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[25569] 【習作】EFBを持ってリリカルへ(オリ主転生・テイルズ等のゲーム技名引用)
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/28 16:02
気づいたら赤ん坊になっていた
夢オチだとかテンプレだとかそんなチャチなものだろうとどうにか心を落ち着け……

られる筈もなく混乱しまくったが赤ん坊が混乱しても泣きわめくだけでどうしようもなかった。

さて、ようやく母の腕の中から離れられた頃、俺はまずは回りを知ろうとあれこれ嗅ぎまわったわけだが
見る事知る事あまりにも今まで自分が暮らしてきた世界とは違っていたわけで。

どうやらこの世界には魔法、というものが存在して、しかもそれが割と普通の事として認識されていた。
魔法、といっても所謂「魔力」というエーテル理論に似ているもので現象を起こすわけだが
その現象を起こすための術式演算やら何やらがとても人間が短時間で行えるものではなく
それを行うのはデバイスという演算装置に魔力を通して現象を起こす。
魔法とは魔力放出から魔力変換後に現れる事を総称して呼ぶ。
魔法使いはリンカーコアと呼ばれる魔力タンクを体内に発言させていることが前提条件である。
リンカーコアとは体内に生成される特殊な器官とも呼べるものであり、それがない人は魔法は使えない。
殆どの人間はリンカーコアを持たないのだが、何人かに一人の割合で魔法資質、つまりリンカーコアが発現する。
人以外の生物にもリンカーコアが発現する場合があり、そういったものは総じて魔法生物と呼ばれている。

さて、空気中にある魔力や体内で精製された魔力をリンカーコアがため込む事で、魔法として使える魔力になる。
それをデバイスに送り込む事で、現象として発現させるために変換-人に使えるようにアセンブルする-される。
変換された魔力は物理干渉力を持つ魔力や精神干渉力など、さまざまな干渉力を持つ魔力になる。
物理干渉力とは、物体に対して影響を与える魔力として運用される。
もちろん魔力自体に物質への干渉力を持たせているため、他者への攻撃やそれからの防御等も行える。
精神干渉力を伴った魔力は、相手の精神に自分の魔力を送る事で、会話をしたり、精神へ負荷をかける事が可能となる。
それらを突き詰めれば相手を文字通り粉みじんにしたり、意のままに操る事もできるが、それは法で規制されているらしい。
治安維持を司る、管理局と呼ばれる組織が犯罪者へ魔力行使を行う場合、魔力が相手に当たった時の影響にリミッターをかけることで、どれだけ強力な魔力だろうと、相手に与えるのは物理的にしろ精神的にしろ強い衝撃を与えるのみにしてあるとか。
これにより、相手は気絶するのがせいぜいであり、死ぬ事はないというなんとも生ぬるい、もとい安全な治安維持を可能にしている。
一般人が使う魔法は専ら空間干渉力へ変換した魔力を用いての転送魔法や、物理干渉力を用いての飛行魔法や生活用魔法である。前者はともかく、後者はものによっては念話等の演算を必要としないものが多く、飛行魔法は治安維持という名目で街中では許可なく使用は禁止されている。
かといってそれらがなくても自分が生きていた頃以上に発達した科学文明を持つこの世界では殆ど意味のないものである。
よって魔法資質があろうがなかろうが、一般生活に関しては魔法というのは「あれば便利」くらいのものなのだ。

話を戻すが魔力変換というのは水や炎、電気などにもなるが、それらを行う場合それなりの負荷がかかる。
補助として詠唱や特殊な魔法陣による補助等の行為を用いての変換があるが、発動までのタイムロスは避けられない上に
一般的に魔法というのは行使者が魔力をデバイスに通すだけというのが普通である。
デバイスは人が身近に置いておけるもの、という前提があり
そういった属性変換を単体で出来るデバイスは高額だったり大型だったりと、一般人はまず持てないものである。
だが、一部の素質ある者-変換資質保持者と呼ばれる-の中には脳やリンカーコアに変換専用の器官を持っていたりするため
デバイスより早く、効率よく属性変換させる事が可能であり、そういった者達は通常魔法より属性魔法を使用する事が多い。

さて、長々と語ったが魔法といってもなんでも出来るわけでもない。
この世界で最もよく使われる魔法は「転送」と「攻撃行為」なのである。
何故かと言われたらそれ以外は全て科学で代用、それも魔法という不安定なものに頼らずとも安定して使えるからである。
では何故魔法での犯罪行為が後を絶たないのか。
それは魔法攻撃は本人の能力如何によっては質量兵器の禁止されたこの世界において
個人としては破格の攻撃力を持つ事が出来るからであり
転送魔法は科学では不可能に近い領域だからである。

こうして話すと、何をトチ狂ったのかと思わざるをえないが、自分がこれから生きるであろう世界の根幹にあるものである。
必死で覚えたこちらの身にもなってほしい。
だが、やはり一番の驚きは自分が生まれた場所というのがそもそも地球ではなかったことか。
ミッドチルダ。数ある魔法世界の中で最も魔法使い人口が多い世界の惑星である。

「さて、ここで問題。この世界はなーんだ?」

A,リリカルなのは

「第二問。これはつまり?」

A,いわゆる異世界転生

「では最後の問題。俺は一体なんでしょう?」

A,転生オリ主とかそんなチャチなもんだろ

そういうことであった。



[25569] それは突然の出会いがあった後なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/24 15:08
さて、分かりやすくどうにかこうにか自分の事をまとめるとこうだ
起きたら赤ん坊に転生。
前世の記憶は持っているが、最後の記憶は思い出せない。急死とかそんなんだったのだろうか。
ここはリリカルな世界でここはミッドチルダのありふれた商業都市の一つ。
そこに住む中流家庭の長男として生まれた俺。名前はヴェル
母親は専業主婦、父親は、管理局員。やはりというか割とありふれた普通の家、らしい。
母親は結婚する前はやはり管理局員で、職場恋愛の末に寿退社というまたありふれた経緯を持っていた。
まぁそんなわけで、どちらも魔法使い。ランクは聞いた事がなかったが父親は海、つまり次元航行船で家にいる事は殆どなく
母親も元海の人間という事から、それなりの強さを持っていたのだろう。

「ねぇ母さん、やっぱり俺も魔法使えるのかね?」

「んーそれじゃ検査してみるー?」

3歳にして普通に会話をする俺にそう言う母。
赤ん坊の時最初に口にしたのが「母乳は勘弁…」で驚かれたりと色々あったが今は何の問題もない。
「私とディルさんの子ならそういう事もあるわよねー」で納得されてしまったのは喜ばしいのか不安になればいいのか疑問だが。

魔法適性検査というのは誰でも受ける事が出来る。一つの都市に最低一つは検査を行える場所が公的施設に併設されているからだ。
母に手を引かれて30分。公共機関と徒歩で辿り付いたその場所で検査を受ける。

「ヴェル・ロンドさん。お入りください」

「んじゃちょっと見てもらってくる」

「いってらっしゃいー」

語尾を伸ばすウザ…独特の口調を崩さずひらひらと手を振る母親に見送られて二号室と書かれた部屋へ。

「こんにちわ。それじゃ検査を始めるけど、全然痛くないから安心してね」

中年の女性の担当者から上着を脱がされて検査する機器を近づけられる

「えーと、リンカーコアは…うん、あるね。ヴェル君、今まで魔法を使ったり魔力を自覚したことは?」

「ないですね」

「それじゃあ、私が魔力を出すから、それを見て、感じて、同じものが自分の中にあるか感じ取ってみようか」

そう言われて手を握られ、そこがほんのりと光り出す。これが魔力。始めて触れたがよくわからない概念的なものとしか言いようがなかった。

「これが魔力。じゃあ今度は自分の中にある魔力を感じてみて」

そう言われてもなぁと思いながらも目を閉じて自分の体の中を感じ取ろうとする。
すると体の中にほの暗い淀みのような場所があるのを感じ取れた。

「多分ですけど感じ取れました」

「じゃあそれを手のひらまで持ってこれる?大丈夫。ただの魔力は安全だから」

「はい」

再度目を閉じて淀みに意識を集中させ、淀みへ近づくイメージを持つと、その淀みがはっきりと見えた。
淀みは暗い色の青。黒に近い紺色をしており、粘性を持つかのようにゆっくりとした動きで波打っていた。
これを手の平へと移していくのだが…どうしたものか。とりあえずバイパスを通す感じでいいのだろうか。
某ゲームの魔術使いと同じで淀みを中心にして道を通すイメージを送ると
その通りに一本の道筋ができ、それは指先で枝分かれし、体の中心から右手の指先まで出来た。
目を開けると何も起きていないが、自分の右手にしっかりと道筋が出来ているのが感じられた。

「じゃあ、魔力を通してみます」

「うん、ゆっくりでいいからね」

淀みの紺色を右手に送り込む。ゆっくりとした流れのまま腕から手の平、そして指先にまで浸透する。
そして徐々に右手に紺色の淀みを集める。

「えっと、通しました」

手のひらから紺色の魔力光。
そして、手のひらからは白い煙と冷気が出ていた。

「これは…そのまま弱いままで維持しててくれる?」

そう言いながら女性は俺の手のひらに手を近づける

「これは…凍結変換ね。ただの魔力には出来ない?」

そう言われても自分の中の魔力をそのまま自分の手のひらに持ってきただけで、変換なんてちっともわからない。
それを自分のイメージと共に伝えると担当官は少し考えてから

「紺色を別の色に変えられない?」

「やってみます」

自分の中の淀みの色を変える。色としては何がいいだろうか。
とりあえず白に変えていこうとイメージすると淀みは徐々に紺から青、青から水色、そして白へと色を変えた。
それをそのまま右手に流すと、今度は白い魔力光は出たが、冷気は出なかった。

「凍結変換資質持ちね。変換資質の中でも中々お目にかかれないものなのよ?」

そうなんですかと、相槌を打ちながら
あれ?でも凍結変換された魔力をため込んでるっておかしくね?と思ったが
まぁ後で考えようとそのまま礼を言って部屋を出た。

「どうだったー?」

部屋から出て母から聞かれて、少しだけぼーっとした表情のまま結果だけ答える。

「まさかの凍結変換持ち。魔力量はこれから計るって」

「凄いわねー私もディルさんも変換資質は持ってなかったわよー。夏は冷房いらずねー」

まぁこんなものである。

「それよりも、母さんと父さんって魔力量は多かったの?」

「んー、ディルさんは普通だったかなー」

「じゃあ母さんは?」

「ディルさんよりは多かったわよー」

「そうなんだ、じゃあ普通くらいかもね」

「そうねー」

と、そんなやり取りをしながら呼ばれるのを待ち、今度は魔力量検査へ。
魔力量検査は自分の中の魔力を全て体外に放出させるイメージを送り、その時の放出魔力量を見る事で計る。
そのため今度は内科の診察室のような場所ではなく、運動場のような場所へと案内された。

「それじゃあヴェル君、自分の中の魔力を全部外に出そうとしてみてくれる?」

そう言われ、自分の中の魔力を外に出そうとしてみるが、これが中々上手くいかない。
淀みの大きさに対して体の中に出来ている道が右腕だけでは小さすぎるのだ。

「えっと、もう一度やっていいですか?」

確認を取り、目を閉じてまずは自分の中のバイパスを増やしていく。
自分の中の淀みから道を全身に広げる。太い道、細い道、血管のように広がり、それは全身へと行きわたる。
そして淀みを全方向の道へ流し込む。自分の中の淀みは一気に減り、それらは全てバイパスの先端へと流れだしていく。

「ま、まって!ヴェル君ストップ!」

慌てた様子の担当官からの声を聞いて体外に溢れ出していた魔力を全て自分の中へと戻した

「どうしました?…ってなんだこりゃ」

「これは……凄いわね。」

目を開けて目の前の光景に担当官と二人で茫然とする。
忘れていた。いつの間にか白から元の紺色に戻っていたのに気づかないまま
魔力を外に出した結果、運動場は大型冷凍庫へと早変わりしていた。

「魔力量は最低でもAAAクラス。加えて単純な魔力放出だけで広域魔法扱いとはね…」

魔力を消費して疲れた体をソファに預けながらつぶやく。
これ以上の計測は首都の設備でないと計測できないと言われ、連絡先やら何やらの手続きを受ける母親を眺め。
出力リミッターを断る代わりに一人の時は暴走の危険もある為絶対に魔力を出さない事と念込めて言われたりと。

そして一週間、母親と二人、1時間半ほどかけて首都クラナガンの検査施設へとやってきて再検査。
今度は遠慮しないでやってねと言われたものの、自分が凍結しそうで正直怖くなったりもしたが
最初の検査の時、自分の廻りが凍結してる中、なんとなく冷たいという程度で自分は寒くもなんともなかったことを思い出して。
まぁ大丈夫かと全力全開で魔力を放出した結果。
周囲50mを絶対零度、温度計が壊れて計測不能と出たが確実に-273.15℃以下に出来るというありえない結果が出たわけで。
まぁ、チートオリ主なのか、と言うとこのレベルならチートと言うほどでもなさそうだ。
確か本編開始時点でなのはもフェイトも魔力量はAAAいってたし。
魔導師ランクがAAAだったのなら問題だが、魔力量がAAAというのはそこまで大騒ぎする程の事ではない。が…

「デバイス無しでの広域凍結。魔力保護なしの人間にかましたら大惨事、か」

どうやらあの紺色の淀んだ魔力は濃すぎるらしいのだ。それを垂れ流せば少ない量の魔力でも触れた側から完全凍結していく。
威力、範囲、共にオーバーSクラス。一般人が持つには危険すぎるが、それを縛る法は残念ながら管理局にはない。
両親が管理局員というのもあるのだろう。特にリミッター制限や封印措置等はなかったがやたら期待のまなざしを向けられた。
だがあいにく自分は管理局なんて入る気はさらさらないし、そもそも原作開始からA'sまでは全ての事件は第97管理世界-地球-で起こる。
ミッドチルダに住む自分にはなんの関係もない。少なくともStSまでは確実に。

「こんにちわ」

そんな事を脳内でやっていたらふいにすぐ目の前から女性の声が聞こえて天井を見ていた顔をおろして前を向く。
母親はかつての同僚やらと俺の事を話し合う、という建前のもと世間話をしに何処かへ行っており、ここには自分だけしかいない。
そして目の前には緑の髪の毛をポニーテイルにした綺麗な女性が…ってあぁ何故だ……

「こ、こんにちわ」

中の年齢はもう二十歳過ぎてるのにどもってしまった自分に恥ずかしくなりながらもぎこちなく挨拶を相手に返す。
彼女は隣に立っていた黒い髪の少年と共に反対側のソファーに腰を下ろし

「初めましてヴェル・ロンド君。私は時空管理局って所で働いているリンディ・ハラオウンと言うの。貴方のお母さんのルクレとは昔一緒に働いていた仲なのよ」

「はぁ…うちの母の元同僚さん、ですか。という事は父も?」

「ええ、貴方のお父さん、ディルさんとは今も職場でお世話になっているわ。あ、そうそう、うちの息子を紹介するわ。ほら、自己紹介なさい」

リンディさんは自分の隣に座って所在なさげにしていた黒い髪の少年に言う。

「あ、えっと、クロノ・ハラオウン。8歳だ」

「初めまして。ヴェル・ロンド。3歳です」

そう言ってお互い握手を交わす。どうでもいいがこの時点の5歳差ってかなり身長差がある。
幼稚園児と小学校中学年じゃなぁ…でもそのうち自分が成長期の遅いクロノの身長を抜いたりしてしまうのだろうか。
しかしクロノと5歳差。つまりなのはやフェイトたちと同い年確定…という事から軽く現実逃避していた。
なんか嫌なフラグ立ちまくっている。
そしてそれをにこやかに見ていたリンディさんはこちらを向いて

「ディルさんから聞いたときはまさかと思ったけど、ヴェル君って本当に3歳児?」

「えぇまぁ、無駄に語尾を伸ばしたり無駄にテンションが高いなんて事もない至って普通の3歳児です」

「ふふ、つまり両親のどちらにも似てないって事?」

「いえ、楽天的な思考だけは確実に遺伝ですよ」

「あらあら。うちのクロノももう少し楽天的になってくれるといいんだけどねぇ…」

「母さん!」

「はは、しっかりものの息子さんってだけでは不十分で?」

「母親としては少しくらいやんちゃでいてほしいものなのよ?」

そんなやり取りをしばし交わしてから、居住まいを正したリンディさん。あぁこれは例のお誘いか?

「それにしても、検査結果を見させてもらったけど、凄いわねヴェル君」

「母さんからは瞬間冷凍庫ねー、って言われましたよ。父さんはきっと必殺技名を考えないとなっとか言われそうです」

「そ、そうね…否定できないわ…」

やれやれといった表情で言う俺にリンディさんは冷や汗を流しながらも

「おほん、それでねヴェル君。その力を、有効に使う場所として、管理局に入局するという…」

「あぁ、今の所管理局とか全然考えてないです。とりあえずこの力を有効活用するならアイスクリーム屋とかですね」

冗談交じりに、だがばっさりと叩き折る。

「あ、あら?」

「だって考えても見てくださいよ。犯罪者に向かって『エターナルフォースブリザード。一瞬で相手の周囲の大気ごと凍結させる。相手は死ぬ。』なんて台詞をのたまう奴を。ドン引きってレベルじゃないです」

自分で言ってて寒くなってきた。なんだってこんな能力持ってしまったのやら。馬鹿だとか⑨だとかそんなチャチなもんはお断りしたい。

「えっと、管理局は非殺傷設定があるから相手を殺す事は…」

「あぁ、リミッターかけるんでしたっけ?生きたまま氷漬けとか余計に厨二チックだなぁ…やだなぁ…」

考える程鬱になる俺を見かねたのかリンディさんは取り繕うように

「おほん、ともかく、ご両親も管理局員なのだし、将来の選択肢の一つとして」

「3歳児に将来設計させないでくださいよ。こちとらまだ教育機関すら入ってないというのに」

そう切り返すとリンディさんは顔を引き攣らせながらも

「そ、そうね…ごめんなさい。ヴェル君なんだか3歳って感じがしなくてつい…」

「ん、まぁお話はそれだけで?」

「あ、えぇ…っと、そう、クロノとお友達になってくれないかしら?」

「それは構いませんが。クロノ君って呼んでも?」

そう言ってクロノを見ると、あぁなんか睨まれた。

「僕はお前と友達になんてならないぞ」

「クロノっ!」

「あぁ、それは重畳。なんでか恨まれてる相手と友達になるのは流石に俺もごめん被る」

悪いがリンディさんの旦那さんの敵討ちなんて崇高な目的こっちはこれっぽっちも理解できない。
だがそれを言った瞬間クロノは自分に殴り掛かってくる。そしてそれを避ける。
体は3歳だが脳みそは既に成人である。体の使い方は8歳ごときに遅れは取らない。

「やめなさいクロノ!」

更に殴り掛かろうとするクロノの腕をリンディさんが掴んで止める。
クロノはまだ俺に憎悪の目線を向けていたが、リンディさんに強い口調で言われたのが効いたのかしぶしぶ下がった。

「ごめんなさいね、ヴェル君。ほら、クロノも謝りなさい」

「いえ、謝らなくていいです。クロノ君も怒る理由があるんでしょう?」

「えぇ、でもこれはうちの事情。ヴェル君は関係ないわ。そしてクロノが怒る理由にしていい事ではないわ」

「まぁ、深くは聞きませんけど。俺が自分の大切な人を失ったら、きっと復讐心でクロノ君みたいになってたかもしれないですね」

「なッ…ヴェル君、うちの事…?」

「エスティアの暴走事件なら父から聞かされた事が。惜しい人を亡くした、と」

「そう…うちの主人とディルさん、船は違っても仲はよかったものね」

「そしてその顛末も多少は聞き及んでいます。闇の書という魔導書が原因らしいですね?」

「えぇ、クロノはそれを知って管理局入りを」

「なる、程…成程。そして俺の絶対零度なら闇の書だって凍らせられるかもしれませんね」

「ならっ!なら強力してくれ!殴り掛かったのは謝るから!」

そう叫びながらクロノは頭を下げて懇願する。
そしてリンディさんもこちらに頭を下げながら言う

「個人的な事に貴方を巻き込む形には絶対しません。ただ闇の書が再び人々に災厄を振り撒く前に貴方の力を貸して頂きたいの」

そうか、そんな他人事のために子供一人の人生を曲げようとするのか。
多少なり協力くらいはしてやろうという考えの前に思ったのはそれだけ。

「物事はすっぱり決める性質ですから言っておきます。お断りです」

そう答えた俺を、親の仇を見るかの如き視線で見つめるクロノ。
そしてリンディは悲しそうな顔をしながらも

「わかりました。本当にごめんなさいね」

そしてクロノと共にリンディさんは立ち去った。

「あぁ、本当、気が滅入る。8歳児が復讐心にとらわれて、それを赤の他人、それも3歳児に押し付けようとか狂ってやがる」

天井を見つめながら呟く。

そしてどこからともなく。いや、正確には自分の中から声がかけられた。

『でも、どこかで助けてあげたいって思ったんじゃないの?』

「俺は他人の復讐劇に混ざるつもりはないよ。向こうがそういうの抜きで助けてほしいって言ってきたならまだしも」

『そうなの。ならきっといつかまた彼女たちはヴェルの前に現れるわね』

「やめてくれよ。そういうのフラグっていうんだぜ?それに俺が何もしなくてもどうにかなるってわかってるんだ」

『あら?私を見つけた時にも「テンプレだな」ってボヤいてたじゃない。ヴェルはきっとそういう星の元に生まれたのよ』

「だからやめろって。マジでそういうのはお断りしたいんだ。お前だって出来ればお断りしたかったんだぞ」

『冷たいわね』

「あいにく心が絶対零度なもんで」

『上手くないわよソレ』

「たった数日ばかりの付き合いの相手にこの仕打ち。やはり早々に追い出すべきだな」

『ふふ、残念。この契約は破棄できないわよ』

「そのうち絶対追い出してやる。覚悟しとけ」

『あらあら、それは怖いわねぇ』

「またお前を追い出す修業の日々が始まるお…」

『師匠である私を追い出すための修業ね…教えるのやめようかしら』

「もうどうにでもなぁれ」



[25569] 魔法の呪文はフリージング・ダーク・アイシクル・オブ・ディッセンバーなの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/24 16:06
はたから見たら独り言をつぶやく痛い子供だが、あいにくとまだ母親は戻ってこないので誰にも知られる事はない。
そして痛い子にしか見えないが、自分は至って正常である。異物を体に取り込んでいる現状、健常とは言えないかもしれないが。

『あら?私がヴェルの中に入ったからって何か害があるわけではないと言った筈よ』

「なら出てってもらっても何の害もないわけだよな?」

『ふふ、残念だけど、私がヴェルから出られるようになるまであと5年はかかるわ』

「……はぁぁ。なんだってまた俺なんかに寄生したんだか」

『だから寄生ではなく契約よ。ただちょっと休ませてもらってるだけじゃない。ヴェルの中って居心地いいのよねぇ』

「お前のせいで魔力変換資質持ち扱いでさっきも普通に魔力放出しただけで周囲50mが絶対零度になったりと危険物認定されて将来が激しく不安なんだが?」

『あら?貴方は元々凍結変換資質持ちよ?じゃなきゃ私とこんなに相性がいいわけないし。だから私が教えればヴェルは誰よりも優れた凍結魔法使いになるわ』

「なん…だと…?」

『ふふ、さて、そろそろ母親がくるわ、私は寝てるから。それじゃね』

「お、おいちょっと待てよレティニア。俺が凍結変換資質持ちってどういう事っていうか、大体いつから修業始めるんだ?って…あの女郎寝やがった」

なんでこんな事になっているのか。
それは最初の検査を受けて家に帰り、そのまま母親と夕飯を食べ、風呂に入り(3歳なので母親と一緒に入れられる拷問)
やはり語尾が延びてシュールな雰囲気を漂わせた子守唄を歌う母親の胸に抱かれながらもなんとか寝入ってからの事である。

「あら、見つかっちゃったわね。こんばんわヴェル」

気づくとそこは自分の中の淀み、魔力の源であるリンカーコアの中で、俺は淀みの上に立っていた。
そして目の前には、一人の艶やかな黒い長髪を持つ一人の女が、淀みに腰まで浸かった状態で佇んでいた。

「あぁ…えっと、こんばんわ?」

自分は寝た筈では?と戸惑いつつも挨拶を返す。
そんな俺を見つめながら目の前の女は穏やかな、しかし明らかに悪女の笑みを浮かべていて

「初めまして。私は」

「ちょっと待て、この展開はまさかあれか?生まれた時から契約がどうたらって奴か?」

そう言うと彼女は驚いた表情をしてから、ニヤリと笑い

「えぇ…そうなんだけど、よくわかったわね?」

「もうやだ……」

ここまで都合がいいのか悪いのか、死亡フラグとかも立つ要素を引き込んでる時点で悪い気がする。
そんな事を思い鬱になって両手をついて俯いていると彼女から呆れ混じりの声がかかる。

「私に気づいたと思ったら直感で言い当てたり落ち込んだり。ヴェルって割と感情表現豊かよね?普段はそっけない人間で通してるのに」

「好きでやってんじゃねぇよ。それよりも、お宅はどちら様で、なんで俺のリンカーコアに埋まってるわけ?」

起き上がりそう言い放つと不服そうな表情をしたが、すぐに元の微笑を浮かべた彼女は説明を始めた。

「私の名前はレティニア。かつて存在した世界で氷を司る精霊だった物よ」

「なる。つまり⑨か」

「⑨?よくわからないけど。それで、その世界が滅んで、私も消え去る所だったんだけど。何故か分からないけど別の世界にはじき出されたのよ。」

「で、はじきだされてなんで俺に?」

「説明するから黙って聞きなさい。えーっと、そうそう、別の世界にはじき出された訳だけど、そこにあった魔力は私には合わない魔力だったの。
それで私は自分の魔力が尽きるまでは適当に放浪してて、そろそろ消える頃だったんだけど……」

そこで俺を見ながら先ほどと同じ悪女の笑みを浮かべて

「私と同じ質の魔力を持つヴェルが生まれたのを見つけて入らせてもらったわ」

「なるほど、憑依霊か…」

「違うわよ。まぁそういうわけで、ヴェルの魔力核、こちらで言うリンカーコアと精霊契約をさせてもらっているわけ」

「で、それは俺に何か影響あるのか?」

「今の所ヴェルの魔力が私に影響されて純水な凍結属性の魔力になっているって事くらいかしら?もっともヴェルが凍結以外の魔法を使う場合は元の魔力に戻すことも出来るけど」

そういえば今日疑問に思った事だったと気づく。

「あぁ成程、どうりで変換された魔力が体内にあるわけだ…っておい、それって俺が凍ったりはしないのか?」

「私が中にいる限りヴェルが凍る事はありえないし、私がヴェルの中から出ればその瞬間ただの魔力に戻るわ」

「成程…ちなみに、いつか出ていくよな?」

そう聞くとレティニアはいかにも残念ながら、といったポーズをしながらもしかし口には笑みを浮かべ

「あら?出て行ってほしいの?でも残念ながら無理よ。弱った私はヴェルのリンカーコアに癒着している状態だもの」

「なんだそれ…まさか、ずっとそのままなのか?」

「この世界の魔力は変換こそ簡単だけど、精霊が取り込むには不純物が多すぎるのよ。
だから私は少しずつしか魔力を補充できない。何年かすれば外に出られる程度には回復するわ。それまではどうにも動きようがないわね」

ここまでくるともうどうしようないとしか言えない。

「……ハァ。ほんとーにテンプレって感じだなぁ」

「あら、運命って言い方も出来るわよ?」

「どんな運命ならロストロギア入り間違いなしの魔法生物に寄生される状況が出来上がるんだよ」

「ヴェル・ロンドという人物の運命はレティニアという氷の精霊と共にあるものなのだと納得するのをお勧めするわ」

「こうホイホイとわけわからん事続きだと流石に投げ出したくなるぜ」

「ふふ、投げ出す事なんて出来ないわ。ヴェルは私と一心同体。ヴェルが望む事ならなんだってしてあげるわ。でも夜の手ほどきはもう少し大きくなってからね?」

妖艶な笑みを向けられてもちっとも嬉しく思わない。
考えてもみてほしい。こいつは人外の超常生物で、自分はバケモノの餌タンクになっていたという事だ。

「はいはいワロスワロス。俺の望みは適度に生きて満足して死ぬ事だから、お前みたいな死亡フラグに繋がりそうな要素は早急にお引き取り願いたい」

「つれないわね」

「人生の刺激は間に合ってるんで」

「あら、私の与える刺激はただの人間では到底味わえないものばかりよ?」

「気持ちいいを通り越して痛いレベルの刺激受けて喜ぶマゾじゃないんでね」

「成程、お望みなら刺激を受ける側になってあげてもいいわよ?」

「そもそも俺の中に埋まってるその状態で受けも攻めもないだろうに」

「それもそうだけどもう少し雰囲気を読んで欲しいわ」

「読んだ上での発言だよ。まぁ、とりあえずこれだけ教えてくれ」

「何かしら?」

「お前を狙ってる組織だとか結社だとかそういうチャチなもんは存在しないんだよな?」

「私がいた世界はそもそもこのミッドチルダという世界から発見されていない世界だったわ」

「さよか…。無理やり追い出すなんて選択肢選んだらバッドエンド直行しそうだしなぁ……」

そう、仕方ないと諦めた。正直一刻も早く出て行って欲しかったがそれは出来ない。
ならどうするか。そこそこ友好的に付き合っていくしかない。
でなければ来るかもしれない厄介ごとに何も知らないまま相手をする羽目になるかもしれないからだ。
それは勿論こいつがいる事によって起きる厄介ごとであり、それ以外の厄介ごともだ。
自分の手札が増えた分、レイズされた額、もちろん自分の命の危険度が増えたのだ
手札とは長い目で付き合っていかなければ最良の役は引き当てられない。

「くれぐれも自分から問題行動起こすなよ?」

「ふふ、ありがとうヴェル。それじゃあ私からも一つだけ聞いてもいいかしら?」

なんとなく聞かれるだろう事は察しがついていたので自分から切り出すことにした。

「…ん、俺は今年で24歳だよ」

「そう…21歳までの前世の記憶があるのね?ヴェルの独り言や行動からそうなのかもとは思っていたのだけれど」

「あぁ。魔法なんてものはない割と平和な世界でな。しかもこの世界がメディアとして存在していた。まぁその物語には俺やお前の描写なんてかけらも無かったけどな」

「それはまた……凄い所から来たものね。ちょっと想像がつかないわ」

「最初の一か月は夢オチだと必死に願ったものだよ。でも夢ではなくさっぱり現実だった。そして俺はこの世界から元の世界には戻れないんだろうさ」

「……ねぇヴェル。貴方はこの世界でどうするの?」

「さっきも言ったけど適当に生きて死ぬ。俺が見た物語の中の登場人物と関わる羽目になるかは知らないが、俺としては出来ればご免被る」

「それは、どうして?」

「関係ないから。赤の他人の不幸に命をかける?冗談も休み休み言えと。そもそも俺が見た物語はハッピーエンドだったぜ」

「でもこの世界ではどうなるか分からないわよ?」

「それが心配だから介入する?様子だけでも見ろと?ハッ、ちゃんちゃらおかしい。会った事も喋った事もない人間しかいない世界とそれに関わって脅かされる自分の命。計るまでもないじゃないか」

嘲るように言い放つ。目の前で困っている人がいる状況ですら傍観する人間が殆どだというのに。
目に見える範囲でならともかく今の状況で遠く離れた赤の他人を助ける余裕なんてこれっぽっちもないと自覚している。
凄い力を手に入れた。これであの子を助ける事が出来る?馬鹿馬鹿しいにも程がある。
自分の命すら現在進行形で危険になっていっているかもしれないというのに。
そしてその考えは目の前の精霊にも納得のいく考えだったようだ。

「そうね。私も行った事も見たこともない世界とヴェルの命なら、ヴェルを取るわ。ヴェルと私は一心同体だもの」

「へぇ。冗談じゃなかったんださっきの言葉?」

「あら、私は魂の伴侶には嘘は言わないわよ」

「さいですか。……まぁそういうわけだから、例え向こうから接触してきても俺は関わろうとは思わない。
自分の命に危険が及んだ時か、知り合い以上になって助ける理由が出来たりすれば、考えるかもしれない程度だ」

それを聞いてレティニアは黒い笑みを浮かべて

「そうね、私もそれでいいと思うわ。でもヴェルという異物を入れたこの世界は、貴方を放っておくとは思えないのだけど?」

「いや、何いきなりそんな黒幕みたいな事言ってるわけ?つかやめろ、そういう事言うと本当に向こうから厄介ごとがこっちに寄ってきそうだ」

「ふふ、そうね。私という厄介ごとを引き寄せたんですもの。そのうちヴェルの見た物語の登場人物がひょっこり現れるかもしれないわよ?」

「勘弁してくれよ…」

「あら、落ち込ませちゃったかしら?」

「3歳児に厄介ごとが降りかかるとか死亡フラグもいい所だろう」

「そうね。普通の3歳児なら何も出来ずにただ死ぬだけかもしれない。でもヴェルは前世の記憶持ち。そして私、レティニアがいる」

「お前がいるのは厄介ごとフラグの種以外に考えられないんだが」

「えぇ、どんな厄介ごとも瞬間冷凍させるひんやりでジューシーで敏感な種よ?舐めてみる?」

再び妖艶な笑みを浮かべて着ていた黒いワンピースの肩を肌蹴るがちっとも喜べない。

「丁重にお断り申し上げます」

「本当につれないわね…そういえばヴェルのリンカーコアに私という精霊が契約した事による恩恵を言ってなかったわね」

「魔力が凍結属性に変換されてる以外にもあるのか?」

「精霊は魔力そのものに近いの。だから空気中の自然魔力を取り込む事に特化してるわ。それがヴェルのリンカーコアと癒着してる。
そして私はこの世界の空気中の魔力を集める事は出来るけど、自分の魔力として取り込む事は出来ない。
でもヴェルのリンカーコアなら空気中の魔力だろうと取り込めるし
取り込まれてヴェルの魔力として変換された魔力は私も少しずつ変換して取り込める。どういう事かわかる?」

「えーと、つまりレティニアの集めた魔力を俺が取り込んで、変換された魔力がレティニアに変換されて取り込まれる、と?」

「そう、そしてその過程で、私が集めた魔力の大半は貴方の魔力としてリンカーコアに残るわ。つまり」

「レティニアが集める分魔力の回復が早い、と」

「その通り。貴方のリンカーコアが空っぽになっても、私が魔力を集めはじめれば1時間もあれば満タンにできるわ」

「それって凄いの?」

「ヴェルと同じ魔力量を持つ人間が自力で魔力を全回復しようとしたら5、6時間は寝込む必要があるわ」

「あんまり実感ない恩恵だなぁ」

「そうね、そもそもヴェルくらいの魔力量になるとガス欠って事自体少ないでしょうし」

「そんな多いの?」

「そこまで多いわけではないけど、使った側から回復するのだからガス欠はほぼないわね」

「へぇ……」

まぁこの程度の恩恵ならば別にチートと言うほどでもないのではなかろうか。
確か一気では高町なのはがフェイト・テスタロッサに自分の魔力を与えるという魔法もあった筈。
相手の魔力と同じ性質にしてから付与する方法があるなら大気魔力を変換して即回復する機器や施設だってあるのだろう。

「それから、凍結変換についてなんだけど。普通の凍結変換の魔法はどういう原理かわかる?」

「さぁ?凍結魔法っていうんだから冷気を持った魔力なんじゃないの?」

「その通り。普通の凍結魔法は周囲の温度を下げるという因子を持つ魔力よ。でも私の影響を受けた凍結変換の魔力はそれとは一線を画しているの」

「って言うと?」

「ふふ、私の影響を受けた魔力は分子の振動を止めるの」

「……嫌な予感がしてきた」

「魔法効果範囲内では気体の分子すら運動を止め、範囲ごと完全凍結させるわ」

「うわぁ……うわぁ……」

いきなりげんなりとした表情を浮かべた俺に焦った表情を浮かべるレティニア。

「ど、どうしたの?凄いでしょう?ただの魔法ごときでは絶対に至れない領域よ?」

「そりゃただの魔法はEFBなんてモンつかわねぇよ…主に恥ずかしくて。何が悲しくて『相手は死ぬ』をやらにゃならんのだ……」

「EFB…?よくわからないけどそういうことだから。無暗に使うと人だろうが物だろうが全て氷の彫像になるわよ」

確かに痛い事この上ない厨二要素だが、暴発しようものなら周囲のものは全て絶対零度だ。

「おいおい。んな物騒なモン持たせるなよ…死亡フラグが向こうからやってくるだろうが」

「そうね…じゃあお勉強しましょうか。ヴェルが私の力を使いこなす事が出来るようになるまで」

「数年後には俺はめでたくただの人に戻るというのに?」

「私が出て行っても私が集めて増え続ける魔力量とそれに伴って肥大化していくヴェルのリンカーコアはきっと私が出ていく頃には人の域を大きく超えているわよ?」

「なんだよそれ……」

「ふふ、それじゃあ、私もまだまだ回復してないからまだまだ寝てないといけないから今日はここまでにしましょう。ほら、母親が起こしに来る時間よ」

「あ、オイ」

こうして目の前が真っ暗になっていく中で。
俺は崩壊した世界から流れ着いた氷の女王の力を借りて、自分が厨二要素をまた一つ手に入れた事を知った夜、転生して初めて煙草が吸いたいと思った。






[25569] 未来は不確定要素がいっぱいなの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/25 04:59
改変の結果短くなったのですが、キリがいい所で上げざるをえませんでした!




ミッドチルダの首都から程ほどに離れている商業都市。
その近くの森に、一人の少年が立っていた。
少年は無言で両手を前に向ける。するとそこから紺色の魔力光が溢れ、60㎝ほどのスフィアを形作る。
そのスフィアから魔力光の紺を少し薄くした魔力の矢が続けざまに8本放たれた。
矢は100m程進んで木に当たると、10m程の高さの木は完全に凍り付いた。

『上出来ね。じゃあ今日はこれくらいにしておきましょうか。隔離結界を解くわよ』

「……ふぅ。あいよ」

レティニアの声とともに、どこかズレた色彩の世界が元に戻る。
隔離結界とは位相をずらす事、次元魔法の結界版と呼べる。
4次元に物体の影響という5次元目を足した世界を限定的に作り、その中で物体が壊れたりしても結界を解けば元に戻る。
似た魔法として封時結界があるが、これは時間信号をズラす事で
術者が許可した者と結界内を視認・結界内に進入する魔法を持つ者以外には
結界内で起こっていることの認識や内部への進入も出来なくなる。
しかし封時結界は結界を貼っている事が廻りから認識されてしまうというデメリットがある。
対して隔離結界は、別の次元に移動しているとも言えるため、秘匿性が高い。
何せ結界を展開した時の魔力残滓でしか知覚できないのだ。
魔力消費こそ封時結界より多く、100m四方の結界でさえ維持は2時間が限度だが。
もっとも、ミッドチルダ式の魔法に隔離結界はなく、これはレティニアのいた世界の固有魔法だったが。

「しかしようやく撃てるようになったのがアイスニードル程度か…まぁ当たった側から凍っていく時点で某物語RPGとは威力は桁外れだが」

『そういえばヴェルって無言で魔法使うわよね?父親も言っていたけど、EFB以外に魔法の名前なんかは言ったりしないの?』

「念じるだけでレティニアが形にするのに言う必要ないだろ。それとEFBはあくまで通称だ。決して固有名詞ではない」

『……相変わらずよくわからないけど。まぁ、私も自分が使う魔法に名前なんて付けていなかったわね。なんなら技名を叫ぶまで溜めて置いてあげましょうか?』

「絶対にお断りだ。何が悲しくて永久絶対究極氷結風斬とか技名叫んだり無駄に長い詠唱を唱えにゃならんのだ」

『でも詠唱をすることでかけた時間だけ魔力制御は安定するわよ?』

「無言で溜めさせてもらおう」

こうして氷の精霊レティニアから魔法を教わり出してしばらく経つ。
始めのうちは魔力を垂れ流すだけだったが、今ではこうしてスフィアを形成し、ある程度の指向性を持たせる事が出来るようになっていた。
こうして習うと分かるが最初の検査の時自分がどれほど危ない事をしたのか実感する。
そして、修業を開始して教えられた事なのだが凍結属性の魔法に関しては、レティニアがデバイスの代わりになれた。
原作のリィンフォースⅡのようなユニゾンデバイスも単体で魔法を行使していたのでこれはまぁいい。
レティニア曰く「ふぅん。私と似たような存在だろうけど、性能に絶対的な差があるわよ」と言われたが。

自分が凍結変換資質持ちで、レティニアが変換させた魔力と親和性が高いというのも理由として挙げられるらしい。
ただしレティニアのサポート付きで凍結魔法以外で出来る事は飛行魔法と結界魔法くらいであり
防御魔法は文字通り氷の盾で拘束魔法は四肢を凍結。
圧倒的に「凍らせる」事に特化したデバイス、とでも言えばいいのだろうか。
なにせ魔力を周囲に拡散し発動させるだけで分子の運動は止まり、無差別範囲攻撃EFBである。特化型というレベルではない。
そしてバリアジャケットだけはレティニアにも無理だった。氷の鎧程度なら出来るらしいが、スケルトンはお断りしたい。
それにしても……

「あの時お前が声をかけてくれれば検査であんな事にならずに済んだんじゃないか?」

『あら?独り言をつぶやく痛い子供になると悪いと思ったのだけど』

「お蔭でこっちはいろんな所から目をつけられて大変な事になっているんだが?」

『それは考え無しに魔力を垂れ流したヴェルが悪いわね』

「あーはいはいそうですね。あの時自分の魔力がとんでもない事になってるって判ってたら隠してたんだがな」

『これから大変ねぇ』

「お前な……」

と、そんなやり取りを行いながらここのところの出来事を振り返る。
首都クラナガンでの検査の翌日からそれはもうひっきりなしの勧誘。
地上本部からの勧誘、本局からの勧誘。果ては聖王教会からまで勧誘を受けた。
前者は「両親が海なので自分が陸に行く事はありません」と言って切り抜けたが

『高待遇だったのに、ヴェルは冷たいわね』

「氷の女王が住んでますから」

『ふふ、私色に染まってきたって事かしら?』

「自分でも外道だと思ってるのにこれ以上どう外道色に染まれと言うのか」

そして問題の本局、海である。
ハラオウン親子の感情を含んだ個人的な勧誘はまだしも、だ。
両親を通じて引き入れようとまでする姿勢には正直なところ辟易したものである。
やはりと言うかなんというか、ハラオウン親子がアレだったわけだし
自分に目を付けるだろう死亡フラグトップ3の一人が当然のごとく関わってきた。

完全凍結を欲しがる海の人間といえば、ご存じギル・グレアムである。
どうやらグレアム提督は父親と面識があったらしく、個人的に呼び出して俺を勧誘するように言ったのだろう。
ある日父親から「お前なんかかっこいい魔力持ってるらしいな!必殺技じゃん!」
という、いつかの予想に近い第一声と共にかかってきた次元間通信に
「まぁ、俺は管理局に入る気はさっぱりないよ」と告げると
「ほう…つまり孤高のヒーローを目指すわけだな!羨ましいぞ!」
という激しくどうでもいい事を言われたが、徐々に勧誘の回数は減っていった。

もしかしなくても父親はそこそこ偉いのか?と母親に聞くと
「5年前から次元航行船の艦長よー」
と、とんでもない答えを頂いた。艦長かよ。普通に大物じゃないか。
どうりでリンディさんの旦那と仲がいいなんて言ってたわけだよ。
流石に艦長ともなるといくら提督とはいえ圧力をかければ不審に思われるだろう。
そもそも熱血とネタを同一視してるような、一言で言えばバカであるうちの父親に後ろ暗い所などないだろうし。

そして、一番の死亡フラグである悪趣味生産機ことジェイル・スカリエッティは、何故かそれらしい気配がなかった。
知られたものと検査を受けてから1か月程はストレスがヤバイ事になっていたが
監視の目は海と陸の定期的な暴走の危険の検査という名目で行われる月1の勧誘以外にはこれといってなかった。
見逃される理由があるのか、目を付けられる理由がまだできていないのか。その辺りは不明だが
不測の事態に対応出来るようにするためにもある程度は魔力を制御できるようにならなければならない。
なので拉致されるという危険性は未だ拭えないものの、こうして表向き一人で郊外の森に来て魔法の練習をしている。

『まぁ、いざとなったらヴェルの言う永遠力暴風雪だったかしら?周囲を完全凍結させればそれで終わりなのだけど』

「漏れなく過剰防衛で過失致死がオマケでついてきそうだけどな」

さて、この数か月で年が一つ増え、原作無印まで後6年を切っている。
このままミッドチルダで生活していれば、StS関連の出来事以外は関わる必要はない。
戦闘機人がいつ頃制作され始めるのかは知らないが、巻き込まれる可能性を否定できない以上、最低でもナンバーズから逃げ切れる程度の力は必要である。

「とりあえずアイスニードルは覚えたから、フリーズランサーとアイストーネードとアブソリュートに。あとはフロストダイバーも欲しいところだな…」

『それってどういう魔法?』

「アイスニードルを前方向に無差別連射するのがフリーズランサー。アイストーネードは文字通り氷の竜巻。アブソリュートは一瞬で相手を氷の塊に閉じ込める」

『相手の回りごと凍結させるならアブソリュートもEFBも大して変わらないじゃない』

「狙った対象だけ閉じ込めればフレンドリーファイアで過失致死を回避できるだろ。そもそも凍結魔法の上位系が殆どEFBと大差ないから小技を覚えないと廻りを巻き込むのが怖くて使えない」

『それも確かにそうね…じゃあフロストダイバーっていうのは?』

「魔力を地面に通してデカい霜柱を自分の前から相手に向けて生やす」

『見た目はいいけど、自分の前から生やす必要はないんじゃない?相手の足元にだけ生やせば』

「それもそうだな……2DのしょぼいMMOの癖に見た目重視とかわけわからん」

『まぁ、相手の足元まで魔力を通す分多少の時間もかかるし、物質変換を持つ魔力を遠くに飛ばすのは制御が難しいわよ』

「しょぼい技の癖に高難易度とかやってらんねぇな…」

『地表表面に魔力を通して相手まで届かせるなら自分の前から相手まで霜柱が立つけど制御は割と簡単になるし発動も早いわ。でも奇襲としては後者の方がいいわね』

「成程、それなら見た目だけじゃないって事か。まぁ、魔導師はともかく、戦闘機人の連中は恐らく飛べないだろうからな。後はそうだな…いっそ空からつららを大量に降らせてみるとか?」

「牽制としてはそれなりだろうけど、自然落下のつららじゃスピードがないから避けられるわよ」

「あぁ、それも考慮しなきゃいけないのか…さすがアイシクルフォール。前がガラ空き以前の問題か……」

『でも上空から降らせるなら相当なスピードになるわね』

「確かに30㎝くらいのつららでも20mくらい上から落下させれば刺さるレベルになるな」

『ただ上すぎると落下までの時間が長すぎるし大気で減衰するから高さの調節が難しいわね』

「ほんと微妙なんだなアイシクルフォール」

『ふと思ったんだけど』

「ん?」

『最初から凍結属性の魔力なんだから、単純に収束して撃てばいいじゃない』

「それなんてれいとうビーム」

完璧なチートスキルだと思ったが、帰ってからレティニアと話し合った結果、なのはの純粋な魔力の収束と違い、属性を持つ魔力は周囲の大気魔力の影響を受けやすく、収束砲撃は難しいとのことだった。
つまりフェイトがサンダーレイジやプラズマスマッシャーという属性魔力を収束せずに用いる魔法がメインなように、凍結属性を持つ俺はブリザードやアブソリュートが技としての限界なのだ。
よって収束砲撃は出来ない。確かに念じれば純粋な魔力というのも出来るが、それは効率が悪く、飛行やバリア等の無属性魔法にリソースを向けながらでは、とてもじゃないが使えない。
フェイトが何故収束砲撃を使わないのか疑問だったが、変換資質持ちというのは無属性の魔力の制御の相性がよくないのである。
そしてフェイトの場合、雷属性を活かしたソニックムーブ等が使えるが、自分の属性は凍結。凍結で無属性魔法に近い事、と言ったら……

「ひたすら防御しながらの固定砲台…だと…?」

そう、白い悪魔と同じ戦法なのである。

『もっと優雅に戦いたいものよね』

「優雅って言われてもなぁ…セルシウスみたいに格闘してみるか?」

『セルシウスって?』

「お前と同じ氷の精霊みたいなもんで、格闘と氷魔法で無双するのが得意。近接は格闘、遠距離はフリーズランサーとアブソリュートのオールレンジ」

『へぇ、悪くないわね。それでいってみましょうか』

と、なんとなく自分の戦闘スタイルの方向性を固めていった。



[25569] 師匠登場!?死亡フラグを抱えた魔法奥様なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/25 14:37
「氷といえばセルシウス様だろう」

この考えから始まった格闘氷結少年への道だったが、すっかり忘れていた事がある。
いや、あれほど原作フラグお断りと言っていたのに、何故気づけなかったのか。
そう、原作には零距離ディバインバスターという獅子戦吼を撃ち、格闘を得意とするキャラクターがいるのである。
そして前回の相談から一月後、両親に「ストレス発散の為」と言って許可を貰いストライクアーツのジムに見学に来た俺の目の前には

「こんにちわ、見学の子かな?」

鮮やかな紫の髪を翠色のリボンでポニーテイルにした女性が俺と目線を合わせる為にしゃがんでいた。
何故ここに管理局員がだとかそんなチャチなもんじゃねぇ。

「あ、はい」

今すぐザ・ワールド発動して逃げ出したいところだが、あいにく自分のチートスキルはEFB。
流石に時間を凍らせるなんて芸当ができる筈もなく。自分の時間だけは凍っていたが。

『上手くないわよ』

レティニアの心を読んで空気を読まないツッコミは無視した。
人懐っこそうな笑みを浮かべた彼女はクイント・ナカジマと名乗った。
そう、原作StSでは故人となっているナカジマ家の魔法奥様である。

「たまにここで体を動かさせてもらってるんだけど、今日はようやくお休みがもらえてね~」

そう嬉しそうに話すクイントさん。
というか旦那放置か。泣いてるぞきっと。もう結婚してるのか知らんけど。
そもそもお前はシューティングアーツだろ、あれって軍隊格闘とかと一緒じゃないのかとか
そんな疑問がふつふつと沸いてくるが、流石に聞く事は出来ない。

「それで張り切って体動かしてたんだけど、張り切りすぎちゃったらしくて一緒に来てた同僚がダウンしちゃって。たはは」

そりゃ魔力をほぼ肉体強化に振った格闘オンリーで陸戦AAなんていうバケモノの称号を持つ奥さんの相手はしんどいだろうさ。

「それで手持ち無沙汰になっちゃったんだけど。どう?お姉さんが教えてあげるからちょっとだけやってみない?」

心の底からお断りしたい。だが、いずれ相手になるかもしれない戦闘機人は目の前の女性より強い。
つまりAAA以上、下手をすればニアSに届くような奴らが襲ってくるかもしれないのだ。
後何年でクイントさんが襲われる-ゼスト隊が壊滅する-のかわからないが
部隊ごと壊滅させるような戦闘機人から最低でも逃げ切る、もしくは無力化出来るようにならなければいけない。
相手の強さを知るには恰好の目標、そしてAAランクという文句無しの教導役。
確かに無力化というだけならEFBで事足りる。だが自分と敵以外の者が周りにいたら?
ツーマンセル以上の複数から遠近波状攻撃を受けたら?
それを考えると近接格闘を覚えるメリットは大きい。
だが目の前の女性に関わることは、必然的にゼスト隊からレジアス、レジアスから最高評議会とスカリエッティという素敵フラグが立つという事だ。
よし、俺はセオリー通り近接格闘の旨味より死亡フラグ回避を取るぜ、と決め

「おこと「まずは型の練習だから、危なくないし痛くもないから。それじゃこっちで」あ、ハイ……」

既に腕を取られていた。

―――1時間後

「そうそう、そんな感じ。拳を前に出す時は脇を締めてね」

「はい」

なんか未だにクイントさんの個人レッスン継続中だった。
というか同僚もう流石に復活しただろう。
あれか?さっき死にそうな顔をした男がこっちを見た途端オアシスを見つけたかのような顔をして
そそくさと離れていったあれが同僚か?何逃げてんだこのチキンめ!俺だって目の前の生きた死亡フラグから一刻も早く逃げ出したいわ!

『活き逝きとしてるわね、この死亡フラグ』

皮肉ってんじゃねぇよ。いや言い出したのは俺だけどさ。

「ほら、ボーっとしない!」

「あ、ハイ」

それにしてもこの人妻、熱血指導である。

―――さらに1時間後

「先輩、そろそろ時間ですよー」

さっき逃げ出した同僚、というか部下が呼びに来た事でクイント先生のレッスンは終了となった。
なんだかんだで基本の型を一通りさせられたが、これでようやく開放される。

「よし、お疲れ様。今日はここまでにしましょう」

「……ふぅ。ありがとうございました」

「飲みこみが早いからつい熱が入っちゃった。才能あるわよ君」

「そうですか」

そんなやり取りを交わしながら、帰り支度をする俺に

「もうすぐ日も暮れるし、送っていくわ」

そういう男気溢れた台詞は旦那に言ってやれ。
いや、やっぱり言っちゃ駄目だな、それでなくてもデスクワークの人なのに沽券ブレイクってレベルじゃない。

「いえ、ここからそれほど離れていませんし、大丈夫です。それでは」

バカめ、次はないわ!
礼を言って足早にジムから離れる。引き留める声?聞こえませんよそんなもの
腕を掴まれた時はアウトかと思ったが、最後まで名前バレを回避した事でジムに行かなければ今後会う事もないだろう。
今回も無事フラグ回避して高笑いしたい衝動に駆られつつ家路へと急いだ。

『(まぁ、また物語絡みの人間だったんでしょうけれど、冷静になって考えてみればわかることよね……)』

―――数日後

「ヴェルーお客さんきてるわよー」

「こんにちわ~。あれからジムに来てないって聞いたから名簿の名前と住所を聞いて様子を見にきたんだけど。まさか、ディル艦長の息子さんだとは知らなかったな~」

目の前には紫の髪を翠のリボンでポニーテイルにした魔法奥様がいた。
そして俺は、最近ようやく安定して心の中で会話できるようになった氷の女王に問いかけた。

『これはEFBを使う時がきたか』

『漏れなく母親も彫像になるわね』

こうして、逃げられないフラグというものを初めて経験したとある日、俺は転生して初めてEFBを積極的に行使したい衝動に襲われた。

「あの、ヴェル君なんか考え込んじゃってますけど、もしかして迷惑でした?」

「たまにこうなる時があるのよねー。あまり気にしないでいいわよー」

「それは……」

「何か考えてる時とか、集中すると回りが見えなくなってるみたいでねー」

と、硬直している間に玄関から応接間に移動させられ
目の前で管理局陸士部隊所属と名前を母親と交わしている魔法人妻。
だがあいにくとこっちはそれどころではない。

『レティニア、お前気づいてたのか?』

『よっぽど動揺してたのね』

『あぁ、これはもうダメかもわからんね。いっそ永遠の家出するか……?』

『私はそれでも構わないけれど。流石に捜索の手がかかるだろうし、今の貴方じゃEFB以外に危険を打ち払う術がないから使ったらすぐ見つかるわね』

『八方塞で詰み、というわけか…』

考える。考える。考える。
目の前の女性は原作に登場することなく死んでしまう。
ゼスト隊が壊滅するときが彼女の最期だ。
つまりその時までに、戦闘機人をかわす算段を考えなければいけない。
彼女と関わる事で強くなれるのはメリット、敵に目を付けられるのがデメリットである。
いや、もう目は付けられている状態と考えれば、余計に目をつけられないようにすれば、ほぼデメリットは消える…筈。
ならば、後は簡単だ。逃げられない状態なら上手く取り込んでプラン修正しなければいけない。
彼女から格闘を習う事で、最低でも戦闘機人から逃げ回れる程度に強くなる。
これしかない。

「前にディル艦長の息子さんが凍結変換資質持ちで絶対零度の空間を作るオーバーSクラスの才能を持ってるって管理局内で噂になってましたよね?」

「うん、でもこの子管理局なんて入る気ないみたいなのよねー。聖王教会からの騎士養成学校への誘いもディルからの電話も断ったのよねー」

「争いが嫌いな子なんですか?」

「そういうわけでもないみたいだけどねー。なんか自分から危険に飛び込むのはごめんだとか言っていたけれどー」

「危険、ですか?管理局や聖王教会が?」

「危険な仕事って事だと思うけれどどうなのかしらねー?」

そして、これが一番の問題であるが、彼女が襲われる次期には戦闘機人が既に稼働している。
つまりその時期がわかればそれを目安に出来るのだが…いかんせんよくわからない。
回想シーンで何年という表示が出ていたかもしれんが、そこまで覚えてはいなかった。
よって、スバルとギンガ、タイプゼロが違法研究施設から保護された時を前兆と考えるしかない。
そこから、2、3年以内に戦闘機人は稼働し、ゼスト隊は壊滅する筈で、それが一つの区切りとなる。
スバルとギンガが保護されるのが何年か、恐らく5年以内だとは思うが……

「じゃあジムにはどうして?」

「ストレス発散の為って言ってたわねー。ほんと、検査の後からしばらくの間は勧誘が山のようにきてたしー」

「そうだったんですか…。この間ヴェル君が見学に来たときに軽く教えてあげたんですけど、格闘の才能もありますよ」

「あら、そうなのー?」

「えぇ、それで、もしよければ、私が格闘を教えてあげたいな、と思ったんですけど」

「本人がいいって言うなら構わないわよー?」

「いいんですか?」

「まーでも、管理局へは入ろうとしないと思うけどねー。それじゃ私は買い物に行ってくるからごゆっくりー」

今の所のプランは4年以内に魔導師ランクで言う所のSランク近くまで戦闘技能を上げる事。
これで恐らくいい筈、だ。4年、というのは短いのか長いのか分からないが。
高町なのはがSランクを取得したのがいつなのか。だが回想での背格好を思い出す限り数年しか経っていないと思われる。
自分に主人公と同じ苦行を辿れるかは分からないが、こうして目の前に死亡フラグが立っている以上、最早逃げる事は出来ない。
凍結変換は陸だろうが空だろうが適性は同じである。一極集中型に出来ないのならオールマイティに立ち回るしかあるまい……。

「ねぇヴェル君?」

「あ?えっと、すいません。聞いてませんでした」

ここでようやく考えがまとまってきて、余裕ができ、声に我に返って前を見る。
母親はいつの間にか応接間からいなくなっており、クイントさんがどこか真剣な目線を向けていた。

「何をそんなに悩んでるのかな?」

「あぁ、いえ、なんでジムで一度会っただけの自分にわざわざ会いに、と」

と返すとクイントさんは真剣な表情を少しだけ緩めて

「そんな事ないわよ。私が初めて人にシューティングアーツを教えた子だもの。言わば一番弟子よ?」

「さいですか……」

「ねぇ、どうして管理局や聖王教会に入ろうとしないのかな?」

「………」

正直に言うべきだろうか。
そこは自分にとっては死亡フラグの大量生産工場で、入るどころか関わる時点でもアウトになるのだと。

「ヴェル君は凄い力を持っているわ。その力で誰かを助けてあげたいって思った事はない?」

「他人を助ける前に、自分が助からなきゃ本末転倒でしょう。それに力を使う場所も、使う意思も個人の自由です」

「あはは、それはそうね。でも、他の人にはない力を持っていて、それを使う場所としての候補には入ると思わない?」

「組織に入れば使う場所を他人に決められるのが前提になります。力を持ってるから使わなきゃいけない道理はないでしょう?」

上手く取り入る、なんて思っておきながらも、突き放す言い方をしてしまった。
あぁ、これは失敗した……だが、ここでクイントさんが自分から離れれば自分の死亡フラグも離れる。
セルシウス路線は消滅するが、それでもいいと思った。
人前で隔離結界を使えば目立ってしまうが、最悪敵と自分を結界内に取り込んでEFBをかませば終わるのだ。
確実に相手は死ぬし、過剰防衛と言われるだろうが、回避のためなら仕方あるまい。
そう思い、更に畳み掛けようとして口を開きかけたが

「じゃあ、貴方はどうしてジムにきたの?」

「勧誘のストレスを発散するために」

「嘘だよね?ストレス発散であんなに真剣な顔をしないもの」

そりゃ、バレるか。こっちは必死で死亡フラグ回避しなきゃいけないわけで。
あの時は割と真剣にレッスンを受けてしまったのが裏目に出た。

「自分の力は他人を巻き込みやすいので、それに頼らない力というのも必要かな、と思いまして」

「成程ね。確かに完全凍結なんて危険だし、他人を巻き込まないというその考えは偉いわ」

「過失致死とか過剰防衛って言われたくないだけですよ」

「そう……じゃあどうしてジムにこなくなったの?」

「魔法の練習の方もしないといけないので」

「デバイスは?」

「凍結魔法に関しては適性が高いのでデバイス無しでも簡単な射出系魔法程度ならできます」

本当はレティニアのサポートで思いつく限りの凍結魔法を使う事が可能で、後はそれを訓練して覚えるだけなのだが。それを言う必要はない。

「凄いのね。普通なら魔力制御だけで手一杯なのに。私なんて身体強化と固有スキルが精々だし」

それで陸戦AAなんてふざけた強さを持ってるんだから文句を言われても。
クイントさんは自分から顔を逸らして少し考えるそぶりを見せてから

「ふぅ…4歳でこんな考えの子がいるなんて考えもしなかったなぁ」

「生きるのに必死になったらこんな考えになりますよ」

「それはつまり、ヴェル君が生きる上で組織に入るのは不都合が多いって事?」

「清廉潔白なんてありえないのが組織ですけど、それが自分に災厄となる可能性があるなら、避けるのは当然でしょう?」

俺の言葉を聞いて、はっとした表情を浮かべた彼女だったが、すぐに考えるそぶりを見せると

「それは…確かに、いくら自分や回りがちゃんとしていても、組織全体の事となるとわからないわね」

「管理局や教会に黒い所があるって揶揄した割に、驚かないんですね?」

「たはは、さっきから驚かされてばっかりよ…。管理局や聖王教会に暗部があるという根拠は?」

「この世界のいたる所に後ろ暗い組織があって、管理局はそれを摘発してますけど、この世界で一番大きい組織と宗教団体に暗部がないという根拠は?」

「そうね……その通りだわ。でも殆どの人は管理局は清廉潔白だと信じてるし、ヴェル君に害になる暗部だとは限らないじゃない?」

「徹底的な隠ぺい工作を行っているとしたら?そして俺のような人材を手駒として、果ては研究材料として欲しがる暗部があったら?」

「でも査察部があるし、流石にディル・ロンド艦長の息子をどうにかしようとは思わないんじゃないかしら?」

「査察っていうのは見回りでしょう?飼い犬は決められた散歩コースしか歩かない。となると」

「飼い主が後ろ暗い場所は通らないようにしている、か…」

そう言って納得した表情を浮かべたクイントさんだったが、彼女は気づいているのだろうか?
彼女だって魔法適性こそ高くないものの、ウイングロードという固有能力持ちで狙われるかもしれない対象だと言う事に。

「…という陰謀説のあるフィクションってわくわくしません?」

「あはは、確かによくあるフィクションね。でもフィクションだから現実にはない、なんて事はない。…言われるまで疑う事すらしなかったなぁ…これも刷り込みなのかな」

「管理局が刷り込みをしてる、というよりは無意識な自己暗示の類に近いのかもしれません。この世界唯一の治安維持組織なら悪事など働かないだろう、という」

「そうね…そうかもしれないわ。この組織に入れば治安を守れるって本気で信じていたもの」

「もしかすると、自分がクイントさんに疑心暗鬼を刷り込んでるのかもしれませんよ」

「確かに、疑い出したらキリがないわね。けれど、疑わずにいる事が普通とも限らないでしょ?」

「へぇ…クイントさんって実は出来る人ですか?」

「それはどういう意味で?」

「考える所は全て旦那さんや上司に任せて自分は突撃あるのみとか言うのかと思ってました」

「むぅ…ヴェル君って人付き合い苦手でしょ?人が気にしてる事をずけずけと言うし」

そう言って脹れた表情を浮かべたクイントさんだったが

「生憎と、クイントさんの旦那さんみたいに思慮深い善人にはなれそうもないですね」

「ぐ…ね、ねぇ、私の亭主の事知ってるの?」

「いえ、クイントさんの旦那さんならそういう人だろうなって」

「…私ってそんなにわかりやすい?」

「旦那さんがデスクワーク向きの人だろうなって事くらいまでは雰囲気で」

「あはは……」

こうしてクイントさんと会話していて分かった事がある。
彼女は決して正義馬鹿ではないということだ。
とても任務のために自己犠牲に走るような人ではない。
それが何故撤退も出来ずに死んでしまうのか。
確かあれはスカさんの持つ研究施設の一つにゼスト部隊が踏み込み
居合わせた戦闘機人とガジェットに返り討ちに遭ったというのが事の次第だった筈だ。
だがいくらなんでも、後方部隊が機能していれば、少なくとも前衛の壊滅の時点でなんらかの行動があって然るべきである。
だが結果は一人も残す事なく部隊ごと壊滅。
当然ガジェットや戦闘機人による退路の封鎖とかそういう要素もあるのかもしれないが…

「クイントさん、俺からも質問していいですか?」

「ん、何かな?」

「例えば、自分のいる組織から狙われたら、クイントさんならどうしますか?」

「う~ん……なんで狙うのか捕まえて聞いてみるかな。命を狙われるのは困るけど、ちゃんとした理由があるのなら確かめないといけないし、悪い事なら止めなくちゃいけないもの」

「そう、ですか……」

成程、この人は危機感を想像するのが下手なのだろうか?
相手が話をする意志も持たず、まして同じ土俵に立ってくれるとも限らないというのに。
しかしクイントさんは少しだけ考えてから

「でも、ヴェル君の話を聞いてたら、相手が自分にはどうにも出来ないってわかったら、逃げちゃうかもしれないわね」

「どうにもならない相手から逃げ切る事って出来ると思います?」

「あはは、それはそうね。どうにもならない相手から逃げられる程度にもっと強くならなきゃね。もちろんヴェル君も」

「えぇ、そのつもりです。死にたくはないですから。でも「よし!それじゃお姉さんと一緒に強くなろう!」もうやだこの人妻……」

こうして、何故か週に1日程度の予定を無理やり開けさせられ
自分に嬉々として近接戦闘を教える師匠が出来た日の夜、俺は生まれて初めてナカジマ家の強引ぐマイウェイってすげぇと思った。



[25569] ここは修羅道、ナカジマブートキャンプなの
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/26 12:40
※時系列再計算の結果63年入学に修正

ミッドチルダから程ほどに離れた商業都市の郊外の森。
そこで地面から5m程の宙に浮かぶ少年と、足元から白光を放つ帯のような道を作って疾走する女性が戦っていた。

少年は水色の魔力光を纏った矢をスフィアから連射するが、女性は巧みに全身を動かして避けながら
当たりそうな矢は的確にナックルをつけた両手で捌きながら速度を落とさずに接近してくる。
距離をとろうとする少年だったが、女性の足についたローラーのスピードの前で、その動きは緩慢と言えた。

女性が少年まで残り5m程になった時、少年は拳に水色の魔力を纏わせて撃つ。が、そこに女性の姿はなかった。
少年は周囲を見渡し、はっとしたように上を向く、そこには体を捻り、少年へ拳を振り下ろす女性の姿があった。
間一髪防御が間に合い、両腕をクロスさせて耐えた少年だったが、女性は拳を引き絞る。

そして彼我の距離は1mもなく。そこからは一方的な展開しかなかった。
防ぐ、捌く、避ける、凌ぐ。
女性の四肢を鞭のようにしならせた連撃を、両手に纏った氷の籠手で必死に捌く。反撃の隙などかけらもない。
だが連撃の衝撃に耐えきれずに籠手は砕け散る。少年は一端距離を取ろうと動くが

「遅い!」

「……ッ!」

それを目の前の女性が許す筈もなく、一直線に懐に突っ込んで拳を振り込んでくる。
少年は咄嗟に右手を前に突出して氷の盾を作ったが、女性のナックルからカートリッジが排出され、瞬間的に拳に纏った魔力が増大するとあっけなく壊される。
そして少年の顔の前には女性の右拳が当たる寸前で止まっていた。

「よし、今日はここまでにしよっか」

「ふぅ……ありがとうございました」

「でもヴェル君大分強くなったよね~才能って恐ろしいわ。基本の型はもうマスターしちゃってるし」

「そりゃ、あれだけ扱かれれば嫌でも覚えますよ。それでも懐に入られたら反撃すら出来ないのは絶望を感じますけど」

「あはは、ヴェル君って凄く飲みこみが早いしつい張り切っちゃって」

「その"つい"さえ無ければって旦那さんから言われた事ありません?」

「ゔっ……。大丈夫よ、修業開始して一年ちょっとで私の格闘をある程度捌けるんだから。このまま体も成長していけば反撃する余裕も出てくるわよ」

「だといいんですけど」

否応なし強制フラグのナカジマ家の若奥様と始まったマンツーマンの個人レッスンだったが
とてもじゃないが4歳の子供にさせるものではなかった。この一年弱、よく耐えたものだと思う。
週一回の直接指導のある日以外は彼女が考えた訓練メニューでの体作りと基本の型を毎日。
それが終わり、ようやく魔法の鍛錬となる。
この一年でアイスニードルはフリーズランサーへと昇華し、最大で2m程のスフィアを形成して一度に放つ事が出来る矢の数は50本を超えた。
5秒間ほど連続で斉射すれば、発射本数は優に千本を超える。
しかし、それをクイントさんに魔力付与した拳で捌かれ、避けられた時はふざけんなと叫びたくなった。
流石に少しは掠ったらしくナックルや服の端々が白く凍っていたが。
曰く「こんなしんどい魔法初めてだったけど、直線射撃なら弾道見切ればなんとかなるわね」だとか。こんなチートなのに本当に死ぬのだろうかこの人妻。
ちなみに他の技だが、アイストーネードは元ネタと違い、れいとうビームの代わりの直射魔法として放つ技になったものの
流石にクイントさんに主人公組のような魔力にモノを言わせた防御力はなく、そもそも射程重視の溜め技にしてしまったため、近接格闘では使えない。
そしてブリザードのような天候操作型だが、まだ制御が難しく、効果が不安定なので絶賛訓練中である。うっかり完全凍結とかシャレにならない。
専らクイントさんとの試合で使うのはフロストダイバーや、氷の盾、アイスニードル、フリーズランサーといった近中距離技と格闘からの〆技としての近接高速射撃である。
獅子の形にするのは流石に恥ずかしいので、ショートバスターのように威力を犠牲にして速度を重視した魔力を拳に乗せて放つ事にしている。
後は先ほどの籠手ようにその場しのぎで魔力で錬成した氷の武具。作ろうと思えば剣とか槍とかもいけるが、今はクイントさんを相手にするために籠手をメインにしている。

「でも本当に強くなったよねヴェル君。陸戦魔導師としてはBくらいは楽に超えてると思うよ?空戦はわからないけど」

「それを言ったらクイントさんなんてこないだ陸戦AAAとっちゃったじゃないですか」

そうなのである。この人妻、ちょっくら試験受けてくるとか言って陸戦ランクAAから+をすっとばしてAAAを取ってしまった。
「ヴェル君の魔法って直線射撃だけど量が凄いし当たるとバリアごと凍って視界を塞がれちゃうから、避けるのもつい力が入っちゃうのよね~。だからランク試験の魔力弾が温く感じちゃった」
いっちょやってみっかで2ランクアップとかどこの戦闘民族だ。あぁだから死亡フラグも立ってるのか。
例えAAAでもクイントさん一人では恐らく壊滅フラグは折れないだろう。
もっともクイントさんが全力で回避と撤退に回ればどうなるかわからないが。
と、そんな事を考えているとクイントさんからコール音が鳴った。

「はい、クイントです。…はい、わかりました。30分で行きます。ごめんヴェル君。支援要請貰っちゃったから行くね!お疲れ~!」

「お疲れ様でした」

クイントさんが部隊内でも隊長のオーバーSに迫る勢いになったとかで、事件が起きた時はよく駆り出されるようになったのだとか。
こうして非番の日ですら呼び出しを受ける事も最近増えてきた。
ちなみにクイントさんの回りで自分に近接格闘を教えていると知っているのは旦那や一部の人間だけらしく、こうして訓練している時の通信は音声通信で行っている。
修業している事がバレるのはともかく、教えている人間がAAランクの陸戦で、自分のランクが一年でB相当にまで上がっている事がバレればまた勧誘されそうだし助かっている。

「魔法奥様は今日も元気に走り回って事件を解決しています、と」

『あれじゃ亭主も子供とか考えるわけないわよね』

「子供を作れないとか以前に子供育てる余裕がねぇよな…」

そう、クイントさんは子供を作れない体である。成長期に流行病で高熱を出した時に作れなくなったのだとか。
女性にとってそれは致命的である。だがクイントさんはそれを耐えた人であり、それを知った時は不覚にも尊敬してしまった。
だが旦那が慰めてくれただのそこからベッドインだのと惚気られてその尊敬は3秒持たなかったが。

「しかし今日も一方的な展開になったな」

『4歳であれだけ動ければ大したものだって言われてたけど?』

「まぁ、さすがに身長差が凄い事になってるからどうしても俺は浮かなきゃいけないし、リーチに関してはどうにもならんが、せめてクロスレンジでも捌き切れるくらいにはならないとなぁ」

『でも凍結魔法で作った盾や籠手は衝撃にそこまで強くないから、クイントの打撃に対しては脆いのよね』

「となると、回避主体で捌くか、クロスレンジから一瞬で脱出できるような技がいるわけか…」

なんとかして回避力とスピードを上げられないものかと悩む中
5月の誕生日を迎え、母親と二人で簡単に祝ってもらった翌日、父親からとある小包がきた。
空けてみると、中に入っていたのはデバイスだった。
「お前が孤高のヒーローを目指すのならかっこいいデバイスがいるだろ!名前はお前が考えてやれ!」
誕生日を祝う言葉どころか激しくどうでもいいメッセージと共に入っていたデバイスは光沢のある銀色の長方形で。
中心よりやや上が子気味いい音と共に開き、中には特徴的な丸い穴の形の防風カバーとホイール。

「Zippo型のデバイスってどうなんだ…」

説明書が同封されていたのでそれを見てみると、このデバイスはストレージ型で
魔法は登録されていない状態らしい。なんでもとある管理世界で意気投合した技術者が父親の頼みを受けて制作したオリジナルだとか。
余談だが、うちの父親は愛煙家だったりする。恐らく意気投合したのはタバコの話なのだろう。
そして、俺の定期検査の結果の魔力の質を鑑みて、俺の凍結変換された魔力でもある程度運用は出来るようになっているらしい。
つまりリンカーコアで凍結魔力を純粋な魔力に変換してから送る必要がないのだ。これは素直に嬉しいのだが

「ご丁寧に火も付く…誰得デバイスと言わざるをえない」

『寒い時に重宝するデバイスじゃない?』

「あのバカ親父はそんな皮肉を考えられる思考回路を持ってねぇよ」

相変わらずのやり取りをしつつ、どう扱ったものかと考える。
バリアジャケットやその他のサポート魔法の類を詰め込むのが自然なのだろう。

「バリアジャケットねぇ…あぁホイホイとかっこいいんだかエロいんだか厨二臭いんだかよくわからない服装を原作連中はよく平気で着れるよな」

『あら?クイントの揺れて弾む谷間に動揺したのはどこの誰「おいやめろ馬鹿」』

初めての模擬戦で懐に入られた瞬間に拳で吹き飛ばされたのは黒歴史だ。
超スピードだとか催眠術だとかそんなチャチなもんじゃねぇ、もっと恐ろしい管理局支給バリアジャケットの片鱗を味わったのもどうでもいいことである。
と、そんな事よりもだ

「今までは訓練着のままレティニアが魔力強化してたから個人的には割とどうでもいいが。さてどうしたものか」

そして就寝後。

「まぁ基礎的な体捌きや型はほぼ終わったから、後は自分で戦闘技法を考えながらバリアジャケットを考えなければいけないわけだが」

そう言う俺の前には、相も変わらず淀みに腰まで浸かった黒い髪の女。レティニアである。

「そういえば、彼女の場合デバイスはあのナックルがストレージ、補助としてローラーブーツを使っているのよね」

「あぁ、近代ベルカ式のブーストアップによる高速機動、一点集中型って奴だな」

「ヴェルの目指してるセルシウスの格闘スタイルはどういうものだったの?」

「飛葉翻歩で悉くこっちのコンボを外され後ろに回られては凍刃十連撃からフリーズランサーか獅吼爆砕陣の〆技。懐かしいトラウマの思い出だ」

「またよくわからない技名が出たわね…飛葉翻歩って?」

「物理系攻撃を避けて相手の後ろに回り込む極悪スキル」

「成程…それが使えればかなり美味しいわね」

確かに美味しいだろう。あのぬるっとした動きで攻撃を外す動作は高速移動技法といい勝負だ。

「だがさすがにリアルで飛葉翻歩なんて…まて、似た事は出来るかもしれない。要はアイススケートで行けばいいんだよな…」

「アイススケート?」

「お前の世界では無かったか?足場を氷にしてその上をブレードのついた靴で滑る」

「あぁ、ソリの人間版みたいなものなのね…楽しそうね」

「楽しそうって…まぁ娯楽だしな。だがクイントさんのローラーブーツだって俺の世界じゃ娯楽だったからなぁ」

「でも、ローラーブーツと同じ使用法も出来るから、彼女の戦法をより取り込めるわね」

「あぁ、だけど、ローラーブーツは直線軌道、こっちは直線じゃなくてもいいんだ」

「どういうこと?」

「横だろうが前だろうが滑って動ける。スケートで言えばフリーラインスケートが近い動きだな」

「よくわからないけど、それでその飛葉翻歩に近い技が出来るのね?」

「あぁ。まずは始めてみない事にはなんとも言えないがな。とりあえずバリアジャケットを考えるのは後にして靴だな」

目指すは平面上における全方位移動である。
これが出来れば今まで防いで捌くのがやっとだったクイントさんの高速直線移動からの連撃を闘牛士のごとく避けて捌ける筈だ。
飛行魔法よりも自分の魔力を通した氷の足場を滑る方が確実に移動速度は速い。
悪路だろうが水の上だろうが空中だろうが凍らせて無理やり整地してスケートリンクにしてしまえばいい。
こうして自分のクロスレンジの切り札になりそうなものを思いつき、俺はいつものように母親から起こされて朝を迎えた。

「なにそれズルい!私もやりたい!」

「ふはは、ローラーブーツでサーフボードの動きはできまい!目指せカットバックドロップターン!実在しない技だけど!」

そして半年後、空中に氷の道を作って放置すると氷の塊が落下してとんでもない事になったので
自分が通った後は微細な氷として砕け散るように設定したりと色々と問題にぶち当たったがなんとか形にすることが出来た。
父親からもらったデバイスにはとりあえずセルシウスのズボン版のようなバリアジャケットを突っ込んだ。
肩が出てるけど凍結属性にとって寒さは苦ではないしバリアジャケット自体の温度調節もあって問題なし。
そして氷の足場だったが、レティニアに足場の形成、デバイスには推進力や姿勢制御の補助を組み込む事でなんとかなった。
進行方向は前だろうと横だろうと自由自在。スケートのようにも、ボードのようにも動けるのでクイントさんのスピードにも対応できるようになった。
もっとも、まだ完全回避できるほど初速を得る事が出来ず、飛葉翻歩はマスターできていないのだが。
ちなみにクイントさんはローラーブーツで俺の魔力でスケートリンクと化した地面でも問題なく走っている。なんという無限軌道。
そして今は何故かクイントさんと模擬戦という名の鬼ごっこをしている。

「拳の勢いは流されるし前を向いたまま横にスライドされるのがこんなに厄介だとは……」

「まぁローラーもブレードも無しにこんな事が出来るのは俺だけなんで」

突っ込んでくるクイントさんに上体を向けたまま、猛スピードで滑る。
前を向かないと事故るぞと思うがそこもきちんと対応した。一度事故って盛大にコケたのは黒歴史である。
デバイスにはバリアジャケットとこの氷の足場関連の魔法しか登録していないのにも関わらず
既に限界容量の8割近くが埋まっている。バリアジャケットと火器管制に3割、実は残り5割は全てこの氷の足場のためのプログラムである。
障害物からの安全装置や危機回避パターン、レティニアの足場生成とのリンク、推進魔力への変換
進行方向に対しての足の置き方の切り替え(スケートとボードの切り替え)等、必要なものを全て詰め込んだ結果こうなった。

そして完成したのは、こと滑る事に関しては他の追随を許さない夢のような魔法。
ピンクのボールがアイスをコピーすると滑って移動するのも納得である。
この魔法を作れたのはレティニアの汎用性と丁度よく送られてきたZippo型デバイスがストレージで演算能力重視だったから。
父親には感謝して、喋る事のないストレージとはいえデバイスにも名前くらいはあげようと思ったのだが

「流石にライターにセルシウスとか付けたらダメだろ」

『火を点ける道具なのに氷の精霊の名前ってのも乙だと思うわよ』

名前を決めるので少しもめた。
結局5月に貰ったのに因んで、アースラのように聖人から取る事にした。
5月の聖人と言えば、男の聖人が4人いる。
セルヴァティウス、マメルトゥス、パンクラティウス、ボニファティウスである。

「どれも厨二センスのかけらも無いな…バルディッシュとか安直厨二ネームをつけられないのが辛いとは思わなかった…」

『確かにちょっと微妙ね…ちなみに女の場合は?』

「冷たいゾフィ―(Kalte Sophie)。まぁ、俺の誕生日が15日だし、ソフィアでいいか……」

という適当な理由でデバイスの名前はドイツ語のKalteから英語のFrostにしてフロストソフィアと言う事に。
火を灯す事の出来る冷たい聖女である。

「Zippo売りの少女だな」

『なにそれ?』

「マッチを売ろうと雪の降る夜に徘徊した幼女が次の日には死んでいる恐ろしい童話だ」

『周りの人間は助けなかったの?』

「童話の作者が生きてた時代はお金がなければ体を売ればいいじゃないを地でいってたからな。
体を売れない無力な少女、回りは誰も助けてくれないなら死ぬしかない」

『……そう、悲しい童話なのね』

「でもマッチしかない世界でZippoを売れば将来は大金持ちだったろうな」

『ふふ、それは夢のある話ね』

「あぁ、魔法のアイテムだよ」

とくだらないやり取りを挟みつつ、回避力とスピードを得た事でよりクイントさんとの修業は濃いものとなっていった。
時は新暦62年の冬。もうすぐ63年となり、6歳を迎えるこの身には教育機関への入学が控えている。



[25569] 妥協しか許されない状況なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/27 14:37
ミッドチルダの教育機関というのは2パターンである。
魔力適性のある人間の通う魔法学校とそれ以外の学校である。魔導師訓練校も騎士養成学校も当然魔法学校の部類である。

魔法学校は初等学校と高等学校が存在し、初等部から入学した場合、高等部へはほぼエスカレーター式となる。
高等部では航空学部と陸上学部に分かれており、更に学部の中で射撃、格闘、拘束等の各戦闘学科や、通信やデバイス技師の学科に細かく分かれ、希望したものを取る事で単位としている。
それを卒業すれば、管理局や警備や運送会社等を含めた魔法関連企業へ就職するのが一般的である。もちろん研究機関も存在し、魔導師向けの大学のような所も一応ある。
それ以外の魔力適性のない人向けの学校は概ね地球の教育制度に近いが、初等部を出た後にそれぞれの専門学校や普通高校へと進む事が出来る。
ちなみに魔導師訓練校も騎士養成学校も高等学校扱いだが、付属初等学校も存在している。勧誘を受けたのはその初等学校である。

学校といえば、去年クロノ・ハラオウンは10歳でクラナガンにある管理局傘下の航空魔導師訓練校に初等部から飛び級して入学したらしい。
男なのに「10歳ですけどー」って言ってるのだろうか。想像してちょっと引いた。
まぁ、という事は恐らく卒業後一度目の執務官試験に落ち、翌年14歳で合格するのだろう。
高等部を卒業すると、管理局の教導施設を始め、各機関の専門部署へ入り更に研修や実習を経てから正規採用となるのが一般的であるが
クロノは初等部在学中に嘱託魔導師試験を受け、既に管理局内で働いていたため、そのまま執務官として動けたのだろう。
何せ赴任先が親の膝元であるアースラだ、多少の無理は親の七光りでどうにかなるし、クロノにはそれだけの実力もあったのだろうし。
さて、そんな事よりも自分の入る学校を決めなければならないのだが

「魔法訓練のある殺伐とした学校なんて行きたくないでござる。甘酸っぱい普通の学園青春がいいでござる」

『ヴェルが小学生に混じって甘酸っぱい学園生活なんて無理でしょう?』

氷の女王の無慈悲な現実を告げる言葉にため息をつきたくなる。
まぁ確かに自分の中の年齢はもう20代後半。6歳児に混ざって遊ぶ歳ではない。
だが、それでなくともここ最近大人しかった勧誘が再び息を吹き返してきたのだ。
オーバーSの魔法素質を持つ人間をなんとかして魔導師訓練校付属に入れようという必死さがウザい。
定期的に移動技能の練習と言う名のXゲームでストレスを発散するにも限度があった。

「仕舞には不登校で引きこもりになるぞ」

『ただの子供ならともかく、中身はいい年した人間が?』

「言ってみただけだよコンチクショウ……」

そう言いながら森の中に出来たU字型をしたり縁石のような形をしている氷の地面で滑って遊んでいたのを止め、U字型のフィールドの縁に腰を下ろして考える。
ここはいつもの訓練場所にしている郊外の森である。だが今現在はクイントさん曰く「ちょっとしたレジャー施設よね」と言われた氷の遊具が占領している。
実はこれを発動させる為の形状記憶や状態維持等の無駄に大量の補助術式をソフィアに入れた事で、めでたくソフィアのストレージは容量一杯になってしまった。
まぁ他に入れるような術式もなく、いざとなればいくつか消せば容量が開くのだ、さして問題ではない。

さて、選択肢は魔導師訓練校は当然除外するとして、魔法学校か騎士養成学校。
この時期に魔法学校の初等部にいる死亡フラグを持っている原作キャラクターはまずいない筈だ。
騎士養成学校は恐らくカリム・グラシアやヴェロッサ・アコース等が上の学年にいるかもしれないが、騎士はベルカ式魔法を用いる必要がある。

自分のストレージデバイスであるフロストソフィアに入っているのは八芒星を円で囲む魔法陣のミッド式。
レティニアが組み上げる凍結魔法は六芒星を円で囲む魔法陣を描くが、これは凍結魔力を制御するために編み出した変則ミッド式と周囲には説明している。
つまり自分は一部変則と言う事にしているものの、基本的には純粋なミッドチルダ式の魔導師ということになる。

なのはやフェイトのように近代ベルカ式に出来ない事もないが、恐らくカートリッジシステムを積むのは厳しいと思われる。
純粋な魔力の塊であるカートリッジの魔力を取り込む事こそ出来るが、それはあくまで純粋な魔力であり、自分の凍結属性を持った魔力とは一緒に運用は出来ない。
つまりどれだけカートリッジをロードしたところで、自分の魔力はレティニアがリンカーコアで凍結魔力に変化させた分が一定時間ごとに増えるだけで瞬間的に増えるというのは無理なのである。
これは思わぬ弊害だった。魔力回復スピードこそ早いが、外部供給で増やす事は一切できない。恐らく無印でなのはがフェイトに自分の魔力を与えていたが、あれも自分に対してはあまり意味がないと思われる。

『今じゃフリーズランサーやフロストダイバー程度はほぼ永久に撃ちつづける事も出来るならカートリッジなんていらないでしょう?』

「連射すれば耐久スペル状態だからなぁ…まぁそもそも、ベルカ式とか以前に一度断っている誘いだしな、今更感がありすぎる」

ここは無難に地元の魔法学校で6年過ごすというのが理想だと結論づけた。
その旨を母親に話し、特に何の問題もなく入学手続きを済ませ。

そして春。入学式である。

魔法初等学校において、教える事は一般教育を中心として、魔法倫理と基礎的な魔法講座が多い。
信じられない事だが、初等部を卒業するまでの6年間に、日本でいう中学校程度の国語、社会、理科を教える。
といってもミッドチルダ語に漢字はないし、騎士養成学校ではベルカ語が必修だがそんな事もない。
社会は旧暦時代のおとぎ話のような話と、新暦に至ってからの歴史的な出来事が殆ど。
理科に関しては魔法という真っ向から喧嘩を売るようなふざけたものがあるため、もっぱら魔法運用における化学や物理がメインとなる。
そして数学においては、一部の公式は高校レベルを超えた所までいく。
もちろん内容は魔法のための演算式が基本であり、それと併せて魔法制御、魔法プログラムの講義も進む。
この世界において魔法とは制御の演算を自分が、術式の演算をデバイスを行う事で行使を可能としている。
これらの魔法行使のための制御演算式については、別に学校でしか教えない、という事はない。
ちなみに俺はレティニアが感覚で術式の演算が出来ると知ってからは図書館通いや親に参考書を買ってもらい自力で覚えた。

さて、つつがなく入学式も終わり、母親は保護者説明会へ。
そして自分はクラスへと入る。ここらへんは日本の学校と変わらないな、と思いつつ、自分の出席番号の席に座る。
6歳といえばそれなりに騒がしいものである。近くの席に座る子供からの挨拶や自己紹介に適当に受け答えしながら先生の到着を待つ。

『ぶっちゃけ辛い』

『原作キャラや両親以外の前で猫を被るのが当たり前になったものね』

一応ご近所では理性的な受け答えをするがしょっちゅう一人で出かける子供程度の認識である。
もちろん次元航行船の艦長の息子だったりと、知る人から見たらそれなりに将来有望な子に見えるのだろうが。

だがこれで勧誘というストレス発生機も消滅し、後は戦闘機人事件までになんとかSクラスまで強くなる。恐らく後二年か三年のうち。
氷の足場を作る魔法と飛葉翻歩によって、クイントさんの全力攻撃をなんとか捌けるようになり、多少反撃の余裕も出てきたが、それはあくまでクイントさん一人が相手の場合だ。
回避と防御に関してはAAAとタメを張れるようになったが、最終的には前衛を捌きながら、後衛を牽制して攻撃を食らわないレベルにするのが目標である。

対ナンバーズに関してはとにかく時間を稼ぐしかない。各個撃破が望ましいが、波状攻撃を受けても耐えられるようにしなければならない。
複数から襲われた場合の理想は閉鎖空間に誘導してから逃げ場無しのブリザードで氷漬けにしてしまう事だ。
あれからようやく制御も安定して行えるようになり、今では範囲内の物体を悉く中を凍らせないまま氷漬けに出来るようになった。
"吹雪"がようやく"粉雪"になった感じである。セルシウス度で計ればきっと-120度くらいになっているだろうから、粉雪ってレベルじゃないが。
クイントさんクラスの身体強化型でも抜け出すのに5分はかかり、凍らなくても確実に相手の動きを鈍らせる(バリアジャケットでも完全な温度緩和は無理)極悪魔法だが、制御を安定させるために10秒程の溜めが必要である。
ほぼ溜め無しで撃てる凍結属性獅子戦吼で打ち抜くのと違い、回避不可能なのは美味しいが、溜めている間は相手を捌く必要がある。
もちろんその間は他の攻撃魔法は使えない。これが出来るかどうかで大分話が変わってくる。

とつらつらと考え事をしているうちに先生が教室に入り、簡単な説明を終え、自己紹介が始まった。
番号的には後ろの方なのでぼーっと眺めては拍手を繰り返していたが

「シャリオ・フィニーノです!好きなものはデバイスです!えっと、隣のクラスのグリフィス君と友達です!みなさんよろしくおねがいします!」

メガネをかけた女の子の自己紹介で危うく椅子から落ちそうになった。

『これは再びEFBを使う時が来たか』

『漏れなく無差別殺人犯ね……何、また原作キャラなの?』

まさか自分の住んでる街に六課のデバイス魔改造担当と若白髪が心配な副官が住んでいるとはこれっぽっちも知らなかった。
だが、心を落ち着けて考え直す。彼女たちは結果的に原作に登場するキャラクターなだけで、死亡フラグを持ちこむ要素ではない。
そもそも学校なんていう閉鎖社会はグループ単位の付き合いが殆どだ。
シャーリーとグリフィスが所属するグループに入らなければ関わる可能性はないと言っていい。
そうすれば必然的に、グリフィスの母親のレティ・ロウランとも関わる事はないだろう。
もっとも、クイントさんというスバギンフラグの人間に関わっている時点で、脇役と関わった程度どうって事ないという現実逃避も多分にあったが。

『あぁ、驚きはしたが、距離を保ってれば何の問題もない相手だ』

そう言ってレティニアに説明をしながら自分の番を待つ。
そしてとうとう自分の番が来たので立ち上がり

「ヴェル・ロンドです。趣味は読書とウィンタースポーツです。よろしくおねがいします」

とあたりさわりのない紹介をする。余談だがこのミッドチルダにもそれなりにウィンタースポーツは存在した。
もっともオリンピックの用なスポーツ選手権的なものもなく、雪は山にしか降らないので認知度はそこまで高くないが。
さて、自分が自己紹介をした途端、何故かシャーリーの目線が変わった気がしたのだが…気のせいだよな?

「初めまして!次元航行船の艦長の息子さんのディル君だよね?」

一回目のホームルームが終わり、入学式の全日程を終了して、後は帰るだけと渡されたプリントを鞄にしまっていると
好奇心一杯の表情を向けるシャリオ・フィニーノが目の前に立っているという状況が出来上がっていた。

『どういうことなの……』

『さぁ?』

とりあえずプリントを全て鞄にしまい込み、改めて彼女に向き直り

「そうだけど」

と返事をすると、彼女は笑顔で

「じゃあじゃあ、レアスキル持ってるんだよね?それも完全凍結っていうオーバーSクラスの!」

と、さらに割ととんでもない事を言いやがった。
オーバーSと聞いて、教室に残っていた数人の子供が騒ぎ始めるが

「ただの冷凍庫要らずなだけだよ」

と作り笑顔を浮かべながらもなんとか返す。というかこいつはどっから聞いてきた?

「そんなことないよ~。一定範囲を絶対零度にしちゃうなんてかっこいいよ!」

やめてくれ。かっこいいとか言われるとリアル厨二病がざわざわする。
そう思いつつも

「ねぇ、俺の事どこで聞いたの?」

予想はついたが話を変えるために聞いてみる。

「グリフィス君のお母さんが管理局の偉い人でね?それでこの街にはディルさんっていう艦長さんが住んでて息子さんも将来有望なんだって聞いたの!」

もうほんとやめてくれよそういうの。

「そうなんだ。でも俺は管理局に入るつもりないから」

そう言うと彼女は不思議そうな顔をして

「どうして?そんな凄い力を持ってるのに……」

「凄い力があるからって管理局に入らなきゃいけないわけでもないしね」

「それはそうだけど……ヴェル君は何かなりたいものがあるの?」

「特にないけど、それは管理局も同じ。特に入る理由がないから」

「んー、よくわからないけど。私はデバイスが好きだから、デバイスの沢山ある管理局で働けたら楽しいだろうなぁって思うよ?」

「じゃあどうしてこの学校に?管理局で働くなら魔導師訓練付属の方がいいんじゃない?」

そう言うとシャーリーは少し顔を俯かせて

「私もそう言ったんだけど、お父さんとお母さんがまずは普通の魔法学校に行けって」

「そりゃまた……」

現実を見てるご両親だな、と思う。
魔導師訓練校はいわば管理局員養殖場だ。卒業生の8割が管理局に入る事は誰もが知っている。
付属とはいえ恐らく学校というものの本質である社会常識といったものを教える事は殆ど行われないだろう。
あるのはただ管理局員としての心構えや魔法講義を淡々とこなす毎日。
そりゃ両親も可愛い娘の将来を仕事漬けにしたいとは思わないだろう。

「でも、グリフィス君のお母さんもその方がいいって言ってたし。グリフィス君も同じ学校に入る事になったから卒業したらグリフィス君と魔導師訓練校を受験するの!」

「そっか、頑張れ」

「うん!」

「それじゃまたあし「それでどうしてヴェル君は管理局に入りたくないの?」最近このパターンばっかりだよ…」

彼女の母親が様子を見に来た事でようやく開放され、自分もさっさと母親の元へ行く。

「ごめん母さん」

「あらあら、早速クラスメイトから質問攻めにされたのかしらー?」

「一人だけ熱心に聞いてくる子がいてさ」

「あら、女の子ー?」

「不本意ながら」

「ヴェルも隅におけないわねー」

「そういう類の質問ならどれほどよかったことか…」

そんなやり取りをしながら家に帰ろうと校門を出た所で

「ヴェルくーん!一緒に帰ろー!」

そんな声がかかり、嫌な予感がしつつも振り返ると、そこには先ほどのメガネの少女シャーリーとメガネの少年グリフィス・ロウラン。
そしてそれぞれの背後には栗色の髪をした女性と、紫色の髪の女性。シャーリーの母親と、グリフィスの母親レティ・ロウランである。

「ねぇ母さん、急用を思い出したって事にして俺だけ先に帰っててもいいかな?」

「あら、照れてるのー?」

「いや、恐れてるの」

リンディ茶フラグを回避して以降、レティ・ロウランのフラグも叩き折ったと思っていたのが運の尽きである。
それでなくても彼女の所属は管理局本局運用部、人材スカウトから資材調達までをこなす所の大ボスである。
これは前々から考えていたが恐らく、リンディさんから俺の意志を知って彼女は近づいてこなかったのだろう。
事実、管理局からの勧誘はクラナガンからのものと、ギル・グレアムの個人的なものだけであった。
運用部からのスカウトは表向きなものが一回だけであったし。
運用部の大ボスが自分と同じ街に住んでいたというのは今日初めて知った事であったが
それまでに一度も、本人からの勧誘も無かったということは、だ

「初めましてヴェル・ロンド君。ねぇ、管理局に入らない?」

「初めましてレティ提督。謹んでお断りします」

こちらに近づいてきた彼女は開口一番に笑顔でこう言い放った。
やはり間違いなく彼女は自分の事を知っているのだろう。
だからこちらも貴女の事は知っているぞという意味を込めて返す。

こちらの世界にきたとき、原作キャラクターでミッドチルダ出身の魔導師に関してはある程度調べた。
その中でも一番簡単に調べる事が出来たのがリンディ、レティ両提督である。
自分の父親と同じ階級であり、本局務めの父親にとってそれなりに関わる機会のある人物である。
たまの休みにふらっと帰ってきた父親に職場の事をそれなりに聞く事ができた。

なんでも、父親や、彼女たちは生え抜き組と呼ばれる世代なのだそうだ。
その中でもハラオウン家は歴史に名を残す事もあるほどの偉人を代々輩出してきた旧暦時代から続く名家の一つなのだそうだ。
レアスキルである羽はハラオウン家の先祖が旧暦時代にミッドチルダ以外の世界から崩壊を逃れてきた名残であり羽によって得られる恩恵は個人によって違う。
だがいくらレアスキルが優秀だろうと、魔力量の適性に関してはまちまちであり、ハラオウン家もなるべく魔力量の高い血を入れようとした結果
羽は何代かに一人という隔世遺伝はおろか先祖がえりのようなものとなってしまった。
慌てて純血に戻そうとしたときには既に新暦。近親相姦は忌避される時代になっていた。
それによりハラオウン家は没落、と言うほどではないものの、その力を失い、ありふれた裕福な家庭の一つになってしまったのだとか。
だがそんな中、リンディ・ハラオウンが生まれる。
彼女は先祖がえりの4枚羽と、高い魔力量を持ったハラオウン家の歴史の集大成のようなサラブレッドであった。
両親はそのことを喜び彼女にお家再興を託すが、彼女にそんな考えは無かったらしく、その持ちえた力を誇示するような人間には育たなかった。
だが、その正義感と能力の高さを活かせる場所として彼女が管理局を選んでしまったのは果たしてよかったのか悪かったのか。
同じ提督職についていたクライドが婿養子に入り、ハラオウン家は再び管理局という組織の中で力を大きくした。
本局にとっては対次元犯罪の優秀な手駒の筆頭であり、亭主クライドが死んでからは仕事で心を殺すかのように働いていると父親は教えてくれた。

レティ・ロウラン―旧姓レティ・ルプノーレは歴史こそハラオウン家より短いものの、特化した技能持ちを多く持つルプノーレ家始まって以来の才女と言われている女性である。
彼女には魔法関連のレアスキルと呼ばれるものはない。
だがその思考速度は入局後に人事、資材関連の部署へ配属されてからは、20人分の仕事を1人で余裕でこなす程だそうだ。
これはもう一種の固有技能と呼んでいいだろう。
原作でも言っていたが彼女は「優秀ならば過去や出自は問わない」という事を有言実行しており
他の次元世界で優秀な人材を見つけた報告を受けてはスカウトの担当官を回し、時には本人も直接交渉に出向くのだとか。
彼女がまず揃えたのは自分の後釜となれる人事、資材関連の処理能力が高い者であり、彼女の部下たちは彼女がスカウトに周っている間も完璧に仕事をこなす事で有名なのだという。
だが、職場の部下と結婚してからは家事に集中し、子供が出来てからは育児に集中すると言って仕事は独身時代ほど詰め込む事はなくなったと、これも父親から語られた事である。

さて、そんな事を知っているバカ親父ことディル・ロンドの事も少しだけ話しておく。
ロンド家は前にも話した通りごくごく普通である。
別に古の先祖が特殊だとか代々特化技能持ちだとかそんなチャチなもの一つない至って普通の家庭である。
父親の管理局へ入ったきっかけを聞くまでは、と言いたくなるが。
ディル・ロンドは管理局に入る前、別の次元世界に住んでいた両親の元に生まれた。
ロンド家の一人息子として生まれたディル・ロンドは、13歳の時に次元災害に巻き込まれ、そこで偶然見つけた魔法の杖の力を使って災害を防ぐというなんともお約束な事をしたのだという。
テンプレすぎるだろうと激しく突っ込みたい衝動に駆られたが
「夢があるだろ!?あの時こいつ『私の力を使え』って喋ったんだぜ!」
と嬉しそうに語る父親に
『ディル、私はあの時そんな事は言っていません。私の制止の声を無視して私を勝手に使ったんです』
とツッコミを入れる父親の待機状態の銃弾型デバイスを見て、何も言う気が起きなくなったのは今はどうでもいい話である。
「相変わらずディルとはアイラは仲いいわねー」
などと呟いているうちの母親が、父親が管理局員になってからとある次元世界で救った亡国のレジスタントで実は王族最後の生き残りの姫君だったなんて事は流石にないだろう。
うん、ないと言ったらないのである。聞いたら負けである。うちは至って普通の家庭である。

と、脳内で誰も聞いていないだろう説明をしているうちに、うちの母親はシャーリーの母親と世間話をし始め、少しだけおどおどした様子で挨拶をしてきたグリフィスはシャーリーと話し始め。
会話誘導でもしたのか彼女たちはこちらから意識を離しており、いつの間にか俺の隣に並んだ完璧な女性を体現している彼女は不敵な笑みを浮かべて

「ふふ、リンディから聞いていたけど、本当に容赦のない子なのね?」

「生憎と心が凍ってますので。それにしても本局の人事と資材の要である貴女が入学式に来るとは驚きです」

「あら、息子の入学式の時くらい無理を言っても仕事を休むのが母親というものよ?」

「成程、確かにそれが母親ってものですね。うちの父親とは大違いです」

「ディル艦長は未発見次元世界の惑星探索をしてる人だから来られないのも仕方ないわ。私の主人も休んだ私の代わりに頑張ってくれてるもの」

なんとなくそんな気はしていたがやっぱり尻に敷いてるのか…姉さん女房ってこえぇ。

「それに、ヴェル君はレアスキル以前に6歳とは思えないほど理性的だわ。それだけでも十分人材としては貴重よ」

「…レアスキル以外の理由で欲しいなんて初めて言われました。ですが理性的に考えた結果、入れない理由がありまして」

「それは管理局も聖王教会も断った理由かしら?」

「個人的な理由ですけど、入るのを断るには十分ですから」

「ちなみにその理由は他の人にどうにかできる事かしら?それとも時間が解決してくれる理由かしら?」

そう言われて考える。
他の人にどうにかできる、というより他の人がどうにかするまで解決しない理由である。
無印はどうでもいいが、A'sに関しては自分の絶対零度ではどうにもならないと思う。凍らせた側から再生するし、仮に凍結させても次元転移で逃げられる。
だからこそ断ったのであり、これは自分が関わる事は恐らくないんじゃないかと思っている。

StSだが、確かにStSが終われば直接的に自分に関わってきそうな死亡フラグというのは消滅するかもしれない。
というより、StS終了後がどうなったのかが分からないから、その後で自分の事を狙う存在がいるかどうかは分からないのだ。
自分が知っているのはあくまでアニメ本編のみである。転生前にAfterや続編らしきものが漫画やらドラマCDやらでやってると小耳に挟んだが、視聴しておくべきだったと今更悔いても遅い。
まぁあくまで魔砲少女が出てくる萌えアニメだからStSの裏設定というか黒い所をやったとは限らないのだが。
恐らくスカリエッティの逮捕から管理局が人造魔導師の開発を裏でやっていたのは緘口令が敷かれるかもしれないが、排除はされるだろう。
それによって自分が研究素体として狙われたりすると言う事はなくなる、と思いたいが

「そうですね……時間が解決してくれる可能性はあります」

「そう。何年くらいかかりそうなのかはわかっていたりするの?」

「わかりませんねぇ……数年程度じゃどうにもならないでしょうし、10年以上経ってもなくならないかもしれませんし」

そう答えると、レティさんは少し考えてから

「長いわね…リンディから聞いて想像していたけど相当な理由みたいね?」

「そりゃ、自分の人生に関わる事ですからね。必死ですよ」

「そう。私が解決してあげられる理由ではないのね?」

「提督にどうにかできるなら真っ先に父親に泣きついてますよ」

「そう…でもディル艦長は不在が多いわ。私なら自分の手元に貴方を置いておける」

「置いたらただの餌になるだけですよ。前に餌を置かないでくださいって言うでしょう?」

「それはつまり、ヴェル君にとって管理局は檻に入れられた猛獣って事かしら?」

「猛獣ならまだなんとかなったんですけど、狂気に染まってしまった古き竜だったもので」

「あら、それは大変ね。じゃあそれを止める勇者御一行もいるのかしら?」

「…見かけこそ万民を助ける竜でしたが、誰も見ていない所で暴れる竜を退治するために勇者一行は罠や飛び道具を駆使します。
ですが魔法の杖を持ったもう一人の勇者御一行が現れて、竜を攻撃する最初の勇者を止めようとするんですよ。「その竜は悪い竜じゃない」と」

「……それで?」

「最初の勇者は問答無用で竜も後から来た勇者も攻撃したため、やむなく彼は最初の勇者を倒します。ですが最初の勇者は倒される前に竜を狂わせていた色の違う鱗を砕いたんですよ」

「それで、その竜と勇者達はどうなったの?」

「正気になった竜がその後どうしたのか。最初の勇者が負けた後どうなったのか。後から来た勇者が真実を知ったのか、それとも知らないままなのか。続きを知る前に寝ちゃったんですよ」

「そう、なの…」

そう言って考え込むレティさん。

「続きが気になっちゃいますか?」

「…えぇ、でも竜が正気に戻ったのならハッピーエンドのお話なのよね?」

「ですが狂った竜に襲われた勇者以外の人間にとってはたまったもんじゃないですけど、ね」

その言葉にハッとした表情を浮かべたレティさんだったがすぐに元の表情に戻り

「そうね。確かに犠牲は出ているわ。でもこれ以上の犠牲はなくなった、と思えば」

「じゃあ自分の大切な人が竜に食べられていた、なんて人はどうなりますか?」

「それは……」

「家族を失った悲しみに耐えきれず壊れる?それとも復讐の炎を燃え上がらせて狂いますかね?竜は悪くない、と言った所で何故鱗が竜を狂わせていたのかが分からないとどうしようもないですし」

「そう、ね。とてもじゃないけどその人たちの前でハッピーエンドだなんて言えないわ」

「まぁ、原因がわかって、その仇を自分の手で討つくらいの事はしないと遺恨は残りますね」

「じゃあ、正気に戻った竜が心優しい竜なら、罪を償っていくのでしょうね」

「えぇ。きっとそうすると思います」

「深いお話ね。してくれたのはお父さんかしら?」

「いえ、夢で見たおとぎ話ですよ」

「でも、さっき続きを知る前に寝ちゃったと言っていたわよね?」

「夢の中で夢を見る事もあるって、知りませんでした?」

「成程、それは知らなかったわ」

本当に疲れる。こういう人にはどれだけ抵抗しても喋らされる。
誘導尋問や会話誘導の恐ろしい所は会話と会話の中間を操る事だ。
自分にはそれを真正面から回避する方法はない。
ならば、あらかじめ喋る内容を限定的に変えておくしかない。
この例え話に嘘はなく、だがどれも同じ時系列で起きる事ではない。
前半はJS事件、後半は闇の書事件の例え話だ。
これにより、カリムの予言にJS事件が既に出ていたとしても噛みあう事はない。
だが彼女は気づいただろう。俺が管理局に入らないのは狂った竜の犠牲になるのが嫌だから、だと。
そしてそれをこんな遠回しに言ったのだ、こちらがなんらかの根拠があって言っているとも。
だからこそ彼女は聞いてくるだろう。

「ねぇ、今のお話、他の誰かにしたことは?」

「いえ、最後がわからないおとぎ話なんて子供には受けませんし、話したのはレティさんが初めてですよ」

「そう。興味深いおとぎ話だったわ。ねぇ、私とそのおとぎ話の続きを考えてみない?」

「自分の夢に出てきたおとぎ話を語るだけでも恥ずかしいのに、一緒に考えるなんて出来るわけないじゃないですか」

「ふふ、それは残念ね」

「レティさんの考えた続きを聞かせてもらえるなら喜んで」

「あら、ルクレさんはおとぎ話を語ってはくれないのかしら?」

「両親が生きたおとぎ話ですから」

「な、成程……」

さて、そんな会話をしていると向こうの話のネタが尽きたのか前の方で会話をしていたシャーリーがこちらを向いて

「レティさん、お話終わったー?」

「えぇ、フられちゃったわ。私じゃ駄目って言われちゃったわ」

「レティさんでも駄目だったの?ヴェル君って理想が高いんだねー」

女性というのはいきなりこういうやり取りをするから恐ろしい。
まして片方は小学一年なのにもかかわらず、何を言ってんだこの人妻。
あとシャーリー、俺の理想が高いんじゃない。俺の理想に対して回りのクオリティが高すぎるんだ。

「あら、ヴェル、女性の気持ちを踏みにじるのはよくないわよー?」

そして母親の空気を読まずに感じた台詞が更に場をカオスにする。

「ヴェル君…父さんから母さんを取らないでよ……」

グリフィス、お前もいつか通る道だぞ。
というかお前この環境で揉まれたらそりゃ堅物にならざるをえないよな…。

「あらあら、男の子を苛めちゃ駄目よレティ」

シャーリーのお母さんが最後の良心と思ったが

「ふふ、ちゃんと後でフォローするわよ?」

「そう、なら問題ないわね」

そんなこともなく。
レティさんとの会話で精神が摩耗している所に追い打ちをかけられ、そろそろ胃が痛みだすんじゃないかと思った頃にようやく分かれ道でフィニーノ、ロウラン親子から解放された。
そしてその日が終わり、いつもの夢の中。

「この世界がこんなに腹黒い女性が多いと誰が想像したであろうか…絶望した」

「尻に敷くタイプは私だけで十分だというのに」

「お前は敷くんじゃなくて居座るタイプだろ。原作キャラの半分以上が敷くタイプばっかりなんだぜ…嘘みたいだろ…」

ツンデレも敷くタイプと仮定した場合とんでもないことに…いや、これ以上考えるのはやめよう。

「…それで、どうしてレティ・ロウランの誘いを受けたの?」

「レティさん自体は悪い人じゃないし。まぁ、本人があぁ言ってたんだし大丈夫だろう」

別に管理局に入る事になったわけではない。
シャーリーやグリフィスと共に本局に見学にこないか、という誘いを受けただけである。
ミッドチルダからの転送ポートで本局に行き、レティさんの職場や各種施設を見学して帰るだけである。
本局にはギル・グレアムがいるが、流石に本局内部で何かしようとは思わない筈だ。
呼び出して個人的な勧誘くらいはあるかもしれないが、いつもの通り「危険な事は避ける主義ですので」と断ればいいだけである。
恐らくないだろうが、もしクライドの復讐云々なんて真実を語り出したら「俺を殺人犯にするつもりか」とでも言ってやればいいだろう。
残念だがA'sに介入する気は自分にはこれっぽっちもないのだ。自分が介入することで関西弁少女を氷漬けにしなくてはならなくなったりしたらたまったものではない。
流石に無理やり俺をどうこうは今の時点ではない筈だ。
何よりレティさんは俺を誘う時にさりげなく

(サーチャーをつけるわ)

と口だけを動かして俺に言ってくれた。
あのおとぎ話を子供の出鱈目と一蹴することなく、まして問いただそうともせずにこうしてくれるのは素直に嬉しかった。

「まぁ、そのうち詳しく聞かれるだろうけどな」

「そうね。その時にどうするかは決めているの?」

「時期と状況と聞かれる内容によるな…未来予知とか適当に理由つけようが、俺の正体をバラそうが聖王教会一直線だしなぁ」

それっぽい根拠と証拠を手に入れるなんて事も考えてみるが、いわば私的捜査=ナンバーズ遭遇フラグになりそうでヤバイ。
今の所レティさんにはいつ何が何処で起きるかも話していない。闇の書については「遺族ならこう考える」としか言っていない
となると残るはJS事件だが…6歳の時点で予兆させる何か……か。
と、考えているとレティニアがどこか呆れた顔をしながら

「ヴェルってその時になってから考えるタイプよね…確実に」

「いや、ある程度は考えるけど、転生してから突発的な事が多すぎるんだよ…お前とかリンディさんとかクイントさんとか」

「やっぱりヴェルはそういう運命なのよ」

「たまには幸福な運命を引き当てたいぜ」

心の潤いを切に願う魔法学校初等部入学一日目の夜であった。



[25569] 殺伐とした萌える世界なの!?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/28 16:00
※世界観をなるべく違和感なくWiki時系列に合わせられるように書いたらこんな感じになりました。
他の方はどうなってるのか知りませんが、私が書くとやっぱりAppleSeedとかスターウォーズ要素です本当にありがとうございました。
(;^ω^)どうしてこうなった……助けてクイントお姉ちゃん!




空があかね色に染まる頃、ミッドチルダのとある街の郊外にある森で、打撃音と破砕音が木霊していた。
その音の発生源の片方は身長130㎝に満たないほどの少年であり、もう片方は160㎝程の女性である。

「せいっ!」

「くッ…!ハァッ!!」

少年は空中に留まったまま体を回転させて連続で蹴りを放つ。
それを女性は気合の声と共にそれを避け、両手のナックルで往なし、防ぐ。

少年は蹴りの最後に軸足を踏み込んだ反動を利用し、更に1m程飛び上がる。
そこからさらに女性に向かって足を振ると、その足から氷の塊が蹴り放たれた。

女性はそれを避けるが、数発躱した所に今度は少年が足を振り下ろしながら落下してくる。
それをなんとか躱し、お返しとばかりに拳を振り抜くが、少年は降られた拳が当たる前に女性を中心に半円を描くように足を滑らせて移動する。
女性のすぐ背後に回った少年はそのまま女性に肩をぶつけながら、右こぶしを引き絞る。

肩をぶつけられて前に押し出された女性は体勢を崩すが、押される勢いに逆らわないまま振りぬいた方とは逆の拳で裏拳を入れる。
少年は裏拳をしゃがみながら体を反らせて躱し、女性はその間に体の向きを少年に向け直しながら距離を取る。

「あっぶな~…。本当に強くなったよねヴェル君。技の繋ぎに肩を当てるなんて考えたわね?」

「全身を使い切ってこそ近接格闘は生きるって言ったのはクイントさんですよ」

「ぐ…私が教える事はもう何もないわね」

「それはクイントさんに勝ってからかけて欲しい言葉ですよ、弟子としては」

「だって弟子の技がもうシューティングアーツじゃなくなってきてるんだもん…」

「あー、わかりました、手と足だけでいきますよ」

「む…でもそれはそれで手を抜かれてるみたいで悔しい」

「俺にどうしろってんだよこの(ピ-)歳……」

……あれ?クイントさんが今は(ピー)歳で、結婚したのが(ピー)年だから、その時のクイントさんの年齢は…よし、考えないようにしよう。
とりあえずゲンヤ・ナカジマは今度からロリコン親父で決定だ。

魔法学校に入学してからクイントさんと模擬戦をするのは学校が終わった後が基本になっている。相変わらずの週一回のペース。
クイントさんの休日が不定期なのもあるが、クイントさんから既に習う型はなく、準備運動の後はひたすら休憩を挟みながらの模擬戦である。
休憩のタイミングはどちらかが疲れるか、攻撃の手を止めて話をする時という暗黙の了解が出来ており、特に決めてはいないという正に耐久レースである。
そして、更に何度か拳を合わせ、お互いがそれとなく手を止めて休憩モードに入っている時に、クイントさんが先ほどの技について聞いてきた。

「そういえばヴェル君、さっき足から氷出してたけど、あれ新技?」

「あぁ、なんとなくやってみたかったので試してたら出来たんです。氷の足場の魔法の応用ですね」

「相変わらず氷魔法だけは理不尽なほど器用よね…まぁ、中距離での牽制にはかなり有効だと思うわ。避けた所に本命の蹴り下ろしが来てそこから〆のラッシュが理想かしら?」

「えぇ、蹴り下ろしで相手の体勢を崩してからのゼロ距離の溜め無し直射でノックダウンを考えてます」

「えげつないわねぇ…」

「初見で悉くそれを崩すクイントさんの方が理不尽だと思いますけどね」

「ふふん、丸二年も教えてればヴェル君の新技と氷魔法の気配には敏感にもなるよ。…あ、ごめんちょっと映像通信きたから離れるね」

「はい。……5年以内にあの人妻に勝てるヴィジョンが見えない件について」

『……残念だけど私にも見えないわね』

まさかあれを防がれるとは思ってもみなかった。
飛燕連脚から鷹爪落瀑蹴までは上手くつながったが、落下後の反撃を飛葉翻歩で躱したところからは完全に互角に持っていかれた。
掌底が無理だったのでタックルからの獅子戦吼という古典的な手法でいこうとしたが、裏拳で崩されてしまった。
そう、某物語RPGの格闘技である。だがやはりまだ練り込みが甘いらしく、クイントさんからは止められてしまったが。
ちなみに実際に使えそうな三散華、飛燕連脚、鷹爪蹴撃、飛燕連天脚、散華猛襲脚といった純粋な蹴り技はある程度再現出来るようになっていたりする。
殺劇舞荒拳の〆で広範囲魔力放出でそれっぽい見た目にしようとしたら森の一角が完全凍結したり
バインド代わりの遠距離四肢氷結魔法という点穴縛態から火龍炎舞ならぬ氷龍炎舞を出せるか試したらエフェクト代わりの氷の出しすぎで自分ごと氷の塊の中に埋まったりしたのは黒歴史である。
今回新しく習得した鷹爪落瀑蹴は飛び道具付きの蹴り落としだが、着地後の獅子戦吼キャンセルの獅吼爆砕陣が試したくなり編み出したものだ。
足場の氷を一時的に大型化し、蹴る勢いを加えて相手に飛ばすこれは中々便利である。フリーズランサーのように魔力スフィアを形成する必要がないのも美味しい。
もっとも、さすがにクイントさんに獅吼爆砕陣を撃つ余裕はないが。

『恥ずかしいとか言っておきながら割とそういう技を普通に使うようになったわよね』

『シューティングアーツは拳主体だから蹴りが少ないんだよ。あと技名叫ぶのが恥ずかしいのであって技模倣はそこまで恥ずかしくない。魔力で身体強化してるからオリジナル以上のスピードで繰り出せるし』

正直いよいよファラ+セルシウスのパターンが出来上がってきたが、気にしたら負けである。
これらの技を使う場合、いつでもどこでも氷の足場を作れるという能力が大変便利で、普通なら空中では宙ぶらりんになるしかない軸脚側に足場を作ったりする事で地上で繰り出すのと同じ感覚で使える。

『それにクイントさんの戦法なんて例えるとしたらまんま八咫雷天流だぞ…?』

直線という最短ルートで接近し、相手の攻撃や防御ごと拳の弾幕で叩き落とす。普通に八咫雷天流の散華にしかみえない。
StS本編のスバル対ギンガのワンシーンなんてまんま速度劣化の白狼の応酬だろう。
ちなみに本家クイントさんが白狼もどきをするとすれ違いざまに2回打撃がきます。
つまりヘル・アンド・ヘヴンが見えない速度で来るんです。理不尽にも程があるだろう。

『そういやあれにも氷属性のがいたっけ…あれ?確かあの人ってルートによっちゃ虎太郎先生の…』

これ以上考えるのはいけないと思った。主に八咫雷天流使いの不良教師に心酔する雪女的な意味で。
と、そんな事よりあの作品の人妖雪女が作中どんな使い方をしていたのかを思い出す事に集中する。

『んー…あんまり使えるような技はなかったなぁ。傷口凍らせて止血とかはそこそこ便利かね?』

『ヴェルの場合止血するだけなら傷口を氷で覆うってだけも出来るわね』

『あぁ確かに。って言っても絆創膏代わりだな』

と新しく思いついた氷キャラが没になったりもしつつ、九鬼先生ですら勝てない八咫雷天流を使う魔法若妻をどうやって倒すかと悩んだりしていると、通信を終えたクイントさんが戻ってきた。

「また応援要請の呼び出し…最近事件が増えてきて出動頻度上がってるし嫌になっちゃうわ…。ねぇねぇ、ヴェル君がうちの部隊に入ってくれたらお姉さんの仕事が減るんだけどなぁ?」

そう言ってしょんぼり顔をした後にやたら目をキラキラさせてこちらを見るクイントさん。
あえてもう一度言っておくが、この人は(ピ-)歳の人妻である。断じて女子○生ではない。

「その代り自分の寿命が減るのでお断りします。そういえばこの間、うちの父親も似たような話をクラナガンの友人から聞いたって言ってましたね」

うちの父親はその人柄からか地上本部にも何人か知り合いを持っている。
もっともレジアス・ゲイズやゼスト・グランガイツのような真面目組とは話が合わないとかであまり面識はないそうだが。
曰く「あいつら漢のロマンがわかってない」そうだ。
俺からしたらゼストなんか漢のロマンの塊に見えるが
「違う、違うんだよヴェル!漢ってのはもっとこう、熱く叫ぶもんなだよ!」
……正直父親のロマンは永遠に理解したくない。

「あぁ、やっぱりそうなんだ?うちの隊長もここの所書類仕事が増えて不機嫌だしねぇ」

「なんか本局の方でもここの所きな臭い事件が増えたとも言ってましたね」

旧世界の人型兵器をとある管理世界の某国が発掘しただの、火の七日間がどうだの。
まぁ例え一つの世界を滅ぼしたような超兵器がが現れてもうちの父親ならなんとかしてくれる筈だ。多分。
父親がなんとかできなくてもきっと姫姉様がなんとかしてくれる。
決してうちの母親の事ではない。そもそもうちの父親は事件捜査じゃなくて新世界探索が管轄だし。

「うわぁ…それってもしかしなくても、これからもっと忙しくなりそうな予感?っと呼び出し食らってたんだっけ。それじゃヴェル君お疲れ様ー!」

「お疲れさまでした」

走り去るクイントさんを見送りながら、適当な場所に腰を下ろす。
脳内ではいろいろと危ない説明をしたが、次元世界における機械兵器の歴史というのはそれなりに古くからあり、そのコンセプトも多岐に渡る。
宇宙を含む無重力空間内における3次元機動を目指したものや、陸上走破性を徹底追及した軽量なもの等、多くの次元世界がエネルギー資源に動力を頼った機動兵器を開発した。
旧世界においては先ほども話した超大型の機体に一撃で街一つを消し飛ばすような威力の武器を積んだものが開発されていたという痕跡や兵器そのものの残滓が遺跡等から見つかる事もある。

その何れもが最終的に目指す所がいわゆる「代理戦争」である。
冷戦などという生ぬるいものではなく、自動で戦争をしてくれる兵器の開発。それを実現するため人はさまざまな研究をした。
そして最終的には無人兵器というものを作り出すが、意志のない兵器同士の戦争はお互いが同性能ならば数を増やすしかなく、そのコストから次第に主戦兵器から防衛や補助兵器扱いになっていった。

その後に生み出された一番の禁忌こそが「生体兵器」である。
最初は人権のない人間や動物に武器を持たせた。それが破られれば今度は生き物そのものを強くしようとした。
その結果生まれたのが生体兵器である。古代ベルカの歴史の一部でも無人兵器と併せてその運用が遺跡や書物に確認されているほど爆発的にその技術は波及したと言われている。
本来持ちえないであろう強さを持った生き物。矛盾したそれはまさに殺戮兵器と呼べる。
だが旧世界の終焉と共にそれらの忌まわしき無人兵器や生体兵器の技術は忘れ去られる事となる。
旧暦の末期に交流のあった次元世界において質量兵器禁止法が公布されたことで、それらは完全に消え去り、人は忌まわしい過去と決別するために年号を「新暦」と改めた。

その後50年弱は魔法による治安維持と、旧世界の技術を引用した科学技術を環境改善や食料生産等の平和利用に限定することで、平和が維持されてきた。
だが、それは唐突に終わりを迎える事となる。新しい次元世界の発見とそれによる管理世界の登録数の増加に対して、管理局の人員が足りなくなり始めたのだ。
少ない人員で治安維持を行わなければならなくなった管理局では、死傷者が増加することとなる。
そしてそれは、医療技術の急激な発達を余儀なくされる事となる。
例えそれが旧世界と共に忘れ去られた技術であったとしても。

戦闘機人の基礎理論とも呼べる人と機械の融合についての論文が医療分野にて発表されたのは今から10年以上前である。
論文の著者の名前こそ違うが、これを考え出したのはジェイル・スカリエッティ本人だった筈だ。
この技術により、人は四肢や臓器を怪我や病気で失っても、ある程度なら問題なく補填することが出来るようになった。
それ以前の体細胞培養による人工臓器や他人からのドナー提供と違い、機械による生体のエミュレートによって動く疑似生体部品は拒否反応もなく、今では一般的な医療行為の一つとして認知されている。
だがそれと同時に、人には持ちえない力を持たせる事が出来る肉体改造用部品として不法に移植される事件が発生していくこととなる。

魔力を持たない一般人でも、魔導師と互角に戦える。そんなキャッチフレーズが囁かれるほど、次元世界の暗部の到るところでそれらが悪用される事となる。
それにより管理局では負傷者が多発し、管理局はその鎮圧のために一時期「緊急時における非殺傷設定解除規定」の緩和措置が議題に上った程である。
だがその議題はなんとか否決となり、代わりに高ランク魔導師の分割運用と強化生体部品を移植した相手と相対した場合の戦術理論の徹底化によって疑似生体部品事件は一応の沈静化を見せた。
それが俺が生まれる2年程前の出来事だというのだから、まったくもってこの世界は知れば知るほど殺伐としている。

そして現在、他の次元世界では失われた筈の機械兵器の噂が立ち始め、疑似生体パーツを用いた犯罪が再び増加している。
恐らくこれは前兆と呼べるのだろう。戦闘機人事件の。
管理局は6年前に構築した戦術理論と、増員された人員で対応しているが……

「考えてみると、機械化歩兵なんて言葉があるんだから、機械の歩兵がいたっておかしくないんだよな」

『なにそれ?』

「俺の世界の軍隊用語だよ。人機一体って奴だ」

『ヴェルの世界では機械の歩兵がいたの?』

「いや、あくまでそういうのは物語の世界だけだった。現実は機械は機械、人は人だったよ。ただ、進化した機械は戦場では人と同列になるんだなって思ってな」

『人が生きる上で科学や機械を手に入れたのは特筆すべき進化の一つだけれど、それで人が苦しむというのは因果応報なのかしら?』

「悪魔はどんな人だろうがただの人として同列に扱う。なのに人は他人を同列に見れないばっかりに機械と同列になってしまったのかもしれないな」

『そうね…でも私は人じゃなければ機械でもないから、人も機械も同じに見えるわ。私と一心同体のヴェルは機械や悪魔をどう見るのかしら?』

「悪魔だろうが機械だろうが、それが自分の意志を以ている限り同列に扱う。だから、機械も悪魔も人も意志を持って俺の命を脅かそうとするのなら、全て等しく凍らせてやる」

『ふふ、本当に冷たいのねヴェルは。だからこそヴェルは、私と一心同体にふさわしいわ』

「…ハッ、言ってろよバケモノ」

『えぇ、ヴェルというモノ以外に言うつもりはないわ』



[25569] それは踏んではいけない地雷だったの?(没1
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/29 13:17
※プロット無し殺伐BADEND回避を考え、かつ作者が主人公に今まで持たせていた矛盾をなんとかしようとした結果の一つ、とお考えください。それ以降の言い訳は文末にて。



管理局は忙しくなっていく一方であったが、生憎と自分は魔法学校1年生の6歳児である。
転生者だったり厨二能力持ちだったりやけに原作キャラと縁があったりするが、はたから見れば普通に親が管理局員同士の繋がり程度にしか見られない。
クイントさんと模擬戦をしている時に挙がった話についてはたまに考察もしていたりするが、表向きは至って平穏な毎日であった。

さて、そんなこんなで入学から二か月程が過ぎ、季節は初夏へと入った。
熱くもなく寒くもない天気の中、一人学校へ向かって歩いていると

「ヴェルくーん!おっはよー!」

「おはよう」

「お早う二人とも」

後ろから声がかかり、振り向くとそこにはメガネをかけた少女と、メガネをかけた少年…としか言えない二人が立っていた。
まぁ言わずともお分かりであろうが、何の因果か同じクラスになってしまった原作キャラこと
シャリオ・フィニーノと、そのご近所に住む隣のクラスのグリフィス・ロウランである。

「それでね!お母さんとレティさんがグリフィス君に…」

「や、やめてよシャーリー!」

「それを着たグリフィス君がすっごく…」

「わああああ」

と、入学式の後からやけに登校時に会う事の多い二人と学校へ向けて歩いていく。
あとグリフィスよ、子供の内に着れるものは着ておけ、人生の幅が広がるぞ。性転換はおススメしないが。
さて、入学式以降、今のところ特にこれといった問題は起きていない。
今日も特になんの出来事も起きないまま本日最後の授業を迎えた。
最後の授業は基礎魔法についての実践授業となっており、覚える魔法は念話。
余談だが、これまでのクイントさんとの模擬戦日程のやり取りや他の連絡等は全て術式通信を用いていた。
術式通信とは魔力のない人間でも使える通信技術であり、通信でやり取りされるものの種類や強度によって分別されている。
一般的に使われているものが音声、映像、情報の三つをやり取りする術式通信である。
管理局内で普段使われている術式通信にはこれに更に次元間通信が加わる。
次元通信はこの術式通信に次元間術式を付与したものであり
これも管理局はある程度自由に使えるが、一般人が使う場合は登録が必要である。
ちなみに術式通信については、一般人は専用端末を、魔導師はデバイスを用いるのが普通である。

とまぁそんなことを考えているうちに念話の使い方の説明が終わり。

《聞こえるグリフィス君、ヴェル君?》

《うん。問題なく使える》

《僕も大丈夫》

《私も覚えたわよ》

《あれ、今誰か喋った?》

《気のせいよ》

《そっか、気のせいなら仕方ないね》

《シャーリー、今誰と話してたの…?》

《…誰だろ?》

特に何の問題もなく念話を覚え、今日の学校は終了となった。あとレティニアは自重しろ。
と、概ね自分の魔法学校での生活はこんなものである。

さて、それから更に二か月程経ち、別段何事もなく日々は過ぎて、夏休みに入った。
とはいっても、別段何かあるわけでもなく、学校に入る前の鍛錬の日々に戻ったくらいである。
クイントさんは事件の増加によりますます忙しくなり、必然的に呼び出される回数が増えてしまった。
そのたびに模擬戦を中断する羽目になり、時間がなくなればその日の訓練は終了となる。
そうなると、自主訓練で補うしかないのだが、いかんせん相手がいないというのは伸び幅がゆっくりとしたものになってしまう。
なので基本的には学校が終わればすぐ帰り、例の森で日が暮れるまで鍛錬というのが入学してからの基本行動だった。
よって夏休みに入ってからは、ひたすら朝から夕方まで格闘と魔法の鍛錬である。
まぁ、シャーリーやグリフィスから誘われて遊ぶ日もあるが、シャーリーの話に適当に合わせ、二人でグリフィスをからかう程度である。

そして、入学式でレティさんから誘われた管理局への見学の日である。
母親と共に待ち合わせ場所であるクラナガンの転送ポートへと向かう。

よくよく考えれば彼女は自ら死亡フラグを持ちこむ事のないキャラクターの中では役職的には最高位である。
管理局運用部提督。どれくらい重要な立ち位置かは想像して余りある。
簡単に言えばこの部署が動かなければ次元航行船の一つも動かなくなるのだ。
それほど重要なポストなのに本編では一切語られる事がなかったわけだが
これは管理局の体制に少し問題があると言っておく。
「職員がいなくても食事は作られ、事件がなくても職員は補充される」という事である。
管理局では部隊が一般人をスカウトし、他の次元世界で作られたデバイスを扱う人もいる。
それらは全てデータベース登録されているが、実際は簡単な履歴書をまとめる程度である。
決して職務怠慢ではなく、そんなことをしても無意味だからだ。
例えば、とある次元世界で事件が起きたとする。
捜査に回された部隊の指揮官は今の人員では対処は不可能だと判断する。
増援を待つべきかと悩んでいると現地の子供がありえない力でそれを解決してしまった。
こんなトンデモ展開も割と起きる世界なのだ。このリリカルなのはの世界は。
だから基本、運用部では人や物資を管理するのではなく、人や物資を必要な所に補充するのを最優先にしている。
人が足りないと言われれば待機扱いの中から必要な技能や能力を持った人材を探し
物が足りないと言われれば適合するものの在庫があればそれを、なかったりオーダーメイドを希望されれば技術部等の部署に手配して手に入れる。
ザルのように思われるが、増えすぎた次元世界を管理するためには、とりあえず規格統一されたものを大量生産しておき
それをストックしておくことで、突発的な出来事や、他の要素にも手が回せるのである。

とまぁそんな事を考えているうちに転送ポート施設に到着する。母親と別れ、自分は受付手続きへ向かう。
あらかじめ連絡は済ませており、簡単な説明を受けながら転送陣のある部屋へと入り、一瞬強い光に包まれるとそこはもうミッドチルダではなく、次元世界の
そこにはメガネをかけた少女と、メガネをかけた少年と、もう一人。

「おはようヴェル君!」

「お早うヴェル君」

「はじめまして!第四技術部のマリエル・アテンザって言います。今日は忙しいレティ提督に代わって私が本局見学に付き添う事になってます。よろしくねヴェル君。気軽にマリーさんって呼んでね?」

そう、やはりメガネをかけた年上の少女である。何このメガネ率。圧倒的である。
とまぁ、また原作キャラかと今までは凍りついていた思考だが、あいにくとマリエル・アテンザは役的にはクラスメイトAとかと同じである。
主人公組のデバイスを魔改造したりと裏ではなんか凄い事をしていたが、彼女自体はなんてことはない脇役だ。
……今更この程度のキャラが出てきた程度で驚く程ではなくなってしまった自分の今までの出会いを消し去りたい。
とまぁ、そんな事を思いながらもマリーさんに連れられて本局を案内してもらっている。
シャーリーとグリフィスは興味津々な様子でドッグに係留されたメンテ中の次元航行船なんかを見ていた。

「それにしてもあのディル・ロンド艦長の息子さんがレティ提督の息子さんと同じ学校とはねぇ」

「それこそ偶然ですよ。正直他の学校には行きたくありませんでしたし」

「オーバーSクラスの素質を持っていながらも魔導師訓練校も騎士養成学校も断ったって話ね?」

「知ってましたか」

「そりゃ魔力放出だけで範囲凍結魔法と同じ強さの凍結変換資質は殆どいないもの。それでなくても凍結変換は数が少ないから、他の変換資質と違って話題に上りやすいし」

「そうなんですか。まぁでも、自分は普通にアイス屋でもやってる方が気が楽ですからねぇ。危険な事はお断りしたい性質なんで」

「あはは、確かに凄い凍結魔法だから、アイス作り放題だね?」

「えぇ。今の季節は冷房いらずで重宝しますしね」

「うわ~それは素直に羨ましいな」

と、そんなやりとりをしながらも順に沢山の場所を見ていき、最後にマリーさんの所属する部署である第4技術部へと足を運んだ。
シャーリーはさっきから沢山のデバイスたちを前に興味津々といった感じでマリーさんに質問しまくっている。

「デバイスって言えば、ヴェル君はデバイス持ってるの?あれだけ魔力量が多いならデバイスの補助無しじゃかなりキツイと思うけど」

「誕生日に父さんからもらったのが。ストレージ型の割と普通のデバイスですよ」

「でも量産型じゃないんでしょ?」

「まぁ、魔力が凍結なんてちょっと特殊なんで、カスタマイズはされてるみたいですけど」

「ねね、ちょっと見せてくれない?」

「えぇ、どうぞ」

「うわ、ライター型とか渋い趣味だねぇ」

「作った技術者が父親と同じ愛煙家だったんだと思いますよ」

「成程。……へぇ、ストレージにも関わらず容量が少ないのは術式演算のための効率アップの補助回路を積んでるから、か。演算スピードだけならかなりのものねコレ」

「そうなんですか」

「ヴェル君、なんで補助魔法ばっかりこんな詰め込んでるの?それも探査、観測、管制系の」

「えーっとそれは」

不味い。入れてる術式にプロテクトとか一切かけてなかった。これはヤバい。
補助系しか入ってないって事は必然的に俺がデバイス無しで凍結魔法を使いこなしていると言う事だ。
どうやって言いくるめたものかと必死に頭を捻らせる。しかし

「これ普通にひとまとめに出来るから圧縮したらかなり容量確保できると思うよ?」

「……っていうと?」

「それぞれの魔法の専用補助として登録してるのが悪いのよ。使用される魔法によって、入っている補助魔法を選んで選択する形にすればいいんだよ」

「でも選択なんてインテリジェントの仕事じゃないですか?」

「それは補助魔法をデバイスが考えて使ってくれる場合。私が言ってるのはどの魔法を使う時にどの補助魔法を使うのかをあらかじめ登録しておく事で、ダブってる術式の部分を削れるって事」

「あぁ~成程」

あっぶねぇ。マリーさんが根っからの技術者で助かった。

「ちょっと待ってて、すぐ終わるからさ」

「あ、直すくらいは自分で「ふふん、ここは専門家に任せなさい」お願いします…」

そう言ってソフィアに格納されている術式一覧を一端吸い上げ、重複魔法を削除しながら新しい術式を組み上げていくマリーさん。
ってか普通に手が見えない速さで動いてる。ブラインドタッチってレベルじゃない。

「はい終わり。そういえば凍結魔法が一つも登録されてなかったけど、別に凍結魔法専用のデバイスがあるのかな?」

「あー…それは」

とりあえず形だけでもイエスと答えるべきか、しかしそれもみせてくれと言われたらアウトだ。
どうするべきか迷っていると。

《私がいるからよ》

「え?誰?」

女郎…バラしやがった。
この時点で詰み以前の問題だ。
なんで自らの存在をバラしたのか。わかってるのか。
俺以上にお前が一番狙われやすいというのが。
……いや、わかっててやってるのだろう。そしてこれはあの女郎が最初から考えていた行動。
つまり奴は初めから俺を驚かせるために言わなかった。
これはもう諦めるしかない、か。

「…俺のリンカーコアに癒着してる魔法生物、って言えばいいんですかね。プログラムじゃなくて感覚で魔法を編み上げてる変態ですよ」

《あら、魂の伴侶に向かって変態とは失礼しちゃうわ》

その声と共に、俺の胸のあたりから黒い髪の女性が出てくる。
身長は40㎝程だが、妙齢の美しい女性の体型をそのまま小さくした形だ。
その女性は硬直しているマリーさんに向き直ると着ている鮮やかな白と紺色の服の両端を摘まみあげ、優雅に一礼し、

「こんにちわマリエル・アテンザ。私はレティニア。かつて存在した世界で氷の精霊だったものよ」

「え?え?つまり何?」

「何でこのタイミングで俺から出てきてるのお前?てか何勝手に自分の存在バラしてるの?てか明らかに狙ってやったよね?」

「ふふ、思った以上に回復が早かったのよ。あぁそれと、出てきてるわけじゃなくて、魔力で編んだ分身みたいなものよ」

「わぁ、ヴェル君から小さいお姉さんが出てきた」

「す、すごいねヴェル君……」

「え?これってユニゾンデバイス?でもあれって古代ベルカの失われた技術だよね?でも目の前にいるし。でも本人違うって言ってるし」

「どうするんだよこの状況」

「ふふ、でもヴェルも悪いのよ?。ヴェルがデバイスの中を誰かに見られた時点でどうあっても私の存在もバレたんだから」

「いやそこは悪いと思ってるけど、俺が適当な理由を考えてだな…」

「無理よ。この世界では魔法はデバイス無しでは簡単なものしか行使できない。なのにヴェルは自分のデバイスに凍結魔法を一切登録していない。この矛盾を説明できる?」

「むぅ…なんかこうレアスキル的な…」

「ねぇマリエル、デバイス無しで自由に魔法を行使できる?」

「ぶつぶつ…え?あぁはい、無理です。レアスキルの一つである高速思考でもデバイス程の演算処理はできません」

「ということよ。諦めなさいヴェル。それにこうしないといけない理由がもう一つあるわ」

「…なんだよ、そろそろ死亡フラグ踏んでおけって事か?」

「そう拗ねないの。ねぇマリエル。貴方に頼みごとがあるのだけど」

そう不敵に笑うレティニアに、きょとんとした表情を向けたマリーさんだったが。

「あーその、とりあえずレティニア、マリーさんに頼みごとする前に一言だけ言わせろ」

「あら、何かしら?」

「これから最低でも家族とクイントさんとサーチャーの向こうで驚愕してるだろうレティさんには事情説明しなきゃいけないんだから手伝えよ?」

「ふふ、勿論」





さて、バラしてみました。
しかしレティニアの死亡フラグを取り除くルートの一つとして、ボツにした1万の文章を書いている中でこれは常に脳裏を過っていました。
彼女はユニゾンデバイスでもなければ魔法生物でもない、存在全てが魔力で出来た生命体。ならば…?といった考えです。
そしてもちろんレティニアは我が身かわいさなんて理由だけで動くような人でもありません。あくまで自分と主人公両方とも助かる道を考える女性です。
ここまで読んで下さった方の中には「この展開だけはあっちゃならないだろう糞作者め」と思う方もいらっしゃるでしょう、作者本人も主人公が隠しきる道があってもよかったと思ってます。
ほんとなんでマリー登場回でバラしてんだろう。
いや、むしろマリーだからこそバレた。あの光るメガネの前には勝てなかったんだって…



[25569] お知らせとか色々。
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/29 09:27
えぇーはい。8話を投稿して一晩様子を見させて頂きました。
反対される予想はしてましたが

こ れ は ひ ど い w

この展開を嫌う方が多数いらっしゃったようで。
実を言うとこれは素直に嬉しかったです、意地で隠し通す気力回復的な意味で。
そして、作者がどのあたりで悩んでいたのかを解って下さっている方も大分いるようでそこは素直に感激です。

そう。ヴェルの魔導師としての扱いなんですよ。
ヴェルは凍結魔法というリリカルなのはの中では
比較的登場頻度の少ない魔法です。
デュランダルとはやて&リィンくらいです。
そしてそのどちらも広域凍結。
そしてヴェルは生きた広域凍結要員ですが、実際に凍らせているのはレティニア。
自分のデバイスの中を確かめられた時に「あれ?管制や座標観測は入ってるけど凍結魔法自体を補助する術式一個もないよ?」と聞かれてしまう展開しか思いつかなかったのです。
如何にそれを回避するか、そこが作者の悩みどころなわけでした。
この意見を言われるまでは。


「バインドや回復、結界魔法はデバイス無しでも使える淫獣がいる。
ならヴェルの凍結魔法もデバイス無しでいけるんじゃね?」


( ゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシゴシ

:(;゙゚'ω゚'):

いやホント忘れてた。
そういやデバイス無しでもなのはさんシューター練習もしてましたね。
しかしUNO忘れるとかド忘れだとか人妻に熱中しすぎただとか
そんなチャチなモンじゃ断じてねぇ。
もっと恐ろしい視野狭窄の片鱗です。

てなわけで現在投稿している8話をもう一度書いてみる事にします。
途中までの流れは変わらず、ただしなんとか自分の中で納得できる
そして読者の皆様にも「まぁ、これなら矛盾はない」
と言っていただけそうな考察を考えてみます。
そうすれば恐らくレティニアバレルートを消滅させる事も可能かと。

8話はそのままにしておきますので他にも
「いや、お前こんな設定あったの忘れてるだろ?」
と言う作者が忘れている事を思い出させてくれるご意見待ってます。

作者のプロット無しは正直これからも変えられそうにありません。
何故ならばこの小説、EFBなんて元々存在しなかったんです。
「プロット通りに書いてたと思ったら主人公がEFBを持っていた」
もうお分かりですね?
プロットは既にゴミ箱逝きだとか構成苦手だとかそんなチャチな小説なんです。
一応、書いてはメモを取って時系列や設定が狂わないようにしてます。
今回はそもそも登場予定があるかどうかすら分からない淫獣のドツボにはまってしまった、という事です。本当に申し訳ありませんでした。

それではちょっと書き直してきます。



[25569] それはまた一つネタ技を思いついた時なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/31 15:11
管理局は忙しくなっていく一方であったが、生憎と自分は魔法学校1年生の6歳児である。
転生者だったり厨二能力持ちだったりやけに原作キャラと縁があったりするが、はたから見れば普通に親が管理局員同士の繋がり程度にしか見られない。
クイントさんと模擬戦をしている時に挙がった話についてはたまに考察もしていたりするが、表向きは至って平穏な毎日であった。

さて、そんなこんなで入学から二か月程が過ぎ、季節は初夏へと入った。
熱くもなく寒くもない天気の中、一人学校へ向かって歩いていると

「ヴェルくーん!おっはよー!」

「おはよう」

「お早う二人とも」

後ろから声がかかり、振り向くとそこにはメガネをかけた少女と、メガネをかけた少年…としか言えない二人が立っていた。
まぁ言わずともお分かりであろうが、何の因果か同じクラスになってしまった原作キャラこと
シャリオ・フィニーノと、そのご近所に住む隣のクラスのグリフィス・ロウランである。

「それでね!お母さんとレティさんがグリフィス君に…」

「や、やめてよシャーリー!」

「それを着たグリフィス君がすっごく…」

「わああああ」

と、入学式の後からやけに登校時に会う事の多い二人と学校へ向けて歩いていく。
あとグリフィスよ、子供の内に着れるものは着ておけ、人生の幅が広がるぞ。性転換はおススメしないが。
さて、入学式以降、今のところ特にこれといった問題は起きていない。
今日も特になんの出来事も起きないまま本日最後の授業を迎えた。
最後の授業は基礎魔法についての実践授業となっており、覚える魔法は念話。
余談だが、これまでのクイントさんとの模擬戦日程のやり取りや他の連絡等は全て術式通信を用いていた。
術式通信とは魔力のない人間でも使える通信技術であり、通信でやり取りされるものの種類や強度によって分別されている。
一般的に使われているものが音声、映像、情報の三つをやり取りする術式通信である。
管理局内で普段使われている術式通信にはこれに更に次元間通信が加わる。
次元通信はこの術式通信に次元間術式を付与したものであり
これも管理局はある程度自由に使えるが、一般人が使う場合は登録が必要である。
ちなみに術式通信については、一般人は専用端末を、魔導師はデバイスを用いるのが普通である。

とまぁそんなことを考えているうちに念話の使い方の説明が終わり。

《聞こえるグリフィス君、ヴェル君?》

《うん。問題なく使える》

《僕も大丈夫》

《私も覚えたわよ》

《あれ、今誰か喋った?》

《気のせいよ》

《そっか、気のせいなら仕方ないね》

《シャーリー、今誰と話してたの…?》

《…誰だろ?》

特に何の問題もなく念話を覚え、今日の学校は終了となった。あとレティニアは自重しろ。
と、概ね自分の魔法学校での生活はこんなものである。

さて、それから更に二か月程経ち、別段何事もなく日々は過ぎて、夏休みに入った。
とはいっても、別段何かあるわけでもなく、学校に入る前の鍛錬の日々に戻ったくらいである。
クイントさんは事件の増加によりますます忙しくなり、必然的に呼び出される回数が増えてしまった。
そのたびに模擬戦を中断する羽目になり、時間がなくなればその日の訓練は終了となる。
そうなると、自主訓練で補うしかないのだが、いかんせん相手がいないというのは伸び幅がゆっくりとしたものになってしまう。
なので基本的には学校が終わればすぐ帰り、例の森で日が暮れるまで鍛錬というのが入学してからの基本行動だった。
よって夏休みに入ってからは、ひたすら朝から夕方まで格闘と魔法の鍛錬である。
まぁ、シャーリーやグリフィスから誘われて遊ぶ日もあるが、シャーリーの話に適当に合わせ、二人でグリフィスをからかう程度である。

そして、入学式でレティさんから誘われた管理局への見学の日である。
母親と共に待ち合わせ場所であるクラナガンの転送ポートへと向かう。

よくよく考えれば彼女は自ら死亡フラグを持ちこむ事のないキャラクターの中では役職的には最高位である。
管理局運用部提督。どれくらい重要な立ち位置かは想像して余りある。
簡単に言えばこの部署が動かなければ次元航行船の一つも動かなくなるのだ。
それほど重要なポストなのに本編では一切語られる事がなかったわけだが
これは管理局の体制に少し問題があると言っておく。
「職員がいなくても食事は作られ、事件がなくても職員は補充される」という事である。
管理局では部隊が一般人をスカウトし、他の次元世界で作られたデバイスを扱う人もいる。
それらは全てデータベース登録されているが、実際は簡単な履歴書をまとめる程度である。
決して職務怠慢ではなく、そんなことをしても無意味だからだ。
例えば、とある次元世界で事件が起きたとする。
捜査に回された部隊の指揮官は今の人員では対処は不可能だと判断する。
増援を待つべきかと悩んでいると現地の子供がありえない力でそれを解決してしまった。
こんなトンデモ展開も割と起きる世界なのだ。このリリカルなのはの世界は。
だから基本、運用部では人や物資を管理するのではなく、人や物資を必要な所に補充するのを最優先にしている。
人が足りないと言われれば待機扱いの中から必要な技能や能力を持った人材を探し
物が足りないと言われれば適合するものの在庫があればそれを、なかったりオーダーメイドを希望されれば技術部等の部署に手配して手に入れる。
ザルのように思われるが、増えすぎた次元世界を管理するためには、とりあえず規格統一されたものを大量生産しておき
それをストックしておくことで、突発的な出来事や、他の要素にも手が回せるのである。

とまぁそんな事を考えているうちに転送ポート施設に到着する。母親と別れ、自分は受付手続きへ向かう。
あらかじめ連絡は済ませており、簡単な説明を受けながら転送陣のある部屋へと入り、一瞬強い光に包まれるとそこはもうミッドチルダではなく、次元世界の
そこにはメガネをかけた少女と、メガネをかけた少年と、もう一人。

「おはようヴェル君!」

「お早うヴェル君」

「はじめまして!第四技術部のマリエル・アテンザって言います。今日は忙しいレティ提督に代わって私が本局見学に付き添う事になってます。よろしくねヴェル君。気軽にマリーさんって呼んでね?」

そう、やはりメガネをかけた年上の少女である。何このメガネ率。圧倒的である。
とまぁ、また原作キャラかと今までは凍りついていた思考だが、あいにくとマリエル・アテンザは役的にはクラスメイトAとかと同じである。
主人公組のデバイスを魔改造したりと裏ではなんか凄い事をしていたが、彼女自体はなんてことはない脇役だ。
……今更この程度のキャラが出てきた程度で驚く程ではなくなってしまった自分の今までの出会いを消し去りたい。
とまぁ、そんな事を思いながらもマリーさんに連れられて本局を案内してもらっている。
シャーリーとグリフィスは興味津々な様子でドッグに係留されたメンテ中の次元航行船なんかを見ていた。

「それにしてもあのディル・ロンド艦長の息子さんがレティ提督の息子さんと同じ学校とはねぇ」

「それこそ偶然ですよ。正直他の学校には行きたくありませんでしたし」

「オーバーSクラスの素質を持っていながらも魔導師訓練校も騎士養成学校も断ったって話ね?」

「知ってましたか」

「そりゃね。広域凍結魔法と同じ強さの凍結変換資質なんて殆どいないもの。それでなくても凍結変換は数が少ないから、他の変換資質と違って話題に上りやすいし」

「そうなんですか。まぁでも、自分は普通にアイス屋でもやってる方が気が楽ですからねぇ。危険な事はお断りしたい性質なんで」

「あはは、確かに凄い凍結魔法だから、アイス作り放題だね?」

「えぇ。今の季節は冷房いらずで重宝しますしね」

「うわ~それは素直に羨ましいな」

と、そんなやりとりをしながらも順に沢山の場所を見ていき、最後にマリーさんの所属する部署である第4技術部へと足を運んだ。
シャーリーはさっきから沢山のデバイスたちを前に興味津々といった感じでマリーさんに質問しまくっている。

「そういえば、ヴェル君ってデバイス無しでも凍結魔法を制御できたんだよね?」

「えぇまぁ。といってもそのまま魔力放出したら広域魔法扱いですからね。座標観測やら細かい補助をしないと危ないんで、誕生日に父さんからもらったストレージ型に大量に補助術式突っ込んでますよ」

自分の魔法はちょっと特殊だ。
本来ならデバイスのサポートがないと出来ないような魔法
つまり広域凍結魔法といったものや攻撃魔法の類はデバイスを用いなくても出来る。何故ならレティニアがいるから。
逆にそれ以外の、氷の足場の補助全般や氷の彫刻を作り上げるような魔法は、ソフィアのサポートが絶対必要になる。
つまりレティニアは、凍らせる、という事に関しては何の不足もないのだが、どう凍らせるか、どのくらい凍らせるか、凍らせた後どうなるかといったものは苦手なのだ。
ちなみに攻撃魔法の威力調節の修業が大変だ、と書いた事があったが
こっちが「これくらい冷たくして」と思ってもレティニアにはそれがどれくらいの温度なのか上手く伝わらずに完全凍結、といった事になったりするのが理由である。

「純粋な魔力による魔法と違って変換資質による属性魔法は制御が大変らしいね?」

「まぁ、制御に関しては大分訓練しましたし。ただ俺の魔力に合うデバイスってのが中々なくて、父さんが知人に頼んで作ってもらったのしか使えませんけどね」

「へぇ…ねね、ちょっとそのデバイス見せてくれない?」

「えぇ、どうぞ」

「うわ、ライター型とか渋い趣味だねぇ」

「作った技術者が父親と同じ愛煙家だったんだと思いますよ」

「成程。……へぇ、ストレージにも関わらず容量が少ないのは術式演算のための効率アップの補助回路を積んでるから、か。演算スピードだけならかなりのものねコレ」

「そうなんですか」

「…あれ、ヴェル君、これかなり効率悪い術式の使い方してるね?」

「そうなんですか?」

「うん、同じ術式が言わばダブってる状態なの。だからこれを、あらかじめ登録しておいた術式から選択して実行するようにすればいいのよ」

「選択して実行っていうのはインテリジェントデバイスなんじゃ?」

「インテリジェントデバイスは術者が命令しなくても自分で選んで補助してくれるけど、
私が言ってるのはどの魔法を使う時にどの補助術式を使うのかをあらかじめ登録しておく事で、ダブってる術式の部分を削れるって事」

つまり、今までは一つの魔法を使う時に1から10まで全部書いていた術式を実行するのではなく、
使う魔法によってあらかじめ登録されている術式の中から1から10まで選択すると言う事だ。

「ちょっと待っててね、すぐ終わるから」

「あ、直すくらいは自分で「ふふん、ここは専門家に任せなさい」お願いします…」

「でも術式の構成自体は凄くよく出来てるよコレ。術式もディル提督が?」

「あぁいえ、自作です」

「自作!?うわーその歳で演算式の構築なんて…ほんと凄いんだねヴェル君」

「必要に迫られて必死になっただけですよ。凍結は他の炎熱や電気と違って周りにいませんでしたし」

そう、もっとも魔導師の人口が多いこのミッドチルダでさえ、凍結変換資質というのは1年に一人くらいの割合でしかいないのだ。
そしてその中でも自分の使う魔法は特殊も特殊。
レティニア印の変則ミッド式。実際はレティニアの感覚で行っていた固有魔法をレティニアと俺で術式魔法として細分化したものだ。
その結果、術式自体はミッドチルダ式として登録する事が出来た。
だがレティニアがいた世界の魔法陣をミッドチルダ式にすることは出来ず、結果変則ミッド式となっている。

「でも見れば見るほど他のデバイスに入ってる術式とは毛色の違うものばっかり…。やっぱり凍結魔法って大変そうだねぇ」

「他の人の構成式を見たことないんですけどそんなに違います?」

「うん。気温や水分濃度みたいな環境観測から、それに合わせた魔力性質演算。普通の魔法はそんなもの入れないからねぇ」

「でもそれをしないと危なっかしくて使えたもんじゃないんですよね」

「確かに属性魔法は周囲の環境に影響されやすいもんねぇ。水分がない所では魔力を直接変換しなきゃいけないし」

なんて事を話しながらもマリーさんは俺のデバイスの術式をあっという間に書き換えてしまった。

「はい、出来たよ。これでストレージの容量が3割くらい空いたから。それでね?お願いがあるんだけどなぁ」

「あー分かりました。組み直した術式のテストですね」

「うん!テスト場はこっちで用意するから」

そうわくわくした顔で見せるマリーさん。
そして俺とマリーさんのやり取りが聞こえたのか少し離れた所で見学していたシャーリーとグリフィスが戻ってきた。

「ヴェル君魔法のテストするの?」

「なんかマリーさんが術式の効率上げてくれてさ」

「いいなぁヴェル君だけ。凍結魔法なんて凄いもの持ってるし」

「冷凍特化しすぎててそれ以外はてんでだめなのに何を言うかシャーリー」

「だって凍結魔法なんて普通は詠唱型か儀式型じゃないと出来ないんだよ?」

「お蔭で日々の授業で苦労するこっちの身にもなってくれ」

そう、学校で支給される通常のデバイスでは俺の魔力量に耐えられない以前に
レティニアによって変質した魔力は合わないから使えないのだ。
俺以外にも自分のデバイスで授業を受けている生徒はいるのだが
こっちは他の術式でストレージ一杯。
結果どうしたかというと、あの氷の遊具を消したのはいいが、それでもリソースが足りなくなり
新しい魔法を習う度に前に習った魔法を削除したりと大変なのだ。

さて、マリーさんの頼みで技術部が確保しているテストスペースに移動する。
広さは検査するためのスペースなので見学している時に見かけた模擬戦スペース程広くはない。
10m四方程の広さの部屋の中央に自分が立ち、マリーさんとちびっこ二人は保護ガラスで区切られた観測室にいる。

「んじゃま、軽く地面凍らせてみますね」

「了解」

そう言って目を閉じ、魔力を放出する。
流された魔力は六芒星を円でかこんだ魔法陣と共に周囲に伝わり、地面を凍らせていく。
テストフロア内はすぐに冷気が充満し、白い霧に包まれた冷凍庫に早変わりだ。

「うわー真っ白だ」

「地面の温度どれくらいになりましたか?」

「瞬間的に-120度まで下がったね。といってもすぐに大気に熱を吸われていってるけど。どう?違和感とか不具合みたいなのは起きてない?」

「今の所は。心なし発動ラグが減った気がします」

「リソースが浮いた分演算に回してるからね。体感で5%くらいは発動スピードが上がってると思う。誤差は起きてないよね?」

「えぇ」

「じゃあ、他の魔法も試してみてくれるかな?」

「わかりました」

足場の魔法陣を小さく、それでいて圧縮されたものへと変えていく。それは足の下だけを凍らせる。
更にそのままその上から魔法陣を出す。これは推進や安全装置の術式。
足場を常に凍結させ、更に推進術式を組んだ移動魔法、氷の足場である。
そのまま地面の上を滑るように動く。動いた後に出来ている魔力で出来た氷は細かく砕けて消えていく。

「うわ、こんな魔法移動法初めて見たよ」

「ちょっとしたコツがあるんです…っと」

「わ、わ!ヴェル君うまーい!」

「ヴェル君運動得意だから羨ましいなぁ」

氷を地面に張って狭いフロア内を器用に滑る俺を、ちびっこ二人ははしゃぎながら見ている。
余談だが俺の氷の足場の走法はフリーラインスケートを参考にしているから屋外である必要はまったくない。
好きな時に滑る、それがジャスティス。

「凍結変換資質持ちの人で移動法に使おうなんて事を考えた人は今までいなかったと思うよ。効率が悪いのもあるけど」

そりゃ殆どの人はこんな効率の悪い事はしない。飛んだ方が圧倒的に効率がいい。
この世界の飛行魔法とは重力制御だとかではなく、某インなんとかさんのロリコン通行さんに近い。
つまり、ベクトルと運動量を操作することで、「体があっちに飛んでいく」と思えばその方向に向かって運動量を挙げる事で飛ぶ。
もちろん羽でバッサバッサしたりする飛行法も存在はしているが、そんなのは稀である。
そして俺の魔法はその飛行魔法のベクトル操作を氷の上で行うという二重の作業をしている。

「足場を作る魔法自体はあるじゃないですか。あれを参考にしたんですよ。あと俺、飛行適性はそんな高くないですし、飛ぶのってそこまで好きじゃないですしね」

「そうなんだ。でも、見てる分にはすごく冷たそうだけど楽しそうだなぁ…わっ凄いね今のジャンプ」

「わーヴェル君すごーい」

「男がやってもちっともときめかないけどな。グリフィスがやればときめく人もいるんじゃね?」

「ヴェル君今のどういう意味?」

フィギュアスケート技もストレス発散時期に適当に覚えた。今では狭い室内でもダブルトゥループくらいなら出来る。クイントさんなんて4回転出来るだろう。
なに?ロンドン・ロンド?Re-Actまでしか遊んでない生粋の自宅ゲーマーだった俺に何を期待しているのかね?
……後で試してみるか。フルール・フリーズは余裕で出来るだろうし。
AD技は再現不可能…いや氷で出来たショートケーキ落とすくらいは出来るか?

「まぁこれが出来る事で年中無休で一人ウィンタースポーツですよ。あぁ、山一つ買ってゲレンデのオーナーとかなるのもいいですね」

「あはは、やっぱり管理局は選択肢にはないんだ?」

「組織に使われるのは嫌なんで」

使われ方次第じゃ人権無視で生命倫理無視の職場とかごめんでござる。

「そっかぁ。でもソフィアに一つも攻撃魔法についてのものがなかったし、ヴェル君はそれでいいと思うな。デバイスもそういう使い方をされた方が喜ぶと思うよ」

ストレージが喜ぶかどうかはともかく、攻撃魔法が一つもないのはレティニアが魔法の生成を受け持っているから。
お蔭でクイントさん以外には今の所自分が攻撃魔法を使えるってバレてません。

『感謝しなさい』

『こんな綱渡りの日々を送る羽目になった原因の大部分が何をほざくか』

これでも気を付けるようにはしているのだ。人前で絶対に攻撃魔法を使わない。これは大前提である。
あぁ、クイントさんは別である。彼女は狙われる可能性があるから強くなりたいという俺の考えを知った上で、個人的に教えてくれる人だから。
いずれ彼女が死んでしまったらそれ以降関わる事はなくなるだろうし。
いや本当に死んでしまうのか保障できない程強くなってるクイントさんだが、それでも恐らく相性が悪い。
ガジェットIV型と言われる光学迷彩付き無人兵器はあのなのはが落とされたのだ。
W.A.S等の探索系統魔法をStSで積極的に使っていたのも恐らく落とされた経験から鍛えたのだろう。それくらいあれは「気づかれにくい」
本編ではメガーヌさんとクイントさんの二人の前に最低でも十機以上のIV型がひしめいていた。
恐らくステルスも使ってるだろうからあのシーンで何機のIV型が集っていたのかは判断が付かない。
まぁあのクイントさんである「物体が動いたときの空気の流れを感じ取った」とか言い出しそうではあるが…
……いや、今は考えるだけ無駄だ。彼女が死ぬにしろ生きるにしろ、自分にとっては他人事である。

とまぁそんな事を考えながらも試験動作も終わり、マリーさんに礼を言うと

「私もいいもの見せてもらっちゃったからギブアンドテイクだよ。そのデバイスも大事に使ってくれてるみたいだしね」

大事に扱っているというより空気に扱っているとは言えない。
なんて事を思いつつ見学で回れる所は全て回り終わり、時間的にもそろそろ帰る頃になったので最後に運用部に行ってレティさんに会う事になった。

「レティ提督、お子さん達連れてきましたー」

「ご苦労様マリー。ごめんなさいね、私が案内出来ればよかったのだけど」

「いえ、ヴェル君からいいもの見せてもらいましたし、私も楽しかったですから」

「そう、それはよかったわ」

とまぁそんなやり取りを交わし、最後にレティさんは俺に近づいてきてこう言った。

「ヴェル君、前に話してくれたおとぎ話に出てきた竜なのだけど」

「えぇ、どうでした?」

「やっぱり表向きは優しい竜のままだったわ」

つまりサーチャーで見ていた限り自分を狙う存在は確認できなかった、ということなのだろう。
自分の方でもそれとなく回りを確認したり、警戒はしていたが。だが表向き、と彼女は言った

「でも、もしかすると、優しい竜の他に別の竜がいた可能性があるわ」

別の竜…陸か。
地上と本局では指揮系統が完全に分断していると言っていい。
いや、正確にはミッドチルダの治安維持を司る首都防衛隊か。
あれは言ってみれば地上本部の私兵である。
他の次元世界に派遣されたりすることもない。
成程…一匹だと思ったら別の竜、ね。

「そうですか…じゃあまだ俺が竜に近づくのは危ないですね」

「そう…竜の事はそのうちまた話し合いましょうね」

そしてその日の見学は終了となった。
危惧していたギル・グレアムやハラオウン親子と会う事もなく、何かがバレるということもなかった。
だが確実に空気はきな臭くなっていっている。

『この平穏もいつまで続くか、といったところか』

『ふふ、いいじゃない、私とヴェルなら相手にとって血も凍るような事が出来る』

『上手くねぇし恥ずかしい事言うな』






というわけで書き直し。
バレ回避&設定保持で書けた…かな?と言う所。
まさかスバ・ギン前に躓くとは思ってもみなかったので作者焦りまくりんぐでしたが、なんとかなったと思ってます。
きな臭くなった詐欺にするつもりはありません。
シリアスも混ぜてこそプロット無しの真骨頂だと思っていますので。
まぁ死人が出るかはわかりませんけどね。



[25569] 師弟対決は暁に燃えるの
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/30 14:22
夏も終わり、季節は冬を迎え、新年を迎えた。
マリーさんのお蔭で実質半分近くにまで容量の空いたソフィアで
魔法関連の講義もそれなりに不自由なく受ける事が出来るようになり
それが終われば再び修業という特に何事もない日々であった。

平穏というのは得難いものだが退屈を感じるのは心の贅肉とは誰の言葉だったか。

レティさんからその後の管理局暗部についての報告はなかったが、どうやら個人的な捜査どころではなくなってきているらしい。
というより、ここの所次から次へと事件が増えて本局全体が蜂の巣をつついた状態になっている。
とりあえず最近になって本局で囁かれている原作関連の事件を挙げると

まず、管理外世界における第一級指定ロストロギア「レリック」関連の事件がある。
過去にも何度か発見され、その高エネルギー結晶体は過去に大災害を巻き起こしたりしたことがある。
もちろん管理局は見つけ次第これを封印処置を取るように指示している。
だが、ここにきてそれらが何者かに強奪されたり、盗またと思われる事件が起き始めている、というものだ。
盗まれたと思われる、というのは明らかにレリックがあったと思われる形跡だけが残されていたりした所からの予測だ。
もちろん犯人はあのスカさんだろう。
今年が新暦64年という事は手駒として動ける戦闘機人がもう何体か稼働しているのだろう。トーレとかチンクとかクアットロとか。
管理局内で大きな事件として扱われる程大々的にやっているということはガジェットドローンも量産体制が整いつつあると見た。
これから数年の間はレリックの窃盗や強奪が相次ぐのだろう。
ガジェットと鉢合わせすることになるかもしれないスクライア一族を始めとした発掘を生業としてる方々にはご冥福を祈らざるをえない。
もしかすると管理局が保管してるレリックも評議会繋がりで横流されたりしてるのかもしれないが。
正直、見た目がなんかのゲームのトロフィーみたいなのに大規模災害を起こすなんて洒落にならんなぁと思う。
だが他にもヤバイものが多いこのリリカル世界、管理局は何個存在するのかすら把握しきれていないレリックばかりを追うわけにもいかない。
そんな事だから狙われんだと言いたい所だが、これは仕方ないと思う。
レリックより危険度の高いロストロギアなんてごまんとあるのだ。

次に、クローン人間関連の増加だ。
これも原因の元はぶっちゃけるとスカさんである。
彼がかつて片手間の暇つぶしだかなんだか知らないが
「クローンに素体の記憶を複写する理論」なんてものを書いたのが事の始まりである。
というか、スカさんが広域指名手配次元犯罪者として登録されたのは
10年程前にこれで研究資金を稼ごうとしたのが発端らしい。
流石に売ろうとしたものがものである。管理局は事件を知り全力でこれを排除した。
だが、近年になってこれがどこかから漏れ出したらしく、クローンの発見例が増え出したのだ。
管理局は先に挙げたレリックよりこの技術の廃絶に本腰を入れている。
この技術を漏らしたのがどこの馬鹿かは知らないが
このクローン事件を隠れ蓑に自分は戦闘機人とレリック-人造魔導師-に本腰を入れる事が出来るスカさんからしたら喜ばしい事だろう。
……そのせいで金髪ツインから親の仇もかくやと思うほど恨まれる事を思うと何とも言えない気持ちになるが。






ちなみにミッドチルダだが、一般人である自分にとっては割と平和である。
そう、一般人にとっては。






今日も俺は、いつもの森でクイントさんとの模擬戦をしていた。

クイントさんは右足を前に出し、両拳を構えながら突っ込んでくる。
体の勢いそのままにクイントさんの両拳が散弾銃のように放たれるが
それを両手の氷の籠手で往なし、体を横や後ろに滑らせて躱す。
拳振り抜いた体勢を戻しながらそのまま自分の横を通り過ぎ、ていくクイントさんを追う事はしない。
ヒット・アンド・アウェイ型を極めたようなクイントさんの基本戦法は生半可な追い打ちをかけてもまず当たらないからだ。
そのくせ身体強化による高めの防御とカウンターごと拳で叩き落とすというふざけた強さを兼ね備えている。

腰を少し落として魔力を出して構える。
足元から魔法陣が広がると共に、地面が白く凍っていき、辺りは白い冷気が漂う。
だがクイントさんはそれをさして気にした風もなく、再び自分に向かって一直線に走り抜ける。
その足元はローラーの衝撃によって凍った地面が砕け散るが、クイントさんは更に加速しながら拳を自分の肩と水平に引き絞る。

牽制に右手を前に出してスフィアから氷の矢を放つが、それは全て左拳の連打で砕かれた。
多少は効果があると思ったが更に加速したクイントさんは右拳を引き絞った体勢のままで迫ってきた。

舌打ちをしながらも氷の矢を出すのを止め、右足を地面に叩きつけるように踏みつける。
すると、足元から氷の壁がせり上がった。
壁が出来た時には既にクイントさんの射程内。
間一髪防御準備が間に合ったが、クイントさんはカートリッジを排莢しながら拳を体ごとぶつけるように突撃し

「一撃完砕!」

右拳を氷の壁に叩きつけた。
壁は一瞬拳を止めたように見えたが、すぐに砕け散り
次の瞬間クイントさんが"消えた"

「二撃必倒!」

ヤバイと思った時には全力後退。これがクイントさんとの数年の模擬戦で鍛えたカンである。逆らえば確実にノックダウンされる。
そしてそのカンは今回も当たりだったようで、後ろに下がり始めた瞬間には目の前に右手で片手倒立したようなクイントさんの姿が。
どうやら初撃の右拳を振りぬいた勢いそのままに、軸足である右足をバネに飛びながら一回転し、頭上から右拳を振り落としたらしい。

当たっていたらノックダウンどころかミンチじゃねぇのかと腰が引けそうになるが
クイントさんとの模擬戦で「馬鹿力」に怯んだら確実に負けるのはもう十分すぎる程に経験済である。
振りぬいた拳をクレーターの出来た地面にめり込ませて片手倒立しているクイントさんを狙って回し蹴りを繰り出すが
それを右手をバネに飛び上がって躱したクイントさんはそのまま一端後ろに下がって止まった。

「あの無防備体勢で避けられるとか死にたくなってきた…」

「当てる自信あった新技だったのに避けられちゃった…」

「あんな出鱈目な技最近作ったとか…てか二撃目全く見えなかったとかどんだけ腕の力強いんですか」

「あ、女性に腕っぷしがどうこうなんて言うのは駄目だよヴェル君」

「今日もこの人妻理不尽の塊だよ…」

「うちの隊長も耐えられたからヴェル君も大丈夫かなって思ったけどやっぱり大丈夫だったね」

「オーバーSの上司と6歳半の弟子を混同しちゃ駄目でしょうが」

「えーヴェル君なら大丈夫だって」

「そもそも打ち下ろしは避けるか打ち上げで相殺以外にどうしようもないじゃないですか」

「そこはほら、弾くとか隊長みたいに崩すとか」

「さっきの崩されたんですかクイントさん…」

「うん…「まだ足の振りの勢いが甘い」って言われちゃった…」

そんなバケモノであるゼストですら手負いとはいえ倒した幼女、もといチンクってどんだけ強いんだ…
スバルの振動破砕で速攻退場してたけどチートってレベルじゃない。
ぅゎょぅι゛ょっょぃなんてチャチなモンじゃねぇ。あの能力がヤバイんだ。
チンクのIS"ランブルデトネイター"はナンバーズの中でも規格外の殺傷能力と汎用性を持つ能力だ。
しばらく触ってれば爆弾になり、爆破の発動は任意。
そして専用のナイフは瞬間移動させる事すら可能。
トラップ爆弾としても飛び道具としても破格だ。
……チンクの素体ってどこの世界の人間だったんだろう。
あんな鉄甲作用付き完全で瀟洒な従者な能力がある世界、きっと殺伐としてんだろうなぁ。
そんなことを思っているとクイントさんは立ち上がり、自分がから離れた所に移動してこう言い放った。

「さて、それじゃ新技を破ったヴェル君には必殺技を受けるご褒美をあげよう」

「……げ」

クイントさんの必殺技。それはこの世界に転生して初めて勝てる気がしないと感じたチート技。
前に八咫雷天流“白狼”という技で例えたアレである。クイントさんの場合はそれを両手で放つ。
カートリッジ左右4発ずつ、合計8発というふざけた魔力ブーストで放つ必殺の二撃。
8発の内、2発分の魔力で全力展開したバリアを前面にのみ張り、
更に2発分の魔力が普段は自己の魔力だけで行っているローラーブーツの推進力に回される。
何故普段は使わないのかと言えば、初速から既に普段のトップスピードを超えるカートリッジでの加速は
ローラーブーツに多大な負荷をかけるため、乱用はとてもじゃないが出来ないからだ。
その加速は正直俺の氷の足場による飛葉翻歩で躱す事はほぼ不可能。
そして左右どちらから放たれるか分からない一撃目でバリア貫通、逆の手で放つ二撃目で魔力ノックダウン効果の拳を叩きつける。
説明すればこれだけだが、ここに更に付け加えると
"一撃でバリアブレイクされたと思ったらそれでダウンしていた"
こんな感じである。つまり一撃目と二撃目がほぼ同時に当たるのだ。
本人いわく「ちょっとだけ疲れるんだけどねー」で放たれる理不尽な両手による惡一文字の十八番技みたいなものである。
食らった相手は交通事故に遭ったみたいに吹っ飛ぶ。そりゃもうスーパー歌舞伎みたいな感じに。
実はご褒美なんて言ってるが、模擬戦の最後の方でクイントさんの「ついやっちゃった」が発動して何度か食らった事がある。
そしてそれを今まで避けられた事も防げた事もない。文字通り最終兵器と言う奴だ。
ちなみに余談だが、これを打つ時クイントさんは「一撃必倒」と言う。
初めて食らった時は一撃に見えたので何も思わなかったが、絡繰りがわかってからはもちろん一撃じゃないじゃんと突っ込みを入れた。
もちろん「一撃っぽいからいいじゃん」で突っ込みは却下された。理不尽だなさすが人妻りふじん。

「じゃあ、今日こそ期待してるよヴェル君!カートリッジロード!」

ガシュンガシュンと同タイミングで両手のリボルバーナックルからカートリッジが排莢され、クイントさんの纏う魔力が爆発的に増えた。
これはどうやら覚悟を決めて、もう何度目かわからない卒業試験と言う名の処刑に挑むしかないようだ。

『レティニア、どうする?あの人妻本気だぜ?』

『そうねぇ…避けるのも無理、防ぐのもカートリッジのないこっちには無理。となると相殺しかないんじゃない?』

『相殺ねぇ…』

考える。向こうの攻撃は防御無視の魔力+物理衝撃。
どちらの手から初撃が放たれるかわからない以上、先手は確実に相手に取られる。
理想はバリアブレイクの初撃を通さない事だが、あれを止めるとなると…

『レティニア、籠手作って全力防御で行く。ただし反撃アリでだ』

『ふふ、お手並み拝見といこうかしら?』

『運ゲーだけどな』

両手の肘まで覆うように籠手を作って構える。
そしてクイントさんは魔力を制御し終わり

「一撃必倒!!!」

次の瞬間にはもう目の前だ。
早すぎてこっちの体の動きは追いつかないが、かろうじて腕を動かすのは間に合った。
両手をクロスさせて防いだ所にクイントさんの左手が来る。
それによって両手の籠手は砕け、その破片が飛び散る前にはもう右手が振られている。

それはむき出しになった両手に当たり、そのまま魔力ダメージを浸透させ、さらに余波で体ごと吹っ飛ばされた。
自分のまだ130㎝弱の体は2メートル程飛んでから地面に叩きつけられ、受け身も取れないまま更に数メートル転がった。
だが、すぐに上半身を起こし、そこで仰向けに倒れてるクイントさんを見てため息一つ。

「ふ、防げた…腕が全く動かないけど」

やったのは初撃をバリアと一体化していた籠手で防ぎ、さらに二撃目が当たるのもそのままむき出しの手で受けて両手を完全に捨てたということ。
ボディや頭部への魔力ダメージを躱せば気絶は回避できる。
そして吹き飛ばされ上体が反るのを利用して障壁貫通効果付きの足で蹴り上げた、ただそれだけである。
直線的な攻撃による魔力ノックアウトの短所は、攻撃範囲の狭さにある。
絶対に回避できない位置から叩きこめ、当たれば確実に沈む代わりに、範囲魔法のように複数制圧出来る攻撃範囲は持っていない。
それは格闘だろうが射撃だろうが当たり前の事で、腕を食らうに任せて足を前に滑らせて体を後ろに倒せば
直線軌道しか描けない魔力衝撃は腕を貫通してそのまま頭上を通過する。

とまぁ、簡単な絡繰りである。だがこれをやるのは正直二度と御免被りたい。
鼻先を魔力衝撃が掠っていってムズムズするのがものすごい恐怖を感じさせる。
正直立ち上がる気も起きず、そのままクイントさんに声をかける。

「あークイントさん?起きてます?」

「ん…うぅ…あれ?……はぁ、とうとう破られちゃったか…」

「いや、俺も全く両手が動かないから相討ちですよ」

「私はまだ動けないし、足が生きてるだけで十分ヴェル君の勝ちよ。教えた身としては蹴り主体の弟子に負けたっていうのは少し悔しいけど、ね」

「不肖の弟子は師匠よりも非力なんで、蹴りでリーチと威力を誤魔化すしかないんですよ」

「…じゃあ、いつかまたシューティングアーツを教える子が出来たら、蹴り技に関してはヴェル君に任せよっかな?」

「いやいや、そもそも俺の蹴り技に関しては最早シューティングアーツじゃないって散々愚痴ってたじゃないですか」

「んー……私がヴェル君に教えて、ヴェル君が作り上げた技ならこれもシューティングアーツの一つと呼べる筈!」

「理不尽さだけは一生勝てる気がしない」

「ふふ、じゃあこれでヴェル君に教える事はもうないわ」

「何言ってんですか。無傷で勝てるようになったら卒業ですよ」

「うわ、弟子が生意気になった」

「それに俺が人に教えるのは無理なんじゃないかと。氷の足場を基本にしてますし」

「でもヴェル君の蹴り技、私もある程度出来るよ?空中連続回し蹴りとか」

「じゃあクイントさんが教えるだけで十分ですね」

「えぇ~……あ、あとほら、掌底から魔力衝撃出すのとかもヴェル君の技だし!」

「クイントさんだってやろうと思えば直射砲撃くらい出来るでしょう?」

「あはは、遠距離技ってなんとなく苦手で……」

「特訓しましょうか」

「うわ、スパルタの予感」

と、クイントさんとの模擬戦で勝った、というより引き分けになったのが年明けすぐの事である。
季節は春を迎え、魔法学校は何事もなく進級した。
とある日の午後、クイントさんからの通信が入り

「ヴェル君、ちょっとうちに来れない?」

という連絡を貰った。
余談だが、今までに何度かナカジマ家にはお邪魔している。
完全にオフの日等はナカジマ家で食事をご馳走になった事もある。
ロリコン親父ことゲンヤさんとも何度か会った事があり

「おい坊主、その歳で略奪愛には走るなよ」

「えぇ、歳の差も考えず手を出すような人間にはなりたくないですしね?」

「ゲンヤさん、ヴェル君、ご飯出来たよ!今日はヴェル君がいるから、つい張り切って作っちゃった!沢山食べてね!」

「……ねぇ、ゲンヤさん。俺フードファイターの弟子になった覚えはないんですけど」

「……何も言わず食え。死んでも食え。あの料理の山の向こうに何も無くてもだ」

なんてやり取りを交わす程度には顔を知っている。
特に予定もなく、クイントさんの誘いを断って修業をする、というのも憚られ
了承の旨を返し、公共機関を使ってナカジマ家のある、エルセア地方へ向かう。
我が家のあるのは西地区でも比較的中央寄りに位置している。
首都に一時間程、エルセア地方にも一時間程かかるので丁度中間、といった所。

「午後だから大丈夫だとは思うが、一応胃薬持ってくか……」

『ヤバイなら断ればいいじゃない』

「あれを断ってみろ。いろんな意味でBadEndしか思いつかない」

決して不味いわけではない。むしろ家庭的な味付けで美味しいのだ。そう、味はいい。

『でもあれ、明らかにヴェルの体重の半分くらいあるわよね』

「言うな。俺もあれはファンタジー世界の何かご都合主義的なものじゃないと説明つかないんだから」

なんてくだらないやり取りをしながらも足取りは比較的軽く。
だがその時はこんなことになるなんて思いもしなかった。

「ほらギンガ、スバル、お兄ちゃんに挨拶」

「こ、こんにちわ」

「…こ…ちわ」

クイントさんに家の中に案内された俺の目の前には
クイントさんとよく似た髪を持つ4歳くらいの長髪の少女と、更に小さい短髪の少女。
うわぁ…そっくりってレベルじゃねぇ。プチクイントさん×2、ただしバージョン違いみたいな。

「あぁえっと、こんにちわ。ヴェル・ロンドって言います」

「ギンガですっ」

「……すばる」

とりあえず、挨拶を返す。
「良く出来ましたー」なんて言って抱きしめてるクイントさん。
そして笑顔のギンガと、びっくりした顔をしながらも素直に抱かれるスバル。
するとそれを見ていた俺に家の奥からゲンヤさんが近づいてきた。

「よぉ坊主。わりぃなクイントが丁度いいって言うもんだから」

「いえ、特に予定もなかったですし。可愛いお子さんですね?クイントさんそっくりの」

「あぁ…まぁちっとな。後で話す」

「え、話すんですか?」

「お前はクイントの一番弟子だからな。知る権利はあるさ」

「出来ればそこは「何も言わずに受け入れてくれ」って頼んで欲しかったなぁ…」

「ハッ、お前みてェなヒネた餓鬼にんな事いわねぇよ」

「そりゃあ残念」

先にも話したが、俺はクイントさんが子供が出来ない体だと知っている。
そこに急にクイントさんそっくりの子供が二人。
…激しくお断りしたいが、大人しく説明されるしかないだろう。

「それじゃヴェル君、二人と遊んであげてくれないかな?」

「わかりました。それじゃ二人とも何して遊ぶ?」

なんて言葉を受け、スバギン姉妹と遊ぶ。
目の前の幼女二人はゲンヤの血こそ入っていないが、クイントさんとは血縁関係どころか同じ血が流れている。だが、
体細胞クローンを遺伝子改良し、疑似生体部品の適合率を圧倒的なまでに上げた半機械人間。
半分人間であり、半分機械。いつか言った人機一体の一つの完成形、戦闘機人。
戦闘機人の強みは、なによりその素のままでの強さだ。
魔力反応もなく、一般人にしか見えないモノが片手で人の頭を握り潰したりする。
もっとも二人はまだ子供。
恐らく保護されたときに出力リミッターでもかけられたのか、力は普通の子供と変わりない。
だが機械補助によって得られる圧倒的なまでの反射や運動神経だけは隠せない。
スバルはともかく、すでに慣れたのか明るい性格をしているギンガと遊ぶのはそれなりに体力を使う。
だがそこはまぁクイントさんに鍛えられたという自負もある。
なんとか疲れた顔をすることなく、最後まで遊ぶ事ができた。
遊び疲れた二人を、クイントさんが寝かしつけるために運んでいくのを見送り、自分はゲンヤさんと応接間のソファに座る。

「お疲れ坊主。しんどかったか?」

「あの体力にはちょっとだけ驚きましたけど、これでも鍛えてますからね」

「そうか。…まぁ、なんだ。今から話すのは少し重いんだが、いいか?なんならさっきお前が言ったみたく何も聞かずって選択も…」

なんて言いかけた所にクイントさんが戻ってきた。

「あら、ヴェル君なら大丈夫よね?あ、洗濯物出しっぱなしだったから取り込んでくるね」

「その根拠はどこからくるんですか…」

相変わらずな女性を苦笑しながら見送る亭主と弟子。どんな構図だ。

「まぁ、アイツもあぁ言ってるから、聞いてくれ」

「わかりました」

「あれはクイントがここん所起きてる事件現場の一つに……」

そして語られたのはまぁ、本編でゲンヤさんが話していた事を少し詳しくした焼き増しである。
ミッドチルダにおける「戦闘機人事件」というのは表向き世間に公表はされていない。
当たり前である。地上本部の最暗部に繋がる鍵と言えるこの事には、当然評議会から圧力がかかる。
そして既にレジアス・ゲイズは地上本部をほぼ手中に収め、精力的に活動している。
では「ここの所の事件」とはなんなのかというと
違法業者や科学者が人気のない所に造った製造プラントからの脱走者や稼働試験中の暴走による発覚である。
ジェイル・スカリエッティが提唱した「人と機械の融合」理論を元に、人体強化を考えた他の科学者は多い。
だが先にも話した通り、それはあくまで疑似生体部品を移植しただけの強化人間である。
恐らくスカさん本人から見れば「粗悪品」と言えるモノである。
そんなものたちがミッドチルダや近隣の無人惑星の至る所で見つかっている。
見つかる強化人間のタイプは、肉体から五感に至るまで様々だ。
そしてあの二人はその中でも完成系の中の一つ。
肉体、五感、魔力。いずれもが高水準で完成された、どこの誰が作ったかもわからない作品。

「…まぁ、こんな所だ。アイツも自分に似てるってんでうちで引き取ったんだが、な」

「そうだったんですか。……まぁ、機械だろうがバケモノだろうが、意志を持ってる限り同じでしょう」

そう言った途端、いきなり部屋に入ってきたクイントさんが俺の頭を撫でる。
というかこっそり様子を伺ってるくらいなら自分も混ざればいいのに。

「さっすが私の弟子!」

「クイントさんという歩く理不尽がいますしね」

「うわ、酷い!」

「……ハッ、そういやお前はその弟子だったな。真面目に話した俺が馬鹿だったぜ」

「弟子入りは強制的でしたけどね」

「もう、二人とも怒るよ!」




[25569] 複雑な心の内なの
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/01/31 15:09

スバギンがナカジマ家にきたということは、あと2、3年でクイントさんは死ぬ。
3年以上の付き合いの師匠が死ぬというのは確かにまぁ、残念だとは思う。
出来れば死なないで欲しいとも思うが、死期が近寄ってきてる事を教えるつもりはない。
「近いうちにクイントさんは死にますよ」
なんて言う子を想像してほしい。普通に電波だ。
それに、教えた所で今度は俺の死亡フラグが立つ。
なに?保護してもらえ?メガーヌさんが死んだ後、ルーテシアが評議会の謎の力で
あっさりスカさんに渡った事を思うに、自分にも同じ事が起きる可能性がある以上お断りします。
父親が海の提督だからといっても安心はとてもじゃないが出来ない。

「罪に問われないなら敵は皆殺し編を開始するのに」

『ふふ、この世界は息苦しいわ。まぁ、ヴェルの中が一番居心地いいのだけれど』

「そろそろ出てけよもう」

クイントさんが何故死ぬような羽目になるのか。
ゼストの身を心配したレジアスが戦闘機人事件捜査から外そうとした。
もっとも、ゼストの捜査力を危惧して辿り付かれる前に外そうとしたとも考えられるが。
それを訝しんだゼストの独断専行によるスカさんの研究所への突入。
そして戦闘機人生成プラントを見つけたのはいいが、ガジェットとナンバーズによる返り討ちで全滅だ。
とまぁ、言葉にすれば簡単な事だ、馬鹿と阿呆に巻き込まれたのだ、ゼストの部下全員。

「知ってれば避けられた、とは思えないのが辛い所だな」

恐らく、既にスカさんは適当な場所に戦闘機人製造プラントを作っている。
もっとも、自分の手駒であるナンバーズは聖王のゆりかごで作っているのだろうが。
レジアスの求めた量産型戦闘機人。それはスカさんが謀反を起こした事で頓挫する。
……なんか借金だけ残してトンズラされた感じだな、レジアス。
教えた所でややこしい事にしかならず、自分の死亡確率が上がるのは確実。

「やっぱり出来る事はないな」

そう結論付ける。
俺が出来るのは精々クイントさんとの模擬戦だけだ。
自分が仮想敵をしてクイントさんが原作より強くなったところで
それだけで流れが変わるかは分からないが。

作業完了と共に家を出る。季節は既に夏。
学校は二度目の夏休みに入っており、既に宿題は終わらせている。
学校生活は相変わらずだ。
自称普通の凍結魔法使いはそこそこ万能な冷房要員になるくらいである。
冬場はいらない子扱いで、夏場は重宝される、そんなものである。
それ以外はシャーリーとグリフィスの漫才を眺めたり
グリフィスを虐めようとした男子をシャーリーが泣くまで殴って
それを見たグリフィスが泣いたりと至って普通であった。

「来年には無印開始とはいえ、冬までは恐らくこのまま平穏だろうな」

とまぁそんな事を考えながらも目的地に着いた。
夏休みは本来なら一人黙々といつもの森で凍結魔法の制御とネタ技再現等を行うのだが。

「あ、兄さん遅いよー!」

「お兄ちゃん遅い」

「よくきたな坊主」

と、着いた途端にこれである。頬を膨らませた幼女二人とおっさん一人。
言うまでもなく理不尽ハウスことナカジマ家である。

「あぁ、ごめんな二人とも。お土産作ってたから遅れた」

「「お土産?」」

「暑くなってきたからな。アイス作ってきた」

そう言って魔力で氷点下に保った箱からアイスを入れた容器を取り出す。
フレーバーはバニラとチョコ。

「これって兄さんが作ったの?」

「まぁ凍らせる事に関してはそこらの冷凍庫より優秀だからな」

「食べていい?」

「食べ過ぎるなよ」

「悪いな、コーヒー飲むか?」

「頂きます」

まぁ、こんな感じのやり取りが春の出会いから続いている。
ゲンヤさんは子供が出来た事で自分の仕事を減らしてなるべく家にいるようにしている。
クイントさんも緊急時と戦闘機人関連の捜査以外はなるべく他の人に回してもらっている。
ギンガが学校に行く歳になるまでは、と言うことで許可をもらったそうだ。
そして今日はゲンヤさんもこの後仕事で家を空けるという事で
夕方クイントさんが帰ってくるまでは俺が面倒を見る事になっている。
どうしようもない時は管理局の託児施設にお願いしているそうだが。

さっそくアイスを頬張って口の回りを汚してる二人を眺めていると、ゲンヤさんが戻ってきた

「あいよ、コーヒー。…ってあぁ、お前ら早速口の回りベタベタじゃねぇか」

そう言って二人の口を甲斐甲斐しく吹き取るゲンヤさん。
なんていうか、すごくお父さんである。

「なんだかんだ立派にお父さんやってますね」

「…うるせぇ」

「春の頃はそりゃもうテンパったり落ち込んだりしてたっていうのに」

「ぐっ……お前に相談したのは失敗だったぜ。…そういうお前も立派にお兄ちゃんやってるじゃねぇか?」

「一人っ子の自分でも立派に兄が出来るっていうのに今年で大台突破のいい大人ときたら……」

「本当にヒネてんな坊主……」

「生憎と比べる兄弟がいなかったもので」

そんなやり取りをアイスを食べながら見ていたギンガが

「あ、兄さん、これ食べ終わったらシューティングアーツ教えてほしいの!」

なんて唐突に言い出した。

「……ゲンヤさん」

「何も言わずに教えてやってくれ。俺は仕事行ってくるから後頼んだ」

あの親父逃げ出しやがった……。
期待に満ち満ちた目をこちらに向けるギンガ。
スバルは我関せずとアイスを食べている。

「あー…ギンガ?俺よりもクイントさんから習った方がいいと思うんだ。俺のは特殊だし」

「お母さんからも教えてもらってるよ。でもお母さんが兄さんの方が足技は上手いって」

「俺の方が足技は上手い、ねぇ……」

確かに、俺が近接格闘で使うのはリーチと威力を補うために足技が多い。
拳は捌きと魔法攻撃を重視している。
まぁ、氷の足場がなくても出来る足技なら教えられるだろうが。

「…上手く教えられるかは分からんぞ。スバルは?」

「やったっ!」

「私は見てる」

というわけで、アイスを食べ終わった二人を連れて家の庭へ。
スバルは少し離れた所で本を見てる。
こんな大人しい子があの性格になるのかと思うと何とも言えない気持ちになる。
準備体操を終え、基本の型を一通りこなす。ギンガはまだ全部の型を覚えているわけではないので、出来る型だけだ。

「さて、俺と違ってギンガはクイントさんと同じローラーブーツでの直線移動だよな?」

何を教えようかと考えながら、的代わりの氷の案山子を作り、魔力で覆って壊れにくくする。

「うん、お母さんからローラーブーツも教えてもらってる」

「…となると絶対的な弱点ってのが出来るのが普通なんだが…わかるか?」

そう聞くとギンガは首を傾げて考える。

「んー…後ろを取られる事?」

「正解。まぁ、クイントさんみたく常に高速で動き続けて後ろを取られないようにするのがベストなんだが…」

案山子を自分の真後ろにくるように立つ。

「もし真後ろを取られた時は…」

右足を軸にして、左足を屈めて、腰を曲げて深くお辞儀をするように上体を曲げ

「こうする」

屈めていた左足を伸ばして案山子を蹴り上げる。なんちゃって殺人貴だ。
蹴り上げられた案山子は砕け散り、蹴り上げと共に飛び上がった体を着地させた。

「わ、わ、兄さん今のもう一回!」

この六兎という技は蹴り上げだが、裏拳と違いしゃがんで避けるのは難しい。
逆にこちらは上体を曲げているので相手の攻撃が上段なら回避も出来て二度美味しかったりする。

「でも六魚は蹴り下ろしが無駄だから見た目よくても微妙だったしなぁ」

なんて事を呟きながら、その後も六兎を見せる。

「私もやってみるね!……やぁ!」

「最初は片足でバランスを取ったまま、飛び上がる練習からしないとダメだぞ…」

六兎の動きは中々出来るものではない。ギンガは文字通り人並み外れたバランス感覚があるから
片足でバランスを取るのはそこまで難しくない。問題は蹴り上げる足と上半身を曲げる動作の同期だ。
軸脚を屈めシーソーのように動きながら、足を延ばして蹴り上げながら飛び上がる。これが中々難しい。

「むぅ、難しいねこれ」

「純粋に体の動きが重要になってくる技だから、俺も出来るようになるには大分かかったしなぁ」

余談だが、この世界で六兎を最初にしたのはクイントさんである。
飛葉翻歩で後ろに回られるのに業を煮やした彼女が足を後ろに蹴りあげたのが最初である。
だが足を延ばしたままでの蹴りでは近距離では使えず、それを俺が六兎を真似る事で近距離でも対応させた。
……えぇ、自分の首絞めましたよ。お蔭でそれを覚えたクイントさんに飛葉翻歩は使いづらくなりましたとも。

「ね、もっとかっこいい技見せて!」

「かっこいいねぇ…かっこいい技ならクイントさんのが多いぞ」

俺が使うのは氷の足場を利用したテイルズ格闘以外は地味なのが多い。
前回クイントさんの白狼を破ったのは九鬼流の焔閻魔という技からヒントを得たものだったりする。
相手の攻撃を食らってわざと上体を後ろに反らしながらの蹴り上げ。
これは相手がいる状態でないと使えないし。まぁこれは実用性重視の技だ。
魅せ技となると派手さ重視になるんだが、氷の足場がなくても使える派手な足技となると……あんまりない。
無駄にブラボーな流星脚とかパンストの伸縮を利用した流星脚とかは使えないからな。

「そうなの?」

「実用性重視技が多いからなぁ…」

ぶっちゃけない事はない。火龍炎舞とか。回転鳥蹴りとか。
だがあれは完全にネタで使い道がない。
連続夏塩蹴りするくらいなら焔閻魔で一撃を当てる方が効率がいいし
カポエイラのような技は文字通り足が止まるから遠距離から撃たれたら終わるし。

「じゃあ、兄さんは必殺技持ってないの?」

「……まぁ、格闘で必殺と呼べるものはないな。格闘は近接の隙を埋めるっていうのが目的だし」

良くも悪くも自分の技は凍結魔法を撃つ隙を消すためのもの。
前衛を往なして、後衛を牽制する余裕を作るのが目的だから。

「でもお母さんはヴェル君の方が強いって言ってたよ?」

「状況次第だな。5m以内に近寄られたら俺が勝てるのは五分以下になる」

「そうなんだ……なんか兄さんってお母さんの弟子っぽくないね」

「そりゃ強制弟子入りだったからな……ま、とりあえずギンガはまだ基本の型を覚えるのを頑張れ」

「はーい」

そんなやり取りをしながら、1時間程ギンガに教えた。
疲れたギンガを連れ、本を読んでいるうちに寝てしまったスバルをおんぶしながら家に戻り、スバルを部屋のベッドに寝かせる。
ギンガもすぐに寝てしまったので、後はそのままクイントさんが帰ってくるまでコーヒーを淹れてアイスを食べながら時間を潰した。

というわけで原作通りにギンガがシューティングアーツを習い始めたわけだが。
何故か夏休みが終わる頃にはギンガがチート入ってるバランス感覚で六兎を鮮やかに決めていた。
……なんなんだろう、この理不尽母娘。
とても敗北フラグ立ってる二人とは思えねぇ。

「ナンバーズに倒せるのだろうか、あの二人。ガジェットじゃもう手に負えないと思う件」

『でもその原因の一端はヴェルよね』

「なんだか激しく原作ブレイクの予感がしてきた」

『そうなったらいよいよどうなるか分からなくなるわね』

「いや…それでも…それでもスカさんとナンバーズならやってくれる筈!」

『死亡フラグを応援してどうするのよ』



[25569] お知らせとか再び。
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/01 00:38
プロット無しのまま何事もなく新暦64年もスバギンと関わり、いよいよ来年には無印スタート、となった主人公ですが
ここにきてどうしたものかと悩んでおります作者だったりします。
そもそも続ける必要あるのこの小説?え?もう打ち切れ?よろしいならば続行だ。
こんな気持ちで書いているわけですが、ここにきてどうにも選択肢が多すぎて多数決という手に頼るしかないかなぁと思うのです。
てなわけでみなさんの希望する展開なんぞを選んで頂ければな、と。


1:無印A's無視してStSに本気出す。
 でもクイントさんが死ぬかどうか決めてない。むしろゼスト隊壊滅フラグ折った場合の話の展開が妄想できない。

2:無印A's介入。
 ただしどうやって地球に行かせたものか…。「グレアム、お前もか」の使いどころが分からない。

3:無印A'sもStSも介入お断りします。
 ただしこの場合下手するとあと10話もかからず終わるんじゃないかな……ノーマルエンド的な意味で。

4:その他
 もう好きなようにやっちゃえよ。バラすのもなんならスカさん陣営に行くのもアリだとかさっさと打ち切れ低能だとか。


とまぁこんな所でしょうか。
ここで選択肢を出すというのはその後の展開がある程度予測できてしまうわけで正直苦しいとは思ってます。
ですが全部の展開を考える、というのは流石に無理がありますし、どこまで続くのか作者すら分からないこの状況。
どうか生温かい目で「この作者は本当にダメな奴だな」程度に思って頂ければ幸いです。


以下嘘予告。参考にはならないチャチなラクガキ。

「チャチな転生オリ主だったはずの、俺、ヴェル・ロンドに訪れた突然の事態。憑かれたのは、氷の女王。
手にしたのは永遠力暴風雪。出会いが 導く偶然が、今、死臭を放って動き出していく。
断りたい想いと、強制開始の物語。それは、原作と日常が並行する日々のスタート。魔法食堂冷やし過ぎ中華、始めました」

※無印編

――目の前には、魔砲少女

「私、高町なのは!あなたのお名前聞かせて!」

「名前聞く前に砲撃当てる人にはお断りします」

「えっ」

――目の前には、露出少女

「ジュエルシードを渡してください」

「封印魔法の代わりに取り込んだ生物ごと凍ってるけどいい?」

「えっ」

――目の前には、KY執務官

「どうして君がここに!?」

「クール宅急便です。サインお願いします」

「えっ」



※A's編

――目の前には、ゴスロリ幼女

「おめェのリンカーコアの魔力を貰ってくぜっ!」

「今なら漏れなく氷の女王もついてくるけど」

「えっ」

――目の前には、再び魔砲少女

「今度こそ名前を教えてもらうの!」

「桃子さんから教えてもらってないの?」

「えっ」

――目の前には、再び露出少女

「管理局嘱託、フェイト・T・ハラオウンです!」

「なぁヴィータ、管理局の人手不足って嘱託で補えないのかね?」

「いやアタシに聞くなよ」

「あの……」

――そして最終決戦。目の前には、関西弁少女

「な?お願いやから言うてや」

「何が悲しくてこんな台詞を言えと」

「いや、やっぱりEFBっちゅうたら厨二詠唱やろ」

「えぇい、一回だけだぞ…極寒の地の氷の神よ、我に力を与えたまえ。言葉は氷柱、氷柱は剣。
身を貫きし凍てつく氷の刃よ、今嵐となり我が障壁を壊さん!エターナルフォースブリザード!!」

「うっわぁ……うっわぁ……」

「あまりの恥ずかしさに俺が凍りたい」


※StS編1

――目の前は、火の海

「こちら八神はやて!これから広域凍結魔法を…ッ!!!この魔力は!?」

「こちら教導隊高町なのは。現地の民間人が魔法で鎮火させてくれました。これより要救助者捜索に入ります」

「……リィン、凍結魔法はアイツいればいいんちゃうかな」

「私の出番をどんだけ奪う気ですかあの人は……」

――目の前には、妹分

「あ、お兄ちゃん!」

「「「お兄ちゃん!?」」」

「正確には妹弟子の妹だ」


※StS編2

――目の前には、無限の欲望

「君の持つ能力に大変興味があるんだよ」

「いや、レリックの代わりに氷の女王が入ってるチャチなもんですよ」

「そうなのかい?」

「そうなんです」

――そして起こる悲劇

「ヴェル君、君が言ってたのはこの事だったのね」

「えぇ。ですからクイントさん。ここで死んでください」

「ねぇクイント、あの子って……」

「私の自慢の弟子だよ。だからこそ負けられない。メガーヌは手を出さないで」


――それらを書き上げるため、作者は奔走する

「ちょwww技ネタ調べるためにタブ開きすぎてブラウザ凍って書きかけの文章消えたwww」←実際に起きた事故

「涼雪さんですか?amaznさんからお荷物が届いてます」

「うはwww妹ぱらだいすきたwww二次小説書いてる場合じゃねぇwww」



以下感想返し。

ヒーヌさま
普通に生き残らせる事も可能でしょうなぁ。
ただ他はともかくゼストだけは殺しとかないとStSが始まらない件。

アンデビさま
チンクはともかくトーレは確実に負けフラグ立ってます。
あの程度の加速能力でうちのクイントさんの白狼は破れない、ような気もします。

モナコさま
魔力放出すれば周囲の分子の振動停止。
つまり本気出したら逆電子レンジになれる主人公なので
そういう技は覚える必要性がなかったり…。

ひこさま
主「いやでもやっぱり原作通りに事が進んでくれないと対策の立てようが…」
レ「作者も「原作通りに進んでくれた方がストーリー考えるの簡単」って言ってたわね」

recさま
いや本当申し訳ないです。
改稿もへったくれもしないまま上げてるので。
何せ「チラシの裏」を「書き散らしの裏」と読む作者です。
それにしても本当にこの後どうしたものか…
なんだかんだナンバーズ遭遇はすんなり書けそうなんですけどそうなると…
主「ほらほら、早く逃げないと凍っちゃいますよ?」
レ「E・F・B!E・F・B!E・F・B!」
って感じになっちゃうんですよね。

電車内さま
チンクは爆発の威力も変えられるでしょうからある程度の近距離も十分いけると思われます。
シェルコートもチート性能ですし、チンクってなんだかんだ主人公組に匹敵しそうな強さなんですよね。
主人公が狙われるタイミング、というのがどうにも計りかねてる今日この頃。
唐突に襲われる可能性もあれば、StS開始まで放置されてもおかしくない。
そんなわけですから絡ませたとしてもEFBで瞬殺してお帰り頂くか、スカさんから招待を頂く展開くらいにしかならなそうです。

kyokoさま
>「ゼスト隊がスカさんを逮捕しちゃってもいいさ」
まさかのStS不発だ…と…?
>自分はファーストアラート時のスカさんの台詞はスバルの正体を知ってのものとしか思えないです。
ならなんであんな放置プレイしてたのかって疑問があるわけで。
単純に戦力不足を補うためだったとしたら振動破砕持ちのスバル狙いの方がいいのになんでネリネ…
げふんげふん、ギンガのスーツケース詰めなんてやらかしたのか。矛盾多すぎですよ都築………

九十欠さま
望まぬ結果に進んでも絶望もしなければ
それをなんとかするのが無理と分かれば放置するのが主人公。正にダメ人間の鏡。

スバルにあんな近距離でスティンガー爆発させても本人普通に寝てる時点でありえないですよね。
チンク姐さんは正直都築も勝てる相手が思いつかずに振動破砕で強制退場願っただけとしか思えないw



[25569] 閑話:泡末と消えたフラグ回避なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/01 16:51
一応3日くらい様子見るかなぁと思ってます。
でまぁ、その間にも閑話は書けたらあげていきます。
今回はEFBを使うとこうなるよ、という見本程度に。





夏休みも終わり、季節は日に日に涼しくなってきた。
ギンガはますますチートに磨きをかけ、氷の足場がないと使えないと思っていた飛燕連脚を覚えた。
正直激しく将来が不安である。ちゃんとリボルバーナックル使って闘うんだろうかこの子。
さて、季節は秋。凍結魔法使いはお役御免となる。
そうなると途端に影が薄くなるので目立ちたくないこちらとしては助かる。

「久しぶりに滑るか」

氷の足場の魔法を展開し、範囲魔法の術式を地面に通して簡易遊具を作る。
余談だが、マリーさんに空けてもらったソフィアの容量3割のうち2割をまたこれで埋めている。
といっても半分以上空いたうちの二割が埋まり、まだ3割程は空いているので授業に問題はあまり起きていない。

『今日はどう滑るの?』

「んー…ギンガに今度見せる約束してるからボードでいくか」

移動法としては秀逸なのだが、回りへの影響を考えて普段はあまり使わない氷の足場。
もっとも、ナカジマ家相伝のローラーブーツも普段はあまり使われていない。
まぁ当然である。人ごみや街中で使うものじゃないし。

『じゃあハーフパイプだけでいいわね』

「今日こそショーン・ホワイト超えてやんよ!」

『ショーン・ホワイトは知らないけどまぁ、頑張りなさいな』

ハーフパイプとなると自然と遊ぶ技はボードとなる。
いや、もちろんフリーラインスケートの延長なのだから、出来ない事はないのだが。
そんなわけでバック・トゥ・バック1080やらダブル・マック・ツイスト1260なんて名前の技を練習する。

「そもそもカットバックドロップターンがリアルで出来る世界で元の世界の技出してもあんまりなぁ…」

なんて事をボヤきながらだったが。だって物理法則無視上等の世界だぜ?
どうにもしまらない事を呟きながらも普通にショーン・ホワイト超えどころかトリプル・マック・ツイストも普通にこなしながら遊んでいたわけだが

「ヴェル・ロンドだな?」

「凍結魔法使ってる時点でまぁ間違いないだろう…しかしなんだこの氷で出来たスロープは?」

なんか全身タイツのお姉さん型が目の前に現れた。デデーンってレベルじゃない。

「これは…前回応援したのがフラグだったのか?」

『いや、そんな事言ってる場合じゃないでしょう』

いやそんな事言われてもなぁ…逃げる?残像が出る速さで動ける相手がいる時点で無理
追い払う?シングルSとAAが揃ってるのに勝てる気がしない。

「でまぁ、これはいよいよEFBしかないわけで」

『落ち着いてるのね』

「まぁ、誰もいないから、な……」

そう、ここは森。巻き込む相手はいない。
死体が二つ転がる事になるが……KOOLになって埋めてみるか?

「で、お姉さん方」

「「ん?」」

氷のハーフパイプを眺めている二人に声をかけた。
まぁ逃げたら即追いかけてくるだけだろうし向こうは落ち着いたものだ。

「襲い掛かってくるなら氷漬けの機械人間が二つ出来上がるだけだし、今後一切関与しないというのなら見逃しますよ?」

「……これは、舐められたものだな」

「あぁ。たかが子供一人に…ッ!?」

残念だがお姉さん型戦闘機人が二人もいる状況を前にして、普段クイントさんとやっているような戦い方は出来ない。
クイントさんがきてからは通常の封時結界だったが、久しぶりの隔離結界で自分とお姉さん二人の次元をズラす。

「立場が分かってないようだからもう一度だけ言うけど、死ぬのはそっち、生きるのは俺」

隔離した結界の中を魔力で満たして気温を一気に下げる。10m四方程度なら‐200度を下回るのなんて1秒で出来る。
生身の部分が硬直し、動かなくなり始めたのだろう。
既に両足は地面とくっついているだろう。だから何もできずに凍っていく。

「な…これは…!?」

「クッ!!」

小さい方のお姉さんがかろうじて動く手を振った瞬間、俺の回りにナイフが出現した。
自分に向かって飛んできたが、それは爆発することなく障壁に阻まれて落ちる。
当たり前だ。どんな爆発物に変えたのか知らんが、分子振動なくして反応するわけない。

「博士がガラクタを付けろと言っていたのはこれが理由か……!」

ふと、魔力の流出が途中から消えるのを感じた。

「IV型まで連れてきたのか。こりゃ警告どころじゃないね」

だが、分子の振動を止める魔力はAMFごときでどうにかなるものじゃない。
放出した側から空気中の水分子を凍りつかせる事ができる。よって

「ほんと、極悪だよね。水分がない場所なんてそうそうないもの」

『えぇ、だからこそ私は強いモノでいられたんだから。同じ事が出来るヴェルが弱いわけないでしょう?』

片っ端から空気中の水分を凝結させて、1m程の氷の塊を生成し、魔力反応が消失する場所に落とす。
100㎏の氷の塊を耐えられるわけもなく、ガジェットIV型は片端から潰れていく。

「なっ……!」

「ではごきげんようお姉さん方。俺としては将来有望そうなお姉さんたちには出来れば死んでほしくないのだけど。特に小さい方」

「小さい方言うな…!」

ムキになって否定する小さい方のお姉さんだったが、次第に凍る世界では何もできず、やがて二人とも動かなくなった。

「びっくりするほどあっけない。やっぱり反則だなこの能力」

「いや、凄まじいねヴェル・ロンド君。個人の能力としては出鱈目な強さだ」

唐突に目の前に通信ディスプレイが開き、画面の中には一人の男が映る。

「ジェイル・スカリエッティ」

「おや、私のような人間をご存じとは、まったく良く出来たお子さんだ」

「お噂はかねがね。それとうちの父さんから「ロマンは分かってるが非人道すぎるのはなぁ」って伝言預かってますよ。あと俺からは全身タイツをなんとかしろと言っておきます」

「ふふ、それは嬉しいね。それと全身タイツなのは諦めてくれないか。対AMF、魔力ダメージ用の優れものなんでね」

「全員にシェルコートとは言いませんけどせめて羽織るものくらい用意してあげてくださいよ。いい体格した女性の恰好がこれってちょっと問題ですよ」

下半身が既に氷に覆われ動かなくなっている二人を見ながら話す。まだギリギリ生きてるっぽいが寒そうだなぁ。

「ッ!?……あぁ、そうだね、検討しておくよ。それで、君に一つ提案があるのだがね?」

「言っときますけど、俺の関係者を人質に、なんて冗談はやめてくださいよ?
そういう事されてもこっちはただそちらを全員凍らせるだけなんですから。
あと、父さんの逆鱗に触れるでしょうから、手を出したら最後、殺傷モードのアイラで原子レベルまで分解されますよ?」

「……わかった。君に手を出すのはやめよう。AMFも効かないとなると、私にはお手上げだからね」

「それはよかった。あぁ、解放云々ですけど、流石にすぐに解凍するのは俺には出来ないんで、クアットロ以外の誰かを迎えに寄越してくださいね。どうせクアットロは普通に俺の関係者の誰かの側でしょ?」

「…本当に君はこちらを知っているようだね。そうか、では迎えに行かせよう。迎えに行くまでの間結界をそのままにしておいてくれないかね?」

「わかりました。それじゃもう会う事もないでしょうけど、ゆりかごの機動頑張ってください」

「…最後に一つだけいいかな?」

「なんですか?」

「君は何者かな?ただの凍結能力者というだけではないだろう」

「ただの冷たいモノですよ」

「成程。納得はいかないが少しだけ君の事がわかったよ。それではまた機会があれば会おう」

そして通信が切れ、俺は時間を潰すためにまた滑り始める。
だがハーフパイプは使わず、スケートのように滑る。
と、気温が上がってきて、凍っていた口の回りが溶けたのだろう、二人が首を動かしたのを見て近づく。

「ねぇ、お姉さん方」

「…なんだ?」

「こんな子供でさえ止められないスカさんに管理局の転覆なんて出来ると思います?」

「お前が異常すぎるんだ。お前さえいなければどうとでもなる。まさかドクターの敵に回るとまでは言うまい?」

「……わかりませんねぇ。回りの人間を傷つけられてみないと。ちなみに今まで俺の回りで死んだ人間にはこれっぽっちも悲しくなりませんでしたけど」

「それは、人として壊れている」

「でしょうね。何せ父親も母親も壊れてましたから」

「壊れていた?」

「えぇ。人を人と思わない。自分以外は全て他人。そんなの人間じゃない別のモノとしか言えないでしょう?」

「お前の両親は管理局員と元管理局員と聞いているが?」

「あぁ、今の両親じゃないです、前の両親って奴ですね。俺前世の記憶持ってるんですよ」

「成程…ならばその歳でそれほど落ち着いているのも納得はいく。博士がかつて研究していた記憶の複写というものもあるしな」

「まぁ、俺の場合は天然モノですけどね。さて、そろそろお仲間さんが着いたみたいですよ」

そう言って結界を解くと、そこには青い髪のお姉さんがいた。

「ッ!トーレ姉!チンク姉!大丈夫!?」

「あぁ、機械部品と保護されている部分はなんともない。もっとも、あれ以上温度を下げられたら保護機能ごと脳を凍らされて死んでいたがな」

「ちなみに10m四方なら‐275度までは2秒あれば行けますから。さっきのは-200度で地面を凍らせて、空間温度は-120度といったところです」

「あれで手加減していたのか」

「言ったでしょう、将来有望そうな人が死ぬのはもったいない、と」

「…その歳で女性をからかうのは感心しないぞ」

「生憎と回りが強い女性だらけなんでこれくらいしないと身が持たないんですよ」

「それは……」

「管理局員ですからスカさんの敵に彼女たちが廻る可能性があるのを考えると、スカさんご愁傷様としか言えないです」

「今のうちに排除は?」

「No。今排除したら確実に計画が発覚して阻止されます」

「お前が関わらせないようにするのは?」

「No。俺が関わると俺もスカさんの計画阻止に動く羽目になります」

「どうしようもないな…まぁいい、その時がきたら全力で相手をするだけだ」

「キャートーレサーン」

「なんだそれは?」

「言ってみただけです」

そんなやり取りをして「もう会う事もないだろうが、いつか博士から会いに行く事もあるかもしれない」なんてあまり嬉しくない事を言われながら別れた。

「なんか普通にスカさんフラグ回避してしまった。どうする?」

『私に聞かれてもねぇ…とりあえず喜んでみたら?』

「正直なんでこのタイミングでってツッコミたい気持ちの方が多いんだが」




「という夢を見たんだ」

『いきなりすぎるわね』

「自分でもびっくりするほどこうなっても不思議じゃないと思える夢だった」

『まぁ、私の台詞は当たってるわね』

「だろう?厨二全開なのにさして違和感ないんだ。っていうか実際出来る範囲でしか能力使ってないから困る」

『でも今まで使ってなかったわよね』

「非殺傷設定だからな。相手が人外でもなければホイホイ使えん」

『不便な世界よねぇ』

「全くだ」





[25569] 閑話:父親のお仕事なの
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/01 17:07
はい、というわけで完全な閑話その1。
感想で旅行だとか言われたのでこんなのが出来ました。




「別の隊が探索してた世界で新種の竜種が目撃されたらしいんだ」

とある日の夜、珍しく休みで家にいる父が、ショットグラス片手にそんな事を言い出した。

「へぇ、竜種って珍しいんだよね?」

「あぁ、珍しいわ強いわで管理局内でも見かけたらなるべく穏便に、ってのが筋だな」

『その竜種と喧嘩したり友達になったりしてるのはどこの誰ですか』

アイラの突っ込みに「ばっかおめー竜っつったら漢のロマンだろ」とか返している父親。
次元世界における竜、というのは実は全て竜の形をしてるわけではない。
世界一つを滅ぼせる程強かったり、希少能力を持つ特殊な原生生物等の総称である。
中にはランク的にSSSランク近いと言われる「古代種」と呼ばれるものも含まれている。

「で、その竜がどうかしたの?」

「あぁ、なんでもその世界じゃ最近発見されたそいつを倒せるかって話をしてるらしいんだが……」

「竜種に喧嘩売るとかその世界の人たちはそんな強いの?」

「まぁ、非殺傷設定なんて存在しない世界だが……
似たような竜種が他にもいる世界で狩られた記録も残されているから
強さ的にはシングルSいってる奴もいるんじゃないか?」

「ふーん…って事はもしかすると狩られちゃう可能性もあるかもしれないね」

「……よし、ちょっと見に行くか」

「…は?」

何言ってんのこの親父。といった顔で父親の顔を見やると、やたらと暑苦しい笑顔で

「よっしゃ、俺もたまには家族サービスもしないとな!家族旅行行くぞ!」

なんて言い放ちやがった。

父親が艦長を務める次元航行艦「オルレアン」は管理局が使う艦船の中でも特に大きいものである。
アースラの1.5倍の大きさを持つオルレアンはS級4番艦。
なんでアースラがLでそれより大きいオルレアンがSなのか甚だ突っ込みたくなったのは昔の話である。
なんでもLやSというのは大きさを表しているのではなく、設計者の頭文字なのだとか。紛らわしいにも程がある。
ちなみに、一番普及率が高い艦種はM級、なんて事はない。これ以上ツッコミを入れるのはごめんである。

さて、そんな管理局でも大型艦の提督をやっているうちの父親だが、先のやり取りを見てわかる通り自由奔放を地で行く人間である。
にも関わらず、管理局内での信用度はそこそこ高い事で知られている。
曰く「まぁディル提督なら余程の事が起きてもなんとかなるだろう」だとか。
正直そこまで出鱈目ならこの人にStS解決してもらえばいいんじゃね?とも思うが
先の竜種しかり、このリリカル世界には平気で世界を滅ぼせる存在がゴロゴロしている。
さすがにZ戦士のような存在は確認されていないようだが
世界を渡り、人の願いを叶える竜なんてものが旧世界の文献に残されていても不思議じゃないのがこの世界なのである。
そんな危険な世界を探索する部隊のうちの一つをまとめ上げているのがうちの父親なのだ。ご苦労様としか言えない。
もっとも、家族連れで未探索世界に遊びに出かけるなんて言い出してる時点で尊敬もへったくれもあったもんじゃないが。

「で、父さん。部下の皆さんにはなんて言ったの?」

そう、このバカ親父は自分の家族旅行のためにオルレアンを動かしやがったのである。リンディさんより酷い。
ここが軍なら懲罰会議モノである。だが父親はなんの気負いもなく

「ん?普通に探索中惑星の実地観測、という名目で1泊2日の旅だ」

なんて言い放ちやがった。もうやだこの父親。
ちなみにだが、今回の家族旅行には家族の他にオマケがついている。

「わ、わ、凄いよスバル!お星さまがいっぱい!」

「…これが、宇宙」

そう、何を隠そうスバギンである。
家族旅行が決まった日、クイントさんから旅行中の日に預かってくれないか、という連絡を貰ったのだが
それを聞いたうちの両親が「よければ一緒に旅行に連れて行く」とか言い出しやがった。
ナカジマ夫妻は遠慮したが、提督の前には強くも言えず、こうしてロンド家+スバギン姉妹という構図になった。
どうしてこうなったと言わざるをえない。

「ちなみにギンガとスバルは行先知らされてるのか?」

『竜を見に行くのに旅行もへったくれもあったものじゃないと思うのだけれど』

「竜見物とか普通に襲われるフラグしか想像がつかないお…」

なんて話していると窓から宇宙空間を眺めていたギンガがこっちに寄ってきた。

「どうしたの兄さん?」

「なぁ、ギンガ達って行先知ってるか?」

「竜が見れて温泉があるってルクレさんから教えてもらったよ!」

温泉というのは初耳だ。大体息子の俺が行先がどういう所なのかよくわからない。
だが竜見物はともかく温泉というのは嬉しい情報かもしれない。
もしかすると案外まともな旅行になるのか?
正直旅行のために駆り出されたとも言えるクルーの皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいだったが
温泉があるというのならせめて浸かれ…無理だろうなぁ普通にクルーの総数100人超えてるし。

「温泉ねぇ…どんな所なんだか」

「楽しみだよね!」

「ギンガもスバルも温泉は初めてか?」

「うん。ミッドチルダじゃ温泉ってあんまりないからお母さんが羨ましがってた」

「あー…売ってたら温泉まんじゅうくらい買って行ってあげよう」

「温泉まんじゅう?」

「湯煙と血煙で赤茶けたサスペンスの銘菓だ」

「わぁ美味しそう!」

「……なんなんだろうな、ナカジマ家って」

『私も楽しみよ?温泉まんじゅう』

赤茶けてるのは血煙のせいじゃないからごめんそんな無垢な顔でこっちみんなバーローとか適当に会話をしながら到着まで時間を過ごした。

「ヴェルーディルさんが着いたってー」

「ん、わかった。んじゃ行くか二人とも」

「「うん」」

ブリッジに上がると父親が艦長席に座っており、行くときに挨拶したクルーの数人が微笑ましいといった目線を向けてきた。
いい人たちなのになんで父親の部下なんてやってんですかと言いたくなるが、「ディル提督ならなんとかするだろう」というのは
先にも言ったが比喩でもなんでもないので、探索部に回される人員はオルレアン勤務を希望する人が後を絶たないのだとか。

「お、来たなチビ共。んじゃ行くか!」

「艦長、静止軌道上からの座標軸の固定終了しました」

「おう。あーお前ら、今回は一応地質調査も項目に入ってる。
だから水質調査って事で地下から温泉を転送魔法で引っこ抜く
なんて事も出来るわけだが…まぁ程ほどにしておけよ」

「「「aye, aye, sir.」」」

アイラが突っ込まないって事はこれもいつもの事なんだろう。
だから俺が何か言う必要もない。むしろ現地の人うちのバカ親父が申し訳ありませんとしか言えない。
ちなみに今回の調査について、一緒に実地調査に回される人員は旅行組以外に10名弱。
戦闘要員は他にもいるのだが、今回は竜がいる惑星という事で
全員がAランク以上という高ランクで形成された少数精鋭になっている。
なんて考えながら転送陣のある部屋まで移動し、ロンド家+αは惑星へと転移した。
既に地上に転移して待機していた数名の部下に向かって

「お前らも面白そうなもんあったら連絡寄越せ。見に行くからよ」

彼らは連絡しない気がする。
堅実に調査して確実に温泉を転送させるだけのような気がする。
まぁ、不平不満が出ないように頑張って温泉転移させてくれ。やりすぎて枯らせるのはダメだが。
つらつらと考えているうちに現地の服装についての説明を受ける。

「といってもこの世界の服装はかなり異色だし、地方による差異が大きいから
私服でもバリアジャケットでもあまり怪しまれないからそのままで大丈夫なんだがな」

服装説明終了。
っていうか父親以外のロンド家+αは普通に私服だし、他の人は普通に武装隊仕様のバリアジャケット装備してるし。

「まぁ、よしんば怪しまれそうになってもバリアジャケット着ればまず問題ないだろう。一応危険度もそこそこ高い世界だしな」

てなわけで私服はともかく出来ればバリアジャケットで、と言うので俺はいつものセルシウス仕様になる。
ちなみに父親はバリアジャケットに変えても服装が管理局制服に近いままという無駄な仕様だったりする。
曰く「仕事服で戦うのがロマン」というしょうもない理由だが、特に害も利益もない。

「母さんとギンガ達はどうする?」

「母さんは現地の服装に合わせるわ」

「私とスバルはそのままで大丈夫って言われてるけど……」

母親が変身魔法の応用で服装を変化させる。
出来た格好はどことなくアジアンテイスト…なんだこの世界。

「わ、いいなー」

「ふふ、ギンガちゃんたちも着る?」

「お願いします!」

なんてやり取りで結局女性人は現地仕様の服装に。
そこはかとなく嫌な予感を感じさせながらも
ユクなんたら村なんて名前の村に着くと、そこにはやたら凶悪な見た目だったり
露出度が高い服装の人とアジアンテイストの服を着た人達が行きかっていた。

「父さんだけなんか浮いてる気がするけど」

「まぁ大丈夫だろ。むしろお前のジャケットがなんで溶け込んでんだよ」

「さぁ?」

としか言えない。セルシウス仕様のモンク服は正直この世界でも違和感ないから困る。
と、村の入り口から少し歩いたところに耳の長い綺麗な女性がいた。
彼女はこちらを見つけると、微笑みながら話しかけてきた。

「ようこそ。ハンターの方ですか?」

「あぁいや、観光で来たんだが」

「そうですか。お泊りになられる予定なのですか?」

「いや、そこまで考えてないんだが、泊まれる所があるのか?」

「この村で一番大きい銭湯に宿泊施設が併設されていますよ」

「それじゃ泊まるのもアリだな……お前らもそれでいいか?」

「私はいいわよー」

「俺も別に」

「「お願いします」」

「てなわけで泊まらせてもらう事になった。良ければ宿の場所を教えてもらえないか?」

「ふふ、わかりました。着いてきてきて下さいな」

そんなわけで女性の案内で宿泊兼温泉の出来る施設へと向かう。

「あぁそれと、この村の近くに渓谷があるのですが、渓谷の中には降りて行ってはダメですよ」

「なにかあるのか?」

「最近、竜種がよく出没しているんですよ。
それで村人や観光者の方には近寄らないようにという御触れが出てまして。
村でハンターの招致を開始したのですが、まだ全て追い払いきれていないようですし」

それを聞いて目の色を輝かせた父親とスバギンに更に不安を煽られながらも
女性の案内で宿の手続きを済ませ、女性に礼を言って別れた。

「あの方はこの村の村長さんなんですよ~」

なんて係の人の爆弾発言に全員驚愕しつつ、部屋に案内される。
部屋は家族部屋ということで、子供用の寝室と大人用の寝室を居間で挟んだ間取りの部屋。

「入浴施設は宿泊者には一日中解放されております。それでは、ごゆるりとおくつろぎください」

てなわけで母親はスバギンを連れて温泉へ。
何?混浴フラグ?幼女の裸でテンパる俺なんか見ても面白くもなんともないだろう。よってお断りする。

『ヘタレね』

氷の女王の呟きを無視してなんとか言い含め、スバギンは渋々温泉へ向かい、俺はというと

「よし渓谷行くz「落ち着け父さん」なんだ?行かないのかお前?」

「いや、別に行ってもいいんだが、ギンガ達も楽しみにしてるみたいだから。俺らだけで行くってのはアレだろ?」

「んーそうだな、じゃあまずは軽く竜の情報集めでもしてみるか」

そんなわけで施設を出て村人に噂を聞いて回ると

村人A「なんかものすごく強いらしい。強いハンターでも一人ではとても太刀打ちできないのだとか」
村人B「電気を出す虫を集めて自分の体を強化してるんだと。それでものすごい速さで動くって聞いた」
村人?「上位太刀ソロ無理www友達やってねぇしwwwボスケテwww」

なんて話を聞く事ができた。
最後のはよくわからない情報だったがまぁいい。

「で、やっぱり行くの?なんか電気とかむっちゃ速いとかそこはかとなくチート臭がするんだが」

「当たり前だろう。といっても今日は行かない。温泉入って飯食って寝る。明日行こうぜ」

「わかった」

なんてやり取りをしながら宿へ戻ると、女性陣は戻ってきており

「あ、どこ行ってたの兄さん!温泉すっごく気持ちよかったのに!」

「ちょっと父さんと竜の話を聞きにな。なんでも電気を使って速くて強いんだそうだ」

「へぇ~」

「強いの?」

「まぁ父さんいるしな。この人のチート具合はちょっとおかしいから」

余談だが父親の魔導師ランクはS+。チート具合は管理局内でも折り紙つきである。
特殊なデバイスであるアイラを用いた全力攻撃はSSランク扱いだとか言われている。
父親曰く「アレで倒せない敵はあんまりないな」だそうだ。どういう強さをしてるんだか。
そんな父親の方を見やると

「はっはっは!この星の酒はうめぇ!」

「ほんと、美味しいわねー」

「よし、湯船酒と行くか?」

「いいわねー。それじゃヴェル、お母さんたちもう一度お風呂行ってくるわー」

なんて事を言われ、子供三人残される。

「ねぇ兄さん、村で面白そうな場所ってあった?」

「ん?あぁ、そういや情報収集だけしかしてないから全然見てないな。一緒に周るか?」

「うん!」

「行く」

なんてわけで子供三人で村を散策することに。
ここ、ユクなんちゃら村はそこまで広いわけではない。
ハンターや観光者を含めても常時100人程だろうか。
とはいえ村としてはそこそこ知られている。霊峰から湧き出る豊富な湯は湯治場として村を発展させた。
若くして村長となったあの女性の経営手腕もあって、そこそこ村は潤っているのだそうだ。
新種の竜種が近くで暴れはじめたのは最近の話だそうだが、ハンターを招致したことで一応村の安全は守られている。

そんなわけで村の外れまで一通り出店を覗いたり村の子供たちと話をしながら時間を潰していたのだが

「お兄さんうちのご主人様を助けてニャ!!」

渓谷へ向かう道付近で唐突に声をかけられた。

「わ、わ、可愛い猫さんだ!」

「二足歩行の猫……」

スバギンはやたらキラキラした目線でみているが、猫は必死な表情で俺に言う

「うちのご主人様が竜討伐の以来を受けてこの先の渓谷近くで戦ってたんだけど、足を怪我して動けなくなってるのニャ。
逃げようにも近くにはまだオウガがうろうろしてるし。だからオウガを倒して欲しいのニャ」

「いや無理だって。大体子供に頼むなよ…」

「御主人友達いないから助けてくれる人がいないのニャ……」

「……それは切ないな」

「うん、兄さんなら助けてくれるよ!」

「頑張ってお兄ちゃん」

「いやいやいやいや………」

そんなわけで何故かギンガと猫モドキの両方から引き摺られて渓谷へと連れて行かれた。

「で、なぁにあれ?」

『大きいわねぇ』

「わーかっこいいー」

「……竜に見えない。ちょっとがっかり」

「ご主人様!助っ人連れてきたニャ!ってあぁ、気絶してるニャ」

そこはかとなくカオスな雰囲気を保ったまま竜が陣取る渓谷の一角へ着いたわけだが。
何だあの四足歩行のよくわからないデカいのは。
ハンターさんは怪我した足では避けられなかったのか吹き飛ばされたらしく、気絶していた。
そして竜はめっちゃこっち見てる。これは逃げられんね。

「ん、なんだこのデカい太刀?」

『あら、いい剣ねソレ。使わせてもらいましょう』

「デカいし持ちづらそうだが無いよりマシか。だが効くかわからんぞ?」

『魔力も流せるみたいだし、それで強化すれば大丈夫よ』

そんなわけで、倒れていたハンターさんのものと思われる落ちていた太刀を拾って構える。
オウガとか呼ばれていたその竜は、光の粒を体に集め、帯電しているのかバチバチと音を鳴らせながらこちらを威嚇している。

「兄さんがんばってー」

「頑張って」

「お兄さん頼んだニャー」

いつの間にか離れた所から理不尽な声援を送る少女二人と猫モドキ一匹。
ハンターさんはまだ気絶してるっぽし何故か戦うムード一色に何もかも投げ出したくなった。

「…やりゃいいんだろやりゃあ……」

不本意すぎる戦闘に巻き込まれてテンションこそダダ下がりだが、ここで死ぬとか終わり方的にもアレなので頑張るしかない。
と、咆哮を上げながらその巨体から想像もできないようなスピードで竜が突っ込んできた。

「うおっ!」

流石に現地人がいる前で魔法行使はどうかと思ってたがそんな余裕はない。
魔法陣を一瞬だけ展開し、高速で氷の足場を形成して横っ跳びに滑って躱す。
だが避けたところに今度は尻尾の一撃が飛んでくる。それをなんとか太刀で受け止めたが、反動で吹き飛ばされた。

「あっぶねぇ…」

『速いわねぇ…クイント程じゃないから反応できないわけではないけど』

「だな……後はこの太刀で攻撃が通るかなんだが…」

攻撃を避けながらひたすら後ろに回って斬りつける。
だが細かい傷が出来たり、太刀に付与された魔力で体の一部が凍りつくだけで、ダメージらしきものは与えられていない。

「尋常じゃない頑丈さだな…」

『いっそEFBで凍らせてしまう?』

「人前じゃなるべく使いたくない……かといってずっと斬ってるのも時間かかりそうだし」

さてどうしたものか。4尺近くある太刀を肩に担ぐようにして竜の両前足や体全体を使った攻撃を避けながら考える。
大太刀と言えばセフィロス。セフィロスと言えば八刀一閃な感じで切りつけてもあんまり効果がないのならば

「弱点狙うしかないだろ」

『そんなものあるの?』

「竜なんだからどっかに逆鱗くらいあるだろ。なぁ猫モドキ、こいつに逆鱗みたいな弱点ってないか?」

そう問いかけると

「逆鱗はお腹の位置のどこかに色違いの鱗が生えてるニャ。それと猫モドキじゃなくてオトモアイルーのスフィンクスニャ!」

スフィンクスとはまたけったいな名前だな。どこのバカがつけたんだか…あのハンターさんか。
この巨体の腹を狙うとなると…突進にカウンターか?

「レティニア、全身強化して竜を転ばせる」

『ヴェルって以外と無茶するわよね』

「だってそれ以外に思いつかないんだもの」

とか言っていると竜が帯電させた体を突撃させてきた。
氷の足場で頭を避け、前足の片方に思いきり太刀を叩きつけると、竜はバランスを崩して倒れ込みながら3m程滑って止まる。

「よっしゃ腹が見えた。行くぜ」

『逆鱗の位置は?』

「えーっと、あれか?」

腹の細かい鱗の中の一つに色違いのものをみつけ、それを思いっきり斬り付ける。
頑丈なのか、一回の斬撃で壊れる事はなかったが、凍り付いた事で壊れやすくなったのかなんとか壊す事ができた。
逆鱗を壊された竜は断末魔の悲鳴を上げながらしばらくもがいていたが、やがて動かなくなった。

「…ふぅ」

『お疲れ様』

刀を地面に刺して寄りかかって片膝をつく。
…超面倒だった。正直太刀無かったら壊せなかったかもしれん。
なんて思っていると少女二人と猫一匹が近寄ってきた。

「兄さんすごーい!」

「…あんまり強くなかった?」

「お兄さん凄いのニャ。オウガをソロで倒しちゃったのニャ」

「いや、正直ものっそいしんどかった。さっさと宿で寝たい」

「これでご主人様のクエストも終わりだニャ。他の大型種はもう狩ってあるし、本当に助かったニャ。それじゃオイラ達はそろそろ行くニャ」

「ん、まぁ終わってみればいい修業相手になった。あぁ、それと太刀借りちゃったけど返すぜ」

「その太刀はご主人様がオウガ用に作った太刀だからオウガを倒したらいらないものだった筈ニャ。だからあげるニャ」

「は?いやでもこれ「それじゃばいばいニャー」…あの体格で大人引き摺ってくのってシュールだな…まぁいっか。太刀なんて使い道ないぞ?」

『ソフィアのストレージに入れとけばいいんじゃない?』

「物質保存ってやたら容量食うんだが…あ、入った。容量二割も食われてるけど」

「いいなぁ兄さん」

「ん、砕けてるけど逆鱗持ってくか?」

「いる!」

「綺麗だねコレ」

「よし、じゃあ宿に戻ろう」

まぁそんな感じで宿に戻ったわけだが、当然のごとく親父からは「は?ヴェルが倒した?俺もみたかったのに……」と拗ねられた。
というか俺が竜を倒した事についてツッコミはないのかと言いたいが
報告を受けて知った他の管理局員は「まぁ、ディル提督の息子さんだし…」で済まされた。不本意すぎる。

――そして翌日

「お母さんただいまーー!」

「ただいまお母さん」

「二人ともお帰りー!楽しかった?」

「うん!これお土産!」

「あら、綺麗な色してるわねコレ?」

「うん!オウガって竜のげきりんって言う鱗なんだって!」

―クイントさんがオウガの逆鱗を手に入れました。



後書き
実を言うと作者は某魔物ハンターシリーズは一本もやったことないんです。
この作品内でやられたり気絶してるハンターさんは、私の友人です。
友「お前もやれよ。そして助けてくれよ」
作「やってやるからPSP買ってくれよ」
こんな感じです。
作者はポータブルハードの作品にはあまり興味がありませんので。
今回無謀にも何故か世界観をもってきてしまったのですが
作者はあくまで模倣しただけですので
実際のゲームとは設定が違う所が多々あると思います。
ですがそこは突っ込まないで頂けると。
アンケートですが、予想以上のご意見を頂き作者困惑しておりますwww
今の所A'sから介入というのが一番多いですね。
それ以外はまさかの同数くらいというのにも困惑。
ノーマルエンド希望とか誰が得するんだ。そして全ルート書けと言う鬼畜な意見に作者びくんびくんしちゃう。
そしてアンデビさまはARMS自重。作者がコーヒー吹き出します。
あと荒城乃月様のvividも吹きました。
ひこさんやChaosさんの意見も鑑みて、これはもうメガーヌとルーテシアの母娘丼エンドを目指すしかないか…!?

なにはともあれ、混浴編をスルーできてよかった!
この作品に登場する幼女は全員18歳以上なんて事はないから安心した!
………え?何?書け?えっちなのはいけないと思います!



[25569] 無印プロローグ:それは避けられない原作なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/02 11:15

ある日の夜、俺こと高間知寿男(30)はいつものように自室で女の子とラブでちゅっちゅするゲームをしていた。

「フフwwwフフフwww可愛すぎるだろ常考www」

24インチの画面の中では頭部と目が大きいいわゆる「二次元美少女」という奴が
主人公―プレイヤーの視点に向かって甘い台詞を吐いたりつっけんどんな態度を取ったりしている。

「フフwwwこれは確実に人気出るわwww……ん?」

一瞬カーテンで閉じられた外が明るく光り、すぐに暗くなったのを感じた。ヘッドホンを外してカーテンの向こうを覗いたが特に何もない。
だが、今日は一日晴天だとネットの天気予報で見たし、日中仕事に出かけていた時も晴れていたはずで、雷雲なんてなかった筈である。
なにより、光ってからもう10秒以上経っているのに雷鳴が聞こえない。

「なんだ今の?結構近くで光ったみたいだったが……?」

特に気にする必要もなさそうだと思ったが、一応部屋の外を見るかと表に出る。
住んでいるのは築16年のアパートだが、隣や上の階の人間は何故か深夜にならないと帰ってこない。
他に確かめに出た人もいないようだったので、窓から見える位置に、自分の部屋の裏に回る。

「……なんだこれ?」

落ちていたのは青い石。どことなく光っているようにも見えるそれは、何故かⅡと刻印がついている。

「宝石って訳でもないだろうし。っていうかこんな所に落ちてるのも変だよな…まさかさっき光ったのはこれか?」

なんて考える。

「不思議な石の力で厨二能力を手に入れた俺(キリッ だっておwwwwww」

そう冗談半分でつぶやいた瞬間、俺は光に包まれ、意識を失う瞬間、青い髪を持つ少年の姿を一瞬見たような気がした。





「私の魔力がほぼ回復したからそろそろ実体化してみようと思うのよ」

いつもの夢の中で氷の女王ことレティニアが唐突にそんな事を言った。
年明け後も何事もなく進級し、今は新暦65年春。
何事もなく自分は三年生に進級したが、今年は原作開始の年である。
だが無印は自分には何の関連性もなく、関わる理由もない。
A'sのある秋以降からのヴォルケンリッターの蒐集やら、グレアムの復讐やらに巻き込まれる可能性はあるが、今は気楽なものである。

「ほう、とうとう回復したか。んじゃ明日とりあえず森行ってみるか」

「えぇ、といっても全部回復はしていないから、試運転みたいなものなのだけど」

「お前がいなくなれば俺はただの凍結変換資質持ちに戻れるからな」

「あら、私はヴェルから離れる予定はないわよ?」

「……まぁ、狙われてるかもしれんのに戦力低下するのは得策じゃないな」

「ふふ、そうよ。だからヴェルは死ぬまで私と一心同体。実体化したら楽しみにしてるといいわ」

「言ってろショタコン」

なんてやり取りをして、翌日になり、俺はレティニアの実体化を試すために森に来ていたのだが

『じゃあ、行くわよ?』

「あぁ」

『ん…っと…ここが…ふっ…ん…こうなっ…て…こう…だから…あんっ』

「お前は俺の中で何をしてるんだ……?」

『…んっ…ずっと…埋まってたから…癒着して…るのを…離すのが…んあっ』

「……なぁ、頼むから俺のリンカーコアこれ以上汚したりしないでくれよ」

『だい…じょうぶ…よっ…流石に…あふ…この程度で…汁とか液とか…出ない…からぁ……ひゃんっ」

脳内にレティニアのピンク色の声を響かせながら森の中に立ってる俺。…死にたくなってきた。

『……んっ。よし、これで9割方ヴェルのリンカーコアから私を剥がしたわ。それじゃ実体化してみるわね』

そう言うと、自分の胸の中からリンカーコアが出てきて、そこから女性の手が生えてきた。うわぁホラーっぽい。

「こわっ…そしてなんかグロっ…」

「あら、失礼ね…いきなり出ると負荷がかかるから、ゆっくり出てきてるのよ?」

「さよか……」

そして手から肩、そして上半身が伸び、そして全体が出て、レティニアが外に出てきた。
リンカーコアはそのまま胸の中へと戻ったが、俺の目には胸から一本の紺色の線が伸びて、それがレティニアの黒い髪の毛と繋がってるのが見えた。

「レティニア、これって?」

「私とヴェルのリンカーコアを繋ぐ線が可視化してるのよ。他の人には見えないし、伸ばそうと思えばかなり伸ばせるから大丈夫よ」

そう言ってレティニアは久しぶりの外の空気を吸って

「あんまりこの世界の空気って美味しくないのよねぇ…やっぱりヴェルの中が一番よ」

「そんなもんか」

「そんなものよ。それで、それなりに力も回復したし、こうして実体化も出来たからヴェルには何かお礼しなくちゃいけないわね?」

「あー…気分が高まってる所悪いが、頼むから未成年を喰うのはお礼にならないからやめてくれよ」

「あら、残念。そうねぇ…それ以外となると…あ、次元魔法を見せてあげましょうか?」

「次元魔法ってお前の世界の?」

「えぇ、世界を渡る魔法。そうね、試しに一回飛んで見せましょう」

「いや、別に他の世界に飛ぶ必要は「それじゃあ行くわよ」あぁもう勝手にどこへなりとも飛んでけ」

「ふふ、久しぶりだから少し気合入れて…って、あら?」

「そこはかとなく嫌な予感のする"あら"だが一応聞く。どうした?」

「なんか引っ張られてるわね…私の魔力ごと強引に。これは…召喚系かしら?あ、ダメだわ、止められない」

「いや、そこは気合でなんとか「無理よ、私の魔力も使われてるものこれ」…もうどうにでもなぁれ」

なんて事を言っているうちに俺とレティニアを中心に六芒星の魔法陣が足元と頭の上に現れ、俺達は光に包まれた。
一瞬の浮遊感を感じ、目を閉じた間に既に転移したらしく、足が地面に着いた感触がした。

「うお眩し…って、どこだよ此処……?」

『さぁ?』

「あ、誰か倒れてる…って……ッ!?」

『どうしたの?』

「な……この街並み…この人の服装…まさか……」

『ここは…街なのかしら?ヴェルの住んでいた所と少し似た街並みだけれど』

「いや、待て…いやいやいや……」

『どうしたのヴェル?心当たりがあるのかしら?』

「……なんてこった。ここは、地球か」

夜の闇に慣れた目が映した光景は建物の裏と思われる場所。
塀を挟んで隣に建っている一般的な日本建築。そして電信柱と街灯。
自分がかつて生きていた世界を彷彿とさせるそれは、この場所がミッドチルダではないと考えるには十分だった。







後書き

結果から言うと、A'sからの介入を希望する方が7名、無印が次いで多く5名となりました。
その他の例もかなりの数を頂戴し、すごく参考になりました。
てなわけで、無印にもA'sにも介入させることに決めました。
そうと決まれば話は早い。
主人公の死因を「海鳴死」にさせる勢いで叩き込みました。
そして初の主人公以外の視点で書いたキャラクター「高間知寿男」
彼の得た力とは!?30歳にして魔法使いとなった彼の運命は!?
例えその先に待っているのが主人公のナデポニコポだとか、幼女との混浴イベントみたいなチャチなものだとしても力尽きるまでは突っ走らせていただきます。

Chaosさまからあった喫煙云々のお話ですが
私自体喫煙者で自分の寿命をマッハで縮めていると自覚しております。
この主人公は未成年ですから、タバコなんてまだ吸いません。
そして原作の終了時点で19歳。まだ吸えません。
吸ったとしても原作終了からですね。
そこまで続くかどうかすら分かりませんけどw



[25569] 無印1話:交戦規定はただ一つ「攻撃魔法は使えない」なの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/03 14:22
「レティニアが実体化したと思ったら地球に来ていた。スキマ送りだとか別室逝きだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしい強制イベントの片鱗を味わったぜ……」

地球。自分がかつて生活した世界。だがそれはこの地球ではない。
何故それが分かるのかと言えば、今自分の手の中にある、石

「これってジュエルシードだよな…?」

『ジュエルシード?』

「願いを歪んだ形で叶えるロストロギア。そして原作第一期に出てくるものだ」

『ふぅん…じゃあ、あそこで寝てた男の願いが歪んだ形で叶った結果が、ヴェルと私を強制召喚したって事ね』

「ジュエルシード単体で叶えられないからレティニアを引っ張り出したと?…何を願ったんだか」

『私とヴェルを召喚したんだから、強い力が欲しいとか?』

「あー……あんな歳で厨二能力が欲しいとか思っちゃったのか…居た堪れない気持ちになるな」

なんてやり取りをしながら人気の少ない所を歩く。
ちなみにあの男性は気絶してるだけだったようなので放置。地球の一般人巻き込んでも自分の状況は好転しないだろうし。
そしてこれからどうするか、どうなるのが一番か考える。
ジュエルシードがあるって事はここは海鳴市。曰く「人外魔境」と名高い街。
そして、この石があるって事は既に原作は始まってると思われる。
今が原作でどのあたりなのかさっぱり分からないが。

「シリアルⅡねぇ…これって原作に出てきたっけか?」

『どういうこと?』

「何個か原作の中で端折られてる石があるんだよ。なのはかフェイトのどっちかが集め済みって形で」

さっきの男性は原作では出てこなかった筈である。
となるとこの石は原作では端折られていた石。

「しかしジュエルシードが起動したってのになのはもフェイトも来ないってのは…なんなんだろうな?」

『さぁ?可能性があるとすれば、私の次元魔法と混ざってジュエルシードの反応として認識されてないんじゃない?まぁ、あの後すぐに離れたから今頃血眼になって探されてるかもしれないけれど』

「そうなのか?まぁ、気付かれてないなら問題ないか。ってか、一応聞いておくが、お前なんでまた俺の中に戻ってるの?」

『その石に強引に私の魔力を引き抜かれたのよ。またしばらくはこのままねぇ』

「うわぁ……」

『やっぱり私がヴェルの中にいるのは運命なのかもしれないわね』

「……それで原作に巻き込まれろと?やってらんねぇ…って待て。お前が俺の中にいるって事は次元魔法で帰るのも無理なのか?」

『そうね。その石の魔力も私とヴェルを召喚したことで殆ど使い果たしてるみたいだし』

「次元通信なんかできないから迎えも呼べず。戻るにはアースラが来たら名乗り出るしかない、と」

だがここで考える。
「ぶっちゃけミッドチルダ戻る必要なくね?」と。StSという死亡フラグから離れられたとも言えるわけだし。
だが親に黙って次元旅行的な意味で強制家出してしまった身。
正直うちの両親に至っては心配どころか「まぁヴェルなら大丈夫だろ」なんて思われてるかもしれんが
捜索願を出されるのもあれだし、っていうか親父から捜索されたら逃げ切る自信ないし、一応連絡くらいはしておきたいなぁとは思う。

「となると、普通に保護してもらうまでの寝床確保が目下最優先項目?」

さて、寝床だ寝床。現金なんてないし、去年貰った太刀は家に飾ってあるからなぁ。
なんて考えていたら

(誰か…僕の声を聞いて…力を貸して…魔法の…力を…)

「お?」

『ん?』

これは…あれか、淫獣の広域念話。
念話には一定範囲内に無作為に言葉を飛ばす、という方法がある。
もちろんこんな方法はミッドチルダでは緊急時以外は使用してはいけない魔法として扱われている。
言わば迷惑防止条例というものだ。ネトゲで全体チャット垂れ流す馬鹿みたいなものである。
まぁユーノ君からしてみりゃ今は緊急時なんだろうけど。
しかしこれが聞こえたって事は、今日は原作開始日前日って奴かな?

「さりとて淫獣は、なのはに見つけてもらう明日の午後まで森で放置プレイ、と」

『そうなの?好きモノなのね』

「いや、流石に邪推すぎる。言い出したの俺だけど」

なんてくだらないやりとりをしながら、どうしたものかなぁと考える。
ユーノに手を出したらなのはがレイハさんと出会うフラグ折るかもしれんし
かといってジュエルシード集めなんか始めたら金髪電気から狙われる。
穏便にアースラが地球衛星上に来るまで隠れてるのがベストなんだが……

「地球はミッドチルダと違って子供が一人だと無力すぎるからなぁ」

ある程度成長してたら話は別なのだが。
適当に徘徊してるだけで生活できるが、子供が一人歩いてるなんて普通に国家権力のお世話になる。
流石にそれも憚られるというか、身元不明でお金のない子供なんて即施設逝きだからなぁ…
と、1時間程考えながら人気のない所を目指して歩いていたせいか、海に出ていた。

「海鳴臨海公園、ねぇ……」

「なのはとフェイト決戦の地」とか立て看板建てておいたら儲かったりしないだろうか。聖地みたいに。無理だよな。

『ねぇ、ヴェル。とりあえずこれから関わりそうな原作って、死亡フラグなの?』

「ん?んー…というより、管理局フラグに繋がる、かな」

魔導師ランク的に当てはめればジュエルシードの励起で生き物を取り込んで生まれる奴らは恐らくBランク以下。
なんでかっていうと歪んだ形で叶えられた結果、劣化してるって事なんだろう。
今更あれと戦って死ぬなんて事はないだろう。
だが、なのはやフェイトが見てる前で戦ったりすれば結果的に自分が戦えるという事が露呈する。
それが管理局にバレればそこからはもう泥沼だ。
自分はあくまで高性能な凍結変換資質があるだけの子供、ということになっているのだ。
前回あの竜を倒したのも、使ったのは氷の足場と身体強化だけ。攻撃魔法は一切使っていない。
となると人前で使ってもいいのは氷の足場や相手の四肢を凍結させる魔法くらいか?

「どうにも困ったものだ。使えば先の死亡フラグが立ち、使わなければ今の状況を改善できそうにない」

『まぁ、頑張ってね。私は疲れたから寝るわ』

「お前がこの状況の原因を作り出した一端を担ってるっていう自覚ないだろお前……」

返事はなく、一人公園の手すりに肘をついて海を眺める。
そういえばミッドチルダにも海はあったが、行った事はなかったな。
季節は春。まだ海の水は少し冷たいだろうが、自分に温度はあまり関係ない。

「波乗りもいいなぁ…でもボードないしなぁ…」

なんて明らかに現実逃避と言える事を呟きながら、そのまま4時間程悩んだものの、結局解決法は思い浮かばず
日の出まで眺めてしまった。

『おはようヴェル。ってずっとあのまま考えてたの?』

「まぁ、一日寝なくてもなんとかなるし。いろいろ考えたが正直さっぱりだ」

『そうねぇ…とりあえず様子を見て、大丈夫そうなら関わってみるとかは?』

「……えらく抽象的だな…お前いつからアホの子になった?」

『……こ、これでも悪いとは思ってるのよ?』

「さいですか」

しかし関わってみる、ねぇ…今から関わるとすれば…ジュエルシード探すかなのはに会うかだ。
ジュエルシードは見つけた所で励起前ならともかく励起してしまったら戦う羽目になる。
そうなると確実に戦ってる所になのはやフェイトが現れるし…

「とすれば、今日は夜まで時間潰すしかなさそうだな」

そう決めて歩いていると、前にトラックを改造した屋台を準備してるおっさんがいるのを見つけた。
おっさんはこちらに気付くと

「お早う少年。こんな朝早くからジョギングか?」

「おはようございます。まぁそんな感じです。おじさんは…たい焼きやさんですか?」

「おぅよ。今日は新作を出すからな、その仕込みもあって早めに店を開ける事にしたんだ」

「へぇ、何味ですか?」

「ふふ、カレー味があるならシチュー味があってもいいだろう?」

「……あー確かに。パイシチューみたいな感じになるんじゃないですか?」

アリか無しかで言えばカレー味よりはアリじゃないかと思う。

「ほう、わかってるじゃないか少年」

「少し生地の砂糖を少なめにして、表面の焼き色を濃い目にして香ばしくすれば「む、そこの所詳しく聞かせてもらおうか」……はぁ、まぁいいですけど」

こうして何故か2時間程シチューたい焼きの考察をする羽目になり、たい焼きの試作品を味見させられまくり。

「……まぁでも、なんか沢山たい焼きもらったし、今日一日はたい焼き尽くしだな」

『なんで魚の形してるのこれ?』

「ん?確か本物の鯛が買えない人が縁起のいいものを食べようとして生まれた、なんて話があるな。もっとも当時まだ砂糖は高かったから、それもあやふやだと思うが。発祥がどこなのかは知らん」

『へぇ…じゃあこれを食べれば少しは運気が上がるといいわね?』

「すでにどん底だからこれ以上下がったらどうしようも「そこのキミ、もう学校は始まってるだろうに一人でどうしt」もうやだこの世界……」

こうして午前中、たい焼きを咥えた少年が青い制服を着た男性から逃げるという珍事件が起きた。




以下感想返し
kyokoさま
いやいや、「遠山万寿夫さんがいるなら高間知寿男さんがいてもいいだろ」程度に考えちゃった名前なんでそこまで深いものはwww

そして竜の定義ですが、あれは召喚魔法の中でも召喚者側が行うのは呼びかけと召喚する場所の決定、実際に出てくるのは召喚される側の力と意志、という位置付で行こうかと。
つまり、管理局でさえ穏便にしようという風潮の竜種、それも魔力を持っていてSランク近いのと契約しちゃったキャロはもう馬鹿じゃねぇの?って部族から追い払われるわけですね。


巣作りBETAさま
残念、高間さんはもう出てくることはありません。多分w



[25569] 無印2話:原作の原作も死亡フラグなの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/03 16:19
なんとか国家権力と治安の象徴である青服から逃げおおせ、今は夜までぶらぶらしている。
途中神社を見つけ「もっふもふ」な子狐なんかを見かけたが、こちらを見た狐は一声鳴くと茂みの中へ逃げていった。
貧乏巫女がいるわけでもないだろうが、大量にあるたい焼きを何個か供えておく。
これでも一応神様には感謝してるのだ。生き返らせてくれたって意味では。

「安全祈願くらいはしておかないとな…これからの人生のために」

『安全、という意味では何が起きてもある程度対処できるでしょうヴェルなら』

「皆殺し編が安全とはとても思えない」

狙われたら消し、知られたら消すなんて事を繰り返してたら管理局が団体でお越しになるだろうし。
と、そんな事を神社の縁側に座って考えていると、先ほどの狐がこちらをうかがっているのに気付いた。
狐の視線は供えられたたい焼きと自分を交互に見やっている。
供えたものを食べさせるのもあれなので、袋から更にたい焼きを取り出して狐に見せながら

「撫でさせてくれるなら食べていいぜ」

話が通じるとは思ってなかったが、しばらく動かないでいた狐はたい焼きの誘惑には勝てなかったようで、ゆっくりと近づいてきた。
膝の上に狐を乗せてたい焼きを食べさせる。
狐のふわっふわでもっふもふな尻尾を撫ぜながら

「狐さん狐さん、ワタクシこれまで精一杯死亡フラグから逃げてきたんです」

「…ク?」

「なのに次から次へと死亡フラグが舞い込んでくる有り様です」

「…くぅん」

「神様の使いとして名高い狐さん、ワタクシはこの先もずっと死亡フラグにまみれる人生なのでしょうか……」

「…ん、美味しかった」

「………そっかぁ、美味しかったかぁ……」

「不思議」

「ん?」

「貴方の中からは私に近い臭いがする」

「似た臭い?……あぁ、体の中に人外を飼ってるからか?」

「人外?妖怪って事?」

「いや、氷の女王。今は寝てるみたいだけど」

「それがしぼーふらぐを引き寄せてるの?」

「んー…そうとも言えるけど、でもコイツがいなかったら防げない死亡フラグもあった気がするし、微妙な所だな」

「ふぅん……」

「ま、恐らく死亡フラグってのは避けようとしても向こうからやってくるんだと思う。要はそれを前にしてどうやって防ぐかってのが問題なんだ」

「避けられないの?」

「今までを思うに避けられたものが殆どないなぁ……今回だってレティニアが表に出てきただけで巻き込まれたわけだし」

「レティニア?」

「氷の女王の名前。冷たくて馬鹿で眠ってばっかで、どうでもいい時にポカをやらかす事もある」

「ふぅん……よくわからないけど、頑張って?」

「ん、頑張る。んじゃ俺はこれで行くよ。それじゃあ、な」

「ばいばい」

……ははっ……狐が喋るとか人外魔境すぎるだろ、海鳴市。
内心冷や汗ダラダラだったが、あんなのアニメには出てこなかった筈だ。うん。
そういえばなのはってゲームのおまけの派生なんだっけ?だとしたらアレはゲームのキャラかなんかか。
厨二剣術使いや喋る狐が出てくるゲームとか魔法世界並みに殺伐としてそうだが……
まぁうん、今後あの神社には出来れば近寄らない方がいいかもしれんね。
そんな事を考えながら、国家権力を見かけては引き返し、公園で時間を潰したりしながらも夜になった。

(聞こえますか…僕の声が…聞こえますか…)

「きたな」

『えぇ』

例の念話が聞こえたので高い建物の屋根に上って見渡すと、淫獣が封時結界を張ったらしく、人が消える。

「なけなしの魔力だったのか、物体にまで作用しきれてないな。これじゃ人とモノの時空をズラすのが精々だ」

『まぁ、しないよりはマシでしょうけど、終わってみればものが壊れまくりで大変ね』

「だなぁ……」

なんて話しながらも更に探すと、直線で2km程離れた所に走っていく少女の姿を見つけた。
収束魔法使いの必須スキルでもある、魔力による視力強化とデバイスの管制補助を用いればこの程度の距離は難なく見れる。
自分は収束魔法を用いる事はないが、こういう偵察向きの魔法はそれなりに覚えている。
べ、別に氷の矢で弓兵ごっことかそんなわけじゃないんだから!……収束無理だしあんな百発百中無理でした。

「……おぉ、走ってる走ってる、リリカルマジカル頑張ってるぜ」

『ずいぶんとのんびりしてるわねぇ』

「いや、こういうのは気分だけでも盛り上げないと」

『そういうものかしら?』

「そういうものだ。しかし、こうして考えると、高町なのはの物語の始まりは差異はあれど似てるかもしれんな」

唐突に魔法という、素敵で無慈悲で不平等な力を持つに至り、回りとは違う世界に生きる事になった。
だが、俺は生まれた時からで、彼女は今日、それを手に入れる。
そこには9年の違いがある。そう、9年だ。原作という前情報を持ち、レティニアという力を持っていても9年経っても逃げ切れない運命がある俺に対して
彼女の前に立ちはだかる運命は、彼女の努力と仲間の力と、偶然という奇跡だけで打ち破れる事が確定している。

……これ以上考えるのはやめよう。気付けば自分の手を色が変わる程握りしめていた。
息を一つ吐いて、手の力を抜きながら、ただ目線を少女が走って辿り付いた動物病院に向けるだけに集中する。
半壊した動物病院から黒い物体が飛び出してきた。彼女は淫獣を抱えて街を走る。
だが追いつかれ、淫獣の言葉でなのはが詠唱し、バリアジャケットに包まれる。
これで彼女はレイハさんと契約した。ミッド式の、いつ誰が作ったかもわからないデバイス、レイジングハート。
あの言葉は恐らくパスを通す契約儀式。
契約をしなければバリアジャケットと杖を生成するパスを通す事が出来ず、デバイスとして全力を出せないとかそんな理由だろう。
インテリジェントデバイスなんて俺からしたら欠陥品な気がする。
主の気持ちに協調し、時には代弁するそれは言わば心の鏡。複雑な思いを持つ人間や、心がからっぽの人間には確実に役立たずだ。

『……ヴェル?』

「なんでもない。ただ…そう、少し羨ましく感じただけだ」

『羨ましい?彼女が?』

「高町なのはは魔法を知り、人と出会って立ちはだかる壁全てを打ち砕くまでの運命が確定していることにな」

『そうね、確かにここで見ている限りあの少女の運命はヴェルの知る物語の通りになるかもしれないわ』

「そして、俺の運命はそれこそ、彼女の物語無しには確定しえない」

『確かにそう。でもヴェル。ヴェルの知る物語の通りに彼女が進んだとして、それに価値なんてあるのかしら?』

「彼女が物語の通りに進めば俺の平穏は保たれる。そして俺は孤独なまま己であり続ける事ができる」

『ふふ、孤独ではないでしょう?私という運命を抱えているんだから』

「……お前というバケモノを得た事で、俺が己自身であり続ける事ができなくなったと思うか?」

『ふ、ふふ…そうね、それでこそ私の伴侶よ』

「伴侶なんてならないけどな」

『つれないわねぇ』

視線の向こうでは、彼女がジュエルシードの封印を終えた所だった。
結界が解けると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえ、彼女は半壊した道路と塀に気づくと慌てた様子で走り去っていく。
余談だが、パトカーは決して彼女たちの方に向かっているわけではない。恐らく朝になって通行人か住人が気づくまで騒ぎにはならないだろう。
さて、原作最初の通過儀礼が終わった。

「寝床とアースラを取るか、接触回避を取るか」

公園に向かっているだろう彼女に「変な石に召喚されて、淫獣の念話を聞いて追いかけてきた」とでも言えば接触は容易だろう。
事件の流れをユーノから説明されてから「んじゃ管理局が来るまで一緒に行動させてくれ」なんて流れにはすぐ出来る。
正直な話、ここで彼女と接触してもさしてデメリットはなく、アースラが来るまで適当に厄介になっていればいい。
彼女と関わればアースラが来るタイミングもわかり、俺にとって不足の自体とも言える、彼女に何らかの問題が起きた時にも対処しやすい。
とりあえず追いかけながら考えるかと思い、魔力で身体を強化しようとした瞬間

「見つけました。貴方が最初に発動したジュエルシードを封印した人ですね?」

黒いデバイスを持ち、黒い服に身を包んだ金髪ツインの少女が降りてきた。

「……悉く予定が狂う件」

『たい焼きと神社の御利益ね』




後書き
作中たい焼き屋や喋る狐が出てくるのはフラグに見せかけたブラフです。
作者が息抜き程度に絡ませたいと思っただけです。
そしてたい焼きは無事消費。もう月村家以外にとらハ関連ネタが出る可能性はないでしょう。
今回主人公の脳内思考でわかったでしょうが、主人公はとらハを知りません。
そしてリリカル世界と同じくらい殺伐としてるんじゃないかと邪推して近寄るのはお断りしました。主人公は自ら年上のお姉さん方をお断りしたのです。本当に馬鹿な奴。
一応リリカル入り、というのが主題ですから、リリカル世界だけしか使わないようにしたいなぁなんて思ってます。
あと、主人公の中では「攻撃魔法どころか魔法全部使えない世界で保護されるとかヤバいだろ」くらいの考え。魔法を持ってると知られないようにビクビクしながら地球で生きるくらいなら多少使っても許される原作キャラ付近をふらふらしてる方がマシ、という。
ていか下手に地球の国家権力とかそういうのにお世話になるとグレアムフラグが立つだろ常識的に。
さて、なんか最後の方でちらっと痴女が出てきました。主人公はどう考えるのでしょうか。逃げる→犬が監視している!



[25569] 無印3話:子持ち熟女!?でもヤンデレはお断りなの!
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/04 14:00
「ジュエルシードを渡してください」

そう言ってデバイスを俺に構えながら告げる少女―フェイト・テスタロッサ。

『これも原作キャラ?ずいぶん奇抜な恰好してるけど』

『薄幸少女に見えて実は一番目立ってるという矛盾した露出少女だ』

本人は否定するだろうが知ったことか。
しかしこの時点で彼女は活動してたのか……あぁ、ジュエルシードに気付いて駆け付けたものの、なのはに封印されて空振りしたって所か。
犬が見えないがおそらく隠れてるんだろう。そして俺がジュエルシードを持っていると気づいたのも恐らくあの犬。
俺が召喚された場所にも彼女は駆け付けたのだろう。あそこにはジュエルシードの魔力だけでなく
俺とレティニアの魔力残滓が残っていた。それを頼りにして犬が見つけたってあたりだろう。

これはまたどうにもならない展開になった、と思いながらも、どうするか考える。
逃げる?いやいや隠れてるけど後ろに犬っころがいるのが分かる。逃げ切れたとしても追われるのなら意味ない。
倒す?原作ブレイクお断りします。ならばここでの選択肢はこれだ。


「ジュエルシードって何?」

「えっ」


そう、自分はあくまでごく普通のミッド在住の子供ってだけで、「君の探しているのはこの石のことかね?」なんて弓兵口調で話すのはアウト。
とりあえず相手の話を聞く。聞いた上で考察したように明け渡してさようなら。これがベストだ。

「なんかいきなりデバイス向けられながら渡してくださいと言われても、これっぽっちも話が見えない」

「あ、あの、えっと…」

そりゃ混乱するわな。だがこっちは本来はもっと混乱してるような状況なんだ。
すると、やっぱり隠れていた犬がこちらに飛び出してきてフェイトの隣に立ちながら

「トボけるつもりかい!アンタがジュエルシードを持ってるのは分かってるんだよ!」

「と、言われてもなぁ…あぁ、もしかしてこれか?」

そう言ってジュエルシードを出す。ここで出すのが正解だろう。

「封印なんてしてないけど、魔力すっからかんだよこの…ジュエルシードっていうの?少しずつため込んでいってるみたいだけど発動するまでしばらくかかるんじゃないかな」

「えっ」

「俺を強制召喚したのがこの石の力っぽいから一応持ってたんだけど。
召喚された所にいたおっさんは気絶してたし、魔力反応もないから関係なさそうだしで
さてどうしたものかと周りを見渡してみればどうやらミッドと違う世界だからとりあえず色々と見て回ったんだが…。
あぁ、俺ミッドチルダの人間なんだけどさ。君は魔導師だよね?」

ミッドチルダと言った瞬間、二人の表情がピクリと動いた。

「そうです……貴方はミッドの人なんですか?」

「うん、しかも魔力はあるけどただの一般人だぜ?そもそもここ何処よって話だし」

「ここは、第97管理外世界の有人惑星、地球です」

「あーやっぱ管理外なんだ?科学技術はそこそこ発達してるみたいだけど、魔法技術関連のものが一切なかったからもしかして、と思ったけど」

「あの、とりあえずその石を」

「ん、あぁ。この石君のなの?じゃあ召喚したのも?」

「い、いえ、私じゃないんですけど……」

「…まぁいっか。とりあえず封印した方がよさげだしね。また魔力が溜まって発動しても困るし」

「あ、はい。ジュエルシード、シリアルⅡ封印っ」

ジュエルシードを封印して「よし、一つ目」なんて言ってるフェイト。
っていうかこれが原作でもフェイトの一つ目だったんだろうか?
……なんか違いそうだな、明らかに発動の仕方がおかしかったものなぁ…。
だいたいジュエルシードの魔力が一時的にしろ励起しなくなるほど枯渇してるとか尋常じゃないだろ。

調べていないしレティニアも専門外なのでよくはわからないものの、ジュエルシードとは願いを叶える機能が後付けされてるだけの魔力タンクだ。
空気中の魔力を一定のペースで溜め、満タンになったら放出、つまり発動する。
その時に魔力を消費する目的をスキャンして願いを叶える。つまり付近にある生物の思考や願望を読み取るのだ。
だが、願いの形というのは抽象的すぎるし、スキャンも完全な形では読み取る事が出来ないため、魔力の放出が不完全なまま終わる。その結果、願いが歪んだ形で叶えられたりするわけだ。
もちろん魔力をそれほど消費していないから、すぐに溜まってまた発動するわけだが
俺とレティニアを召喚したジュエルシードは溜めこんでいた魔力をほぼ全て消費しきっていた。
この石の魔力回復スピードがどれだけ早くても、次に発動するのは3日程はかかる。
もっとも、封印魔法なんざ使えないからその時はポイして逃げるつもりだったが。

さて、自分とレティニアという存在がいるだけで勝手に原作の一部がおかしくなっていってるのは確実。
ならばその中でなるべく違和感なく無印を無事終了させて、さっさとミッドに戻るに限るのだが。

「…でさ」

「な、なんですか?」

「帰る方法知らない?魔導師って事はどこかの次元世界から来たんだろ?俺は次元通信出来ないから管理局を呼ぶのも無理だし」

「管理局……あ、えっと、私はこの石を探すためにきたので、自分の家への転移ゲートしか…」

「マジで?あー…ちなみに君の家に行けばミッドに行くか連絡が付く方法はない?」

「庭園に行って母さんに聞いてみないと……」

「まぁ、別に俺は急いでるってわけでもないからさ、なんだか知らないけど切羽詰ってるみたいだし」

しかし予定外も予定外だ。
ここで彼女と遭遇とかこれっぽっちも予定に考えてなかった。
このタイミングで彼女と遭遇するのはちとヤバイ。俺はミッドの人間で、どちらかと言えば
彼女の、正確には彼女の母親、プレシア・テスタロッサにとってはただの邪魔でしかない。
プレシアに知られたら「邪魔よ」の一言で殺そうとしてくるかもしれん。
だからここはジュエルシード集め終わったらママンに聞いてみてよ、くらいの所にするのがベターだ。
それを実現するため、なるべく違和感のないように話す。

「でも、早く帰らないと心配されるんじゃないですか?」

「あー、まぁ俺の場合、回りは心配してくれるような人間がいないからね」

「それは……」

「まぁアイツなら大丈夫だろ、くらいで済まされてる予感しかしない……」

両親は言わずもがな、「面白そうなものでも見つけたんだろう」だとか言ってそう。
シャーリーあたりは「きっと自分探しの旅に出たんだね!」とか……もうやだあいつら。

「………あ、あの?」

「…ん?あぁゴメン。それでさ、現地の公的機関に保護してもらうって手も考えたんだが
この世界に管理局の手が入ってない可能性もあったし
魔法バレする危険を考えると迂闊に接触もヤバイと思って。で、どうするかなぁって考えてたら
なんか念話が聞こえたから自分以外にも魔導師がいると分かって探してたんだ」

「念話、ですか?」

「あぁ、この町一帯に男の子の声で広域念話。んで封時結界も張られてたから、こっちも広域念話で問いかけようかと思ってたんだが…君には聞こえなかった?」

「あ、はい。私の家は隣の町ですし、ジュエルシードの発動を感じてさっき来ましたから」

「ふぅん。てことは俺と君以外にも魔導師がいるって事だな。その人が最低でも次元通信出来るといいんだが……」

「………」

そんな事を呟くと、彼女は黙る。大方、犬と念話でもしてるんだろう。
まぁこれで、ほとんど嘘もない事実のみを伝えて俺は関係ないとわかった筈だ。原作は壊れたりしないはず。

「ま、とりあえず見つけてからだな。それじゃ魔導師さん、俺はもう一人の魔導師を探してみるよ。魔導師さんもジュエルシード集めがんb「あ、あの!」…ん?」

「ジュエルシードを探し終わったら、母さんに聞いてみます」

「ありがとう、助かるよ。念話は出来るようにしておくから、お母さんに聞いて結果が分かったら連絡くれないか?」

「えっと、見つかるまで寝る場所とかは?」

「まぁ、なんとかなるんじゃない?自然多いし」

「じゃあ、うちに来ませんか?私は石を探さないといけないけど、寝る場所くらいはなんとかしてあげられると思います」

「……有難い話だが、君も石を探さなくてはいけないだろう?」

「えっと、もう一人の魔導師も、私が見つけておきます。探索はアルフが得意ですから」

そう来たか…いや、予想は出来た筈だ。
どうする……このまま別れて次にジュエルシードが発動した時になのはに会うつもりだったんだが。
彼女の事情的に、自分が管理局に連絡を取るのを彼女は阻止したいのだ。
彼女は、プレシアがユーノが乗った次元航行船を叩き落とした事は知らされていないかもしれない。
だが、ジュエルシードというロストロギアを集める事を管理局に知られては厄介な事になる事は把握しているわけで。
であれば、だ。管理局との接触フラグになりかねない自分を軟禁したいって魂胆なわけか。

さて、彼女の家、つまり隣の街にあるセーフハウスに厄介になったとして、デメリットを考えると
プレシアに遭遇する可能性が上がる。なによりこれが一番大きい。
Sランク魔導師とはいえ流石に勝てないってことはないだろうが、もし消されそうになったら確実に厄介な事になる。
メリットはプレシアにさえ見つからなければ後は高町家フラグとさして変わらない。
むしろ関わる人数が減って願ったりかなったりな気もする。
犯罪者と知らずに厄介になってれば管理局から見ても俺には罪もなんもないし。
だがプレシアがなぁ…うーん……次元魔法というスキマ使いな時点で見つかる可能性があるのは避けたい。
というか今こうしてフェイトと話してるだけでも内心ビクビクものだ。
いつ空から雷が降ってくるかわかったもんじゃねぇ。雷ババァ怖い。
だが、ここで断るとさっきからこっちを睨むような目線で見てる犬が強制的にお持ち帰りとか言い出しそうだしなぁ…。

「……じゃあ、お願いしていいか?石を集めるもの手伝う」

本当はそんな気さらさらないけど流れ的に手伝いを買って出てみる。
小癪にも軟禁なんて考えた仕返しも少しだけ、ある。
しかしさっきから俺の言う事に動揺しまくってるなこの子。

「あ、あの、だ、大丈夫です。アルフもいますし」

「そ、そうだよ!アタシがいるから大丈夫!」

犬いきなりしゃべんな。
しかもなんでお前までどもってるんだよ。

「御厄介になるだけっていうのもあれだしさ、手伝える事ない?」

「ほ、本当に大丈夫ですよ!」

「そうそう!手伝うならご飯の用意とかそういうのでいいからさ!」

「そうか?んじゃそうさせてもらうよ」

そんなわけで、フェイトのセーフハウスにお持ち帰りされる……っていうか連行される事が決定した。
夜の街を歩く少女と少年と犬。フェイトは一個目のジュエルシードを難なく手に入れてどことなく嬉しそう。
こっちはプレシア的な意味でお葬式ムードだ。
フェイトより先に自分がプレシア的な意味のお葬式ムードになるとは思ってもみなかった。
……何?不謹慎?皮肉でも言わないとやってられんっての。

『ヴェル、本当にいいの?』

『…死亡確率は上がったけど、大人しくしてればフェイトがプレシアに報告に行くまでは高町家より介入フラグは少ない。まぁ襲われたら潔く逃げて今度こそ高町家行こう…』

『先行き不安ねぇ……』

『まぁ、StSよりは大分気は楽なんだけど、な』

『そうなの?』

『ラスボスのプレシアはランク的には条件付きのSSだが病弱で老い先も短く、全力攻撃には限度があるだろう。
条件ってのは間違いなく次元跳躍魔法による一方的な儀式系広範囲砲撃のことだろうから、中距離以内に入ってればいいとこ直射AAAあたりな筈だ。
近接なんか絶対出来ないだろうし、直射系での弾幕勝負ならこっちは理論上の弾無限だから押し勝てる。
正直な話、ナンバーズの二機連携から襲われるとかよりよっぽどマシだわ』

『そんなものなの?』

『こっちは魔力に関しても大分ズルできるからな。EFBだって溜めが長くなるけど魔力量換算でもう四方160mまでは広げられるし』

なんてレティニアと原作の危険度について話し合っていると
フェイトがいきなりはっとした表情になった後、また慌てた表情を浮かべながらこちらを向き

「あ、あの!」

「ん?」

「私、フェイト・テスタロッサと言います」

「アタシはアルフ」

「あぁ、そういえば自己紹介もしてなかったな。ヴェル・ロンドだ」

さて、フェイトの家についたら……とりあえず寝よう。






後書き
てなわけで逃げられずに連行されましたー。
ヴェルは魔法が使えるだけの部外者。
ならば高町家だろうがフェイトのセーフハウスだろうが
アースラ来るまで大人しくしてれば無問題!とか思ってる主人公です。
次回「プレシア様が見てる」には…多分なりませんね。
フェイトが報告しに時の庭園に行くまで割と平穏でしょう。

プ「何ジュエルシード探すのサボって男連れ込んじゃったりしてるわけ…?」
フ「ヴェルさんに私のお父さんになってもらったんです!」
プ「なん…ですって…?」
主「31歳差でも夫婦になれますよ(ニコ」
プ「な、何を言ってるの……私と貴方が夫婦になんて…///」



[25569] 無印4話:ここは隣町、フェイトのセーフハウス一日目なの
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/05 19:44
時の庭園。かつてミッドチルダ南部の辺境、アルトセイムに存在した移動庭園である。
名も知られていない魔導師が、アルトセイムに屋敷を建てた際に、そのまま移動できる空中庭園として作り上げたものを
プレシア・テスタロッサが買い取り、更に多額の資金をつぎ込んで次元航行システムまで取り付けた。
そして現在、時空の狭間に停泊している時の庭園の一角にて
時の庭園の主はいつもの黒い魔導師服に身を包み、姿見程の大きさの鏡の前に立っていた。
鏡に写っている自分を眺めながら、プレシアは何か思いつめたかのような顔をしていた。





「○○○、あの娘みたいな……可愛い娘が好きなのかしら……」
「も、もしかして!? ○○○は……ロリ……ううん、そんなことないわ……○○○はただ可愛い娘が好きなのよ……そうよ、そうに決まってるわ」
「え、えっ!? ということは、○○○……○○○は、プレシアのことまだ本気で可愛いと思ってるの? プレシアが可愛いから……抱いてるの?」
「確かに、まだプレシアは全然可愛いわ……髪の毛なんてこんな風にしたら……」
「やん、いやぁん! プレシア……やっぱりまだまだ可愛い……○○○、まだきっとプレシアに惚れてる……」
「そうだわ……あの、あの服似合うかしら……ん、んん……こんな感じに……」
「ああぁ! やだわぁ、プレシアすごい可愛い……いやぁ~ん、可愛すぎるわ……」
「きっと、あの娘なんかより全然可愛い……ううっ、可愛すぎるぅ!」





「いやいや…ないだろう常識的に……」

『おはようヴェル。どうしたの?』

「なんか凄い夢を見た気がするんだが……思い出せん」

フェイトに拉致られた翌日、プレシアにいつ見つかって襲われるかと意識を向けすぎて何かとんでもない夢を見てしまった気がしながら目が覚める。
内容はよく思い出せないが、なんかプレシアさん頬に手を当ててやたらクネクネしてたような…ないな。年を考えろ年を。

「一人に意識を向けすぎると他の死亡フラグに気付かないなんて事もあるからな。ひとまず置いておこう」

『意識を広げすぎると注意力が散漫になるわよ?』

「いや、注意しすぎててもダメなんだって」

そんな事を話ながら寝ていたソファーから起き上がり、軽く体をほぐす。
フェイトとアルフは俺と会った事で探索を切り上げ一緒に帰宅したのでそのまま寝ている。時刻は7時過ぎ。

「さて、とりあえず朝飯なんだが…冷蔵庫になんか入ってるのか?」

なんて事を呟きながら、ひとまず洗面台に行って顔を洗う。ようやく頭がすっきりしたところで、台所に向かい

「お待ちかねの気になるテスタロッサ家の食事事情は……」

冷蔵庫を開けた。そしてすぐに閉めた。

「まぁ、そんな予感はしてたんだが、これはなぁ…」

恐る恐るもう一度冷蔵庫を開ける。中に入っていたのはいわゆる「栄養ドリンク」的な黒くて小さいビンがダース単位。
ラベルがないのを見るに、地球で売られている市販品ではなく、次元世界のどこかで作られたかして、プレシアが支給したものだろう。
他にも何かないか探したが、あったのは固形タイプの機能食品らしきものとミネラルウォーターだけ。

「いや、マジでテスタロッサ家凄いな。まぁ、のんびり食事作るなんて余裕もないんだろうけど」

『どうする?』

「まだスーパーの類はやってないし、あるとすれば……」

リビングに戻り、一応の書置きを残してマンションを出る。
お金は昨日のうちにフェイトからいくらか貰っている。生活用品代としてもらったのだが致し方あるまい。
しばらく街の商店街の方に向かって歩いていると、ちらほらと人を見かけはじめた。
海鳴市と違い隣の街はそれほど大きいわけではない。
どちらかというと海鳴市の企業区画で働く人のベッドタウン扱いといったところだろうか。
いわゆる閑静な住宅街という奴が大半を占めている。
ゴミ出しに出てきたと思われるいかにも主婦といった女性に挨拶をしながら、目的の場所はないか聞いてみると

「それなら商店街の方にあるわよ。見かけない顔だけど越してきたのかしら?」

「いえ、こっちに親戚が住んでまして。学校を少し休学してこっちに遊びにきてるんですよ」

質問を上手く躱しながら目的の場所に着く。

「とりあえず今朝はコンビニだな。調理器具もあんまり揃ってないし材料もないならどうしようもないだろ」

『そういえばヴェルって氷菓子以外の料理はできるの?』

「まぁ人並みには出来る」

なんて事を呟きながらコンビニに入り、サンドイッチ等を買って帰る。
フェイト達の分もと多めに買ったが、まぁ残ってもアルフが消費するだろ。

セーフハウスに戻って買ってきたものを取り出していると、フェイトが起きてきた。

「おはようフェイト。朝飯買ってきた」

「あ、おはようございます」

「ん、とりあえず顔洗ってきな」

なんてやり取りを交わして自分はキッチンへ。
買ってきたものの一つであるコーヒーを淹れるためにお湯を沸かす。
ガス給湯器から直接っていうのもなんとなくアレなので、やかんに水を入れ、コンロの上に置く。
湯が沸くまでリビングで座って待つ。

「しかしなんだ、結構いいとこ住んでる割に食事は最低限ってかなり矛盾してないか?」

『食事っていうよりエサね』

「まぁそうなんだろうけどな」

プレシアからしたらフェイトに渡した金も自分の道具の維持費みたいなもんだろう。
このセーフハウスだって金にものを言わせて手に入る場所で一番手間がかからなかったとかだろうし。
他の世界はともかくこの地球においては、すんなり住める場所が手に入るなんて都合のいいことはない。精神干渉系の魔法でも限界はある。
しかし偽造書類の用意とかそういうのをしてるプレシアさんが想像できんが……まぁ本人がやってるわけないか。
フェイトもアルフも出来るわけないだろうし、人を操って用意したとかそんなところだろう。

それでもこういうものの用意にはそれなりに時間がかかる。
早いうちから当たりをつけて準備したのは間違いない。
ジュエルシードを積んだ次元航行船を叩き落とした時点で既に動いていたんだろう。
予想ではこっちの街に落ちると考えて準備したものの、誤差で隣の街にジュエルシードが落ちてしまったとかそんなところか。
そして隣の街から海鳴に探しに出るフェイトはそれでなくても移動時間というものが付きまとう。
転送魔法という手も管理局や一般人に見つかる可能性を考えると使えない。
管理外とはいえ地球出身の管理局員が結構いるのがこのリリカル世界だ。
そのあたりがなのはに先を越されまくった原因なのだろう。着いたら終わってたってパターン。フェイトカワイソス。
なんてレティニアと話していると顔を洗い終えたフェイトが戻ってきた。

「あの、朝ご飯って一体?」

「あぁゴメン、とりあえずなんか口に入れるかって思って冷蔵庫の中勝手に見させてもらった。流石に栄養ドリンクとブロックタイプの機能食しかないのには驚いたが」

「あ、それは……普段は外食とかで……それに朝は食べないから……」

「まぁ、そうだろうな。お母さんの所で食うわけにもいかんだろうし、実際一人暮らしは最終的に自炊か外食かに落ち着くもんだ」

「そう、ですか?」

「そんなもんだ。自炊なんてこれっぽっちも心得がないならこうもなるだろう。さて、コーヒー淹れるが飲むか?」

「あ、はい」

と、脳内でプレシアの黒い話を考えてるなどこれっぽっちも見せずに受け答えする。
正直プレシアがどれだけ黒い事をしてようが、自分に害がなければ何をやろうが知ったこっちゃない。
娘を生き返らせるという高尚な理由があるんだし、知識欲と探究心を満たすために人様に迷惑かけるスカさんよりよっぽどいいだろう。

「お早うフェイトー。ん、ヴェルも起きてたのかい」

「おはようアルフ」

「おはようさん。朝飯買ってきてるから顔洗って好きなの食え。ドッグフード食ってるわけじゃないんだろ?」

「おはよ。まぁ人間の体を得てからはあんまり食べなくなったけど食えないわけじゃないよ?あれはあれで美味しい」

「マジか」

「アルフって基本なんでも食べるから……」

「ほう、なんでも食うのか」

「ふふん、アタシに食えないものはあんまりない」

「便利だなぁ使い魔……」

「そこで便利って使い魔をなんだと思ってるのさ……」

なんてやり取りをしながらも、三人で朝食を食べ、一息ついてふと気になって問いかけた

「そういえば探索は昼間はあんまりやってないの?」

「警察って現地の機関が怖くてねぇ……こんな時間にどうしたの?はもうトラウマだよ……」

「日本人じゃない人からやたらと話しかけられますし……」

どうやらフェイト一味にとって最大の敵は青い国家権力と外人のようだ。
そりゃそうだろう、金髪少女がデカい犬ひきつれて日中の街中歩いてりゃ目立つってレベルじゃない。

「だろうな…俺も大分追いかけられた。この世界は動きにくいってレベルじゃないよな」

「ですよねやっぱり……」

「治安はいいけどやっぱりねぇ……」

某魔法先生の認識阻害の魔法なんて都合のいいものは存在しない。
幻惑系に似たようなのがあるが、それもあくまで一定範囲内の認識をごまかすだけで、一定以上離れた位置からは普通にバレる。
更に幻惑系は本人の素質に左右されやすく、固有技能に近い扱いなのでフェイトが使えるわけでもない。
そういえばスカさんの所の4番さんはそういうの出来ないのだろうか?
……ダメか、あの人って幻惑というよりただのステルスだし。

まぁそんなわけでとりあえず動ける時間帯になるまでは待機、という事になる。
発動していない状態のジュエルシードはただの石ころにしか見えないわけで、肉眼で探索する以外に方法はない。
だが、溜めこんでいる魔力が飽和状態になって周囲の願いを探知しようとすると、一定の魔力を放出する。
それを頼りに探すのが定石なのだが、広域スキャンなんてアースラみたく衛星軌道上からでもないと出来ないのでこっちは基本アルフだけが頼り。
ぶっちゃけると発動した時に放出される魔力を検知してから駆け付けるのが確実だったりする。

「んじゃ、とりあえず俺は生活用品と食材を買いに行ってくるわ」

まぁ、そんな事を考えても俺には一切関係ないというわけで、生活用品と食材を買いに行く。

「あ、私も行きます!」

「ヴェルって料理できるのかい?」

「まぁそれなりには?」

そんなわけで再び少年少女と犬一匹で外に出る事になった。
食器はあったがフライパンやら包丁やらもないという凄まじい状態だったりするので
なんとか午前中のうちに買い揃えなければいけない。服もないし。
早い店は9時には開くのでそれまでにそのほかの家事について話し合う。

「洗濯?きにすんな誰もが通る道だ」

話し合い終了。具体的には"お約束"なイベントが起きないように配慮するだけでいい。
つまりフェイトとアルフで洗濯。俺は料理で掃除は三人で一緒に。
9時になったので部屋を出て、商店街の方へ。

適当な服と調理器具、生活用品や服を買い、最後に食料品店へ。

「なんか食べたいものとかある?っつってもフェイトのお金だから聞くのもアレなんだが」

「特には……」

「アタシは美味しければなんでもいいさ」

春先なので新野菜が美味しそう、ということでアスパラガスとキャベツとタマネギをとりあえず確保。
灰汁抜き済のたけのこも出ていたので

「よし、今日のお昼は味噌ラーメンだな」

ネギともやしと人参をカゴに突っ込み別のコーナーに向かう。
中華麺、ひき肉、味噌、にんにく、しょうが、ごま油、豆板醤、干ししいたけ等もカゴに突っ込む。

『少女にラーメンをすすらせる。我ながら鬼畜』

『鬼畜かどうかはともかく、本気で作るの?』

『フェイトにラーメンすすらせるのは鬼畜の所業だろ。まぁ、ミッドにもラーメンはあったし大丈夫だろ』

そう、地球からの食文化の流入がそこそこ多いミッドチルダは何故かラーメンもある。
まぁラーメンどころか麺類全般あるという謎の小麦粉文化なんだが。
淀みなく材料をカゴに突っ込んでいく俺を不思議そうに眺めるフェイトに時々食材の説明なんかをしながらも買い物を終えて店の外に出る。

(ずいぶん買ったねぇ)

なんて店の前で座って待っていたアルフに

(そういえばお前ってネギ類食えるの…?)

普通に食えると聞いて一安心。やっぱ使い魔便利じゃん。
味噌ラーメンとか食べたことないという二人に

「まぁ楽しみにしておけ」

なんて言いながら帰宅。
時間は丁度11時を回ったところだ。

「今から準備すると丁度昼になるかな」

「わかりました」

「アタシも全然おっけー」

というわけで台所に向かい調理開始。
別に達人を目指してるとかそういうわけでもないので、干ししいたけをスライスし、水で戻す。
下準備として野菜をカットして冷蔵庫に入れておく。とりあえずはしいたけが戻るまで手持無沙汰になった。
ちなみにフェイトにがっつり鶏がらとか魚介ベースの出汁じゃアレだというので干ししいたけの出汁をベースにするつもり。
リビングに戻るとフェイトはおらず、アルフだけがいた。

「あれ、フェイトは?」

「ん、デバイスの方にちょっと調整をね」

「ふーん」

まぁ関係ないだろうということでアルフにミッドでの話なんかをしつつ、時間を潰していると、フェイトが部屋から出てきた。

「さて、んじゃ昼飯作るか」

「あ、手伝います」

「んじゃ、丼ぶり出してくれるかな、そこの取っ手がある所に入ってるから」

ラーメンの丼ぶりが何故セーフハウスの食器棚にあったのかはこの際突っ込まない。
恐らく備え付けの棚に始めから入っていたとかそんな理由だろう。
案の定、フェイト達は壁に食器棚が埋まっている事を知らなかったらしく、

「こんな所に収納スペースが……」

なんて呟きながら丼ぶりを三つ出してるし。
そんなフェイトを尻目にこっちは朝のうちに見つけておいた調理器具の中から鍋でお湯を沸かしながら、野菜とひき肉をフライパンで炒めていく。
しいたけから出た出汁を温め、調味料を加えてスープも作っていく。

『ガスコンロもご丁寧に三つ使えるタイプだし、ラーメンハウスとしてやっていける気がする』

『普通の家は二つだものね』

『ミッドも代替ガスとはいえ普通に使ってるからな』

ミッドでは魔力を用いた代替エネルギーが普及している。
ガスにしろ電気にしろ、化石燃料といった資源エネルギーを用いている地球と違い
ミッドでは魔力作用によって電気を起こしたり、物質を魔力で変化させて可燃性ガスにしたりといった技術がある。
太陽光や地熱といった地球でも開発されている技術ももちろんあるが、それはインフラの整備されていない地方などで使われている。
次元世界において、エネルギー資源を巡った争いなんかがないのはこれが理由だ。
あれだけの数の次元世界を管理していれば、全人口を賄えるくらいの資源はありそうだが
そういったものを巡っての争いというのはどこの次元世界でもあったことらしく、管理世界においては魔法を用いた代替エネルギーへと切り替わっていったらしい。
といっても切り替わったのが旧暦以前の話らしいのだが。
ちなみにこういった知識が魔法学校高等部の試験に出るらしい。
なんて考えながらも手は休まず動き、あっという間に味噌ラーメン三つ完成。

「んじゃ、食おうぜ」

「えっと、いただきます」

「お、美味いじゃんコレ」

すでに人間モードになって食い始めてる一匹をスルーしながらも食事開始。
フェイトは箸使えるのか、という疑問があったが、何故か普通に使えていた。

「前にリニス…母さんの使い魔が和食を作ってくれた事があって」

「へぇ、和食作れる使い魔がいたのか」

「はい。もういないんですけど」

リニスの話や自分の話をしながらもラーメンを食べ終えた。
手持無沙汰になるのもあれなので部屋を掃除したり、途中ジュエルシードの発動を感じてフェイトとアルフが飛び出していったものの、やはりなのはに先を越されて空振りで帰ってきたりとその日一日はそれなりにあわただしく過ごし、日が暮れると二人は探索のために出かけていった。

余談だが、ラーメン食べてるフェイトは普通でした。

『おかしい。鬼畜ルートだと思っていたのに違和感がない…だと…?』

『そもそもどうして少女にラーメンが鬼畜なのよ?』

『……あれ?そういえばなんで鬼畜なんだろうな?』



[25569] 無印5話:主人公組のチートを見て今どんな気持ちなの?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/08 22:39

あれから特に何事もなく2週間が過ぎた。
その間に2回程ジュエルシードの発動が、あったのだが……

1回目

「どうしたんだ汗だくで」

「場所が…神社で…階段がものすごくて…」

「あぁ、あの神社か。普通に高過ぎだよな。てか飛ばずに行ったのか」

「近くまで行かないと結界範囲に入らないし…あんな場所に…建てたら誰も参拝にこないと思うんですけど……」

「まぁ寺社仏閣ってのは立地が重要になってくるからな。さ、風呂入ってさっぱりしてこい」

2回目

「で、今度はびしょ濡れか。どうしたんだ?」

「駆け付けた先でフェイトがウォータースライダーっていうのの近くで水飛沫をモロに浴びちゃってさ」

「風邪ひく前に風呂入ってあったまってこい」

とまぁこんな感じで夜の探索に備えて寝ていたフェイトが飛び起きて
寝癖も直さないまま飛び出していったのだが悉く先を越されて帰ってきた。
そして今日は

「で、今度はまた汗だくだな」

「用務員のおじさんが……」

「まぁ、風呂入ってこい」

夜の探索に出かけてる最中に学校で発動を感じて駆け付けた途端に張られていた結界が解かれ、用務員さんから見つかって逃げてきたそうな。
当然ジュエルシードは既に学校に潜入していたなのはによって封印され、しょんぼりした顔で帰ってきた。

「ジュエルシードもないし、もう一人の魔導師も見つからないし……」

日に日に焦った表情を浮かべていくフェイト。
なのはさんというジュエルシードが出たら即惨状、もとい参上しちゃう主人公がいるんだから、ライバルは焦るに決まってる。
アルフが目線で「アンタからも何か言ってあげてよ」と言ってきたので

「大変そうなら手伝おうか?」

と爆弾発言をしてフェイトは更に焦る。アルフも自分が馬鹿な事を頼んだと気づいて慌てる。
「ダイジョブデスヨ」「ソダヨーダイジョブダヨー」という片言となった言葉に何も言わずに納得すると
フェイトとアルフはほっとした表情をしていた。

『鬼畜ね』

『失礼な、ウイットに富んでると言え。現地の子供に飴玉の代わりにパイナップルを手渡す兵士だっているんだぜ』

『パイナップル?ならいい兵士じゃない』

『パイナップルってのは手投げ弾の事だ』

なんてやり取りをしながらも、暇な時は適当にテレビを見たり
自分の生まれ故郷はこの世界にもあるのかとネカフェのPCで検索したりの日々である。
図書館なんて絶対にお断りする。
隣町の図書館でさえ車椅子に乗った子供の後姿を見かけてからは怖くて近寄れねぇ。
あれが狸かはわからないが、今までの事を考えるに確実に狸と考えていい。くわばらくわばら。

『まぁ当然故郷なんてさっぱりなかったわけだが』

『あったらどうかしてたの?』

『いや、なんもしない。暇つぶしに探しただけだしな』

別の世界の自分なんてものがいたとして、果たして会いたくなるか?
個を特定するための条件の一つに記憶がある。
だが、別の世界の自分が同じ記憶を持っている可能性はおそらくない。
同じ経験、同じ思考をする可能性などあるわけもなし。
そうなるとそれはもう別の個と言える。

フェイトは前提からして違う個にアリシアの記憶を転写した結果出来上がった存在だ。
何故別の個と言えるのかといえば、生まれた経緯も生まれた年代も違う。それはもう立派な差異だ。
フェイトとアリシアという既に別の個なのにもかかわらず、持っている記憶は同じだと言うが
フェイトはアリシアの全ての記憶をもっているのだろうか?断片的にしかないのなら更に差は広がり、同じ思考と選択をするわけがない。
つまりアリシアを生き返らせるには、アリシアという個を蘇らせる以外にはない。

『さすがに死んでから十年以上経ってる死体を復活させるなんて無理そうだが』

『そうねぇ…死んだ直後なら私の世界でも死者蘇生に近い魔法を使って蘇らせたなんて話があったけど』

『やっぱりお前の世界にもあったのか、死者蘇生』

『私のような精霊が生まれる遥か前からあったらしいわ。といっても出来るのは肉体的な死を修復するだけ。
精神的な死にはどうしようもないし、死んでから時間が経ってしまえば無理だったみたいだけど』

『まぁ肉体的な損傷を再生して、後は精神が消失する前に蘇生させる、となるとそれが限界だろうな』

さて、死者蘇生とは一体何かというと、一般的に言われているのは二種類ある。
死んだ原因を超回復させるものと、死んだという因果そのものを捻じ曲げるものの二つ。
前者は圧倒的な回復力を持つ魔法や薬などを精神が死ぬ前に施す事で死者蘇生となる。
当然だがこれは、死亡してから時間がたち、精神や魂と言われるものが肉体から消えてしまえば使えない。
ではなぜアリシアが事故で死んですぐに治療行為がなされなかったのか疑問が残る。
超回復で肉体的な損傷を取り除いたのか、外傷のない死因だったのか知らないが、アリシアは体を損傷していなかった筈だ。
ならば死んですぐに脳細胞が死ぬ前に蘇生を行えば生き返らせられたのではないだろうか。
まぁ、プレシアが無理だったのだ、恐らく超回復では治せない死因だったのだろう。

ちなみに、スカさんが死んだゼストにレリックを埋め込んで生き返らせたのも、レリックによる肉体強化の促進を利用した超回復だ。
スカさんの研究テーマはあくまで、レリックウェポンという人間の強化だ。副次効果で蘇生させたに過ぎない。
メガーヌも早めにポッドによる細胞と生体機能維持を行ったために生き返らせる事ができたわけだし。

ならばプロジェクトFとはなんだったのか。
スカさんにとっては恐らく「違う個に他人の記憶を転写して作る新しい個」という認識だったのだろう。
だが他の人間は「他者を復活させる方法」と考えた。
スカさんが周りにそう言って扇動したのか、周りが勝手にそう思い込んでいたのかは知らないが。
そしてプレシアはアリシアのクローンを生み出し、記憶を転写させても違う個として
出来上がったフェイトを見て、それに気づかされてしまった。

『どちらにせよ、死者蘇生が無理とわかれば、失われた都なんておとぎ話にでもすがりたくもなるだろうさ』

『でもスカリエッティとやらはアルハザードの遺産から生み出されたんでしょう?』

そう、アルハザードは実在する。ただそれはオーパーツのようなものなのだ。
いつ誰がその世界をアルハザードと呼びだしたのか、それすら分からない。
にもかかわらず、アルハザードの遺産は存在している。
ならばアルハザードとは一体なんなのか。

『人知れず滅んだなんて言われてるが、あくまで痕跡が見つかったというだけだから、案外どこかに残ってるのかもしれないがな』

『それなら見つかる可能性もあるでしょう?』

『今の次元世界よりずっと進んだ世界の人間が、旅行先に同じ世界を選ぶか?』

個人的な考えでは、滅んだのではなく、消えたのだ。それも遥か昔に。
下手をすると文明どころか生体レベルで全て消えたのではないだろうか。
アルハザードの人間が消えたあと、もう一度種の起源から今の人類が生まれた可能性だってあるのだ。
そうなると数千年どころか数百万年規模の話になる。そりゃ確かに痕跡なんてものは殆ど残っていない。

『案外不死人とかいたんじゃないか?アルハザードの人間とやらは』

そう、数千年を生きて今の世界には何もないと分かった彼らは、新しい世界を探しにどこかに行ってしまった。
自分の後に生まれた者達が自分達に気付かないように何も残さずに。
だが全て消せたわけでもなく、どこかの次元世界で痕跡が発見されて、次元世界は魔法と科学を融合させた技術を手に入れ、スカさんが生まれた。

『ふむ、我ながら夢がある話じゃないか。どっかにリアルえーりんとかプロトカルチャーがいるかもしれない』

『なにそれ?』

『あらゆる薬を作る不死人と世界を作った始祖達だ』

あらゆる薬ってどの程度までいけるんだろうな?歌で管理局の暗部が平和になったりはしないだろうけど。
なんて自分には何も関係ない事を考えて時間を潰す程度には平穏である。




「ゴホッ!ゴホッ!……ジュ、ジュエルシードを…探しに…」

「だめだよフェイト寝てなきゃ!」

ベッドから起き上がれない程見事に風邪を引いて寝込んでるフェイトと
それでもジュエルシードを探そうとするフェイトを必死に止めるアルフがいたが。

『まぁ、案の定というか、ここ最近湯ざめしそうな雰囲気がプンプンしてたというか。しかし風邪ってこんな重い症状だっけ?』

『さぁ?私は風邪なんて引いた事ないし』

『あぁ…クローンだから免疫抗体が正常に機能しきれてない、とかか?』

いくらスカさんでも完全な遺伝子のコピーは無理な筈だ。
血液検査と投薬を適度に行いながら徐々に遺伝子の自己修復に任せて免疫不全を直す事が出来る程度には完成されているのだろうが。
そんなわけで普通の病院ではそんな事出来るわけもなし、そもそも保険証なんかあるわけないから病院に行くのも無理。
となるとプレシアの所に運ぶか自然治癒しか選択肢がないわけだが

「あのババァがフェイトのために薬を用意なんかしてくれるわけないし……」

アルフがそう漏らしたのが聞こえたのでこれで自然治癒で決定。
そりゃ道具に無駄に金かける気なんかないだろうさ、あのご婦人。

「寝てる…場合じゃ…」

「寝てろ寝てろ。今日一日は休業日だ。身分証もないから病院には行けないだろう?」

「あ、ヴェルさん……でも……」

部屋に入り氷嚢をフェイトの頭に乗せる。
フェイトはこちらを見て申し訳なさそうな顔をしたが

「もしジュエルシードが発動したら、俺が行ってきてやるから」

「で、でもヴェルさんは封印魔法を持っていない。危険です……」

「まぁ、仮に襲われても時間稼ぎくらいは出来る。その間にもう一人の魔法使いが来れば御の字だな。俺の事はいいから寝てろ」

本当は自分が行く気なんてこれっぽっちもないんだが。

「アルフも今日一日看病。俺に大事なご主人様の看病を任せたくないならな」

「え、いや、でもさヴェル…」

「それでなくても最近はお約束事故が起きそうになった事があるんだ、氷嚢と食事は用意しておくから着替えとかはお前がやれ」

そう言って問答無用で部屋を出る。
背後でフェイトがとうとう気絶したらしく「ふぇ、フェイト!」なんて聞こえたが無視だ無視。
お約束事故の事を話せ?フェイトじゃなくて犬と事故っただけですよ?
そう、あれは動物だからお互いにスルーできた。
だがフェイトが事故ったら俺はともかくフェイトがお嫁に行けない。

「ま、さすがに昨日ジュエルシードが発動したんだ、今日もって事はないと思いたいが」

なんて考えながらその日の家事を済ませていく。フェイトは寝てしまったので、俺とアルフの分だけ朝食を作り
アルフがまたフェイトの部屋に行ったのを見届けてから自分はソファーに座る。

「だが、学校で発動ってのは本編じゃやってなかった筈だよな……」

『そうなの?』

「やったのは最初の動物病院と神社、そして街にトトロの木が出来る回だった筈だ」

『トトロ?』

「妖怪が住んでるでかい木だ。しかし本当に本編は時系列が分からないな……」

そう、この二週間のうちに発動したのは3つ。
うち二つが本編ではやっていない発動。
プールっていうのは前に何かで聞いた気がするからあまり気にはしていなかったが
学校での発動というのは初耳も初耳。
まぁ、これ自体に何か問題があるわけではない。今の所フェイトがなのはと出会えていないし
もし今日発動したならフェイトは病欠で、次の発動で必ず会うだろう。

「と考えた結果がコレか」

『これがトトロの木?』

「コブやら根やらがグロテスクに見えるから違うな。こんなのにトトロが住んでたら子供が泣いちゃうだろう」

何事もなく昼を回り、起きたフェイトにおかゆを作ってアルフが食べさせ、再び寝たフェイトの側にアルフが着いて。
夕方になる少し前にジュエルシードの発動を感じた。アルフが部屋から出てきたので

「とりあえず様子を見てくる。お前はフェイトの側にいてやれ。なんかあったら念話する」

と言い含めて看病を任せて自分は海鳴へとやってきたわけだが
結界こそあるものの、広範囲で完全には無理なのか、やはり人と物を分ける程度にしか張れていない封時結界の中に入ると、目の前には巨木。
特に暴れもせず、ただ突っ立ってるデカい木。だが街の一部を覆う程に伸びた根が、家やら道路やらを破壊している。

「発動を感じて駆け付けたけど、何処かから収束砲撃が飛んできて封印されてしまった。と言えばいいだけなので、このまま見てればベストだな」

というわけで物見遊山と洒落込もうと思い、氷の足場でビルの壁をすいすいと滑って上っていく。
至るところでジュエルシードの魔力を纏った木がある中なら自分が魔法を使ってもバレる事はないだろうし、ビルの上まで初代W.A.Sは届かない。
屋上について、縁に座って木を眺める。魔力強化した視力で見ると、巨木の中心の少し上のあたりに呑気に寝てるバカップルがいるのを見つけた。

「気絶してるのは果たしてよかったのか悪かったのか」

『罪の自覚が足りない?』

「まぁ、不慮の事故って事で納得してくれるさ、優しい人間なら。さて、高町なのはのはぢめての砲撃を見届けるとしますか」

この回でなのはは収束砲撃での封印を行う。それも数キロ離れた学校の屋上からだ。
封印魔法とは俗称であり、一つの封印魔法で全てのロストロギアが封印できるわけではない。
一般的には専用に組んだ術式を用いる事で効果的に封印することが可能となる。
ジュエルシードの場合、周囲の魔力をとりこみ、放出するタイプなので、発動させなくするには魔力が流れ込まないようにすればいい。
AMFのような魔力消滅力場を形成するのが理想的ではあるが、それでは準備に時間がかかりすぎる。
ならばどうすればいいのかというと、一番手っ取り早いのはジュエルシードを魔力を遮る物質化させた魔力で覆ってしまう事。
魔力を通さなくするのはシールド等の魔法の応用で出来る。だがジュエルシードの魔力放出力は強く、AAランク以上のシールドを張れるものでしか覆う事はできない。
管理局では封印処理専門の部隊まであるのだから、ロストロギアの封印処理がどれほど厄介かが分かるというものだ。
ちなみに俺の氷の盾はAランク相当。砕けた側から魔力に物を言わせて復活させる事が出来るので
並みのシールドより破られにくいが、一枚の防御力はそれほど高くない。
発動してすっからかんの状態のジュエルシードを覆う事こそ出来たが、そもそもレティニアで変質した魔力で封印とか怖すぎるだろう常識的に。

「AAランク相当の威力を持たせたまま、数キロ先のジュエルシードを封印出来る程の遠距離収束射撃を感覚で、ねぇ……」

『なにそれ?ありえないわね』

「なにせ主人公だからな。チート性はこっちの方が上だが、汎用性なら向こうが圧倒的に上だ」

そう、魔力の収束射出というそれほど高難易度なわけでもない単純な攻撃。だが高町なのはの収束砲撃は今の時点でAAランクの威力を持ったまま数キロ先まで届く。
これが魔法世界においてどれほど効果的かは言うまでもない。射程外からの一撃。これに尽きる。
本編でも何度かやっていたが、正確無比にして避けるのも楽じゃないスピードで迫り
生半可な壁では防げない威力の収束砲の攻撃能力は絶大なものがある。
防げるとしたら同ランク以上のシールドか、相殺。もしくは全力回避しか方法がない。

『ヴェルでも先に撃たれたら危ないわよねそれ』

「だなぁ、EFBで周囲を常に凍らせてる状態ならSLB何発食らおうが防げるだろうけど、不意打ちされたらキツイな」

自分にディバインバスターやSLB規模の魔法を簡単に防ぐ方法はない。
直射魔法でDBくらいなら相殺できるが、SLBとなると恐らく撃ち負ける。
EFBを展開してしまえば魔力放出した範囲内にあるものは大気だろうが魔力だろうが片っ端から凍らせて防げるが
範囲外からの高ランク収束魔法は中々に厄介なのだ。
だからこそプレシアは条件付きSSランクなんて持ってるわけだし。
もっとも、プレシアの場合は射程外からの次元跳躍範囲攻撃。
射出地点は目標から200mそこらだろうし、一点の威力も高いわけではないので、なのはの射程外とは意味が違ってくるが。
エースオブエース。撃ち落とされる事なく撃ち落としていく姿に高町なのはに付けられた称号は
彼女の戦闘スタイルを見れば案外納得のいくものなのだ。そもそも相手とは土俵が違うのだから。

「ん?きたか」

そんな事を考えていると、左手に見える学校の屋上から、桃色のサーチャーが無数に放たれたのが見えた。
あれも魔法を覚えたばかりの子供が放てる量ではない。
デバイス側で必要な情報のみを取捨選択してから持ち主に送信しているのだろう。

「レイハさんはつくづく優秀だな……」

ユーノはなのはの才能にばかり目を向けていたが、レイハさんの優秀さも異常と言える。
インテリジェントとは思えないほどの処理能力。そしてそれを余す事なく持ち主の為に使う。

「レティニア、ああいうのを尽くすタイプって言うんだぜ」

『あら、私だってヴェルの為に尽くしてるでしょう?』

「なら少しは自重する心を持てよデバイスもどき」

なんて言っていると、学校の屋上から大量の魔力が放出された。
そしてそれは拡散することなく一点に収束していく。

『なにあれ、ひたすら放出した魔力を収束してるわね。暴発寸前じゃない』

「制御限界ギリギリまで圧縮して撃つ。そりゃ数キロ先までも届くわけだな」

高町なのはの魔力量はそれでなくても一般の魔導師数人分近くある。
つまりそれが切れるまで彼女は収束して撃つ事が理論上可能。
もちろん収束に用いる制御やデバイス側の管制処理が追いつく範囲内での話だが。

「本当にチートだな。本人はデバイス側からの情報だけで感覚で術式組み上げるし、デバイスは管制術式に関しては並みのストレージより高い性能持ってるし」

『彼女と戦う事になったら遠距離での撃ちあいはお断りしたいわね』

「最終的にはシューターとシールドで近距離でも生半可なスピードと威力じゃ太刀打ちできなくなってたけどな」

『でもヴェルならなんとかなるでしょう?』

「どうだろうな。クイントさんと違ってウイングロードを出さなくても空中を滑る事が出来るが、クイントさんほど早いわけじゃない。
フリーズランサーの弾幕を囮にして接近、ショートバスターはこっちも使えるからクロスレンジに入ってしまえばなんとかなるかもな」

『でもそれEFB無しの話でしょう?』

「当たり前だろ、主人公凍らしてどうする……お、撃つな」

『うわぁ……撃ちながら収束してるわねあれ』

普通は収束した魔力を射出したらそのまま大気魔力で減衰するに任せるが
なのはの場合はそこから更に収束を続ける事で威力を安定させていた。
正直これは凄く危ない。それでなくても収束魔法というのは
当然の事だが、収束中に攻撃を受けたら収束した魔力が暴発する危険があるのだ。

「……つくづく信じられん戦い方をするな」

『主人公だから許されるってわけでもないでしょうに』

「ユーノもなんで注意しないんだろうな。まぁサポート魔法ばっかりで収束砲撃は専門外なんだろうが」

収束された桃色の魔力光を纏った砲撃は、デバイスの管制に従い、外れる事なく木の中心を貫いた。
ジュエルシードの魔力で生み出された木と根は消えていき、着弾点に残されたのはバカップルだけ。

「いや、いいものを見た。参考にはならないが」

『まさかヴェル、また収束を練習するつもりなの?』

「冷凍ビームが無理だった時点でどうしようもないだろ」

生憎自分には魔力の収束に関しての才能は殆どない。
代わりにレティニアというチートのお蔭で魔力の性質変化と形状変化はそこらの魔導師には出来ないレベルで出来るが。
収束が苦手、というのは戦闘魔導師としては中々に致命的である。一般的な武装局員でさえ、収束射撃魔法を使う。
だが自分の魔力は収束出来ない。いや、そもそも収束する必要がないのだ。
大気ごと凍らせるような魔力密度を既に持っているからである。
だがそれは制御されて収束されたわけではなく、ただレティニアによって密度が増しただけ。
当然そのまま直射しても遠距離射撃は大気魔力による減衰で大幅に威力が下がってしまう。
なので遠距離の相手にも凍結効果を与える一つの方法として、物質化させて射出する事を考えた。
そして出来上がったフリーズランサーは相手に当たると、氷の矢として形成した魔力が元の凍結魔力に戻る。
これにより相手に刺さる事なく、凍らせるか魔力ダメージだけを与える事が出来るわけだ。
もちろん蜂の巣にすることも可能だが、まぁそれはいわゆる殺傷設定という奴だ。
必死に覚えた唯一キロ単位で届く魔法だが、それでも射程は2キロが限界。
まして弓兵のように百発百中なんて無理なので、単発ではとてもじゃないが当たらない不便な技である。
ちなみにだが、直射であるアイストーネードは威力を安定させたまま届くのは射程400mほどが限界。
ショートバスターな獅子戦吼は20mそこらをカバーする事が出来るだけ。
実質フリーズランサーが一番汎用性が高いのだ。
1キロ以上の遠距離なら変化制御という溜めに多少のロスがかかるが、中距離ならほぼ無詠唱。
弾幕としても使えるし滅茶苦茶便利だったりする。

(ヴェル!ジュエルシードは!?)

反応が消えたからだろう、アルフからの念話が入ってきた。

(ん、もう一人の魔導師が封印したよ。生憎と数キロ離れた所からの遠距離収束砲の狙撃で封印なんて馬鹿げた事をしてくれたから会えなかったが)

(そうかい……怪我とかしてないよね?)

(ただの馬鹿でかい木でどう怪我しろってんだよ。だいたい発動地点から多少離れて見てたし。まぁ帰ったら詳しく話す)

こうして原作通りに街の一部は半壊し、結界が解けて騒然としはじめた街中を駅がある方向に向かって歩く。
日は暮れはじめ、夕日に染まる街。
高町なのはは半壊した街を見て自分の意志でジュエルシードを集める事を決意するのだろう。

「決意した途端フェイトが出てきて出鼻をくじかれるわけだが」

『で、どうなるの?』

「遠距離砲撃を覚えたばかりのなのはにフェイトが負けるわけないだろう。インレンジで接敵した時点で彼女は詰んでる」

『成程』

「収束スピードや威力調節がまだまだ不安定だから、撃ったとしても当たらないだろうしな」

『そういえば彼女たちって今の時点でどれくらい強いの?』

「単純に戦闘技能だけなら、なのはがC、フェイトがBってところじゃないか?総合的にはAランク近いだろうけど」

『それでも高いわねぇ』

「二人とも欠点を補う形で硬い防御と早いスピードがあるからな。何より魔力量が尋常じゃないし」

『そういえばそうだったわね』

武装局員のランクがBランクというのは総合的にB、という事である。
戦闘技能、魔力量のランクその他を加味してBという事。
つまり戦闘技能がSランクとはいえ、本人の魔力量はCランクそこら、なんて人も中にはいるのだ。近代ベルカ式でAランクの障壁抜く人妻みたいな。
対してなのはとフェイトは戦闘技能はともかく、魔力量と使う魔法の威力が尋常じゃない。AAAの魔力量とニアSに届く威力の魔法。
つまり強くてニューゲームなのだ。そして戦闘技能を覚える二人の成長速度はありえないスピード。
自分もレティニアという強くてニューゲーム状態だという自覚はあるが、成長速度に関しては主人公組に勝てる気がしない。

「ま、このままいけば原作無印で戦う事はないだろうさ」

『もし戦闘になったら?』

「とりあえず避けるが避けたら怪しまれそうな攻撃は非殺傷なら甘んじて食らう。伊達にクイントさんの拳を食らっているわけではないからな!」

『ヘタレねぇ』

「打たれ強いと言え。人妻に殴られる複雑な気持ちを吐露すんぞ」



後書き
「妹パラダイスをしていたと思ったらカスタムメイド3Dをしていた」
な、何を言ってるのかわからねぇと思うが、俺にも何が起きたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
好きなキャラ作り放題だとかめいめいこと御苑生メイの一人四役がハンパないだとかそんなチャチなモンじゃ断じてねぇ
もっと恐ろしいテクスチャ遊びの片鱗を現在進行形で味わってるぜ……

いや本当申し訳ない。
もうなんていうか、「嫁イド」が可愛すぎてついつい2徹で遊び倒して今日一日死んでました。
てなわけで半分ほど書きかけた状態で放置されてたので
さっき気付いて慌てて書き上げました。

カスタムメイド3Dはストーリーと呼べるようなものがほぼありません。
ひたすら自分で作った嫁とらぶちゅっちゅするゲームです。
ならばシナリオ厨は楽しめないの?そんな事はありません。
まして二次小説なんて読んだり書いたりしてる方ならばあふれ出る妄想という名の脳内設定で好き放題できる夢のようなゲームだったりします。
とまぁ何をゲームの紹介なんぞトチ狂った事をしているのかと言われても仕方ない程作者はハマってしまっております。
EFBなのはの方は正直今日起きてPCの前に座るまで忘れる程に……

別に打ち切るつもりは今の所ないですけど、更新速度が遅くなる理由としてご説明させて頂きました。正直殴られても文句は言わない。

べ、別に作者がピリオドの向こうへ行こうと読者には関係ないんだからっ!




くだらない事言ってないで感想返し

烏賊さま
あ、じゃあ一応次回は父母達ミッド組からの視点もちょこちょこ書いてみる事にします。騒ぎにはなってない筈。

奇士さま
この話を書くときに、考えた最初の一つとして「セーフハウス確保に時間がかかる」というものがあります。
他の方が言っていたように、次元航行船が単なる事故、という原作設定そのままなら、なのはとフェイトが遭遇するまでの二週間ちょっとの間にプレシアはジュエルシードの事故を知り、セーフハウスを用意したという事になります。ちょっとそれはありえない速さじゃね?って思って私の小説内では改変しています。
他の作者さまの設定とか見たことないので分かりませんが、フェイトの出現時期はなのはに会う時とほぼ同時期、としても上記以外にさして違和感はないと思います。プレシアが「ジュエルシードが落ちたと聞いて」って感じで海鳴に来るまでのスピードもありえないですけどね。

甘党な抹茶さま
いやほんと、仰る通りです。でもそこは二次設定ということでやんわりスルー…は無理ですね。この作品の目的は無理がある原作設定をどこまで解釈することが出来るかも十分範囲内ですからね…なんとか無理のない設定だけで書き上げてるつもりですが、至らない、というより作者の原作知識の少なさが露呈する形で不満に思われるのは本当に申し訳ないです。

HITAさま
可愛いババァは共有財産と自負しております。でもプレシアルートは未定w

九十欠さま
美少女にラーメン啜らせるのは鬼畜。
でも本当に鬼畜なのは「美少女とデート先でラーメン屋に行く」事

MMEさま
なんと!知りませんでした…。
遠見だとか海鳴だとかなんかのギャルゲの主人公の苗字みたいな名前しやがって←意味不明

34さま
主人公曰く死亡エンドもある鬼畜ゲーな世界だそうですが、美少女と和める世界なだけで十分裏山けしからんですよね

A-Ⅲさま
てなわけでトトロの木の回になりました。
神社はフェイトには遠すぎたんです。街から離れすぎだろう背景描写的に……みたいな。
独自設定…なんですかね?既に他の方が似た設定してしまっている可能性は高いと思います。何せ作者の妄想力はそこまで高くないですし。
その場合はまぁ「同じ妄想設定に辿り付くなんて気が合いますね!」って感じで作者とその作者さまのフラグが立つ、かもしれない。

kyokoさま
作者の知識は偏ってます。最低の屑だとか、みさくら語マスターのサトウユキ信者だったりするチャチな人間ですから。可愛いプレシアは今後も出る予定は今の所なかったりするんですけどね!
食器に関してはまぁ午前中のうちに主人公が見つけた鍋とかは煮沸して、丼はフェイトが取り出したものを洗った、という事とかなんとかでもいいですし、そこまで深く考える必要ないかと。






[25569] 無印6話:付け焼刃のポーカーフェイスなの!?
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/18 07:22

数ある次元世界の中でも最も科学と魔法が発達した世界、ミッドチルダ西部にあるありふれた都市のひとつ
その郊外に建っている一軒の家のリビングには重苦しい雰囲気を持った男女が4人座っていた。
いずれもが管理局に少なからず関係のある人物であり、うち二人は現役の提督階級を持っているという有り様だったりする。
その提督職にあるディル・ロンドとレティ・ロウランはテーブルを挟んで向かい合い、隣には
それぞれ妻のルクレと本土防衛隊の前衛部隊長であるクイント・ナカジマが座っていた。

「それで、ヴェル君からの連絡は未だにないんですね?」

そう深刻な表情を浮かべながら問いかけたレティに対し、3週間程前忽然と失踪した本人の父親であるディルは

「あぁ。だがアイツの事だ、どっかで将来有望そうな女とよろしくやってんじゃねぇか?」

なんて呑気に返すと、その場の空気は途端に軽いものとなった。
レティの隣に座っていたクイントがその中でも一番気楽な声で言う。

「あぁ~ありえますねぇヴェル君ですし。でもウチとしてはスバルかギンガ貰ってくれないかなぁなんて。いっそ二人とも貰ってくれてもオッケーなんですけどねぇ」

「ほう、ヴェルの奴そんなにクイントちゃんのお嬢ちゃんと仲いいのか」

「そりゃなんたってうちの二人の全力全開の遊びに付き合ってくれてますからねぇ」

「ギンガちゃんもスバルちゃんもうちにもよく遊びにきてくれてるしねー」

そんなやり取りを聞いたレティは自分の知らないヴェルの姿を
初めて聞かされて少し驚いた表情を浮かべた。

「へぇ、学校じゃ程ほどの付き合いばかりのヴェル君がそんな事になってるんですか……」

「「いつか負ける気がする」なんて言いながらもギンガにストライクアーツ教えてますしねぇ」

「そういや…こないだ温泉入った時見たらガキの癖して腹筋割れてきてんだぜアイツ?」

「それはまた……魔法学校でも至って普通らしいとうちの息子が言ってましたけど?」

「本人は別に隠すのが好きだとかそういうわけではないらしんですけどね。そういうところギンガとスバルに見せたら一発で落ちると思うのになぁ」

「ハッ、アイツそういうの全然気にしない所は俺そっくりだからな!」

「ディルさんの場合は隠すくらいで暑苦しさが減ってちょうどいいと思うけどねー」

「おいおいそりゃないだろルクレ」

話が逸れまくっている事を4人とも自覚していたが、別にまぁヴェルなら大丈夫だろう
という事でお互い納得しているので、そのまま雑談モードへと入っていく。

「まぁ、ヴェル君は勘もいいみたいですしね。自分から危険なところに行くなんて事はまずないでしょうし」

「その割に何があってもいいようにってちゃんと考え込んでるんですよねぇ…時々妙に悟った顔しますし。ほんとギンガだけでももらってくれませんかね?」

「ククッ、ウチとしちゃ大歓迎だが、アイツの事だから既成事実の三つくらい作って詰まないと逃げると思うぜ」

「そうねー。ヴェル大人っぽいからそういう話もちかけてもすぐ流すしねー」

なんてちゃっかり親同士の情報交換がなされているなんて事をヴェル本人は気づける筈がない。
そして両親からオーケーサインどころかアドバイスまで貰ったクイントは

「なるほど……それじゃ今度ギンガに話して実践させてみますね!」

「ふふ、ナカジマ陸尉は随分ヴェル君に入れ込んでるのね。やっぱり一番弟子は違う?」

「いやぁ、あの歳であれだけ才能あるのに、あえて管理局以外の道も考えられる子って有望株だと思いません?」

「そうねぇ…管理局としては是非欲しいところだけど、男として見るならあぁいうのも悪くないわよね」

「思えば回りにいないタイプの男の子よねー。ディルさんだって管理局だしー」

「ヴェルの奴はいつの間に人妻キラーなんて才能を手に入れてんだ?」

「あ、考えてみればあるかもしれませんね。年上キラーな所。その辺りはディル提督に似なかったんでしょうねぇ」

「案外よろしくしてる女っていうのもまた人妻だったして?」

「可能性あるわねー。しかも今度は未亡人とかー」

「ディル君の事だからありえるわね……もし別の世界にいるなら、リンディあたりと鉢合わせしてるかもしれないし」

「おいおい、自分と歳の離れてない女からお義父さんなんて呼ばれたくねぇぞ俺」

「でも結局ヴェル君の結婚相手になりそうな女性ってどんななんでしょうね?」

「そういえばヴェルの好きなタイプ、なんて聞いたことなかったわねー」

「なんていうか、相手に合わせてる感じがして掴めないんですよねぇ」

ヴェルの予測は概ね当たっており、とりあえず連絡あるまでしばらくは待つか、という方向で決まった。
何故動かないのかといえば、広すぎる次元世界において、次元通信機もなく、GPSのような位置情報発信機もないのでは探しようがないからだ。
それでもここまで楽観的というのは確かに珍しいと言えるが、ディル・ロンドという探索活動中にしょっちゅう行方不明になる人間の息子という
不本意すぎる肩書きの影響も大きいのであった。


そんな行方不明、もとい絶賛巻き込まれ中の当人は
フェイトのセーフハウスで現在掃除中であった。
風邪の治ったフェイトは「休日なら国家権力から目をつけられる心配もないから」という理由で朝から探索に隣の街、海鳴市に出かけている。
日に日に焦りを募らせるフェイトに「まぁ休日だろうが外国人から話しかけられるのは確実だよね」とは言えなかった。
もっとも、本人が自分から動く、といっている以上、自分があれこれ言って原作ブレイクなんて事にしたくないのもあるが。
恐らく次に発動した時がフェイトとなのはの邂逅になるのだろう。

「原作でも問答無用だったけどアレ見ちゃってると落ち着け、なんて言えないよなぁ……」

『そうねぇ』

思い返すはなのはに先を越されまくり、母親の期待に応えられない焦りに満ちたフェイトの顔。

「誰にも迷惑かからない場所でならアルハザードへの道くらい開かせてやりゃいいものを」

『そういえばプレシアはどうやってアルハザードに行くつもりなの?』

「次元震を局所的に発生させて虚数空間への扉を開く。まぁ普通は考えつかない方法だな」

アルハザードに辿り付ける確率もあやふや、そもそも虚数空間から出れる確率すらあやふや。
それでも見つからないアルハザードにたどり着く一つの答えが虚数空間。
全ての確立を内包している場所ならアルハザードがある場所にたどり着く可能性だってあるという、まさに神頼み的な方法だ。

『私の隔離結界みたいなものなのね』

「あれはよくて5次元。虚数空間はそれ以上だろうな」

『ふーん、よくわからないけどそうなんだ?』

「俺が元の世界に帰れる確率さえ内包してるかもしれないけど。失敗すれば消滅するか虚数の海を永劫に彷徨うだけだろうが」

『ようするに自殺よねソレ』

「まぁな。それでなくても余命が短いってのに。誰も介錯してくれないから自殺するのも一苦労なんだろうさ」

リビングのフローリングを拭き取り終わり、使い捨てのウェットシートをゴミ箱に捨てながら
そんな事を話していると、この数週間ですっかり馴染みのある反応を感じた。

「ん?発動したって事は今日が月村家の森か」

『行くの?』

「んー……」

行った所で別に何かあるわけでもないというか、むしろ行くと余計な事が起きそうだし。

「パスだな。それより久しぶりにフェイトがジュエルシードをゲットするんだ、今日の夕飯は気合入れて作ってやるから買い出しだな」

介入なんてこれっぽっちも考えず、買い物袋と財布を持ってセーフハウスを出る。
と、いきなり結界が張られ、街から人が消えた。

「これは……広域結界か」

封時結界と違い、これは魔力を持つ人間とそれ以外を分ける単純な結界だ。
この結界はたまに魔力を持たない生物も紛れ込む上、バックアップ無しでは張れる時間の短い可能性のある大雑把なものだ。
恐らく結界を張ってるアルフは結界が安定するまでその場から動けなくなっているだろう。
フェイトを先行させるためとはいえ思い切った事をするものだ。
まぁ今回は月村家の敷地の森で目撃される心配は低いし、神社程に離れてはいないにせよ
街外れの月村邸に一気に向かうには一度広域結界を張って飛んでいった方が早い。

「しかし、隣町まで広げることはないだろうに…焦りすぎだろ」

『結界から出る?』

「結界破るのは流石にダメだろう。となると手持無沙汰だな……」

『それじゃ見に行ってみましょうか』

「……まぁ、暇だしなぁ」

というわけで氷の足場を久しぶりに発動させて空へ上がり、月村邸へ向かう。
巨大化した猫が視界に入ったので見渡せそうな場所まで一気に滑っていく。
敷地内を見渡せる場所を見つけ、そこに座ると、丁度フェイトがなのはに襲い掛かっている所だった。

「おぉ、焦ってる焦ってる」

『どっちが?』

「もちろん無表情を装ってるフェイトが」

いきなり攻撃されたなのはより、実はフェイトの方がテンパってると思う。
この前のディバインバスター狙撃の話を俺から聞いて以来、フェイトはなのはに警戒しまくりだったし。
なのはがレイハさんをシューティングモードにして向けた瞬間ちょっとフェイトの眉が動いた気がしたが

「あれだな、ビビったら負けって奴」

『なにそれ?』

「こないだテレビ見てたらサングラスかけたおっさんがそんな台詞をな。フェイトがやけに見入ってたから。あ、フェイト撃ったな」

巨大猫の身じろぎに一瞬気が逸れたなのはに容赦なくフェイトが電気変換された魔力弾を叩き込む。
不意をつかれたなのははシールドを張る余裕もなく直撃。
魔力衝撃の余波に吹き飛ばされたなのはをユーノが衝撃緩和魔法で受け止める。
気絶したなのはを一瞥したあと、フェイトは封印魔法を撃ちこむ。
しかしなのはの砲撃と違い、フェイトの直射魔法は貫通力がないので
猫の体内からジュエルシードを吐き出させるための魔法を先に撃つ。
猫が動かなくなり、体内からジュエルシードが吐き出されると、上空に暗雲を作り上げ、そこから雷の矢を無数に放った。

「ほう、儀式場を形成しての砲撃魔法ね……」

『あまり効率良さそうには見えないけれど』

「威力重視の溜め優先、というか撃てるだけ撃ってやがるな。フォトンランサーからプラズマスマッシャーとか凄い念の入れようだ」

『つまりそれだけ気合入ってる?』

「だろうなぁ……」

思えばフェイトが暴走状態のジュエルシードに封印魔法を撃ちこむのはこれが初めて。
はぢめてのふういん。多少オーバーキル気味になるのも仕方ないか。

「っと、終わったみたいだし俺も撤収しないとな。結界解ける前に隣町に戻らないと」

『まっすぐ買い物ね』

「そういえばフェイトの好物ってなんなんだろうな?好き嫌いないって聞いたから割と適当に作ってるけど」

『聞いてみれば?』

「空気読まずに念話しろと?まぁいいけどさ…」

隣町に戻り、丁度結界が解けた所でフェイト達に念話を送る。

(フェイト、いきなり広域結界でこっちまで覆われたんだが、アルフがやったのか?)

今まで帰ってくるまで特に何も聞かなかったので
このタイミングで念話は焦ってるだろうなぁ……

(えっ!?あ、その、そうです。でも回収は出来ました)

(アハハ、悪いねヴェル。いちいち結界範囲指定するどころじゃなくてさ)

(優秀なのはわかるが、加減を覚えろよ。まぁ、よかったじゃん。今回は、もう一人の魔導師は?)

(えーと、何故か、現れませんでした)

(ふぅん、風邪でもひいたかね?)

(あぅ……)

(ヴェル、フェイトをからかうのはやめなってば)

(ま、久しぶりにジュエルシード手に入れられたんだ。夕飯は気合入れて作ってやろう。といってもフェイトの金だが)

(あ、そんな事してもらわなくても……)

(そりゃ楽しみだね!)

(と、アルフはノリノリだからとりあえず肉は確定だな。アルフ、豚、牛、鳥どれがいいよ?)

(今日は牛の気分!)

(じゃあたたきにでもするかね。フェイトもヒレなら食べられるだろう?余ったらケバブにでもしよう)

(ヴェルが来てから食べものだけは充実してるよねぇ)

(食べる係冥利に尽きるだろ?)

そんなやりとりを交わし、更に探索を続けるというフェイトとアルフに一言告げ、自分は商店街へと歩く。
これから先、向こうも隠し通すのが辛くなりはじめるだろう。
何よりフェイト達がジュエルシードを集めて、プレシアがそれで何をするのかさえ不透明なのだ。
もし自分がいるときに執務官とか魔王と遭遇するような事になったらこの関係も終わりだ。

「次は温泉、ねぇ……」

『そうなの?』

「たぶんそのうち行くんじゃないか?周りに何もないから励起寸前で放置されてるだろうしな」

『一緒に行くの?』

「出来れば留守番していたい」

その日の夜、いつもより少しだけ明るいフェイトと
それを見て嬉しそうなアルフと一緒に牛肉のたたきをメインにした手料理を食べながら
この関係も少しだけ悪くはないと感じ始めた自分がいる事に気付いた、なんて事もなく。

『さっさとアースラこないかなぁ……』

『でもそれに乗ってるのって6年前に会ったあの親子よね?』

『そうなんだよなぁ…いっそオルレアンに……親父どころかクイントさんまで来そうだから頼むから来てほしくないなやっぱり』

『まぁ、あの人たちは来ないでしょうけどね』

『そもそも探す事自体無理に近いからな』

『きっと女とよろしくやってるとでも思われてるわよ』

『この年で女絡みの厄介ごとに巻き込まれたと思われてるとか不本意すぎるが否定できねぇのが辛い』






後書き
「モノを書く時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃダメなんだ 独りで静かで豊かで…… 」
久しぶりに湾岸ミッドナイトを一巻から読み直してたら、急にマブラヴのSSが書きたくなったりしながらも、結局途中で投げてカスタムメイド3Dやってました。本当にサーセン。

無理ありまくりの世界観に無理ありまくりの設定を考えるのが好きなんです。
この小説を書くときも、後から後から増える出鱈目な原作設定に、「きっとこういうのはこう考えればつじつま合うんじゃね?」というのをメインに置いてます。
その結果、ストーリーがおざなりになってきて、今度はそっちに時間を取られてしまうという悪循環。
何より本編を見直しながら書かなきゃいけないというのも辛い。
というかアルフの声若杉だろう常識的に。
次話はどれくらいかかるか微妙な所です。
温泉の話だけで一話使い切るってのは多分無理なので、温泉とその次くらいまで書ければいいなぁ。


以下感想返し。
ポリンキーさま
フラグ立てたって害がないならこういう台詞も容赦なく言うのが主人公。
いやほんと、いつか誰かに言われると思ってました。
オリキャラの名前なんて適当で決めてるので
部屋に飾ってるHGUCνガンダムをぼーっと見てて付けた名前だったりしますw
管理局に入らないと隊作るなんて無理なので、可能性は低いと思いますwww

kyokoさま
いやほんと、一気に遅筆になってしまいました。
書いては消すのを繰り返す頻度が高くなる一方なんですよね。
エロゲに時間取られてるのもありますけど、やっぱりモチベーション維持って重要だと思います。

大丈夫、今はまだ…ヴォルケンいないから大丈夫……
こういう思考が一番危ないんですねわかります。

リラックスさま
病弱というわけでもないけど一端体長崩すとヤバイのがクローン。
本編でバルディッシュ待機状態でもバリアジャケットをよく着てるのは風邪対策なんですよきっと。

巣作りBETAさま
最高ですよね…MODが豊富すぎてキャラスロット50じゃ足りません。
げふげふ、本編ようやく確認する事が出来て、うろ覚えだったのをなんとか補完できるようになりました。
主人公は相手が死んでもいいならチートですが、相手を射程に入れるまでが大変なのは変わりありません。
一番相性悪いのがなのはやディエチみたいな狙撃タイプと遠距離で戦う事。
フリーズランサーは一発あたりの威力が低く、発射弾数で威力と命中力を底上げしてる技なので
一発の威力が高いものを撃たれると余裕で競り負けてしまい、相殺すらできません。
不便なチート、それがEFBというものです。

温泉すら回避したいと願う主人公を前に、お約束なんて多分起こらない!

A-Ⅲさま
主人公のジュエルシードは魔力枯渇状態であっさり封印できてしまったので
今回初めての暴走状態相手ということでフェイトの気合の入り具合を意識させてみました。
フェ「こういうのはビビったら負けだって張さんも言ってた…!」

Chaosさま
二重の意味で生きててゴメンナサイです。
再開未定、というより、次話完成未定って感じですね
時間がないとかじゃなく、書ける時は書ける、書けない時はいくら悩んでも書けないって感じです。
プロット無しの本当の地獄はここからだ……!



[25569] ラクガキ:ぼくの考えたかっこいいマブラヴ世界観(1944-1987)
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2011/02/26 03:55
気づいたら幼女になっていた
夢オチだとかテンプレだとかそんなチャチなものだろうとどうにか心を落ち着け……

られる筈もなく混乱しまくったが医者を呼ばれそうになったので自重するしかなかった。

さて、両親を思いきり心配させてしまったので、なんともないと伝えるのに少々手間取ったものの、なんとか安心させて
俺はまず回りを知ろうとあれこれ嗅ぎまわったわけだが、見る事知る事あまりにも今まで自分が暮らしてきた世界とは違っていたわけで。

といっても別に魔法と科学が融合した世界というわけでもなく、元の世界と同じ、科学技術と歩んできた世界である。
人は火を、石を、木を使う事を覚え、そして鉄やプラスチック、果ては合金や化学繊維を生み出した。
それで何が変わったわけでもなかったのだが、それらの技術レベルが一部で異常な発達を遂げているのがこの世界だった。

元の世界では45年にケリがついたが、この世界では1944年に第二次大戦が終結した。
たかが一年程度の誤差である。ドイツが降伏した後すぐに日本も降伏宣言を受け入れた、ただそれだけの事。
だがその時点で、日本の戦車は複合素材を使い、エンジンの馬力は500hpを超えていた。
少し分かりづらかったかもしれないが、自分が生きていた世界の同じ時代の日本の戦車が150-250馬力しかなかった、と言えば分かりやすい。
単純に倍のパワーである。過給機によって圧縮された空気と燃料散布の絶妙な配合率はチラシの裏で筆算した程度では割り出せない。
頑丈なエンジンをブローすることなくただ回転力とするだけでなく、最適の空気量と燃料量でパワーを生み出す。
そう、1944年の時点で既に演算処理装置、CPUを積んだ電子制御が実用化されていたのである。つまり半導体だ。
更に、素材の発達もこの時点ですでに元の世界の現代に匹敵するものがあった。
ステンレスだけでなく、チタン、タングステン、クロモリ(クロームモリブデン)等のレアメタルや合金にまで足をかけていた。
それにより、乗り物はより頑丈で高機動に、人は防弾素材を得て死にづらく、そして弾頭はそれすら貫ける高威力になった。

だが、素材やエンジンの技術が元の世界より進んでいたとしても、歴史は殆ど変ることもなく、ただ死人と荒廃した大地を作っただけであった。
そして技術は発達しても化学の分野では、元の世界と同じ速度で誕生したものがあった。アメリカはロスアラモスで生まれた原子力である。
元の世界でこそ、クリーンエネルギーとも言われた原子力だが、元をただせばそれはただの火力だ。
核分裂反応時における熱量放出は、街を廃墟に、人を消し炭に。そして放射能は大地を不毛にする。
そしてそれは、元の世界では広島と長崎で使われるものだったが、この世界ではドイツに落とされた。

何故アメリカはドイツに原爆を落としたのか。
それは当時複合素材と合金によって少数でも圧倒的な性能を誇っていたドイツを、先進医療技術を持つ日本よりも恐れたからだ。
先ほど話した戦車にしても、ドイツはアメリカの戦車をいとも簡単に葬り去っていたのだ。
生産された台数こそ連合の大量生産には敵わないものの、元の世界と違い、前述した複合素材と合金での軽量化による運動性と
高出力ガスタービンエンジン+この時点で既に電気駆動と並行させた事による機動性。
それはアメリカのディーゼルエンジンを積んだ戦車を信じられないほどの撃墜比で沈めていた。
戦車だけでなく、戦艦、戦闘機、そして乗員の着る戦闘服に至るまで、全てにおいて枢軸国は連合国を技術で圧倒していた。
アメリカ兵が10人死んで、ドイツ兵は3人しか死なない。日本兵に至っては負傷しても、数日後には戦線に復帰してくる。
連合国側の疲弊スピードは元の世界の比ではなかった。
元の世界でも枢軸国は高い撃墜比を保っていたが、この世界ではそれどころの話ではなかった。

枢軸国側の有利な立場で和平交渉を迫られる前にケリをつけるには、圧倒的な威力の兵器による戦意の喪失しか方法がなかったのである。
こうして原子爆弾はドイツベルリンに落とされ、その圧倒的な破壊力を前にドイツは降伏。
もっとも、発端を開いた一つの元凶ともいうべき、第三帝国を夢見た総統殿がベルリンで灰になり、戦う理由が文字通り焼失してしまったのもあるが。
日本はそれを受けて戦闘継続を選ばず、条件付き降伏という元の世界より少しだけ有利な形になったものの、枢軸国側の敗北という元の世界と同じ結果となった。
そしてそれは、元の世界よりも圧倒的に進んだ技術による、ベルリンでの死者以外は圧倒的な被害の少なさでの決着でもあった。
数値的にはわからないものの、恐らく全体的には元の世界の10分の1程度にまで死者はいなかったのではないだろうか。
確かに連合国側の被害が元の世界よりも圧倒的に多いが、あくまで比率的に見ての話であり、実際の死者数は少ない。
それほどまでに少ない被害で終結した世界大戦だったのである。
そして戦後になり、戦争中に開発、発見された新素材や技術は戦争以外の用途へと使われ始めた。
車や旅客機等の乗り物から、原子力も元の世界よりずっと早い段階で発電へと平和利用されはじめ、医療技術は怪我や病気による致死率を圧倒的に下げた。

さて、乗り物の進化は元の世界と同じく、とある分野での研究が最も効率がいい。
複合素材による耐熱、耐圧は大気圏でも宇宙空間でも耐える。電子演算された燃焼システムは合金と複合素材で出来た密室の船を重力に負ける事なく宇宙空間へと押し出す。
何故宇宙なのかと言えば、増えすぎた人口を養う場所と資源を求めて、といういかにもSFチックな理由を考えそうなものであるが
実際の所はより乗り物を早く、安全に、そして低コストでという夢を追い求めた結果であり
じゃあ宇宙空間でも自由に出来るくらいのモノを作って考えようというのが理由の半分を占めるのだ。
では残りの半分は何かと言うと、技術、資源競争である。
この世界は元の世界と違い、化石燃料や資源に関しては驚く程余裕がある。
元の世界では輸入に頼るばかりだった日本においてさえ、一部の金属やレアメタルは輸出できる程度の余裕がある。
元の世界も見つかっていないだけで同じくらいの埋蔵量だったのかはわからないが、海洋資源開発も進んだこの世界においてそれらは人々に恩恵をもたらしていた。
だが、国にとっては持っている資源の量=国としての大きさである。そして技術の高さ=国としての質なのだ。
そしてそれは簡単に戦争の火ぶたとなるものである。
資源だけでなく、戦後処理により半分に分けられた技術大国を求めてという理由も含まれた大戦争。
だが国連という組織がある中で、殺し合いをする戦争は割に合わないリスクを伴う。
ならば何で戦えばいい?他国を取り込めるほどの資本力、開発力で戦えばいい。
相手は手を結んだ事もある海を挟んだ向こうにあるもう一つの大国。

戦争終結からわずか二年後には、アメリカを中心とした大国による宇宙開発論が発表される。
アメリカは宇宙軍を設立。更に4年後には素材技術の本場にして敗戦国であるドイツを含む欧州との共同体制での宇宙開発計画が発動。
ソ連もそれに伴い、開発計画を始動するが、他国から技術を流入するより、技術の流出を恐れての秘匿性を重視したものであった。
元の世界より圧倒的に進んだ素材技術は人を簡単に宇宙空間に飛び立たせ、次々と実用化されていく。
元の世界では潜水艦より窮屈な宇宙船は複数の人間を一度に快適に宇宙へ運び、犬小屋レベルだった宇宙ステーションはプレハブ小屋以上の居住性を確保した。
探査機に搭載される測定機器類も多機能で高詳細なものへと変わっていく。
そして元の世界よりも20年近く早い段階で人は月面へと到達した。
これにより、開発競争に一つの終止符が打たれる事となる。もちろん勝者はアメリカ。
だが、それだけで開発競争が終わるわけもなく、次のテーマは船外活動と外宇宙探索、そして宇宙ステーションの更なる大型化である。
進んだ技術はそれらをどんどん大型化させたが、とうとう船外活動において宇宙服を着た人力ではどうにもならない領域へと至る。
そうなると、今度は宇宙服を大型化させ、人の手と同じ操作性を持ちつつ、人の何十倍ものパワーを持った船外活動機械が用いられる。
まるで元の世界のモビルなんちゃらである。だがSFに出てくる夢の機械であるそれは、発達した素材とエンジン、集積回路によって徐々に実現化していくこととなる。
MMU(Manned Maneuvering Unit)と言われるそれは、最初こそ全高数m程でしかなかったが、取り扱うものの大型化によってそれらも大型化していく。
そしてそれ専用の道具や機器、それを扱うためのソフトウエアを含めた操作システムも高性能化していく。
宇宙開発における偉大な発明と言われ、複合繊維素材の一つの到達点と言われたスーパーカーボンが開発されたのが56年の事である。
これはカーボンの摩耗を極力減らそうとした結果出来上がったものである。
物質とこすれて摩耗することなく、衝撃にのみ劣化する特殊繊維。
一定の衝撃量を与えればそれはただのゴミに成り下がるが、ただ擦らせるだけならば一切劣化することのないそれは
衝撃に強くないことと、かかるコストから外壁材として使う事は見送られたものの、骨組みや加工用機器の切削部としては理想の素材と言えた。
さらに、人の動きを正確に再現するための操作システムとそれを処理しきるだけのCPUの開発も成功。
一番の問題と言われた動力の小型化も成功し、宇宙開発競争は更に加速していく。
MMUは乗り物の開発としては既に地上で用いる事をほとんど想定しておらず、それはただ宇宙空間で使う乗り物のオプションにすぎなかった。
しかしながら、大型化していく施設を宇宙空間で作る上ではMMUの存在は必要不可欠であった。
しかしそのMMUの大前提は、予想もしていなかったものとの遭遇により覆っていくこととなる。

人は月を手に入れ、次は火星を目指したわけだが、そこで人は未知との遭遇を果たす事となる。
それは火星表面上にあった不自然な突起物。そして隕石が掠ったり落ちたりした跡とは明らかに違う地表面に点々と規則的に残された跡。
跡は突起物へと続き、探査機はそれを追ってカメラをズームさせる。そして写されたのは宇宙空間に蠢くモノの影。
人は歓喜半分、あまりにも唐突すぎる出会いに戸惑い半分でそれを目に焼き付けた。
さらに数秒ほど影を写した探査機は、その後突然に信号をとだえさせたが、人はそんなことよりも写っていた光景に茫然としていた。
我に返った者たちはすぐさま次の火星探索計画を練る。
それは月到達以来あやふやになっていた開発競争の目標がピタリと定まった瞬間でもあった。
なんとしてでも火星にいる生物に接触を図る。それは大国だけではなく、敗戦国も小国も巻き込んだ一大競争となっていく。
やがて国連から最も評価の高いプロジェクトを立ち上げた国に優先権を与える旨が発表され、各国に国連直下の研究機関が設置される。
宇宙空間で活動できる程なのだから、知的生命体がいる可能性がある。そして人は更に接触するために努力する。
さておき、再び探査船を送り出そうかという時期に、唐突に事件は起きる。
出来たばかりの月面基地から探索のために出ていた人員が、月面地表において蠢く影を発見。
望遠カメラから映し出されたものは明らかに生物であった。
自分達とは進化過程の異なる異形を写した映像。火星で見つけた異星生物との接触に再び沸いた人類だったが
数十秒後に映像が途切れた事で我に返った。
「何故火星で見た影が月にいる」「何故写したチームが消息を絶った?」
その疑問は別の探査チームからの異形から襲われたという通信と、月基地への襲撃事件をもって氷解することとなる。

人はその異形と戦う事を余儀なくされた。すぐに月基地は武装を配備し、襲い掛かってくる異形を倒す。
だが異形共はどこからともなく現れては人を殺していく。
音声も電波のやり取りもなく、ひたすら人を襲う異形の群れに
とうとう国連の科学者は異形を人類に敵対的な地球外生命として断定。呼称をそれらの頭文字からBETAとする。

やがて日増しに増えていく月での死傷者と戦闘結果に米国国防省が戦闘方法に疑問を投げかけた。
それまでの戦闘方法は人が持てる武器か、ミサイル兵器の類のみ。
その時点で既に人が持てる武器では敵わない大きさのBETAが出てきており
ミサイルを集中運用しても数の多いBETAを一度に殲滅できる量には限りがある上に取りこぼしも多い。
そこで考えられたのは、人一人が持つ武器の威力強化であった。
これまでにも探査用ヴィークル等を改修した搭乗タイプの兵器はあったものの、月面における走破性は高くなく、車両を操作する人間と武器を使う人間の二人が必要であった。
そこで目を付けられたのが、人の運動性能を強化するものだった。
MMUのノウハウを生かして作られた強化外骨格と後に呼ばれる事となるそれは
人一人に軽機を装備させる程の余裕があり、更には防御性能の増加により致死率を下げることとなる。
この構想は間違っていない。そう考えた時の技術者は更なる強化を考える。
それは人に軽機以上の火力を、具体的には戦車砲クラスの火力を持たせる事に主軸を置いた考え。
そしてそれを振り回せるパワーを用いての白兵戦闘の実現。
だが、月面に置いて熾烈化していく宇宙生物との戦争は、更に決定的な被害を受けることとなる。

ユーラシア大陸は中華人民共和国新疆ウイグル自治区カシュガル、かつて東トルキスタンとも言われたシルクロードの要衝だったそこは
73年の春に地図上から姿を消す事となる。BETA着陸ユニットという、隕石の落下に近い原因で。
中国政府は自国内に落ちたものは自国のものというトンデモ理論を主張し、独自に回収作戦を立案。
中国軍は空爆による面制圧を行いながら落下地点付近に順調に進む。戦況は有利であった。しかし、それは僅か数ヶ月の間のみ。
航空機やミサイルに頼った遠距離からの爆撃による蹂躙戦法はこれまでまったく戦場に姿を現す事のなかった見たことのない形をしたBETAに悉く跳ね除けられた。
これまでひたすら数にものを言わせた原始的な攻撃しか行ってこなかったBETAが
射程30㎞以上、時には100㎞以上の大気減衰しない光線兵器という、人類でさえ実用化していない兵器を持ちだしたのだ。
人はすぐさま怪しんだ。「これほどの兵器を持っているのならやはり知的生命体ではないのか?」と。
だが後にこれは、BETAという生物の単なる生体器官に過ぎない事が判明する。
生き物にしてレーザーを撃つという非常識さ。
そして何よりそのレーザーは味方誤射することが全くなく、それでいて当時現行の音速に届いていた戦闘機でさえ軽々と叩き落とす程の命中精度。
人は混乱した。どうしてこんなバケモノが襲い掛かってくるのだと。
人は恐怖した。どうしてこんなものが現実にいるのだと。
戦況は圧倒的な物量をもつBETAの一方的な蹂躙となった。
破たんした戦況にソ連が中国への協力を申し出たものの、航空兵器の一切使えない状況においては大国の軍事力とて無力だった。
とうとうどうしようもないと、人類は最後の切り札を切る。
しかしその圧倒的な破壊力をもってしても、BETAの圧倒的な数を駆逐することは出来なかった。
そして切り札はそうぽんぽん撃てるものでもなかった。

既にこの時もう一つの大国では、前述した人の機械化強化の一つの完成系とも言えるものを生み出していた。
国防省の要求した仕様に従いアメリカが誇る企業が競い合い、作り上げた、全高15m以上にまで大型化した、人の形をした機械。
MMUの思想をもったまま、地球の重力下において圧倒的な機動性を持った陸上兵器。
武装は一発で当時はまだ戦車級とは呼ばれていなかった中型クラスを血煙にできる連射のできる小口径連射砲。
さらには要撃級や突撃級等の大型種でさえ仕留められる戦車砲クラスの大砲。
もしこれがカシュガルに500、いや、200機投入することが出来ていれば、その後の歴史は変えられたかもしれないほどの技術革新。
だが、全ては遅すぎた。

月面基地は放棄が決定され、人は月という第二の足場となる惑星を奪われ、地球ではBETAの侵略が始まる。
アメリカはカシュガルの二の舞を恐れ、カナダはアサバスカへと落ちてくる着陸ユニットに対し、核兵器での処理を決定。
着陸直後に戦術核を集中運用―アメリカが当時ストックしていた核弾頭の3分の1―することで
カナダの半分を人が数十年住めない不毛の地に変える代わりにこれを消滅させた。
それから10年ほど、人はそれ以上戦法を変える事が出来ないまま、ひたすら戦い続ける事となる。
だが物量にモノを言わせるBETAの進軍は、言い換えればまさにノアの方舟の津波の如く押し寄せる。

そして現在は87年。戦術機と言われる人型機動兵器を主力とする戦法は相変わらずのままであったものの
ミサイルや砲弾の進化により、上空からの攻撃が限定的に可能になった事をうけ、それらの発射機構の防衛を兼ねる事
そして車両やヘリ等が入れない限定空間でも活動出来る事を踏まえ、戦術機に乗る者を衛士と呼ぶようになって数年。

昨年、フランスはリヨンに新しくハイヴが建造され、ユーラシア大陸の左半分がほぼ完全に制圧された。
唯一生き残っているのは中東地域ではインド南端部とサウジ南部からUAE
欧州はポルトガルとスペインとイギリスとノルウェーの南端。それと地中海の一部のみ。
現在BETAはそこで西進は一端止め、新設されたハイヴの防衛と資源搾取に努めている状態。
米国はリヨンハイヴ建造に警戒を強め、派兵が議会一致で決まった所だ。
これまでも国連軍として派遣することはあったものの、それはあくまで世界の警察、としてであり
米国にとっての危機となるリヨンには国連軍として派兵する分からではなく、自国の防衛戦力として確保していた人員を回す事にしているそうだ。

人が異形の怪物に絶滅させられるかもしれない世界。絶望レベルはゾンビだらけの世界とどっこいどっこいだ。
既に世界の人口は3分の1を失っている。あと数年で半数を割る可能性さえある。
それほどに殺された。殺される前には殺すしかない。相手は生身ではまず勝つ事の出来ない宇宙生物。

もうお分かりになっている方もいるだろうが、自分がこれから先死ぬまで付き合う羽目になる世界である。
もちろん他にも知っていることは多々あるのだが、今は特に話す必要のない事だろう。

「さて、ここで問題。この世界は?」

A,マブラヴ二週目以降

「第二問。これはつまり?」

A,いわゆるゲームの世界に転生。しかも性転換付き。

「では最後の問題。このゲームをコンティニュー無し生身でプレイする難易度は?」

A,ルナティックどころかファンタズムだろ

自分が転生した世界が死に満ち溢れた世界だと知った日の夜。
俺もとい、今は私は生まれて初めて厨二能力を切実に欲しいと願った。






※続編未定につき、前回言ったマブラヴ世界観を載せてみるテスト。
せめて感想返しだけでもしておこう、なんて思ったので。
……べ、別にカスタムメイド3Dに魔王と痴女modが出て狂喜乱舞したからってわけじゃないんだからね!←自爆

そもそも、マブラヴ世界の第二次大戦の推移が全くわからないという状態なんですよね。(どっかに載ってたりするんですかね?)
第二次大戦の時点で既に日本とドイツの医療と素材技術が世界最先端だったり
総統殿がベルリンで灰になったりしてれば日本の条件付き降伏もアリかな、と思ったり。
正直なのは世界よりずっとややこしいものの、考えるの楽しいです。
この世界最大の壁である突撃砲と支援砲の謎設定をどうするかだけで一日潰れますよね。
36㎜ってなんぞって。チェーンガンと表記って事はアパッチとかについてるM230みたいなもんなんでしょうけど
威力不足すぎますよね常識的に…携行弾数で補おうにもあまりにも威力不足。
2000発×弾倉何個持てるのかすら不透明。120㎜なんて戦車ですら80発は持てるんだから戦術機なら…あれ?そうすると弾倉10個…あれ?
日産の代わりに猫のうんこ重工がいるとして…あれ?IHIがいないお?住友重工は?
僕の大好きなノック・ネヴィス(史上最大のタンカー)がこの世界にはないの?それくらい自分で考えろ?無茶振りお断りします。
そんな事を考えるだけで楽しいです。楽しすぎてしばらく日本の設定考えたくなくなるくらいには。
だから今回の主人公はアメリカ生まれのアメリカ育ちでラクガキしてます。
GD社が好きなんですけど、センチュリーシリーズって設定がF-4でぶち壊されてるので面倒な事この上ないですけどね。
F-111なんてなかった事になってるんだろうなぁ……
そういえばアメリカと言えばユウヤフラグとか考えますけど
TE2巻で窓から投げ捨てた私に何を今更って感じ。99式?レールガン?なにそれ禁書ですか?
120㎜で毎分800発のコイルガン?粘着榴弾も焼夷弾も使えないとか話にならんわっていう。
日本帝国の設定がいつもぶっ飛んでるので、のほほんとアメリカ設定考えるのが丁度いいです。
でも一番考えるのが楽しいのはやっぱり中東、地中海戦線。
「89年のスエズ防衛戦とか言ってるけどアブラハム教の連中はエルサレムから逃げ出したの?」
もうこれ考えるだけで股座がいきり立つレベルですよね。
終末思想連中はBETAをどう考えてるのか。もう楽しくて仕方ない。
イスラム教徒の民兵が「アッラーは偉大なり」と叫びながらBETAに突撃。
カトリックによるバチカン防衛戦とか三教徒合同でのエルサレム防衛戦とか
中東のお金持ち達の共同出資による民間戦術機部隊とか妄想しまくりですよねもう。
インドネシアや南米も最高ですよ。世界に疲れた人間、高騰する物価、横行する犯罪。化け物から逃げた先は地獄だったってな感じで。
カスタムメイド3Dの片手間にこんな事を考えつつ、今日も僕のツンデレ嫁イドは可愛いお!

脳みそプリンになってきたので感想返します。

kyokoさま
回想シーンであんだけ笑ったりしてた子がいきなり無表情キャラになれる筈がない→どうしてこうなったw
ぬこに対してはあれですよ、欠陥電気のノミ取りみたいな。

プレシアがごじy(次元魔法により省略されました)歳なんですよね確か。
まぁ…翠屋のシュークリーム食わせれば20代の肌を持つよn(パティシエにより省略されました)歳だってピチピチですから大丈夫。


撃震307さま
湾岸でマブラヴ。頭文字ではなく。
いや、S30Zで600馬力なら、マブラヴ世界の第二次大戦中のチハたんも500馬力いけてたんじゃないかっていう
わけわかんない脳内変換が起きたんですよ。
一式戦車も電子制御インジェクターで大戦中期には開発完了みたいな。
そしてドイツはガスタービンエンジンと複合装甲+電気駆動のキングティーガーで無双。
日本もドイツの技術提供でチハたんを複合装甲化みたいな。
かくてアメリカは膠着状態になり枢軸側に有利な停戦交渉を迫られる前に核でベルリンを総統ごと灰にってな具合で。

LastLoop……友人が勧めるんで読んだのはもうずいぶん前の話です。
思えばオリジナル戦術機の「かっこよければなんでもいい」理論の礎ですよねあの小説。

EFBはガアラさんよりも範囲狭い上に、なのは世界の魔法体系見ると遠距離系は魔法陣ないと無理なので
遠距離絶対防御的なものは出来ない仕様でいこうかなと。どこまでも不便。でもなのは世界ではまず負けない程度の強さ。


巣作りBETAさま
急いで対策考えるんだ!フェイトmodも劇場版魔王modもうpされてしまったぞ!
正直modであれこれなんてoblivion以来なんで私もてんやわんやしてますけどwww

加減すれば死なない程度に、というのも出来るんです。
何せ冷凍庫ですから瞬間冷凍から段階冷凍までなんでもござれ。
でもガチの対人戦闘の経験不足が圧倒的。
全力で、だけど殺さないように戦う、というのがまず無理。
相手が機械でもない限り全力全開は確実に相手が凍死しちゃうのも考え物ですね。



[25569] ネタ帳に残ってた閑話の一つ。65年のナンバーズとか。
Name: 涼雪◆078c5e78 ID:29328c19
Date: 2012/02/09 13:56
ミッドチルダからほど近い次元世界。
この世界は魔法こそ存在するのものの、科学の発展スピードは遅く、人々は生活の中で魔法を用いながらも牧歌的な生を営んでいる。
そんな世界の森の奥深くで、この世界どころかどこの世界でも浮いてそうな青いタイツに身を包んだ短髪の女性と長髪の少女が並んで歩
いていた。

「チンク姉、本当にこんなとこにドクターの目当てのモノがあるもんなの?」

背の低く、くすんだ銀の長い髪にマントを羽織った少女にそう尋ねた
翡翠色にショートの女性はどこか気だるげな表情を浮かべていた。
手帳程の大きさのPDAを持った右手を覗きながら、尋ねられた少女は答える。

「なんでも、この先に先史時代の遺跡があるのだそうだ」

「遺跡、ねぇ……二人もいらなかったんじゃないの?」

二人には保護者とも、製作者とも呼べるものがいたが、今回その彼から言い渡された仕事は研究に必要なロストロギアの調達。
今までは彼のパトロンから回されてきたもので行っていた研究だが、回されてきたものは安定しすぎていて味がないという
なんとも研究者らしいのかよくわからない理由から、管理局でさえ手出ししないようなモノを手に入れる事となったのである。

それは旧暦より遥か昔からあるものだった。
誰が作ったのか、そもそも人が作ったものかさえあやふやだが、膨大なエネルギー供給能力を秘めた結晶体であるソレは
時には宗教の偶像として、時には人の生活を支える魔法技術のエネルギー源として、そして一瞬で多くの人間を殺す兵器として用いられ
た。
もっとも、今となってはその結晶体を用いる術はほぼ失われていると言っていい。ただ一人だけ、用いる術を知っている彼を除けばだった
が。

「コレはね、いわば仮想のリンカーコアのようなものなんだ。魔力というのは個人で波長が微妙に違うのは知ってるね?
術式とデバイスでよく似た魔力を作る事は出来るが、そこで多少劣化してしまう。疑似リンカーコアでさえその問題点は完全にはなくなっ
ていない。
ところがこのレリックというのは、完璧にコピー出来るんだよ、人の魔力やエネルギーを。
もちろん全ての人の魔力をコピーできるというわけではない。レリックごとに波長に差異があるし
それに適合する人間も見つけなければいけないわけだけど、その確率はそれほど低いわけじゃない。
むしろ、コピーした魔力を際限なく吐き出し続けるのを制御するジェネレータの構築の方が難しくてね……」

などと言っていた彼だったが、それを聞いていた彼の作品達で話を全て理解出来たのは長女と四女だけだった。
とにかく、同じ波長ばかりの支給品に飽きた彼が次に求めたのは、出力も膨大なら波長もピーキーなレリックだったわけである。

「それがそうもいかないらしい。Aランクの戦闘魔導師を含んだ管理局の調査隊が途中で負傷して逃げ出す羽目になったらしくてな。
こんなところに盗掘に来る者もいないだろうということで、管理局でも簡単な警報装置を増設してそのまま安置しているらしい」

「うわ、なにそれ…バケモノでも出るとか?」

「アレから漏れて淀み溜まった残留魔力に釣られて有象無象の魔法生物はいる。もちろん高ランクのものもいる可能性もいる。
そしてこれが最大の理由なんだが、どうもトラップが大量に仕掛けられているらしいのだ。
それも非魔力のものから魔力探知式まで様々なシロモノが」

「非魔力というと?」

「調査隊の報告には矢が飛んで来たり槍衾があったらしい」

「でもそれくらい防御魔法とバリアジャケットとかでどうにでもなるんじゃないの?」

「それがそうもいかなかったらしい。対人式の罠とは思えない程大がかりなのだとか」

「つまりバリアジャケットで防ぐどころの問題じゃない、と?」

「あぁ。最後には地下の一本道で小山程もある巨石が転がってきて追いかけられたとか」

「えげつないなぁ…で、それを避けるために私がいるわけだ」

「そういうことだ」

「私が回避でチンク姉が突破、このタッグなら問題ないだろうしね」

「ドクターはワクワクもロマンも感じない冒険になりそうで嫌なんだけどとおっしゃっていたが」

「そりゃ仕事イコールロマンの人間だからねぇ」


魔法考古学冒険活劇、インディアナ・ナンバーズがはじまるかも。




スクライア一族に受け継がれるいにしえに伝わりし秘宝だとか
圧倒的な力を秘めていると伝わる棺をめぐる軍事帝国の特殊部隊との戦闘とか
なんだろう、クロスさせちゃいけない予感しかしないけど楽しそうな気がしたんだろうな、書いた当時の私ってば。

お久しぶりです。になろうの方で読専やってたりしたら
完全に放置状態になってました。
まぁなんというか、温泉編が終わるくらいまでは下書きあったりするので
またぼちぼち書きあがったら上げていこうかなと。

べ、別に、になろうの方でお気に入りにさせてもらってる方が
なのはの二次書き始めてふと思い出したとかそんな訳じゃないんだからっ!!
うちのヴェル君は金髪巨乳にクマーされる事はないだろうなぁ。
いまさらながらに思う、枯れすぎだろこの主人公。




[25569] 無印7話:ここで伏兵フラグ、海鳴温泉なの。上
Name: 涼雪◆078c5e78 ID:29328c19
Date: 2012/02/21 14:46
唐突だが、この世界におけるロストロギアの定義について少しだけ補足しておく。
おおまかに「悪用される可能性がある」ものと「存在そのものが危険」なものの二種類に分ける事ができ
前者はいってみれば誰も手出ししなければ無害、後者はあるだけで有害。
ジュエルシードやレリックなどは当然前者に分類される。
なにせジュエルシードは自然に暴走したとしてもBランク以下の魔法生物が生成されるだけだ。
武装局員が二人もいれば安全に回収できるわけで特に何も問題はない。
ではなぜ悪用された場合危険か。それは単体で無限動力とも呼べるからである。
例えばジュエルシードに「魔力が満タンになったら分裂する」なんて機能を組み込んだ日には
下手すると某未来からやってきた無限に浸食と増殖を繰り返す
電界25次元在住の存在並みに危険な物質になるわけだ。
もちろん古代の遺物であるジュエルシードを改変するなんて事は
普通の人間にはどだい無理な話なのだが、出来るか出来ないかでいえば出来るのである。
まぁそんな変態科学者がぽっと出てくるほど殺伐としていないのがせめてもの救いか。

レリックの場合は少し違う。性能的には圧倒的であり
半死人を全回復させ、聖王の能力を強制的に覚醒させる事もでき
更に魔法以外にも強化が可能な夢のエネルギー結晶。
しかして本編でもそうだったように運用出来るのがスカさんクラスの天才である事が前提であり
木端研究者が束になったところで完全運用は程遠いというある意味で安全なシロモノだったりする。
まぁそれでも、暴走したりそこそこのまとまった数をそろえられたらそれなりに危険なものなので
災害規模の事故や事件が起きる前に回収される事が望ましいのだが。

そして存在そのものが危険なのが闇の書さんとかである。
存在するだけで何かしら被害が発生するためこれらは前者と違い発見次第何等かの措置を行うこととなる。
新暦71年のミッドチルダの臨海空港火災で暴走したロストロギアも後者だろう。
管理局法ならぬ消防法で定められた危険物の分類で例えるなら
ジュエルシードやレリックが1類、闇の書が3類、空港火災の原因が5類といったところか。

「浪漫も何もない例えだけどな……魔力自体が可燃性物質とも言えるし
やっぱりリリカル世界は妙なところで現実的すぎるのが困り者だな」

「ヴェルが鬱になる以外はさして困らないでしょう?」

「そのせいで絶賛ストレスがマッハだけどな!」

などというやりとりをリビングでしていると、フェイトが一人部屋に帰ってきた。
アルフとジュエルシード探しをしていた筈だが、アルフはまだやることがあるらしい。

「あの、ヴェルさん」

「ん?」

「励起状態のジュエルシードの放出魔力を察知したんです」

「ほうほう」

「大分離れてるみたいなので、明日一日家を空ける事になりそうなんです。最悪翌日まで」

「なるほど」

「それで、えっと、一緒に」

「わかった、気を付けて行ってこい。留守番はまかせろー」

「あ、……はい」

海鳴市の中心にあるタワーは隣町の建物よりかなり高層だ。
フェイト達はここの屋上に儀式上を形成した魔法を使い
励起状態で魔力を放出しているジュエルシードがないか時々探している。
といっても励起してしまうと大抵はすぐに周囲の生物等から願いや思念をスキャンし発動
そして暴走状態になってしまうのであまり効率のいい方ではない。
暴走してから駆け付ける方が効率が最もよく、普段フェイトが海鳴市で
励起前のジュエルシードを探し回っているのは
言わば森で嗅覚を頼りに遠くの川を探す程に難しかったりする。
励起前のジュエルシードは近づくまで感じられない水の臭いのような魔力しか出していないからだ。
それでもやるフェイトには尊敬を通り越して呆れるばかりだが
生みの親の頼みともなれば、10歳とはいえ、いや10歳だからこそ理由を知らずとも必死になれるのだろう。

さて、今夜はその屋上からの探索の日だったわけだが
大気中の魔力に混ざって励起状態のジュエルシードの魔力を検知したらしい。
探索魔法はサーチャー等で空から見渡す事だが
今回手がかりを掴んだ魔法はいわゆる分析魔法とでも言えるものだ。
魔力というものは同じ量、同じ力を持っていても、人によって波長が違うのは以前話したと思う。
当然大気中の魔力とジュエルシードの魔力にも波長の違いがあるわけで、今回はそれを検出したという事。
その魔力を辿ってジュエルシードのおおまかな場所を特定した結果が、ご存じあの海鳴温泉なわけだ。
そして、何がどうなってそう思ったのか知らないが、どういうわけか誘われた。

『まぁ、断固お断りするよね理由もわからんし』

『そうね。といっても大体の予測はつくけれど』

『してその理由とは?』

『だってあの子達、この国の文字殆ど読めないじゃない』

『………あ』

この国の文字、というのは勿論日本語。かな文字と漢字の事である。
ミッドチルダの言語というのは、かなり特殊である。
あのミミズがのたくったような文字、あれがミッドチルダの文字なのだが
厳密には、魔法文字と言った方が正しいと言える。
何故ならば、あの文字を読めない人はいないからだ。
これも歴史の教科書に記されていた事なのだが、旧暦の時代に国を併合した際、文字の違いに悩まされたのだという。
言葉はいい。青狸特製こんにゃくも真っ蒼なこの世界の
「日本語かデバイスの場合は英語に聞こえるけど次元世界共通語的な何か」があるのだから。
ただし文字についてだけはどうにもならなかった。
その結果生まれたのが今のミッドで使われいてる文字である。
これはその文字を読むのではなく、見る段階の時点で書かれている事が分かるという、もうわけわからん仕様だったりする。
具体的に言うと、例えば日本語しか読めない人間がミッドの文字を見れば、日本語でその文字を理解出来る、というわけだ。

『いやでもほら流石に翻訳魔法かければ』

『何か書かされる度に魔法使うなんて不審者にしか見えないわね』

『だよなぁ……』

恐らく原作では「会話は出来るけど文字は無理」な金髪外人で通したのだろう。
じゃなきゃ旅館での記帳とかどうやっても回避できないわけだし。
しかし今は俺がいる。
そういえば俺がやたら日本に詳しい事も彼女たちは聞いてこないが
それはお互い様というものだろう。
……気付いてないだけというのはないだろう、たぶん。

『まぁお断りしたし原作でも二人でなんとかなってたし大丈夫だろ』

『……まぁ、ヴェルがそう言うなら私から言う事はないわね』



そして翌日。
晴れ渡る青空
周りは住宅街で自分の後ろにはバス停の標識が。

「どうしてこうなっ……いや、原因は一人しかいないわけだが」

「温泉なんて初めてだからさ、ここはひとつヴェルにご教授頂こうかと」

目の前にはやたらテンションの高い駄犬、もといアルフ。
その隣にはすまなそーな顔をしてる駄目飼い主、もといフェイト。
そしてなんの冗談か寝間着のスウェット上下のまま海鳴温泉行きのバス停に突っ立っている俺。

御承知の通り、あろうことか寝てる間に運ばれたわけだ。

『おいレティニア……お前予想してただろ』

『そんなことないわよ。朝にもう一度お願いしにくるかなぁ程度の事は考えてたけれど』

『温泉なんて前にオマケ付きで家族旅行に行ったきりだったし
温泉好きだからいいけどさ、と前向きに考える程度には慣れたわもう』

もう何事も自分の予想通りにいくなんて考えは全部そげぶされる運命なんだろうなぁちくしょう。
時間はまだ朝、そしてこれからアルフと俺は温泉に向かい、フェイトは一人で先に森を探索してからの合流。

てなわけで魔法でぶっ飛んでくほど急ぎでもなし
公共交通機関で昼頃には到着し、俺とアルフの二人で宿の確保となったわけだが。
個人的には魔王一行とブッキングは是非ともお断りしたい。
しかしうちの子をアレしてくれちゃってる発言をアルフにさせるためには
断腸の思いで同じ宿を取る必要があるわけで。

『もう部屋に引きこもっててもいいんじゃないかな、フェイトたちもその方が安心するだろ』

『私としては是非ともヴェルと混浴したいところなのだけれど』

『もういっそ溶けてなくなってしまえばいいと思うよ。温泉が凍るだけだろうけど』

それにしても問題が山積みである。
もうこの際リリカルなのは関連はまだいいとする。
ではそれ以外で何が問題かって、もう一つの原作の登場人物がいる事だ。
地球にきて最初に会話した現住生物が狐だったのを忘れたとは言わせない。
そしてあの狐さまはあろうことか俺の中のレティニアに気付いていたのだ。
その関連人物が魔王と一緒にいる。そして遭遇する可能性がある。
喋る狐って事はいわゆる妖怪とかそんな類なんだろうけれど
それに関連してくるキャラがいるとか絶対まともじゃないのがいる筈。

『あれだ、魔王のクラスメイトに魔族がいたっておかしくないわけだ』

『でも、いきなり敵対はしてこないんじゃないの?私が大人しくしてる限り』

『そうはいっても、化け物がいる世界ほど異種族排斥ってのは顕著だしなぁ』

仮に気付かれたとして、すぐ消されるなんて事はないだろうが
目をつけられたら後々厄介な事になるのは目に見えている。
しかし魔族か……魔族!?

『やべぇ……吸血鬼だ』

『またいきなりファンタジーの王道みたいなのが出たわね。何、いるの?この世界に』

『いや……もう一つの原作設定だとは思うんだが』

そう、数ある二次小説の中でたまに触れられる設定
月村家は吸血鬼の一族である。
といっても流石に空想具現化できたり星とつながってる無限機関だったりはしないだろうが
それでもレティニアに気付く可能性が一番高い原作キャラ筆頭じゃん。
どうして忘れていた。というか今気づくとかこれ完全にフラグだろ!

『考えれば考えるほどに今すぐ引き返したい思いでいっぱいなんだが』

『と言いつつすらすらと宿帳に記帳していくヴェル。もう体は諦めてるということね』

『スルースキルの弊害としか言いようがない』

こうして海鳴温泉一泊が決まった昼過ぎ、俺ははじめて昔のエロゲもやっておくべきだったと後悔した。






さてさて、復活一話目から複数話構成になりそうな感じです。
というわけでとらハの設定をすっかり忘れていたヴェル君。
とはいってもここはパラレル、もしかすると一般人かもしれない!
ノエルさんもファリンも、もしかすると機械人形なんて
物騒なものじゃなくただのメイドさんということも……!
と願ってます。ところがどっこい作者は薫る年上臭がするなら
例え機械人形でもヴェル君に関わらせたいと思っちまう人間なんだぜ。
え、桃子さん?ありゃ入る余地ないわ、むしろ高町家にお持ち帰りされるわ。

金髪巨乳神ご降臨のインパクト強すぎて
ノエル・K・エイヴィヒカイトとか打ちそうになったぞどうしてくれる。
これ以上この作品をカオスに染めるのは無理そうです。

以下コメント返し

アンプさま
なんという金髪巨乳の知名度の高さ……!(脱帽
いやほんと、すげー前に見てるぜ的な事を
活動報告で仰ってたのは存じ上げておりましたが
っべーわ、まじっべーわ、期待が重いッ!!!

てんぞーさま
みんなー!金髪巨乳教祖があらわれたぞー!
もう駄目だ!人妻教はおしまいだァー!
いやほんと、てんぞーさんの作品の感想で復活っぽい事匂わせた5分後には
降臨してらっしゃるとかどういうことなの……

もかまったりさま
ただし主人公になれそうな子を決めるのが難しいので
仮に書くとしてもローテーションで冒険してもらうとかになるんだろうなぁ……
冒険活劇という名の旅番組にしかならなそう、いやそれはそれで悪くない、のか?

だれかさんさま
まぁ、あの方の知名度はチト転の頃から歪みねぇですからね。
好きといっていただけるなんて……耳から畏れがダダ漏れです。

白いクロさま
更新しますよー先行き未定のままですけどね!

74さま
待っていてくれる方がいらっしゃった
しかも読み返してくださる程だったとは
ただただ嬉しい限りでございまする。
>金髪巨乳
私の作品では「魔王と百合ってろ」「行かず後家乙」になる可能性大ですので
ぜひぜひお読みになってください。きっと私の人妻愛なんて木端微塵に…。




[25569] 遅まきながらのキャラ紹介とかコメント返しとか。
Name: 涼雪◆078c5e78 ID:29328c19
Date: 2012/02/19 16:00
さて、『年上、メイド、機械人形』とか高性能すぎて
カワカミン薬事法に抵触しはじめそうなノエルさんと
どうやって接触させたものかと色々書き直してる現在ではありますが
一年前に書いておいたキャラ紹介的なものを多少修正して
一応のせとこーかなと、思ってしまったわけで。

まぁ色々とボロが出始めてきてるって事です。
……思えばこんな主人公作る予定無かったのになぁ。
でまぁそんなわけで皆さんにも恐縮ではありますが
何かありましたらご意見をばと。




そんなに強くないのになのは世界じゃ無双できる人
ヴェル・ロンド
65年時点で9歳。
作者が適当にラクガキしてて出来上がった皮肉大好きな子。
名前は勿論「鈴を鳴らしてりゃいいのさ」から。
主人公の名前なんざ手抜きでいいんだ手抜きで。
相手にとってシャレにならない事も
聞こえてないなら平気で言うシリアスブレイカー1号。
でもまわりがそれをひっくり返す勢いで
どんどんシリアスブレイクしていくのでツッコミ役も兼任してる苦労人。
ちなみに戦闘シーンでは無双出来ますが
事なかれ主義を貫くフリをしてるので滅多に戦おうとはしません。
もし戦いになったら
「お前たちはそんなに戦争がしたいのか…ッ!」
って叫んで後で恥ずかしさに悶える羽目になる。

主人公の性格は分かりやすいです。
前向きに卑屈。それでいて強い役を作るのを優先させて
相手のポーカーフェイスは無視するタイプ。
イメージとしては某お嬢様学校に通う直感Aスキルと
男とバレると死ぬ呪い持ちの女装主人公に
ちょっとだけ渋い系のおっさんキャラっぽさを足した感じ。

座右の銘は「別に鳴り響かなくていいよ俺のメロス」
このネタわかる人少なそうですが一応。
全生命体最高の防御力を誇る結構モチ肌なお姉さんが出てくる漫画です。



相棒ポジションが出来上がりつつある全ての元凶
レティニア
65年時点で年齢不詳。
これも本当はもっと明るくてかわいくて
「へぅぅ」とか言っちゃう子にしたかったのに
いつの間にか年増、もといアダルトな
お姉さん口調になってしまった正体不明すぎるキャラ。
名前は「白岩さん」から。
レティ提督の事すっかり忘れてて慌てて
ニアを付けたなんて事はない、多分。
彼女の世界は既に滅んでから数百年経ってる
という設定にしておけばストーリーに関わってくることはまずない、多分。
「そうよ!ショウやっちゃえー!」的なポジションから
変わる事になるのはいつになるのだろうか。



本編のキャラクターと著しく違ってしまった気がする人
クイント・ナカジマ
65年時点で禁則事項(ry
泣く子には拳で語る人妻。
どうしてこうなった第一号。そして最初の死亡フラグ。
そもそもこの人本編で戦ってるシーンどころか
喋ってるシーンすらもないわけで
ほぼ全部オリジナルで考える必要があったりする
完全な作者殺しでもあります。
本編でのランクは陸戦AAなので
「じゃあちょっと主人公がゲーム技教えたら化けるんじゃね?」
で化けてしまったバケモノ。
スバギンが戦闘機人で馬鹿力+タフネスなら
生身の本家はスピード重視タイプなんじゃね?
という安易な発想の産物。
ちなみに未だに67年で殺すかどうかは未定。
死ぬビジョンが見えない?またまたご冗談を……



本編のキャラクターと著しく違ってしまった影響を受けた原作キャラ筆頭予定
スバル・ナカジマ/ギンガ・ナカジマ
実はこの二人はどうなるか未だにイメージが沸いてなかったりします。
いっそクイントさん死ななかったらスバルがそのまま成長して『巨乳ショート無口妹キャラ』とかにでも……
何?テンション上がってきた?んむ、私もその意見には賛成だ。
原作ではスバルの性格が前向きになった理由を明確には言っていないので
クイントさんが死ななくてもあの明るい性格になる可能性はあるんですけれど
どうにもやっぱりねぇ……性格改変系はなるべくしたくないなぁと。
しかし仮に原作通り+他作品技チートがついたらstsが始まる頃には
「継承された理不尽」とかになるのだろうか。



実は本作中最強かもしれない人
ルクレ・ロンド
65年時点で禁則事(ry
旦那と結婚して寿退社する5年前にはすでに探索部提督だったというバケモノ。
デバイス無しの魔力強化した体だけでも勝てる気がしない。とは旦那の呟き。
辞める前に自分のコネで旦那を自分の船の副艦長に移動させる等、やりたい放題してから退職したらしい。
という設定だったら面白いよね!



強烈な脇キャラ臭がする人
ディル・ロンド
65年時点で34歳
嫁さんの元副官でその前は管理世界巡視部の戦闘部隊長。今は探索部提督。
元々は実家のある世界の駐留組に所属していたが、家族からの強い勧め、という名のやっかい払いを受けて巡視部へ。
ルクレと衝撃的な出会いを果たして次元災害規模の大プロポーズを行うという伝説を作った。もちろん災害を起こしたのは嫁さんの方。
なんて設定だったら面白いよね!



この作品を書いて如実に感じた事は
「あれ?なのは世界って以外と強さランク的には低い…?」ということ
美少女戦士なんて銀水晶破壊されない限り絶対死なない時点でチートでしたし
魔法少女モノの中では以外と強くないんですねなのはって。
だって美少女戦士「因果」とか「世界の書き換え」にだって勝てるんだぜ?

その他のキャラは概ね原作通りに持っていく予定ではいるんですけど
正直作者から見たキャラと読者から見たキャラって差が出てくると思うんですよね
作者が「こういうキャラです」って言っても、読者は「え?本編中でそんな感じしないよねこのキャラ」なんて事はザラにあります。
ならどうしたら自分の思い描く通りの言動をさせられるか。
このあたりからもプロットの重要さがよくわかります。
でも作者の中では「モノを書く時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃダメなんだ 独りで静かで豊かで……」
なんて思ってますので実際に出来上がったものが
必ずしもそうはならなくてもいいんじゃないかなと。
ましてこの作品ではプレシアさんとかリンディさんとかが
可愛くなってしまう可能性も内包してるんですよ?
そのうちキャラ紹介にしれっとヒロイン候補として
追加されてるかもしれないんですよ?
むしろそうなって欲しいと人妻好きが賛同してくれるといいなぁ。








次話上げる前に多数の感想を頂いてしまったので
この場にて返信をば。



もかまったりさま
さぁて無印完結までたどり着くのは一月後か一年スパンか…(遠い目
吸血鬼もヤバイけど戦闘民族もヤバイのに気付かないのは
細マッチョになりつつある自分の体型に無自覚なだけです。
そしてノエルさんはまぁあれですよ、年上キラー(無自覚)なヴェル君なら
きっと何かしてくれる筈という願望。

NsTさま
いやぁ、思わず「⇒驚愕する」でしたもん、マジで。
金髪巨乳教祖様に目をつけられたら土下座か首を置いてくしかないんですねわかります。

一年も待っていてくれた方には申し訳ないやら嬉しいやら。
そりゃ一年もたてば忘れている方が殆どだろうなぁと。
それでも読んでくれる方には感謝の念でいっぱいです。

ノエルさんに創造させるとかはさすがになぁ…(妄想中)
……機械神の一撃とかすげぇハマる気がする。オイどうしてくれる。

>この作者何するかマジ解んねえ
大丈夫、この作品に妖怪首おいてけとか聖遺物持ちが出る事はない、筈。
まぁジュエルシード等の原作に登場するロストロギアで
他作品ネタな事をやらかす妄想はあったりなかったり。
金髪巨乳神の影響でフェイトにメガネかけて十月機関のコスプレさせろって電波を受信しましたが
これはきっとStS編からスタートしてる彼の方の作品の持ちネタになるだろうシロモノが
流出した金髪巨乳信仰と一緒に漏れだしただけだと思うのですよ、えぇ。
私のネタ帳にフェイト・乳・オッパイオウンなんてものもない。ないったらない。
ですから未だに台詞の一つすらないうちの魔王が
アリシアの入ったポッドを踏み潰したりとかもしませんし
シグナムが妖怪化もしません(妄想できても書くのは無理ですと土下座しながら)

ミリミリさま
やだぁ…感想板の金髪巨乳教徒率の高さがパネェんだけどどういうことなの…。
この作品は金髪巨乳教祖のお方みたいなぶっとび展開もなければ
ドSな主人公でもないし無双も出来るけどまだしてないというのに。
波長が合うのだろうか。でもほら、私がネタにしてるのは
テイルズ以外はR○GNAROKだったりR-○ypeだったり
あとはエロゲからPro○eller作品だったりするわけですし。
え?他はともかくR-t○peは鬼畜要素の塊すぎる?キニスルナ!
つまり何が言いたいかと言うと、人妻は寝取ったりせず
その可愛さを愛でろ、未亡人なら相手の反応次第だと言う事(キリッ

555さま
恥ずかしながらも帰ってまいりました。
いや、になろうの方でお気に入りに登録させて頂いている作者さんの誰かが
なのは二次書きはじめたら本気だそう、といつか心に決めたのを思い出したのです。
金髪巨乳教祖様の他にも老成したチート侍のIS二次を書いてらっしゃるお方とか
誰かがなのは書きはじめたら便乗しよう、そうしようと。
なにはともあれ、金髪巨乳教祖様のような執筆速度は土台無理ですが
長い目でお付き合い頂ければ幸いです。

てんぞーさま
主人公の属性が「人妻」「年上」だったのに加えて
スバギン姉妹に加えてノエルさんなんて加えようものなら「機械」も追加されちゃいますね!
姉はともかく妹の振動破砕がそのうちマジで機械神の一撃に昇華しそうな……なりませんけどね!
そして金髪巨乳はマジで畏れ多いです。せめてパパ的立場が限界。
べ、別にフェイトを手なずけてプレシアさん(子持ち熟女)と
いちゃいちゃしたいわけじゃないんだからねっ!!!

上梨ツイナさま
もうなにこの金髪巨乳教感せn…布教率。
こんなカオスな感想板にいられるか!
俺はになろうの方でマブラヴ二次を上げさせてもらうぜ!(自滅フラグ

筋肉大旋風さま
だからこの作品にヒャッハー要素など……あ、いたわ拳系人妻とその娘たちが。
あぁ、早く無印編終わらせてネタとギャグに溢れたナカジマファミリーとのドタバタを再開したい。
もうA'sの防衛プログラムとかジュエルシードで時空の扉(闇の極光術)あけてポイしちゃおう、そうしよう。

kyokoさま
どうもお待たせいたしました。またほそぼそと続けていきますよぉ。
邂逅はするにしても、高町家にお持ち帰りされるのは無印中になるのか、それ以降になるのか。
どちらにせよ魔王に目をつけられたらたまったもんじゃないので
出来る限りスルーする予定のヴェル君ではありますが、さてどうなることやら。

>本編EFBそっちのけでこっちを更新
あ、やっぱり楽しそうに見えますよね?
私も思いますもん、主人公組全員女で冒険活劇。
ただナンバーズにはあの作品の醍醐味である
「昔の女」とか「旧友、現地の伝手」みたいなポジションを作れないのがなんとも。
そして何より見つけるものの設定が面倒。凄い面倒。
いっそ聖遺物とか神器とか他作品でごまかすのも考えますが
そんなの手に入っちゃったらレリックいらねぇって話ですよねぇ。
まぁほら、レリックの強奪やらでナンバーズを管理局が確認したのは
本編ではstsが始まってからみたいな感じですし
大抵はドローンがやってるでしょうから、そう何回も書く事も出来ないだろうと。
つまり何が言いたいかっていうと、私が遺跡の仕掛けやトラップを妄想すると
服が溶ける粘液プールとか最初に想像しちゃうんですよ言わせんな恥ずかしい。



[25569] 無印7話:ここで伏兵登場、海鳴温泉は8歳以上混浴禁止!だといいなぁ。中
Name: 涼雪◆078c5e78 ID:29328c19
Date: 2012/02/21 15:22
海鳴温泉旅館「山の宿」はそれほど大きな旅館ではない。
まして海鳴温泉街から少し離れた場所にある為
バスで行く場合は温泉街で一端降りた後
そこから旅館が運行している臨時バスで移動する。
となると原作でもそうだったように外に出る客というのもあまりいない。
原作のワンシーンで桃子さんと士郎さんが散策していたのも
実はあれ宿の敷地内にある場所だったりするわけで
つまり何が言いたいかっていうとだ

「やることがない」

「アタシと温泉に入ればいいと思うよ!」

「ここの混浴年齢制限みてないからわからんが、俺はまず9歳には見られないだろ常考」

「そんなの気にする事ないと思うけどなぁ」

『ルクレ以外で最初に混浴するのは私よ』

「マジでファンタジー世界は人型の人外にも情操教育する設定を追加しようぜ……」

切実にメタい願望をボやきつつ、お茶を飲みながら考える。
アルフはすぐにも温泉に行きそう。つまりここで一緒に行けば
うちの子にアレしてくれちゃってるのはうんたらかんたらなわけだ。
そこでまず月村すずかに遭遇するのは確定。
次に女湯に向かう途中、もしくは女湯には月村忍と高町美由希がいる。
このまま一緒に行ったとして、女湯は確実に拒否する心算なので
後者はまだなんとかなる。問題は前者だ。
いやでも、アルフに気をとられてるだろうからバレないか?
それとも他人のフリしてずかずか先に行ってればスルー出来るか?
いや無理だろうな、アルフが大人しくしてるわけもなし。

「まぁ、俺は夕食後にでも入らせてもらうから、お前は風呂入ってこいよ」

「えぇ~、一緒に行こうよ~それで後でフェイトとも一緒に入ろうよ」

「フェイトが気絶するぞ、もしくは飛ぶぞ、魔法で」

にしてもなんでこうなったのか。
最近スルーしようとするほど裏目に出る気がしてならない。
そりゃたしかに「ふーん、ほう、へぇ」のおざなりスルーだった事は認める
認めるが、にしたってこれは酷い。
何が酷いって気付いたら回避不可になってるものばかりなのが。

『ヴェルは少し女の子の扱いを考え直すべきね。特に私の』

『いや、この年齢、この状況で人間関係にまともな思考を割く余裕はないだろうお互いに』

まぁ二人に懐かれはじめた、という自覚はある。
恋愛要素などではなく、信頼や依存的なものだという認識ではあるが。
そりゃプレシア以外では初めて関わった、共に生活している他人だ。
ましてそれが異性ならば、距離感が偏るのは仕方ないとも言える。

言わばシャアに父親を見たクェス状態だ。
クェスでさえ恋慕したハサウェイやギュネイを
意識されていると認識しながらも放置プレイして
シャアという父親代わりからの愛情を求めたわけで
それより年下で閉鎖された人間関係しか体験したことのないフェイトにとっては
異性への家族愛以外の感情など認識どころか知る由もないだろう。
友達でさえ言葉では知っていてもどうすればいいのか分からないのだ。
そしてそれはアルフも同じ。

一人と一匹から依存されはじめてる今、このあたりが分水嶺だとも気づいている。
これ以上踏み込めば結果的におそらくフェイトに肩入れしてしまうだろう。
……だがまぁ、知り合って既に20日以上。
アリシアとプレシアはともかく、フェイトとアルフには
目ざとくもジュエルシードを持った俺を見つけて拾ってくれやがった恩もある。

『思うんだけどヴェルって基本ダウナー系ツンデレよね』

『やかましいわ淫乱氷精』

ニュータイプでさえ他人から向けられる感情については他人からの指摘がなければ
先入観と経験で錯覚と誤認を起こすのだ。
化け物に憑つかれているだけの一般人にとっては
まさに触れれば火傷するのが目に見えているのが、他人との付き合い方。
というか誰にも関わらずひっそりとアイスクリーム屋したり
未開の次元世界の惑星で雪山暮らしとかしたいわ……。
……あぁでも雪山暮らしは絶対この女郎の悪影響な気もしてきた。

『いいじゃない私と二人きりで雪山でしっぽりねっとり』

『二人きりになった途端に寿命まで弄られちまいそうだ。あとエスパーすんな』

さて、ここまで色々現実逃避はしたが、仕方ないだろう。
これ以上無理に拒否したらその理由を問われる。
先を見据えた行動より目の前の人物との人間関係を優先するしかないだろう。

「というかだ。わかった。行くわ行けばいいだろアルフ、担ごうとするな。抱き上げようともすんなコラ」

「んじゃ、温泉へ向かってれっつごー!」

最近本当に遠慮がなくなってきたアルフと共に、温泉へと向かう。
そして前方からやってきたのは、月村すずかとアリサ・バニングス。そして高町なのは。
あぁちくしょう、俺一人の時にすれ違うとかならまだよかったんだが。
するとアルフは一瞬驚いた顔をしたあと、嘲笑を浮かべて高町なのはに顔を向けつつ

そのまま通り過ぎた。

「えっ!?これって!?」

高町なのはは驚いた表情を浮かべながら立ち止まり、こちらに振り返る。
そしてアルフへと視線を向ける。

『あ、そっか。そういやフェイト達って俺に高町なのはと
接触してほしくないから俺を拉致、もとい保護したんだっけ』

『ということはヴェルが気になっていた台詞は今頃念話でやってるってことかしら』

これは幸運。そして問題の月村すずかは
アリサと共に声を上げて振り返った高町なのはにどうしたのかと尋ねていた。

『いきなり声だしたなのはの方を見てるだけっぽいな』

『バレなかったと見るべきか、気になったけど声をかけなかったか微妙な所ね』

『ま、この場さえ凌げば後はどうとでもなるだろ』

『そういって上手くいったためしががなかった事をそろそろ自覚するべきよね』

『いや、自覚したところで今まで全部突発的すぎて防ぎようがないものばっかりなんだが』

そんな台詞を言いながらアルフと分かれて男湯に向かおうとする俺。
そして案の定浴衣の袖を掴む駄犬。

「だから無理だって。大人しく一人で入ってこい」

「むー……アタシ以外に人がいるかもしれないし。でも夜は入ってもらうからね!」

「夜も普通は人いるだろうよ」

「なんならアタシが風呂限定で結界を張るからさ!」

「そしてうっかり結界解除して悲鳴でビンタで通報の流れですねわかります」

「ぐぬぬ……絶対入るんだからねッ!」

そう言い捨てながら女湯へ向かうアルフを見つつ
自分は男湯へと向かう。

「あれ絶対自分でもなんで意固地になってるかわかってないよな」

『そうでしょうね』

男湯の脱衣所に入ると、脱衣籠は全て開いていた。
どうやら人は自分以外にはいないらしい。

「時間帯的には確か……高町家の長男は部屋、家長は奥さんと散策中ってところか」

『そうなの?』

「あぁ、これで夜さえ回避出来れば問題はないだろうよ。
というかチェックインこそしたけど泊まらない可能性も高いし」

『あら、そうなの?』

『泊まったら翌日朝に旅館でフェイトとなのはが遭遇とかしそうじゃん』

『あぁ、成程』

そんな事を話したり、レティニアがやたらと俺の体格を誉めはじめるのを全スルーしたりしつつ
それなりに温泉を楽しんでから湯から上がり、服を着て湯場を出ると

「あの、少しお話させてもらいたいのですけれど」

目の前には紫がかった髪を持つ長髪の少女と短い髪の女性。
というかぶっちゃけ先ほどすれ違った吸血鬼の妹こと月村すずかだった。
隣の女性は……確かメイドだっけ?

『問題なくスルー出来たと思ったらばっちり勘付かれてたというオチかコレ?』

『さて、どうかしらね』

務めて無表情を装いつつ、湯上りしっとりだったお肌は
早くも冷や汗べっとりなお肌へと変化しはじめている。

「……俺になんか用ですか?」

「ここではなんですので、フロントのロビーで」

そう言ってメイドさんの方は俺の後ろに回り、月村すずかは俺の左隣へ並んだ。
やっぱりバレたのだろうか、それとも先ほどの高町なのはについてだろうか。
出来れば後者がいいなぁ、知らぬ存ぜぬを貫きたいなぁとか現実逃避しつつ。

『これはヤバいかなぁ』

『焦ってる割に言動が落ち着いてるわね』

『こういう状況はなんかもうアレだ、なるようにしかならん』

『とうとう悟っちゃったのね』

そしてロビーに着くと
人はフロントに待機している従業員以外は
いわゆる細マッチョと言える鍛えられた肉体を浴衣に収めた青年と
隣の少女をそのまま大きくしたような女性が窓際の角の席に座っていた。
そちらへ近づくと、女性の方が声をかけてきた。

「いらっしゃい。立ち話もなんだから、座って」

そう言われ席の奥へと座らされた。
そしてまず女性が口を開く。

「こんにちわ。いきなり呼んでしまってごめんなさいね。
私は月村忍。こっちの彼は高町恭也。で、こっちが」

「妹の月村すずかです」

「ノエル・K・エーリヒアカイトと申します」

「はぁ……ヴェル・ロンドと言います」

初めて名前を知ったのはメイドさんことノエルさん。
さっきは俺の後ろに付いてたって事はそれなりに戦う心得のある人なんだろうけど。

『まさかトゥーハンドでダサいガンカタしたりはしないよな?胸あるし』

『判断基準は胸なの?』

『あっちのノエルは本当の意味で希少価値枠だからなぁ』

なんてくだらない妄想をしていると、月村忍が真面目な表情をして一言。

「単刀直入に聞くけど、貴方って犬か何かの魔物かしら?」

『『バレてたのはアルフ(駄犬)の方だった!?』』











てなわけですずかの吸血鬼の嗅覚炸裂。
犬臭い→なんか違和感→お姉ちゃんに報告→ヴェル君に白羽のYA。
違和感なくノエルさんとお近づきになるためには
畏怖の象徴高町家の長男と吸血鬼の長女もつれてくる必要があるかなと。
これで危機感倍プッシュだ!
まぁこの作品はこんな突発的な何かがおきても
特に何事もなくスルーされる可能性が大きいわけで。
それと感想でのノエルさんへの喰いつきを見ると
個人的にはヒロインとまではいかなくても
最低でもクイントさんくらいまで深く突っ込んだキャラとして
登場させてあげたくなってしまったのもあります。
あぁ、人妻、妹系に続いてメイドまで……マジ節操ねぇな作者。

そして上・中なんて後につけてるけど
あと一話で温泉編が終わる気がしない件。
嘘みたいだろ…この後まだ高町家からの体格へのツッコミやら
自分の境遇をいかに誤魔化すかとか必死に頑張っても
夜にはフェイトとなのはのターンが待ってるんだぜ……。

以下感想返し

かれーるーさま
かくいう私もこんな小説書いたっけなぁくらいの状態でしたし
私のOperaのブックマークからはいつの間にか消えてました!

なにはともあれ再開です。亀もドンびく更新頻度になるかもしれませんが。

金髪巨乳教祖様の作品はおススメですよぉ。
必要なネタ知識は少なく、それでいてキャラが濃くて羨ましい限りです。
何より神(更新)速使いですものあの方。それだけで崇拝レベル。
もちろん挨拶は「金髪巨乳!」ですよ。

kyokoさま
いや、言ってから気づきましたけど私も今のところは全くヴィジョンが見えてきませんねぇ。
でも「未亡人」で「美熟女」で「出来る女」という高スペックさを併せ持つ
リリカル世界の優良物件だと思うわけで。
もちろん真っ当にヴェル君が彼女たちにフラグ立てるとするなら
そこらのオッサンキャラを超える圧倒的な渋さを
備えてもらうくらいの事をやらかすしかないわけですけど
それでも歳の差がなぁ……。
でも他の作品のようにジュエルシードにアンチエイジング頼んだりはあれなので
「実はあの世界は25歳で成長が止まり、老化が始まるのは50過ぎてからなんだよ!」
という方向でいってみるとか……?

メガーヌさんとルーテシアの母娘丼コテージ生活エンドは前にもお話しましたが
「そこまで続くかがそもそも(ry」
と言った具合ですのでどうにも……
そもそもメガーヌさんの旦那の設定すらまだ考えてない状態。
いっそルーテシア消滅させるか……?マテハヤマルナ俺。

ラ・ヨダソウ・スティアーナで思ったんですけど
作者の意向次第で(転生したりトリップしたり憑依する)世界が選択されちゃうという
ある意味ではオリ主ってどうあがいても邪気眼なんだなぁと。
仮にそんな男が料理屋なんてやったら来る客も濃いんだろうなぁ…世界の選択的に。



[25569] 無印7話:ここで一言、ファンタジー世界の子供の子供っぽくなさは異常・下
Name: 涼雪◆078c5e78 ID:742b236a
Date: 2012/03/09 04:09
2012/03/09
04:08に加筆。


「いえ、違うわね……キミの中にいるソレは……何?」

月村忍は自分でよく確認もせずに彼を呼び出した事を今更ながらに後悔した。
妹の「さっきすれ違った人から私たちと似たような感じがした」という言葉を受けて
もし自分達にとって害を成すものであった場合を考え、一応問いかけるだけのつもりだった。
妹とメイドが連れてきた少年は、なるほど確かに一目で何かが違う。
そして彼から微かにする臭いは自分の叔母と似た感じがした。
ということはこの少年も見た目こそ人間だが、犬か何かに所縁のある何かが化けたものだろうか?
そんな疑問を直球でぶつけながら、その時彼女は初めて真正面から少年を見た。
濃い蒼の髪にアメジストの瞳を持つ少年。

(この少年はただの魔物なんかじゃない……!!!)

感じる何かは気配こそ強くは感じないものの
存在そのものへの畏怖とも呼べるものはとてもそこらの低級な魔物どころか
知人がペットにしている300年以上を生きる妖狐ですらも圧倒しそうな程だった。
300年モノの妖怪といえばそれは最早災害と呼べるシロモノであり
人はなすすべもなく蹂躙されてしまう程の力を秘めている。
しかし少年の中にいる何かは数百年という時間が数秒に感じる程の時を刻んでいる。
それは言ってみれば神話、伝承レベルのモノたちの領域であり
既に魔物や妖怪などという括りからは逸脱している。
もしこれが彼が意図的に隠した状態でこれなのだとしたら。
もし正体を現して、それが自分達に敵対してきたとしたら。
それに気付き、内心でこれは命のやりとりになるかもしれないと感じ始めた頃。

『あら、今度こそ完全にバレたって奴かしら?』

『だろうな……つかお前が特一級のバケモノだった事を忘れてた件。すげぇ警戒されてるんだけど?』

『そもそも今まで回りにバレたことがなかったからねぇ』

ヴェル・ロンドはどう切り抜けたものかと悩んでいた。
レティニアは滅んだとはいえ一つの世界で氷を司っていた精霊。
さて、ここで一つだけ疑問が浮かぶ。
氷の精霊は他の有名な精霊より格が低いのかということ。
答えは否である。
仏道で言う所の地・水・火・風・空の何れでもなければ
陰陽道でいう所の木・火・土・金・水にも当てはまらない。
氷属性なんてものがないファンタジー世界では風か水の派生となっていたりもするが
彼女の世界で彼女は他の精霊と同じくらいには強かったという。
例えば地や土は地面にあるもの以外にも重力や質量等を操る事がある。
水は植物や動物の細胞に働きかけて傷をいやす事がある。
火は熱そのものであり、物体を高熱にする事も出来る。火のない所でも熱量を操れる。
風や空は気体全般を操り、気体になるもの、気体によって発生する雷なども操る。

ならば氷はどうか。
ただ液体が個体になるだけ、温度が下がるだけ、ということはない。
そう、レティニアの真骨頂は”分子レベルの物質の振動の停止”
伊達にEFBがネタにされているわけではないのだ。
それは須らく動くものを停止させてしまう絶対の法。
矛として使うことも、盾として使う事も可能な能力である。
もっとも、そういった「恥ずかしい能力合戦」になった場合
どちらが上手く使えるか、どちらがより強力かで勝敗が決まる世界になってくるわけだが。
まぁ何が言いたいかと言うと、有名どころの精霊とも余裕で拮抗出来る存在がレティニアであり
彼女は元の世界では人では到達しえない高みの存在だったわけだ。
そしてそれは、次元世界でもロストロギア認定確実の強さである。
地球に関しては、未知数すぎて判断しにくいところではあるが。

『まぁ、匙加減が難しいのが難点なんだけれども』

『手加減を知らない精霊程困ったものもないだろうけどな』

精霊で彼女より格上となると某雷落とし魔法を食らって
「そんなバカな!?」と叫ぶ時の精霊兼魔王クラスとかになってくる。
しかし魔法だらけの次元世界で生活しててバレなかった
(リリカル世界の魔力とは質が違うため感知系は全スルーできた)のが
地球にきて20日そこらで原作関係者に速攻バレるとかっべーわ、地球マジっべーわ。

『まさか都築世界と見せかけて他作品設定がくるとかはないよな?』

『吸血鬼や魔物がいるくらいだからありえるかもしれないわね』

『流石にゴメン被りたいところだがなぁ』

しかし……さて、どうしたものか。
目の前の吸血鬼と言われる一族の女性は
レティニアの存在に正体こそ分からないものの気付いている。
この状態からどれだけ友好的にこの場をスルー出来るか。

『思うんだけどこの状態ってヴェルが前に言っていた異議アリ!って言葉が有名なゲームみたいね』

『どちらかというと、何事もなく終わる予定に不満を覚えたGMが
鬼畜判定値のダイスロールさせた卓に近い。
もしくはあれだ、黄金の魔女が赤文字証明してきた感じ』

『よくわからないけどまぁ、ヴェルならこれくらいの事は言い回しでなんとか出来るでしょう?』

『でも、お前の存在がバレていないというこれまでの前提が既に崩されてるからなぁ』

そう、俺の中にバケモノがいるというのが確定された情報として
相手に渡ってしまっている状態からのスタート。
ここからいかに自分の中のバケモノが
彼女達にとって無害で無関係で無意味なシロモノかを
出来る限りこちらの情報を隔した上で納得してもらえるか。

近日中に管理局や次元世界の存在も高町家の長男から妹を通して知られる可能性がある以上
自分の中のバケモノはこの場にいる面子だけで隠匿してもらえるような言い回しが必要になってくる。

「……あー、確かに俺の中には異物が入ってますけど、俺はただの人間です
貴女の言う犬か何かの魔物ってのは俺の居候先の住人ですね」

「へぇ、それじゃあ単刀直入に聞くけれど、貴方の中にいるソレは何なの?」

「えーと、例えるなら崩壊した妖精界の生き残り?」

正直「よし分かった、説明しよう」でシャダりたい気持ちでいっぱいであるが
この説明をミスると後々厄介な事になるのは目に見えている。

「まぁ、なんていうか、貴女方もオカルトでファンタジーな世界の住人だからこそ
こうして呼ばれたと仮定して、信じてもらえることを前提で最初にいくつかお伺いしますが」

「構わないわ。続けて」

「ではまず、ミッドチルダという単語に聞き覚えは?」

「いいえ、ないわね」

「じゃあ、魔法は現実に存在する?」

「いえ、魔法みたいな力が存在するのは確かだけれど
厳密に魔法が実在してるかは知らないわ」

「最後、貴方方は自分の正体、もしくは裏の顔を秘匿している?」

「そうね。だから自分達が平穏に生きるためにこうして貴方に声をかけたわけ」

これでまず先手の札は切り終えたかと確認しつつ、次にどこから説明していくかを考える。
もちろん今のはこちらが相手を知らない事が前提の質問。
そして相手が嘘をつくかどうかの確認でもある。
どうやら向こうも穏便に済ませられるならその方がいい様子。
ならばこちらも嘘はなるべく使わない方向で行く事にする。
後で嘘だった事を知られて話がこじれる可能性も考えてだ。

「まず、俺はこの世界の人間ではないです。
あぁでも、別に並行宇宙だの未来だのってわけでもないです。
別次元の世界に浮かぶ惑星の一般市民。
ただ向こうの世界は魔法と呼ばれるシロモノが当たり前に存在してますけど。
地球では科学を用いて行っているモノの一部に利用したり、相手を殺す事のない兵器として使ったり
とにかくまぁ、そんな世界の子供です」

「それはまた、凄いぶっとんだ事実が出てきたものね。
それでその世界の住民である君が、何故地球に?
まさかキャトったりとかするわけ?」

「魔法の認知以外は全く同じ外見の存在がキャトるとかナンセンスでしょう。
まして地球人は魔法が認知されていないだけで全く魔法が使えないとは限らない。
それどころか時には魔法すら凌駕する異能持ちだって現れそうですしね。
おいそれと手なんて出されないと思いますよ?まぁただの子供の戯言ですけど」

魔法が使えない、異能というところで目の前の彼女とその妹が一瞬反応したように感じた。
と言っても、こちらが向こうの正体を知っているのが前提でもない限りまず気づかれないレベルである。
そして月村忍も何事もなかったかのように、むしろ少し笑みさえ浮かべつつ口を開いてくる。

「ただの子供、ねぇ、貴方は13歳くらい?それにしたって言動が大人びてる気がするけど」

「あー、体格は諸々の事情があって恵まれてまして。今年で9歳だったり」

そして場が静まり返った。
やっぱりおかしいのだろうか、9歳で150㎝あるのは。
転生前のスポーツ少年団のバスケチームにいた奴なんかは普通に150ある奴もいたし
ミッドの学校にも同い歳で自分より背が高い奴も数人はいる。
なので今まで気にした事はなかったが。

『(やっぱり身長云々じゃなくてその細マッチョな筋肉が問題なのは気づかないわね……)』

「えっ」

「うそ…同い年!?」

「9歳とは思えない体つきだな……」

「何か苦労なされたんですか?」

「まぁ、口調が大人びてるのは外向けって奴でして。
そこらへんは察していただけるとありがたいです
あとノエルさんでしたっけ?そこは一番知られたくない所です。
主にストレスがマッハ的な意味で」

「察しろって言われても9歳ならなおさらそんな口調はおかしい
別に何かするわけじゃないんでしょう?なら元の口調で構わないわ」

「あー、まぁでも目上の人には一応この口調保ってるんで。
で、まぁなんで地球にいるのかでしたっけ。
簡単に言うと、こっちで誰かがいわゆる召喚魔法ってのを使ったんです。
召喚の原因は恐らく俺の中にいる存在。でも俺が一緒にいる上に
元々コイツの力自体は万能でもなんでもない上に、俺という存在で弱体化も弱体化。
そもそも召喚した人は俺に何かさせたいわけでもなく、ただの事故だったらしくて。
しかも目の前で気絶してるわで、とりあえずその場から逃走して現状把握。
でまぁ、魔法の認知されてない世界に飛ばされたと確認して
元の世界に帰る方法もないしどうしたもんかなーって悩んでたところに
同じ世界出身でこっちに来てるって人が保護してくれたってのが今の所の現状ですねぇ。
この旅館にも至って普通に温泉入りに来ただけだったりします」

これでここまで嘘はほぼない筈。
弱体化も厳密には嘘ではない。
レティニア本体は単体で次元転移すら行えるのだから。
しかし目の前の人たちの目線が、警戒から別の何かに変わっているのは気のせいか?
これで後はレティニアの正体を適当に答えておけば問題ない筈。

「9歳で随分と刺激的な事に巻き込まれてるわねぇ貴方」

「可哀相……」

「それがいい修業になってるって事なのか」

「……ヴェル・ロンド様、お飲物のお代わりは?」

「地球に来て1ヶ月経たずに初対面の人からマトモに同情されるとかどういうことなの……」

『ヴェルェ……』

『おいやめろ馬鹿。この話題は早くも終了ですね』

こうして原作脇役組に呼ばれた日の夕方、俺は初めて同情という名の感情をモロにぶち当てられたのだった。









はい、というわけでバレたところからいかにほのぼのさせるかが鍵。
そして結果はまさかの「はぢめてのれんびんのまなざし」でした。
この先彼女達とらハ、脇役連中がどれくらい絡んでくるかは未定ですけど
この後男湯で
士「遅かったじゃないか」
恭「鍛錬しよう、盛大にな!」
みたいな事になるとしか思えないのは私だけではないはず。
ちなみにレティニアのいた世界がどれくらい殺伐としてたかは未定。
終末レベルの鬼畜能力持ちの存在がウヨウヨしてそうではありますけど。


以下感想返し

メロッサさま
仰る通り…!仰る通りでございます…!
でも直さない。それがジャスティスだと信じて!

塩さま
とはいえ、三歳児のパラノイア的思考に共感しちゃう魔法人妻がいる世界ですから
そのあたりはまぁ、本人も後で「あるぇー?」って思ってそうではありますな。

もかまったりさま
そう、違和感しかない。でもその違和感が大切かなと。
無印やっぱりずるずる感があります、か……。
どうにか精進したい所ではありますが、草食(にならざるを得ない)系主人公は動かしにくいのが難点ですなぁ。

てんぞーさま
年上人妻!ならいくらでも発言されますよこの小説では。
もち強引なのは仕方ないかと。何せ自分でもこの話は苦渋の選択でした。
それでも温泉編だけで5話くらい使っとかないと
無印何事もなく終わっちゃう予感しかないんですよ!(ひどいネタバレ

やったねヴェル君、はじめてまともな同情をされたよ!

筋肉大旋風さま
コトリザバス「掛け算大好きと聞いて」
ちなみにルーテシアの手持ちの召喚獣のうち
触手だの謎の白い液体だのはガリューとメガーヌさんが親子フィルターで検削済み。
首おいてけになる可能性は低そうです。
何せ命のやりとりを危惧しているのに何故かそういう展開にならないですしwww

通りすがりさま
実はレティニアのバケモノ臭さとアルフの犬臭さがそなわって最強に見えただけだった、という事でした。
なのはですら念話されないと気づけない見事な人化したアルフと
リリカル魔法では探知されなかっただけでとらハ組にはもろバレなヴェル君。
つまりヴェル君は犠牲になったのだ……美女美少女との同棲という名の犠牲にな……。

ルーテシアちゃんのパパについてはもう不明のままでもいい気がしますよね。
最強と名高い「戦闘民族ヒダカ家」でも父親の設定は結構不明ですしね。
「戦闘民族高町家」や「理不尽民族ナカジマ家」があるリリカル世界ですし。




[25569] 無印8話:いい展開が思いつかなかったまま引き伸ばされた温泉編終わり
Name: 涼雪◆7a2751f0 ID:6ea60729
Date: 2012/05/03 03:34
※なのは世界の「西暦設定」は公式にはありません。
暦で当てはめると2006年らしいです。つまりアレはもう発売されているということ。



「とまぁ、そんなわけで、向こうでもこいつの存在、というかさっき説明したロストロギアみたいな
強い力はいいこと無しなんで普通に一般人として生活してるんですよ。
今の所貴方方以外にバレた事はなかったんですけど
まさか飛ばされて20日そこらでバレるとか
地球こわすぎワロえないって感じで実はさっきまでマジ体が震えてやがりました」

「なるほどねぇ……あ、怖がらせちゃってごめんなさいね」

『ヴェル、口調壊れはじめてるわよ』

『……ヤバイ気が抜けてた。しかしネタスルースキルもすげぇな忍さん』

「いえ、地球にいるのも居候させてもらってる所の人が送ってくれるまでですから。
誰にも言わないでいてくれるなら構わないですよ」

「そう。しかし氷の精霊か……パッと思いつくのはやっぱりテイルズオブエt「それ以上はいけない」どうしたの恭也?」

「いや、なんとなく言わなければいけない気がしただけだ」

なんか寡黙なイケメンが宇宙電波を受信した気がしたがそんなことはなかったぜ。

「こっちの世界だとフィクションで結構いますよね?」

「そうね、ファンタジー世界ではありがちだわ。強さは世界によって違うけど」

「まぁロストロギアの定義って”消え去った世界の危険なモノ”って括りですから、強さはあんまり関係ないんですけどね」

「なるほど。ちなみにその氷の精霊さんとはお話できたりとかは?」

「時々意志みたいなものが伝わってきますけど、本人は今の状態に満足してるみたいで
勝手に体の外に出て喋ったりとかは今のところないですね。
ついでに言うと暴走できる程に凄い力があるわけでもないですし」

そう、今のところはない。何?ちょっと前にあえぎながら出てきただろ?EFBはチートだろ?
だからちょっと前の話だろ?今はないんだ、そう今は。
瞬間冷凍なんて今の冷蔵庫じゃ当たり前に出来る事だからすごくないに決まってる。
うん、この言い訳は割れながら少し無理があったかもしれない。

「そう。それじゃあ私たちの事も話しておくわ。私たちだけが知ってるってフェアじゃないし」

「あー別にそんな事しなくても「貴方は吸血鬼って知ってる?」あれ?このパターン懐かしい気がするぞ……」

そうして話してくれやがったのは自分達が吸血鬼と呼ばれる一族だということ。
とはいっても伝承にある吸血鬼の能力も特性も自分からしたら
なにその秘匿の簡単さ、羨ましいってレベルじゃねぇぞってくらいのモノだった。
血は能力を使う時などに少量必要なだけ。吸血衝動は普通に生活してる上では殆ど起きない。
運動能力は常人を超えるが、彼氏が一般人の癖に自分と同じくらい強いとかなんとか。
後半惚気られた気しかしないが、まぁそんなところだったりする。
にしても吸血鬼っつったらやっぱりあれだろ、ほら

「ご先祖さまが100年に一度、キリストの力が弱まる時に復活の儀式で蘇るとか」

「そんな邪教徒に崇拝されるようなもんじゃないわね」

「親戚の方がイギリスで吸血鬼狩り専門の部隊にいらっしゃってバチカンと仲が悪いとか」

「血の力で超回復くらいは出来るけれど、他人の命をストックするなんてのは無理ね」

「吸血鬼だけが持つ第五塩基を投与する事で人工的に吸血鬼を作り出せるとか。
で、その幸せになれるお薬の名前が変若水とか」

「遺伝子的には常人と差はないわね。うちの叔母みたいな人狼とのハーフだと少し違ってくるらしいけど。
あと幕末の京都で羅刹と呼ばれる鬼が暴れたりはしてないわよ」

「それはよかっ「ただし……」ただ?」

「吸血鬼以外の魔物には人に危害を加えるものだっているわ。
もちろん吸血鬼の中にも過激派みたいなのはいるし、そういうのはただの敵ね。
果ては妖怪までいるんだから、それを狩る仕事が存在しているのは確かよ。
退魔士だとかそういうのがね。実際この街にも何人か退魔の力を持っているものはいるわ」

「ふむ。ちなみに吸血鬼に噛まれて吸血鬼になっちゃうって話はないんですよね?」

「さっきも言ったけど私たちは血で特殊な能力が使えて身体能力が高い以外はただの人間」

「つまり紅の胞衣を被りし子、なんてのもいないわけだ……いやぁよかったよかった」

「そもそも吸血鬼という異能の血筋ってだけだしね。
混血も純血も関係ないわよ。異能に目覚めるかどうかが問題で。
にしても随分色々と聞いたけど何か吸血鬼に思入れでもあるの?」

「いや、ちょっとした確認がしたかっただけです。
ついでに言うと別の世界には割とこの世界のファンタジー通りの吸血鬼、いるらしいですから」

「本当に!?」

「まぁなんでも、日常生活に支障が出るレベルで”ファンタジー通り”なんで
その世界では脅威でも次元世界規模で考えるとさして危険ではないらしいですけど」

所々忍さんの回答に電波だか宇宙意志の介入があったような気がするが
とりあえず自分の思いつく限りの他作品介入の可能性を聞いてみた結果がコレである。
どうやら吸血鬼関連でヤバイのはいないと判断していいらしい。
ちなみに型月関連は考えるまでもない。あれはもうなんか別モノとして考えるべきである。
強いて言うならこの世界の日本に冬木市がなければセーフ。美咲町はいろんな所にあるので除外。
そして自分の実家を探すために行ったネカフェで確認したが冬木市は見当たらなかった。
あと別世界の吸血鬼だが、これは馬鹿親父の話で少しだけ出てきたので詳細は知らない。
なんでもその世界の亜神に匹敵するとまで言われる存在でさえ、リリカル式魔法のチート具合の前にはモロかったとか。
そりゃそうだ、どんだけシリアスに描写したところで非殺傷なんていう温い方法でも割と無双出来るのがリリカル式魔法。
それこそ型月仕様でもない限り他世界の魔法体型では科学と融合したリリカル式魔法に太刀打ちするのは難しい。

『というか最初に聞いた世界って……もしかしてアレ?』

『ミッドチルダのゲーセンに置いてあった時は吹いたな。流石名作と言わざるをえない』

『でも鞭で倒せる吸血鬼なんだから今更混じった所でどうにかなるわけでもないでしょう』

『そもそも時代設定的に2035年までは何も起きないからな、悪魔城シリーズ』

『それ聞く意味あったの?』

『いやほら、ベルモンドがいたら化け物相手にも有効な近接格闘術を習ってみたいな、と』

『鞭以外も強いの?』

『設定どおりなら身体能力も格闘術も化け物とタメ張れるらしい』

『画面の中では鞭振ってるだけなのに……』

その後、適当な話をして解放されたわけだが。
ん?吸血鬼の一族の誓いだのはどうしたかって?
確かに出てきたけど「それって異世界人にも適用されるの?」
って言ったら忍さんが悩み始めてうやむやになり。
ちなみに戦闘民族の長男さんは以外と理性的だった。
流石に9歳児に面と向かって「私にふさわしい相手か試させてもらうぞ」とかは言わないらしい。
ついでに言うと御厄介になってるフェイトのセーフハウスは隣町。
あまり会う事もないだろうということで、なんかあったら翠屋か月村邸までという住所の書かれたメモを貰って終わり。
でまぁ、その後は二度風呂に行く気もせず、アルフが風呂から戻るまで温泉名物ゲーセンと思ったら
流石山奥にぽつんとあるだけあってそういうのがないというオチでしたという。
する事もないので適当に茶を飲みつつ待っていると

「お、ヴェル」

「アルフか。どうだったよ初めての温泉は?」

「いいもんだったね!」

「毛とかまき散らしてきてないだろうな?」

「流石にしないさ!まぁ、リラックスしたら耳は飛び出してきたけど」

「どんだけくつろいでんだよ」

「まぁまぁそれより、なんかあったの?」

「わかるか?」

「そりゃ他の人間の残り香がね」

「どうでもいい時に役に立つんだなその鼻」

「で、何があったのさ?」

「んまぁ、端的に言うと現地のトンデモ人間その他達からの接触があった」

「トンデモ人間?」

「俺たちっていわば異世界人じゃん?ついでに言えばアルフは化けた犬。
それに気付いた現地の人外その他が俺に話しかけてきたってわけ」

「へぇ……ってそれってマズくないかい!?」

「いや、俺は異世界からの迷子で、今は同じ異世界からこっちに仕事で来てる
人の厄介になってるって事情を説明したらあっさり納得してくれたよ」

「それはまた、人がいいというか……」

「あぁ、基本的に善人って感じだったよ。とりあえず何かするつもりもなければ
そのうち帰るって言ったらこのメモ渡して終わりだ」

「喫茶翠屋に月村邸、ねぇ……」

「ま、問題はなかったよ。盗聴、尾行もなし。マジで善人だわ」

さて、高町家その他御一行は一泊するんだろうが、こちとらこのあとは
日帰りプランで予約したのでフェイトと晩御飯を食べてからチェックアウトだ。
原作でもフェイト達が泊まってる描写はなかった。
だから翌日に宿でフェイトとなのはがばったりなんて事もない。

(フェイト、そろそろ晩御飯だが?)

(あ、はい。すぐに戻ります)

(晩御飯、楽しみだねぇ)

(でもこういう所の料理って山の幸メインだぞ。まぁ肉は出るだろうけど)

(あ、それは少し楽しみです)

(むぅ…。ま、肉が出るならいいけどさ)

そんなわけでフェイトが宿に戻ってきてから夕飯にそれなりに舌鼓を打つ。
何故それなりなのかと言えば、季節柄
春の味覚を前面に押し出したものなので、味より粋を求めた品々だったからだ。

「個人的にはタラの芽とかコシアブラとかこごみも嫌いじゃないけどな」

「私はちょっと、クセが強いと思いました」

「アタシはコシアブラっていうのの臭いだけでダメだったよ」

「コシアブラの香りがダメならふきのとうも厳しいかもな。
どっちも本当は味噌と一緒に炒めて珍味にするようなものだし
天ぷらで食べようなんてのは最初だけだからな
でも作った味噌はやっぱり万能だぞ?和えて良し焼き物に乗せて良しで」

「それでもアタシはこの臭いはやっぱりダメだね」

「まぁ今日のベストは桜鯛のしゃぶしゃぶで決まりだったな」

「あ、あのお魚は美味しかったです。桜鯛って言うんですか?綺麗な名前ですね」

「この季節、産卵期に入って脂が乗ってる真鯛の事だな。
鯛なんて現地の人間ですら祝い事や験担ぎくらいでしかくわねーものなんだが
桜鯛だけは個人的にブリやマグロより好きかもしれん」

「ブリにマグロですか。この間ヴェルさんがイナダっていうのを食べさせてくれましたが、あれも美味しかったですよね」

「アオコ、イナダ、ワラサ、ハマチ。全部同じ鰤という魚の事を指すが、大きさと地方で名称がころころ変わる魚だ。
こういうのを出世魚と言うんだが、庶民派には70㎝もある鰤を一匹買うなんて事は出来ないからな」

「イナダでもだいぶおっきい魚でしたけど、あれよりおっきくなるんですか……」

「へぇ、そういうのは面白いねぇ」

「……ちび→ポチ→ドックミート→メンチ→アルフ→駄犬(今ここ」

「プッ………フフッ……!」

「おいヴェル!……フェイトも笑ってないで怒るとこだろう!?」

なんて馬鹿なやり取りをしつつも夕飯を食べ終えて、チェックアウト。
フェイトとアルフはジュエルシードの回収に。
俺はまっすぐセーフハウスに戻ると告げて、フェイト達と別れる。

『で、見に行くの?』

「え、一方的な展開なのは確実だろ、俺の接触は最小限でイレギュラーなんて事もなし」

『まぁそうね。それじゃ帰ってお風呂でも沸かしておく?』

「だな、汗だくで帰ってくる可能性は捨てきれないし」

そんなわけで今回の戦闘はスルー決定。
そういえばフェイトが「お互いのジュエルシードを賭けて」なんて事を
原作で言っていたが、あれの原因判明。
こっちでやってた某カードバトル決闘アニメ(三作目)のせいでした。
どうでもいいけど何故アンティルールなんてリスペクトしたしフェイト。
そして案の定至近距離で初めてDBを撃たれたフェイトは冷や汗まみれで帰ってきた。

「まさかサンダースマッシャーが圧し負けるなんて……」

なんて小声で言ってるけど聞こえてんぞ。

『そりゃ直射と収束じゃなぁ……』

つくづく不条理ななのはの収束砲撃。
なにが不条理って収束してるくせにカウンター気味でも間に合う速度なうえ
こちらの直射と同じくらい極太なのがねぇ。

それから数日後の夕方には少し早い午後。
いつも通りにフェイト達とジュエルシードの探索がてらに買い物を済ませるつもりが
途中なんか見覚えのある魔王……こと高町なのはが原作通りにアリサから怒られたのだろう
意気消沈ムードでトボトボ歩いてるのを見かけたせいで遠回りし
いつもは行かない店に行く羽目になり、ちょっと憂鬱になりかけていたものの
その近くにあった精肉店がなんかありえないくらい品揃えが良かった為
ちょっと興奮しつつも「アレはあるか?」と聞いたら「あるよ」との渋い声。
普段はここまで手のこんだ料理は作らない人間だが、たまにはいいだろうと
価格的にもそこそこ良心的だったのもあって、久しぶりに本気で料理する事にしたのだった。

『なに作るつもりなの?』

「究極魔法の一つ。相手は死ぬ」

『なにそれこわい』

「いやお前のEFBだって究極魔法だからな?」

そんな事をレティニアと言いながら仔牛の骨とスジを下ごしらえしてから焼き目をつけていく。
フェイトのセーフハウスのキッチンは電子オーブンレンジもばっちりあるので
手の込んだ料理もやろうと思えばできるのだ。面倒だからしないが。

「手抜きのための調理機器が気づけば揃いすぎて手抜きじゃない料理も出来るようになる、ジレンマだよな」

『万能をつきつめた結果が、手抜きも凝った料理も出来るって事じゃないかしら?』

「なるほど、道理だけど機能が増えすぎて手が出しづらいって人の事もちったぁ考えろと」

『まぁ私は魔力とヴェルだけで生きていける存在だからなんとも言えないわね』

「霞と煩悩だけとか怠惰すぎるだろ」

焼き色を付けていくとき、焦げてしまうとアウトなので水分を飛ばしながらじっくり焼くのが失敗しないコツ
なのだが、面倒、それでなくてもこの後時間かかる等の理由から割と強火でガンガン火を通していく。
このあたりはもうぶっちゃけ人によって様々だと思うんだ、拘る人、拘らない人。

「ちなみに原作組はただいま友達と険悪だったり思いつめた表情で使い魔と話し込んでたりします」

『……ヴェル?』

「ん?なんかしたか?」

『……なんでもないわ』

そう、原作通りなら明日には管理局が来る。それもご丁寧にタイミングは読んで。
ほとんどの方がアヤツは空気が読めないと言っていたが、俺はそうは思わない。
あのタイミング、あの制止の仕方。男の子なら仕方ないだろう、うん。

「話はあとで聞かせてもらう!次元振で世界は崩壊する!」

『ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!』

「親の心、子の心、大切な心を守る管理局からきた男、クロノ・ハラオウンッ!」

『\テッテテーッテテレ!テレッテテー/』

そう、こういう登場がしたかったんだろう、彼は。
いいじゃない目立つ登場の仕方くらい。
羞恥心を捨ててネタに走れるなんて貴重な存在だと思うよ、ホント。

『前に似たようなフレーズの台詞を言ったらこういえって言われたけど、これって何か意味あるの?』

「大事な事だからな。いっそ今からでもソフィア(※忘れてる人も多いだろうけどデバイスの名前)
に音源つっこんで全力ステルスでBGMだけ流しにいきたいくらいだ。やらないけど」

『……こないだ入れてた曲は絶対にやめなさいよ』

「えーいいじゃん」

『制作年がこの世界の暦で1967年とかその場にいる子達の誰も反応してくれないわよ……』

「おのれ、これもナゾーの仕業だと『それはないわね』……こーもりーだけーが『知らないわよ』」

流石に別の部屋にこれからジュエルシードの強制励起という荒業を起こす事を決心したフェイトと駄犬がいる中で
フハハハなんて笑ってられないのでこれ以上は自重する事にする。
焼き色がいい感じについたのを更にフライパンに油を敷いて中まで火を通していく。
この時に余分な臭みやらえぐみやらが出てるので、油は捨てる。このあたりを手抜くのは流石にアウト。
鍋に肉を移したら今度はタマネギ、ニンジン、セロリを大雑把に切ったものをこれまたフライパンで軽く色が付くまで炒める。
それも鍋にぶちこんだら水を多めにどばーっと入れて強火でガンガン沸騰させる。
出てきたアクを油ごと掬い取っていく。

「アクと一緒に浮いてきた油は悪しきもの」

『シャレのつもり?』

「いや、どっちかっていうとメカ鈴蘭に肖ってみた」

『なにそれ?』

「そういえばこっちではおりがみネタは無しだったっけ」

アクが白くなり、出る量も減ってきたところで
塩ひとつまみ、にんにく、トマト、トマトペースト、ブーケガルニを上からぶちまけていく。
この段階で既に1時間。面倒すぎるだろ相変わらず。流石究極魔法。

「ここから更に最低8時間、基本10時間は火はつけっぱなしだ」

『……ガス代大丈夫なのそれ?』

「独り暮らしだったら軽く死ぬレベル。でもこれ作れば冷凍効くし中々便利だぜ?」

『まぁ、今じゃフェイトからお財布預かってる身だものね』

「出所不明すぎるお金だけどその辺りはもう悟ってるわ」

さて、こちらがひと段落したので夕飯の準備。
今日はガチバトルあるだろうアイツらの事を考えてあっさりめの料理でいこうかなとか考えていると
部屋からフェイトとアルフが出てきた。

「あの、ヴェルさん」

「ん、どうした?」

「今日は、少し危ない方法でジュエルシードを探してみようと思うんです」

「ふむ、何か手伝う事はあるか?」

「いえ、流石にヴェルさんに手伝ってもらうわけにはいかないです」

「そうか。まぁ気を付けろとは言わんが、引き際だけは見誤るなよ。後の事を考えて行動するように」

「はい」

「大丈夫だって!アタシだってついてるんだからさ!」

「うん、頑張ろうねアルフ」

「んじゃまぁ、今日は少し軽めのご飯にしとくかね」

「えーお肉食べようよお肉」

「ボテ腹で鉄火場行く気か駄犬め」

「あの、その鍋は?」

「これは明日以降のお楽しみだな。こいつを使って作る料理はどれも一級品になる魔法のソースってヤツだ」

「なんかもう既にいい匂いがしてるねぇ!」

「てなわけで今日は普通に何か作るつもりだが、何か希望は?」

「「ヴェル(さん)にお任せで」」

「たまにはアレが食べたいとかないのかお前ら」

「「ヴェル(さん)の作る料理はどれも美味しいから」」

「ダメだこの主従すっかり餌付けされてやがる……」

これから夜には怒涛の展開が待っているのは確定的に明らかなのにこの空気でいいのかとか
そんな事を思わないでもないが、こちとら既に突発的なアクシデントには慣れてきはじめた身。
下手に干渉しなけりゃ問題ねーだろの精神で夕飯の準備に取り掛かるのだった。

『台所から洋食の臭いがしまくりのこの状況、仕方ない、ぱぱっとスパゲティでも作るか』

『戦闘中にあの子たちの鼻からパスタが』

『……うん、パスタはやめて明日の朝食用の鮭をメインにしようか』

『言っておいてアレだけど流石にないわよ……流石に……』

『原作イメージそのままのアイツらならないだろうが、見事に餌付けされたアイツらを見てるとな……』

『出来事は原作通りなのに不安になるのはどうしてかしら?』

『これもナゾーの『だからないわよ』』





はい、というわけで結局いろいろ美味しい展開になりそうなもの全スルーでした。
やったねヴェル君、原作崩壊の可能性が増えないよ!



以下感想返し



74さま
個人的な脳内設定でうちのヴェル君は見た目もやし、脱いだら針金な感じです。
有名な厨二ゲーの渋いおっさんキャラの方々みたいな見た目になるようこの時点で調整入ってます。
しかし一番の問題は、渋いおっさんの見た目でセルシウスみたいなバリアジャケット。
痛い、これはイタイ……。

筋肉大旋風さま
まぁ、あまりコジマ汚染が進むとStSでスカさんがキサラギかアスピナみたいな変態になったり
なのはのSLBが主任砲みたいな……いや、あれは既に同格か。
それもこれも
魔力をコジマ粒子と仮定すると、APを削って相手の体力をゼロにすれば相手は戦闘不能という例えにすると
案外わかりやすいのが悪い。リリカル式ネクストネタは誰かやってそうで怖いなぁ。

一通り読み流したさま
聖王教会を避ける理由も明確にはしてませんでしたね。
一応レティニアのせいで魔法陣がミッドっぽく見えるだけの別物にしからないと表記してるのが
理由だとしていたりします。もちろんベルカ式なんて使えないというだけのオチ。
聖王教会所属だから必ずベルカ式にしなければいけないのかなぁ、程度に考えて行くのやめましたという。
魔法での攻撃は、なかなか定義が難しい所ではあります。
気功みたいに流し込むだけで相手をノックアウトさせるものだけを
〆で撃ちこむ形にするというのがヴェル君のスタイルと言う事にしていますけど。
牽制でフリーズランサーだのいろいろぶっ放してますからねぇ。
それを防ぐクイントさんも大概ですけど。

主体性のない主人公を目指しているので
それを望む場合は別の方の作品をお読みくださいとしか……
だって想像してみてくださいよ、うちのヴェル君が無印でなのはやフェイトの前にとんずら使って颯爽と駆け付けて
「黄金の氷の塊で出来た魔導師がただのジュエルシードに遅れをとるはずは無い」
とか言ったり、StSで評議会の脳みそシリンダーに向かって
「地位と権力にしがみついた結果がこれ一足早く言うべきだったな?お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」
とか言ってる姿を。周りからキタ!メイン盾きたこれで勝つる!とか言われないよう目立たないように
最近無駄と自覚しはじめたものの諦めきれずに頑張って隠れようとする主人公ですし。

kyokoさま
この台詞で終わらせるパターンも久しぶりで中々文章考えるのが難しい今日この頃です。
いやいや、あの人たち戦闘民族の癖に美人とくっつく事が運命付けられてるリア充たちですから。
むしろこの先もし高町家に関わる機会がくるとしたら
今はのほほんと温泉に浸かってるだろう行かず後家キャラ筆頭の大学生さんから
猛禽類の目が向けられる事は確定的に明らかという。年上キラーもといヴェル、生きろ。

MORIの人さま
ネタ展開予報を真面目に考えてくださるとは感謝の極み。
うちのヴェル君、元が我流の中国拳法モドキのゲーム技を参考に
足りない動きは魔法で補っての戦法ですから
いい加減そろそろ真っ当な流派に師事するのもいいとは思うんですけど
カウンター足技の猿おとしはともかく
他の攻撃スキルがほぼ剣術で占められてる流派なので
模擬戦はやっても技を覚える予定は今のところないですかね。
とはいえプロット無しの小説なのでどうなるかは作者もわかりません(汗

幻朧さま
何故だろうその一覧のヴェル君の下に無意識で
プレシア・ロンド(妻)
が見えた件。
理性ではシナリオ的に無理だろと思いつつ、未だに本能が
熟女とのイチャラブ生活ルートを求めているということなのか……。



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