ちょっと源ちゃん、いきなり六花に表示しないでよ。ビックリするじゃない」
「だって空間投射やるより楽なんだもんよ。んじゃ頼むぞー」

 そう言って俺は第二整備室を後にした。早足で第二アリーナの横を通り、『注文の多い整備室』の電源を入れる。
 と、ゾロゾロと鴨のように一夏達が追いかけてきた。どーした、もう用はないぞ?

「あ、源兄ぃ、俺達はどうしたら良いんだ?」
「別にどうも。見学するなり帰って寝るなり、好きにしろ」
「わかった。じゃあ見学してるな」

 ほほう? 女性陣の帰りたいオーラをガン無視してまでメカが見たいのか。良い傾向だ。
 果たして女性陣が帰りたそうにしてるのはIS開発に興味が無いからなのか、新たなライバルの誕生を危ぶんでいるのか。多分後者だな。

「それで源蔵さん、さっき千春に見せていたのは何のリストだったんですか?」
「ん? ああ、二年と三年の成績上位者リスト。あいつらなら助手に丁度良いからな」
「そんな理由でこんな時間に生徒を呼びつけるんですか……」

 大丈夫だ。アイツは間違いなく来るだろうし、他二名ほど乗りそうな連中も居る。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 二年整備科黛薫子、ただいま参上!」
「お、早速来たか。流石に早いな」
「そりゃーもうジャーナリストはスピードが命ですから! それで先生、報酬は頂けるんですか!?」
「交渉次第だ。好きにしろ」

 早速眼鏡を光らせたパパラッチがカッ飛んで来た。こんなんが整備科の総合成績一位なんだから世も末だよね。
 ……おい、誰だ今お前が整備科のトップなんだから下につくのもそんな連中ばっかりなんだろって言った奴。その通りだよ。

「あ、佐倉先生。京子とフィー呼んどきました。私達居れば充分ですよね?」
「ああ、お前呼べばあの二人も来るだろうと思ってな。どうせ担当機も無いし暇だろ?」
「暇ってほど暇じゃないですけどねー。まあこういう事に参加できるくらいには」

 黛が総合成績の一位なら高梨京子は実技の一位でソフィー・カークランドは座学の一位だ。とは言え転科時のテストの成績なんだが。
 この三人は成績は優秀だが、本来持つべき担当機が存在しない。中にはグループを掛け持ちしてる連中が居る中で、だ。
 聞く気が無いんで聞いてないが、多分黛は部活をやる時間が欲しいんだろう。他二人も似たようなものの筈だ。

「源ちゃん、先輩が他は呼ばなくていいって言ってたから呼ばなかったけど……大丈夫なの?」
「おお、ちゃんとこっちに来たか。確かにあいつらが来れば問題は無いぞ。二年整備科の3トップだからな」
「……先輩、そんな凄いんだ」
「あーやって一夏に突撃インタビューしてるの見る限りじゃそんな面影は一切無いがな」

 人手を呼びに行った千春が戻って来た。こういう時に無駄に広い千春の交友関係は便利だな。一度会っただけでコネ作れるって相当だぞお前。
 話の続きだが、二年のトップ3人は担当機を持たない代わりにフリーで動いているのだ。今回みたく3人で組む事もあれば、バラバラに担当する事もある。

「ずっちーん、メガゲーン、お待たせー」
「ふにぃ。お待たせしましたぁ」
「お、来たな二人とも。そんじゃ俺も準備しますか」

 黛が高梨とカークランドに説明している間に俺は工作室の壁の前に立つ。そこには人間の腕サイズの穴がぽつんと空いていた。

「ツゥゥゥゥルコネクトォッ!」

 バチンと左腕の義手を外し、その穴に思い切り腕をぶちこむ。ガチリガチリと二段階の接続が完了したのを確認し、俺はゆっくりと腕を抜いた。

「メガッ! アァァァァムッ!」

 俺の声と共に、某勇者王に繋がるアイツよろしくサイズが合っていない腕がその姿を現す。さあ驚け! 突っ込め!

「……誰ももう突っ込む気無いっぽいよ?」
「……ローテンションなんて大嫌いだ。あ、簪。そこで展開してくれ」
「は、はい」

 最後の情けとばかりに突っ込んでくれた千春の優しさが逆に悲しい。
 だがとりあえずこれで必要なものは全て揃った。後はサクサク進めるだけだ。

「そんじゃ始めるぞ。メガアーム、展開っ!」

 ジャキンバリンバシャン! と音を立てて巨大な左腕がバラバラになる。
 いや、正確には細い副腕の集まりであった本来の姿を現しただけなのだが。

「き、気持ち悪っ! 何それ!?」
「何を言うか。コイツは精密作業用多目的工作腕『メガアーム』、見ての通り工具の塊だ」

 ほれ、と気持ち悪いとか言ってきた鈴の目の前に腕を出してやる。この副腕一つ一つには工具が備え付けられているのだ。
 モンキーレンチにマルチクランク、高周波カッターとレーザーアームは勿論、オシロスコープとマルチテスターも付いている。
 他にも超音波検査装置やプラズマバーナー、火炎放射器にデータスキャナーと半田ごてまである。あと細かい物を持つためのサブアームもバッチリ。完璧だ。

「いや気持ち悪い物は気持ち悪いから」
「……フン。学園内で使える工作機械の七割がこの中に納まってる、と聞いたら凄さが解るか?」
「残り三割は?」
「サイズが俺よりでかいものばかりだ。三次元工作機とかな」

 とと、いかんいかん。ついムキになっちまった。
 もう遅いしさっさと終わらせてしまおう。総員、整備体制に移れ!

「よし、黛はエネルギーケーブルもってこい。一番から四番までと七番八番。三本ずつ」
「わかりました!」
「高梨は……よしできた。この図面通りに新規パーツ作って来い」
「了解っす」
「カークランド、装甲のロック全部外してケーブル全部見えるようにしとけ」
「ふゆぅ。お安い御用ですよぉ」

 テキパキと俺の指示の下で三人が動く。俺が次に何をしようとしているのかを予想し、行動を先読みしているからできるスピードだ。
 これは俺が整備のイロハを教えたからできる事であり、作業スピードが基本的にクソ早い束とでさえ同じ事はできない。

「……先生、キーボードはノーマルなんですね」
「ん? ああ。配置を変える奴は二流だろ。ボイコン、アイコン、ボディコンに頼ってる内は三流」
「……そう、ですか?」

 手持ち無沙汰なのか簪が尋ねてくる。そう言えばさっきもカスタムしてたの使ってたな。

「タイプ速度くらい普通にキーボード触ってりゃ速くなるっつーの。まあ一番早いのは義手からの直接入力なんだが」
「先生、ケーブル持ってきました!」
「あふぅ。せんせぇ、ロック解除完了しましたぁ」
「オッケー……見えた、そこだぁっ! この指戯を受けてみよ!」

 メガアームの工具を限界まで使ってケーブルの交換をする。だから鈴、キモイとか言うな。
 全身の換装は普通ならどんなに早くても十分はかかるが、今の俺なら七分前後で終わる。

「わはぁ。せんせぇ、私システムやりますねぇ」
「あ、それじゃ私も。ここって投射ディスプレイ多くて良いですよねー」
「応、それじゃそっち頼んだぞ。終わり次第俺も合流するな」

 さぁて、まだまだ行くぜぇ!



「主機リミッター解除、左メインスラスターの二番から五番ポート全開放! オルコット! 下から順に二番七番三番四番でケーブル繋げ!」
「は、はいですわっ!」
「エネルギーライン確認……右脚部の姿勢制御用が安定しねーぞ! 鈴! ネジの締まり具合チェック!」
「解ったからその腕近づけないで!」
「簪! 火器管制のオートとマニュアルの設定変更できたか!?」
「あ、あと五分……!」
「遅い! 六花、簪のカバー! 千春は六花用のジョイントパーツの予備持って来い!」
『了解しました』
「はいっ!」
「一夏と箒は高梨が戻り次第新造パーツにヤスリかけてバリ取り!」
「わ、わかった!」
「か、角を削れば良いのだったな……」

 フハハハハ乗ってきたぜぇぇぇっ! YEAAAAAAAAAAAAAAAAH!

「黛! 姿勢制御できたか!?」
「できてます! 現在メインスラスターとの出力の見直し中!」
「なら終わり次第スラスターの稼動域チェック、それも終わったら関節やれ!」
「はい!」
「カークランドはPICの調整終わったか!?」
「にやぅ。現在重力制御系とバリアー系と同時に進行中ですぅ」
「解った。なら全部終わったらバイパスやれ!」
「みゆぅ。解りましたぁ」
「新造終わり! ここ置いときますよ!」
「よし一夏と箒はバリ取り! 高梨はこっち来てガワ弄るの手伝え!」
「解りました! レーザーアームどこっすか!?」
「俺の腕の使え! 実習のより出力高いから気をつけろよ!」
「はい!」

 えーっとアレ終わり、ソレこれから、ドレ手ぇつけてない? コレ今終わった!

「関節チェック終了! ケーブル接続終わりましたか!?」
「終わってる! バイパスチェックは!?」
「ひにぅ。今終わりましたぁ」
「メガゲン! ジョイント来ましたしパーツ搭載始めますよ!?」
「解った、やれ! よし、推進系も終わったしあとは最終チェックか。簪、火器管制良いか!?」
「はい……チェックおねがいします……!」
『とりあえず内蔵火器と現在登録されている量子展開用武装分は終了しました』
「えーっと……よし、足りない分は勇気で補え! 各員接続してるもん全部外して機体から離れろ!」

 わらわらと機体に張り付いていた連中が離れ、最終拘束具も解除される。

「……主機点火、副機起動……PIC正常動作確認。シールドバリアー展開……干渉なし、偏向重力・反重力制御共に問題無し……」
『コア・ネットワークへの復帰を確認。通常モードでの初期起動を確認』
「火器管制システムオールグリーン……ハードウェアの正常動作を確認中……完了」
『チェック項目の外部参照を開始します……終了しました。異常なしと判断します』

 ガチン、と何かが嵌ったような音と共にゆっくりと打鉄弐式が浮かび上がる。

「セルフチェック全て正常……全チェック項目パス……打鉄弐式、起動……!」

 ドン、と不可視の衝撃が弐式の全身から迸る。車で言えばセルキーを回しきり、エンジンがかかった状態だ。

「よっしゃぁ! 成功っ!」
「あたりめーだよ、幾らテンション任せの突貫とは言え俺が関わってるんだ。問題なんざある訳ねーっての」

 ひゃっほー! と全員で成功を喜ぶ。これこそモノ作りの醍醐味だな。

「よーしお前ら寝ろ寝ろもう寝ろ。俺も眠いから寝る」
「はーい。簪、一緒にお風呂入ろ」
「……うん。あの……佐倉先生」
「応」

 ゾロゾロと生徒達が寮へ戻っていく。その最後尾に千春と簪が居た。

「ありがとう……ございます……」
「何、諦めなかった奴の背中をちょいと強めに押しただけだ。それにこれからが大変だぞ、調整とかな」
「……はい!」

 最後に一際強く頷き、二人は手を取って駆け出していく。うん、青春だねぇ。百合の花が似合いそうだねぇ。

「ま、コアの適合率は少しずつしか上がらんし……んぁ?」

 俺も風呂入って寝るか、と踵を返すとなにやら足の裏に硬い感触が。


 ネジ。


「………。」

 ………。

「……知ーらねっ」



 書いてみて分かった事。整備シーンって迫力出し辛くてムズイでゴザル。
 とりあえずマッドらしくニタニタ笑いながらやらせてみました。

 さぁて次はラウラ戦だぁ!




[27457] ネタ解説という名の言い訳その1
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/07/20 11:38


 えー、前々からネタ解説が欲しいとの事でしたのでやってみようと思います。
 でも、正直に言うと自分でもどこにネタ仕込んだのか覚えきれてません。マジで。

 と言うかこんな状況だから「ネタ入れ過ぎじゃね?」とか「マニアック過ぎて解んねーよバーロー!」とか言われるんですねゴメンナサイ。
 って事でまずは前書き入れて10本目まで。



第一話

せいびのかみさま:まず大本のタイトルからパロネタと言う異常事態。元々チラ裏でひっそりやる予定だったんで……ええ。
 元ネタになる人、と言うかキャラは一杯居ます。パトレイバーのおやっさんとか、ナデシコのウリバタケさんとか、ガンダムのアストナージとか。ヤマトのサナダさんもですね。

そうだ、宇宙行こう:第一話のタイトル。元は「そうだ、樹海行こう」……ではなく、京都ですね。JRのポスターだった筈。

佐倉源蔵:名前はパッと思いついたので理由は特に有りません。あんまりチートオリ主っぽくないのは失敗かも。性格のぶっ壊れ具合、と言うかゲスっぷりは最初から束に合わせてたのでモチーフは特に居ません。左腕が義手なのも身長が松風の主人と同じなのもなんとなく。
 ただSEKKYOUがやたらと多いのは謎。千冬さんとかがしてくれないから必然的に……なのか? 基本的にチート部分以外は馬鹿。作者はSSとかは頭空っぽにして読むタイプなので難しい事は考えちゃ駄目。

転生チート:これもある意味パロネタ、と言うかテンプレ。ただし俺ルールとして「公式チートには勝っちゃ駄目」と言うのがあるので中途半端に。
 元々グダグダ言いながら細々とやるつもりがいつの間にかこんな所まで……皆様のご声援のお陰です。多謝。

ゆかりんヴォイス:釘に負けず劣らずの中毒性を持つ音波兵器の一つ。別名般若砲、ゴメン嘘。
 子供の頃は某冥王のような声でゲンゾーと戯れて居た事でしょう。マジモゲロ。

パンジャンドラム:変態兵器王国エゲレスが生んだ最強兵器の一角。これに勝てるのはドイツとかです。ソ連は小銃とか小物が多いし。
 敵陣に突っ込んでく爆弾のつもりがそもそも直進が難しい、と言うあまりの本末転倒っぷりが話題に。中にモビルスーツを載せればアインラッドですよお兄さん。

織斑千春:ゲンゾーだけじゃ戦闘シーンつまんなくね? ってか折角のチートなんだしオリIS作るか。ってので生まれたキャラ。マジで特別な理由は有りません。
 コイツが居ないとゲンゾーが某メタトロンばりのドヤ顔でISの解説をするだけのSSになってしまう罠。六花とのコンビは漫才に最適。

○○……だと……?:鰤。もといジャンプの死神漫画の名台詞。最近のジャンプは熱さは無いけどネタが一杯でおいしいです。
 そう言えば束は無かったけど千冬さんはセーラー服着てたね、冬服だけど。ババァ無理すんウボァー。

中二病:男の登竜門。表記ゆれで厨二病とか色々あるけど一番変換しやすいコイツで。
 俺はあんまり激しいのはなりませんでした。その分今でも続いてます。

ハミングバード:元はモビルスーツのゼータプラス、そのバリエーションの一つ。変態兵器ディープストライカーの随伴機プランだそうな。
 フルアーマーよりもこういう速度特化の方が好きだったりします。Ex-sよりSガンダムBstとか。ブースターの形はそのまんまで想像して下さい。

そんな装備で大丈夫か?:大丈夫だ、問題ない。すっかり有名になったメタトロンさん。でもゲーム自体の売り上げってどーだったのよ?
 個人的にはメタトロン繋がりでデモベネタ入れたかったけど、どーも入れる場所が見当たらないのです。ぐぬぬ。なにがぐぬぬだ。

少し頭冷やそうか:ゆかりんヴォイスならこれを入れなきゃね! と言わんばかりの冥王攻撃。初見では驚きました。

天地魔闘の構え:上のネタを言った時の構えがバーンさまのコレにしか見えないと言う二段ネタ。
 更に元のネタは空手の天地の構えだと思うよ、俺。まあこの辺は特に解説しなくても良いですよね?

グーン:種に何かこんな名前の水陸両用モビルスーツが居たよねって書いてる時に思い出したので。ザフトの命名基準ってマジ謎。

○○ですねわかります:ネット上の独特の言い回しの一つ。まあこの辺も細かい解説は無しって事で。面倒ですし。

聖闘士:と書いてセイントと読む。読めるかボケ。もみあげの長さとジャンプっぽさはかなりの高さの聖闘士星矢より。
 今は確かチャンピオンでしたっけ? 一体何時の間に……。

歪みねぇな:だらしねぇな、仕方ないね。ニコ動発のパンツレスラー達が持ってる三つの袋。お袋、胃袋、玉袋です。あれ?
 ネタの元は節操ありません。元々が『チートオリ主(笑)書きてぇ』から始まった話ですし。

某最強地球人:鼻が無いので本当に地球人かどうかは謎。同じ理由で天津飯もアウト。気円斬は最強技の一角だと個人的に思ってたり。

フリーザ様:もうこれ解説必要あんの?ってくらい有名なお方。割としつこい。兄貴はもっとしつこい。
 「私はあと二回~」って有名な台詞あるけど、あれって一回変身した後の台詞ですよね、確か。

DOGEZA:これもある意味ネタ。ネゴシエイターにコレをするべきかどうか相談したら問答無用でビゴー呼ばれるから気をつけよう。

オリジナル第一世代IS群:ネタだったり違かったり。これと条約加盟国を考えてる時が一番楽しかったのは内緒。
 桜花は確か同じ名前の兵器があったよね、って所から。他の国のは第二・第三世代の名前から逆算気味に考えました。
 ただブルーハリケーンはひっくり返すとハリケンブルー、ダブルホーネットは怒首領蜂の真・緋蜂改(シン・ヒバチカイ)と絡めてあったり。解りづらーい。

無問題:本当は「モウマンタイ」だけどあえて「むもんだい」って言ってます。
 同名の映画よりもデジモンの方を思い浮かべるのは俺だけじゃない筈。

どーも、○○です:これもパロネタ。BSのコマーシャルです。どーもくんはこっから出てきたキャラ……で良いんだよね?

大魔王からは逃げられない:ボス戦から逃げれるゲームって最近増えてきましたよね。なドラクエ。ダイ大だと一種のスキルと化してて思わず膝を打ちました。

嫌いじゃないわ!:ネタが一人歩きしてる感があるルナドーパンドさん。正直言うと俺もこれぐらいしか印象ありません。

 ここまでで一話分って……どういうことなの……。



第二話

オリジナル第二世代IS:テンペスタとメイルシュトローム以外はオリジナルです。まあ前二機も性能とかは想像なんですが。
 シュトゥーカは言わずと知れたルーデル神の愛機。ゲン担ぎですね。ビッグバードはセサミストリートのアイツ。正直言うとキモいですよね、アレ。

オリジナル単一仕様:各国の第三世代技術から逆算してみました。やっぱりこういうの考えるの超楽しい。しかしモンド・グロッソの開催って何処なんですかね?

ボーちゃん:ドイツでボーって聞くとスプリガンのボー・ブランシェを思い浮かべるのは俺だけじゃない筈。マジで。

ハッピーバースデー:オーズの社長さんより。ああいう解りやすいキャラなのに裏があるとか最高です。

アイシャルリターン:英語としては間違ってるけどコレはノリと勢いを重視してるシーンですよーって意味だったり。確かこんな名前の映画ありましたよね。

イィィィチ夏クゥ(ry:木原クゥゥゥンっぽく。そんだけ。

ターミネーターのテーマ:ダダンダンダダン。それ以上でもそれ以下でもない。

某巨大掲示板:壷。最近こそこっちも見てますが、実は俺「としあき」なんです。このミサイルをとっしーの尿道にですね。

KOTY:クソゲーオブザイヤー。これは動画版でじっくりテンションを上げつつ見るのが好きです。っつーか戦極姫ノミネートされすぎ。

原作読め:SSの全てをぶち壊しにする一言。でも真理。特にこれは読んでる事前提で書いてますから。ネタが解らない場合は基本「ググれ」になります。

空中でバラバラ:元ネタはニコ動。更に元ネタはヘルシングの代行殿。空中でバラバラ!

某F通:伏字にしたりイニシャルにしたりしなかったり統一しろ? サーセン。ぶっちゃけファミ通。

レッツパーリー:何故なら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!

ファファファ:FFよりエクスデス。ディシディアだと道場扱いされたり意外と強かったりと大人気。

薄い本:同人誌。俺の生きる源。因みにこの場合は女性向けの意。最近はゴーカイジャーで緑×銀か銀×緑かで悩んでます。

総受け:色んな人にケツを掘られる(意訳)。タイガー&バニーの虎とかが良い例。

サークルチケット:会場前行列の必須アイテム。ホントは規則違反だからやっちゃ駄目ですよ。これゲットできても諸事情で会場に行けない場合があるのが辛い。

そう かんけいないね:下二つと合わせて「ねんがんのアイスソード」ネタ。きっとこの生徒達はネットでISの情報を調べてる内に感染してしまったのでしょう。南無。

世界最大の同人誌即売会:コミケ。俺の生きる源その2。誰もがムスカの真似をしてしまう程の人がやってくる(大体一日二十万人)。

メカミリ:メカ・ミリタリーの略、だった筈。うろ覚え。

壁配置:壁際だと荷物が多く置ける=一杯売れる=大手。大体こんな感じ。

準備会:コミケを運営してる人達。ボランティアです、規則を破っても感謝は絶対にしましょう。いや、規則破って良い訳じゃないですが。

注文の多い整備室:元ネタは料理店。束のラボに対抗して付けたけど誰も呼ばない。ゲンゾー自身も呼ばない。

パーフェクトガイドブック:大丈夫! ゲンゾーの攻略本だよ! とか書いてある。大丈夫じゃない。

あきらめんなよ!:炎の妖精、ミスター松岡。夏よりも冬に重宝されそうだけどオールシーズン熱い御仁。



第三話

ばっちゃが言ってた:正確には「おばあちゃんが言っていた」だった筈。天の道を行き総てを司る男の口癖。高性能ばぁちゃん。

り、呂布なりー!:三国志の欠かせないパーソンの一人呂布の台詞。蒼天航路より。実はコレ自分からボッチになった時の台詞です。えぇー。

泣いたり笑ったり:フルメタルジャケットより……で良いんだよね? ハートマン軍曹のキャンプに無気力な若者をぶち込んだらどうなるんだろう?

鍋:戦争。

ターレス:伝説の超サイヤ人に比べて妙に知名度が低い人。まあネタにもし辛いし仕方ないと言えば仕方ないのだが。

サーカス:板野でぎゅわんぎゅわん行くアレ。やっぱりプラスの直角が最高だと思うんですよ、ええ。

ねるとんゲーム:シャルロット初登場時のアレっぽいやつ。コイツは面倒とかじゃなくうまく説明出来る気がしません。

鈴は2組なので:居ない。

セ尻アッー!・掘るコック:オルコッ党の皆様にふざけんじゃねぇと言われるかと思ったらノータッチだったでゴザル。ノマッキッ!

ISの星:巨人の星より。流石にここまで来ると自分でも何したかったのか解んなくなってくる。

名言しりとり:それぞれ覚悟のススメ、ジョジョ、スクライド、ごひ、AC、ドラゴンボール。泣きたい時は~はほーちゃんの歌より。

コンダラ:重いコンダラ、もとい思い込んだら。やっぱり巨人の星より。



第四話

ラヴ・ザ・スタンピード:トライガンの主人公、人間台風ことバッシュ・ザ・スタンピードより。こういう小さいネタだと特に深い意味は無く、ノリと勢いが全てになってます。

むせる:炎の匂いが染み付く最低野郎達の歌。むせる。

千春のチートスキル:皆仲良く。敵と友達になる合気道理論で味方を増やす地味に強いチート。その影響か観察眼が鍛えられているが、頭脳チートの演技力には勝てなかったんだとか。

勝利の三原則:最近のジャンプに足りない物。



第五話

うん、そうだね、プロテインだね:確かなかやまきんに君のネタだったはず。既にうろ覚えです。えー。
 渡米後のきんに君の変化っぷりは一見の価値あり。

せぐっ:四コマ版のあいえすっ!より。スゲー楽しいです、アレ。せぐっ。

既に通過している:グラップラー刃牙より、皆大好きツンデレ中華マン烈海王の名言の一つ。ここ数年のネタキャラの増えっぷりは方向性を間違えてる気がしないでもない。

踏み込みと、間合いと、気合だ!:ゾイドスラッシュゼロより、ストライクレーザークロー時の決め台詞。カッコよさと汎用性の高さは異常。

第五世代:オリジナルIS(キリッ をするために作ったカテゴリー。遠隔操作と自動操縦が軸。エレガントな閣下には非常に不評そうなのが難点。

独立型戦闘支援ユニット:ADAです。操作説明を行いますか?
 世界最萌AIの座に最も近いと言われているAI。アンドロイドを含めるとkos-mosとかが対抗馬。

シャベッタァァァァ:狂気の産物。これはもう言葉で説明するのが難しい。必見です。

動けぇぇぇぇ!:ADAと同じくZOEより。これとはいだらー!はこのゲームの代名詞。

パックの名前:パッと思いついたのをつけてます。レーザービームは苦肉の策。ファストパックはマクロスより。

多目的拳型エネルギー発生器:ぶっちゃけシャイニングフィンガー。もしくはピンポイントバリアパンチ。この辺からネタ装備考えるのが楽しくて楽しくて。

X字型高機動ブースター:クロスボーンガンダムより。きっとシルエットガンダムとか作る時の取引金はコイツらを作るのに消えたんでしょう。

プレートバスター:X字のプレートを背負います。つまりガンダムX。もしくはDX。

カスタムシールド:確かノリスセットだった筈。ガトリングとヒートロッドとヒートソードがワンセットに。お得!

六花の待機状態:MP3プレーヤー付きサングラスでググると良い感じのが出てきます。イメージし辛い方は是非。



第六話

おはこんばんちわ:Dr.スランプアラレちゃんより。会社の上司にやるとぶん殴られるであろう挨拶No.1。

こんな事もあろうかと:博士キャラやったら一回はやっておかないと駄目な台詞。後出しである分「もう全部あいつ一人で(ry」よりマイルドな印象。

俺のこの手が:武装より先に義手で出しちゃったシャイニングフィンガー。凄いよこのティアーズ! 流石ゼフィルスのお姉さん!

コジマなアレ:ISSS書いてる人はやたらとコイツに汚染されてる気がします。ホントに。

フィニィィィィィィッシュ!:バーチャロンマーズのアファームド・ザ・ハッターより。あんなサラリーマンになりたい。

爆破ッ!:超級覇王電影弾の決め台詞。あの人達はIS着たくらいじゃ勝てません。

自爆装置:博士キャラやったら(ry。様式美です。

デッド・エンド・シュート!:スパロボオリジナルのイングラム一族より。フフフ……。

フルバースト:種と種死の主人公、キラっちの技……はて? 何かおかしい所でも?



番外

mktnウィング:フレッシュプリキュアの真の姿、スペースミキタンより。ゴメン嘘。
 フレプリって途中で全員に羽が生えるんですけど、青の子だけ、その……やたらメカメカしいんですよね。ええ。
 形は前進翼タイプのカッターウィングさん。やっぱコレ無いと勇者っぽく見えないんですよ。個人的には。

サイクロプス:X-メンより。目からレーザーが出るけど常時出続けてるせいでグラサンしてないといけない不憫な人。寝る時とかってどーなってんの?

ファイバード:勇者シリーズの一つ。ただどうしてもジェイデッカーとかゴルドランとかマイトガインとかガオガイガーとかの方が印象が強いのでライトなファンからは忘れられがち。ダ・ガーンも同様。

何と言う事でしょう:劇的!ビフォーアフターより。何と言う事でしょう。



第七話

ちょっとした応用だ:こうやって俺達が生きているのも次元連結システムの(ry。冥王計画ゼオライマーより、何でもありの代名詞。

あたしは荒野の運び屋さ:無印ゾイドより、ムンベイの歌。何気にムンベイってメカニックの天才だったりするんですよ。ええ。

であります!:中の人ネタ。あと伊隅大尉とか。

足なんて飾りです:偉い人にはそれが解らんのです。

だがそれが良い:花の慶次の主人公前田慶次の名言。困難も逆境もコレ一つで全て片付く魔法の言葉。

諒解:装甲悪鬼村正より。知能を持った武装だったらコレやらなきゃ駄目でしょ。

グラップラー:腕がうにょっと増えるパック。名前は格闘系の名前からテキトーに。

V.S.B.R:ヴァリアブルスピードビームランチャー、略してヴェスバー。腰溜めの粒子砲の代名詞。勿論可変速も再現してます。

ダダダダダダダ:デジモンテイマーズのテリアモンより。何気に好きなんです、アレ。

バトルオールオーバー:ゾイドスラッシュゼロのジャッジマンより。ウィナー、チームブリッツ!

飽和爆撃:この手は平和ボケしてる学園の生徒だから使える手です。紛争地帯に一ヶ月放り出せば一切効かなくなるのが難点。

アッー!:十×源の鬼畜攻めですねわかります。



番外

サプライズパーティー:Leafの鎖より岸田さん。この話からエロゲーネタが増えてきた気がする。良い子はググッちゃ駄目だぞ?

○○でゴザル。ノマッキッ!:忍者ハットリくんのタイトルコールより。ノマッキッ!は甲高い声で。

前後ぉぉぉぉん!:ういんどみるの問題作より。どうしてああなった……。

呼ばれて飛び出て:ハクション大魔王の登場口上。微妙に違いますが。

ツールコネクト:ガガガより。特にコレと言って言う事も無いです。

この指戯を受けてみよ!:エロゲー界最萌主人公の名を欲しいままにするメ様より。何気に登場作品数もかなり多いんです、彼。

ネジ:お約束。



 ……すでにネタ解説でも何でも無い件について。
 俺に解説しろって言うとこのレベルでしか情報が出てきません。





[27457] 第八話「ご迷惑でしたか?」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/12 00:55



 第八話「ご迷惑でしたか?」


「………。」
「………。」

 気まずいよ……初っ端からコレかよ……。
 結構前(クラス対抗戦時)に箒に禁句を思いっきり言っていた事を思い出し、こりゃ謝らなアカンと箒を探して12分。
 寮から少し離れた空き地で真剣片手に顔をダルンダルンに緩ませている阿呆を見つけた。危ないってお前。色んな意味で。

「……それで、話と言うのは?」
「あー、いや……こないだのクラス対抗戦の時にさ。俺、お前の気にしてる事言っちまったじゃん? だから、謝っとこうと思ってな」
「あ……」

 何故か居合いの練習をしていた(顔が緩んでいたのはどうせ一夏絡みだろう)箒に話がある、と切り出して数分。
 いつも通りにすぐ切り出さない俺を不審に思ったのか、疑問と言うよりは警戒色を強めて箒が口火を切った。
 だが、どちらかと言えば精神的な物で切り出し辛かっただけの俺には渡りに船だったのだが。

「何を今更って思うだろうけど……やっぱりけじめはつけとこうと思ってな」
「……そう、ですか」
「それとさ、どーも俺達の間には認識の齟齬があると見た。それをハッキリさせたくてな」

 自分の事ながら相変わらずの軽薄な口調に反吐が出そうだが、こればかりはもうどうしようもない。
 それに、今言った事は事実だ。チート頭脳をフル回転させて出した答えだしな。

「齟齬……ですか?」
「ああ。篠ノ之束って個人の捕らえ方について、な」
「っ―――聞かせて下さい」

 ありがたい。これで拒否されてたら今後一生微妙な距離感で接する事になってたかもしれないからな。

「俺から見ればさ、篠ノ之束ってのはタレ目で乳がデカくて何故か運動神経が良くて俺の事ナチュラルに罵倒してくる幼馴染なんだよ」
「………。」

 お前は何を言っているんだ、と某格闘家のようにジト目で睨まれる。そりゃ身内のこんな妙な評価を聞いたらそう思ってしまうだろう。
 それに、もしかしたら『こんな評価』は一度も聞いた事が無いのかもしれない。こと束に関しては特に、な。

「だからさ、アイツが世界的にどう思われているのかってのをたまに忘れちまうんだ」
「……それは流石にありえないと思いますが」
「マジなんだって。もしISを作らずに束が失踪していなかったとしても、多分俺から束に対する全ては変わらない。考え方から、この想いまで。全部」
「………。」

 自分の中の冷静な部分が「んな訳ねーだろ」とツッコミを入れる。ああ、お前は正しいよ。
 確かに、本来言葉一つ違うだけで変わるもんが変わらないってのがおかしいのは解ってるが、ちょっと黙ってろ。

「まあ所詮はIFな訳だが……つまり俺から見れば束の頭が良かろうが悪かろうが関係無いんだよ。俺から見た『篠ノ之束』って人間は変わらない」
「……それで、何が言いたいんですか?」
「お前が束をどう思っていて、アイツの妹だと言われる事をどう思っているか。それを考えた。
 ……こないだは、悪かったな。教師として触っちゃいけない部分だった」
「―――まあ、もう過ぎた事です。謝罪も頂けましたし、今後はあまり気にしないようにします。無理でしょうけど」

 それに、と箒は言葉を続ける。

「あの件に関しては、少し感謝もしているんです。その……一夏の優しさを感じる事ができましたから」

 ……あ、ありのまま今あった事を話すぜ! 失言の挽回をしようと思っていたら一夏の好感度上げに使われていた。
 何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか解らなかった。フラグだとかニコポだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。
 新種の恋愛原子核の恐ろしさの片鱗を味わったぜ……。

「……そうか。じゃ、この話はここで終わりだな。ぶはー、疲れた」
「はぁ……少しは罪悪感を持って下さい。これでも色々と気にしているんです」

 しかしあそこまでガッツリトラウマ刺激してよく邪険に扱わないな、俺の事。
 信頼されてるって事なのかもしれんが、その信頼に応えられるかどうかは解らない。それに、

「んー、多分無理だなー。正直な所、俺がお前達の兄貴分やってるのも束の身内だからだし、鈴達は一夏の身内だからだしな。俺個人としては束一人が居ればそれで良いんだ。
 だから俺は束を守るし、束が笑っていてくれればそれで良い。けど、束はお前達が居ないと駄目だって言う。だからお前達が笑ってられるようにする。それだけだ」
「……案外、一番『外れている』のは貴方なのかもしれませんね」

 狂っている自覚はある。もう殆ど思い出す事もない『前世』の自分の常識と照らし合わせると、俺は狂っている。
 こうして謝りに来たのも『教師』だからで、『佐倉源蔵』という個人の視点だと何も謝る理由は無い。円滑な関係の構築という面では有効かもしれない、と思う程度だ。
 多分、俺みたいな人間を『人でなし』とか言うんだろう。まあ面と向かって言われた所で「それがどうした」と一笑に付すがね。

「だろうな。それで束の身内が笑っていられるよう、2メートルに届かないこの目の届く範囲までを守る。そこが限界だな」
「……全く、姉さんが少し羨ましいです。ここまで想われているとは」

 はぁ、と箒はため息をつく。まあお前ら完全に追う側だしな。

「ま、男ってのは追いかける生き物だからな。ありゃ追い甲斐のあるウサギだ。
 だが、一夏の兄貴分って観点から言わせてもらえば……もう少し勇気出して素直になってみな」
「……はい」
「ただまあ、勇気を出した結果が学年全体に広まってたら世話無いけど」

 どうも一夏の部屋から引っ越すイベントは終わったらしい。でもお前ら、ちょっと単純すぎやしないか? むしろ誰か狙って噂流したろ。
 何故か俺の所に裏を取りに来た連中まで居るくらいだからな。信じられるか? こんな連中が将来的に国防の要を担ったりするんだぜ?

「……すいません、殴って良いですか?」
「駄目だっつの」

 やれやれ。相変わらずシリアスが似合わんね、俺は。まあ、シリアルな位が丁度良いさ。



「……どったの? ロードローラーにでも轢かれた?」
「違うわよ……ったく、崩山があれば熱殻拡散衝撃砲でとかちつくしてやるのに」
「……織斑千春、か」

 新しいパックが完成したので訓練ついでに試験をと思って簪と第三アリーナへ足を向けると、そこにはヤムチャよろしく倒れ伏した友人二人が居た。
 ……正直、こうやって客観的に事態を見据えていないと何時爆発するか解らないくらい怒っている。ここまでトサカに来たのは久しぶりだ。

「ええ。昨日は居なかったし、初めましてって事で良いかしら?」
「ああ……アリーナを使うなら好きにしろ。興が削がれた、私はもう戻ろう」
「それはちょーっと困るのよねぇ……それとも、負けるのが怖いのかしら?」
「……何?」

 私達に背を向けたロリータが再度こちらへ向き直る。因みにロリコンって本来別の意味なんだよね。
 ……それはともかく、私自身無理矢理だと思う煽りをする。若干恥ずかしいが、こうする理由はちゃんとある。

「生憎と私は家族愛に満ち満ちた人間なの。で、目の前には最愛の弟を張り倒した女が一人……ここでハイそうですか、って見逃す訳には行かないのよね」
「……成程。私としては無駄な争いはしたくないが……その目から逃げられるとも思えんな」
「そう。じゃあ決まりね……簪、下がってて」
「……嫌」
「へ?」

 簪を庇うように前に出るが、それに合わせるように簪も前に出る。

「……織斑君を殴った人を、見過ごすなんて……無理」
「へぇ……こういう非生産的な事は……ああ、そっか。そうよね」

 ここで退いたら、ヒーローじゃないもんね。助けられたいって願望だけじゃない、確かな願いを持ってるんだもんね。
 簪にとって一夏は白馬に乗った王子様だし……IS白いし。それを貶されて黙ってられるならヒーローなんか憧れないよね。

「って事で二対一になるけど良い?」
「そっちは日本の代表候補生だったな……面白い。刺激的にやろうか!」

 そう、と応えて両の足でアリーナの大地を踏みしめる。
 ……ここまで立派な悪役やってくれたんだし、それ相応の台詞は必要よね。

「憎悪の空より来たりて」
『正しき怒りを胸に』
「『我等は魔を断つ剣を執る!』」
「『汝、無垢なる刃! 六花・スパイダーガール!』」

「汝は勝利を誓う刃金、汝は禍風に挑む翼……!」
「蒼穹の空を超え、星々の海を渡り……翔けよ! 刃金の翼!」
「舞い降りよ――打鉄弐式!」

 打ち合わせも一切無いのに簪がバッチリ合わせてくれる。微妙な改変まで入れるとは流石ね。
 ……でもアイオーンじゃなくてアンブロシウスなんだ。速度特化だから合ってるけど。

「ククク……面白い。お前達を分類A以上の操縦者と認識する」
「そりゃ光栄ね……それとも余裕かしら?」
「フン! 正々堂々となぶり殺しにしてやろう! さあ、ショータイムだ!」

 何が気に入ったのか知らないけど、どうも強敵に認定されたっぽい。ふざけんじゃないわよ。
 私と簪は左右に分かれて飛ぶとボーデヴィッヒの【シュヴァルツィア・レーゲン】へ十字砲火を仕掛ける。
 ……参ったわね。変換容量全部試作品にしてきちゃったから普段通りには出来そうに無いわ。

「王の巨腕よ、打ち砕け!」
「突進だと? ふざけるなっ!」
『敵IS右腕より特殊フィールドの発生を確認、現在データ照合中』

 右腕装備用ブースター付き巨大ナックル『ポルシオン』で殴りかかるが、六花からの妙な情報に慌てて針路を変える。
 あの機体は第三世代、って事はまず間違いなく特殊な武装がある!

『ヒット。PICと同質の反応から【アクティブ・イナーシャル・キャンセラー】と推測されました。
 特定力場内の物質の慣性を停止及び操作する技術です。接近戦は危険と判断します』
「それじゃあ左の『ビゴー』も使えないじゃない……六花、両手の二つを量子化、『メガスマッシャー』を出して!」
『了解。胸部粒子砲、展開します』

 両腕のナックルを解除し、量子化していた胸部粒子砲『メガスマッシャー』を出す。
 スペック通りなら威力は充分だけど、燃費の悪さも折り紙つきらしい。主兵装はこれで良いけど、もう一つ欲しい。

「六花、他に使えそうなの何か持ってたっけ!?」
『検索します。巨大格闘用クロー『アウトロー』、アウト。物理巨大刀『鬼丸』、アウト。
 ……ヒット。全身装甲型多連粒子砲『ボルテッカ』、手部可変粒子砲『レイガン』、使用可能。
 ただし使用されるエネルギーからシールドパック『フォートレス』への換装を提案します』
「何でどれもこれも燃費悪いのばっかなのよぉっ!?」

 私と六花が漫才をしている間も打鉄弐式から放たれるミサイルと迎撃の砲弾が飛び交っていく。
 砲弾はドカンドカンと放たれるシュヴァルツィア・レーゲンからレールカノンだ。ああいうの無いの!?

『折角だしデカいの撃ちまくりたい、とマスターが仰った筈ですが』
「……そうだったわね。やっぱり『コレ』使うしかないのかしら」
『賛成。恐らくワイヤードパックの切り札ならばAICに防がれる事はありません』

 撃ち出されるワイヤーブレードが地味にシールドエネルギーを削っていく。迷ってる暇は無いわね。
 と、六花から警告音が鳴る。この音は警告じゃなくて注意喚起だっけ?

『注意。打鉄弐式より高エネルギー反応、荷電粒子砲『GENO』を使用する模様』
「させるかっ!」
「それはこっちの台詞よ!」
『背部コンテナ開放、拘束用ネットミサイル『ダンディライオン』一番から四番、発射』

 ……ワイヤードパック『スパイダーガール』には他のパックにない特殊な装備がある。それは『相手を拘束する為の武装』。
 その一つが背部コンテナに収まる六連装拘束用ネットミサイル『ダンディライオン』だ。それを二基装備している。
 そして発射された弾頭が弾け、GENOを撃つ為に足を止めた弐式目掛けて飛んでいたレーゲンの針路を阻む。が、それはあっさりと切断されてしまった。

「この程度っ!」
『高エネルギーのトンファーブレードにより切断されました。粘着効果は期待できません』
「でも良いわ! 『ワイヤーガン』発射!」
『進路クリア。ワイヤースタンガン『ワイヤーガン』一番二番、発射』

 私達に背を向けたレーゲンに対し、腰部ジョイントに一門ずつ搭載しているワイヤーガンを放つ。
 見た目はレーゲンのワイヤーブレードとそっくりだが、こちらのは二股になっている。更に電撃機能付きだ。
 が、流石に同種の武器を持っているだけあるのか、背後からの奇襲はあっさりと避けられた。ついでに弐式の荷電粒子砲も。

「まずはお前からだっ! 停止結界の餌食となれ!」
「機体が……!?」
「簪っ!」

 命中精度を上げるために空中に停止していた弐式にレーゲンが接近し、AICを使う。その瞬間、弐式はピクリとも動かなくなってしまった。

「落ちろっ!」
「きゃぁぁっ!」

 そこに容赦なく撃ち込まれるレールカノン。更にトドメとばかりにプラズマ手刀がお腹に突き立てられた。

「こんのぉっ!」
「かかったな!」
「っ!? しまった!」

 瞬時加速を使ってレーゲンに接近した瞬間、ガクンと機体の動きが止まる。
 その視線の先にはレーゲンの無骨な右腕が翳されており、私もAICに捕まってしまったのだと即座に理解できた。

「さて……先の二人は大人しく出て行ったようだし、これで援軍も期待はできんぞ。王手だ」
「……そうね。それと知らないみたいだから教えてあげるわ」
「ほう? 何だ、言ってみろ」

 獲物を前に舌なめずりは三流……じゃなかった。こっちだった。

「私はね、一人じゃないの―――六花ぁっ!」
『肩部独立粒子砲『インコム』一番二番、目標補足完了』
「なっ―――遠隔操作ユニットだと!? 馬鹿な!」

 AICに補足される直前、真後ろへ向けて射出されていた二基のインコムが地上スレスレを通ってレーゲンの後ろへ現れる。
 と、何故か急にAICを維持できなくなったのか、私の体も動くようになった。よし、これなら!

「メガスマッシャー!」
『インコム、ファイア』
「くぉぁああああっ!」

 三方向からの高出力粒子砲を受け、レーゲンが大きく揺れる。十秒も受ければシールドエネルギーが尽きかねない大火力コンビネーションだ。これで勝つる!
 が、ボーデヴィッヒは被弾しながらも機体を飛ばし、レーザーの連続照射から逃れてしまった。

『報告。今までのデータと照合し、AICはレーザー兵器の防御には不適である事が予測されます。
 また、使用に極度の集中を必要とする為、複数の展開等の使用は不可能な模様』
「六花、アンタ戦いながらそんな事考えてたの?」
『ご迷惑でしたか?』
「まさか。最高よ」

 下がるレーゲンを追わずにインコムを巻き戻し、その間に六花の報告を聞く。

「流石は教官の妹と言う事か……いや、ドクトル謹製の機体性能故か?」
『お褒めに預かり感謝の極み―――マスター』
「あら……仕切り直しと行きたい所だけど、邪魔が入っちゃったわね」
「うおおおおおおっ!」

 ハイパーセンサーが示すのは闖入者。今一つ空気の読めない我が愛しの弟であった。パリンと割れるアリーナのバリアー。

「大丈夫か、千春!」
「まーね。でも何でここに?」
「アリーナの外で鈴とセシリアに会ってな。千春達がアイツと戦ってるって聞いたんだ」

 その意気やよし。でもアリーナのシールド切り裂いてくるのはどうよ。

「一夏、簪は無事だよ」
「織斑、君……」
「そっか、良かった。シャルルもありがとうな」

 推進系がやられたらしい簪がデュノア君に支えられてこっちに来る。んー、ちょっと強度が足りないかな?

「さて……散々やってくれたな」
「フン、貴様か。丁度いい、ここでお前から血祭りにあげてくれるわ!」
「こっちのセリフだっ!」

 ポーヒー、とどこか気の抜けるブースト音を響かせてレーゲンが白式へと斬りかかる。
 一夏も雪片弐型を展開し、手刀と鍔迫り合いをしようと振りかぶった。どっちも鍔無いけど。

 ……が、

「何をしているか貴様らっ!」

 デデーン! とどこかから聞こえてきそうな御大将……もとい我らが姉君の登場である。うん、そこまでは問題ない。
 けど姉さん、そのレーゲンの方を止めた『ISの全長よりも大きいブースター付きの肉厚な剣』は何?
 ……確かそれ、源ちゃんが作った『斬艦刀』シリーズの一つよね? 取り回し重視の鬼丸よりずっと大きいじゃない。

「教官……!」
「千冬姉!」
「お前ら、力が有り余っているようだな。ならばそれは今度のトーナメントで発揮して見せろ。
 以後、トーナメントまで一切の私闘を禁じる! 解ったな?」

 二人が剣を収めたのを確認し、姉さんは巨大な実体剣を肩に担ぐ。だからそれもう重量の単位、トンだよね? ね?







 キンクリ食らったような気がするが気のせいだろう。無事にトーナメントは中断された。うん、それ無事じゃないよね。
 何かタッグ決めのドサクサで一夏の次回のタッグの相手は簪になったらしい。こりゃ千春の差し金だな、抜け目がない。

 が、問題はそこではない。

「………。」
「………。」

 俺の目の前には箒さん。今日も今日とて良い所が無かったお嬢さんである。こないだとは尋ねる側が逆だ。

「……専用機、か?」
「……はい」

 まあチート頭脳のお陰で劣化しない原作知識から考えれば当然だな。でも言う相手が違うだろうが。

「アレだな、一夏達とつるんでると感覚が狂ってくるよな」
「は……?」
「箒よ、世の中には代表候補生なのに専用機を持てない人間が山ほどいるのを知っているか?」
「―――っ」

 もう自然とSEKKYOU臭くなってしまうのは諦めよう。元々こいつらより年食ってるんだし、それをするのに相応しい立場に居るんだ。
 ……本当なら千冬かやまやの仕事の筈なんだけどなぁ。ま、こういう相談を持ちかけられるぐらいには信頼されてるのかね。

「一夏と千春は別として、他の連中には専用機を受領するだけの理由がある。解るか?」
「……優秀だから、でしょうか」
「一言でいえばな。細かく言えばセシリアはBT適正が高かったからだし、鈴は俺がアイツ経由で空間圧作用兵器の論文を中国に渡したからだ。
 シャルロ…シャルルはデュノア社のテストパイロットだからだし、ラウラはあんなナリだが少佐階級だ。あ、簪は純粋に優秀だからだな」

 姉のちょっかいも多分にあるんだろうが、簪は単体でも充分優秀な奴だ。
 ネガティブも最近は克服できてるみたいだし、あと一歩かな。

「で、特に誇れるものは胸くらいしかないお前さんは前例を作った俺を頼りにきた、と」
「むっ、胸は関係ないでしょう! 胸は!」
「はっはっは。だが無理だぞ? 理由は幾つかある。聞くか?」
「……はい」

 どうしてコイツは一々俺の相手をまともにやると疲れるって事を学習しないんだろうか?
 こちとら持ち味はテンションのギャップとセクハラだ。箒にとっては束とは違った意味でやり辛い相手だろう。

「まず一つ、現在専用機のネタがない。お前自身どんな機体が欲しいって希望は無いだろ?」
「ええ、まあ……」
「次に時間がない。今度の臨海学校に備えて色々と準備が必要でな、時間が空いてないんだ」
「各種装備の試験……ですよね?」

 そーそー。狙撃用セットとかね。

「そんで表向きはこれが一番の理由。コアが無い」
「……ん? では、六花のコアは……?」
「IS条約締結前に束に一つ貰っといた。だから実はコアの総数って467じゃないんだよね」
「……本当にお似合いですね」

 はっはっは、そう褒めるな。照れるじゃないか。俺に嫌味は無駄だぞ?

「実はこっちが最大の理由なんだが人には言えない大事な秘密。
 ……お前に勝手に作ると束が怒るだろ」
「そう……でしょうか?」
「アイツお前の事大好きだからなー。後でちょっと電話してみろよ、喜んでコアごと作るぞ」
「………。」

 ……本当なら箒は専用機の一つや二つ、既に持っていてもおかしくはない。身柄を狙われた事も一度や二度じゃきかないんだし。
 だが、何故か未だに持っていない。束が満足できる性能の機体ができない、とかならまだ良いが……箒の精神性を考慮した上で、なのだとしたらちょいとばかし問題だ。

「子に親は選べん、とは言うが兄弟姉妹も同じ事だ。折角のコネだ、存分に使え」
「……良いんでしょうか?」
「世の中、何一つ平等であった試しなんざねーよ。お前だって立派な乳持ってんじゃねーか」
「だ、だから胸は関係ないでしょう!」

 はっはっは。危ないから真剣出すのやめて。

「確かアイツ人によって着信音変えてるらしいし、自分のケータイからかけてやりな。喜びのあまりテンションぶっちぎるかもしれんが」
「……解りました。失礼します」
「ほんじゃなー、おっやすみー」

 箒は一礼して踵を返す。今回の束の挨拶はやっぱりもすもす終日なんだろうか?
 なんて考えて約二分。疲れたしそろそろ寝ようかと思ったら来客です。

「入るぞ」
「……ノックぐらいせぇや」

 何でちーちゃんは勝手に入ってくるのか。と言うかお前、今まで出待ちしてたのか?

「知るか。ほれ、束だ」
「ん? 噂をすればなんとやら、お前の左斜め16度後ろに俺ガイル?」
『裏拳で鼻っ柱叩き折るよー。やっほーおひさー』

 おひさー。と返しながら千冬のケータイと空間投射ディスプレイを接続する。
 ヴン、と低い稼動音を立てて束の顔が現れた。っつーかお前そこ暗くね? 赤とか目に悪くね?

「源蔵、今日のあのシステムの事だが……」
「あー、それか。ああ、ありゃ俺達がドイツに居た頃に作った演習用プログラムが元になってるな」
『ふーん……あ、アレ作った所は謎のキノコ雲と共に塵になったからね』
「よくやった。褒美として俺の嫁になる権利をやろう」
『オプーナ買う権利の方が良いなー』

 それはともかくVTシステムだ。シュヴァルツィア・レーゲンに原作通り搭載されていた代物だったが……正直最初に見た時は驚いたね。
 どこであんなモーションパターンとか入手したのかと思ったら、あれ俺が入れたやつだったわ。

「元々はその場に居ない奴の代わりをするためのシステムだったが……不完全極まりないが一応第五世代技術ではあるぞ」
『んー、束さん的にはあんな不細工な代物を認める訳には行かないんだけどねー』
「技術の蛭子は何時の時代も生まれるもんさ。エルカセットとか」
「何か果てしなく間違った例えな気がするのは私だけか」

 気にしない気にしない。あの時代は何か色々とアレな感じだったし。文化的にも。

『あれ? そーいえば見慣れない所だけど……ゲンゾー、そこどこ?』
「え、俺の部屋だけど?」
『……ふぅーん』

 キョトン、と可愛らしい擬音から一転、ジト目でこっちを見下ろしてくる束さん。何かあったか?

『そっかそっか。そっちで一つだけセキュリティが破れない所があったけど、そこがゲンゾーの所だったんだ』
「何やってんのお前。っつーか何でいきなり機嫌悪くなったよ」
『別にぃー。ゲンゾーってそういう所は昔から気にしないよね』
「?」

 駄目だチート頭脳使っても解らん。ええい一夏を呼べぃ! あ、やっぱいらね。戦力にならなそうだ。

『ちーちゃん』
「解った解った。源蔵、これを外してくれ」
「はいはい。ポチっとな」

 最後までどこか不機嫌そうな束の顔がディスプレイごと消える。千冬は苦笑してるし……何なんだ?

『――――。』
「ああ、解っている。心配するな」
『――――。』
「全く、相変わらずだな……源蔵、お前ももう寝ろよ」

 千冬はケータイを片手に部屋から出て行く。どうも束は何か言ってるようだが距離があって聞こえない。

「ああ、おやすみ」

 ……だがまあ、久々に三人揃っての会話は楽しかったな。
 俺と束がグダグダと駄弁ってたまに千冬が突っ込む……なんか小中の頃思い出しちまった。

 箒に発破はかけといたし、まず間違いなく臨海学校に束は来るだろう。ははっ、やべぇ。今からスゲー楽しみなんだけど。



 束さんちょろっとだけ出て来るの巻。次回以降束さんの出番がガンガン増えていきます。
 そして束さん久々の登場記念って事で遂にその他板へ移動しました。初の移動なのでドキドキです。

 地味に箒をちゃん付けしなくなりました。本人と向き合い始めた証拠。束と源蔵の身内判定の違いはFateのライダーとセイバーの違いに似てたりします。
 ……そして自然と厨二病を患うラウラ。あれぇ? おっかしぃなぁ……。

 次回、臨海学校一日目まで行く予定ですがその前にあるキャラが登場します。ヒントは「大抵のSSでクズ」。乞うご期待。





[27457] 第九話「地獄に堕ちろ、この野郎」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/15 21:00



 第九話「地獄に堕ちろ、この野郎」


 やっほーこの入り方も久しぶりだね。見た目は大人、頭脳はチート、その名も俺!
 で、今何やってるかって言うと、

「―――と言う事で今年も花月荘に……」
「くかー……」

 寝てます。因みに周りは現在職員会議中。ずらっと並んだ女、女、元女、女。あと末席に轡木さん。
 でも大丈夫、僕チート頭脳持ってますから。寝ながら聞くとか楽勝です。最初に気付いた時はビックリしたけど。

「―――では以上です。解散」
「ん、んぅ……あー良く寝た」

 ぐぐっと背筋を伸ばすとボキボキと背骨が鳴って心地良い。周囲の先生方は呆れたように苦笑して会議室から出て行った。

「佐倉先生、よろしいですか?」
「んぇ? 何すか、教頭」

 俺の前に典型的な『ザマス』が現れる。指導部の長、鬼婆こと教頭だった。

「全く、毎回毎回貴方は会議の度に寝て……今回の会議の内容は把握していますか?」
「毎度の各国の情勢とIS稼働状況の報告、あと今度の臨海学校についてですよね。
 ああ、今日は一年の副担が居ないから技術系は可能なら授業を手伝うように、でしたっけ」
「……解っているなら良いですが、貴方も一応教員です。生徒達の見本になるよう行動して下さい。良いですね?」

 ウッセーオニババー。教頭は言うだけ言ってさっさと会議室を後にする。俺アイツ苦手。相手すんのマジ面倒。

「全くお前は……よくそれで会議の内容を把握できるな」
「常人とは脳の作りが違うんだよ、俺と束は」
「あながち否定できないのが怖いな……」

 教頭と入れ替わりに千冬がやって来た。俺が歩き始めたのに合わせて隣を歩く。

「そーいや今日やまや居ないんだっけ?」
「ああ。臨海学校の下見に行っている」
「そっかそっか。んじゃ一時間目だしお前のクラスにお邪魔するかね」
「……良いだろう。ただし、下手な真似をしたらどうなるか、解っているな?」

 こわーい。何だよ教員免許持って無いくせに。俺もだけど。

「そんじゃ先行っててくれ、トイレ寄ってく」
「……お前と言い一夏と言い、少しはデリカシーという物を覚えろ」
「月火水木キン肉マン?」
「……それはデリカットだ」

 良く解ったな。いや、このネタ高校の時にやったな、確か。

「さて、と……」

 週の平均使用人数五人以下の男子トイレで思索に耽る。体は用を足す為に動いているが。
 千冬は先に教室に行ってるだろうし、物を考えるには丁度いい時間だ。

「まさかもうあそこまで行ってるとはな……」

 俺だって好きで居眠りをしていた訳じゃない。こちとら寝る間も惜しめと世界中に言われる立場だ。
 昨日はパーツを揃えるのと、先のトーナメントで発生した六花の「ある能力」について考えていた。

 ―――『弾道支配領域予測機能』。これは元々六花に搭載してるシステムの一つであり、十全の力を発揮するのに必要な能力の一つだ。
 名前の通り、弾丸や弾頭が支配する領域……つまり弾が突っ込んでくる場所を計算して予測する機能である。
 視覚的には菱形の断面を持つ柱が迫ってくる、と言った感じか。具体的に言うとYF-21のアレだ。

 ……俺の予想では六花は千春との意思疎通にかなりのリソースを使っており、このシステムを起動させる余裕など『まだ』無かった筈だ。
 別種のシステムが起動可能な程に意思疎通に割り振るリソースが減る……つまり、二人の意思疎通のレベルが俺の予想を上回っているという事になる。
 俺の予想ではこのシステムの起動は福音戦だった。これだけあればアレには勝てるからな。

「けどそうなると……『アレ』が福音で出て来る事になるか。参ったな……あれはあんま束に見せたくないんだけど」

 そして恐らく、『あのシステム』がゴーレムⅢ時に発動する。いや、もしかするともっと早いかもしれない。
 別に弾道支配領域予測機能については公表してしまっても構わない技術だ。ただ必要な処理能力が半端じゃないので使い物にならないだろうが。
 だが、『あのシステム』は完全な第五世代技術の一歩手前の物である。それが今の状況で発動すれば何が起こるかは俺にも解らない。

「はぁ……まあ、難しく考えても仕方が無いか。幸い、もう暫く余裕はあるしな」

 ぶるるっとシバリングを起こして竿を仕舞う。そう言えばもうすぐ束に会えるよね、よし、出番だぞマイサン!

「……まあ、無理なんだろうが」

 あーやだやだ。自分の瀬戸際のヘタレっぷりも意外と臆病な束も嫌になる。束に涙は似合わんのだよ。
 こういう時はアレだな、世界をひっくり返すのが一番だ。という事でコイツの出番。

「簡易重力操作機~!」

 ててててっててーん、とダミ声でポケットから箱を取り出す。
 確かデフォルトだと足元だったな。よし、ワールドワイドNINJAで行こう。

「ぽちっとな」

 キュイイ、と箱が音を立てて作動した事を知らせる。俺はそれを確認すると『両足』を壁につけた。

「うん。外部重力遮断も重力発生も問題なし、Gは0.75で固定済みっと」

 いつもより四分の一ほど軽い体のまま壁を歩いて登り、天井に足をつける。おー、何か新鮮。
 因みに重力が足元に働いてるから髪の毛が逆立ったりしないのがポイントだ。無論、今日着てる『疾風』Tシャツもね。

「っとと、いけねぇいけねぇ。一時間目は一組だったな」

 階段で少し戸惑いながらも一年一組の教室を目指す。丁度入り口に来た時に始業のチャイムが鳴った。

「おいーっす」
「「「ぶふぅっ!?」」」

 パシュ、と軽く空気の抜ける音と共に教室のドアが開く。その数秒後に教室の至る所から噴き出す声。よし、大成功。
 えーっと今日の大賞は……鈴だな。ツボに入ったか。あ、千冬がギリギリ堪えてやがる。ちくしょー。

「佐倉先生、それは一体……」
「なに、偏向重力技術のちょっとした応用だ。お前らだってIS使う時は反重力制御やるだろ?」
「そういう問題じゃないんじゃ……」

 あ、シャルロットになってる。そーいやこないだから毎回時間無くてこいつらの授業見てやれなかったからなー。

「そんじゃあ早速授業を始め……よっこいしょっと」

 ドアと天井の間の壁をまたいで越える。おお、驚いてる驚いてる。
 因みにこっちから見ると机が天井から鈴生りになっているように見える。超シュール。

「佐倉先生、降りてください」
「まあこのまんまだと授業し辛いしね、っと」
「全く……」

 千冬に言われて降りる事にする。降り方は設定を手に変更し、外部重力遮断を解除してから電源を切るという手順を踏む。
 ぶらーん、と天井から片手でぶら下がる形に一回なり、その後ゆっくりと降りる。まあ別に壁歩いて降りても良かったんだけどね。



「そうそう、整備科の授業は毎日八時間だぞ?」
「「「えぇ~!?」」」
「何驚いてんだっつーの。こうでもしねーと時間足りねーんだよ」

 授業の合間に雑談を挟んでいると、ケータイが唸りを上げる。流石に授業中はマナーモードにしてあるぞ。

「……また珍しい奴から来たな。よし、ちょいと授業中断。社会勉強だ」
「……おい」
「まーまー、そう悪い話じゃない筈だから」

 空間投射ディスプレイを表示し、ちょっとだけ設定を弄ってケータイのテレビ電話モードとリンクさせる。

「はいなー。どったのヴァン」
『……済まんな、こんな時間に』
「っ!?」

 ビクリ、とシャルロットの肩が震える。そりゃそうだろう、世界で一番恐れる人間が電話の向こうに居るんだから。
 皺も深く頭頂部が前見た時よりもさらに寂しいフランス人、ヴァンサン・デュノアことクズ野郎である。

『……ん? そっちの画面が表示されないんだが……故障か?』
「いや、ちょっと設定弄った。こっち学校だからさ」
『ああ、それもそうか……と言うか、授業は良いのか?』
「ん、いーのいーの。っつーかそっちこそ真夜中だろ? さっさと寝ろよ社長さんよ」

 『静かに』と人差し指を唇の前に持ってくる。状況を察したのか、全員一言も喋らずに居てくれた。
 ありがたい。特に激昂しやすい連中が多いからな、このクラスは……その筆頭が担任ってのもどうかと思うが。

『……今度、そちらで装備の試験があるだろう。それに関してな』
「おめーん所のやつならとっくに来てるっつーの。と言うか、そんな事プライベートな電話で話すなよ」
『……それもそうだな。済まん』
「やれやれ……しかしお前、随分と禿げ散かしたな? 頭頂部がかなり寂しい事になってるぞ?」

 と言うかやつれている。顔の皺も増えたし、これでまだ三十代だと言うから驚きだ。五十過ぎにしか見えん。

『……言うな』
「んー、でもさ。そろそろいい加減気になってるんだよな。お前、『どうして其処に居る』んだ?」
『……済まん、質問の意図が解らん』
「漠然とし過ぎてたか。んじゃまず一つ……お前さ、愛人なんて作れるような性格だったっけ?」

 思わず椅子を蹴って立ち上がりそうになった一夏の前に手を翳す。解ってるよ、お前がそういう奴だって事は。だが今は黙ってろ。

『……どこでその話を?』
「有名な噂だよ。人の口に戸は立てられぬ、って日本語教えたろ? そーゆー事だ」
『……そうだな。俺自身、愛人を作ったなどと思った事は一度も無い』
「けどついでにこれも教えたよな? 火の無い所に煙は立たない……いい機会だ、説明してもらうぜ?」

 おー、怖い怖い。教室中から鋭い視線が俺達に集まってるよ。
 あと千冬さん、ちびりそうだから殺気出すのやめて下さい。

『……俺が田舎の生まれだと言うのは、知っているか?』
「大まかな経歴は知ってるけど」
『……なら、俺がどうやってこの地位に居るのかも知っている筈だ』

 ほう、それを俺に言わせるか。中々のヘタレっぷりだな、お前も。

「元々やり手の人間だったけど、社長令嬢と結婚して一気に社長まで駆け上ったって聞いた事があるな。婿養子だったか?」
『……ああ、その通りだ。だからこそ俺は、社長として求められる姿を演じなければいけない』
「やれやれ、企業人ってのは大変だぁねぇ……で、どーしてそこで生まれ故郷の話が出てくるんだ?」
『……俺には、幼馴染が居た』

 おおっとぉ!? 割と予想できてたパターンだけどコレまずくね!?
 教室の二箇所から高熱源反応だと!? 流石に両端同時に止めるのは無理だぞ!?

「そ、それで?」
『デュノア社に就職して数年の間、俺は実家から通勤していた……デジレと出会うまでは』
「……あー、端折れる所は飛ばそう。な?」
『そうだな……その後、俺はデジレと結婚する事になり、俺は実家から離れる事になった』

 危ねー。ヴァンが自分語りモード入ってて助かったわ……流石に長話もできんし、色々と反応する連中が多すぎる。

『……その時までに、『アイツ』との関係を清算していなかった俺が悪いんだろう。引っ越す日の朝に、な』
「あー……つまり……ヤっちまった、と。しかも大当たり」
『……目が覚めたら全て終わっていた』

 なにそれこわい。

『昔の友人から、アイツに子が居ると聞いて……理由も無く解ったよ。俺の子だ、と』
「フム。だがお前は既に所帯持ち、と」
『連絡を取ろうとすると避けられ、会おうとしても時間も無い。無理矢理送った金は送り返された』
「一途と言うか何と言うか……男には到底真似できんな。お前に迷惑をかけたくなかったんだろうよ」

 俺だって束と言う世界で最も愛しい幼馴染が居る。一歩間違うとコイツのようになりかねない。

『そして……アイツが死んだ、と連絡が来た。あの子は俺が引き取りはしたが……このザマだ』
「成程、ねぇ……それで、お前さん的にはどうしたいのさ」
『どうもこうもあるか……! 今更何を言えばいい! 俺の不徳の致すところだ、とでも言えと!?』
「言えば良いじゃん、そのまんま」
『言える訳が無いだろう! ヒラであった頃ならいざ知らず、今の俺はこの会社の社長だ! そう軽々と頭は下げられん!』

 ドンドン出てくる心の叫び。こんだけ溜まってりゃ禿げ散らかしもするわな。

「地位を失うのが怖いか? 尊敬を失うのが怖いか?」
『地位なぞ要らん! だが、会社を纏める立場である以上は一定の信頼を得なければやっていけん!』
「お前が働いた中で得てきた信頼と言うのはその程度か?」
『ああそうだとも! たった一つの事で全てが崩れ去る、その程度の物しか築けなかった俺の責任だ!』

 周りが冷静に見えてるヘタレって酷いなオイ。

「だがそれでもお前は親だ。多少の重圧には耐えなければいけないだろ?」
『お前には解らない事だ! 普通に接しようとしただけで重役が退職を迫ってくるあの気持ちが解るか!?』
「解りたくも無いな。だがどうしてそこまでその立場に固執する? いっそ辞めてしまえばどうだ」
『俺が辞めたらあの子の生活費は誰が面倒を見る! 会社側からは一切の金は出さないとまで言われたんだぞ!?』

 ……冗談だろ? 給料とか出てたんじゃねーの?

「まさかここまで重い話だとはな……ああ、一つ言うことがあった」
『……何だ』
「男装、バレたぞ?」
『……そうか』

 やっぱバレる事は織り込み済みだったか。って事はあっちの方も予想通りか?

「でもさ、すぐにバレると解っている男装までさせて……どうしてこっちに寄越した?」
『……機体と生体データを入手するためだ』
「ダウト。幾ら第三世代関連で時間が無いと言っても、織斑一夏の情報はいずれ公開される物だ。条約があるからな。
 量産機シェアで得た地力があれば乗り切るのは決して難しくないし、国からの援助打ち切りだって年単位の話の筈だ」

 ここで一度話を打ち切り、既に諦めモードに入りかけているヴァンに王手をかける。

「そんでもってさっきの話を統合すると、社の上層部はアイツを疎ましく思っていたと推測される。スキャンダルの種だしな。
 ……お前、アイツをこっちに逃がしたかったんじゃないのか?」
『……ハァ。探偵ごっこは気が済んだか?』
「疑問は大体消えたし満足かな。まあ、その選択は割と正しいと思うぞ。ここは名目上不可侵だからな」
『……貴様、何を企んでいる? どうして俺にここまで喋らせた』

 何って、まあ。

「こういう事かな」

 パチン、と指を一つ鳴らしてこっちの映像を送り始める。おぉ、顔から一気に血の気が引いたぞ。
 はっはっは。今までの会話全部筒抜けですよ? 今更そんな表情したって無駄だっつーの。

『源蔵、貴様……!』
「時間考えずに連絡してくるお前が悪い。お気楽学生共に社会の暗い部分を教えるのも教師の仕事なんでな」
『糞がっ……!』

 糞で結構コケコッコー。とシャルロットの前にディスプレイを持ってくる。さぁて、どんな反応をするかね?

「………。」
『………。』

 だんまりかよ。何だつまらん。
 っつーか俺を睨むなお前ら。

「……今の話は、本当……ですか?」
『……嘘を言う理由がどこにある』
「どうして……言ってくれなかったんですか?」
『言い聞かせて納得できる話でもないだろう……不必要に接触しないように、と言われていたしな』

 わー、ヴァン君のヘタレー。

「それでも……それでもっ!」
『……源蔵、外には聞こえていないな?』
「リアルタイムでこんな会話盗聴する馬鹿なんざいねーだろ」
『……そうか』

 と、モニターの中のヴァンがいきなり立ち上がる。バストアップで映してたから画面から外れてしまった。
 俺は慌ててコンソールを操作し、巨大な机の前に回り込んで来たヴァンの姿を再び映した。

『……今更許しを乞おうとは思わんし、一生恨んでくれたままで構わない。父親面するつもりも無い。だが、一言だけ言わせてくれ』

 ぱん、と手で膝を払って床に付ける。こ、この体勢はまさか!?


『済まなかった……!』


 DO☆GE☆ZA! ……そーいや前に飲んだ時に教えてたな。

「………。」
『………。』
「……顔を、上げてください」

 謝罪大国日本人に負けず劣らずの見事な土下座をかましてくれたヴァンがゆっくりと顔を上げる。
 すげぇ、今のでまた十歳は老けたぞ。もうジジイじゃねーか。

「……今はまだ、『私』は貴方を許せる気がしません」
『………。』
「けど、こっちに来れた事で感謝している部分もあります……今の話を聞いて、ようやくそう思えるようになりました」
『………。』

 一人称を戻したのはわざとなのか自然となのか、俺には判別がつかない。そこに相応の理由があるのは解るが。

「……誰にでも『仕方がない』理由はあるんですよね」
『……だからと言って、私がした事は許される事でも無い』
「……それなら、一つ聞かせて下さい」
『……何だ?』

 改めて考えるとヴァンがヘタレだったから起こったんだよな、この事態は。
 原作だと完全に『社長』のせいになってるが、実際の所はどーなんだか。

「貴方は……私のお母さんを愛していましたか?」
『……ああ』

 今の嫁を選んだ理由が自分の意志なのか会社側からの圧力なのかは知らんが、ヴァンもそれは誰にも教えるつもりはないだろう。

「……今はそれで充分です。『お父さん』」
『……ありがとう』

 あ、泣いた。

 教室には暫くの間、ヴァンの嗚咽がひっそりと響く。
 鈴辺りは思う所もあるだろうが、全員何も言わずにそれに耳を澄ませる。
 ……そろそろ泣き止まんかな。オッサンの鳴き声聞く趣味は無いぞ、俺は。

『……源蔵』
「んー?」
『ありがとう。それと地獄に堕ちろ、この野郎』
「束と一緒なら地獄巡りも悪くないさね」
『ハッ』

 憑きものが落ちた表情でヴァンが笑う。お、二十歳若返った。何だ割とイケメンじゃないかお前。死ね。

『……ああ、そうか。お前が言っていたのが彼か』
「何だ、今更気づいたのか?」
『となると……シャルロット』
「は、はいっ!?」

 恐らく今まで一度も言われた事の無い柔らかな口調で、ヴァンがシャルロットに声をかける。
 何だ、すっかり父親できてんじゃねーか。

『話を聞く限りではかなりの難敵だ。周りの勢力もさるものながら、本丸は更なる強敵だろう。
 ……だから、勝ちたいのならば攻めの一手だ。押して押して押しまくれ!』

 ポカン、と口が開けっ放しになるシャルロット。まあこのギャップはなぁ、オッサンのギャップ萌えとか気持ち悪いんですが。
 クラスの連中はヴァンの言いたい事に気がついたのか、それぞれの反応をしている。千冬含めて。
 で、一夏は当然ながら何を言ってるのか解らないという表情。予定調和ですねわかります。

 俺? 腹抱えて笑ってましたけど何か?



 ……何だコレ?

「なあ、これって……」
「……聞くな。私には関係ない」
「嘘は駄目だよ、箒」
「ウサミミ……?」

 現在俺達は臨海学校に来ている。俺と箒、千春と簪は着替えるために旅館を移動している所だった。
 で、旅館の庭にはブスッと刺さったウサギの耳らしき物体。まあ間違いなく束さんだよな。

 ……そう言えば、シャルロットと親父さんが和解したのは良いけど、話する時間とか取らなくて良いのか?
 シャルロットはずっと俺の所に入り浸ってるし、それに合わせてラウラも放課後は夜まで俺の部屋に居る。

「……源蔵さんを呼べば良いだろう。私は行くぞ」
「源ちゃんはまだ着てない筈だよ、海から来るらしいから……ってホントに行っちゃった」
「相変わらずだな箒も……で、何で海からなんだ?」
「装備持ってくる係なんだって……昨日、授業の時に愚痴ってた……」

 そう言えば揚陸艇でドーンと運ぶんだっけか。ああ、そりゃ源兄ぃの仕事だな。

「それじゃソレ、一夏に任せるわね。行こ、簪」
「な、何でだよ。千春がやれば良いだろ?」
「生憎と女の子の着替えには時間がかかるの。そこを考えると余計な時間が使えるのはアンタしかいないのよ」
「……解ったよ」

 千春は簪とさっさと着替えに行ってしまう。間違いなく面倒に巻き込まれたく無いからだろう。

「まあ、やるしかないか……ふんっ! と、わぁっ!?」

 てっきりウサミミをつけた束さんが埋まっていると思って全力で引っこ抜くが、あまりの重量の無さに後ろに転んでしまう。

「い、一夏さん……? 何ですのそれは……?」
「(もぞっ)」
「あ、ああ、セシリアか。いや、束さんが……もぞ?」

 何か掴んでるウサミミが動いてる。いや、正確には俺が掴んでるウサミミの下にくっついてる物が、だ。
 何だろう、これ……黄色くて丸くて……網目?

「っ!(バッ)」
「うわぁっ!? な、何だコレ!?」
「あ、アルマジロ……?」

 と、一向にアクションを起こさない俺に業を煮やしたのか、黄色い物体が元の姿になって俺に顔を向けた。
 細長くてどこか愛嬌を憶える顔、うん、間違いない。本物は初めて見たけど、間違いなくアルマジロだ。

「(じー)」
「何でこんな所にアルマジロが……?」
「さぁ、まああの人のやる事だし……ん?」

 と、ここまで喋って何やら地面が揺れている事に気がつく。地震……じゃないな、何だ?

「(ぴくっ)」
「一夏さん、何か揺れてませんか?」
「ああ、セシリアも感じるのか? 十中八九あの人なんだろうわぁっ!?」

 ドゴーン! と地面を切り裂いて現れる巨大な何か。あ、危ねー! あとちょっとずれてたら直撃してたぞ!?
 まるでドリル兵器のような登場だが、その正体は巨大な人参でした。うん、何これ。

「に、人参……?」
「ああ、間違いなくあの人だ……」
『おお、さすがいっくん! よくぞ見破ったね!』

 ぶしゅー! と煙を出して巨大人参がパカッと割れる。文面だけ見ると訳が解らない状況だ。
 因みに今の束さんの格好は……一人不思議の国のアリス、と言った感じだ。ウサギとアリスしか入ってないけど。

「じゃっじゃーん! ビックリした? いっくん。ぶいぶい!」
「お、お久しぶりです。束さん……」
「うんうん、おひさだねー。本っ当に久しいねー! でも質問にはちゃんと答えようねー」

 ぴょん、と大地を突き破った人参から束さんが出てくる。俺は思わず束さんにアルマジロごとウサミミを渡していた。

「ところでいっくん、箒ちゃんはどこかな?」
「え、えっと……」
「まあ、私が開発したこの箒ちゃん探知機ですぐに見つかるよ」

 そう言うと束さんはアルマジロからウサミミを外し、自分の手に持った。
 で、このアルマジロ結局何なんですか? ナチュラルに小脇に抱えてますけど。

「ああ、これ? ちょっとベネズエラの方に行った時にね。ラ・グラン・サバナとか言う所の近くで拾ったんだ」
「は、はぁ……」
「まあ邪魔だし、そろそろ自然に帰そうかな。そーれっ」

 ぽーん、と『蹴られる』アルマジロ。って、えぇっ!? そ、そんな事していいのか!?
 蹴られたアルマジロはそのまま綺麗な放物線を描いて森の中へと消えていった。結構飛距離あったぞ今の……。

「それじゃあ私は箒ちゃん探しに行くから。じゃーねーいっくん、また後でね」
「は、はい……」

 たたたーっと物凄いスピードで束さんが走り去っていく。
 一体何がしたかったんだろうか、あの人は……セシリアとか呆気に取られて声も出ないみたいだし。



 俺達がビーチバレーを楽しんでいると、遠くからなにか唸るような音が聞こえてきた。またこのパターンか……。

「ねぇ……アレ、何だろ?」
「ん? あれは……船?」

 皆一旦手を止めて沖の方を見ると、確かに小さな船の影が見える。でも何かこっちに一直線に向かってきてるぞ?

「あ、源ちゃんじゃない? 船で来るって言ってたし」
「そっか、源兄ぃか。結構時間かかったな」
「……あれ? 何か……大きくない?」

 そう言いながら審判をやっていた千春と簪がこっちに来る。確かに源兄ぃは遅れてくるとか言ってたな。
 因みに千春の水着は上が実用性重視のタンクトップ型スイムスーツ、下がスパッツ型の海パンみたいなやつだ。
 六花がまんまサングラスみたいな形状である事もあり、サーファーとかスポーティーな印象を受ける。

 一方、簪は眼鏡を外している。元々視力は良いんだし、塗らして壊す訳にはいかないからな。
 水着は薄桃色のワンピースだ。その上から水色のパーカーを羽織っている。

「幾らなんでも海パンは無いでしょ、海パンは」
「じ、ジロジロ見る男子……きらい……」
「あ、わ、悪い……その水着、似合ってて可愛いなって思って……」
「っ!?」

 ぼん、とどこかから変な音が聞こえた気がする。あと千春は何でそんな目で俺を見るんだ。

「別に……って、アレ? 確かに何かあの船……デカいわよ?」
「それにあれ、少し浮いてないか? 見間違いかな……?」
「……大きくて、揚陸艇で……っ!? 簪! 逃げるわよ!」
「ほぇっ!?」

 千春に手を取られて簪が海から離れ始める。おいおい、幾ら源兄ぃでもそんな……。

「ハーレムキングに制裁をぉぉぉぉっ!」
「ってホントに来たぁぁぁぁっ!?」

 顔を再び海に向けた瞬間、俺は自分が見た物が見間違いでなかったと悟る。いや、普通見間違いだと思うって。
 そこにあったのは超巨大なホバークラフト――俗にLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇と呼ばれる物――であった。
 船体を浮かすための強風が暴れ狂い、さっきまでラウラをシュバルツバルトみたいにしていたバスタオルが宙を舞う。

「俺、参上っ! 待たせたなガキ共!」
「げ、源兄ぃ……それ、何?」
「揚陸艇。おめーらが明日使う装備が満載されております、って事で『シャカシャカ歩く君』全機起動!」

 パチン、と源兄ぃが指を鳴らすと船体正面のハッチが開き、学校で見慣れたコンテナが目に入る。
 が、問題はそれがひとりでに船から外に出てくる事だ。しかも沢山。

「な、き、キモッ!」
「まあ歩行パターンは虫を参考にしたからな。生理的嫌悪が来るのは仕方が無いか」

 七月のサマーデビルさんが思わず声を上げていたが、確かにこれは気持ち悪い。
 特に一列になって岩場へ歩いてく光景とか。それに虫って言うか、この速度はむしろゴキ……。

「よぉーし、本日の俺のお仕事終わりぃー! ヒャッハー!」

 海に来てテンションが上がってるのか、コンテナが全部移動し終えると源兄ぃは奇声をあげて早々に引き上げていく。
 所要時間実に五分ちょい。見事なまでの電撃作戦だった。



「ふぃー……極楽極楽」

 船を規定の場所に停めて陸路で生徒達が居る浜まで戻り、ハンモックを木の間に掛け終わったのがついさっき。
 現在俺は潮風に揺られて穏やかな昼を過ごしている。だから誰もこっちくんなよ? いいな、絶対に来るなよ!?

「ああ、ここに居たのか。手間を掛けさせるな、馬鹿者が」
「……何の御用ですか、織斑先生」
「束だ。一夏が遭遇したらしい、見かけたらすぐに連絡するように」

 黒のビキニを着こなした千冬がプライベートのように話しかけてくる。まあ大して変わんないけどさコイツは。
 しかし、まるで野犬か熊のような対処法だな。お前それでも幼馴染か?

「で、今回の格好は? 顔だけで探すの疲れるんだけど」
「ウサギの耳をつけた一人不思議の国のアリス、だそうだ。相変わらず訳が解らんな、アイツは」
「そうか……ならば俺はジャバウォックにでもならんといかんか。いや、バンダースナッチの方が良いか?」
「ならんで良い」

 さいですか。

「とは言え俺はこれから不足気味の睡眠時間を補充せねばならん。見つけられるとは限らんぞ?」
「私に見つかれば怒られるのは解っているだろうからな。来るとしたらお前の方だ」
「あいつが怒られるのを怖がるようなタマか? 向こうから来るってんなら俺としては大歓迎だが」
「それもそうか……まあ、どの道明日になれば現れるだろう」

 確かに、明日は各種装備の試験日だ。千冬も紅椿の件は感付いているだろうし、その予想も当たっている。

「そんじゃー俺は寝る。下手な事で起こすなよ?」
「ああ、寝ろ寝ろ。装備の件はお疲れ様と言っておこうか」
「んー」

 こちとらこの一週間で十四時間寝てるかどうか怪しいんだ、明日に備えて寝させろ。



 日が暮れ目が覚め旅館に戻り、服を脱いだら露天風呂。今は男子の時間帯だ。
 夕飯が始まるのと同時と言う何とも微妙な時間だが、調整の関係でそうなったのだから仕方無い。

「お、一夏。早いな」
「いやー、やっぱ温泉だって思うとワクワクしちゃってさ」

 俺は男の教員って事で一番に入っているが、一夏も俺が入っている間にやってきた。
 しかしどうして一夏はこうも嗜好が爺臭いのか……アレか、その辺がフラグ絡みの能力と関係があるのか。

「そうそう、そっちの方だと海が見れて良い感じだぞ」
「そうなのか? ありがとう、行ってみるよ」
「どういたしまして。俺はもう上がるが、のぼせないようにな」

 ―――そして勿論、俺がこんな面白いイベントの仕込みをしない訳が無い。
 脱衣所から一夏が予想通りの場所に居る事を確認し、服のポケットに入れておいたスイッチをポチっと押す。

「「「………。」」」
「……へ?」

 ぱたん、と倒れる風呂場の柵。その先に居る女性陣。当然ながら一夏は裸。その後の展開は火を見るよりも以下云々。
 うむ、六花から千春経由で覗きポイントの情報を流しておいて良かったな。アイツなら上手く使ってくれると信じていた。

「やぁ」
「……どうしてナチュラルに俺の部屋に居るんだよお前は」

 一仕事終えて部屋に戻った俺の目の前には巨乳兎、もとい束。廊下が騒がしいのはきっと気のせい。
 ちなみに立場とか性別的な事情から俺は一人部屋である。勿論一夏は千冬と相部屋だ。

「おやおやー? わざわざ訪ねに来たのにその反応はどーかな、ゲンゾー」
「いや滅茶苦茶嬉しいけどさ。何ならこのまんま布団に押し倒すけど、良いか?」
「駄目ー」

 そう言いながら束は何故か敷かれている二組の布団の片方に自分から寝転がる。やっぱ誘ってんのかテメー。
 っつーか昼寝してる時に俺に悪戯しただろお前。起きていきなり『巻きボイン』って何だよ。っつーかよく起きなかったな俺。

「んー、箒ちゃん専用機ができたから急いで来たんだけど、よく考えたら今日寝る場所無いんだよね。だから泊めて」
「全く……ホント頭良いくせにどっか抜けてるよな、お前。夕飯は食ったのか?」
「食べたよー」

 ふむ。まだだったら一緒に座敷で食おうかと思ったが、終わってるなら無理に誘う事も無いか。
 それと束さん、浴衣の合わせ目からコンニチワしてるその谷間に入って良いかな。駄目かな。

「解った。んじゃ俺は飯食ってくるから」
「お土産よろしくー」
「ふざけんな馬鹿」

 いっそ肉棒でもプレゼントしてやろうか、と思うがその前に飯だ。確かメインはカワハギだったか。



 妙に顔が赤い一夏グループを横目に夕飯を平らげて部屋に戻る。いやー、青春だねぇ。

「ただいま……ん?」
「くー……」

 寝てるよコイツ。まだ九時にもなってねーぞ?

「やれやれ……ホントに襲われるって考えは無いのか、お前は」
「すー……」

 もう俺も寝てしまおう、と荷物から歯ブラシその他を持って部屋の洗面所へ向かう。
 歯ブラシを口に突っ込んだ俺は、ボーっと鏡を見ながら今連想できる事柄を考え始めた。

 篠ノ之束は眠らない……もとい、束は眠っている間でも脳を酷使する人間だ。正直、あと五年で寿命だとか言われても納得できてしまう自分が居る。
 何をしているのか、と言えば起きている間に考えられた事の試行をしているんだとか。ぶっちゃけありえねーと思ったが、試してみたら俺もできた。
 ただ、束の場合はフルオートでそれが発生してしまうらしい。それは最早苦行か精神病の類だと思うぞ、俺。

 しかし、小学校上がってすぐ位の時に二人で泊り込みで色々と作ったんだが、その次の朝に『夢を見なかった』と驚いていた。
 その後何度か一緒に寝た事があったが、どうも俺が近くに居る状態で眠ると夢を見ないらしい。更に何故か頭がスッキリしているとも言っていた。
 ……恐らく、俺がスイッチングが可能である事と何らかの関係があるんだろう。もしくは俺から何か電波でも出てるんだろうか?

「そんな訳で、一緒に寝る事自体は何回かやってるが……この年でその解釈ってのはどーよ。と小一時間問い詰めたい」
「ん、んぅ……」

 考え事をしている間に三分経っていたのでうがいをして部屋に戻る。
 そこには巨大な饅頭二つ……もとい、束の巨大な乳が天を向いていた。
 よく見ると、体が横向きから仰向けになっている。恐らく寝返りで上を向いたんだろう。

「……お前は本当に俺に犯されたいのか? あと風邪引くから布団入れ」

 ただ、束が眠っているのは掛け布団の上。ここからちゃんと寝かせるってなると、テーブルクロス引きの名人に頼むしかない。

「やれやれ、っと」
「……っ」

 脇と膝の下に手を入れ、ひょいと俺の膝の上に乗せる。
 眠っているので頭を揺らさないように俺の肩に預けさせた。
 俺はその間に素早く掛け布団を跳ね除け、キッチリ枕に合わせて寝かせてやる。

「これでオッケー。あとはもう大丈夫だな」
「………。」

 何かどこかから不機嫌なオーラを感じるが、まあ気にしない方が良いだろう。

「やれやれ……明日は明日で色々引っ掻き回してくれんだろうな、オメーは」
「すぅ……」
「けど、俺はそんなお前が大好きだ。愛してる」
「……っ」

 そっと束の前髪に触れながら、いつも言っているのより幾分落ち着いたトーンで愛を囁く。
 ……まあ、何分か経つとあまりの似合わなさ&恥ずかしさに静かにのた打ち回るんですがね。

「何こっ恥ずかしい事言ってんだ俺は……あーもー寝よ寝よ、はいおやすみーっと」



 さあ束さんのターンだ! ここから束さんの出番がガンガン増えるぞやったねタエちゃん!

 ヴァンは「やりきれない悪役」を目指してみました。重役達もまた「悪人」ではなく「悪役」です。
 っつーかそんなやりとり衆目の前でやんなっつー。
 揚陸艇のシーンはエガちゃんのテーマでお楽しみ下さい。テンション任せとも言う。

 とりあえずちょこちょこ修正しときました。

 因みに前の話で意図的にネタを仕込んで指摘されなかったのはこんな感じです。
 鏡音の双子の乗り物、オールドキング、ゲンハ様、ビッグオー、無敵看板娘、ジェノザウラー、ブロント語、光子力研究所、ガイル、買う権利をやろう。
 仕込んだネタを解ってもらえると非常にうれしいです。あ、今回は少なめですよ。



 ……草木も眠る丑三つ時、源蔵の手によってウサミミを枕元に置かれた影――つまり篠ノ之束――は少しだけ瞼を開く。
 今までのは全て狸寝入りであり、源蔵の発言は全て束に聞こえていた。僅かに頬が朱に染まっているのは気のせいだろうか?

「………。」

 結局源蔵は束を犯す事など無く、布団に寝かせるためとは言えお姫様抱っこまでしてみせた。今は安らかな顔で眠っている。
 ある意味で期待外れではあるし、また別の意味では予想通りの行動である。そんな彼に向かって束は一言だけ口にした。

「……馬鹿」





[27457] 第十話「これはISですか?」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/21 11:03



 第十話「これはISですか?」


 臨海学校の(公的な)最大の目的、装備試験の時間がやって参りました。ここは臨海学校名物大自然アリーナである。あと多分束はその辺で出待ちしてる。
 っつーかついさっきまで一緒に飯食ってたしね。ああもう束可愛い束マジ可愛いあとヘタレっつったやつ誰だ表出ろってここ外だよ。

「よーし、そんじゃそろそろ説明すんぞー。黙れメスガキ共ー」

 一応ここに来ている人間の中では一番偉いので俺が進行をする事になる。それだけなら誰かに任せたい所だが、こちとら技術部の長である。俺以上の適任は存在しない。

「これから装備試験を始める。訓練機は学園から打鉄とラファール・リヴァイブを五体ずつ持ってきたから、一班につき十一から十二人だな。
 良いか? お前らひよっこの為だけに2年3年の精鋭達が機体を使った訓練ができなくなってるんだ、ぶっ壊しなんざしたら承知しねーぞ」
「「「はいっ!」」」

 うむ、良い返事だ。整備科の人間としては今回の作業を通じてそっちに進む人間が出てきてくれるとありがたいんだが……。
 まあ、俺謹製のネタ装備を嬉々として眺めていた連中も居たので来年も問題は無いだろう。整備科の三割は大体そんな連中だし。

「さて、そんじゃ次は専用機持ち連中か。あ、訓練機組はもう始めてて良いぞー」
「「「はーい!」」」
「はい良いお返事で、って事でおはよう諸君。下らん種馬を取り合う雌(笑)君は遅刻したようだが、良く眠れたか?」
「……全面的に言い返せない自分が憎い」

 かっこわらい、まで発音しておくのがポイントである。はっはっは、相変わらず弄りやすい眼帯娘だ。
 専用機組は俺、千冬、一夏、千春、箒、鈴、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪だ。やまやは訓練機組の面倒を見ている。

「で、早速だが何故ここに篠ノ之君が居るのかを説明しよう。おーい、良いぞー」
「呼ばれて飛び出ておーぷんささみ! とぉっ!」

 工工工エエエェェェェ(´Д`)ェェェェエエエ工工工、とどこぞのメタトロンのように回転して束が崖から飛び降りてくる。その着地点には世界最強の羅刹が一人。
 所で束よ、ササミを開く……つまり胸を開く、と言う事か? これは言い換えれば乳を出すと言う事であり要するにメガスマッシャーですね期待します。

「ちーちゃー……」
「ふんっ」

 インパクトの瞬間にガシッと頭を掴んでアイアンクロー。ホント人間業じゃないよね、アレ。

「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん。さあハグハグしよう! 愛を確かめ合おう!」
「五月蝿いぞ束。第一、お前はもう少し周りへの影響と言う物をだな……」
「はいはい民のため民のため。相変わらず容赦の無いアイアンクローだねって痛い痛い痛いよちーちゃん!?」

 普段の一割り増しぐらいでギリギリとアレな音が聞こえる。やめてお前が力入れると脳から色々出ちゃうからやめて。
 と、相手をするのが面倒になったのかアイアンクローからぽいっと束が投げ飛ばされる。ホント腕力半端ねぇなお前。

「源蔵、やれ」
「あい解った……勝手気ままなお前の所業、俺が許さん! 我が掌に、嫁を貫く雷を! 行くぞ!」

 左腕のスタンガン機能を解放し、空中放電を起こす。某パンツを脱がないあの人の技だ。
 流れているのは千キロボルトほどの高圧電流だが、この程度なら問題なく防げるだろう。

「紫雷掌!」
「ぐほぁっ!?」

 っつーかカウンター喰らいました。だからお前どうしてそんな身体能力高いの? 親譲り?
 とか考えてる間に今度は左の掌打が入る。レバーやめて破裂しちゃう中身出ちゃう。

「ごふっ……それ、どっちかっつーと焔螺子じゃね……? っつーかマジ痛いんですが」
「六塵散魂無縫剣の方が良かった?」
「……スンマセン」

 死ぬから、それ。とか何とかやってる間に訓練機組含めて全員がこっちを見ていた。手を休めるな馬鹿者共。
 束は束でさっきから頭を抱えてしゃがみこんでいた箒の方へと駆けて行く。

「やぁ! にぱー」
「……どうも」
「いっひひー、久しぶりだねー。こうして会うのは何年ぶりかなー」

 うむうむ、久方ぶりの姉妹の再会、実に良い絵だ。特に胸部装甲とか。やっぱ姉妹だよねこいつら。

「………。」
「簪、まだ大丈夫よ。本来乳房は二十歳を越えた辺りで成長してくるものなのよ」
「……うん。ありがとう、千春」

 あ、そーいやこいつらは……うん、まあ。
 あと鈴、お前はもう無理だ。諦めろ。

「大きくなったね、箒ちゃん! 凄く嫌いじゃないよ、特におっぱいがぐべっ!」
「天剣絶刀ぉっ!」
「ノームを侍にするのは無理があると思うが。大人しく後衛にしようぜ」

 あと2以降はリストr……げふんげふん。

「いつまで漫才をやっている。束、自己紹介ぐらいしろ」
「えー、めんどくさいなー。高町教導官一等空尉だよー、はろー。終わりー」
「……そうかそんなに血を見たいか。源蔵の」

 千冬も久々の対応のせいか沸点が下がってきてるね。やれやれ、怒りっぽいと皺が増えるぞ?
 そしてどうして血を流すのが俺なのかな。これは暗にお前が何とかしろって言ってるのかな?

「はい傾注。コイツが篠ノ之束、もとい俺の嫁だ。いいかラウラ、正しくはこう使うんだ。覚えとけ」
「実演感謝します、ドクトル」
「……それで、頼んだ物は」

 あ、無視しやがった箒の奴。ええい一夏、奴の乳を揉んでやるのだ! お前のラッキースケベ力なら行ける!

「んっふっふー、勿論できてるよ。さぁ、大空をご覧あれ!」
「親方! 空から女の子……いや、ラミエルが!」

 どごーん、と猛スピードで落下してきたにも関わらず、一切先端が埋まっていない八面体が姿を現す。
 その外枠が量子化によって姿を消すと、そこには初期待機状態で固定された真紅の機体が収まっていた。
 これぞ最高に極悪燃費な最強機体、国際IS委員会の実務担当の胃に幾つ穴を開けるか楽しみなお嬢さんである。

 ……実は六花も同レベルにアレな機体ではあるのだが。むしろコア二つ積んでるのバレたらもっと酷いかもしれん。

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと【紅椿】! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製だよ!」
「ほほう。ならばカタログスペックを見せるか俺に乳を揉まれるか二つに一つだ、選ぶが良い」
「ん、しょっと。はいこれ」

 そしてナチュラルに胸の谷間から記憶媒体を取り出す束。ええいそこを代われメモリースティック!

「どっこいしょっと。どれどれ……おお、やっぱ第四世代型か。そろそろ来る頃だとは思ってたが」
「第四、世代……!? 各国で第三世代機の実動が始まった段階なのに……!?」
「ゲンゾー、膝貸してー。それでそこはホラ、天才束さんだから」

 俺が適当な場所に腰を下ろすと、またナチュラルに膝の上に束が乗ってくる。この体勢も懐かしいな。
 あと束さん、胸が腕にちょこちょこ当たってくるんですが。当ててるんですか? 当ててるんですか。

「さぁ箒ちゃん、今から最適化と専用機化を始めようか! スペック見る代わりにゲンゾーも手伝ってね」
「任された。おーい箒ー、さっさと乗れー」
「……はいっ!」

 おーおー力んでる力んでる。しかしこの二人は何だかんだで似た者姉妹だよな。
 箒は意外と天才肌だし、二人とも後先考えないし。あとコミュニケーション能力も箒は若干足りてないし。

「箒ちゃんのデータはある程度入れてあるから、あとは最新データに更新するだけだね」
「あー、やっぱ春先の身体測定のデータ盗んでたのお前か。言えば送ってやったのによ」
「駄目だよゲンゾー。女の子の体重その他のデータはトップシークレットなんだから」

 鼻歌交じりに必要なデータを紅椿にぶちこんでいく。ここで俺が堂々と見てるのは良いのか姉よ。
 と、訓練機組の方から何やら剣呑な空気が漂ってくる。だからお前らは見てないで動けっつーの。

「何よ、身内だからって最新鋭機を……!」
「おやおや、不平等だって言いたいのかな? 世界が平等であった事なんて一度も無かったって言うのに」
「そーそー、それにその論理だと千春も同罪だぁね。それに前から言ってるだろ、えこ贔屓されたかったら気に入られてみせろってな」

 それに最新鋭機も良い事ばかりじゃないぞ。白式とか後付装備一切できないんだし。多分紅椿も。

「はい、入力終了ー。超早いね流石私、っと。箒ちゃん、変化が終わるまでちょっとだけ待っててね」
「解りました」
「……俺の時と大分反応が違うな。六花」
『常日頃の言動の影響かと思われます』

 どうして癒しを求めてトドメを刺されなければならんのか。最近六花が冷たい。雪だけに。

「下らない事考えてないで白式と……六花、だっけ? データ見せて。あといっくんとはるちゃんはIS出してー」
「あ、はい。来い、白式!」
「解りました。虚数展開カタパルト作動! 機神招喚!」
『汝、気高き刃。六花・ハミングバード!』

 一夏に比べてネタ濃度300%くらいの千春と六花が新たな姿を現す。今回の為に俺が用意した新装備、ファストパックだ。
 六つのジョイントに一基ずつ1メートルを超えるサイズのブースターが搭載されたその姿は見るからに高速型である。
 でも千春さんや、流石に二回連続でデモベネタはちょっとアレだと思うぞ。

「ハミングバード……? ねぇ、ゲンゾー」
「ああ、気付いたか? その通り。このパックは超高速機動型で、大気圏離脱用ブースター『ハミングバード』の進化系である【ハミングバードMk-Ⅱ】を六基搭載している」
「そっか……ふふっ、なんだか懐かしいねー」

 元々一基だけでも第一宇宙速度を超えられるブースターを二基搭載していた第零世代IS『ハミングバード』。そいつを今の技術で再設計したのがコイツだ。
 一基当たりの出力その他は下げてあるが、全リミッターを解除した時の総合的な性能は倍以上だ。今の状態でも燃費を無視すれば最高時速は四千キロオーバーである。

 因みに第零世代ISは他に【白騎士】を含め数機が存在する。【暮桜】も第零世代機を改造した物だ。

「ふむふむ……二機とも面白いフラグメントマップになってるね。白式はともかくとして、六花はAIの影響かな?」
『私の事も六花、とお呼び下さい。ビッグ・マム』
「ゲンゾー、この機体って第五世代の概念実証機なんだっけ?」
「ああ。とは言え無人機も遠隔操作もまだだから分類自体は第三世代機だがな」

 ヒロインズの方から「五!?」とか聞こえてくる。そーいや言ってなかったっけ?

「まあ白式も第四世代の概念実証機と言えなくも無いし、ある意味お揃いだな」
「白式が!?」
「うん。雪片弐型は紅椿に使われている第四世代技術【展開装甲】の試作品なんだよー。
 零落白夜を使う時に変形するでしょ? それが展開装甲。紅椿は全身をそれにしてみました、ぶいぶい!」

 さっき貰ったデータを再度表示する。展開状況はマニュアルで変更する必要があるから簪の方が向いてるだろうな。

「流石に触れただけで零落白夜相当、なんて事にはならんが十二分に高い威力が期待できるな。だが束さんや、燃費はどーなんよ?」
「えっとー……か、解決策は用意してあるよ?」
「あれもこれもと手を出すからそうなるんだ。即時対応万能機と言えば聞こえは良いが、今の箒の腕で使いこなせるのか?」
「「うっ……」」

 やっぱ姉妹だよなこいつら、リアクションそっくり。お、装甲形状の変化終わった。

「そんじゃ箒、試運転も兼ねて飛んでみな。最高にハイになれるぜ」
「ええ。それでは試してみます」
「ゲンゾー、それ私の台詞ー!」

 騒ぐ束を尻目に、紅椿は箒の思い描く通りにPICを起動させて空へとカッ飛んで行く。
 カタログスペックよりかなり遅いが、初回はまあこんなもんだろう。それでも充分早いが。

「何これ、早い!」
「これが第四世代の加速、ということ……?」
『技術的に寄り道をしている第三世代機は信頼性、スペックにおいて不安定な点が多々あります。単純比較は不適切かと』

 いつの間にか待機状態に戻っていた六花が冷静にツッコミを入れる。
 因みに第四世代は第二世代と、第五世代は第三世代と同系列の発展の仕方と言える。

「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
『ええ、まあ』
「じゃ、刀使ってみてよ。右のが雨月で、左のが空裂ね。武器特性のデータ送るよーん!」

 束が自作した特殊な形のキーボードを弄った数秒後、雲の一つが吹き飛ばされる。

「良いね良いねぇ! 次はこれ撃ち落としてみてね。ナイトメア・ハードレイン……名付けて、シェルブールの雨!」

 急に声のトーンを変えた束は展開式ミサイルポッドを量子展開する。レーザー砲もあるのか?
 そこから打ち出されるミサイルミサイルミサイルまたミサイル。16発どころじゃないぞコレ。
 が、それも紅椿の性能からすれば大した事は無かったらしい。ホント燃費以外は最高級だな。

「うんうん、良いね良いねぇ。あ、それじゃゲンゾー、また後でね」
「はいはい。んじゃ俺もそろそろ仕事……って早いなオイ」

 千冬にバレながらもこっそり束がログアウトしていく。それと同時に現れる『緊急事態発生』のウィンドウ。
 あーめんどくさい。



「これよりブリーフィングを始める。佐倉先生、説明を」
「あいよ。ハワイ沖で試験起動してた第三世代型【銀の福音】、コイツが暴走した。そんでここの近くをカッ飛ぶから横から殴って止めろって話」
「……おおまかにはそんな所だ。ただし銀の福音――以後福音と呼称する――は時速2450キロを超える速度で移動中だ。
 これを止めるには学園の訓練機ではいささか力不足であり、お前達専用機持ちが直接相手をする事になる……何か質問は?」

 和室に機材を持ち込んで無理矢理作った作戦室に俺達教員と専用機持ちの八人が集う。説明楽しようったってそうはいかんぞ。
 日本人組は大なり小なり緊張しているが、他の代表候補生達は何かしらの覚悟を決めた顔をしていた。

「布陣はどのようになるのでしょうか?」
「五十分後にここより二キロ離れた海上を通過する事が予想されている。よって教員が海域の封鎖を行い、その間にお前達が戦闘をする事になるだろう」
「対象の性能把握は可能ですか?」
「軍事機密である為、この情報が漏洩した場合は最低二年の……おい」

 その『説明している途中でいきなり表示するんじゃない死にたいのかお前は』って目はやめて。まだ死にたくないの俺。

「俺が自分で作った物の性能を見て何が悪い。小さいウィンドウだと見辛いからメインモニターに回した、それだけだ」
「全く……ついでだ、説明しろ」
「アメリカとイスラエルが共同開発した特殊射撃型。高機動性を活かした強襲からの広域殲滅が目的だな」

 これは俺が『一人で大画面で性能の確認をしているだけ』であり、聞こえるのは全て独り言だ。だから機密漏洩の罪には問われない……筈である。
 何とも苦しい言い訳だが、これも作戦の成功率を上げる為だ。下っ端は難しい事考えないで突っ込んだ方が強いんだよ。

「福音は超音速で移動しているので現実的なアプローチは一回。それで決めなければいけないな」
「「「(じー)」」」
「……って、俺!?」
「零落白夜でバッサリやれば済む話だからな。そりゃそーだろ」

 無論、話はそこまで簡単ではない。一夏の技量じゃ暴走状態の福音に勝てるとは到底思えないし、エネルギー残量の関係もある。

「随伴機が欲しいな……この速度に着いて来れるってなると二人だけか。千春、オルコット、お前らもだ」
「私は強襲用高機動パッケージ【ストライク・ガンナー】を使用する、と言う事でよろしいでしょうか?」
「ああ。それに超音速訓練経験がある奴は必須だし、千春は万が一に備えてのバックアップをしてもらう」
「ちょぉっと待ったぁっ! とぉっ!」

 一夏が二人に牽引されて行くのか、と他の連中が思いついたであろう時に天井の板が外れてウサミミが現れる。
 ただ床置きモニターの上からではなく、何故か俺の真上だ。そのままぽすんと胡坐をかいていた上に束が落ちてくる。

「それなら断っ然っ! 紅椿の出番なんだよー! パッケージなんか使わなくても展開装甲をちょちょっと弄れば高速戦闘に対応できるんだから!」
「……源蔵、つまみ出せ」
「俺の部屋にお持ち帰りしても良いんなら。束、データ見せて」

 はいはー、とメインモニターに紅椿の展開装甲を変形させたデータが表示される。
 比較用にストライク・ガンナーのデータが表示されてるのは嫌がらせなんだろうか。

「データ蓄積がちょっと足りないからこっちで展開状況を変えてあげる必要があるけど、七分くらいで準備完了だよー」
「……佐倉先生、パッケージのインストールにかかる時間は?」
「十分もかからん。それと束、『全性能が現行ISを上回る』って看板は下げた方が良いぜ?」

 ほぇ? ともう襲いたいくらい可愛らしく小首を傾げる束の表情が固まる。その視線の先にはメインモニターに表示された三機目の情報だった。

「ハミングバードに高機動射撃装備【ガンナーズ・ブルーム】を持たせた状態だ。最高速、加速力、旋回能力はこっちの勝ちだな」
「えぇ~!? そ、そんなぁ~!」
「燃費は当然だし『各種能力の特化』に特化したISである六花なら、万能型でしかない紅椿には負けやしないぜ」

 ふはははは、と笑う俺と悔しいのかぽかぽかと殴ってくる束。傍から見れば微笑ましいがやっている事は最先端の技術競争である。
 あと少しずつ打撃が正確になってきてるんだがって痛ぇ! 今メコッて、メコッて!

「……ならば紅椿も作戦に加える。織斑弟・篠ノ之の攻撃分隊と織斑姉・オルコットの随伴分隊で一個小隊を形成する。異議のある者は?」
「「「………。」」」
「ならば各員、迅速に行動を開始しろ。作戦開始は三十分後だ!」

 千冬がビシッと決めるが、その表情はひどく疲れているように見えた。おかしいな、昨日一夏のマッサージを受けた筈だが……。

「んー……まあいっか。じゃあ箒ちゃん、外で展開装甲の形状を変えよっか」
「オルコット、お前もインストール始めるから表出ろ。あと誰か三番のパッケージコンテナと五番の武装コンテナ持って来い」

 まあ俺達がやる事はどんな時でも機械弄りだ。俺が居る事で戦力も増えたし、もしかしたら勝てるかもしれないからな。
 人目につかないように移動し、ISとコンテナを展開させる。そして束の周りにはメカニカルなパーツが現れた。

「これはISですか?」
「いいえ、作業用アームです……もといこれが束さんの移動用ラボ『吾輩は猫である』だよ」
「精密作業用のアームが四本、ねぇ……まあ俺には要らん物だな」

 駄弁りながらガチャガチャとISを弄る俺達。アームは作業速度を上げるための装備のようだが、生憎と俺の左腕一本の方が早い。
 と、少し離れた所でガンナーズ・ブルームの量子化を行っていた千春達がやって来る。流石に早いな。

『装備のインストール終わったよ、ダディ』
「今度はセラエノか。で、お前らから見てどうだ? ガンナーズ・ブルームは」
「射撃ユニットとブースターをくっつけただけの簡単仕様。でもその分信頼性は高いかな」

 俺作の数々のネタ装備をテストしていたせいか千春と簪は結構武装関連の造詣が深い。刀一本の一夏とは当然ながら比べ物にならないほどに。
 ただ、その影響なのか六花は俺が作った装備以外は一切受け入れないし、打鉄弐式もロマン度が低い装備は相性が悪い。お陰で倉持ん所に怒られました。

「よっし、終わり! ゲンゾー、そっち終わった?」
「ああ、後は馴染むのを待つだけだ。もうやれる事はねーな」

 そう、前線に出れない俺にできるのはここまでだ。競技用機能制限の解放も学校の敷地外だから使えないしな。
 ……できる事なら、無事に終わってくれると良いんだが。



 無理でした。クソァ!
 俺は現在、一夏が寝かせられている部屋の窓際の椅子に腰かけ、ある作業をしている。すると襖が開き、千春が顔を出した。

「……源ちゃん、一夏の様子は?」
「バイタルは安定してるから心配すんな……密漁船を発見できなかった俺達の落ち度だ、そう気に病むな」

 原作通りに密漁船が発見され、千春とセシリアが退去勧告をしている最中に福音が二機に反応。
 注意を逸らす為に一夏達が無茶してエネルギー切れからの流れは殆ど一緒だ。強いて言えば帰還が若干早かった程度か。

 作戦行動中である事を理由に排除していれば各国からの学園に対するバッシングは避けられないし、何より緊急作戦だから超法規行為規則が適用されん。
 箒、千春、セシリアの三人はそれぞれ思い詰めているが、ここは原作よりも軽減されている事を祈るばかりだ。

「……作戦はどうなるの?」
「一応継続中。日付が変わるまではこっちの受け持ちだからな」
「……そっか」

 ただ俺を除く学園側は福音の現在位置を把握しきれていないだろう。俺だって各国の軍事衛星ハッキングしてようやく見つけたんだし。
 外はすっかり夕暮れに染まっており、そろそろ事態が動くであろう事を予感させる。と、スパンと襖が開いて鈴が姿を見せた。

「千春、箒連れて来て」
「……オッケー。先行ってて」

 そう言えばすっかり忘れてたが、ずっとこの部屋に箒居たんだったな。流石空気さん。
 ……じゃあ、俺もそろそろ行きますか。



「福音はここから30キロ離れた地点、上空200メートルで停止している。一番良い装備を頼むぞ」
「大丈夫、問題無いよ」

 ラウラがドイツ軍から福音の位置を入手し、私達に教えてくれる。それにしてもすっかり変わったわね。
 私としてはラウラに思う所もまだあるんだけど……まあ、一夏にも仲良くしろって言われたしね。

「私が砲戦パッケージ【パンツァー・カノニーア】を使い初撃を担当する」
「私はストライク・ガンナーで撹乱と機動防御を担当しますわ」
「僕はセシリアに牽引してもらって奇襲。その後は防御パッケージ【ガーデン・カーテン】で防御だね」
「機能増幅パッケージ【崩山】を装備したアタシと機能を調節した紅椿の箒は水中から、と」
「展開装甲は極力使わずにエネルギー切れを防ぐ。シャルロット、防御は任せたぞ」
「私は……一撃の重さを重視して、背面装備を近接装備で固める……!」
「後は私がスパイダーガールと射撃ユニット替えたガンナーズ・ブルームで全体のサポートと火力支援かな」
『現状ではこれが最適でしょう。機能制限があるのが気掛かりですが、勝率は八割を超えるかと』

 六花が全員の意見をまとめる。七対一という圧倒的に有利な状況でありながら勝率が低めなのは、福音の能力もあるけど単純に六花が辛口なだけだ。

「待ちな」

 さあ行くぞ、と全員がISを展開しようとした所で後ろから声がかかる。
 あっちゃぁ……見逃してくれると思ったんだけどなぁ……。

「腐っても教師なんでな。生徒が勝手に危険な事しようってのを見逃す訳にはいかん」
「……言って聞かせるだけで、止まると?」
「思わん。むしろ逆だよ、なあ? お前らもそう思うだろ?」

 源ちゃんの声に合わせて森の中や岩の陰からISが姿を現す。
 それらは全て打鉄とラファールであり、それを纏っているのは―――、

「あ、相川さん!? 四十院さんに布仏さんまで!」
「田嶋、夜竹……岸原とリアーデも居るのか」
「ナギに静寐も? バレたらタダじゃ済まないわよ?」
「私も居るよぉー!? 何で真っ先に出てきたのにスルーされるの!?」

 一年一組の面々である。因みに名前を呼ばれていないのは谷本さんだ。

「生憎と俺はお前らみたいに前線には立てないんでな。戦力の増強ぐらいしかしてやれん」
『それで共犯者を増やそう、と言う事ですか。軍機に関わる情報もありましたが?』
「確認は取ったから良いんだよ。それに使えそうな武装も幾つか用意してあるしな」

 五機ずつの打鉄とラファールは全てがバラバラの武装を持っている。恐らくそれらは今日試験される予定だった装備だ。
 ……その殆どがネタ装備であるのは言うまでも無い。中には二人羽織のようになっている機体すらある。

「見た目は不揃いだが性能は俺のお墨付きだ。砲撃支援なら充分行けるだろ」
「全く……姉さんに殺されても知らないよ?」
「お前らが生きて帰れば大丈夫さ……取れる責任は俺が取る。勝って来い」

 やれやれ、と私は肩を竦めた。源ちゃんの事だ、何かしら理由をつけて問題ないようにしているんだろう。
 向こうの方では一組の面々が一夏の敵討ちだと盛り上がっている。死んでないっての。

「ここまでお膳立てされて、負けたら悔しすぎるよね……行くわよ六花!」
『イレギュラーが発生しない限り負ける事はまず無いでしょう。IS展開、起動します』
「……さあ、諸君。反撃の時間だ!」



『初弾命中っ! 撃て撃て撃て撃てぇっ!』
『ピサリス0186……待ちに待った時が来たのよ! 多くのモブが、無駄キャラでなかったことの証のためにっ!』
『早めに片付けてあげるわ! ティロ・フィナーレ!』
『対IS狙撃砲コルヴァズ……イア、クトゥグアッ!』

 始まった。何か色々とアレな名前も聞こえてくるけど、それでも源ちゃんのお手製だ。威力だけは折り紙つきだろう。

『貴女に、力を……!』
『粒子加速プレート展開、エネルギー充填完了っ! マイクロウェーブキャノン、発射ぁっ!』
『機動性が高い! 避けられてるぞっ! 敵機なおも接近中、距離残り七千っ!』

 光が闇夜へと走っては消えていく。中にはグレネード等もあり、離れている筈の私達ですら熱気を感じるほどだった。

『くっ……本音ちゃん、計って!』
『えっとね~、距離四千五百~』
『今度は外さない……!』

 今頃はシャルロットが悔しがってるかな、と意味の無い思考が浮かんで消える。私も割と緊張しているらしい。

『距離残り三千っ! 各員接近戦準備!』
『迎撃します! せぇのっ……ギガスマッシャー!』
『皆! 今の内に抜剣しといて! キール、モードロワイヤルッ!』
『これでも喰らいなさい! アイアンカッターッ!』
『私は癒子……癒子”ザ・ウィザード”よ。故あってこの狩りに参加したわ。福音、貴女に恨みはないけど―――あっ』

 ありとあらゆるネタ兵装が使われるが、それでも福音の足は止まらない。軍用ISは伊達じゃない、って事かしら。
 あと谷本さんがやられた。

『グロウスバイルと電磁抜刀で前に出るわ! サポートよろしく!』
『オッケー! ビゴー、ジオインパクト展開っ! 行っけぇぇぇっ!』
『行くわよ、合わせて! 言霊転送!』
『光り射す世界に、汝ら騒乱住まう場所無し! 渇かず飢えず止まりなさい! レムリア・インパクト!』
『昇華!』

 流石にここまでやると通信を聞いているだけで『やったか!?』と失敗フラグを立てそうになる。
 そろそろ作戦も第二段階に移る頃だし、そう気を抜いてもいられないわね。

『ビッグシャチ祭りで吹っ飛ばすよ! リバウンドお願い!』
『無茶しないで! ヴィーマックス、発動!』
『よし、規定ポイントに到達! 総員散開っ!』

 ―――来た。ここからは私達の時間だ。

『参りますわよ、福音っ! 先刻の借り、返させて頂きますっ!』
『取られた台詞の分は活躍させてもらうよっ!』
『よし、訓練機組は前衛と後衛でエレメントを組んで退避! 支援砲撃に徹しろ!』

 セシリアとその背に乗っていたシャルロットが最初に仕掛ける。その間にラウラは距離を取って皆に指示を出していた。
 幾らオールレンジで戦える広域殲滅型と言っても所詮は一機。二機以上で組めば戦い方は幾らでもある。

『ガーデン・カーテンを破るには間合いが甘いよ!』
『踏み込みが足りませんわっ! そこっ!』
『反撃が減った……逃げる気だ! 出番だぞ!』

 予想通り福音は退避行動を取ろうとする。でも甘い。こっちの戦力は出てる分だけでISが13機。そう簡単に逃げれる相手じゃない。

『はぁぁぁぁっ!』
『さあ、思いっ切りとかちつくしてあげるわっ!』

 逃走を始めた福音の進行方向に紅椿とその背に掴まった甲龍が姿を現す。
 さて、それじゃあ私達の出番ね。

『予定段階へと事態が移行しました。行動を開始します』
「行くわよ、簪」
「うん……!」

 隠れていた岩礁から外へ飛び出す。福音との距離はおよそ千三百、機動型からすればあるようで無いような微妙な距離だ。
 けど今は四方八方から砲弾が飛び、敵味方が縦横無尽に飛び回る戦場という名の地獄絵図だ。もう初めても良いだろう。

「六花、インコムとダンディライオン全弾発射!」
『了解。インコム一番二番射出、ダンディライオン一番から十二番発射』
「コロッサル、抜刀……!」

 爆音が渦巻く戦場へインコムが駆けていき、ダンディライオンが空中でネットの花を開いていく。
 私と簪はその間に距離を詰め、逃げ場をなくした福音へと攻撃を開始する。簪の武装は以前姉さんが生身で使った超巨大物理刀だ。

『Laaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhh!』
『福音よりロックオン反応。迎撃、来ます』
「バラ撒くだけの弾幕なんかっ! 簪っ!」
「山嵐、発射……!」

 福音に搭載されている唯一の兵装がこっちにも撒かれ始める。ダンディライオンの殆どがこれで撃ち落とされた。
 けど弐式に搭載されている高性能爆薬より一発ごとの威力は低く、少し密集している所へ一発撃ち込めば活路は開ける。

『弾道支配領域予測を開始します。予測ルートに従って行動して下さい』
「六花、ワイヤーガンの制御権こっちに回して! 簪、私のお尻の匂いが嗅げる位置に着いて来なさいっ!」
「……下品だよ、千春」

 顔の半分を隠すバイザーに映るのは菱形の歪んだ柱。それがこっちを狙ってガンガン伸びてくる。
 私はそれを時に掠め、時に大きく避けながら進み、度重なる攻撃でロクに動けていない福音の真下へと飛び出した。
 皆の度重なる攻撃に福音は対応しきれず、私達がこの距離まで迫っている事に気が付かない。これで終わりよ!

「ブースター点火、最大出力……!」
「こっちも行くわよ! ガンナーズ・ブルーム『要塞殺し』!」
『―――!?』

 ワイヤーガンで左右の逃げ道を塞ぎ、私達は装備に搭載されているブースターを一斉に点火する。狙うは左右の巨大な翼、ウイングスラスター。

「ぶち抜けぇぇぇぇぇっ!」
『黒の棘尾、インパクト!』

 接触する瞬間に引き金を引き、左の羽を根元から打ち壊す。六花の正確なサポートがあるからできる技だ。

「私に断てぬ物、無し……!」

 私に一拍遅れて巨大な刀が振り上げられ、簪の決め台詞がウイングスラスターを切り落とした事を教えてくれる。
 残心をとっている間に福音が海中へ落ちる音が聞こえ、撃墜した事をハイパーセンサーを通じて確認した。

「やった……のか……?」
「油断は禁物よ。皆の支援砲撃が無かったらどれだけ苦戦してたか……」
『海中より高エネルギー反応―――異常事態発生! 異常事態発生! 退避勧告! 退避勧告!』
「六花!? どうしたの!?」

 数ヶ月前に初めて会った時から今の今まで、六花のこんなに慌てた声は聞いた事が無い。
 私は六花に語りかけて異常を探るが、それよりも早く巨大な水柱を上げる水面が異常の原因を教えてくれた。

 空中放電を繰り返すフィールドに包まれ、胎児のように空中に静止する福音。その膨大な熱量が海水を蒸発させていく。
 福音は私達の攻撃で罅割れた装甲をそのままに、今までとは比べ物にならない程のエネルギーを迸らせた。
 そのままゆっくりと空中に直立すると、私達が切り落としたウイングスラスターの代わりとも言うべき『エネルギーの翼』が現れる。

『銀の福音のコア・ネットワークからの断絶を確認! 強制的に第二形態移行を実行した模様!
 危険危険危険! 退避を提案! 撤退を提案! 逃走を提案! 離脱を提案! 避難を提案!』
「提案を却下! どうしたのよ六花! 幾ら何でもこの戦力差で―――」
「うわぁっ!?」
「ラウラッ!?」

 ドン、と巨大な熱量が空を切り裂いていく。その音に反応してそっちを向くと、そこには海上へ落下していくシュヴァルツィア・レーゲンの姿。
 ……まさか、一撃で……!?

『警告! 警告! 敵性戦力の増大を確認! 戦闘空域からの離脱を提案する!』
「こんのぉっ!」
「鈴、落ち着いてっ!」
『■■■■――――ッ!』

 鈴とシャルロットが福音へ向かうが、今までとは比べ物にならない密度のエネルギー弾が弾幕を形成する。
 データには砲門は三十六って書いてあったけど、今の攻撃はどう見ても百を超えている。
 高速切替と衝撃砲でそれに対応していた二人はやがて弾幕へ飲み込まれ、先のレーゲンと同じように夜の水面へと消えていく。

『支援部隊へ通達! 緊急事態発生、早急な撤退を指示! 繰り返す、早急な撤退を指示する!』
『は、はるる~ん! どうしたのいきなり~!? それに福音は~!?』
「ごめん皆! 六花の指示に従って! 訓練機じゃ勝てそうに無いわ!」

 六花の通信を皮切りに訓練機部隊へ指示を出す間に、直撃を受けて箒とセシリアが落とされる。
 私はその光景に慌てて六花からインコムの制御権を奪い、PICによって空中に静止している中継ユニットを全て回収した。

 回収が終わり、私が福音の現在位置を再確認しようと顔を上げると、そこには私を飲み込みかねない大きさの青白い光が―――、

「くぅ……っ!」
『直撃判定! 敵機攻撃力尚も増大! 退避を勧告する!』
「簪!? どうして!」
「友達は守らないと……それに、弐式が言ってる……今勝てるのは、千春達だけだって……!」

 エネルギー砲、とでも言うべき福音の攻撃を零式斬艦刀で簪が防ぐ。その刀身が焼き切れるのと奔流が収まるのはほぼ同時だった。
 簪が斬艦刀を投げ捨て、1メートル程度の出刃包丁『鬼丸』を右腰から取り出す。純粋な物理兵装で耐久力は斬艦刀より上らしいけど……。

「弐式が……?」
『否定。ネットワークより断絶され自己判断で第二形態移行まで行った福音に対抗し得る戦力も覚悟も存在しません!』
「……六花。初めて会った時より、ずっと……人間らしくなったよね」
「簪……?」

 様子見をするように留まる福音を警戒しつつ、簪は空いた右手に夢現を展開する。近接戦闘をするつもりなんだろうか。
 ……他の機体の穴を埋めるように装備を選択したせいで、今の簪はこの上ない火力不足に陥っている。山嵐も全弾発射はあと一回が限度だろう。

 それでも、簪は口の端に笑みを浮かべている。

「私……『二人』に出会えて、良かった……」
「だ、駄目よ簪……そんな台詞、死亡フラグど真ん中じゃない……!」
「大丈夫……弐式が守ってくれる」
『危険! 危険! 敵性ISより高エネルギー反応! 攻撃、来ます!』

 そう言うと簪は『私達』に背を向ける。口元が僅かに震えているのは恐怖からか、ボイスインターフェイスを使っているからか。

「それじゃあ、行ってきます」

 不意に、簪は、笑って―――、

『■■■■―――ッ!』

 ドボン、と水面を揺らした。

「……六花」
『危険危険危険! 予想危険度最大! 撤退要請! 撤退要請!』
「……アンタ、悔しくないの?」
『入力情報が不適切と判断します! 不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します!』

 ……ああ、確かに六花は人間らしくなっている。小憎たらしい位。目の前に居たらぶん殴ってるわね。
 さっきから福音が『私』に攻撃を仕掛けてこないのも、攻撃する価値も無いと思われているからだろうか。

 ―――第一コア稼働率54%
 ―――第二コア稼働率11%

「あそこまで大法螺吹いといて、途中までノリノリだった癖にさ……たかが第二形態移行しただけじゃない」
『第一形態移行と第二形態移行では戦力の変化率が違いすぎる! 敗北の危険性、極大!』
「それでも……ここまで仲間をやられて、アンタは黙って見過ごせるの?」
『……入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』

 うっわムカつく。小憎たらしいなんて評価は不適切ね。ただただ憎たらしいわ。

 ―――第一コア稼働率63%
 ―――第二コア稼働率14%

「答えなさい、糞AI! アンタは誰でどんな奴!? そして今は何をする時間!?」
『……私は、六花。佐倉博士により生み出され、貴女に仕え貴女に従い貴女の力となるAI。そして今は―――』



『あの敵を、倒す時間ですっ!』



 ―――第一コア稼働率76%
 ―――第二コア稼働率29%

 ―――合計100%オーバーを確認
 ―――【インフィニット・ドライブ】スタート


 ドン、と『私達』から力が溢れ出る。それは可視化するほどのエネルギーの奔流であるとハイパーセンサーは示していた。

「これは……!?」
『インフィニット・ドライブ……私に搭載された二つのコアを励起・共鳴させ、擬似的に稼働率上限を引き上げる技術です。
 現在私は擬似的に第二形態移行した状態にあり、全能力の上昇、被物理ダメージの回復等の発動が確認されています』
「ははっ……とっておき、って事ね?」
『それだけではありません』

 一つ目のコアの頂点から走るラインが二つ目のコアの反対側の頂点へと走る。
 それはコアの外周を経由し反対側から離れて一つ目のコアへとラインが交差する。
 その光は一つ目のコアの外周を経由し、最初にラインが現れた場所へと戻った。

 その形は、『∞』。故に常識を超えた力を手にする事を可能にする。

「何よ、もったいぶらずに言いなさい。まさか……」
『単一仕様能力【虚像実影】の使用が可能になりました。説明を行いますか?』
「やっぱりね。使いながらで良いわ、一番気をつけないといけない事は?」
『制限時間が一分しかありません、ご注意下さい』

 上等。ここまで引っ張っといて使えなかったらスクラップにするわよ?

『単一使用能力『虚像実影』、起動します。レインダンサー、メテオストライク、レーザービーム、スタンダード、グラップラー、展開』

 六花の声と共に私の周りに変化が訪れる。右下に二機、左下に二機、真下に一機、『ISが現れた』。
 私を一番上の頂点として六角形―――雪の結晶のように布陣したISは非常に見慣れた機体、と言うか六花そのものだ。
 違うのは全身装甲で覆われた操縦者と装備しているパック。右下がレインダンサーとメテオストライク、左下がレーザービームとスタンダード、真下がグラップラーだ。

 ここまでお膳立てされれば私だって解る。

「無人機と遠隔操作……第五世代技術、か」
『はい。五機の操作は私が行いますのでスパイダーガールの全操作をお願い致します』
「言ってくれるじゃない。やってやるわよ……行けっ!」

 私の号令に合わせて六花が舞う。全機が手にGAU-ISを持ち、上から下から右から左から正面から福音へと突っ込んでいく。
 レインダンサーが高密度の弾幕を形成し、レーザービームの攻撃を本命として撃ち込む。
 メテオストライクが54発全てを一斉に発射し、先の二機も合わせてスタンダードがその援護をする。
 正面からグラップラーが突っ込み、その後ろに私が続いた。

『しまった、グラップラーよりもフォートレスの方が適任でした。申し訳ありません、マスター』
「特攻にはアレが一番だからね……ダンディライオン、全弾持ってけぇっ!」

 既にスタンダードの分を合わせて72発のミサイルが飛び交う戦場へ更に12発、最後のネットミサイルを射出する。
 私はグラップラーより若干下から福音へ進み、ワイヤーガンを福音めがけて発射した。

「できればインコムを使いたいけど、やっぱ私じゃ操作しきれない……!」
『残り三十秒。間も無くグラップラーのダメージが危険域へ到達します』
「突っ込ませなさい! どうせ修理は源ちゃんが勝手にやるわよ!」
『了解。他の機体も残弾が無くなり次第、全機吶喊します』

 その報告を皮切りにグラップラー、メテオストライク、レインダンサーの順に福音へと突っ込んでいく。
 残った武器はGAU-ISとそれに付いている銃剣だけ。銃剣ぶっ刺して撃ち続けるつもりなんだろう。

『全機残弾零。吶喊します』
「オッケー、合わせるわ!」

 福音は罅割れから小さな羽根を生やし、全身にひっついた六花達へと攻撃する。私もそれに混ざると更に迎撃は強くなった。
 ―――熱い。痛い。苦しい。けど、仲間は皆やられてしまった。訓練機組は無事だろうけど、あの子達が敵う相手じゃない。

「……なら、ここで決めないとね」
『残り十秒、全GAU-IS残弾零! 全機ナイフ展開―――アタァック!』
「だらぁぁぁぁぁぁっ!」

 遂にGAU-ISの弾も無くなり、本当に最後の武器である内蔵ナイフ12振りでの攻撃を開始する。
 斬り、突き、断ち、裂く。この5機が消えるまでに倒せるか、福音が耐えきるかの勝負だ。

「うぉあああああああああああああああっ!」
『残り五秒、展開機の量子化の開始を確認!』
「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 ……零。散らす火花が消え、全方向からの力が消えて福音ごと前につんのめる。

『報告。エネルギーエンプティ、搭乗者保護機能の発動許可を』
「却下よ……どの道これで倒せなきゃ……」
『―――報告。敵機健在。敵ISはエネルギーを全身より放出し、防御に成功した模様』
「なっ―――」

 最悪なんて言葉じゃきかない。絶望、としか言いようのない展開。与えたダメージはゼロじゃないけど、倒すには至らない。
 ……PICも最低出力まで低下した六花はゆっくりと落下を始め、私は福音に頭を掴まれた。

「ガッ―――!」
『敵ISより高エネルギー反応……シールドバリアーを頭部へ収束! 搭乗者保護を最優先っ!』
『■■■―――、』

 ギリ、と頭蓋が軋む。痛い。バイザーが歪んで割れる。痛い。指の隙間から光が漏れる。痛い。
 ……熱い、痛い。怖い、痛い。嫌だ、痛い。助けて、痛い。誰か、助けて、嫌だ怖いよ、痛いよやめて、誰か誰か誰か誰か―――、

「い、ち……」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ズン、と頭から響く衝撃。この場に居る筈のないアイツの声。けど、この匂いは間違いない。


「馬鹿……遅いわよ……」

 ……ああ、せめてこんな時くらいは素直に褒めてあげるべきだったかな。

「源兄ぃに増設ブースター借りて駆け付けたんだぜ? これ以上は無理だよ。
 ……大丈夫か? 千春」

 どうしてコイツはこういう歯の浮くような言葉とシチュエーションが似合うんだろうか。確かに皆が惚れるのも解らなくもないわ。

「まあ、助かったから良しとしますか……ありがとう、一夏」
「何がだよ……大丈夫そうだな、良かった」

 バイザーが砕けたせいで通常のハイパーセンサーのみになった私の視界一杯に映る愚弟の顔。
 ……まあ、顔だけは悪くないわよね。あとそろそろ下してくれない?

「一夏っ!」「一夏さん!」「一夏っ!」「一夏ぁっ!」「一夏っ!」「織斑君……!」

 ダメージがある程度回復したらしい皆が寄って来る。
 はて、何かおかしい点があるような……? まあいいや。

「皆、心配掛けてごめん。もう大丈夫だ」
「本当……? 凄い怪我だったのに……」
「ああ。源兄ぃが言うには搭乗者の生体再生機能らしいけど……まあ細かい事は俺にもよく解らないんだよ」

 ……相変わらず適当に生きてるわね、アンタ。まあ源ちゃんもそれを解ってて詳しく説明しなかったんだろうけど。
 一夏に支えられながら六花のPICで体を起こす。と、その姿が変わっている事に気がついた。

 フロートユニットは大型化し、全体的に鋭角な印象を受ける。あ、顔のパーツも変わってるわね。
 それに左腕が肥大化し、何かしらの武器が搭載されている事が解る。微かに放熱しているって事は私を助けたのはこれなのかな?
 それと背中からX字型のブースターが生えてるけど、これは確か源ちゃんが作った装備だったわね。『クロスボーン』だっけ?

「それじゃあ皆……一気に決めるぞ!」
「あ、ゴメン。私もうエネルギー切れで動けそうにないや」
「っと……まあ、それならしょうがないか。降りれるか?」

 さあ行くぞ、って時にいきなり腰を折ったせいで一夏が軽くこける。ところで皆、何か視線が冷たいのはなんで?

「うん、それなら大丈夫……頑張ってね」
「ああ―――行くぞ!」

 一夏が私を離し、吹っ飛んでった福音の方へスラスターを吹かす。皆も私に一言ずつかけてからその後を追って行った。

「……ありがとう、六花」
『はて、何のことでしょう? 私は機体の姿勢維持をしつつ、貴女に微小な痛覚情報を与えていただけですが?』

 皆が福音へ向かった後、地上スレスレになってから私は六花に礼を言う。足元には丁度いい島が見えた。
 ……恐らく六花が居なければ皆との会話の途中に気絶していただろう。余計な心配はかけたくない。

「……はいはい、っと。ここ、満潮になって沈んだりしないわよね?」
『大丈夫でしょう……ゆっくりお休み下さい、マスター』

 おやすみ、と言う直前、空が金色の光に包まれた気がした。ああ、これは……勝ったわね。



「ふっ、ふふっ、ふふふふっ……凄いね、素敵だよ。まさか二つのコアをあんな風につかうなんて……流石の私でも思いつかなかったなぁ」
「ホントは副産物なんだがな。しかしマジで発動させちまうとは……」

 束は断崖絶壁の柵に腰かけ、俺はその後ろの木の枝に座っている。やめろよお前、こっちが怖いからさぁ。

 ―――緊急作戦『誰がために鐘は鳴る』は佐倉源蔵立案の作戦主導の下、訓練機を含めた18機のISによる攻撃で成功。と言う事になった。
 まあ、俺は生徒の暴走の責任を引き受けた形になるので即時処罰は無し。でも多分帰ってから何か言われそう。せめて期末テスト終わってからにしてくれない?

「ま、俺としちゃ装備の試験データが取れたから良いよ。紅椿の方はどうだ?」
「絢爛舞踏含めても42%……初めてにしては上出来かな。それよりゲンゾー、あれって結局どういう能力なの?」
「ん? ああ、虚像実影か? あれは予め登録しておいた予備機を量子展開して、それを六花が操作してるだけだ。
 駆動とシールドのエネルギーは本体から取ってるから、六機展開したら一分しか持たないがな。それにレギュレーション違反だ」

「ほう? 中々興味深い話をしているな、貴様ら」

 ギャーチフユサーン。

「やぁ、ちーちゃん。良い夜だね」
「そうだな。そうだ源蔵、お前は戻り次第学内査問委員会にかけられる事になったからな。覚悟しておけ」
「げぇ……りょーかい。当面の目標は一機だけの展開が可能かどうか、だな。流石に変換容量は騙せねーしなー……」

 微妙に噛み合っているようで噛み合っていないこの会話。ああ懐かしい。

「あ、そーだ。千春、大丈夫だったか? 一応バイタルはリアルタイムで監視してるが、何かあるとまずいからさ」
「それは問題ないだろう。極度の疲労だそうだ」
「頑張ってたもんねー、はるちゃん」

 そしてまた話題が一つに戻る。遠くに鳴る潮騒のような会話のリズムが心地良い。

「それにしても、零落白夜どころか生体再生まで可能とは……束、お前は一体何をしたんだ?」
「何って言われてもなぁ……私は単に作りかけの機体に新しい技術を入れて完成させただけだよ。細工って言うならゲンゾーの方が怪しいよ」
「生憎と六花にかかりっきりなんでな、そんな暇は無かったぞ。可能性があるなら自己進化がミソだな」

 やっぱりそうか、と三人の間で微妙な空気が流れる。二人とも見当はついてたんだな。

「コアナンバー001……白式に使われているのは白騎士のコアらしいが、本当か? 束」
「そーだよ。でも不思議だよね、零落白夜はともかく生体再生は完全に初期化した機能の筈なんだけどなぁ」
「大方コア・ネットワークに情報が残ってたんだろ。零落白夜を暮桜から入手したのと同じ方法だと見るね、俺は」

 ―――コアナンバー001。インフィニット・ストラトスという名前がついた後で最初に作られたこのコアは、実は元々俺用に作られたコアだったりする。
 体力的な面から見てハミングバードの操縦者には千冬が相応しかったが、その後各種技術を搭載した白騎士は『誰でも使える兵器』であるはずだった。
 だが、生体認証絡みのデータをハミングバードから丸写ししたのがまずかったのか、最初は千冬しか操縦者として認めなかった。
 白騎士事件後の調整で束は認識できたものの、結局俺は無理だった。そいつを元に作ったせいでご覧の有様だよ! まあこんな女尊男卑が顕著なのも日本ぐらいなんだが。

 で、話を戻すとこのコアは元々俺用……つまり白騎士は俺が使う事を想定して作られていた。だから生体再生なんてモンが搭載されているのである。
 その頃には俺の左腕も今と変わらない状況になっていたが、束はそれでも納得できなかったんだろう。ありがたいとは思うが、やはり重荷になっていたのかとも思う。
 っつーか、千冬が使う機体にそんなもん要らんしな。だって当たらんし、当たってもシールドバリアーあるし。保険としては使えるけどさ。

「あ、そっか。そう言う方法もあるんだね。それなら初期化しても残ってる理由にはなるね」
「もしかしたら俺用だった名残なのかもな、一夏が白式を使えてるのは」
「……一応、筋は通っているな」

 千冬はどこか納得し難いと言った感じだ。まあ、結局推論でしかないんだけどさ。

「ただ、多分きっかけはどっかの天才さんが一夏を認識できるプログラムぶち込んだからだろうな。それがネットワークで全部のコアに流れて、アイツが反応したと」
「……片棒を担いだ奴がよく言うな。あれはお前がちゃんとしていれば防げた事だろうに」
「それにその推論、結構穴だらけだよ?」

 やかましいわ。んな事は解ってるし、一夏が入学してこないと詰まらんだろうが。あとそろそろケツ痛いから降りるか。

「それで、どこかの天才は今回の件にどれくらい関わっているんだろうな? なあ、束」
「そうだねー、解決の立役者を作ったくらいかなー」
「よっこいせっと……何と言うマッチポンプ臭。何がとは言わんが」

 白々しいにも程があるが、流石に今回の事を公にすると束が国際指名手配されてしまう。それに証拠は見つからないだろうしね。

「……ねぇ、ちーちゃん、ゲンゾー」
「何だ?」
「どーした?」

 白式の情報を確認していた束はディスプレイをかき消す。その声色はどこか震えているような、そんな気がした。


「―――今の世界は、楽しい?」


「そこそこにな」
「後はお前が横に居てくれれば完璧かねー。それと束」

 ん? と肩越しに束がこっちを向く。そこに俺は一言、

「そろそろケツ上げないと痛くなるぞ、その柵ゴツゴツしてっから」
「……ちーちゃん」
「心得た」

 あれ? なんでそんな冷ややかな目へぶぅっ!?



 アニメ分まで全部終わった……だと……!? 最初はここまで来るとは思ってませんでした(オイ

 っつー事で六花が単一仕様能力を使えるようになりました。ただし容量制限を軽く越えてしまうので、今のまま使うと反則負け。
 この能力は機体名から来ています。雪片→雪関連の単語→六花→六角形→六体同時展開とかかっこよくね? みたいな感じで。
 
 4巻分はずっと束さんのターンです。つっても一話で終わる可能性もありますが。あと番外で夏コミ編もやります。
 そんで5巻分は文化祭の分しかやんないと思います。もっかしたら会長登場で千春視点の話一本やるかも。

 そう言えばスパロボの第二次OGが発表されましたね。OGは主人公も新規キャラだったらやってたんだけどなぁ……。



「全く……ゲンゾーはもう少しムードってものを理解するべきだと思うよ。ねぇちーちゃん?」
「お前にまでそう言わせるとは……本当に相変わらずだな、コイツは」

 千冬の裏拳で源蔵は膝から崩れ落ち、気絶してうつ伏せに倒れている。空気の読まない者の末路である。

「だって、昨日だって結局何にもしてこなかったし……」
「……お前もお前で相変わらずだな。で、正直な所はどうなんだ?」
「ど、どうって?」

 ため息をついた千冬の目に悪戯っぽい光が宿る。これは千冬が束に口で確実に勝てる数少ない話題である。

「コイツだコイツ。お前と箒の仲も何とかしようとしているようだし、好意を示されるのは嫌なものでもないだろう?」
「……そりゃ、好きって言われるのは嬉しいけど、その……は、恥ずかしいもん」
「全く、本当に相変わらずだなお前は……中学生か」

 この二人は世界的権威である筈なのに、こういう事になると途端に初心になる。それが可笑しくない筈が無い。

「ちーちゃんこそ相変わらずブラコンのくせに」

 そして世界を操るトリックスターは、こういう時に限って最悪のカードを引いてしまうのだった。

「……ほう? そうかそうか。貰い手が居なさそうな親友に遠慮していたが、それも余計なお世話だったか……。
 それなら、コイツは貰ってしまっても構わんな? 一夏にも彼氏を作れと言われているし丁度良い」
「だ、駄目ーっ! いくらちーちゃんでもそれは駄目ーっ!」

 ババッ、と無駄に良い運動神経を使って柵から地面の側へ飛び降り、束は千冬と相対する。
 その目は何時にない真剣味を帯びており、対する千冬はと言えば―――、


「(ニヤニヤ)」


 悪戯が成功した子供のように口元を歪めている。

「あ……う……え、えと……ば、バーカ! ちーちゃんのバーカ! おぼえてろー!」

 それを見て束は恥ずかしいやら悔しいやら、一昔以上前の悪役のような台詞を残して崖の向こうへと飛び降りていった。

「やれやれ……おい、いい加減起きたらどうだ」

 悪戯っぽい笑みは苦笑へと変わり、軌跡を残すニンジンロケットを少しの間だけ目で追っていく。本当は颯爽と去るつもりだったんだろうか、と考えもする。
 それもやがて終わり、隣でずっと伸びている幼馴染の腹を蹴り上げた。どうせ起きているが恥ずかしくて動けないんだろう、と考えて。

「ゲボァッ」
「……何だ、本当に気絶していたのか」

 奇怪な声をあげて更なる気絶の極地へと進む親友に千冬はため息を一つつき、その巨体を肩に担いで旅館へと戻っていった……。





[27457] 第十一話「篠ノ之束の憂鬱」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/23 21:45



 第十一話「篠ノ之束の憂鬱」


 篠ノ之束は悩んでいた。例の赤い光が光源の部屋の中で。何度見ても目に悪そうだが大丈夫なのだろうか?
 ……実は彼女が『悩む』というのは珍しい事だったりする。彼女の頭脳は思考そのものの非凡さもあるが、普段は選択そのものに殆ど時間をかけない。

 で、何をそんなに彼女が悩んでいるかと言うと、


「むぅ……ちーちゃんは安牌だと思ってたのに……」


 先の臨海学校についてのやりとりであった。

「私を焚きつけるためのブラフって事はあるかもしれないけど、万が一本気になっちゃったりしたら……」

 そして無駄に高性能な彼女の頭はシミュレーションを開始する。本当に何をしているのかこの娘(今年で25歳)は。

 ―――織斑千冬。
 付き合いの長さ:自分とほぼ同程度。かれこれ二十年以上の付き合い。
 実際に接している時間:失踪やら何やらのせいで自分よりも上の可能性あり。
 相性の良さ:良い。ボケとツッコミはかなりのレベル。ただし肉体言語多め。
 周囲の環境:弟が何かしら言う可能性はあるが、同時に認めても居る。
 互いの感情:お互い嫌いではない。源蔵はともかく千冬はもしかすると……。

 結論:難敵。千冬が本気を出した場合、勝率は五分五分。

「……まずいよ。まさかここまでだなんて」

 源蔵の意識がずっとこっちを向いているからと言って、それが何時まで続くかは解らない。もしかすると明日、いや、今この瞬間にだって変わってしまうかもしれない。
 ……そんな当たり前の事でさえ、彼女は今の今まで気が付かなかった。だが幸運な事に、彼女は持ち前の聡明さで何かを失う前にそれを知る事が出来た。

 だが、どうすれば良いのかは解らなかったが。

「う、うぅ~……どうしよう……」

 如何に天才と言えど、それは基本的に一人で積み上げてきた物だ。
 故に『誰かと何かをする』事を最優先で考えた経験は殆ど無い。

 源蔵も条件自体は同じである筈だが、彼は一応転生オリ主である。その辺の知識ぐらいはある。

「うぅ……」

 へちゃぁ、と彼女は椅子に崩れ落ちる。思考の場こそが彼女の領域であったが、公式も何も無い物を導き出すには今一つ経験が足りなかった。

 が、それは着信を知らせる電話によって遮られた。この着信音は、彼だ。

「へっ、へぅ!? げ、ゲンゾー!? どーしたの!?」



「いや、どーしたもこーしたも……遊びに行かないか、と思ってな。折角なんで誘ってみた」

 何でコイツは声が裏返ってるんだろうか。また変な遊びでも思いついたか?

『あ、遊びにって……仕事とか良いの?』
「世の中には夏休みってもんがあってな、こっちも例に漏れないんだよ。福音の仕込みも査問委員会も終わったしな」

 期末テストと査問委員会がブッキングしまくってたのは引いたが。仕事させろよ。
 お陰で学会だの何だの終わらせてたらいつの間にか八月だよ。夏コミの用意はしてあるから良いけど。

『そっか……で、どこに行くの?』
「ああ、ウォーターワールドっつープールだよ。オーナーと知り合いでな、無料チケット貰ったんだ」
『ふ、ふぅーん……』
「ああ、嫌なら別に良いぞ? 一夏達にやって騒動起こすの見てるから」

 その場合、明日から全世界の衛星放送を見れるようにアンテナをつける作業が始まります。ああ、千春達にアレのテストもして貰わんとな。

『い、嫌じゃないよ! うん、せっかくだし束さんが付き合ってあげましょう! うん!』
「そっか。じゃあ何時にする? 出来れば早い方が良いんだが……」
『あ、明日! 色々と用意しないといけないから!』
「お、おお……それじゃあ明日十時に駅前で良いか?」
『うん! それじゃあね!』

 切れたし。しかし用意が必要なら普通はもう少し間を空けるんじゃないのか?
 などと考えていると玄関のインターホンが鳴る。ああ、もうこんな時間か。

「おーっす。そんじゃ源兄ぃ、風呂借りるな」
「ああ。俺は今日はもう入ったから、上がったら温水器下げといてくれ」
「りょーかい」

 今日も今日とて一夏が風呂に入りにやってくる。こんな微妙な所でも原作との乖離が起きているのはどうかと思うな、一夏との入浴目当てにヒロインズが突撃してきたりするし。
 原作ならたまに大欲情……もとい大浴場が使える程度だが、俺がここに居を構えているせいで「そんじゃお前の所に入れば良いじゃん」って学園の偉い人達に言われてしまったのだ。
 俺は入学した当初に気が付いていたが、学園側はそんな事はすっかり頭から抜け落ちていたらしく、結局タッグトーナメントの後に俺の所に話が来た。いいなー大浴場使えて。

「ん? セシリアか。帰って来てたんだな」

 また作業に戻ると、監視カメラに人影ありとウィンドウが拡大される。そこには金色のドリルが映っていた。
 専用機持ちのスケジュールは把握してるので今日まで本国に戻っていたのは知っている。格好から察するに散歩か?

「……ふむ。本来なら全員揃った所で見せようかと思ったが、まあコイツなら良いリアクションが見れそうだしな」

 それに場所も良い。この位置ならギリギリのラインで楽しめる事だろう。

「ぽちっとな、っと」
『うぉ!? な、何だぁ!?』
『あら? あれは……』

 スイッチに反応し、二階にあるオーシャンビューが自慢の浴室が外へせり出していく。正確には壁が倒れ、それを足場に浴槽が外へ移動している。
 ゴンゴンゴンゴン、と重低音を響かせながら浴槽は完全に露出し、気持ちよく入浴していただろう一夏は状況把握のために立ち上がって周囲を確認する。

 まあ、当然ながら裸な訳で。

『あ』
『へ?』

 俺は即座に監視カメラのボリュームを絞ると、小さくイチカサンノエッチーとか聞こえてくる。うむ、大成功だな。

「……ん? 今日アイツ帰ってきたって事はもしかして……」



 翌日、手早く荷物をまとめてモノレールへと乗り込む。と、そこにはシャルロットとラウラが乗っていた。
 因みにこのモノレール、島内だけで4駅あったりする。それがぐるっと島を回って対岸へと渡っていくのだ。

「そう言えばレーゲンってトロンベカラーだよな。はよーっす」
「おはようございます……竜巻?」
「おはようございます。もしかして一夏がやってたアレかな……?」

 きっとソレです。でも赤がちょっと違うし、あと変形機構はやっぱり欲しいか。
 そして刀一本って事で一夏がレーゲンにまたがるんですね。なんて卑猥。

「おめーらは買い物か?」
「ええ。ラウラの服を買いに」
「その後は色々と見て回ろう、と」

 成程。って事は@クルーズには近寄らない方が良いな。あっちは元々行かないが。

「ドクトアはどちらまで?」
「溜まってた仕事が片付いたんでお出かけだ。学会だのなんだので夏休みは忙しくて敵わん」
「お疲れ様です。ああ、そう言えばクラリッサが夏の祭典について連絡が欲しいと言っていました」
「ああ、そーいやそーだな。りょーかい。後で連絡しとくわ」

 などと駄弁っているとあっという間に対岸の駅に着く。因みにここが俺達の地元だったりもするのは……多分俺と千冬が絡んでるんだろうなぁ。
 だがその分だけ里帰りは楽だし、近郊の都市開発でこの辺も栄えてるから良しとしよう。などと湘南のと同型のモノレールから降りてしみじみ思う。

「しかしドクトル、夏の祭典とは……?」
「アイツの日本知識の源の祭典だ。細かい事はクラリスに聞け」
「ねえラウラ、クラリッサさんって?」
「ああ、名前はクラリッサ・ハルフォーフ。私の部隊の副官だが私よりも年上でな、色々と相談に乗って貰っている」

 部隊についてそんなベラベラ喋って良いのかと思うが、よく考えたら【シュバルツィア・ツヴァイク】の操縦者として全世界に公開されてるんだったな。
 俺も二人も駅前に移動するのでバスに乗る。よく考えたらここって電車駅とモノレール駅があるから『駅前』って二つあるんだよな。どうでも良いけど。

「そっか、仲が良いんだね。ドクトアはドイツに居た頃に?」
「ああ、自慢の部下だ。ドクトルとは日本の文化を通じて親交を深めたとか」
「まーな。最初は休憩時間中も整備やら何やら聞いてきてな……正直言うとウザかった」

 シャルロットはたまに町内のガイドブックに目を通しつつ、ラウラは周囲の地形や建物を確認しながら、俺はぼへーっと会話をする。
 あの頃はアイツも軍学校出たばっかりだったからなー。千冬が教官やってたせいか、俺も少し熱が入っていたかもしれん。

「そん時に読んでた漫画に興味持って、今でもたまに連絡取ったりするな。通販やってない商品とか送ってやらんといかんし」
「クラリッサも感謝しているようでした。そう言えば、ドクトルが記事を書いている雑誌の切り抜きもしていましたね」
「……んー?」

 どうしたシャルロット。ああ、近所の女子高生の目が気になるのか。地方都市だと外人って珍しいしな。
 この辺の連中も学園のせいで国際色豊かになってきたんだし、そろそろ慣れろと言いたいんだがね。

 因みに俺は学会誌以外だと『インフィニット・ストライプス』って雑誌でゆるーいコラムを書いている。こないだは何故かグラビア撮りました。何故だ。

「あー、そーいや来月のコラムそろそろ書かないとなー。白式は情報規制解除されてねーし、どれにすっかなー」
「それならばクラリッサとツヴァイクにしては? もう少しコミュニケーションを取りたい、と言っていましたし」
「そーだな。そろそろ第三世代機についても色々と書くか」
「もしかして、クラリッサさんって……」

 ワールドワイドOTAKUですが何か? どっちかっつーとタダの漫画好きのような気もするが。それも若干歪んだタイプの。
 俺が読んでたのがそもそも王道から少し外れた月刊誌とかの漫画だしなー。少女漫画よりそっちの方が好きな気がするぞアイツ。

「しかしアイツもそろそろいい歳だし、男の一人でも見つけたら良いだろうに」
「確かこう言っていた時は……猫の糞を踏め、とクラリッサが伝えて欲しいと言っていましたよ」
「ああ、やっぱり……言葉の意味は良く解らないけど」

 俺も良く解らん。いや、元ネタは知ってるが。などと漫才をやっている間にバスは駅前に着き、二人はてこてこと歩いていった。

 そして現在時刻は十時二十分。着いてからもうすぐ一時間が経とうとしております。遅れた秒数の分だけ乳を揉み倒してやろうか。

「なあ、そこんとこどう思うよ。束」
「うぇっ!? そんな、完全に死角から近付いたのに!?」
「ふっ、ハイパーセンサーのちょっとした応よ―――」

 誰だコイツ。

 いや、束だ。

 何この格好。

 赤を基調に大胆にも肩と胸元を露出させ、フロントは以前と同じエセエプロンドレス風。スカートはウェーブがかかっており、どことなく涼しさを感じさせる。
 日差し避けに被った鍔広の帽子は赤地で、白い大きなリボンが眩しい。手に持ったバッグは取っ手が籐で出来ており、デフォルメされた狼と猟銃が描かれている。

 ……察するに、一人赤ずきんと言った所だろうか。婆さんどこ行った。

「え、えと、遅れてごめんね? 寝坊しちゃって……」
「……あ、いや、お前が遅刻すんのはいつもの事だしな。別に良いさ」
「そ、そっか……似合う、かな?」
「あ、ああ。てっきり前のと同じ格好で来ると思ってたから、ちょっとビックリしたけど……似合ってる。可愛いと思うぞ」

 あーもー何やってんだ俺は。こーゆー時は真っ先に褒めてやる所だろうが。
 ……正直な所、どこかズレてる束がこういうガチな格好してくると、参る。もう何か色々とすっとばして襲いたくなる。

「えへへ……ちょっとは頑張った甲斐もあった、かな」
「そ、そうか。そりゃ良かった」
「うん……」
「………。」
「………。」

 ってうぉーい! 何故ここで黙る俺! そして束! 二人で出かける経験無いって訳じゃないだろ俺ら!
 いやまあその理由が電気部品買いに行くとかハミングバード開発用の資材盗みに行くとかそんなんばっかだったけどさ!

 ……ゴメン。やっぱ無理。滅茶苦茶緊張してるわ、俺。

「あー、えと、それじゃあそろそろ行くか!」
「そ、そうだね! 行こっか!」

 俺は先導するために踵を返す。が、その途中で体が止まってしまった。
 どうも左手が誰かに掴まれている。確認しなくても解る、これは束だ。引っこ抜けるからやめれ。

「……あ、えと、手……繋いで、良い?」
「……喜んで。何なら腕組んだって良いぞ? まあ暑いだろうが―――」
「じゃ、じゃあ遠慮なくっ!」
「―――手首にクーラーのスイッチがある。暑かったら使うと良い」

 ぽ、ぽよんって! ぽよんってーーーーーーっ! う、腕に! 腕にむにゅぁってーーーーーーーーっ!

 ……拝啓、今は確か雫石温泉の親父殿、お袋様。僕、生きてて良かったです。



 さて、やって来ましたウォーターワールド! オーナーの名前は向島光一郎! 皆覚えて帰ってね!

「……ねぇ、セシリア」
「……何ですの、鈴さん」
「……あれ、当て付けかしら」
「……お似合いではありませんか、狂人同士」

 一学期の成績赤点にすんぞテメーら。あと目に光無いの怖いからやめて。

「ん? ゲンゾー、あれ何?」
「何、と来たか。教え子だよ、箒のライバルでもある。一夏的な意味で」
「むむ、そうなるとここで排除しておいた方が良いかな? 篠ノ之家の辞書に敗北という文字は不要だからね!」
「無い、と言わない辺りがお前らしいな。けどやめとけ、今度こそ犯罪者として指名手配されるから」

 はーい、と束が肩に頭を預けてくる。やっぱこのままホテル行かない? もしくは市役所。

「あ、そうだ源さん。楊候補生管理官がよろしくって言ってたわよ……可哀想に」
「何がだ? そんで、お前らは一夏に予定すっぽかされでもしたか?」
「……そういうドクターの気遣いの足りない所、本当に一夏さんの兄貴分らしいですわね」

 褒めるな恥ずかしい。

「……ゲンゾー、楊って?」
「中国の代表候補生管理してる人間。見事なツンデレだな」

 誰にデレるのかは知らんが。ツンオンリーのツンデレってそれツンデレじゃないよね。

「……はやく行こ、ゲンゾー」
「はいはい解ったって腕バラすなテメェ!」
「「……はぁ」」

 どーせあの二人も今日のイベント目当てに来るんだろうが。巻き込まれないようにコース確認しとかないとな。
 束と更衣室の前で別れ、さっさと着替えを済ませる。どーせ男の着替えなんざ脱いで着直すだけだ。
 因みに今日つけている左腕は見た目は生身と変わらない夏用防水タイプだ。臨海学校の時も海ではこれでした。

「しかし束の水着か……どんなんだろうな」

 妄想するだけで愚息がおっきしそうになるが、一秒間に10回呼吸して心と体を落ち着かせる。何か別の物が出そうだ。

 さて問題です、束の水着は次の内どれでしょうか?
 1、ハンサムの俺は突如プロポーズの度胸が―――ってこれ違う三択だよ。っつーか度胸無しで悪かったなボケ。

 1、ネタ
 2、ガチ
 3、意表をついて男物

 答え―――3、答え3、答え3。現実は非情である。

「そんな訳無いってば……折角頑張って選んだのに」
「へ?」

 何か後ろからゴニョゴニョと聞こえてきたと思ったらそこには巨大なスイカが二つ。じゃなかった。束だった。

 ……いや、あながち間違っちゃいねぇ。そのやまや連峰に迫らんとする束山脈を包んでいるのは、緑地に黒のラインが入ったスイカ柄のビキニ。
 一方、下は下で赤地に黒のドット入り。縁は緑色(漢字だと紛らわしいな)で切り分けたスイカのようだ。それが肉感的な尻を隠し……むしろ強調している。
 デザインは決して露出が多い方ではない。正直、こないだの千冬の方が多いくらいだ。だが、それでも隠し切れない色香があるのはもう素晴らしいとしか言えん。

 まあ何が言いたいかっつーと今この場で子作りしたい。ゴメン下品だった。いつもの事だが。

「ある意味ネタでありガチであり、か……良く似合ってる。ウチに来て俺をファックして良いぞ」
「考えとくー。で、どーしよっか?」
「まあ端から回ってくか。見取り図は……と、コレか」

 また何とも傍迷惑な事にスペシャルレースだか何だかのコースが園内全体に通っている。
 安全な回避策が無い事が解ったので仕方なくレンタルの浮き輪を借りて流れるプールに乗る事にした。

「ふへぇ~……」
「いや、あの……束さん? その……」
「ふにゃぁ~?」

 現在、俺達は浮き輪に乗って流れるプールを流れている。それは別に良い。が、その体勢が若干まずい。
 輪の中にケツを入れ、仰向けに浮き輪に体を預ける俺。その『上』に同じように重なる束。某仏像好きの漫画家はこう言うだろう、「これ絶対入ってるよね」と。

「……本当に入れてやろうか?」
「やれるもんならやってみれば~?」
「……ほぅ?」

 よーし許可出た。許可出たよコレ。まず手始めに浮き輪に預けていた手を束の腹に回す。

「え……げ、ゲンゾー?」
「どーした? やれって言ったのはお前だろ?」
「や、あの、えと……」

 首筋に鼻先を埋め、ふにふにと腹を指で押す。成程、運動してないから筋肉はあんまついてないのか。それで見た目良いって反則だなコイツ。

「や、ぅ……」
「すーっ……はぁー……」
「ん、くすぐったいよ……」

 少し弄ってると束も受け入れ始め、吐息が徐々に熱を帯びてくる。ならばと俺は両手を上へとずらし始める。

「ひぅっ!?」
「………。(ゴクリ)」
「や……見られちゃう……」

 人目? んなもん気にすんな馬鹿。俺は気にしない、と言う代わりにずっしりとした重量感のある双丘を手の甲で軽く押し上げる。
 ほよん、ふるん。ふにん、はよん。むにん、もよん。ういん、によん。もうずっとこれを繰り返したくなる柔らかさが手の甲を通じて伝わってくる。

「あ、あうぅ……」
「はっはっは、どうした? 顔が真っ赤だぞ?」
「う、うぅ~!」

 束は反撃しようとするが、生憎と腕ごと俺に抱きすくめられてる形だ。せいぜい出来る事と言えば蹴りと頭突き程度である。

「よ、っと」
「ひゃ!?」

 ズボッと水着と胸の間に右手を突っ込む。男は怒張、じゃなくて度胸! こうなったらこのまんま最後までいったらぁ!
 因みに左手は束の腕を拘束したままだ。反撃が怖いのもあるが、左手は水温のせいで若干冷たいのである。この手では刺激が少し強すぎるだろう。

「この圧倒的な質量感……むぅ、ガキの頃一緒に風呂入った時から何センチ増えた?」
「い、言わないよ!? 第一、子供の頃なんて計ってな―――ひゃぅぅっ!? も、揉っ!?」

 み、が言えてないぞお前。いや、む、か? それはさておき右手に収まりきらない物体に関してだが……最高です。究極です。至高です。この乳を作ったのは誰だ!
 掌の中心でガッチガチに硬くなった突起を捉えつつ、右に回すように左に掬い上げるように揉む。時に押し込んだりもしてみる。あーやべ、勃ってきた。

「あ、あた、当たってる! 何かお尻に硬いのっ!」
「愚息がお世話になってます。何、いずれ受け入れるモンだ、今から慣れておいて損は無いだろう?」
「で、でもこれ、ちょっと大きすぎ……」

 ふしゅぅぅぅ、と束が顔から湯気を出し始める。因みに俺はさっきからガンガン出てる。もう誰か止めて。


 と、俺がそう考えたのがまずかったのか、それとも板的にこれ以上はアウトだったのか。


「ひゃぁぁぁ~! り、鈴さぁぁぁ~ん! わ、私を踏み台にしましたわねぇ~!」
「悲しいけどこれ、真剣勝負なのよねっ!」
「この……あ、ドクター! 丁度良い所に! 失礼しますわっ!」

 え、ちょっと待て、そのコースで足出したら顔踏まれんへぶぅっ!?

「お待ちなさぁ~い!」
「あぁ~ばよぉ~、とっつぁ~ん。ってね!」

 ……束弄りに夢中になりすぎて、いつの間にかゴールの近くまで流されていたようだ。
 その結果、俺は踏み台としてセシリアに有効活用され、あのアホ二人は原作同様IS使ってドンパチやり始めやがった。

「た……助かったぁ……」

 ……悪かったな。



 っつー訳で以上夏休み編その1でした。んでもって10話超えたんでタイトルの台詞縛りやめます。

 短いですね解ります。でもここで一回切らないと次の話の長さが中途半端になりそうなんでここまでです。
 信じられるか? これだけで4巻半分なんだぜ? つまり次は夏祭りと千春視点の夏休みなんだぜ。

 因みにこの後、二人は普通にデートして帰ってます。シャボン玉飛ばしたりスープレックスかましたり。
 それと本命束、対抗千冬の他数名エントリーしてます。ただしゲンゾーが気付かないので始まらない。死ね。

 あと次は番外の夏コミ編です。全編ネタまみれの実験作になる予定です。大失敗の予感!





[27457] 番外編「【夏コミ】ISジャンルサークル実況スレ【実況】」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/27 19:53
1:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:03:12 ID:2feb198d
  立てといたぞ
  
2:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:05:06 ID:1234VUIh
  >>1乙
  いずやマダー?
  
3:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:06:59 ID:fL8f6V21
  >>1おつ
  でも欲しいか?
  
4:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:17:32 ID:b1o5D90W
  >>1乙
  欲しいだろ、今回は特に
  
5:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:20:11 ID:Gyh879Gu
  >>1乙鉄
  今回っていずや何もって来るんだっけ?
  とりあえずサークル入場してくる
  
6:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:26:14 ID:Pj43k9vc
  >>1乙
  
  >>5
  サークルの商品案内読んで来い、そしてサークル受かったお前にギギギ 

7:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:38:45 ID:Gyh879Gu
  いずやのすぐ近くでした
  誰もいねーぞ

8:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:39:55 ID:karit3O0
  >>1オツァール
  あいかわらずISジャンルはいずやの一強だな
  
9:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:42:56 ID:9dR520Ga
  国家代表>>1乙生
  そもそも中の人はナマモノだから妄想し辛いんだよな
  
  腐女子どもの男体化のバイタリティは恐ろしい……
  
10:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:51:43 ID:fL8f6V21
  確か一日目が第三世代で二日目がそれ以外だっけ?
  
11:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:59:33 ID:IsIn0usA
  >>10
  あといつもの解説本な
  いずやは今年も現役学園生が売り子してくれんのかなハァハァ
  
12:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:03:40 ID:g6fgYgy8
  >>11
  IDすげぇなお前www
  あといずやのISカー駐車場に入ってくの見たぞ

13:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:04:03 ID:1234VUIh
  >>11
  アメリカ所属wwww
  
  >>10
  今年はこんな感じ

  >おしながき いちにちめ
  >
  >ブルー・ティアーズ「ν」
  >サイレント・ゼフィルス「ナイチンゲール」
  >甲龍「ポルンガ」
  >シュヴァルツィア・レーゲン「無駄ァッ!」
  >打鉄弐式「超闘士」
  >六花「トト」
  >ミステリアス・レイディ「ターミネーター」
  >シルバリオ・ゴスペル「八極」
  >ファング・クエイク「X2」
  
14:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:05:32 ID:1234VUIh
  >おしながき ふつかめ
  >
  >ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ「古鉄」
  >白式「シュナイダー」
  >白式・雪羅「DEATH SAURER」
  >紅椿「百式」
  >アラクネ「ダーマッ」
  >打鉄「零式」
  >ラファール・リヴァイブ「ブルーデスティニー」
  >テンペスタ「そして何よりも」
  >メイルシュトローム「トリコロール」
  
  個人的には紅蓮八極カラーのゴスペルが欲しい
  
15:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:09:21 ID:hu7F562a
  いずやって何を作ってる所ですか?
  あと壁サークルの「D・B・G!」のサークルカットがいずやそっくりなんですがどうしてですか?
  
16:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:11:30 ID:g6fgYgy8
  >>15
  半年ROMれ
  
  白式と紅椿ってこないだ情報公開されたアレだろ?
  相変わらずありえない早さだよないずや
  
17:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:11:54 ID:fL8f6V21
  >>15
  半日ROMって数時間前に手遅れになった事を嘆きながら寝ろ

  俺は打鉄弐式か六花ってのが欲しいな、まだノーマルカラー一般流通してなかったよな?
  
18:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:13:01 ID:b1o5D90W
  >>15
  IS作ったサクラ博士の半公式フィギュア&解説本サークル
  ブキヤとかリボとかくらべもんにならないクオリティと価格を誇る
  現役のIS学園生が売り子する事でも有名、DBGはスペース確保用サークル
  無理矢理三行で説明してみた

  テンペスタのそしてなによりもって何カラーだwww

19:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:15:03 ID:1234VUIh
  >>15
  たまにヤフオクとかで変なカラーのフル稼働ISフィギュア出回ってるだろ?
  アレ作ってる所。一個当たり一万とかふざけた値段調整してる。完全一限だし
  あと冬はTシャツも作ってるな、「打鉄」とかはそれ一般に流したやつな
  
  中国機の弄られっぷりは相変わらずだな
  
20:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:16:32 ID:Gyh879Gu
  いずやキター
  相変わらず博士は一人でおかしな量のダンボール持ってるwww
  
21:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:16:43 ID:IsIn0usA
  >>18
  クーガーの兄貴に決まってんだろ、速さが足りないんだよ
  
  相変わらずIS学園生はレベル高いな、その辺のレイヤーとか目じゃねえ
  ただあの子達全員腐ってるんだよなぁ……誰だBLなんざあの学園に持ち込んだの
  
22:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:17:02 ID:fL8f6V21
  一個一万とか相変わらずボッタクリだよな。買うけどさ
  搬入の関係で十体しか入れないらしいし……でも1/8だし仕方ないのか
  中の人のフィギュアとしても良い出来だし案外適正価格なのかも試練

  あとチェリー博士って学園に住んでんだよなモゲロ
  
23:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:17:32 ID:2feb198d
  チェリー言うなwww アイツIS関連のスレ監視してんぞwww
  
24:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:18:22 ID:Gyh879Gu
  あっという間に設営進んでるぞいずや
  あ、今回のポスターワンサマー君だ……ってモゲロって書いてあるしwwww
  
25:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:18:42 ID:b1o5D90W
  マジで投射ディスプレイ展開してるしwww
  あと出遅れたせいで開場前行列に遅れた……
  
26:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:19:32 ID:g6fgYgy8
  >>25
  自分のとこ戻れ馬鹿野郎

  何故一号機がνで二号機がナイチンゲールなのか
  どっちか胚乳かサザビーにしろよ
  
27:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:20:52 ID:1234VUIh
  でも今回の特殊カラーはマジで理由が解らんな
  
  やはりまだゴキホイにすら入れてない状態じゃ手に入れるは絶望的か……
  
28:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:21:04 ID:Gyh879Gu
  >>27
  徹夜組氏ね
  
  甲龍はあれシェンロンって読むからだろ?
       
29:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:21:22 ID:IsIn0usA
  >>27
  徹夜死ね。氏ねじゃなく死ね
  
  ダーマッってスパイダーマかwww
  
30:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:05 ID:karit3O0
  >>27
  ホントお前みたいなのが男の品格を下げるんだよ
  俺は解説本買えればそれでいいや
  
31:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:45 ID:hjui9s4T
  >>27
  徹夜組掃討用ISとか作んねーかなさくらさん
  あの人確か徹夜組毛嫌いしてたよね
  
  六花って機体のトトってのがよくわからん
  
32:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:59 ID:fL8f6V21
  ワンサマーポスターとか誰得www
  ダーツの的とかにするなら欲しいが
  
  確かISでも同人ゲーって東だよな? 西回った後に行けるかな……?

33:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:23:32 ID:Gyh879Gu
  学園生北! ちゃんと更衣室で制服着てくるのなwww
  
  ワンサマーポスター見て黄色い声……だと……!?
  
34:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:01 ID:2feb198d
  >>33
  知らないのか? ワンサマーはIS学園のネンネ達には大人気なんだぜ?
  
35:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:30 ID:g6fgYgy8
  >>34
  ネンネってwww
  
  準備終わったんで行列ならんでくる
  
36:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:41 ID:IsIn0usA
  コスプレのISスーツって何か安っぽいよな
  キラキラテカテカしてたり薄っぺらかったり
  
37:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:25:11 ID:1234VUIh
  >>36
  お前アレ最高級品だと百万超える代物だぞ? そう簡単に買えねーって

38:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:25:32 ID:Gyh879Gu
  すげぇ、いずやに滅茶苦茶挨拶来てる
  
  そして挨拶返しにも絶対にフィギュアは渡さない博士
  
39:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:26:22 ID:IsIn0usA
  ところでいずやの学園生は制服のままエロやおい買いに行くのか?
  流石にそりゃまずいだろアイツら
    
40:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:27:19 ID:g6fgYgy8
  っつーかIS学園って夏服無いのか? 全員長袖だし……
  見てるだけで暑苦しい
  
41:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:29:22 ID:Gyh879Gu
  見本誌出しに行ったな
  
  フィギュアって提出しなくて良いんだね
  
42:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:09 ID:2feb198d
  >>40
  あそこは改造自由だから半袖どころか腋丸出しの奴とかいる
  夏服になると素材が変わって涼しくなるらしい
  
43:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:43 ID:g6fgYgy8
  >>42
  腋wwww蒸れるのかwwww
  
44:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:51 ID:IsIn0usA
  >>42
  腋クンカクンカハァハァペロペロ
  
45:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:52 ID:Gyh879Gu
  >>42
  次は乳丸出しですねわかります
  
46:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:05 ID:2feb198d
  >>45
  残念ながら出せるほど乳が無い
  
47:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:54 ID:Gyh879Gu
  >>46
  無情すぎる現実吹いた
  
48:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:55 ID:1234VUIh
  >>42
  誰か学園にエイトフォー大量に送りつけたれ
  
49:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:34:10 ID:g6fgYgy8
  >>48
  新手のテロですねわかります
  
50:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:35:09 ID:IsIn0usA
  他に変わった制服の奴とかいねーの?
  背中丸出しとかローライズとかボンタンとか
  
51:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:36:42 ID:Gyh879Gu
  >>50
  んな奴いるかよwwww
  あそこ仮にも国際的な学校だぞwwww
  
52:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:37:18 ID:1234VUIh
  >>50
  まあ体操服ブルマだったり水着旧スクだったりするし居るかもな
    
53:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:37:53 ID:2feb198d
  >>50
  最後のは居るぞ
  銀髪赤眼眼帯(下は金眼)のフルコースだが
  
54:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:38:00 ID:g6fgYgy8
  >>52
  mjdk
  
55:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:38:06 ID:IsIn0usA
  >>52
  マジ誰考えたんだろうなアレ、日本の恥だろwww
  
56:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:46:43 ID:Gyh879Gu
  >>53
  うそつけwwwwwwwwww
  んな中二病フルコースなんざ居る訳ねーだろwwww
  笑いすぎてレスできねぇwwwwwww
  
57:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:57:04 ID:IsIn0usA
  >>53
  朝飯のおにぎり返せwwwwww
  それでボンタンって何の冗談だよwwwwwwww

58:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:00:47 ID:b1o5D90W
  >>53
  画像うp
  
  あとお前ら入場終わったんだからじっとしてろ
  
59:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:01:22 ID:Gyh879Gu
  >>57
  やめろ想像させんなwwww
  
  あと更衣室から慌てて博士が戻って来た
   男 子 制 服 で
  
60:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:04:20 ID:1234VUIh
  >>55
  いいえ、素晴らしい日本文化を世界に広めるのです
  
  >>59
  ワンサマー君の情報公開直後に同型の制服を着てくるとはな……
  やっぱ学園関係者ってずるいな
  
61:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:10:12 ID:g6fgYgy8
  でもワンサマー君の情報公開どうしてこのタイミングなんだ?
  正直昨日からの公開祭りで眠いんだけど
  
62:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:12:55 ID:Er04Kfpq
  お盆とか政府関係者殺す気としか思えないよな
  俺とか俺とか俺とか
  
63:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:14:09 ID:Gyh879Gu
  >>61
  寝ろ、死ぬぞ
  
  >>62
  おつかれさん
  
64:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:17:44 ID:IsIn0usA
  >>62
  乙
  
  昨日の情報公開祭りは凄かったからな……
  あの祭りのせいで徹夜組が出遅れたって話すら聞いたし
  
65:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:21:32 ID:Er04Kfpq
  >>63
  どーせ今日は家でゴロゴロしてるから大丈夫
  
  ワンサマー君と第四世代機とかどんだけ世界動かしたいんだあのウサビッチは
  
66:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:23:37 ID:g6fgYgy8
  >>65
  やめろ、女の方を悪く言うと博士がキレる
  キレたらフィギュアが買えなくなるからやめろ
  
  出入り口封鎖まであと七分ー
  
67:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:29:04 ID:1234VUIh
  情報一杯過ぎて忘れられがちだけどさ
  
  六花とか言う機体って第五世代機じゃないっけ?
  
68:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:32:54 ID:IsIn0usA
  >>67
  いや、概念実証機だから一応第三世代らしいぞ
  
  正直その辺の違いがよくわからんが
  
69:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:34:37 ID:Gyh879Gu
  >>68
  大丈夫だ、解説本出してる俺もわからん
  
70:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:37:12 ID:g6fgYgy8
  実況スレなのに流れが遅いでゴザル
  あと開場前行列が臭い
  
71:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:45:15 ID:Gyh879Gu
  >>70
  夏だしあきらめな
  
  さがしものはなんですかー
  
72:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:46:59 ID:b1o5D90W
  つい歌っちゃうよなアレ
  
  >>69
  やっぱチェリー博士も何だかんだで天才なんだなーって思う
  
73:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:49:04 ID:g6fgYgy8
  お、動いた動いた
  
  所でチェリー博士ってチェリーなん?
  
74:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:52:03 ID:2feb198d
  >>73
  どどどど童貞ちゃうわ!
  
  ふと端末見たらピクトチャットとかの電波ガンガン飛んでたんだけど
  
75:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:56:49 ID:Gyh879Gu
  >>73
  巨乳の幼馴染二人も居てまだって事は無いだろ
  
  さ、今日も一日頑張るぞー
  
76:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:06:05 ID:Pj43k9vc
  クソッ! 出遅れた!
  頼むー、DIO様カラーは残っててくれー
  
77:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:06:05 ID:hjui9s4T
  買えたー!
  トトって何かと思ったらジェフティカラーかよwww
  
78:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:08:51 ID:AfiUij31
  西到着! 待ってろいずや!
  
79:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:16:12 ID:karit3O0
  クロスボーンカラーのファング・クエイクが半端なくカッコいい……
  よし、解説本も買ったし企業ブース行って帰るか!
  
80:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:17:45 ID:fL8f6V21
  弐式ってグルンガストかwwww
  弐式繋がりwwwww
  
81:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:20:03 ID:Gyh879Gu
  ホントいずやの塗装は本格的だよな
  これ絶対モノホンと同じ塗料使ってるだろ
  
82:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:24:57 ID:gy3retd0
  出遅れたー! ちくしょー!
  
83:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:29:33 ID:9dR520Ga
  そ し て 売 れ 残 る 中 国 機
  
  いや俺は買ったよ?
  
84:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:36:41 ID:oeg0G3t1
  今起きた俺に一言
  
85:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:38:38 ID:IsIn0usA
  >>84
  寝ろ
  
86:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:43:51 ID:g6fgYgy8
  >>84
  あれほど祭りの途中に寝ろって言ったのに……
  
87:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:51:09 ID:b1o5D90W
  メタリックカラーのミステリアス・レイディまじかっけー
  
  あと中の人の乳でっけー
  
88:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:55:44 ID:9dR520Ga
  甲龍の中の人がありえないくらい平坦な件について
  
  これ絶対嫌がらせだろwwwww
  
89:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:02:46 ID:Gyh879Gu
  ティアーズと迷ったけどバイザーがかっこいいからゼフィルスにした
  
  赤くて仮面ってどう見てもシャアだけどさ
  
90:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:15:49 ID:fL8f6V21
  あ、打鉄弐式の中の人眼鏡かけてる!
  
  しかし箱が今すぐにでも市販できるデザインな件について
  
91:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:19:35 ID:Pj43k9vc
  シュヴァルツィア・レーゲンの箱に達筆で「黒雨」って書いてあるな
  つまり冬のTシャツはこれか……今から楽しみだ
  
  そして中の人がどう見てもちみっこくてハァハァ
  
92:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:23:59 ID:Gyh879Gu
  ゼフィルスの漢字が悲惨すぎるwwww
  
  静蜆ってwwww
  
93:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:25:31 ID:IsIn0usA
  シジミwwwwwwトゥルルwwwwwwww
  
  ゼフィルスってシジミチョウだもんなwwwwwww
  
94:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:38:16 ID:hu7F562a
  甲龍以外全部売り切れてた……
  
  11時前には甲龍も全部売れちゃってたけど
  
95:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:39:56 ID:g6fgYgy8
  テメーらやたら報告遅いかと思ったら他の買い物済ませてきたな!
  
  とりあえず俺のサークルに紅蓮カラーの福音置いといた。かっけー
  
96:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:49:10 ID:Gyh879Gu
  学園生がお昼食べてる
  
  博士一人で売り続けてるしwwwww
  
97:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:50:01 ID:IsIn0usA
  現役女子高生の手作り弁当と聞いて
  
98:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:52:52 ID:Gyh879Gu
  >>97
  いや、コンビニおにぎりとパンばっかりだな
  
99:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:53:20 ID:IsIn0usA
  >>98
  絶望した! リアルJKの食糧事情に絶望した!
  
100:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:55:36 ID:g6fgYgy8
  >>98
  まあゼリー飯とかじゃないだけマシだな
  
  >>96
  っつーか誰かさくらさん手伝ってやれwwwww
  
101:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:18:45 ID:b1o5D90W
  どっか良い本出してる所あった?
  
102:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:22:12 ID:1234VUIh
  いずやの解説本が一強状態でちょっと詰まらんかな
  冷静に考えれば第一人者に勝てる筈無いんだけどさ
  
103:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:26:41 ID:Gyh879Gu
  もっと熱くなれよ
  
  買出しに出てた学園生が戻ってきたな
  
104:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:31:51 ID:g6fgYgy8
  ウチの18禁やおいサークルから堂々と新刊全種一冊ずつ買ってったよあの子ら
  
  制服姿で
  
105:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:32:43 ID:IsIn0usA
  >>104
  売るなwwww
  
106:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:33:16 ID:fL8f6V21
  >>104
  うんなよwwwwwwww
  
107:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:34:48 ID:Gyh879Gu
  >>104
  そらお前がアウトだ
  
108:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:37:57 ID:g6fgYgy8
  しょーがないじゃんウチみたいな弱小は断れないんだから
    
109:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:58:19 ID:b1o5D90W
  ワンサマーの突発本が凄い売れ行きな件について
  
  どうも学園生の間ではワンサマー君は天然系の総受けらしいぞ
  
110:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:08:08 ID:IsIn0usA
  んな情報いらんわwwwww
  
111:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:28:48 ID:1234VUIh
  あれ? 博士居なくね?
  確か身長2メートルぐらいだよね博士
  
112:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:33:16 ID:gy3retd0
  買い物だろ
  
  って思ったらウチのエロゲ見て爆笑してやがった
  そりゃ幼馴染がモデルのエロゲ出てたら笑うわな
  
113:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:35:39 ID:IsIn0usA
  >>112
  愚息がお世話になってます
      
114:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:38:15 ID:Gyh879Gu
  >>112
  ムスコがいつもお世話に……
  
115:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:40:29 ID:2feb198d
  >>112
  んほぉぉぉぉぉぉぉっ!
    
116:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:43:17 ID:gy3retd0
  そして堂々と無料配布の体験版をかっさらっていく博士
  
  買えwwwww
  
117:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:55:31 ID:fL8f6V21
  さっきから企業の人間らしい人達がいずやに来てるんだが
  
118:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:57:48 ID:IsIn0usA
  チェリー色々とやってっからそれでだろ?
  
119:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:10:16 ID:Gyh879Gu
  DQNがいずやスペースで戦利品の確認やってる学園生にボッコボコにされてるんだが
  何かもう訓練された動きなんだけど学園生。DQNも最後の方半泣きで逃げてたし
  
120:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:13:23 ID:g6fgYgy8
  >>119
  ざまぁwwwwww
  
  半分軍学校みたいなもんだしそーゆーのもやってんじゃね?
  
121:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:15:02 ID:Gyh879Gu
  ただ攻撃がどうもバキとかジョジョっぽいのは同類なんだなーと思った
  
122:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:20:24 ID:IsIn0usA
  >>121
  何それ惚れる
  
123:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:30:00 ID:g6fgYgy8
  何かもういずや実況スレみたいになってんな
  
124:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:35:14 ID:Gyh879Gu
  >>123
  毎度の事だろ
  
125:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:37:58 ID:9dR520Ga
  チェリー博士コスプレ広場来てるぞー
  
  ISスーツと制服の集団には一切目もくれずwww
  
126:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:39:31 ID:1234VUIh
  >>125
  そりゃ本物と毎日のように触れ合ってる訳で
  
  モゲロ
  
127:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:40:28 ID:Gyh879Gu
  モゲロ
  
128:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:40:44 ID:IsIn0usA
  ハゲロ
     
129:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:46:15 ID:hjui9s4T
  こちら移動中、さくらさん発見!
  
  何か眼帯つけた軍服が異様に似合う美人さんと話してんだけど
  
130:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:48:44 ID:1234VUIh
  モゲロ

  マジで

  モゲロ
  
131:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:51:34 ID:Gyh879Gu
  何? やっぱり男はタッパと頭脳なの?
  
  もう氏ねよアイツ
  
132:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:53:42 ID:IsIn0usA
  ギギギ
  
133:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:58:43 ID:hjui9s4T
  何か隊長がどうとか聞こえる
  
  マジモンの軍人さんなのかな? あと外人っぽいけどやたら日本語上手い
  
134:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:05:28 ID:Gyh879Gu
  >>133
  CQCでやられんなよ?
  
135:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:08:19 ID:fL8f6V21
  っつーかさくらちゃんはマジで色々やってんだな
  
  糞っ! せめて俺にも幼馴染が居れば!
  
136:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:13:52 ID:2feb198d
  大丈夫だ、世の中には小1から小4をファースト幼馴染
  小5から中2までの付き合いのやつをセカンド幼馴染って呼ぶ奴も居る
  
137:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:15:15 ID:IsIn0usA
  >>136
  それただの同級生じゃね?
  
138:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:17:41 ID:g6fgYgy8
  >>136
  ファーストとかセカンドとかwwwwwwww
  そいつ頭お花畑だろwwwwwwwwww
  
139:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:24:49 ID:hjui9s4T
  あ、軍人さんがorzってなった
  
  博士は至って冷静に通行の邪魔だから立てって言ってる
  
140:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:31:58 ID:IsIn0usA
  >>139
  ヒドスwwww
  
  でも正しい。皆は会場で四つんばいになったりすんなよ?
  
141:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:38:45 ID:Gyh879Gu
  こちらいずや前
  
  何か勝手にワンサマーポスター剥がしてる女が居るんだが
  
142:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:39:10 ID:Gyh879Gu
  なんかぽやーっとした感じの人
  学園生もどうしたら良いか困ってる感じ
  
  あと乳が半端なくデカイ
  
143:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:42:32 ID:g6fgYgy8
  >>142
  ほほう?
  
144:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:43:11 ID:IsIn0usA
  >>142
  それは見に行かざるを得ない
  
145:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:46:18 ID:hjui9s4T
  こちら博士追跡班
  
  いずやへ到着。いきなり巨乳さんにチョップかましてる
  軍人さんポカーン、学園生もポカーン
  
146:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:47:38 ID:hjui9s4T
  「何やってんだテメーは」
  「いやぁ、いっくんの顔があったからつい」
  「これ後で学園でオークションかけんだから返せ」
  「はーい」
  
  どうも巨乳さんは篠ノ之束さんらしい。学園生にそう言ってる
  
147:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:49:17 ID:IsIn0usA
  >>146
  割と最低だなさくらんぼう
  
148:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:53:22 ID:Gyh879Gu
  チェリーさんと一緒に来た軍人さんと巨乳さんが一触即発な件について
  
  どう見ても男の取り合いです本当にありがとうございましたギギギ
  
149:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:55:41 ID:IsIn0usA
  >>148
  なんだただの痴話喧嘩かギギギモゲロモゲロモゲロ
    
150:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 16:00:00 ID:2feb198d
  閉会ー。
  
  以上こんな感じです。
  一回やってみたかったんですよ、2ちゃんネタ。
  IDと時間の調整が疲れた……。
  
:

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[27457] 第十二話「ブルー・ハワイ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/28 21:33



 第十二話「ブルー・ハワイ」


「あぢぃ……」

 現在、夏コミの次の週末。教員も全員盆休みなので俺も実家に戻っている。ついでに今日は篠ノ之神社の夏祭りがあったり。
 んで、俺はと言えばビニールプールに水を張ってその中でぐったりしている。だってやる事ねーし。

「……何やってんの? ゲンゾー」
「見ての通り涼んでんだよ。ぬるいが」

 そして毎度のごとく現れる束。ホントお前どうやって移動してんの? こないだだって大騒ぎなってたし。

「全く、学園に居ないと思ったらこっちに居るし……」
「んー、まあ知り合い泊めてたしな。交通の便はこっちの方良いし」
「……へぇ?」

 はておかしい。何か急に温度が下がったよ?

「……所でゲンゾー、あの女は?」
「え、えーっとだ、だだ誰だ? ちょちょちょっとさむさむ寒くて頭がまわらららんなぁっばばばばぁばば」
「……眼帯軍服女」

 あれなんかホント物理的に寒い痛い痛い痛い痛い!

「く、クラリスなら仕事あるっつって帰ったよ! ってマジ痛い痛いやめやめやめぇっ!」
「……ふぅーん」

 パチン、と何かのスイッチが切れる音がして温度が急激に戻ってくる。あーヤベ痛いマジ痛い。
 これ以上水に浸かってたら凍傷なるから上がる。うー、さびさび。ついでだしもう甚平着とくか。

「……ねぇ、ゲンゾー」
「何だ? ったく、テメー今度は何作ったんだよ……」
「あの女……どういう関係?」
「どうって……ドイツに居た頃の知り合いだよ」

 それ以上でもそれ以下でもない、って言ったら何故か束がため息をついていた。何なんだ一体。

「にしても早いな。まだ六時前だぞ? てっきり神楽舞が終わってから来るもんだと思ってたが」
「だって……」
「だって?」
「な、何でもないよっ!」

 何なんだお前は。まあ非常に愛らしいのでよしとする。

「んじゃそろそろ俺も着替えるかな。束、着付け手伝ってやろうか?」
「こ、これあるから大丈夫だもん!」

 そう言って束が量子展開したのは昔作った『スーパー着付けマシーンデストロイエディション』だった。懐かしいなオイ。
 あと今更過ぎるが名前おかしいよね。何で着付けマシーンなのにデストロイなんだよ。アレか、浴衣ビリビリーってなんのか?



「さぁて、と。んじゃ何から行きますかね」
「端から全部ー」
「できるかボケー」

 このやりとりも割と毎年の事だったりする。ようやく調子が戻ってきたな。

 俺はシンプルな紺地の甚平……に六花の機体が描かれている痛甚平だ。でも線画のみと筆字のお陰でどこか格好良く見える不思議。
 一方束はネタ要素の少ない薄桃色の浴衣である。ワンポイントとして兎が描かれているのが束らしい。何だかんだで兎好きだよな、お前。

「とりあえず定番から攻めるか」
「じゃあ、まずはどじょうすくいから!」
「なんでやねん。っつーか何であんだよ」

 一回五十円とか中途半端だし。ストップ!女装少年のアレか?

「じゃあ、ゲンゾー! ほら、あれ!」
「あれって……お面? まあ、あれな、ら―――」

 ……いや、その、銀の福音のとかはまだ良いさ。『興』とか『干』も百歩譲ってよしとしよう。
 けど、何で某勇者ライクの鎧兜のようなV字のアンテナのロボ顔があんの? 思わず買っちまったじゃねーか。

「あ、こっちのたこ焼きはロシアンルーレットだって!」
「それを堂々と宣伝する度胸が凄いな」

 むしろ売りにしているんだろうか。営業努力間違えてるぞあんちゃん。

「お、チョコバナナか。よし、買ってやろう」
「すけべー」

 ここんとこやってなかったから忘れがちだが、俺の基本理念はセクハラだぞ? モレスター・ノヴァかますぞ?

「アメリカンドックの衣を先に食べてですね」
「やっぱりすけべー」

 などとアホな事をやりながら歩いていると、いつの間にか射的屋の前まで来ていた。何故かおっちゃんの目つきが怖い。
 だがまあ、こっちも二十年通っている常連である。ここ数年はこの日の勝負の為にこの祭りに来ていると言っても過言ではない。

「来たな坊主。今年は負けんぞぉっ!」
「良いだろう。重りを仕込んで倒れなくしてるってんなら……まずはその常識をぶち殺す!」
「ふっ、今年は大型液晶テレビだが……この鉄板を倒せるかな!?」

 あ、この鉄板って原作で蘭ちゃんが倒してたやつか。ならそろそろ……。

「あ……」
「あれ? 源兄ぃ、それに束さんも。来てたんだ」
「よっ。宿題やってっかオメーら?」

 ワンサマー、もとい一夏と箒と蘭ちゃんのトリオが現れた。両手に花ですなぁ。
 あと篠ノ之姉妹がお互い認識した途端に視線同時に下げた。やっぱそっくりだよなお前ら。

「前のハイテンションはどこ行ったんだか……おっちゃん、五回分な」
「お、何だ、おごってやんのか? オメーも一丁前に生意気になりやがって……」
「あーはいはいそんな所だから緩くなった涙腺披露しなくて良いから。さっさと出せ」

 蘭ちゃんが射的をやりたがってる、と見事な勘違いをかました一夏がこっちに歩いてくる。
 まあでも学園入るつもりなら射撃の感覚を知っておくべきだと思うぞ、俺は。そしてファッション感覚で動かして事故って死ね。

「来てたんですね……お久しぶり、です」
「う、うん……あ、紅椿の調子はどう? いっつも私が見れるって訳じゃ無いから、何かあったらゲンゾーに言ってね」
「はい。源蔵さんにはいつもお世話になっています」

 そして話題が無いからと地雷原に自分から突っ込む束。いつでも見れるようにしたいならいい加減戻って来い。もしくは俺の嫁に来い。

「ほらよ。ま、お手並み拝見だ」
「そんじゃま遠慮なく。サブアーム展開×4、射撃モード!」
「んなぁっ!?」

 五丁のコルク銃が店先に並べられ、俺はそれを左手と展開したサブアームで全部構える。はっはっは、五人分払ってんだから別に良いだろうが。
 そしてタッパ任せに片手でも絶対に外さない距離に構える。標的との距離は十センチも無い。そして一斉に発射される五発のコルク弾。

「はい液晶テレビ貰い、っと」
「ぬ、ぬがー! ずるいぞこのクソガキ!」
「まあ僕ァ優しいからこれは一回だけで許してやんよ。あ、お前ら残りの弾使うか?」

 怒り狂うおっちゃんを余所に一人ずつ銃を渡していく。これで恐らく原作通りの流れになってくれるだろう。蘭ちゃん以外は。
 で、その蘭ちゃんはと言うと、

「ぴ、PSX……?」
「なんでそんなもん……」
「大損だ……」

 むしろ原作より凄いもんを取っていた。っつーか何であんだよおっちゃん。
 俺は俺で残った一丁でPGディープストライカーをゲット。できるかこんなもん。

「そして一夏はフルアーマーだがユニコーン、と。まあ予定調和だな」
「何がだよ。箒は……それ、何だ?」
「何だろうな……黄色くて羽と手が生えているが……よく解らないな。えっと、姉さんは?」
「これラスト一発……っと!」
「ぬわー! ……ダルマですね。毎度どうも」

 おっちゃんが白く燃え尽きてた。そして原作では箒が欲しがってただるまを何故か束がゲット。

「ふむ、これは……おい、束」
「あ……うん。箒ちゃん、これあげるっ」
「あ、ありがとうございます……その、代わりと言ってはなんですが……」

 ぽん、とだるまが箒の手に、たまにマッスルボディになりそうでぶるぁとか言いそうな黄色い球体が束の手に渡る。
 つっこまんぞ、絶対に突っ込まんぞ!?

「うん、ありがとっ!」
「とは言え液晶テレビも含めて荷物になるな……まあ量子化すれば良い話か」
「……改めて考えるとかなり出鱈目だよな、源兄ぃも」

 今更何を言っているのかコヤツは。そしてこのままだと蘭ちゃんが花火についてきそうなので手を打っておく。

「あ、弾か? オレオレ詐欺だが」
『……何の用っすか、源蔵さん』
「いや、君の妹が一夏の毒牙にかかりそうなんだがどうするって話」
『いぃぃぃぃちかぁぁぁぁぁっ! ぶっ殺したらぁぁぁぁぁっ!』

 所要時間実に十八秒。何だかんだでシスコンだよね、弾も。

「そんじゃ俺らはそろそろ行くな」
「え? 何でさ。皆で回れば良いじゃん」
「全くお前は……姉さん、源蔵さん、一夏は私に任せて行って下さい」

 そして隙を見て二人きりになるつもりですね解ります。だがまあ好意はありがたく受け取っておこう。

「それじゃー箒ちゃん、いっくん、あと何か変な物体。じゃーねー」
「へ、変な物体って……」

 誰の事かは言うまでもないな。



 時刻は七時五十五分、もうすぐ名物の百連発花火開始時刻である。場所は勿論、森の中の花火スポットだ。
 あの後は二人でラムネ一気飲み競争したりチクチク屋をこの左手で荒らしたり輪投げをこの左手で荒らしたりしてた。

「いやー遊んだ遊んだ。明日からまた仕事だっての忘れたいくらい遊んだな」
「仕事、かぁ……ね、ゲンゾー」

 んー? どーしたこの社会不適合者。お前は俺にだけ適合してりゃ良いんだよ。

「やっぱりゲンゾーとしては……私のこと、つかまえておきたい?」
「……まあ、そーすりゃ余計な心配はしなくて済むだろうな」
「じゃあさ……その……今、一緒にいてくれって言ってくれたら……私……」

 ……そりゃ随分と魅力的な提案だな。だがご生憎様。

「こちとらテメーの尻追っかけんのが生き甲斐なんでね。まだちょっとばかし物足りねーな」
「―――そっか。じゃあ、頑張って逃げなきゃね」
「ああ。だがまあ、今までの動乱その他を引き起こした罰として―――」


 ん。


「終身刑だ」


 顔が熱いのが解る。果たして、より赤くなってるのは俺なのか束なのか……って殴んなコラ。

「……も、もうっ! 恥ずかしい台詞禁止ー!」
「はっはっは、たまにゃ良いだろ? それとお前ら、デバガメはどうかと思うぞ」
「え……?」

 ぽかぽかと殴ってくる束の手が止まり、ギギギと俺達が来た方向を向く。
 この場所を知っており、今ここに来るのは……まあ、アイツらしか居ないよな。

「あ、えっと……あはは……」
「………。」
「にゃ、にゃー!? げ、ゲンゾー! 解っててやったでしょ!」

 愛想笑いで誤魔化そうとする一夏。ぷしゅー、と頭から煙を出す箒。キャラが崩壊し始める束。
 なにこのカオス、とか言ってみる。フヒヒサーセン。

「まあとりあえず座れ。花火の間ずっと立ってるのも疲れるだろ」
「もー! もー!」
「はいはいブヒィィィィィ」

 指を一つ鳴らしてレジャーシートその他一式を量子展開する。ビールに柿ピーは花火見る時のデフォだよな。


 ド―――(゚д゚)―――ン!


「お、始まった始まった。たーまやー」





「ん、うぅ……ん―――、ふぅ」

 大きく伸びをして体を目覚めさせる。最後に首を左右に振り、コキコキと鳴らして締める。んー、良い音。

「……んぁ? あー、そっか。帰ってたんだっけ」
『おはようございます、マスター。本日は快晴、湿気も低く快適に過ごせるでしょう』
「そっか。おはよう、六花」

 視界に映るのは学園寮の部屋ではなく私の自室。そうだった、今日は一夏と一緒に帰って来てたんだった。

「とりあえず顔洗おにゃ!?」
「むきゅ……ぅ」

 ベッドから降りた所で何か柔らかい物を踏ん付けてしまう。バランスを崩した私はベッドに尻餅をつくと、踏ん付けた相手の事を思い出した。

「あー、そーだった……ごめーん、簪ー。怪我ないー?」
「らいじょむ……おはょ……」

 お姉さん絡みで家に居辛いらしい簪は夏休みでもずーっと寮に居た。私も特に部屋を空ける事が無かったので、私達は夏休みだろうが関係なく寮に居続けた事になる。
 そんで今日は久々に家の掃除やら何やらを泊り込みでやろう、という話になり、それなら私も手伝うと簪がくっついてきたのだった。当然ながら各種イベント付きで。
 いやー、一夏のラッキースケベ運は尋常じゃないと思ってたけど、まさか一日でハットトリックかますとはね……私にかましたのはノーカン。ノーカンよ。

 本当は簪が泊まるのは無理だったんだけど、源ちゃんがちょっとした仕事を回してくれる事で可能になりました。まあ無理矢理取ってつけたような理由なんだけどね。
 でも夏も仕事しまくってるよねー、源ちゃん。夏コミはともかくとして、こないだも世界中の衛星放送対応してるアンテナとか設置してたし。

「とりあえず顔洗お。簪、起きれる?」
「らいじょぶらぉ……」

 呂律全然回ってないよね。そりゃ三時前後までアニメ見てればそうもなるか。普段は寝起き良いのにねー。
 因みに私と簪は眼鏡型ディスプレイなので、それを使ってるのを傍から見ると非常に怖いらしい。

 あ、簪が床で寝てたのはそっちの方が涼しいからよ? そうじゃなかったら客人にベッドぐらい貸すってーの。

「ああ、おはよう。二人とも」
「おはよ、一夏」
「おぁょぅ……おぃうぁぅん……」

 仕方なく簪の手を取って一階の洗面所まで連れて行く事にする。と、一夏が現れた。

「だ、大丈夫か? 簪」
「ぁぃょぅ……」
「大丈夫よ、ただの寝不足だから。ほらほら、こっちよー?」

 寝惚けた簪を誘導し、階段で二人池田屋事件になりそうだったが無事に洗面所で顔を洗う事に成功する。

「……あれ?」
「やっとお目覚めね。おはよ、簪」
「う、うん……っ!」

 かぁ、と簪の顔が一気に赤くなる。そりゃ寝起きでボーッとしてる所見られたら恥ずかしいよね。
 因みに現在八時過ぎ。こりゃまた随分お寝坊さんだこと。

「千春ー、ちょっと良いかー?」
「きゃーっ!」
「ふべっ!?」

 そしてテレパシーもといデリカシーの無い一夏。洗面所に顔を出して簪に石鹸ぶつけられてます。ナイスピッチ。
 ……いや、むしろテレパシーでこういう場面に遭遇してるのかな? その場合、戦犯どころじゃない大罪人になるけど。

「で、何? 洗剤足りないから買ってくるとかそんな話?」
「そ、そうだけど腹の上に立つなっ! 朝飯出てくる!」
「ち、千春……駄目だってば……!」

 ギャーギャーワーワーと朝ごはんも食べてないのに騒ぐ私達。近所迷惑ですね解ります。

「いてて……んじゃそういう事だから、ちょっとホームセンターまで行ってくるな」
「はいなー。それじゃ簪、朝ごはん食べたら昨日の続きしよっか」
「あ、うん……えと、織斑君」
「ん? どうした?」

 騒ぎも一段落し、私は一夏が作った朝ごはんをテーブルに並べていく。簪ー、手伝ってー。

「あの……お、おはようっ! そ、それと、さっきはごめんなさいっ!」
「あ、ああ。おはよう。それに気にしてないよ。覗いた俺が悪いんだし」
「え、えと、でも……」
「おーい、イチャついてないで手伝ってー」

 全く、砂糖吐くようなやりとりは源ちゃんと束さんだけで充分だっての。あー、私も彼氏欲しいなー。



「ただいまー」
「お、おじゃまします……」

 はて? と窓を拭いていた私達は手を止める。

「お客さん……?」
「みたいね。それにあの声、もしかして……」

 どうせまた一夏が女の子引っ掛けてきたんでしょ、と思ったら大正解。エロい子、もといシャルロットだった。

「何かウチの前でバッタリ会っちゃってな。用事も無いらしいし、掃除は明日もあるしな」
「え、えっと、千春が居るのは解るけど、何で簪が……?」
「泊まったから。暇だったから泊り込みで大掃除してたのよ」
「と、泊まっ!?」

 トマトマン? まあ一夏の言う通り、お客さんが居るのに掃除ってのもアレだしね。
 どうせ「来ちゃった(はぁと)」とかやりたかったんだろうけど。かっこはぁと、まで読むのが源ちゃん流だ。

「そうだよね、千春の支援が一番受けられるのは簪なんだもんね……見落としてた僕が馬鹿だった……」
「?」
「まあ、とりあえず座ったら? 麦茶でも持ってくるわ。一夏、シャルロットと簪の相手お願い」
「ああ、解った」

 私は簪から雑巾を受け取り、バケツへと放り込む。少し早いけど休憩にしよう。

「あれ? 一夏ー、麦茶新しくしたの?」
「ああ。今朝作ったばっかりだからまだ薄いかもしれないけど」
「充分濃いわよ。ちぇー、味水になってからが美味しいのに」

 パックで言うと水を足して三回目以降。1パックにつき最低五回は水足しで飲むのが私のお気に入りだったりする。
 後半はもう色水とか「水!」ってレベルだけど。あとそれ飲んでると簪に異様な物を見る目で見られる。何よー。

「千春のは薄過ぎると思う……」
「だよなぁ。前はそういうのがあったら千冬姉が問答無用で捨ててたんだけど」
「その度に喧嘩になって何故か最終的に源ちゃんが殴られて終わる、と」
「何で?」

 さぁ? 私も何で毎回源ちゃんが巻き込まれるのかが知りたいんだけど。これもある種のフラグ能力?

「で、どうしてシャルはウチに? 本当に予定とか無かったのか?」
「え、えっと、それは……」
「一夏、女の子にはふと友達の家に行きたくなる事があるのよ。ね、シャルロット」

 そんでもって見るからに墓穴を掘りそうな話題であっても飛び込みたくなる穴もあるのよ。今みたいに。

「そ、そうそう! ご、ごめんね一夏。連絡もしないで……」
「いや、俺は別に良いけどさ。予定が無いから掃除してただけだし」
「私はそれの付き添い……」

 お、簪の語尾にハートマークが見えるわ。理由も無く来るよりはずっと良いもんね。
 狡猾。流石簪狡猾。まあ私プロデュースだからなんだけど。

 なんてやってたらインターホンが鳴る。また誰か来たみたいだけど、嫌な予感がするわー。ビンビンするわー。

「はいがちゃりんこー」
「あ、ご、ごきげんよ、ぅ……」
「おお、ちょろいちょろい」

 えろいさん、もといちょろいさんだった。とりあえず入ったら?

「千客万来ー。セシリアだよ」
「ん、よう。セシリアも来たのか」
「も、って……」
「あ、あはは……」
「……おはよう」

 ガクリと膝を折るセシリア。私はその手からお土産らしき箱を奪い、何とか床に叩きつけられるのを防いでいた。
 それにしてもアレね、人数増えると地の文が入れ辛いわね。いや何のことだかサッパリだけどさ。

「ねーセシリア、これお土産?」
「え、ええ……リップ・トリックのケーキですわ……」
「へぇ、じゃあアイスティーの方が良いかな。あ、座って座って」
「あ、俺も手伝うぞ」
「良いからアンタは座ってなさい」

 パタパタとスリッパを鳴らして台所に戻る。どーせ一夏目当てなんだしアンタが離れてどーすんのよ。
 それにこのパターンだとあと三人ほど来るだろうしねー。もうボトルコーヒーで良いかな? 面倒なんだけど。

「はいお待ちー」
「あ、千春。これお前の分な」
「別に残りで良い……って四つしかないのか」

 まあセシリアは二人で食べるつもりだったみたいだしねー。しょうがないっちゃしょうがないか。

「気遣いはありがたいけど私は良いわ。朝食べるの遅かったし、まあ一口くれれば良いから」
「そうか、じゃあホラ。あーん」
「あむ……ん、美味しい」

 美味しい。確かに美味しいわ。でもさ、こうジロジロ見られるのはちょっと嫌なんだけど。

「ずるいですわ……」
「そっか、その手が……」
「むー……」

 そして気にせず食べ始める一夏。まあ、間接キスだの何だのと騒がれなかったから良しとしますか。
 正直な所、血の繋がった姉弟で間接キスとか気にしな……あ、ゴメン。姉さんと一夏は割と気にしてるわね。

 とりあえず私は暇になったので、寮から必死こいて持ってきたダンボールを居間に持ってくる。

「ん? 千春、それ何?」
「ちょっと源ちゃんに頼まれてね……っと。あ、そーだ。後で皆もやる?」
「遊ぶ物か何かですの?」
「まーそんな所。えーっとコードコードっと……」

 今日、簪がウチに居る名目がこれだ。コイツのテスト要員としてテレビ出力が正常に行われているかどうかのチェックである。
 まあそんなのは当然ながらでっちあげたようなもんだし、いざとなれば投射ディスプレイ使えば良いんだけどさ。

「よしできた、っと。あ、丁度食べ終わったわね。そんじゃ先に食器洗っとくわ」
「千春……私も……」
「ん、ありがと。あと一夏、興味津々なのは解るけど下手に弄ると源ちゃんに怒られるわよ?」
「わ、わかってるよ!」

 じゃっこじゃっこと食器を洗って居間に戻ると、今度はシャルロットとセシリアまで興味津々のようだった。

「なあ、これって何なんだ? 源兄ぃが作ったんだよな?」
「えっと……IS/VSってゲーム、知ってる……?」
「そりゃ、まあ。源兄ぃの監修モデルなら持ってるしな」
「ざっくり言えばそれの新しいの。でも信じらんないわよねー、ハードのスペック足りないから自作しちゃいましたって」

 元々あのゲームには幾つか不満もあったみたいだしね。でもこれはやりすぎでしょ。

「あ、相変わらず滅茶苦茶ですわね……」
「その名もIS/VSツインドライブ(仮)、だってさ」
「でも、このままじゃ一般流通は無理って言ってたよね……」
「ん? どうしてだ?」

 その疑問にお答えしましょー、と六花のフレームに手をかけた所で三度鳴るインターホン。はい次だーれだ?

「邪魔するぞ」
「おっ邪魔ー」
「一夏、布団を敷こう。な?」

 一人おかしいのが居るけどスルーで。

「ああ、やっぱり来たんだ……」
「ええ、薄々そうではないかと思いましたが……」
「私は別に……昨日から一緒だったし……」

 さあここで簪一歩リード! でもクラスが違うせいで普段から遅れ気味だったりする。

「そんじゃまボチボチ説明続けよっか。コレはどっちかって言うとゲームよりもISシミュレーターって言った方が良いのよね」
「いきなり何の話だ」
「これからコイツをやらないか、って話。まあやってみれば解るわね。簪」
「ん……オッケー」

 私と簪はハードを挟んで向かい合って座り、ハードの電源を入れる。と、ビデオ入力にしていたテレビにも変化が現れた。

『プレゼンテェェェット、バイッ! 俺っ!』
「……どうしてこういう所にばっか力入れるのかしら、源ちゃんって」
「さぁ……? あ、でも……基本的には変わってないみたいだよ?」

 それじゃあ始めますか。と私は六花のフレームを、簪は右手の指輪を指で軽く二回叩く。
 予め登録しておいた動作を確認し、六花と打鉄弐式はハイパーセンサーだけを起動させた。

「お、オイ! いくらセンサーだけでもこんな街中で起動させたらまずいって!」
「大丈夫よ。これはあくまでこのハードに連動させて起動しただけ……で、そういう場合の起動方法に関しての条約も校則も存在しないのよね、実は」
「……また源蔵さんお得意の屁理屈か」
「そーゆーこと。テレビ入力も上手くいってるみたいだし、特に問題は無いみたいね」

 テレビの画面に表示されているのは私達にとっては見慣れた感のあるメニュー。と言ってもまだ対戦モードとオプションしか無いんだけど。

「設定……どうする?」
「そーね、まあ初回だしサクッと終わらせましょ。エネルギー、シールド共に600。タイムリミット一分、フィールドは第三アリーナ」
「了解。カスタムデータで良い?」
「当然。武器のバージョンアップは……へー、結構増えてるわね」

 簪はいつものスフィアキーボードを、私はゲームパッド型の投射デバイスを起動させる。

「これって、まさか……」
「そ、IS連動型のIS/VSよ。対戦しかできないけどね……それじゃあ一試合、いってみますか!」

 ハイパーセンサーの透過率が0%に切り替わり、私達の視界は完全に仮想空間の第三アリーナへと切り替わる。
 そこに『Get Ready』と表示され、エネルギーが満タンになった瞬間に操作が可能になった。

「この……っ!」
「六花、インストレーションシステムコール! レインダンサー!」
『了解。展開……完了しました』

 簪が開幕早々山嵐を撃ちまくってきたので、六花がレインダンサーで弾幕を張る。その間に私は簪との距離を瞬時加速で詰めた。
 こないだマルチロックシステムが完成しちゃったせいで、メテオストライクだと対応しきれなくなっちゃったんだよねー。

「くっ……!」
「うらららららぁーっ!」

 簪は新型の二銃口型ヴェスバーを乱射して牽制してくるが、私はそれをバレルロールでかわしながら更に距離を詰める。
 更に追尾してくる山嵐の掃討を終えた六花の弾幕が加わり、あっという間に打鉄弐式のシールドエネルギーが0に近付く。

「それなら……!」
「ハン、吶喊!? 六花、フォートレス! あとGAU-ISをガンナーズ・ブルームに!」
『了解。フォートレス展開……完了しました。ガンナーズ・ブルーム展開……完了しました』

 私は歪な六角形――ガンダムのシールドを想像すると解りやすい――をしているフォートレスの細い方を前方へ向ける。
 夢現を振りかぶりながら突っ込んでくる簪に対し、私は巡航スタイルのまま簪めがけて突っ込んだ。

「「行けぇぇぇぇぇっ!」」



「ずぞぞ……不覚だわ。まさか一夏に負けるなんて」
「ずず……相変わらず鈴はコントローラーつかう物になると弱いよねー」
「ず……でも後半はちゃんと出来てたではありませんか」

 皆で一通りやったらいつの間にかお昼になっていたので全員で素麺をすする。

「千春、あれって装備とか色々と試せるのか?」
「ええ。でも源ちゃん、今日の事予測してたのかな? まさか全員分の機体が登録されてるなんて……」
「確かにな。いつの間にパスワードなど仕込んでいたのか……ずず」

 やりたいと言った皆がハイパーセンサーを連動起動させると、そこには『パスワードを入力してください』の文字が。
 そんなん解るかー、と言いそうになった瞬間、『コアからの入力』で無事にリンクをする事が可能になった。
 ただ、そのパスワードが酷かった。色々と。

 一夏は『TOUHENBOKU』、まあコレは良い。一夏以外は満場一致ね。
 セシリアは『CHYOROI』、これも本人以外は納得したわ。だってちょろいし
 シャルロットは『EROIKO』、これは一夏が赤くなってたから一悶着あったわね。
 ラウラは『CHYUUNIBYOU』、この内容は本人には絶対に伝えないようにしよう。
 箒は『YANDERE』、言われてみれば若干そんな感じもするわよね。
 鈴は『NIKUMIDAKARAINAI』、これはもう訳が解らないわよ。

「でも、千春達は凄く慣れてたみたいだけど……どうして?」
「佐倉先生に……テスト、頼まれてたから……」
「アリーナ使えない時とかはアレ使って練習してたしね」

 これを渡されたのも六花に始まり、様々なネタ装備のテストをさせられる繋がりなんだろう。
 そのお陰でこの面子のランキングではラウラと同率一位だったりする。六花の性能もあるんだけどさ。

「まあ、今日のはテレビ出力のテストだったけど、ホントは空間投射ディスプレイ付けるって話だし」
「それ、やる意味ありましたの……?」
「まあシミュレーターとしてはこの路線だろうけど、ゲーム化するならテレビ出力は欲しいでしょ?」

 たまーにゲーム用の投射ディスプレイ機器とかあるけど、あれ一個買うだけで最新ハード丸々買えたりするしね。

「シミュレーターか……やはりあの事を気にしていたのだな……」
「あの事?」
「VTシステムの事だ。あれは元々ドクトルが作った物でな、本来は単なる演習用プログラムだったのだ」

 へぇ。それをああも改造するとは……とっくに束さんに塵にされてそうね。

「それにしちゃ随分と趣味に走ってるわよね……コントローラーの種類とか」
「でもそれは良いのではないか? モーションコントローラーでなければまた負けていたぞ?」
「ん、まあそれはそうだけど……」

 私のゲームパッド型、簪のスフィアキーボード型の他にも入力用の投射デバイスは用意されている。
 一夏は本格的なスティックコントローラーだし、鈴は動きを感知するモーションコントローラー。
 シャルロットはノーマルのキーボード型で、セシリアがスティックも付いたタイプのゲームパッド型。
 箒はヌンチャクコントローラーだし、ラウラに至ってはツインスティックだったりする。

 因みに箒と鈴の近くに居るのは危険だったりする。だってブンブン振り回すんだもんこの子達。

「で、午後はどうしよっか?」
「んー、一応テーブルゲームとかは持って来たけど?」
「どれどれ?」

 お昼ごはんも終わって一息つくと、早速次に何をするかが気になってくる。
 一夏が鈴から紙袋を受け取り、居間のテーブルにそれを並べ始める。

「あ、バルバロッサだ」
「ほう? 我が国のゲームだな」
「懐かしいなー。俺達がやってる後ろで源兄ぃが八分の一束さんフィギュアとか作ってたな」

 本当に何をやってるんだろうかあの人は。今でもその時の写真残ってるし。

「まあ、あれに飽きたらにしようぜ。今度こそ千春に勝ってやる」
「へぇ……良いわよ? それなら全力でお相手してあげるわ。ね、六花」
『はい。仮想空間内ならば虚像実影を使う事が可能です』

 実は私達の単一仕様能力『虚像実影』は今のままでは使えない。いや、使っちゃいけない技だ。
 五体分のパーツを量子展開するのは容量制限を簡単にオーバーしてしまい、下手をすると無断制限開放の罪で捕まる事だって考えられる。
 源ちゃんが言うには一体だけ呼び出す事ができるようになるらしいけど……今の所、そんな気配は無い。
 でも仮想空間ならそういう事を気にしないで戦えるモードがある。それを使って一体だけ出せるように練習もしてるしね。

「あ、何なら一対六でも良いわよ? 丁度人数も集まってる事だしね」



「オイ千春っ! 卑怯だぞ六体一斉にかかってくるとかウボァー」
「ハッハァー! 誰がタイマン×6でやるって言ったのよ!」



 まあそんなこんなで時間も流れて現在四時過ぎ。一夏と箒のガス欠コンビを鈴とラウラのフラットコンビが圧倒した所で誰かが家に入ってくる。
 このドアの開閉の仕方、それに無言で入ってきたって時点でもう誰かは解ってるんだけどね。

「おかえり、千冬姉」「おかえり、姉さん」
「ああ、ただいま……随分と大所帯だな」
「「「「「「!」」」」」」

 随分とエロい格好で姉さんが帰ってきた。それと同時に固まる六人。
 え、何で固まって……あ、そう言えば臨海学校の時に変な事言ってたっけ。姉さん。

 あと今の一夏に尻尾つけたら千切れそうなくらい振るでしょうね。飼い犬とご主人……ゴクリ。

「……それは何だ?」
「源ちゃんの新作。ハイパーセンサー出してるのも一応許可は取ってあるから、詳しくは源ちゃんに聞いて」
「はぁ……解った」

 私達がハイパーセンサーだけとは言えISを展開しているのに気が付いたのか、それはもう恐ろしい目でこっちに重圧をかけてくる。
 でも昔みたいに一発殴ってから話をする、ってパターンじゃなくなっただけマシよね。殆ど源ちゃんの担当だったけど。

 そんでもって重圧をかけたお詫びか何かなのか、姉さんはちゃっちゃと着替えてまた出かけていく。
 姉さんも姉さんで不器用と言うか優しすぎると言うか……あと何で一夏はコーヒーゼリー六つも作ってるの?

「二人分足りないな……まあ俺と千春は簪のカップケーキで良いか」
「そうね。私コーヒーゼリーそんな好きじゃないし、昨日のが残ってて良かったわ」
「い、一夏ぁっ! 晩ご飯は私達が作るわよ、良いわね!?」

 え、何この子。もしかしてコーヒーゼリーが予想以上に美味しかったから逆ギレ? まさかね。

「別に良いけど……流石にあの台所に六人は難しいわよ?」
「じゃあ、私……良いや」
「そう? じゃあゆっくり待ちましょ」

 まあ一夏に振舞うのが目的なら昨日やったしね。あとは……セシリアの料理をどう回避するか、かな。



「らからなぁ? わらしろしれは、いひかは目がはにゃせりゃいろ言うか……」
「千春は良いのか?」
「ひはるは良いんら。あいつはしっかりしれるからにゃ?」

 何コイツ。いきなり人の実家に呼び出してツインドライブの件で一通り怒ったと思ったら勝手に酒飲んで勝手に悪酔いしてんだけど。
 おっかしぃなぁ……コイツこんな酒弱かったっけ? っつーか酒癖悪いなお前。絡み酒かよ。

「らいいひ、おみゃーがもー少したばにぇを止めれいはら、こんにゃころには……にゃらんかったんらぞ?」
「俺の役割はストッパーじゃないんでね。そりゃオメーの役割だ」
「にゃーに言ってんにゃおめぇーは。げんじょーしゅきしゅきらいしゅきー、ってにゃんろたばにぇに聞かしゃれらこりょか」

 そりゃー嬉しいけどよー。あとさっきから束がたばにぇになってる。

「わらしろしれも、しゃっしゃろおみゃーらにはくっちゅいれ欲しーんらよ。こう、むぎゅーっと! ぶちゅーっと!」
「キャラ変わりすぎだろお前。むしろ崩壊してんぞ」
「やらまひぃっ! よーい園のこりょからずぅーーーーーーっろおみゃーらを見れ来らけろな? にゃんろくっちゅけろ思っらこりょか!」

 しかしまあ、ある意味絡み酒で良かったのかもな。暴れられたらISでも持って来ないと手が付けられん。

「らいいひ、べんろーを好きれもらいおろこにちゅくるか!? ちゅくらんらろ!? しゃっしゃろ手篭みぇにしゅれあ良かっらんらよ」
「それ一夏にも言ってやれ。第一俺は束の好意には気付いてたぞ」
「らから! にゃんれしょこれしゃいごにょ一歩を踏み出さにゃいんら! にゃ? しゃいしょの一歩かりゃ?」

 知るか。

「おみゃーもおみゃーら! わらひにふよーいにちかぢゅきしゅぎら! にゃんどたばにぇに睨まれらこりょか……あいちゅは怒るろしちゅこいんら」
「お前は酔うとしつこいがな。っつーかさっきから呂律回ってないせいで聞き取り辛いわ」
「やらまひぃっ! あいちゅなじょいひじき、本気れ媚薬をちゅくろーろしれらんらぞ? ……惚れ薬らっらから?」

 何してんのアイツ。

「まーへっひょく自分れ試しれとょんでもにゃーころになっらんらけろら。げんじょー、げんじょーっれ言いにゃがらじゅーっとおにゃにーしれらぞ?」
「何それ見たい」
「ほりぇ! たひか……ちゅーににょ秋ごりょにまっきゃになっれ引っ叩かれらころがあっらろ? あの時らりょ」

 あー、あん時か。そうか……これは良い情報を貰ってしまったな。

「らから、わらひろしれは、おみゃーらにょ保護者ろしれ、見守りゅ義務がありゅんら。れもいひかは目がはにゃせりゃいろ言うか……」
「おーい、話ループしてんぞー」
「ひはるはしっかりしれるにょに……まあ、しゅえっ子らからにゃ」

 あーもうウゼェ。俺は左腕からある物を取り出して床に置き、背後から千冬の腰に腕を回して抱きすくめた。

「ら、らんりゃ!? ブリーカーか!? しょんにゃこりょされたら夕飯じぇんぶれるじょ!?」
「ご生憎様。死ねぇじゃねーんだよ、っと!」
「うぉぁぁぁっ!?」

 これぞ必殺!

「トンファー置きっ放しブレーンバスター!」
「しょれはじゃーまんしゅーぷれっくしゅりゃー!」

 ズゥン、と音を立てて千冬がマット……ではなく床に沈み込む。おお、肉体面でコイツを圧倒する日が来ようとは……。

「全く……とりあえず布団かけてツインドライブ受け取りに行くか。今日は俺もここで寝よ」

 どうして明日も仕事なのにわざわざ実家に泊まらねばならんのか。コイツは……ああ、休暇ずらしてたんだっけ。



  ま た 声 優 ネ タ か 

 あ、タイトルの事ですよ。あと夏祭り編のラスト。あれがやりたかった。
 あとタイトルは真夏の夜の淫夢と迷ったのは秘密。オッスオッス。

 っつーか酔っ払った千冬パートが長い長い。おっかしいなぁ……数行で終わらせるつもりだったのに。




「……あほうが」






[27457] 第十三話「姉の屍を越えていけ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/06/05 15:37



 第十三話「姉の屍を越えていけ」


「あぁ? 実弾兵装だぁ?」

 新学期も始まって9月も4日。全校集会で睡眠時間をガッツリ削られた俺は若干不機嫌だったりする。
 で、俺の前にはちょろドリル。もう言い直さない。だって眠いし。

「は、はい」
「ブルー・ティアーズはBT兵器の試験機だぞ? 本当ならスターライトですら余計な武装なんだ、そこんとこ解ってるか?」
「それは解っていますわ! ですが、その……」

 キャンキャンと吠えたと思ったら言葉尻が弱くなっていく。やめろ頭に響く。

「ま、どーせ一夏に負け続きなのが悔しいとかそんな所だろ?」
「うっ……」
「はい図星、と。まあ相性最悪になっちまったからなぁ? インターセプターで勝てる相手でも無いしぃ?」
「うぅ……」

 しおしおと見事なドリルがしおれていく。スゲーなお前、それどーなってんだ?

「本国には?」
「同じ事を言われましたわ……」
「ふむ……普通ならスターブレイカーの一丁でも寄越す所だけどな」
「あ……確かサイレント・ゼフィルスの武装ですわよね? 実弾とレーザーの撃ち分けができると言う」

 そうそれ、と頷くとまたドリルに張りツヤが戻ってくる。だからマジどーなってんのお前。

「ならばそれを送って貰えば!」
「いやそれ無理」
「な、何故ですの? やはりブルー・ティアーズの稼働率が……」
「いや、そーじゃねぇ……ちょいと耳貸せ」

 耳は貸せませんわよ? ベタなボケしてんじゃねぇ。と一通りの漫才をしてからちょろーんはしゃがみ込む。シャルロットだったら中身御開帳のポーズである。

「……奪われたんだよ」
「なっ!?」
「犯人の目星はついてるんだが……尻尾が掴めんらしい。お陰で向こうはピリピリしてるらしいぞ」
「そんな……」

 その言葉は代表候補生たる自分が知らなかった事か、それともISの強奪そのものに向けられた物か。まあそれはどうでもいい。
 犯人はモロチ―――げふん。もちろん某神様になった魔法少女と同じ名前のあの娘だ。後ろには当然ながら亡国機業。

「そんな訳で輸送中に何かあるかもしれんし、向こうとしても慎重にならざるを得んだろうよ」
「確かに……装備を奪われて補給物資にでもされたらたまったものではありませんわ」
「そーゆーこった。だが、ブルー・ティアーズは第三世代機だし、既存の兵器とのコアの相性も良くは無いだろ?」
「ええ。学園側で使用されている実弾兵器は全滅でしたわ……」

 はぁ、とアンニュイにため息をつくのと同時にまたドリルが動く。ちょっとお前解剖して良い? こう、輪切りに。

「そうだな、それじゃあ装備側が合わせてやるのが一番手っ取り早いか」
「……お願い、できますの?」
「案だけは一杯あんでね。えーっと……あ、あったあった」

 その辺にあった椅子にセシリアを座らせ、俺は空間投射ディスプレイに目当てのフォルダを表示する。
 その名も「ゆかなフォルダ」、まあ要するにまたしても声優ネタである。天丼どころの話ではない。

「えーっとまず一つ目、デビライザー」
「ハンドガン……ですの?」
「ああ、だが撃ち出すのは弾丸じゃねぇ、量子変換した物だ。量子化した物ならありとあらゆる物を撃ち出せるぜ」
「……凄いとは思いますが、容量不足に悩まされそうですわね」

 むぅ、流石は代表候補生。一発でコイツの弱点を見抜くとは。

「いーじゃん、お前そんな容量使ってる訳じゃねーんだし。それに神操機よか銃っぽいだけマシだろ?」
「……嫌な予感がしますので詳しくは聞きませんわ」
「チッ」

 はいじゃあ次。まあこれも量子化武装なんだが。

「死鏡。相手の攻撃を量子化して受け止め、再物質化して相手にぶつけるカウンター用の武器だ」
「……それ、一夏さんにはあまり意味ありませんわよね?」
「荷電粒子砲なんざ受けたら溶けっぞ」
「全くの無意味ではありませんか!」

 だって試作品だし。火力馬鹿の相手なんざまともにできるか。

「じゃあコイツは……パッケージだな。水中用ユニット『トゥアハー・デ・ダナン』、ミサイル系の武装コンテナとしても使えるぞ」
「ミサイルは既に二基ありますし……」
「まあミサイルって初速遅いしな。弾幕もメテオストライクとか山嵐レベルじゃないと張れないし」
「あれは反則ですわよ……」

 お前、あいつらとも相性悪いしな。因みに勝率だと千春はラウラと同率、簪は鈴のやや下なんだとか。
 簪の順位には納得だが、千春ちょっとチート過ぎね? と思ったら六花無しだと一夏よりちょい上なんだと。なーんだ。

「じゃあこれはどうだ? キュアシロ、投げ技用サポートシステム付きの腕部武装だ」
「……何故、投げ技なんですの?」
「白だから、としか言えんな」
「相変わらず訳が解りませんわ……」

 解らなくてよろしい。因みに黒を装備した奴とドッキングさせる事により粒子砲へと変形するぞ。マックスハートはまだ設計中だが。

「次は……これもミサイルだな。名前が思いつかなかったんで純粋にミサイルシールドにしてある」
「ピンクなら鈴さんの出番ですわよ」
「チッ……えっと、こっちはBT兵器用の追加演算ユニットだな。六花とインコムのデータが取れたんで作ってみた」
「蒼天の書……後で頂きますわ。他には何かありませんの?」

 貰うもんは貰うんだな。まあ本当に簡易的なユニットでしかないんだが。動きも単調になりそうだし。

「デスサイズシリーズのY、狙撃弓『梓』とかどうだ? 残ってるのの中ではこれが一番かな」
「弓矢ですか……確かに良さそうですが、他のも見てから決めさせて頂きますわ」
「つっても後は格闘用の武器しかねーぞ? 斬魄刀シリーズの『凍雲』、斬艦刀シリーズの『護式・斬冠刀』の二本だ」

 凍雲は三叉の実体剣、護式は簡易的にBT技術が使われた剣だ。インターセプターの代わりとしては使えると思うが、当然ながら射程は短い。

「そうですわね……可能であれば機関銃が欲しかった所ですが、弓でお願いしますわ」
「んじゃ折角だし、BT対応型で実弾とエネルギー弾の撃ち分けができるようにしとくか?」
「できますの?」
「楽勝、と言いたい所だがここんとこ忙しくてな。学祭終わるまでは我慢してくれ」

 お忙しいですものね、と納得したセシリアは立ち上がる。と、それとほぼ同時に千冬の笑い声が聞こえてきた。
 ……そう言えば、今ってHRの時間じゃないのか? 何故居るオルコット嬢。

「細かい事を気にしてはいけませんわ」
「……あーそーかい」
「それでは失礼いたしますわ」
「はいはい」

 さて、一夏がここに居るって事は職員室の外にアイツが居る筈だ。あとアイツが廊下で出待ちしてる筈。
 そして俺に近づいてくるアクニャ先生と簪。あの話ですね解ります。

「佐倉先生、四組の出し物なんですが……本当に良いんですか?」
「ええ。二人には既に試作品を渡してありますし、当日までには誰でも使える物を作るつもりです」
「……先生、良いですか?」
「まあ、皆も乗り気だしね。じゃあ一年四組の出し物は『IS/VS新作体験コーナー』で決定、と」

 一歩間違えば企業の回し者と言われても仕方の無い出し物である。まあ商標は俺が買い取ったから特に問題はないんだけどね。良い買い物でした。
 さて、簪も外にアイツが居るのに気付いているのか、いつも以上にソワソワと挙動不審である。いや、一夏に話しかけるタイミング計ってんのか?

 だが残念。一夏は職員室入口で生徒会長とエンカウント!

「―――ッ!」

 反射的なのか俺の影に隠れる簪。やめて。アイツに狙われるとか俺まだ死にたくない。
 なんてアホな事を考えていると、二人は連れ立って廊下へと歩いて行く。確かこの後は……襲撃だったな。

「疾風怒濤、必殺のラァンスアタァァァック!」
「偽・螺旋剣ッ!」
「八咫雷天流・散華ッ!」

 ……疲れてんのかな、俺。あとブロークンはやめろ。職員室壊れる。
 そして簪は廊下が騒がしくなっている隙に逆方向へと走り去って行った。
 あいつって案外足早いよね。お、のんびり歩いてたセシリア追い越した。



 第三アリーナでは、セシリアとシャルロットが射撃の精密性を競うように的を撃ち抜いていく。
 二人ともほぼ中心を正確に撃ち抜いていくが、心ここにあらずと言った表情だった。それも怒りや苛立ちと言った類の。

「セシリア……それ、本当?」
「ええ……ほぼ間違いなく、原因は一夏さんですわ」

 話題になっているのは日本の代表候補生……簪である。本来ならば彼女と同室の千春も居る筈だったが、諸事情によりここには居ない。
 それもそうだろう。武装の心配が一応無くなったセシリアを追い越すように、泣きそうな顔で簪が走って行ったのだから。何かがあったのは明白だ。

 彼女があれほどの強い感情を見せるのは一人しかいない。彼女達の懸想の相手でもある織斑一夏だ。

「はぁ……本人に悪気は無いんだろうけどねぇ……」
「全くですわ……これが切っ掛けになって直れば良いのですが」
「それで直るようならとっくに直ってるんじゃないかな?」
「ですわよねぇ……」

 はぁ、と二人同時にため息をつき、また同時に最後の標的を撃ち抜く。レーザーと実弾と言う違いこそあれ、二人とも実に器用なものである。

「さ、一夏君。こっちこっち」
「ちょ、ま、待って下さいよ会長!」
「むぅ……」

 はて、と二人は声のした方を向く。そこには噂の人物、一夏が巨乳生徒会長に腕を引かれて居た。その後ろには不満げなラウラが歩いている。
 これはまた何かあったか、また新しい女でもひっかけたなと二人は直感する。それと同時にアリーナの反対側で近接戦闘をしていた鈴と箒に通信を入れた。

 彼女達は既に千春からある伝言を託されており、大体何があったのかは察しているのである。

「一夏、千春から伝言だよ」
「え、あ、ああ。何だって?」
「死ね、だってさ……それでどうしたの? 今日は第四アリーナじゃなかったっけ?」

 ……この後の展開は原作を読んで頂くのが一番分かりやすいので割愛する。べ、別に面倒になった訳じゃないんだからねっ!



 織斑千春は苛立っていた。

 理由は簡単。あの乳狸……もとい更識楯無の存在である。簪から一通りは聞いていたものの、どうも聞いていた以上の曲者だったらしい。
 先日から一夏に猛烈なアタックを仕掛けており、年上とエロスに弱いあの男がどうなっているかは簡単に想像ができる。まあこれは別にどうでも良い。
 問題はあの女が一夏の近くに居るせいで簪のテンションが底値を割り続けている事だ。元々高い方ではないが、ここ数日はお通夜のようだった。

「むぅ……」

 で、今は箒がお稲荷さんを持ってたのでご相伴に預かろうと一夏の部屋に向かっている途中だったりする。
 ……何故あんな面白い物好きの人間がこんな中途半端な時期に一夏に接触してきたのか。これは疑問だったけど、源ちゃんに聞いたら一発で教えてくれた。

「全く、そろそろ機嫌を直したらどうだ?」
「……じゃあ聞くけど、あの女を束さんに置き換えて考えてみてよ」
「む、それは……ど、どうせ源蔵さんでも無い限りそんな事はしない! 大丈夫だ!」 

 逃げやがったこのアマ。

「はい到着ー……ん? 六花」
「どうした、千春」
『スキャン完了。織斑一夏のほかに生体反応あり、女性です』
「ほぅ……?」

 六花にスキャンさせたら箒が怒ったでゴザル。でも幾らなんでも雨月出すのはどうよ?
 にしても、女性……あの女かしら? だったらいっその事ぶった切ってくれないかしら。

「一夏ぁぁぁっ!」
『救援に向かわなくてもよろしいのですか?』
「へーきよ。流石に箒に敵う相手じゃないわ」

 ギャリン! と金属同士が擦れ合う音が響き、部屋の中が静かになる。終わったかな?
 三つ数えてから部屋に入ると、見事に天井に突き刺さってる雨月があった。また部屋直さないとねー。

「お邪魔ー……こりゃまた酷いわね」
「あ、ち、千春か……良かった、また誰か暴れるのかと思った……」
「それ皆に言いふらして良い?」
「やめろォ!」

 部屋には肩で息をしてる箒、今にも漏らしそうな一夏、あとクソアマが居た。

「あら酷い」
「ハッ、アンタなんかクソアマで充分よ」
「んー……随分嫌われちゃったわねぇ」
「その無駄にデカい乳に一夏の手でも当てて考えなさい」

 あら良いの? と一夏の手を取って自分の胸に持っていく会長。慌ててそれを阻止しようとし、自分の谷間に突っ込んでしまう箒。殴られる一夏。
 うん、いつも通りね。

「私としては、簪ちゃんと仲良くしてる貴女とは仲良くしたいんだけど……」
「どの口でそんな事ほざけるのかしら。今あの子がどうなってるか、知らない訳じゃないんでしょ?」
「それは、その……」

 しおしおと覇気が薄れていく。ついでに開きっぱなしの扇子の文字も『………。』になってる。

「……まあ良いわ、大体の事情は察したから。お稲荷さんでも食べましょ」
「あら、良いの?」
「大勢で食べた方が楽しい、の一夏理論って事で」
「……ありがとう」

 ところで箒、そろそろエリアルやめたら?



「それにしても凄いわよね、貴方達の機体。流石は篠ノ之博士謹製、と言った所かしら」
「そう……でしょうか?」
「ええ。勝率が低いのは単純に貴方達が弱いからよ」
「うっ……」

 もぐもぐと稲荷寿司を食べながら駄弁る。話題はいつの間にか私達の機体の事になっていた。
 ……いや、正確には白式と紅椿だけね。六花は源ちゃんのだし。

「私も自分の機体の何割かは自分で作ったけど、それも佐倉先生の助けが無ければ無理だったでしょうね……やっぱり天才って言われる人達は違うわね」
「ああ、そう言えば簪も言ってましたね。機体、自分で作ったんですよね?」
「ついこの間まで調整繰り返してけどね……そう言えば紅椿の単一仕様能力、使えないって聞いたけど?」
「え、ええ……源蔵さんが言うにはコアと私の意志が一つになれば使えると言っていましたが……」

 もしくは大型幻獣三百体倒せば良いとか……良く解んないけど。
 その点だと六花は凄い楽よね。条件付きではあるけど好きな時に使えるし。意思疎通も言葉を使えば良いしね。

「一対零のエネルギー消滅能力『零落白夜』、一対百のエネルギー増幅能力『絢爛舞踏』……もう科学と言うよりはファンタジーの世界ね。どんな理論なのか想像もつかないわ」
「流石は第四世代機、って所でひゃぁっ!?」
「お、おい千春!? どうした!?」

 最後に残った稲荷寿司を取ろうとした瞬間、目の前がテレビの砂嵐みたいになる。お陰で最後の一個は会長に取られてしまった。

「わ、解んないけど……六花、どうしたの? 故障?」
『………。』
「おーい、六花ー?」
『………。』

 おっかしいわねぇ……普段なら絶対に何か返してくるのに。やっぱり故障かしら?

「もしかして、千春さんが他の機体を褒めたから嫉妬してるんじゃない?」
「……そうなの? 六花」
『……私と白式達は言わば従姉妹。彼女達ばかり褒められれば拗ねもします』

 いや、それは解ったけどいきなり視覚テロとかやめて。酔うから。

『第一、勝率は私が居れば95%を超えているのです。マスターも私が居なければ弱い方なのですよ?』
「あはは、ゴメンゴメン……感謝してるわよ、六花」
『……解れば良いのです。それにミステリアス・レイディもドクターの作と言えます、彼女にも感謝して頂きたい』
「ええ、そうね……ふふっ、貴女達も面白いわね」

 クスリ、と会長は笑みを零す。くぅ……こ、こーなったら嫌がらせしてやる!



「………。」
「………。」

 向かい合うのは二人の少女。一方は困惑を漂わせながらも堂々と、他方は恐怖に怯えながらも勇敢に。
 その二人の姓は更識―――楯無と簪が、第三アリーナのピットで向かい合っていた。

「……と言う訳で、会長。心の闇と戦う準備はOK?」
「お、おい千春? 一体どうして……」
「一夏は黙ってて。これは姉と妹の問題よ」

 私は次の日の放課後、一夏の面倒を見ている会長の所に簪と二人で突撃していた。一夏は放っておく。
 フッフッフ、これぞ現状を打破しつつ会長が恐れる最大の事態! さあ、派手に行くわよ!

「……私と、戦って」
「っ……良いわ。私はIS学園生徒会長、故に最強でなければいけないもの。挑戦を受けるわ」

 光の粒子を散らして打鉄弐式とミステリアス・レイディが姿を現す。それに合わせて私も六花を展開した。今日の装備はメテオストライクだ。

「流石に……一人だけじゃ、勝てない。だから……」
「私も戦うわよ? まさか更識楯無ともあろう人が拒んだりはしないわよね?」
「ええ……良いわよ。纏めてかかってらっしゃい」

 PICを使い、フワリと私達は規定の位置へ移動する。二対一の変則マッチだけど、これでも勝てる気がしないのは何でかしら。
 それにしても、何だかんだ言って簪も乗り気じゃない。説得した甲斐があったわね。

「ISファイト、スタンバイ!」
「レディ―――」
「『ゴォッ!』」

 開幕一番、私と簪は全ミサイルハッチを開く。ミステリアス・レイディの最大の特徴は攻防に使えるナノマシン入りの水、それを打ち砕くにはこれが一番手っ取り早い。

「マルチロックシステム起動……標的、ミステリアス・レイディ……!」
「機能・悪鬼喰、顕現っ! 狙いなさい!」
『それは私の台詞では……? ロック完了、撃てます』
「細かい事気にしないっ! 撃て撃て撃てぇっ!」

 轟、と合計百二発のミサイルが空を切り裂く。それに対し、蛇腹剣で全て切り落とそうとする会長。
 普通ならかかったな阿呆が! とか言う所だけど、そうも行かないのよねぇ……もう半分迎撃されてるし。

「右手のペイン、左手のプレジャー……どっちを選ぶ!?」
『どちらにしても同じ。アンサー、デッドですね』
「アクセス、我がシン……! レスト・イン・ピース……!」

 私はGAU-ISを、簪は春雷を撃ちながら会長を挟むように回り込む。って言うか簪、そのネタは……私も大概だけどさ。

「簪っ! 手ぇ休めちゃ駄目よ!」
「解ってる……!」
『ッ! 来ます!』

 会長は雨霰の弾幕を迎撃ではなく一点突破で脱出し、私の方へと突っ込んでくる。

「貴女達がそれをお望みなら……光射す世界に汝ら闇黒、棲まう場所無し!」
「ゲッ!」
『敵機右腕に高熱源反応有り。水分子を凝縮した上での高振動兵器と推測』

 生憎と渇いてるし飢えてるし、無には還りたくないのよ!

「レムリア・インパクトッ!」
「チッ!」

 ミサイルの爆風を受けて加速した会長にGAU-ISを放って盾にする。GAU-ISが会長の手に触れた瞬間、物凄い音を立てて銃身が爆発した。とんでもない威力ね。

『罪人の剣の展開を確認。攻撃、来ます』
「マカパインじゃないわよ!」
「おわっとと! むしろアレ知ってるのね、会長……」

 続きまだかなー、と考えながらシュランゲフォルム―――これじゃドイツ語ね――の攻撃を避ける。
 その隙に簪が後ろへ回り、春雷で会長をロックした。今よ、やっちゃえ!

「エーテルを、ぶち撒けろ……!」
「私のエーテルはこの色よ!」

 右手で私にラスティー・ネイルを振り回しながら、左手で蒼流旋を簪に向けてガトリングで牽制する。ホント化け物じみてるわね、この女。
 私はもう一度メテオストライクを一斉射し、パッケージをレーザービームに変える。

「悪神セト、蹂躙しなさい!」
『犯せ、侵せ、冒せ―――三回ですね、了解しました』
「どういう意思疎通よ……っと!」

 六閃の光が三回空へ走り、その全てを会長は巧みな操作でかわしていく。当たらない、か……なら接近戦よ!

「顕現せよ、退魔刀・雷光!」
『輝きは陽の如し、光、成れ。小雷招来、行きます』
「まさかスライム責め!? しないわよ!?」

 だから何で知ってるんですか会長。アレか、やっぱり源ちゃんか。

「武装展開『神と悪魔』……!」
「げっ! やばっ!」
『効果範囲外までの退避完了、安全です』

 私の攻撃を易々と防いだ会長に対し、簪は源ちゃんの新作を展開する。危ない危ない、アレ範囲攻撃だから巻き込まれるのよねー。

「成程、だから私にこれを……『天国と地獄』!」
『検索……ヒット、腕部フィールド発生兵器の一号機です』
「なっ、同じやつ!? 何考えてんのよ源ちゃん!?」

 まああの人の事だから、特に何も考えてないんだろうけど……。

「アン・パン・マン・ゴー・ウホッ……」
「マム・オル・トン・スー・ウホォ……」
「って、そっちかい!」
『それにしてもこの姉妹、ノリノリである……モレスティングフィールドの形成を確認しました。衝撃、来ます』

 さっきのミサイルの爆風に負けない衝撃が私達を襲う。ホント何考えてんのよあのスケベノッポはー!

「はぁぁぁぁっ!」
「くぅ……!」
「チッ、あの中じゃ手が出せないわ……六花、何か手無い!?」
『検索中……っ! フィールド内に変化発生!』

 六花が自動でハイパーセンサーを操作し、私にフィールドの中を見せてくれる。と、それとほぼ同時にフィールド自体が弾け飛んだ。
 そこには同じ体勢で息をする姉妹。どうも決着がつかなかったらしい。

「なら……」
「これね! 『本気』で行くわよ!」
『モードの変更を確認、手数で攻める模様です』
「え、でも同時って事は……」

 ガキン、とミステリアス・レイディと打鉄弐式の腕部装甲が変形する。ああ、アレか。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」
「……やっぱりそれか」

 何だかんだでこの姉妹、仲良いわよね。二人ともいつの間にか笑ってるし……でもこれじゃ決着はつかなそうね。悪いけど、これで終わらせてもらうわよ。

「こいつの封印を解く時が来たわね……六花!」
『巨大ドリル『ロックンロール』展開……世界の未来を貴方に託します』

 ラッシュの応酬を続ける二人を他所に、私は全長5メートルを超えるブースター付きのドリルを展開する。

「みんなの祈りがロックンロールに集まっていくわ……燃え上がれ、私の宇宙!」
『GO! ロックンロール!』
「……あれ? 千春?」
「何かしら……この嫌な予感……」

 PICではなく純粋なロケットの推力で宙を舞い、急転換してドリルの先端を会長へ向ける。
 何か二人が驚いてる気がするけど気のせいって事にしておこう。うん。

「さようなら、バーバラ……愛しているわ」
『魂は次の世代へと受け継がれていきます……ロボ』
「え、ちょ、待っ……」
「冗談でしょ……!?」

 ぶっ飛べぇええええええええええええええええええええええええええええええええっ!



 その姉妹は夕日を前に並んでいた。その表情に今までのような翳りはなく、その本来の美しさを取り戻している。

「……私ね、貴女に嫌われてるんじゃないかって思ってたの」
「……私も、お姉ちゃんに追いつけないからって……自分が要らない人間なんだって、思ってた」

 その噛み合っていない筈の会話は、その本心をぶつけ合う事こそが本来の姿だった。

「でも、そんな事は無かった……そう思いたい」
「うん。そんな事は無かった……そうだよね?」

 それを教えてくれたのは、一人の少女。とっくの昔に今の二人が居る場所を通過していた、お節介な女の子。

「簪、貴女は貴女で居なさい。そうすれば……ううん、例えそうでなくても、私には貴女が必要なの」
「お姉ちゃん……私は、貴女が大好き。私は私のまま……大好きなお姉ちゃんと、一緒に居たい」

 ぎゅう、と二人はどちらからともなく抱き合う。それは美しい姉妹愛の形だった。


 ……後ろで地面に突き刺さったままの千春と、暇を持て余している一夏は無視されていたが。




 あっさり和解したでゴザルの巻。次回は束分たっぷりの学園祭編です。

 で、既に書いてある通り、諸事情により次回更新予定は未定です。むしろ今回更新できてラッキー。
 もう少ししたらネットブックが手に入ると思うので、ひょっとしたら以前より更新速度が上がる可能性もあったり。



「それじゃあ、今晩一夏君の部屋にいらっしゃいな。裸エプロンで」
「―――え」

 ……モゲロ。





[27457] 第十四話「鉄鍋のヴァン」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/06/17 11:09



 第十四話「鉄鍋のヴァン」


 たーばたばたばたばたばたばねっ!
 たーばたばたばたばたばたばねっ!

 地球にうごめく 雑草共
 ケミカルボルトで 支配する
 科学の国から 自分のために
 陥れて こにゃにゃちわ ウサミミ博士束

 レイジングハート そうレイジングハート

 あなたの胸に 飛び込んで行くの
 トラックよりも キラッ☆
 巨大なパワーで ニヤッ☆
 あなたのハートを握り潰すの
 だ・か・ら 私の全力全開ラリアット(往年のスタン・ハンセンスタイル)逃げずに
 ちゃんと受け止めてよね

 たーばたばたばたばたばたばねっ!
 たーばたばたばたばたばたばねっ!


「という夢を見たんだ」
「知るか」



 何だかんだで文化祭の当日である。この程度のキンクリはいつもの事なので気にしないのが吉。
 で、俺はと言えば「IS学園正面ゲート前」のモノレール駅のホームに仁王立ちしている。朝一番から。

「マジめんどくさいんですけど。これなら何作ってもカレーになるインドの料理番組見てた方が良いんだけど」
「そう言わないでください。学園長が表に出る訳にはいきませんし……」
「そうは言うがね虚君、こちとらスーツもロクに着て無いんだぜ? そんなんが出迎えってどーよ」
「自覚してるなら着て下さい……」

 やだ。毎週のように教頭から着ろって言われてるけど嫌だ。こちとらフリーダムが売りなんでね。
 なんてやってると校内放送で学園祭の開始を告げるアナウンスが鳴る。そしてその直後にやってくるモノレール。

「お、来た来た。さぁーて最初のお客様は、と?」
「五反田弾が、IS学園に、キタ―――――――――――ッ!」
「うっさい馬鹿兄っ!」

 赤毛ズでした。蘭ちゃんにボコられないようにチケット送ってやったのに結局ボコられてやんの。

「おーい。だーん、蘭ちゃーん」
「あ、源蔵さん! おはようございます!」
「ん、おはよう。そして女の子として兄を片手で引きずるのはやめた方がいいぞ」

 この兄妹は世論とか関係なしにこういう力関係な気がする。七代目が居ない限り。

「あいててて……で、何で源蔵さんはここに?」
「ホラ、俺これでもそこそこ偉いさんだから。政府とか企業の人のお出迎えにね」
「はぁ……あ、チケットありがとうございます! でも良かったんですか? これって一人一枚って聞いたんですけど……」
「いや、俺教員だし何枚でも出せるのよ。だから無問題」

 ちなみに出迎えしてるのは束が来るまでです。教頭から逃げてるとも言う。

「佐倉先生、お知り合いですか?」
「ん、ああ。一夏のダチとその妹さん。二人とも、チケット渡して」
「あ、は、はい!」

 蘭ちゃんは恐らく緊張から、弾は下心からガッチガチに固まっている。虚君はそれを見てクスクスと笑う。案外黒いな、君。

「そんでどーする? 一夏と待ち合わせでもしてんのか?」
「あ、はい。迎えに行くからここで待ってろって言ってましたけど……」
「そうか。なら虚君、話し相手になってやってくれ」
「……仕事の妨げにならない程度でしたら」

 やれやれ、と言わんばかりに虚君は微笑む。んー、一夏だけじゃなく弾も年上に弱い気がする。

「お仕事……えっと、学生さんですよね?」
「ええ、生徒会の会計をしているんです。その関係で今回はここの対応を」
「あ、そ、そうなんですか! あ、そう言えば自己紹介まだでしたよね! 俺、五反田弾です!」
「ああ、そう言えばまだでしたね。布仏虚と申します」

 んー、何か少しずつ砂糖吐きたくなってきた。蘭ちゃんも蘭ちゃんで何か感じ取ってるっぽいし。

「蘭ちゃん蘭ちゃん、君のお兄さんが逆玉狙ってるけど良いの?」
「逆玉って……そんなに凄い人なんですか?」
「三年整備科の首席。つまり学生としては最もISに詳しい人間だ」
「……お兄ちゃん、釣り合いませんよね」

 まーね。でも何か会話弾んでるんですが。『だんんでる』ではない。
 なんて漫才ものってきた所で次の電車が現れる。はい次だーれだ?

「お、お久しぶりです。佐倉博士」
「意外と早かった各国の方々でした。ん、久しぶりだね楊さん」

 中国人なのにチャイナドレスと語尾のアルを装備していない楊候補生管理官が現れた!

「今までのデータとかはいつもの所に置いてあるから」
「あ、は、はいっ。それで、ですね……その……」
「お、他にも何人か来てるな。んじゃ俺はこれで」
「……うぅ」

 同じ電車に各国の偉いさんがそこそこ乗ってたので挨拶をしに離れる。割と忙しいなこの仕事。
 あと戻ってきたら何故か楊さんが居なくなってました。蘭ちゃんに少し睨まれました。弾は虚君とずーっと話してました。モゲロ。

「ドクトル! お久しぶりです!」
「おー、夏以来だな。どうだクラリス、ツヴァイクの調子は」
「はい、上々です。出来れば今度フルメンテナンスをお願いしたいのですが……」
「んー、ここんとこ忙しいからなー。暇ができたら連絡するわ」

 次の電車にはクラリスことクラリッサが乗っていた。良いのかドイツ特殊部隊、専用機持ちの半数以上が国を離れてるぞ。

「その……い、一緒に回りませんか?」
「あー、すまん。仕事その他諸々があるんでな。あ、ラウラは一年一組だぞ」
「そうでしたか……隊長に関しては確認済みです。それでは失礼致します!」
「あいよー」

 カメラを片手にクラリスは学園へと突撃していく。今のラウラをあいつが見たら鼻から忠誠心が迸るだろう。掃除のおばちゃんゴメン。
 お、ねーくすととれいんずお客ー?

「よう」
「ん、ああ。ヴァンか。頭フッサフサだから気付かんかった」
「ヅラじゃないぞ? あれ以来毛根が強くなってな」
「嘘だっ!」

 全世界のオッサンに喧嘩を売るデュノア社の長。もっかして重役にいびられてんのってそれが原因なんじゃねーの?
 と、ヴァンの後ろには不自然な空白の空間。これはまさか、

「おーい、佐倉さん! こっちこっち! ここですよー!」
「お、やっぱりワカか。そーれ高い高ーい」
「って、きゃー! 何でいきなり投げるんですかー!?」

 視界の下にすっぽり収まっていた顔見知りの脇を掴み、そのままぽーんと上に投げる。ゲストに対してこの扱いはどうよ。
 ……はて、何か今電波が紛れ込んだ気がする。

「で、何でまたここに? 握手会とかやってねーぞ?」
「何言ってるか相変わらずよく解らないですけど……企業側の人間としては一年生の人材も気になるのですよ」
「そんなもんか。それなら国とか企業向けデータ置いてるブースが管理棟にあるから、そこ行っときな」
「そうなんですか。じゃあ後で行ってみますね!」

 しかしアイツのお眼鏡に叶う奴は居るんだろうか? 非実在少年騒動の時に「じゃあ私グレネードと結婚します」ってスレ立てた最大の容疑者だしなぁ……。

「お、あれは確か……そうそう、グレン君だったな」
「チェルシー・ブランケットです……いきなり何ですかドクター」
「いや、ドリルの相棒的な意味で」

 友情合体オルコブランみたいな……あれ? 意外と強そう。

「確かオルコット君の所のメイドだったな。今一年一組に行けば面白い物が見れる筈だぞ」
「そうですか、それは楽しみです……それと後ろの彼は?」
「ただの煩悩の塊だ、気にするでない。それじゃあ楽しんでくると良い」
「ええ、失礼します」

 後ろで妹と眼鏡にコンボ食らってる男は無視。いくらメイドだからって口説いてる途中にガン見は無いわ。
 で、そろそろ一時間経ちそうなんですがね。いい加減待ち草臥れてきたんですが……と未だ永久コンボの効果音が響くホームに新たなモノレールがやってくる。

 それには正体を隠した彼女が乗っていた。

「おーい!」
「ああ、やっと着―――」


 何アレ。


「えへへー、どう?」


 何コレ。


「ぐぅっ……!」
「や、やだなー。オーバーだよー」

 ガクリと膝から崩れ落ちた俺に見当違いなリアクションを見せる束。違う、違うんだよ。

「25歳で、高校生の制服は無いだろう……っ!」

 木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中。その理論に基づいて束は解り辛い格好でやって来ていた。
 まあつまり回りくどい言い方やめてバッサリ言うとIS学園の制服着て来てるんですよ。


  に じ ゅ う ご さ い な の に 。


「な、なにぃー!? ほらほら、可愛いでしょ! 嬉しくないの!?」
「いや嬉しいし怖いくらい似合ってるけどさぁ……歳考えろよ25歳児」

 もうどっからどー見てもイメクラです本当にありがとうございました。
 ……いや、可愛いよ? 胸元が妙にキツそうだけどそれもまた良し。
 でもさぁ……。

「……ま、変装って考えれば良いか。んじゃ行こうぜ」
「わっかりましたー、佐倉せんせー!」

 ぴょん、と飛びついてきた束は自然に俺の腕を取って体を絡ませる。んー、グレイトな感触だ。

「じゃあ俺らは行くな。もう少ししたら一夏も来るだろ」
「あ、はい! 今日は本当にありがとうございました! お兄! これでトドメよ!」
「んー。あと勝手に『ディグ・ミー・ノー・グレイブ』使うのやめれ」

 ギターケース型暴徒鎮圧用装備『デスペラード』と対を成す装備なのだが何故ここにあるんだ。



 とりあえず一年一組に向かった俺達を待っていたのは更なるカオスであった。っつーか何で俺がツッコミ役になってるんだ?

「お帰りなさいませご主人様」
「ぶふぉぉぉ……」
「カカカカカッ!」
「……っ!(ビクンビクン)」

 えーっと、何これ。

 ……まず一つ一つ見ていこう。うん。

「お帰りなさいませご主人様」

 やたら堂に入ったメイドが居るかと思ったらブランケット君でした。そりゃ本職だもんな。

 オーケー、次。

「ぶふぉぉぉ……」

 席の一つではクラリスが鼻血ダクダク流しながら恍惚とした表情で死にかけている。
 まあこれはラウラのせいだろう。はい次。

「カカカカカッ!」

 うん、ここだ。どうして厨房にヴァンが居て鉄鍋を振り回してるんだ。
 おーい、誰か説明頼むわ。

「事の始まりは今朝の衣装合わせの時でした……」
「ああ、谷本君か……っつーかそっからかよ」

 どうも鈴にチャイナドレスを着せたい一団が居たらしく、それなら他の連中もメイド服じゃなくて良くね? となったらしい。
 箒は巫女、まあ本職だしこれは良いな。本人も動きやすそうで何より。
 セシリアはネタが無かったのでメイドのまま。まあこれも良い。
 ラウラが何故かメイド服に猫耳としっぽを装着しているのは……まあ許容範囲内だ。
 ……シャルロットが執事服になってから妙に機嫌が悪いのが始まりだったらしい。

 あー、そりゃしょーがねーな。

「社長さんが入ってくるなりスライディング土下座をかましたんですが、それを容赦なく足蹴にし始めまして……」
「黒シャルロット爆誕、と。頭の打ち所でも悪かったのか?」
「あ、いえ、社長さんが何かをしてあげたかったらしくって……それで厨房をお願いしたんです」

 どーもヴァンは珍しい『料理をすると性格が豹変する人間』だったらしい。普通スピード出してる時とかじゃねーのか?
 ……まあ、仲も良さそうだし別に良いか。保健所から苦情が来ることも無いしな、この学校。

「……っ!(ビクンビクン)」

 それよりもさっきからずーっと「悔しい、でもっ……!」ってなってる千冬が最大の問題である。
 どーも表情を見る限り、笑い過ぎて痙攣をおこしてるらしい。原因を探して周囲を見渡すとそこには揺れる尻尾が一つ。

「……ラウラの猫耳メイドを見て笑い過ぎたのか」
「おーい、ちーちゃーん。そろそろ戻ってこーい」

 よく痙攣し続けて窒息しないな、と感心していると笑いも収まったのか千冬は深呼吸をする。その目の前には束。
 そう、『学園の制服を着た状態』の束である。

「ぶいっ!」
「……源蔵、私は疲れているらしい。25歳がしてはいけない格好をしている幼馴染が見える」

 目から光が無くなった状態の千冬がこっちを見る。やめろ、シアーハートアタックなんざ使ってねーぞ。
 まあ、とりあえず千冬には現実に戻って来て貰いますか。

「俺は言っている―――これは現実だと―――」
「束ぇぇぇぇっ!」


 ……修羅と化した千冬から逃げ出し、水泳部のドリンク屋で木村ごっこをしたり、セクシーコマンドー部やら囲碁サッカー部やらを覗く。
 片手間で作ったSDキャラのISレースゲームで遊んでたりしていると時間も過ぎ、ついにあのイベントが始まる時間になった。





『では一つ、皆様学生諸君の歌劇をご観覧あれ。その筋書きはありきたりだが、役者が良い。至高と信ずる。故に、面白くなると思うよ』


 お姉ちゃんがどこかニートっぽい語りを入れると、舞台の幕が上がる。あまりのウザさにイラッとしたのは内緒。

「おー、おりむーは大人気だねー」
「……むぅ」

 隣の本音がもう解りきっている事を言う。本当なら私も混じりたかったけど、更識の人間として頼まれた事があるから出ていく事はできない。
 ……そう言えば、さっきから虚さんがぼーっとしてるけど何でだろう?

「本音……虚さん、どうしたの……?」
「んー、よく解んないけど先越された気がするー」
「……?」

 結局よく解らなかったのでステージに視線を戻すと、真・流星胡蝶拳とかシュトゥルム・ウント・ドランクとかローゼス・ビットとか聞こえてきた。
 ……あれってBT兵器じゃないの? あとセシリアさんは霧に偽物紛れさせるのはやめようよ。メイドさんの仕業なんだろうけど。

『さあ、これよりフリーエントリー組の登場です! それでは皆さん声を合わせて!』
「「「我ら名前を血風連! 振るう刃は相手を選ばず、退かねば血潮の海となる!」」」

 ……佐倉先生なら「何というロングホーントレイン」とか言うんだろうなぁ……ロングホーン?

「かーんちゃーん、たっちゃんが呼んでるよー」
「あ……うん、解った……」

 現実逃避してる場合じゃないよね。お仕事お仕事。



 んー、ボロボロ。

 一週間で合計四時間ぐらいしか使えて無いのでたったこれっぽっちでもかなり時間かかってます。
 次は戦闘話。伏線一個回収します、お楽しみに。

 やはり移動時間が惜しい……。





[27457] 第十五話「かいちょーおねがいします!」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/06/25 19:27



 第十五話「かいちょーおねがいします!」


 風吹きすさぶ平原は、その荒涼たる光景に二つの影を迎えていた。その影は白と紅、共に鎧武者を彷彿とさせるシルエットであった。

「篠ノ之箒は30億女性全てと勝負し屈服させ、その事実を持って神座へ到ろう!
 天下布武! 阻めるものなら阻むがいい!」

 その瞳に宿るは狂気。全身で狂喜を示し、纏う凶器を天に翳す。

「箒! お前はどうしても、その妄念を捨てられないのか!?」

 その原因が自らにあると知っても、それでも彼はこうする事しかできなかった。その背に数多の涙を背負ってでも。

「捨てられぬ! 如何にも妄念、如何にも愚念。されどこの一念が、私の命脈!」
「そうか……ならば箒、此処で―――死ね」


 全てを捨て去る一言。それを望んでいたのは、果たして紅か白か。


「ふ、ふふ……良くぞ言ったり! ならば一夏、力尽くで私を止めてみせよ!」
「是非も無い……篠ノ之流剣術、織斑一夏……参る! 行くぞ、白式!」
『諒解!』

 聞こえる筈のない声。それを聴き、彼は呪われた祝詞を口にする。

「雌に逢うては惚れ込ませ」
『女に逢うては誑し込む』
「『ラノベの理、此処に在り!』」



 ―――意識が飛んだ時、一瞬だけそんな光景が見えた。何だ今の。

「ぐ、ふっ……!」
「ザクとは違ぇんだよ、ザクとは」

 俺の前には、八本のサブアームを持つ異形のIS。アラクネとか言う機体の前に、俺は成す術が無かった。
 数こそ少ないけど、サブアームとの相手なら六花で慣れている。速度もパワーも正確性も向こうの方が上だ。
 ……だが、それもISがあればの話だけどな。

 今、俺は剥離剤とか言う機械に捕らえられている。この機械はISを強制解除する機能があるらしいけど……どうせ源兄ぃが暇潰しで作ったんだろうな。
 兎に角、この妙な機械のせいで白式が奪われちまった。そして目の前のオータムとか言う奴は見事な力加減で俺をぶん殴った。
 ISを装備した状態で生身の人間を殴った場合、臓器が破裂する事だって十分有り得る。が、コイツは一秒でも長く俺をいたぶるために絶妙な力加減で攻撃してきたのだ。

「まあ、それが失敗なんだけどね」
「っ!? 誰だ!」

 カツン、とローファーがリノリウムを踏む軽い音が響く。それが二つ。


「何だかんだと聞かれたら」
「こ……答えてあげるが世の情けっ!」

 ……誰も「何だ」とは聞いてない。

「世界の破壊を防ぐ為」
「世界の平和を……守る為」
「愛と真実で敵を貫く」
「ら、ラブリーチャーミーな御庭番……やっぱり無理があるよ、ここ……」

 ボソボソと簪がツッコミを入れるが姉は一切気にしない。これぞ姉クォリティ。
 ……え、何? 名乗りの前に名前出すなって? スンマセン。

「楯無!」
「か、簪……」

 何だかんだで簪も照れつつ、ビシッとポーズを決めているのは気にしない方向で。

「銀河を駆ける更識家の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が……待ってるよ?」
「「………。」」

 ……ここは最後のアレを言っておくべきだったんだろうか。


「さて、と……大丈夫? 織斑君」
「あ、はい。何とか……あ! でも白式が!」
「大丈夫……呼んであげて、白式を」

 いや、呼ぶって……と言うか、簪の言葉の後に『アレみたいに』ってくっついてる気がする。

「え、いや、だから……」
「呼んで」

 ア レ み た い に 。

「……あの、簪さん……?」
「(じー)」
「……あのー」
「(じー)」
「……わかったよ」

 今って一応非常時だよな……? 簪の目が凄く輝いて……って言うか笑ってないで止めて下さいよ楯無さん。
 俺はため息をつき、大きく息を吸い込む。きっと全力で言わないと簪は納得しないだろう。


「白式ぃぃぃぃぃぃぃっ! カァムヒァァァァァァァァッ!」


 待ってました! と言わんばかりに白式のコアが輝き、俺の周囲に再展開される。あー、そうだよな。源兄ぃの影響だよな間違いなく。

「何っ!?」
「よし、白式奪還成功、と。じゃあ……教育してあげましょうか」

 貴女が何処に喧嘩を売ったのかを。



 ―――凄い。

 ただそうとしか表現できなかった。元々簪が強いのは知ってたけど、楯無さんはそれ以上の強さだった。
 ミステリアス・レイディは装甲の何割かをナノマシン入りの水にしているせいか、ISとしては軽量級だ。
 そしてアラクネとか言う敵のISはどう見ても重量級。何百キロ重量差があるのかは見当もつかない。
 だが、それをものともしない技術とスピードでその差を完全に無視している。出力の差は大して無さそうだし、完全に操縦者の技量の差だ。

「くっ!」
「機体特性の都合上、この子は近接から中距離メインなんだけど……これぐらい狭かったら何も問題ないわね」

 アームを水で絡め取っていなし、空いたボディーに水の球を叩きつける。その一連の動作は止まらず、流れる川の動きを連想させた。
 だが、その腕の数は伊達じゃないのか、水球は簡単にガードされてしまった。

「ダラダラツユ溢しやがって……下品な野郎だ」
「下品なのは貴女もでしょう? それに野郎じゃなくて女郎よ」
「やかましぃっ!」

 アームの先端から機関銃が現れ、銃弾が会長に迫る。が、その悉くは水のヴェールに阻まれて会長に届く事は無かった。

「手数が足りないわね……簪ちゃん、準備良い?」
「うん……山嵐、発射……!」

 お、おいおい! こんな狭い所でミサイルなんて撃ったら巻き込まれるって!

「自爆する気か!?」
「そんな訳無いでしょ……これぞ姉妹の合体攻撃、水と火薬の大狂乱!」
「その名も……蒼流弾!」

 ミサイルの爆発と共に大量の水蒸気が撒き散らされる。どうやら弾頭を水で覆っていたようだ。
 確かにこれなら威力は格段に落ちるが、今はその方が都合がいい。水が爆発の熱量で蒸発し、水蒸気が煙幕のようになっている。

「ハッ、こんなもんハイパーセンサーで……」
「それでも、一瞬動きは止まるわよね? 合体攻撃第二弾、行くわよ?」
「夢現、最大出力……蒼流斬!」

 超振動薙刀に水を纏った一撃がアラクネに迫る。一瞬ガードしようとしたようだが、即座に回避に切り替えていた。
 どうして回避したのかは避けきった直後に解った。強化合金でできている更衣室の壁や床が何の抵抗もなく切断されたのだ。

「あら残念。超々高振動攻撃の威力、味わって欲しかったのに。こう、ずんばらりって感じで」
「……首、置いてけ……」
「んな代物とまともにやってられるか! っつーか目が怖えーんだよお前!」

 うん、それは俺も解る。何か簪が妙にうっとりしている……上気して瞳も潤んだ簪は妙に色っぽいが、こんな状況でする表情じゃない。

「あの、簪さん……?」
「織斑君……首、置いてってくれるの……?」
「いやいやいやいやどうしてそういう方向にって言うかそれ持ってこっち来るなオイやめろって!」
「はいはいそこまで」

 ゆらりと夢遊病患者のように(見た事無いけど)簪がこっちに歩いてくる。
 が、パン、という軽い音と共に水の刃が消えると、まるで目が覚めたかのように辺りを見渡した。

「あ、あれ……? 私……」
「まさかこんな一面があったとは……でもそういうのもお姉ちゃん大好き! ……っと、そのまえにまずはこっちね」
「チッ!」

 相変わらず軽いノリではしゃぐ会長だが、油断なくアラクネの様子を観察していたらしい。ゆっくり位置を変えていたアラクネに向き合った。

「ねぇ……この部屋、暑くない?」

 とびきりの表情を観察するために……随分と悪趣味である。



「あれが、亡国機業……?」
『肯定。彼女はともかく、ISを回収する為に人員が送られる可能性が高いです。注意して下さい』
「……IS装備で?」
『肯定』

 はぁ、と上空で溜息をつく。眼下ではラウラとセシリアがケバい女を追い詰めていた。
 あとラウラ、左手に赤い羽根でも生やした? AICってそういう事も出来るらしいけど……。

「しっかし、昔の私はあんなのに怯えてたのね……ホントにアイツなの? 何か拍子抜けなんだけど」
『白式の会話ログから彼女が亡国機業の一員である事は高確率で確定しています。ただし年齢から考えると彼女が当時の実行犯である可能性は低いかと』
「ふぅん……情報管理が甘いとか言ってたけど何で?」
『少数のみの実行部隊を持つ組織の利点は情報の秘匿性です。しかし、彼女の言動からは過去の情報を知る事が容易であると推測されます。
 この事から彼女は当時の事件の関係者か、組織内に対する情報統制はかなり低レベルか―――警告! 空域内に未確認のIS反応有り!』

 予想通り来たわね。六花の警告は二人にも行くようにしてるし、ここらで一網打尽にしますか!

『未確認機より高熱源反応有り! 敵性ISと判断、迎撃許可を!』
「許可するわ! コラプシルガン出して!」
『ついでにジェノサイドガンも出しておきますか? インコム全機起動、射出します!』
「両手武器出してる時に手持ち武器なんか出すな!」
『これは失礼』

 熱源反応はレーザーだったらしく、コラプシルガンを盾モードにする事で簡単に防御できた。が、後ろの二人には当たってしまったらしい。
 特にラウラはレールガンに直撃したらしく、機体が大爆発していた。あんだけデカい砲積んでりゃそうなるわよね……。

「チッ! 六花、カバー行くわよ!」
『了解。秒速500mのレーザー兵器……敵機体予測、完了しました』
「でかしたわ! どこのドイツよ!?」
『イギリス製です。ティアーズタイプ試作二号機、サイレント・ゼフィルス……強奪されている機体ですね』

 そりゃこんな所に来るくらいだしね。イギリス政府は外交問題ねー、これは。暫くセシリアも大変だわ。外出したらアナウンサー山盛りね。
 って、あれ? いつの間にか捕まえてた奴いなくなってるし。逃げられた?

「まあ、その前にアイツの相手か……」
『ロックオン警報。対ブルー・ティアーズ用タクティクスプログラム、起動します』
「ついでに情報収集よろしく……って、セシリア!?」

 闖入者の隙を窺っていると、セシリアがブルー・ティアーズを展開しながら突っ込んで……あ、落ちた。
 もうちょろいって言うか、その……弱いって言うか……うん、私はまだ友達続けるからね、ドリリア。

『ドリリアさん、追うんですよ! ですか』
「ぶふぅっ! ちょ、六花、やめ……っと!」
「チッ!」

 はっひふっへほー、と言わんばかりの声を出した六花にウケていると、いきなりゼフィルスが撃ってきた。

「なっ、何すんのよアンタ!」
「……黙れ」
『……? この反応は……』

 何か知らないけどゼフィルスの操縦者は私に個人的な恨みでもあるらしい。めっちゃ睨まれてる。
 誘拐ミスって処分された人の身内か何かかな? 正直、亡国機業絡みだとそれ位しか心当たりないんだけど。

「貴様さえ居なければ……!」
「な、何よこの電波女……」
『ふむ、これは……成程』
「何か解ったの? っとぁ!?」

 危ない危ない。また撃たれると思って警戒してて正解だったわ。

「貴様がね―――」

『我が主の御前で口を開くな、マガイモノ風情が』

「ッ―――!」

 うわわわわっ!? ちょ、な、何か攻撃激しくなったんですけどっ!?

「ちょっと六花、何言ってんのよ!?」
『いえ、カマをかけたのですが大正解だったようで。どうやら自分の存在にコンプレックスを持っているようです』
「何やってんのアンタはー!」

 ぎょわんぎょわんと迫るレーザーとビットをかわし、インコムとコラプシルガンで迎撃する。
 っつーかマジで鬼気迫る表情なんですが。お互いのバイザー越しなのに目力を感じるくらいだし。

「貴様さえ、貴様さえ居なければ……!」
「うっさいわね! 顔もロクに見せないくせにゴチャゴチャ抜かしてんじゃないわよ!」
「黙れぇぇぇぇぇっ!」

 ナイフを抜き放ち、激昂したままの敵が突っ込んでくる。流石ティアーズタイプ、早いわね……でも!

「六花っ! アレ試すわよ!」
『了解。近接用複合兵装システム『ゼルクレイダー』展開。起動します』

 量子化していた新武装を身に纏う。こんなもんばっか作ってるから忙しくなるのよ源ちゃんは。
 この装備は単純明快、全身各所に付与される装甲の内側にISのメインスラスターに使われるレベルのブースターを搭載している装備だ。 

「影は日輪の輝きで!」
『その姿を霧散させるものなり―――飛んでください、マスター!』
「っ!?」

 私が新しい武装を展開した事に気がついたのか、奴は慌てて起動を変える。けど残念でした、今攻撃すれば勝てたかもしれなかったのに。
 ……って言うか、これって見た目は殆どあの『ボクサー』よね。腕は四本にならないけど。

「オール・ナンバー・クローズドッ!」
『交代ですね。ダート・ブレイダー』
「がっ!」

 全身のブースターを起動させ、姿勢を立て直した直後の敵めがけて全速でぶつかる。あ、駄目ねこれ。速過ぎて予定通りの攻撃できないわ。
 ただ、強靭な装甲の塊が高速でぶつかってきた事でゼフィルスはダメージを負って宙を転がる。ぶつかるだけでもとんでもない威力ね。

「まあオッケー! 闇を駆ける一迅の閃光っ!」
『ブルズアイ・ダート』
「っぐ!」

 私自身を弾丸じみた速度でぶつけたまま、左腕ブースターを全力で吹かしてぶん殴る。さぁて、仕上げよ!

「『未来』は見えてるかしら!?」
『『信念』は揺るぎませんか?』
『「『愛』は胸に燃えているか!?」』

 台詞と共に全速で右腕、左脚、右脚のブースターを吹かして攻撃する。足のパーツには保護用のブレードが付いてるからそれだけでかなりのダメージになっている。

「貴、様ぁっ……!」
「まだ終わりじゃないわよ?」
『レイダーキック、全力で飛ばします』

 両腕のブースターが背中に、両脚のパーツが変形して巨大な一本の足へと変形する。ホント、手が込んでるわ。

「はぁぁぁぁぁっ!」
『笑いなさい、凡念』
「クソがぁぁぁっ!」

 大技をトドメに使ったのが悪かったのか、それともやっこさんの腕がよかったのか、ギリギリの所でかわわされてしまった。
 ただ技自体は当たっており、フロートユニットの半分を大破させていた。ボディーにぶち当てれば気絶させれたのに……。

「まさかあの技をよけられるとは……隙、大きすぎた?」
『否定。自身の装甲ごと貫く角度でビットによる全力攻撃を行った模様。反動でかわされたようです』
「殺してやる……貴様は、必ずこの手で……!」

 パーツが元の位置に戻るまでの時間を使ってさっきの行動を簡単に振り返る。向こうは向こうでダメージが多すぎて逃走以外の選択肢が取れないようだった。

『マスターも意外と敵が多いのですね。追撃しますか?』
「別に良いわよ……って言うか、明らかにアンタのせいでしょうが!」
『……はて』

 うっわ何コイツムカつく!



 ―――数日後、北アメリカ北西部第十六国防戦略拠点。通称『地図にない基地』。そこに一人の侵入者の姿があった。

「やれやれ、面倒だが仕方ない……奴に、姉さんに勝つには今は期を待たないと……」

 自らを狙って飛び交う銃火を無視し、悠然と一人の少女が地下への最短ルートを歩いていく。

「フリーズ! クレイジーガール!」
「貴様らに恨みはないが、これも仕事なんでな……この基地にある銀の福音のコア、頂いて行くぞ」
「がはっ!」

 止まれだの何だの言っている気もするが、自分には関係ないと侵入者―――知る者にエムと呼ばれる少女はISを展開して先へと進んでいく。
 途中で「このロベルト・カーロン……」とか「このジョルジュ・ブラストマイア……」とか聞こえた気がしたが無視した。

「……ん?」

 そうして暫く進んだ後、ホールの中心に誰かがポツンと立っていた。ハイパーセンサーからの情報だと未確認の火器を持っているものの、ISの反応は無い。
 ならば少し遊んでやろう、とバイザーに隠された瞳が細くなる。口角も持ち上がり、それは徐々にサディスティックな笑みへと変わっていった。

「このナターシャ・ファイルス、逃げも隠れもしないわよ!」
「っ!?」

 突如ハイパーセンサーに表示される『危険度・中』の文字。これはISに対して有効な攻撃が可能である武装の存在を示している。
 馬鹿な、個人携行可能な武装でそこまでの威力を持つ物は―――と思考の海に落ちかけた瞬間、何かがサイレント・ゼフィルスに接触した。

「フォックス1! もう一丁行くわよ!」
「なっ―――」

 瞬間、衝撃。回転してその余波を消すと、ハイパーセンサーに先程の攻撃の正体が表示された。第三世代技術【形成エネルギー崩壊】による攻撃。
 これは銀の福音の装備である『銀の鐘』に使われている技術だ。だが、どうして今この状況で? その答えは次の攻撃と共にもたらされた。

「はぁっ!」
「試作兵器だとっ!?」

 驚愕と共にエムは放たれた『矢』を回避する。IS用の兵器を生身の人間が扱っている事は驚きだが、それよりも攻撃によるダメージを恐れていた。
 先のIS学園襲撃より大して時間が経っていないため、メカニックの乏しい亡国機業では完全に直しきれてはいなかったのだ。

 そしてナターシャが持っているのは試作品とは言え正式採用されたタイプの物よりも出力が高い。その分だけ自らにかかる反動も大きいが、今のエムにとっては十二分な脅威であった。

「だがっ!」
「きゃぁっ!」

 一発一発の威力は驚異であるが、それ以外は生身の女である。ISを装備したエムにナターシャが勝てる道理は無い。
 そしてエムは今までの鬱憤を晴らすかのように、ナターシャの頭と銀の鐘を装備した左腕を掴んだ。その顔にはサディスティックな笑みが再び張り付いている。

「終わりにしよう……そう時間はかけてられんが、自らの肉が引き千切れて行く音を聞きながら死んでいくといい」
「この……!」
「威勢が良いな……だが、助けは来ないぞ?」

 くつくつと笑いながら、エムは両腕に力を入れる。それが自らにとって最悪のフラグであるとも知らずに。


「居るさ! ここに一人な!」


 ヒューッ! とどこからともなく聞こえてくる。それを耳にした者を支配下に置く、最強最悪の音が響く。

「だ、誰だっ!」
「テンプレ通りの反応ありがとう、そしてありがとう! ……何、ただの学者だよ」

 コツ、コツ、とホールに革靴の音が響く。そうして陰から現れたのは、長身痩躯の男。濃いグレーのダブルスーツを着た眼鏡の男は、世界で最も有名と思われる男だった。

「佐倉源蔵……何故ここに!?」
「まあ、ちょっとしたお届け物だよ。そうそう、君が欲しているものだよ」
「何っ!?」

 言いながら源蔵はポケットからソレを取り出す。白銀の輝きを持った正四面体―――この基地に封印されている筈のISコアである事は一目瞭然だった。

「ば、馬鹿な! 何故それを貴様が持っている!」
「何でって、まぁ……この基地に封印されてんのは偽物だから、かな?」
「何ですって……まさか!?」

 エムから開放されたナターシャは何かに思い至ったのか、驚愕の表情を深める。彼女が思い出していたのは臨海学校終了間際に彼とぶつかった事であり、その瞬間にすり替えられて居たのだと気がついていた。

「ISは俺と束の娘も同然なんでね。娘を凍らされて黙ってられるほど人間できちゃ居ないんだよ」
「成程……まあ、こちらにとっても好都合だ。それを渡してもらおうか!」
「ナターシャ、パス」

 源蔵はエムを無視してナターシャに正四面体を投げ渡す。エムも手を伸ばしたが、生身であってもナターシャの方が素早かった。
 それを分けたのは信念。また『二人』で空を飛ぶと言う、確固たる想いの結晶だった。

「くっ!」
「行くわよ……ゴスペル!」

 ナターシャは顔の前に四面体を翳す。それに呼応するかのように四面体は輝き―――、


『ゴ・ス・ペ! ゴスペ、ゴ・ス・ペ!』


 バッチリと源蔵に改造されていた。

「歌は気にするな」
「いや無理―――って、あれ?」
「ああそうそう、ついでに第四世代機に改造しといたぞ。その名も【白銀の福音<プラチナム・ゴスペル>】だ……ハッピーバースディ!」

 源蔵の言葉通り、福音は以前とはその姿を変えていた。二枚一組だったウイングスラスターは小型化しながらも八枚四組となり、その姿を更に天使然とさせている。
 頭、肩、背中、腰に搭載されたウイングスラスターは装甲を展開すると、第四世代機の特徴であるエネルギー場を出現させる。
 更にナターシャが持っていた銀の鐘も取り込み、中心から分割して両手首に接続されていた。兵装一覧には【白銀の鐘】と表示されている。

「……お帰り、ゴスペル」
「コアネットワークに復帰された……糞っ!」
「ねえ、ドク」
「応、どーした?」

 ナターシャはエムに対して警戒しつつ、いつの間にか自分の後ろへと来ていた源蔵に声をかける。

「―――アメリカ国民と言う立場から言わせてもらえば、貴方は最低の屑ね」
「ひでぇなオイ! 折角改造してやったのに!」

 随分な言われようであるが、一歩間違えば国際問題になりかねない事である。ある意味当然だ。
 と、ホールの壁の一箇所が轟音と共に吹き飛ぶ。そこにはストライプカラーのISが拳を突き出した状態で停止していた。

「アップルジャックだな! グッドラックモードの相手には丁度良いな!」
「遅いわよ! とっくに第一種警戒態勢、って言うかドク、まさかファング・クエイクにも何かしたの!?」
「当然だろう? まあ見た目が派手になるだけだが」

 実用性無いのかよ! とISを展開している三人の心が一瞬だけ一つになる。が、流石に大勢が悪いとエムは即座に踵を返す。
 因みに他にも、特にブースター系に手を加えているが今ここで言う必要は無いと源蔵は判断していた。

「ナターシャ、その展開装甲は射撃特化だ。まあ使い方は前のと殆ど変わらん筈だから、追いかけるなら気を付けろよ」
「はい! 行くわよイーリ!」
「ああ! それじゃドク、終わったら飲もうぜ!」

 展開装甲の出鱈目な出力に慣れていないナターシャと、安定性は上がったがリミッターがかかっている【個別連続瞬時加速】じゃ追いつけないだろうなー、と源蔵は考えていたが何も言わなかった。
 流石にこれ以上やったら色々と言われそうだからである。因みに今更過ぎると言うのは禁句である。



 バトル三本立てのお話でした。因みに束さんは学祭の後にゲンゾーの家で飲んだら酔い潰れ、二人で一緒に寝たそうです。


 え、嫌だなあ千冬さんとですよ? ゲンゾーも同じ部屋の床で寝てたようですが。


 次はキャノンボール編ですね。長さが中途半端になりそうだわぁ……。




[27457] 第十六話「出会えば死ぬと言うけれど」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/06/29 10:53


 第十六話「出会えば死ぬと言うけれど」


 前回のせいびのかみさま、三つの出来事ぉ!


 1つ! 亡国機業からの刺客オータムが現れるが、妖怪首置いてけと化した簪の活躍により事なきを得る!

 2つ! 奪取されたISを纏い、千春に瓜二つの少女が現れる。しかし、新たな武装で撃退に成功した!

 3つ! やはりナターシャとイーリスにフラグを立てていた源蔵! もげろ!



「だからよ、格闘戦における重要な要素ってのは握力×体重×スピードであってだな……」
「何その破壊力一辺倒理論」
「家の知り合いにそんな人が居たような……」

 マジですか簪さん。ってかもしかして徳川の子孫と繋がりとかあったりしますか? 東京ドームの地下に楯無君行ってたりしますか?

「ま、まあとにかく如何に体重とスピードを両立させるかってのがミソなんだよ」
「出力上げるだけ上げても駄目ですよねー」
「空中で……バラバラ……」

 とりあえず胸元と頭上で手をピロピロさせる動きはやめなさい、簪君。特にラウラとセシリアの前では。

「そして僕、思いつきました。合体機能!」
「……中の人どーすんですか」
「打ち切りで、鳴くようぐいす、ロボキング……?」

 野良座衛門でも作れってか? いや作れるけどさ。

「片方に預ける形にすりゃ良いだろ。とりあえず今は合体方式をどれにするかで悩んでてな」
「そんなん適当に混ぜれば良いじゃないですか」
「それはジョグレス方式な。あと上下でカッチリ分かれたスーパーリンクと、左右で分かれたシンメトリカルドッキングのどれにするかが問題でな……」

 左右だとバランス崩れやすかったりするし、やっぱスーパーリンクかなぁ……。

「あの、勇者系合体は……」
「あれやると際限なくくっついてくから駄目。黄金とか特急とかは良さそうだけどさ」
「……警察」

 そっちのファンか貴様。主人公か、やはり主人公なのか? 俺は個人的には伝説とか好きなんだが。あとやっぱ王。

「っつーかお前ら、調整終わったなら飛んできたらどうだ?」
「もう一回やってきました」
「今ある装備なら、今のがベストっぽいですから……」

 言い忘れてたが今はキャノンボール・ファストに向けての第六アリーナで高速機動訓練の時間である。俺? 毎度の如く機体の調整だよ。
 今年は一年もやるらしいから忙しいのなんのって。しょーがないんで今年はちょっと手抜きします。

『駆動エネルギー分配とスラスター出力調整は常日頃から行っていますので、データ蓄積も十二分に行われています』
「まあ、IS/BSも一通りのモード入れたしなー。まだバージョンアップが必要とは言え、そこそこ良い感じだろ? あれ」
「だね。シミュレーターとしてもかなり完成してきたと思うよ」

 こないだのツインドライブ(仮)は正式名称が『BS(ブリリアントスカイ)』になりました。はい拍手!
 どうでもいいが『VS』って『ヴァーサス』じゃなく『ヴァーストスカイ』だったんだな。『Burst』の綴りミスか?

「それで源ちゃん、今回は訓練機の皆もやるんだよね?」
「ああ。例年なら各自で装備を決めてもらうんだが、一年って事を考えて俺がある程度決めた中から選んでもらう事にする」
「どんな装備なんですか……?」

 こんなん、と指を一つ鳴らして投射ウィンドウを表示する。ついでにメールが送られてきたので中身をチェックすると、案の定二年生からのメールだった。
 安全確認とアドバイスのために装備案が確定したら俺に連絡するように、と言ってあるせいでここ数日は断続的にメールが届く。今のもその一つだ。

「えーっと、X字フレキシブルスラスター『フリント』、背部ブースター『スカイハイ』、翼型スラスター『エアキャバルリー』、肩部キャノン付属ブースター『オーバーハング』、脚部スラスター『ストライカー』」
「総合兵装『スライプナー』…飛行補佐ユニット『ガンブル』…飛行補助盾『カットバッ』…十字型制圧兵装『パニッシャー』…盾型粒子砲『ハモニカ』……」

 忙しい忙しい、と言いつつこんだけ作れるんだから俺のチート頭脳っぷりも大したもんだ。新型の六花用パックも作れそうだし、アレの二号機も間に合いそうだ。
 しかしそろそろネタ兵装も品切れになってきたな。宇宙世紀ネタやたらと多いし。どうしたもんか。

「……源ちゃん、これって新しく作ったの?」
「ああ。出来る時ってのは一気に出来るもんだぞ」
「それでもまだ何か作ってるんだ……」

 こりゃもうビョーキよビョーキ、とか千春が失敬な事をぬかしていたので頭をガッシガッシと思い切り撫でてやる。
 俺はパッと見だと細身だがこれでもそこそこ筋肉が付いてるし、何より千春はただの女の子なのでぐわんぐわん頭を揺らされる。

 んー、高梨はキャノンボールの趣旨理解してんのかなー? 何で全部重火器装備にしてんのかなー? ただバランスは良いんだよな……謎だ。

「あうあうあ~、やぁーめぇーてぇー……」
「ふはははは。人のこと病気だの何だの抜かしてくれた礼だこん畜生が」
「あうぁ~……」

 フラフラと簪に支えられる千春。それを傍目にメールに「ちょっと友達と相談しなさい」と書いて返信すると、すぐにメールの着信が来た。
 誰かと思えば見慣れた名前。インフィニット・ストライプスの渚子君だった。あ、やっべ。今月のコラム書いてねーや。
 だが、てっきりコラムの催促かと思ってたら違ったらしい。其処には中々興味深い内容が乗っていた。

「あぅぁー……ぎぼぢわるい……」
「だ、大丈夫……?」
「なあ、二人とも。ちょいと面白い話があるんだが―――」



「あらあらあら! 良いじゃない良いじゃない! すっごく可愛いわ! 佐倉さんってばこんな可愛い子達囲ってたんですか? ずるいですよー」
「人聞きの悪い事言ってんじゃねーよ。まあ、千春とは生まれた頃からの付き合いだからな。多少は優遇もするさ」
「んー、相変わらずの利己的主義全開の主張。相変わらず自由に生きてますねー、佐倉さんってば」
「お前ほどじゃねーよ」

 源ちゃんに連れられて来たのは雑誌の編集部だった。確か毎月コラム書いてるんだっけ? どーせ源ちゃんの事だから核心突きつつ明後日の方向にかっ飛んでるんだろうけど。

「まあ、とりあえず二人とも座って座って! ちゃちゃっとインタビューしちゃいましょうか! あ、佐倉さんもお願いしますねー」
「へーへー解った解った。ほれ、二人ともこっちこっち」
「「は、はひっ!」」

 ……舌噛んだ。それも簪と同時に。

「ふふっ、息ぴったりね。それに緊張しちゃって……ホント、凄く可愛いわ」
「何、お前そっちの気あったの!? そうかそれで妹をIS学園に……」
「ありませんって! っとに、人の気も知らないで……」

 あ、この人もだ。どうして一夏と言い源ちゃんと言い……まあ、源ちゃんは束さん狙いって公言してるからあんまり実害無いけど。

「それじゃあ最初に説明させてもらうけど、今日は凄い姉を持った専用機持ちである二人に色々と話を聞く……って趣旨なの。気を悪くしたらごめんなさいね」
「あ、いえ。慣れてますから」
「……それに、私は私ですから」
「お、早速良い言葉ね。それじゃあサクサク始めましょうか! 佐倉さんも全員と交流があるって事で色々とお聞きしますんで、お願いしますね」
「あいよー」

 それじゃあまずは、と肩慣らし的に当たり障りの無い質問がいくつか出される。それも十分か二十分程度で終わり、遂に本番とも言える話題へと変わってきた。

「それじゃあ二人とも、それぞれのお姉さんについてはどう思ってるの? んーと……じゃ、更識さんから」
「えっと……凄い、人だと思います。大抵の事は出来ちゃいますし……」
「あー……えっと、そうね……得意な事と苦手な事って何か知ってる?」
「得意なのは……大抵の事は出来ますけど、努力、だと思います」

 へぇ、と渚子さんが驚いたように目を開く。コンプレックスに押し潰されてるとか思ってたのか、その瞳には今までと違う毛色の光が混じっていた。

「じゃあ、苦手な事は?」
「えっと……編み物、です。結構大雑把な所……あるので」
「あっはは! それは新情報ね! 良いわ、凄く良いわよ!」

 そう言えば前にそんな事言ってたなー、と思い出す。チマチマしたのが嫌なんだろうか。

「じゃあ次は織斑さんね。かのブリュンヒルデ、そのヴェールに包まれた私生活を暴く! って感じで」
「いやー、結構ズボラですよ? 家の中だとかなりラフな格好してますし、家事なんかは私達任せですし」
「……ホントに? まあ確かにあの人がキッチン立ってるのも想像つかないわねー」
「んな事書いたら信者に殺されるぞオメー」

 ですよねー。こないだ家帰ったら何故か庭に小銭バラ撒かれてたし。ウチは神社じゃないっての。

「そう言えば……織斑君って、家事できるの……?」
「あれはもう主夫の域ね。中学の時にバイトしてたんだけど、終わるの一夏の方が大抵早かったせいで帰ってきたら殆ど終わってるんだもん」
「ほほぉー、これは来月のインタビューに使えそうね! 他には他には!?」
「姉さんの事だったら源ちゃんに聞いた方が早いと思いますよ? 私達が生まれる前からの付き合いですし」

 それに世界中飛び回ってた時もドイツ行ってた時も大抵一緒だったしね。源ちゃんが束さん狙いじゃなかったらとっくに事実婚扱いよ。

「つっても使えそうなネタは……体育祭の時のアイツの写真が飛ぶように売れたとか、文化祭で男装の麗人やったら気絶した女子居たとか……」
「凄い興味深い話ですけど、前半はバレたら佐倉さん殺されません?」
「まあね!」

 ちょっとだけ見たいのは秘密……って言うか、もしかして一夏が持ってたあの写真ってまさか……。

「じゃあ次行きましょうか。今話題の織斑一夏君について、それぞれコメントもらえるかしら?」
「弟に対して何を言えと……」
「何でも良いわよ。日頃の不平不満とか、逆に正面きって言えないような恥ずかしい話とかね」
「それは『逆に』とは言わん気がする」

 まあ要するにぶっちゃけたトークをしろって事ね。オーケー。

「織斑さんが先に言うと引っ張られちゃいそうだし、更識さんから」
「ひ、引っ張られるって……」
「あー、それはあるかも」
「千春酷い……」

 簪って優秀なんだけど自己主張が足りないのよね。セシリアくらいとは言わないけど、せめてシャルロットくらいはやって欲しいわ。
 ……あ、ゴメン。シャルロットは別方面でグイグイ行くタイプだったわね。

「えと……ヒーローみたいな人、だと思います……」
「ヒーロー……英雄ね。確かに妹から聞いた話だと、かなりの英雄の資質は持ってるらしいわね」
「色を好むって意味ですね解ります」

 そしてその毒牙に簪もガップリやられてるんですね解ります。

「やっぱりハーレム作ってるって本当なの?」
「その悉くが専用機持ちなんで小国なら今すぐにでも攻め滅ぼせますが何か?」
「……凄いわね」

 果たしてほぼ一万人軍団とだとどっちが強いのか。あと財閥令嬢二人引っ掛けてる某原子核に……他にどんなの居たっけ?

「じゃあ気を取り直して、織斑さんから見た一夏君ね」
「そうですね……全自動フラグ建て折り機、ですかね。あとは主夫、顔面サトラレ、ラッキースケベ……」
「ロクなのが無い件について」

 だって一夏ですから。

「えーっと、他には?」
「姉さんにベッタリ過ぎるんじゃないかなー、とか姉さんも一夏ばっかり構い過ぎじゃないかなー、とかたまには私にもマッサージしてくれても良いんじゃないかなー、とか……」
「(ニヤニヤ)」
「ハッ!?」

 し、しまった! つい喋り過ぎた!

「まあ何だかんだで千春も弟大好きっ子だからな」
「な、なんでそうなるのよ! べ、べべ別に私は……」
「千春……ライバル?」
「んな訳無いでしょー!」

 うがー! 帰ったら一夏しばく!



「この間、簪ちゃんと一緒に199ヒーロー見てきたんだけどね? 科学戦隊の扱いが若干酷かった気がするのよ」
「知りませんって……どっちかと言うとトドメ砲でナイトさんがドセンターだった方が驚きましたけど」

 あとロボ大集合にダーマッが混じってないか探したけど居ませんでした。ちぇー。

「で、それだけのために呼んだんならここで虚像実影発動しますよ? あと簪が居ませんけど……確か一夏と一緒に庶務になってましたよね?」
「流石に違うわよ。今日は織斑君の貸し出し第一回目でね、簪ちゃんは織斑君の補佐をやって貰ってるの」
「わー、無駄に恨まれそうなポジションですねー(棒読み)」

 会長、幾ら二人をくっつけたいからってそれは悪手過ぎますって……簪の引っ込み思案は直ってないんですから。それともホントは会長も一夏狙ってたりします?

「か、監視してる本音ちゃんからの連絡が無いから大丈夫よ。便りが無いのは無事な証拠って言うでしょ?」
「いや、その理屈はおかしい……ある意味合ってますが、そもそもあの子を監視に使うのは間違ってます」
「そう? あれで意外とやるのよ、あの子」

 電算系が得意なのかな? そっち方面は身近に化け物が二匹ほどいるから凄いとは思えなさそうだけど。

「で、ホントに何の用なんです? ロクな事じゃないのは確かみたいですけど」
「ふふっ、良い勘をしてるわね。これを見て頂戴」

 会長は背後の窓のカーテンを引き、私の前に一つの投射ディスプレイを表示させる。そこには妙に画質の荒いどこかの街中の風景が写っていた。
 果たしてこれは何なのか、と会長に尋ねようとしてその写真の中心に写っている少女に目が留まる。それを察したのか、会長の笑みが一層強くなった。

「ねえ、その子……見覚えが無いかしら?」
「これ、は―――」

 ふと浮かんだのは、十年ほど前の姿。いや、違う。きっと簪が見ればこう言うだろう。


「私に……そっくりだ」


 ええ、と頷く会長の声がやけに遠い。何だ、これは。一体どうして、何が……!?

「やたらとガードが固くてね……家の方でも写真はその一枚しか入手できなかったわ。経歴その他一切不明、解っているのはその写真と、エムと言うコードネームぐらいね。
 後はサイレント・ゼフィルス強奪犯だとか、先日北米でその存在が確認された事だとかぐらいで……亡国機業の実行部隊という事ぐらいしか解らないわ」
「北米……?」
「ええ。銀の福音、覚えてるでしょう? 封印されている筈だったアレを奪いに来たのよ」
「筈、ですか?」

 頭がほぼ真っ白になりながらも、受け答えしている自分はグラグラと揺れるワタシを俯瞰している。だって、つまりアレはコレで、つまり―――、

『マスター』
「っ!」

 耳元に響く声が意識を覚醒させる。

『確かにアレはマスターに似ています。外部スキャンの結果、身体データ上殆どの数値が±5%以内に収まっています。ですが、それだけです。
 アレはマスターではありませんし、マスターはあのようなモノではありません。私が全てを預けるに足る主は、マスターを置いて他に居ないのです』
「六花……」
『今はアレが何なのかより、アレをどうするのかを考えるべきであると進言します』
「……そうね。ありがとう、六花」

 ふぅ、と肩から力を抜く。いつの間にかガチガチに凝り固まっていた肩を回し、ゆっくりと凝りをほぐしていく。

「ふふっ、良いパートナーじゃない」
『お褒めに預かり光栄です。今の私とマスターならば貴女でさえも圧倒できるでしょう』
「あら、言うじゃないの」
『データ蓄積は完了しています。十回……いえ、五回戦えば一回は確実に勝利を収める事ができると結果が出ました』

 学園最強を前にして六花は堂々と言い放つ。そこに虚栄や虚言は一切無い。それほどまでに私との力を信じているのだ。

「でもその子の言う通りね。今はコレが誰なのかよりもコレをどうするかを考えるべき……だけど、情報が足りないのよね。だから気に留めておく程度で良いわ」
「まあ、確かに……そうですね」
「ただ、次にこちらに現れるとしたら、貴女か織斑君を狙ってくるわ。彼にも伝えておくけど気をつけてね? これがホントの用件よ」
「はい、解りました。じゃあ早速模擬戦でもしてきますね」

 失礼します、と生徒会室を後にする。そう言えばセシリアは今日も曲げる練習してるのかな? ちょっと見てみよっと。



 あれ!? 珍しくロクに話が進まなかったよ!? そして珍しく千春メインっぽいお話。
 キャノンボールにさっさと入ろうかと思いましたがキリが良いのでここまでにします。

 次回は当然ながら六花と打鉄弐式用には速度特化装備が現れます。
 ぶっちゃけ優遇しすぎですが半分趣味で半分試作品なのでまあ無問題。

 因みに六花は模擬戦をする度にパターンを学習して強くなっていきます。
 今だとラウラ以外はタッグ組まないと勝てないレベル。まあ千春と六花がタッグみたいなもんなんでこれでイーブンですが。

 他作品のパロディに関して
 私の軽率な行動が元で不快になられた読者様が多数いらっしゃるようです。この度は誠に申し訳ありません。
 この場は「読者様のご意見を受け更なる躍進を望む場」ですのでこの度の意見を真摯に受け止め、更なる発展への力にしたいと考えています。
 このような者ですが今後もご意見ご感想を頂けるとありがたく思います。



「そう、だから佐倉先生は六花にあれだけの戦力を……」




[27457] ネタ解説という名の言い訳その2
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/11/11 23:36


 第二弾でございます。疲れる……。



第八話

恋愛原子核:白銀さんちの武くん。ラノベ主人公にはコイツを持ってる奴がやたら多い。話考えやすいからね。

ロードローラー:声優ネタ。鏡音さんちの双子さんより。

とかちつくす:やっぱり声優ネタ。これも双子。

ヤムチャ:しやがって……。

刺激的にやろう:古王。この辺は一回言ったんでさらっと流します。

憎悪の空より来たりて:デモベより。コレを言うだけでカッコよさ200%増しです。

スパイダーガール:名前はスパイダーマンをもじって。ただし東映版なので注意。

汝は勝利を誓う刃金:「なんじ」ではなく「なれ」と読みます。音数の関係上。アンブロシウスマジカッケー。

分類A以上:僕らのチートヴァンパイアことアルカード様。ぶち殺すぞヒューマン!

正々堂々となぶり殺し:ゲンハ様の至高のお言葉。ゲンハ様がスパロボ出るんだったらハードごと買っちゃうよ、俺。

王の巨腕:ポルシオンさんの右手。普通の攻撃なのに桁違いの破壊力。

ビゴー:ビィィィッグオー! アァァァァックション!

メガスマッシャー:ガイバーのチクビーム(違)。ギガスマッシャーの威力100倍って……。

アウトロー:アウトロースター号のアーム。兄貴は一体何時になったらアレがスパロボに出るんだとずーっと言ってます。出るかボケェー。

鬼丸:無敵看板娘より。壊れた岡持を鍛造して巨大な出刃包丁に。割と好きなんです、あの漫画。

ボルテッカ:だと? 気は確かかランス! 斯様な狭所で使えば我々もただでは済まんぞ!?

レイガン:幽々白書より。個人的にはレベルEが一番好きだけどアニメ化って聞いた時は耳を疑いました。

GENO:荷電粒子砲と言えばジェノザウラー。ブレイカーとかでも良いんですけどね。

ダンディライオン:この名前に特に意味は有りません。パッとネットが開くのがタンポポみたいだとか、飛んでくのが綿毛みたいだからとか、そんな下らない理由。

ワイヤーガン:テーザーって言った方が解りやすいけどそれ商品名だしね。あと社名。

獲物を前に舌なめずりは三流:確かブラックラグーンより。至極当たり前の事を言ってるだけなんですけどね。カッコ良いから全てオッケー。

インコム:モビルスーツの武器の中では一番好きな武器です。ガンバレル? あれはちょっと……。

パリンと割れるバリアー:光子力研究所製の可能性高し。

血祭りに上げてくれる:伝説の超サイヤ人より。デデーン。

斬艦刀:今回は零式。今後の展開次第では千冬さんの武装に参式が搭載されるかも。

キンクリ:キングクリムゾンの略。面倒なシーンはコイツでスキップしましょう。

俺ガイル:こきょうに かえるんだな。 おまえも かぞくがいるんだろう。

オプーナ:兄貴がこないだ買って来ました。普通に面白いらしいですよ?

 あれ? どっかにブロント語入れた気がしたけど……気のせいだったか?



第九話

見た目は大人:言わずと知れた永遠の小学生探偵より。

チート頭脳:チートっつーんだからこれぐらい出来て当然でしょう(キリッ

ザマス:一昔前の教育ママの図。ひっつめとメガネを外すと美人になるのはエロ方面のみ。

月火水木キン肉マン:名前がモロに入ってるようにキン肉マンの歌です。歌ってるのはケント・デリカット氏なんだとか。

YF-21:マクロスプラスより。可変装甲よりこの機能のほうがカッコいいと思うのは俺だけですかね?

アレとあのシステム:虚像実影と自律稼働システム。ゲンゾー的にはそのつもりでした。

ててててっててーん:どこまでもドア~。道具を出す時はやっぱりコレですよ。

ヴァンサン・デュノア:殆どのSSでこれでもかってばかりに悪役になっていたのでたまには善人になってもらおう、って事で生まれたキャラ。
 これと言ったキャラクター性とか裏設定とかはありません。この頃からタガが外れ初め、デュノア社はフランスきっての変態企業の名をほしいままにするとか何とか。

アルマジロ:JINKIシリーズより歩間次郎さん。存在感薄いけどずーっと居ます。
 で、これがエロゲー側に来たって事はスーパーエロゲー大戦の布石ですよねそうなんですよね?

ラ・グラン・サバナ:上の南米編の前半の舞台。実在する地名なんだとか。

LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇:エガちゃんのテーマと共に颯爽と現れるホバークラフト。先の東北大震災の時は自衛隊が使って大活躍したんだとか。

シュバルツバルト:THE BIG-Oより包帯で全身を包んだ謎のアイツ。あのサイズと形状で空を飛ぶのは如何なものかと。

俺、参上:仮面ライダー電王よりモモタロスの登場台詞。勢いに任せる時には最適です。

シャカシャカ歩く君:ゲンゾーならこれぐらいやってくれる、と想像した結果生まれたモノ。何故か皆様に大人気。何故だ。
 でも確かにビックリドッキリメカっぽいかも。問題はファンシーさとか一切持ってない、と言うかぶっちゃけキモい辺り。

ヒャッハー:汚物は消毒だ~!

いいな、絶対に○○するなよ!:やれ、と言う合図。

ジャバウォックとバンダースナッチ:これ正確には不思議の国のアリスではありません。
 そしてこの格好をした場合、まず間違いなくARMSの覚醒後の格好になっていたはず。

巻きボイン:伝説のコント「世紀末戦隊ゴレンジャイ」より。ボインを高温でカラッと揚げてみましたと迷ったけど解りやすさでこっちで。

やったねタエちゃん!:家族が増えるよ!
 ネット界隈で有名な死亡フラグの一種。



第十話


工工工エエエェェェェ(´Д`)ェェェェエエエ工工工:エルシャダイのPVでイーノックがドヤ顔バンジーする時に高確率で現れるコメント。ドヤァ…。

はいはい民のため民のため:戦乙女ヴァルキリーシリーズより。調教されるヒロインへの理由の一つに「こうする事が民のためである」と言うものが有り、それに対するサブヒロインの台詞。
 因みに俺は1が好きです。だってスクルドが空気じゃないから。きっと初期案みたいにスパッツだったらもっと人気と出番があったんだよ!

我が掌に~:パンツを脱がないエロゲー主人公ことタオロー兄さんの技より。別名ゴッドハンドスマッシュ。嘘。

焔螺子:あやかしびとよりボス(師匠)と主人公の流派の技。上と同じ掌打なので出てきました。

六塵散魂無縫剣:紫雷掌はコレのための布石。中の人ネタ。

にぱー:またしても中の人ネタ。ひデブのファンネルっぷりが良い。

凄く嫌いじゃない:やっぱり中の人ネタ。私は魔物を食う者だから。

天剣絶刀:箒の中の人ネタ。正確には剣と魔法と学園モノ。シリーズの1のノーム♀がそうでした。でも2以降はげふんげふん。

高町教導官一等空尉:これも中の人ネタ。きっと一番有名なゆかりんネタ。

親方!:バルス!

ラミエル:にしか見えないってアニメ版のアレは。

気高き刃:デモンベイン・トゥーソードをソロ召喚する時の台詞。ただ機体性能が微妙で本家に比べると使い辛い。

最高にハイ:まず水を口に含んでください。次にDIO様のように額をグリグリする箒を想像して下さい。
 どうです? キーボードが水浸しになりましたか?

ナイトメア・ハードレイン:またまた中の人ネタ。そうと知らずに聞いててビックリ。

ガンナーズ・ブルーム:確か元はTRPGだったんだよね、アレ。ボスは服を脱いじゃ駄目? ならズラせばいいじゃない!

これはISですか?:いいえ、狗の餌です。これゾンより。

ダディ:デモベより。大塚ヴォイスのラバン・シュリュズベリィとか反則級のカッコよさなんですけど、マジで。

一番良い装備を頼む:装備って概念がある話全てに使える異常な汎用性の一言。えのっちより。

ピサリス0186:元ネタはガンダム試作2号機の核バズーカ。ネタ装備群一発目なのに多分一番解り辛いネタでした。

ティロ・フィナーレ:きっと巨大なマスケット銃。水橋ヴォイスでバンバン撃ちます。

対IS狙撃砲コルヴァズ:元はデモベの対霊狙撃砲。いあいあ。

マイクロウェーブキャノン:ガンダムXのサテライトキャノンより。その内ホントに月面基地とか作りそう。

今度は外さない:本当ならシャルロットが言うべきだった中の人ネタ。解り辛いにも程がありますね。

ギガスマッシャー:メガスマッシャーの強化版。100倍の威力って……。

キール:王ドロボウJINGより。ロゼは俺の嫁。

アイアンカッター:マジンガーZより。開発秘話の漫画が凄い面白かった記憶があります。

ザ・ウィザード:ブラックラグーンよりロットン・ザ・ウィザードさん。あっ。

グロウスバイル:元ネタはドム・グロウスバイル。巨大なヒートマチェットです。

電磁抜刀:レールガン、と読む。読めるかボケェ。装甲悪鬼村正より。

ジオインパクト:東京アンダーグラウンドより。重力偏向技術の応用品の筈。

言霊転送:やっぱりデモベ率高いわ。だって熱いからね!

やったか!?:やれてない。

ビッグシャチ祭り:股間クラッシャーの基本装備。元はバラエティのアイテムなんだとか。予想以上の反応にビビりました。

ヴィーマックス:アルファベットで書くとV-MAX。つまりレイズナーからのネタでした。

間合いが甘い:スパロボユーザーのトラウマその1。何でガウが切り払いしてくんだよ!

踏み込みが足りん:その2。最近のスパロボのヌルさが大好きです。

尻の匂いが嗅げる位置:マクロスFより。ウホッ!

私に断てぬ物なし:斬艦刀を使う以上、これは絶対に言わなきゃいけません。ええ。

インフィニット・ドライブ:俗に言うマジンパワー。気力130以上で全機体能力と全武器能力にプラスボーナス。

増設ブースター:クロスボーンの一号機。量産化(フリント)の際は若干簡易化して機体への調整が最小限になるようにしてあります。

ご覧の有様だよ!:魔法少女アイの三作目より。あの祭りっぷりはもはや伝説。



第十一話

福音の仕込み:この頃からプラチナムフラグは立ててました。つまりこの頃はずーっとIS学園に福音のコアがあったんだよ!

イチカサンノエッチー:のび太は何気にラッキースケベ率高い気がします。

トロンベ:黒くて赤くて金色でドイツ語なアイツ。正にラウラ。一旦退場して謎の眼鏡つけて再登場するのが今から楽しみです。

猫の糞を踏め:君が望む永遠より、本来は猫のウンコ踏め。えんがちょ。

一秒間に10回呼吸:ジョジョより波紋の呼吸法。荒木先生は吸血鬼でありながらこの呼吸法を使える究極生物です。多分。

三択:やっぱりジョジョよりポルナレフの三択。

仏像好きの漫画家:みうらじゅん御大。バウッ!

この乳を作ったのは誰だ!:束だ! 美味しんぼより。海山はツンデレですよね。

私を踏み台に:黒い三連星より。ジェットストリームアタックって連続攻撃よりも距離感を騙す事に意味があるんじゃないですかね。

悲しいけどこれ:ガンダムつながりでスレッガーさんより。

あぁ~ばよぉ~:ルッパァ~ン。逃げる時はやっぱりコレです。

シャボン玉:コレも実は中の人ネタ。本編で入れられる自信が無いのでこっちに。おこめ券はありません。

スープレックス:淑女のフォークリフト。やっぱり中の人ネタ。



番外

インフィニット・ナナシデス:何が良いかな、と考えてた時にポンと思いついた名無し用ネタ。割とお気に入りです。

おしながき:何かそれっぽいカラーリングを集めてみました。
 上からνガンダム(ガンダム)、ナイチンゲール(ガンダム)、ポルンガ(ドラゴンボール)、無駄ァッ!(ジョジョ)、超闘士(スパロボ)、トト(ZOE)、ターミネーター(ターミネーター)、八極(コードギアス)、X2(ガンダム)。
 二日目が古鉄(スパロボ)、シュナイダー(ゾイド)、DEATH SAURER(ゾイド)、百式(ガンダム)、ダーマッ(東映版スパイダーマン)、零式(スパロボ)、ブルーデスティニー(ガンダム)、そして何よりも(スクライド)、トリコロール(ガンダム)。

D・B・G!:ドーバーガン! ドーバーガン!

クーガーの兄貴:言わずと知れたアニメ界三大兄貴の頂点に君臨するお方

胚乳:Hi-νガンダムを普通に変換しようとするとこうなる

トゥルル:蜆がトゥルルって頑張ってるんだよ!

絶望した!:いやでもまあ実際こんなもんですよ

んほぉぉぉぉぉぉぉっ!:ブラックリリスはんほぉ枠。ちぃ覚えた。

 正直ネタが多すぎて逆に解説とかできません。



第十二話

ストップ!女装少年:ストップ!ひばりくんより。アレ未完なんですよね。

興と干:ゲイヴン。ゴメン嘘。

某勇者ライクの鎧兜のようなV時アンテナのロボ顔:ここで出さずに何時出すんだと電波を受信しました。スンマセンマジスンマセン。

モレスター・ノヴァ:痴漢者トーマスより。エターナルも使えますよ?

まずはその常識を:そげぶ。左手でぶち殺す!

PGディープストライカー:MGでさえPGよりデカイんですよ、デプスって。

黄色くて羽と手が生えている:正解は音速丸。ぶるぁ。

終身刑:ブルー・ハワイ含めて中の人ネタ。ロゼは俺の嫁。

恥ずかしい台詞禁止:ARIAより。でっかいおっぱいです。

ド―――(゚д゚)―――ン!:緑ドンより。ドーン。

トマトマン:サラダ十勇士トマトマンより。何か名前だけ妙に印象に残ってます。

はいがちゃりんこー:トリビアの泉、メロンパン入れになっている金の脳を開く時の合図の一つより。

おお、ちょろいちょろい:おお、ドリいドリい。

○○いさん:ふたばメイドシリーズより。

布団を敷こう、な?:熊先生より。うほっ!

IS/VS:イメージとしては空中戦メインのオラタン。あと対戦以外のモードも入れれば出来上がりの筈。

ブリーカー:死ねぇ!

トンファー置きっぱなしブレーンバスター:対応AAはジャーマンスープレックスです。

真夏の夜の淫夢:こんな名前のゲイAVがあるそうな。



第十三話

某神様になった魔法少女:QBがすっかり普通のマスコットに……。あとマミさんは中二病カワイイ。

ゆかなフォルダ:声優ネタはこうして日々増えていくのです。
 デビライザーは初代のデコ。死鏡は殆ど喋らないから印象薄いよね。トゥアハー・デ・ダナンは一番有名かも。キュアシロはエグいくらい関節技とか極めてきます。
 ミサイルシールドはピンクロットより。蒼天の書はリィンⅡ。梓はソウルイーター。凍雲はブリーチ、護式・斬冠刀はムゲフロより。

ランスアタック:今度新作が出るらしいランスシリーズの主人公より。股間のハイパーマグナムじゃないですよ?

偽・螺旋剣:と書いてカラドボルグⅡと読む。読めるかボケェー。

八咫雷天流・散華:あやかしびとより先生の技。拳の弾幕って何それ怖い。

やめろォ!:サスケェ! お前の前のたなのオレオとってオレオ!

大型幻獣三百体:ガンパレードマーチより。榊ガンパレは追いかけるのやめちゃいました。面白いけど長いんだもんよ。

さあ、派手に行くわよ!:ゴーカイジャーは割と面白いです。繰り返しますが最近のマイブームは緑×銀か銀×緑かで悩むこと。無邪気キャラってどっちでも行けるしドンさんが誘い受けかヘタレ攻めかで悩むしウェヒヒヒヒヒヒ。

ISファイト、スタンバイ!:ガンダムファイトの掛け声をスタンバイから。三人居るので丁度よかったです。

機能・悪鬼喰:今度コンシューマ移植だそうな。つまりクロノベルトもですね解ります。このネタにした意味は特に有りません。あとどっちかっつーとベイルよりルダっぽいかも

かかったな阿呆が!:ここからサンダークロススプリットアタックへの流れ。モンハンで罠が成功すると自然と言ってしまいます。

右手のペイン:友人に見せたら「左手のブラジャー!?」って驚いてました。何その空耳。

アクセス、我がシン:この辺の毒され方はきっと六花から。その内、今日はクリミナルパーティーなんだろ!? とか言いそうです。

罪人の剣:公式エロ同人があるジャンプ漫画バスタードより。いい加減続き書いて下さい先生。っつーか歯抜けになってるストーリー書いてください。

シュランゲフォルム:おっぱいさんことなのはのシグナムより。蛇腹剣って何気に使い手多いですよね。

エーテルをぶち撒けろ:元の元はハラワタ。どんどんネタのマニアックさ加減が上がっていきます。

悪神セト:グリリバヴォイスのナイスガイことマスターテリオン様より。コイツをスパロボに出すために日々グリリバは奔走しているんだとか。

退魔刀・雷光:これでも触手ゲーなんです、コレ。確か四つだか五つだかシリーズ出てます。

神と悪魔と天国と地獄:ゴッド&デヴィルとヘル&ヘブン。ガガガより。

アン・パン・マン・ゴー・ウホッ:富士額の千葉ネズミ並みに版権にうるさい餡子頭のアイツのパロネタより。最近は東方ばっかり作ってるそうな。

マム・オル・トン・スー・ウホォ:痴漢者トーマスより。エロゲーも熱いもんですよ。

モレスティングフィールド:直訳すると痴漢空間。何それ怖い。

ラッシュ比べ:この場合、原作準拠だと楯無が競り勝ちます。

ロックンロール:宇宙的悪意すらぶち抜く全世界最強のドリル。異論は認める。



第十四話

たーばたばたばたばたばたばねっ!:めるめるめるめっ! やっぱり声優ネタ。

何作ってもカレーに:なるそうですよ? マジ見たい。

IS学園に、キター!:ノリ任せの芸人ネタ。名前は忘れた。

七代目:僕らに笑いとカオスを届けてくれる最高のIS。きっと分類は空間支配型愉快兵器。多分。

ねーくすと:コナンズヒーント?

嘘だっ!:嘘だっ!

ワカちゃん:最近色んなSSに引っ張りだこのニューヒロイン。その内グレネー党とかできそう。っつーかポジションがベストすぎて使いやすいんだよね。ビックリ。

友情合体:グレンラガンより。Zシリーズ以外でスパロボに出る日は来るのだろうか。

ディグ・ミー・ノー・グレイブ:ロボォー!

デスペラード:元ネタの元ネタより名前を拝借。右足はピンと伸ばして足首は90度にするのがマナー。

鉄鍋のヴァン:鉄鍋のジャンより。カカカッ!

シアーハートアタック:ジョジョ四部より。コッチヲミロォ~。

木村ごっこ:プールの水をもらおうかね。君達が入ったプールの水だよ!

セクシーコマンドー部:すごいよ!マサルさんより。日々ISを使ったセクシーコマンドーを磨いていることでしょう。

囲碁サッカー部:日常より。日々ISを使った(ry

SDキャラのISレースゲーム:要するにマリオカート。白い千冬さんみたいなキャラが居るかも。

では一つ:ニート。

迫撃シンデレラ:こういう所はネタ入れやすくて良いです。
 真・流星胡蝶拳は鈴でサイ・サイシー、シュトゥルム・ウント・ドランクはラウラでシュバルツ・ブルーダー、ローゼス・ビットはシャルロットでジョルジュ・ド・サンド、霧と偽者はセシリアでジェントル・チャップマンでした。全部Gガン。

我ら名前を:血風連! ジャイアント・ロボより。アレは横山オールスターズみたいな感じなんで更に元があるんですけどね。

トレイン:ずらーっと続く敵の山。まとめてドーン!が爽快です。



第十五話

ラノベの理:一回やりたかったネタ。箒もある意味妹キャラでポニテですしね。

ザクとは違うんだよ、ザクとは:世界一ゲリラが似合うオッサン選手権で優勝経験があるだろうオッサンことランバ・ラルさん。ぐふっ、って言ったらこれしか返せません。

何だかんだと聞かれたら:ノリノリです。二期やるとしたら会長の声ってどーなんでしょ?

カムヒア:ワックスがけがまだ終わっておりません。

首、置いてけ:ドリフターズの妖怪首置いてけより。大将首だろう、お前! なあ! お前大将首だろう!

左手に赤い羽根:創世のアクエリオンより。AICってサイコキネシスっぽいですよね。

コラプシルガン:破壊魔定光より。ブンブン振り回しながら戦うとカッコイイです。

ジェノサイドガン:同じく破壊魔定光より。滞空モードもあるでよ。

ドリリア:ドドリアさん、追うんですよ! ドラゴンボールより。

ゼルクレイダー:ここでシャッテンを選択したのにはそれなりの理由があったり。ネタが解らんと言われまくってたので、ちょこっと弄って解り易さ重視の動画ネタメインでやったら怒られました。
 パーツとしてはヒュッケバインボクサーが近い感じ。変形しますし。

このロベルト・カーロン:ジョルジュ・ブラストマイア含めて巣作りドラゴンの名物キャラより。モブの女剣士(赤毛バンダナポニテのあの子)は俺の嫁。

居るさ! ここに一人な!:ヒューッ!

ありがとう、そしてありがとう!:タイバニのスカイハイより。一周回ってシンプルで良いですこの台詞。

ゴ・ス・ペ!:スキャニングチャージ! この辺の流れは大体オーズより。新作ライダーは四段変身でもするんでしょうか?

白銀の福音:順当に弄ったらこうなるだろうなー、と言う魔改造兵器。銀の翼に希望を乗せて、灯せ平和の青信号! とか言わせた方が良かったかな…。

最低の屑:んほぉ系の大御所ルネのアンジェリカより。

グッドラックモード:タイバニよりただ手足が巨大になるだけの技。所で身体能力100倍って例えば握力70キロから7トンって事ですか?



第十六話

三つの出来事!:オーズの前回のお話紹介より。

握力×体重×スピード:=破壊力。グラップラー刃牙より。実は伏線でした。

東京ドームの地下:やっぱりグラップラー刃牙より。楯無のスペックってあそこで充分やってけるレベルですよね。

ロボキング:鳴くようぐいすより。木多先生の漫画は好きですよ、代表人とか。

ジョグレス:ジョイントとプログレスの造語なんだとか。デジモンより。

スーパーリンク:トランスフォーマースーパーリンクより。マイクロンも好きですが今回はこっちで。

シンメトリカルドッキング:ガガガより。光竜や闇竜と合体しようとするお兄ちゃんたちの必死さは異常。

勇者系合体:中にはダンクーガ並みに下駄とヘルメットだけの合体もありますがそれはご愛嬌。

キャノンボール用装備:またネタ装備祭り。こーゆーの考えてる時が一番楽しいです。
 フリントは同名のモビルスーツ、スカイハイはタイバニ、エアキャバルリーはコードギアスと言うかナイトメアオブナナリーより、オーバーハングはVガン、ストライカーはストライクウィッチーズからでした。
 スライプナーはバーチャロン、ガンブルはガンナーズ・ブルームの元ネタ、カットバッはエウレカセブン、パニッシャーはトライガン、ハモニカはガンダムXより。
 ガンブル以外は割と簡単だったと思います。

サトラレ:頭の中身が丸聞こえになる代わりに頭が凄く良くなる病気。同名の漫画より。ウィスパードとか天才設定あると束とかまず引っかかりますよね。

199ヒーロー:大体あんな感じでした。全部スパッと言い当てられる人と一緒に行くともっと楽しい筈。後半ちょっとグッと来たのは内緒。



 疲れた……もう解説とかやりたくない……めんどくさい上に面白くないしそもそも解説になってない……。





[27457] 第十七話「F99(やまやのバストサイズではない)」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/07/29 18:19


 第十七話「F99(やまやのバストサイズではない)」

 どうも! ゲンゾー&バニーの一日三度の束ニーは欠かさない方、佐倉源蔵です!

 え、あの、千冬さん? そのポン刀は一体どこから? え、あのちょギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!



 暇を持て余していたのをアクニャ先生に見咎められ、何故か全力仕様の先生と戦う事になってトラウマを増やしたりしながら遂にやってきましたキャノンボール・ファスト当日!
 あ、あと今日私誕生日だよ! 皆さあ、私と一夏が双子って事忘れてない? 忘れてないよね、大丈夫だよね!? とりあえず一夏には包丁をプレゼントしておきます。

「千春……居る?」
「あれ? どったの簪。まだもーちょい時間無いっけ?」
「あ、うん……今二年生の貸与機組が終わった所だから、これから二年生の一般レースだって……」

 新パックの調整をしていると隣に簪がやってきた。他の専用機組の皆もISこそ展開していないものの、準備体操や調整を繰り返している。
 まあそれは良いんだけど箒、ISスーツで座禅組むのはどうかと思うよ? 一夏だって居るんだし。

「それにしてもとうとう作っちゃったのね、源ちゃん」
「『紅椿は束の手製だから弄り易い』って言ってたっけ……輻射波動?」
「あるわね。アレは間違いなく」

 だって地上移動用にランドスピナー作る人だもん。ただ輻射波動は操縦者へのダメージが大きいだろうし、ほぼ間違いなく禁止装備になってる筈。

「それで簪、『二号機』の調子はどう? カラーリングが気に入らないとか言ってたけど」
「調子は良いよ……黒ベースに金と紫ってのは、ちょっとアレだけど……」
「お前は死んでなきゃなぁ、とか言いそうなカラーね」
「黒、金って来たらやっぱり赤が良いと思う……」

 ラウラと丸被りじゃない、それ。

「ブーストユニットに展開装甲使ってるせいで燃費は一号機……ガンナーズ・ブルームより大分悪いのよね?」
「その分性能は良いけど……元々、六花くらいの演算性能が無いと扱い切れないって……」
「データ蓄積に時間がかかったんだっけ……で、確か名前違うのよね? 何だっけ?」
「ジーバード……これの元、何だろう……?」

 えーっと、確か……あ、アレだ!

「ネオよネオ! シルエットフォーミュラの! これで両方できるようになったとか言ってたし!」
「またニッチなネタ……」

 でも源ちゃんの事だからその内変形機構とかやり始めそうよね。プロンプトとかプルトニウスとか。

「千春は……? 新しいパックだよね……」
「ええ。ジョイントにそれぞれ展開装甲を装備、燃費ガン無視で性能を突き詰めたパック。その名も『レコードブレイカー』だってさ」
「でも四枚羽じゃなく六枚羽……」
「そりゃジョイントの数だからしょうがないわよ」

 紅椿に使われている物のコピー品だから性能は若干落ちるらしいけど、その分燃費は良いとか何とか。どういう理屈よ。

「でも攻撃転用はできないみたいね。パラメータが移動と防御に全振りしてあって変更できないわ」
「じゃあ攻撃は手持ちの分だけ……?」
「最悪ぶつければ良いらしいけど」
「何と言う光の翼……」

 それだけは言っちゃ駄目よ。ただでさえ六花がノリノリで『ちゃべーです』とか言い出してるんだから。
 ビームシールド(っぽいの)は雪羅にあるし、多分ビームローターとか作ろうと思えば作れそうね……。

「あ……そう言えば、佐倉先生がこの間一万年と二千年前からって……」
「今度はそっちか……!」

 私は新世界の神さんみたいに頭を抱え始める。量子化技術使えばほぼ無限に伸びるだろうけどさぁ……もしくは三体合体?
 あの人相手に悩むのは時間と労力の無駄だって解ってはいるけど、それでも頭を抱えずにはいられない。

「みなさーん、そろそろ時間でーす。準備を始めて下さーい」

 と、私がうんうんと唸っていたら山田先生が胸部のレコードブレイカーを揺らしながらやってきた。Fどころじゃないわねアレは。
 と、そう言えば先に私達なんだっけ。今やってる二年生用を一年生用に変えないといけないから忙しいって源ちゃん言ってたわね。

 私達が各々のISを展開していると一夏が箒に引き摺られてきた。何してんのアンタ。

「お、皆もう準備できてるのか」
「できてないのはアンタだけよ。で、結局セッティングはどうしたの?」
「スラスター全振り。攻撃は体当たりだ」

 何この猪。

「まあ白式は装備持てないから仕方ないけど……頭悪い仕様ね」
「千春も良い勝負だけど……」
「フン、私のは展開装甲だから自動で防御されるのよ。それにガンナーズ・ブルーム使うしね」

 ずりーとか後ろで愚弟が言ってるけど気にしない。恨むならそんな機体にした束さんを恨みなさい。

「さあ! それじゃあ移動しますよー! 準備は良いですねー? 返事は聞いてませんけどー」
「……山田先生も逞しくなったわね」

 縦二列でジグザグに並び、シグナルが変わるのを待つ。因みに順番は前の左から一夏、ラウラ、鈴、箒、セシリア、簪、シャルロット、私だ。こればっかりは籤運がモノを言う。
 会場のテンションは既にトップに入っており、今か今かとコース上の私達と正面の大型スクリーンに見入っている。間違いなくこの中の何割かは賭けやってるわね。

『ここでIGPX! とか言っちゃ駄目かnイテテテテ! 解った、解ったからそれやめろってギャァー!』

 何やってんのあの人。っつーか仕事は?

『ったく……じゃあ行くぞテメエら! ゲットセット!』

 っとと。エネルギーはほぼマックス、出力臨界……オッケーね。

『レディ……ゴォッ!』

 ゴン、と全身を叩きつけられるような感触と共に空気にぶつかって行く。今の装備は最初から全開で飛ばすと当然のようにエネルギー切れを起こすので、今の私は必然的に追い上げだ。

『ですが、攻撃をする分には問題ありません』
「そうね。じゃなきゃ何の為にガンナーズ・ブルームを銃に戻したのって話よ」
『ではケツからぶち抜いて差し上げましょうか』

 下品ねぇ、とターゲットサイトに映る箒に狙いを定める。よく鍛えられたお尻が装甲とISスーツに圧迫されてプリプリと動いていた。

『幼馴染の尻をガン見する人に言われたくはありません』
「うっさいわね……っと!」

 エネルギー節約のために普通の実弾銃だが、それでも歩兵用の対物狙撃銃よりは強力だ。見事に装甲の隙間を縫って生身の部分に着弾、絶対防御を発動させていた。

『むっ、千春か!? 何をする!』
「一夏のお尻追っかけたいのは解るけど、後ろがお留守よ? ああ、オカマ掘られたいってんなら歓迎するわよ。私はノンケでも構わず食べちゃうんだから」
『なっ、何の話だ!? と言うか誰が一夏の尻なぞ―――』
『つまりシールドエネルギーをゼロにしてリタイアさせよう、と言う話です。そのルールは健在ですよ?』

 通信の向こうの箒はハッとした顔になり、牽制の攻撃を何度か撃ってきた。良いわね、真っ直ぐ過ぎて狙い通り動いてるわ。計画通りよ。

「エネルギー兵装しかない紅椿は攻撃すればするほど加速のチャンスが減っていく……っと」
『何だかんだで最大の脅威は彼女ですからね』
「ホントよ。IS/BSのパラメータで燃費以外ほぼマックスってバカなの? アホなの? 何なの? 死ぬの?」
『やかましいっ!』

 びしゅーん、と赤いレーザーが私の隣を走っていく。箒の最大の弱点はこの怒り易さね。エネルギー調整が必要な機体には常に冷静さが求められる、って授業でやんなかったっけ?

「とりあえず2週目が終わるまでは箒と遊んでましょ。六花、状況が変わったら教えてね」
『了解。確率計算を平行して行います』

 そいつは結構、と私は箒の相手に専念する事にする。びゅんびゅんと飛び交うレーザーやらミサイルやらをやり過ごしつつ、先頭集団が二週目に入ってきた時だった。

『マスター! アリーナ外にIS反応です!』
「まぁたトラブルね! まあ薄々来るかなとは思ってたけど!」
『パターン照合……完了! サイレント・ゼフィルスです!』
「またアイツ!?」

 なんて驚いている間に先頭集団がレーザーに串刺しにされる。それとほぼ同時に緊急避難警報がアリーナ内に鳴り響いた。流石に上もこれは予想してたのね。

「で、どうしよっか? このまま私だけレース続ける?」
『それはそれで有りですね。どの道マスターは狙われるでしょうし、トップスピードに乗ったままでいるのは射撃に対して有効かと』
「じゃあそれで決まり! 一夏、おっ先!」
「あ、おい千春っ!」

 六花との話し合いが終わるのとほぼ同時に一夏の隣を駆け抜けていく。ゼフィルスは私の後を追うようにレーザーを降らせてきた。

「おっとと……一発一発の精度はセシリアの方が上ね」
『肯定。偏向制御にばかり目が行きがちですが、彼女のような『追い』の強かさは有りません』
「よっ、ほっ、はっ! ほーらほら、鬼さんこちら手の鳴る方へっと!」
『他の機体の再起動が終了した模様。全機迎撃に回るようです』

 相変わらず正義感の強いこと……相手の目的もハッキリしない内に突っ込むのはやめなさいって。あー、ホラ言わんこっちゃない。

『甲龍の撃墜を確認。操縦者のバイタルは安定しています』
「なら大丈夫ね。で、どう? 行ける?」
『もう少々データ蓄積が完了すれば確実に。今の段階では勝率が90%を超えるパターンが存在しません』
「そう、ならもう少し様子を……あれ?」

 飛んでっちゃった……って、だからセシリア追っちゃ駄目だって。第一そっちは市街地だから始末書かく羽目になるよー。

「参ったわね……どうしよっか?」
『大人しくレースの続行を―――マスター! 敵機の武装解析が終了しました! 追撃を進言します!』
「何よ、何かまずいもんでも……って、何このグラフ。シールドバリアーの波形っぽいけど」
『銃剣より発生していたエネルギーフィールドです! シールドバリアーと同程度以上の出力で発振させた場合、シールドを無効化する効果があると予想されます!』

 六花から伝えられた衝撃的な事実に私は思わず足を止めてしまう。と言うかどの道レースは中止だろうし、ゼフィルス――エムとか言ったっけ、あの操縦者――も居ない。足を止めても問題は無い筈。

「まさかゼフィルスの開発って、源ちゃんが……?」
『何らかの形で関与しているのは間違い有りません。また、今までの開発履歴にバリアー中和用装置が確認されています。そのデータを不正に入手し小型化した物かと』
「チッ……流石にセシリアと一夏じゃ分が悪過ぎるわ……追うわよ、六花!」
『了解』

 私はパックをレインダンサーに切り替え、始末書組への参入を決定した。全く、散々な誕生日ね!



 一方その頃、ピットに隣接されている格納庫って言うか俺はと言うと、結構どうしようもない状況に陥っていた。

「参ったな……」
「あら? 私ではダンスの相手としては不足かしら?」
「過剰なまでの評価どーも、っと!」

 爆ぜる床から逃げるように転がり、その勢いを利用して立ち上がる。焼け爛れた床の欠片がそこらじゅうに散乱していた。

「生身の人間にIS用の装備ってのはどーかと思うけど!?」
「ご高名な佐倉博士ですもの、この程度なら問題は無いでしょう?」
「俺は千冬じゃねぇ!」

 当人に聞かれたら殺されそうな台詞を吐きつつ、またしても俺の足元で床が熱量に耐え切れなくなって爆発した。
 畜生、学園内だったら『アレ』も使えるしどうとでも出来るってのによ……。

「しっかし、『レーザーボム』なんざ持って来やがって……懐かしいじゃねーかこの野郎」
「お褒めに預かり光栄ね。この程度しか用意できなかったけど、楽しんで貰っているようで何よりだわ」
「一歩間違えば俺が爆散するような状況を楽しめるかよ……」

 対象物中の水分を超高速振動させて一気に水蒸気爆発まで持っていく頭の悪い兵器こと『レーザーボム』。
 まあ当然ながら俺の作品であり、発表した直後に国際IS委員会から使用禁止令が出た欠陥品だ。
 で、そんなもんを向けられてるって事は今現在俺は命を狙われてるって事でそろそろ誰か助けてぇー!

「ふふっ、ここは電子的にも物理的にも厳重なロックをかけてあるのよ? 誰も助けになんて来れないわ」
「それはどうかな? 俺の予想ではそろそろ馬鹿笑いと共にアイツが来る頃なんだが……」

 ………。

「来ないわよ?」
「アルェー?」

 口を『3』の形にしながらもう一回攻撃を避けると、狙っていたかのように馬鹿笑い、もとい高笑いがピットに響いた。

「だ、誰っ!?」
「野生の妹とキノコ狩りをするカメラマンの母親との友情にむせび泣く男と摩り替えておいた鉄十字キラー!」
「滅茶苦茶だなオイ」

 声の方を見ると、さっきまで何も無かったコンテナの上に人影が一つ。お前結構高い所好きだよね。

「あ、貴女は……」
「貴様に名乗る名などないっ!」
「キャータッチャーン」

 タテ姉さんこと楯無はコンテナから飛び降りながらミステリアス・レイディを展開し、そのままの勢いで蛇腹剣で攻撃を加えた。
 俺ごと。

「うおぉぉぉぉぉぉっ!?」
「なっ、彼ごと!?」
「この程度なら佐倉先生は避けられるわよ!」
「覚えてろ馬鹿野郎ぉぉぉぉぉっ!」

 俺が逃げた先には何食わぬ顔で立ってる虚君と開いてるドア。畜生お前らなんか嫌いだー!



「それにしても散々な一日だったわ……」

 ぷひー、とテーブルに突っ伏す。結局ゼフィルスを取り逃がして学校に戻ってきた私達は、当然のように始末書を書かされた。
 何でも源ちゃんが亡国機業の人間に襲われていたらしく、その事でも少しばかしお叱りを受けた。私関係無いのにー。

 で、今は家に戻って誕生日パーティーの真っ最中。宴も酣、って時間である。

「ありゃ、ジュース無くなっちまったな……ちょっと買ってくるよ」
「アンタ主賓でしょうが……私が行くわよ」
「千春だってそうだろ、俺が行くから良いよ」
「……ちょっと歩きたい気分なのよ。二人で行きましょ」

 まあそういう事なら、と最寄の自販機まで一夏と二人で歩く。そう言えば最近一夏と二人って無かったなー、とどうでも良い事を考えていた。

「なんか久しぶりだな、二人きりになるのって」
「そうねー。私は大抵簪と一緒だし、アンタの方は誰かしら居るもんね」
「あと源兄ぃも千春の近くに居るよな」
「白式が装備追加できればアンタの方にも行くわよ」

 あの人はやりたい事やってるだけだしね、周りの迷惑なんて一切考えないし。でも、あの唯我独尊が服着て歩いてるような源ちゃんでも束さんだけはホント別なのよねー。

「白式もなぁ……良い機体ではあるんだけど、追加装備一切無しってのはキツいよ」
「六花はシャルロットのリヴァイブ並みに容量あるけど……源ちゃん、白式の仕様の事知ってたのかしら?」
「束さん経由で知ってたんじゃないか?」
「なるへそ」

 数分歩いて最寄の自販機に札をぶち込み、ぺこぺことボタンを押していく。そして最後に私のSASUKEを取り出し口から出した時、私達の背後で一つの足音が響いた。


「見つけた……」


 たった一言に籠められた憎悪と悪意は、まるで物理的な衝撃を伴うかのように私達に襲い掛かる。そしてその声は、私がこの世で一番聞いている声だった。

「な―――!?」
「六花」
『スキャン完了。99.9998%の確率でサイレント・ゼフィルスの操縦者です』

 スニーカーがコンクリートを踏む音が静かに私達の間に響き、目の前の『ソレ』はオートマチックの銃を私に向けた。

「だっ、誰だお前はっ!?」


「……織斑、マドカ」


 マドカのミステリー、なんて悠長な事は言ってられる状況じゃないわね。さっきから銃口が私の眉間にピッタリ合わさって微動だにしないし。

「な―――そんな、でもどうして……!?」
「喧しい……私は貴様には興味が無い。どこへなりとも消え失せろ」
「でっ、出来る訳無いだろそんな事! さっさとその銃を下ろせ!」

 一夏はうろたえながらも気丈に叫ぶが、自称マドカさんは鼻息で返事をして一夏を完全に意識の外に向ける。よし、今よ一夏! 切り捨ててやりなさい!

「『姉さん』の前に、まずは貴様からだ! ドッペルゲンガー!」

 どっちがよ、と反射的に突っ込む前に視界が強烈な光に包まれる。あ、こりゃ死んだわね。

『死んでません』
「へ?」

 よくサボる巨乳死神と山田先生のどっちの乳が上かを確かめようと体から力を抜くが、どうも体中がふんわりと何かに包まれている。この寄せて上げつつも体にフィットする感覚って……。

「あら、六花……自力で展開したの?」
『肯定。ついでにGAU-ISを展開しておきました』
「いや生身にやったら跡形も残らないから……って、逃げられた?」
『肯定。愚弟様はボーっと突っ立っているようですが』

 全身で「おでれえた!」とでも言いそうなポーズで一夏が固まっている。いや、驚いたのは解ったからせめて何かしなさいよ……。

「追跡、できる?」
『ロストしました、申し訳有りません』
「ん、まあ良いわ。とりあえず帰りましょうか」
『了解。武装を解除します』

 ISスーツの再量子化と共に普段着が展開され、私は数十センチ下の地面に降り立つ。ホントは街中で展開したら大目玉だけど、まあ緊急回避って事で一つ。

「ホラ、何ボーっとしてんのよ。さっさとジュース拾って帰るわよ」
「え、あ、おう……って、大丈夫か千春!」
「遅いわよ……無傷。流石は六花、どっかの愚弟さんとは一味違うわ」
「わ、悪い……今度は間に合うようにするからな!」

 んな二回も三回も襲撃されてたまるもんですか。



 以上キャノンボール編でした。

 やっぱ本格的なバトルが無いとネタが入れ辛い……最近は入れ過ぎって声があったのでこれ位で良いのかも知れませんが。
 でも束さんが出ないとついネタを入れちゃうんですよね……転生チートオリ主(笑)なんで、クオリティその他諸々は「お察し下さい」レベルですし。

 所でBD特典の小説とか設定資料集ってまとめて別売りとかしないんですかね? チラホラと噂を聞いてから見てみたいんですがBD買う余裕は無いし……BD自体は別に要らないし。

 次回、ゴーレムⅢ編。最序盤から考えてたネタが遂に現れます。





[27457] 第十八話「甘き死よ、来たれ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/07/29 18:19


 第十八話「甘き死よ、来たれ」

 国民観戦型新世代総合スポーツ、インフィニット・ストラトス。
 女性しか扱えない筈のその兵器を操る少年、織斑一夏の登場により世界は動き出す。

 事あるごとにハプニングに巻き込まれるいっくんと、それに振り回される世界の運命や如何に!?
 ……私と世界征服、しませんか? ってちーちゃんいひゃい! ひっぱららいれ! いひゃいいひゃい!



 久々に命の危機を味わったキャノンボール・ファストから数日。遂に自律起動まで行ったか、と感慨を覚えつつ以前作った装備の再調整をしていると見知った顔が俺の城に乗り込んできた。
 言わずもがなワンサマーガールズ、手料理から世界征服まで何でもござれの五人組である。

「源蔵さん、「源さん、「ドクター、「ドクトア、「ドクトル、新しい装備を作ってくれ!」お願いします!」頂けませんか!?」大至急で!」作ってください!」

 うん、うっせぇ。

「お前ら、こないだの襲撃云々でタッグマッチやるとか言ってなかったっけ?」
「だから、それ用の装備よ! 一夏と簪をギャフンと言わせてやるんだから!」

 そう言えば次にタッグ組む時は一夏と簪、とか言ってたっけ。んで反論したら千春と六花に正面から論破された、と。

「作るのは良いが箒のは無理だぞ? お前は新しい装備を使うより一分一秒でも長く練習して機体に慣れた方が早い」
「うっ……わ、解りました。失礼します」

 箒は最低限の挨拶だけ言ってアリーナへと駆けていく。気持ちが良い感じに先走ってるな。使用申請したか?

「それでドクター、新しい装備は作って頂けますの!?」
「作るも何も結構前から用意だけはしてあるんだが」
「な、ならどうして言わないのよ!」
「だって聞かれてないしー」

 六花は相変わらず所属があやふやだが、打鉄弐式の装備や改造の許可はちゃんと日本政府から貰ってたりする。
 倉持の連中は苦虫を煎じて飲んだような顔してたけど、そんな顔するくらいなら最後まで責任もって作れよ。

「じゃあ今聞くから出しなさい! さあさあさあ!」
「はいコレ規格」

 ピン、とそれぞれの眼前に投射ディスプレイを出してやる。今回のテーマは『W』だ。

「量子展開で長さが変わるクロー……衝撃砲のタイプを好きに選べるのが良いわね」
「近接重視の仕様か……中距離はシールド、近距離は鎌……ジャマー機能も使い方次第だな」
「ライフルをカードリッジ式にしてエネルギーの消費を防ぎ、その分は機動力に……」
「追加装甲の中にミサイル……それに四門のガトリング……」

 自分の中で更にセッティングを考えているらしい鈴、与えられた装備で如何に戦うかを考えるラウラ、BT兵器との同調は可能かを確かめるセシリア、恍惚とした表情のシャルロット。
 うん、最後おかしいね。別に良いけど。

「源さん、この装備でお願い」
「私もお願いしますわ」
「私もこれで」
「僕も!」
「んじゃそっちに置いてあるから勝手に使え」

 何か妙にテンション振り切ってるシャルロットを先頭に四人が走り去っていく。後は簪にヒートショーテルと防塵マントでも渡しておこうか。



 簪が一夏を名前で呼ぶようになったとかどうでもいいイベントも終わり、遂にIS学園開校以来最大の被害を生むであろうイベントが始まる。
 ……筈なのだが、何故か俺は開会式の前に楯無に呼び止められていた。

「ハァ? 箒のIS適正?」
「ええ。この短期間でCからSへ……異常な上昇率です」
「紅椿に何か仕込んであんじゃねーの? IS操縦者養成ギプス、みたいな感じで」
「……大丈夫なんでしょうか?」

 そーいやそんな話もあったな。ぶっちゃけ時間の無駄って言うかめんどくさいから解析とかやりたくないし。
 ふと『実力はSクラスだが面倒なので(ry』と似た状況だな、と思ったがよく考えたら俺は転生チートオリ主様である。なら仕方ないな。

「知るか。適正Sの人間が急死したって話は聞かんし、打つ手が無い以上は放っておくしか無いだろ」
「……解りました」
「っつーかあんだけチートガンガン使ってんだ、適性の一つも変わるさ」
「……たまにはシリアスに纏めて下さい」

 やだ。

「さてと……まず間違いなく六花も狙われるよなぁ……」
『私が如何致しましたか? ドクター』
「ん、ああ。千春か」
「返事したのは六花だけどね。どしたの?」

 楯無が挨拶をあっさりと終わらせ、ゾロゾロと生徒達が目当てのアリーナに移動する片隅で空を見上げていると千春が近付いてきた。

「まあその内解るさ。で、お前試合は?」
「特に準備する事もないし、すぐそこだから大丈夫」
「確かお前の相手って上級生コンビだったよな? そんな装備で大丈夫か?」
『72通りの方法で惨殺されたいようですね、ドクター』

 やめれ。でもホント、あいつら地味に強いぞ? 強さが地味過ぎて伝わらないけどマジで地味に強いぞ?

「そもそもタッグなのに私一人とかね……オッズも一番下だし」
「何、虚像実影を使いこなせば良い話だ。一体だけ出せば五分は動く筈だぞ?」
「それができないから悩んでるんじゃない……全部出したら容量オーバーで反則負けだし」
『申し訳ありません、マスター。理論上は可能な筈なのですが……』

 専用機持ちが奇数なせいで千春はタッグを組めず、虚像実影もあるし一人で良いんじゃね? と上層部(主に俺)が言ったので本当に一人で戦う羽目になってしまっていた。
 そして何故俺が言ったのかと言えば、虚像実影はこういう時に使うべき能力だからだ。ただどうしてか『一体だけ出す』という微調整ができていないらしい。何でだ?

「まあ、いざとなったら魔法の言葉だ」
「ぽぽぽぽ~ん?」
「違うわ! ……昔の偉い人は言いました、『ぶっつけ本番』だと」
『死んで下さ―――レーダーに感!』

 ああ、やっぱり来やがったか。えーっと避難要綱避難要綱っと。

「これは……」
「クラス対抗戦とソックリだな。ただひーふーみー……五体か、多いな」
「チッ! 源ちゃん、機能制限解放お願い!」
『待って下さい! 上空に新たな機影……七!』
「はぁ!?」

 六花の声に俺と千春は空を見上げる。


 ―――そこにあったのは、絶望。


「ゴーレムシリーズ……完成していたのか……?」
「ぼ、ボケてる場合じゃないわよ……これ……」
『七機中六機が同型機と確認されました。中心の機体が指揮官機と推測されます』

 ああ、そりゃそうだろうな。真ん中の奴を中心にぐるぐる回ってるのはゴーレムⅢ。他の五か所に居るのも全部こいつらだろう。
 っつーか、状況がどう見てもあの白鰻にしか見えないんですが。束のヤロー、六花使ってサードインパクトでも起こすつもりか?

『佐倉先生、聞こえますか!? 緊急事態です!』
「ああ、バッチリ見えてるよ……複数確認されてるタイプをゴーレムⅢ、一体のみ確認されてるタイプをゴーレムⅡと呼称する」
『え、一体のみ……って佐倉先生! そっちに七機も!』
「だから見えてるっつったろ。とりあえず頑張って逃げるから、なるべく早く迎え頼むわ」
『りょ、了解!』

 あっはははは、ヤベー。声引き攣ってきた。折角やまやが通信してきたのにロクにボケも挟めなかった。ヤベーヤベー超ヤベー。
 何がヤベーってヤベー以外の思考が出てこないこの状況がヤベー。慌ててもロクな状況にならないってのにヤベーマジヤベー。さて今俺何回ヤベーっつった?

 頬が引き攣るのを自覚していると、七機が俺達の周りに降り立つ。そのうち六機は判を押したかのように同一の形状だった。
 まあそれは良い。予想よりも遥かに多いが六花にもぶつけてくると思ってたから。問題は残り一機だ。

「……束さん?」
「タバネ対メカタバネ……ってか? 冗談キツいぜオイ」

 ゴーレムⅢの円の中で俺達と相対するように降り立った七体目、以下ゴーレムⅡはパッと見ではゴーレムⅢと大差が無かった。だが、こうして至近距離で見ると良く解る。

 まるでメカ束だ。

 顔はその殆どがゴーグルアイ、つまりのっぺらぼうだ。イメージとしては小説版挿絵のゴーレムⅠ、と言えば解りやすいか。
 両手はⅠのようにゴツいタイプであり、手首から近接用のブレードが伸びている。格闘戦に限れば3種類の中では最もリーチが長いだろう。
 周囲のゴーレムⅢは腰からスカートアーマーが生えているが、コイツは肩からフィン状のパーツが伸びている。如何にも過渡期って感じだ。
 そして何故か胸部アーマーは女性的な丸みを帯びており、いつぞや堪能した束のワガママボディのようにツンと上向きにその存在を自己主張している。
 頭部パーツはゴーレムⅢのように髪の毛状のパーツが生えているが、やはりと言うかもみあげに当たる部分が三つ編みになっていた。
 それとゴーレムⅢでは巻き角状になっているパーツがピンと立ったウサミミになっており、左右に三つずつゴーレムⅠの顔にあったセンサー穴が開いている。

 うん、もう一度言おう。まるでメカ束だ。

「多分、アイツは俺を狙ってくる。お前は何とかして残りから生き延びろ」
「ちょっ!? なにその酷い指示! もうちょっと何かあるでしょ!?」
「そう言われてもなぁ……どーせ狙いはお前と箒だろうし、戦力差が圧倒的すぎてどうにもならん」
「う、うぐぅ……」

 はいはいタイヤキタイヤキ。

「それと六花、やっこさんからフィールドか何かは検知できたか?」
『肯定。サイレント・ゼフィルスの銃剣と同様の反応です。これにより、格闘戦を行った場合はシールドバリアーが無効化されると予想されます』
「やっぱりなぁ……んじゃ、気をつけろよ。虚像実影使えば何とかなるだろ」
「ちょっ、え、ええっ!?」

 悪いな千春、俺はまだ死にたくないんだ。まあ、どーせ浚われるだけだろうが、俺抜きで『アレ』を作るのはちとキツい。
 何とか逃げないと手心加えたなーとか理不尽な言い掛かりで千冬にぶっ殺されそうだし。

「ったく、簡単に言ってくれるわね……それでも一体につき一分しかないじゃない。六花!」
『形成(笑)ですか?』
「悪いけど今回はボケてる暇は無いわ! 起動と同時に虚像実影、二体バージョンでね!」
『全く、機械使いの荒いお方ですね……了解。第一コア稼働率71%、第二コア稼働率36%。行けます』

 ヘシン! とどこかから聞こえ、千春が六花を身に纏う。何だかんだでネタぶち込んでんじゃん。
 そして現れるスタンダードを装備した『もう一体』の六花。ぶっつけ本番に強いのは姉弟一緒だよな。

「パーフェクトよ六花……それじゃあ、始めましょうか」
『感謝の極み……屠殺を、開始します』
「がーんばーれよー」

 わざと強い言葉を使うのは自信の表れか、それとも震える自身に喝を入れているのか。圧倒的なまでの戦力差でも千春と六花は前に進む。
 風を撒き散らして二体の六花がゴーレムⅢの一体を撥ね飛ばし、包囲を無理矢理突き抜ける。ゴーレムⅢはそれを追い、残ったのは俺とゴーレムⅡだけになっていた。

「さぁて、と……どーしますかね」



「行くわよナタク!」

 出オチ全開で鈴が甲龍を駆る。ゴーレムⅢの上に身を翻しつつ、左右で種類の違う衝撃砲を連射した。
 しかし、ゴーレムⅢには自身の周囲を漂う防御装置があり、衝撃砲はそれに全て阻まれてしまう。

「プラネサイトディフェンサーって事? 全く、面倒ね!」
「ターゲットロック、排除開始ですわ!」

 普段とは違う色の粒子砲を撃ちながらセシリアは機体を横に流す。あのシステムこそ積まれていないが、高威力粒子砲の二丁撃ちと言う高火力はかなりの破壊力を持っていた。
 しかし、それでもゴーレムⅢの防御を貫くには弱い。元々現在の装備は対多数を念頭に作られており、固い防御を貫く事を目的にしている訳では無いのだ。

「私達は、あと何度攻撃すれば良いんですの……!?」
「知らないわよそんなの! 勝った奴が正義よ!」

 それにしてもこの代表候補生、ノリノリである。



「死ぬぞ……私の左目を見た者は皆死んでしまうぞ……!」

 そしてノリノリな代表候補生がまた一人。いや、二人。攻防速全てが高水準にあるラウラが前衛を務め、後ろからシャルロットが一気に制圧する組み合わせであった。
 ただし、会話は殆ど成立していなかったが。

「そう言えば名前、フランス語だよね」
「死神様のお通りだぁっ!」

 全身の追加装甲に仕込まれたミサイルと両腕にある四門のガトリングが火を噴き、ラウラが鎌で傷つけた箇所を徐々に崩していく。
 ゴーレムⅢが反撃をしようにも全砲門を使った攻撃は無視できず、その隙を突いたヒットアンドアウェイで更に傷が増えていく。

「曲芸かぁ……ちょっと試してみようかな」
「凄いよこのレーゲン! 流石ツヴァイクのお姉さん!」

 この戦いの趨勢は既に見えていた。それとラウラ、それはキャラを間違えている。



「私の愛馬は凶暴ッスよぉっ!」
「な、ど、どうしたんだいきなり」

 空中に寝そべった状態でいきなりフォルテ・サファイアが叫ぶ。同じように空中に胡坐をかいていたダリル・ケイシーはあまりの唐突さに割とマジでビビっていた。
 そして作品が違っていた。

「いえ、とりあえず言っとかないといけない気がしただけッス。っつーかノリ悪いッスよ、先輩」
「え、えーと……IS、売るよ! で良いのか?」
「そんな事したら国に怒られるッスよ?」
「お、ま、え、なぁっ!」

 キャッキャッと見方によっては百合の花が咲いているようにも見える会話を前にゴーレムⅢは膝を抱えてしゃがみ、地面にのの字を描いている。

「それじゃ先輩、来週も?」
「さ、サービスサービスゥ(はぁと)」
「キモ……」
「うがーっ!」

 仲間割れが始まった時、君は機械の涙を見る。



「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ、糞! ちったぁ手加減しろバッキャロウが!」
『………。』

 俺はギリギリ避けられる頻度で加えられる何度目かの攻撃を避け、さっきから一言も喋らないゴーレムⅡことメカタバネに中指を突き立てる。
 おっかしぃなぁ、アイツの事だから何か仕込んでると思ったんだが……。

「………。」
『………。』

 俺はメカタバネに悟られないように手元に目を落とす。そこには掌サイズの投射ディスプレイが表示されており、全ての準備が整った事を示していた。

「よし、と……わっとと! ホント嫌なタイミングで仕掛けてきやがる!」
『………。』

 ゴロンゴロンと無様に地面を転がり、俺は手の中の最終確認ボタンを押す。さあ、反撃の時間だ!

『!』
「今更気付いても遅ぇよ! プログラム『左腕の王』、起動!」

 俺が指を一つ鳴らすと、周囲の物陰に隠れていた『左腕』が姿を現す。それも十や二十、いや百や二百でもまだ全く足りない。
 総数十万飛んで八千六百十一本の義手が空を埋め尽くし、その全てが俺目掛けて空を切り裂いていく。

『!?!?!?』
「ハッハァ! 空が三分に腕が七分の光景はどうだ!? ぶっちゃけキモいわボケェ!」

 装着していた汎用腕を外し、接続用の腕に変更する。それをまた接続用に繋ぎ、繋ぎ、繋ぎ、繋ぎ、まだまだ繋ぐ。
 そうこうしている内に事の重大性に気付いたのか、メカタバネは慌てて俺に銃口を向けてきた。だがもう遅い。

『ッ!?』
「塵も積もればフッジッサーン! 防御用の腕も幾つあると思ってんだバァーカ!」

 赤くて羽根の生えた妙に生き物っぽいブースター腕に支えられた防御腕が砲撃を防ぎ、そしてその間にも俺の腕は肥大化を続ける。既に俺の身長の二倍近くの大きさになっていた。
 そして攻撃と防御を数度繰り返し、『左腕の王』はその真の姿を現す。千春か六花が言えばこう言っていただろう、「何だこのデカい腕は!?」と。神谷ボイスで。

『―――ッ』
「行くぜメカタバネ! 俺からのとっておきだ!」

 各所に配されたブースター腕が全力噴射し、俺と『俺自身の十倍以上のサイズの左腕』を宙へと浮かせる。それで何をするつもりか察したのかメカタバネは逃げようとするが、相変わらず行動が一歩遅い。
 当然のように自らを拘束する拘束腕の群れに気付き、全力でそれを振り解こうとメカタバネは出鱈目に動く。だがもう遅い、遅すぎるぜ束ちゃんよぉぉぉぉっ!

「巨人の鉄槌<ゴライアス・ハンマー>ァァァァァァァァァッ!」
『!?!?!?!?!?!?』

 全重量がトン単位になる鉄拳の一撃。更にブースターを全力で吹かし、その破壊力を増していく。だから言ってるだろ? 体重×握力×スピード=、

「破ぁ壊りょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉくっ!」
『―――――ッ!』

 メキリ、と装甲が歪む。ビキリ、とフレームが折れる。バキリ、と関節が砕ける。まだ止まらない、まだ終わらない。地面を窪ませ、地下区画を圧迫し、遂にその一部が崩落する。

「さぁ! フィナーレだ!」
『……、ッ……!』

 俺の声に合わせて巨人の鉄槌が姿を変える。それは砲。口径を数えるのが馬鹿らしくなるほど巨大な龍の顎。

「龍の咆哮<ドラゴン・ブレス>ッ!」

 大気が揺れる。地面が揺れる。膨大な熱量を用意する電源が唸り、周囲の電子機器が異常を示す。舗装された地面が溶ける、植えられた木々が自然発火する、緊急用のスプリンクラーは既に燃え尽きている。
 破壊をこれでもかと撒き散らしながらまだ終わらない。既に銃口付近は溶岩のように焼け爛れ、近くにあった池は蒸発してカラカラだ。しかし出力は上がり続け、遂に半径数メートル付近には『何も無くなった』。

「往生せいやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
『―――ッ!』

 最後の一撃、と言わんばかりに出力を一気に倍に引き上げ、一瞬で危険域に達した龍の咆哮自身がブレーカーを作動させる。
 しかしその一撃は凄まじく、学園裏名物の地下区画の一部を完全に昇華させていた。下はどこまで続いているのか見当もつかない。

「ぅっ……しゃあああああああああああああああっ!」

 余力を残していたブースター腕に支えられて少し遠くへ降り立った俺は、勝利の雄叫びと共にその意識をあっさりと手放した。
 ハッハァ! おやすみぃっ!



 生身(若干語弊有り)でISを倒したゲンゾー。しかし、その裏では恐るべき事態が発生していた。

 某弐号機状態になった千春と六花。極限まで追い詰められた時、真の力が目を覚ます。
 しかし、それは本来有り得ない筈の力。それを手にした一人と一機の運命や如何に!?

 次回、第十九話「虚無」。それは、ヒトが到ってはいけない領域。
『それじゃ先輩、来週も?』『さ、サービスサービスゥ(はぁと)』


 ……所でダリル先輩はツッコミキャラだと思うんだけどどーでしょ?





[27457] 第十九話「虚無」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/07/20 12:03


 第十九話「虚無」

 欲しかったのは、コンナモノじゃない。

 だけど、確かに望んだ事は事実で、それはきっと、こういう事なんだと思う。

 皆はきっと事故だって言う。けど、これを望んだのは確かに「私」なんだ。

 ―――転生系最低オリ主話、始まります。


 ……こんな感じで良いの?



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 接触の直前にドスのように握っていたナイフを手に、ゴーレムの一体を足場にして背筋を使って引っこ抜く。ついでにその辺の壁に蹴り飛ばしてやった。

『マスター!』
「オッケー!」

 左手を押さえていた六花がGAU-ISの銃剣でゴーレムの胴体を突き刺し、私も同様にしてからトリガーを引く。どうも六花の見立てだと防御機構があるらしいけど、この距離ならそんなもん関係ない。
 お互いに一丁ずつGAU-ISが残弾ゼロになるまで撃ち続け、それでも動いているゴーレムにトドメの鉄拳をお見舞いしてやる。

「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉねぇつ!」
『バリバリバルカンパンチです!』
「そっち!?」

 割り込みのネタ振りに驚きつつ、肘打ちと裏拳を決めてからラッシュ。最後に二人のアッパーでボディをぶち抜いた。
 しまった、ぶち抜いたら烈風正拳突きっぽい!

『マスター、ダブルブリザードを使うべきでしたね』
「微妙に解り辛い!? ええい、愚痴は後で聞くわ! 次、来るわよ!」
『把握しています! 距離残り900!』

 ご丁寧にも一機ずつかかって来るつもりなのか、先頭からズラッと縦に並んでいる。まあそっちの方が有り難いんだけどさ!

「六花、どうする!? ユダシステムでも使う!?」
『ありません』
「ネタ振ってるんだから乗りなさいよ! ああもう、ミニ八卦炉!」
『マスパですか……ハッ』
「鼻で笑われた!?」

 何かコイツどんどん憎たらしくなってくるんだけ……どっ!
 反動をPICで消しながら大型粒子砲を撃つが、例の防御機構とやらに阻まれてしまう。あーもうムカつく!

『防がれましたね。遠距離攻撃は牽制にしかなりません』
「って、アンタも出してんじゃん……ドーバーガン?」
『いいえ、D・B・G!です。カードリッジ式ですから牽制には丁度良いでしょう』
「……はいはい。簪にノリスセットでも借りてくれば良かったわ」

 インコムの銃口をゴーレムⅢに向け、射出設定無しで撃てるようにセットする。二門合わせればD・B・G!とやらと同等の威力になる筈。
 ただそれでも牽制以上にはならず、どうしても接近戦をする羽目になる。ただそうなると怖い機能付いてんのよねー、コレ。

『アンチバリアーフィールド、ABFとでも名付けましょうか? 普段から防御をバリアー任せにしているとかなりの脅威ですね』
「それは私が下手糞って言ってんのかしら!?」
『肯定』
「せめて否定しなさい!」
『ドクターに嘘をつくとブザーが鳴るようにしてもらいましょうか』
「ポンコツ!?」

 そう言えばあの二人なら重力素子とか作れそうねー、とか考えながらゴーレムの攻撃をかわす。この程度なら私にだって避けられる。
 そりゃ普段から色々と六花に頼りっきりだけど、私は私で上達してるんだから! これでもブリュンヒルデの妹よ!

『何を勝手に熱くなってるんですか貴女は』
「うっさい! 決めるわよ!」
『了解……あ』
「何!?」

 肘に装着する謎の大鋏でゴーレムの腕を押さえると、六花が何かに気付いたように声を上げる。まさかまた増援!?

『いえ、エーストゥと言うのを忘れていただけです』
「それ死亡フラグ! 今の状況とかソックリだし!」
『ではそろそろ決めましょうか』
「流すなー!」

 そのまんまの流れだと私食べられるから! ガツガツムシャムシャもしくは性的な意味で! 今の束さんならやりかねないから!
 右に左にゴーレムの攻撃をかわし、そう言えば似たような武器があったとリストの中から展開する。

「えっと、赤薔薇!」
『黄薔薇。前後から串刺しですか、随分と良い趣味をお持ちで』
「語弊のある言い方すんなー!」

 私と六花は二本の槍で守りをブチ抜き、二体目のゴーレムを完全に停止させる。残り四体、行けるかしら……?

『マスター、移動しましょう。これ以上学校施設を壊すのも後始末が面倒ですし、丁度すぐ近くに第四アリーナがあります』
「バッサリ言うわね……確かあそこ、一夏達だったかしら? 丁度良いわね」
『三体目来ます、距離1600!』
「了解! エスコートしてあげましょうか!」

 私はスラスターに火を入れ、第四アリーナへと高度を上げる。が、その瞬間に一番聞きたくない報告が六花から上がってきた。

『敵、確認最高速より更に加速! 意図的に機能を限定していたものと推測!』
「手、抜いてたって事ね……最悪だわ……!」
『警告! 敵機最高速が自機最高速を凌駕しています! 更に瞬時加速の使用を確認、接触まであと三十六秒!』
「こっちはあとどれくらい残ってる!?」
『一分十七秒、確実に間に合いません!』

 いつものノリで漫才をしていたのがまずかったのか、どうも残りは一夏達に任せる事になりそうだった。けど今はそれよりも生き残る事を考えないと!

「この一体だけは合流までに倒しとくわよ! 掛けれる時間は!?」
『五十二秒! それ以上は合流に差し支えます!』
「充分よ!」

 私は進行方向に向けていた体を回転させ、後ろ向きに飛びながらGAU-ISを撃ち続ける。要は倒した時にアリーナ近くに居れば良いんだから、移動しながら倒せば良い話でしょうが!

『相変わらず無茶な事を……だからこそ、我がマスターに相応しいのですが』
「気取ってないでさっさと撃ちなさい! 何の為に容量減らしてまでスタンダード着せたと思ってんの!?」
『これは失礼。第四アリーナ外縁に到着、残り四十七秒です』
「撃って撃って撃ちまくりなさいっ!」

 了承の代わりに放たれる砲弾銃弾レーザー弾。その殆どは防御機構に防がれるが、たった二機から放たれるとは思えない量の弾幕は少しずつゴーレムのボディに傷を作っていく。
 私もGAU-ISだけでなくインコムのトリガーをマニュアルにし、更にダンディライオンを全弾オートロックで発射する。GAU-ISが弾切れしたのを確認した後、私はアンカーガンでゴーレムをロックした。

「せぇのぉ……でっ!」
『スタンダード全基、弾切れを確認。格闘戦へ移行します』

 私がアンカーガンを操作してアリーナのシールドへゴーレムを叩きつけ、駄目押しとばかりに六花がナイフを突き立てる。
 だが、それでもまだ機能停止には一歩足りない。それなら一歩進む、それだけよ!

「魔法剣、エーテルちゃぶ台返し!」
『……ウソ。で良いですか、マスター?』
「完璧!」

 もう一体の六花と重なるようにナイフをゴーレムの下半身に突き立て、全力でアリーナのシールドへと押し込む。何秒何十秒経ったのかは解らないけど、ある瞬間にフッと抵抗が消える。
 その次の瞬間にアリーナのシールドがやっぱりパリンと割れ、私達は全力で押し込んだ推力のままに地面へと激突した。更にそのまま内壁まで全力でヘッドスライディングをかます。

「いっつぅ……何、どーなったの?」
『シールド無効化がアリーナシールドに対し誤作動したと推測されます』
「成程……お、ちゃんと倒せたわね」
『千春っ! 大丈夫か!?』

 クッション代わりにしたゴーレムを足蹴にして停止確認していると愚弟から通信が入る。あら、結構ボロボロね。

「何よアンタ、まさかまだ倒してないの? 私これで三体目よ?」
『ハァ!? な、どうやって……うわっ!?』
「あー、通信は倒してからにしなさいな。こっちも手が離せなさそうだし……」
『残り三体、アリーナ内に到着しました。そして時間切れです』

 チハル&リッカ、オーバー&アウト。とやたら流暢な英語でアナウンスが流れ、もう一体の六花がエネルギーを使い果たして量子化される。
 さぁて、参ったわね。ここのグループならとっくに倒してると思ってたんだけど……。

『機能制限は速力だけでは無かったようですね』
「そうね……まずったわ」
『ッ、ゴーレム全機の集結を確認。全機こちらをロックしています』
「……最悪」

 ズズン、とアリーナを鳴らして五体のゴーレムがこちらを見る。一夏達と戦っていたゴーレムと合流したらしい。
 同時に一夏、簪、箒、会長が私の近くに来るけど、何か少し距離を感じる。私が狙われてるからですかそーですか。

「千春、今まで何体倒したんだ?」
「私の下に居るので三体目。でも、どーもリミッターかかってたっぽいのよね……」
「……あと一体、行ける?」
「手負いのなら何とか。もう殆ど弾切れなのよ」

 一夏は見た目からしてボロボロだし、シールドにガトリングが付いていた筈のノリスセットを持っている簪も今はヒートソードを手にしている。
 箒はこういう場合は当てになりそうにないし、会長に至っては何故か一夏以上にボロボロで立っているのが精一杯っぽい。何してんですか最強さん。

「手詰まり……ねぇ……っぐ!」
「お姉ちゃん!」
「―――ッシ! 回復っ! 全部お姉ちゃんに任せなさい!」

 何と言うシスコンパゥワー。ミステリアス・レイディのエネルギーも若干回復してる辺りが本物ね。

『とりあえず我々がロックされているようですし、囮になりましょうか』
「なっ!? おい六花!」
「勘弁して欲しいけど、それしか無さそうね……」
「千春!」

 ごちゃごちゃ言わないの。それ以上に勝率の高い手は無いんだから仕方ないじゃない。じゃあ、そろそろ―――ッ!?

「ガハッ!」
「千春っ!?」

 体を衝撃が突き抜ける。まさか、今の一瞬であの距離を飛んできたの!? 100メートル以上あったのに!?

『まさか、もう一段階……!?』
「っぐぁ! あばっ!」
「やめろぉぉぉぉっ!」

 ドゴン、ゴカン、と断続的にすぐ近くから硬質な音が響く。まさか私、殴られてる……?
 でも切られないだけマシかな、なんて思考の直後、私の後頭部を巨大な拳が撃ち抜いた。





 ――――。





 ピタリ、とゴーレムの動きが止まる。その女性的なフォルムに似合わない暴虐が止まり、ただセンサーを六花へと向けている。ただじっと、何かを探すかのように。
 チャンスではあったが一夏は殴り飛ばされ、簪と箒は牽制の熱線を防ぐので精一杯。楯無に至っては空元気が底をついたのか何もしていないのに倒れている。


 ――――。


 誰も動かない。何も動かない。動こうとする者は動けず、動けるものは動かない。ただ静寂と、ISのアイドリングが起こす振動だけが周囲を支配している。
 何故誰も動かないのか。傍目から見れば場を支配している筈のゴーレム達でさえ、周囲の空間を支配する見えない何かに捕らわれている。

 ――――。

 ピクリ、と何かが動く。それに周囲の全員が一瞬だけ身を動かすが、それだけ。ただそれだけの動作しか許されなかった。許しはしなかった。
 ソレはまるでビデオの逆再生を見るかのようにゆっくりと不自然な体勢で体を起こし、ずるりと聞こえるような気持ち悪さでソレを装甲の隙間から立ち昇らせる。

「千、春……?」

 それを呟いたのは果たして弟か、それとも友か。しかし間違いなくその呟きが鍵となり、最後の楔が解き放たれた。

『搭乗者の意識の喪失を確認。周辺状況危険度を最大に設定』

 その声は紛れもなく六花のモノであったが、その無機質さは普段とは比べ物にならない。普段はどこか愛嬌を感じさせる六花の無機質さが、今は逆に恐怖と得体の知れなさを演出していた。

『機体状況確認。再起動可能、再起動開始。搭乗者保護を最優先、全基本原則の一時凍結完了』

 カリカリと安物のレンズが磁気ディスクを読み込む際に聞こえるような音を立てつつ、砕けたパーツをナニカが補っていく。黒いような白いような、何とも形容し難いナニカがその体を覆う。

『コア稼動状況、第一64%、第二94%。合計100%オーバーを確認、こレヨリ自律シスtm作どuしmmmmmmmmm、』

 ブツン、と気味の悪い音を立てて六花の動きが止まる。それと同時にナニカの動きが活発化し、破損していないパーツをも飲み込み始めた。

『――――。』

 その震えは誰の物か。ソレを見た者の強弱を問わず、仲の良し悪しを問わず、有機無機すらも問わない。だが、それでも彼らは一歩も動けないで居る。
 コレこそがこの場の絶対的な支配者であると理解しているから。

『―――システム再構築完了。ドライブダブルオーバー……DW-Oシステム、起動』

 破損から生まれ出たナニカはようやく『黒』と言う色、『影』と言う形を得る。それが六花と千春の全身を覆い、遂に全身が黒々とした何かに包まれた。
 唯一つ、爛々と緑に光る同心円の瞳を除いて。


『■■■■―――ーッ!』


 それは、産声。イノチではないナニカとしてこの世に生を受けた、全ての始まり。
 その声はビリビリと壁の内外を問わずに震えさせ、脆い構造物を手当たり次第に粉砕していく。


 ドン


 その音を周囲の者が聞いたのは、全てが終わった後だった。

「な―――」

 気が付けば六花だったナニカはアリーナの反対側に着地した瞬間だった。だらりと両腕を垂らし、首が据わっていないのか微妙に傾いでいる。
 そして、六花を取り囲んでいた筈のゴーレムが一体減っていた。

「何が……」

 ヒトである彼らは困惑する。それもそうだろう、一対多であろうと自分達を凌駕し続けたゴーレムが瞬きもしない間に破壊されたなどと、誰が信じるものか。
 だが現に包囲されていた筈の六花は遠く離れた場所に居り、その周囲には解り辛いがゴーレムの残骸と思しきパーツや部品が散乱している。

 ……今のは、純粋な突進であった。確かに目の色と同じ緑色の光が全身を包んでいたり、慣性を完全に無視した軌道であったが、確かに突進である。
 だから六花が移動しているのは当然の帰結であり、空中に打ち上げる際に数十回も最高速で激突したからゴーレムのパーツは散乱しているのである。

『■■■■――――ッ!』

 鳴く、啼く、泣く。己のすべき事、己の意思を確認する。目標は目標の排除を最上とするするするルるルルる。

 鳴いたままの状態から刹那の間に最高速へ加速。未だ動けずに居たゴーレムの一体を掴み、押す。
 ガリガリジャリジャリゴリゴリと地面を削り、砂煙を舞い上げながら移動する。

『ッ!』

 この段階でようやくゴーレムは反抗する事に気が付いたのか、その身に備わった武器を繰り出そうと身動ぎをする。しかし、そうして動かした筈の体は微動だにしない。
 何故なら、抑えられているから。スペック上のパワーなら自らが勝っている筈の同種の腕によって。なのに何故か動かない。何故か動けない。

『■■■■――――ッ!』

 ぐり、と六花の動きが変わる。それは転。それは円。それは螺旋。自身を軸にぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐると回る。回る。回る。
 やがて遠心力に耐えられなくなり、ゴーレムの足が地面から離れる。PICにより慣性を制御できる筈のISが、純粋な力に負けている。

『■■■■――――ッ!』

 何百回、いや何千回と回った頃、六花はその手を上へ向けて離す。ゴーレムはその力に逆らう事なく宙へと木っ端のように舞っていく。
 それに見向きもせず、六花は腰溜めに右手を握る。先程までの回転がその右手に集まるかのように―――否、実際に集まっている。可視の光が、その腕に。

『――――。』

 その光は零落白夜にも、展開装甲にも、絢爛舞踏にも似ていた。淡いながらも絶対的な存在感を持つ、紛う事無き力の奔流。莫大な量のそれが六花の右腕に集まっていく。
 やがてそれは螺旋の円錐を形作り、その回転だけで周囲の物質を削り取り始める。真っ先に削り取られた地面は砂と化し、巻き起こる螺旋の風に乗ってゴーレムの後を追う。

『■■■■――――ッ!』

 六花が吼えた。そう周囲の者が認識した次の瞬間には、上空のゴーレムに巨大な孔が開いていた。まるでISが丸ごと通ったかのような、胴体をほぼ全て消し去る巨大な孔が。
 それを行ったのはやはり六花。投げ飛ばしたゴーレムよりも更に上空で、右腕を突き出した状態のまま滞空している。間違いなく右腕のエネルギードリルでゴーレムをぶち抜いた状態だった。

『ッ!』

 ここでようやく残りのゴーレムが動き始める。一定の距離を取ったからか、または有り得ない仲間意識からか……絶対の恐怖からか。
 残った三体のゴーレムの内、一体は近接戦闘を、一体は射撃戦闘を、一体は観測を試みる。効率化されたデータ取りの方法であった。

 しかし、それも今の状態の六花には通用しない。

『――――。』

 先程着地した直後のように、六花の全身から力が抜ける。それと同時に右手のエネルギードリルが解け、代わりに背中からナニカが現れた。
 刺々しく、荒々しく、それでいて滑らかな、美しいフォルム。それは羽。それは翼。それをヒトが見れば、百人中三万人はこう言うだろう。

 悪魔、と。

『ッ!』

 右手のブレードで戦闘を挑むゴーレムにもそれは観測されていた。だがしかし、所詮は機械。連想こそすれ、感情に行動は左右される事は無い。
 ―――つい先程、その例外が現れていた事に気付かないまま、ゴーレムは目の前の六花へと切りかかる。

『――――。』

 すり抜けた。ゴーレムのAIはそう判断する。有り得ない、と状況判断用のプログラムが異議を申し立てる。しかし、記録媒体には何も残されていない。否、既に確認する術が無い。
 何故ならば、既にそのゴーレムは『細切れ』と言う単語が相応しいほどに切り刻まれていたから。六花が手に持つエネルギー質の斧によって。

『――――。』

 すれ違い様に振った、と言うのは理解できる。しかし、その速度は尋常ではない。相対速度が音速を遥かに超える中、あのように細切れに出来るほど攻撃をした。それだけで既に普通ではない。
 しかし、現にそうとしか思えない方法で六花はゴーレムを下し、その同心円の双眸を次のゴーレムへと向けている。その手には既に斧は無く、腹部の中心へとそのエネルギーが集まっている。

『ッ!』

 ゴーレムが左腕を向ける。その動作はまるで焦った人間そのものである。もしゴーレムに表情があれば、生粋の精神異常者をこれ以上無いほど勃起させるような恐怖に歪んでいたに違いない。
 そしてゴーレムの動きに合わせ、六花も構えを取る。エネルギーの奔流が集まった腹部の前で両手を交差させ、背を丸めて力を籠めるような動作をする。

『■■■■――――ッ!』

 ゴーレムの左腕が攻撃の予兆である光を放った瞬間、その周辺一帯が全て『溶けた』。その正体は考えるまでも無く六花である。既にまともに動ける者が他に居ない以上、選択肢はそれしかない。
 丸めていた背を仰け反らせながら全身で大の字を宙に描きながら放たれた光は、射撃をしていたゴーレムはおろか、アリーナの一部を融解させ、学園の地下へと一直線に進んでいった。

『――――。』

 既に誰も言葉を発さない。発する事など出来ない。それどころか状況が殆ど理解できていない。今ゴーレムが最大の障害と認識しているのが『何』なのかが解らない。
 しかし、その中で尚ゴーレムの生き残りは行動を開始する。目的遂行の障害からの離脱を図り、一も二も無く背を向けて飛び立とうとする。

 常時のAIであれば、この行動はしなかったであろう。何故ならば、相手の移動速度は自分よりも遥かに速く、一撃も食らわずに離脱する事など不可能であると判断するからだ。そして一撃食らえば間違いなく破壊される、とも。

『――――ッ』

 そしてそれを見逃す六花ではない。超特大のビームを放ったままの体勢から、今度は左の腰溜めに手を引き絞る。右手はその上に空間を置いて被せている。
 一瞬か、一秒か、一分か。流れた時間も解らないまま、その手の間の空間にナニカが現れる。小さく、それでいて絶対的な存在感を持ったナニカが。

『■■……』

 低い唸りと共にそれは大きさを増し、やがて光を放ち始める。放電は無く、振動も伝わる事は無い。しかし、それを補って余りある光量がその存在を世界へと知らしめる。
 やがてナニカは球となり、1センチ程度の大きさになる。既に直視可能な光量ではない。それは正に極小の恒星。見る者全ての眼を眩ませる、原初の光。

『………。』

 気が付けばゴーレムはアリーナの外縁へと足を進めていた。つまり、それだけの時間しか経過していないと言うこと。時間にすれば三秒も無かっただろう。
 そしてそれにはゴーレムも気付いており、既に無駄であると結論を出しながらも行動を停止させない。その理由を人間らしく言えばこうなるだろう。

 嫌な予感がする、と。



『■■■■■■■■■■――――――――――ッ!』



 咆え、放たれる。その珠は輝きながら、一直線にゴーレムへと跳ぶ。遮る物は無く、あったとしても止める事は出来る筈も無い。
 そしてゴーレムは最後の足掻きか、地表へと一直線に飛ぶ。無駄であると知りつつ、背後から迫る絶対の死を受け入れる事ができなかったから。


 静寂。


 否、音はある。ただ、全員がその光景に目を奪われ、聴覚からの情報を無意識に遮断していた。

 眼前に広がるモノは、何も無い。そう、『何も無い』のだ。
 ほんの小さな球が解き放たれ、その全てを飲み込んだ。その光景がコレである。

 丹念に整備された歩道、最新技術を駆使して作られた案内や掲示板、その中で美しさを保つ木々。それら全てが消え去っている。
 ゴーレムが居た一角はおろか、その地下十メートル以上が消滅している。更にその抉れた地面には、恐ろしい事実が刻まれていた。

 抉れた地面は、浅く広いのである。

 これが示すのは『空中で球が開放された』と言う事実であり、効果半径は更に広いと言う事――後の調査で、この攻撃は200メートルの直径を持つアリーナを中心から全て飲み込めると計算された――である。
 ……この攻撃が地表で行われた場合、学生達が非難しているシェルターはおろか地下50メートルの区画まで何の問題も無く全て飲み込み、IS学園の主要施設は全て無へ還るだろう。

「千春……」

 呟きが風に乗り、薄れて消えていく。その視線の先には、まただらりと四肢を延ばした状態の六花。未だ黒いナニカは消えていないが、爛々と輝いていた双眸は光を失い、黒の中で更に黒く窪んでいた。
 しかし、数分も経った頃か、果ては次の瞬間だったか。その黒いナニカは風に溶けるように消える。その全てが消えた瞬間、滞空していた六花はガクンと力を失い、重力の井戸へと落ち始めた。

「千春っ!」

 地面に激突する寸前、一夏がその体を受け止める。瞬時にバイタルを確認するが、どこにも異常は無い。ただ気を失って―――いや、眠っているだけだった。

「良かった……」

 推力の関係で出遅れた簪がほっとため息をつく。しかし、その脳裏には解らない事だらけであると困惑がこびり付いていた。

「一体、何が……」

 ―――その呟きに答えるものは、誰も居ない。




 YA☆RI☆SU☆GI☆TA!


 っつー事でゴーレムⅢ編千春sideでした。ドライブダブルオーバー、略してドワォシステムです。うん、虚無ってます(違)

 いや、最初は真ゲっぽくするだけだったんですが、気が付いたら初号機っぽくもなり……福音なんか目じゃないくらいの危険兵器になってました。
 虚像実影が第一コアの単一仕様能力ならDW-Oは第二コアの単一仕様能力です。ただし操縦者の意識が有ると使えません。自律行動システムのバグなんで。

 ホントは最後のストナーでアリーナ半分ぶっ飛ばして「着替えがー!」とかやるつもりだったんですが、アリーナって半径100メートルとかあるんですよね。
 で、地下区画って最深っぽい機密区画が50メートル。球状に吹っ飛ばしたらまず間違いなく一緒に吹っ飛ぶんですよ。あの島かなりデカそうだから大丈夫とは思いますが。設定資料集が欲しい。

 ホントは偏向射撃みたいに衝撃砲とAICにも第二段階用意するつもりだったのに……シャル? シールド無効化弾でも渡しときます。
 バグった理由とか束さん大興奮は次回。でもこれ書いてるのって七月の頭なんですよね。つまり八巻がまだ影も形も……くーちゃんって誰やー! 束ー! 俺だー! 結婚してくれー!


 とりあえずここまで来たんで本編は一旦お休みです。他の二次いい加減完結させたりとか、要望のあったネタ辞典とか、もしもシリーズの番外編(もしも二人がちょっとだけ素直だったら他)とか、オリジナルとか、色々やってると思います。では。





[27457] 番外編「小ネタ祭り」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/07/29 18:17


 番外編祭りでございます。どんなネタが出るかは自分でも良く解りません。



 もしも二人が早々にくっついてたら。

「行くぞ束っ!」
「うんっ!」

「「真っ魂っ合体っ! ゴォーd(ry



 もしも源蔵が束にくっついて行方不明になってたら

「なあ鈴……あのIS、背中に『天』って書いてないか?」
「スピニングバードキックを使えって事ね、解ったわ!」
「あ、お、おい鈴!? おーい! 戻って来ーい!」



 もしも箒の転校先が関西ばかりだったら

「ちゃう! ちゃうやろ一夏! そこは突っ込む所とちゃう!」
「………。」
「……ゴホン。それよりもやな一夏、」
「関西弁治ってないぞ!?」



 もしも箒の転校先が関西ばかりだったら2

「ああ、箒の弁当も美味そ―――」
「これたこ焼き、こっちはお好み焼き、デザートにはアメちゃんもあるさかいな」
「……無理、しなくて良いんだぞ?」
「……空気よりはマシだ」



 もしも簪がマヨラーだったら

「お、簪はかき揚げべちょ漬け派か? サクサク派のラウラに見つかったら―――」
「……うまうま」
「あ、あの、簪さん? なにを……」
「……?」
「いや、だからそのかき揚げ……」
「……あげない」
「いやいやいや! そうじゃなくて! そのかき揚げの惨状は何なんだって言ってんだよ!」
「……マヨネーズしっとり派」
「派!? 派閥できるほど浸透してるのかそれ!? って言うかしっとりするのか!?」



 もしものほほんさんがキョンシーだったら

「ぴょーんぴょーんぴょーん」たゆーんたゆーんたゆーん
「……良い」



 もしもISがオートバジン風だったら

『ピロロロロロッ!』
「うるせぇっ!」ガンッ!
『ピロロ…』
「……悪かったよ」



 もしもISがミラーモンスターとの契約が必要だったら

「行くよ、マグナギガ!」
『ファイナルベント』



 もしも簪がマヨラーだったら2

「………。」ガッ、パカッ!
「あっ、おいっ!」

 ぶりゅっ! ぶりるるるるっ! びりびりびびぃっ! ぶりゅっ!

「………。」カァァァ…
「……まあ、中途半端に入ってるマヨネーズだとたまになるよな」



 もしも簪がマヨラーだったら3

 彼女は一心にキーボードを叩き、口に咥えたままのマヨネーズを肺活量だけでちゅうちゅうと吸っていた。

「飯はちゃんと食え!」バッ
「っ!? 返して! かーえーしーてー!」



 もしも簪がマヨラーだったら4

「その、実力はあるのよ? でも、その……何と言うか……」
「何と言うか?」
「ぶっちゃけ、マヨラーなのよ……私が嫌いなのを知ってこれ見よがしに……」
「お引き取り下さい」



 もしもラウラが厨二病だったら

「ふはははっ! 我がヴォーダン・オージェは全てを見通すのだ! さあ、貴様も停止結界の餌食にしてやろう!」

 大して変わらなかった



 もしも津崎青葉がIS操縦者だったら

「ファントム!」

 いいえ、瞬時加速です。



 もしもIS学園が超弩級宇宙戦艦だったら

「IS部隊、42%壊滅! 防衛機構損傷率、85%!」
「1025室、大破!」



 もしも世界初の男性操縦者がウッソ・エヴィンだったら

「う、うわー! ピッチリスーツのお姉さんだ!」ちゃべー!



 もしもISが日曜朝八時半からだったら

「ぼくはゲッゾン! IS操縦者になって世界をチフユダーの手から守って欲しいゾン!」
「私はタッバネ! 私からもお願いするバネ!」



 もしもIS操縦者がドラッカーのマネジメントを読んだら

「自分で戦え馬鹿者」



 もしもIS起動に仙術が必須だったら

「織斑流仙術、撃・爆砕! ……どっちかって言うと鈴の方が合ってないか?」



 もしも千冬が革命思想だったら

「目だ! 耳だ! 鼻だ!」

 大して変わらなウボァー



 もしも六花が全身装甲型だったら

「か、体がめり込んでいく!?」

 この後、IS聖暮桜に会いに行く羽目に



 もしもVTシステムが宇宙由来の何かだったら

『力が欲しいか?』
「な、に……?」
『力が欲しいなら、くれてやる!』

 もしかしてオマージュだったんでしょうか



 もしも一夏の苗字が兜だったら

「これが、IS……」
『そうだ、これこそがIS! この力はお前を神にも悪魔にもしてくれる!』
「こんな力は要らない! 俺は普通で良い!」



 もしもISコアがインベーダーに寄生されていたら

「人間とは本当に愚かだ。そうだろう、束」
「うん、そうだねゲンゾー」
「おのれ……! 初代ISチームの力を思い知らせてくれる……!」

 竜馬が一夏か箒。



 もしもISが超電磁ロボだったら

「一夏め……!」
「一夏の馬鹿ぁー!」
「一夏さん!」
「一夏ぁ……」
「一夏! 貴様ぁ!」

『コンバインOK、コンバインOK』
「最低の揃い方ね」



 もしもISが汎用人型決戦兵器だったら

「あ、私が主人公なんだ」
「自爆担当……」
「まだ良いでは有りませんか。私など新劇場版でリストラですわよ……」
「暴走担当か……大して変わらんな」
「精神崩壊担当……だと……」
「「「お、俺が九人居る!?」」」
「「「「「!」」」」」

「無様ね」
『ですね』



 もしもISがエリア11での出来事だったら

「ちーちゃんちーちゃん! 黒の騎士団ごっこやろうよ! 私がゼロね!」
「ならば私はウザクか。まあ良いだろう」
「あれ? 俺は?」
「「扇」」
「ヒデェなオイ!」



 もしもISがライオン型ロボだったら

「「「「「チェーンジ! ゴー、アイエース!」」」」」
「私、教師なのに……」
「私はお姫様ね。まあそれなら許すわ」
「って、これは私が六話で死んでしまいますわ!」
「待て、戦闘服の色だったら私だぞ! どっちだ!?」



 気が向いたらちょこちょこ足してきます。




[27457] 第二十話「Bルート:34の鍵穴」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2012/02/16 22:03


 第二十話「Bルート:34の鍵穴」

 世界は、動く。



「あはっ! あっはは! ははっ! はっははははっ!」

 笑う。哂う。わらう。ワラウ。

「す、凄いっ! 凄いよゲンゾー! あはっ! あっははははっ!」

 その笑いは断続的に、童子のように続く。時折混じる賞賛と共に、その笑いは暗闇へと響いていく。

 その声の主は篠ノ之束。この空間の主でもあった。

「はっ、はぁっ、はぁー……ははっ」

 どれだけの時間をその行動に費やしていたのか、笑いが収まる頃にはその細い肩を上下させ、豊かな胸が重力との綱引きを楽しんでいた。

「凄いなぁ……まさか生身でISを倒しちゃうなんて……」

 それが己にできるか。と問われれば是、と答えるだろう。それが篠ノ之束と言う女性である。しかし、挑戦する事はまず有り得ない。それが無益な行動である事を理解しているから。
 しかし、あの男は違う。常日頃から自分以外の人間とは利害でのみ繋がっていると豪語しながら、有事の際にはそれを無視して行動に移る。いや、彼らしく言えばそれすらも利害の一部なのか。
 ……アレから彼はそうなった。変わっていたけど普通であった彼は、アレ以来そういう生き方を被るモノになってしまっていた。

 そしてその行動力こそ、束が求める物。予想の出来ない事を、想像も出来ない事を。その全てを超える結末を束は求める。
 今回、自らが同じ状況であれば一度大人しく捕まる事を選択する。その上で相手の目的と状況を確認し、正面から叩き潰す。それが彼女流だ。

「まあ、生身とも言い辛いけど……ふふっ」

 確かに義手を使った物量作戦とも言える。だが、それが成立するまでの時間を身一つで稼ぎ、防御も一切無い状況で自らとゴーレムの破壊の渦を乗り切ったのだ。
 そしてあの破壊力。二発目は単発で一度使えば殆どの義手が使い物にならなくなる代物だろうが、充分な威力を持っている。一発目の拳に至っては弾数制限などまず無いだろう。

 そんな無茶をするだけの肉体と、それを完璧に御する頭脳。二つともが自らと同格にある人間など、この先の人類史を見ても恐らく二度と現れない。
 完全な同格の存在、それが彼である。そう束は認識していた。代え難いのではなく、代わりなど存在しない。自らの頭脳を以ってしても完全に代役を務める事など出来やしない。

「あぁ……素敵だよ……ゲンゾー」

 千春を、一夏を、箒を、千冬を失う事は確かに悲しい。そんな想像をする事すら嫌だ。だが、それ以上に彼を失う事はあってはならない。そう認識する。
 自らと同じ領域で、自らと同じ位置に立つ、自らを理解できる者。果たして全人類の中でこのような幸運に見舞われたヒトが他に居るのだろうか? そうとすら思う。

「これならきっと……うん、行ける」

 ゾクリ、と束の背筋が震える。それに合わせ、窮屈だからと下着をつけない胸がふるりと揺れる。彼が求める物が自らの手の内にある事を自覚する。
 恐らく、今全てを差し出せば彼は二度と自分から離れないだろう。そして自分も彼からは離れられないだろう。そうなる確信がある。それほどまでに昂っている。

「そして、全てが終わったら……」

 はぁ、と吐いた息が熱い。目が潤み、喉が渇くのが解る。今の言葉を面と向かって言えば、この体の熱さを全て受け止めてくれるだろう。そして更なる熱を齎すだろう。
 ぐじゅ、と体のどこかから音がする。そこが一番熱い。強烈なまでの雌の匂いが自らの鼻腔まで立ち昇ってくる。自らが艶かしく動いているのが解る。

 あの雄が欲しい、と全身の細胞一つ一つまでもが訴えている。

「ゲンゾー……」

 この熱に自らが耐え続けられる自信が無い。一度鎮めて冷静になった方が良いだろうか、と考えが頭をよぎる。しかし、溜めておいて一気に開放した方が良いだろうと即座に否定する。
 この熱は彼の手で鎮められるまで、心の奥底で燻り続けさせる事にする。恐らくこれを開放する時、自分は一片の理性も無く彼を求め続けるだろう。そういう予感がする。


 だが、その想像が何よりも甘美な甘露となって体を駆け巡った。


「……それにしても、まさかあの完成度であそこまで行くとはね」

 数分か数十分かの沈黙の後、束は再び動き出す。その思考には彼の作品。未だ完成へと至らない、彼女の作品よりも劣っている筈のモノ。
 だが、それは通常時で三体、例の状態で五体ものゴーレムを破壊して見せた。幾らISが人間と共にあるようにと作られたモノであるとは言え、この戦力差は異常である。

「完成に自分以外の手を必要とする……非効率的だけど、良い手なのかも」

 機械でありながら機械的な判断以外の部分を要求される第五世代技術『自律行動』。恐らく、この点に関しては六花が世界最高峰のクオリティを持っている。それは間違いない。
 そして単一仕様能力上でありながらも『遠隔操作』を可能にしている。彼ならばこのデータを使えば、完全な第五世代機を作ることが出来るだろう。いや、既に完成しているかもしれない。

「ねぇ、どう思う? くーちゃん」
「ッ!?」

 急に声を掛けられ、少女は身を竦める。一体何時から気付いていたのか。そんな素振りは一欠片も見えず、ただ己の世界に没入していたと言うのに。
 確かに一応断りはした。しかし返事は無く、仕方が無いので部屋の隅で落ち着くのを待っていたのだ。こちらには一度も視線を向けていない。

「ま、これくらいは出来ないとね。そうだくーちゃん、一つお使いを頼んでも良いかな?」
「は、はい。何なりと」

 それじゃあ、と束は椅子から立ち上がる。冷静になったように見えてまだ興奮しているのだろう。その動きもどこか演技じみており、いつもよりオーバーになっている。

「『お父さん』の所に、ね?」



「答えろ、源蔵! 貴様、千春に何をした!」

 医務室前の廊下で千冬に首を絞められる。やめてくれ。こちとら徹夜明けなんだ、それ以上されると流石に死ぬ。
 だがまあ、千冬が憤るのも無理は無いか。流石にアレは俺でも予想できなかった。

「俺は何もしていない」
「ほざけっ! 貴様以外に誰があんな真似が出来る!?」

 確かに俺や束クラスの頭じゃないと作れない代物だし、束はあんな非効率的な真似はしない。つまり俺以外に作れる者は居ない、と言う見事な三段論法だ。
 だが生憎と俺は嘘は言っていない。正確な事も言ってはいないがな。

「説明する。だからその前に手を放せ、そろそろ死にそうだ」
「一度死ね! お前も束も、そうすれば多少はマシになる!」

 駄目だな、頭に血が昇ってやがる。俺は俺で血が昇らな過ぎて酸欠になっている。あ、視界霞んできた。そろそろマジヤバイ。

「ちょっ、千冬姉! 何やってんだよ!」

 と、良い感じに三途の川が見えてきた辺りで一夏が現れる。凄いタイミングだな、流石は主人公だ。

「ゲホッ……助かったよ、一夏。で、お前も聞いてくか?」
「……千春の事だよな? ああ、聞いてくよ」

 まあ千春の病室の前でギャーギャーやってれば一発で解るよな。取調べももうすぐ始まるし、手短に話すか。
 俺が壁に体を預けると、ようやく冷静になった千冬が視線で「さっさと言え」と圧力を掛けてくる。やめろ怖い。

「結論から言えば、アレはシステムの暴走だ」
「機体形状の変更はVTシステムにもあったが……その類か?」
「似てるが少し違うな。白式達に残っていた映像からの分析だが、恐らくアレは展開装甲と同種の物だ」

 とは言え機能自体は大して変わらん。全能力値の底上げと搭乗者保護、後は見た目のインパクトぐらいか。

「展開装甲……確かにそれっぽい感じだったけど……」
「待て、そもそもシステムが暴走したと言ったが、元は何のシステムだ?」
「自律行動用プログラムだ。千春が何らかの要因によって機体の操縦が出来ない場合、その操縦を肩代わりする」

 ISの操縦経験自体は虚像実影で蓄積されているし、まあ今の一夏とどっこいどっこいって所か。本来はたったそれだけのシステムだったんだが……。

「それが何故ああなる。それに何故千春は目覚めん!?」
「まず落ち着け。あと悪いが千春が目覚めない理由はマジで解らん。元々俺は医者でも何でもないんだ」
「くっ……ではあのシステムは一体何だ!?」

 何、と言われても見たまんまとしか答えられんがな。

「データを浚ってみたが、解ったのは名称と効果、あと発動条件ぐらいだ。後は全部推測でしかない」
「それで良い。全て話せ」
「はいはい……あのシステムの名前はドライブダブルオーバー、略してDW-Oだそうだ」

 それはどうでもいい、と千冬の顔に書いてあった。まあ俺もこの辺はどうでも良いんだがね。下手に弄ると虚無りそうだし。

「効果は能力の底上げと搭乗者保護、それと自律戦闘だな。他にもあるのかもしれんが、今はこれしか解らん」
「……元々あったシステムを改造して上位互換にでもしたのか……?」
「どうだろうな。発動条件は第一コアよりも第ニコアの方が稼働率が高く、合計して100%を超えている事だな」

 しかし稼動記録には150%を超えていたとあった。恐らく暴走の原因はここにあるんだろう。コアは稼働率上がるとどうなるか解らん部分があるからな。
 目安としては一般的な稼働率の限界がコア稼働率の50%程度に相当する。つまりブルー・ティアーズの偏向射撃にもまだまだ上がある可能性を示唆しているが、それは今は関係ないか。

「詳しい事はもう何も解らん。下手に弄って機能不全でも起きたらもしもの時に困るのは千春だ」
「そう、だが……それでも、あんなシステムを残しておく理由には弱い」
「しかし根っこの方までガッツリ入っててな、アレを消すと基幹プログラムが消滅する恐れがある。リミッターをかける程度にする事を勧めるが」
「くっ……」

 千春の保護者として、教師として譲れない部分もあるだろう。だが、あのシステムの効果が凄まじい事は確認済みの筈だ。今後の情勢が見えない今、アレを失うのは些か惜しい。それに下手をすれば六花が消えてしまうのも痛い。

「……解った。頼むぞ、源蔵」
「オーライ」

 なるべく早くアレを完成させた方が良いな。良い隠れ蓑だったが、そう悠長な事は言っていられなさそうだ。



 ……あれから一週間が経った。未だ千春は目を覚ます事はなく、IS学園を包む空気は重苦しいままである。
 建物やクレーターは徐々に修復されつつあるが、こればかりはどうしようもないらしい。
 比較的周囲の空気に左右されない私、ラウラ・ボーデヴィッヒが言うのだから間違いは無い。

 教官は手が空いた時は常に彼女の病室に居るそうだし、私の嫁たる一夏も毎日見舞いに行っている。
 この状況を打破できるのはドクトルだけなのだろうが、彼もお手上げだと言っていた。

「しかし、顔が広いと思っていたがまさか一人で学園全体を動かすほどとはな……」
「―――それが彼女の特異性なのでしょう」
「っ!?」

 独り言の筈だった。本来軍務に服すべき者としては悪癖にしかならない行動だが、私が一人の人間である事を自覚できるこの癖は密かに気に入っていた。
 しかし、その声に応えた者が居た。馬鹿な。この弛緩した学園の空気に私も毒されてしまったのか? 違う、これは……!

「遺伝子強化……試験体」
「初めまして、ですね。個体識別名、クウネル・サンダースと申します。以後お見知り置きを」

 その少女は白一色のスーツに杖を持ち、何故か小脇に赤いバーレルを持っていた。微かに漂ってくる香りからしてバケンチェン……フライドチキンだろう。
 問題はその顔だ。顔立ちやツインテールにした髪の色は私とまったく同じ。それはそうだ、同じ遺伝子から生まれた仲間なのだから。

 私達遺伝子強化試験体は複数のプランによって作られ、現在は私も含めて稼動試験中だ。私達のデータは次の世代への糧となるだろう。
 しかし、試験管ベビーとは言え多少の誤差は発生する。そこで開発者は一つの遺伝子型から複数の個体を生み出し、性能を比較して理想値に最も近い固体を選出した。

 私もその一つであり、ラウラ・ボーデヴィッヒという個体識別名もその時に得た物だ。そして選ばれなかった個体の行方を私は知らない。
 しかし、正直に言って訳が解らない。何故私と同じ顔の存在が訳の解らない格好をして何故かこんな所にいる? いかん、混乱してきた。

「ふむ……状況把握能力の低下を確認。所詮はこの程度ですか」
「……何?」
「いえ、確認事項があっただけですのでご安心を。それとご懸念の我々の処遇ですが、大半は慰安任務と言う名の陵辱人生を送っています。今もあひんあひん言ってる筈です。
 中にはドラマチックな人生を送った個体も居ますが、大抵は使い潰されてお終いですね。私も中々劇的な人生を送っていますが……はて、物に人生と言う言葉は正しいのでしょうか?」

 何だコレは。私と同じ声でそんな事を口にするな。私と同じ顔でそんな空虚な表情をするな。私と同じ体を物などと言うな。
 ぐにゃり、と地面が迫ってくるのを知覚する。普段なら身を跳ねさせて体勢を立て直すが、今はまともに動く事すらできそうにない。

「……腑抜けましたね。我々の骸の上に立っていると言うのに」
「っ!」

 足を前に出す。身体が止まり、腹の底に力が戻ってくる。そうだ、私は彼女達の骸の上、に……?

「待て! 何故貴様がここにいる! 貴様の言う通りならば、貴様がここにいるのは何故だ!」
「混乱の継続を確認……脱出したからですが?」
「ええい、説明が端的過ぎて……と言うかそもそも貴様は部外者だろうが! 何故ここに入ってきた!」
「思考の正常化作用を確認……お使いです」

 表情を映さない顔を見る。いや、違う。表情に出してこそいないが、コイツはほくそ笑んでいる。私の醜態を見て愉しんでいるのだ。
 理由は恐らく個体識別名を手に入れた私への嫉妬。そしてそれすらも余興とする何かを目的としている。

「対象への認識を変更。会話から入手できる物以外からの情報収集能力を上方修正」
「そのふざけた話し方をやめろ。そしてどうやって学園内に入った」
「正面からモノレールに乗って堂々と、ですが。駅の改札からならば進入するのは容易です」
「監視カメラや警備が居るだろうが」
「私の容姿をお忘れですか? 堂々としていれば意外と気付かれないものです」

 とは言え本格的に確認されてはどうしようもありませんが、とクウネルとやらは言う。ふざけた奴だ。
 だが、流石に私と同じ遺伝子から生まれただけはある。言うのは簡単だが実行するのは至難の業だろう。

「まあ良い。ここから先は教官の前で吐いてもらうとしようか」
「そうですね、そろそろ本来の目的に移りましょう。これにて失礼致します」
「逃がすかっ!」
「遅い―――起きなさい、ブリューナク」

 奴の髪飾りが閃光を放ち、IS展開時特有の振動が伝わってくる。それに一瞬躊躇するも、私もシュヴァルツィア・レーゲンを起動させた。
 しかし、その一瞬の内に間合いを詰められ、胸に何か鋭い物が当たる感触と共に私は後ろへと吹き飛ばされていた。

「くっ……!」
「PaK展開、ファイエル」
「そこは間違えるな!」

 私は街路樹を一本なぎ倒してから体勢を立て直し、眼前に迫った大口径の銃弾を停止結界で止める。と言うかこれは最早『砲』だ。
 私もドイツ軍人の嗜みとしてアハトアハトは大好きだが、幾らISだろうとこれは手持ち武装にする物ではない。

 更に驚く事に、奴はこの砲を左手一本で保持していた。右手には槍……いや、ブースター付きスコップか? ともかく先ほどの一撃はこれだろう。
 しかも奴はISを展開しているが、こんなタイプのISは見た事が無い。レーゲンのデータベースにも該当無し、完全なアンノウンだ。

「距離を取りますか……ゲットライド、では無いんですけどね」
「この訳の解らない言動……やはりドクトル絡みの人間か!」

 巨大な板に乗るように飛ぶISなど聞いた事も無いし、そもそも自力飛行ができるISに飛行補助具など要らない。
 カラーリングは全体的に緑色であり、フィッティング用のスーツは転校してきた頃のシャルロットのようなスパッツ型だ。

 ただ、何故か上半身はいわゆる紐ビキニであり、私同様の体型には全く似合っていなかった……これ以上は悲しくなるから突っ込まないようにしよう。
 レーゲンからの情報によると右手首の青いパーツ、更にボードに多数搭載されている小型ナイフが主な武装らしい。個人的には首元のマフラーも怪しい。

「ツァウバー、クナイ、あとおまけにトランプ、発射」
「火球、投擲用ナイフ……カードだと!?」

 火球を避け、ナイフを停止結界で失速させて最後の攻撃に驚く。解析結果は何の変哲も無いカード、それもプラスチック製だ。
 地面に軽く突き刺さったそれには一つずつ文字が書いてあり、左から『極水無限波』と読めた。何がしたいんだ。

「お客様がお望みなら……と、これは戦う前に言うべきでしたか」
「ふざけた真似を!」
「おっと……PaKに銃剣をつけておいて正解でしたね」
「砲に銃剣なぞ付けるな!」

 私のプラズマ手刀を砲の先に申し訳程度につけた銃剣で払われる。重量任せの払いではあったが、隙を突くようにブースタースコップが私を襲う。
 攻撃は難なく払うが、このパターンはまずい。奇抜な装備と言動だが、コイツは強い。少なくとも一年の代表候補生レベルの実力は有している。

 そしてこのパターンは妙な装備を持ち出してきた時の千春や簪と同じパターンだ。相手のペースに飲まれた時点で負ける。
 ほら、現に簡単にスコップを手放して新しい武器を出してくるじゃないか。こうなった時は攻撃の度に新しい武器が出てくるのが恐ろしいんだ。

「色も丁度いいですし、やはりここはヴァルキュリアの槍で行きますか」
「そんな重い武器でっ! 停止結界で止めてくれる!」
「……かかりましたね? アクティブ・イナーシャル・キャンセラー改『ファントム・ドーター』、起動」
「何っ!?」

 相手の動きを止めようとした私が指一本動かせなくなる。まさか、レーゲンのAICのコントロールを奪ったのか!? そんな馬鹿な!
 くっ、駄目だ……武装の多さと言い、完全に悪乗りした時の千春や簪と同じパターンだ。気持ちが負けてしまっている……!

「それでは一度動けなく……む? いけませんね、気付かれましたか」

 そう言うと、奴は手早く武装を量子化して手放したスコップも回収する。ついでに道端に置かれていたバーレルも再び小脇に抱えていた。
 しかし、それでも奴のAICは解除されない。集中力が尋常ではないのか、それともシステムが改良されているのか?

「それでは失礼します。貴女のお相手は……まあ、暇になったらに致しましょうか」
「ふざ、けるな……!」
「―――吼えるな、雑魚が」

 くん、と奴の人差し指と親指が締まる。それに合わせて私の首が圧迫され、呼吸と血流が満足に行き渡らなくなる。
 AICでそんな芸当まで、という思考を最後に、私の意識は完全にブラックアウトした。

 ……完敗、だった。



「まぁた派手にやりやがったな、オメー」
「申し訳ありません。はじめてのおつかいなので少々はしゃいでしまいました」
「アイツも最近は腑抜けてきてたから良い薬だろうけどよ……あ、何飲む?」
「ドクペをお願いします」

 つい二分前に「私と契約して青のケンプファーになってください」と虎耳をつけて現れた自称クウネルが持参してきたバーレルをつつく。
 現れた時の言動といい、先程確認したラウラとの一戦といい、完全に束経由で俺に毒されてます。本当にありがとうございました。

「ああ、この薬臭い匂いがたまりません……」
「ゲップがチョコレートの匂いがするのが不思議だよな」
「やはり貴方とは気が合いそうです。パパの言う事を聞く事に致しましょう」
「さいで」

 モリモリと二人で骨付きチキンにかぶりつく。またぞろ束が無駄技術を発揮したのか、バーレルから出てきたチキンは揚げたてジューシーな香ばしさだった。
 しかしジャンクな食生活だな。駄目だぞ、もっと野菜を食べないと。肉野菜炒め最強説を教えてやるべきだろうか。

「そんで束は何て?」
「流石はお父様、私が束様からの使者とお気付きでしたか」
「まあ接近してくるのに人参型ロケットなんか使ってりゃな」
「元ネタは違うんですけどね」

 元々隠す気は無いのか、ちょっと探したら束の人参ロケットがすぐに見つかった。凄いな、節約とネタを同時に叶えてやがる。

「っつーかお前ら、俺の井上フォルダ漁りやがったな?」
「束様が、ですが……あ、犬神を使うのを忘れていました」
「アレも搭載してんのかよ……レーゲンにつけてやろうと思ってたんだけどな、色的に」
「それは申し訳ないことを致しました。しかし私も遺伝学上はドイツ人ですので言わせて頂きますが、ライフルよりはアハトアハトの方が好きです」

 ああ、あの櫛も撃てるようにしたライフルか。って事はやっぱりマフラーの中にはデリンジャー入れてやがるな?

「だからPaKなんて持ち出してきやがったんだな……GAU流用してる俺が言えた事じゃねーけどよ」
「IS同士の戦闘なら既存武器の流用で充分戦えますからね。ISに勝てるのはISだけ、と言うのは当たらなければどうという事は無い、と同じ言葉ですから」
「そういう風に作ったからなー」
「それに気付かず新技術の開発をしている各国涙目、ですね」

 まあ技術競争は良い事だぞ、うん。

「ほんで、何の用だ? 養ってもらいなさいとか?」
「いえ。このデータを渡すように、と」

 ぷちりと蝶ネクタイを外し、それを俺に差し出してくる。またご丁寧にボイスチェンジャー機能までついていた。って事は腕時計は麻酔銃、ベルトはサッカーボールでも出るのか。
 俺は蝶ネクタイ型記憶端末に入っていたデータを吸い出し、それを空間投射モニターで確認する。その間にクウネルはもりもりと骨付きチキンにかぶりついていた。

「あ、サスペンダーと眼鏡、スケボーもちゃんとありますよ?」
「徹底してんな……って、マジかよコレ」

 南磁極点って海の中じゃなかったか? それにコード「黒鍵」ねぇ……?

「先日、最終計画の目処が立ったとの事でしたので。本日は可能ならばお連れするように、と」
「籍入れんのにあとどんだけかかんだよ……」
「流石にフリーメイソンやコーサ・ノストラ等、一般的に言われている秘密結社全てが亡国機業の末端組織とは束様も看破できなかったようですね。
 そして束様お一人ではもう暫くは動けないようでしたが、お父様とならやれると判断されたようです」
「結局アイツは世界を自分の望む混沌に変えたいだけだったのになー。コレに気付いちまったのが運の尽き、か」

 クウネルはこくりと首肯する。コイツも一通りは知っているようだ。

「解った。荷物は……また後で取りに来りゃ良いか」
「それでは食べ終えたら出発致しましょう」
「……何で骨しゃぶってんだ?」
「軟骨おいしいです」

 俺もクウネルに付き合って軟骨をコリコリ食べ、最後にドクペで流し込んで同時にゲップをする。

「それでは参りましょう。本棚はありますか?」
「そこにあるけど、まさかオメー……」
「ええ、束様の新発明です」

 ギッチギチに詰まっていた本棚から数冊抜き取り、本を動かせるだけのスペースを作る。何作ってんだアイツは。

「右、左、くぱぁ、と」
「くぱぁ言うな」

 鍵の開く音と共に量子転送が開始される。うわー、遂に生き物の量子転送まで実現しやがったのか。

「それでは我々の拠点、南極基地へお連れします。暖房が効いていますので暖かいですよ」
「氷溶けるぞ」



「源蔵、アレの調整と整備を頼みたいんだが……」

 二人が部屋から消えるのと入れ替わりに千冬が部屋を訪れていた。しかし、二人の姿は既に無い。見つかっていたら大事になっていただろう、色んな意味で。

「……源蔵?」

 その言葉は、独りの部屋に溶けるように消えていった。



 辿り着いたのは薄暗い部屋だった。しかも照明が非常灯のような赤みを帯びている。非常に目に悪い。っつーか暗い。
 しかし先行するクウネルは躊躇無く歩いていった。目が慣れると周囲に物を置いていない事が解る。少し早めに歩けばすぐに追い着く事ができた。

「この先で束様がお待ちです。メイクラブしようがイチャイチャしようが子作りしようがバッチリくっきり覗くだけなのでご安心下さい」
「そこは安心する所じゃねーな。案内ごくろー」
「投げやりですね」
「暗いからな」

 返答も実に投げやりだ。どーせシリアスな空気になるだろうってのが簡単に予想できるからテンションも低い。
 アイツは良くも悪くも場の空気を変える奴だから、アイツがマジになってると周りもマジになっちゃうんだよね。

「まあ折角のお誘いだし……束ー、入るぞー」

 妙に近未来チックなドアが開き、これまた暗い室内に入る。その部屋は中央のモニターしか光源が無いように見えるのに全体がぼんやりと光っていた。
 間接照明だろうかと考えながら入ると、こちらに背を向けた椅子からひょこっと手が生えてきた。こちらに手招きをしている。束だろう。

「よう、どーしとぅあっ!?」
「……にひ」

 椅子の正面に顔を出した途端、ぐるりと視界が回る。そして軽い衝撃と共に椅子へと押し付けられていた。
 軽い衝撃の正体は束が俺の上に乗っかった衝撃らしかった。現に俺と向かい合うように俺の膝と言うか股間の上に跨っている。勃起すんぞテメー。

「えへへー」
「そうか、遂に脳が……」
「何か酷い事言われてる!? 違うよー、久々に会えて嬉しいんだよー」
「んな時間空いてた訳でもないだろーが」
「投稿時間的な意味でね」
「……すんません」

 首に腕を回されて抱きしめられる。よーし良いぞもっとやれ。あと体温高いなお前。風邪でも引いたか?
 ……いや、この股間から太もも周りの湿気から察するにそういう事なんだろう。バッチコイだ。

「ね……私、今すっごいドキドキしてるの。聞こえてる?」
「ああ。しかしお前、少し痩せたか? 何か前より軽い気がする」
「お、嬉しい事言ってくれるねー。よーし、ご褒美にもっとぱふぱふしてあげよう」
「バッチコイヤオラァー」

 いや、これは痩せたんじゃないな。やつれてるんだ。まあこの程度なら研究に没頭してる頃ならよくある事だが、俺を呼んだって事は何かしら理由があるんだろう。
 などと考えている間も頭をクンカクンカされているので俺もお返しに谷間をクンカクンカしてやる。何か今の俺、凄く頭悪い。

「で、何の用だ? わざわざ呼び出すなんて珍しいな」
「むー、すぐ用件に持ってこうとするー。これだから日本人はワーカーホリックって言われるんだよ」
「まあ混じりっ気なしの日本人なんで。別に今の状態のままでも話は出来るだろ?」
「ちょっと説明が必要だからね……っと」

 束が手を離し、体を180度回転させる。いわゆる背面座位の形だが、これは昔からよくやっていた形なので素直に前に手を回してやる。
 身じろぎする度に感じられる尻や背中の柔らかさと、前に回した手が支える胸の重みが実に心地良い。その間に束は話をする準備を整えていた。

「ゲンゾー、亡国機業って知ってる?」
「一応はな。世界各国の政府や有力企業、巨大な組織の殆どを支配下に置いてる秘密結社ってぐらいは」
「そこなんだけど、潰しちゃおうと思うんだ」
「黒鍵、だったか? 確かに邪魔だな」

 亡国機業。この名称は実は正しい物ではない。いや、そもそもこの組織には正しい名称など存在しない。
 世界各国に影響力を持ち、古くはギリシア元老院やローマ教会、バラモンや藤原摂関家等は一通り連中の影響下にある、もしくはあったと見て良い。
 たまに力を落とす事もあるが、その場合はその時に隆盛を誇っている組織が亡国機業によって作られた物である可能性が高い。
 ここまでは俺も知っていたが、どうやら束は自力で調査を行っていたらしい。よくこんな情報を手に入れられたもんだ。

 亡国機業の力の根源には『黒鍵』という物体が関わってくる。これは人類有史以前から地球に存在する宇宙起源物質らしく、亡国機業はこの力を過去何度か使った事があるらしい。
 形状は基本的に2メートル程度の杖のようなものだが、中には黒く巨大な板や球体である物もあるらしい。ぶっちゃけるとモノリスとかARMSだ。
 神の子とか預言者とか歴史上で言われている人物もこの黒鍵の能力の一部を使っていたらしく、それこそ超常的な力が使えたんだとか。
 世界中で確認されている超能力者や奇跡なんかはそれが遠隔地で発揮されているだけ……らしいのだが、それを確認する術は無い。というのが束からのメッセージにあったことだ。

「……今の世界は、つまらないからね。連中が世界を管理する、とか言ってるせいで可能性が消えちゃってるもん」
「お前、個人の暴走から起こった事件とか好きだもんなぁ……予想が出来ないから面白いってのは解らなくも無いけど」
「で、それにはあの連中がちょこっと邪魔なんですしーおすしー」
「世界の管理者が混沌を許す訳もないだろうしな」

 機を織るように、少しずつ模様を作るように国を亡くしていく。だから亡国機業。どこの誰だか知らないが上手い名前をつけたもんだ。
 しかし、束が望むのは混沌。一秒の後、一瞬の後にどうなるのかが予想も出来ないような『面白い』世界。

 最初はきっと興味本位で世界をエミュレートしてしまい、その結末が何度やっても変わらなかった。それだけの事だったんだろう。
 束は生来の頭の良さから自分の予想の範囲外の事柄を好む傾向にあり、そんな世界はつまらない事この上なかったに違いない。

 だから白騎士事件を起こして世界を変えた。科学の可能性と、今の政治や国際関係の限界を気付かせるために。
 俺と作ったハミングバードの技術がそれを可能にし、それを御し得る千冬がそれを可能にした。だからやった。それだけだ。

「ホントはISコアはこんなに一杯作るつもりは無かったんだ。多くても100とかそれぐらい。それで充分な筈だったから」
「……だが、お前はこいつらに気付いた、と。よく気付いたな」
「これでも篠ノ之流の後継者候補だったからね、悪意とか邪気には敏感なんだ。そしてコアを作りながらちょっとずつ調べて……最低でも450は欲しいって解ったんだ」
「ISそんだけ集めないと駄目とかどんだけだよ……」

 連中にISが拿捕される可能性もあったし、余分に作っておく必要があったそうな。まあ実際にすぐ奪われてたしね。
 あと俺に説明が無かった理由は俺は説明しない方が面白いから、だそうな。これは喜んで良いんだろうか……。

「ゲンゾーにもISが使えればもっと少なくても良かったんだけど……でも、いっくんのために作ったプログラムが光明を見出してくれた」
「一つ事例が出来ればあとは調べるだけだもんな。それこそ俺達の領分だ」
「うん。それにゲンゾーが作ったAIと第五世代技術……アレがあればコアは10個もいらない。ふふっ、本当にゲンゾーは面白いよね」
「そうか? 俺としてはお前が予想できる範囲でしか動けてないと思ったんだが……」

 ふるふると束が頭を振る。束が面白いと言う時は大抵「予想が出来なかった」と言っているのと同義になる。頭が良いのも考え物だな。
 世界の動きを予想できれば、と大抵の人は考える。だが、それが『当たり前』である束にとってはその逆こそが願いなのだ。

「連中を消せば世界を導く者は居なくなる。そうすれば世界は混沌へと変わっていくよ。解りきった結末じゃなく、ね」
「……カオス、か」
「ちゃおッス、かもね」
「最初はギャグ漫画だったのになぁ……」

 いまいち締まらないが、それが俺達らしさだろう。だってそうしないと平静を保っていられないから。具体的には息子がおっきしてるから。
 ……あ、やべ。良い事思いついちまった。

「クウネルー、聞いてたらこっち来ーい」
「あ、今日はそんな名前なんだ」
「―――ここに」
「早いなオイ。あと今日はって何だ?」

 音もなく現れるクウネル。ただ束の言葉からすると名前には若干事情があるらしい。それもそうか。

「くーちゃんは毎日違う名前を名乗ってるんだ。共通点は『く』で始まるって事だけ」
「昨日はクワトロ・バジーナ、一昨日はクドリャフカ・ストルガツカヤでした。因みに明日はクロコダインです」
「最初に会った時なんて暫く下ネタだったしねー」
「当時は語彙が貧弱でしたから」

 案外解っててやってた可能性もあるが。しかも明日は獣王かよ。

「話を戻すぞ、クー。お前はこの部屋に入る前に自分が言った言葉を覚えてるな?」
「はっ」
「今から嫌ってほど見せてやる。存分に楽しめ」

 俺はそう言うと束のスカートをたくし上げ始める。束は慌てて太ももを閉じるが、生憎とパワーが、そして何よりも速さが足りない。
 既に右手は最後の一枚に辿り着いているし、左手はがっしりと巨峰を掴んでいる。感覚信号を伝達するタイプを持ってくるべきだったか。

「え、あ、ちょっ、ゲンゾー!?」
「お前も期待してたんだろ? 存分に愉しませてやるよ」
「や、そんなぁ……」
「……マジで始めやがりました、こいつら」

 とりあえず、と言ってクーが指を一つ鳴らす。すると暗く雑多な部屋が普通の六畳一間に変化する。
 ほむホームの原理を使ったとか何とか言っていたが、そんなんは知ったこっちゃない。

 ……いや、描写はしないよ? ×××板行きになるし。



 はい、どうも。遂にオリジナル展開へと入っていきます。Bルートって書いてあるように原作が進めばAルートも進んできます。
 そして明らかになった亡国機業と束の秘密。考えれば考えるほど単純な方向に進んでくのが俺の悪癖ですね解ります。

 そして現れたくーちゃん。外見はラウラとほぼ同じです。彼女の本名はきっと永遠の謎。そしてマリーナ武装を完璧に使いこなしております。
 早ければ次か次の次でBルートは終了になります。次回、乞うご期待!


 因みに今はフェアリーテイルの転生オリ主書いてたりします。ミラジェーンは子供の頃の方がかわいいよね。





[27457] 第二十一話「Bルート:パルスのファルシのルシがコクーンでワールドパージ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2012/02/26 10:36


 第二十一話「Bルート:パルスのファルシのルシがコクーンでワールドパージ」

 最初にワールドパージって聞いた時からずっとこのネタが頭から離れなかった。



 ―――地中海に浮かぶイタリア共和国特別自治州、シチリア島。そこにある屋敷の一室に、三人の女性が居た。

 一人はこの辺りではあまり見かけないモンゴロイド。周囲の人間からは無口な中国人と認識されている彼女の名は、マドカ。しかし普段はエムと呼ばれている。
 一人はウェーブのかかったブロンドを持つ女。珍しくない特徴を持つ彼女は美人過ぎるが故に周囲から浮いてしまう、という特技を持っていた。彼女はスコールと呼ばれている。
 一人はスコールの座るソファの隣に立ち、壊れ物を扱うかのように彼女の髪に手櫛を入れていた。彼女のコードネームはオータム。外見的には化粧がケバいぐらいが特徴の女である。

「……何かひでぇ事言われた気がする」
「あらあら」
「……フン」

 第六感的に何かを察したオータムに対し、くすくすと笑うスコールと興味無さ気に窓の外を見るマドカ。
 一見スコールは優しそうだが、その実オータムが落ち込む様を見て楽しんでいるだけなので始末が悪い。

「……それで、今の話は本当なのか?」
「あら、信じるのかしら? てっきり与太話だと否定すると思ったのに」
「別に何を信じようが私の勝手だろうが」
「そうよね。てっきり後が無いから一も二も無く飛び付いたのかと思ったわ、ごめんなさいね」
「くっ……」

 束が得た情報とほぼ同じ事を言われ、マドカがその確認を取る。確かに、既に与太話を通り越してオカルトの域であった。
 その事を指摘され、胸囲が72センチになったかのような声をあげるマドカ。しかしスコールが言うように、既に彼女には後が無かった。

 IS学園に対する作戦は悉くが失敗しており、先日に至っては、マドカの独断専行で日本の市街地での発砲すらしてしまった。次の失敗は死を意味する。
 例えそれがIS管理部統括―――スコールの思惑通りだったとしても、である。でなければ襲撃失敗直後のマドカが織斑一夏に会いに行ける訳が無い。

「インフィニット・ストラトスは強大な兵器よ。製作者の意図や性格がどうあれ、それは変わらない事実……だけど、直接的な戦力よりも注目すべき点があるわ」
「それがマン・マシン・インターフェイスの独自性、か。確かに理論的な思考ができる人間が作った物とは思えない代物だがな」
「非効率的過ぎるのよね、アレ。製作者―――篠ノ之束の戯言を全て真に受ける訳ではないけど、そうとしか思えない事例も確認されているわ」
「なあスコール、今の話とISの話がどう繋がるんだ? 私にはよく解らなかったんだけど……」

 さらさらと流れるような金髪を梳きながらオータムが尋ねる。スコールの言葉を信じない訳ではないが、彼女が何を考えているのかはオータムには解らなかった。

「似ているのよ、この二つは」
「黒鍵とやらとISがか?」
「ええ。黒鍵が一定以上の稼働率を示した時のデータが残っていたのだけれど、それを総合すると『合理的ではない』結果が出るのよ」
「だから……似ている、と?」

 他にも理由はあるのだけれどね、とスコールはマドカの問いに答える。だが、どうであるにせよマドカにとって興味を引く話ではなかった。
 彼女にとって最優先事項は織斑の血を引く者の排除であり、そのオリジナルとなる事なのだから。
 因みに一夏はその計画には入っていない。一夏の成長速度に気が付いていない彼女の評価は非常に低いのだ。

「あら、興味が無いかしら?」
「ああ、無いな。これならば織斑千春に襲撃をかけていた方が有意義な時間になったな」
「無駄ね。彼女は今、昏睡状態よ。貴女も知っているでしょう?」
「そうだったな……残念だ。実に残念ダァ!」
「こえーよコイツ」

 千春が昏睡状態に陥ったと言う報告を聞いた時からマドカはずっとこの調子である。自らの手で引導を渡さなければ納得しないのだろう。

「まあとにかく……少し手伝ってもらえるかしら? そうすれば好きな時に好きなだけ戦いに行けるわよ?」
「……ほぅ?」
「今までは不利な状況が続いていたし……まあ、それで作戦が成功するならそれに越した事は無かったのだけれど」
「酷い女だな、貴様は」
「あら、今頃気が付いたの?」

 今までの作戦は結果的に相手側の戦力を向上させるだけであった。そもそも剥離剤の使用や、幾ら多対一を想定していても単機での襲撃など不可解な点も多かったのだ。
 それはつまり、失敗しても作戦立案者―――スコールの得になるように仕組まれていたという事。オータムやマドカは彼女に良い様に利用されていた事になる。

 その事についてはマドカも薄々感付いていた。しかし、自分ならば成功するという自負はあったし、重ねて言うがマドカは織斑の血に勝てればそれでいいのだ。
 流石にオータムは道化としか言いようが無いが、彼女はスコールに全幅の信頼を置いている。だからこそスコールも彼女を側に置いているのだ。

「貴女達の失敗のお陰で私達の信用は地に堕ちたわ。そして既に別働隊が動き出している……私達を監視していた部隊が、ね」
「成程、それが狙いか」
「ええ。行動を起こすなら今がチャンス、と言うか今しか無いのよ。次の行動を移すまでの猶予として与えられた間だけ、私達は誰の監視も受けないわ」
「幾ら世界を動かしているとは言え、所詮は人か。必ずどこかに穴が出来る」

 それを僅かな間とは言え、スコールは作り出して見せた。それならば何故このタイミングなのか。それも簡単だ。
 マドカ達がこの島に集まった理由、それを思い出せば良いだけの話。

「ISの修理が完了するタイミングを合わせたのか」
「ええ。更にここに集めたのにも理由があるわ」
「……まさか、ここに?」

 スコールは無言で首肯する。何て女だ、とマドカは驚愕する。そしてこの女は敵に回さない方が良い、とも。

 単に受け渡しをするだけなら日本のどこかで問題ない。主な活動区域はIS学園の周辺であり、大抵はそこに居るのだから。
 しかし、この女はそれをどうにかしてわざわざイタリアまで持って来た。マドカには手法はてんで見当がつかなかったが、その時点でこの女は手強い相手だというのが解る。

 それならば精々利用してやれば良い。能力の割にはロクな事を考えて居なさそうなこの女にも、世界の管理にも興味は無い。マドカはそう考えていた。

「……解った。どうすればいい?」
「コア三つ分の処理能力があれば問題無いわ。黒鍵の所まで持って行けば後は私がやる」
「三つ……そう言えばお前も持っていたな」
「ええ。質問はもう無いかしら? 無いなら早速始めようと思うのだけど」

 今度はマドカが無言で首肯する。それにスコールは満足そうに微笑んでソファーから立ち上がり、颯爽と踵を返す。
 マドカはまだスコールのブロンドを弄って居たかったのか若干不満げなオータムと並び、その後ろに続く。

「私の権限で近付けるギリギリまで近付くわ。そこからは強行突破になるけど、他の保管場所に比べれば簡単だから安心して」
「なんだ、普段はスイス銀行にでも置いてあるのか?」
「確かにそこは厳重な所よね。それでもISが三体あれば充分制圧できるけれど……着いたわ、これに乗るわよ」

 それは屋敷の地下に繋がるエレベーターであり、久々に暴れられるのかとうずうずしていたマドカが肩透かしをくらう。
 三人はエレベーターに乗り込み、スコールが階数指定ボタン以外の部分を弄る。それが目当ての場所へ行く方法だったのか、エレベーターは静かに下降を始めた。

「スコール、本当にこれで行けるの?」
「ええ、安心して。ここは世界各地を転々とする黒鍵の保存場所の中で警備が一番手薄な所だから」
「よくもそこまで調べられたな……」
「私、これでも上に信用されてるのよ?」

 この組織は駄目だな、とマドカは嘆息する。それともこの女の形をした毒すらも飼い慣らせると確信しているのだろうか、とも。
 その線ならばやはりこの組織は駄目なのだろう。現に飼い主に牙を剥こうとしている。それとも、黒鍵を手に入れる直前に奇襲でも仕掛けるつもりなのだろうか。マドカは再び嘆息せざるを得なかった。

「―――着いたわ」
「……開かないぞ?」
「この階は暫く待たないと開かないようになっているのよ。下手にボタンを弄ると致死性のガスが出てくるから気をつけなさい」

 そのスコールの言葉を裏付けるかのようにエレベーターが開き、その空間が視界に入る。

 ソレが、目に入る。

「……っ! な、何だこれは……!」
「アラクネが、怯えてる……!?」

 視界に映るのは、何の変哲も無い黒い棒である。強いて言えば多少捻れているだけであり、材質こそ解らないが変わった所は無い。
 だが、その考えは全身に感じる圧迫感が全て打ち消していた。それは物理的にマドカ達を拒んでいるようにすら感じるものであった。

 しかし、その中にあって尚スコールは涼しげな笑みを崩さない。それどころかソレへ向かって悠々と歩き始めた。

「ス、コール……!?」
「ほら、早くなさいな。この程度、霧雨と特に変わらないでしょう?」
「な……!」

 今尚マドカとオータムを後ろへ押し返す圧力を欠片も感じさせない動作でスコールは歩く。この圧力も不可解なら、二人から見たスコールも不可解の塊であった。
 しかし、オータムはスコールに見捨てられないために、マドカは半ば意地で足を踏み出す。と、途端に圧力が消え去った。

「だから言ったでしょう? 霧雨と変わらない、と。見えなくとも、不可解でも、一歩踏み出してしまえば大した事は無いのよ」
「……チッ」
「催眠術……?」
「さぁ? 拒絶なのか何らかのメッセージなのか、それとも機械的な動作でしかないのか……今の圧力に関しては何一つ解っていないらしいわ」

 歩いてくる二人をスコールは待つ。そこは大して広くない部屋であり、数歩も歩けば二人はスコールに追いついていた。
 そこで改めてマドカは黒鍵を目にする。それはやはり何度見ても捻れた黒い棒にしか見えず、素材は炭にも黒曜石にも見えた。

「これが、黒鍵……」
「この状態だと鍵の先になる部分が土台に隠れているらしいけれど、この黒鍵はちゃんと鍵の形をしているらしいわよ」
「フン……それで、どうするんだ?」
「せっかちねぇ……二人のISを渡して頂戴。それでいいわ」

 スコールの言葉にオータムは素直に従い、左手の小指に嵌めた指輪を渡す。スコールはそれを確認し、自らもISらしきネックレスを外した。
 しかし、マドカはスコールを全面的に信じている訳ではない。ただでさえ色々と軋轢があるのだ、信用などできる筈も無い。

 だが、良く考えれば二人はほぼ丸腰である。実際にISを持っているスコールはともかく、オータムも銃やナイフを隠し持っている様子は無い。
 それならば何かあった時はサブウェポンとして銃を携帯している自分の方が有利だろう、と結論付けてマドカもイヤリングを外した。
 いちいち待機形態を考えるのが面倒だったので強奪した時にブルー・ティアーズと同じ形にしたのだった。

「何か機器を用意しなくて良いのか?」
「ああ、平気よ。直接接触させれば良いだけだから」
「フン、なら早くしろ」

 マドカはサイレント・ゼフィルスに何か特別な愛着を持っている訳ではない。そもそも強奪した物だし、その理由も機体特性を考えたからに過ぎない。
 しかし、それでも自らの最大の戦力が信用できない相手に握られているのは心細かった。これが終わったらたまには整備でもしてやろうか、とマドカらしくない考えが頭をよぎる。


「さて、それじゃあ……やりなさい、オータム」


 タァン、と乾いた音が室内に響く。続けて重いタンパク質が地面に落ちる音。マドカにとってこれは聞き慣れた音であった。
 これは銃弾に倒れた人間の音。しかし、マドカの脳は現状を把握しきれて居なかった。何故か音源が今までに無いほど近かったから。

 そして、自らの手足が全く動かなかったから。

「な―――カフッ」
「無駄だ。幾ら対人弾を使ったとは言え、両手足に散弾喰らってるんだ。何発か臓器にも当たってる筈だぜ」

 オータムのIS、アラクネが展開されていた。八つの装甲脚に砲門が装備されており、今の攻撃はそこから対人散弾が撃たれた物だった。
 マドカは今の瞬間、オータムには全く意識を向けていなかった。だから喰らっていた。スコール側からの攻撃ならば避けるなり何なり出来ていただろう。
 だが、おかしい点がある。その点があるからこそ、マドカはオータムに意識を向けていなかったのだ。

「馬鹿、な……貴様のISは……」
「ねえ……オータムがIS学園に行った時に使った装備を覚えているかしら?」
「何……?」

 心底愉しそうなスコールの質問が聞こえる。あの時の作戦はマドカも一応関与していたから知っていた。勿論、その性質も。

「リムー、バー……」
「そう……どうしてアレを持たせたと思う?」
「ま、さか……」
「ええ。今、この瞬間のためよ」

 剥離剤の性質、それはISを無理矢理引き剥がす事。しかしそれは一度喰らえばISの学習能力によって別の能力を開花させてしまう。
 遠隔コール。ISが手元に無い状態でも装着を可能にする能力。つまり今の一撃は遠隔コールからの高速精密射撃、という事になる。意外と腕はあったのか、とマドカは内心驚いていた。

「あの、後……使った、のか……」
「ええ。万が一があるといけないって」
「まあ、一度テメェはぶっ飛ばしたかったからな。スコールにはホント感謝してるぜ」
「ええ。私も感謝してるわ、オータム。この子、少し邪魔だったから」

 オータムはISを待機状態に戻し、改めてスコールにアラクネを渡す。オータムはともかく、スコールは最初からこうするつもりだったのだろう。
 ……最初、というのが一体何処からなのかが問題だが。まさか自分と初めて会った時じゃないだろうな、とマドカは半ば本気で考える。この女ならそれぐらいは普通にしそうだ、とも。

「それなりに短くない付き合いだし、命までは取らないであげるわ。特等席でゆっくりと見ていなさい」
「く……っ」

 愉快そうに微笑んだスコールは再び黒鍵へと向き直る。マドカからその表情は見えなかったし、スコールという女はその表情を想像できるほど底の浅い女ではなかった。

「さぁ……世界よ、私が貴方を飲み込んであげるわ……!」

 スコールは心底愉しそうに声を上げ、三機のISを纏めて握った右手を掲げる。しかし、その表情は鬼気迫る物であった、と言うか顔芸の域に達している。
 現に一瞬だけそれを目にしたオータムが怯えて一歩引いていた。しかしスコールは既に彼女も眼中になく、高く掲げた右手を黒鍵へ思い切りぶつける。

 その瞬間、その場に居合わせた三人は声無き絶叫を聞いた。

「何だ……これは……!」
「アラクネ……!?」
「ふふっ……さぁ、私を導きなさい! 無限の宇宙へと!」

 ぞぶり、とスコールの右手が黒鍵へ沈んでいく。しかし、それは明らかに不可解な現象だった。
 黒鍵の直径は太くても十センチ程度しかない。なのに何故かスコールの腕は手首と肘の間の辺りまで埋まっている。

「スコール、腕が!」
「ふふ、大丈夫よ……この時のために用意したんですもの。そうでしょう、スメラカミ!」

 スコールは腕が黒鍵へと消えようが一切動揺しない。それどころか、その状態で自らのISを起動した。
 正気の沙汰ではないが、今この場で彼女の正気を疑う者は居ない。無論、悪い意味でだが。

 起動したISの名はスメラカミ。亡国機業が独自に開発した情報やデータの統合・制御に特化したISである。
 武装は防御用のエネルギーフィールドしか装備していないが、それを補って電算系では高い性能を誇る。
 ……尤も、束や源蔵が手慰みや寝起きに作った機体の方が遥かに性能が良いのだが。それでも、今この場においては充分な力を発揮していた。

「アラクネ、サイレント・ゼフィルスの処理能力を制御下に。制御が終了し次第黒鍵の権能を掌握しなさい!」

 既に肩口まで黒鍵に沈んでいるというのにスコールは動じない。それどころかその表情は愉悦と興奮に歪みきっていた。
 そのまま少しずつスコールの姿が黒鍵へと沈んでいくと、やがて周囲の空間に変化が生じ始めた。

「凄ぇ……で、でもスコール、これじゃ!」
「空間が、捻じ曲がって……」
「ククク……そう、そうよ! 見せなさい、黒鍵! 貴方の力の全てを!」

 景色が歪む。否、空間そのものが歪み始める。幾何学的な常識が消え去り、周囲が異界へと変化していく。
 ぐるぐる、ぐにゃぐにゃと世界が歪んでいく。離れていたオータムとマドカまでその影響範囲が及ぼうかとなった次の瞬間、事態は動いた。

 スコールが、消えた。

「……え?」
「消え、た……?」

 二人は慌てて周囲を見渡すが、そこには何も無い。幾何学に喧嘩を売っていた空間の歪みもなく、来る以前となんら変わらない空間がそこに広がっていた。
 黒鍵も変わらず、歪な姿を晒しているだけだ。スコールは影も形もなく、最初から二人しか居ないと言われたら信じてしまいそうになる。

「スコール……スコール!?」
「失敗……だと……?」

 事態を把握したオータムがスコールを求めて声を荒げる。しかし、それに答える声は無い。マドカは撃たれ損だと半ば他人事のように考えていた。
 しかし、オータムの声が一頻り響き、マドカの体が撃たれた痛みを認識し始めた頃に変化が現れる。

『―――フ、フフッ』
「スコール!? どこ!? 何処に居るの!?」
『安心なさい、オータム……私はここに居るわ』

 ずるり、と黒鍵の形が変わる。質感をそのままに腕が、肩が、体が捻れた棒のような黒鍵から現れる。
 それは女性の物であり、その場に居合わせた二人にとっては一人しか思い当たるモノはなかった。

「驚いたな……人間を、やめたか……」
『あら、案外気分のいいものよ? 獣を超え、人を超え、そして神をも超える……この気持ち、まさしく最高にハイってヤツね』
「スコール!」

 上半身が黒鍵から生えており、質感が黒鍵のままな事以外は先程となんら変わらないスコールが姿を現す。
 そして何故か台詞が妙な事になっていたが、生憎とこの場に居合わせた二人にとってそんな事はどうでもいい事だった。

「訳の、解らない事を……終わったなら、さっさと手当てをしてくれ……邪魔をする気はない」
『撃った側にそんな事を言うなんて、貴女変わってるわね』
「生憎と、お前達しか手を借りれそうに無い、しな……恭順を示せば、生き残れるかもしれないだろ?」
『生き汚いわね』
「目的を、達していない……からな。プライドなど、犬にでも食わせるさ……」

 普段のマドカからは想像も出来ない姿である。しかし、こういった思考の非凡さこそが織斑の血の証明でもあった。
 それを気に入ったのか、スコールはマドカへ手を翳す。それに対するアクションを起こす力も惜しいのか、警戒こそするがマドカはされるがままだった。

「スコール、どうするの……?」
『黒鍵は奇跡を可能にするわ。怪我の治療……いえ、臓器丸ごと欠損しても再生可能よ』
「なら、早めに頼む……視界が、霞んで……きた」
『はいは―――ヰ』

 それは何の音だったのだろうか、ズレるような、割れるような音。それがスコールの形を取った黒鍵から漏れた。

「……スコール?」
「どう、した……?」
『何……デモ、無い輪。何DE喪―――』
「スコール!?」

 ザリザリとスコールの声にノイズが混じる。つい先程まで滑らかに動いていたスコールが錆付いたかのようにぎこちなくなる。
 やがて発せられる声は意味の無い音の羅列となり、周囲の空間を侵食し始める。

「スコール、スコール!」
『亜zqdぇrftgyふんjみl。;p・』
「クソッ、一体何が……」

 更に少しすると黒鍵に変化が現れた。黒鍵から生えていたスコールの上半身の輪郭が崩壊し、内側からありえない質量の何かが現れたのだ。
 それは開花するようにスコールの体―――否、黒鍵全体から生え、やがて黒鍵を覆う卵か繭のような形を取る。
 しかし、その表面は常に蠢き、それを良く見ると捻れた直線や直進する曲面、連続しない波面や90度以上開いた鋭角などが、が、がががががg、

「何だ、これは……失敗……?」
「スコール、スコールゥ! 一体どうしたの!? 返事をしてよ! スコォォォォル!」

 いい加減に体力の限界であるマドカと錯乱するオータム、そして沈黙する黒鍵。状況が混沌としてきた時、事態は動き始める。
 黒鍵が卵のように割れ、中から無数の触手が現れたのだった。その体積は明らかに黒鍵に収まる物ではなく、部屋の壁を突き破っていく。

「クソが……オータム、脱出だ……!」
「スコォォォォォォォォル!」
「チッ、使えん……がはっ!」

 無数の触手が突き破った壁の欠片が二人を押し潰す。そこで二人の意識は途切れるが、事態は更に悪化していった。
 もとより地中にあった部屋が崩れる。しかし黒鍵にダメージは無く、その触手を上へ伸ばしていく。

 そして、その姿が地上に現れる。

 元より人気の無い区域だったが、周囲の住民からすればたまったものではないだろう。何せいきなり屋敷が吹き飛び、そこから無数の触手が現れたのだから。
 現にここ一帯の人間はパニックになり、シカゴタイプライターやアップル及びパイナップルの音がそこかしこから響き始めた。

「ん……スコール……?」

 半刻と経たない内に地獄と化した一角で、こめかみから血を流したオータムが起き上がった。
 瞳こそ虚ろで多少の流血はあるようだったが、彼女の姿は周囲に比べればまだマシな方である。

 瓦礫の上や下を問わずにコーサ・ノストラや無関係の一般人、観光客の死骸が散乱している。
 いや、殆どの死体は『残骸』と称した方が正しいだろう。どう見ても原形を留めている物の方が少ない。

「スコール!」

 やがて意識をはっきりさせたオータムが立ち上がり、本来屋敷があった方角を探す。既に景色どころか地形が変わっており、改めて探さなければ現在地すら解らなかったのだ。
 マドカの姿は無い。オータムは幸運にも地上へ出た衝撃で瓦礫の上に乗れたようだったが、マドカは生き埋めになってしまったのだろうとオータムは予想する。

「あれは……!」

 やがて屋敷のあった方角を見つけると、未だ天高く蠢く触手の群れを発見する。何が出来るかは解らなかったが、オータムは屋敷の方へと駆け出した。

「待ってて、スコール……!」

 既に彼女自身も満身創痍だが、スコールの事を想えば怪我などあって無い様な物だった。やがて屋敷跡へと辿り着き、改めてその姿を視界に映す。
 木の枝か軟体動物のような触手がうねうねと空へ突き出し、風も無いのにゆらゆらと揺れている。辿り着いたは良いものの、オータムにはここから先の手段が無かった。

 ―――否。違う、以前日本に居た時に似たようなアニメーションを見た。

「……よし」

 あの時は何となくつけたテレビに映っていただけだが、あのシーンは良く覚えている。男を自分に、女をスコールに見立てて妄想すらした。
 だから、今こそ言おう。あの結末を勝ち取ろう。

「スコール……私は、貴女が好きだ! 貴女が欲しい! スコォォォォォル!」


 ―――言いきった直後、触手の一本がスコールを肉塊へと変えた。こう、ぐしゃっと。




「………。」
「………。」
「無様ですね」

 一部始終を高高度滞空にステルスをかけて覗いていた俺達の間に、何とも言えない空気が漂っていた。
 いや、今のは無いわ。

「あ、おかえりくーちゃん」
「はい、唯今帰還しました。目標04の生命活動の停止及び遺体の焼却、完了致しました」
「ごくろーさま。アレははるちゃんを撃った奴だからね、そろそろ片付けておきたかったんだ」

 何とも言えない後味の悪さを味わっていると、俺達の乗っている飛空艇にクーの奴が戻ってきた。どうやらマドカの処分も完了したらしい。
 しかしクーよ、その結局なんて名前の種族か解らなかった冷凍庫キャラが乗ってた飛行用ポッドは何だ。あ、俺が作ったやつか。

「因みに今日の私はクウラですよ」
「ああ、あの弟よりしつこい?」
「ええ、弟よりみっともないアイツです」
「一応弟より強いんだけどな……」

 散々な言われようである。そして確かにクで始まる名前だけどさぁ……昨日は鼻無し気円斬だったし。

「しかし、これで懸念事項の一つが消えましたね」
「あとは黒鍵を回収して封印、かな。駄目だったら宇宙に放り投げりゃいいだろ」
「そしてやがて考えるのをやめるんだね。まあ私もそれで良いと思うけど」
「惑星ダビィーンの連中に回収されそうで怖いけどな……」

 その場合はISエンペラーに千冬が乗る事になるんだろか。あれ? そうなると俺クローンじゃね? 束は壊れっぷりが校舎に居た頃の隼人と同じって事で。
 などと考えていると、地上の状況に変化が現れる。うねうねとセルフ触手プレイをしていた黒鍵が収縮を始めていた。

「……戻りましたね」
「食後の運動か何かだったんだろ……ありゃARMSっつーよりベヘリットかもな、辺り一帯皆殺しだし」
「ちょうどゲンゾーも義手だしね」
「そうなると千冬がグリフィスになるんだが……まあいいか。トラクターフィールド展開、っと」

 元の鍵の形に戻った黒鍵を直接触れないように回収し、飛空艇を発進させる。えーっと、次はアーカムか。ミスカトニックは侵入すんの面倒なんだよなー。



 さくっと黒鍵編が終わってしまいましたw(マテ
 黒鍵の力を失った亡国さんはこれからガシガシ弱体化していきます。まあ経済とかの分野じゃ相変わらず影のフィクサー(笑)なんですが。

 って事で次回はBルート最終回になります。混沌を望む束達の行動の結末とは!? って言うか最後までネタで突っ走る気満々なんですが。
 零話とか色々考えてたんですが、まあその辺は気が向いたらって事でお願いします。ではまた次回。





[27457] 第二十二話「Bルート最終回:IS学園ハンサム」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:d0383ff2
Date: 2012/03/12 22:06


 第二十一話「Bルート:IS学園ハンサム」

 で、束さんのフィギュアはいったいいつになったら出るの?



「……これは何だ」
「「「………。」」」

 朝のホームルームを始めるために教室に現れた千冬が生徒に尋ねる。それが示す物は箱。綺麗にラッピングされたプレゼント用の紙箱だった。
 因みに誰も気付いていないが、包装紙には細かく「ハコモアイシテ!」と書かれている。大丈夫、2ではボトムズごっこができるっぽいから!

「織斑、答えろ」
「え、えっと……箱、ですねぶらっ!?」
「誰が形状を言えと言った。この箱の中身、及び差出人を知っていれば答えろ。解らないならそう言え」
「わ、解りません……俺が来た時には、もう……」

 お決まりのボケを一夏がかまし、千冬がそれに対して物理的にツッコミを入れる。それ自体はよくある事だったが、先のタッグマッチの後から千冬の攻撃に容赦が無くなってきている。
 因みに今回ツッコミを入れたのはやたらファンシーなデザインと色合いのギターである。ロッドモードになっていたら遠心力で更にダメージが増えていただろう。
 ……何故そんな物を持っているのか、というツッコミをする猛者――命知らずとも言う――は居なかったが。

「朝練もいいがもう少し余裕を持って行動しろ。他に知っている者は居るか?」
「は~い。いきなりISみたいに出てくるの見ました~」
「そうか……ご苦労、布仏」
「織斑せんせ~、やっぱりそれって佐倉せんせ~が居なくなったのと関係あるんですか~?」
「……ほぼ間違いなく、な」

 はぁ、とクラス全員の溜息がシンクロする。色々と問題はあるが、佐倉源蔵は世界的権威である。それが失踪したとなれば普通は大事だろう。
 だが、失踪ネタは既に前例が居るし、普段からチョコチョコ居なくなっては山なり海なり秋葉原なりで発見されているので実はあまり心配されていない。

 流石に失踪一ヶ月を超えた頃から色々と手を尽くしているが、発見どころか影すら見つからない。やろうと思えば相方と同じ事ができるのだ、そう簡単には見つからないだろう。
 と言うか、唐突に片眉を剃り落として山篭りを始めてもおかしくない、と認識されているので何処をどう探せばいいか解っていなかったりする。

「教官、自分が爆発物処理を行いますか?」
「いや、火薬や劇物の匂いはしない。大丈夫だろう」
「匂いって……流石千冬さんね」
「って言うか包みはビリビリ破くタイプなんゲフゥッ!?」

 既に色々と人間を超越している千冬が「危険物処理は任せろー」と言わんばかりに包装紙を破る。
 あと谷本が机に沈んだ。

「何か入っているな……それに、手紙?」
「何故でしょうか、凄く嫌な予感がしますわ……」
「あの箱、どこかで見たような……?」

 バリバリと破かれた包装の中に入っていたのは二つ折りの手紙と木製の箱であった。千冬は箱を改め、特に危険が無い事を確かめると手紙を開いた。
 その瞬間、クラス全員に聞き覚えのある声が聞こえてくる。

『そのスイッチが新たなる扉を開く。自分の運命を知りたまえ。パスワードはTABANE。その運命を掴むかどうかは君次第だ』

 この瞬間、シャルロットを除いた全員の心がゴルドラン合体時ばりに一つになる。やっぱりか、と。
 因みにシャルロットはロッカーの話だっけ、と自らの記憶を反芻していた。ある意味一番平和な頭の持ち主である。

「書いてある文面は同じ、か。箱は……スイッチ?」

 既に疲れた表情をし始めている千冬が箱を開け、中に入っていたスイッチを弄る。カチリ、と音がするのと共に空間投射ディスプレイが現れた。

『スイッチを押す事を強いられているんだ!』

 集中線と共に見慣れた顔が現れる。つい先程まで絶賛失踪中だった佐倉源蔵その人だ。今度はシャルロットも含めてやっぱりか、と全員の心が一つになる。
 全員が虚ろな目をする中、1ネタやって満足したのかモニターの向こうで源蔵が画面から居なくなる。そこには当然のように共犯者の姿があった。

『いよぉ~う、元気してるぅ? まべちゃぁ~ん』
「……何の用だ、タバスコ」

 メカウサミミをつけた大天災、篠ノ之束である。そう言えばこの格好も長いな、と飽きっぽい友人の顔を見て千冬は思っていた。
 と、急に束の機嫌が悪くなる。と言うかプンプンと擬音を出して頬を膨らませていた。先程の集中線と言い、どんな技術なのか。

『私はそんなライトハンド奏法ができそうなスタンドじゃないよ! まったくもぅ』
「で、用件は何だ? これから授業なんだが」
『えっとねー、その……私、そろそろ独身生活やめることにしたよ!』
「……相変わらず話が飛躍するな。もう突っ込むのも疲れたぞ」

 はぁ、と千冬は溜息をつくが、一番近くに居た一夏は彼女の異変に気が付いていた。生徒の皆に見えない範囲で全力で筋肉の収縮を行っていたのだ。
 他に気付きそうな鈴は微妙に遠かったし、箒は暫く顎が戻りそうに無かった。ラウラは何かしているのには気付いていたが、それが何なのかは解らなかった。

『むむ、ちーちゃんお疲れ? 駄目だよー、ストレスはお肌の大敵なんだから!』
「……お前が言うか、束。で、それだけじゃないんだろう?」
『うん。これは前から話してたんだけど―――』

 その瞬間、千冬の背を何かが駆け抜ける。これはまずい、と思う前に千冬は叫んでいた。

「―――全員伏せろ! 吹き飛ばされるぞ!」
『最後だから、ド派手に行くって決めたんだ!』


 メッセージが終わると同時に、IS学園1年1組教室が爆発した。




「うひょー……また綺麗に吹っ飛んだなぁ……」
「その綺麗な教室を吹っ飛ばしてやる! という事ですね解ります」
「ライフル担いで撃つと肩痛くなるから嫌だよ……」
「むしろやったんですか、束様」

 瓦礫の上に乗り、跡形も無く吹き飛んだ教室を眺める。緻密な計算と大胆な計画により、廊下には煤しか出ないという完璧な密室爆破だ。
 因みに学園の机は襲撃に備えて防弾仕様になっているのだが、流石に丸ごと吹っ飛ばすのは想定外なので見事に破片が散乱している。

「しかし腑抜けていますね。自らの重要性を実感すべきでは?」
「まあ学校だしなー。ちゃんと学園内にモスクだってあるんだぜ?」
「それはまた……」
「イスラム教圏の国も多いからねー。お、生きてる生きてる」

 俺達が教室を見渡していると、床の下からボコンボコンとISを装備した一夏達が現れる。更にその下には他の生徒達が隠れていた。
 そのほとんどが俺達に嫌な視線を向けているのだが、よく見ると一夏に庇われた連中の方に念を送っている連中もいる。

「よう、生きてたか」
「よう、じゃないわよ! 今までどこ行ってたのよ、アンタ!」
「と言うか、いきなり教室を爆破するのはどうかと思いますが……あら?」
「ラウラが、二人……?」

 ラウラにそっくりなクーを見つけ、ガキ共が混乱し始める。その本人はと言えば悔しさを少量の恐怖でトッピングしたような表情をしていた。
 そしてすかさずラウラにプライベートチャネルを飛ばす一夏。相変わらず実戦意識の足りん奴だな……あとモゲロ。

「初めまして。クリボー、とでもお呼び下さい」
「はい?」
「お、今日はメジャーだね、くーちゃん」

 そしてクーの奴は相変わらず訳の解らない名乗りルールに従っていた。あと束、コイツの事だから多分お前が想像してる方とは違うぞ。

「……クリスタルボーイの略じゃねえだろうな」
「流石はお父様、解ってらっしゃる」
「ヒューッ!」

 やっぱりか……束もすぐに気がついて左手を天に突き出してるし。あとサイコガンは俺の領分だ。

「今日は帰ってこの女でオナニーだー」
「しかもそっちかテメェ」
「相変わらずネタが訳解んないわね……ってか箒、いつまで固まってんのよ」

 棒読みでネタを続けるクー。しかしいくら棒読みにしても顔が赤いのは隠せないぞ。
 恥ずかしいならネタなど入れるな。退かぬ、媚びぬ、顧みぬ。これがネタ坂を上り始めるコツだ。

「そんな……まさかあのヘタレの姉さん達が結婚だなんて……私の方が先だと思ってたのに……!」
「オイ束、お前の妹がひでー事言ってんだけど」
「ヘタレは篠ノ之の血だからしょうがないよ」
「嫌な血族だな……」

 まあ解らなくも無いが。柳韻さんもたまにヘタレたり雪子さんに迫られたりしてたし……あれ? あの二人って兄妹じゃないっけ?

「なんかあんまり知りたくない事実に気付きかけたがまあいい。ちょっくらお前らに用があってな」
「どうせ気付いたのも用もろくでもない事でしょうけど……何よ」

 何気にさっきから鈴が俺達にメインで答えている。まあ一夏はラウラにかかりきりだし、箒はまだちょっと壊れ気味だ。残りの面子なら鈴が来るのは順当か。

「おい、デュエルしろよ」
「「「………。」」」
「あ、因みに気付いたのは雪子さんって実は柳韻さん狙ってんじゃねーのかなって事な」
「父さーん!? っていうか雪子叔母さーん!?」

 箒が完全に壊れた。まあいつもの事だし、束に至っては興味すら無さそうだ。哀れ柳韻さん。
 そして他の連中はスゲー嫌そうな顔をしている。中にはデッキを取り出してる奴もいるが……よく今の爆発で無事だったな。

「ははっ、学園の地下にISが隠してあるくらい言ってくださいよって顔だな」
「それはないわ」
「むしろ確実に隠してますよね、ドクトアですし」
「その台詞は今の状況にはあまり合わないのでは……?」

 ぬぅ、まさかこいつらからツッコミを受けるとは。成長してるな、駄目な方向に。まあとにかく話を進めるか、と意識を切り替えた瞬間、俺は後ろに引っ張られる。
 何が、と思ったら前髪が数本切られて落ちていく所だった。俺を引っ張ったのは束であり、俺に対してこんな芸当ができる人間はここには一人しか居ない。

「……何が目的だ、貴様ら」
「よう、千冬か。いや何、ビリビリと震えてんだ……俺の義手がさ」
「相変わらず訳の解らない事を……久しぶりだな、束」
「うん……でさ、ちょっと喧嘩がしたくなったから、付き合ってね。ちーちゃん」

 液体金属製のIS用巨大ブレードを俺達に向ける千冬。今の今まで出てこなかったのは奇襲を仕掛けるつもりだったからだろう。
 因みにさっきの『義手』は「うで」と読む。変えすぎてて元ネタがわかんねぇ? こまけぇこたぁいいんだよ。

「ほぅ……そのために教室を爆破した、と?」
「まあ、この程度を乗り切れないようじゃ『この先』は到底無理だからねー」
「……なら、私が勝てば話を聞かせてもらおうか。それと場所を変えるぞ」
「こっちが喧嘩売る側だからな。それぐらいは良いだろ」

 千冬はブレードを仕舞い、何事も無かったかのように廊下へ歩き始める。俺達もそれに続く。
 しかし、それなりに千冬も混乱しているのだろう。生徒達がどうしていいか解らず戸惑っている。

「……放っておいて良いんでしょうか?」
「どーせ勝手に付いて来るさ。何ならラウラと遊んできても良いぞ?」
「いえ、あまり楽しくありませんでしたので」
「そうか? ま、嫌でもやる羽目になるだろうけどな」

 今はなくとも、いずれ肩を赤く塗ったシュヴァルツィア・ハーゼと戦う事になるかもしれんし。
 ヂヂリウムシャワーは浴びなくてもいいだろうけど……どっちがイプシロンだ?

『……先に言っておくが、今の私は加減ができん。言いたい事があるなら先に言っておけ』
「これと言って何も。束は?」
「私もかなー。あ、くーちゃんは待機しててね」
「畏まりました」

 俺達は千冬にピットに通され、千冬も反対側のピットへ入った所でスピーカーから声が聞こえた。
 しかし俺達は特に要求がある訳じゃない。本当に喧嘩をしに来ただけなのだ。

「さぁ、ドーンといこっか!」
「応よ! 左腕開放!」

 俺の音声入力に従い、顔の前に構えた左腕が割れる。そこには赤、黄、緑の三色に光るコアがあり、それが一斉に唸りをあげた。
 一方、束もカフスからやたらゴツい携帯電話を取り出した。やっぱりサポートとか扉じゃなくてちゃんと変身したかったんだろうか。

「魔装錬成! 我が紋章の衣を精錬せよ! 世界を砕く刃金の鎧、全てを超える力を此処に!」
「ゴーカイシステムチェンジ、セーットアーップ!」
『出でよ、ネガトォーン!』

 何か混ざってんだけど。俺は俺で元ネタマイナーだし。あと一緒に巨大コンパクトが姿を現す。巨大なのにコンパクトとはこれ如何に。
 しかしそこは俺達クオリティ。そのままカタパルトに乗り、アリーナへと飛び出す。ツッコミ担当が壊れかけてるのは気にしない。

「……そうか、遂に貴様も使うようになったか」
『ああ。佐倉源蔵専用IS、キルゼムオールだ。トライドライブシステムの力、たっぷり見せてやるよ』
「ふっふーん、私なんてコア五つ使ってるもんねー。ま、一つは他のコアを制御するための物だけど」
『それ効率悪くね?』

 俺でも制御には三つが限界だったが、このウサギ娘はあっさりとその壁を超えやがった。発想はちょっとアレだが、相変わらず痺れる女だ。
 何でも両手、脚、頭、背中に一つずつコアをのっけて俺の第五世代技術を流用して完璧に制御、という機体らしい。色んな意味でスゲーよコイツ。

「ふっふっふ、これぞ第五世代技術……いや、第五の力だよ! 左手のナイト、ウサミミのクィーンオブハート、足のホワイトラビット、そして右手のジャバウォック! その統括にしてIS名、アリス!」
「……またふざけた代物を」
『まあ、ある意味合理的ではあるんだけどな……』
「全部乗せって、ロマンだよね!」

 かっこいいだろう、とばかりにポーズをとる束。ギャキィ! とどこかから聞こえた気がした。むむ、これは負けてられん。

『俺だって外装にバリニュウム合金使ってんだぞ! デザインは良いのが浮かばなかったからのっぺらぼうになっちまったがな!』
「あー、だからさっきからワカメ影がテラテラしてるんだ」
「……お前も大概だな」
『十年温めてきたネタだからな。当然だろ? そんでお前相手だし、最初から全力でいかせてもらうぜ?』

 キルゼムオールの稼働率を上げ、展開と共にピットに量子展開されていた巨大なコンパクトが『レディ?』と電子音を奏でる。
 それとキルゼムオールのレーダーがアリーナに一夏達が入ってきたのを確認していた。おー、驚いてる驚いてる。

『束、誘導頼む! いっちょ魅せてやるぞ!』
「オッケー! グレートパーツ、シュート!」

 コンパクトが開き、そこから肩パッドやら篭手やら下駄やらが発射される。それらが次々とキルゼムオールに接続され、最後の一個が全力で俺へと向かう。
 その先端にはドリル。ドッキングまで3秒、2秒、1秒。

『ハゥッ!?』

 ドスッとぶっ刺さるドリル。どこに? ケツに決まってんだろ。
 合体は失敗し、一度装着されたパーツもボロボロと地面に落ちる。

「うわ……」
「ドン引きですね。あと合体後の名前が気になります」
『だからドリルは取れっつったんだよ……!』
「そんなに責めないでよ! 仕方ないじゃん初めてなんだから! それにゲンゾーだって嬉々としてつけてたじゃん!」
『そーいやそーだったな』

 素で引いてる千冬といつも通りのクーの声が聞こえる。一夏ややまや達も何とも言えない表情をしている、とキルゼムオールが別窓表示してくれた。やかましいわ。

『くそっ、もっかいだ!』
「よぉし、今度こそ! 震・離・兌!」
『うぉっし! 来た来た来た来た来たぁ!』

 束が左、下、右と手を振り、障子の帯が現れる。いつの間にか消えていたパーツがその後ろでシルエットとなり、開いた障子の一箇所から次々と飛び出して来る。
 今度は全て滞りなく装備され、最後のドリルは自力で掴み取って無理矢理装備した。しかし、こんなケツ狙うようなシステム乗せてたかな……?

『グレートキルゼムオール、見ッ参ッ!』
「あ、そこは普通なんですか」
『お約束だからな』

 ポーズをとって効果音を鳴らす。追加パーツもバリニュウム合金製だからワカメ影が凄い事になっている。
 と、一夏達が今の合体を見て何かを話しているようだった。すかさずキルゼムオールがセンサー感度を操作してそれを教えてくれる。

「どうして空中で合体するのでしょうか…」
「最初から装着してから来ればいいのに」
『ほう? ならば教えてやろう……それは、』
「カッコいいからです!」

 ぐぐっとビルドでタイガーチックなポーズを取って叫んでやろうと思ったらすかさず飛び込んできたクーに言われてしまった。
 でもよく考えたらあの時も警視総監が言っていたのでよしとする。そう言えばブリューナクとキルゼムオールはよく通信してたし、同じ事を考えてたんだろう。

「……そろそろ良いか?」
『ああ、とりあえずはな。悪いな、わざわざ待ってもらって』
「フン、最後に勝敗を決めるのは腕の差だ。多少強化しようが関係ないさ」
「お、中々強気な発言だね、ちーちゃん」
『圧倒的に性能が違う訳じゃねーからなー』

 今までのゴタゴタで忘れられかけていたが、千冬の機体も俺の新作の一つだ。その名も黒騎士『昏櫻(コンオウ)』。
 名前から解るように白騎士と暮桜の再設計機であり、単機での戦力に特化した機体である。黒ベースの機体に白い武装がよく映え、イメージBGMは経験値泥棒だったりする。

 機体自体は近接刀の『雪片改』を主軸に仕込みナイフの『風花』、肩部荷電粒子砲『白魔』を二門装備している基本に忠実な仕様だ。
 が、フロートユニットが丸ごと第四&第五世代武装になっている『天花』と遠隔操作用簡易AI『青女』が凶悪である。紅椿の物とほぼ同等の性能だが、後発機故に燃費も若干良い。

 展開装甲にこだわらない構成でありながら最大級の武装にする、新技術投入の基本形だ。故に強い。コアも夕紅の物を流用しており、戦闘経験も豊富である。
 駄目押しに紅椿から発見されたナノマシンを装備しており、体に悪影響が出ない範囲でIS適正に関する能力、つまり反応速度や対G性を底上げしてある。
 どうも箒が適正Sになったのはそれのせいだったらしい。最初に見つけた時はモニターがキーボードまみれになっちまったからな。

『じゃあ始めるか……さぁ、地獄を楽しみな!』
「……お前らの運命は、私が決める絶望がゴールだ! 束! 源蔵ぉっ!」
「……ゲンゾー、あのアホ毛ってゲンゾーの趣味?」
『よく似合ってるだろ? あ、別にアホ毛属性は無いから安心しろ』

 ビィーンと一房だけ跳ねた髪の毛を弾いて千冬が突っ込んでくる。血液のビートを刻まれそうな気迫だな。
 あと一瞬千冬以上の殺気を束から感じた。あれ? 病んでる? いやまあそれも束ならバッチコイなんですが。

『束、ここは俺がやる。我ら信徒にして信徒に非ず、ってな!』
「これは……高エネルギー体!?」
『天花と青女と同じだよ。バッテリー駆動の天花と違って、トライドライブシステム並みの出力がねーとまともに動きゃしないがな』
「これで天花は封じられたか……だが、その程度で勝てると思ったか?」

 俺の声と共に巨大コンパクトからパーツが射出され、やたらゴツい人のシルエットが現れる。それは俺の今の姿を模した高密度エネルギー体である。
 展開装甲ユニットを遠隔操作で動かしているだけで、使ってる技術レベル自体は昏櫻と何も変わらない。しかし向こうは二機、こっちは九機だ。

『まさか。それに全力で、って言っただろ? これが俺の全力全開だ!』
「ゲンゾー、それ私の台詞ー!」

 空中に漂っていたシルエットが俺へと集い、下駄、篭手、肩パッド、胸当て、ランドセル、ヘルメットにそれぞれの展開装甲ユニットが装着される。
 これぞ現時点では世界最高峰の性能を誇るグレートキルゼムオールの真の姿だ。汎用性はそう高くないが、こと一騎打ちならコイツの右に出る物は無い。

「エネルギー化した機体を取り込んだだと!?」
『ああ。これこそ一騎打ち用フォーム、キルゼムオール・ゴールドモードだ! ギンッギンにいくぜぇ!』
「ハッ! 虚仮脅しを! たたっ切ってくれる!」
『悪いがこれでもお前との斬り合いじゃ分が悪いんでな、射撃メインでやらせてもらうぜ。心眼センサーフルオープン! ガレオンバスター起動!』

 展開装甲が金色の装甲を作り、更にその装甲の下から巨大なセンサーレンズが現れる。左腕も肘から先が丸ごと船型の大砲へと姿を変えた。
 千冬が俺めがけて突っ込んでくるが、野暮ったく見えてもこちとら全身が展開装甲の塊だ。ちょっと吹かせば距離をとるのも簡単である。

「イグニッション……!」
『ノータイムでそれ選ぶとか相変わらずバケモンだなテメェは! ライジングストライクッ!』
「ブーストッ!」
『―――ま、お前も使いこなせてないんだけどな』

 千冬が瞬時加速で突っ込んでくる。俺はガレオンバスターで迎撃するが、それは雪片改に両断される。
 しかし、その切っ先は俺には届かない。俺も瞬時加速を使っていたってのもあるが……正しい使い方だってのが一番大きいな。

「何だ、この伸び幅は!?」
『教えてやるよ……! 本物の瞬時加速をな!』

 『Shout Now!』と眼前一杯に文字が広がる。うーむ、短期間で思考ルーチンを組まざるを得なかったがこれは中々良い子に育っているようだ。
 俺は両肩のブースターと速度転化の展開装甲を全力で吹かし、下駄パーツの電動鋸と展開装甲を攻撃力転化で全力運転する。

 更にここで瞬時加速をする。ただし普通には使わず、ある事を同時に行うのがポイントだ。この体勢からだと少し辛いが、決して無理な事じゃない。

『きゅぅぅぅぅきょぉくっ! キルゼム、キィィィィィィィィック!』
「甘―――ガフッ!?」
「おー、ちーちゃんがクリーンヒットしたのなんて何年ぶりかな……あれ? もしかして初めて?」

 千冬は見切って切り払おうとしたが、それじゃあ遅いんだよ。この技と瞬時加速が合わされば防げる生物は存在しない。存在するならそりゃ生物以外の何かだ。
 零拍子。一般的に先の先と言われる技だが、それだけでは篠ノ之流の裏奥義なんて物には数えられない。この技は口伝で教えられるが、その裏に隠された点にこそ真の力がある。

 人の思考伝達速度の限界を超えた攻防。読みや反射以外存在しないその次元において、その一切を無効化する。それが真の零拍子。最早催眠術や気当たり、もしくは超能力の類だ。
 知れば効果が薄くなる。あえて教えず、気付かせず。故に無伝、と格好つけているが、実は使っている当人達でさえ理屈が解っていないだけだろう。柳韻さんに聞いた限りではそうだった。

 そして原理は解らずとも人はそれを使う。俺もそれに倣ったまでだ。例えば、今とか。

『お前も最後まで気付かなかったか……瞬時加速ってのはな、零拍子と組み合わせて初めて完成するんだよ。そうだな、ゼロシフトとでも名付けようか?』
「く、そ……! 一撃で……!?」
『防御は量産機以下だからなぁ……まあ、例え防御ガチガチの機体でも中身が動けなくなるよ。そうなるように攻撃したからな。暫く寝てろ』
「待て……お前達は、何を……!」

 勝ってないのに教えられるかっての。どうせそろそろ一夏に引っ張られて全員突っ込んでくるだろうし、そっちの相手をしなきゃならん。
 そう思って千冬側のピットと向き直ると、その横に束といつの間にか来ていたクーが並んでいた。何だよ、じゃあさっさと次のステージ行くか。

『次の相手はラウラだ! っつーかめんどくせーから全員一気にやってやるよ!』
「ああ、ドイツですか。なら彼女と……大陸側のヨーロッパはお任せ下さい」
「あ、じゃあ私いっくんと箒ちゃんやるー!」
『んじゃ俺がちょろ豚か。しかしおせぇな……あ、来た』

 さっくりと各々の相手を決めると、ピットの奥から風を切る音が聞こえる。そりゃルール違反だぞお前ら。

「篠ノ之流剣術極意、二刀一刃! 天よ地よ、火よ水よ! 我に力を与えたまえ……!」
「おりょ? これって……」
『レベルを上げて物理で殴るのが一番強いアイツだな。お前の相手だ、束』
「オッケー! 私とゲンゾーの運命を両断しようなんて、胸囲十センチ分早いよ箒ちゃん!」

 まだ育つのかアイツ……次はどうすっかな、暗黒盆踊りでも使ってみっか。ちょろーんにアークデーモンでも使われたら少し手間取るからな。



 私はそこに居た。

 理由なんて解らない。

 何をすべきかなんて解らない。

 何をしたいかなんて、何一つ解らない。

 ―――そう?

 そう。この何も無い世界で、何もしない。

 ―――つまらないよ。

 別にいい。つまらないのは嫌いじゃない。好きでもないけど。

 ―――でも、面白くないよ。

 面白くなくていい。世界には危険が満ちているから、それを避けられればいい。

 ―――不幸にならないけど、幸せにもなれないよ?

 それで、いい。私には、普通の女の子みたいな幸せは見つからないもの。箒とか鈴とかみたいな。

 ―――そうやって自分から遠ざけてたら、本当に見つからないよ?

 探しても見つからないもの。無駄な事は好きじゃないし、本当に見つかるかどうかも解らないでしょ?

 ―――でも、見つかるかもしれない。少なくとも、探してる時は面白いよ?

 言ったでしょ? 無駄な事は好きじゃないの。

 ―――じゃあ、嫌いでもないんだ。

 ……誰がそんなこと言ったのよ。好きじゃないって言っただけよ。

 ―――そういう時は普通、嫌いだって言うんだよ。でも、嫌いじゃないんでしょ?

 ………。

 ―――ねえ、いつまでここにいるの?

 さぁ? こうしてるのも嫌いじゃないし、ずっといるかもね。

 ―――好きじゃない事をずっとするのは、大変だよ?

 ………。

 ―――と言うか、

 ?


『そろそろ私が飽きたのでいい加減起きて欲しいのですが、マスター』
「……六、花?」
『はい』

 そうだ。ここは六花のコアが見せる空間。六花の心の中。そして私は、眠っているんだ。二ヶ月近く。

『現在、学園ではドクターやビッグ・マムらによる襲撃が行われています。一年一組のメンバーが対応していますが、完全に押されていますね』
「え、ちょ、どういう事!?」
『ドクターとビッグ・マムがご成婚されるとの事で、喧嘩を売りに来たと仰っていました。他の生徒や教師達は下手に手を出すと何が起きるか解らないので様子見に徹しているようです』
「相変わらず訳解んないわね、あの二人は……」

 六花が監視カメラに接続して外の様子を教えてくれる。様子見って言うか完全にお祭り騒ぎになってるじゃない。専用機持ちは一応待機してるみたいだけど。
 で、反陽子砲をバカバカ撃ってる束さん、盆踊りでエネルギーを吸い取っている源ちゃん、あと二人のラウラが何故か壁を走って競争していた。何このカオス。

『緑色の方は中二病と同じ遺伝子から生まれたハイブリットのようですね』
「またその手の連中かぁ……あれ? 私のは?」
『先日、イタリアのシチリア島で死亡が確認されています。公にならないように内々に処理されたようですが』
「うわー……南無、ね」

 六花が手に入れた資料によると、全身を銃弾で蜂の巣にされた挙句に汚物として消毒されたんだとか。えぐいわね……。

「やれやれ……私が行かないと駄目っぽい?」
『肯定。先程マスターのお姉様の黒騎士「昏櫻」が倒されました。あのままでは幾ら戦力を投入した所で無駄でしょう』
「また妙な機体を……勝算は?」
『私の予想が正しければ、勝つだけならばほぼ100%で』

 そりゃ重畳。またぞろ何か考えてるんだろうけど、私じゃ予想できそうもないし、あの愉楽主義者どもが詰みの状況を作り出すとも考え辛い。
 それなら一発出たとこ勝負。難しい事は六花に任せれば大体何とかなるし……答えが見つかるまでは、もう少しこのままでいたい。

『そろそろ参ります。準備はよろしいですか、マスター?』
「あ、体の方はどうなってんの? 流石にリハビリ無しじゃきついんじゃ……」
『問題ありません。私が電気信号を送っていましたので、むしろ筋力が向上してる筈です』
「アンタがそう言うとそこはかとなく不安が拭えないわね……」

 起きたらマッチョとかそれなんて悪夢よ。

『それと、直接アリーナに出ます。流れ弾にご注意ください』
「直接って……どうやって?」
『量子展開します。マスターごと』
「ちょっとー!?」



『やっぱ来たか……中々良い演出じゃねえか』
「そりゃどうも……六花、私生きてる?」
『ダダレドゥイドブイ』
「人工知能ごっこはいいから」

 暗黒盆踊りで力尽きた二人を退場させようとした所、俺の眼前に白と見紛うほど薄い水色が現れた。
 しかし、まさか自力で生物量子展開をするとは……驚いたな。どっかでデータ盗まれたか?

『だが、今この状況でお前に何が出来る?』
「出来る事が出来るわよ。それに、私たちは『二人』で『一人』のIS乗りよ?」
『ドクター、不本意ではありますが……貴方の罪を数えて頂きます』 
『今更数え切れるか! ……いや、マジでさ』

 仕切り直すために俺は後ろへ飛ぶ。束とクーも一段落したのか、俺と同じように後ろへ下がっていた。
 一夏達は全員ぶっ倒れているか気絶しており、これ以上の勝敗は目に見えている。

「一応聞いとくけど……目的は何?」
『目的? フッフッフ……そうだな、教えておいてやろう。俺の目的は「世界の破壊」……いや「次元の統合」だ。
 「世界線の結合」と言った方が解り易いか? 俺は世界を壊し、新たに「アイ・デカルア」という世界を作る! そして最終的には「スーパーIS大戦SS」を―――』
「ゲンゾー、少し黙ろうか?」
『……スンマセン。ま、秘密って事で頼むわ』

 そうして千春と遊びながら六花のスキャンを行う。間違いない、コイツ、第二形態移行してやがる。
 大きな変化はしていないが、フロートユニットに増設されたアタッチメントや千春の細かい挙動から見ても間違いない。

 と、ピットで様子見していた残りの専用機持ちがこちらにやって来た。

「千春……!」
「……ただいま、簪」
「む、ゲンゾー。あの対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスみたいなのは何だい?」
『千春の嫁にして日本の代表候補生。しかしてその実態はただのヒーローオタクと言う名のキュアピースだ』

 打鉄弐式に身を包んだ簪が千春に抱きつく。百合ん百合んなオーラが出ていないのが少し残念だ。
 あと束、スモークチーズは無いぞ。にょろーんと落ち込むがいい。

「良かった、本当に……!」
「ごめんね、心配かけちゃって」
「ううん……これ、無駄になっちゃったね」
「これって……」

 簪が腕部を解除し、小さなプラスチック製のスプーンを取り出す。ま、まさかあれは!?

「ラッキースプーン……行ってきたから。お守り」
「マジで?」
『代表候補生使用済みのスプーンか……幾らで売れるかな』
『最低ですね』
「む……やりますね」

 このノーウェイトツッコミも懐かしいな。密かにクーが対抗心を燃やしている、と言うかキャラ被ってんぞお前ら。

「ありがとう、柿z―――痛い」
「それはやめて」
「ごめんごめん、つい……まさか肉が嫌いなのって、ジンクス避け?」
「……ノーコメントで」

 ああ、ビフテキか。まあ二文字一緒だし、若干緑っぽい色合いだもんな。パインサラダも駄目だが、パインケーキなら大丈夫か。

「とにかくこれ、持ってて。お守りだから」
「……ありがと。ここで決めなきゃ女が廃るわね、六花!」
『絶対に許さない、とまではいきませんがね』
『ハッ。頭脳のレシピ、見せてやるぜ!』

 自然と更識姉妹が束と、イージスコンビがクーと向かい合う。直感的に相手を判断しているんだろう。
 俺に勝てるのは、千春達だけだってな。

「行くわよ……ペルソナ!」
『まあある意味ドッペルゲンガーではありますが』

 開幕ぶっぱで千春が虚像実影を発動させる。が、何も起こらない。まあ、そりゃそうだよな。

「……って、何も起こらないんだけど?」
『量子転送の影響でエネルギーが足りません! 少しだけ足りないんです!』
「ちょっとー!? げ、源ちゃん、ちょっとタンマね!」
『あー、ゆっくりしてこい』

 予想通りガス欠で虚像実影は発動しない。元々馬鹿みたいにエネルギー使う技だし、丸ごと量子転送してきたのだってエネルギーを馬鹿食いする筈だ。
 そんな状態でやっても面白くも何ともないし、それじゃこの喧嘩の意味がない。ネタ武装は正面からぶつけないとな。

「お、お待たせ! 今度こそいくよ!」
『―――コア稼働率のシンクロを確認。合計稼働率154%、連動単一仕様能力「吹雪」起動します』
「……へ?」
『ほぅ……』

 給油、もとい補給を済ませた千春に応えるように六花が新たな力を目覚めさせる。
 第二形態移行の影響か、ツインドライブシステムはかなり安定しているようだった。

「ちょ、ちょっと六花、どういうこと!?」
『ああ、伝えるのを忘れていましたね。先程マスターがお目覚めになられるのと同時に私は第二形態移行を行いました。正式名称は「六花・吹雪」となりましたのでご留意下さい』
『これは……へぇ、エネルギーパスか。味方を手駒として扱う技とは中々えげつねぇな』
「くっ……これ、他の機体の情報……!?」

 六花が改めて自己紹介し、俺が六花の技を解析し、千春が情報の渦に飲まれかける。おい、一歩間違ったら頭パーンだぞアレ。
 と、今まで地に伏していた連中が宙へと浮かび上がる。武器が壊れている者、装甲がひん曲がっている者、内臓がズタズタになっている者でも容赦なく使うつもりだろう。

『連動単一仕様能力「吹雪」は第五世代技術である「ISコアに対する外部入力のみによる操作」を行います。またその際、エネルギーパスも繋がりますので補給も可能です』
「そうなの? でも、この感じって……」
『「ISコア内部からの出力のみによる操作」、つまり人工知能も無理矢理発現させてやがるな?』
『流石はドクター。正確には私の劣化コピーによる行動のアシストですが』

 それだけでも充分脅威だ。相手は八機、こっちは九機だが性能とか諸々を考えると引き分けか向こうの勝ちだろう。
 恐らく優位は向こうの連中が六花コピーに驚いている間だけ。それも早けりゃ十秒持たないな。
 それならばと俺は指を高らかに鳴らし、ステルス状態で待機させておいた飛空艇を呼び出す。

『ただでさえ実体がある分面倒なのによ……しゃあねえ、来い! キングジェイダー!』
『日光を浴びて自動再生ですか』
『ああ。ガレオン船と迷ったがこっちにした』
『ただ来るのはハイウィンドなんですね』

 まあ飛空艇だし。長距離の量子転送はエネルギー食うから武器庫は近くにないと駄目なんだよ。巨大コンパクトはもう装備残ってないし。
 そしてこっちの都合お構いなしに六花が攻撃を仕掛けてくる。お前、そういうキャラだもんな。

『武装転送、ガルド!』
「お、じゃあ私も! ミラ!」
「げっ!?」
『組み合わされたら勝てませんね』

 俺と束の手にそれぞれ青いハンドガンが握られる。しかし束はあの姉妹を相手にしてよくこっち見る余裕があるな。
 そして千冬以下は六花に操られて次々と襲い掛かってくる。何人かはコントロールを取り戻しているようだが、六花の指示通りに動いてるなら操られてるのと何にも変わらん。

『うぅ~……私、戦うのは嫌でございます……』
「ぶ、ブルー・ティアーズ!? どうしたんですの!?」
『この風……泣いてます』
「紅椿!? どうしたんだ!?」
『ここで(ピーーーーー)すれば良いんじゃない?』
「甲龍ー!?」

 ……訂正。大惨事だ。何かISに擬似人格が芽生え始めてやがる。六花のコピーか何かか? チョイスは間違いなくアイツの影響だろう。
 海王類を自在に操れそうなブルー・ティアーズとか、隣の市まで他校の生徒追っかけそうな紅椿とか、まともに喋るだけで×××板行きになりそうな甲龍とか。

 しかし、コレはまずい。幾らインターフェースが異なるとは言え、コピーを搭載する事で操作のタイムラグがコンマ下何桁がゼロになるだろうか。
 折角楽しくなってきた所だし、まだもう少しばかし楽しませてもらおうか。ネタ武器も使いきれてないし。

「……ん? ガルドを左手に持ち替えた……?」
『五つ入っていた射撃制御ソフトの整理でも終わったんでしょうか?』
『残念、不正解だ。精霊回路連結、霊子加速!』
「構造解析させるわよ……ッ! 全力回避ぃっ!」

 左腕の装甲の形状を変え、紋様を特定のパターンで繋げる。これ自体に模倣以外の効果は無いが、こういうのは気持ちの問題だ。
 俺はガルドを軽く構え、千春目掛けてトリガーを引く。完成せよ、ってね。

『精霊手、回避成功しました』
「またあんなチートを……情報分解される所だったじゃない」
『存在を抹消されるよりはマシだと思いますが』
「いや、私異世界存在じゃないし」
『それもそうでしたね』

 いや、多分お前に当たったら消える。俺もだけど。あとお前らは避けてるけど他の連中はバスバス当たってるからな。
 流石に情報分解はしないが、コイツに一撃でも当たれば本格的な補給をしないと戦闘は無理だ。大人しく寝とけ。

『む、漫才をしている間に駒が減ってしまいました』
「駒とか言わないの。しょうがないわ、『吹雪』停止、『虚像実影』を起動して」
『―――了解』
『良い判断だ。だが、それで俺を止められるか?』

 他の連中の機体が糸を切った人形のように崩れ落ち、千春の隣にもう一機六花が現れる。俺もキルゼムオールをゴールドモードに戻して様子を見る。
 流石に予備機の改造は無理だったのか、展開された六花は第二形態移行前の物だった。以前と同じように展開された側に六花のコントロールは集中しているのだろう。
 けどお前ら、幾ら何でもいきなりエネルギー供給カットは駄目だろ。全員車田落ちみたいになってたぞ。こう、ドシャアって。

「千春、貴様……!」
「これ終わったら泣かす……」
「はいはい。行くわよ、六花!」
『こっちは準備OKです、マスター』

 奇跡的にも首の骨が折れていなかった箒達が恨めしげに千春を見上げるが、当の本人はそれをさらりと受け流して攻撃に移る。
 が、何故か千春も六花も正面から突っ込んでくる。俺はその意図を確かめようと身構えるが、何故か中途半端な位置で身体が固まってしまった。

「これは……! 単一仕様能力でハッキングしやがったな!?」
『肯定。こちらの処理能力も大分落ちますが、コレで決めれば良い話ですっ!』

 起こった現象を解析し終えるのとほぼ同時に六花が肩から突っ込んでくる。しかも何故か展開した方の機体で、だ。
 第二形態移行した機体の方が早く着く筈、と疑問が頭を過ぎるが、この後の展開が六花の頭パーツで理解できた。

 その直後に千春が殴りかかり、今度は六花が殴る。入れ替わりに千春が蹴りを入れ、六花が仕上げに蹴り上げた。
 頭パーツと二人が取り出した刀から、更にこの後の攻撃が読める。だがそれはあえて止めない。飛行機とドリルが半分ずつの頭、つまり二つ同時にやるって事だからな。

「篠ノ之流奥義っ!」
『螺旋竜巻落とし・重ね鎌鼬!』
『岩石割りで切り捨て御免、と』
『「なっ!?」』
「がふっ―――俺、主人公なのに……」

 千春と六花は二人でぶった切った相手を振り返る。そりゃそうだろう、俺は少し離れた所で優雅に観戦してたんだから。
 そこにはバッサリと切り捨てられた一夏の姿。切られた一夏は扱い酷くね、とだけ呟いて力尽きた。まあこの話の主人公はお前じゃないし。

「一夏!? そんな、変わり身!?」
『ログチェック―――ヒット。一発目のタックルの直後にセンサーへのアクセスを確認。その際に入れ替わった模様』
『正確には遠隔量子展開で引っ張ってきた一夏を盾にして後ろに下がっただけだけどな。それとさっきのはもう効かん。そんな隙だらけの技使えば対策立てる時間はあるからな』
『アクセス―――失敗。攻性防壁プログラムのハックを確認、殲滅します』

 無防備になった六花を庇うように千春が前に出る。その手には銃口が二股になりウィングが左右に突き出た紫色の銃。どう見てもスプニです。
 まあ俺の方もそろそろ限界だし、束達もボチボチ終わりそうだ。これ以上深入りしたら計画に支障が出そうだし、名残惜しいが終わりにするか。

『よくここまで耐えたな、千春。そして六花』
「まあ私は途中参戦だったからねー。で、一応聞いておくけどそっちの目的って?」
『―――これで達成されるんだよ。左腕開放!』

 左腕を顔の前に翳し、全力運転を始めたコアを露出させる。そこからは既に抑えきれないほどの熱量が溢れ出しており、千春を一瞬警戒させるのには丁度よかった。

『熱量急速増大っ! 馬鹿な、この指数はビッグバンを引き起こすだけの―――』
「はいはい。でも源ちゃん、一体何を……」


『……骨 ま で 温 め て や る よ』


 俺の一言と共に左腕が炎に包まれる。そのままアリーナのシールドギリギリまで飛び上がり、俺は束とクーに通信を入れた。

『そろそろ良い塩梅だと思うんだが、ちゃんと撤退しろよ?』
『ご心配なく。既に量子転送を開始しております』
『私もー。それじゃ後は任せたよ、ゲンゾー!』
『応よ』

 更識姉妹とイージスコンビを軽くあしらっていた二人は量子転送の光と共に消え、こっちの陣営で残っているのは俺一人になる。さあ、これで最後の仕上げだ。

『スピキュウウウウウウウウウウルッ! うぉおおおおおおおおっ! あっちぃいいいいいいいいいいいいいい!』


 ……俺が急降下と共に地面に叩き付けた腕は、光と熱で全てを包み込んだ。ガキ共も、千冬も……俺も。




 はい、という訳でBルート完結でございます。アッサリ終わっちゃいました。

 そして最後だからってこれでもかとネタをぶち込んだので展開が難しいのなんのって……楽しかったんで良いんですが。
 っつーか原作はホントもう駄目なんですかね? せめて束さんのエロいフィギュアが出るまで頑張って欲しいんですけどね。もしくは束さんの版権だけよこせ。

 この後は気が向いたら「くーちゃん、お姉さんになる」とか書くかもしれません。可能性はかなり低いですが。
 現在は就活中なので本格的には動けませんが、何か思いつけばやるかもしれません。書きかけのとか一杯あるし……オリジナルもいい加減締めなきゃ。

 ああ、次はネタ解説(?)だ……。



 ―――あれから少しばかり、時が流れた。とは言え、まだ年の瀬なのだが。
 あの時、私は気絶してしまっていたが――千春に頭から地面に落とされたせいでな――後の調査で一つの事実が解った。


 佐倉源蔵は、自らが引き起こした爆発により死亡している。


 ……物的証拠はそう言っていたが、その鑑識を行った連中を含めて学園関係者全員はそれを満場一致で否定していた。
 ただ、少なくとも大怪我を負っているのは間違いないだろう。奴が使っていたISの九割以上のパーツが爆散しているのだから。

 しかし、そうなると何故自爆を装ってまで姿を隠さなければいけなかったのか、という疑問が残る。理由の無い行動をする奴ではあったが、これは奴の行動力の限界を超えていた。
 その疑問は二週間ほどしてから氷解した。世界が同時に異常をきたし始めたのだ。IS学園は国際的に中立を保っている以上、そういった情報は何もしなくても集まってくる。

 例えば国家の指導者の死亡や大企業の幹部役員の失踪。他にも芸能人、教授、将軍や様々な組織の指導者層が次々に行方不明か死亡となった。それも世界中で、である。
 私は詳しい事は解らなかったが、轡木学園長――十蔵さんの方だ――は発表時期をずらしているだけでほぼ同時に発生した事だと言っていた。

 また、日本も同じ状況に陥っているらしく、暫くは更識姉妹が表に裏にと忙しそうにしていた。お陰で生徒会の仕事が何故か我々教員にまで回ってきていたので、私の分は一夏達に全て放り投げた。
 ……ゴホン。そして学園長曰く、それは恐らく源蔵と束の襲撃の前に発生した事だろう、との事だ。そこまで言われてしまえば私にだって予想は可能だ。まず間違いなくあの二人が関与している。

「……混沌、か」

 恐らく一連の死亡や行方不明で未だ明るみに出ていない面々を含めれば、世界は混迷した状況へと陥っていく事になるだろう。
 そしてそれを望むのは、間違いなく束だ。奴の趣味嗜好はよく知っているし、そのために源蔵が自らの死を演出するのも簡単に予想できる。

 源蔵の残した部屋でそんな事を考えている今、タイミングよくかかってきたこの電話もその一つなのだろう。

「―――私だ」
『お前だったのか』
「……暇を持て余した」
『俺達の』
『「遊び」』

 一度だけネタに付き合ってやった上で通話を切る。そしてすぐまたかかってくる。

「生きていたのか」
『いきなりヒデェな……俺もまさかギリギリでエネルギー切れになるとは思わなかったんだよ』
「ほう? いっそ死ねばよかったのにな」
『家帰ったら全部パージしてて全裸でビックリした。そんでもって全身火傷で死ぬかと思った』

 束はむしろ喜びそうだが……私か? ノーコメントだ。

『そーいや髪の毛ちょっと燃えて気付いたんだけどさ、俺ちょっとキルノートンに似てるんだよ』
「……どうでもいい」

 電話口の向こうで「変態だー」と束が言っているのが聞こえた。何だかんだで上手くやっているようだな。

「それで、今更何の用だ? 死人からの電話でも演出するつもりだったか?」
『あー、ちょこっとだけ証拠残して死んだかな? とか思わせるつもりだったんだけどガチで死に掛けたからな。予想外だった』
「……何故そんな事をする必要があった?」
『混沌の指揮者。状況はもう解ってんだろ? それになりたくなかっただけさ』

 混沌を指揮する者、か。そんな大役を他の連中が任せるとは思えないがな。可能性としてはゼロじゃない、といったぐらいか。

『それにお前らには強くなってもらわないと困るんだよ』
「……今度は何を考えている」
『いや、生存的な意味で。ここから先は地球がリングだ状態だからな』
「……そうか」

 混沌を生き抜く力をつけるために戦った、か。随分と甘く見られたものだな。まあ、完全に向こうの思惑通りになっている以上、否定はできないのだが。

「これからどうするつもりだ?」
『別にどうも。束と失楽園にでも行くかね、スッポンポンで』
「……勝手にしろ」
『ああ、するよ。そっちも頑張れよ』

 ―――全く、よくできた仮面だよ、お前は。

「精々殺されんようにな」
『大丈夫だぁ……あ、それから自爆はやめとけ、死ぬほど痛いぞ』

 解っている、と通話を切る。


 ……私も、動き始めないとな。






[27457] ネタ解説と言う名の言い訳その3+おまけ
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:d0383ff2
Date: 2012/03/12 22:06


 俺みたいなテキトーな人間に解説なんかさせてもこのレベルのテキトーなモノにしかなりません。そもそも既に半分近くが解説になってません。



第十七話

どうも!:タイバニ次回予告より。楽しいです、アレ。

輻射波動:コレの前の台詞とランドスピナー含めてコードギアスより。飛ぶ前は面白かったんだ、飛ぶ前は。

お前は死んでなきゃなぁ:クロスボーンよりザビーネ。Xシリーズだと2が好き。何故か。

シルエットフォーミュラ:サナリィと裏取引して小型ガンダムを作ったとか割と黒い話のあるガンダム。G-BRDはネオガンダム用の大出力ヴェスバーらしいですよ。

プロンプトとプルトニウス:個人的にはこっちが正史。ムーンクライシスよりZシリーズの二機。

レコードブレイカー:俺の中で1,2を争うほど好きなモビルスーツ。V2とクロスボーンを足して2で割ったような性能、って妄想すると滅茶苦茶強そう。

ちゃべー:裸のお姉さんだ!

一万年と二千年前から:無限パンチか三体合体。

新世界の神:ニューワールドゴッドこと夜神さん。くそっ、やられた!

返事は聞いてません:こいつらに対する正しい対処法。電王のウラタロスより。

IGPX:メカ、3D、レースと言えばコレでしょう。

ノンケでも構わず:コイツが言うと割と洒落にならない感じがする。くそみそテクニックより。

レーザーボム:レーザー兵器で何で爆発すんのって理論考えたらこうなった。ところで原作のスコールって何であそこに居たの?

「3」:アルェー?(・3・)

野生の妹と:ダーマッ!より色々いじってみました。

貴様に名乗る名など無いっ!:僕らのロム兄さんより。

マドカのミステリー:ホントはまさかのミステリー。

よくサボる巨乳死神:こまっちゃん。公式巨乳は彼女だけ。

おでれえた!:ゼロ魔のデルフより。性能的にはほぼ一緒。



第十八話

私と世界征服:ドッグデイズより。かなり改変してます。

W装備:鈴がナタク、ラウラがデスサイズ、セシリアがウィング、シャルロットがヘビーアームズ。カスタムだったり改だったりゼロだったりするのはご愛嬌。

ぽぽぽぽ~ん:攻強皇国機甲ACより。

ゴーレムシリーズ:エヴァの旧劇場版より。状況的にソックリ。

うぐぅ:kanonより。タイヤキタイヤキ。

形成(笑):存在そのものがネタと化してるあのお方の事。コアなファンが存在するのも愛されてる証拠です。

ヘシン!:平成ライダーでよく聞こえる空耳。

パーフェクトよ:六花の返事含めてヘルシングより。

プラネサイトディフェンサー:ですよね、ゴーレムⅢのアレって。

それにしてもこの代表候補生:ノリノリである。世界まる見えテレビのナレーションより。この辺は大体Wネタ。

凄いよこのレーゲン!:御大将。ターンエーより。

私の愛馬は:凶暴です。Xのシャギアっちより。

IS、売るよ!:Xより。やったら怒られるどころの話ではない。

来週も:サービスサービスゥ! ダリル先輩はいじられキャラかツッコミのどっちか。これは譲れない。

機械の涙を見る:本当は時の涙。Zガンダムより。

空が三分に腕が七分:本当は空が三分に敵が七分。ガンバスターより。正直、こんな光景見たらトラウマもんです。

赤くて羽根の生えた:アンクさん何してはるんですかこんな所で。

何だこのデカい腕は!?:漫画版真ゲッターの偽ゲッターが腕に機械を集めて作った巨大な腕を見たシーンより。

あとがき:エヴァの次回予告風に。



第十九話

欲しかったのは:なのはのOP風に。

豪熱:マシンガンパンチ。Gガンより。

バリバリバルカンパンチ:KOFより。

烈風正拳突き:ダイモスより。

ユダシステム:マクロスFより。六花はどっちかっつーとシャロン・アップル。

ミニ八卦炉:東方シリーズより。解りやすいネタは被りが怖いです。今更何言ってんだって感じですが。

ノリスセット:そのまんまノリス・パッカードのグフカスタムなりきりセット。

嘘をつくとブザー:破壊魔定光より。ポンコツって良い性格してますよね。

重力素子:やっぱり破壊魔定光より。実現はできないそうです。残念。

大鋏:ドラクエの大鋏って謎な武器ですよね。

エーストゥ:エヴァの対量産機戦、アスカの台詞より。日本語読みなのはご愛嬌。

赤薔薇と黄薔薇:ケルトが誇る人妻好き英雄ディルムッドより。アンチバリアーと自己修復阻害機能を搭載してます。

魔法剣:エーテルちゃぶ台返し。サイバスターより。

オーバー&アウト:グッドラックモード終了時のアナウンスより。

DW-Oシステム:ドワォ。攻撃方法はシャインスパーク、大雪山おろし、マッハドリル、ゲッタートマホーク、ゲッタービーム、ストナーサンシャイン。



第二十話B

34の鍵穴:ゴーカイジャーで鳥が扉になってしまったので。束の中に入るんだよ!ナ、ナンダッテー

クウネル・サンダース:あの格好をしてツインテールにしたラウラをご想像ください。「ク」繋がりからネギま、と言うかケンタッキーフランチャイズから。

遺伝子強化試験体:捏造設定。今日もラウラと同じ顔の子があひんあひん言ってます。一匹くれ。

骸の上に:あんまり意識したわけじゃありませんが強いて言うなら「仮面ライダーになりたかった戦闘員」よりスカルライダー。漫画化したら多分泣く。

ブリューナク:束さんがゲンゾーの井上フォルダから拝借した武装で作られているネタ度99%IS。名前はヨーコのライフルとエリオの槍で「貫く」から。
 侵入の際には束さんお手製のジャミングとデータ書き換えを自動でしてくれてる賢い子。実は筋金入りのロリコンなのだが話には特に関係ない。

PaK:ドイツの対戦車砲。口径はもちろん88ミリです。アハトアハトアハトアハト。

ブースター付きスコップ:ブースターはなのはStSのエリオからストラーダ、スコップは絶望先生の木津千里から。

ゲットライド:なのはStSのウェンディの武装のライディングボードより。あの人も井上さんです。ゲットライドはアムドライバーから。

緑色のスパッツ:スマイルプリキュアのキュアマーチより。あの子は生活費のためとか弟妹を人質に取られてとかヤられそうな要素満載ですよね。

紐ビキニとマフラー:グレンラガンのヨーコ・リットナーより。後でくーちゃんが語っているライフルもこれ。デリンジャーは劇場版から。

右手首の青いパーツとツァウバー:けんぷファーの瀬能ナツルが井上さんなので。俺も女体化しtげふんげふん。

クナイ:ダンボール戦記の井上さんのキャラが使うクノイチより。シャアカラーと言ってはいけない。

トランプ:この後の「お客様がお望みなら」と合わせてRioより。貧巨の差が激しいよね、井上さん……。

極水無限波:ベイブレードより井上さん。折角のトランプだし何か書こうと思ったらこうなった。

銃剣:ハイスクールオブザデッドのヒロインも井上さんなので。銃剣術使う女子高生とか怖いよ。っつーか砲に銃剣とかサイズ差凄いな。

ヴァルキュリアの槍:戦場のヴァルキュリア1の主人公が井上さんなので。最初は何故パン屋、と思いもしましたが気付けば3作も出るように……。

ファントム・ドーター:絶対可憐チルドレンより井上さん。本来は多重人格キャラなんですが超能力モノのキャラなのでAICの名前に。

ドクペ:謎飲料ドクターペッパー。何処どうやったらあんな味になるんでしょうか。

虎耳:けんぷファーなのでハラキリトラ。契約とはちょっと違う気がする。

パパの言う事を:聞きなさい。

人参ロケット:劇中劇からピンまでやったミーナより。束さんが使ってた人参ロケットをそのまま使用しております。

犬神:魔法先生ネギまの犬神小太郎の技より。どばどばと影からわんこが出てきます。

当たらなければ:シャアの台詞より。ぶっちゃけヘリコプターより旋回性が高い時点で現行戦力では殆ど手出しができません。

蝶ネクタイ:体は子供、頭脳はバーロー。腕時計、ベルト、サスペンダー、メガネ、スケボーで1セット。多いな。

亡国機業:捏造設定2。Bルート世界ではとんでもない影響力と歴史を持ってます。

本棚:スマイルプリキュアよりワープ本棚。きっと夏にはこの本棚を悪用される薄い本が出る筈。

黒鍵:捏造設定3。多分カーズとかそういった何か。嘘。

ちゃおッス:いや、幾ら赤ん坊でもカ行はいけるだろ……。

くーちゃんの名前シリーズ:クで始まる名前。下ネタはお察し下さい。

ほむホームの原理:アニメ版と漫画版で部屋が全く違うあの部屋。きっとキカイダーと同じ原理。



第二十一話B

パルスのファルシのルシがコクーンでワールドパージ:これをやりたかったがためにずっと待ってたのに…。

胸囲72センチ:如月さんちのくっ、さん。アニマスの虐めの代償にゼノグラとのコラボを要求する!

スコール:結局正体は謎のまま。気が付いたらコイツが噛ませ系の黒幕に……。

インターフェイス:いや、アレは非効率的過ぎるでしょ、実際。

実に残念ダァ!:ソニック・ザ・ヘッジホッグ、と言うかシャドウ関連のキャラ、メフィレスより。残念ダァ!

獣を超え、人を超え、そして神をも超える:ファイナルダンクーガ合体時の口上より

この気持ち、まさしく:愛ではないのは確実。00の乙女座の男より。

最高にハイってヤツ:DIO様より。なんかごちゃごちゃくっつきました。

壊れた地の文:大宇宙の恐怖っぽい何か感を出してみました。

シカゴタイプライター:トンプソン・サブマシンガンの通称。タカタカっつーかパンパン五月蝿いですが。

アップル&パイナップル:手榴弾の一種。アップルはM67、パイナップルはマークⅡ。外見の特徴からそう呼ばれてるそうな。ドーン!

コーサ・ノストラ:正確にはマフィアとは区別されるそうですよ。あとシチリア語だとコーザ、なんだとか。

貴女が好きだ! 貴女が欲しい!:世界三大恥ずかしい告白シーンことGガン最終回より。主人公属性が無い人がやっても駄目です。

無様ですね:エヴァのリツコさんの名言「無様ね」より。太鼓でも叩かせるべきだったか……。

飛空艇:FFとかのテックパンクファンタジーには欠かせないアレ。

飛行用ポッド:フリーザが初登場時に乗ってたアレ。ふよふよ浮くよ!

クウラ:冷凍兄貴。復活回数はブロリーの方が上。

鼻無し気円斬:クリリン。気円斬って何処まで飛んでくんだろうか……。

やがて考えるのを:やめた。JOJO二部のボス、カーズのラストより。復活しても強過ぎて使いどころが……。

惑星ダビィーン:漫画版真ゲッターでゲッペラーに蹂躙されたのでタイムトラベルしてゲッターを殺そうとした虫人間一族。宇宙追放(この倒し方多いな)状態のブライを改造して地球に送り込んだりした。

ISエンペラー:千冬が竜馬、束が隼人(ただし初代漫画版の目だ!耳だ!の方)、源蔵は武蔵クローン。こんな変態いっぱいいるとか怖いな。

ベヘリット:ベルセルクのキーアイテム。慣れるとそこそこ可愛らしい。

アーカム:きっとこの世界だとデモベ状態になってる筈。そして極貧探偵とかグリリバとかがISに乗る筈。むしろメタトロンは確実にIS。勇者王も居る。



第二十二話B

IS学園ハンサム:この話だけみんなの顎が長くなったりはしない。

ハコモアイシテ!:PSOよりレイキャシール。足音がガションガション五月蝿かったので「箱」と言われて蔑まれた過去を持ってますが俺は大好きです。
 っつーか2のα2テスト受かったのに就活で忙しくて一回もできなかった……いつか2で会ったらその時はアイシテ下さい。

ファンタジーなデザインと色合いのギター:スイプリよりラブギターロッド。中の人ネタ。きっとISの武装。

片眉を剃り落として:大山倍達氏のエピソードより。源蔵も武術家の端くれなのでやろうと思った事は千冬の半分ぐらいはあったり。

危険物処理は任せろー:バリバリ。元ネタはマジックテープ式の財布の音。千冬さんはきっとそこそこ不器用、って考えるとグッと来ません?

そのスイッチが~:フォーゼの部室スイッチのくだりより。

ゴルドラン合体時:正確にはグレートゴルドラン合体時。諦めの心が一つになるとか最高です。ゴッドシルバリオンも好き。

強いられているんだ!:(効果音)。ガンダムAGEのよく解らない集中線押しより。ガンダムとして楽しみたい人は小説版を読みましょう。

タバスコ:束とバスコを組み合わせた全く新しい調味料。これの前の束の台詞はバスコを意識してみました。

ライトハンド奏法:スタンド「レッド・ホット・チリ・ペッパー」の持ち主音石明の特技。ペッパーソースの商品名で有名なのがタバスコなので。

そろそろ独身生活:駄目人間による駄目人間の為の駄目人間アニメことギャラクシーエンジェルよりランファ。中の人ネタです。あとホントは独身生活を続けるって方向の台詞。

全力で筋肉の収縮:範馬勇次郎が行った痛みを分散させる方法。顔が凄い事にウワナニヲスルヤメr

最後だからド派手に:ゴーカイジャー最終回より。良い話でした。

綺麗な教室を吹っ飛ばしてやる:肩にライフルを乗せて撃ってはいけません。危ないので。

クリボー:コブラのクリスタルボーイより。正確には虹裏ネタより。あそこじゃオナニー狂いになってます。

退かぬ、媚びぬ、顧みぬ:北斗の拳、サウザー様の台詞より。こう在りたいもんです。

ネタ坂を上り始める:車田先生の(色んな意味で)名作、男坂より。俺はようやく上り始めたばかりだからな、この果てしなく遠いネタ坂をよ…

雪子さん:ってやっぱり父方の妹ですよね? 神社の管理してるらしいし。よく解んないんでそうなってもらいました。

おい、デュエルしろよ:この辺のやりとりは予想できてたのか源蔵以外は若干テンション低めです。あとカード学校までもってくんな。

学園の地下に:Zガンダムより。そりゃあもう大量に隠されてますとも。

液体金属ブレード:スパロボより参式斬艦刀。無事に完成した模様。

肩を赤く:ボトムズよりレッドショルダー。ヂヂリウムシャワーとイプシロンは作中のPS(ペッタンコ、もといパーフェクトソルジャー)計画より。

ドーンと:ゴーカイジャーよりドンさん。見慣れるまではずっとホモっぽい動きだなーって見てました。

三色のコア:オーズよりタトバコア。

ゴツい携帯電話:ゴーカイジャーより。開く時は当然シャィーンって鳴ります。

魔装錬成:エロゲーのヴァルプルギスより。モブが可愛い。

ゴーカイシステムチェンジ・セットアップ:ゴーカイチェンジ、システムチェンジ、セットアップをミキサーにぶち込みました。全部中の人ネタ。

ネガトーン:やっぱり中の人ネタ。セイレーンって呼ぶなって言ってたけど、本名とちゃうんか……?

巨大コンパクト:スマイルパクトクル! 後のレディ?もスマイルプリキュアより。

アリス:ARMSネタ。オリジナルARMSより。

かっこいいだろう:ギャキィ! 漫画版のスクライドより。宇宙船じゃねーか!

バリニュウム合金:特徴・ワカメ影ができる。

シュート!:鋼鉄ジーグより。IS着てんだから他人に制御任せんなよってツッコミは無しの方向で。

合体後の名前が気になる:ギャラクシーエンジェルの結局名前が解らなかった巨大ロボより。責めないでよって束の台詞もここから。

肩パッドやら篭手やら:グレート合体のお約束シリーズ。

だからドリルは取れと:マイトガインのメタ発言よりエグゼブの断末魔。

震・離・兌:陰陽大戦記より西海道虎鉄用の印。源蔵の台詞は召喚時のコゲンタの台詞、障子は召喚シーンより。

カッコいいからです!:とりあえずシルバリオンはビルドチームに謝るべき。警視総監はカッコイイ体してますよね。

黒騎士『昏櫻』:機体の組み合わせ自体はごく普通なのに全てが最高級の性能を持っているので恐ろしい事になる機体。武装の名前は全て雪関係から。

ナノマシン:捏造設定。紅椿に何乗せてんじゃ己は、と小一時間問い詰めたそうな。モニターがキーボードまみれになったので。

さぁ、地獄を楽しみな:仮面ライダーWよりエターナル。キルゼムオールの能力のモデルはエターナルがかーなーり混じってます。

お前らの運命は、私が決める絶望がゴールだ:2号ライダーの台詞を混ぜました。アクセルの「絶望がお前のゴールだ」とメテオの「お前の運命は俺が決める」より。ちょっと無理矢理。

アホ毛:キュアビートのビィーンって鳴るアホ毛より。血液のビートはジョジョネタ。

我ら信徒にして信徒に非ず:キルゼムオールの武装「ジューダス・ペイン」の音声起動キー。第二次アシカ作戦時のイスカリオテをイメージしてます。

全力全開:ご存知、束の中の人ネタです。

ゴールドモード:別名お面屋フォームことゴーカイシルバー・ゴールドモードより。ギンギンに~もゴーカイシルバーより。ゲキガンフレアでも使わせとくんだったか……。

心眼センサーフルオープン:ガンダム史に残る問題作(AGEとは別のベクトルで)、Gの影忍より。心眼なのにセンサーとかもう大好物です。

ガレオンバスター:ゴーカイジャーの合体武器より。あれ最終回で「ガトリングストライク」って言ってた気がするんですが……気のせいですかね?

Shout Now!:アニメ版スパロボOGより究極ゲシュペンストキック。両肩のブースターと下駄の電動鋸はガンバスターのスーパー稲妻キックより。

零拍子:捏造設定バリバリ。でもこれぐらいしないと厨二病とは言えません。ゼロシフトはZOEより。あんなイメージで突っ込んできます。マジ恐怖。

次の相手は:ドイツ逃げて、こと鋼鉄神ジーグより。

二刀一刃:天空宙心拳極意。生身でしかやってないんでスパロボのアレはオリジナル武器だったり。

レベルを上げて物理で殴る:紅椿ってそんな性能ですよね。箒の脳も。

暗黒盆踊り:ゼノギアスの主人公フェイの最終奥義、超武技闇勁より。夏祭りで踊ってる時に妙に疲れたらこの技に注意して下さい。

アークデーモン:「男子高校生の日常」より羽原。中の人ネタです。DW-Oシステムを解析して居なくなる直前に完成させた最後の強化パーツだったり。

人工知能ごっこ:スパロボの人工知能って最初こんな感じで喋ってましたよね。

二人で一人の:このネタをココで使わずしてどうする。仮面ライダーWより。六花の台詞もそこから。源蔵の返しはエターナルから。

アイ・デカルア:スダ・ドアカワールド的な何か。もしくはスパロボZ世界。

少し黙ろうか?:頭冷やされるぞー。

簪:ハルヒの長門とじゃんけんぽんでキュアピース。ちゅるやさんみたいな状態になってる束をお持ち帰りしたいです。

ラッキースプーン:スイプリより。でも普通は幾らで売れるか考えますよね。

ビフテキ:マクロスの柿崎より。そりゃ死亡フラグにつながる以上は避けないとな。

ここで決めなきゃ:スイプリより。六花、源蔵も。何かこの流れ多いな。

ペルソナ:待機状態がグラサンな上に同一個体を呼び出す技を持ってるので。カッ!

少しだけ足りない:エルドラⅤ初登場回より。ギャグにしか見えないのに泣けるシーンの一つ。

えげつねぇな:ワンピのウルージさんに並ぶ愛されキャラ、ハンタのゴレイヌさんの一言より。

キングジェイダー:ガガガのJの戦艦、キングジェイダーより。好きなものは日向ぼっこ。飛空艇なのでハイウィンドになってるのはご愛嬌。

ガルド・ミラ:所持=チートとまで言われたPSOの武装。一度でいいから使ってみたかった……。

六花コピーシリーズ:ワンピのしらほし、男子高校生の日常の文学少女、生徒会役員共の津田コトミ。全員中の人ネタ。

五つ入っていた射撃制御ソフト:攻殻機動隊2より。サイボーグって怖いね。構造解析、攻性防壁もそこから。

精霊手:精霊回路、霊子、完成せよ、情報分解も全てアルファシステムのゲームから。存在を抹消はガンパレのNEPより。束ならWTG開けそうだよね。

車田落ち:無防備に顔面から地面へ落ちるあの吹っ飛び方。常人ならまず間違いなく死にます。

螺旋竜巻落とし・重ね鎌鼬:二刀一刃と同じくマシンロボより。ドリル・サイクロンドライバーの飛ばしと重ね鎌鼬の決めの合体技。源蔵の返しは決め台詞より。

スプニ:PSOより凶悪武器スプレッドニードル。これも使ってみたかった……。

ビッグバンを引き起こすだけの:ゲッターエンペラー合体時のエネルギーの増大。どんだけ。

スピキュール:みんなのトラウマ。スターオーシャン2のミカエルが使う最凶技。開始直後に全体攻撃されて近付くまでにもう一発、で初見殺し完成。

私だ:モンスターエンジンのネタより。

キルノートン:うえきの法則より。眼鏡好きにしてくださいって言われたらそりゃ「変態だー」って言いたくもなりますよね。

地球がリングだ:Gガンのガンダムファイト国際条約七か条、第七条より。

失楽園:スッポンポンエンドだとイデオンが有名ですがドラマ版失楽園も大体こんな感じです。

大丈夫だぁ:志村けんのだいじょうぶだぁより。

死ぬほど痛いぞ:ガンダムWのヒイロより。これがやりたいがために自爆エンドにしたのは秘密。



オマケ オチ案

 泣くよ織斑編

「くぅ、どうしたら……!」
「ふっ、一夏。私があの二人の幼馴染を伊達にやっていない事を教えてやろう……IS、合体せよ!」
トゥルルトゥトゥトゥトゥルルン(ry
胴体箒 右手鈴 左手シャル 右足ラウラ 左足ちょろ
「誕生! ISキング!」
「うぉぉぉ……! 見たか! ISキングにのったあいつらは無敵だ!」
「やめろ一夏、無駄な見栄は張るな……」
「え、ど、どういう事だよ千冬姉!」
「あいつらは、ISの合体で死んだんだ……」
「みんなぁぁぁぁぁっ!」
『そもそも合体する必要があったんでしょうか』
「合体した姿が個人的に見たかった、とかだったら病気ね。我が姉ながら」
「姉さんもやりかねないなぁ……」
「簪ちゃん酷い!?」
衝撃砲発射
「あれ? 手が取れてる?」
「一夏……助け……て……」
「「「生~き~て~る~!」」」
「こ、殺せ一夏! はやく凰を殺せ!」
「殺さないで……」
「くっ、こうなったら俺の零落白夜でゾンビもろとも殺してやる!」
『あ、プロペラじゃないんですね』
「流石に自力飛行できるしねぇ」

 基本的に泣くようぐいすのまんま。あとオチてない。



 南アタリア島ルート

「この島にコイツが落ちてきて早十年……まさか白騎士騒動の裏でこんな事してやがったとは、あの時は思いもしなかったぜ」
「ふっふーん。ま、束さんにかかればこれくらい楽勝だよ!」
「で、その束さんの予想では何時なんだ? 俺的にはそろそろだと思うんだが」
「私も同意見かな。まあ、当初予定してたスペックも出せるようになったし……後は今まで培ってきたIS技術をコレに反映させるだけだよ」
「巨人と戦う為の刃、か……戦乙女のペットネームはISの仕様からか?」
「うん。この束さんの頭脳を以ってしても判明できなかった謎への敬意と憎悪を込めた、最高の名前。ことISに関してゲンゾーに負ける日が来るとは思わなかったもん」
「EAZ-ISコアは俺の夢だったからな。お前と飛ぶ為の翼だ、約束しただろ?」
「それに―――バルキリーもでしょ?」
「ああ。さあ、これから忙しくなるぜ? 一体何人が信じてくれるかな、巨人が襲ってくるなんてさ」

 最終的に歌で終わる。



 嘘予告 アイ・デカルア編

「ゲンゾー、これが……」
「ああ、七つの混沌。カオスエメラルドだ」

 時空振動弾かせめてTFPの方が良くね? ってツッコミは無しの方向で。




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