――the third person――
「……隠れたか」
空間攻撃をなのは達に放った闇の書の意思は、周囲の反応を探ってそう呟いた。
「……彼を、此処へ」
その声に反応して闇の書本体が光を放ち、一呼吸の間にヤコウが現れる。
展開していた騎士甲冑のお陰で酷い怪我は負っていないが、それでもバインド状態のままビルの屋上から落下したのである。
バインドは自力で破壊できたようだが、無理な体勢での落下を防ぐ事が精一杯だったのか、地面にはぶつかってしまったらしい。
完全に気絶しており、ピクリともしない。
ヤコウが大事無い事を確かめた闇の書の意思は一瞬だけ笑みを浮かべたが、直ぐにそれを引っ込めると未だ目覚めないままのヤコウへ言葉をかける。
「ここで静かにしているといい、主の愛する者よ。……私は主の願いを叶えに行く。もう会う事も無いだろうが……今まで主を守ってくれたこと、礼を言う」
そう言って踵を返すと、背中にある漆黒の翼を広げて飛び立つ闇の書の意思。
その顔には何も浮かばず、何も感じさせない無表情そのもの。
しかし――瞳から溢れる涙だけが、彼女の心の内を示していた。
………………
…………
……
――side Yakou――
『――ター、マスター』
自分に対する呼びかけで、僕は目を覚ました。
ベイオネットはずっと呼びかけていてくれたらしく、声音からは心配そうな色が滲んでいる。
取りあえず、痛む身体を無理矢理起こすと現状を確認していく。
と、いきなり不可解な事態に直面した。
「……何で屋上に居るんだ?僕は吹き飛ばされて、それで落ちたよな?」
『その通りです、マスター。ですがその後、此処に転移させられたのです』
「……誰に?」
落下した僕をここに転送させたなら、その人物は僕を助けたという線が強い。
故に味方であると予想も立つが……思い出したくも無いが、僕の味方である守護騎士の皆は仮面の男たちに嵌められて、消えてしまった筈だ。
僕には守護騎士の四人以外で、味方といえる人物などいない筈なのだが……?
疑問に思っていると、それにはベイオネットが答えた。
『マスターが気絶した後、此処に転送したと思しき人物は守護騎士の御一同と似た魔力の波長をしていました。それと、闇の書を携えていましたね』
「守護騎士の皆と似た魔力を持っていて、闇の書を携えていた、か……」
それを聞いて、僕は以前シグナムさんから聞いた話を思い出した。
曰く、闇の書も意思を持っているのだと。
確かに、僕も闇の書が誰の助けも無く宙に浮いている所などを何度も目にしている。
が、それはデバイスに搭載されたAIと似たようなものだと考えていたのだが……自分で闇の書を携えていたとなると、守護騎士の皆と同様に人の姿をしているのだろう。
考えを巡らしていると、突如ベイオネットからの声が響く。
『マスター、広域攻撃魔法です。この場所は安全ですが、攻撃範囲内に高町なのはとフェイト・テスタロッサが存在しています』
「……その闇の書から現れたと思しき人物と戦っているのか?いったい、どういう状況なんだ……?」
『不明です。私も双方の意思までは推し量れません』
如何にも機械らしい返答だが、僕もそれには同意する。
とはいえ、このまま傍観していても何も分からない事だけは確かだ。
「危険かもしれないが……行かなきゃならない気がする。ベイオネット、行くぞ」
『私はマスターの相棒です。何処までも、貴方と共に』
ベイオネットの力強い言葉に笑みを零しつつ、僕は闇の書が居ると思しき場所へと急いだ。
『マスター。対象、視認距離です』
「ああ、見えている」
最速で飛んできて現場を視野に入れると、そこには向かい合うなのはと闇の書から現れたと思しき女性が向き合っていた。
あの銀髪の女性こそが、闇の書の内に存在していた人格なのだろう。
結界が展開されている空は闇夜も合わさって暗く沈み、街の至る所から噴き出した火柱は世界の破滅を連想させる。
そんな中で向かい合う二人の間に、僕は割り込んだ。
「え、あ、あなたは……」
「お前か……目が覚めたのだな」
なのはは突然割り込んできた僕に驚きの声を上げるが、闇の書の女性は少しだけ目を見開いたものの、声も特に驚いた感じはしない。
後ろに居るなのはの事は気になるが、取りあえず訊かなければならない事を聞いていく。
「……君が僕を助けてくれたのか?」
「一応な、主の愛する者よ。……それより、安全な場所へ移動するがいい。私は主の望みを叶える」
「主の望み……?」
闇の書から現れた彼女が主と言うなら、はやての事に間違いないだろう。
しかし、はやての望みを叶えるとは一体……?
その疑問を察したのだろうか、彼女が答えを発する。
「――我が主は、自分の大切なものを奪ったこの世界が、悪い夢であって欲しいと願った。我は唯、それを叶えるのみ……」
世界が夢であって欲しいという願い……?
まさか……この世界が消える事を、はやてが望んだ?
僕が屋上から落とされた後、激情に駆られてそう願ってしまったのか……?
「主には穏やかな夢の内で、永久の眠りを……。そして、愛する騎士たちを……家族を奪った者たちには、永久の闇を」
――僕は絶句した。
はやては闇の書の内で、幸せだった時間の夢を見ている――
激情に駆られた心が思わせた感情に絡め取られ、自分を閉ざしてしまっている――
「私は主の願いを叶える……だからお前は、安全な所まで下がっているのだ」
「……そうはいかない」
「何……?」
彼女は不可解なもの見た表情で僕を見るが、それは聞けない。
「何故そんな事を言うのだ……?」
「はやてが本気で、心の底から世界の破滅を望むなんてあり得ない。守護騎士の皆が消された事で、そして僕が死んだと勘違いしてそう願ったなら――」
ブレードの切っ先を彼女に向けて、僕は宣言する。
「僕は君を止める。――はやてが本当に望んでいるのは、僕や守護騎士の皆、それに――」
僕はそこで一旦言葉を切り、なのはの方を向いてから断言した。
「――そこにいる高町なのはの様な友達と笑って暮らせる、そういう優しい世界だからだ」
「――えっ?」
キョトンとした表情を見せるなのはの表情が可笑しくてクスリと笑うと、僕は闇の書の彼女に向き直る。
「はやては破滅なんて望んでない。そんな一時の感情に任せた願いなんて、叶えさせてはやれない。――だから、僕は君を止める」
「……主の愛するお前を傷つけたくない。どうあっても退いてくれないのか……?」
「君がそれを止めるって言うなら退くさ」
僕がそう言うと、彼女は悲しそうに顔を伏せたが、数瞬後には鋭い目つきで僕を射抜いた。
「そうか……ならば仕方無い。お前を打ち倒し、主と共に眠ってもらおう」
「生憎、僕は夜更かしが大好きなんだ。眠るにはまだ早いんだよね」
冗談めかしてそう言うと、僕はなのはに向き直って話しかける。
「と、言う訳なんだ。……今まで敵対しておいて虫のいい話だけど、はやてを助けたいんだ。力を貸してほしい……!」
そう言って頭を下げる。
一方なのはは頭を下げた僕に慌てたらしく、わたわたと慌てたような声を出した。
「そ、そんな、頭なんて下げないで下さい!私もはやてちゃんを助けたいのは同じなんですから!」
「……有難う、本当に。じゃあ、えーっと……」
僕が呼び方に迷っていると、なのははそれを察したらしく、笑顔でこう言ってきた。
「なのはって呼んでください!私は、えーっと……」
「好きなように呼んでくれていいよ」
「んー……じゃあ、ヤコウさんって呼んでいいですか?」
「ふふっ、了解。……それと、気になってたんだけどフェイトは?」
なのはがいるならフェイトもいる筈だと思ったが、さっきから姿が見えない。
「それが……闇の書の内部に閉じ込められちゃって……」
「そうか……なら、尚更だね」
歪んだ願いは、このまま溢れないうちに終わらせる。
闇の書の彼女に視線を向け、僕は口火を切る。
「――行こうか、なのは。彼女を止めに」
「はいっ!」
「ベイオネット、無茶をさせるだろうけど、宜しくな」
『寧ろ望むところです、マスターの無茶はあちらに居たころから慣れっこですし』
挑む様なベイオネットの言葉に苦笑しつつ、僕となのはは共闘を開始した。
………………
…………
……
「――――はあぁっ!」
「……」
気合と共にブレードを振り下ろすが、闇の書の彼女が片手をかざすとシールドが出現し、難なく受け止められてしまう。
なのはが彼女の攻撃を受け止めている隙を狙っての攻撃だったが、彼女にとってはこの程度隙にもならなかったらしい。
今もなのはに攻撃を加えつつ、僕の攻撃も完全に防ぎ切るという離れ業を行いながら、表情を崩しもしない。
「――きゃあぁっ!」
「なのはっ!――ぐあぁっ!?」
攻撃に耐えきれなくなったなのはのシールドが割れ砕け、その勢いを維持したままの彼女の拳がヒットして、なのはを海へ向けて吹き飛ばす。
未だシールドとの競り合いを続けていた僕が吹き飛んだなのはに一瞬気を逸らした瞬間、彼女はシールドを解除。
体勢を崩した僕の身体に魔力を纏った手刀を振り下ろし、僕も続けて海に叩き込まれた。
海面に叩きつけられた苦痛など斟酌している場合ではないので、すぐさま上がってなのはと合流。
「はあ、はあ、……なのは、大丈夫か?」
「はあ、はあ、ふう、……うん、大丈夫、何てことないです」
大丈夫とは言っているが、半分は強がりだと考えた方がいいだろう。
僕もなのはも、いまだ有効な攻撃を一発も闇の書の彼女に入れていない。
一方で、僕らは何発も攻撃をもらっている。
致命的な攻撃は僕もなのはも受けていないが、積み重なればじわじわ効いてくる。
「分からない……何故、お前はそうまでして立ち向かう?この身の運命は変わらないというのに」
肩で息をしつつ彼女を見据える僕に、動きを止めた彼女が問いかけてくる。
「何故かって……?僕たちは家族だからさ……間違った事をしていたら止めるのが当たり前だろ?」
「家族……だから?それが、愛する者の願いでも止めるのか?」
理解出来ない様な表情で言う彼女に、僕はしっかりと言葉を紡ぐ。
「そうだ……愛しているからこそ、間違いは体をはってでも止める。はやても……新しい家族になるだろう、君もね」
「私が……家族?」
聞き間違いだろうかという様な表情の彼女に、僕は笑みを浮かべて続ける。
「君ははやてが物心つく前から傍にいて、ずっと見守っていたんだろう?なら、君もはやての家族だ」
僕の言葉に一瞬瞳が揺れたように見えた彼女だが、すぐにまた元の鉄面皮に戻ってしまう。
「……私は唯の魔道書。お前も知っての通り、主を蝕むだけの壊れた道具に過ぎない。……そんな私が、主の家族を名乗るなどおこがましい事だ」
「……泣きながらそんな事言ったって、信じられないよ。主であるはやてを想う心を持っているのに……君はその心を自分から閉ざして、悪役になろうとしている」
心があるのに……通じ合えるのに……
「何ではやてを想うその心を、そのまま表現できないんだ!」
突然叫んだ僕を彼女となのはが驚いた表情で見ているが、気にもならない。
「君ははやてと向き合っていない……。まだ始まってもいない内から終わろうとしている君は、無理矢理にでもはやてと向き合ってもらう!」
「……」
彼女は黙り込んで僕を見つめており、その表情は微動だにしていない。
ただ静かな瞳で……全てを諦めている様な瞳で、こちらを見るのみ。
「なのは……僕の無理に付き合ってくれるかい?」
僕の問いかけに、なのはは力強く頷いてくれる。
「任せてください!スターライトブレイカーが撃てれば何とか……でも、撃てるチャンスが……」
『I have a method』
「え……?」
難しいというなのはに、相棒であるデバイス――レイジングハートが手段はあると告げる。
だが、その案はかなり危険を伴うものであったらしく、すぐさまなのはは反対した。
『Call me. Excelion mode』
「ダメだよレイジングハート!アレは本体を補強するまで、使っちゃダメだって!私がコントロールに失敗したら、レイジングハートが壊れちゃうんだよ!?」
……自壊覚悟で攻撃しなければならないのか、それなら反対するなのはの気持ちも分かる。
『Call me. Call me, my master』
だが、レイジングハートは己を信じてくれと言う様にそう繰り返す。
「だけど……!」
『いいのではないですか?』
「どうしたんだ、ベイオネット?」
迷うなのはを後押しするように、今まで黙っていたベイオネットが声を発する。
『高町なのは。アナタの相棒は、アナタを信じて全てを預けています。自分の主なら大丈夫だと。ですから、アナタも自分の相棒を信じてあげてもいいのでは?』
ベイオネットの言葉を聞いたなのはは、虚を突かれた表情をして視線をレイジングハートに戻した。
レイジングハートは何も言わなかったが、ただベイオネットの言葉を肯定するようにコアを明滅させた。
「……分かったよ、レイジングハート。レイジングハートが私を信じてくれたのと同じ様に、私もレイジングハートを信じる!」
『Yes, my master』
なのはとレイジングハートは信頼で結ばれた力強い声で、モードの変更を宣言する。
カートリッジがロードされ、その形状が組み変わっていく。
「レイジングハート、エクセリオンモード……ドライヴッ!」
『Ignition』
宣言と同時にレイジングハートが変形を開始し、その姿を変えていく。
音叉の様な形状から一転、先端が槍の様な形状に変わって、より攻撃的な趣きになっている。
その様子を見ていると、ベイオネットが再び声をかけてきた。
『――マスター、データの再構築が一部完了。新たに使用可能なパーツが増加しました』
「いま、完成したのか?」
『はい、たった今。今の状況なら、マスターもより強い力を望むでしょうから。……必要でしょう?彼女を止めるために』
「……そうだな、今の状況では有り難い。それに交換してくれ」
『了解。刀身パーツ、交換開始』
ベイオネットの言葉を皮切りに交換が開始され、刀身の姿が変わっていく。
新たに使用可能になったのは――
「これは――!」
配色は赤と黒のツートンカラー。
回転する刃を持ち、主の意思に応えて敵を、アラガミを切り裂く。
幾千もの戦場を潜り抜けてきた、歴戦の神機――そのレプリカ。
「――ブラッドサージ!?」
リンドウさんが使用していた相棒のレプリカが現れた事に驚いて、僕はただ驚愕した。
「ベイオネット、これは一体……?」
『マスターはその神機のデータをツバキ殿より預けられ、再現する事に成功しましたがずっと使わずに封印していた事は知っています』
「……当たり前だ、僕がリンドウさんの神機のレプリカなんて使っていい筈が無い」
そう思ったからこそ、預けられたデータで再現はしたものの、ずっと封印していたのだから。
『ですが、ツバキ殿は言っていましたよね?弟の神機は再び適合者が出るまでは眠っているしかない、よってこのデータをお前に託すから有効に使ってくれと』
確かに、ツバキさんはそう言っていた。
リンドウさんが使っていたような歴戦の神機が破壊されずに回収された場合、それはまた新人の神機使いの相棒になる。
神機の中枢に加工できるような無傷のコアがアラガミから取れる事はかなり珍しく、余程こっぴどく破壊されない限りはまた使われることになるのだ。
リンドウさんの神機は僕たち第一部隊が回収したが、それからしばらくたった後、アーク計画阻止後に、僕はツバキさんからリンドウさんの神機――ブラッドサージのデータを託された。
驚いた僕が何故これをと訊くと、弟の神機を適合者が出てくるまで腐らせておくのは勿体無い、だからお前に託すと言う。
確かに、刀身パーツの付け替えが可能な新型神機を使う僕なら、再現したリンドウさんの刀身を使う事は可能だった。
だが、リンドウさんの刀身を受け継ぐと言っても過言ではない畏れ多いその事態に、僕はデータをツバキさんに返そうとした。
だが、ツバキさんは弟もそれを望んでいると言って取り合ってくれなかった。
途方に暮れた僕は、僕より何倍もリンドウさんと付き合いの長かったサクヤさんとソーマに相談したが、二人も僕が使うなら申し分無いと言う。
とどめに、コウタはただ単純にその事を自分の事のように喜んでくれ、アリサは貴方ならその資格がありますと目を輝かせながら言う始末。
どうにもならないと思った僕は、取りあえず皆の望み通りブラッドサージを再現した。
だが、その刀身が装着された神機を握った途端、手が震えた。
あのリンドウさんの神機を――レプリカとはいえ僕が使う資格があるか?
――否。
土壇場でそう結論した僕は、皆の望みを退けてブラッドサージを封印した。
みんなは不満を口にしたが、僕はいつか覚悟が決まったらと言って説得し、何とか納得してもらった。
その時のツバキさんの悲しそうな目は、今も忘れられないが。
それ以来、装着する事を先送りにしてきたその刀身が、目の前に存在している。
「……ベイオネット、他の刀身に代えてくれないか」
『拒否します。この場でこのパーツを使う義務が、マスターにはあると考えます』
「何だって……?」
忠実な相棒の予想外の言葉に絶句していると、続いた言葉に僕は言葉を無くした。
『リンドウ殿はマスター達に未来を託して逝き、その姉であるツバキ殿はマスターにこの刀身を託しました。守りたいものを守れるように、ツバキ殿はそんな願いを込めたのでしょう。――救いたい者が目の前にいて、まだマスターは逃げるのですか?』
「……」
黙り込んだ僕に、ベイオネットは更に言葉を続ける。
『もう、逃げるのは止めにしましょう。……この刀身を使う事が重いと言うなら、込められた願いが重いと言うなら、私も共に背負いますから』
「ベイオネット……」
『かつてはマスター一人で背負わなければいけない重さでしたが、幸い今は私がいます。重さも半分で済むでしょう?実は結構緊張しているんですよ、レプリカとは言え歴戦の神機ですからね』
冗談めかして言うベイオネットに、僕は思わず噴き出した。
同時に心も軽くなっていく。
「はは、お前が緊張ねぇ?――ベイオネット、有難う」
『お気になさらず』
ブラッドサージから目を逸らさず見据え、確りと神機を握る。
大丈夫、手は震えていない。
僕が迷い無く握ったことで反応したのか、ブラッドサージが駆動音を上げる。
いままでは存在していただけだった刀身が産声を上げたように聞こえ、僕も口元に笑みを浮かべた。
「……今まで仕舞い込んでいて、ゴメンな。これからは頼りにしているよ」
それに応えるように光を反射した刃を頼もしげに見遣り、僕は共闘している少女に目を向ける。
なのはは話を聞いていたのか、心配そうな表情で僕を見ている。
「心配いらないよ、なのは。……僕はもう逃げない。リンドウさんが、ツバキさんが託してくれたこの剣で、守りたいものを守って見せる」
「ヤコウさん……。うん、一緒に頑張りましょう!」
なのははそう言うと、闇の書の彼女に力強い言葉を紡ぐ。
「繰り返される悲しみも、悪い夢も――きっと終わらせられる!」
「そうだね――君が悲劇を繰り返してきたのなら……僕らがそれを止める!」
再び僕らはぶつかり合う――
………………
…………
……
――the third person――
――何処とも知れない、暗い、暗い空間。
暗いのに暖かく、宙に浮いているように体が楽で、安らぐ。
眠気が絶えず襲ってくる空間で、しかしはやては何故か眠る訳にはいかないと思っていた。
(私は……何を、望んでたんやっけ……?)
決して忘れてはいけない、大切なこと――
だけど今は、霞がかかった様に判然としない。
それをぼんやりと考えていると、何処からか声が聞こえてきた。
「夢を見る事……」
澄んだ綺麗な声が聞こえてきて、はやては意識をそちらに向けた。
目の前には女性がいて、自分に優しく微笑みかけている。
「悲しい現実は、全て夢となる……安らかな眠りを」
全てが夢――
不自由な体も健康そのもので――
命の心配も無く、コウ兄やシグナム達とずっと一緒に生きていく、幸せな暮らし――
だが……
(そうやったっけ……?)
それが本当の事だったらどんなに幸せだろう。
いままで望んでも手に入らないと思っていたものを一遍に手に入れ、懸念は欠片も無く。
愛する人たちと共に生きる、大切な時間。
しかし……それは何かが違う。
彼女が言っている事は、確かにはやてが望んでいた事だ。
でも、それは幻で……現実ではなく、唯の夢に過ぎない。
夢は育むもので、溺れていいものではないのだから。
ずっとここにいる訳にはいかない。
はやては頭を覚醒させて目を開き、目の前の女性に話しかける。
女性ははやてが意識をはっきりさせた事に驚いたようだが、構わずはやては言った。
「私……こんなん望んでない。あなたも同じはずや……違うか?」
「私の心は、騎士たちの感情と深くリンクしています。だから騎士たちと同じように、私もあなたを愛おしく思います」
そこで言葉を切った女性は顔を伏せると、苦しみを堪える様な表情で言葉を続けた。
「だからこそ――あなたを殺してしまう自分自身が許せない」
女性の言葉にはやてがハッとした表情になるが、そのまま女性は話を続ける。
「自分ではどうにもならない力の暴走……あなたを侵食する事も、暴走してあなたを喰らい尽くしてしまう事も……止められない……」
自らの有様を、そしてそれが原因で引き起こされている現在の惨状を嘆くような言葉に、はやては瞳を揺らして顔を伏せるが、やがてポツポツと話を始めた。
「……覚醒の時に今までの事、少しは分かったんよ。望むように生きられへん悲しさ……私にも少しは分かる……。シグナム達と同じや、ずっと悲しい思い、寂しい思いしてきた……」
「……はい」
はやての言葉に悲しそうに顔を伏せる女性だったが、はやてはそこで声を明るくして言う。
「せやけどさ……コウ兄が言うとった事、忘れとったわ」
「……」
女性は急に嬉しそうになったはやてに戸惑いつつも、言葉を待つ。
「ずっと一緒におってくれるって……私がそれを望む限り、いつまでも……って」
「――っ!」
「皆とずっと一緒やって言うとった……。私、こんな大事なこと忘れたらあかんかったなぁ……」
驚きに目を見開く女性に、はやてはいたずらっぽい表情で告げる。
「やから……こんな世界消えてまえー、なんて……言うたらあかんかったんや」
「……は、い」
俯く目の前の女性を見て、はやては静かな笑みを浮かべながら言う。
自分と同じ……ずっと一人だった女性の頬に手を伸ばして、優しく告げた。
「それに……忘れたらあかん。あなたの今のマスターは、私や……マスターの言う事は、聞かなあかんで?」
頬に手を触れられて驚く女性にはやてがそう言うと、はやてを中心に魔法陣が展開され、二人を包み込む。
白銀色の魔法陣は二人を祝福するように輝き、暖かに照らし出す。
跪いた女性の両頬に手を当て、穏やかな口調で言葉を紡ぐはやて。
「名前をあげる――もう闇の書とか、呪いの魔道書なんて呼ばせへん……私が呼ばせへん!」
「……っ」
力強いはやての言葉に女性の瞳から涙が零れ、口元からは嗚咽が漏れ出る。
「私はあなたのマスターで管理者や……私にはそれが出来る!」
涙を零しながら、嬉しさのあまりそれに縋ってしまいそうになる自分を戒め、女性は自嘲を浮かべながら嘆きを口にする。
「無理です……自動防御プログラムが止まりません……。管理局の魔導師と、あなたが兄と慕う者が共に戦っていますが、それも……」
「コウ兄もおるんやな……頑張ってくれとるんやな……。なら、絶対に大丈夫やて、な?」
女性の言葉に尚更確信した様な笑顔を浮かべたはやては、涙を零す彼女を慰めるように微笑むと、彼女の肩に手を置いた。
その震える肩に……少しでも温もりを与えようと――。
………………
…………
……
――side Yakou――
「はああぁぁああぁっ!」
「……」
矢継ぎ早に繰り出す剣戟を、闇の書の彼女は涼しい顔で受け止める。
高速移動しつつ打ち合いを演じる僕らは、後に何も残さないほどの勢いで戦い続けていた。
「――ヤコウさん、行きます!」
「了解!」
合図と共に数瞬斬り合い、隙をみて離脱。
「バスターッ!!」
そこへチャージを終えたなのはの砲撃が繰り出され、彼女にヒットする。
だが、またもや有効な攻撃は加えられなかったようで、その表情は微動だにしていない。
相変わらす何も感じさせない冷たい目で僕たちを見つめ、冷めた声音で言う。
「一つ覚えの剣戟、離脱、砲撃のコンビネーション……通ると思っているのか?」
そんなのはさっきから分かっているが、そういう問題じゃない。
「倒す……!レイジングハートが力をくれてる、命と心を賭けて応えてくれてる!」
そのなのはの声に応え、レイジングハートがカートリッジをロード、魔力をその身に充填させる。
「――泣いてる子を、救ってあげてって!!」
「そうだ……可能性の問題じゃない。――絶対に助けると誓ったから、僕らはそれを守るだけだ!」
この刀身に込められた想いに応えるために……絶対に諦めない。
守りたいものを、もう取りこぼさない様に。
かつて僕は、シオを助けられなかった――
あんな思いは、もうたくさんだから――
「はやてを、君を助けるまで……僕らは諦めない!」
『強制解放剤改、リミット間近。――再度投与しますか?』
「ああ……切れた途端しんどくなるけど、ここは踏ん張りどころだ」
『了解。投与開始』
ベイオネットが言うやいなや、強制解放剤改が腕輪から注射されてバーストモードが起動する。
この強制解放剤改は、普通神機を通して身体を活性化させるというプロセスのバーストモードを、神機使いの体内の偏食因子を強制的に喚起して身体から先に活性化させてしまうという逆のプロセスを踏ませる、いわば自己ブーストを起こさせる薬剤である。
捕喰の手順を踏まずにバーストモードに入るために特殊バレットは手に入らないし、自己ブーストの名の通り負担も大きい。
だが、神機を通さずに身体を活性化させるためか、その効率が捕喰よりも高いのだ。
そう言うわけで、多少の負担は無視して効果が切れる直前に投与するのを繰り返している。
今さっき投与したので二本目で、効果が切れた時を考えると怖いのだが今使わずに負けたら後悔どころの話ではない。
なのはがエクセリオンモードと言う切り札の中の更なる切り札、ストライクフレームを展開させる。
勝負に出る事を悟った僕は、それを確実に成功させるべく闇の書の彼女を撹乱する。
「なのは、僕が彼女の気を逸らすから、隙を見て攻撃して。――僕が近くに居ても、気にしないでいいから」
「――分かりました。絶対に当てます!」
心配したらしく一瞬表情を歪めたなのはだったが、思い直してくれたのか力強く頷く。
僕も頷き返すと、バーストモードの極限の機動力を用い一瞬で彼女に肉迫、ブラッドサージで連激を放つ。
眉ひとつ動かさずそれを捌く彼女だが、何とか鍔競り合いにまで持ち込む。
「……お前の攻撃は把握している。もう諦めるがいい……」
「そうか、なっ!」
「っ!」
鍔迫り合いの最中、僕は柄に仕舞われた銃身の銃口の部分を彼女に向け、隠し玉を公開する。
「ベイオネット、お見舞いしろ!」
『了解。Inpulse edge, string shift』
ベイオネットが起動音を発し、ブラッドサージの特性を反映した雷弾がゼロ距離で、連続して撃ち込まれる。
これはロングブレード用にベイオネットと作り上げた、インパルスエッジの発展型の魔法である。
元々単発でしか放てないインパルスエッジを連射できるようにしただけという発想としては単純なものだが、その効果は凄まじく攻撃力も大幅に増加したが、僕とベイオネットにかかる負担も大幅に増大してしまった。
よって、バーストモード中であり、一定以上の強度の刀身を使っている時でなければ使用できず、更に多用も不可という、いわば諸刃の剣の様な技に仕上がってしまった。
もっとも、その威力はデメリットに目を瞑るだけの価値があるが。
ゼロ距離での連続射撃に一瞬隙を見せた彼女に、なのはの攻撃が迫る。
「エクセリオンバスターA・C・S――ドライヴ!」
その言葉と共に突撃を敢行し、ストライクフレームの切っ先を彼女に向けて肉迫する。
彼女は体勢を崩しつつもそれを防御し、堪える。
「届いてぇっ!」
レイジングハートが更にカートリッジを装填し、魔力をその身に漲らせる。
そして、遂に彼女の堅牢なシールドに僅かに罅を入れる事に成功する。
「まさか……!」
「ブレイク・シュートッ!!」
なのはの言葉にレイジングハートが唸りを上げ、シールドの罅を押し広げるように凄まじい威力のゼロ距離砲撃を放つ。
途轍もない爆発が起こり、至近にいた僕も少なからぬダメージを負ったが、なのははもっと酷いダメージを受けただろう。
果たして、なのはは肩を押さえて痛みを堪えている様な体勢になっていた。
「なのは、大丈夫か!?」
「……はい、何とか。ちょっと疲れましたけど……ヤコウさんは大丈夫ですか?」
「ああ、僕は何ともない。でもこれで……」
「はい……少しは、ダメージを与えられていたらいいんですけど……」
だが、そんな僕らの願いは風の前の塵芥の如く儚いものだった。
『Master!』
『……残念ですが、戦いは続行されるようです。本当に、信じられない位頑丈ですね。防御体制のボルグ・カムランもあそこまで硬くないでしょうに……』
「ええぇっ、嘘!?」
「なっ……!?」
衝撃で発生した煙が晴れたその場所には、闇の書の彼女の悠然とした姿。
何の痛痒も感じていない様な、常と変わらない表情だ。
あれだけの決死の、捨て身とも言える攻撃をまともに食らったというのに、ダメージは限りなくゼロに近いのだろう。
思わず笑ってしまいそうな光景だが、諦める事は絶対にしない。
「……なのは、もうひと頑張りしようか?」
「はいっ……絶対に、諦めません!」
「僕もだ……二人を助けるまでは、絶対に退かない」
僕もなのはもお互いに満身創痍であるが、気力だけは充実している。
仕切り直しとばかりに闇の書の彼女の方を向くと、異変が起きた。
何やら不自然な挙動をしており、ガクガクとおかしな動きをしている。
突然の彼女の変調に訝しげな表情をしていた僕となのはだったが、次いで聞えてきた声に瞠目した。
『外の人!……えと、管理局の人、それとコウ兄おる!?そこにいる子の保護者の、八神はやてです!』
「はやてちゃん!?」
「はやて……!?」
『なのはちゃん!?コウ兄もほんまにおったんやね!……信じとったで、生きとるって!』
「……はは、当たり前だろ。ずっと傍にいるって約束したからな」
はやての声を聞いて、疲れ切っていた身体に活力が戻って来る。
なのはが今現在共闘している事を説明すると、はやてが意外な事を僕らに頼んできた。
『ごめん、なのはちゃん、コウ兄。何とかしてその子、止めたげてくれる?』
「え……?」
「……どういう事なんだ、はやて?」
『魔道書本体からはコントロールを切り離したんやけど、その子が奔ってると管理者権限が使えへん。……今そっちに出てるのは、自動行動の防御プログラムだけやから』
「んん……え……?」
はやての言葉になのはが首を捻っているが、その疑問に答えるように僕らに念話が入った。
(――なのはと、えーっとヤコウって呼んでいいかな?今から言う事を君たちが出来れば、はやてちゃんもフェイトも外に出られる!)
(えっ、本当なの、ユーノ君!?)
(うん。目の前の子を、魔力ダメージでぶっ飛ばして!全力全開っ、手加減抜きで!)
(……なるほど。確かにシンプルで、僕らにはお誂え向きの方法だな、ユーノ少年)
(でしょう?じゃあ、挨拶はまた後で)
(ああ、助言感謝するよ)
念話が切れると、なのはと顔を見合わせて互いに笑みを浮かべる。
「さっすがユーノ君、分かりやすい!」
『It`s so』
主従そろってユーノ少年の事を理解しているらしく、疑う事は全くない様だ。
「いやまあ、シンプルイズベストとは言うけど……ここまで単純とはね」
『いいじゃないですか、こういう展開はマスターも好きでしょう?』
「……違い無い!」
レイジングハートをなのはが構え、魔法陣が展開されて、そのデバイスからも光の羽が展開される。
砲撃の構えを見せるなのはを警戒したのか、海から何かの触手が伸びてきてなのはに迫り来るが、僕がいち早くそれを打ち払い、寄せ付けない。
「なのは、君は砲撃の準備に集中するんだ!こちらは僕に任せろ!」
「はい、ヤコウさんっ!――エクセリオンバスター、バレル展開!中距離砲撃モード!」
『All right. Barrel shot』
レイジングハートから放たれた不可視の衝撃波が闇の書の彼女を拘束し、磔の様な体勢にする。
それはその名の通り、必中の砲撃の為の通り道。
砲撃のチャージをしていくなのは、なのはの邪魔をせんとする触手を打ち払う僕。
カウントダウンは進んでいく。
………………
…………
……
――the third person――
ヤコウ達が着々と解放の準備を進める中、闇の書の内部のはやてと女性は、神聖な儀式の只中にあった。
命名――その存在を定義づける名を授ける、生まれて初めて貰う大切なもの。
長い時と悲劇の歴史を経た魔道書は、当の昔に自分の名前など忘れてしまっていたが、はやてはその名を再び授ける。
「夜天の主の名に於いて、汝に新たな名を送る……」
「……」
「強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール――」
彼女はただ静かに、その名を享ける。
「――リインフォース」
一方その頃、闇の書に捕らわれていたフェイトも脱出すべく行動中であった。
「――バルディッシュ、ここから出るよ。ザンバーフォーム、行けるね?」
『Yes, sir』
コアを明滅させ、いつも通りの冷静な声音で告げるバルディッシュ。
フェイトはその応えに笑みを浮かべると、バルディッシュを頭上に構えてバリアジャケットを展開させる。
バリアジャケットを展開したフェイトはバルディッシュを腰だめに構え、カートリッジをロード、その形態を変化させる。
『Zamber form』
バルディッシュの音声と共にその形状が変化していき、両刃の大剣状に姿が変わる。
大剣状に姿を変えたバルディッシュを正面に構え、魔法陣を展開、その光刃も電撃を帯びる。
「疾風、刃雷――!」
バルディッシュを肩に担ぐように構えなおし、ここでの出来事を想うフェイト。
――優しい母、しっかり者のリニス、少しお転婆のアリシア、何時もと変わらないアルフ。
そして自分がいるその時間は、自分が何よりも欲しかったもの。
それを見せられた事で、改めて思った。
でも――それは夢で、幻で、本当じゃない。
だから――外で私を待ってくれている人達のところへ、帰らなくてはいけない。
大切な人たちのところへ。
居心地のいい夢を、振り切ってでも――
そんな主の決意を反映してか、バルディッシュが一際強い雷撃を放出していく。
全てを断ち切る勢いで、フェイトは雷刃を振り下ろした。
「――スプライト・ザンバーッ!!」
その一閃で夢の世界に罅が入り、崩壊していく。
夢の時間は終わり、フェイトは現実へと帰っていく。
彼女の帰りを待つ人々のいる世界へと――。
………………
…………
……
――side Yakou――
僕がその都度斬り伏せていた触手も、駆けつけたユーノとフェイトの使い魔のアルフのバインドですっかり動きを封じられている。
なのはのチャージも完了し、後はその強大な一撃を闇の書の彼女にぶつけるのみ。
なのはとユーノ風に言うと、全力全開、手加減抜きで彼女をぶっ飛ばすのみだ。
溢れんばかりの魔力を充填したなのはが、攻撃を宣言する。
「エクセリオンバスター・フォースバースト!」
レイジングハートの先端に巨大な魔力球が形成され、それを環状魔法陣が取り巻いて更に圧縮する。
「――ブレイク・シュートッ!!」
魔力が解放され、指向性を持った砲撃となって唸りを上げながら闇の書の彼女に直撃、その身体を砲撃の光が包み込んでいく。
それと同時に彼女の内からも閃光が迸り、雷鳴の様な音が辺りに響き渡る。
思わず皆で辺りを見回すと上空から空を裂くような音が聞こえ、そこには僕の知るフェイトがいた。
「フェイト!」
アルフが安堵の声を上げ、それに反応したフェイトが僕らの方を向く。
他のメンバーを見てフェイトも笑みを浮かべたが、僕の事を認識すると僅かに驚いた表情になる。
だが僕が笑いかけると目を瞬かせ、その後自然な笑顔を返してくれたのだった。
――the third person――
『――新名称、リインフォースを認識……管理者権限の使用が可能になります』
「うん……」
今や新たな名前が与えられた魔道書の管制人格――リインフォースがマスターであるはやてにそう告げる。
悲劇の魔道書がその輪廻を断ち切るべく踏み出した最初の一歩だが、まだ全てが終わった訳ではない。
その名を祝福する様な光に包まれているはやてに、リインフォースは問題点を告げていく。
『ですが、防御プログラムの暴走は止まりません……管理から切り離された膨大な力が、直に暴れ出します』
「うん……まあ、何とかしよか」
相当重大な事を告げられるが、はやてにもリインフォースにも不安はまるで無い。
リインフォースがいれば……主がいれば……そして皆がいれば大丈夫――その想いが、互いの心を満たしていたから。
はやてはそっと新たな名を与えられた魔道書――夜天の魔道書を抱き込む。
「行こか、リインフォース……皆のところに、コウ兄のおる所に」
『はい……我が主!』
そんな二人を送り出すかのように、光が包み込んでいくのだった――
――終りの一言――
植田さんの『Snow Rain』は神曲ですね!
――はい、今回は独自の想像に基づいた設定満載でお送りしました~!
……正直反応が怖いです、が。
僕の考えはああだったのですよ、ええ。
強制解放剤改の件は完全に想像です。
捕喰でのバーストモードと比べて効果が高いなんて事はありません。
ただ、それっぽく書いただけですので。
ブラッドサージはエンディングを見ると作れるようになる武器で、文中で触れた通りリンドウの神機そのままです。
そんな神機を、ただ第一部隊のリーダーの後を継いだというだけで、レプリカとはいえそっくりな物を作ることが許されるか?と考えた時、僕の結論はNOでした。
なので、リンドウの姉であるツバキから神機のデータを託され、それを元にレプリカの作ることとその使用を許された、という独自の設定を作りました。
そうでもしないと納得できなかったのです。
リンドウは極東支部で一番慕われていた神機使いと言っていいと思いますが、その神機を無許可で真似る?
大顰蹙でしょう、しかも本人は亡くなってしまいましたし、余計に。
あと、例によってオリジナル魔法ですが、これは単純に単発でしか撃てないインパルスエッジを矢継ぎ早に撃ちまくるという、ある意味僕の夢を体現したモノです。
……まあ、実際にゲームでやったら、あっという間にOPとスタミナがカツカツになるので使いものにならないでしょうけど。
魔法あっての産物で、しかもバーストモード限定、おまけに神機にかかる負担も大きく多用不可、と言う訳です。
『string』という単語は、「連続」と言う意味の語を探していた時、語感がよさそうなのがこれくらいしかなかったので採用しました。
ご感想、お待ちしています。
P.S――
劇場版なのは、ギリギリで観る事が出来ました。間に合って良かった……。
なのはとフェイトの出会いの物語は良かったですね。
あと、バルディッシュのグレイヴフォームがカッコいいと個人的に思いました。
これが加わったバルディッシュは、まさにハルバードといった感じだと思います。
アックスフォームで薙ぎ払い、サイズフォームで切り裂き、グレイヴフォームで突き刺す!って感じで。