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[19101] 【ネタ】だぶる!(仮面ライダーW×けいおん!クロス) 【全体修正】
Name: masa◆d79afa30 ID:6c7b970e
Date: 2011/02/20 19:52
注意!

このssは【小説家になろう!】にも投稿されています。

このssは仮面ライダーWとけいおん!のクロスオーバーです。

作者のssの傾向として著しいキャラ崩壊、厨二病、文章力の欠如が存在します。

それ以上に、作者はこの投稿版の機能をよく把握していません。

以上の問題点を鑑み、尚且つそれでもokという方のみが御進みください。


7/19 全体的に少しだけ修正してみました。

8/1  軽く修正

8/11 2話投稿、全体修正

2/20 全話を修正。







[19101] プロローグ【Wのライブ/探偵と音楽】
Name: masa◆d79afa30 ID:6c7b970e
Date: 2013/02/17 00:38

『ハードボイルドな探偵事務所。そこには音楽というものが欠かせない――言ってみれば流れる音楽こそがその事務所の空気というものを決定付けているのだろう。

当然この鳴海探偵事務所にも音楽は欠かしたことはない。俺はコーヒーのカップを置くと、年季の入ったラジオに近づきスイッチを付ける。

ラジオから流れ出すのは天使の如き歌声。俺は再び椅子に体を埋めると、相棒と共にその歌声に耳を傾けた』











「……2人とも何やってんの?」

「馬鹿!放課後ティータイムの歌声を邪魔すんな!」

至福の時間を邪魔された故か思わず声を荒立てる翔太郎だが、亜樹子が訝しげな顔で尋ねるのは寧ろ当然だろう。
彼女の目に映っているのは男2人がラジオの前にかじりつき、亜樹子でさえ赤面するような小っ恥ずかしくなるような歌詞の歌を大声でデュエットしているというサバトじみた光景。

それはきつい……と、言うよりは痛い。

「放課後ティータイムぅ?」

押しも押されぬ新進気鋭のガールズバンドの名前を、ミーハーな気のある亜樹子が知らないわけはない。
だが悲しいかな、亜樹子が突っ込みたいところはそこでは無いのだ。
しかし如何せんその思いはフィリップには伝わらなかったようだ。
亜樹子のリアクションにフィリップが猛然とマシンガントークを炸裂させる。

「アキちゃん、何を言ってるんだ!放課後ティータイムといえば、今最も熱いガールズバンドじゃないか!」

「ちょ、フィリップくん落ち着いて――」

「初CD『ふわふわ時間』はオリコンの集計では、発売前日の2009年7月21日付デイリーチャートで1位にランクインした後、同年7月25日付デイリーチャートまで5日連続1位を記録。さらに同年8月3日付週間チャートでは初登場1位を獲得。そしてつい最近では武道館でのライブまで成功させた。ビジュアルだけでなく確かな演奏技術に裏打ちされたハイレベルな音楽は玄人さえも唸らせ「フィリップ!」……!?」

「真に彼女達を愛するのなら、今やるべきは語る事じゃない」

「……そうだね、翔太郎。どうやら僕は一番大事なことを忘れていたようだ」

「いいさ、行くぜ相棒!」




「「ふわふわ時間! ふわふわ時間!」」



「……だめだ、こりゃ」











「やっぱ最高だな、HTTは」

「ああ。あれは全力で検索するにはふさわ『え~、ここで放課後ティータイムの大事なお知らせを発表しま~す』

歌も終わり、何やら満足げな表情を見せる2人だったが、パーソナリティーである『園崎若菜』、通称『若菜姫』の『大事なお知らせ』という言葉に二人は即座に表情を引き締める。
イケメン×2は相変わらずキメ顔のタイミングを間違えていた。

『この度!放課後ティータイムの次のライブが風都タワーで行われることになりました!みんなぜひ見に来てくださいね!』

「放課後ティータイムのライブが……風都で?」

呆けたように黙り込む翔太郎。しかしそれも一瞬。
次の瞬間、彼の喉から古い事務所が震えるほどの絶叫が放たれる。
勿論、叫んでいないだけでフィリップも興奮を隠し切れていない。

「素晴らしい!すぐに更なる検索を始めなければ!」

――と、いうか隠そうともしていない。
そしてそんな2人のテンションに亜樹子はとてもついていけない。

そんな非常に珍しい光景が見受けられる中で

後にこのライブが大事件に発展するなど

無論、今の彼らには彼らは知る由もない。









『そう。俺は忘れていたんだ。探偵事務所には、音楽以上に事件こそが良く似合うという事を』



To BE CONTINUE






[19101] Wのライブ/探偵と音楽 依頼編
Name: masa◆c6adf89c ID:6c7b970e
Date: 2013/02/17 00:27


「いいか、お前等!これは俺達の放課後ティータイムへの愛が試される、謂わば、試金石だ……俺達、風都のHTTファンが応援で負けるわけにはいかねぇ」

現在、ただでさえ広くない鳴海探偵事務所の人口密度は限界ギリギリを迎えていた。
そこにはサンタちゃんやウォッチャマンなどのいつもの風都イレギュラーズから、亜樹子の知らない人間まで様々。
そんな彼らに唯一共通するのはただ一点。この風都に於いてHTTを愛しているという一点によって、彼らは団結しこの場に馳せ参じたのだ。

――正直暑苦しい。

しかしその場に集っている兵《ファン》達は上昇し続ける不快指数さえも心地良いとばかりに、その情熱を滾らせている。

その熱気を燃料にせんとばかりに、翔太郎の演説は益々無駄な熱量を発揮させていた。

「だが!俺達の相手はあの放課後ティータイムを追いかけ続けてきた海千山千のファン!はっきりいってこのホームグラウンドでも厳しい戦いとなる筈だ!」

翔太郎の、普段から顰められた眉間の皺が更に深くなる。

彼は、本気だ……!!

観衆達に緊張が走る。しかしそれを面白いと言わんばかりの不敵な声。

「その点に抜かりはない。放課後ティータイムの情報に関してはすでに検索を終えている」

その笑みに浮かべる自身の『検索』に対する絶対的な自負!

そう!彼の相棒であるフィリップだ!

「流石と言いたいが……甘いな、フィリップ……真のファンに必要なものは検索で集めた情報なんかじゃねぇ」

しかし翔太郎はそんなフィリップを寧ろ憐れんだように見つめている。そして徐に来ているシャツのボタンに指をかけ、一気に胸をはだけさせた。

は ね む ~ ん

燦然と輝くその一文が翔太郎の胸に露わになったことで、周囲が俄かにざわつきを見せ始めた。

「し、翔太郎!そのTシャツをどこで……!?」

そんな喧騒など耳に入らないかのように、翔太郎は熱く、ただひたすらに熱く語り続ける。

「そんなことはどうでもいい。いいか?真のファン足り得る為に必要なもの。それは――」

彼は自身の胸を指す。否――

「――魂だ」

――魂を!

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

その瞬間、空気が爆発した。

中には彼の演説に感極まったのか滂沱の涙を流している者さえいる。

「駄目だ、こいつら」

そんな狂騒と熱狂を前にして、亜樹子がぽつりとこぼしたのは、まあ無理もないかもしれない。






そんな馬鹿騒ぎを繰り広げていた鳴海探偵事務所メンバー――というか探偵2人――の元に、一件の依頼が届いてきたのはそれから一月後の事である。





『Wのライブ/探偵と音楽』




それは放課後ティータイムのライブが2日前までに迫った日のことである。
平素、鳴海探偵事務所に依頼が来ること自体は珍しくもない。
多少ええ格好しいなところはあれども、この風都に翔太郎の優秀さを疑う者は殆どいない。

そう。依頼自体はこの風都に限っては割とありふれたものだったのかもしれない。

「はい、どなた――ってええええええええ!!!!!??????」

ただ、その依頼人は翔太郎にとっては十分に非日常と言えた。

なぜならその顔は――

「まさか、あ、あんた……放課後ティータイムの平沢唯!?」

あまりに予想外の人物の来訪は、翔太郎は常日頃保っている(翔太郎主観)ハードボイルド(やはり正太郎主観)を完全に吹き飛ばした。

「ち、違います!私は平沢憂!」

そんな翔太郎の狼狽ぶりに充てられたのか、平沢『憂』もまた狼狽しつつ彼の勘違いを訂正する。

「平沢唯の妹です!」

「……へ?」

そういえば確かにどこだかの雑誌の記事でそんな感じの話題を目にした気もする。
翔太郎は、失礼かとも思いつつも彼女をまじまじと観察してみる。

成程、確顔の造形こそ非常に似通っているが、しっかりと見れば確かに別人。
尤も、それを初見で見分けられる人間は非常に稀有ではであろうが。

「妹さんだったのか……それにしても似てるな」

翔太郎は心から呟いた。

「ふふ……よく言われます。それより、依頼の話に移らせてもらっていいですか?」

一方、姉と間違えられた憂はどこか嬉色を滲ませた様な、何とも複雑な苦笑を見せる。

「ああ、構わないぜ」

翔太郎は、おそらくはまだ学生であろう憂の、歳不相応な対応の練れ方に感心しつつソファを進める。それに軽く頭を下げ応じる憂。

(確実に亜樹子よりもしっかりしてんな、この娘)

その姿を見て、そんな失敬な事を頭の中に浮かべつつ、自身もその対面に座り話を聞き始めた。





依頼書


依頼者:平沢憂

依頼内容:放課後ティータイムの護衛

備考:ボーカルの1人、秋山澪が数日前から奇妙な怪人を目撃している、との事。
           
   見間違えかもしれないが、ストーカーの可能性も捨てきれないので護衛を頼みたい。








「秋山澪さんがストーカーに遭っている?」

翔太郎から伝えられた依頼内容にフィリップが顔を顰める。憂の依頼とは、放課後ティータイムのメインボーカル、秋山澪に関する件だった。

「それでどう思う、フィリップ?」

どことなく煮え切らない翔太郎の表情に、フィリップは「ふむ」と意味ありげに笑みを浮かべる。

「大方、君が不安を感じているのは、彼女の依頼に含まれている『怪人』というフレーズ、かな?」

「怪人……か」

フィリップの言うとおりである。彼女のその一言が、翔太郎に妙な胸騒ぎを残している。

『怪人』

少なくともこの風都で、そのフレーズを笑い飛ばせるものはいないだろう。

何故ならそれは形なき都市伝説などではなく、現実にこの街を蝕む悪意であり実体を持った犯罪である。

当然その心境はフィリップとて分かっている。分かっているが――彼の懸念を振り払うようにフィリップは続ける。

「ストーカーの被害は風都の外での出来事。君の考えすぎだろう」

「だと、いいんだけどな」

「ところで翔太郎く~ん?なんで所長を通さずに君が依頼を受けちゃってるのかな~?」

いつもの3割くらい眉間の皺を深め思索に入る翔太郎の頭に、亜樹子の伝家の宝刀《スリッパ》が炸裂した。





『さて、実のところ俺が受けた依頼には少しばかり続きがある』




「それじゃあ、安心しな。俺達が依頼を受けたからには、どんな相手だろうと絶対にお姉さん達を護り切る」

護衛対象が放課後ティータイムであることも手伝ってか、いつもの3割増しほどに格好つける翔太郎。

「あのっ!実は左さんにもう一つお頼みしたいことがあるんです!」

「ふっ――なんでもいってみな」

いつもそれで面倒な事件に巻き込まれるのだが、実に懲りない男である。

ある意味物語の探偵には相応しい性格である、と言えなくもないが。

そんな安請け合いにも等しい翔太郎の反応に些かの後ろめたさを覚えつつ、憂はおずおずともうひとつの依頼を告げた。

「それじゃあ――お姉ちゃん達にこの町を案内してもらえませんか?」

「案内?」

「はい。お姉ちゃん達はデビューしてからすごく有名になりました。それでいろんな所を廻ってます。だけど――」

言葉を切る憂だったが、彼女の浮かべる表情が翔太郎におぼろげながらも事情を伝えてくる。成程、未だ学生の身でありながらの成功がもたらしたのは、必ずしも正の面だけには止まらない。そういうことなのだろう。

「決して、お姉ちゃんが今は音楽を楽しめなくなった、そういうことではないんです。それでもやっぱり最近のお姉ちゃんは疲れた表情をすることも多くて……だから一度でいいから昔みたいに皆でゆっくりと楽しんで欲しいんです」

「なるほどね……売れっ子ってぇのも善し悪しってわけか。だけど、なんで俺なんだ?」

無論、依頼を受けるのはやぶさかではない、というか誰が――主に所長が――何と言おうが受ける。しかし風都以外では別段に有名というわけでもない彼に何故依頼をしてきたのか、という疑問があった。そんな翔太郎の疑問は憂も想定していたのだろう。
その表情に一瞬苦いものが混じる。

「警察には怪人を見たなんていっても聞いてもらえないんです。それでこの街には警察も受け入れない事件を受けてくれる探偵さんがいるって聞いて――」

そんな彼女の表情を見れば、彼女が如何に姉とその友人たちを愛しているか、その深さが一目で伝わってきた。それえは、それこそ翔太郎がこの街を愛する事にも引けを取らぬほどに。

そして何より、この依頼が風都を最も深く愛し、知る彼の下に舞い込んだ事は何かの因果めいたものを感じる。

それはあたかも――

「話は解った。任せな、この風都は俺の庭だ……」






『そう。この依頼はこの街の何かに引き寄せられたのかもしれない。人と人が風に呼ばれるように。人とメモリが運命に導かれるように』





To Be Continue





[19101] 第1話 【Cは求める/芸術家の異常な愛情 】
Name: masa◆82d749cb ID:6c7b970e
Date: 2013/02/17 01:33




『私がその話題を出したのは本当に些細な動機だった。次のライブで訪れることになった風都。聞き覚えの無い名前に、面白そうな何かが見つからないものかと、柄にもなく下調べしてみたのだ。果たして、その成果はあった……と、この時の私は実に満足していた』


「実は、これから行く風都って街は、色々と《噂》の絶えない街でね」

「う、噂?」

じっくりと思わせぶりにためを作るその様は、正に玄人はだし。田井中律は斜め45度の方向にその才能を開花させようとしていた。

「ああ。《怪人》が人を襲い、そして人を殺す」

「……っ!?」

しかし一つばかり誤算があった。

殺す。その一言は繊細、というかやや病的なまでに臆病な澪に、行き過ぎる程の反応を取らせてしまったのだ。

「き、聞こえない、聞こえない……!」

ふるふると小動物の様に、部屋の隅で震える澪。いつものことと言ってしまえばそれまでだが、今回は少々過剰に過ぎる。

「りっちゃん、怖がらせすぎだよ」

いつもだったら乗っかってきそうな唯も今回ばかりは、少しばかり窘める様な声色。
流石に事ここに至り、律も少しばかり調子に乗りすぎたことに気付くと、慌ててフォローを入れる。
幸いと言うべきか、風都と言う街にはピッタリの噂もまた同時に存在しているのだ。

「あ~……まあ、なんだ?大丈夫だろ、どうやら噂ではそいつらを倒す《超人》もいるみたいだしね」

言いながら彼女は考える。一体誰が考えたのだろうか。

流石に都市伝説の域を思い切りはみ出した、子供向けの特撮じみた奇妙なロア。

「まあ、いざとなったら守ってもらえばいいさ」

きっと、そいつは自分以上に思考がぶっ飛んだ奴なのだろう。多分、仲良くなれる気がしないでもない。

「噂の《ヒーロー》に」




『しかし、私、こと田井中律はこの時の会話を改めて振り返りこう思う。

もしかしたらこの時に要らぬフラグを立ててしまったんじゃないかな~っと』







『Cは求める/芸術家の異常な愛情』




その街に着いた時、梓が感じたのは優しい風の気配だった。
無論、ここに来る前から風都の成り立ちはそれなりに知ってはいたものの、実際にその風を受けた時の感触は、彼女の貧相なイメージなどは遥かに超えていた。
包み込むような緩やかな風、少し淋しげな木枯らし、彼女の長い髪を弄ぶ旋風《つむじ》。
風都を廻るあらゆる風が、まるでこの街を訪れた者たちを歓迎するかのように踊っている。

「わあ……本当に《風の街》なんだね、風都って!」

そうだ。この街の主役は人間であると同時に、この風なのだろう。
感受性の強い唯は、ある意味で梓以上にそれを感じ取っているのだろうか。
そのやや幼さを感じる声がいつも以上に弾んでいる。

「それに沢山風車があるよ!」

そして《彼等》もそれに応えるように、駅の至る所に存在する風車《ふうしゃ》や風車《かざぐるま》をからからと躍らせていた。






「あっ!ねえ、皆」

唯が待ち合わせ場所に佇んでいる一人の青年を指さす。その瞬間、全員が納得した。

澪のボディガードとして探偵を雇った、と聞いて皆、どんな人物かを色々と想像していたのだが……

「探偵さんってあの人じゃないかな?」

唯に指摘されるまでもない。皆一目で彼が探偵だと認識した。

寧ろ、それ以外で認識できない。

一昔、どころか二昔は前――そう、言ってみれば古き良き探偵小説からでも切り取ってきたような服装の青年。

確かに、どこか浮世離れしたかのようなこの街である。
そんなテンプレートな探偵が居たところで……いや、無い。

「あー……いや、まあ、私もそうだとは思うけど」

「ある意味、予想の斜め上で来ましたね」


限度を超えたテンプレートは、《左翔太郎》を嘘臭ささえも感じさせる程に探偵としている。

「あ、でもそれはそれで面白いかもな。あの恰好で実は教師、とか」

「これが本当の探偵学園!ってやつですか!?」

「何を言ってるんですか……」

律と唯の相も変わらずの無駄に絶妙なコンビネーションを尻目に、梓は少しばかり、いや多大に不安になる。

「そりゃあ、形から入る、っていう言葉はあるにはありますけど」

あれはそういうレベルで済ませていいんでしょうか?

そう言外に滲ませる。

仮にも澪を守る、という目的で雇った人間である。
そりゃあ憂が探してきた人間だから、信用できる人間ではあろう。

しかしそれが信頼――文字通りの信じ頼ることのできる人間かは別の話だ。

「放課後ティータイムの皆さんですね」

そうこうと躊躇っているうちに、翔太郎の方から話しかけてきた。
翔太郎はやけに気障ったらしい仕草で名刺を取り出す。

『あらゆる事件をハードボイルドに解決   探偵 左翔太郎』

((胡散臭っ!?))

特にハードボイルドを己で語っているあたり、本当にこの男はハードボイルドの意味を 理解しているのだろうか?

澪と梓の胸裏にドンドンと不信感が蓄積されていく。

「すっげー!本物の探偵なんて初めて見た!」

「私も。どきどきするわぁ」

「おお~!やっぱり、怪盗とか捕まえたり!?」

「甘いな、唯隊員。それは一年前のキャラだ。そんな奴より、きっと埋蔵金とかも見つけるぞ!」

ただ、それを気にしないものもいた、というよりこの放課後ティータイムの面々に限って言えば、比率的に澪や梓のような反応の方がマイノリティだったようだ。

「ちょっと、待て!そして律は何か、というか明らかにおかしいでしょ!っていうか一年前って何!?」

「そうですよ!大体、探偵なんて依頼の殆どは精々ペット探しなんですよ!」

澪と梓の2トップによる突っ込みを受けた唯は、しかしどこ吹く風である。
というか、この街に来てからの唯のテンションは少しばかりおかしい。

「そんなことないよ!きっと行く先々で殺人事件に見舞われたりするんだよ!だって探偵だよ!?」

「どんな探偵像だよ!いくらハードボイルドでも嫌だよ!」

「いやですよ、そんな血塗られた探偵!!」

今度は翔太郎と梓の突っ込みが同時に炸裂する。しかし、翔太郎はハタと動きを止める。そして今度は、すかさず梓へとその矛先を変える。

「――って失礼だな、オイ!ちゃんとした依頼くらいあるに決まってるだろ!」

「じゃあ一番最近の依頼は?」

「……そ、そりゃあ、お前、あれだ……」

梓のズバリ過ぎる直球に、翔太郎は盛大に視線をそらすと、やや以て言葉を濁す。




「ペット探しだって大事な依頼だろうが!」

……ペット探しであった。


それを皮切りにきゃんきゃんと子供の様に梓と言い争う翔太郎だが、そこに彼の持ち歌でコールがかかった。

翔太郎は慌ててスタッグフォンを取る。

『やあ、翔太郎。もう放課後ティータイムとの顔合わせは済んだのかな?
だとしたら僕の分、サインを貰ってきてくれ』

第一声がこれである。

翔太郎は疲れた様に溜息を吐く。

「……まさか、そんな理由で電話してきたんじゃないだろうな?」

もっともフィリップであればそれも十分にあり得るが。

『まさか。実は今、刃野刑事から興味深い写真が送られてきた。今、メールで送ろう』

刃野刑事、通称『刃さん』はこうやってちょくちょくと捜査情報を翔太郎に横流ししてくる。

無論、違法である。

もっとも、そのおかげで彼等はドーパント事件の最新情報を入手。
刃野刑事はその手柄を手に入れるので持ちつ持たれつ、世の中存外巧く回っているもののようである。

閑話休題

送られてきた写真を見た翔太郎。

そこに映る『異常』としか言えない光景に、彼はその言葉を失くした。

「……何だ、こりゃ」

その写真に写っていたものは一瞬、出来の良い蝋人形を思わせた。

だが、すぐさま本能がそれを誤りと判断する。

作り物が、人の手がこんな生々しい死相を、死の匂いを再現出来る筈が無い。

写真に写っているのは、艶のある光沢に包まれた死体。

それらは年齢、性別共にバラバラだが共通点が一つだけある。
それは、死体全ての容姿があまりにも、美しい。

それがこの猟奇的な死体達に、狂的な美術性を纏わせる。

否、或いは、犯人にとってこれは真実、芸術なのかもしれない。


それは死体で組み上げられた、塔だった。


翔太郎は写真から目を逸らす。

恐ろしかったのだ。彼の感性がこの《作品》を美しいと認めてしまいそうで。

『数日前の死体らしいが……この光沢……それに保水性からして蝋の類かな?』

一方、スタッグフォンから聞こえるフィリップの声は、写真の発する猟奇的な美、倒錯した魅惑、それらに対しての興味を一切匂わせない。いつも通りの相棒の声は、翔太郎に奇妙な安心感をもたらした。

『恐らく、メモリの正体は《CANDLE》。メモリ自体は凄まじい強度を誇る蝋を精製する事の出来る程度の単純な物さ。そんなことより、興味深いのは犯人の思考と嗜好だ。一種の屍体愛好であるのか、或いはなんらかの意味をもった犯行計画の一環なのか……』

寧ろフィリップにとって興味の対象は唯の一点、犯人そのものという事なのだろうか。

『ただ放課後ティータイムのライブを邪魔する様な真似をされると非常に困るな』

「お前、色々凄いよ、やっぱ……」

訂正。もう一点あったようだ。

『とはいえ……これは蝋人形にでも見立てているつもりかな?中々に興味深い』

実に不謹慎な言葉である。しかし当のフィリップはそんなこと気にも留めずに話を続ける。

『どうやら犯人はジャロッド教授でも気取っているようだね』

何とも皮肉なことだ。

古き良き名探偵の名を冠する彼の口から、怪奇小説の登場人物の名が飛び出すとは。

翔太郎はそれが奇妙に可笑しく感じた。

「だったらそのうち蝋人形の館でも作るんだろうぜ、フィリップ=マーロウ」

『翔太郎……間違っても放課後ティータイムのメンバーに危害が及ぶことのないように』

「――って、それが言いたかっただけかよ……」

返事は返ってこない。なにせとっくに切られている。

ぼやく翔太郎を無視して、フィリップはさっさと電話を切ってしまった様だ。
相変わらずの相棒の自由さ加減に、翔太郎は本日幾度目かもわからない溜息をついた。


「どうしたの、探偵さん?」

「ああ、相棒からちょっとした連絡さ」

「相棒!私、それTVで見たことある!」

「あれは刑事だろ……」

疲れたように呟く翔太郎だが、内心ほっとする。

何せ、以前憧れていた若菜姫があんな感じだっただけに、またイメージを裏切られるんじゃないかと密かに不安だったのだ。

だが彼女達は――と、いうか主に唯と律が――マイペース過ぎて少し疲れるものの、会話をして決して嫌な感じはしなかった。
それに、澪はストーカーに遭っていて、しかもそれが警察に門前払いさせられ、だいぶん神経質になっているとも憂から聞いていたが、今の彼女の表情からはそのような陰は感じられない。
何となくだが、翔太郎には唯と律が無闇に騒ぐのはその為なのではないかと思えた。

(どんなに立場が変わっても友達って訳か……)

そして彼には、そう感じられた事が、なんとなく嬉しくもあったし、そんな彼女達を守る自分が誇らしくもあった。

「やれやれ、まあ取り敢えずいつまでもここにいても……あん?」

そんな自身の思考を振り払うように翔太郎は頭を振る。ここでしょうも無い言い争いを繰り広げても仕方がない。
翔太郎が5人を伴って彼女達の宿泊先に移動しようとしたところで――翔太郎の眼前には、何時の間にか一人の男が立っていた。

その男の様子は一言でいえば『異様』

眼は血走り、全身は病的なまでに痩せこけているその姿は『亡者』を想起させるもの。

死臭さえも漂ってきそうなその姿は、否が応でも翔太郎の悪い予感を掻き立てるものだった。

そして、その予感は放たれた次の一言で決定的。

「お、お、お前、彼女達と、ど、どんな関係だ?」

男の眼の放つ輝きは尋常な物ではない。

その眼に、声に宿っている狂気に、唯達は僅かに怯えを見せた。
翔太郎はそんな男の視線を遮るように、彼女たちの前に出る。

「俺はこの街の探偵、左翔太郎。彼女達のボディガードさ」

尤も、そんなときでさえも気取った仕草を忘れないのが、左翔太郎という男なのだが。

「そういう、アンタこそ何モンだ……Mr.ストーカー?」

クール、と本人は信じている笑みを浮かべる彼が少々お気に召さなかったのだろうか。
どこか苛立ったかのように男は答える。

「ぼ、ぼくは芸術家さ。そ、そざい、をしっかりと間近で見ておこうと思って」

「そ、ざい?」

素材。そしてさっきの写真。蝋人形。

これらの単語が結びつき、翔太郎の中の嫌な予感がはっきりと形を作った。

(こいつ、まさか……!?)

そしてその嫌な予感を証明するかのように、男の手の中で彫刻刀の刃が鈍い輝きを見せた。

「ウソだろ!?」

「退ってろ!」

だが、この手の輩にある程度慣れている翔太郎にしてみれば、そのくらいの行動は予想範囲。

立ち構えるその姿には刃物に対する怯えはなく、且つ油断もない自然体。

しかし男にはそれを見取る力量など無論、無い。
ただ、素人丸出しで彫刻刀を縦に横にと振り回す。

当然ながらそうして闇雲に振り回される彫刻刀の刃先は、翔太郎には掠めもしない。

「おらぁ!」

それどころか気合一閃、翔太郎の上段蹴りが男の側頭部に突き刺さる。
しっかりと体重の乗せられた蹴りで、男の身体は軽々と吹き飛んだ。

「強ぇ~」

今一頼りになるのか疑問だった翔太郎の、素人目にも場馴れした強さ。
辛うじて零れた律の一言が一同の心境全てを表わしていた。

「くそっ!くそっ!邪魔しやがって!馬鹿にしやがって!」

しかし男は頑丈であった。否、あまりの怒りと狂気に、痛みがマヒしているのかもしれない。
2mは弾き飛ばされるほどの一撃を、頭部に叩き込まれたというのに、すぐさま立ち上がると、懐から何かを取り出す。

その正体は――

「な、何だぁ?」

「USB?」

「あ、あれは……ヤバい!」

その正体は少しばかり派手な装飾をされたUSBだった。だが何故それをこの状況で取り出すのか。律達は首を傾げる――それの本性を知る翔太郎以外は。

《 C A N D O L E ! 》

「ガイアメモリ!!」

そう。この街を蝕む悪魔の小箱。
超人的な力と引き換えに身体と精神――そして命さえをも侵食していくそれは正しく悪魔との契約。

男はシャツを捲りあげると、鳩尾のコネクタにキャンドルメモリを突き刺した。

《 C A N D O L E ! 》

そして内包する《蝋の記憶》が男をキャンドルドーパントへと変貌させる。
その姿からは、もはや人を感じさせる部位など殆ど残ってはいない。

「お返しだぁ!!」

キャンドルドーパントは、小手調べとばかりに、まるで邪魔な小虫を払いのけるかのように、無造作のその異形と化した巨腕を振るう。

「しまっ!?ぐぁぁぁ!!!」

翔太郎の反応は決して遅れたわけではない。
しかし軽く掠めただけに見えた一撃は、それでも人間一人を吹き飛ばすには十分足るものだったのだ。

自動車にでも跳ね飛ばされたかのように道路に叩き付けられた翔太郎を見やって、キャンドルドーパントの声が愉悦に濁る。

「いいなぁ……やっぱり 最 高 」

ドーパントは自身の得た力が齎す全能感に陶酔している様だった。

「やはり、芸術を極める為には悪魔との契約が不可欠なんだよぉ!!」

「そうだ!有史以来の素晴らしき先人達は、その全てを捧げ、そして破滅へと躍り出て初めて神を手にしたぁ!そして僕もその域に立ったんだよ!」

だが、嬉々として語る彼の姿は最早人のそれを留めていなかった。

燭台と人間のシルエットを無理矢理にパッチワークで継ぎ合わせたかのような酷く歪な、そしてちぐはぐな異形。

醜悪なその姿、しかし唯達が恐怖を感じているのはそんなところではない。

「ああ、本当にいい。皆、綺麗だぁ。顔も、心も、そして恐怖も!君達は皆、最高の素材になってくれそうだよぉ。特に澪ちゃんはねぇ。
怖気振るう姿の美しさこそが人間の美を決める指標なんだからねぇ?」

その姿以上に、歪でおぞましい狂気。変身する前は辛うじて内に籠っていたそれが、今や隠すことなく澪にぶつけられている。

「あの探偵もそこそこに見た目は良かったから、惜しいことをしたけどさぁ。
あいつは駄目なんだよ。僕を見ても、死の気配が迫ってても、脅えもせずに生を見据えてた……醜い!醜いだろぉぉぉぉぉ!!!」

その腕からどろりとした蝋が垂れた。

「だから、今は君からだねぇ!!!!」

「澪!逃げろ!」 

律の叫びも、完全に怯えきった今の澪には届かない。

律が、唯が、紬が、梓が、せめて自分の身体を盾にしようと身を構え。

その瞬間――



《 C Y C L O N E ! 》《 J O K E R ! 》



――風が起こった。

ドーパントの悪意を苛烈に吹き飛ばすように。

澪の涙を優しく拭うかのように。

風に攫われ礫塵が吹き散らされる。風を受けカラカラと風車が廻る。

風都が風に包まれる。

そしてその風の中心には――人影が佇んでいた。
この街を体現するかのようにその身に風を従え。
風が、白いマフラーを靡かせる。

瞳が紅く輝いた。

何故かは解らない。しかしその影は不思議と澪に安堵を齎す。

(ああ、私、助かったんだな)

根拠など無い。しかしその思考を最後に、澪の意識は静かに闇へと落ちていった。



「仮面……ライダー?」



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[19101] 第2話『Cは求める/そのアートは赦さない』
Name: masa◆82d749cb ID:6c7b970e
Date: 2013/02/17 02:40


その左半身は黒だった。夜に紛れ悲劇を終わらせる《JOKER》

その右半身は緑だった。吹き荒び涙を吹き散らす《CYCLONE》

《彼等》の名は――W《ダブル》

『さあ――』『お前の罪を――』  『『数えろ!!』』   




その光景を見たのは完全に偶然だった。

深紅のベルト《ダブルドライバ》に緑色のメモリが現れる。それと同時に翔太郎は黒いメモリを取りだし、同じように差し込んだ。そしてドライバをダブルの形に開く。

「変身!」

《 C Y C L O N E ! 》《 J O K E R ! 》

翔太郎の身体が巻き起こる風と共に、人外へと変容していく。
黒と翠が映える美しい左右対称《シンメトリー》。
それを見た時、彼女は思わず呟いていた。

「仮面……ライダー?」

(どうしよう……あの人がそうなんだ……)

彼女は無意識にそっと服のポケットに手を入れる。

その指先に一本のメモリが触れる。彼女はそれを強く、強く握りしめた。



『Cは求める/そのアートは赦さない』



「へぇ?その緑と黒……綺麗だねぇ。素材にちょうど良さそうだよぉ?」

『ハン?やってみろよ』

ダブルの姿を見ても動じずに狂気を見せつけるキャンドルドーパント。しかしダブルもまた、その狂気を目の当たりにしても、軽く鼻で笑い飛ばした。

「だから――」

ダブル――翔太郎の嘲笑を皮切りにキャンドルドーパントが、蝋を精製しダブルに放つ。

「――それが醜いっていってるんだよぉぉ!!」

『おっと!』

ダブルは身を翻すとあっさりとそれを避ける。そこに殺到する蝋の次弾。
しかしそれをもダブルは悠々と掻い潜り、キャンドルドーパントの懐へと躍り出る。

『おらぁ!!』

風さえも置き去りにする様な勢いをそのままに後ろ回し蹴りが唸りを上げる。

炸裂音と共に突き刺さる強烈な一撃に、キャンドルドーパントの胴がくの字に折れた。

しかしダブルの動きは止まらない、どころか更に加速。

疾風の如く鋭く、疾く、そして軽やかに。

蹴りが、拳が、蹴撃、拳打の嵐となってキャンドルドーパントを呑み込んでいく。

奔放且つ縦横無尽。

正しく CYCLONE 《旋風》を冠すに相応しく

荒々しく、颯爽と

アクロバティックにしてダイナミックに

それでいて洗練された――技が疾る。



そして止めとばかりに、空を突き刺す様な槍の如き蹴り。
100キロは優に超えているドーパントの身体が、宙を舞った。





凶悪無比な一撃で地に伏したドーパントを見下ろすダブルの右目が紅く点滅する。

『翔太郎、相手は蝋……僕の側のメモリ、変えよう』

「え?お、おい!?」

翔太郎の意思に反して、その右腕が勝手にソウルメモリを入れ替える。

《 H E A T ! 》

《 H 》の刻印が刻まれた炎の様な赤いメモリ。

《 H E A T ! 》《 J O K E R ! 》

風を思わせた右半身の色が、鮮烈な赤色へと変貌。
そしてダブルの半身をそれさえ霞むほどの紅蓮の炎が包み込む。

そう。《HEAT》のメモリが与えるのは文字通り《熱》。

今やダブルの体術は全て鋼鉄さえも焼き払う。

黒と赤。ダブル《ヒートジョーカー》

『――ハッ!まあいいか……キャンドルサービスだ……ド派手にいくぜ!!』

アッパーボルテージマターと呼ばれる興奮物質。

エンドルフィンを遥かに超えるそれが翔太郎の闘争本能を刺激して、翔太郎の意識は燃え盛るかの如く高揚していく。

ダブルの右拳がメキリと音を立てた。

それに呼応するかのように、ヒートサイドから一気に焔が噴き出す。
陽炎が立ち込め景色がゆらゆらと揺れた。

ダブルは湧きあがる凶暴な衝動に身を任せるままに、キャンドルドーパントへと駆け出す。

『――っらぁ!!!!』

空気を揺らめかせ、蒸気を引きながら、焔を纏い、振り上げられた緋の拳がドーパントの顔面に真一文字叩きこまれた。

刹那、轟音と共にドーパントの顔面が、文字どおりの意味で『爆発』した。

凄絶な威力を込めた一撃に、ドーパントの顔面は後ろに大きく弾け飛ぶ。
それを見たダブルは容赦無く追撃を仕掛ける。

爆発。爆発。爆発。

そして断続した炸裂音の後に、極端に振り被っての、豪快無比なテレフォンパンチ。

それまでとは比較にならないほどの爆発と衝撃が、キャンドルドーパントを派手に吹き飛ばした。

しかし

『あん?』

「あははははは!!そうだぁ!早く素材に成れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

吹き飛ぶ瞬間に放たれた一発。付着した蝋は自然界では在り得ないほどの強度と早さで硬直していく。

しかし翔太郎達は一瞬で固まっていく自分の右腕を見ても慌てる素振り一つ見せない。

「ハッ!そいつはどうかな?」

翔太郎は新たなメモリを取り出す。冷たい鉄の色をしたメモリを。

《 M E T A L 》

メタルメモリと呼ばれるソレをジョーカーメモリと入れ替えるように差し込む。

《 H E A T  !  》《 M E T A L ! 》

ダブルの黒い左半身が文字通り鋼鉄《METAL》を連想させるような鈍色に輝きを変じた。

それと同時に、焔の勢いが増し、蝋が溶ける……否、蒸発する。

理論上であれば核攻撃をも耐えきる肉体を与える闘士の左半身。

3,000℃にも及ぶ熱量を自在に操る力を与える熱き右半身。

《METAL》と《HEAT》

重なり合う化学反応によって生まれる1+1を遥かに超える乗数《マルチプライア》

鈍銀と深紅のダブル《ヒートメタル》

ヒートの力を限界まで引き出した今のダブルに、たかが少しばかり溶けづらいだけの蝋など、何の拘束にもならない。

「く、くそっ!」

それでもドーパントは未練がましく蝋の弾丸を放つ。


そんな苦し紛れ、彼らに通用するはずもない。
唸りを上げるメタルシャフトが、赤い螺旋を描き、その全てに喰らい付き塵と還す。   
最早、ドーパントに抵抗するすべなど無かった。



『翔太郎、メモリブレイクだ!』

『ああ!』


メタルシャフトにメタルメモリが差し込まれる。

《 M E T A L !》《 M A X I M U M  D R I V E !》     
その音声と共に、ダブルドライバがメモリの制御という本来の役目を放棄し、メタルメモリが遂にその鎖を解き放たれた。

《闘士の記憶》がその凶暴な本性を剥き出しにする。

同時にヒートメモリもそれに呼応するかのように、メタルシャフトに籠る熱量を暴走寸前まで引き上げる。

それを手応えで感じ取ったダブルが直に来る反動に備え、足を踏みしめる。

そして――ダブルは鋼鉄の弾丸となった。

地面が爆ぜ、視界の全てが線と化す。

『『これで決まりだ――』』

苦し紛れに放たれた蝋の弾丸は、しかし今や3,000℃を超えるダブルの身体には届かない。

ダブルは両の腕《かいな》に渾身の力を込め、思い切りメタルシャフトを振りかぶる。

『『メタルブランディング!!!』』

破壊力、30tにも及ぶ鋼の豪打。

それが唸りを上げてキャンドルドーパントを打ち据える。

喰らい付いた一撃は、鋼鉄に比類する蝋の甲冑を容易く粉砕し文字通りに叩き伏せた。





爆発が収まると、そこには先ほどの男が横たわっていた。
その傍らにはキャンドルメモリが落ちている。

しかしそれも程無くして乾いた音と共に砕け散った。




『……最後は自分がキャンドルアートだ。満足だろ?』



後は、この男を警察に引き渡すだけ。そう。この時、彼等は完全に勝利を確信していた。しかし――




「え?」

律が呆然と呟く。

何が起こったかまるで理解できなかった。都市伝説と思っていた怪物が自分達の前に現れた事。そしてやはり都市伝説だと認識していた筈のヒーローが自分達を助けてくれた事。それまではどうにか着いてこれた。だがそのヒーローが――消えた。

瞬時に地面が爆砕され、粉塵が舞い上がる。飛礫が頬を打つ。

何が起こった?

何の前触れもなかった筈――

そこまで考えた瞬間、一気に彼女を頭痛と吐き気が襲う。

「――っぐ!なんだ、これ!?」

脳をシェイクされたかのような不快感。状況がまるで理解できない。

否、無理矢理理解させられた。目の前に、先の怪物のような異形が立っていた。

スピーカーを無理矢理に組み込まれたような人型。

「ヒッ――!?」

声に成らない悲鳴がこぼれる。当然だ。この状況から逃げ切れると思うほどには、彼女は自信家でも楽観主義者でもない。それは即ち自身の死を意味する。

表情筋など存在しないドーパントの顔からはその感情は読み取れないが、それでもこの惨状を作りだしたのがこいつだということくらいは見て取れる。

そしてドーパントの視線が律を捉える。

『オラァ!』

「――!?」

刹那、ドーパントを鞭のようなものが襲った。しかしその炸裂音は、明らかに鞭などと言う可愛らしいものではなかった。無論のこと、与えるダメージも同様に。

降り立ったダブルの姿は再び変化していた。その右半身を赤から夜天に浮かぶ黄金の月のように。

《幻想の闘士・ルナメタル》

その眩き右半身が司るのは《幻想》

しなやかであった筈の鞭は、ダブルの手中でまるでそのしなやかさが、それこそ夢幻《ゆめまぼろし》の類であったかのごとくその硬度を取り戻す。



そしてドーパントの視線は律から外され


ダブルのそれと絡み合った。




to be continued







[19101] (ある意味)ネット版だぶる!AtoZで爆笑26連発!
Name: masa◆82d749cb ID:6c7b970e
Date: 2010/08/22 19:46




本篇も書かずにまさかのスピンオフ!?



「一番危険なネタ切れはストーリーじゃなくてサブタイトルだろうが!!」


本編キャラ達が大暴走!


「ガイアメモリは地球よりも強いってことだな」


「ギ―太のギはギターのギじゃないよ?」

「なん……だと?」


「緊急読者アンケートを取ります!」


他では見られない×見たくない○ギリギリアウトネタ連発!


「ぶっちゃけ綴り間違えてない?」


「琴吹紬、あなたは何も分かっていない。王道とは即ち流×殿……」

「分かっていないのは貴女の方よ……それが王道というのであれば、茉×ことは至高!」


AtoZで送る笑撃の26連発(続くといいなぁ)!


「このコーナーはわたし、平沢憂が全国のアブノーマルな恋愛に悩む人たちに、的確なアドバイスをかましちゃうコーナーです(はぁと)」

「帰れ」


「……翔太郎はNEVERさえも超える改造人間だったんだ……」

「「「「「「なんだってーーーーーー!?」」」」」」


「この世界が俺の世界……だと?」

「そう……門矢士、ここがあなたのいるべき世界……」

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」



(ある意味)ネット版だぶる!AtoZで爆笑26連発!



「以上の提供は『電波塔の魔術師』様でお送りしました」

「――って嘘かよ!!!」





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