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[7093] 3年A組 銀八先生!(ネギま!×銀魂) 【完結】
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:2193e654
Date: 2012/04/19 12:47
初めましてカイバーマンという新参者です。今回描くのは銀魂とネギまのコラボです。ジャンルは『SF人情ファンタジーコメディ』です
銀さんがエヴァ、いいんちょ、千雨や様々な人と関わってドタバタコメディを繰り広げていきます

この小説を読む前にいくつか注意事項
①原作のネギまとは違うオリ設定になっております、なので少し世界観が変わっています。
②サザエさん方式でエンドレスストーリー重視。キャラクターは年を取ることはほとんどありません
③学園長に対する酷さが半端ないです、学園長好きな人は読むことが出来ないと思います・・・・・・
④最後に一言、ネギまキャラがぶっ壊れている所(銀魂風)がありますので・・・・・・ネギまキャラが「おいィィィィィ!!」って叫ぶのを見たくない人はこの小説は読まないほうがいいです・・・・・・

5月26日 ブログ作りました。よかったら見てください

↓作者が書いた別作品です。
【遊戯王バレンタインデーズ】

【禁魂(銀魂×とある魔術の禁書目録)】



[7093] 第零訓 運命の出逢いは時に最悪
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:2193e654
Date: 2010/01/09 22:50

天人という宇宙人達の襲来によって、支配された国『江戸』天人達の支配によって江戸の文明は比較的に上昇し、反対に古くから存在していた侍たちは、天人の権力によって強いられた『廃刀令』によって衰退の一途を辿っていた。そして今では稀少種の一人の侍が、こんな時代に不満を言っていた。

「ちくしょ~、天人達のせいで俺の財布からマネーがロストしていくよ、ふざけんなちくしょうこの台全然出ねえじゃねえかッ!」
「銀さん、玉が出ないのは天人のせいじゃないと思うんだけど、悪いのはアンタの運と欲望だから、パチンコ台にキレても何も始まらないからね」

廃刀令がしかられた江戸で腰に木刀を差した銀髪天然パーマの男、坂田銀時がかぶき町のパチンコ店内で台に向かって椅子に座りながら、ブチ切れていた。それを隣りで疎めるグラサンの男はまるで駄目なオッサン、通称『マダオ』こと長谷川泰三だ。彼も既に財布はほぼ空だ。

「銀さんやっぱり駄目だよ今日は・・・・・・一旦出直そうぜ、これはきっと神様が俺達なまけ者に嫌がらせしているとしか思えねえよ、俺もなけなしの金はたいてやっているのに全然玉が出ねえ、今日は家に帰ってHPを回復しようぜ」
「家が無いアンタにんなこと言われても全然説得力無えよ、家どころか宿屋もないアンタがどうやってHP回復すんだよ、やくそうも買えないくせによ」
「うるせえよッ! 俺には公園という名の家があるんだよッ! 無許可だけどさッ!」
「それ家って呼ばねえよ、勝手に住みついてるだけだろアンタが、くそ~もう財布もヤバイし確かに潮時か・・・・・・」

銀時が財布の中をチェックしながら長谷川に毒を言う。実はこの長谷川泰三、現在無職でありそのせいで路上生活を余儀なくされている、哀れなオッサンだ。昔は江戸幕府の天人が江戸に来るのを仕切っている、入国管理国局長という立派な仕事を持ち、キャリア道をつっ走っていたのだがとある事件を機に仕事を失うわ、妻に逃げられるわ。
今ではもうマダオ道を全速力でつっ走っていた。

「銀さんは良いよな~俺と同じマダオなのに家もあるし、仕事もあるし、暖かい家族もいるんだから、俺なんか家無いし、仕事無いし、妻のハツには逃げられてるからね」
「何言ってんだよ、家って言っても家賃催促してくるババァがうるせえし、仕事だって万事屋稼業だからそんなに収入ねえしよ、暖かい家族ってアイツ等そんな生っちょろいモンじゃないから、熱すぎるからね? もう家の中オーバーヒート寸前なんだから」
「そういうオーバーヒート一家も俺には羨ましいんだよ、アレ? そう言えば銀さんって結婚とかしないの? カミさんとかいれば銀さんの所も少しは安定するんじゃない?」
「俺が結婚する質に見えるか? 結野アナなら文句無しでOKだけどさ、俺の周りの女共はモンスター軍団だからね、結婚なんてする気にもならねえよ」
「ハハハ、だよな~銀さんが結婚なんて想像出来ないもんな、まず銀さんの妻になる人なんてこの世界にいるはず無いし・・・・・・・お来たリーチッ!」

二人でパチンコしながらそんな談笑をしていると長谷川が吸っていたタバコを口から落とすほど突然テンションアップする。どうやらパチンコで大勝ちのチャンスが来たらしい。銀時は自分の席から立って長谷川の後ろからそれを眺める。

「頼む揃ってくれッ! ここで外れたら俺は断食修行のスタートだッ! 悟りを開いちゃうよッ!」
「いやブッダさん断食修行だけしても悟りは開かないって言ってるからね、長谷川さんの場合は地獄の門が開くだけだから」
「地獄の門なんてとっくに何回も通過してるよッ! もう常連だからッ! そろそろ赤鬼さんと青鬼さんに顔覚えられてるよッ! 頼む揃えェェェェ!! マダオ卒業させてくれェェェェ!!」

テンション上がって吼えている長谷川に銀時は哀れと思いため息をついた

「駄目だこのオッサンとことん駄目だ・・・・・・ん? なんだこの小さな穴・・・・・・?」

ふと下を向いていると銀時の立っている所にゴルフボールぐらいの小さな穴が1つぽっかり開いていた。なんでこんな所にこんな穴があるんだ? 銀時がアゴに手を当て考えていると突然

「でッ!」

穴がブオンッと音と共に、大きくなり銀時をすっぽり入れるサイズになった。あまりの突然に銀時は驚いてそのまま穴の中に・・この現象に誰一人気付かないのも不思議だが、ここはパチンコ店。騒音が長く響いている大きな場所なので銀時の声も聞こえず、みんな自分のパチンコ台に夢中なので気づかないのだ。


「アァァァァァァ!!」
「だァァァァァ!! 外したァァァァ!! 断食修行スタートだチクショォォォォ!!!」

銀時は叫び声を上げて落ちていく(ついでにマダオも叫んでる)。
下へ、下へと・・・・・・・まるで底なんか無いように銀時は落ちて行った。














そこは普通の人間と魔法使いの世界が混合している世界であり、普通の人間は魔法使いの存在など知らずに生活しているが、魔法使いは裏の世界(魔法世界)に住んでいたり、表の一般世界で普通の人間に魔法使いだとバレないように暮らしている人もいる。
そして表の世界のある魔法使いが住む家にて今1つのアクシデントが舞い降りてきた。否、落ちてきた。

「おわッ!」

銀時は突然知らない部屋の中に黒い穴から排出され、そのまま床に「うぎゃッ!」っと声を上げて顔面から落ちる。

「あ~クソ痛ぇ・・・・・・・何処だよここ俺パチンコ店にいたんだよな・・・・・・」

銀時が頭をおさえながら周りを見渡す。ある部屋に落ちたのは確かだが、銀時には見覚えが無い物があふれている。銀時はおもむろに部屋の物を物色しようと、色々と探ってみる。

「知らねえモンが多いな・・・・・・ナメック語で書いてある本なんて初めて見たわ、まずここは何処だ・・・・・・? 江戸か?」

ひょいとベッドに置いてあった彼には見知らぬ言葉で書いてある本を持って中をパラパラ見る。そして誰のかわからないタンスを見て、本をベッドに放り投げて近付いて行く。そしてまるで空き巣の様に中を調べ始めた。

「中には女の下着か、大きさからして子供か・・・・・・てことはここ子供部屋か・・・・・・? 何で俺が子供部屋に落ちてきたんだよ・・・・・・?」

タンスの中に入っている物でここにはどんな人が住んでいるのかわかる。万事屋というなんでも屋をやっている銀時にはこういう知識が豊富だ。銀時は他に何か無いかタンスの中をゴソゴソと調べていると、突然階段を駆け上がってくる音が聞こえた。そして突然部屋のドアがバタンッ! と乱暴に開く。

「今の音はなんだッ! まさか本当に召喚魔法が成・・・・・・・功・・・・・・・」

突然部屋に入ってきた金髪の少女は開けて早々叫んだが徐々にトーンが下がっていった。

目の前には自分の下着を持っている銀髪天然パーマの男がいた・・・・・・











「こ、こ、この下着泥棒がァァァァァァ!!」
「違ェェェェェ!! これは誰が住んでいるかという調査であってッ! 断じて違うからッ!」
「何が調査だッ! この変態天パがッ! 下着ドロでここに来た事を後悔させてやるわッ!」
「うおッ!」

金髪の少女が銀時に向かって飛びかかる。銀時は持っていた少女の下着をポイッと捨てて、少女を受け止めるもそのままベッドに押し倒された。

「まず貴様が盗もうとした下着の持ち主をその脳に刻んでおけッ! 私の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、貴様を塵に変える者だッ!」

自分の名を叫んだ少女は銀時の胸倉を掴んでぐらぐらさせる。一方的に犯罪者呼ばわりされる銀時も少しカチンときたのかすぐに反論する。

「だから下着ドロじゃねえっつってんだろうがッ! テメェも刻んどけ思い出にッ! 俺は坂田銀時、真っ当な人生を歩む『万事屋銀ちゃん』のオーナーだガキッ!」
「家宅侵入罪の奴の名など覚える訳が無いだろこの私がァァァァ!!」
「好きでお宅訪問した訳じゃねえよッ! 突然俺がいた所に穴が空いてそこから落ちたら、こんな所にポイッされたんだよッ!」
「そんな話信じられるわけ・・・・・・・え?」

少女は右手で思いっきり銀時の顔をグーで殴ろうとしたが、彼の声でハタッと止まる。

「てことは・・・・・・召喚魔法でお前が呼び出されたって事か・・・・・・?」
「・・・・・・何言ってんのお前・・・・・・? 呼び出されたってここ何処?」
「紛い物かと思い面白半分で召喚魔法をやったら、出てきたのがこんな死んだ魚のような目をした男・・・・・・?」
「何死んだ魚の目って、埋めるぞガキ・・・・・・さっきから召喚魔法って何だよ・・・・・・?」
「おい、お前は魔法使いにここに召喚されたと信じるか・・・・・・?」
「・・・・・・へ?」

少女と銀時は互いに混乱を交わらせながら時が止まったかのようにお互いを凝視していた。

これがかつて『白夜叉』と呼ばれた侍坂田銀時と、かつて『闇の福音』と呼ばれていた魔法使いエヴァンジェリンの初対面であった。



[7093] 第一訓 侍だって教師になれる
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/06/27 00:41
外はすっかり夜になっていた。

「俺がお前に魔法でこの世界に召喚されました? それはわかったから元の世界に帰してくれないかな? 俺向こうで色々と忙しいんだよね、おチビさん?」
「帰し方なんか知らんって何回も言っているだろう、お前の言う『江戸』という国に帰す術など私は知らん」
「チビ人形~このガキ全然使えねぇよ~自分で口寄せしておいて帰せませんだってよ~なんとかしてくれよ~」
「ケケケッ、本当使エナイゴ主人ダナ~」
「お前の世界に送れる事は出来んが、代わりに地獄に送る事は出来るぞ貴様等・・」

前回、自分の世界にいた坂田銀時は、魔法使いのエヴァンジェリンことエヴァにこちらの世界に召喚されて、
現在はエヴァの家の小さなリビングにて互いの世界の事情を話し、ソファに座っている銀時はエヴァの従者の一人チャチャゼロという小型人形を両手で持って、銀時の向かいのソファに座っている寝巻き姿のエヴァをイラつかせながら話している。自分で召喚した相手を見ながらエヴァは深いため息をついた

「全く・・冗談半分で召喚魔法をやってみたらまさかこんな奴が出てくるとは・・それにしても『天人(あまんと)』、まあ宇宙人の事らしいが、江戸に宇宙人が来襲して支配された世界なんて聞いた事もないぞ・・・」
「俺だって生きている中で『魔法使い』がいる世界なんて漫画や映画でしか見たことねえよ、この世界にもヴォルデモート卿みたいな恐え~魔法使いとかいんの?」
「恐ろしい魔法使いなら今貴様の目の前にいるぞクックック・・」
「チビ人形~この痛い子どうにかして~、言ってる事が物凄く痛いよ~ガキのくせに自分の事恐ろしい魔法使いだってよ~痛々しい、痛々しいよこのガキ」
「ドウニモ出来ネェナ~、ゴ主人ハ一生コンナ子供ダカラナ~」
「いちいちチャチャゼロと会話するなッ! すっごいムカつくんだよお前等ッ!!」

相変わらずチャチャゼロと一緒に会話して腹立たしい事を連呼する銀時。そんなふざけた態度の彼にエヴァは額に青筋を浮かべて立ちあがって近付き、とりあえず銀時が持っていたチャチャゼロをひったくってブンッと放り投げる。「ア~レ~」と言いながら家の壁にぶつかり、その場に落ちるチャチャゼロ。そんな光景を無表情で見ていた銀時は目の前で荒い息を吐いているエヴァの方へ顔を向ける。

「じゃあ結局俺が帰れるのかわかんないんだよな?」
「うん、わからん」
「・・・・・・」

エヴァの一言で一刀両断された銀時の意見。しばらく銀時はそれを聞いて下を向いていたが・・

「まあお前の今後は私とジジィが・・むぐッ!」

エヴァの言い分を聞かず銀時はいきなり彼女に近付き、彼女の口の中に自分の親指を突っ込んでそのまま思いっきり引っ張る。銀時の先制攻撃に「いふぇふぇふぇッ!(イテテテッ!)」と驚きと痛みを交えてエヴァは思わず悲鳴を上げる。

「何がわからんだよテメェェェェ!! 人をわけわかんない世界に勝手に呼んで何だそりゃッ!? この世界で暮らせってかッ!? この世界で一生暮らせってかッ!? 俺の住民票どこッ!? 俺の家どこッ!? 俺の仕事どこッ!? 俺のメシ何処だオラァァァァ!!」
「いふぁいふぁッ!(痛いわッ!)ちゃんほおふぁえのしょふうはふぁんふぁえているふぁッ!(ちゃんとお前の処遇は考えているわッ!)」

頬を引っ張られたおかげで理解不能な言語になっているエヴァだが、銀時は理解したのかようやく彼女の口から自分の親指を抜く。解放されたエヴァは自分の両頬をさすりながら恨みがましい目で銀時を睨む。

「この私をよくもこんな目に・・くそ、いつか後悔させてやる・・」
「何か言ったかクソガキ?」
「この白髪天然パーマメントが・・まあいいこんな奴を召喚した私が悪い・・こいつの飼育は私がしっくり調教を交えながら飼って・・後は職だな、ずっとウチにいられるのも困るしな・・」

エヴァはしばらくブツブツと独り言をしながら銀時をどうするか考える。そんな彼女を銀時は小指で鼻をほじりながらボケーと眺めていた。
しばらくしてエヴァは一人の人物を思い出した、銀時に職を与えれるのはあの男しかいない
と彼女は立ちあがる。

「どうしたのおチビちゃん?」
「今からちょっと出かけるぞ、お前の職を提供してくれる心優しい人物の所にな、ちょっと着替えてくるから待ってろさすがに寝巻き姿で行くのはヤダ」
「出かけるって何処にだよ?」
「私の従者の一人がお前の事をジジィに報告している頃だな・・そこに私達も行って職を貰いに行くぞ」
「だから何処だっつーのッ! ハローワークか何かかッ!?」

銀時が何処へ行くのかと、自分の部屋に着替えるために階段に登って戻ろうとするエヴァに向かってソファから立ちあがって叫ぶ。少し口から歯を出して、意地の悪い笑みを浮かべてながら彼女は振り返った。

「麻帆良学園だ、ちょうど国語の教師が足りないとかあのジジィほざいていたからな、お前確か前の世界で万事屋とかいうなんでも屋をやっていたんだろ? そんなこと仕事にしているなら器用だと思うし、教師ぐらい出来るだろ」
「・・・はい?・・・何言ってんのお前・・・?」

ポカンと口を開けて固まる銀時に彼女は満足した様子で自分の部屋に戻って行った。
教師・・いくら器用でもそんなこと一回もやった事が無い・・まず人に物事を教え込む自体あまり無い、人に質問されたら返す程度・・教師など無理だ・・
銀時がそんな事を悩んでいると、床に転がっていたチャチャゼロがケケケッと笑っている。

「オ前モ前途多難ダナ~天パ」
「全てテメェのご主人のせいだろうが・・」

自分の心を読んでいたチャチャゼロを銀時は拾ってテーブルにポンと置き、乾いた声でツッコむのであった






第一訓 侍だって教師になれる
















ここは麻帆良学園。この巨大な女子校がある島のほとんどはこの麻帆良学園の所有地であり、学校というより、もはや1つの街と言った方がいいのではないかと思うほどめっさデカい。その学園内のトップが今、自室でこの学校の生徒と話をしていた。

「何? エヴァが別世界から奇妙な格好をした銀髪の男を召喚した? いきなりそんな事言われてもの・・ていうか何やってるんじゃアイツは・・その男は大丈夫なんじゃな? 何か目からビーム出すとか、投影魔法が使えるとか、自縛神を呼び出すとかそういう危ない奴じゃったらここにいては困るのじゃが・・?」
「大丈夫です、魔力も持ってないとマスターが言っていましたし、目が死んでいるちゃらんぽらん、持っているのは木刀一本と中身が空の財布のみ、この学園に危険が及ばせる程の人物ではないかと? まあ私を見てすぐに人間では無いとわかったのは凄いと思いましたが」
「その情報聞くと別の意味で危ない奴に思えるんじゃけど・・あとお主がバレるのもわかる気がするんだけど・・だて見た目どう見てもロボじゃん・・なんで気付かないのウチの生徒たち・・」

学園内のトップの人物。麻帆良学園理事長の通称、学園長。彼は自室の学園長室にて、自分用の豪華な椅子に座って目の前で無表情で説明している、エヴァの従者でもありこの学園の生徒の天才少女、葉加瀬聡美が作った高性能アンドロイド絡繰茶々丸から、エヴァが召喚してしまった男の情報を聞いていた。
もしその召喚してしまった男が危険人物なら、この学園に危害が及ぶ。学園長にはこの学園を守る義務があるので、仮にそんな男がこの学園内に入ったら即刻排除する気だったが、茶々丸の情報を聞く限りただの駄目人間が来たという結論に落ち着き安心する。

「まあそんな奴召喚したエヴァが悪いの・・召喚したなら責任持って元の世界に帰すなり、自分の家で世話するなりしろってあの娘ッ子に言っておいてくれ」
「承知しました」

学園長がめんどくさげに言った答えに、茶々丸は相変わらず無感情で頷く。だがその時、学園長室のドアがノックの音もせず開いた。入って来たのは私服姿のエヴァが腕を組んで学園長に向かって歩く。

「おいジジィ話がある」
「何じゃエヴァか、何か用? 言っとくけどワシ召喚した奴を元の世界に帰す術なんて知らねえよ?」
「おいおいおい、これがここの一番偉い奴なの? 見た目どう見てもエイリアンか洋梨だろコレ、おいガキ絶対嘘だろ、これここの建物の中に迷い込んだ野良エイリアンか何かだろ?」
「何このいきなりワシに無礼な態度の男・・? いきなりエイリアン呼ばわりされたんだけど・・エヴァ、もしかしてこの男をお前が・・」

エヴァの後から入って来て、学園長を見た早々いきなり自分を指差して失礼な態度を取る銀時に、学園長は眉間に皺を寄せた。恐る恐る学園長はエヴァに質問するが、彼女は髪を掻き毟りながら頷く。

「まさかこんな奴を呼んでしまうなんて思わなかった・・だが私が呼んだんだから一応私に責任がある、コイツは私の家に住まわせる、それで良いなジジィ?」
「別に良いよ、茶々丸君の情報を聞く限り危険人物では無いってわかったし、どうぞ末永くお幸せに~」
「そろそろ昇天するかジジィ・・」
「で? ワシに他に何かあんの? そろそろ孫娘のお見合い相手を探すというワシの趣味をやりたいのじゃが?」

エヴァの言い分にめんどくさげに自分の椅子にもたれながら承諾する学園長に、エヴァはイラつくもとりあえず再び口を開く。

「ジジィ、確かこの学園には国語の教師が不足していると聞いたが?」
「そうなんじゃよね~もう困りまくってんだよね~せめて後一人は欲しいんだよね~」
「ほう、ではこの男を教師にしたらどうだ・・?」
「・・・何言ってんすかアンタ・・?」

思わず自分の口調が変わるほど呆気に取られている学園長。エヴァが自身満々に指差した男、何時の間にか学園長室のお客様用のソファにゴロンと横になって欠伸をかいている銀時だった。そんな銀時を見ながら学園長は話を続ける。

「どう見てもコイツ教師出来ないじゃん・・見た目からして駄目駄目じゃん・・絶対無理よ・・いくら教師不足でもこれは無理よ・・」
「お前の意見など知らん、コイツはこの学園の教師にする、家にずっと居てもらったら困るし何より職も無いプータローを養うなど私のプライドからして出来ん、これはあくまで報告だ決定事項だからな、お前はこの男を教師にするよう手引きをする、わかったな?」
「わかったかジジィ俺を元の世界に帰せ、そうしてお前も自分の星に帰れ」
「いやエヴァの意見も理不尽じゃがそれ以上にこの天パの意見もムカツクんじゃけど・・何でお前を教師にする話がおまえを元の世界に帰す話になっているんじゃ・・しかもワシこの星出身だからね・・?」

いきなり自分とエヴァの会話に入ってくる銀時に学園長が冷静にキレながら彼のほうに目を向ける。何時の間にかソファに座っている茶々丸と相変わらず横になっている銀時がテーブルの上でオセロをやっていた。

「っておいッ! 人の部屋で何勝手にオセロやってんじゃッ! ていうかオセロなんか何処にあったッ!?」
「銀時様、角取りです」
「は~強すぎじゃねお前? これ負けフラグ立ってるよ俺、全部の角取られたらもう勝つ見込みねえよ」
「ワシの言葉聞いてないしッ! 何コイツッ!? ワシの人生の中でトップクラスのムカツク奴なんだけどッ!?」

自分の言葉など全く聞こえていない銀時に学園長はブツブツと小言で文句を言っていると、更に腕を組んで銀時と茶々丸の試合を眺めていたエヴァが追い討ちをかける。

「もしこの男を教師にしないと言うならば、その瞬間お前の天寿が全うするぞ、どうするジジィ?」
「どう考えてもワシがお前に殺されるという脅しにしか聞こえないんだけどッ!? 天寿じゃねえよッ! 明らかに殺されるよワシっ! どっちを取ってもこの学園崩壊の危機じゃんッ! ふざけんじゃねえぞコラッ! ワシだってやる時はや―――「何処の港に沈められたいんだジジィ?」・・・うん、こういう教師も悪くないっすね」

学園長がカッコ良く決めようと思ったが、話し終えるうちにエヴァのドスの効いた脅しが飛んできた、その瞬間速攻で心変わりする学園長。そんな使いやすい学園長にエヴァは満足げに笑う。

「良い返事だ、こいつを教師にするための書類やら何やらは全てお前に任せるぞいいな?」
「何でナギの奴、こんな奴をワシの所に送ったんじゃ・・警備としては最強だけど、性格は最悪・・」
「その長い白髭引っこ抜いてやろうか?」
「すんませんそれだけは勘弁して下さい、これワシのチャームポイント何で」
「どんなチャームポイントだよ・・」

自慢の長い白髭を持って、必死に謝る学園長。エヴァは全くチャームではない髭にツッコミを入れる。

「じゃあこいつ・・え~と」
「坂田銀時だ」
「銀時が教師として仕事を始めるのは明日でいいじゃろ? 国語担当だけじゃなく、ちょうどいないA組の副担任もやってもらうか」
「何でA組の副担任にするんだ・・?」
「ネギ君に基本、コイツ全部任せる」
「どんだけ無責任なんだお前は・・」

ある教師に責任全て押し付ける学園長にエヴァは呆れた・・
ふと時計を見ると時刻は既に午後9時になっていた、エヴァはそれを見て「こんな時間か・・」と帰る準備をする。

「じゃあ私達は帰るぞ、おい茶々丸、銀時の服をどっかから調達して来い着物で教師をやる奴などこの時代にはいないからな」
「ロン、九連宝燈(チューレンポート)で役満です48000点」
「うわッ! 『17歩』も強えんだけどコイツッ! 俺一発トビじゃんッ!」
「ってオイッ! 何で麻雀始めていたんだ貴様等ッ!? ていうか何処にあったそんなもんッ!?」

今度はオセロではなく突然麻雀をおっ始めている、相変わらず無表情の茶々丸と頭を抱えてショックを受けて立ち上がっている銀時にエヴァはつい大声でツッコんだ。












銀時とエヴァは二人で家へと帰っていった。茶々丸は「葉加瀬さんの所から銀時様の服を探してきます」と言って別行動になり、会話をする気も無いのでとぼとぼと歩いていた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言で歩く二人、空はすっかり真っ暗で、薄暗くなっている道を銀時が先頭で歩いている。

「・・・・・・」
「・・・おい」
「あん?」

無言で歩いていたエヴァが突然立ち止まって前を歩いている銀時を呼ぶ。彼もそれにぶっきらぼうに振り返って立ち止まる。

「お前はあっちの世界で家族とかいるのか・・?」
「血の繋がった家族はいねえな・・」
「どういう意味だ? 血の繋がっていない家族がいるというのか?」
「まあそういう事だ」
「家族というのは血が繋がっているから家族なんだろ・・そんな家族なんかいるか・・」

後ろでポツポツと小声で銀時から目を逸らして喋っているエヴァに、銀時は近付く。

「別に血が繋がってなくても家族なんかなれるんだよ、バカやって、喜んで、怒って、泣いて、笑って、またバカやって、そう言う事を一緒にやってりゃあ絆も生まれる、その絆を俺が家族と言えばそれは俺にとって大事な家族だ」
「ふん、大した楽天家だなお前は・・その家族から引き裂いた私をお前は憎いか?」
「あいつ等は俺がいなくても上手くやっていけるさ、俺はあいつ等の事を信用しているしな、それより俺はお前が心配だよ」
「は?」

銀時が突然エヴァの頭にポンと手を置く、彼女にとっては長年振りの人の温もりだった。

「お前みたいな変なプライド持っている奴は上手く友達作れねんだよな~、お前絶対友達いねえタイプだしな」
「余計なお世話だ・・」
「口寄せやったのも、「自分と喋ってくれる奴でも来て欲しい」とか思ってたんだろ? お前の目前に俺の世界で見た、友達が欲しいのに素直になれなくて絆が生まれる頃には死んじまった奴の目と似ているんだよ」
「・・・・・・」

銀時の推理が合っているかどうかわからないがエヴァは深く黙り込む。そんな彼女の頭をわしゃわしゃと銀時は手で掻きむしる、その手を彼女は振り払わず黙りこくったまんまで銀時に視線を向けた。彼はこちらを向いて優しそうな笑みを浮かべていた。その笑顔は昔会った男と何処か似ている・・姿形では無く雰囲気が・・・

「安心しろ、この銀さんがお前の遊び相手になってやるよ、俺はガキの子守りは得意でね、お前見たいな生意気なガキでも楽勝だ」
「ちゃらんぽらんで私に対してふざけた態度で接する・・お前はアイツと何か似ているな・・」
「何か言った?」
「何でも無い・・にしてもお前コロコロ性格変わるな・・最初私にあんなナメた態度だったのに、急に優しくなりおって、もしやツンデレか?」
「何がツンデレだこのガキ、髪の毛掻きむしりまくって、俺と同じように髪の毛ぐしゃぐしゃにしてやろうかこら?」
「止めろ止めろ! そんなに私の髪の毛を痛めるな! ハゲたらどうするッ!」

エヴァの首に腕でホールドを掻けて逃げれないようにして、もう片方の手で彼女の頭を楽しそうに掻きむしる銀時。
やってる事は子供と変わらない。

「家に帰るまでにお前の頭のてっぺんハゲにしてやろうか? ヘヘッ」
「止めろ小学生かお前はッ! 本当にハゲたら氷漬けにするぞッ!」

ようやく銀時のホールドから抜け出しエヴァは自分の頭を直す。そんな彼女を見ながら銀時はまだ笑っている。そんな男にエヴァはキッとして睨みつけるが急にしぼんだ風船のように顔を落ちこませる。

「悪かった・・」
「あん、いきなりなんだよ?」
「銀時、お前を勝手にこの世界に連れて来てしまって悪かった・・」
「何だそんな事か・・過ぎた事はしょうがねえだろうが、ここでお前と暮らして、先生やって、元の世界に帰り方を探す、今はそれが最善だ、お前の謝罪なんか聞いても背中がかゆくなるだけだっつーの、もう帰るぞ遊びは家に帰ってからだ、行くぞエヴァ」

銀時はそう言いながら自分の背中をボリボリとかいて歩き出すがエヴァは立ち止まったまんまだ。銀時は不審に思い彼女の方へ向く。

「どうしたんだよ? まさか疲れて歩けないとか言うんじゃねえだろうな?」
「いやさっきお前が私の名前初めて言ったなと思ってな・・ちょっと嬉しかった・・」

エヴァは少し顔をほんのり赤らめながら、自分の頬を爪で掻く。そんな彼女の様子に銀時は首を傾げるが「なんだそりゃ」と一言で一蹴してさっさと歩き出してしまった。

「これから一緒に暮らすお前の名前言うのがそんなに変なのかエヴァちゃん?」
「ちゃん付けで言うなッ! あと歩くのが早いんだよお前! 少しペースを落とせ!」
「お前の足が短いだけだろうが、デカくなれ、色んな所をデカくなれ」
「余計なお世話だッ! 痛ッ!」

走って自分の足に蹴りを入れようとするエヴァの攻撃を銀時はヒョイと避けて木刀を抜いて柄でコツンと彼女の頭を軽く小突く。そんな調子で二人は我が家へと帰っていった。


















「これが俺の教師用の服か?」
「ハカセさんの研究所から色々とパク・・貰ってきました」
「ていうか眼鏡と白衣がある意味がわからんが・・」
「眼鏡と白衣があれば少しでも知的に見えると思いまして」
「それ俺の見た目がバカに見えるって事かオラ?」

家に戻ってしばらく茶々丸の帰りを待っていた銀時とエヴァ。数分経った頃、彼女は服を数枚調達して帰って来た。
銀時はとりあえずそれに着替えてみる。スーツの上に何故か白衣、小さな伊達眼鏡、履いているのは何故かサンダル。教師にはあまり見えない・・
エヴァも銀時の姿を見て、これが教師と認識されるのか? と首を傾げる。銀時も自分の着ている服を色々とチェックしている。白衣を調べているとふと胸ポケットに何かが入っていることに気付く。

「タバコかコレ・・? 何でタバコ?」
「前の持ち主が吸っていたようですね」
「おい、これ本当に貰ってきたんだよな? 普通タバコ入れたまんま渡すか?」
「・・・・・・」
「何故黙るのッ!?」

茶々丸が目を逸らしたので、銀時は服の本来の持ち主から本当に了承を貰ったのか不安に思うが、とりあえずタバコを胸ポケットに戻して元の服に着替え始める。
欠伸をしていたエヴァは首をコキコキ鳴らしながら自分の部屋に戻ろうとする。

「茶々丸、私は寝るぞ、今日は疲れた」
「わかりました、所で銀時様は何処で寝てもらいましょうか?」
「あ~俺はソファで寝るから気にすんなや」

銀時はカチャカチャと自分のベルトを締めながら欠伸をかきながら茶々丸とエヴァにに口を開く。

「俺ここの居候だしよ、わざわざお前等に寝床作ってもらうのも悪いわ」
「ふん、お前の遠慮など聞いても背中がかゆくなるだけだ、お前らしくない事を言うな」
「微妙に俺がお前に言った台詞と被ってねえか・・?」
「それにベッドぐらいならすぐに用意できるぞ、着替え終わったなら私の部屋に来い」
「はぁ?」

エヴァはそそくさと階段を昇って自分の部屋に戻って行った。
着替え終わった銀時は持っている羽織を肩に引っかけて、頭に『?』マークを浮かべている。

「俺が寝る用のベッドなんてあんのか?」
「ここから歩いて数キロにベッドが置いてあるデパートがありますが?」
「いやそういう意味じゃないから」

ボケなのか素なのかわからないが、とりあえず銀時は茶々丸に軽くツッコんで、エヴァの部屋に行くため階段を上っていった。











「で? 俺の寝床何処よ?」
「貴様の目の前にあるだろ」
「いやこのベッドお前のだろうが・・」

エヴァの部屋に入って来た銀時はしかめっ面で、目の前で自分のベッドに座って、ふふんと笑っている少女を見る。

「お前は何処で寝んだよ?」
「私のベッドに決まっているだろうが」
「そして俺は何処で寝るの?」
「私のベッドに決まっているだろうが」
「茶々丸、さっき言ってたデパートの場所教えてくれ、ちょっとベッド買ってくる」
「おい待てぃ銀時ッ!」

エヴァと会話して数秒で後ろに振り返って部屋から出ようとする銀時。それをエヴァは慌てて腰に抱きついて止めた。

「この私が一緒に寝てやると言ってんだぞッ! 遠慮するなって言っただろうがッ!」
「うっさいガキ、一人で寝ろ」
「くぎゅッ!」

自分の腰に抱き着いて抗議するエヴァの手を掴んで取って自分の腰から引き剥がす銀時、そのまま彼女をベッドに放り投げ、そのままエヴァはベッドに倒れこんだ。

「じゃあおやすみ~」
「おい待・・!」

そのままバタンと銀時は部屋をバタンッとドアを閉めた。ベッドに投げられたエヴァはベッドの上で体を起こしてあぐらをかきながら、ハァ~とため息をついた。

「やっぱりナギの奴と似ているな・・アイツも私が誘っても軽くあしらうだけだったもんな・・」

かつての想い人と銀時を比べているとエヴァは相当疲れていたのか、部屋の明かりを消さずにそのままコテンと倒れて眠ってしまった。







「銀時様、電話です」
「は? 俺この世界での知り合いなんてお前等ぐらいしかいねえよ?」
「学園長からです」
「あのエイリアンが・・?」

一階に戻ってやはりソファに寝ることになった銀時はくつろいでいると、茶々丸が電話の子機を持ってくる。どうやら学園長からの電話らしいが、銀時はめんどくさそうにその子機を受け取る。

「何すか? 俺もう寝たいんだけど?」
【ワシも寝たいんだけどね、お前のおかげで眠れないんじゃよ・・色々とお前の教職につける為の書類を作成するの大変なんだよね~本当】
「死ぬほど頑張れジジィ、はい俺のエールで元気になったか?」
【ならねえよッ! ていうか今ジジィつったろッ!?】

学園長が向こうで怒り狂っているのがわかるほど声を荒げているが銀時は全く気にしていない様子

「ていうか用があるんだろ? 早く言えや」
【本当ムカツク奴じゃの・・明日早朝にワシの部屋に来い、会わせたい先生がおる】
「めんどくせえな」
【つべこべ言うなッ! 明日遅刻すんなよッ! もし遅刻したらパワーボムかますぞッ!】
「いやお前みたいなジジィがパワーボムやったらオメェが死ぬ・・・・・・あ切りやがった・・」

自分の用件だけを言ってすぐに電話切った学園長に舌打ちして、銀時は電話を茶々丸に返す。

「俺もう寝るわ・・明日早く起こしてくれ、ジジィが話しがあるってよ」
「わかりました、この部屋の電気消しときますね」

そう言って茶々丸は部屋の電気を切った。一気に部屋は暗くなり、銀時はそのままソファに寝転がる。

「ここでやっていけるかね~?」
「マア為ル用ニナレダナ」

銀時の独り言にテーブルの上に放置されていたチャチャゼロだけが暗闇の中で銀時に答えを返した。



[7093] 第二訓 ジャンプを愛するものに悪い奴はいない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/07 00:18
お姉ちゃんへ
僕の生徒達が中学三年生になって数週間がたちました。みんなとても元気で、むしろ元気過ぎる生徒もいますが、むしろ元気過ぎて暴走行為に走るので毎日がハードワークです。でも僕は元気にここで生活を送っています、生徒達ともちゃんと接し(例外もありますが・・)僕も勉強させてももらってます。特に一緒に住んでいる、木乃香さんとアスナさんにはとってもお世話になっています。木乃香さんは優しいし料理もうまいし、すごく良い人です、アスナさんは・・・えっ~と・・う~ん・・・あ日本で有名なジャンプという漫画雑誌を貸してくれました。「努力・友情・勝利」という三大原則は僕も知らなかった事でした、僕も勉強不足でした。でも僕のジャンプの中で一番好きな作品の「ギンタマン」という漫画はそんな三原則を見事に破壊していました、跡形も無く残ってませんでした。でもアスナさんは
「そこがいいのよッ! 人気が無いのが残念だけど革命的で私は好きだわ」
と熱く語っていました。僕もそういう所が「ギンタマン」の好きな所です。
そんなわけで僕は「ギンタマン」が打ちきりにならないようにファンでありつづけようと思いました




自分の家で読んでいた、自分の弟当然の子の手紙にネカネ・スプリングフィールドは読み

「後半からギンタマンオンリーね・・ていうか最後作文?」

疑問をポツリと呟きその子がどんどん遠くなっていると感じた

第弐訓 ジャンプを愛する奴に悪い奴はいない

「大変だ!今日は学園長から緊急の話しがあるのに!」

僕、ネギ・スプリングフィールドはあわてて走りながら目的地 麻帆良学園へと向って行った、昨日の夜に突然、学園長から電話があり話しと会わせたい人がいるということで明日は早めにくるようにすること、と言われていたのにうっかり忘れていた。
「あ~やっちゃたな~教師失格だよ約束忘れるなんて・・でも学園長もあんな時間に電話する事無いのにな・・・」

僕は一人で愚痴りながら走って行く。そういえば一人で学園行くの久しぶりだな・・いつもはアスナさんと木乃香さんと一緒に行ってるからな~。今頃は二人とも学園に向う準備かな・・アスナさんはジャンプ読んで遅刻しそうだな・・そういえば今日ジャンプの発売日だ! なんというミスを、SHIT! いつもは発売日にコンビニか購買部で買って、H・Rが始まる前に読んでH・Rが終わったらそのままアスナさんに貸す(ていうか強奪)といういつものパターンなのに・・アスナさんに怒られる・・

「どうしよう、でも学園長の話しがあるし・・あきらめるしかないか・・」

僕は深いため息をついて学園長にうっすら怒りを覚えて目的地に向かった

走りながら僕は人の間をくぐりぬけながら走り学園町の部屋まで遂にたどりついた。
間に合わなかったかな?5分は過ぎてる。あ~遅刻だ~怒られるかもな~どうせ遅刻するなら反対方向行って購買部でジャンプ買っとけばよかった・僕はそんなこと考えていたがノックして学園長の部屋のドアを開けた。
「すいません今日の用事を忘れてしまってました! 本当にすいません!すいません! 」

何度も頭を下げて謝った。そしてゆっくりと頭を上げて学園長の顔を見ようと思って顔を上げると

「今度から気をつけろよ、次やったらアレだ『キン肉バスター』だからな、もしくは『マッスルミレニアム』」


見知らぬ銀髪の男の人が、ジャンプ読んで学園長の机の上に腰掛けていた・・
誰だろう? 銀髪の天然パーマで、服はスーツの上に白衣を着ている、眼鏡を付けて、口にタバコをくわえている、そして目が・・生気がない、死んだ魚の目だ。そして一番気になるのはどうして木刀腰に差してるんですか? そうやってジロジロ見ているとそれに気づいたのか銀髪の人は

「何見てんだコノヤローそんなにジャンプ読みたいのか?」

不機嫌そうに銀髪の人は答えた。怒ってるのかな・さっきも「次やったら『キン肉バスター』決める」って言ってたし・・
「えっと・・今日は遅刻してスイマセンでした!  あとジャンプ読ませてくれません?」
謝りながらも僕は自分の欲求に逆らえる事ができませんでした今週の表紙珍しく「ギンタマン」だし・・

「あ~俺が読んだら貸してやるよ、あとそんなに何回も謝るんじゃねえよ、俺、嫌な奴みたいだろ」
銀髪の人はまた同じテンションで答えた。あ、これがこの人にとって素なんだな別に不機嫌ではなくこれがこの人の性格なんだ。
僕がそう解釈している時に・・

「やっぱ『ギンタマン』つまんね~なこの世界でも最悪だわ、早く抹殺して『ワンパーク』や『ベルト』を超える逸材を作らなきゃよ~。ジャンプの汚点だな」

僕はその銀髪の人に対して怒りのボルテージが上がった。

「いや~ワシが遅刻してしまったスマンの~ちょっと便の切れが悪くて・・ってお前等何やってんの?」
「『ギンタマン』の何処が悪いんですかッ! ああいうブラックユーモアやツッコミのキレが笑いを取れるんですよッ!」
「ああんッ! あんなもんただの下ネタまんさいオンパレードじゃねえかッァァァ!! お前なガキのくせにあんなもん見てんじゃねえよッ! ガキはコロコロコミック読んでろッ!」
僕は学園長の存在に気づくまでえんえんと銀髪の人とジャンプの方針について論争していた




「すいません思わずヒートアップしてしまいました本当すいません!」

まさか学園長の部屋で、激しいジャンプ論争があるとは、学園長も思わなかっただろうな・・僕はこれで今日何回謝ったかな?

「・・いやいいんじゃが・・君でもあんなに異常なほどテンション上がるん
じゃね、ていうかお前もじゃ銀時! 大人になれッ! その年でジャンプの行方について子どもと討論するなッ!
この人銀時っていうのか、この人何やっている人なんだろ?そんな事考えてると銀時さんは
「うるせえな~エイリアンのくせに、まあエイリアンにはわかんねえだろうがな~ジャンプには魂を熱くさせるというすっげ~ウェポンなんだぞッ!」
「そのウェポン、使ってのにお前の魂は燃えてねえしッ!つか死んでるわッ!お前の魂ッ!」
うわ~また喧嘩になりそうだな・・銀時さんってどんな人にでもケンカ腰になれるんだな

激しい学園長と銀時さんの怒鳴り会い、そして殴り合いがようやく静まり返った・・あの僕H・Rあるんですが・・学園長はとりあえず落ち着こうと椅子に座り深呼吸してしばらくの沈黙のあとやっと口をあけた

「まあコイツ・・この男は国語の先生になってなそして君のところ3年A組の副担当になった坂田銀と・・いや坂田銀八じゃ」





はい?
この人が先生? 目が死んでますよ? しかも3ねんA組の副担任? 僕の生徒とケンカする確率が高いと思うんですが・・・あとさっきはなんで「銀時」と呼んでいたのに「銀八」と呼んだんですかッ!?
僕は頭の中ブレイク寸前な時、その問題を抱える男、「坂田銀時」ならぬ「坂田銀八」はこちらよ指差し・・・

「おいコイツが先生なの? じょうだんだろ? なんで子どもが先生になれるんだよ~ドッキリか? 赤ヘルのオッサンは何処だよ?」

半信半疑だと感じているようだった。それはそうですね・・普通は10歳では教師やりませんし・・よしじゃあこう提案しよう

「なんかお互い頭が混乱しているんで、互いについて説明をしません?」

これが一番得策だと思った、お互い場の状況を理解しよう・・
別世界の住人、最初はそれを聞いた時驚いた、しかも銀八さんを呼んだのはどうやらエヴァさんらしい・・何やりたかったんだろ・・。
銀八さんは向こうの世界では、『天人』という宇宙人が江戸を支配し、自分たち侍は腐敗していってるらしい、だから刀ではなく木刀か・・まあでもここの世界でも木刀を所持するとはな・・いや僕の生徒の中にはモノホンの殺傷武器持ってる人がいるしな・・
そして何故坂田銀八と名乗るのかというと、単にハマッてたドラマの先生の名前をパクったらしく自分で付けた名前らしい「どうせ教師になるなら名前を教師っぽくしたほうがよくね?」が銀八さんの意見
いや名前より先に見た目を教師にしてください・・
そして次は僕が話す番に名前は「ネギ・スプリングフィールド」魔法使いだということも話して(これを聞いた銀八さんは「だよな、服装からしてホ○ワーツとかにいそうだもん」と答えたそんなに怪しいかな僕の服装・・)
自分は魔法学校を卒業していて立派な魔法使い「マギステル・マギ」になるために修行ということでこの麻帆良学園で去年の3学期からで教師をしているということを話した。そのあと銀八さんはしばし考えた後

「ふ~ん色々あんだなお前も・・まあ自分の事は自分で決めろよだけど俺は子どもってのはただ遊ぶだけの方がいいと思うけどな・・」
とめんどくさそうに言ってきたこの人悪い人ではないんだろうな・・本当は優しい人なのかも
そんなこと考えていると突然ドアが『ドンッ!』と開いた

「ちょっとネギ!H・R終わったわよ!あんたがいないからみんなで勝手にやって終わったわよ!それとジャンプ持ってきなさいよッ!」

アスナさん?・・あそういえばH・Rのこと忘れてたしまったどうしよう・・H・Rの時にみんなに銀八さんの紹介しようと思ってたのに・・・

「ええやんアスナ~、ネギくんもなんか色々な事情があったんやろ? ウチのジッちゃんの長い話しでも聞かされてたんやろネギくん?」

木乃香さんまで・・心配かけてすいません・・と謝ろうとしたとき、二人とも不思議なものを見る目でこっちをみた

「・・・ネギその見るからに怪しい銀髪の人誰ッ!?」

そう言って指差したのは僕の後ろ、ああ・・ふてぶてしくまたジャンプに読みふけっていた銀八さんがいた
銀八さんはめんどくさそうにチラリとアスナさんを見て

「うるせえな~やかましいんだよ今ヤムチャまた死にそうなんだから」

そう言ってまたジャンプを読み始めた・・長い沈黙・・
もう耐えられなくなり

「この人は、今日から国語の先生で3年A組の副担任になる、坂田銀と・・坂田銀八先生です・・」

とりあえず僕が銀八さんの紹介した銀八さんも「よろしく~あと静かにしろ~ヤムチャ死んだから~」と答えた。銀八さんもうちょっとやる気出してください・・二人とも目が天になってますよ・・
しばしの沈黙のあと・・

「うそォォォォォッ!!これが教師?目が死んでるわよッ!しかも私達んとこの副担ッ!?麻帆良学園ってそんなに人材不足なのッ!?」
「アスナそれこの人に失礼やで・見た目は恐そうやけどきっと中身は・・あれどうやろ?」

まあそう思いますよね二人の反応はごもっともです。とりあえず僕が銀八さんの事情を話そうこの人説明しなさそうだし、今はジャンプに夢中だし・・
銀八さんの説明をするとおもいのほか二人とも驚かなかった魔法もあるなら別世界も一つや二つあるだろという結論にいきついたらしい

「コイツ侍なのッ!?全然見えないわよッ!どう見てもジャンプ好きの駄目人間でしょッ!」

たしかに侍って感じじゃないですもんね・・日本滞在が短い僕でもこれは侍っぽくないと感じる・・
「まあ侍だろうが駄目人間だろうがええやんこの人はここの先生、ウチらのクラスの副担任やろ?よろしくな~先生」

木乃香さん適応早すぎ・・こんな見た目の人でもやさしく出来るんだな・・僕も見習わなきゃ・・


「・・・・誰?アンタ?ジャンプ読みたいの?ほらよ、言っとくがヤムチャ死ぬから」

銀八さんは木乃香さんにぶっきらぼうにジャンプ渡した後・・

「んじゃあ俺便所行って来るわ~またなガキ~」

バタン と学園長室の部屋から銀八さんはトイレに行ってしまった
残されたのは呆然とするアスナさんと僕、学園長・・そしてジャンプ読み始めた木乃香さんだけ残された・・


あの人教師できるのかな?・・・



[7093] 第三訓 女子というのはだいたい見た目八割で決めるもん
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/07 00:19
「ウィ~ス、銀さんが戻ったよ~いや~出たわ~ジャンプを読んでる時にトイレいけねえもんな~」

用をたし、スッキリした感いっぱいの銀八がトイレから帰ってきた。それを怪訝の目で見るアスナ、年上の銀八の将来に不安感を覚えるネギ、「もう駄目だこいつ・・なんともなんね~」と思いながら頭を抱える学園長の姿があった。一方木乃香はジャンプに夢中になっておりまだ読書中だった。そして銀八先生に気付き

「銀八先生、これおもろいな~ウチ漫画あんま読めへんかったかったけど、アスナが好きになるのもわかるわ~」
「あたりめえだろ、ジャンプはなッ!男の魂をビルドアップさせる強力なウェポンなんだぞッ!」
「いやウチ女やけど・・」

銀八と木乃香がそんなやり取りをしている時、アスナとネギは木乃香の持っているジャンプを物欲しそうに眺めていた

しばらくしてアスナが木乃香に近づいて

「あの~木乃香読み終わったら次さ、それ私に貸してくんない?まだそれ読んでないのよ」
「あ、ずるい! アスナさん僕も早く読みたいのにッ!」

ネギが気付きアスナに抗議をする、自分だって一秒も早くジャンプ読みたいのだ。

「うっさいッ! 年上が優先よッ!」
「普通、年下に譲るでしょッ!」

とジャンプ取り合い合戦が勃発していた。一方ジャンプの本来の持ち主、銀八は木乃香に向ってジャンプについて熱く語り始めていた。

「いいか~ジャンプというのはな、『努力』、『友情』、『勝利』の三原則を持つ正に今、人類の必要なものを教えてくれる、それはそれはありがたいものなんだよッ! お前さぁ~今まで今まで何を見ていたんだよ? ジャンプ読まない人生なんて、チャーハン作れない母ちゃんぐらいまずいんだぞッ!」
「いやアスナやネギくんがよく買って、寮で読んでるんやけど読もうとはしなかったんよ・・アスナとネギくんに話しだけは聞いたことあるんやけど『ギンタマン』? とかいうギリギリな名前の奴が、面白いと言ってたんやけど・・この漫画だけは理解不能やったんよ・・」
「いや理解しなくていいから、あんなもんジャンプのバイキンだから、すぐ消滅するから」
「「なにィィィィィィィィィィィィィィ!!」」

銀八と木乃香の話しの銀八の暴言に気付きコンマ0,1秒で同時に反応し、銀八の方向に振り向いたネギとアスナ、自分達の好きな「ギンタマン」をバイキン扱いされたから2人の怒りは一瞬で頂点に達した。

「くおらぁッ! そこの天然パーマぁぁぁぁッ! 今言ったことを撤回しなさいッ! そして土下座して謝罪しなさいッ!」
「いやなんでよ? バイキンをバイキンって言って何が悪いのですか~? 俺は真実を言っただけです~」
「そんなの真実ではありませんよッ!それはジャンプに隠された「ギンタマン」というシークレットウェポンを知らないからそんなことが言えるんですよッ!撤回、謝罪、切腹を申し付けますッ!」

お互いに睨み合い、火花を散らすネギ、アスナ、銀八。『第二次ジャンプ討論大戦』が今開かれようとしていた。
ジャンプを持ちながらうろたえる木乃香、「こいつら何やってんだろ?」という呆れた目で椅子にうなだれながら見ている学園長。

「よぉぉぉぉぉぉしッ!!わかったじゃあテメエら……」

銀八は黙り周りが静かになる

「今日は一日、「ジャンプに行方とその先に・・」というテーマで徹底的に討論だァァァァァッ!!」
「仕事行けェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」

なんだかよくわからない討論会をおっぱじめようとする銀八に遂に学園長は椅子から立ち上がりブチ切れた





第参訓 女子というのはだいたい見た目八割で決めるもん


んだよジジィ、せっかくコイツらにジャンプのあり方を、徹底的に教えようと思っていたのに・・空気の読めないエイリアンだな・・
俺はそう思いながら、おもしろくなさそうに頭をポリポリとかく、仕事なんてよくわかんないし~そもそもどうすればいいのかもわかんねえんだよ・・そんな状況の俺に相変わらず空気の読めないジジィは

「ということで銀八、まずお前の担当は国語じゃな?もう一時間目始まるぞッ!さっさと行って来いッ!そしてワシの視界から消えてくれッ!」

うるせえな~唾がでてんだよ、きたねえな~。行って来いて言われても何処に行きゃあいいのかわかんねえよ

「一時間目?国語…げっ!…てことは私達のクラスよね…?」
「あそうやッ!、良かったやんその時に自己紹介できるな~銀八先生~」

名もしらねえ女子が、ツインテールのガキが嫌そうに、ジャンプ貸した黒髪のガキが嬉しそうにこちらを向いて言って来た。自己紹介? ちょ~めんどくせ~じゃん・・なんだよそれ、もう帰りてえよ~そんなこと考えてるのにまたこのエイリアンジジィがいらぬおせっかいをしてきやがった

「ネギくん、この男一人で授業させると、めちゃくちゃになるていうか学級崩壊になるの見えてるし、つーかコイツ途中で帰りそうだし、今日はコイツを補佐と見張りしてくれないかの?ぶっちゃけ見張りメインで?」
「はいわかりました!僕も自分達の生徒達が心配ですから…」

くそ~最悪だよいらねえよ、補佐なんて一人でできる子だよ俺はッ! これで『黒板に自習って書いてエスケープしちゃおう作戦』という知的かつステキな俺のナイス作戦ができねえだろうがおいッ!

ジリリリリリリリリリリリッ!

そんなこと考えていると校内からベルが鳴った、これが授業開始の合図なのか?

「うわヤバッ!もう始まるじゃんッ!・・・あそういえばアンタが一時間目か・・・じゃあ急がなくいいわ」
「でも前もって銀八先生のことみんなに報告したほうがよかない?いきなり知らない先生が出てきたらビックリするでッ!」
「確かにいきなりコレが出てきて「俺教師よろしく」って言っても全く怪しい物体Xとしか思えない・・すごく変わった先生が来るってみんなに報告したほうが良いかも・・」
「オイ、変わった先生ってなんだよ?確かに銀髪天然パーマだが俺は変わったところはねえよ」

2人の女子の会話に思わずツッコむ、怪しい物体Xってなんだよ・・少なくともこのジジィよりも俺は自然だッ!

「アンタが口にくわえているタバコはッ!?授業中吸うんじゃないわよッ!それと腰に差してる木刀ッ!怪しすぎるわッ!つ~かもう全体が変な奴という空気で覆われてるわよッ!もはや「変な塊」よッ!」
そんな捨て台詞をはいてさっさと部屋から出るツインテール小娘とその後を「待たな、ネギくん、銀八先生、ジィチャ~ン」ともう一人の黒髪京都弁娘が言葉を残しこちらに手を振って出て行った…ん?ジィチャン?

「おいジジィ、あの京都弁娘もしかしてお前の孫?」
「そうですよ、木乃香さんは学園長の立派なお孫さんなんですよ凄いでしょ?」
「そうじゃよ~凄いじゃろ~、銀八、木乃香に近づくんじゃないぞッ!もし手を出したらお前マジ殺すぞッ!」

うへ~こんなエイリアンとあんな将来べっぴんさんになりそうな娘と血が繋がっているだ~ッ!ありえね~

「…ネギ騙されるな、このエイリアンきっとあの娘が小さい時に、UFOでさらって自分の孫だと記憶を変えたんだ、絶対そうだから、だからお前も気をつけろ、夜中にコイツに近づくなよ、キャトルミューティレーションされるぞ…」
「なわけねえだろうがぁぁぁぁぁ!! そんなにワシをエイリアン扱いしたいかクソ天パぁぁぁぁぁ!!」

俺がネギにしかわからないように、ネギの耳元でヒソヒソ声にしたのに、なんで聞こえんだよ…やっぱこいつ人間じゃあねえよ…



「じゃあ僕らも授業に行きましょうか、銀八先生、僕が案内するので付いてきてくださいね」

そういえば1時間目とっくにはじまってるのね…、大抵の教師は既に教室入りしてるんだよな普通。俺はそれに嫌そうに頷き、怒り狂ったジジィの部屋から出て行った。あ~めんどくせ~よ、授業行くのやめねえ?




ネギと俺は自分達が行く、教室に向いながら歩いて行った。ちょっと遅刻なんで微妙に早足だがな、そういえば俺は教室についたら何すりゃあいいんだ?

「んで具体的に何すればいいのよ、俺?」

俺はとりあえず歩きながら、自分よりずっと年下だが、先生歴はちょっとだけ先輩のこども先生に聞いてみた。ここは先輩のアドバイスを聞いとくべきだな
「今日は挨拶だけなんで授業はやらなくて大丈夫ですよ、自己紹介して、生徒達と色々喋ったりすればOKです」
ふ~ん…じゃあ生徒と喋るのはめんどいから省いて、自己紹介して帰るか、あ、まだあの娘っ子にジャンプ貸したまんまだ、返してもらって帰ろう~後は全部先輩に任せよう
「…なんか僕に任せてエスケープしようと考えていませんか?・・・表情が企んでいる顔ですよ・・・」
ネギが疑いの眼差しをこちらに向ける、コイツ結構鋭いな…やべえな、これは逃げられそうにねえよ…
「んなことねえじゃんッ! アレだよ今から「元気な生徒達と触れ合って教師生活スタートだ~ッ!キャホォッッッイィィィ!!」って期待と夢を膨らましてたんだよッ!」
俺はまったくそんなこと考えてないけどね、中学生のガキ共と触れ合ってもなんも得にならねえよ、むしろ綺麗な姉ちゃんと触れ合いたい。








しばらく歩いていると『3年A組』という表札が書かれた教室の前まで来た、やっと着いたのか、広すぎなんだよここ・・

「じゃあ銀八先生から先に教室に入ってください、一応担当だし、僕は後ろから付いて行くんで」

いや俺が先頭なのかよ…どうすっかな~とりあえず最初が一番肝心だし紳士的に…うん?
スライド式のドアが少し開いているんだけど? 上を見たらよくあるパターンである黒板消しがはさまってた、そりゃあもうチョークの粉いっぱいの…





プチッ

「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ドォォォォン!!

俺は思いっきり、ドアを蹴っ飛ばしてスライド式のドアを「押した」。ドアは思いっきりぶっとんで、向こうの壁にたたきつけられた。
コノヤロー…確かあの女子2人が俺が来る事を知らせているんだよな、ってこと確実に俺を陥れるトラップだろこれ? なめんなコラッ!
俺はお怒りMAXだが、その怒りを制御し、ドアのない教室にスタスタと入っていった。後ろの補佐する先輩がすっごいあわてているが、気にすんな、全部ココの生徒が悪いから、俺は関係ないから

俺が教室に入って、教壇についてもシーンと静まり返っていた、俺のことを疑う目、恐怖の対象を見る目、好奇の目、様々な生徒の目が俺に集中している。あれなんだかコレ、恥ずかしいわ・・なんか見せ物気分だわ…
にしても女子ばっか…つ~か女子しかいねえじゃん、マジかよ~聞いてねえよ~ダルイなオイ、しかも変な奴ばっかだし…アレ? なんか半透明な奴がいんだけど? 足無いし浮いているし…いやただ体が薄いだけだ、まあそういう人間もいるわ、うんそうだ、足が無くても人間やるきになれば、半透明で浮いている事も出来るんだよなウンッ!
俺は一人でうんうんと頭を下げて納得していると、一人の女子が歩いてこっちに近づいてきた、ていうかコイツ・・

「遅いわ、バカ者」 

グギッ!

いきなりコイツことエヴァが、俺の足にローキックかましてきたんすけど『グギッ!』って音したんですけどッ!

「イテェェェェェェェェェェ!!何すんだ、このクソガキッ!何でテメェがここにいんだよッ!」
「貴様の初授業だからな、来てやったんだありがたく思え、ていうか私はここの生徒だしな」

マジかよ…こいつどうみても中学生にはみえねえよ…つーかどんだけコイツ偉そうなんだよ…あれ?よく後の席見たら、茶々丸もいるじゃん、ここはカラクリも勉強する学校なのッ!?
マジかよ…こいつが生徒だと色々ヤバイな…どう考えてもサボるのが不可能じゃん…鬱になるわ~
俺がそう悩んでいるとやっと、控えめにネギが入ってきた。おい先輩助けろッ!俺をここではない所へバルシーラしてくれッ!

「あの~この人が新しい国語の教師でこのクラスの副担任になってしま・・なった坂田銀八先生です…」

俺の代わりに俺を紹介してくれた。あ~自分で言う手間がはぶけたわ、だが俺もなんか言わなきゃな、なんつ~か俺を怯える目もある、ヤバいなエヴァのせいで俺は恐い人だと認識されている…ここはとりあえず俺のお茶目な印象を見せなければ…

「こんにちは坂田銀八で~す、趣味は糖分摂取とジャンプ摂取、特技は目を開けたまんま寝ることで~す、しくよろ」




「「「ウソォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」」」
一斉に生徒が叫んできた、何? なんかおかしなこと言った俺?
「本当に先生なんですよねッ!」

眼鏡を付けて、二本のアホ毛が触角のように生えている女子が、突然立ちあがり質問してきた、何あの触角?ゴキ?

「だから先生だっつてんだろ、2度も言わせんな、ったくうるせえな・・その触角抜いて方向感覚無くしてやろうか?それとも殺虫剤かけるぞオラ」
「いやこれ触角じゃないからッ! 地毛だからッ! つ~か昆虫類でもありませんッ!」

ふ~もう帰りてえな~…こいつら俺のこと信用してないし…帰って寝たい、いや酒飲みたい…俺はクシャクシャと頭を掻き毟りながら生徒を見まわす

「ククク…やはり貴様が先生と認識されるはずがなかったな銀八先生?」

あ~こいつまだいたのか…いやらしい笑い方だし、ウザいし、死んでくれないかな…

「うるせぇな、テメエも見た目小学生だろうがッ!カルシウム取れッ!カルシウムッ!煮干と牛乳の摂取が足りねえから背が小せえんだよッ!」
「なんだとッ!頭の中は幼稚園レベルのくせにッ!私が小さいのは色々事情があるんだよッ!アホ天然パーマッ!」
「んだとコラァぁぁぁぁ!!テメェ、もう泣かしてやるわぁぁぁぁ!!ていうか天然パーマの何が悪いんだぁぁぁぁ!!」

俺とエヴァは喧嘩をおっぱじめた。よし、とりあえず回りの生徒共はほっといてコイツをだまらせよう…なんか周りがざわざわがしているがどうでもいいわ



しばらく怒鳴り合いをしていると、席から立ちあがり、ニコニコしながらこっちに歩み寄ってくる女子が俺とエヴァの間に割り込んできた。なんだコイツも中学生か? 成長しすぎじゃね? ムネが? このガキに分けてやれよ

「ど~も銀八先生~初めまして朝倉和美です!、まあまあ2人とも落ち着いて~、エヴァちゃん珍しく朝からハイテンションだね~」

そんなノリノリのテンションで、この女子が俺達をなだめにきた。なんだよ邪魔すんなよ、今から俺の『アルティメットスクリューナックル』がこのクソガキののライフを大幅に削ろうとしていたのに

「え~とそれで銀八先生、1つ2つ質問していいですか?」

ニカッと笑いながら、なだめてきた女子が俺の顔にマイクを近づけてきた、どっからだ?どっからマイクだしたッ!

「え~めんどいんでノーコメントでお願いします」
「却下です」

俺の意見が笑顔で却下されたッ!俺の拒否権は無いのかッ!俺の人権は何処に行ったッ!

「え~それではインタビューを開始しま~す」
「何コレ?新手のイジメ?すっげ~腹立つんすけど…」

女子がまた俺をまあまあとなだめた、何コイツ…強引にも程があるだろ、お妙と良い勝負だな…

「じゃあ速攻で本題に入りますが銀八先生ッ!さっきからエヴァちゃんと仲良さげですが、ぶっちゃけエヴァちゃんとはどういう関係でッ!?」
「とりあえず、お前一度眼科行って来い、仲良しに見えるか普通?どんな関係って別に何もねえよ、ただ一緒に住んでるだけだっつーの」

あれさっきから目をきらきらしながら質問してきたのになんか俺が答えた瞬間、時が止まったように硬直したぞ?つーかこのクラス全体が硬直しているぞ?何、俺が喋るみんなと黙るシステムなのか?


「…え~もしかしてそれは同棲ですか…?」

うるさい小娘がありえねえことを言って来た、そういう結論になるか普通ッ!もしやクラス全員がそういうこと考えてるんじゃねえよなッ!

「そういう意味じゃねえよッ!なんで20代の真面目で健全な俺がこんな小学生みたいなガキとそんな関係にもつれこむんだよッ!、コイツとはな俺が違う世界にいたときにコイツがいきなり…」
「くぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!黙れぇぇぇぇぇ!!それ以上言うんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

俺が質問の答えを言い終えるうちに、エヴァが顔面にドロップキックを当ててきた。俺は思わず「あべしッ!」と叫んでモロにそれを食らって大の字に倒れた…あ、魔法の事は言っちゃいけないんだけ? 忘れてたわ…俺が倒れながらそんなこ考えていると、あの質問娘が俺を起こしてくれて、また質問してきた

「つまり銀八先生はエヴァちゃんによって、深く禁じられた世界に入ってしまい、そのまま新しい世界に住むことを決めたということですかッ!?」
「違うからッ! いや合ってんのか? いや違うわッ! ちょっと合ってるけど、それは違うわッ! 合ってるってのはそれじゃなよッ! あれだからッ!」

俺が冷せ汗ダラダラ流しながら必死に弁明した。やべ~どうしよう…このガキはニヤニヤ笑いながらこっち見てるし・・お前もなんか言えよッ!ふざけんなッ!銀さんはノーマルだッ!そんな危ない道は俺は渡らねぇッ!

「駄目ですよ、朝倉さんそういうこと聞いちゃッ!」

いきなりネギが口を挟んできた、助けに来たのか?魔法がばれず、なおかつ俺がいかに真っ当な人間だと教えてくれッ!頼む!300円あげるからッ!ネギは「任せてくださいッ!」という表情だ、これは期待できるッ!

「銀八先生はエヴァさんが夜中、森に呼んで色々合って、その後エヴァさんが責任を取り、2人は色々な問題を抱えながらも乗り越えて行き、1つ屋根の下で喧嘩しながらも、なかよ…グボォッ!」

ネギが言い終わるウチに俺のナックルがネギに直撃!ネギは叫び声をあげおもいっきりに後ろにぶっ飛んだ

「お前を信じた俺がバカだったよぉぉぉぉ!!何話し進めてんだよッ!今まさにこの問題を乗り越えたいよッ!むしろ破壊したいわッ!ていうかお前を破壊したいよッ!」

そんなネギの逆効果熱弁により俺はどんどん窮地に陥っている…なんかもうクラスの中から

「ロリコンっていうのかな?」
「いや愛に年齢は関係無いッ!」
「いや見た目的に無理でしょ?」
「ロリコンって何アル?強いアルか?」
「いや、まあ別の意味で強いけど…」

やべ~よ、これ俺もう『ロリコン』っていう1つの称号手に入れてるよ…最悪だ…なんかもう一層死のうかな…
教室の隅っこで座って思いつめていると、後ろから優しく背中をポンと叩かれた、振り向くとニッコリ笑っている 『ギンタマン』好きのツインテールの小娘がいた。なんだ俺を励ましてくれるのか? 言っとくが今の俺はどんな慰めでも立ち直れない状況だぞ・・

「大丈夫!たとえアンタがロリコンでもこのクラスにはショタコンもいるんだからッ!同じ外道同士仲良く出来るはずだから安心してッ!」
「何処が安心だぁぁぁぁぁぁ!!!何その励まし方ッ!全然嬉しくねえよッ!むしろこのクラスが心配になってきたよッ!」

最悪の励まし方だなオイ・・つーかショタコンって誰だよ…
そんなこと考えてると、一人の女子が立ちあがってきた、日本人には珍しいロングの金髪で、出るところが出てる姉ちゃんだな…つーかここ本当に中学校?

「ちょっとアスナさんッ! まさかわたくしの事を言ってるんじゃなくてッ!」
「そうよショタコンッ!あんたも銀八先生と一緒に小さい子供を追いかけているがいいわッ!」

この姉ちゃんか、ショタコォォォォン!!自分で公表しちゃったよッ!自分でも軽い自覚あるんじゃん!しかもお前ら俺を同類扱いしてんじゃねぇぇぇぇ!!勝手にロリ、ショタコンビ結成させるなぁぁぁぁッ!

「言いましたわねッ!貴方なんかオジコンのくせにッ!あなたあのマダオ(まるでダンディなオジサマの略)と言われている高畑先生のこと・・」
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!それ以上言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

なんかショタコンとオジコンが、殴り合いスタートしたんですけど…もうどうでもいいよ、チクショウ…どうすりゃいいんだよ俺は・・誰か俺のピュアを返してくれぇぇぇぇぇ!!





ジリリリリリリリリリリリリ

これ授業終わりの合図だよな…まだコイツら喧嘩してるし…結局俺は『ちゃらんぽらんのロリコン』という称号をもらってるまんまだよ…この先やって行ける気がしねえよ…どうする俺?
頭を抱えて悩んでいるとまだニヤニヤしながら笑っているエヴァが突っ立っていた。

「どうだ銀時? ここで教師としてやっていけるか?」

挑発的な質問だな…このアマッ! とりあえずニヤニヤ止めろ腹立つからッ! お前が全ての原因なんだろうがッ!
俺はそうぶちまけたいが、生徒の前でまたコイツとバトったら、またいらぬ噂が広まりそうだから我慢する…俺はため息を1つ吐き
「やっていくしかねえよ、そうしないと俺の居場所がねえ…テメェのことはテメェでやるさ」

俺はエヴァにそう言い残し、ショタ、オジコンビの喧嘩をネギに任せてドアの無い教室から出ていった…


そあ、そういえばジャンプ返してもらうの忘れたわ

















「教えて銀八先生~のコーナー」 *本編とは関係ありません
3年A組放課後の教室にて…

「あ~物語はやっと3話目に突入したが、ぶっちゃけ作者のおかげでこの作品は非常にマズイ状況になっている。感想よりクレームが激しく、『感想板』ならぬ『苦情板』になっています、どうしたらいいでしょうか?」
「いやなんで問題調?ていうか作者が改善すればいいんだろ…」

銀八の問いにエヴァが頭をかきむしりながらポツリと呟く。ちなみに教室にいるのは教壇に立っている銀八と一番前の席でで銀八の問いに答えているエヴァ、何故か一番後ろに頬杖をついてだるそうに2人のやり取りを眺めている長谷川千雨がいた

「いや一応ページ数は増やしたんだけどさぁ~。前回はノート4P半だろ?今回は9Pだ、でも作者の奴、想像力って言うか色々足りないからさ~描写がヘタクソなんだよ、他にも色々問題あるしよ~打ち切りを回避するにはどうすればいいでしょうか?」
「いやまた問題になっているからッ!ていうか作者努力しろよッ!本当に打ち切りだぞッ!」

銀八の問2に、遂にエヴァは立ちあがって、ツッコミを入れる。

「最低でも10話はいきてぇな・・その後は・・まあなるようになれだな~」
「オイィィィィィィ!!なんでそんなにアバウトな感じにするんだ貴様はッ!」

ジリリリリリリリリリリリ!!

最後の校内ベルが鳴った、もうそんな時間であった

「じゃあお前ら~帰って良し、10話は行きたいからさ~せいぜいこの作品が打ち切られないようがんばんだぞ~」

と言い残し銀八はスタスタと教室から出ていって、その後をエヴァが追って行く。



誰もいなくなり一人残された長谷川千雨は

「帰ってパソコンで『なの魂』読むか…」

とポツリ呟き帰る支度をして教室から出ていった。



[7093] 第四訓 物語はボケも必要、それを支えるツッコミも大事
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/07 00:22
長谷川干雨の嫌いなものは3つ、『人ゴミ』と『予想のつかない事象』そして『非現実的』である。
3年生になってもあいかわらず担任は、あの子ども先生だ。これは正に『非現実的』にストライクである。
なんでだよッ! ありえねぇだろッ! あの見た目で教師なんて普通じゃねえだろッ! 労働基準法違反だろうがッ! っていうかクラスの奴らも、誰かつっこめよッ!

そして干雨は1つの結論に導いた。
あ、先生だけじゃなく、このクラスも、いや学園自体変なんだな・・
それが、干雨にとっての悩みの種だった。しかし今はもっと重大な悩みを抱えている、あの男が教師として突然やって来た時からだ。
 銀色の髪、スーツの上に白衣、授業中に喫煙(本人はペロペロキャンディと主張)、腰には木刀携帯、付けてる眼鏡の奥には死んだ魚の目・・どうみても教師じゃなくね?
あの子ども先生や変人クラスより質が悪い、正に『非現実教師』、少なくとも子ども先生とクラスの連中には、少しは一般常識は通用する。所がアイツは・・3年A組の副担任になってしまった「坂田銀八」は・・


非常識のみで構成された『予想がつかないちゃらんぽらん教師』だった







第四訓 物語はボケも必要だがそれを支えるツッコミも大事



「あ〜月曜日か〜、今日は・・くそ〜休みの後の学校はだるくてしょうがねえな・・」

私、「長谷川干雨」は通学路を歩きながら一人ごとをつぶやいていた。
日曜に『サザエさん』を見ると「あ〜サザエさんも終わりか〜そういえば明日学校か〜ダルイな〜」という現象があるが、私の場合サザエさんを見なくても毎日が憂鬱である。特に月曜が・・

「月曜の一時間がな〜、いきなり休みあけの授業が「アレ」なんて最悪だろ・・マジ帰りたい・・」

私は一人ごとをつぶやきながら校門をくぐる。あの男の授業さえなければどんなにマシか・・アイツが来て、一週間なんだよな・・

「どうしてあんなちゃらんぽらんが教師やってんだよ・・ていうか、教師のスキル持ってねえだろ・・授業中はタバコ臭くなるし、寝てる奴見つけると木刀で殴るし(主にアスナとエヴァ)、教師のくせに遅刻はするし、ていうかあんなの授業じゃねえしッ!」

私は思わず一人ごとを少し大きな声を出してしまった。だが周りに人はいない、私は人ゴミが嫌いなので、いつも早く学校へ行く、こんな時間にはめったに生徒はいない、いるとしたら朝番の教師ぐらいだ。

「あ〜くそ、銀八がいない世界に行きたい、いや出来れば子ども先生とクラスの奴らもいない世界にッ!、誰か私をまともなスクールライフがおくれる世界にルーラしてくれぇぇぇぇぇ!!・・・・・・ん?」

私が、校庭の中心当たりで不満ぶちまけていると、何やら音が近づいてきている、この音はバイクか?

ブロロロロロロロロロロッ

「クソォォォォォォ!オイィィィィィ!!止まんねぇぇぇぇぇぇ!!!そこどけぇぇぇぇぇぇ!!!!」

私が後ろから声というか悲鳴に近い声を聞いた、なんだと思い、振り向いてみると・・問題教師「坂田銀八」が後ろにエヴァを乗せスクーターに乗りながら私に突っ込んできた・・マジ?

「「ギャァァァァァァァァァァ!!!!」」

私と銀八は絶叫しながら・・

ドォォォォォォォォォォォンッ

私は生まれて初めて交通事故にあった・・



「ギャグ小説じゃなかったら死んでたかもな〜コイツ・・あ〜あ、これで二人目だよ〜このスクーターの轢いた人の数、これさ〜ブレーキ全然効かねぇんだけど?」
「何を言っている、このスクーターはあの葉加瀬聡美と超鈴音が作った『超高性能スクーター』だぞ、時速200キロは軽く行ける『超強力エンジン』、たとえマシンガンで撃たれようが穴が開かない『超強力タイヤ』、そして核爆発にも耐えられる『超強力ボディ』ッ!欠点なんぞこっちが知りたいわッ!」

ぶっ倒れている私は、銀八とエヴァの会話が耳に入ってきた。ていうか私は轢かれたんだよな?なんでコイツ等、私ほっといて、スクーターの話?

「そんな兵器いらねぇよッ!何『超』つければ良いと思ってんのッ!?超腹立つんだけどッ!、ていうかブレーキが弱いんだよッ!重要な欠点トップ3にランクインしてるよッ!」
「ふん人生にブレーキは必要無いというだろう、大事なのは進む事・・そう未来へのロードに「停止」は不要だッ!」
「だぁぁぁぁぁぁ!!もういいわ中二設定はッ!ブレーキが無いってお前、ボケのみでやり通すお笑い芸人みたいなもんだからッ!、暴走してどっかで怪我するからッ!、ブレーキ役のツッコミが必要なんだよッ!行き過ぎを支えなきゃ行けないんだよッ!」

コイツ等、人轢いといて、ブレーキの必要性について喧嘩し始めたんだけど・・私はどうしたッ!?普通、こっちが先だろッ!救急車とか呼ばねえのかよぉぉぉぉぉ!!!
私はそう思いながら、自力で立った、さすがギャグ小説だわ・・シリアスだったらここで死んでたかもな・・
私が起き上がったのに気付いた銀八は喧嘩を止め、こちらに顔を向けてきた。

「うわ〜立った立った、お前、頑丈だな〜昨日のテスト運転の時に、タカミチの奴を轢いた時、10分ぐらい痙攣していたぞ、あれは焦ったわ〜、どう隠すか迷ったよな?」
「あれはお前、あの時は200キロいってたからな、まあとりあえず体育館倉庫に隠すという手があって助かったな・・アイツまだ生きてんのか?」

お前ら今、人を轢いといて何、隠蔽工作の話してんだぁぁぁぁ!!私も高畑先生みたいに痙攣していたら、倉庫に投げ入れたのかおいッ!つーか高畑先生の安否が気になるわッ!
私はそうツッコもうとしたが、我慢して、体の汚れを払い落とし、教室に向かうことにした。そして銀八とエヴァを睨んで

「じゃあ先生、エヴァさん、今度から気をつけてください・・轢かれるのはたまったもんじゃないので」
「うん今度から気をつけるわ、お前大丈夫か?保健室行った方がよくない?一応轢かれたし」
「ギャグ小説ですから次のページでは全快してますから、では教室で・・」

銀八のいらぬ心配にはっきりと私は拒否した。とりあえずコイツとは関わり合いたくねぇ・・さっさと教室に行って寝てるに限る、私は教室に向かって歩き始めた。

「ところで銀八、このスクーターはお前が頼んで作ってもらったのだから、これの制作費はお前の給料から引いてくぞ」
「ちょっと待てッ!、あれってお前がオゴッてくれたんじゃないのッ!?、勘弁してくれよッ!お前俺の安月給を0にする気かッ!、頼むッ!それだけは止めてくれッ!」

エヴァと銀八の不毛なやりとりが後ろから聞こえるがどうでもいい、早くコイツ等から離れたい・・





教室についてうつぶせに伏せて30分ほど寝ていると、クラスの奴等がどんどん来るようになってきた、そしてどんどんにぎやかになていく・・あ〜うるせぇ・・

ガララララララ

「みなさんおはようございます」
「「「「「「おはようございま〜す」」」」」」

子ども先生も教室に入ってきてあいさつをしてクラスの奴らもあいさつしている、何度も思うんだが、なんであんなガキに教育されるという屈辱を受けなきゃいけねぇの?いや子ども先生の方があいつよりはずっとマシだよな・・

ガララララララ

「あ〜チクショウ、また『ハンガー×ハンガー』休載かよ〜いいかげんにしてくれよったく・・」

銀八がジャンプを読みながら教室に入ってきた。いや何普通にジャンプ読んでんのッ!?、しかも第一声が『ハンガー×ハンガー』休載の話かよッ!、そんなんでいいのかよッ!

「銀さん、H・R中にジャンプ読むのはちょっと・・僕みたいに始まる前に読みましょうよ・・」
「だまれ小僧! 俺はジャンプを読みたい時に読むんだ、朝は色々あって読めなかったから、今読むんだ。俺は自由に生きる、束縛なんてされねぇ」

いや、なんかカッコイイこと言ってるように聞こえるけど、ただのワガママだからねッ! 何少しカッコイイ言い回ししてんのッ! ダメ人間だからね、アンタはッ!
私はそうツッコミたいのだが言えない、普段地味に生きる私がこんな所で大声でつっこんだら変だし・・ということで他の奴等つっこめよぉぉぉぉ!!

「先生ッ!」

そんな願いが通じたのか、双子の姉のほうが挙手して、立ちあがった。おお、まともな感性もってんじゃんッ!

「先生!『ハンガー×ハンガー』はすぐ返って来るから安心してくださいッ!」
「ダメだよ、お姉ちゃんッ! あの人一回休載したら、当分返ってこないよッ!」

何処につっこんでんだよぉぉぉぉ!! ていうか双子の妹、お前もそれ違うからッ!
そんなこと考えてるうちに、クラスの連中はどんどんカオスな会話を始めている・・

「今度も長期休載でしょ?」
「いや絶対すぐに返ってくるッ!」
「無理だってあの人は・・話は面白いのにな~」
「『ハンガー×ハンガー』って何アルか?強いアルか?」
「いやキャラクターはめっちゃ強いけど・・」

お前等、どんだけ『ハンガー×ハンガー』について語れるんだよッ!! ウチのクラス、どんだけジャンプ読者多いんだよぉぉぉ!! もういいよ、わかったよチクショウッ!

「あ~先生方? 私頭痛いんで帰ります」

私はもうウチに帰る事にした、なんかもう今日はサボりたい・・家帰って、色々やりたいし・・

「頭痛いんですかッ!?じゃあ頭痛薬をッ!」
「いや結構ですから、ていうかなんでそんなもん持ってんですか?」
「ネギ、お前さ〜悟ってやれよ、アレはなきっと「あの日」が近いからイライラしてんだよ、わかってやれよ、もう〜」
「セクハラで訴えますよ、銀八先生・・」

この天然パーマッ!!「あの日」が近づいても、なくてもお前のせいで毎日イライラしてんだよッ!
私は心の中でそう絶叫しながら、さっさと教室から出る、もうこんなカオスな連中から離れたい・・







ようやく家に着いたか・・私のやるべきことは1つ、それはこの『銀八ストレス』を速攻で解消するための策。

「うぉぉぉぉ!!この社会の理不尽さに、社会に、そして大衆に訴えてやるよぉぉぉぉ!!」

私は制服を脱ぎ、着替えをしながら眼鏡を取り、化粧をする。外に出る時は絶対にしないことだ。



「オッケ〜今日も、ちうは元気だぴょ~んッ!」

私は表の自分を捨てて、今はコスプレ風味全開の服装で叫びながら、自分のパソコンの前に座った。
「おハロー、元気~!? 今日はとってもイヤなことがあったよん! ウチのクラスの副担任が変態で、ていうかすごい変態で! いやアルティメット変態で!! 今日、ちうにセクハラ発言してきたんだよん!」
私は喋りながら、その言葉をパソコンに打ち込んでいく、そう私は表の世界では地味に生きているが、ネットの世界ではトップに君臨するネットアイドルなんだよッ! お、さっそく書きこみが・・

ちうファンHIRO:許せねぇ! なんだその変態はッ!
通りすがりB:オレらがぶちのめしてあげようか、ちうたん?
フルーツチンポ侍:その教師切腹しろッ! オレが介錯してやりますよッ!
タマネギ剣士:なんか良いバイトありません? サングラス着用ありの?

私がメッセージを入れた瞬間、雪崩のように書きこみが発生している、いやなんか違うのまじってるけど・・

「よし来た来たぁぁぁぁ!!、ネットアイドルのランキングでもぶっちぎり一位ッ!、どうだぁぁぁぁ!!、私は女王なのよッ!、いずれはネット界のナンバーワンのカリスマになって、すべての男が私にひざまづくんだよッ!」」

あの銀八だって、例外ではない・・いずれネットの頂点に君臨する私に、あんな教師、敵ではないッ!

「すいませ〜んフィーバー中悪いんですけど〜」

あれ? 後ろから声聞こえるんだけど? しかも聞いたような声・・この部屋、私しかいないはずッ!。
私がおそるおそる振り向くと・・

「ドアの鍵が開いてたんで~入ってきたんだけどさぁ、ネギの代わりに頭痛薬持ってきたんだけど~なんか面白いの見れたわ~」

坂田銀八がニヤニヤ笑いながら、パソコンと今の私を両方眺めていた・・



「ウギャァァァァァァァァァァ!!」

私はもう絶叫するしかない、バレたッ! 一番バレたくない奴にッ! 私のプライベートを思いっきり覗かれたぁぁぁぁ!! 消そうッ!こいつを消そうッ! 消さないと、私も明日から変人クラスに、加入されるッ!

「おいおい、お前ってネットだとずいぶんはっちゃけてるな~、普段は地味眼鏡のくせによ~ネットの世界だと・・うわ、この書きこみは引くわ、ほとんど宗教じみてやがる」

私が凶器を探していると、銀八がいつのまにか私のパソコンで私のHPを調べていた。なんかもう・・恥ずかしくて、死にたい・・

「いるんだよね~リアルでは地味な存在だけど、ネット世界では『伝説の勇者』と言われるほど強い奴。ネットゲーム内と現実世界のパロメータは反比例するんだよな~」

うぉぉぉぉぉ!! なんかもう現実世界から逃げ出したいッ! でもコイツが私の事をクラスの奴等にばらしたら、本当に私はリアルで生きていけなくなるッ!

「これ、あいつらにバレたらどうなるかねぇ、まあ、また変な人が一人増えるってことになるなぁ、俺が言えばこれ一発だな~」

銀八がにやりと笑いながらこちらを振り向く、まさかコイツ・・私を脅してるのッ!?教師が生徒を脅してるよッ!!





場所が変わって、今、銀八と着替えた私は、とあるファミレスにいた・・

「いやぁ、悪いね~金無くてさ~、一応ジジィから金少し貰ったんだけどよぉ、スクーター代のおかげで一文無しなんだよねぇ、そこの姉ちゃん、パフェ、もう一個追加で」

銀八と私は席について、私は何も食わずに、銀八が店員が持ってきたパフェを平らげているのを眺めている、くそ~生徒におごってもらう、ってどんな教師だよッ!

「なあ、もういいだろ先生・・もう5杯もパフェ食ってんだぞ、これで私の秘密、誰にも言わないでくれよな・・」
「心配するなよ、ちうちう~、お前の、はずいプライベートを邪魔なんてしないぴょ~ん。すんませ~んパフェ2個追加で」
「その呼び方と喋り方やめろぉぉぉぉ!!!しかもまだ食うんかぃぃぃぃ!!」

私は自分の弱みを握っている相手についに立ち上がりキレる、このやろうどうしてくれようか・・

「最近、糖分食ってないからさぁ、今のうちに食いたいんだよ、でも俺だって鬼じゃねぇよ、もう次で最後のパフェにするわ。あの~この一番高い『ブルーアイズ・アルティメットパフェ』って奴を1つ」
「いい加減にしろぉぉぉぉ!!、私は帰るッ!金は置いとくからなッ!」

私は財布から札を数枚出して、机に置き、出口に向かうため席を離れた。

「なんだよ~ちうちう帰んのか~? 一緒に学校サボった同士、コミュニケーションするのが普通じゃねぇ~?」
後ろから、銀八の声が聞こえるが無視した。その名で呼ぶなッ! ていうかお前も学校サボってるんかいッ! それでも教師ッ!? ていうかお前なんかとコミュニケーション取れるかぁぁぁぁ!!
私は心の中でキレながらさっさとファミレスを後にした。





「あのバカ教師のせいで金欠だな・・最悪だ~家に帰って今日はずっと寝てよう~」

私は財布を覗きこんでブツブツ言いながら、電車が来るのを待っている。
あいつのせいで今日は一生の中で最悪の日だ・・ていうかあいつ約束守ってくれるよな・・

「守りそうにねえな・・もしかしたら、またたかってくるかもな・・あ~もう死にてえ~殺せよッ!誰か私を殺せよぉぉぉぉ!!」

私は足で小石を蹴るしぐさをした、その瞬間

ズリンッ

そういえば昨日の夜は雨降ってたな、雨上がりのホームって、すっごい滑るよねって思いながら・・


「おぶしッ!」

私はレールに向かって落ちてしまった。

「いて~ちくしょう、どんだけ神は私を不幸に・・ん?」

悪態をつきながら、立ちあがり前を見るとそこには・・電車が走ってた、こっちに来てね? あれヤバくね?

「うそぉぉぉぉ!! シャレにならねぇぇぇぇぇぇ!!」

ホームに登れるか? だめだ、高いし濡れてて滑るッ! 反対方向のレールに移動は? 違う電車が停車してて入れるスペース無いんだけどぉぉぉぉ!!

キキキキキキキキキキキッ!

電車はどんどん来ている、ブレーキかけているが間違い無くここでは助からん・・

「うわ、もうこれ死ぬよッ! うそでしょッ! まだ死にたくねえよッ! 4話目で人が死ぬって、どんだけ短期連載にする気だぁぁぁぁ!!」

私が叫んでるが電車はどんどん近づいてくる・・もう無理、死んだわ・・


「干雨ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

誰かが私の名を呼んでいる、聞いたことある声で、声の主は駅をスクーターで疾走しながら、私に向かっている電車を追い越した、そして

「乗れぇぇぇぇぇえぇぇ!!!」

電車が走っているのに、躊躇もせずに構わず、レールの上に着地し私の方に叫びながら走ってきて、手を差し伸べてきた、その目はいつもの死んでいる目では無く、綺麗な目をしていた。私は何も考えず、その手を掴み、そのまま後部座席に乗せられた。

「ふんごぉぉぉぉぉ!! なめんなぁぁぁぁ! この『超強力エンジン』の力をぉぉおぉぉ!!」

私を乗せた男はアクセルに思いっきり力を入れる、電車からふりきる気だ、だが電車も速い。

「先生ッ! もっとスピード出せッ!微妙にスクーターにチップしてるからッ!、私の後ろ凄い事になってるからッ!」
「うるせぇぇぇぇ!!なめんなコラぁぁぁぁぁ!!このスクーターは200キロ行けんだぞぉぉぉぉ!!」

こんな状況でもなぜか会話が出来る私達って・・、どこに余裕があるんだよ・・

キキキキキキィーッ!

なんとか電車は止まったようだな・・

「スクーターで逃げ切ったよ・・ありえねえだろッ!非現実にも程があるわッ!」
「あ~やばかった~、ったくパフェ代が足りなかったから、お前探してたら、電車に轢かれそうになってるってどんな状況だよ・・俺も死にそうになったじゃねえか」

レールの上を走りながら銀八は疲れた調子の声で言う。

「駅の中をスクーターで疾走する、お前の方がどんな状況だよッ!」

私は後部座席に乗りながら銀八の肩を掴みながら、ツッコミをいれる。無茶すぎだっつ~の・・だけどよ

「・・ありがとな・・」
「あん?」
「助けてくれてありがとな銀八・・」

私は恥ずかしいのを我慢してお礼を言った。凄く恐かったが、なんだかスリルがあって、すごく楽しかったような気がするのはなんでだろうな・・銀八もなんだか照れくさそうにしている

「気にすんなよ、生徒を守るのも教師の仕事らしいしな、さっきの店のパフェ代くれればチャラにしてやるよ」
「・・お前なぁ・・」

コイツの頭の中、本当に何考えているかわからねえな・・だがそこがおもしれえのかな?コイツと一緒にいれば、いつかわかるだろ。

「ところで銀八、なんでスクーター止めねえんだよ? もうレールを当たり前のように走っているけどさ」

段々、隣り駅が見えてきたんですけど・・しかもスピード出しすぎじゃね?

「ブレーキ故障中なんだよね、あとレールに降りる衝撃で、ハンドルもいかれちゃった」

銀八はポツリと呟いた。ん? 今なんて言いました?
しばらくすると目の前に停車している電車が・・アレ?やばくない、コレ?


「「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

ドォォォォォォォンッ!

こいつと付き合って行けるか心配だな・・










教えて銀八先生~のコーナー
「4ていうのはさぁ、縁起が悪いもんだって、ミスタが言ってたな~「必ず4が付くと嫌な事が起こるんだぜッ!」ってよ~。はいじゃあ、この作品も4話にいきました~」
「おいぃぃぃぃぃ!!なんだその嫌な始まり方ッ!」
「ミスタの話を鵜呑みにするなぁぁぁぁぁ!!ていうかジョジョ読まないと、知らねえよッ!ミスタなんてッ!」

銀八の始め方にすかさずツッコむ、エヴァと干雨。ミスタを知りたい人は『ジョジョの奇妙な冒険・第5部・黄金の風』をお読みください。

「さあ今回の問題は「。」と「、」が少ないという問題だ。これは冒頭から問題になってる事だよな?、ぶっちゃけ今回も微妙だしな。時間が空いたら編集しなきゃな~」
「まあ読みにくくなるもんな、無いと・・ていうか小説書くなら、それに気付けよ作者ッ!、ていうか去年の大学の論文でも同じ指摘されたよねッ!?」

立ちあがりツッコミをいれる干雨。それを聞いた銀八はだるそうに

「気にすんなよ、作者の奴も勉強するために本を読んで「、」、「。」の付け方勉強したんだから、まあでもこの小説を見る限り、効果ゼロってのがわかるな」
「今更、そこの勉強か・・で、何読んだのだ?」

エヴァはとりあえずその本のタイトルを聞いてみる、どうせろくなもんじゃないだろ、と思いながら。

「乙一が書いた『The・BOOK』だよ、すっげ~面白いから、コレ作者からのオススメ」
「「結局ジョジョかよぉぉぉぉぉぉ!!しかも宣伝すんなぁぁぁぁぁぁ!!」」

エヴァと干雨が同時にツッコミを入れる。


ジリリリリリリリリ

最後のベルがなる、帰宅時間はとっくに過ぎている。

「次回、「金持ちの家のチャイムを鳴らす時はジャンケンするよね」を予定。出来たらやりたいね~」
「そのアバウトな感じやめろぉぉぉぉぉ!!」

銀八に対する干雨のツッコミが人ッ気のない学園中に響いた。

ガララララララララ

「うるさいですわよッ!帰宅時間はとっくに過ぎてますッ!見回りに来てみたら、何遊んでんですかッ!?」

教室のドアを開けて雪広あやかは、教室にいる三人に向かって大声で怒りにきた。
「「「あ、すんません」」」

あまりにも怒ってるんで三人は謝るしかなかった。












[7093] 第五訓 金持ちの奴でも不幸な過去はあるもんだ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/07 00:23
「銀さ~ん、ちょっと頼みがあるんですけど~」
「すまん、緊急事態だ。帰って『無双OROCHI・Z』やりたい」
「いや、それはいつでも出来るじゃないですか・・」

帰りのH・Rが終わり、教室でネギが銀八に頼みを持ってきた、それを銀八は自分の都合で断ろうとしたのだが、ネギもそれで引くことは出来ない。

「昨日から、学園の生徒たちは、風邪を引く人が多発しているんですよ、僕達のクラスも10人以上休んでいるし、だから銀さんと二手に分かれて、生徒達のお見舞いに行こうかと・・」
「何言ってんの、お前?自宅に先生来たら気まずくなるでしょ。めんどくせ~しよ、ゆっくり寝かせてやれよ。じゃあ、俺は遠呂智の討伐に行くから」

かたくなに頼みを断る、銀八。彼が今考えている事はゲームの事だけらしい、そこにめんどくさい用事は入らない。なんとも単純な頭の中である。
そんな銀八の駄目っぷりに、ネギは深い溜め息をついた。

「僕だって、銀さんを生徒のところにお見舞いに行かせるのは凄く不安なんですよ。こうゆう事態のときはタカミチがやってくれるんですけど、謎の事件に巻き込まれて、病院で入院中なんですよ・・」

ネギの信頼する、先輩でもあり、友でもある、タカミチは先週、日曜日に用があるため、学園に向かっていた。その途中で、後ろから突然、バイクがもうスピードで体当たりしてきたらしい。その時にタカミチは意識を失い、気がついたら体育館倉庫で死にかけていた。という不思議な事件が起きたのである、犯人は後ろからだったので、見ておらず、結局犯人はわからない。
それを聞いた銀八は額に汗を出して、下を向いていた。そしてしばらくするとまた顔を上げて

「わかったよ、一件だけ行ってやるよ」
「本当ですかッ!?、でもどうして急に?」
「なんか罪悪感が俺から芽生えたんだよ・・」

ネギの頼みを散々嫌がっていたのに、銀八はいきなり承諾してくれた。彼にも罪の意識があるらしい、せめて少しでも罪悪感を軽くするためにネギの願いを受け入れることにしたのだ。

「? なんだかよくわかりませんが助かります! じゃあ・・雪広あやかさん。「いいんちょさん」の所に行ってくれませんか?、風邪のため、実家に戻って休養中のようですし。住所は紙に書いて渡しますね」
「あ~あのショタコンね、はいはい了解。行ったらすぐに帰って良いだろ?」

ネギは紙にペンで雪広あやかの実家の住所を書いて銀八に渡した。それにしても生徒の実家の住所まで覚えているなんて、かなり用意周到である。

「まあ、風邪がまだおさまらなくて、苦しそうなら、声だけかけてすぐに帰って良いですけど。元気な様子でしたら、今日起こった、学校の出来事とか色々話してくれません?いいんちょさんは、学級委員なんでそういう所、気になると思うんで。」
「あ~じゃあ、俺が授業そっちのけで寝ていて、夢で見ていた遠呂智との対決の事を・・」
「いやそれ、銀さんの出来事でしょッ!、学校の事ですよッ!、ていうか授業中寝てたんですかッ!?」

あいかわらずふざけた考えの銀八に、ネギは呆れかえっていた。

(まずいな・・こんな人を一人でいいんちょさんの家に入れたら、どんな事態が起きるのやら・・いやまず入れるのかな?。最悪、ポリス呼ばれそうだな~)

ネギは頭を抱えて悩んでいると、まだ帰っていない生徒がこちらに近づいてきた。

「私が銀八先生についていきますよ、この人だけじゃあ心配でしょ、ネギ先生」
「千雨さんッ!いいんですかッ!?」

ネギは生徒の長谷川千雨が銀八と同行をするという事に、驚いた。彼女にしては珍しい・・ていうか、彼女がこんな事に首を突っ込む事自体初めてだ。

「ネギ先生も不安でしょうがないでしょ、こんな先生が一人で生徒の家に言ったら、大騒ぎ、最悪この人捕まりますよ? もしくは、あやかさんの家が爆破するかもしれませんし。私も行けば少しは大丈夫だと思いますから」
「そうですね、生徒がいたら教師として認識されるかも・・ここはお願いします、千雨さんッ!」

千雨の言葉にネギはうなずいて、千雨にお願いする。その光景を不満そうにみていた銀八は・・

(いや、お前も教師として認識されなくね?)

自分よりずっと年下の子ども先生をじーっと見ていた。






場所が変わって、銀八と千雨は二人で歩きながら、雪広あやかの実家に向かっていた。住所によるともうすぐ着くらしい。

「ていうかお前、なんで来たの?、あんまりショタコンと仲良さそうな感じじゃねえけどな」
「お前が行くからな。暇だからついて行くんだよ」

家に向かいながら銀八と、千雨は話していた。銀八に興味を持った、千雨はたびたび銀八と行動する事がある。銀八も嫌そうではなく、時々仕事を手伝わせているのだ。

「まあいいけど・・ていうか住所ここだけど、本当?」
「ここだけど・・ていうかこれ家?」

二人は喋っていると目的地に着いたらしい。しかし二人ともその雪広家の実家を見て、二人はあんぐり口を開けていた、そう、それはあまりにも・・

「デケェェェェェェェェェェ!!」

銀八が叫ぶほど、立派なお屋敷であった。庭だけでも壮大であり、ホワイトハウス超えてんじゃね? ぐらいのお屋敷もある。とりあえずバカみたいに広かった。
「あいつこんな、家もってたのかよ・・もっと仲良くしようかな・・。そういえば俺、こういう家慣れてないわ、つーか初めてだわ。ということで千雨、チャイム鳴らしてくれない?」

銀八は一人言を呟いた後、千雨に指を差して、指示を出した。銀八が指を差した方向には。家のインターホンだと思われる物が門の隣についていた。

「いや、お前がやれよ、お前が用あって来たんだから、私はただのお前の付添いだから、はい押して」
「いやいや、お前さぁこういう経験ないよ?、金持ちの家のチャイム鳴らすなんてめったにないことだよ、ほらお前にやらしてやるよ、はい、あれプッシュしてきて」

千雨はやんわり拒否するが、銀八も拒否する。あまりにも超豪邸なので、チャイムを鳴らすのが緊張するようだ、一般人の悲しい性である。

「いいって私は、ほらお前だって経験ないんだろ?、それにお前教師じゃん、かわいい生徒の前で手本を見せてくれよ銀八先生。はい、行って来て」
「何言ってんの?、経験無いんだから、手本なんかみせられないだろうが、むしろ生徒は何事も経験すべきだろ、これやればお前、俺より上の位置に立てるんだよ、すごいな~。はい、ゴープッシュ」

いやお前が、いやお前やれって、お前だろ普通、お前がいいって、お前しか出来ない、いやおまえだからこそ出来る、
いいから押せよッ! お前が押せよッ! お前が押してくれるためにアイツ待ってるよッ! いやアイツが待っているのはお前だけなんだッ! お前待ってんだよッ! ちがうお前なんだッ!

インターホンを鳴らすだけで、10分間以上門の前で揉めている、銀八と千雨。周りから見たら、あきらかに不審者である・・
お互い疲れが溜まり、このままではマズいと思い、千雨はある提案をした。

「・・よしジャンケンで決めるぞ・・うらみっこ無しな?」
「・・ジャンケンか・・しょうがねえな・・最初はグーだからな、パー出すなよ」

その提案に承諾する銀八、お互いに相手の手を考えている時に

ガァァァァァァァァァァァ!

門が自動的に開いたのだ。その光景を最初はグーのポーズで硬直して銀八と千雨は口をポカンと開けて眺めていた。
ジャンケンする意味を無くしたので、二人は門の前で立って目の前を見ていた。

「どうして開いたんだ?」
「門の前にいたからお客様だと思ったんじゃね?、早く入ろうぜ。さっさと自宅訪問を終わらして、俺は遠呂智の自宅訪問もしなきゃいけないんだよ」

千雨の疑問に単純に答え、銀八はさっさと中に入っていく、それにしぶしぶ千雨もついていった、だがその時

ダダダダダダダダダダダッ!

「不審者が入ってきたぞォォォォォォ!!」
「ものども出会えッ!出会えェェェェェェェ!!」
「お屋敷に近づけるなぁぁぁぁ!!」

なんか見た目ゴリラのような、見るからに強そうな警備員がわんさか出てきて、あっという間に銀八と千雨は囲まれてしまった。

「オイィィィィィィィ!!、どうすんだよッ!なんか不審者扱いになってるぞ、私達ッ!」
「なんでだろうね~?」
「お前の見た目が怪しすぎるんだァァァァァァ!!、特に腰の木刀が危険ありありだっつうーのッ!」

とぼける銀八に対して千雨は思いっきりツッこんだ。そりゃ木刀を腰に差したまま、門の前にいたら不審者としか認
識されない。

「かかれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「「「「「オォォォォォォォォォ!!!!」」」」」
「「ちょッ!ちょっとタンマァァァァァ!!」」

襲いかかってくるゴリラ警備員に、銀八と千雨は同時にストップ命令をするが、意味無く、警備員は集団で飛びかかってきた。





第伍訓 金持ちな奴でも不幸な過去はあるもんだ

「あやかお嬢様、自分は教師と生徒だと主張して、見舞いに来たからお屋敷の中に入れるよう言っている者がいますがどうしましょうか?」

私がベッドで風邪の症状も落ち着いたので、本を読んでいるとドアをノックしてメイドが報告に来た。

「教師?、教師というのはネギ先生でございますのッ!?」
「いや銀髪で目が死んでいます、あと腰に木刀を差していますね・・」

もしかしたらネギ先生が見舞いにッ!? と思ったのだが、メイドの報告ですぐ誰が来たのかわかった。
あ~あの先生ですか・・最近、副担任としてきた教師。いや教師ではなく『凶師』と呼ばれる人、銀八先生だ。
私はがっくりうなだれていると、ふと気になる点があった。

「よく、見た目不審者のようなあの人を我が家の敷地内に入れましたわね?」
敷地内に入ったら警備員としては最強といわれている「雪広家」が誇る、ゴリラみたいな警備員がわんさかいるはずだ。あんな不審者の塊は、入った瞬間、捕獲確実だ。

「それが・・その教師がここまで来るために警備員を全員倒しちゃったらしいです・・」
「なんですってッ!」

まさかここの警備員を一人で倒すとは・・信じられない、あの人が?。そんなに強いのかしら・・。

「あともう一人「長谷川千雨」と言っている。生徒らしき人もいます。特徴は・・地味でしたね・・。どうします?」

メイドの言葉にまた私は驚く。

「千雨さんがッ!?、そんなに親しくさせてもらっていないのに・・まあいいです。その二人は私のクラスメイトと、一応教師です。中に入れて構いません」

メイドは少し心配そうだが、頷いた後部屋を出て行った。
あの二人が見舞い?、不思議な組み合わせですわね・・、しかもまったく見舞いとは無縁だし、私とも親しい間柄ではない。そんな二人がどうして私に?。まあせっかく来たんだから、それに見舞いだし、お礼を言わなければ。

「急いで迎えに行かなければなりませんわね・・」

あの凶師をほっといたら、また一騒動起こしそうだ。私はベッドから出て着替える事にした。




「金持ちの家ってのは、何でシャンデリアが好きなのかね~、シャンデリアだらけじゃん、なんか気持ち悪いよおい。俺だったらそんな所に無駄なコスト使わずに、蛍光灯で充分だな。」
「いや豪邸の照明が蛍光灯じゃあ、不釣合いにも程があるだろッ!。ていうかあの時、お前なにやったッ!?、少なくともお前メチャクチャ強いんだろッ!?」

着替えを終わらせ、二人が客間にいると聞き行ってみたら、回りをキョロキョロ見ながら話している、奇妙なコンビがいた。この二人が会話しているのはなんとも不思議な感じですわね・・。
それにしてもよくみると、先生は大量の警備員を倒したと聞いたのに、体どころか、いつもの白衣にも、キズや汚れさせ付いていない。本当にこの人が倒したのかしら?、私がそんな考えをしていると、先生はこちらに気づいたようだ。疲れた調子で私に話しかけてきた。

「お、ショタコンじゃん。お前結構、金持ってるな。ゴリラの警備員ががいっぱい出てきたから大変だったわ」
「ショタコンって呼ばないで下さいッ!。ていうかその警備員を倒したのはあなたでしょう?どうやって倒したのですか?」
「・・言葉が通じないゴリラだから黙らしたんだよ・・」

私の質問に先生は嫌そうに、顔をそむけて喋った。詳しい事は言おうとはしない・・だったら

「ごきげんよう、千雨さん。あなたは先生が、どう倒したのかわかりますよね?」

言いたくないのなら、見た人に聞いてみよう。私はそう思い、銅像を眺めている千雨さんに聞いてみた。

「いやなんか襲われそうになった時に、銀八がいいというまで目をつぶれって言ったから、ずっと目つぶってたんだよ。警備員の悲鳴とか殴られる音は聞こえたんだがな・・」

千雨さんも不思議だったと、頭を掻きながら答えた。いや、律儀に目をつぶるあなたも不思議ですけどね。
そこまで自分の力をみせたくないのかしら・・この先生は謎が多すぎますね・・

「まあいいでしょう。ではまず、お二方。今日は私の為にわざわざ実家まで足を運んでくれてありがとうございます。そのお礼として、二人には雪広家が誇る盛大なディナーでおもてなししますわッ!」
「マジでかッ!?じゃあゴチになりま~す。エヴァに飯いらねぇって伝えてくんない?」
「まあ、金持ちが何食ってのか、気になるしな・・。銀八が食うなら私も食うか」

二人とも遠慮しませんわね~。まあでもお二人と話したいこともありますし・・




「うわ~なにこの肉ッ!やわらかいんだけどッ!、口の中でとろけるわ~。千雨それよこせ、銀さんはその肉を食いたい」
「ふざけんなッ!、私も食ってんだよッ!。ていうかお前さっきからうるせえよッ!、マナーというのを叩きこんでやりたいわッ!」
「いやあなたのツッコミもうるさいですから・・」

場所を屋上に移し、夜空を見ながらごはんを食べようと思ったのですけど、二人とも花より団子ですわね・・
先生は飯に食らいついて、千雨さんは先生に時々ツッコミを入れている。
この二人こんなに仲良かったのかしら?、それにしても、千雨さんがこんなにテンション高い所は初めてみますわ。

「それでは先生、千雨さん、そろそろ聞きたいことがあるのですが。どうしてわざわざ私の家まで来てくださったのですか?」

メインの料理は終わり、デザートがきたころで私は二人に質問してみた。二人ともデザートをぉ食うのを一旦止め。

「罪悪感が俺を動かしたんだよ・・」
「こいつが行くから、私はついていった、それだけ」

先生はすこし俯いて、千雨さんはそれが当たり前だというように言った・・。
いや答えになっていませんわよ・・。ていうか罪悪感って誰に罪を行ったのですか?・・

「千雨さんは、そんなに先生と仲良かったかしら?、タイプが全然違うと思っていましたわ」
「あ~、面白いからコイツについていってんだよ」

千雨さんは照れくさそうに答えた。なんか千雨さん、口調変わってません?、先生と似てますわよ・・
結局謎だらけですわね、この二人は・・


「あ~食った食った、もう食えねえよ、俺はもう幸せいっぱい夢いっぱいのワンダーランドだよ」
「意味わかんねえよ、その感想ッ!、つかお前どんだけデザート食ったのッ!?、テーブルの上がケーキの皿だらけじゃんッ!、一人でワンホールも食うんじゃねえよッ!」

晩食を終えた、先生と千雨さんはあいかわらず息の合ったボケとツッコミをやっている。このふたり、漫才いけますかもしれませんわね・・

「じゃあ飯も食ったし・・そろそろ・・」

先生が椅子から立ちあがった。帰るのだろうか?

「トイレ行って来まーす」

そんな先生の抜けた発言に、私は椅子からズルッと滑り、千雨さんは「早く行って来いッ!」と怒鳴っていた。
それを聞いた先生が「は~い」と答えさっさと屋上から姿を消した。

「あの人は本当に・・まあいいです。私はちょっと用事があるので、失礼しますわ。勝手に帰って大丈夫ですから・・」
私はそう言い残し、千雨さんを残し、屋上をあとにした。今日はあの子の日でもある・・色々報告しましょうか・・








「ごめんね、遅くなっちゃって。お姉ちゃん今日は、色々と用事が会ってね・・」

私は屋敷のとある部屋にいて、そこで近くのベッドに座って、誰かと喋るように、話していた。周りには誰もいない、私だけだ、もし誰かが見たらきっとおかしい人だと思うでしょうね・・。でも時々ここにきて、嫌なことがあったり、面白い事があった時、たまに実家に帰ってきた時、ある特別な日の時に、私はここにきて喋っている。まるでここにいる者と喋っているように。

「今日はね、お姉ちゃん、とっても不思議な二人とご飯を食べたのよ、その一人が特に不思議なのよ。その人先生なのに、先生って感じがしないのよ?、まるで子供みたいに食べていたわ・・」

私はまた話しかけるように喋る。この声が届いて欲しいと願うように・・

ガチャ

「しつれいしま~す、ここトイレっすか~?、もれそうなんですけど~?」

とつぜんドアが開き、銀八先生が入ってきた!。私はいきなりの訪問に驚く、トイレじゃないし、ていうかノックもしないで普通に入ってきますッ!?

「ここはトイレじゃありませんわよッ!、トイレならここを出て、まっすぐ行って突き当りを左ですわッ!」
「あれお前なんでこんな所にいんの?、ここお前の部屋?ガキくせ~な~、ぬいぐるみだらけじゃん」

先生の言うとおり、この部屋にはぬいぐるみや、おもちゃがいっぱいある。しかしここは私の部屋ではない。

「ここは私の部屋ではありませんッ!この部屋は弟の・・」

私は途中で言葉を止めて下を向いてしまった。先生は私に近づいて、周りを見渡していた。

「お前、弟いるんだ。何処にもいねえけど?、家出か?、金持ちイヤで家出か?」

家出・・そっちの方が何百倍もマシですわね・・。

「弟は・・ここの部屋には来ません・・もうこの世にいませんから・・」
「!!」

私の言葉に先生は表情が一変する。この事を他人に教えるなんて、私らしくありませんわね・・

「弟は生まれる前に亡くなったんです。バカですわね私は・・こんな部屋まで作って・・浮かれすぎていた自分が本当に愚かとしか・・」
「バカでも愚かでもねえよ」
「え?」

私が下を向いて弟の話をしていたら、突然先生が言葉を出した。しかしいつもと違う調子の声と口調だったので、私は思わず顔を上げた。

「お前は、その弟の為にこの部屋作ったんだろ?、ありえねえぜ普通よ。弟の為にこんなもん作るなんて、うれしいだろ、弟もよ。こんな自分の事が好きな姉ちゃんがいてくれてよ」

先生は上を見ながら私に話しかけてきた、まるで上に弟がいるかのように・・

「俺は霊は信じないが、あの世はあるって信じてるよ。弟も上でお前をずっと見守ってるはずさ、お前さんは立派な姉ちゃんだ。それを誇っていい」

先生がこちらに向き直った。先生の目はとても綺麗な優しい目をしていて、私はしばし見とれてしまった・・

「しっかしお前が、ショタコンだという理由もこれでわかったわ~」
「へ?」
「お前、ネギの奴を自分の弟と重ねて見てるだろ?、多分無意識にやってると思うけどな」

私がネギ先生と弟を・・そんな事ないとは言えない・・私は恋愛の対象ではなく「守るべき弟」として見ていたのかもしれません・・。先生の言葉が深く私の心に突き刺さった。

「確かにそうかもしれませんわね・・私は自分の都合で先生を弟と見て、ふりまわしていたのかもしれません・・」
「別にいいんじゃね?」
「はい?」

私は先生の言葉にまた驚く。この人は一体・・

「別にネギの奴も迷惑に思ってねえよ、ずっと守ってやれよ、弟を守るみたいに。俺も協力してやるからよ」

先生は頭をボリボリ掻きながら少し笑って、私に向いて言った。

思えば私は恋愛なんて一回もないかもしれませんわね・・身内以外の異性とは全く話さないし、友達さえもいない。初めて親身になっておしゃべりしたのは、ネギ先生と。それと・・・・

バフッ

私はおもわずベッドから立ちあがり、先生に抱きついた。

「ちょちょちょちょちょ、待て待て待て待てッ!!やばいってッ!いきなりなんだよッ!、これはマズイってッ!」

先生が悲鳴とも言える声で叫んでいるが私は聞いていない。
生まれて初めて、年上の異性に抱きついた。優しい感じのぬくもりがありますわね・・

「しばらく・・このままにさせてください・・」

私は気付いていたら先生の胸で泣いていた。決して誰にも見せないとも思っていた自分の涙。自分は雪広家の次女。常に堂々として、生徒のみんなを引っ張らなければ行けないのに・・
私が泣いている事に気付いた先生は私の頭を優しく撫でてくれた。

「泣いて全部吐いちまえよ、泣きたい時は俺の胸かしてやるからよ、俺がお前を守ってやるよ」
「先生・・」

先生の言葉を聞いて、私は抱きついている腕の締め付けを強くする。もしかしたら私の初恋の相手は・・

ガチャ

「すんませ~ん、銀八って奴知ってます~?銀髪で、頭悪そうで、目が死んで・・」

ドアが突然開きいた、どうやら千雨さんが先生を探しに来たらしい。ドアを開けて、部屋の中で私と先生を見た千雨さんは言葉を失い、抱きついている二人を見て凍っていた。あれ、この状況やばくありません?

「のわァァァァァァァァ!!すんませんッ!、本当すんませんッ!、私空気読めなくてッ!、今すぐ消えますわッ!、誰にも言いませんからッ!、もちろんエヴァにも言いませんからッ!」
「待てェェェェェェェ!!、違うから、これは違うんだよッ!、思わずノリでこうなったんだよッ!、場の雰囲気でこうなっただけなんだよッ!」
「先生ッ!その言い方だと誤解されていく一方ですわよッ!」

私と先生は走って帰ろうとする千雨さんの両肩を掴み、止めようと必死に奮闘した。





ようやく騒動が収まり、私は、先生と千雨さんを門までお見送りした。風邪などとっくのとうに完治している。

「じゃあいいんちょ、俺ら帰るわ。明日学校でな」
「いいのか銀八?なんならエヴァに私から、用事があって今夜帰れない、って伝えておくか?」
「だから何もねえって言ってんだろうが、いいかげん殴るぞメガネ」

先生はいつも通りに戻っていた。この人はいろんな顔を持っているのですね・・本当に分からない人、でもそこに・・

「あやかと呼んで下さい」
「ん?」
「私を呼ぶときは、あやかで結構ですわ」

私の言葉に先生は冷や汗だらだら流している。まあ無理もありませんわね・・生徒に呼び捨てにしてくれって頼まれるなんて

「じゃあ俺は銀さんで」
「え?」
「銀さんでいいっつ~の。『先生』ってのは俺には合わないんだよ」

先生は照れくさそうに顔をプイッと背ける。こういう所もあるんですわね・・

「じゃあ銀さん、千雨さん。今日は本当にありがとうございました」

私はおじぎして礼を言う。本当に今日は楽しかった、最初は不安だったけど・・
「ああ、じゃあな、あやか。また風邪引くなよ、ここ来るのめんどくせぇから、いちいちゴリラ討伐しなきゃいけねえし」
「いいんちょのこと名前で呼ぶのかよ・・やっぱお前達デキ・・イテェ!」

千雨さんが言う前に銀さんの拳が千雨さんの頭にクリーンヒットする。私もこの二人に混ざってみたいですわね・・
二人は最後に手を振って帰って行った。二人の背中が見えなくなるまで私は門の前に立っていた。
また明日、学校で会いましょうね。







翌日、学校が終わり放課後。

「銀さん、何書いてんですか?」
「『万事屋 銀ちゃん』って書いてんだよ」

場所は学校の中の生徒相談室。たまたま銀さんがポスター用紙を持って生徒相談室に入るのが見えたから、私はついてきた。私の質問に銀さんはぶっきらぼうに答えた、しばらくすると千雨さんが入ってきた。

「銀八、学園長がブチ切れてるぞ、ここで仕事始めるって言ったら「学校の中で、教師も出来てないのに、そんな仕事始めるんじゃねぇぇぇぇぇ!!」ってさ」
「んだとあのエイリアンめ、遠呂智の代わりにアイツを討伐してやろうか、しょうがねえ俺が行って、許可取りに行く」

銀さんは書くのを止めて、腰を上げて行く準備をする。

「銀さんは何をやろうとしているんですか?」
「万事屋・・ようするに何でも屋だよ、この部屋使ってな、生徒相談なんてこねえしよ。俺が前にいた所でやってた仕事だよ。ここでは副業だけどな、色々あって俺、金欠なんだよ・・安月給だし、エヴァは今度から家賃払えって行ってくるし・・もう瀬戸際なんだよッ!」

銀さんが顔を手にうずめて言う。
万事屋か・・銀さん、なんでも出来そうですもんね・・

「私もやって良いですか?」
「あん、万事屋をか?、お前金持ちじゃん、仕事しなくていいじゃん」
「あいにく、普段は普通の中学生ですから。それにあなた達といると面白そうなので」

銀さんと千雨さんはそれを聞きしばらく考えていたが

「まあ、給料はアテにすんなよ、それなら許す」
「おい、いいんちょ学校で銀八と抱きつくなよ、誰かに、特にエヴァに見られてたら・・ゴフッ!」

千雨さんがまた何か言い終わる前に、銀さんが千雨さんの腹にボディブローをかました。その光景がどこか微笑ましく思えた。

「じゃあ俺は、ジジィの所に行ってくるわ、話しつけてくる、暴力で」
「なら私も行きますわ」
「私も・・行くわ・・」

ドアを空けて銀さんは出て行く。その後ろに私はついていき、ちょっと遅れ気味で腹を押さえて千雨さんが来た。

「暴力を使う前に、私の交渉術で学園長から許可もらってあげますよ」
「いや別に俺はジジィを殴りたいってのもあるし・・」
「結局、殴りたいだけかよッ!、ていうかお前どんだけ傍若無人に出きるのッ!?、学園長死ぬよッ!」

私と銀さんと千雨さんは3人で話しながら学園長室に向かって行った。


やっぱりおもしろいわね、この人といると・・








 教えて銀八先生~のコーナー

「ついに5話だ、最低目標の半分か・・大丈夫かな~。っていうか今日はこのコーナー止めねえ?」
「いや何、仕事放棄しようとしてんだよッ!」
「そうですわよッ!せっかく今回は私メインの話しだったのにッ!」

銀八の駄目司会っぷりに、思わず叫ぶ、千雨と、あやか。銀八はそれを聞いてもダルそうにしている。

「だってよ~今回はノート9Pで終わりに使用と思ったのによ~、いつのまにか13P行ってんだぞ~、いいだろもうこのコーナー、誰も見てねえよこんなの。」
「どんだけやる気ねえんだよッ!、っていうか私メインの話しにも10Pだったよなッ!。別に9Pに絞らなくても良いだろッ!」

千雨がツッコミを入れている時に、あやかは1つの不審点に気がつく

「銀さん、エヴァさんがいませんが、どうしましたか?」
「あいつは今回、出番が無かったのでいじけて帰りました」
「「エェェェェェェェェェェェェェ!!」」

ジリリリリリリリリリリリ!!

最後のベルがなり、銀八は帰る準備をする。

「いや、これでいいのッ!?、エヴァの事ほったらかしッ!?」
「別にいいじゃん、俺は帰れば会えるし。枕濡らして寝てるんだろ、今頃」
「どんだけいじけてるんですかッ!、エヴァさんッ!、そんなに出番が無くて悲しいんですかッ!!」

夕日も見えて、学校ないで響くのは三人の会話のみ。

ガララッ

「ここにいましたか、銀時様、それとも銀八様と呼びましょうか?」

ドアを開けてきて入ってきたのは茶々丸だった、どうやら銀八を探していたらしい。

「一応コーナー名だから、銀八で、何かあったか?」
「マスターが枕濡らしていじけているので慰めてください」

それを聞き千雨とあやかは口をポカンと開ける。

・・本当にいじけていたんだ・・

今二人の考えはフルシンクロしていた。

「しょうがねぇな~、じゃあ俺帰るんで」

銀八はそう言い残し、茶々丸を連れて、教室から出ていった。
ポツンと残された千雨はあやかは途方に暮れていた。


「次回『契約はご計画的に、いや本当に』をやるってよ・・」
「またタイトル変わるんじゃないんですか・・今回もタイトル変わってるし・・」
「まあこんな所まで誰もみてねえからいいよ」

千雨は次回予告をして、あやかは不安感を感じていた



[7093] 第六訓 契約は計画的に、いやマジで
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/06/13 10:22
休日というのはいい。仕事の事を考えずに出来る、ゆったりとした一日をおくれるからだ。
ということで、教師の銀八の休日は、いつもの和服に着替えて、エヴァの家で昼まで爆睡している。しかし平日でも時々、昼過ぎにこの男は起きる事がある。

「『モンスターペアレント』も恐いけど、『モンスターティーチャー』のお前も恐いな・・」

そんな問題教師の銀八に、エヴァは散々嫌味を言うが、馬の耳に念仏だ。
今日も。休日の日曜なので、銀八は昼に起きた。この後、茶々丸が用意した昼飯を食う、そしてすぐに寝る。晩飯の時間までに起きる、また寝る。という習慣があるのだが、今日は違った。
いつも通り茶々丸の作ってくれた昼飯を食べた後に、銀八は椅子から立ちあがり

「ごちそうさん。じゃ、俺出かけるから、晩飯には帰ってくるわ」
「ってオイッ!、何処へ行くのだ銀時ッ!」

あまりの突然の外出にエヴァは驚いた。銀八は出かける準備をする。ちなみに銀八の本名は「銀時」であり、この名を使うのは生徒ではエヴァと茶々丸のみである。

「何処へ行こうが勝手だろうが・・アレだよ、『万事屋』やるから色々準備しなきゃ行けないんだよ」

銀八はめんどくさそうに答える。

「万事屋って・・お前そんなのやるのかッ!?、こっちは全然聞いてないぞッ!」
「お前に言うとめんどくさくなりそうだからよ~、悪いけど、ジジィの許可が下りるまで黙っていました」

銀八はそれがどうしたという感じで、エヴァに説明する。

「めんどくさいとは何だッ!、そういうことはまず私に・・、ってよくあのジジィの許可とれたな。ジジィの天敵のお前が」
「それはな~・・。やっぱ説明すんのめんどいんで、回想いくわ。ホワンホワンホワワ~ン」
「いや回想の音いらんだろッ!」








「いや銀八、ぶっちゃけありえんじゃろ」


と話しているのは学園長。通称ジジィ、もしくはエイリアンである。
場所は学園長室。椅子にふんぞり返って座っており、めっさ長い白髭を揺らしながら、自分の目の前でも咥えタバコをしている銀八に、話しを続けた。

「万事屋をやる許可くれってさ、お前教師のスキルも0なのに、副業やりますって。しかもこの学園の中じゃろ、それってつまり生徒から金取る気? 教師が生徒から金取るのか?」
「そんなこといってもねぇ、安月給だから、副業も必要なんだよ。家賃も払わなきゃいけなくなったし、まだスクーターのローンもあるしよ、ジャンプ買いに行かなければいけないし、パチンコ行きたいし、『レッドクリフpart2』見に行かなきゃいけないんだよ」
「いや後半はお前の欲望だろうがァァァァァァ!!」

不純な動機で反論してくる銀八に、椅子から身を乗り出して、学園長はツッコミを入れる。

「しかし、この学校の中でも悩みを持つ人はいるはずですッ!。その人から依頼がきて、こちらが解決したら、悩みも解消するし、これは生徒にとってはプラスになることじゃなくてッ!」

突然学園長に異議を出したのは、学級委員の「いいんちょ」こと「雪広あやか」だ。
彼女の言葉に学園長は困った顔をする。銀八みたいな無法者ならともかく、学年トップクラスの成績を持つ彼女がいうと、理にかなっていると思わず思ってしまう。

「いや~あやかくん、君も万事屋賛成派?。駄目だよ~、こんな天パのいうこと聞いちゃぁ~。生徒から金取るのやっぱまずいっしょ~」
「あ~もう、うっさいジジィ、オラ」

ブチッ

あやかに反論している学園長に、突然つかつかと学園長の前に来て・・

「ギャァァァァァァァァァ!!、ワシのヒゲがァァァァァァァァ!!!」

あろうことか、銀八は学園長の長い白ヒゲを引っこ抜いたのだ。

「あ~思いっきり引いたら、取れちまったよ。キモチワルッ!」
「何、ヒゲ抜いといて、その反応ッ!?、返せッ!、ワシのチャームポイントォォォォォ!!」

学園長のヒゲを抜いた銀八はいやそうに学園長のチャームポイントを握っていた。長い白ヒゲがない学園長は、なんか人間には見えない。

「このヒゲが返してくれほしければ、許可を出しなさいッ!、万事屋の許可をッ!」
「え、あやか君まで悪ノリッ!?、しかもワシのヒゲが人質だしッ!。すんませんッ!、マジかんべんッ!」
「かんべんして欲しいなら、許可よこせ、コラ。許可くれたら、この気色悪いの返してやるよ」

あやかが悪ノリし、銀八が、学園長のヒゲをゆらゆら揺らさせながら脅している。周りから見れば老人虐待の構図である。

「おのれッ!、銀八ィィィィ!!。フッフッフ、いいのか銀八ッ!?、この小説に「老人虐待です」ってクレームがばんばん来ちゃうぞッ!。打ち切りになるぞッ!」
「いや、もっとやれって意見ならあったな」
「・・・・・・・・マジ?」

銀八の発言により、学園長から笑みが消えた。

「オイ、千雨こっちに来いッ!、もう見張りはいい。このジジィの毛根抜くの手伝え。あやか、お前はマユゲな。千雨は口ヒゲな。俺は後頭部に生えているヒゲ抜くわ」

銀八が素早く、学園長の後ろをとり、学園長を羽交い締めにして、誰かこないように、学園長の外で見張りをしていた、長谷川千雨を呼び。あやかと千雨に学園長のチャームポイントの伐採を命じた。

「いやちょっと待って、これはないってッ!。やりすぎじゃからッ!、絶対クレーム来るよ、コレッ!。
せっかく軌道に乗りそうなのに、また人気落ちるよッ!。しかもお前、後頭部のヒゲって髪の毛じゃんッ!。止めてッ!、それは大切にして・・ギャァァァァァァァァ!!!」

学園長室から恐ろしい、断末魔の悲鳴が聞こえた。






「ってなわけで、それで許可もらったんだよ、取った毛を全部人質にしてな。ということで今のジジィは、ヅラフル装備だわ」
「お前どこまでジジィをいじめるんだよッ!、一応学園長だぞッ!」

銀八の回想を聞き、エヴァはツッコミを入れる。少なくともこの小説では、学園長へのいじめ率は高い。
そんな銀八の鬼畜っぷりに、エヴァはやれやれと半ば呆れていた。しかし気がついたことがあり、エヴァは銀八に顔を向けた。

「待て、なんでその時に長谷川千雨と雪広あやかがいたのだ?。しかもお前に荷担する方に」
エヴァはあの二人の事はあまり知らないが、少なくとも銀八とは合わないタイプだと思っていた。そんなことするのはありえないだろうと感じた。

「何でって、アイツ等も俺の所で、万事屋メンバーとして働くんだよ」
「へ?」
「最初は俺一人でやろうと思ったんだけどさ、あいつ等がやりたいっていったからよ~。まあ三人組は基本コンセプトだし」

銀八の言葉にエヴァは一瞬言葉を失った。
あの二人が銀時と一緒に行動しているのか?

「いや待てッ!、おかしいだろッ!。なんであの二人がお前と一緒に行動しているのだッ!?。私は知らないぞッ!」

エヴァは我に帰り、銀八に怒鳴った。

「あ~色々あったんだよお前がいない時によ、別にいいだろうが俺がどんな奴と行動しようがよ・・。何お前?俺のお母さん?」
「ふざけるなッ!」

エヴァはイスから立ちあがり、机を思いっきり叩いた。それに傍にいた茶々丸が思わずビクッとするが、銀八はため息をつき、エヴァから顔を背けて、出かける準備を再開した。

「お前をここに呼んだのは私だ銀時ッ!、他の奴等と行動するなら私の許可を取れッ!。それ以外は私の傍にずっといればいいのだッ!」
「うるせぇな、なんでお前の許可が必要なんだよ。誰とツルもうが俺の勝手だろうが。なんでお前とずっとベッタリ一緒にいなければいいんだよ。ったく俺絶対、自立してこの家から出て行くわ。もしくは千雨の家に居座ろうかな~」

エヴァも勝手だが、銀八も勝手である。これを見て茶々丸はいつもの喧嘩ではないと感じた。

「もういい・・」
「あん?」
「もういいと言っているッ!!」

エヴァは銀八を睨みつけた。声が震えている、本当に怒っているのだ。

「勝手に私のもとからいなくなればいいッ!、そうだろッ!。私は悪の魔法使い・・600年以上生きる、真祖の吸血鬼だからなッ!」
「!!」

銀八は驚きエヴァの方にふりむいた。エヴァの正体はずっと知らなかったのだ。ただ魔法が使えるだけの、ただの中学生だと思っていたからだ。

「お前はアイツと同じだ・・」
銀八はエヴァの顔を見てかける言葉をなくした。エヴァは泣いていた。

「見た目は違うが・・性格の悪さと、私のあつかいもそっくりだ・・。そしてお前もまた私を置いて行く・・」

泣いている表情を隠さず、涙を流しながら話す。それでも銀八から目を逸らさなかった。
銀八も事のヤバさに気付いたのか、エヴァに何て言おうか悩んでいた。茶々丸もどうにかしようと、オロオロとエヴァと銀八を相互に見ていた。

「・・ふん・・私はもう寝る・・吸血鬼は普通、夜行性だしな・・」

エヴァは涙を腕で拭き、下を向いたまま、階段を上っていった。
残された銀八と茶々丸は、呆然と寂しそうなエヴァの背中を見ていた・・







第六訓 「契約は計画的に、いやマジで」







「やべーな・・茶々丸?、アイツって本当に吸血鬼?」

銀時様は珍しく焦りの表情を浮かべてソファに座っています。出かけるのを止めたようです。銀時様と、マスターの喧嘩はよく見ますが、今回は本当に深刻かもしれません。

「はい600年以上生きている、真祖の吸血鬼。『闇の福音』」、『不死の魔法使い』と呼ばれるほど恐れられた、悪の魔法使いでした」
「・・マジかよ・・」

私の説明に銀時様はうな垂れてしまいました。しかししばらくすると、またこちらに、気がついたかのように、こちらに振り向いて

「なんでアイツ、そんな事してたのに、ここでスクールライフをエンジョイしてんだよ?おかしくね?」
「マスターは『サウザンド・マスター』という伝説の魔法使いに敗北。その時に『登校地獄』という呪いをかけられて、15年間ここで中学生を繰り返しているのです」
「何、その一部の人が喜びそうな地獄?」

銀時様はツッコミを入れてきましたが、いつものような元気がありません。心配です。二人の中を修復しなければ、マスターと銀時様もきっと後悔しています。

「銀時様はマスターにどうしたいのですか?」

私の質問に銀時様は、下を向いて悩んでいました。5分くらい経ち、しばらくして顔を上げて

「あ~クソ。今日は俺が悪かったよ・・、俺に非があるかもしれねぇし・・」

まだ納得していない所もあるようですが、ひどい事を言ったと自覚はあるようです。

「では行きましょう」
「はい?」
「マスターの部屋に行って謝りに行きましょう」

私の言葉に銀時様は激しく動揺している様です。額から汗がぼたぼた出ています。

「いやだってさ、アイツ寝てるじゃん?。寝てる奴起こしたら、もっと不機嫌になるよ」
「構いません、夢の中へ入るので」
「へ?」

銀時様が混乱していますが、緊急事態ですし速攻で事件解決しましょう。
私は倉庫に行き、とある機械を持って銀時様に見せました。形は水中メガネと言えばいいのでしょうか?

「超様が一時のテンションで作った『ドリームウォッチャー』です。これを使えば夢を見ている人の、夢の世界に行く事が出来ます」
「いやなんかその名前の響きどっかで聞いたことあるんだけど・・。ていうかマジで夢の中へ行くのか?・・」

銀時様はまだ半信半疑のようですが、やってみればわかるでしょう。
私は嫌がる銀時様の手をつかみ、無理矢理マスターの部屋に連れて行くことにした。

「銀時~、ゴ主人二、ヨロシクナー」

後ろから姉さんの声が聞こえます。それに銀時様は「うるせぇッ!、キャサリンみたいな喋り方のくせにッ!」と私に連れてかれながらも、悪態をついていました。


マスターの部屋に入る。やはり寝ています。枕に顔をうずめているから、表情はわかりませんが、今の銀時様みたいな表情をしているのでしょう。

「んでコイツ寝てるけど、それどうやって使うの?」

マスターが寝ているのを確認した銀時様は、『ドリームウォッチャー』に指を差してきた。どうやら本気にしてくれたようです。

「ではまず付けてください」
「はいよ」

銀時様に『ドリームウォッチャー』を渡し、装着させる。そして私は、もう1つあるのでそれを付ける。

「そしてマスターを見ながら、フレームに付いてるボタンを押してください」
「ボタン?ああコレね、ポチッとな」

私もボタンを押す。その瞬間、周りが一瞬で真っ白の世界になった。

「いやいや、ヤバくないッ!?、コレッ!?。ポケモンでパーティ全滅になった感じになったんだけどッ!。しかも付けてた『ドリームウォッチャー』も無くなったしよッ!」
「問題ありません、ロード中みたいなものですから。夢の中では『ドリームウォッチャー』は消えた状態になります。時間がたてば、マスターの夢の中へ入れます」

私は慌てている銀時様に説明をしていると、周りがピカッと光り、私と銀時様は思わず目をつぶった。そして目を開けた瞬間・・







場所は砂浜でしょうか、海も見えます。これがマスターの夢の中・・そう考えていると、横で大の字で気絶している銀時様を発見

「起きてください、銀時様、夢の中に入りました」
「あ~入れたのか・・気持ちワリ~。っていうかここ何処よ?、んでアイツ何処だ?」
「わかりません、現実の場所ではない時もありますが、ここまで鮮明に光景があるなら、マスター自身が体験した事を、夢に見ているのでしょう」

私の説明に納得したようすの銀時様はしばらく海を眺めながら考えていると・・。

「とりあえず、どっかに隠れるぞ、夢の中でもタイミングってのがある」
「了解しました」

私も了承し、銀時様と一緒に近くにあった海の家に入って、ドアの近くで待機態勢に入りました。
そういえば銀時様はマスターにどう謝るのでしょう?

「そういえば銀時様はどうやって・・」
「おい、金髪の姉ちゃんが来たぞ。すげ~な~、何アレ、美人にも程があるだろ」

私が質問をしようとした時に、銀時様は指を差して何かに気付いたようです。
見るとそこには、長い金髪を揺らし、少し露出の多い服装ですが、その肌はすごく綺麗です。しかも出るところは出ています。左手に持っているのは・・チャチャゼロ?

「銀時様、あれマスターですよ」
「はぁッ!?、「昔は大きかった」とかそういう設定ッ!?。それともアイツの妄想が夢の中で具現化したのかッ!?」
「いえ幻術です。マスターは敵に威圧感を与えるために体を大きくさせて、敵と戦っていたのでようです。」

銀時様が「サギだろそれ・・」と呟いて、大人マスターを見ている。しかしマスターがあの状態だというと敵と戦うようですが、まだだれもいません。どうやら大人マスターは来るべき敵を待っているようです。
しばらくすると、フードを被った男がやってきた。杖を持っているという事は魔法使いですね。しかもあの杖は・・

「来たかッ!、サウザンド・マスターッ!」
大人マスターがその男に向かって叫ぶ。相手がサウザンド・マスターということは・・

「貴様が言った待ち合わせ時間に来たのに、お前が遅刻するとは何事だッ!」
「ワリィ、トイレ行ってたわ。お前よりそっちの方を優先したわ」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

遅刻してきたサウザンド・マスターは全く悪びれもしない調子なので、思わず大人マスターもキレている様子です。

「何だッ!、『大』の方だったのかッ!?」
「ヒーローが『大』なんてするわけねぇだろうが、『糖』の方だ」
「糖尿に侵された、ヒーローなんぞ聞いたことないわぁぁぁぁぁぁ!!」
大人マスターは激しいツッコミをいれます。ていうかこの二人のやりとり最近みた感じがします。

「まあいいッ!、今度こそお前を倒して私のモノにしてやるッ!、行くぞッ!」
大人マスターはチャチャゼロと共に、サウザンド・マスターに一気に距離を詰めてきた。
2対1で不利なはずなのに、サウザンド・マスターは余裕がある感じなのはなぜでしょう?
そんなこと考えていると、サウザンド・マスターが杖で砂をズボッと突つくと・・

ドパーン

大人マスターが突然落ちました。

「ってオイ何じゃこりゃあッ!?」
「落トシ穴ダ、ゴ主人」
「見ればわかるわッ!」

どうやら、大人マスター、いえもう幻術が解けて、子供に戻ってますね。マスターは落とし穴に落ちたようですね。落ちた穴の中は深い水になっていて、泳げないマスターとチャチャゼロはアプアプと溺れています。

「はいニンニクとネギ追加~」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!、私の苦手なニンニクとネギッ!、止めろぉぉぉぉぉ!!」

落とし穴の中で溺れているマスターに、弱点のニンニクとネギを大量に放り投げている。
サウザンド・マスター・・どう見えても英雄には見えませんね・・

「ひ、卑怯者ッ!、お前は魔法使いだろッ!、魔法使いなら魔法で勝負しろッ!」
「やなこった、俺は魔法は5,6個しか覚えてねぇもん。魔法学校も中退だ、恐れ入ったかコラ。いや~お前がここに来る前に落とし穴ほっといて正解だったわ~」

これが英雄といわれた伝説の魔法使い・・やることなすこと、私の隣で眺めている人とそっくりです。
そんな事考えていると、サウザンド・マスターがフードを脱いだ。茶髪に少し黒が混じった。二枚目の好青年という感じだがやることは鬼畜ですね。しかしその顔をみた銀時様が驚きの声を上げました。

「ネギッ!?いや似てるだけか?」
「サウザンド・マスターの本名は『ナギ・スプリングフィールド』。ネギ先生の父親です」
「マジかッ!?、あいつも大人になったらあんな奴になるのかな~」
「ということは、ネギ先生が銀時様みたいになるということですね」
私が銀時様にそういうと「何で俺?」って感じでこちらを向いてくる。ネギ先生の父親と性格が似ている自覚がないようですね。
それにしてもどのタイミングでマスターに会いましょうか・・少なくともこのタイミングは・・

「すんませ~ん、そこのガキに用があるんで、ちょっと渡してくれませんか~?」

いつのまにか銀時様がサウザンド・マスターに歩み寄っていた。タイミングここですか?、正に予想外です・・

「ん、だれアンタ?エヴァの知り合いか?、こっち取り組み中なんで後で」
「いやもういいから、夢の中の存在のクセに、俺の邪魔すんな、こいつと色々話さなきゃいけないから」

んだとコラッ。やんのかコラッ。何その髪?、天パか?、銀髪天パか?。うるせぇよ、茶色か黒どっちかにしろ、わかりずらいんだよ、その髪型。ああん?目が死んでるくせに俺に文句言うのか?。いいんだよ、いざという時にきらめくから、こちとらお前の息子の世話してんだ、ありがたく思えや。いや俺、息子いないし、下半身の息子ならいるけどね。てめぇの汚ねぇ息子なんざ世話するかボケッ

サウザンド・マスターと銀時様が喧嘩を始めました。お互いメンチ切りあって、目から火花飛び散るほど、接近しています。
私はとりあえず似たもの同士の喧嘩をほっといて、マスターの所にいきましょう。

「こいよッ!、拳で決着だコラッ!」
「のぞむところだよッ!、お前なんて一発で落としてやるよコラッ!」

サウザンド・マスターの挑戦を受けて立つ銀時様はもう無視しましょう・・

「マスター元気ですか?」
「茶々丸かッ!?なんでここにッ!?、夢の中なのにお前から私の魔力を感じる・・もしや、私の夢の中へ入ってきたのかッ!?、っていうかとりあえず助けろォォォォォ!!」

私は落とし穴に落ちている、マスターの手を引っ張り上げた。チャチャゼロはほっときます、夢の中なので大丈夫でしょう。しかしマスターも夢の中とはいえ、苦しかったらしい、しばらくゼイゼイと息をはいていました。

「マスター、銀時様もこちらに・・」
「なんだとッ!、アイツがかッ!?、何しに来たッ!?」
「謝りに来ました。自分に非があったと」
「・・ふん・・」

落ち着きを取り戻した、マスターに銀時様の事を言いましたが、やはり怒っているようです。

「でアイツはどこにいるのだ?」
「はい、あそこでサウザンド・マスターと殴り合いをしています」
「私の夢の中でなにやってんだぁぁぁぁぁぁ!!」

私が指差した方向には、拳で殴り合いをしている。サウザンド・マスターと銀時様がいました。やはり似ている者同士だと、仲が悪いようです。

「貴様等ァァァァァァ!!、わたしをほっといて何やっているッ!。二人とも本来は私に用があるんだろうがッ!」
「「ちょっと黙っとけコラッ!、コイツぶっ飛ばすんだよッ!」」
「あ・・ごめんなさい・・」

二人の剣幕に思わず、自分が謝罪してしまう、マスター。銀時様は何しに来たのでしょうか・・


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

この音は・・

「銀時様、そろそろマスターが目を覚ますようです。正確に言うと47秒です」
「死ねコラァァァァァァァァ!!」
「お前が死ねェェェェェェェ!!」

私の言葉が聞こえないようです。まだ銀時様は喧嘩中のようですね・・。しかも夢の中なので痛みがないので、ずっと殴り合いが続きそうです。

「おい、銀時ッ!私はそろそろ起きるぞッ!。さっさと私の夢から出ろッ!」

マスターが怒鳴ったら、ようやく喧嘩を止めました。

「しょうがねえな・・よし茶々丸帰るぞ。テメー今度会ったらぜってーぶっ飛ばすからなコラッ」
「いつでもかかってこいよ、お前なんか一捻りだコラッ」
銀時様と、サウザンド・マスターがまだ悪態をつきあっていました。
そしてまた目の前が真っ白に・・






「帰って来れたのか・・ったくあのヤロウ・・」
「私達は何しに言ったのでしょうか?」
「それはこっちが聞きたいわッ!」

場所がマスターの部屋に戻りました。銀時様と私は起き上がり、マスターはベッドの上で仁王立ちしていました。

「貴様等ッ!、私の夢の中によく入ってきたなッ!。今度という今度は許さんッ!、ミンチにしてやろうかッ!」
「いや~お前に謝りに行こうかと思ったんだけどさ、なんか反りが合わない奴に会って~、とりあえず決着つけて、お前に謝ろうと思ってさ~」
「私の夢の中で決着つけるってどんな戦いだァァァァァァ!!」

マスターの激昂にあっても、銀時様の口数は減りませんね・・

「夢で見たとおり、私は吸血鬼だ、人もいっぱい殺している。『闇の福音』と呼ばれ恐れられていたこともある・・。そんな私が気味が悪いならさっさとここから出ていっていい・・」

うつむいて、トーンの下がった声を出すマスター。本当は出ていって欲しくないはずですが・・・

「別にお前が吸血鬼だとか、悪い奴でしたとかどうでもいいんだけど?」
「な、なんだと!?」
「俺のいた世界では、天人っていう、まあ宇宙人がごろごろいるんだよ。吸血鬼って言われても、もっと奇妙なの知ってるわ、それに俺は天人と侍の戦争に参加してたしな。そこで大量に生きてる奴等を殺してきた」

銀時様はどこか寂しそうな目で窓から、空を眺めていた。昔の事に思いをはせているのでしょうか。それを聞いていたマスターも何処か寂しげな表情をしていた。

「だからテメェがなんだろうが俺は別に関係ねぇ。お前はお前だし、俺から見れば、やかましいけど、ほっとけね~中学生のガキとしか思ってねえよ。」
「何がやかましいガキだッ!、お前は・・全く・・」

マスターは銀時様の話しを聞いて、黙ってしまいました。
それを見た銀時様がマスターに近づいて

「オメーを傷つけたのは謝るわ、お前、俺が謝る事なんてめったにねえんだぞ。まあお前と一緒の時間を作っていくからよ」
「だったら・・・」
「ん?」
「私と一緒に生きていく誠意を示せ・・・」
「誠意・・?」
「そこに座れ・・届かない・・」
銀時様は首を傾げましたが、マスターの言うとおりその場に座りました。するとマスターが近づき、銀時様の顔にに自分の顔を近づけました。

「これが・・・お前と私二人一緒に生きる誓いだ」
「いや何? ていうかお前顔近いし何を・・・!!!!!!」

二人は互いの唇を重ねました。
銀時様がすぐに離れようとしますが、マスターがいつのまにか抱きついていて、放そうとしません。
しばらくしてようやくマスターが銀時様から離れました。
銀時様の顔には生気がなく、ぐったりして、反対にマスターは顔を真っ赤にして息を荒くなっています。

「テメェェェェェェェェ!! ふざけんなァァァァァァァ!! 何俺の唇奪ってんのッ!? 何が誠意だッ! ガキのくせにませた事してんじゃねえよッ! やばいよ~子供に唇奪われたァァァァ!!」
「う、うるさいッ! これで許してやるんだから文句を言うなッ! 私だって、男とこんなことするの初めてだわッ!、私のファーストを上げたんだから少しは喜べッ!」

銀時様がマスターの胸倉を掴んだままケンカを始めましたがこれでようやく二人のわだかまりは解消しました、これで私も一安心です・・・







「銀時~学校に行くぞ~スクーターを出せ~」
「お前何処の殿様?、ちょっと待ってろ、ったく落ち着いてジャンプも読めねえ」

休日が終わり、平日になりマスターと銀時様は一緒に行くためにスクーターを用意していました。
私は歩いて行きます、二人の邪魔はしたくないので。

「あ~あ、昨日は誰かのせいで万事屋の準備出来なかったから、今日、放課後居残りじゃん俺・・」
「私が手伝ってやるさ。長谷川千雨や雪広あやかより出来るぞ私はッ!」
「はいはい、期待していないから。お前に頼むなら、茶々丸に頼むわ」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉ!!」

二人でスクーターに乗りながらいつものやりとりをする二人。マスターは銀時様といるのが一番嬉しそうです。
思わず私は少し微笑む。それに気付いた不思議そうな顔でこちらを向いた

「茶々丸、お前最近おかしくないか?なんか銀時が来てから、感情性が豊かになったというか・・」
「マスターが変わったからじゃないですか?」
「うん?」

マスターは「そうか?」っと考えていましたが、銀時様がエンジンをつけた瞬間。銀時様の腰に抱きつき、いつでも行ける準備の態勢に入りました。

「じゃあ、学校でな。たまにはお前も乗せてってやるよ茶々丸」
「ほう、貴様、私の前で茶々丸を口説くか、許さんッ!」
「いや、なんでそうなるの?」

そんな会話をしながら二人はスクーターで走って行きました。

今日もマスターは楽しそうです











                 教えて銀八先生~のコーナー
「はいどうもッ!、6話に来たけどさッ!、今とんでもないことが起きてるんだよッ!」
「めずらしく、このコーナーでテンション高いな・・何かあったのか?」

ものすごいテンションを上げている銀八にエヴァはちょっと引き気味だ。ついでに千雨とあやかはいません。今日は無理矢理、エヴァに帰されました

「いや~、前の回が終わった後さ~、いっぱい感想が来てたんだよ。いきなり感想が増えていて作者もびっくりしてよ~「しまった~、やっぱシリアス物なんて俺には無理だったんだ~。クレームの嵐だよきっと~、打ち切り決定やん」っと思いながら感想を見てみたら、お前ビックリだよッ!応援のメッセージを一杯いただきましたッ!」
「ほう・・作者のマイナス思考は置いといて、なんでそんなに前の回が人気あったのだ?」
銀八のハイテンションに引いていたエヴァだったが、1つ気になる点があった。その質問に銀八は頭をかきむしりながら答える

「お前の出番なかったからじゃね?」
「へ?」
「じゃあ、今回駄目じゃん、お前の出番多いし、しかも最長記録の17P使っちまったよ、お前の出番あるのに、いまだに打ち切りの危機があるな、お前の出番によって」
「なんだとォォォォォォォ!!私の出番が多いと人気がダウンするってどういうことだァァァァァァ!!」


ジリリリリリリリリリリリ!!

「はい、終了の合図が来たし帰るか」
「待てェェェェェェ!私の話を聞けェェェェェ!!」

ガララッ

「朝倉和美で~す、銀八先生、今回こそ取材を・・」
ドアを開けて教室に敏腕記者の朝倉和美がはいって来た瞬間。銀八はエヴァを掴み、窓から飛んで逃げ出した。
その瞬間わずか3秒。

「放せぇぇぇぇぇぇ!!まだ私の話は終わってないぞぉぉぉぉ!!!」

和美は教室に残され、窓の外からわすかにエヴァの声が聞こえるだけである。

「あ~あ、また逃げられちった・・。逃げ足が速いんだよな~先生は」

和美はがっくりし、ため息をつき髪をかきあげた。





「次回『日常はスクープより奇なり』です。よろしくお願いしま~す。そして応援メッセージをくれた方達、本当にありがとうございましたッ!」

一人ぼっちになってもとりあえず次回予告と、応援してくれた方達へのお礼を忘れない和美であった。








銀八先生のちょっと気になるコーナー

銀八「あ~どうもここでマル秘情報です、実は~この話で俺とエヴァが仮契約するシーンがあったんだけど~あまりにも強力すぎると読者の声が多かったので編集で削除されました、ということで読者の諸君、後先考えずに話を書いちゃ駄目だからな、じゃないとこれ書いてる作者みたいに編集作業に見舞われるからな」
千雨「それは小説書いてる人しかわからねえ事じゃねえか・・・」



[7093] 第七訓 日常はスクープより奇なり
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/03/27 02:11
場所は生徒相談室。だが今は生徒指導室ではなく、別の部屋に改築されている。そして生徒相談室の名札ははがされており、代わりに一枚のポスターが貼られていた
『万事屋 銀ちゃん』

「ウィ~ス。テメェ等、今日は新入りを呼んできた。といっても正社員じゃねぇ、マスコットとでも思っておけ。イジメとかやるなよ。でも昼ドラみたいになると、中年女性のファンが増えるかもな・・よしイジメてよし」
「いや、どんだけッ!?。変なジャンル追加させるなよッ!。っていうか絶対そんなファン来ないからッ!」
「そうですッ!、イジメもしませんからッ!。どんな人でも私は歓迎しますッ!」

『元生徒相談室』、現『万事屋 銀ちゃん』の中ではH・R前なのに、あわただしかった。
中にいるのは、坂田銀八、長谷川千雨、雪広あやかの三人だ。三人は絶妙な策で(どんな策かは前話参照)学園長から許可を取ることに成功し、今は万事屋を開業するために、日々準備している。

「んでその新人ってどんな奴?、私達と同じクラスか?」

長谷川千雨はどこからか、わからないが・・ここまで銀八が持ってきたソファに座り、ドアの前に立っている銀八に質問する。

「じゃあ呼んでやるよ、ホラ入って来い。大丈夫、お姉ちゃん達イジメないって」

銀八がドアを開け、外にいる新入りを手招きした。外から聞いた事のある声で「だれがイジメられるかッ!」と、銀八に叫んでいた。その時、千雨とあやかは誰が来るのか大体わかった。
ドアを開け中には入ってきたのは

ガチャ

「私だ、貴様等私の為に馬車馬のように働け、そして過労死しろ」

第一声がいきなり死刑宣告をしてきた新入りは、やはりエヴァだった。
それを見て千雨は「やっぱな~」と呟き、顔を手で覆い上を見た。また銀八が何処から持ってきた、立派な銀八用の事務机の上を掃除していた、あやかは掃除を止め、エヴァに近づく。

「よろしくエヴァさん。ところで貴方と銀さんは変な噂がありますが、その事実を知りたいのですが?」

あやかは凄みのある声でエヴァに詰め寄った。もしその噂が本当なら、自分の願いを叶える難易度が一気に上昇するからである
しかしそんなあやかを一睨みし、エヴァはフッと笑いあやかに返答した。

「本当だ」
「ウソです」
「おいッ!」

エヴァの自身満々の返答を一瞬で潰したのは、いつのまにか千雨の隣で鼻をほじって座っていた、銀八だった。
それを聞いた、あやかは安心して

「フフッ。ただのデマでしたか。お二人の関係はただの同居人ということですわね」
「ち、ちがうッ!。私と銀時はもう、ものすっごい深い関係でッ!」
「ウソです」

エヴァが必死に抗議したが、またもや銀八に黙殺される。まあ事実二人は、恋人同士ではない。

「銀時ッ!、何故否定するッ!。私とお前は唇を合わせた中であろうッ!」
「なんですってッ!、銀さんとッ!?」
「ウソやん」
「っておいッ!これは本当だろッ!。ていうか、なんで関西弁なんだッ!」

まあ唇を合わせたのは本当だが、銀八はそれも否定する。エヴァは銀八の胸倉を掴むが、銀八はそっぽを向きどこ吹く風だ。
そんな光景をみて、あやかは笑みを浮かべ、勝ち誇った顔でエヴァを上から見下ろした。この二人、身長差が同級生だとは思えない。

「フフッ。やはり、チビッ子さんの戯言ですわね」
「なんだとッ!、誰がチビッ子だッ!。チューしたのは本当なんだぞッ!」
「『キス』のことを『チュー』と言ってる所でチビッ子ですわねッ!。オーホッホッホッ!」
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!!貴様ァァァァ!!。もう許さんッ!」

高笑いするあやかにエヴァはとびかかり、二人はギャーギャー言いながら、掴み合いを始めた。

「おい銀八止めねえのか?。いいんちょと新人が喧嘩始めたぞ、これお前のせいじゃね?」
「なんで俺のせいなんだよ、勝手に喧嘩をしてんのはコイツ等だろうが。俺は今、ジャンプを読むのを止められないから」

喧嘩を眺めていた、千雨が二人を指差し、銀八に聞いたが、問題の種の銀八はそんなこと知らんという顔で、ジャンプに読みふけっていた。そんな様子の銀八に千雨はため息をつき天を仰いだ。

「私一人で、こんな奴ら止められねぇよ・・」

ボソッと呟き千雨はまた深いため息をついた。









第七訓 日常はスクープより奇なり

坂田銀八・・出身地不明。年齢不明。過去は何やっていたのかも不明。最近『万事屋』という何でも屋をやるらしいが、なぜそんなことするのか不明。親しい生徒はエヴァちゃん、千雨ちゃん、いいんちょ、茶々丸・・だが、何故仲良くなったかは不明。学園長を散々な目にしているらしいが、なぜクビにならないのか不明。ていうか、何故教師出来るのか不明。同僚のネギ先生曰く「あの人はジャンプの何もわかっていませんッ!」。いや意味不明・・。

「あ~もうッ!。これじゃあ、全然記事にならないよ~」

私、朝倉和美は部屋で書いていた、メモ帳を放り投げて、机の上に腕を組んで、顔をうずめた。

「くそ~、この私がまったくわからない人がいるなんて~。朝倉和美、一生の不覚ッ!」

そう私は報道部。調べた情報は数知れず。どんな人のプロフィールでもくまなく調べ上げる、凄腕の敏腕記者ッ!。だが・・

「全然、銀八先生の情報がないッ!、ネットや口コミで調べてもわからないし、先生に取材しようとしても逃げられるし・・。もうどうすればいいのよ~」

なぜ私が銀八先生の素性を知りたいのか。それは我がクラスの会話で、あるテーマになっているからだ。

『銀八先生って何者?』

さまざまな意見があるが・・

「ただのバカよ」
「ええ人よ、時々ジャンプ貸してくれるで」
「目が死んでますよね」
「なんで教師になったの?」
「授業中のタバコは止めてくれませんかね・・」
「なんで腰に木刀を携帯?」
「あ、あの・・授業中寝ないで欲しいです・・」
「どうでもいいです」
「興味無い」
「勝負アルッ!」
「・・・・」

これら全てを含めた結果、ダメ教師ってのはわかるけど・・私はもっとあの先生の事を知りたい。このクラスの間でささやかれている、『銀八の謎』。これを私が解明すれば、私の地位も上がるってもんよッ!
だけど・・

「あの人本当に何ッ!?。何で教師なのッ!?。何で天パなのッ!?。何でこの小説セリフ多いのッ!?」

わからん・・混乱してきた・・
私は机の上に頭をゴリゴリ押しつけながら、悩んでいた。そんな事やっていて、ふと時計を見ると

「げッ!、もうこんな時間ッ!?。学校行かなきゃッ!、とりあえず今日こそ、銀八先生を徹底的に調べ上げるかッ!」

私は速攻で身支度しながら、意気揚揚と吼えた。
待っていろ、銀八先生・・今日こそは取材して、一面記事にして銀八先生の謎を解明してくれるわッ!




ガララッ

「和美さ~ん、5分だけ遅刻しちゃいましたね」
「すいませ~ん、ネギ先生。ちょっと調べる事が・・」

私は遅刻してしまったが、教室には着いた。ネギ先生がいるってことはH・Rの途中だよね。てことは副担任でもあり、一時間目をやる銀八先生も来ているはずなんだけど・・


ガララッ

「銀さ~ん、5分遅刻ですよ~」
「すいませ~ん、ネギ先生。ちょっと今日のメイク迷ってて」
「いや銀さんいつもやってないでしょ・・。やったとしても気持ち悪いですから・・」

ああ、普通の遅刻か。この人は遅刻は日常茶飯事だし、最初からいる方がおかしいか。


ガララッ

「すいませんッ!ネギ先生ッ!、チビッ子に礼儀を教えていたら、遅れてしまいましたッ!」
「チビッ子、チビっ子うるさいんだよッ!。私はショタコンに礼儀を教えていたッ!」
「遅れてすいませ~ん、銀八先生の手伝いしてました~」

少し遅れて、いいんちょとエヴァちゃんが息を荒げながら、入ってきたけど・・。あ、その後ゆら~っと千雨ちゃんも入ってきた。ていうか、いいんちょとエヴァちゃんがッ!

「どうしたんですかッ!?、いいんちょさんとエヴァさんッ!。見た目ボロボロなんですけどッ!?」
「「ドーナツ作りに失敗しました」」
「ドーナツでそんなにボロボロになるんですかッ!?」

いや、あきらかにあの二人、ひともんちゃくあったよね・・。そういえば千雨ちゃんは銀八先生の手伝いをしていたって言ってたよね?、てことはその手伝いの時に、いいんちょとエヴァちゃんが・・、う~ん銀八先生が絡むと謎の事件が多発するな・・。
見た目ボロボロのいいんちょとエヴァちゃんがお互い睨み合いながら席に着いて、千雨ちゃんはいつのまにか座っていた。
銀八先生は・・教室の壁にもたれて、ジャンプ読んでるッ!

「銀さん、だからH・R中にジャンプはちょっと・・」
「俺は読みたいときに読むんだよ。束縛なんてされないんだぜ」
「それ、前に聞きましたから・・、しかも『だぜ』ってなんですか・・」

ネギ先生にうとめられて、渋々ジャンプをしまう銀八先生。
本当にこの人が教師できる理由を教えて欲しいわ・・。どうにかして銀八先生を逃げられないようにし、二人っきりで取材をするには・・

ガタッ

「銀八先生ッ!」
「あん?」

私はイスから立ちあがり、ジャンプをネギ先生にバレないように読んでいる、銀八先生を呼んだ。この策ならいけるかも

「先生ッ!、私のオゴりで放課後に二人でファミレス行きませんかッ!?」
「何ッ!?」
「何ですってッ!?」

私の発言に先生より先に、エヴァちゃんといいんちょが反応したんだけど・・。周りからも、ざわざわと声が・・

「あれってデートの誘いだよね・・」
「いいわッ!、ラブ臭がプンプンするわッ!」
「何言ってんの、あんた・・」
「『デート』って何アル?強いアルか!?」
「中学生なら知っとこうよッ!それはッ!」

この際、デートでも教師と生徒の禁断の愛でもなんとでも言うがいいッ!、全てはこの人を釣るためッ!、そして先生を記事にッ!。

「お前と二人で?、オゴりで?」
「そうですッ!、なんでもオゴりますよッ!」
「それはいいな~、俺が時々行ってるファミレスに行きたいしな~」
「でしょでしょッ!」
「だが断る」
「えェェェェェェ!!」

簡単に釣れると思ったのに、やはり銀八という魚はとてつもなくデかい・・、私の誘いにノッてきたとみせかけて、私の糸を切った。

「何でいきなり、お前そんなこといってくるの?うさんくせ~な、絶対何か企んでんだろ」
「そうですわッ!きっとファミレスとかいって変なお店に連れて行って色々と・・破廉恥ですッ!」
「いやお前の考えていることじゃないからね、きっと」

いいんちょの暴走に、冷静にツッコむ銀八先生。やはり勘付いている・・。この人は、人の心読むのうまいんだよな~

「わかりました・・では・・」

こうなったらでかい魚にはでかい餌を・・

「銀八先生の行き付けのファミレスの新商品の『メテオブラック・チョコパフェ』を死ぬほど食っていいですッ!」
「のったァァァァァァァァァ!!!」
「「決断早ッ!」」

よっしゃァァァァァ!!。私の財産をすべてかけたこの餌で、銀八先生を釣り上げたッ!。ちなみにツッコんだのは
エヴァちゃんといいんちょね。








「すんませ~ん、『メテオブラック・チョコパフェ』くださ~い」

場所は先生行きつけのファミレス。銀八先生は店員に声をかけ、目当ての物を注文する。それにしてもこんなに高いとは・・何で一個、3500円のパフェなんて存在するのッ!?。しかも一個だけじゃなくいっぱい来たしッ!。しかもなんで・・

「んじゃ私は普通のカツ丼でいいや。朝倉、別にお前からオゴられようとはしてないから」

なんで千雨ちゃんもいるのよォォォォォォ!!

「そういえばお前なんでついてきたの?」
「コイツが何か企んでいるのわかってるから、ついてきたんだよ。ど~せお前の取材目当てだろうけどな」

私の心読まれてる~。何?千雨ちゃんも読心術持ってんのッ!?、それとも私って顔に出るタイプ?

「あははは・・ご名答です・・」

私は素直に白状・・。まあいい、高いパフェオゴってんだ、意地でも情報を手に入れるッ!

「銀八先生ッ!質問が5,60個あるんですけどいいですかッ!?」
「多すぎだからッ!。もう質問じゃねぇよッ!、完全暴露だよッ!。本が出来るわッ!」

先生はパフェを食いながらツッコんでくる。だって先生の謎が多すぎるんだもん・・

「おい銀八、こいつ一度興味持ったら、カレーの汁並にしつこいから、ここは2つか3つ答えてやれよ」
「しょうがね~な、カレーの汁と墨汁の汚れは全然落ちねえんだよな。3つだけだぞ」

千雨ちゃんが先生を動かしてくれたッ!、やったァァァァァァ!!。でもなんか私、悲しいのは何故・・

「え~とそれじゃあ質問に入りますッ!。エヴァちゃんやいいんちょとかとよく行動している銀さんですが、学校の中で、一番一緒にいるのは千雨ちゃんですよね。なんでですか?」
「ツッコミが無いと、この作品ボケで飽和しちゃうだろ。いわゆるコイツは第2の新八だ」
「それ、私の存在理由ッ!?。私はただのツッコミ要員かよッ!ていうか新八って誰だよッ!」
「ナイスツッコミッ!」
「うるせぇッ!」

なんか千雨ちゃんと先生が即興漫才始めたんだけど・・。っていうか千雨ちゃんの存在ってそういう役割なんだ・・

「んじゃあと2つな」
「え?あ、はい。・・じゃあ、エヴァちゃんといいんちょどっちを選びますかッ!?」
「この作品の進む具合で。あと1つな」
「それだけッ!?」

いや結構聞きたかった質問だったのに・・。ていうか作者まだ決めてないんだ・・優柔不断にも程があるよ・・
それにしてもあと1つって、先生の謎まだまだいっぱいあるんだよ。そこから1つなんて選べないし・・しかもこの感じだと多分、ちゃんと答えてくれない・・このままじゃマズイッ!、こちとら高いパフェおごってんだッ!こうなったらッ!。

「急用思い出しので帰りますッ!」

私は席から立ちあがり、出口へダッシュッ!

「ってオイィィィィィ!金はどうすんだよッ!、俺金持ってねえんだよッ!」

すいません先生。でも私のお金を生け贄に捧げても逆に謎が増えそうだし・・

「先生、頑張ってッ!」
「待てコラァァァァァ!!、何を頑張ればいいんだよッ!」

私は先生に走りながらエールを送り、逃走。吼える先生を尻目にファミレスから脱出ッ!






「は~結局情報が全然手に入らなかったな~」

ファミレスから脱出し、今は人気の無い道をぶらぶらと独り言を言いながら歩いている。
結局あの人の事はわからずじまい・・ていうか明日、学校行くの恐いわ・・

「どうしよっかな、明日はサボろうかな~?。でも私、優等生だしサボるわけには・・」

私が悩みながら下を向いていると・・

ドンッ

「いてえなコラッ!」
「誰だテメェッ!」
「よくも兄者にぶつかってきたなオラッ!」

なんかパンチパーマ三人組の人達にぶつかっちゃったァァァァ!!。絶対極道の人だよッ!、親分っぽいのグラサンだし、腕に刺青あるし、舎弟っぽい人は小指無いしッ!

「すいませんッ!、今人生の道の行き方を考えていまして・・」
「てめえは俺にぶつかった時点で、人生の道のデッドエンドだよッ!。ヤロウ共ッ!、コイツをたたんじまえッ!」
「YES 兄者ッ!」
「OK 兄者ッ!」

私の謝りが無駄に終わり、あっという間に私は困れたァァァァ!!。どうしよう、本当にヤバイッ!。しかもこの辺人がめったにいないから助けを呼べないッ!

「ふっふっふ・・安心しろ、兄者はガキには興味がねえ、兄者の好みは熟女だッ!、しかもオバちゃんタイプのなッ!」
「そうだぜッ!、兄者の初恋の相手はお母さんなんだぜッ!凄いだろッ!」
「バカやろうッ!勝手に俺の性癖を言うなァァァァァ!!。ていうか普通みんな初恋の相手は、大体お母さんだろッ!」
と三人で話ながらも私に近づいてくる・・。あ~私。日頃の行い悪いのかな・・



「おい、そこの陰毛パーマ共」

私が思わずしゃがんで、殴られるのを待っていた時、声が聞こえた。こんな人のいない所で?、しかもこの声は・・

「誰だテメェはッ!」
「誰が陰毛パーマだッ!、俺達はパンチパーマだッ!」
「お前なんか天然パーマだろうがッ!」

私は顔を上げて、パンチ三人組の足の間から、その人を見た。いつも腰に差している、木刀を肩に担ぎ、目はいつもと違い死んでいない。

「うるせぇよ、陰毛族が。こちとらそいつに用があるんだよ、そいつをシメるのは俺の役目だ」

銀八先生が・・銀八先生が私を助けに来てくれたッ!

「このヤロォォォォォォ!!」
「なめんなパンチをォォォォォォ!!」
「こいつを先にやっちまえェェェェェ!!」

パンチ三人組の舎弟の二人が一斉に先生に襲ってきた。いくら木刀を持っていても、極道二人を相手にするなんて・・

ゴガッ!

「グボッ!」
「ウゲッ!」
「俺の舎弟がァァァァァ!!」

全然心配する必要無かった・・。木刀で、舎弟の二人が並んできた瞬間を狙って、横振りで一閃。一瞬で二人は撃沈してしまった。

「ウソ・・この人こんなに強いんだ・・」

私は思わず、立つのを忘れて、先生の強さに見とれていた。

「おのれェェェェェ!!よくも俺の舎弟をォォォォ!!!」

パンチの親分が怒りで我を忘れて、ポケットから銃を出した、ヤバイッ!、さすがにこれでは分が悪すぎるッ!

「死ねボケェェェェェェ!!」
「ちょッ!、先生逃げてッ!」

親分が引き金を引いたので、私は叫んだ。このままじゃあ先生死んじゃうってッ!。
だが先生は逆にこっちに・・

「誰が死ぬかボケ」

親分が撃つより早く先生は、親分を木刀の射程距離に入れ・・

ゴスンッ!

「う・・がぁ・・」

あっという間に木刀で、親分の頭部に兜割りを決めた。そのまま親分はバタッと倒れた。

「敵将、討ち取ったり~」
「先生・・」

私は立とうとしたのだが、腰が抜けて力が出ない・・。そんな私に、先生は私の手をつかみ立たせてくれた

「このヤロウ、よくもエスケープしやがったな、あの後大変だったんだぞ、責任取れよッ!」
「先生・・最後の質問いいですか?」
「あん?」

私は先生におんぶされて、先生の後ろ頭に疲れた調子の声で聞いてみた。

「先生はどうして私を助けたんですか?」
「はぁ?、目の前で自分のところのガキ助けねぇほど、俺はバカやろうじゃねえよ」

先生の当たり前だという口調の答えで、私は黙りこくった。
この人はこの人なりに私達クラスのこと考えているんだなぁ、最初はただのちゃらんぽらんかと思ったけど・・。でもこの人の周りには、個性的なメンバーが集まっている。

「とりあえず一回ファミレスに戻るぞ、千雨に皿洗いさせてるから。早く金持っていかないとな」
「えッ!、はい、どれぐらいお金かかりますかね?・・」
「心配すんな、さっきの陰毛族から迷惑料として財布からお金をもらってあげた」

この人、本当に先生?。やることなすこと破天荒すぎる・・。そんな人だから慕われているのかな・・。あ、そういえば

「先生凄く強かったですねッ!、この事を記事にしていいですかッ!?」
「答えはNOだ、記事にしたらお前の頭を陰毛パーマにするからな」
「えッ!、どうしてですかッ!?先生の事すごく強いってのがわかったら、みんな先生の事を尊敬しますよッ!」

私の案に先生は頑なに拒否した。どうして自分の力をクラスのみんなに隠すのだろうか・・しかし、この質問は答えてくれないのはわかった、聞くなという顔をしている。でも助けてくれたんだからなにかしらお礼はしたいんだけど・・

「俺の記事じゃなくて、万事屋の宣伝とか記事やってくれる?」
「え?」
「やっぱ、宣伝する必要があるからなこうゆう仕事は。そうしてくれればテメェの依頼料半額にしてやるよ」

万事屋の宣伝か・・なるほどそれだけでインパクトありそう。それに私・・

「わかりました、面白そうですし。でも依頼料半額はいいですから」
「なんでよ?、お前悩みないの?。最近のガキは、悩みばっかって聞いたんだけど?」
「いや、半額の代わりに私は・・」

先生に自分がやりたいことをいい、先生は頭を掻きながら、「まあいいんじゃね?、そうすれば色々と効率が良くなるかもしれねぇし」と言って了承してくれた。私のやりたいこと、それは・・





「今度から一人メンバー追加な、まああくまで情報屋だがな、俺達みたいな仕事はしねぇ。エヴァよりは使える、そう言っておこう。イジメるなよ、でも女子同士のイジメ合いがあると、女子高生のファンが増えるかもな。よしイジメてよし」
「お前のイジメの権限はどうでもいいんだよッ!。ていうかお前と朝倉のせいで、私はファミレスで皿洗いさせられたんだからなッ!」
「私より使えるってどういうことだぁぁぁぁ!!。私だって貴様等の仕事ぐらいやってやるわッ!月一ぐらいでッ!」
「エヴァさん、せめて週一にしたらどうですか・・」
「だそうだ、入って良いぞ」

『万事屋銀ちゃん』と書かれているポスターが貼られている部屋からさわがしい声が消え、誰が来るか待ち構えている。ドアを開けて先生が入って来いと手招きしてきた。

「ど~もッ!、万事屋宣伝係、万事屋情報屋を任せられた。朝倉和美ですッ!よろしくおねがいしま~すッ!」




私が中に入り元気良く自己紹介したとたん、静かになりました。そして沈黙が破れ・・

「いやなんでお前なんだよッ!、銀八ッ!。お前なんで変な奴ばっかり引きこんでくるのッ!?」
「千雨さん、それ自分も変な奴と認めてることになりますわよ・・。あれ?、それだと私も変ということですかッ!?」
「銀時ィィィィィィ!!お前どんだけ、女をたぶらかすのだァァァァ!!」

本当に濃い連中だね~。まあコレがこの人の人徳か・・
私はそう思いながら、先生に向き直る

「これから、よろしくッ!。銀さんッ!」
「死ぬほどこき使ってやるからな、覚悟しとけよ」

銀さんは髪をポリポリ掻きながら、少し笑みを浮かべた。

さ~て忙しくなりそうだわ











          教えて銀八先生~のコーナー
「7話に突入か、ここまで来ると、ジャンプの場合生きるか死ぬかの大事な場面だよな。ということで今日はどうすれば生き残れるか考えてみるか」
「いや、やけにシビアだな・・」

いきなり現実的な話をする銀八に、千雨のトーンが下がる。やはり生き残るには人気が必要。その人気を獲得するにはどうすればいいのかというのが銀八のテーマだ

「まあ俺が考えているのは、やはりすごいインパクト感が必要だと思うんだよ。つまり読者の記憶に残せる、強い衝撃をつけなければならない。考えてみろよ、この作品に強い個性ってのがないんだよ。たとえば、そうだな『るろうに刹那』とか見てみろよ、個性が強いだろ、話もおもしれぇしよ、だから人気高いじゃん。それにひきかえこの小説を見ろ、序盤から地雷踏んでるよ、悪い意味でインパクト出ちゃったよ」
「まあ・・そうですけど・・でもこの作品だって強い個性があるはずですッ!」
「ほ~言ってみろあやか、この作品の強いインパクトを」

あやかの挑戦に銀八に腕を組み、あやかの返答を待った

「・・え~と・・あ、学園長の毛根が伐採されたのはインパクトありまして?」
「いやだわ、そんなインパクトッ!。それで生き残れるわけねえじゃんッ!」

銀八の代わりに千雨がツッコむ。まあここまで学園長が被害になる作品も珍しいと思う。

ジリリリリリリリリリ

「おいおい、終わりの合図来ちゃったよ。やばいよ~最近は「打ち切りにしないで下さい」とか「打ち切りにしたら許さん」、「打ち切りにしたら殴る」とか色々応援も来てんだよ。この期待に応えるためにデかい花火打ち上げるんだよ」

「んなこと言ってもよ・・ていうか感想恐いの混ざってるんだけどッ!」
「困りましたわね・・」

三人が頭を抱えて悩んでいると

ガララッ

「おや、銀八先生まだいたんですか・・」

教室に桜咲刹那が入ってきたやいなや、銀八を見て少しイヤな顔をする。

「なあ、お前さこの作品にインパクトの高いの欲しいんだけどなんかある?」
「主人公が死ぬのはどうですか?」
「え?」

銀八の突然の質問にも刹那は即答で返事した。









「『第八訓 みんなそれぞれテメーの刀を持っている』です・・ねえ、俺死んだ方がいいのかな?」
「バッドエンドもありじゃね?」
「ありじゃねぇぇぇぇぇ!!!俺は生きたいッ!。そんなインパクト残しても結局話が終わるだろうがァァァァ!!」

千雨の提案に銀八は全否定だった。










銀八先生のちょっと気になるコーナー

銀八「え~『四訓の『四』はこっちの方が使った方がいいのでは?』という質問がありましたが・・・・・・・・・・・・・・この漢字がパソコンの変換で出ません、どうしたらいいでしょうか?」
千雨「質問に質問で返すなァァァァァ!!」
銀八「WBC見ました、やっぱりイチロー最高だわ。あそこで打つってのはやっぱスターだわ」
千雨「質問じゃねえじゃんッ!WBCの感想じゃんッ!」
あやか「私的には内川選手が良かったですわねッ!。バッティングも守備も最高でしたッ!」
千雨「オイィィィ!!、WBCで話し進んでるよッ!いい加減にしろてめぇらッ!。ついでに私は青木選手だけどねッ!」






[7093] 第八訓 みんなそれぞれテメーの刀を持っている
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/06/08 12:13
獣は森を疾走する、追っ手を振り切ろうと必死に。おのれの自由を持ち、自分はもう誰にも支配されない。そんな事を考えていて、ついに獣は自分を封じ込めていた檻から出て逃走した。もう誰にも縛られねぇ、俺は自由なんだ。獣はそう考えていた。そして獣は森の中で追っ手に逃げながら自分を奮い立たせるために叫ぶが如く、吼えた

「ニャァァァァァァァァ!!」
「待ちやがれェェェェ!! クソネコォォォォォ!!!」

獣もとい、ネコは今、銀八、千雨、あやかの三人により捕獲されるピンチに陥っていた。ネコは必死に逃げ、追いかけてくる三人を巻こうと必死だった。

「ハァ・・ハァ・・もう無理限界・・疲れたわ・・」
「何言ってんだテメェッ! それでも二代目新八かッ!? 襲名したんだから、初代を超える勢いで頑張れよッ! 新八は少しはやる奴だったよッ!」
「うるせェェェェェ!! お前やいいんちょと違って、私は体力無いんだよッ! だから新八って誰ッ!?」

満身創痍の千雨に銀八は激をいれながらも、逃走するネコを追いかける。
何故こんな事をやっているのかというと『万事屋』に朝倉和美の仲介により仕事が入ってきたのだ。依頼主は中等部の一年生。ネコが帰ってこないので探して欲しいという、捜索願いだった。

「ところで銀さんッ! あのネコで本当に合ってますわよねッ!?」
「ああ、依頼主の言っていた特徴と一致している。まちがいねぇ、あれは依頼主のネコの『ドリームジャンボ三億円ちゃん』だッ!」
「どんな名前ェェェェェ!? 所ジョージかッ!? 所ジョージの影響かッ!?」

走りながら、あやかの問いに銀八は答え、千雨はツッコむ。こんな状態でもネコはもう捕まえられる範囲に入ってきている。ついでに銀八の衣装はいつもの白衣ではなく、私服でもある和服を着ている。

「あやかァァァァァァ!!右から回れッ!俺は左からだッ! 千雨は、俺達がネコを挟み撃ちにした所を狙ってトドメを刺せッ!」
「了解しましたッ!」
「いや、私の役目やばいだろッ! トドメって何ッ!? 依頼主のネコにトドメ刺していいのッ!?」

そんな千雨の言い分を無視して、あやかは右に、銀八は左に回りながら走りネコが逃げられないように両サイドにつき・・

「でぇぇぇぇぇいッ!」
「ニャァァァァァァァァ!!」
「やったッ! 銀さんが捕獲しましたわッ!」
「あれ、私の役目はッ!? トドメ刺すんじゃねえのッ!?」

銀八はダイビングキャッチし、見事『ドリームジャンボ三億円ちゃん』を捕獲するが、千雨は自分の役割について抗議する。

「心配すんな、新八はこういう所じゃあ、あまり活躍しねえんだよ。地味に徹してツッコミをするのが新八の役柄だった」
「だから新八じゃねぇってッ! どんだけ私を新八にしたいんだよッ!」
「バカヤロウッ! 『地味』、『眼鏡』、『ツッコミ』という『新八三種の神器』を持つお前は、立派な新八になれるさッ!」
「そうなんだッ! やったァァァァ!! って言うと思ってんのかボケェェェェェ!!」

森の中で銀八はネコをつまみ上げてゆらゆらさせながら、千雨に『新八論』を叩きこんでいた。










第八訓 みんなそれぞれテメーの刀を持っている

気に入らない男がいる。最近、副担任になった男だ。あんなダメ人間のくせにクラスの人達には、なんだかんだで
慕われている、別にそれは構わない。だがあの御方とも親しいのが私の気に入らない点だ

「刹那、何イラついている顔をしているんだ?」
「龍宮か・・別に私はイラついてない・・」

場所は学校の屋上。そこで私は一人である御方を守るために、ここから見守っていたのだが、ルームメイトであり、同業者の、龍宮真名が突然後ろから私の名を呼び、話しかけてきた。

「さしずめ、お前の大切な木乃香お嬢様と仲のいい、あの天パの先生だろ。アイツとお嬢様が親しいのがそんなに腹立つのか?」
「勘のいい奴だな・・お前は・・」

龍宮の言葉は的を射ている。お嬢様、木乃香お嬢様と仲の良いアイツに私は憤りを感じている。
最初見たときはどうでもいい存在だった。学園長も性格は危険だが、強さは我々に比べれば、問題無いと言っていた。
魔力も持たないし、あの見た目だ、腰の木刀も振れるのか、わからない・・。あんな自堕落な奴がお嬢様と仲良くしているのが許せないのだ。私はお嬢様を影から見守るもの、私がお嬢様とお喋りするなど言語道断だ。それをアイツはやすやすと・・

「お前はあの男に嫉妬しているのか?。自分は木乃香と仲良く一緒にいてはいけない、自分は遠くから見守る事しか出来ない。だがあの男は違う、自分と違って木乃香と仲良く出来るし、しかも男だ。あのダメ人間日本代表候補の男に嫉妬しているんだろ?」
「私は嫉妬などしていないッ! 私はあの男がお嬢様に有害だと思っているのに仲良くしているから、腹立たしいんだッ!」

座って静かに語るかのように話しかけてくる龍宮の言葉を、私は否定する。
ネギ先生みたいな子供ならいいが、アイツは20代前半ぐらいだろ。お嬢様に下心がないとは言いきれない・・。なぜあんな奴を学園長は教師にしているんだ・・・

「銀八先生にはエヴァンジェリンがバックにいる。だから学園長も容易に手を出せないんだな、なんでも彼をクビにしようとすると自分の首を飛ばされるとか言ってたな・・・」
「・・お前は相変わらず人の表情で考えを読むんだな・・」

龍宮は立ちあがり、屋上から降りようとする。その時、ふと私に顔を向けてきた

「あの男は見るからに非力だ。依頼料さえ出せばすぐにアイツをエヴァの目が見えないうちに、この学園から追い出せるぞ」
「必要無い、お前に高額な依頼料出すより。あんな奴、私一人でも軽くやれる」

私は龍宮の提案を一蹴すると、龍宮はフッと笑い、屋上から飛び降り消えた。普通の人間がここから飛び降りたら命は無いだろうが、私や龍宮のような仕事をやる者には簡単に着地する事が出来る。
ふと下を見ると、お嬢様は学友のアスナさんと一緒にベンチに座り、昼ご飯を食べているご様子だ。しかし段々とふらふらしながら、二人に接近している男がいた。

「坂田・・銀八・・」

私はその男の名をつぶやき、見ていた。銀八が来たのに気付いたお嬢様とアスナさんは軽く挨拶している。しかしあろうことか、そのままあの男はお嬢様の隣りに座ったのだ。お嬢様の肩に手を回し、お嬢様の弁当のおかずをくれと、ねだっているようだ。お嬢様は笑顔でアイツにおかずをあげている。

「まるで乞食のようだな・・お嬢様にとって奴は邪魔だ・・」

私はそう呟き、銀八を屋上から睨みつける。
あの男をこの学園から追い出したい・・しかし後ろ盾には『闇の福音』のエヴァンジェリンがついている。簡単には出来ない事だ。だがこのままだと、あの男はいずれお嬢様に危害を加えるのでは・・どうすれば・・

「クックックッ・・何恐い顔してんだぁ? お嬢ちゃん?」

突然後ろから男の声がした。私はハッとして後ろを振り向いた。

「何か大切なものが誰かに取られそうで、どう守ろうか考えている顔だな・・」
「貴様、何者だッ!?」

声の主は異様な見た目だった。左目に包帯を巻いていて、片方の目は全てを見透かすようなどす黒い感じな目をしている。何故か女性の和服を着ていて。腰には一本、日本刀を差しており。キセルを吸いながら私を見ている。
私が聞いても男はクックックッと笑い、こちらに近づいてきた。
普通なら近づいた瞬間、私は攻撃体制に入り攻撃するのだが、動けない・・隙が全く見えない・・
その男は私の隣りに立ち、私が見ていたお嬢様達と銀八を見ていた。そしてしばらくすると、首だけ私のほうに向けてきた

「お前、『白夜叉』が憎いか?」
「しろ・・やしゃ・・?」
「あそこで楽しそうにしている銀時の呼び名だよ。俺達が戦争している時は、天人や俺達の方からそう呼ばれていたのさ」
「銀時?・・銀時というのは銀八のことかッ!? お前と一緒に戦争をしていただとッ!? どういうことだ答えろッ!」

私は刀袋から愛刀を抜ける体制に入り、一歩下がり、目の前の男と対峙する。だが男は涼しい顔でキセルを吸い、煙を吐き、口元に笑みを浮かべていた。

「銀時の奴は偽名まで使ってんだなぁ・・よほど過去を忘れてぇのか? アイツと俺はここの世界の人間じゃねぇよ、といっても魔法界でもねぇ・・別次元の世界さ」
「な、なんだとッ!」

私はその男の言葉に動揺した。別次元の世界だとッ!?その世界で銀八は、この男と一緒に戦争をしていただと・・信じられない・・だがこんな幼稚なウソを目の前の男がつくとは思えない・・

「教えろ・・銀八は何者なんだ・・」
「銀八ってのは本名じゃねぇ、銀時っていうんだよアイツは。俺の元ダチでな、今はケンカ中さ、昔は仲良かったんだぜ。一緒に何百、何千の敵を斬り殺したなぁ・・」

銀時・・それが奴の本名なのか・・、こいつと銀時が友達だと?、とてもそうとは思えない・・。銀時が戦争に参加して敵を倒して行く姿など想像さえ出来ない・・
そんな事を私が考えている時、キセルを吸いながら男は話しを続けた。

「銀時はなぁ、敵との戦において鬼神のごとき強さで、敵どころか味方からも恐れられていた。その時についたアイツの呼び名が『白夜叉』さ」
「あの男はそんな風に見えないが?」
「あいつはキバを隠すのが上手い。今もキバが無い小動物を演じているようだが。一度アイツがキバを出せば・・」

そこで男は言葉を切った。そして邪悪な笑みを浮かべ、私に一瞬で近づいてきて目と鼻の先の距離で私に話しを続けた

「アイツがキバを、白夜叉がキバを出せばお前の大切なモンが傷つくかもなぁ・・」
「なッ!」
「クックックッ、信じるも信じねえもお前さんしだいだ。だが白夜叉の事は本当さ」

男は笑みを浮かべながら一歩下がり、私の反応をみていた。
あの男はそんなに危険なのか?、コイツが危険なのはわかるが、私に手を出してこない・・殺意もない。コイツの言う事を信じるか?だが信じて、白夜叉を倒すとしても、まずエヴァンジェリンがいる。この男の言う限り、白夜叉の力も本物・・どうすればいいんだ私は・・

「お前さんのキバを研いでやろうか?」
「何ッ! どういう意味だッ!?」
「これやるよ」

私が悩んでいると、男は裾から、数珠を私に投げてきた。珠の代わりに勾玉で形成されている。

「それは文字通り『魔除』って言ってなぁ、それをつけるとどんな奴でも魔力を失い、しだいに動けなくなる。外すのもつけた本人しか取れねえ。つまり吸血鬼の魔法使いだろうがよぉ一瞬でただのガキだ・・」
「まさかッ!」

この男はこの数珠でエヴァンジェリンを無害にしてしまえと言っているのかッ!?
だがそうすれば障害は減る・・この数珠を使い魔力を封じ、人質にして白夜叉を誘う・・

「あとこれやるよ、手ぇ出しな」
「なんだこれは、お札か?」

男はまた取り出して、私の手に渡したのはお札だった。しかしこんな黒いお札は見た事がない・・

「それはなぁ、テメーが守りたいモンを命をかけても守りたいと思ったときに、使えるようになる武器。名は『死装束』」
「武器・・だと?」
「使わない方がいいかもしれねえが、それを使えば白夜叉に勝てるかもなぁ」

これを使えば白夜叉を・・そうすればお嬢様の障害が消える。だがこの男の事を鵜呑みにするのは・・

「その2つがありゃあ、吸血鬼や白夜叉も殺せると思うぜ、あばよ」
「ま、待てッ! 何故私にこんなことをするッ! 貴様は何者だッ!?」

その男が背を向け帰ろうとする。私はその男に声をかけ呼び止めると、男はこちらに振り向く

「高杉晋助っていうんだよ、俺の名は。お前に立派なキバが見えてなぁ、研いでやりてぇと思ったんだよ。お前の中の獣も見てぇと思ったというのもあるしな、あと・・」
「あと・・あと何だッ!?」
「キバを隠して自分は無害だと主張して生きている、あの『白夜叉』がお前と殺し合いを演じて、どうなるのか興味があるんでねぇ・・」

高杉はそう言い残し屋上から飛び降りた。私は高杉がいた所にいき、下を見たがそこには高杉も着地した痕跡も無かった・・

「ガキのお守りがあるんだ。殺り合うんなら、今夜にしてくれねえかぁ? クックックッ・・」

その声はどこから聞こえたか分からないが、いきなり私の耳に入ってきた。私は周りを見たがアイツの姿は無い・・

「高杉・・晋助・・。いいだろう、貴様の入っている事が本当なら、今夜、白夜叉を倒してやろう」

私は奴の名を呟き、数珠とお札を持ち、白夜叉を倒す計画を練った。








「な~茶々丸? これ銀時に上げたらアイツ喜ぶか?」
「銀時様は甘い物なら、なんでも喜んで貰いますよ」

エヴァンジェリンを見つけるのは容易だった。購買部で茶々丸さんと一緒に奴の好きな甘い物を物色していた。しかももう5時間目が始まるので、周りに人はいない。私は簡単に彼女の後ろについた

「こんにちは、エヴァさんちょっといいですか?」
「桜咲刹那か、貴様が私に用があるのか?」
「はい、銀八先生をおびき寄せるエサとなってもらいます」
「なッ!?」

私が突然話しかけてきたのにも少し驚いたが、私の次の言葉に、エヴァンジェリンの顔には驚きの表情をはっきり出し、一瞬の隙を出した。彼女の首にふところにしまっていた、『魔除』をすばやく巻く事に成功する。

「なんだ・・これは・・、私の魔力が封じられるほどのマジックアイテムか・・?」
「あの男の言ってたことは本当ですね、これでエサを手に入れることが出来ました」

『魔除』を首に巻かれたエヴァンジェリンは力を失っている事に気付き、そしてついにはその場にへたり込んでしまった。

「マスターッ!」
「茶々丸さん、あなたは銀八先生に今夜の10時に、この学園の大樹の前へ来いと伝えてください。もし来なかったら人質の命は無いと」
「刹那さん・・本気ですか?」
「はい」

珍しく驚きの声を上げる茶々丸さんに、私は伝言を彼女に頼む。左手にへたりこんでいるエヴァンジェリンの動きを封じている『魔除』を握り、私の覚悟も伝える。

「行ってこい、茶々丸。アイツにこの愚か者をぶっ飛ばせと伝えて来い」
「・・了解しました・・」

茶々丸さんは心配の表情を浮かべながらも、エヴァンジェリンの言葉を聞き、あの男がいると思われる所へ走って行った。

「それで、貴様は何処に行くのだ?」

魔力を封じられながらも、私に威圧のある眼で彼女は見上げて私を睨みつけてくる。やはり『闇の福音』という異名を持っているだけの事はある、どんな状況に陥っても自分の強さを見せつけてくる。

「早いですが集合場所に行きます。もちろんアナタを連れてね」
「ふん、さっさと銀時に会いたいなら、もっと早めにしておけばよかったんじゃないのか?」
「早い時間に戦ったら、人目につきます。あそこの周りは10時には誰もいません、戦える場所に好都合です」
「戦うだと? 何故銀時と戦う?」

私はエヴァンジェリンの問いに答えずに、『魔除』をグイッと引っ張り、彼女を立たせて歩かせた。






時間まであと3時間。まだ人はいるが、時間がたてばいなくなるだろう。もう学校もとっくに終わっているはず、アイツは伝言を受け取ったのか? もしかしたらこっちに近づいているのかもしれない。

「退屈だな~、特に人質にされて長時間ベンチに座っていると。さっさと帰って『ロンハー』見たい、いや今は『ぴったんこカンカン』やってるか」

エヴァンジェリンの首には魔除があるので、動く事もやっとの状態だ。彼女はもうベンチに座っている状態から立つ事さえ出来ない、だがまだ余裕の表情をしている。

「もう一度聞くがなぜ銀時と戦う?」
「彼は私が守る御方には有害です。だから駆除する、それだけですよ。この学園から1つの邪魔者が消えるだけです」

エヴァンジェリンは私の言葉を聞き、不快な表情をする。

「ムカツク女だな、そんなに近衛木乃香が大事か?、いっておくが銀時は、お前が思っているほどダメ人間なんかではない。それに貴様の発言は私の大切な人を侮辱しているぞ・・」
「人質は黙ってください」

怒りを含めた声で彼女は私を睨みつけてきたが、私はそれを受け流す。
アイツが消えれば終わる・・そうすればお嬢様も幸せになるはず、あの御方が幸せなら私も幸せだ・・。







約束の10時になった。アイツはまだ来ない。だがきっと来る、奴にとってエヴァンジェリンという後ろ盾がいなくなったら、この学園から追い出される。まあそっちでも私には好都合だがな・・
約束の時間に5分ぐらい過ぎると、コツコツとブーツの足音が聞こえた。エヴァンジェリンはベンチで私の隣りに座っていたが、足音に気付きそっちの方向に顔を向けた。

「ったく、こんな時間に呼びやがって・・『リンカーン』見れなかったじゃねぇか」

いつもの白衣ではなく和服姿で奴は来た、その目は私を見た後、隣のエヴァンジェリンを見てしかめっ面をした。

「お前、昔は『闇の福音』とか呼ばれて昔はブイブイいわしてたんだろうが、何人質になってんだよ・・」
「う、うるさいッ! 魔力封じのマジックアイテムを使われたんだッ! さっさと助けろッ!」

アイツはエヴァンジェリンの言葉に「へいへい」と答え、こちらに近づいてきた。私もベンチから立ち、エヴァンジェリンは動けないので放置し、やつの方へ歩き対峙する形になった。

「銀八先生、今日はこんな時間に来ていただきありがとうございます」
「おう、見たいテレビあったのに、可愛い生徒の為に来てやったよ。んでテメェはなんであのガキを使って俺を誘ったんだ?」
「あなたは木乃香お嬢様とよく話していますね」
「まあな、ジャンプ貸す時あるし。いわゆるジャン友だよ」

コイツは相変わらず、自分のペースで答える。それに腹が立ってくるのだ・・、私は平静を装って話しを続けた。

「悪いですが、あなたがお嬢様に近づかれると、お嬢様には危険が及びます。早急に離れて、いやこの学園から消えてください」
「何お前? アイツに惚れてんの? いっとくけど、俺そういうジャンル無理だから。ていうかなんでアイツに俺が要ると危険が及ぶんだよ」
「『白夜叉』はキバを隠していて、いつかキバを出した時に周りに被害が出るという情報が入りましてね」
「!!」

私の言葉を聞き、奴は、白夜叉は驚いてるようだった。この反応だとやはりあの男が言っていたのは本当のようだったな・・
白夜叉の目はいつもの死んだ目ではない、怒りと疑問が混じった目だ。

「テメェ、それ何処から聞いた? 言え」
「答える必要はありません、なぜなら」

私は刀袋から自分の愛刀、『夕凪』を出し、鞘から刀を抜く。そして刀を白夜叉につきつける。

「あなたは二度とこの学園には来れないからです」

私はそう言いながら、刀を持ち構え、白夜叉に向かい疾走した。一瞬で斬れる距離に入り、まず白夜叉の足を止めるために、ひざを狙うため、私は伏せて白夜叉の膝に横薙ぎで夕凪を振った。しかし・・

ガキィンッ!

白夜叉は何時の間にか腰に差していた木刀を抜き、私の夕凪が膝を斬りつける前に木刀で止めた。

「銃刀法違反だぞテメェ、おしおきの時間だなこりゃあ。『体罰反対』とかほざくんじゃねーぞ」

白夜叉は私の夕凪をはじき飛ばし、再び対峙する形になる。言葉を吐きながらも白夜叉の構えには隙がない。
再び木刀と夕凪がぶつかる・・そう思ったのだが違った。

「オラァッ!」

木刀で斬りかかってくると予想していた。しかし木刀を持つ構えはフェイクだったのだ、白夜叉は左足で私の腰に蹴りを入れてきた。あまりの予想外に私はなすすべなくその蹴りを食らい、後ろに吹っ飛んだ。

「がはッ!」

私は思わずうめき声を上げる。剣術だけじゃない・・体術も持っている・・、イヤ、戦闘慣れをしているので体が自然にそういう動きになったのであろう。あの戦い方は恐らく我流だ・・
私は分析しながらも、なんとか立ちあがり、白夜叉に体を向けた。

「やはりいくつの戦闘を繰り広げている男・・、だが私は・・」

私は京都神鳴流の剣士だ。なんとかこの男の隙を作らねば・・

「負けるわけにはいかないッ!」

私は白夜叉に再度突進した、しかし無策ではない。私は白夜叉の攻撃範囲に入らないよう距離を取り、夕凪を地面に突き立て思いっきり振り上げた。それにより白夜叉めがけて土を放った。狙いは奴の目

「チッ! 目潰しかよッ!」
「もらった、奥義・・」

白夜叉が目に入った土を払っている隙を見つけた。私は奴を夕凪の攻撃範囲に入れる。

「斬岩剣ッ!」
神鳴流の技『斬岩剣』を白夜叉はモロに食らった・・いや違うッ!

「おい小娘、ちょっと剣術知ってるからって調子に乗るなよ。目潰しなんぞ、昔から経験済みなんだよ」

白夜叉は目をつぶりながら私の技を受け止めていた、私が驚いている暇も作らさせず、私のふところに入ってきた。

「月まで昇れやァァァァ!!」

白夜叉は叫び、私のあごを狙い木刀で突き上げてきた。

「ぐッ!がァッ!」

私はそのまま高く吹っ飛ばされた。そのまま私は地面に落下していく。

ダンッ!

「うッ!、クソ・・」

奴の一撃が脳まで響いている・・、私はよろよろと立ちあがる。そんな様子を白夜叉は見ている

「おい、もう降参しろ、自分の生徒いたぶるのは好きじゃねえんでね」
「く・・貴様の同情などいるかッ!」

私は頭を横に振り、形勢を立てなおすために再び、白夜叉と距離を作る。だが今回は夕凪も奴の木刀も届かない距離だ。接近戦が不利なら・・私は夕凪を構え

「奥義 斬鉄閃ッ!」

刀身から『気』を飛ばすこの技に、白夜叉は驚いている。まさか刀から飛び道具が飛んでくるとは思わなかったのだろう。

「飛び道具も出るのかよッ!」
「人間の中には『気』というのがありましてね、鍛えれば色々と戦闘に使えるんですよ」

私が説明している間に白夜叉は回避するために横に飛ぶ。だがそこが私のねらい目だ

「そうだ、貴様は横っ飛びするしかない、そこをッ!」

白夜叉が下に着地する前に、私はもう一発、斬鉄閃を放つ。空中では避けれまいッ!

「うおォォォォォォ!!」


白夜叉は吼えながら私の気が届く前に、地面に木刀を突き刺し、その衝撃で・・

「さっきと同じ技なら・・軌道も読めるんだよ俺はッ!」

白夜叉は空高く舞いあがった。しかも私に向かってくるッ!

「一撃で昏倒させてやるよ」
「神鳴流 秘剣・・」

私に向かって落下する早さと自分の力を合わせて木刀を振り下ろしにくるはず、私は白夜叉に向かって飛ぶ。ここで決めるッ!

「百花繚乱ッ!」

私と白夜叉の周りには私の技により大量の花びらが舞っている。空中でこの秘剣は避けれないはず、木刀で止める事も不可能だッ!
私は勝利を確信した。高杉からもらったもう1つの武器を使うまでも・・何ッ!?

「いや~危なかったわ~」

白夜叉は私の百花繚乱を受けていたはずなのに、吹き飛ばないどころか、何も起こっていないだとッ!?。こんなことどう説明すれば・・まさかッ!?

ガキィッ!

私の技が何故当たらなかったのかわからないまま、再び私の夕凪と奴の木刀はつばぜり合いになる。しかし力は圧倒的に向こうが上、私は思いっきり後ろに吹っ飛ばされる、だが私は吹っ飛ばされながらも白夜叉を見た・・奴のあの構えはッ!

「さっきお前がやった技、おもしろかったな。思わず名前覚えちゃったぜ~、確か秘剣・・」

奴の構えは神鳴流ッ! まさか私の秘剣を止めたのは、初見で私の構えで技を・・

「百花遼乱だったけェェェェ!?」

奴は刀身から『気』を放ち、吹っ飛んでいる私を追撃してきた。私は直撃して、その衝撃で手に持っていた夕凪離れて、そのまま後ろにあった大樹にぶつかる。

ドンッ!

周りには花びらが舞っている、それにあの『気』・・間違いなく私の技をコピーしている。しかも奴は初見で覚えたのだ・・あいての構えだけでどんな技か理解したというのか・・しかも『気』までコントロールしている・・私とはケタが違う・・
私はそのまま大樹の根元にドサッと落ちる。体がもう動けない・・これで負けだというのか・・
そんな私に白夜叉は近づいてくる。目は哀れなものに向ける目だ

「わりぃな、まさかあそこまで真似できるとは思わなかったわ、俺才能あるのかな、お前の所の剣術?」

こいつは『気』を出したことも知らないというのか? 私が苦労して習得して手に入れた技を一度見ただけで覚えただと・・

「もういいだろ保健室に連れて行ってやる、ったく俺もう疲れちゃったよ・・寝たいけどオメーに色々聞かなきゃならない事があるんでね」

白夜叉は私に向かって手を差し伸べる。夕凪は無い、もう武器が・・いやある
私は無理に体を動かし、ふところにしまっていた、ある物を出す。

「まだ終われないんだよ・・白夜叉・・」
「いい加減にしろよ、オメーの刀も向こうに吹っ飛んでる。武器さえ持ってないお前は俺に勝てねえよ」
「武器なら・・ここにあるッ!」

私が持っていたある物、高杉から貰った『死装束』が光出した。その次に私の周りに黒い霧が立ち私を包み込む。

「なんだこりゃあ・・お前何をしたんだッ!?」

霧の向こうから白夜叉の声がするが、今の私はそれどころじゃない
力がどんどんみなぎっているのがわかる。いままで感じた事の無い充実感ッ! 気がつくと私の右手にあった『死装束』はお札では無くなっていた。

「これは・・刀だったのか?・・」

お札だった『死装束』は、とても綺麗で美しく、そして恐怖も感じるほど刀身が黒い野太刀になった。

「これが奴の言ってた武器か・・しかも武器と一緒にこの力のみなぎり・・フフフフフ、ハハハハハハハハッ!!」

黒い霧は晴れる。私は白夜叉と目を合わせた。白夜叉は私を見て信じられないという表情をしている。

「テ、テメェッ! 何やったんだッ!?」
「白夜叉・・今の私なら・・」

ガスッ!

白夜叉の腹に私の左手のこぶしが思いっきりはいった、白夜叉は「ウッ!」と叫び一瞬で後ろに吹っ飛ぶ。
あんなに当てられなかった一撃がこうも簡単に当たるとはな・・
そして大樹の根元から移動するために私は・・

「ゲホッ! ゲホッ! チクショウ・・羽まであるのかよ・・本当にお前の体どうなってんだ・・」
「私は鳥族と人間のハーフなんですよ・・これは元からです、しかし・・」

私は背中から翼を出す、本来なら『白』だった。だが今は・・

「鳥族?・・お前の親カラス天狗ですか?・・」
「フフフ・・元は白だったんですけど、今は黒に染められてますねぇ・・」

白夜叉が奇妙に思うのもわかるな、私の羽はどす黒く変貌していた。その翼で倒れている白夜叉と対峙するように舞い降りる。

「お前がそんな目で見てるということは、私の外見はかなり変わっているようだな・・」
「ああ、鏡見てみろ白目が黒くなってんぞ、んで黒目だったところが赤いしよ・・爪も黒くしやがって・・ヘっ、パワーアップのつもりかよ・・」

ようやく立ちあがった白夜叉は私に悪態をついてきた。確かに爪は黒いな・・目もきっと白夜叉の言うとおりだ・・

「では、始めましょうか・・」

私は右手の『死装束』を握りなおし、白夜叉に近づいていく。あまりにも力がみなぎってくるので、私は思わず口元から笑みがこぼれてしまう

「第2ラウンド開始だ、白夜叉ッ! フハハハハハハッ!!!」

私は口を大きく開けて高笑いしながら、白夜叉に突進する

ガキンッ!!

木刀と死装束がぶつかる、しかし今の私に木刀程度で防げるかなッ!?

「お前の力なんぞ、私と比べればウジ虫以下だなッ!」
「チクショウ、見た目だけじゃなく、性格も変わってんじゃん。しかもこの力・・クソ、ヤベェ・・」

私の力は圧倒的に白夜叉の力よりだ。もはやこの男をここから追い出すだけじゃ、私の体は満足しない

「お前を殺してやろう・・そうすればお前はもうキバを隠さずに生きていかなくていいんだぞ・・クックック・・」
「・・チッ!」

白夜叉は軽く舌打ちし、自分の力が私より劣っていると感じたのか、私の死装束から木刀を離すために、一歩引く。

「今度は貴様が押される番だ、白夜叉ッ!」

私は引いた白夜叉を逃さない。飛行能力を持つ私にもはやスピードでは天と地の差だ
地面から少し浮上して、私は白夜叉に詰め寄って行く。まずは最初の目的を遂行する・・

ズシャァァァァ!!

「くそ、足狙いやがったかッ!」
「銀時ッ!!」

私の狙った場所は、足。木刀でガードする暇なく、私の死装束は白夜叉の膝を斬った。奴の足から血飛沫が上がっている。ながめていたエヴァンジェリンも思わず、焦りが入っている声で叫ぶ

「やべぇなコレ動きにく・・」

足から出血しながらも、私を睨みつけて、構えをつくる。あの構えは

「これでどうだァ!!」

やはり私が使った斬鉄閃だ、二回見てるのだ、一手見れば覚えれるこいつが使えないわけが無い。
私に放ってきた『気』をなんなく飛んで避ける。どうやら結構辛いらしいな、白夜叉・・足も動けない、呼吸も乱れてきている、これが貴様の最後の技か

「それが貴様の精一杯の攻撃のようだな、なら今度は私の番だ・・」

私は空中で死装束を持ち、構えをつくる。今度の狙いは・・私は狙いを定めて一気に白夜叉めがけて突っ込む

「斬岩剣ッ!」

バキィッ!

「ちッ! 俺の木刀がッ!」

私の狙いは奴の武器、力の上がっている私なら、あの異常に硬い木刀も割り箸のように折れる。
予想通り私の一撃は白夜叉の武器を見事に破壊した。だがまだ終わりじゃない

「これで終わりだ、白夜叉ッ!」

私は武器を失い、焦りの表情がある白夜叉のふところに入る。

グシュゥッ!

「ぐッ!」
「ぎ、銀時ッ! そんなッ!」

私の死装束が奴の体を切り裂いた、奴はその場に血を流しながら倒れ、エヴァンジェリンも泣きそうな声で叫んでいる。

「終わったな・・もう起き上がれないだろ、白夜叉・・・」
「ハァー・・ハァー・・・チクショウ・・・」

悪態をつきながら白夜叉は倒れる。だがまだ息がある、完全なるとどめを刺さねば。私は白夜叉の首に死装束を当てる。

「首を取れば、行き返ったりはしないだろう」
「や、止めろッ! 桜咲刹那ッ! 命まで取るんじゃないッ!」

エヴァンジェリンの悲痛な叫びも、もう今の私にはどうでもいい。私は死装束を振り上げ、首を取る体制に入る

「その刀を振り下ろしたら、お前はもう二度と戻れなくなるぞ刹那」

エヴァンジェリンではない誰かの声、ふと後ろを見ると声の持ち主がいた

「龍宮か・・どうしてここに・・」
「悪いが最初からずっと見ていた、ここまで激しい戦いになるとは想像できなかった。それにお前のその変化もな・・」
「何を・・ガハッ!」

刀の構えを少しといて、突然背後から来た龍宮と話している時に、私は急に吐き気がし吐いた瞬間、口から出てきたものは黒い液体であった・・

「ハァーハァー・・これが私の血か?・・」
「確かにお前がその刀を持った瞬間、恐ろしいほど戦闘能力が上昇している。が、それを引き換えに貴様の生命力が低下しているのがわかる。その刀を持っているとお前は・・死ぬぞ」

龍宮が言っている間に私の口から黒い血がポタポタと流れている。なるほどアイツの言っていた事を思い出した・・

『テメーが守りたいものを、命を失ってでも守りたいと思ったときに使えるようになる武器さ』

命を失ってでも・・なるほどそういうことか。この刀の名は『死装束』、使った者は死を覚悟するべし・・
今から刀を離せばどうにかなるかもしれない。だがそんな余裕など無い

「白夜叉を殺したら、あそこで泣きそうな闇の魔法使いと、そしてお前を殺す・・」
「白夜叉だけじゃなく、私やエヴァも殺す気か? 正気を失ったのか?」
「これを使ってから正気などとっくに捨てた・・この姿を見た奴は全員殺す・・」

私の今の姿・・すでにもう誰にも見せられない状態になっている。背中に黒い翼を持ち。黒ずんだ爪、目も黒いと白夜叉が言ってたな・・血も黒くなっている、だが私は死装束を離さない

「もう自分は普通に生きていけない・・だが私はどんな犠牲を払ってでもお嬢様だけは守るッ! だから・・ゲホッ!」

私は話しを一旦中止し口から黒い血を吐いた後、振り上げている死装束に力を入れる。

「だから私はお嬢様に害なすものはすべて消すッ!」
「お前はその刀に憑りつかれている、周り全て敵に回すきかッ!」

龍宮の言葉も私にはもう届かない・・私は倒れている白夜叉に向き直る。

「止めろ、お前を人斬りにはさせな・・ガハッ!」

龍宮が言葉を終える前に私のもう1つの武器の黒い翼が龍宮の横っ腹に直撃して、そのまま横に吹っ飛んだ。

「龍宮、お前を殺すのは白夜叉を殺った後だ・・そしてその後何も出来ない無力な『闇の福音』を殺す・・」
「止めてくれ・・頼む・・やめて・・」

エヴァンジェリンは泣きながら私に訴えてくる。お前も散々人を殺してきたんだろう、だったら自分も殺されて幕を閉じるがいい・・それとも白夜叉の命乞いか?
私は刀を振り下ろす体制に入る。この刀を降ろせばッ!

「死ねェェェェェ!! 白夜叉ッ!」

私は刀を振り下ろした、白夜叉を討ち取ったッ! と確信した時に

「まだ・・・俺は死ねねぇんだよッ!」
「なッ!」

白夜叉は急に起き上がり、私の刃を両手で止めた! どうやら私が白夜叉の急所を捉えたと思った一撃は少しずらされ、まだコイツが体が動かせるぐらい傷はそこまで深くないらしい・・・ということは倒れていたのは油断させる芝居か!
私の刀を両手で払った後、奴は全速力で何処かに走った。足を斬られ、急所では無かったといえあの傷を負って、まだ走れる余裕があるのか・・・逃げようとしているのか、それともエヴァンジェリンだけでも逃がそうとしているのか・・・だがそんな事どっちでもいい

「逃がすか白夜叉ァァァ!!」
「ちッ!」

私は走っている白夜叉を翼を広げて追う。奴は軽く舌打ちしてそのまま走り続ける。無駄だ・・どんなに走ろうが貴様の走力では私の飛行能力に比べれば歩いているのと同じだ。

「斬鉄閃!」
「うおッ!」
「ちッ!」

白夜叉の背中に斬鉄閃をぶつけようとしたのだが、奴は前方に転がってそれを避ける。斬鉄閃は地面に当たりその衝撃に爆音が鳴り響く。斬鉄閃の衝撃で大量に舞う砂埃のせいで私は奴の姿を一瞬見失ったが、すぐに奴の気配を感知した。

「そこだッ! 悪あがきもここまでだッ!」

私は白夜叉の姿を両目でしっかりと捉えた。その時私と白夜叉の目があった。
奴の目は死んでいない・・・気に入らない目だ・・・だがもうここまでだ!
私は死装束で奴を突き刺す為に、滑空する。

「これで終わりだァァァァァ!!」

少しの情けや容赦などしない・・奴を殺せば・・・私は・・・

ガキィンッ!

私の刀が奴の胸に突き刺さった! と思ったのだが・・・奴の肉を突き刺す音ではなく、金属音の響く音が聞こえた・・・
なぜこんな音が・・・舞っていた砂埃が消え、私は奴が私の刀を止めれた理由がわかった・・・こいつは逃げようとしたのではなく“アレ”を拾うために走っていたのか・・! そしてそれを拾い、奴は私の一撃を瞬時に受け止めた。


「何・・貴様、その刀を・・」
「落したのは誰かねぇ? 良い刀じゃねえか、まあちと俺には長すぎるがな・・・」

奴が拾ったのは私が持っていた愛刀『夕凪』、私の刃の先を、奴は夕凪の刃で止めている! まさか武器を無くした直後にその場に置いてあった私の刀を拾って、自分の武器にするとは・・・これが戦場で生きていた者の知恵か・・・

「だがその刀を使っても私には勝てないッ! お前は手負いの身で、私には死装束の力ッ! ひっくり返す事など貴様には出来ないんだよッ!」
「ごちゃごちゃと・・・うるせんだよッ!」
「なッ!」

白夜叉の夕凪で私と死装束が弾き飛ばされた! まだこんな力を残していたのか!? いやきっとあれが最後の全力・・もう奴に力など残っていない
私はそう確信した後、飛ぶのを止めてその場に下りる。だんだん翼もボロボロになって来ている・・・そろそろ決着を着けなければ身が持たない・・・すぐに奴の息の根を止めなければ・・・

「白夜叉ッ! これで死ねッ!」
「当たらねえ・・」
「何ッ!?」

私は白夜叉に急接近して自分の刀で横振りをかまそうとした、しかし奴はまるで雲が動くようにゆっくりと体を動かしただけで私の攻撃範囲から後退して避けた・・・そして私は奴の目をもう一度見た・・・奴の目の色は今までと違う事に気づいた、あれはまるで・・・                                                  

「夜叉の・・・目・・・」
「ファイナルラウンドだ、これで終いにさせてもらうぜ・・・!」

夕凪を静かに構え、夜叉・・白夜叉は私に突っ込んでくる。いいだろう、夜叉の本気というのを見せてもらう

「お前と私、どっちが上かはっきりさせてもらうッ!」

ガキィィィィィンッ!!

白夜叉が持つ夕凪と私の死装束がぶつかり合う

どうやら戦いはまだ終わらないようだ・・







教えて真選組のみなさ~んのコーナー
「はいど~もッ! 初めましてこんばんみッ! 近藤勲でェェェェェすッ!」
「沖田で~す」
「土方だ」

A組の教室で教壇に立ち、見た目どっちかというとゴリラに近い男が大声で、見た目のルックスはさわやかそうな青年はやる気のなさそうに、2枚目だが瞳孔開きぎみの男がタバコを吸いながら短絡に自己紹介する

「ダメですよ土方さん、せっかくの出番なんですから、最初は肝心なんですよ。なのになんですかその態度は」
「うるせぇな、大体なんで俺達がここにいるんだよ・・」

愛想の無い挨拶をした土方に指摘する沖田。だが土方はイライラした口調で返事する

「まあ、そういうなトシ、このコーナーはな万事屋の奴が忙しくてこっちに来れない時にやるコーナーだ。あいつがいないすきに俺達が出て人気を総取りするという戦法なんだぜッ!」
「なんで、俺達があいつの尻拭いしなきゃならねえんだよ、近藤さん。それに人気総取りって、この作品に人気自体あるかどうか疑問だろうが」

テンション上がっている近藤に土方は冷静にツッコむ。それを聞いた沖田は首をやれやれと横に振って

「何言ってんですかぃ、ここで人気もらえれば、俺達本編に出してもらえるかもしれねぇんですよ、土方さん」
「いや別に俺は出たくねえよ、なんでガキ共と戯れなきゃいけねぇんだよ。つーかここまで見てる奴がいるか自体わかんねぇよ」
「わかりませんよ、最近は読者が増えてんですからねこの小説。打ち切りにしたら恐い目に合わせるという応援がぎっしりと・・」
「それ本当に応援ッ!? 脅迫じゃねッ!? 別の意味でヤバイ状況作ってんじゃねぇよッ!」

沖田の言葉に一度は冷静に言うが次は激しくツッコむ土方。それを見ていた近藤は沖田と土方を制するように手を上げ二人の論争を止める

「いいかげんにしろお前等ッ! こういう小さいコーナーでも頑張ればいつか俺達にも本編に出るチャンスがあるんだッ! 本編に負けないコーナーにして、あっという間にレギュラー化目指そうぜッ!」
「確かに『近藤さん面白い』とか『沖田君サイコー』とか『土方死んでくんない?、いやマジで?』っていう感想が来たら俺達の本編入りもありますぜ」
「オイィィィィィィィ!! 俺だけ死の宣告じゃねぇかッ! マジでそういうの来そうだからそういうこと言うんじゃねぇよッ!」

沖田の呟きに敏感に反応した土方、もはやお約束である。

ジリリリリリリリリッ!

「あ、やばいですぜ終了の合図です、このコーナー滅多に無いと思いますし、ていうかここで打ち切られたらこれで最後です」
「何ィィィィィィィ!! やばいよトシッ! 俺達のコーナー終わるってよッ! 俺達の本編入りがッ! ていうか本編ごと消える可能性がッ!」
「いや落ち着いてくれよ、近藤さんッ! 苦情が来なければ修学旅行編とかオリジナル編でまたやるだろ、まあそこまで続けばの問題だがな・・それに、どうせここまで見てる奴なんていねぇんじゃね?」

あまりにも態度が悪い土方を見て沖田はポンと手を叩く

「なるほど~、だから土方さん全裸になってたんですかぃ。誰も見てないと予測して己の恥部を・・」
「ウソついてんじゃねェェェェェ!! 小説だから絵が無いのを利用して人を露出狂扱いしてんじゃねぇよッ!」

沖田のウソ発言に潔白の証明を叫ぶように沖田に怒鳴る。ついでに土方はちゃんと服着てます

ガララッ

「あの~銀ちゃんがここに行ってこいって言ってたんやけど~?」

教室に入ってきたのは近衛木乃香だった。遠慮しがちに三人を見ながら中に入ってくる

「どうしたお嬢ちゃん、もしかして万事屋の奴の生徒か? なんでここに来たんだい?」
「え~と・・銀ちゃんが「そういうシステムだから」って言われたから来たんよ・・」
「どんなシステムッ!?  たく・・もういいだろさっさと出て行け、俺達は万事屋と違って、お人好しじゃないんでね」

近藤は優しそうに接するが、土方は冷たく突き放す。近藤は子供の扱いには慣れているが、土方は全く持って子供を相手にするのは苦手だ、一番近くにいる部下が子供だからである、そしてその子供が腹黒い・・

「お嬢ちゃん、土方さんはアレです、『ツンデレ』って奴だから心の言葉と口から出る言葉が違うんですよ、気をつけてくだせぇ、でも時々デレフラグ立ちやすから」
「あ、そうやの? なんや銀ちゃんと同じか~良かった~」
「ウソ教えてんじゃねェェェェ!!」

腹黒い子供こと、沖田総悟が木乃香に『土方ツンデレ説』を耳打ちで教えている様子を見て土方は激しいツッコみをいれた







「次回、第九訓『大切なものを守る時は大切なものだけ見ないでその周りも守れるほど強くなれ』です。なんか題名長いですね?」
「もう終わりに近いんじゃねぇか?」
「トシィィィィィィ!! そんなこと言うなァァァァ!! このコーナーもっとやりてぇよォォォォ!!」

冷静に分析する土方に、近藤は自分の訴えを読者と作者に伝えていた








沖田くんのちょっと気になるコーナー
沖田「『この作品って銀さん、フラグ立てまくってますけど大丈夫ですか?』 という感想を貰いました。まあぶっちゃけ答えますとねぇ、本格的なフラグは今の所2本しか立ってないんですぜ。旦那は基本的にそういうフラグ立たせるの苦手なんでね、ていうか作者もそういうの苦手だから、あんまりフラグは今後も立たせません。ご理解頂けましたかぃ?」
土方「ようするに後々めんどくなるから、フラグ立たせたくねえだけだろ・・」
沖田「続いての質問です。『ネギがアスナの誕生日に何買えばいいのかわからなくて万事屋に依頼して買ってもらう。何てどうでしょうか?』という意見を貰いました・・・・・・・・・・いただきま~す」
土方「おいィィィィィィィ!! 使っちゃっていいのかそれッ!?」
沖田「貰えるもんは貰っときましょうよ、んじゃちょっとアレンジしますがいつか使わせてもらいま~すこのネタ」
土方「まず続くのかこの作品?」
近藤「わからん・・だが一応作者の頭では10話までのストーリーは出来てるが・・」
沖田「なんとかなるでしょ確か、原作と設定違いの修学旅行編までは引き伸ばしに入るようですし」
土方「設定変えるのかよ・・まあしょうがねえか、設定なんて、冒頭から変えまくってるしよ」
近藤「ということで『3年A組 銀八先生!』はとりあえずストライカーズ編まで頑張りますッ!」
土方「近藤さん、ストライカーズ編は無いからッ! それは『なの魂』に任せようッ!」
沖田「『なの魂』や『東方よろず屋』には負けますがどうかこの作品もごひいきに~」



[7093] 第九訓 大切なものを守る時は大切なものだけを見ないでその周りを守れるほど強くなれ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/06/08 12:15

「白夜叉、これでッ!」
「「終わりだァァァァァ!!」」

刹那の妖刀と銀時が使う夕凪で斬りあいを始める。刹那は妖刀『死装束』の力で、生命の危機を引き換えに爆発的な力を得て、反対に銀時はまだ斬られた箇所から血をポタポタと流している程の傷を負っている、しかし・・・

「くそ! 攻撃が・・・当たらないッ!

繰り出す刹那の強力な斬撃、凶悪な力に進化している彼女の奥義や黒い翼でのトリッキーな攻撃、しかしどれも銀時に当たらない。刹那の攻撃を避けながら、又は受け止めながら銀時は徐々に距離を詰めていく。

「くそォォォォォ!!!」

再びぶつかる互いの刀、力は刹那のほうが上、そのはずなのに・・・

(私とこいつの力は互角・・・いや圧されている! 死装束を得た私の力が白夜叉に圧されている・・!)

何故銀時の強さが一気に上昇したのか刹那はわからない、わかる事はこのままだとヤバイという事だけだ。

「ぐわッ!」

銀時の持つ夕凪で遂に刹那がつばぜり合いに負け吹っ飛ばされる。だが瞬時に自分の翼をバネ代わりにして立て直し、彼女は再び敵に突っ込み、再び刀がぶつかる音が鳴り響く。












「まさか、今の状態の刹那と互角・・いやそれ以上の力でやり合っているなんて・・・あの人は何者だ・・・?」

銀時が刹那と凄まじい戦いをしているのを見て、龍宮は口を開けて驚いていた。エヴァも同様目を見開いて、驚いている。

「桜咲刹那は今は妖刀の呪いにより魔人クラスの力をもっているはずだ、だが銀時はそれを圧倒し始めている・・・」
「妖刀を握った刹那と最初交えた時はあそこまで素早く動けなかった! まさか・・・成長しているのか? この戦いで・・」 
「違う目覚めたんだ・・・銀時の中に眠る戦いの記憶が・・・桜咲刹那との極限の命のやり取りの中で・・・あれが・・・」

エヴァと龍宮は銀時と刹那の戦いを見ていた、刹那の攻撃をミリの差で避けて飛ぶ、彼女の後ろに着地した銀時は彼女が慌てて振り向いた時には夕凪を構え、ある場所に向かって突き刺した。

「ぐ・・・ぐはァァァァ!!」

刹那が死装束を持っている手の甲から夕凪が突き出す。刹那の手から出る黒い血、苦痛の表情を浮かべた。

「白夜叉の力だ」

エヴァが言い終わると同時に銀時は刀を刹那の手から抜いた。

「まだその刀離さねえのか、その刀がやべえってのはわかってんだろ? もう捨てろそんな刀」
「誰が・・・離すか・・・この刀があれば私は誰にも負けない・・・見ろッ! 貴様にやられた傷などすぐに塞がっているッ!」

刹那は銀時にやられた筈の手の甲を見せ付ける。傷はすでに塞がっていた、どうやら死装束を持っていると傷を負っても瞬時に細胞を活性化させて、傷を回復させる再生能力を持っているらしい。だが人間が急に細胞を無理に活性化させると、自らの寿命を削るというリスクもあるのだが・・・

「私はなぁ・・お前を殺れば満足なんだよッ!」

どこからそんな力が出ているのか、刹那は翼を出し、また銀時めがけて飛び出す。居合いの構えになり銀時の首を飛ばしにかかる、だが

ヒュンッ!

「攻撃の動作が遅えよ、その刀もお前の力もそろそろ限界来てるらしいな・・これで・・」

銀時は刹那の居合いを再びかわす。そして刹那と距離を詰めて

「ゲームセットだ、悪ガキ」
「がッ! くそ・・・」

銀時は刀を逆刃にして刹那の頭めがけて兜割りをする。これによりついに刹那は沈んで倒れた

「やっと終わったか・・くそ、手間かけさせやがって・・・」
「白・・夜叉・・お前を・・殺す・・」

倒れながらも銀時を睨みつける刹那を見て銀時は額に汗が出る。完全に彼女は虫の息だ、このままだと死ぬ。

「チッ! お前本当に死んじまうぞッ! とりあえずその刀捨てて、早く保健室、いや病院に行かねえと・・」




「せっちゃんッ! 銀ちゃんッ!」

沈黙が流れた銀時と刹那は声がした方向に向く。この戦いの場において最も刹那が来てほしくない人が階段を駆け上がり来たからだ

「木乃香・・おじょうさま・・どうしてここに・・」
「せっちゃん、その姿・・一体・・」

突然現れた木乃香は変貌した刹那の姿を見て信じられないという顔をした。それを見た刹那は頭の中がこんがらがってきた

「見られた・・私の姿を・・羽どころか・・妖刀に堕ちた私の姿を、お嬢様に・・私は・・私は・・」
「せっちゃん・・さっき、茶々丸さんが電話でせっちゃんを止めてくれって頼まれたんよ・・でも遅かった・・」

木乃香はその場に座りこみ涙を流した。刹那はもうその光景で残っていた正気を無くした

「お嬢様・・たとえどんな体になっても・・私はお嬢様の為にやることがあるんですよ・・」
「せっちゃん・・何を言うとるの?・・」

刹那は立ちあがった、それに反応して疲労感が残っている銀時も立ちあがり、間合いを取る。だが刹那は虚ろな目で銀時を見つめているだけだ

「見ててください・・お嬢様・・この男が全て悪い・・悪鬼めぇ・・お前は私が殺してやるッ!」
「まだそんな力を・・なッ!」

突如目がカッと開き刹那は銀時に飛んで襲いかかる。これには銀時も予想外であり、一瞬で距離に入られ銀時は刹那に裾を掴まれ力いっぱいブン投げられて、10メートル以上ぶっ飛び、地面に直撃する。周りには大量の土埃がパラパラと出ていた

「これでどうだ白夜叉・・私はまだ戦えるぞ・・」
「せっちゃん、何で銀ちゃんと戦ってるのッ!?」
「銀ちゃん? コイツ、そんな名前でしたっけ? もう何もかも忘れてきました・・・でも覚えている事はこいつが白夜叉という私達の敵であるということですよ・・お嬢様・・」

木乃香の質問にも曖昧に答える刹那、もはや目は正気ではなく口からが笑みが浮かび、銀時を殺すという指令しか脳に伝わっていなかった

「白夜叉ァァァァァァ!!! 死ねぇッ!」

吹っ飛ばされた銀時はすぐに立ち上がり、向かってくる刹那の迎撃を待ち構える。

ガキンッ!

「もう止めろッ! テメェ死にてえのかッ!?」」
「黙れッ! 私の命など軽い、貴様を殺すだけが私の使命だッ!」
「もう言っていることが正気じゃねえぞテメェッ! こうなったら・・・」

前より強くなってきている刹那の振り下ろしを刀で受け止める銀時。正気の目ではない刹那を銀時が説得しようとするが、彼女はもう既に銀時を殺すだけしか頭に入ってないのか持っている刀でどんどん自分の力を加えてくるだけだ。
このままじゃ埒が明かない、そう感じた銀時はだんだんと出血が激しくなっている体の痛みをこらえながら

「だぁッ!」
「何ッ!?」

力を振り絞って刹那を弾き飛ばす。後ろに後退する彼女を銀時は追う。

「剣術指南もこれで終いだ、オラァ!」
「くッ!」

刹那の死装束を夕凪で弾いて、ガード不可にするそこを・・・

「ぐはッ!」

銀時は左手の拳で刹那の横っ腹にかます。あまりに予想できなかった銀時の動きに刹那はなすすべがなかった。銀時は攻撃の手を緩めない。右手の夕凪で死装束を止め、拳や蹴りで刹那本体にラッシュをかける。

「うおォォォォォォォ!!!」

だんだんと激しくなる連続攻撃、銀時は手を緩めない。次々と刹那に攻撃を浴びせていく

「せっちゃん・・どうしてこんな・・」
「大丈夫だ、刹那はあの人が助けてくれる」
「え?」

刹那が攻撃されている場面を見て、泣きながらみていた木乃香に話しかけてきたのは、ようやく立ちあがれるようになった龍宮だった。

「あの刀を破壊すれば刹那は正気に戻ってくれる、破壊しないと刹那はもうすぐ死んでしまう・・」
「そんなッ! なんとかならんのッ!?」
「心配するな、今あの男が刹那を救ってくれるはずだ」

龍宮が指差した方向には自分のクラスの副担任で普段はぐうたらでちゃらんぽらんだった男・・・だが今の彼はそんな所微塵も感じなかった・・・

「銀ちゃん・・・」
「大丈夫だ、あの人は私たちが考えるずっと凄い人だきっと刹那を救ってくれる」

龍宮は腕を組み、木乃香は呆然と二人の戦いの決着を見守るしかなかった。

「これでぇぇッ!」

銀時は夕凪を地面に突き刺して弱っている刹那の腹めがけて右手の拳に力をこめる

「どうだァァァァァァ!!!」

雄たけびを上げながら拳を刹那の腹めがけてかまし、彼女の意識が一瞬飛ぶ

「ガハァァァァ!!!」

思いっきり入った刹那は口から大量の黒い血を吐いて、後ろにふっとんで壁にたたきつけられ、ドサッと倒れる。普通ならもう立ちあがれない、だが刹那はもう普通じゃない

「白夜叉・・私はもうじき死ぬ・・だがその前に・・貴様を道連れにしてやるわァァァァ!!!」

彼女は立ちあがった、完璧なる狂気となり、もはや壊れた人形のように離れている銀時だけを睨んでいる
その光景をみた銀時は覚悟を決めるように右手で刀を抜く

「おい、あいつの刀を折ればあいつ正気に戻せるか?」

エヴァを避難させるためにおぶって戦いを見ている龍宮に銀時は聞いてみた。龍宮の代わりにエヴァが答える

「妖刀が刹那の生命力を奪っている・・あの刀を破壊すれば助かる。だが、もう元の姿には戻れないかもな・・」

エヴァの言葉を聞き銀時は思いつめた顔で「そうか・・」といい落ちていた夕凪の鞘を拾ってそれを腰に差す。

「銀ちゃん・・」
「何だよ?」

木乃香は涙を拭いて立ちあがり銀時を呼んだ。それに銀時は振り返える、木乃香は鼻をすすり、グイッと顔を上げて銀時に顔を向ける

「せっちゃん、助けてや・・」
「・・当たりめえだ」

木乃香に返事して銀時は刀を鞘に納め、のろのろと近づいてくる刹那に向き直り、そっちにむかって歩いて行き、刹那と対峙するよう立ち止まり、彼女も止まった

「白夜叉ァァァァァ!! お前を殺せばッ! 私は安心して死ねるんだァァァァ!!!」
「殺されねぇよ、お前も死なせねぇ・・」

完全なる狂気の塊の刹那と元の姿に戻った銀時は、お互いの刀を鞘から抜いて構える

「はァァァァァァァァァァァ!!!!」
「白夜叉ァァァァァァァァァ!!!!」

お互いに刀を持ち突進する銀時と刹那。そして二人が交差する







キィンッ!

お互いの刀がぶつかり合い二人は振りきったあと止まる。銀時は決着が着いたのがわかり、夕凪を静かにカチンッと鞘に入れる

ヒュンヒュンヒュンッ

刹那は刀を振りきった姿勢で止まっている。その刀は半分に折れ、もう半分は音を立て宙を舞っていた

ザシッ!

『死装束』は折れて。折れた刀の先が地面に突き刺さった瞬間。糸が切れたように刹那は倒れた








「・・ちゃん・・・・」

刹那は声が聞こえた、だれの声だろうか?

「せっちゃん・・」

段々声がはっきり聞こえるようになった。刹那はぼんやりと目を開けた

「せっちゃんッ!」

刹那は目を覚まして、はっきりと自分の名を呼ぶ人を見た

「お嬢様・・」
「せっちゃんッ! もう心配させんといてよ・・」

木乃香は倒れている刹那が意識を取り戻して、ホッと一安心した。刹那は上半身を持ち上げ周りを見た
動けないエヴァを龍宮から渡されておんぶしている銀時、腕を組んで立って自分が目覚めるのを待っていた龍宮がいた。そして自分の最も大切な人が介抱してくれていたらしい

「すいません・・お嬢様・・」
「もうええんよ、銀ちゃんや龍宮さんから話し聞いたで、私の為にこんなことしたんやろ・・」
「ですが・・私は過ちを犯しました・・妖刀に魅了されて・・私はもう元の姿には戻れません・・」

木乃香の許しをもらっても、ふがいない自分が情けなかった・・その結果もういつも通りの生活は送れない・・
黒い羽はだらりと下がり、体は死装束が破壊された事によって体が耐えられなくなり多くの個所から黒い血が出ている。自分がやったことがいかに愚かだったか後悔した

「ウチはせっちゃんがどんな姿でもかまわへん・・」
「え?・・」
「大事なのはその人が好きか嫌いかの2つ。ウチはせっちゃんの事は全部好きなんやで・・」
「お嬢様・・」

木乃香はこんな自分がいていいと認めてくれ、抱きしめてくれた。その瞬間

カッ!

「なんだッ!」
「おいッ! 第三段階もあんのッ!? 無理無理、俺もう限界だからッ!」
「いや、これは・・」

龍宮は驚き、銀時は焦っているが、銀時におんぶされているエヴァはその光景を静かに眺めていた
優しい光りが刹那を包みこみ、刹那の体は徐々に傷が消え、生気が甦っていく、そして・・

「私の羽が白くなっていく・・これはもしやお嬢様の力・・」

刹那はつぶやき自分の体を見る。死装束によって残された傷跡は消え去り、羽も元に戻る。もういつもと変わらない刹那がいた

「ア、アレ? ウチ今なにしたん・・? なんかせっちゃんとずっと一緒にいられるようにて願ったらせっちゃんが元通りになったわ」
「お嬢様・・ありがとう・・ございます・・」

木乃香の眠っていた力が刹那を元に戻すことができた。妖刀の呪いも打ち消す癒しの力・・
そして木乃香は刹那を見つめる。そして刹那の背中の羽に手を伸ばす

「なんで羽だけ残ったんやろうね?」
「私は鳥族の父と人間の母のハーフなんです・・隠しててすいません・・」
「いやなんであやまんねん、へ~そうなんや。別に隠さんでもええのに、ウチ黒い羽もワイルドで好きやったけど、白い羽も天使みたいで好きやで」 

自分の正体を知っても、気にする所も全く見せずに笑って自分の羽を誉めてくれた。そんな木乃香をみて目頭が熱くなってきた

「すいません・・お嬢様・・」
「いやだからええって・・」
「ごめんなさい・・お嬢様・・」
「何度もあやまらんといてよ~」
「ごめんな・・このちゃん・・」
「・・うん・・」

謝る度に目から涙を流す刹那を木乃香を優しく抱きしめた。刹那は木乃香の胸の中で嗚咽をしながら泣いた

「終わったな・・」
「ああ、あの二人なら仲良くやっていけるさ」
「あれが近衛家の力か・・呪いさえ打ち砕く癒しの力・・いや近衛家の力ではなく近衛木乃香自身の願いの力が、妖刀の呪いから桜咲刹那を解放してくれたのか・・」

二人が抱きしめあっている光景を見守る、龍宮と銀時とエヴァ。だがまだ龍宮は浮かない顔をしている。

「あの木乃香の癒しの力・・どこぞの輩が手に入れようと襲ってくるかもしれないな・・」
「俺が守ってやるさ、そんなヤローがあいつ等に近づいたらぶん殴る、あいつ等だけじゃねえ、俺はこの学校の奴等全員守っていくさ・・それが俺の武士道だ」
「せいぜい頑張るがいいさ、それがお前のやるべきことならな」

龍宮の心配も銀時は一蹴する。エヴァはそんな銀時を見て、頼もしく思う

戦いが終わった









第九訓「大切なものを守る時は大切なものだけを見ないでその周りも守れるほど強くなれ」

「いや~中々面白かったじゃねえか・・・」

ウチがせっちゃんを抱きしめていると、パンパンパンッと手を叩く音が聞こえた。そっちの方向を見ると、男の人が笑ってこっちを眺めていた

「死装束を折ったかぁ・・さすがだなぁ、銀時。最初から見物させてもらったぜ、やっぱりお前の戦いを見ているとおもしれぇよ。しかもお涙頂戴の結末と来たもんだ・・クックック・・」
「「高杉ッ!」」

せっちゃんがウチを庇ってくれるように立って、銀ちゃんと同時に叫んだ。二人の知り合いなんかな・・あの人なんか恐い・・

「てめぇ・・こいつをけしかけたのはお前か・・なんでてめぇがここに・・」
「けしかける? 馬鹿言うんじゃねぇよ、そいつに立派な牙が見えたんで砥いでやっただけさ」
「くッ! 高杉・・」

せっちゃんは高杉って人を睨んでいる。銀ちゃんは真顔なんやけど目がすっごい怒っている感じがする・・もしかしてこの人が・・

「高杉、なんでてめぇがこの世界に来れたんだ?・・」

銀ちゃんは怒った目睨みつけながら高杉さんに質問する。もしかして銀ちゃんと同じ世界の人?
そんな銀ちゃんの気迫にも全く動じへん高杉さん。ニヤッって笑って、銀ちゃんに顔を向けた

「この世界はなぁ、銀時。幕府の上官や裏の巨大組織とかぐらいしか知らねぇ別世界だ。知ってるか銀時? 世界ってのは無数にあるんだよ。そしてこの世界と俺達の世界は波長が合う、だがまだ行くためのパイプが無い・・最近は幕府の連中が転送装置を作ろうとしているらしいが、俺はここにそんなもん使わずに来る事が出来た、何故だと思う・・?」
「なんだよ?・・」
「お前もやったろ? こっちの魔法使いに召喚されるんだよ・・銀時、お前もその娘っ子に召喚されたんだろ? 俺もこの世界に召喚されたんだよ・・まあ偶然だけどな、最初は驚いたぜ・・この世界の事は知っていたがまさかこうやって来るとはな・・クックック・・」
「何ッ!?」

銀ちゃんがビックリしとる・・高杉さんは銀ちゃんと同じ世界の人・・しかも顔見知りどころかお互いの事をよく知ってる感じやな・・
銀ちゃんの様子を見て高杉さんは満足したのか話しを続ける

「だけどオメーのような強い魔法使いに召喚されたんじゃねぇがな・・ただのしがない占い師のガキさ。元の世界に帰れる方法がわかんねぇし、しょうがなくそのガキと一緒にいるんだがな・・今頃ロンドンで少ねぇ客を相手にしてんのかな・・」

高杉さんはニヤニヤしながら銀ちゃんに聞こえるように上を向いて話しとる・・この人はあっちの世界でもこうやったのかな?・・そしてこの世界でせっちゃんを・・

「高杉さんッ!」

ウチは怒った声で高杉さんに向かって叫んだ。高杉さんは笑みを浮かべなら私に顔を向けてきた

「どうしたんだぁお嬢ちゃん?・・」
「せっちゃんと銀ちゃんを戦わせるようにしたのアンタなんッ!?」

私が怒っているのに気付いたのか、高杉さんは少し驚いたがすぐに口には笑みが広がっている

「まあそうなるかもなぁ・・久しぶりに戦いが見てぇから休暇をとってここまで来たんだよ・・銀時がここにいるのは知ってたしな・・相変わらず牙を隠してんのかと思ったら案の定さ。そしてその銀時を面白くない目で見てる奴がいた、そのお嬢ちゃんだ・・簡単に動かせたぜ・・クックック・・」
「くそ、私はこんな奴に利用されて・・」

せっちゃんは下唇をかんで悔しそうに高杉さんを睨んだ。この人はただ戦いを見たいだけで・・

「アンタがあの刀をせっちゃんに渡したんッ! なんでそんなことするんッ!? せっちゃん死にそうになったんやでッ!」

高杉さんは全然反省している様子はない・・ただ笑って楽しそうにウチを眺めている・・

「俺は使わない方がいいって忠告したんだぜ? それでも使ったのはその娘さんだぜ? 勝手に死にかけたんだろうが・・まあ面白い戦いが見れて俺は満足だよ。なぁ銀時? それとエサ役の吸血鬼のお嬢ちゃん? アンタの力も是非見てみたいもんだぜ・・・」

ウチから目を離して高杉さんは銀ちゃんとおんぶされているエヴァちゃんに言葉を向けた。銀ちゃんとエヴァちゃんは、無言で高杉さんを睨みつける。あんな目で見られたらウチなら逃げるで・・だけど高杉さんはヘラヘラ笑っとる・・

「そんな顔すんなよぉ・・銀時、お前はやっぱ牙を出すときの方が似合ってる、お前はキバを出さないと生きていけんぇんだよ、お前さっき目が昔の目になってたぜぇ・・・あれが真の白夜叉・・・久しぶりに見れたぜ・・・」
「ああ、確かに俺はキバを出さないと生きていけねぇ、てめぇと同じかもな・・だがな・・」

銀ちゃんは言葉を一旦止める、そして再び高杉さんを睨む

「俺の牙はだれかを護る牙だ、高杉テメェの牙とは違う。テメェは護るもんが無いただの獣だ」

銀ちゃんがはっきりと宣言する。その答えを聞き高杉さんは満面の笑みを顔に浮かべる。そしてウチ等に背を向けて歩き出した。

「獣で結構、俺は護るもんなど必要ないんでね。俺は全て壊すだけさ、この世界でも何も変わりゃあしねぇ。じゃあな、また会おうぜ銀時・・」

そのまま不安な言葉を残して高杉さんは一瞬でとウチ等の目の前で消えてしもうた・・










「いや~だからゴメンって言ってるじゃ~ん、気付く分けないじゃろ~? 魔力も感じないのに転移魔法使える、しかもこの学園内でじゃよ? 無理じゃから、ワシそんな奴来てる事自体知りませんでした~、だから降ろしてくんない? ていうか頭熱いんで勘弁してください・・」
「反省の色なしだなジジィ。薪が足りねぇな、追加」
「ちょっと待ってッ! もうワシのヒゲがチリチリになってんだからッ! 勘弁してくんないッ!? お前に毛根抜かれた時になぁッ! ワシ元に戻るのに三日もかかったんじゃぞッ!!」
「三日で戻るのかよッ! お前やっぱ人間じゃねぇだろッ!」

今、ウチと銀ちゃんは学園長室にいる。そしてジィちゃんを逆さ吊りにしてジィちゃんの頭の下で、銀ちゃんはパチパチと薪を燃やしながら焚き火しとる・・まあでも高杉さんが入ってきたのを気付かなかったのはジィちゃんの責任問題やね・・
今ここにいるのはウチと銀ちゃんとジィちゃんだけ。せっちゃんは一応保健室で診てもらう為に龍宮さんが付添いになって一緒に行ってもうた、ウチも行きたかったんやけどジィちゃんに先に報告した方がええと龍宮さんに言われて、銀ちゃんと一緒に学園長室に行く事にして、現在に至る。エヴァちゃんはやることがある言うて、せっちゃんに変な首輪取ってもらった後、さっさと帰ってしもうた・・

「木乃香、ヘルプッ! ワシ頭パーンてなりそうッ! 九話目で死んじゃうッ!」
「しょうがへんな~そんなん見るの嫌やし。銀ちゃん、ジィちゃんが頭パーンしそうやからもう降ろしてくれへん?」
「わ~かったよ・・コイツに免じて命だけは助けてやるよ」

銀ちゃんは渋々、ウチの意見を承諾してくれて、ジィちゃんを許してくれた。と思ったら銀ちゃんはまだ持っていたせっちゃんの刀を構え、ジィちゃんに向き直る・・

「あの~銀八? いえ銀八君? いや銀八様? それどういう意味じゃ? ワシ・・ぶった斬る気?」
「お前ぶった斬っても、二つに増えそうだからいやだわ」

そう言うて、銀ちゃんは刀を抜いて汗をだらだら流しているジィちゃんをつないでいた紐を切った。そのままジィちゃんは頭からドサッと落ちる、あれ落ちた場所って・・

「熱ちィィィィィ!! ふざけんなァァァァ!! 火を消してから紐を切れェェェェェ!! ていうか優しく降ろせェェェ!! 老人の扱いは丁寧にしろォォォォ!!!」

焚き火に頭から突っ込んだジィちゃん・・ジィちゃんはゴロゴロ転がりながら自分についた火を消しとる、そんなジィちゃんの様子を見て「めんご~」っていって銀ちゃんが一応謝っとる・・


やっと火が消えて、ジィちゃんは一安心して自分のイスに座る。

「あ~死ぬかと思った・・所で銀八・・ワシはお前に聞きたいことがある、お前は自分の世界で宇宙人とに侍の戦争があるって言ってた。だがお前は、自分が参加してましたって言わなかったの? ここで話してもらうぞ・・そしてその高杉という男のことじゃ・・」
「言われると思ったわ・・喋ってやるよ、高杉の事もか?」
「当たり前じゃよ、その男は危険過ぎるじゃろ。この学園に魔の手が伸ばした男じゃ・・お前の世界でもそんな奴だったのか?」

ジィちゃんは急に態度を変えて、銀ちゃんに視線を向けた。銀ちゃんもあくびをしながら返事をする。

「ああ、あいつ実は俺の・・」

バンッ!

「木乃香さんッ! 銀さんッ! やっと見つけましたよッ!」
「木乃香ッ! あとバカ天パッ!」
「うわッ! ネギ君とアスナやんッ! どうしてここに来たんッ!?」
「おいあのアマ、俺の事今なんて言った? 殺していい? 俺白夜叉モードになるよ?」

突然、銀ちゃんの話しを止まらせて学園長室に入ってきたのはネギくんとアスナやった。すぐにこっちに歩み寄ってくる。そういえば黙って行ったんやった、二人とも汗だくや・・必死に探してたんかも・・

「木乃香さんが僕達が見てないすきにどっか行っちゃったので、心配しましたよ・・でもまさか大樹の所にいたなんて・・さっき龍宮さんに事情を聞きました。ていうか僕は龍宮さんが魔法について知ってるのも驚きでしたが・・それにしても大変だったようですね・・」
「水臭いじゃないのッ! 何悩み事一人抱えて突っ走ってるのよッ! 今度から相談しなさいよ、友達なんだからッ!」
「ネギくん・・アスナ・・」

こんなにも自分のことを思ってくれる、友達と先生がおる私は幸せ者やな・・
そんなこと考えているとウチの頭をポンと叩かれた。叩いた人は優しそうに笑っている

「よかったじゃねぇか、いいダチ持ってんな。手放すんじゃねえぞ、いっぱい相談して困らせてやれ」
「銀ちゃん・・わかっとるよ・・」

ここにもおったな、自分達のことを考えてくれとる先生が・・まあ先生って感じせえへんけど・・この人は高杉さんとは違う・・

バタンッ!

「銀八ッ!」
「銀さんッ!」
「銀さ~ん生きてるッ!?」

長谷川さんといいんちょ、朝倉さんがいきなり雪崩込んできおったッ!

「銀八、さっきエヴァから電話が来てな。お前がいっぱい隠し事してるから全部聞きに行けってな・・お前私達に何か言いたいことあるんじゃねえか?」
「銀さんッ! 私はあなたがどんな人でも受け入れますわッ! たとえ火の中や水の中に行こうとも私はついていける覚悟ですッ!」
「大丈夫だよ、その事は記事にはしないからさ、私個人の銀さんの情報にしとくからッ!」

長谷川さん、いいんちょ、朝倉さんが銀さんに歩み寄って一斉に喋り出す。これには銀さんもタジタジや

「ちょちょちょッ! なんでお前等に話すのは出来ねえんだよッ! なんか複雑な事が交差していて・・」
「せいッ!」

ゴスッ!

「お・・てめえ・・そこは・・」

銀ちゃんが三人を追い出そうとすると、長谷川さんが銀ちゃんの大事なところに蹴りを・・銀ちゃんは言葉も出せなく苦痛の表情をしてバタンと倒れてゴロゴロ転がっとる。それを見たジィちゃんもネギ君も顔に手で覆い「あれはイタイな・・」と呟いた。 

「あ・・ヤベェ・・何すんだよ千雨・・女になる所じゃねえか・・」

呼吸を荒げ死にそうな銀ちゃん・・確かこの人せっちゃんと凄い戦いやってたんよね・・そんな状態の銀ちゃんに長谷川さんは銀ちゃんに馬乗りになって銀ちゃんの胸倉を掴んで

「くぉらァァァァ!! 銀八ッ! お前みたいなちゃらんぽらんな奴の秘密知ったって私は何も嫌だとは思わねぇよッ! 好きでテメェと付き合ってんだよッ! 隠し事なんざ必要ねぇんだよッ!」 
「千雨・・」

長谷川さんの訴えに銀ちゃんもその思いに気付く。そうやな、隠し事なんか必要あらへんな・・
銀ちゃんの体から長谷川さんが降りて、銀ちゃんに手を差し伸べ立たせる。そんな様子を見てたジィちゃんは立った銀ちゃんに質問する

「銀八、お前はここで何をしたい?」

銀ちゃんはジィちゃんの質問に少し考えて、そして決心したように顔を上げる

「護るんだよ、こいつ等をな。こいつ等だけじゃねぇ、俺はこの学校を護る、大切なモンを守る時はまずその周りも守れるようになるんだよ。そうしないと俺はまた大切なモンを失っちまう・・」
「銀ちゃん・・」

銀ちゃんは戦争に参加してたんもんな・・色々失ってるんやな・・あの高杉さんもそうなんかな?

「ふむ・・ならばこの三人にもお前の事を話してやっても良いぞ、そうするとこの世界の事情も説明せんとな・・まあそれはワシから言うとくから。この三人に話しとけば後々力になるじゃろ、孤独は人を駄目にする、人は支えてもらう人が必要なんじゃよ、それに隠し事はやっぱ駄目じゃろ?」
「いいのか? アンタも面倒な事になるぜ?」
「お前がワシのこと心配すんの? うわ~今背筋から寒気でたわい、ワシの事より仲間の絆の方を大切にせんか。そうすればお前は力を隠さなくていいんじゃし」

ジィちゃんもたまにはええ事言うなぁ・・自分のことよりも銀ちゃんの事を考えてくれたんやね

「俺だってジジィのご好意なんて気持ち悪いってぇの・・だけどお言葉に甘えさしてもらうわ」
「あ、僕も聞かせてください、銀さんの身の上話ってあんまり聞かないし・・・」
「私は興味無いけど、アンタの事情ってのも聞いてあげないと可愛そうだしね・・」

ここにいる人、全員が銀さんに注目した。そして銀ちゃんは自分の話しを始める

こことは別世界にいたという事、攘夷戦争という、天人っていう宇宙人と銀ちゃん達お侍が何度も戦った戦争の事も、多くの敵を斬り殺し、敵と味方から『白夜叉』と言われていた事、でも結局、攘夷戦争で敗れた銀ちゃんは多くの仲間を失ってしもうた・・戦いにイヤになった銀ちゃんは万事屋としてひっそりと暮らし始めたんやけど、何度か色んな人と戦ったらしい・・力持ってる奴は戦いを止めても戦う運命にあるんだよって銀ちゃんは言ったけど、そう言っている銀ちゃんはなんか寂しそうやった・・
そして高杉さんの話しに。あの人は銀ちゃんの幼馴染で長い付き合いだったらしい、でも色々あって決別しそれぞれの道を歩んだ。銀ちゃんの世界でも有名なテロリストやって・・どうやら銀ちゃん達の中にいたお侍の人達は未だに我が物顔で支配する天人にまだ戦おうとする人達がいるらしい、高杉さんもその一人やって。でもあの人はこっちの世界でもなんであんな事したん?・・ただ楽しんでるだけしか思えへん・・

「じゃあ俺の話しは終わりだ、この世界の秘密事はジジィが説明するから」

銀ちゃんは話を終えて周りを見渡す。

「お前が別世界の人間で宇宙戦争やってましたねぇ・・」
「異名がつくほどの強さを持っていたんですか・・」
「しかもこの世界に来ているテロリストと幼馴染・・」
「まあな、信じられねえだろな普通」
「いや信じてるよ」
「は?」

長谷川さん、いいんちょ、朝倉さんは全く疑いもせず信じたようやな・・長谷川さんがすぐに「信じてる」って銀ちゃんに言ったわ。

「別に何処の国だろうが世界だろうが私はどうでもいいよ。お前の『坂田銀時』の話しは知らねえけど『坂田銀八』の事ならよく知ってるしな。それでいいんじゃね?」
「たとえ、貴方が戦争に行っていたとしても、貴方はそれなりの辛い過去を持っているんだと思います・・貴方が力を隠していたのもわかったと思います・・」
「銀さんは、自分の力が周りに知れたら、周りの人達にも危害が及ぶ可能性があると思って力を隠してたんでしょ? でも私達も守られるだけじゃないからねッ! 銀さんにたまには楽させてあげるよッ! 私も銀さんと一緒にこの学校を守っていくよッ!」

銀ちゃんはそんな三人を見て呆れ顔でハァ~とため息をつく

「お前等本当に成績いいの? 単細胞過ぎるんだよ・・本当、俺の世界のバカ共とそっくりだわ・・ま、そっちの方が俺にはあってんのかね・・・」

銀ちゃんは軽く口元に笑みを浮かべて、三人を見る

「この世界で平和に生きておこうと思ったんだけど、やっぱり俺の性には合わねえらしいな・・よしテメェ等、俺に着いて来いッ!」
「元よりそのつもりだっつ~の」
「一生ついていきますッ!」
「いや一生って・・いいんちょ、どんだけ・・まあ勿論私も情報屋として銀さんに協力するから。銀さんが絡むと特ダネがいっぱい出来そうだしね~」

銀ちゃんの号令に賛同する長谷川さん、いいんちょ、朝倉さん。よかったな~この世界でもええ仲間見つけたやん。
ウチにとっても銀ちゃんは大切な仲間や、そしてせっちゃんのことだって私の大切な人・・

「みんな、ちょっとウチ用事思い出したから行ってくるわッ! じゃあねッ!」
「いや木乃香、何処行くのよッ!?」
「大丈夫ッ! 朝ご飯には帰るからッ!」

銀ちゃん達が仲良く話している所を見て、ウチは学園長の扉を開け、アスナに返事をして一目散に駆ける








着いた場所は保健室。せっちゃんは窓の前で立って日が上がりそうな空を眺めていた。

「せっちゃん 大丈夫やったぁ?」
「お嬢様・・はい体の異常は完全に無くなったようです、これもお嬢様のお陰です。ありがとうございます・・」

せっちゃんはウチの声に気付いて、空を眺めるのを止めてこっちをむいてペコリとお辞儀した。お礼なんて別にええのにな~
せっちゃんは何か考え事してたみたいやった、昔見た悩んだ時のせっちゃんもこんな顔をしとったな、今は全然一緒にいなかったから久しぶりに見たわ・・

「本当はただ白夜叉に嫉妬していただけかもしれませんね・・」
「嫉妬?」
「はい、私はお嬢様を見守る事しか出来なかった、だが白夜叉は出会って間も無いのにすぐにお嬢様と仲良くなれた・・幼馴染が突然男に奪われたという心境だったのかもしれません・・本当バカですね・・」

せっちゃんは昔はいつも二人で遊ぶほどの仲やった。でもある事があってギクシャクしてもうた・・それでもせっちゃんはウチを守ってくれていた

「こんな私だから高杉に利用されるんだ・・あの男の口車に乗せられて、私も白夜叉もボロボロになり、お嬢様にさえ悲しい思いを・・私はただのうつけ者です・・」
「そんなことないッ! 悪いのは高杉さんやろッ! せっちゃんも銀ちゃんもしかたなく戦ったんやッ!」

ガララッ

「おうやっぱりここか、ジジィの話し長くなりそうだから抜け出した。お前に用があるの忘れてたわ」
「あれ銀ちゃん、何しに来たん?」

突然中には入ってきたのは銀ちゃんやった。どうしてここに? そういえば・・

「刀返すぜ、お前のもんだろ?」

銀ちゃんはせっちゃんに刀を背中から鞘ごと抜いて返しに来た。でもせっちゃんは目の前に出されている刀に手を伸ばさへん

「今の私ではその刀を受け取る資格はない・・」
「意地張るなよ、オメェの刀だろ。ほら受け取れ」
「白夜叉・・お前が預かってくれないか?」
「は?」

せっちゃんの言葉に銀ちゃんは頭に『?』マークをつけとる。せっちゃんは話しを続ける

「私は半人前だ、その刀を扱う事など出来なかった・・その刀を放し、私は妖刀に憑りつかれてしまった・・」
「せっちゃん、だけどそれはッ!」
「いえお嬢様、刀は武士の魂、手放なして闇に堕ちるなど言語道断。普通なら私はあの時に死ぬべきだったのかもしれません・・ですがお嬢様と白夜叉、それに夕凪が私を救ってくれた・・」

せっちゃんはウチと銀ちゃんそして銀ちゃんが持ってる刀を見た。ウチにはようわからんけどせっちゃんにも自分のルールみたいなのがあるんやね・・

「白夜叉、お前は夕凪の潜在能力を引き出してくれた。今はお前が持っててくれ」
「いいのか貰って? 大事なモンなんだろ?」

銀ちゃんは刀を肩に担ぎトントンと刀で肩を叩いている。せっちゃんは銀ちゃんの質問に首を横に振る

「あくまで『預ける』だ、私はいつかお前より強くなって、その刀を持つ資格を手に入れる。今度は妖刀など使わずに正々堂々と戦いたい・・」
「あ~あ、そういうことなら預かってやるよ。ま、早くしねえと質屋に流すかもな? それとも物干し竿に使うか?」
「銀ちゃんッ! 恐い冗談止めてよッ! それせっちゃんの大切なもんやからねッ!」

銀ちゃんの冗談に聞こえない冗談にびっくりして、ウチは銀ちゃんを怒鳴る。銀ちゃんは笑って「へいへい」って言って刀を背中に差した

「じゃあ、俺は行くわそろそろジジィの話しも終わってるかもしれねえし。早くこの刀奪いにこいよ、俺は木刀で十分だから。でもお前に木刀折られたんだよな、あれ通販で売ってるかな・・もしく葉加瀬の奴に直してもらうか・・」

銀ちゃんは保健室のドアを開けて、私達に少し笑って出て行く

「何考えてるかわからない男ですね・・」
「そうやね、でもそこが面白いんちゃう?」

せっちゃんとウチは銀ちゃんがいなくなった時にポツリと呟いた。不思議な人やな銀ちゃんって・・

「せっちゃんは銀ちゃんの事どう思ってるん?」
「駄目教師で駄目人間、駄目パーマの、ていうか駄目な物ですねアレは・・ですが私の命の恩人です、そしその力を私は尊敬しています・・守る剣・・私も勉強させてもらいます、私もお嬢様を守る剣になりたいから・・」

なんだかんだで銀ちゃんのこと気に入ってるやん、せっちゃん・・ウチも守られるだけじゃアカンか・・

「せっちゃん、今日はウチ等の部屋で朝ご飯食べへん?」
「えッ! でも迷惑じゃありませんか?」
「迷惑なわけないやろ~いつでも歓迎や」

私もせっちゃんともう一度仲良くなりたい・・銀ちゃんみたいに溝なんか飛んでいけるような人にウチはなりたい・・

もうじき日は昇る、早く帰って朝ご飯の支度しなきゃ、4人分作らなアカンな・・














『3年A組 銀八先生』重要なお知らせ
「どうもこんばんは・・この作品の主人公をやっていた坂田銀時です。本日は皆様に重大なお知らせがあり、『教えて銀八先生~』のコーナーを変更してお送りします」
「初めましてみなさん『銀魂』のレギュラーでもある志村新八です」
「初めまして、神楽です、銀ちゃん本当に発表するアルか?」

珍しく真顔の銀時と見た目地味な眼鏡少年とチャイナ服を着たオレンジ髪の少女が心配そうな表情をしている

「ああ、そうするしかねえんだよ・・ではお知らせします。『3年A組 銀八先生』は本日の話しをもちまして終了させていただきます」
「銀さん・・やっと本格的スタートが始まりそうだったのに・・どうしてこんなことに・・読者の皆様もうしわけございません・・」
「しょうがないアルよ、元々不安定な位置にこの作品立ってたし、こうやって終わるとおもっていたアルよ・・」

銀時がお辞儀して、新八と神楽もお辞儀する

「ところで銀さん、僕ここまで見てくれた読者の皆様に、伝えたいことがあるんですけどいいですか?・・」
「新八にとってこれが最初で最後の出演だからな・・よしお前の気持ちを読者にぶつけてやるんだ・・」

新八は銀時にお辞儀して教壇にあったマイクを握る、そして大きく息を吸って

「お前等ァァァァァァ!!! なめてんじゃねぇぞォォォォォォ!!!」
「・・はい?」

新八の変貌ぶりに軽く引いてる銀時。だが新八は話しを続ける

「なんかさぁッ! この小説だと長谷川千雨って人が僕の代わりにツッコミ担当らしいけどさッ! 『新八とは別物ですね、むしろ千雨の方が上です』とか『いや~ぱっつあんより、ちゆちゃんの方が全然いけるよ~』とかあきらかに僕よりその人のほうが上って意見があるんですよッ! 僕は初代ツッコミ総長ですよッ! 僕の方が銀さんにうまく対応できますねッ! 絶対僕の方が上だからねッ!」

新八は思いっきり吼えているが銀時と神楽はドン引きしていた

「新八は個性がないから負けるネ、お互いの原作を見ると扱い的に向こうの方が圧倒的に勝ってるヨ。お前の時代じゃないんだよ駄メガネ」
「んだとォォォォ!! 神楽ちゃんの方が僕よりやばいでしょッ! 向こうにはチャイナキャラ二人いるんだよッ! てことは神楽ちゃんが出るとチャイナキャラ三人になるんだよッ! 無理だろそれッ! 扱いにくッ! 神楽ちゃん扱いにくッ!」
「あんだとこらァァァァァ!! あんな奴等、私の目の前ではひれ伏すしかないネッ! お前と違って私は個性があるんだよッ! 何処でも生きていけるアルッ!」

「ぐはァァァァァァ!! 気にしている事を言われたァァァァ!! チクショォォォォォ!!!」 

そのまま新八と神楽はケンカを始めた。といっても一方的に新八が殴られているだけである
それをみて銀時はハァーとため息をつく

「おいテメェ等、俺の最後の舞台を汚すんじゃねえよ。最後ぐらいは美しく終わらせようぜ」

ガララッ

「すいませ~ん、んまい棒買ってたら遅れました~桂で~す」
『さーせん』

突然教室に入ってきたのは長髪ロンゲの『狂乱の貴公子』の桂小太郎、アヒルなのかペンギンなのかわからない生物のエリザベスが持っているボードに文字を書いて入ってきた。だが桂の体はボロボロである

「やっと来たのかよ、ヅラ・・お前が『最終回だから最後ぐらい美しく飾ろう』って言ったんだぞ、お前が遅刻してどうすんだバカ」
「ヅラじゃない桂だ。あ~それで俺も発表しにきたんだ、エリザベス俺の代わりに発表してくれ、間接が痛い・・」
『わかりました』

いつもの手持ちのボードを掲げてそこに文章を書いて会話をする。それがエリザベスのコミュニケーションだ

『じゃあ、発表しますね』
「一体なんでしょうね? ていうか桂さんどうしてあんなにボロボロなんでしょうか?」
「さあな・・あそこまでボロボロにされるなんて余程のことがあったんだろうな・・」
「どうせ、人妻に手を出そうとしてボッコボコにされただけアル」

新八と銀時、神楽は桂のボロボロな理由を知りたかったが、エリザベスがボードを掲げたのでそっちをみた

『ドッキリ大成功~タッタタ~』





「「「え?どういう意味?」」」

三人はエリザベスの書いてあるボードを見て硬直した。しばらくすると桂が来てパンパンと手を叩きエリザベスを褒め称えた

「よくやったぞエリザベスッ! いや~間が良かったぞ、銀時達最初から騙されてたぞ~さすが俺のバディだッ!」
『効果音を書いたのが僕のこだわりです』
「そうかそうかッ! さすがエリザベスだなッ! 俺達も近々本編入りもあるなコレ、ハ~ハッハッ!!」

エリザベスと一緒に喜んでいる桂。そこに銀時はコツコツち近づく

「ヅラ~あの~話しが見えないんだけど~?」
「銀時、実は最終回じゃないんだな~コレが。むしろ打ち切り危機もなんとか脱して、これから本格連載スタート的な感じなんだよ、フッフッフ・・」
『読者に怒られる覚悟で作った高等ドッキリです』





銀時、新八、神楽は2度目の硬直をする











「次回 第十訓『どうしても斬れない絆もある』をやります、これからも『3年A組 銀八先生!』をよろしくなッ!」
『僕と桂さんを出してくださいという意見ありがとうございます。本編入りするために日々努力します』
「って何終わらせようとしてんだテメェェェェェェ!!」
「銀さん、僕等も一緒にシメるの協力します・・」
「ヅラ死にさらせアルゥゥゥゥゥゥ!!!」
「グホッ! すまんッ! ちょっとノリで・・ゲホッ! マジすんませんッ! ひでぶッ!」
勝手に次回予告して終わらせようとする桂に三人がかりで粛清に入った。聞こえるのはヅラの断末魔の響きだけになる








新八「所でどうして桂さん最初ボロボロだったんですか?」
桂「ファンの皆様に大量の虐殺好意をされたのだ・・」
神楽「こんなんやってるからプロレス技かけられるアル・・」
桂「いやエイプリルフールかと思って・・」
銀時「これ書いてる時は3月末だよバカ、4月バカじゃなくて、3月末バカだよお前」
エリザベス『これからもよろしく、そして応援してくれた皆様ありがとうございます』













銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー
銀八「今回も沢山のお便りありがとうございます。その中から3つ選ばさせていただきました、まず1つ目『銀さんのオリ能力必要なのかな?』という意見をもらいました・・・すいませんオリ能力って何ですか? そんなもんこの作品にはありませんが?」
新八「無かったことにしてるッ! 無かったことにしてるよ編集されて消された能力をッ!」
銀八「2通目~久しぶりの苦情だな『改行して見やすくしろ 見る気がなくなる』ということです。確かに序盤は読みにくいという苦情があるな。コレを機に編集しようと思う」
新八「今は直っているんで安心してください・・・それにしてもこれで苦情止まりますかね・・・? 不安ですよね」
神楽「でも応援メッセージいっぱいもらったアルッ! 『千雨と銀時の相性がGOOG』とか『定番になりそうなコンビですね』とか『個人的に一番好きなのは千雨ですね』とかいっぱい来たアルッ!」
新八「それ僕の出番の確率が下がりそうな応援メッセージじゃんッ! クソォォォォォォォ!!! でも僕はあきらめませんよッ! 初代ツッコミ総長、志村新八ッ! 打倒、長谷川千雨を誓いますッ!」
銀八「はいはい勝手に宣言してくださいね、お前が千雨に会えるかわかんねぇけど・・んじゃ3通目~
『土方死んでくんない?いやマジで?』・・・・・・・・・・・・・・俺もそう思う」
土方「んだとコラァァァァァァ!!! あのバカのせいでやっぱり来たじゃねぇかァァァァ!!」
新八「うわッ! 土方さんッ!? いきなり出てこないで下さいよッ!」
神楽「お前はまだましなんだよチクショォォォ!! 私なんか名前を書き込まれることさえ少ないアルッ! 私が原作ヒロインだぞゴラァァァァァ!!!」
新八「みなさん落ちついてくださいよッ! 読者の意見も象徴すべき・・てことは僕のほうがあの人よりツッコミが下って事に・・ふざけんなオラァァァァァァ!!!」
銀時「ということで『3年A組 銀八先生!』はこれからも連載を続ける事を決めました。まあここまで来れたのも読者のおかげだな、マジありがとうございます。ふざけた作品ですが見てくれれば幸いです、それでは次回で・・バ~イ」



[7093] 第十訓 どうしても斬れない絆もある
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/03/13 10:56
早朝のロンドン、一人の男が歩いていた。自分が住む場所はいても退屈なので、こうして朝からぶらぶら散歩するのが日課となっている。時折人とすれ違いになるが、大半の人はその男を見ると離れて歩く。男の異様であり、左目に巻かれた包帯、女性の和服、そして視線だけで人を殺せそうな不気味な眼。人は決して寄りつこうとはしないのだが、彼を知っている人は『占い師の女の子の隣りで音楽を奏でて、客寄せをしているミュージシャン』という認識をしていて、男の音楽が好きな人は男に笑顔で挨拶してくる。男は一応会釈をして、そのまま歩いて行く。いつもの散歩の道で大きな橋を渡っていると、半分言ったところに、ロンドンには珍しい僧が座っていた。男はその僧を見ると口元に笑みを浮かべて、僧に近づいた

「久しぶりだなぁ・・お前もこの世界に来ていたのかよ、ヅラ」

男はその僧を知っていた。ここではない別の場所で共に勉学を学んだ、幼馴染だった

「ヅラじゃない、桂だ。高杉、貴様もこの世界に来ていたのか? 相変わらず変わらんな・・」

男こと、高杉を見て、『桂』と自分の名を言った僧は少し驚いたようだが、高杉はまだニヤニヤ笑っていた

「お前も変わってねえじゃねえか・・別にこの世界でも変装なんか必要ねえだろ、ここは平和過ぎるほど平和なんだよ。楽しい戦いや、激しい祭りもねえ・・退屈なところだぜ」
「幕府の犬をこの世界に派遣する情報を、この世界に来る前に聞いていたのだ。念には念をだ」

桂は高杉に返答した後はしばらく黙っていたが、しばらくすると逆に質問した

「お前も幕府の極秘の『次元転送装置』を使ってここに来たのか?」
「俺は違えよ、ここの世界の魔法使いに召喚されたんだよ、偶然だがな。お前はその装置を使ってここまで来たのか?」
「そんな手もあるのか・・俺は幕府の『次元転送装置』を奪い、この世界で天人に大打撃を与えるような情報がないか来てみたのだが・・どうやら俺は罠にハメられたらしい。その転送装置は片道キップだった、一回使うと壊れてしまった・・つまり俺は帰れなくなった、恐らく幕府の連中が俺をこの世界に閉じ込める策略だったのだろ、どうりで手に入れるのが簡単だったはずだ・・」

高杉は桂の事情を聞いて「クックック」と笑っていた。そして橋の手擦りにもたれて上を見る

「お前から帰り方を聞こうと思ったんだがなぁ、お前もこの世界から出られねえのか。じゃあ、あのガキはまだ生かしておく必要があるな・・」

高杉は独り言を呟いていると、ふと思い出したように空を眺めるのを止め、桂に顔を向けた

「そういや銀時にあったぜ、この国じゃねえがよ」
「何・・銀時の奴が? それは本当か?」
「ああ、日本で学校の先生やってるぜ。クックック・・笑えるだろ?」

高杉の言った言葉に反応して、初めて桂は高杉に顔を向ける。そして桂は高杉の情報をまとめる

(日本か・・俺が最初に転送された場所か・・ふむ、留守番させているエリザベスやあの少年の事も気になるし、ここは一度戻ってみるか・・)

桂が結論を出した時に、こちらに走ってくる女の子がいた。赤髪のツインテールで気の強そうな、まだ小学生ぐらいの少女だ

「高杉ッ! あんた、こんな朝っぱから歩くの止めてよねッ! あんた見た目すっごい恐いんだからッ! さっさと帰って仕事の支度するわよッ! アンタが客寄せしなきゃ、お客さっぱりなんだからッ! 本当この前はあんたがいなくて・・あ~もうッ! 早く帰るわよッ!」

桂はその少女を見て驚いた。高杉に対して恐れもなく、こんなに軽く喋れるのか? 

(もしやこの少女は高杉を召喚してしまった魔法使い・・)

桂が考えていると、橋にもたれていた高杉は「フンッ」と鼻を鳴らして頭を掻きむしりながら、つかつかとその少女の方へ歩いて行った

「屋敷にいてもつまんねぇから、こうやって散歩していたんだよ・・じゃあなヅラ、ガキの手伝いしなきゃなんないんでね・・銀時は自分で探してくれや」
「高杉、誰その人? あんたの知り合い? あんたこの世界で友達なんていたっけ?」
「そんなもんじゃねえよ・・もっと深い絆だ・・」

高杉はさっさと歩いて、頭に『?』マークを浮かべている少女を置いて、行ってしまった。それを少女も気付き「待ちなさいよ~!」と言いながら高杉に向かって走って行く。その光景をみて桂は唖然として二人を見ていた。

 (高杉を召喚した魔法使いがあの少女だとしたら・・早急に少女と高杉の接触を断ち切らないとあの子の命は無いな・・)

桂は高杉とあの少女のことを考えていたが、一人フードで顔まですっぽり隠れている者が桂に近づいてきた

「こんな所にいたんですか、ヅラさん、早朝の散歩は遠慮して欲しいですんけどね・・近々あなたの敵の『幕府』とかいう所の連中が来るんでしょ? 気をつけてください」
「ヅラさんじゃない桂だ。狭いところにいるとどうにも落ちつかんのでな・・悪いがジョギングしてシェイクアップしていた。すまないなアル殿」
「アル殿じゃなくてクウネルです。狭いところって私の隠れ蓑のことですよね? それにジョギングなんかしてないようですが?」

桂に対して注意したのに受け流された、アルと呼ばれた男はその名前を否定してクウネルと名乗った

「ところであなたはこんな所に何を目的で来たんですか? ここまであなたを連れて行くの大変だったんですよ?」
「すまない、この国限定の『んまい棒 英国紳士味』があると聞いたので、それ目当てでお主に頼った」
「いやなんですかそれ・・ていうかどんな、んまい棒なんですか・・味が聞くのも恐そうです」

クウネルは呆れてため息をつく。だが桂はお構いなしにふところから『んまい棒 英国紳士味』を食べていた

「・・なるほどこんな味か、新しい味だなこれは・・いっぱい買って、エリザベスとあの攘夷志士候補の少年に食わしてやるか・・ということでアル殿。京都へ帰ろうか」
「アルじゃなくてクウネルですよ・・もう帰るんですか? 本当にんまい棒の事だけなんですね・・」
「いや本当に、んまい棒だけだったんだが、情報を手に入れた。俺の友がどうやらこの世界にいるらしい」

桂の言葉を聞いてクウネルはフードから顔を覗かせる。中性的な結構な2枚目である

「友? 例のナギに似ている人ですか? この世界に来ているんですか・・一度お会いしたいですね~」
「俺の友は日本にいるぞ、あ~捜索せねばならんな・・とりあえず京都に返って近衛殿とも茶を飲みたいし、あの少年を立派な攘夷志士にしなければ・・」

色々と思案している桂を見て、クウネルはため息をついて口を開く

「わかりましたヅラさん、あなたと京都に戻りますよ・・私がいないと、あなたこの国から一歩も出られませんしね」
「ヅラさんじゃないって桂だって。さすがアル殿、俺の心の友よ。お礼にんまい棒を進呈しよう」
「アル殿じゃありませんってクウネルですから。そろそろキレますよ? 一応貰っときますよ・・」

クウネルと桂はんまい棒を食いながらロンドンを歩き始める

「新しい味ですねコレ?」
「だろ~それがわかるお主も立派な、んまい棒マスターだ」
「あははは、私も10本ぐらい買って帰りましょうかね」
「負けるか、俺は20本だ!」
「張り合わないで下さいよ・・じゃあ私30本で」
「50本だ!」
「じゃあ100本で」
「く・・そんなに金を持っているとは・・ここの魔法使いは化け物か・・」
「あなたどんだけお金持ってないんですか・・」








第十訓 どうしても斬れない絆もある

「お~い俺の木刀直ったか~?」
「あ、銀八先生、とっくに終わってますよ」

銀八は学園内の研究所に来て、一人の少女、葉加瀬聡美に問いかける。葉加瀬は銀八に気付き、返事をする

「さすが発明バカ、この世界にはねえ素材の木刀を修復するとはさすがだぜ」
「誰がバカですか・・銀八先生の世界だろうが私に直せるものはありませんよッ! ていうか先生、真剣持ってんですから、木刀必要あります?」

葉加瀬が銀八の背中の太刀に指差した。見事な野太刀の『夕凪』が銀八の背中に差してあった。ついでに業務中も差しているので生徒にとっては怪しさ満点だった

「いやこれじゃあ落ちつかねえんだよ、元々これ俺のじゃねえしよ。やっぱ腰に差す木刀がいいんだよ、んじゃ俺の愛刀を返してくれや」
「あ~はいはい確か・・あ、ありました」

葉加瀬が持ってきたのは包装紙にくるまれた銀時の愛刀『洞爺湖』だった。銀八にそれを渡し、銀八は開けてみた

「お~すげ~元通りじゃん、折れたのにそんな所微塵も感じねえ」
「すごいでしょ~、更にこれからの為にパワーアップしていますよ?」
「パワーアップ? マジで?」
「ふっふっふ・・柄を押してみてください・・」

葉加瀬が眼鏡を上げ、銀八に指示をする。銀八は少しドキドキしながら押してみた

「うおりゃぁぁぁぁぁ!!!」

ピュウッ!

「醤油がでますッ!」

木刀の先から醤油が勢い良く発射された。銀八はただ醤油の後を呆然と見て・・

「ネタを提供してくれた読者の『からな』さんありがとォォォォォ!! そしてふざけんなァァァァ!!!」

銀八は額に青筋を出して、木刀を叩きつけて葉加瀬に怒鳴る

「なんで醤油が出るんだよッ! 俺ワクワクしていたの返せよッ! パワーアップするのになんで醤油発射ッ!? こんなもん目に入って痛くさせるという攻撃しかできねえよッ!」
「醤油をさしてとどめをさすんですよ」
「微妙にうまいこといってんじゃねえよッ! 意味ねえよ、こんなのッ! 眼鏡取れオラッ! 食らえッ!」

ピュンッ!

「ぐわァァァァ!! 目がッ! 目がァァァァ!!」

葉加瀬の眼鏡を取り上げ、近距離から葉加瀬の目に木刀から醤油を放つ。葉加瀬は思いっきり痛がって、倒れてもがき苦しんでいた









場所はイギリスのウェールズ。とある村で一人の女性がある場所へ向かって行った

「最近、ネギからの手紙も相変わらずだし・・どうしたのかしら? 悪い人と遊んでなきゃいいんだけど・・」

長い金髪をなびかせ、独り言を言いながら女性ことネカネ・スプリングフィールドは目的地に向かっていた
最近は暇になったときは村はずれの小さな花畑にいく。花を見ていると癒される、余計な心配事が一時忘れれることも出来る
そしてやっと目的地に着きネカネは静かに深呼吸した

「やっぱりここが落ちつくわね・・あ~何か悩み事が吹っ飛んだかも、なんかもう叫びたい気分ね・・誰もいないし、不満でも吐き出そうかしら・・」

ネカネは周りに誰かいないか確認して、大きく息を吸ったそして

「ネギィィィィィィ!! ジャンプの事ばっかじゃなくて自分の事を書いてェェェェ!! お姉ちゃんどんどんジャンプに詳しくなっちゃうからァァァァァ!! ていうかあなたの事情よりジャンプの事情の方が詳しい・・」

ヒュゥゥゥゥゥン

「え?」

ネカネが日頃の不満をぶちまけていると、突如、空から小型の船が降ってきた。アレ? こっちに来てない?

バゴォォォォォォォォン!!!

「でェェェェェェェ!! 花畑がァァァァ!!」

その船がネカネの目の前の花畑に墜落して、一瞬で花達を押し花にしたのであった。ネカネもこの光景に驚きとショックを隠せなかった

プシュゥゥゥゥゥッ

「え? え?」

小型船のハッチが急に開いた。それにしてもこの小型船、ついてる機械が半端ではない、まるで昔アニメで見た宇宙戦艦に近いかもしれない・・ネカネがそんなことを考えているとハッチから人の影が出てきた

「アッハッハッハッハッすみまっせーんッ! 友達の家ば行こーとしたら、なんか変な次元に呑み込まれてしもうたきに、パニくってたらこんな所に落ちちゃいましたーッ! アハハハハハハッ!」

人影はっきりと姿をあらわした。異様な服装に、黒のパーマの男はネカネに向かってお笑いしながら話しかけてきた





「えェェェェェェェェ!!!」

ネカネの驚きの声と男の笑い声が押し花畑で響いているのであった



場所は変わり、ネカネの家。とりあえずこの男を家に連れてきてこの男の素性を知ろうとした。あそこに置いとくと、またなんかやりかねないと思ったのもある。二人は一般用の大きさのテーブルを挟んで椅子に座り、お互い自己紹介した。男の名は『坂本辰馬』海援隊という組織で宇宙をまたにかけて商売をしている江戸一の商売人だと名乗った(ついでにこれだけ要点をを喋るのに1時間かかった)後本題に入った。

「で? あなたは宇宙から突然、次元の狭間に飲みこまれて、あそこの花達を一気に押し花にしたと? ということですか? 坂本さん?・・」
「ハハハハハッ! 何勘違いしとるんじゃあッ! わしは金時に会いにきたんじゃあ! せっかちじゃのうッ! 金時何処にいるか知りませんか~!? アハハハハハッ!」
「会話のキャッチボールぐらいしろォォォォ!!」

ヒュンッ!

「おぶッ!」

ネカネは持っていたお客用カップを坂本の顔面にクリーンヒットさせる。だが坂本は額から血が出ても、まだ笑っていた

「アハハハ、最近の美人さんは凶暴じゃの~、そんな顔して中身はゴリラじゃな~」
「誰が凶暴にしているんですか?・・しばきますよ・・」
「あ~悪かったきに、ちょっとちょっかい出したかっただけじゃ、じゃから椅子を投げてくるのは、ちょっと止めてくれんかの~アハハ・・」

ネカネが椅子を持ち上げたので、坂本は額に汗を流して、乾いた笑いをしながら謝った。ネカネはそれに不満そうな顔をしていたが椅子を下ろしてそこに座った

「まったく別世界の人間って・・しかも魔法界じゃない世界って、言葉だけを聞くととても信じられませんが、坂本さんの格好とあの船を見ると、とても今の時代の人ではありませんし・・」
「わしは色んな星を渡っているんじゃが、こんな事になったのは初めてじゃぁ! ほんまにここは地球か~!? 天人とかもいるのか? アハハハハハッ!」
「天人ってなんですか?」
「宇宙人の事じゃ~そんなことも知らんのか~? ネカネさんはアホじゃの~アハハハッ! あ、すんませんわしが本当に悪かったきに許してくれんかの? ・・あのテーブルはヤバイと思うんじゃが・・それわしの頭に当たったらわしは死んでしまうかもしれんの~。もしくは頭をぶったたいた瞬間なんか別の人格になってしまうとかいう。そういうパターンのオチになるかもしれんじゃろ?・・」

ネカネはついにキレて、両手でテーブルを持ち上げ(魔力は使ってません)椅子に座ったまま恐怖で動けない坂本を冷たい目で見下ろしている。

「別人格になっても構いませんよ? コジロウになろうが小次郎になろうがロックオンになろうが私は構いませんから・・」
「アハハハハ コジロウって二回も言っちょるど、ネカネさんは本当にバカじゃ・・」

ゴスンッ!

テーブルが坂本の脳天に直撃する。坂本はふら~っと椅子からずり落ちる

「や・・やっぱり兄さんみたいにはうまくいかんの・・」
「本当に別人格になりましたね、しかも弟の方ですか、もう一回叩けば兄のほうになるかもしれませんね・・」
ネカネは恐ろしい事を呟き、また両手でテーブルを持ち上げる(何度も言いますが魔力は使ってません)

「や、やめるんじゃアニューッ! わし等はわかりあえるはずじゃッ!」
「だれがアニューですか・・アニューは別のキャラでしょ」

ゴスンッ!

「お前等・・こんな世界で満足か・・わしは・・ゴメンじゃな・・」

最後の言葉を残し坂本はガクッと気絶してしまった

「本当に兄のほうになりましたね・・それにしてもこんなにダブルオーのネタやって大丈夫でしょうか?・・」

ネカネはテーブルを元の場所に戻し、坂本は放置して、もう結構な時間になったのでさっさと寝室で寝る事にした。








視点場所が変わりロンドン。空はすっかり夜空になり、一人の少女と一人の男は帰路についていた

「やっぱあんたが楽器弾いてると、お客さんが来てくれるのよね~。あんた最初出てきた時はビックリしたけど、あんたのおかげで修行がやりやすくなったわ」
「俺の方が三味線を弾いてる時に召喚されたからもっと驚いたがな・・なに半人前のくせに召喚魔法なんてやろうとしてんだよ」
「う・・それは言うんじゃないわよ・・」

男は少女に嫌味を言い、何も言えない少女は男を悔しい目で睨みつける

初めて、男が少女の仕事の観察するために同行したのだが「あんた、暇なら客寄せでもやりなさいよッ! じゃないと飯抜きよッ!」と少女に言われたので渋々、ここの世界に来た時に持っていた三味線を少女の隣りで弾いていたら、思いのほかお客には大反響であった。今では占い稼業の少女より儲かっているのが現状だ

「あんたが儲かっているのは癪だけど、私も客が増えてきたし、一応プラスになったのかな?」
「知らねえよ、俺は屋敷にいてもつまんねえから、お前についていってるだけだ。お前が儲かろうがすかっぴんになろうがどっちでもいい」
「あんた本当に性格悪いわよね~・・高杉? 前の感じでもそんな感じだったの? そんな性格だとレディーに失礼よ」
「別にお前に好かれようとは思ってねえよ、お前が俺の世界に返してくれるまで一緒にいるだけだ」
「あんたさっきから「お前、お前」って・・私には『アンナ・ユーリエウナ・ココロウァ』って名前あるんだからねッ!」
「そんな長ったらしい名前呼べるか・・」
「じゃあアーニャでいいわよッ! わがままなんだからッ!」
「どっちがだよ」

少女は、アーニャと名乗った少女はプイッと高杉に顔を背ける。高杉はやれやれといった感じで頭を掻く。そんな感じで歩いていると、アーニャは突然ピタリと止まったので高杉も止まる

「どうしたんだよ」
「あそこのアイスクリーム屋まだやってんだ・・ちょっと待ってて買いに行って来るッ!」

走って近くのアイスクリーム屋に入っていく、アーニャをみて高杉はハァーとため息をついて夜空を眺める

「何やってんだろうなぁ俺は・・あんな生意気なガキとおしゃべりなんて・・んなガラじゃねえのにな・・いつか殺すかもしれねえガキと何仲良くしてんだか俺は・・」

高杉は夜空に向かってそんな事を呟いていた
自分を召喚した魔法使いを殺してしまった場合、どうなるかはわからない。なので一応帰る手段を見つけるまで少女を生かしている・・少女が自分を元の世界に返せるような、魔法使いになれるのは到底期待していない。自分の力だけで帰る、そのために色々と準備が必要だ。今は我慢して少女と共に行動する事にするか・・

「おまたせッ!」

アーニャがアイスクリーム屋から出てきたので高杉はそっちに顔を戻す。右手にチョコ、左手にバニラのソフトクリームを持って、高杉の方にに走ってきた

「なんで二つ持ってんだよ、お前二つも食うのか?」
「食べないわよ二つもッ! これはアンタの分ッ!」

アーニャは高杉にグイッと持っていたバニラを差し出した。高杉は少し驚いた顔を見せる

「なんで俺の買ってんだ?」
「今日は客がいっぱい来たからそのお礼よッ! 勘違いするんじゃないわよッ!」

アーニャがグイグイッとソフトクリームを押しつけてくるので高杉は渋々受け取った

「別に頼んでねえんだ、礼なんか言わねえぞ」
「わかってるわよ、そんぐらい、あんたにお礼なんて言われたら気持ち悪いもん」

高杉に対して軽くため息をつき、アーニャはチョコのソフトクリームを持ち、なめながら歩いて行く。
高杉はまだ歩かずに持っているバニラのソフトクリームをしばし見ていたが、おもむろになめてみた

「甘ぇ・・」

高杉は小さな声で感想を漏らし、そして再び夜空を見る

(俺も甘ぇな・・こんなガキと付き合って・・)
「どうしたの高杉?」

アーニャは後ろを見ると、夜空を見ながら立っている高杉を見て不審に思った。そして高杉は上を見ながら喋る

「アーニャ、明日は雨が降るぞ、占いは休みにしとけ」
「本当にッ!? ああせっかくの稼ぎ時に・・あれ? いま私の名前呼んだ?」
「さあな・・」

高杉は空を見るのを止めて、ソフトクリームをなめながら、質問してきたアーニャを流して、そのまま先に行ってしまった

「待ちなさいよッ! 本当わけわかんない奴ねッ!」

さっさと歩いていく高杉を、アーニャはソフトクリームを大事に持って、早足で高杉の隣りに向かって行った。

四つの絆はやがて繋がる












教えて銀八先生~のコーナー
「物語は10話目に突入~今回の話しはいつもと違う感じになっており、『ここで一区切りして、次回からは新たなスタートにしよう』とかいうバカ作者の考えで決まったんだよ、ていうか俺の出番少ねェェェェェ!!」
「いでッ! 知らねえよッ!」

イライラした様子の銀八が一番前の席に座っている千雨に奴当たりで頭を殴る。それに千雨も怒る

「なんで俺の出番少ねえだんよッ! 主人公だぞ俺はッ! この恨みを誰にはらせばいいんだァァァァァ!!」
「あだッ! 私にはらしてるだろうがッ! さっきから痛えよッ!」

銀八は再び、千雨の頭を殴り、千雨は頭をおさえながらツッコんだ

「ところで銀さん? 今日久しぶりに私達三人そろいましたが、今日もなんかテーマがあるんですか?」

二人のやり取りを見ていたあやかは銀八に質問する。銀八は千雨に奴当たりするのを止めて、頭を掻いて答えようとする

「あ~今日は・・」
「うおォォォォォォォォ!!!」

突然銀八の声をさえぎる雄叫びが、窓の外から聞こえてきた。そして・・

「とぅぅぅぅすッ!!!」

パリーンッ!

窓を割って入ってきたのは、見た目が地味な、眼鏡を付けた少年・・

「読者に対する怒りをはらすためッ! 前回に引き続き再登場ッ! 初代ツッコミ王者、志村新八じゃぁぁぁぁぁ!!!」
「帰れ」
「えェェェェェェ!! いきなり帰れって酷くないですかッ!? 銀さんッ!?」

かっこよく自己紹介したと思っていた新八に、即退出命令を出す銀八。それにすかさずツッコミを入れる新八をみて、千雨とあやかは唖然とする

「銀八・・その人誰?」
「原作『銀魂』のツッコミ担当の新八。本編入りは無いと思われるキャラ、ナンバーワンだ」
「どんだけェェェェ!? 僕そんな不名誉なナンバーワンに輝いているんですかッ!? ていうかいつそんなの決まったんですかッ!?」
「読者の感想を見た作者の考えでだよ、ぶっちゃけお前よりふんどし仮面の方が高えよ」
「うそォォォォォォ!! ふんどし仮面に負けたァァァァァ!!!」

新八は頭を壁に何度もガンガンぶつけて、悔しさを表現していた。そんな新八の乱心にあやかはどん引きである。

「な、なんなんですか、この人は・・本当に銀さんの世界のツッコミ担当だったんですか?」
「よくぞ聞いてくれましたァァァァァァ!!!」
「ひぃッ!」

壁に頭をぶつけるのを止めて、頭から血を出しながら新八はあやかの声にすばやく反応した。思わずあやかも恐くて叫ぶ。

「僕はねぇ・・前回の話しの後、絶対『やっぱりツッコミは新八でしょ』とか『個性がないのが逆に個性だ』とか『新八は俺の嫁』とか様々な応援メッセージが来ると思ったんですよッ! なのになんだよ読者ッ! もう言葉に出来ない程の罵詈雑言・・挙句の果てに『新八はいらないでしょ?』ってどんだけだァァァァ!! お前等の血は何色だァァァァァァ!?」
「いや『新八は俺の嫁』はないだろ・・」

新八のアホ発言に冷静にツッコむ千雨だが、それが誤りだということに気付く。新八は恐ろしい眼光で千雨を睨みつける。

「お前かァァァァァァァ!!! この作品のツッコミ担当とかいう長谷川千雨とかいうアマはッ! このヤロウッ! 女だけという理由で読者に反響もらいやがってッ! ちょっとツッコミが出来るぐらいだろうがッ! 僕はねぇ、銀さんとは長い付き合いですしねぇ・・僕が銀さんの操縦が一番出来るんだァァァァァ!!!」
「アムロ? お前どっちかというとウッソじゃん」
「カテジナさァァァァんッ!!」

銀八の要点の違うツッコミに思わず新八は別世界でのかつての想い人の名を叫んだ

「うるせえよッ! ていうか今回ガンダムネタ多くないッ! どんだけダブルオーの最終回に影響されてるんだよッ!」
「千雨さん大変ですわッ!」
「これ以上の大変って何ッ!? ガンダム知らない人に怒られるよコレッ!」
「これ書いてるときにふと、なの魂の最新話読んだみたら『なの魂』でもダブルオーのネタやってますわッ!」
「ぐはァァァァァ!! めちゃくちゃマズイじゃんそれッ! こっち潰されるよッ!」

千雨は一人、『なの魂』にどう謝ろうか考えていた

ジリリリリリリッ!

「あ~終わったか・・ある意味終わったかもな・・銀八、私疲れたから先に帰るわ・・」

千雨が疲れた様子の声でさっさと帰る支度をした、だがそれを見て新八が不敵に笑う

「ふっふっふ・・逃げるんですか、千雨さん・・だったら僕がこの小説の新たなツッコミ担当にさせてもらいますよッ!」
「無理、帰れ」
「銀さァァァァんッ! なんか僕にドライじゃありませんッ!? 長年の付き合いの僕をそんなに簡単にダストシュートするんですかッ!?」
「『なの魂』とか『東方よろず屋』がお前出してあげてんじゃん、こっちはそんなにいっぱいキャラ出すと混乱するんだよ。作者の能力の差なんだよ。お前は一生本編入りは不可なんだよ」
「くそォォォォォ!! いいじゃん僕がいたってェェェェ!! 僕も銀さんみたいにフラグ立たせてぇんだよォォォォォ!!!」

新八は不満を再びぶつけるために、壁にまたガンガンと頭をぶつける。そんな新八を見て、千雨はポツリと呟く

「銀八と長い付き合いになるとああなるのかな・・」
「まあ、話が進む度にああなるかもしれませんわね・・そうならないよう努力なさったらどうですか?」
「う~ん・・頑張る・・」

新八を見て千雨は、自分の行き方について深く学んだのであった






「次回、第十訓 『友達は自然になるもんだ』をお送りします、そういえば今回生徒の奴来てねえな?」
「最初から教室に来てましたよ~」
「あれ? 誰の声? なんか聞こえたんだけど? 気のせいだよな・・アハハハハ・・」
「先生、やっぱ聞こえてますよね~私の声~?」
「うぉぉぉぉぉ!!! 俺気絶しろォォォォ!!」
「何事ッ!?」

突然銀八が新八の隣りで壁にガンガン頭をぶつけたので、千雨は思いっきり驚いた










銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー
銀八「え~では今回も3通から選ばさせてもらいました。まず一通目『お面君のキャラを洞爺湖の仙人と斬月のおっさんを足して2で割ってみたらどう?』という意見を貰いました・・お面君って誰・・?」
千雨「え~と・・・お面君ってのは銀八が編集前に持っていた物で今は編集が終わったので見ることは出来ません・・・」
銀八「作者の黒歴史」
千雨「それ言ったらお終いだろッ!」
銀八「2通目『刹那のキャラ違くない?』という意見です。もっと来ると思ったんですけどね、一通しか来なかったので逆にビックリですよこれ、なんかヤンデレになっちゃいましたね、通常版刹那も死装束刹那もぶっ壊してしまいました、今度からはキャラの性格を覚えとかなきゃな」
千雨「まあ、キャラの構成覚えとけ作者って感じだな・・」
銀八「3通目~『土方死んでくんない?いやマジで?』・・・・・・・・・・・・俺もマジそう思う」
土方「おいまだ来んのかよコレ? どんだけ俺は死んで欲しいと思われてるんだ?・・」
銀八「とかいって本当は嬉しいんじゃないの~? これで本編入りも早まる可能性があるんだからな」
土方「嬉しくねえよッ! ていうか近藤さんに誰も応援送ってないだろッ!? あの人、落ち込んで枕濡らしていじけてるんだけどッ!?」
近藤「甘いぞトシ、枕どころかシーツ、いや畳まで・・・・・・・」
土方「オイィィィィィィ!!!」



[7093] 第十一訓 友達は自然になるものだ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/09 14:48
真夜中の学校って恐いよね?

これはもはや日本の常識用語である。なぜ恐いかと言うと、『学校の怪談』みたいな学校で起こるホラー物が日本にはめっさあるからである。そのため『夜中の学校=絶対行きたくない場所トップ5にランクイン』となるのである。身近な場所に幽霊とかいると恐いよね? っていう感じのホラー話しが日本には多すぎて人は夜中の学校が恐いという認識になる
そして今、一人の教師と一人の生徒が真夜中の学校に入るために学校の前に立っていた

「なんでまっくらなんだよ?夜中でも電気つけとけよジジィ、俺みたいに『ジャンプを買って、家でくつろいで読もうと思ってたのに、学校に置き忘れてしまいました』と思う奴いっぱいいると思うのに、なんで暗いんだよ?」
「そんな特定な人物、お前しかいないと思うが・・別に暗くてもいいだろ、ていうか必要無いしな、普通見回り以外、誰も来ないからな」

教師の銀八は校門の前で愚痴っていたが、生徒でもあり、同居人でもある、エヴァは冷静に正論を言った。

「ったくよ~こんな事なら、H・R中に読めばよかったんだ・・それを好物は後にとっておこうという魔が差して、夜中わざわざ学校行ってジャンプ取りに行くはめになっちまった・・」
「付添いで来てやった私に感謝しろよ。お前がしつこく誘ってきたからついてきてやったんだ、まあ悪い気はしないがな・・」

エヴァはまんざらでもない様子で、隣りで学校を見ながらしかめっ面をしている銀八に視線を向けたが、銀八はそんなことに気付かず校内へ入っていく

「さっさと行ってジャンプ取りに行くぞ、早く来い小娘、俺から離れんなよ」
「いい年して、ジャンプってお前・・あれ? 私もいい年だったわ・・」

600年は生きてる自分がジャンプ読むほうが、よっぽど駄目じゃね? と、エヴァは心の中で自分にツッコミをいれて、銀八の方へ歩いて行った。






校内の廊下はやっぱり暗かった、今は誰もいない。いるのは顔から、汗を出しながらキョロキョロ周りを見ている銀八と、その隣りで銀八の様子を観察しながら歩いているエヴァがいるだけだ

「銀時? 何、周りを気にしてるのだ? もしかして人に見られたら、校内で淫らな事をしようとしている教師と生徒と思われるのが恐いのか? 私は別に構わんが、むしろなれ・・クックック・・」

銀八の様子があきらかに可笑しいのでエヴァは茶化す。ここで普通銀八が「なわけねえだろうがッ! クソガキッ!」と返してくるのだが、銀八はエヴァが茶化すのを聞いてない様子だった。しかし次の瞬間、エヴァの予想の範囲外の行動をを銀八は行った

ニギッ

「なッ! ぎ、ぎ、銀時ッ!」

エヴァは顔を少し赤らめて、驚いた様子で銀八を見た。なんと銀八が自分と手を繋いできたのだ、こんな事は初めてだ、普段は傍若無人を振るまっている、この男が自分と手を繋いでいる・・何コレ? 周りに誰もいないから、デレフラグでも立ったの? それとも、もしかしてマジで二人で淫らな事を・・ちょっと待てまだ心の準備がッ! 初めてだから優しくしてッ! とか悶々とエヴァがアホな妄想をしていたら、握っている銀八の手に奇妙な感じがあって、エヴァは不審に思った

「銀時・・なんか手が汗ばんでるぞ、お前?・・」
「お前の汗だろ、俺全然汗なんかかかないから、いかなる時でも汗をかかないという修行をつんでるから」
「いや、さっきから顔からポタポタ出てるぞ・・なんかもういままで見た事無い量の汗が出てるぞ、オイ」
「汗じゃない、コレは涙だ。ジャンプを忘れた悲しみを、俺は顔の全身から涙を出して表現してんだ」

どういっても涙じゃないだろそれ・・なんでこんなに汗を流しているんだ・・もしかしたらコイツ・・

「あ、人体模型がエアロビしてるッ!」

エヴァは突然、何も無いところに指差して銀八をひっかけてみた。すると・・

ガタガタッ

エヴァが叫んだ瞬間には既に銀八は、エヴァの手を放し、そばにあったデッカイ壷に腰まで体をつっこんでいた

「お前まさか・・」
「いや魔界への入り口かと」

銀八は壷から顔を出し、くだらない言い訳をするが、その様子を見てエヴァは「ははーん」とすぐに合点がいった

「恐いもの苦手なのか?」
「何言ってんのお前? 俺はただ『ディスガイア』の世界に行こうって思っただけだよ、恐くなんか無えよ」

下手な言い訳をする銀八に、エヴァはニヤニヤ笑って観察している

「そうかそうか、お前の弱点がわかった。幽霊とかそういう類が恐くてたまらないんだな~」
「幽霊なんていねえよッ! 何お前ッ!? 幽霊なんて信じてるわけッ!? そんなもんこの世にはいねえんだよッ! バッカじゃないのッ!?」

銀八が前をステップを踏みながら歩いているエヴァに向かって、全否定するが、エヴァは銀八にニヤニヤ笑いをしながら振り向いた

「どうかな? もしかしたらいるかもしれんぞ? この麻帆良学園にもいるかもな・・フフッ・・」
「は?」

意味深なエヴァの発言に銀八は目をぱちくりして、訳がわからない様子だったが、エヴァはそのまま鼻歌を歌いながら歩いて行った

「おい『世にも奇妙な物語』のテーマで鼻歌やんなッ! 『ドラえもん』とか楽しい歌にしろォォォォ!! あと先に行くなァァァァ!!!」

取り残された銀八は、鼻歌を止めないエヴァに向かって走っていった








第十一訓 友達は自然になるもんだ

相坂さよは一人で教室にいた。こんな夜中なのに、何故彼女がいるのかというと、彼女は学校の範囲外から出られないからだ、せいぜいコンビニぐらいしか行けない。何故なら

「あ~誰も私に気付いてくれません・・やっぱり幽霊だと誰も見えないんですよね~誰かこんな私と友達になってくれないかな・・」

彼女は幽霊だった。彼女の姿は半透明であり、足が無い。地縛霊なので学校の範囲外には行けず、仕方なく教室でゆらゆらと宙に浮いて、ぼやいていた。その時 

ガララッ

「頭テッ○テ~カ 冴えて○ッカピ~カ そ~れがど~した 僕ドラ○も~ん」
「な~に恐くて『ドラえもん』歌ってんだお前は?」
「恐くねえつってんだろうがッ! お前が恐そうだから歌ってやってんだよッ!」

教室の中に突然に入ってきたのはドラえもんを歌っている銀八と、それを面白そうに見ているエヴァだった。
相坂さよはこの二人を見て近づいてみた、もしかしたらこの二人は見えてるかもしれない・・そんな時がよくあるのだ

「すいませ~ん、銀八先生、エヴァさ~ん? 私の声聞こえますか~? 相坂さよです」
「た、た、確かジャンプは教壇に中にあ、あ、あったけ~? さ、さ、さっさと帰るぞ~」
「銀時~何か聞こえないか~?」
「何も聞こえねえけどッ!? お前幻聴が聞こえるのッ!? やばいってッ! 今度病院に行かなきゃねッ! んじゃ帰るぞォォォォ!!」

エヴァはさよを見ながら銀八に話しかけた、だが銀八は否定してさっさとジャンプを持って帰ろうとする

(エヴァさんってもしかして私の事・・それに先生の態度もおかしい・・)

さよは帰ろうとしている銀八の前にふわりと立ってみる。銀八は尋常じゃない汗を出してさよを見る

「こんにちは~相坂さよですよ~先生、見えてますか~?」
「ほら銀時、挨拶してるぞ~」
「未来の世○の~! ネコ型ロ○ット~!! なんでかって僕ドラ○も~んッ!!!」

銀八はさよがドアの前に立っているので開けられずにいた。それによりドラえもんを歌って、気をまぎらわす作戦に入った。 

「エヴァさん、私の事見えるんですかッ!?」
「お前の事はずっと知っていた、そいつもちゃんとお前の事見えてるぞ」
「お前誰と今話してんのッ!? 遂に幻聴と幻覚が見えるようになったのッ!? 急いで帰ろうッ! 今日の占いだとドアから出ては行けないってッ! よし窓から飛ぶぞッ!」

銀八はエヴァとさよの会話をしているのを見てないフリをして、窓から飛び降りようとする。そこを・・

「待ってくださいッ!」

ゴォォォォォォッ! ドシャァァァァァンッ!!

「のわァァァァァァ!!」

大量の机がひとりでに飛び、銀八を窓から逃げないように、机でバリケードが張られた、ポルターガイスト現象である。銀八はその場にへたりこみ、頬がピクピク痙攣している。そこにさよは近づく

「すいませんッ! でも先生私のこと見えてるらしいですねッ! ちょっとお話がしたいんですけどッ!」
「おい銀時もういいだろ? 魔法使いだっているんだ、幽霊だって存在するだろ」
「おおおお俺は何も見えねえよッ! ゆゆゆゆ幽霊ッ!? ばばばば馬鹿言ってんじゃねえよッ! そんな非科学的なもん存在しねえよッ! 大槻教授も言ってんだろッ!? 幽霊なんてしょせんプラズマの塊なんだよッ!」 

銀八はまるで自分に言い聞かせるようにエヴァに叫ぶ。それでもチラチラとさよの方に目を向ける。そして・・

「ホンワカ○ッパ~! ホンワカ○ッパ~! ドォォォォラァァァァ○ェェェェェもォォォんッ!!!」

急に立ちあがり、銀八はさよがドアの前にいない隙に、ドラえもんの歌で雄叫びをあげながら、ドアに向かって全速力で走った。

「先生待って~!!」
「おい銀時、こいつずっとここにいるから毎日会うんだぞ? ここで逃げたら一生つきまとわれるぞ?」

ドアを開けて教室に出ようとする、銀八にエヴァの声が聞こえピタリと止まり、ひきつった顔で後ろを振り向いた。




銀八をなんとか帰らせることを止めて、銀八とエヴァはさよと対極になるように席に座る。(机は全て銀八が直した)エヴァはさよを直視しているが、銀八は目をピクピクしながらジャンプを読んでいた。だがほとんど頭に入ってないと思われる。

「なんでエヴァさん、私が見える事を言わなかったんですかッ!? 何年も一緒だったのにッ! 話しかけてくれたっていいじゃないですかッ!?」
「なんでそんなことをしなければわからんし、そもそもクラスの奴がいる所で私がお前に話しかけたら、奇妙にも程があだろ・・」
「それは、そうですけど・・でも私の事が見える人めったにいないのに、二人も見える人がいるなんて・・驚きました」

エヴァとさよは談話をしているが銀八はまったく入る気が無かった、ただジャンプの同じページを見ているだけで、時折目がぴくぴく痙攣している。

「先生も私の事見えてますよね? なんで見えないフリをしているんでしょうか?」
「こいつは筋金入りの恐がりだからな」
「だれが恐がりだオラッ! 恐いって何ッ!? ホワッツッ!? 誰が恐いって感情を俺に教えてくれッ!!」

思わずエヴァの言葉に反応し、銀八はジャンプを机に叩きつけて抗議する。だが目の前のさよをみて顔がひきつる

「先生やっぱり見えるんですね私の事、よかった~安心しました」
「なななな何言ってんのよ・・俺最近スタンド使いになったから、スタンド見えるの当たり前じゃない・・」
「女言葉になってますよ、先生・・それに私幽霊ですけど?」
「幽霊なんてこの世にいないんだよッ! お前は自分がスタンドだと気付かないのッ!? 幽霊なんていないッ! お前はスタンドだッ!」
「私、スタンドじゃありませ~ん」

銀八は相変わらず苦痛の表情をしているが、思わずさよにかみつく。それにはさよもタジタジだ

「それで先生とエヴァさんにお願いがあるんですけど・・私と友達になってくださいッ!!」
「無理ッ!」
「え~そんな~・・」

コンマ一秒で銀八はさよの願いを断る。これにはさよも涙目になってしまった

「どうしてですか~? やっぱり幽霊とは友達に・・」
「幽霊じゃない、スタンドだッ! スタンドなんかと友達になれるかッ!」
「そんな~そこを否定されるたら、私の存在自体を否定してます~」

銀八はなおも幽霊という言葉に敏感に反応して否定する。そんな銀八の酷い仕打ちにさよはもう泣く寸前だ。
その光景をみていた、エヴァはおもしろい事思いついた顔をして、銀八に顔を向ける

「銀時、私から万事屋に依頼していいか?」
「な、何だよッ!」
「相坂さよと遊んでやれ」
「はッ!?」
「エヴァさんッ! いいんですかッ!?」

エヴァの提案に銀八は恐怖で頬が痙攣し始めた。それと対照的にさよは嬉しそうにエヴァを見る。

「何言ってんの、お前ッ!? そんな依頼できるかボケッ! 友達ってのは何時の間にかなるもんだよって『20世紀少年』のケンヂくんも言ってんだよッ! そういう第三者が無理矢理、友達にさせようとするのは駄目なのッ!! 後でギクシャクしちゃうでしょッ!」

だが銀八はその依頼を却下してしまう、そんな銀八を見てさよの顔は一気に沈んだ

「そうですよね・・やっぱり私なんかに友達が出来るなんて・・う・・うう・・」

いきなりさよが沈んで泣き出したので、銀八は額から汗を出して焦り顔になる。そんな光景を見て、意地悪い笑みを浮かべるエヴァ

「あ~あ泣かしてしまったな、女を泣かすとはお前も結構酷い奴だな」
「いや・・だって・・えェェェ!! 俺のせいッ!? わかったよッ! わかったってッ! 朝までだからなッ!」

追い詰められた銀八はやけくそになり、エヴァの依頼を受け取った。それを聞き、さよは泣きながら顔を上げて銀八を見る

「い・・いいんですか?・・私みたいな幽霊と・・」
「幽霊じゃない、スタンドだッ!」
「どんだけ幽霊を否定するんだ、貴様は・・」

銀八のなおも幽霊の存在を否定する恐がるぶりに、エヴァは呆れながらツッコミをいれた

「でも、何やんだよ? 遊べる道具なんて俺持ってねえし・・木刀と刀でなんかやる?」
「出来るかァァァァァ!! どんなゲームやる気だ、貴様はッ!」
「え~と・・じゃあ私良い物持ってますよ」

銀八の危険物は置いといて、さよは自分の机からゴソゴソと探してみる。そして・・

「ありましたッ! 先生、エヴァさんッ! 『UNO』やりましょうッ!」
「予感してたのが的中したよッ! なんでスタンドってUNOに夢中なのッ!? どういう理屈ッ!?」

さよが嬉しそうに持っているUNOを見て、銀八のツッコミが教室の中に響き渡った





「UNOォォォォォォォ!! 更にドロー4ォォォォォォ!!」
「じゃあ私はドロー4だ」
「すいません先生、ドロー4です・・」
「ふざけんなァァァァァ!!! どんだけ俺を上がらせない気だ、テメエ等ッ!! このパターン何回目でコラッ!」

なんだかんだで銀八とエヴァは机を並べてさよとのUNOでの戦いに白熱していた(特に銀八) ついでに銀八は何時間も経っているのに一回も一番になっていない

「なんで俺等、こんな時間にスタンドとUNOやってんだよ・・ていうか茶々丸が心配するんじゃね?」
「安心しろ、ちゃんと連絡しておいた。「UNOやるから心配すんな」って」
「そんな連絡あるかァァァァ!! いきなり「UNOやります」って言われても「は?」だよッ! 逆に心配だよッ!」

銀八とエヴァが話している光景を見て、さよは羨ましそうな顔をしていた

「なんだか二人とも仲良さそうですね・・私もお二人みたいに仲の良い人とお喋りとかしたいです・・
「仲良くなんかねえよ、ただの腐れ縁だよ・・スタンドだったらスタンドと仲良くなれよ・・」
「いえ私、スタンド恐いんですよ・・」
「なんでお前がスタンドなのにスタンド恐いんだよッ! どういう矛盾ッ!?」
「ていうか相坂さよ、もうスタンドでいいのか?・・」

さよが自分をもうスタンドでいいと認めたころ、空を見るともう朝日が昇りそうだった。もうそんな時間になっていたのだ

「あ・・もう朝になってしまいました・・」

さよは名残惜しそうに空を見つめた。たしか二人が遊んでくれるのは朝まで・・それからはもう一緒に遊んでくれないのかな・・っと少し泣きそうになりながら、さよはそんなことを考えていた。

「おい、もう一回やるぞ。さよ、お前がカード切れ」
「て、あれ?」
「あれ? じゃない、一番の奴がカードをシャッフルするルールだ、忘れたか?」

朝日が昇ってきているのに、まったく帰る気の無い二人に、さよは戸惑った。

「あの~私と朝まで遊んでくれると言いましたよね? もう朝になりそうなんですけど・・」
「誰が今日の朝って行ったんだ?」
「え・・確かにそうですね・・て、えェェッ!?」

銀八がさよの代わりにカードを切りながら、さよに意味深な発言をして、さよは困惑の表情を浮かべる

「朝飯までには帰るがな、どうせまた来るし・・昼休みに万事屋の面子呼んでUNO大会だ、その時に一番になってやるからな」
「そんな・・いいんですか?・・私スタンドですよ?」
「ダチになったらスタンドだろうが、スタンド使いだろうが関係ねえんだよ」
「ダチって・・そんな・・さっきは私と友達になるのあんなに嫌がっていたのに・・」

さよは自分の疑問を、カードを配っている銀八に問いかける。銀八は頭をポリポリと掻きながら答える

「もう夜中ぶっ続けてUNOやってんだぞ? 眠くて、もうお前がスタンドだろうがどうでもよくなってきたわ・・」
「ほう、遂に幽霊攻略したか? 銀時?」
「幽霊じゃないッ! こいつはスタンドだッ! 幽霊なんていないんだよッ! いい加減に気付きなさいッ!!」
「やっぱり恐いものは恐いのか・・どこまで怖がりなんだ・・」

銀八のダメっぷりに呆れるエヴァだが、さよは涙を浮かべて銀八を見る

「すいません・・私なんかと友達になってくれて・・ヒック・・」
「お前泣きすぎじゃね? そこまで泣く奴いないよ普通? 嬉しいなら笑っとけ」
「えへへ、そうですね・・」

銀八の言葉にさよは泣きながらも笑みを浮かべた。外はすっかり太陽が昇っていた







「UNOォォォォォォ!!! 更にドロー4ォォォォォ!!!」
「ドロー4だ」
「私もドロー4」
「ドロー4ですわね」
「はいドロー4~」
「すいません、先生・・ドロー4です・・」
「いい加減にしろォォォォォ!!! このUNO、ドロー4どんだけ入ってんだよッ!? ていうかどんだけお前等、俺をどん底に落とすんだよッ!! 合計24ドローって遊戯王ならウハウハじゃねえかァァァァ!!」

昼休みの時間、『万事屋 銀ちゃん』の部屋にて、銀八、エヴァ、千雨、あやか、和美、そしてさよが椅子に座りUNO大会をおっ始めていた。ついでに茶々丸もいるが静かに観戦していた

「んにしても幽霊とUNOやるって・・お前どんだけ変な奴と仲良くなれんだよ・・にしても私にはその幽霊見えねえからカードだけ浮いてて恐いんだけど・・」
「何かアイテムを使えば、相坂さよを見えるように出来るかもな・・まあ葉加瀬と超に頼んで作ってもらうか」
「ありがとうございます、エヴァさんッ!」
「千雨、幽霊じゃねえッ!! スタンドだァァァァ!!」
「イデデデデッ!! お前どんだけ幽霊苦手なんだよッ!!」
「それにしてもお化けが苦手なんて・・可愛いところもあるんですわね・・フフ」
「ほう・・私の目の前で、よくもそんなことを言えたな、雪広あやか・・」
「私のカメラにさよちゃん、写せるよ、ほらけっこうカワイイじゃん」

千雨に銀八がコブラツイストをかまして、いいんちょの発言にエヴァは反応してお互い睨み合いに勃発して、茶々丸はその間でオロオロしていた。和美はさよを持っていたカメラでとって、「ほら先生、心霊写真~」と千雨をコブラツイストしている銀八に写真を見せるが「心霊写真じゃねえッ! スタンド写真だッ!」っと言い放ち、空いていた足で和美の顔面に蹴りを入れ、和美は「おふッ!」と叫び吹っ飛ぶ。そんな慌ただしい、光景を見てさよは満面の笑みを浮かべた

私、友達が出来ました












教えて真撰組のみなさんのコーナー(特別編)

「お久しぶりですッ!! みんなの太陽の近藤ちゃんでェェェェェすッ!! そういえば今回からこの作品も第二章的な感じになるんだが、変更点を説明するとな、まず本編でキャラ一人の視点ではなく全体の視点に変更されたんだよッ! まあこっから色んな銀魂キャラも出るし、キャラ一人の視点よりそっちの方がいいと思ったんだよなッ! 誰が本編入りすんのかな~楽しみだな~読者の諸君ッ!?」
「おい今日は一話完結だろ? なんで俺達ここにいるんだよ?」
「それがですね、前回の話しの後、近藤さんへの応援のメッセージがズラリと来たんですよ。ということで近藤さん、すっかり舞いあがって、突如、コーナー第二回やっちゃいました」
「いや何やってんのお前等? 勝手に人のコーナー潰すんじゃねえよ、お前等なんて誰もお呼びじゃねえんだよ?」

ハイテンションで教壇で自己紹介する近藤の隣りで土方に沖田が説明する。だがそこには銀八の姿もあり、面白くなさそうな顔で、三人を睨んでいた

「でも旦那、いっぱい近藤さんに応援が来てるんですよ? 「ミンチにしてくれ」とか「死んでくれない?」とか」
「それ応援? さっさと殺してくれという、読者のメッセージだろ?」

沖田の言う応援の言葉に銀八は疑問をぶつけるが、そこの近藤が食ってかかる

「なんだとッ! 確かに俺のアンチはいるが、他にも応援の言葉がいっぱい来たんだぞッ! なあトシッ!?」
「近藤さん、確かに応援のメッセージはあったけどアンタの名前じゃなくて『ゴリラ』って呼んでる奴がほとんだ」
「あれェェェェェェェ!? なんでゴリラッ!? ゴリラじゃないよ俺ッ!? みなさ~んッ!! 俺はゴリラじゃありませんッ! 地球人ですよォォォォ!!!」

土方の痛烈な一言に近藤はあわてて、読者に向かって叫んでいる。だが土方はそんな近藤を見て軽くため息をついた

「別に本編入りなんてしなくていいだろ・・俺はガキ共と戯れるなんてゴメンだな」
「あ、そうだ土方さん、1つお祝がありやすぜ」
「なんだよ? 感想が100件超えた事か? とっくに知ってるぞ」
「いえ、土方さんの本編入りが具体的に絞られてきました。確か20話までには出るそうです」





沖田の衝撃的な告白に場の空気が一瞬凍った。

「へ?・・なんで俺なんだよ?・・・・」
「え~と、作者がストーリー上必要と思ったからです、本当は土方さんもっと早く出る予定だったんですけど、都合上、第二章で出す事になりましたそうですぜ」
「トシィィィィィ!!! どういう事ォォォォォ!? 俺より先に本編入りッ!? じゃあ俺達も一緒に出るんじゃないのッ!?」
「いえ、土方さんだけです。もう具体的に決まってるようですよ、俺と近藤さんはまだ未定です」
「ウソだァァァァァァ!! みんなが俺の晴れ舞台を待っているのにィィィィ!! なんで俺の出し方決めてないんだよォォォォ!!」

近藤は土方につかみかかり、涙を出しながら訴えるが、沖田が冷静に答えを言い、それを聞いた近藤はその場に大の字でふさぎこみ、泣いてしまった。そんな上司を見て土方は大きなため息をつき、ポケットからタバコとマヨ型のライターを出してタバコに火をつけ、気分を落ち着かせる。煙を吸い吐いていると、沖田が土方に話しかけてきた

「いや~土方さん凄いですね~近藤さんを踏みにじってまでも本編入りしたかったんですね~正に鬼の副長」
「いや、作者が勝手に決めたんだから俺は何もしてねえよッ! この権利、近藤さんかお前に譲ってやるよッ!」
「確かに、俺もあの小っこい桑谷ボイスのあの生意気なガキをどうシメてやろうか思ってますけど、ここはその役割を土方さんに任せます」
「おい、その発言でお前今、そのガキのファン全員敵に回したよ? ヤバイよお前? 怒られるよコレ?」

沖田のS告白に土方は額に汗を出しながらツッコミを入れる

ジリリリリリリリッ!

「うし、時間だお前等帰れ、二度と出てくるな」
「ほら終わりですよ、近藤さん帰りましょう?」
「お・・俺・・帰りたくない・・」
「あんた子供ッ!? ほら泣いてないで帰るぞ、近藤さんッ!!」

その場を動こうとしない、近藤を沖田と土方が無理矢理その体制の近藤を引きずって、教室から出て行く。
そんな光景をみて銀八はため息をつく

「ただでさえ『キャラいっぱい出して大丈夫?』ていう感想も来てるのによ・・あんな奴等が本編に入ってきたらどんどんカオスになるだろうが・・ていうかなんでマヨラーが本編入りなんだよ?・・頭おかしいの作者?」

ガララッ

「やっと・・僕の出番ですか・・一応原作の主人公でもあるんですけど・・」
「お~ネギ、この小説ではちょい役ばっかの原作の主人公」
「そんなこと言わないで下さいよッ! 結構頑張ってますよ僕ッ!?」

教室に疲れた調子で中に入ってきたのは3年A組の担任のネギ・スプリングフィールドだった。それを銀八が拍手でお迎えするが、言ってる事は完璧に嫌味である

「次の話って読者の意見をネタにした話しだっけ?」
「そうですね~作者もネタ切れでしょうか?」
「そんなもん毎日だっつうの」
「毎日が修羅場ですもんね・・バイト中にネタ考えるって・・」







「次回、第十二訓『誕生日のプレゼントはプライスレス』をお送りします、銀さん僕やっと出番ですよ・・」
「お前なぁ、銀魂の某ツッコミメガネなんか見てみろよ、感想であいつ限定で苦情殺到してんだぞ。あいつよりはお前全然幸せだよ?」
「いや名前で呼んであげましょうよ・・可哀想でしょうがないです・・」

銀八の冷たい言葉にネギはその少年を哀れと感じていた、そしてまだ自分はやっていけてると感じた。









沖田君のそこんとこ詳しくのコーナー
沖田「ど~もまた会いましたね、でも今回返せそうな質問が一件しか無かったので・・『銀さんはいいんちょと仮契約しないんですか?』という意見を貰いました、土方さん、『いいんちょ』、『仮契約』って何ですかィ?」
土方「知らねえよ、万事屋に聞けよ、俺はあっちの世界の事はなんにも知らねえよ」
沖田「じゃああっちの世界の人を・・」
ラカン「ぶっちゃけて言うとキスすることだなッ! そうすると従者がパワーアップして主人を守る力が強まるんだよッ! つまりこれは『銀さん』と言う奴が『いいんちょ』っていう奴とキスをして、『いいんちょ』の能力を強化、もしくは発生させるという意味だッ! 短絡的に言うとこんな感じだなッ! あばよッ!」
土方「今の誰ェェェェ!?」
沖田「近藤さんの飲み友達です」
土方「なんで近藤さん、あっちの世界の友達作ってんのッ!? 何今のオッサンッ!?」
近藤「いや、たまたま飲んでたら気が合ってさ、俺を励ましてくれたいいオッサンだった」
土方「何処で飲んでんたんだよッ!?」 
近藤「スナック竜宮城だよ、ほらトシも行った事あるじゃん?」
土方「なんであっちの世界のオッサンが俺達の世界にいんのォォォォォ!?」
沖田「あれですよ、オッサンの友情は世界の壁を越えるって奴ですよ」
土方「どんなオッサンの格言だよッ!? ていうか常識ぐらい守れよッ!」
沖田「いいじゃないですか、このコーナーなら世界の壁ぶっ壊しても」
土方「よくねェェェェェェェ!!! どんだけぶっ壊す気だァァァァ!! ていうか質問に答えろォォォォォ!!!」



[7093] 第十二訓 誕生日はプライスレス
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/06/09 00:56
「う~ん・・どうしようかな・・」

ネギは自室に閉じこもり、机にもたれて悩んでいた。今日は同居人のとあるイベント、その為、ネギはその同居人にやることがあった

「何あげればいいんだろ・・アスナさん、欲しいもの教えてくれないからな・・」
「ネギく~ん? いる?」
「うわッ! 木乃香さんッ!?」

悩んでいたネギの所に木乃香が部屋を突然、ひょこっと覗いてきた。これにはふいを突かれネギも驚いた

「朝からネギくん、何してるん?」
「いや、今日の事で困ってんですよ・・」
「アスナの誕生日? なんや、誕生日プレゼントを考えてたん?」
「はい・・何あげればいいのかわかんないんですよ・・」

今日は同居人でもあり、自分の生徒でもある、アスナの誕生日。ついでに今はアスナは新聞配達のバイトのためいない。誕生日を祝うのは多分今夜だ、しかしネギはプレゼントを買ってない所か、何を買うかも決めてないのだ。
最初、ネギはアスナにプレゼントで、欲しい物を聞いたのだが「ガキのくせに、んなこと考えなくていいのよ、アンタから貰うものなんて、どうせロクな物じゃないんでしょ? 気持ちだけで十分よ」と適当に扱われた。

「でもやっぱりアスナさんには色々お世話になっているし・・やはり、お礼をしないと駄目だと思うんですよ・・だからアスナさんが喜びそうなものを考えているんですが、全然わかないんですよ・・」
「そうやな~オジサマ好みしかわからんもんな~、でもそれじゃあプレゼントわからんし・・誰かそういう事にアドバイスしてくれる人・・あ、そうや! ならあそこに相談行ってみればいいやん!」
「相談って誰にです?」
「決まってるやん、あの人の所や」

悩むネギを見て木乃香がひらめいた事は、ある人の元へ相談に行かせる事。この事態に適材かどうかはわからないが、一人で悩ませるより、その人と考えた方が解決できるかもしれない。だがネギは不安な表情だ。

「もしかして、あの人ですか・・? あの人は人に物をあげるタイプじゃないと思うんですが・・」
「大丈夫やろ、なんでも屋みたいなのやってるんやで、きっと力になるはずや」
「う~ん・・」

木乃香の強い押しにも、少し不安を抱えているネギ。だが今は藁にもすがりたい状況だ、背に腹は代えられない。そう思っているとき・・

バンッ

「ただいま~、んでおやすみ~」

新聞配達を終えて帰ってきたアスナは速攻で2段ベッドをかけ昇り寝てしまう。あまりにも俊敏さにネギと木乃香はおかえりも言えず、呆然と、もう寝ているアスナを眺めていた

「アスナ、このままじゃまた遅刻するかもしれへんな・・」
「新聞配達で疲れてるんですよ・・ていうかアスナさんは別にバイトしなくてもいいんですよね?」
「まあアスナは借りは返す性格やからな、ああやって新聞配達の給料で学園にお金返してるんやけど・・バイトのせいで遅刻ばっかやと学園側には難しい問題やね・・」

アスナには両親がいない。ある理由でこの学園で世話になっており学費、生活費等、免除で暮らしている。しかし
頼りっぱなしは行けないと思い、少しでも恩を返そうと、新聞配達の給料で学園側にお金を渡しているのだ。まあバイトのせいで寝坊して遅刻することが少なくないので、学園側は学業に専念して欲しいというのが意見だが

「アスナさんに渡すプレゼント・・あの人ならわかるかな・・」
「まあ、あの人もアスナみたいなアホっぽさがあるし、わかるんやない?」
「アホっぽさって・・でもなんだかんだで、生徒のことも考えてるし・・親身になって考えてくれると期待しますよ、放課後に行ってきます」

ネギはもう既に爆睡している、アスナを見ながら、頼もしい相談相手の事を考えていた












第十二訓 誕生日プレゼントはプライスレス

「いや知らねえよ、なんであのガキに渡すプレゼントを、俺が考えるんだよ? ていうかお前みたいなガキが、年上の女に渡す事自体わかんねえよ」
「だから、お世話になっているお礼で・・」
「だったらそうだな、現金渡せばいいだろうが。結局人間が一番欲しいのはマネーだよマネー。『カイジ』の利根川さんも言ってたろ、『金は命より重い』って、それぐらい人の欲望の塊なんだよ金っていうのは。諭吉を数百枚ぐらい用意して、「今までのお礼だ、てめえの欲しい物はコレだろ」って言って投げつけてみればいいんじゃね?」
「なに生々しい物をオススメしてくるんですかッ!? 現金直渡しを誕生日でやるのは駄目ですってッ! 物でお願いしますッ! あとそんなに僕お金持ってませんッ!」

学校が終わり放課後。『万事屋 銀ちゃん』には『アスナのプレゼントを一緒に考えて欲しい』という依頼をした、ネギが客用のソファに座っていた。だが銀八はその依頼を聞いてやる気を無くしていた。(ついでに、この時の銀八の服装は万事屋モードで、和服を着ている)
自分の椅子に座り、頭の後ろに両手を回しめんどくさそうな調子で答える、銀八のやる気ゼロの態度に、ネギは深いため息をついた。
だが万事屋メンバーは銀八のみではない

「ネギ先生が悩んでいるんです、私は協力しますッ!」
「ありがとうございます、いいんちょさんッ! 便りにさせてもらいますッ!」
「あの人とは長い付き合いです、きっとお役に立ちますわ」

ソファに座っているネギの隣りにさっそうと座ってきたのは、雪広あやかだ。ネギの相談をこころよく協力する事を誓い、ネギは感激する。

「千雨さんや、銀さんもなんか考えてくださいッ! これも依頼ですよッ! 是非解決しなければいけませんわッ!」
「あ~めんどくさいんだけど・・私、神楽坂とは付き合いないからパスで」
「俺も、めんどくせえしあいつとは仲悪いからパスで」

あやかは向こうのソファで肘かけて座っている千雨と、その隣りに座ってきて、相変わらずやる気のない銀八に向かって呼びかけるが、二人とも駄目駄目だ。 

「いや、なんですかそのけだるさはッ! お願いしますッ! 特に千雨さんは女性なんだからそういうこと、わかるでしょッ!? 男性から誕生日プレゼントも一つや二つ・・」
「・・いや私、男からプレゼント貰った事無いんだけど・・」
「あ・・すいません・・」

千雨の地雷を踏んだのか、あやかは思わず謝る。千雨はリアルで男とは一切、話した事さえ非常に少ないのだ、プレゼントなんて無いし、無論、色恋も無関係である。唯一対等に喋る男は銀八のみだ。そんな事を思い出し、千雨のは軽く落ちこむ、だが、銀八は軽く笑い、隣りにいる千雨を親指で指差して、あやかに向かって口を開いた。

「こいつが女性に渡すプレゼントなんてわかるわけねえだろ、色恋なんぞと無縁に決まってんだろうが、こいつはなぁ、リアルの世界ではこんな地味メガネだが、ネットの世界だとなんとネットアイド・・」

ズボッ!!

「ギャァァァァァァ!!!」
「は、長谷川さぁぁぁぁんッ!?」
「千雨さんッ! 銀さんが凄い事にッ!」

銀八が言葉を言い終わる前に、千雨がソファの上に立ちあがり、座っている銀八の鼻に、自分の指を突っ込ませ、そのまま片手で持ち上げる。銀八はあまりの痛みに悲鳴を上げ、ネギとあやかもこの光景を見て、思わず叫ぶ。

「銀八ィィィィ!! 私との約束を言ってみろォォォォ!!」
「いだだだだだッ!! 『長谷川千雨の秘密をバラす、もしくはバラそうとしては、決してあってはいけない』でありますッ!!」

完全にキレている千雨が、指二本で銀八を持ち上げ、その状態の銀八に問う。あまりにも痛いので、銀八は思わず敬語を使ってしまう。

「その通りだァァァ!! 銀八ィッ! 貴様は私との約束の契りを交わしたのにそれを破ったァァァ!! よって鼻フックデストロイヤーの刑に処すッ!!!」

ブンッ!!

「ギャァァァァァァ!!!」

ドォォォォォン!

銀八はそのまま千雨に投げられ、壁に激突する。そして銀八はゆっくりと床にドサッと落ち、動かなくなった。
その惨劇を見た、ネギとあやかはただ呆然とその光景を見ていたのだが、千雨がゆっくりこっちに振り向いてビクッ! とする

「・・お前等何か聞いたか?・・」

千雨の目は鋭く、ネギとあやかを見る。二人は黙って思いっきり首を横に振って、否定する。それを見た千雨は「それならいい」と呟き、銀八が倒れている方に行き、銀八を起こそうと体をゆすって、銀八の頭をグラグラさせる。

「あの二人ってなんで一緒にいるんですかね・・」
「私にもわからないことですわ・・」

銀八の両頬をビシッ! ビシッ! と叩いている千雨を見て、ネギとあやかは小言で呟いた。





「・・鼻付いてるよな・・なんかほっぺも痛いんだけど・・まあいいや、ネギお前の依頼受けてやるよ、報酬料は俺の耳鼻科の診察代で手を打とう」
「本当ですか? ありがとうございます・・ていうか大丈夫ですか?・・」
「それはお前から金もらって、医者に見てもらってからわかることだ・・」

ようやく覚醒した銀八は、自分の椅子にもたれかけるように座り、鼻をさわりながら、ネギの依頼を承諾する。考えてみれば、プレゼントを提案するだけで、報酬が貰えるのだ。こんな楽な仕事は無い、貰ってさっさと病院に行こう
、と銀八は思ったのだ。

「で? 具体的にどんな物が欲しいと、ヤツは言ってるんだ?」
「それが・・アスナさん言わないんですよ・・ていうか欲しい物ありませんかも・・」
「おいおい、それじゃあ何買っていいのかわかんねえよ、だるいから、『アメトーーク』のDVDセットでいいだろ? 全巻買うと、『ケンコバ特集』が特典でつくぞ」
「いや、それは受け取らないですよッ! いやいいんですけど、プレゼントには向いてないでしょッ!? それにケンコバの特集は女子中学生にはNGですッ! 僕も無理ですッ!!」

銀八の提案に、ソファに座っているネギが即座に却下する。確かにケンコバ特集は子供には見せられない。

「フッフッフ・・お困りのようですわね、ネギ先生・・」
「いいんちょさん! ていうかなんで壁にもたれて腕を組んでるんですかッ!? いつの間に移動したんですかッ!? あとさっきからずっと困ってるって言ってますよねッ!?」

何故か、どこぞのお助けキャラみたいに、あやかは壁にもたれて腕を組んでいた。思わずネギもそこにツッコんでしまう。だがあやかはそのツッコミをスルーしてネギの隣りに座りに来た

「ネギ先生、そうゆうことはまず女性に聞く事です。私がネギ先生の疑問に答えてあげましょう・・そして必ずやあの人が、死ぬほど喜びそうな、ていうか死んでしまうほどのプレゼント情報を提供しますわッ!」
「いや、死なせないで下さいッ! 殺傷能力の無いプレゼントの情報にして下さいッ!!」

あやかの危険発言を聞き逃さず、ネギがあわててツッコんだ

「じゃあまず千雨さん、1つ女性が欲しがりそうなものを」
「いや私にふるのかよッ! お前だろ普通ッ! え~とじゃあ花束とか?」
「ヒネリのねえ答えだな、そこはボケろよ」
「いや、大喜利じゃないんだからボケる必要無いだろッ!」

千雨のありきたりな答えに、銀八はダメ出しをする。あやかも千雨の答えを聞いてため息をついた

「千雨さん、渡す相手はあのアスナさんですよ? 花なんて渡したら、あの人がモリモリ食べてしまうという、オチですよ?」
「いやさすがに花は食わねえだろ・・」
「でも食用花という手はありますわね・・」
「だから何で食う前提ッ!? もらったモンなんでも食うと思ってんのッ!? あいつ、花に興味無いんだろッ!? だったら受け取らない、それだけじゃんッ!!」

あやかの冷静なズレた分析に、千雨は立ちあがり叫ぶ。そんな中、銀八はネギに顔を向ける

「とりあえず花は駄目だな、お前も見たくないだろ? 目の前で薔薇が食われていく様を」
「いや、銀さんも食べると思ってんですか・・いくらアスナさんでも食べませんよ・・ていうか薔薇なんて食ったら、口の中血だらけですって・・」
「ということでここは『内P』のDVDセットにするしかねえな」
「あのDVDでオススメするの止めてくれませんッ!? しかもお笑い系のッ!?」

銀八の提案をまたネギは一蹴する。銀八は頭を掻いて「んだよ~」と言いながら立ちあがり、千雨の隣りにまた座る。そして4人での『アスナのプレゼント会議』が始まった

「とりあえずアイツ、オジコンだろ? だったら新田先生をリボンで巻いて、渡してみろよ」
「いやですよッ! ていうか、そこでなんで新田先生をチョイスしたんですかッ!?」
「じゃあ、大量の生肉はどうでしょうか? アスナさんきっと喜んで、もらった瞬間食らいつきますわよ」
「だから、食わねえよッ! お前本当にアイツと幼馴染ッ!?」
「よし、じゃあ遊戯王のパック5つでいいだろ?」
「どんな、低コストのプレゼントですかッ!? あと何故に遊戯王のパックなのかわかりませんッ!?」  
「そうですわ、パックの中身に『キラートマト』とか『ゴースト王 パンプキング』とか『デーモンの召喚』とか入ってたら、食い物と認識して食べると思いますし」
「食わねェェェェよッ! そこまでバカだと思ってんのッ!? てか『デーモンの召喚』は絶対無いからッ!!」
「じゃあ高くなるが『やりすぎコージー』のDVDセットでいこうぜ」
「だからお笑いDVDは止めましょうッ!? しかも妙にマニアックですッ!」
「もしかしたら、やりすぎコージーの表紙の今田さんを魚と認識して・・」
「食わないからねッ! ていうか謝れッ! 神楽坂と今田さんに謝れッ!!」

散々議論を交わすが、一向に話しが進まない。こうしてる間にもタイムリミットは刻々と迫ってきている。もう夕方だ。

「あァァァァァァ!! やばいですってッ! まだ決まってもないのに、こんな時間ですよッ! どうしましょコレッ!?」

ネギが部屋の時計を見て慌てているが、銀八には冷静に考えていた

「よし、最後の一手だな・・ネギ、いますぐデパート行って、『人志松本のすべらない話』のDVD買って来い、間違い無くイケる」
「銀さん、なんかお笑いのDVDに呪われてるんですかッ!? そんなにアスナさんにお笑い見せたいんですかッ!? どうなればイケるんですかッ!?」

銀八の最後の一手もネギはまたもや、却下する。しかし本当に何を渡せば良いのかわからない・・ネギが頭を手で押さえていると・・

「困っているようだな・・」
「えッ!?」
「誰だッ!?」

突然、部屋の中のどこからか、声が聞こえた。ネギと銀八は周りを見わたすが、声の持ち主は見当たらない。しかしいきなり、掃除用具のロッカーがガンッ! と開き、人が出てきた

「他人のプレゼント渡しにも協力するとはな・・本当に銀八先生はおせっかい焼きといえるな」
「お前は、あの時にいた・・」
「龍宮真名だよ、銀八先生あの時はお世話になった」

ロッカーの中から突然現れたのはA組の誇る、身長とプロポーションを持つ、そしてプロの仕事師でもある、龍宮真名だった。それにしてもよく、ロッカーの中に入れたのかは謎である。

「なんでお前がここの? ていうかお前ロッカーにいつからいた? なんか雑巾臭いよお前?」
「フッ、銀八先生が来る前の一時間前には待機していた。ずっと見てたんだが、あまりにもピンチに見えたので思わず出てきたのさ」
「いや長すぎだから・・ていうか一時間前ってそれ授業の時間じゃね? あとピンチになったら掃除ロッカーから出てくるお助けマンってどうよ? 」
「まあお助けマンは本業じゃないよ、本当の目的は銀八先生、貴方だ」
「は?」

龍宮は銀八に近づいて、銀八に指差す。だが銀八は頭の上に『?』を出していた。それでも龍宮は話しを続ける

「銀八先生、貴方の強さは凄い。あの刹那に勝ち、更には妖刀の力を持つ刹那も救う事が出来た。その強さは一体どこから出てくるのか、私は知りたくてね。腕力でも能力でもない、貴方自身の中の持つ強さを」
「それで俺の事知るために、ロッカーで雑巾まみれで待機ですか? こうゆう待ち伏せ作戦は初めてか?」
「いや、確か9話が終わってからずっと尾行やら、待ち伏せしてたな・・回数はわからないな」





しばし凍る空気、銀八、千雨、あやか、ネギは、真顔で宣言した龍宮を見て固まる。しばらくして、銀八がやっと口を開く。

「え? んじゃ何? 俺のプライベート覗きを満喫してたって事?」
「当たり前だ、エヴァの家ににいる時の先生、授業している時の先生、万事屋をやっている先生、ジャンプ読んでいる先生、風呂に入って体を洗っている時の・・」
「警察呼べェェェェェェ!!!」

銀八が立ちあがり、他の三人に向かって叫ぶ。もはや立派な犯罪行為だ

「何が、強さが知りたいだよッ! ただのストーカーだろうがァァァ!! こっちにはストーカーキャラいないと思っていたのに、いたよッ! ここにッ! こんな所にストーカーのスペシャリストがいたよッ!!」
「ストーカーのスペシャリストじゃない、スナイパーのスペシャリストだ。」
「うるせえェェェェェ!!」

銀八はドロップキックを龍宮にかます、そのまま龍宮は「わぶッ!」と叫び、後ろに吹っ飛んで倒れた

「じゃあ警察呼びますわね?」
「射殺許可もしてくれ」
「いやマジで呼ぶのッ!? しかも殺る気ッ!?」
「さすがに警察沙汰はマズいですよッ! まあ確かに犯罪ですけど・・」

あやかは事務机に置いてある、黒電話の受話器を取り、淡々とダイヤルを回していた。これには千雨とネギも慌てる

「いいんちょッ! お前が怒るのもわかるけどさッ! ここは落ち着こうッ!?」
「私は平静ですよ、あ、警察ですか? すいませ~ん、ストーカーを一人射殺してくれません?」
「ちょっとォォォォ! 第一声が普通じゃないですよッ! あと、いいんちょさん、目恐いですよッ! なんか「写輪眼発動するんじゃない?」って思うえるぐらい恐いですってッ!」

恐ろしい目をしているあやかを、千雨とネギは必死に電話を奪おうと躍起になっていた。だがそんな事をしている時に、問題の張本人の、龍宮がやっと起き上がった

「ふ、安心しろ、雪広あやか、私は先生にそんな感情は持っていないよ」
「なッ! 別に私はッ!」
「私が持っている感情はどちらかというと尊敬に近いよ、そんなことより・・」

顔が少し赤くなっている、あやかをほっといて、龍宮はもう椅子に座っている銀八に向き直った

「困っているんだろ? 神楽坂のプレゼントがわからないそうじゃないか?」
「その言い方だと、てめえはわかってるようだな、教えてもらおうかストーカー野郎」
「ストーカーじゃないスナイパーだ、まあいい、ああいうタイプは物じゃなくても喜ぶ事があるだろ? 物じゃなくても喜べるプレゼントは?」
「物じゃねえ、プレゼント・・あ~、ストーカーにしちゃあ上出来な提案だ」
「私の性には合わないがな・・やるかどうかは先生方に任せるよ」
「おい銀八もしかして・・」

4人は龍宮の言うプレゼントを理解した。銀八は椅子から立ちあがり、そんな三人に指示を出す

「あやか、クラスの奴等に連絡しろ、無論アイツ以外な、8時にA組の教室に来いってな、あと食い物持って来いって行っとけ、木乃香にも伝えておけよ、あのバカに悟られるな」
「はいッ!」
「ネギ、あいつを連れて来い、あいつが嫌がったら、殴るのを許可する」
「そんな許可いりませんよッ! でも連れてくればいいんですね? わかりましたッ!」
「俺はジジィの所に行って、「ある事をやるから、A組に近づくな、抜くぞ」と脅しておく」
「あの~もしかして、銀さんがここの最高権力者なんですか?」
「千雨は家に帰って『コードギアス』の論文書け、以上だ。よし、それぞれ行動開始」
「「はい!」」
「いや待てェェェェェ!!」

なんか一致団結している感じだが、一人明らかに不遇な者がいた

「なんで私だけ、家帰れッ!? しかもなんでギアスの論文を書かなきゃいけねえんだよッ!」
「テーマは『CCの声ってリィンフォースと同じって本当?』だ、最低でも3000文字は書け」
「しかもテーマあるんかいッ! マニアックだしさッ! 3000文字も書けねえよッ! つうか書かねえよッ!」

結局、千雨は銀八と一緒に学園長室に行く事になった。そして、アスナのプレゼント作戦がスタートした






約束の時間10分前。銀八は3年A組にいた。無事に学園長を説得し(わかると思いますが、ヒゲ抜きました)あやかもクラスを呼ぶ事に成功し、今はA組メンバーが教室の中である事を急いでやっていた

「はい、ちゅうも~く」

銀八教壇に立ち、パンパンッと手を叩いて、クラスメンバーをこちらに注目させる

「じゃあテメエ等、打ち合わせ通りにいくぞ。アドリブもOKだが、滑ったらこの刀の餌食だ」
「はい、先生滑った時のペナルティが重いです、ていうかその刀本物なんですか?」

朝倉和美が手を上げて銀八の背中に差してある刀にに質問する。銀八は頭を掻きながら

「これはな~俺が冨士山の仙人に貰ったありがた~い刀だ」
「違うだろッ! それはそんな刀じゃないッ!」
「じゃあ、どんな刀だ、言ってみろよせっちゃん?」
「いや・・それは・・」
「はい次行きま~す」
「こいつに・・刀預けるんじゃなかった・・」

銀八に自分の愛刀を渡して刹那は深く後悔した

「ということでテメエ等、もうすぐターゲットが来る。最後になんか意見あるか?」
「あるアルッ!」
「あるある? まあいいわ、言ってみろ・・」
「銀八先生、私と勝負するアルッ!」
「いや、なんで俺なんだよ、このイベントの事の意見聞いてんだよ・・」

いかにもチャイニーズ臭のある、クーフェイが手を上げた事態、銀八は少々嫌だった。実は何回も勝負しろ、勝負しろとしつこく付き纏われているのだ

「じゃあ、俺と勝負したかったら、俺の一番弟子の佐々木まき絵を倒してみろ」
「え・・いや先生、私先生と話した事もありませんけど・・」
「現在進行形で話してるだろ、よし神楽2世、俺の弟子を倒してみろ」
「わかったアルッ! いくアルよ、まき絵ッ!」
「いや、クーフェイもなんで何も疑問にしないのッ!?」

銀八の悪ノリの対象に偶然なってしまった。佐々木まき絵はクーフェイに襲われ、「ちょッ! ストップッ!スト・・ギャァァァァ!!」と悲鳴を上げていた

「よし、バカがエサを食っているうちに、奴等が来るのを待とう」
(あいつ本当に鬼畜だな・・)

銀八の鬼畜っぷりを見て千雨は心の中で呟いていた。

しばらくして、銀八は一人でボーっと壁にもたれて立って、クラスの会話を眺めてたり、まき絵がクーフェイにまだ襲われている所を眺めているだけだったが、突然銀八の真後ろの窓が少し開く

「先生・・」
「ストーカーか? なんだよ急に?」
「アスナ達が近づいてきている、そろそろ電気消しといた方がいいぞ」
「お前、結構気が利くな」
「本当に私がこんなことやるなんてね・・先生のおっせかい焼きがうつったかな?」

銀八を前を向いたまんま、後ろの窓から話しかけてくる龍宮と会話する。そして、ふと銀八が後ろを振り向いてみたらそこにはもう誰もいなかった。

「本当に気配がわかりにくいわ、ストーカーの素質あるなやっぱ・・・・おいテメエ等、もうすぐ奴等が来る、電気消しとけ」

銀八は小声で龍宮に毒づいて、クラスに指示を出す。教室はあっという間にまっ暗になった
そして、段々と足音が聞こえてきた。それを聞いたクラスメンバーは全員静かになる。クーフェイもまき絵を襲うのを一時休戦する。そして、足音が止まり・・

「じゃあ、アスナさん開けてみてください」
「いや何、いきなりこんな所に連れてきてんのよッ! 学校がとっくに終わってるでしょッ! まさかアンタ、私に補習授業するのがプレゼントとか言うんじゃないわよね・・」
「いや、さすがにそんなことはしませんよ・・」
「ほら、アスナ開けてみい、ビックリするで」
「わかったわよ・・」

ネギと木乃香、アスナの会話が聞こえてくる、そしてアスナがドアを開いた・・そして・・

「電気点けろォォォォォ!!」

銀八の号令により、すぐに電気がついた。そして私服姿で来たアスナは、目の前の光景を見て驚く。机の上には大量のデザートやら飲み物、『超包子』の肉まんが大量に置いてあった。更に

「なんで、みんないるのよ? しかもコイツまで・・」
「俺がいたら悪ぃのかよ? まあいいわ、ネギ、いっちょかましてやれ」
「はいッ! それではみなさん、せ~の・・」
「「「「「アスナ誕生日おめでとォォォォォォ!!!」」」」」

アスナはまだきょとんとしていた。いきなり教室に行こうと、ネギに無理矢理連れてかれて、来てみたらA組のみんなが出迎えてきた。少し頭が混乱していた

「もしかして・・私の誕生日会って奴?」
「うぬぼれるな、これは銀さんを励ます会だ」
「銀さん、そこでボケないで下さい・・」

そしてみんなはそれぞれテーブルの食事にありつき始めた

「いや、早ッ! 私の祝福あれで終わりッ!? 私より食い物選んだわよッ!」
「お腹へってたんですよきっと・・許して下さい・・でもアスナさんはこうゆうの好きですよね?」
「まあ、ね・・・・・・で? コレがアンタのプレゼントとして貰っていいの?」」
「はい、一応そうなんですが・・誕生日会を開くのが誕生日プレゼントって可笑しいですよね?・・」

ネギは苦笑するが、アスナは嬉しそうに教室を見渡していた

「悪くないわよ、私は物貰うより、やっぱり楽しくはしゃぐのが好きだわ」
「アスナさん・・」

アスナはネギに笑いかけ、ネギもその顔を見てホッとした。だがいきなりアスナがその場にへたり込む

「あ~もう腹減った、ていうか私の誕生日ケーキ何処よッ!?」
「すいません、そこまでは・・」
「ふふ・・アスナさん、あそこにありますわよ」
「いいんちょッ!? アンタまでッ!? いたのッ!?」

へたり込んでいるアスナに話しかけたのは何故か豪華なドレスを着ていた、あやかだった。一体どうやってこんな短時間で着たのか謎だ

「確かあの辺にケーキが・・あッ!」
「あの~もしかして~」
「あの腐れ天パァァァァァァァ!!!
 
アスナの為に用意したであろう、誕生日ケーキは今、一人の甘党によりほぼ、完食していた。しかもかなりデカかったようだが、筈か数ページで、糖分王銀八は綺麗に食べてしまった

「あの先生・・それってアスナさんのだったんじゃないですか・・」
「知らねえよ、こうやって肉まん置いとけばケーキと認識して食うだろ」
「そこまで単純じゃないでしょ・・」
「相変わらずバカですねあなたは・・」

肉まんをぽんとケーキがあった皿に置いて、安心している銀八に、宮崎のどかと早乙女ハルナは心配の表情を浮かべ、綾瀬夕映はそんな銀八に呆れていた。

「くおらァァァァァ!! 天パッ! 何人のケーキ食ってんのよォォォ!!」
「いや待て、そこに置いてあるじゃん」
「肉まんでしょうがこれはァァァァ!!」
「なんだと・・肉まんだとわかるのか?・・」
「何処までバカにしてんのよッ! 今日という今日はアンタをぶっ潰すッ!」

アスナが襲ってきたので、銀八はすぐに立ちあがり、さっそうと逃げて行く、二人の体力だと、当分長くなりそうな鬼ごっこだなとネギは思った

銀さんも誕生日、期待しててくださいね



















教えて銀八先生のコーナー
「十二話も終わって、キャラが増えてきたな~ということで、今日は誰を消していこうかと思っている。お前等、まずだれ消す? ジジィか? ジジィなのか? ジジィなんだろ?」
「いや学園長どんだけ消したいんだよッ! もうそろそろ勘弁してやれよッ! もうこの小説、『学園長の拷問体験』っていうタイトルでもいける気がするんだけどッ!?」
「ていうか消すキャラなんていませんッ! みんな生き残ってエンディングを迎えましょうッ!」

銀八は二人の意見を聞いて、くわえタバコをしながらため息をつく

「何言ってんだよ、人が増えると混乱するだろ、うちの作者は、絶対混乱するよ? 今回だってネギがメインなのにネギの出番少ねえじゃん、無理なんだよ、うちは一話で三人しか使いこなせません」
「何言ってんだ万事屋ッ! 俺がまだ本編入りしていないのに、そんな暗い事言うなよッ! それじゃあ俺のハーレム計画が台無しだろッ!」

怒りの雄叫びをあげたのは真撰組局長、近藤勲・・





「何普通にいるんだゴリラァァァァァ!!!」
「ぐほッ!」

あまりにも自然にいたので、銀八は驚きながらも、普通に椅子に座っていた近藤に近づいて、顔面に蹴りを入れる。

「何なのッ!? ここは銀魂のキャラが自己アピールする所じゃねえんだよッ! しかもなんだよハーレム計画って? ゴリラが何にフラグ立たせるんですか? チンパンジーか? 日本猿か? テングザルか? 死亡フラグか?」
「いてて・・いや、なんで類人猿限定なんだよッ!! しかも最後のフラグはいやだわッ! 俺だってなぁ、お前みたいにフラグ立たせてんだよッ!」
「知らねえよ、作者が勝手にフラグ立たせたんだよ、ていうか二本しか立ってねえしよ」
「二本・・ププッ! お前二本しか立ってないのッ!? うわ傑作だわこれッ!」

銀八が立たせたフラグが二本しかない事を知って、いきなり笑い始める近藤。そんな近藤の態度に、銀八は少しカチンとくる。だがカチンときたのは銀八だけではない

「ちょっとゴリラさんッ! なんですその笑い方はッ! 銀さんは硬派なんですッ! あなたみたいな、性欲の塊とは違うんですッ!」
「いや、初対面でゴリラってなんすかッ!? しかも性欲の塊って酷すぎないそれッ!? ハーレムは男のロマンだよッ! あっちの世界ではお妙さん、こっちの世界ではハーレム・・夢持っていいじゃないッ!?」
「こんなゴリラとよく銀さんは同じ世界にいれましたわね・・」

ジリリリリリリッ!

「いや~俺もこんなゴリラがよく組織を統率してるな~って思ってるよ」
「おいッ! 終了のベルが挟まってるぞッ! 会話のタイミング読めよッ!」

あまり関わりたくないと思い、近藤が来てから(本当は最初から、いたのだが)ずっと黙っていた千雨はさすがに銀八の駄目さにツッコむ。そしてそのツッコミを見た近藤はハッとした。

「まさか君はあの2代目新○を襲名し、あっという間に○八君を追いぬいてしまった、あの新○2世かッ!?」
「あの~なんで~伏字が入ってんの?・・しかも明らか人の名前だよね・・私知ってるよあの名前・・」
「もうあの名前はNGワードだ。残念ながら新○はもうあまりの苦情の多さに、ブラックリスト入りになった」
「ま~可哀想ですわね、まあ本編入りもありえないと言われている人だから仕方ないですわね~」
「いや二人とも酷くない?・・あの人頑張ってたじゃん、ひたすら目立とうと頑張ってたじゃんッ!!」

ガララッ

「失礼するアル!」
「いや~俺もあんなメガネがよくツッコミしてるな~って思ってるよ」
「だから挟まってるってッ! 人のセリフも挟んでるしッ! 読みづれえよッ!」

銀八の駄目駄目に呆れる千雨、小説を読んでる皆様すいません。
教室に入ってきたのはクーフェイ、銀八を見つけた瞬間、すぐに銀八に駆け寄ってきた

「銀八先生、今日こそ勝負するアルッ!」
「おい、佐々木まき絵はどうした?」
「もう動かなくなったアル」
「あれェェェ!? 巻き込まれ役まさかの死亡フラグッ!?」

佐々木まき絵の不憫さに、千雨は哀れみを感じられずにはいられなかった。

「だから今度は先生の番アルッ!」
「いや残念ながら中ボスがいる、このゴリラだ」
「だったらそのゴリラも倒すアルッ!」
「いや、待て万事屋? なにこの展開? いきなり暴力沙汰に巻きこまれそうなんだけど?・・」
「あいつに勝ったらお前も本編入り近づくかもよ?」
「・・・・・・マジで?」

銀八の手で踊らされる、ゴリラとチャイナ娘。今二人の戦いが始まろうとしていた

「本気で来るアルッ!」
「子供相手に本気は出せないな・・もし本気を出させて欲しいなら、俺を窮地に立たせてみるんだな」
「上等アルッ!」

二人は構えをとり距離がじりじりと近づいていく・・そして

「ホワチャァァァァ!!」
「うォォォォォォォ!!」








「次回、第十三訓『本気で戦うのが、戦いのマナーじゃァァァァァ!!』をお送りします」
「ここで次回予告ゥゥゥゥ!? あの二人どうすんのッ!?」
「銀さん、すっごい激しいバトルになってますわよッ! ほらッ!」
「お~激戦、激戦、どっちも頑張れ~」
「なかなかやるアルなッ!」
「ほう、子供だと見くびっていた・・だがこの真撰組局長、近藤勲は負けられないなッ!」

二人の戦いは別に次回には登場しませんのでご注意を

「じゃあなんで戦ってんだよッ! あのバカ二人はッ!?」
「戦いの果てには何もありませんのにね~」

千雨のナレーターにツッコミを入れ、あやかはのん気に二人の激戦を見ていた












銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー

銀八「はい前回はグダグダだったので、今回は多めにやります。まず1通目『前回の歌、伏せ字いれなくて大丈夫?』という意見ですね、2通ももらっちゃいました。いいんじゃないですか? まあ違反ですけどね、そういう綱渡りも悪くはないって」
千雨「いや、駄目だろッ! 法律的に駄目だろッ! 訴えられるぞッ!」
銀八「こんな小説誰も呆れて、訴えねえだろ、んじゃ2通目~『銀さんはいつ頃からネギまの世界に来たんですか?』という質問です、俺がここに来たのは『地雷亜編』の後です、あ、たまに話が進んでいくと何時来たのか変わるので注意して読んでね。三通目は「連載が続けば会えるって、『コードギアスのネタお願いします』という意見をらいましたが・・まあ一応やったんですけどね・・作者、コードギアスあまり見てないんですよ、知ってるのはありきたりな事だけです、すいません。所でルルーシュ死にました? ナナリーは元気にやってます? スザクって今、仕事何してるんですか?」
千雨「いや、何読者に聞いてんだよッ! ていうか一応興味あるんだッ!」
銀八「やっぱ気になるだろ? ルルーシュ生きてるかね~? やっぱ死んだかな? では4通目『銀さんといいんちょは仮契約するの?』・・・・・・・・・・・・え?」
千雨「いやどうしたんだよ?」
銀八「いや、これは・・う~ん・・読者の皆様がOKするならあるかもしれませんね・・」
千雨「どうした、顔色悪いぞ?」
銀八「お前とはないよね~さすがに・・ハハハハハッ・・」
千雨「何がだよ?」
銀八「だから、あいつとはそういう関係じゃないのに・・う~ん・・完結するのが恐えわ・・」  



[7093] 第十三訓 本気で戦うのが戦いのマナーじゃァァァ!!
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/06/08 12:10
麻帆良学園の登校時間、校門の前では多くの生徒が混雑している。ある生徒は走って行き、ある生徒は友達と喋りながら、校門をくぐって行く。そしてその中に一人の教師も今、自分のスクーターをおしながら、一人の生徒と一緒に、校門をくぐろうとしていた。

「銀八先生、見つけたアルよッ! 今度こそ勝負するアルッ!」

いきなり、教師の名前を呼ぶ声が後ろから聞こえた。教師、坂田銀八はめんどくさそうに後ろを振り向く

「朝からうるせえよ・・この時間だとお前って格ゲーのキャラみたいな奴等を、半殺しにしてる時間じゃねえの?」
「先生と戦う為にとっくに倒してしまったアル」

銀八に恐ろしい話しをしているのは、銀八が副担任をしている所の生徒のクーフェイだった。変わった語尾をつける彼女は、中学生でありながら中国拳法の達人でもある。その実力は確かなもので、クーフェイに勝つために、いつも大量の格闘家達が校門の前でたむろって、勝負を仕掛けるのだがあっという間に倒されてしまう。そんなめちゃくちゃな強さを持つ彼女が、ある教師に興味を持った。今めんどくさそうにクーフェイを見ている、坂田銀八でアル あれ? うつった?

「だから、俺は嫌だって言ってんのによ・・なんであいつは人の話しを聞かないの・・?」
「お前が、人の話を聞かないから、ツケが帰ってきたとでも思っとけ」
「ああ、そういうこと・・」

銀八は隣りにいる生徒、エヴァと話していると、何時の間にかクーフェイは銀八に近づき、銀八の白衣を両手で掴んでいる。白衣をブンブン振っても、一向にスッポンのように離れない。

「先生~今日こそは勝負するアル~」
「あ~もう離れろよ・・なんでそんなに俺と勝負してえんだよ・・」
「先生、見た目はちゃらんぽらんだけど、本当は強いんじゃないかと私は見てるアル、いわゆる拳法家の勘って奴アルッ!」
「アルアルうるせえよ、神楽思い出すわ・・俺が強いとか弱いとか関係ねえんだよ、俺はお前と戦いたくない。OK?」
「勝負アルッ!」
「おい、誰か通訳呼べ~」

いくら振りまわしても、いっこうに白衣から手を離さないクーフェイを見て、銀八はため息をつき、そして

「わかったよ、勝負してやるよ・・」
「マジアルかッ!?」
「だが条件がある」

ついに折れたのか、銀八はクーフェイとの勝負を承諾する・・ように思えたのだが、銀八は周りを見渡して、ある人物を探す。そして見つける事に成功した、銀八はそちらに歩き、その人物の頭をガシッ! と掴む

「おい、チャイナ娘。もし俺と戦いたいなら、俺の一番弟子、この佐々木まき絵を倒してみろ」
「ちょッ! 先生また私を巻き込む気ですかッ!? 勘弁して下さいッ! くーふぇいって私と同じバカだから何でも真に受けるんですよッ! それに私がいつ、先生の弟子になったんですかッ!? 私は普通の一般生徒ですッ!」 

銀八が捕まえたのは、銀八の所のクラスの一人、新体操部の佐々木まき絵だ。無論、銀八の弟子なんかではないが、前に銀八とクーフェイによって、悲劇を体験した哀れな少女であった。

「まき絵はもう倒したアルよ?」
「甘いな、前のまき絵だと思うなよ。こいつは地獄のような修行を経験して、もうお前の知る佐々木まき絵じゃねえんだ。修行により数段パワーアップしたまき絵、そう『スーパーデラックスまき絵』と呼ぼうか?」
「本当アルかッ!? 凄く格好良いアルッ!」
「いや、先生何言ってるんですかッ!! 私、地獄のような修行なんていつしましたかッ!? それにそんな星のカービィのタイトル名みたいな、名前になってませんからッ! 

銀八の言葉を真に受け、クーフェイは目をランランとしてまき絵を見るが、そんな期待をもたれても、全くの嘘っぱちなので、まき絵は必死に逃げようとする。だが銀八に頭を鷲掴みにされているので、動けない。そしてその状態のまき絵を、銀八はクーフェイに向かって押しやる。

「行け、俺の弟子スーパーデラックスまき絵。あのチャイナ娘にリベンジだ、見せてやれよお前のパワーアップした力をな」
「よし、だったらまき絵、勝負するアルッ!」
「くーふぇいッ! 私、スーパーデラックスになってないからッ!! ていうかもう銀八先生の言う事を聞かないでッ!」
「問答無用アルよッ!」
「ちょ! 止めて、くーふぇいッ! ストップッ! ストップッ! スト・・ぎゃァァァァァァ!!!」

まき絵はクーフェイを止めるよう、説得を試してみるがやはり失敗に終わった。校門の前でまき絵の悲鳴が聞こえた

「よし、バカがデラックスを殺ってる間にとっとと行くぞ」
「佐々木まき絵が凄い事になってるぞ・・」

銀八はまき絵がクーフェイに襲われているスキに、ずっと黙って、唖然と見ていたエヴァを呼び、学校に向かうために惨劇にあっているまき絵をほっといて、スクーターを再び持って、校門をくぐっていくのであった







第十三訓 本気で戦うのが戦いのマナーじゃァァァ!!」

「それで、銀八殿とは戦えたのでござるか?」
「駄目だったアル・・まき絵と戦っているスキに、また逃げられてしまったアルよ」

3年A組の教室にて、H・R前。席に座っていたクーフェイに、仲の良い長瀬楓が話しかけてきた。クーフェイが銀八と戦いたがっているのは知っていて、いつも逃げられているクーフェイを応援しているのだが、今回もまた銀八に逃げられたと聞き、楓は「う~む」とアゴに手を当て悩んだ。

「また逃げられたでござるか・・拙者も是非戦いたいのだが、そんなに拒否するとは・・あれ? そういえば、まき絵は大丈夫でござるか?」
「大丈夫、生きてるアルよ、ほら」

クーフエイが指差した方向にはボロボロのまき絵が机に伏せていた・・。まき絵は顔を伏せながら、「マジ、洒落にならないよ・・」と声が出ているから生きてるのはわかるが、凄く酷い体験をしたのが見てわかる

「クーフェイ・・ちとやりすぎでは・・?」
「戦うからには本気でやるのが勝負アルッ!」
「いや、そういう問題じゃないと思うのでござるが・・」

楓は巻き込まれた、まき絵を哀れと思って眺めていたが、ふと思い出した事があった。

「そういえば真名から、面白い事を聞いたのでござるが」
「何アルか?」
「銀八殿は刹那を倒した事があるそうでござるよ、まあどうして戦ったのかは教えてくれなかったでござるが・・」
「本当アルかッ!? やっぱり私の勘は当たったアルッ! やっぱり銀八先生は強敵アルね・・」

楓の情報を聞き、クーフェイは確信する。あの神鳴流剣士の刹那に勝ったのだ、銀八はかなり強い部類に入るということである。そんな銀八と戦いたいのだが、彼は絶対に戦ってくれない・・どうすればいいのだろうか・・
そんなことをクーフェイが考えていると、それを見ていた楓が助言してくれる

「真名からもう1つ情報が・・もし銀八殿と戦いたいなら、ある条件があるらしいでござるよ?」
「え? まき絵ならとっくに倒したアルよ?」
「いや、それは銀八殿のおふざけでござるよ・・条件はどうやら銀八殿の周りに人がいなければ、戦える確率が上がるそうでござる」
「何で、周りに人がいると戦ってくれないアルか?」
「拙者の考えだが、銀八殿は力を隠しているようでござるな・・きっと何らかの理由があるのでござろう。銀八殿が一人になれば戦える、コレを覚えておけばきっと好機が見えてこよう」
「う~ん一人にすればいいアルね・・」

楓の情報を聞いて、クーフェイは考えるが、大きな問題がある。銀八が一人になる事は滅多にないのだ。朝はエヴァと一緒に学校に来て、休み時間は万事屋で、千雨やあやか、和美など様々な生徒たちと一緒にいる。放課後も校門の前まで万事屋メンバーといるし、その後はスクーターで颯爽と帰ってしまうので、中々一人の時の銀八を見たことがない。

「難しい問題アルな・・」
「うむ、あの方はあんな見た目だが人徳はあるようでござるし、真名や刹那が認めてる程の人物・・拙者も戦いたいのだが、あそこまでガードが固いとキツイでござるな・・」

クーフェイと楓は悩んでいると、教室のドアがガララッと開く。

「みなさん、おはようございます」
「「「「「おはようございま~す」」」」」

ドアを開けて来たのは担任のネギだ。クラスのみんなは、やってきた先生に挨拶を返す。楓はとりあえず悩むのを一旦中止して、自分の席につく事にした。

「え~と、H・Rが始まる前に1つ、今日、銀八先生は突如、万事屋の仕事が入ったので、今日の1時間目はお休みにするそうです・・」
「はァッ!? あいつ一応、本職は教師なんでしょッ!? 本職より副業を優先するのッ!?」
「そうなりますね・・でも新田先生の用事なんですよ、銀さんって新田先生から色々とお金借りる事があるから、断れないんですよ・・」
「いや何、借金つけこまれてるのよッ! ていうか金借りてるって、それでも教師ッ!?」

どうやら銀八は、今日は万事屋の仕事をやるために今日は休むらしい、とネギが言うのだがアスナはそんな銀八にツッコみ、呆れていた。他の生徒たちも「まあ、あの人なら仕方ないか」という感じで納得していた。だがクラスの中に、それと違う反応を見せている者もいた

「・・万事屋と授業・・私はどっちをとれば・・銀さんをとるか授業をとるか・・どうすればいいのでしょうか・・」
「ネギ先生~いいんちょが銀さんと授業を天秤にかけてま~す」
「あ、朝倉さんッ! 何を言ってッ!・・」
「いいんちょさん、学生ならどっちを選択するかわかってますよね・・」
「もももも勿論わかっていますッ! 選ぶのは、じじじじ授業に決まってるってばよッ!」
「いや何で語尾ナルトみたいになってんですか・・」

万事屋メンバーの雪広あやかは頭を抱えて悩んでいたが、朝倉のせいでネギにばれてしまう、ネギはあやかを見て、疎める。だがもう一人の万事屋メンバーは悩みもせず即決だった。

ガタッ

「すいません、腹が爆発しそうなんで休んでいいですか?」
「いや、千雨さん・・銀さんの所に行く気でしょ・・? ていうか爆発しそうなのにどんだけ冷静なんですか・・?」
「まあ、そうですよ」
「清々しいくらい正直ですね~、駄目ですからッ! 学生は授業をやるのが普通なんですからッ! 万事屋をやるなら、H・R前、放課後か休みの日とかにやってくださいッ!」

ネギに叱られ、椅子から立ちあがり、銀八の所に行こうとしていた長谷川千雨は渋々席についた。授業をするより、銀八と一緒にいたほうが面白い、それが彼女の考えだ。そんな千雨に、ネギはため息をついて話を続ける。

「今日は銀さん一人に任せてください・・焼却炉の修理をしているそうですから、授業が終わってから会いに行ってください・・ね?」

ネギの言葉にあやかはため息をついて、千雨は不満げに了承する。だがこのクラスにはもう二人、銀八の所に行きたがっている人物がいた。

(チャンスアルッ! 銀八先生、今は一人アルッ!)
(確か焼却炉がある所にはあまり人が近づかない・・授業中ならなおさらでござるな、あそこは何も無い場所だし戦うにも良い所でござる)

クーフェイと楓は、アイコンタクトでお互いの言い分を理解し、そして

ガタッ

「ちょっと頭爆発しそうだから、保健室行ってくるアルッ!」
「拙者も腰が爆発しそうだから、これにて御免」
「いやちょっと待ってくださいよッ! さっきの僕の話し聞いてましたッ!?」

突然立ちあがったクーフェイと楓は、ネギの言葉も聞かずにあっという間に教室のドアを開け、颯爽と廊下を走っていった。

「だから何で爆発なんですか・・」
「ネギ先生、きっとキラークイーンに爆弾付けられたんだよ!」
「朝倉さん、ジョジョネタは読者が困るんで止めてください・・」

二人が閉めずに開けっぱなしのドアを見てぼそっとつぶやいたネギに、和美がボケるがネギは冷静に読者の為につっこんだ。









場所変わって、焼却炉がある学校の裏側。今、そこにいるのは焼却炉をカチャカチャと、しゃがんで修理している万事屋モードの銀八のみだった。

「何でこんなの俺に任せるかね~プロ呼んだ方がいいだろ普通、まあ出来ねえわけじゃねえけど・・」

銀八はぶつぶつ文句を言いながら和服姿を着て、作業を進める。意外と銀八は器用なので、こうゆう仕事も前の世界でよくやっていたので、慣れた手つきで直していく

「にしても今時、焼却炉ってどうよ? まあ、あのジジィがドンやってんだから古臭いだな、俺がドンになって改革しようかな~」
「銀八殿が、ドンになったら、この学園の終焉ということになるでござるな~」
「ていうか、銀八先生はきっとドンにはなれないアル」
「バーロー、俺の方が絶対あのジジィよりドンに向いて・・ん?」

銀八が愚痴をこぼしている時に、突如後ろから声が聞こえた。銀八が振り帰ってみると・・

「お前等、うちのクラスの・・しかもまたお前か神楽2世・・授業はどうしたんだよ?」
「いや~銀八殿がここにいると聞き、授業をエスケープして、こうして来たでござるよ」
「銀八先生、今度こそ勝負するヨロシッ!」
「やっぱりそれかよ・・」

突如出てきた楓と、そしてクーフェイを見て銀八は嫌な予感がしたが、やはりその予感は的中した。もうファイティングポーズをしているクーフェイを見て、銀八はやれやれと首を振る。

「何度も言うが俺はお前と戦う必要はねえよ、さっさと授業に戻れ」
「私は必要アルッ! 先生、刹那に勝った事があるらしいし、そんな先生に私は勝ちたいアルッ! それに今は周りに私達以外しかいないから、先生戦えるはずアルッ!」
「それ誰に聞いた? 俺がアイツと戦ったの知ってる奴ほとんどいねえのに・・」
「真名から少し聞いたのでござるよ、戦った理由までは教えてくれなかったでござるが・・それに銀八殿が力を隠しているのも・・」
「真名・・? あ~ストーカーの事? あのお喋りストーカーが・・」

楓が素直に答えて、それを聞いた銀八は、苦々しく自分のストーカーの顔を思い出していた。その時、ふと袖を引っ張られた感覚があり、そっちを向いてみると、クーフェイがまたもやぐいぐいと袖を引っ張っていた。銀八は、ハァ~とため息をついて、立ちあがり、クーフェイをはがすため、腕を上げてぶんぶん振るが、クーフェイはやはり離れない。

「銀八先生~勝負してくれないと、先生が強いってみんなに言いふらすアルよ~?」
「今度は脅しかよ・・しょうがねえな・・一回だけだぞ? 焼却炉直したら、戦ってやるから・・頼むから手を放せ・・」
「本当アルかッ!? また逃げちゃだめアルよッ!」
「わかったわかった・・」

銀八はクーフェイのしつこさに遂に本当に折れた。戦ってくれると聞き、クーフェイは、おもちゃをもらった子供のように喜び、楓も満足そうに頷く。

「良かったでござるなクーフェイ、では明日は銀八殿、拙者と・・」
「戦わねえよッ! お前もこいつと同じ戦闘バカだって臭いでわかるんだからねッ!」
「う~む、ではまたの機会に・・」

楓が言葉を終えるより先に、銀八は答えを返す。それを聞き、楓はがっくりうなだれた。







「よ~し終わった、んじゃチャイナ娘いっちょやり合うか?」
「遂に戦ってくれるアルかッ!? じゃあ本気で来て欲しいアルッ!」

修理が終わり、銀八は傍に座っていたクーフェイに話しかける。クーフェイは嬉しそうにし、本気を出して欲しいと銀八に頼むが、銀八はそれに嫌そうな顔をする

「いや別に本気出さなくていいだろ・・?」
「駄目アルッ! 戦うときは全力で戦い合うのが私の勝負の仕方アルッ!」
「え~めんどいんだけど・・」
「もし本気出さなかったら、先生の秘密みんなに・・」
「わ~かったよ! じゃあ、俺に本気出させてみろよ、お前が強ければ、俺は仕方なく本気出すから」
「上等アルッ! よろしくヨロシッ!」

クーフェイに再び脅されて、しかめっ面で銀八は頭を掻きながら了承する。クーフェイもそれに満足げに銀八に頭を下げる。

「じゃあ拙者は外野に行くでござる、お互い頑張って欲しいでござるな」
「見ているアル、楓ッ! 私先生に勝ったら結婚するアルッ!」
「それ勝負の前に言ったらいけない言葉でござるよ・・ていうかクーフェイ相手いないし、結婚できる年でも無いでござろう・・」
「ボケてねえで構えろよ、俺の準備は出来てるぜ・・」

クーフェイと楓がボケとツッコミをしている時に、既に銀八は腰の木刀を抜いていた。それを見て楓は「それじゃあ拙者は木の上で」と言い残して、茂みにあった、木の上へ飛び待機する。クーフェイも表情が一変して、真顔になり構えを作る

「こっからは俺はお前等の優しい銀八先生じゃねえ、こっからはラストサムライ、坂田銀時だ」
「なんで名前変わるアルか? あと優しいと私はこれッぽちも思ったことないアル」

銀八は焼却炉から離れて、クーフェイと対峙するように立つ。銀八が何故名前が変わるのか、クーフェイにはわけがわからなかった。だが銀八はだるそうに言葉を返す。

「細かいことぐだぐだ言うんじゃねえよ、戦闘モードの時は銀時なの、OK?」
「う~ん、両方の名前覚えるのめんどくさいから、今度から『銀ちゃん』って呼んでヨロシ?」
「チャイナ言葉に俺の事ちゃん付けか・・神楽と被るな、やっぱあいつの本編入りは無理だな・・」
「何か言ったアルか、銀ちゃん?」
「いやなんでもねえよ、じゃあそろそろ始めるか」

クーフェイは銀八、いや銀時の言葉を聞き静かに構えをつくり、銀時の動きを調べるように、銀時を中心に周るように歩いていく。銀時は木刀を腰に差したまんま、クーフェイをじーっと見ているだけだった。

「どうみても銀八、いや銀時殿には隙があるように見えるのだが・・だがクーフェイがあんなに慎重なのは珍しいでござるな・・」

お互いの動きを木の上で観察している楓は、いつもより慎重な動きをするクーフェイに奇妙に思えた。

(どっからでも、隙がありそうで隙が無いアル! こんな人、今まで見たこと無いアルよ!)
(アイツの攻撃を待ってようと思っていたが・・慎重だな意外と、しょうがねえ俺から攻めるか・・)

クーフェイは銀時と距離を作りながら歩く、銀時のあまりもの無防備、周りから見ればすぐに銀時に飛びかかって、攻撃すればいいのに、クーフェイは出来なかった。実は一見隙がありそうに見えるが、銀時は不用意にクーフェイが近づいた瞬間、即座に木刀でカウンターを決めようと思っていたのだ。だがクーフェイにそこを見抜かれたと悟った銀時は

「じゃあ、まず俺のターンだッ!」
「えッ!」

銀時は木刀を居合いの体制で構え、クーフェイが驚くほどの速さで対象に近付く、対象はもちろんクーフェイだ。銀時は自分を木刀の居合いで自分の腹を狙いに来た、とクーフェイは思っていた。だが銀時の居合いの構えは本当は騙しだ、本物の狙いは・・

バシィッ!

「ふ~危なかったアル~」
「ああッ! 騙せたと思ったのに、何で気付いたんだよッ!?」
「一瞬、銀ちゃんが背中に差してる刀を持ったのが見えたアル、しかもわざわざ逆刃にしてくれたから、止める隙が出来たアルよ」

本当の狙いは背中の野太刀、『夕凪』による峰打ちを狙っていた銀時だった。木刀で居合いする構えをしながら、クーフェイに近付き、クーフェイが木刀の動きに集中している隙に、一瞬で構えを変え持っている木刀を抜かずに、左手で背中の刀を抜き逆刃に持ち替え、クーフェイを気絶させるぐらいに手加減して彼女の頭を狙う。それが銀時の策略だったのだが、これは失策に終わった。まずミスが二つ。一つ目は、クーフェイは『木刀』の動きではなく『銀時』の動きを見ていたことだ、常人はまず、相手が持っている武器に無意識に集中してしまうものだ、だがクーフェイは無論、常人ではない。持っている武器に集中せずに武器を持つ本体を見て、銀時の攻撃の瞬間を彼女は見ていたのだ、その高度な動体視力で。そして二つ目、銀時が刀を逆刃に持ち替えた事。だがこれは仕方ない、普通に振り下ろしてしまったらクーフェイを真っ二つにしかねない、だから銀時は斬れない方の逆刃に持ち替えたのだ。だが、その銀時の『持ち替える』という行為が、日々戦いによって鍛えられた、クーフェイの動体視力から見ればギリギリ見える範囲を作らせたのだ。現にクーフェイは今、銀時が振り下ろした夕凪を両手で受け止め、いわゆる真剣白刃取りをやり見事に銀時の攻撃を防いだ。これには銀時も驚き、そして険しい顔をする。

「お前化け物か・・普通これ止められる・・?」
「どっちが化け物アルか・・普通あんな動き人間には無理アルよ・・二つの武器をあんな速さで切り替えるなんて、私でもギリギリ見えたぐらいアルよ・・」
「へへ、じゃあお互い化け物級ってことか・・」
「そうみたいアルね!」

二人は戦いながらも会話を楽しむ余裕さえあった。お互いの強さを知った所で、銀時はクーフェイが両手で挟んでいる、自分の夕凪を無理矢理引き抜いて、それによりクーフェイはほんの一瞬ノーガードになる、その瞬間を銀時は逃さず、右足で蹴りをクーフェイの腹にかます、これにはクーフェイも面食らって思わず「うッ!」と叫び声を上げ、よろめいたのだが彼女は倒れない、倒れない所かよろめきながらも、右足で体を支えてそのまま右足を軸にして体を一回転、バレェのように回った後、クーフェイの裏拳が銀時の顔面の直撃。銀時は彼女のあまりにもトリッキーな動きに驚き避ける暇も無かった銀時は、「おぶッ!」と叫び、顔を押さえたまんま後ろに下がる。クーフェイも右腹を押さえて後ろに下がる。

「痛え~・・変なパンチ食らった・・」
「変なパンチじゃないアルッ! 今のは八極拳の・・」
「二度と食らわないように気をつけよ、変なパンチを」
「変なパンチじゃないアルッ!・・あいたたた・・」

 銀時は食らった右頬をさすりながらも、相変わらず口が減らないので、クーフェイは抗議するが、自分も銀時の蹴りを腹に食らったから痛いので抗議を中断する。

「銀ちゃんはそろそろ、本気出さないアルか・・?」

腹を押さえながらやや苦しい表情で、銀時に顔を向けなんとか彼に質問する。だが銀時は少し笑みを浮かべて、余裕の表情を浮かべている。

「俺を本気にさせたいなら、俺にテメーの魂ぶつけてみろや、だったら俺も答えるぜ」
「本気なら、私はとっくに出してるアルよ・・」
「いや、お前の本気は本気じゃねえ」
「え?」

銀時の言葉に思わず腹の痛みを忘れて、クーフェイは真正面から銀時を見た。銀時も彼女をまっすぐ見て真顔になり話しを続けた

「お前の護るモンは何だ?」
「護るモン・・?」
「戦いってのは自分の大切なものをかけて戦うもんだ、てめえの拳にはそれが見えねえ、それじゃあただの獣でも出来るぜ」
「私の大切なものアルか・・?」

クーフェイは銀時の言葉をポカンとした顔で聞いた。自分の護る物・・思えばそんなこと考えもしなかった、ただ純粋に戦いを楽しんでいただけ・・自分の大切なものなんて考えずに戦いに明け暮れていた・・だが銀時の言葉を聞いて、初めてその事を考えてみた、自分の大切なもの・・それは・・

「私は・・」
「何だよ? 言ってみろ」
「私は将来、立派な中国拳法の達人になって世界一強くなることアルッ!!」





クーフェイの言葉に銀時はしばらく顔をひきつらせて言葉を失い、言葉を出すのに時間が掛かった

「いや、お前の人生設計なんて聞いてないんだけど・・」
「だから私はその夢を護るために戦うアルッ! ここで負けたら夢から一歩遠さかるアルッ! だからその夢を護る為私は・・銀ちゃんに勝つアルッ!」
「ああ、そういうこと・・じゃあ護るもんがわかったんなら、テメーの夢かけて俺にぶつけてきな、それで俺を本気にさせてみろやッ!」
「絶対本気にさせるアルッ!」

銀時はクーフェイの護る物を理解し、銀時は歯を少し出して笑みを浮かべ、持っていた夕凪を背中の鞘に収めて、腰の木刀を抜く。そして銀時は叫びながら、クーフェイに突進する。クーフェイも同じタイミングで突っ込んだ。

ガシィッ!

お互いの武器、木刀と拳がぶつかる。だがお互い一歩も引くは全く無い

「来いよッ! てめえのこもった拳を俺にぶつけてみなッ!」
「ホワチャァァァァァ!!!」

つばぜり合いが解かれ、お互い再び叫びながら攻撃をかます。何合もぶつかる木刀と拳、銀時は拳を食らい、クーフェイは木刀の攻撃を受ける、だがそれでもお互い倒れず体がボロボロになりながらも、攻撃を止めない。

「いや、これってただの喧嘩にしか見えないのでござるが・・」

楓が額から汗を出して、二人の戦いの感想をつぶやく。だが銀時とクーフェイはそんなこと露知らず、口元に笑みを浮かべながら木刀と拳で殴り合っていた。これが10分ぐらい続いたのだろうか・・そして

「ハァ・・ハァ・・どんだけタフなんだよ・・」
「・・どうしたアルか? 銀ちゃん・・私は全然へっちゃらアルよ・・」
「バカヤロウ・・俺はまだ本気じゃねえよ・・バーローめ・・・」
「ふふふ・・だったら本気・・出して・・来るヨロシ・・」

バタッ

絶対に倒れなかったクーフェイが、銀時に台詞を吐いている途中でついに倒れた。倒れたクーフェイを見て銀時は、やっと終わったとわかり、その場に座り、休んだ。

「あ~疲れたわ・・」






戦いが終わり30分後、クーフェイが目を覚ました、いつのまにかクーフェイは銀時の膝で眠らされていたらしい。銀時と近くにいた楓はクーフェイが目を覚ました事に気付いた。

「もう起きたか? 対した回復力だな・・」
「あれ・・銀ちゃん・・私負けたアルか・・?」
「俺の勝ちだな、でもお前の拳を受けすぎて体中痛えよ・・」
「銀時殿なら、もっと攻撃を受けずに勝てたのではござらんか・・?」
「こいつのがどんなもんか、試した結果、これだよ・・」

クーフェイは銀時の膝に頭を乗せたまんま。ぼんやりと目を開けながら苦い顔をしながら楓と話している銀時を下から見ていた。

「銀ちゃん・・本気出してないアルよね・・?」
「残念ながらな、色々あって本気出すなって、エヴァにも言われてるしよ・・まあまだ俺を本気にさせるには魂が足りねえな」
「まだまだアルか・・私もっと強くならなきゃいけないアルな・・」
「まあ精々頑張れや」

自分の膝枕で横になっている、クーフェイを見下ろして銀時はニカッと笑い、クーフェイも思わずつられて微笑んでしまう。そんな二人はやれやれと楓は見ていた

「ふむ、銀時殿にはまだクーフェイも敵わないということでござるか・・ならば次は拙者・・ん? あれは・・?」

楓が銀時に挑戦しようかと考えている時、銀時と頭を銀時の膝に乗せているクーフェイが、二人でを不思議なものを見ているような目で同じ方向に顔を向けてみた。楓もそちらを見てみると・・

「銀ちゃん、何で掃除ロッカーがこんな所に置いてアルか?」
「いや、俺でもわかんねえや・・いつの間にあんなの置いてあったんだよ・・?」 
「何でござろうか・・アレ?・・拙者も気付かなかったでござる・・」

銀時達が見ていたのは焼却炉・・の隣りの不自然にある掃除ロッカー。今まで無かったし、こんなところにあるなんて怪しさMAXである。銀時を今だ立てないクーフェイを楓に預けて、恐る恐るその掃除ロッカーに近付き、開けてみる・・そこには・・

「先生、今までの戦い見せてもらったよ、やはり貴方は強いな、そして色々学ばさせてもらった」
「龍宮に無理矢理連れられて来たがなかなか面白いものが見れたぞ、私達に気付くのが遅いな、お前が戦う5分前にここから観させてもらったぞ、白夜叉」
「何してんの、お前等・・?」

銀時が見たもの、それはぎゅうぎゅうになりながら、掃除ロッカーに二人で入っていた龍宮と刹那だった。どうやらロッカーに覗き穴を作り、銀時の戦いの見物に来たようだが・・

「お前等なんでそんな所に二人で入ってんだよ狭くね?」
「正直キツイな・・悪いが助けてくれないか?」
「同じく・・」
「あそ、頑張れ」

バンッ!

銀時は苦しそうな龍宮と刹那を見て、言葉を残してすぐにロッカーのドアを乱暴にしめた。中で「先生、マジやばい、なんか苦しくなってきた、私達生徒を護ってくれ」、「白夜叉ッ! お前はそこまで非情な人間だったのかッ!? 見損なったぞッ!」とか聞こえるが、銀時はロッカーを横に蹴りをいれてボンと横に倒す。ロッカーの中で「「イダッ!」」という龍宮と刹那の声が聞こえた。

「よし、帰るか」
「え、あれ放置するアルか?」
「あいつ等、バカだから死なないって」
「ていうか何であの二人はロッカーでカモフラージュを考えたのでござろうか・・?」
「あいつ等バカだから、バカの考えはわかんねえ、よし行くぞ」

銀時はクーフェイをおんぶして、楓を連れて、三人で教室に帰っていった。倒れて中で「先生~マジヤバイ、どれぐらいヤバイというとマジでヤバイ」、「白夜叉ァァァァァ!! 助けろォォォォォ!! 助けてッ!! いや助けてくださいッ!! 」
と声が聞こえる掃除ロッカーを残して・・








翌週、H・R前に銀八は屋上で寝転がって、タバコを吸いながら空を眺めていた。しかしいきなり銀八の目の前に顔をひょっこり出してきた生徒がいた。

「銀ちゃん探したアル」
「んだよ・・お前か・・なんか用か?」
「先生に質問があるアル?」
「はぁ? あるある?」

銀八の前に突然出てきてのはクーフェイだった。彼女の質問を銀八は一応聞く体制で半身を起こす。

「銀ちゃんの大切なモンって何アル? 知りたいアル」
「俺の大切なモンか・・」

クーフェイの質問を聞いて、銀八はタバコを吸いながら、押し黙る。しばらくして銀八はクーフェイに向き直る

「俺の武士道だ」
「ブシドウ? ブシドウって何アルか?」
「さあな自分で考えろや」

銀八の答えを聞いてもキョトンしているクーフェイをほっといて、銀八は立ちあがり、歩いて行った。

「あれ、待ってよ銀ちゃんッ! 私わかんないアル、そんなことッ!」


クーフェイが何時の間にか歩いて行く銀八の背中に叫ぶ。銀八はピタリと止まり、クーフェイに向かって笑みを浮かべていた

「それがわかった時にもう一回戦ってやるさ、んで今度は俺に本気出させてみろや」
「え? 本当アルかッ!?」
「まあわかればだがな~何百年後かね~? じゃあ俺は掃除ロッカー取ってくるわ、どっかのバカが万事屋のロッカー奪いやがったんだよ、まあホシはわかるけどな」

歩いていく銀八の背中はクーフェイは消えるまで見ていた。
武士道とは何か・・これはクーフェイに銀八からの宿題になった。彼女がその意味を知ったその時は

銀ちゃんにいつか本気出させるアルッ!










教えて銀八先生~のコーナー

「じゃあ13話に来ました、ということでお前等なんか言いたい事・・・・・・・・・・・・・・って誰もいねェェェェェェェ!!」

銀八は恐ろしい事に気付く、何故か今日は教室に一人しかいなかったのだ。いつもの千雨やあやかもいない。

「何で誰もいないんだよ・・何これイジメ? 「お前の席ねえから!」っとかいうイジメはおれへこむよ・・」

そんな事を一人で淋しく銀八がトークしていると、教室の窓からひょっこり顔を覗かせる人物がいた。

「あ、旦那おつかれです、」
「いや今度はお前かよ・・何だろコレ・・? なんかもうお前等普通に来るよね・・頼むから帰ってくんない? お前は人気ありそうだから大丈夫だって・・」
「何言ってんですかぃ、実は俺もねえさっさと本編入りしたいんですよ、よっと」

窓から入って来たのは沖田総悟だった。顔はさわやかだが考える事は腹黒い・・別名『サドスティック星の王子』・・
だが今回の沖田は純粋に本編入りするためにアピールしに来たらしい、だがそれを聞いて銀八はうさんくさそうな顔をする。

「お前またなんか、企んでんだろ・・」
「いやいや、俺は普通に本編出たいんですよ、その証拠にこれ見てくださいよ」
「ん? なんだこの紙切れ?」

疑いの眼差しを向ける銀八にも、全く動じず沖田はポケットに入れていた紙を、銀八に渡す。それを見た銀八はじっとその紙に書かれているものを見る。
紙には『ネギま!』のキャラの名前が書かれていた。しかもそこにはA組の生徒のメンバーも入っていた。

「何だこれ? 何でこんなん書いてんだよ? こいつらに会いたいの?」
「ええ、会いたいですね、んで会ったら調教する予定の奴等です」





「いや何やらかそうとしてんじゃァァァァァ!!!」

銀八は一瞬硬直したが、我に帰り、沖田の作った、調教リストを破いた。

「何しようとしてんのお前ッ!? マジ洒落にならないよこれッ!? お前そいつらのファン達に袋叩きに合うよッ!?」 
「そうですかぃ? ああいうプライドの高い奴とか気弱な奴は1度根本的なモンをへし折れば、調教しやすくなるし・・」
「駄目ェェェェェ!! 特徴は言うなッ! 近頃のファンの皆様は鋭いからねッ! それだけでわかっちゃうからッ!」
「そうですね~気を付けます。所で旦那? 買いましたかい『戦国BASARA バトルヒーローズ』? やっぱりかすがとお市って何回見ても調教しがいがありそうなんですけどどう思います?」
「おい今のヤバいよお前・・言った瞬間これだよ・・声優詳しい人一発でわかるよコレ・・BASARAと声優詳しい人が見たら「あ、あの人だ」ってわかっちゃうよ・・」

銀八が止めようとしても、沖田のサドスティックトークは止まらない。銀八も額から汗を流しながら必死になる

ジリリリリリリリッ!

「お、終了合図が来たようですね、ところで旦那もしかしたら今日は、かすがかお市が来るかもしれないんで待ってていいですかぃ?」
「帰れェェェェェェ!! もうギリギリなんだよッ! つーかアウトだからねッ!? もうお前の本編入りはねェェェェェ!!!」
「しょうがない、じゃあ俺はしばらく出番を待ちますわ、かすがとお市によろしくお願いしま~す」
「帰れやァァァァァァァァ!!!」

沖田は相変わらずのペースでさっさと教室から出て行く。銀八は疲れた様子で黒板にもたれかける。

「声優ネタ出してくださいっていうオファーがあったらこれだよ・・BASARAはヤバイって・・最近アニメ化もしてんだから、人気なんだからやばいって・・勘付かれるよコレ・・」

ガララッ

「銀八~、あれ? 何疲れた顔してんだ?」
「なんか疲れてますわね・・?」

教室に入って来たのは長谷川千雨と雪広あやか、どうやらいなかった理由はこうゆうことらしい。だが銀八は二人を見てもため息をつく

「お前等がリスト入ってなくて良かった~」
「「はい?」」

銀八は二人に近付き、二人の肩をポンポンと叩いて、そのまま教室を出ていった。わけのわからないという表情を浮かべる千雨とあやかを置いて・・








「おい次回予告はどうすんだよッ!?」
「あ~はいはいめんどくせえな・・第一四訓『メンバーの仲は良好にしようね』をやりますんで・・」
「なんで銀さん本当に疲れてるんですか・・?」
「みなさん、『沖田を出して下さい』とかそういう意見は求めませんから、あんなん出たらまさしく崩壊するよッ! この作品ッ!?」
「いや銀さん、沖田って誰ですか・・?」

銀八のテンションに千雨とあやかはますますわけがわからなくなった。











銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー

銀八「ではまず一通目、『声優ネタを増やしてください』という要望が、これは作者もやりたがってたんだが、声優詳しくない人は間違い無く混乱するから、あまり乱用していません。ですがまあそろそろ話し進んだし、いっか~、なあ金糸雀?」
千雨「それ私のことだよなッ! 普通お前が先にやるだろッ!? ほら、『涼宮ハルヒの憂鬱』に出るあの・・」
銀八「鶴屋さん?」
千雨「なわけねえだろォォォォ!! それエヴァだからねッ!?」
銀八「じゃあ声優ネタは今後地味にやるということで・・2通目、『歌詞の件は伏せ字にしないと管理人に削除されるよ』・・・・・・・・伏せ字にしました」
千雨「結局、修正かよ・・」
銀八「しょうがねえだろ、消されてたまるか、ここまでやってのに消されたらもう死にたい、というのが作者の意見です」
千雨「既に死の覚悟ッ!?」
銀八「まあそんな奴はスルーして3通目~『銀さんやっちゃえって、あやかとやっちゃえって、あつ~いディープキ・・せいッ!』
千雨「おい何で破いてんだよッ!?」
銀八「誰だァァァァァ!! こんなギリギリなの書いた奴ッ!? ていうかアウトだわッ! ノーマルどころかディープって、出来るかァァァァァ!! 色んな意味で出来るかァァァァァ!!!」
千雨「あ~わかった・・にしても相変わらずいいんちょルート希望は多いな・・」
銀八「それに引き換え、もう一人のヒロインはぶっちゃけゴリラや新○より感想に書かれてないけどね」
千雨「マジで・・?」




[7093] 第十四訓 メンバーは仲良くないと色々大変
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/04/25 22:44
「銀八、前から思ってたんだけどさ・・?」
「あん?」

今日は土曜日、学校は休みなのだが万事屋は営業中。理由は銀八が少しでも金を稼ぎたい。だが土曜日に生徒が来る事は非常に確率が低いと思うのだが・・
万事屋の部屋で千雨はお客用のソファに座り、銀八は自分用の椅子に座り、机を足に乗せジャンプを読んでいたのだが、突然千雨が話しかけてきたので、銀八はジャンプを読むのを一旦中止して、彼女の方に向いた。

「お前ってエヴァと一緒に住んでるんだろ?」
「まあ他に住む所ねえからな」
「それでエヴァと色々進んでいるとかある?」
「・・お前一回死んでみる? あるわけねえだろうが、あんなガキに・・」

千雨の質問に銀八はぶっきらぼうに返す、千雨はそれを聞き「そうか・・」と呟き、しばらくたって話しを続ける。

「じゃあいいんちょと何か進展しているとか?」
「いや進展って何だよ、お前まだ誤解してんの? 俺とあやかは教師と生徒、上司と部下ですからね?」

銀八は相変わらずイライラした口調で返す、千雨はそれを聞いて下を向いて考え込む、そして彼女は再び銀八に顔を戻した。

「じゃあエヴァといいんちょ、お前どっち選ぶ?」
「・・・・・・・・・・」

銀八は千雨の選択問題を聞いた瞬間、無表情で椅子から立ちあがり、ソファに座っている千雨に近付いて

「このバカチンがッ!」
「アダッ!」

急に毘沙門天のような顔になった銀八が、千雨の頭を思いっきりグーで殴る。あまりの痛さに千雨はソファに寝転がって悶絶するが、銀八は攻撃の手を休めない。飛びかかって馬乗りになり、マウントポジションを奪った銀八は、千雨の首をしめにかかった。

「お前、どうしてわかんないのッ!? 俺とあいつ等には何も無いからねッ!? エヴァは同居人、あやかは部下ッ!
 それ以上なんて無いんだよッ! 何度も言ってんだろうがッ! 日本語わかるッ!? Do you know Japanese!?」  
「苦・・苦し・・ギブギブ! 死ぬッ! これ死ぬッ! こんなノリでポックリ死にたくねえよッ!」

銀八が容赦無く首をしめていくので、千雨はまさに虫の息だ。まさかギャグパートで死ぬとかそんな結末はたまったもんじゃない。
しばらくして、ようやく首をしめるのを銀八が止めてくれて、解放された千雨は息をハァハァ・・と荒くしていた。

「・・で、わかったか? 俺はエヴァともあやかとも何もねえよ・・」

銀八も少し疲れたのか呼吸が荒いが、馬乗り状態を止めずに千雨の頭を挟むように手を置いて、千雨に顔を近づける。

「なあ銀八・・」
「んだよ、まだ何か言いたいのか? いい加減埋めるぞ?」
「私達の今の体制やばくね?」
「え?」

千雨の言葉を聞き、我に帰って今の状況を考えてみると、息の荒い千雨が、同じく息の荒い銀八が、千雨に馬乗りになり、お互い顔をめっさ近づけている・・どう見ても誰かに見られたら誤解される構図が、お手本のごとく出来てい
た。

ガチャ

「すいません銀さん、ちょっと調べ物・・を・・」





いきなり万事屋のドアを開けてきた雪広あやかは、目の前の光景を見てそのままフリーズした。銀八と千雨もあやかを見てフリーズする。
千雨を押し倒している銀八、しかも二人とも息が荒い。二人は固まっているあやかに向いて、額から汗を出しながら、苦笑いする。

「い、いや~これはね~別にお互いそういう事考えてるんじゃねえよ・・誤解しないでね・・」
「いいんちょ、私と銀八はそういう関係じゃないからさ・・だから出来れば誤解しないで欲しいんだけどさ・・」

二人の声もあやかの耳には残念ながら届いていなかった。そしてようやくあやかは震えながら口を開く。

「ぎ・・ぎ・・銀さんなんて・・銀さんなんて石田純一と同じですわッ!」

あやかは言葉を震わせながら、最後に銀八に向かって、あるプレイボーイの名を叫んで、走って部屋から出て行ってしまった・・残された二人はしばし固まる、そしてようやく我に帰る。

「ん? あれ誤解されてねえ俺? 石田さんと一緒になってるよッ! 違うよッ! 俺は石田さんとは違うよッ! ちゃんと俺、靴下履くもんッ!」
「そこツッコむのかよッ! ていうか、いいんちょ追うぞッ! このまま誤解されたらマズイってッ!」
「当たり前だッ! 行くぞッ!」

二人はソファから起き上がって、あやかを追うため、廊下に出て全力疾走をしながらあやかを探した。

「あやかァァァァ!! 俺とこの眼鏡にはそんなもんありませんからァァァァ!!」
「大声で叫ぶなァァァァ!! 誰かに聞こえたらまた誤解生まれるだろうがァァァ!!」

廊下で走りながら、大声でボケとツッコミをやりつつも、ターゲットを確保するため二人は捜索を必死にやっていた。












第十四訓 メンバーは仲良くないと色々大変

「本当に何もないんですよね・・」
「だから何もねえって・・私と銀八はそうゆうの無いって・・」

あやかをようやく見つけ、万事屋に連れこむ事に成功した、銀八と千雨。今、あやかと千雨はソファに座り、千雨がなんとか誤解を解こうとするが、あやかはまだ附に落ちない状況だ。あやかは、椅子に座りお茶を飲んでジャンプを読んでいる銀八を眺めながら、千雨に質問する。

「銀さんって、千雨さんと話す時って、なんか昔から連れ添っている悪友と話しているように見えるんですけど?」
「いや、それはお前の観点だろ・・銀八との付き合いは、私といいんちょもあんま変わんねえし・・アイツ、お前とも普通に話すじゃん」
「いえ、私と接する時は、銀さんは私にコブラツイストとか、頭を殴ってくるとかそういうことしません」
「普通は人と接する時はそういうことしないからね?」
「でも千雨さんはやられていますわ!」
「何ッ!? して欲しいのッ!? 銀八にコブラやられたいのッ!? いつでも代わるよッ!?」

あやかの際どい発言に、千雨はため息をついて、無言で「一回部屋から出るぞ」と親指で指示する。あやかもそれに従い、しかめっ面で千雨と一緒に、ジャンプに夢中の銀八を残して部屋を出る。
二人は部屋を出てドアを閉め、改めて向き合う。

「部屋で会話出来ないから、ここに来たんでしょ? 一体何ですか?」
「改めて聞くけど・・いいんちょって、銀八の事どう思ってんだよ?」
「!!!!!」

不機嫌そうなあやかが、千雨に質問すが、言葉を返されたときに顔が一気に赤くなっていく

「なななな何言ってんですかッ!? 私と銀さんは生徒と教師ですよッ!! なんですその言い草は・・」
「いや、いまさら隠してももう遅いから・・とっくにA組の奴等に気付かれてるって・・お前がアイツに惚れてるの」
「マジですかッ!?」 
「マジだよ、「いいんちょって銀八先生と喋っている時、なんか女の子っぽいよね~」ってクラスでそういう話しで持ちきりだから」

千雨の止めの一言に、あやかはその場にぺたりと両手をついてへたりこむ。どうやら自分では隠していたと思っていたらしいが、クラスのみんなにはとっくにバレていたのだ。ガックリうなだれているあやかに、千雨は優しくポンと肩に手を置く。

「クラスの奴等喜んでたぞ、「いいんちょ脱ショタコンおめでとう!」って」
「だから私は元からショタコンじゃありませんッ! 訴えますわよッ!」
「神楽坂の奴も「アレに惚れるなんて、いいんちょ毒キノコでも一気食いしたのかしらね~?」って言ってたな」
「あの人に一番言われたくない言葉ですわね、それッ! あの人こそ毒キノコ10BOXは食ってるはずですッ!!」

千雨のプチ情報を教えてもらっても、あやかはクラスのみんなに恨みを募らせるだけだった(特にアスナ)。

「・・もうみんなにバレてるんですわね・・」
「今更気付くお前も凄いけどな・・」

ようやくあやかは立ちあがり、ぐったりした様子で千雨の方に体を向く。だが千雨を見て、ギラリと目が光った。

「それで?」
「いや、それでって何だよ・・」
「千雨さんは銀さんの事どう思っているんですか?」
「どうって・・あいつとは・・」
「私が銀さんの事が好き。それは認めます、ですが千雨さんはどうなんですか・・?」

睨みつけてくるあやかを見て、千雨は思わず後ろに後ずさりしてしまう。ここまで恐いあやかを千雨は見たことない。
まずオーラが違う。

「いや、別に私がアイツといるのは面白いから付き合ってるって、前にも言ったじゃねえか・・」
「それって、銀さんといつも一緒にいるのが好きということですか?」
「えっと・・そうなるのかな・・」
「わかりましたわ・・」

千雨はあやかのオーラに恐怖を覚えながらも質問を返したが、あやかの目つきはまだ変わらなかった。

「やはり、貴方も銀さんの事がッ!」
「なわけねえだろォォォォ!! 私の『好き』はお前が思っている『好き』じゃねえよッ!! アイツが好きなのはアレだろッ!? お前とエヴァだけだろッ!?」
「は! そういえば不安要素がもう一人いましたわ・・銀さんと一つ屋根の下に住む、あの何もかもが小さい不安要素が・・」
「むちゃくちゃ言うな、お前・・どんだけ仲悪いんだよ・・」

激昂したあやかが千雨に攻め寄るが、もう一人の人物の存在に気付き、考え込む。矛先が自分から変わった事に千雨はホッと一安心する。

「身長も、器も、胸も小さいあの人が、どうして銀さんと一緒に・・」
「それは誰のことを言っているのだ、雪広あやか・・? 答えによっては、お前を気化冷凍法で氷にして、かき氷にして食ってやろうか・・?」
「マスター、気化冷凍法を使えるのはある作品の吸血鬼しか出来ません」
「うおッ! エヴァ、茶々丸ッ!! いつの間にッ!?」

あやかが考え事をしている時に、突然エヴァと茶々丸がフラリと来たので、千雨は驚いた。どうやら話している間に、銀八に会いにくる為にやってきたらしい。しかし学校内だからといって、わざわざ休みの日にも制服で来るとは・・

「何驚いてんだ、長谷川千雨・・? 私が来て都合が悪い事でもあるのか?」
「タイミング的には最悪だな」
「正直だなオイッ! 八つ裂きにしてろうかッ!?」

千雨の正直さに少し感心するも、やはりキレるエヴァ。だがエヴァは千雨を一瞥し、相変わらず考え込んでいる、あやかに向き直る。

「で、貴様は何を考え込んでいるのだ・・? 銀時の事か?」
「いえ、その前に銀さんにくっついている、チビッ子をどうしようか考えているんですよ」
「おい・・それ私のことか・・?」
「あれエヴァさんいたんですか? 小さくて気付きませんでしたわ・・」
「このアマぁぁぁぁ!! 少しばかり胸がでかいからって調子に乗るんじゃねえぞゴラァァァァ!!」

ようやくエヴァに気付いたらしく、彼女に初めて視線を向けて、あやかは軽くあしらった。そしてエヴァはまたブチ切れ、あやかをぶん殴ろうとして彼女に詰め寄るが、茶々丸がエヴァを後ろから両腕を掴み、止めにかかる。

「放せェェェェ!! この女は一発ぶん殴らないと気がすまんッ!! つーか殺すッ!」
「女子供は殺さない主義じゃないんですか? マスター」
「場合によっては変更じゃ、ボケェェェェ!!!」
「原作の設定を勝手に変更しないで下さい」

相変わらずジタバタ暴れるエヴァを茶々丸は取り押さえるのに奮闘する。そんな風景をあやかはあざ笑うかのように眺めていた。

「オホホホホ、子供は元気ですわね~」
「お前な・・そろそろエヴァと仲良くなれねえのかよ・・」
「所で千雨さんも銀さんの事・・」
「だから私は違うってッ! もう何回目ッ!?」

急にあやかの矛先が自分に戻ったので、慌てて必死に否定する千雨。だがあやかはジーっと千雨を怪しむように睨んでくる。

(何で、いいんちょって銀八が絡むとこんなに恐いんだよッ! 誰かヘルプッ!)

心の中で千雨が助けを求めている時に、何やらコツコツとこちらに向かってくる足音が・・千雨はそちらに向く。

「何やら、万事屋の前で修羅場やってるね~」
「あ、朝倉ッ!?」
「呼ばれてないのに参上~ 久しぶりに万事屋に来たら、面白いものが見れたね~、銀さん争奪戦でもやってんのかな?」
「そう見えるならこの危機を打破しろッ!」 

やって来たのは万事屋の情報屋担当、朝倉和美。何やら嬉しそうにしているが、千雨は必死な様子で訴える。
それを聞いて、「う~ん」と髪をイジりながらしばらく考えていたが、ピンと来たのか、いい事思いついた的な顔をする。

「じゃあ、始めようかみんな」
「何やるんですか?」
「なんか私、嫌な予感する・・」

和美が急に全員に聞こえるように号令をかける。メンバーがみんな和美に注目したので、彼女は満足そうに頷く。

「茶々丸さんと私は銀さんと結ばれたいとは思ってないけど、まあ私は別に銀さんと付き合っても・・あ、ごめんいいんちょ・・目が恐い、それでこっち見ないで、冗談だから・・ということで銀さん争奪、王様ゲーム開幕ゥゥゥ!!」
「「「王様ゲームゥゥゥゥ!?」」」

茶々丸以外のメンバーが一斉に叫ぶ。いきなり和美が合コンでも最近やらないゲームをおっぱじめようとしているのだから。

「おい王様ゲームって・・」
「茶々丸さん説明お願い」
「王様ゲームとは、番号と王様の印が書いてあるくじを引くという、シンプルなゲームです、王様のマークを引いた人は王様となり、番号を持っている人たちに命令が出来ます、例えば私が王様の場合の時、私は命令する権力を得て、「3番の人は爆死してください」と言えば、3番の人、ここは仮にマスターが3番のクジを持ってるとして、残念ながらこの命令は絶対で、拒否不可です、なのでマスターは爆死します、主に昔合コンでやっていた余興のゲームです」
「いや知ってるからッ! 説明いらないからッ!」
「ていうか、私が爆死ってどういう事だ茶々丸ッ!?」
「残念ながら、私が適当に言った番号がたまたまマスターだったんです、さようならマスター」
「おやすみなさい、エヴァさん、一片の骨も残さず消滅して下さい」
「勝手に死なすなァァァァァ!!! お前を消滅させてやろうか、雪広あやかッ!?」

5人でコントをやって騒いでいたら、突然万事屋のドアがガチャと開き、不機嫌な表情をして、この騒動の種が顔だけ出して、5人を見た。

「うるせえよ、バカヤロウ・・部屋の前でギャーギャー騒ぐなや、ジャンクにしてやろうか? ああん?」
「ちょうどいいタイミングだね~銀さん、今から万事屋メンバーでゲームしようと思うんだけど?」
「あ? 何するんだよ?」
「王様ゲームッ!」
「いや何で王様ゲーム? 悪いけどお前等でやっとけ、俺、昨日教師の連中と飲みいったから頭痛いし、さっきひとっ走り行ったから疲れてんだよ・・だからそういうのしたくねえんだよ、わかる?」
「わかりません、じゃあ失礼しま~す」
「俺の意見、笑顔で拒否ッ!?」

相変わらずの和美に、銀八は最初は不機嫌をを表に出していたのに、和美のペースに乗せられて、そのまま和美の入室を許してしまった。







万事屋の部屋には一人の男と五人の女子が、ソファに座り集合する形になった。ちなみに席順は銀八を真ん中にし、右にエヴァ、左にあやかが銀八を挟むように座り、銀八の向かいには和美で、エヴァの向かいに茶々丸、あやかの向かいに千雨が座っている。銀八はまだ納得していないのか険しい顔で、楽しそうに割り箸に番号やら王冠のマークを書いている和美を眺めている。

「何でてめえ等といきなり王様ゲームやんだよ・・?」
「いいじゃん、銀さんどうせ暇でしょ? だったら万事屋メンバーの親睦会だと思って参加してね」
「何が親睦会だよ・・前、UNOやったろうが」
「いや、基本週一で親睦会やろうと思ってさ」
「何でそんなに親睦会が多いんだよ? どんだけ俺等結束力を必要としているの?」
「はいクジ完成! これを箸立てに入れて・・王様ゲームのセットの完成ッ!」 

銀八と和美が会話をしている間に、王様ゲームに必須のクジ引きセットが完成したようだ。だが銀八は全く乗り気じゃない。

「めんどくせぇな・・つーかよエヴァ、お前何で殺気立ってんの?」
「王様ゲームには殺気がつきものだろ・・」
「いや、いらねえよ・・殺気は王様には必要ないから、そりゃ嫌いな奴をどうしてやろうか考えるのはあるけど・・あれ、あやかさん? そんなにクジを睨んでどうしたんですか?」
「どれが当たり牌か透視しようとしているんです・・」
「うん、そういうのは『哲也』のキャラに任せてね? お前はお前でいいから・・何で俺の両サイドこんなにピリピリしてんだよ・・ 」

(このデカ乳娘をどうにかして、銀時の前で恥をかかせてやるわッ!)
(このチビッ子をどうにかして、銀さんの前で恥をかかせてやりますッ!)
(何で、こいつ等いきなり睨みあってんの・・? つーか何で仲悪いんだこいつ等? アレか? マラソン一緒に走ろうと言ったのに、スタート5分でいきなり裏切られたとか、そういうエピソードでもこいつ等持ってんのか?) 

銀八は両サイドから熱い熱気を感じながら、冷や汗をかきながら、仲が悪い理由を模索していた
そんな時、和美はクジを入れた箸立てをシャッフルして、ポンと机の真ん中に置く。

「じゃあ、みんな引いてみて・・」
「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
「ちょっ! エヴァちゃん、いいんちょ早ッ!?」

和美の静止も遅く、和美がスタートの合図する前にエヴァとあやかは、一斉にクジ入り箸立てに襲いかかった。
ドシャァァァン!! と音を立て、机の上で二人が箸立ての奪い合いをしていた。

「何コレ? 私達王様ゲームやろうとしたんじゃねえの? なんかバトル勃発してんだけど・・」
「ここまで激しくなるとは思わなかったね・・せっかく二人に銀さんとの仲を進展をさせてあげようと、これやったのにね~」
「何で、王様ゲームで進展すんだよ?」
「知らないの、千雨ちゃん? 王様ゲームでの王様の命令は拒否不可なんだよ? 例えば、王様が「3番と2番がキすして下さい」って言えば・・3番と2番は絶対キスしなきゃいけないんだよ、ウフフ・・」
「そうな事も命令出来んのかよッ!? そんな光速の進展は駄目だからッ!」
「千雨ちゃんも、もしかしたら銀さんと色々出来るかもねぇ?」
「だから違うっつうのッ! 私と銀八は、そういう仲じゃねえよッ! お前もいいんちょみたいに、勘違いしてんじゃねえよッ!」

必死に否定する千雨を見て、朝倉はニヤついて、「へ~」っと曖昧な変事をして、全く信じていないようだった。

「まあ、そういう事にしといてあげるよ、今はね?」
「何だよ今ってッ! 今もその先もずっと私はアイツとは何もねえよッ!!」
「どうかね・・あ、エヴァちゃんといいんちょ? クジ取れたならそろそろ返してくれない?」

二人が箸立てで奪い合いをしている所に和美が喋りかけて来たので、二人は奪い合いを止めて、息を荒げながらお互いクジを引いて、和美にクジ入れを渡す。ていうかクジ引きに早く引こうが遅く引こうが関係無いのだが・・
ようやく他のメンバーもクジを引くことが出来て、次々とみんながくじを引き始め、最後に銀八がめんどくさそうにクジを引く。

「じゃあ、みんな引いたよね? じゃあ王様だ~れだ!?」
「俺だよ」
「お前が王様かよッ! なんか恐いな・・」

テンションが最高にハイになっている和美が号令をすると、銀八が王冠が書いてあるクジを上に掲げる。
銀八が命令権を習得したので、千雨は不安感が募った。

「銀さん、王様ッ!? 残り物には福があるって本当だね~ じゃあ王様命令お願いね」
「じゃあ、お前ちょっとギルガメッシュに喧嘩売って来い」
「いや、番号でお願いね・・それに無理だから・・まず死ぬし、ていうか作品違うから・・」

銀八は和美を指差して命令するが、すかさず和美に却下される。名指しの上に別作品に喧嘩売りにいくなんて絶対無理だ。和美の却下を聞いて、銀八が「んだよ、わがままが野郎だな」と呟き、渋々命令を変更する。

「2番の奴、タカミチに向かって「この小説って14話も進んでんのに、一回も出番無いですね~元からいない感じでこれからもいくんですか?」って行って来い」
「いやそれはあんまりだろッ!」
「あ、2番は私です銀時様」
「よし行って来い、今頃あいつ暇だから、漫画喫茶で『ドカベン』でも読んでるはずだ」
「了解しました」
「茶々丸、躊躇無しッ!?」

銀八の残酷な命令にエヴァはさすがに酷いと思って、立ちあがって抗議したが、2番を引いた茶々丸は躊躇せず、颯爽とターゲットの所に向かうのを見て、ため息をついて自分の席に座った。

「まあ本当にあいつ出番無いけどな・・」
「不憫だよな、あの人も・・」
「ていうか一人いなくなったからもう王様ゲームはいいだろ?」
「別に一人減ろうが大丈夫です、続行だ、倍プッシュだ、むしれるだけむしれ」
「アカギネタはいいから、いいんちょ・・じゃあみんなクジ返して、一人減ったけどメンツはまだ5人いるし、茶々丸さんが帰ってくるまで5人でやろうか」

和美はタカミチの事を考えているエヴァと千雨、タカミチの事などどうでもいい様子のあやかと銀八からクジを回収し、クジ入れに入れてシャッフルする。

「今度は誰が王様になるかな~?」
「こいつ何でこんなにテンション高いんだよ・・?」
「知らねえ、なんか楽しいんじゃね?」
「じゃあなんで、俺の両サイドはメンチ切り合ってんの?」
「それは知ってるけど、言わねえ」

あやかとエヴァの睨み合いに挟まれている銀八は困惑しているのだが、千雨はあえてその質問には答えなかった。そんな千雨に「いや何で言わねえんだよ?」っと銀八が聞いてくるが、彼女はは不機嫌そうに「さあな」と返す。そんな様子の千雨に銀八が首をかしげている頃に。テンションがハイになっている和美が、机の真ん中にドン!とクジ入れを置く。

「じゃあ今度は普通に引いてね、エヴァちゃん、いいんちょ? クジ早く引きたいからって飛びかからないでね?」
「元よりそのつもりだ」
「クジ引きに早く引くこうが遅かろうが関係ありませんわ」
「あんた等、最初なにやってたの思ってるの? 机の上でスマブラだよ?」

しらばっくれる金髪コンビを見て、朝倉は唖然としながらツッコミを入れた。
そんな二人は置いといて、王様ゲ―ム第2回が始まる、次々とメンバーがくじを引き、クジ入れは空になった。

「あれ一つ残るはずなんだけどな・・まあいいや、じゃあ王様は誰かな?・・・・・・はい私ですッ!」
「自分で質問して自分で返したよこいつッ!」

和美のペースに翻弄されながらも千雨は懸命にツッコミを入れる。そんな千雨を尻目に和美はずっとやりたかったことをやろうとニヤニヤしながら、実行する。

「じゃあ1番の人と2番の人がキスしてくんない?」
「「「はいィィィィィ!?」」」
「あ、俺1番だ」
「「「何ィィィィィィィィ!?」」」

和美のびっくり提案に、エヴァ、あやか、千雨が同じタイミングで驚くが更に、銀八の番号が入っている方が最も驚いた瞬間だった。そんな様子のメンバーを、一人計画通りと和美がムフフと笑みを浮かべていた。

(まさかうまく、銀さんが当たり引くとはね・・ここまで上手くいくなんて私やっぱ天才かな~? 銀さんと誰かがキス・・記事になるかもこれッ!?)

和美が悪巧みしている時に、他の女子三人は自分の番号をすぐに見た。

「3番だ・・」
「5番です・・」
「4番・・別にいいけど・・ん? ていうか、全員違うじゃん?」

エヴァ、あやか、千雨は自分の番号を見たが2番ではない。2番のクジは何処かにいったのか? と思っていると・・

「あ、2番は私だった」

テーブルの下から、龍宮真名が、2番のクジを持って茶々丸が座っていた所から顔をひょっこり出してきた・・
あまりの予想外の登場に一同固まる・・

「何、お前3連チャンで出演してんだよ・・?」
「いいじゃないか減るもんじゃないし、所でこうなると私は先生とキスすることになるが・・別にOKだぞ?」
「俺はNOじゃボケェェェェェ!!」
「ぶべらッ!」

銀八は普通にソファに座って、レギュラー面している龍宮に、立ちあがってドロップキックをかまし、その後彼女を担いで、ドアを開けて放り投げた。

「二度と来んな、ストーカー」
「フ、そう言われると私は逆に燃えるものだ」
「マジで死ねストーカー」
「おふッ!」

銀八はまだ不敵な笑みを浮かべている龍宮に、茶碗を投げて彼女の顔面に直撃させる。茶碗は見事にパリンと割れるほどの威力だったので、あまりの痛みに龍宮はじたばたのたうちまわっていたが、銀八は彼女のを残してバタン!とドアをいきおいよく閉めた。

「じゃあ、バカは追い出したんで、やり直しだなこれ」
「あ~もう少しだったのに・・」
「何がもう少しなんだよ?」
「いや、なんでもないよ、アハハハ・・じゃあクジ回収ね」

銀八はソファに座りながら、和美に疑いの視線をおくるが、和美はそんな中メンバーのクジを回収する。

「よしクジ回収っと、じゃあ第3回をやろうか?」

和美は楽しそうだが、銀八はもうやる気は完全に0の表情だった。ていうか元からやる気はない

「いやもういいだろ・・なんで俺がお前等とこんなゲームに3回も付き合うんだよ・・」
「銀時、やらなかったら惨劇ゲームに参加させるぞ・・」
「銀さん、これで最後でいいですからやってください」
「何でお前等、そんなに目、恐いんだよ・・わかったよこれで最後だからな!」

銀八は何故か恐怖を感じさせるエヴァとあやかに圧倒されて、渋々と和美が置いたクジ入れから、クジを引いた。
そんな時、ガチャッとドアが開き、用事を済ませた茶々丸が帰ってきた。

「行ってきました銀時様」
「ご苦労、アイツどうだった?」
「『ドカベン』読みながら落ちこんでました」
「本当に漫画喫茶にいたのか・・あいつも相当暇なんだな・・」

茶々丸の報告によると、タカミチは漫画喫茶で落ちこんでいるらしい。が銀八はそれを聞いても澄ました顔で「ふ~ん」と鼻をほじりながら、ほぼノーリアクションだ。

「ま、そんなことよりクジを引けよ、お前の残ってるぞ」
「わかりました」
「同僚の教師の事をそんなことの一言で消しやがったよコイツ・・」

銀八の酷さにタカミチ哀れと思っている千八をよそに、茶々丸は銀八が差し出してきたクジ入れから、残っている一本のクジを引いた。すると・・

「あれ? これ王様のマークですね?」
「へ? 何だよ王様、最後の一本だったか」
「何か命令しなければいけないんですけど、何を言えばいいんでしょうか?」
「あ、私に任せてッ! 良い事教えてあげるッ!」

残りもんにはやっぱ福があるもん。見事茶々丸は命令が出来る、王様になれたが、どう命令すれば困っていたが、和美がしゃあしゃあと茶々丸に近付いて耳打ちする。

「おいッ! てめえが教えたらロクな命令になるの決まってんだよッ!」
「大丈夫大丈夫、みんなが楽しめる案にするから!」
「お前が絶対出来ない事だろうがそれッ! どうせお前だけが楽しめる案だろそれッ!?」

銀八のツッコミのむなしく、和美は茶々丸に近付いてひそひそと耳打ちし、茶々丸が「わかりました」と和美に向かって頷く。

「じゃあ、3番の人、好きな人の名を言ってください」





茶々丸の命令にニヤニヤしている和美と、きょとんとしている銀時を除いて、女子三人・・そして急いで同じタイミングで自分の持っているクジを見る。

「私は2番だッ!」
「5番だッ!」
「アハハハ、私4番だよ~」
「俺1番だな」

エヴァ、千雨、和美、銀時は外れた。ということは一人残ったのは・・

「わ、私です・・」
「いいんちょ当選~ッ!!! さあ言ってみようか~?」
「ほ、本当に言うんですか・・? だ、だって目の前に・・」
「王様の命令は絶対だね~じゃあ言ってみようか~?」
「そ、そんな・・」

見事、和美の思い通りの展開になり、それの犠牲になったのは目の前の人が意中の人である、あやかだった。顔を赤くして、激しく動揺していた。

(ここで言えばもしかしたら・・いや無理ですッ! こんなノリでぶっちゃけることなんて私無理ですッ! ていうかもう死にたいッ! 何でこんな事に・・)

あやかがあたふたとそんな事を考えていると、エヴァと千雨も少し動揺しているようだった。

(あいつが言ったら、もしかしたら『あやかルート決定ッ! エヴァお役御免ッ! 帰れッ!』で終わる可能性がッ!?・・冗談じゃないッ! こんな出番の無いまま、ヒロイン降板なんぞ許せんぞッ!)
(別にいいんちょが銀八の事が好きなのはいい・・けど銀八がいいんちょと恋人になったら、私はこのまま銀八といつも通りにいれるのか・・いや、待て・・銀八がいいんちょの彼氏になるなんて、天文学レベルに確率が低い・・大丈夫だ・・)  

二人が黙々と考えている時に、あやかは真っ赤になったままソファから立ちあがった。

「じ、じゃあ私の好きな人は・・」
「「!!」」
「はいぶっちゃけて見よう~」

あやかが息を荒げながらも、決心した表情で喋り出した。エヴァと千雨も、それを聞きビクッと反応するが、和美はテンション上げ上げだった。そしてあやかは隣りに座っている銀八を見て

「ぎ、銀さん・・あの言いたい事があるんですけど・・」
「うん?」

銀八はあやかに顔を向けてきた、真正面から銀八を見てあやかはどんどん顔を赤くして、やっと口を開いた。

「私の好きな人はッ!」
「おいィィィィィ!! 雪広あやかッ! 窓から校庭を見てみろッ! あれ『テニプリ』の真田じゃねッ!?」
「本当だッ! いいんちょッ! 戦ってこいよッ! 「まだまだだね」って勝ちゼリフ吐いてやれよッ!」
「マスター、千雨さん、テニプリのキャラはこの作品には出ません」

決心を固めてあやか銀八に詰め寄るが、そんな時にエヴァと千雨が慌てて、部屋の窓から校庭を指差して、必死に叫んでいたが、茶々丸は冷静にツッコミを入れ、一蹴する。だが今のあやかには三人の会話は聞こえない。顔をどんどん赤くして、ヒートアップしていた。それでも銀八にいきなり抱きつき、そして・・

「いきなり何だよッ!?」
「もう・・限界です・・・」
「おいあやか?」
「・・・」
「もしも~し?」
「・・・」
「あの・・抱きつかれても困るんだけど・・」
「・・・」
「あやか?」

銀八があやかを何回呼んでもピクリとも反応しない。銀八はおもむろにあやかを引き離して、あやかの顔を見て一言
つぶやいた。

「気絶してるぞコイツ・・」





「「「はい??」」」
「あやかさん、テンション上がりすぎてダウンしたようです」
「「「嘘ォォォォォ!?」」」

銀八がゆさゆさとあやかを両手で揺らすが、彼女は顔を真っ赤にしたまま気を失っていた。どうやら銀八に告白する前に、尋常じゃない緊張感にぶっ倒れたらしい・・

「いやどんだけ緊張したのよ・・あ~スクープになる記事だったのに~」
「ったく・・おいッ! 誰か冷えピタ買って来いッ!」
「じゃあ私が買ってきます」
「ふん、情けない女だ・・」
「ま、これで一件落着か・・」

こうして波乱の王様ゲーム三本勝負の結末は、あやかの自滅により幕を閉じたのであった。


















翌日の早朝、銀八は学園内の人気の無い所のベンチに座って、復活したあやかと話していた。

「私、昨日、何か言いましたか・・?」
「しつけえな、何も言ってねえよ、言う前にお前、死んでたよ・・」
「本当に何も言ってなかったですかッ!?」
「あ~何十回も聞いてくんじゃねえよッ! 何も言ってねえよッ! 何なのッ!?」
「いえ、あの・・すいません・・」

昨日ぶっ倒れたあやかは銀八により、彼女が住んでいる女子寮に運ばれた。翌日起きたあやかは、
何度も同じ質問を銀八にしてくるのであった。

「所で銀さんって、その・・好きな人とかいます?」
「この世界でか? んなもんいねえよ、ここガキばっかだしよ」
「そうですか・・」

思いきった質問をしてみたものも、全く銀八は動じずぶっきらぼうに返した。だがあやかはそれを聞いて少し安心した。

「じゃあ別にエヴァさんや千雨さんの事、何も思ってないんですね・・良かった・・」
「何でウチのメンバーはそんな事ばっか考えてんだか・・俺がテメエ等ガキ共に惚れるなんてありゃしねえよ」
「ハハハハ・・そうですか・・」

銀八は頭を掻き毟りながら、隣りで座っているあやかの頭を軽く叩いていると、遠くから誰かがこちらに向かって歩いてきた。

「何だいいんちょと銀八こんな所にいたのかよ・・」
「こいつから話しがあるって言われて、こんな人気のない所に呼ばれたんだよ」
「何話してたんだよ・・?」
「くだらねえ話さ」
「ふ~ん・・」

やって来たのは千雨。万事屋に行ったのだが、誰もいなかったので、しょうがなくぶらぶら散歩していたら、偶然二人を発見したらしい。

「じゃ行くか・・野郎共行くぞ」
「いいんちょ、銀八と何話してたんだよ?」

銀八が立ちあがり、それと一緒にあやかも立ちあがり、万事屋に向かおうとする。銀八はさっさと歩いて行くが、千雨は神妙な顔であやかに問いかけ、立ち止まらせた。あやかは口元から笑みを浮かべ、千雨に顔を向けて口を開いた。

「興味があるんですか? 千雨さん?」
「別にねえけど・・一応な」
「千雨さんが自分に素直になるなら話してあげますよ」
「素直って何だよ! 別に私はアイツの事何も思ってねえってッ!」
「私が銀さんの事話しているなんて一言も言ってませんわよ?」
「あ・・」

あやかの口車に乗せられて、一本取られてしまった千雨は苦い表情を浮かべた。そんな千雨の様子にあやかは何処か楽しそうだ。

「今度、私が銀さんに告白する時はゲームとかのノリじゃなく、ちゃんとした場でやりますから」
「言っとくけどアイツは生徒を恋愛対象なんかにはしねえよ・・」
「わかりませんわ、だったら賭けます? 私がフラれたら千雨さんの勝ち、結ばれたら私の勝ち、どうですか?」
「面白いな、まあ私が勝つと思うけど・・いいんちょまた気絶しそうだし」
「なッ! 今度は気絶しませんわよッ!」
「ま、告白しても無理だと思うけど、精々頑張れや」

あやかの賭けに千雨は少し楽しげに同意する。そんな時、二人に銀八がけだるそうな表情で振り向いた。

「何してんだテメエ等・・さっさと行くぞ、今日は珍しく仕事あんだよ」
「あ~だから朝倉がいたのか・・じゃあ行くか、いいんちょ」
「貴方に言われなくても行きますわッ!」

共通する譲れない者に二人は少し早歩きについて行った









教えて銀八先生~のコーナー
「え~14話も終わった所で、今回は『この作品のバランス性の悪さについて』議論しようと思います、最近は感想版に応援のメッセージもぞくぞく来てくれますが、「オリ設定はいらなかった」とか「桂とか高杉は出ないほうが良かった」とか感想というより批評も来ている、どうしたらいいのかお前等考えてみろ」
「そんな事言われてもな・・もう14話進んでるし、どうすりゃあいいんだよ・・」
「まあ、もう戻れない事情ですか・・まあ作者の限界性が感じられますわね・・」
「俺もなんとか改善する手は無いか模索してんだよ、こっちも・・ほらテメェも考えろよ、マヨ侍」

銀八が千雨とあやかが考えている時に、端っこの席で机に足かけて座っている男に近付いて問いかける。男は瞳孔開き気味の目で銀八を睨む。

「土方だ・・誰がマヨ侍だ・・ていうかな、んなもん一度休載して、面白いネタ考える期間でも作っときゃあいいだろ」
「つーか、何でテメェがいんだよ、本編出る前にお前もアピールタイムですか? 必死ですね~土方さん、そんなに本編出たいのかな?」
「別に本編に出る気はねえよ、俺は近藤さんや総悟みたいな、くだらねえ野望は無いんでね、何度も言うが俺はテメェみたいにガキ共と戯れる趣味はねえんだよ」

お互いタバコを吸いながら、メンチを切り合っている様子の銀八と真撰組の副長、土方十四郎に、千雨が恐る恐る質問してみた

「あの~銀八、その人もお前のところの世界の人?」
「知らねえよ、お前の世界の奴だろ?」
「何しらばっくてれてんだコラッ! ていうか俺がこの世界のキャラだったら完全に浮いてるだろうがッ!」
「出席番号32番『土方十四郎』、瞳孔開き気味の中学三年生、キャラは『マヨネーズキャラ』という新ジャンル、必殺技は、嫌いな生徒の机の中をマヨネーズまみれにしたり、嫌いな生徒の頭にマヨネーズをかけたり、嫌いな生徒の家に忍び込んで、その生徒が寝ている隣りで、夜な夜なマヨネーズ作って、そのマヨネーズを生徒の顔にぶっかけるっていうキャラじゃねえの?」
「どんなジャンルのキャラだよッ!? つーか何で俺中三なんだよッ!? 何で女子校なのに俺いるんだよッ!? しかもマヨネーズでのイジメ手段が陰湿なんだよッ! 絶対嫌われるだろそれッ! ていうか元から俺はこの世界のキャラじゃねんだよォォォォ!!」

銀八と土方のやり取りを見ていた、千雨とあやかはもうカヤの外だった

「丸っきり、テーマと関係ねえこと喋ってるよ・・」
「テーマの結論はこのまま進んでも駄目だったら、修学旅行編の終わりでほんわか作品ごと終わらせるという方向で行きましょう」
「確かにこんな不安定だとそうなるかもしれないけど・・ていうか修学旅行編ってどんぐらい先?」
「え~・・30話ぐらい進んだ頃に・・」
「まだ全然じゃん、何でさっさとやらねえだよ?」
「間違い無く長編になりそうだから、そのために作者がネタ考える時間を作っています」
「あ~そういう事・・」

ジリリリリリリッ!

「おら出席番号32番さっさと帰れよ」
「チッ・・帰るに決まってんだろ、ここに出れば本編に出るのが遅れると聞いたんでな、その為に来ただけだ」
「俺の世界ではどんなジンクスが出来てるんだよ・・ま、新○、ゴリラ、サド王子は確かにヤバいわな・・」

銀八が三人の問題児を考えている時に、既に土方はドアを乱暴に開けて教室から出て行った。

「あんな人もいるんですね~銀さんの所の世界の人って」
「瞳孔開いてたぞ・・2枚目だけど、なんか近寄りがたいな・・」
「本編で会っても近付かないように、マヨネーズぶっかけられるぞ、じゃあ今回は誰が・・」





銀八が雑談している時にいつも生徒が来るのだが、一向に来ない。待てども待てども来ない、待っているウチに銀八がイライラし始めていた。

「おい遅くねえか・・もう俺帰っていいかな・・?」
「いやさすがにそれは不味くね?」
「いいんだよ、来ない奴は悪い、次回予告もそいつにやらせろ、俺は帰る!」
「いや待てよッ!」
「銀さん、そんな無責任なッ!」

千雨とあやかの静止も聞かず、銀八はさっさと教室のドアを開け出て行ってしまった。慌てて二人もあとを追いかける。教室には誰もいなくなった。





「ふ~やっといなくなったな・・旦那に見つかったら色々不味いし・・こうやって隠れてたけど・・」

教室の天井が少し穴が空いてそこから、教室にヒラリと下りてきた見た目があまりにも地味で土方と同じ服装の男・・

「このタイミングで俺って・・『山崎出して』なんて意見一つしか無かったのにな・・ま、仕事貰ったんだから頑張るしかないか・・でも恐いな~」

一人言をつぶやいている男の名は山崎退、密偵をこなす、ミントン好きの真選組メンバーだ、何故今回ここにいるのかは次回を待ってください。











「はいということで次回 十五訓『驚いた事があっても全く動じないのが真のスパイ』ではまた次回で会いましょう」

地味な山崎が地味なりの次回予告をして、地味に幕を閉じた

「いや、地味地味言いすぎでしょうがッ!」

地味男は吼えた

「だから地味ってなんだよッ!? あだ名みたいに言うなッ!」












銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー

銀八「では吟じます」
千雨「いや、やらねえだろそんなことッ!」
銀八「言ってみただけだよ、まず一通目『いっそのことジジィを殺して学園を牛耳るのは?』という意見をもらいました。いいですね~ディ・モールト良いですよこれ、じゃあ校名も変えましょう、『銀魂学園』に変更で」
千雨「駄目だからねッ!? 何『銀魂』を『ネギま』の世界に浸透させようとしてんだよッ! つうか『銀魂学園』ってお前の所の『3Z』の『銀魂高校』と微妙に被ってんだろうがッ!」
銀八「作風が銀魂よりだからいっそそうした方がいいだろ?」
千雨「出来るかァァァ!! 色々苦情が殺到するわァァァァ!!」
銀八「しょうがねえな、じゃあこれはまたの機会に・・二通目~『アスナと神楽って、どっちの方がバカなんですか?』・・どっちもバカだからな・・もうバカの中のバカですからね、もう手遅れですから、比べるとしたら、外伝で『銀魂VSネギま! どっちが上か勝負させてみようぜッ!』的な企画でもやって、クイズ対決でもしてもらいましょ」
千雨「どんなバトル? ネギまのキャラと銀魂のキャラが色んな事で戦うって事?」
銀八「そうすればうちの本編入りが無いキャラも出せるだろ? 見せてやりて~な~、お前に原作のツッコミ新○君」
千雨「いやもう会ったから・・もうあの可哀想な人とは一回会ってるから・・」
銀八「そうだっけ? ていうかアイツこっちに来たっけ?」
千雨「おい、それはいくらなんでもあんまりだろッ!」
銀八「本当に覚えてねえや・・じゃあラスト~『なに銀ちゃんテレてるの? わかったよ・・んじゃいいよ。あやかとお風呂に入って・・』・・・・・・・・そぉぉぉぉいッ!」
千雨「また破いたッ!」
銀八「おい、これ荒らじゃねッ!? これ前と同じ読者が送ってきたんだろッ!? しかもかなりエスカレートしてるんですけどッ!? 書けないレベルまで来てるんですけどッ!?」
千雨「また来たのか・・?」
銀八「無理だからッ! これ無理だからッ! XXX板にでも行かないと無理だからッ!」
千雨「でも、似たような話は企画してるってよ? 温泉騒動的な?」
銀八「その話しが最終回になるだろうがボケェェェェェ!!! 何ッ!? イケそうな気がする~っとでも持ったのか作者ッ!?」
あやか「あると思いますッ!」
銀八「あるかァァァァァァ!!!!」







おまけ 真撰組謝罪会見

土方「え~前回、うちの隊の者が不適切な発言を連発したということで、本当にすんませんでした、おらテメェがここ謝るところだろうが・・」
沖田「土方さん、何か言ったんですかぃ? 責任とって腹斬って下さいね」
土方「オメェェェェだよッ!! 前回のお前のS発言で今、感想板が炎上しそうなんだよッ!? どうすんだテメェッ!!」
沖田「あ~『早くやってくれ』っとかそういう意見でも来てるんですか?」
土方「来るかボケッ! 大半はオメェに対する宣戦布告だよッ!」
沖田「マジッすか~?」
土方「マジだよ・・ったく当分は出るのを自粛するんだな・・」
沖田「でも、『あやかと千雨以外のA組生徒全員を調教して下さい』という意見貰ったんですよ、これは是非やってあげなきゃいけないでしょ」
土方「誰だァァァァァ!? こんな感想送った奴誰だァァァァァァ!? 何『沖田調教編』作ろうとしてんだよッ!?」 
沖田「土方さん、俺、最近縄の縛り方練習してるんですよ、もしかしたらいつか使うかなと思いましてねぇ、ということで練習台になってくれませんか?」
土方「ふざけんなッ! 誰がなるかそんなもんやるかッ! ていうかテメェ何処でやる気だそれッ!?」
沖田「向こうのガキ共はかなりの数です、読者を飽きさせないよに、いっぱい技が必要なんですよ、土方さんッ!」
土方「もうお前帰れェェェェェェェ!!! 色んな技覚える前に人としての生き方を覚えろォォォォォ!!」















[7093] 第十五訓 驚いた事があっても全く動じないのがスパイの基本
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/03/13 10:50
「侍の国」
そう呼ばれていたのはもう昔の話
かつては侍達が仰ぎ夢を馳せた「江戸」の空では、今は異郷の船が飛び交う。
かつて侍達が肩で風を切り歩いた街には、今は異人の者がふんぞり返り歩く。
そしてこの世界に、また再び異常な現象が起きていた。

昼頃、江戸の歌舞伎町にあるとある焼肉店。二人の同じ服装の男が、個室の席で座っていた。

「山崎、別世界ってあると思うか?」
「ええ、松平のとっつぁんから聞いた事ありましたよ、何でも幕府の上層部だけが行ける、こことは違う次元の世界でしょ?」
「話は早いな、お前その世界に行ってこい」
「えェェェ!?」

何やら不思議な話をしている、この二人。質問してきた男の名は江戸の治安を守る、武装警察『真選組』の副長、土方十四郎。山崎と呼ばれた見た目地味な男は、真撰組の密偵担当の山崎退だ。

「いきなり何言ってんですかッ!? 副長ッ! 別世界になんて行けませんよッ! まず俺がそんな所にいく意味がわかりませんよッ!!」
「声がデケェよ、幕府の上層組の連中に聞かれでもしたら、俺達の首が飛ぶぞ」
「あ、すいません・・そんなにヤバい事なんですか・・?」

山崎を疎めた土方は、ポケットからタバコを取り出し、マヨ形のライターで火を付け吸い始めた。そのままタバコを吸いながら、山崎に視線を戻した。

「最近、この街に攘夷志士が少ない事に気付いているだろ?」
「はい、最近は攘夷志士の連中も見かけません・・まるで、神隠しにでもあったように消えてますね・・」
「その神隠しにあっている連中の居場所がわかった」
「本当ですかッ!?」

山崎は土方の報告を聞いて驚いた。今、真撰組が最も不可思議に思っている事。攘夷志士の出現率の低下だ。
この国にとってそれは良い事なのだが、おかしすぎる。
「桂小太郎」や「高杉晋作」を初めとする、攘夷志士が大量に姿を消しているのだ。あの厳重指名手配犯の二人がいなくなるとは、あまりにも不気味だ・・真選組はこの現象の正体を模索していたのだが、全く持って迷宮入りだった。しかし土方はその消えた攘夷志士の居場所を遂にわかったらしい。

「奴等は別世界にいると、松平のとっつあんから聞いた、勿論極秘でな・・」
「別世界ですかッ!? そんな所に攘夷志士が・・所でなんで極秘なんですか? この事は幕府の上層部にも教えた方が・・」
「その上の連中が奴らを別世界に送ったんだよ」
「えッ!? てことはこの現象の黒幕は俺達の上の連中ッ!?」

土方の情報が再び山崎を驚かす。そんな山崎を気にせずに、土方はタバコを灰皿に入れて、テーブルの上のカツ丼を、持っていたマヨネーズで思いっきりぶっかける。そんなマヨネーズまみれのカツ丼を見て、山崎は気持ち悪そうに口を抑えた。

「うぷ・・なんで上の連中はそんな事をしたんですか・・?」
「どうも上の奴等、この国に邪魔だと対象にした奴等を片っ端にあっちの世界に流しているらしい、桂を罠にはめ、他の連中も強制的に飛ばしたとか・・高杉が消えたのはわからねえらしいがな・・一般人の行方不明者も巻き込れているケースもある、これは幕府の警察庁長官のとっつぁんの情報だ」
「そんな大層な事をどうやってやったんですか・・?」
「さすがにそれはわからねえが・・だが別世界に行くのはそんなに難しい事じゃねえらしい、現にとっつぁんは何回か遊びに行ってるらしいからな」

土方はマヨネーズまみれのカツ丼を食いながら山崎と会話する。そして一気に平らげ、空になった丼をテーブルに置き、話しを続けた。

「そういう事でお前の出番だ、別世界に行って、あの世界の事をピンからキリまで情報を俺達に流すんだ、そして攘夷志士の情報もな」
「いやいや、何で俺が行くんですかッ!? いくら密偵でも別世界ってッ!」
「松平のとっつぁんだったら別世界に行くのは簡単だがあの人は警察庁の長官、デカすぎて簡単には動けねえんだよ、だが俺達真撰組の事は、上の連中は自分の犬程度にしか思ってねえ、奴等の目は俺達には向かない、動けるのは俺達だけだ、別世界にいる攘夷志士を俺達が大量検挙して、別世界や上の連中がやっていた事を国の奴等にバラす、上の連中に赤っ恥をかかせるチャンスだ、いっとくがこれはとっつあんの案でもあるんだぜ」

土方は山崎に説明した後、ニヤリと笑った。だが山崎は対照的に顔をひきつらせていた

「で、俺の出番なんですか・・?」
「当たりめぇだ、密偵のお前が一番の適任だろ今日中に行って来い」
「き、今日中ッ!? いきなりすぎですよッ!」
「うるせぇ、何事も早めにやっとけばすぐに済むんだ、今から屯所に行くぞ、身支度したら、すぐに別世界だ」
「そんな急展開イヤですよッ! しかも俺一人ってッ!」

山崎がもう抗議するが土方はまったく聞かない。そんな事をしていると、ふすまがガララッと開いた。

「ここにいたんですかぃ土方さん、近藤さんが呼んでますよ、何でもとっつぁんが拝借してきた転送装置の行き先の準備が完了したらしいです」

ふすまから顔を出してきたのは真撰組、随一の剣の使い手である沖田総悟。数少ない土方ときさくに話せる・・いや完璧になめている人物だ。ルックスは爽やかだが、腹の中は真っ黒だ。

「総悟か、山崎を取り押さえろ、コイツを別世界に飛ばす」
「やっぱり山崎ですか、まあ予想してあっちの世界でも使える、山崎用の身分証明書は作ってますんで」
「ちょッ! 何作ってんですかッ!? 俺を向こうに飛ばす気満々ですかッ!? そういう準備はしているのに、俺にはアポ無しッ!?」
「お前を喜ばすためのドッキリハプニングだ」
「全然喜べないんですけどォォォォォ!! 待ってくださいッ! まだ心の準備・・あァァァァァァ!!」

山崎の抵抗むなしく、両肩を二人の上司につかまれ、店の中で絶叫しながら、真撰組の屯所へ向かうのであった。













第十五訓 驚いた事があっても全く動じないのがスパイの基本

山崎は数時間後、とある学校の職員室に来ていた

「山崎・・ん? これ何て読むのかな?」
「退(さがる)です山崎退」

目の前にいかにも厳しそうな先生といった感じの教師が、普段着(と言ってもあくまで江戸の普段着なので袴姿だ)
を着て立っている山崎の面接をしていた

「松平先生の教え子で、やりたいのは清掃員か・・ついでに私は学園広域生活指導員と現代国語を担当している、新田だ、よろしく」
「あ、はい・・あの所でここで一番偉い人って何処にいるんでしょうか? 一応挨拶しようと思ってんですけど・・」
「ジジ・・学園長は昼寝中でね、だから私が代わりに君の面接をしているのだよ、実際あんなジジ・・いやあの学園長より、私達一般教師の方が働いてるんだけどね」
「よくそんな人の場所に来ましたね・・?」

新田先生が自分用の椅子に座り、立っている山崎に、ブツブツと学園長の文句を言っていたが、しばらくして自分の事務机に置いてあった、電話で誰かと通話を始めた

「あ~私だ、誰?って、私だよ、先週教師のみんなで一緒に飲みに行っただろ・・いや源先生なわけないだろ、女性の声がこんな低音だったら引くよ、とにかく職員室に来てくれ、君をウチに来て面接をしている子と会わせておくんだよ、採用する前に君の存在の事を知っておかないと、いきなり君とでくわした瞬間、逃げる可能性があるから・・いやめんどいって、君ね・・先週ジャンプ代貸しただろ、チャラにするから早く来なさい」

新田先生は電話相手と長話しをした後、電話を切った、軽く疲れた調子でため息をついて、再び山崎に首を戻した。

「すまないが、君に会わせておく人物がいる」
「え? 誰です? 学園長ですか?」
「あんなジジィ知らねぇ」
「ってあれ? キャラ変わりました・・? 新田先生・・?」

いきなり本性表したかのように、タバコを吸い始める新田先生に、山崎は若干戸惑った・・

「そういえば君は松平先生の教え子と聞いたが、松平先生は元気かね?」
「松平のとっつ・・松平先生は健康体そのものですね、むしろちょっと体悪くなった方がいいんじゃね?ってぐらいパーフェクトボディです」
「ハハハハ、相変わらず元気らしいな、今度ここに来たら是非また一緒に飲みに行こう、キャバクラに」
「あの新田先生、本当に教師?」

突然、松平のとっつぁんの事を新田先生に聞かれたので、山崎はとっつぁんがこの世界で使っている『世界で一番スゴ~イ学校のエラ~イ教師』というなんとも頭の悪そうな偽装の職業を聞いていたので、上手く新田先生に返した。

(大樹の根元に転送された時は最初驚いたが・・とっつぁんの言う通りならこの『麻帆良学園』っていう学校は、色々と情報が集まりやすいとか・・でも案外普通な所なんだよな・・江戸と違うといったら、天人がいない事と建物の雰囲気が違うぐらいかな・・?)

山崎がそんな事を考えていると、職員室の扉が開いて、一人の男が入ってきた。山崎はそちらに振り向き驚愕する、そこには予想だにしない意外な人物がいた。

眼鏡の奥に死んだ魚のような目と、腰に差している木刀、服装は何故かスーツに白衣という姿で背中に野太刀を差しているが、あの目立つ銀髪天然パーマをの男は!

「何か用すか~? 俺~ジジィが寝ている隙に部屋の家具全部奪おうとしていたんすけど~?」
「そんなことしたら、あのジジィ怒るぞ」
「いや~、万事屋の家具って八割ジジィの所からパクってんのに、あのジジィ「誰かに盗まれたァァァ!! ごっそり部屋の家具ほとんど持ってかれてるゥゥゥ!!」って言っただけっすよ、ジジィが万事屋に来たらバレますが、あんなエイリアン俺の部屋には絶対入れないし、もし入った瞬間上の毛から下の毛まで燃やしますわ」
「普通犯人は君だと最初は疑うと思うんだけどね、ジジィどんだけボケてんだか、所で坂田君、そんなジジィはほっといて、この青年がここで働きたいと言っている山崎君だ、山崎君、この人は一応教師という職業になっている坂田先生だ、うかつに近付かない方が良いよ、噛みつくから」
「人を猛獣扱いにしないでくんない? 何俺? 定春?」

山崎は硬直して声が出なかった、目の前で新田先生と話している男は、よく知っている人物だったのだ。そしてその男が山崎の方に目を初めて向けた。

「噛みつかねえから安心しろ、俺が手を出す相手は基本決まって・・ってお前って真選組の・・」
「あァァァァァ!! すいません新田先生ッ! この人から色々とここの事聞きたいんで、おいとましますッ! 清掃員の仕事は明日やるんでッ! ではッ!」

その男こと銀八が、山崎を見て気付いた時、慌てて山崎は銀八の口をおさえて、新田先生に用事を伝え、銀八を引きずったまんま職員室から走って出て行った。残った新田先生は手に持っていたタバコをスゥーと吸い始めた

「まだ採用すると言ってないんだけどな」















山崎と銀八は誰もいない、屋上に来ていた。ようやく山崎の手から解放された銀八は、人が落ちないように設置している、フェンスにもたれかけて、あくびをしていた。そうしてしばらくすると、銀八は山崎に質問した。

「で? 何でテメェがここにいんだよ?」
「それはこっちの台詞ですよッ! まさか旦那もこっちの世界に来てるなんてッ!」
「色々あってな、ここで教師やってんだよ、お前は?」
「え~と話すと長いんですけど・・周りに人の気配は無いな・・この事はくれぐれも、ここの世界の住人には言ったりしないようにして下さいよ・・」

人差し指を自分の手に当て、山崎は声を潜ませる。もしここの世界の住人にでも聞かれたら、せっかくの計画に支障が起きる確率がある、山崎は銀八に近付いて、ヒソヒソと江戸の怪奇現象の説明をした。

「今、俺達の世界・・江戸では大量の行方不明事件が起きているんですよ・・特に攘夷志士の消失が・・」
「行方不明・・?」
「はい、んで俺達が調べた所どうやら幕府の上層部の一角が、この世界を檻代わりにして攘夷志士を閉じ込めているようなんですよ・・しかも少数ですが一般人の行方不明者もいます・・どうやらあいつ等、江戸を自分の思い通りの世界に変えようとしているらしいですよ・・」
「なるほどねぇ・・江戸には良い事だが、こっちの世界の奴等にとってはいい迷惑だ、攘夷志士の連中がここで大人しくしているってのは考えられねえしな・・過激な攘夷志士だったら、こっちでウサ晴らしで意味の無いテロ活動でもおっ始める可能性があるかもしれねぇ・・」
「そこで密偵の俺の出番です、この世界の情報を知って、俺達の世界の真撰組に流す、そしてここにいる攘夷志士の情報も調べて、その後幕府の連中に突然の大義名分の面目を立てて真撰組をここに導入して、一気に捕まえる。こんなことしたら上の連中も黙ってませんが、あいつらのおかげで俺達、真撰組が大手柄を取るチャンスでもあるんですよ・・」

山崎の事情を聞いた後、銀八はしばらく黙り込み下を向いていた。

「・・江戸でそんなことが起こってんのか・・考えてみれば、俺はここに来てから江戸の事すっかり忘れてたな・・」
「え? 旦那何か言いました?」
「何でもねえよ・・所でお前ここにどうやって来たんだよ?」
「あ、俺はコレを使ったんですよ」

銀八が顔を上げて山崎に質問して、彼はポケットから手の平サイズの物を出した。細長い体に二本の割り箸のような手をつけて、目には生気がない人形を銀八の前に差し出す。

「いや・・何この小学生の工作みたいな人形・・?」
「アレですよ、旦那、『ジャスタウェイ』に決まってるでしょ?」
「いやジャスタウェイって爆弾だろ・・?」
「これは爆弾のジャスタウェイじゃないんですよ、こんな小さくてもコレって転送装置なんですよ、名前は確か『ジャスタウェイ・レクイエム』」
「何レクイエムって? ジョジョとかコードギアスのスタンドみたいに、レクイエムってワード付ければカッコ良くなると思ってんの?」

銀八は文句を言いながら山崎からジャスタウェイ・レクイエムを取って、片手でクルクル回しながら観察する。そしてふと気付いたように、山崎に視線を戻した。

「これ俺が使ったら俺も戻れるの?」
「いや、それって最初使った人じゃないと機能しないんですよ・・そのジャスタウェイに個人設定を打ち込んで、その人のみが使える簡易小型転送装置なんです、だからその俺用のジャスタウェイを無くしたり、壊したりしちゃったら、俺、元の世界に戻れないかも・・」
「ふ~ん・・ほらよ」
「ちょ! 言ってるそばから乱暴に投げないで下さいよッ!」

いきなり乱暴にジャスタウェイを投げてきた銀八に、山崎はツッコむが、銀八はなにか考えている表情だ。山崎はそれを見て、銀八の様子が不自然に思えた。
いつもの彼なら自分に掴みかかるでもして「ふざけんなッ! さっさと俺を元の世界へ帰しやがれ税金泥棒ッ!」とか悪態をついてくると思ったのだが、帰れないと知ってもノーリアクションだ・・
そんな事を山崎が考えていると銀八は、フェンスにもたれかけるのを止めて、歩き出した

「もう帰りのH・Rの時間だ、オメーも早く住む場所でも探すんだな」
「え! ちょっと待ってくださいよ旦那ッ!」

山崎は銀八の肩を掴んで引き止める、色々と質問したいことがあるのだ

「旦那はどうやってここに来たんですかッ!?」
「俺は幕府の奴等に飛ばされたんじゃねえよ、この世界には魔法使いって奴がいてな、俺はそいつにここに口寄せさせられたんだよ、今はその魔法使いの家に住んでここで教師やってる」
「魔法使い・・そんなのいるんですか、ここッ!? 変わった行き方もあるんですね・・アレ? でもどうやって元の世界に帰るんですか?」
「知らねえよ、だから困ってんだろ、じゃあな、また遅れると同僚のチビッ子先生に怒られる」

自分の肩を掴んでいる山崎の手を払い、銀八は屋上から下りる階段へと歩き始めた。そんな銀八の背中を見て山崎は、自分が考えている事を質問してみた。

「旦那・・もしかして帰る気が無いとかありませんよね・・?」
「・・なわけねえだろうが、さっさと俺も帰れる情報を仕入れて来い、仕事しろこの税金泥棒」

銀八は山崎に顔を向かず、歩きながら答えを返した。だがその声はトーンが下がっていた

(旦那にしてはいつもの乱暴な調子じゃないな・・もしかして旦那は帰りたくないとか・・いやそんなことないはずだと思うんだけど・・)

山崎がそんな事を考えていると、いつのまにか銀八は屋上から姿を消えていた。

「あの人まさか、ここで女作ったとか無いよね・・あの人ふしだらな恋愛しかしてなさそうだし、別世界の人でもOK的な・・」
「いやいや、確かに銀八殿は女性との交流は多い方だが、手は出してないと思うでござるよ」
「なッ!」

独り言をしている山崎の背後から突然声が聞こえ、驚いた山崎は後ろを振り向く。みるとそこには銀八がもたれていた所に何時の間にか、この学園の制服を着た糸目の女性が立っていた。
山崎はそれを見て絶句する、人の気配が無かったのに何故こんな所にいるんだッ!? 自分の洞察能力に疑問を持ったが、慌てて普通の態度に戻して、その女性に向かって口を開いた。

「え~と、ここの学校の生徒ですか・・?」
「当たり前でござる、この制服を見れば一目瞭然、麻帆良学園中等部3年A組の長瀬楓という者でござるよ」
「へ~そんな年でも学校って行けるもんなんですね~ここって」
「年って、拙者はまだ14才でござるよ」
「はいッ!?」

楓の発言に山崎は驚く、そして改めて山崎は彼女を見てみて、もう一度質問する

「いやどうみても、14才じゃないでしょッ!? どんだけ成長早いんですかッ!? コスプレか何かでしょッ!?」
「失敬な、正真証明のピチピチの14才でござる、ほら学生証」
「嘘ォォォォォォ!!」

楓が持っている学生証を山崎はまじまじと見た。確かにこの学園の3年生の14才だ、山崎は一人思考を巡らした。

(ありえなくねッ!? 見た目からして、大人に近いだろッ! 俺より身長デカいよこの人ッ! つーか何もかもがデケェよッ! 何食ったらそんなにデカくなんだよッ! 牛乳と煮干しをどんぐらい食ったらそんなに色々とデカくなれんだよッ!?)

山崎は一歩下がって自分より身長の高い楓の体を見ていたが(特に一番驚いたのが胸のデカさ)、そんな山崎の様子を気にせずに楓は山崎に近付く。

「ところで、さっき面白い事を耳にしたのでござるが、なんでも別世界が存在するとか・・」
「でッ!!」
「まさか別世界が存在するとは、しかも銀八殿も別世界の住人・・驚いたでござるな~」
「でェェェェェ!!」

やはり、楓は先ほどの銀八と山崎の会話を聞いていた。山崎は驚きを隠さず、思いっきり叫んでいる所を見て、楓は確信したかのように頷く。

「そのリアクションからして本当らしいでござるな、用心深くしていたのにも関わらず、拙者がいる事に気付かないとは・・それで密偵とはまだまだ未熟」
「何で俺が密偵だって知ってるんですかッ!? あ、言っちゃったァァァ!!」
「銀八殿とお主の会話、「ここの世界の人間には言ったりしないようにして下さい」って言ってた所からずっと観察しておった」

一番タイミングの悪い時から聞かれていた・・山崎は自分の取り返しのつかないミスに呆れ、その場に頭を押さえて座りこむ

(ちくしょォォォォ!! ここに来て数時間でこの世界の住人にもうバレたァァァァ!! どうするッ!? 口止め料なんて、俺ここの通貨とっつぁんから少ししか貰ってねえしッ! ていうか何でこの人の気配わからなかったんだ俺ッ!? どんだけこの人気配を隠すの上手えんだよッ! こうなったら何とかしてこの事は黙ってもらうしかないッ!)

山崎が座りこみながら考えていたら、相変わらずニコニコした表情の楓に、恐る恐る山崎は顔を上げて頬を引きつらせながら質問してみる。

「あの~出来れば他の人には黙ってもらえませんか・・? 色々と俺困っちゃうんで・・」
「う~む、他人の秘密は言わない方でござるが、さっきの話しは面白かったので、クラスメイトと盛り上がりそうな話しだったし喋っていいでござるか?」
「日本語わかるでござるかァァァァ!?」

思わずツッコむ時に楓の口癖がついてしまう山崎。クラスの全員になんか知られたら、色々とヤバい・・最悪、副長がこっちに来たら任務失敗ということで切腹を命令されそうだ・・

「頼みますよ本当ッ! お願いします、本当この通りッ! なんでもやりますんでッ」

山崎は自分よりずっと年下の楓に床にこすりつけるように土下座する。山崎は普段の悲劇の連続体験により、いかなる時でも必死に謝れるという能力を持っているのだ。

「じゃあ色々と銀八殿とお主の事が知りたいのでござるが」
「それはちょっと・・」
「クラスのみんなに、さっきの事・・」
「旦那の事ならよく知っていますッ! あっちの世界では色々と世話になったんでッ!」

三秒で前言撤回する山崎だが、ある事に気付き山崎は疑問を浮かばせる

「そういえば・・さっきからどうして、旦那の事を「銀八」って言うんですか?」
「ん?「銀八」が本名では無いのでござるか?」
「え~と確か「坂田銀時」ですよ旦那の本名は」
「おお、その名前はクーフェイと戦っていた時に使っていた名、あっちが本名でござったか、いや~やっぱりお主詳しいでござるな~」
「いえ・・そこまで詳しくは・・あの人俺達の世界でも、あんまり自分の事話さないし・・」

楓は山崎の情報を聞いてふむふむと頭を頷き、相変わらず座っている山崎を見下ろした。

「所でお主の名は?」
「あ、山崎退です・・」
「山崎殿、この世界に住む所があるでござるか?」
「いや、まだ決めてませんね・・とりあえずここで仕事やりながら色々と情報を探そうと思っていただけで、住む所なんか考えていませんでしたね・・」

山崎が頭の後頭部を掻きながら、自分の住む場所は決まってないと答えた。それを聞いて「そうでござるか」と何処か満足そうに表情を喜ばしていた。糸目なのであんまり表情はわからないが・・

「では、色々と話しをしようと思うのでござるが・・放課後にまた屋上で会えるでござるか?」
「ええ、明日仕事するって言いましたから、そういえば採用かどうか聞いてなかったな・・まあなんとかなるか、ここで待ってればいいんですよね?」
「うむ、その方が助かる、では拙者はこれにて、また会おう山崎殿」

そのまま楓は屋上から銀八が使った階段を降りて、消えて行く。

「・・何話すんだ? また旦那の事か? それとも俺の話し? あの人に嘘ついても、バレそうな気がするんだよな・・ていうか嘘あんまり上手くないしな俺、原作でも結局正体がバレる事がたびたびあるんだよな・・正直に話すしか無いか・・とにかく別世界の存在を言わないようにしてもらおう、それさえしてもらえれば、まだ俺は副長に切腹命令されないはず・・」

山崎は空を眺めながら、自分の心配事をつぶやいていた、少なくとも彼女が黙っててくれれば、一安心だ。そう思い山崎は寝っ転がる。

「とりあえず、あの人が来るのを待ってるか・・まさか何処かに連れて行って、俺を脅して一生コキ使うとか無いよな、アハハハ」

相変わらず独り言を続ける山崎、その一言が危険フラグだというのがわからないのであろうか















数十分後、山崎は麻帆良学園の女子寮の中のにある部屋に来ていた

「じゃあ、新しいルームメイト兼この部屋の家事全部をする事になった、山崎退殿でござるよ」
「かえで姉が言ってた、ボク達の部屋の家事全部やってくれる人ってこの人ッ!? なんか地味だね~」
「本当にお姉ちゃんの言う通り地味だね~でも地味でもここのお掃除とかしてくれるなら歓迎だよ~」
「山崎殿、ツリ目の方が姉の鳴滝風香、お団子頭の方が妹の史伽でござる、わかると思うけど二人は双子、ルームメイトなら区別出来るようになるでござるよ」
「いや、いきなりの展開に対処出来ないんですけどォォォォ!!」

話しを戻すと、山崎は放課後に、楓に半ば無理矢理にここまで連れてこられた。そして山崎は部屋の玄関で、目の前にいるチビッ子双子と隣りに立っている楓を交互に見て、汗をしたらせながら落ち着こうと必死になっていたが、楓は相変わらずの調子で山崎に説明する。

「山崎殿が話していたあの話は、バレてしまったら色々とマズイのでござろう? それで拙者が山崎殿の秘密を隠す代わりに、ここの家事を山崎殿に担当してもらう事にするでござる。な~に可愛い女の子に囲まれて、しかも家と飯付き、文句は無いでござろう?」
「「無いでござろ~?」」

楓の口癖を双子が楽しそうに真似している所を呆然と見ながら、山崎は固まってしまった。

(まあ、家事やるだけで飯は食えるし寝床が見つかったのは良いけど・・結局この人がバラす事はあるって事ッ!? ヤバイ、この人に逆らえねぇッ!! 真撰組のみんなッ! 俺、中学生に捕まっちゃったッ! 所でこの双子は何者ッ!? 小学生っすかッ!?)

「あの~二人ともいくつ・・?」
「「14!」」
「What!?」
「あ~ジミー信じられないって顔してる~」
「酷いよジミー、これでもかえで姉と同い年なんだよ、私達小さいのコンプレックスに感じているんだから~難しい年頃なんだよ」
「いや信じる方が難しいからッ! つーか『ジミー』って俺ッ!? それはもしかして『地味』から来ているのかッ!?」

風香と史伽があの楓と同い年だという事に山崎は疑問ありありなので、信じるかどうか考えていたが楓が「部屋に入った方が良いのでは?」と促してきたので、一旦考えるのを止めて、自分の靴を脱いで部屋に入った。
そこまで広くは無いが、まあ4人ぐらいなら住める部屋でもある。だがやっぱり気になるのは山崎の周りを「「ジミージミー!」」とはしゃぎながら回っている、双子の存在だ

(この小ささで14ッ!? ありえねェェェェ!! マジで小っせえよッ! 何処のホビット族だッ!? もしくはもののけ姫の言霊ッ!?)

心の中で相変わらず自分の周りをぐるぐる回っている双子に山崎がツッコミを入れていたとき、楓が山崎に近よってきた

「ところで山崎殿、寝る所は何処がいいでござるか?」
「まあ、俺も一応男としてのプライドがあるんで、ここは女性と一緒の部屋は勘弁ですね・・天井裏にでも寝かせてもらいますよ」
「出た! ジミーのプライドッ!」
「略してジミライドッ!」
「そこの双子黙ってくんないッ!? ジミライドって何ッ!? 俺の必殺技みたいに言わないでくれるッ!?」

双子にツッコミを入れている山崎に、楓は「うむ、あいわかった」と了承する。

「山崎殿が天井裏が好きならわかったでござる、上に昇るのはこの梯子を使えばいいでござる」
「別に好きじゃないんだけど・・ていうか何で天井裏に行くための梯子があるんですか・・?」
「いや拙者が時々天井裏で寝たい時があるから」
「どんな欲求にかられて天井裏で寝ること決意したのッ!?」

山崎が楓の奇行に質問するが、彼女は「アハハハ」と軽く笑って、「それは女の秘密でござる」と言って答えようとしなかったが、山崎は「いや女の秘密になんで天井裏があるんだよッ!」とツッコミを入れた。










山崎が作った夕食を食べた三人は(双子曰く地味に美味い)、皿洗いを終えて、ちゃぶ台にもたれて一息ついてる山崎に質問をしてきた。

「山崎殿はこの麻帆良学園の事はあまり知らないのでござろう?」
「まあ、初めてですね女子校だというも初耳だったし・・そういえばここ女子寮ですよね? 俺、住んで大丈夫ですか?」

山崎は自分が男で、ここは女子寮だという事に気付いた。普通女子寮は男子禁制では・・?
だがすぐに自称中学生、見た目小学生の双子が疑問に答えた。

「心配ないよ~ジミー、ここには男の子のネギ先生っていうボク達の担任の教師も住んでるんだから」
「へ~そうなんだ・・って! 男の子ッ!? 子供が教師やってるんすかここッ!?」
「ジミー、ネギ先生はね、子供でも、私達よりずっと頭良いんだよ~、見た目は子供、頭脳は大人なんだよッ!」
「だからって教師出来るのここッ? ・・本当にこの学園は変な事ばっかだな・・そういえば旦那を教師にしてる事自体おかしいし・・」

自分がとんでもない所に来てしまったと、改めて痛感した山崎だったが、そんな山崎に楓は「ハハハ」と笑って励ました。

「すぐに慣れるでござるよ」
「慣れません・・ていうか慣れたくありません・・」
「これだけで驚いてたら、ここで生活出来ないでござるよ?」
「まだいるんですか、貴方方みたいなびっくり人間が・・?」
「うむ、無双シリーズが一本作れるぐらいいるでござるよ」
「コーエーにでも頼んで作って貰ったらいいんじゃないですか・・?」

山崎は力なくツッコミを入れて、ちゃぶ台に頬杖をついた。自分はこの世界ではやっていけそうにない・・早く任務を終わらせて、このカオスな学園から脱出したい・・そんな事を山崎が考えていると、ふと自分が懐に入れていた物が無くなっている事に気付いた。

「あれ・・ジャスタウェイ・レクイエムが無いッ! マジでッ!?」
「何でござるか? そのルルーシュの超必殺技みたいな名前は?」
「俺がここに来るために使った転送装置ですよッ! ヤバいッ! あの人形が無いと俺は元の世界に帰れないッ!」

山崎が必死に自分の服をチェックして探していたが、楓はふと双子が何かを引っ張って取り合っている事に気付いた。

「風香、史伽何をしてるでござるか?」
「ボクがこの部屋で最初に見つけたんだからッ!」
「お姉ちゃんズルイッ! 最初に拾ったの私だよッ! このふざけた顔をしている人形は私のッ!」

楓は双子に手のようなのを引っ張られている人形をみた。あんな物この部屋にあったか・・?」

「山崎殿、もしかしてアレでは・・?」
「え? あッ! 何してんのォォォォ!! それ俺のジャスタウェイッ!」

必死に服を調べ上げていた山崎に、楓は双子が持っている人形を指差して、聞いてみた。山崎は人形を見た瞬間、思いっきり慌てた。

「ジミーのじゃないよッ! これはボクのジャスタウェイだよッ!」
「違うよ、私のだよッ! マイジャスタウェイだよッ!」
「何言っての君達ッ!? ていうかジャスタウェイの手を引っ張ないでッ! それまだ試作品なんだから壊れやすいって、とっつぁんが言ってたんだからッ! 壊れたらそれ・・!」

山崎が言い終わるウチに双子に引っ張られているジャスタウェイはミシミシッと音を立てて

バキンッ!

双子の力でジャスタウェイはバラバラに壊れた・・





「ジャスタウェイ死んじゃった・・可哀想・・」
「お墓を作ってあげなきゃね」
「二人とも優しいでござるな」
「「うん!」」
「うんじゃねェェェェェ!!!! 俺のジャスタウェイィィィィ!!」

三人のルームメイトに山崎は、この世界に来て一番大きな声で怒鳴り声を上げた後、見事にバラバラになっているジャスタウェイを見て、山崎は体の全身から汗を出した。

「どうやって直せばいいんだよ・・再起不能ってレベルじゃないぞコレ・・ジョルノか丈助呼ばなきゃいけねえよ・・コレがなかったら俺どうやって帰れば・・」
「まあまあ、壊れてしまったらしょうがない、もう寝る時間でござるし一旦寝て、明日考えればいいでござろう」
「かえで姉とジミーおやすみ~」
「ジミー、明日ジャスタウェイのお墓作るの手伝うからね」
「いや待てやッ! そこの双子実行犯ッ! 何ッ!? 俺の物壊してスルーッ!?」

何時の間にかパジャマ姿の双子に、山崎はツッコミを入れるが、双子は「「どんまい!」」と親指を立てて、そのまま一緒のベッドで寝てしまった。

「何がどんまいだチクショォォォォォ!! 俺のジャスタウェイを返せェェェェ!!!」
「山崎殿、これお客用の布団でござる、天井裏で使うと良い」
「布団貰ったワ~イッ! って誰が喜ぶかァァァァ!!!」

楓から布団を貰った山崎はノリツッコミをして、部屋の中で大声で叫んだのであった・・

副長・・俺はどうやらここまでらしいです・・



















深夜
坂田銀時は、同居人のエヴァの家の屋根に座って空を眺めていた。江戸と変わらない夜空、違いといったらUFOが飛んでないぐらいだ、それ以外は自分の故郷と何ら変わり無い。

「眠れないのか? 銀時」
「・・何だテメェか」

銀時がボーっと空を眺めているときにエヴァが屋根の上に昇ってきた。エヴァに気付いた銀時はそっちに目をやるが、すぐに夜空に目を戻した。銀時の隣りにエヴァは座って一緒に空を見た。

「何か見えるのか?」
「いや・・俺の世界と何も変わってねえ空だと思ってよ」
「・・・・・・そうか・・」

エヴァは相変わらず空を見ている銀時を見た。今まで見たことが無い表情だ・・

「お前は・・元の世界に帰れる事が出来たら・・どうするんだ・・?」
「・・・あっちでは俺を待っている奴らがいるんだよ」
「じゃあ帰るのか・・?」
「・・・・・・」
「帰るな・・」
「抱きつくな、暑苦しいんだよ・・」

空を見ていた銀時は、いきなり腰に抱きついてきたエヴァに顔を向ける。表情は見えないが小さな背中が震えていた。

「お前までどっかに行ってしまったら・・私は・・」
「・・・・・・・・」
「銀時、帰らないと言ってくれないか・・?」
「無理だ、帰らなきゃ行けねんだよ、俺は本来ここの人間じゃねえ、俺がいるべきはあっちの世界・・江戸なんだよ」
「イヤだ・・帰らないでくれ・・ずっと一緒にいたい・・」
「お前な・・」

嗚咽をもらしているエヴァの頭を銀時は優しく撫でた。彼女は一層強く抱きしめてきた。そんな様子のエヴァに銀時はため息をついて、再び空を見上げた。

「もし帰るとしたら・・お前も連れて行ってやる」
「お前の世界・・?」
「悪い世界じゃねえぞ、まあ宇宙人がいるけどな、あと個性が強い歌舞伎町の住人もいる、お前の呪いを解いて帰れる手段見つけたら・・まあ、来るかどうかはお前次第だがな」
「行くに決まってる・・死ぬまで一緒だ・・」
「そうかい」

自分の涙を拭いて、エヴァは顔を上げて笑みを浮かべて銀時を見る。そんな予想通りの彼女に銀時はフッと笑った。

「長谷川千雨と雪広あやかは誘うなよ、特に雪広あやか」
「別に連れて行っていいんじゃね?」
「駄目だ、奴等と一緒に行きたくない」

エヴァは凄みのある声を出して二人が江戸へ行く事を拒否する。

「私以外の女を連れて行くのは許さん」
「そういえばお前って女だったね」
「え・・貴様ッ! もしかして私を女として見たこと無いのかッ!?」
「お前みたいなチビガキをどうすれば女に見えるんだよ? ちっさい=ガキだよ、悔しかったら牛乳と煮干しを死ぬほど食いまくってなさい」
「もうキレたッ! 600年生きる『闇の福音』をよくも怒らせたなッ! もう容赦せんッ!」

屋根の上で銀時とエヴァは暴れている所を、下から茶々丸と彼女の肩に乗っかっているチャチャゼロは、二人が掴みかかっているのを優雅に眺めていた。

「止めた方がよろしいのでしょうか?」
「ケッケッケ、ゴ主人嬉シソウダシ、ホッタラカシニシトイタ方ガ良イト見タ」
「了解です姉さん」

茶々丸とチャチャゼロは屋根の上で喧嘩をしている二人が疲れて下りてくるまで、お茶を作って、ずっと眺めていた。












[7093] 第十六訓 老人は国の宝
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/03/13 10:51










このお話は外伝と同じく本編とは一切関係ありません







早朝、麻帆良学園の学園長室にて。

「ワシさ~まあ見た目からして、すげ~長生きしてんのよ? もう色々と無理したくないんじゃよ、わかる?」
「はいはいわかってるよ~」
「全然わかってないよね? まず学園長の部屋でソファに寝転がって、DVD鑑賞してる所でわかる気ゼロだよね?」

自分の椅子に偉そうに座っている、別の意味でこの小説で人気の高い学園長と、お客用のソファに寝転がっている銀八が、テレビを観ながら学園長に適当に相槌を打っていた。いつものナメている態度の銀八を見て、学園長はうんざりする。ここに来てしばらく経っているのに、この男は教師のくせに、一般教師よりずっと偉い自分に対して、全く礼儀がなっていない・・

「つーかお前何見てるのじゃ? ていうか自分ん家で見ろ・・」
「紅の翼戦記のDVD」
「いや、この小説でそれ観るのマズくね? てか何処で手に入ったそれ? あとお前が観ると特にマズイよ?」
「安心しろジジィ、どーせこの小説は魔法世界編まで行く前に完結、ていうか修学旅行編で終わりかもしれねえしよ、それにここの修学旅行編は原作とはちょっと違うから、ほわわ~んな感じで完結に持っていくから」
「いやそういう事言っちゃ駄目じゃろ・・読者からもっと続いて欲しいっていう意見もあるんだからさ・・」

学園長の方に向かずめんどくさそうに返事をしながら、銀八はテレビを観ている。しかもこの小説の今後の予定を軽くネタバレしている。

「いや、DVD観てないでさ、お前に色々と言いたい事があるんじゃよワシ? まあ何を言おうとしてるかわかるな? お前がワシに酷い事ばっかしている件についてじゃ」
「わかってるわかってる、あ~このバカ死んでくんないかな~? 何がサウザンドマスターだバカ、調子乗ってんじゃねえよバカ、ラスボスに殺されろバカ、そして死ぬ前に俺に殴らせろバカ」
「だからお前絶対わかってないよね? もうDVDの感想しかしてないよね?」
「うわ、コイツラスボス倒しちゃったよ・・空気読めよ、死んでくんないかな~? 頼むから死んでくんないかな~? 醤油1リットル一気飲みして死んでくんないかな~?」
「おいお前が空気読め、ワシそろそろキレるぞ若白髪」

観ている『紅の翼戦記』にぶつぶつ文句を言って、もう学園長の話など聞いてもいない銀八を見て、学園長は額から青筋がピクピクしている。

「言っとくけどアレだよ? ワシね昔はスッゲー強かったから、もうナギより全然強いと自負するから、お前よりも強いんだよ? 一瞬でお前なんかパーンじゃよ? だからもうちょっとワシを敬うとかそういう態度になった方が良いよ? ワシ昔の力を解放するよ?」
「つーか誰このよく出てくるオッサン? ゴリラみたいですっげ~頭悪そうなんだけど~、ウチの世界のゴリラが『並ゴリラ』ならこのゴリラは『特上ゴリラ』? もし吉野家に両方出てきたら俺訴えるよ? そして両方海に沈めるよ?」
「あれ? いいのかな本当に? マジで眠っているワシの力を解除するよ? もう卍解とかそういうレベルじゃないんだよ? 仙人モードとか目じゃないぐらい強くなるんじゃよ?」
「俺がもしこの時代にあそこに行ってたらさ~絶対あの鳥頭をシメるね、んで『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』連れて大暴れしてやるね、んで俺が天下取るね」 
「いい加減にしろォォォォ!! お前はワシを本気で怒らせたようじゃなッ!?」

遂に堪忍袋の緒が切れた学園長は、自分の机に飛びのって、そこから鑑賞中の銀八に向かって

「食らえッ! 学園長ジャンピングキィィィックッ!!」

怒りに震えた学園長はピョーンと飛んで学園長の必殺技『学園長ジャンピングキック~まごころを君に~』(ただの飛び蹴り)をかまそうとする。しかし銀八はチラリと自分に奇声を上げながら飛んできた学園長を見て、寝転がった状態で片手で学園長の足首を掴んで止める。

「へ?」
「うるせんだよジジィ、テーブルで寝てろ」
「え? それどういう・・ごっぱッ!」

銀八は学園長を隣りにある、お客用のテーブルに顔面からドシャァァン!と叩きつけた。テーブルは銀八が振り下ろした学園長の頭によって見事に破壊されてしまった。
テーブルが壊れた所で気絶している学園長。だが銀八は「一生寝てろエイリアンが」と言って、再びテレビを見始めた。

「あ~やっぱコイツ死んでくんないかな~? もう一回エヴァの夢の中に入ってシメに行こうかな~?」

自分と反りの合わないキャラにぶつぶつ文句を言いながら、学園長が隣りで死んでいる部屋でテレビ観るをする銀八だった。









しばらくすると学園長室のドアをノックする音がして、ドアをガチャッと開いて地味そうな男が入ってきた。

「すいませ~ん、今度からここで清掃員として採用された山崎です・・ってあれ? 旦那?」

無事に清掃員として採用された山崎は今は清掃員の服装(といっても何故か上下青のジャージ)を着て、学園長に挨拶するため、ドアを開けて部屋に入ってきた。だがそこにはいつも持っている木刀と刀をソファの肘掛けに掛けて、持ち主の銀八はソファに寝転がってテレビを観ていた。そして何故かテーブルが破壊されており、そこには老人の亡骸が・・
山崎はこの奇妙な光景に不安を覚えつつも、とりあえずソファに寝転がっている銀八に近付いて口を開いた。

「・・何で旦那、学園長室にいるんですか?」
「あれ、お前ここで何してんの?」
「その言葉旦那にそのまま返しますよ・・ここ学園長室ですよね? 何で旦那が我が物顔でソファに寝てるんですか・・?」
「あ~俺が学園長だからに決まってんだろうが」
「いや普通にわかる嘘付かないでくださいよ・・ていうかさっきからこの亡骸が妙に気になるんですけど・・?」

山崎は死んでいるのかどうかわからないが、ぶっ倒れているモノに指差して銀八に質問する。銀八はその物体を見て一言

「エイリアンだ」
「なわけねえだろうがァァァァァ!!!」
「うおッ! 旦那ッ! エイリアンが蘇えったんすけどッ!」
「誰がエイリアンじゃッ! ワシが学園長じゃッ!」
「えッ! ここってエイリアンが学園長何すかッ!? 大丈夫ですかここッ!?」
「大丈夫じゃねえよ、変な奴ばっかだよここ」
「だからエイリアンじゃねえってッ! ワシは貴様等と同じ赤色の血が流れているヒューマンッ!」

いきなりがばっと起き上がって生き返った学園長に、山崎は驚いたが色々と学園長に失礼な言葉を叫んでしまう。
そんな山崎を見て学園長に気付いたのかジロジロと眺めた。

「ん~オヌシは誰じゃ?」
「え? ああここで清掃員として働く事になった山崎です」
「清掃員? 清掃員を雇ったなんてワシの耳に届いてないんじゃが?」
「でも俺、新田先生と面接したんですから、学園長に報告してるんじゃないですか?」
「いやされてねえんだけど? とりあえず新田先生を呼んでみるかの・・」

学園長はまだ衝撃が残っているのか、ふらふらした足取りで、机に置いてある電話で新田先生にこっちに来るように連絡した。しばらくすると学園長室のドアが開いて、一人の教師が入ってきた。

「何ですか学園長、私忙しいんですよね、コロコロコミックの読書中だったのに何ですか突然? 『デュエルマスターズ』の続きが気になるのですが」
「全然忙しくねえじゃねえかッ! いい年してコロコロ読んでんじゃねえよッ!」
「人の読んでる物にいちいちケチつけてんじゃねえよクソジジィ、あ、すんません」
「おいィィィィ!! いきなり学園長のワシに向かってその態度ッ!? ここの教師はそんなにフリーダムじゃったけッ!?」

学園長をナメまくっている新田先生がコロコロを持ってめんどくさそうに入ってきた。
新田先生は入ってくるやいなや、学園長にいきなり無礼な事言うが全く反省する気ゼロ。
そんな自分の学校の教師に、ため息をつくも気を取りなおして学園長は新田先生に質問する。

「この男、山崎君じゃったけ? ここの清掃員として雇ったそうじゃが・・何でワシに報告しなかったんじゃ?」
「すんません忘れてました、てか学園長の存在自体忘れてましたね」
「何で自分が働いている所のドンの存在忘れるわけッ!? ナメてるッ!? ワシの事ナメてるッ!?」
「お前なんか舐めるわけねえだろうが気持ち悪いんだよクソジジィ、すんません」
「ナメてるの意味違うしッ! ワシに向かって気持ち悪いって言うしッ! ていうかすんませんの一言で片付くと思ってんのッ!?」

新田先生の暴言に的確にツッコミを入れる学園長。そんな二人を見て、山崎はどうしようか迷っていたが、銀八は観るのが終わったのかを腕を枕にして寝始めた。

「おい銀八、ここで寝るなッ! ここはワシの部屋じゃぞッ! ワシのプライベートルームで寝るなァァァ!!」
「うるせえな・・俺が何処で寝ようが勝手だろうが・・夢の中であのバカをボコしに行ってくるわ」
「どんだけ嫌いなのお前ッ!? つーか発想が小学生レベルだなオイッ!」
「ていうか旦那・・そんな都合よくそんな夢見れるんですか・・?」
「・・・・・・・・」
「あ、旦那寝ましたね・・」
「もうお前等出てけェェェェ!! ワシをナメてる連中全員出てけェェェェ!!」

学園長は怒りで頭の血管を浮かび上げて、三人に向かって吼えた。そんな怒り心頭の学園長に、新田先生がボソリと

「てことは麻帆良学園の人達はみんなここから出て行く事になるぞ?」
「いや部屋から出て行けって意味で・・ていうかここの人達みんなワシの事ナメてんのッ!? なんか涙が出てきた・・あと今敬語使わなかったろッ!」
「うおッ!」
「どうしたんですか旦那? 真っ青な顔して起きて」

学園長が涙ぐんでる時、寝ていた銀八が突然起き上がった。真っ青な顔で自分の胸をおさえている。

「やっべ~今すっげ~恐い夢見た・・」
「どんな夢ですか?」
「姫さんに頼まれたドラマの『BOSS』録画するの忘れて、めちゃくちゃキレられる夢」
「早く帰れェェェェェ!!! ジジィからのお願いッ!」


 








放課後、学園長は学園内のペンチにもたれて考え事をしていた。教師たち(銀八と新田先生)の自分に対する態度の事、銀八に何度も痛い目にあっている事、実は銀八に自分の部屋の家具を盗まれていた事(追求したら、蹴りを入れられた後、屋上から投げられた)、最近『銀さんが学園長にもっと酷い事して欲しいです』って意見が山ほどここの感想板に来ている事、色々なことが頭の中でぐるぐる巻いて・・結論に至った。

「つーか、10割銀八のせいじゃん・・! アイツのせいでワシの立場が無いじゃんッ! どうすればいいのッ! くそ~忌々しい白髪頭が~・・」

彼は今、銀八に対する復讐心で一杯だった。元はといえば原因の種子は全てあの男だ。

「あのアホ天パの弱みを握りたい・・」
「アホ天パって何? 誰の事言ってんのクソジジィ?」
「誰がクソジジィじゃァァァァ!! この麻帆良学園のアホ天パって言えば、銀八という駄目教師に決まってるじゃろうがァァァァ!! ・・・・ってアレ~銀八?」
「高い、高~い」
「イデデデデッ! ワシの髭引っ張んといてッ!」

学園長が後ろに向かって、いきなり自分の一人言に入ってきた声の主に怒鳴るが、後ろを見て表情が強張った。さっき学園長がその人物に愚痴をこぼしている時に、本人の坂田銀八が自分の後に立っていたのだ。
無表情の銀八は、学園長のチャームポイントの白く長い顎髭を引っ張って、宙ぶらりんにする。

「イデデデデデッ! 何でいつもワシこんな目にッ!」
「日頃の行いが悪いからね~」
「悪いのはどうみてもお前の方じゃろうがァァァァ!! 髭引っ張るなッ! 給料カットじゃぞッ!?」
「おいそれは卑怯だろうが・・チッ、汚ねえジジィだな・・おらよ」
「急に離すなッ! アダッ!」

自分の給料を人質にされたので、銀八は舌打ちして髭を放した。そのまま学園長はベンチにドスンッとしりもちをついき「アタタタ・・」と自分の尻をおさえながら学園長はため息をついた。そんな学園長の隣りに銀八がドカッと座る。

「ハァ~・・何でワシってこの小説だといつもこんな目ばっかあってんの・・?」
「読者の意見が多いんだよね~ジジィ虐めろ虐めろって、やれリンチされろだの、毛を全部抜けだの、やれ死んでくれだの、その他多数」
「エェェェェェ!! 何でワシそんなに憎まれてるのッ!? ワシ何かやったッ!?」

全く自覚が無い学園長は、隣りで小指で鼻をほじっている銀八に質問をする。銀八は少し考えた後上を見上げながら口を開いた。

「ま~原作では役立たずだし、アニメでも役立たずだし、実写板でも役立たずだし・・本当役立たずだし・・やっぱお前本当に駄目だな? 一回転生してこい」
「お前言いすぎじゃねッ!? いまワシの心臓に『ゲイ・ポルク』が何発も刺さったよッ!? ・・ハァ~もうワシどうしようかな・・」

銀八の言葉の槍が突き刺さり、学園長は意気消沈して更に落ちこんだようだ。しばらくそんな学園長を見ていた銀八だったが、しばらくして銀八はある提案をした。

「何で読者どころかこの学校の奴等にも人気ゼロなのか知りたいか?」
「・・・何じゃと・・?」
「この万事屋銀さんが、テメェの悩みを解決してやろうじゃねえか」
「マジでッ!? ていうか貴様がワシの悩みを解決って、ワシにとってお前が悩みの種なんじゃけどッ!?」
「殺すぞクソジジィ、俺がいなくてもどこのSS小説でもお前人気ゼロだろうが」
「イダダダダッ! 眉毛引っ張るなイダダダダッ!」

今度は長い眉毛を引っ張る銀八に、学園長はまたもや悲鳴を上げた。
ようやく銀八が眉毛を放して、学園長が自分の眉毛をさすっている時、再び銀八が口を開く。

「放課後3年A組の教室に来い、俺がお前に特別授業をしてやる、授業料は俺の給料倍な?」
「いや何それッ! 給料倍ってふざけんなゴラァァァァ!!」
「お前このままだと完結するまで読者に暴言浴びせられるよ?」
「ご教授お願いします、銀八大先生」

銀八に宣告された瞬間、ベンチから降りて、銀八の前に出て土下座する学園長。彼にはもはや選択する余地が無かった。














第十六訓 『老人は国の宝』

「まあちょっと早いけどよ、今回は本編を混ぜた『教えて銀八先生のコーナーの』時間だ、今回のテーマは『何故ジジィは本当に死んでくれないのか?』だから」
「死んでくれってなんじゃッ!? ワシだって一生懸命生きてるんじゃッ! なのに読者の奴等はワシをよってたかって・・グス・・」
「銀八・・学園長が泣いてる・・」
「気色悪いな、コイツ・・」

3年A組の教室にて。中にいるのは教えてコーナーと同じく、教壇に立っている銀八と、席の一番前にいつも座っている、千雨とあやかだ。だが今回は銀八の隣りでむせび泣いている学園長がいる。

泣いている学園長に千雨はさすがに哀れと感じたが、銀八は全くそんな感情は持っていなかった。自分の泣いている上司をほっといて、銀八は話を進める。

「という事で何かジジィの問題点とかあるか?」
「銀さん、この人自体が問題なので、問題点なんか付けれません」
「ひどすぎじゃねッ!? あやか君ッ!? 今の言葉でワシの涙吹っ飛んだよッ!」

手を上げて、銀八に始まって数秒で結論を言ってしまったあやかに、学園長が起き上がって文句を言うがあやかは全くお構い無しだ。

「私は事実を言っただけです、存在自体がセクハラの人には妥当評価ですわ」
「うぉぉぉいッ! 存在自体がセクハラって何ッ!? 確かにちょっとエッチな事しちゃう事あるけどさッ! 男ってみんなそういう生き物なんだよッ!? 男はみんなスケベなんだよッ!?」
「銀さんとネギ先生を貴方みたいな変態ぬらりひょんと一緒にしないでください、殺しますわよ?」
「ワシのアダ名また1つ増えたよッ! 言っとくがあやか君ッ! 銀八だって結構いい年だし、色々と経験・・あ、すいません・・」

学園長が言い終わるウチにあやかの目が鋭い殺気が出たので、マジで命の危機を感じたのか謝ってしまった。
隣りで額から汗をたらしている学園長がまだ睨んでくるあやかに怯えているのをよそに、銀八は今度あやかの隣りで机で頬杖をついている千雨に聞いてみる。

「千雨、お前は何かねえの? 学園長がウザイ理由」
「見た目と性格だろ? 見た目アレだし、性格もしつこそうだし、てか一言じゃ片付けられないんじゃね?」
「よし、ジジィ今すぐ生まれ変われ、て事で死ね」
「お前等さっきから鬼ィィィィ!? 何かここでワシの人気が上がらない理由が知りたかったのに何でそこまで打ちのめされるのワシッ!? そんなに老人虐めて楽しいのかお前等ッ!? あ~もう来るんじゃなかった・・」

学園長は万事屋トリオに向かって激昂して吼えた後、クールダウンしてその場にへたり込んでしなびたキノコみたいになってしまった。
落ちこんでいる様子の学園長はまたブツブツと文句を言っている。

「どうしてワシはこんなに虐められているのよ・・銀八の方が絶対駄目人間じゃん、主人公の風格ゼロじゃん・・なのに何で木乃香やネギ君はこんな奴に懐くんじゃ・・誰か銀八と仲の悪い生徒はおらんのか・・?」
「ブツブツと俺に失礼な言葉言ってると焼却炉にブン投げるぞしなびたシイタケ風情が、俺とお前ではめちゃくちゃ差があるんだよ、お前みたいに学園長室に引き篭って一人で威張りちらしてるバカじゃねえんだよ、俺みたいに現場で頑張ってるデカが生徒の気持ちはよくわかってんだよ」

落ちこんでいる学園長に銀八が自分との性能差を叩きこんでいると、それを聞いていたあやかが思い出したかのような表情で銀八に口を開いた。
銀八はまあ生徒とは一応よくやっているが、まあ仲の良い生徒もいれば仲の微妙な生徒もいるもので・・

「銀さん、のどかさんとはまだ仲ギクシャクしてませんか・・?」
「オイ・・そいつの名をここで言うのはちょっと止めてくんね・・?」
「何ッ!? 銀八と仲の悪い生徒がいるのかッ!?」
「悪いって言うか銀さん恐がられているんですよね・・やっぱあの時ですわよね・・」

銀八の苦手な生徒がいると聞いて学園長が復活する。落ちこみと立ち直りが早くて忙しい学園長はあやかに詰め寄って行く。

「その『のどか』ってA組の出席番号25番の宮崎のどか君の事かのッ!?」
「何でそんな所まで知っているんですか・・? もう最悪ですわね、マジで死んでくれません?」
「いやワシ学園長だからねッ!? 生徒の名前は全員覚えているだけだからッ! 殺さんといてッ!」 

あやかはしばし慌てている学園長に軽蔑の眼差しを向けていると、千雨が欠伸をした後、少し額から汗を出している銀八に話しかけてきた。

「あの時って、銀八とのどかが廊下ですれ違った時だろ? お前まだアイツに恐がられているの?」
「いやだってさッ! 俺が二日酔いでフラフラしてて廊下歩いていたら、アイツとすれ違う時肩ぶつかったらよッ! まあ俺ちょっと二日酔いのせいでイライラしてたからうっかり睨んだだけだよッ!? そしたらアイツ・・」
「泣きそうになりながら頭下げて何回も謝ってたな」
「そこだよそこッ! 何で俺に睨まれただけで泣きそうになるんだよッ! 俺の世界ではそんな奴一人もいなかったよッ!? アイツのせいですっごい嫌な空気が充満して、周りからヒソヒソ声聞こえるしよぉ・・どんだけあの場にいるのがツラかったかわかるッ!? お前等もあの時俺の後ろに突っ立ってないで助けにこいよッ!」
「あれはお前が悪いだろ・・」
「すいません銀さん、あの状況は助けれません・・」

銀八が必死に生徒との事件に主張するが千雨と、あやかは銀八が悪かったと証言した。
じつはこの宮崎のどかという少女、銀八が最も苦手なA組の生徒である。、常に前髪のせいで顔は見えず、オドオドして引っ込み思案のある大変大人しい少女だが、そんなのどかに銀八は今までにあった事の無いタイプなので常に対応に困っている。しかも廊下での事件を機に銀八がのどかに近付く度に毎回謝ってくるという、仲が悪いというより彼女の恐怖の対象にされているのであった・・

学園長はその事件の全貌を聞いて、遂に銀八の弱みを握ったといやらしい笑みを浮かべた。

「フッフッフ・・銀八、どうやらのどか君の事が苦手らしいの、そして彼女は相当お前の事を嫌っていると見た・・?」
「嫌われてるんじゃねえよッ! 一方的に恐ろしいものと対象にされているだけだボケッ!」
「お前さっきはワシに散々言ってたけどさぁ? ワシの事情より自分の事のほうがヤバイんじゃな~い?」
「オイ、ジジィ・・どういう意味だそれ・・?」

段々調子に乗っていく学園長に銀八は額に青筋が浮かび上がって、頬はピクピクと痙攣しているて、もはやリミッターブレイク寸前だ。だが今まで散々銀八に痛い目に合わせられた学園長は、銀八の弱みを握られたのが嬉しくてたまらないのか、自分のこめかみに引き金を引かれているのにも気付かずに学園長はテンション上がりまくっていた


「フェッフェッフェッ、考えればお前って周りに敵作ってくタイプだし~見た目教師というよりチンピラだし~、そりゃあのどか君も恐がるの~、所で銀八く~ん? のどか君と二人っきりになったらどうすんの~? どっちが先に逃げるのかの~? ワシお前が先に逃げるのに賭けるぞ、カ~カッカッ!」

ブチッ

段々ウザく、そして殺意が芽生えて行く学園長に、遂に銀八の中で何かがキレた・・

「新田先生カモンッ!」

銀八が教室の教室の窓にに向かって叫んだ瞬間、速攻で一人の教師がガラッと窓を開けて出てきた。

「何だね坂田君、今『ドラベース』を読んでいたのだが」
「っておい! 何で新田先生が入って来たのッ!? どうやっていたのッ!? どうやって持ちこたえてたのッ!? 」

片手でコロコロを持って教室に入って来たのは何だかんだで銀八と仲の良い新田先生。そんな彼の存在に千雨が驚いている時にはもう銀八は次の行動に出ていた。

「しずな先生ドンッ!」

銀八が言ってパチンと指を鳴らすと教室のドアが開いた

「銀八先生、職員室にあるあなたの机の上がジャンプまみれなので掃除しといてくださいね」
「源先生来たんだけどッ!? え、何このメンバーッ!?」

教室に入って来たのは、スタイル良し、顔良し、眼鏡装備良し、井上ボイス良し、胸は特に良しッ! と言われるほどの女性で、銀八の同僚の教師でもある、源しずな先生だ。しずな先生は笑顔で学園長を見るが対照的に学園長は何故か血の気が引いている。

「学園長こんな所で何油売っているんですか? フフ」
「し、しずな君・・あと新田先生も来とるし・・てことはあともう一人来たらワシはヤバイッ!」
「何で学園長の奴急に震えてんだ?」
「さあ・・銀さんが何であの御二方を呼んだのもわかりませんわ・・」

銀八、新田先生、しずな先生の奇妙なメンバーに千雨とあやかが何故だろうかと考えていると、銀八が新田先生から携帯を借りて、誰かに連絡をしていた。

「あ~オレオレ、場所は3年A組の教室だからさっさと来い、ジジィ処刑開始だから、今回は過去最大の惨劇の予定」

銀八は、用件だけを言って、携帯電話を切った。銀八が新田先生に携帯を返した後、、口元に小さな笑みを浮かべながら、その場に腰を抜かしている学園長に近付いて行く。

「おいジジィ恨むんじゃねえぞ、お前はさっきの失言で死刑確定だ、今最後の死刑執行人を呼んだから」
「銀八ィィィィィィ!! ごめんなさい、マジでゴメンッ! このメンツはヤバイッ! 最後の奴が来たら特にヤバイィィィィィ!!
「まあ学園長命乞いなんて見苦しいですよ、最後ぐらい男らしく死んでくださいね」
「笑顔で何恐い事言ってんのしずな君ッ!? ワシ今お主に見られただけで三途の川が一瞬見えたよッ!?」
「学園長、焼死、溺死、感電死、爆死、何が良いですかな?」
「何がいいですかなじゃねえよッ! どれも死ぬことしか言ってないからねッ! てかお前は原作だと影が薄いのに、何でここだと・・あ、すいません! タバコの煙をこっちに向かって吹かないでッ! 何このチンピラが挑発する時に使う技ッ!?」

何時の間にか銀八だけでなくしずな先生と新田先生が慣れた手つきで、学園長が逃げられないよう囲んでいた。更に新田先生は学園長に吸っているタバコの煙で虐めている。学園長は「止めてッ!」とか「勘弁してッ!」、「今度は何する気じゃッ!」等三人に必死に叫んでいたのを見て千雨とあやかはますます謎が深まった。

「なあ銀八何かやんの・・?」
「決まってんだろ俺達はジジィを昇天させる組織『GS』だ」
「いや知らねえよッ! そんな何処から怒られそうな名前の組織なんてよッ!」 
「私も知りませんわ・・ていうかGSってどう言う意味ですか・・?」
「ジジィ(G)死ね(S)」
「「あ~なるほど」」
「二人とも納得しちゃ駄目じゃろッ!? 要するにワシをとことん酷い仕打ちにするイジメッ子グループだからねッ!?」

銀八に組織名の意味をわかりやすく千雨とあやかに言って二人を納得させたところで、学園長が必死に叫んでいたが廊下をコツコツとこちらに歩いてくる音にビクッと反応する。

「おい銀八・・マジで呼んだのか・・?」
「呼んだよ~だってアイツあの技に関しては俺を超えるからね」
「そうじゃッ! アイツのせいでワシの体はもう限界に来てるんじゃぞッ!」
「今日は限界突破出来ますかもしれませんね」
「しずな君ッ!? さっきから笑顔だけどワシが痛めつけられてるの見て嬉しいッ!?」
「嬉しいというよりさっさと死んでくれないかなと思っています」
「えェェェェェ!! 君がワシに見せる笑顔ってそういう意味だったのォォォ!?」

怯えている学園長に笑顔で止めを刺すしずな先生。それを見ていた新田先生は「プ・・コイツ馬鹿じゃん」と口をおさえて学園長を笑っていた。廊下を歩く音がどんどんと大きくなる。

「千雨、あやか、お前等この作品って、16話と外伝1話やっているのに未だに出番無い奴知ってる?」
「え・・・あの人だろ・・?」
「原作だと1話から出ているのに、こっちだと台詞1つも無いあの人ですか・・?」

銀八が教室のドアに近付いて立って、千雨とあやかの方を向いて質問する。二人が答えると銀八は「そうだ」と言って頷く、そして廊下の足音が止まると同時に、銀八がドアの取っ手を掴んだ。

「今回は記念すべき奴の本編初登場だ」
「マジでッ!? やっとあの人に出番がッ!?」
「さあ本編で暴れてやれッ!」

銀八が取っ手を横にスライドさせるとそこにいたのは・・そう本編16話目にして遂に彼の出番だ







身の丈2mは越えている身長と強靭な肉体、そしてその肉体にふさわしいワイルドな顔立ち、バンダナとサングラスがトレードマーク、服装はプロレスラーのようなショートパンツ1枚、両手に持つのはフランスパン、そうその男の名は・・

「いや誰ェェェェェェェェ!?」

その男をみて千雨が大声で叫んだ、どうやら彼女はかつての担任の教師を忘れてしまったらしい・・

「いや忘れてねえよッ! 高畑先生だろ普通このタイミングッ!? 誰この人ッ!?」
「は? 何言ってんの? タカミティンだろ、どこからどう見てもタカミティン以外の何者でもねーだろ」
「タカミティンって何だよッ! そこはタカミチって言う所だろッ!? 何で『チ』が『ティン』になってんだよッ! 誰だよコイツッ!? どこからどう見ても別人以外の何者でもねえよッ!」
「オイオイいちゃもんつけるのはよせ、思い出せネギまの原作1話を・・初登場の時こんな感じだったろ? もしかして出番が無くてタカミティンの顔忘れたのか?」
「だから忘れてねえよッ! 私の知っている高畑先生はもっとスマートだったよッ! ていうか全部違うよコレとはッ! 何でグラサンとバンダナつけてるんだよッ! 何でパンツ一丁なんだよッ! 何でフランスパンもって棒立ちしてんだよォォォォ!!」

タカミチならぬタカミティン、どう見ても別人の彼を見ながら、銀八に向かってツッコンでいると、棒立ちしていたタカミティンはゆっくりと教室に入って来た。その瞬間、学園長が尋常じゃないほど怯えている。

「きききき来たァァァァ!! コイツのせいでワシがいっつも酷い目に合ってるのにィィィィ!!」
「えッ!? 学園長、タカミティンと知り合いッ!?」
「長谷川さん、タカミティンはウチの学園の教師よ、忘れたの? そして彼は学園長虐めに関してはプロ級の技を持っているのよ」
「タカミティン今日も頼むよ、終わったらいつもの店にでも行くか」
「タカミティンなんてこの学校にいなかったよッ! あんた等どんだけ高畑先生を抹消したいんだよッ!! 何、最初からいました的なノリにしてんだよッ!」

千雨が完全に一人の教師を忘れているしずな先生と新田先生にツッコンでいると。タカミティンはフランスパンを食べながらちょんちょんと銀八の肩を指で突っついて初めて口を開いた。

「タイムイズマネー・・・ワタシ、一時間一万円、二時間二万円、ソノ間ワタシ、タカミティン、オーケー?」
「オーケイ、オーケイ、マネーはジジィからブンドッテクダサ~イ」
「おいそいつ完全に金で雇った外国人だろッ!! カタコトじゃんッ! 日本語カタコトじゃんッ!」
「うるせえよ千雨、何勘違いしてんだコイツはどうみてもネギの親友の『高畑・T・タカミティン』だよ、確認してみろネギは絶対タカミティンの事を・・」
「ねえよッ! どうみてもコレを友達とは言わねえよッ! だって別人だものッ! 360度あらゆる角度から見て違う人だものッ!」

とぼける銀八に千雨が抗議するが、問題の種のタカミティンは気にせず持っていたフランスパンをパンツに入れた後、自分の拳をパキパキ鳴らしてその場にへたり込んでいる学園長に近付いて行く。

「アイム、モンスターバスター」
「いやワシモンスターじゃないってッ! どっちかつうとお前がモンスターじゃろッ!」
「タカミティン、モンスターのハントお願いします」
「しずな君ッ!?」
「オーケー」
「待てぇぇいッ! タカミティンもうあの技は止めて・・ギャァァァァ!!」

タカミティンに笑顔で目の前の学園長に向かって手で首を掻っ切るサイン、死刑執行の合図をしずな先生が開始した瞬間、タカミティンは学園長の言葉を聞かずに学園長を押し倒して、彼のチャームポイントである長い白髭を掴み

ブチッ!

「痛ぇぇぇぇぇ!!!」

タカミティンは学園長の髭を抜いて後ろで見ている銀八に見せる。

「スイマセン、コレダケッスカ?」
「ノーノー今日は初挑戦で全部やってみようオーケィ?」
「オーケー」

タカミティンは持っていた髭をポイッと捨てて、再び押し倒している学園長に「ファッキュゥゥゥ!!」と叫びながら再び襲い、教室に再び学園長の断末魔の叫びが響き渡った、千雨とあやかが思わず両耳をおさえる

「銀八ッ! いつも学園長にこんな事してんのかよッ!?」
「いつもじゃねえよ週3だ、タカミティンはジジィの毛を抜くのが誰よりも得意なんだよ」
「どっちにツッコめばいいんですかッ!? 週3でこんなことやっている事、タカミティンが毛抜きの達人の事どっちにツッコめばいいんですかッ!?」

千雨とあやかが銀八に向かって耳を押さえながら叫ぶが、まだ学園長の悲鳴が聞こえる。

「すっげ~ウルサイ・・銀八お前何で平気なのッ!?」
「銀さんだけじゃありません・・新田先生やしずな先生も平然と学園長を眺めています・・」
「あ、俺等耳栓携帯してるから」
「ジジィの悲鳴はバンシー並にうっさいからね」
「こうしないと耳の鼓膜がはちきれるんですよね」
「もう慣れてる領域だよこの三人ッ!」

耳栓を付けて平然とした表情で目の前の惨劇を学園長虐めのスペシャリスト三人はただ眺めていると銀八が二人に顔を向けて一言・・

「次、誰がやんの?」
「まだやんのかよッ!」

あまりにも酷い銀八に千雨は耳をおさえながらもその声だけははっきり聞こえた。












「やべえな・・タカミティンが全部抜いたからこんな事に・・」
「いや全部抜いた後、坂田君がキンニクバスターの練習用にしたのがきつかったかもね」
「その後新田先生がどこから持ってきた墨汁を大量にぶちまけていた上にそのまま一気飲みさせたのが悪かったんじゃないですか?」
「シズナサン、アンタモンスターノボディ、全テノ穴ニ、チョークブッ刺スノダメヨ」

学園長イジメッ子クラブの四人が目の前の学園長“だった”モノを見ていた・・モザイクまみれでよく見えないが・・

「ちょっとやりすぎたな今回は、さすがにコレはグロい」
「さすがに悪ノリしすぎたかな? これは読者には言い表せない物体だ」

銀八と新田先生が目の前のモザイクに感想を言った後、銀八は後ろで今度は顔を机に伏せている千雨とあやかに向かって歩いていく。

「お前等アレ見ちゃ駄目だからな、子供には刺激が大きすぎる」
「オイィィィィ!! どうなったッ!? どうなっちまってんだよッ!? 学園長はッ!?」
「千雨さん・・銀さん私のことまだ子供だって・・」
「いいんちょ、そこは別に考えなくて良い所だから・・」 
「私には学園長なんかと比較できない程重要な事ですッ!」
「もういいよッ! 勝手にショック受けとけやッ!」

思わず目を開けて、別の事に落ちこんでいるあやかにツッコむ千雨だが、その時思わず興味本位で学園長の方をチラッと見てしまう。見るとそこには・・

「・・・・・ここは地獄か・・?」
「見るな千雨! お前の本体である眼鏡が壊れるほど衝撃的なんだぞアレはッ!」
「むぐッ!」

千雨がモザイクの学園長を見た瞬間呟くが、銀八が見せないように千雨を自分の懐に抱き寄せる。
新田先生としずな先生、タカミティンははそれを見た瞬間固まった・・・・・・

「坂田君、そういう関係を生徒とはちょっと・・」
「いや新田先生違うっすよ・・これは生徒にグロデスクな描写を見せないために仕方なく・・」
「銀八先生ってA組のエヴァちゃんと付き合ってると思っていたのに・・二股は良くないわよ? もしかして雪広さんとも?」
「しずなさんッ! 笑顔で恐ろしい事言わないでッ! 最近は読者そういう言葉に敏感なんだからッ!」
「グッドラック」
「どういう意味タカミティンッ!? 応援しますってかッ!? ふざけんなコラァ!」

銀八が千雨を抱き寄せながら、三人に必死になって否定する。千雨は銀八の胸に自分の顔を圧迫されているのでモガモガと苦しんで暴れていたがようやく、プハーッと顔を銀八の胸から脱出させた。

「何すんだよッ!」
「お前が何してんだよッ! アレ見たらお前の目腐り果てるぞッ!」
「どんだけやったのアンタ等ッ!? ていうか離れろッ! こんな状況いいんちょに見られたらまた・・」
「銀さん、もう見て大丈夫ですかッ!?」
「「まだ見るなァァァァァ」」

銀八と千雨が抱きあってる状況で、目を開けようとするあやかに向かってハモッて叫んで止めて、急いで二人は離れる。

「どうすんだよアレ・・私直視できないしよ、グロ過ぎて・・」
「う~ん、悪いタカミティン、アレ捨ててきて」
「ショウガナイ子ダネ」
「お母さんッ!? タカミティン何でお母さん的なポジになってんのッ!?」

銀八がタカミティンに頼んでみたら、意外と簡単に承諾してくれたそれよりタカミティンが何でお母さんキャラになったのかが千雨の気になる点だった。彼はモザイクの物体を肩に担いで教室を出てどっかに行ってしまい、その後他の教師陣も帰って行く。

「じゃあ坂田君、我々は失礼するよ」
「さよなら先生、長谷川さんを幸せに・・」
「「違ェェェェェェ!!!」」

しずな先生が最後に銀八と千雨に手を振って出て行く前に銀八と千雨が同時に叫んだ。
教室に残ったのが三人だけになると銀八は、さっきから顔を伏せているあやかの頭をパンッと叩いて「もう駆除したから目を開けて良し」と伝えたら、ようやくあやかは顔を上げれた。

「銀さん、教室が凄いことになっているんですが・・」
「明日は大掃除だね~」
「それだけで済む問題でしょうか・・」

教室は既に表現できないカオスな状況になっていた。だが銀八はのん気な事言った後、背伸びした後帰り支度する。

「じゃあ帰るか、俺もう疲れて眠いわ」
「なあ・・学園長、もうこの作品に出ねえのかな・・?」
「何言ってんだ俺はアイツの中で唯一尊敬しているのは、あのスライム並の再生力だぞ、今はあんな状態だけど、数話で復活してるって」
「あ、もう本当に人間じゃねえんだな・・」

学園長の人間離れ、つーかもう人間じゃないその能力に千雨はボソリと呟いていると、銀八が頭をボリボリと掻きながら教室から出て行く。

「帰るぞテメェ等、早く帰らねえとタカミティンに怒られるぞ、フランスパンで殴られるぞ
「なあ銀八・・・タカミティンって一体何・・・?」
「・・・・・・」
「無視かよッ!」

千雨とあやかを連れて銀八は教室の照明を消した後、教室を出て閉めた。
千雨の質問には結局最後まで答えなかった銀八だった。






翌朝、学園長と思われるモザイクの物体が校舎の裏で発見された。そして何故か近くにはフランスパンが1つ置いてあったらしい・・












銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー

銀八「ハァ~久しぶりの読み手だよ・・サドとチビのせいで本当久しぶりって感じがするわ・・」
千雨「私もここ来るの久しぶりだな・・」
銀八「しかも次回はリメイク版の零話からスタートだよ・・そこで質問コーナーやったらヤバイかな?」
千雨「駄目だろ・・初めてみる人がわけわかんなくなるぞ?」
銀八「じゃあ質問コーナーは当分お休みにします、すいませんね何かグダグダで、今回のコーナー終わったら当分無いんで」
千雨「最低一ヶ月は無いんで17話が始まる時に質問お願いします」

銀八「一通目『銀さんってツンデレなんですか? 2話連続でエヴァに抱きつかれて正直我慢の限界っしょ? 何で我慢してんの?』・・・ツンデレって言われてもな・・俺がいつ神楽になったんだよ・・」
千雨「あのチャイナ別にツンデレじゃねえだろ」
銀八「お前な、アイツの声はツンデレのスペシャリストだよ? ルイズとか、大河とか、シャナとか、ナギとか・・いやここのナギじゃないよ? ここのナギだったらぶっ殺すからね?」
千雨「ていうかそれチャイナじゃなくて中の人だろうが・・」
銀八「結論、俺はくぎゅじゃなく杉田なのでツンデレではありません、あとエヴァに抱きつかれて我慢っていうかアイツに抱きつかれも俺何ともないからね? わかってる? わかってるououoさん? そろそろぶちのめすよ?」
千雨「遂にハンドルネーム出したッ!」

銀八「ニ通目『沖田をフェイト側の仲間にしてください、そして女性メンバーを調教してやって下さい』え~無理じゃね~? だってここ一応『銀魂』と『ネギま』のクロスだし、フェイト出すのはマズイだろ・・しかも別の場所で『なの魂』もあるしさすがにこっちでフェイト出すのはちょっと・・女性メンバー調教ってプレシアとかフェイトとかあの犬なんかに、んなことしたら、ここ大変な事になるからね?」
千雨「オイ・・『リリカルなのは』に出てくるフェイトと間違えてるだろ・・」
銀八「え? 違うの?」
千雨「全然違えよッ! 何でこっちでなのはキャラ調教して下さいって感想が来るんだよッ!」
銀八「じゃあフェイトって誰よ?」
千雨「え~と・・そこは私が知ってて良いのか、知ってはいけないのか微妙なところだから・・」
銀八「どういう意味?」

銀八「三通目~『万事屋メンバーとの子作りが駄目なら大人の魅力ムンムンの源先生と一緒に付き合っちゃえば?』・・バカヤロウこういう事ばっか書きやがって、お前は本当に本当に・・・・・・成長したな」
千雨「いや何読者誉めてるのッ!? コレっていつも来たらお前が悪態をつくタイプの質問だろッ!?」
銀八「俺はなぁガキには興味無い、だが年の近い源先生なら全然守備範囲だ、そりゃああの人ちょっと恐いけどさ、まず美人だろ? 胸デかいだろ? ザ・ボスと同じ声だろ? まあかなりの上物って事だな~全然俺OKだからね」
エヴァ「貴様・・死ぬ覚悟は出来たか・・」
銀八「あれぇ・・何でお前がここにいんのかな~・・あとあやかまで・・」
あやか「エヴァさん今度だけは助太刀しますわ・・」
銀八「え~二人とも目が恐いんだけど・・ちょっと待って・・イヤイヤ別に俺がどんな女性が好みだろうとお前等には関係無くね・・?」
エヴァ・あやか「あるわァァァァァ!!」
銀八「ギャァァァァァァァァァ!!!」
千雨「じゃあしばらく私出番無いけどいつかまた会いましょう」
銀八「何テメェ終わらせようとしてんだッ! 早く助けろやッ!」
千雨「フン」
銀八「何怒ってんのお前ッ!? なんか俺お前に酷い事したッ!? つうかお前等痛えよッ! 蹴りは止めろッ! 蹴りはヤバイってッ! ウギャァァァァァァ!!!!」
 












[7093] 第十七訓 喫煙者にとってタバコは何よりも大事 それがわかるのは喫煙者だけ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2010/05/02 14:00
場所は江戸の真撰組屯所にて。ある日、屯所内に一枚の紙キレが送られてきた。

「本日から江戸全体をタバコ撲滅キャンペーンのため三ヶ月間の禁煙令を出す。真撰組隊士は江戸を見廻って、喫煙をしている不埒な者がいたら厳しく取り締まるべし」

屯所内の会議室にて一番隊隊長の沖田総悟がその紙に書いてあった内容を読み上げた、それを聞いていた隊士達も「やっぱりタバコは駄目だよな」、「ウチは大丈夫だな、隊の中で吸っている人副長だけだし」、「やっぱタバコはね~アレもヤクと変わらんでしょ?」とヒソヒソと喋りながら部屋を出て行く。だがその場にポツンと座っている男が一人。
無造作ヘアで鋭い相貌の男、鬼の副長こと土方十四郎が絶句の表情を浮かべ固まっていた。
フリーズ状態の土方を見て沖田が近づいてくる。

「土方さ~ん、もうタバコ吸ったら駄目ですよもし吸ったらその場で俺が引導渡すんで、じゃ」

沖田の声が聞こえているのかないのか、土方は相変わらずショックを受けているようだった。そんな彼に沖田はニヤッと笑た後部屋の襖を開けて出て行った。














「んにゃろ~・・・どうやら江戸は喫煙者を徹底的に殺そうとしてやがる・・・」

ようやく復活した土方は自室にて、火の点いていないタバコを咥えて脳内で吸っているイメージを浮かべながらなんとか気を落ち着かせていた。

「この前の禁煙例は一週間だったが今回は三ヶ月だぁ? ふざけんじゃねえ、タバコは喫煙者の心の友だぞ、三ヶ月も会えないなんて俺には耐えられん・・このままだと俺はニコチン不足で死んじまう・・・」

煙の出ないタバコを吸いながら独り言をする土方。この男かなりのヘビースモーカーで一日のタバコ摂取量が半端ない、なので今回の江戸の三ヶ月の禁煙令がおもくそ響いているらしい、精神的不安定状態だ。

「くそ、どうすればいい、タバコを止めるなんて論外だ・・・俺にとってタバコは水より貴重源なんだぞコラ、どうすれば吸えるんだ・・・」

ブツブツと呟きながら土方は咥えているタバコを見る。

(・・・・・・そうか! 簡単な事だったバレなきゃいいんじゃねえか! いやまてタバコの臭いは体に残るんだった・・・・・タバコの臭いを出さずにケムリを吸える攻略法を・・・ていうかケムリどうすんだよ! 一本のタバコでも結構出るぞオイ! 駄目だ何処で吸ってもバレる可能性がある・・・いや、つーか警察の俺が法を侵したらマズイだろうがッ! ヤニ切れで頭やばくなってんのか俺ッ!?)

頭の中で土方は必死に思案していた。江戸全体でタバコが吸えないというのは彼にとっては地獄のような辛さなのであろう。

「江戸に喫煙者の居場所は無ぇ・・・江戸に俺の居場所は無ぇのか・・・」

咥えていたタバコをタバコ箱に戻してため息をつく土方。そんな時、部屋の襖から「失礼しや~す」と声が聞こえ開いた、襖から顔を覗かせてきたのは土方いびりが趣味の沖田だった。
どうせ弱っている自分をいびりに来たんだろうと思い土方は残った気力で沖田を睨んだ。

「テメェ何のようだ・・・? 俺は今疲れてんだ、お前と一緒に遊ぶ気なんかねえぞ・・・」
「元気ないですね土方さん、そんなジメジメしていると体からカビが生えますぜ、外に出て思いっきりタバコをスーッって・・・あ、いけねえ江戸って今は禁煙令でしたね~」
「遊ぶ気はねえがお前を殺す気はまんまんだぞ俺は・・・」
「落ち着いてくださいよ、本当に喫煙者はニコチンが切れると危なくてしょうがねえや」
「んだとコラァァァァァ!!!」

既に自分の刀を握っている土方を相変わらずおちょくりまくる沖田。いつでも抜刀しそうな上司に、沖田は「落ち着いてくださいよ、まだ仕事中ですよ」と言ってきたので、土方はしばらく荒い息を立てながらドカッと座る。

「じゃあ土方さん近藤さんの言伝ですが、山崎が別世界で行方不明になったようですぜ」
「何ぃ? 山崎が・・・?」
山崎というのは真撰組の密偵の山崎退の事である。山崎を別世界に送り向こうの世界の助勢やさまざまな事を調べ上げるために土方が選んだいわゆるスパイだ。だが沖田が言うにはその山崎から音沙汰なしが続いており、これに不安を感じた真撰組の局長の近藤勲が別世界にいって山崎を探しにいく為に再び隊士の誰かを別世界に送ろうかと考えていた。

「誰を行かせるのか近藤さんが今考えているんですが、誰が行くんですかね? 俺は行っても良いですけどね、当分仕事サボれるし山崎なんてその辺の奴を適当に拉致ってくれば良いだけでしょうし、あともう一つ大事な用があるんで」
「テメェは絶対行くなよッ! 拉致って何ッ!? ていうか大事な用って何だよッ!? 何しに行く気だテメェッ!?」

何やら恐ろしい事を考える自分の部下に土方は頭をおさえる。その時土方の頭の中でさっき沖田が言っていた事が頭に出てきた。
別世界に一人隊士を派遣・・・土方の頭の中で『別世界』というワードが頭の中に出てくる。その時沖田がわざとらしく声を大きくして独り言を喋った。

「別世界にはきっと禁煙令なんて無いんでしょうね~本当あっちでは吸い放題ですよきっと」

沖田の独り言が土方の耳に入る。そして・・・

土方 圧倒的閃き!

「クックック・・・そうか、答えはやっぱ単純だったんじゃねえか・・・要するにここで吸わなければ良いんだ、この世界で吸わなければ良い・・・だったらッ!」

ニヤリと笑みを浮かべ土方は急に立ち上がり、ある場所に向かって走っていく。自分の自室で邪悪な笑みを浮かべている沖田を残して・・・

















「近藤さん話があるんだが」
「その声はトシか・・・悪いが今の俺は忙しいんだがな後にしてくれないか・・? ここを何処だと思っているんだ?」
「何処ってそりゃあ・・・」


土方が走ってついた場所にいたのは見た目『精悍な顔をしたゴリラ』という形容がピッタリの真撰組局長、近藤勲だ。
自分の部下であり、友でもある男の声を聞いて冷静に咎める。何せ近藤と土方がいる場所は

「厠だろ」
「そうだトシ、そして今俺は厠の中でウ○コをしている」
「まあタイミング悪かったのはワリィと思っているが・・・」
「トシ、これは一応俺の本編初登場見たいなもんだ・・・なのに・・・記念すべき俺の最初のシーンがウ○コ中って何だッ!?  
俺はもっとカッコよく出たかったのにウ○コって何だよッ!」

場所は屯所内の厠場、そこで近藤は一つの厠で大きい方をしていたのだが、このタイミングで土方に話しかけられて、さっきの冷静さはどうしたのか近藤は顔を熱くして叫んだ、戸があるので土方にはその顔は見えないが

「何でこのタイミングで来るんだよッ! 何で俺が座禅を組んでいるときとか、滝に打たれて修行している所とか何でそういうカッコよさげな時に来なかったのッ!?」
「いやアンタがそんな事してるの見たこと無いし」
「最悪だよ~マジ最悪だよ~よりにもよってウ○コ中かよ~トシ~本当勘弁してよ~」
「悪かったって言ってるだろ・・・もう三十路の一歩前の男が厠の中でメソメソ泣くなよ」

恐らく厠の中で泣いているのだろうか、中から近藤のすすり泣きの音が聞こえてくる。そんな上司にやれやれと頭を掻きながら土方は話を切り出す。

「所で近藤さん、別世界に山崎の捜索する隊士を一人送るんだろ? あれ俺にしてくれ」
「何? トシお前が行ったら駄目だろ、江戸を守る真撰組の副長のお前が『江戸』から離れるなんてありえないだろう、隊に行く人物は決めている、悪いがトシ、お前が山崎を心配に思うのもわかるが行くところは別世界だ、どんな危険があるかわからん」
「いや山崎はどうでもいいんだけどな・・・」

土方の声が途中で小さくなったのでその言葉は近藤の耳には届かなかった。
そしてやっと全部出し終わったのか近藤が水を流して厠から出てきた。「あ~腹はスッキリしたけど心は憂鬱の気分なんだけど・・」と呟きながら土方とようやく対面する。

「それよりトシ、山崎の心配より自分の心配をしたらどうだ? 最近江戸で禁煙令出ただろ? 真撰組の中で唯一の喫煙者はお前だ、いくらタバコを吸いたくても吸わないようにな」
「え・・? いや、んなのわかってるつーの・・・ていうか近藤さん、誰を別世界に送るんだ? もしかして総悟じゃねえだろうな・・・?」
「ハハハハ、総悟じゃねえよアイツは一番隊の隊長だしな、俺たちにはかかせない存在じゃないか、別世界に行くのは・・・」

近藤はしばらく間を取って自分を親指で指した。

「俺だ」





誇らしげに自分が行くといった真撰組のトップに土方は時が止まった・・・

「ということで俺しばらく留守にするから、留守番お願い」
「ふざけんなァァァァァ!!」

言葉を残して厠を出ようとする近藤に土方が吼えて彼の背中に蹴りをドカッといれた。

「アンタは真撰組局長だろうがッ! 何考えてんだッ! アンタが一番離れちゃマズイ人間だろうがッ! つーか何でアンタが行くんだよッ!?」
「トシ・・・俺はな、わかったんだよ・・・ここでは俺と付き合ってくれる女性なんかいないって・・・そりゃあお妙さんはいるけど、あの人は恥ずかしがりやだから俺から逃げちまう」
「いや一方的にアンタがストーカーしているだけだからね? 何勝手に向こうの心境を自分で妄想してんだよ、
絶対無いからね」 

近藤のありえない理論に呆れてツッコむ土方。お妙という人物は近藤の想い人であり、彼がいつもストーキング行為をするターゲットだ。近藤の執着心は他のストーカーを圧倒するほどのレベルで、たとえ彼女が火の中水の中にいようが
何処でもストーキングするであろう正真正銘立派な犯罪者だ。当然お妙は近藤のことなどウザい、キモい、死ね、ぐらいしか思ってなくこれまで何百回も近藤を制裁しているのだがどうやらこのゴリラは全く懲りていない、それ所かヒートアップする一方だ。

「そんな時とっつぁんからある情報を小耳に挟んだ、とっつぁんが言うにはあそこの世界には『麻帆良学園』とかいう女子のみがいる、なんともパラダイスな場所があると聞いた、俺はそこで女性の心を勉強し男を磨きまくって、お妙さんの心を鷲掴みにできる素晴らしい男になるッ! そしてあわよくば向こうの女子生徒の心も鷲掴みに・・・」
「全然仕事関係無えじゃねえかッ! 何考えてんのッ!? それアンタのただの願望だろうがッ! そんな不純な動機で何自分の部下たちほっぱらかしにしてんだよッ! やっぱ俺が行く、俺のほうが適任だッ! アンタじゃ絶対無理ッ!」
「わかってくれよトシ~ッ! 俺はお前や総悟みたいに二枚目じゃねんだよッ! いつもゴリラ、ゴリラ、言われてさッ! 俺もう疲れたよッ! だからモテる秘訣とか知りてんだよッ! ていうかお前が教えてくれよトシ~ッ!」

涙を流しながら土方の腰に抱きつく近藤。どうやらもうかなり自分のコンプレックスに悩んでいるらしい・・・武装警察のリーダーがこれでは先が思いやられると土方は不安になった。
そんな時、近藤がいた厠の隣のドアが静かに開いた。

「近藤、どうやらテメェ結構悩んでいるらしいじゃねえか、どうして俺に相談しなかった」
「とっつぁんッ! 何でここにいんのッ!?」
「ちょっと野暮用でな・・・例の話が何処まで進んでいるのも知りてえしな」

厠の中から出てきたのは見た目極道だろコレ? と彷彿させる姿。真選組内では通称とっつぁんこと、松平片栗虎だ。真撰組を組織させた警察庁の長官でもあり山崎を別世界に送れたのも彼のおかげだ。どうやら厠の中で土方と近藤の話を聞いていたらしい。

「あ! とっつぁんがいたから厠が凄く臭かったのかッ! 勘弁してくれよ俺臭くて死にそうになったんだからッ!」
「それはテメェのウ○コの臭いだろうが、テメーのウ○コで勝手に死にやがれクソゴリラ、オジサンは加齢臭はするがウ○コはジャスミン並みの凄く良い臭いだ」
「どんなウ○コだよ」

とっつぁんのあり得ない事に冷静にツッコむ土方。そんな彼にとっつぁんが顔を向けた。

「話は聞いていたぜ、トシお前が別世界に行け」
「へ?」
「えェェェェェェ!!! 何でェェェェェ!?」

突然の命令に土方は呆気にとられるも近藤はそれよりも遥かに驚いていた。

「何でトシッ!? 俺じゃ駄目なのッ!?」
「テメェはここの頭だろうが、局長がこの世界から離れられる訳ねえだろ、確かにトシも二番頭だが危険な任務こそ遂行してもらうにはそれなりの良い駒を出さねえと元も子もねえ、将棋で言えばお前と俺は『王』、トシは『角』だ、何こいつがいなくてもここの連中ならなんとかやれんだろ、だってオジサンが作った組織の連中だからね、使えない野郎はメメタァすればいいし」
「しかし・・・」
「俺の命令は絶対だ、この件はトシに任せるわかったな近藤」
「しょうがない・・・とっつぁんがそこまでトシのことを信頼しているんだしな・・・トシ頑張ってくれよッ!」

とっつぁんが自分の友をそこまで信頼しているのならばしょうがない・・・近藤はついに折れて土方に向かって熱い激励をした。そんな土方にとっつぁんが近づいてこっそりと耳打ちするに肩を組んで喋りだした。

「・・・トシ、わかってんだよオジサンは、江戸で禁煙令が出たから別世界でタバコ吸いまくりたいんだろ~? 俺も喫煙者だしお前の気持ち痛いほどわかってんだよ~? 」
「とっつぁん・・! てことは、俺の為に・・・」
「そうだ、お前に三ヶ月も禁煙なんて苦行はさすがにキツイしな、これは俺からのプレゼント、いわゆる『オジサンニコチンプレゼント』だ、まあ、ぶっちゃけ禁煙令出したの俺だしね、娘がタバコ臭いの嫌だって言ってるらしいから禁煙しようと思ってよ、でも自分だけ禁煙するの嫌だから他のやつ等も道連れにしてやろうかなって思ってさ」
「前半は良い人だと思ったけど、後半アンタに殺意が芽生えた・・・」

前半はお互い喫煙者なので自分の気持ちをわかってくれた仏様かと思ったのだが、後半でぶっちゃけるとっつぁんに土方は、僅かに殺気を放った。ようするに娘に嫌われたくないために、禁煙しようと思い自分だけやるのが嫌だと思い、自分たち喫煙者を道連れにしたらしい・・・
とっつぁんは悪気ゼロで「まあ許せトシ」言って土方の肩をポンポンと叩いて離れた。

「トシ、お前の転送装置を用意するのに少しばかり時間がかかるな、アレは簡単に用意できる物じゃねえんだ一個で家が建つほどの代物だ、まあ俺が確実に用意してやる、夕方頃には別世界でニコチンが待ってるぞ」

元よりこの男のおかげで自分が悲惨なことになったんだが・・・
土方はそんな事を考えながらとっつぁんに視線を向けるが、身支度しようと自分の部屋へと戻るために厠場を出ようとして、去り際に振り返らずに土方は口を開いた。

「近藤さん、俺はしばらくここを留守にするぞ、よろしく頼む」
「任せろトシ、お前がいない穴を埋めるのには大変だがなんとかなるさ、いっちょ別世界に殴りこんで来い」
「フ・・言われなくてもわかってるつーの」

近藤が自分にエールを送る、それを聞いて土方は当たり前のように答えて、振り返らずに少し笑って厠場から出た。

「トシの奴・・・無茶しなければいいが・・・」
「心配すんなやテメェのダチだろ、アイツなら任務を全う出来るに決まってらぁ・・・ん? そういえばアイツの本来の任務って何だ?」
「そういえばそうだな・・・なんだっけ? トシと話しているウチに忘れちゃったな」

山崎が無事かどうかの模索するという任務をすっかり忘れている山崎の上司二人(高確率で土方も忘れていると思われるが)。
何とも不憫な山崎だ・・・
近藤ととっつぁんが厠を出て廊下を歩きながら思い出そうとしていると前方の曲がり角から沖田がひょこっと出てきた。

「あ、近藤さん、松平のとっつぁんもお元気そうで、ところで土方さんが別世界にいくそうですが本当ですかぃ?」
「お~情報が早いな総悟」
「さっき土方さんに直接聞いたんで「お前ともしばらく会えねえし良いことづくめだな」って言われましたし」
「本当は俺が行きたかったんだけど、俺はここで江戸を守らねばならんしな、なんていったってトシは『角』、総悟は『助』、俺は『肛門様』だからな、ここは角さんのトシに任せよう」
「おいゴリラ、俺は将棋で例えたんだぞ、それは水戸黄門だししかも漢字間違えてんだろうが、どんだけ下ネタやる気だテメェ」

思わず卑猥な言葉を言う近藤にとっつぁんがツッコむ、そんな二人を眺めながら沖田は人差し指を上げて一つ提案した。

「近藤さん、土方さんみたいな立派な人物がいなくなっちまったら大変でしょ? ここは俺を代理副長として駆り立ててくれないですかね? 確かにあの人と違って俺はまだ全然ダメダメですけど少しは役に立てるんじゃないかなと思いまして」
「なるほど確かにアイツのような男の代わりを務められるのは真撰組内ではお前ぐらいだな、いいぞ総悟、お前を代理副長に任命してやる、トシがいない間お前が副長だ」
「まあ性格に問題アリだが、コイツは剣に関しては隊一の実力と言われるぐらいだし、指揮はお前がやって、現場で隊を引っ張らせるのはコイツで良いだろ」
「ありがとうございます! 近藤さんと松平のとっつぁん! 俺まだ未熟だけど頑張りますッ!」

沖田は二人に頭を深々と下げる。こうやってみると非常に頼もしい青年に見えるが、この男の名が沖田総悟だということを忘れてはいけない。
頭を下げているときの沖田の表情は近藤達には見えない。沖田は一段と口に笑みを浮かべていたのであった。そして小言でポツリと

「・・・計画通り・・・」

沖田は頭を上げて表情を元の戻して「じゃあ俺副長ってどうすればいいのかちょっくら色んな奴らから聞いて勉強してきますね」と言い二人と別れる。近藤達が見えなくなるまで歩いて、屯所内にある庭でふと止まる。

「遂に俺の『副長の座奪還計画』が成功したぜ、だけどあのヤロウが帰ってくるまでか・・・」

沖田の目的、それは副長の座を土方から奪うことだ。今まで過去なんども土方の命を狙い、局長の近藤の隣に立てる副長の座を日々狙っていた沖田。そして今回沖田が考えたことは『土方を亡き者にするのではなく彼を別世界に行かせるてその隙に副長の座をゲット作戦』、そして沖田は土方を別世界に送る策を計画していたのだ。

まずとっつぁんに「娘さんがとっつぁんのタバコの臭いがきつくて嫌いって言っていた情報を風の噂で聞いちゃいました」
と言って、とっつぁんにデマを流す。とっつぁんは本当のマジ親バカなので愛する娘のために禁煙を宣言するだろう。そして彼の世界は自分が中心に回っていると思っている性格なら、ワガママ言って、再び禁煙令を出して世の喫煙者を道連れにするに違いない。それはターゲットの自分の上司も例外ではない、タバコが吸えなくなったと知ったなら奴は間違いなく地獄の苦しみを味わうに違いない、あのヘビースモーカー野郎なら間違いない。沖田はそう確信していた。

現に土方は禁煙令を出されたこの江戸で自分の居場所が無いことに気づいてテンションが下がっていた。そこへ自分が別世界に行けばタバコを吸えるんじゃないかな~? 言って、思考がニコチン不足のおかげで思考が低下している土方は簡単にそれに食いつく。そして近藤に頼んで自分がタバコを吸うために別世界へと行くに違いない。沖田の計画は見事に成功したのだが、少し計画とは違うことがあった。それはとっつぁんがずっと江戸を禁煙令にするのではなく、三ヶ月のみの令だったという事だった。
とっつぁんもかなりのヘビースモーカーだ、本当は禁煙する気なんかサラサラ無いらしい・・・自分の娘のためならとっつぁんは一生禁煙宣言をするに違いないという沖田の考えは外れてしまった。
土方が別世界に行くことによって遂に自分が副長の座につけたがあくまで代理副長、禁煙令が終わりそれを機に土方が帰ってきたらまた自分は一番隊隊長に戻ってしまう。

「あ~アイツ別世界から永久に帰ってこれなくなれねえかな・・・」

何とも腹黒い独り言を沖田は天を見ながら呟いていたのであった










第十七訓 喫煙者にとってタバコは何よりも大事 それがわかるのは喫煙者だけ

場所大きく変わって、放課後の麻帆良学園。目を覚ますとそこには巨大な木があり、多くの建造物が並んでいた。

「ついに着いたぜ・・・ここがとっつぁんの言う、なんとか学園か・・・こんなガキ臭い所どうでもいいが、とっつぁんが言うにはここのある人物に会いにいかなきゃならねえしな・・・」

土方は麻帆良学園内の歩きながらこの世界の住人を眺めていた。自分の世界と違うところといったら、服装の違いと天人が見当たらない事と、何より近藤の言うとおり女性ばっかだった。女子校だから女子が多いのは当たり前なのだが、こうも多いと土方も少し居心地悪い。遠くからこちらを指差して楽しそうにキャーキャー言っている女子団体といくつかすれ違ったが彼にとってはどうでもいい事だ。彼が何故こんな別世界にわざわざ来たのか、無論それはタバコのため。土方は適当にベンチに座って胸ポケットからタバコを取り出す

「まあソイツに会う前に俺は待ちに望んだコレを吸うか」

思わず表情をほころばしている土方はタバコ箱の中から一本取り出す、待ちに待っていたタバコ。彼はそれにライターで火を点けてスゥ~と煙を吸う。

「うめェ・・・やっぱタバコはたまらねえよ、これを止めるなんて俺に人間止めろって言ってるモンだぜ・・・」

ゆっくりと煙を吐きながら土方は感嘆して、思わず口から感想をもらしてしまった。
数時間忘れていたタバコの味に感動しながら土方は今後の予定を考えていた。土方はあっちの世界で最後に喋ったとっつぁん達との会話を思い出す。













「トシ、これが時空転送装置『ジャスタウェイ・クリムゾン』だ前に山崎のヤローに渡しておいた奴より高性能に作ってあるからな、壊すなよ。あ、そういえば山崎を探す任務だったか、やっと思い出した」
「そういえば山崎の奴を探す任務だったな、タバコのことしか考えてなかった」

場所は真撰組屯所内の倉庫室の地下。ここに別世界へと行くための機材やら資料がわんさかある。ここにそんなもんを幕府の上の連中から極秘に作ったのは、今土方に手の平サイズのジャスタウェイを渡したとっつぁんだ。土方はそれを受け取りしげしげと眺める。

「こんなに小さくて大丈夫なのか? 壊れたりでもしたら俺帰れなくなるんだろ?」
「まあ前回の『ジャスタウェイ・レクイエム』は試作品だったから確かにマジで壊れやすかった、だがこの『ジャスタウェイ・クリムゾン』はそれより10倍は硬え! そして防水加工付き! 簡単に壊れねえよ」
「なるほど、こんなふざけた面をしているくせに、コレはかなり貴重な機械のようだな・・・」

土方は生気の無い目をしている人形を大切に上着のポケットにしまった。
二人の会話を見ていた近藤が土方に向かって心配そうに口を開いた。

「そういえばお前その格好で行くのか? 何かもっと色々と持っていったほうがいいんじゃね、さすがに手ぶらで行くのはどうかと思うぞ?」

今の土方はいつもの真撰組の制服と刀しか持ってない様子に見える、さすがにそれだけで別世界に行っていくのは不安じゃないだろうかと近藤は考えたのだが、土方は自信満々に答える。

「近藤さん、俺は三種の神器を持ってれば何処でも生きていけるんだよ他に何も必要ねえ、返って邪魔になるだけだ、俺の三種の神器、一つ目は侍の魂でもある刀、二つ目は俺を支えてくれるタバコ、そして三つ目は調味料の神を呼ばれたマヨネーズだ」

腰に差している愛刀、内ポケットにあるタバコ、最後にズボンのポケットに入っている土方にとっては最高の調味料であるマヨネーズが入っている。どうやら土方にとってこれが最強防具らしい。それを聞いていたとっつぁんは頷く。

「確かに色々と持っていくよりそっちの方が楽だな、だがマヨネーズぐらいあっちにあるんだけど?」
「もしあっちの世界のマヨが俺の口に合わなかったらどうすんだよ、俺に一番合うのはこの世界のマヨか自分で作るマイマヨ・・・それ以外のマヨは信用しねえ、それが俺のプライドだ」
「どうでもいいですけどね、そんな陳腐なマヨプライド」
「うるせえッ!」
土方が何か熱く語っていたら沖田が突然入り込んできたので思わずそっちに吼えた。

「じゃあトシ、これでしばらくお別れだ達者でな、準備が出来次第お前を向こうに送る」
「ああ」
「これは俺の餞別だ」

とっつぁんは土方に最後に挨拶する、そして懐からある物を取り出した。

「受け取れ」
「何だそれ? 名刺か?」
「俺が向こうの世界で行っているキャバクラのナンバーワンの女の名刺だ、これで指名し放題だぞ」
「いらねえよッ! キャバクラ行かねえしッ! つーかアンタ何しにいってたんだよッ!」

とっつぁんが持っていた名刺を叩き落しツッコむ土方。そこへ今度は近藤が近づいてきた。

「トシ、これを受け取れ」
「何だこの紙・・? 何か書いてあるし・・・」
「俺の電話番号とメルアドだ、カワイイ子いたら渡しておいてくれない?」
「何で俺がアンタの電話番号渡しにいかなきゃならねえんだよッ! まだ行きたいと思ってんのかッ!? しかも世界違えから繋がらねえだろうがッ!」

近藤が持っている紙を叩き落し再びツッコむ土方。そこへ最後に沖田が近づいてきた。

「土方さん受け取ってください」
「どうせお前もくだらないモン・・・これムチだよな・・・?」
「俺の代わりにちょっくらやっちまってください」
「何をだよッ! 誰をだよッ! これで誰を何するんだよッ!」
「言っていいんですかい?」
「やっぱ止めろッ!」

沖田が危険発言する前に彼の持っているムチを叩き落してツッコんだ土方。既に行く前に疲れてきた。

「・・・ったく、とっつぁんもういいさっさと俺をあっちへ送ってくれ」
「トシ、あっちに言ったらまず『麻帆良学園』という所に飛ばされる、その後そこの職員室に行って俺の友人に会いに行ってこい、俺の紹介だと言えば何か仕事をくれるはずだ、お前は向こうにいる間はそこで仕事して生計立てとけ」
「随分勝手だな・・・何も知らねえ世界で暮らせってか・・?」
「もしかしたら山崎のヤローもいる可能性があるしな、そこからなるべく離れんじゃねえぞ」
「わ~かったよ・・・」
















回想終了

「まずは職員室っていう所に行けって言ってたが、今の俺はタバコがキレている、しばらく吸わせてもらうぜ」

土方は二本目のタバコに手を伸ばす、彼にとってタバコは生きる糧。何より最優先なのはニコチン摂取。
ライターで火を点け再びタバコを吸おうとする、すると・・・

バッシャァァァァンッ!

突然バケツ一杯分の水が土方を襲い、一瞬で水びだしになり、タバコを握っているポーズで止まって、髪からポタポタと水の滴が落ちる土方。
そこに一人の女子生徒がバケツを持って土方に話しかけてきた。

「タバコは喫煙所で吸ってください、ここは禁煙ゾーンです、日本読めるますか? そこに書いてあるですよ」

小柄な少女はバケツを置いて、人差し指で土方が座っているベンチの看板に指差す。そこに書いてあったのは
『未成年だろうがここの関係者だろうがナメック人だろうが、喫煙者はここの周りでタバコを吸わないでください』

そう書いてあったのだが土方は見ていない、何故なら持っているタバコをフルフルさせながら頬をピクピクさせ、目の前の小さな少女をガン見していたのだ。タバコというのは水に濡れるとしけってしまい二度と吸えなくなる。そして体一杯に水をかけられた土方のタバコは・・・

右手に持っているタバコどころか、左手に持っていたタバコ箱の中のタバコも壊滅していた。

「てんめぇぇぇぇぇぇ!!! よくもやってくれたなコラァァァァ!!!」

怒りのボルテージMAXで立ち上がる土方、その形相は正に鬼。だが反対的に少女は涼しい顔をしている。

「禁煙広場でタバコ吸ってる貴方が悪いんですよ、喫煙者ならタバコのマナーぐらい勉強するです」
「んだとオラァァァァ!! 粛清してやろうかこのガキッ!」
「自分に不備があるのに、今度は暴力で解決する気ですか? タバコよりまず人としてのマナーを勉強するです」
「だァァァァァ!! 何コイツ、スゲームカつくッ! 斬りてえんだけどッ!? めちゃくちゃ斬りたいんだけどッ!?」

土方は持っている刀を持って脅すも、少女は全く恐れていない。相変わらず無感情な表情で言葉責めをする。土方にはそれが我慢ならない、何故なら彼女は土方にとって大切なものを大量に殺したのだ、タバコという土方にとってかけがえの無いもの。確かに気づかないで禁煙の所で吸った自分が悪いが、注意だけすればいいのだ。だがこの少女は

「何でバケツ一杯俺にぶっかけるんだよッ! お前バカかッ!? バカなのかッ!?」
「私、ウチの副担任が喫煙者ですから基本、喫煙者嫌いなんです」
「何その理由ッ!? それただお前が副担任嫌いなだけだろうがッ!? 無関係な俺に八つ当たりしてんじゃねえよチビッ!」
「八つ当たりにはならないですよ、現に貴方吸ってたしそれを私が消しただけです、悪いのはタバコを吸っている貴方と私の所のアンニョイ教師だけです」
「うぜェェェェェェ!!! 何だこのチビィィィィ!!! ここに来て早々むちゃくちゃムカつく奴に会ったんだけどォォォォ!?」

既に抜刀しかけている刀を持って土方は、自分よりずっと小さな少女に睨んでいる。それを何考えているのかわからない表情で少女も見返す。そんなことしていると、突然少女のポケットから着信音が鳴った少女はポケットから携帯を取り出す

「何ですハルナ? 今変なニコチン中毒者に絡まれているのですけど? ああ大丈夫ですただの狂犬ですから、すぐに帰りますから、じゃ」

会話を終えて携帯を切って土方に向き直る

「私貴方と違って暇じゃないんで帰りますね、タバコ吸いまくって肺真っ黒になって早死にしくてださい、それじゃ」

少女はそういい残し、どっかへ歩いて行ってしまった。

「あのガキ~・・絶対いつかぶっ殺す・・・・!!!!」

小さくなっていく少女の背中を見ながら、怒りがマグマの如き跳ね上がっている土方はそう固く誓い、次に会ったらすぐに刀抜いてあの口黙らせる為にスパンといこうと決心した。

















「ったく、総悟並に嫌なガキだったぜ・・・いつかあの長い髪の毛で逆さ吊りにしてやる・・・」

土方はあの少女に文句を言いながらとりあえず学園の職員室へと向かう、職員室へは親切なマッチョなプロレスラーみたいな外人の、つまりかなり珍妙な生物に道を教えてもらった。

「何でここはこんなにデケェんだか・・・まあいい道がわかったなら進むだけだ、その前に・・・」

土方はポケットからある物を取り出した、出したのはライターと

「へへ、まさかストックでもう一箱持っていたとは俺も忘れていたぜ」

土方は濡れなかったポケットから新たなタバコの箱を出す。彼も思わず口元に笑みを出す。
土方は長い階段の前で少し一休みしようと銅像がある前の石畳の階段に座って新箱からタバコを一本取り出し火を点ける。
もう何処が喫煙だろうが禁煙だろうがどうでもいいわボケって感じでタバコを吸い出した。

「フゥ~またバケツかけてくるバカでもいないか気をつけねえとな・・・ん? 何だぁあのガキ?」

タバコを吸っている最中に土方は長い階段の上で大きな本を数冊持ってフラフラしている少女を見た。

(さっきのガキと同じ制服か、てことはここの生徒か、つーか何であんなに本が必要なんだよ・・・んにしてもフラフラしすぎて危なっかしくて見てられねえぜ、前髪が長すぎるんだよ、あれじゃあ前見えねえんじゃね?)

土方が階段の上の少女を眺めながら土方が持っているタバコの箱を内ポケットにしまっていた時。

「あッ!」
「でッ!」

少女は足を踏み外したのか、捻って崖になっている部分へと・・・

「チクショウッ! あのガキッ!」

少女が下へ落ちる、あの高さだと大怪我になる可能性もある、土方は元から警戒していたのですぐに立ち上がり

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

土方は吸っていたタバコを捨てて全力疾走で少女が落ちてくる前に追いつこうと走る。

「んなろォォォォ!! ダイビングキャッチィィィィ!!!」

土方は両手を前に出し前方に向かって飛ぶ、そして・・・

「きゃッ!」
「がふッ!」

ズザァァァァ!! とスライディングした土方の両手に・・ではなく彼の背中に少女はお尻からドスンッ!と落ちた。どうやら土方が早過ぎた様だ。少女は難なく土方の背中がクッションになったので軽くお尻を痛めただけで済んだようだが土方は腰にかなりのダメージを食らった。

「い、痛ぇ・・・」
「ああああ、あのその・・・だ、大丈夫ですか・・・?」
「いいから・・・俺の背中からおりろ・・・」
「え? あ、ああ! すすすす、すいませんッ!」

ようやく自分の腰から立ち上がる少女。土方もよろよろと立ち上がり、腰をおさえながらも一緒に落ちてきた本を拾っていたのを見て、彼女は前髪から少し目を覗かせながらドギマギしている。

「あ、あのあの・・あり、あり、ありが・・」
「礼ぐらいちゃんと言えるようになるんだな、おらよテメェの本だろ」 
「すすすす、すいません・・・!」
「いやなんで謝るんだよ・・・」

土方が少女をちょっと睨んだのが怖かったのか急に謝ってくる少女に。土方はツッコンだ後、大量の本を彼女に渡した。
その時、内ポケットに妙な違和感を感じる

「ん? おいまさかッ!」

土方はゴソゴソと調べる。ジャスタウェイは無事なのは知っている、あんな衝撃で壊れるはずが無い、もう一つの内ポケットを探るそこに入っていたのは・・・

少女の重みで潰れた19本のタバコ達だった・・・

「ぬ、ぬおォォォォォ!!! 嘘だろおいィィィィィ!!! 俺のタバコォォォォォォ!!」
「え・・ど、どうしたんですか・・・?」
「俺の友達が死んだァァァァァ!!」
「エエエエエエエッ!?」

土方は吸えるタバコが無いか探したが、どれも全滅。つまり土方の所持するタバコは本当にゼロになってしまった。思わずその場にがっくりうなだれる土方

「あの友達死んじゃったんですか・・・?」
「19人死んじまった・・・」
「じゅ、19人ッ!? どんな惨劇あったんですかッ!?」
「俺のタバコの新箱が一瞬でクラッシュされたんだよ、誰かの重みでよ・・・」
「え・・? もしかしてタバコの事ですか・・・? 良かったてっきり人かと・・・あれ? もしかして、わ、私のせいですか・・・? す、す、すいませんッ!」

少女に半泣きになりそうに謝られて、土方も怒るに怒れない。しょうがなく頭をポリポリ掻いて天を仰いだ後。

「まあいい、タバコ代貸してくれね・・・? 300円」
「え? あ、はい! 教室にある鞄から財布取ってきますッ!」
「俺も着いて行く、もうどっかで休憩するのはごめんだし、その本持っててやるよ・・・」
「す、すいません・・・」
「だから謝らなくていいっつ~の・・・」
「すいません・・・」
「・・・・・・」

なおも謝って来る少女に土方はため息をつきながら一緒に教室へと向かった。

「所でお前名前なんていうんだ?」
「えと・・・麻帆良学園の中等部、3年A組出席番号27番、宮崎のどかです・・・・」
「いやそこまでプロフィール言わなくていいから」
「お兄さんは名前なんて言うんですか・・?」
「あん? ここで多分働くと思う、土方十四郎だ」
「すいません・・・」
「今謝るポイント全く無かったよねッ!?」

日はもう既に落ち夜になろうとしている、宮崎のどかと土方は自己紹介をしてそのまま校舎の中へと入っていった。
今宵、学園の珍事件に巻き込まれるとも知らずに・・・













教えて真撰組のみなさんのコーナー

「はいどうも沖田です、いや~今回から遂に土方乱入編に突入しましたね~近藤さん」
「何で~トシだけなのかな~? 俺たちが行っても別に問題無くない?」
「俺たちが一斉に出たら何か話がスッチャカメッチャカになるから、とりあえず土方さんだけ出したらしいですね、何ででしょうかね? 知ってますかぃ? 今回出番ゼロだった万事屋三人組」
「「「んだとコラァァァァァ!?」」」

沖田が急に話を振った相手、今回出番が少ない所かゼロの銀八、千雨、あやかだった。三人は一斉に沖田に叫んだ。
そんな三人組に近藤がプッと含み笑いをした。

「万事屋の奴、今回俺より台詞無い所か出番無し・・・プププッ!」
「気持ち悪い笑い方してんじゃねえよゴリラッ! 下ネタ野郎はもう一生出番なんかねえよッ!」
「いやお前も時々下ネタ・・・アダッ!」

千雨が余計な事を言いそうになったので銀八が頭を殴る。そんな銀八に近藤は勝ち誇った顔をしている。

「甘いな万事屋、下ネタというのは年齢関係なく誰からも受け入れられる万能なネタなんだぜ」
「年齢関係なくドン引きされる時もありますわよ」
「えッ!? そうなのッ!?」
「少なくとも私は貴方にドン引きです」
「マジかよ~中学生って下ネタ好きな年頃じゃないの~?」
「近藤さん、それ男子の方ですよ、女子はほぼ引きます」

あやかに駄目出しされた近藤は落ちこんでいたら、沖田は今度は銀八の方に顔を向けた

「にしても土方編は本当豪華キャストですね、俺がもう土方さんの代わりに出たいぐらいですよ」
「いや今回はきっぱりと断言しよう、お前が出たら駄目だ」
「そこをなんとかお願いしますよ、鎖じゃなく縄で我慢しますから」
「そういう問題じゃねえよッ! どっちもS武器だろうがッ! 却下だ却下ッ!」

沖田のデンジャラストークに銀八がシャットダウンした。縄でも鎖でもやる事は一緒だからである。


ジリリリリリリッ!

「よ~し終わりの合図だ、サド、ゴリ帰れ」
「旦那、これは俺達のコーナー何で出て行くのは旦那方ですよ、ここで出番終わりです」
「俺等の出番これだけッ!? 待て千雨なんて台詞ちょっとしか言ってねえんだぞッ!」
「いや別にいいわッ! ていうかいいんちょもそんな喋ってないぞッ!」
「それならこのゴリラも喋ってませんッ!」
「何言ってんの俺は喋りまくりだよッ! ここの半透明の女の子とッ!」





近藤の発言にしばし固まる団体。

「あれ? お前等ここにいる女の子見えないの?」
「銀八・・あのスタンドか・・?」
「さあ俺には見えねえし」
「いや見えるじゃんお前ッ!」
















「次回土方乱入編の第十八訓 『スタンド使いはスタンド使いのみが倒せる』をお送りする予定? 名前からして別作品みたいになっちゃいましたね?」
「つーか今日生徒来なかったね」
「いやいるんだろッ! お前見えてんだろッ!」
「見えません」
「いや見えるって前言ってたよねッ!?」

銀八がとぼけるので千雨が追求していると、近藤が大声で話しかけてくる。

「万事屋ァァァ!! 半透明の子が泣いちゃったぞッ!」
「励ましたらどうですゴリラさんが? 好感度上がりますわよ?」

あやかの言葉に近藤の目がキランと光る。

「マジでッ!? じゃあえ~と・・・お嬢さん俺のお墓に入りませんかッ!?」
「それ口説き文句です、しかも今時古すぎですわ・・」
「ていうか私、お墓に入れないんですけど・・」
「ガ―ンッ! スタンドにも振られたァァァ!!」

相坂さよは苦笑しながら近藤の口説き文句を拒否して、実はマジで口説こうとしていたゴリラはあっけなく玉砕するのであった。













沖田君のそこんとこ詳しくのコーナー

沖田「どうも、では始めます。今回は土方の野郎が調子に乗って本編行っているので、ここは代理で旦那の部下を持ってきました」
千雨「何で私なんだよ・・」
沖田「すいません、ちゆたん」
千雨「今なんつったッ!?」
沖田「では一通目~」
千雨「おいッ! 何で知ってんだよッ!」

沖田「一通目、『あやかさんに質問です。スポーツ万能、成績優秀ですが、某機動馬に乗れたりしますか? あと、武器は槍と剣の扱いに自信ありますか?』・・・・・・残念ながら作者はこのネタ全くわかりませんでしたね」
千雨「まあ、あまり深すぎると作者もわからないんで気を付けてください・・」
沖田「金髪の大きい方より俺は地獄少女か第3ドールの質問が来て欲しかったぜ」
千雨「何て答える気だよお前・・」
沖田「そりゃ的確に○○○とか、×××が出きるか、△△△が有効とかあるぜ」
千雨「伏せ字つくぐらい何言ってんだテメェッ!」

沖田「二通目、『沖田は何時出るですか? のどかよゆえを念入りに○○してくれませんかね? それ以上に刹那を○○や土方見たいに○○してくれませんかね?』」
千雨「お前どんだけ伏せ字出すんだよ・・」
沖田「俺も出たいんですけど、銀魂キャラを一気にゾロゾロ出したら大変になるので、まず土方さんだけ出して、そして次から次へと出てくる予定です、だから俺と近藤さんの本編入りはしばらく待ってて下さい、○○ですか? 勿論やります、お市の方は土方さんと一緒にいるので的が2つあるようなもんですね、簡単にぶち抜いて見せますよ、あとの二人は待ってて下さい」
千雨「何言ってんだかもう・・ツッコミきれねえよ・・」
新八「沖田さん、ドS発言にも程がありますよッ! ○○って何ッ!? お市って言っても大体読者わかってますからねッ!? ぶち抜くって何をッ!? 何をぶち抜く気なんですかッ!?」
沖田「お~いきなり出てきたね新八君、出てきて早々ツッコミまくりだね」
新八「そりゃそうでしょ、僕は・・ツッコミだけは・・誰にも負けないんでねッ!」
千雨「何でこっち見て不敵な笑み浮かべてんだよッ! 別に良いからッ! お前が勝っててもいいからッ!」




[7093] 第十八訓 スタンドはスタンドでしか倒せない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:0010dcfa
Date: 2009/06/28 23:00
前回のあらすじ。禁煙令により江戸に居場所を失ったと感じたニコチン中毒の土方は、別世界でタバコを吸おうと考え、山崎の生存確認を名目に土方は別世界へと旅立ったのだ。しかし一人の少女により友であるタバコは水死。嘆き悲しむ土方だが、更に悲劇が起こる。身を挺して守り偶然会った少女、宮崎のどかのおかげで彼のタバコ二号は圧死。困りに困った土方はのどかにタバコ代を貸してもらうため、彼女と共に麻帆良学園の教室内へと入るのであった。


「日が落ちてきたな」
「はい、早く帰らないと夕映やハルナが心配しちゃう・・・」

三年A組の教室にて宮崎のどかと一緒に彼女の本を教室に持っていくため手伝った土方は、夜になっていく空を眺めていた。

「小娘さっさと帰るぞあと300円貸してくれ」
「は、はい! すいません・・・」
「もうツッコまねえぞ俺は・・・」

これで何回目だかわからないぐらい、のどかに謝れている土方に彼女はタバコ代の300円を渡す為鞄から財布を取り出し、中を探って小銭を取り出す。

「ど、どうぞ・・・」
「江戸と対して変わらねえ通貨だな、ありがとよ」
「あと・・・こ、これ助けてもらった・・・お、お礼です!」
「ん?」

土方はのどかから300円もらった後、彼女はまた財布からあるものを取り出した。土方はそれを受け取りしげしげと眺める。

「何だこの紙?」
「えと・・と、図書券です・・・」
「図書券だぁ? 俺は本屋何か行かねえよ 大体コンビニで買うんだよマガジンとか」
「貰っても嬉しくないですか・・?」

少女が長い前髪からチラチラと目を覗かせながら申し訳なさに土方を見る。彼女は何かしら人に助けてもらった時はいつも持参している図書券をお礼に渡すのだが、目の前の人物にはあまり関心の無い物らしかった。

「気持ちだけ受け取っておく、別に礼を貰うほどの事をした覚えはねえよ」
「そんな、でも・・・」
「いらねえんだよ。俺は一応、一般市民を助ける仕事、あくまで仕事でお前を助けただけだ、礼を貰うために助けたわけじゃねーよ、タバコ代もちゃんと返すからな」
「え? 警察官なんですか?」
「いや警察というか・・・そういえばここでは俺仕事無いんだったな・・・とにかくこれはお前に返す、俺は本は読まねえ」

土方はそう言って持っていた図書券をのどかにつき返し、彼女はそれをしゅんとして受け取る。

「でも何かお礼を・・・」
「いらねえっつてんだろ、タバコ代を貸してくれただけで十分だ、もう帰るぞ、家まで送ってやるから」
「そんな、そこまでやってもらうなんて・・・!」

土方が自分を送ってくれると聞き、のどかは激しく首を横に振る。そこまでされたら本当に申し訳ないという気持ちになる。だが土方も女子供を夜中一人で帰すのは忍びない。

「こんな時間なのにテメェみたいな娘っ子を一人帰せるか、行くぞ本はここに置いとけ」
「はい・・・すいません」
「その謝り癖どうにかしろよ・・・」
「すいません・・・年上の男性と喋る機会って、私全然無いんでどう喋ったら・・・」

相変わらず消え入るような声で喋るのどかに土方は呆れた表情で彼女を見る。

「よくそんなんで世渡りできたぜ」
「は、はい・・・すいません・・」
「・・・もういい、行くぞ」

土方はため息をついて、教室のドアを開けようとした時

「ん?」
「・・・急に寒気が来ませんでしたか・・?」
「一瞬、生暖かい物も感じたな・・」

土方にスゥ~と来た寒気、どうやらのどかも感じたらしいが、土方は何か嫌な感じがするな・・、と思い急いで教室のドアを開けようとしたその時。

「すいませ~ん」
「・・・またすいませんか、お前いい加減に・・・ってのわァァァァァ!!!」
「ど、どうしたんですかッ!?」

土方の耳に女の子の声が耳に入り、声の主がのどかだと思い振り返り彼女を見ると、思いっきり叫び声をあげて教室の窓際まで走った。のどかはこの奇行に一瞬何事かと思っていたら、土方が震えるながらのどかを指差す。

「お、お、おいッ! 後ろッ! お前の後ろォォォォォ!!」
「私の後ろがどうかしたんですか・・・?」

のどかは土方の言うとおり後ろを振り向いてみると・・・

「こんばんは~私の事見えますか~?」

足の無い半透明の少女が笑顔でふよふよと宙に浮いていた





「キャァァァァァ!! お化けェェェェェ!!!」
「お、驚かないでくださ~い」
しばしその半透明の少女を見て、われに返ったのどかはやっと悲鳴を上げた。











第十八訓 スタンドはスタンドでしか倒せない

「いきなり驚かせてすいません、まさかもう私も普通の人に見えるぐらい磁気が強くなっているなんて・・・」
「見えるって何が・・・?」
「そもそも磁気が強くなったのはこの学園がある幽霊の巣になっちゃいまして・・・」
「ゆ、ゆ、幽霊ですかッ!?」
「『スタンド』とも言うって先生に聞きましたね、そのスタンドが・・・実は私って自分がスタンドなのにスタンドが苦手で・・・ところでそこから私の声聞こえますか?」

学園の自縛スタンド、相坂さよが教壇の真上でふよふよ浮いて話しているに対し、土方とのどかは一番後ろの机の影に潜めながら頭だけをのぞかせて話を聞いていた。
これにはさよも困惑の表情を浮かべる。

「あのもしかして・・・スタンドとか苦手ですか二人とも・・・?」
「バ、バ、バ、バッキャローッ! 怖いわけねえだろッ! スタンドなんか怖くねえよッ! スタープラチナだろうが、ザ・ワールドだろうが何でもこいよコラッ!」
「じゃあ近くに行って良いですか?」
「いや駄目だ、お前が敵のスタンド使いの遠隔操作型のスタンドという可能性がある、だから近づいたら殺すぞコラッ!」
「そんな~ていうか私もう死んでます~」

机から頭をのぞかせながら土方が、顔から大量の汗を流しながら必死にさよに向かって叫んでいる。このリアクションでわかる通り、彼は異常なほどスタンドを怖がる性質だ。
そんな土方の隣に同じく伏せていたのどかは、恐る恐る頭を出して好奇心でさよに話しかけてみた。何故かはわからないが彼女に恐怖心がわかない、最初はびっくりしたがこうやってみると普通の女の子だと思った。いや足が無い所は置いといて

「あ・・あの・・さよさん・・? でしたっけ・・・?」
「はい! 名前覚えてくれてありがとうございます、のどかさん!」
「あれ・・何で私の名前知っているんですか・・・?」
「私ずっと昔からここの生徒やっているんです、ですからA組の皆さんの顔と名前覚えてますよ」
「ええッ!? そうだったんですかッ!?」

今までずっとこの学校にいたと聞いてのどかは驚きの表情を見せた。

「だからのどかさんが銀八先生を怖いのも知ってます」
「そ、そんなとこまでッ!?」
「確かにあの先生見た目怖そうに見えますけど、本当は優しい人なんですよ? 私の友達にもなってくれましたし」
「と、友達になったんですかッ!? あ、あの人とッ!?」
「はい、時々一緒にUNOやってくれる時があるんです」

あの銀八が目の前の少女と友達だという事にのどかは目を見開いて驚いた。何故ならあの教師はのどかにとって最も怖い生物だ。

ある時は授業中でも生徒に対して平気で手を上げるし

「寝てんじゃねえよ、バカレッド」
「イダッ! 木刀で頭叩くってどういう神経よッ!」
「はい、教師にタテついた~廊下で腕立て、腹筋、スクワット 100回を3セットしてこい」
「何で廊下でそんなことやるのよッ! ていうかしないわよッ!」
「何一人じゃ寂しいから出来ない? 安心しろまき絵が一緒にやってくれるってよ」
「いや私全く関係ないよッ!」

ある時は自分の親友を昆虫呼ばわりするし

「おいこの教室ちゃんと掃除したか~? 一匹でっかいGが棲みついてるぞ~誰かゴキジェット持って来い」
「だから私は冷蔵庫の下によく潜んでいるあのGじゃ無いって何回も言ってるよねッ!?」
「先生、偶然ゴキジェット持ってました」
「千鶴さんんんん!? 何でそんなの携帯してたのよッ!?」
「気が利くじゃねえか、はいプシューッ」
「いや止めてッ! ゴキジェットって人間が食らっても危ないんだからッ! マジ止めてッ! ゲホッ! 口に入っちゃったッ! ゲホゲホッ!」
「ついでにまき絵にも食らっとくか?」
「だから私全く関係無いじゃんッ! グホッ! 鼻からゴキジェットが入ってきたッ!」

別の親友の一人も彼のことを良く思っていない。

「あの人は教師というより人生の反面教師ですね、のどかはああいう人間に近づいちゃ駄目ですよ、近づくと天パになって、目が死んで、やることなすことやる気0になって駄目人間まっしぐらになるのです、それにずっと一緒にいるとまき絵レベルぐらいバカになっちゃいますよ」
「何で例えが私ッ!? ていうか夕映だって私と同じバカじゃんッ!」
「私のバカとあなたのバカは全然違うです」
「いや同じだよッ! 結局同じバカなんだからッ! 同じバカレンジャーじゃんッ! 同じ穴のムジナだよ私と夕映はッ!」
「クーフェイ、まき絵が武天老師の元での修行でパワーアップした力で瞬殺してやるよって挑戦してますけど受けて上げますか?」
「マジアルかッ!? よしその力を見せてみるアルよまき絵ッ!」
「いやいやいやッ! クーフェイもうわかってよッ! 一度その脳みそ調べさせてッ! 私、別に重い甲羅背負ってクリリンと石探しの勝負とかしてないからッ! 全部夕映の嘘だって・・・ギャァァァァァ!!」

とにかくのどかにとって銀八という男は(途中で親友の一人の恐ろしさも思い出してしまった)SS+レベルの危険人物だと思い込んでいたのだが、目の前の半透明の少女はそのアンニョイ教師と友達だと言うではないか。確かに銀八の周りには色々な生徒が慕っているが、まさか・・・

「銀八先生は確かに破天荒な性格ですけど心根は優しい人ですよ」
「へ~そうなんですか・・・」

さよが笑顔をこちらに向けてきたので彼女もぎこちない笑みを浮かべた。心の中ではまだ銀八は危ない猛獣という認識なのでなんとも言えない。
のどかとさよ二人でが普通に喋っているのを見ていた土方も勇気を振り絞ってついに机から立ち上がった。

「おい、スタンド」
「あの私、『スタンド』って名前じゃありませんよ・・・私の名前は相坂さよですよ~・・・」
「んなことどうでもいい、俺はタバコ買いに行きてえんだ、悪いがお前と話しているヒマなんて無え、さっさとお前も帰るなり、成仏するなりしやがれ、ていうかしてくれ頼むから」

額から汗を流しながら平静のフリをする土方、後半からは彼の心からの願いである。
だがさよは表情を暗くして泣きそうにに喋る

「それが今私凄く困っているんですよ・・・最初は銀八先生に頼もうと思ったのに、今日は早帰りだからって先生すぐに帰っちゃったんです・・・だからどうしようと学園内をさまよっていたら、落下するのどかさんを自分の身を挺して守ったあなたを見て、こんな勇敢な人なら私の頼みを聞いてくれるかな~と思いまして・・・」

さよの事情を聞いて土方の表情が強張る、スタンドから頼りにされる事なんて人生で一度も経験がもない、ていうかスタンド自体に初めてあった彼は彼女の頼みというものに嫌な予感を感じる。

「まさかテメーを成仏させろとかじゃねえだろうな?」
「いやそういうのじゃなくて・・・それは半ば諦めてますし・・頼みというのは、実は一週間からここには霊力の強い三体のスタンドが住み着いたんですよ・・・そのせいでこの学園の磁気も上がってきて、ついに今日の夜に私も見えるようになったようなんです・・・まあ、お二人の反応でわかったんですけどね、私が皆さんに見えるのは嬉しいんですけど、その3体のスタンドが何故か私をしつこく追い回してくるんですよ・・・私自縛スタンドだからこっからコンビニぐらいの所までしか行けないんで、怖くて怖くて・・・」
「さ、さよさん以外にも幽霊がいるんですか!」
「おい、幽霊じゃねえスタンドだ、幽霊なんかいるわけねえだろ何間違えてんだコラ」
「ヒッ! す、すいませんッ!」

のどかの言葉に土方が敏感に反応して彼女の胸倉をつかんで、必死の形相で疎める。思わずびっくりして、小さな悲鳴を上げてのどかはすぐに謝った。
のどかの胸倉を掴むのを止めた後、土方は今度はさよのほうに顔を戻した。

「お前の頼みっていうのはようするに俺にそのスタンド3体をなんとかしてくれって事だろ」
「はい・・・ようやくここで先生や友達が出来たのにここから離れたくありません・・・いきなりこんな頼み失礼かもしれませんけど、本当に怖くて・・・」
「可哀想だが別を当たってくれ、俺は霊能力者じゃ無いし、色々と忙しくてなニコチンもキレかけてるし、スタンド退治はその道の担当者にやってもらえ、おら小娘行くぞ」
「え、行っちゃうんですかッ!?」
「そ、そんなぁッ! お願いです助けてくださ~いッ!」

もう半泣き状態の彼女の頼みを聞いても、残念ながら土方の苦手な物はスタンド。まず関わりたくない相手である。土方がのどかの手を引いてさっさと教室から出ようとするのだが、目の前にさよが立ち塞ぐ。

「お願いします~~~~!!」
「し、しつけえな・・・スタンド同士仲良くすればいいじゃねえか」
「無理です~私怖いもの苦手なんですよ~だからスタンドなんて怖くて仲良くなんかできません~~」
「おめえがスタンドだろッ! スタンドの奴等の事情を俺に押し付けるなッ! 邪魔だコラッ!」

さよがいきなり目の前に出てきたのでびびった土方は、必死に彼女を手でシッシと振って追い出しドアを開けて出て行こうとすると、突然土方が空ける前にドアが開いた。

「宮崎さんいますか~? 同じクラスの桜咲刹那です、綾瀬さんに無理やり頼まれて貴方を探しに・・・」

ドアを開けてきた人物はここの学園の生徒と警備の仕事を兼任している桜咲刹那。
彼女は台詞を言い終わる前に目の前の土方と目が合って硬直した。





「誰ですか・・・?」
「おめえこそ誰だ」
「いや私はここの生徒ですけど・・・」
「そういえばこいつと同じ制服だな」
「こいつ・・・? あ! 宮崎さんッ!」
「さ、桜咲さん・・・こんばんは・・・」

目を合わせて刹那が今まで見たこと無い男を見ながら警戒していると、土方の後ろからのどかがひょこっと顔だけ出して刹那に挨拶した。

「こちらの男は宮崎さんのお知り合いですか・・・?」
「は、はい・・今日の夕方、怪我しそうになった所助けてもらって・・・」
「そうなんですか・・・でもこの男見た目かなり怪しいんですけど大丈夫ですか・・・? 腰に刀ぶら下げてますよ・・・」
「でも・・ぎ、銀八先生も背中に刀を差していましたし・・今時の男の人のファッションなのかなと・・・」
「どんなファッションですか・・・」

のどかの解釈に刹那は乾いた声でツッコミを入れ、やれやれと頭を押さえながら首を振った後、再び土方に顔を戻すのだが


「その刀本物ですよね、それに服装も見たこと無い格好だし・・・あなた一体何者・・・ってうわッ!」
「刹那さ~ん見えますよね~ここの生徒の相坂さよです~」

土方の後ろから今度はのどかの反対方向からさよが頭を出して自己挨拶をしてきた。これには刹那もぎょっと驚く

「みなさん助けてください! 私の居場所はここだけなんですよ~刹那さんも協力してくださ~い」
「はいッ!? 宮崎さんこの子は誰ですかッ!? 見た目半透明で足が無いんですけどッ!」

土方の後ろから出てきたさよが刹那や土方を見渡しながら半泣き状態で訴えてくるので、慌てて刹那は土方の後ろにいるのどかに近づいて聞いてみる。刹那とはあまり会話が無いのでのどかはドギマギしながら答える。

「さよさんです・・・えっと幽・・スタンドです・・・今いろんな事が起こってるらしいんで、助けてあげれませんかね・・・?」
「スタンドッ!? この学園にはスタンド何かいたんですかッ!?」

学園にスタンドが出現した事に刹那はどう対処したらいいのかわからなかった。そのスタンドが目の前で宙に浮きながら半泣きしているのだから尚更だ。

「お願いします皆さんッ! 人助け! じゃなくて、スタンド助けしてくださいッ!」
「あの~私だけ話がよくわからないんですけど・・・」
「え、え~と・・・詳しく言いますと・・・」

さよを指差しながら戸惑っている様子の刹那は再びのどかに説明してもらう事にした。












「なるほど大体話しはわかりました、その三体のスタンドがいるからさよさんは怖くて学園内を歩けないんですか・・・」

足を組んで机に座りながら刹那は自分の椅子に座っているのどかに詳しく説明してもらい、さよに確認する、彼女も顔を曇らせながらこくりと頷く。

「はい、だからもうワラにもすがる状況であのお兄さんに・・・あれ? そういえば何処いったんですかあの人?・・・まさか帰っちゃったんですかッ!?」
「タバコ買いに行きました・・ここって学校なのにタバコの自動販売機が一個だけありますから・・・」

何時の間にか土方がいないのに気づいて慌てて質問してくるさよに、のどかは自分のお金でタバコ買いに行ったと報告する。
何故この学校に未成年者は吸えない筈のタバコの販売機があるのか生徒たちにも不思議で、のどかもさよもわからないし刹那も同様知らない。

「あの『松平専用タバコ販売機』とか書いてある自販機ですよね? あれ誰が置いたんですか本当・・・?」
「さあ・・・何時の間にかあったので・・・そもそも松平専用って・・・」

刹那の疑問にのどかは首を傾げて答えられない。タバコ販売機を置いた人物が一体どの様な人物なのかと一同考えていると、ようやく土方がタバコを口にくわえて帰ってきた。
 

「何でとっつぁんの苗字が入っている販売機があるんだよ・・・まあ助かったが・・・」
「お兄さん! 帰ってきてくれたんですね!」
「勘違いすんじゃねえよ、このガキ連れていくだけだ、帰るぞ」
「あ、あの土方さん・・・さよさん・・助けられませんかね・・・?」
「あん?」

タバコをくわえながら寄ってきたさよを手で追い払って、土方はのどかの腕を掴んで帰ろうとするが、彼女は動こうとせず前髪から目を覗かせながら勇気を振り絞ってこのまま帰ることに抗議した。一応彼女は同じクラスメイトだし困っているんだからほっとけないのが彼女の本音なのだが土方はしかめっ面で返す。

「何言ってんだお前・・? スタンドの助け方なんか知るか、俺じゃなくてぬ~べ~先生にでもやってもらえばいいんだよ」 
「で、でも土方さん、一般市民を守る仕事とか言ってませんでした・・・?」
「一般市民とスタンドは別だ」
「うぅ・・・・」

土方に拒否されてせっかく勇気を出したのに撃沈されたのどかはがっくりうな垂れる。そんな二人の光景を見ていた刹那が土方に近づく、彼女の場合はさよの事ではなく土方自身の事だ

「土方さん? ですよね? 失礼ですが何処からここに?」
「何処からって江戸に決まってんだろ」
「江戸・・・? 何百年前の話ですか・・・?」
「ん? もしかしてここ江戸がねえのか?」
「あるわけないでしょ、江戸といったらずっと昔に終わって、しかもそんな見たことない服装で・・・まさか白夜叉やあいつと同じ所から・・・」

刹那が何かに勘付いて土方に追及しようと思ったのだが今度はさよが半べそで土方にまとわりつく。

「お兄さん帰っちゃ駄目ですよ~~~」
「おいィィィ!! 近づくんじゃねえェェェェ!! 離れろォォォ!! スナックのママかお前はッ!」
「もう慣れてくださいよ私のこと~~」

さよにツッコまれるも、彼女が目と鼻の先まで近づいてきているので、土方は顔から尋常じゃないほど汗をたらしていた。ついに土方はのどかの腕をぐいっと引っ張って無理やり立たして帰ろうとする。

「帰るぞ小娘ッ! スタンドはもうたくさんだッ!」
「え、え、でもそんな・・・!」
「待ってください~~~! 見捨てないで~~~~!」
「土方さんッ! ちょっと聞きたいことがッ!」

さよと刹那に話しかけられても無視してのどかを引っ張りながら教室を出ようとドアを開けようとする。だが・・・

「あれ? 開かねえぞ・・・?」
「え?」
「おいスタンド娘ッ! 何しやがったッ!」
「いや私は何も・・・まさかッ!」
「土方さんッ! あれをッ!」

ドアが開かない、まるで向こう側に誰かが開けないよう力を入れているみたいに。土方はさよが何かしたんじゃないかと思ったのがさよでは無いらしい。
その時黒板から半透明の物体が出てきたので刹那が土方たちに叫ぶ、さよと同じ半透明・・・土方が何が来たのか予想出来た。

「なるほど・・・これはあのスタンドの仕業か・・・」
「フッフッフ、そうだ・・・そのスタンドの助っ人らしいからどんな奴かと思ったが、ただのスタンドびびりの臆病者だったなッ!」
「・・・なんつったテメェ・・・?」」

挑発された土方はドアから手を引いて腰に差す刀に手をかけ、瞳孔を開いて目の前の浮遊物体に近づく。そんな逆鱗に触れられた状態の土方を見て思わずのどかは身を縮ませる。

「おいスタンド娘とガキ共後ろに下がってろ、このクソスタンドを斬る」
「き、き、斬るんですか・・・!?」
「お、お兄さん!? 別に私斬ってくれとは言ってませんよ!」
「うるせえよ・・別に斬ろうが斬らないだろうが俺の勝手だろうが・・・!」
「「ヒィッ!」」

刀を鞘ごと抜いて戦闘体制に入って完全にキレている土方に、のどかとさよは寄り添って二人で同じ悲鳴を上げる。のどかとさよは机の奥に身を潜めて隠れる。だがもう一人は違った。

「何でお前は隠れずに俺の隣に立ってんだよ?」
「一応私はここの警備員ですしね、目の前の物体はどうもよからぬ事を考えていそうなので成敗するんですよ」
 
土方は隣に立つ刹那に違和感を感じながら、タバコに火を点けて煙を吐く。

「お前みたいなガキが警備員・・・? 世も末だなここは」
「ガキでも腕は確かですよ、こう見えても神鳴流の剣士ですから」
「剣士ぃ? どこに剣持ってんだよ?」
「今はちょっと人に預けてまして・・・でも体術は少々出来ますから」

申し訳なさそうに頭を掻いて刀は今は持ってないと言う刹那、だがそれなりに刀が無くても戦えるらしい。

「好きにしろ、だが言っとくがこいつを狩るのは俺だわかったか?」
「別に良いですが、その代わりこれが終わったら少しお話してくれませんか? ・・・貴方の世界の話を」
「なッ!!」
「その反応からしてやはり別世界の江戸の住人のようですね」
「テメェそれを何処で・・・」

口元が笑っている刹那が言った事に思わずくわえていたタバコを落とすほど土方は驚く。何で知っているのか刹那に追求しようとしたのだが、目の前で浮いていたスタンドがぼんやりと実体化したのでそちらに注目する。

「テメェがあのスタンド娘を追い回しているスタンドか」
「いかにも・・我は・・・織田信長ぞッ!」
「信長・・・何言ってんだこいつ・・・」
「まさか・・・そんな人がここに・・・」

スタンドは実体化した。独特な髭を生やし髷を結んでいる男・・・教科書や肖像画で見たあの第六天魔王と言われた織田信長だと土方と刹那は驚いた。だがもっと驚いたことがあった。信長が完全に実体化した時だ。





スタンドだが同じスタンドのさよとは違い足がある、いやそんなのは特に気にすることではなく、一番驚いたのは真っ白なブリーフ

「いや何でブリーフ一丁なんだよォォォォォォ!!」

土方はそのままツッコむ。信長は裸でブリーフ一丁という何ともなんとも開放感のある格好だった。刹那は直視できずに顔を赤めて目を逸らした。後ろから目を覆っているさよが必死に土方に叫ぶ。

「ほらッ! 土方さんその人ですッ! そんな格好で私に向かって走ってくるんですよッ! 私を追い回すだけでは飽き足らず、自分の裸体を見せつけるという嫌がらせしてくるんですよッ!」
「はぁ? 何言ってんの? 俺これが普通だからね、別に見せようとは思ってないし」
「おい信長なんか現代風喋りになってるよ、最初の口調は何処言ったんだよ」

いきなり現代風の喋りになりさよと喋るブリーフ一丁の信長、土方は唖然とする。だがふと気づいたことがあった。さよは相手スタンドは三体いると言っていた

「おい信長」
「あん? 何いきなり呼び捨てにしてんの? ぶっ飛ばすよ?」
「お前の仲間あと二人いるのか?」

土方に呼び捨てにされたのでガンつける信長。土方の質問に自分の髷を引っ張りながら表情を曇らせた。

「まあいるっちゃいるけどさぁあまり仲良くないんだよね、何かこう色々と事情があって、何かさぁ俺たちって成仏したと思ったら気がついたらこんな所にいて、だからしょうがなく一緒にツルんでんだよ」
「あの本当に信長・・・? くだけすぎだろ・・・で誰だ?」
「サルと光秀って奴」
「・・・あのそれってもしかして・・・あなたみたいに・・・」

信長の仲間に土方と刹那は嫌な予感がする。そして案の定。教室前の方のドアから一人のスタンドが開けて入ってきた。

知将、明智光秀。だが今彼の姿はブリーフ一丁でそして何故かピッチピチのブリーフだ。

「信長さん、もうドアを手でおさえるの疲れるんで止めます」
「バカおめぇそういう事言うなよ? 何かこう・・霊的な力で出られないようにしていると思わせたかったのによ~」
「光秀出たァァァァ!! あれお前らが手でおさえてただけだったのかよッ!!」 
「よく光秀ってわかりましたね土方さん・・・」
「ブリーフピッチピチじゃん、サルは絶対あんなん履かねえよ」

光秀と信長がドアの近くで軽い口論しているのを見ながら、相変わらず目を信長たちに合わせられない刹那と土方が話しているとき、後ろからドアが開く音と甲高い悲鳴が響いた。

「キャァァァァァァ!!!」
「どうした小娘ッ!」
「宮崎さんどうかしたんですかッ!?」
「変態ィィィィィィィィ!!!」
「ちょ、待って誤解っスよ変態じゃありませんって、俺健全な天下人ですから」
「秀吉かァァァァ!! 間違いねえよッ! ブリーフズルズルだし、自分で天下とったって言ってるよッ! ていうかケツにウン筋が出来てるしッ!」

教室の光秀が空けたドアの反対からかつての天下人でありサルこと豊臣秀吉が入場してきた。いきなり目の前に出てきて、しかもズルズルブリーフのオッサンだケツにウン筋が出来ているという事は余程ウ○コを拭いていないのだろうか・・・。のどかと目をおさえていたさよは悲鳴を上げて土方のほうに逃げて彼の後ろに隠れる。

「ひ、土方さん・・・すいません何とかしてください・・・!」
「あの人たち本当にどうにかしてくださ~い!」
「テメェ等何俺の後ろに隠れてんだッ! 今あいつ等ドアおさえてねえんだから今のうち逃げろよッ!」
「悪いけどそのスタンドをこっから出す気無いんでウチ等」
「あ・・・?」

信長の言葉に土方は目を細めて睨みつけるが信長は無表情で答える

「その娘ってさすぐ俺等から逃げちゃうからさ、もう一か八か今日はこうするしかなかったんだよね」
「お前等こいつを捕まえて何か目的あるのか・・・?」
「あるに決まってんだろ、おい、お前らこっち来い」

信長は手を振って光秀と秀吉を呼ぶが二人とも不満げだ。

「命令しないでくださいよ、俺は殿を倒した男っスよ」
「俺なんかその殿を倒した光秀殿を倒し更に天下を取った男ですよ」
「ああ? テメエ等結局は俺の部下じゃん? 何そういう態度? お前ら裏切り者と俺の領土を奪った奴っていう称号だけだからね?」
「うるせえよお前等ッ! 喧嘩してないでこっち来やがれッ!」

いきなり三人でメンチの切り合いを始めたので土方が叫んでこっちに呼ばせる。それに渋々従うブリーフ3

「で? お前らの目的は何だ?」
「俺たちはね、その娘に大事なものを盗まれてんだよ」
「盗まれた? おいスタンド娘、何奪ったんだ?」
「いやいやッ! 何も盗んでませ~ん!」
「いやあんたは大事なものを盗んでいきました」

土方の後ろに顔を恐る恐る覗かしているさよを激しく睨む信長とその後ろの光秀と秀吉のブリーフ。3そして・・・

「「「心奪われましたッ! 結婚を前提にお付き合してくださいッ!!」」」





いきなり土下座して変な事口走ったブリーフ3に土方、のどか、刹那、さよの脳が何秒か思考停止した。



















「要するにお前らこいつに惚れたから追い回していたのか・・・?」
「だってさぁ、前いた場所と全然違ぇんだもん、こんな可愛い子見たことないんだけど?」
「まるで別世界の女の子って感じですよね」
「そうそう世界が違うね、何か二次元萌え的な? だから一発で落ちたんすよ俺等」

信長、光秀、秀吉の順に答える。
結論から言うと、このブリーフ3はさよに一目みて惚れてしまい、だからお付き合いを申し立てようと三人で追いかけていたらしい。三人はなだれこんで土方の後ろのさよに詰め寄る

「あの俺って大阪城って所住んでるんで良かったら来ない?」
「何言ってんだサル、テメェなんかその辺のチンパンジーと一緒に上野動物園にでも行けや」
「そう言ってるアンタが一番駄目っすよね~性格短気って一番女性にとって最悪なんすよ?」
「あ~確かに短気ですよね、だから俺、裏切ったんですもん
「は~? うるせえよサルと裏切り者が やんの? いいよ別に、後で厠来いや」

信長は拳を鳴らして、光秀と秀吉に詰め寄る。お互い再び睨みあう。

「別にここで良いでしょ、ここの方が彼女に良い格好見せられるし」
「光秀殿、彼女って何? まさかあの少女に言ってんの? 言っとくけどあれあんたの彼女じゃないから俺だから」
「何妄想してんの? お前らマジ引くわ~人の彼女で変なこと考えてんじゃねえよ?」

三人であーだこーだと喋っているのを見て土方は背中のさよに話しかける

「どうすんだよコレ・・・」
「どうしましょうか・・・あの私・・・無理なんですけどあの三人とは・・・」
「聞かなくてもわかるっつーの」

土方がこの三人をどう始末するか考えていると、突然のどかの携帯の着信音が鳴る。その音は・・・

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「な、何ですかッ!?」
「その着音止めてぇぇぇぇ!!」
「え・・・?」

のどかの着信音が鳴った瞬間、断末魔の悲鳴を上げるブリーフ3。体が少しづつ削られるように縮むブリーフ3。のどかの携帯の着信音は何かと土方が慌ててのどかの携帯を奪って四人で見ると

『千の○になって』


「これが・・・? これ聴いた瞬間あいつ等消えていくぞ」
「え~とつまりレクイエム的なものになるんですかねこれ・・・」
「あ、あの・・・私のけ、携帯・・・返して欲しいんですけど・・・夕映からですきっと心配して・・・連絡しないと・・・」

土方はのどかを無視して携帯をブリーフ3に近づけて、三人を成仏させようと奮起する。

「おらぁぁぁぁぁ!! 死ねぇぇぇぇぇ!!!」
「「「ウガァァァァァァ!!!」」」

体が砂のように消えていく三人に土方は止めをさせると確信する。だが着メロだからなのか効果が弱い。更に5分ぐらいかかったころ

『携帯を充電してください』

携帯から突然出てきた女性の声。つまり電池が切れたのだ・・・

「チクショォォォォォォ!! 使えねえェェェェ!!!」
「すいません・・・あとお願いします・・・携帯返してください・・・」

のどかが恐喝にあった人みたいに携帯を返してほしいと言ってくるので土方はのどかに投げて返す。

「おいッ! そこのガキはこの曲入っている携帯持ってねえのかッ!」
「フ・・携帯自体持ってません、あってもかける相手がお嬢様ぐらいしかいません」
「何で誇らしげッ!? 今時みんな持ってるんだよ普通ッ! あと友達作れッ!」
「そういう貴方は持っているんですか?」
「タバコとマヨネーズならあるぞ」
「それじゃあ何のハーモニーも生まれませんって・・・何でマヨ持ってるんですか・・?」

土方と刹那がWボケ、Wツッコミをやっている頃、ついにブリーフ3が復活した。

「ハァハァ・・ちょっと走馬灯が見えた・・・本能寺で焼かれてたんだけど・・・」
「俺なんか落ち武者狩りに追われてました」
「俺は自分の天下を奪う奴に自分の子供託してましたね」

それぞれの心境を語りながら立ち上がってくるブリーフ3に土方は焦りの色を出す。

(ヤベェ・・・よくよく考えればスタンド相手に刀なんか当たらねえし・・・どうすれば・・・)
「私に任せてくださいッ!」
「スタンド娘ッ!? つーか何でお前はこの歌効いてねんだ?」


焦っている土方にさよは自ら名乗り出てきた。同じスタンドなのに何故彼女は効かなかったのだろうか・・・

「その歌は歌詞フルで覚えているんですよ私」
「なんで覚えてんだよッ! 一番覚えたらマズイお前がッ!」
「前にある先生に「お前がこれ聴いたら天にも昇れるぐらい良い歌だから毎晩聴いとけ」って言われたので夜中はラジカセで聴いているんです」
「お前明らかそれヤベェよッ! その教師からさっさと成仏しろというメッセージが込められてるよッ!」 
「毎晩聞いてると昔の記憶が蘇りそうなんですよ」
「走馬灯ぅぅぅぅ!! それ走馬灯ぅぅぅぅ!!!」

さよが毎晩デンジャラスな道を歩いていることに土方が危機感を持っているのにもかかわらずさよは話を進める。

「でもずっと聞いていると歌詞は覚えたんですが、代わりに段々昔の記憶が蘇らなくなりました」
「克服したのだかよッ! レクイエム克服してるよコイツッ!」
「という事で歌詞覚えているので誰か代わりに歌ってくれません? 私恥ずかしいので・・・」

さよが周りを見渡す、だが誰も目を合わせない。そりゃあこんな所で歌えと言われても恥かしくて出来る訳無い。

「おい小娘、お前歌ってやれ少しは自分を前に出す努力しろ、着メロにしてるんだから曲調わかるだろ?」
「む、無理ですッ! 私人前に出るのなんて出来ませんッ!」
「じゃあそこのガキがやれ、お前何もしてねえだろ」
「いや歌とかそういうのする機会無いので・・・土方さんがやって下さいよ」
「ふざけんな、そういうキャラじゃねえんだよ」

三人で誰が歌うか揉めている頃、さよは必死に復活したブリーフ3に追い回されていた。

「すいませんッ! まず名前教えてくれないッ!? 友達から始めようッ!」
「殿、俺が最初に言おうと思ったこと言わないでくださいよッ! じゃあ俺はお付き合いから始めますッ!」
「何言っているんすかアンタ等ッ! 俺の嫁として大阪城に来て、俺のパンツ洗ってくださいッ!」
「イヤです~~~!! 特に最後の人が~~~!! お兄さん達早く決めてくださ~い!」

追って来る変態たちにさよは泣きながら飛んで嫌がりながら逃げる、特に秀吉に対しては全力で拒否。

「アレだと捕まっちまうな、よしジャンケンで決めるぞ」
「ええッ! ジャンケンですかッ!?」
「恨みっこなしですからね」
「じゃあジャンケン・・・」

さよが捕まりそうになっている中、土方はジャンケンを提案。のどかは抵抗を感じるが刹那は潔く承諾する。そして

土方 グー
のどか グー
刹那 チョキ





「あの~もう一回やりません・・・私本当に歌ったこと無いんですよ・・・」
「ふざけんなお前が負けたんだから行け」
「勝てて良かった・・」

結果、刹那の一発一人負け。刹那は自分のチョキを眺めながらワナワナと震える。

「無理ですよッ! 本当に無理ですッ! デープスペクターのダジャレが受けるぐらい無理ですッ!」
「大丈夫だってお前ならテリー伊藤並に面白いこと言えるから」
「いや別に面白いことを言うんじゃないんですよね・・・」

刹那と土方にのどかは小さな声で正論を言った。

「お兄さん~決まりましたか~!? もう私疲れました~~!!」
「おい小娘、ペンとノート持ってるだろあれスタンド娘に向かって投げろ、カンペ作ってもらう。ていうかあいつが歌えばいいだろ・・・歌詞知ってるんだから・・・」
「そうですよね・・・」
「スタンド娘、今から紙とペン投げるから受け取れ! あと歌うのこいつだから」
「マジで歌うんですかッ!? あ~もうッ!・・・歌えばいいんでしょッ! 歌えばッ!」

のどかが鞄から紙とペンを出してそれを空中に放り投げて、さよがブリーフ3から逃げながらそれを空中で掴む。そしてついに刹那はヤケクソになってしまったのであった。





















という事で刹那は空中で逃げながらカンペを作るさよを見ながら歌ったのだが。何故歌うシーンが無いのかという著作権的な問題だと解釈してほしい。
そして刹那の『千の○になって』を聞いたブリーフ3は

「ぐぼぉ!!」
「たわばッ!!」
「だっかるびッ!!!」

一応消えていくのだが何故か痛みを感じるようにのたうち回っていた。

「グボファッ! すっげ~下手なんだけどあの子・・・」
「ドホォッ! 音程合ってねえとかそういうレベルじゃないっすよ・・・」
「バガスッ! ああ俺もう無理です・・・」

刹那の歌は尋常じゃないほどアレで、歌を経験が無いとは言え異常なほどアレだった。余談だが土方やのどかも机の下で耳をおさえながらうずくまっている。さよも何か辛そうだ。
そしてこの破壊音を聞いた光秀、秀吉、信長はやばい状態に陥り、吐血と流血を繰り返し、光秀に関してはもう消えかかっていた。

「光秀殿しっかりッ! 希望を持つんだッ!」
「止めて止めてッ! ここで優しい言葉かけないでッ! 消える消えるッ! 地獄のソングの中で優しい言葉かけられたら消えるんだけどッ!?」

秀吉に抱きかけられて既に消えかけの光秀には優しい言葉は成仏させる止めの一撃になってしまう。それに気づいた土方がもうそろそろ頃合だと思い、机から出てきて刹那に歌を止めるよう指示。

「おいガキもう止めろ、奴等に止めをさすやりかたがわかった」
「♪~~~~~!!」
「もう止めろッ! 何で楽しげに歌ってんのお前ッ!」

何故か楽しげに歌う刹那に、土方は後ろから後頭部に跳び蹴りをする。

「いや、歌う前って歌いたくなかったんですけど、歌ってみたらテンション上がっちゃって」
「お前自分の歌唱力わかって言ってるのかッ!? 周囲一体が地獄と化してたぞッ!」

土方は少し照れてる刹那にツッコンだ後、さよを自分のほうに手招きした。

「よしスタンド娘、あいつ等に優しい言葉をかけてこい」
「え・・・何でですか・・・?」
「あいつ等の弱点だ、こいつの死の鎮魂歌を聞いた後なら奴は惚れてるお前に優しいこと言われたら一発で成仏する」
「でもどういう言葉をかければ・・・」

土方の提案にさよは困惑する。今まで男と会話した相手は銀八と目の前の土方のみ。そんな男性経験ほぼ0彼女に、男に対する優しい言葉など知らないのだ。だがここで思いもよらぬ所から助け舟が出てきた。

「あの・・・ひ、土方さん・・・この本参考になりますかね・・・ハルナに無理やり渡された奴なんですけど・・・」
「それってお前が持ってた来た本か・・・おいここから引用して奴等に使ってみろ」
「この本からですか・・・? え~とやってみます」

さよはのどかからぶ厚い本を受け取り恐る恐る、死にかけブリーフ3に近づいていく。

「大丈夫でしょうかね?」
「まあ古来スタンドはスタンドでしか倒せないとかそういうルールあったし、止めを刺せる奴はアイツしかいねえよ」
「所で宮崎さん、何の本渡したんですか・・・?」
「え、えと・・・『男を落とす一万の言葉と男を振る二万の言葉』って奴です・・・」
「何でそんなに言葉あるんですか・・・? ていうか振るほうが一万多い理由もわからないんですけど・・・?」

多大な不安感を持ちつつ三人はさよの背中を見ながら見守った。
彼女は光秀に近づいて、そして

「あの・・・来世で私達会えると良いですね・・・」





「生まれ変わってもずっとラブフォーエバー・・・」
「光秀殿ォォォォォォ!!」

最後に彼なりの口説き文句を言った後、光秀は天へと昇った。ついでにさよが言った言葉は『もしナンパされたらやんわりと拒否る技』から彼女なりのアレンジ

「クソォォォォォ!! 光秀殿ォォォォ!! 羨ましいィィィィィ!!!」
「あの・・・秀吉さん・・・」
「は、はい何でござりましょうかッ!」

再び土方に言われたとおりに妙に口調が丁寧になった秀吉に近づくさよ。

「あの・・・来世でおサル動物園で会ったら餌あげに行きます・・・」





「俺って来世もサルって呼ばれるんだね・・・」
「サルゥゥゥゥゥゥ!!!」

何故か秀吉も光秀同様昇天する。ついでにさよが言った言葉は『相手を人間以下と見下してどん底に突き落とすドSにふる技』から彼女なりのアレンジ
最後の仲間を失った信長は絶叫する。

「残るはこいつだけか・・・もう消えかけてるなこいつ・・・」

土方の言うとおり彼の下半身は消滅してすでに虫の息だった

「放置しとけばそのうち消えるんじゃね?」
「待ってッ! 放置プレイは好きだけどここは一言何かちょうだいッ!」
「しょうがねえな、何か言ってやれテメェに任せる」
「は、はい!」

さよは信長に近づいた。何だかんだで彼等は自分のことを好きになってくれた人たちだ。最後は本当のことを言おうと思いさよは笑顔になり口を開いた。

「来世では友達になってくださいね!」
「・・・今じゃ駄目・・・?」
「・・・私スタンドは苦手なんですよ・・・」





「君もスタンドじゃん・・・」
「あ、消えましたよ」
「最後にツッコンで消えましたね・・・」

最後に彼女に最もなツッコミを入れて信長は笑顔で天へと帰っていった・・・

「終わりました~・・・私もう疲れました~・・・」
「そういえばさよさん来世に~って言葉使ってましたけど、さよさんって成仏するんですか・・・?」
「成仏のしかた知らないのでなんとも言えません・・・」
「そうなんですか・・・」

さよは信長を見送った後、ヘナヘナとその場に仰向けに倒れる。刹那と会話を始めた。
土方はタバコを取り出しやっと終わったと教室の窓辺に座って、火をつけて一服する。

「ここに来て早々厄介なことに巻き込まれたぜ・・・」
「すいません・・・」
「ここでお前が謝る事なんかねんだよ・・・その癖改善しとけよ」
「でも元はといえば私が階段から落ちてそれを土方さんが助けて土方さんの友達が死んじゃって、それでお礼をするためにここに呼んじゃって・・・そこでさよさんと出会って・・・」
「遠すぎんだよ・・・別に厄介ごとに巻き込まれたからって嫌じゃねえよ、元々慣れっこだしな」
「そうなんですか・・・?」

隣に座ったのどかは土方と一緒におもむろに窓の外を眺めた。すっかり真夜中

「もう結構な時間だな・・・帰りお前送らねえといけねえの忘れてたわ」
「・・・何でですか?」
「あん?」
「何であんなに必死になって私やさよさんを助けてあげたんですか・・・?」

前髪から目を出しのどかはタバコを持っている土方に質問する。彼はタバコをくわえてケムリを吐いてゆっくりと口を開いた。

「俺がお前を助けたのも偶然だしスタンド娘も成り行きだ、人を助けるのに理由は二の次、助けようと思ったら何も考えずがむしゃらに救う、それが俺の武士道だ」

土方が言った言葉にのどかはしばし考えていた。
人を助けるのに理由なんかいらない、助けようという意思があるのならそんなこと考える前に手を差し伸べろ。

(私にはそんな凄い事出来るのかな・・・)

しばし彼女は考え事しながらタバコをくわえている彼の横顔を見ていた。そしたら急に彼はこちらに振り向いた。

「何見てんだ」
「え? あ! す、すいません・・・!」
「タバコに興味あんのなら吸ってみっか?」
「はい!? わ、私未成年ですよ!」
「バッカお前、今時のガキはタバコの一本や二本普通に吸ったことあるんだよ、女子は知らねえけど、一本やるからくわえてみろ」
「ちょっと待・・・! むぐ!」

勘違いされ無理やり土方に箱から取り出した新しいタバコを口につっこまされるのどか。かすかに匂うタバコの葉っぱに彼女は大人の匂いだと感じる。そのまま土方は持っていたマヨ形のライターで火を点けた

「吸ってみろよ」
「あ、はい・・・・・・・・・」
「どうだ?」
「・・・・・・ゲホッ! ゲホッ!」

生まれて初めて吸ったタバコに思いっきりむせた。予想通りの彼女の反応に土方は悪戯が成功した子供のように笑った。

「時機に慣れるんじゃねえか」
「ゲホッゲホッ! 慣れたくありませんよッ! うう・・・私14歳でタバコ吸っちゃうなんて、不良です・・・って私まだくわえてる・・・! か、返します!」

初めて吸ったわりにはタバコをくわえて器用にのどかは喋る。そしてまだくわえていることに気づいて慌てて土方につき返した。

「口の中にケムリがまだ残ってます・・・」
「そうやって大人になっていくんだよ」
「土方さん、宮崎さん、さよさんがもうすぐ見えなくなるそうなのでお別れの挨拶とか・・・宮崎さん元気ないですけど何かあったんですか・・・?」
「初めてニコチンを摂取したせいで体がおかしくなったんじゃねえか?」
「・・・大丈夫です・・・」

刹那が土方と元気の無いのどかを呼んできた。土方は彼女がくわえていたタバコの火を消してゴミ箱に捨てた後、タバコのせいで頭がクラクラしているのどかと一緒に、嬉しそうに笑っているスタンドの方にに向かって歩いていった。


















「夕映~もうこんな時間なんだけど・・・本当に大丈夫・・・? 真夜中だよ真夜中・・・警察読んだほうが良いんじゃない?」
「刹那さんを当てにしたのが失敗かもしれませんでしたね、まさか携帯にも出れないとは・・・警察呼ぶと何かとめんどくさそうなのであの人に任せればいいでしょう?」
「あの人って・・・銀八先生・・・?」
「あの人の手を借りるのは癪ですけど、万事屋とか如何わしい事やってるんだし人探しぐらいなら出来るでしょうあの人でも。ハルナ、すぐにあの人の連絡先に」
「夕映がするんじゃないの普通・・・?」
「あの人と喋りたくないので」
「・・・・あ、そう・・・そういえば私たちも探しに行かない?」
「そうですね、心配ですし。学園内をさまよっていたあのニコ中に変なことされてなければいいんですけどね」

彼を巻き込む騒動はまだ終わらない。






















教えて真撰組のみなさんのコーナー

「どうも、また来ました真撰組副長の沖田総悟です、今回はいつものガキ臭い教室じゃなくて。このせまっ苦しい豚小屋のような家で送っていこうと思います」
「ぶ、豚小屋ッ!? 私の家が豚小屋ってふざけるなァァァァ!!」
「そうだ、その豚小屋に俺も住んでるんだぞコラッ!」
「お前も豚小屋って言うなァァァァ!!」

色々都合があり、いつものA組の教室ではなく、今回は場所を変えてエヴァの家にてコーナーを始める沖田は、始まって早々自分が来ている家に毒を言い家の主を怒らせていた。
ついでに今いるのは、リビングの中央に立つ沖田、ソファに座っているエヴァと銀八、そして近藤がいるのだが彼は家の隅っこに座りがっくりうな垂れている

「どうしたゴリラ、また何か読者に言われたのか?」
「その通りだ万事屋・・・俺は何でこんなに叩かれるんだ・・・一体何が悪いのかわからない・・・やっぱアレか二枚目じゃないから叩かれるのか・・」
「おい銀時何だこのゴリラ、こんなの家に入れるな家が臭くなりそうな気がする」
「ほらほら、初対面の女の子にも叩かれてるよ俺・・・ハハ・・」
「あ~これは重症ですね」

いつもの彼なら初対面のエヴァにでも怒ってお決まりのツッコミをするはずなのに、かなりローテンションで隅っこに座ったまんま落ち込んでいる。

「まあ近藤さんはそっとしておきましょう、出るたびに叩かれるんですからね、話を変えて今回は土方編の二話目、色々とキャラが出てきているようですが、旦那の出番は回想シーンのみ、旦那の連れも出てないし、どうですかこの心境?」
「ムカつくね、何ですか? アレですか? 土方君は教室で何グダグダやってんですか? 今回の話はね今まで一番長い話なんだよ? 今までの最長は8話の27ページ、今回はそれを越える35ページだよ? それなのにあいつは教室から一歩も外出てないよ? ずっとちんたら何やってんだあのバカ? まあ次でやっと俺出るから良いけどさ? 俺が主役というのをどんなもんか教えてやるね」
「非常に憎しみの入ったメッセージありがとうございます」

頭に血管を浮かばせて言葉を震わせながらながら銀八は沖田のインタビューに答えた。

「じゃあ次は最近やっと大きい金髪の方の人気に追いついて来てんじゃないかな~と思われている小さい金髪の方に質問を」
「何だその言い草ッ!? あと名前で呼べ名前でッ!」
「出番がロクに無いヒロインですけどこのままで良いんですか、エヴァンゲリオン?」
「名前間違えるなッ! せめてエヴァで止めろッ! あと質問が腹立つッ! ちょいちょい出てるだろうが私はッ!」
「『序』は面白かったけど『破』は成功するのかな? エヴァンゲリオン?」
「私の質問じゃないだろうがァァァァァ!! 思いっきりエヴァンゲリオンの話になってるだろうがッ! そんなもんシンジ君にでも聞けェェェェェ!!」

沖田にすっかり遊ばれているエヴァはもう手を出しそうだったが銀八が間に割って出た。

「その辺にしとけよ、確かにこいつはチビだし、生意気だし、空気読まないし、人の菓子勝手に食うし、ゲームで負けるとキレるし、人のジャンプにジュースこぼしても謝らないし、家賃払えってうるさいし、風呂入ってたら一緒に入ろうとするし、あとは~」
「言いすぎだァァァァァァ!!!」
「うぼッ!」

銀八が指を折りながらエヴァの事をもくもくと暴露するのでついにエヴァが銀八の腹を殴る。

「痛えなッ! 本当のこと言っただけじゃねえかッ!」
「お前だって、性格悪いし、人の菓子を勝手に食うし、ゲームで負けるとふてくされるし、人の頭にジュースこぼしても謝らないし、家賃払わないし、せっかく一緒に風呂に入ろうとしても私をポイって投げて追い出すではないかッ!」

腹をおさえている銀八とエヴァは真撰組そっちのけで口喧嘩を始めた。

「最後は当たり前だろうがッ! お前みたいなチビと一緒に入っても全然嬉しくねえよッ!」
「チビって言うなッ!」
「うっさいチビッ!」
「旦那、痴話喧嘩してる所悪いですがもう終わるんで俺達帰りますね、近藤さん帰りましょうや」

喧嘩をおっ始めた二人に挨拶して近藤を連れて帰ろうとした、だが近藤は隅っこの方で立ち上がり、こちらを向いて微笑んでいる。

「どうしたんですか近藤さん?」
「総悟、俺は一つの結論が出せた、俺が人気の無い理由・・・それはッ!」

近藤が腕を組んで小さな脳みそが入っている頭をおさえながら考え、顔をあげる。

「ウ○コネタはマズかったッ!」
「気づくの遅いですよ」

近藤の結論に一瞬で沖田はツッコミを入れた。










「次回 第十九訓『頼れる年上は憧れる』これで土方編もラストだ、やっと終わったよ~もう主役がこんだけ出番無いなんてどんだけだよ~? そして生徒来てないんだけど~?」
「旦那、今回の話で出てるんでこのコーナー出れません」
「おいじゃあこのコーナー完全に成立しねえじゃねえか」
「ここはヒントを言いましょうやガンダム00の主人公と同じ名前」
「まあ知ってる奴と知らない奴に綺麗に別れそうだな」
「銀時ィィィィィ!! まだ話は終わってないぞッ! 私と雪広あやかどっちが大事なんだッ!?」
「いつそんな話になったんだよッ! そんなの知るかッ!」
「総悟ォォォォォ!! 俺と新八君ってどっちが人気低いのッ!?」
「ああ、両方ともどん底ですよ」











沖田のそこんとこ詳しくのコーナー

沖田「じゃあ始めますよろしく、今回は旦那ですか」
銀八「はいはい、俺とことん出なきゃこの作品マズイからね」
沖田「必死ですね旦那」
銀八「・・・・・・・」

沖田「一通目『土方さんはのどかを助けて下敷きになっていましたが「うほwやわらかいな~wドジっ娘萌え~~~やべ・・・我慢できない!!(以下、規制のため省略)」って思ってたんじゃないですか? あと銀さん・・・・俺を散々殴ったのは、実は俺にあやかとエヴァを取られると思ったからなんですよね?』が送られてきました、そうですか土方はの野郎は随分と変態になっている様子ですね」
銀八「変態だね、もう絶対思ってるよあいつだから、俺はこんな事考えてないからね、もう一回殺すぞ」
沖田「でも実際旦那ってどっちを本格的に調教するんですか?」
銀八「お前と一緒にすんなや、俺はマヨと違って健全な大人だから、俺は両方ともそういう関係じゃない」
沖田「まさかのメガネのガキの方とか?」
銀八「誰かゴルゴ呼んでこい、コイツ撃って貰う」

沖田「二通目『このSSでも終わり方がいまいち見えません、どこまで正当ルートやるんですか?』
え~ズバリ言いますとね、この作品は現在の過程では修学旅行編で終了です、まあ大まかな考えですけどね、もしかしたら学園祭編いくんじゃね? っていうノリもありますが

銀八「俺は嫌だね」」
沖田「何でです?」
銀八「俺、文化祭とか学園祭とかそういうの嫌いだから俺的にはやりたくねえ、だからこの作品は修学旅行編までなんだ」
沖田「あ、それだけなんですか」

沖田「三通目『銀さんとこの前しずな先生と二人で(以下規制)』です。旦那~どんだけあっちの女に手を出す気なんですか?」
銀八「そんな事実全くありません、何処で見かけたのかこっちが知りてえよ、しずな先生とはそういう関係ではありません、なりたいけどね」
沖田「さらりと言いましたね」
銀八「だからよ~あの辺が俺的にはベストなんだよ~わかる? 年と胸が俺のストライクゾーンに入ってんだよ」
沖田「今の言葉テープレコーダーで録音したんで旦那の連れに聞かせてやってもいいですかぃ?」
銀八「・・・何が望みかな総悟君・・・」
沖田「質問コーナーの延長でもお願いしますかね」
銀八「何で?」
沖田「また調教依頼来てるかもしれないんでね」
銀八「本当に止めてくんないッ!」

沖田「『甘味の味は江戸と麻帆良では違いますか?』です。旦那よろしく」
銀八「大体こういうのは俺しか答えられないしな・・・まあそうだな、味は悪くねえな、茶々丸とか木乃香が時々作ってくれる菓子もうめえし」
龍宮「あと千雨や朝倉と行ったファミレスとかによく食いに行くよな先生は」
銀八「まあ行くけどよぉやっぱ江戸の甘い物の方が長く食っているからな・・・っておい何いきなり来てんだテメェ・・・」」
龍宮「いや先生についていったらこんなコーナーやってたから」
銀八「おい、コーナー進行しとけ、質問の答えは『和菓子は江戸、洋菓子はここの方好き』だ、ちょっとこいつシメて追い出す」
沖田「本当旦那の周りって変な奴ばっかですよね~」

沖田「五通目『銀さんに質問です。そっちの世界でも閣下化できるんですか? あと、うちのSSでえらい目に遭わせて申し訳ございません』、いま旦那がいないからわかんないですね、あと『魔法少年リリカル銀さん』版の旦那がどんな目に遭おうが俺はどうでもいいですね、こっちの旦那とそっちの旦那は全くの別物だと思っててください、そっちの旦那は旦那らしく頑張って、旦那のように生きててください、そして旦那の如く・・・」
銀八「旦那旦那うるせェェェェェ!!」
沖田「あ、帰ってきたんですか、どうでしたあの女は?」
銀八「とりあえずその辺の川に落としてきた」
沖田「さすがに死ぬんじゃないですかぃ?」
銀八「何言ってんだよ、この前はあやかと一緒にあいつをコンクリート詰めにして海に放り投げたのに次の日にはあいつ普通に教室にいたからね?」
沖田「旦那がやることもえげつないですがその女もしぶといですね、興味わきました」
銀八「あいつはバンバンやっちゃって良いから、俺が全面的に許す」

沖田「六通目『銀さんに質問です修学旅行編で神威を出さないんですか?』はい旦那に質問だからパス」
銀八「え~ノーコメントで・・・こうゆう難しい質問には答えられません、代わりといっちゃ何ですがズラとその周りの連中はちゃんと出ますねはい」
沖田「こういう質問はあまり答えられないんですか?」
銀八「悪役方面の敵は教えられねえな、出すのかもしれないし、結局出さないのかもしれない、ただでさえこの作品はネタバレ多いんだからさ」
沖田「じゃあ俺の出番はいつですか?」
銀八「・・・・・・・」



















[7093] 第十九訓 頼れる年上には憧れる
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:0010dcfa
Date: 2009/07/17 13:29
ブリーフ3は無事に成仏し、教室には土方十四郎、宮崎のどか、桜咲刹那そして相坂さよだけが残っていた。ブリーフ3によって高まっていた磁気は無くなり、スタンドであるさよも次第に見えなくなっていく。

「それじゃあ皆さん、私ももう見えなくなっちゃいますけど、今日は本当にありがとうございましたッ!」
「別に礼を言われる事なんてやってねえ」
「最後ぐらい素直になったらどうですか?」
「うるせえッ!」
「イタッ!」

刹那に言われ土方は少し照れがあるのか彼女の頭を軽く叩く。さよは苦笑して三人にお辞儀をした。

「お兄さん、のどかさん、刹那さん今日は色々お話が出来て楽しかったです。もし私がまた皆さんの前に現れたらまたお話ししてくれますかね・・・・・・・?」 
「は、はい! 大丈夫です・・・・・・・!」
「私も別に良いですよ、スタンドと喋れるなんて滅多に無い事ですし、今度会う時はお嬢様と一緒に」
「ありがとうございます~」
「俺は御免だ出来れば二度と会いたくない」
「お兄さ~~~~ん・・・・・・・」

のどかと刹那はさよのお願いを快く承諾してくれたが土方はタバコを吸いながら拒否。
これには彼女も困った表情を浮かべて彼に近づく。

「また会いましょうよ~~~~」
「断る」
「会いましょうよ~~~~」
「無理、さっさと天に帰れ」
「会ってくださ~~~~い」
「チッ・・・・・・わかったから腕にしがみつくなッ!」
「やった~~~~!」

腕にしがみついてくるさよについに土方はうんざりした表情で承諾した。ガッツポーズを上げて喜んでいるさよを見てのどかも他人事なのだが一緒に喜んでいた。

「良かったですね、さよさん」
「はい、のどかさん! それでは皆さん絶対また会いましょうねッ!」
「何で俺はこんなガキ供とこんな事してんだ・・・・・・」

喜んでいる様子のまま消えていくさよと、若干笑顔になっているのどかを見て土方はタバコの煙とため息を同時に吐いた。そんな彼に刹那が神妙な表情で話しかけてくる。

「土方さん、別世界の件なんですが・・・・・・?」
「ん? ああ、そういえばテメェが何で知ってんだそれを」
「この世界にそういう人物を見かけたことがありましてね」
「なんだと・・・・・・? まさか山崎の奴ここに来てもう正体バレてるのか・・・・・・?」
「山崎? 山崎って誰ですか・・・・・・?」
「・・・・・・山崎じゃねえのか? じゃあ誰だ?」

別世界の件で話しかけてきた刹那に土方は頭を悩ます。山崎以外の人物がここに来てるなんてあるのだろうか・・・・・・?

「私の知る限りでは二人知っていますよ、え~と・・・・・・」
「きゃあッ!」

刹那が言い終わる前に突然、ガラスが散る音が鳴り、のどかは身を縮ませて悲鳴を上げる。教室の窓が割れたのだ、何かを窓に向かって投げられたらしく刹那の前にコロコロと手のひらサイズの金属製物が転がってきた

「土方さん・・・・・・これ、どっかで見たことある様な気がするんですが・・・・・・」
「・・・・・・手投弾だ」





「逃げろォォォォォ!!」

刹那が持っていたピンの取れている手投弾をひったくって放り投げ、しゃがんでいるのどかの手を引いて慌てている刹那と一緒に教室から逃げ出す。その後教室で強烈な爆音が鳴った。

「何つう所だここッ! 夜の学校の窓に向かって手投弾放り込むなんざ尾崎豊でもやらねえぞッ!」
「あわわわわ・・・腰抜けちゃいました・・・・・・・」
「あんな物持っている奴は・・・・・・まさかアイツが・・・・・・?」

廊下に逃げ出す三人。そんな時、廊下をコツコツと歩いてくる音が聞こえてくる。

「誘拐犯と思われるターゲットを確認、捜索フェイズから戦闘フェイズへと移行します」
「おい、今度は何だ・・・・・・?」
「ちゃ、茶々丸さんッ!」

土方達の目の前に現れたのはここの制服を着ている女性。機械的な台詞を言い終えた後、土方に急接近して右手の拳で殴りかかってくる、それに反応して土方も刀を抜いて刀身で拳を受け止める。

「指示により誘拐犯を捕縛せよという命令が下されています」
「誰が誘拐犯・・・・・・だッ!」

彼女を押し返し、バランスを崩した彼女の頭を左腕で掴み土方は豪快に地面に叩きつける。その手際のよさに刹那は驚いた。そのまま土方は尋問を開始する。

「何で俺を襲った? テメェは何者だ?」
「名前は絡繰茶々丸、宮崎のどかさんが行方不明になったらしく、真相を知るべく早乙女ハルナさんがマスターの家に捜索願いを出し、私は校内を探していたら、一緒に探していた龍宮真名さんがのどかさんと更に桜咲刹那さんを連れている貴方を発見、誘拐の確率が高いと見て貴方を行動不能にせよ指示を出されたので襲わしてもらいました」
「全部説明したッ! 何だコイツッ!? 隠す気ゼロッ!?」

律儀に説明してくれた茶々丸に土方はツッコんでいる間に茶々丸は土方の手を振り払い瞬時に後ろに下がり、立ち上がる。

「戦闘フェイズ続行、これより抵抗する誘拐犯を捕縛します」
「めんどくせえ喋り方だ・・・・・・女を相手にするのはやりずれえが、ウダウダ言ってねえでかかってきやがれ」

まだ向かってきそうな茶々丸に土方は刀を突きつける。メラメラと闘志を燃やしている土方に刹那が後ろから彼に耳打ちする。

「・・・・・・土方さん、茶々丸さんはここの警備員みたいなのも勤めている人なんです・・・・・・・」
「だからどうした」
「どうしたって・・・・・・麻帆良学園の警備員をやっているという事はそれなりの猛者って事なんですよ・・・・・・ここは私が誤解を解きますから刀しまって下さい」
「テメェ俺があんな機械人間みたいなガキに負けると思ってんのか・・・・・・?」
「いや機械人間ですよ・・・・・・確かにさっきの反応は凄かったですけど本気で向かってくる茶々丸さんにただの人が・・・・・・あッ!」

刹那の台詞を聞かずに土方は疾走していた。無論刀をしまわずに攻撃態勢で。
突っ込んでくる土方に茶々丸は両腕を突き出す。

「しばらく眠ってもらいます」
「ぬごぉッ!」

茶々丸の両腕が突然射出され飛んできた、これには土方も突然の飛び道具に一瞬驚くも、すぐに体制を立て直し

「オラァッ!」

彼女の両腕を刀で叩き落す。叩き落された両腕は鈍い音を立てた後動かなくなった。

「何だ今の・・・・・・ロケットパンチ飛んできたぞ、最近のガキは腕がロケットパンチ出来るのか? おいガキちょっと腕飛ばせ」
「いや飛びませんって・・・・・・彼女はここの生徒が作ったロボットなんです、あなたの世界で言うとカラクリ人形の中に魂が宿っているって事ですよ、そちらの世界にも茶々丸さんみたいなロボットがいると聞きましたが?」
「やけに俺の世界の事に詳しいじゃねえか」

土方は刹那に両腕の無い茶々丸に刀をつき返したまま刹那の方に振り返る。

「色々と教えてくれる奴がいるんですよ、ダークマター製造機やらストーカー忍者とかチンピラ警察とか」
「誰がチンピラ警察だ殺すぞ」
「いや私が言ったんじゃなくて、あいつが・・・・・・・チンピラ警察なんですか?」
「あいつを倒した後お前をシメる」
「えぇぇぇぇぇぇ!! ちょっと・・・!」

土方は不機嫌そうに言い放った後、何か言おうとしている刹那を無視して、茶々丸の方向に体を戻す。

「カラクリなら死なねえだろ、その仏頂面な顔を支えている首をすっ飛ばしてやる」
「両腕を回収、ターゲットの危険度をCからAに変更します」

土方が叩き落した両腕がすぐに彼女に向かって飛び彼女の前腕部は接続された

「準備は出来たようだな、ロケットパンチだろうが、ロケットキックだろうが何でも来てみろ」
「では・・・・・・」
「!!!」

土方の挑戦に受けて立つように、茶々丸は葉加瀬聡美とエヴァの力によって搭載されている『魔力ジェット』による高速移動で低空飛行しながら土方を翻弄しながら突っ込む。

(チッ! 速すぎて見えねえッ!)
「ターゲットを射程距離内に入れる事に成功」
「何時の間にッ! がはッ!」

自分の動体視力でも捉えられなかった彼女は瞬時に土方を攻撃範囲に入れ、彼の腹に右のストレートを思いっきり入れる。これには土方も苦悶の表情を浮かべ意識を失いそうになる。

「ひ、土方さんッ!」

茶々丸の腕が飛んだり、高速移動しているのを見て、腰を抜かしたまま呆然と眺めていたのどかはようやく口が開いた。

「土方さんッ! 土方さんッ!」
「うるせえな・・・・・・」
「土方さんッ!」
「そんなに呼ばなくても・・・・・・まだ終わってねえよッ!」

必死に自分の名前を叫んでいる彼女の声に土方は失いかけてた意識を回復させ、自分の腹に拳を入れている状態の茶々丸の右肩を掴んだ。彼女はそれを振り払おうとするが土方の手はどんなに自分が力を入れても離れない

「腹部にダメージを負ってこんなにもまだ力が・・・・・・」
「俺の事気にするより・・・・・・」
「!!!」
「自分の首を気にしやがれッ!」

土方の目と右手に持っていた刀が光る、それに茶々丸が気づいた瞬間には遅かった。

「うらぁッ!!」

鬼の副長は刀を振り上げる、その瞬間バシュッと音が鳴り茶々丸の首が飛ぶ。首を失った体はその場に倒れ、落ちてきた首はゴロゴロと転がっていた。それを確認して一呼吸した後、土方は刀をカチンとしまう

「ふん、カラクリ相手に俺が負けるか」
「ひ、ひ、土方さんんんん!!!」
「んだようるせえな」
「だ、だ、だって茶々丸さんのく、首を斬っちゃって、これ殺人罪ですよッ!」

のどかがワナワナと震えながら茶々丸の首を指差す。普通の人が見たらまさしく殺人現場だ、だが土方は落ち着いて口を開いた。

「カラクリだから死ぬことなんてねえだろ」
「カ、カラクリ・・・・・・?」
「私的にはカラクリよりロボットの方が通称ですね」
「ちゃ、茶々丸さんの首が喋ったァァァァ!!! ああ、アハハハ・・・・・・」

茶々丸の首がゴロンとのどかの方角に向き喋りかけてきた。あまりの衝撃体験にのどかは目を回しながら直立の状態から後ろ向きに倒れてと気絶する。

「土方さん、宮崎さんが気絶しました」
「めんどくせえ小娘だ」
「お二人の会話を聞いてると誘拐された人と誘拐犯の会話とは感じませんね」
「だから言っただろうが、俺がコイツ等を誘拐なんてするか」
「「言ってません」」

首が取れてもなお普通に喋る茶々丸に土方が返すが、のどかを介抱している刹那と彼女に同時にツッコまれる。

「カラクリを片付けたからそいつが起きたら帰るか・・・・・・ん?」

土方が決着は着いたと刹那とのどかの方に振り返るがその瞬間ビスッと音と共に胸に奇妙な違和感を感じる。

「何だ・・・・・・? くッ!」

土方が胸に違和感を感じた瞬間、急に立ちくらみを起こし立つのが困難になり床に膝をつく。

「土方さんッ!?」
「何だ・・・・・・急に眠気が襲ってきやがる・・・・・・まさか・・・・・・」
「案外効かないな、超はインド象でも3秒で寝て5日は縛睡すると効いたのに」
「龍宮ッ! お前かッ!」

大量の眠気が遅いついに両手を床につける土方とそれに驚いている刹那の後ろからゆら~と人影が出てきた。右手に短銃を持って土方の方に向けている龍宮真名だった。

「茶々丸と戦っている内に標準を合わさせてもらった、なんせ貴方がよく動くからね、貴方が二人に気を取られている隙に撃たせてもらった」
「誰だ・・・・・・テメェ・・・・・・」

土方は目をこじ開けて龍宮を睨む、喋るのも困難になっているので刹那が代わりに龍宮と喋る。

「龍宮、教室に手投弾投げたのもお前か・・・・・・?」
「いやあれ先生に私の手投弾を見せてあげてたらあの人ピン抜いちゃって、慌てて放り投げた所に君達がいる教室にピンポイントにスローインしてしまった」
「スローインって・・・・・・こっちは死に掛けたぞッ! ていうか何で手投弾なんて物騒な物をいつもお前は携帯して・・・・・・ちょっと待った先生だと・・・・・・?」
「お~誘拐犯退治終わったか~? めんどくせえな~人探しの依頼だと思ったら誘拐犯退治しなきゃいけないなんてよ~ご苦労さん」 

龍宮の後ろの暗い廊下からコツコツとブーツの音が聞こえてくる、土方は意識絶え絶えに新手かとそちらを向く。そして足音の主の顔を見た、土方は驚愕する。
目の前に現れた人物は自分の世界の住人と瓜二つ、否、同一人物だった。江戸でよく着ている着物、銀髪の天然パーマ、腰には木刀、目が死んだ魚のような男。

「お、お前は・・・・・・!」
「あれ? コイツ・・・・・・」

土方とその男が目を合わせた瞬間、ついに土方は意識が途絶えた。




















第十九訓 『頼れる年上には憧れる』

土方はゆっくりと目を開けた、そこは真撰組の屯所の自分の自室。彼は布団から起き上がり頭を横に振る。

「全部夢だったのか・・・・・・?」
「土方さ~ん、起きましたか、入りやすぜ」

土方が頭をおさえて考えていると、いつもの様に沖田が襖を開けて出てきた。

「おい総悟、俺は別世界に行ってなかったか・・・・・・?」
「ついに頭イカレちまいましたか? 別世界って何処ですかぃ? 言っとくけど二次元には行けないんですよ」 
「誰が頭イカレてるだッ! 俺は正常だッ! あと二次元なんかに興味は無えッ! ・・・・・・何もかも夢だったのか・・・・・・?」

沖田にキレた後、土方は首を傾げる。そんな様子の彼に沖田が珍しく笑みを浮かべて話しかけてきた

「土方さん、大事なお知らせがあるんですがね」
「んだよ、お前の大事なお知らせなんて・・・・・・どうせ無駄なことだろ」
「いえ土方さんには結構大事ですよ、実は俺、今日から副長になったんで」
「・・・・・・は?」

布団から起き上がり、自分の戸棚から真撰組の制服を取り出している土方に、笑みを浮かべながら報告する沖田。その報告に土方は一瞬言葉を失う

「何言ってんだお前・・・・・・? お前が副長になれるわけねえだろ、俺がいるんだぞ」
「残念ながら土方さんは一般隊士Bに格下げです、今度から俺を呼ぶときは副長の沖田様と呼んでくだせぇ」
「いやいやいやッ! 何でお前が副長になるんだよッ!? Bて何ッ!? せめてAにしろッ! おい近藤さんを呼べッ!」
「あー近藤さんは『日○モンキーパーク』に輸送されました、今日から局長もチェンジですぜ」
「何で近藤さんがサルの王国に飛ばされてんだッ!? ていうかチェンジって・・・・・・!?」

沖田の無茶苦茶な報告に土方は焦る、そんな時沖田の後ろからのそりと男が現れる。出てきたのは腐れ縁の銀髪天然パーマメントだった、何故か真撰組の制服を着ている。

「おい一般隊士B、早くしろや局長の命令で切腹にするぞコラ」
「オイィィィィィィ!! 何でお前が局長ッ!? お前なんかが局長なんて誰が認めるかァァァァ!!」
「局長、今のは上に対しての反逆発言とみなしますがどうですか?」
「副長、今のは上に対しての反逆発言とみなす、切腹にしろ」
「了解、直ちに一般隊士Bに腹を斬ってもらいます、介錯は俺がやりますんで」
「ちょ、ちょっと待てやテメェ等ァァァァ!!」

新局長と新副長に引きづられながら土方は吼えるも二人はガン無視。
これにて土方十四郎の人生は幕を閉じるのであった。
























めでたし、めでたし

「何がめでたしだァァァァ!!!」
「おぶッ!」

吼えながら土方がベッドから起き上がった。ようやく起きた彼は我に帰ったのか周りをキョロキョロと見渡す。
知らない天井で周りはカーテンで囲まれている、少なくともここは真撰組の屯所内では無い。
ここが現実だとしたら別世界のはずだ。土方は安心してため息をつく。

「危ねえ、危ねえ・・・・・・よくよく考えればアイツが副長になれるわけねえだろうが・・・・・」
「・・・・・・ようやく起きましたね・・・・・・でも龍宮は人間なら一週間は縛睡するって言ってたのに・・・・・・」
「ん? 何だテメェか、どうした顔をおさえて」

安心している土方に、ベッドの下から顔をおさえて刹那が這い上がってきた。彼女の異変に土方も気づく

「顔が赤いぞ、誰かに顔でも殴られたのか?」
「誰かさんがうなされていたので、状態を調べていたら突然起き上がってきて、誰かさんが私の顔面にヘッドバッドかましてきたんですよ・・・・・・保健室でヘッドバッド食らうなんて私だけでしょうね・・・・・・」
「それは大変だな」
「ええ大変ですよ本当に・・・・・・」

赤くなった顔をがさすっている刹那を見ながら土方はある事に気づいてカーテンを開ける、部屋の窓から外を覗くとすっかり朝になっていたのだ。

「おい、俺は一体どんぐらい寝てたんだ?」
「麻酔弾を撃たれた直後に寝たので・・・・・・ざっと17時間ぐらいです、今は午後5時なので」
「あの小娘はどうした?」
「気絶した状態の彼女を龍宮が女子寮に届けに行きました」
「・・・・・・俺を襲ったカラクリはどうした?」
「白・・・・・・私の所の副担任が持って帰りましたよ」

刹那の答えに土方は頭を掻きながら考える、あの時現場に来た人物は首をすっ飛ばしたロボットと、自分に麻酔弾を撃ってきた色黒の長身の女子、そして・・・・・・

「あそこに目が死んでる天然パーマがいなかったか・・・・・・?」
「いましたよ私と宮崎さん、茶々丸さんや龍宮がいるクラスの副担任ですよ、名前は坂田銀八、本名は坂田銀時です」
「・・・・・・やっぱりあのヤロウか・・・・・・どうしてここに・・・・・・」

土方の読みは確信する、あの男は自分とは長い付き合いだ。だが何故別世界に・・・・・・
そんな事を考えながら保健室にもかかわらずベッドに半身を起き上げならタバコを吸い始める土方。彼の喫煙行為に別段気にする事は無く刹那は話を続ける。

「あの男が土方さんの世界から来た男ですよ、もしかして知ってましたか?」
「あっちの世界では何かと顔を合わせる奴だ、合わせたくないのにあのヤロウは本当に絡んできやがる、いわゆる腐れ縁だ・・・・・・」
「本当ですか? まあ向こうも知ってる素振りでしたしね・・・・・・」
「よ~起きたかマヨラー? お前の誘拐疑惑はそのガキとさよが証言してくれたから無罪になったんだから感謝しろよ~」

土方と刹那が会話していると、当の本人の腐れ縁の人物の坂田銀時がカーテンを開けて現れた。二人は同時にそちらに振り向く

「テメェッ! 何でお前がこの世界にいんだよッ!」
「それはこっちも聞きてえよ、とりあえず元気ならそいつの案内で万事屋に来い、そこで話しようじゃねえか、フジモンとユッキーナについてよ」
「何でその二人についてお前と喋んなきゃいけねえんだよッ! あの二人はきっと幸せになってくれると俺は信じてるよッ! 俺はお前が何でこの世界にいるのかが知りてえんだよッ!」
「いや俺は無理だと思う、お笑い芸人と女性タレントは上手くいかないケースが多い」
「そっちで会話進めてんじゃねえッ!」

土方がツッコミを入れると「わ~ってるよ」と言って手を振ってカーテンを閉めようとした。だがその前に土方は銀時の背中に指している物に気づく。

「おい何だその刀は? お前そんなの持ってたか?」
「ジャパネットで買ったんだよ、じゃあな」
「嘘つくなッ! 土方さん、あれ私の刀ですッ! 今は色々会ってあいつに預けてるんですッ!」
「何で刀預けてんだよ? 刀は武士の魂だぞ」
「それは・・・・・・」
「まあいい、万事屋に行くぞ、お前も来い」

口ごもっている刹那を見て、土方はため息をついて、ベッドから体を出して立った。丁寧に置かれていた靴を履いて、吸っていたタバコを床に捨てて踏む、それを拾ってゴミ箱に捨てる。

「おい、万事屋まで案内してくれ」
「はい、所で土方さんって・・・・・・・」
「んだよ」
「ここでどう生計立てるんですか・・・・・・?」





「・・・・・・あ・・・・・・」

今までハプニングの連続だったのですっかり大切なことを忘れていた土方だった。ここに短期とはいえ滞在する予定だったのだ、仕事がなければ暮らすことなど出来ない。

「チッ、万事屋の前に学校の職員室に案内しろ」
「職員室ですか・・・・・・? わかりました」

元はといえば最初、土方が行くべき場所は麻帆良学園の職員室だった。実に長い道のりだった・・・・・・
とにもかくにも土方と刹那は保健室を後にした。
















「え~と松平先生の所で色々と仕事していたのかね?」
「ああ、とっつぁ・・・・・・あの人の所で仕事をしてたんすけど、そこでトラブル起きちまって続けられなくなって、どうしようかと思ったらあの人がここで仕事してこいって言われて来たんすよ」
「トラブル起きちまったってどんなトラブルが起きたのかね?」
「職場とその周りが禁煙地区になっちゃったんすよ」
「ほ~それは私にもキツイTOLOVEるだ」
「字間違えてるんすけど?」

土方は職員室に来ていた。椅子に座り、目の前の自分用の椅子に座っている男と面接をしていた。
かつて山崎をここの学園長の許可なしで採用した人物であり松平のとっつぁんの別世界の友人、新田先生だ。土方は慣れない、一応彼なりの敬語を使い質問に答える。

「まあ、あの人の紹介ならさすがに断れないな・・・・・・所で私はここの教師を務めている新田だ、まずやりたい仕事は何かあるかね?」
「何で自己紹介したんすか? あ~具体的にどんなのあるんすか?」
「今残っているのは、格闘家と戦士と僧侶と遊び人と警備員だ」
「何でドラクエ方式ッ!? ここの面接で誰が遊び人を選ぶんだよッ!? つかそれ仕事ッ何!?」 
「君が経験なしなら魔法使いか、もしかしたら賢者になれる可能性もあるがどうする?」
「まさかの下ネタッ!? いやいいからッ! 唯一まともの警備員でッ!」

無表情のままボケる新田先生に声を荒げてツッコむ土方。余談だが、新田先生が『魔法使い』というワードを使ったとき、回りの何人かの教師がビクッとした。いや別にそっちの魔法使いではない。













面接が終わり土方は職員室から出ると外には刹那が立って待っていたのだが何やら友人なのだろうか、同じ年ぐらいの少女と話していた。入りずらいとわかりながらも土方は頭を掻きながら刹那に話しかける。

「おい、面接終わったぞとりあえず俺は明日から警備員やってくれだと」
「土方さんもう終わったんですか、随分早いですね」
「面接官が言うには、別にここで一番偉い奴に会わなくても仕事の採用とか不採用は勝手に自分で決めてるって言っていたな」
「どんな独裁者ですか・・・・・・?」
「ねえねえ、せっちゃん、この人が土方さんって人なん?」

土方と刹那が会話している中に少女が土方を見たあと刹那に話しかける。独特的な訛り方が混じっている喋り方だ。

「はい、昨日の夜のスタンド騒動で色々と助けてくれた土方さんです」
「おいガキ、この訛ってしゃべる娘はオメェのダチか?」
「いや友達じゃなくて・・・・・・」
「せっちゃんのお友達の木乃香です、色々とせっちゃんがお世話になりました~」
「お友達って! 私はお嬢様の護るための剣であり・・・・・・」
「昔から遊んでいるんやから友達に決まってるやろ」
「それはそうですけど・・・・・・」

照れている様子の刹那に木乃香は笑顔で会話しているのを見て、土方は奇妙な安心感を持った。

「ハァ~ようやくここに来てまともなガキに会えた気がするわ」
「へ? そうなん?」
「謝ってばかりの小娘、スタンドなのにスタンド嫌いのスタンド娘、ロケットパンチやら加速装置を付けてるカラクリ、手投弾やら麻酔銃やらを所持している女、破滅の歌を覚えているこのガキ、そいつらよりはずっと見た目普通だし、中身も普通そうだ」
「へ~せっちゃんってそんな技もってるん?」
「はい、敵スタンドにかなりの大ダメージでしたッ!」
「俺らも大ダメージだったからな、少しは自重しろ」

音痴の自覚が全く無い刹那に呆れた声でツッコンだ後、土方は話を続ける。

「だが一番会いたくなかったガキは俺のタバコを溺死に追いやったあのチビ助だ・・・・・・」
「どんな子なん?」
「こんな子です」
「そうそうこのガキってオイィィィィィィ!! 何いきなり出てきてんだテメェェェェ!!」

土方が愚痴っている時に自然にその恨んでいる少女が現れた。背は土方よりずっと小さいのだが、最初に会った時の様に土方を見ても無感情なまんまだ。

「また会いましたねニコ中、本当は二度と会いたくなかったんですけどこの子がどうしてもお礼を言いたいとか」
「俺だってテメェと会いたくねえよッ! 誰がニコ中だッ! 喫煙者に謝れッ! ん? お前は」
「ひ、土方さんこんにちは・・・・・・」

少女に噛み付こうとせんぱかりに土方が顔を近づけていると彼女の後ろから同じ制服を着た二人の生徒が現れた。
一人は他の二人より背が高く、何故か土方を見ながらニヤけている眼鏡を付けた少女と、もう一人は

「小娘、お前もしかしてコイツの・・・・・・」
「小娘じゃなくて宮崎のどかですよ、何でのどかはあなたの名前覚えているのにあなたは覚えられないんですか?」
「いちいちムカつくガキだなコイツッ!」
「夕映、喧嘩吹っかけるの止めて・・・・・・」

のどかに言われて夕映と呼ばれた少女は渋々引き下がり、今度はのどかが土方の前に出る。

「あの・・・・・・とりあえず気絶しちゃってすいません・・・・・・何か茶々丸さんと会ったあの辺覚えてなくて・・・・・・茶々丸さんの腕が飛んだりする変な夢とか見てまして・・・・・・」
「本当に変な夢だ、出来れば夢であって欲しかった」
「夕映から聞いたんですけど、土方さん色々と大変だったとか・・・・・・誘拐罪で島流しされる件は大丈夫でしょうか・・・・・・?」
「いや島流しとかされねえからッ! 俺は何処の島にも流されないからッ!」

夕映の狂言を思いっきり真に受けているのどかに土方がツッコんだ後、土方は夕映を睨む。だが彼女は目を全く合わせようとはしない、顔をプイッと横を向けて完全にシカト体制だ。

「本当ムカつくガキだな・・・・・・で? それ言いに来ただけか?」

夕映に悪態をついた後、土方はのどかに顔を戻す。彼女は少し顔を赤らめていた後、前髪から片目だけ覗かせて顔を上げた。

「あ、あの私頑張って土方さんの言う通り引っ込み思案なの治そうと思いますッ!」
「お、おう・・・・・・」

頭を深々と下げて、彼女なりに声を張って喋る。そんな様子の彼女を土方は始めて見るので少し戸惑いを見せる。

「んなのわざわざ言うために俺を探していたのかよ・・・・・・今度から俺に謝ったらデコピンだからな」
「は、はい!」
「良いね~やっぱりついてきて正解だったよ~そうだよね~頼れる年上って良いものね~」
「ちょ、ちょっとハルナ!」

突然土方とのどかの間に割って出てきて慌てている様子ののどかに、ハルナと呼ばれた女子が出てきた。

「良いじゃんのどかっち~、年上の男性も魅力的だし良いじゃない、色々と人生の先輩なんだから手取り足取り教えてもらえるかもよ・・・・・・」
「ハルナ、顔怖いし息が荒い・・・・・・」
「何バカ言ってんですか、このニコ中がそんな事したら犯罪ですよ、ロリコンです、死刑です」
「いや夕映、死刑は言い過ぎでしょ・・・・・・」

のどかに息を荒げながらハルナが教えを説いているときに夕映が冷静にツッコンだ。

「大体のどかとか桜咲さんとか、やたら胸が小さくて世間知らずな人ばっか集めて夜中の教室で何やっていたのか疑わしいです、のどかが言ってましたがスタンド騒動? そんなファンタジックかつオカルトチックな話をもしのどか以外の人が言ったら私は信じれません、むしろ私たちの教室に巨大なクレーターが出来ている事を解明して欲しいです 」
「あれ? 今何気に私もバカにされませんでした・・・・・・? 胸が小さいとかどうとか・・・・・・?」
「頑張ってせっちゃんッ! 頑張れば胸ぐらい・・・・・・なッ!」
「何を頑張れとッ!? 別に気にしてませんからッ!」

両手を後ろに回して淡々と歩きながら喋る夕映に刹那はふと疑問を持ったが、木乃香の悲しい応援により揉み消しになった。

「でもまあのどかは酷い事されてるわけじゃなさそうですし、それにこの子は嘘つくような子じゃないので」
「お前は平気で嘘つくけどな」
「ここは一億歩譲ってあなたがのどかを助けたことを認めてあげましょう」
「何その上から目線? 斬っていい? 本当に斬っていい?」

自分の前で立ち止まって喋る夕映を見て、土方は再び抜刀衝動に駆られていた。

「そういえばあなたここで何をしに来たんですか?」
「ああ? 仕事もらいに来たんだよ文句あんのかクソガキ」
「文句は六法辞書の厚さぐらいありますけど、特に嫌なのがまずあなたがいると校内がタバコ臭くなります」
「本当に素敵なほどムカつくガキだぜ・・・・・・」

夕映の散々な毒に土方がイライラしながら睨んでいると

「何してんだお前ら?」
「あ、銀ちゃん」

突然後ろから気だるい声が聞こえて。一同振り返るとそこにいたのはに万事屋状態の銀時だった。銀時は不機嫌そうに頭を掻き毟る。

「人が待っているのに、何ウチの生徒と仲良く遊んでんだお前?」
「遊んでいるように見えねえだろッ! ・・・・・・つうかウチの生徒ってどういう意味だ・・・・・・?」
「俺は国語担当にして三年A組の副担任の教師もやってんだぜ」

銀時が少々誇らしげに言うが、土方は目を細めて疑う。

「お前が教師・・・・・・? 何の因果でお前が教師になれるんだよ、ありえねえだろ」
「死ぬほど嫌ですが今初めてあなたと意見が合いました」
「お前は一旦黙れッ!」

横にいる夕映に叫んだ後、すぐに銀時に顔を戻す土方。

「俺の用は済んだ、早くお前の言う万事屋・・・・・・そういやお前ここでもそんなことやってんのか?」
「良いだろうが別によ~教師だけじゃあ食っていけない時代なんだよ、木乃香、お前もさっさと家に帰れ、家の奴等が心配するぞ」

銀時はそう言って木乃香に言うと彼女も「うん、じゃあまた明日な~」と言って、手を振って帰っていった。それを見送った後、銀時は今度はのどか達の方に体を向ける。

「お前らも帰れよな」
「は、はい、すいません!」
「うん俺のほうが口が悪かった、すいませんでした、だからもう謝るな頼むから、なんか切なくなる」

土方に対してはようやく普通に接することは出来るかもしれないが、やはり銀時は駄目なのどか、銀時も困り顔で謝り返す。

「ハァ~・・・・・・おら、お前も自分用の家に帰れ」
「先生、私のどか達と同じ部屋なんだけど・・・・・・」
「え? 俺ん家の冷蔵庫の下に置いてあるあの床がネバネバしてる家じゃねえのッ!?」
「それホイホイでしょッ! 何そのマジでッ!?って顔ッ!?」

銀時が驚愕している所にハルナがツッコミを入れた後、銀時は夕映と目を合わせる。

「オメーも早く帰れよ、別に居残って勉強とかしねえだろ」
「そうですね、あなたと喋っている時間ももったないです」
「じゃあ喋らなければいいだろうが、何? そんな事もわかんないの?」
「あなたが喋りかけてきたから嫌々返しただけです」
「そうかい、さっさと女子寮に帰れよ、嫌ならさっさと帰るのが一番だろ」
「言われるまでもありません、嫌いな人とこれ以上喋るのはごめんです」
「だから早く帰れって、何? そんなに俺と別れるのが名残惜しいのか?」
「もう帰るです のどか、ハルナ、帰りましょう、これ以上この人と付き合ったら頭痛くなります」
「どんどん痛くなれ、頭使うと痛くなるんだ、頭使えばお前の成績も少しは上がるだろ」
「余計なお世話です、むしろあなたが頭使ってください」

銀時と夕映の会話というより口喧嘩に一同呆然と眺めていた。二人は止む気配なくずっと続きそうなペースで喋っている。

「おい、万事屋とあのチビ助って仲悪いのか?」

土方が刹那に声を潜めて質問する、彼女は悩んだ表情を浮かべながら

「めちゃくちゃ仲悪いんですよ・・・・・・」





















銀時と夕映の口喧嘩は結局15分以上続いて、さすがにこれはマズイと思い、ハルナは夕映を説得して強制的に連れて帰った。のどかは帰り際にお辞儀をして、夕映はどこか納得のいかない表情のまま帰っていく。
そして三人組と別れた銀時、土方、刹那も今は万事屋銀ちゃんという表札が飾られている部屋の中にいた。

「ここまで来るのにどんぐらいかかってんだよ、本当お前等遅いわ~銀さんが迎えに行くなんて滅多にねんだぞコノヤロー」
「お前が、チビ助と口喧嘩してたからだろうが・・・・・・」
「同感ですね、二人とも普段は会話なんて絶対しないのに、どうしてああいう時は・・・・・・」
「あ~相性の問題だよ」

ソファに座って喋りかけてくる土方と刹那に、鼻をほじりながら銀時はめんどくさそうに言う、元々銀時と夕映は全く喋らない、というか夕映が一方的に避けているのだがいざ対面となると必ず口喧嘩する。

「まあそんな事はどうでもいいわ、何でお前がこの世界に来ているかが本題なんだよ」
「それはこっちの台詞だ、お前がどうしてここに来れたのかが知りてえよ」
「俺は魔法使いの召喚魔法でここに来た」
「・・・・・・何言ってんだお前・・・・・・?」

一瞬銀時の正気を疑った土方だが、隣に座っている刹那が説明する。

「この世界には魔法使いという種族が実在するんですよ、ここで生活を余儀なくされている闇の魔法使いのエヴァンジェリン、彼女の召喚魔法によってこの男は江戸からこの麻帆良学園に転送されてきたんです」
「いやちょっと待てッ! 闇の魔法使いだか、召喚魔法だか知らねえが本当にそんなのがいるのかこの世界にッ!?」
「はい、この学園にいる教師たちの中にも魔法使いが混じっています」

土方は魔法使いの存在など信じた事はなかった。だが彼女の目は嘘をついていない目だ。少々混乱しながらも土方はポケットからタバコを取り出し火をつけて、くわえタバコをしながら頭の整理をする。

「要するに江戸にいた万事屋はここにいる魔法使いに召喚されて別世界に来れた、そういうことになるんだよな? 魔法うんたらな事はまだ信じれるかどうかわからねえが、とりあえずそういう事にしておく、魔法使いが教師か・・・・・・そういやあの新田って人も魔法使いなのか?」
「よく気づいたな、あの人は999の世界を滅ぼし、今ここで1000個目の世界滅亡を企んでいるもう魔法使いというより神に近い存在、混沌を作り世界を破滅させる事とコロコロが大好きなフリーザも泣いて逃げ出す強さを持ったお方だ」
「大嘘を叩くなッ! 新田先生は普通の教師ですよ土方さんッ!」

鼻をほじるながら大嘘をつく銀時に刹那はツッコんだ後、土方の方へ向いて説明する。

「まあ白夜叉は魔法使いによってここに召喚されたてここで教師として生活しているんですよ」
「なるほど教師として白・・・・・・おい白夜叉って誰だ? こいつの事か?」
「えと・・・・・・白夜叉、説明して良いのか?」
「駄目、こいつにそれを話すと色々めんどくさい」
「だそうです、すみません・・・・・・」

 銀時が手でバツの字を作ってNG、刹那は申し訳なさそうに土方に謝るが、彼は呼び名の理由より銀時と刹那のリアクションに疑問を感じる。

「何を隠してんだお前等・・・・・・」
「いや何も・・・・・・」
「いいや隠しているな、正直に吐け」

刹那の胸倉を掴み、土方が追求しようとしたその時、部屋のドアが開いた。

「旦那~いきなりこんな時間に来いって、俺早く帰って晩飯作らなきゃ風香ちゃんにシメられ・・・・・・え?」

入ってきたのは覚えている読者が覚えている真撰組の密偵で、今はここの生徒の所に住んでいる山崎(今は真撰組の服ではなく着物)。ドアを開けて早々彼の目にはここにはいないはずのあの頼もしい男がいた。二人は目を合わせて固まる

「そ、そんな・・・・・・副長ォォォォォォ!! 助けに来てくれたんすねェェェェェ!!!」
「何してんだお前ェェェェェェェ!!!」
「おぶぅぅぅぅぅ!!!」

山崎は涙を出しながら土方に抱きつこうと思ったのだが、残念ながら部下の熱い抱擁の前に上司は右ストレートで感動の再会を砕く。胸倉を掴まれていた刹那はその光景に戸惑う。

「テメェ、今まで連絡取らずに何してやがったんだコラッ!」
「す、すんません副長ッ! ちょっとダブルチビッコギャングにジャスタウェイをクラッシュさせされて連絡どころか帰りの手段も失ってましたッ!」
「壊しただとォォォォォ!? 何してんだお前ッ!? どうやって江戸に攘夷志士とこの世界の情報を流すんだァァァァァ!!! 腹斬れェェェェ!! 今すぐ腹斬れェェェェ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

山崎をマウント攻めでボコボコにする土方、だが彼の背中をポンと叩かれ一旦山崎の粛清を止めて振り向く。

「何だ?」
「すみません、お二人の関係性も気になりますがその前に・・・・・・ここにいる攘夷志士とかこの世界の情報を流すってどういう意味ですか・・・・・・?」

真顔の刹那の問いに土方は額から汗を出してタバコをポロッと落とした。





















「なるほどそちらの世界とこちらの世界ではそんな事があったんですか」
「誰にも言うんじゃねえぞ、これは極秘中の極秘だ」
「あいつの事はまだ黙っておくか・・・・・・」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありません・・・・・・」

思わず口を滑らせたことに後悔しつつも、土方はソファに座り向こう側に座っている刹那に攘夷志士の神隠し事件の全貌を語る。この世界には多くの攘夷志士が存在する、これは危険極まりないことであり、もしかしたらこの世界で攘夷志士が色々と事件を起こす可能性があるからだ。そこで土方や山崎、真撰組はここの攘夷志士を大量検挙するべく立ち上がったのだ。

「それでこの人がこの世界で諜報活動をしている山崎さんですか? 初めまして桜咲刹那です」
「いや、君とは何度か廊下ですれ違ってんだけど・・・・・・」

刹那に頭に下げられて自己紹介されるも土方の傍に立っていた山崎自身にとっては刹那は初見ではない。地味ゆえに気づかれなかった、慣れていることだがこういうリアクションはちと山崎自身の心にダメージを与える。

「まあいいや・・・・・・所で副長はどうしてここに来たんですか? まさか本当に俺を助けに・・・・・・」
「タバコ吸うためだ」
「・・・・・・何ですかそれ・・・・・・?」

山崎は微かな希望を持って土方に問いかけたが彼の答えに山崎はガックリうな垂れる。そして今度は土方がタバコを吸いながら山崎に質問する番だ。

「所でお前転送装置壊してどうすんだ? もうあっちの世界に二度と帰れねえぞ」
「え、嘘ッ!? マジっすかッ!? 俺もうこの世界カオス過ぎてたくさんなんですけどッ! 何とかならないんですかッ!?」
「どうにもならねえな、帰った時ににとっつぁんに山崎は二度と帰ってこねえって報告しておく、お前は一生このカオス学園に住んでろ」
「いや少しは自分の部下を大切にしてくださいよッ! だってほら旦那も元の世界に帰れなくて困ってんですよッ!」

山崎はビシッと椅子に座って自分の後頭部に手を回している銀時を指差す。

「別にこいつが帰れるか帰れないか知ったこっちゃねえ、むしろ帰ってくるな」
「ああ? 一般市民置いて自分だけ帰る気ですか? 税金貰ってんだから仕事しろこの税金泥棒」
「お前を一般市民と認識した覚えは無い、ここで一生ガキ共と遊んでろ」
「んだとコラ? テメエも何でその娘っ子連れてきてるんだよ? お持ち帰りだろ? お持ち帰りする気なんだろ? お持ち帰りして遊ぶ気なんだろ?」
「ほざけ若白髪、こいつはここまで来るための道案内役だ、お前のほうがガキをお持ち帰りする気なんじゃねえのか? どうせお前のことだから江戸にガキを連れて帰るとかそんな事考えてそうだ」
「そんな事考えてねえしッ! バカいうなよッ! お、俺がんなこと考えるわけないだろうがッ!」

いきなりしどろもどろに手を振って否定する銀時に土方は疑惑の眼差しを向け、追及しようと思ったのだがに急に刹那に話しかけられた。

「土方さん、この世界に来る為に使った転送装置見せてもらえませんかね? もしかしたら葉加瀬さんならそういう物を同じように作れるかもしれませんよ? そしたら田崎さんが帰れる可能性があるんじゃないでしょうか?」
「田崎じゃなくて山崎です」
「これは江戸の最新テクノロジーを使った代物だぞ、ハカセだからっかせいだか知らねえがんなの出来るか、野崎を帰る術は別の方法で考える」
「野崎じゃなくて山崎・・・・・・ていうか副長が何で俺の名前間違えるんですか?」
「おいマヨ侍、あいつを馬鹿にすんじゃねえよ、俺の化け物スクーター作ったガキだぞ? あいつに任せれば竹崎の転送装置ぐらい作れるって、一回見せてみろ」
「だから山崎だって、あんた等全員チョップかましますよ?」

山崎がいちいち訂正するのを三人とも見事にスルーして、土方は胸ポケットから転送装置『ジャスタウェイ・クリムゾン』を取り出す。

「これが転送装置だ、どうだ? そいつに作れるか?」
「何か生気の無い人形としか感想が言えませんね・・・・・・それ本当に転送装置ですか?」
「相変わらずふざけた面の転送装置だな」

土方が持っているジャスタウェイをまじまじと見ていた刹那の後ろから土方が持っていたジャスタウェイを銀時がひょいと取り上げた。

「今日の朝、さよとそいつに色々聞いたが、お前等昨日の夜結構バカ騒ぎしてたんだろ? 何でこんなに無傷なんだよ?」
「それはこいつが使ったジャスタウェイの強化版だ、頑丈な仕組みになってんだよ」
「ふ~ん・・・・・・トゥースッ!!」
「ってオイィィィィ!! 何してんだテメェェェェ!!!」

観察していた銀時が急に土方のジャスタウェイを床に叩きつけた。これには土方も吼えてすぐにジャスタウェイを拾って回収するが幸いに何処も壊れていなかった。

「何処も壊れてねえようだな・・・・・・危うくお前等と同じ未帰還者になる所だった・・・・・・」
「チッ!!」
「何舌打ちしてんだテメェッ! 自分が帰れねえからって、俺を道連れにしようとしてんじゃねえッ!」
「チッ!!」
「お前も舌打ちしてんじゃねえッ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!」

銀時に悪ノリして、一緒に舌打ちした山崎をシメている土方を苦笑して見ていた刹那は、ふと部屋の壁についている時計を見る、もうかなり暗くなりそうな時間だ。

「盛り上がっている所悪いんですが土方さんは一体何処で寝泊りするんですか?」
「ああ? 俺は・・・・・・おい山崎、テメェは何処で寝泊りしてんだ?」
「イテテテテ・・・・・・女子寮で生徒の人に済ませてもらってます、旦那も女子寮では無いですがどうやら生徒の一人の家でお世話になっているようですよ」
「あいつがお世話してんじゃねえ、こっちがお世話してんだよ」

攻撃を受けてボロボロになった山崎は体の埃を叩きながら説明。銀時は同居人を頭に浮かべながらぶっきらぼうに口を挟む。それを聞いて土方はしかめっ面だ。

「そんな所しかねえのか・・・・・・俺もここで雨風しのぐ場所探さねえとな・・・・・・」
「あの・・・・・・土方さん?」
「何だ?」

宿が無いと聞き刹那は少しぎこちない口調で、頭を手でおさえて困っている向かいの土方に身を乗り出した。


























「刹那、もう少し自分の貞操を大切にした方が言いぞ、一回会っただけですぐ同棲ってのは展開が早すぎるんじゃないか? 木乃香が聞いたら泣くぞ」
「いやそういうのじゃなくて・・・・・・この人は白夜叉と同じ別世界の人なんだ、色々会ってここに来ることになったのだが、住む場所が無くて困ってるらしい」
「先生と? そういえば同じ様に腰に得物をぶら下げているな、先生みたいに剣術は優れているのかその人は?」
「茶々丸さんに勝った人だから腕は相当だろ、ちょっと剣術指南もやってもらおうと思ってここに呼んだんだが・・・・・・」

麻帆良学園から出て現在、麻帆良生徒専用の女子寮。その部屋にて、玄関に立つ自分の目の前で刹那がスレンダーな長身の女性と自分の事で喋っていた・・・・・・土方はその女性を見て固まっていた。

「別にここで住んでも良いぞ、私はあまりここにいないからな、もっぱら先生の背後にいる」
「いい加減にしないと白夜叉と雪広さんににまたコンクリ詰めだぞ・・・・・・土方さん住んでも大丈夫らしいですよ、これは私のルームメイトの」
「昨日の夜会って以来だな、龍宮真名だよろしく、寝床は私のベッドを使えば良い、夜中は大体エヴァの家の周辺にいるから私は」
「要するにあいつのストーキングだろ・・・・・・」
「最近はもう、そう言われてもどうってことないな」

昨日の夜自分を襲った龍宮の自己紹介を聞いて、無表情のまま土方は思った。

チェンジお願いします
























教えて銀八先生のコーナー

「19話も終わって土方編も終わり、久々の銀さん登場、ということで久々の教えてコーナーですが、ぶっちゃけこのコーナーって何を教えているのかさっぱりわかりません」
「そういえば何でこのコーナー始まったんだっけ?」
「人気どん底の時に作者が思案してどうせ打ち切るならと思ってやってみたら5話目で急に人気が上がっちゃってここまで来ちゃったんだよ」
「へ~くだらね、あ、5話目で思い出したけどいいんちょの奴来てないな・・・・・・」

千雨が教室を見渡すがそこには銀八と自分しかいなかった。「どうせ学級委員長の仕事かなんかだろ」と銀八が言うので彼女もそれに一応納得する。

「あいつがいなくてもコーナー進めなきゃな・・・・・・じゃあ今回は珍しくテーマがあってお題は『キャラとキャラの相性』について、こういうクロス作品ならではの問題なんだよな、誰だって好きな奴嫌いな奴がいる、例えば土方十四郎というキャラは宮崎のどかとは相性が良いですが、綾瀬夕映とは最悪です、こうゆう風に人間関係を徐々に作っていき物語は山あり谷ありと進んでいく、今回の話はそういうのを色々と入れていました。ということでお前も相性の良いキャラ、悪いキャラ言ってみろ」
「いきなりかよッ! え~と相性が良いっていうか一番仲良いのは・・・・・・」

いきなり吹っかけてきた銀八のお題に千雨は慌てつつも、しばらく考えて頭を掻きながら銀八から照れ隠しで目をそらし、ポツリと言う。

「お前かな・・・・・・」

それを聞いて銀八は頷く

「確かに俺としかお前って基本喋らないもんな、現実世界では」
「現実世界が余計だッ!」
「じゃあ苦手な奴は?」
「え~と・・・・・・」

銀八から再び問いだされて、今度は時間をかけてゆっくり彼女は考える、そして

「お前の所の初代万事屋の地味な眼鏡の奴かな・・・・・・」
「新八か、確かにあいつはお前に殺意が芽生えているほどのライバル心を剥き出している」
「本当アレどうにかなんねえかな・・・・・・」
「どうにもならねえな、お前が俺から離れればあいつも成仏するんじゃね?」
「いやオメーと別れるなんて絶対に嫌だ」

少々顔を赤らめながら千雨は頬を掻きながら言ったことに銀八は軽く笑う。

「そうかい俺もお前とはこの世界では一緒にいてえな」
「え・・・・・・?」
「だってこの世界ツッコミがいねえとボケで飽和するんだよ、お前がいないと基本銀さん組はツッコミよりボケ全般なんで。これからもどんどん俺の傍でツッコんでくれ」
「やっぱそういう考えかよッ!! うっすら予感はしてたけどなッ!」

自分に対する銀八の好意に千雨は机に顔を伏せて深いため息をつく。そんな彼女の頭に銀八は近づいてポンと手を置く。

「まあお前と一緒にいて悪くねえってのは本当だよ」
「私だって同じだよ・・・・・・」

顔を伏せながら千雨は銀八に答える。それを聞いた銀八は満足そうに彼女の頭を撫でる。

「そこまでツッコミたいのかお前」
「違えよッ! どこまでそっち方面にもっていく気だお前ッ! いい加減にしろッ!」
「ナイスツッコミッ!」
「それムカつくから止めろッ!」

嬉しそうに親指を立てて変な褒め言葉を言う銀八に千雨が上手くツッコミをさせされている頃終業のベルが鳴学園じゅうに鳴り響いた。

「ということで今回のテーマはボケとツッコミの相性についてでした」
「最初のテーマと変わってんじゃねえかッ」
「宿題、ボケとツッコミが最高と思われるお笑いコンビを三組出して、どこが面白いのか詳しく書いて来い」
「書かねえよッ! 何だよ宿題って、どこの科目だよそれッ!」

銀八が人差し指立てて淡々と言う言葉に千雨が吼えていると、ドアの教室が開いて人が入ってきた。

「銀さん、千雨さん遅くなってすいません」
「お~あやか、面白いお笑いコンビ三組言ってみろ」
「いきなり来たいいんちょにまさかの無茶振りッ!?」
「『さまぁ~ず』、『くりぃむしちゅー』、『爆笑問題』ですわね」
「リアルだなおいッ!」





























「さ~て次回は記念すべき第20訓、題名は『銀と金』」
「タイトル短け~・・・・・・ていうかこんな漫画あったな~・・・・・・」
「所で千雨さん、銀さんと二人で何話してたんですか?」
「くだらねえ話だよ、所で銀八、いいんちょってボケとツッコミどっち?」
「ん~ボケも出来てツッコミも出来るオールラウンドだな」
「あ~本当にくだらない話してたんですわね」
































銀八先生のそこんとこ詳しくのコーナー

銀八「え~今回は久しぶりの読み手なので来た質問すべて答えようと思います、まず一通目
『刹那に質問、刹那って半分鳥族なのに鳥料理や卵料理って食べるんですか?もしも食べたら共食いですよね?後、刹那ってデコ広いですね。これからはデコ那、デコッパチってあだ名でいいですよね!ww』はい、これはあいつへの質問ですね、どうぞ」
刹那「鳥と卵はよく食いますね、手羽先とか好きです、このあだ名で呼んだらパイルドライバー食らわしますよ?」
千雨「ぶっちゃけたよおい」
銀八「あと同じ読者からもう一つ『沖田の調教以来、刹那をのどかやゆえ以上の雌豚〇隷にしてくださいね。それとも肉〇奴隷でもOKですよ。原作のヒロインは沖田の好きなようにしてもいいですよ。(満面の笑顔)』はい、サド王子召喚」
沖田「すげ~燃えてきました、もう俺の部屋鎖だらけですわ。あ、肉〇奴隷はしませんね、俺はそんなことせずにただ純粋にサドりたいだけなんで」
刹那「純粋にサドるだけで人の行為じゃないでしょッ!」
沖田「うるせえ、デコ那ここでテメェの羽で手羽先作ってやろうか」
刹那「もうサドって来たッ!」

銀八「二通目『今回はアホ天パーの銀時のクソ野郎・・・あ!すいません、間違えました・・幼女大好き金髪巨乳好き変態野郎の銀時が本編に出てこなかったのですが、いったいどこで何をしてたんですか?(笑)まさか・・・エヴァとあやかを・・・は!!もしかしてネギを女装させて・・・・そうか!!そうだったんですね・・・銀さん・・・』どうしてこんなのばっか来るかな~? マジ殺して~よ、パソコンから通り越して殴りに行きたい」
ハルナ「良いネタ発見ッ! 銀×ネギ・・・・・・イケるッ!」
銀八「千雨、つまみ出せもしくは殺せ、ゴキジェット貸すから」
千雨「はいよ」
ハルナ「ゴホッ! ゴホッ! マジで止めてッ!」

銀八「三通目『ゴキジェットだけじゃ心許ないでしょ?ゴキブリ(ハルナ)にはホウ酸団子を食わせろばよく効きますよ。W』何この質問の連携プレイ? よしホウ酸団子誰か持って来い」
千鶴「先生、偶然持ってました」
ハルナ「だから、何で千鶴さん持ってんのォォォォ!?」
銀八「よ~し食え食え」
ハルナ「いや食わないよッ! 人間でも死んじゃうよッ!」
銀八「サド行け」
沖田「へい、おら覚悟しろよこの虫野郎」
ハルナ「ムゴッ!・・・・・・」
千雨「銀八、サドにホウ酸団子思いっきり口に突っ込まれてハルナが倒れた」
銀八「まあGだからしょうがない」

銀八「四通目『エヴァ様に質問です。万事屋の名誉的スポンサー(総括的な意味で)になる気はありません?あの緑髪の女の子みたいに。そんでもってスモークチーズ食えました?それから『急』では大暴れしてください。是非。それから精霊(髪留め方の)を使って傷を治せたりしたら便利だと思います。(正しくは逆行だけど。某オレンジ頭死神漫画のあの子ね。)』何か俺あてに質問こねえな・・・・・・はいチビ」
エヴァ「ていうあかスポンサーみたいなもんだぞ私は・・・・・・スモークチーズは銀時がいない時に食ってる、あと『急』で大暴れするのは私じゃなくて別のエヴァだ馬鹿者、傷を治す? 私は不死身だからそんなの必要ない」
銀八「声優ネタが多すぎるので少しは自重するように」
千雨「全然わかんねぇ・・・・・・」
銀八「同じ奴からもう一通『刹那に質問です。武 力 介 入お疲れでした。来年の映画も楽しみにしてますけど、ガンダムに乗った感想を教えてください。あと、今回の話(18話)で、この話がONAIRされたあと、詠春さんか刀子さんから「刹那(君)、もう少しちゃんと歌いなさい。(歌ったほうがいいんじゃないかな?)」という旨の電話ありませんでした?あれは酷いと思います。(元ネタはアニメ159話での銀八先生の質問解答です。)』はいまたあいつね、どうぞ」
刹那「え~別の刹那でしょコレ・・・・・・エクシアだかダブルオーライザーとか乗ってる人に聞いてくださいよ・・・・・・ああ電話は来ました、作者が歌詞知らないせいだって言ってすぐ切りましたがね」
沖田「俺はディスティー派ですね」
土方「俺はエアマスター派だな」
新八「僕はVですね」
千雨「あ~声優ネタ止めろやッ! 全然わかんねえからッ!」
新八「何だとッ!? あらゆるジャンルに精通する必要があんだよッ! もうちょっと勉強して来いやボケィッ!」
銀八「新八、新八、また読者に叩かれる」
新八「しまったッ! 今夜も枕濡らして寝ることになってしまうッ! 銀さん今のカットでッ!」
銀八・千雨「「いやそんなんないから」」

銀八「五通目『沖田、土方がのどか泣かした瞬間、殺せ。人気投票二位の力みしたれ。(つーか、一回地獄見せろ)』またサドかほらよ」
沖田「ああ、泣かす前に俺が泣かします、つか両方とも地獄見せる気ですしね」
千雨「銀八こいつ止めろってッ! どんどんすごい事連発してるぞッ!」
沖田「安心しろメガネ、お前の調教以来は来ねえからな」
千雨「そういう問題じゃないからッ!」 

銀八「六通目、『銀さん、龍宮のことをうざがっていますが、よければ俺にいただけませんか?くださる時は商品引き換えの宅急便でお願いします。』あんなのでも良ければ上げますが、上げてもすぐにウチに戻ってくると思うんですけど良いですか?」
龍宮「気がついたら先生の後ろにいる、それが私だついでに今日先生がトイレに行った回数は・・・・・・」
銀八「おいサドッ!」
沖田「ホウ酸団子テイク2ッ!」
龍宮「ゴフッ! ・・・・・・フ、さすが先生の世界の住人だやる事が容赦ない・・・・・・」
千雨「銀八、龍宮の奴一個丸ごと食った・・・・・・」
龍宮「・・・・・・普通の団子かと思ってつい食ってしまった・・・・・・」
沖田「旦那、バカが死にましたぜ」
銀八「人間にも効力あるんだね~」

銀八「同じ奴からもう一通『沖田隊長、3Aのメンバー以外に調教したいとしたら誰ですか?どんな方法を使いたいかも詳細付きでお願いします。』何回も呼んで悪いな」
沖田「良いですよ別に、3A以外ですかぃ? そうですね~一人言うとしたら『エミリィ・セブンシープ』で」
銀八・千雨「「誰、それ?」」
沖田「魔法界編の奴ですね、旦那のツレの金髪のデカイ方とキャラ被ってる奴でさぁ」
銀八「んだと、それは許せねえな、よし俺も協力してやる」
沖田「旦那がいれば心強いですね、じゃあ行きましょうか」
銀八「おう」
千雨「行けるかァァァァ!!」





[7093] 第二十訓 銀と金
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:0010dcfa
Date: 2009/08/27 09:32
授業が終わり放課後、雪広あやかは毎日の習慣のように万事屋へと向かった。
別に毎日行くほど万事屋には仕事は入ってこない、だが彼女は当たり前のように来ている。理由は一つ、そこにいる男に会いに行くためだ
その男とはまだ短い付き合いだが二つわかることがある。一つは見た目不真面目で中身もグータラだが心根は優しく人の絆を大切にし、親身になって接してくれる人だという事。
そしてもう一つは

自分はそんな男に惚れている事

万事屋の部屋のドアを開ける。そこにいたのはソファに寝転がってジャンプを読んでいる男、着物姿の、今は教師ではない坂田銀時だけだった。よく見ると今日はいつも銀時と一緒にいるはずの自分のクラスメイトの一人がいない。

「銀さん、千雨さんは?」
「ああ、今日はお前しか来てねえよ」
「珍しいですわね? いつも銀さんにくっついてるあの人が」
「確かネットアイド・・・・・・じゃなくて家で宿題片付けるだとよ」

銀時が途中で言おうとした事を訂正して言い直す。あやかは彼の様子を不審に思うが別にここにいない人の事情を聞くのも気が引けるので追求しようとはしなかった。
相変わらず読書に夢中の銀時はジャンプから目を離さずあやかに話しかける。

「オメーも律儀に来なくて良いんだぜ、もうすぐテストか何かあるんだろ? 大丈夫かお前?」
「珍しく教師みたいな言い方ですね」
「いや俺教師だからね、設定忘れかけられるけど一応ここでは教師だから、今は万事屋銀ちゃんだけど」

体を起こして銀時は、ジャンプをテーブルに置いて向こうのソファに座ったあやかにツッコミを入れる。

「今日は帰って良いぞ、どうせ今日は仕事来ねえだろうし」
「そうですか・・・・・・銀さんはどうするんですか?」

あやかの質問に銀時はしばらく考えた後、ダルそうに答える。

「俺は帰る前にメシ食いに行こうかね? 久しぶりに外食してくる」
「お一人でですか?」
「一緒に行くか?」
「えッ! ふ、二人だけでッ!?」
「まあ二人しかいねえからそうなるな、何処で飯食いに行く? JOJO苑なんかには行かねえからな」
「何処でも良いですッ! 早く行きましょうッ!」
「やけに嬉しそうだな・・・・・・そんなに腹減ってんのか?」

嬉しそうにはしゃいでいる彼女を見て、飯を食いに行くだけで何でこんなにハイになっているのか、銀時はわからない様子だった。

銀時はまだ気づいていない、彼女が自分に好意を持っていることに、そして今回はその彼女にとって初めて二人だけでのお出かけなのだから。






















第二十訓 『銀と金』

スクーターの後ろにあやかを乗せて銀時が向かった先は、彼がよく行く安い甘味や高い甘味も一通りそろっている、行きつけのファミレスだ。
ファミレスについた二人はスクーターを置いて中に入る。店員の指示で端っこの四人用の席に座り、銀時は店員が持ってきたメニューを開く。

「最初に言っとくが、高い物はオゴらねえからな、俺の財布を気にかけて選べよ」
「あれ? オゴッてくれるんですか?」
「・・・・・・いやまあ何だ? いつも俺の所に来てくれてるお礼的なもんだよ」

あやかを見ずにメニューで顔を隠して照れ臭そうに頭を掻いてる銀時を見て、あやかは微笑む。彼なりの生徒へのねぎらいなのであろう。

「わかりました、私は銀さんと同じ物で良いですから」
「あ? 俺と同じで良いのか? 自分で選ばなくて良いの?」
「こういう所来た事ないので・・・・・・・今日は全部銀さんに任せます」
「は~金持ちお嬢様は大変だね~、ていうかクラスのやつ等と行かねえのかよ?」
「私が住んでる部屋は、千鶴さんがいるから料理に関してはあの人がいるから安心ですわ」
「ふ~ん、あ、すんません前作ってもらった奴を二つお願いしま~す」

あやかの話を頬杖をついて聞いていたら、店員が通りかかってきたので銀時は注文してその後すぐ彼女に顔を戻す。

「千鶴って、あの中学生には見えねえ、下手すりゃ俺より年上に見えそうな奴だろ」
「それ本人の目の前で言わないほうがいいですわよ・・・・・・」
「あの女、胸デカ過ぎだろ? あんなにデカイとね、男としては目のやり場に困るんだよ本当に」

銀時がブツブツと文句を言っている言い分にあやかは目を細める。

「銀さん、千鶴さんの胸ばっか見てるんですか・・・・・・?」
「俺だけじゃねえよ、男はな~デカイ爆弾を見ると思わず目がそっちに泳ぐ生き物なの、あんなに大きいとそりゃつい見ちゃうでしょ? モノホンですか? どんだけ牛乳飲んでそんなに胸・・・・・・あれそういえばお前も結構デカ・・・・・・どぶッ!」

銀時が語り終えるうちにあやかがテーブルの上にあった小皿を銀時の顔に円盤のように投げつける。小皿は銀八の鼻にクリーンヒットし、ポタポタと鼻血が出てくる。

「いって~な、何だよ何か気にさわる事言ったのかよ?」
「言いまくりです、そんなにいやらしく鼻血を出して」
「いや鼻血はお前のせいだろうが」

銀時があやかから受け取ったポケットティッシュで自分の鼻から出る血を拭っていたころ、店員が注文していたものを持ってきた。テーブルの上にドンと置かれたとき、あやかの頬は引きつる。

「コレ・・・・・・何ですか・・・・・・?」
「何って宇治銀時丼だよ、この店で俺が頼んだ銀さん専用のメニューだ」
「ご飯の上に宇治金時が乗ってますわね・・・・・・」
「だから宇治銀時丼なんだよ」
「いや、炭水化物と炭水化物のキメラ融合じゃないですかコレ・・・・・・?」
「食の革命と言っても良いほどの斬新的かつエキセントリックな味だ」

銀時はそう言って箸を取って宇治銀時丼にがっつく、美味そうに食ってる銀時を見てあやかは唖然とする。そして自分の目の前にも食ってみろと言わんばかりの宇治銀時丼が待ち構えていた。

「忘れてましたわ・・・・・・この人の味覚は少しおかしいと・・・・・・」

深く後悔した後、あやかは意を決して箸を掴む。宇治銀時丼から一口分取る、宇治銀時と白米の合体、彼女の14年間の生涯に食べたレシピにそんな料理というより嫌がらせにしか見えない物体を食べるのはもちろん初めてである。
恐る恐る彼女はそれを自分の口に入れる。口の中で宇治金時と白米が見事に喧嘩している、噛めば噛むほど嫌な食感。そして飲み込んで一言

「無理です・・・・・・オゴッてくれたのに悪いですが・・・・・・」
「何? もうギブアップ?」
「人の食べ物というより猫のエサに近いです・・・・・・よく食べれますわねこんなの・・・・・・」
「まあ大人の味だからな、ガキにはまだ早え。お前の分も食ってやるよ」
「すみません、お願いします・・・・・・」

銀時は彼女の丼をとり一気にがっつく。丼は数分で空になり、その後つまようじで歯の隙間を洗っている銀時を見てあやかは唖然とする。

「よくもまあ平気で食べれましたわね・・・・・・向こうの世界でもそんなの食ってたんですか・・・・・?」
「まあな、しょうがねえな代わりにアイス食わしてやるよ、ここで一番安い奴だけどな」
「何でも良いですよさっきの奴以外は・・・・・・」

あやかは苦笑して銀時の提案を承諾する。しばらくして、彼女の目の前に小皿に乗った丸いチョコアイスが現れた。それをスプーンで食べながらあやかは銀時の頭の銀色の髪をみてふと思った。

「そういえば銀さん銀色の髪って地毛なんですか?」
「ああ、生まれつきだよ、お前の金髪はどうなのよ?」
「私も地毛です、クォーターですから」
「クォーター?」
「体の四分の一に異人の血が入っているって事ですよ、だから元の毛が金髪なんですよ」

彼女の説明に「へ~」と銀時は頷いてあやかの髪を見て、おもむろに向こうに座っている彼女の金髪に手を伸ばし触ってみる。いきなり髪を触られてあやかは少々顔を赤くした。

「サラサラヘアーじゃねえか、良いよな~俺なんかこの世に生を受けた瞬間から天パの呪いにかかっちゃったんだよ、もう雨降ってるとクリンクリンになるんだよ」
「あの銀さん・・・・・・私の髪を指に絡めてクリンクリンにしようとするの止めてください・・・・・・・」
「黙れサラサラヘアー、クリンクリンヘアーの苦しみをお前にも味合わせてやろうか」

銀時があやかの髪を自分の指に絡めて遊んでいるころ、外はすっかり雲行きが怪しくなってポツポツと雨が降ってきた。それに気づいた銀時は苦い表情を浮かべる。

「チッ 俺の頭もこれでクリンクリンだよ、傘はねえし当分ここで雨宿りだな」
「良いですわよ、私、銀さんに色々と聞きたかった事があるんです、髪だけじゃなく色々と」
「何よ?」
「ただの世間話ですよ、銀さんも結構この世界にいて随分たちますからね・・・・・・」

あやかはテーブルに頬杖をついてアイスを食べながら話を続ける。

「学校の方は大丈夫ですか?」
「それって普通教師の俺がするんじゃねえの? 大丈夫だよガキ共相手に、俺は子供に好かれる体質だから」
「のどかさんとは大丈夫ですか?」
「あいつは別で」
「夕映さんとは大丈夫ですか?」
「あいつは別で」

銀時の返答にあやかはため息をつく。銀時にとって宮崎のどかと綾瀬夕映は何かと相性が悪い、方や恐怖、片や嫌悪で二人は銀時を見ているのだ。まあ見た目がガラの悪い銀時を見れば普通の人はそう感じるのが常識だが

「のどかさんはともかくせめて夕映さんとは少しは仲直りとかして下さい・・・・・・最近は千雨さんとも険悪になってきているんですから・・・・・・」
「何で千雨がそこに出てくんだよ? 別にあのデコといざこざがあるわけでもねえのによ」
「千雨さんは銀さんの事を見た目だけで悪く言われるのが我慢出来ない性格ですから・・・・・・まあただの口喧嘩する程度ですけど・・・・・・・」

自分の影響で千雨と夕映が仲悪くなっていることに銀時は「ハァ~」と重い息を吐いた。

「別に俺の事なんかであいつがキレる必要ねえだろうに・・・・・・」
「千雨さんにとって・・・・・・銀さんは絶対的な存在ですから」
「あいつにそう思われるほど俺は立派な人間じゃねえよ」
「立派ですわ、現に銀さんのおかげで千雨さんが自分から他人と会話をするようになったんですから」
「それは俺のおかげじゃねえよ、あいつ自身がやったことだ」

手を横に振って銀時は否定する、その手をあやかは両手で捕まえて固く握り真正面から銀時を見た。

「あの人が成長できたのもあなたがいたからこそ出来たことです、それに私も・・・・・・銀さんのおかげで成長できたような気がするんです・・・・・」

後半は顔を銀時から反らして恥ずかしそうに言う。銀時も照れくさそうに頬をポリポリと掻く

「立派か・・・・・・もし俺が立派なら昔あんなバカしなかったよ」
「・・・・・・銀さんの世界でやっていた戦争ですか・・・・・・?」
「ああ、あの時に色んな大切なモン無くしちまったからな」

神妙な顔をしているあやかに、店の天井を眺めながら銀時は話を続ける。

「敵をどんだけ殺しても失ったモンか帰ってこなかった、それでもガムシャラになって敵を斬った、だが斬れば斬るほど俺の周りの奴等は減っていく・・・・・・」
「・・・・・・銀さんが戦争に行くのに親は反対しなかったんですか?」
「・・・・・・俺に親はいねえよ」
「えッ! ・・・・・・すみません知りませんでしたわ・・・・・・」

銀時の突然の告白にあやかは驚いた後すぐに謝る、彼に親がいなかった事なんて今まで知らなかった・・・・・・
だが銀時は少しも気にしていない様子で彼女の両手から右手を引き抜き、自分の両手を首の後ろに回す

「親がいなくても俺みたいにその場その場で生きていけるんだ、勉強しろよ」
「てことは銀さんはずっと一人で生活していたんですか・・・・・・?」
「親の代わりに俺を育ててくれた人がいたからよ、メシはなんとか食っていけたよ」
「そういう人がいたんですか?」
「まあな・・・・・・・」

天井を見ながら銀時は自分を育ててくれた人を思い出し、物思いにふけっている様子だ。そんな様子の銀時を見てあやかは興味本位で銀時の育ての親がどんな人だったか聞いてみたかった。

「銀さんを育てた人ってどんな人だったんですか?」
「変わり者だよ、小汚い俺を拾って、つまんねえ授業聞かしたり、剣の稽古をしたり、色々教えてくれたな・・・・・・」
「授業って、学校の人か何かですか?」
「ん~そんなもんかね・・・・・・」
「そうなんですか・・・・・・フフ」

あやかはそれを聞いて少し笑う、その反応に銀時は首を傾げた。

「何かおかしいことあったか?」
「いえ、自分の教え子が教師になるなんてその人がここにいたら誇りに思うんじゃないですか? 一度会ってみたいですわねその人に」
「そう? 一度も俺、教師みたいな事してねえけど?」
「授業を教えるだけが教師の仕事じゃありません、生徒の精神を成長させる道しるべを作るのも教師の一環です、きっとなれますわよ、その人の志は銀さんに受け継がれているはずですから」

あやかの言い分に銀時はしかめっ面で頭を掻いて「何を根拠にして言ってんだよ」っと軽くツッコンだ。

「まあ、その人の元で教育を受けたのは俺だけじゃねえ、前に教えたろ高杉って奴をよ」
「え? 高杉ってあの刹那さんが嫌ってる人ですか・・・・・?」

高杉と聞いてあやかは眉間にしわを寄せて思い出した、前に銀時に聞いたかつての幼馴染であり戦友でもあった高杉晋助。彼女と同じクラスの刹那に接触してたぶらかし、銀時と戦わせた張本人である。あやかはまだ顔は見たことないが、悪人というイメージだけが出ている

「前から思ってたんですがその高杉って人が銀さんと一緒にいたっていうのが想像出来ませんわね、会ったことないから詳しくわかりませんが、まあ会いたくもないですが・・・・・・」
「会わなくていいわ、あんな奴・・・・・・あともう一人いんだよヅラとかいうバカが」
「ヅラ?」
「話してなかったな、ヅラっていうバカがいてよ、今も高杉みたいに攘夷活動やってるがこっちの方は全然大丈夫だから、どうせ今でも珍獣連れて江戸でバカやってんだろ」

銀時の言い分にあやかはそのヅラという人に少し哀れと感じる。銀時が言うには高杉と同じ攘夷志士らしいがバカだから問題ないらしい・・・・・・そっちの人はどんな人か一度会ってみたいと彼女は思っていると銀時が思い出したかのように手をポンと叩く。

「思い出した、いやこいつは攘夷戦争の時からの知り合いなんだけどよ、坂本っつうもう一人のバカがよ」
「またバカですか・・・・・・やっぱり類は友を呼ぶんですわね」
「それ俺がバカだって事かコノヤロー、俺はあいつほどバカじゃねえ、あれは真性のバカ、スペシャルバカだぞ、今頃宇宙戦艦乗って船の中でリバース連射してるんだろうよ」
「宇宙戦艦? あ~そういえばそっちではそういう文明が発達しているんでしたっけ?」

銀時の世界の文明とこちらの世界の文明はかなり違う、あちらは天人によりハイテク技術がかなり搭載されているが、こちらの世界ではそんなもの存在しない。最もこちらには魔法使いが存在するのだが、彼女みたいな一般人には接触する機会は皆無だ。

「あと忘れちゃいけねえのが万事屋の奴等だな」
「万事屋? 私達みたいな人達がいたんですか?」
「まあな、クーフェイと超みたいなチャイナ娘の神楽とツッコミ地味眼鏡の新八、ドッグフード5袋平らげる暴飲暴食巨大犬、定春・・・・・・本当に俺の周りって変なのばっかだな」

銀時が悪態をつきながらかつての仲間を思い浮かべている風景を見てあやかは何処か微笑ましく思えた。

「銀さんもそっちの世界では友達がいっぱいいたんですわね」
「あんなの友達じゃねえよ一緒にすんなバカがうつる」
「フフフ、でも楽しそうに仲間の話をしている様に見えましたが?」
「そうか? まあお前らみたいに変な奴ばっかって事だよ」
「んな! 私は変じゃありませんッ!」

あやかが突然立ち上がって銀時に叫ぶが彼はぶっきらぼうに返す。

「見た目中学生に見えないお前の何処が普通なんだよ」
「エヴァさんよりはマシでしょ、あの人は中学生というより小学生です」
「いやどっちもどっちだから、よくよく考えれば変な奴ばっかだな俺達のクラス、A組に普通の奴いねえのか?」
「無双シリーズ一本出来るぐらい個性的なメンバーが揃ってます」
「コーエーに頼んで作ってもらって来い」

それからしばらく銀時とあやかが談話していると、外はどんどん暗くなっていく、雨はもう止んでいた。

「お前としゃべっている間にすっかり夜になって来てるじゃねえか、『世界まる見え』が始まる前に帰ろうぜ」
「銀さんと二人だけで喋っているとこんなにあっという間に時間が過ぎていくんですわね・・・・・・」
「お前と二人だけで一緒にいるのって滅多にねえもんな」
「は、はい・・・・・・」

そういえばずっと二人だけで時間を過ごしていたことに気づいたあやかは、急に緊張して銀時の顔をまともに見れず下を向いてしまった。だが銀時はそれに気づかず財布の中身をチェックしながら彼女に話しかける。

「そういやお前って俺以外の男と遊びにとか行かねえの? 女子校でも男作れるだろ?」
「!!! い、行くわけないでしょッ! 私をそんなに軽い女だと思っているんですかッ!?」
「・・・・・・どうした急に?」
「え? あ、あのすみません・・・・・・私は銀さんやネギ先生ぐらいとしか異性との付き合いは無いので・・・・・・今はそういう事に興味は・・・・・・」
「最初からそう言えよ・・・・・・」

急に立ち上がって叫んだあやかに銀時は呆気に取られて口をポカンと開けたのを見て、慌てて彼女はごまかして顔を赤く染めながら席に戻り、テーブルに置いてあったポッドから、水をコップに入れ一気飲みする。

(本当は異性に興味あるんです・・・・・・でも異性というよりあなただけに私は・・・・・・)
「まあお前結構綺麗だし、タメだったら絶対口説こうとしてたな」
「ぶッ!!!」

水を飲んでいたあやかに銀時がなんとなく言った言葉を聞いた瞬間、思わず口から水を銀時に向かって吹き出してしまった。

「ケホッ! ケホッ! い、いきなり何てこと言うんですか銀さんッ!」
「いきなり何で俺に水をぶっかけるんですかあやかさん?」
「ああッ! す、すみませんッ! 店員さんタオル下さいませんかッ!?」

吹き出した水を直撃した銀時は、ポタポタと滴を落としながら無表情であやかを見る。
彼女は慌てて店員からタオルを持ってくるようお願いする。程なくして慌てて店員がタオルを持ってきた。

「ごめんなさい・・・・・・綺麗って言われて気が動転して・・・・・・」
「もういいから、ていうか何でお前がタオル持ってんだよ、自分で拭くから」
「いいえ、私がしでかした事ですから・・・・・・とりあえず服はそんなに濡れてなくて良かったですわ・・・・・・」
「顔面は直撃だったけどね」

店員からタオルを受け取ったあやかは銀時の隣の席に移動して彼の頭を拭く、確かに服はそんなに濡れていないが顔はびしょびしょだ。

「もうちょっと優しく拭いてくれねえか? 俺の髪デリケートだからさ」
「デリケートってこのゴワゴワする髪の毛がですか?」

銀髪天然パーマをあやかの方に向けて銀時はしかたなく彼女に拭かせる。まさか雨宿りの為にいる場所で濡れるとは予想だにしなかったであろう。

「ハァ~・・・・・・・そういえばお前に聞きたかった事あんだけどよ?」
「何ですかこのタイミングに?」
「俺が自分の世界に帰ったらどうする?」
「・・・・・・え?」

銀時の頭を拭いていたあやかの手がピタッと止まる、あまりにも予想外の質問に一瞬戸惑う。彼の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった、ずっとここに住んでいるのかと思っていたからだ

「俺もここにずっといるわけにもいかねえからさ、さっき前の万事屋メンバーのこと話したろ? あいつ等が待ってると思うからよ、色々あるからまだ帰れねえけど、一応聞いておこうと思ってさ」
「そうですわよね・・・・・・銀さんを待ってる人達もいるんですよね・・・・・・エヴァさんとか千雨さん、朝倉さんには聞いたんですか?」
「千雨と和美には聞いてねえが、エヴァはついて行くってよ、お前はどうする? 俺は二度とこっちに帰ってこれない可能性もあるからこっちにダチとか親がいるお前はここに残ったほうが・・・・・・って!!」

銀時が言い終わるうちにあやかは彼の首に手を回して抱き寄せる。突然の抱擁に銀時は一瞬何事かと混乱している。

「えッ! 何ッ!? 何なのッ!? 何ですかッ!?」
「答えは決まってます・・・・・・」
「ん?」
「エヴァさんが銀さんと一緒に行くんなら、私も行きます」
「・・・・・・いいのか?」
「どうせこの質問を千雨さんにしてもあの人は100%一緒に行くって言いますし、ここに帰ってこれない可能性もあるかもしれませんが・・・・・・でも私は・・・・・・・あなたとずっといたいから・・・・・・」

それを聞いて抱き寄せられたまま銀時はしばらく黙り込む。しばらくして

「わ~ったよ、帰る時期はわからねえが、もしも帰るときは江戸に招待してやる」
「本当ですかッ!?」
「向こうの奴等と喧嘩すんなよな っておいッ!」
「今の言葉忘れませんからねッ!」

自分の首をあやかがきつく抱きしめるので銀時は必死にもがく、必死になる理由は一つは首を絞められて苦しいことと、もう一つは

(胸ェェェェ!! こいつの胸がデカすぎて圧死するッ! どんなTOLOVEる展開ッ!? 苦しッ! マジ苦しいッ! 胸に挟まれて死ねるってのは男の本望だけど自分の所のガキに挟まれて死ぬなんて御免だっつーのッ!!)

銀時があやかの豊満な胸で圧死の危機になっているのに気づかず彼女が嬉しさのあまり我を忘れていると・・・・・・

「アンタ達何やってんの・・・・・・?」
「「・・・・・・え?」」

突然知っている声が聞こえてあやかが反応し、銀時はやっと開放されるが、振り返るとそこには知っている二人組のアスナと木乃香が口をポカンと開けて見ていた。

「アスナさん、木乃香さん・・・・・いつからそこにいたんですか・・・・・・?」
「いや・・・・・・離れで食べてたら向こうで何か騒がしいと思って来てみたらアンタ等が・・・・・・・何ファミレスでイチャついてんのよ・・・・・・」
「ラブラブやな~二人とも」





よくよく考えれば何かと騒いでいたことにようやく二人は気づいた、周りを見ると数人の客がコソコソとこっちを見ていた。二人はそれを呆然と眺める。しばし時が過ぎやっと銀時が三人に重い口を開いた。

「・・・・・・・い、いや~そういうのじゃなくてさ・・・・・・・」
「そういうのってどういうのよ? 薄々勘付いてたけど天パ、アンタ生徒に手出しすぎ」
「違えよッ! 何で俺が中学生相手に手を出さなきゃいけねえんだコラッ!」
「ウチ、銀ちゃんってエヴァちゃんと付き合ってると思ってたわ~」
「そこッ! 根本的に勘違いしてんじゃねえよッ! おっとりタイプのお前でも度が過ぎると容赦なく銀さん手を出すよッ! いやそういう意味じゃないからねッ!?」

銀時が誤解を解こうと席から立ち上がり、二人に必死に叫んでいると後ろで座っていたあやかはうつむいて、自分がやっていた事に今更思い出していた。

「銀さんを自分から抱きしめるなんて・・・・・・しかもあんな事言って・・・・・・もう駄目、恥ずかしくて・・・・・・・ああ・・・・・・・」
「あやかァァァァァ!! 何でまた気絶してんだテメェッ!? 起きろォォォォ!! 俺が生徒に手を出さない人間だと証明してくれェェェェェ!!」

自分なりの行為の数々に赤面してあやかはついに気絶して席のソファの上に倒れてしまった。銀時が彼女を持ってゆさゆさと振って起こそうとするが目蓋は一向に開かない。それを目を細めて見ていたアスナが銀時に近づく

「ねえアンタっていいんちょの事どう思ってんの・・・・・・?」
「駄目だこりゃあ、起きるまでここにいるか・・・・・・あ? 自分の生徒に決まってんだろうが」
「・・・・・・じゃあいいんちょはアンタの事どう思ってると思う?」
「知らねえよ、教師とか上司とかそういう感じじゃねえの? でも俺の所ににずっといたいって言ってたな・・・・・・そっか、もう就職先を俺ん所の万事屋に決めたんかね?」

ぶっきらぼうに答える銀時を見てアスナは「ハァ~~」とため息をついた

「アンタどんだけ鈍感なのよ・・・・・・木乃香、このドがつくほどの鈍感はもうほっときなさい、ただの天然ジゴロよこの天パ」
「鈍感には最初からドはついてるだろうがバカレッド、つーか鈍感ってどういう事だコラ」
「うっさい細かい所にツッコミ入れるな、アンタの事よこのド鈍感、じゃあ帰るわよ」

そう言ってアスナは首を傾げてる銀時を尻目に「銀ちゃん、程々にな~」と言っている木乃香を連れて銀時の視界から消えていった。

「俺が鈍感だと? 言っとくけど走るの速えんだぞ、何なら徒競走で勝負してやろうかあのバカレッド」

会計を済ませて店を後にする二人組を眺めながら銀時はブツブツと呟やきながら気絶しているあやかの方に顔を戻す。

「こいつ気絶症なのかね・・・・・・」

あやかの頭を自分の膝に置いて彼女の金髪を撫でながら銀時はポツリと呟く。

「俺の所にずっといたいか・・・・・・どんだけ万事屋家業が大変なのか知らねえのかよ・・・・・・・まあコイツと一緒にいるのも悪くねんだけどな・・・・・・」

少し笑って銀時は呟き、店員に自分の分と彼女が起きた時のためのパフェを注文する。
ふと窓を覗いて空を見る。空に金色の三日月、少し濡れている銀時の銀髪は金色の光によって少し輝いていた。





















場所変わって麻帆良市内の何処かの平原。そこの大きな木の下で人影がポツンと立っていた。その人影に近づくもう一つの人影

「すみません今日は色々と用事が会って来るのに遅れちゃて・・・・・・」

人影が、ネギ・スプリングフィールドが木の下にいる人影に申し訳なさそうに喋りかける。それを聞いて木の下に立っていた人影はゆっくりと動いてネギに近づく。

「別に良いよ、君は別世界の住人の俺を拾ってもらった上に飯を毎晩ここに持ってきてくれる、俺がここにいる事を一切他言無用にするのを守っててくれれば、俺は文句は言わない」
「ありがとうございます、それにしても毎晩僕の修行に付き合ってもらって悪いですね・・・・・・」
「俺は自分の準備体操としか考えてないから、所で毎晩家を出て同居人にはバレないの?」
「アスナさんと木乃香さんには夜勤で土方さんって人と学園を見廻っているって言ってます、まあ今日は二人とも外食に行ってます」

ネギと喋る人影は男の声だった。幼稚な無垢な喋り方をする不思議な男、実はネギはこの男と会ってまだ数週間ぐらいだ。男は木の下から三日月を眺める

「そんなんで信用するんだね・・・・・・でも何でそこまで君は強くなろうとするの?」
「前に話しましたよね? 僕にはサウザンド・マスターっていう英雄のお父さんがいるって事」
「知ってるよ凄い魔法使いだったんだろ、一度戦ってみたいな~」
「それと僕と同じクラスを担当している、あなたと同じ世界の人間の人」
「銀髪天然パーマの侍・・・・・・だったよね? フフフ」

男が自分が言った事に口の笑みを広げる。ネギはその笑いの意味によく理解できなかったが話を続ける。

「僕はあの二人のように強くなりたい、銀さんが『高杉』とかいう人がいるからこの学園を護っていかなきゃいけないって言ってたんです、だから僕も生徒の事を・・・・・・・」
「そのお侍さんのように何かを護れるように強くなりたいんだ?」
「・・・・・・はい」
「ふ~ん、まあ子供らしいのか大人っぽいのか・・・・・・俺にはそういうの理解できないけど、君の修行には付き合ってあげるよ、と言っても組み手だけだけどネ」
「組み手だけでも色々と勉強になりますよ」
「君は飲み込みが早いから面白いよ、俺の技をどんどん吸収していくのは才能って奴だろうね、さすが英雄の息子くん」

男は自分の一つに結ってある三つ編みを揺らしながら歩いて木の下から現れ男の姿を月が照らすので、青い目とサーモンピンクの髪がより目立っていた。その男の背中にネギが話しかける

「お師匠さんはどうして僕に色々と教えてくれるんですか?」
「アハハ、そのお師匠さんって言われるの苦手だな~、俺は君に何も教えてないよ君が俺の技を見て覚えているだけじゃないか、でもまあ俺が本気になったら君なんかあっという間に殺せちゃうけどネ、弱い奴に用はないよ」

男がこちらに振り向かず物騒なことを言うので思わずネギは身震いする。

「怖い事言わないでくださいよ・・・・・・じゃあなんでお師匠さんは僕を殺さずに、逆に僕を強くさせようとしているんですか?」
「う~ん、一つは俺は子供は殺したくないんでね、強い子になる可能性があるから、二つは君の才能に興味があったこと、その才能があればきっと凄く強くなれるっと思ったから、それともう一つは・・・・・・」

男がゆっくりとネギに振り返り笑顔を見せる

「強くなった君と本気で戦えたら面白そうだなと思ったから」

それを聞いてネギは苦い表情を浮かべる。現在の二人の戦闘力の差はまさに雲泥の差だからだ

「無理ですよ今の僕ではまだお師匠さんには・・・・・・」
「だからお師匠って呼ばなくていいよ、名前で良いから」
「神威さん・・・・・・ですか?」

自分の名前をネギに呼ばれて神威と呼ばれた男は「そうそう」と笑顔で頷いた

「俺の名は誰にも言わないようにね、君の尊敬するそのお侍さんにもだよ」
「わかってますよ・・・・・・」

神威はそれを聞いて不敵にニンマリと笑う、と言っても元々笑顔なのだが。

「じゃあ始めようか、うっかり殺しちゃうかもしれないけどその時は許してね」
「いや死んじゃったら、許すとか許さないとかそういう問題じゃないんで・・・・・・」
「ここで死んだら君はその程度の人間で、俺の見込み違いだったって事だしネ、検討を祈るよ英雄の息子くん」

男はゆっくりと杖を構えるネギと対峙する体制に立つ。
そんな二人を真上から三日月はじっと眺めていた。

「あのお侍さんのように強くなってもらわなきゃね・・・・・・」

神威の目が一瞬見開く。
物語は人と人の絆を結ばせながら戦いの舞台へと進んでいく。



























20話突破記念 教えてコーナー特別版
教えて万事屋の皆さんのコーナー

「どうも皆さん志村新八ですッ!」
「神楽ですッ!」
「いや~こうやって出るのって久しぶりですね、という事で今回は20話突破記念を称して僕ら初代万事屋チームが仕切ろうと思います」

久しぶりの出番にテンション高めの新八と神楽をよそに銀時は「ふぁ~~」っと大きなあくびをした後喋り始める。

「それにしてもウチも20話か~もうルーキーじゃなく中堅当たりになったんだなこの作品も・・・・・・本当毎話綱渡りで送ってるよ~」
「確かにそうですねここまで来れたのはもう奇跡に近いですね、読者の応援が無かったらとっくに終わってますもんねこの作品」
「でも一番キツかったのは外伝の遊戯王のネタでダダスベリになった事ネ」
「そういう事言わないで神楽ちゃんッ! この作品の数多い黒歴史の一つをサラっと言わないでよッ!」

ソファから立ち上がって新八は向こうに座って酢昆布を食べている神楽にツッコむが今度が銀時が口を開く。

「ああ、遊戯王知ってる読者『ウィル』さんと『白々燈』さんしかいなかったのはビックリだったな、アレってもうちょっとメジャー級のゲームだと思ってたのによ」
「作者がマニアックすぎるネ、変な所にこだわるから読者がついていけなくなるアル」
「よしだったら今度からマジギャザで勝負だ、遊戯王ネタは何かと東方よろず屋と被るからこっちで行こう」
「何でカードゲームで話進めてんだよッ! ていうか勝負すんな、そんなんでッ!」

新八は銀時と神楽にツッコミを入れてため息をつく

「今回は20話からは色々とやっていく事を紹介する予定だったんでしょ? 何でかつての惨劇を思い出してんですか? しっかりして下さいよ、じゃあ僕から何をやっていくか紹介しますねまず一つ目、質問コーナーが色々とパワーアップしますッ!」
「「は?」」

新八の紹介に銀時と神楽は首を傾げて、意味がわからない様子だ。それに気づいたのか新八は人差し指を立てて二人に話を続ける。

「簡単に説明すると今までは質問を送ってくれた読者の皆さんのハンドルネームは未公開、まあ例外もあるんですけど・・・・・・今回からは普通に名前を出すんですよ、よくよく考えれば原作では普通に名前言ってましたしね・・・・・・」
「なるほどそうやって『こいつはこんな質問書いてますよ』とさらけ出すんだな」
「いやさらけ出すなんて言わないでくださいよ・・・・・・『この人達のおかげでこのコーナー成り立ってます』って意味ですよ」
「何か地味なパワーアップネ、もっと変わることないアルか?」
「え~とそうだね、来た質問は出来るだけ全部受け答えするようになった事かな?」

新八が言ったことに銀時は不満そうに口を開く。

「何か地味だなおい、もっと何かこう『人気投票やります』とか『同人誌化します』とかねえのかよ?」
「んなわけないでしょう、そんな事やってもまた惨劇になるだけでしょうが」
「新八の紹介だからしょうがないネ、所詮地味キャラは地味な事しか言えないアル」
「何だそれッ!? 地味キャラに対して酷いこと言うなッ!」

神楽の一言に新八がいち早く反応する。それを見て銀時は深いため息をつく

「お前ももうちょっと目立てれば千雨に勝てる可能性があるのにな」
「何言ってんですかッ!? もう勝ってるでしょッ!? あんなの女だからってチヤホヤされてるだけですよッ!!」
「ただのザクとシャアザクぐらい性能の差があるヨ」
「三倍も負けてんの僕はッ!?」

ザクとシャアザクの差に落ち込む新八はほっといて、銀時は耳を小指でほじりながら口を開く。

「よしじゃあ今度は俺が意外性の高いモンっていうのを紹介してやるよ」
「意外性の高いモン・・・・・・? 何ですかそれ?」
「教えてコーナーが何とッ!・・・・・・・パワーダウンします」
「へ~確かに意外性が高ってオイィィィィ!! 何だよここでパワーダウンってッ!」
「次回予告に出るゲストキャラをカットします、実はなあそこで出るゲストキャラは次回では何とメインの話になるという隠れたシステムがあってよ・・・・・・」
「いやもうほとんどの人が知ってる事だからッ! 勘の良い読者は4、5話でもうそのどうでもいいシステムわかってるからッ!」
「そうそう勘のいい読者がいるから、ネタバレになりすぎるんだよこれ」
「なんだよそれッ! ただのネタバレ防止かよッ!」

新八がツッコミを入れまくっていると今度は神楽が「ハイハイ!」と手を上げる。

「どうしたの神楽ちゃん?」
「私も紹介することあるネッ!」
「どうせくだらない事じゃないの・・・・・・?」
「お前の存在よりはくだらなくないアル」
「いやそれどういう意味だコラァァァァ!!」

毒舌攻撃をしてくる神楽についに新八が彼女に掴み掛かろうとするが軽く避けられ更に金的に蹴りを入れられてしまった。新八はその場で仰け反りゴロゴロと転がる

「ヌゴォォォ・・・・・・!! お袋さん、二つのお袋さんが別居しそう・・・・・・・」
「フン、キン○マ蹴られたぐらいでオーバーすぎて笑えるネ、それでも男アルか?」
「神楽ちゃん・・・・・・男だからこうなるんだよ・・・・・・」

悶絶している新八をよそに神楽は銀時に喋りかける

「銀ちゃん、私大切なお知らせがあるネ」
「どうした神楽急に改まって・・・・・・」

不振な態度の神楽に銀時は頭に「?」を付ける。しばらくして彼女は目をカッと開いて

「映画のエヴァンゲリオン観に行ってきたアルッ!」
「何処が重要なお知らせェェェェ!? 心底どうでもいいんですけどォォォォ!!」
「暇だから観に行ってきたけどマダオそっくりな奴がいたアル、まるでダメなオヤジだったアル」
「まあ、声も同じだし見た目も似てますしね・・・・・・」

ようやく復活した新八がツッコミに参戦する。そんな時終業のベルが教室に鳴り響く。

「おいもう終りなんだけど? 20話記念に何グダグダにしてんだコラ?」
「じゃあ最後に・・・・・・ここから『三年A組 銀八先生』は新展開が始まっていき修学旅行編まで突っ走って行こうと思いますッ!」
「何とR-18指定になるアルッ!!」
「ならないからッ!!」
「銀魂とネギまのクロスになんとディケイドが参戦ッ!!」
「ねえよッ! アンタ等結局最後までその調子かよッ!!」

























「次回、外伝Ⅱ『クラスの中で空気を読まない奴は必ずいる』本編はちょっとお休みで~す」
「あ~待ってましたよ、この外伝じゃないと僕らの出番無いですからね」
「そうアルッ! ていうか何であの本編未登場のサド野郎が私より出番が多いのか腹立つネッ!」
「俺もそれが心配なんだよな、あいつが本編入りしたらどうなるんだろ・・・・・・」
「少なくともネギまキャラのほとんどがフェイズ6に入ると思いますよ・・・・・・」






















.


万事屋質問コーナー

銀時「今回は原作万事屋チームで手早く質問に答えてくぞ 理由はな、多いんだよ一人の質問回数が、質問は一人一個にしてくれよ」
新八「銀さん沖田さんへの手紙がめちゃくちゃ来てます」
神楽「銀ちゃんちゃっちゃっと終わらせるヨロシ、サド信者なんかスルーアル」
銀時「やりたくてもやれねえんだよ、 第一通『ノリ』さんからの初めての質問『ネギま勢にもガンダムパイロットがいたらやっぱり凹みますか? 凹むならエヴァに慰めてもらえば良いと思いますよ。あ、でもポックスドライバーだとあまり機能しないかwww』・・・・・・ 声優ネタの質問は一般読者にはわからない以前に、何人を変態にしようとしてんだコラ、あとボックスドライバーって何だよ? なってねえよそんなの」
新八「銀さん同じ読者からもう一通『調教依頼 委員長かエヴァか夕映をお願いします。ほら、やっぱりプライド高い娘を堕とすのって燃えるじゃない?』です」
銀時「出て来い、もはやこのコーナーだとレギュラーの男」
沖田「旦那が許すならいつでもやりますけど」
神楽「全員殺って来いヨ、なんなら私も協力してやろうじゃねえカ」
銀時「お前が決めるなッ!!」

銀時「二通目、『正宗の胃袋』さんからの質問、『木乃香をGS組織に入れてジジィを死んだ方がマシだ言うくらいに拷問をしてください!後、千鶴さん僕は貴女の事が大好きです!だから今ここで告白します!「ババァ結婚してくれ!加齢臭しても好きだー!永遠の30代だから誇っても良いぞー!年齢と見た目が全然違うからそこが良いぞー!」』最初はわかるけど後半意味わかんねぇ・・・・・・」
神楽「銀ちゃんさっさと答えるネ、この読者も二通送ってきてるアル」
銀時「あ~ハイよ、木乃香GSに? そもそもこの組織作ったのアイツだからあとババァ云々の所はあいつに渡した瞬間、目の前が真っ白になったのでわかりません」
新八「さらっと何衝撃的な事言ってんですかッ! あと何があったんですか銀さんッ!?」
銀時「え~ともう一通ナニナニ・・・・・・『沖田もジジィを虐めるGS組織に入っちゃえば?』はいサド」
沖田「ジジィ虐めるより孫の方が良いですね」
銀時「もう帰ってよ良いよお前・・・・・・」

銀時「はい三通目、俺的にもうブラックリスト入りの『エンジン』さんの質問『楓さんに質問です。辰馬さんとは気が合いそうですか?なんか読んでると二人とも同じシンパシーを感じてしまうのですが。あと、イ ノ ベ ○ タ - (正式名称イノベイ○)ですか?』もう声優ネタは勘弁してくれよ・・・・・・」
楓「イノベイターとはフフフ何のことでこざろうか・・・・・・あと辰馬とは誰でござるか?」
銀時「別次元だとお前の恋人だよ」
新八「この作品ってガンダム出てる声優本当多いですね・・・・・・」
神楽「私と新八もガンダム乗ってるアル、あれ? 銀ちゃんは?」
銀時「衛生兵で一応・・・・・・」
沖田「要するにガンダム乗ってないんですね」

銀時「四通目『ゲロロ軍曹』さんの質問・・・・・・はいまず一通目、『せっちゃんへ、こんにちは。あなたとこのちゃんのやりとりなシーンはどこか微笑ましいな~・・・と感じてる、ゲロロ軍曹と申します。ところであなたのあだ名というかニックネームについてですけど、個人的には「せつにゃん」というのがいいかな~と思うのでしょうけど、実際そう呼ばれたらいかがでしょうか?・・・あの、もしいやでしたら、もうちょい別なの考えますので、斬ったりとかは・・・。(汗)』はい、せつにゃん」
刹那「いきなり呼ぶなッ! そんな可愛らしいあだ名で呼ばれたくありませんッ!」
沖田「悪くねえじゃねえか、せつにゃん」
刹那「嫌ですッ!」

銀時「同じ奴から、『いいんちょことあやかさんへども、あやかさん。個人的にあなたと銀さんのカップリングを大応援してるゲロロ軍曹と申します(ぺこり)。エヴァとのカップリングも悪くはないと思いますけど、私としては銀さんに恋してるあなたって、とても魅力的で乙女っぽいな~・・・と思ってますので、断然私はあなたと銀さんがカップリングされるのを切に願っておりますので、頑張ってくださいです!!・・・てか、初っ端からこんな訳わかめな事言ったりしてすいませんです・・・(汗)ところで質問なのですけど、もし銀さんが風邪をひいてほんとに辛そうにしてた場合、どのように看病してあげてると思われますか?あなたの事ですから、最初は多少慌てながらも心を落ち着けて、テキパキと氷枕を用意してあげたり、四葉のさっちゃんとかに色々教えてもらいながら、おかゆとかを料理してあげてるのではないかな~・・・と思っておりますが・・・(苦笑)。』本当に訳わかめな事言ってますね、俺とあの娘はそんなのありません、つーかありえません」
あやか「銀さんの・・・・・・看病ですか・・・・・・?」
銀時「もしそうなった場合、茶々丸に頼むから別に良いって」
あやか「いえッ! お見舞いに行って精一杯銀さんが安心してご養生出来るよう一生尽くしますわッ!」
銀時「一生は良いから、またクラスの奴等に誤解されるような事言ってんじゃねえよ、まあそこまでしてくれるのは悪くねえけどよ・・・・・・」
あやか「銀さん・・・・・・」
神楽「銀ちゃん、イチャついてないで次の質問答えるヨロシ」
銀時・あやか「「イチャついてねえッ!(ませんッ!)」」

銀時「ったく・・・・・・気を取り直して同じ奴以下略、『ちうちゃんこと千雨さんへ
どもです、あなたと銀さんとのボケとツッコミのやりとりがナイスに思えるゲロロ軍曹です。(を)
ところで、銀さんとの約束(?)でもある「自分がネットアイドル」っていう秘密ですけど・・・、個人的にはいいんちょとかには話してもいいんではないかと思うのですけど、どうでしょうか?いいんちょだったら別に話してもあなたの事を変な目で見るようになったりしないでしょうし、かずみん(を)だって、知ったらしったでからかいはするでしょうけど、別にいやがらせのように周囲にバラしたりは・・・しない・・・と思いますし・・・、多分(汗)(を!?)。』今度は千雨か」
千雨「死んでもバラしたくねえ、バレてるのは銀八だけでいい・・・・・・」
沖田「よしこのネタをかずみんに売りにいくか」
千雨「なに考えてんだテメェッ!」
銀時「半分俺によこせよ」
千雨「お前もふざけんなッ!!」

銀時「同じ奴・・・・・・別の銀魂二次小説で質問数は自重するって言ってたじゃねえかゲロロ軍曹・・・・・『銀さんへ、どもです、銀ぱっつぁん。ところで今回のお話で相性云々なお話が出てたのですけど、それでしたら銀ぱっつぁん的に自分と相性がよさそうな3-Aの子をあげるとすると、どんな子が思いつくでしょうか?個人的にはボケとツッコミな関係でちうちゃんとか、あと好意的な感じで接してくれるいいんちょことあやかさんとかもあげてくれそうかな~・・・と。エヴァは・・・、喧嘩友達的な感じで中間とか?(を)』やっとまともな質問だな、え~銀さんのクラスの中で相性が良いのはまあ万事屋メンツですね、あとはまあ仲良いのもいるし、普通に教師と生徒の関係もいるし、お互い死ねよっと思っている関係の生徒もいます、ついでに銀さんが最近仲良くなったのは五月ことさっちゃんですね」
千雨「いつの間に仲良くなってたんだよ?」
銀時「たまにちょくちょくあいつの店には行くんでそれでだな」
千雨「そんな話聞いてねえんだけどお前が他の奴らと仲良くなってるの・・・・・・」
銀時「何でお前に言うんだよ?」
千雨「いや別に・・・・・・・」
銀時「?」

銀時「五通目、『ナナシ』さんからの初めての質問『沖田先生に是非とも月読の調教をお願いします!』月読じゃなくて月詠じゃね?」
沖田「とっくの昔にチェック済みですぜ、ああいう娘こそやりがいもありますからね」
月詠「む? わっちか? わっちは出番があるなんて聞いて無いのだがの」
神楽「ツッキーじゃなくて向こうの方ね、私と同じ声の奴アル」
銀時「あ~紛らわしいな同じ名前だとよ・・・・・・」

銀時「六通目『サハリン』さんからの質問、『糞マヨラーニコ中野郎の土方に質問があります。
デコ那の部屋に泊まるんですね!デコ那とのどかを襲っちゃえ、以下規制』おい土方君、何やらかそうとしているのかな~?」
あやか「不潔ですわ」
神楽「女の敵アル、けだものネ」
沖田「死んでくれませんかねマジで?」
土方「やらねえよッ! 俺があいつ等にんな事したら、一発でしょっぴかれるだろうがッ!」
銀時「大丈夫だその時は局長の俺が手錠を掛けてやるから」
沖田「副長の俺が護送しますから」
土方「ふざけんじゃねえッ! ていうか前の話のネタ引きずるなッ!」
銀時「お前の切腹の介錯は一番隊隊長の夏美でいこう」
土方「何か新たな展開出来てるしッ!」
夏美「いややらないしやりたくないよッ!! てかいつ私一番隊とかそんなのに入ったのッ!?」
千鶴「頑張って夏美、苦しみを与えずにバッサリと逝かせるのが大事よ」
夏美「何怖いこと言ってんのちづ姉ッ!!

銀時「じゃあ気を取り直して『白夜叉』さんから七通目の質問『『トッシー』に質問です。
目の前に本物のドジっ娘(のどか)がいてどれぐらい興奮しているのか、GNドライブ何個分かで表現して下さい。もしくはもやしもんのA.オリゼー何匹分可愛いかでお願いします。』はいトッシ~」
トッシー「どれぐらい興奮かはGNドライブ何個とかでは出来ないでござる、強いて言えばそうッ! ソレスタルビーイングを速攻で勝てるぐらいの大量のGNドライブを搭載した感じでござるッ!!」
あやか「やだこの人・・・・・・急に人格が変わったように変態なことを連発してますわ」
銀時「近づくなあやか、菌が移る菌が」
土方「いや今のは俺じゃなくてトッシーが勝手に・・・・・・!!」
あやか「自分の事トッシーと呼んでますわ・・・・・・銀さんこの人怖い・・・・・・」
銀時「おらウチの子怖がってんじゃねえか、近づくなこの変態マヨネーズ」
土方「だから俺じゃねェェェェ!!!」

銀時「はい同じ読者からもう一通」
土方「スルーすんなッ!」
銀時「『土方に【白夜叉】の事を知られてどのくらいマズイと感じたのか、デスザウラーの荷電粒子砲何発分か、もしくはディケイドのコンプリートフォームを始めて見たときの衝撃度で教えて下さい。』あ~ぶっちゃけますけど土方の野郎はせつにゃんが俺を呼ぶときの白夜叉というあだ名の意味を知りません、簡単に説明しますと『白夜叉』というあだ名は攘夷戦争戦争内で使われていた異名で戦場の敵味方からしか呼ばれてないので、攘夷戦争に参加していない土方君は白夜叉と聞いてもピンときません、せつにゃんが独特に付けた俺に対するあだ名とでも思っているんでしょうね、ということで全くマズイと感じてません、デスザウラーの荷電粒子砲? それ所かジェノザウラーのゲップぐらいしか感じてませんね、おい神楽、マヨのヤローの耳おさえておいたか?」
神楽「バッチリアルッ!」
土方「テンメェェェ!! 力加えすぎだッ! 止めろッ!! 鼓膜が・・・・・・破ける・・・・・・!!」
刹那「土方さんッ! ていうか白夜叉、お前ちょくちょく変なあだ名で呼ぶなァァァァ!!」
銀時「ごめんねせつにゃん」
刹那「いや頼むから止めてくれ・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」
銀時「どうしやせつにゃんッ! おいサドッ! せつにゃんが体調悪そうだから女子寮まで運んでやれッ!」
沖田「女子寮じゃなくて川に放り投げていいですか、せつにゃん?」
刹那「お願いしますッ! 本当お願いしますッ! 勘弁してくださいッ!」 

銀時「続いてのせつにゃんは・・・・・・あ、間違えた」
刹那「いい加減にしないとまたお前に殺意が芽生えるぞ・・・・・・!」
沖田「あ~らら、すっかり土方さんみたいになっちゃって、せつにゃん」
刹那「もう良いです・・・・・・」

銀時「八通目、『剣聖』さんの質問『土方ニコチンヤロウは、いつになったら死ぬんですか!?そして、どうやったら、沖田はのどかを、あきらめるんですか!?代わりに、かすがを生け贄に捧げても、ダメですか!?PS刹那、ビームサーベルで衛生、切りさけませんでしたが、仲間やみんながいて、よかったですね』だってよ、え~とあいつは・・・・・・」
沖田「土方さんなら病院行きましたぜ、鼓膜が破けたとかで」
銀時「いやこれ一応お前の質問になると思うから、どうよ?」
沖田「俺に諦める? 俺の算数ドリルには『調教を諦める』は載ってませんぜ」
銀時「算数ドリルじゃ載ってねえから、辞書だから、つーかリアルでもそんなの載ってねえし」
沖田「かすが生贄、いや俺はきっちり両方ともやるんで、だって両方とも・・・・・・やりがいあるじゃないですか・・・・・・」
銀時「沖田くぅぅぅぅんッ!! 笑顔が怖いよォォォォ!!!」
神楽「銀ちゃん、P・Sが残ってるアル」
銀時「ん? ・・・・・・どう思うせつにゃん?」
刹那「本当に切り裂けなくて後悔してるよ・・・・・・」
銀時「せつにゃんこわ~い」
刹那「腹斬れッ! 今すぐ腹斬れッ!」
神楽「マヨ2号機アル」

銀時「続いて最後の質問、本当によくここまで来たな・・・・・・・『キョージュ』さんからの初めての質問『土方は白夜叉を知らないようでしたが、仮にも攘夷浪士を取り締まる真選組の副長が、攘夷戦争の英雄のことを知らないってことがあるんでしょうか?職務上、普通に知ってそうな感じですが』ん~まあ、今も攘夷をしている攘夷志士は覚えていると思いますが、銀さんみたいにもう攘夷志士じゃない人は知らないんじゃないですかね? けどこれは作者のご都合主義なので原作ではわかりません、ここでは真撰組の奴等は白夜叉と聞いてもピンときません、そういう解釈でお願いします。ふ~終わった終わった」

神楽「今回は一段と長かった気がするアル」
銀時「同じ読者からの質問が多かったからな、今度から自重してくれよ特にゲロロ軍曹」
新八「あの・・・・・・銀さん・・・・・・」
銀時「うん? あれ、お前いたの?」
神楽「気づかなかったアル、どんだけ影薄く出来るようになったアルか?」
新八「いや原作レギュラーまた忘れてたのッ!? 何か後半で僕完全にフォードアウトしてたんですけどッ! 後半からは沖田さんに場所とられてたんですけどォォォォ!!」
銀時「新八、本当のことを言おう実はな・・・・・・・作者がマジで忘れてた」
新八「死ねェェェェェェェ!!! 作者死ねェェェェェ!!」
神楽「やっぱり新八は新八アルな」
銀時「新八の活躍が見たいなら次回の外伝、もしくは他の銀魂二次小説を見よう」
あやか「あ、ここではもう救済の余地は無いと・・・・・・」














[7093] 外伝Ⅰ 国は違えど優しくその文化を受け止めよう・・まあ限度あるけどね
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/08/11 23:21
銀八先生からのお知らせ
「前回の予告タイトルと思いっきり題名変わってんじゃねえかッ! という思ってる読者の皆様へ、すんません作者の手違いで、思ったより話が進まなくて今回はエピローグ的なものでお送りしたいと思いま~す」
「それここで言う事じゃなくね・・?」



この話は本編とは関係ありません

麻帆良学園の校庭。今そこで互いのプライドを賭けた、天下分け目の熱い戦いが始まろうとしていた。あれ? 言いすぎ?

「じゃあ外伝スタート~、今回の勝負は『ドッチボール』だ、オラお前等早く配置につけ、敵が来るぞ敵が」
「いやいやいやッ! 展開を略するにも程があるだろッ! どうゆうことかまず説明だろッ!?」

校庭には銀八と隣りで苦笑いしているネギと、体操着姿の3年A組の生徒数名が立っていた。だが急すぎる展開に、生徒の一人であり、貴重なツッコミ要員と新万事屋でもある千雨が、第一声でツッコむという、なんともハイレベルな技を披露した。

「別にツッコミの速度関係無くねッ!? あと私の説明長いだろッ!」
「ツッコミの技術が上昇したんだから誇るべきですわよ」
「嬉しくねえよッ! ていうかナレーションが、完璧に私をあるポジションに立たせる気だよッ!」
「あの地味な人と同じポジションですからね」
「泣きたいんだけどッ!? つかもう涙出そうだよッ!」

隣りに立っていた同じ万事屋メンバーのあやかと千雨が喋っている頃。
タバコを吸っている銀八に、ネギが「あの~銀さん話があるんですけど・・」っと口を開いた。

「どうしたのかな? ネギちゃん?」
「何でいきなりそんな甘ったるい口調なんですか・・不気味だから止めてください・・ドッチボールやるって言っても、相手いませんし・・それにどうしてこのメンバーなんですか?」
「そうよ何で私までいんのよッ! それに木乃香も刹那さんまでッ! バカやんのはあんた等でやってよッ! 私は色々と忙しいのよッ!」
「アスナ別に家で、録画していた『ラピュタ』見るだけやろ・・」
「『ラピュタ』ですか、私はどちらかというと『紅の豚』派ですね」
「せっちゃんそこはほじくらなくてもええから・・」

ネギと銀八の会話に、アスナが割り込みしてきて、抗議するが銀八はウザそうに耳を両手で塞ぐ。ついでに今その場にいるのは千雨、あやか、眠そうにあくびをしているエヴァ、そしてアスナをなだめる木乃香と、それを見ている刹那がいた。
銀八は周りのメンバーを見渡して、淡々と説明する。

「今回はドッチボールだからな、まあお前等三人は数合わせで来てもらった、ネギと俺は審判、お前等は奴等と戦ってもらう」
「奴等って誰よッ!?」
「いやお前の後ろ」
「・・へ?」

銀八はアスナの後ろに指を差す、思わずアスナは後ろを振り向いてみると・・彼女の目は点になった

パトカーが猛スピードでアスナめがけて、突っ込んで来ていた・・

「って何でパトカーがこっちにィィィィ!! がふッ!!」

突然のパトカーのダイレクトアタックに、アスナは思いっきりドゴォォン!っとぶつかり、叫び声を上げて吹っ飛んだ。

「アスナが突然パトカーに轢かれてしもうたッ!」
「アスナさんが飛びましたッ!」
「凄いね」
「いや銀さんなんですかそのクールなリアクションッ!?」

ネギと木乃香は慌てるが他のメンバーはただ宙を舞っているアスナを普通に見てるだけだった。
アスナが轢かれた音で、ようやく眠りかけていたエヴァが意識をはっきりとさせた。

「何だ~? 人が徹夜で『モンキーハンター』やったせいで眠いのに・・あれ何であの女飛んでるんだ?」
「エヴァさんやっと喋りましたわね、いないと思ってましたわ」
「相変わらず腹立つ嫌味を言ってくるな、雪広あやか・・大剣でイヤンクックのように討伐してやろうか、コノヤロー・・」
「おいモンハン用語出てるぞ・・どんだけやってたんだよ・・」
「うるさい長谷川千雨・・オンラインゲームはハマるとマズいんだよ・・所であの車は何だ・・?」

まだ瞼が重そうだが、アスナを轢いたパトカーがキキィッ! と止まったので、そちらを見ていたが、千雨はエヴァの頭上に何かが降って来ているのを見ていた

「エ、エヴァッ! 上ッ! 上ェェェェェ!!」!
「何だよ騒がしい奴だな・・上がどうした・・?」
エヴァは「ん~?」と重い瞼と頭を、めんどくさそうに上げると・・

宙を舞っていたアスナが降ってきたのだ。

「って何でお前がこっちに降ってッ!・・ぐぶッ!」
「神楽坂が、エヴァの顔面に降ってきたァァァァ!!」
「ていうかアスナさんどんだけ宙を飛んでたんですかッ!? 人間、そこまで宙に浮く事なんか出来ませんよッ!?」

エヴァの顔面に、アスナの頭が直撃。まさかの二次災害を受けたエヴァは、顔をおさえてめっさ痛がる。千雨とネギが驚いていると、その場に倒れて「あ~頭痛い・・」とぼやいているアスナに、エヴァはキッと睨みつけた。

「降ってくる場所を考えろォォォォ!! 降るなら雪広あやかの所に降れェェェ!! そして両方死ねェェェェ!!」
「・・うっさいわね・・好きで宙を飛んだんじゃないのよッ!」
「何で轢かれたのにあんなにピンピンしてんだよ・・」
「そりゃあ、あの人は丈夫なだけが取り柄ですから」

轢かれて数10秒で蘇生して、顔が赤くなっているエヴァとアスナが口喧嘩をしていると、パトカーからガチャッと二人の男が出てきた。

「おい総悟、パトカーで人轢いてんじゃねえよ、テメェのせいで俺が責任取らなきゃいけなくなるかもしれねえんだぞ」
「いや~あの女見たとき、読者の『いけェェェェェ!!』って声が聞こえたんで思わずやっちまいました」
「誰も言ってねえよ、お前の願望がそうさせたんだろうが」

出てきたのは、この小説のコーナーではお馴染みの・・
二人は生徒達に、ふり返り自己紹介する。片方は少し笑みを浮かべ、片方はタバコを吸いながらめんどくさそうに

「沖田で~すよろしく、ガキ共テメェ等覚悟しとけよ、一人一人俺が粛清してやる」
「・・・土方だ・・別にお前等ガキ共と遊ぶ気は無えが、勝負だったら話は別だ、自分の首が飛ぶのを覚悟しな」





「いや、誰・・?」

最悪な自己紹介をする二人にしばし固まるネギだった・・








外伝 『国は違えど優しくその文化を受け止めよう・・まあ限度あるけどね』

沖田と土方来日。二人を見てネギが思った感想は「今までに見たこと無いキャラだ・・仲良く出来るかな・・」と思ったが、そういえば自分の生徒フッ飛ばしたのこの人達だった・・と思い恐る恐る二人に近付いてみた。

「あの~さっき運転してたのってどっちですか・・?」
「俺でぃ、どうした俺のドライブテクニックに魅了されたか?」

手を上げて沖田がこっちだと主張する、さわやかな顔をしているのに、あんな事をするのかこの人は・・とネギは感じながらも彼の方に顔を向けた。

「いや別の意味で釘付にされましたよ・・僕の生徒飛んだんですけど・・」
「人は皆飛びたいって願望持ってんだよ、俺はそれを叶えたいわば夢を叶える天使のような存在だろうが」
「どの辺が天使ッ!? やった事どうみても堕天使でしょッ! 本当に空飛ぶ所だったんですよッ!? もうここに帰ってこないぐらいにッ!」
「んだよ帰ってきたのか、ギャグ小説はそういう所が空気読めてねえな」
「天使さん、本格的に殺る気じゃないですかァァァァ!!」

態度がどう見ても、丸っきり悪気の欠片も無い沖田に、ネギがツッコンでいると。ふと刹那は沖田達をほっといてタバコを吸っている土方を見て近付いてみた、この男どう見ても場違いと感じているのか、やる気が無い・・

「貴方はあの人と同じ服装ですが、あの人とどんな関係ですか・・?」
「ああ? 俺達は泣く子も黙る武装警察『真撰組』、だそしてあいつは俺の部下、それがどうした?」
「警察というより、チンピラに見えるんですが・・」
「うるせえな、話がそれだけか? あっち行けガキ、俺よりあっちの心配しとけ、さっき轢かれたガキとウチのガキがメンチ切ってるぞ」

土方が親指で指差したので、その方向に刹那はそちらを向いた。
さっき轢かれたのにもう全快しているアスナと、何考えているかわからない表情の沖田が、顔を近付けて睨み合っていた。

「アンタねぇ・・人轢いといてごめんなさいも言えないのかな・・?」
「いや~あなたを見た瞬間、なにも考えずにアタックしちゃいました、これも青春ですね~やっぱ引きましたか?」
「物理的なアタックでしょ今のはッ! 引きましたか?って轢いたのよアンタが私をッ! こいつ銀八より腹立つわッ! 一発ぶん殴らないと気が済まないッ!」
「アスナさん落ち着いてッ! ギャグパートだからアスナさんピンピンしてんじゃないですかッ! もう許しましょうッ! なんかこの人に突っかかると危険な感じがしますッ!」
「そうやでアスナ、まあ全く謝る気ゼロなのは気になるけど・・ここは大目に見ような?」

沖田の胸倉を掴んで、右手で一発かまそうとするアスナに、ネギが慌てて彼女の腰に抱き着いて、沖田から引き離す。木乃香もなんとかなだめようと必死だ。だがまだアスナの怒りはおさまらない

「離しなさいネギィィィィ!! コイツは絶対ここに来てはいけない存在よッ! 早急に息の根を止めないと絶対危険だからッ!」
「なんとなくそれわかりますけどッ! でもせっかくの外伝なのに、そんな血生臭い描写は出来ませんってッ! この人もきっとテンション上がっただけですってばッ!」
「テンション上がって人轢く奴なんて許せるかァァァァ!!」
「まあ普通そうやけどな・・」

ネギに腰に抱きつかれながらも、アスナは目の前の沖田に噛みつきそうだ。目の前でジタバタしているアスナを見て、沖田は携帯していたバナナを食べながら、優雅に眺めていた

「へ~ここって、サルも飼ってんですね~キーキーうるさくてしょうがねえや、バナナ欲しいのか? ほれ食わしてやるから取ってみろよ、ほれほれ」

沖田が目の前で持っていたバナナをこちらに差し出して、届くか届かない距離でバナナをゆらゆら揺らしている・・遂にアスナは理性もフッ飛ばした。

「ムキャァァァァァ!! 絶対殺すッ! スタープラチナでラッシュかましてやろうか、オラァァァァ!!」
「アスナさんストップストップッ! スタプラはアスナさん持ってませんからねッ!? 冷静になってくださいッ! すいませんこの人挑発しないで下さいッ!」
「挑発じゃねえよ、エサやりだよ、このエテ公の」
「○#□$×%△&ッ!!!」
「アスナさん何言っているかわかりませんッ! 誰かァァァァ!! アスナさんを落ち着かせるような物をォォォォ!!」

ほぼバーサーカー並に手がつけられない状態のアスナを、自分だけでは止めれないと察し、周りに救援を呼びかけるが、予想外にさっきからアスナを暴走させている沖田が動いて、パトカーの後部座席からあるものを出した。

「ちょうど良い物があるぜィ、コイツ用のとびきり太い縄だ」
「何でアスナさん用の縛る縄なんて持ってんですかァァァァ!? ていうか本当に太ッ! それ大型動物の捕獲用の縄でしょッ!?」
「なめんなよ、縄だけじゃねえ、コイツ用の特注の鎖もあるんだぜ、これで巻くからそのエテ公おさえとけ」
「何ゆえ鎖を作ったんですかッ!? つーか長すぎですッ! 何重に巻きつける気ですかッ!?」  

沖田は縄どころか鎖も出して、その鎖で暴れているアスナを縛ろうと、邪悪な笑みを浮かべながら沖田が近付くが慌てて木乃香が止めに入っている。そんな様子を車の向こう側で土方はノーリアクションで、刹那は呆気にとられていた。

「貴方の部下、早く何とかしないとどんどん悪い方向に進んじゃいますよ・・」
「何言ってんだ、アイツはサドスティック星からやって来た王子だぞ、もう手遅れだ」
「そうですか・・」

土方が煙を吐き出しながら、刹那に説明をする。そんな説明を聞いて、再び王子を見て刹那は納得するしかなかった。










「なんだかカオスな事になってますわね~」
「あのサドスティック野郎とは絶対関わらないようにしよう・・」
「あそこまでのドSは私が生きている限りでも、そうそういないぞ・・」

少し離れた場所でアスナと沖田の戦いを見て、あやか、千雨、エヴァは突っ立ってドSの王子様を観察していた。

「それにしてもエヴァさん、茶々丸さんが先ほどから見えないのですが? 遂に愛想尽かされましたか?」
「殺すぞ貴様・・茶々丸には大事な任務を任せているのだ、もうそろそろ帰ってくる・・ほら来た」

エヴァはイライラした様子であやかに言うと、タイミング良く大きな袋を持った茶々丸が、学校から出てきてこちらに歩いてきた。

「マスターただいま戻りました」
「遅いぞ! 頼んでおいたドッキリマンチョコは買ってきたかッ!?」
「大事な任務ってそれッ!? ただのおつかいじゃんッ!」

エヴァの言う大事な任務に千雨がツッこんでいると、茶々丸は相変わらずの無表情のまま口を開いた。

「申し訳ありません、先ほど購買部に行ったのですが「チョコなんて体に悪いから、私が作ったかぼちゃの煮付けを食っときなッ! これ母ちゃんからの餞別だよッ!」と言われて、買えませんでした、その代わりかぼちゃの煮付けを貰ってきました」
「なんじゃそりゃァァァァ!! 母ちゃんって何処の母ちゃんだァァァ!?」
「八郎の母ちゃんだそうです、マスター私はかぼちゃの煮付けを家に持って帰って調理しますので失礼します」
「八郎って誰だァァァァ!! ていうかお前も私置いて家に帰るなァァァァ!! 待てェェェェ!!」

エヴァの叫びもスルーして、そそくさと茶々丸は家に帰ってしまった。八郎の母ちゃんから貰った、カボチャの煮付けを持って・・

「行っちゃいましたわね・・エヴァさんも帰って良いですよ?」
「ふ、ふざけるなァァァァ! あんなバックリマンも買えない奴なんでどうでもいいわッ! あれバックリだっけ?」
「略してバクマンですか?」
「いやそれ漫画だから・・バックリマンじゃねえしよ・・」
「そうアル、ザックリマンの間違いアルよ」
「ん?」

三人で喋っていると、何時の間にか酢昆布をくちゃくちゃと食べている、オレンジ髪でチャイナ服を着た少女が、こんなに晴れているのに傘を差して立っていた。ついでに眼鏡を付けた地味な青年がいた。
今まであった事の無い少女、エヴァは不審な目でその少女を見るが、急に頭に妙な痛みを感じた。しかも自分の頭からポタポタと血が流れている・・

エヴァの頭には巨大な白い獣がザックリ噛み付いていた・・

「・・ぐぉぉぉぉぉ!! ザックリやられたァァァァ!!!」
「エヴァがなんかデカイのに噛まれとるッ! ていうかお前誰だよッ!?」
「私はお前等の先輩の、万事屋が誇るヒロイン神楽、あとそれは犬の定春ヨ」
「わん」

千雨に質問されたので、自己紹介した神楽は、エヴァに噛みついている獣に指差して定春の代わりに紹介する。それに答えるように、定春は噛んでいたエヴァを落として鳴いた。
ドサッと落とされたエヴァは、頭の激痛でその場で悶絶していたが、神楽はどうでもいいという感じであやかの方に指差した。

「所でここでヒロインだとほざいている奴は、そこのデカ乳女アルか?」
「だ、誰がデカ乳ですかッ! まあ一応ヒロインですけど・・?」
「フッフッフ・・」
「あの・・何笑っているんですか・・チャイナさん・・?」

神楽は、持っていた酢昆布を食べきり不敵に笑った。そんな彼女にあやかは首をかしげる。
そして急に神楽は顔を上げた。

「遂にこの時が来たアルッ! 覚悟するヨロシッ!」
「・・・はい・・・?」
「私は『銀魂』のヒロインなのに、この作品ではヒロイン所か、本編にも『チャイナ三人もいらなくね?』と言われて1話も出る事が出来ないという屈辱・・それでも私は耐えた・・いつか何かしらこの作品に爪跡を残そうと私は耐えた・・そしてこの外伝で遂に私はチャンスを手にしたアルッ!」

持っていた傘を折りたたんでブンッと、呆気にとられているあやかに向かって突き出す。

「お前をフルボッコにして私がヒロインの座を乗っ取ってやるアルッ! ヒロインってのはなぁッ! 強い奴がヒロインって言うんだよッ! 読者のみんなは強いヒロインを求めているんだヨッ!」
「いや別に強くなくてもなれるんじゃないですか・・?」
「お前なんか乳がデかいだけアル、さっさと天パと一緒にどっか行くヨロシ、私はここでヒロイン兼主人公をやるアル、題名も変えて『永遠の美貌と美声の美少女、超スーパーミラクルボンバーエンジェルデビル神楽』ネッ!」
「長いし、意味わかんねえよッ! エンジェルとデビル混ぜんなッ! 正反対だからなその2つッ! ていうかどんな作品かもわかんねえッ! まずこの世界必要ねえじゃんッ!」
「お前はツッコミ役にしてやるヨ、他の女共は私のパシリアル、んでお約束は話の結末で毎回ここのジジィを火葬」
「やりたくねえよッ! つうかお前何処の魔王ッ!? 学園長何回死ぬのッ!?」

神楽の独裁振りにツッコんでいると、千雨はある事に気付く。

ウチもう一人ヒロインいたよな・・

「おい・・そこのチャイナ小娘・・」

今までずっと悶絶していたエヴァが、ようやく復活してよろよろ立ち上がった。それに気付いたのか、神楽は話しかけられたのでめんどくさそうに顔を向けた。

「何アルか? 私より小娘のくせに、私は忙しいからさっさと話すネ」
「言っとくが私もヒロインだぞッ! 普通まず最初は私に喧嘩売ってくるだろうがッ!」
「お前みたいな、乳無しのクソガキごときが私の眼中に入っていると思ってんのかゴラァ、ガキは大人しくとっとと帰って、家で『小学四年生』でも読んでろヨ」

神楽の毒舌攻撃にエヴァは思わず「うッ!」 と言ってのけぞるが、なんとか踏ん張る。自分よりずっと年下の娘に引けを取るわけにはいかない。

「お、お前に言われたくないわァァァ!! お前みたいなガキより私は長年生きている魔法使いだぞッ! そんな私にお前ごときの小娘が私に勝てると思ってんのかッ!? 私のほうが遥かに私のほうが強いんだよッ! わかったかッ!? もう一度言うぞ、私はお前よりずっと強いッ! 今度そんな事言ったらこの作品に二度と出れないぐらいボコボコにしてやるッ!」
「しつけーな、わかったから失せるアル、ギャーギャーわめいてウゼェんだヨ、前回少し読者に誉めてもらって、浮かれてんのかコラ? どうせあそこだけだよオメー、お前はもう一生不人気ネ」
「そそそ、そこまで言うかァァァァ!? いくら何でも酷すぎだろッ! ていうか絶対わかってないだろッ!? あとその辺の石っころを見ている目を止めろォォォォ!! 」
「このデカ乳の影で精々泣いてるがいいアル」
「・・人が気になってる所をズバズバと・・クソォォォ!! 今に見てろォォォ!!」
「っておい! お前何処行くんだよッ!」

神楽の容赦無い会心の一撃にエヴァは、涙目になって、千雨の声も聞かずに走って行ってしまった・・
エヴァが泣きながら向かった場所、そこには銀八がタバコをくわえて立ってジャンプを読んでいた。

「銀時、知らないチャイナ娘にいじめられた・・」

銀八はジャンプからちょっと目を離し、チラリと下を向いて声の主を見た。自分の足に抱きついている涙目のエヴァがいた・・
それを見た銀八はため息をついてジャンプを小脇に挟んで、めんどくさそうな事に巻きこまれた・・という感じで頭を掻く。

「何泣きながらのびた君みたいに、なってんのお前・・? お前結構強いらしいから、喧嘩なら負けねえだろ・・」
「私の肉体は強靭だが、心はガラスのハートだ・・あのチャイナ娘の毒舌に私の心はもうボロボロだ・・もう死にたい・・」
「いやどんだけ酷い事言われたのお前? チャイナ娘で毒舌ね~、クーフェイと超はそんなこと言わねえし・・俺が知ってるもう一人の娘っ子か?」
「デッカイ犬を持っていたし、そいつに頭をザックリやられた・・」
「元からだけど今回のお前の扱い酷いなオイッ! 白い犬を連れたチャイナ娘は、一人しかいねえ・・じゃあ俺そいつの所行ってくるか・・」
「ま、待てッ! 私も行くッ! あいつは嫌いだが、お前がいれば千人力だッ!」
「いや俺は喧嘩する気ないからね」

ようやく自分の足に抱きつくのをエヴァが止めたので、銀八はタバコを携帯灰皿に入れて、ジャンプを小脇に挟んだまんまエヴァを連れて、かつての部下に会いにいった。
銀八が神楽を見つけるのは容易だった。不敵に笑っている神楽と、腕を組んでいるあやかが対峙して、何やらどこかで見たようなバトルをしていた・・

「行け定春! 君に決めた! 定春あの胸に脂肪が溜まってる女が今日の昼飯アルッ! 噛み砕いてヨロシッ!」
「わん」
「行きなさい千雨さん! あのチャイナにわからせてやりなさいッ! チャイナは三人もいらないとッ!」
「何で私が行くんだよッ! うおッ! 犬こっちに来たッ! 無理無理無理ッ! 私普通の中学生だからッ!」
「わぎゃぁぁぁぁ!!」
「どばッ!」

定春の容赦無い前足の強烈な右フックに、思いっきり吹っ飛ぶ千雨。そんな光景を銀八とエヴァは少し離れてみていたが、しばらくして定春が千雨の頭をガシガシ噛んでいると「はい終了だから定春、千雨にそれ以上噛みつくとそいつ死んじゃうから」と言って仲裁に入った。まあその時に、今度は銀八が定春に頭を噛み付かれたが・・ 

「銀ちゃん久しぶりアル、元気にしてたアルか~?」
「当たりめぇだろ、俺はどんな世界でも対応できるオールマイティ銀さんだぞ」
「でもさっきから頭から血が出てるアル、本当にこの世界で生きていけるアルか?」
「それは俺達の世界から来たこのバカ犬のせいだ・・」

銀八は頭を噛んでいる定春をなんとか引き離し、頭の血を手で拭いて周りを見渡す。

「おいダークマター製造機はいねえのか?」
「アネゴはここの学校の先生がいる所にお土産代わりにお手製の卵焼きをあげに行ったアル」
「明日休みになるな学校・・多分教師のほとんどが病院送りだわ・・」

銀八はあの料理を凶器に変える事が出来る、女性を思い浮かべて同僚の教師たちに、手に持っている卵焼きを無理矢理食わしている所を想像した・・そして合掌・・

「銀さん何ですかそのダークマター製造機って・・」
「お前は知らなくていい、多分俺の世界からトップ3に入るぐらい来てはいけない奴だ、つーか神楽お前ここに何しに来た?」
「決まってるアル、ヒロインと主人公の座を奪いに来たヨ、銀ちゃんさっさと、そこのパツキンコンビを連れて隠居するネ」
「いや何やらかそうとしてんのお前・・まだ隠居する年でもねえしよ」
「隠居してそいつらと子作りでもしてろヨ、万年白髪頭」
「「「「ぶッ!」」」」

神楽のギリギリの、いや本当ギリギリの発言にそこにいたメンバーが吹き出す。銀八は神楽の頭にチョップかまして「女の子がそんな事言っちゃ駄目でしょうがッ!」と叫んだ。

「銀さん私初めてなんですが・・」
「お前も何言ってんのッ!? お前にあのチャイナの言う事なんかしねえからッ!」
「てことは私か? 言っとくが私も未経験だぞ銀時・・」
「もうバカ二人家に帰れェェェェェ!! さっきから何危ない事連発してんだコラッ!」 

あやかとエヴァが顔を赤らめて、ギリギリ・・いやアウトの発言で銀八が二人の頭をベチンッと叩いてブレーキをする。その後銀八は疲れたように大きなため息をついて、箱から酢昆布を出してまた食べている神楽の方に顔を向ける。

「神楽ちゃん、もう帰ってくんない・・? 俺もう疲れちゃったよ・・」
「じゃあそいつ等連れて隠居して・・」
「死んでくんないッ!? 頼むから死んでくんないッ!?」

神楽の頭を思いっきりぶっ叩く銀八。さっきから叩きっぱなしの銀八はもう疲労困憊だ。

「・・え~とあと俺達の世界のレギュラーキャラはお前に俺、サドにマヨ、・・後はゴリラとヅラか・・?」
「あれ・・銀さん僕は・・」
「ヅラってもう本編入りしてんだから別に出なくていいアルよ、後はゴリラ出て終わりでヨロシ」
「神楽ちゃ~ん、僕は? ねえ僕は?」
「いやだってよ、ヅラの話ってまだ大分先だし、ここで出さないと忘れられるかもしれねえしよ、何よりあのバカは人気高いから」
「ねえ二人とも、さっきから何で無視するんですかッ!? 桂さんより先に僕の事忘れちゃいましたかッ!?
僕の事気付いてくださいよッ! 銀さぁぁぁぁぁん!! 神楽ちゃぁぁぁぁん!! もう一人のレギュラー忘れてますよォォォォ!!!」 

ふと何かに呼ばれた気がして銀八と神楽は振り返る。見るとそこには・・眼鏡を付けた地味な少年が突っ立ていた。それを見て二人は・・

「・・・・・・誰?」
「新キャラアルか?」
「え・・銀さんと神楽ちゃんマジで言ってんですか? 僕ですよッ! 志村新○ですッ! 万事屋の一人で、貴重なツッコミキャラ、お通ちゃん命のこの僕ですよッ! あれなんか泣きそう・・目頭が熱くなってきたよッ! 今まで長年付き合ってた二人にここまで突き飛ばされるとは思ってなかったよチクショォォォォ!!」
「いやいや、冗談だよ冗談泣くなよ、お前とはもう原作だと1話から一緒にいるんだぜ、忘れるわけねえだろ新○君」
「あれ・・何で伏せ字なんですか・・?」
「随分前にお前の名前はNGワードなんだよ新○君」
「止めてくださいッ! もうマジで止めてッ! 何で僕こんなに不当な扱いッ!? 『なの魂』とか『東方よろず屋』では頑張って出ているのに、何でここではそんな酷いんですかッ!? いい加減にしろヨークシャテリアァァァァ!!! せめて伏せ字は止めテリヤキマックッ!!」

銀八と神楽、そしてこの作品自体に向かって、語尾に言葉を足す、お通語を使って、力の限り叫んだ。その後すぐに新○は「伏せ字止めて! もう許してください!」 新八は周りのメンバーに向かって抗議を始めた。

「ていうか皆さん、僕の存在気付いてなかったんですかッ!? 神楽ちゃんがここに初登場する時、一応僕の説明入ってたんですよッ!?」
「だってよ、お前等どうだ?」
「いえこんな地味な人見ませんでした」
「私が感知出来ない程地味なんだな」
「お前等酷いな・・まあ私も気付かなかったけど・・」
「私はまずお前がレギュラーだということに驚きアル」
「え~みんな酷いけど、特に一番辛口コメントは、同じ世界の神楽ちゃんだからねッ!? もう5年も一緒に『銀魂』支えてるじゃんッ!?」

長年の同僚の少女にここまで言われてはさすがに新八も青筋を額から浮かべてキレた。しかし神楽どころか銀八も鼻をほじって、そんなこと知るかというような眼を新八に向ける。  

「自分のグッズが少ないくせに、『銀魂』支えてるって思ってんじゃねえヨ、お前は死ぬまでツッコミ入れてるネ」
「オメーの特徴的な個性ってアイドルオタクしかねえじゃん、人気もそこまで高くねーしよ、つうかお前よりお前の姉ちゃんのほうがインパクト強いよ」
「うそォォォォォ!? まさかの原作の主人公とヒロインからの罵詈雑言ッ!? くそォォォォ! やっぱあのアマが僕の存在を更に薄くしやがったァァァァ!! 許さんッ! 許さんぞ長谷川千雨ぇぇぇぇ!!!」
「いや何でいきなり私なんだよッ!? お前が影薄いのはお前のせいだろッ!」
「何で同じ『地味』『眼鏡』『ツッコミ』なのにここまで人気の差があるんだよッ!? ぜってー何かチート使ってるよッ!」
「使ってねえよ・・別に私は人気とかどうでもいいから」

いきなり新八が自分を指差して吼えてきたので、たじろいだがすぐに受け流す。だがまだ新八も千雨に対する不満が収まらないようだ。新八は銀八に向かって質問する。

「銀さん、僕とあの女、どっちがツッコミ上手いですかッ!?」
「新田先生」
「いや新田先生関係無いだろッ!? そこは私かこいつの事じゃねえのッ!?」
「はい、今の急なボケに素早くツッコめた千雨の勝ち」
「・・へ・・?」

いきなり千雨の手を銀八が持って、こっちが勝者だと言う様に上げた。だがそんな展開聞いてないので新八は焦った。

「えェェェェェ!! それは反則でしょッ! 僕、新田先生知らないし対応出来ませんよッ!」 
「おいおいおい、新田先生にいちゃもん付けるのか? 言っとくがあの人が本気になればお前なんか指先一つでダウンだよ」
「いや新田先生にはいちゃもん付けてませんよッ! ていうか新田先生、北斗真拳の継承者か何かですかッ!?」
「よく俺が北斗のパロやってる事に気付いたな、ここは新八の勝利~」
「マジでッ!? よっしゃァァァァァ!!」
「いやそんな勝負どうでもいいんだけどッ! 勝手にやっててくんないッ!?」

銀八に手を上げられて、喜びの雄叫びを上げている新八に、千雨はツッコミを入れていた頃・・
















場所変わって、ここはとあるショッピング街、今一人のゴリラ・・じゃなかったがっしりとした体格と、真撰組の制服を来ている男、真撰組局長の近藤勲が、額に汗をかきながらウロウロしていた、何故学校に行っていないのか・・それは

「迷ったァァァァ!! ここは何処ッ!? 私は誰ッ!? いや俺は近藤だよッ! くそ! トシと総悟めッ! 俺がウ○コしている内にさっさと行きやがってッ! 待ってくれたっていいじゃんッ! つうかマジでヤバイんだけどッ!? 別世界で迷子になるなんて、スッゲー恥ずかしいんだけどッ!?」

ここに来る途中で見事に迷った近藤は、ここで一時間ほどうろうろしている状態だ。もう彼もどっぷり疲れて、遂に知らない世界で助けを求めた。

「誰かァァァァァ!! 俺を助けてェェェェェ!!! 近藤勲はみんなの助けを求めていますよォォォォォ!!」
「ちづ姉・・なんか変な人が吼えてるよ・・」
「あらあら、ゴリラさん動物園から脱走したんだけど、ホームシックになっちゃったのね可哀想に、今日特売で買ったバナナでも食べさしてあげようかしら?」
「いや、あれは人間でしょ、ちづ姉・・」

麻帆良学園の3年A組の生徒の、そばかすと赤髪が目立つ村上夏美と、A組一の脅威的なデカさのメロン(胸の事である)を持っている那波千鶴が、近藤を指差して話していると、それに気付いたのか近藤がそちらに向いて、一気に走った。

「すいませぇぇぇぇんッ! そこのガールズッ! 俺の道案内をしてくれェェェェ!! 俺の人生という名の迷路を解いてくれェェェェ!!」
「うわッ! 土下座しながらこっちに滑ってきたよッ!」
「人生は他人の助けでは開かないの、自分で切り開くのものよゴリラさん」
「ちづ姉、そこは真面目に言わなくていいからッ!」

近藤のスライディング土下座にも驚くが、千鶴のどこかズレてる所も夏美は驚いた。
そんな時千鶴は自分が持っていた、スーパーの袋からバナナを1束だして、土下座している近藤に差し出す。

「ゴリラさん、このバナナ動物園に帰る道順で食べるといいわ」
「いや・・俺ゴリラじゃないんですけど・・俺が行きたい所動物園じゃなくて、麻帆良学園なんですけど・・」
「え? 夏美、麻帆良学園にゴリラ用の飼育室なんてあった?」
「いや無いよッ! ていうかちづ姉、その人は人間だからッ! もう気付いてあげて、その人泣きそうな顔でバナナ食ってるからッ!」 
「余程美味しいのね、きっと久しぶりのバナナだったから喜んでいるのよゴリラさん」
「俺・・ここの世界でも・・ゴリラ扱いなんだね・・」
「ちづ姉ぇぇぇぇ!! なんかその人のコンプレックスをめちゃくちゃ突いてるっぽいよッ! 私もコンプレックスあるからわかるよッ! 元気出してェェェェ!!」

正座の状態で涙目になりながら、ド天然の千鶴から貰ったバナナを食べる近藤に、遂に夏美は自分よりずっと年上のこの哀れな男性を助ける事にした。 












「いや~助かったよ夏美君、まさか麻帆良の生徒だったとはな~、千鶴さんもバナナありがとうございます」
「もっとバナナあるから飼育室に入る前にもっと食べていいわよゴリラさん」
「まだ俺ゴリラ? そろそろゴリラ止めてくれません? 俺もう心ズタズタなんですけど?」
「ちづ姉は天然だから・・」
「いや天然ってレベルじゃないよね? 人類をゴリラと間違えるのは明らか天然って言葉じゃ済まないよね?」

無事に近藤は夏美と千鶴の道案内で麻帆良学園への道を歩けた。三人は軽く自己紹介して、相変わらずバナナを食べている近藤と、朗らかな笑みを浮かべている千鶴と、そんな千鶴の天然っぷりに乾いた笑いをする夏美は麻帆良学園へと向かっていた。三人が話しながら歩いていると、近藤がふと気付いた事があった。

「所で千鶴さんって・・年いくつですか・・?」
「14才です」
「えェェェェェ!! 見た目よりめっちゃ若いっすねッ! 思わず俺敬語使ってましたよッ!」
「見た目・・より?」
「あ、あの~近藤さん・・その話しは止めた方が・・」

近藤が千鶴の年齢を聞いて驚くと、微笑んでいる千鶴に若干、ドス黒い違和感を夏美が察して、近藤に警告するが、残念ながら彼には声が聞こえなかった。

「ええ、見た目より若く見えます、だってどうみても20代・・いや若い30代にも見えますね~」
「・・・・・・・・・・・」
「こ、こ、近藤さんッ! それ以上は禁句ですッ! ちづ姉の背中から黒いオーラがッ!」

アホの近藤が千鶴の出す黒いオーラに囲まれているのに気付いて、夏美が思わず叫ぶ。早くしないとあの人は死ぬ・・そう直感したのだ。何故なら千鶴に見た目と年齢のギャップの違いを言うと・・

「だって制服来てもどう見ても学生には見えませんよ、ていうかもう子持ちですって感じの匂いがありますもん、特にそのでっかい2つのメロンが・・・・・・・・・」

近藤がセクハラまがいの言葉を言い終えるウチに、ドスッと刺されたような音が聞こえた。それど同時に近藤は急に立ち止まって静止する。

「あれ、どうしたの近藤さん・・? 急に止まって・・?」
「どうしたのかしらねぇ? ゴリラさん、口から泡出して、背中にバナナ生やしてるわ」 
「いや生えてるっていうか刺さってるよね・・? バナナ背中に刺さってるよね・・?」

近藤が突然口から泡を吐くのも奇妙だが、何より奇妙なのは彼の背中にブッ刺さってるバナナだった・・そして

ブシャァァァァァ!!

近藤の背中から大量の鮮血が散った・・そのまま近藤は前からドスンッと倒れた。

「近藤さんの背中から、見た事ないほどの血がァァァァ!! やばいよッ! ちづ姉さすがにこれはマズいよッ!」
「スタンド攻撃よ、何処かにスタンド使いがいるんだわ」  
「ここにスタンド使いがいるとしたら、目の前の人しか私知らないよッ! どうするちづ姉ッ!? とりあえず病院ッ!?」
「大丈夫よ、このまま行って次回始まればケロっとして復活するわ、だってゴリラですもの」
「ゴリラでも限度があるよッ! てかこの人ゴリラじゃないしッ! 近藤さぁぁぁぁんッ! ここで死なないでェェェェ!!」

近藤勲・・麻帆良学園に着く前に、スタンド使いにより、背中にバナナを刺されて死亡・・

「ちづ姉勝手にナレーションいじらないでッ!」

第ゴリ部 完

「終わらしちゃ駄目だからァァァァ!! ていうか何ジョジョっぽく終わらせようとしてのォォォォ!?」

千鶴のフリーダムっぷりに夏美は、近藤をほっといてひたすらツッコミまくっているのだった。













次回予告

第一回クロス対決の始まりッ! しかし戦いの前にあの男達が大暴れッ!? (ナレーション・朝倉和美)

遂にやってきた一人のゴリラッ!

「読者のみんなァァァァァ!! みんなの近藤が遂にやってきたよォォォォォ!!!」
「何で近藤さん背中にバナナ刺さってんのォォォォォ!?」

サド王子により、始まる前に乱闘かッ!?
 
「銀八・・神楽坂とサドがまだ睨み合ってる・・」
「相打ちになってくんねえかな?」

マヨラー侍と、ある生徒と戦いずらい空気発生ッ!

「いや、もう少し話数を計算しろよ・・作者・・」
「どうしましょうか・・?」

そしてあの伝説のブラザーズとスーパードラゴンがまさかのネギまサイドに助っ人登場ッ!?

「あ、アンタもしかして・・!」
「フン、ただのしがない配管工さ」
「その弟です」
『でっていう』

次回の外伝は20話終了後だよッ!

「ていうか・・弟さんの方は、僕の世界の人だと思うんですけど・・?」
「気のせいです、私は『涼宮ハルヒの憂鬱』のキャラです」
「いや、そう言うと俺もそうなるだろーが」

















小ネタ 主人公同士の暇の過ごし方

場所は万事屋銀ちゃん。銀八とネギはテーブルの上で、超メジャーなカードゲームをやっていた。

「手札を1枚捨てて、魔法カード『ライトニングボルテックス』発動ッ! 銀さんの場に出ている表側表示のモンスターを全て破壊ッ!」
「させるかよッ! 俺の主力モンスター、『スターダストドラゴン』の効果発動ッ! スターダストドラゴンを生け贄にして、相手のフィールドのカードを破壊する効果を持つカードを無効にして破壊するッ! 『ヴィクテム・サンクチュアリ』ッ! しかもお前のターン終了後、スターダストは俺の場に戻ってくるぜッ!」
「だけどこれにより、スターダストはこのターン場にいませんッ! いまが好機ッ! 僕はエースカード『ブラックマジシャン』で銀さんの場に残っている『インフェルニティ・デストロイヤー』を攻撃ッ! 『ブラック・マジック』ッ!」
「ぬおォォォォォ!! 俺のデストロイヤーがッ! やべッ! 俺の場がガラ開きにッ!」
「そして『ブラックマジシャンズ・ガール』でダイレクトアタックッ! 『ブラック・バーニング』ッ!」
「チッ! 俺の場にはこれがあるの忘れたのかッ!? 永続罠カード『デプス・アミュレット』発動ッ! 相手のモンスターの攻撃を手札を1枚捨てて無効にするッ! 俺は手札から『インフェルニティ・ビースト』を捨てて、マジシャンの小娘の攻撃を無効にするッ!」

銀八とネギは叫んだり、吼えたり、オーバーリアクションでカードをめくったり、墓地ゾーンにカードを置いたりしている。はたから見れば、恐い光景だが、これはカードゲーム『遊戯王』をやる時では普通である。いや、あくまで作者はね?

「攻撃力2300のインフェルニティ・デストロイヤーを、攻撃力2500のブラックマジシャンで撃破したことにより、銀さんのライフは200ポイントのダメージ・・まだ3800ですか・・ターン終了・・」
「テメェの終了真際に、速攻魔法『終焉の焔』発動! 自分の場に攻撃力、守備力0の『黒焔トークン』を2対召喚するッ! しかも、俺の場にはスターダストドラゴンが戻ってきたぜ、こいつの攻撃力は2500だが、十分戦えるレベルだ、お前のライフは残り2700、こりゃあ俺の勝ちも近いな」
「確かに、そのカードは協力ですが、僕のブラックマジシャンも2500、そしてブラックマジシャンズ・ガールは2000・・場としてはまだ僕のほうが有利ですよ、銀さん・・」
「へ・・甘いな、俺が無駄にトークンを出したと思ってんのかネギ? 俺のターン、ドロー!」

銀八は不敵に笑って、デッキからカードを引く。引いたカードを銀八が見たときネギに向かってニヤリと笑う。

「コレでチェックメイトだ、俺の場の2体の黒焔トークンを生け贄にして・・現れろッ!『DT(ダークチューナー)・ナイトメアハンド』!」

銀八は自身満々に引いたカードを出すが、ネギはそのカードをみてギョッとする。

「攻撃力と守備力0のレベル10のモンスターッ!? 何ですかこのカードッ!?」
「へッ! コイツをアドバンス(生け贄)召喚で出すと、俺の手札からレベル2以下のモンスターを召喚できるんだぜ、来いッ! レベル2の『スピード・ウォリアー』を特殊召喚ッ!」
「たった攻撃力900のカードを召喚して何する気ですかッ!?」
「黙ってみてな、レベル10の『DT・ナイトメアハンド』で、レベル2の『スピードウォリアー』をダークチューニングッ!」
「ダークチューニングッ!? 普通のチューニングじゃないんですかッ!?」

チューニングとは本来、チューナーモンスターと、チューナー以外とモンスターの星の数を合わせてシンクロモンスターを召喚する、特殊な召喚方法である。例えばレベル5のシンクロモンスターを召喚する時は、レベル5になるように、モンスターとチューナーモンスターをうまく合わせれば、召喚できるのだ。しかし銀八が言ったのは『ダークチューニング』・・ネギはその単語を初めて聞いた。

「レベル2から、レベル10を引いて・・漆黒の帳降りし時、冥付の瞳は開かれる・・舞い降りよ闇よ! ダークシンクロッ! 『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』ッ!」
「今の詠唱みたいなの何ですかッ!?」
「おいそこを聞くなッ! 恥ずかしいんだよッ! 遊星やジャックとか我慢してるんだいつもッ!」

ネギのツッコミでせっかくカッコ良く決めようと思ったのに、結局グダグダになり、銀八は顔をしかめる。一旦中止して、二人は改めて再開した。

「レベル-8のモンスターッ!? レベル2から、レベル10を引いたって事ですかッ!? しかも攻撃力3000ッ!? スターダストでも厄介なのに、こんなモンスターを出すなんてッ!」
「攻撃力だけじゃねえ、こいつの能力も強力だぜ・・更にコイツが破壊されても・・まあ破壊されればの話しだけどな」
「くッ! この不気味なドラゴンの能力は一体ッ!?」
「『スターダストドラゴン』と『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』、この2枚がそろって未だに勝ったデュエリストはいねえ・・俺のパーフェクトコンビにお前負けるぜ・・フハハハハハ!!」

思わず顔を苦ましているネギに、銀八は挑発的に笑っている。
銀八の場には白く神々しい竜と、黒く禍禍しい竜が並ぶ・・ネギは2枚の銀八の切り札に対抗できるのか? そして黒き竜の能力とは? 
次回『炸裂!ハンドレスコンボ! そして地縛神光臨!』
なおナレーションは、私、雪広あやかが担当しました。






「ってなんじゃこりゃァァァァ!!!」

今までずっと見ていた千雨が、身を乗り出してツッコんだ。

「なんですか、千雨さん私ナレーターやって疲れているんですが? 読者に気付かれないように、いつものナレーターと同じ口調にするのって疲れるんですよ?」 
「別にお前のナレーションはどうでもいいよッ! 何でいきなりデュエルッ!? しかも長いしよッ! おい聞いてるのかそこの二人ッ!?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いや何まだ一時停止やってんだよッ! もういいんだよッ! 次回なんかねえからッ!」  

銀八とネギが一切動かずに、さっきからずっと同じポーズを取っていたのだが、千雨がツッコんだ所でようやく二人は元に戻った。

「いや、アニメとか漫画だとこういう感じで終わるだろ? 俺も時々あるけどこれかなり疲れるんだよね~」
「ここ小説だから関係無えよ・・」
「そういえば銀さん、よくスターダストとあんなドラゴンのデッキを作りましたよね? バランス悪いんじゃないですか?」
「バカヤロー、このデッキはな~ネギ、遊星と鬼柳のカードを混ぜた友情デッキだ、あいつ等の絆は例えどんな事があっても、断ち切れないという思いで俺が作ったデッキだぞコレ」
「無駄に話し深くしようとしてんじゃねえよッ! 誰も共感しないからねソコッ!」

銀八の無駄に深い話しにツッコミを入れて千雨はハァ~とため息をついた。

「お前等なァ・・言っとくけど『東方よろず屋』でもデュエルやってんだぞ・・これ端から見ればパクりだと思われるぞ・・オイ・・」
「しょうがねえだろ、まさか同じタイミングで遊戯王ネタやるなんて、そんなミラクル起きるなんて予想外だっつうの、だけど白々燈さんからデュエルやっていいって許可もらったから、『もっと自由にやってください』ってありがたい言葉貰ってんだよウチは」
「許可貰えたのは嬉しいけど自由過ぎるんだよ・・」

銀八があくびをしながらの報告に、千雨は不安がよぎる。少なくとも遊戯王知らない人がここ見てもどん引きである・・

「そうですわ、所で銀さん私のデッキとはいつ戦うんですか?」
「お前まだ、アニメだと出番少ないじゃん、キングVSカーリー戦の後だと思うからしばらく先だな」
「それ、中の人ネタですよね?」
「声優ネタとか遊戯王とか・・もう読者の皆様すいません・・」

今日も万事屋ではにぎやかにおかしく、そしてバカバカしくやっています。














「次回は本編に戻って・・で誰が主役だ?」
「フッフッフ・・遂にワシの出番じゃな・・」
「『スターダストドラゴン』と『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』であのエイリアンにダイレクトアタック」
「え?」
「キシャァァァァ!!」
「ゴガァァァァァ!!」

銀八の後ろに出現した2体の竜、1体は白と水色の混じった特徴的な体つきをしている、スターダストドラゴン、もう1体は黒い体で、無数の眼を体に付けている竜よりむしろ悪魔に近い、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

「っておいィィィィィ!! 何で実体化したんじゃッ!? ここ銀魂とネギまのクロスじゃなかったッ!? 何で遊戯王みたいに実体化すんのッ!?」
「いや自由にやって下さいって言われたから」
「自由過ぎじゃんッ! ていうかそんなドラゴンの攻撃食らったらワシもう死・・」
「スターダストドラゴン『シューティング・ソニック』、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン『インフェルニティ・サイト・ストリーム』」

銀八は学園長の言葉を言い終えるうちに技名を言い、スターダストの口から放つ波動と、ワンハンドレッドの大量の眼の全てから光線が飛び出し、全て学園長に・・


「ウギャァァァァァァ!!!」
「次回『老人は国の宝』」
「そこで予告するなァァァァ!! 光線がまだ飛んでくるんすけどォォォ!! うおッ! ワシのチャームポイントが消えたッ!」

銀八が予告している間も2体のドラゴンの攻撃はまだ止まらない、次から次に来る光線を、必死に避ける学園長。だが自慢の髭は、ワンハンドレッドの光線で一瞬で剃られた

「ワシ次回生きてるのコレッ!?」
「おら行けェェェ!! スターダストォォォォ!! そこで止めだいけェェェェ!! そして逝けジジィッ!」
「逝くかァァァァ!! 次回はワシの話しなのに、こんな所で死ねるかァァァァ!!!」 

銀八の言葉にブチ切れながら必死に攻撃を避けつづけている学園長だった。
今回遊戯王ネタ多くてすいませんでした・・















教えて欲しいぞぉマスター のコーナー

エヴァ「おい見ろ銀時ッ! 遂に私のコーナーだッ!」
銀八「いや基本、質問コーナーと変わらねえから、ていうか何でお前? お前とサドのせいで俺しばらくやってねえんだけど?」
エヴァ「前回のおかげで私の株が上がったからな、それを記念してこんなことやってみたッ!」
銀八「サドと考えが変わってねんだよ」

エヴァ「いいだろ別にッ! 一通目! 「エヴァ様に質問です、スモークチーズは好きですか?」・・何か今までに無かった質問だな・・まあいい、スモークチーズは私の大好物だ、だがいつも銀時に止められる」
銀八「いきなり声優ネタかよ、そう言えば色々とお前と一緒に出てるな俺・・」
エヴァ「『なのは』では私とお前は夫婦だし・・子供いるしな・・フ・・」
銀八「まあここではお前みたいな一生ガキ、俺全然興味無いけどね、さっさと次いけバカチン」

エヴァ「何をォォォォ!! 見てろいつか成長してやるッ! お前の方がバカチンだッ! 二通目ッ! 『万事屋メンバーでいっその事子作りしちゃえば?』・・銀時ッ! 私以外の女には手を出すなァァァ!!」
銀八「お前にも手出さねえよ、この『永遠のクソガキ』が」
エヴァ「変なあだ名付けるなッ! 全く・・いつも私と同じ家に住んでいるのに、夜這いに来ないとは何事だ・・」
銀八「お前は俺をロリコンにする気か? そんな事したら、この小説マジでヤバイからね?」

エヴァ「元々この小説は色々とヤバイんだから、良いだろうが・・三通目『外伝でも良いから、じじぃを虐める会を作るというのは?』別に無くても自然に出来てるよな?」
銀八「まあな~基本俺と新田先生は、あのジジィの事は毛嫌いしてるしよ、源先生も、笑顔で「マジで死んで欲しいです」って普通に言うからね? タカミチは・・知らねえや本編であった事なんて一回も無えしよ、名前しか出てないし~ていうかアイツオリキャラだっけ?」
エヴァ「いや私もあんま覚えていない、原作では結構会ってるらしいが、ここではお前のスクーターで轢いた時ぐらいしか会ってないし、正直どうでもいい」
銀八「俺もどうでもいい」

エヴァ「あんな奴の話しより四通目だ」
銀八「まだあんのかよ、最近感想増えてるな・・まあありがたいけどね? 感想が来てくれると嬉しいしよ」
エヴァ「この作品は感想によって成り立つ作品だしな・・全くどんな小説だ・・『宮崎のどかを出して下さい』だとよ?」
銀八「いや~今回出そうと思ったんだけどさ、都合上カットになったんだよ俺まだあいつと絡んだ事無いしよ、あとアイツ俺の事恐がってるように話すんだよね・・俺何かしたかな・・?」
沖田「残念ですね、俺もあいつが出るの待ってるのに、もう作者死ねって感じです」
エヴァ「おい今一瞬サド王子が出たぞ・・」
銀八「もうあのカミングアウト野郎はブレーキ役探さないとヤバイな・・ゴリラとマヨと俺だけじゃアイツの欲望は抑えられねえ・・」

エヴァ「私はアイツとは絶対絡まんぞ・・あんなドSと関わるのはもうゴメンだ・・所で銀時私個人的に気になる感想があるのだが・・?」
銀八「何?」
エヴァ「『銀さんへ、エヴァに抱きつかれた時興奮した?』という質問が来ているのだが・・」
銀八「何ニヤニヤ笑いしてんのお前? 気持ち悪ぃな、ていうかその読者一回連れて来い、ちょっとマジで殴るから、なんか俺が嫌がる質問ばっかする奴だろ? もうマジでぶん殴るから」
エヴァ「で? どうなんだ?」
銀八「ニヤニヤ笑い止めろっつってんだろこのチビ、お前なんかに抱きつかれて興奮したら真性の変態だからね俺?」
エヴァ「唇を合わせたがな・・クク・・」
銀八「おい『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』あの言ってもわからないバカチビに一発かませ『インフェルニティ・サイト・ストリーム』」 
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン「ゴガァァァァァ!!」
エヴァ「ちょッ! 何でここにもお前がいるんだッ! クソォォォ!! カードのモンスター風情が私を舐めるなァァァァ!!」
銀八「おうおう、やってるやってるビーム避けるの上手いなアイツ、ということでまた次回で」
エヴァ「えッ!? もう終わりかッ!? ちょっと待てッ!? こいつの攻撃が止むまで・・くそ全く止める気なしかこいつッ!?」
銀八「バ~イ」
エヴァ「待てェェェェェ!!」










おまけ

土方「おい総悟、何読んでんだ?」
沖田「読者からの俺への手紙ですね『ドッチボール集団黒百合を調教したって下さい』ですって」
土方「また、そんな感想か・・まさかお前やるんじゃねえよな・・?」
沖田「チョロかったです、余裕でしたあんな奴等」
土方「おいィィィィ!! どう言う意味だッ!? どういう意味だそれッ!?」
沖田「外伝2話に期待」
土方「出来るかァァァァ!!」



[7093] 外伝Ⅱ 空気の読めない奴は必ずクラスに一人はいる
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/08/27 09:31
銀八先生のお知らせ

銀八「ネギま銀魂対抗試合始まるよ~けどその前に」
沖田「このお話しは過激な暴力描写、グロデスクなシーンがあるので心臓の弱い読者は注意して下せぇ」
朝倉「本編後の別設定のネギま×銀魂小説もよろしくッ!」











校庭にいる群集の中に一人の男がついに到着した。その名は近藤勲。
土方、沖田達真選組をまとめる頼もしいリーダー……なのだが

「いや~迷ったよ新八君、だってこの辺広いんだもん俺迷子になっちゃって、でもここの女子生徒の二人に道案内してもらってさッ! いや~モテる男は辛いよ、だが大丈夫だぞ新八君ッ! 俺はお妙さん一筋だからさッ!」
「その前に近藤さん1ついいですか……」
「どうした新八君? 俺の顔に何かついてる?」
「いえ、顔じゃなくて……背中に本来刺さらないモノが刺さってます……バナナ刺さってます」

新八が目を細めて近藤の背中に刺さっているモノを指差す、それは見事な曲線の黄色いバナナ。だがそれを聞いても近藤は理解できなかったらしく大声で笑った。

「新八君そんなもん刺さるわけないだろ? 俺は学校の公舎内で背中にバナナぶっ刺して平然としてる程バカじゃないってッ! もしそんな奴見つけたら大笑いしてやろうぜッ! な~はっはッ!」
「そうね笑っちゃうわね、ウフフフフ」
「いやアンタ自分のバカさ加減知らないでしょ……? さっそく笑われてますよ、道案内してくれた女の人に笑われてますよ……」

新八の言う通り近藤の後ろで彼を道案内した千鶴が手で口を押さえてクスクスと笑っていた。しかし元はといえば彼女が彼の背中にバナナぶっ刺した人物なのだが

「見てみて夏美、あのゴリラさん背中にバナナ刺してるわ」
「いや何前回のやり取り無かった事にしているのちづ姉……あれ刺したのちづ姉じゃん、思い出してよ……」
「夏美、女は過去を見ずに未来を見据えるように生きなきゃ駄目なの、大事なのは過去じゃなくて未来よ」
「消してはいけない過去もあるからねッ!?」

相変わらずの彼女に一緒に近藤を道案内した夏美が大声で彼女に叫んでいた









近藤が平然と背中にバナナを刺しているという、なんともマヌケな絵面を眺めながら土方はタバコに火をつけて遠くから見ていた。

「何で近藤さんの背中にフルーツが実ってるんだ……」

自分の上司の有り様を見て土方は煙とため息を同時に吐いていると、隣りにいた刹那がしかめっ面で豪快に笑っている近藤を指差して土方に質問する。

「あの人って土方さんと同じ制服なのですが・・・・・・?」
「近藤さんは俺達の総大将だ」
「ええッ!? あの人が一番偉い人なんですかッ!?」
「なめんじゃねえぞ、あの人は俺達真撰組を束ねる事が出来る唯一のお人だ」
「全く見えませんがね……背中にフルーツ実ってるし……」
「ああ実ってる、不自然な生え方で実ってる」

アホみたいに大声で笑った近藤を見て、刹那は一体土方はあの男の何処に惹かれたのかさっぱりわからなかった。













「木乃香、あのサド野郎はどこいったかわかる? さっきから姿見えないんだけど……」

校庭のど真ん中でキョロキョロと見渡してアスナがサド野郎=沖田の所在に着いて木乃香に尋ねる。彼が目の前にいるのも危険だが、いきなり忽然と姿を消すのも不気味だ。それを聞いて巨大犬定春の頭を撫でていた木乃香がしばらく考えた後思い出したように答える。

「あの人なら散歩に行くとか言ってたで、なんか知らんけど鎖と首輪持って」
「へ~鎖と首輪持って・・・・・・そりゃあ急いでこの学園の中の人達に避難勧告しないとマズイわね~ていうか木乃香その犬、大丈夫……? さっきエヴァちゃんや千雨さんに噛み付いてた犬よ……?」
「大丈夫アル、定春はよい子だから安心するヨロシ」
「アン」
「いやよい子ってチャイナ……」

座っている定春の背中に乗っていた神楽がひょこっと顔を覗かせる、それと同じに木乃香に嬉しそうに触られている定春が答えるように吠えた、だが今まで見たことの無いデかい犬なのでアスナは不安である

「じゃあ……お手」
「……」
「黙ってないでやりなさいよ、オラ」

アスナが手を差し出して定春に命令するが定春は舌を出して笑っているだけなので、軽くペチンと頭を叩く。すると

「わぎゃぁぁぁぁ!!」
「のふッ!!」
「ア、アスナがまた飛んでもうた~~~!」
「すげ~! 人間が飛べたアルッ!!」

頭を叩かれて機嫌を悪くしたのか定春は右アッパーでアスナを上空に跳ね上げていた








アスナと木乃香から少し離れた場所。そこで坂田銀八が両手で持っている紙を眺めながら、普段よく行動している千雨、あやか、エヴァに淡々とゲームの説明をしていた

「ゲームの内容はドッチボール、設定ルールは……なんだっけ? ネギ~説明頼む」
「ってッ! その紙に説明書いてあるんじゃねえのッ!?」

銀八が紙を眺めた後、すぐに銀八にパシられてジュース買ってきたネギにこっち来るよう促す。そこに千雨がすかさずツッコむと銀八が持っている紙をピラピラさせながら口を開く。

「あ~これ? これ新田先生から貰ったキャバクラのチラシ」
「こんな時に読むものそれッ!?」
「今夜一緒に行こうって誘われちゃってよ、どの娘を指名するか迷ってんだよ」
「何生徒の目の前でどのキャバ嬢選ぶか迷ってんだよ……」

額に皺を寄せて悩んだ表情を浮かべてキャバ嬢リストを眺める銀八、だがそれを良しとしない金髪二人がジリジリと彼に近付く

「銀時……誰が誰を指名するって……?」
「いや俺がガキ共に囲まれたこの環境を一変させるような良い姉ちゃんを指名……あれ?」
「私達がゲームやろうとする時に、銀さんは誰と王様ゲームをやろうか考えていたんですか……?」
「あれ何でだろう銀さん汗が止まらない……あと何か背筋に寒気が……」

銀八が住んでる家主の少女エヴァと、自分の部下の少女あやか。銀八に想いを寄せている二人が殺気を出しながら近付いてくる。銀八が何か自分に良からぬ災難が起こると察し頬を引きつった顔で二人を見る。

「いやしょうがないじゃん……新田先生に一緒に行こうって言われたら断れないでしょ……俺あの人に結構金借りてるし、ハハハハ……」
「銀時……」
「銀さん……」
「千雨ェェェェェ!! 見てないでこの二人どうにかしてくんないッ!? これ間違いないッ! 俺再起不能にされるカウントダウンが始まってるッ!!」

銀八が慌てて振り返り千雨に助けを求める。だが……

「ネギ先生、そのジュースください」
「あ、あれ? 銀さんにジュース買ってきたんですけど……?」
「あの人はしばらく無視で」
「千雨ちゃぁぁぁぁんッ!? 何でお前っていつもこういう時冷た……ドフッ!!」

叫んでいる銀八を千雨はスルーして困惑している表情のネギから銀八が貰うはずのジュースを飲んでいる。これに銀八が近寄って怒鳴ろうとするが、その前に突然前に現れたエヴァに自分の腹を思いっきりボディーブローを入れられ、その場に腹を押さえて両膝を付く

「ちょ……お前等……」
「さてゲームを始める前に……」
「教師でありながらキャバクラなんかに行こうとする御方に制裁を加えますか……」

エヴァとあやかが微笑を浮かべながら額から汗を流している銀八に近付く、あまりの汗の量にかけていた伊達メガネがズルリとずれた。

数分後校庭に銀八のイヤァァァァ!という悲鳴が長い間響いていた。



















銀八がエヴァとあやかに粛清されている中、麻帆良学園内で沖田総悟は別世界にも関わらずブラブラと歩いて散歩していた
まだ自分の上司の一人がこちらに着いてなかったので、暇になったからと言ってその辺をうろついているのだ。

「あ~あ、俺が一番会いたかったガキは何処にいるのかねぇ」

ブツブツと独り言を言いながら沖田は自動販売機を見つけて近付く、沖田は財布からお金を取り出す。

「ま、いいか、調教しがいのあるイイ女がいるし……あれ?」

ふと自分の持ってる小銭を見て気付く。別世界と自分達の世界では通貨が違う、つまりこの世界では自分達のお金ではジュース一杯も買えないのだ。

「まいったなこりゃあせっかくエテ公とデコ那の為に、俺からの特性激辛タバスコ入りコーラをあいつ等の鼻に突っ込んでやろうと思ってたのに、しょうがねえその辺のガキから喝上げでもして……」
「あの~私使って良いですかね、お兄さん?」
「あん?」

ふと声が聞こえて振り返ると、そこには制服を来ているのでここの生徒の一人であると沖田はわかった。三年A組で唯一彼氏持ちのチアリーダー、柿崎美砂が少し笑って沖田に尋ねる。彼女から見れば沖田は相当イケメンなので初対面の沖田には好感が持てた。
だが沖田は彼女を目を細めてジッと見つめるだけだ

「え? 嫌だなそんなに見つめられても私一応彼氏持ち……」

頬を染めて照れている彼女を見つめながら沖田の目がピカっと光る

ドSモードオン















「さあ始まりましたネギまと銀魂の原作対抗試合ッ! 司会は私花野アナとッ!」
「朝倉和美ですッ! 今回はドッチボール戦の一本勝負ッ! お互い張り切っていきましょうッ!」

テレビでよく見る司会者の為の腰掛けに座り、司会の花野アナとA組生徒の和美がマイクを持って意気揚揚と高らかに宣言した。

「え~いきなり休暇中に叩き起こされて、こんな別世界に連れて来られて困惑していますが、しっかりと仕事を終わらせようと思うのでトラブルやアクシデントは起こらないようにして下さい」
「すいません、俺さっそく人間関係でトラブル起こしました、どうすれば良いですかね……」
「おーっとッ! 早速トラブルな目にあってそうな人が来ましたッ! 人の話を聞いていなかったのでしょうかッ!?」
「あれ銀さんボロボロじゃん」
「ちょっとな……」

花野アナが愚痴を入れながら話している時に、いつもの天然パーマが更にこんがらがっている頭をして、見た目ボロボロの銀八が歩いてきた。

「どうせエヴァちゃんといいんちょ辺りと揉めたの?」
「お前超能力者かッ!? どうしてわかったッ!?」
「いや大体把握できるから……」

銀八と和美が会話をしていると、他のメンバーもゾロゾロと歩いてくる、沖田以外……

「あれ? トシ、総悟何処行ってんだ?」
「知らん、散歩にでも行ったんじゃねえか? あいつが何処で何しようがどうでもいい」
「何か「あ~こっちにお市がいる気配がする」とか行って鎖振り回しながらあっち行きましたよ?」
「探せぇぇぇぇ!! 草の根分けてあのバカ探せぇぇぇぇ!!!」

刹那がボソリと言った後、すぐに大声で土方が必死に叫んでいると背後からジャラジャラと音を立てながら人影がこっちに向かって歩いてくる

「すいませ~ん、遅くなりました」
「総悟ッ!? テメェ今まで何処で……」

土方が振り返って怒鳴ろうとしたが急にトーンダウン、そこには相変わらず無表情の沖田総悟、そして彼が持っている鎖の先には……





「どうしたんですか土方さん? そんなに俺のペットが珍しいんですかい?」
「いやペットってお前……」

沖田が言うペット、それは鎖に繋がれ大人しく首輪を付けている……

「おい自分で自己紹介しろメス豚」
「柿崎美砂です、よろしくお願いします」





こちらにペコリと一礼する美砂に、銀魂メンバーとネギまメンバーは絶句の表情を浮かべ固まった。

「……あれ? その人僕の所のクラスの人に凄く似てるんですけど……」
「他人の空似じゃねえか? これは俺の、おいそこに四つん這いになれ」

ネギが恐る恐る質問するが沖田は否定して鎖を引っ張って美砂に指示、彼女は無表情で0.5秒でその場に四つん這いになり沖田は彼女の腰にドカッと足を組んで座る

「俺の椅子です、ちょうど立つのダルイなと思ってたんでここに帰ってくる前にちょっくら」
「いや何してんですかあんたァァァァ!!!」

美砂の上に座っている沖田についに群集の中からネギが大声で叫んだ。後ろからアスナが走って彼に近付く

「サドォォォォ!! あんたやっぱり駄目だわッ! ここに絶対来ては行けない男だわッ!! すぐ帰れッ!」
「イヤに決まってんだろ、俺はまだ一番星のターゲットを仕留めてねえ、こんなのまだ準備運動にもならねえぜ」
「駄目だこいつ……早くどうにかしないと……! 柿崎ッ!! 今助けるから待ってなさいよッ!!」

アスナはイスされている美砂を助けようと彼女に近付くが

「邪魔すんじゃないわよッ!!」
「え、何で助けようとしている人に怒られたの私ッ!?」

突然アスナの方に顔を向けて怒鳴り声を上げる美砂にアスナは戸惑いの表情を見せる

「あんたまさかそれ好きでやってるわけじゃないわよねッ!?」
「好きだからに決まってんでしょッ! ご主人様に手を出したらぶっ飛ばすわよッ!?」
「ご、ご主人様ァァァァ!? もしかしてコイツの事ッ!? ちょっと待ってッ! てかあんた彼氏いるのに何そんな事してんのよッ!!」
「彼氏なんてご主人様と会って5分で電話して別れたわよッ! 付き合って数ヶ月だったけど一度もキスせずに、捨ててやったわッ!!」
「ちょっとォォォォ!! 何か性格変わってんだけどこの娘ォォォォ!!!」

沖田の調教のメスにより完全に沖田のメス豚になってしまった柿崎美砂が形相を変えてアスナを怒鳴りつける、それを見ていたネギはその場に両手をつきがっくりうな垂れる

「僕の生徒が……お師匠さん僕はもう生徒を護れませんでした……」
「柿崎? 誰だっけ?」
「いや僕等の所の生徒ですよ……」

銀八はどうでもよさそうな目で自分の生徒を見る。そんな同僚にネギは小さな声でツッコむ

「これは大変な事になりましたッ! 銀魂代表の沖田選手が既に生徒の一人を手駒にしていますッ! 暴挙ですッ! これはクロス先の作品に対する暴挙ですッ!!」
「う~んあの娘は結構コロリと別の男についていくタイプだと思ってたけど、まさかこんなに簡単に自分のモノにするなんて……沖田っていう人危険だね……」

花野アナが叫び、和美は沖田を見ながら難しい表情を浮かべていると、突然花野アナの腕時計が鳴る、もう始まるのを宣告して結構経っている。

「おーっと時間通りに行こうと思っていたのに試合開始より10分も遅れてますッ! もうトラブル、ハプニングばっかで全く進みませんッ! 皆さん集合して下さいッ!!」
「サド王子、あんた降りなさいよッ!」
「だから邪魔すんじゃないわよッ!」
「おい俺の許可なしで喋るなメス豚」
「すいませんご主人様ッ!!」

全く聞いていない

「皆さん集合ッ!!」
「トシ、俺ここ来る前にすっごい胸がデかい人にあったんだよッ!!」
「あそこに座っている女だろ?」
「だろッ! 一体お妙さんの何倍デカいメロンなのかなッ!? まるでシングルマザーのようなあの豊満な……がはッ!!」
「近藤さんんんん!!! 何で頭にバナナが刺さったッ!? 何処だッ!? 何処のスタンド使いだッ!?」
「いえ土方さん多分あの人ですね……千鶴さんの背中から黒いオーラが見えました……」

聞いてくれない

「集合ッ!!」
「銀さん、今週のジャンプどうでした?」
「ワンパークがすっごい事になってた、いま盛り上がりまくってるよ白ひげがすっごいんだよ」
「マジですか? ギンタマンはどうですか?」
「あ~まだ後ろの方見てないわ、ジャガーさんのちょい前にいっつもあるよねアレ? まあ早く潰してハンガー×ハンガーの連載再開をして欲しいね」
「そろそろ決着つけますか銀さん」

聞かない

「集まってくださいッ!」
「新八ッ! お前もし負けたら次回からは名前オール伏せ字ネッ!!」
「いや止めてよッ! もし負けたら僕もう誰が誰だかわかんなくなっちゃうじゃんッ!!」
「あれ神楽ちゃんその人誰なん?」
「○○アルッ!」
「おいッ! もう伏字にしてんじゃねえよッ!」

聞かず

「8時だよ全員集合ッ!」
「千雨さん、先週万事屋にいませんでしたが何か別の用事が会ったんですか?」
「ほう、こいつが銀時にくっついていないなんて珍しいな」
「私だっていつも一緒にいるわけじゃねえよ……」
「押して駄目なら引いてみるですか、千雨さんらしいですわね」
「どんな事考えてんだお前……」

……

全く話しを聞かない一同を花野アナは見渡して……

「おい聞けよテメェ等ァァァァ!! こちとら休みなのにわざわざ来てやってんだよコラッ!」
「花野さん落ち着いて落ち着いて、こんな所で怒ったらこの先身が持たないよ……」

激昂している花野アナを和美が大人の態度で自分より年上の彼女を疎めていた











外伝Ⅱ 空気の読めない奴は必ずクラスに一人はいる

しばらくしてやっと集合してくれたメンバーに花野アナはピリピリしながら競技の説明を始めた

「え~それではルール説明です……今回は8対8のドッチボール戦、内野5人、外野3人、特例により顔面セーフはありません、これがあると何回も顔面にぶつけようとするプレイヤーがいると思うので」

手短かに説明する花野アナにメンバーの後ろで美砂にまだ座っている沖田は不満そうな顔を浮かべる。

「んだよそれじゃあ同じ奴に何回も顔面にぶつけられねえじゃねえか」
「アンタが考えている事ってそればっかね……」

沖田の隣りに立っていたアスナはサド振りを発揮する沖田にもう修正するのは無理だとあきらめて険しい表情を浮かべた。

「まだ両方のチームには方や5人、方や6人ですから8人そろってないので早急に集めて欲しいと思います」
「えッ! いや待ってくださいよッ!!」

花野アナの話を聞いて新八が挙手する

「僕らこの面子しか今日来てませんよッ! どうすればいいんですかッ!」
「安心しろぃ新八君、俺はこの世界で色々と使える奴を知っているんでね、今携帯で呼んでやるよ」
「使える奴……? 沖田さんってまだ本編入りしてないのに何でそんなのいるんですか?」

新八の不安をよそに沖田は携帯を取りだし向こうの相手と喋り出す。

「オレオレ、十秒以内に来い、遅刻したら鼻フック以上」

短絡的に説明して沖田はピッと携帯を切った。

「すぐ来るんで」
「お前一体どこで会ったんだよそんな奴……?」
「いや、今日来る前に昨日忍び込んでいる時に偶然会いましてね、土方さんが我が物顔で住んでいる中等部の女子寮は見つかりませんでしたが」
「何普通にカミングアウトしてんだテメェッ!!」
「間違えて高等部の方に行っちゃいました」
「……高等部?」

土方が首を傾げ、沖田が頭を掻いて反省していると……

「ただいま来ましたご主人様ッ!!」
「おせえぞ粛清してやろうか」
「すいませんッ!」
「出来ればして下さいッ!」
「いや誰コイツゥゥゥゥ!!」
「俺のメス豚、A、B、Cです」

猛スピードで走ってきた三人組の女性が沖田に跪いて謝るその光景は王様と召し使いの図である。それを見ていたアスナはジッと三人組を見た後、ハッとしてある事に気付いた

「アンタ等、高等部で今だにドッチボールばっかしている変な集団じゃないッ!」
「誰が変な集団ですかッ! 麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校の生徒で、ドッジボール部『黒百合』の主将の英子ですッ!」
「ビビですッ!」
「しぃですッ!」

原作にてアスナ達とドッチボールの試合挑んだ。黒百合の三人組だ。どうやら昨日のうちにすっかり沖田によって洗礼されてしまったらしい……

「アンタって本当に悪魔かなんかじゃないの……」
「人聞きの悪い事言ってんじゃねえよ、おいメス豚A肩揉め、Bは新聞買って来い、Cは土方を罵れ」
「はいッ!」
「急いで読売買ってきますッ!」
「死ね土方ッ!」
「何だテメェやる気かコラッ!」

メス豚Aこと英子が沖田の肩を揉み、Bことビビは新聞を買いに行き、Cのしぃは土方に真正面から暴言を吐いていた。

「よし総悟の人徳のおかげで何とか人が集まったなトシッ!」
「あれ人徳じゃねえッ! 完璧な調教だろうがッ!」
「土方さんの周りって本当大変ですね……」

勘違い振りを発揮する近藤に土方はしぃの胸倉を掴みながら彼に向かって吠える。そんな図太い精神の上司と目の前のドS部下を持っている彼に刹那は苦笑するしかない。







「どうしよう沖田さん……あんな事しちゃってるよ僕等完璧ワル者だよ……」
「でもあのバカのおかげで頭数揃ったアル、そっちはまだ足りてないようだけどな、キッヒッヒ……」

新八は額に汗をかきながらサドリストを眺めて不安に思っていたが、反対に神楽はいやらしい笑みを浮かべながらあやかに向かって挑発していた。それを見て彼女は顔をムッとする

「馬鹿にしないで下さいここは私達の世界、メンバーなんてすぐ足りますッ! 夏美さん、千鶴さんッ!」
「頑張っていいんちょ~」
「ファイトよあやか」
「既に見物人ポジションッ!?」

あやかが号令しても夏美は千鶴は壁にもたれて手を振って観客になっていた

「何やっているんですかッ! あなた達がいれば足りるんですよ早く来てくださいッ!」
「いやもう私疲れちゃって……ここまで来るのにダブルボケにツッコミまくってたんだから……」
「ごめんなさいあやか、私、人に物ぶつける事なんて乱暴な事出来ないわ」
「えッ! ちづ姉、近藤さんはッ!?」
「私はゴリラさんに何もしてないわよ夏美」
「え……えェェェェェ!?」

すっとぼけて笑みを浮かべる千鶴に夏美は驚きの声を上げている。
この二人は無理と察しあやかは首を振って深いため息をついた

「全く……エヴァさんと千雨さんは?」
「友達なんぞおらん」
「私もいねえ」
「そんな学校生活で楽しいんですかあなた達はッ!?」

エヴァはキッパリと千雨はぶっきらぼうに言う、あやかは心の底から彼女達の行く末を心配して再びハァ~とため息をついた

「もう誰でもいいから早急に集めないと……」
「その必要は無いぞ、この俺が来たからにはもう安心だ」
「え?」

見知らぬ声が聞こえ、あやか後を振り向く。チリンチリンと音が鳴り自転車をこぐ音、そこには……

「このカツオブラザーズがおぬし等に手を貸そうッ!」
「は、はい……?」
「兄さん漕ぐの疲れたからもう下りていいですか?」
「よし俺も疲れたから下りよう、すいません自転車置き場って何処ですか?」
「私に聞くなロン毛バカ」
「ロン毛バカじゃないカツオだ」

突然二人乗りの自転車で颯爽とやって来た二人組。二人とも赤と緑で統率する服装と青いオーバーオ-ル、どっからどう見てもあのメジャー級の兄弟にしか見えない。そこに新八と神楽が急いで駆けつける

「何やってるアルかヅラッ!」
「おおリーダーではないか、悪いがエリザベスとはぐれてしまってな、何処に行ったか知らないか?」
「何普通に話してんですかッ!? アンタ僕らサイドでしょッ! 何でそっち側に……あれ? ていうかその人ッ!?」
「あ、弟のクイージです、兄がお世話になってます」
「あ、どうもこんにちはってオィィィィ! 桂さんこの人って一体何ッ!?」

やってきたブラザーズに新八はツッコむ、彼が一番気になった点は何故来たのか、何故そんな服装なのかではない。兄の後ろにいる弟だ(余談だが弟は兄と違い付けヒゲをつけていない)、
その質問に兄は自転車あら降りてその場に止め、そして新八の方に振り向いて親指を立てて自身満々に答える

「俺の新たに加入した攘夷志士だ」
「違います」
「あともう一人いるのだが「んなもん行くかボケェ!」って言って断られた」
「私も断ったんですけど私は無理矢理ここに連れてこられました」

所々に弟が笑顔で口を挟んでくるので、兄の意見は新八は半ば信用出来なかった。兄の方と新八は何かと縁があるのだが、彼の意見はかなり自分勝手だ。

「じゃあその人は桂さんの知り合いだとして……桂さん、どうしてそっち側につくんですか?」
「なに、困っている女性をほおっておく程腐ってないからな、何て言ったて俺は侍だッ!」
「あなた達みたいな変な二人組に助けられる筋合いはありませんわ」
「そんな事言うなピーチ姫、姫がピンチになったらすぐに駆けつけるそれが我らカツオブラザーズッ!」
「誰がピーチ姫ですかッ!」

親指でグッと自分を指差してノリノリの兄の方にあやかがツッコンだ。

「私は知らない人達と共闘なんて……」
「何やってんだテメェ等、さっさとやって帰ろうぜ、もう何ページだと思ってんだコノヤロー」
「銀さんッ! 何か変な兄弟がッ!」
「兄弟?」


何やら騒がしいと思い近付いてきたのはタバコをくわえながらやってきた銀八。それを見てすぐにあやかは彼に近付く。彼女が指差した方向には

「兄さん、ジュゲムがいるよ」
「誰がジュゲムだっつーのッ!」
「おい貴様アルだろッ! 何バカとバカやってんだッ!」
「アルでもバカでもありませんクイージです」
「バカじゃないカツオだ」
「うるさいバカブラザーズッ! 何誇らしげに二人で自分の名前言ってんだッ!」

カツオブラザーズが千雨とエヴァで遊んでいた。それを見て銀八はタバコを捨ててあやかに向き直る。

「あれは大丈夫だから赤い方は認めたくねえけど知り合いだからさ、緑は知らねえけど」
「本当に大丈夫ですか……?」

銀八が言っているがそれでも少々不安である。すると兄弟が振り返り弟が銀八を指差す

「兄さんクッパがピーチ姫をさらおうとしているよ」
「おおッ! おのれクッパめッ!」
「誰がクッパだッ! テメェ等いつまでマリオごっこしてんだコラッ!!」

兄弟にお決まりの姫を浚うラスボスと認定された銀八が兄弟に向かって吠えた

「何か面白くなりそうやな~ネギ君」
「そうですか……僕はもう始まる前に心身ボロボロです……向こうの人達って本当何が何だか……」

かくしてついに各々メンバーが集まり、2つの作品の対抗戦が始まるのであった















「それでは皆さん白線が引いてあるコートの中へ入ったので試合を開始しようと思います、改めて実況は花野アナが送ろうと思います」
「じゃあ私は解説役でもやろうかな」

それぞれのメンバーがコート内に入っていく。ついでにメンバーは
実況 花野アナ 解説 和美
主審 銀八、ネギ
銀魂勢、内野 近藤、土方、沖田、神楽、新八 外野 黒百合三人組
ネギま勢、内野 アスナ、刹那、エヴァ、千雨、あやか 外野 カツオブラザーズ、木乃香。
以上である

「おい雪広あやか、長谷川千雨、私に飛んできたら全力でぶつかれ、そして散れ」
「イヤです、エヴァさんがチャイナさんの球に当たって散ってください」
「いやアルッ! こんなミニ乳狩ってもヒロイン獲得には遠く及ばないアルッ!!」
「今ミニ乳って言ったなッ!? しかも私を倒してもヒロインになれないだとッ!? 貴様等ッ! あのチャイナは私の獲物だからなッ!」
「あ~当てろ当てろ出来ればあそこのメガネもやってくれ」

小ばかにされたエヴァは神楽を指差してあやかと千雨に向かって叫ぶ。
一方アスナは相手側のコートでPSPを夢中でプレイしている男を見る。彼女のターゲットは

「車に轢かれた仕返しを今ここで返してやるわよ……あとアイツに洗脳された生徒達の為にも……」
「アスナ頑張ってな~」
「ええ、もうR-15指定になるぐらいにぶちのめしてやるわよ」
「それはちょっとヤバイんちゃう……?」

何やら危険な発言をさらりと言うアスナに外野に立っている木乃香は困った顔を浮かべる、ふと他のメンバーを見ると敵陣営を見物していた刹那がいたので木乃香は声を上げる

「せっちゃ~ん頑張ってや~」
「お嬢様……出来ればあまり土方さん以外の人とは関わりたくないのですが……変な人ばっかだし特に……」
「でもみんな悪い人には見えへんからええやん」
「お嬢様これ終わったら眼科行きましょうッ!」

刹那は木乃香の応援を聞きながらもあまりテンションが上がらない。土方は知り合いなのでまだいい、だが沖田は危険とわかっているし、クーフェイみたいなチャイナ娘も拳を鳴らしかなり威圧感がある、あそこの地味なメガネの男はまだわからないが……だがどうみても危険というか危ないというべきか、今はバナナが刺してあった場所を千鶴が持ってきてくれたガーゼを付けているあの男だ、これをやる前にやっと土方にツッこまれ気付き、慌ててバナナを2つ取った瞬間、背中と額から噴水が湧き上がったのは言うまでもない

「トシ、総悟よ、この試合の勝ち負けにより俺がいかに凄い男が見せつける為のショーでもあるんだこれは、だから俺は勝ちたい、銀魂に真撰組ありと読者と向こうのメンバーに見せてやるぞッ!」
「もう凄い男ってのは認知されてるんじゃねえのか? 額にバナナ生やす人なんて世界中に近藤さんしかいねえぞ」

準備運動の屈伸をしながら近藤はタバコを吸っている土方に激を飛ばすのだが、どうも見た目からして迫力がない、所々体を動かす度にガーゼがある傷口から赤い液体が漏れている。

「近藤さん血が出てる、血が」
「そう俺達はここまで来るまで多くの血を出してきたな」
「いや現在進行形で出してるから、ガーゼでおさえられないぐらい血が出てる」
「だが俺の夢はまだ終わっちゃいない、こんなゲームごときで倒れるわけにはいかない」
「ゲーム始まる前にそれ以上腕立て伏せしたら倒れると思うんだが」
「おかしい! 顔を地面に近付ける度に意識が遠のいていくッ! 俺の体に一体何がッ!?」
「もう病院行けやッ! 外科と、あと脳科に行って来いッ!」

腕立てふせして自分の血液を流して行く近藤に、ついに土方は尻を蹴って彼の自殺行為を止める。そんな事をしている頃、まもなくして花野アナが再び大声で叫ぶ

「それでは試合開始ですッ! 最初にボールを所持者は年齢のハンデにより麻帆良生徒の皆さんの方ですッ!」
「よぉぉぉぉしッ! アンタ等ッ! 相手側の軍団が二度と立てないぐらい倒すわよッ!!」
「立てないだけじゃ済まさんッ! 塵に返すぐらい叩き潰すぞッ!!」

アスナとエヴァは相手側に殺気を燃やして味方陣に鼓舞するのだが、刹那が申し訳なさそうに二人に入ってくる。

「あの……土方さんが相手だとやりにくいので私は傍観してて良いですか……?」
「何を言っている桜咲刹那ッ! ああいう毒性の強い奴等は早めに駆除しておかねければ、貴様の大切な近衛木乃香に被害が及ぶぞッ! 八話の時のお前はどうしたッ!?」
「人の傷口をほじくり返すなッ!」

いらん事を言われて刹那がエヴァに胸倉を掴みかかって叫ぶ。土方と一緒に住んでいる内に何故か段々と彼に似てきていた。
向こう側にいた土方はタバコを吸いながら静かに観察している。
戦いが始まる前に敵の行動を見てどう動くか計算する。それが戦場を指揮する鬼の副長のやり方だ


「さっそく仲間割れか、まあ所詮寄せ集めの軍勢……勝てるな」
「いいのかトシ?」
「どうしたんだ近藤さん? ていうか病院行け頼むから」
「向こうにはお前の連れがいるらしいじゃないか?」

近藤が声を小さくして土方に声をかける。外伝1が始まっている頃はまだ土方は麻帆良入りしていなかったので、向こうには知り合い一人いなかったが、今回までくるのに土方は麻帆良入り。同居人の刹那とやりあうのはやりずらないのでは無いかと思ったのだ。だが土方はそれを聞いて鼻でフンと笑う

「確かにやりずれぇのはある、だが勝負は勝負、たとえ女だろうが、同居人だろうが敵になるなら全力で狩らしてもらう、まあ俺とあいつがボールを持った時だがな」
「じゃあ私はデカ乳を狩るアル」
「じゃあ俺はツインテールの小娘狩ります」
「よーし、わかったから得物をどっかに置いて来い、狩る意味が根本的に違えから」

神楽は常に持っている夜兎族の戦闘用日傘、沖田は常に腰に差してある刀を肩にかけ、命ごと狩ろうとする気マンマンなので土方は冷静に疎める。

メンバー内でそんな雑談をしていると向こう陣営に和美がアスナにドッチボールに使うためのバレーボールを渡しにくる

「わかってると思うけど怪我とか事故とかそういう事起こすのは注意してね」
「見てなさい朝倉、あのサドのムカツク顔に跡がつくほどの球をぶつけるから」
「あれ……人の話聞いてた?」

何か物騒な事を口走るアスナに和美は不安になりながらも彼女にボールを渡す。それを片手で受け取りアスナは目の前でクチャクチャとガムを噛みだした沖田を睨む。彼もその視線に気付き彼女と目が合う、ガムを噛みながニヤリと笑う

((この試合で……徹底的にぶちのめすッ!!!))
「銀さん、何かあの二人殺気が凄くないですか?」
「勘弁してくれよ全く、ああいう頭カラ二人は後先考えねえんだよな」
「でも僕の知り合いの人に『殺ると決めた時は全力で殺るのが礼儀』って言ってましたよ?」
「誰だよそんな物騒な格言言ってる奴、イチローでもそんな事言わねえよ」

お互いにメンチを切っている二人を眺めながら、ネギと銀八は疲れた様子で少し離れた所でイスに座りながらもうすぐ始まるゲームに間違いなく誰かが重傷者が出る、ネギは戦いの師との戦い、銀八は長年の戦いの経験によってそう感じた。

「まあいいやどうせギャグ小説だし適当にやろうぜ、という事でそばかす娘、笛吹く役お前に任せる」
「まず人のコンプレックスをあだ名にしないでよッ! ていうか何でそんな役やらなきゃいけないの……?」
「いやもう笛吹くのもめんどくさい」
「先生何しに来たの……?」

笛を吹く役目を銀八に押しつけられた観客の夏美が渋々戦いのホイッスルを鳴らす。
甲高い音と共に戦いの火蓋は切っておとされたのだ

「さあホイッスルが鳴りついに戦いの開幕ですッ! 所で朝倉さん、これって勝ったら両チームに何か利益あるんでしょうか?」
「麻帆良チームが勝ったら銀さんが、大江戸チームが勝ったらネギ先生がここのJOJO苑で勝ったチームにメシを奢るという利益が待ってます」

隣りにいた銀八はそれを聞いてイスからずっこけた

「いやちょっと待てェェェェ!! 聞いてないんだけどッ!? もしガキ共が勝ったら俺奢らされるわけッ!?」
「いいじゃん減るもんじゃないし」
「減るわッ!? 金銭的な物が減る気が減るわッ! あんなバカ高い所行けるかッ! 俺一回も言った事ねえんだぞッ!」
「じゃあ私もお願いしようかしら」
「じゃあ私も……」
「私とご主人様もッ!」


千鶴が高々と手を上げて銀八に笑いかけ、遠慮ごしに夏美の手がそろそろと上げ、何時の間にか千鶴の隣りに座っていた美砂が首輪を付けた状態で銀八に叫ぶ

「いやお前等試合参加してねえだろうが……おいテメェ等ァァァァ!! 負けんじゃねえぞコラッ!! 神楽ちゃんこれ勝ったら牛一頭コイツが奢ってくれるってッ!」
「マジかヨッ! キャッホォォォォイッ!!」
「ちょっとあの人そんなに食べるんですかッ!? 神…お師匠さん並ッ!?  僕だってそんなお金持ってませんってッ!」
「いけェェェェェェェ!!! 勝てばネギから焼肉食い放題プレゼンツだぞォォォォ!!」
 
 ぴょんとぴょん飛んでる神楽を見てネギが慌てて銀八に抗議しようとするが全く無視、銀八は己の財産の為に江戸の仲間達に大声で叫んでいた。

「土方さん、旦那がこれ勝ったら俺達焼肉パーティ出来るって言ってますよ、土方さんの仲良しの生徒連れてきてくれませんかね? あの前髪の長い女」
「そんなもん誰が……っておい総悟前ッ!」
「ん?」

土方が叫ぶ頃には既に沖田の前方から豪速球が飛んできている。

「死ねサドォォォォォ!!」
「おおっとッ! 既にアスナ選手、沖田選手が油断している隙にボールを放り投げていたァァァ!」

花野アナがマイクを握り締めて叫ぶ、アスナは沖田と土方が喋っている隙にすでに力の限り沖田にロックオンしてボールを投げていた。彼女のバカ力によりボールの速さは半端無い豪音を立てて沖田に襲いかかるそして

ボールを当てるだけでは本来聞こえないはずのズドォォォォン!! という砲撃音が聞こえる

「終わったわね……あばよサド」
「アスナ選手の投げたボールが沖田選手の顔面にヒット……あれ?……いや違います無事ですッ! 沖田選手は……なんという事でしょうッ!」
「へ?」

アスナが勝利を勝ち取ってと確信して後ろを向いた時、花野アナが叫ぶ声が聞こえる。耳を疑いもう一度振り返ったそこには……

「沖田選手ッ! 麻帆良の女子生徒を盾に使っていたァァァ!! 一瞬の出来事ですッ! あの生徒はさっきまでこっちにいたのに本当に一瞬ですッ!」
「って柿崎ィィィィ!! アンタまた何されてんのォォォォ!!」

ガムをくちゃくちゃと噛みながら沖田は余裕の表情をしている。彼の左手にはさっきまで千鶴の隣りに座っていた美砂がぐったりした表情で気絶していた

「危ねえ危ねえ、俺のリバースカード『メス豚のかかし』を伏せておいて正解だったぜ」
「何その生々しいリバースカードッ!?」
「ご主人様を守れるなら……本望……」
「ご苦労さん」
「柿崎さんッ! 大丈夫ですかッ!」

ぐんなりした美砂をコート外にほおり投げる。自分の生徒を目の前で盾代わりにされたネギは慌てて彼女に近寄った。

「柿崎さんッ! 早く保健室にッ!」
「本当は……アスナのじゃなくてご主人様のボールが欲しかった……」
「ああ駄目だッ! 別の意味で手遅れになってるッ!」

もういく所までいってしまった美砂にネギは深くうな垂れ、しょうがなく彼女は観客に座っていた千鶴達に任せた

「沖田選手、一般生徒を使いアスナ選手のボールをガードッ! しかし朝倉さんこれは反則ではないでしょうか?」
「コート外の人を使っちゃマズイよね……審判の二人、ここはイエローカード的なモノでいいんじゃない?」
「イエロー所か人としてレッドだと思うんですけど?」
「いやいや、あれはセーフじゃね? 思い出せ、サドに盾にされたあの娘っ子の表情を、任務をやり遂げた戦士のような顔じゃねえか、この戦士の犠牲にそれは無いだろ」
「任務をやり遂げて安らかに死んでいく戦士の表情ですよあれは、花京院やビッグボスもあんな顔してましたよ」

千鶴の介抱の元で休んでいる美砂を見ながらネギはここまでいってしまった彼女にショックを受けながら銀八にツッコんだ。


しばらく二人で話合った後沖田に判決が下された。

「次あんな事したら失格にしましょう、これ以上僕の生徒がやられるの見たくないので」
「しょうがねえな……」
「ということで沖田選手には警告が出されますッ! 次コート外の生徒に手をだしたら失格とされるので注意して下さいッ!」

銀八達の代わりに花野アナが叫ぶ、それを聞いて沖田は軽く舌打ちする。

「盾が無えとあのバカ力の攻撃を受け止めるの厄介になるじゃねえか」
「沖田さんアンタどんだけ読者敵に回そうとするんですか……? あの子のファンこれ見たら凄い事になりますよ……即打ち切りですよコレ……」
「心配ねえよ新八君、俺応援しますって意見結構来てるから、そう言った奴等を後悔させるぐらいとことんやってやろうと決めてるから」
「心配ありすぎなんですけどッ!?」

沖田に後ろから新八がツッコむが彼は全く聞いてはいない。そんなサディスティック星の王子を睨みながら、アスナは跳ね返ってきたボールを拾う

「盾が使えないならもう次で止め刺せるわね……」
「おい神楽坂明日菜、ボール貸せ」
「うん?」

沖田にもう一度ぶつけようと思っていたのだが不意に声が聞こえたのでアスナは後ろに振り帰る。後ろには腕を組んで立っているエヴァが彼女にボールをよこせと目で合図する。

「あそこのチャイナ娘ぶつけるからボール貸せ」
「エヴァちゃん空気読みなさいよ、ここはまずサド討伐に決まってんでしょ」
「いいから貸せ」
「イヤよ」
「貸せ」
「イヤ」

ボールを頑なに渡さないアスナとボールを要求するエヴァの間にピリピリした空気が発生している。お互い睨みをきかせ自分の意見を曲げないつもりだ。そこに学級委員であるあやかが間に割って出てくる

「何内乱始めようとしているんですか……? どっちが投げても良いから早くしてくれません?」
「雪広あやか、あそこでガム食ってる男とあそこのチャイナ娘、どっちが先に死んで欲しい?」
「殺さないで下さい、どんなゲームやらかそうとしているんですか」
「いいんちょッ! ここで私側になったらッ!」
「なったらなんですか?」
「ファミレスで天パと一緒にイチャついてた事はエヴァちゃんと千雨さんには黙っといて上げるわよッ!」





アスナが思わず口から放ってしまった言葉にあやかは時が止まる。エヴァはそれを聞いてアスナからあやかに矛先を変えて目を細める。

「誰とイチャついていたって……?」
「アスナさん……目の前の人誰だかわかりますか……?」
「あ、ごめん言っちゃったわ」

全く悪びれもせず謝るアスナにあやかはいつも以上に彼女に腹立ったが、怒る前にエヴァが歯軋りしながら彼女に近付く

「私が見ていない所でお前は随分と好き勝手に銀時の奴を誘惑しているらしいな、おい長谷川千雨」
「な、なんだよ……」
「お前はどう思う?」
「べ、別に……銀八がいいんちょと何処で何しようが……」
「相変わらず素直になれん奴め、だからお前はいつまで経っても……」
「あのすいませぇぇぇんッ!! 試合進まないんですけどッ!?」

エヴァが試合そっちのけで別の話しで盛り上がってきているので花野アナがメンバー勢に大声で叫んだ。それを聞いて彼女は舌打ちする

「まあいいお前と銀時の事はこれが終わってから聞く、おい神楽坂明日菜ボールをよこせ」
「だからイヤだって……」
「アスナさん聞いて上げなさい、この子すぐ駄々こねますよ」
「人を子供みたいに言うなッ!
「いや子供だろうが、神楽坂もう上げろって」
「ったくしょうがないわね、ほら」

アスナはエヴァにボールを渡すのに不満だがあやかと千雨に言われて渋々と彼女にボールをひょいっと投げる。

「よし、本当は雪広あやかにぶつけてやりたいが、ここはあのチャイナに……」

エヴァはボールを両手で握り締め、目の前で不敵に笑っている少女を睨む。

「かかってこいヨ、ミニ乳ふぜいのオメーが私に敵うと思ってたら大間違いアル……」
「精々吠えろ……貴様の敗因はたった1つのシンプルな答えだ……お前は私を怒らせた……」

ボールを強く握り締め片手で投げる体制に入るエヴァ、それに真っ向から迎え撃とうとする神楽。ドドドドドドドという音を響かせながら己のヒロインのプライドを賭けついに戦いの激化が始まろうとしていた。







「私達どうすればいいんですかね……?」
「適当にやってりゃあいいだろ適当に」

エヴァと神楽が睨み合っているのを遠くから敵味方を仕切るセンター線の所で刹那と土方が座って観戦者のように見ていた。

「ていうか土方さん、試合中はタバコ吸うの止めませんか……?」
「これは俺の体の一部だ、死んでも手放さねえ」
「そうですか……」
「なあお嬢さん、俺さ~女の子相手にボールなんてぶつけられないんだけど」
「せっちゃん当てちゃ駄目やからなゴリラさん」
「一回マジで聞きたいんだけど俺って本当にゴリラに似てる……?」

刹那と土方が二人で話している近くで、近藤が外野にいる木乃香に笑顔で軽く傷付けられ泣きそうな顔を浮かべていた















次回予告
「どうも~今回ロクに喋れる機会が無かった朝倉和美です、でもまあ次のおまけ話では私メインだから別に良いかな……それはさておき今回遂に激突した両軍ッ! 沖田さんは好き勝手やるし、アスナは殺意むんむんだし、エヴァちゃんとあのチャイナさんはどんどん険悪になっていくし、もうねカオス過ぎて見ているこっちも……次回も沖田さんは大暴れだし、チャイナさんも相変わらず毒舌だし、ゴリラみたいな人は相変わらずゴリラだし、あの兄弟は本当わけわかんないし、遂に出番がある黒百合はもうキャラ変わってるし……こんな話しだけど次回も見てくださいね~次回外伝Ⅲ『「ボールは友達恐くない!」って言った奴ちょっとツラ出せや』をお楽しみに~そういえば銀魂勢に一人ロクに出番が無かった人いたよね?」
「○○アルッ!」
「だから伏せ字にしないでよッ! 次回は僕の出番ありますよねッ!? 志村新八の出番あるよねッ!?」
「それでは次回~」
「私よりデカ乳の方がヒロインっぽいって言った奴、ちょっと体育館裏来いヨ~」
「何か言えよテメェ等ッ!!」





















注意・このお話しは本編とは一切関係ありません、作者が日頃暇つぶしに書いてたら出来たもう1つのネギま×銀魂クロス作品です

『三年Z組 朝倉先生!』

偏差値がぶっちぎりに低い銀魂高校。その中の3Zの生徒達は放課後にも関わらず補習授業という名目で全員集合させられていた

「はいじゃあ、今日は常日頃からふざけている君達にこの作品が読者にどう思われているかを教えて上げるね~」

どこぞの万年やる気のない教師が着ている白衣を着て、口にはレロレロキャンディーをくわえてニカっと笑い、朝倉和美が教壇に立ち生徒達を見回す。そこから恐る恐る誰かが手を上げる、3Zの数少ない常識人、志村新八

「すいません……何が起こっているのかさっぱりわからないんですけど……ていうか銀さ……銀八先生はどうしたんですか?」
「この作品どう思われてるか知ってる? 『映画で例えるとジャッカスですね』って言われてんだよ? つまりやること成す事が『やりすぎ』って事、という事で毎日はっちゃけているアンタ達に今何が必要か問おうと思います」
「あれ無視……?」

新八の意見を聞こえていないように無視をして和美は周りを見渡す。そこからビシッと生徒の中から手が上がった
ここの学級委員である桂小太郎

「先生! ガンダム好きの読者がやたら多いのでガンダム出せばウケるかと思いますッ!」
「桂君、これは銀魂とネギまのクロス小説だからね? 麻帆良学園にストライクガンダムでも出したら不自然極まりないよ」
「違いますよ先生ッ! 俺はジャスティスに乗りたいんですッ!」
「はいはい、他無い他~?」

やたらと空気の読めない生徒、桂をスルーして和美は他の生徒にたずねる。しばらくして生徒の中からタコさんウインナ―を箸で食べながら、牛乳瓶のような眼鏡を付けている女の子、神楽

「チャイナキャラがッ! クチャクチャッ 向こうにいるのでッ! ニチャニチャッ 一人残らずッ! グチュグチュッ 消滅すれば良いと思いますッ! ペッ!」
「喋るかウインナー食うかどっちかにしてね~後半噛んでいる音じゃなかったし、あと何で最後吐き出したの?」
「先生ウインナ―じゃありません、タコさんウインナ―アル」
「結局はウインナ―じゃん……他無いの他~?」

頭を掻き毟りながら神楽にツッコンで再び回りを見渡す

「先生! 私どうしても言いたい事があるんですッ!」
「猿飛さん? 確かこの小説では初登場だよね?」

手を上げて立ちあがったのはメガネッ娘属性を持つ『さっちゃん』こと猿飛あやめ、元お庭番衆、現銀時の初代ストーカーだ

「先生、向こうではやたらと私と被るキャラが多すぎますッ! 即撤廃をッ!」
「そう? 誰かいたっけ?」
「いますッ! 忍者キャラ被ってるのもいるし、メガネッ子もいるし、あとドMキャラもさっきの話しで誕生してたし、ていうか私の題目でもあるストーカーキャラ被っている女とか、私の声と被ってる女もいるしッ!」

指を折って数えてふつふつと怒りをチャージするさっちゃん、最後には机をバンと両手で叩きそして

「何よりあの銀さん寄り添ってるあの女がッ! 何よあの口調ッ!? そんなにキャラ立たせるのに必死なのッ!? お嬢様キャラで銀さんを誘惑してドロボウ猫にも程があるわッ! 前回の話しで人気沸騰したから調子乗るのよッ! きっとそうよッ!」
「うんわかったわかった、はい次~」

吠えるだけ吠えて結局は個人の理由なので和美はめんどくさそうに手を振って話しを終わらせ、他の生徒に向かって聞く。すると

「先生ッ! 是非とも若の本編入りをお願いしますッ!」
「東城君……だよね? 何か初登場多いな、若って?」
「はい! ここでまるでお人形のような体つき、ですが強靭な魂を持つ柳生家の宝ッ! そうッ! この若の本編入りになればこの作品の印象もガラリと変わるでしょうッ!」
「止めろ東城、僕はそんな事に興味は無い」

長髪をなびかせ今回初登場の東城歩がビシッと隣りに座っている、左目に眼帯を付けたポニーテールの女の子、柳生九兵衛を支持するが彼女はそんな事に興味は毛頭無いらしい

「何でですか若ッ!? あそこの世界に足りないキャラッ! そう、それは眼帯キャラッ! 作者も大好きな眼帯キャラッ! もう眼帯キャラだけで次々と世の男共が寄ってきますぞッ! まあそんな男が来たら即私がぶった斬りますがッ! まず手始めにこれ書いてる眼帯フェチをぶった斬りましょうかッ!?」
「いや結局アンタは九兵衛ちゃんをどうしたいの……?」
「若が出れば私も出れますのでッ!」
「何自分の主人をダシにして自分も出ようとしてんのよ……」

趣旨を理解して和美は呆れながら東城にため息をつく。要するに自分が一番出たいらしい、そんな事をしていると九兵衛が隣りに座っている女性の方へ向く。短いポニーで見た目は美人、中身は腹黒、新八の姉、志村妙

「妙ちゃんは本編入りとか考えてる? 妙ちゃんが出るなら僕も出たいと思えるけど」
「私はいいわ、だって私が出たらレベル高すぎてあそこの女の子達みんな影薄くなるじゃない、作品として成り立たなくなるでしょ、元々成り立ってないけど」

笑顔でさらりと酷い事を言うお妙、それを遠くから聞いていた風紀委員長の近藤勲がイスから立ちあがり振り向く

「お妙さんッ! 確かにお妙さんが来たらそれこそ読者の奴等はネギまキャラそっちのけでフィーバーですよッ!  でもお妙さんが出れば俺とお妙さんのカップリング小説が生まれ……ゴホォッ!」

近藤が良からぬ事言う前にお妙は机の中にあった百科辞典を飛んでくる、見事近藤の眉間に直撃しその場に崩れる。

「気持ち悪い事言わないでゴリラのくせに、百科辞典を思いっきり顔面にぶつけられたいの?」
「いえさっき投げましたよね……」

鼻血をポタポタと出しながら近藤はゆっくりと立ちあがる。末恐ろしいお妙に恐怖を抱きながら苦笑する和美はこの空気を改善するため、こっちから誰かを指名しようとする。

「もうみんなふざけすぎ~じゃあ土方君、何かある?」

教壇に肘をついて、適当に目に入った男、近藤の右腕 土方十四郎を指差す。だが彼は真顔でキッパリと言う

「いや無いっすよ、俺は本当そういうのどうでもいいんで」
「本当に何も無いの?」
「無いっすね」
「嘘だ~本当はのどかちゃんともっとラブラブしたいとか考えてんじゃないの~?」
「何でそうなるんだよッ! 考えてるわけねえだろうがッ!」
「先生ッ!」

ニヤニヤ笑いながら和美が土方を追求していると彼の後ろから一人の生徒。毎度お馴染みサド王子、沖田総悟が立ちあがる。

「土方さんとあの少女のカップリング考えてみましたッ!」
「テ、テメェッ! 何考えてんだコラッ!」
「お、イイね~続けて続けて」

沖田は土方が怒鳴っているのにも関わらず楽しそうにしている和美に一回咳をして話し出す

「まず土方さんがターゲットを、見晴らしの良い絶壁に連れて行きます」
「あ~ベタだね~所でなんでターゲット?」
「二人でみる夕日はなお美しく見えます」
「うんうん」
「まさに二人だけの世界」
「イイね~」

沖田はそこで一旦言葉を区切って

「そこを俺が後ろからバズーカで一発ぶちこみます」
「めでたし、めでた……くないよッ! 何そのラストッ!? 何でそこに沖田君が出てくるのッ!?」
「いや楽しそうだから俺も混ぜて~的な?」
「楽しそうだからってバズーカ撃っちゃ駄目だからッ! 勘弁してよ~土方君はのどかちゃんと純愛をしたいんだから、そんなドロドロしたの望んでないよ~」
「お前等本当いい加減にしろッ!」
 
席から立ちあがって土方が叫ぶが和美はケラケラ笑って全く聞いていない。

「大丈夫、先生は応援しているから」
「うるせえよッ! 何で本編でも一切絡みが無いアンタに応援なんてされんだよッ! つーか俺とアイツは知り合い程度だぞッ!」
「銀さんや千雨ちゃんも似たようなごまかし方してたね~」
「ごまかしてねえよッ!!」

和美にすっかり遊ばれた土方は、どう考えてもこの娘はそういう話しが好きなタイプだと考え、舌打ちした後渋々席に座った。

「じゃあ土方さんの恋愛話はひとまず置いといて~」
「だから恋愛話じゃねえって……」
「何か無い~?」
「ハイハイハァァァァイッ!!」

目の前で思いっきり手を上げるので和美は仕方なくその少年を指差す

「んじゃそこの地味な眼鏡の人」
「何で初登場の東城さんとか猿飛さんは名前言ったのに僕の名は言わないのッ!? ここのツッコミ担当の志村新八ですってッ!」
「ごめんごめん、私キャラが薄いのあんまり興味無いから」
「さりげに酷い事言いますね……話しを戻しますが、やっぱり原作レギュラーであるこの僕とかを出した方が良いと思うんですよ、きっと読者に一人や二人望んでいるはずだと思うんですけど……」
「誰も望んでないと思うよ、はい次~」
「あれ何か冷たくないッ!? 土方さんの時はノリノリだったのに何で僕に対してそんなに冷たいのッ!?」

新八をそのまま無視して和美は他の生徒を見渡す。するとあれよあれよと生徒達が意見を出してくる
手始めにまた沖田が喋り出す

「先生! 麻帆良の生徒調教の許可をッ!」
「絶対却下、ていうかもう4人ほどやってるよね……?」
「何言ってんですか、俺の本命はあくまで能登ボイスと桑谷ボイスでさぁ」
「はい絶対却下ァァァァ!!」

次に神楽

「デカ乳いらないアルッ!」
「いやヒロインだから彼女」
「私がいるアルッ!」
「いいってコレ以上ややこしくなるから……」

次に近藤が立ちあがる
 
「先生ッ! やっぱ主人公を俺にしてハーレム物にしましょうッ!」
「保健の千鶴先生にまたお尻にネギ刺してもらおうか?」
「すいませんッ! じゃあヒロイン一人で是非お妙さ……ドゥホォォォ!!!」
「お妙さん……思いっきり目潰しするのはどうかな……」
「ウザかったんです」
「笑顔で言う事それ……?」

近藤が目を押さえてその場でゴロゴロしていると桂が立ちあがる

「先生ッ! ガンダムが駄目ならハルヒ出しましょうッ! 僕の友達にSOS団が二人いますんでッ!」
「私がSOS出したいよ……だからクロス違うって……」
「でも友達がハルヒと親しく話しているのを遠くから見ているのはツライから俺はイヤです」
「じゃあ何で言ったの……? 何なのこの人……」

それから東城と猿飛が立ちあがり叫ぶ

「若を出しましょうッ! そして私もッ!」
「東城、お前は自分が出たいだけだろ」
「何言ってのよッ! 私だって銀さんの側に行きたいわよッ! 四六中一緒にいたいわよッ! あのチビッ子とイチャついている銀さんをずっと屋根裏から見たいわよッ! そして金髪チビッ子がいない隙に私と銀さんは……ああ想像するだけで興奮してきたわ……」


段々自由になっていく生徒に和美は顔を苦ませ髪をワシャワシャと掻き毟しる、ここまでカオス過ぎるともはや学級崩壊というレベルではない。

「あ~もう落ち着いて、何か話しがズレて来てるよ~」
「何やってんだいアンタ等? とっくに授業終わったんじゃないのかい?」
「理事長ッ!」
「学校で何かうるさい声が聞こえると思ったら、やっぱりアンタの所の3Zかい」

教室のドアを開けて入って来たのは、かなりの年だが威厳のある存在感を持つ、我等が銀魂高校の理事長のお登勢だ。タバコに火を付け煙を吐きながら相変わらずの3Z生徒を見渡し、その後和美に顔を戻す

「で? 今度は何やってんだい? 前は「今見るべきの映画トップ3」とかわけのわからない話してたけどそれはもう終わったのかい?」
「あ、それは3位『20世紀少年3』と2位『ハリーポッター6』、1位『カイジ』に決まりました」
「物凄くどうでもいい情報だね」
「でも私は「カイジの役に藤原君は難しい」って言ったんですけどね」
「いやアンタにそんな事言われても何も起こらないから、デスノートでの月役はハマってたじゃないかい」
「個人的には天海さんの遠藤さんは見たいですけどね」
「カイジから離れろォォォォォ!!」

タバコを指に挟めながら一喝するお登勢、和美はアハハと笑った後彼女に質問する

「理事長は何か無い?」
「ふん、答えはもう決まってんだろこの作品に必要なジャンル……ちょっと待ってな」

そう言ってお登勢は教室から出て一旦ドアを閉める。しばらくして

ガララララッと教室を開けて出てきたのは

「必要なジャンルは……熟女だよ」

和美には見なれた麻帆良学園の制服を来ているお登勢が出現。それを見て和美はしばらく黙った後





「おえッ!」
「おいどういう意味だそりゃァァァァ!!」

あまりにもアレな服装のお登勢に和美は思わず吐き気をもよおした。

「すいません……キモすぎて本当小説で良かったな~と思いました……ウプ……」
「どんな感想だコラァァァァ!!」

しゃがみ込んで吐いてもおかしくない状況の和美が嗚咽をしながらなんとか喋る。

「いいかい、若ければ良いってもんじゃないんだよ、こうゆう熟女キャラを出せばそういうジャンル好きの男が寄ってくるのさ」

お登勢がようやく立ちあがった和美にいかに熟女が貴重か喋っていると、生徒の中から一人の一応女性……ネコ耳がトレードマーク(?)の神楽と同じ留学生のキャサリンが勢い良く立ちあがる。

「ダッタラ私モ出セバ良イジャネエカッ! 年増トネコ耳ッテ最強ジャネエカッ!」
「ネコ耳は貴重だけど持ってる人があなただから無理」
「フザケンナヨッ! 世ノバカナ男共ハコレデ一発デ落チルンダゾコラッ! テイウカ読者何デ私ヲ出セッテ言ッテコナインダヨッ! バカカッ!? バカナノカッ!?」
「カタコトで見ずらいんだけど……とりあえずあなたの本編入りは100%無いから」

キャサリンに対してめんどくさそうに受け流して早く座るよう促して、和美は彼女をなんとか黙す。
しばらくして重いため息をついた後、教壇から生徒たちに向かって

「結論、このまま『やりすぎスタイル』で行きましょう」
「え、いいんですかッ!? このまま野放しスタイルで良いんですかッ!?」
「だってあれやろうこれやろうって言っても結局はいつもバカしかしてないじゃん、所詮私達は何でもかんでも行き過ぎしか出来ないんだよ、ねえ元ツッコミ」
「だから新八って言ってんだろうがァァァァ!! あと元って何だァァァァ!!」

新八の心の底からツッコンだ声は教室中、学校中に響いた。今日も銀魂高校はバカばっかでお送りしています。






















銀さんの質問コーナー

銀八「は~いでは始めようと思いま~す、、ついでに言っておきますが質問は一人に対して一通にしてください、○○へ、○○へ、で一杯来られたら長くなるんで、まあ今回は別に良いわ、前回言わなかった俺が悪いんだし~」

銀八「まず一通目『BBE』さんからの質問
『沖田先生にはむしろネギ先生や小太郎クンのような可愛い美少年を調教して欲しいです。男がいやならふたりとも女装させてしまえば問題無しです。むしろ完璧です!女装で首輪で登下校…イイね!!』いやよくねえって」
沖田「あ~そっちのジャンルも好きな野郎がいるんですかい?」
カツオブラザーズ・兄「ん? 俺は可愛い美少年だと思われているのか?」
カツオブラザーズ・弟「あなたじゃなくて別の小太郎ですよ、どこをどう考えてそう思えるんですか?」
カツオブラザーズ・兄「そうか別の小太郎か……あ、風魔小太郎か?」
カツオブラザーズ・弟「時々あなたと一緒にいる事に疑問を感じますよ」

銀八「バカは置いといてニ通目『かい』さんからの質問
『質問というか願望なんですが、沖田、土方を殺してください。
のどかに手を出したロリコンをやってください。彼女にタバコを吸わせたマヨ侍をこの世から消滅させてください。
それから、千雨、いいんちょ、のどかに手を出すなら、沖田も消えてください。
他の3-Aは……まぁ、好きにしていいです、この3人に手を出さないなら、好きに調教してください。応援しています(笑)』はい今回暴れた沖田君、これをどう思う?」
沖田「旦那の連れはともかく最後はイヤですね」
銀八「はい、相変わらずなのでこれにて終了」
千雨「ていうかこいつに対しての手紙多くね? もうこいつほとんどここのレギュラーじゃん」
沖田「あ~最終的に俺がここを乗っ取るつもりでさぁ」
銀八「何考えてんだお前」

銀八「じゃあ三通目、『ououo』さん、ああ『さん』はいらねえか『ououo』の質問
『あやかさんに質問です!!
20話では何色の○○○をはいていましたか?あと、今日の何色の○○○ですか?
ぜひ教えてw』はいもう死んでくれませんかね? こういうの何回も送られるとこっちも疲れるんすよ」
千鶴「私は絶対黒か白だと思うわ、だってあの子、銀さんの所に行くときはいつも勝負下着の白と黒を……」
あやか「ち、千鶴さぁぁぁぁぁんッ!!」
銀八「強制終了ッ!!」

銀八「ハァ~気を取りなおして四通目『コスモ』さんの質問
『銀さんは夜王並みの力や権力を手に入れたら何をしたいですか?理由もお願いします』おお久しぶりに質問らしい質問じゃねえか、そうですね~とりあえずジジィをぶっ殺して俺が学園長の座につきます、んでしずな先生を秘書にします、理由? それが俺の夢だからだ」
千雨「ようするに好き勝手やりたいって事だな……」
銀八「最終的には保健室にナース100人入れるのが俺の目標」
千雨「いや保健室にそんなに入らないからッ!」

銀八「五通目、『エンジン』さんからの質問
『今回はまともな質問です。神楽は演歌、沖田は落語、釘宮は洋楽(アヴリ○ラヴィー○)とかこの作品のキャラ聴いていますが、あやかさん、千雨、エヴァ様は音楽は何を聴いていますか?音楽を聴いていればでいいので教えてください、やはりカイバーマン様の影響でメタルやロック色が強いアーティストですか?』
反省したようだな、お答えしましょう。まずエヴァですが基本俺と同じく音楽を聴きません、テレビで流れている音楽を鼻歌で歌う程度です、千雨は音楽は聴きますが特に固定ジャンルはありません、好きなドラマとか映画、アニメの主題化のCDを買ってたりしています、あやかはクラシックとかです、何か聞いてそうでしょ? という事で作者の好きな『マキシ○ムザホル○ン』とかそういうのは俺等全く興味無いんで」
千鶴「聞いてください『マキシ○ムザホル○ン』の『川○猿員』」
銀八「いやそれ絶対駄目だからッ! 歌詞が危険過ぎてリアルに問題になって訴えられそうになった曲じゃねえかッ!」
千鶴「じゃあサビだけでも」
銀八「サビが一番ヤバイんだろうがッ!!」
千雨「段々あいつも自由になってきたな……」

銀八「……六通目『ノリ』さんの質問
『あやかへ…宇治銀時丼はそんなにヤバイですか?個人的にはオハギや牡丹餅を緩くネチャネチャにしたようなイメージなんですが
刹那へ…せつにゃんが嫌なら刹那・F・セイエイはどうでしょうか?それも嫌ならソラン・イブラヒムやカマル・マジリフでも(00の刹那の本名と偽名)…
銀さんへ…自分も天パ+剛毛なので苦しみは痛いほど解ります!!(血涙)何度「鳥の巣」や「ヒジキ頭」と言われたことか…
一緒に饅頭茶漬け(ご飯の上に葬式饅頭みたいな大きめの饅頭を切れ目を入れて乗せ、緑茶をかける。汁粉っぽい)食べませんか?』はい○○へパターンですね、じゃあまずはあやかから」
あやか「あれは一言では言えませんわ……暖かいご飯に小豆が乗っているとこんなにも不味いんだなと思いました……」
銀八「あれ美味いじゃん?」
あやか「あなたの味覚が異常なんですよ……」
刹那「次は私ですか……00を知ってる読者多いですね……それ使ったら本当に別キャラになってしまいますから……」
銀八「『俺がガンダムだァァァァ!!』とか言って神楽に突っ込まないように」
刹那「誰が突っ込むかッ!」
神楽「ヘイヘイヘ~イッ!」
刹那「あなたも悪ノリしないで下さい……」
銀八「で、俺への質問と言うより食事の誘い? 野郎と二人で行きたくないので可愛いネエちゃん連れて来い、以上」
あやか「銀さん……可愛ければホイホイ着いて行くんですか……?」
エヴァ「それ以上みだらな発言をすると外出禁止令を出すぞ……」
銀八「あ~わかったわかったッ! いいよもうチクショーッ!」
千雨「嫁に束縛されている旦那状態だな……」

銀八「七通目ッ!『白夜叉』さんからのお便り
『銀さんに質問です。
最近どうにも筆が止まってしまいます。
ネタはいくつか思いつくのですが、なんか言われてるんじゃないかって思ってしまうんです。
この間なんか「勢いだけ」なんて言われてしまいました。
マジで一瞬、死んでしまいたいとも思いました。
こういう時って、人間どうすればよいのでしょうか?
つまり僕が聞きたいのは、どうしてカイバーマンさんはSEED以外に箸を付けてくれないのかということです。
富野節はいいモノです。一度、体感してみて下さい。』
おいおい何言ってんだコラァ、この作品を見てみろ、正に『勢いだけ』を具現化した小説じゃねえか、その内失速して墜ちるの見え見えじゃねえか、こんなのでも一応20話までやってんだからさ、もうちょっと頑張ってみようぜ、あと最後何でガンダム話になった? 全く関係ねえだろうがオイ」 
千雨「この作品なんか最初は『銀魂とネギまを読みなおせ』って言われたからな……」
銀八「結論、安心しろ作者はガンダム三国伝にハマッてるから」
千雨「結局ガンダムッ!?」

銀八「続いて八通目『さるめ』さんから
『銀時へ、とりあえず、宇治金時丼はやめてやれ。見てるだけでもかなりキツイ、ぶっちゃけ、メンバーも吐き気を催してるから、いくら女メンバーでもあんた以上に甘いの好きな奴いないから、とりあえず、糖をやめろと言わんから控えろ』そんなの俺の勝手だろうが」
あやか「でもあれはちょっと……」
銀八「大人の味なんだよ子供のお前等にはわかんねえ、じゃあ次に」

銀八「『土方へ、禁煙するなとは言わんから、減らせ。周りは未成年だ、後、普通にマヨを使え、頼むから、刹那とのどかがビビるから』だとよ土方君」
土方「ああ? 俺が何処でタバコ吸おうがどうでもいいだろうが……おぶッ!」
銀八「どうした? そんなに水びだしで、水にしたたるイイ男でも演じてるのか?」
土方「いや……上から水が……アダッ!」
千雨「あ、上からバケツがふってきた」
土方「あのクソガキ……」

銀八「続いて『沖田へ近藤さんのどこが気に言って下についてるんですか?』ほれサド」
沖田「色々ありますが、一緒にいると面白いからですね」
近藤「いや~まいっちゃうな~」
沖田「だってこの年でウン○漏らすんですよ」
近藤「ちょッ! 総悟君ッ!?」
あやか「最低ですわ……」
千雨「見た目からして、いい年してるクセに……」
近藤「いいじゃんッ! ウン○漏らしたっていいじゃないッ!?」
千雨「開き直るなよ……」

銀八「実を言いますとここまで全部さるめさんの意見、もう普通に長えよ、これでラスト~
『要望というか、真撰組に通告。
白髪テンパの無職の男が、10歳の子供と14歳の学生をお持ち帰ろうとしているから、逮捕して。アー、後、そのテンパ原作の序盤に隠し子いたと思うんで、そこらへんも明らかにしてやって、では』……」
土方「よし屯所に連れて行くぞ」
銀八「待て待て待てッ! 落ち着けッ! 俺はそんな事考えてないないないッ!」
土方「黙れ、元々お前はそういう匂いがプンプンしてんだよ犯罪者、おら総悟連れてけ」
沖田「へい、ガチャリと」
土方「……オイ、何で俺の両足に手錠した?」
沖田「え? 土方さんが学生二人をお持ち帰りしようとしているんじゃないですかぃ?」
土方「なわけねえだろうがッ! おら総悟ッ! これ外せッ!」
銀八「よくやったサド、あれはしばらく放置だ、良いな?」
沖田「元よりそのつもりですぜ」
土方「おいドSコンビ待てやコラッ! アダッ! 待てェェェェ!!」

銀八「続いて九通目『剣聖』さんからのしつも~ん
『みなさん、土方のこと、どう思ってるんですか?特に、沖田とのどかとせつにゃん。ちなみに俺は、うざい、シネ、この二重人格ロリコン変態野郎、だ。つー訳で地獄に行け。ぬらりひょんと一緒に。あと、ついでに地味メガネ。ちなみに、千雨じゃねぇぞ、こら。』俺もそう思う」
沖田「俺もそう思う」
土方「お前等……つーかこの手錠外せッ!」
刹那「私は……まあ一緒に住んでますが、真っ直ぐに生きている人だなと思ってますが……」
沖田「おいもう一人の娘っ子はどうした?」
土方「おれが来るなって言っといた、お前がいるからな」
沖田「チッ……この二重人格ロリコン変態野郎が……」
土方「今なんつったコラァァァァ!!」
銀八「そういえばここに書いてある地味眼鏡って誰?」
新八「いやどうみても僕でしょッ!」
あやか「ネギ先生じゃないんですか?」
銀八「いや最近読者が付けてるアイツのあだ名は『死亡フラグ』だ」
新八「それあだ名じゃなくないッ!?」

銀八「十通目、ついに二桁か……『正宗の胃袋』さんからの質問」
『ネギを第二の銀さんのようにしてくれませんかね。ネギが「あ~なんかもうマギステル・マギなんてやめて万屋でもやろっかな?」ふうにならないですかね』
親父がアレですからね~でも最近『何で僕は死亡フラグ立ったって言われてるんでしょうか……?』って相談に来たからそうなるのも時間の問題かもな~」
千雨「え? 何でそんなの立ってるの……?」
銀八「知らねえよ、何か読者が騒いでんだよネギ死んだ死んだって」
千雨「もう死亡確定ッ!? 私達が見ない間にあの人どうしたのッ!?」

銀八「続いて十通目『クワガタ仮面』さんからの質問
『そういえば銀さんは「みなとそふと」の最新作「真剣で私に恋しなさい」のハゲとして出演したらしいですけど。感想の方をお願いします。ネットラジオでも出演していましたよね。
ちなみにハゲはロリコンです。俺もロリコンなんで安心してください』
何が安心してくださいだかよくわかりません、俺は健全です。つーかその『みなとそふと』って何ですか? 作者がネットで調べようと思ったら『18才以上ですか?』とかいきなり出てきたからヤバイモンだと思ってすぐ退去してたけど」
沖田「きっとグロいんですよ、もうグラセフ並に」
千雨「このタイトルでそれは無いだろ……」
沖田「『真剣で私に恋しなさいッ! じゃないと……じゃないと絶対に許さんないんだから……包丁持って追いかけるんだから……テヘッ!』って感じのヤンデレヒロインだけのグロデスクホラーラブコメ」
千雨「ねえよッ!!」
沖田「やべえ調教してぇその女共」
千雨「だからねえってッ!!」
銀八「じゃあハゲにもよろしく言っておいて下さ~い、早く捕まれって」

銀八「ラスト~十ニ通目、『サハリン』さんの質問
『糞マヨラーニコ中野郎に質問がある
のどかの胸を揉んでたな!証拠写真をゆえとゴキブリと沖田と銀魂の世界の真撰組の皆様に送ったから処刑を心待ちしておけ!』
おいおい土方く~ん、ポリスメンのくせに何やらかしてんのかな~」
土方「やってるわけねえだろうがコラッ! こんなもんたまにくる読者の嫌がらせだろッ! つーか質問じゃねえしこれッ!」
銀八「沖田く~ん、この税金ドロボウ、早くムショにぶち込めよ」
沖田「へ~いガチャリと」
銀八「あれ? 何で俺に手錠かけるの?」
沖田「旦那、金髪のデかい方の胸に顔を押し当てていたらしいじゃないですか」
銀八「え、ちょおま……」
沖田「じゃあ行きましょうか」
銀八「違うってッ! あれは成り行きだからッ! しょうがなかったし、ていうかあれやったの向こうだから」
沖田「言い訳無用ですぜ、旦那の連れの眼鏡のお嬢ちゃん、どうしやすかぃ?」
千雨「死刑で」
沖田「旦那、介錯任してください」
銀八「待てェェェェェ!! 俺は無実だってェェェェ!! 俺は何もしてないんだァァァァァァ!!!!」
















外伝の外伝 佐々木まき絵の奇妙な冒険

麻帆良生徒と江戸の住人がドッチボールで戦っている時、佐々木まき絵はジャージ姿で肩にスポーツバッグを担ぎながら麻帆良学園の校舎内を歩いていた。今日は祝日にも関わらずまき絵が所属している新体操部は、朝から練習に励んでいたのだ。

「疲れたな~購買部でアイスでも買って食べながら帰ろう」

独り言をつぶやいた後、まき絵は購買部に寄って、置いてあったアイスボックスからアイスキャンディーを1つ取ってカウンターに置く

「アイス1つ下さ~い」

カウンターに誰もいないのかとカウンター内をよく見ようとすると……

「誰かいませんか~?」
「なんだいッ!」
「うわッ! ビックリしたッ!」

カウンター内を覗きこんでたら突然下からニュッとパンチパーマのオバちゃんが勢い良く出てきた。これには驚きまき絵は思わず地面に尻餅をつく

「なんだいッ! 何か欲しいのかいッ!?」
「え……あ、あのそのアイス下さい……」
「アイスだって……?」

そのオバちゃんの威圧にビビりながらもまき絵はようやく立ちあがり注文するのだが、オバちゃんは目の前に置いてあるアイスを数秒見た後

「こんなもん食ってるからアンタ等若い子はふしだらに生きていくんだよォォォォ!!」
「えェェェェェ!!」
「これ母ちゃんから上げるよ、母ちゃんが作ったカボチャ、このカボチャ食ってシャキっとしなッ! アイスなんて食ったら駄目だよッ!!」

オバちゃんはカウンターの下から立派な大きさのカボチャを取り出し、無理矢理まき絵に持たせる。いきなりのカボチャプレゼントに彼女は混乱する

「え、何でアイス買いに来たのにカボチャッ!? いやこんな大きいカボチャ、いいですってッ! 帰りこんなの持って帰ったら変な目で見られるからッ!」
「持っていきなッ! 母ちゃんからの言う事はちゃんと聞くのが子供ってモンだよッ!」
「母ちゃんって誰の母ちゃんッ!?」
「八郎の母ちゃんだよッ!」
「八郎って誰ッ!?」

八郎の母ちゃんと名乗るオバちゃんにツッコむまき絵。彼女の人生経験の中で『八郎』という人間は知らない。

「八郎の母ちゃんはみんなの母ちゃん、だからアンタも私の娘、だから持っていきな」
「じゃあ別に八郎の母ちゃんって言う必要無いじゃん、最初っからみんなの母ちゃんで良いじゃん」
「何だいこの娘はッ! 人のアゲ足ばっかり取ってェェェェ!! いいからそれ持ってッ! 真っ直ぐ帰るんだよッ!!」
「は、はいィィィィ!!」

八郎の母ちゃんにどやされて追い出される形でまき絵は購買部を出る。左肩にスポーツバッグ、両手に大きなカボチャを持って

「トホホホホ……何でこんな目に……ん?」

カボチャがかなり重く、額から汗を出してヒーヒー言いながら歩いていると、突然背中を叩かれたので後ろを振り向くと

「……」

ペンギンのようなアヒルのような……緑色のペンキで体を塗りたくって、背中にはセロテープで赤いギザギザが付いている。つまり何ともわからない生物がまき絵の目の前に立っている。まき絵は目が点になって眺めるも、彼、いやこの生物が持っている手持ちのボードを見る。そこには

『でっていう』
「いや……どういう意味……?」
『おいおい偉大なるスーパードラゴンの鳴き声を忘れたとは言わせねえぜ』
「いやドラゴンって……え! もしかしてそれあのドラゴンのつもりッ!? 似てないッ! 絶対似てな……うげッ!!」

どうやら生物は自分を超メジャーゲームのスーパードラゴンだと主張するのだが、全く違う、断じて違う。まき絵は必死に首を横に振ってあまりにも否定するので、生物は持っていたボードで彼女の頭をぶっ叩く。

『そういえばここで赤い帽子を被った長髪の人知らないか?』
「イテテテテ……え……? 赤い帽子? そういえば何処かで見たような……」
『ならば良し』
「え?」

そう生物はボードに書いた後、むんずとまき絵を左腕一本で挟んで持つ。

「あれ……ちょ、あれ……?」
『何処にいる?』
「えと……ごめん私何処で見たか覚えてない……」
『じゃあしらみ潰しに探すか』
「え、ちょっと待……おうッ!」

まき絵が何か言う前に生物は猛スピードで学園内を駆けて行く。校舎内で生物のドスドスドスッ!という足音とまき絵はぎゃぁぁぁぁ!!と叫び声を上げながら見えなくなって行く。 大きなカボチャを床に置いて
                                      to be continued……



[7093] 外伝Ⅲ 『ボールは友達恐くない!』って言った奴ちょっとツラ出せや
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:1c185549
Date: 2009/09/21 17:22
銀魂勢とネギま勢の合戦は遂に本格的に始まろうとしている。前回や前々回から神楽に色々と酷い事を言われていたエヴァは目の前で指でくいくいとこっちに向かって投げてみろと挑発している神楽に、彼女は振りかぶって右手で投げる構えに入る

「かかってこいよオラァァァァ!!」
「言われなくても投げてやるわこのクーフェイと……キャラ被り娘がッ!」

そう言ってエヴァは持っていたボールをぶん投げる、しかしそれはあまりにも

「エヴァ選手投げたァァァァ!! しかしこれは速いぞォォォォ!!」
「くたばれチャイナァァァァ!!」

実況している花野アナが思わず身を乗り出して驚く。勢い良く投げられたボールは轟音を立てて神楽に襲いかかってくる、だが

「ふんごォォォォォ!!!」
「神楽選手受け取ったァァァァ!! それにしても凄い衝撃だァァァァ!」

それを両手でなんとか神楽は食いめる事に成功する。受け止めた瞬間の深い衝撃、一瞬地面から浮いて吹っ飛ばされそうになりながらも、なんとか神楽は地面に足をつけて踏ん張った。
自分の攻撃を受けきった神楽を見てエヴァはフンと鼻で笑う

「手加減して投げてやったのに必死だな随分と」
「神楽ちゃん大丈夫ッ!」
「大丈夫アル、新八……」

神楽と同じ万事屋の一員の新八が慌てて彼女に近寄る。神楽は問題無いと言うように自分の手をフーフー吹いて冷ましながら後ろに数歩後退する。

「ミニ乳の分際で私に喧嘩売ったのは高くつくネ」
「相変わらずミニ乳、ミニ乳、って……お前だって小さいだろうが……」
「結局両方『貧乳』って事ですわね」
「「うるさいわボケィッ!!」」

あやかが口を挟んだ事に二人は目をむいて同時に叫ぶ。彼女達にとってのコンプレックスを一番そのコンプレックスと無縁の人に言われたので一層腹が立った。

「ミニ乳狩ったら次はデカ乳アルッ! うおォォォォォ!!」
「来たか、実力の差、歴戦の差を教えてやる」
「神楽選手猛牛の如くエヴァ選手に向かって助走をつけて投げる体制に入るッ! 正に力と力ッ! やっとゲームらしくなってきましたッ!!」
「長かったね~いや本当」

両手でボール掴んで神楽はエヴァに突っ込むように走る、一方エヴァはそれに構えもせず余裕に立っているだけだった、約600年生きている吸血鬼に14年程しか生きていない小娘の球など容易に受け止める。そうタカをくくっていた。
だが向こう側にはあの男がいた。真撰組一番隊長 沖田総悟が声を上げて叫ぶ

「あ、旦那がネギまクロスなのに涼宮ハルヒとイチャイチャしてるッ!」
「何ッ!?」

エヴァは思わず沖田が叫んだ方に顔を向ける。何でネギま×銀魂なのにハルヒ? そう思いながら見るとそこには

「銀さんですよね? 初めまして桂さんから聞いていますよ、クウネルですよろしくお願いします」
「ああそう早く自分の所に戻れって、アレ? お前とは初めて会った気がしないんだけど?」
「アハハハ、ナンパの仕方が上手いですね~」
「おい顔が近いって止めろ、近い近い」

銀八が自分の知っている男と会話をしているだけだった

「いや涼宮ハルヒじゃなくて、古泉……!」
「死ねェェェェェェェェ!!」
「え? ちょっと待てッ!」

エヴァが銀八達に気をそらしている間に神楽は既に右肩を使い思いっきりボールを発射そして……

「めがっさッ!!」
「エヴァさんッ!」

神楽の投げたボールがエヴァの腹にクリーンヒット、これには彼女も思わず膝をついて崩れる。慌ててあやかがエヴァに近付く

「エヴァさん大丈夫ですかッ!?」
「くそ……あのサドめ……」
「ヒットォォォォ!! エヴァ選手、大砲のようなボールを腹に砲撃ッ!! 一人アウトッ!」
「エヴァちゃんやられちゃったよチャイナさんに……」

花野アナと和美が喋っている時もエヴァは腹を押さえて痛がる、なんとか苦悶の表情で顔を上げて向こうを見ると。
そこにはニタニタ笑っている神楽と沖田が立っていた

「き、貴様等……」
「勘違いしてんじゃねえぜ、俺はこいつを助けたんじゃねえ、一人消えるのに越した事は無いんでねそこに便乗したまでよ」
「ギャハハハハハッ!! あんなに余裕ぶっこいて当たってやんの~!! すげ~弱いアルッ!! ギャハハハハッ!!」

沖田がガムをクチャクチャしながら言った後、隣りに立っていた神楽の下品な笑い声を上げる。彼女の笑いに反応してエヴァがキッと睨みつける

「違うわッ! そこのサドが邪魔をして……」
「言い訳してやんの~!! 負けたからって言い訳してやんの~!」
「い、言い訳じゃないッ! お前等が卑怯な手を使うから……」
「勝負に卑怯? ……そう言うのが言い訳なんだヨッ! ギャハハハハッ!!」
「うう……」

口でもまた負かせられたエヴァは思わず悔し涙を目に滲ませる。
彼女が神楽に見せる2度目の涙。それを見て神楽が一層ニヤニヤする

「おお、また泣くアルか~? もう泣きキャラ決定ヨロシ?」
「う、うるさい……泣いていない……」
「涙目になってどこの口がほざくアル」
「だから泣いていない……」
「泣くなよ、虐められたからってよ……」
「虐められたからって泣いても何も始まりませんわよ?」
「な、泣いて……泣いてない……」

段々と嗚咽をしながら喋るエヴァ、誰から見ても泣いているので思わず千雨とあやかが心配そうに近付く。

「ほらハンカチ貸しますから、涙拭いて下さいみっともない」
「泣いてない……」
「いやどうみても泣いてるから……」
「うう……」
「よぉぉぉぉし一人ヒロイン潰したァァァァ!! これで私がヒロインに戻れるのに一歩近付いたアル、キャッホーイッ!!」

あやかから貰ったハンカチでぐしゃぐしゃになった顔を拭いていると、また神楽がいらん事を言って驚喜していた。
それを聞いて再びエヴァは顔を上げる。

「だだだだ、誰がヒヒヒヒ、ヒロインだって……」
「あ~もういいアル、声を震わせながら何言っても迫力の欠片もないネ、さっさと失せて銀ちゃんに泣きついてろヨ、泣き虫」
「うう~……うわぁぁぁぁんッ!!!!!」
「あ~あ本格的に泣いちゃったよ……」
「銀さん、エヴァさんが泣いて……」
「銀時~~~~~!!」
「おい、自分から向かったぞあいつ……」

ついに大声で泣き出したのであやかと千雨が泣いてるエヴァをなだめ役の銀八の所に持って行こうとするが、彼女は泣きながら自分で、少し遠くでイスに座ってネギ達と喋っている銀八の方に走って行った。

「なあ『こち亀』の実写版ってさ両さん役香取君じゃん? あれ大丈夫なの?」
「僕としては合わないというか……ラサールさんが駄目なら小さいしガタイも良い、ケンコバでも良かったんじゃないかと思うんですよね……」
「お前本当にケンコバ好きだな、いや俺も嫌いじゃないけど……お前ぐらいの年で好きになる芸人じゃねえよあの人?」
「私は別に香取君でも悪く無かったですよ、全く別物のこち亀と割りきればあれはあれで楽しいですから」
「いや確かに香取君でも良い、だが俺はやっぱり両さんは麗子さんより背が低い方が……わぷッ!!」

両隣にいるネギとクウネルと銀八が喋っていると突然何かが飛んで抱きついてくる。
一瞬何事かと思って抱きついて来た物を見ると彼の同居人

「エヴァ……?」
「……」
「何してんの……?」
「ぎ、ぎ、銀時~~~~~~!! 」
「ちょッ! いきなり泣いてんじゃねえよッ!!」

いきなり自分の胸に顔をうずめて泣き出したので銀八は慌てる。さっきまで主審にも関わらずずっと銀八達は喋っていたので、エヴァが泣いている経緯を知らないせいで何が起こったのかさっぱりだ。

「何があったんだよ……?」
「あのチャイナ娘がな……私よりずっと……とととと年下なのに……」
「神楽? あ~ハイハイ、また泣かされたのね、めんどくせえな~オイ」

成り行きが読めた銀八は、だるそうに自分の胸で嗚咽しているエヴァの頭を慣れた手つき撫でている、すると隣りに座っているクウネルが面白そうに眺めながら口を開く。

「随分とその子の相手するの慣れてますね」
「ああこいつすぐ泣くからさ、この前も教師の奴等と朝まで飲んでたらよ~家に帰ったら怒りながら泣いてやんの、時々あるんだよこういうの、まあ頭撫でてれば泣き止むんだけど」
「いや泣き止まさないで良いですよ、彼女が泣いてるのもっと見たいので、カメラ持ってこれば良かったと後悔してます」
「あれ? おたくもドS?」

銀八がエヴァの頭を撫でながらクウネルと変な会話をしていると、花野アナがどうしたらいいか困った顔で実況を再開する

「え~一人泣き出してしまいましたが続行します……とりあえず一人アウトです、朝倉さんこの情況どう思います?」
「明らかに麻帆良生徒が劣勢だね、だって相手男ばっかだよそれにあの神楽って子化け物? もちろん沖田さんもかなり危険だし、ゴリラもきっとゴリラなんだから力はあるだろうし、ウチの警備員の土方さんも凄そうだよね~、あの地味な眼鏡は~……わかんないや」
「ではこのままで生徒の皆さんに勝機は無いと?」
「いやわかんないよ、千雨ちゃんを除けば運動能力が高い連中ばっかいるからね、それにあの外野陣のブラザーズも未知数だしね」

花野アナと話しながら和美はブラザーズこと外野に立っているカツオ(本名・桂小太郎)を指差す。伝説の兄弟の兄のコスプレをしている男だ、何をするか分からない。そんな事を考えていると彼はお腹の所にある大きなポケットから何かを取り出す

「そろそろ食事の時間にしよう」
「お兄さん、それ何や?」
「決まっている、んまい棒……あこっちは駄目だ、食事はこの1UPキノコだ」

兄、カツオこと本名『桂小太郎』はポケットからんまい棒を戻して緑のキノコを取りだしモグモグと食べ始める(食べた瞬間何故かピロリロン♪と音が鳴った)、同じ外野の木乃香はそれを不思議そうに眺めていると、弟の方が銀八の方から帰ってきた。

「何でキノコ食ってんですか?」
「戦の前にはまず栄養補給だ、そうだ近衛殿も食べるか? もう一個あるのだ」
「ええの? ていうか何でウチの名前知ってるん?」
「まあ父上から……いや何でも無い、俺は侍だから何でも知っているんだ」
「ごまかし方めちゃくちゃ下手ですね」

桂のごまかし方にクウネルが呆れているが、木乃香は気にしなかったように彼から貰った大きなキノコを面白そうにモグモグ食しているので別に気にしていないらしい。

「結構美味いな~せっちゃ~ん」
「何ですかおじょう……って何食ってんですか? しかもデカ……」
「キノコ」
「何でこのタイミングにキノコ食ってんですか……?」

異様な大きさのキノコを木乃香が食べているのに刹那は頬を引きつらせながら小さな声でツッコンだ。この情況で何でそんな得体の知れないキノコを食べているのだろうか……?

「何であんなの食ってるんでしょうか……まさかあの変な兄弟から貰ったのか……」
「なあ桜咲」
「何ですか千雨さん?」

桂達を見ていると突然後ろから千雨に呼ばれたので振り返る。すると千雨はいつもの仏頂面で指を差して

「狙われてるぞ」
「へ?」
「死ねせつにゃぁぁぁんッ!!!」
「でッ!!」

千雨が指差した方向にいるとボールを振りかぶって物騒な事を言いながらこちらに投げる沖田の姿が。
彼にとって刹那も立派な調教対象である。

「しまったッ! スキを突かれ……!!」
「どりゃァァァァァ!!」
「アスナさんッ!!」

レーザービームの如く飛んできた沖田のボールを刹那に当たる前にアスナが横っ飛びで受け止める。そして地面に足をつけた後すぐに投げる体制に入り

「死ねサドォォォォ!!」
「チッ、エテ公が」

センターラインギリギリにいた総悟は舌打ちして一歩下がるもアスナは容赦なく近距離にいる沖田に思いっきり投げる、勿論顔面狙いだ。ボールが沖田に襲いかかる、だが

「とぉぉぉぉぉ!!」。
「えッ!? 何よあのゴリラッ!?」

アスナと同じように近藤が沖田に当たる直前のボールを横っ飛びでセーブ。近藤は着地した声高らかに親指で自分を指差して叫ぶ

「ゴリラじゃないッ! 近藤勲だァァァァ!! 総悟大丈夫かッ!?」 
「大丈夫ですよ、近藤さん」
「よしッ! 悪いがツインテール娘ッ!! ここで退場してもらうぜッ! 何故なら……なんか当てても読者に怒られそうにないからッ!! 」
「何よその不毛な考えッ!」

近藤は叫んだ後、ボールを持って足を軸にし、グルグルと竜巻のように回る

「うぉぉぉぉぉ!!! 食らえ大回転魔球ッ!!」
「何アレ……?」

グルグル回ってる近藤を見ながらアスナは呆然と立ち尽くすが、とりあえず何か無いかと策を考える。あんなガタイだ、投げる球もタマったもんじゃない筈。回りに何かゴリラボール攻略の鍵を探す。
そうしていると彼女はある物を見つける。

銀八に腰にちょこんと座って試合を見ているエヴァ

後ろには腕を組んで立っている雪広あやか

その時アスナに圧倒的策が脳内に浮かぶ!

「いいんちょッ!」
「何ですかアスナさん? バナナでも食べたいんですか? 千鶴さんが持ってましたわよ?」
「ぶん殴るわよッ! それよりアンタあれ見てどう思うッ!?」

腕を組んで観客のように眺めていたあやかに向かってアスナは走ってある方向に指差す

「エヴァちゃんがアンタの天パ一人占めしてるわよッ!」
「え……? あッ! エヴァさんのくせにあんなに銀さんと仲良く……!」
「早く行かないとあのまま独占されるわよッ!? でもね、私に良い考えがあるのよ……」
「あなたの良い考え……? とりあえず何ですか? 早く言ってください」
「それはね……」
「いくぞツインテール娘ェェェェ!!」

いやらしく笑っているアスナがあやかの肩を持って説明しようとする前に、後ろで近藤が回転しながら

「食らえェェェェェェ!!」
「力を溜めていた近藤選手がついに投げたァァァァ!! ですがあそこまで回った意味がわかりません」
「そもそも時間がかかり過ぎだしね」

花野アナと和美がツッコんでいるのも束の間、近藤が回転を入れて投げたボールは砂埃を撒き散らしながら轟音を立ててアスナに襲いかかる。だがアスナは後ろを振り向いてニヤリと笑い

「いいんちょ、チャンスよ」
「え?」
「あれに当たってさっさとアウトになって天パの所に向かいなさいッ!!」
「ってッ! アスナさん何をッ!?」

アスナがあやかの襟を掴んで強引に向かってくるボールに突き出す。その瞬間

衝撃音が鳴り、大量の砂埃が宙を舞う。パラパラと砂が待っていると中から人影が

「ふ~危なかった……」
「ア……アスナさん……」

ぐったりして頭にコブが出来ているあやかの襟を掴んで、アスナは涼しい顔で平然と立っていた。

「アスナ選手、あやか選手を盾にしたァァァァ!! 沖田選手とは違い、自分の陣地の仲間を盾にッ! てか原作ヒロインがあんなことして良いんですかッ!?」
「絶対駄目だね……あ~あゴリラさん、いいんちょやっちゃったよ……彼女人気高いのに」

和美が机に肘突いてしかめっ面で近藤を指差す。近藤は体中から汗をダラダラ流しながら明らかに焦っている姿があった。
















外伝Ⅲ 『ボールは友達恐くない!』って言った奴ちょっとツラ出せや

麻帆良生徒側がここまで二人脱落、勝負は圧倒的に江戸側が有利の情況。

「おいあやか~生きってか~?」
「死んでるか~? どうせなら死ね~」

現在、近藤によりぐったりしているあやかを銀八が自分の側に置いて顔をペチンペチン叩きながら、もう泣き止んでいるエヴァと二人で彼女の意識を確認している

「いや~さすが近藤さん、読者の目なんか気にせず問答無用に人気キャラをぶっ飛ばすなんて俺もまだやってませんよ、本当凄えや」
「凄いって何が……?」
「よくやったアルッ! あの憎たらしいデカ乳は私がやりたかったけどゴリラにやられた方がきっと屈辱になった筈ネッ! ザマ~ミロッ!! ヒャ~ハッハッ!! 」
「いやよくやったって何が……?」
「さあ、現在一人の選手が意識昏倒してますが、いよいよ盛り上がってまいりました、果たして生徒の皆さんには勝機はあるのでしょうか?」


花野アナが実況をしている中で、頬を引きつらしている近藤は沖田と神楽に絶賛されるが全然嬉しそうではない。
一方それを見る生徒陣営

「いいんちょアンタの敵は取って上げるわよ……」
「いやアスナさんが壁にしなければ生存してましたよ彼女……」
「さ~てもう三人しか残ってないんだから刹那さん、千雨さん、油断しちゃ駄目よ」
「とりあえずお前の近くに立たねえ事にする」

千雨と刹那がツッコまれた後、アスナは全く気にせずボールを拾い、これで何度目かのターゲットに狙いを絞る。

「よし今度こそサドをッ!」
「待ってくださいアスナさん、ここは一旦外野に渡した方が良いのでは?」
「何でよ?」
「このまま何回も直接狙っても向こうの猛者共には絶対に止められますよ、裏をかいて外野の人達にパスしましょう」
「裏をかくにも……裏がアレよ……?」

刹那に言われてもアスナはしかめっ面で自分たちの外野を指差す。

「よっしゃぁぁぁぁ!! 『トランセル』ゲットだぜッ!」
「良かったですね、そこまで喜ぶほどのモノでもないと思いますが」
「モンスターボールが切れててマスターボールというモノしか残ってないので使ってみたら一発で捕まえられたぞ、さすが俺だ」
「ああ、ご愁傷さまです」
「二人とも今度は何やってるん?」

木乃香がゲーム機を持ってガッツポーズを上げている桂と隣りで同じくゲーム機を持っているクウネルの方に質問する。すると桂は少々誇らしげに

「うむ、近頃子供達に流行っているゲームをちょっとな、『ぽけっともんすたー・赤』こんな小さなゲーム機でこんな名作が出来るとは時代も変わったものだ、確か『げーむぼーい』という物なのであろう?」」
「ちょっと古すぎやない……? ポケモンもとっくに随分出てるし、ゲームボーイも色々新化してるで……」
「そうですよね、言ったでしょ桂さん、今は『ぽけっともんすたー・金』ですし、げーむぼーい所か今では『げーむぼーいからー』が出てるんですよ」
「何ッ!? 何だその見たことないポケモンはッ!? しかも画面に色がついているだとッ!? これが時代の最先端ッ!?」
「いや両方とも古すぎやと思うんやけど……」

クウネルが持っているゲームボーイカラーに驚いて叫んでいる桂とその反応に嬉しそうにしているクウネルに木乃香が遠慮がちにツッコんでいる。

それを見ていたアスナと刹那は……

「あの連中にボール渡すの?」
「え~……とりあえず、渡してみましょうよ……このままだと私達負けちゃいますし……」
「しょうがないわね……アンタ等ッ! ボール渡すから受け取ってッ!」

ため息をついた後、アスナは思いっきり高く向こう側にいる外野三人にボールを渡すため、高くほおり投げる。

「おおーっとッ! ここは一旦外野にパスです、ですが外野勢は全くやる気無しのようですがコレが凶と出るか吉と出るかッ!?」

やがてボールは桂達の前にポトリと落ちる。それと同時に桂とクウネルは持っていたゲーム機の電源を切る

「弟よ、どうやら俺達の出番のようだな」
「兄さん私一回投げてみたいんで良いですか? あの人達相手にするの面白そうなので」
「ではあの幕府の犬の総大将を仕留めてくれ、ああいうデカいのを仕留めれば後々楽になるのでな」
「ゴリラの人ですね、わかりました」
「二人とも頑張ってな~」

ゲーム機をお腹のポケットにしまい二人は歩き出す。兄が拾ったボールを弟が受け取り。目の前で腕を組んで立って不敵に笑っている近藤を見る。

「ふっふっふ、2枚目だろうと俺を倒す事なんざ出来ねえよ」
「じゃあどうぞ」
「……何そのフライ?」

弟はふわ~んと相手側にボールを上にほおり投げた。この弟の可笑しな行動に近藤は小さな声で「何考えてるの?」と呟く。だが彼の真上にボールが来た瞬間

「はいモンスタボール」
「はい?」
「落下」

そう言って弟が笑顔でボールをピッと指差すと

「あれ? ボールの向きが?」

ギューンッ!! と音を立ててボールが突然音を立てて隕石のように急降下、狙いは

「え、何アレ? 嘘、俺に向かって降って来てね? 凄い音立てて降って来てないアレ?」
「近藤さぁぁぁぁんッ!! 避けろぉぉぉぉ!!!」
「え?」

土方が近藤に叫ぶのも束の間ボールは凄い勢いで一気に近藤に向かって

「いやちょっと待って、何でこんなあぼぉぉぉぉ!!!!」
「近藤さぁぁぁぁんッ!!!」

ズドオォォォォン!! と音を立てて近藤の腹に向かってボールが降ってきた。その場所に大きなクレーターが出現して、その中心にそのまま大の字に倒れる近藤だが、まだ終わっていない

「ぐおぉぉぉぉ!! 超重ぇぇぇぇぇ!!! 何ッ!? 何なのッ!?」
「何言ってんだ近藤さん、早くボール……重ぇッ! 何だコレッ!?」

土方が近藤の腹にあるボールを取ろうとするも重くて出来ない。こんな不思議な現象は初めてだ、土方は笑顔で見物している兄弟を睨む。

「てめぇ等何しやがったッ!! ボールがこんな重くなるなんてありえねえだろッ!?」
「ハハハハ、何ででしょうね私もわかりません」
「ふ、俺達を疑う前に自分の大将を心配した方がどうだ?」
「ん? ってオイィィィィ!! アンタ何Vの字になってんだッ!?」
「ぐおぉぉぉぉ!! トシ、総悟ヘルプッ!!」

兄弟に言われて土方が降り返るとそこにはあまりのボールの重さに体でVの字にしている男が一人助けを求めていた。

「近藤選手アウトッ!! 近藤選手、突然降ってきたボールに直撃して現在Vの字を作っていますッ! これはどういう現象なのでしょうかッ!?」
「あのバカ……人前で魔法を使いおって……」
「やっぱ魔法ですか……てことはあの人も魔法使いって事ですよね……?」
「まあな、何であのバカがあのロン毛の所にいるのかはわからんが……」

花野アナが実況している隣りで、相変わらず銀八の膝の上に座っているエヴァと隣りのイスに座っているネギは一般人の前で重力魔法を普通に使うクウネルの存在に疑問を持っていたが、魔法に疎い銀八と彼の隣りに座っているあやかはわからなかった様子だ

「すっげ~なあやか、ゴリラがVの字作ってるよ」
「汚いVの字ですわね~」
「お前等さっきボールの不自然に気付か……おいッ! 何銀時の近くに座ってんだッ! 離れろッ!!」

エヴァが振り向くとそこには銀八の隣りのイスに座っているあやかがいたので離れるよう怒鳴る。
だが彼女は目を細めてめんどくさそうにエヴァを見つめ返す。

「アスナさんのせいでゴリラさんのボールを頭に当てられてズキズキするんですよ、頭痛いんで叫ばないで下さい」
「だったら保健室なり病院なり行って来いッ!!」
「銀さん、エヴァさんがうるさい」
「いや両方うるさい、ていうかお前等暑いんだから離れろ」
「「イヤ」」
「ハ~……」

膝の上に座るエヴァと隣に密着するようにすわるあやかに銀八がダルそうに言うが、二人は一向に離れる気配が見えない。

「お前等当てられたんだから外野に移動だろ? さっさと行けよ」
「頭を負傷した私にまだゲームに参加させる気ですか?」
「まだチャイナ娘に傷つけられた私の心は癒えてないので休ませろ」
「何だよそれ……」

あやかとエヴァが聞く耳持たないので銀八は深いため息をついた。
諦めてこの暑苦しい環境で何時間持てるか考えていた。









「よぉぉぉぉしッ!! よくやったわ変な兄弟の緑の方ッ!! これでゴリラが死んだわッ!」
「いやゴリラって……」
「早く終わんねえかね……」

アスナが近藤撃破に嬉々している中、千雨はもうとっくに帰りたかった。この試合彼女には何のメリットも無い、それは刹那も同様で楽しんでいるのはアスナだけである。

「どうよサドッ!? アンタの所のゴリラやられたけど大丈夫ッ!?」
「うるせえよテメェなんかモンキーじゃねえか」
「うっさいドSギツネッ!!」

テンション上げ上げのアスナがダウンしている近藤を銀八の所に引きずり終え、戻ってきた沖田に向かって挑発するが沖田は軽く受け流し、土方からボールを受け取ろうとする、だが

「待ってくださいッ!」
「ん? どうした新八君? ていうかいたの?」
「おお新八、何処行ってたアルか?」
「何だ万事屋の所のメガネじゃねえか、今来たのか?」
「いやさっきからずっといたからねッ!?」

同じチームのメンバーにまるで珍しい物を見ている目で眺められて初代ツッコミの新八が指をさしてツッコむ。そしてツッコんだ後咳を一回して真顔で口を開き出す

「次は僕に任してください」
「オメーがやんのか? 言っとくがツインテール娘とあのガキは手強いぞ」
「違いますよ僕は……」

土方が言った二人が新八のターゲットではない。新八は向こう側にいるその二人とは別の人物を見る。
全くやる気のなさそうにあくびをしてこちらに背中を向けている生徒。自分が長く立っていたポジションをいきなり出てきて、あっという間に奪った新八の憎き敵、長谷川千雨がそこにいた。

「この試合で絶対痛い目に合わせてやりたいんですよッ! 皆さんどう思いますッ!? 自分がずっといた立ち位置にいきなり知らない女に奪われるこの屈辱をッ!? ずっと耐えてきたんですよ僕はッ!? 感想掲示板に『新八いらなくね?』とか『新八がEUイナクトだとすると千雨はリボーンズガンダム、これぐらい差がある』とか『新八は『元ツッコミ』じゃなくて『故ツッコミ』ですよ(笑)』とか散々言われてもずっと耐えてきたんですッ! だから……」

新八は近藤の腹に落ちたボールを持っていた土方から取り両手でボールを強く握り締め目をギラギラ殺気立てる

「この外伝で僕の存在力がいかに大切かを読者の奴等に見せつけてやるんですよ~……!!」
「へ~新八君殺気立ってるね、土方さんどうやらここは任せた方が良いようですぜ」
「俺は元々誰が投げようがどうでもいい、さっさと帰りたいそれだけだ」
「さっさと帰って地獄少女と何する気ですかぃ?」
「よし一遍死んでみるか?」
「新八ッ! お前の気持ちわかるアルッ!!」
「神楽ちゃんッ!」

新八が目をギラつかせていると神楽が力強く叫ぶ、これには新八も嬉しくなる。そう考えれば彼女も被害者なのだ

「私も新八みたいにヒロインのポジションを奪われたネッ!」
「そうだね、神楽ちゃんも取られたんだよね……でも神楽ちゃんの場合本当に向こうの方がレベル高……ぐほッ!」

新八が言い終える内に神楽の正拳が腹に入る。一瞬意識が飛ぶ新八、だがなんとか持ち堪えヨロヨロと立て直す

「ごめん……神楽ちゃんもレベル高いよね何て言ったって釘宮ボイスだもんね……」
「そうだコラ、なめんなくぎゅボイスをよ~こちとらツンデレ界のエースオブエースだぞコラァ、あのデカ乳なんかただのテニプリだろうがコラァ~ただのギアスだろうがコラァ~ただの遊戯王だろうがコラァ~」
「いやテニプリもギアスも遊戯王も結構凄いと思うよ……?」

ヤンキー口調になっている神楽を新八はなんとかなだめ、しばらくして一回落ち着いた後再び相手側に目を戻す

(標的は長谷川千雨ただ一人……)
「近藤選手が再起不能になり勝負再開ッ! ボールを持っているのは……誰……?」
「え~と(故)ツッコミじゃない?」

目を細めて誰だったか思い出そうとする花野アナと、笑って酷い事を言う和美の声ももう新八の耳には届かない。
彼は意識を集中する。
眼前でだるそうに頭を掻いている千雨とふと彼女と目が合う

(教えてやるッ! 銀さんを上手く転がせられるのは僕だと教えてやるッ!)
(何だアイツ……適当にぶつけられてさっさと銀八の所に戻るか……てか何でアイツはあんなにしつこいんだよ……)

新八に睨まれても全く動じず千雨は、新八のボールに当たって試合を観戦している万事屋一同の所に行く事を算段していた。 
そんな事を知らずに新八はボールを持って千雨に狙いを定める。

(ついに来たんだ僕は、こういう舞台でいつかあの女に何かで勝って僕の存在を見せ付けるのを……見ていてください、僕と同じくポジションを奪われた神楽ちゃん……僕と神楽ちゃんがいなくても、全く気にせずにむしろ女の子に囲まれて私欲の限りをつくしている銀さん……あれ? 何かあの人無性に殺したくなった……そして僕のことを常に応援してくれた姉上……あの時の言葉、僕は忘れてませんよ……)

新八は静かに目を閉じる。そして江戸にある自宅で最愛の姉・お妙との会話を思い出す。

あの日は江戸でも珍しい大雨だった……



















「そういえば新ちゃんと同じツッコミ役の千雨ちゃんっていう女の子って、新ちゃんより人気高いわよね?」
「え……姉上……今何て?」

大雨でとても出られる情況ではない外を見ながら、新八の姉で見た目がおしとやかに見えるし結構美人な女性、志村お妙がボソリと呟いた事に居間に座って煎餅を食べていた新八がすぐに反応する

「どうしようかしら、このままだと新ちゃんみんなから忘れられる存在になるわ」
「だだだだ大丈夫ですよッ! 読者って飽きっぽいからすぐに人気なくなりますよッ! その時に僕の出番ですッ! 本編に颯爽と登場して銀さんにツッコミまくりますよッ!! あしたには僕の出番かなッ!? うんッ!」
「あしたっていつの明日かしら?」
「あ、あしたですよ……」

新八はそう言って黙り込む、持っていた煎餅の食いカス床に落としながら。
しばらくしてお妙はそんな弟に微笑ながら近付きそして……

「あした、あしたっておのれは何回同じ事言えば気が済むんじゃァァァァ!!」
「どほォォォォォォ!!!」

微笑みから急に豹変して鬼のような形相を浮かべてお妙は新八を思いっきり蹴っ飛ばす、新八はそれを顔面から受けゴロゴロ回転しながら家の柱にぶつかる

「な、何するんですかッ!? 可愛い弟になんて事をッ!?」
「オメーそのあしたって言葉、一ヶ月前にも使ってたじゃねえか、いつになったらあしたは来るんだ? お前の『あした』はいつなんだ? あん?」
「う……」

新八はそれを言われてグゥの音も出ない。確かにそうだ、いつまで経っても本編入りの話なんか一向に来ない。それどころか他のキャラは次々と本編入りをしている、あの自分と同じ地味な立場の山崎でもだ。
悔しそうに歯を食いしばる新八、だがそこに真顔に戻った姉が近付いて話しかける

「確かにあなたは地味で個性もアイドルオタクとメガネしか無い童貞よ、あっちの世界で誰一人フラグ立たせる事なんて100%出来ないチェリーボーイよ、けどね……」
「さっきからズバズバ酷い事言ってますよね……? ていうか童貞の所を強調しないで下さい……」
「それよ新ちゃん、あなたには誰にも負けないツッコミの才があるの、あなたはそのツッコミの才で誰かに負けてもいいの?」
「姉上……」

姉の言葉が新八の心に深く刺さる、そうだ自分はまだ終わっていない。新八は決心したように立ち上がる

「わかりました姉上、僕はツッコミ道を極めます、そしていつか読者の奴等を見返してやるツッコミリストになりますよッ!!」
「その意気よ新ちゃん、じゃあ早速特訓ね、まずは初歩的なツッコミ『どんだけ~』を完璧にマスターしましょう」
「え、それ古くないですか……? まあいいですけど……」

ちょっと古めのツッコミ方法に新八は戸惑うも、とりあえずやってみようと実戦する

「え~どんだけ~ッ!!」
「駄目よ、もっと声を上げてッ!」
「どんだけ~ッ!!」
「もっと上向きにッ!」
「どんだけ~ッ!!」
「発音がズレてるわッ!」
「どんだけ~ッ!!」
「歌うようにッ!」
「どんだけ~ッ!!」
「また元に戻ってるわッ!」
「どんだ……っていい加減にしろォォォォ!! 小説だからわかんないでしょここッ! 行数稼ぎと思われる可能性大だし、ていうか完全にそうでしょッ!?」
「そうよッ! そのテンションで言うのよ新ちゃんッ!」
「マジでッ!? やったァァァ!! ってどんだけェェェェ!!!」

大洪水の雨、志村家では雨の音にも負けない声で新八のツッコミが高くこだま響いていた。



















(そう僕はまだ終わっちゃいないッ!)
「いま死ぬほどどうでもいい回想シーンがあったぞ」
「多分ほとんどの読者がページを早送りしたな」
「めんどくさいですわね……」

銀八達が愚痴っている中、新八はボールをもって後ろに歩いていく。そして

「うぉぉぉぉぉ!!!」
「ツッコミ選手が助走をつけてボールを投げる体制にッ!」
「誰がツッコミだぁぁぁぁ!! 新八じゃボケェェェェ!!」

実況している花野アナにツッコミながら新八は走るそして右手にボールを握り

「姉上ッ!……『あした』って今ですッ!」

背負い投げのようなフォームで新八はぶん投げる、目標は千雨

「当たれェェェェ!!!!」

ボールは真っ直ぐ飛んで千雨を狙う、だが

「よっと」





「へ?」

千雨に当たる前にボールはアスナが走ってそれを止める

「いくわよメガネ~」
「え? あの……」
「おら……よッ!!」

きょとんとしている新八にアスナは構わずボールを思いっきり投げて……返す。

「あぼぉぉぉぉ!!!」
「ツッコミ選手ッ! アスナ選手にまさかのカウンターに成す術無しッ! 顔面に直撃してこれで3対3になったァァァァ!!」
「結局あの回想シーンって何……?」

顔面からアスナのボールを受け止めメガネを見事壊されながら後ろに倒れて行く新八、ゆっくりと意識が消えて行く中彼は表情を和らげて思った

(何か……全然絡んでない人に邪魔されたんですけど……)
「新八ィィィィィィ!!」

その場にバタリと倒れ消えていく意識の中、こちらに叫びながら走ってくる男を見た。今までずっと冷たかった銀八が自分の為に必死に走り寄ってくる

「新八ィィィィ!! 大丈夫かァァァァ!!」
「ああ銀さん……やっぱり僕のことをまだ忘れていなかったようですね……」

ようやく自分の存在を思い出してくれて、これで死ぬなら本望と新八は思っていた。だが急に銀八は新八から反れてある物が落ちている所に向かう

「神楽ッ! 新八大丈夫かッ!?」
「粉々アルッ!」
「新八ィィィィィ!! こんなにめちゃくちゃになっちまってェェェェ!!」
「いやそれメガネェェェェ!! 新八こっちィィィィィ!!!!」

新八ではなく新八がかけていたメガネ、神楽と銀八はスクラップにされたメガネを見て嘆き悲しんでいると、本体が自力で這い上がってツッコンだ。そんな折、沖田は新八の顔面にヒットしていたボールを拾って前に歩いていく。

「いや~また一人減っちゃいましたね土方さん」
「そうだな、つーかあっち側で張りきっている奴ってあのサルみたいにすばしっこい奴だけじゃねえか?」
「サルみたいにじゃなくてサルですよありゃあ、まあ俺に任してください、けどその前に……」

土方との話を一旦止めて目を細めて向こう側にいるターゲット対象を定める

「千雨さんッ! あんたもっとやる気出しなさいよッ! 私がいなかったら当たってたわよッ!!」
「うるせえな、さっさと適当に当たって終わりたいんだよ」
「何言ってのよコラァァァァ!! 刹那さん刀持ってきてッ! 勝負する気が無い奴は切腹よッ!」
「いや刀持ってないので……」

アスナに怒鳴られているにも関わらず、相変わらずやる気のなさそうに頭を掻いている千雨。沖田は彼女を見てニヤリと笑う

「戦場で戦意を失ってる奴は早々と退場してもらいましょうかね……おい出番だメス豚共ッ! 狙いは旦那の所の2代目メガネだッ!」
「はッ!? ちょっと待てよッ!?」
「「「かしこまりましたご主人様ッ!!!」」」

千雨が急に何のかかわりも無い沖田に狙われたので戸惑っている中、沖田が命令した後に外野にいた三角形のフォーメションをしていた黒百合三人衆栄子、ビビ、しぃは沖田に敬礼、ドSの王子はその中の一人、三人の中では唯一短髪にしているビビにボールをほおり投げる、センターサイドにいる彼女なら一番奥で暇を持て余している千雨にぶつけれるのは容易だと思ったからだ。

「おら受け取れメス豚Bッ!」
「イエッサーッ!
「「させるかァァァァ!!」」
「あぼッ!! 栄子、しぃッ!? 何でッ!?」
「おおっとッ!? 助っ人の黒百合三人組の一人が取ろうとしたら他の二人がそれをさせまいとドロップキックで受け止めをカットッ! どういう事だこれはッ!?」

飛んできたボールをビビが受け止めようとすると、すかさずメス豚Aの栄子とメス豚Cのしぃがボールカット後ろに吹っ飛ばされたビビは思わずボールを手放す

「何すんのよッ!」
「お黙りッ! 私がご主人様に手柄を誉めてもらうのよッ!」
「何言ってのよ栄子ッ! 私の所に来たんだから私のボールよッ!」
「関係無いわッ! 手柄を貰うのはこの私……」
「せぇぇぇぇいッ!!」
「おごッ! しぃッ! あなたもビビと一緒に引っ込んでなさいッ!」
「栄子が引っ込みなさいよッ!」

黒百合のリーダー格である栄子がボールを投げようとするとすかさず、しぃがスライディングタックルで足払い。そこからどちらが手柄を取るかキーキー言い合いながらボールの奪い合いが勃発する

「大変な事になりましたッ! 試合そっちのけで内乱開始ですッ!」
「うわ~……」
「おい総悟、お前が手駒にした女……」
「見てください土方さん、メス豚共が醜い争いしてますぜ、見てるだけでご飯3杯いけますわ、あ~たまんねぇ~」
「……近藤さんがもっとしっかり教育してれば……」 

自分が原因で内乱が起こっているにも関わらず沖田はその光景を面白そうに見てるだけ。彼の上司の一人がもっとしっかり人の道徳を教えていれば……タバコの煙を吐きながら土方は頭を抱える
そんな土方を尻目に黒百合メンバーはボール争奪を行っており、そのせいで三人にみくちゃにされていたボールが上に上がった瞬間、三人は同時に飛びあがってボールを手に入れようとする。

「「「手柄は私の……!!」」」
「どきなさい脇役風情がァァァァ!!!」
「「「だほッ!!」」」
「ボールを取ろうとした三人に突然飛んできた鎖に当たり打ち落とされましたッ! ボールを手にしたのは……あれ? あの生徒さんって……」

突如三人に長い鎖が襲い彼女達を地面に落とす。その瞬間空中でボールを奪う影が一体。黒百合に当てた鎖を右手でブンブン回しながら、左手にはボール。見事ボールを手に入れた人物は後ろに振り返る。

「ご主人様に誉めてもらうのは私じゃぁぁぁぁ!!」
「柿崎ィィィィィ!!!」
「正規の選手ではないのに2度目の登場してきた少女ッ! 本当に彼女の未来が心配ですッ!」

前回こってり沖田に調教された美砂がボールを持って叫ぶ。いきなりの再登場に千雨は思わず大声で叫んだ。

「お前ゲーム参加者じゃねえだろうがッ!!」
「シャーラップッ!! そんな小さい事気にしてないで……」
「いッ! ちょっと待てッ!!」
「テメェのタマ(命)気にしなさいよォォォォ!!」

千雨の話を聞かずに美砂は右手一本でボールをほおり投げる、狙いは勿論自分の主人が言ったターゲットの……

「そいやァァァァァ!!」
「あだッ!!」

思わず後ろに走って逃げようと思ったのが運の尽き、美砂が投げた球は千雨の叩頭部を捕らえる。

「千雨選手にヒットォォォォ!! しかし当てたのは正規の選手じゃないのですが……どう思いますか朝倉さん?」
「いいんじゃな~い? どうせみんな好き勝手やってんだから、1回ぐらいは多めに見ようよ」
「いえ彼女2度目です」

花野アナが和美にツッコんでいる一方、千雨は叩頭部をさすりながらキョロキョロと何かを探す。さっきの拍子にいつも付けている伊達メガネを落としてしまったらしい

「いて~……柿崎のせいでメガネどっか飛んでっちまった……」
「フッフッフ……まだ全然傷ついていないようね……」
「あ……?」

落としたメガネを探していると何やら美砂が誰かに言っている。不審に思った千雨が降り返ると

「私のボールで傷つかないなんていい度胸じゃないッ! 私はご主人様にはMだけど、ご主人様には指名されたアンタなんかには私はSに走るわよッ!!」
「ってそれ私のメガネだァァァァ!!」

美砂が持っていたのは自分のメガネ、それをさぞかし千雨本人と喋っているようにブラブラさせながら両手で持っていた。本物の千雨が叫んでいると、後ろからアスナが声を上げる

「柿崎ッ! 千雨さんをどうする気よッ!?」
「違ぇよッ! 柿崎ッ! それ返せってッ!」
「決まってるじゃない……こうするのよッ!」
「千雨さぁぁぁぁぁんッ!」
「だから本体こっちッ! てかメガネェェェェェ!! 何壊してんだテメェェェェ!!」

突然、美砂が両手で千雨のメガネをグシャリ、いきなりの暴虐行為に千雨は彼女にドロップキックをヒットさせる

「あ~めちゃくちゃじゃねえか……」
「千雨ェェェェェェェ!!」
「銀八……? 何だよ……?」

フレームもレンズのボロボロに変形している自分の伊達メガネをもってぼやいていると、銀八が必死に走り寄ってくる、そして千雨が両手ですくい上げている壊れたメガネをひったくって

「俺がマック行ってテイクアウトしてる間にこんなにボロボロになっちまってェェェェ!!!」
「だから千雨こっちじゃボケィッ!!」
「千雨さん……まさかこんな形で永遠のお別れが来るなんて……」
「既に死んでる扱いッ!? 健在だよこのバカ共ッ!」
「何だ死んだのか、じゃあこの作品誰がツッコミやるんだ?」
「だから生きてんだよッ! つか何で無視してんのお前等ッ!?」

銀八と、彼の後ろからやってきたあやかとエヴァが既に千雨本人を死者と認定しているので、千雨は見を乗り出して三人にいつも通り大声でツッコんだ。

「何という事でしょうッ! たかがドッチボールにまさかの死者がッ!!」
「千雨ちゃん……無念だったろうね~……」
「お前等にとって私はメガネしか見えてねえのか……たく……」

ため息をついて千雨は銀八達と客席に戻っていると自分の顔をおさえながら銀八の方にむく

「銀八……」
「何だよメガネ掛け?」
「そろそろ埋めるぞ……お前の伊達メガネ貸してくんねえか? 落ち着かねんだ……」
「別に素顔のままでいいだろ、掛ける必要も元々ねえんだからよ」
「あんまり自分の素顔晒したくねえんだよ、早く貸してくれよ……」

自分の顔を隠して喋る千雨、どんだけ自分の顔に自信ねえんだよっと銀八はしかめっ面をした後、彼女の壊れたメガネを自分のポケットに入れて、自分の付けていた鼻に掛ける用の小さな伊達メガネを彼女に渡す。

「ほら、これでいいんだろ?」
「少し小せえけど……まあ素顔よりは……」
「あら千雨さん生きてたんですかッ!?」
「メガネ掛ければ私見えるようになるのかお前は……」

銀八の小さなメガネをつけると、近くにいたあやかが驚いたような声を上げたので、それに千雨はジト目で睨む

「さあ選手が一人減ってしまい二人になってしまった生徒の皆さん、この戦況を覆せるのかッ!!」
「覆す? んなもん今からでもやってや……!!」
「待てぇぇぇぇいッ!!」
「うわッ! アダッ!」

落ちていたボールを拾いアスナは敵側に投げようとする前に突然誰かの声に驚いてその場にズッコける。
一体何事かと顔についた砂をはたきながら声の主の方へ顔を向ける。声の主は自分達の外野陣であり、今はセンターサイドで自分を親指で指している、あの兄弟の……

「このカツオブラーザスが兄の俺に任せろッ!! この情況をあっという間に解決して見せようッ!!」
「はぁッ!? あんたの弟なら凄いのはわかるけど今までアンタはずっとポケモンやってただけでしょうがッ!!」
「フ……この時間帯でトランセルをバタフリーに進化させたぞ」
「自慢気に話してんじゃないわよッ!」

相変わらずズレた兄にアスナは怒鳴り散らす。どうやらドッチボールが激戦している中ずっとゲームをやってたらしい、そんな男が信用できるのだろうか……だが彼の弟はあのガタイの良いゴリラを一撃でノックダウンさせたのだ、もしかしたらこの兄も……アスナは半信半疑で彼に希望を託す事に決意する

「よりあえずアンタ出来るの……?」
「何度も言わせるな、もし俺が誰も倒せなかったら」
「倒せなかったら何よ?」
「俺が手塩にかけて育てたバタフリーをあげようッ!!」
「いらないからッ! あ~もういいわッ! 渡すからさっさと受け取って誰かにぶつけなさいッ!!」

兄に渡される品物をアスナは全力で拒否した後、彼にボールを託す。敵側の頭上を飛んでそれはカツオブラザーズの兄、カツオの元に託された。

「確かに受け取った、見せてやろうスポーツには力だけでは無く頭も必要だということを……」
「アスナ選手ボールをあのマリ……カツオ選手にボールを託しますッ! 一体彼はどんなプレイをするのでしょうかッ!? 補足ですが、私が江戸のゲーム店で彼とあった時は恋愛ゲームでヒロインの母親を口説いてました」
「うん、その補足だけで江戸の人達ってやっぱり変なのばっかだってのがよくわかるね」

花野アナの実況に和美がツッコんでいる中、話の中心の男カツオ、本名桂小太郎はボールを持ち誰を狙うか絞りだしに入っていた

(真撰組の犬共を血祭りにしてやりたいが……ここは容易に俺の策にハメられる……よし)

力強く頷いたカツオは誰を狙うか絞った。彼女なら自分の作戦に見事やられる、そう確信する

「リーダー、悪いがここで退場してもらおうか?」
「私を狙うつもりアルか? ふん、ヅラの球程度にこの私が屈すると思うアルか?」
「ヅラじゃないカツオだ、リーダーに見せてやろう、食い意地の悪いリーダーにこそ出来るこの技を」

指名された神楽は鼻で笑って桂を軽く挑発するが、彼はお腹のポケットからある物を取り出す、そのある物こそが神楽攻略のルーツ

「んまい棒だ」





「「「「「は?」」」」」」

自信満々に桂が持っている物、それが「んまい棒」。その事実にそこにいたほとんどの人達が敵味方関係無くきょとんとする。だが桂はそんな反応にお構い無しにんまい棒を投げる構えに入り

「リーダー、そろそろ腹も減った頃だろ、これで……腹を満たすがいいッ!!」
「カツオ選手、んまい棒を投げたァァァァ!! 正に意味不明ですッ!!」
「何やってんのよバカ兄貴ィィィィ!!!」
「キャッホォォォォイッ! ありがたく頂戴するアルッ!」

アスナが思わずキレて怒鳴るのと同時に神楽は投げてきたんまい棒に走り出す。敵に塩を送られた彼女は口を開けてそれを食べようとする、だが……

「甘いなリーダーッ!」
「何ッ!?」
「このボールも……食らってもらおうかッ!?」

んまい棒を投げた桂はすかざす一瞬でボールを投げる。神楽は既に飛んできたんまい棒に食いつこうと走っている。しかしその後ろからは彼が投げたボールもせまっていた。

「食い意地の悪いリーダーだ、例え敵からもらった物であろうと簡単に食べようとする、思ったより簡単に成功したものだ」
「くッ!」
「んまい棒と共に飛んでくるボールに神楽選手止まれませんッ! これはカツオ選手の作戦勝ちかッ!? ていうかボール以外の物を投げないで下さいッ!」

見事に桂の作戦にハメられた神楽は万事休す。突っ込んでいた神楽はんまい棒の後ろから来ているボールを受け止める事も避ける事も……だが彼女に眠る夜兎の力は決して伊達ではない

「なめんなァァァァ!!」
「な、なんと神楽選手ッ!!」
「何だとッ!?」

余裕の表情をしていた桂に衝撃が走る。神楽は走りながら、まず先に飛んできたんまい棒を口にくわえ、そして瞬時に前宙返り、それにより次に飛んできたボールを避け、更に足でそのボールを空中で挟んでキャッチするという荒技を成し遂げる。
そのまま着地した神楽は口にくわえていたんまい棒をパキッと半分に折って目の前に立っている桂に向かってニンマリと笑う

「お前のんまい棒、悪くない味アルな?」
「くッ! さすがリーダーだ……」
「アクロバットな技で神楽選手、カツオ選手の罠を見事に回避ッ! とても人間技とは思えない動きでしたッ!」
「何やってのよバカロン毛ッ! ボール止められてるじゃないッ!」
「シャ~ッハッハッ! 時には魅せる事も必要なんだヨヒロインにはなッ!!」

んまい棒を半分食べきり残りの半分を指でクルクル回しながら神楽は余裕の高笑いを見せつける。敵を倒す所か敵に食べ物を補給させてなおかつボールまで渡してしまった。桂の失敗にアスナが叫んでいると、彼は深くうな垂れたまま顔を上げようとしない。

「どうしたヅラ~? 私に負けたのがそんなに悔しいアルか~? 負けた責任で私に本編入り譲れよヒャ~ッハッハッ!!」
「フッフッフ……」
「ん?」
「悪いがその責任は出来ない、俺はリーダーとの戦いに勝ったのだからな」
「何言ってるアルか? お前のボールを私が……うッ!」

さっきまでニタニタ笑っていた神楽の顔に突然大量の汗が流れる、次の瞬間その場に膝をつき何故か腹を押さえて苦痛の表情を浮かべる

「ぐおぉぉぉぉぉ!! 何じゃこりゃぁぁぁぁ!!!」
「どうした事でしょうッ!? 突然神楽選手がお腹を押さえて苦しんでいるようですッ! 体調不良でしょうかッ!?」
「ヅラ……お前何したアルか……?」
「今リーダーが食べたのは俺が作った特製んまい棒でな、中には大量の下剤が含まれているのだ」
「な、何ィィィィィ!!!」
「試しに試作品を京都にいる少年に食べさしてみたが、それはそれは酷い状態に陥ってな、そのせいで一週間は口聞いてくれなくなってしまった」

今度は桂の方が勝ち誇った笑みをしている、腹を押さえて必死な形相を浮かべる神楽に桂は淡々と説明を始める

「俺はボールは当てるのが目的ではなかった、そのんまい棒をリーダーに食べさせるのが本当の目的だったのだ」
「そ、そんなバカな……!?」
「勝つときは時にこういう戦法も使わなければな、リーダーがあの娘を倒した時のように」
「て、てんめぇぇぇぇぇ!!!」

神楽は腹を押さえたまま桂に吠えるも、すぐに腹の波が押し寄せてきたのですぐに地面に倒れ横になる。そんな状態の彼女に沖田と土方が近寄ってきた

「おいチャイナ娘どうした? ウ○コでも漏らしそうな顔して?」
「話しかけるんじゃねえヨッ! こちとら別のモンと必死に戦ってんだドS野郎ッ!!」
「おい誰かこいつをトイレに連れてけッ!!」

沖田はその辺から拾ってきた細長い棒で神楽を突っついてジワジワ責めていると神楽は人をも殺しそうな顔をして彼にブチ切れる、そんな彼女を見て土方は観客席にいるメンバーに向かって救援要請。原作ヒロインがよもやこんな所でとんでもない不祥事を起こさせるわけにはいかない。すると誰かがひょこっとこちらに近付いてくる、死にそうな神楽を助けようと……ではない、これまで苦渋を飲まされつづけ、そして今苦しんでいる彼女を見て至上の喜びを感じている人物だった。

「クックック……いい気味だなチャイナ娘……私を散々コケにした天罰だと思え」
「く……金髪ミニ乳……」
「苦しそうだな、さっさと泣きながらトイレに駆け込んでくるがいい、貴様にはそれがお似合いだ」
「…………」
「どうしたうずくまって、私に悔し涙を見せたくないのか? うん?」

神楽に近付いてきたのはニタニタ笑っているエヴァ。散々罵られていた彼女は今がチャンスと神楽に対して強気な態度を見せつけ、それに対して神楽は顔を下げて黙り込む。そこに更なる追撃をかけようとエヴァが近付いて行くが

「て、て……」
「何だ、まだ喋れるのか? だがもう得意の毒舌攻撃は出来な……」
「てめぇも道連れじゃぁぁぁぁ!!!」
「むぐッ!」

神楽は持っていたある物を残っていた力をこめてエヴァに襲いかかり、彼女の口に何かを無理矢理詰め込む。いきなりの行動にエヴァは一体何事かと思っているうちに、思わず彼女から咥えされた物を飲み込んでしまう

「ゴクッ……ハァ、ハァ……貴様私に何を食わしたッ!」
「ヘッヘッヘ……私が食べたもう半分のんまい棒アル……」
「何ィィィィィィィ!! うぐッ! 腹が……!!」
「私と同じ苦しみを味わうがいい、デヒャヒャヒャ……ぬごぉぉぉぉぉ!!!」

神楽が残していた半分の下剤入りんまい棒、それがエヴァの腹の中に……彼女に強烈なビッグウェーブが襲いかかる。
倒れている神楽同様エヴァも腹をおさえて苦しみだした

「ぐわぁぁぁぁ!! ぎ、銀時ィィィィィ!!」
「銀ちゃぁぁぁぁんッ!! トイレ何処ォォォォ!!??」
「あ? 知らねえよ、今てりやきマック食ってんだから忙しいんだよ、勝手に漏らせチビ共、」
「「この腐れ天パァァァァァ!!」」

あまりの激痛に思わずエヴァと神楽は同時に観客席で座っている銀八に助けを求めるが、彼はクチャクチャとお持ち帰りしてきたマックを食べながらそっけない態度で一蹴。だがしばらくすると銀八は思い出したようにエヴァ達の方に向く

「こっから近いトイレって体育館のだぞ」
「そうかッ! よし急いで体育館へ……」
「でも銀さん、あそこのトイレ今故障中でまだ一個しか使えませんわよ?」
「マジで? つーか何俺のエビフェレオ食ってんだテメェ、返せコラ」

銀八が持ってきたマックを勝手に食していたあやかの情報を聞いてエヴァと神楽が同時に立ち上がる、そしてお互いを睨んで

「どっちがヒロインとしてふさわしいか……」
「ここでケリつけるアルか……」

学園内のトイレにはこの腹の痛みからして恐らく間に合わない、ならば体育館に1つ残っているベルサレム(トイレ)にどっちが先に辿りつけるか……
同じ事を考えていたエヴァと神楽は額からポタポタ汗をしたたせながら顔を見合わせて、静かに笑った後

「「負けるかコラァァァァ!!!」」
「今エヴァ選手と神楽選手が何処かに向かって猪の如く走って行きました、何があったのでしょうか?」
「さあ? ゴリラさんはどう思う?」
「んも~誰か俺のことを人間と認めてくれよ~」

必死な形相でエヴァと神楽は、互いに妨害をしながら体育館へと走って行く。そんな珍行動に花野アナと和美が首を傾げて一体何事かと、ようやく復活して今は和美の隣にイスに座って安静している近藤に尋ねてみる。彼は深く考え込んだ後

「二人の顔から出る汗の量からして……あれは俺も何回も経験してる状態だな」
「どんな状態?」
「決まってるだろ、きっと……おごごごごごッ!!」
「あれゴリラさん? ゴリラさ~ん? 背中にバナナこんなに生やしてどうしたの?」

近藤が言い終える内に再びあの感触が、しかも今度は散弾銃のように背中に大量のバナナが突き刺さり、その衝撃でイスから転げ落ちてそのまま倒れながら白目を剥いている状態の近藤を見て和美は彼に近付いて揺すっていると

「うふふ、女の子の前で何下ネタなんか言おうとしているのかしら?」
「もしかしてこれ千鶴さんのせい……?」
「いいえ神からの審判よ和美」
「近藤さんがまた死んだァァァァ!!」

近藤の後ろから突然出てきた千鶴に和美は疑いの目を向けるが、彼女はニコニコ笑ってとぼける。同じく千鶴と一緒にいた夏美は慌てて近藤に駆け寄った。

「ちょっとちづ姉やりすぎでしょッ! このままだとマジで……」
「どうも、校庭で騒いでいる声が聞こえたから来てみたんですけど何やってるんですか?」
「あ、山崎さんッ! 急いで救急車を……! って何で泣いてるんですか……?」
「いや……俺の名前知ってる生徒もいるんだなと思ってつい……」
「そんなことッ!? それよりこの人がヤバいですから早くなんとかしないと……!!」

学園内で情報活動していた真撰組の密偵を勤める山崎退がここでは珍しく真選組の服装をして、何をやっているのかと見に来たのだ。
来て早々夏美に名前で呼ばれたので少し涙ぐむ山崎に夏美がツッコんだ後、近藤を指差す。だが涙を拭いた山崎はそんな近藤を見ても全く動じていなかった

「すんません……え~と とりあえずこれ抜きましょうか、ていうか何で局長がいるんですか?」
「ちょっとッ! 人の命の灯火が消えかかってるのに何その対応ッ!?」
「ああ大丈夫、俺等の世界でも大体局長はこんな感じだし、心配してくれてありがとね」
「ええ~……この人ってそっちでもこんな感じなの……」

夏美の心配をよそに山崎は淡々と説明を終えた後、倒れている近藤の背中のバナナをズボズボ抜いて背中から噴水が出ているにも関わらずその血を止めるために持っていた包帯でグルグル巻きにする。

「こうしてればすぐに復活するからウチの局長は、この人凄いタフだから」
「確かに前々回ちづ姉にやられても前回では普通に出てきたね……ていうか何で山崎さん普通に包帯携帯してるの……?」
「何でって、ここで働いている以上必要だからに決まってるでしょ、最近は楓さんやら旦那の所にいたチャイナ娘そっくりな娘に勝負吹っかけられるんすよ?」
「あ、それは……ウチのクラスメイトが本当すみません……」

真顔で答える山崎に夏美は頭を掻いて素直に謝る。色々と騒ぎを起こすのはもっぱら我等3年A組の元気過ぎる生徒達である。後ろでニコニコしている千鶴も無論例外ではない。

「夏美、その人だ~れ? ゴリラさんの飼育員?」
「違うよちづ姉……ここで働いてる山崎さんだよ、時々見るじゃん……」
「あらそうだったかしら? 全然気付かなかったわ」 
「あ~ここの生徒って本当俺のこと見えないんですね……俺もしかしたら死んでるのかなアハハハ……」
「重ね重ねすみません……」

千鶴にスパっと一蹴されて山崎が軽くうな垂れているところを再び夏美は彼に謝る。山崎が見える生徒は現時点では極限に少ないのが現実であった。






山崎が己の地味さを実感しているその頃、神楽が途中退場になった事で2対2となり、アスナはその事に勝機ありと見てテンションが上がりっぱなしだった。

「ヨッシャァァァァ!! 思ったよりあのバカロン毛使えたわね刹那さんッ!」
「そうですね……ていうかアスナさんさっきからずっとテンション上げ上げですけどよく持ちますね……」
「当たり前でしょッ! あのサドに一度痛い目に合わせないと本編入りしたら何しでかすかわかったもんじゃないじゃないッ!?」
「そりゃそうですが……」

一応アスナの言い分は納得できるし、時折自分も狙ってくるので危険なのはわかるがそれほど執念深く殺意を発するのもどうかと刹那は首を傾げる。何より土方の部下なのでほんのちょっぴりでも常識というのは持っているはず……

「おい総悟、ガム噛むの止めろクチャクチャうるせんだよ」
「土方さんもタバコ吸うの止めてくれませんかね? タバコ臭くて敵わねえや」

相変わらず自分の上司に対して軽い調子で返す沖田を見て。
やっぱり無いのかだろうか……と刹那が考えていると花野アナが試合再開の宣言をする

「さあ~色々起こってますが遂に終盤までやってこれました、本当に長かったです、読者の皆様こんな長ったらしくてすいません、では試合再開ですッ! 現時点でボールを持っているのは……おーっとッ! 沖田選手だァァァァァ!!」
「チャイナ娘の屍から剥ぎ取ってきました」

神楽が残したボールを片手で持ち上げ沖田はジリジリと今回の彼の一番人気のアスナに迫る。だがアスナの近くの方にいた外野の黒百合部隊の英子をチラリ見て

「メス豚Aやれ、今度他のメス豚共と喧嘩したら車にくくりつけて首都高疾走だからな」
「わかりましたご主人様ッ!」
「チッ! 直接来ると思ったら外野にパスしてきたわねッ!」
「沖田選手、黒百合集団の一人にパスッ! これには何か策があるのでしょうかッ!?」

ボールを素早い手際で英子にパス、沖田の戦略が何かわからないがとりあえずアスナは英子から来ると思われる攻撃に身構える

「フッフッフ……またぶつけさしてもらうわよバカ力さん……」
「サドの配下のくせに調子乗ってんじゃないわよ、一回見たアンタのボールなんて軽く止められるわよ」
「へらず口は相変わらずね……ならばこのボールを止められるかしらッ!?」

そう言うと栄子はボールを持った状態で高く飛びあがり、アスナに狙いを定める。アスナからの視点で彼女は後ろに照らしている太陽と重なる

「くッ! また……!」
「必殺! 太陽拳ッ!」

原作で栄子がアスナに使った戦法を再び行う。栄子の後ろの太陽によりアスナは眩しさのあまり飛んでいる栄子が直視出来ない、この状態で投げられたらアスナは再びやられる。だが一度見た技を再び食らうなどアスナはそれほど無能ではない。

「刹那さんッ!」
「うわッ! 今度は私を盾にする気ですかッ!?」
「安心しなさい、盾じゃなわいよ」
「へ?」

すかさずアスナは刹那の後襟を掴んで栄子の射程距離の範囲内へ。あやかのように今度は自分を盾にするのかと刹那は思ったが、アスナの考えは違った。彼女が刹那を欲した理由、それは……

「こ、これは……!!」
「刹那さんの出てるデコで……必殺! 太陽拳返しッ!」
「私の額を使って何やってんですかッ!? そんなの無理に決まって……!」

いきなりアスナに前髪を後ろに持ってかれて栄子の前に突き出され困惑する刹那だが、彼女の言葉とは裏腹に……

太陽の反射で刹那の額が光る

「うッ! 眩しいッ!! あの娘のデコが光り輝いて前がッ!」
「え、ちょッ! 私の額ってそんなにでかいんですかッ!?」
「しまったボールをッ!」
「黒百合さんが刹那選手のデコフラッシュで思わずボールを生徒さん側に落としてしまったァァァァ!! これはチャンスだッ!」
「勝手に私の技みたいに言わないで下さいッ! 何ですか『デコフラッシュ』ってッ!?  ちょっとコンプレックスなりそうですから止めてくださいッ!」

花野アナの勝手な実況に刹那が怒鳴っている頃、彼女の額を使って敵の攻撃を防ぐ事に成功したアスナは落ちてきたボールを受け止める、同時に外野の方で栄子が墜落していた。

「よしッ!」
「うぎゃッ!」
「アスナ選手が黒百合さんが落としたボールをキャッチしますッ! 同時に黒百合さんが落ちてきましたが大丈夫でしょうかッ!?」
「く……すいませんご主人様……」
「使えねえ野郎だ、デコ那のデコ程度でやられてんじゃねえよボケ、」
「う……任務に失敗して悔しいのとご主人様に罵られて嬉しいのが両方に……」
「あんたどんどんサドのせいで人の道を踏み外してるわよ……」

ドS沖田に美砂同様洗礼され、賛美の表情をして立ち上がろうとする栄子を見てアスナは頬を引きつらせる

「何か私の周りの人達がどんどんキャラ変わっていくわ……」
「いえアスナさんも結構変わってますから……そういえばさっき持ってたボールは……」
「ああ、あれは……」
「どうせ食い物と思って食ったんだろこのモンキー……イテ」





沖田がアスナを挑発しようとした時にポンと柔らかい感触が彼の頭に響く

「アスナ~当たったで~」

ふと沖田がそちらを向くとアスナに向かってはしゃいでいる外野の木乃香がいた。

「沖田選手ヒットォォォォォォ!! まさかのアスナ選手の機転により気付かない内にボールを外野の木乃香選手にパスしていたァァァァ!! これは迂闊、私も彼女の存在を忘れていたので気付けませんでしたッ!」
「空気だったもんね木乃香ちゃん」
「いやや~そんなん言わんといて~」

和美の言い方に木乃香が泣きそうな顔で訴えているにも関わらずアスナはピョンピョン跳ねながらはしゃいでいた。遂に沖田退場、こうもあっさりと、更に全くノーマークの少女に当てられ……

「サド死んだァァァァァ!! 今夜は宴よキャホォォォォイッ!! ざまあみろヒャ~ハッハッ!!」
「アスナさん段々テンションが向こうのチャイナさんと一緒……」
「せっちゃ~ん、助けて~!!」
「え……?」

狂気するアスナに刹那が何か言おうとする前に、突然木乃香の必死に助けを呼ぶ声が。
一体何事かと彼女の方へ刹那が顔を、向けると

「せっちゃ~ん!」
「おい助けなんて呼んでんじゃねえよ、今から粛清してやるから覚悟しろよこのなまり娘が」
「お嬢様ァァァァァ!!」

木乃香の首根っこを片手でおさえ、宙ぶらりんにした状態でもう片方の手には自分の刀を握って今すぐにでも刺そうとする沖田がいた

「き、貴様ァァァァァ!! お嬢様に何する気だァァァァァ!!」
「俺に恥かかした罰でさぁ、ちょっくら死んでもらいま~す」

激昂して沖田に吠える刹那を尻目に沖田は無表情で物騒な事を言う、だがそれはさすがにヤバいと上司の土方が止めに入る

「総悟止めとけ、その娘っ子は俺ん所のガキのダチだ」
「そうよ私の友達でもあるのよッ! 木乃香に手出したらぶん殴るわよッ!!」
「いや元々お前が原因だろうが……」

アスナが飛んできて沖田に怒鳴るが本来彼女が木乃香にボールを渡したのが原因ではなかろうか
だが土方の言葉やアスナの脅しも聞かずに沖田は刀を戻さない

「誰に言われようと俺はもう止まらないぜ、俺はここでドS界の神になる」
「沖田選手ッ! 木乃香選手を殺る気マンマンですッ! ちょっと誰か止めてッ! これヤバいからッ!」
「せっちゃ~ん!」

涙目になりながら木乃香は沖田に掴まれながらも刹那に助けを求める、そんな彼女を見て

刹那の頭の中でブチっと何かがキレる音がした
「て、てんめぇぇぇぇぇ!!」
「あれ刹那さん……?」
「それ以上お嬢様を恐がらせる真似したら殺すぞコラァァァァ!!」
「何だデコ那やる気か?」
「上等だテメェッ! おい山崎ッ!」
「は、はいッ! あれ俺呼び捨てッ!?」

いきなり豹変した刹那にいきなり指名された山崎が慌てて彼女に近寄る。何と言うか自分の上司の一人と同じ口調なので思わず敬語を使ってしまう

「刀よこせッ!」
「いや刀は武士の魂だからただの生徒に刀貸すのはちょっと……」
「てめえの陳腐な魂なんざ知ったこっちゃ無えんだよッ! あのサド殺る前にオメーを殺ってやろうかああんッ!?」
「は、はいィィィィィ!!」

普段は敬語で喋ってくる刹那が、まるで別人のようにチンピラ口調になる彼女に、山崎は急いで腰に下げていた刀を鞘ごと投げ、刹那はそれを片手で受け取る。そんな彼女を見て沖田は口元に笑みを浮かべる

「ついに覚醒しやがったか土方マークⅡが、オラよ」
「きゃん!」

木乃香の首から手を放して沖田は彼女を地面に落とす。木乃香は尻餅をつくも外傷は無い

「いくぜデコ那」
「あのお二人さぁぁぁぁんッ!! これドッチボールなんですけどォォォォォ!? 何で刀持って斬り合いおっ始めようとしてんのォォォォォ!?」

花野アナの叫びも沖田と刹那には馬耳東風、互いに刀を持って二人はじっと立ち尽くす。沖田は笑って刹那は無表情で。それを眺めていた土方はタバコを携帯灰皿に入れてふと空を見上げる

「俺の周りは戦闘バカしかいねえのか……」
「ひ、土方さ~ん」
「え?」

嘆いている土方に自分を呼びかける声、土方はこの声を聞いた事がある。色々世話になった生徒の声……

「土方さ~ん」
「いや待て待て、ここであいつの声が聞こえるわけが……」
「土方さ~ん、大丈夫ですか~?」
「ないないない、このタイミングで来るはずねえって、ここで来たらマズ……」

恐る恐る土方は声のする方向へ顔を向ける。声がした方向は観客席。そして見つけた。長い前髪から目をチラつかせ、自分に向かって叫んでいる少女を

「土方さ~ん応援に来ました~」
「何来てんだテメェェェェェ!! はッ!」
「デコ那~悪いな……あちらのお嬢さんが先だ……!!」
「何?」

そこにいたのは土方に手を振っている宮崎のどか、それを見た瞬間土方は焦りだす、何故なら部下の沖田が本来一番星で狙っていた少女は

刹那に剥いていた総悟は急転換して観客席にいるのどかに体を向ける。そして……

ドSモード・レベル2・ON
邪悪な笑みをして総悟は目を赤く光らした

「遂にツラ出しやがったなのどかァァァァァ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「待てや総悟ォォォォォ!!!」
「どうした事でしょうッ!? 沖田選手、観客席に向かって刀を持って暴走していますッ! 誰かを追っているようですが……あの少女は……?」
「本屋ちゃん?」

刀を持って沖田は土方の静止も聞かずのどかに向かって襲いかかる、花野アナと和美が観察して見ると、泣きそうな顔で逃げているのどかと、刀を持って吠えながら追う沖田の姿が

「のどかちゃぁぁぁぁんッ! あ~そ~び~ま~しょォォォォ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!! 助けてぇぇぇぇ!!」

のどかは必死に逃げるも沖田の方が断然早い、走りながら沖田は懐からある物を取り出す。

「のどかちゃ~ん、ちょっとこの鎖に巻かれてくれな~い」
「いやです~!! 何で鎖なんか持ってるんですか~!!」
「君のハートを調教したいのさ~~」
「何か恐い事言ってる~~!!」

刀を鞘に戻して取り出した鎖をブンブン回しながら逃げるのどかの背中に近付いて行く沖田。無表情で鎖を振り回す彼を見て、一層のどかは激しい恐怖感を抱く。

「の~ど~か~ちゃんッ!」
「ひぃッ!」

沖田は鎖を投げて彼女を捕まえようとする。思わず後ろを振り向いたのどかはこちらに向かって来ている鎖を見て思わず目をつぶる。
もう終わった、のどかはそう思った。
だが鎖は飛んで来ず、代わりにガキンッ!という何か固いものを斬る音が聞こえた

「ハァ……ハァ……ったくこいつが来てる時に来るんじゃねえ……」
「土方……さん……?」
「何するんですか土方さん、俺の特注の鎖をぶった斬って、高かったんですから弁償して下さいね」
「テメェやりすぎだ……そろそろ止めとけ……」

咄嗟にのどかの前に出てきたのは土方十四郎。彼はのどかに来る鎖を持っていた刀で断ち切ったのだ、息が荒いのは恐らく必死に走ってきたのであろう。
そんな土方に沖田は不敵にニヤリと笑う

「土方さん、そこどいてくださいませんかね?」
「断る、お前が誰を調教しようが構いはしねえが、コイツだけは止めとけ、読者に叩かれるぞ」
「読者に叩かれるから駄目じゃなくて、土方さん個人の理由があるからじゃないですかぃ?」
「何が言いてえんだテメェ……」

意味ありげに笑う沖田の言葉に土方は睨んで答える、視線だけで人を殺せるような狂犬の目。
だが沖田は全然動じず口に指を入れてピーっと笛を吹く。

「その娘ッ子よこしてくれないなら俺にも考えがありますぜ」
「俺とやりあう気か、総悟」
「俺一人では不安なのでこいつらと一緒にのどかちゃん頂きますぜ」
「こいつら……?」
「「「「お呼びでございましょうかご主人様ァァァァ!!!!」」」」
「やっぱそいつ等かよッ! てか短期間でどんだけ教育してんだテメェッ! 来るの早えッ!」

余裕の表情を浮かべる沖田の後ろに黒百合三人衆と美砂の四人が走ってきて早々沖田にひざまずく。あまりの手際の速さの良さに土方は思わずツッコんでしまう。

「俺とこのメス豚軍団を相手に一人でやれますかい土方さん?」
「チッ、5対1か……つかどこの悪役だテメェ……」
「土方さん……」

女子供を連れた沖田はヒッヒッヒと笑い、土方を挑発する。黒百合や美砂など土方とのレベルは全く違う。だが女を相手にするのは苦手な土方にはちとやりずらい。そんな彼にのどかは思わず彼の腰に抱きつく。

「だ、大丈夫ですか……?」
「大丈夫だから少し離れろ、こりゃあ一人で相手にするのは面倒……」
「一人ではありませんよ」
「刹那さんッ!」
「私も加勢します」

土方の隣りに颯爽とやって来たのは山崎の刀を持った刹那、そんな彼女を土方は見ずに話しかける

「俺にガキの助けなんか必要ねえ」
「私はあの男に借りがありますので、生憎それは譲れません」
「……好きにしろ」
「言われなくても」
「小娘後ろに下がれ、怪我するぞ」
「は、はい」
「行くぞガキッ! 真選組副長 土方十四郎ッ! 推して参るッ!」
「お嬢様に楯突く奴は何があっても許せん……死ぬ覚悟は出来たかッ!?」

のどかを後ろに下がらせ、土方は刹那と背中を合わせ、刀を構える。そんな光景を見て沖田はフンと鼻で笑う

「何処の伊達軍ツートップですかぃ? 政宗だろうが小十郎だろうが俺のサド道は止められねぇ、行くぞオラァァァァァ!!」
「「「「イエッサァァァァァ!!!!」」」」

刀を振りかざし号令を掛ける沖田、それを聞いて沖田のメス豚部隊と共に一斉に土方達に襲いかかる。それに立ち向かう土方と刹那。

「「死ねコラァァァァァ!!!!」」
「土方さん刹那さん、が、頑張って~~!」
「せっちゃん、土方さん頑張ってな~」

のどかと何時の間にか来ていた木乃香の応援を背に、土方と刹那は沖田の軍勢に二人で立ち向かう。

かくしてここに上司と部下、生徒と生徒の合戦が始まるのであった。













「って何してんのアイツ等ァァァァァァ!!!」

白線がしかれたコート内で一人アスナが天を仰いで叫ぶ。そう本来の試合はドッチボール、なのだが……

「大変な事になりました、土方選手と刹那選手がまだアウトになっていないのに、あっちでガチバトルおっ始めてます……」
「向こうは向こうで盛り上がってるけど……銀さんどうする?」
「どうもこうもバカレッドしかいねえからな」
「じゃあこのまま生徒側の不戦勝で?」
「ふざけんな、あいつ等が勝ったら俺が焼肉奢るんだぞ、ちょっと待て今打開策考えるから……」

銀八は椅子に座りながら頭に手を置いて考える。そんなことしているうちに、後ろから

「死ね土方ァァァァァァ!! お前等撃ちまくれェェェェ!!」
「テメェ等バズーカは反則だろうがァァァァ!!」
「シャーラップッ! 勝てばよかろうなのだァァァァァ!!」
「どんどんキャラ変わってますけど大丈夫ですか柿崎さんッ!?」
「せっちゃんも人のこと言えないんちゃう……?」

と爆音と叫び声が入り混じりながら、大量の砂埃を撒き散らしている。後ろでフィーバーしている中、銀八は黙々と考える。彼にとってこれは金がかかってるのだ、不戦勝など断じて許せない。
しばらくすると隣りに銀八の隣りに座って彼ののメガネを付けている千雨がボソリと呟く

「野球みたいに代わりの選手でもいればいいんじゃねえか?」
「代わりの選手ってお前……」

千雨の助言を聞いて銀八の顔は曇る。そんな都合良く目の前に使える江戸の住人など……

「何やってんでしょうね、副長と沖田隊長、ていうかあの子俺の刀返してくれるかな……」

適材発見、その時銀八の目が光る。自分の刀で黒百合の栄子に峰で兜割りを決めている刹那や、自分の上司を眺めていた山崎の背中に近付いて銀八はポンと彼の肩を叩く

「出番だジミー」
「……は……?」













「いや~問題が起こりましたがなんとか解決して良かったですね、朝倉さん」
「そうだね~まさか土方さんの代役が見つかるなんてね~」
「銀さん銀さん」
「あれ? いたのネギ?」
「いました、あなたの近くにずっといました……」
「マジで? 何かお前、新八並に地味になってるきてんじゃね? 気を付けろよ」
「……はい……」

銀八に言われて彼の左に座っていたネギは(ついでに右にはあやか、その隣りに千雨)軽く落ち込んでうな垂れるが、すぐに顔を戻して銀八に口を開く

「土方さんの代わりの人ってあの人ですか……?」
「そうだ、普段は全く地味で、いや本当地味で、何やっても地味で、とにかく地味で地味で仕方がない男それが……!」

銀八はビシッと銀魂チーム側にポツンと立っている男を指差して

「その名もジミーこと山崎ッ! 行けェェェェ!! ジミィィィィィ!! 地味キャラの力を見せてやれェェェェェ!!」
「地味地味うっせェェェェェ!!!」

いらん事を連呼されるので山崎は思わず銀八に向かって吠える。何故彼がここにいるのか?理由は簡単、途中で抜け出した土方の代理である。いきなりコートに立たされた山崎は目の前に仁王立ちしているアスナを見て、顔から汗が出す

(マズイぞ……副長と旦那のおかげでいきなりこんな舞台に立たされるなんて……! アレ? でもこれ目立てるチャンスじゃね? 考えればこれ俺の一人舞台じゃん? しかも活躍すれば更に目立てて……いやいや密偵の俺が目立っちゃマズイでしょ……)

山崎が頭を抱えて自問自答をしている頃、アスナはボールを構えて目をギラつかせながら山崎に狙いを定める

「誰だか知らないけど、さっさと終わりにして焼肉食いに行かせてもらうわ」
(でもこれで目立てればな~もうちょっと扱いが良くなるかもしんないな~……いやでも地味キャラが定着しているのにいきなりここで華になってもな……それにボールぶつけるとしても俺あの生徒と何ら関わり無いし……)
「おい山崎前ェェェェェ!!」
「いやッ! ここは目立とうッ! 思いっきり目立って、定着している地味キャラの殻を破ってやろうじゃないかドフゥゥゥゥ!!」

悩みに悩みぬいて決心した山崎が顔を上げる。だが顔を上げた瞬間……
彼の顔面に深い一撃が叩きこまれた

「ヨッシャァァァァ!! 知らない人倒したァァァァァ!!」
「土方選手の代理アウトォォォォ!! 人が悩んでいるシーンの時に狙い撃ちするとは本当に空気が読めないアスナ選手ッ!! しかしこれで決着ッ! 遂に決着ですッ!!」

アスナのボールが山崎の顔にクリティカルヒットした瞬間、そのまま彼は後ろにバタッと倒れてKO

「山崎テメェェェェ!! 何普通に突っ立ってんだよッ! 仕事しろよッ! 税金泥棒じゃなくてギャラ泥棒に転職かコノヤローッ!!」

試合に負けた腹いせに倒れた山崎に向かって野次を飛ばしまくる銀八、それに見事復活して彼の後ろに立っていた近藤が頷く

「山崎の奴、日頃の鍛錬が怠っているから、ここぞという時に何も出来ないんだ、やっぱ男は俺みたいに日頃から鍛えてなきゃな、ねえ千鶴さん?」
「そうね、動物園に行くと時々自分の胸を叩いて鍛えてるわね、ゴリラさんは偉いわ」
「違いますよッ! あれは『ドラミング』と言って胸を鍛えてるんじゃなくて向かってきた相手に威嚇行為をしているんですッ!! めっちゃビビるでしょあれッ!?」
「ツッコむ所違うよ近藤さん……」

千鶴に近藤がツッコんで近藤に夏美がツッコんでいると、ふとネギが後ろに振り向いて彼女に喋りかける

「そういえば試合終了のホイッスル吹かないんですか?」
「あ、そういえばそれ私の役だっけ……」
「おいふざけんじゃねえッ! まだ終わってねえッ! まだ終わらんよッ!!」
「銀さん……」

ネギの提案に銀八が席から立ち上がって猛抗議、だがネギはため息をついた後、なだめるように銀八に向かって口を開く

「だってみんなアウトになりましたよ、銀さんの世界の人?」
「俺がいるじゃねえかッ! まだ真のラスボスがここにいるじゃねえかッ! おいバカレッド勝負だコラァッ!!」
「しつこいわねッ! 勝ったのはこっちでしょッ! 素直に奢りなさいよッ!」
「ここは認めしょうよ銀さん……タン塩で」
「負けは負けですわ銀さん……私カルビお願いします」
「銀八、私レバー」
「お前等ドサクサに注文してんじゃねえよッ! まだ戦いは終わってねえってッ! まだ僕等の戦いは終わっちゃいないんだァァァァァ!!!」

普通に欲しい肉の種類注文するあやかと千雨にツッコんだ後、銀八は声高らかに叫ぶ。だが何を言おうが終わりは終わり、長期に渡るクロス作品対抗試合はネギま側の勝利となり幕を閉じるのであった






























試合が終わって数十分後、夕日の空を見ているとカラスの声だけが聞こえ、どこか寂しげな雰囲気が漂っていた

「なあネギよ~金貸してくんねえかな?」
「良いですけどそんなには持ってませんよ」
「ったく……あのバカ共が負けたおかげで何で俺がガキ共に……」

愚痴をこぼしながら銀八はネギからお金を少しばかりもらいため息をつく。試合が終わってからもずっと抵抗を続けていた銀八だが結局、生徒側の猛抗議により高級焼肉店JOJO苑に行かされる事になったのであった。

「銀行行かねえとマズイなこれ……それにしてもあいつ等……」

頭を掻き毟りながら銀八は周りを見渡す、ふと見ると千雨の所に誰かが近付いている。

「おい……試合はどうなった……?」
「試合云々よりお前が大丈夫かエヴァ?」

ようやく戻ってきたエヴァがだるそうに地面に座って休んでいる千雨と喋っている。エヴァはまだ調子が悪いのか腹をおさえて表情に辛そうなのがよく現れている

「もう帰りたい……何時間もトイレにいた……」
「そりゃあ、ヒロインとしてどうかと思うぞ」
「まだ痛い……あのチャイナめ……私がトイレに入ろうとした瞬間、私を蹴っ飛ばして自分は中に入って……学園内のトイレに行くまで地獄だった……」
「それは災難だったな……」
「大体何だあのチャイナ……こっちにはチャイナ二人いるんだぞ、キャラ被りにも程があるだろ……」
「へいへい」

すっかりグロッキー状態のエヴァを見て千雨は軽く同情するも、それからは延々と千雨はエヴァから神楽への悪口を聞かされ続けられた。

一方その神楽はというと……

「ヘッヘッヘ……今回は大人しく引いてやるヨ……だが次会った時は今度こそヒロインポジションを取り返してるネデカ乳……」
「腹おさえて何言っても迫力に欠けますわよ、チャイナさん」
「うるせぇぇぇぇ!! 覚えてろよチクショォォォォォ!! あだだだだッ!」
「はいはい、早く帰って養生して二度とこっちに来ないで下さいね~」

エヴァ同様疲労困憊の神楽は腹をおさえながらもあやかに対しては全力で敵意をむき出す。そんな彼女にあやかは腕を組んで立ち尽くし、何を言われても適当に流していた。

続いて銀八はさっきまで試合が終わってからもずっと別の事でやりあっていたグループを見る
すっかり入で立ちがボロボロの状態で刀を杖代わりにしてお互い随分やりあった形跡が残っている土方と沖田だった

「ゼェ……ゼェ……どうだ総悟……」
「ハァ……全く土方さんもせつにゃんもしぶといですね……本当に死んでくださいよ」
「だ……誰が死ぬか……まだ俺達とヤリ合う気か……?」
「いえ今回は引きやす、メス豚共が全員せつにゃんにやられたんでね……」

クイッと沖田は親指で後ろで目を回して倒れている栄子、ビビ、しぃ、そして美砂を指差す。
彼女達ながら頑張ったものの、刹那相手にすっかりやられたようだ

「次はこうは行きませんぜ、本編入りしたらもっと強いメス豚をゲットして土方さんとせつにゃんぶちのめして、のどかちゃんという大将首を取ってやりますぜ、あとまだかすがにも会ってないのでそっちもやります」
「かすが……? あいつか……あのガキはいくらやっても構わん、むしろやれ」
「だ、駄目ですよ土方さ~ん……私の友達売らないで下さ~い」
「イデデデデデッ! わかったッ! わかったから抱きつくなッ! あちこちイテェんだよッ!!」

自分の友達への調教を許可する土方に、それは止めて欲しいとのどか彼の腰に抱きついて懇願する。いきなり抱きつかれた土方はあまりの痛みにうっすら目に涙を滲ませる。

そんな土方達の近くで地べたに座り、彼同様ボロボロになっている刹那の姿。まだ息が荒くひどく疲れているのがよくわかる

「サド王子の部下の皆さんなんであんなゾンビみたいに攻撃的に……おかげで全員峰打ちで倒すのに時間がすごいかかった……」
「せっちゃん生きとる~?」
「ええかろうじて……」

目が死んでいる刹那に木乃香が気の毒そうに近付く。ずっと見ていたがバズーカやら鎖やらを受けていた彼女を見てたのでかなりのダメージを食らってると思われる

「せっちゃんこれ食べて、さっきのお兄さんから一個貰ってきたで」
「お嬢様これは……」
「キノコ」
「それ食ってパワーアップするのは配管工兄弟だけなんですよお嬢様……」

無邪気にキノコを持っている木乃香を見てツッコむものも、その無垢な純粋さに少し癒される刹那であった。

ドッチボールそっちのけでスマブラやっていた集団をジト目で睨んだ銀八はため息をついた後、何やら大声で笑っている声が聞こえたので、銀八はうるさい声が聞こえる方向に顔を向ける

「ガ~ッハッハッ! どうでしたか千鶴さんッ! 俺の『天真爛漫』な大活躍をッ!」
「近藤さん『天真爛漫』使うところじゃないよそこ……」
「凄いわ~あんなにVの字になって、ゴリラの体ってやわらかいのねゴリラさん」
「ゴリラ、ゴリラ……夏美君、もしかしたら俺は本当にゴリラなんじゃないのかな……もうゴリラとしてターちゃんでもいるジャングルにでも移住しようかな……」
「ちょっとぉぉぉぉ!! 自分に自信持ってェェェェ!!」

相変わらず千鶴に人間として認められないので、どこか遠い目で見つめて自分の存在に疑問視している近藤に夏美が慌てて励ます。

「考えてみてよッ! ゴリラって服着るッ!? 近藤さん着てるでしょッ!?」
「ああ着てるね……」
「あとゴリラはもっと毛深いよッ!? 近藤さんも結構毛深いけどモノホンゴリラはもっとゴワゴワだよッ!!」
「確かに……」
「そうだよッ! ていうかゴリラは刀なんか持たないよッ!」
「そうだッ! ゴリラは刀なんて持てねえッ! 刀を持つ俺はゴリラじゃねえッ! 侍だッ!!」

夏美(十代前半)の励ましに再び活気を取りもどす近藤(二十代後半)。そして近藤はもう一度千鶴の方に顔向ける。

「千鶴さん考えてくださいッ! ゴリラって刀持ってないでしょッ!? 俺刀持ってますよッ!」
「まあゴリラさんじゃなくて、武器を持つことを覚えた北京原人だったのね? ごめんなさい勘違いしてたわ」
「やったぞ夏美君ッ! 俺ゴリラじゃないってッ!」
「いや原人扱いだからねッ!? ゴリラじゃないけど原人だからねッ!?」
「でも原人さんよりゴリラさんの方が言いやすいから、ずっとゴリラ一本で行きましょうゴリラさん」
「駄目だァァァァァ!! ゴリラの輪廻から飛び出せねぇぇぇぇぇ!!! ずっとゴリラのターンだァァァァ!!」
「とりあえず地道に頑張って人類として認められようね近藤さん……」

何を言っても人として認めてくれない千鶴に、近藤は遂に天に向かって大声で絶叫する。そんな彼に夏美は小さな声で応援のメッセージを届けるしかなかった……

それを見て「うるせえなあのゴリラ……」と銀八が舌打ちしていると後ろの方向からまた何やら騒いでいる声が、振り向くと気難しい表情のネギと負傷している山崎、メガネがボロボロの新八という、何ともおかしな三人組がいた

「新八君やっぱり俺達って何やっても地味なまんまなんだよ、もう諦めよう、そして地味キャラでずっと生きていこう……ねえネギ君」
「え……何で僕……?」
「山崎さんの言う通りかもしれませんね……地味は地味なりに頑張ってる所を読者に見せつけるのも良いアイディアかもしれません……ねえネギ君」
「いや……これでも僕なりに色々とやってるんですよ……?」

ネギの言い分にも山崎と新八は全く聞いておらず、彼等はそっとネギの両肩に手を置く

「もしBASARA3の家康みたいに地味キャラから主人公キャラになるような真似したら……」
「僕等地味トリオは解散です、そして地味キャラから抜け出した君を地の果てまで追いかけてシメますよ……」
「地味トリオって何ッ!? そんな所に所属してましたっけ僕ッ!?」

いきなり変な団体の名前を上げられたので慌ててネギは澄まし顔の山崎と新八に叫ぶ。それを聞いて二人はわかっているように

「何言ってるんだい、本編での出番からして君は俺らジミー・ザ・トリオに決まってるだろ」
「そうですよ本編見る限り君もこっち側ですし……」
「いいですッ! そこは言わないで下さいッ! まだ『BASARA2の家康』から『BASARA3の家康』になれる可能性はありますッ!」
「なったら潰すぞコラ……」
「あの恐いんですけどこの人ッ!?」

いきなり新八の目が血走ったので戦いの師とやりあってる時と似た恐怖をネギは抱き始めた。
果たして地味キャラ脱出はあるのだろうか……

一方地味とは全く無縁、個性の塊のような男はネギが叫んでいる近くで何やら生徒の一人に話しかけていた。
個性の塊のような桂はカツオの衣装のまま、試合が終わって一息ついているアスナに近付く

「終わったようだな」
「ええ、アンタ途中で弟と一緒にポケモンやってたでしょ……見てたわよ、まあアンタもよくやったじゃない、チャイナやっつけたし」
「そういうお主も仲間を切り捨ててでも勝利を掴もうとする貪欲な姿勢、その姿に俺は敬意を称する」
「勝てばいいのよ勝てばね……」
「お見それしましたッ!」

原作ヒロインとしてはもはや失格レベルに到達するほどやさぐれているアスナに、何故か敬礼のポーズをする桂。彼は行う事がいちいちわからない。敬礼を止めた後桂は再びアスナに話しかける。

「所でその強欲な姿勢を持つお主を是非俺達の組織に入れようと考えているのだが」
「は? グループって何……?」
「いわばこの腐った世界を救うメシアのような組織だ、どうだ凄いだろ?」
「そういうアホな発想をしているあんたが凄いわ、キッパリお断りよ」
「今組織に加入した人は入会特典でこのあそこにいる幕府の犬もこっぱみじんのC4爆弾を贈呈、更に使い放題を進呈します」

胸のポケットから桂が取り出した球体状の爆弾をしばらく見た後、桂が指差しているまだ土方に文句を言っている沖田を見るアスナ。





「よしッ!」
「あざーすッ!」
「何やってんですかあんた等、バカな事してないでさっさと京都に戻りますよ」

即決定するアスナに再び敬礼する桂の二人にクウネルが軽くツッコんだ後、桂の後襟をひっ掴んでズルズルと出口の校門へ引きずって行く。

「ハッハッハッ! では次会う時に正式に加入してもらうかッ! さらばだ攘夷志士の卵よッ!」
「待ちなさいよッ! そのサドぶっ飛ばせる爆弾だけ置いて行きなさいッ!」
「彼女、爆弾目当てですよきっと」
「口ではそういって本心は俺のように世界を正そうとする考えに共感しているに違いない、それが今流行りの……確か『ヤンデレ』って奴だな?」
「『ツンデレ』です全然違いますから」

ズルズルと引きずられて行きクウネルと会話しながら桂は抵抗せずにそのまま帰っていった。
「爆弾寄越せェェェェ!!」と叫んでいるアスナを置いて
そんな風景を見て銀八はタバコに火をつけて吸う、しばらくして煙を吐いた後

「何このカオスな空間……?」

銀八がボソリと言った事はこの作品の象徴を表していた

















「さてこれにより銀魂対ネギまの対抗試合ドッチボール戦は終了です、皆さんお疲れ様でした。司会・実況は私花野アナが」
「解説は朝倉和美がお送りしました~」
「朝倉さん、やっと終わってふと思ったんですけど……」
「何ですか?」
「私の台詞、並のキャラより多くありませんか?」
「そうだね……」
「次回は本編に戻りそして第三章スタートッ! 第二十一訓『考えてるほど世界は広くない』、どういうお話かご期待下さい」
「花野アナさん、JOJO苑行く~? 銀さんが奢るんだって」
「ご一緒させて頂きます」













外伝の外伝 佐々木まき絵の奇妙な冒険part2

まだ対抗試合が過熱していた頃、3A生徒、佐々木まき絵と珍獣エリザベスという奇妙な組み合わせで学園内をトボトボと歩いていた

「疲れた……きっと学校の中にはいないよ、エリザベスさん……」
『マジで?』
「うん、ここに来ているなら多分校庭じゃないかな……?」

疲れ気味のまき絵が隣りで一緒に歩いているエリザベスに話しかける。もうボードで会話するエリザベスにもすっかり慣れて来た。色んな所や部屋に行ってきたがどこにもいないとすると残っているのはまき絵がいた体育館、もしくはあの広い校庭ぐらいだ

『よし校庭まで案内しくよろ』
「はいはい……あれ……?」
「あらエリザベスさん、こんな所で何やってるの? それに何なのその格好? でってぃう?」

廊下の突き当たりから出てきたのは和服美人という感じのポニーテールの女性だ。何故こんな人がいるのかまき絵は
疑問だが隣りのエリザベスは『どうもです』と親しげな様子だ

「エリザベスさん、この女の人と知り合い?」
「志村妙って言います、みんなからはお妙って呼ばれるわあなたは?」
「え~と佐々木まき絵ですここの生徒です」
「あら随分カワイイ生徒さんね~」
「い、いえ滅相も無いですッ! お姉さんの方が美人ですしカワイイですッ!」
「知ってるわ」
「ハハハハ、そうですか……」

笑顔でサラリと言うお妙にまき絵は頬を引きつらせていると、まき絵は彼女が持っているある物に視点が移る。
紫色の何やら何か入っている風呂敷を彼女が何なのかと眺めていると、その視線にお妙が気付いた。

「良かったら食べる? さっき教師の人達に分けてたのよ」
「え? 食べ物ですか?」
「そうよ、ホラ」

そう言ってお妙は風呂敷をとく、そこには食べ物……

「何ですかコレ……」
「卵焼きよ」
「え? 何処に卵がいるんですか……?」
「そんな細かい事どうでもいいじゃない、大切なのは中身よ中身」

出てきたのは大きな黒い塊。見た瞬間まき絵の表情は固まる、隣りのエリザベスも『ゴゴゴゴゴゴ』と擬音をボードに書いてヤバい物だと察知している
だがそれを製造した本人は笑顔でそれを前に突き出す

「さあ食べてみて」
「え……すいません私ダイエットしてて……」
「あらダイエット機能もあるのよ? さっき太った先生にこれを1つ食べさせて(無理やり)上げたんだけど数分経ったら稲川淳二並にスリムアップしてたわ」
「恐ッ! 稲川さんの怪談話より恐い現象起きてるよそれッ!」

そんな不気味な食べ物(?)は死んでも食いたくない。まき絵は助けを求めるように隣りのエリザベスの方に顔を向けるが……

『そうだ京都に帰ろう』

そう書いてあるボードだけが置いてあった

(逃げられたァァァァァ!! 変なニセヨッシーに逃げられたァァァァァ!!)
「何してんのまき絵ちゃん? 早く食べなさい」
「いやちょっと待って下さ……!!」

エリザベスにエスケープされた事に頭を両手で抱えていると、お妙が早く食べるよう促す。そんな彼女に焦るまき絵、どうしたらいいのかと考えている時

「何をしているんだ佐々木」
「グッドモーニン」
「新田先生とタカミティンッ!」

突然後ろから話しかけてきたのは生徒から『鬼の新田』もしくは『コロコロ新田』と呼ばれている新田先生と、この学園で何故か時々会う、謎のマッチョな外国人のタカミティン(名称銀八)だった。まき絵は何故その組み合わせ?っと疑問に感じていると、その二人に気付いたのかお妙はそちらにお辞儀する

「始めまして志村妙です、さっき職員室にいなかった先生の一人ですね、これほんの江戸からのおみやげです、そちらの外人の方も食べてください」
「む……それはどうも……」
「センキューベリーマ……」

新田先生とタカミティンがお礼を言おうとした時、元々無表情の二人の表情が固まる。
目の前にあるのは黒い塊、これを食べろと?

「大変だ、帰って録画していた『ドラえもん』を観なければ」
「オーマイガー、カエッテ『オーラノ泉』観ナケレバ」
「はいッ!?」
「健闘を祈るぞ、佐々木」
「忘レハ~シナイ~」
「いや……って何でムーンウォークッ!? しかも早ッ!」
「ジャクソンに敬意を」
「どうでもいいよッ! ていうか本当に待って……!」

まき絵が何か言う前に二人はすごい勢いでムーンウォークの状態のままあっという間に遠くへ……
その姿をただ呆然と彼女は見るしかなかった

「もう差し出され物を受け取る前に帰るなんて駄目な人達ね、でもあなたは大丈夫よね?」
「へ……?」
「勿論食べるわよ……ね……?」

一見笑顔だが目は一切笑っていない。逃げたら殺すぞ、その目がそう言っているようにまき絵は感じた。
もう断れない、そして逃げられない事にまき絵は気付いたのだ

「私から食べさして上げるわ、はい口開けて」
「いやその……え~と……」
「しょうがないわね~」

お妙はそう言った後、まき絵が逃げれないように彼女の頭をガシッ!と掴んで拘束する

「お砂糖と塩を間違えちゃったけど、大丈夫よきっと」
「そんなレベルじゃないような気が……」

逃げる事は出来ない、お妙の微笑みから感じる恐怖、そして

「はいどうぞ」
「ちょ、ちょっとマジでヤバいんじゃないですかそれッ!? 私まだ死にたく……」

まき絵が言い終わる内にお妙が右手に持っている怪物はどんどん接近してくる、そして














「あれ? 何だ今の悲鳴?」

とある女性の悲鳴が聞こえたので、学園内探索で諜報活動していた山崎は持っていた書物から顔を上げた。

「まあいいか、この学校って不思議な事ばっかだし、今更ね……そういえば校庭で何か騒いでたな、局長の声が聞こえたけどまさか……一応行ってみるか」

山崎は教室に誰かが忘れたと思われるこの世界の日本史を閉じて、校庭へ向かうために教室を後にした。
数分後校庭に向かおう歩いている所に廊下に横たわっているまき絵を見つけた山崎は、慌ててまき絵を保健室に運んでいったのであった
まき絵は保健室で寝ている間ずっと『ダークマターが……ダークマターがこっちに……』と散々うなされていたのは言うまでもない。
第一部 完










銀さんの質問コーナー

銀八「は~いでは一通目バカの質問、じゃなかった『Ououo』の質問」
千雨「最低の間違いだなおいッ!」

『銀時さん。キャバ嬢、誰にするか決まった?ちなみに俺は巨乳の『ナツキ』ちゃんかな!!(笑)』

銀八「え~お答えします、その日焼肉屋に奢らされたので金が無くなったので行けませんでした、決めるも何も行けませんでした、これらは全て焼肉屋でバカ食いしたバカレッドのせいですねはい」
千雨「お前もヤケになって食ってなかったか?」
銀八「本当ふざけんじゃねえよチクショウッ! 人の金なんだと思ってんだチクショォォォォォ!! バカでも少しは常識知れよッ! ウチのチビは偉いよッ! 何も食わずにずっと横になってんだよッ! それなのにお前等バクバク人の金で食いまくりやがってよッ! 少しはアイツ見習えよッ!」
千雨「それはあいつが腹痛かったからじゃね……?」

銀八「あ~腹立つわ……続きまして二通目行くぞッ! 『ノリ』さんの質問ッ!」

『銀魂組でドッチボールのメンバーが三人足りない時に気づいたのですが山崎が抜けていません?
それとも山崎って人物は最初からいなくて俺が勝手に産み出した妄想の産物だったのでしょうか...仮に存在していたとしたら今回の扱いについてどう思いますか山崎さん?』

銀八「いますよアンタッチャブル山崎」
山崎「いやいやいやッ! それ別人ですからッ! 芸人じゃなくて真選組の山崎ですッ!」
銀八「それから~?」
山崎「俺は存在しますよ今回いたでしょ? まあ最初から呼ばれなかったのは軽いショックでしたけど……」
銀八「そしてそこから~?」
山崎「え~と……何で芸人の方真似してんですか……?」
銀八「ひっくり返ってそれで~?」
山崎「ウゼェッ! その真似止めてッ! 腹立つッ!」

銀八「三通目~? 『汁裂注射』さんからの初質問~?」
千雨「もはや山崎でもなんでもねえって……」

『マホスポの記事で、刹那さんご乱心。放課後の教室で『君が欲しい』と絶叫告白とあったのですが、それについて木乃香さんのご意見はいかがですか?
また、その後のステルスさよちゃんとのご関係はいかがでしょうか?』

銀八「質問は一個にしろ~次やったら『ロードローラーだッ!』の刑だぞ~
木乃香「せっちゃん、そんな事言ったん?」
刹那「いや言ってませんけど……ていうかマホスポって何ですか……?」
銀八「作者曰く「調べてみてみたけど、読もうと思っていいんちょの所読んだらあまりにも恐かったので断念した」だとよ、要するにビビリお断りらしいから、無理でしたすいません。さよの方ですが時々こいつの後ろにいます」
刹那「え? マジ……?」
銀八「ああ、それに今でも……次行ってみよ~う」
刹那「待てェェェェェ!! 今でもなんだァァァァ!!」

銀八「四通目~『風の都』さんからの初質問」

『あやかさんへ
銀さんはエヴァの所に住んでいますが、やはり「自分の所に来て欲しい」という想いはありますか??
(ある意味、父・銀さん、母・あやか、姑・千鶴、娘・夏美という、ドタバタコメディーが出来そうな予感)』

あやか「いやそれは……ストレート過ぎるというか……いきなり同棲なんて……そういう家族構成も魅力的ですが……」
銀八「おい飯持って来いよコラァァァァ!! あと酒だ酒ェェェェ!!」
あやか「いきなり家族設定ッ!? しかも何で暴力亭主なんですかッ!?」
千鶴「あらあら、あやかさん貴方最近味噌汁の味が薄いけど……もしかして手を抜いてるのかしら? こんな母親にはこれで十分だと思ってるのかしら?」
あやか「千鶴さんもそこ乗らないで下さい……性格の悪い姑設定似合い過ぎですわよ……」
夏美「お母さん、何か道の端っこに捨てゴリラがいたんだけど飼っていい……?」
近藤「捨てゴリラですッ! どうか俺をこの暖かい家庭に入れてくださいッ!」
銀八・あやか・千鶴「「「捨ててきなさい」」」
夏美・近藤「「家族の心が1つにッ!」」

銀八「五通目です『正宗の胃袋』さんの質問」

『崇高なるGS組織を作った偉大なる木乃香様に質問があります。銀八と一緒にジジィを4分の3殺しに行きませんか?週に3回くらいありますから一度で良いから行ってみた方が良いですよ?病み付きになりますよ。』

木乃香「銀ちゃん、4分の3って……」
銀八「お前がちょっと懲らしめてくれって言ったからやったんだろうが、言っとくけど俺等は容赦しねえから」
木乃香「4分の4でええのに……」
銀八・千雨「「はいッ!?」」

銀八「何かあの娘が黒く見えたんだけど……まいっか……気を取りなおして六通目~『穀潰し』さんからの初質問」

『刹那よ、近藤さんがトップだって事に驚いてたようだが、自分のトップの事はどう思ってるんだ?』

銀八「ジジィの事?」
刹那「強いて言うならばそうかもしれないが……何も言えないとしか……」
銀八「素直に死んでくださいって言えばいいんだよ」
刹那「そんな事正直に言えるかッ!!」
千雨「いや言ってるだろそれ……?」

銀八「せつにゃんがカミングアウトした所で七通目『ウィル』さんからの質問だ」

『銀さんは大昔のツッコミ(○八)と今のツッコミ(千雨)、どちらが好きですか?まあ、聞くまでもないことですがw。これで○八って言ったら銀さんはアブノーマルです。』

銀八「俺から見ればどっちでもいいんだけど?」
新○「いやいや銀さん銀さん、僕との長い付き合いでしょ? 色々と楽しい思い出あったじゃないですか? それを踏まえて……はいどっちのメガネッ!?」
銀八「アンタチャッブル・柴田で」
新八・千雨「「いやそっちのメガネかよッ!」
銀八「どうでもいいんだよ、結局両方ツッコミとしたら似たようなツッコミだろうが、レベルなんて知らねえよ、結論、読者の間でどっちが上か決めてください」
千雨「投げやりだなオイ……」
新八「ていうか僕が元祖ツッコミなのに、何でこんなに嫌われてるんだよ……このウィルって人は明らか僕に敵意を剥き出しですよね、やるんですか? いつでもやりますよ僕は……?」

銀八「新八が哀れに喧嘩売ってる間に八通目~『Citrine』さんから~」
新八「アンタそろそろシバますよ……?」

『購買の八郎の母ちゃんは「あの」八郎の母ちゃんと同一人物なんでしょうか???
前にも聞いたような気がしますがもう一回お願いします』

銀八「お答えするとこの世界にいる八郎の母ちゃんと江戸の母ちゃんとは別です、いわばパラレル母ちゃんです、八郎の母ちゃん見たいな一発キャラ見たいなのは、時々いきなり出てくるかもしないので注意するように」
沖田「じゃあ俺も一発キャラなんで出て良いですかい?」
銀八「おめえレギュラーだろうが」
沖田「安心してください一発狙ってバズーカ撃ったら帰るんで」
銀八「そっちの一発ッ!? 何しようとしてんだテメェはッ!」
沖田「そりゃあ色々と……あ旦那駄目ですわ、一発じゃ足りませんから百発キャラで出して下さい」
銀八「学園ごとふっとばす気かァァァァ!!」

銀八「バカはともかく……九通目……『サハリン』さんからの質問」

『糞エイリアンに質問があります。木乃香が崇高なるGS組織の創立者であります。今の気持ちを詳しく教えなさい。』

銀八「おいおいこういうのバラすのはもう少し時間をかけてだな~……」
学園長「木乃香が? そんなわけないじゃろ~最近の読者何考えてるんじゃ全く……」
銀八「あ、本当駄目だわこのジジィ」
木乃香「そうやな~ウチはそんな事せえへんよ」
学園長「そうじゃそうじゃ、ワシのカワイイ孫があんな鬼畜業の総統なわけないじゃろうが、フォッフォッフォッ」
銀八(あのガキの目、笑ってねえ~)

銀八「十通目か……最近増えてきたな……『白夜叉』さんからの質問」

『千雨に質問です。
柿崎が(性的に)ヤられたとき、一〇輝みたいに
「柿崎ィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
と叫びそうになったんじゃないですか?
そこんとこ教えて下さい。
むしろ吐け。
さぁ、曝け出せ。
今こそ公衆の面前に『ちうたん』の顔を晒せ!!
そっち方面の人間である事であることをカミングアウトするのだ!!
いくら隠そうが、貴様も十分変人の一員じゃ!』

銀八「ここはまず千雨の代わりに俺が答えますが、柿崎は別に(性的に)はやられてません、ただ色々と調教されただけです」
沖田「そうですぜ、ガキの体なんか興味無いんでね」
美砂「そんなッ! 私はいつご主人様に押し倒されて、いつでも貞操を捧げる事を心待ちにしているのにッ!?」
沖田「一生待ってろメス豚、オラオラ」
美砂「ああ……鎖で吊らさないで~……」
千雨「結局この質問の意味は何だ? 私のプライベートを晒せって言ってんのか……?」
銀八「だろうな、で? どうする」
千雨「断るに決まってんだろうが……」
銀八「そろそろお前をネットから表の世界に出してやろうと思ってんだがな、プロデューサーの俺としては」
千雨「何処のアイドルマスターッ!?」

銀八「十一通目『白々燈』さんからの初質問」

『銀さん、大丈夫。エヴァは見た目ちびっ子でも何百年も生きた合法ロリッ子だから。
だからそのままゴールインしちまえYO!!
そして(ry(コレ以降は一身上の都合により削除されました))』

銀八「いくら東方よろず屋の作者様でもキレるぞおい、出来るかそんなこと」
あやか「そうですッ! こんな見た目小っちゃいのにッ!」
エヴァ「身長は結婚するのに関係無いだろッ! 年は全然余裕なんだから可能だッ!」
千雨「いやいや無理だろ……どうみても親娘にしか見えねえって……」
エヴァ「何をッ!? 昔ナギの奴は私に言ってたぞッ! 『いちご牛乳飲んでおけばいつかお前もマイケ○ジョーダ○並に伸びるんじゃねえの?』ってッ!」
千雨「無理だし恐えよッ!!」
エヴァ「だが数十年飲んでるのに一向に伸びんッ! 吸血鬼のこの体が腹立つッ!」
千雨「どんだけ忠告通りにしてんだよ……」

銀八「チビの可哀想な事情はその辺に捨てて、十二通目~『エンジンさん』からの質問」
エヴァ「捨てるなッ!」

『銀八先生に質問。この世界(ネギま)で、天気予報はみますか?(キャスター目当てで)結野アナ以外にも興味がわいたキャスターがいたら教えてください。』

銀八「見てます、キャスター目当てで、何処の世界にもいるんだな」
エヴァ「お前はそんな不純な動機で私が見てる番組を変えていたのかッ!?」
銀八「もう『おはスタ』卒業しろよいくつだよお前……ずばり言うとお気に入りキャスターは長門アナとかだな」
エヴァ「その名前どっかで聞いたような……」
銀八「あと朝比奈アナも好きです」
エヴァ「いやそれ別世界だろ……? お前でも私の所の世界でもない……」
銀八「だけどめちゃくちゃに番組を振り回す涼宮アナがこれまた……」
エヴァ「ハルヒから離れろォォォォ!!」

銀八「っと熱くなってきたところで最後のしつも~ん、十三通目『ハモン』さんから」

『銀さん、作者の名前の由来は何なんだ?カイバーマンって事は遊戯王の海馬と関係性でもあるのか?教えてくれ』

銀八「随分変わった読者もいるもんだな~作者がハンドルネームで使っている『カイバーマン』っていうのは、遊戯王のカードやアニメに出ている海馬瀬人がモデルのカードで、アニメだと精霊、ついでに声も性格も社長と同じだ。
効果は『場に出ているこのカードを生け贄にすることで手札から『青眼の白龍』を一枚特殊召喚できる』って感じですが……はっきり言って攻撃力も守備力も最低クラスなのでザコです、もう完全にザコですからね、ピンチの時にこれ引いたらすげ~腹立ちますよ? もう破いてやろうかコラ? って思っちゃいますよ?」
千雨「そこまで言う……?」
銀八「あと『BASARA3早く出て欲しい』だの『カイジ観たい』だの『嘘喰いおもしれ~』だのそんな事ばっか考えてますからねアレは、そんなの考えてないで小説書けやボケって感じですね」
千雨「いやそれって……」
銀八「結果的に言うと、『本当カイバーマンはバカでザコである』これテストに出るぞ~」
千雨「まあ、あながち間違えてないし……別にいいか」







[7093] 第二十一訓 みんなが考えてるほど世界は広くない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/10/10 12:31
時は6年前、ある小さな村にてサウザンド・マスターの息子、ネギ・スプリングフィールドは一生忘れられない光景を目にする。
その日、村から少し離れた森で遊んでいたネギはウェールズで学生をしているネカネが帰郷してくる事を思い出し、急いで帰路に着いていた。
だが彼が村に帰った時にはそこは地獄だった。

「え・・・・・・?」

民家のほとんどが燃やされ、周り一帯が火の海と化し、目につく所に本で見た事のある無数の悪魔や見た事のない奇怪な生き物がうごめいている。

「何・・・・・・・これ?」

まだ小さすぎて何の事だから理解できていないネギはポツンとその場に立ち尽くす。周りからは人々の悲鳴や爆音が途切れることなく鳴り響いている

「ネギッ!」
「お姉ちゃん・・・・・・?」

メラメラと燃えていく村を呆然と見るしか出来なかったネギの耳に自分を呼ぶ声が聞こえたので振り返った。
そこにいたのは額から汗を流し息を荒げ何かをおぶっている様子の少女、自分の姉代わりであり保護者のネカネ・スプリングフィールドの姿があった。

「ここは危険よッ! 早く逃げましょッ!」
「みんなは・・・・・・?」
「ここの村人の人はほとんど・・・・・・残ってるのはあなたと私と、この子だけ・・・・・・」

そう言ってネカネはうしろに背負っているのをネギに見せる。ネギの幼馴染のアーニャが死んだように目をつぶっている

「アーニャのお母さん悪魔にやられて・・・・・・きっとそのショックで・・・・・・」
「・・・・・・」
「とにかく逃げましょう・・・・・・悪魔や化け物達がまだこの辺をうろついているのよ」
「・・・・・・」
「早くッ!」

根を張っているように動けない状態のネギを、ネカネは焦りが混じっている声で叫んで彼の腕を引っ張る。やっと我に返ったのかネギは彼女の手に引っ張られながら、ネギが一人の時やアーニャと遊んでいる時に使う場所の森へと再び走らされる。
一体何が起こったのか、何でこうなったのか理解できないまま、ただ無我夢中で走ってネギは燃えていく村を後にした。


















しばらくしてネギとアーニャをおぶっているネカネはようやく森の中へと逃げ込むことができた。ネカネは森の中から遠くでまだ燃えている村を見て、表情を沈ませる。

「ここまで来れば・・・・・・ネギは大丈夫? 何処か怪我してない?」
「僕は村にいなかったから・・・・・・お姉ちゃんとアーニャは?」
「アーニャは大丈夫よ、ちょっと時間が経てばきっと・・・・・・・私も大丈夫だから・・・・・・」

ネカネは優しくネギに笑って見せるも何処かぎこちない、何か隠しているのではないかとネギが思っていると、彼女は再び森の中へと歩き出す。

「この森の奥へ隠れましょう、化け物に気付かれないウチに」
「う、うん・・・・・・」

ネギは頷き、彼女の手を固く握って、森の中へと入って行った・
しばらくお互い無言で奥へと歩いていると不意にネギがネカネに口を開いた。

「お姉ちゃん・・・・・・・村で何が起こったの・・・・・・・?」
「わからない・・・・・・私が村に帰ってきた時には辺り一帯にいっぱい人が悪魔に石にされたり、本で見た事もない化け物に殺されている人もいたわ、私は何処かに生存者がいないか必死に探したけどこの子だけしか救えなかった・・・・・・お母さんはもう悪魔に石にされていたわ、スタンさんは・・・・・・」
「殺されたの・・・・・・?」
「わからないわ、でも悪魔でも人間でも無いあの化け物に会ってたら・・・・・・」


ネカネ自身もその言葉で合っているのかわからないようだが、彼女はありのままの事をネギに伝える。

「人では無いのは確かだった・・・・・・見たことない色々な武器を持つ化け物で、やつ等は集団で村の人達を襲ってた、村の魔法使い達は必死に戦ってたけど敵の数が多すぎて・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
「あの村は多くの腕利きの魔法使いがいる、並の軍隊が来ても戦えるぐらいに・・・・・・だけど無理・・・・・・だった・・・・・・・」
「お姉ちゃん?」

話の途中ネカネが突然アーニャをおぶったまま膝をつく。顔からポタポタと汗を流しながら苦痛の表情を歪める
そんな彼女にネギは一体どうしたのかと不安に感じる

「大丈夫、ちょっと疲れただけだから・・・・・・うぐッ!」
「お姉ちゃんッ!」
「傷が深すぎたわね・・・・・・魔力では傷口を塞ぐことはもう出来ないみたい・・・・・・」
「お姉ちゃん血が・・・・・・・!」

彼女の腕から血が服に滲んできている、ネカネはそれを止めようと辛そうな顔をしながら手でおさえる。

「ちょっと斬られただけなの・・・・・・これぐらい何ともないから・・・・・・」
「ちょっとって・・・・・・いっぱい血が出てるよお姉ちゃんっ!」
「平気よ、少し休めばまたすぐ歩けるように・・・・・・」
「ゲヘヘヘヘ・・・・・・・あの村の生き残りがいましたぜ~」
「「!!」」

ネカネとネギの耳に野太い声が入ってくる。見るとそこには身の丈3mはあるだろう大きな体を持つ黒い豚のような姿をしている怪物が笑っている。手には大きな棍棒と体には銀色の鎧を着けているその怪物は、誰かに話しかけるように後ろに向かって叫ぶ。

「陀絡さ~ん、村の生き残りの連中がいやした~まだあの悪魔共に石にされてない奴等です~」
「うるせえな、身だしなみ整えてる時に声かけるなっていつも言ってるだろうが」

暗闇の中から男の声でこちらに近づいてくる、ネカネはその声を聞いて感情的に腕をおさえている手に力を込める。

「俺達は村の奴らは悪魔共見たいに石化なんてめんどっちい事せずに一人残らずババッと殺せばいいんだよ、ここにいると思われるあいつのガキは例外だがな」
「あなたは・・・・・・!!」
「おやおや、さっき村であった元気な姉ちゃんじゃねえか」

暗闇から出てきた男は睨みつけてくるネカネに少しだけ笑みを浮かべる、男の肌や骨格からして人間ではないのがわかる。眼鏡越しから見える目は人を殺しても平気だと言っているようだった。
黒いコートを着て、手にはハンカチを持って腕についているある物を拭いているその男はゆっくりと負傷しているネカネと怯えた表情のネギに近づく

「あの時に殺したと思ったんだが、魔法で傷口でも塞いだのか? どっちにしろここで始末するまでだ」
「あなた達はどうしてこんな事を・・・・・・!!」
「怨むんなら、サウザンドマスターを怨むんだな、あいつのせいで俺たち『春雨』がどれだけ被害を被ったと思ってんだ」
「だからって関係ない人達を殺したり石化させて済むと思ってんのッ!?」
「うるせえよ」
「がはッ!」
「お姉ちゃんッ!」

男は半腰のネカネに腹を冷徹に思いっきり蹴る。蹴った拍子に彼女がおぶっていたアーニャが後方に吹っ飛ぶもまだ起きない。
ネカネの腹をふんずけながら男は血走った眼で彼女を睨む。

「弱いくせに『春雨』に盾突くんじゃねえよ、 あの女もジジィも自業自得だ、さっさと逃げれば良かったものの悪魔共に突っ込んで自分から石になっちまっただけじゃねえか」
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
「お前を斬った時によ、腕に血がついて取れねえんだよ、下ろしたての服に染みついちまったらどうすんだ? ああ?」
「ぐッ!」

足に力を込め男はネカネの腹を強く踏みつける、あまりの痛みにネカネは意識を遠のかせるが突然自分を踏んでいる男の足に何かが抱きついたのであわてて叫ぶ

「ネギッ!」
「お姉ちゃんをイジめるなッ!」
「何だこのガキ? 汚え手で俺の足に触ってんじゃねえ」

いきなり自分の足にまとわりつかれて男は不機嫌な様子でネギを見降ろして睨む。
だがネギは恐怖で身を震わせながらもネカネを守ろうと男を睨み返す

「お姉ちゃんは何も悪くないッ!悪いのはお前たちの方だッ!」
「ふん、威勢だけは褒めてやる、小僧その根性に敬意を払ってやるから死ぬ前に名前を言ってみろ」
「僕の名前はネギ・スプリングフィールドッ! サウザンドマスターの息子だッ!」
「ネギ・・・・・・スプリングフィールド・・・・・・・やっぱりテメェがあいつ等の子供か・・・・・・似てると思ってたが当たりだったな」

男はネギの名前を聞いてニヤリと笑った後、振り返って後ろの部下であると思われる最初にネカネ達を見つけた大男に命令する

「おい、春雨の上層部に連絡しろ、サウザンドマスターをおびき出すための息子を見つけたってな」
「わかりました~」
「サウザンドマスター・・・・・・ナギさんをおびき出す・・・・・・?」

ネカネはこの男が何言ってるのか理解できなかった。何故ならサウザンドマスターはとっくに・・・・・・
男はネギの後ろ襟を掴んで片手で持ち上げる、ネギは抵抗しようと手や足を振って暴れるが全く男は動じていない。

「このガキをエサにすればあいつは必ずやってくる、来た所を今度こそ叩き潰す、そういう計画でね、さすがに自分の息子を見殺しには出来ねえだろ」
「何言ってるんですか・・・・・・? ナギさんはとっくに亡くなってるはずじゃあ・・・・・・」
「生きてるんだよ、俺達の『所』でな」
「俺達の所・・・・・・?」

男の言っていることがわからずネカネは混乱してくる。そんな彼女を尻目に男はネギをジロジロと観察する

「見れば見るほど親父に似てるじゃねえか・・・・・・いや母親の方か・・・・・・?」
「離せッ! 離せーッ!」
「暴れんじゃねえ、まだ殺しはしねえよ、ただしお前の姉ちゃんとお友達は別だがな・・・・・・」
「や、止めろッ!! お姉ちゃんとアーニャは殺さないでッ!」
「うるせえな・・・・・・おいもう連絡出来たろ? このガキ持っててくれ、女子供の口封じしなきゃならねえからよ」

男が連絡を終えたはずだと思い大男の方を向かずに命令するが返事が返ってこない。
上司に返事もしないのかと男は舌打ちした後、後ろに振り返る。

「何やってんだデカブツ、返事も出来ねえほど頭ヤバいの・・・・・・・」
「誰の頭がヤバいって? 気にしてる事をストレートに言われるとマジでキレるぞ、最近シャンプーするたびに毛が抜けるんだよ、どうすりゃあいいんだコレ?」
「お前は・・・・・・」

男が振り返るとそこにいたのは大男ではなくうつ伏せに倒れている大男の亡骸とそこの上
に立っている人物が一人
全身を隠すように肌を出さない服を着て、背中には細長い包みを背負い、更に頭までフードとゴーグルをして顔が全く見えない。そして一番気になるのは右手で持つ日傘を肩にかついでいる事だ
男はそれを見て急に持っていたネギをネカネの上に落とす。そんな事も気にせずに男はどうしたのか警戒の表情を浮かべる

「アンタが何故ここにいるんだ・・・・・・・?」
「頼まれごとをやりにきたんだよ、あのバカの子供にちょっくら用があってな」
「まさか・・・・・・『ここ』に自由に来れるのは俺達ぐらいだぞ・・・・・・」
「お前等で出来てこの俺が出来ねえわけねえだろ、昔、偶然来た事あってな、今では知り合いのおかげで隣り駅に行くぐらい簡単なんだぜ」

ゴーグルを付けている男が簡単に説明した後に傘を横に構える。
ネギとネカネは一体彼が何なのかはかわからないが目の前の男はこの人物を知っているらしい

「オメーの村にいた部下の奴等と悪魔は全員俺が始末した、残るはテメェだけだ」
「何故アンタが・・・・・・? そんなことやる理由は無いだろ」
「夜兎にとって戦う理由などどうでもいい、ただ目の前に気に食わない奴がいたら潰す、それだけだ、」

マントを翻しながらゴーグルの男は傘を横に持って構える。そしてゴーグル越しから獣のような鋭い眼光で男を睨み

「俺はお前等が気に食わねぇ、だからここで潰す」
「チッ・・・・・・アンタ相手を俺一人で勝てるわけがねえ、ここは一旦引かしてもらう」

その眼光の鋭さに自分では敵わないと察知し、男は背中を見せてそそくさと森の中へと消えって行った。ゴーグルの男はそれを追わず負傷しているネカネの所へと顔を向ける

「大丈夫か? いや大丈夫じゃねえな、この薬使え傷口が塞がる、応急処置にはなるだろ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・命まで助けてもらって・・・・・・」
「早くこれなくて悪かった、まさか春雨の奴らと悪魔が共同でここ攻めてくるとは思わなくてよ、あんたがネカネでこっちの坊主がネギだな?」
「は、はい」

ゴーグルの男はマントの裏側から小さな薬箱をネカネに渡す。彼女はこの男と認識は無いがこの男は自分たちの事を知っているらしい。そんな男にようやく恐怖から解放されたネギが恐る恐る彼に近づいて口を開く

「おじちゃん、誰・・・・・・?」
「ああ、悪い自己紹介がまだだったな」

少し笑ったような声で男は答える。

「『星海坊主』って呼んでくれや」

ゴーグル越しの目つきはさっきとは違い獣の目ではなかった。
 



























第二十一訓 みんなが考えてるほど世界は広くない

男は鬼神の如くで敵を倒していく、自分の武器の日傘を持ち、いくつもの敵を塵へと変えていくのは正に一騎当千の姿である

「ギャァァァァ!!」
「う、う、星海坊主だぁぁぁぁぁ!!」
「何故だッ!? 何故エイリアンハンターのあいつが俺達を・・・・・・・! それにここは次元が・・・・・・・!」
「悪いな」
「!!」
「ちょっと黙れ」
「ギェェェェェ!!」

刀を持った化け物が男に驚いている間に一瞬で距離をとり右腕で持つ傘の一振りで化け物を亡骸へと変える。

「春雨の奴等は大体終わったな、ったく何で俺がこんな事を・・・・・・」
「おぬし・・・・・・何者じゃ・・・・・・?」
「ほう、まだ生きている奴もいるじゃねえか」

呼ばれたような気がして男が振り返ると、いたのはローブと奇怪な形の帽子を被った一人の老人が苦しそうに立っていた。

「こいつ等を一人で殲滅・・・・・・並大抵の腕じゃないな・・・・・・」
「まあな、所でサウザンドマスターのガキはここにいるか?」
「サウザンドマスターを知っているのか・・・・・・?」
「20年前から殺し合いをしている長い腐れ縁だ、で? ネギ・スプリングフィールドは何処だ?」
「お主は一体・・・・・・まあいい、ネギの奴は森に遊びに行っていたからここにはいないはずじゃ」
「わかった、あばよじいさん、精々長生きするんだな」
「待て」
「あ?」

老人はまだ何かを訴えようとするが、彼の体に何かが蝕んできている。老人はキセルをくわえながらゆっくりと男に喋り出す

「ネギを・・・・・・わしの代わりに守ってくれないか・・・・・・・?」
「やれやれ、俺にこれ以上めんどくせえ事やらせないでくれ、元々俺はそのガキにあいつから託された物を渡しに・・・・・・アンタの体どうした・・・・・・?」
「へ、悪魔にやられてな・・・・・・・この石化はもう止まらん・・・・・・」

男が断ろうとした時、目の前の老人はどんどんパキパキと音を鳴らしながら固まっている。
老人にかかっていたのは石化の呪い、悪魔による魔術だ。もう体が動けなくなっている老人は最期に小さな声で

「年寄りの最期の頼みじゃ・・・・・・・守ってくれ・・・・・・ネギとネカネ・・・・・・・を・・・・・・」

やがて時が止まったように静止した老人を男はじっと眺めた。完全に石と化してしまった老人を見て男はため息をつく

「断る前に固まりやがって・・・・・・しかもどさくさに一人増やしてんじゃねえよ、誰だネカネって、このクソジジィ・・・・・・」
「イタゾ・・・・・・・生キ残リダ・・・・・・」
「一人残ラズ・・・・・・」
「破壊ダ・・・・・・」
「たく、面倒なのがゾロゾロと・・・・・・」

ブツブツと小言を言っている間に男は大きくそして上位種である大きな悪魔に囲まれる。だが男は傘を肩に担いで落ち着いた様子で深呼吸

「来いよ、ハンデで右腕一本で相手してやる。ま、元々無えんだけどな」
「フ、フザケルナァァァァ!!」

近くにいた悪魔が激昂して男に襲いかかる、だが悪魔が彼にキバを立てようとした次の瞬間

「エ・・・・・・・?」
「そんな動きじゃ夜兎には勝てねえ、出直してこいあの世でな」
「バカナ・・・・・・悪魔ノ俺ガ一瞬デ・・・・・・・」

悪魔に見えたのは一瞬で消えた閃光。それを見た時にはすでに男は自分の後ろにいた、右手に傘を持って立っているだけ。何故いつの間にそこに移動したんだと考えた時には既に胴体を横一閃に切断されていたのだ。悪魔の上半身が衝撃を与えながら地面に落ちる。
それを確認せずに男はゆっくりと傘を構えてまだ残っている悪魔たちと対峙する

「ジジィの遺言聞かされててな、早く行かなきゃなんねえんだよ、さっさと終わらせてもらうぜ」
「ク、止ムヲ得ン・・・・・・全員デ殺レェェェェェ!!」

一番図体のデカイリーダー格と思われる悪魔が他の悪魔たちに号令をかける。その声で悪魔達が次々と男に襲いに来る、だが彼はその事を喜びに感じているような眼がゴーグルの上から見える。

「本物の化け物が何か教えてやるよ・・・・・・・!!」





















「まあそんなこんなで俺は悪魔共を一匹残らず皆殺しにして、急いで森へ行きお前等を探しに来たって感じだ」
「そうですか・・・・・・」

ゴーグルとマスクを取って今は素顔を見せている星海坊主の経緯を聞き終え、ネカネはベッドの上で表情を沈ませる。
場所はウェールズの山奥にある街のとある民宿。
2日前、海星坊主はとりあえず安全な所へ連れていく為にネカネ達を連れて、ここまで歩きやらバスやらでやっとこさ着いたのだ。

「スタンさんも石にされて・・・・・・・」
「すまねえな、もっと俺が早く来てればジジィを助けれたかもしれねえのに」
「謝らなくていいです、私やネギ、それにこの娘も助けてくれたんですから」

そう言ってネカネは隣でベッドに横たわるアーニャを見る。あの時からまだ目覚めないのだ、それほど精神的ショックが大きかったのかもしれない。
眠っている彼女に星海坊主はコツコツと歩いて近づく、一向に開かない瞼にどこか少し心配そうな表情を見せる

「俺にも娘がいてな、こいつより少し年上だが前にやばいモン見せちまってな・・・・・・。これぐらいの年で身内が目の前で殺されそうになるのはよっぽど酷だってのを知っている」
「星海坊主さんにも子供が・・・・・・?」
「あまり会えねえが俺の大事な娘だ、俺は色んな所を行く事が多くて中々家に帰れねえがいつでもカミさんと娘の事は忘れねえ、あいつもな・・・・・・」

どこか遠くを見るような表情で星海坊主はアーニャを見た後、表情を戻してネカネの方に振り向く

「そういえばあの坊主はどうした?」
「あら? あの子何処行ったのかしら?」
「しょうがねえ探しに行くか・・・・・・・」
「じゃあ私も・・・・・・」
「怪我人は寝てろ、俺の薬で傷口は塞がってるがまだ完全完治じゃねえ、ここに医者でも呼んで養生しろ」
「はい・・・・・・」

ネカネが腰を上げようとした時に星海坊主は手で押して彼女を再びベッドに戻す。
そうして自分は部屋のドアを開けてネギを探しに行った。

それと同時にアーニャはゆっくりと瞼を開けていた

「私・・・・・・」
「アーニャッ! 起きてたのッ!?」
「あのおじさんが村の事喋っている時から起きてた・・・・・・・」

体を起こさず天井を見ながら驚いているネカネにアーニャは口を開く。そしてどっと彼女の目から涙があふれ出す。

「私全然無力だった・・・・・・」
「アーニャ・・・・・・」
「ママを守れなかった・・・・・・」
「あなたはまだ子供よ、守れないからって誰もそこを攻める権利はない」
「私は・・・・・・私は・・・・・・・」

アーニャは涙を腕で隠して必死に嗚咽をおさえる、自分は見ることしかできなかった、ただ母が悪魔にやられて石になっていく所を見るだけしかできなかった。しかもそのショックで気絶した事が悔しくてたまらなかった

「私に力があったら・・・・・・・悪魔やあいつ等を殺せる力があったら・・・・・・」

幼い子供は純粋に心からの願望を呪文のように何度もつぶやいていた。














ウェールズの街全体を眺められる一番高い所に置いてある大きな広場。
日は沈み始め夕焼けになっている空と、自分が住んでいたよりずっと大きな街を眺めながらネギがボーっとしていると、後ろから足音が聞こえたのでふと後ろに振り返る。

「ここにいたのか、姉ちゃんが心配してるぞ」
「チョビヒゲのおじちゃん・・・・・・・」
「誰がチョビヒゲだしばくぞマジで」

日傘をしている星海坊主はネギの隣に立ち一緒に街の風景を眺める

「悪くねえ所だな、今日からここがテメェの家だ、お前等が住む家とか色々まだ残ってるが俺に任しとけ、不動産屋脅して一番良い所に住まわしてやる」
「僕の村は・・・・・・?」
「ん?」
「僕の村や村の人はどうなったの・・・・・・?」

ネギは星海坊主に不安そうな面持ちで質問してきたので少々困惑した顔を浮かべるも、正直に話しとくべきかとすぐに顔を戻して口を開く。

「石になった奴はわからねえが、大体は春雨の奴らに殺されたかもな」
「春雨って・・・・・・?」
「宇宙海賊『春雨』、宇宙をまたにかけ次元をも超える海賊共の巨大組織の名前だ、それにしても悪魔と交流がまだあったのは驚きだぜ・・・・・・まだ鳳仙が持っていた繋がりを忘れてねえとは悪魔も結構義理固いんだな」
「何で海賊が僕の村を襲ったの?」
「オメーの親父はその組織を半壊させた人物だ、怨みをもらってもしょうがねえ」
「じゃあ僕のお父さんのせいでみんな・・・・・・イタッ!」

悪いのは自分の父親だと思ったネギは泣きそうな顔を浮かべるがすかさず海星坊主がボコンと彼の頭をグーで殴る

「悪いのはあっちじゃねえか、テメェの親父はわるくねえだろうが」
「ごめんなさい・・・・・・おじちゃんはお父さんの事知ってるの・・・・・・?」

叩かれた頭を痛そうにさすりながらネギは興味深げに海星坊主に聞く、彼は頷いて懐かしむように口を開いた

「昔、俺がこことはちょっと違う所に偶然来れた時にな、あいつがまだガキの頃に会って、そん時から長い付き合いだ」
「おじちゃんはお父さんのお友達なの?」
「なわけねえだろ、俺はちゃんと友達選ぶわ」
「でも長い付き合いだって・・・・・・」
「ただの腐れ縁だ、マジで腐り果てて切れて欲しいんだよこの縁、あいつに関わるとロクな事ねえ」

ブツブツと文句を言っている海星坊主にネギは少し彼への考えを改めた。
正直怖かったのだ、いきなり出てきた時は全身を覆い隠すなような服装な上に、自分達を襲ってきた男を見たときのあの獣の様な目に恐怖感を感じていたのだが、素顔を見ると普通の中年男性だし、父と親しい間柄であると知るとこの男に対する恐怖感が消えていった。

「お父さんはどんな人だったの?」
「え? 聞いて後悔しない?」
「うん」
「そうか・・・・・・一言で言うならちゃらんぽらんのバカだ、何考えてるかわかんねえし甘い物ばっか食ってるし喧嘩好きだし人の話聞かねえし、要するに真正のダメ人間だ、だがめちゃくちゃ強いのは確かだがな、宇宙最強の戦闘種族、『夜兎』の俺でさえ今も互角だ、あとめちゃくちゃモテるんだよなあいつ・・・・・・ヤバい殺したくなってきた」
「強かったんだお父さん・・・・・・ダメ人間だけど・・・・・・・」
「そうだ強くてダメ人間だ」

ネギと星海坊主は街を見渡しながら会話をする。幼い男の子と中年の男性が喋っている現場は傍から見れば親子にしか見えない。
そんあ時星海坊主はポツリとネギに告げた

「親父に会いたいか?」
「え・・・・・・?」
「オメーの親父は生きてる」
「えッ!? 本当ッ!?」
「一応だがな、今はちょっとヤバいつーか・・・・・・お前に会えに行けない状態だからな来れなかった」
「そんな・・・・・・」

星海坊主の言った事に一度は嬉しさと驚きを交えた声を上げたものの、来れないと知ってネギは深く落胆する。そんな彼に星海坊主はしゃがみ込んで背中に背負っていた細長い包みを彼に渡す

「あいつがなお前に渡してくれって俺に頼んだモンだ、自分ではもう届けられないからってよ」
「え? うわッ!」
「ハハハ、まだ重いか、開けてみろ」
「う、うん・・・・・・・」

言われる通りネギはその包みを開けてみる、現れたのは一人前の魔法使いが使うような長い杖だ。それを両手でなんとか持ってネギはまじまじと見る

「お前の親父の杖だ」
「お父さんの杖・・・・・・?」
「それと伝言だ『強く生きろ』だとよ」
「強く・・・・・・」

父の伝言を代弁した星海坊主を見てネギはその言葉がどういう意味なのかと聞こうとすると、彼は自分から口を開いた

「俺に言わせるとな、世の中を生きるのは強い奴のみ、弱者は強者に潰されるのが自然の摂理、俺達戦場で生きる夜兎はそういう考えで生きている、お前はどうする? 弱いまま一生を過ごすか? それとも強くなって親父に会って何処行ってたんだと顔面を思いっきり殴れるようになりてえか?」

父の杖をじっと見ながらネギは深く黙りこむ。その言葉が子供の彼に重くのしかかる。
一生弱いままで生きるか、父に会いに行ける程の強さを求めるか。だがネギの中では答えは決まっている。ずっと会いたいと思っている人に一生会えないなど絶対に嫌だ

「ぼ、僕はお父さんをぶ、ぶん殴るッ!!」

口から唾を吐きながら大声で叫ぶネギに星海坊主は満足そうに笑う。

「そうじゃねえと親があっちで泣くぜ、坊主、お前等がここで落ち着いて暮らせるようになるまで俺が稽古をしてやる、出来るな?」
「うんッ!」

星海坊主の言葉にネギは元気よく頷く。そんな子供っぽさを見せるネギに星海坊主は何処か懐かしげな顔をしていると、ふと気になる事があった。

「そういえばお前、もう魔法使えるのか?」
「え? えと・・・・・・まだ練習中だけど・・・・・・・」
「やってみろ、魔法云々の事は知らねえがこう見えて何年も色んな魔術師を見ている、どんぐらいの魔力を持っているのか稽古する前に見てやる」
「う、うん・・・・・・」

ネギは不安そうにコクリと頷いて父の杖を下において、自分のコートの下から子供用の杖を持ってブツブツと詠唱を始める。それを海星坊主はその場に座って観察してしばらくするとネギは目をつぶって

「火を灯れーッ!」

ネギがそう叫んで杖を前に出した時、その先にいたのは・・・・・・

ボッと共に星海坊主の頭のてっぺんがメラメラと燃えだした。

「ぐおぉぉぉぉぉ!! あちぃぃぃぃぃ!!! ていうか毛がッ! 毛がァァァァァ!!」
「おじちゃぁぁぁんッ!!」
「このクソガキィィィィィィ!! 俺の最近寂しくなってきた毛に会心の一撃を与えるとは良い度胸じゃねえかァァァァ!!」

フードの上から燃える頭に、火傷の心配より頭にある髪の毛を心配しながら火を消そうと右手でバンバン叩きだす、その度にヒラヒラと彼の頭から黒い毛が一本一本と落ちていく

「うそぉぉぉぉぉ!! 俺の毛根こんなに弱くなってんのかッ!? 何で俺の強さとインフレ起こしてこっちは日に日に弱体化していくんだよォォォォォォ!!!!」

星海坊主の心からの叫びが街全体へと響き渡った。














それから星海坊主とネカネは住める家を探して景色も良くて少し大きな家に住めるようになった。家の代金は全て海星坊主が払ってくれたので(代金を渡す時、手のひらサイズ程の金塊2、3個を普通にポンとカウンターに置いた海星坊主にネカネと相手は度肝を抜いた)ネカネは何度も彼に頭を下げるも彼は大したことないと言って手を振るだけだ。

これにより星海坊主はネカネ達と一緒に彼女達が落ち着くまで済むことになる。
そしてネカネの学費やアーニャやネギが魔法学校に行く為のお金、食っていく為のお金全てを星海坊主が払ったのだ。もうネカネは頭をこれでもかと彼に下げていく事になるのであった。
暇さえあればネギに軽い組手や近接攻撃の戦い方、戦闘方法の基礎を教えている海星坊主に、子供にはまだ早いと言うネカネとたびたびネギの教育方針で揉めていた。
所で長い間星海坊主と一緒に住んでいたのだが、彼は無くなった左手の事だけは話そうとしなかった。何かあったのかと聞いても「まあ色々あったんだよ」と言うだけで答えようとはしない。
更に彼は日にも弱い体質らしく外出するときは常に日傘をさしている。この傘はネギの稽古にも使われ、一振りでネギを思いっきりホームランにした事がある、そのおかげで星海坊主はネカネに物凄く怒られた。
そして彼の髪の毛であるが、ネギが発火呪文を彼の頭にダイレクトにやってしまったおかげで元々衰退の一歩をたどっていた毛はそれにより末期状態に陥り、バーコード頭になるという惨事が起こってしまった。(その日からネギに対する稽古が一層キツくなったのは言うまでもない)

時が早く過ぎネギと星海坊主が出会って3ヶ月後・・・・・・
ようやくネカネ達が新しい土地に慣れてきたと感じ海星坊主はここから去る事を決意し、家を出ることになった

「世話になったな」
「それはこっちの台詞です・・・・・・何から何まで感謝の言葉が足りません・・・・・・」
「なに、じいさんの遺言を聞いてやっただけの事だ、あばよ」
「おじちゃん、行っちゃうの・・・・・・?」

家のドアを開けていつも持っている日傘をさして去ろうとする星海坊主に寂しそうな声が聞こえる。振り向くとネギが泣きそうな顔で星海坊主を見ている

「行っちゃイヤだよ・・・・・・」
「また会えるだろ、お前が強くなっていったらきっとな」
「本当・・・・・・?」
「本当だ、じゃあこれを証にするか」

星海坊主は一旦家の中に戻り傘を折りたたむ、そしてその傘をネギに渡す

「今度会う時にはそれを立派に扱えるような強い奴になれ、傘はそん時に返せ、それでよ、一発勝負しようじゃねえか」
「・・・・・・」
「どうした?」
「お父さんの杖より・・・・・・ずっと重い~・・・・・・・」
「フ・・・・・・フハハハハッ!」

両手で踏ん張るようにプルプルと震えながら自分の傘を持つ小さなネギに思わず笑ってしまった、そして再び家のドアの前に戻る

「じゃあまた会おうぜ、ネカネ傘借りるぞ」
「はい、色々とお世話になりました」
「最後に行っとくがお前彼氏なんか作るなよ、俺にとってお前等は俺の子供みたいなもんだからな」
「フフ、肝にめんじときます『お父さん』」
「お父さんって・・・・・・やれやれ神楽ちゃんに姉と弟が出来ちまったよ・・・・・・・」

自分の子供同然だと言われてネカネは少し嬉しくなり笑ってしまう。実は彼女の父は春雨の襲撃によって殺されてしまっていたのだ。その表情を見てまんざらでもない星海坊主は口元に笑みを浮かべた後、彼女のピンク色の傘をさして家を出て行った。

「強くなれよ坊主」

星海坊主が振り向かず言った言葉にネギは彼の傘を必死に持ちながら無言でコクリと頷く。
それを見ずに海星坊主はこの家を去って行く。
ネギとネカネはその背中が見えなくなるまでずっと見送っていた。


















そして6年後。場所は変わり日本にある麻帆良市内の何処かの平原にてネギはいる

「魔法の射手・光の3矢ッ!」

父の杖を持ち詠唱を唱え呪文を使う、出てきたのは魔法の矢3本、狙いを定めて放ったが対象物はそれをすりぬけて一気にネギに近づく

「遅いよ」
「くッ!」

言葉と共に戦いの師の神威は右手でネギを殴りつける。すかさず魔法障壁という魔法の盾でネギはガードするもその衝撃で後ろに吹っ飛ぶ

「もう一度食らってみる?」

神威は吹っ飛んだネギに走って追いつき、再び右手で彼を殴りつけようとする。

「いえ遠慮しときます・・・・・・・!」

ネギは吹っ飛ばされた状態を立て直し右によけて神威の左をとり左に手に持つ父の杖で彼を思いっきり叩くが神威はそれを右手で難なく受け止める、だがまだネギの攻撃は終わっていない

「はぁぁぁぁぁ!!」

ネギは右手を振りかぶって神威の横っ腹めがけて殴りつけようとする。だが神威はクスリと笑った後、それを簡単に左手で受け止める

「肉弾戦はもっと鍛えなきゃ無理だよ」
「く・・・・・・」
「はい終わり」
「えッ! アダッ!!」

神威は両手を封じられていたので頭突きでネギの額に突っ込む。とっさの攻撃にネギはガツンと頭に深い衝撃を受け、その威力でネギは杖を持ったまま後方に倒れる。

「駄目だ・・・・・・全然歯が立たない・・・・・・・」
「たかだか10才ぐらいの少年に、肉弾戦で俺が負けるとでも? 君は力無いんだから筋トレでもやるか上級の肉体強化の術でも覚えておくんだね」
「はい・・・・・・」

大の字で倒れているネギにいつもの笑顔で神威が歩み寄ってくる。
最初は杖のみで戦っていたのだが、神威のように素手でも強くなりたいと思ったのだがネギには彼のような強靭な肉体を持っていない、いくら似たような戦い方を昔見た事があるとしても己の能力は足元にも及ばないのだ。
そういえばと思い出したかのようにネギはむくりと起きて神威に話しかける。


「前に話した僕の村の事や星海坊主さんの事覚えてます?」
「ん~まあギリギリ覚えてるよ」
「ギリギリって・・・・・・それなんですけど神威さんって星海坊主さんと同じ種族だって言いましたよね? 何か星海坊主さんの情報知ってますか?」
「知らない事もないよ」
「ほ、本当ですかッ!?」
「でも教えない」
「えぇぇぇぇぇ!?」

笑顔でサラリと拒否した神威はネギに言葉を付け足す

「いつか君自身が知ることになる、その時の反応を見たいから俺は楽しみをとっておくよ」
「どういう意味ですか・・・・・・?」
「さあね」
「さあねって・・・・・・」

相変わらず何考えているのかさっぱりわからない、ネギがそう思っていると彼は木の下に置いてあったある者をネギの所に持ってくる。それは血のように赤い一冊の分厚い本、それを神威はネギに突き出す

「どんな事をしても強くなりたいと願うならこれを読めばいい、知り合いから貰ったもんでね」
「これは・・・・・・呪文書・・・・・・・?」
「それで君がもっと強くなれるか、壊れるか・・・・・・・精々頑張りなよ」

ネギが貰った本をマジマジと読んでいるのを眺めながら神威は珍しく目を開きながら微笑していた。

(この世ってのは案外狭いもんだ、ねえ海星坊主さん?)

心の中でつぶやいた事に思わず神威は一層ニンマリと笑う。



まさかこんな所で父のあだ名を聞くとは思わなかったからだ































銀八「まず一通目、『クワガタ仮面』さんの質問」

『銀さんに質問です。
銀さんにとってタカミチとはなんですか? 実はただならぬ関係という噂をききました。女性に手をつけないのでもしやそっちのけがあると言われているらしいです。
あと、やっぱり銀さんはハゲと同じでロリコンですよね? 中学生に手をつけて(手なずけて)いますものね。』

銀八「タカミチが誰だか知らねえし、ガチホモじゃねえし、ロリコンにもしないで下さい、殺すぞオラ」
千雨「いやちょっと高畑先生忘れたのお前・・・・・・?」
銀八「都市伝説だろあれ?」
千雨「リアルでちゃんといるわッ! 一応原作サブレギュラーだぞッ!」
銀八「信じるか信じないかはあなた次第」
千雨「だからいるって・・・・・・! あれ?でも最近見ないな・・・・・・・」

銀八「二通目『蛙』さんからの初質問」

『銀魂を知らない母が近藤さんを見て
「この人、ロッテの今江みたく、ゴリラ顔やな。ゴリさん言われとるんか」
だそうです
あまり漫画に興味ない母にまで言われたら、もうゴリラ決定でよくない?』

銀八「ゴリラ決定というか既にゴリラです」
近藤「僕はゴリラじゃありましぇぇぇぇぇんッ!!!」
千雨「何で武田鉄也・・・・・・・?」

銀八「三通目『ノリ』さんからの質問」

『銀さん、撫でるだけじゃなくて何でそこでエヴァを押し倒さないんすか〜俺は正直ロリとかイラネ派だったけどエヴァはアリだと思うよ。なんなら俺が代わりにゲフンゲフンッ...っと冗談はさておき質問を...
以前黒歴史の能力を抹消しましたが今後仮に新たな力を得るとしたらどんなのが良いですか? 自分が思い付くだけでもキバって行くぜでヴァンパイアなライダー、『ブレイクザアァァンッ』で電脳世界を守護するマスターウェブナイト、某白い悪魔が所属する組織で20代ながらも提督と執務官を勤めるスタンダードな魔導師と言ったのがありますが』

銀八「黒歴史の部分をほじるな、作者が落ち込む。能力か・・・・・・強いて言えば『時を数秒止める』とか『物質を生命に帰る能力』とか『触ったものを爆弾に変える能力』とか欲しいですね」
あやか「そういうチート性能なんか持ったらまた黒歴史が増えるだけですわね」
銀八「いやもうそこまで突っ走れば行けるかも・・・・・・・・」
千雨「行かねえよッ!!」

銀八「四通目『サハリン』さんからの質問」

『のどかに質問があります。沖田に調教される寸前で糞土方に助けられた時に「ああ・・・土方さんなら調教されてもいいかも///」って顔赤くなりませんでしたか?』

のどか「な、なってませ~ん・・・・・・!」
沖田「そうですぜ、俺にやられてえんだよな?」
土方「何出て来てんだお前は、帰れ」
沖田「おっと俺が帰ったらのどか調教ですかい? 土方さんもついに俺と同じ道を・・・・・・」
土方「おい、誰かあの肌黒女連れてこ~い、こいつ射殺する」

銀八「独眼竜がお市の調教するのは置いといて」
土方「だからしねえってっ!! 殺すぞテメェ等ッ!!」
銀八「五通目『風の都』さんからの質問」

『夏美ちゃんへ
ちづ姉と近藤さんのボケにツッコミを入れてますが、「あれ、私って新◯って人よりツッコミ上手くない?」と思ったことはありますか?
僕は正直、新◯よりツッコミのレベルは上だと思います。
何かと大変ですが、これからも頑張って下さい。
ツッコミに疲れた時は、空に輝く一番星を見つけて下さい』

夏美「いや私別にツッコミ云々の事はあまり考えてないんだけど・・・・・・」
銀八「新八にまた新たな敵現るだな」
新八「うそぉぉぉぉぉ!? 一人倒すのにも手こずっているのにまた新たなツッコミがッ!? 銀さんマジで僕のポジションマズくないですかッ!?」
銀八「お前のポジションって何処?」
新八「忘れてるよこの人ッ! もう良いです空に輝く一番星を探してきますッ!」
千雨「いやそれお前じゃなくて村上に言った事だから・・・・・・」

銀八「六通目『正宗の胃袋』さんからの質問」

『変態ぬらりひょんに質問がある。
ぬらりひょん、お前がいるだけで学園は病の存在だから死ね!もしくは幻想郷にでもいって妖怪に食われて死ね。』

学園長「質問じゃねぇぇぇぇぇ!! ただの侮辱じゃろうがこれぇぇぇぇぇ!!」
銀八「幻想郷行ったら向こうに迷惑だから、誰にも迷惑かからねえようブラックホールの中に旅行して来てくんねえかな?」
学園長「遠まわしに死ねっていってるだろテメェッ!」
銀八「当たり前だろ」
学園長「正直に自分の部下に言われたッ! いやもうわかってるけど・・・・・・」
千雨「とことん救われね~・・・・・・」

銀八「七通目『白々燈』さんからの質問」

質問です先生!
エヴァといいんちょを交えての遊びで最近のマイブームは何ですか!?
質問だけではあれなんで応援をば。銀さんがんばれ! エヴァといいんちょもがんばれ!!
あ、あと新八。がんばれ、色々と。(眼鏡に向かって

銀八「家でwiiのスマブラをするのが今んところブームだな、千雨もいるけどよ、あ頑張ります」
あやか「執拗に狙ってくるエヴァさんがいるから疲れるんですけどね、あ頑張ります」
エヴァ「黙れデスマッチにも関わらず銀時のキャラと一緒にいるくせに・・・・・・リアルでデスを体験させてやろうか? あ頑張ります」
新八「そっちメガネじゃボケェェェェェ!!!」

銀八「ラスト八通目~『ウィル』さんからの質問」

『千雨に一つ。エヴァやいいんちょにライバル視されてるわけですが、千雨は二人のことをどう思ってるんですか?見た感じ、気兼ね無しで接してるようなのでそこら辺についてお願いします』

銀八「何か今回初めてまともな質問かもしれねえな」
千雨で「そうだけどよ・・・・・別にあいつ等の事は銀八と一緒にいるだけしか付き合わねえし、仲良くも悪くもなんともな・・・・・・」
あやか「友達になりたいならいつでもなりますわよ?」
千雨「いいわ別にッ!」
エヴァ「友達になりたいなら私に永遠の忠誠を誓え」
千雨「それ友達じゃなくて下僕だろうがッ!」
沖田「下僕? 下僕になりてえなら俺に任せな、一発でドMのメス豚にプロデュースしてやるぜ」
千雨「誰がなるかァァァァ!! つか下僕になる事が目的じゃねえよッ!」
あやか「せっかく友達のいない千雨さんの為に友達になってあげようと思ったのに」
エヴァ「せっかく友達のいない貴様を銀時から離して召使いにしてやろうと思ったのに」
沖田「せっかく友達のいないメガネを哀れなメス豚にしてやろうと思ったのに」 
千雨「悲しくなるから友達いないって連呼すんじゃねぇぇぇぇぇ!!」



[7093] 第二十二訓 人との交流は新しい扉を開けるチャンスである
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/09/04 01:53
平日の早朝、エヴァの家にて

「古来昔にこんな言い伝えがあるのだよ『バカは風邪をひかない』」
「ゴホッゴホッ・・・・・・」
「それなのに何故お前は風邪をひいているのだ? ありえんだろ」
「うるせえよバカ・・・・・・お前に言われたくねえんだよ俺はデリケートな存在なの」

咳き込みながら銀時はエヴァのベッドを借りて寝巻を着てマスクを付けて横になりながら、ベッドの近くで椅子に足を組んで座っているエヴァに悪態をつく。早い話こんな時期に銀時は風邪をひいてしまったのだ
風邪のせいでひどく苦しそうな銀時は、額の冷えピタをはがして新しいのを貼っていると、ここの二階のエヴァの部屋まで誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる。

「銀さんッ!」
「大声で叫ぶんじゃねえよ頭に響くだろうが、あ~だるい・・・・・・」

部屋のドアを開けて大きなビニール袋を持ちながらあやかが、部屋に入ってきて早々銀時の元へ慌てた様子で駆け込んだ。

「さっき電話で『今日は風邪ひいたから万事屋休みだわ』って連絡が来た時は、一体銀さんはエヴァさんにどんな病原菌をうつされたのかと心配で・・・・・・急いでここに馳せ参じました」
「誰をウイルス扱いしてるんだ貴様、お前だって銀時にくっつくバイキンだろうが」
「お黙りなさいウイルス、千鶴さんから貰ったネギをお尻の中に突っ込まれたいんですか?」
「うるさいバイキン」
「駆除されなさいウイルス」

互いにガンつけながら馬事雑言を言いあうエヴァとあやかに銀八は舌打ちして耳をおさえていると、あやかが開けたドアから今度はもう一人の万事屋の千雨が仏頂面で入ってきた。

「何やってんだお前? 風邪ひくタマでも無いくせに」
「おい、いつまでも銀さんが鋼鉄の体を持ってると思ってんじゃねえよ、俺だって風邪ひくんだよ、あ~もうお前等と喋るのも辛い・・・・・・」

そう言うと銀時は千雨達にそっぽを向いて寝ようとすると不意に何かを思い出して急にベッドから半身を起こした

「やべえ・・・・・・今日どうしても断れない仕事あるんだった、行かねえと」
「その体で何言ってるんですか、 病人は部屋に寝ててください・・・・・・所でここ銀さんの部屋ですか? 随分と女の子っぽい雰囲気があるんですけど?」
「私の部屋だ」
「銀さんすぐに“部屋を変えて”寝ててください」
「お前を永遠に寝かしてやろうか雪広あやか?」

またエヴァとあやかが一悶着起こしているのをほっといて、銀時はベッドから出て咳き込みながら仕事の準備をしようとする。そんな銀時にため息をきながら千雨は彼を止める。

「いいだろ今日は、病人なら病人らしくジッとしてろよ・・・・・・仕事は私といいんちょでやるから」
「お前等だけでやれるわけねえだろ、ゴホッゴホッ・・・・・・お前等バカ共に任せたら何も解決出来ねえよ、犬の散歩もやれねえよお前等だと」
「そうだなこいつらでは何もやれないだろうな、だが・・・・・・」

急に話に割って入ってきたエヴァが腕を組んで銀時に対して微笑して

「この二人だけの場合だ、もしそこにお前の頼れる人物がいたらどうする」
「・・・・・・は?」

風邪ですっかり体がだるい銀時はニヤニヤ笑っているエヴァの言っている事が何か理解できなかった。



















麻帆良学園のとある教室、『万事屋銀ちゃん』と書かれた部屋に銀時の同僚の教師、源しずな先生がノックをして部屋を開ける。

「こんにちは、昨日連絡させてもらった源しずなです、坂田先生今日は依頼に・・・・・」
「フ・・・・・ノックもしないで部屋に入ってくるとは随分無粋な依頼主だな」
「いやノックしてただろさっき、何雰囲気作り出そうとしてんだよ」
「どうせゴルゴ見て影響されたんでしょう、これだから子供は」
「お前私をいくつだと思っているんだ、天下人の徳川家康よりずっと年上なんだぞコラ」

部屋にいたのはソファに座る千雨とあやかのいつもの二人、そして銀時がいつも座っている彼専用の椅子に彼では無い別の人物が座っていた、しずな先生が首を傾げているとクルリと椅子を回転させてその人物は姿を現す

「フッフッフ・・・・・・万事屋エヴァ様とは私の事だ」





銀時がいつも来ている着物を小さい体で無理やり着たと思われるエヴァが、口元に笑みを浮かべながら姿を現した。











場所戻ってエヴァ宅

「ハァ~・・・・・・」
「銀時様、お水とお薬です」
「あんがとよ、今頃あいつ等何やってるのかね~・・・・・・俺抜きで仕事出来るのかあいつ等・・・・・・?」
「マスターがいますのでご安心を」
「だから余計に心配なんだろうが」

ベッドに横になっていた銀時はエヴァの召使いの茶々丸から水と薬を受け取りながらあの三人組に不安を感じていた。
そしてため息をついて銀時は茶々丸から受け取った薬と水を飲んですぐに横になって天井を見ながらポツリとつぶやく

「あいつ等、俺抜きだと仲良く出来るのか?」
「マスターがいますのでご安心を」
「だから余計に心配なんだろうが」

さっきと同じやり取りをしながら銀時はますます不安に感じた

何故ならあの三人は基本自分がいないと成り立たないトリオだったからだ。

















第二十二訓 人との交流は新しい扉を開けるチャンスである

「あら坂田先生いないのかしら?」
「あいつは風邪だ、だからこの私が奴の代理でここの首領になったのだ」
「へ~偉いわね~」

自慢げに喋って銀時の椅子に座りながら胸を張るエヴァにしずな先生は彼女に笑いかけながら頭を撫でてあげる

「でも困ったわね、坂田先生に頼みたい事あったのに・・・・・・昨日私がお願いしたら『OK~わが命に代えても』って嬉しそうに言ってくれたのにまさか今日風邪引いちゃうなんて・・・・・・」
「あいつがあんなに仕事行こうと思ってたのがわかったな・・・・・・」
「下心丸見えですわね・・・・・・」
「とことん腐ってるなあの天パめ・・・・・・」

銀時の行動の裏にそんな事があったのかと千雨はため息をついて、あやかは頭を手でおさえ、エヴァは舌打ちして、今は家でぐうたら寝ている男に呆れていた。

「ハァ~・・・・・・で? 銀さんにどんな依頼してたんですか?」
「あらあなた達がやってくれるの?」
「まあ銀八抜きでも出来る仕事なら・・・・・・」
「任せろ奴に出来て私に出来ない事はない、依頼は何だ? カーズの退治か? 悪魔超人の退治か? 霊夢の退治か?」
「何で全部討伐クエストなんだよ・・・・・全部勝てる気しないし」

とんでもない依頼を想像しているエヴァに向かって千雨がツッコんでいると、しずな先生は首を横に振って否定する。

「バラモスの退治でもワシズの退治でもないわ、今日は学園長の退治じゃなくて別の事をやって欲しいのよ」
「いや・・・・・学園長の討伐でも出来ませんウチは・・・・・・つーか銀八は何でそんな依頼引き受けてるんだよ・・・・・・」
「実はね、今日購買部のおばちゃんが息子に会いに行くとかで急にどっか行っちゃったのよ、それで坂田先生にとりあえず今日の放課後の店番をやって欲しいと思ってたの」
「はた迷惑な話ですわね・・・・・・仕事ほったらかして息子に会いに行くって・・・・・・」
「おい、購買部のおばちゃんってあのいつもうるさくて敵わん奴の事か?」
「そうだよ『私はみんなの母ちゃん』って言ってる人だよ・・・・・・」

購買部のおばちゃんの突然の仕事放棄に『何でここはそんな人間をクビにしないのか?』と三人が考えていると、しずな先生は微笑みながらエヴァの両手をとる

「坂田先生の代わりとしてお願いできますね? 万事屋の小さなオーナーさん?」
「いやぶっちゃけめんどくさいのだが・・・・・・」
「先生の代わりならきっちりとやってもらいますから」
「むう・・・・・・基本的に仕事は何をやっていれば良いのだ?」

不満げであるが一応やることをしずな先生に聞くエヴァ、すると彼女はニコッと笑い簡単に説明する

「レジとか品出しとか、小さいあなたでも出来る筈だから安心しなさい」
「小さい言うな・・・・・・」
「本当の事ですからしょうがないでしょ小さいんですからエヴァさんは」
「何だと人の気持ちも知らないでッ! 小さい事がどんだけ私はコンプレックスにしているか・・・・・・・!!」
「あ~もう喧嘩すんなやッ! 金髪コンビッ!」

エヴァがあやかに飛びかかろうとする所で千雨が二人の間に割って止める。そんな状況にも関わらずしずな先生は相変わらず微笑を浮かべながら手を振りながら「じゃあ昼休みに購買部で」と言い残して部屋から出て行ってしまった。

「大丈夫かよ・・・・・・私、店番なんかやったこと無いぞ・・・・・・」
「安心しなさい、この部屋にいる人はみんな未経験です」
「いや安心できねえから・・・・・・あ~やっぱ銀八がいればな~・・・・・・」

やはりあの男の存在力はデカイ・・・・・・店番ぐらいならあの男の事だからきっと経験持ちだろうし、一応メンバーの統率をを取れるのは彼だけだ。そんな事を考えながら千雨が嘆いていると、その男の代わりに着ている和服をズルズルと引きずりながらエヴァが拳をコキコキ鳴らしながら自信ありげに彼女に近づく

「心配するな私がいる」
「はぁ? お前が何の役に・・・・・・オゴッ!」
「殴るぞ」
「殴ってから言うなよ・・・・・・・」

エヴァに殴られた腹をおさえながら千雨はやっぱこの三人じゃ無理だって・・・・・・と悟るのであった。








その頃の本物の万事屋オーナーはというと

「銀時様、お粥持ってきました」
「お~あんがと・・・・・・・て多すぎだわァァァァァ!!!」
「少し生産しすぎました」
「鍋から溢れるほど生産してんじゃねェェェェェ!! つうかマグマみたいにグツグツ煮えたぎってるじぇねえかッ!!」
「食べれませんか?」
「食えねえよッ! それに近づけるなそれッ! 熱気で頭クラクラしてくんだよッ!!」
「では口を開けて下さい、私がお入れします」
「人の話聞いてるッ!? そんなん食えるわけ・・・・・・おぶぅぅぅぅ!!」

茶々丸が作った煮えたッぎている巨大お粥を無理やり鍋から直接口に注ぎ込まれているのであった。













時は一気に進んで放課後、エヴァ達はしずな先生の言うとおり購買部へと足を運んでいた。

「授業中もその格好してるおかげでみんな変な物を見るような目でエヴァさんを見てましたわよ」
「しかも何回も転ぶから余計に目立ってたな」
「しょうがないだろ、私にはぶかぶかだから足に引っ掛かるんだよあいつの着物は」
「じゃあ着なければいいだろ・・・・・・」
「バカ者、なりきる事が大事なんだ」
「あっそ・・・・・・」

授業中でも着物を着ていたエヴァにあやかと千雨が非難しても全く彼女は反省しておらず、すぐに購買部の中へと入って行った。
そこには色々な雑貨用品が溢れかえりまさに購買部と言った感じだが、しずな先生の言う通り購買部のおばちゃんはいなく、代わりにカウンターの所に。『八郎に会いに行ってくるッ!』と小さなボードが置いてあるだけだった。
エヴァはそのボードを持って「仕事終わってから行けッ!」と叫びながらボードを下に叩きつける。
そんな折に三人の所に依頼主のしずな先生が微笑みながら再び現れた。

「ちゃんとみんな来てくれたのね」
「しずな先生、あの・・・・・・私達レジとかそういうのやった事無いんですが・・・・・・」

申し訳なさそうにあやかが言うがしずな先生は全く動じずカウンターの中に入り、しばらくして彼女に一冊の教科書みたいなのを手渡す

「マニュアル本よ、レジ打ちの仕方とか商品の出し方とかそこに書いてるから」
「読みながらやるんですか・・・・・・でも何でしずな先生がこの本の存在を知っているんですか?」
「購買部のおばちゃんがよく読みながらレジ売ってるの見てたからよ」
「あの・・・・・・何であの人雇ってるんですか・・・・・・?」
「まあこの学園は坂田先生を雇ってるレベルだから、とにかく頑張ってね」
「えッ! ちょっとしずな先生ッ!!」

本当にここの学園の雇用方法が知りたいと思っていると、しずな先生は笑いながら手を振ってスタスタとどっかに行ってしまう。
取り残されたあやかはハァ~と深いため息をついた。

「どうしましょう・・・・・・とりあえずお店を開けて、トラブルを起こさないようにしましょう」
「おい、いいんちょよ~エヴァが購買部の板チョコ勝手に食いまくってるぞ~」
「言った直後にトラブル発生ッ! 千雨さん止めてッ!」
「何で私が・・・・・・・」
「千雨さんッ!」
「わ~ったよ、かったり~な・・・・・・」

千雨がぶっきらぼうに指さした所にはお菓子売り場に置かれている大量のチョコレートをもしゃもしゃと食い漁っているちびっ子がいる。それを見て慌ててあやかが千雨に命令してそれに渋々と髪を掻きむしりながら彼女は従う。

「エヴァ、何売り物食ってるんだよ・・・・・・」
「何を言っている今はここの当主は私だぞ、自分の物を食って何がおかしい」
「それじゃあ八百屋の店長は毎日スイカ食べ放題になれると思ってんのかコラッ!? もう食べるのやめろってッ! それにお前食い過ぎだからッ!」
「止めろッ! 私のチョコを取るなッ! お、スモークチーズ発見」
「だから食うなって言ってるだろうがァァァァァ!!」
「それを言うのは銀時の役目だ」
「ハルヒネタはいいからッ! いいんちょこいつ取り押さえろッ! 出来れば縄でそこらへんに縛り付けてくれッ!」

手当たり次第に食べようとするエヴァに千雨が奮闘しながらさっきマニュアル本をパラパラめくっているあやかに助けを呼ぼうとすると、彼女は突然軽くパニック状態でその場でウロウロしていた

「どうしたんだよ?」
「お客さんです・・・・・・! ここが再開したのを知って早速来たようです・・・・・・!」
「客って・・・・・・もう来たのかよ・・・・・・」
「しずな先生が再開したと言っていたのに店員はいないのかね? コロコロコミック買いに来たのだが」
「いやアンタかよっ!」

突然の来客はまさかの学園の教師を務めている同じく銀八、しずな先生の同僚の新田先生だった。学校内にも関わらず普通に喫煙しながらカウンターの前にコロコロを置いて立っている。

「お~い店員はいないのか~?」
「はいはい少々お待ち下さいませッ!」
「ん?」

あやかが慌ててカウンターの中に入ってきたので、新田先生は疑問の声を上げた。

「何でお前が店員やってんだ白凰」
「誰がデュエルマスターですか、雪広あやかです、今日は購買部のおばちゃんの代役として銀さんが来る予定でしたが風邪で来れなくなったので私達が更にあの人の代役になりました」
「ほ~そういう事か、まあ良い社会勉強になるだろうな・・・・・・とりあえず社会人の私から言うと店員だからって商品を食ってはいけないというルールがあるのだよ」
「千雨さん早くその人止めてェェェェェ!!」

新田先生が向いている先にはイチゴ牛乳のパックを普通にグビグビ飲んでいるエヴァがいて、それを見てあやかが千雨に向かって叫ぶ

「すいません・・・・・・あの子供はすぐに逆さ吊りにしますので・・・・・・」
「まあ別に私は困らないから別に良いんだがね、困るのはここの購買部や学園の総オーナーのジジィだから、それは良いとして早く会計してくれないかね? 早く『デュエルマスターズ』の続きが気になるのだ」
「あ、はいッ!」

あやかは慌てながらも何とかレジを打って会計を済ませる。会計を終わらせた後、新田先生はその場でコロコロを開いて「やべ、やっぱデュエマの白凰は強いわ」と呟きながらその場を去って行った。
一人目の会計を終えあやかはやっと終わったと壁にもたれる。

「ハァ~・・・・・・・何かこういう接客業は慣れてないと怖いですわね・・・・・・」
「終わったのか?」
「千雨さん・・・・・・・エヴァさんはどうしたんですか・・・・・・?」
「「もう腹いっぱいだ」って言って満足そうに物置で寝てる」
「まったくあの人は・・・・・・・私がエヴァさんを叩き起こしに行きますからカウンター任せますわね」
「え、私にッ!? 無理だって私じゃッ!」

急にカウンターを任せられたので千雨はちょっと待てと抗議する。元々人見知りが激しい性格なので接客業なんてやれっこない。
だがあやかは不安そうな彼女の肩に優しく手を置く

「これを機会に人との交流を覚えて、友達の作り方を勉強すべきだと思いますわ」
「いいよ私はッ! 交流なんてお前等と銀八でいっぱいいっぱいだしッ!!」
「じゃあ頼みましたわよ」
「待てェェェェェ!! 本当に無理なんだよ私はッ!」

千雨の言い分も聞かずあやかはそそくさと物置へ言ってしまった。残された千雨はどうするべきかと必死に考える

(無理だって~銀八とかいいんちょ達なら普通に喋れるけど、リアルでは知らない人とかと喋る事なんで出来ねえよ~、いいんちょが来るまで客来ないでくれよ本当~)
「すいませ~ん」
「うわ客来やがったよチクショウッ!」
「来やがったよって・・・・・・お店なんだから客が来るの当たり前でしょ千雨ちゃん」
「な、何だ朝倉か・・・・・・お前なら大丈夫だわ・・・・・・」

ガムをくちゃくちゃ噛んで、カウンターの前に立っていたのは一応同じ万事屋の一人の朝倉和美。それを見て千雨はホッとしながらカウンターに立つ。
彼女なら知り合いなので問題はない

「ハァ~・・・・・・・で? 何しに来たんだよ」
「そりゃあもちろん買いに来たんだけど・・・・・・・いや~本当に銀さんの代わりに店番やらされてるんだね~」
「うるせえな、お前も万事屋なら店員やれよ」
「アハハハ、私は情報係なのでパスで~それよりいいんちょとエヴァちゃんはいない?」

和美はカウンターから身を乗り出して他の二人を探し始めたので千雨は首をかしげる。

「あいつ等に用あるのか?」
「いや私が用あるのは千雨ちゃんなんだけどね」
「は?」

何やらニヤニヤしながらカウンターに肘をついて自分を指名してきた和美に千雨は嫌な予感を感じる。大体彼女がこういう顔をしているとマシな事を言うはずない、そして案の定

「銀さんとはどんな感じ?」
「お前な~~~・・・・・・」

やはりそんな事だと思ったと、千雨はため息をする。実を言うと自分が一人になっている時は必ず“その手の”話を聞いてくるのが日課となっているらしいのだ。

「大丈夫、私は千雨ちゃん“を”応援しているから」
「何の応援だよひっぱたくぞ」
「だって千雨ちゃんって基本銀さんがいないとテンション低いじゃん、今日も教室でテンション低かったし」

二ヤつきながら和美が追及してくる事に千雨はすっかりイライラした調子になっている。

「あのな、それが素なんだよ・・・・・・」
「ああ、やっぱ銀さんがいるからテンション上がっちゃう感じなんだ?」
「ぐ・・・・・・あ~もういいから早く商品出せやッ! 頼むからどっか行ってくれ調子狂うからッ!」
「アハハハ、はいお金」
「商品は?」
「口の中だけど出す?」
「もう食ってたのかよッ! いやいいわもうッ! 出さなくていいからッ!」

さっきまで噛んでいたガムを和美がカウンターに吐きだそうとしたので、千雨が慌てて会計を済ませてお釣りを渡す。だが和美はそこから動こうとはせずにカウンターに肘をついたままだ。

「銀さん今自宅養成中でしょ~? 看病とかして上げれば良かったのに?」
「茶々丸がいるから問題ねえよ・・・・・・私そういうのやったこと無えし・・・・・・」
「じゃあもし茶々丸さんがいなかったら?」
「エヴァかいいんちょ辺りがやるんじゃねえの?」
「も~そんないつもあの二人に任せていると置いてけぼりにされるよ~?」
「何の置いてけぼりだよ背負い投げしてやろうか・・・・・・」

何か言いたげな和美に千雨が適当に流していると、彼女の後ろからあやかが何食わぬ顔で入ってきた。

「朝倉さん? 何やってるんですか?」
「うわ、良い時にいいんちょが来ちゃった」
「良い時って何ですかそれ・・・・・・・?」
「しょうがない・・・・・・じゃあ千雨ちゃん私帰るから、これからも銀さんの事頑張ってね~」
「何も頑張らねえよッ! さっさと帰れバカッ!」
「はいは~い」

そう言うと和美は楽しそうに千雨に手を振りながら帰って行った。そんな彼女のおかげで疲れたのか、千雨は頭を手でおさえてその場にしゃがみ込む。

「あいつと喋る時毎回あんな話ばっかだ・・・・・・私と銀八は何も無いって言ってるのに・・・・・・」
「何かあったんですか?」
「いや何もなかったよ・・・・・・・」
「?」

何も無かったわりにはどうしてそんなに疲れているのか? とあやかは思っていると千雨がしゃがみ込みながら逆に彼女に質問してくる。

「エヴァはどうしたんだよ?」
「エヴァさんは私が叩き起こしたのでご安心を、ほらエヴァさん早く来て下さい」
「う~まだ眠い~・・・・・・」
「ったく・・・・・・」

まぶたをこすりながらやってきて眠そうにしているエヴァを見て千雨は「何が私に任せろだよ・・・・・・・」と呟いて立ち上がる

「結局食って寝てるだけだぞお前・・・・・・?」
「ふん、めんどくさいんだよこういうのは、初心者にこんなハイレベルな真似出来るか」
「いやレジ打ちはレジ打つ事しかねえから・・・・・・」

自信満々に言うエヴァに千雨がツッコんでいると、カウンターの前に人影が現れる。どうやら早速お客が来たようだ。

「ほらエヴァさん、お客が来てますわよ」
「う~めんどくさい・・・・・・」
「すいませ~んって・・・・・・あれ何であんた等がいんの・・・・・・?」
「貴様か、神楽坂明日菜、昼飯も終わったのにまだ何か食べたいのかお前は?」
「何で私が買う物が全部食い物限定なのよ・・・・・・」

入ってきたのが同じクラスのアスナだとわかった瞬間、エヴァはダルそうににカウンターに小さいので頭だけ覗かせ対応するのだが、いきなり失礼な言葉をアスナに浴びせる。

「あのね・・・・・・私が買うのはボールペンよ、ホラ」

しかめっ面でアスナがコロンと置いたボールペンをじーっと見つめるエヴァ、しばらくして

「言っとくがボールペンの中にある液体は飲んだら死ぬぞ」
「誰が飲むかッ! 私が何でも食うと思ってんじゃないわよッ!」
「じゃあ本体食べる気か?」
「人をスプラッター扱いしないでくれるッ!?」

勝手な思い込みにアスナはエヴァにツッコむがそこを彼女はスルーしてカウンターに置かれていたお金を取ってレジを打とうとしてピタリと止まる。

「・・・・・・おい雪広あやか、私の代わりにレジを打て」
「あなたがやる事でしょそれ・・・・・・?」
「やり方知らん」
「そこにマニュアルがありますから・・・・・・」
「読むのめんどくさい」
「ハァ~あなたどんだけ子供なんですか・・・・・・中学生じゃなくて本当は小学生でしょ?」
「貴様だって中学生じゃなくて本当はとっくに20代いってるんじゃないか? サバ読みにも程があるぞ」
「何ですってッ! 大体あなただって・・・・・・!」
「あの誰でも良いからさっさと私の会計済ませてくれないッ!?」

いきなり目の前で口喧嘩が始まったのでアスナはカウンターに身を乗り出してキレるが二人は全く聞かずに喧嘩の真っ最中だ。

「だぁぁぁぁ! もうそこの二人はどっか行って千雨さんがやってッ!」
「うへ~・・・・・・結局また私かよ・・・・・・」
「早くッ!」
「へいへい・・・・・・」

アスナの言う通り渋々レジを打ちながら千雨は後ろにいる二人を見てため息をつく。
考えてみればそもそもこの二人が一緒に仕事なんて出来るわけない

「・・・・・・はいお釣り」
「どうも、じゃああんた等も何で店番やってるのか知らないけど、早く家に帰りなさいよ」

そう言ってアスナは買ったボールペンを手でクルクル回しながら三人にその手を上げて出て行く。帰りたいなら帰らしてくれ・・・・・・それが千雨の意見だった。

しばらくしてここの部活終わりの生徒達がポツポツと入って来たので、千雨はあやかと交代交代で(エヴァはレジ打ちでは役に立たないので品出し担当)なんとかやっていた

しばらくして外がちょっと暗くなってきた所で客足も少なくなりようやく一段落ついて。千雨はカウンターに肘をついて後ろにいるいいんちょに疲れた調子で話しかける

「・・・・・・いいんちょこれ何時までやらなきゃいけないんだ?」
「どうですかね・・・・・・部活帰りの人達ももういないそうですし、しずな先生が来たら終わりかもしれませんわね・・・・・・・」
「四輪連続ドリフトッ!」
「何であの人はカートで頭文字Dごっこやってるんですか・・・・・・?」

品物を運ぶためのカートを使い、購買部の中でドライビングテクニックを披露しているエヴァをジト目でみながらあやかは呟く。今日あの人が来た意味は本当にあったのだろうか・・・・・・

「もうエヴァさんはいいですほっときましょう・・・・・・」
「すいませ~ん、マヨネーズ一つ」
「あ、はいッ!」

突然カウンターの所から呼ばれた声がしたのであやかは振り向いてカウンターに立つ。
目の前にいた男はどうみてもヤンキーっぽく新田先生と同じく学園内で普通にタバコを口にくわえている。そんな男が右手にマヨネーズのボトルを持っているのは何ともおかしな景色である。
男はあやかに気付いたのかジロジロと彼女の服装を見る

「お前ここの生徒か? 何で生徒が店番やってんだ?」
「私達、万事屋をやっているメンバーなんですけど、今日はここの店番を任せられているんです」
「ああ? 万事屋だと?」
「白夜叉の所の万事屋ですよ土方さん」
「やっぱりか・・・・・・あの野郎、生徒を自分の所の従業員に仕立て上げたのか・・・・・・」
「いつの間に刹那さんいたんですか・・・・・・?」

土方の隣にいきなり出てきた刹那が彼に説明すると、今度は目を細めてあやかを見る土方。
そして隣にいる刹那に顔を戻して話しかける。

「前々から思ってたんだが・・・・・・何で何処の世界の奴もあの天然パーマの下で働く奴が必ずいんだ? あんなちゃらんぽらんの下で働いてもマシな目にならねえぞ」
「確かに上司とするとしたら私は遠慮します・・・・・・・給料とか払うわけ無いと思いますし・・・・・・」

土方と刹那が二人でヒソヒソ話しているのが耳に入らなかったのか、あやかは普通に土方が持ってきたマヨネーズをレジで通して会計を済ませる。

「はいお釣りですえ~と・・・・・そういえばお名前を御存じないのですが・・・・・・・?」
「土方だ、今週からここの警備員をやっている」
「土方さんですか、どうも雪広あやかですよろしくお願いします」

自己紹介した自分にあやかは微笑んで自分も自己紹介する。そんな彼女に土方は少し調子がズレる

(万事屋の野郎の部下のくせに『真撰組』の俺に笑って丁寧にお辞儀だと・・・・・・? 『万事屋』の連中と言ったら、俺達『真撰組』とは犬猿の仲だったのに・・・・・・・)

刹那がゆすっても動かずに、マヨネーズを片手に持って固まる土方にあやかが首をかしげていると、何かあったのかとめんどくさそうに千雨が近づいてきた。

「いいんちょ、どうした?」
「ん? お前は・・・・・・・」
「あ、この人は同じ万事屋の長谷川千雨さんです」

あやかに紹介された千雨をじーっと見て土方は口からタバコの煙を吐いて安心したような表情をする

「やっぱ何処の世界でも万事屋にはメガネだな・・・・・・」
「え・・・・・何メガネって・・・・・・?」
「気にするなメガネ、おいガキ帰るぞ」
「あ、わかり・・・・・・・」
「退け貴様ァァァァ!!」
「え? アダッ!」

少々混乱している千雨を置いて土方は刹那を連れて帰ろうとすると、急に刹那が土方の目の前でカートを乗り回していたエヴァにドンと吹っ飛ばされる。
仰向けで倒れている刹那を見ても、エヴァは反省の影一つも見せずにカートから降りて彼女に近づく。

「退けと言ったのに退かなかった貴様が悪いのだぞ、桜咲刹那」
「き、急に言われて退けるかッ! いい年して何やってるんだエヴァンジェリンッ!」
「暇潰しににやってたんだが思ったよりハマってた」
「本当にこいつが悪の魔法使いって言われていたのか・・・・・・?」
「そういえばお前と購買部で会ったのは、ヤンデレ状態のお前が私をさらいに来た時以来だな」
「人の傷口に塩を塗るなッ!」

刹那は悪態をつきながら腕を組んで踏ん反り返っているエヴァを睨んでいると、エヴァの肩にをガシっと誰かが掴む、その人物は

「ウチのガキ轢いといて詫びの一つも出来ねえとはよっぽど擦れたガキみてえだな」
「誰だ貴様は」
「土方だ、年上にタメ口とは良い度胸じゃねえか。つか何であいつの服来てんだ? コスプレか? 趣味悪いぞ」
「ああ貴様が銀時と茶々丸が言っていた例のニコチン男か、言っとくが貴様と私だと年の差は歴然だぞ、おい桜咲刹那こいつに私の年を教えてやれ」

瞳孔開き気味の土方にガンつかれても全く怖がりもしないエヴァは自信満々に刹那に自分の年を言わせる、だが彼女は

「10歳です」
「はッ!?」
「こいつよりガキじゃねえか、」
「ええ、私よりガキです、だからここは大目に見て上げましょうか」
「違うッ! 私は600年以上生きてるんだぞッ!」

ぶつけられた恨みが残っていたので刹那は土方にウソ報告。それにエヴァは慌てて否定して本当の事を言うが土方はそれを聞いても「はぁ?」と言って全く信じていない様子だ。

「お前が600歳なら俺は6000歳だ、こんなガキに付き合ってらんねえ、帰るぞ」
「いや待て・・・・・・」
「じゃあ長谷川さんといいんちょさん、ここで失礼します、そこのちびっ子もお元気で」
「だから待てと言って・・・・・・ぷぎゅッ!」

帰り出す土方と“してやったり”の顔で彼についていく刹那を止める為に走ろうとするが、自分が着ているのが銀時の着物なのを忘れていたので前につんめのって転んでしまう。
その隙に二人は女子寮へと帰ってしまった。

「うぐぐぐぐ・・・・・・」
「あ~あ何転んでんだよ・・・・・・」
「そんなに転んだら銀さんの着物どんどん汚れてしまいますわ・・・・・・」

倒れているエヴァを千雨が立たせてあげて、あやかが心配(銀時の着物の方)していると、ツカツカと廊下を歩いてくる音が聞こえてくる。

「ごくろうさま、もう大丈夫よ」

歩いてきたのは依頼主のしずな先生だった彼女は何やら入っている大きなビニール袋を何袋か持って三人の前に現れる。

「しずな先生ッ! じゃあもう帰って良いんですかッ!?」
「やっと帰れるわ・・・・・・・」
「くそ・・・・・・あの鳥女と狂犬みたいな男・・・・・・次会ったら見てろよ・・・・・・」

あやかと千雨が安堵の表情を浮かべている中、エヴァは一人だけ悔しそうな表情を浮かべていると彼女にしずな先生がニコニコした表情で近づいてくる

「坂田先生の代役としてよく頑張ったわね」
「ふ、ふん・・・・・・」
「そいつ、食品を食い散らかしてただけですよ?」
「さっきカートで人身事故も起こしてました」
「お前等黙・・・・・・・」

いらん事を言う千雨とあやかにエヴァが怒鳴ろうとした時、しずな先生は彼女の手を取り少しも気にしていないと優しく頷く。

「困るのは学園長だけだから」
「何か最近ジジィの事が哀れに感じてきた・・・・・・」
「別に同情する人でも無いわ、はい、これは依頼料ね」
「ん? 何だそのでっかいビニールは・・・・・・うおッ!」

しずな先生が差し出した大きなビニール袋を受け取った瞬間、ぐいとかなりの重さがエヴァの手にのしかかる。一体何が入ってんだと彼女がビニール袋の中身を覗いてみると

「カボチャ・・・・・・・? これが依頼料だと言うのか?」
「私は別にお金で払うなんて言ってないわ、おばちゃんにいっぱい貰ってたから処分するのに困ってたのよ」
「ふ、ふざけるなッ! こんな重たい物全部持って帰れだとッ!? そこの部下二人ッ! 報酬を分けてやるからありがたく思えッ! ていうか全部やるッ!」

次々としずな先生にカボチャ入りビニール袋を渡されるのでエヴァはあやかと千雨に全て譲ろうとするが、彼女達は同じタイミングで首を横に振る。

「私達って元々銀さんからそういう報酬とか貰わないので、それは全部代理オーナーの貴方の物になりますわ」
「良かったな毎日カボチャ食い放題じゃねえか、じゃあな」
「いや待て逃げるなァァァァ!! この・・・・・・むぎゅッ!」

即拒否してさっさと帰宅しようとするあやかと千雨を捕まえようと、帰っていく二人を走って追いかけようとするが、彼女は再び銀時の着物を足に引っ掛けてしまい再び転んでしまう。

「イテテテ・・・・・・これで何度目だ・・・・・・?」
「じゃあ私も失礼しようかしら」
「えッ! 待てこんなカボチャ持って帰れるわけ・・・・・・ってもういないッ! どこの上忍だあいつッ!?」

エヴァが立ちあがって後ろを振り向いた瞬間には既にしずな先生は消失しているという、なんとも奇妙な現象に、そして自分の手や腕、首に引っ掛かっているカボチャ入りビニール袋だけが彼女の元に残ったのであった。


















「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

すっかり夜になりエヴァは息を苦しそうに上げながら帰路に着いていく、大量のカボチャを持って・・・・・・

「くそ・・・・・・やはり雪広あやかや長谷川千雨なんかとツルんでもロクな目に会わん・・・・・・どいつもこいつもオランダも・・・・・・学園の奴等全員私の事ナメてるんじゃないのか・・・・・・?」

ブツブツと小言を言いながらカボチャ達を落とさないようあっちへフラフラこっちへフラフラしながら我が家へと帰って行く

「銀時~・・・・・・・」

額の汗を拭いながら思わずエヴァは泣きそうな顔で同居人の名前を小さく叫ぶが助けに来るはずがない。現在銀時は家で療養中である。

「来るわけないか・・・・・・」
「お~いたいた」
「ん?」
「ったくよ・・・・・・何でお前そんなカボチャばっか装備してんだコラ? カボチャ防具か? スキルどんなの着くんだよオイ?」
「え・・・・・・?」

エヴァはため息をついて顔を上げた時目の前から男が歩いてくる。額には冷えピタを貼りまだダルそうにしている坂田銀時と自分の従者の茶々丸の姿がそこにあった。

「遅えから心配して来てみたら・・・・・・何でそんなに体中にカボチャ袋引っ掛けてるんだよ? 茶々丸、代わりに持ってやれよ」
「了解しました銀時様」
「ぎ、銀時・・・・・・? 風邪は大丈夫なのか・・・・・・?」
「そいつの作ったバカデケェお粥食った後に薬飲んで寝たらよ、結構良くなってな。まだちょっとダリいけど・・・・・・」

ボリボリと頭を掻きながら銀時が事情を説明しているうちにエヴァが持っていたカボチャは全て茶々丸が回収する。

「マスターはいつからこんなカボチャ好きになったのでしょうか?」
「ち、違うッ! 依頼料がその大量のカボチャだったのだッ! 仕事して貰ったのが“それ”だぞッ!」
「んだよオイ、しずな先生随分とお茶目だな」
「何がお茶目だッ! 私が色々やっている時にお前は家で寝て・・・・・・・このッ!」

カボチャが無くなって身軽になったエヴァはそのまま銀時の背中に飛びつく。いきなりの彼女の行動に銀時は「うおッ!」と不意を突かれる。

「何俺の背中に乗ってんだコラッ! 降りろッ! 病人だからデリケートに扱えッ!」
「何が病人だそんなに吠えてッ! 私だって疲れてんだ、お前の代わりに働いて上げたんだから少しは労えッ!」
「ったく・・・・・・しょうがねえな・・・・・・・」

落とそうとしても彼女はガシっと自分の首に手を回して落ちないので、銀時は観念したのかそのままエヴァをおぶって道を歩いていく

「千雨とあやかと仲良くできたのかお前?」
「仲良くなんて出来るか、あんな奴等・・・・・・この私に向かって怒るわ、嫌味を言うわ、喧嘩売ってくるわ、この闇の福音に向かってよくもあんなに気安く接してきおってッ! だが・・・・・・」

銀時におぶられながら彼の後頭部に自分の頭をくっつけて、エヴァは少し照れた顔で。

「ああいうのも・・・・・・悪くはない・・・・・・」
「そうか、お前があいつ等と仲良くできて安心したわ」
「仲良くなんてしてないって言ってるだろッ! 雪広あやかはいちゃもん吹っかけてくるわ、長谷川千雨はメガネのくせに私に口出しするわ・・・・・・」
「そういう奴等がいるから世の中悪くねえと思えるんだよ、気軽に喋れて一緒にバカ出来る仲間の一人や二人、いても良いんじゃねえか?」
「・・・・・・フン、じゃあ私達はお前の“ソレ”に入るのか?」
「へ、言うまでもねえだろ」
「そうだったな」

銀時が少し笑ってこっちに振り向いたのでエヴァも思わず表情を和ませる。

二人はそのまま少し笑っている茶々丸と一緒に、三人でまっすぐ我が家へと帰って行くのであった。


















教えて銀八先生のコーナー
銀八「一通目ノリさんからの質問」

『トッシーへ...トッシーはこの世界に来てどんな印象を持ちましたか?
やっぱりトッシーにとってネギま世界は桃源郷(シャングリラ)ですか?遠き日の理想郷(アヴァロン)ですか?それとも幻想郷ですか?Gストーン何個分かで表して下さい(Zメタルでも可)
あとこの質問はあくまで『トッシー』に聞いているのであって『土方さん』はその間ココアシガレットかマヨネーズでもしゃぶっていてください』

トッシー「拙者の夢であった、文字通り次元の違う世界に来れたので凄く嬉しいでござるッ! だが十四郎の体を奪えなくてまだ一回もこの世界を満喫していない・・・・・・早く様々な萌え要素を持つ少女に会いに行きたいでござるッ!」
千雨「銀八、警察に電話した方がいいんじゃね・・・・・・?」
トッシー「待つでござる、長谷川氏ッ! 拙者は危険ではないッ! ただ一人のピュアな生命体でござるッ!」
千雨「いや長谷川氏って何だよ・・・・・・」
銀八「ていうかGストーンとかZメタルとかって何・・・・・・・?」

銀八「二通目、ウィルさんからの質問」

『今回も千雨、それといいんちょとエヴァに。銀さん超ラブなお三方(千雨は絶対否定すると思うけど)ですが、夢の中で銀さんが出てきたことってありますか?出来れば健全な内容であることを願いますが』…

千雨「夢の中か・・・・・・銀八が凄くまじめになって『ツッコミとかばっかしてないでもっと勉強した前よキミ~』って言われるわけのわかんない夢なら見た事あるな・・・・・・」
あやか「わ、私は・・・・・・・自分の家族に銀さんを紹介する夢を・・・・・・」
銀八「え、ごめん後半よく聞こえなかった、何て?」
あやか「な、何でもありませんッ!」
エヴァ「私は○○して○○で更に○○に会って更に銀時は○○になり○○を・・・・・・」
銀八「強制終了ォォォォォ!!!」

銀八「ハァ~・・・・・・三通目エンジンさんの質問どうぞ」

『あやかさんに質問。ご飯にあんこの組み合わせは最悪ですが、それ以外の甘いものは好きですか?あったら教えてください。できれば千雨、エヴァも』

あやか「女の子ですので基本的に甘いものは嫌いじゃありませんわ、しいて言うなら洋菓子系統です」
銀八「俺は和菓子派なんだけどな」
あやか「えッ!? じゃあ今日から和菓子派になりますッ!」
銀八「何で?」

銀八「四通目、サハリンさんの質問」

『銀ちゃんに質問があります。
ワンピースに出てくる能力(悪魔の実も可)があったらどんな能力を使ってジジィを痛めつけますか?ちなみに僕はドクドクの実を使ってジジィを苦しませながら最後に殺します。』

銀八「ゴロゴロの実でマラガンぶっ放すとかスナスナの実で元々干からびてるジジィの体を完全にミイラ状態にする手もあるが・・・・・・最近ジジィにはやりすぎたなと後悔してるし・・・・・・・」
千雨「お前でもそういう感情あったんだ・・・・・・」
銀八「ここはヤミヤミの実で、ジジィの一片の欠片もこの世に残さずあっという間にあの世に送ってやろうと思う」
千雨「それがやりすぎなんだよッ!」

銀八「五通目~白夜叉さんからの質問」

『なんだかネギが、強くなるための修行を始めたみたいですが、銀さんからネギへアドバイスとかありますか?
なんだったら、銀さんが昔していた修行法ほ伝授されては?
きっと、某サ〇ヤ〇や某〇リ〇ンみたいに強くなる事うけあいですよ。』

銀八「何お前、そんなめんどくさい事やってんの?」
ネギ「めんどくさいって・・・・・・・まあ一応・・・・・・・」
銀八「だったら良い修行法あるぞ」
ネギ「本当ですかッ!?」
銀八「まずここにインストラクターを用意して・・・・・・」
ネギ「何ですかそのタフガイそうな人はッ!?」
銀八「そしてこの『銀』と書いたインストラクターを外に投げると」
ネギ「何でインストラクターを投げるんですかッ!?」
銀八「投げたら結構飛ぶぞオラァァァァァ!!」
ネギ「インストラクタァァァァ!!!」
銀八「よし拾ってこい、この修業は人命救助にも繋がる練習だ」
ネギ「人命救助にも繋がる修業ってまんま人命救助じゃないですかッ! 急いで助けにいかなきゃッ!」

銀八「じゃあネギがインストラクターを探している内に六通目、蛙さんの質問」

『質問です
銀さん。マダオさん(長谷川さん)はこちらには来ませんか?
苗字繋がりで「千雨の親族」という設定でいけると思います』

銀八「長谷川さんは現在・・・・・・すみませんこうゆうのネタばれになるのでノーコメントで」
千雨「マダオ? 誰だそれ」
銀八「んま~いつか会えるんじゃね?」
あやか「まるで出してもらえないおっさんなら知ってますわよ」
千雨「それは高畑先生だろ・・・・・・」

銀八「七通目、風の都さんからの質問」

『質問です
あやかさんへ
銀さんと二人きりで旅行に行けるとしたら、どこに行きたいですか?
(金髪ロリばあさんは呪いの為、外には出られないので妨害される心配はありません)』

あやか「え~と・・・・・・私が今一番行きたい所は銀さんの世界ですわね」
銀八「いや無理無理無理、お前と二人きりで歩いている所をかぶき町の奴等に見られたら変な目で見られるから」
あやか「まあエヴァさんなら危険な香りはしますが私は大丈夫ですわ」
銀八「無理無理無理無理、誤解されるよ~間違いなくかぶき町の奴らに誤解されるよ~ババァなんか祝儀持ってくるよきっと~」
あやか「し、祝儀ッ!?」
銀八「そうそう、だからお前と二人だけで江戸に行くのはちょっと・・・・・・・あれ? あいつ何処行った?」
千雨「顔真っ赤にして走って逃げた・・・・・・」


銀八「続いて~八通目、正宗の胃袋さんからの質問」

『糞天パに質問、東方よろずやで好きなキャラクターを教えてください。(オリキャラも可)理由も入れて、俺は紅 美鈴と撫子です。理由は凄くかわいいからです。一目惚れです。』

銀八「誰が糞天パだ全国の天パに謝れ、随分前に言ったよなコレ? 俺が好きなのはアオと撫子、イイ話が多いんだよあいつ等、泣けるよ本当、涙腺崩壊だよ、良い子だとあいつ等、あと他に好きなキャラは・・・・・・まあ銀さんだな、いや~カッコいいよ彼」
千雨「それ自分だろうがッ!」

銀八「九通目、さるめさんからの質問」

「焼肉、ごちになりました…なんて言うか、人の金で食う肉って旨いっすわ…ほとんど俺が一番食べててすんません。また、誘ってくださいね?」

銀八「うん質問じゃねえな、こういうの注意してね本当」
千雨「ていうかこんな人いたっけ・・・・・・・?」
あやか「さあ・・・・・・」
銀八「いや待てよオイ~飯代が余計に増えてたからもしやと思ってたが・・・・・・・、」
龍宮「あ、バレたか?」
千雨「オメーかよッ!」

銀八「ラスト十通目、剣聖さんからの質問です」

『アスナとネギはいつになったらイチャつくんですか!?本人達にも聞きたいです!ネギ!教師と生徒なんて関係ないぞ!アスナ!ショタコンとか気にするな!』

ネギ「いやいやいやッ! 教師と生徒でそういうのはヤバいですよッ!」
アスナ「何真面目に答えてんのよ・・・・・・アンタと私に何かあるわけないでしょ・・・・・・」
木乃香「でも最近アスナ、ネギ君が出かけてると少し寂しそうやったで」
アスナ「ちょっと木乃香ッ!?」
ネギ「アスナさん・・・・・・」
アスナ「だぁぁぁぁぁ!! せいッ!」
ネギ「あだッ!」
千雨「照れ隠しでチョップするなよ・・・・・・」

銀八「次回、第三章・二十三訓『アイドルだって喜怒哀楽がある人間なんだよ』」



[7093] 第二十三訓 アイドルだって喜怒哀楽がある人間なんだよ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/09/27 10:35
長谷川千雨は、麻帆良生徒の女子寮の部屋に一人で住んでいる。表の顔は何処にでもいそうな地味な学生なのだが一度家に帰ると・・・・・・


「は~い! みんなのアイドルのちうたんは夜も元気だぴょ~ん!」

夜の女子寮で千雨はいつも付けているメガネを取り、外を出る時は絶対にしない化粧までして、服を着替えて一転し、彼女ははパソコンの前に座って、普段は絶対に言わない口調を使いながら、物凄く早いタイピングで文字を打ち込んでいく。何故なら彼女の裏の顔は

「今日はね~みんなに見せようと思ってゴスロリ衣装を着てみたの~! 黒がメインで白がちょっと混ざった衣装だぴょん、 今から写真とるから待っててね~!」

千雨が今開いているホームページの名前は「ちうたんのホームページ」これは自分が立ち上げたサイトであり、彼女はそこでは表の地味さとは全く正反対のネットアイドルを演じている、これを知っているのはただ一人・・・・・・・

「え~と・・・・・・カメラ何処置いたっけ・・・・・・?」
「ちゆたん、ちうたん、こっちこっち、はいチーズだぴょ~ん」
「は~い」
「イイよ~ナイス笑顔、これで今月もネットアイドルランキング一位じゃねえの~? でも銀さん的には黒いゴスロリを着てるなら黒い翼生やすとか、髪の毛銀髪にするとか、やってくれるともっとイケると思うぴょ~ん」
「そうですか~? じゃあ明日アキバで買いに・・・・・・って何してんだテメェェェェェ!!!」

突然素に戻って、千雨はドロップキック。対象物はどさくさに普通に部屋に紛れて、カメラのシャッターを切る一人の白衣を着た男。
坂田銀八、千雨のクラスの副担任でもあり万事屋のオーナーであり千雨が唯一信頼している男。そして彼女の事実を唯一知っている男でもある。

「おいおい、ノリツッコミも出来るようになったのかよ、お前どんどんツッコミのレベル上がってんじゃん、もうネットアイドルじゃなくてツッコミアイドルで売り出してみろって、ヒットするぞ間違いなく」
「うるせえよッ! ていうかどうやって入ってきたんだよッ!? ドアは今回は閉めてるはずだぞッ!」
「そりゃあお前、ドアが入れなかったら窓から入ればいいじゃない? という格言を元にここまで来たんだよ」
「どんな泥棒テクを身に付けたアントワネットッ!? 不法侵入罪で訴えるぞッ!」

銀八の言う通り、窓が少し開いているので、自分が気付いていない内にここから壁を登って入って来たのだろう。どういう神経をしているんだこいつは・・・・・・と思いながら、千雨が窓をバタンと閉めて振り向くと、そこには普通に彼女の部屋でくつろいでテレビを見ようとする銀八の姿が。とりあえず千雨は深いため息を吐いた後、ゴスロリ衣装のまま彼の隣に座る。

「何しに来たんだお前・・・・・・?」
「へ~ヘキサゴンで普通にフジモンとユッキーナ共演してるよ、大丈夫なのかコレ? 大丈夫なのか紳助さん?」
「いやヘキサゴンじゃなくて・・・・・・」
「最近この番組見てるとさ、クイズの方じゃなくてそっちの方が気になるんだよね? イケるのあの二人? 庄司みたいにイケるの? 陣内みたいに破滅とかしねえよな?」
「おいこっち向けってッ!」
「うおッ! うるせえよッ!」

話を全く聞こうとせず、テレビ鑑賞に浸っている銀八に千雨は彼の耳元で叫んでこっちに向かせる

「で? 本当は何しに来たんだ?」
「ネットアイドルを頑張っているちうたんを応援しにきたんだぴょん」
「ウソつけッ! つーかその喋り方止めろッ!」

何故かとぼける銀八を見て、千雨は目を細めて銀八に最後の追及をする。

「で? とぼけるんじゃねえぞ、何で私の部屋に侵入してきたんだ?」
「千雨・・・・・・」
「な、何だよ急に真顔になって・・・・・・・」

急に真顔になって自分を見つめる銀八に思わず千雨は座りながら身を固ませる。
そして次の瞬間、銀八は両手を床につけて

「俺を今晩ここに泊らせて下さいッ!!」





「・・・・・・は?」

目の前で思いっきり土下座して必死に懇願する銀八に、千雨は口をポカンと開けてわけがわからずただ呆然とするだけだった

















時は数時間前に戻りエヴァの家にて

「私が冷蔵庫にしまっていた大量のチョコが姿を消した、食べた奴は正直に手を挙げろ、今なら3分の2殺しで許してやる」
「マスター、3分の2はほとんど死んでいます」
「おいおい、京都で謎の忍者が目撃されたってよ、俺達の世界では結構いたけどこの世界にも、普通にいんのこうやって忍者? いやまあウチのクラスに忍者疑惑お奴出てるし、つーか完璧忍者だし、あー世の中もう忍者だらけだよ、NARUTOの影響どんだけ受けてんだよ」
 
エヴァが喋っているにもかかわらずまだ白衣を着ていた銀八はソファに寝転がって新聞を読みながら天を仰いでいる。鼻から血を出して・・・・・・

「おいどうした幸せそうに鼻血垂らして? 美味かったか? 私のチョコ美味かったか?」
「そんなチョコ食って鼻血出すなんて、今時そんなベタなの無いっすよ先輩」
「誰が先輩だ、ここにいる奴らの中で物を食べる事が出来るのは私とお前だけなんだよ」

鼻血を流す銀八の顔をむんずと掴んで尋問に入るエヴァ、銀八は顔を掴まれた状態でなおもすっとぼける

「食べられない? いや待て茶々丸はきっと色々食ってるよ、あいつお前のいない所でモリモリ食ってるよ? ぜってー隠れてミスドやモスみたいなおしゃれな店に行ってるよ?」
「こいつはロボットだから食べ物は必要ないんだよ」
「じゃあチャチャゼロだ、あいつ食い意地悪そうじゃん、絶対食ってるよ間違いなく」
「あいつも茶々丸と同じで食べ物はいらん」
「マア酒ハ飲ムケドヨ~チョコトカソンナガキミタイナノ食ワネエヨ、ゴ主人ジャアルマイシヨ」
「チャチャゼロ、お前も後で処刑」

銀八の顔を掴んでいるエヴァの後ろでケラケラ笑っているチャチャゼロ
チャチャゼロは後でやるとして・・・・・・そう思いエヴァは銀八に顔を近づけていく。

「お前食ったよな? 銀時?」
「エヴァ・・・・・・・実を言うと俺の正体は侍ではなく、この世の悪を抹殺するために生まれた忍者なんだよッ!! 本当はあのチョコには猛毒が入っていて俺が処理するためにそこにあるチョコ全部食って・・・・・・むぐッ!」
「何で猛毒入りが入っているチョコ食うんだよ・・・・・・!? 最近どんどん調子に乗って来たな、そろそろお灸をすえてやらなければならんのか・・・・・?」
「お灸だァ~? 調子乗ってるのはお前じゃねえのッ!? チョコ食いました、それがどうしたんですかッ!? あ~美味かったよッ! チョコ美味かったよッ! 銀さんの口の中を満足に満たしてくれたよッ!」 

顔の頬を思いっきり掴まれて、ついに本当の事を言った銀八にエヴァは勝ち誇ったような顔を見せる。

「やっと白状したな・・・・・・つまみ食いした罪は重いぞ」
「何だよ・・・・・・? つーかお前も前回やってなかった?」
「今日は外で寝ろ」
「は?」
「茶々丸」
「了解しました」
「いや待てってオイ・・・・・・のおッ!」

銀八が何か言う内にエヴァの命令で茶々丸は彼を窓からほおり投げる。地面に大の字で倒れる銀八に、窓から顔を覗かせてきたエヴァが喋りかける。

「罰として今日は野宿で過ごせ、じゃあな」
「いやちょっと待てってッ! おいッ!」

立ちあがった銀八はエヴァに向かって走るのだが、彼が窓に手をかけようした瞬間ピシャッと目の前で閉められた。

「ふざけんじゃねえよおい・・・・・・あのガキどんだけチョコ好きなんだよ・・・・・・スモークチーズじゃねえのかよ、しょうがねえ・・・・・・あいつの家にでも行ってみるか・・・・・・」

ブツブツと小言を言いながら銀八は夜の中を歩いて目的地へと行くのであった。















「で? エヴァと痴話喧嘩して追い出されて・・・・・・その目的地がどうして“私の所”なんだよ・・・・・・・?」
「お前一人暮らしだろ? あやかの所は他に女子二人いるから居心地悪そうだし、それに引き換えここにはネットアイドル一人、寝るならここの方がいいだろ」
「あのな・・・・・・」

銀八の話を聞き終わった後、腕を組んで聞いていた千雨は頭を掻いてどうしたものかと考える。

「生徒の一人の家に上がりこむ教師なんてお前ぐらいなもんだぞ・・・・・・」
「安心しろよ、俺は子供に興味無えから、間違いは起こさねえ」
「どうだかね・・・・・・・ハァ~もういいわ・・・・・・部屋汚すんじゃねえぞ」
「へ?」
「一泊だけだからな・・・・・・」
「マジでヨッシャァァァァ!! 野宿しなくて済んだァァァァ!! いや~やっぱ同じ長谷川でも家がある長谷川は違うわ~」
「どういう意味? まあいいや・・・・・・私ちょっと着替えてくるから・・・・・・」

そう言い残して千雨はガッツポーズを上げている銀八を部屋に残してシャワールームの所へ着替えを持って行く。彼がいる目の前で着替えをするわけにもいかない

「痴話喧嘩に巻き込みやがって・・・・・・まさか男と同じ部屋で寝る事になるなんてな・・・・・・」

千雨はゴスロリ服を脱いでパジャマに着替えながら、ボソリと呟く

「あいつって・・・・・・一体私の事どう思ってるのかな・・・・・・・?」

化粧を水洗いで下ろして、いつものメガネをつけて鏡を見ながら自分に問いかけるように呟く。

だがその答えは本人にしかわからないのであった












第二十三訓『アイドルだって喜怒哀楽がある人間なんだよ』

千雨は着替えを終え、部屋の中の物をほとんどシーツで隠して誰が着てもまさかここでネットアイドル活動していないような雰囲気にし、ただの殺風景な部屋に変えた後、銀八と共にテレビゲームをしながら時間を潰していた。

「まあな~お前って気軽に友達を部屋に呼べる性質じゃないのはわかるよ、だってネットアイドルとかなんとか変なのやってる人間だし? 人には言えないような恥ずかしい事だと言うのは知っているけどよ、でもそういうのも全てさらけ出せばいいじゃない? あいつ等お前みたいに変な奴ばっかの集団なんだからさ、簡単に受け入れてくれるよ?」
「誰が変なのやってる人間だよ・・・・・・お前だって変人だろうが・・・・・・!! 夜中に女の部屋に忍び込んでくるなんて立派な変人だろうが・・・・・・!!」
「いや待て待て待て、ハメは駄目だよハメは、俺格ゲーとか慣れてないんだからさ~、しかも俺が選んだキャラただ俺と声が同じだからっていう理由だけだからね~コマンドとか全然わからないんだからね~」

格ゲーをやりながら千雨と会話をする銀八は必死にテレビを見ながらコントローラーで操作するのだが、彼と比べて千雨はかなりのゲーマー、基本負けなしである。彼に話しかけられても彼女はコントローラを巧みに操って銀八が見たこと無いコンボでフィニッシュ。
その瞬間銀八は深くうなだれる

「何でお前こんなに強いんだよ・・・・・・一緒にやる友達もいねえのに・・・・・・俺等とエヴァの家でスマブラやる程度なのに・・・・・・」
「よ、余計なお世話だッ! このゲームはオンラインもあるからネット上で顔も合わせずに戦えるんだよッ!」
「結局ネット絡みかよ・・・・・・・ネットの交流もいいけど、リアルでも色んな奴と交流しろよ」
「んだよ、別に良いだろ・・・・・・私はお前達と交流で精一杯なんだよ・・・・・・」

千雨が過去交流が深い方なのはあやかやエヴァ、和美、そして一番交流が深いと思われる銀八という何とも寂しい人間関係を作っている。しかしこれでも彼女にとっては劇的な変化だ。

「ったく、私ってお前がここに来るまではずっと一人でいたのによ・・・・・・お前と初めて出会った瞬間から私の人生が思いっきり変わっちまった・・・・・・・」
「ああ、俺がお前と最初に会った時ね、スクーターで轢いた時?」
「そうだよ・・・・・・あの前でもお前の印象最悪だったのにあれで更に悪化したんだよ・・・・・」

銀八と千雨が初めて顔を見合わせたのはずっと前、校庭を歩いていると突然後ろから銀八がスクーターで体当たりしてくるという。ラブコメの展開を思いっきり突き抜けた出会いだった。

「今だから言うけど、私ってお前の事嫌いだったんだぞ、無神経でちゃらんぽらんでバカで腰に木刀差している変人の中の変人・・・・・・そんな奴がここに来た瞬間、全てが終わったなって感じたな・・・・・・」
「お前、俺の事そうだと思ってたの?」
「今でも思ってるよ」
「殴るぞオラ」

千雨がスクーターで轢かれたその日に、彼女は早退してこの部屋に戻っていつものネットアイドルの活動をしていた時に彼が突然部屋に入って来たのだ。
それにより彼女の歯車が狂いだす。

「あの時は、ここでお前とこうやって一緒にいるなんて想像できなかったな・・・・・・」
「まあ人の人生なんて小さな石ころ踏んだだけで変わっていくもの何だよ、わかったか?」
「私にとってお前は石ころじゃ済まないんだけど? 超ド級の大岩なんだけど?」

話をしながら千雨はゲーム機の電源を切って、押し入れから毛布を一枚取り出し銀八にほおり投げる。

「それ布団に使って床で寝てくれ、じゃあ」
「おいおい、何お前ベッドに入ってもう寝ようとしてるの? まだ9時だよ、テレビ見てみろよ世界仰天ニュースやってるよ? 『扇風機おばさん』とかすっごい怖いのやってるよ?」
「いいよもう、基本この時間は私のホームページを更新するのに、お前がいるから出来ねえんだよ」

千雨がベッドに入って布団に潜り込んだので銀八が潜り込んでいる彼女んに近づいて揺らして起こそうとする。ちなみに銀八が言っている『扇風機おばさん』というワードを絶対に検索してはいけない。

「お前まだ夜は終わってねえよもっとはしゃげよ、普通人が泊まりに来たらテンション上がってオールで遊ぶもんだろ? おら起きろよスマブラ大会と桃鉄大会とかやってねえんだぜ」
「子供かよ・・・・・・つうか大会ってそれ全部4人でやるもんだろうが、2人でやっても盛り上がらねえよ・・・・・・」
「んだよじゃあもう2人連れてくればいいんだろ」
「へ・・・・・・?」

銀八が言った事に思わず千雨は布団から顔だけ覗かせる。なんだか凄くいやな予感がする・・・・・・そう思っていると彼は千雨の反対方向へと歩いて目の前にある壁に向かって

「オラァァァァ!! 起きろバカ共ォォォォ!!」
「何してんだお前ェェェェ!!」

助走をつけて壁に向かってとび蹴りを行い、その瞬間部屋中に振動が響き渡る。
いきなり何するんだと千雨が銀八に怒ろうとした時、隣の部屋からバタンッ! と勢いよくドアを開ける音が聞こえ、次の瞬間この部屋のドアを力強く叩く音が聞こえてくる。
驚いている千雨を尻目に銀八は「お~来た来た」と玄関へと歩いて行く。

「おら開けろコラッ!」
「白夜叉ッ! 何でお前が隣にいるんだ開けろッ!」
「うるせえな、はいはい今開けますよ」

銀八がドアを開けるとそこにいたのは不機嫌そうな様子の土方と刹那が二人して息を荒げている。土方は寝巻用の着物で刹那はパジャマ。どうやらもういつでも寝る体制に入っていたらしい。

「早かったな、お前等」
「てめぇ仕事オフだから『世界仰天ニュース』見てるって時に壁蹴って驚かすとは良い度胸じゃねえか・・・・・・何がやりてえんだコラ?」
「私なんかいきなり壁から白夜叉の叫び声が聞こえてきたから、飲んでたお茶吹き出したんたんだからな・・・・・・」
「まあまあお前等の言いたい事はわかる、いきなり呼びだして悪かったのも認める、でもこっちもかなり深刻な状況だからさ」
「深刻な状況だぁ・・・・・・? お前が女子寮の部屋にいる事自体“深刻な状況”だろ」
「それ貴方が言えますか・・・・・・?」

銀八に言い分に土方がツッコんで更に刹那が彼にツッコんでいると、銀八が二人を部屋に上がるよう誘う

「とりあえず立ち話もなんだ、上がれよ」
「おい銀八ッ! 何人の部屋に上がらせようとしてんだよッ!」
「あ、万事屋の所のメガネ」
「ああそういえばここ千雨さんの部屋でしたっけ?」
「そうだよッ! 銀八いい加減にしねえと追い出すぞッ! アンタ等も帰っていいからッ!」

慌てた様子で千雨が玄関に入ってきて土方と刹那を帰そうととするが、彼女の肩に腕を巻いて銀八が一旦玄関から離れてリビングに戻る。

「いいか~? これはお前の為でもあんだぜ、万事屋の所しか交流の場が無えお前に、こうやって万事屋メンバー“以外”の奴等とも交流も深めていけばいつの間にか他の奴等ともツルめる事を覚えて友達ゲットだぜ、的なノリが成立するんだよ」
「いいよ私はッ! そういうコミニケーションとか必要無えからッ! 友達もいらねえしッ!」
「しょうがね~な、ここはシャイな生徒の為に教師たる俺が手助けしてやるか、おら上がれよお前等」
「オイィィィィィ!!」

勝手に2人を再度呼ぶ銀八に千雨が叫ぶも土方と刹那は、靴を脱ぎ捨ててリビングに入ってくる。

「何だこれ?随分と殺風景な部屋だな」
「千雨さんこのシーツ何ですか?」
「だぁぁぁぁ!! それめくるなッ!!」

ブツを隠しているシーツに刹那が手をかけようとした時、千雨がそれを全力で阻止する。
バレたら非常にマズイ物がここにはいっぱい転がっているのだ、もし一つでも見られてしまったら千雨は二度と外に出たがらないであろう。

(銀八の奴本当に何考えてんだッ! もしこいつらにバレてもしたらもう国内歩けねえよッ!)
「あれ仰天ニュースって何チャンだ?」
「6か4ですよ」
「お前等は人の部屋で勝手にテレビいじってんじゃねぇぇぇぇ!!」

土方と刹那が千雨の部屋にも関わらずテレビを見始めていると、銀八が二人に近づいて肩に手を置く。

「今は仰天ニュースは置いとけ、実はなぁゲームの対戦やりてえんだけど2人足りなかったんだよね~、だから暇そうなお前等を誘ったんだよ」
「はぁ? ゲームだ? 何言ってんだお前? 深刻な状況ってゲームの相手いないだけかよ、お断りだテメェ等と遊んでられっか」
「暇そうなお前等ってお前の方が年中暇してるだろ、付き合ってられん」

やはり二人とも銀八の誘いを断る。元々銀八とは相性の悪い二人、素直にうんと言うわけがない。
これで銀八も諦めてくれるかな・・・・・・っと千雨が淡い期待をするのだが、残念な事に彼にとってこれは予想範囲だった、銀八は突然二ヤつきながら二人を見る。

「何だお前等俺にゲームで負けるの恐いのか?」
「あ? 今なんつった・・・・・・?」
「負けるのが恐いだと・・・・・?」
「まあ別にこのまま帰っていいけど~つまりそれは俺に負けるのを恐れて逃げたって意味になるわけで~それでいいならどうぞお帰り下さ~い」

その言葉に土方と刹那の頭の血管がプチっと切れた。

「上等だテメェ・・・・・・後で後悔すんじゃねえぞ・・・・・・」
「そこまで言われて帰るわけにはいかない・・・・・・!」

二人して喧嘩腰になる土方と刹那に銀八は満面の笑みで「そうこなくちゃな」と言った後、後ろでポカーンとしていた千雨に近づいて耳元で小声で話しかける。

「・・・・・・ほら見ろ、こいつ等って筋金入りの単純構造だからよ、すぐ食いつくんだよ本当こういう台詞にさ~・・・・・・・」
「・・・・・・つまりお前と同じか・・・・・・」
「・・・・・・・俺は違えよこいつ等見たいな単純構造じゃねえもん、精密構造だからね銀さんは・・・・・・」
「・・・・・・はいはい・・・・・・」

銀八の意見を軽く受け流した後、千雨はもう諦めてため息をつく

そして銀八、千雨、土方、刹那の4人による。夜中のゲーム大会が始まったのであった。


















「死ねェェェェェェ!! 万事屋ァァァァァ!!」
「うっせえよお前が死ねッ!!」
「あれ・・・・・・ジャンプって何ボタンですか?」
「お前ゲームした事無えなら何でここいんだよ・・・・・・ていうかもう2時間プレイしてんだからいい加減覚えろよ・・・・・・」
「白夜叉に挑発されたのが悔しくてつい・・・・・・私剣術以外の勉強は不足していて・・・・・」

土方と銀八が互いにテレビに向かって叫びながらコントローラを押しまくる。それに引き替え、刹那はゲーム自体未経験者なので事あるごとに焦って隣のベッドの上で横になりながらゲームをしている千雨に質問してくる。

「千雨さんってゲーム得意なんですね、白夜叉や土方さんも近づけないぐらい強いじゃないですか」
「ま、まあ大した事じゃねえよ・・・・・・」
「おいマヨッ! さっさとくたばっちまえよッ! つーかお前がリンク使うんじゃねえッ! 無双の政宗とBASARAの政宗でごちゃごちゃになるだろうがッ!!」
「うるせえなッ! お前なんか侍のくせに何でファルコンなんか使ってんだよッ! 侍なら刀を使え刀をッ!!」
「お前等少し静かにしろォォォォ!!!」
「いえ千雨さんのツッコミも静かにした方がいいのでは?」

吠えながらゲームをしている土方と銀八に千雨が静かにしろと叫ぶ。こんな大声で叫ばれたら他の女子寮に住んでいる人達に何事かと思われてしまう。目立ちたくない、それが彼女の性格だ。
だが2人はお構いなしに声を荒げながらゲームに夢中であった。

「はッ! 万事屋テメェもそろそろ終わりだッ!」
「土方さん援護しますッ!」
「んなろ~こうなったら・・・・・・ファルコンキィィィクッ!!」
「アダァァァァ!!」
「何ガキに向かってリアルの蹴りやってんだコラァァァ!!!」

劣勢に陥っていた銀八はあろうことかリアルで隣に立っている刹那にローキックをお見舞いする。刹那が動けなくなった瞬間、銀八はゲームに戻り状況を立て直す。

「お前何人のガキ、リアルでKOさせてんだよッ! これゲームだぞッ! ゲームなんだから大人になれよッ!」
「お前に言われたくねえよッ! さっきお前等、俺をぶっ飛ばそうとしてボム兵投げまくったろッ! お返しだお返しッ!」
「リアルで返すんじゃねえよッ! オラオラオラァッ!」
「ぬおッ! ヤベェこのままだと・・・・・・千雨ヘルプッ!」
「私を巻き込むんじゃねえよ・・・・・・つか両方とも大人になれ・・・・・・」

ゲームで再び土方に押され出したので銀八は千雨に助けを求めるが、彼女は二人の戦いを傍観する事に。そんな千雨に銀八は舌打ちした後、右にいる土方に向かって・・・・・・・

「ファルコンパァァァァンチッ!!!」

渾身の右ストレートを土方の顔面に当てようとするが土方は膝を折ってそれを難なく避ける

「お、俺のファルコンパンチがッ!!」
「ふん、テメェの考えは見え見えなんだよ、ウチのガキの仇だ、くたばりやがれェェェェ!!」
「食らうかボケェェェェ!!」
「部屋の中で暴れんじゃねェェェェ!!」

土方の反撃の前蹴りに、銀八はそれをなんとか避ける。そんな二人に千雨が叫ぶのだが全く聞いてくれない

「へ、やっぱゲームよりこっちで決着付けた方が良さそうだな・・・・・・!!」
「上等だかかってきな、おいガキ起きろ」
「はい・・・・・・」
「お前さっきまで倒れてたのに復活してんじゃねえよッ!」
「私の部屋で暴れんなァァァァ!!」

千雨の言う事も聞かず銀八、土方、刹那はコントローラーを置いて他人の部屋だろうが関係なくルール無用のリアルでの大乱闘を始めてしまう。
混じり合う罵声、混じり合う拳、千雨の部屋全体が振動で響き渡るほど大きな雑音が鳴りっぱなしだった。
それをドアの隙間から覗く目が一つ

「土方さんと桜咲さん何やってるんだろ・・・・・・?」

廊下を歩いていたら何やら騒がしいと思い、パジャマを着ている宮崎のどかは千雨の部屋を覗いてみると4人の男女がギャーギャー騒いでいる光景が、しかもそこには土方と刹那も混ざっている

「ここ長谷川さんの部屋なのに何でいるんだろ・・・・・・?」
「のどかさん千雨さんの部屋の前で何やってるんですの? 覗きのスキルでも開花したんですか?」
「いいんちょッ! いやそうなじゃなくて、長谷川さんの部屋が大変な事になってて・・・・・・!」
「はい?」

のどかが千雨の部屋のドアを覗いているのを見て近づいてきたパジャマ姿のあやかに、彼女は必死にドアの隙間を指さす。あやかは首を傾げながらのどかが見ていた隙間から覗いてみる。

「あれ・・・・・・? 何で千雨さんの部屋に銀さんが・・・・・・?」
「土方さんもいます・・・・・・」
「とりあえず入りましょうか、こんなに騒がしくされると眠れませんし」
「え・・・・・・でも勝手に入っちゃ・・・・・・あ」

のどかの制止も聞かずあやかはガチャっとドアを開く。その音に千雨が気付いて玄関まで走って来た。

「すいませーん、近所迷惑ですわよ」
「おまッ! 勝手に部屋に入ってくるなッ! これ以上ここに人呼びたくねえんだよッ!」
「それより何で銀さんがここにいるんですか?」
「いやそれは色々事情があって・・・・・・・」

あやかに睨まれて千雨はうろたえながら説明しようとする前に後ろから叫び声が聞こえる。

「ファルコンチョォォォォップッ!!」
「そんな技ねえだろうがッ!!」
「白夜叉ッ! 大人になれッ!」
「だからお前等うるせえってッ! いい加減にしねえと銀八、お前泊めてやらねえぞッ!」

千雨の声が耳に入ったので銀八は顔を玄関に覗かせる。

「あれ? あやかか?」
「こんばんは、銀さん」
「銀八・・・・・・これ以上部屋を滅茶苦茶にするならお前が泊まる件は無しだからな・・・・・」
「マジで? おいここは一旦休戦だ、俺がここに泊めさせてもらえなくなるから」
「あん? そんな事で引き下がると思ってんのか?」
「あの娘っ子来てるぞ」
「娘っ子?」

銀八が親指で玄関を指さしたので土方はそちらに首を出してみる。そこにいたのはあやかとその後ろから顔を覗かせている、土方とは時々喋る仲の生徒

「宮崎、お前そこで何してんだ?」
「いやそれって私の台詞なんですけど・・・・・・」

のどかがいた事に首を傾げて彼女を名字で呼ぶ土方。余談だが現在彼が名前を言う生徒は彼女だけ、最近から名字で呼ぶようになって時々だが呼んで上げる事がある。(彼女の触角の付いた親友にうるさく言われためた)
のどかを見た後土方は舌打ちした後「しょうがねえな・・・・・・」っと髪を掻き毟る。

「あいつの前でお前と殴り合うのも何か後見が悪いしな・・・・・・」
「わかってるじゃねえか、そこのガキもそのテレビ元の場所の所に置いとけ」
「チッ・・・・・・」
「え、テレビ投げようとしてたのッ!? 私の部屋にあるテレビ勝手に投げようとしてたのお前ッ!?」

今まさに千雨の部屋に置いてあるテレビを銀八にぶん投げようとしている刹那に銀八が疎めると刹那は渋々元の場所に置いた。かなりのアウェイな戦法に家主の千雨がツッコむ。

「よーし、まあ思わずゲームで熱くなるのもわかるが~」
「いやお前が先に手を出したんだろ」
「部屋の持ち主に迷惑かけるような事しちゃいけないつー事だ」
「いやお前が一番迷惑なんだけど」

所々に銀八に千雨がツッコんでいると、さっきまでずっといる生徒が銀八に近づく。

「銀さん・・・・・・何で千雨さんの部屋にいるんですか・・・・・・? しかもさっき泊まるって・・・・・・」
「え? いやその色々あって・・・・・・」
「まさか千雨さんとそんな関係まで達していたんですか・・・・・・?」
「違えよッ! エヴァの家から追い出されたから今日だけこいつの部屋に泊まろうとしただけだっつーのッ!」
「じゃあ何で千雨さんなんですかッ!? 私じゃ駄目なんですかッ!? 私より千雨さんを選んだんですかッ!?」
「あれぇぇぇぇぇ!? 何この展開ッ!? 何かお昼のドラマでこんなんやってなかったッ!? だからさ・・・・・・!!」

千雨の部屋で泣きそうな顔をするあやかに銀八が必死に説明しているのを土方と刹那と勝手に入って来たのどかはボーっと眺めていた

「ドロドロだな」
「ドロドロですね」
「ドロドロです・・・・・・」























それから数十分、銀八と千雨が必死にあーだこーだと不機嫌な様子のあやかに事情を言っているにも関わらず、土方達三人はずっとテレビ鑑賞、しばらくしてようやく終わったのか万事屋三人の討論が終了する。

「ようするに私が三人部屋だから駄目だと・・・・・・ふむ、夏美さんなら追い出せますが千鶴さんは・・・・・・」
「何考えてんだよお前・・・・・・」
「まあこれでわかったろ? 俺はこいつの部屋で一泊するだけだから、ガキなんかには全然興味ないですからね銀さんは、土方君と違って」
「あ? 呼んだか?」
「呼んでねえよ、オメーは三人仲良くテレビ見てろ」

銀八の言葉に反応して土方は振り向くがそれを銀八は適当に流した後大きなあくびが出る。

「やべえスマブラずっとやってたから眠くなってきた・・・・・・」
「もう12時じゃねえか・・・・・・銀八もう絶対寝るからな」
「まあ普通ここから朝までマージャンとか朝までUNOやるのが普通なんだが・・・・・・俺も眠いしな・・・・・・・」

ゴシゴシと目をこすりながら銀八はテレビ鑑賞中の三人に顔を向ける。

「お前等ももう帰った方がいいんじゃね? それにそこのガキ二人は明日学校だろ? 夜更かしすると寝坊するぞ・・・・・・」
「テメェが俺等誘ってきたんだろうが、夜中までスマブラやらせやがって・・・・・・・しょうがねえ帰るぞお前等」
「宮崎さんは大丈夫ですか? 家の人達が心配しているんじゃ?」
「メールで夕映とハルナに連絡してたから大丈夫です、土方さんと一緒にいるから大丈夫って、2人の反応は全然違ってたけど・・・・・・」

刹那に説明した後のどかは軽く項垂れる。最近の彼女の悩みはこの二人の友人がことごとく土方との関係に口出ししてくる事だ、しかも全くこの二人の意見は正反対なのも質が悪い。

「何してんだ宮崎、帰るぞ」
「あ、はい」
「土方さん、何で宮崎さんは名前で呼んであげるのに、私の事は名前で呼んでくれないんですか・・・・・・?」
「お前そんな事気にしてたのか?」
「少し前からずっと・・・・・・」

少しブルーなテンションで刹那が土方と話しながらリビングを後にして帰っていく。そしてのどかも万事屋の三人にお辞儀して

「し、失礼しました・・・・・・千雨さん、いいんちょおやすみなさい、先生・・・・・・すみません・・・・・・」
「何で俺だけ謝罪ッ!?」

そうしてのどかは土方達の後を追うように玄関へと走って行った。そんな彼女に銀八は「何でマヨは大丈夫なのに俺にはあんなにビビるんだよ・・・・・・」っと呟いた後、テレビの電源を切る。

「やれやれ・・・・・もう寝るか・・・・・」
「やっと寝れる・・・・・じゃあ電気消すぞ・・・・・・」
「千雨さん、私も布団ぐらい欲しいんですが? 押し入れにまだ毛布が残ってますか?」
「ああ、そういえばストックで一枚あったな」
「じゃあ借りますわね」
「明日起きたら畳んでしまってくれよ」

千雨はそう言った後、メガネを取って髪をほどき電気を消した後、そうして自分のベッドの下で寝床についている銀八をあやかを見た後すぐに横になった

「じゃあおやすみ・・・・・・」
「おお、おやすみ」
「おやすみなさい」





「「って何でお前までここにいんだよォォォォォ!!!」」

まっ暗闇の中、千雨と銀八が立ちあがって二人の間で寝ていたあやかに夜中にも関わらず大声でツッこむ。千雨が電気を点けるとあやかは不機嫌そうに目をこすりながら彼女を見る。

「何で電気点けるんですか・・・・・・? 人が寝ようとしているのに・・・・・・」
「いや何でお前まで当たり前のようにここにいるんだよッ! まさかお前までここに泊まる気ッ!?」
「当たり前です、女性と殿方が二人屋根の下で寝るなんてそんなハレンチな所行、委員長として見過ごせません、お二人に“間違い”が無いようここでご一緒させていただきます」
「間違いってそんな過ち犯すわかねえだろうがッ! そんなに俺の事信用できないッ!?」
「信用はしてますが、こういう二人で寝るイベントって思わずテンションとかノリでイヤ~ンな展開になる確率はありますので、お二人がそうならないようここで眠ります」

 そう言ってあやかはゴロンと再び横になって、目をつぶる。残された千雨と銀八は気まずそうに目を合わせる。

「・・・・・・寝るか」
「・・・・・・うん」

銀八の意見を聞いて千雨は再びベッドに点いてる電気を消して横になる、もう結構な時間だしあやかはこうなるとテコでも動かないので諦めて眠りにつく事にした。

(銀八と間違い何か・・・・・・ねえよ・・・・・・)

千雨は暗闇の中、こちらに背を向け寝ている銀八を見る。
間違いなんて無い、自分にはあやかやエヴァみたいな感情を銀八には持っていないのだ、確かに付き合いは長いが・・・・・・
モヤモヤした考え事をしながら千雨はゆっくりと瞼を閉じて眠りについた。



















(ね、眠れねぇぇぇぇぇ!!)

ベッドに横になって1時間半、千雨は一向に眠れずにいた。

(ホームページ更新してないから不安になって眠れねえよ・・・・・・)

千雨はベッドの下で寝ている二人を見る、あやかは寝息を立ててぐっすりと眠り、銀八は反対方向に横になっているので顔は見えないが、恐らく既にもう寝ているだろう。
自分のホームページを更新していない事に気がついてそれが気になってしょうがなくなり、結局眠る事が出来なかったのだ。

(どうせこいつ等寝てるだろうし・・・・・・こっそりパソコンやってもバレねえだろな・・・・・・)

そう思い千雨は物音を立てないよう細心の注意を払って、こっそりとベッドから起き上がり、ゆっくりと爆睡しているあやかをまたいで、その先にある銀八もまたいでやっとパソコンが置いてある机に着く。
千雨は焦らずパソコンを隠していたシーツを取ってパソコンに電源を入れた後、椅子に座って横を見る。

(まだあいつ等は寝てる・・・・・とりあえず写真は貼れねえが、ブログは書けるな・・・・・・)

パソコンにデスクトップが表示され急いで千雨は自分のホームページを出し、チェックを始める。ネットアイドルとして毎日こういう事をしていないと落ち着かないのだ。

(・・・・・・別に掲示板も大丈夫だな、私のファンで一杯だ・・・・・・)
「この『まるで出してもらえないおっさん』って奴ただ出番が欲しいって言ってるだけだから削除した方がいいんじゃね?」
「あ、本当だ、何だよ出番って・・・・・・ハァ~最近変なのが増えたな・・・・・・って何で起きてんだよお前は・・・・・・!」

突然彼女の後ろにヌっと出てきた銀八に千雨は驚きながらも小声にしてツッこむ。だが銀八はお構いなしに自分のサイトをジロジロと眺める。

「相変わらず痛い連中ばっかだな、新八見たいな駄メガネがいっぱい巣食ってやがる」
「何だよ駄メガネって・・・・・・メガネ付けてるかどうかもわかんねえのに決めつけてやんなよ・・・・・・」
「うお・・・・・! お前って本当こういう時はっちゃけてるよな~何すかこの写真? ミニスカポリスとかバニーも良いけど俺的にはナースの方が・・・・・・」
「だぁぁぁぁぁ・・・・・・・! 勝手に画像を見るなぁぁぁぁ・・・・・・!」

掲示板の後自分の写真が入っている所を銀八が勝手にマウスを奪って調べ始めたので、千雨は慌ててパソコンにしがみついて隠す。 

「もう頼むからネットアイドル関連の事だけはほっといてくれよ~恥ずかしいんだよ~・・・・・・・」
「いや恥ずかしいならやるなよ」
「そうだけど譲れないものがあるっていうか・・・・・・」

顔を赤らめながら千雨はしばらく黙ってしまった。しばらくして千雨は顔を上げずボソリト銀八に呟く

「・・・・・・なあ?」
「あん?」
「お前って私の事どう思ってる・・・・・・?」
「は?」

突然の千雨の降りに銀八は頭の上に「?」をつけるが、彼女は塞ぎこんだまま話を続ける。

「だって私って地味だし、皮肉屋だし、ネットオタクだし、隠れてこんなネットアイドルなんかもやってるし、友達も作る事も出来ない・・・・・・こんな私ってどう思ってるのかなって・・・・・・」
「何でそんな事いきなり俺に聞くんだよ」
「いつも気になってたんだよ、こんな私に何でお前は一緒にいてくれるのかなと思ってさ・・・・・・」

千雨は恐る恐る顔を上げて不安そうに銀八を見るが、彼はため息ついてめんどくさそうに答える。

「別に俺はお前の性格が普通だろうが変だろうがどうでもいいんだけど?」
「え?」
「オタクだろうがネットアイドルだろうが、友達作れないほど内気だろうが、俺にとってオメーは大切なモンだ、俺がここに来て初めて万事屋の一員になってくれたお前を嫌いになれるわけねえよ」

銀八が珍しくふざけずに言った言葉に千雨は深く黙りこむ。

俺にとってオメーは大切なモンだ

その言葉が嬉しかった、こんな自分でも受け入れてくれる人がいるのがただ嬉しかった。単純構造の彼らしいと言えば彼らしい、

「千雨よ~」
「何だよ・・・・・・?」
「当たり前の事聞いてんじゃねえよバカ」

銀八は既にもう寝るのか、毛布に入りながら千雨を見ずにぶっきらぼうに言った言葉に千雨はフッと笑った。

「・・・・・・改めて確認したかったんだよ」
「そんなの確認すんなめんどくせえ」
「ああ・・・・・・」

眠そうに言う銀八の声を聞いて千雨はパソコンの電源を切ってベッドに戻る。更新は明日する事にした。

例えここを卒業して大人になっても、私はこいつ等と・・・・・・銀八と一緒にいたい・・・・・・ったくずっと一人だった私がこんな事考えるなんてな・・・・・・

誰にも見えない所でクスッと笑った後、千雨はベッドの中で静かに眠りについた。

この先大きな苦難が待っている事も知らずに





























おまけ
千雨の部屋から出て3分後。
のどかが土方達と別れ自分の部屋へと戻ると電気も点けずに、彼女の親友の一人の綾瀬夕映がベランダから夜空を眺めていた。

「夕映・・・・・・? 何してるの・・・・・・・?」
「ん? ああのどかですか、ニコチンには襲われませんでしたか?」
「ニコチンじゃなくて土方さんって呼んでよ・・・・・・それに襲われてないし・・・・・・」
「それならいいです、しかしいつでも細心の注意を払ってください、男はみんな狼なので」
「狼って・・・・・・それ誰から聞いたの?」
「祖父からです」
「どんな教育叩きこんでたんだろ・・・・・・」
 
ため息をついてのどかは眠そうにベッドに入る。もう一人の親友の早乙女ハルナは既に爆睡だ、寝言で「う~ん・・・・・・銀×ネギか、銀×土どっち描くか迷うわ・・・・・・」等とあやしい事を言っている。

「あれ? 夕映は寝ないの?」
「まだ眠くないので、おやすみなさいのどか」
「うんおやすみ・・・・・・」

そう言った後のどかは枕に顔をうずめた瞬間すぐに寝てしまった
。ベランダに立っている夕映は懐からポッキーを取り出しそれをくわえる。

「何かおかしな事が起こると星が言っているようです、ん?」

ポリポリとポッキーを食べながら空を眺めていると、突然ここから見える大樹の所から不思議な光が見える、その眩しい光に夕映は思わずくわえていたポッキーをポロっと落とす。

「何ですかあの光は・・・・・・ハルナ、のどか起きるです、大樹の根元で不思議な光が・・・・・・」

夕映は急いでベランダから出て、寝ている二人を起こそうとするのだが・・・・・・

「ごめん先生~ホウ酸団子は勘弁して~それ食べたら死ぬから本当~・・・・・・」
「土方さん夕映と喧嘩しないでくださ~い・・・・・・ああ刀何か抜かないで~・・・・・・」
「駄目です完璧に夢の中へ入っています・・・・・・」

二人が寝言を言いながら眠りから覚めそうにないので、夕映はどうしたものかと首を傾げていると大樹の所で光っているのを、再び見て彼女は玄関へと走ってスリッパを履いてパジャマのままドアを開ける。

「しょうがない、私一人でもあの謎を解明するです」

そう言って夕映はペタペタと音を立てながら大樹の根元まで行く事にした、ここからだと歩いて時間がかかるのだが、彼女には秘策があった。

女子寮を出て夕映は携帯を取り出してある場所に連絡するしばらくして

「ここですタクシー」

やってきたタクシーに手を上げる夕映。
中学生でタクシーを用意する手際の良さで彼女は大樹のある麻帆良学園へと向かった。

「あ、先に言いますが領収書お願いするです、土方十四郎で」

本当に手際がいい中学生である。

















数十分後、夕映は麻帆良学園への前でタクシーを止めた。真夜中の学校と言うのは彼女自身もあまり好きではない。

「ここまできたら後は引けませんか・・・・・・一体なにがあるのやら・・・・・・」

生唾を飲み込んで意を決して夕映は学校内へと入っていく、目的地はもちろん大樹の前だ。期待と不安が交差する中、彼女はズンズンと進んでいく。その先に奇妙な現象が待っているのも知らずに
















しばらくして大樹の前に到着。夕映の目の前には信じられない現象があったのだ。彼女の目の前には何と動物園でしか見た事のないあの動物が大の字で倒れているではないか・・・・・・・

「ゴリラ・・・・・・何でゴリラがこんな所に・・・・・・・?」
「・・・・・お、お・・・・・・」
「ん? ゴリラが起きたのですか・・・・・?」

大の字で倒れるゴリラに恐怖心を拭い去り、夕映はゴリラに近づいてみる。よくみると服を着ているというなんとも珍妙なゴリラだ。

「俺は・・・・・俺は・・・・・・・」
「服を着たゴリラが何か喋ろうとしてますね、それにしてもこの服装は・・・・・・」

夕映はそのゴリラを触ろうとした時・・・・・・・

「俺はゴリラじゃありませぇぇぇぇぇぇんッ!!!! 一泊二日で近藤勲が別世界に~・・・・・・キタァァァァァ!!!!」

ゴリラ否、真撰組局長・近藤勲が急に起き上がって両腕を上げて天高く叫ぶ。それを無表情で見ていた夕映は携帯を取り出して

「警察ですか、学校内にゴリラが出たので早急に駆除をお願いします、腕のいいスナイパーも用意して下さい」
「だからゴリラじゃないってちょっとォォォォ!!」

自分を射殺させようと恐ろしい早さで携帯で会話する夕映に慌てて再び近藤は声を上げて叫んだ

波乱再び巻き起こる。























教えて銀八先生

銀八「はいでは一通目。蛙さんからの質問」

『近藤さん。少し下ネタを控えませんか?
このままだと近藤さんの株は下がる一方ですよ』

銀八「質問になってないその1」
近藤「俺自身はそんな自覚ないんだけどな~」
銀八「存在そのものが下ネタだろうがお前」
近藤「そこまで言うッ!?」

銀八「二通目、サハリンさんからの質問」

『闇の幼女と恐れられたエヴァに質問があります。
デコ那の傷口を塩を塗るような暴言吐くなよ。せめて暴言吐くならハバネロを傷口に馴染ませる用な暴言を吐きなさい。』

銀八「質問になってないその2」
沖田「あんなレベルじゃ駄目ですよ、もう5日は飯食えなくなるぐらい、傷口をえぐる様な暴言吐かなきゃな」
エヴァ「生憎、貴様ほど性格は悪くないのでな」
千雨「そうか? 十分ひねくれてると思うよ私は?」
あやか「それがまとまな観点です千雨さん」
エヴァ「お前らあとで死刑」

銀八「三通目、剣聖さんからの質問」

『とりあえず質問~ネギ、アスナ布団にもぐりこんでんじゃないの?そしてアスナが欲情してXXX板でしか語れないような事やったんだろ?(むしろやれ)本人達にも聞きたいです。ネギ!責任とれよ!アスナ!結婚はまだできないぞ!』

銀八「質問になっていないその3」
アスナ「私がこんあガキに欲情するわけにはいかないでしょ・・・・・・・けどバカネギがベッドに潜り込んでくる事はあるわね・・・・・・・」
ネギ「いやだってアスナさんお姉ちゃんに似ているのでついクセで・・・・・・」
アスナ「いい加減姉離れしなさいよ、アンタのお姉ちゃんも、もしかしたらアンタがいない隙に恋人でも作ってるかもしれないのよ?」
ネギ「そうなったら恋人には血反吐を大量にぶちまけた後死んでもらいますから」
アスナ「え・・・・・・笑って言う事それ・・・・・・?」

銀八「四通目、ノリさんからの質問」

『沖田は調教するならエヴァみたいなチンマイ体と、真名の様なけしからん体でしたらどちらのが縛り甲斐がありますか?
もし後者でしたらしずな先生を 調教するのはどうですか?』

沖田「誰でも良いんですけどね、まあ強いて言えば凸凹がついてる方が縛りやすいので後者で」
エヴァ「悪かったな凸凹が無くて・・・・・・!」
沖田「所で誰ですしずな先生って? サドりがいのある良い女んなんですかぃ?」
銀八「おいテメェッ! しずな先生だけは何人たりとも触らせねえからなッ!」
沖田「旦那のチビ金髪の方は?」
銀八「別に」
エヴァ「き、き、貴様~~!!」

銀八「五通目、風の都さんからの質問」

『あやかさんへ
休日はどのように過ごされてますか?
やはり銀さんと街へ買い物に出かけたりしているのでしょうか?』

あやか「休日はまあ銀さんの所へ遊びに行ったり、千鶴さんや夏美さんとかと買い物言ったり・・・・・・銀さんとはまだ買い物言った事無くて・・・・・・」
千鶴「駄目ね~まだ二人で買い物に行けないなんて、それじゃあ二人で『ディ○ニーラン○』にも行けやしないわ」
あやか「そ、そんなカップルが行くような場所行けるわけないでしょッ!!」
千雨「つーか著作権的に無理だよ・・・・・・」

銀八「六通目、汁裂注射さんの質問」

『SでMでニンフォマニアなオジコンなアスナさんに質問です。麻帆良学園教師陣で今一番(性的に)食べたいのはだれですか?』

アスナ「高畑先生がいたんだけど・・・・・・あの人転勤になっちゃって・・・・・・・」
ネギ「突然いなくなっちゃいましたからね・・・・・・どこいったんだろタカミチ・・・・・・」
千雨「いやいやッ! ちゃんと本校にいるからッ! なあいいんちょッ!?」
あやか「千雨さん、あの都市伝説まだ信じてるんですか? タカミティンに似た教師が学校内をうろついているというお話を」
千雨「うわ、こいつ高畑先生の存在ごと消滅させやがった・・・・・・しかもタカミティンの方がオリジナルかよ・・・・・・」

銀八「七通目、ユルカさんの初質問」

『質問は銀さんに。
週ジャン一年分、
高さがエヴァの身長位あるパフェ、
銀さんが好きに弄り倒していい人(勿論口で)、
この3つの内、どれをあやかにプレゼントされたいですか?
勿論選べるのは一つだけです』

銀八「別に誰から貰ってもいいんだけど? エヴァぐらいのパフェでお願いします、おらあやかよこせよ」
あやか「すみません、そんなパフェ用意できません・・・・・・」
エヴァ「そんな奴より私に任せろッ! 裸になって体中にパフェの食材を塗ればたちまちお前が望むものが生まれるぞッ!」
銀八「生まれねえよ、18禁物しか生まれねえよ」

銀八「八通目、エンジンさんからの質問」


『エヴァに質問です。これ以上「チビ」「ドチビ」「豆」と言われたら、神楽の兄貴(別世界)とか死神世界での白髪の10番隊隊長のように、「誰がドチビだコラァ!!」と言える自信はありますか?』

エヴァ「意味わからん質問だな、何で私が・・・・・・」
あやか「まあチビだと言うのは事実ですからね、そこは天地が引っくり返っても変わらない事実ですから」
銀八「つまりそいつ等と何一つ変わらねえということだなドチビ」
沖田「精神的にはこっちの方が下でしょうね、なあ豆?」
エヴァ「吸血鬼に対して全然恐がらないよな貴様等・・・・・・」
銀八・あやか・沖田「「「まあ小さいし」」」
エヴァ「くそ・・・・・・泣きたくなってきた・・・・・・」
千雨「いつもの事だろ・・・・・・・」

銀八「九通目、正宗の胃袋さんからの質問」

『変態ぬらりひょんに質問がある。
妖怪が学園を支配をしてそんなに楽しいですか?それとも学園の生徒達を自分の食料として入学させているんですか?木乃香とデコ那も妖怪の血が受け継いでいるから人食い衝動が抑えられない時が来るかもしれませんね。その時は責任取れるんですか?』

銀八「質問になっていないその4」
学園長「食料なわけねぇぇぇぇだろッ! ワシのブラッドは人間のブラッドじゃァァァァ!!」
銀八「どの口が言うんだテメェ? 人間の血は紫色じゃねえんだよ」
学園長「いや紫じゃねえよッ!」

銀八「十通目、q-trueさんからの質問」

『銀さんに質問です。
最近タカミティンが出ないのは、48の殺学園長技を開発中だからというのは本当ですか?もし本当なら、完成している技をいくつか教えてください。実践込みで!』

銀八「そんな技お前持ってたっけ?」
タカミティン「OK、OK 今カラ キン肉マンを読ンデ勉強シマス」
学園長「そんなもん覚えるなァァァァ!!!」
タカミティン「マッスルミレニアムッ!!!」
学園長「ぐほぉぉぉぉぉ!! まさかの二世で来おったァァァァ!!」

銀八「十一通目、ウィルさんの質問」

『今回は意表をついて山崎に。地味で印象が薄いことに定評があると思うのですが、3-Aのクラスの生徒に気付いてもらえた人数とその女生徒の名前を挙げてもらえますか?楓と鳴滝姉妹を入れるかどうかは山崎のプライド、略してジミライドにお任せします。』

山崎「えーと楓さんと風香ちゃんと史伽ちゃんと・・・・・・」
銀八「速攻捨てたよジミライド」
山崎「刹那さんと夏美ちゃんと・・・・・・あと・・・・・・・」
銀八「もう終わりか?」
山崎「あ、まだいましたッ! 最近知り合ったまき絵ちゃんがッ!」
銀八「まき絵なんていねえッ! それはお前から生まれた妄想の産物だッ!」
山崎「えぇぇぇぇぇぇ!?」
まき絵「いやいるからッ!」

銀八「十二通目、さるめさんからの質問」

『質問つーか、報告
「とりあえず、謝辞を親戚のおかんがお世話になりました。また何かあったら頼みます。あとかぼちゃ,お礼に100箱送っておきます。
他の皆さんにもおすそ分けで送りましたので」』

銀八「質問になっていない以前に質問じゃねえよコレ」
茶々丸「銀時様、お荷物が」
銀八「ジジィの所に全部投げろ」
茶々丸「了解しました」
エヴァ「学園長室は瞬く間にカボチャだらけになるな・・・・・・」

銀八「十三通目、キョージュさんの質問」

『銀さんに質問です。最近活躍してませんが(本誌の方でも)、そろそろ年のせいで息切れでもしてきましたか?ていうか、次いつ吉原ばりの活躍するんですか?』

銀八「なめえんじゃねえよ、銀さんはいつでも現役バリバリだよ、修学旅行編にはもう大活躍だよ、次回だってきっと・・・・・・」
夕映「第二十四訓・『拾ったペットから教えられる事もある』です、あなたはちょい役、もしくは出ません」
銀八「おわッ! 何でいきなりお前がいんだよっ! しかも今なんつったッ!?」
夕映「出番がないと言ったのです、それではさようなら」
銀八「・・・・・・・え? これで終わり?」 





[7093] 第二十四訓 拾ったペットに教えられることもある
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/09/12 22:22
場所は銀時の故郷の江戸、そして真撰組屯所内である上司と部下が密談を交わしていた。

「総悟、俺別世界行こうと思ってるんだけど良いかな?」
「近藤さん、それ無理です」

上司の名は近藤勲、がっしりとした体つきと人懐っこい顔をしていて真撰組を唯一まとめられるリーダーだ。そんな男が急に自分の私室に呼んできて、部下の一人、沖田総悟に相談するがすぐにバッサリ却下された。だが近藤は怯まずに話を続ける。

「お前も知っての通り、今別世界に山崎の奴とトシを送っているんだが、トシが持っている転移装置の発信機はちゃんと正常に作動しているし、あいつなら心配ないと思う、だが奴らの安否が大丈夫だと言う保証はまだない・・・・・・ここは真撰組の局長であるこの俺が直々にあいつ等が無事かどうか見に行きたいんだが」
「だから無理ですよ、近藤さん自分の身分わかってるんですかぃ? ここの“頭”張ってる人がここを留守にするわけにはいかないでしょう、土方さんや山崎とかなら代わりはいくらでもいますが、近藤さんは代えが無いんですから」

近藤の言い分もわかるが彼はここのドン、そんな男がここを留守にしては江戸の治安が危ぶまれる、それが沖田の主張だ、どさくさに自分の上司と部下に酷い事言っているが・・・・・・

「とにかくそういう話は一切認めませんから、じゃあ俺は“副長”としてあいつ等をシゴいてきまさぁ」
「いや待って総悟ッ! じゃあこうしようッ! 一泊で帰ってくるからッ! すぐ帰るからッ!」

立ち去ろうとする沖田に近藤が慌てて叫ぶ。それを聞いても沖田は疲れた様子で振り返る。

「一泊するだけでも近藤さんがいないという支障は大きいですって、無理なもんは無理です」
「大丈夫だ一日ぐらいッ! だってここにはまだお前が残っているッ! トシの代役で“副長”を務めているお前がなッ!」

襖を開けて去ろうとしていた沖田はそれを聞いてピクリと止まった。

「“副長”を務めている俺がここにいればここは大丈夫ですかぃ?」
「当たり前だろ総悟ッ! 副長のお前がいれば真撰組も準備万端だッ!」
「そうですねぇ確かにこの“副長”たる俺がいれば、何処から攘夷志士が来ても一網打尽ですからね」
「いよ副長ッ! 俺やトシがいない真撰組を任せられるのはお前しかいないッ!」

近藤におだてられながら沖田は満更でもないような顔をする。沖田が長年欲しがっていたポジション、それが近藤の隣に立ち彼のサポートをする位置である真撰組の『副長』である。その位置がついに現副長の土方の代理とは言え、最近その座に突く事が出来たのだ。
これか彼にとって大変喜ばしい事で、そこを近藤に言われるとつい無表情の顔をほころばせてしまう。

「しょうがいないですね~一日たったらすぐ帰ってきて下さいよ、その間はこの“副長”沖田総悟が江戸の治安を守っているんで」
「おおさすが副長ッ! 俺の一番の理解者ッ! じゃあとっつぁんの所に行って別世界に行く手続きしてくるわッ!」
「お気をつけて~」

最後まで近藤にヨイショされながら、彼が走って部屋を出て行くのを手を振りながら見送る沖田。彼の背中が見えなくなった頃、沖田は振り返り真撰組の隊士達がいる中央広場へと行く。

「近藤さんの代わりに隊士の奴らに俺が考えた楽しい鍛錬をやってもらうか、あ~これだから副長は止められね~、まずはウォーミングアップに屯所の周りを100周ぐらい走ってもらうとしますかぃ」

サディスティック星の王子は副長というポジションを利用し、部下を徹底的にしごく為スキップしながら向かって行くのであった。 















そして近藤が別世界に行くと決断した日の夜
彼は別世界へ到着しし、そこで出合い頭に出会ったのが麻帆良学園の三年A組の生徒、綾瀬夕映だ。
今、近藤は夕映に大樹の近くのベンチに座って尋問を開始されている。

「で? ゴリラさんの名前は何ですか?」
「近藤勲・・・・・・ヒト科です・・・・・・」
「ここで何をしようとしていたんですか?」
「言えません・・・・・・」
「さっきの光は何ですか?」
「言えません・・・・・・」
「身分を証明する物を」
「出せません・・・・・・」
「もしもし警察ですか?」
「だぁぁぁぁ!! それは堪忍してェェェェ!!」

本当の事を言えない近藤は彼女の質問に答えられず、それを夕映は怪しみ再び携帯を取り出して通報しようとするので彼は必死に静止する。

「頼むよマジでッ! 俺一応警察何だからさッ!」
「ここの警察は腰に刀を差してませんしそんな制服でもありません、職業詐称ですか?」
「ウソじゃないッ! ほら警察手帳ッ!」

内側の胸ポケットから近藤は夕映の顔の前にバッと自分の生徒手帳を取り出して彼女に見せる。

「身分を証明する物あるんじゃないですか、どれどれ・・・・・・真撰組・局長近藤勲、現在の住所『江戸』・・・・・・?」
「あ・・・・・・」

近藤の警察手帳を手に取りじっくり眺めた夕映は、目を細めて疑いの視線を近藤に向ける。

「もしかして私の事舐めてるんですか? 真撰組とか江戸とか」
「いや違う違うッ! 本当にあるんだってッ! 実は真撰組というのは超極秘で活動しているエリート部隊であってッ! まあ江戸というのは俺達のアジト的な感じッ!?」
「あなた嘘つくの下手くそですね、嘘を突くと人間と言うのは鼻の頭に血管が浮き出るんですよ」
「嘘ッ!?」
「嘘です」
「あ・・・・・・」

自分の鼻の頭をチェックしていた近藤は手が止まった、実に単純な男だ。
そんな彼を見て確信したのか夕映は三度目の携帯を取り出す。

「それじゃあ警察に通報しておくです」
「だぁぁぁぁ!! だから待ってよお譲ちゃんッ! じゃあくそ・・・・・・え~と・・・・・・あの、その・・・・・・え~と・・・・・・その・・・・・・」
「何ですか見逃せと?」
「いやその・・・・・・」「

近藤は怪しむ夕映に思い切って

「俺が異世界から来てってのは信じてくれるかな・・・・・・?」 










「は?」

さっきまで言っていた事とは比べられないほどの衝撃的な告白に夕映は思わず携帯を落としてしまった。














「本当の話ですかそれ?」
「ああそうだ、俺はここの世界の人間ではなく別世界の江戸から来た人間なんだ」

つい拍子で夕映に告白してしまった近藤は(そっちの告白じゃない)自分のここまでの経緯を全て包み隠さず言う、自分は別世界から来てここに自分達の世界の犯罪者がウロついている、だからその犯罪者たちを捕まえる為にここに派遣している隊士達がいるのだが、彼等がどうしているのか自分は見に来たのだと

「その隊士というのが・・・・・・」
「トシとザキ、土方と山崎って奴でな」
「・・・・・・やはり同じ服装だからもしやと思いましたが、あの人も・・・・・・」

夕映は一緒に持ってきたポッキーを食べながら一般人に行ってしまったと落ち込んでいる近藤を眺めていると、彼はゆっくりと顔をあげて彼女と目を合わせる。

「これで信じてもらえたかな? いや無理だよな~・・・・・・いきなり異世界から来ました何て・・・・・・ちゃんと証明する物も無えし・・・・・・」
「信じるですよ、あなたがさっき行っていた異世界の話も」
「え、ウソォォォォォ!?」

絶対に信じてくれるはず無いと思っていたのに夕映は何と信じると言ったのだ。これには近藤は項垂れていた体を思いっきり直立させる。

「そんな簡単に信じるのッ!? だってどう見てもこんなのファンタジーだよッ!?」
「バカ正直なあなたが嘘ついているような感じでは無かったのもありますし、それに・・・・・・・」
「それに?」
「異世界があるって考えた方が面白いじゃないですか」

夕映は持っていたポッキーを一気に食べて彼に振り向く。
その顔に一瞬笑みが見えたのは近藤の気のせいだったのだろうか
























第二十四訓 拾ったペットに教えられることもある

三年A組の生徒、早乙女ハルナは中等部の女子寮で生活している。同居人は無二の親友の宮崎のどかと綾瀬夕映との三人暮らしだ。
早朝、ハルナは時間通りに目が覚め瞼をこすりながら、枕元に置いてあるメガネをつけて、ベッドから出る、そしてだるそうに背伸びして欠伸をした後、隣で寝ているのどかを起こす。

「のどか起きて~学校遅れるよ~」
「ううん・・・・・・」

ベッドで就寝中ののどかはハルナが揺すっても一向に起きない。恐らく昨日の夜更かしがたたったのだろうか、そんな彼女を見てハルナは髪を掻きむしって、いつもの手を使う

「のどか~土方さんが来てるよ~」
「へッ! ひ、土方さんがッ!」

ハルナがのどかの耳元でボソリと言った瞬間、彼女は慌てて飛び上がるように上半身を起こした。そんな彼女を見てハルナはニヤニヤ笑いだす。

「ウソだよ~ん」
「ハルナ・・・・・・そうやって起こすの止めてくれないかな・・・・・・・?」
「だってこれが一番のどかを早く起こせる方法だもん、大体土方さんが天敵の夕映がいるここに来るわけないじゃん」
「そうだよね・・・・・・土方さんと夕映が仲良くなればな・・・・・・・」
「そしたらのどかの希望通りに来てくれるかもしれないね」
「べ、別に私・・・・・・!!」

顔を赤らめて口ごもるのどかにハルナは一層ニヤニヤしながら制服に着替え始める。

「ほらさっさと着替えて朝食準備しなきゃ、夕映も起きてる見たいだしさ、何処行ったのかな?」
「本当だ、夕映って朝弱いのに・・・・・・」

ハルナに言われた通り夕映のベッドには誰もいなかった。彼女が自分達より早く起きているなんて珍しい、いつもは爆睡してて中々起きない筈なのだが・・・・・・

制服に着替え終えたのどかはまだ眠そうにしながらキッチンに立ってある準備を始める。そんな時、ガチャリと玄関のドアが開く音が聞こえた

「部屋のゴミ出しをして来たです」
「夕映がゴミ出し? 部屋の一切家事をしない夕映が・・・・・・?」

ハルナはちゃぶ台の上に置いてあった新聞を読みながら首を傾げる。普段なら部屋の掃除など一切やらない夕映がゴミ出しなんてめんどくさいのをやるなんて珍しい、そういえば新聞が置いてあったのも変だ。彼女が持ってきたのだろうか・・・・・・
そんな事を考えていると既に制服に着替えている夕映がいつもの無表情でリビングに入って来た。

「のどか、朝ご飯はまだですか?」
「あ、ちょっと待って夕映! そのまえに作りたいものがあってその・・・・・・・」

後ろから夕映の催促する声が聞こえたのでのどかはバッと振り返る、だがのどかは夕映を見て、表情が固まる。否、夕映の後ろにいる物を見て固まったのだ。のどかはまだ新聞を読んでいるハルナの方を振り向く。

「ハ、ハルナ・・・・・・・」
「どうしたののどか~? 今コボちゃん読んでるんだけど?」
「夕映の、う、後ろ・・・・・・」
「何? スタンドでもいた?」
「そ、そうじゃなくて・・・・・・」
「何なのよのどか・・・・・・」

のどかに体を揺すられるのでハルナはめんどくさそうに夕映を見た。いつもの彼女だ何処にも異常は見当たらない、だが問題は彼女の後ろにいる生き物だった。ハルナもそれを見て表情がフリーズする

「あ、あの~夕映~・・・・・・・?」
「ああこれは昨日の夜拾った・・・・・・・」

夕映が説明しようとする前に、その生物はビシッと敬礼した後、大声で叫ぶ。

「近藤勲ッ! ただいまゴミ出しを完了してまいりましたッ!!」





ハルナとのどかは時が止まった

「ゴ、ゴ、ゴリラだァァァァァ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「いや待ってッ! 俺人間だから誤解しないでねッ!」
「ゴリラが喋ったァァァァ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「だからゴリラじゃなくて人間だってッ! ゴリラは服着ないでしょホラッ!」
「ゴリラが服来て喋ったァァァァ!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっとぉぉぉぉ!! どう言ってもゴリラいうのは否定しないんですかアンタ等ッ!? ていうかそこの子は悲鳴しか上げてないじゃんッ!!」

ハルナは彼を指さして慌てて叫びながら、隣ののどかは悲鳴を上げ出すので、そんな二人に近藤は力の限りゴリラ説を否定する。それを夕映は黙々と見物中

この二人が落ち着くまで10分の時間を費やした








ようやく落ち着きを取り戻したハルナとのどかはちゃぶ台に座って対極に正座している近藤と夕映の二人に尋問を開始する。

「じゃあ改めて・・・・・・お名前とプロフィールをお願いします」
「近藤勲です、仕事はまあ警察官的な仕事をしていまして、年はもうすぐ三十路に達しそうなのでそろそろ結婚しないとマズイかなと思ってます。好きな物はお妙さん、嫌いな物は天然パーマです」
「別に好きな物とか言わなくて良いんだけど・・・・・・・で? 夕映はどうしてこの人連れて来たの?」
「夜中の学校で見つけて、拾ってきました」
「何でそうなるの・・・・・・?」
「面白そうでしたから」
「は~そうですか・・・・・・」

夕映の答えにハルナは戸惑いの表情を浮かべるも、そこはスルーして近藤の方に向き直る。

「で? あなたが学校にいた理由は?」
「う~ん、実は俺、潜入捜査的な事をしていまして詳しい事は言えないんだけど、ここに極秘に潜入している隊士達が無事かどうか確認しに来たんだよね」
「詳しい事言ってるんだけど・・・・・・あれ?そういえば近藤さんの服装って・・・・・」
 
ハルナはジロジロと近藤の服装を見る、どこかで見た忘れられない服装。ハルナは隣でまだ怯えている表情ののどかに目を合わせる。

「あの服装って・・・・・・土方さんと同じだよね・・・・・・?」
「あ! そういえば土方さんと同じ服装・・・・・・!!」
「何ッ! 君達トシを知っているのかッ!?」
「ひぃッ!!」

いきなり身を乗り出した近藤にのどかは思わず悲鳴を上げる。こんな図体のデカイ男がいきなりアップで近づいて来たら恐いに決まっている。そんな近藤を隣に座っている夕映がなだめる

「落ち着くです、のどかが恐がっているでしょう」
「あ、すんません・・・・・・で? トシは今何処で何してるかな・・・・・・? あと山崎って奴もいると思うんだが・・・・・・?」

のどかに謝った後、近藤は席に戻り土方と山崎について尋ねる。それを聞いてのどかは恐る恐る質問に答える。

「土方さんはここで刹那さんや龍宮さんと一緒に住みながら警備員をやってまして・・・・・・・山崎さんって人は・・・・・・ハルナ知ってる?」
「う~ん見た覚えはないけど、確かあの双子姉妹と楓さんと一緒に同居しているという清掃員はそんな名前だったかも・・・・・・」
「何ッ!? あいつ等ここに住んでるのッ!? しかも君達見たいな女の子とッ!? ぬおぉぉぉぉ!! 許せんッ! トシはわかるがザキの奴までそんなラブコメみたいなパラダイスを満喫しているなんて絶対許せんッ!」

のどかとハルナの情報を聞いて近藤はちゃぶ台に何回も頭突きをしながら怒りをあらわにする。そんな彼の隣で夕映がいつの間にか食べているポッキーをくわえながら静かに傍観。のどかは恐がって一歩引いてしまう、だがハルナはなんとか近藤をなだめに入る

「だから落ち着いて近藤さんッ! 私達の質問まだ終わってないよッ!」
「あ、すんません、つい興奮しちゃって・・・・・・」
「やる事が本当ゴリラなんだけど・・・・・・まあいいや、近藤さんさっき潜入捜査の一員だとかどうとか言ってたよね? てことは土方さんやその山崎さんって人も?」
「ああそうだ、俺達はここにいる危険な輩を退治するためにはるばる遠くからやってきた、いわゆるFBI的な存在なのだよハルナ君」
「あれ・・・・・・何で私の名前知ってるの・・・・・・・?」
「私が教えました、貴方達は寝ていたので」
「人の名前を勝手に口外しないでね・・・・・・」

ていうか人が寝ている時にこの男を自宅に招きいれたその神経がツッコミたかったのだが、キリが無いのであえてハルナは言わないようにする

「夕映はこういう事もう知ってたの・・・・・・?」
「当たり前です、昨日の夜に学校で色々とお話を聞きましたから」
「へ~昨日の夜に・・・・・・何で夜中学校行ったの・・・・・・?」
「昨日の夜、学校にある大樹の所から不思議な光が放たれてたんです、不思議に思って行ってみたらこの人が大の字で倒れていたので、話を聞いてみるとあの人の知り合いだと聞きまして」

夕映の言う“あの人”というのは近藤の部下の土方の事である。彼女は年上の異姓の名前はあまり言わない。

「まあ見た目はゴリラそのものですが、話をすると結構面白い人なのでここまで来てもらいました、心配しないで下さい今日の夜には帰るそうですから」
「トシや山崎の確認を済ませたらなッ!」
「そ、そうですか・・・・・・」

意外と図太い神経の夕映にハルナは感心半分呆れ半分で頷いていると、のどかが慌てて付けている腕時計を見る

「ハルナもう学校行かなきゃ遅刻しちゃうッ!」
「え、もうそんな時間ッ!? あ~朝っぱらからこんなハプニングに巻き込まれてて学校の事忘れてたわ、夕映行くわよッ! あれ近藤さんはどうするの・・・・・・?」
「私が連れていくです、あの人なら見回りだとか行って学校の中をウロウロしているはずですし」
「あの~出来ればあいつ等にバレない様にお願い出来るかな・・・・・・? バレたら色々と怒られそうだし・・・・・・」

近藤が申し訳なさそうに三人に頼む。もしバレたら「局長のアンタがこんな所で何やってるんだ」と色々言われそうだからだ。三人は一応それを承諾して、麻帆良学園に一人の男を連れて向かうのであった。














麻帆良学園に向かう途中、近藤は目の前の光景を見て目を見開いていた。

「こ、こ、これは楽園かッ!? 見渡す限り女の子祭りじゃねえかッ!」
「そんな所で立ち止まっていると邪魔ですよ、ただでさえあなたは図体デカイんですから」

近藤の目の前には多くの麻帆良学園の女子生徒達が通行を飛び回っている。思わず立ち止まって近藤は感動の雄叫びを上げる

「うお、チョー嬉しいっ! 普段野郎共に囲まれてばっかの俺にこの光景は堪らんッ! こんなにいるんだから一人や二人俺とつき合っていい女性がいるかもッ!?」
「そんな天文学的な確率ありませんから、早く行きましょう、雪崩に巻き込まれそうです」
「え? あぶッ!」

夕映が言った瞬間、近藤は大量の女子生徒の大群に飲み込まれてしまう、そのままどんどん遠くへ流されていく

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「言うのが遅かったですか、まあ目的地は同じなのでどうせ会えますね、行きましょうハルナ、のどか」

夕映は生徒達の雪崩に巻き込まれないように端っこを歩いて行く。ハルナとのどかも近藤の安否を気にしながらついていく

「大丈夫かなあの人・・・・・・?」
「土方さんの上司らしいから大丈夫だとは思うけど・・・・・・」

のどかがそんな事を言っていると後ろから聞いた事のある男と女子生徒の声が

「どわぁぁぁぁぁ!!」
「土方さぁぁぁぁぁん!」
「刹那、諦めろあれは助けられん」

近藤と同じく土方も女子生徒の雪崩に巻き込まれながら流されていた、それを走って追っている同じクラスメイトの刹那と龍宮の姿が

「やっぱ、同じ穴のムジナだね・・・・・・」
「うん・・・・・・」

流されていく土方を見ながらうっかり近藤と出くわさないよう祈るしかないのどかだった。
そうしているとまた後ろから悲鳴が聞こえてくる。

「うわぁぁぁぁぁ!!」
「楓姉、ジミーが流されたよッ!」
「流されジミーだよッ!」
「落ち着くですござる2人共、いつもの事であろう山崎殿がああやって波に飲まれることなど」
「そうだね楓姉ッ!」
「社会から流されてるもんねジミーッ!」

見た目地味な青年が雪崩に巻き込まれているのをクラスの双子姉妹の風香と史伽、そして楓が楽しそうに眺めながら走っている。

「山崎って人やっぱあの人だったね・・・・・・・」
「そうらしいね・・・・・・」

近藤や土方達と同じく流されていく山崎を見ながらのどかは頷く。そんな状況の中後ろから、ブロロロロッ!っとバイクの音が聞こえてきてのどかは嫌な予感が頭をよぎる。

「どけどけぇぇぇぇ!! 轢き殺されてえのかテメェ等ッ!! こちとら早朝に千雨の所で寝てたら茶々丸に連れ去られて、こいつの送り迎えさせれてんだぞガキ共ォォォォォ!!!」
「「「「「キャァァァァァ!!!!」」」」」

案の定、のどかが最も苦手な相手、坂田銀八がスクーターで生徒達をあおりながらイライラしながら叫んでいる。
どうやら今日の朝にすぐに千雨の所で寝ていた所を探しに来た茶々丸に無理やり起こされてエヴァの家まで連れてかれ、そこからいつものようにエヴァを後ろに乗せてここまで来たらしい。茶々丸曰く「マスターの夜泣きが激しかったので」

「銀時、全然進まないではないか、早くしろ」
「んなこと言ってもよ~この時間帯はガキ共が邪魔で進めねえんだよ」
「歩道が広いではないか、行け」
「いや通れるわけねえだろ・・・・・歩道も人が溢れかえってるし・・・・・・」
「関係無い、行け」
「しょうがねえな・・・・・・」
「行けるわけないでしょアホンダラァァァァァ!!」

銀八と後ろに座るエヴァが不祥事を起こそうとしているのを通りかかったアスナが踵落としで銀八を止める

「何考えてんのよアンタ等ッ!」
「いやノリで思わずあんなやり取りになってまって」
「うむ、吸血鬼の血が騒いでしまった」
「あんた等、どんだけ漫画に影響されてんのよッ!」

後ろで揉めている様子の銀八とエヴァとアスナを見てハルナとのどかは唖然としていた。

「朝からあのテンションはさすがアスナって感じだね・・・・・・」
「先生を蹴って止めるなんてよくそんな恐い事出来るよね・・・・・・・」
「何やってるんですかあなた達、先に行くですよ」
「あ、ごめん」

アスナ達の所に慌ててネギと木乃香が駆け寄ってきているのを見た後、ハルナとのどかは夕映の後を追った。















ようやく学校の門をくぐり抜けれた三人は流された近藤が何処に行ったのか探すが、すぐに発見された。門をくぐった先のすぐに人だかりができていて、生徒達がいったい何者なのかとぐったりして倒れている近藤を眺めている。
そこに夕映達が入って行って近藤を見つけ、彼を人目につかないよう一旦そこから離れる為にズルズルと引きずって行った。3人がかりとは言え大の男を女性の力で運ぶのは結構骨がいる。

「近藤さん大丈夫? ていうか生きてる?」
「・・・・・・幸せだった、もう一回やりたい・・・・・・」
「あ、そ・・・・・・」

ハルナの問いに苦しそうに、そして幸せそうにつぶやく近藤であった。


















「じゃあ私達授業あるから、それじゃあここで」
「失礼します・・・・・・」
「おうッ! 色々してくれてありがとうッ! 君達への恩は死んでも忘れないッ!」
「ごめん死んだら忘れて、化けて恩返しされても困るから」

近藤を誰もいない学校の裏側に連れて行き、ハルナとのどかは彼に手を振って別れを告げ、すっかり回復した近藤はそれに大声で手を振って見送る。しかしその隣にチンマリした少女が一人

「あれ・・・・・・? 君は行かないの?」
「初っ端から嫌な先生の授業があるので今日はサボるです、ハルナ達にも伝えておきました」
「いやサボるのはどうかと思うんだけどな・・・・・・・」
「・・・・・・元々やる気が無いんです、学校の授業自体をすることが・・・・・・」

めんどくさそうにつぶやく夕映の言葉に近藤はしばらく考え込んだ後、ポンと手をたたく。

「じゃあ今日は俺に付き合ってくれないかッ!? 俺ここ来たの初めてだから道案内頼むわッ!」
「別に良いですよ」
「えッ! 即答ッ!?」
「拾ったペットの管理は飼い主の義務なので、とりあえずあなたのお仲間を探しましょうか」
「やったぁぁぁぁぁぁ!! サンキューゆえっちッ!!」
「次にそれで呼んだら保健所に連れて行きますから」
「すんませんッ!」

まるで猛獣を手なずける猛獣使いの用に夕映と共に、麻帆良学園内での土方と山崎の行方を捜す事にする。二人が行こうとした時、近藤は彼女の方に笑みを浮かべて振り向く。

「そういえば俺の本当の事彼女達にバラさないでくれてありがとな」
「・・・・・・あなたに礼を言われる筋合いは無いです」
「いや本当感謝してるよ、これは重要機密なことでな、一般人にバレると大変な事になりかねん、いや~本当に君に会えて良かった、俺の事もバラさないし、ここの案内までしてくれるんだしな、いつか礼をさせてもらうよ」
「・・・・・・・」

何だかこの人と喋っていると調子が狂う・・・・・・・夕映が近藤に思った印象はこれだ。
自分に向かって満面の笑みでお礼を言われたりするのは彼女にはあまり経験がない、まあそれは元々自分の性格が災いしているのはわかるのだが。

(あの子と初めて会った時の感じですね・・・・・・)

そう思いながら夕映は近藤と共に学校の裏側を後にした。
























山崎を見つけるのは容易だった。真撰組の服装ではなくジャージ姿で彼は誰もいない理科室をせっせとモップブラシを使い床を走りまわっていた。鼻歌を吹きながらやっているので心なしか何だか楽しそうにやっている感じがする。

「あれはまさしくザキ・・・・・・密偵のくせに何でこんな所で楽しく掃除してんだ・・・・・・」
「密偵というのはスパイ的なあれですか? なるほど道理で地味なはずです、私もこの目で初めて見ました」

理科室のドアの隙間からこっそりと山崎の行動を見る近藤と夕映、傍から見れば変質者だ。
だが二人は廊下を歩いている教師たちにも目もくれず山崎をチェックする

「あの野郎、転送装置の反応が無くなったから心配していたのに、自分はゆったりライフ決め込んでやがる・・・・・・まさかトシの奴も・・・・・・」
「転送装置って何ですか?」
「いえ、え~と・・・・・・俺達の組織がここに来るためのパスポート的なモンかな・・・・・・」

夕映の質問に頭を抱えながら応える近藤。別にウソは言っていない

「俺達って、ここに来るのに凄く大変でさ、まずそれが無いと・・・・・・」
「綾瀬さん、こんな所で何してるの? 坂田先生の授業はとっくに始まってるわよ、まあ授業になってないと思うけど、あら?」

近藤が夕映に軽く説明しようとする時、前方から曲がり角から出てきたスタイルの良い女性が授業なのにこんな所にいる夕映を見て注意しようと思ったのだが、彼女の近くに立っている近藤を見て首を傾げる

「どうしてこんな所にゴリラがいるのかしら?」
「いえすみません、俺って人なんですよ・・・・・・」
「しずな先生、この人は見た目どうみても立派なゴリラですが、一応人間らしいです」
「いや一応人間って何?」
「まあそうなの、一応人間なのね、ごめんなさい勘違いして」
「だから一応人間って何?」

夕映の説明を聞いてここの教師である源しずな先生は納得したように頷く、だが二人の言い方に近藤は少し傷心気味だ。そんな彼に構わずしずな先生は話しを続ける

「綾瀬さん、あなた最近坂田先生の授業に出席していないらしいけど大丈夫なの? 坂田先生言ってたわよ「次来なかったら火あぶりだ」とか」
「大丈夫です、一度も行く気がありませんから」
「ハァ~しょうがないわねぇ・・・・・・」

キッパリと言った夕映に対してしずな先生は困ったような表情をする。彼女も銀八と夕映が仲が悪いのは知っているがまさかここまでとは・・・・・・

「まあ今回はいいけど昼休み後の授業は行きなさい、坂田先生には私から言っておくわ、生徒が火あぶりにされる所なんて見たくないし」

そう言ってしずな先生はその場から立ち去って行く。
夕映はその後ろ姿を見ながらポリポリと頭を掻いた後、近藤の方に振り返る。

「じゃあスパイの人は確認できたので次はもう一人を探しましょうか」
「へ? あの・・・・・・授業行った方が良いんじゃない・・・・・・?」
「だから行きませんってあの先生の授業はつまらない以前に問題外ですし」

近藤の意見を突き返して夕映はスタスタと歩いて行ってしまう、それを慌てて近藤は追って行く。二人が理科室から離れていった時、ガラララッと理科室のドアから山崎が出てきた。

「ハァ~終わった、何か最近綺麗にするのが楽しくなってきたな、俺ってこっちの方が合ってるのか・・・・・・ん?」

山崎がふと向こうの方を見ると見た事ある男の背中が見える、見間違いかと目を擦ってもそこにはあの男が生徒の一人と歩いている。しかもあの生徒は・・・・・・

「局長・・・・・・・え、局長ッ!? 何でこんな所にいんのッ!? しかもいつも副長と折り合いが悪い生徒と二人で何やってんだ・・・・・・とりあえず後をつけてみよう」

別世界に何で近藤がいる事に山崎は口をあんぐり開けて驚きつつも、何故か土方と仲の悪い夕映と一緒にいるので、彼の動向を調べようと後ろからコッソリと尾行を始める山崎だった。

























近藤と夕映は学校内をウロウロと探し回って土方を探すのだが、何処にもその姿は見当たらない。いつもならこの時間にいるのだが・・・・・・
夕映が顎に手を当て考え込んでいると、一時間目の終了のベルが鳴り響く。もうそんなに時間が経っていたのだ。

「しょうがないですね・・・・・・私は二時間目の授業には出なければならないので、ここで一旦お別れです、昼休みに会いましょう」
「すまないなこんな事に付き合わせてしまって、授業もあるというのに」
「・・・・・・別にあなたの事は嫌いにはなれないので・・・・・・」
「ん? 何か言った?」
「何でもないです」

思わず呟いた事を夕映は適当にごまかして近藤のそばから離れていく。彼女の後姿を見送った近藤は一体どうしたものかと一人で悩んでいた。

「う~む・・・・・・適当に探してみるのもアリだが嬢ちゃんがいなくて一人で歩いてたらマジで捕まるかもしれないな・・・・・・」
「局長、こんな所で何してるんですか・・・・・・・?」
「あれ・・・・・・?」

近藤が考えていると後ろから突然声が聞こえ振り返ってみるとそこには頬を引きつらせる山崎の姿が、2人はしばらく見つめ合う。

「何で・・・・・・局長がここにいるんですか・・・・・・?」
「いや・・・・・・だってお前等全然連絡無いからさッ! わざわざ心配してここまで来たんだぞッ! 本当頼むよマジで、もうチョベリバッ!!」
「局長それ死語ですって・・・・・・全く局長ともあろうものがこんな所にバカンス気分で来る所じゃないんですよ・・・・・・」

何故自分の総大将がノコノコとこんな所に来てるんだと呆れるが、山崎はもしかしたらと一か八か「あ~山崎なんかにバレた~」と顔をおさえている近藤に聞いてみる

「あの~局長、自分専用の転送装置が無くても江戸に帰れますかね・・・・・・?」
「ん? 何でそんな事聞いてくるんだ?」
「いや一応無くしたり、壊したりしたら大変だな~と思いまして」
「俺は深くは知らんよ、だがとっつぁんはそうなった場合帰るのは至難、もしくは無理だって言ってたぞ」
「うわ~・・・・・・あの双子のおかげで俺の骨が何処に埋まるか不安になるな・・・・・・」
「どうしたザキ、顔色悪いぞ」
「あの俺実は・・・・・・転送装置壊しちゃって・・・・・・」








申し訳なさそうに山崎は頭から汗を掻きながら言った言葉に近藤の表情は固まった。

「あの、局長大丈夫ですかね、俺・・・・・・・?」
「山崎・・・・・・」


近藤はポンと山崎の両肩を叩く

「お前の事は忘れん」
「いやそれどういう意味ッ!? 諦めろってかッ!? 江戸に帰れるの諦めろってかッ!?」
「ヘキサゴンで覚えたんだがことわざでこんなのあるんだぞ、『住めば都』」
「それ完全にここで暮らせって事ですかッ!?」

既に山崎に対して諦めモードの近藤に必死に山崎は主張を訴えるのだが、彼は全く聞いてはおらずまあまあとなだめる

「冗談だって、お前の帰れる方法は今日帰ったらとっつぁんに聞いてみるさ」
「本当ですよね・・・・・・勘弁して下さいよ俺だって帰りた・・・・・・今日帰るんですか局長?」
「そりゃあそうだろ俺は局長だよ、局長がそんなに長く留守できないでしょうが、昨日の夜着いてな、帰るのは今日で一泊だけだ」
「一泊か・・・・・・・俺は何日ここに住めば帰れるんだろ・・・・・・? てことは本当に俺達の事を見に来ただけなんですね」
「当たり前だろ、まさか俺が女子生徒に囲まれてハーレムを作ってここに永住でもするんじゃないかと思ってたんじゃないだろうな? 俺がそんな軟弱な根性だとでも・・・・・・!!」

近藤が男らしく叫ぼうとしたその時彼の後ろから声が

「山崎さんこんにちは、あのちづ姉知らない?」
「あれ? 夏美ちゃんもう授業じゃないの?」
「そうなんだけどちづ姉がどっか行っちゃって・・・・・・」

山崎を読んだ声の主は村上夏美、そばかすと赤髪が目立つA組には珍しい極一般の少し地味な生徒だ。お互い地味だからわかるのか彼女は数少ない山崎の姿と名を知っている生徒である。これには山崎も感激して彼女とは縁のある生徒の一人だ。

「ちづ姉何処行ったのかな・・・・・・?」
「あ~あの人ね・・・・・・」
「ちょっとザキッ!? 何でお前がそんなに女子と親しく喋ってるのッ!? 江戸では俺と同じ二枚目二人に邪魔された哀れなモテないコンビだったじゃんッ!!」
「山崎さんこの人誰・・・・・・?」
「残念ながら知り合いなんだ・・・・・・」

吠える近藤にやや引き気味の夏美に山崎は「とりあえず悪い人じゃないから」と説明する。だが目の前の近藤は「山崎のくせに何でだァァァァ!!!」と叫びながら刺さっている電柱を引っこ抜こうとしている。しかも本当に抜けそうで怖い。

「何だかなぁ・・・・・・」
「あら、夏美どうしたの?」
「あ、ちづ姉ッ! 私探してたのに何処行ってたのッ!? もう授業始まっちゃうよッ!」

夏美に話しかけてきたのはちづ姉こと、那波千鶴。いきなり出てきた彼女に夏美は戸惑いの表情を見せるも彼女はいたってニコニコ笑っている。

「ちょっとトイレ行っただけじゃない、落ち着きなさいよ」
「この前トイレ行くとか行ってそのまま帰ってこなかった時あるよね・・・・・・・?」
「そうだったかしら? まあ人生には寄り道があるほうがまっすぐ生きるよりはよっぽどマシよ」
「変なごまかし方しないでよ・・・・・・」

千鶴のやっかいな所と言ったらかなりの天然であり、気がついたら何かしらおかしなことをしていたり、どっかに行っていたり、終いには何故そんな物を持っているんだとツッコミみたくなる物を持っている時がある。彼女に対しては同じく破天荒なあの坂田銀八でさえも「お前はもう自由に羽ばたいていいから」とお手上げ状態だ。
しかも彼女は天然だけではなくもう一つ強大な武器を持っている

「夏美、あそこにいるの何?」
「あれはえ~と、山崎さんの知り合いの人だよ」
「へ~初めまして」
「あ、初めま・・・・・・・」

まだ電柱を引っこ抜こうとしている近藤に千鶴は夏美に紹介されて彼に近づいて挨拶。それを聞いて思わず近藤も振り返って挨拶しようとすると目をカッと開いて硬直する。その目は彼女の容姿ではなく別の“モノ”を見ていた。

(む、胸デケェェェェェェェ!!!! 何だあのメロンッ!? ここ中等部だよねッ!? ウソマジでちょッ! 別世界スゲェェェェェェ!!! )

千鶴のもう一つの武器、それはA組でトップクラスを誇る強大なプロポーション、中学三年生とは思えないようなスタイルの持ち主であり。あの子供には全く興味が無いと豪語する坂田銀八でさえ彼女に「俺と一緒に大人への階段登らね?」と低俗な誘いをした事がある、その後あやかによって銀八が教室の窓から排出されたのは言うまでもなく、それ以降は千鶴に誘いをかけなくなった。

「あら硬直しちゃってどうしたのかしら?」
「いえ・・・・・・」

固まった近藤を見て千鶴は首を傾げるがすぐに近藤は顔をキリッと身構える。自分なりの男前の顔で

「フ・・・・・・ちょっとあなたの、デカイむ・・・・・美しいお顔に見とれてしまいましてね、まあ僕から言わせるとそのデカイメロ・・・・・・・綺麗な髪は見る男を魅了してしまう小悪魔ちゃん的な代物、全くこんな学校であなた見たいな凄いパイオ・・・・・・お美しい小悪魔は初めて見ましたよ、どうです、このまま俺と一緒に海へ行って水上スキーでも? もちろんポロリも、ハハハハ」
「局長、気持ち悪いです・・・・・・・ていうか所々欲望が出まくってます・・・・・・・」
「絶対ちづ姉の胸をZ注目してるよね・・・・・・最後ポロリとか言ってるし・・・・・・」

近藤なりの最高の口説き文句に山崎と夏美は、思いっきりドン引き。
二人の腕には鳥肌がビッシリ出ている。
当然千鶴もかなり引いているんだろうなと山崎と夏美は彼女を見るのだが

「海へは行かないけど別の所には連れて行ってあげるわ」
「・・・・・・今なんと・・・・・・?」
「さあこっち来て」
「嘘ッ!? うおッ!」

楽しそうに近藤の手を引いて千鶴は何処かに行ってしまうのだ。
取り残された山崎と夏美は驚愕の表情を浮かべる

((あ、あのチンケな口説き文句で速攻フラグ立てただとォォォォォ!!!!))
「局長待って下さいよッ!」
「ちづ姉待ってッ いくら天然でも限度ってのがあるよッ!」

山崎と夏美は何処かへ走り去っていく千鶴と近藤を必死に追いかけていった。














「局長~そこで目をつぶって何してるんですか・・・・・・?」
「ん? その声は山崎か? 実は千鶴さんに突然目をつぶって欲しいと言われてしばらく手をひかれて歩かされてさ何処かに入った感じはあるんだけどここ何処かな・・・・・・?」

山崎はと夏美の目の前には近藤がある部屋に目をつぶって立っている。それを見て二人は千鶴がやりたかった事を理解する。

「なるほどやることが旦那や沖田隊長と大差無いな・・・・・・」
「天然って恐いね・・・・・・」
「あら二人とも追いついてきたの?」
「あの~千鶴さんもう目を開けていいスか?」
「もういいわよ」

近藤はゆっくりと目を開けた時、彼は入れられた部屋をキョロキョロと見まわす。周りにいるのはウサギが餌を食べていたり、ウグイスは飛び回り、ニワトリが卵をちょうどポロンと生んでいる小じんまりとした部屋、そう彼がいる部屋は・・・・・

「それにしてもまさかここの学校の“飼育室”にゴリラを飼っていたなんて驚きだわ、このゴリラさんはきっとここの飼育室から脱走していたのね、危なかったわ、じゃあ夏美もう戻りましょう、遅刻しちゃうわ」
「え・・・・・・うん」

千鶴は頬笑みを一切崩さず、そのまま飼育室にご丁寧に鍵をかけられ閉じ込めた近藤を置いて、彼の事が哀れでしょうがないという視線を送る夏美と一緒に立ち去ってしまう。
残ったのは山崎一人、互いに無表情で目を合わせ時間が経つ。

「鍵・・・・・・開けましょうか・・・・・・・?」
「大体予想は出来てたんだ、こんなオチだろうなと・・・・・」
「局長・・・・・・」
「・・・・・・ちょっとここで自分を見つめ直してる、これはきっと俺がお妙さん以外の女性に下心を見せた天罰なんだ」
「わかりました・・・・・・副長には局長の事は言わないで置きますから・・・・・・」

山崎がそう言うと近藤は「すまん」と頭を下げてそばにあるウサギが巣にしている土管の上に座る。彼が見せる寂しげな背中を見て山崎は思わず泣きそうになるが我慢してその場から走って立ち去って行く。

一人残された近藤は同居人と一緒に戯れながら静かに時間を過ごし始めた。





















近藤が動物達を戯れながら時間を過ごし既に昼終わり、飼育室に閉じこもっている近藤をじーっと眺める二つの目。

「違和感無いですね、そうしていると」
「ああ嬢ちゃん来てくれたんだ・・・・・・俺って本当にゴリラに似てる・・・・・・・? 俺ってゴリとラーのどっちかなのかな・・・・・・?」
「何ハイレベルなネタ使ってんですか、鍵開けたから早く出てきてください、あの人見つかりましたよ、あとどっちかというとあなたはラーです」

ガチャリと飼育室のカギを開けて近藤を出したのは夕映。彼女が開けたドアから近藤はまだブルーな表情で出てくる。

「外伝でも言われても本編ではもしかしたらとか思ったけどやっぱりゴリラか・・・・・・」
「何言ってんですか? 全く千鶴さんが「学校内でゴリラを捕まえた」って言ってましたからもしやと思ったら案の定ここにいましたね、彼女は天然でやっているのかはたまた素でやっているのかわからないです、じゃあブルーになってないで行きましょうか」
「そうだな・・・・・・クヨクヨしてちゃ駄目だよな・・・・・・ポジティヴに生きていこうッ! ゴリラ好きな女性もいるさきっとッ!」
「テンション下がったり上がったり忙しい人ですね・・・・・」

いつものテンションに戻る近藤を見てダルそうに夕映はもう一人の隊士がいる場所へと向かって行く。はっきり言うと彼女にとってはあの男とはあまり関わりたくないのだ。
夕映と土方は初対面の時から相性が悪い。

「あなたってあの人の上司ですよね? どうしてあんな人を自分の部下にしたんですか?」
「うん? トシの事か? まあ俺にとってトシは部下じゃなくて悪友見たいなもんだと思ってるからな」
「友達何ですかあの人と? よく友達やれましたね、私なんか一日で絶交宣言です」
「アハハハ、もしかしてトシの事嫌いなのか?」
「・・・・・・大嫌いです」

歩きながら、つぶやく夕映の言葉に近藤は口元の笑みを消す、その言葉に怒りが込めてるように聞こえたからだ、それから夕映が彼に振り向かずに話を続ける

「最初はただ気に食わなかっただけなんです、元々ガラの悪い大人は嫌いなので、私とは一生縁のない人だとそう割り切っていました、ですが・・・・・・」

夕映はその場にハタと止まったので近藤も一緒に止まる。

「あの人と私の友人の一人が彼と出会ったんです、その時の話をするんですよ私の友人が、その時の彼女の顔は楽しそうに嬉しそうに面白かったように輝いていて・・・・・・・いつしか彼女はあの人を慕うようになりました、私はそれから本当にあの人の事が嫌いになりましたね」
「・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと前にある教師の事が嫌いだって言いましたよね? その人も最初はあの人のようにただ単にガラが悪いから嫌いなだけだったんですが、少し前からあの人はクラスのほとんどから慕われるようになりました、私の別の友人の木乃香という子が笑って接しているのを見て・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「嫉妬だって自分でもわかってるんですよ、でも私は自分が嫌いなタイプの人に友達を奪われたような感じがして嫌なんです、何であんな連中に私の居場所を・・・・・・」

下唇を噛んで夕映は珍しくポーカーフェイスを崩す。しばらく何も言わずに彼女の意見を聞いていた近藤はゆっくりと重い口を開いた。

「君はトシをどう思っている?」
「ガラが悪いし、喧嘩早いし、短気だし、タバコ臭いし、とにかくダメ人間ですね」
「そうか、じゃあ何でそんなダメ人間に君の友人は慕っているのかな?」
「・・・・・・前に色々助けてもらったって聞きました・・・・・・」
「ハハハハ、トシの野郎早速ここに来て人助けか、あのおせっかい焼きめ」
「・・・・・・・・・・・・」

笑っている近藤に夕映は顔をうつむけて黙る。今度は彼が彼女に喋る番だ

「俺にとってトシは気難しい所もあるが筋ははっきり通すそんな男だと思っている、
あいつは人付き合いが苦手な性格でな、あまり素直になれないんだ、だがトシは困った奴を見過ごすような腐った野郎ではない事を俺は知っている、だから嬢ちゃんの友達もあいつのそういう所に惹かれてを慕うようになったんじゃないかな?」
「・・・・・・・・・・・・」
「その教師の方だってそうさ、俺はその教師の事は知らんがきっとその木乃香というお譲ちゃんは何かしら縁があったんだろう」
「木乃香はあの人に友人の命を助けてもらったとかでいつも感謝しています・・・・・・・」 
「ほらな」

ニンマリと笑って近藤は夕映の頭を撫でる。まるで子供をあやす父親の用に、夕映は撫でられながら動こうとはしない。

「悪い所だけを見ずに良い所を見つけてみればいい、悪い所だけを見ても何も始まらん、良い所があるから人と人は親しくなれる、悪い所しか無い人間なんていやしねえんだ、誰でも一つは良い所があるもんだ」
「私は・・・・・・悪い所しか見てないからあの二人を許せないんでしょうか・・・・・・ただ私の友人を奪った奴、そう考えていたから私だけあの二人を好きになれなかった・・・・・」

つぶやきながら落ち込み気味の夕映は近藤を見ると彼は二カっと笑顔を見せる、そんな彼に夕映は思わずクスリと笑ってしまう。

「あなた見たいに良い所だけしか見てないような人間が羨ましいです、あなたやのどか・・・・・・あの子は男性は苦手なのですが、年が近い女の子と接する時は悪い所なんか絶対に見ようとしません、だからこんな理屈屋で無愛想な私でも友達になってくれた」

今からずっと前、夕映とのどかが初めて会った時、彼女は自分が冷たくしたり無愛想に接しているにも関わらず笑って接してくれた。いつしかそんな彼女に自分は惹かれてのどかは自分の友人なったのだ。

「悪い所だけを見ずに良い所を見ろ・・・・・・か・・・・・・・」
「ああ、やってみれば良い」

近藤は撫でるのを止めて再び歩み出す、夕映も一緒に付いていく。

「きっと見えなかったモンが見れるはずだ」




















土方は学校内にあるテラスに来ていた。彼はここで昼食を済ませている事が多く、今日もここでカツ丼でも買って食べようとしていたのだが、ふと席に座っていると彼の前に思わぬ来客者が現れた。顔を真っ赤に染め上げ、弁当箱を持つ手が震えている
その来客者はのどか。彼女は緊張で土方に目を合わせずにテーブル越しに彼の前に座った。

「どうしたんだお前・・・・・・? まだメシ食ってなかったのか?」
「あ、あの土方さん・・・・・・まだご飯食べてないですよね・・・・・・?」
「今から食うんだよ、お前も今から食うのかそれ?」
「あのこ、これはひ、土方さんの分です・・・・・・」
「は・・・・・・?」

土方に目を合わせずうつむいたままのどかは土方に持っていた小さめの弁当箱を差しだす。一瞬キョトンとする土方だがそれを手に取りしげしげと眺めていると、声を震わせながらのどかが口を開く。

「き、今日の朝作りました・・・・・・良かったらどうぞ・・・・・・」
「オメーが作ったのかコレ?」
「はい・・・・・・あの迷惑だったでしょうか・・・・・・?」
「いや迷惑じゃねえ・・・・・・ありがとよ・・・・・」
「は、はいッ!」

土方自身も女子供から弁当なんて貰ったことが無いので少々照れてしまい、のどかの方に向かずに礼を言う。土方にお礼を言われてのどかもようやく安堵の表情を浮かべる。

それを物陰から眺める者がいた

「え、え~・・・・・・トシに懐いてる友達ってあの子だったの~・・・・・・」
「こうやってあの人を眺めると確かに悪い人では無いんですよね・・・・・・」

大きな植木鉢に隠れて土方とのどかのやり取りを見る近藤と夕映がいる。
しかし思わぬシーンに近藤は口をあんぐりと開けている。

「自作の弁当作って貰うってトシの奴・・・・・・羨ましいな・・・・・・」
「どうやらあの二人思ったより展開が早いのかもしれないです・・・・・・」
「イイわ~こいつはくせぇ~ラブ臭がプンプンするわ~」
「あれメガネ娘?」
「いつ私達の後ろにいたんですかあなた・・・・・・」

近藤と夕映との背後で何時の間にか一緒に隠れて、ハルナは付けてるメガネを光らせながら土方とのどかの方を見ながら必死にエールを送っている。

「ふっふっふ・・・・・・やっぱり私の助言通りお弁当作戦は成功したようね・・・・・・あ、土方さんが弁当箱を開けた・・・・・!!」

土方が弁当箱を開けた事に敏感に反応するハルナ、彼は弁当の色とりどりの具材を見て「まあ悪くねえな」と呟いていた後、懐からある物を取り出す、それは・・・・・・

「だがマヨネーズがかかってねえな」
「え・・・・・・・?」
「いいかこうやってマヨネーズをたっぷりかけると味が10倍に膨れ上がる」
「あ、ああ・・・・・・・」

彼が持ち出したのは自作のマヨネーズ、それをのどかに作って貰った弁当にふんだんにかけている、のどかはただショックで目まいが・・・・・・

「マヨネーズってのは昔から何にでも相性抜群の調味料の神と言われている、こうすればどんな食材でも・・・・・・」
「何のどかのお弁当を犬の餌にしてんのよアンタァァァァァァ!!!」
「どうふッ!!」
「ハ、ハルナッ!?」

親友のお弁当にあらぬテロを起こす土方にハルナは隠れるのを止めて土方に向かって走り、そのまま彼の首に向かってラリアット、土方はその衝撃でのどかの弁当に顔面直撃。
いきなりの彼女の登場にのどかは驚いている。

「このお弁当どんだけのどかが作るのに苦労したかわかってんのッ!? こちとら部屋にゴリラ上がりこんで大変だったのッ! そんな中頑張ってのどかはやっとこさ完成させたのッ! それをアンタマヨネーズまみれにするってどんな嫌がらせよォォォォ!!!」
「何すんだテメェッ! こいつの弁当メチャクチャになっただろうがッ!」
「元々アンタがメチャクチャにしたんでしょうがァァァァ!!」

お互い激怒しながら掴み合いになる土方とハルナ、それをどうにか止めようとオロオロするのどか。そんな光景を呆然と見るだけの近藤と夕映

「うんまあ・・・・・・トシにも悪い所はあるんだよね・・・・・・」
「あの人と仲良くなれるのは無理かもしれません」

ギャーギャー言い合いをしている土方達を残して、近藤と夕映はその場から離れて行ったのであった。




























昼休みもそうそろそろ終わる頃、無事に二人の安否を確認した近藤は帰り支度をするために今はもう人気が無い、大樹の前で帰る準備を始める。見送りは夕映一人だ。

「もう帰るんですか、もう少し話がしたかったのですが・・・・・・」
「悪いな嬢ちゃん、早く帰らないと総悟にどやされるからな」
「・・・・・・また来るですか?」

何処かテンションの低い夕映の質問に近藤はしばらく考えた後彼女に振り返って答える

「忙しくて滅多に来れないかもしれないが必ずまた来るさ、今週もスケジュールパンパンでさ、朝は稽古、昼はお妙さんの警護、夕方は仕事、夜はお妙さんの警護、真夜中もお妙さんの警護、大人は大変だな本当」

ぶっちゃけ一つ余計な物を省けば結構暇なスケジュールなのだが。
夕映はその『お妙』というワードに引っかかって首を傾げる。

「お妙って誰です?」
「俺の想い人何だけど、どうにもこうにも俺に振り向いてくれないんだ、俺はこんなに愛しているのに・・・・・・・本当三十路前なんだから早く結婚してえな~」

ハァ~と重いため息を吐いて近藤が頭を抱えていると、夕映は欠伸を交えた後彼に口を開く。

「別に私が嫁に入っても構いませんが?」
「ハハハハ、マジで? いや~冗談でもそんなこと言ってくれて嬉しいよ、じゃあ三十路になってもお妙さんを落とせなかったら嬢ちゃんに俺の真撰組の姐さんになってもらおうかな、ハハハハハ」
「良いですよ」
「お~こりゃあありがたい、これで俺も三十路には一応結婚できるってわけだダ~ハッハッ!!!

どうせ夕映の冗談だろうと笑い飛ばす近藤。夕映もつられて少し笑っているが・・・・・
後にこのやり取りが土方や沖田、真撰組達に大事件を巻き起こすキッカケになるのはまだまだ先の話。

「じゃあ俺はもう帰るわ、色々手伝ってくれてありがとな嬢ちゃん」
「その嬢ちゃんって言うのもう止めてくれませんか? 子供扱いされるのは嫌いです、名前で良いですよ名前で」
「じゃあ・・・・・ゆえっちッ! また会いに来ますッ!」
「何で名前で良いって言ったのにそれ・・・・・・もういいです」
「助けが欲しいと思ったら俺を呼んでくれ、すぐに駆けつけるからな、あばよッ! 」

近藤の呼び名のチョイスにめんどくさそうに流す夕映、そして近藤は持っていた転送装置、ジャスタウェイ・クリムゾンに付いているスイッチを押した瞬間、彼女の目の前に突然大きな光が、彼女は思わず目をつぶってしまいしばらくしてゆっくり開けるとそこには誰もいなかった。

「また会えますよね・・・・・・近藤さん・・・・・・」
「お~いたいた、テメェもう逃がさねえぞコラ」

近藤が消えた所を眺めていた夕映の後ろから聞いたことのある声が、振り返ると自分が嫌いなタイプの一人だとあげたA組の副担任・坂田銀八だった。相変わらずの死んだ目でこちらを睨んでいる。

「今日俺の授業が二つあるの忘れたとは言わせねえぞオイ、お前今日の一時間目にいなかったよな? つー事でお前は火あぶりの刑に処する、覚悟しろよデコ助」

こんな男が周りに慕われているのは間違いない事実、親友の木乃香も親しげに話すし、特にエヴァや雪広あやかや長谷川千雨に関しては生徒と教師以上の関係なのではないかと思うほどだ。夕映には何でこの男にそんな人望があるのか理解できないが、近藤が言っていた事を思い出す。

悪い所だけを見ずに良い所を見つけてみればいい、悪い所だけを見ても何も始まらん、良い所があるから人と人は親しくなれる、悪い所しか無い人間なんていやしねえんだ、誰でも一つは良い所があるもんだ

今まで夕映は銀八や土方の悪い印象しか見なくて勝手に嫌な奴だと判断していた、だがもっと彼等と関わりを持てば・・・・・・何かがわかるかもしれない

「相変わらずうるさい人ですね・・・・・じゃあ行きましょうか」
「あれ・・・・・・? いつものああいえばこういう戦法はどうした・・・・・・?」
「何ですかそれは? 早く教室に戻らないとまた、いいんちょさんに怒られるですよ」
「え、どうしたのお前ッ!? 素直に言う事聞くなんてお前じゃねえだろッ! 何か企んでるだろッ! ぜってー何か企んでるってッ!!」

素直に階段を下りて校舎に向かう夕映、そんな彼女に銀八が一体どんな風の吹き回し?と頭を抱えているのを尻目に夕映は口元に若干笑みをつけて歩いて行くのであった。

また彼と会える日を楽しみにしながら





















銀八先生からの重要なお知らせ

「え~最近、読者からの質問コーナーへのお便りに、質問になっていないのがたびたび来ています、まあこれは前回、作者が感想返しの時に言っていた事なんですけどね、ということで非常に申し訳ないのですが、質問ではないお便りはここで載せる事は出来なくなりました、今回の質問枠から外れた読者様すみませんでした」

銀八先生のお知らせ終了


教えて銀八先生

銀八「一通目サハリンさんの質問」

このかに質問
ジジィに対して本音は、どう思っていますか?

木乃香「ええ、ジイチャンやと思うとるよ~」
千雨「で?・・・・・・本音は?」
木乃香「だからええジイチャンやって思うとるって~」
千雨「何で笑顔なのに目だけ笑ってねえんだよッ!」 

銀八「二通目とびかげさんの質問」

ゴリラはホントに一泊二日ですか?
私はとっつぁんがいいのでさっさとバナナぶっ刺して帰、いや返しましょう!

銀八「ゴリラ?」
土方「何だ近藤さんの事か? あの人はここに来てねえよ」
山崎「いや・・・・・・」
近藤「とっつぁんの方が良かったって・・・・・・」

銀八「三通目エンジンさんの質問」

ネギに質問。最近ヤンデレじみてきてるけど(お姉さんに対して)怖いです。そのうちSEED発動して、あのスーパーコーディネイターのごとくの戦闘力を発揮しそうですよね。そこでですけど、お姉さんに似ている明日菜さんに彼氏ができたら即刻追い払おうとしますか?

ネギ「アスナさんは彼氏以前に男の人と無縁・・・・・・うぐッ!」
アスナ「女子校なんだからしょうがないでしょ」
ネギ「すみません・・・・・・別にアスナさんに彼氏が出来ても僕は何も言わないので・・・・・・お姉ちゃんに彼氏ができたら話は別ですが」
銀八「末恐ろしいシスコンだな」

銀八「四通目、風の都さんの質問」

土方さんへ
こちらに来て、マイマヨを超えるマヨは見つかりましたか?

土方「無えな、購買部で買ってみたがどうにも俺が作るマイマヨとはレベルが数段落ちる、今の所、部屋でマイマヨ作りは日々怠れねえ」
刹那「そのせいで部屋がマヨネーズ臭くなってるんですが・・・・・・」
龍宮「うむ、匂いが少しキツイな」
土方「安心しろ、毎日マヨネーズの匂いを嗅いでいったら何時の間にかマヨ好きになり、そうすればマヨの香りがジャスミンティー見たいに感じるようになるんだよ」
刹那「今の所嫌いになる一方ですよ・・・・・・」

銀八「五通目、殻潰しさんの質問」

さよちゃん、最近は誰か遊びに来てくれてますか?

さよ「私の事見える人は先生とエヴァさんしかいないのであまり・・・・・・」
銀八「今度遊びに行ってやろうか? お前が好きそうな音楽持ってきて」
さよ「本当ですかッ!? 何ですッ!?」
銀八「レクイエム」
千雨「おい・・・・・・」

銀八「六通目、正宗の胃袋さんの質問」

ゴリラに質問
ゴリラって呼ばれるのは、両親のどちらかゴリラの天人ですか?それとも地球産のゴリラですか?

近藤「いや俺は純血の人間ですッ!」
銀八「嘘ついてんじゃねえよゴリラ、お前が俺等と同じ人類なわけねえだろ、地球人に謝れ」
近藤「嘘じゃねえよッ! 言っとくがゴリラって攻撃方法でウ○コ投げる戦法を使うんだぞッ! 俺やらねえよそんな事ッ!?」
銀八「うるせえよ、存在自体がウ○コ見たいなもんだろお前は、いい年して何回クソ漏らししてるのかわかんねえのか?」
沖田「じゃあ近藤さんの正体はウ○コゴリラで」
近藤「いやぁぁぁぁぁ!!!」
千雨「つうかお前等下ネタ止めろ・・・・・・」

銀八「七通目、ウィルさんの質問」

まき絵にです。さりげなく銀さんにいじられてるわけですが万事屋メンバーに入らないのですか?入ればもれなくマスコットに!

まき絵「いやこれ以上いじられたくないし、入りたくは・・・・・・」
エヴァ「貴様、私のポジションを奪う気かッ!?」
まき絵「イダイ、イダイッ! 耳引っ張らないでエヴァちゃんッ! 入らないからッ! 万事屋には入らないからッ!」
銀八「どんだけ自分のポジション守るのに必死なんだよチビ」

銀八「八通目、q-tureさんの質問」

銀さんに質問です。
GSに入団するには、年1回行われる入団試験で筆記と実技の2つをパスする必要があると聞いたのですが、今年はどんな問題が出題されたのかいくつか解答例付きで教えてください

銀八「無えよ、GSは殺る気だけがあれば誰でも歓迎します」
千雨「恐えよッ!」

銀八「九通目、Ououoさんの質問」

千雨さんしつも~ん!
コスプレするときは、どんな勝負パンツをはくんですか?(笑)
特に実技!

千雨「何これキモチワル・・・・・・」
銀八「適当に言っとけ言っとけ、ノーパンだとかでいいだろこんな変態」
あやか「千雨さん・・・・・・ノーパン何ですか?」
千雨「軽蔑する眼差し向けるなッ! ちゃんとはいてるからッ!」
銀八「いやそういう発言もどうかと思うがな・・・・・・」

銀八「十通目、黒足のコックさんの質問」

カモくんどこ?(ロッチ風

銀八「カモって誰?」
千雨「知らねえ」
ネギ「まあ僕と縁のあるキャラです・・・・・・出番の見送りが多くて24話まで行っているのに未だに読者の誰からも触れられずに・・・・・・・」
銀八「まあご愁傷さまだな、俺には関係ねえから、ということで次回予告、第二十五訓 『ペットの責任は飼い主の責任』 今回と少し被ってるなコレ」
ネギ「あれ?もしかして・・・・・・」
近藤「俺の再登場ッ!?」
銀八・千雨「「ねえよ」」






[7093] 第二十五訓 ペットの責任は飼い主にも責任
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/09/27 10:40
「はぁ? 下着泥棒だぁ?」
「そうじゃ、三日前から出没しているらしいのじゃが・・・・・・その間だけでも数十件の中等部、高等部の女子寮等が被害に会っている、これはかなり巧妙高い盗人がこの麻帆良学園に潜伏しているとワシは見た」

放課後の学園長室に呼ばれた銀八は、学園長の机の前に立ちながら聞かされたことにダルそうに髪を掻き毟る。そんな事で自分を呼ぶという事は何かを命令しようとしている証拠だ。そして銀八の考えは見事に当たる

「そこでじゃ銀八、この学園を危険に貶めようとするその輩をおヌシの手で捕まえて欲しい」
「何で俺がそんな事しなきゃならねえんだよ、んなもん警察に任せりゃあいいだろうが、ふざけた事抜かしてると久しぶりにその髭ぶち抜いてやろうか、ああ?」
「いや髭は抜かないで本当・・・・・・この学園を護ると言ったのはお前じゃろうが、カワイイ生徒達が夜な夜な下着泥棒の恐怖に怯えているのじゃぞッ! この件は3年A組にも被害が出ている、ここはA組の副担任として生徒の為に泥棒退治も当たり前じゃろッ!!」
「だったら学園長として生徒の為にテメェがやれよ、つかネギは?」
「いや~ワシも若ければ生徒の力になれるんじゃけど、こんなに体が老いるとどうも体の調子が・・・・・・」

わざとらしく腰を叩いてすっかりヨボヨボだという雰囲気を作り出す学園長。
それを見て銀八は軽蔑の眼差しを学園長にぶつける。

「付き合ってられるか俺は帰って金スマ見てえんだ、下着泥棒でも恋泥棒でも知ったこっちゃねえんだよ」
「待てぇぇぇぇいッ! 銀八ッ!! もしこれをやればお主に臨時ボーナスを付けてやってもいいぞッ!」

帰ろうとする銀八の耳に必死な学園長の言葉が耳に入りその場に止まって振り返る。どうやら学園長が言っていた事に関心を持ったらしい、銀八は学園長のとこへ体を戻して目を細める
「本当だろうな、もし嘘でも付いてたら、髭抜かれるより辛い下半身のアレ引っこ抜くぞ」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!? アレって何ッ!?」 


思わず股間を両手でおさえる学園長と念入りに契約をして、銀八は臨時ボーナスの為意気揚々と下着泥棒退治を行うことになったのであった。





















夜になった時、銀八は中等部の女子寮へ入ってメンバーを集め廊下へ集合。着物を着て久しぶりに持ってきた木刀を肩に担いで血気盛んな銀八が場を仕切り始める。

「いいかー相手は下着ドロとか言う便所に付いてるタンカスよりも汚え野郎だ、そんなクソ虫がお前等が住んでいるこの場所に毎晩来て下着を盗んでいるという何とも腹立たしい話しじゃねえか、そこで俺はお前等生徒の為にその下着ドロを血祭りにしてやろうと思う、新万事屋初めての抹殺任務だ、行くぞお前等」
「はいッ!」
「下着ドロ退治か・・・・・・あんまりノリ気しねえな~・・・・・・・」
「そう言う台詞を言う人ほど殺されやすくなるんですよ、気をつけて下さい千雨さん」
「どうやって下着泥棒に殺されろと・・・・・・?」

銀八の号令に万事屋のあやかは俄然やる気を出すが千雨はダルそうに首をコキコキと鳴らす。銀八のいつものメンバーが揃って今から任務開始と言う感じだが、そこにいつもは呼ばれない筈の者が一人。

「あの~何で僕も呼ばれたんでしょうか・・・・・・?」
「何言ってんだお前、A組の為に下着ドロを捕まえるのを副担任がやるっていうなら、担任のテメェがやらなくてどうすんだよ、教師の心を捨てたのかお前は」
「はぁ、一理あるので何とも言えません・・・・・・でも今日ちょっと人に会いに行こうとしてたんですけど・・・・・・」
「んなもんキャンセルじゃボケ」
「やっぱりそうなりますよね・・・・・・すみません神威さん・・・・・・」

銀八にアポ無し召集をかけられ、この状況に困り果てるA組担任の銀八の同僚のネギ。そしてボソリと小さな声である人物に謝る。
そんなネギを見てあやかは心配そうに銀八の方を向く。

「銀さん、ネギ先生は危険じゃないですか・・・・・・相手が下着泥棒と言っても犯罪者ですし・・・・・・10才の子供のネギ先生には危ないですわ」
「ああ、大丈夫ですよいいんちょさん」
「でももし下着泥棒が逆上してネギ先生に襲いかかってでもしたら・・・・・・!!」
「心配しないで下さいその時は・・・・・・・」

自分の亡き弟のように思っているあやかにとって今だにネギの事には過保護になる時がある。
だがネギはニコッと笑って

「襲ってきたら・・・・・・殺しますから」















「じゃあ行きましょうか銀さん、いいんちょさん、千雨さん」
「銀さん・・・・・・ネギ先生、今・・・・・・笑顔で何て言いました・・・・・・・?」
「いや違えよ・・・・・・あいつはそんな子じゃなかったはずだよ、俺達の聞き間違いだって・・・・・・あんなお子様が笑顔で殺すって・・・・・・」
「なあ、あのガキから黒いオーラを感じたのは私だけか・・・・・・?」

その場に硬直して動けない万事屋メンバーをよそにネギはいつも持ち歩いている父の杖を振り回しながら行進するように歩いて行く。

日々鍛錬をしてくれる“あの男”のおかげで、ネギはスクスクと精神的に成長(?)して行くのであった。






















第二十五訓 ペットの責任は飼い主にも責任

「とりあえず今はクラスの皆さんには外出しないよう呼びかけているので、聞き込みをしましょうか」
「おーそれそれ、俺もそれを思ってた、代わりに言ってくれてありがとよ」
「いえ・・・・・・」

本当にそう思ってたんですか・・・・・・?と考えるがネギはそのまま流して、何処の部屋から聞き込みするかキョロキョロと周りを見渡す。その時それを聞いていたあやかから一つの提案が出される。

「銀さん、ネギ先生、ここは最初はまず“被害に会った”生徒から聞きましょう、まずは犯人像を作らなければ」
「おーそれそれ、俺もそれを思ってた、代わりに言ってくれてありがとよ」
「いえ・・・・・・」
「さっきからお前、本当にそう思ってたのか・・・・・・?」
「当たり前だろ、銀さんは常にお前等の先の事を考えてるの、殴るぞメガネ」

ネギと千雨の疑いの視線をよそに銀八は被害に会った生徒がいる部屋をコンコンとドアをノックする。間もなくしてそのドアが開かれた。

「はいはい何でしょう・・・・・・か・・・・・・」

ドアを開けて出てきたA組の一人の佐々木まき絵は銀八の死んだ目と目を合わせる。











目を合わせたままそーっとまき絵はドアを・・・・・・

「おい」

閉めようと思ったのだがガッ!とドアの隙間に銀八が足を入れる

「何閉めようとしてんだテメェ」
「ああ・・・・・・何で先生ここにいんの~? エヴァちゃんの家にいるんじゃないの~?」
「どうしたんや、まき絵? そんな泣きそうな声出して」

玄関の前で何やら小さな悲鳴のような声を上げているまき絵の声を聞いてルームメイトであり、親友の和泉亜子が彼女の方へ歩み寄る。

「亜子~、先生が学校だけじゃ飽き足らずここまで来て私を苛めに来たよ~」
「誰がいつ苛めたんだコラ?」
「先日やったよ~」
「え? ああ、アレか?前の授業でデコ助の代わりにお前で火あぶりの刑のリハーサルに使った時か? あれは苛めじゃねえよ生徒と教師のコミニケーションだ」
「嘘だ~目がマジだったもんあの時~~」

銀八が言う火あぶりの刑とは先日、自分の授業にまた夕映が欠席したので遂に銀八はキレて、教室に火あぶりにするための処刑台を設置する。そして実際に対象を燃やせるのか生徒の中で実験者を選ぶというなんとも教師として非道な事を行い、その時銀八は適当に選んだのがこの佐々木まき絵である。(適当かどうかは不明だが)
嫌がるまき絵を強制的に逆さ吊りにして(協力・龍宮真名)火の上でブラブラさせるという、彼女にしては何ともトラウマ的な経験をされているのだ。

「あの時本当に死にそうだったんだよ~」
「バカかお前ギャグ小説で死ぬわけねえだろ」
「ギャグでも死ぬ時あるんだからねッ!」
「うるせえな・・・・・・ところでこの部屋はお前とそこの関西弁娘だけか?」
「そうだけど・・・・・・」
「一体どないしたん先生?」

銀八は玄関に立っている亜子と目の前にいるまき絵をじーっと見た後・・・・・・

「おいネギ、どうやらここじゃねえ」
「あれ? 下着泥棒の被害に会ったのはその部屋のまき絵さんと亜子さんの筈ですが?」
「バカお前見てみろよ・・・・・・」

キョトンとしているネギに銀八は首を横に振ってまき絵達を指さす。

「こんな奴らの下着盗むか?」
「って何それぇぇぇぇぇぇ!!」
「どういう事やそれぇぇぇぇ!!」
「駄目だここは別の所行くぞ」

銀八はドアの隙間から叫んでいる二人にそっぽを向いてドアを閉めようとするのだが今度は亜子がドアの隙間に足を入れてそれを阻む。確かに二人はスリーサイズは小さめだが一応女性のプライドはある。

「ちょっと待てや先生ッ! ウチら被害にあってるでッ! 昨日の夜ベランダに干してたウチとまき絵の勝負下着が盗まれたんやッ!」
「一生出る幕が無いお前等の勝負下着を盗む奴何ていねえよ」
「悪かったな万年ベンチ入りも無くてッ!」
「先生、本当に盗まれたんだよッ! 何か小さな物が飛んできてそれが私と亜子の下着を目の前で凄い早さで持って行っちゃったのッ!」
「小さな物ってそれはお前等のだろうが」
「いや誰がペチャパ・・・・・・!!」

亜子が何か叫ぼうとする前に、銀八は彼女の足を蹴って部屋に戻しそのままバタンッ!とドアを閉める。ドアの向こう側でここを開けようと必死になっている二人の声がするが銀八が押しているので二人の力では開けれない。

「ここはシロだな、次行くぞ次」
「でも彼女達何か言ってますよ・・・・・・」
「どうせ被害妄想だろ」
「そんな事ありませんわ先生、ここの二人が被害に会ったのは事実だと思います」
「ほう何故そんな事が言えるのかなあやかくん?」

あやかが異議を上げたので銀八は言ってみろと顎でしゃくる。その間ずっと銀八が抑えているドアはドンドン叩かれている。
そんな状況の中あやかは一つコホンと咳をした後、銀八に向かって口を開いて説明する。

「実はA組のクラスでは無い生徒が下着泥棒の会話しているのを耳にしたのですが、さっきのまき絵さんが言っていた事と一致するんです」
「小さい物が下着をかっさらうって話か?」
「そうです、その小さい物が何かはわかりませんが・・・・・・ここは私と千雨さんがまき絵さんと亜子さんの話を聞きますので、銀さんとネギ先生は他の生徒の所へ」
「おいッ! 何で私もいいんちょの所に付き合わなきゃなんねんだよッ!!」

ドサクサに自分を混ぜているあやかの言葉に千雨が抗議するが彼女はしれっとした態度で

「千雨さんと銀さんをセットにするのは安心できないので」
「・・・・・・どんな答えだよ・・・・・・」
「じゃあここはお前等に任せるわ、行くぞネギ」
「はい・・・・・・いいんちょさんと千雨さん、何かわかったら教えて下さいね」
「おい待てよお・・・・・ぶッ!」

銀八が行こうとおさえていたドアから手を離した瞬間、勢いよく亜子とまき絵がドアから出てきて、その勢いのまま二人は千雨にタックルをかます。

「あれ? 先生かと思ったら長谷川さんや?」
「長谷川さん何やってんの?」
「テメェ等・・・・・・」
「じゃあ部屋の中へ入って話を聞きましょうか、千雨さんもそんな所で寝てないで行きましょう」
「本当は銀八と一緒の方が良いのに・・・・・・」

ブツブツと文句を言いながら、千雨は頭を腰をおさえながら立ちあがりあやかの後を追う。

(これから先いいんちょと一緒の時はこんな事に付き合わなきゃいけえのか・・・・・)

ハァ~と深いため息をついた後千雨は断念したかのように靴を脱いで部屋へと入って行くのであった。

















一方まき絵達の部屋を後にした銀八とネギはというと

「適当に何処かの部屋に当たってみるか」

とりあえず銀八は目にした部屋を見つけてそこから探索を始めようとする。しばらくして彼の目についた部屋を銀八はドアをノック、間もなくしてガチャリとドアが開いた。
しかし彼には予想だにしない人物が現れる

「なんですか?」
「うわ・・・・・・ここお前等の部屋かよ・・・・・・」
「あ、夕映さんこんばんは」

ドアから出てきたのは綾瀬夕映で銀八とは仲の悪い生徒の一人だ。最初は彼の授業もすっぽ抜かし、顔を合わせれば口喧嘩になるほど銀八の事を嫌っていた夕映だが、最近どうもそういうのが薄れてきたのか授業にも一応出るようになったし、口喧嘩の回数も減った。一体なぜ夕映がここまで変化したのか銀八には不思議でたまらない。

「何の用ですか? 遂にエヴァさんの家からでも追い出されたんですか?」
「そんなもん経験済みだ、お前下着泥棒とか見てねえか?」
「最近出没中の下着泥棒ですか、見てないですね、うちは今番犬がいるので下着泥棒対策はキッチリしてますから」
「番犬?」
「まあ今日は特別に部屋に上げさせてあげましょう」

夕映の言葉に何か引っかかるも夕映がドアを開けて銀八達に上がるよう指示してきたので仕方なく二人は玄関に入って靴を脱いで部屋に上がる。

「ネギよ~こいつら犬飼ってんの?」
「いや聞いた事は・・・・・・」
「2日前からウチのベランダで住んでるんです」

会話をしながら歩いているとリビングに到着。そこにいたのは夕映のルームメイトのハルナとのどかがちゃぶ台の所で座っている。

「ハルナ、のどか、先生方がこの部屋のセキュリティを見に来たです」
「ああどうも・・・・・あれ銀八先生とネギ先生って随分珍しい二人組だね」
「無理やり召集されましたので・・・・・・イダッ」
「御苦労さまです先生・・・・・・」

苦笑するネギの頭を銀八は軽く小突いた後、ベランダに入って番犬がいるのか確かめる。だがそこにいたのは犬ではなく・・・・・・

「何してんだお前・・・・・・」
「あ? お前こそ何してんだ、こちとら張り込み中だ邪魔するな」
「ふむ、敵は見当たらないな・・・・・・先生、情報は見つかったか? 見回りに行かしているクーフェイの情報も来ないんだ、まあ大方何処かで油売ってると思うが、人材不足とは言え彼女(一人)はマズかったかもな」
「まあ下着泥棒の情報は無えが不審者発見の情報はあるんですけど?」

ベランダに設置したテントの中から、土方と真名が体を半分外に出して何時下着泥棒が来ても大丈夫なように待機しているという異様な光景が銀八の目に映った。

「お前等何でこんな所で張り込み何かしてんだよ」
「ああ? 近頃下着ドロがここら辺にいるって聞いたら真撰組として見過ごすわけにはいかねえだろ、ここで張り込みしているのは女二人しかいない俺達の部屋より女三人で住んでいるここの方が来る確率は高いと見たからだ」
「本当はのどかが下着ドロの被害に会ったからだけどな、そのおかげで二日前からずっとここで待機、刹那は同じく被害に会った木乃香の所で張り込みしてるし、二人共好きな人の下着を奪われてプッツンモードで困っているんだ、だから協力しているわけさ」
「好きなんかじゃねえッ!」

自分の説明の後に龍宮が上乗せするかのように説明してそれに土方は激しく否定する。だが銀八は「ふ~ん」と理解していた。

「まあいいんじゃねえか、好きな女の為に体張るのもよ」
「だから好きじゃねえって言ってるだろッ! 殺すぞオラッ!」
「銀さん、被害に会ったのどかさんはその時外出していたからどう盗まれたかはわからないようです、けどベランダには動物のと思われる白い毛が数本あったらしいんですよ・・・・・・」
「毛? 何でそんなもんが落ちてるんだ・・・・・・?」
「無視かよ・・・・・・」

土方の叫び声をスルーして銀八はのどか達と話をしていたネギの情報に頭を悩ます。その毛が犯人の持ち主だという証拠はないが、ペットも飼っていないこの部屋に動物の毛が落ちているのは不自然だ、何故動物の毛がここに・・・・・・

「その白い毛、お前等心当たりねえのか?」
「無いです、ウチは動物も飼ってませんし入れた事もありません、そこの番犬は別ですが」
「私も無いね・・・・・・」
「ごめんなさい、私もわかりません・・・・・・」
「小さい物が下着をかっさらって落ちていたのは白い毛・・・・・・まさか下着泥棒の犯人が小動物じゃあるめえし・・・・・」
「そうですよね、動物が人間の下着何かに興味持つ筈ないし・・・・・・」

ネギと銀八が頭を悩ましながらそんな会話をしていると突然部屋の外から怒鳴り散らすような大声で誰かが叫んでいる

「待てェェェェェェ!! ナマモノォォォォォォォ!!!」
「あの声はアスナさん・・・・・・!?」
「遂に野生化したか」
「いや雄叫びじゃないですよッ! とりあえず外に出ましょうッ!」

銀八にツッコんでネギは急いで夕映達の部屋から飛び出して廊下を見渡す。その瞬間、猛スピードでアスナが走って来たのだ

「アスナさんッ! 何かあったんですかッ!?」
「ネギッ! あんた何処行ってたのよッ!」
「えと・・・・・・銀さん達と一緒に下着泥棒探しを・・・・・・・」
「下着泥棒ならさっき私達の部屋に来たわよッ!!」
「エェェェェェェェ!!!」

アスナの思わぬ情報にネギが驚きの声をあげていると夕映達の部屋から銀八と更に張り込みをしていた土方と龍宮も出てきた。

「どうしたネギッ!」
「銀さんッ! 下着泥棒がアスナさんの部屋に来たってッ!」
「来て早々部屋の中の私の下着を盗んで走り去って行ったわよッ!!」
「野郎・・・・・・遂に動いたか・・・・・・!」
「あれ? アスナ、君の所に刹那がいた筈だが何で彼女がいて犯行をやられたんだ?」

龍宮はアスナ達の部屋に来たと聞いて首を傾げる、アスナは木乃香のルームメイト、つまり同室だ。それならばその部屋は木乃香の為にいる刹那が護衛をしている筈では・・・・・・・
間もなくして刹那が息を切らせながら走って来た。アスナ達を見るとその場に止まって息を荒くさせながらしゃがみ込む。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・すみません・・・・・・」
「何やってんだこのガキッ! 敵に侵入されながらオメーは何処で何してたッ!?」

刹那の胸倉を掴んで一喝する土方。すると彼女は敬礼をして

「お嬢様が作ってくれた焼き鳥を食べてましたッ!」







「お前結局飯食いに行っただけじゃねえかボケェェェェ!!」
「あぼッ!!」

正直に堂々と言い張る刹那に土方は右ストレートを彼女の頭に落とす。その拍子で倒れた刹那に土方を始め銀八、龍宮、そしてアスナまでも彼女に拍車をかける為襲いかかる

アホッ! ドジッ! マヌケッ! 光ってるのデコだけかテメェはッ! 焼き鳥ってお前それ共食いだろうがッ! 刀バカッ! お嬢様バカッ! ヤンデレッ! ポジション的にポルナレフッ! ここでは不人気ッ! 土方サイドだからってヒロインになれるって思ってんじゃねえよッ!

「いやま、ま、待って下さいッ! 言い過ぎだし蹴らないで下さいよッ! 本当にすみませんでしたッ! 反省しているんで許して下さいッ!」 

罵詈雑言され刹那は遂に目から涙を流しながら一同に土下座、肉体的にボコボコにされたより彼女にしては悪口の内容があまりにも酷過ぎて肉体より精神の方が疲れてしまった。
刹那が頭を何度も下げていると、その時だった、遠くから再び誰かの叫び声が

「待つアル白ネズミィィィィィィ!!!」
「あ? クーフェイの奴が白ネズミ追いかけながらこっち向かって・・・・・・」
「天パッ! あのネズミが下着泥棒よッ!」
「何ィィィィィィ!? マジで小動物だったのかよッ!!」

クーフェイが叫びながら白いネズミ、否、白いオコジョを追ってこっちに向かってくる。しかもその白オコジョはこの下着泥棒の犯人だと言うではないか、現にあの獣、口に誰かの下着をくわえている。

「野郎・・・・・あれがここ最近女子寮を荒らしまわってる下着ドロの正体か・・・・・・」
「龍宮、こっちに向かってくるクーフェイと協力して挟み撃ちだ」
「よし、わかったヤンデレ」
「ヤンデレ言うなッ!」

龍宮にツッコんだ後、刹那はオコジョの前に立ち通せんぼ、龍宮や土方も同じくサイドから取り囲む。後ろにはクーフェイ、四方に囲まれたオコジョは慌てた様子で周りを見る。
うろたえているオコジョを見た時ネギは「ん?」っと目を細める。

(あのオコジョって・・・・・・)
「刹那、龍宮、マヨラー、ナイスアシストアルッ!」
「功績を称えるのは後だクーフェイ、まずはこのネズミを捕まえなければ」
「そうですッ! 行ってください土方さんッ!」
「こんの・・・・・・あの娘の下着返しやがれェェェェェ!!!」

刹那が叫んでいる前に既に土方はオコジョに向かって鬼気迫る迫力で突進。そして目にもとまらぬ速さでオコジョを奪取

「獲ったどぉぉぉぉぉぉ!!!」
「さすが土方さ・・・・・・あれ・・・・・・?」
「どうした?」
「土方さん・・・・・・それ・・・・・・」
「ん?」

刹那が頬を引きつらせながら土方が持っている物を指さす。当然彼が持っているのは下着泥棒を行ったオコジョ・・・・・・・

「誰の下着だコレ・・・・・・」
「まさか・・・・・・!! 代わりパンツの術ッ!」
「凄いアルッ! 楓並の忍術アルッ!」
「どんな忍術じゃぁぁぁぁ!!!」

感心している龍宮とクーフェイに土方がツッコんでいる間に何時の間にかオコジョはするりと逃走。してやられた土方は舌打ちをして再び追走を開始しようとするのだが

「何ですか騒がしい・・・・・もう夜なので静かにして下さ・・・・・・」

眠そうに目をこすっている夕映が部屋から出てくる。彼女が見た先にはバカ騒ぎしている土方達、そしてまず彼女が見た物は

刹那、龍宮、クーフェイに囲まれている土方

手には女性の下着

夕映はその光景をしばらくジーっと見て

「まさか・・・・・・下着泥棒の犯人があなたとは・・・・・・」
「違ぇぇぇぇぇぇ!!!」
「のどかに何と言えばいいのでしょう・・・・・・まさか想い人に下着を盗まれただなんて・・・・・・」
「だから誤解だッ! 俺じゃねえッ! この下着はあの白ネズミが盗んだもんなんだよッ!」

土方が否定してもまだ不信感丸出しの夕映に土方は刹那、龍宮、クーフェイを呼んでなんとか誤解を解こうと必死に弁論開始。そんな彼を尻目に銀八はオコジョの逃走経路を見る。

「こっちに逃げたな・・・・・・ネギ、バカレッド行くぞ」
「あの銀さん僕あのオコジョ・・・・・・」
「ゴチャゴチャ言ってないで後を追うわよネギッ!!」

ネギが何か言おうとした時アスナが早くしろと後ろからせかす、仕方なくネギは話すのを諦めて、銀八とアスナの後を追ってオコジョを探しに行くのであった。











銀八、アスナ、ネギの順で女子寮の廊下を駆けまわる。階段を上ったり下りたり、もうひたすら走りまわるのだがオコジョの姿は何処にも見当たらない

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・私もう限界・・・・・・」
「アスナさん頑張ってくださいッ!」
「アンタ最近体力付いてきてるわよね・・・・・・」

遂にその場に座り込むアスナにネギが激励していると銀八の目の前に通行人の生徒がやってくる。

ピエロの様なメイクをした小さな少女、三年A組一のポーカーフェイス、ザジ・レイニーディだ。
銀八は疲れているアスナをよそにネギと一緒に彼女に近づく

「おい、白いネズミ見なかったか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「え? あれオコジョって言うの? 知らなかったわ」
「ええッ!? 銀さん今聞こえたんですかッ!?」

唇も動いているのかどうかわからないザジの声、何故それが銀八の耳に入っているのかは謎だ。驚くネギは置いといて銀八は再び追及する

「オコジョってわかってるなら見たんだな?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「この先に向かって行ったらしい、少し前に見たって言ってるからまだ近いぞ」
「え~僕には全然聞こえませんが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「耳鼻科行けよ、だってよ」
「いやあなたの声が小さすぎるんですよッ!」

通訳の銀八を通してネギはツッコんでいると、ようやくアスナが立ち上がり追いかける準備ができた

「まだ疲れてるけど・・・・・・私の下着を返してもらわなきゃいけないしね・・・・・・」
「よし、じゃあ再出発だ、お前もあんがとよ」
「・・・・・・・・・・・」
「何でそこで下ネタなんだよッ!!」
「いや何て言ったんですかッ! 彼女ッ!?」

銀八が何にツッコんだのかはわからないが、とりあえずザジに礼を言って三人は再び追走を開始する。









しばらくして女子寮の出口にたどり着いた銀八達は辺りを見渡す、すると

「おい見ろッ! あいつの言う通りいたぞッ!」
「僕にはザジさんの声は聞こえませんでしたが・・・・・・」

銀八が指さした方向にはオコジョが今女子寮から去ろうとしている所だった。銀八達に気付いたのかオコジョは「さいなら~」と手を振る様な仕草をした後ダッ!と走り去っていく

「やべえ外に逃げられたらもう捕まらねえッ!」
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!! 私の返せぇぇぇぇぇ!!」
「銀さんていうかあのオコジョやっぱり僕知ってますッ! あれは・・・・・・・!」

ネギが何かを言おうとした時

女子寮の外からブチッという何かを踏みつぶす音が聞こえた

「う~んやっぱりザジさんの言う通りここで待機しといて正解でしたわ、あの人も中々の策士です」
「何であの時あいつの声聞こえたんだお前・・・・・・? ていうかこれやりすぎじゃ・・・・・・」

女子寮の外から声が聞こえたので、三人は慌てて外に出る。見るとそこには・・・・・・

「あ、銀さんスクーター借りましたわ、轢く時しか使ってないのでご安心を」
「その言い方だと傍から誤解されるだろうが」

銀八のスクーターを使いオコジョを踏みつぶし、誇らしげに腕を組んでいるあやかと、その後ろで苦い顔を浮かべる千雨がいた。

「お前等・・・・・・どうしてここにいんだ?」
「はい、私と千雨さんはまき絵さん達から犯行現場に白い毛が落ちていたって話を聞いたので、それを頼りに女子寮にいる住人から聞き込みをしていたら偶然会ったザジさんに、白いオコジョに下着を盗まれてしまったという話しを聞いたんです」
「私には話の内容が聞こえなかったがな・・・・・・」
「そしたらザジさんが「オコジョは銀八先生達に追われていたのでルート的に女子寮の出口から出て行くと見ている、ならばそこで待ち伏せするのです」と言われたのでとりあえずここで銀さんのスクーターを借りてここで張ってたんです、そしたらザジさんの予想通りオコジョがポーンと出てきて私がそこをグシャ~ってなったのです」
「いやあいつ何処の孔明?」
「まあとりあえず、このナマモノを何処かへ連行しましょう」

所々千雨がツッコんでいるとあやかがスクーターを下りてタイヤに轢かれた哀れなオコジョをつまみ上げる。何か死にかけている様だが・・・・・・。

(間違いない、あの子だッ!)

その姿を見てネギは遂に確信する。やはりあのオコジョだ彼しかいない

「カモ君ッ!」
「は? カモ?」
「カモって誰ですか?」

きょとんとしている銀八とあやか、だが次に予測できない事態が起こる。
あやかがつまんでいた死にかけオコジョはネギの方へ向いて

「ネ、ネギの兄貴・・・・・・会って早々何ですが・・・・・・お別れの様です・・・・・・」








オコジョが喋った。最期の言葉を言い終えた後オコジョはガクッと首を垂れて動かなくなる。

「カモくぅぅぅぅぅぅんッ!!!!」

一同黙りこんでいる中でネギの悲痛な叫びだけがその場に響き渡っていたのであった。






















下着泥棒騒動を終えて数時間後の午前12時

「いや~死ぬかと思ったっスよ、まさか問答無用にスクーターで轢き殺そうとするなんて最近の娘は恐いっスね~」
「カモ君、もう大丈夫なの?」
「あ~もうピンピンしてますよ、俺っち体はめちゃくちゃ丈夫ですからッ!」
「んじゃ今度は俺が轢き殺してやろうか? あやかのような一回だけじゃなくて俺が何回もミンチにしてやるよ」
「あ・・・・・・すんませんそれだけはご勘弁を・・・・・・」

今銀八達がいるのはネギ、アスナ、木乃香が住んでいる部屋で、ネギはオコジョを大事そうに抱えあやかと千雨はそこから離れて眺め、銀八とアスナはネギが抱えているオコジョを睨みながら、それを心配そうに見る木乃香が立っている。
まず最初に話を切り出したのは銀八だった。

「で? それは何?」
「あ、はいこの子は・・・・・・」
「ちょっと待ってくだせえ兄貴ッ! 自分の紹介は自分で出来まさぁッ! どうぞ皆さん聞いてくだせえッ! 俺っちの名はアルベール・カモミールッ! 由緒正しいおこじょ妖精の漢ッ! 以後よろしくお願いしやすッ!」
「おい木乃香、オコジョって食えるっけ? 食えるなら何か作ってくれよコレで」
「でェェェェェ!! いきなりグッバイフラグッ!?」
「銀さん、実はこの子は僕の友達なんですよ・・・・・・」
「ああ? 友達だぁ?」

銀八が木乃香に恐ろしい料理を提案し始めたのでネギが突然口を開く、そのネギの言っている事に銀八は首を傾げる。

「実はカモ君とは5年前、僕がウェールズに住んでる頃から長い付き合いの親友なんです・・・・・・」
「そうッ! 俺っちと兄貴は桃園の誓いの如く結ばれた、もはや義兄弟といっても過言ではない間柄なんスよっ!!」
「てめぇは俺から話しかける以外喋るな、切り刻まれてえのか?」
「サーセンッ!!」

銀八の一睨みで硬直するカモ、例えネギの友達だろうが下着泥棒は下着泥棒である。

「で? その下着泥棒の淫獣がここに何の用で?」
「人聞きの悪い事言わないでくれよ旦那~、俺っちはよ~ネギの兄貴を立派な魔法使いにするためにはるばるウェールズからやってきたんだぜ~、そりゃもうここまで来るの大変だった事・・・・・・」
「じゃあ何で直接こいつの所に行かなかったんだよ」
「そりゃあ決まってるでしょ~」

銀八の質問にカモはポンと胸を叩いて自信ありげに答える。

「そこにパンツがあるからッ!」
「・・・・・・つまりこいつの所に直接行かなかったのは?」
「会う前にちょっと良い素材の女の子達の下着が欲しくて・・・・・・ついやっちまったぜッ!」
「へ~・・・・・・って、結局一般の下着泥棒と同じ考えじゃねえかァァァァァ!」
「あぼぉぉぉ!!」


銀八のアッパーがカモを思いっきり宙に舞い上げる、そのままゆっくりと降って来たカモを慌ててネギが両手でキャッチする。

「大丈夫カモ君・・・・・・?」
「な・・・・・・なんとかイケるっス・・・・・・」
「ったく下着泥棒が教師のペットでしたって洒落にならねえぜ・・・・・・あれ?そういえば何でそいつ喋れるんだ?」
「へ・・・・・・? 今まで普通に会話しててやっと気付いたんですか・・・・・・?」
「え? お前等気付いてた?」

そういえばオコジョが何で人の言葉を喋れるのか、銀八がやっと気付いて周りを見渡すとみんなコクリと頷く

「銀さん気付くのが遅すぎです・・・・・・」
「オコジョが喋るのでさえ不自然なのに普通に会話してたお前も不自然だった・・・・・・」
「銀ちゃんらしいな~みんなビックリしてたでオコジョが喋るなんて」
「私達がキョトンして黙ってる中、あんた普通にコイツと喋ってたわよね・・・・・・」
「し、しょうがねえだろ・・・・・・俺の世界ではコイツみたいな人外で普通に喋る奴いっぱいいるんだから違和感感じなかったんだよ・・・・・・・」

一同の反応に銀八は口ごもりながら喋る。彼から見れば喋るオコジョも喋る天人も対して変わらない
銀八はとりあえず頭を掻きむしった後、カモに顔を戻して口を開く。

「一応聞くけどよ、何で喋れるんだお前?」
「へッ! 俺っち見たいな天才のおこじょ妖精は人間の言葉を喋れるなんて朝飯前よッ!」
「答えになってねえよ、まあとりあえず・・・・・・ネギ、ペットの責任は飼い主の責任だ、しっかりテメェが責任を取れよ」
「僕がですか・・・・・・?」
「決まってんだろ、俺はガキだろうが容赦しねえ、落とし前はキッチリ付けろや」
「わかりました・・・・・具体的に何をすれば・・・・・・」

死んだ魚の目で睨まれてネギもグウの音も出ない。素直に承諾して恐る恐る何をすればいいのか銀八に聞こうとしたその時、部屋のドアが思いっきり開く音が聞こえた。

「御用改めであるッ! 真撰組だッ! 手配中の下着泥棒がいるってのはわかっている、さっさとこっちに差しだせッ!!」

部屋のドアを蹴り破って般若の様な顔でタバコをくわえながら怒っている土方がズカズカと入って来る。後ろには刹那もいる。
部屋に上がって来た土方は銀八達がいる部屋に入って来てキョロキョロとある物を探し始める。そしてネギの両腕に抱かれているカモを発見。土方の目は光る

「ようやく見つけたぜぇ・・・・・・そのナマモノのおかげでこちとら下着泥棒と勘違いされそうになったんぞ・・・・・・どう落とし前つけてくれるんだオラ・・・・・・・?」
「ヒ、ヒィィィィィィ!!!」

瞳孔の開いている両目で土方はカモを威圧する。あまりの迫力にカモはネギの腕の中で震えあがる。土方がネギに歩み寄って彼をつまもうとしたその瞬間、慌ててネギが割って出る。

「待って下さいッ! どうしてここにカモ君がいるってがわかったんですかッ!?」
「あ? ウチには山崎より使える密偵がいんだよ、ほらそこにいんだろ」
「お邪魔してます」
「龍宮さぁぁぁぁんッ!! 何時の間に天井裏にッ!?」

土方が言った瞬間、天井が一つ分スペースが抜けて龍宮がひょっこり顔を出してきた。どうやらここにカモがいるのを土方達に流してここにおびき寄せていたらしい、だが土方と刹那は携帯を持っていないので、わざわざここから土方達と合流して情報を教えるとは案外気がきくのかと思いきや・・・・・・?

「私の仕事料は払ってもらうぞ土方さん」
「っておいッ! ただじゃねえのかよッ!」
「ビジネスだからな、ルームメイトとはいえ金はちゃんと貰わなければいけないんだよ、先生の場合は別だが」
「じゃあ噴火山の穴に飛びこんで来い」
「それは無理だ先生」
「私が金払うから飛びこんで来い」
「それは無理だ刹那」

銀八と刹那の思わぬ依頼が来ても龍宮は天井裏で顔を覗かせながら冷静な表情で却下している中、ついに土方がタバコをふかしながらネギが抱いているカモをつまんで自分の目線の所まで持ち上げる。

「さてと、どういう方法でミンチにしてやろうか」
「ギャァァァァァ!!!」
「ま、待って下さい土方さんッ! そのオコジョ、実は僕の友達なんですッ!」
「じゃあ友達とお別れの挨拶を済ましとけ」
「いやいやいやッ! そうじゃなくて・・・・・・!!」
「こいつはその友達の淫獣の責任を自分も取りたいって言いてえんだよ、理解しろよ頭の中全部マヨネーズまみれになってんのか?」
「頭の中がプリンみたいな脳みその奴に言われくねえよッ!」

突然会話に入って来た銀八に吠えた後、土方はネギの方に向き直る

「万事屋が言っていたのは本当か?」
「はいそうなんですけど・・・・・・あの、何をすればその子を許してもらえるでしょうか・・・・・・」

ネギが頬を掻きながら恐縮になって土方に尋ねる。彼は一瞬バツの悪い表情を浮かべて、タバコに火をつけて煙を吐く。

「今日の朝までにこいつが盗んだもの全てここに持ってこい・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「お前のダチの代わりに自分を犠牲にする根性に免じて、これで許してやる」
「ほ、本当ですかッ!」
「朝までにちゃんと持ってこなかったらこのナマモノ焼いて食うからな」
「はいッ! ありがとうございますッ!」
「ふん・・・・・・」
「土方さんが許しても私は許しませんからね」
「お前は空気読めよ」
「あだッ!!」

ネギが土方にお礼を言っている時に、土方の隣に座っている刹那が空気の読めない発言に、思わず銀八は彼女の後頭部を殴った。
































土方達に許してもらう代わりに、ネギはカモが大量に奪っていた下着を隠している場所に向かっていた

「カモ君はあの木の下の穴に隠していたって言っていたけど・・・・・・それにしても何でここに隠すかなカモ君・・・・・・神威さんに会わなかったのかな?」

ネギはゆっくりと歩きながらその木に近づいて行く。木の周りは大平原でここら辺は何も無いので滅多に人が来ないのだ。自分とある男を覗けば・・・・・・
ネギが木に近づいていくと、何故か木の下でオレンジ色の光が見えてきた。あの光は火では・・・・・?

不審に思ったネギは木の方に走る、一体あの木の下で何が、そう思いながらネギは到着すると一瞬目を疑った。

「あれ? 来るの遅かったじゃん」
「神威さん・・・・・・何燃やしてるんですか・・・・・・?」
「ああ、コレ? 何かここに落ちてたから燃えるかなと思って、焼き芋焼けたよ食べる?」

そこにいたのはいつも夜中にここでネギを待っている神威、彼はそこで火を起こし、いつもの様に笑顔で何処から手に入れたのか焼き芋を作っていた、しかし問題なのはその火の素なのだが・・・・・・

「もしかしてそれって女性の下着とか何かですか・・・・・・?」
「よくわかったね、もしかして君の物だった? まあ人の趣味はとやかく言わないけど、さすがに女の下着を集めるのは俺でも引くよ?」
「いや僕じゃありません・・・・・・」
「ふ~ん、ならいいや一緒に焼き芋食わない? ちょっと知り合った女の子からいっぱい貰ってね」
「・・・・・・いただきます・・・・・・」

神威が燃やしている物を眺めながらネギは彼の隣にしゃがむ。彼から差しだされた焼き芋をほおばりながら天を仰いだ

「もう・・・・・・どうでもいいや」
















一方ネギがいなくなった後の部屋では

「そういえばこの下着誰のだか知ってるか?」
「うわ、まだ土方さん持ってたんですかそれ・・・・・・?」
「捨てるわけにもいかねえだろうが」
「ん・・・・・・? ちょっとそれ私のじゃないッ! 返しなさいよマヨッ!」
「ぐッ!」

土方が持っていた下着をアスナが見た瞬間彼女は血相を変えて彼にドロップキック、見事下着はアスナの元に戻って来た

その近くで銀八に縄で縛られているカモが不安そうに窓から夜空を見上げる。
「ネギの兄貴大丈夫かな~? 俺っちが教えた場所にはとっくに着いてる頃だよな~・・・・・・」
「朝まで帰ってこなかったらテメェは惨死刑だかんな」
「だ、大丈夫ッっスよ旦那ッ! 兄貴はきっと帰ってきますぜッ! 人質になっているオイラの代わりにきっとッ!!」




















早朝、アルベール・カモミールは銀八のスクーターで女子寮の周りを何周も引きずられるという落とし前をつけられた。
そして刑の執行が終わった数分後にうなだれながらネギが帰宅。彼が持ってきたのは盗まれた下着ではなく袋一杯に入っている焼き芋。
銀八、ネギが持ってきた焼き芋をほおばりながら二度目の刑執行。カモは今度は麻帆良市内を引きずりまわされ、一方ネギは盗まれた下着代を全て弁償というお咎めを受けた

その日ネギは“責任”というのを学んだのであった。

























教えて銀八先生

銀八「じゃあ一通目~正宗の胃袋さんからの質問」

変態ぬらりひょんに質問
生まれた時からそのような醜い頭になったんですか?それとも年をとって醜い頭になったんですか?

学園長「醜くくねえよッ! ワシは若いころはバリバリだったよッ! ナギよりもイケメンじゃったわッ!」
銀八「嘘ついてんじゃねえよジジィ、何処にも片鱗が残ってねえじゃねえかそのツラに、ホラ拭いてないでさっさと臨時ボーナス寄こせ」
学園長「嘘じゃないわいッ! 正真正銘のキムタクフェイスでした~ッ! 信じない奴にはボーナスはやらんッ!」
銀八「よ~し久しぶりに抜くか~」
学園長「イダイ、イダイッ! 払うからッ! 頼むからほんとマジで止め・・・・・ギャァァァァ!!!」

銀八「二通目、剣聖さんの質問」

アスナに質問です。ネギと銀さん、どっちのほうが好きですか?

アスナ「選ぶ前提にどっちも論外ね、ネギはお子ちゃまだし、天パはバカだし」
銀八「はぁ? お前にバカって一番言われたくないんだけど? 戦国時代最も活躍した武将は?って問題で「呂布ッ!」って即答しそうなお前に言われたくねえよ」
アスナ「えッ!? 呂布じゃないのッ!?」
銀八「ほら見ろバカが、呂布は平安時代だよ、合戦で義経とやりあうんんだよ、無双オロチやってるから俺知ってるんだぜ、なあネギ」
ネギ「呂布は日本にはいませんから・・・・・・三国志、中国の時代ですよあの人・・・・・・」

銀八「三通目、一揆さんの質問」

古に質問、いつまでまき絵が銀八の一番弟子だと勘違いし続けるんでしょうかね?

クーフェイ「マジアルかッ!? 銀ちゃんの弟子じゃないアルかッ!?」
銀八「ああ、あいつ本当は範馬勇次郎の弟子」
クーフェイ「うおぉぉぉぉ!! 凄いアルッ!」
まき絵「私がどんどんあらぬ方向にッ!?」

銀八「四通目、q-trueさんの質問」

銀さんに質問です。
世間では夏休みが終わりましたが、今年の麻帆良もじじぃ割り大会は盛り上がったんでしょうか?
毎年全国から2万人のGSが人工ビーチの特設会場に集まり、じじぃのドタマをかち割るという大イベント!
きっと銀さんも参加したと思うのですが、自分は今年参加できなかったので教えてください。

銀八「無えよ、大体二万人って何だよ」
千雨「まあさすがに二万はな・・・・・」
銀八「二十万だ、やるとしたら何処かめっちゃ広い所じゃねえとやれねえな」
千雨「オイィィィィ!! 何時の間に増えて、ていうか増えすぎだァァァァ!!」
学園長「つかそんな大勢の人達にワシって怨まれてるのォォォォ!?」

銀八「五通目、サハリンさんの質問」

デコ那に質問
第八訓でデコ那がエヴァを誘拐したのは、妖怪の血に目覚めたんですか?

刹那「目覚めてないしデコ那っていう名前でもないッ!」
エヴァ「まあヤンデレには目覚めてたな」
銀八「スクールデイズの影響か?」
刹那「その辺はマジで突かないでくれ・・・・・・」

銀八「六通目、ウィルさんの質問」

今回は千雨といいんちょのヒロインコンビに。もし休日に銀さんと二人っきりになったらどんな風に過ごしたいですか?お二人は節度ある人間だと信じてますので綺麗な想像、期待してます。…エヴァは自分からマスコット宣言したようなものなのでヒロインの座から降りたということで聞きません♪

千雨「多分何処かでブラブラ散歩しながら喫茶店とかに入って無駄話でもしてるんじゃねえかな?」
あやか「私はゆっくり出来る所で銀さんとまたお食事がしたいです」
エヴァ「なあ・・・・・・最近私の人気どんどん下がってないか・・・・・・? 最初に銀時と会ったのは私だぞ・・・・・・」
銀八「しょうがねえよ、だって“お前”だもん」

銀八「七通目、ハクコウさんの質問」

最後に銀さんとエヴァ様に質問です。
自分はこの作品を最近読み始めたのですが、第六訓で銀さんが仮契約をするシーンが削除されたそうですが、一体どんなアーティファクトを手に入れたのですか?差し支えなければ教えてください。

銀八「作者が一番忘れたい事情なので・・・・・・感想版の返事でバカ作者が短絡に教えるそうなのでチェックするように・・・・・・それにしても何であんな能力書いたんだよ・・・・・・」
千雨「まあこの作品の黒歴史の一つだな・・・・・・」

銀八「八通目、風の都さんの質問」

あやかさんへ
第二十三訓において銀さんが千雨の所に泊まりに来た時「ようするに私が三人部屋だから駄目だと・・・・・・ふむ、夏美さんなら追い出せますが千鶴さんは・・・・・・」と発言されてますが、本気で夏美ちゃんを追い出すつもりでいたのでしょうか?冗談ですよね??

あやか「銀さんがそれで来てくれるならやりましたが?」
夏美「えぇぇぇぇぇ!?」
あやか「まあでも千鶴さんがいるから出来ないと思いますが・・・・・・」
千鶴「そんな事無いわよ、夏美を連れて漫画喫茶にでも行って時間潰しとくから安心しなさい、先生とCでもZでもどうぞごゆっくり」
あやか「な、なんちゅう事考えてるんですかッ!?」
銀八「つうかZって何・・・・・・?」

銀八「九通目、エンジンさんの質問」

銀さんとエヴァに質問です。今回の例の問題行動(スクーターで人を轢こうとする)についてですが、まさか明日菜が突っ込んでなかったらそのままD〇Oのごとく轢きながら登校する予定だったんですか?

銀八「まあノリがあれば基本何でもやってもいいと思ってるんで俺等」
エヴァ「そういう考えだからこの作品は何とか生き残っているのだ」
アスナ「そういう考えだからこの作品は何回も死にかけてるんでしょうが・・・・・」

銀八「十通目、黒足のコックさんの質問」

クソマリモモドキ(土方)に質問、のどかの弁当はちゃんと食べれたんだろうか?

土方「一応食ったぞ、ちゃんとマヨネーズを塗り直してな」
のどか「アハハ・・・・・・今度はちゃんとマヨネーズ塗っときますから~」
ハルナ「のどかァァァァ!! マヨネーズに負けちゃ駄目ェェェェ!! ただの調味料なんかより愛情という名の調味料で打ち勝てばいいんだよッ!」
山崎「無理だと思いますけどね、副長はマヨネーズを何よりも愛している至高のマヨラーなので」
ハルナ「外野は黙っててッ! フラグの気配なんか全く作る気配ない地味キャラ程度が恋する乙女に口出しすんなッ!」
山崎「アンタも人の事言えねえだろッ!」
夕映「どっちもどっちですね」

銀八「ラスト十一通目とびかげさんの質問」

ザキさんはもう帰れないかな?影薄いし・・・
動乱編みたいに死に掛けたらライト当たるかもね

山崎「不吉な事言わないでくんない・・・・・・?」
楓「うむ帰れなくても大丈夫でござる、拙者達は山崎殿がここにずっといた方が嬉しいので」
風香「ジミーがいるとボク達は家事しなくていいんだもんッ!」
史伽「ジミーがいると凄く楽なんだよッ!」
山崎「早く・・・・・・早く家に帰してぇぇぇぇぇぇ!!!」






次回 第二十六訓『ヘラヘラした奴って本当ロクな事考えねえよな・・・・・・』へ続く




[7093] 第二十六訓 ヘラヘラした奴って本当ロクな事考えねえよな・・・・・・
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/09/27 10:47
夜、麻帆良学園の女子寮のネギ達の部屋にて

「ええッ! 兄貴、まだパートナーの目星付いてないんですかいッ!?」
「うん・・・・・・まだそういう段階じゃないと思って・・・・・・・」
「駄目っスよッ! 早く相方作らないとッ! 立派な魔法使いになるにはパートナー選びも重要なんですぜッ!」
「そうなんだけど色々と忙しくて・・・・・・」

部屋にいるのはリビングで腰を下ろして顔を悩ましているネギと、ちゃぶ台の上でピョンピョン飛びながら叫んでいる、この部屋の新たな同居人のオコジョのカモの一人と一匹のみ。
パートナー選びというのは魔法使いの従者、つまり自分と共に戦い支え合う者を見つける事で、立派な魔法使い、『マギステル・マギ』になるにあたって重要な課題だ。
だがネギはというとその事には全く手を触れておらず、ただ平凡と教師生活をしているだけだったのだ。神威との事は別だが

「でも僕のパートナーになる人っているのかな・・・・・・?」
「何弱音吐いてんですかいッ! ほら兄貴の気になる人っていやすかッ!? 兄貴を守れるような腕っぷしが強い人とかッ!? その人と『仮契約』が出来たら兄貴もまた成長できるってもんっスよッ!!」
「腕っぷしいの強い人か~・・・・・・」

カモの言う『仮契約』とは魔法使いが従者と仮の契りを結ぶ儀式の事。
契約した従者はその魔法使いの護衛役となり、パートナーは魔法使いの魔力により身体能力を強化できるなど様々なメリットが付く。だが今では戦うことはほとんど無いため恋愛対象とすることもあるらしい。
ちなみに本来『契約』は原則一人としかできないが、お試し期間として『仮契約』の場合だと何人とでもすることができる。

そしてネギはその『仮契約』をするための対象者を黙々と頭をおさえながら考える。元から凄く強い人なら仮契約すればもっと強くなれるのだ。一体どんな人が・・・・・・
そんな事を考えていると真っ先に頭の中で出てきた一人目が

神威

「いやムリムリムリッ!! 絶対断られるッ! ていうか殺されるッ!」
「お、何か候補者がいるんですかい? 大丈夫ですよ兄貴、仮契約っていうのは魔法陣の上でキスするだけで出来る事なんっスから~、得る物はありますが失う物は何もありませんぜ」
「いや失う物あるよッ! 凄く大切な物失うよッ!」 

ネギはそうカモにツッコんだ後、再び首をひねる。師匠である神威と仮契約なんて出来る物ではない、確かに彼は強くて従者には適材だがまず自分の言う事を聞く事なども無いだろうし、まず契約をする手順が・・・・・・

「絵的にも凄くマズイ事になるだろうし他の人にしないと・・・・・・」

ブツブツとつぶやきながら壁に背をかけて考え始める。すると神威と同じく強い力を持つ者が再び脳内に現れる。

坂田銀時

「だから無理だってェェェェェ!! 銀さんは絶対無理ィィィィィ!! お師匠さんより無理ィィィィィ!!」
「兄貴ッ! 何でも無理って言っちゃ駄目ですッ! 男は度胸何でも試しにやってみるもんですッ!!」
「いや“男”だからこそ出来ない事もあるんだよっ! それにそんな事したらエヴァさん達に殺されるからねッ!?」

叫んだ後ネギはため息をついて天井を仰ぐ。
とりあえずこの二人が絶対に無理だ、自分と同姓であるこの二人が絶対に許可しないだろし、間違いなく八つ裂きにされる

「他に出来る人って言ったら誰かな・・・・・・?」
「う~ん、じゃああのアスナっていうツインテールの姉ちゃんとかどうですかぃ? バカみたいに力もあるし、女と言うよりゴリラみたいなあの人がパートナーになればかなり心強いですぜ」
「そのバカみたいな力でアンタを思いっきり引っ張って裂いてあげようか?」
「え・・・・・・?」

カモが言っている隙に後ろから聞いた事のある女性の妙に殺意がこもっているような静かな声、恐る恐るカモが振り返ると。
そこには女子寮に配備されている銭湯から返って来たばかりの木乃香と冷たい眼差しでカモを見下ろしているアスナが立っていた。

「真っ二つに裂かれたいか、輪切りにされたいか、千切りにされたいか選びなさいナマモノ・・・・・・」
「な、何言ってんですかいッ! あ、姐さんほんの冗談っスよッ! 本当は姐さんの事俺っち一番の美人だと思って・・・・・・ひぶッ!」

カモが必死に手を振って弁明しようとしたのだがアスナの張り手が彼の小さな体に強打、その勢いで吹っ飛ばされ壁に叩きつけられる。

「誰が姐さんよ、今度またゴリラだかサルだか言ったらこっから追い出すわよナマモノ」
「へ、へい・・・・・・」

ズルズルと壁から床に落ちていくカモにアスナが脅しをかけていると、木乃香は全く反応せずネギに近づいて手紙を取り出す

「はいネギ君、ポストにイギリスからネギ君宛てのエアメール入ってたで」
「ああきっとお姉ちゃんだと思います、それにしてもアスナさんがカモ君吹っ飛ばしたのに全く動じないんですね木乃香さん・・・・・・」
「えへへ~いつも銀ちゃんがジィチャンをボコボコにしてるの見てるからな~」
「いや見てないで助けてあげて下さいよッ! 本当に孫ですかッ!?」

笑顔でさりげなく恐ろしい事を言う木乃香にツッコんだ後、ネギは彼女に渡された手紙を開いてみる。
手紙を取り出した瞬間、手紙の上にポッと金髪の綺麗な女性の立体ビジョンが出てきた。

「うわ~魔法使いの手紙ってこんな事も出来るんや~」
「やっぱりネカネお姉ちゃんだ~」
「へ~それがアンタの親戚の姉ちゃん何だ、綺麗ね~」
「そうですよね~」

ネギは思わず後ろから見ている木乃香とカモをしばいたアスナに無邪気に微笑む。しばらくしてその手紙の上の女性のビジョン、ネカネ・スプリングフィールドが一礼した後口を開いた。

『ネギ、元気にしてる? お姉ちゃんの所は色々あったんだけど頑張って生きてるわ』
「色々あったって何でしょうか・・・・・・?」
「私に聞かないでよ」
「もしかしたら恋人とか出来たんちゃう~?」
「ハハハハ、そんなの出来たら僕、故郷に戻って“ひと仕事”しなきゃいけなくなっちゃいますよ」
「どんな仕事やる気アンタ・・・・・・」

笑顔で言うネギにどこか戦慄を覚えたアスナをよそに再びビジョンのネカネが口を開く。

『ネギ、最初にどうしてもあなたに言いたい事があるんだけど・・・・・・』
「どうしたのかな、急に神妙な顔になって・・・・・・」
『あなたいくら住んでる場所にかさばるからって、お姉ちゃんの所に大量に読み終えたジャンプを送ってくるの止めてもらえないかしら・・・・・・・』
「ネギ君、実家にジャンプ送ってたん・・・・・・・?」
「はい、捨てるのもったいなくて」
「天パ見たいにジャンプ読み終えたら捨てるとかあれは邪道よ、ファンなら保管しておくのが正道よ」
『そのおかげでお姉ちゃん日本語覚えるわ、連載作家の名前を覚えるわ、「これもうすぐ打ち切られるな」とかわかるようになるわ、変なスキルばっか習得してきてるのよ・・・・・・』
「アンタの姉ちゃん良い具合にジャンプ色になってるわね」
「このまま送り続けて完璧にジャンプ信者にしましょう」
「いや向こうは止めてって言ってるんやけど・・・・・・」

困り顔のネカネをよそにアスナとネギは全く懲りていない様子、そんな二人に木乃香が苦笑していると、ビジョンのネカネがさっきまでの神妙な顔から少し微笑んだ表情になる。

『それはさておき、ちょっと早いかもしれないけどあなたのパートナーは見つかったのかしら? フフ、魔法使いとパートナーは惹かれ合う存在だからもうあなたの身近にいるかもしれないわね』
「やっぱりパートナーか~・・・・・・・でも確かに早いような気がするけど、一人前に早くなりたいしな~・・・・・・」
「パートナー?」
「社会にでて活躍する魔法使いには相棒になる『ミニステル・マギ』という相方を作るのが風習なんです、特に一人前の魔法使いである『マギステル・マギ』になるにはパートナーの一人もいないと格好つかないんですよ」
「あ~ようするに春日を生かせる若林、泰造とホリケンのブレーキ役の名倉、有田を支える上田みたいなもん?」
「何でお笑い芸人で例えたんですか・・・・・・? まあ確かに合ってますけど・・・・・・」

真顔で言うアスナにネギはまあ一応当ってると素直に頷いた。

「それで僕もそういう相方を作らないといけないな~っとカモ君と相談してたんですよ、でも中々候補が見つからなくて・・・・・・」
「大丈夫よ、ケンコバとか劇団ひとりとか陣内智則とかはピンで活躍しているじゃない」
「だから何で芸人で例えるんですか・・・・・・? そりゃあ活躍してますけどそれはお笑いの世界であって、僕達みたいな魔法使いには相方は貴重な存在なんですよ」
「相方いなくてもトークでも上手ければ生きていけるわよ」
「あのお笑いに例えるのもう止めてくれませんッ!? 何か魔法使いが吉本みたいなお笑い事務所みたいなもんだと勘違いしてないですよねッ!?」

すっかりお笑い事務所に定着されている事にネギがツッコんでいると彼が持っている手紙から『アハハハハッ!』と変な笑い声が聞こえてきた。ネギ達3人はその笑い声に反応して手紙に視線を戻す。

「・・・・・・・今の笑い声何ですか・・・・・・?」
「手紙から聞こえたわよね? アンタの姉ちゃんの笑い声?」
「ハハ、お姉ちゃんがあんな下品な笑いするわけないでしょ、殺しますよ?」
「ねえ最近アンタがどんどんキャラ変わってない・・・・・・?」
「ネギ君、お姉ちゃんが横向いて誰かに喋ってるで」

振り返って笑顔でサラリと簡単に言うネギにアスナの顔から血の気が引いていると、手紙の上のネカネが何やら横を向いて喋っている

『ちょっとッ! 今録画中だからこっち来ないでッ!』
『アハハハハッ! ネカネさん晩飯まだかの~ッ!?』
『いいから部屋で大人しく死んだように静かに待ってなさいッ!』
『あれ? 部屋に閉じこもってると思ったら何やってんじゃネカネさん?』
『入ってこないでってッ! さっさと部屋に戻ってッ!』
『もしかしてこれが魔法っちゅう奴かッ!? いや~初めて見たのッ! いつもネカネさん頼んでもやってくれないんじゃきん、わしはてっきり魔法なんて嘘っぱちかとアハハハハッ!』
『この・・・・・・!!』

ネカネが腕まくりをして走り去り画面から消える。しばらくして何かを殴る音と誰かの悲鳴がネギ達に聞こえる。
そして何事も無かったかのようにネカネが落ち着いた表情で戻って来た。

『ごめんなさい、ちょっと会話が成り立たないぐらい頭がカラの人がいるの、でも今は大丈夫、死んだように静か・・・・・・』

ニコっと微笑んでネカネが言おうとしたその時・・・・・・

『どうも坂本辰馬どぇぇぇぇすッ! これもしかしてビデオレター的なもんじゃろッ!? 誰かに話しかけてるようじゃし、アハハハハッ! 金時~!! ヅラ~!! わしは今何と・・・・・・あばッ!』

話してる彼女の前にいきなり出てきたのは、丸いサングラスを付けた黒パーマの男。男は笑いながらこっちに向かって手を振っていたが、間もなくしてネカネに後ろからかかと落としを決めて撃沈。倒れた男を荒い息を吐きながらネカネは見下ろして

『バカのせいで撮り直しじゃないの・・・・・・』

そこで映像が消えた。















映像が終わって呆然とその手紙をじっと見たまま静止する三人。しばらくして木乃香が手紙を持ったまま動かないネギに口を開く。

「さっきの男の人・・・・・・誰なん?」
「知りません・・・・・・」
「あ~あれは坂本の旦那ですよ兄貴」
「えッ! アンタ知ってるのッ!?」
「時々ネギの兄貴の実家に寄ってたんスよ俺っち、ちょっと前からネカネ姉さんの家にいたっスね~」

手紙を持ったまま動かないネギに語りかけるように復活したカモが近づいて説明を始めた。

「何か色々事情が合ってネカネ姉さんが住まわしてやってるらしいんスが、ですが、俺には何も話してくれないんスよ二人とも、こりゃあもしかしたら・・・・・・」
「もしかしたら何よ?」
「へっへっへ、結婚するまで貞操は守るとか言ってましたが、パートナー・・・・・・つまりネカネ姉さんの恋人・・・・・・ぶッ!」

いやらしくカモが言おうとしたその時、突然グッと顔を思いっきり掴まれる。さっきまで動かなかったネギが一瞬で動いて彼の顔を掴みながら睨む。

「カモ君、さっきの人と会ってたんだよね・・・・・・」
「あ、兄貴・・・・・・・? ええ、会ってました、いい奴でしたよ・・・・・・・」
「会ってたんなら、食い物に毒を盛るなり、頸動脈を噛み千切るなり、寝ている隙に異物を飲み込まして窒息死にさせるとかを何でしなかったの・・・・・・?」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」

10才の子供とは思えないその口調と冷淡な目にアスナと木乃香は悪寒を感じる、カモを掴んでいた手を緩め彼を解放した後、ネギは立ちあがって身支度を始めた。

「今から実家行ってさっきの黒モジャ裁いて来ます」
「はいッ!? 今からってアンタ学校はッ!?」
「学校より・・・・・・お姉ちゃんの貞操の方が心配でしょッ!?」
「いやそれ教師としてどうなのよッ! いいからッ! アンタのシスコンぶりはわかったからッ! とりあえず落ち着きなさいッ!」
「落ち着けませんってッ! こんな事している間にもあの黒モジャがお姉ちゃんに変な事していないかアスナさん心配じゃないんですかッ!?」
「いやアンタの姉さんとは他人だからッ! 待ちなさいってッ!」
「離して下さいよッ! ちょっと行って来るだけですからッ!」
「言って何するか大体見当付いてんのよ・・・・・・物騒なモン置いて今日はさっさと寝なさいよぉ・・・・・・!!」
「無理ですってば・・・・・・離して下さい・・・・・・」

颯爽とローブを着て両手に杖と神威を赤い本を持って戦闘態勢に入っているネギを、必死に後ろから彼の両肩に手を回して抑えるアスナ。いつもとは逆の位置に立っている二人。
そんな二人をポカーンと木乃香とカモが眺めている。

「ネギ君随分性格変わったなぁ・・・・・・」
「兄貴・・・・・・俺っちがいない間にこんなにキャラ変わっちまって・・・・・・ていうか別人?」
「そういえばカモ君はネギ君のお姉ちゃんの恋人・・・・・・みたいな人に会ったんやろ? どういう人だったん?」

首を傾げて木乃香に尋ねられたカモは何処から持ってきたのかタバコを取り出して器用に火を付けて吸いながら淡々と説明を始める。

「悪い奴じゃありやせんよ、さっき見たようにいつも笑っているような陽気な人なんスよ、確かにアホですが、町の住民達にも慕われてるし、ちびっ子共にも人気が高いし、最近のご時世には珍しいイイ兄ちゃんって感じでしたぜ」
「へ~良かったなネギ君、坂本さん優しいええ人やって」
「優しかろうが強かろうがとかそんなのどうでもいいんですよッ!! お姉ちゃんと一つ屋根の下で寝ている事自体が許されない行為なんですッ! アスナさんいい加減もう離して下さいッ!!」
「行かせるわけないでしょうがァァァァ!! 修学旅行も近いのに何アンタ里帰りに行こうとしてんのよォォォォ!!」

それからアスナはネギが落ち着いてくれまるで夜中ずっと彼を故郷のウェールズに帰さない為に室内格闘を続けていたのであった。




















第二十六訓 ヘラヘラした奴って本当ロクな事考えねえよな・・・・・・

場所は大きく変わってネギの故郷のイギリスのウェールズ。ネギの親戚の保護者である、ネカネ・スプリングフィールドは同居人の一言に思わず飲んでいた紅茶を吹き出している所だった。

「あ、あの手紙送ったですってぇぇぇぇ!! ゲホッゲホッ!!」
「何じゃあれ送るのまずかったかの? テーブルの上に置いてあったから、とりあえずいつもネカネさんが送っている相手用の便せんに入れてポストに入れたんじゃ、もう結構前じゃがの」
「道理で捨てた記憶が無かったはずよ・・・・・・あなたがいるのに無防備にテーブルに置いてた私がバカだったわ・・・・・・」

同居人、坂本辰馬をチラッと見て頭を抱えて悩んだ表情を浮かべるネカネ。
この男なら自分が触るなと言っていても、恐らく魔法使いの修業に出ているネギに手紙を送ってそうだ・・・・・・

「ハァ~ネギに何て言えばいいのか・・・・・・今までずっとあなたの事は伏せてたのに・・・・・・」
「何で伏せ取ったんじゃ?」
「この世には隠さなきゃいけないバカもいるのよ・・・・・・ネギが勘違いしてなければ良いんだけど・・・・・・・」
「アハハハッ! もしかしたらわしがネカネさんの恋人かと思われてるかもしれんの~アハハハハッ!!」

後頭部に手を回してヘラヘラ笑っている坂本を見て、ネカネはジト目で睨んだ後、吹き出してしまった紅茶をナプキンで拭きながら深いため息をつく。

「そういえばあなたとこうやって住んでるのもう結構長いのよね・・・・・・」
「そうじゃの~わしも次元漂流者ばってん、帰り方もわからん。陸奥が心配しているかもしれんの~・・・・・・」
「『陸奥』って確かあなたの部下の人でしたっけ? 案外あなたがいないから気楽にやってるんじゃないですか?」
「ハハハッ! そうかもしれんわッ! このままだとわしゃ不要だと思われてしまうかもしれんのッ! アハハハハッ!」
「あなたねえ・・・・・・」

全く危機感を持たない坂本にネカネは呆れて言葉が出ない。そもそも何でこんな男がその大将をしているのかもわからないし・・・・・・

「世も末ね・・・・・・そういえばあなた花畑に突き刺さってるあの宇宙船は修理出来たの?」
「それがの~部品が足りなくての、ここの世界はワシらの世界のように技術は発達しておらんきん、失ったパーツを補う物が無いんじゃ」
「じゃあなたどうやって帰るの・・・・・・・?」
「アハハッ! 知ってるわけないじゃろッ! 知ってたらもうとっくに帰っとるわッ! ネカネさんは本当にアホじゃの~アハハ・・・・・・いづッ!」

笑い飛ばす坂本の顔面にネカネは持っていたティーカップを素早くぶん投げる。カップは見事に命中し坂本の鼻からポタポタと血が出てくる。

「アイテテテ・・・・・・このパターン何度目かの・・・・・・ハハハ・・・・・・」
「学習しないあなたの脳みそが本当に不思議ね、一度頭かち割って見てみたいわ」
「恐い事言うぜよ、そんな物騒なモン言うちょるから未だに彼氏の一人も出来ないんじゃ」
「よ、余計なお世話よッ! 普段はもっとおしとやかにしてるんだからッ! こういう態度で接するのはあなただけよッ!」

坂本に痛い所突かれて思わずネカネは口を荒げる。彼の言う通り今まで一人も彼氏を作った事が無い。結婚するまで貞操は守りたいし、やはり心の底から惚れた男とじゃないと付き合うことさえ出来ない。それに色々と世話になった海星坊主に彼氏は作るなと言われているのもある。

「あなたをここに住まわしているのだって、このまま野放しにしていると何やらかすかわかったもんじゃないからここに置いているだけよ・・・・・・」
「なんじゃわしは男として見てられなかったのか~、ワシは結構ネカネさんはタイプの女性なんじゃがの」
「フン・・・・・・生憎私はもっと強くてたくましい人の方がタイプですから・・・・・・ヘラヘラ笑って何考えてるかわからない人と付き合うなんて考えられません」
「ガーン・・・・・・わしはネカネさんにそう思われておったのか、ショックじゃの~・・・・・・いいきん、わしにはおりょうちゃんがいるんじゃ~・・・・・・」

わざとらしく床に両手をついて落ち込んだポーズをする坂本にネカネはやれやれと首を振って、彼にあるメモを渡す。

「ブルーになってないで、ちょっとおつかい行ってきてくれないかしら・・・・・・? 住ましてやってるんだから色々と家事やってもらわないと」
「うん、おつかいか? お~それならお安い御用じゃッ! 今からひとっ飛びしてすぐに帰ってくるぜよッ! それでわしの事見直してくれやッ!」
「立ち直りの早さは相変わらずね・・・・・・それとこれは財布」

すぐに生気を取り戻した坂本にネカネは呆れながらも彼に財布を渡す。彼はそれを受け取り、まるで子供がおつかいに行くようにテンションが上がっている。

「じゃあ行ってくるぜよッ!」
「寄り道しないで帰って来なさい」
「わかっとるきーに、わしはネカネさんより年上じゃぞ、そんな子供扱いされるなんて心外じゃの~」
「このまえおつかい行かせたらあなた危うく魔法界のゲートに行きそうなったわよね・・・・・・あなたがフラフラ歩いて行くのを町の人が見てなかったらどうなってた事やら・・・・・・」
「アハハハハッ! 危うくわしだけ『魔法世界編』に突入する所じゃったわッ!」

町人によると一般人の坂本が普通に“ここの世界のもう一つの世界”に行くためにあるゲートに普通にフラフラと歩いていたらしい、ネカネが慌てて行ってみるとゲートに立ってそびえ立つ石板を眺める坂本の姿があり、その場で鉄拳制裁。危うく彼はこの世界だけではなく“あちらの世界”でも迷子になる所だった。余談だがあのゲートへの道のりにまっすぐ行くには宝くじの一等賞を当てるぐらい難しいのだが・・・・・・

「今回は大丈夫じゃき~すぐ帰るの~」
「ハァ~・・・・・・あなたの大丈夫は私にとって世界で一番信用できない・・・・・・」

坂本と一緒に行くという手もあるがそれだと町の人に変な誤解されかねないのでやりたくない。
楽しそうに手を振りながら家を出て行く坂本に、ネカネは頭をおさえてどうか彼がまっすぐここに帰ってくるよう祈るしかなかった。
























しかしながらその祈りは彼には届かなかった。

「アハハハハッ! すんませ~んッ! 八百屋行こーと思っちょったら迷ってしもーたきにッ! ここは何処か教えてくれんかの? アハハハハッ!」
「ここは町の市場の反対方向のメルディア魔法学校なのだが・・・・・・お主は何者だ・・・・・・?」
「違う違う魔法学校じゃなくて八百屋行きたいんじゃッ! 人の話聞いちょれバカッ! アハハハッ!」
「何だ貴様ァァァァァ!! 舐めてるのかコラァァァァァ!! この怪しい奴めッ!」

坂本が今いる場所は市場とは“反対方向”にあるウェールズにある魔法学校。かつてはここでネギやアーニャ、ネカネが在籍していた魔法を教え学ばせる為の学校だ。大きさは普通の学校よりかなり大きく、多くの生徒を養うための寮も存在する。麻帆良学園にも匹敵するような巨大学校だ。
そして坂本はそこで何やっているのかというと、どうやら迷子になってここに行きついたらしく、学校の巨大門の前に立っている警備員と早速トラブルを起こしている。
しかし彼にとってはこんな事は日常茶飯事だ。

「ちょっと来いッ!」
「お、八百屋まで案内してくれるのかのッ!? 別世界の住人は親切じゃの、すまんの~アッハッハッハ~!!」

坂本は魔法使いと思われる黒いローブを着た警備員に手をひかれ、不審者という事で校門の中まで連れかれる。その間も坂本はただヘラヘラと笑っているだけだった。















坂本は魔法学校の内部へ警備員に引っ張られながら入って行く。周りを見てみるとそこには警備員と同じくローブを着た多くの教師や生徒が廊下を歩きまわっている。
明らかに異様な雰囲気の坂本をほとんどの人達がジロジロと見ている。まあ警備員に引っ張れっているのでその点でも注目されていると思われるのだが

「ここにいる奴等みんな変な服装じゃの~こんな暑苦しい時にローブを着こむなんぞ、何考えてるかわからんきに、もしかしてガマン大会でもやっとるんか? アハハハハッ!」
「だぁぁぁぁ!! お前はもう黙れやぁぁぁぁぁ!! このままムショへストレートにぶち込んでやろうかああんッ!?」

相変わらず笑ってばっかの坂本に男性の警備員は彼に怒鳴り散らす。それから目的地に着くまでずっと二人は方や笑い、方や怒声を繰り返していた。











しばらくしてやっと坂本と警備員は目的地の部屋の前に着いた。警備員の男はそのドアを数回ノックする。

「校長、怪しい男がこの学校の前でウロついていたので捕まえてきました」
「怪しい男じゃと? どんな男じゃここに連れて来なさい」
「はい、おいお前、校長が呼んでいる、さっさと中へ入れ」
「うん? おまんは来んのか? 友達じゃろ、一人だと不安じゃから一緒に行こうぜよ」
「いつ友達になったッ! さっさと行けッ!」

急に馴れ馴れしい態度で自分の肩に手を回してきた坂本に、警備員は部屋のドアを開けて彼を蹴っ飛ばして中に入れる。坂本が蹴られた腰をさすりながら立ちあがる頃にはその警備員はドアをバタンと閉めて帰ってしまった。

「全くシャイな奴じゃの~」
「ほう、お主が怪しい男か、確かに見た目からしてかなりおかしな姿をしておるな」
「んあ?」

坂本が振り返るとそこにいたのは椅子に座って机の上で手を組んでこちらを見ている威厳漂う雰囲気を持つ高齢の男性。その男性の長い髪の毛と白髭を見て坂本はサングラスの奥から物珍しそうな目で男性を眺める。

「おんし、随分と面白い姿をしてるの~まるで仙人見たいじゃ」
「フフ、さすがに仙人ではないわい、それにワシからみればお主の方がよっぽど可笑しな姿じゃ、名は何と言う?」
「ワシか? ワシの名は坂本辰馬じゃ、宇宙をまたにかける商人だぜよ」
「ホッホッホ、宇宙をかける商人とは随分と見栄のデカイ男じゃわい」
「いや本当なんじゃがの・・・・・・」

男性に笑われている事に坂本は頬を掻きながら困り顔をしていると、男性は改めて坂本に顔を戻す

「ワシはここのメルディアナ魔法学校の校長じゃ、校長じゃろうがじいさんじゃろうがどう呼んでも構わんぞい、今日は何故ここの学校の前でウロついてたんじゃ?」
「ん~道に迷っての、所で魔法学校の校長ってどういう意味じゃ~?」
「ここの施設で一番偉い人って事じゃよ、お主本当に何も知らんようじゃな・・・・・・?」
「アハハハ、色々とネカネさんに聞いちょるんじゃが、まだこの世界の事はさっぱりじゃ~アハハハハ」
「・・・・・ネカネ?」

坂本の言動に校長は目を細める。もしやこの男は彼女が手紙で行っていた例の異界の男では・・・・・・・?

「お主はもしかして・・・・・・ネカネが言っていた異界の男か・・・・・?」
「おーそうじゃよくわかったの~、もしかしてじいさんってネカネさんの知り合いなんかの?」

坂本が手をポンと叩いて正解みたいなポーズをする。そんな彼に校長は少し微笑んで彼の問いに答えた。

「あの子はここの元生徒でな、今でも時々手紙を交わす仲なのじゃよ、お主の事も聞いておる簡単に言うと、宇宙から落ちてきた別世界の変な男をしょうがなく住ましてやってると、ん? てことはお主がさっき言っていた宇宙をまたにかける商人というのは・・・・・・」
「本当の事ぜよ、わしは宇宙を飛んで大型貿易を行っている『快援隊』のリーダー、わしの所の世界では結構有名な商人なんじゃがの~・・・・・・」
「そうかそうか悪かったわい」

校長がまた口元に笑みを浮かべ、苦笑いをしている坂本を観察する

「それにしてもネカネが言うにはお主かなり抜けてるようじゃの」
「やっぱりネカネさんにはそう思われてるようじゃな~・・・・・・わしだって本当はやれば出来る子じゃきん、いざとなれば役に立つんじゃぞ~」
「フッフッフ・・・・・・いざとなればその内側の胸ポケットの銃で彼女を守れるという事かの・・・・・・?」
「およよ・・・・・・?」

坂本の顔からいつもの笑顔が消えて驚いた表情になる。校長は笑みを崩さず話を続ける

「お主の左胸の所が若干膨らんでおってな、形からして一般の人間が身を守るため、もしくは相手を殺す為の武器である銃の形をしておる。年をとると観察力が優れてきての、ネカネの目は誤魔化せてもワシの目は誤魔化せん」
「アハハハ、バレちゃったかの~こんなん小さな膨らみ、普通だれも気付かんじゃろ~」

坂本はため息をついて髪を掻き毟る。そして校長の言っていた内側の左ポケットから右手である物を取り出す。
それは彼がネカネにも見せずに持ち歩いている黒い銃。それを器用にクルクル回しながら坂本はゆっくりと口を開いた。

「何でもお見通しのようじゃなじいさん、ほんに仙人かなんかじゃないかの?」
「ホホ、ワシの勘も年をとる度に冴えてくるの、何でそんな物騒な物を持っているのかね?」
「宇宙は危険が多いけ~、わしみたいな貿易会社は襲ってくる連中がごまんといるぜよ、これは護身用じゃ、アハハハハ」

校長の言葉に坂本がケラケラ笑っていると、学校内にある時計塔が鳴りだした。もう坂本がネカネの家から出てから結構時間が経っている。彼が迷っていたのとここで話しているのを含めると相当な時間だ

「あり? じいさん今何時じゃ?」
「午後6時じゃな、それがどうしたんじゃ?」
「あいや~こりゃあまたネカネさんに怒られるけ~」

坂本が困ったように頭に手を置いてどうしたもんかと考える。とりあえず市場に行くのは諦めるか・・・・・・このまま迷って帰りが更に遅れるとネカネにもっと怒られそうだ

「まあじいさんと長話してたって言って誤魔化すか、じゃあわしもう行くぜよ」
「ふむ、ネカネにあまり心配かけんようにな」
「アハハハハ、わかっとるきん、ほなお邪魔しましたっと」

そう言って坂本は銃をしまい校長室のドアを開けて最後に校長に向かって笑いながら手を振ってドアを閉めていった。

「ふうむ、もっと色々聞きたかったんじゃがの・・・・・・あの男の目の奥底に隠れている修羅・・・・・・一体彼が過去にどんな経験をしたのかはワシの洞察力でもわからんわい・・・・・・」

彼がいなくなった部屋で校長は口にパイプをくわえ坂本が閉めたドアの方向に目をやる。

「少なくともただの宇宙の商人ではあるまい、全くネカネもとんでもない物を拾って来たの・・・・・・」

校長がため息をつくと同時に窓の外から、先ほどの警備員の怒声と坂本の笑い声がここまで響いて来たのであった。
















一方、家にいるネカネはというとテーブルに肘をついて椅子に座りながら帰りの遅い坂本の帰りをイライラしながら待っていた。

「・・・・・・遅いわね・・・・・・・嫌な天気だしやっぱり一人でおつかいになんか行かせるもんじゃなかった・・・・・・・ここに居ててもトラブル起こす人なのに・・・・・・」

やはり自分だけで行って彼はここで留守番・・・・・・いや彼を一人でここに残す事も危ない。常にトラブルを抱え込んでくる男なのだ、家だろうが外だろうが間違いなく彼を一人にするのは動く時限爆弾を野放しにするようなものだとネカネは理解した。

「今度からは絶対あの人を一人にするのは止めましょう、私がついて置かないと・・・・・・いちいち心配するこっちの身にもなって欲しいわね・・・・・・」

ネカネが独り言をつぶやきながら人差し指で机を叩いていると、ゆっくりと家のドアを開ける音が聞こえたのですぐに反応する。

「やっと帰って来た・・・・・・! もうおつかいが出来てようが出来て無かろうが殴り飛ばしてやるんだから・・・・・・!」

歯ぎしりしながらネカネは椅子から立ち上がりズンズンと玄関まで歩いて行く。とりあえずあの顔面に右ストレートを何発も打ってやらないと気が済まない、そう思いながらネカネは玄関へと辿り着いた。

「全くッ! あなた一体おつかいへ行くだけなのに何でこんなに時間をかけないと・・・・・・あれ?」

玄関には誰も立っていない所か人の気配さえない、だが誰かが来たのは間違いないはずなのだが・・・・・・

「おかしいわね、あの人家に帰ってきたらちゃんと私が来るまでここで待ってるのに・・・・・・」
「悪いが勝手に入らせてもらった、女の家にズカズカと入りこんで申し訳ないねぇ」
「!!」

すぐ後ろから男の声、ネカネがハッとして振り返る。目の前に現れたのは坂本では無い。

口元には無精髭を生やし、黒いマントを着こんで、右手には傘を持った長身の男。それにあの傘は・・・・・・

「6年前に春雨に襲撃された村の生き残りだよな確か、どう生き残ったのかは知らんがね、その時はまだ俺もいなくてよ」
「あなた・・・・・・何でその事を・・・・・・誰なんですか・・・・・・?」
「おおっとそういえばまだ名乗ってなかったな」

震えているネカネに男は僅かにニヤリと笑う。

「宇宙海賊、春雨の第七師団団員の阿伏兎ってモンだ、今日はあんたに用事が合ってな」
「は・・・・・春雨って・・・・・・!!」

阿伏兎と名乗った男は持っていた右肩に傘を担いで、驚いて目を見開いているネカネにユラ~っと近づいていった。





















「あ~早く帰らんとネカネさんにまた殴られるけ~気張れわしの足~もうすぐ家に着くぞ~多分じゃが、ハハハ」

坂本は走って帰路についている。おつかいも出来ずに帰ったら一体どんな制裁を食らうのだろうかと想像しているとふと空の雲行きが怪しい事に気付いた。

「こりゃあ早く帰らんと雨に打たれるぜよ、にしてもこういう天気はわしは好きになれん・・・・・・イヤなもん思いだすしの・・・・・・」

サングラスの奥から目を覗かせながら坂本は走りながら空を眺める
















見上げた空は曇天だった



































教えて銀八先生

銀八「え~一通目、ゼミルさんの初質問」

あやかと千雨、どっちが本妻でどっちが愛人になるの?
ちなみにエヴァはマスコットなので別枠で。まぁ夜にベッドで啼かされるのは3人一緒なんだけどね!

銀八「はいはい、え~と・・・・・・殺されてえのか?」
沖田「本当にこういう系統の質問、旦那に多いですよね、まあ土方さんも時々来ますが」
銀八「何でわかんねえのかねぇ・・・・・・大体あいつらの年って神楽と一緒だからね?」 
神楽「じゃあ私をそういう目で見ていたアルかッ!? キモいアルッ! しばらくこっち近づくんじゃねえヨッ!」
銀八「いや死んでも見ねえよボケッ!」


銀八「二通目、サハリンさんの質問」

ヤンデレ(デコ那)に質問
ヤンデレは、烏族なのに鳥料理や卵料理食べたから迫害されたんじゃないんですか?

刹那「別にそれで迫害されたわけじゃないし食べても悪くないでしょ、お嬢様が作った焼き鳥とか上手いんですよほら」
銀八「それお前の父ちゃんだからな」
刹那「でぇぇぇぇぇ!! お嬢様何て事をォォォォォ!!!」
木乃香「いやちゃうから・・・・・・せっちゃん真に受けちゃ駄目やって・・・・・・」
 

銀八「三通目、剣聖さんの質問」

質問です。銀さん達は、フラグ立てまくってるのに、どうしてアスネギフラグが立っていないんですか?立つとするといつごろになりそう?

銀八「これ作者あての質問じゃね?」
アスナ「未来永劫無いわね」
カモ「え~姐さんぐらいしかもうネギの兄貴、残ってないんですよ、色々と原作ヒロイン奪われちまったから」
銀八「へ~そんな野郎がいんのか大変だなお前も」
土方「ふてえ野郎だ、俺が斬ってやろうか?」
近藤「女を奪うなんて侍の風上にも置けんなッ!」
カモ「いやアンタ等なんすけど・・・・・・」


銀八「四通目、オレの「自動追尾弾」さんの質問」

茶々丸に質問
ここのエヴァには威厳のかけらもないですが(笑)、茶々丸から見てエヴァはどうですか?マスターとしてではなく、人としてw

茶々丸「そうですね銀時様に合う女性だと思いますが」
エヴァ「よく言った茶々丸」
銀八「合わねえよこんなチビ助、何処をどう見て思ったんだよ」
茶々丸「精神年齢が二人共子供なので」
銀八・エヴァ「「はぁッ!?」」


銀八「五通目、エンジンさんの質問」

刹那に質問です。周りからヤンデレヤンデレ言われてますけど、自分ではどう思ってるんですか?僕から見てもあの行為はヤンデレ(お嬢様のために銀さんを殺そうとしたり)としか思えません。しかも危ない方向に走ってるのでいつか大変な目に遭うのではと思っているのですが。

刹那「自分でもあの時は反省してます・・・・・・ですが今は普通になったと思います・・・・・・!」
龍宮「刹那、木乃香がサド王子に襲われてるぞ」
刹那「てめぇまた何してんだコラッ! その首今度こそ叩き落してやろうかああんッ!?」
龍宮「嘘だ」
刹那「あ・・・・・・」
銀八「ヤンデレじゃなくなったがどっかのマヨ侍みたいになってんぞ」


銀八「六通目、正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
ぬらりひょんの1日の時間は、午前は人を虐殺しながら遊び。午後は、美人な女性を捕まえて無理矢理遊び(性的に)。夜中は、眠っている生徒を誘拐して食事をしていると聞いたんですが本当ですか?もしも本当なら霊夢に連絡しますんで。

学園長「へいッ! どんどんワシ化け物だと思われてな~いッ!?」
銀八「こんなジジィがんな事出来ねえよ、逆に虐められるのがオチだろーよ」
学園長「いやワシだって頑張れば姉ちゃんの一人や二人とッ!」
銀八「霊夢呼ぶぞ?」
学園長「すんません・・・・・・」


銀八「七通目、風の都さんの質問」

まき絵ちゃんへ
このSSでの、自分のポジション(やられ役・第2の学園長・公開処刑)についてどう思われていますか?

まき絵「私そんな扱いなのッ!?」
銀八「お前が第二のジジィなわけねえだろ」
まき絵「え、本当ッ!?」
銀八「お前のポジは第二の山崎だ」
まき絵「イヤァァァァァ!!」
山崎「何でそこで悲鳴ッ!?」

銀八「八通目、q-trueさんの質問」

銀さんに質問です。
秋と言えばスポーツの秋ですが、GSの皆さんは学園長でどんなリンt…もといスポーツをしていますか?
自分はピン(学園長)にボール(解体用鉄球)で潰すじじぃボーリングがマイブームです。

銀八「え~爆弾ゲーム」
新田「魚雷ゲーム」
しずな「地雷ゲーム」
タカミティン「ライアーゲーム」
学園長「全員恐ぇぇぇぇぇ!! ていうか最後が特にッ!」


銀八「九通目、一揆さんの質問」

あやかに質問
千雨・エヴァ以外にライバルになりそうな人物はいますか? もしいたらどう対応するかもお願いします。

あやか「しずな先生とかが危険ですわよね・・・・・・対応はどうしましょう、とりあえずあの二人をセットにしない事とか?」
千雨「あの人、別に銀八に興味無えだろ」
あやか「でも銀さんは興味ありありですよ・・・・・・?」
千雨「そうだな~別に私はどうでもいいけどよ」
あやか「千雨さんのツンデレ」
千雨「何だよそれ・・・・・・」


銀八「十通目、Citrineさんの質問」

>「実はカモ君とは5年前、僕がウェールズに住んでる頃から長い付き合いの親友なんです・・・・・・」
三か月って事だったから、星海坊主とは会ってないんでしょうけども
もし会ってたりしたらカモ君はどうなっていたと思いますか?

カモ「兄貴~海星坊主って誰ですかい~?」
ネギ「僕が色々とお世話になった人だよ、どうなっていたって聞かれても、僕はわかんないな・・・・・・」
??「食ってた」
カモ「あれ兄貴・・・・・・今通りすがりのオッサンが恐い事言ってすぐ帰っちゃったんすけど・・・・・・」
ネギ「え、そうなの? 僕は気付かなかったけど?」
カモ「なんか俺っちその人に会わなくて本当に良かったなって思いやす・・・・・・・」


銀八「十一通目、汁裂注射さんの質問」

佐々木まき絵さんに質問があります。
銀さんに公開調教されてるようですが、そろそろ眠っていたドMな性癖が目覚めてきていませんか?

まき絵「私ドMじゃないよッ!」
龍宮「先生は“ドS”だぞ」
まき絵「いやだから何ッ!?」
龍宮「相性抜群だと言う事だ」
まき絵「そんな相性関係嫌だからッ! つかドMじゃないって私はッ!」
あやか「もしやまき絵さん計算でドM戦法で銀さんに近づいて・・・・・・!!」
まき絵「無いよッ! 止めてそういう勘違いッ!」


銀八「ラスト十二通目、ウィルさんの質問」

今回はエヴァに。銀さんの自分の家に住まわせてるわけですが、銀さんのベッドに銀さんが寝てる間に潜り込んだことってありますか?成功とか失敗は大して気にしませんので、その時のエヴァの感想を聞きたいなって思った所存です。それ次第では私はエヴァをヒロインと思ったりしたりしますw

茶々丸「ついでに銀時様が今寝てる所はマスターの部屋の隣にある和室です」
エヴァ「そこを私が夜這いに入るッ!」
銀八「そこで俺が布団に入って来たチビを蹴って追い出す」
茶々丸「これを夜中の間3セット繰り返して結局失敗に終わります」
エヴァ「なあ別に一緒に寝るぐらいならいいだろ・・・・・・?」
銀八「ふざけんな銀さんはロリコンじゃねえ」
エヴァ「ロリコンでもポリゴンでも構わんぞ私は、同じ布団で一夜を過ごそうではないか」
銀八「お前と一緒に寝るならチャチャゼロと一緒に寝るわボケ」
エヴァ「何だとォォォォォ!! 私よりもっと小さいのが好きだったのかお前はッ!?」
銀八「そういう意味じゃねぇぇぇぇぇ!!!」






攘夷組編・第二十七訓『占いは当たるも八卦当たらぬも八卦』へ続く。



[7093] 第二十七訓 占いは当たるも八卦当たらぬも八卦
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/10/02 14:28
現在から数か月前の事であった。場所はイギリスにあるロンドン
時刻は真夜中、ある一人の少女がいつもの様にベッドに横たわって寝ていると、部屋の真上から何やら話し声が聞こえてくる。

「あいつ・・・・・・上で何やってるのよ・・・・・・」

少女は眠い瞼を不機嫌そうにこすりながら起き上って、部屋の中にある梯子を使って天井裏まで昇る、そして天井裏にある上へと出る為の窓を開けてよじ登り、少女は屋根に上ってキョロキョロと辺りを見渡す

「誰かと喋ってたように聞こえてたんだけど・・・・・・あいつここで誰かと喋る仲の人間なんて私ぐらいじゃなかったかしら・・・・・・?」

少女が屋根の上を慣れたように歩いていると、ちょうどてっぺんの所にあの男がいた。
だが一人ではない、座っている彼の前に背中に傘を差した中年の男性が立っていたのだ。

「あんた、誰と喋ってるのよ?」
「何だお前、起きてたのか・・・・・・・」
「起こされたのよあんた達が真上でうるさいから・・・・・・」
「おんや~? これがあんたを呼び寄せた嬢ちゃんかい?」

中年の男性は興味深げに少女に目をやる。その観察するような珍しい物を見ているような目つきに彼女は更に不機嫌になって来た。

「誰よあんた? 変な目で見ないでよ」
「こいつは失敬、俺は阿伏兎っていう者だ、この男とは共同戦線をしている仲でね、この男とはちょっと前からの付き合いだ、それにしてもまさかこの世界に来るとはねぇ」
「ふん、勝手にこのガキに呼ばれたんだよ・・・・・・」
「クク、勝手に呼ばれた割には仲良くしてるじゃねえかあんた・・・・・・」
「共同戦線・・・・・・? どういう意味よそれ?」

阿伏兎と名乗った男は顎に手を当てながら少女の知り合いの男を見る、彼はいつも持ってるキセルを吸いながらめんどくさそうに口を開いている。そんな二人に少女が首を傾げていると口から煙を吐きながら語りかけてきた。

「そういえばお前、昔ある組織に故郷を襲われて故郷を失ったって言ってたな・・・・・・」
「そうよ・・・・・・それがどうしたのよ・・・・・・・」
「その組織の一人が・・・・・・こいつだ」











「・・・・・・・え・・・・・・?」

少女はそれを聞いて一瞬何を言っているのかわからなかった。彼と“あの組織”が繋がっている・・・・・・・

「やっぱりこのガキが俺達『春雨』が過去にやった事件の生き残りか、ここにはちょくちょく来てるんだがこうやって見るのは初めてだな」
「殺すんじゃねえぞ」
「いやいや別に生き残りを殺すとかそんな事考えてねえよ、俺もその時はまだ春雨にはいなかったしな、安心しろよあんたの嬢ちゃんには手は出さねえさ・・・・・・」
「・・・・・・・」

阿伏兎は首を振って手は出さないと言うので、男は一体何を考えているかわからないが無言でそれを聞いてまたキセルを吸う。
そんな男に少女は震えながら後ずさりを始めた。

「何なのよ・・・・・・どういう意味なのよ・・・・・・何であんたがそいつ等と繋がっているのよ・・・・・・わけわかんない・・・・・・」
「ねえ、ここの世界の奴等弱そうな奴等ばっかなんだけど? 阿伏兎、何でここに来たの?」
「この男にまた色々と物を渡しに来たのと情報提供をしに来たんだよ」
「!!」

少女が後ずさりをしていると背中から別の男の声、振り返ってみるとまるで笑顔の仮面を付けたような青年が立っていた。青年も彼女に気付いたのか中年の男性から目逸らして少女を見る。

「君、誰?」
「あ、あああ・・・・・・・」
「アハハハ、ブルブル震えてら面白いね君、阿伏兎この子誰?」
「俺達と同盟を結ぶこの男の大切な嬢ちゃんだ、殺さないでいて下さいよ団長」
「別に良いよ、だってこの子弱そうだし」

青年はニコッと震えてる少女に笑いかける。その笑顔に彼女は不気味な恐怖を抱いて思わず腰が抜けてしまいその場に尻もちをついてしまう、そんな彼女に先ほどまでキセルを吸って座っていたが立ちあがり近づいてくる。

「どうやらお前にも話す時が来たようだな・・・・・・」
「え、え・・・・・・・?」
「教えてやるよ、俺の闇って奴を・・・・・・お前には素質があるしな・・・・・・」
「や、闇・・・・・・・・?」

近づいた男はキセルをいつも着ている女性の着物の裾の中に入れて、怯えている少女に邪悪に笑った

















第二十七訓 占いは当たるも八卦当たらぬも八卦

時と状況は戻って場所はネカネの自宅の玄関。彼女は突然家に上がりこんできた阿伏兎と名乗った無精髭の男を睨みつけながらなんとか距離を取ろうとする。

(間違いない・・・・・・あの肌を隠すようなマント、あの人が持ってるのと似た日傘を持って、そしてあの獲物を狙う狩人の目・・・・・・あの人が昔喋ってくれた夜兎・・・・・・)

口に笑みを浮かべているも男の目は笑っていない。ネカネは昔一回だけ見た事がある。
かつて夜兎である星海坊主が敵と対峙した時に見たあの目だ。

「・・・・・・・・・」
「おいおい黙ってないで少し俺とお喋りしようや、アンタの事は知人から色々聞いてんだよ、ネカネ・スプリングフィールド、まだ若い身でありながら文武両道、容姿端麗であり魔法学校を首席で卒業。いやはや出来たお嬢さんです事・・・・・・しかも」

懐から取り出したメモ帳を読みながら阿伏兎はネカネの履歴を簡単に紹介した後ニヤっと笑う

「6年前住んでいた村に我々宇宙海賊『春雨』が来襲、村は焼け落ちほとんどが殺された中。アンタはガキ二人を連れて命からがら逃げ延びた、そうだよな?」
「そうよ、そしてその春雨の団員が今更私に何の用?」
「へ~あんたの友人や知り合いを殺した組織の一人が目の前に立っているのに動じないとは勇ましい娘だ、まああくまで“見た目”だけだがな、足が震えてるぜ」

茶化してくる阿伏兎にネカネは刺すような目で睨みつける。
この男は自分達のかつての村を襲った春雨の一員、自分の中でや激しい憎悪、怨み、殺意がのたうち回っている。だがそれでも必死に平静を保つ、この男のペースには乗せられたくない

「・・・・・・いい加減私に何の用があるのか教えてくれないかしら・・・・・・?」
「おやおや~足だけじゃなくて声も震えてるよお嬢ちゃん?」
「く・・・・・・!」
「まあいいや単刀直入に言うとだな」

額から冷や汗を流しながら少し声に震えが出たネカネに阿伏兎はクスっと笑った後、自分の要件を言った

「俺はあんたを連れて来いと命令された身でね、今日はあんたを・・・・・・攫いに来た」
「誘拐・・・・・・? 宇宙海賊もそんな事しないとやっていけないのかしら?」
「誘拐とは人聞きの悪い、連れて来いって言ったのはあんたの知り合いさ」
「何ですって・・・・・・?」

阿伏兎の言葉にネカネは一瞬戸惑いを見せる。その隙に阿伏兎がジワジワと彼女に近づいて行く。

「そう言う事だ、つまりあんたの知り合いがどうしても見せたいものがあるっていうから俺がパシリにされてここまで来てんだ、“素直”に一緒に来てくれればおじさん悪い事はしないからよ」
「誰が素直に行くと・・・・・・!!」

近づいてくる阿伏兎に気付いてネカネは階段を上って逃げようとする。この男から距離を置かなければ、戦って勝てる相手では無い。
彼女の反応に阿伏兎は頭に手をおさえてため息をつく

「逃げるなって、あんたの知り合いから頼まれたのは本当の話なんだぜ、さてここで選択肢だ、俺に素直に攫われるか、抵抗してちょっと痛い目に合わされて俺に攫われるか」
「何言ってるの・・・・・・?」
「え? どっちも結局攫われるって? かたい事言うなよたかがクイズだろ」
「あんたなんかの所に素直に行くと思ってんの・・・・・・!?」
「成程それが答えか・・・・・・ふんッ!」
「えッ!!」

阿伏兎は階段を上る前にピタッと前で止まり、そこからネカネに向かって超人的な跳躍を見せ、一気にネカネの所まで飛ぶ。目の前に着地してたじろいでいる彼女の首を掴んでそこから二階から一階まで落下、そして彼女を床にそのまま

「がはぁッ!!!」

思い切り叩きつけた
床が壊れるほどの衝撃。阿伏兎はこの行動を夜兎特有の神がかり的なスピード力でやり遂げる
叩きつけられたネカネは一体何が起こったのか分からずに頭や口から血を出して体中に強烈に激痛が襲い身を悶える

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ぐッ!」
「年上の意見はよく聞くもんだ、素直に来てくれればそんな目に合わなかったのに」
「ゴホッ! ゴホッ!」
「おんや~? やりすぎちゃったかな? 人間は俺達より遥かに弱いから加減がわかんねえや」

床に向かって咳をするたびに血を吐くネカネに、阿伏兎はやれやれと頭をボリボリ掻いて彼女の胸倉を掴んで無理やり起こす。

「こんなにボロボロにしちまってあのガキに燃やされるかもしれねえな俺?」
「アハハハハ、・・・・・・安心せい」
「何・・・・・・?」

玄関の外から急に男の笑い声が聞こえた。阿伏兎はネカネを右手で掴んだまま後ろに振り向くと









「燃やされる前に楽に一発で仕留めるきん・・・・・・」
「な・・・・・・!!」

阿伏兎が男と目が合った瞬間

銃声が家の中で響く

阿伏兎はネカネから手を離し後ろに吹っ飛んでそのまま大の字でバタリと倒れる。
倒れた阿伏兎を確認してツカツカ足音を立てながら銃を握った男が玄関から入って来た。

「ネカネさん大丈夫かの?」
「あなた・・・・・・その銃は一体・・・・・・」
「話は後でするけ~じゃけんその前に・・・・・・」

銃を右手に持っている男、坂本辰馬にネカネが四つん這いの状態で口を開けて驚いてるのをよそに彼は倒れている阿伏兎に近づく

「まだ歩けるかのネカネさん? ここは危険じゃ一旦隠れてくれ、わしはこいつを仕留める」
「仕留めるって・・・・・・あなたがさっき顔面に向かって撃ったじゃない、生きてるわけが・・・・・・」
「・・・・・・おいおい、いきなり撃ってくるとはここの地球産にもひでぇ野郎もいるもんだなぁ」
「そ、そんな・・・・・・!!」

坂本が近づいて行くとネカネが死んでいると思っていた阿伏兎がまるで何事も無かったかのように立ちあがる。ネカネがなんとか体を起こしてその光景を見ていると、彼は口からプッと何か小さな物を吐きだす。

さっき坂本が撃った弾丸だ

「反応がちょっと遅れたらいくら夜兎でも死んじまうだろうが、ったく殺す気かあんた?」
「アハハハハッ!・・・・・・殺す気じゃがどうした?・・・・・・」

坂本の顔からいつもの笑顔が消えた。

銃口を立っている阿伏兎に向け、眼光は彼をじっと射殺すように睨んでいる。その姿にネカネは思わず身震いを感じる、あの目は間違いなく立っている男を殺そうとしている目だ。

「おまんが何者だがわしゃあ知らん、だが女子供に手を出す性根の腐った野郎じゃっという事だけは知っとる」
「坂本・・・・・・さん・・・・・・?」
「こりゃあ随分とした嫌われようだな、だが俺を殺す事なんぞ人間のあんたには出来やしねえよ、過去、俺達“夜兎”を人間が倒したというケースは一例しか存在しない、しかも“人間共大勢の力を合わせて”だ」

背中に持っていた傘を差して阿伏兎は坂本に向かって右手を前に差し伸べる

「夜兎である俺の前に立つ人間は手負いの姫様とそれを護る勇敢な騎士の二人だけ・・・・・・どう考えてもお前達に勝機は無い」
「な~に、宇宙を旅しているとおまんみたいな奴等腐るほど見てきたわ、夜兎もクソもない、おんしは怒ってるこのわしに殺される、それだけじゃ」

二人は互いに相手を睨んだまま動こうとしない。
チッチッチと家にある時計の針の音だけが響き、周りは静寂と化す。
二人の間の圧力がかかる空気にネカネは逃げる事も出来ずにただ階段を2、3段上った所で巻き込まれないよう壁にもたれていた。

「俺に一人で挑む度胸は認めてやる、その勇気と共に・・・・・・楽に殺してやろう・・・・・・」
「ハハハハ、本当はわし、血を見るのは嫌いなんじゃがの~、しょうがない・・・・・・行くぜよッ!」

銃を持ち坂本は阿伏兎に向かって走る。だが阿伏兎は背中の傘を抜かずに待ち構え拳を振り上げる。

「さてさて、楽しい殺し合いと行こうじゃねえかぁぁぁぁぁ!!」

高らかに叫びながら阿伏兎は床に向かって思いっきり拳を振りおろす。その瞬間周りに飛び散る床の破片、坂本はそれにお構いなしに当たりながら突っ込んで銃口を相手に向ける。

「おいおい、わしが住んでる家これ以上壊すなか」
「へ~これでビビって距離をとると思ったんだが・・・・・ちッ!」

自分の顔に向かって飛んでくる銃弾を阿伏兎は空中に飛んで避ける。
そのまま坂本の背後に着地して、背中を見せている彼に向かって右手を上げる

「おらぁぁぁぁ!!!」
「おっと」

後頭部を狙ってくる気配を察知して坂本は前かがみになって阿伏兎の拳が頭をかするも、そのまま前転して体を立て直し、坂本は再び彼の真正面に立ち右手に持っている銃を上げて数発撃つ

飛んできた数発の弾丸を阿伏兎は今度は避けずに右手で掴み、二発目を口で止める。しかし三発目は止められず左肩に当たった。それでも余裕気に口から再び銃弾をペッと吐きだす姿は正に人外の能力をもった化け物だ

「左肩か・・・・・まあいいやどうせ使ってねえし、“こっち”はもう無いんでね、まあそっちは頭切ってるが大丈夫かい?」
「ハハハハ、わしも頭使ってないから大丈夫じゃ」

左肩から血が滴り落ちている阿伏兎に対し、頭から血を流す坂本。どうやら阿伏兎の拳がかすった時に少し切ったらしい。
傷ついているにも関わらずお互い睨み合いながら笑っている。そんな不思議な状況にネカネは黙って見る事しかできない。

(何なのこの戦い・・・・・・夜兎の男の動きもおかしいけど、それについてこれているあの人も一体何者・・・・・・・?)

ネカネはある物を手に持ちながら階段をなんとか登りきって、まだ安全な二階から下を眺める。
自分の体もかなりの傷を負っている、早く医者に診てもらいたいがあの男がまだここにいる限りそんな事は出来ない。

そんな事を考えながらネカネが下を見ていると、阿伏兎は撃たれた左肩から弾丸を素手で取り出しながら坂本に話しかける。

「地球産にしてはいい動きだ、お前殺し合いは何回した事ある?」
「アハハハ、そんなもんいちいち数えてなか、戦で殺し合いをするのは当たり前じゃき」
「戦・・・・・・?」
「攘夷戦争じゃ」
「あの侍が天人相手にわざわざ負け戦を仕掛けた戦争か・・・・・・てことはお前俺達の世界の・・・・・・クックック」

ネカネが一体何を話しているのかぜんぜんわからないと首を傾げた時。阿伏兎はニタリと笑ったまま背中に差してあった傘を抜く

「ここからは本気で行かしてもらおう、俺に“コイツ”を抜かさせた人間はあんたで初めてだ」
「そいつは光栄じゃな、出来れば抜いて欲しくなかったんだがの」
「さあ・・・・・・これで終わらさせてもらうぜッ!」
「うおっとッ!」

急に懐に飛んできた阿伏兎に、坂本は一瞬度肝を抜かれるも体を後ろにのけ反る。その瞬間、目の前でを空を切っている日傘が横切るのが見えた。

「アハハハ、マトリックスみたいに避けるわしって凄ッ!」

体を後ろにのけ反らしたまま、坂本は銃を握って阿伏兎に向かって撃つ。狙いは足、数発の弾丸は阿伏兎の両足に一発ずつ当たる、だが彼は全く効いていないようにフッと笑った

「狙いはいい、戦場においてどんな猛者でも足の自由を失えば戦う事は出来なくなる。だが一つ言っておく、夜兎の体は人間と違ってやわじゃねえんだ・・・・・・よッ!」
「ぐぎッ!」
「坂本さんッ!」

さっき撃った筈の足で阿伏兎は飛びあがり、思いっきり坂本の腹に真上に降って来た。足から血を流しながらもその足で倒れた坂本を踏みつける。

「これで終わりだな、時代に残された古きお侍さんよ」
「アハハハ、どうかのわしの手にはまだ武器はあるぜよ・・・・・・」
「さっきからあんたがそいつで撃った回数を数えてたんだが・・・・・・そろそろ弾切れててもおかしくねえか?」
「ハハハ・・・・・・バレた?」

阿伏兎の言う通り、坂本が持っている銃にはもう弾は残っていない、胸ポケットにはいつも予備の弾丸が入ったカートリッジが一個だけある筈なのだが、どうやら何処かに落としてしまったらしい

「もうあんたに打つ手は無いな・・・・・・あばよ」
「・・・・・・その人を殺すのは止めなさい・・・・・・」

倒れた坂本を踏みながら、持っている傘を振り上げる阿伏兎に、さっきまで二人の戦いを見ていたネカネが静かに発する言葉に彼はふと上を見上げる。

「殺すな? 冗談はよしてくれ」
「その人をどうしてもあなたに殺されて欲しくないのよ・・・・・・その人を殺すなら私も舌を噛んで死にましょうか・・・・・・?」
「あ~それは勘弁願いたい、俺の本来の目的はあんたの奪還だし、おじさん困っちゃう」
「だったらその人の命を助けて上げて・・・・・・」
「それも無理なんだがなぁ~」

手すりにもたれながら口から血をに滴らせているネカネに阿伏兎はダルそうにため息をついた。何故そこまでしてこの男を助けたいのだろうか・・・・・・

「あんたがこの男の命を助けたい理由は?」
「その男はねえ、私に一杯迷惑かけてるの・・・・・・」
「へ?」
「外へ行けば迷子になるわ、家の中に居てもノックもせず人の部屋に入り込んでくるわ、人が捨てようとした手紙を勝手に相手に送ったりするわ・・・・・・言葉のキャッチボールも出来ないし、いつもヘラヘラ笑ってる頭空っぽのバカ・・・・・・だから」

ネカネは意を決したように歯を食いしばり、阿伏兎に向かって

「そいつを殺すのは・・・・・・私がやるのよッ!!」

叫びながらネカネは力を振り絞ってある物を投げた、大きさは小さく顔面に向かって飛んできたそれを阿伏兎は容易に避ける。

「この男を殺すのは自分の役目ねぇ、随分と偏屈した絆ですなぁ」
「フフフ・・・・・・避けるんじゃなくて傘で弾くなりしておけば良かったわね・・・・・・」
「何?」

額から汗を流しなら立つのもやっとなネカネが不敵に笑う。その姿に阿伏兎は不審に思い、さっき彼女が投げた物が何処に落ちたのか下を見るが、何処にもない・・・・・・

「何処にいった? あんた一体何を投げ・・・・・・」
「おっさん・・・・・・」
「はッ!」
「探し物は・・・・・・わしが拾っといた」

坂本が持っていたのはさっきネカネが投げてきた物、それは坂本が落としていた予備の銃弾の入ったカートリッジ、彼が落としていたカートリッジはネカネが拾っておいていたのだ。
持っていた銃に付いてるボタンを押して空のカートリッジを出し、ネカネに託された新しいカートリッジをすぐに装填、自分を踏んで面喰っている阿伏兎に向かって坂本は半笑いで銃を握り

「しまったッ!」
「これで終わりじゃけ」

坂本は近距離から阿伏兎の体めがけて撃った

「がはぁッ!」

そして放たれた何発もの弾丸は阿伏兎の体を貫く

「俺とした事が・・・・・・!!」
「勝負っちゅうもんは最後までわからんもんじゃの~まあわしには“勝利の女神さん”がついておったっちゅう事じゃな」

弾丸で貫かれた体を阿伏兎はよろよろとさせながら後ろに下がる。反対に坂本はようやく立ちあがれるようになり、再び銃口を相手に向ける。

「そない弾丸食らっちょるのにまだ生きてるっちゅうのはどういうこっちゃ?」
「夜兎はお前等人間と違って頑丈だと言っただろ・・・・・・だがこれはちとキツイなぁ・・・・・・」

撃たれた箇所や口から血が滴らせながら阿伏兎はニヤリと笑う。いくら夜兎だとしても近距離からあんなに撃たれてはかなりのダメージだ、何とか急所には当たらないよう避けたのだが、やはりここまでの深手は彼にとっては珍しい事らしい。

「人間共にいっぱい食らわせられるって事は俺もまだまだなようだ・・・・・・こっから夜兎の本気ってのも見せてやりたいのもやまやまだが、このまま戦いが続けばあそこのお嬢さんを巻き込んで殺してしまう可能性もある・・・・・・どうだ? ここは一度停戦でもしようや」
「都合のいい話じゃな」
「いいじゃねえか、良い情報をあげるからよ、あんた攘夷戦争に参加してたんだろ・・・・・・? それで思いだしたんだがあの男も攘夷戦争に参加したと言っていたっけな・・・・・・」
「あの男・・・・・・? 誰じゃ?」
「クックック・・・・・・」

銃口を突き付けて動こうとしない坂本に阿伏兎は笑った後ボソリとつぶやく

「高杉晋助・・・・・・昔は攘夷戦争に参加して今では地球の江戸で一番有名な過激派攘夷志士だ・・・・・・だが今はこの世界で潜伏して暮らしてる」
「高杉・・・・・・? あいつもこの世界におるんか・・・・・・?」

阿伏兎の言葉に坂本は耳を疑う、かつての戦友がこの世界にいるだと・・・・・・?
彼の反応に阿伏兎は鼻で笑った後話を続ける。

「知り合いなのか? まあいい、近々そいつは日本の京都って所でデカイ花火を打ち上げようとしている、俺達『春雨』も奴の軍派と同盟を結んでいる義理で協力しているってわけさ・・・・・・」
「春雨か・・・・・・こりゃまた厄介な奴と同盟を結んだの高杉の奴・・・・・・あんたがネカネさんを襲いに来た理由はなんじゃ?」
「襲いに来たんじゃねえよ、ちょっくら一緒についてきて欲しかっただけさ、あるガキに頼まれてね・・・・・・名前は何だっけな、長すぎて覚えてねえや・・・・・・でも確かあの男は・・・・・・」

ぶつぶつとつぶやきながら阿伏兎が思いだそうとする、しばらくして思い出したような表情で楽しげに坂本と、二階からこっちを見下ろしている両方を見ながら口を開いた。

「思いだした、高杉はそのガキの事をアーニャって呼んでたっけ・・・・・・」
「アーニャ・・・・・・?」
「ア、アーニャですってッ!」

坂本はその名前を聞いても首を傾げるが、ネカネの方はそれを聞いて驚いて腰をその場に落としてしまう、その反応に不審に思った坂本は彼女の方へ振り向く。

「何じゃネカネさん知っとるんか?」
「私が面倒を見ている子供の幼馴染よ、何でその子があなた達と・・・・・・」
「あのガキの事は教えられねえな、プライバシーってもんがあるし」
「つべこべ言ってないで吐きなさいッ! 何でアーニャがあなた達と関係しているのッ!?」
「それはあのガキに直接会って聞いてみてくんねえかな?」
「この・・・・・・!! うッ!」
「ネカネさんッ!」

飄々とした態度で話そうとしない阿伏兎に、思わず血が頭に上って階段を下りて近づこうとするが、負傷した体で興奮したせいで立ちくらみを起こして、彼女が階段の段を踏み外して下に落下する前に坂本が走って階段を駆け上がって両手で受け止める。

「大丈夫かいの?」
「ええ・・・・・・ありがとう」
「じゃあもう俺からの情報は終わりだ、俺の体も結構やられているし、ここまで来るために使った貨物船にまた忍び込んで休まないといけないんでね、お幸せにお二人さん」
「ま、待ちなさい・・・・・・!!」

こちらに背を向けて玄関に向かって歩いて立ち去ろうとする阿伏兎に、坂本の両腕に抱かれながらネカネが呼び止められたので彼はピタリと止まり背中を見せながら彼女に楽しそうに喋りかける。

「さてあんたにまたここで選択肢だ。このままここで時が来るのを待つか? それとも近々起きる祭りに参加して“全てを知る”か?」
「・・・・・・・」
「人生は選択肢の連続だ、よく考えて行動するといい、あとそこの黒モジャ」
「いや黒モジャってあんまりじゃろ・・・・・・」

阿伏兎に変なあだ名で呼ばれた事に不服そうな坂本が顔をしかめていると、阿伏兎が振り向かずに口を開いた。

「かつての戦友に何か伝えて欲しい事はあるか?」
「そうじゃの・・・・・・まああんまり悪い事したらいかんぞって伝えておいてくれ」
「クク、わかった伝えておくぜ」
「私からもお願い・・・・・・どうかまた無事にここに帰って来て欲しいって・・・・・・」
「それは娘っ子にか? やれやれ俺は伝言係じゃないんだが・・・・・・まあ一応言っとくよ、あの娘が俺の話を聞くかどうかわからんが・・・・・・」

坂本だけではなくネカネの伝言も受け取り、阿伏兎は傘を差して負傷した体とは思えない足取りで雨の中を歩いて行く、体から出てくる血を地面にポツポツと滴らせながら
それを呆然と立っている坂本と彼の両腕に抱かれたネカネは開いたドアから見送るだけだった。

「あの男、あの体で帰る気け? 末恐ろしい化け物じゃな・・・・・・さっきの戦いもわしから見ると本気を出してるようでもなかったしの」
「もう二度と会いたくないわね・・・・・・それよりあなた、いい加減下ろしてくれない?」
「ハハハ、何言っちょるんじゃ、早く病院に行かんとヤバい体しちょるのに」
「人の事言えないわよ・・・・・・あなたもさっきあの男に踏みつけられた時にアバラ辺りが折れたでしょ? それに頭から血が出てるし・・・・・・同じ怪我人じゃない」

自分より怪我してると思われる坂本をネカネはジト目で睨む、だが彼は笑い飛ばして歩き出す。

「わしの体はあの男程じゃないが頑丈じゃきん、こないな怪我大した事なか」
「まあ確かにいつも殴ったり蹴ったりしてるのにすぐにケロっとして復活してるわね・・・・・・」
「アハハハハッ! わしは不死身じゃから死なんのじゃッ! アハハハハッ!」
「あ~元に戻ったわね・・・・・・さっきまではちょっとカッコいいと思ったのに・・・・・・」

いつものようにヘラヘラ笑っている坂本にネカネはボソリとつぶやいた後ため息をついた後、坂本に抱きかかえられながら玄関にある靴箱の上に置いてある自分の傘を取る。

「傘が無いと濡れるでしょ、外は雨なんだから」
「おおッ! てことは相合傘・・・・・! うごぉッ!」
「バカ言ってると殺すわよ」
「腹を怪我しちょるのに殴らんといてくれ・・・・・・本当に死ぬぜよ・・・・・・」

坂本の腹に向かって抱っこされてる中彼に肘鉄をかますネカネ。坂本は苦痛の表情になりながらも外に出てネカネが差した傘の中に入って歩き出す。

「いや~しかし驚いたの~、わしの友達もここに来ちょるようじゃし、しかもネカネさんが知ってる子と一緒じゃとは・・・・・・世の中狭いの~」
「私はアーニャの事も驚いてるけど、あなたにも驚いてるんだからね」
「ハハハ、わしの事は病院に着いたら話すけ、色々と聞いてくれ」
「そうねお互い全部吐き出しましょう、あなたの過去、そして私の過去も・・・・・・」
「わしは女の過去はあまり聞きたくないんじゃがの」
「必要になる事だからちゃんと聞いておきなさい、私達が次にやる行動の為にも・・・・・・」

雨の中ネカネは坂本に抱えられながら色々と考える。
阿伏兎が言っていた彼女にとって重要な選択肢、だがそれはもうとっくに決まっている事だった。

「私はアーニャに会いに行く、どうしても本当の事を知りたい」
「わかっとるけ、わしも久々に友に会いに行きたいしの、だがわしらの怪我治るのに何日経つかの?」
「魔法使いのいる町をナメないでほしいわね、こんな怪我お医者さんの高度な治癒呪文だったらすぐ治るわよ」
「便利なもんじゃの~じゃあ完治したらどうするんじゃ?」
「決まってるでしょ、色々と準備してあの男の言ってた“祭り”に参加しに行く」

坂本の問いにネカネはキッパリと言う、これが彼女の答え。
アーニャと坂本のかつての戦友が何を行おうとしているのか、自分で確かめなければいけない・・・・・・

「坂本さん、あなたを殺すのは私の役目なんだから京都で死ぬんじゃないわよ」
「アハハハ・・・・・・それってマジじゃったんか・・・・・・?」

額から血だけではなく冷汗を流しながら坂本は抱きかかえるネカネに聞いてみると彼女は太陽の様な笑顔で頷いた

「マジよ」
































坂本達がいるイギリスから遠く離れている日本の京都。
現在の時刻は夜を迎えるイギリスとは違いここは昼過ぎであり、多くの人達が町の中を歩いて賑わっていた。
そんな光景を宿屋の窓から隙間を開けていた二つの目

「楽しそうねみんな・・・・・・」

舞子や観光客や自分と同じ外国からきた人までいる、色とりどりな人達を見て少女はどこか寂しそうにつぶやいた。
その声に反応して彼女の隣に座っている男が喋りかける

「お前も下りて楽しんでくればいいじゃねえか・・・・・・」
「ここは“関西呪術協会”の本部があるのよ、下手に外出たら危ないでしょ」
「クク、冗談に決まってんだろ、これからここで色々とやらかす前に一悶着起こしたら話しにならねえ・・・・・・」

男は持ってるキセルを吸いながら薄ら笑いを浮かべてこちらに向いている少女に顔を向けた。

「そういえばお前の大切な姉ちゃんはどうなんだよ?」
「ネカネさんは絶対に拒むと思うわね、けどあの人は絶対に“ここに”来るわ」
「ほう、どうしてそう言えるか聞きたいな」
「ネカネさんの未来を占ってみたらね、出たカードは『女教皇(ハイプリエステス)』の正位置、意味は『知性、平常心、洞察力』」

少女がローブの裾から一枚のカードを見せる、そのカードを見て男はククっと笑みを浮かばせる。

「・・・・・お得意のタロット占いはちゃんと当たるのかねぇ」
「あの陰険そうなメガネの人から貰ったマジックアイテムのこのタロットで占ったんだけど、よく当たるのよこれ」
「ああ何かと利用できる女からの貰い物か・・・・・・あの女にも精々『道化』として働いて貰わねえとな、クックック・・・・・・」

男は煙を吐きながら笑っていると、そんな彼に少女もつられて口に少し笑みを作った。

「あの女が“アレ”を蘇らした時、“あいつ等”の力であんたの世界へ送るんでしょ?」
「ああ、そうすりゃあいよいよ俺の目的が実行に移されるって訳だ」
「私の目的も忘れないでよ、私の故郷を奪ったあの連中を・・・・・・」
「わかってるさ、物事が進んだら奴等には俺の舞台から消えてもらおう・・・・・・それまで便利に扱わせてもらうさ連中には」
「部下の方には色々と準備をやって貰って、あの上司にはあの子を強くさせてもらわなきゃ・・・・・・」

少女は一人の少年を思い浮かべて苦虫を噛みしめたような表情を浮かべる

「ネギだって絶対にわかってくれる、きっと“こっち側”になってくれる・・・・・」
「お得意の占いで占ってみたらいいじゃねえか、あのガキが未来でどうなるかよ」
「とっくにやってるのよ・・・・・・でも・・・・・・」

少女は気難しい顔でローブから残りのタロットカードを全て出してその中から一枚だけ取り出す。

「出たのは『死神(デス)』の正位置・・・・・・意味は『終末、破滅、離散、死の予兆』よ」
「クク・・・・・・こりゃまた面白いもんが出たな」
「何でこれが出たのかはわからないわ・・・・・・けどあの子に重大な試練が立ちはだかるのは間違いない、それを乗り越えればきっと・・・・・・」
「どうかねぇ所詮占いなんて100%当たるもんでもねえしな」
「そうね、だけど私は必ず何かが起こるんだと感じるの、占い師の私にはわかるわ・・・・・・」
「占い師の勘って奴か・・・・・・」

男は壁にもたれながらニヤリと笑って頭を掻き毟る、
物事は順調に進んでいる、人材も集まったし後は実行するタイミングの時を待つのみ

「アーニャ」
「何?」

アーニャと呼ばれた少女はテーブルに置いてあるお茶を不味そうに飲みながら男に振り返る。

「俺が世界を破滅に導く為のテロリストだと聞かされた時どう思った?」
「・・・・・・最初は正直恐かったわね、頭の中が真っ白になったもん」
「じゃあ今はどうだ? 俺みたいな奴と関わらなければお前はここまで堕ちる筈は無かったんだぜ」

男の問いにしばらく考えた後アーニャはお茶をテーブルに置いて、彼の所に近づいて寄り添うように座る。

「あんたに会わなければ私はあいつ等を怨みながら一生を過ごす事になったのよ・・・・・・けど高杉・・・・・・あんたが私の下に来てくれたおかげでチャンスが芽生えたのよ、春雨の奴等を殺す、その為なら奴等と仲良くするふりをして後ろから刺す事だってやってやる」
「おっかねえなぁ、まあ春雨と同盟してる俺だったら簡単に奴等に近づけるしな・・・・・・クックック・・・・・・」
「べ、別にあんたに全部やってもらうわけじゃないわよ・・・・・・私だって頑張って村の人達の無念を晴らすために何だってやるわ・・・・・・」

高杉と呼ばれた男はアーニャの決意を聞いて一層口元の笑みが広がった
その時二人がいる部屋の障子の向こう側から誰かが来た

「晋助はん・・・・・・」

障子の向こう側から聞こえる女性の声、その声に高杉はピクっと反応する

「おめぇか、計画はどうなってる?」
「計画は順調どすえ、晋助はんの言うとった『春雨』っちゅう所の幹部の一人ともさっき合流しときましたさかい、後は例の“アレ”動かすためのお嬢ちゃんが来てくれれば後は完璧どす」
「幹部? 高杉、あんたあの夜兎二人だけじゃなくてもう一人呼んだの?」
「ああ、まあ阿伏兎の奴に頼んでな、まあそいつは別の目的で呼んだんだけどな・・・・・・」
「?」

思慮深げな表情を浮かべる高杉にアーニャはキョトンとして首をひねる。そんな彼女を置いといて障子の向こうにいる女は話しを続ける。

「後、麻帆良学園にいる神威っちゅう男からの連絡なんやけど、ウチが上げた呪文書で色々と変化が起きてるらしいんよあの子供、このまま行けば完璧に利用できる人材になるんちゃいますか・・・・・・?」
「クックック・・・・・・まああのガキはあの団長さんのお気に入りのようだしな、渡せって言っても渡してくれそうにないがな・・・・・・」
「そうどすな、フフ、ではウチはもう失礼します、お二人でごゆっくり・・・・・」

女が立ち去ったのを確認して、アーニャは冷たい目で気配が無くなった障子に目をやった。
所詮利用されているのはあの女も同じだ、これから行われる祭りであの女の役割が終わった時、春雨同様、斬り捨てられるのだ、だがそれはもしかしたら自分も・・・・・

「ねえ高杉・・・・・・」
「どうした」
「あの女や春雨の様に私もあなたに捨てられる時が来るの・・・・・・・?」
「・・・・・・・」

少女の目に怯えが見え高杉はしばらく考えた後、アーニャと目をあわさずにポンと彼女の頭に自分の手を置く。

「別にお前は元々何も利用できないだろうが、ただ勝手にお前が俺に着いてきただけだ、着いてくるなら勝手に着いてこい・・・・・・」
「ずっと一緒にいてくれるって事・・・・・・?」
「勝手に解釈しろ・・・・・・」
「ありがとう・・・・・・」

安心したかのように笑いかけてくるアーニャに高杉は顔をそむけて頭を掻き毟る。

(こいつといる一緒にいると俺の中から妙なモンが出てくる・・・・・・もう必要ねえと思って捨てた感情が何でこいつがいると・・・・・・自分がムカついてくるぜ・・・・・・)

自分の中に残っていた極少ない微かなある感情が起こる事に高杉がイラついていると、悩みの種の少女が彼に寄り添いながら静かな口調で喋りかける

「ねえ、あの三味線まだ弾けるわよね・・・・・・」
「・・・・・当たり前だろ」
「あの音色聴かせてくれないかしら・・・・・・私、あれを聴くと心が落ち着くの・・・・・・」
「・・・・・・」
「聴かせて・・・・・・・」
「・・・・・・ふん」

高杉はぶっきらぼうに立ちあがって部屋の隅に置いてある三味線を取って、テーブルの上に座った。








昼過ぎ、京都にある小さな宿屋の一室の部屋で三味線の独特な音色が静かに響く


































教えて銀八先生

銀八「一通目q-trueさんの質問」

銀さんに質問です。
秋と言えば食欲の秋ですが、GSの皆さんは学園長でどんなリンt…もとい調理をしていますか?
自分は臓物の除去や血抜きといった下処理をした後、天ぷらでカラッと揚げるのがマイブームです。
ちなみにできた料理は海岸にブチ撒けて海鳥の餌にしています。

銀八「料理になんかしねえよ誰が食べんだよ、つか海鳥が腹壊したらどうすんだ? まず海岸に捨てるなよそんなもん、人類の母の海がある場所を汚すな、という事で腹を壊した海鳥と母なる海に謝っておくように」
学園長「いやまずワシに謝れッ! この読者の質問ってずっとワシの事ばっかじゃんッ!」
銀八「良かったなお前にファンが出来てよ」
学園長「これファンじゃねえよッ!!」


銀八「二通目クルトさんの質問」

銀さんに質問です。
エヴァとチャチャゼロでチャチャゼロなら、茶々丸とチャチャゼロならどっちと一夜を明かしますか?

銀八「チャチャゼロ」
エヴァ「お前は本当にチビ人形好きだな・・・・・・」
茶々丸「銀時様はマスターよりも小さいのが好きなロリコンの中でもレベルの高いテラロリコンなのですね」
銀八「いやテラって何だよ・・・・・・いくらカラクリでも一緒に寝るのは無理だろ、チビ吸血鬼とかカラクリロボ娘と寝るなら銀さんはガキどもに誤解されない為にチャチャゼロと寝る」
千雨「人形と寝るいい年した男の方がよっぽど不気味だけどな・・・・・・」 


銀八「三通目Foobarさんの質問」

のどかさん
土方の嫁になるということは3食マヨネーズの生活がもれなく付いてくるということですが、
そんな脂っこい食生活に侵された人生に我慢できる自信はありますか?

のどか「よ、よ、よ、嫁ぇぇぇぇぇぇ!?」
ハルナ「まあ最終的にそうなるわね、でも3食マヨネーズはきついわね・・・・・・あんたやれるの・・・・・・?」
沖田「心配すんなよ、俺が口の中に無理矢理大量に突っ込んでやるから、何なら今からやってみる?」
のどか「い、いやですッ! ていうかまだ結婚とかそんなのまだまだ・・・・・・」
沖田「結婚したら土方のどかになるな」
のどか「がはッ!」
ハルナ「のどかが吐血したァァァァ!!」


銀八「四通目エンジンさんの質問」

ネカネさんに質問。
今ジャンプで「打ち切られそう」と思ってるのは何ですか?個人的には天地先生の「ギンタマン」とか、亜城木夢人先生の「擬探偵TRAP」とか、蒼木紅先生の「hideoutdoor」とかじゃね?って思ってます

ネカネ「『鍵人』、作者は何か偉い人のお弟子さんらしいけど、読み辛いのよあれ・・・・・・」
ネギ「えぇぇぇぇぇ!? 荒木先生の弟子なんだよッ!? あんな偉大な人のお弟子さんが打ち切りになんか会うわけ・・・・・・あ、一回切られたんだっけ・・・・・・」
銀八「ジャンプは厳しいんだよ例え神の弟子でも切る時は切る」
千雨「いやまだ確定してないから・・・・・・」


銀八「五通目、星さんの質問」

のどかに質問があります。前に土方のために弁当を作ったみたいですがあの時以外も弁当を作ってあげた事はあるんでしょうか?…あ、でまた同じ展開になってそうな気がする(汗)

のどか「ハハハ、作ってますよマヨネーズぶっかけられる前にぶっかけてますから大丈夫です~・・・・・・」
ハルナ「のどかが壊れたッ!」
夕映「マヨネーズですか・・・・・・じゃあ私はバナナでいいんですか?」
近藤「え、どういう意味それ?」


銀八「六通目ゼミルさんの質問」

超リンにしつもーん。未来じゃあやか・千雨・エヴァ、この中の誰が銀さんの子供産んでました?
・・・ハッ!?まさか全員!?

超音「悪いけど教えられないネ・・・・・・この作品を読みながら気長に持ってほしいヨ」
銀八「つうか全員の子供生むって、どこのビッグボスだよ俺は」
あやか「まずエヴァさんとそんな真似したらどうみても犯罪ですわ」
エヴァ「男は危ない橋を渡ってこそ『漢』と呼ばれる存在になるのだ」
千雨「そういう意味じゃねえよ・・・・・・」
 

銀八「七通目黒足のコックさんの質問」

ネギに質問、あんたマガジン派じゃないとまずいんでなーい?(いろんな意味で

ネギ「え~マガジンよりジャンプの方が面白いでしょ? 高いファンタジー要素と言ったらジャンプだし」
銀八「それお前が言っていいのかよ、マガジンのファンタジー作品の代表的存在のお前が・・・・・」
土方「『フェアリーテイル』はジャンプのファンタジーにも負けない名作だろうが」
ネギ「ハハハ、あのジャンプの某作品と絵が・・・・・・」
土方「オイィィィィ!!」
銀八「強制終了ッ!!」


銀八「フ~・・・・・・気を取り直して八通目、正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
後頭部が長くなったのは最初から長かったんですか?それとも年をとってから長くなったんですか?

学園長「多くの知識を蓄えるとこうなるのじゃ、みんなも頭をいっぱい使えばワシみたいになれるぞい」
銀八「誰がなるかお前みたいなエイリアンヘッドに」
しずな「迷惑かからない所で死んで下さい♪」
新田「とりあえず地獄に堕ちろ」
学園長「お前等、本当自分達の上司に容赦ないな・・・・・・」


銀八「九通目ウィルさんの質問」

今回は千雨、いいんちょ、エヴァのヒロイントリオに。前回、カモが女生徒の下着を盗んでいたわけですが、もしも銀さんがそれぞれ持っているであろう「自分達の勝負下着」を盗んだらどうしますか?銀さんは一応年下に興味ないって言ってますし、意外と紳士なところもありますのでそんなことはしないとは分かってます。あくまでifの質問ってやつなので銀さん、怒らないでくれると助かります。

千雨「殴る、徹底的に」
あやか「まあ盗まれてるって事は“そういう対象”で見られてるって事で別に私は・・・・・・」
エヴァ「ハッハッハッ! 私は本編で銀時の奴に盗まれそうになったぞッ!」
あやか「はいはい」
エヴァ「貴様信じてないなッ!? プロローグで私の下着を持ってニヤけながら銀時はそれを・・・・・・あだッ!」
銀八「誰がそんな事するんだよボケチビ」
エヴァ「持っていたのは本当だろ・・・・・・」
あやか「よくそんなに口からデマカセ吐けますわね」
エヴァ「本当の事なのに・・・・・・・」

銀八「十通目風の都さんの質問」

質問です
・あやかさんと夏美ちゃんへ
何故、ちづ姉はあそこまでフリーダムな人になってしまわれたのか
ルームメイトのお二方、何か心当たりはございますか?

あやか「元から“アレ”ですので知りません・・・・・・」
夏美「いつからああなったんだろ・・・・・・」
千鶴「あら、私は普通よ? ねえゴリラさん?」
近藤「いやッ! 千鶴さんの胸は普通じゃありませんッ! 立派なデカイメロ・・・・・どぅほぉぉぉぉぉ!!!」
千鶴「そこじゃないわよ」
夏美「近藤さんのお尻に長いネギがッ!」


銀八「十一通目サハリンさんの質問」

ネギに質問
ジャンプで連載しているどのマンガが「もう少しで打ち切られるな」と思いますか?

ネギ「これお姉ちゃんの方にも来てたような・・・・・・まあ『わっしょい!わじマニア』が切られると僕は見てます」
アスナ「ギャグ漫画では『ギンタマン』があるし、後は『いぬまるだしっ』、『ピューと吹くジャガー』もあるからもうギャグ漫画枠はいらないのよね」
銀八「いや『ギンタマン』はギャグ漫画じゃなくてビッチ漫画だからね、あっちのほうがわじマニアより早く打ち切りにあうんじゃね?」
アスナ「黙れビッチ天パ、あんたにジャンプを読む資格なんかないわ」
ネギ「またひと論争始めますか銀さん・・・・・・?」
銀八「あん、かかってこいよジャンプ歴20年の俺に勝てると思ってんの? よ~し次回は話しを変更して『ジャンプとは一体どんな読者に求められるのか』というテーマで討論を・・・・・」
千雨「裏でやれッ!」

銀八「ラスト十二通目はきさんの質問」

千雨に質問でいいのかな?ちうは、はじめ銀八のことをHPにはどんな風に書いてましたか?
そして新万屋のメンバーになってから評価はどのように変わってHPに載せたりしてるのですか?
もしかして銀八との交際をほのめかしてるとか?

千雨「銀八の事を最初どんな風に書いてたかは4話でわかるから、現在のあいつと万事屋のメンツの事を何て書いてるかは・・・・・言わねえ・・・・・・」
あやか「何かネットでブログでも書いてんですか千雨さん?」
千雨「な、何も無えよッ!」
エヴァ「どうせ夢小説でも書いて自分と銀時とくっつける話でも書いてんだろ」
千雨「誰が書くんだよそんなもん・・・・・・」
ハルナ「私が書いてるよッ!」
千雨「はぁッ!?」
ハルナ「ネギ×銀カップリングを同人でッ! イダッ!」
千雨「んなもん書くなッ!」
エヴァ「目が腐るわッ!」
あやか「ネギ先生と、銀さん・・・・・・ちょっと読みたいかも・・・・・・」
千雨・エヴァ「「おい」」











次回・攘夷組編・最終章・第二十八訓『バカは死んでも治らない』へ続く



[7093] 第二十八訓 バカは死んでも治らない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/07 13:58
場所は京都の関西魔法協会の本部、これは近衛家の屋敷で起こった事件

関西呪術協会の長である近衛詠春はいつもの様に自室でローソクの灯で読書をしていると、ドタドタと誰かがこちらに向かって走ってくる音が聞こえてきた。
すぐに自室の障子の向こう側から荒い息を吐きながら、この屋敷の使用人の一人だと思われる女性が障子越しに詠春に伝える

「長(おさ)ッ! 屋敷の庭にて怪しい男と“変なモノ”がおりましたッ!」
「怪しい男と・・・・・・変なモノ・・・・・・?」

詠春は彼女の伝令に首を傾げた。
侵入者がこんな所に来るなど珍しく無いわけではない、ここは関西呪術協会の本部、何か良からぬ事を考えて入ってくる輩もいないわけではないのだが変なモノ・・・・・・・?

「侵入者として厳罰に・・・・・・」
「いや待ちなさい」
「はい?」
「私が見てみよう、一体どんな人物なのか一目見てみたい、あなた達の監視をかいくぐってここの庭までやってきた侵入者をね、特にその変なモノというのを」
「わかりました・・・・・・でも本当に変なんですよ・・・・・・?」
「ハハ、私は長い間色々な変な人を見てきたから大した物じゃないと驚かないよ、」

詠春は心配する使用人をよそに笑いながら自室の部屋から出てきた。彫の深い顔と多くの経験と知識を持ってるかのような風貌で、人目見ただけで誰もが真面目そうな、そして頑固そうな人だと認識してしまう顔だった。

「では案内しなさい、その怪しい男と、変なモノにね」
「はいこちらです、今は私達によって庭で待機させております」

袴姿の使用人が詠春をそそくさと案内を始める

しばらくして屋敷の前にある大きな庭へと着いた。その中央には多くの屋敷の使用人が侵入者を逃がさないよう囲っている。
詠春はやれやれと首を横に振った後、その群集の中へと入って行く

「どきなさい私だ、中へ入れてくれ」
「長ッ! 変なロン毛の男と変なモノが庭に突然降ってきましたッ!」
「降ってきた?」
「長ッ! 我々はあのような変な生物は見た事がありませんッ!」
「それはもうわかってるから早くどきなさい、変、変、変って・・・・・・何がどう変なのか言いなさ・・・・・・」

詠春が慌てている使用人達をどかせながら入って行くと、群衆の中央には使用人の一人に手を縄で縛られている着物を着た髪の長い男とそして・・・・・・

隣には白い体に黄色いくちばし、アヒルなのだかペンギンだかわからない謎の生物(?)が同じく手を縛られて座っていた。








「変なモノだ・・・・・・・」
「やっぱり変ですよね・・・・・・あの目を見てると吸い込まれそうな気分になります・・・・・・」
「・・・・・・とりあえずあっちの髪の長い青年に聞いてみるか・・・・・・」

すっかり謎の生物に恐怖を抱いている使用人と喋った後、詠春は侵入者の男の方へと近づいた。

「初めまして、手荒な歓迎ですみません、まずはあなた達の名前を教えてくれませんかね?」
「フ、人の名前を聞く前にまず自分から名乗るのが礼儀ではないか?・・・・・・・この台詞一度言いたかった」
「貴様、侵入者のくせに何だその態度はッ!」
「侵入者じゃない桂だッ!」
「ああ、桂って言うんですか・・・・・・」
「何ッ! 何故俺の名がわかったッ!? さてはエスパーかッ!?」
「いや、さっき自分で言ったでしょ」

使用人に向かってつい自分の名前を叫んでしまった桂という男性、詠春は彼にツッコんだ後隣にいる珍妙な生物を指さす。

「それでこの変な生物は何でしょうか桂君?」
「変な生物じゃないエリザベスだッ!」
「え・・・・・・す、すみません・・・・・・このエリ・・・・・エリザベスって一体何なんですか・・・・・・? 私も見た事無い生物なのですが」
「エリザベスはエリザベスだッ!」
「いやだから何なのかって・・・・・・」
「それ以外に何があると言うのだッ! なあエリザベスッ!」

桂が詠春に向かって叫んだ後、隣にいるエリザベスという生物に話しかけるが、彼(?)は苦しそうに汗を流しながらジタバタする

「どうしたァァァァエリザベスッ! ハッ! 手を縛られているからボードが出せないのだなッ!?」
「え、ボードって・・・・・・・?」
「ボードが無いとエリザベスは会話が出来ないのだッ!」
「何ですかそのコミニケーションの方法ッ!?」

目を血走らせながらエリザベスが暴れ出す、そんな珍獣にすっかり使用人達はビビってしまっている。もう彼を縛っている女性も正直逃げ出したいと思っていた、そこで桂が慌てて詠春に叫ぶ

「早くエリザベスを解放しろッ! そして取り上げたボードを返してやるのだッ! そして俺も解放しろッ! 後、腹がすいたから何か食べ物をくれッ!」
「ちゃっかり自分も助かろうとしないで下さい、しかも図々しいし」
「好物はそばだッ! そばを持ってこいッ!」
「あの、いい加減にしないと警察呼びますよ?」
「・・・・・・・それは勘弁願いたい、とりあえず話をすれば長くなる、ここは一度この屋敷の中で茶を飲みながら語り合おう、遠慮するな」
「いやここ私の屋敷なのですが・・・・・・」

勝手な言い分を要求する桂に詠春は冷静にツッコみながら考える。
よく見るとこの男は腰に帯刀している、それに連れているのはこの変な生き物だ、何処から見ても怪しい侵入者、逃がすわけにはいかない。
詠春はしばし考えた後、顔を桂の方に戻した。

「わかりました・・・・・・では屋敷の中へと案内しましょう、この一人と一匹を宴会席の方へと案内して下さい」
「よ、よろしいのですかッ!?」
「無論、客としてではなく侵入者としてですがね、話を聞かせてもらいましょうか桂君?」
「当たり前だ、ところで・・・・・・・」

桂はキョロキョロと周りを見渡した後、詠春の方に顔を戻す。

「転送装置をさっきここに降ってきた衝撃で何処かに行ってしまったらしくてな、俺はそれが無いと帰れないのだが」
「転送・・・・・・装置?」
「長ッ! ここに変な人形が二体落ちてますッ!」
「また変なのですか・・・・・・全く今日は一体・・・・・・」

使用人の一人が人形といえば人形だが、ゴミといえばゴミに近い明らか変な物を二体見つけたらしく慌てて指さして叫んでると

人形の体が真っ赤になり、ピピー、ピピーと警告音を出して・・・・・・

ドゴォォォォォォン!!!!とその辺り一体に強烈な爆音が響いた。激しい爆風、吹っ飛ぶ使用人、そんな光景に口を開けて硬直している詠春と無表情で見ている桂とずっと無表情のエリザベス。

「あの桂君・・・・・・こんな時どうすればいいんですかね・・・・・・」

パラパラと破片や砂埃が舞う中、詠春がボソリと言ってきた質問に桂はフッと笑い

「笑えばいいと思うぞ」
「君からは“じっくり”話を聞かないといけないようですね」
「おっと、強く引っ張らないでくれないか?」

怪我をした仲間を使用人達が応急手当てしている中、詠春は桂とエリザベスを縛っている縄を持って屋敷の中へと入って行くのであった。

















「別世界? しかも天人という輩が徘徊する『江戸』という所から来た『侍』ですか?」
「うむ、前々からここの世界の事は知っていたので色々と情報を探ろうと思ったのだが、あの通り幕府から盗んだ転送装置があの通り吹っ飛んでしまった」
『やれやれだぜ』
「ああそうやって会話するんですか彼・・・・・・」

詠春は桂とエリザベスを連れて、普段は団体様がお見えになった時に使っている宴会席へ入れて二人の話を聞いていた(正確にはエリザベスは右手に持っているボードに書いて会話をしてくる)
詠春自身も軽い自己紹介を済ませて二人の話を聞くのだが、桂の言う『天人』という言葉には聞き覚えがあった

「天人がいる世界・・・・・・まさかまたそこの世界から来た人に会えるとは思いませんでしたね」
「何? てことは俺達の様にこの世界に来た奴がおるのか近衛殿?」
「ええ随分昔にちょっと色々と、そちらの世界からきた天人にも会いましたよ、あの時は本当に疲れました・・・・・・」
「まさか俺達の様に別世界へと行けた者がいたとはな・・・・・・」
「江戸も知ってますよ、ちょうど別世界から来た“その人”を返す為に転送装置を作りましてね、それを利用して私の知り合いがそちらの世界で旅をしておりました、その世界では彼の一番のお気に入りの場所だったんですよ江戸は・・・・・・」

疲れたようにため息をついて詠春を見て桂はふと一つの疑問を抱く

「という事はこちらからでも俺達の世界に来れるのか?」
「いえ今はその装置はとっくに壊れてしまっています、最後に使ったのはあの人ですから随分前になりますね・・・・・・」
「てことは俺とエリザベスは帰る手段が見つからんという事か・・・・・・」
『マズい事になりましたね桂さん』
「全くだ、これでは幕府の思うツボだな、俺達が使った転送装置もここに来た瞬間爆発する仕掛けだったのであろう、してやれたな、どうやらこの世界に閉じ込められたらしい・・・・・・」

顎に手を当て桂は額に眉を寄せながら考える。思えばあの転送装置は極秘中の極秘器具であるのにも関わらず簡単に入手する事が出来た。そこで警戒を怠った自分が甘かった、全ては幕府の上層部の罠だったのだ、この世界に閉じ込めれば自分達は江戸の天人を排除するための攘夷活動が出来ない。さしずめこの世界は彼等にとって自分達を入れる為の檻の中なのだ

「とにかくこの世界から一刻も脱出する方法を探さなければならんな・・・・・・しかし今日はもう疲れた。何処かで休まねば、なにせここに降って来た瞬間、大勢の女子(おなご)に羽交い絞めにされて大変だったしな」
『そうっスよね、いきなり襲いかかってくるなんてマジパネェっス』
「話も聞かないでいきなり侵入者だとか変質者だとか・・・・・・ここの教育がなっていないぞ近衛殿」
「どっからどう見ても変質者のあなた達がどの口を言うんですか?」

悪いのはこっちではなくそっちだとさりげなく主張している桂とエリザベスに詠春はメガネをカチッと上げて冷静にツッコんだ。

「・・・・・・しょうがないですね、とりあえず今日はここで一泊してもらって今後の事は後日話しましょう」
「かたじけない、出来れば後で飯を持ってきてくれまいか? 江戸で何も食わずにこっちに来てしまったものでな」
「遠慮する気ゼロですか?」
『いやぁサーセンwww』
「あなたは随分若者言葉にハマってますね?」

詠春の提案に桂とエリザベスはお構いなく承諾、そんな一人と一匹にこんな態度で侍と名乗っている事にいささか驚きながらため息をついて、使用人のほとんどがさっきの爆破事件で色々と騒いでいるので二人を寝かせる為に自分が寝室へと案内した。


































場所変わって屋敷の中の客室、部屋は二人分寝るだけでは大きすぎな、豪華な家具が並ぶ大層立派な和室だ

「とりあえず今日はここでお休みください、ああ食事は使用人達の手当てが終わったら持ってこさせますので」
「ほほう、悪くない部屋だな、なあエリザベス」
『これで食事が寿司だったら文句ないですね』
「客の身分で贅沢な事を言うなエリザベスッ! それでも日本の夜明けを切り開く攘夷志士かッ! 全く・・・・・・ついでに近衛殿、俺は寿司では穴子が好きだ」
「それ以上ふざけると本当に追い出しますよ?」
「すいません」

調子に乗ったエリザベスに桂が一喝したのかと思いきや、するりと自分の好きな寿司の種類を言う桂に詠春は微かな殺意を持って来た頃、部屋に入った桂は奥にあった少し小さな本棚の上に置いてある様々な置物を物色し始める。

「ほう木彫りの熊と王将・・・・・・こんなありがちな物をいまどき飾っている所があるとは」
「悪かったですねありがちで」
「うん? この黒い筒は何だ?」
「ああ、それはさっき話してたあなたと同じ別世界の人から貰った者ですよ、多分あなたの世界の物だと思います」

桂が興味を持ったのはフタが付いてる細長い黒い筒、傍から見れば卒業証書を入れる時に使うような筒だ。彼が持っている物に詠春が軽く説明する、どうやらここにきたある天人からの贈り物らしい。

「これには何が入っておるのだ近衛殿?」
「それが・・・・・・それの送り主に『何かマズイ事態が起こってない時以外開けるな、開けたらアレだ、すげぇめんどくせえぞ』と言われたので貰った時から一回も開けてないんですよ」
「ほう・・・・・・あ、開いた」
「いやちょっとッ!! 人の話聞いてましたッ!?」

つい普段冷静な詠春が口調を荒げてしまうほど人の話を全く聞いていなかった桂、彼は詠春が言った直後にはパコっと上に付いてるフタを取ってしまったのだ。
その筒を右手で持ってゆさゆさとフタが無くなった筒を下に向かって降ってみる。

「何も入っておらんぞ、一体何なのだこれ・・・・・・」

筒の底をパンパンと叩きながら中身を確認するのだが何も入っていない、桂が首をひねっているとしばらくして・・・・・・

「何も出ないではないか、せっかく期待しておった・・・・・・ぐほぉッ!!」
『桂さんッ!』
「何天井に向かって発射されてるんですかッ! ロケットですかあなたはッ!」
「ロケットじゃない桂・・・・・・だ・・・・・・・」

桂がため息をついた直後天井に向かって彼は筒から何かが勢いよく出てきた衝撃で思いっきり跳ね上がる、天井に思いっきり背中から当たり桂はボトッと大の字で落ちてくる。

「く・・・・・今の衝撃は一体・・・・・・」
「あのすみません」
「ん?」
「“封印”を解いてくれた事には感謝するんですが・・・・・・ちょっと重いんでどいてくれませんかね?」













不意に聞こえた聞きなれない男の声、桂は自分が落ちた所をよく見てみると

「誰だお主?」
「まあとりあえずどいてください」
「まさか・・・・・・」
「ああ、お久しぶりです詠春、私が封じられてる間にまた一段と老けました?」

女性の様な顔立ちと変わったローブを着て桂の下敷きになっている男性を見て詠春はハッとする

「アル・・・・・・なのか?」
「当たり前でしょ、ちょっと“向こう”でヘマをしてしまいましてね・・・・・」
「ヘマ?」
「それより上の人もそろそろ・・・・・・」
「ん? すまんちょっと腹がすいてきたなと考えてた、近衛殿もう俺の腹は限界になって来たのだが」
「ああ、私も6年振りに起きてみると腹が減ってきましたね詠春、何か食べ物持ってきてくれません?」
「相変わらずだな君も・・・・・・・」
『つか両方ともさっさと立てよ』

二段重ねで倒れている桂とかつての友に詠春はため息をついて、隣にいたエリザベスはボードで二人に向かって普通にツッコんだ

これが狂乱の貴公子と呼ばれ、かつて銀時、坂本、高杉と攘夷戦争に参加した攘夷志士、桂小太郎とサウザンドマスターの下で数多の戦を行ってきた元神鳴流剣士、近衛詠春と最強クラスの魔法使い、アルビレオ・イマとの初コンタクトだった



























第二十八訓 バカは死んでも治らない

時は過ぎ数ヵ月後、早朝の満天の快晴に桂はもうすっかり居付いてしまった近衛家の屋敷でいつも通り朝食の時間前に起きて布団からモソっと寝巻の着物で起き上がり障子を開けて屋敷の庭に出て空を見る。

「今日は一段といい天気だ、日本の夜明けは近いぞ」
「朝なんですから“夜明け”なんてとっくに過ぎてますよ」
「む、お主も起きたのか、珍しいなこんな朝早く」

庭からふと桂は自室に振り向くと同じ部屋で寝ているアルがだるそうに起き上がって髪を掻き毟っている

「起きたんじゃなくて起こされたようなもんですね、眩しいんで閉めてくれません?」
「そう言ってまた眠る気であろう、俺の様に日頃早寝早起きを習慣にしていないと立派な攘夷志士になれんぞアル殿」
「いつから私が攘夷志士になったのかを聞きたいですね、それとその名前で呼ぶの止めてくれます? 『クウネル・サンダース』という名前で呼んでくれっていつも言ってますよね?」

アルの本名は『アルビレオ・イマ』、偽名は『クウネル・サンダース』。魔法使いではあの『サウザンドマスター』とも並ぶ程とも呼ばれる事もある彼は、復活してからは日頃から偽名で名乗っている。どうやら何かと正体を隠さないと色々と敵を呼んでしまうらしい、かつての大戦で多くの敵を討ち倒した彼には多くの敵が存在して、その為のカモフラージュで偽名を使っているのだが、目の前の男はお構いなしに本名の方で呼ぶ時が多い。

「フ、名前ぐらい構わんだろ、それに俺と同じ部屋に住んでいる時点でアル殿も俺と同じ志を持つ攘夷志士の一人だ」
「何とも素晴らしい解釈ですね、その微笑んでいる顔に一発上級魔法をぶち込んでやりたくなりました」

微笑んでいる桂に同じく笑顔で殺気めいた事を言いながらアルは布団から起き上がって、それを丁寧に畳む。

「誰かさんのおかげですっかり目が覚めましたよ・・・・・・ところでエリザベスさんはどうしたんですか?」
「俺が起きた時にはいなかったな、まあエリザベスの事だ、大方この京都で江戸へ帰れるための情報収集に回っているに違いない、さすがは俺の心の友、誰かとは大違いだ」
「それは無いと思いますけどねぇ・・・・・・」

桂とエリザベスとも付き合いは結構あるが、アルが見る限りではあの生物は桂が見ていない所で時々粗暴の点を行っている所をアルは時々目撃している。
そしてそのエリザベスはというと・・・・・・


















京都にある開店前のパチンコ店でおっさん達が並ぶ行列にタバコをくわえて新聞を読みながら自然に並んでいるのであった。

『新台はチェックしとかなきゃな』














そんな事露知れず、桂は部屋に戻っていつもの着物に着替えている

「アル殿も早く着替えんか、早くせんと朝食が来るぞ」
「アル殿じゃなくてクウネルです、ヅラさん」
「ヅラさんじゃない桂だ」

着替え始めるアルに、桂がツッコんでいると、いつも朝食を持ってくる使用人ではなく別の訪問者が部屋にやって来た。

「桂君おはようございます、それにアルも」
「おはよう近衛殿」
「アルじゃなくてクウネルです、詠春」
「いやせめて昔からの友人なのだから本名ぐらい呼ばせてくれ・・・・・・」

昔からの馴染みなのだからせめて自分は本名で呼んでもいいだろと詠春はいつも使う敬語ではなくタメ口で要求するが、ローブを服の上に着ながら首を横に振るアル

「“私が”入ってる封印箱をあの人に託されたのに、ずっと放置する人を友人とは呼べませんねぇ」
「『開けたらめんどくせぇ事になる』ってあの人が言ってたのでね、悪いが私は面倒な目には御免なのでずっと放置させてもらったまでだ」
「あの人もあなたも私の事何だと思ってるんですか? こっちは6年間放置プレイされたんですよ?」
「まあ面倒臭い奴だな、あの人も日頃からそう言ってたし」
「ハハハハ、それじゃあ私がまるでこの人と同じタイプみたいじゃないですか」
「私から見るに両方とも一緒にいて疲れるタイプだよ、君と桂君は・・・・・・」

詠春から見れば桂もアルも両方とも何を考えているかさっぱりわからない、空気も読めないし、会話する時も何か少しズレている二人に、詠春は彼等がいなかった時より数倍疲れる事が増えていたのだった。

「全く君達はいつも私を・・・・・・」
「ところで近衛殿、今日はどのような用事でここに来たのだ? そして朝食はどうしたのだ?」
「ああ、朝食は後から持ってこさせますから、相変わらず図々しいですね・・・・・・それより朝早くから桂君に尋ねて来たお客さんが来てますよ」
「お客? 誰だその者は?」
「小学生ぐらいの子供でしたね、何か用かと使用人が聞いてみたらあなたに用があって来たらしいですよ、それにしても子供の友人とはあなたやっぱり変わってますね・・・・・・屋敷の別の客室で待たせているので早く行ってあげた方がいいですよ」 

そう言い残して立ち去って行く詠春を見送った桂は腕を組みながら「ふむ」と縦に頷く

「俺と親しい子供と言えばあの少年しかおるまい」
「あの子ですか随分と懐かれちゃいましたねぇ、初対面は最悪だったのに」
「拳を交えれば友情が生まれるというのはお約束だからな」
「どこの熱血ジャンプ漫画のキャラですか、あなた達は」
「すいませーん、朝食持ってきました」
「おお御苦労であった」
「・・・・・・」

アルが親指を立ててこちらに決めポーズする桂にツッコんでると二人の使用人が朝食を持ってきた。そそくさとそれを置いて使用人の二人のうち一人は桂を人睨みした後去って行った、恐らく前に桂のせいで爆弾被害にあった使用人の一人だと思われる・・・・・・
だがそんな事全く気にせずに桂は朝食の前に座り「いただきます」と丁寧にお辞儀した後、箸を取って食事を開始していた

「やはり朝飯は白米と鮭、そして味噌汁に限るな」
「しみじみと感想言ってないで待たせて良いんですかあの子?」
「まずは飯を食べる事が人間として必要不可決な事だ、少年には悪いがしばらく待っててもらおう、朝からエネルギー補給せんとどうにも頭が働かん」
「元から働いてないと思いますけどねその頭、私も食べますか、どちらかというと私はパン派なんですが」

口の中に白米と鮭を入れながら器用に喋る桂をしばらく眺めていた後、アルは彼と同じく箸を持って食事を開始して、別の部屋で人を待たせているのにも関わらず二人は呑気に朝食を開始するのであった。





































食事をやっと終えた桂とアルは、ようやくある場所へ向かう事にした。廊下ですれ違った使用人の一人から聞いて知り合いの少年が待ってる部屋へと歩いて行く。

「一体何の用で来たのだろうな、あの少年?」
「一人で寂しいから遊びに来たんですよきっと」
「なるほど、だが遊びに来るのなら先に連絡をして欲しいと俺は思うぞ、おかげで朝食をゆっくり食べれなかったしな」
「そう言ってちゃっかりおかわりしてましたよね、桂さん」
「それはお主もだろ」

何気ない話をしながら桂とアルが廊下を歩いていると、ようやく少年の待つ部屋の前へと着く。部屋に前に立った桂は障子を開けようと手で取っ手を掴もうとした瞬間。

「待たせたな小・・・・・・」
「遅いわボケェェェェェェ!!!」
「ぐふッ!」

いきなり障子を突き破って学校の制服を着たような格好の獣耳の少年がドロップキックで飛んできて桂はその攻撃を顔面にヒット、そのまま後ろに回転しながら壁に頭から当たる。
それを普通に避けて何事もなかったように立っているアル

「朝から元気ですね小太郎君は」
「おのれら何分待たせるねんッ! あまりにも長い間待たされ続けて屋敷の姉ちゃんから貰った和菓子全部食ってもうたやんけッ! おいヅラッ! さっさと起きんかいアホッ!」
「ヅラじゃない桂だ・・・・・・少しぐらい遅れただけで腹を立てては立派な侍になれんぞ」
「誰が侍になるかッ!」

アルに小太郎と呼ばれた随分と乱暴な口調を使う屋敷の中にも関わらず帽子を被っている少年は桂に向かって叫んだ後、部屋へと戻って行く。
桂は蹴られた頭を撫でながらゆっくりと立ち上がって部屋に入って行き、それにアルも同乗して一緒に入る。

「また断られましたね」
「今から頑張れば俺の様に立派な攘夷志士になれるというのに」
「攘夷志士の勧誘はお断りって前に言うたやろ」
「今なら攘夷志士に入ると特典でエリザベスストラップをプレゼント、更にプレミア会員で入った場合、何とエリザベスの写真がプリントされたTシャツを」
「いるかボケェッ!」

バナナの叩き売りのように押してくる桂に小太郎はツッコんだ後ドカっと敷かれたサブトンに座り、桂とアルも畳の上で正座する。

「それで少年、今日は何しに来たのだ?」
「少年じゃなくて俺は犬上小太郎や、名前で呼ばんかい」
「俺も名前は小太郎だ」
「それがどうかしたんかい・・・・・・?」
「自分の名を自分で言うのは恥ずかしいだろ」
「そんなん知るかッ! いいから名前で呼べやッ!

目の前の結構親しい間柄になっている男が自分の名前を呼ばない理由がそんなどうでもいい事だとわかり、小太郎が大声で怒鳴っているのをアルは涼しい顔で傍観している。
アルから見ればこの小太郎という少年はいつも桂とはこんな感じで付き合っているので、別に珍しい風景では無い。

「相変わらず仲が良いですね~」
「仲良しなわけないやろうが・・・・・・」
「じゃあ何でわざわざ自分からここへ来たのですかね小太郎君は」
「えと、そりゃあまあ・・・・・・今日はヒマやったからちょっと・・・・・・」
「なるほど私の読み通り寂しかったから桂さんに構って欲しかったんですか、小太郎君は可愛いですね~」
「こ、こ、こ殺すぞボケコラカスゥゥゥゥ!!」
「アハハハ、顔を赤らめる姿もこれまた一段と」
「むぐぐぐ・・・・・・・もういいわアホッ!」

図星なのか勝手なアルの推測なのかはともかく、小太郎は顔を赤らめて立ち上がり、すぐにでもアルに飛びかかろうとするが、彼の口から出てくる巧みな話術に小太郎は悔しそうに再び座布団に座る。

「何でヅラはこんな奴と付き合ってんねん・・・・・・」
「ヅラじゃない桂だ、そりゃまあ色々と教えてもらう為にな、“魔法”や“魔法使い”やなどの事はそれで大体わかったのだ、この世界の仕組みも大体近衛殿やアル殿のおかげでわかってきた」
「魔法とかそんなんは俺が教えるっちゅーねん・・・・・・」
「おやおや私に妬いているんですか小太郎君?」
「・・・・・・ええ加減にせんとそのニヤケ面にサマーソルトかますぞコラ」
「ハハハハ、すみません思った事をすぐ口に出すタイプでして」

笑いながら茶化してくるアルに小太郎はジト目で睨みながら脅すが彼は全然懲りていない様子だ。そんなアルに小太郎はため息をついた後周りを桂の方へと目を戻す。

「ところであの珍獣はどこいったんや? いつもお前の傍にくっついとるあの珍獣」
「珍獣じゃないエリザベスだ、今頃“俺達”攘夷志士の為に京都の街を探索にいているに違いない、本当に頼りになる男だ」
「おい俺達の攘夷志士ってもしかしてそれ俺もカウントされてるんやないやろな・・・・・・?」

自分の膝に頬杖をつきながら小太郎が桂に質問すると、彼は自信満々に頷く

「当たり前だろ、お主もアル殿も俺の中では同志と既に登録している」
「そうか、ならはよう俺の登録抹消させてくれ、誰かさんのおかげで頭痛めてこりゃあ復帰できんわ」
「私も心の病のせいで一軍どころか二軍でも活躍できませんので抹消してください後片も無く」
「そこまで嫌か攘夷志士になるのに、武士道の欠片もない奴らだな・・・・・・」

勝手に一緒に攘夷志士にされてはたまらんと小太郎とアルに拒否られて、桂は面白くなさそうな表情を浮かべながら、着物の懐からいつも持ち歩いているスナック菓子『んまい棒』を取り出してボリボリと食べ始める

「お主たちもエリザベスのように働いてくれればな、このんまい棒もエリザベスが俺の為に持ってきてくれたんだぞ、少しは見習えエリザベスを、そして超えてみるのだエリザベスを」
「何でアヒルだかペンギンだかわからん生物を見習わなきゃいけないんねん、つかそのんまい棒もどうせあいつがいつも行ってるパチンコ店で貰って来た景品やろ」
「パチンコだとッ! エリザベスが俺を置いてそんな所に行くわけないだろうがッ!」
「いや結構な量で行く所を見てますよ桂さんがいない所で、私もあの人から貰いましたし、んまい棒」
「俺も貰ったな、歩いてたら偶然パチンコ店から出てくる所とバッタリ出会って『食うか?』って貰ったわ、んまい棒」
「デタラメ言うな貴様等ァァァァ!! エリザベスが俺の目を盗んでパチンコでフィーバーしているわけなかろうがァァァァ!! 俺はエリザベスを信じるぞッ! あいつは俺と同じ信念をもった侍なのだからなッ!」

アルと小太郎が言っているエリザベスの情報に桂は激怒した様子で立ち上がり叫ぶ。桂にとってエリザベスは彼らより遥かに長い付き合いで行動している仲間だ、そんな彼が自分の目を盗んでギャンブルに手を染めているなど考えられるわけが無い
所で桂がエリザベスの事を心から信じている頃、当の本人のエリザベスはというと・・・・・・



















「10番の台に座ってるお客様『CR 花の慶次』の新台で10000個突破~!!」
『まだまだ・・・・・・骨の髄まで絞り取ってやるぜ・・・・・・』

パチンコ店で見事フィーバーしたのか男の店員にメガホンで祝福されながら、エリザベスはタバコを吸いながらクールにパチンコのレバーを指の無い手で器用に握っていた。
























そんな事も知らずに桂は呑気にんまい棒を食べながら「エリザベスはパチンコなど行かん」の一点張りでアルと小太郎の言葉にも耳を貸さなかった。
頑固な彼に小太郎はハァ~と膝に頬づえを突きながらため息を吐く。

「お前ってホンマに変わり者やな~・・・・・・」
「何を言う俺より銀時の奴がもっと変わり者だぞ、あそこまでちゃらんぽらんな奴などそうはいまい」
「銀時? あ~前に言うとった天然パーマで甘い物が好きで喧嘩好きのヅラの幼馴染か」
「ヅラじゃない桂だ」
「甘い物好きならウチのナギも負けてませんがね、喧嘩も好きですし」
「フッフッフ、銀時の糖分節をナメるなよアル殿、そんじょそこらの甘党とは格が違うのだ」
「アルじゃなくてクウネルです」

不敵に笑う桂にアルはツッコんでいると彼は静かに幼馴染でありかつての戦友を語り出した

「あいつと共に行動していた時は今でも思い出せる・・・・・・・銀時の奴はな、何と白米の上に宇治金時を漬けて食べるのだ」
「何やそれキモチ悪ッ! 食えるかいそんなモンッ!」
「正直見てるこっちは気持ち悪いのだが、奴はなんの違和感もなくその食い物とは思えないシロモノを平然と食えるのだ」
「ああナギも昔白米の上にプリンを入れてかき混ぜて普通に食ってました」
「こっちもキモッ!」
「ええ、その後詠春に「それは日本の米に対する冒涜だぁぁぁぁ!!」って言われながら彼にパイルドライバーされてましたが」
「そんな気持ち悪い物食ってる時点で甘党以前に人としてアウトやろがそいつ等・・・・・・」

小太郎は気持ち悪そうな顔をして口で手をおさえる。まさかそんな物を食える悪食が二つの世界に一人ずついるとは思わなかった

「そんな奴等が戦争に出て活躍してたなんて信じられんわ・・・・・・確か銀時の方が『白夜叉』で、ナギが『サウザンドマスター』って呼ばれてたんやろ?」
「銀時の場合は昔の話だがな、俺達は戦に負けた、その名を覚える者も極少数だし扱いも反逆者扱いであろう、それに引き替えそっちの男は民衆から英雄扱いだからな」
「今なお語り継がれてますからね、まあ当の本人は何処行ったかみんなわかりませんが・・・・・・」

それを聞いて小太郎は鼻の頭を掻きながらサウザンドマスターの最後の経歴を思い出した

「ああ、確かずっと前に死んだって聞いたで俺は」
「死ぬわけないでしょあのナギですよ?」
「あのナギって言われてもわからんわ・・・・・・俺会った事無いんやで・・・・・・」
「『バカは死んでも治らない』を自分自身で提唱した天才ですよ」
「それやったらお前等も天才に入るやないか、凄いわホンマ」
「何言ってるんですか私はナギほどバカではありません、ねえ桂さん」
「俺も銀時ほどバカではない、常識と言う物を持ち合わせているからな俺達は」
「いやいや安心せい、両方とも俺が見る限り逸材のバカやから、銀時だかナギだかに十分匹敵するでホンマ」

自分自身のバカさに気付いていない様子で桂とアルは自分達は正常だと断言するが、小太郎から見れば彼等が話す友も“話してる本人”も少なくともまともな人種では無い事が確かだった。

「お前等みたいなバカと会って結構経ってるんやな・・・・・・俺もよくお前等に付き合えたわ」
「最初は色々会ったが今ではこうやって世間話出来る仲だ、これからも人生の先輩である俺に色々と話を聞くがいい」
「何が人生の先輩・・・・・・・あ」

小太郎は急に思い出したように口をポカンと開けたのでアルがそれに気付いて顔を向ける。

「どうしたんですか? そんなアホ顔して」
「年中アホ面のお前に言われとうないわい・・・・・・悪いけど用事思い出したわ」
「何だもう帰るのか?」
「いや“知り合いの人”の話聞きに行くだけや、数時間後にはすぐ戻ってくるさかい」
「ふむ、ではお主が帰ってきたら近衛殿にもう一人分昼飯か晩飯の用意をしてもらうとするか」
「べ、別にええってッ! 何でお前等と仲良くメシ食わなあかんねんッ!」
「とか言って本当は嬉しいんじゃないですか? フフフ」

面白そうな表情でアルが再び小太郎を茶化してくる、そんな彼に小太郎は顔を少し赤らめてキッと睨む

「ヅ、ヅラはともかくお前とは絶対メシ食わんからなッ!」
「邪魔者の私がいなければ桂さんとゆっくり出来ますものね」
「そういう意味やないわッ! もうええわッ!! お前はホンマ死ねッ!」

茶化してくるアルに小太郎は顔を赤らめながら立ち上がって部屋から逃げるように走り去って行った。その後ろ姿を桂は眺めながら隣にいるアルに喋り出す

「あの少年は随分と忙しいのだな」
「そうですね、まあすぐ戻ってくるらしいですからいいじゃないですか、からかいがいのある子供は好きです、フフフ」
「そういえば前から聞きたかったのだが」
「何です急に突然?」
「お主やあの少年は何で俺やエリザベスみたいな別世界から来た余所者と付き合うのだ? 何の得があるわけでもないのに」
「ハハハ、そんな事ですか」

急に桂からの質問にアルは思わず笑ってしまう、彼は桂に向かって口元に笑みを浮かべながら答える

「小太郎君も私もあなたといると楽しいからに決まってるでしょ」
「それだけか?」
「それだけで十分ですよ、私もあなたの昔の友人の話を聞くと・・・・・・つい彼といた時期を思い出しましてね・・・・・・」

かつて共に行動していた仲間を思い浮かべながら少しアルは懐かしさを感じる。
窓から見える空を眺めながらアルは随分と昔の筈なのに昨日の用に覚えてる彼との数多くのバカ騒ぎの一つを思い出していた。


あれはとある昔のとある世界の小さなスナックの出来事























「おいアル、お前もっと飲めって、んなチョビチョビ飲んでたら見てるこっちが酔いが醒めるわ」
「私は結構ですよ、それにしてもここお客さん私達しかいませんね」
「潰れるんじゃねえかこの店? まあこんなババァしかいねえ店なんて俺達ぐらいしか来ねえよ」
「誰がババァだい殺すよトリ頭、戦争中の時に夜中ノコノコ飲みに来るバカなんてお前等しかいないんだよ」

小さなスナックの中で、今の見た目と変わらないアルと一緒にいるのは、『サウザンドマスター』と呼ばれ世界を救った英雄ナギ・スプリングフィールド、そして店のママだと思われる中年の女性がタバコを吸いながら店の者とは思えない口振りで話しかけてきた

「攘夷志士と天人が戦争おっ始めてる時に、あんた等はこんな所で呑気に酒飲んで何やってんだかねぇ」
「私達“余所者”がここの戦争に首突っ込めませんよ、ねえナギ」
「おいババァ、パフェくれ、糖分無えとイライラすんだよ」
「人の話無視して糖分補給ですかあなたは」

アルの話を無視してナギはスナックのママに注文する。だが彼女は口からタバコの煙を吐きながら不機嫌そうな顔を浮かべる

「あんた私がパフェ出す前にあんたも何か私に出すモン無いのかい?」
「え、何?」
「とぼけるんじゃないよ、二階に住ませてやってるのに溜まった家賃持ってこないってどういう事だいこりゃあ」
「あ~その話・・・・・・・」
「身分証もないあんた達をこのかぶき町で住む事が出来るのは誰のおかげだい?」
「い、いや待ってくれよッ! 俺だって頑張って稼いでんだよッ!? だけど収入がさ~」

ずいと身を乗り出して威圧感を漂わすスナックのママにナギは気まずそうに頬を引きつらせながら言い訳を言う、だが彼女には全く通用しない。

「腎臓とキンタマなら二つあるんだから一個ぐらい売ってくるんだね、そしたら金が出来るじゃないか」
「おいッ! 腎臓はともかくキンタマは売れるわけねえだろッ! キンタマは男の象徴だぞッ!」
「大丈夫ですよ一個だけになったら私の一個上げますから」
「お前は気持ち悪い事言ってんじゃねえよッ!」

笑顔で何言ってるんだコイツとナギがアルにツッコんでいるとスナックのママがギロっとナギを睨みつける。その目からでる威圧に思わずサウザンドマスターと呼ばれる彼も血の気が引いてしまった

「で? 家賃を払う手段は見つかったのかい・・・・・・?」
「んにゃろ~しょうがねえな~・・・・・・お、良い事思いついたッ!」
「なんだい、まあどうせロクな事じゃないだろうがね」
「いやこれは我ながら良いアイディアだと思うよ、ババァちょっと聞け」

名案を閃いたらしくナギは身を乗り出してしかめっ面のスナックのママに口を開いた。

「俺のカミさんここで働かすってのはどうよ?」
「・・・・・・あんた何考えてるんだい?」
「いいかババァ、こんなさびれたスナックに来る客なんてたかがしれてるだろ? だったら俺のカミさんここで働かせればいいじゃねえか、言っとくけどウチのカミさん結構な上物だよ? もう客バンバン来るよ? あ、お触りは無しだから」
「・・・・・・じゃあ直接本人に聞いてみようじゃないか」
「へ?」
「そこにいるんだろ、入ってきな」

スナックのママが言う事にキョトンとするナギを尻目に、店の入り口からガラガラと戸が開く音が聞こえた。彼がそちらに振り向くとそこには

「・・・・・・い、いつからそこにおられたのですか姫さま・・・・・・」

思わず頬を引きつらして敬語を使ってしまうナギ、そこにいたのはこの世界の女性のほとんどが着る着物を身にまとって、このかぶき町でも珍しい長い金髪の美女の姿が腕を組んで立っていたのだが、体中から何やら黒いオーラを発している。

「お主が何処にいるか聞こうとここに入ろうと思った時にちょうど聞こえてきての、お主がわらわを身売りしようとしている所をここで聞かせてもらったのじゃ」
「あらら~一番タイミングの悪い時に来られちゃいましたねナギ」
「嬉しそうだなアル君~、『バイオ3』でいきなり追跡者が窓から飛び出してきたぐらい俺の心臓がバックンバックンいってるのによ~・・・・・・・」
「ナギの災難を見るのが私の好きな物の一つなので」
「それどういう意味だコラ・・・・・・イデッ!」

アルが言った事にナギがジト目で睨んでいると後ろから急に髪の毛を引っ張られた。無論引っ張っているのはさっき来た女性だ。

「このたわけが、一国の元王女を家賃払えぬからと身売りするとは何事じゃ」
「イデデデッ! 別に良いだろうがッ! 旦那が仕事してるならカミさんも仕事するってのも新しい夫婦の形だと思うよ俺はッ!」
「何が仕事してるじゃ、万事屋と言ってもロクに仕事も来ないではないか、お主などその辺のプータローとそんな変わらんぞ」
「それ言いすぎじゃねッ!? 一応俺頑張ってるんだよッ! なあアルッ!」
「三日前にパチンコ行ってましたね」
「オイィィィィィ!!」 
「いい心がけじゃな」
「アダダダダダダダッ!! 抜ける抜けるッ! それ以上引っ張ると俺禿げるッ! この年でまだ禿げたくないッ!」

余計な事言ってしまったアルによって彼女が髪を引っ張る力が増しナギが悲鳴のような叫び声を上げる、英雄とは程遠い姿だ。

しばらくしてやっと髪を引っ張るのを彼女が止めてくれて、ナギが頭をおさえながらフゥ~とため息をついてると、さっきまで黙って見ていたスナックのママが彼等の方に目を向ける

「それで溜まった家賃はどうするんだい?」
「安心しろお登勢、ここで働いて返す」
「え、てことは姫さんここで働いてくれるの? いや~助かるわ本当」
「勘違いするな、ここで働くのはお主じゃナギ」
「・・・・・・へ?」

突然の事にナギは目をパチクリさせてると彼女はスナックのママと話を進め始める

「どうせこ奴は仕事が来ない日はヒマなのじゃ、ここで女装でもさせて働かせればいいじゃろ」
「はッ!? 女装ッ!?」
「まあ確かにこいつはツラ“だけ”はマシだからねぇ、案外似合うかもしれないね」
「ふざけんじゃねえよッ! 俺が女装ッ!? 女装させるならコイツの方が適任だろッ!」
「私は別にあなた達と一緒に生活してるわけじゃないのでここで働く必要無いでしょ」
「決まりじゃな、家賃の滞納分ここでキッチリと働くのじゃぞナギ。お登勢、こ奴をヒーヒー言わせるぐらいコキ使ってやってくれ」 
「言われなくてもそうするつもりさね」
「話し進めてんじゃねえよッ! 嫌だァァァァァ!!! 女装とか絶対やりたくねぇぇぇぇ!!」
「たまに遊びに来ますよナギ子」
「変な名前で呼ぶんじゃねえよボケェェェェェ!!!!」

何やら楽しくなってきたとアルが頭をおさえて懸命に女性二人に訴えてるナギに止めの一言。その言葉にキレたナギは席に座ってるアルに飛び膝蹴りをかました




































「いや~あの時は本当面白かったですね~フフフ」
「どうかしたのかアル殿」
「アルじゃなくてクウネルです、いえ少し思い出し笑いをね・・・・・・」

かつての仲間を思い出していたアルは思わず口から笑いが漏れてしまう。もう何年も彼とは会っていない、今頃何処で何をしているのだろうか・・・・・・

(まああの人の事だからいつもの様にヘラヘラしながらひょっこり出てくるかもしれませんね・・・・・・)
「アル殿、お主にんまい棒を分けてやろう、エリザベスからの餞別をプレゼント」
「アルじゃなくてクウ・・・・・・・もうめんどくさいからあなたは特別に名前で呼んでいいですよ・・・・・・いただきます」

何回訂正しても言う気が無い桂に、アルは呆れながら仕方なく彼が自分の本名で言う事を承諾して、彼が持ってるんまい棒を受け取って二人で黙々と食っていた

「あなたが言っていた銀時って人も話を聞く限りナギの様にどうしようもないダメ人間だったんでしょうね」
「普段から俺以上に掴みどころのない奴でな、性格も悪いし無鉄砲なひねくれ者のあまのじゃく、やる事なす事めちゃくちゃな男だ、だが・・・・・・」

そこで一旦桂は話しを止め、んまい棒を食べるのも止めて、アルに微笑んだ表情を見せる

「俺はあいつと共に戦えたのを誇りに思う」
「フフ、私がナギの事を思ってる感情と同じですね」

太陽が昇ってくる空を背に桂とアルは、口に笑みを浮かべたまま持っているんまい棒を同時のタイミングでほおばり始めた。












































一方エリザベスはと言うと

『桂さんのお土産いっぱい手に入れたな』

右手にボードを持って、左手には大きな紙袋を持ちながらズンズンと京都の中を歩いて行く。どうやらあのままパチンコで大勝ちしてしまったようだ。
意気揚々と帰路に付いているとドンとエリザベスの右手に通行人の一人がぶつかった。

「あ、すんませんジャンプに夢中になってました」
『気にすんなや』

ジャンプで顔を隠すようにペコリと一礼する男にエリザベスは全く気にせずにそのまま歩き去ろうとする。だが後ろからボソリとその男の声

「へ~あんた攘夷志士の桂小太郎の所のペットだよな?」
『何・・・・・・?』
「いやはやこんな所で会えるとは思わなんだ、もしかして例の転送装置でここに飛ばされちまったのか? じつは俺もそうなんだよね、まあ俺は「もしかして別世界ってジャンプの世界なんじゃね?」と興味本位で盗んでこんな所に飛ばされちまってな、お互い苦労するよなこんな所で」

男は振り向かずにジャンプのページをめくりながら立ち話をする、そんな彼にエリザベスは警戒態勢に入っている、こんな身なりでも彼も桂を慕う立派な攘夷志士の一人だ。
だが男はゆったりとした口調でこちらに顔を見せずに喋る

「近々この京都で俺の雇い主が色々と派手なイベント起こすらしい、あんた等はここから逃げた方が良いぜ、関係無えんだからよこの世界とは」
『派手なイベント?』
「同じ世界のよしみとして忠告はしたぜ、じゃあちょいと雇い主に呼ばれてるんで失敬、ハァ~雇い主が醜女だったらよかったのにな・・・・・・・よりにもよってべっぴんさんってのが辛いんだよな・・・・・・・」

男はため息をつきながらジャンプを読みながら京都の群衆の中へと消えて行く、それを呆然とエリザベスは目で追うもすぐに見えなくなってしまった。
しばらくそこでつっ立っていたエリザベスはすぐにクルッと回って急いで桂達のいる屋敷へと走って行く

『コレは桂さんに伝えた方がいいな』

ただ普通にパチンコやりにきただけだったのに、思いもよらぬ情報を手に入れたエリザベスは桂に教える為に駆けていく。

これで桂小太郎、坂本辰馬、高杉晋助、そしてもう一人・・・・・・・









































四つの絆が繋がるのも遠い事では無い























教えて銀八先生

銀八「一通目q-tureさんの質問」

銀さんに質問です。
秋と言えば芸術の秋ですが、GSの皆さんは学園長でどんなリンt…もといアートをしていますか?
ちなみに自分の最新作は『吊るされた学園長』です

銀八「え~『ゴミ箱に頭からダストシュートされてるジジィ』みたいな?」
学園長「それアートじゃなくて実話じゃね?」
千雨「そんな事まだされてるんだアンタ・・・・・・」


銀八「二通目剣聖さんの質問」

質問。ネギがアスナの布団に潜り込んでるのは、アスナがおねぇちゃんに似てる(姿やにおい)ためなんですか?

ネギ「まあ“見た目”は似てるのでついうっかり・・・・・・」
アスナ「何で見た目の所を強調すんのよ」
ネギ「あくまで見た目だけですから、中身は全くの別物ですので、格が違います」
アスナ「それどういう意味かじっくり教えてくれませんネギ先生・・・・・・?」
ネギ「なんでいきなり敬語なんですか・・・・・・恐いんですけど・・・・・・」


銀八「三通目ウィルさんの質問」

今回は茶々丸にです。何気に銀さん達と一緒に行動してると思いますが、茶々丸から見てエヴァ、千雨、いいんちょの3名は楽しそうですか?本人達からの証言は色々と出揃ってるので、第三者から見た意見を聞いてみたいと思いました。

茶々丸「仲が悪いわけではなさそうですが、良いわけでもありません、マスターとあやかさんも喧嘩ばっかしてますし、千雨さんと銀時様も時々口喧嘩します」
銀八「初代ツッコミメガネの新八はパシリ的な存在だったのに、ここのツッコミメガネはやたらと口出しするのが多いんだよな~」
エヴァ「そんな奴さっさとクビにしてしまえ」
新八「はいは~いッ! 後釜は是非僕にッ!」
エヴァ「・・・・・・消えろ・・・・・・」
新八「あれ・・・・・・何で僕ってこんなにネギまキャラにめちゃくちゃ嫌われてるんでしょうか・・・・・・・この子に関してはもう僕の事ゴミを見るような目なんですけど・・・・・・・何か泣きたくなるんですけど・・・・・・」
銀八「まあ頑張れよとしか俺は言えないね」


銀八「四通目サハリンさんからの質問」

木乃香に質問
どうして、GS組織を設立したんですか?

木乃香「面白そうやったから~」
銀八「最近お前が恐くなってきた」
刹那「お嬢様の何処か恐いというんだ白夜叉、こんな純粋無垢な笑顔に何処から恐怖が湧いてくるというのだ、むしろ・・・・・・・も、萌え的な何かが・・・・・・・」
千雨「お前もう本当ダメダメだな」


銀八「五通目とびかげさんの質問」

ぬらりひょんよ、そろそろ正体見せてもいいんじゃないか?

学園長「へ? どういう意味?」
銀八「え、それ以上気持ち悪い物に変形できるのお前?」
学園長「どういう意味じゃそれッ!?」
エヴァ「汚物以下の存在からどこまで下に変形できるか見てみたいな」
学園長「しかもパワーダウン・・・・・・・ていうかわし汚物以下ッ!?」
銀八「おいおい、ウ○コと対極の存在になれると思ってたのかジジィ?」
学園長「ワシウ○コ以下ッ!?」


銀八「六通目正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
第二十六訓の質問コーナーで幻想郷にいる楽園の巫女である博麗霊夢の事よく知ってましたね。もしかして幻想郷に迷い込んで妖怪と間違われて殺されかけたんですか?

学園長「・・・・・・」
銀八「おい珍しく何で何も言わねえんだ?」
学園長「だってあいつ等容赦無いんだもん・・・・・・」
銀八「事実かよッ!」


銀八「七通目星さんの質問」

銀さんに質問です。学園長を始末することになった場合はどう処理しますか?以前海に捨てると海が汚れるとか言ってたので海に捨てるのは駄目ですし燃やすと大気汚染されそうですからやっぱり埋め立てとかですか?埋めても影響が出そうですね・・・・・・

銀八「う~ん・・・・・・・どうっすっかな~・・・・・・・」
ザジ「・・・・・・・・・・」
銀八「あ~カーズ見たいに宇宙にぶっ飛ばせばいいのか、そうすれば地球にはなんも支障は無えな、相変わらず名案を思いつくなお前」
ザジ「・・・・・・・・・・」
銀八「おい、いくらあのジジィでもさすがにそれは酷過ぎじゃねえか・・・・・・・?」
学園長「その子何て言ったのッ!?」


銀八「八通目蜻蛉さんの質問」

最大のモテ期な近藤さんに質問です。
せっかくリアル告白があったのだからもちろん受けるんですよね?

近藤「はぁぁぁぁいッ! どうもモテ期の近藤勲でぇぇぇぇすッ!! 予定としては万事屋ぐらいヒロイン欲しいでぇぇぇぇすッ! いや~あれは多分あの子の冗談だからさ、それを真に受ける程さすがに俺はバカではないよ、なあ?」
夕映「・・・・・・・・・・・」
近藤「あれ・・・・・・・何で否定しないのかな・・・・・・・・?」
夕映「子供は何人欲しいですか?」
近藤「あれェェェェェェ!? 何か一人の無垢な乙女の脳内で恐ろしいビジョンがッ! 違うよねッ! あれ冗談で言ったんだよねッ!? 答えて夕映っちィィィィィィ!!!」
銀八「次の質問行ってみよ~」
近藤「待って万事屋ァァァァァ!! この問題は早急に対処しないと何かマズイ気がするってェェェェェ!!!」


銀八「ゴリラはほっといて、九通目風の都さんの質問」

まき絵ちゃんへ
「学校に行くのが嫌だ」と思ったことはありますか?
特に銀さんが来てから以降

まき絵「毎日です・・・・・・」
銀八「どういう事だ? もしかしてアレか? いつもジャンプ買いにパシらせてる事か? 答えを言う所を八割の確率でお前を指名する事か? それとも毎朝校門で俺がクーフェイに勝負仕掛けられるからお前を身代りにする事か?」
まき絵「全部だよ先生・・・・・・」
山崎「大丈夫だよ、俺も上司に大体そんな扱いされてるから、最近なんか自分よりずっと年下の女子生徒にもパシられてるから・・・・・・・・」
まき絵「そんな哀しい励まし方止めてッ! こっちも泣きたくなるからッ!」


銀八「十通目オレの「自動追尾弾」さんの質問」

銀さんに質問
千雨→金丸くん
エヴァ→定春
いいんちょ→神楽
龍宮→さっちゃん
チャチャゼロ→キャサリン
というポジションですが、茶々丸、ネギ、明日菜、カモ、このかはどのポジションですか?

銀八「茶々丸はたまです、ネギはまだですが最終的にはこのキャラみたいな感じに近づくんじゃね?っていうのが決まってます、バカレッドも同様です、木乃香は志村妙を七割削った感じです、あくまで作者のイメージですので読者は気にしなくて大丈夫です」
カモ「銀の旦那、銀の旦那、俺っちは?」
銀八「お前はお前その者だよ、つうか作者が決めてない」
カモ「それはそれで悲しいんすけど・・・・・」
新八「ていうか何であそこ金丸君ポジになってるんですかッ!? あそこ絶対僕ですよねッ!? そうですよねッ!?」
銀八「まあ頑張れよとしか俺は言えないね」
新八「それさっき聞いたわボケェェェェェ!!!」


銀八「十一通目白夜叉さんの質問」

銀さんに質問。
最近、小説を書いているときに、大体の話の流れは決めているのですがキャラのセリフが思いつきません。そんな時、カイバーマンさんはどのようにセリフを思いつくのでしょうか?
銀さん、ご存知でしたらお教え下さい。ご本人に直接お伺いを立てるのは気が引けるものですから

銀八「セリフが出なかったら、諦めて展開を変えて書き直す、これが作者の手口です」
千雨「そのせいでここまで来るのにめちゃくちゃ展開変わったよな・・・・・・」
銀八「まき絵は初登場した瞬間死ぬ予定だったからな」
まき絵「ウソォォォォォォォ!?」
千雨「そんな展開なわけねえだろうがッ! お前も真に受けんなッ!」




銀八「十二通目はきさんの質問」

ネカネさんに質問
モジャ頭はどのように処刑するか考えてますか?具体的に教えてください。
ジャンプ作品の1シーンとかで例えたりもありでお願いします。

ネカネ「ナルトの大玉螺旋丸で塵残さず消し飛んで欲しいわ」
ネギ「僕はジョルノのゴールド・E・レクイエムの能力で無限の死に追いやった方が良いと思うよお姉ちゃん」
ネカネ「そうね、楽に死なせずに永遠に死んでもらうのもいいかもしれないわね」
坂本「アハハハ・・・・・・今考えれば死亡フラグが一番立ってるのってもしかしてわし・・・・・・?」


銀八「十三通目エンジンさんの質問」

ネギと明日菜に質問。ジャンプのトップ3(ワンパーク・ベルト・プリーチ)の中でどれが「誰にでも勧められる」面白い漫画だと思いますか?

アスナ「プリーチ」
ネギ「いや普通に考えてワンパークでしょ? 王道の中の王道ですし、それにプリーチって無駄に大ゴマばっか使うからワンパークやベルトより全然話し進まないんですよ?」
アスナ「うっさいわね、迫力ある大ゴマの魅力がわからないガキは打ち切りになりそうなジャンプ漫画読んでなさい、話しめっちゃ進むから」
ネギ「いやそういう事言っちゃダメですってッ!」


銀八「十四通目一揆さんの質問」

3-Aと銀時に質問
近右衛門は人類として認めれないが、いったいあれは何類に属するのでしょうか?

銀八「地球には存在しない筈の生き物なのでわかりませんが、恐らくエイリアン系の種類に属すると思われます」
学園長「エイリアンじゃねえつってんだろッ! お前も本当しつこいのッ! もうすぐ最終章なんじゃから少しはわしに優しくしろッ!」
銀八「ジジィよく考えてみろ、もうすぐ最終章なのに原作ではサブレギュラー的な男が一話も出てないんだぞ、向こうとお前どっちの扱いがマシだ?」
学園長「あ・・・・・・・そうじゃった・・・・・・彼よりワシはまだマシか・・・・・・」
銀八「いくら酷い事言われようがな、読者に忘れ去られてるアイツよりはお前はまだマシだよ」
学園長「そうじゃな・・・・・・あの男の・・・・・・・あれ誰じゃったけ?」
銀八「・・・・・・俺も忘れちゃった」














次回、第二十九訓『修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?』へ続く



[7093] 第二十九訓 修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/10/22 15:04

修学旅行
それは日頃から学校に来るのもめんどくさがりやな生徒もこの日はハイテンションになって参加する中学での伝統行事。
大体、中学三年生は京都に行くと何処の学校でも決まっており、目的地に行く前に新幹線の中でテンション上がり、目的地に着いたら更にテンション上がり、宿屋に泊ったらもっとテンション上がり、夜中になったら生徒達のテンションは最高にハイになる、正しく中学生活最高のイベント。
無論、この麻帆良学園も例外ではなく修学旅行は存在し、ネギと銀八率いる三年A組も京都に行く筈だったのだが・・・・・・

「修学旅行の京都行きが中止ッ!?」
「う~んまだ中止とは決まってないんじゃが、関西呪術協会が超嫌がってての・・・・・・」
「関西呪術協会?」
「うむ」

修学旅行までもう少しと来ている頃、夕方に突然学園長に呼び出された三年A組の担任の教師ネギは、いきなり京都行きは無しと言われ激しく戸惑いを見せる。日本の歴史が数多くそのまま残されている京都、英国生まれのネギにとっては一度は行ってみたい場所だったののだが・・・・・・
だがそうと決まったわけではないと学園長が首を横に振る。

「実はワシってスゲー偉いから関東魔法協会の理事もやってるんじゃが」
「スゲー偉いのに何で銀さん達にナメられてるんですか?」
「うるせえよ、それはともかく関東魔法協会と関西呪術協会って昔から犬猿の中でさぁ、今年は一人魔法先生がいるって向こうに言ったら、向こうが嫌がってのぉ・・・・・・」
「じ、じゃあ僕のせいなんですか・・・・・・?」
「うん、そう言う事なんだけどさ」
「何のフォローも無しに即決ですか」
「まあ聞きなさい、ワシとしてはもう東も西も関係なく仲良くやっていきたいんじゃ、その為に君を『特使』として京都に行ってもらいたい、そうすれば京都行きをワシが許そう」
「特使?」

学園長はそう言うと机の上に置いてある、一枚の封書を差し出す。それを受け取ってネギはまじまじと見る。

「何ですかコレ?」
「その親書を向こうの長に渡してくれるだけでいいじゃ」
「ああ、それだけで京都に行けるんですか?」
「いやそれだけって・・・・・・この親書を持って行く道中それを快く思わない連中からの妨害があるかも知れないんじゃぞ? 銀八もいるし、奴等は魔法使いじゃから一般人の生徒には危害を加えない筈じゃが・・・・・」
「それはちょっと危ないですね・・・・・」
「そうじゃろ? まあ念のため腕の立つ護衛を付けておこうと思い彼に同行頼んでみた」
「護衛?」


学園長の言う護衛にネギが首を傾げていると、突然ドアを開けて誰かが部屋に入って来る。タバコをくわえながらふてぶてしい態度で腰に帯刀している男。ここの警備員を務めている土方だ。

「邪魔するぜ」
「土方さん? え、てことはッ!」
「このじいさんにお前の道中見守るように言われてな、どうせここにいても退屈だし買って出たわけだ、よろしく頼む」
「じゃあ土方さんも京都に来るんですか?」
「京都名物の八つ橋にマヨネーズ塗ったらどうなるのか試して見てえと思ってたからな」
「京都まで行って何やろうとしてんですか?」

真剣な顔で言う土方にネギはツッコんでいると学園長が話を続ける。

「昨日修学旅行の説明をしている時に土方君の事は銀八から色々と聞いてるんじゃ、実は向こうの世界の出身者でしかも中々腕のいい侍じゃと、ていうかその時初めてここで働いてるって聞かされたんだよね・・・・・・本当新田先生どうにかせねばの・・・・・・」
「僕は前々から銀さんに教えてもらっていましたよ」
「そうなの? じゃあ知らなかったのワシだけだったんだ、何この疎外感? ワシここで一番偉い存在なんだけど?」

土方の事を“一番最後”に教えられた事に気付いて学園長は少し落ち込み始めていると、吸っていたタバコを携帯灰皿に入れて土方はネギと学園長に背中を見せる

「じゃあもう何も無えなら俺は帰るぜ、最近俺の周りのガキ共がうるせえんだよ」
「わかりました、修学旅行の時はお願いします」
「あんま俺に頼りきるんじゃねえぞ、こっちにも限度があるからな」
「大丈夫です、自分で出来る事は自分でやります」
「ガキのくせにわかってるじゃねえか、まあお互い気を付けようぜ」

土方はネギに振り返って喋った後、ドアを開けて出て行く。
残されたのはネギと学園長だけになった。
しばらくして学園長はハァ~とため息をついた後ネギに向き直る

「まあとりあえず頑張っておくれ、修学旅行は予定通り行うから、これも立派な魔法使いになる為じゃ、無事に責務を果たしてくるんじゃぞ」
「わかりました、土方さんや銀さんに余計な手間かけさせないよう、もし親書を奪われそうになったら僕が全員皆殺しにしてやりますよ」
「・・・・・・ごめん今なんつった?」
「じゃあ僕も帰ります、親書は任して下さいね」
「おいちょっと待てェェェェェ!!!」
 
まだ小学生ぐらいの年齢のネギが笑顔なのにその口から物騒なモンが聞こえたので、耳を疑う学園長を置いてネギは元気そうに手を振り、部屋のドアを開け出て行く。残された学園長はボソリと呟いていた

「最近の子供おっかねえなぁ~・・・・・・」








































話は進み女子寮のとある一室

「なるへそ~関東と関西を和睦させる為の親書ッスか、大変なモン任されましたねぇ兄貴」
「確かに大変だろうけど、銀さんや土方さんもいるし大丈夫だと思うだんけどね・・・・・・」
「そうですけどねぇ・・・・・・・兄貴自身も京都では警戒を怠らない方がいいッスよ、自ら敵の本部に突っ込んで行くようなもんスからね」
「わかってるよ、僕だって色々鍛えてるんだからなんとか足を引っ張らないようにしなきゃ・・・・・・」

ちゃぶ台に肘かけて一枚の封書を持っているネギと、ちゃぶ台の上で彼が持っている封書を眺めている使い魔であるカモ。二人は今後の事について話しているのだが、他の同居人はドタドタと騒いで、とても集中出来やしない

「木乃香~!! 私修学旅行用の着替え何処置いたっけ~ッ!?」
「もうバッグに入れてたで~アスナまだ一週間ぐらいあるのにはしゃぎ過ぎや~」
「そういえばそうだったわね、じゃあ私の修学旅行用の下着は~? 見当たらないんだけど?」

部屋を徘徊しながら歩き回っているのはネギの同居人のアスナ、腰かけて本を読んでいる親友の木乃香と喋りながら彼女は色々な場所を探っているとカモがポンと自分の胸を叩く

「大丈夫ッスッ! 俺っちが既に懐に収めてるんでッ! 姐さんの下着は誰にも盗られないよう俺っちが護ってやしたッ!」
「わざわざありがとう、じゃあ死んで」
「おごッ!!」

自らが下着を盗んだ犯人と自首した生物の横っ腹にアスナは回し蹴り、カモはそのまま壁に激突してその場に落ちてピクピク痙攣している。そんな彼を見ながらアスナはしかめっ面でやれやれと首を横に振る

「アンタも行くって事はあのナマモノもついて来るってわけよね・・・・・・せっかくの修学旅行が台無しよ・・・・・・」
「すみません、以後気を付けさせます・・・・・・」

白目をむいて動かないカモの代わりにネギはアスナに謝った。未だあの小動物には下着専門の盗み癖が抜けて無いらしい。

「カモ君はともかく、なんかアスナさん修学旅行前なのに随分はりきってますね?」
「バカね、修学旅行の前は異常なほどテンションが上がるのが生徒の習性なのよッ!」
「アスナの場合は上がり過ぎと早過ぎやで、ずっと前から修学旅行の準備をして・・・・・・普通準備っちゅうのは二日前とか前日にやるもんやろ?」
「学校は何のために存在するかわかる木乃香? それはこの修学旅行というイベントの為に存在するのよッ!」
「違います、勉強する所です」

声高らかに宣言するアスナに後ろから冷静にツッコむネギ、彼女はそれを無視してネギと木乃香に向かって叫ぶ

「私はこのイベントに命賭けてんだからねッ! ネギッ! あんたも変な事に巻き込まれるんじゃないわよッ! それに木乃香もッ!」
「いやウチは別に大丈夫やて、向こうに行くの慣れとるし」
「う~ん僕は学園長に重大な任務を任されまして・・・・・・」
「じいちゃんから何かやれって言われたん?」
「ええ、この親書を関西呪術協会の長に渡しに行けって頼まれたんですよ」
「そんなんどうせジイちゃんのモンやから破いて捨てれば何の問題も無いで、ウチが代わりにやろか?」
「何笑顔で恐ろしい事言ってるんですかッ!」
「いやそのツッコミアンタがやっても全然説得力無いんだけど?」

最近は随分と性格が変わっているネギに目を細めてアスナはツッコんだ。彼女から見れば木乃香もネギも腹黒さは大差ない。
まあその事は置いといてとアスナは髪を掻き毟りながら、ネギが持っている親書をひったくる。

「めんどくさそうなモン引き受けたわねアンタも、せっかくの修学旅行なのにおつかいなんて」
「しょうがないですよ、これもマギステル・マギになる為の試練ですから」
「マギステル・マギ? 何それ食えんの?」
「食い物じゃないですよ・・・・・・一人前の魔法使いの事をマギステル・マギっていうんです、この前教えましたよね・・・・・・・?」
「私って興味無いのは数秒で忘れる性質だから」
「便利な頭ですね本当・・・・・・」

随分と単純な構造なんだなとネギが呆れていると、アスナはネギに持っていた親書を返した後再び口を開いた。

「マギステルなんとかで思い出したけどあんた確か『パートナー探し』とかあったわよね? あんたの姉ちゃんが言ってた奴、そっちはどうなのよ?」
「仮契約の方ですか、それがまだ全然決まってないんですよ・・・・・・・もう最近はピンでいいかなと思ってきました」
「諦めるんじゃないわよ、ショタコンの人なんていくらでもいるわよきっと、ほらいいんちょも・・・・・・あ、今は違うか・・・・・・・鈍感な天パがいるし」

頭の中に出てきた幼馴染と同時に銀髪天然パーマの男が出てきたので、アスナは頭を横にブンブン振りながら座っているネギの隣に座る

「・・・・・・まあ頑張んなさいよ、ついでに私はパス、ガキンチョのパートナーとかそんなの絶対無理」
「大丈夫です、アスナさんにはお願いする気は毛ほども無かったので」
「は?」
「だってアスナさんワガママだし暴力的だし食い意地悪いし・・・・・・おごッ!」
「何処が暴力的だって・・・・・・?」
「今です今・・・・・・現在進行形で暴力的です・・・・・・」

話している時に腹に思いっきり右ストレートを入れるアスナにネギが顔に苦痛を滲ませながら反論していると、さっきまで気絶していたカモがよろよろと起き上がってアスナに駆け寄る。

「姐さん本当頼みますよ・・・・・・兄貴の奴かなりの奥手で全然パートナー探しに積極的じゃないんですよ、ここは姐さんが兄貴とブチューとやって仮契約頼みますわ」
「ブチュー?」
「魔法使いとパートナーが仮契約する為の儀式、いわゆる『キス』ッスよ」
「・・・・・・はぁッ!?」
「それさえすれば姐さんも立派な兄貴のパートナーに・・・・・あごッ!!」

カモが言い終わる前にちゃぶ台に置いてあった新聞紙を丸めて思いっきり彼の頭に叩きつけるアスナ。ペシャンコに潰れて再び重傷を負うカモを睨みながらアスナは叫ぶ

「な、何で私がガキンチョとそんな事しなきゃいけないのよッ!」
「いや・・・・・・仮契約で一番てっとり早い方法はキスなんスよ・・・・・・口と口でブチューって・・・・・・」
「まだ誰にも上げていないこの清潔な唇を、何処ぞのお子ちゃまに上げるわけないでしょうがッ!!」
「そこをなんとか頼みますよ・・・・・パートナーがいない魔法使いって何かと不便なんスよ・・・・・・?」
「しつこいわよナマモノッ! 今度また変な事言ったら根性焼きの上に木乃香にアンタで鍋作ってくれって頼むわよッ!!」
「いやウチはそんなかわいそうな事出来へんから・・・・・・」
「ていうか誰が食べるんですかそんなの・・・・・・」

カモがしつこく頼んでくるのでアスナは止めの一言を発した後、彼女は困り顔を浮かべているネギをジト目で睨んで指を差す

「私は絶対お断りだからねッ!」
「わかってますから大丈夫ですよ・・・・・・」

はっきりした物言いのアスナに苦笑しながらネギは後ろ髪を掻き毟る。

しかしながら二人の運命が急変するのはさほど時間のかかる事ではなかったのだ














































第二十九訓 修学旅行が始める前ってめちゃくちゃテンション上がるよね?

翌日の月曜日、今日一日の授業を終えた三年A組の生徒達は帰りのホームルームではほとんどの生徒が浮足立っていた、理由は担任のネギがある物をクラスに配った物。
クラスの全員が今手にしているのは京都へ行く修学旅行の為に作られたしおり、班や寝泊まりする部屋の番号、観光名所、スケジュール、その他多くの説明がビッシリ書いてある、修学旅行へ行く為にはかかせない物だ。
それを受け取り元からイベント好きの生徒達はすっかりお祭り気分でワイワイと活気づいていた。

「ええッ! 刹那さんそれ本当ッ!? 土方さんも私達の修学旅行に同行するのッ!?」
「はい、色々と事情がありまして・・・・・・ハルナさん何でそんなに嬉しそうなんですか?」
「決まってんでしょこの娘の絶好のチャンスだからよッ! のどかッ! この修学旅行で一肌脱ぐのよッ! いやむしろ全部脱いだ方が一気に進めるかも・・・・・・」
「な、何考えてるのハルナッ!?」
「脱ぐのはともかく、ここであの人とデートぐらい済ませた方が、修学旅行で良い思い出が作れるかもしれませんよのどか」
「夕映まで・・・・・・・」

すっかり舞い上がっているハルナがのどかの背中をバシバシと叩く、それに夕映も持っているしおりを読みながら乗っかって彼女の応援をするのだが、のどか自身は顔を赤らめて黙りこくる。
そんな三人の会話をさっきまで聞いていた刹那は少し喋りにくそうに口を開く。

「あ、あの・・・・・・悪いんですけど土方さんはずっと私と行動するので二人だけでその・・・・・・・デ、デートとか無理だと思いますよ・・・・・・・?」
「はいぃぃぃ!? 何で土方さんが刹那さんとずっと一緒に行動するのッ!?」
「それはまあ・・・・・・ある都合で私は土方さんの下で色々と・・・・・・・」

土方が京都に行く事になったのは関西呪術協会へ渡す為の親書を持つネギの護衛の為であり、その協会の本部までの道案内を神鳴流剣士の刹那が買って出ていたのだ、だがこんな事一般人のハルナ達に教える事は出来ないので刹那は途中で口ごもる、しかし彼女のその反応を不審に思ったハルナは疑惑の目を向ける

「色々・・・・・・? ハッ! まさか刹那さんって既に土方さんと・・・・・・・デキてる?」
「え、ええッ!?」
「あらら、何時の間にヒロイン替えですか、残念ですねのどか」
「違いますからッ! 私と土方さんはそういう関係じゃありませんッ! のどかさんも夕映さんもそんなリアクション取らないで下さいッ!」

三人の勘違いに慌てて否定している刹那。それを一番後ろの席から眺めているのはダルそうに机に頬杖を付いてエヴァが欠伸をしている

「うるさい連中だな全く・・・・・・あんな目つきの悪い狂犬をどう惚れろというのだ?」
「お前が好きな相手も似たようなレベルじゃねえか? 銀髪の死んだ魚の目をした奴」

エヴァの独り言に反応して口を挟んできたのは彼女の左前から一つ飛んで座っている長谷川千雨、ちなみに彼女もエヴァ同様他の女子と話しもせず貰ったしおりも読まずにさっさと帰る準備をして時間を過ごしているだけだった。そんな彼女にエヴァはフンと鼻を鳴らした後口を開く

「“お前が”じゃなくて“私達が”じゃないのか長谷川千雨?」
「お前やいいんちょと一緒にすんじゃねえよ、私とアイツはそんなんじゃねえ・・・・・・・」

うんざりした表情で千雨が何処か遠くを見つめていると、ガララッと教室のドアが開いた。
入って来たのはジャンプを脇に挟んでに土方同様学校の中にも関わらずタバコをくわえているA組の副担任、坂田銀八だ。
教室に入ってきて早々不機嫌そうな顔をしているのは明白であった。

「うるせえよお前等、廊下中にピーピー響き渡ってんだよ、一人残らず永久に静かにしてやろうか?」
「でも先生ッ! 修学旅行まであと一週間だよッ! これはテンション上がるでしょッ!? 先生は上がらないのッ!?」
「まき絵のクセに調子乗ってんじゃねえよ、火あぶりにされてえのかコラ」
「ごめんなさい・・・・・・」

最前列にいるまき絵を軽く脅した後、銀八は教壇に立っているネギに近づく。

「おいこのやかましい騒ぎどうにかしてくんねえか? 担任だろお前、仕事しろよ」
「すみませんすぐにおさめますから・・・・・・まあしょうがないですよ、もうすぐ修学旅行ですので、僕も生徒の皆さんと同じ気持ちですし、銀さんはどうですか?」

笑いかけてくるネギに銀八は相変わらず死んだ目をしながら口からタバコの煙を撒き散らしている。

「全然テンション上がんない、むしろ冷めるわ、何でガキ共と旅行なんかしなきゃいけねえんだよ、しずな先生と二人だけで旅行行くなら別だけどよ」
「しずな先生とだったらテンション上がるんですか・・・・・・?」
「上がるね、夜なんか特にここが・・・・・・」
「いやそれ以上言わなくていいですからッ!!」

いきなり自分のある部位を指さして下ネタトークを始めようとする銀八にネギが慌てて止めに入る。銀八に注意した後、ネギは生徒の方に向き直り騒いでいる生徒の声に負けないように声を張り上げる

「皆さん自分の席について下さいッ! これから修学旅行の段取りを簡単に説明しますッ!!」
「ねえ夏美、修学旅行で行く京都に鹿がいっぱい住んでる『奈良公園』ってあるわよね?」
「あるよ、それがどうかしたの?」
「この前テレビで見たんだけど奈良公園ではその場所限定のお煎餅が売ってるらしいのよ、私一度でいいから食べてみたいわ~」
「ちづ姉、それ人間は食べれないからッ!!」

ネギが叫んでいるにも関わらず生徒は騒ぎまくって全く話を聞いていない、その反応に少々困った顔を見せた後ネギは再び口を開いた

「皆さんにお知らせがありますッ! 席について下さいッ!!」
「だから私と土方さんには何も無いってさっきから言ってるでしょッ!!」
「だってよくよく考えたら土方さんって刹那さんの所に住んでるんだよね? 男と女が一つ屋根の下に住んでると言う事は・・・・・・」
「ズバリ同棲です」
「同棲・・・・・・よく考えればそうだよね・・・・・・土方さんと刹那さんか・・・・・・お似合いかもしれませんね・・・・・・・」
「あ~もう誤解しないでくださいのどかさん・・・・・・住んでると言っても何も無いんです本当・・・・・・名前だって呼んでくれた事ないし・・・・・・」

色々な所でペチャクチャと騒いでいるので誰も聞いてはくれない、(若干二名落ち込んでいるが)そんな生徒達に思わずネギは項垂れるも思考を巡らせる

こんな騒ぎ程度もおさめられなくてこの先教師なんてやって行けるわけない・・・・・・・!?

心にそう固く決意したネギは机をバンッ!と叩いて思いっきり叫ぶ

「皆さんッ!! 大事なお知らせがあるので席に座って下さいッ!!!」
「いいんちょッ! あんた修学旅行中に天パと進んでみなさいよッ! こんなチャンス滅多に無いのよッ!?」
「チャンスって何ですかッ!? 私の事はほっといて下さいッ! アスナさんのクセに人の恋愛事情に口出して・・・・・・」
「ほっとけないわよこんな面白いのッ! だっていいんちょの相手があの天パ・・・・・・ギャハハハハッ!!」 
「こ、このおサル風情が・・・・・・!! もう許しませんわッ!!」
「アスナもっと素直になったらええのに・・・・・・ちゃんと応援してるって言ってあげればええやん・・・・・・」
「おおッ! アスナといいんちょが取っ組み合い始めたッ!」
「あぶッ!!」
「その揉み合いに巻き込まれてまき絵がいいんちょに殴られたッ!」
「トゥースッ!!」
「アダダダダダッ!!」
「いや何でそこで銀さんがまき絵に四の字固めをやるのッ!?」

今ネギの目の前ではアスナといいんちょこと銀八の所の一人、雪広あやかがあの手この手と大乱闘をおっ始め、何故か銀八はまき絵にプロレス技をかけている、実況している和美のおかげでクラスメイト達はやんわやんわと騒いで(一部、まき絵を応援する声が混じっている)、既にホームルームという存在を忘れていた。
そんな自分の生徒達と悪ノリが激しい同僚の光景を目にしてしばらくネギは顔に影を出して一人静かになり・・・・・・・

「あ~うるせえなあいつ等・・・・・・・銀八なんか今度はまき絵をジャイアントスイングしてんじゃねえか、あれいつか殺すな」
「お前はああいうクラスで騒ぐのは参加せんのか?」
「私は元々あんな風なテンションが嫌いなんだよ、生徒のみんなでワイワイと楽しむのわよ、私は銀八がいるから・・・・・・のわぁッ!」

騒いでる生徒達を後ろから見ながらエヴァと喋っていた千雨は突然驚いて椅子から転げ落ちる。

彼女が思わず転げ落ちた理由は突然何か固い物が思いっきり壊れたような衝撃音、その音に生徒全員が一気に静まる。銀八でさえまき絵を持ったまま固まってる、生徒達と銀八の視線は教壇にいるネギ、何故なら

彼の後ろには見事に大きくヒビ割れた黒板、恐らくさっきの衝撃音は“コレ”のせいであろう。思いっきり裏拳をした跡がくっきりと残って、パラパラと破片が落ちて行く。そしてそれをやったと思われる張本人は・・・・・・

「駄目ですよ~皆さん・・・・・・・先生の言ってる事はちゃんと聞かないと・・・・・・でないと・・・・・・」

影で顔が見えてなったネギが顔を上げる、表情は笑っているが、何か多大な恐怖を感じる、右手に残っていた黒板の破片を左手で払いながらゆっくりと彼は口を開いた。

「もし今度僕の言ってる事を聞かずに騒いだりしたら、修学旅行の京都行きを変更して黄泉の国へと全員送り飛ばしちゃいますよ」
「「「「「・・・・・・すみません・・・・・・」」」」」

アスナやあやかも初め、銀八も含めさっきまで騒いでいた生徒達数十名が、笑顔を見せている少年に向かって丁寧にお辞儀して謝った






























「じゃあ修学旅行への簡単な説明は終わりです、何か質問ありますか?」
「ネギ先生、黒板が壊れてるんですが・・・・・・・」
「随分と古い物だったので“ちょっと”殴ったら壊れちゃいました」
「それ結構新品だったと思いますわネギ先生・・・・・・・」

修学旅行の説明を終えたネギに恐る恐る手を上げて質問してきたあやかにネギは笑顔で答えるが本来“ちょっと”殴るだけで壊れる物ではないのだが・・・・・・
そんなネギの耳元で隣にいた銀八がこそっと囁く

「・・・・・お前ってどんだけ力あるの?」
「いえ、日頃から魔法の力で少しだけ身体強化されてるんですよ僕」
「これ少しだけか・・・・・・?」
「アハハハ、まあいいじゃないですか」

笑いながら簡単にごまかすネギに銀八は何処か納得いかない表情をするが素直に引き下がり、ネギの方は再び生徒達に質問は無いかと呼びかけている

「修学旅行で分からない事があったら何でも言っていいですよ」
「ねえねえ修学旅行に持って行くおやつは何円分ならいいのッ!?」
「向こうでおやつ買うってのはアリなのッ!?」
「いやそういうの無いので大丈夫ですよ・・・・・・小学生じゃないんですから」
「普段から思ってんだけどお前等双子って本当に中三?」

同時に挙手した双子姉妹の風香と史伽に銀八が軽く疑問を抱いてると、今度は一番前にいる和美が手を上げてくる

「先生ッ! 生徒達の行動時間に先生達も一緒について来れるんですか?」
「僕達は基本的に皆さんと一緒に回りますので、ねえ銀さん?」
「銀さんはずっと京都でパチンコやってます」
「やらないで下さい、一応教師なんだからちゃんと生徒の皆さんと行動して下さいよ・・・・・・」

何考えてるんだとネギが銀八にツッコんでいると、和美が身を乗り上げて再び質問してくる

「じゃあ修学旅行の自由時間に私達の班で銀さんと一緒に回れるって事ですかッ!?」
「自由時間ですか・・・・・・まあその時に予定が無ければ大丈夫ですよね? 銀さんも色々行きたい所あるでしょうし」
「いや俺が行きたい所は基本的にガキ連れて行っちゃいけない所だから、子連れと思われるのも嫌だし」
「修学旅行に行く教師がどんなアウェーな所に行こうとしてるんですか・・・・・・?生徒達をそんな所に連れて行くのは止めて下さいね・・・・・・?」

修学旅行の時間帯に何処に行く気なのかわからないが間違いなく子供に悪影響をもたらす場所であろう、そんな銀八をネギが疎めていると和美がまたひと押ししてくる

「じゃあ銀さん自由時間は私達と一緒に行動しようよッ! 千雨ちゃんもいいんちょもいるよッ!」
「めんどくせえよ、何で日頃から見飽きてるお前等と京都回んなきゃいけねえんだよ、断る」
「却下しますッ!」
「俺の意見笑顔で却下ッ!?」

あっという間に自分の意見を潰されて「絶対一緒に行動しようねッ!」っと和美達の班に強制的に連れて行かされるハメになってしまった銀八がダルそうな呻き声を出しながらタバコをくわえて火を付けて、煙を吸ってため息と煙を同時にはいていると、生徒の一人が突然立ち上がる

「ネギ先生ッ! 銀八先生がアリなら修学旅行に一緒に来る予定の土方さんも大丈夫なんですかッ!?」
「え~あの人が良ければ大丈夫だと思いますけど・・・・・・」
「連れてけ連れてけあんな奴、近くにいるとマヨネーズ臭くてやってらんねえんだよ」
「よぉぉぉぉしッ! のどか修学旅行はいっちょかましなさいッ!!」
「う、うん・・・・・・・」

ネギと銀八の了承を得たハルナは来て欲しいと思っている本人より喜んでのどかを応援するのだが、彼女の隣に座っている刹那はめんどくさそうな表情でハルナの方へ首だけ振り返る

「無理だって言ったでしょハルナさん、あの人はほとんど私と一緒に・・・・・・」
「のどかッ! 隣に座ってる子の言う事なんて聞かずに突っ走るのよッ!」
「だから無理なんですってッ! 私と土方さんは常に一緒にいなきゃ駄目なんですッ!」
「せっちゃんそんなにあの人の事が・・・・・・ええ人にあえて良かったな~」
「い、いや違いますお嬢様ッ! そ、そういうのじゃないんですよッ!」

ついハルナに対して大声で口を滑らせてしまった刹那に木乃香が心から嬉しそうに笑みを見せてきたので、刹那は少し顔を赤らめながら訂正するも、すでに生徒達はざわざわと喋っている

「同居人だったにも関わらず気がつかなかったな、まあ私は家より先生の寝てる部屋の屋根裏の方がいる時間は長いし、しょうがないな」
「ねえ夏美、土方さんって誰?」
「本屋から貰った弁当にいっぱいマヨネーズ塗って食べてる人だよちづ姉・・・・・・・」
「土方さんって刹那さんと一緒に住んでるカッコいい人だよね? まあ私は彼氏持ちだからどうでもいいけど、勝ち組の私には無縁ね」
「彼氏って言っても一カ月しか経ってないじゃん美砂、確かキスも未経験でしょ? それにしても男の人と一緒に住んでみる環境って面白そうだな~私お父さんしかいなかったし「それ何処の乙女ゲー?」みたいなのやってみたいよ、まあ刹那さんや本屋見たいに一人の男を取り合う修羅場はイヤだけど・・・・・・」
「修羅場って何アルか? 強いアルか、祐奈?」
「ねえクーフェイ、このやり取り結構やってるんだから、いい加減何でも強さ基準に考えるの止めない?」

生徒達がヒソヒソと話しているのを見て慌てて刹那が立ち上がって「違いますッ! 違うんですよ皆さんッ!」と必死に連呼するも全く聞いてくれない、しばらくして諦めたのか刹那は席に座ってため息をついた後机に顔を伏してしまったが、生徒達に向かって銀八が不機嫌そうな声を上げて、「こっちはさっさと終わりてえんだ、ガキの恋愛論は後にしろ」と言ったので生徒達はしだいに静かになってくれた

「んじゃもう質問無えのか? 無えなら終わるぞ」
「・・・・・・・・・」
「はいお前」
「いつも不思議に思うんですけど何でザジさんの声が聞こえるんですか銀さん・・・・・・・?」

いきなり生徒の一人のザジに向かって指さす銀八にネギが唖然とする。何故かはわからないが彼女の声は銀八とあやかにしか聞こえない

「・・・・・・・・・」
「ああ、それがどうした?」
「・・・・・・・・・」
「まあ宿にテレビ置いてあると思うから見れんじゃね? 」
「・・・・・・・・・」
「バカヤロー、あれはガキには早すぎるだよ」
「・・・・・・・・・」
「いやまあ確かに銀さんも好きだよ、ああいうネタは俺も結構好きだし」
「・・・・・・・・・」
「ギャハハハハッ! あのネタ最高ッ!!」
「お二人共、本当下ネタ系好きですわね・・・・・・・」
「すみませんッ! 全然わからないのでもういいですかッ!?」

銀八とザジに対してあやかがしかめっ面をしているのだが、ザジの声が聞こえないネギや生徒達にとっては謎が深まるばかり、ついにネギが強制ストップをかけA組のホームルームはやっと終わりの時を迎えるのであった。



























ホームルームを済ませて帰りの挨拶をした後、次々と生徒達は教室から去っていき、ほとんど誰もいなくなった教室で銀八も学校内にある万事屋に行こうと教室から出ようとするが、途中で誰かに白衣の先をグイっと引っ張られた。

「ん?」

振り向くとそこにいたのは自分よりずっと小さいエヴァ

「何だよチビ」
「銀時、ジジィから聞いたが関西呪術協会と和睦する為に親書を本部に持って行くらしいな」
「俺じゃなくてネギだけどな、俺はあいつのお守り役担当だ、まあ暇さえあればお前等と・・・・・・あれ、お前って確か・・・・・・・」
「私は忌々しいこの呪いでここから出られん・・・・・・」

かつてサウザンドマスターがエヴァにかけた魔法は『登校地獄』。この呪いにより彼女はこの麻帆良学園の敷地内から出る事は出来ない、つまり彼女は敷地外から出る修学旅行には参加できないのだ。
銀八がいない時は修学旅行に行けないなどどうでも良かったのだが、今年は修学旅行に行けない事に少し未練があるようだ

「お前とはしばらく会えんな・・・・・・」
「・・・・・・まあ土産ぐらい買って来てやるよ、八つ橋とか木刀とか」
「いや土産はいらん」
「へ? 何で?」
「その代わり修学旅行の日まで私のベッドで一緒に寝るのはどうだ?」
「・・・・・・・海の底で永遠に寝かしてやろうかドチビ?」

正直、最初は修学旅行に行けなくてここに残るエヴァに少しだけ同情したが、彼女がニヤつきながら言った提案を聞いて、そんな同情は銀八の中から塵も残さず消えて行った。

「イイだろ修学旅行が始まれば私とは長い間お別れなんだぞ、せめて私のぬくもりを覚えてから京都に行け」
「ふざけんな誰が覚えるかそんなモン、何でテメェみたいなクソガキと同じベッドで寝なきゃいけねえんだよ」
「何話してんだ銀八?」
「またエヴァさんに絡まれてるんですか?」

エヴァの意見に銀八が真っ向から拒否していると、千雨とあやかが鞄を持って近づいくる。そんな二人に銀八は振り返り、親指でエヴァの方を指さす

「こいつが修学旅行に行けないから俺に危ない橋渡ってくれだとよ」
「ああ、お前まだ渡ってなかったのか」
「埋めるぞコラ」
「まあエヴァさん修学旅行に行けないなんてショックです、喧嘩友達がいないと私とっても寂しいですわ」
「棒読みで言われても全然嬉しくない、いい加減死にたいのか貴様?」

目を細めて意外だなという様な視線で見てくる千雨と、無表情で感情移入ゼロのあやかの言葉に、銀八とエヴァは目の前の二人に軽く殺意を抱いているとその4人の間をすり抜けるようにネギが教室から出る為に通って来た。

「じゃあ皆さんさようなら、銀さん修学旅行には遅れないで下さいよ」
「わ~ってるよ、そう言うテメェも“持ってるモン”奪われないように気を付けるんだな」
「はい」

教室から出るネギに向かって銀八がぶっきらぼうに言葉を送ってネギはそれを聞いて振り向いて頷き、その後去って行った。残されたのは四人だけとなった筈だが・・・・・・

「じゃあ万事屋に行くか、そういえばお前も来るか?」
「ん? 誰に話しかけてんだお前?」

突然自分達以外誰もいない教室にある端っこの机の方に向かって話しかける銀八に、千雨が首を傾げると、彼ははくわえてるタバコに火を付けながら答えた

「スタンドだよスタンド」
「何だ女子生徒の幽霊・・・・・・イデッ!」
「幽霊なんて存在するわけねえって言ってんだろお前は、『ぬ~べ~』の読み過ぎなんだよバカ」
「イタ~・・・・・・ったくいい加減認めろよ幽霊ってよッ! その年で幽霊怖いなんて恥ずかしくないのかよッ!」
「は? 全然恐くないですけど? いつから俺が幽霊怖いって言ったんですか? 勝手に俺の設定を捏造しないでくれませんかね?」 

急に敬語を使ってタバコの煙を吐き散らしてくる銀八に、千雨は彼にポカンと殴られた頭を右手でさすりながらため息をつく。

「いつも妙な所が頑固なんだよなお前・・・・・・・」
「それあなたが言えますか?」
「どういう意味だよ」
「そういう意味ですわ」
「?」

隣に立っているあやかに言われた事に千雨が一人で混乱していると、銀八はツカツカと教室の端っこにある机の方に近づく。

「お前もチビと同じ修学旅行に行けないんだろ、地縛スタンドだから、もうすぐしばらく会えなくなるからUNOでもやろうぜ」
「あ、はいッ! うう・・・・・・地縛霊の私が見える先生がいて本当に良かったです・・・・・・」
「地縛霊じゃなくて地縛スタンドだ」
「すみません・・・・・・・」
「霊って言葉に本当に敏感だなお前は」
「黙っとけチビ、ほら行くぞ」

銀八の見ている先には席に座っている状態の薄い姿をした女子生徒がいた相坂さよ、一応A組所属でこの麻帆良学園の地縛霊である。彼女の姿が見えるのはこの学園では銀八とエヴァにしか見えないのだ。ちなみにネギは気配だけは感じ取れるらしい。

そんな彼女だが何かと気軽に話せる仲である(土方や刹那、のどかとも交流があるのだが、残念ながら霊感の少ない彼等にはさよの姿は見えない)銀八の誘いに快く承諾してすぐに彼の後ろにフワフワと浮きながら歩いて行く銀八にくっついていく。

「スタンド連れてUNOやるぞ、UNO、どうせ生徒の奴等は修学旅行でフィーバータイムだから依頼なんて持ってこねえよ」
「そうだな、修学旅行があっても無くてもいつもと変わらねえと思うけどな」
「お前って本当一言多いよな」
「コイツは根元までひねくれ者だからな」
「私から見れば三人ともかなりのひねくれ者ですが?」

千雨に向かってしかめっ面を見せる銀八と、口を挟んでいるエヴァに向かってあやかはツッコミを入れる。彼女から見ればこのメンツは自分に正直になれないひねくれ者揃いだ。
あやかにそう言われても銀八は無視してさよを連れて教室から出て行く、それに千雨とエヴァも続いて最後にあやかが出て教室のドアを閉めた。
廊下を歩きながら銀八はふとあやかに向かって話しかけてきた。

「所でさぁ? 映画のバトロワでよく流れてるBGMって何だっけ?」
「確かジュゼッペ・ヴェルディが作曲した『レクイエム』って奴だと思いますわ」
「ああそれだ、その曲いつかこのスタンドに聴かせようと思ってんだけど、何処で手に入るか知ってる?」
「ぎ、銀さん? それはちょっと・・・・・・」

凄い事をぶっちゃける銀八にあやかは頬を引きつらせる、それを聞いていた千雨とエヴァは視線を合わさずに会話する

「なあ、レクイエムってどういう意味だったっけ?」
「鎮魂歌と読んでレクイエムと言われるケースが多い、つまり死者を安息に眠らせるための曲だ」
「なるほどね・・・・・・」
「何か恐そうな歌ですね~」
「お前にとっては心地よい音楽になるんじゃないか相坂さよ?」

こちらに振り向いて感想を言ってくるさよにエヴァは半ばあきれながら彼女に返す。

死者である彼女がそんな曲を聞いたらどうなるのであろうか・・・・・・

そんな事をエヴァが歩きながら腕を組んで考えていると、千雨がふと思い出したように彼女の方へ顔を向ける

「所で茶々丸どうしたんだよお前?」
「知らん、最近私に許可も無くどっか行ってしまうんだよアイツは、どうせサツキと超の店でも手伝いに行ったんじゃないか?」

不機嫌そうに言うエヴァに対して千雨は「ふ~ん」と特に気にもせずまた顔を前に戻す。

「修学旅行ももうすぐなのにあいつ等まだ店やってるのか」
「モノ好きな客が多いからなあそこは、サツキが言ってたが最近面白い客がたまに来てるらしい」
「面白い客?」
「まあ私にはどうでもいいがな」

そう言ってエヴァは少し小走りになって銀八の方へ歩み寄って彼に話しかけている。
そして千雨もエヴァが言っていた事も忘れて銀八の方へと歩み寄っていくのであった。

彼女達がその“面白い客”に会える時はいつであろうか・・・・・・
























麻帆良学園の敷地内には『超包子』という三年A組の四葉五月と超鈴音が経営する店が存在する。来る客は様々だが放課後には生徒達がよくおり、夜中になると教師達が飲みに来る事も多い。こういう何処の層でも受け入れられているのは、五月の作る料理の腕とその性格がもたらしているのかもしれない。
そして学校を終えた五月と鈴音はいつも通りお店を開いて、今日は茶々丸にお店の手伝いをしてもらいながら商売に励んでいた。

「ハァ~、あのジジィ早く死んでくんないかな~」
「教師の口から出るとは思えない発言ネ、新田先生」
「さっちゃん、今度あのジジィが店に来たら料理の中に軽く毒でもトッピングしといてくれ、無理だと思うが死ぬ可能性はある」
「五月に変なの吹きこまないで欲しいネ、新田先生」

店にあるカウンターで酒を飲みながら愚痴を言う新田先生に応対するクーフェイと同じ中国人と思われる少女の超鈴音と、彼女の隣ではなごやかに微笑んでいる五月の姿があった。
新田先生がそんな彼女に一人でカウンターで愚痴っていると、彼の隣に一人の青年が座った。しかしその青年を見た鈴音は少し嫌な顔をする。

「また来たネ、暴飲暴食魔・・・・・・いつもは夜に来るのにこんな時間に珍しいネ」
「アハハハ、ちょっと小腹が空いて来たしもう“コッソリ”来る必要も無くなったから食べに来ちゃった、ここ美味いし」
「小腹が空いたレベルでも間違いなくここの店のほとんどを食い散らす気ネ、誰かさんが来るようになってから店にある食料が物凄い勢いで消えて行くヨ」
「儲かるから良いじゃん、金は払ってるよ俺、その辺の弱いチンピラから巻き上げた金で、あ、中華まん30個で」
「最近この辺ででやたらと救急車が鳴ってるのはキミの仕業だったネ・・・・・・」

笑いながら言う青年に鈴音は相手が客にも関わらずしかめっ面を見せる。最近やたらとチンピラの数が減っているのはある意味彼のおかげなのかもしれないが、病院送りにさせるほど重症にするのはどうだなのだろうか(本人曰く、知り合いに“キツく”言われているので殺す程はしないらしいが・・・・・・)

「そうそう、この前のさつまいもありがとね、俺と知り合いの子で食べさして貰ったよ」

青年が五月に向かって笑いかけながらお礼を言って来たので、彼女も「困ってる時はお互い様です」と笑って返した。
随分前の話だが、五月が夜中にいつも通り在庫チェックをしている時、残り過ぎた賞味期限切れ寸前のさつまいもをどうにか処理しようと悩んでいた時、客として来ていた青年が全部自分で食べるからおくれと要求してきたのだ。それを聞いて五月はどうせ売り物にならないならと彼に全て渡してあげていたのだ。

「にしても随分今日は客少ないんだネ、どうしたの? 潰れるのココ? 俺が手っ取り早く潰してあげようか?」
「潰れるわけないネッ!! 今からが客やってくる時間帯ヨッ!」
「そうだぞ少年、ここが潰れたら誰が私の愚痴を聞いてくれると言うのだ、この店が無かったら私はキャバクラでしか愚痴を語れないんだぞ」
「そろそろ新田先生は教師辞めた方がいいネ」

五月が出した大量の中華まんをヒョイヒョイ食べている青年の隣に座って、まだ飲んでいる新田先生に教師と生徒の立場を超えて鈴音が毒を吐いていると、青年は中華まんを食べながら彼女に話しかける。

「あ、外にいる客と応対してる店員って誰? 俺見た事無いんだけど」
「彼女はアルバイトで時々忙しくなる時に手伝ってくれる絡操茶々丸、誰かさんが来るのはいつも夜中だから彼女に会えるわけないネ」
「ふ~ん、そう」

青年は中華まんを口に挟みながら後ろに振り返り、お客である女子生徒のグループがいるテーブルで注文を受けている茶々丸を数秒見た後すぐに体を戻す。

「アレが“あの子”の言ってたカラクリか・・・・・・見た目は弱そうだけどなぁ・・・・・・」
「何ブツブツ言ってるネ?」
「ああこっちの話だから気にしなくていいって」

そう言って青年は最後の中華まんを食して席からガタッと腰を上げた。

「ごちそうさん、金はここに置いとくから」
「早ッ! 相変わらず食うスピードが半端ないネ・・・・・・」
「美味いもん程早く食えちゃうモンだよ」

青年は爪楊枝で歯に詰まった物を取りながらポケットからグシャグシャの万札を数枚出して、いつも持ち歩いてる大きな日傘を肩にかける。

「釣りはいらない、もう俺には当分必要のないモノだし、ここにまた来るのは当分先になるしネ」
「何ヨ? 何処かへ行く気ネ?」
「ハハハ“あの人”と“あの子”が先に来る前にちょっと“舞台”の下準備に行って来る」

超音の方に振り向かず青年はのれんをくぐり日傘を差して外に出る。その後ろ姿に彼女は少し口元に笑みを浮かべながら喋りかけた

「その“あの子”の生き方を決めるのは今後のキミ次第、『光』か『闇』、彼に選択肢を与えるのはキミの役目ネ、精々頑張るヨロシ」
「・・・・・・キミ何者? 随分と変な事言うね」
「アハハハ、ただのここの生徒兼料理人ネ」

自分の方に振り向いて来た青年に超音は笑い飛ばしてごまかす。しばらく青年は彼女をジッと目を開いて見ていたが、すぐにいつもの“取って付けた”ような笑顔で「まあいいや」と言って背中を見せた。

「何者だろうが俺の邪魔はしないほうがいいよ俺は邪魔する奴には容赦しないから、じゃあね」

超音にそう言葉を残して手を振りながら青年は歩いて行く。ふと彼が歩きながら横を見ると、段々と増えてきた客の対応に追われている茶々丸の姿があった、彼女と目が合うと青年はニコニコしながらいつもの笑顔で彼女に手を振る、一方茶々丸は彼とは初対面なので首を傾げるだけだった。
青年はそのまま傘を差して生徒達の間をすり抜けるように歩いて店を後にする。

(『光』と『闇』、そんな“どうでもいい”選択を俺はあの子には選ばせない、この世には『強い者』と『弱い者』の二種類しかいない、あの子がどっちに転ぶかはあの子が決める事だ、俺が決める事じゃない)

麻帆良学園の校舎を見つめながら青年は目を開いて口元にニヤっと笑みを作った。

「しばらくお別れだ、次会う時はキミがもっと強くなってる事を願ってるよ」

そう言うと青年は再び歩き出す、もうすぐ始まる“舞台”の為に

教え子の成長と“ある男”の戦いの為に夜兎・神威は麻帆良から姿を消した。




























教えて銀八先生

銀八「一通目クルトさんの質問」

木乃香さんに質問
学園長殿(笑)の骨格って医学的に価値有りますよ?解剖したいんですが有りですかね?

木乃香「ええけど何か変な液体が飛んできても知らんよ」
銀八「紫色の血が出てきそうだしな」
エヴァ「それに口から卵を吐き出しそうだ」
学園長「ワシはピッコロ大魔王か」


銀八「二通目エンジンさんの質問」

千雨さんに質問。
ライバル(銀さん争奪戦)が増えてきましたが、眼鏡を変えるなどのイメチェンはしないんですか?

千雨「いや必要ねえよ・・・・・・メガネ返る必要なんかねえよ・・・・・・・」
銀八「グラサンでもかけてみる?」
千雨「何でグラサンなんだよ」
銀八「俺の知り合いの人に『長谷川さん』っていうグラサンかけた人がいたから」
千雨「同姓繋がりで私にもかけろと・・・・・・?」

銀八「三通目q-tureさんの質問」

銀さんに質問です。
秋と言えば読書の秋ですが、GSの皆さんは学園長でリンt…もといコミュニケーションをする為にどんな本を読んでいますか?
自分が最近読んだのは『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』です。

銀八「俺は本は読みませんが最近ジジィは「ハリポタ」読んでますね」
学園長「ダンブルドアかっけ~な~、ワシもこんぐらいバシッと決めれば支持率上がるかもしれんのぉ・・・・・・」
銀八「確かそのジィさんの最期って部下の教師の一人に殺されちゃうんだよな」
学園長「へ~、そういえばワシもある教師に殺されちゃうんじゃないかと毎日考えてるんだよね~」
銀八「良かったじゃねえか、死ぬ原因がカブりそうで」
学園長「いや嬉しくねえよっ!!」


銀八「四通目蛙さんの質問」

まき絵に質問。
「万事屋さん所のエヴァンジェリンと一対一のトレードがさっき成立したから、明日からは万事屋の一員として頑張りなさい」と部活終了後に顧問から告げられたら、どうしますか?

まき絵「荷物まとめて逃げます」
銀八「それを俺が捕まえます」
沖田「そして俺が旦那用に調教します」
銀八「おいしいパシリの出来あがり」
まき絵「おいしいってどういう意味ッ!?」


銀八「五通目ウィルさんの質問」

今回は銀さんに。事あるごとに年下の女の子(子供)に興味が無いって公言してますが、銀さんが彼女達(千雨、いいんちょ、エヴァ)を一人の女性として扱うのは何歳からですか?女達も成長すれば当然素敵な女性になるわけですからね。それに江戸にいる銀さんに近しい女性って月詠以外はアウト気味ですし…。彼女達の好意をあまり無碍にしないことを私は勧めます。歳だけでダメっていうのは何だか逃げる口実にしか聞こえないです

銀八「さあな~会った時からガキだしそう言う目で見れねえしな俺、俺ぐらいの歳で中学生なんかと付き合ったら周りからしたら相当引くよ?」
エヴァ「で? いくつぐらいならいいんだ?」
銀八「最低でも俺が女として見るのは高校生かな・・・・・・?」
エヴァ「なら私はセーフだな、600年以上生きてるんだぞ」
銀八「お前が一生かかってもそのままなら、俺とお前は一生無い」
エヴァ「ハァ~やはり男とは乳がデカいのが好きな動物なのだな・・・・・・ナギの奴もそうだったよ」
銀八「乳じゃなくて俺は身長の事言ったんだよッ!」


銀八「六通目サハリンさんの質問」

ヅラに質問
犬神小太郎には、んまい棒よりドックフードや骨っこ元気をあげたほうがいいのでは?

桂「バカ者ッ! ドックフードや骨っこよりんまい棒の方が安いであろうッ! だがまあ月に一回与えてやるのも悪くはないなドックフード」
小太郎「お前俺の事『犬』だと思って見てるんかい・・・・・・」
桂「安心しろ、俺は猫も好きだが犬も好きだ、ちゃんと可愛がって育ててやろう」
小太郎「そういう意味じゃないわボケコラカスッ!」


銀八「七通目白夜叉さんの質問」

銀さんに質問。
えー、次回より京都編ということですが、銀さんは京都平気なんですか?
京都は平安京ができて以来、疫病やら戦やらでガンガン人が死んでるいわゆる魔都と呼ばれているところです。
安倍晴明や蘆屋道満、賀茂忠行といった陰陽師が活躍したのも、京の都が魔の住む都であったからです。
そんな所に銀さんが行って本当に大丈夫なんですか?
そこんとこ詳しくお願いします。

銀八「時代を勘違いしてません? 今はTHE・平成ですよ? 疫病とか戦とかとっくの昔に終わってますからね?」
千雨「それに修学旅行編はまだ先だろ、次回は・・・・・・むぐッ!」
銀八「はいネタばれ禁止~」


銀八「八通目正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
第二十八訓の質問コーナーで「あいつ等」って霊夢以外に誰に殺されかけたんですか?

学園長「基本血の気が多い奴全部」
銀八「お前って本当襲われそうな生き物だもんな」
学園長「うん、可愛かったからちょっと尻触ろうとしただけなんだけどね」
銀八「10割お前のせいじゃねえか」


銀八「九通目はきさんの質問」

お登勢さんに質問です。
ナギとの出会いまたはナギ子の時とかのエピソードでどんなことあったか教えてください。
それがダメならナギにどんな仕事をさせたかでもいいです

お登勢「やれやれ最近の若いのは話しの展開を待てないのかい? まあちょっとだけなら話してやろうか、普段はカミさんに頼りきりのダメ亭主って感じだけどいざとなったら筋は通す、そんな奴だったよ」
アル「まあ滅多にありませんがね、万事屋として働く回数とスナックで働く回数もそんな差がありませんでしたし」
お登勢「基本ダメ人間だね、誰かと同じで」
銀八「ババァさっきからこっち見て何ブツブツ喋ってんだ?」


銀八「十通目とびかげさんの質問」

銀八へ
万事屋の主な依頼内容は何ですか?あと、報酬はいかほどですか?

銀八「基本的に江戸での依頼とそんな大差ありません、まあ江戸のメンツとは違って周りが周りなので武力行使の依頼は来ませんがね、報酬は江戸の時より少なめです」
千雨「まあ来るのは大体学生だしな」
あやか「毎回猫に逃げられてる生徒もいますしね、『ドリームジャンボ三億円ちゃん』は飼い主の事を相当嫌っているんでしょうか・・・・・・」
千雨「あ~まだ逃げてるのあの猫・・・・・・・?」


銀八「十一通目Koiさんの初質問」

質問コーナーで言ってた「最終章」ってなんの最終章ですか???

銀八「修学旅行編の事です、それがこの作品の終点」
千雨「うまくまとまんの?」
銀八「さあ? 無理なんじゃない?」
千雨「何かまたグダグダと引き延ばしそうだな・・・・・・」


銀八「十二通目風の都さんの質問」

銀さんへ
何故、まき絵ちゃんをイジメるのですか?
彼女、いつも独りで泣いてますよ。可哀相ですよ

銀八「あいつ『ドM』なんで」
まき絵「Mじゃないよッ!」
あやか「てことは千雨さんもM?」
千雨「何でそうなるんだよッ! 私は佐々木みたいに責められる事に喜びを感じる変態じゃねえよッ!」
まき絵「ちょっとォォォォ!! 勝手に変態扱いしないでよッ!」


銀八「十三通目Citrineさんの質問」

今はナギどこにいるんでしょうか?

銀八「知りません」
エヴァ「知ってたら苦労せんわ」
銀八「とりあえず死んでる事を願ってます」
エヴァ「私の呪いはどうするんだ銀時・・・・・・?」


銀八「十四通目、風凪五月の初質問」

質問です。
龍宮は銀さんの事をどれぐらい気になっているのですか? もしもさっちゃんがネギま世界に現れたら、彼女はどんな反応をするのか聞いてみてくれませんか

龍宮「さっちゃん?」
銀八「お前と同じ俺専用のストーカーだよ」
龍宮「何だ同業者か、別に私は先生の行動を知りたいから一緒にストーキングしても構わない、向こうはわからないけどな」
銀八「そろそろお前も完全体に近づいてきてるな・・・・・・・」


銀八「十五通目、Namelessさんの初質問」

信者に染まりつつあるネカネさんに質問なのですがジャンプネタが豊富なのにファミコンジャンプネタが一度も出ないのは何故でしょう?
ネカネさん的に2009年までのジャンプ作品内でファミコンジャンプに参戦させるとしたらどんな作品群になりますか?

ネカネ「ファミコンジャンプって何ですか?」
銀八「1980年代にあったゲーム、今でいう『ジャンプアルティメットスターズ』みたいな奴だよ」
ネカネ「そのアルティメットなんとかもわからないんですけど・・・・・・」
銀八「あ~ジャンプのキャラが一杯出てきて戦うゲームだよ、ジャンプ初心者はこれだから・・・・・・」
ネカネ「そうなんですか、じゃあ『めだかボックス』で」
銀八「まさかのバトル漫画じゃない方から持って来たよこの人・・・・・・」


銀八「十六通目Kickさんの初質問」

土方さんにフラグがもう一つ立つとしたら誰でしょうか?
僕的にはなんやかんやでよく一緒にいる真名あたりがいいんですが……

龍宮「無理だな、刹那に悪い」
刹那「何が私に悪いのかわからないんだが・・・・・・」
龍宮「ほほう、この娘は先生や長谷川並に己の鈍感さに気付いてないらしい」
千雨「何で私がそこに出てくるんだよ、銀八はともかく」
銀八「いや俺がいるのもおかしいだろ、よくバカレッドに言われるけどよ」
エヴァ「お前等は『マジ』だろ・・・・・・・」


銀八「ラスト十七通目、自爆心さんの初質問」

屁怒絽様はこの小説ではださないんですか?
またでるとしたらどのへんでだしますか

銀八「へ、屁怒絽くんはこの世界には来ないかもしれないな~・・・・・・それにしても長谷川さんとか屁怒絽とか松平のとっつぁんとかやたらと本編入りしてくれって読者のメッセージが多いな・・・・・・」
沖田「俺も時々来てましたね」
銀八「最近の読者は本当考える事がデンジャラス過ぎるぜ」
沖田「という事でそういう読者の期待に応えて俺を本編入りさせましょうか」
銀八「何でそこで一番“デンジャラス”なお前が出てくるんだよッ!」











第三十訓・『主人公のいない世界なんてのりの無いのり弁と同じ』へ続く。



[7093] 第三十訓 主人公のいない世界なんてのりの無いのり弁と同じ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/11/09 00:05
ここは『江戸』
かつて侍達が何かを護る為に戦っていた世界。だが時代の流れにより侍と名乗る者はもはや刻々と減少していった。
だがそんな時代でも江戸のかぶき町には一人の侍がいたのだ。
その男は一見侍とは思えぬ風貌と性格だが、いざとなったら誰よりも優しくそして強く生き抜こうとする己の信念を持ったそんな男だった。
だが・・・・・・・

「う~ん・・・・・・」

早朝、かぶき町に住む一人の少女が瞼をこすりながら体を起こす。少女はだるそうに頭を掻き毟りながら布団から出て、もう随分慣れている手つきで布団を畳む。

「まだ眠いアル・・・・・・・」
「神楽ちゃ~ん、起きてる? 朝ご飯とっくに出来てるから食べに来てよ」
「はいヨ~」

ある青年の声に少女はそう返して、畳んだ布団を押し入れに戻した後、パジャマ姿のまま自分の部屋から出た。自分の部屋と言っても本来はお客様用の部屋なのだが、今はわけあってここを使わしてもらっているのだ。ついでに彼女のペットの犬(?)もここで世話して貰っている

少女の名は神楽。かつて『万事屋銀ちゃん』というなんでも屋で従業員として働いていたのだが上司が突然いなくなってしまい、今は同じ従業員だった青年とその姉の所で住んでいる、チャイナ風の喋り方が特徴的な女の子だ。

廊下をフラフラと歩きながら神楽は朝食を食べる為に居間に着くと、そこには既に二人の男女が座って待っていた。片方は和服の似合う綺麗なポニーテールの女性、もう片方は何処か地味な感じのメガネを付けた青年だ、ちなみにさっき少女を呼んだのはわかると思うが彼だ。

青年の名は志村新八。神楽と同様『万事屋銀ちゃん』の従業員だったが、上司が消えたおかげで働き口が無くなり、今では昔の様にフリーターをしながら家の家計を支えている健気な若者だ。ちなみに生まれてから彼女が出来た事は一度も無い。

「おはよう神楽ちゃん・・・・・・ってまだ着替えて無かったの?」
「今起きたばかりアル・・・・・・」
「あらあら凄い寝癖ね、女の子はいつも綺麗にしとかなくちゃ駄目じゃない」

まだ眠そうに瞼を半分閉じている神楽は自分がいつも座っている場所に座ると、隣に座っている女性が優しく彼女の頭を櫛でとかす。

女性の名は志村妙。名字で分かる通り新八の姉で、周りの知り合いからは「お妙」と呼ばれる事が多い、現在廃刀令によって門下生を失った志村道場を守る為に、夜のスナックで働いている傍ら、こうやって一緒に住んでいる少女の世話もして上げている彼女の姉さん的な存在だ。見かけによらず結構腹黒い

「アネゴ~今日はお店お休みアルか~?」
「そうよ、昨日また“あのゴリラ”がやってきたから有り金全部奪ってやったらね、オーナーにお店に大きく貢献したという事で特別に今日はお休みにさせてもらったのよ」
「あの人全く懲りてないんですね・・・・・・夜な夜なスナック何か行ってないで警察なんだから早く“あの人”見つけて欲しいよ全く・・・・・・」

新八は不機嫌そうに神楽とお妙にご飯を盛って渡す(神楽は大食いなので大盛りにしている)、彼が文句を言っているとお妙の心配そうにため息をつく

「そういえばまだ銀さん見つからないわね、何処行ったのかしらあのちゃらんぽらん」
「知りませんよ、僕等を置いて突然いなくなっちゃう薄情者なんか」
「新ちゃんそんな言い方ダメよ、新ちゃんは銀さんの事心配じゃないの?」

フンと怒ったようにキッパリという新八をお妙がなだめると、彼女の隣で既に食事にがっついている神楽が彼女に向かって口を開く。

「アネゴ、私はこんな地味ツッコミメガネと違って銀ちゃんがいなくて夜も眠れないアル」
「神楽ちゃんはイイ子ね~新ちゃんも少しは見習いなさい」
「いや神楽ちゃんいつも爆睡してるよね・・・・・・僕より寝てるじゃんいつも・・・・・・」

姉と同居人に悪者扱いされながらも新八は二人に朝飯を渡しながらツッコむ。女二人を相手にするのは何かとキツイ、こんな時にあの男がいれば・・・・・・

「僕だって銀さんの事はちゃんと考えてますよ、でも江戸中を歩き回ったり警察に捜索願いを出しても全く見つからないんだよあの人」
「もしかしたら女の家にもぐりこんでるかもしれないわね、あの人ってだらしないし」
「ハハハ、いくら銀さんでもそこまで腐ってませんよ」

姉の一つの推測に新八は笑い飛ばす。いくらあの男でもそこまで落ちぶれていない、“女の家に入り込んで居候”なんて事するわけがない。

「いくらあの人がダメ人間だからって僕等を置いて女の所に行くなんてありえませんよ」
「そうネッ! こんなカワイイ女の子と一緒に住んでるのに銀ちゃんが他のアマの所に行く筈ないアルッ!」
「そうよそうよッ! 銀さんが私を放置プレイして他のメス豚とイチャイチャするなんてありえないわッ! メス豚は私だけよッ! 銀さんのサドに耐えられるのはこの銀さん専用機の私しかいないのよッ!! 銀さん専用さっちゃんッ! 行きまーすッ!!」












突然天井が開いて誰かが大声を上げながら天井裏から顔を出してきた、三人が見上げて見てみるとやはりというか案の定“彼女”だった。

「猿飛さん何やってるの? 不法侵入罪で流刑にするわよ?」
「さっちゃん、銀ちゃんがいなくなったから今度は私達のストーカーになったアルか?」
「誰があなた達凡人の日常生活をストーキングしなきゃならないのよ、私は銀さんだけのストーカー、あなた達を覗いてても全然燃えないわ、私にストーキングされたいならまず銀髪天然パーマになって死んだ魚の様な目になりなさい」
「いや別にされたくないんで」

猿飛あやめ、通称さっちゃんと呼ばれているドMなメガネッ娘。本業は悪人専用の殺し屋をするくの一で、その傍らある男のストーカーもしていたのだが、いなくなってしまった彼を探す為日夜捜索を勤しんでいる。

天井から喋りかけてくるさっちゃんに新八がサラリとツッコむと彼女はサッとこちらに向かって降ってきた、志村家の食卓が並んでいるテーブルに


「オイィィィィィ!!」

彼女が降ってきた直後音をたててご飯やら味噌汁やらが宙を舞った

「私がここにいるのはあなた達からちょっと聞きたい事があったのよ」
「何普通に流してるんですかッ! 僕等の温かい食卓がメチャクチャじゃないですかッ!」
「銀さん何処にいるか知ってるかしら? 素直に言わないと殺すわよ」
「知るかボケェェェェ!! そんなのこっちが知りたいわッ!!」

志村家の食卓を荒らしても全く悪気が無いさっちゃんに新八が叫ぶが彼女は全く気にせずため息をつく

「あなた達もあの人が何処かに行ったかわからないのね・・・・・・」
「ったく・・・・・・誰もわからないんですよ、最後に見たのは長谷川さんなんですけど、気が付いたら突然いなくなっていたとかで・・・・・・」
「ヅラとエリーも最近見ないネ」
「全蔵とも会わなくなったわね、まあ“クソ”どうでもいいけど」
「そういえばそうだ・・・・・・・ここ最近色んな人の姿が見えない・・・・・・・・」

あの男だけではない、新八の知り合いの桂小太郎とエリザベスにはここ最近会った事が一度も無い、さっちゃん曰く元お庭番衆の服部全蔵も姿を消したとか・・・・・・

「みんなの知り合いがいなくなっちゃうなんて・・・・・・・」
「新ちゃん、近藤さんはいつ消えるのかしらね?」
「姉上それは・・・・・・」
「心配しないで下さいお妙さんッ! あなたの近藤勲は常にあなたと共に生き続けますからッ! これからも二人の愛を育みましょうッ!!」












「何普通にテメェは出て来てきてんだゴリラァァァァァ!!!」
「グホォォォォォォ!!!」

突如テーブルの下から顔を出して叫んできたいかつい男にお妙は表情を豹変して、その顔面に思いっきり蹴りを入れる。そんな“いつもの”光景に新八はジト目で吹っ飛んだ男を見る。

「いい加減姉上にストーカーするの止めてくれませんか近藤さん? あんたそろそろ三十路なんだから早く別の人見つけて結婚した方が良いですって」
「そうよ、さっさとメスゴリラと結ばれて私の目の前から消えなさい、ていうかこの世界から消えなさい」
「く・・・・・・何故お妙さんに俺の愛が伝わらないんだ・・・・・・・」
「アンタのは愛じゃなくてただの嫌がらせだから」

倒れたまま苦痛の表情を上げるストーカー近藤勲に新八とお妙が言葉のナイフを投げていると、それに便乗して神楽とさっちゃんも彼に向かって口を開く。

「根本的に無理アル、ゴリラと付き合うなんて私だったら死んでも嫌アル」
「そうねゴリラとフラグが立つなんて罰ゲーム以外の何者でもないわ、まあ銀さんとのフラグが成立してる私には関係の無い事ね」
「いや成立してませんから」

サラリと自分の願望を言うさっちゃんに新八が軽くツッコんでいると、突然近藤がガバッと起き上がり涙ながらにみんなに叫び出す

「いるよぉぉぉぉぉ!! こんなゴリラみたいな男だって好きになる人だっているよぉぉぉぉぉ!!」
「そんな世紀末な事が起きるなんてありえないわ、現実を見なさい腐れゴリラ」
「・・・・・・・フッフッフ」
「何笑ってアルかゴリラ? ついに頭おかしくなったアルか?」
「実はこれは隊の奴等にも内緒にしているんだがな・・・・・・・」

お妙に止めの一言を言われて心を折られて変になったのかと周りが思ってる中不敵に笑う近藤。彼は立ちあがり自信満々にお妙に向かって口を開く。

「お妙さん俺はね、実は一人の少女に冗談だと思いますがこんな俺でも結婚して良いって言ってくれる子がいるんですよッ! いいんですかお妙さんッ!? 早く俺の愛を受け止めないと俺その子と式を開いちゃいますよッ!?」
「あら~二次元のキャラとどうやって結婚出来るのかしら?」
「いや二次元じゃなくて現実にいるんですけど・・・・・・」
「じゃあ会わせてくれないかしら? 一回見てみたいわ近藤さんの花嫁候補」
「いやあの・・・・・・ちょっとした理由でここには呼べなくて・・・・・・」

急に慌てふためく近藤に新八と神楽は軽蔑の眼差しを向ける

「近藤さん、嘘を付くならもっとマシな嘘を付いて下さい」
「マジキモいアル、妄想でそんな事言う奴って本当引くアル、私からもっと離れろヨ妄想ゴリラ」
「違う違うッ! 妄想じゃないんだってッ! 実在するんだよッ! 冗談だと思うけどこんな俺と結婚して良いって言ってくれてッ!」
「姉上、僕はあそこまで落ちぶれないように日々精進します」
「いい心がけよ新ちゃん、人間あそこまでいくともう帰ってこれなくなるから気を付けなさい、まああれは人間じゃなくてゴリラだけど」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!! これは本当の事なんだってぇぇぇぇ!!!」
「大丈夫よゴリラさん、私も日々妄想で銀さんと子作りに励んでるから、もう数えれきれないぐらい想像妊娠してるんだから」
「いやアンタと一緒にしないでくれるッ!?」

頬を染めながら今ここで恋焦がれる男との甘い時間を脳内で過ごしているさっちゃんに、近藤が指さしてツッコんでいると、ツカツカと志村家の庭に誰かが入って来た。

「やっぱりここにいたんですかィ近藤さん、あんまりこの“副長”たる俺に迷惑かけないでくれませんかね?」
「あ、沖田さん、何か僕等の家って無断に入ってくる人本当多いよね・・・・・・」
「おい何でテメェがここにいるアルかッ! さっさと出て行けヨッ!」

庭に現れたのは真撰組局長の近藤の部下、ドS王子こと沖田総悟。彼を見た途端神楽がケンカ腰で叫び出すが彼はそれを睨みながら返す

「うるせえな、好きで来たわけじゃねえよ、近藤さんを連れ戻しに来たんだけだっつーの、全く副長は大変だねぇ、どっかの暇なチャイナ娘と違ってダラダラと無駄な時間を費やす事も出来やしねえ」
「んだとコラァァァァ!!」
「副長? あれ? 確か真撰組の副長って土方さんでしたよね?」
「土方? そんなダッセー名前をした奴なんてウチの隊にはいねえな」
「いやいましたよね・・・・・・? 真撰組の副長と言ったら土方さんですよね近藤さん?」
「ク、クソ~・・・・・・・ほ、本当の事なのに誰も信じてくれない・・・・・・・」
「まだあんた引きずってんですか・・・・・・いきなり泣かれてもイタイだけですから止めて下さいよ」

新八に疑問を問いかけられた近藤はというと、畳の上で寝っ転がり嗚咽をしながら涙を流していた。そんな姿に新八は哀れみを入れながら彼を問いただす。

「土方さんの姿、最近見ないんですけどどうしたんですか?」
「ああ、トシは今急な任務でここを離れているんだ・・・・・・」 
「急な任務? 何かあったんですか?」

テンションの低い近藤の答えに新八が追求しようとすると、庭で神楽とメンチを切り合っていた沖田が会話に割って出てくる

「それは極秘事項でね、一般人のおたくらには教えられないんでさぁ、まあそのおかげで邪魔者が消えちまいしてね、そいつの代わりに今は“俺が”近藤さんの右腕をやってるって話、ほら近藤さん帰りますよ、松平のとっつぁんがもうすぐ“元副長”の持ってる転送装置と通信するらしいですから俺達も行かないと」
「そうだな・・・・・・・ここにいてもお妙さん達に引かれるだけだし屯所に戻るとするか・・・・・・」

沖田に言われて仕方なく立ちあがった近藤は靴を履いてトボトボと庭に出る。彼の背中を見てるとこっちも泣きたくなる、新八はそんな事を思っていると、沖田がふとこっちに振り返って口を開く。

「新八君、旦那はまだ見つかってないようだねぇ? あの人がいないとこの江戸も少し退屈だから早急に見つけといて上げるから」
「でも最後の目撃者は突然消えてしまったと言ってるんですよ・・・・・・?」
「突然消えちまった・・・・・・ねぇ・・・・・・」

新八の証言を聞いて沖田は目を細めながら顎に手を当てて考える仕種をした後、ふと隣に立っている近藤に向かって喋り出す

「近藤さん、“あの事件”って確か少数ですが一般人も巻き込まれてましたよね?」
「え? ああそうだな、確かに一般人からも行方不明者の捜索願いがここん所よく来てる」
「もしかしたら旦那もそれに・・・・・・」
「あり得えない事もない、つくづくトラブルに巻き込まれる奴だしなあいつは」
「二人共何か知ってるんですかッ!?」
「いやこればっかりはアンタ等にも話せない事なんでね、じゃあ失敬」
「ちょっと待って下さいよッ!」

新八が彼等が何らかの事情を知っているのではないかと呼び止めようとするが、沖田は手を振って去って行く。代わりに近藤が振り返り歯を見せて二カッと笑う

「新八君、万事屋の野郎は俺達が全力で探してあげるから、そのお礼として俺とお妙さんのフォーリンラブを祝福・・・・・・ふごッ!」
「さっさと二次元少女と結婚して火星へハネムーンに行きなさい、そしてそのまま地球に帰ってこないでね」

近藤が何か言おうとしたその時、笑顔を浮かべながらお妙が投げた灰皿が彼の顔面に直撃。そのまま倒れた近藤を沖田はやれやれと引きずって帰って行った。
彼等が去った後、朝飯を食べ終えた神楽が新八の方へ話しかける

「あいつ等絶対何か知ってるアルッ!」
「長い付き合いの僕らにも話せない事って何だろ・・・・・・? 土方さんも出張するほどの事件か・・・・・・もしかしたら銀さんはその事件に?」
「興味深いわね、真撰組の内部・・・・・・調べてみた方がよさそうね」
「お願いしますさっちゃんさん、ていうか人の朝食勝手に食わないで下さい」

勝手に朝飯の納豆を食べているさっちゃんに新八は頼むようにお辞儀する。くの一の彼女から見れば真撰組の屯所に潜り込むのも容易い筈だ

「向こう(幕府)はあまり敵に回したくないけど、銀さんの為ならたとえ幕府相手だろうが恐くないわ、あなた達も何かあったら私に教えなさい」
「ありがとうアルさっちゃんッ!」
「あなた達からお礼を貰っても全然嬉しくないわ、私は銀さんを見つける事さえ出来れば何も望まないのよ、それじゃあ」

そう言って出てきた所と同じ天井の穴からシュッと飛びあがって消えるさっちゃん、彼女がいなくなった部屋で新八と神楽も身支度を始める。

「じゃあ姉上、まだバイトの時間じゃないので僕等は“あそこ”へ行ってきます」
「待つアル新八、私も行くヨ、もしかしたら銀ちゃん帰ってるかもしれないネ」
「気を付けてね、もし銀さんを見つけてきたらここに連れて来なさい、思いっきりぶん殴ってやりたいから」
「はい」
「あんの天パ見つけたらタダじゃ済まさないアルッ! じゃあ私は着替えてくるから待ってるヨ、覗くんじゃねえぞスケベメガネ」
「“全く”覗く気無いから安心して」

新八は姉に頷いて神楽は歯ぎしりしながら拳を鳴らした後着替える為に一旦部屋に戻り、新八は玄関へと向かった。
二人がいなくなり一人ぼっちになった居間でお妙は頬杖を突いてポツリと呟く

「こんなにみんなに心配されてる人なんて滅多にいないわよ、本当にバカな人・・・・・・」

これはかぶき町のヒーロー『坂田銀時』が姿を消して数カ月経った後の世界の話である。



















































第三十訓 主人公のいない世界なんてのりの無いのり弁と同じ

新八と神楽が銀時の行方を求めて向かった場所、それは彼がそこで生活して仕事などを行っていた二人にはお馴染みの場所だ。

「銀さ~ん、帰ってます~? まあどうせいないと思うけど」
「出てこいヨ天パ~ヒロインの私はここアルよ~」

ガララと障子を開けて新八と神楽は家の中に上がり込み銀時を呼ぶが返事は返ってこない。
『万事屋銀ちゃん』それが銀時が営んでいた商売で、彼はこの家で生活と共になんでも屋をやっていたのだが、やはり今は人の気配は無い。あんなに賑やかだった家が家主のいないとこんなにも静かなのかと新八が実感していると、神楽が居間の方へ行って彼の名を叫んでいる。

「銀ちゃ~ん」
「神楽ちゃん、銀さんはここに帰って来て無いと思うよ」
「銀ちゃ~ん」
「いやあのね神楽ちゃん? 銀さんそんな所に入らないから・・・・・・」

新八が居間へと入ってみるとゴミ箱の中を漁りながら銀時を呼ぶ神楽の姿が、普通に考えてそんな所にいるわけ無いと思うのだが

「う~ん、寝室にもやっぱりいないね、今日も帰ってくる気ゼロか、本当あの人何やってるんだろ・・・・・・・」
「銀ちゃ~ん」
「神楽ちゃん、机の引き出しの中に銀さんがいたら恐いから、その中に入れるのって恐らくドラえもんしかいないから」
「ドラえもんはいなかったけど、エロ本が入ってたアル」
「コラァァァァ!! 女の子がそんなの見ちゃ駄目ェェェェ!!!」

銀時がいつも寝ている居間のとなりにある寝室を開けて確認していた新八だが、居間にある銀時の机の引き出しを開けて数冊のエロ本を持っている神楽に慌てて注意して走り寄る。

「何考えてんだあのバカはッ! 女の子が住んでる家でエロ本をこんな簡単な所に隠すなんて不用心極まりないよッ!」
「失礼します、銀時様はおりませんか?」
「あれあの声は・・・・・・?」

神楽からひったくったエロ本を元の場所に新八が戻していると、玄関から女性の声が聞こえる。しばらくして障子が開いて声の主が現れた。

「すみません銀時様は御在宅でしょうか?」
「タマ何しに来たアルか? 銀ちゃんならまだ帰って来て無いヨ」
「そうですか、今月分と先月分とそのまた先月分の家賃の回収を済ませていないのに困りました」

着物を着て妙に礼儀正しい口調をする彼女の名は『たま』。分け合って今は一階にある『スナックお登勢』で住みこみで働いており、からくりでありながら人間の様に感情を持つ機械人形だ。

「たまさん、やっぱり銀さんは帰って来てないんですか?」
「はい、ここの所全く姿を現さないのでお登勢様がそろそろ二階を空き家にしようかと考えています」
「え・・・・・・マジですかそれ・・・・・・・?」
「マジです」

淡々と喋るたまに新八の表情は凍りついた。ここが空き家になる・・・・・・・と言う事は

「ヤバいアル新八ッ! このままじゃ私達の万事屋が無くなっちゃうヨッ!!」
「たまさん一階に行ってお登勢さん呼んできてッ! 銀さんは必ず僕等が見つけるから少しの間待ってくれってッ!」
「お登勢様は現在亡くなった旦那様の墓参りに行っておりますので外出中です、今ここににいるのは」
「私ヲ呼ンダカ? ガキ共?」
「呼んでねえよッ! 何でこのタイミングで出てくるんだよアンタがッ!」

突然たまの後ろから優雅にタバコをくわえながらやってきた中年のネコ耳というなんともアンバランスな見た目とカタコトで喋る女性。たまと同じく一階で働いているキャサリンだ。彼女はふてぶてしい態度で新八達に胸を張ってポーズを決める。

「私ヲ呼ブ声ガ聞コエタカラニ決マッテンダロ」
「いやだから誰も呼んでないからッ!」
「オ前等ジャネエヨ、読者ノガキ共ガ私ヲ呼ンデタンダヨ」
「誰もあんたの登場なんて期待してねえよッ!」
「ウルサイ奴デスネ、オ前ノ登場ダッテ誰カラモ期待サレテネエヨ」
「僕が一番気にしてる事言うなァァァァ!! 少なくともお前よりは人気高いよッ!」

キャサリンに指さして大声で新八がツッコんでいるにも関わらず神楽はそんな二人を置いてたまに向かって懇願する。

「タマ~あのババァに頼んでくれないアルか? もし銀ちゃんが帰って来てもこの家が無かったらあのダメ人間ホームレスになっちゃうヨ~」
「私も銀時様がホームレスになってしまうのは悲しいです、けどこのままあの方が帰ってこなかったら検討するとお登勢様は考えております」
「あんのババァ~血も涙も無い奴アル・・・・・・・」

神楽が今は何処かに行ってしまっているスナックのママに怒りを燃やしているとカンカンと階段を上ってくる音が聞こえた。

「お~いみんな~銀さん帰って来てるかな?」

陽気そうにやってきたのはグラサンとラフすぎる服装が特徴的な男
長谷川泰三、別名『マダオ』(まるでダメなオッサンの略)だ。ちなみに銀時と最後に会っていたのは彼である。
長谷川が来た途端慌てて神楽と新八が詰め寄る。

「マダオッ! 大変アルッ! 私達の万事屋がピンチアルッ!」
「ピンチっていつもピンチだよねここ、むしろピンチじゃないのがおかしいぐらいじゃん」
「今回はいつものピンチじゃないんですッ! 早く銀さんを見つけないとこの部屋売られちゃうんですよッ!」
「えええッ! じゃあ俺代わりにここで住んでいいッ!?」
「フンッ!」
「おぶッ!」

長谷川が何か言う前に神楽が彼の腹に向かって鉄拳制裁。彼の表情が一気に歪む。

「お前は一生公園で住んでろヨ、ホームレス」
「お、俺だって屋根のある家に住む権限ぐらいあるじゃん・・・・・・」
「長谷川さんの場合それに素直に頷いて良いのか悩みます」

多くの貸し家で家賃を踏み倒している長谷川はこのかぶき町のブラックリストに入っており、その為日々公園でのホームレス生活を余儀なくされているのだが、自業自得なので(元をたどればここまで彼が堕ちた原因は銀時にあるのだが)新八と神楽は全く同情する気は無い。

「ところで長谷川さんは何でここに来たんですか?」
「いや~銀さん帰って来てるかなと思ってさ、やっぱりまだ行方知れずなの?」
「残念ながらまだ捜索中です・・・・・・長谷川さんが最後に銀さんと一緒にいたんですよね? 銀さんの周りで何か変わった事とかありませんでしたか?」

新八からの質問に長谷川は「う~ん」と顎に手を当て首を傾げる。彼が銀時と最後にいたのはかぶき町にあるパチンコ店で、どういうわけか気が付いたら彼の姿が無かったという何とも不思議な出来事だった。その事自体“変わった事”なのでやはり長谷川は申し訳なさそうに首を振る。

「悪いな全然わかんねえんだ、なんせいきなりあの人消えちまってさ」
「そうですか・・・・・・そもそも人が突然消えるなんてありえるんですかね・・・・・・?」
「さあな、俺は体験した出来事をありのままに話しただけだ、じゃあな、ハァ~銀さんとまた一緒に飲みに行きてえな~」
「銀時様がいないとこのかぶき町も少し寂しいです、早く帰って来て欲しいと願っています」
「アイツガイナイト何カ物足リナイ気ガシマス、認メタクネエケドヨ」

そう言って長谷川とたま、キャサリンは階段を下りて帰って行った。
残された新八と神楽も彼等が今でも銀時の帰りを待っている事に嬉しいのと悲しいという感情が入り混じる。

「やっぱりみんな銀さんの事心配してるんだね・・・・・・日頃から憎まれ口叩かれても銀さんはこのかぶき町には欠かせない存在なんだ」
「何で銀ちゃんこんなに好かれてるのに消えちゃったアルか・・・・・・?」

障子にもたれて神楽は天を仰ぎながらポツリと疑問を抱く。しかしその答えを新八は知らない、だがもしかしたら彼等は・・・・・・・

「“あの人達”は知っているのかも・・・・・・あの二人、さっきちょっとおかしかったし・・・・・・」
「ゴリとサドアルか?」
「うん、沖田さんが言ってた僕達にも言えない事件、それに銀さんが関与してるのかもしれない、少なくとも真撰組は僕等よりずっと情報収集は早い筈だし」
「マジアルかッ!? じゃあ私ちょっとあいつ等の所行って洗いざらい吐かしに行くネッ!」
「え? いやちょっと待ってよッ!」

神楽は自慢の常に持ち歩いている日傘を持って、真撰組屯所に殴りこみに行こうとするが、それを新八が彼女を後ろから羽交い絞めにして止める。

「まだそうと決まってわけじゃないからッ! それにいきなり乱入して暴れたら危ないってッ! 向こうは警察だよッ!?」
「離すアル新八ッ! 私は私の思うがままに行動するネッ! 国家の犬なんて知るかァァァァ!!」
「落ち着いて神楽ちゃんッ! 君が言ってる事はカッコいいと思うけど、それかなり自分勝手な人の意見だからッ! 銀さんと同じ思考回路だからッ!」

新八が神楽に訴えながら止めようとするも、宇宙最強民族の一人『夜兎』の血が流れている彼女は見かけによらず腕力は並大抵のレベルではない。
神楽が彼の羽交い締めから逃れるのも時間の問題だと思っていた矢先、再び誰かがここまで階段を上ってくる音が聞こえて二人はそちらに向いて一旦いざこざを止める。

「おまんら、何やってるけ?」
「あれ? あなたは・・・・・・」
「銀ちゃんの友達の部下だった奴ネ」

現れたのは土佐弁を使う一人の女性で、道中合羽に三度笠という女性が着るとは思えない侠客風の衣装。
彼女は三度傘を取って二人に軽く頭を下げた。

「あん時はウチのバカがお世話になったの、宇宙貿易団体『快援隊』の副官を務めている陸奥じゃ、今日はまたどっか行ったウチの大将をちょっと探しに来たじゃが、ここにおるか?」

前に出会った時のようにいつものポーカフェイスで彼女はジッと二人を見た。





























突然やってきた宇宙貿易団体の快援隊の副官を務める陸奥、とりあえず彼女を家主のいない万事屋に入れて新八は、ソファに腰掛ける彼女にお茶を差しだして万事屋の事情を話しだした

「ほう、おんしらの“大将”もいなくなったのか」
「そうなんです、だから今依頼が出来る状況じゃなくて・・・・・・・陸奥さんは何か知ってますか?」
「知ってるわけなかろう、わしはほとんどこの星には戻る事は無いんじゃ、この星の情勢は全くわからん最後に知った情報は楽天の野村監督が退任する事ぐらいじゃな」
「結構最近の情報じゃないですかそれ、今年の野球界で起こってる事じゃないですか」

お茶を飲みながら話しだす陸奥に対して新八も同じくお茶を飲みながらツッコんでいると、新八の隣に座っていた神楽が煎餅をバリバリ食べながら(数ヶ月前からここに置いてあった煎餅)陸奥に話しかける

「ところであの黒モジャの空っぽアタマはどうしていなくなったアルか?」
「ああ、ちょっと里帰りしてくると言って勝手に小型宇宙船に乗っていなくなってしもうての、まああのバカの故郷は地球なのは当然じゃし、幼馴染のいるここにいると思うて来たんじゃが・・・・・・おんしらの口振りからして大将に会ってないようじゃな」
「見てないですね・・・・・・もしかして坂本さんも銀さんのように・・・・・・」
「銀ちゃんとヅラと黒モジャ、ダメ人間ばっか消えてるアル」
「何じゃ『ダメ人間補完計画』でもやっとるけ?」
「いや確かに三人ともダメ人間ですけど、やる意味が全く無いですよねそれ」

神楽と陸奥の会話に口を挟んで新八は持っていたお茶を飲み干す。
空になった茶碗をテーブルに置いて新八はふと考えてみた。

「でもあの三人がいなくなるなんてな・・・・・・やっぱり近藤さん達に聞かなきゃわかんないかも」
「よしじゃあ私行って来るネッ!」
「あ~ごめん神楽ちゃん、今から近藤さん達に会いに行くのは僕無理なんだよね・・・・・・もうすぐバイトの時間だからさ、後日真相を聞きに行こうよ」
「それなら私だけでも行ってくるアルッ!」
「君一人で言ったら間違いなく暴力沙汰になるから止めてね、だからさっき僕止めたんだから」

腕をブンブン振り回しながら血気盛んな神楽に新八は疎めながら立ち上がり、帰る支度をする。バイトの時間が刻々と迫っていたのだ。

「じゃあ神楽ちゃん一人で屯所に殴りこもうとか考えないでよね、あと陸奥さんもすみません力になれなくて・・・・・・」

新八は陸奥の方へ向いてペコリと頭を下げるが、彼女は気にしてない様子で頬をポリポリと掻く

「別に謝らんでもよか、おんしらもわしと同じ境遇じゃしな、わしはしばらくこの辺で滞在してあの男の捜索するきん、お互い何かわかったら情報を提供しようかの」
「世話のかかる上司がいると大変ですね・・・・・・」
「全くじゃな」

そう言ってため息をつき陸奥は立ち上がり万事屋から出て行く。去り際に彼女は障子を開けながら二人の方へ振り返った。

「あの二人は殺しても死なん奴らじゃけ、きっと何処かでヘラヘラ笑いながらフラフラしとる筈じゃし心配せんでよか」
「大丈夫です命の心配はしてませんよ、銀さんは不死身ですから」
「あのマダオ(まるでダメな大人)がいないと万事屋が再開できないからそっちの方がずっと心配アル」
「ほう、余計なお世話だったようじゃの、まあお互いダメ人間の捜索を頑張ろか」

新八と神楽の言い分を聞いて陸奥は少し笑ったような表情をし、三度傘を被って万事屋を後にした。それを見送った新八も後に続くように万事屋から出て行く準備をする。

「じゃあ僕もバイトに行って来るよ、神楽ちゃんはどうする? 一人で真撰組に殴りこみに行っちゃ駄目だからね」
「しつこいネ、私はアネゴの所に一旦戻って定春を連れて銀ちゃん探しをやるヨ、それでいんだろこの不人気メガネ」
「不人気メガネって何ッ!? その言い方グサリとくるから止めてくんないッ!?」

去り際にツッコんでくる新八に神楽はめんどくさそうに鼻をほじりながら彼の方へ向く

「お前の代わりなんていくらでもいるんだヨ、銀ちゃんもお前がいなくてもきっと何処かで代わりのツッコミ担当作ってるネ」
「いるわけないじゃんッ! 僕の代わりが務まるツッコミなんか存在しないよッ! いたら僕が全身全霊をもって血祭りにするよッ!! 初代ツッコミ隊長の座は誰にも渡さないよッ!!!」

新八は心の底から叫びながらピシャリと障子を閉めてバイトへ向かって行った。
しばらくして残された神楽も志村家の所へ戻るかと腰を上げる。そして玄関まで歩いて行くと再び後ろに振り返ってかつて銀時が住んでいた部屋を見渡す。

「絶対ここは銀ちゃん以外に渡さないネ」

そう決意を表明するように呟いた神楽はいつも持っている日傘を差し、眩しく輝く太陽の下をズンズンと歩いて行くのであった。




























































「悪いねこの頃忙しくて寄れなかったよ」

墓地にある一つの墓に向かって話しかけるのは50代ぐらいの着物を着た女性、その名もお登勢。
『スナックお登勢』のオーナーであり坂田銀時の理解者でもある彼女は亡くなっている夫の墓参りに来ているのだ。
タバコを咥えながらお登勢は再び口を開く、

「実はアンタの代わりに私を護るとか言ってた奴が急に消えちまってね、“あんな事”言っておいて雲隠れしちまうなんて全く・・・・・・せめて溜めていた家賃払って消えて欲しかったよ」

煙を吐きながら悪態をついているとお登勢はふとある事を思い出した。

「そういえばあいつが住む前にいた二人もどっかいっちまってたね、そろそろ6年か・・・・・長いもんだ」

銀時が住んでいた家には6年前まである事情で住んでいた二人の男女がいた。二人は夫婦であり管理人のお登勢とも交流が深かったのだが、ある日を境に突然消えてしまったのだ。
 
「夫の方は死んでいてもいいが、女房の方は無事であって欲しいねあんなによく出来た子は滅多にいないよ」

そんな事を墓に向かって愚痴っているとザッザッと砂利の上を歩きながらこちらに向かってくる足音。しゃがみ込んでいたお登勢は後ろへ振り向かず、自分の背後で足音を止めた人物に話しかけた

「こんな時間に私以外に墓参りする奴がいるなんて珍しいね」
「別に墓参りにした来たわけじゃねえよ、あんたの店に言ったらあんたがここで旦那の墓参りしてるって聞いて来たんだよ」

若い男性の声でしかも何処か馴れ馴れしい口調で話しかけてくる。しかしお登勢はその声に何処か懐かしげなモノを感じていた。
そう、この声は・・・・・・・

「今まで何処行ってたんだい?」
「ああ、ちょっと面倒な目に合わせられてな、ったくあのハゲもっと早く助けに来いよ・・・・・・ところで俺の“カミさん”見た?」
「アンタの女房に会ったのは6年前で最後だよ、それからは一度も会ってない」
「そうか・・・・・・姫さんどっか行っちまったのか・・・・・・」

男がボソリと呟くような声にお登勢は後ろに振り返らずにフゥ~と口からタバコの煙を吐く。

「何だい愛想尽かされて逃げられたのかい?」
「ざけんなクソババァ、確かに何度も離縁の危機はあったけどまだ大丈夫な筈だ、ていうかそうであって欲しい、そうじゃねえと泣く」
「ふ、減らず口は相変わらずの様だね」

昔と変わらない性格にお登勢は安心したのか鼻で笑う。しばらくして男は彼女に背後を見せて再び何処かへ歩いて行く。それに気付いたお登勢は立ち上がって初めて後ろに振り返る。

「今度は何処行くんだい?・・・・・・・ナギ」
「あ? 決まってんだろ?」

お登勢に呼ばれた男はバッと振り返る。彼女の目の前にいるのは6年前と変わらない姿で笑いかけてきた、こんな季節にもローブを着ている赤髪の男・・・・・・・

「姫さん探す前に糖分接種だ」

伝説の魔法使いナギ・スプリングフィールドがついに江戸へ戻ってきた。











































教えて銀八先生!

銀八「え~まずは一通目q-tureさんの質問」

銀さんに質問です。
これまでの質問でスポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋と来ましたが、銀さんなら次に何が来るかもう予想はついてますよね?
そう!GSの秋です!
GSの皆さんは今年はどんな新技を試しましたか?
自分は学園長を水槽に沈めて笑い死にさせる天才マン方式(難易度AA)に挑戦してみるつもりです

銀八「懐かしいですね『ラッキーマン』に出てくる天才マン、ああいうキャラって中々忘れられませんよね~」
千雨「ここで懐かしむなよ」
銀八「先生は新技覚えてませんが、最近ジジィがいつも履いてる下駄を『努力マン』が使ってた鉄下駄にすり替えるとかやってます」
学園長「最近足がいう事きかねえなっと思ってたらお前のせいじゃったのかッ!!」
千雨「いやアンタもさっさと気付けよッ!!」


銀八「二通目ウィルさんの質問」

今回は千雨に。銀さんを嫌ってる(現在はそうでもなさそう)夕映とは今でも仲が悪いんですか?

千雨「悪い、未だに銀八の事以外で口げんかする事がある」
あやか「基本銀さん派と土方さん派は仲悪いですのよね?」
エヴァ「私も桜咲刹那とはお互い死んでくれって思ってるからな」
あやか「あら私達もうかうかしてられませんわね、のどかさん」
のどか「何でッ!?」


銀八「三通目ノリさんの質問」

下位クエでも理不尽判定でメンドイガノトトス並にウザい土方に質問です。
今さらですがGTOの番外編が始まりましたよね?マガジンのヤンキー物が好きなアンタはやっぱり嬉しい?(いや、俺も嬉しいけどさ…)とりあえずマヨネーズ何本分かで答えてくだせぇ

土方「その前にガノトトス並にウザいってどういう事だコラッ! ったく・・・・・・まあ悪くねえなマヨネーズ数百本分だ、GTOを全巻コンプリートしてるぐらい好きな俺にはたまらなかったぜ、」
沖田「ああ、土方さんが異世界行ってる間に俺がブックオフに売っときましたよ」
土方「オイィィィィィィ!! 俺の魂を勝手に売ってんじゃねえぇぇぇぇぇ!!」
沖田「安心して下さい土方さん、その代わりに俺が好きな『けいおん!』の漫画が売ってたんで置いときましたから」
土方「いらねえよッ!! つーかお前いつそんなモン好きになってんだよッ!」
沖田「いいですかぃ土方さん、あれに出てくるメス共を見てるとね・・・・・・すげー調教したくなるんですよ・・・・・・」
土方「お前いい加減に女を調教対象にするの止めろッ!!」



銀八「四通目蛙さんの質問」

まき絵に質問。まき絵は万事屋に入るの?
この前、新聞に「『私の活躍の場は万事屋しかない!』移籍希望の佐々木まき絵、万事屋入り秒読み段階へ!?」「エヴァンジェリン、万事屋からの戦力外通告!近く退団、新たな移籍先探しへ」とありました。

エヴァ「貴様私のポジションを奪おうとしてるのかッ!?」
まき絵「入らない入らない入らないッ! 絶対入らないッ!!」
銀八「最近お前人気高いね、こりゃあファンに応えてお前を正式に・・・・・・」
まき絵「すみません勘弁して下さいッ! これ以上酷くなりたくないんでッ!!」



銀八「五通目とびかげさんの質問」

銀八先生へ質問
以前質問で悪魔の実でぬらりひょん殺しの話がありましたがスクライドだと何がいいですか知ってたら答えてください。
個人的には音速の蹴りをかましたいです。
速さは文化です

銀八「そりゃあもちろん『シェルブリット・バースト』とかゼロ距離からぶちかましてやりたいです」
土方「スクライドか、真田幸村を思い出すぜ・・・・・・」
銀八「・・・・・・あながち間違えてはねえな」


銀八「六通目正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
幻想郷にいる地獄の最高裁判長のこと四季映姫に会いましたか?もしも会ったのなら映姫の能力『白黒はっきりつける程度の能力』でなんて白黒判断されたんですか?(白は仙人、黒は妖怪)

学園長「う~ん白かと思ったんじゃが何故か灰色じゃった・・・・・・・」
銀八「お前それ仙人でも妖怪でもない未知の生命体Xと認識されたんじゃねえか?」
学園長「いやそこで普通人間だという認識にならね?」
銀八「なるわけねえだろ」
学園長「んだよもう転生でもしようかな~・・・・・・・」



銀八「七通目はきさんの質問」

新田先生に質問
ぬらりひょんを恨んでるみたいですが、過去にどんな因縁があり、今までどんな抹殺計画を(組織単位で)建てましたか教えてください。(あとその組織の規模についても)

新田「短絡に言うと学園長が給料上げないとか、ウザいとか、休みくれないとか、ウザいとか、仕事しないとか、ウザいとか色々あるんだがね」
学園長「所々「ウザい」って言うの止めてくんない?」
新田「坂田先生に会うまでは抹殺計画とかはやって無かったが、今では日々遊んでやってるよ」
学園長「そろそろ解雇にしてやろうか」


銀八「八通目サハリンさんの質問」

ネギに質問
どうして銀ちゃんと一緒に糞ジジィを虐め(殺さ)ないんですか?した方が後の自分のためになりますよ。

ネギ「いえ殺しても何の得にもなりませんからッ!!」
学園長「違う違うッ! そのツッコミ間違ってるよネギくぅぅぅんッ!!!」
銀八「まあガキには見せられない光景だからな“俺達のシメ方”は」
ネギ「ああじゃあ参考にしたいので今度見に行きますね」
銀八「いや何の参考?」
ネギ「ちょっと殺したい黒モジャがいるので」
銀八「黒モジャって何・・・・・・・?」


銀八「・・・・・・・気を取り直して九通目、志翼さんの初質問」

銀さんに質問
あのデッキ(外伝Ⅱのおまけにて)「インフェルニティ・デストロイヤー」や「終焉の焔」などは高く、意外とお金かかってそうですが、
デッキを作った月は糖分やジャンプ買ったりできましたか?

銀八「大丈夫です、全部鬼柳からの貰いモンなんで」
千雨「誰だよッ!!」
銀八「遊戯王のキャラに決まってんだろうが、そして俺のダチだ」
千雨「何でネギまのキャラでもない銀魂のキャラでもない奴と交流してんだよッ!!」
遊星「『絆』の力があれば世界の壁なんて問題無いッ!!」
千雨「いやアンタ誰ッ!?」


銀八「十通目風の都さんの質問」

あやかさんへ
「先生にイジメられてるよ~プロレス技かけられたよ~ いいんちょ、助けてよ~」と、まき絵ちゃんが泣きながら相談に来ました。
あやかさんは、どのように受け答えしますか?

あやか「「そんな弱音を吐く人は佐々木まき絵失格です」と言って銀さんに突き返しました」
千雨「ひでぇな・・・・・・」
まき絵「その後先生に「プロレス技がイヤなら柔道技にしてやるよ」って背負い投げループにされました・・・・・・」
銀八「後半なんてお前泡吹いてたもんな」
千雨「いや本当にひでぇな・・・・・・・」


銀八「十一通目からなさんの質問」

銀さんに質問です!
ちょっと前のジャンプで、銀さんたちが猫になる話があったじゃないですか。
もし、三人が動物になったらとしたら、予想としては
あやか→牛(乳的な意味で)
エヴァ→猫(名前的な意味で)
千雨→メガネ(特長的な意味で)
だと思うんですけど、やっぱ銀さんはそんな三人を飼いならしたい、気分になったりするんですか?
教えて銀八先生!

銀八「なりません」
エヴァ「猫になった私はさぞカワイイだろうな」
銀八「性格もそのままなら間違いなくペットショップに売りつけるな」
あやか「わ、私の乳絞りとか・・・・・・・」
銀八「やらないから、何か色々と危険なにおいするから絶対にやらないから」
千雨「ていうか何で私だけ生き物じゃねえんだよ・・・・・・・」
銀八「そもそもどうやってメガネ飼いならすのか教えてくれ」


銀八「十二通目エンジンさんの質問」

エヴァ・銀さん・あやか・千雨で依頼の打ち上げを何ヶ月か1回にする際にはやはり超包子でやるんですか?二次会はカラオケとか。(笑)あんまり報酬も多くないだろうし、財政的にもそれが無難かと思いまして

銀八「基本決まってません、よく行ってるファミレスとかさっちゃんの店とか、ウチとか基本安いかタダの所でしかそういうのやりません」
エヴァ「相変わらず金が無いんだなお前は・・・・・・いきなりズカズカとあいつ等を私の家に上がり込ませるの止めてくれないか?」
銀八「いいだろ一日中ヒマだろお前は、友達一人もいねえんだから」
あやか「エヴァさん教えて上げましょうか友達作るコツ? まずその性根の悪い性格を叩き直しなさい」
エヴァ「お前にだけは言われたくないコツだなこの性悪泥棒猫め・・・・・・」
あやか「どっちが泥棒猫ですか、今日こそ色々とキッチリ話しあいましょうか?」
エヴァ「望む所だ」
銀八「なんだかんだでお前等って結構仲良くね?」


銀八「十三通目白夜叉さんの質問」

銀さんは京都に着いたら、舞妓モノのポルノと女教師モノのポルノ、どっちを見に行きますか?

銀八「どっちも捨てがたいな・・・・・・」
しずな「あら坂田先生、何悩んでるんですか?」
銀八「しずな先生・・・・・・よし女教師で行こう」
千雨「本当わかりやすい性格だよなお前って・・・・・・」


銀八「ラスト十四通目オレの「自動追尾弾」さんの質問」

ハカセに質問
洞爺湖の「醤油発射機能」、ネギの杖にもつける予定はあるんですか?

葉加瀬「貸してくれれば是非ッ!」
ネギ「イヤですよッ! ていうか何で醤油なんですかッ!?」
葉加瀬「じゃあソースにする?」
ネギ「そういう問題じゃありませんからッ!!」
土方「マヨネーズが出る刀・・・・・・おいそこのメガネ、ちょっと話があるんだが」
刹那「それやったら部屋から追い出しますからね土方さん」









次回、第三十一訓・かぶき町編『ダメ人間の代わりなんてダメ人間で十分なんじゃね?』に続く






[7093] 第三十一訓 ダメ人間の代わりなんてダメ人間で十分なんじゃね?
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/11/15 00:17
志村新八の行っているバイトはとある小さな飲食店だ。学歴が寺子屋中退の新八にとってはこんな店ぐらいしか雇ってくれる者はおらず、彼は黙々と仕事を行っていた。
しかし

「だからバカおめえ違うつってんだろうがッ! それじゃねーよッ! それ領収書出す奴だろうがッ!!」
「え? じゃあこれですか?」
「それも違えよッ! 何でそこで『清算』押すんだよッ! ワザとやってんのッ!? いい加減にしねえと殺すぞコラッ!」
「すみません・・・・・・」

レジ打ちを教えている店長から罵声を送られながら新八は頭を下げて謝る。雇って二週間ぐらい経つのだが、何やっても一般業務が出来ない新八に日に日に店長のイライラは頂点に達してきた。

「オメー今時レジ打ちなんてチンパンジーでもゴリラでも出来るよッ!? オメー人間じゃんッ! 何でこんな簡単な事やれねえんだよッ! 猿以下じゃねえかッ!」
「す、すみません・・・・・・昔万事屋とかやってたんですけど・・・・・・」
「だったらそのスキル活かせやこのエテ公以下のドブネズミッ!!」
「ぐはッ!」

ついに完全にブチ切れて新八の顔面を思いっきり殴りつける店長。衝撃で倒れた新八は殴られた頬を片方の手でさすりながら、もう片方の手で飛んでしまったメガネを拾って付け直した。

「こちとらテメェみたいな使えねえカスをクビにしても何も困らねえんだぞオイッ! 履歴書に『万事屋やってました』とか『剣術やってました』って真面目に書く奴は本当マシな奴いないのッ!? 剣なんてとっくの昔に滅んでんだよッ! それをまだ侍気どりですかユーはッ!?」
「おいもういいだろ店長よ、なあそこのメガネを付けた少年、レジはいいからさお茶持ってきてくんない?」
「あ、ヘイただいま」

新八と店長のやり取りをさっきまで見ていた客の一人が新八に向かって注文してくるので、彼は慌ててお茶を持って行く準備する。
客は男性でかなり豪勢な服装とサングラスと付けていてこんな店に来る客とは思えない姿だ。でかい顔と体にありとあらゆる場所に光り物を付けている所を見て、かなりの成金なのがうかがえる。
そんな客に店長はさっきの行いから急変して急にペコペコしだした。

「兵藤の坊っちゃん甘やかしちゃダメですよ~最近のガキはこんな風に叩きつけないと何も覚えやしねえんですから~」
「なんつーかあの少年があまりにも哀れに見えちゃってな、俺みたいな『勝ち組』と違って『負け組』は日々の生活を生きるのにでさえ必死だ。あんな姿を見ると思わず助けたくなるのが人間の性って奴さ」
「いや~さすが『帝愛グループ』のご子息は立派な考えを持ってますな~、それにしてもどうしてあんな大企業の二代目がこんなちっぽけな店に来たんですかぃ?」
「クックック・・・・・・決まってんだろ」
「お茶持ってきました~」

店長の疑問に客が歯を出してニンマリ笑っていると、新八がお盆に一杯の茶碗を乗せて戻ってきた。だがその客は近づいてきた新八に足をスッと出して

「うわッ!」

その足につまづいた新八が思いっきり転んでしまい別の客のテーブルにそのまま顔面をぶつけてしまう。そんな彼の姿に大富豪の客はゲラゲラ笑う

「こうやって小さな店に寄って下々の“可哀想な姿”を見てるとよ、つい“ちょっかい”かけたくなっちゃうんだよね」
「ギャハハハッ! 坊っちゃん、さっき『あんな姿を見ると助けたくなるのが人間の性』って言ってませんでしたかいッ!?」
「ん~? 助けた後突き飛ばすのが面白いんだろ」
「ギャハハハハッ! さすが坊っちゃんだッ! おい新八何やってんだッ! お茶をこぼしたテメェが悪いんだからさっさと坊っちゃんに謝れよッ!!」 

店長は倒れている新八の髪を乱暴に引っ張って、大富豪の客の前に座らせて何度も彼の頭を床に叩きつける。
そんな新八の姿を見て金持ち息子は一層下品な笑い声を上げる。

(クソ・・・・・・これじゃあ昔と同じゃないか・・・・・・!!)

頭を床にこすりつけられながら新八は悔しそうに唇を噛む。

(今まで僕は銀さんに何を教えてもらってたんだッ! こんな奴の下でコキ使われる為に僕は生きていたのかッ!? こんなボンボンに見下される為に生きていたのかッ!? 僕は銀さんがいないと何もできない人間なのかッ!?)
「おい」
(え?)
「あん? お客さん今こっちは忙・・・・・・ガフゥゥゥゥ!!!」

新八をさっきまで床にこすりつけていた店長が叫び声を上げながら思いっきり後ろに吹っ飛ぶ、その光景を見て新八は奇妙なデジャブを感じた。

「(まさか・・・・・・)銀さんッ!」
「いや銀さんって誰?」
「あれ・・・・・・?」

あの男がやっと帰って来て、また自分助けに来たのかと思った新八は後ろに振り返るが。

そこにいたのはヨレヨレのローブを着た髪の赤い男。どうやらこの男が店長をぶん殴ったらしい。KOされた店長をよくみると顔に思いっきり拳の跡がついている。
そんな観察をしていた新八を尻目にその男はツカツカと金持ち息子の方に近寄る。

「テメェ等が騒ぎまくったおかげで、俺のストロベリーパフェがまるまるこぼれちまったじゃねえか、どう落とし前つけてくれるんだコラ?」

赤髪の男はケンカを売るように空になってしまったコップを金持ち息子の前に突き出す。だが相手はクックックとこんな状況で余裕そうに笑っている。

「こいつは悪かったパフェ代は俺が弁償させてもらうよ、いくらだい?」
「金はいいからパフェ出せよ」
「いやだから金出すからそれで・・・・・・」
「“今”パフェ食いてえんだよ、こちとら“長年寝てた”せいで糖分が無くてイライラしてんだ、同情するならパフェを出せ」

物凄い剣幕で赤髪の男は金持ち息子を睨んで、糖分切れでかなりイライラが溜まってるのがわかる。新八はその状況を心配そうに見ていたが、金持ち息子は残念そうにハァ~とため息ついた。

「惜しいな~あんた見たいな男嫌いじゃないんだが、金で解決出来ないならしょうがない、よっと」

金持ち息子が合図するかのように指でパチンと鳴らす。するとゾロゾロとサングラスを付けた黒服の男達が店内に入ってくるのだ、これには新八も慌てて後ずさりする。

「ちょいとこの赤髪の男にヤキ入れてくんねえかな? ヒヒ・・・・・・強気な態度のあんたが俺の前で血まみれになりながら土下座して許しを乞うのは何秒後かな?」

(なんていうサディストだ・・・・・・)

ゆっくり見物かのように椅子から立ち上がらずにニカニカ笑っている男に新八は恐怖を感じる。あの男の周りには常に用意できるボディーガードが何十人もいたのだ、しかも全員かなりの腕を持っているのは見た目で分かる。だが新八はそんな事よりもっと異様なものを見た。
そんな男達にあっという間に周り囲まれたにも関わらず、赤髪の男はニヤリと笑っているのだ。

「こっちは糖分切れてムカついてんだから、テメェ等どうなっても知らねえぞ」
「へ~こんな状況でもそんな事言えちゃうんだ、まあいいや・・・・・・・殺っちゃえ」
「ちょッ!」

男の非情な命令に新八が何か言おうとするが、その前に黒服の男達が一斉に赤髪の男に襲いかかる。あんな集団にリンチにされたら一巻の終わりだ、新八が息を呑んだその瞬間

突然雷でも降って来たかのような轟音と目も開けられないほどの閃光が黒服が囲んでいた場所から発生した。

「うわッ!」
「な、なんだッ!?」

新八と余裕気に座っていた男も思わずその一瞬の光に目をつぶって顔を手で覆い隠す。光が消えたので新八は恐る恐る目を開けてみると

「なんだ・・・・・・コレ・・・・・・」

目を開けてみるとそこには大量の黒服の男達が全員コゲて倒れている。しかもまるで全身に電気でも帯びたかのようにビリビリと小さな電流が走っている。
ふと見ると倒れた男達の中央には襲われる前と何も変わって無いあの赤髪の男がダルそうに欠伸をしていた。

「やっぱ久々にヤルと疲れるわ・・・・・・」

まさかこの現象を一瞬でやったのはあの赤髪の男だというのか・・・・・・・?

「あんたさっき何を・・・・・・・」
「すげぇ・・・・・・こいつはたまげた・・・・・・・こんな事が出来る人間がいるなんて、本当にすげぇ・・・・・・おいアンタッ!」

新八が赤髪の方に質問する前にさっきまで腰を抜かしていた金持ち息子が椅子から立ち上がって彼の方に走り寄って行く。その男の目はサングラスを付けていてもかなりランランと輝いているのがわかる、まるで欲しかったおもちゃを見つけた子供の様だ。

「今のどうやったッ!? もう一度やってくんねえかッ!?」
「・・・・・・」

近づいてきた男に赤髪の男は無言でただ不機嫌そうに睨む。だが男はそれを気にせずにコートからバッと小切手を出して彼に突き出す

「俺の所に来ないかッ!? 金ならたんまりあるこの小切手に好きな金額を書けッ! 俺の所に来れば毎日パフェ食い放題だぜッ!!」
「・・・・・・ふん」

男のいきなりの催促に赤髪の男は全く動じず彼が持っている小切手の方にスッと手を差しだす。
一瞬、彼の催促を受け取るのかと新八は思ったのだが

バキボキッ! と何が折れる鈍い音が店内に響いた。

「あ・・・・・・が・・・・・・」
「金じゃなくてパフェ出せつってんだろ、それと」
「お・・・・・・・お前・・・・・・・」
「俺はテメェみたいに金をビラビラ見せつける腐った野郎は・・・・・・ムカつくほど嫌いなんだよッ!!」
「ごほぉぉぉぉぉぉ!!!!」

赤髪の男の拳が思いっきり男の顔面にヒット。男の付けていたサングラスは空中で粉々になりそのまま後ろにある店のガラスの壁に頭から突っ込んで店の外に吹っ飛ぶ。
それを見た新八が慌てて店の外に出た男の方を見たが、さっきまで高らかに笑っていた男とは思えないほどの醜態で気絶していた、よくみると彼の左手は小切手を持ったまま指を何本か折られている。さっきの何かが折れる音は赤髪の男がこの男の指を折った音だったのだ

「おい」
「!!」

さっきから何人もの負傷者を出してるにも関わらず、赤髪の男はいたって普通な態度で新八の方に口を開く、それに頬を引きつらせながら新八はゆっくりと後ろに振り返る。

「な、なんでしょうか・・・・・・?」
「お前ここの店員だろ? パフェもう一個作ってくんね?」
「・・・・・・はい?」

一瞬新八は我が耳を疑った。この男はこんな状況でもまだ糖分摂取しようと考えているのか・・・・・・? しばらく新八がキョトンとしていると、店の外から悲鳴の声やざわざわと賑やかになっている事に気が付いた

「やばッ! 一般人の人達が集まって来たッ! あんたが暴れたおかげでマズイ事になっちゃたじゃないですかッ!」
「いや俺が悪いんじゃねえよ、俺の一時の幸せを奪ったこいつ等が悪いんだ、そして元々の原因はお前が俺のテーブルに突っ込んだせいだ、よってお前が悪い、俺は悪くない、OK?」
「全然OKじゃねえよッ! 100%アンタが悪いだろッ! とにかくここは一旦裏口から逃げましょうッ!」

責任転嫁して自分に指さしてくる赤髪の男に新八はツッコんだ後、彼の手を引っ張って自分の元から来ている服をロッカーから持って店の裏に回る、ヤジ馬達が騒いで来る前にさっさとここから逃げ出さなければ

「なんだって僕のバイト先にはアクシデントばかり起こす輩が毎回来るんだよチクショウッ!!」
「気にすんなよ、人間ってのはいい奴ばっかじゃねえんだ、ああいう奴だってこの世にいる、それが人生さ」
「アクシデント起こしたのはほとんど“アンタ”だろうがッ!」

店の裏口に出た新八は一緒にいる赤髪の男に向かってキレながら逃走を開始した。

「これでまた僕プータローに逆戻りだよッ! どうしてくれるんですかコレッ!? ていうか何者なんですかアンタッ!?」
「さっきからうるせえメガネだなその辺は言えねえんだよめんどくせえから、とりあえずさっさと逃げるぞ」
「ちょ、ちょっと待って下さいよッ!」

まるで滑るように走って行く赤髪の男に追いつこうと新八は必死に走る。

「せめて名前だけでも教えて下さいよッ!」
「ナギだよ」
「え?」
「ナギ・スプリングフィールド、最近ここで昔やってた『万事屋』を再開する予定、今後ともよろしくッ!」
「よ、万事屋って・・・・・・!!」

ナギと名乗った男が自分に笑いかけながら言った事に新八は一瞬唖然とした。
何故ならこのかぶき町で万事屋をやっていたのは他でもない自分達だからだ。








新八の中で止まっていた歯車が少しずつ動き始める












































第三十一訓 ダメ人間の代わりなんてダメ人間で十分なんじゃね?

かぶき町四天王が一人『スナックお登勢』のオーナーお登勢は旦那の墓参りに行った後店にまっすぐ戻っていた。
時刻はそろそろ夜なので店は開けており、お登勢はタバコを吸いながら客を待っていると、ガララと店の入口を開けて店内に誰かが入ってきた。誰かとお登勢がそちらを見ると、すぐにしかめっ面になる。

「また何かやらかしたのかい?」
「悪ぃ、ちょっといざこざ起こしちまったからここでかくまってくんね?」
「ったく、帰ってきて早々トラブル起こすって、あんたもそこぐらい改善しなよ」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・何でここに来たんですか?」

入ってきたのは涼しげな顔で入ってきたナギと、その後ろで彼とは対照的にゼーゼー息を荒げている飲食店の服装を着ている新八が後に続いた。お登勢はそんな新八の方を見て軽く驚いた顔をする

「おや新八が何でコイツと一緒にいるんだい?」
「え・・・・・・? お登勢さんこの人知ってるんですか?」
「昔ここの上で住んでた奴でね、さっきフラリと帰って来たらしいんだよ」
「ここの上? ここの上に住んでたのって銀さんですよね?」
「あいつがここに来る前にはこいつが住んでたんだよ、銀時が住み始めたのはその後すぐさね」
「へ~あそこって銀さんの前にこの人が住んでたんですか」
「あ? 銀さん?」

バイト用の制服からいつもの和服に着替えながらお登勢と会話している新八の台詞に、勝手に店の裏にある冷蔵庫を物色していたナギが顔を上げた。

「おいメガネ、銀さんって誰だ?」
「“ナギさん”の後に住んでる人です、今は行方不明ですが万事屋をしながら生活していた江戸っ子のヒーローみたいな侍なんですよ、僕もその人の下で日夜侍道を学んでました」

新八が懐かしげに銀時の事を説明するが、冷蔵庫からいちご牛乳を取り出してそれを一気に飲み干した後、ナギはしかめっ面を彼に向ける。

「ふ~ん万事屋ねぇ・・・・・・俺の職と家奪って随分勝手な野郎だな」
「いきなり消えちまったアンタが悪いんだろ、まあ今はそいつもどっかに行っちまったから、あの家はまたアンタに貸してやるよ」
「当たり前だろ、あそこは元々俺とカミさんの家だ」
「今回はちゃんと家賃払うんだね」
「気が向いたらな」
「え、ちょっと待って下さいッ!!」

お登勢と淡々と話を進めながら冷蔵庫から持ってきたプリンを持ってカウンターに座り、気だるそうにプリンをスプーンで食すナギに新八が慌てて身を乗り出す。

「あそこに住むってどういう事ですかッ!? あの家はまだ銀さんの家なんですよッ!?」
「お前、名前は?」
「志村新八です、さっき説明したように銀さんの所で働いていた万事屋のメンバーです」
「新八っていうのかお前、なあ新八よぉ、その『銀さん』ってのはあの家に現在進行形で住んでるわけ?」
「いえ、今はちょっとどっか行ってて、ここしばらくずっと帰って来てません・・・・・・」
「それじゃあもうあそこ空家みたいなモンだろ、俺が住んでも別に問題無いって、なあババァちょっとご飯くんね?」
「何言ってんですかッ!? あの家はまだ銀さんの家ですよッ! お登勢さんしばらく待ってて下さいッ! 絶対に銀さんを連れて帰ってきますからッ!」

ナギをあの家に住ませる事は非常にヤバい、あの家を失ってしまったら銀時の住む家が無くなってしまう、新八は必死に家の提供者のお登勢に懇願するが、彼女はナギにご飯を渡しながら首を横に振る。

「あいつがいなくなってもうかなり時間が経ってんだ、こちとらボランティア感覚であいつを住ましてやってたわけじゃないんだよ、いいじゃないか“こっち”もあいつと同じダメ人間だし、仲良くやっていけるんじゃないかい?」
「いやいくらダメ人間だからって銀さんとこの人って・・・・・・・」
「誰がダメ人間だ、俺のどの辺がダメ人間か言ってみろババァ」
「ご飯とプリンをかき混ぜた物体を普通に食うとか、その時点でアウトだよ」
「うわ・・・・・・アンタなんちゅうモン食ってるんですか・・・・・・・?」

ご飯の上に普通にさっきまで食べていたプリンを入れてかき混ぜ、それを平然とした表情で食べるナギに、新八は唖然とした表情を浮かべる。

「銀さんもそんなの食ってましたね・・・・・・そういえばナギさんって銀さんと性格似てるかも・・・・・・・」
「ますます気にくわねえな、ちょっと呼んで来い体育館の裏でシメる」
「いやだから行方不明だって言ってるでしょ」

ご飯と宇治金時を混ぜ合わせた物体を美味そうに食う銀時を思い出した新八が、目の前でご飯とプリンを混ぜ合わせた物体を美味そうに食うナギを見て奇妙なデジャブを再び感じていると、ナギが突然ご飯を食べるのを止めて新八の方に向いた

「そういえばこの辺で金髪美人で気の強そうなネエちゃん見てねえか?」
「金髪美人? いえそんな人見た事ありませんよ、ナギさんの知り合いですか」
「いや知り合いっつうか俺の嫁」
「え? ナギさんって結婚してんですかッ!?」

目の前のふしだらな男が結婚している事に思わず彼の隣の席についた新八は意外そうに驚いた。その反応にナギは少し目を細める。

「何そのリアクション、俺にカミさんがいるのそんなにおかしいか?」
「ああすみません、銀さんみたいに一生そういうのに縁が無い人なのかと思ってまして、見た目どうみても遊び人ですし」
「誰が遊び人だ、ダーマの神殿で賢者に転職しろってかコラ?」
「それでどうしたんですか? まさか奥さんに逃げられたとか?」
「逃げられてねえからッ! ちょっと込み入った事情で離ればなれになってるだけだからッ!」
「まあ夫婦仲が悪くなるのも仕方ないさね、なんせこんな旦那とずっと暮らしてるとさすがに疲れてきたんだろ」
「うるせえババァッ! 俺とカミさんの仲は一生円満だッ! 俺のカミサンはな・・・・・・!!」

新八やらタバコを吸いながら話しかけてくるお登勢にナギが叫んで行方知らずの妻の事情を話そうとした時店の入り口からまた誰かが入ってくる。

「お登勢サン、買イ物行ッテキマシタ、オイ小娘ッ! サッサト荷物持ッテコイヤッ!」
「ただいま帰りましたお登勢様」
「ババァ、お前の為にこいつらの荷物持ち手伝ったヨ~だから銀ちゃんの家売っ払うなヨ~」

入ってきたのはこの店でお登勢の下で働いている二人の従業員、キャサリンとたま、そしてスーパーの袋を何個も両手で抱えている新八と同じ万事屋メンバーの神楽。
どうやら何とか銀時の家を売りに出させない為にお登勢に恩を着せる魂胆らしいが、いささかパンチに欠ける恩である

「おかえり、チャイナ娘が手伝ってる理由はわかんないけど御苦労さまだね」
「ババァ~銀ちゃんの家売ったら老い先短い人生を今ここで終わらせるぞコラァ」
「神楽ちゃん神楽ちゃん、その事なんだけどさ・・・・・・」
「あれ新八、お前バイトどうしたネ? またクビになったアルか?」
「まあ確実にそうなったと思うけど・・・・・・それよりこの人がさ」
「ん? 誰アルかそのトリ頭?」

新八はやってきた神楽に隣でまたプリンを乗せたごはんにがっついてるナギを指さす。そして少し間をおいて新八は口火を切った。

「実はこの人ここの上で住む事になるらしいんだよ・・・・・・」
「ここの上って何処アルか? 天国アルか? 勝手に行けヨ」
「そこまで上じゃないから・・・・・・・だからこの人が銀さんの代わりに、僕等の万事屋に住むらしいんだよ」
「マジアルかッ!? おいババァ何銀ちゃんの家勝手に売ってんだゴラァ!!」

突然の報告神楽は持っていたスーパーの袋を床に落としてお登勢に向かって拳を向ける。だが向けられた本人はため息をついた後、彼女に向かって口を開く

「しょうがないだろ、数カ月も銀時は帰ってこないんだ、こいつも“あそこ”しか住む家が無いだろうし、住ませてやるのが賢明だろ」
「ふざけんなよコラァァァァ!! 銀ちゃんの家は絶対に渡さねェェェェェ!! おいそこのトリ頭ッ!」
「あ? 何か用?」

お登勢に向かって怒鳴った後、神楽はまだ食事中のナギを呼ぶ。ナギはそれを聞いてめんどくさそうに椅子をクルっと回して、まだご飯が残ってるどんぶりを持って神楽の方を見る。
そんな彼に向かって神楽はビシッ!と中指を立てた

「今ここで粛清されたくなかったら銀ちゃんの家で住む事を諦めろやッ!」
「何このチャイナ娘? いきなり初対面の人脅して来たんだけど?」
「僕と同じ銀さんの所で働いていた万事屋メンバーの神楽ちゃんです」
「神楽? その名前どっかで聞いたような・・・・・・・」
「死ねコラァァァァァ!!! 銀ちゃんの居場所は誰にも渡さねぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっとォォォォッ! 神楽ちゃんッ!!」

ナギは彼女の名前を何処で聞いたか思い出そうとしていると、神楽が突然拳を振り上げて襲いかかってくる、降りかかってくる神楽の拳にナギは舌打ちした瞬間、彼女の拳が獲物に近距離に迫りそして・・・・・・・

「オラァァァァァァ!!!」
「ナギさぁぁぁぁぁぁん!!!」

神楽の咆哮により新八の声はすぐにかき消され店のカウンターが壊れる音が聞こえてくる。周りで破片が飛び散る中、新八は神楽の鉄拳を受けたはずのナギの安否を心配する。
だが彼の姿は見当たらない

「あぶねぇ~最近のガキは血の気が多いのかよ、いや昔もそんなモンか・・・・・・」
「!!」
「な、何で私の後ろにッ!?」
「相手したいのは山々だけどこっちは色々会って疲れててさ、家で休ませてくんない?」

新八はナギが不思議な力を使った時のように表情をこわばらせる。さっきまでいたカウンターの席に彼の姿が無いと思ったその瞬間には、既に神楽の後ろに立ってあぐらを掻いているのだ。攻撃した本人の神楽も驚愕しているのを表情から見てわかる。
そのすばしっこさはかつての銀時の様に早くて見えなかった

「じゃあババァ俺は上に戻るぜ、俺の前に住んでた野郎は何かいらん事やってねえだろうな?」
「一回全壊にした事あったけどすぐに建て直したからね、別に何も変わって無いと思うよ」
「一回全壊にしたって何があったんだよ・・・・・・? まあいいか元通りになってるなら」
「コノヤロォォォォォ!!」
「よっと」
「ほら家の鍵だ、ていうかチャイナ娘店の中壊れるから暴れんなァァァァ!!」

ナギがお登勢に家の確認を取りながら、未だにとび蹴りをかまそうと飛んでくる神楽の攻撃を軽く避けながら(彼女が攻撃するたびにナギにはダメージは無いが店が徐々に崩壊していく)お登勢が投げてきた家の鍵を受け取った後店の入り口を開ける

「久しぶりの我が家に戻るかねぇ~」
「あ、待って下さいよッ!」
「逃げんな腐れトリ頭ァァァァ!!」
「テメェはウチの店の壊した分弁償しろチャイナ娘ェェェェ!!」

ナギの後に続いて行く新八と神楽にお登勢が神楽の方を向いて怒声を叫ぶが、頭に血が上ってる彼女は無視してそのままナギを追いに行った。

「ブレーキ役の銀時がいなくなったらすぐこれだよあの子は」
「お登勢様、あの赤髪の一見不審者のような御方は誰なのですか?」
「何ダカ頭の悪ソウナトリ頭デスネ、坂田サンノ『バーター』カナンカデスカ?」
「まあ古い知り合いだよ・・・・・・それはともかくあんた達、店を開ける前にチャイナ娘がぶっ壊した所を急いで修繕するよ」

店の中でお登勢達が神楽が暴れた惨状を埋めようと躍起になっている頃、ナギは慣れたように階段を二段飛ばししながらあっという間に銀時の家“だった”場所の前についていた

「お~何も変わってねえや懐かし~」
「ナギさん本当にここに住むんですか・・・・・・?」
「当たり前だろ、ここじゃなかったら何処に住めばいいんだよ?」
「テメェはマダオと一緒に公園でホームレスやってろやァァァァ!!」
「いやその選択は無理、つかマダオって誰だよ」

そう言ってナギはまだとび蹴りをしてくる神楽の攻撃を頭をかがめて避けて、家の障子をガララと開ける。

「お邪魔しま~す」
「ここを失ったら僕等万事屋再開出来ないんですけど・・・・・・」
「心配すんな俺の所で働かしてやるから、上司が転勤して新しい上司になりましたという心境で頑張ればいいじゃねえか」
「いや・・・・・・そういう問題じゃないと思います」
「そういう問題なの、どうだチャイナ娘お前も・・・・・・・」
「天誅ッ!!」
「おふッ!」

ナギが新八と話してると、つい油断していたのか神楽のドロップキックがついにナギの後頭部を捕えた。そのまま彼は家の中に吹っ飛ばされる。

「くおらぁぁぁぁ!! 銀ちゃんの家に土足で入ってんじゃねぇぇぇぇ!!!」
「いやお前が入れたんだろうがッ!」

後ろから神楽が怒鳴ってるのが聞こえるがナギはとりあえず彼女に言葉を返した後、立ち上がって自分の靴を玄関にほおり投げて家の中を進んで行く、それに新八と神楽も慌てて靴を脱いで中に入って行った

「中もあんまり変わってねえな、お前等の所の上司は俺とカミさんが残してた物全部使ってのうのうと暮らしてたらしいぜ」
「そうなんですか?」

居間にあるテレビやらソファやらを眺めながらナギが新八達に説明していると、ふと飾ってある額縁を指さす

「だってあそこに『糖分』って書いてある額縁、あれ俺が書いたんだよ」
「えッ!? あれ銀さんが書いたんじゃないですかッ!?」
「違えよ俺が書いたの、俺があまりにも“ここの国”の字を覚えないからカミさんに「寺子屋行って子供達と一緒に勉強するか?」って脅されて必死に覚えて書いたのがあの『糖分』ってわけだよ」
「完璧に奥さんの尻にしかれてるじゃないですか・・・・・・ていうかナギさんってやっぱ外国生まれだったんですか」

髪を掻きむしながら少し考えるも「そんなモンだ」と答えてナギはそのまま家の中の状況を見渡す。

「ちょっと埃っぽいな、まあ掃除すればなんとかなるよね新八君」
「何でそこで僕に聞くんですか? やれってか? 掃除やれってか?」
「見た感じ雑用向いてそうだし、そこん所よろしく頼むわ」
「まだアンタの下で働くなんて決めてないんですけど・・・・・・」

勝手にナギが新八を雑用担当に指名していると、それを聞いていた神楽が身を乗り出す

「新八ッ! この偽銀ちゃんの所で働くってどういう意味アルかッ!? 裏切りかコラァッ!?」
「そんな早く決めつけないでよ、神楽ちゃんにはまだ言ってなかったけど、この人も昔は僕達みたいに万事屋やってたんだよ、それで同じ万事屋のよしみとして僕等を雇ってもいいって言ってるんだよ」
「そうそう、どうせお前等今は何もやってねえんだろ、だから俺のカミさん探すの手伝え」
「カミさん探すのは自分でやって下さい」

どさくさに頷きながら付け足すワードに新八がツッコんでいると、二人の話を聞いても神楽が素直に承諾するわけがない

「ふざけんなぁッ! 私達を買収しようとかいい度胸じゃねえかッ! 私達のリーダーは銀ちゃんだけネッ!! 銀ちゃんと私と定春、三人そろって万事屋アルッ!」
「神楽ちゃん僕が入ってないんだけどッ!?」

新八が自分の存在意義を彼女に叫んでいると、言われた本人のナギはというと神楽の話を聞かずに勝手に銀時の机の中を探りながら机の中から一冊の本を取り出す

「あ、エロ本あった」
「人の話聞いてないでエロ本なんか読んでんじゃねえぞコラァッ!!」
「聞いてる聞いてる、お前は何処へだって羽ばたけるさ、うん」
「完璧に聞いてなかったですよね?」

適当に流すナギに新八がツッコむが彼はそれを無視しながらエロ本を読みふける

「懐かしな~ナース物、俺カミさんに持ってたエロ本全部燃やされたから全く読めなかったんだよね」
「当たり前でしょ、結婚してる相手がエロ本持ってたらそりゃ誰でもキレますって」
「俺のエロ本を焼きながら「今度こんな物を隠してたらお前もこれと一緒に燃やしてやろう」って睨まれながら言われた」
「カミさん恐ッ!!」
「あの時はまさか本当に燃やされるとは思わなかったな、死ぬかと思ったぜ」
「結局またやったのかよアンタッ! どんだけエロ本に執着してんですかッ!?」
「男って生き物は結婚したってそういうモンに興味出ちゃんだよ、まあそんな事カミさんに言ったら東京湾に沈められそうになった・・・・・・」
「ヤクザ見たいな仕打ちですね・・・・・」

その時の事を思い出していたのかナギが若干青ざめながら話す女房の話を聞いて新八はソファに座ってため息をつく

「何かナギさんの奥さん凄く恐いんですけど・・・・・・」
「見た目は美人だしスタイルも良かったんだけど、性格がかなりキツくてよ・・・・・・俺何回死にかけたんだっけ? ああダメだ指の数が足りねえ・・・・・・」

何処か虚ろな目で自分の指を折って数えているナギを見て、こんなちゃらんぽらんでも恐がるモノあるのかと考えながら新八はポツリと呟いた

「一体どんな人なのか見たくなりました僕・・・・・・」
「目を合わせると危険だぞ、ガーってくるぞガーって」
「熊かよ」

短めにナギにツッコんでいると新八はふと気付いた事があった。
さっきから神楽の気配が無い

「あれ?神楽ちゃん何処行ったのかな」
「大好きな銀ちゃん探しに行ったんじゃねえの~?」

めんどくさそうに銀時が使っていた椅子にもたれながらナギが返していると、ガララッと障子が開いた。先ほどまでいなかった神楽がジト目で入ってくる。

「神楽ちゃん何処行ってたの?」
「ちょっと定春連れてきただけアル」
「ワン」
「え? 何そのデカイの?」

ナギに会ってからずっと不機嫌そうな表情を浮かべている神楽の後ろから入ってきたのは、ヒグマほどの大きさはある巨大な白い犬。
犬の名は定春 神楽が昔拾ってきた巨大犬で万事屋のマスコット的な存在である。見た目はチャーミングだが凶暴性が高く、人をかむ癖があって神楽以外に懐かない。
特に銀時に対してはかなり凶暴な面をよく見せていた

「ワン」
「ワンじゃねえよ、何だよこの犬、何でここに入れんだよ?」
「定春は昔からずっとここに住んでるアル、定春~銀髪天パはいないけど今度から代わりにあそこのトリ頭噛んで大丈夫ヨ~」
「犬に変なの吹きこむんじゃねえよッ!! ったくどういう真似だコノヤロー」

定春の頭を撫でながら命令する神楽にナギが口を出すと彼女はダンッ!と床に根付くように座る

「新八、私はここにまた住むアル」
「へ?」
「はぁッ!? ここは俺の家なんすけどッ!?」
「銀ちゃんの家は私が守るネ」
「神楽ちゃんちょっと強引すぎない・・・・・・?」
「ここは私の家でもあるネ」

テコでも動かないという風に腕を組み床に座ってナギを睨みつける神楽。その姿に新八は大きなため息をついた

「こうなった神楽ちゃんは何言っても無駄ですよ、どうするんですか?」
「どうするって・・・・・・新八このチャイナ娘どうにかなんないの」
「う~ん・・・・・・神楽ちゃんここにいても銀さんが帰ってくる保障があるわけじゃないんだよ? ここで待つのと僕達の所で待つのも変わらないんだからここは一旦家に帰ろうよ」
「嫌アル、私はここから動かないアル、定春と一緒に私はここに住むネ」
「あ~これ無理です、すみません神楽ちゃんよろしくお願いします」
「いやあきらめるの早すぎだろッ!」
「ここまで頑固になったら銀さん呼ぶぐらいしか対策はありません」

キッパリと断固拒否する神楽に新八がすぐほおり投げたのでナギが机から身を乗り出してツッコむ。だが新八本人は既に帰る準備だ

「じゃあ僕姉上に色々と話さなきゃならないので、バイトの事とかナギさんの事も」
「いやお前がいなくなったらこっちどうすんだよッ! 俺この娘とやっていける自信無いんだけどッ!?」
「神楽ちゃんナギさんって別に悪い人じゃないからさ、まあほとんど銀さんみたいな人だしそんなに嫌いにならないでね」
「・・・・・・」
「オイィィィィ!! 待てやメガネェェェェェ!!!」

ナギの叫びも虚しく新八は家の障子を開けて「明日また来ま~す」と言い残して帰ってしまった

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ワン」

残された神楽とナギの間に気まずい雰囲気が流れる。ナギは銀時の使ってた椅子に座りながら頬杖を突いてため息をつき、そんな彼を神楽は床に座りながらジト目で睨む。定春はというと勝手に家の中をウロウロしだした

(どうすっかな~? 力づくで追い出すのも後味悪いし・・・・・・だからってこのままずっとこの娘っ子と住んでるのもな~・・・・・・・)
「おい」
「ん? どうしたんですかお嬢さん?」

ふいに不機嫌そうに神楽に呼ばれたナギは何事かと一旦考えるのを止める。

「新八が言ってたけどお前ってナギって言うアルか?」
「そうだよ、お前は確か神楽だっけ?」
「気安く私の名を呼ぶんじゃねえヨ、変な名前のクセに」
「このガキ・・・・・・一回親の顔が見てみたいぜ・・・・・・ていうかお前が俺の名前否定すると少し問題だろうが・・・・・・」

年上の自分に対して生意気な口振りの神楽にナギは悪態をつくと彼女に向かって口を開く

「こちとら色々とトラブル起こってんだ、妙な事すんじゃねえぜ」
「お前の命令なんか絶対に聞かないアル」
「ハァ~・・・・・・・」

メンチを切ってすっかりケンカ腰の神楽、ナギは疲れた様子で髪を掻き毟った

「・・・・・・まあなんとかなるだろ、賑やかの方が好きだしな」

フッと笑いながら楽観的な答えを出し、ナギは頬を掻きながら自分にそう言い聞かせるように頷いた
そんな彼に神楽がやっと立ち上がってある事を催促する

「おいトリ頭、さっさとメシ作れヨ」
「それが人に頼む態度? ていうか俺料理とかそういうの出来ねえから」
「使えねえな~銀ちゃんはお前と違って器用だから何でも出来たアル」
「本当銀ちゃん銀ちゃんうるせえ奴だな・・・・・・知らねえよそんな奴・・・・・・」

さすがに神楽の『銀ちゃん』という男の名前にはいい加減飽き飽きしてきているのだ。新八やお登勢も彼の事ばっかり話す、もうウンザリだ。
そんな男よりもっと重要な人がいる

「姫さん今頃どうしてるのかね~・・・・・・」

窓から見える月を眺めながらナギはポツリと呟くのであった
























































舞台が変わってここはナギの住んでる江戸から別次元の世界、つまり銀時が今いる世界だ。

銀時がいる麻帆良から遠く離れた場所にある京都。そこで広々とした宿屋の部屋にある青年が鼻歌を歌いながら楽しそうに月を見ていた

「ここに来てから上機嫌ですなぁ団長殿は」
「いや~あと少しで楽しいイベントがあると思うとワクワクして来て夜も眠れなくてさ」
「子供ですかあんたは・・・・・・」

窓辺から体を半分出しながら月を見ているのはネギの師である神威。どうやら京都に辿り着きこの和風造りの宿屋で時期が来るのを待っている様だ。そんな彼にお茶を飲みながら話しかけたのは部下である阿伏兎、坂本による銃撃は既に回復しており、今は完全な健康体だ。そんな彼の隣には一人の少女の姿があった。

「阿伏兎はんは楽しく無いんどすか~?」
「“あんた等”見たいにはしゃげねえよ、こっちはいい年なんだよ」
「もうオッサンだからね阿伏兎は」
「オッサンでも俺はまだ現役ですから、団長やあんたみたいな若いモンにはまだまだ遅れは取りませんからね」
「じゃあ一回ちょっと俺と戦って見る?」
「神威はんだけずるいどす~、ウチと一回どうどすか?」
「勘弁してくんない?」

こちらを向きながら吹っかけてくる神威と京都弁を使う少女に阿伏兎は疲れた表情で断る。神威とこの少女がかなりの戦闘狂なのを阿伏兎は知っているのだ。

「月詠はともかく団長だと下手すりゃ死にますから・・・・・・ん?」
「あ、帰って来た」

阿伏兎の話の途中でスーッと音と共に誰かが襖を開けてきたの。入ってきたのはフードで頭をスッポリ隠している一人の女性、無言でそのまま阿伏兎の向かいに座り、そのままジッと動かない
そんな彼女に神威は楽しげに窓辺から話しかける

「久しぶりだね、元気にしてた?」
「・・・・・・」
「アハハハ、相変わらず嫌われてるようだね俺は」
「神威はん嫌われとるんですか~?」
「そうそう酷いんだよこの人、“同僚”なのに昔から俺の事嫌ってるんだよ、俺は仲良くしようとしてるのに」

神威は立ち上がって女性の隣に座り少女に向かってわざとらしく肩をすくめると、女性はフードの下から彼を睨みつける

「・・・・・・貴様等の同僚になった覚えはない・・・・・・この忌々しい首輪が無ければとっくの昔に貴様等はたたっ斬るつもりじゃ」
「お~怖い怖いさすが英雄さんの女だ、未だに俺達の喉に噛みつこうとする牙が残ってるらしい」
「英雄さんの女? どういう意味どすか阿伏兎はん?」
「ん~? お前さんにはまだ話してなかったか」

神威が女性に対して言った事に少女が首を傾げていると阿伏兎が顎を撫でながら話し始めた。

「俺達『春雨』にはその辺の並大抵の団員には言えないある重要な『秘密』がある」

阿伏兎は話し始めると同時に、女性はスッと立ち上がって部屋の窓辺の方に歩いて行った。

「数年前、春雨は一人の女を捕まえた。その女の正体はかつて自分達に煮え湯を飲ませた男の妻、本来なら捕まえた時点で即刻処刑する筈なのだが、春雨の上層部の考えは違った」
「春雨はその女の力を有効に活用したかったんだ、魔力もあるし、頭もいい、それにもしかしたら夫の方を呼び寄せる気がしないと思ってね、春雨はその夫の方を死ぬほど憎んでいたから」
「そこで上層部は女を拘束するだけはなく、自分達に従わせるようにほどこして団員の幹部の枠に潜り込ませた、女はそのまま操り人形の如く春雨の命令に従い春雨に“与えられた力を借り”そのまま幹部にまで上り詰めた」
「ほ~凄いどすなその人~それでその女の人が・・・・・・・」


阿伏兎と神威の話を聞いて少女は感心したかのように頷くと、窓辺に立っている女性を見る

「あの人どすか?」
「ああ見えて結構強いんだよ」
「英雄の妻でありながら春雨の幹部にまで上り詰めた実力を持ち、時が経っても未だその美しさは変わらない女」

女性はそっとフードを脱いで空に浮かぶ自分のロングヘアーと同じ色の金色の月を見た。満月の光が一層彼女の美貌を引きたてる。

「宇宙海賊春雨の幹部、アリカ・スプリングフィールド、かつて『サウザンド・マスター』と呼ばれた一人の英雄ナギ・スプリングフィールドが愛した女性だ」

月に照らされながら寂しげな目で空を見上げるナギの妻アリカは今何を思うのだろうか



































































教えて銀八先生の

銀八「とりあえず一通目風凪五月さんの質問」

学園長は一体、何類ですか? 嘘偽り無く、お願いします★

学園長「人類ッ!」
銀八「嘘付くなつってんだろうがお前エイリアンだろ」
学園長「ねえたまには優しくしてよマジで」
銀八「気持ち悪い事言ってんじゃねえよッ!」


銀八「二通目テレフォンさんの質問」

修学旅行編が最終話みたいですけど、文化祭編が最終章中編、魔法世界編が最終章後編なんですよね?そうなんですよね?

銀八「いやそんなにダラダラと続きたくないんで、キリの良い所で終わりたいんですよ本当」
千雨「このままだと最後まで高畑先生出そうにないな・・・・・・」
銀八「誰それ?」
千雨「何でもない・・・・・・」


銀八「三通目q-tureさんの質問」

学園長に質問です。
どうも最近arcadiaに業者の書き込みが多いですね。
おかげで舞さんは対応で忙しく、利用者はイラつき、CSS版が消えた事で一部読者は涙目です。
学園長はこの責任をどのようにとるのでしょうか?
切腹するんでしょうか? 切腹しますよね? 切腹しろよ!?

学園長「ワシ関係無くね?」
銀八「じゃあ明日ぐらいに腹斬るか」
学園長「誰がやるかッ!」
刹那「介錯なら私がやりましょうか?」
学園長「だからやらねえってッ! ワシに対する質問ってこんなのばっかだよね・・・・・・」
銀八「もはや質問でも何でもねえからな」


銀八「四通目エンジンさんの質問」

銀八先生(もしくはカイバーマンさん)に質問です。この作品は本家銀魂(アニメ含む)とほとんど同じ足跡(不人気スタート→テコ入れで少しずつ人気上昇→ギャグが際どいパロディに→不動の地位を確立→それでもパロまみれで苦情がwwww終わる終わる詐欺もどきとか。)ですけど、その辺のシンクロ率についてどうおもいますか?

銀八「時々それ言われるんですが正直複雑なんだけど、何もそこまで同じにならなくても・・・・・・って思いました」
千雨「未だにアンバランスだしな」
銀八「他のSS小説みたいにバランス良くなりてえよな」
千雨「それはこの作品に一番無理なモノだろ」
銀八「・・・・・・だよね」


銀八「五通目ペケペケさんの質問」

学園長に質問なんですが、・・・・幻〇郷にて何やら破廉恥な行為を行ったらしいですね?具体的に「誰」に「何」をしたのかな?かな?
 具体的に示したのち然るべき場所で然るべき「モノ」を捩じり切ってくださいませんか?主に下の部分を徹底的に。

学園長「モノを取るのは関係ねえだろうが・・・・・・・え~とあるメイドに出会ってちょっと尻を触ろうとしただんだけど」
銀八「その時点でお前死亡フラグじゃねえか」
学園長「触ろうとした瞬間、いきなり目の前に大量のナイフが現れて飛んで来おった・・・・・・死ぬかと思った」
千雨「それってもしかして十六夜・・・・・・・」
銀八「アキ?」
千雨「いや咲夜の方だから」


銀八「六通目サハリンさんの質問」

早く死んでほしい糞ジジィに質問
いつも銀ちゃんにボコボコにされているのにどうしてクビにしないんですか?

学園長「本当はクビ所か抹殺したいんだけど、8話で龍宮君が言ってるように」

「銀八先生にはエヴァンジェリンがバックにいる。だから容易に手を出せないんだとか、彼をクビにしてしまうと自分の首を飛ばされるとか言ってたな・・・・・・」

学園長「というようにあの吸血鬼のおかげでワシは忌々しいあの男をクビに出来んのじゃ・・・・・・」
銀八「あ? チビがいなくてもお前に俺をクビにする権限なんか無えよ、だってジジィだもん」
学園長「うっせえよジジィなめんなッ! 最近みんなからナメられてるけど本当はめちゃくちゃ強・・・・・・・イダダダダッ! 髭引っ張らんといてッ!!」


銀八「七通目蛙さんの質問」

まき絵に質問。何故、万事屋入りを拒むのですか?
入ればエヴァは追い出せるし、ドM度アップの為に沖田がスタンバイしてますよ。土方と刹那を罵れますよ。

まき絵「別にエヴァちゃんの事嫌ってるわけでもないし、ドMでもないし、沖田さんなんて人も知らないし、土方さん達には恨みがあるわけもないし・・・・・・」
銀八「あのマヨネーズバカいつか殺してやるとか言ってなかったけ?」
土方「ほう、誰だか知らねえが俺にケンカを売るとはいい度胸だ、買ってやるよ・・・・・・」
まき絵「言ってないですッ! 全部その人の狂言・・・・・・ギャァァァァ!!」
千雨「とことんそういう役柄なんだなお前は」


銀八「八通目Citrineさんの質問」

ナギに質問質問
オカマバーで働いて仕事にハマった所為で嫁さんに逃げられたんじゃないんですか?

ナギ「いやまさかそれで・・・・・? いやだってアレってカミさんが俺を無理矢理・・・・・・」
新八「オカマバーでも働いた経験あるんですかアンタ・・・・・・」
銀八「・・・・・・そういえば俺も・・・・・・」
アル「ほう、話を詳しく聞かせてもらえませんかね?」
銀八「目を輝かせながらこっちくんなッ!」
桂「その時の話は俺がしてやろうッ!」
アル「是非」
銀八「とっとと帰れダブルバカッ!!」


銀八「九通目ノリさんの質問」

原作では地味にフラグもヘッタクレも無い癖に、こっちでは地味に幼女×2やけしからん女忍者と相部屋で地味に『どこのギャルゲ主人公?ちょっと後で便所に来いよ。』な山z…ゲフンゲフン!!ジミーに聞きたい事があります。
31巻でめでたく背表紙に載りましたがこれを機に(まぁ可能性は欠片ほどでしょうが)自身がメインの話を今後一話でも良いから出して欲しいと思ったことはありますか?
どのくらいの数値かをJ(ジミライド)で表してください。K(コンブ)でも可


山崎「長いからもうちょっと短くまとめようね~、まあ出来ればもうちょっと出番が欲しいかな・・・・・・副長は出番多いのに俺脇役ばっかだし・・・・・・ていうか数値の規模を教えてくんない?」
まき絵「出番があってもただ酷い目に合わされるだけの人よりはマシじゃん・・・・・・」
山崎「いや俺も対して変わらないから・・・・・・」
土方「おい山崎、マガジン買ってこい、あとマヨネーズもな」
銀八「おいまき絵、ジャンプ買ってこい、あとたけのこの里もな」
山崎・まき絵「「・・・・・・イエッサー・・・・・・」」


銀八「十通目風の都さんの質問」

夏美ちゃんへ
夏美ちゃんは万事屋に相談とか行かないのですか?
例えば「ちづ姉をどうにかして」「もっと出番が欲しいなー」「新八って私より地味じゃね?」とか、あると思うのですが

夏美「ちづ姉は先生でも対処不可だってわかってるから・・・・・・」
銀八「無理無理、あれは俺絶対無理、なんつうか何考えてるかわかんないのが怖い」
夏美「出番は別にそれほど興味は無いし・・・・・・ていうか新八って誰?」
銀八「今は亡き地味ツッコミメガネだよ」
夏美「へ~」
新八「生きてるゥゥゥゥ!!! 江戸で健在ですよ銀さぁぁぁぁんッ!!!」


銀八「十一通目Kanataさんの質問」

ゆえっちへ質問です
近藤さんのお妙さんへの警護(ストーカー)についてどう思ってますか?

夕映「別に何も無いですよ」
銀八「お前はあのゴリラの異常なストーカー振りを知らないんだな~」
近藤「ストーカーじゃないッ! 恋のスナイパーだッ! 愛しのお妙さんのハートをゲットだぜッ!」
千雨「お前こんなのでいいのか・・・・・?」
夕映「面白いですから」


銀八「十二通目ゼミルさんの質問」

銀さんを除く攘夷の皆さんに質問。戦友がツルペタロリババア吸血鬼・ちょっとツンデレ突っ込み担当美乳メガネっ子・巨乳お嬢様・同じく巨乳系女性記者と今や4人もの美少女を侍らせて爛れた日常を送ってる事に対して何か一言お願いします。

坂本「ええの~わしなんか美人じゃけど凶暴なおネエちゃんしかおらんぜよ」
銀八「そういうのじゃねえよバカチン」
桂「貴様等ッ! 侍のクセになんという堕落した生活を送っているのだッ! 俺なんか周り男だけだぞッ! くそッ! 人妻キャラを仲間にしたい・・・・・・!」
銀八「お前の欲望は生々しいんだよヅラ」
坂本「そういえば高杉は何処じゃ~?」
銀八「お前はもうちょっと空気を読め・・・・・・・」


銀八「十三通目正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
前回の質問でもしも仙人だと思ったって言ってましたよね?仙人は妖怪の大好物であり、仙人の肉を食らうと妖怪の各が上がり、普通の獣でさえも肉を食らうと妖獣になるんですよ。しかも数多くの妖怪に狙われたり、地獄から刺客が来たりそれまでに少しでも修行を怠ったら追い返すことが出来なくて地獄へ堕ちるんですよ。そいつらに相手して勝てるんですか?

学園長「マジでッ!? ワシって超偉いから、仙人かな?と思ってたがまさか本当に仙人だったとは・・・・・・」
銀八「何でそうなるんだよ」
学園長「だってワシメチャクチャ妖怪共に襲われたもんねッ! 何回も死にかけたんじゃぞッ!!」
銀八「その生命力は本当に尊敬するわ・・・・・・」


銀八「十四通目ウィルさんの質問」

今回も千雨に。いったいいつになったら眼鏡を外して素顔で素直に銀さんと向き合うんですか?確か貴女の眼鏡は伊達のはず。伊達ということは別に眼鏡無しの生活も全く問題ないということ。つまり眼鏡が本体って不遇な扱いも本来なら受けないのです!眼鏡が本体として扱われるのは視力が悪くて眼鏡などの恩恵無くしては生きられないキャラにこそ相応しいのですから。例えばそう、Gことパルとかw

千雨「別にメガネ付けてても素直に銀八とは接してるつもりなんだけど・・・・・・」
銀八「アレだよな、キャラ付けで必要だもんなメガネは」
千雨「そういう意味で付けてんじゃねえよ・・・・・・」
エヴァ「ちなみに銀時にメガネ属性は無いぞ、残念だったな」
千雨「いや気にしてないから・・・・・・」
ハルナ「ていうかドサクサに私の扱いが不遇にされてない・・・・・・?」
銀八「うわ出た、誰か~丸めた新聞紙持ってねえか~?」
千鶴「先生、私偶然持ってました」
銀八「よし」
ハルナ「アダッ! アダッ! イダッ!」
銀八「中々潰れねえな」
ハルナ「だからゴキじゃないってッ! イダイッ!」


銀八「十五通目とびかげさんの質問」

マヨラ侍に質問
もし沖田が副長してたらあなたはどう思います?
一度でいいので「レッツパーリィー!!」って言ってください
お願いします

土方「あいつが副長? あいつはそういうタイプじゃないからなれたとしても無理だ、だがもしなっちまったら俺の立場が危ういな・・・・・・」
銀八「ところでレッツパーリィーって何? それ流行ってんの? ちょっと叫んでみ?」
土方「そんな恥ずかしいの言えるか」
夕映「向こうの世界ではガンガン言ってるくせに」














次回・第三十二訓・江戸編「誰かと比べられるのはかなり腹立つわ」に続く。




[7093] 第三十二訓 誰かと比べられるのってかなり腹立つ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/11/15 00:22
武装警察『真撰組』の屯所内にある蔵には秘密の地下室が存在する。
ナギが江戸に帰って来た深夜、ここの倉庫で近藤勲、沖田総悟、そして別世界への架け橋を提供してくれているとっつぁんこと松平片栗虎が、異世界にいる土方十四郎と通信できる為に準備を始めていた

その部屋には何やら大きな精密そうな装置がドンと置かれその周りで沖田がいそいそと、とっつぁんの指示通りに回線をつなぐ。

「とっつぁん準備出来ました」
「よし、これで異世界にいるトシと通信ができるかもしれねえな、おい近藤オメーにかかってんだぞ、オメーがこの通信回線にエネルギーぶち込んで起動するんだ」
「いやぶち込む前に、何で俺自転車に乗ってるの?」

準備を終わらせた沖田の方にとっつぁんは頷いて次に近藤の方に向いて激を飛ばすも、何故か近藤は回線が数本繋がっている自転車に乗せられている事に未だピンと来ていなかった。
どうやらこの自転車につないでいる回線から異世界へ通信する為のエネルギーを装置に送るらしいのだが

「もしかして『人力自転車』って奴でエネルギー作るのこれって?」
「実はおじさん“別のスゲーモン”を研究部に作らせててそっちの方で予算使い過ぎちゃってよ、ということで近藤こげ、トシと通信が繋がっても休まずこぐんだぞ、お前が休めば通信が切れる」
「どんだけこっち低予算にしてんのッ!? めちゃくちゃしんどいよ絶対コレッ!」
「大丈夫ですよ近藤さん、俺電話とか短めに済ませるタイプですから」
「いやそういう問題ッ!?」

装置にある通信用に使うレトロ電話形の受話器を持っている沖田に近藤が叫んでいると、とっつぁんが彼の向かって指示を入れる

「近藤こぐんだッ! そうしねえとエネルギー溜まらねえんだよッ!」
「チクショォォォォォ!! やってやるよォォォォ!! お妙さんの愛の力で俺の力を見せてやらぁぁぁぁぁ!! オラオラオラオラオラァァァァ!!!」
「無駄無駄無駄無無駄無駄ァァァァ!!!」
「総悟ォォォォォ!! 別に“それ”とは関係無いからァァァァ!!」

とっつぁんに言われるがまま近藤はペダルを踏んで思いっきり漕ぐ。彼に向かって沖田が叫んでくるのでそっちにツッコミながらも彼はこぎまくった。

「フンゴォォォォォ!! どうだとっつぁんッ!」
「順調にエネルギーが溜まってるぞやっぱゴリラの力はスゲーな、総悟俺に言われた通りにトシの転送装置と通信出来るかやってみろ」
「まかせてくだせぇ、“副長”の俺にはこんなこと朝飯前でさぁ」

そう言って沖田は装置にあるボタンを押して、入力が完了した後受話器を握って耳につけてみる。
しばらく無音の後ピッピッピっと鳴って再び無音、そして・・・・・・































































場所は代わり異世界にある麻帆良市内のとある小さな屋台。
二人の大人と深夜にも関わらず一人の子供、一匹の小動物という何とも不可思議な集団で屋台の中で飲みふけっていた。

「は~何で俺がこんなガキ共の所でガキと一緒に住んでんだよ~江戸に帰りて~」
「何言っての土方君~? 俺なんか君よりガキ共の集団と毎日付き合ってんだよ~? こっちの方が疲れてんだよ? 仕事先にガキ、家帰ってもガキ、俺もう疲れっちったよぉぉぉぉぉ!!!」
「にゃろ~俺と対して変わらねえじゃねえか、俺なんかオメ~ガキ共が大量にいる巣の中で暮らしてんだコラ~、ヒック」 
「んなもん俺と比べればマシだろうが~俺なんか最近アレだぞ? ヒック、一緒に住んでる小っこいガキが気が付いたら俺の寝てる隙に布団入ってんだよ~? 最初は蹴りで追い出してたのに最近あのチビ気配隠すのうまくなって、今じゃ朝まで一緒に・・・・・・アァァァァァ!!!!」

屋台にある席の両端に座っているのはすっかり酒が回っている江戸出身の土方十四郎と、同じくかなり酔っていて教師姿ではなく普段着を着用して、何やら嫌なモノを思い出しかのように叫んでいる坂田銀時がいた。そしてその真ん中には

「兄貴~何か最近元気無いっスね~どうしたんスか~?」
「ごめん話す気力も無くなってるから・・・・・・」

銀時達同様、小動物にも関わらずカウンターに座、おちょこに頭を突っ込んでグビグビと酒を飲んでいるネギの使い魔のオコジョカモが、土方と銀時に挟まれて座っている魔法使い兼子供教師のネギに向かって千鳥足をしながら話しかけるが何処か元気が無い。(ついでに店の親父は普段はずっと裏に隠れてるでカモの声は聞こえていない)
それに「ん?」と気付いた土方は酒をグビっと飲んだ後端っこでガンガン飲んでいる銀時の方に向かって叫ぶ

「万事屋~! ボウズがスゲー暗いぞ~!」
「あ~? てめぇせっかく俺が最近元気の無いお前を飲みに誘ってやったのに、なんだそのテンションはッ!? 舞い上がれよッ! 華麗に舞い上がって落ちろやギャハハハハッ!!」
「いや僕の為とか言ってすっかり銀さん達の方が舞い上がってるじゃないですか・・・・・・」

自分の言った事に自分で大笑いしている銀時にネギは非常に居心地が悪くなる。
学校の行事を終わっても帰らずに職員室にある自分の机に伏せてため息ばっかついているネギを見た銀時はここの小さな飲み屋に誘ってくれたのだが(ちなみに土方は偶然一人で飲んでいた)

(銀さんには悪いけど・・・・・・今の状態で元気なんて出せないよ・・・・・・)
「一体全体どうしたんスか~? 死んだ魚の様な目をしてますよ兄貴~?」

銀時みたいな目をしながらカウンターにだらけているネギにカモは酔っ払いながら話しかけるが彼は何も答えない。

(神威さん突然何処行っちゃったのかな・・・・・・・? 僕何か悪いことしたっけ・・・・・・?)
「おいおやじ、酒持ってきてくれ~」
「ま~だ酒飲み足りないんですか銀の兄貴は~?」
「今日はコイツの為に朝まで飲むって決めてんだよ~? どうせ帰ってもヒック、チビと一緒に寝なきゃならねえんだぞ?」
「ほう? てことは毎夜その女の子にあんな事こんな事・・・・・・ぶぼぼぼッ!!」
「するわけねえだろうがナマモノ~!!」
「銀さんが怒るのもわかりますけど・・・・・・それ以上やるとカモ君溺死しちゃんでほどほどにして下さい・・・・・・」

カモの生首を掴んでそのまま酒が入っているおちょこに顔面から無理矢理沈める銀時に、ネギが低いテンションでツッコんでいると土方の胸ポケットからピリリリっと携帯の着信音のような音が鳴りその後

『アーアー、土方聞こえるかコノヤロー』
「何だ突然懐かしい野郎の声が聞こえてくっぞ~?」
「土方さんの胸ポケットから聞こえ・・・・・むぐッ!!」

誰かに呼ばれたような気がしたのでキョロキョロと周りを見渡す土方に、ネギがおもむろに話しかけていると突然彼の口に銀時が笑いながら一升瓶を思いっきり突っ込む

「おいネギィィィィィ!! せっかくなんだからてめぇも飲めェェェェ!!!」
「むぐぅぅ!! むぐぅぅぅぅ!!!」
「ゼーゼー・・・・・・銀の兄貴、ネギの兄貴はまだ今年10才なんスけど・・・・・・」
「ああ~!? 10才ならあと10年で飲める年だろうが、全然大丈夫だって~!」
「10才と20才って結構時間かかるっスよ・・・・・・」

  銀時に溺死寸前まで追い込まれていたカモが心配そうに無理矢理酒を飲まされて、苦しそうにしているネギを見ている中、土方はそんな連中をほっといて胸ポケットからある物を取り出す。
この世界に来るための必需品のジャスタウェイの形をした転送装置だ。

「もしかして・・・・・・・ヒック、コレか?」
『お~い土方~生きてるなら返事しろ~』
「生きてるわボケェェェェ!!」
『あ~土方さんやっぱ生きてたんですか、しぶてぇ人だな』
「誰がしぶてぇだコラッ! あれ・・・・・? もしかしてお前総悟か~?」
『お久しぶりですね土方さん、とっつぁん通話に成功しました』

喋っている相手が異世界の部下である沖田と知って酔っ払っている土方はしばしボーっととしていると、ジャスタウェイを持ってその人形に話しかけていた彼に気付いた銀時は、酒を飲まされてぐったりしているネギをほっといてそちらの方に目をやった

「な~に人形相手に喋ってんだテメェ~? そんなにこの世界で喋れる相手がいないぐらい寂しいの? 悲しい奴だね~お前って」
「違うわボケ~!! この人形から総悟の野郎の声が聞こえたんだよ、つまり“コイツ”は総悟なんだよッ!!」
『土方さん違いますから、ていうかアンタもしかして酔ってる? それに誰と話してるんですかぃ?』
「な~に~!? じゃあそれ貸してくれよ、俺もあのサドと久しぶりに喋りたくなっちゃった~」
「おう話せ話せ、ドS同士仲良く喋ってろ~ホレ」

土方はそう言って銀時に向かってジャスタウェイをポーンと投げる。焦点の合わない目で受け取った銀時はそれに向かってヘラヘラ笑いながら喋りかける

「どうも坂田銀時で~す。万事屋と教師やってま~す」
『・・・・・・え?』
「銀さんはこんな世界でも元気にやってるんで心配しないで下さ~い、学校で毎日ガキ共とツラ合わせなきゃいけなくてだるいけど元気っす~ヒック」
『あのもしかして・・・・・・・』
「ところで一緒に住んでるエヴァっていうチビガキが最近俺の布団に潜り込んでくるんですがどうしたらいいでしょうか~? 朝起きたら気付くといつも入ってるんですがどうすればいいんでしょうか~? もう殺していい? 殺しちゃっていい?」
『いやウチ質問コーナーとか受け付けてないんで、近藤さんスゲー人とコンタクト取れましたって・・・・・・それどころじゃねえか近藤さんは』

ジャスタウェイの向こう側から沖田の声だけではなく『ハァ~ハァ~ッ!! 死ぬ~!! コレ絶対死ぬ~!!』、『もっと気張れゴリラッ! お前ならもっといけるッ! 自分の限界点を超えてみろやッ!』、『ウォォォォォォ!!! お妙さぁぁぁぁぁぁん!!!!』っといかつい声が二種類銀時の耳に聞こえたが彼自身は酔っ払っていて上手く理解していない。

「何だコレ?」
「どうした?」
「いやゴリラの声が聞こえてくんだけど?」
「何だそれキモチ悪ぃな、貸して見ろ」

土方は銀時が投げたジャスタウェイを受け取り、返してもらった転送装置をジーっとすわった目で眺める

「中にゴリラでも入ってんのか?」
『あれ、また土方さんに戻った、もう土方さんはどうでもいいんでさっきの人に替わってくれませんかね?』
「ああッ! 俺よりこの銀髪天然パーマの方がいいってどういう事だコラッ!」
『間違いなくあの人のようですね、その人今何してるんですか?』
「てめぇ俺より万事屋の野郎を優先かよ、殺すぞコラッ! 万事屋は・・・・・・ヒック・・・・・・毎日メガネの娘と気前のいい金髪の女の三人組で一緒にいるぞ、時々生意気な小っこいガキも連れてな」
『へ~なるほどねぇ、わかりやしたじゃあ土・・・・・・方・・・・・・さん・・・・・・その人の・・・・・・事を・・・・・・・・・・・・』
「ん? おい総悟どうした~?」

さっきまで会話していた沖田の声が突然聞こえなくなり、完璧に酔っている土方はジャスタウェイを何回も振ってみる、

「何で突然総悟の声が聞こえなくなってんだ~?」
「土方さん?」
「あ? 何で総悟じゃなくてあのガキの声が聞こえてくんだ?」
「隣に立っているからですよ・・・・・・」

聞き覚えのある声がして土方は焦点の合っていない目でそちらに向く。そこにいたのは同居人の桜咲刹那が意外そうなものを見る目でこちらを向いていた。

「オメー何でここにいんだ? どっか行くって言ってたろ?」
「とっくの前に葉加瀬さんの研究所に行ってきました、寮に戻ってもあなたの帰りが遅いので探してみたらこんな所に・・・・・・ていうかかなり酔ってますよね?」
「酔ってねえよ俺の何処が酔ってんだよ」
「さっき転送装置の人形に向かって喋ってましたよね・・・・・・?」
「バカ違えよ、こいつは総悟だ、こいつは総悟とゴリラなんだ」

ジャスタウェイを持ってヘラヘラ笑っている土方に刹那はやれやれと首を横に振る

「もうわけがわかりません・・・・・土方さんってこんなに酒に弱い人だったんですか・・・・・・白夜叉、この人は連れて帰るからお前もネギ先生連れ回してないでさっさと家に戻れ、家の奴等に心配されるぞ、あれ? 土方さん寝てる・・・・・・」
「ですってよ~銀の兄貴~!」
「誰が帰るかボケェェェェ!! ここからが本番なんだよッ! ほらお前ももっと飲めってッ!」
「未成年に酒を進めるなッ! 全く・・・・・・」

すっかりベロンベロンになっているカモと銀時は刹那の言葉も聞いても馬耳東風。
そんな彼等に呆れた後、刹那は土方の財布からお金をカウンターに置いて、そのまま眠っている土方をなんとか起こして、フラフラしている彼の手を引っ張って帰って行った。
一方屋台に残されているグループのネギは銀時に酒を無理矢理飲まされてさっきからカウンターに顔を伏せて動かない

「何で落ち込んでるかわかんねえけどさ、男ってのはイヤなモンは全部酒で忘れるのが一番なんだよ、だからお前も今日は飲め、飲んで忘れろ」
「・・・・・・持ってこい・・・・・・」
「え?」

ネギの声がよく聞こえなかったので銀時が彼に近づいて耳を傾けると

「酒持ってこいつってんだろうがぁぁぁぁ!!」
「おふぅぅぅぅぅ!!!」
「ネ、ネギの兄貴ィィィィィ!?」

突如ネギが起き上がりカウンターに置かれていた一升瓶を持ってそれを銀時の頭で叩き割る。何が起こったのかカモとやられた本人の銀時もわからず、あまりのショックで二人共一気に酔いが醒めてしまった。

「おいおやじッ! あるだけ酒持ってこいッ!」
「いや未成年に酒出せねえから・・・・・・」
「酒持ってこないとてめぇの『ソコ』抜いて犬に食わすぞ・・・・・・!」
「・・・・・・すみません今すぐ出します」

さっきまで覇気の無い顔から豹変して完璧別人の様な姿のネギに屋台のおやじもすっかりビビってしまっている。それは銀時とカモも同じで、頭に瓶を叩きつけられた銀時は頭からポタポタと酒をしたらせながら引きつった顔で彼に恐る恐る話しかける。

「あのネギ・・・・・・ネギ先生? もしかしてお前酒癖めちゃくちゃ悪いの・・・・・・?」
「何でそんな事テメェに教えなきゃいけねんだよこの天パ、殺すぞ・・・・・・」
「ネギ先生ェェェェ!? 確かに時々腹黒くなる性格だったけど、今の先生腹黒いどころか見た目も真っ黒いんですけどォォォォ!? 表裏一体黒しか残ってないんですけどォォォォ!?」
「おいナマモノそこでつっ立ってないでさっさと酒つげや、使い魔のくせに本当役立たずだなオメー」
「す、すんません兄貴ッ!」

店の親父が持ってきた酒をネギが何処かにあったジョッキに注げとカモに命ずる、その時の彼は完璧に殺る目だった。カモは言われるがまま小さな体で頑張ってジョッキに一升瓶を注ぐ。
どうやらネギの酒癖はかなり悪いらしいらしく、そのまま酒を注がれたジョッキをガバガバと一気に飲も干す姿に、酔いの欠片も失っている銀時は額からタラーと汗が出る。

「あのネギ先生・・・・・・俺そろそろ帰らないと家の者が心配しまして・・・・・・」
「ああ? さっき朝まで飲むって言ってただろうが」
「いえさっきはそういうテンションだったんですけど・・・・・・よくよく考えれば明日学校なのに朝まで飲むってマズくね? と思いまして・・・・・・」
「別にいいだろうが、それともアレか? ここで飲むより、ヒック、家帰って女とベッドインする方が楽しいってか? ヘヘ」
「あながち間違って無いけどその言い方止めて・・・・・・・確かにベッドインですけど手は出してないんです本当・・・・・・」
「すげぇ・・・・・・いつもと立場逆ッスね・・・・・・」 

目がすわって笑っているネギに向かって思わず敬語を使ってしまうほどビビっている銀時を、カモはカウンターからその二人を交互に見る、思いっきり普段の二人とは逆である。

「お前が生徒に手出そうがどっちでもいいんだよ、いいから飲め、こっちのテンションが醒める」
「醒めてくれた方が嬉しいんだけどなこっちは・・・・・・誰に似たんだよこの酒癖・・・・・・」
「ブツブツ言ってないでさっさと飲めやぁぁぁぁ!!!」
「ごふぅぅぅぅぅ!! すんませんでしたぁぁぁぁ!!!」
「オラオラオラッ!! 朝まではまだまだあるぞコラァァァァ!!」
「オゴゴゴゴゴッ!!!」
「兄貴ィィィィ!! もう止めてッ! 銀の兄貴のライフはとっくに0よッ!」 

再び一升瓶を持って銀時の顔に向かってスイングをかました後、更にネギはもう一本取り出してそれを銀時の口に突っ込んで無理矢理飲ます。その時のネギの表情は戦いを楽しむ時のあの夜王鳳仙と同じ表情だと銀時は沈んでいく意識の中そう思った。

二人の教師と一匹の使い魔の朝は遠い


















































話しはネギや銀時のいる世界から戻って、真撰組屯所にある蔵の地下室に戻る

「う・・・・・うう・・・・・・」
「近藤さん大丈夫ですかぃ?」
「そ、総悟か・・・・・・?」

近藤が目を開けるとそこには沖田がいつもの表情でしゃがみ込み自分を覗きこんでいた。どうやらエネルギーを送る為に自転車をこいでる途中で気絶したらしい

「近藤さん俺が通話してる途中で泡吹いて倒れたんですよ」
「ったくだらしねえな近藤、ゴリラのクセにこんな事でぶっ倒れてんじゃねえよ」
「とっつぁん・・・・・・いや、さすがに長時間ハイテンションで自転車こぐのは無理・・・・・・総悟、お前あんまり長話しはしないタイプだって言ってたよな・・・・・・」

一緒にいたとっつぁんは口にくわえているタバコに火を付けながら倒れている近藤に悪態をつく、だが疲弊している近藤はもう返す言葉も精一杯だ
そんな彼に沖田は後頭部をポリポリ掻きながら謝る

「すんませんちょっと予想外の事が起こっちまったんでつい」
「予想外?」
「とりあえず面白い情報を一つ手に入れましたよ、ていうか近藤さん何であっちの世界に“行ってるのに”知らなかったんですか?」
「な、なんだ・・・・・・? まさか千鶴さんの胸は実は既に100センチに・・・・・・」
「いや千鶴さんの胸とかじゃなくて、ていうか俺そんな人知りませんから、そんなどうでもいい情報じゃなくてですね」
「バカヤローッ! 千鶴さんの胸が100いってるかどうかはかなり重要な問題だろッ! 俺は100じゃなくて90台をキープしている胸の方が好きなんだッ!」
「もう千鶴さんの事は離れて下さい、話し進まないんで、とりあえず一つ手に入れた情報は」

倒れながらも叫んでいる近藤に沖田はツッコんだ後人差し指をピンと立てた。

「万事屋の旦那、見つかりました」
「・・・・・・マジで?」

その情報を聞いて近藤のは目をパチクリさせる。

部屋の天井からメガネが光らせ覗いている二つの目があるとは気付かずに



































第三十二訓 誰かと比べられるのってかなり腹立つ

翌朝、銀時の住んでいた家で久しぶりに夜を明かしたナギは玄関から聞こえたインターフォンの音が聞こえたのでむくりと布団から起き上がった。着ている服装はここに住んでいた銀時が残していた寝巻用の服を勝手に拝借した。

「何だよこんな朝早く、常識とかねえのかよ・・・・・・玄関開けた瞬間思いっきり文句言ってやる・・・・・・」

銀時の寝室から出てきたナギは悪態をつきながら玄関に向かって行く。そしてしかめっ面をしながら玄関の障子を開けるとそこにいたのは

「初めまして・・・・・・こんな朝早くからすみません、昨日隣に越してきたと聞いたので少しご挨拶に来させていただきました・・・・・私、隣で花屋を営業している『屁怒絽(ヘドロ)』と言います・・・・・・」
「・・・・・・」

現れた人物はナギの想像を遥かに超え文句を言えずに無言のまま固まってしまった。
そこにいたのは超ド級のこわもての緑の巨人。頭にはチャーミーな花がポンと咲いているが問題なのはその凶悪そうな面構えで、伝説の魔法使いと呼ばれたナギ・スプリングフィールドも屁怒絽と名乗った彼にはすっかり硬直してしまう。

「ここに前に住んでいた坂田さんには色々とお世話になりまして、貴方とも友好的になろうと思い・・・・・・これはほんの引越祝いです、受け取って下さい、私が大事に育てた・・・・・・花です・・・・・・」
「ど、ど、どうも・・・・・・」

屁怒呂が手に持っていたのは綺麗な色とりどりのチューリップが小さな植木鉢にズラッと生えている。それを恐縮しながら受け取ったナギは彼に向かって深々とお辞儀をする。

「困った事があったら聞いて下さい・・・・・・“すぐに”駆けつけますので・・・・・・」
「わ、わかりました、ありがとうございます、お、お館様・・・・・・」
「いえ屁怒呂ですから」
(こ、怖ぇぇぇぇぇぇ!! 何だこの化け物ッ!? 花屋やってるツラじゃないだろッ!? 明らかにアンケートで趣味の所に『人の内臓をえぐり取る事』って書くタイプだぜッ!? ヤバかった・・・・・・相手を見ずに入口を開けた瞬間文句を言ってたら間違いなく食われる所だった・・・・・・)

足をガクガク震わせながら帰って行く屁怒絽を見送るとナギは家の障子をすぐに閉めてハァ~とため息を突いた。

「しばらく俺が帰ってない間にあんな化け物が隣に住んでるとは・・・・・・どうしようとなりの屁怒絽めっちゃ怖い、絶対夢に出るよ、ん?」

玄関にある靴入れに屁怒絽から貰った花をコトンと置いて居間に戻ろうとすると目の前に現れたのは巨大な白い生き物。昨日無理矢理同居人となった人物が連れてきた巨大犬、定春。

「・・・・・・え~と定春だっけお前?」
「ワン」
「・・・・・・お、おはよう」
「・・・・・・」
「あれ意識が遠のく・・・・・・」

ナギの朝の挨拶に定春は何も言わずにガブッ彼の頭に噛みつくと言う事で返事をした


















































数時間後、 万事屋に一人の青年が障子を開けて入ってきた

「おはようございまーす、新八です、二人共仲良くやってますか・・・・・・って見ればわかるねコレ・・・・・・」
「何で定春を追い出さなきゃ行けないネッ! 出て行くんならテメェが出ていけヨッ!!」
「うるせぇぇぇぇぇ!! 家主に対してザックリやる猛犬なんかと一緒に住めるかァァァァ!! 出て行けェェェェ!! ついでにテメェも出て行けェェェェ!!」
「お前が出て行くアルトリ頭ァァァァ!!」

銀時の所で万事屋をやっていて、今は彼のいない間ナギの所でお世話になろうか考えている新八が居間で見た光景は
何故か頭から流血しているナギと、この家に無理矢理住んでいる万事屋メンバーの神楽が、そこら辺にあるコンビニ弁当やら酒のカップやら様々なゴミを投げ合ってお互い罵声を吐いている所だった。
そんな二人を見て新八は思わず頭を手でおさえる

「朝っぱらから騒がしい連中だよ・・・・・・なんか懐かしい感じもするけどこれ以上部屋にゴミ撒き散らされたらたまんないや・・・・・・はーい皆さん一旦こっちに注目してくださーい」

新八が手をパンパンと叩いて少し声を張り上げると、やっと気付いたようにナギと神楽がゴミを投げるのを一旦止めた。

「あれ新八、お前いたの?」
「気がつかなかったアル」
「地味で悪かったな・・・・・・とにかく二人共今度はどうしたんですか? ていうか何でナギさん頭から血出してるんですか?」

気にしてる所をサラリと言って来るのは置いといて、新八はとりあえず頭からダラダラ血を流しているナギの方に向いて聞いてみた。それにナギはイライラした様子で彼に答える。

「どうしたもこうしたもねえよ、朝っぱらから頭に花咲かしたお館様に出会った直後にいきなりこのガキの犬が頭からガブリだぜ、家主にも噛みつく犬と一緒に住むなんて出来るか普通」
「ああそれで定春を追い出せと叫んでいたんですね」
「普通そうだろうが、誰があんな熊みたいな犬と・・・・・・」

なるほどと頷く新八にナギが話していると後ろでソファに座っていた神楽が抗議してくる。

「銀ちゃんはお前なんかと違って私と定春をここに住んでもいいって言ってくれたネッ!」
「また銀ちゃんかよッ! 銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃんうるせえ奴だなテメェはッ!」

神楽に叫ぶナギに向かって新八はしばらく顎に手を当てて考えて後結論を彼に言う

「まあ至極残念でしょうけど定春を追い出すのは僕も反対ですね、一応僕達の家族ですし」
「ていう事はアレか? 俺は毎日犬に虐げられて生きていかなきゃいけねえのか?」
「大丈夫ですよ、ナギさんに慣れれば定春も噛みついてこなくなるでしょうし、ずっと一緒にいれば定春もナギさんに懐いてくれますよ」
「そうは言ってもよ・・・・・・」

新八はそう言うがナギ自身は不安でしょうがない。振り向いて神楽の方を見ると、やってきた定春の頭を撫でながら邪悪な笑みで彼の耳元に小声で何か言っている

「・・・・・・定春、今度はあいつの頭を噛みつくだけじゃなくてそこから噛み千切るネ、ケッケッケ・・・・・・」
「ワン」
「あんな事命令してるんだぜ」
「・・・・・・出来る限り定春と離れた方が良いですね、とにかくまずは神楽ちゃんと仲良くなってくれませんかね?」

新八の意見にナギは全力で首を横に振る

「無理だよ俺絶対アイツと仲良く出来ねえよ、だってアイツの頭の中銀ちゃんだらけだぜ? 俺が入る余地なんか無えよ」
「しょうがないですよ神楽ちゃんにとって銀さんは血の繋がらない兄みたいなもんでしたから・・・・・・本当の兄さんとは不仲な分銀さんにはかなり懐いてたからな・・・・・・」
「何か言った?」
「いえ何でもないです、それにしても・・・・・・」

つい口から彼女の事情を漏らしてしまった新八はごまかして辺りを見渡す、よくみるとコンビニのゴミが散乱していて足の踏み場が無い状態だ。

「アンタ等もしかして昨日の晩飯コンビニ弁当で済ませたんですか?」
「おうよッ! ついでに酒も飲んだぜッ!」
「いっぱい食ったアルッ!」
「誇らしげに言ってんじゃねえよッ!」

何故か自慢げに言うナギと神楽に新八はツッコんだ後その辺にある弁当を手当たり次第に拾ってはゴミ箱に捨てる

「駄目ですよこんな大量にコンビニ弁当食べちゃッ! 栄養片寄りますよこれ絶対ッ! これほとんど神楽ちゃんでしょッ!?」
「コイツが料理出来ないのがそもそもの問題アル」
「しょうがねえだろ、俺メシとかそういうの作った事ねえもん」
「昨日僕も泊まっておけばよかった・・・・・あ~こんなにお酒のカップがあるじゃないですか、アルコールの大量摂取は危険なのに全く・・・・・・」

新八はブツブツと文句を言いながらもヒョイヒョイとお酒のカップを持ってきたゴミ袋に詰めていく。主婦の如く手早さだ。

「お酒ばっか飲んでると肝臓がダメになるの知らないんですか?」
「あ~そんなことカミさんが言ってたな。『ギンタマン』? 何だコレ?」

銀時の使ってた机に座って脇に置いてあった一冊のジャンプを読みながら新八に返すと、それに新八は「うわ~」っと声を上げた

「出たよカミさん、その時は別に何もされなかったんですか?」
「何だよそれ? 人の女房を悪魔みたいに言うな、その時は注意しかされてねえよ“俺は”な、うわ『ギンタマン』くそつまんね~最近のジャンプってこんなにレベルダウンしてんの?」

頭を掻き毟りながらジャンプに向かって文句を言っているナギに新八はふと首を傾げる。

「俺は? 誰かほかの人が被害に遭ったんですか?」
「いや人っていうより・・・・・・まあ俺がカミさんを初めて居酒屋に入れてやったんだよ、それで俺が店の中で酒飲んでると、「お酒だけ飲んでると肝臓にも悪いしアルコール中毒になるからあんまり飲み過ぎるな」って言われてさ」
「へ~いい奥さんじゃないですか、きっとナギさんの体に凄く気を使ってたでしょうね」

新八が感心したように頷くと、ナギはジャンプを読みながら話を続ける

「そん時に俺も「ハイそうですか」で流せばよかったのに、俺カミさんに勧めちゃったんだよね酒が入ったお猪口一杯分、「だったらお前も飲んでみろって今まで飲んだ事無いんだろ? 美味いよ?」って」
「まあお猪口一杯ぐらいならアルコール飲んだ事無い人でも飲めますもんね」
「カミさん、それ遠慮がちに飲んだんだよ、そしたら・・・・・・」
「そしたら?」

ナギはしばらく黙りこくった後ため息をつき、そして

「居酒屋が火だるまになった」
「オイィィィィィ!!! どういう意味だそれッ!? 何で燃えんのッ!? 何で居酒屋が火だるまになるのッ!?」
「あの時に初めて気づいたんだよな、カミさんの酒癖の悪さに」
「酒癖ェェェェェ!? 酒癖だけで店燃やしたのッ!? 悪いってレベルじゃないですよそれッ! 悪魔超人レベルですよッ!」
「燃える店を見ながらカミさん高笑いしてたな、泣いてる店員とそのオヤジの隣で」
「悪魔どころか魔王レベルだったァァァァ!! 酷いでしょいくらなんでもッ! 店のオヤジさんが不憫で仕方ありませんッ!」

ナギの女房のあんまりな行いに新八がその時の店のオヤジに同情しているとナギが「大丈夫、大丈夫」と軽く手を振る。

「あん時は“あっち側”だったから弁償はなんとか出来たんだよ、俺あそこでは色々とコネがあったし」
「あっち側? ああナギさんの生まれた国の事ですか?」
「そうそう、あっち側のせ・・・・・・国なら俺は結構有名人だったんだぜ」
「まあ確かに目立つっちゃ目立つでしょうね、何ていったって酒一杯で魔王に覚醒する人を女房にしてるんですから」
「いやそういう目立ったって意味じゃないんだけどね?」

新八の解釈の仕方に頬を掻きながら苦笑いするしかないナギはまたジャンプの方に目を戻した。
それからしばらく新八はというとナギと神楽が散らかした部屋を掃除することにした

まずそこらへんに転がっている大きなゴミをホイホイとゴミ袋に入れて

「ナギさん酒と弁当どころか、アイスまでこんなに買ってたんですか・・・・・・」
「俺定期的に甘い物食わないと死んじゃうから」

次に小さなゴミを掃除機で吸い取る。

「神楽ちゃん足どけて、ソファの下に小さな埃が溜まってるよ」
「先に大きな埃があるからあっちを吸い取るアル」
「いやあれナギさんだから・・・・・・・」

最後に大きなゴミを燃えるゴミと燃えないゴミに分別出来れば終了だ

「さっちゃんさん、そこにあるジャンプ以外の雑誌全部縛って下さい」
「どうかしら?」
「何で亀甲縛りなんですか・・・・・・?」

とりあえず足の踏み場などは確保したしあらかた掃除出来たであろうと新八は満足げに居間を見渡す。

「よし、これで少しはまともになったぞ」
「お疲れヨ~」
「御苦労さん、あ、ワンパークまだ続いてんだ」
「アンタ等少しは感謝の気持ちってのが無いんですか・・・・・・?」

さっきまでずっと掃除していた新八にも関わらず神楽はソファに寝転がってテレビを見て、ナギは相変わらずジャンプに読みふけっている。新八の待遇は銀時とナギも同じなようだ

「まああながち想像は付いてたんだけどね・・・・・・」
「ちょっと、客が来てるんだからお茶ぐらい出しなさいよ」
「ああ、すみませんさっちゃんさん、今すぐ出しますね」

神楽の向かいのソファに座っている、くノ一忍者の猿飛あやめにどやされた新八はペコリと謝ってすぐにお茶を出す準備を・・・・・・する前に彼女にもう一度目をやる。

「あれ・・・・・・」
「何してるのよ早くお茶持って来なさいよ、こっちは徹夜で疲れてるのよ」
「いえちょっと待って下さい・・・・・・何時の間にいたんですかアンタ・・・・・・・?」
「あなたが掃除するシーンにいるじゃない」
「うそッ!? 掃除するのに夢中で気が付かなかったッ! 何突然出て来てんですかアンタッ! 僕ビックリですよッ!」
「忍びはいつだって神出鬼没なのよ、よく覚えておきなさい」
「いやそれ以前に自然にワンシーンに出てくんなやッ!」
 
突然現れた銀時のストーカーを行っているさっちゃんに向かって新八は叫ぶ。そんな彼に気付いたのかナギと神楽がテレビとジャンプから目をそらしてそちらに向く。

「どうした何か変なモンでも見つけた・・・・・・おたく誰?」
「さっちゃん来てたアルか?」
「ふ、私の気配に気付かないなんてあなた達本当銀さんがいないと腑抜けね、それにその男は誰?」

質問してきたナギに向かって逆に指を差して質問を返すさっちゃんに新八は疲れた調子で代わりに答えた。

「・・・・・・・銀さんの代わりにここで住む事になったナギさんです」
「な、何ですってッ!? こんな天パでもなく目も死んでない男が銀さんの代わりッ!?」
「それ以外は妙に似た点が多いんですけどね」
「冗談じゃないわよッ!」

そう言ってさっちゃんは思いっきりソファの間に置いてあるテーブルを思いっきり叩く。その拍子で付けていたメガネがポロっと落ちた。

「あなたみたいな人が銀さんの代わりなんて出来ると思うの? 私を銀さん以上にイジメられるの? いいや出来ないわねッ! 何故ならあなたには銀さん以上のSの臭いを感じないからッ!」
「あの~すんません、そいつからはSの臭いどころか獣の臭いしかしないと思うんですけど?」
「さっちゃん、それ定春アル」

メガネを失ったさっちゃんはヘッヘッヘと笑っている定春に向かって指を突き立てる。彼女の弱点、それはメガネが無いと何も見えない事である。

「さっちゃんさんこれ、メガネ落としてましたよ」
「あれ? 何でメガネが私のメガネを持って・・・・・・あ、やっぱりメガネだったわ」
「メガネ付けても僕の事メガネにしか見えてねえのかよッ!!」
「そういえばあなた達に話す事があったわ」

新八が彼女に向かってツッコミを入れるもそんな事は露知れず、さっちゃんはソファに戻って足を組む。

「昨日の夜、真撰組に潜入したんだけど銀さんの居場所がわかったわよ」
「え・・・・・? 本当ですかッ!?」
「何処ネッ!? 私すぐ銀ちゃん迎えに行くアルッ!」

さっちゃんの思わぬ情報に彼女の向かいのソファに座った新八と神楽は目を輝かせる。だがさっちゃんは少し難しそうな表情を浮かべている

「落ち着きなさい、銀さんがいる所はあなた達一般人には知られては絶対にいけない所なの、“あの場所”を知る者は幕府の上層部と接触のある人物のほぼ一握り、昔一度だけ聞いた事があったんだけどその時は半信半疑だったわ、だけど真撰組の奴等がやってた行動で確信した」
「誰にも知られてはいけない場所・・・・・・?」
「そんな所あるアルか?」
「・・・・・・・・・・・」
「教える前に確認しとくわ、そこの男は口堅い?」

新八と神楽は不思議そうな顔をしているがナギは珍しく真顔で無言だ、そんな彼にさっちゃんは問いただすと、彼はいつもの調子で淡々と返す

「残念ながら俺の口はやわらかいよ、カミさんに何度も怒られるぐらいだ、けどな・・・・・・実はもうアンタが言おとうしてる場所は俺知ってるんだぜ」
「それはどういう意味かしら?」
「ナギさん・・・・・・・?」
「何でお前が銀ちゃんの居場所知ってるネッ!」
「そいつの居場所自体は知らねえよ、そこら辺はこっちのネエちゃんの方が詳しいんじゃねえか?」

ナギは軽く笑って見せた後、さっちゃんの方に向く。それに反応して新八と神楽も彼女に向き直る。

「教えて下さいさっちゃんさんッ!」
「さっさと教えるネッ!」
「その前にあなた達これから言う事は本当の事よ、その現実を受け止める覚悟を持ちなさい」
「もったいぶらずに教えて下さいよッ!」
「吐けコラァァァァ!!!」

身を乗り出して叫んでくる新八と神楽にさっちゃんはため息をついた後。その口からついに銀時の居場所を言った。そう










「別世界よ」
「べ・・・・・・別世界・・・・・・」
「別世界ってどういう意味アルか?」
「俺が生まれた世界だ、正確には違うけどよ」
「!!」

さっちゃんの言っている事に理解できなかった新八と神楽に更にナギが新事実をサラリと
言う。新八は驚いて彼の方へ顔を向ける

「別世界・・・・・・?」
「文字通りだよ、こことは別次元の世界。俺は元々“あっち”の世界の人間だ、ここの世界の人間じゃない、ついでにカミさんもだぜ」
「ほ、本当に存在するんですか・・・・・・? そんなおとぎ話みたいな現象がこの世に存在するなんて・・・・・・」
「残念ながらあるんだよ、お前ずっと俺が“普通の人間”だと思ってたのか? 昨日の時も?」
「え・・・・・・あ、あの時ッ!」

ナギの問いかけについ重要な事を忘れていたと新八は気付いた。
彼と初めて会った時、彼は大量の黒服の集団に襲われた。
だが彼の周りには突然雷が打たれたような電流が走り、黒服全員を文字通り瞬殺したのだ、中心にいた彼は無傷。あの不可思議な現象はもしや・・・・・・・

「あの時の電撃は・・・・・・」
「そう、俺の力だ、なんなら今から別のモン見せようか? ほれ」
「へ? うわァァァァッ!」
「飛んでるアルッ!」

新八と神楽が目で見た光景は信じられない出来事だった。
ナギがふわっと宙に浮き、そのまま空中に立つようにしてこちらを見下ろしている。そんな姿をさっちゃんは興味深そうにメガネをカチッと開けていた

「あっち側の世界の人間はこんな事も出来るのね」
「いや俺が生まれた場所の人間は大体出来るかもしれねえけど、大半の人間はこんな事知りもしねえよ、魔法は普通の一般人には知られちゃいけねえもんなんだ」
「凄いそんな事が出来るなんて・・・・・・ん? 今なんて言いました?」
「だから『魔法』は普通の一般人には知られちゃいけねんだよ、バレたら色々とめんどくさい事になっちまう、だからあんまりここの世界の奴等にも俺が『魔法使い』なのは秘密だぜ」
「ま・・・・・・」
「魔法使いアルか・・・・・・」




















新八と神楽はナギが言った事に数秒間固まってしまう。何故ならさっき彼は自分の事を・・・・・・

「「魔法使いィィィィィィィ!?」」
「驚いたわね、あっちの世界ではそんなのがいるなんて・・・・・・」
「さすがに魔法使いの情報を知ってるのは幕府にもいなかったようだなネエちゃん」

口を思いっきり開けて同時に驚いた新八と神楽と、珍しく少し驚いた表情を浮かべるさっちゃん。そんな彼女にナギは笑いかけながら口を開く。

「私が知ってる情報は別世界の存在と、その別世界に銀さんが真撰組の隊員の一人とコンタクトを取ってる範囲内にいるって事だけよ、あいつ等の通話記録さえあれば具体的にどんな所にいるかわかるかもしれないわね、あっちの世界出身の“この男”ならその場所の特定も可能かもしれしないし」
「真撰組の隊員・・・・・・もしかして最近見かけない土方さんッ!?」
「銀ちゃんはマヨラーと一緒にいるって事アルか?」
「その可能性が高いと思うよ、でも何で銀さん別世界とか思いっきりぶっ飛んだ場所にいるんだろ・・・・・・」

何故銀時は異世界へ? 新八がその事に頭を悩ましているとナギがまた情報をくれる。

「たまにあるんだよ、偶然宇宙を彷徨ってる時にあっちの世界の次元に突っ込んじゃうとか、あっちの魔法使いの召喚魔法で稀に出てくるとか、まあ宝くじで特賞出すぐらい低確率だけどな」
「そうやって異世界に行くケースがあるんですか、宇宙を彷徨ってる時にか・・・・・・坂本さんがあっちにいる可能性が出てきたけど銀さんは・・・・・・?」
「あいつが宇宙へ行く事なんて無いネ」
「じゃあ二つ目の方法なのかな・・・・・・」
「どっちにしろ銀さんが別世界にいる事だけはわかってるのよ、行く過程なんかどうでもいいでしょう」

さっちゃんは顎に手を当てながら考える。そもそも隊員の一人を別世界に送れるあの組織が重要だ

「今の所別世界を行ったり来たり出来るのは恐らく・・・・・・」
「真撰組・・・・・・そうだよ、だって土方さんを向こうに送れたんだし」
「あいつ等の所に行けば絶対銀ちゃんの事もわかるネッ!」
「よしッ! 真撰組に行こうッ! もう相手が警察だろうがどうでもいいよッ!!」
「決まってるアルッ!」

ソファから立ち上がり新八と神楽は真撰組屯所に向かう事を決意する。そんな熱気の高い二人とは対照的にさっちゃんは冷静に話しかける。

「私は遠慮しとくわ、幕府に正面から敵対するのは今後仕事貰えなくなりそうだし、今日も幕府から直々に依頼が来てるしもう行かなきゃ、じゃあ別世界に行けたら銀さんに伝えてくれないかしら? 私は常に銀さんの物よって、もうこんなに放置プレイされて我慢できないんだぞって、さっちゃん怒っちゃうぞって」
「仮に行けたとしても、そんな気持ち悪い事を銀さんに伝えに行かなきゃ駄目なんですか?」

新八がキョトンとしているとさっちゃんは「当たり前じゃないッ!」と叫んだ後、家の障子を開けて去って行った。さっちゃんが去った後新八と神楽は向かう準備をする

「じゃあ僕達もッ!」
「おうさッ!」
「お前等ちょっと待てって、俺まだ着替えてねえんだからよ」
「え? ナギさんも来てくれるんですか?」

椅子から立ち上がり着替えを取りに行く為にナギは寝室へ入って行く。そんな彼に新八は
少し意外そうな表情を浮かべる。

「元々俺は“ある事情”でここ数年あっち側に帰れなくてな、戻る方法もわかんなかったしいい機会だ、また“絶対”こっちに戻ってくるけどね俺は」
「やっぱりここに戻ってくるんですか・・・・・・銀さんになんて言おう・・・・・」

寝室で自分の服装に着替えながらナギは新八に話すと、新八自身は複雑そうな表情をする。
家主が二人いると言う事はどうすればいいのであろうか・・・・・

「お前等の初代リーダーの事はどうでもいいけど、もしかしたらウチのカミさんが“あの野郎”のおかげで別世界に行ってるかもしれないし、それに・・・・・・」
「それに?」
「デカくなったか一度見てみたいガキがいるんだよ・・・・・」

何処か遠い目をした後ナギはいつもの服装にローブを着飾って出かける準備が出来た。

「行くぞてめぇ等、真撰組とかいう所に殴りこみだッ!」
「仕切ってんじゃねえヨッ!」
「ああッ!? 今は俺がリーダーだろうがッ!」
「はいはい、喧嘩してないでさっさと行きますよ」

ナギと神楽の喧嘩を新八が仲裁しながら三人は障子を開けてある場所に向かって走る。


いざ行こう真撰組へ


























































教えて銀八先生

銀八「え~一通目風凪五月さんの質問」

刹那はレズですか? それともお嬢様バカですか? レズなのかバカなのか、ハッキリとお答えください!

刹那「レズでもお嬢様バカでもありませんッ! 私はただお嬢様をお守りしようと・・・・・・」
銀八「ただのバカですね」
刹那「バカって言う奴がバカなんだッ!」
千雨「そういう考えの時点でお前はバカだ」


銀八「二通目ペケペケさんの質問」

ナギさんと銀さんに質問。
宇治銀時丼とプリン丼(仮)を交換したとします。食えますか?

銀八・ナギ「「食える」」
ナギ「俺の方がもっと宇治金時を盛るね」
銀八「いや俺の方がプリンをもっと盛るね」
ナギ「いや俺の宇治金時はお前よりずっと甘い」
銀八「いや俺のプリンの方がもっとプッチンしてる」
千雨「何処まで続くんだそれ・・・・・・?」


銀八「三通目からなさんの質問」

銀さんへ
大体、週何度の頻度でエロ本買ってますか?
資金はどうせ妖怪Gの財布から出てるんだろうけど、三人娘に見つかったら嫉妬でエロ本焼かれるか、殴られるかと思うので気を付けてください
あ、でも銀さんの嗜好を確かめるのに三人娘が読んでると思うので、やっぱこれからも買い続けて下さい
大丈夫です。存在自体が猥褻物の妖怪がいるんです。
もっと堂々として好い筈です。
これからも応援してます。エロ本読みながら応援しています。

銀八「男はみんなエロ本好きですよねわかります、さすがにジジィからじゃなくて自費で買ってるから頻繁には買わねえけど」
千雨「お前なぁ・・・・・・今度いいんちょに言いつけるぞ?」
銀八「そんな事されても俺の欲望は抑えられねえよ」
ナギ「男はみんな一生エロ本と言う欲望に踊らされる人生なんだぜ」
新八「それアンタ等だけだと思います」


銀八「四通目ウィルさんの質問」

今回はヒロイントリオといきたかったのですがいいんちょにだけです。ズバリ聞きますが銀さんとの子供は何人欲しいですか?出来ればでいいのですが『○○歳、第一子誕生。○○歳、第二子』などの計画表みたいなものも欲しいです。ちなみに千雨とエヴァに聞かなかったのは千雨は素直じゃないから絶対に答えてくれないでしょうし、エヴァに関してはなんていうか、その…体そのものが作る作らない以前の問題ですから。

あやか「こ、子供・・・・・・男の子と女の子一人ずつ欲しいですわ・・・・・・」
千雨「そんな事まで考えてんのかよお前・・・・・・」
エヴァ「私だって子供ぐらい作れるぞ」
あやか「その見た目であなたが作れるわけないでしょ、それ以前に銀さんに相手にもされませんわ」
エヴァ「ふん、幻術を使えば私の体は一瞬でお前よりデカくなるんだぞ、その時に銀時を・・・・・・」
千雨「なんか必死過ぎて可哀想になってきた・・・・・・」
エヴァ「黙れッ!!」


銀八「五通目とびかげさんの質問」

銀八先生に質問
文化祭が嫌いといってましたが、風の噂ではしずな先生は
とても楽しみだそうですよ? 
この際キャラ変して楽しむのもありと思います

銀八「そんな事作中に書いてあったっけ? まあ残念ながらこの作品は文化祭編は無いんでキャラ変しても意味無いですから」
千雨「何で無いんだっけ?」
銀八「俺が嫌いだから」
千雨「やっぱりその理由なんだな・・・・・・」


銀八「六通目風の都さんの質問」

あやかさんと千雨へ
銀さんが三日間、出張に出かけることになりました。
その間、銀さんのポジションは外伝で知り合った近藤さん(ゴリラ)が代理として就くことになりました。
お二人にとって、この三日間はどういう三日間になりそうですか?
あくまで仮の話ですので、気軽にお答えください。

千雨「ゴリラって時点でアウトだろ」
あやか「私、ゴリラは無理ですの」
沖田「すみませんゴリラで」
近藤「ゴリラをバカにすんなぁぁぁぁ!!!」
土方「いやアンタの事をバカにしてるんだと思う」


銀八「七通目蛙さんの質問」

新八に質問。
これからもツッコミ一本でいくのですか?それとも、別のポジションへコンバートですか?
まぁ何をしても、あやか・千雨。次期、万事屋候補の『大魔神・佐々木まき絵』がいるので一生控えのような気がしますがね

新八「これからもツッコミ一本でッ!」
神楽「ていうかそれ以外しか取り柄が無いアル」
ナギ「ねえ大魔神・佐々木まき絵って何? あいつ(銀時)の所には大魔神もいるの?」
まき絵「いや大魔神じゃないから・・・・・・」
銀八「出たァァァァ!! 大魔神だァァァァ!!」
神楽「大魔神討伐じゃキャッホォォォォイッ!!」
まき絵「こっち来ないでェェェェ!!」


銀八「八通目サハリンさんの質問」

ロリコン銀ちゃんに質問
今自分のマイブームのパチンコの台は何ですか?ちなみに僕は、シティーハンターの甘デジの台です。

銀八「美空ひばりかな、ていうか誰がロリコンだボケ」
千雨「美空ひばりってパチンコであるんだ・・・・・・」
銀八「あの人の歌聞きながらフィーバーするとテンション上がんだよな、歌が終わった途端「俺こんな所で何やってんだろ?」って泣きたくなるけど」
千雨「一応お前にも自覚あるんだな・・・・・・」


銀八「九通目正宗の胃袋さんの質問」

変態ぬらりひょんに質問
幻想郷に行って特に一番酷い目に遭ったのはどこですか?出来ればどの位幻想郷に滞在日数も教えてください。

学園長「普通ネギま×銀魂の小説でそっちに話し進める? ここの作者『東方よろず屋』しか読んでないからそんなに東方詳しくないよ?」
銀八「元々東方嫌いだったしなアイツ」
学園長「全くワシの生まれ育った場所を嫌うとは許せん・・・・・・!」
銀八「・・・・・・今なんつった?」


銀八「・・・・・・十通目ゼミルさんの質問」

主に女持ちな男性キャラに質問。相手と色々な意味で大人な事をしてると思いますが、具体的にはどんな事やってますか?詳しく教えて下さい。
具体的にはさっちゃんレベルの内容で。特に銀さんとスプリングフィールド夫婦。

銀八「やってねえから、ていうか女持ってないし」
ナギ「そんな事言えるか・・・・・・」
坂本「アハハハッ! 手出した瞬間、わし死ぬぜよッ!」
銀八「お前等はいいよ年相応の相手がいて、俺なんか周り中学生だぜやってられねえよ」
ナギ「あ~おたくロリコン?」
銀八「ぶっ殺すぞテメェ」
坂本「ロリコン疑惑はあいつじゃろ?」
銀八「おいそいつの名は出すなよ・・・・・・」


銀八「十二通目眼球さんの質問」

学園長に質問。
あなたに味方と呼べる人、もしくは物はいますか?
常に四面楚歌な状態ですけど……………?

学園長「いるぞッ! ワシの大事な孫娘の木乃香がッ! この前なんかワシの為に作ってくれた饅頭を箱に詰めて持ってきてくれたのじゃ~」
木乃香「いつもじいちゃん大変そうやからな~」
学園長「ところであの箱、開けた瞬間爆破したんだけど?」
木乃香「やだわ~『砂糖』と『火薬』間違えてしもうたわ~」
学園長「まったく木乃香はドジじゃな~フォッフォッフォ」
千雨「ついに爆破テロ・・・・・!!」
銀八「そろそろ本気で殺しにかかってるな」


銀八「十三通目q-tureさんの質問」

学園長に質問です。
原作(ネギま)のモデルになった『ハリー・ポッター』シリーズの主役のダニエル君が現在大麻吸引の疑いで騒がれています。
そのため、最悪の場合映画の最終シリーズが公開されない可能性があります。
学園長はこの責任をどのようにとるのでしょうか?
切腹するんでしょうか? 切腹しますよね? 切腹しろよ!

学園長「しねえよッ! ワシとダニエル君関係ねえよッ!」
銀八「安心しろダニエル君はそんな事やってねえよ、ハリポタの主人公役がそんな真似する筈無い、だがジジィお前は切腹しろ、世の中の為だ」
学園長「だからやらねえってッ!」
銀八「ていうか切腹でもなんでもいいから死んでくれ」
学園長「投げヤリだなオイッ!」











次回、第三十三訓・江戸編最終章『過去の因縁はどうしても消えない』




[7093] 第三十三訓 過去の因縁はどうしても消えない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/11/21 11:32
真撰組局長、近藤勲と真撰組副長(代理)沖田総悟は幕府の研究所で用事を済ませ、江戸のパトロールをしながら屯所に向かって帰っていた。

「いや~、近藤さん松平のとっつぁんは中々面白いモン造ってましたね」
「もう少しで完成する様だな、“アレ”が出来れば異世界に行くのも簡単になる・・・・・・あの子とも会えやすくなるかもな・・・・・・それにしてもとっつぁんの人望はすげえな、幕府の上層部から隠れて、研究所の科学者達にあんなもの開発させるなんざ普通出来ねえよ」
「何言ってんですかぃ近藤さんも負けてませんよ、俺達みたいな野郎共を束ねるなんざ近藤さん以外出来ませんぜ」
「ハハ、世事を言っても何もやらんぞ総悟」

帰路についてる途中、気さくに話しかけてくる沖田に近藤はどうせちゃかしてるんだろと言う風に笑い飛ばす。そんな彼に沖田は頭をポリポリと掻きながら少し困った表情を浮かべた。

「本当の事なんですがねぇ・・・・・・ん? 近藤さん、なんか屯所が騒がしくないですか?」
「なに?」

やっと目的地の屯所が見えた頃沖田はふと屯所へ指をさす。近づきながらよく見てみると隊士達が騒がしそうにしている。

「一体何やってるんだあいつ等? まさか俺達がいない隙に焼き肉大会でもしてんじゃねえだろうな」
「そいつは許せねえな、もしやってるなら“副長”の俺が直々にバカ共をぶった斬ってやりまさぁ」

自分の肩書きを誇るように沖田はカチッと腰に差している刀を握りながら近藤と共に屯所へと入る。入ってみるとそこには

「テメェ等ァァァァ!!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
「しつけえんだよォォォォ!!!」
「「「のわァァァァァァ!!!」」」

赤髪の男が手から電撃を出して隊士達を黒こげにしている所だった。
近藤と沖田は呆然とそれを見る。

「え? 何やってるのこれ?」
「あいつ等自分を焼き肉にしてますね、でも焼き過ぎですよありゃあ」
「いやそれよりあの男誰? 手から電撃出してなかった?」
「出してました、ビリビリしそうなモン出しまくってますね、現在進行形で焼き肉やりまくってますね」

襲ってくる隊士に向かって容赦なく電撃を発射して、人間技ではない事をやってのける赤髪の男に近藤は少し混乱状態になっていた。
そんな二人の足元に黒こげになってる体を四つん這いにさせてズリズリと誰かが近づいて来た。
スキンヘッドといかついヤクザの様な顔が特徴的な、真撰組十番隊隊長、名は原田右之助

「きょ、局長とお、沖田隊長・・・・・・今帰って来たんですか・・・・・・」
「原田ッ! お前まで何やってんだッ!」
「おい原田、今沖田隊長つったな? 俺の事は副長と呼べ副長と」
「うごごごごッ!! 失礼しました副長ッ!」
「総悟ォォォォ!! これ以上原田に追い打ちかけないでェェェェ!!!」

四つん這いになって倒れている原田の背中をグリグリと踏みつけるサド王子に近藤が慌てて止めに入った後、倒れている彼にしゃがんで話を聞く

「しっかりしろ原田ッ! 何があったんだッ!?」
「く・・・・・・見てわかる通りあの電撃を出す“赤髪の野郎”のせいでウチの隊士はほぼ壊滅状態です・・・・・・」
「誰だあの男はッ! もしかして俺達を狙って来た攘夷志士かッ!?」
「いえ攘夷志士じゃねえと思います、死人は出してないしそれに・・・・・・いきなりここへ無理矢理入って来て万事屋の所の二人連れて殴りこみに来たんです・・・・・・」
「万事屋の二人ッ!? もしかして新八君とチャイナ娘の事かッ!? 何であんな男と一緒にッ! 総悟とりあえず新八君とチャイナ娘に話を聞きに・・・・・・って総悟ォォォォォ!?」

今にも気を失いそうな原田の情報を聞いて近藤は行動しようと後ろに振り返るが、そこにいるはずの沖田がいない。何故なら沖田は既に

「おい、そこの赤髪のトリ頭」
「誰がトリ頭だコラ、お前もコイツ等の仲間だよな」
「ここの副長を務めてる沖田っていうモンでねぇ、誰だか知らねえが俺の部下共を随分と痛みつけたその罪、その体に“キッチリ”刻ませてもらうぜ」
「へぇ、中々強そうじゃねえかお前」

赤髪の男に近づいて喧嘩を売っていたからだ。
沖田は腰に差している刀を抜き、“対象物”に向かって走り出す。
男の方はそんな彼に笑いかけ、向かってくる沖田に右手からバチバチと電撃を溜めて発射しようとしていると・・・・・・

「アチョォォォォ!!!」
「ってオイ神楽ッ!」
「うおっと、なんでテメェがいるんだ?」

突然上空から降って来た知り合いのチャイナ娘の飛び蹴りを沖田はすぐに後ろに跳んで避けた。そのまま彼女は二人の間に着地。いきなり勝負の邪魔してきた彼女に向かって赤髪の男が叫ぶ

「てめぇ今やっと手答えのありそうな奴と戦えそうなんだから邪魔すんじゃねえよッ!」
「このサドは私の獲物じゃあッ! お前は他の奴等でも狩っとくアルッ!」
「ふざけんなこいつは俺の獲物だッ! ガキは引っ込んでろッ!」
「ああッ!? やんのかコラッ!?」
「上等だかかってこいよッ! そろそろ誰が強いかお前に教えてやろうと思ってた所だぜッ!」 

お互いの顔を近づけながらメンチを切り合う知り合いのチャイナ娘と謎の赤髪の男。
そんな二人に取り残された沖田はどうしたもんかと考える。

「参ったなこりゃあどういう事だかさっぱりわけがわからねえや」
「すんませぇぇぇぇぇんッ!!!!」
「うん?」

しばらく睨み合っているチャイナ娘と赤髪を眺めていると、聞き慣れた声が聞こえたので沖田はそちらに振り向く。
見るとそこには近藤に向かって土下座して謝っているメガネを付けた青年がいた。万事屋メンバーの志村新八だ

「すみません本当すみませんッ!! 僕等ちょっと抗議しようと来ただけなのに、あのバカ共いきなり真撰組の人達をぶっ倒し始めてッ!! マジすんませんでしたァァァァッ!!!」
「落ち着け新八君ッ! とりあえず話を詳しく教えてくれッ! こっちもわけがわからんッ! それにあの見た事も無い赤髪の男は誰だッ!?」
「それは・・・・・・」

思わず口ごもる新八に、近づいて来た沖田が二人の会話に割って出た。

「近藤さん、ここは詳しく話を聞かせてもらう為に屯所の中へ案内しましょうや、おたくの旦那にはよく世話になってたし、隊の奴等の事は俺のしごきが足りなかったという事で大目に見ますが、こっちも色々と聞きたい事があるんでね、電撃出せる人間なんて普通いますかぃ?」
「そうだな、しかもそんな人間が君達と一緒に行動してるなんてこっちはさっぱりだ、新八君も何か言いたそうだしここは屯所の中でゆっくり話し合おうか」
「はい・・・・・・」

沖田の処置と近藤の器のデカさに感謝しながら新八は立ち上がりざま再び彼等に頭を下げ、相変わらず睨み合っているあの二人の方へ向く

「大体テメェはもうちょっと年上を敬うっていう気持ちはねえのか、あ・・・・・・?」
「こっちはお前みたいなパチモン銀ちゃんに敬う気持ちなんかこれっぽちも無いネ・・・・・・」
「おいパチモン銀ちゃんって何だコラ・・・・・・勝手に俺をそいつの偽物に認定してんじゃねえよ・・・・・・!」
「うるせえよパチ銀・・・・・・所々銀ちゃんとキャラ被っててまぎらわしいんだヨ・・・・・・」 

新八と同じ万事屋メンバーの神楽、異世界からやってきた謎の『魔法使い』ナギ・スプリングフィールドはまだ口喧嘩している真っ最中だった。新八はそんな二人を見て頭に青筋を浮かべる。

「テメェ等いい加減にしろやぁぁぁぁ!!!!」

新八の怒りの雄叫びが真撰組の屯所内全体に響き渡った












































第三十三訓 過去の因縁はどうしても消えない

「異世界? そりゃあ一体何の事かな~? 新八君」
「そうだよ~新八君~、ところでお妙さんは元気かな? 今度いつか焼き肉に誘おうと思ってんだけど?」
「二人共とぼけないでください、僕達もう知っているんですよ、銀さんが異世界にいるのは、土方さんもあっちの世界にいるんですよね? そうじゃないと沖田さんが副長になるなんてありえません」
「私達の地獄耳を甘く見てんじゃねえぞサド野郎、お前とゴリラがしらばくれっても、とっくにこっちは色々と知ってるんだヨ」
「総悟どうする・・・・・・」
「なんでバレたのかわかりませんが、旦那の事まで知られてはこっちもお手上げですよ、素直に白状しましょうや」

場所は真撰組屯所内の客室。そこにいるのは沖田と近藤に強く訴えかける新八と神楽、そして暇そうに新八の隣でくつろいでいるナギの姿があった。

「新八、コイツ等誰?」
「ごつい方が武装警察真撰組の局長の近藤さんと、見た目爽やかで中身真っ黒なのが“今は”副長の沖田さんです」
「へ~このゴリラみたいなのが一番偉いのか」
「初対面でいきなりゴリラとはなんだッ! あんたこそ何者なのか教えろッ!」
「あ~なあ新八、教えていいのか俺の事?」
「大丈夫です一応この人も幕府の人達ですが、敵ではありません」

新八の説明にナギは「ふ~ん」と理解してだるそうに近藤と沖田の方に自己紹介する。

「ナギ・スプリングフィールド、異世界では結構有名人だった『魔法使い』で、今はカミさんの行方を追いながら昔やってた万事屋を再開中~。好きな物は甘い物、嫌いな物は噛みついてくる犬で~す」
「異世界では結構有名な人だった『魔法使い』? え? どういう事それ?」
「二人共落ち着いて聞いて下さい、この人は銀さんがいる所の異世界出身者、しかも魔法使いという僕等の想像を遥かに超えた人なんです」
「へ~・・・・・・」














「ハイィィィィィ!?」

新八の話を聞いてしばらく静止した後、近藤はいきなりすっときょんな声を上げて驚く。
反対に隣の沖田は興味深そうに考える。魔法使いなんて聞いて簡単に信じれるわけがないが目の前で“あんなの”を見た場合だと考えは少し変わってくる

「じゃあさっきの電撃はまさか『魔法』とでも言うんですかい?」
「そうです、普通の人間で電撃なんて出せますか?」
「現役の時ならもうちょっとデカイ呪文撃てるんだけどなぁ・・・・・・どうも“あの野郎”のおかげで上手く力が出ねェ、今じゃ簡単なのと無詠唱呪文ぐらいしか使えなくなっちまった・・・・・・現役時代に戻るのはまだ先かね・・・・・・」
「確かに一般人が手から電撃出すなんて並の事じゃねえな、近藤さん、こりゃあ随分と衝撃的なニュースみたいですよ」
「魔法使いとかそんなファンタジーみたいなもんがあっちにはあるのか・・・・・・でも待てよ? 俺は一度あっちの世界に行ったけど魔法使いになんて会った事もないぞ?」

沖田の問いかけに近藤は最初思慮深げな表情をするがすぐに疑問で首を傾げる。そんな彼にナギがテーブルに置いてあったお茶を飲んだ後口を開いた。

「魔法使いってのは一般の人には知られちゃいけねえ存在でよ、お前が言った場所は魔法が現実に存在するなんて知らない場所、もしくは魔法使いはいるが普段はその魔法を一般人に見せないよう工夫してる場所なんだろ」
「へ~まあ確かに俺が行った学校はここと少し文明が違ってるぐらいだったしな」
「ちょっと待つアルゴリラッ!! お前あっちの世界に行った事あるのかヨッ!?」

ナギの話になるほどと頷いている近藤に向かって神楽が身を乗り上げる。すると彼はそんな彼女に押され気味に言葉を返した

「ま、まあ一回だけ日帰りでな、トシと山崎が無事かどうか見に行っただけだよ」
「山崎さんもあっちの世界にいるんだ・・・・・・道理で姿を見ないわけだ・・・・・・」
「じゃあ何でその時に銀ちゃんをこっちに連れ戻さなかったアルかッ!?」
「いやだって・・・・・・万事屋があの学校にいるなんて知らなかったし・・・・・・ていうかあんまりトシと山崎を探す以外は何処も行ってねえんだよ、飼育室の中ぐらいしか行ってないしな」
「・・・・・・なんで飼育室の中なんですか? そんな所に行く理由がわかりません」
「話すと長くなるから言わんが、俺は向こうの世界でもゴリラと認識されるらしい」
「閉じ込められたんですか? ゴリラと認識されて閉じ込められたんですか?」

何処か悟ったような表情をする近藤に新八はツッコみながら一体彼をどんな人物が閉じ込めたのか少し気になったが、それは置いといてすぐに本題に迫る。

「まあ近藤さんが何処の世界でもゴリラだというのはわかりましたが、一番肝心なのはどうして銀さんがあっちの世界に行ってしまったのかという事です、二人共何か知ってますよね?」
「あっちにいる理由ってのはあんま詳しくはわからねえんだがねぇ・・・・・・多分、旦那は“江戸の神隠し事件”に巻き込まれたかな?」
「はぁ? 江戸の神隠し? 何それ?」
「最近江戸の攘夷志士が消えている事件、つまり幕府に反旗する連中を異世界に送ってるんです、これには最近一般人も巻き込まれてるケースが多発してましてね、攘夷志士を異世界という檻に閉じ込めてこの世界を『綺麗にしよう』としてる連中の仕業でさぁ」
「そ、そんな事件が起こってるんですかッ!?」
「私達そんな事件知らないアルッ!!」

江戸の神隠しという事件なんて新八と神楽は聞いた事も無かった。しかしそれは当然の事でこの事件は幕府の組織しか知られておらず、一般人には極秘の事件であり知る人はほとんどいない。しかもこの神隠しは“事件ではない”のだ
ナギはしかめっ面で説明していた沖田を睨む。


「それでお前等は指くわえてその事件を見過ごしてるのか? お前等警察なんだろ?」 
「んな事言ってもねぇ、犯人は中々のクセモノで『幕府』の上層部の連中と来たもんでさぁ、これでウチも犯人を捕まえれるなんざ出来ねえんですよ、捕まえようなんかした瞬間アウト、俺達全員の首が飛ぶだけです」
「幕府だと?」

『幕府』という言葉を聞いてナギは目を細める

「攘夷志士の大量異世界転移、これで幕府に刃向かう連中はこの世界からいなくなってこっちはあいつ等の思い通りの世界に、あっち側の世界なんて知ったことかって感じですね」
「チッ、俺が寝てる間に色々とこの国は乱れてるって“ハゲ”が言ってたがそこまで腐ってるとはな・・・・・・攘夷志士よりそいつ等を地獄に転移してくんねえかね」

沖田の皮肉交じりな説明にナギは腹立たしそうに舌打ちをする。しばらくして向かいに座っている沖田がイラついている彼に再び口を開く。

「そこで俺達はちょいとあいつ等の計画で上手く手柄を取ろうと思いましてね」
「手柄?」
「異世界に送られた攘夷志士連中を束ねて一気に俺達が捕まえてやろうっていう作戦です」
「・・・・・・上手くいってんのかそれ?」

不安そうに聞いてきたナギに沖田は小さなため息をついてお手上げのポーズをする。

「全然です、最初に密偵として送った奴があっちでヘマしてこっちに帰れなくなるし、もう一人送った奴はもっと使えなくて、見てきた近藤さんがいうにはあっちでラブコメやってるらしいんで論外です」
「ラブコメ? なんだそりゃ?」
「密偵は山崎さんって事は二人目は・・・・・・土方さんッ!? あの人がラブコメッ!? 嘘でしょ土方さんはそういうタイプじゃないでしょ絶対ッ!」
「ダヒャヒャヒャッ! 何処のアホがあのマヨとラブコメなんてするアルかッ! マジ笑えるアルッ! 」

土方がラブコメやってると聞いてナギは口をへの字にして、新八はあまりにも意外性の高いチョイスで我が耳を疑い、神楽は腹を抱えて大爆笑している。
三人のそんな反応に近藤も腕を組んで面白そうに混ざり出す

「いや~トシはやっぱり顔は二枚目だからな、実はあいつが今いる所って女子校でさ女の子がメチャクチャいっぱいいるんだよ、それで俺が知り合った女の子の一人が実はトシに惚れててよ、手作りの弁当をあいつに上げたんだが、その時の少し照れたような表情をしてるトシは本当普段俺達には絶対見せない顔だったな~」
「ギャハハハハッ! 最高アルッ!!」
「女子校にいるんですか土方さんッ!? 全然想像できませんよあの人が女の子にお弁当を貰うなんて・・・・・・クソ、なんか羨ましい・・・・・・! 僕も一度そっちの世界に行きたい・・・・・!」

近藤の話に神楽がゲラゲラ笑っている傍ら、新八が思わず口を漏らした事にナギがすぐさま反応する

「いや行っても無理だと思うよ新八、お前は無理無理、絶対無理、何があってもお前にフラグは無い、断じて無い、俺の全てに誓ってそれは絶対にあり得ない」
「なんでそこまで全否定すんだよッ!? もしかしたら奇跡があるかもしれないでしょッ!? そんなに女の子が一杯いるならこんな僕でも好きになる人がいるよきっとッ!!」
「お前俺が見る限り今まで彼女とか出来た事無いだろ?」
「うッ! 確かに生まれて16年間彼女なんていませんでしたけど、出会いがあればきっと・・・・・・!!」

図星を突かれてもなおもナギに抗議しようとするが、彼は静かに首を横に振る。

「出会いがあればとか思ってる時点でお前は彼女なんて出来ねえよ、あっちから誘ってくるなんてどっからどう見ても地味なお前には一生無い、お前みたいな地味な男子に誰が惹かれるんだよ? まず『穴に入らずんば子を得ず』ということわざを覚えるべきだぜ新八」
「『虎穴に入らずんば虎児を得ず』だから、確かにそれでもある意味正解だけど卑猥極まりねえんだよ」

なんかイイ事言っているなと思ってたらナギの話が後半からいきなり下ネタが入ってきた。
新八はそんな彼に冷静にツッコミを入れた後、ハッと思い出したかのように沖田の方へ顔を向ける。

「待って下さい、土方さんが女子生徒と学校にいるって事は・・・・・・!」
「そう」

新八に向かって沖田はニヤリと笑いながら頷く

「俺はそのガキをとことん虐めて泣かしてえんでさぁ、近藤さんからそのガキの特徴を聞いてみると、中々虐めがいのあるガキだと思うし」
「いやアンタのドSプレイの事じゃないからッ! ていうか何考えてんですかッ!?」
「もしかしたら俺の“姐さん”になるのかもしれねえんだから、そうなる前に俺が“キッチリ”と教育を施してやらなきゃねぇ」
「最低だよこの人ッ! 未来の姐さんになんちゅー事考えてんだよッ!」 

新八が考えていた事と全く違う事を言い、なおかつ腹黒そうに笑いながら呟く沖田に、新八は指さして叫ぶが、彼はお構いなしの様子。

「殺しはしねえよ、何て言ったって土方さんの女が14そこらのガキって笑えるでしょ? それを眺めるのが俺の夢でさぁ」
「沖田さんのサディスティック性はわかりましたから・・・・・・それより土方さんが学校にいるって事は銀さんもその学校、もしくはその周りで暮らしてるって事ですよね・・・・・・?」

ドS話は置いといて新八がやっと質問したかった事を聞く。それを聞いた沖田は後ろ髪をポリポリと掻きながら答えを返した。

「その辺は通話記録で証明済み、旦那が土方さんと近い所で住んでるのはわかってるんで、こっちは通話で旦那から直々に色々と聞きだしたんでね」
「通話で直々に・・・・・・? てことは銀さんと話す事が出来たんですかッ!?」
「マジかヨッ! てめぇ何でそれ先に言わなかったアルかッ!!」
「昨日の夜、異世界にいる土方さんと通話してたら本当に偶然あの人が出て来てね、相当酔ってたけど色々と言ってたねぇ」
「銀さんはどんな事言ってましたかッ!?」
「あいつきっと私がいなくて絶対寂しい思いしてるアルッ!!」

あの行方不明だった男と通話に成功した。沖田の情報に新八と神楽はテーブルに身を乗り上げて彼に詰め寄る。

「まあ半分以上は意味不明だったけど、旦那はあっちの世界で学校の教師やってるとか言ってたねぇ・・・・・・」
「はぁぁぁぁぁ!? 銀さんが異世界で教師ィィィィィ!? んなわけないでしょ何であの人が教師やるんですかッ!? あんなちゃらんぽらんが人に物事教えれるわけないでしょッ!!」
「酔ってたから本当か嘘かはわかんねえけどまあ元気にやってたね旦那は、それにお前等の事なんかこれっぽっちも考えてなさそうだったぜ」
「あの天パァァァァァ!!! ヒロインの私置いて何やってんだコンチクショォォォォ!!!」

銀時の情報に新八と神楽が絶叫。だがそんな二人の間でだるそうに沖田の情報を聞いていたナギは二人と違って無反応である。そもそも銀時と彼は接点も無いし完全に赤の他人だ。

「そいつが何処で何しようが俺には関係ねえからさ、お前等俺のカミさんの情報とか知ってる? 金髪で美人でボンッキュッボンッの女なんだけど?」
「おたく結婚してたんですかぃ、生憎俺は既に手が付いてる女を調教するのは専門外ですから興味無いんで」
「そっちで考えてんじゃねえよッ! 殺すぞドSッ!! 人の女房なんだと思ってんだコラッ!」

澄ました顔でサラリと言ってくる沖田にナギはキレて新八と神楽の様にテーブルに身を乗り上げて彼の胸倉をつかもうとするが、慌てて近藤が止めに入る。

「止めろッ! ここは冷静になって落ち着いて話し合おうッ!」
「うるせえよゴリラッ! 言っとくが俺は昔テメェよりもっとゴリラみたいなオッサン見た事あんだぞッ! テメェなんかあいつと比べればまだ並ゴリラだッ!」
「何ッ!? 是非会わせてくれッ! 同じゴリラキャラとして朝まで語り合いたいッ!!」
「意気投合しようとしてんじゃねえよッ!!」

バカにしたつもりが逆に表情を輝かしている近藤にナギが彼の顔面に蹴りを叩きこんでいると、沖田がそんな彼を見ながら淡々と喋り出す。

「まあおたくのカミさんの場所はわかりませんが、一応行方不明者として捜索リストに入れときまさぁ、名前何て言うんですかい?」
「あん? 『アリカ・スプリングフィールド』だよ、血反吐吐くまで探せよ税金泥棒」
「へいへい、全力で探しあげま~す」

ナギに睨まれながら言われても沖田は飄々とした態度で持っていたメモ帳にナギの女房の名前をペンで書く。(名前の横に『調教不可』と書いている)

「じゃあおたくの女房はこっちで探しあげるんで安心してくだせぇ、万事屋の旦那ももうすぐ連れて帰るんで」
「連れて帰る事が出来るんですかッ!? でも何で銀さんを連れて帰るのは今すぐじゃ出来ないんですか?」

何故すぐに連れ戻せないのかと聞いてくる新八に沖田の代わりに近藤が頷いて答える。

「実は俺達が異世界へ交流できるのはあるお人のおかげでな、その人が近いうちにスゲー物作るらしいからそれまで待ってくれ、それが無いと行方不明者はこっちに持ってこれねえんだ、なあにそこまで時間もかからんさ」
「よかった、銀さん帰ってこれるんですねッ!」
「やったアルッ! グフフ・・・・・・そういう事でお前はさっさとどっかへ消えるヨロシ」

嬉しい答えが返って来て新八は安堵した表情を浮かべ、神楽の方はナギに向かってニタニタ笑いながら手で追い出す仕種をするがナギはフンと鼻で笑う。

「イヤなこったあそこはもう俺の家だ、追い出せんなら追い出して見やがれ」
「ぐぬぬ・・・・・・! 往生際の悪いトリ頭アル・・・・・・・」
「ところでゴリラ、そのスゲー物はあっち側からこっち側に人を持ってこれる奴なんだろ? その逆も出来るのか?」

神楽にキッパリと拒否して、ナギは襲いかかってくる彼女の頭をおさえながら近藤の方へおかしな質問をする。

「それってつまりこっち側の人間をあっち側に持って行けるかって事か? 可能だがそれがどうした?」
「実は俺はこっち側の世界に来たものの、あっちの世界に帰る事が出来なくなっちまっててよ、ちょっと一回だけでいいからあっちへ行かしてくんない? 会いたい奴がいるんだよ」
「何言ってんだ、いくら魔法使いと言ってもアンタはここの住人だ、一般人を異世界になんぞ送れねえよ、いやしかし元々あんたはあっちの世界の住人らしいし・・・・・・とっつぁんに頼み込んでみればなんとか出来るかもしれんな・・・・・・」
「頼むわゴリラ、今度バナナ上げるから」
「いやバナナって・・・・・・」
「バナナで警察を買収しようとすんなよ、あれ・・・・・・?」
「何だこの音は?」
「地震ですかい?」
「いや・・・・・・」

断れてもナギがめげずに近藤に物で釣ろうとする事に新八がツッコんでいると、急にゴゴゴゴゴゴと地響きのような音が聞こえてくる。その部屋にいたメンバーは一体何事かと思っているとナギはその音の正体にいち早く気付いた。

「こいつの腹の虫だ」
「神楽ちゃ~ん、女の子なんだから自重して~」
「腹減ったアル~私朝飯と昼飯も食ってないヨ~」

自分の腹からゴゴゴゴゴゴ、ドドドドドドド、っと普通の人間ではありえないような腹の音が鳴る神楽にナギと新八は呆れ顔。沖田はというとそんな彼女を見てニヤっと笑う

「こりゃあ万事屋の旦那も愛想尽かして異世界に逃げるわけだぜ」
「んだとコラァッ!! 嫁に逃げられたコイツと一緒にすんじゃねえヨッ!!」
「逃げられてねえって言ってんだろうがァァァァ!!!」

神楽は怒鳴りながら指さした方向には無論ナギの姿が、怒鳴っている彼の姿を見て新八は「うーん」と顎に手を当てて考える。

「でも実際そうかもしれませんよ、夫のナギさんに何も言わずにどっか言っちゃうなんて、夫婦の絆ってのは非常にデリケートなんですよね」
「てめぇはそういう事に一切無縁のクセに黙っとけやこのチェリーッ! 」
「チェリーは一生アイドル追っかけてるから結婚出来ないヨ」
「なんだとぉぉぉぉ!!! お前等世界中のチェリーボーイに謝れぇぇぇぇ!!!!・・・・・・ちょッ! すみませんごめんなさい!! へねぶッ!! アンタ等二人がかりで卑怯だろッ! おぐしおッ!! 何でいつも仲悪いのに僕をシメる時は一致団結してんのッ!? あぎッ!!」 


ナギと神楽の一言に激昂した新八が彼等に殴りかかろうとするも逆にやられて、悲鳴を浴びてる中。近藤がそんな三人組を見てポツリと一言

「いつもの三人組と何ら大差無いんじゃねえかコイツ等?」
「あの魔法使い何故だか分かりやせんが万事屋の旦那と同じ匂いしますからね」

ボッコボコにされてる新八を眺めながら、近藤と沖田は何処か懐かしい光景を思い出すのであった



























ナギ、新八、神楽一行はとりあえず、「今後銀さんの情報が来たら何か教えて下さい」、「俺のカミさんの事も忘れんじゃねえぞ」、「腹減ったアル~」と残して屯所を後にした。
かぶき町を三人で歩きながら万事屋へと向かう。

「それにしてもあいつ等に任せて大丈夫なのか? ドSとゴリラだぜ?」
「まあ性格はアレですけどいざとなったら頼りになる人達ですからここはあの二人に任せましょう、異世界に行けないのはちょっと残念ですけど・・・・・・いいな女子校、何で銀さんとか土方さんはそんな羨ましい所行けるんだろ・・・・・・」
「女子校ねぇ・・・・・・まさか俺が知ってる女子校じゃねえだろうな・・・・・・」

残念そうな表情を浮かべる新八の隣でもしや?っと眉をひそめているナギの更に隣では神楽が帰る道中で彼に買ってもらった団子を一口で食していた。

「こんな団子で私の心を動かそうとしても無駄だぞコラぁ」
「勘違いすんなよ、お前の『腹減ったコール』がうるさいから買ってやっただけだ」
「これだけじゃあ足りないアル、途中でコンビニ寄って酢昆布大量に買ってこいヨ」
「酢昆布? お前そんなのが好物なの? か~今時のガキの味覚は本当わかんねぇ~」
「神楽ちゃんは普通の女の子とは別格ですから」
「何度も思うんだけどこんなガキとお前の所の上司はよく付き合ってたな」

隣で睨んでくる神楽にそっぽを向いて新八の方に話しかけるナギ、新八はそれに「アハハ」と笑いながら答える

「銀さん自体が破天荒な人でしたからね、すっごいんですよあの人、普段はだらけながら死んだ魚の様な目をしているのに、本気になればメチャクチャ強いんですよ」
「へ~どうでもいいけどそういう奴なんだな、ていうか本当にそいつ侍?」

銀時の事に少し興味を持ったナギが歩きながら新八に質問する。それに新八は少し声を潜めて彼に近寄る。

「・・・・・・あんまりこれは周りの人に言えないんですけど、実はあの人って元々攘夷戦争で活躍してた侍なんですよ、あれ?もしかしてそのせいで江戸の神隠しに被害に遭ったのかな・・・・・・」
「攘夷戦争ッ!? そいつ攘夷志士だったのかよッ!」

声を上げて意外そうに驚くナギに慌てて新八が自分の口元に人差指を立てて静かにするよう促す

「声がデカイですって・・・・・・!! 銀さんが攘夷志士だったなんて幕府の連中にバレたら大騒ぎなんですよ・・・・・・!? とにかく銀さんはその時からメチャクチャ強くて、攘夷戦争を生き残った今でも僕達と一緒にいろんな奴等を相手にして倒してきたんですよ」
「まさかそいつが攘夷志士だったなんてな・・・・・・でもそれでそいつが俺より強いかどうかはわかんねえぜ? 問題はそいつが“どんな奴等”を倒して来たかって事だ」
「そりゃあまあ数えきれないぐらいバッタバッタと倒してきましたよ銀さんは、最後に戦ったのは『吉原』の時だったかな?」
「吉原?」

新八が言った『吉原』という言葉にナギは反応する

「吉原の誰と戦った?」
「ナギさん吉原を知ってるんですか? 驚かないで下さいよ、なんと銀さんはあそこを牛耳っていたあの『夜王』を倒したんですから、まあ銀さんはただの袋叩きだったって認めて無かったんですけど・・・・・・ナギさん?」

話を聞いているナギの表情を見て新八は不審に感じる。さっきまでずっとだるそうにしていた彼が真顔でこっちをジッと見ていたからだ

「なるほど、鳳仙を倒したのはそいつだったのか・・・・・・てことは俺は“その男にも”救われたって事になるな・・・・・・」
「救われた?」

ナギの言っている事がさっぱり出来ていない新八は首を傾げる。話を聞いていなかった神楽は何事かとそちらに目をやる。

「どうしたアルか?」
「ナギさん、アンタ夜王となんか関係があったんですか・・・・・?」
「・・・・・・あいつは・・・・・・・」


夜王の事を新八に尋ねられてナギの足はピタッと止まり、何処か遠い目をしながら天を仰いだ。
“あの男”と最後に遭った時の会話、それが脳裏にフラッシュバックされる







あれは6年前・・・・・・・













「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・・」
「・・・・・・いかに伝説の英雄と言われようが、貴様も人の子だったな・・・・・・」
「鳳仙ッ!! てめぇ・・・・・・!!」
「ナギッ!」
「女連れでこの『夜王』との“因縁”から逃げ切れると思うたか、クックック・・・・・・・まさか偶然同じ場所を住処にするとは・・・・・・運命とは皮肉なモノだな」
「チッ・・・・・・!!」
「心配するな貴様は一生わしの下で生かしておいてやる・・・・・・わしがあの世界にいた時に手に入れたこの『封筒』・・・・・・この中で永久に生き続けるがいい・・・・・・」
「俺の事は何やっても構わねえ・・・・・・けどその人は・・・・・」
「ナギ・・・・・・・」
「自分の事より女の命を乞うか・・・・・・? フン・・・・・・特別に生かしてやるよう処分してやろう・・・・・・あくまで“生かすだけ”だがな・・・・・・!!」
「チクショウ・・・・・・・」
「貴様との長かった因縁も・・・・・・これで終わりだッ!!」


あの男と会話したのはそれが最後だった




























「どうしたんですかナギさん?」
「今はまだ言いたくねえけど・・・・・・お前等にいつか教える時が来るかもな・・・・・・・」

ナギの表情を見て、この話しは彼にとってはデリケートな部分に触れるのであろうと感づいた新八と神楽は気にしてなさそうに少し笑った

「・・・・・・まあ言いたくない過去は誰にだってありますからね、夜王とナギさんの関係はそれ以上聞かないようにしときます」
「お前の話なんかどうでもいいけど喋りたくなったらいつでも喋るヨロシ、新入りの相談に乗ってやるのが先輩である私の役目ネ」
「ワリィな」
「いいんですよ、それより僕もお腹空いて来ましたし、何処かで食事しませんか?」

ナギの話から話題を変えて何処かで昼飯をとろうと新八は二人を誘う。案の定神楽がそれに賛成して手を上げた。

「私焼き肉食べたいアルッ!」
「お前昼から焼き肉ってどうよ? つうか高くて食えねえよそんなの」
「アハハ、神楽ちゃんの場合牛一頭分は食べるからね、ここはファミレスで手を打ちましょう」
「貧乏人の私達は所詮そんな所しか行けないアルか、ジョジョ苑とか行きたいヨ~」
「無理に決まってんだろそんなハイレベルな所、あそこは選ばれし者しか行けねえんだよ」
「てめぇさっさと金稼いで来いヨ、コラァ」
「あん? まだ万事屋再開の準備もしてねえんだよ、どうやって稼ぐんだバーロー」
「全然この二人仲良くなる気無いんだけど・・・・・・よし銀さんが帰ってくるまで僕が頑張らなきゃッ! でないとこの二人何やらかすかたまったもんじゃないよッ!」

神楽とナギがまた険悪のムードになっているのを新八が間に入って必死に制止する、賑やかな三人組はかぶき町の中を歩いて行き人ごみの中へと消えていった。













































場所戻って真撰組屯所。沖田と近藤は茶を飲みながらのんびりと庭を眺めていた

「は~うるさい奴等がいなくなって静かになりましたねぇ近藤さん」
「そうだなぁ、ところで総悟、一つ聞きたい事があるんだが?」
「何です?」
「さっきちょっと話してたけどよ・・・・・・お前トシが中学生の女の子と結婚するって言ったらどうする?」
「そんな面白いイベントあったら俺はもう狂喜乱舞ですね、その時の土方さんを是非この目で拝見してぇや、俺も異世界行こうかねぇ・・・・・・」

お茶を飲み終えて煎餅をボリボリと食べながら沖田はつぶやく。ぶっちゃけ彼にとっては異世界の行方不明者よりそっちの方が気になっている。
考え事をしてる彼に近藤が再び質問する。

「じゃあよ、仮にだぞ? 仮に“俺が”中学生の女の子と結婚するって言ったらどうだ? いや~実はよ俺あっちの世界の学校で・・・・・・」
「殺しますね」
「・・・・・・総悟今なんて言った?」
「一片の肉片も残さずそのガキを殺しまさぁ」











しばし固まる空気。近藤は煎餅を口にくわえて純粋な目でこっちを見ている沖田と目が合ったまましばらく微動だに出来なかったが、数十秒経ってようやく口を動かせた

「・・・・・・総悟、俺がお妙さんと結婚したらどうする?」
「祝福しますぜ、近藤さんをしつける事が出来るお人ですし大歓迎でさぁ」
「・・・・・・俺が中学生の女の子と結婚したら?」
「殺しますね、なんで中学生とかションベンくせぇガキを姐さんと呼ばなきゃいけねえのかムカつくし、まず近藤さんの嫁としてそんなガキを俺は認めたくねえです」
「あ~そうなんだ~・・・・・・トシは良くて俺は駄目なんだ~・・・・・・」

呆然と庭を眺めながら呟いている近藤に沖田がまた口を開く

「俺は土方さんは見てて笑えますけど近藤さんの場合は笑えませんね、ところで何でそんな事聞いてくるんです?」
「い、いやもしかしたらそういう可能性もあるんじゃないかな~見たいな~!! トシだってそういうのあるんだから俺にもあるかもって思っただけだからッ!」
「あ~やっぱ冗談ですよねこいつは良かった、けどもし本当に近藤さんの嫁だと名乗る中学生のガキが出てきたら俺にとって土方さん並に血祭りにしたい“ターゲット”ですね」
(こりゃあ総悟の奴何があっても認めねえなぁ・・・・・・まああの子が言ってたのは冗談だと思うし大丈夫だよな・・・・・・)

自分の腰に差している刀をカチッと握っている沖田を見て近藤は顔から汗を出しながら目を逸らす。それからはプラス思考で必死に異世界にいる彼女の安否は大丈夫だと信じた。

だがあの少女は本当に“冗談で言った”のだろうか・・・・・・

「まさかあの若さで一日しか会ってない、しかも俺みたいなゴリラ男とそんな事考えてるわけないよな・・・・・・いやでも若さゆえのノリっていう可能性も・・・・・・いや逆にノリでそういう冗談を言ったんじゃ・・・・・・」
「何ブツブツ言ってるんですかぃ? 携帯鳴ってますよ近藤さん」
「え? ああ本当だ、一体誰だ考え事してる最中に・・・・・・!!」

独り言を呟いていた近藤に沖田が彼の胸ポケットを指さして携帯が鳴っているのを促した。近藤は不機嫌そうにその携帯を耳に当てる

「もしもし誰だッ! 今こっちは忙しいんだよッ! 俺の人生設計に関わる問題なんだよッ!」
『ああ? テメェみたいなゴリラの人生設計なんて知らねえよ、おじさん本気なればお前の人生なんざ上野動物園でもサファリパークにでも搬送決定に出来ちゃうんだぞ、どっちがいいんだ近藤? それともアフリカにでも放して野生に帰してやろうか?』
「でぇぇぇぇぇ!! とっつぁんッ!? わ、悪いッ! 今ちょっと考え事してて・・・・・・」

携帯の相手は松平のとっつぁんだと気づいて、慌てて謝る近藤。それから電話越しにとっつぁんの舌打ちが聞こえてくる

『まあそんな事より本題に行くぞ近藤、実はお前か総悟にだけしか頼めねえ事情があるんだが・・・・・・』
「おうッ! 何でも言ってくれッ!」
『実はな・・・・・・ゴニョゴニョ・・・・・・』

近藤と松平の密通はしばらく続いた。












江戸の住人達は着々とある舞台への為に準備を進めるのであった















































教えて銀八先生

銀八「あ~一通目正宗の胃袋さんの質問」

ネギに質問
ぬらりひょんに対して不満やムカついた事がありますか?

ネギ「僕は銀さん程では無いですが不満はあります、時々仕事して欲しいなとは思ってるんです・・・・・・」
学園長「フォッフォッフォ、ワシは一番偉いから仕事なんてしなくてもいいんじゃよネギ君」
銀八「どうだネギ?」
ネギ「・・・・・・ちょっと殺意が芽生えました・・・・・・」


銀八「二通目、風凪五月さんの質問」

新八へ質問です。もしネギま!世界の本編に出れるとしたら、今よりも扱いの酷い学園長のポジションでもOKですか? 出番が無かったほうが幸せかもしれないと思える位置でも良いですか? 返事は『イエス』か『はい』で答えてください☆

新八「両方とも『はい』じゃんッ! 僕の人権ナッシングッ!?」
ナギ「ぶっちゃけ今でもそんな扱い良くないよなお前? だって『新八』だし」
神楽「しょうがないアル、『新八』という時点で負け組決定ネ」
新八「『新八』という存在だけで負け格にすんなぁぁぁぁ!!!」


銀八「三通目、蛙さんの質問」

沖田と近藤さんに質問。
麻帆良学園女子中等部で教師が出来るとしたら、どの教科を教えたいですか?
担当クラスは3‐A限定で

近藤「まあ学が無い俺が出来るのは精々『体育』ぐらいだろうな」
千雨「暑苦しそうだな・・・・・・なんか似合ってるけどよ・・・・・・」
沖田「まあ学が無い俺が出来るのは精々『拷問』ぐらいだろうな」
千雨「ねえよッ! つうか怖えよッ!!」
沖田「授業内容は主に俺の調教テクニックを惜しげもなく生徒達に披露する事、もちろんテメェ等直々に体験させてやるよ」
千雨「一点の曇りも無く自分の欲求を言ってんじゃねえよッ! ここをXXX版に搬送させる気かアンタッ!」
沖田「出来ればそうして欲しいねぇ」
千雨「銀八の世界ってこんなのばっかだよな・・・・・・」


銀八「四通目ゼミルさんの質問」

男が居る女性陣に質問。あわよくば相手の男とどこまで関係を持ちたいと考えていますか?XXX版クラスの内容でお答えください。
特に銀さんハーレムの女性陣とアーニャは詳細に。

あやか「まああの人が求めるならどんなマニアックな物でも答えようと・・・・・・」
千雨「おい止めろッ! 本当にさっきのアイツの欲望通りにXXX版行きだぞッ!!」
のどか「そ、そういう事はちょっと・・・・・・」
夕映「夫婦になるのであれば色々と関係を持つのは当たり前です」
ネカネ「私は手でも出して来たら何の躊躇も無く殺します、あれあの子は?」
銀八「ここで出るわけねえだろ」


銀八「五通目テレフォンさんの質問」

銀さんへ質問。
この際いっそ文化祭編までいって超たちと一緒に学園祭ぶっつぶしちゃったらどうです?

銀八「文化祭編まで行けって意見最近多くね? 言っとくけどぶっ潰す前にそもそも俺は文化祭があっても行かないよ? めんどくさいし」
新八「じゃあ文化祭編からは僕が主役で始まるっていうのはどうでしょうかッ!?」
銀八「いくらこの作品でもそこまで危ない橋は渡らねえよ、ていうか橋なんてねえよ、谷底にそのままスポンだよ」
新八「そこまで言うッ!?」
沖田「ちなみに続編はあまりにも読者の希望が多いので最近思案中です」

銀八「六通目とびかげさんの質問」

銀八先生へ質問
マヨラー侍とは飲み比べは互角としてナギとは
どっちが酒強いですか?

新八「二人が飲み比べをして」
千雨「三時間後」
銀八・ナギ「「おろろろろろろッ!!」」
あやか「結論両方とも同レベルですわ」
神楽「まだどっちのゲロが多いかは決着ついてないアルッ! 頑張れ銀ちゃんッ!」
エヴァ「それを私の家でやるなぁぁぁぁぁ!!!」


銀八「うっぷ・・・・・・七通目ウィルさんの質問・・・・・・」

今回は万事屋メンバーではなくてたまにはアスナでいきます。一体いつになったら長年想い続けるタカミティンに告白するんですか?

アスナ「タカミティン? 誰それ?」
銀八「これ」
タカミティン「・・・・・・」
アスナ「あ、結構ワイルドで素敵・・・・・・」
ネギ「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

銀八「八通目エンジンさんの質問」

ナギに質問。銀さんと比べられることは相当腹が立つようですが、実際どう思ってます?

ナギ「神楽の口からそいつの名前が出る度にイラついてくるんだよな」
新八「実際似てますからね二人共」
ナギ「何言ってんだ俺はあいつと違って自分の女は一人と決めるんだぜ」
新八「そこは本当に銀さんよりしっかりしてると思います」
沖田「将来的にあの人の嫁はエグザイル並になるんじゃないですかぃ?」
新八・ナギ「あ~~~」
銀八「なるわけねえだろうが・・・・・・!」


銀八「ったく・・・・・・九通目オレの「自動追尾弾」さんの質問」

銀さんに質問
銀さんから見て、ネギの『下の杖』はどうですか?色、大きさ、実用性の順に述べてください。

銀八「あ、すんませんまだ見た事無かったので今からチェックします」
ネギ「ちょッ! 銀さん待ってくださいッ! 何をッ!?」
銀八「ジッとしてろ、今からてめぇの“デカさ”を・・・・・・」
ネギ「いやぁぁぁぁぁ!!」
銀八「おい騒ぐんじゃねえってッ!」
アスナ「ア、アンタ・・・・・・そこまで腐ってる人間とは思ってなかったのに・・・・・・」
銀八「え?」
カモ「道理で女に囲まれても平気な顔してたんスね・・・・・・」
銀八「違う違うちょっと待ってッ! 誤解しないでちょっとッ! おい待てってッ! 俺の話を聞けぇぇぇぇぇ!!!」


沖田「旦那が行方不明になったのでこっからは俺が旦那の代わりに答えやす、十通目風の都さんの質問」

銀さんへ
外伝で沖田君にプロデュースされた柿崎は元気にしてますか?
 
沖田「あ~いたねそんなメス豚」
千雨「メス豚って・・・・・・ちなみに元気にやってます外伝と本編は別なんで・・・・・・・」
沖田「本編で会ったらもう一回教育し直さなきゃねぇ・・・・・・」
千雨「あ、柿崎の奴終わったわコレ」


沖田「十一通目サハリンさんの質問」

ロリコン糞天パに質問
ジジィを虐めるGS組織っていくつあるんですか?全国ですか?それとも麻帆良学園内ですか?

沖田「旦那曰く、色々な世界に存在する様です」
千雨「は? どういう意味?」
沖田「銀魂やネギまだけじゃなく、様々な作品にGSというのは存在するって事だぜ」
千雨「はッ!?」
学園長「世界規模ってレベルじゃねえじゃんッ!」


沖田「十二通目ペケペケさんの質問」

学園t・・・変態ジジイに質問。11月16日発売のジャンプ(銀魂内)の中にパンデモニウムと言う生き物が出現しましたが、あれまっすぐにしたらあなたの頭部そっくりになりませんか?アレの亜種とか、希少種とか何か関連性はあるんでしょうか。

学園長「ねえよ、ワシはあそこまで化け物に見えるならお主は一旦眼科に行け」
新八「そうだッ! パンデモニウムさんをこんなエイリアンと一緒にするなッ!」
学園長「んだとこのメガネェェェェ!! いきなり偉くて立派なワシに向かってなんじゃその態度はァァァァ!!」
新八「パンデモニウムさんの方が立派じゃボケェェェェ!!!」
神楽「あらら~見るも哀れな乱闘やってるアル」
ナギ「本当見てると情けなくなってくるな、ジジィが勝とうがダメガネが勝とうが死ぬほどどうでもいい」


沖田「はいここで旦那が帰って来たので交代しやす」
銀八「ハァハァ・・・・・・あいつ等の誤解解けるのに時間かかった・・・・・・十三通目・・・・・・はきさんの質問・・・・・・」

修学旅行へんには山崎って出てきますか?
個人的にかっこいいジミーとか見てみたいんですが。

山崎「そんな事言ってくれるなんて俺嬉しい・・・・・・グス・・・・・・・」
土方「お前が出るかはまだ言えねえんだがな、ていうか何で山崎にこんな質問来るんだ?」
新八「そうですよッ! 僕にはこんな質問来た事無いですよッ!」
山崎「まあまあ新八君、フフ、君にもいつか来ると思う、よ?」
新八「何だその勝ち誇った顔はァァァァ!!」
銀八「『五十歩百歩』って奴だな」
土方「もしくは『目糞鼻糞を笑う』って奴だ」



















銀さんからの重要なお知らせ

銀八「え~読者の皆様、突然ですが『教えて銀八先生のコーナー』は次回で最終回とさせて頂きます、今まで本当にありがとうございました」
千雨「ありがとうございました~」
あやか「あれ? 何で次回で最終回なんですの?」
銀八「もうすぐ修学旅行編が始まるんだよ、その間は質問コーナーを打ち止めにして本編に集中したいのが作者の意見らしい」
エヴァ「なるほど、“実に”自分勝手な意見だ」
銀八「という事で読者の諸君、これからも『三年A組 銀八先生!』をよろしくピ~ス」
エヴァ「次回何も質問が来なかったら笑えるな」
千雨「お前は笑えるけど作者は笑えねえよ・・・・・・」






次回、三十四訓・『一生隣で笑ってくれる奴等がいる事こそ最高の幸せ』 








[7093] 第三十四訓 一生隣で笑ってくれる奴等がいる事こそ最高の幸せ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/11/28 12:58

万事屋グループはリーダー坂田銀時のふとした思いつきによってあるイベントをやる事を決めていた。

「万事屋の連中でバーベーキューでもするか」
「なんで?」
「たまにはそういうのもいいだろ基本暇だしな俺等、何お前イヤなの千雨?」
「いやまあ別にいいけどよ・・・・・・」
「はい決定」

彼の一言を気にメンバーは打ち合わせを何度も行っていき、そしてついにその日が来た。

修学旅行の前日の夕方という色々と行事の為の準備が必要なのにも関わらず、銀時は万事屋メンバーの4人のうち2人を連れて、ある場所に来ていた

「大丈夫だって」
「大丈夫じゃねえだろ」
「以外に合うって」
「合わねえだろ」
「結構イケるって」
「イケねえだろ」

麻帆良市内にあるデパートの地下一階・食品売り場にて。いつもの着物を着飾っている銀時と私服姿の長谷川千雨がある物を眺めながら相談していた。


「だってお前なんでバーベキューやるのにマシュマロも一緒に焼くんだよ、意味わかんねえよ」
「いや~案外肉とマッチするかもしれねえよ? 普段会った事の無い奴といきなり会うと結構イイ奴なんだと気づく時があるだろ?」

千雨がしかめっ面で右手に持っているのは商品棚から出したマシュマロが入ってる袋、どうやら銀時が取れと命じた様だが彼の甘党好きにさすがの千雨も少々呆れている

「しねえよコイツ等の場合出会った瞬間間違いなく喧嘩するだろ、マシュマロの方なんか肉と出会った瞬間ラリアットかましそうじゃねえか、メチャクチャ攻めに入りそうじゃねえか」
「そういう殴り合いの果てに新たな友情が育まれていくんだよ、ほらカゴに入れろ」
「絶対お前しか食わねえと思うんだけど・・・・・・」

躊躇しながら千雨は仕方なく銀時が持っている買い物カゴにマシュマロの袋を入れると、銀時は同時にある物を思い出した

「そういや野菜とか買わねえとな」
「野菜? まあ必要だな確かに」
「最近チビの奴野菜食わねえから栄養のバランスが悪過ぎるんだよ、野菜売り場に行くぞ」
「糖分で栄養バランスが跡形も無く崩壊しているお前にそんな事言われても説得力ねえつーの、野菜を買うにしてもエヴァの奴ちゃんと野菜食うのか?」

人の事を言えるわけがない銀時に千雨が呆れ顔でツッコミながら質問すると、彼はすぐに彼女のいる後ろへ振り返ってしかめっ面を見せる。

「食わねえに決まってんだろあの豆っ娘が、俺が無理矢理アイツの口の中に突っ込む」
「だよな、見た目からして好き嫌い激しそうだし」
「別にあいつの事心配してるわけじゃねえけど、せめてピーマンの一つや二つ食えねえのかねぇ?」
「・・・・・・アイツ本当に私達よりずっと長生きなのか?」
「最近年齢詐称なんじゃねえかって思えてきてんだよな、本当は小学生ぐらいなんじゃねえかあいつ?」

二人でとある生徒の実年齢に疑問を覚えてきた頃、そんな二人にバタバタと駆け寄ってくる足音が

「銀さ~ん、はいお肉ッ!」
「帰って来たか、ちゃんと高い肉にしたのか? 俺の金じゃなくてチビの金なんだからなるべくイイもん買えよ」
「バッチリッ! その点は抜かりなくッ!」

千雨同様私服姿の朝倉和美が銀時に敬礼の仕種をする。
受け取った肉を銀時は確認しながら買い物カゴに入れていると、彼の後ろではすぐに和美が千雨の方に話しかけていた。

「千雨ちゃんってそんな肌出す服持ってたんだ」
「何だよ、私が着てて悪いのかよ」
「いや~気合い入ってるな~と思って」
「そういうわけじゃねえよッ!」

ノースリーブの水色のシャツとオレンジのショートパンツという千雨ににしては珍しい服装。
和美は必死に否定する彼女の姿に「ふ~ん」とニヤニヤ笑いを浮かべながらうんうんと頷く。

「大丈夫、いいんちょやエヴァちゃんにも負けないよ千雨ちゃんは」
「私がいつあの二人と勝負したんだよ・・・・・・」
「銀さん、千雨ちゃんの服装どう思う?」
「はッ!?」

突然銀時の方に向いて彼に話しかける和美に千雨はふと動揺の表情を浮かべる。
彼女が焦っているのも束の間、銀時がいつものだるそうな表情でこちらに振り返った

「何? なんか言った?」
「だから千雨ちゃんの服装どうって聞いてるの」
「あ~? どうって言われても・・・・・」
「ジ、ジロジロ見るなよ・・・・・・」

ジーッとこっちを見ている銀時に千雨は思わず顔を少し赤らめて顔をそむける。
しばらくして銀時がめんどくさそうに

「いいんじゃねぇ?」
「え?」
「本当ッ!?」
「俺は女のファッションとか興味ねえからわかんねえけど、別に悪かぁねえよ」
「おおッ! 良かったね千雨ちゃんッ! 銀さんに褒められたよッ!」
「痛ッ! 何一人でテンション上がってんだよッ!」


バンバンと背中を叩いてくる和美に千雨がまだ顔を赤くしたまま叫んで、銀時はそんな二人をみながら頭に「?」を付けて眉間にしわを寄せて首を傾げていた

「何かイイ事でもあったのかお前等?」















































第三十四訓 一生隣で笑ってくれる奴等がいる事こそ最高の幸せ

銀時が千雨と和美を連れて食料を調達している頃、エヴァの家の前の敷地内で万事屋メンバーの一人の雪広あやかがせっせとバーベーキューの準備を始めていた。

「エヴァさん、火が上手く点かないんですけどどうしたらいいんですか?」
「私と銀時の愛なら既に燃え上がってるぞ」
「そのまま燃え尽きて灰になって下さい」

家へ昇る為にある階段の一番下で足を組みながら、バーベーキューの準備しているあやかを手伝わずにただ眺めているだけの少女が一人。
銀時の同居人で参加者の一人でもあるエヴァにあやかはジト目で睨む。

「あなたも何かしたらどうですか? さっきからずっと見てるだけで少しは手を動かして下さい」
「フン、バーベーキューの準備なんぞ貴様みたいな小娘にちょうどお似合いだ」
「オホホホ、私より全てが小さいあなたみたいな人に言われても全然説得力ありませんわね」
「デカイだけが取り柄の貴様が何を言う、私は600年以上生きてる不死の吸血鬼だぞ」
「そんなに生きてる割には精神面は小学生並ですわよね、銀さんがよく言っていますわ「あいつは未だに好き嫌いが激しいガキだ」って」
「なんだとッ!」

あやかの挑発にさっきまで余裕気だったエヴァが思わぬ一言につい立ち上がる。

「本当に銀時がそんな事言ってたのかッ!?」
「銀さんが大体エヴァさんの話する時は9割はあなたの愚痴です」
「嘘つけッ! 私とあいつは同じ布団で寝るほどの仲なんだぞッ!」
「あなたの方が嘘八百じゃないですか、あなた見たいな子供と銀さんが寝るわけないでしょ?」
「ほう、言ったな貴様・・・・・・おい茶々丸ッ!」

完全に信じ切っていないあやかに向かってニヤリと笑った後、後ろに振り返り家の中でバーベーキューに必要な物を準備していた自分の従者の茶々丸を呼ぶ。
しばらくして家のドアがガチャッと開いた

「お呼びですかマスター」
「私と銀時が一緒に寝ている証拠を持ってこいッ!」
「かしこまりました」

エヴァの命令に茶々丸はすぐさま行動を起こして、再び家の中へと戻って行った。

「フッフッフ、本当かどうかみせてやろうでは無いか・・・・・・」
「持ってきましたけどこれでいいですか?」
「よし、これを開いてその目に焼き付けておけ」
「何ですかそれ? アルバム?」

すぐに家から出てきた茶々丸が持っていたのはよくあるA4サイズの写真屋で貰えるようなアルバム。それを受けとったエヴァは笑みを浮かべながらあやかの所まで歩いて行って渡す。
不審な表情でアルバムを受け取ったあやかはとりあえずそれを開けてみる事にした

「まさか銀さんがあなたなんかと・・・・・・えッ!?」

アルバムを開けてみると彼女の表情は一変する。
見るとそこには銀時の腕や腰に抱きついてるエヴァが同じ布団で寝ている姿を撮った写真が何枚もあるではないか。

「どうだ凄いだろ、ここ最近はずっと私とあいつは同じ布団で寝てるんだぞ」
「ご、合成かなんかじゃないんですかッ!?」
「まだ現実に直視できないのか雪広あやか、それは正真正銘のなんの細工も無い事実のみを映し出した写真だ」
「全て私が撮りました、マスターがどうしても撮ってくれってしつこいので」
「そんな・・・・・・」
「これでわかったろッ! 私は貴様なんかと格が違うんだよ格がッ!」

両手を組んで勝ち誇った顔をしているエヴァにあやかは何も言えずに、ただショックで呆然としながらアルバムをめくっていると、ふと彼女はある違和感に気付いた。
よくみるとエヴァに抱きつかれて寝ている銀時の表情が悪夢でも見てるような表情で辛そうにしている

「・・・・・・何でこんなに銀さんメチャクチャしんどそうな顔してんですか?」
「恐らくマスターと一緒に寝ているので悪い夢でも見ているのではないかと」
「おい茶々丸それどういう意味だッ!」
「元々その写真はマスターが銀時様が寝ている隙に、こっそり布団の中に潜り込んで一緒に寝ている所を撮った写真でして」
「コラッ! よ、余計な事言うなッ!」
「あ~なるほど、直接銀さんに一緒に寝てくれって言っても聞いてくれないので、仕方なくこうやってコソコソと」
「おっしゃる通りです」
「うぐ・・・・・・」

茶々丸のおかげで写真の全貌を知ったあやかはさっきとは一転して哀れむような目でエヴァを見る。
バレてしまったエヴァは何も言えずにそのままうつむいて黙り込んでしまった。

「ま、こんな事だろうと思いましたわ、銀さんがあなたみたいなチビっ子にその気があるわけないし」
「好きで小さいわけじゃない・・・・・・私だって大きかったら・・・・・・」

気にしてる点を思いっきり突かれブツブツと言い訳するエヴァの姿にあやかはやれやれとため息をつく。

「あなたって本当に子供ですわねぇ」
「ぐッ! 言ったな貴様ッ!」
「これ返しますわね、必死に頑張っているのはわかりましたので」
「うるさいデカ乳がッ! そんな服で銀時を誘惑しようと頑張ってる貴様の方がよっぽど必死に見えるわッ!!」
「べ、別にこの服はそんな下心があって着てるわけではありませんッ!」 

エヴァにアルバムを返したと同時に自分の着ている私服装にイチャモンをつけられ、あやかはほんのり頬を赤く染めながら激しく否定する。
あやかの服装は純白のワンピースというなんともシンプルな服装なのだが、彼女の持つ大きな胸元が強調されている為、異性なら目のやり場に困る格好だ。

「そんなに自分の乳を銀時に見て欲しいか雪広あやかッ!? デカ乳はデカ乳なりに大変なんだなぁッ!」
「そういうわけじゃありませんッ! 私は普通の人より少し成長しているだけですから自然にこうなってしまうんですのッ!」
「嘘つけぃッ! 絶対銀時を誘惑する為だろッ! わかるんだよ貴様の体から男を誘うフェロモン臭がプンプンとッ!」
「男って・・・・・・!! 私は銀さん以外の男の人に好意を求められるなんてこれっぽっちも思ってませんわッ!」
「ほらついに本性を言ったな貴様ッ! やっぱりその乳見せワンピースは銀時の為だったんだなッ!」
「しまった・・・・・・!! ついこんな人の口車に乗せられて・・・・・・ていうかそのネーミング止めて下さい・・・・・・」
「フハハハハッ! やはりそれが貴様の目的かッ!」

思わず口を滑らしてしまった事に深く後悔するあやかをよそに、彼女に向かって両手を腰にあてながら高笑いするエヴァ。
恥ずかしそうに体を縮ませているあやかはポツポツと彼女に向かってつぶやく

「だって千鶴さんがこういう服の方が男の人、銀さんが喜ぶって・・・・・・」
「貴様は普通の人より胸がデカイぐらいしか長所が無いからなぁ・・・・・・そこでしか勝負出来ないもんなぁ貴様は」
「ミニ乳だし性格も悪くて長所が何一つ無いあなたがそれ言えますか?」
「貴様まだ言うか・・・・・・!! そろそろ私も本気で怒るぞッ!?」
「別にいいですけど? あなたが怒っても全然怖くないですし?」
「うがぁぁぁぁぁぁ!! 最近『攘夷組編』やら『江戸編』やらで貴様とは勝負する機会がなかったが、どうやらここで貴様と決着をつけねばならぬようだなッ!」
「いいですわね・・・・・・!! 私もちょうど最終章が始まる前にあなたとは色々と済ませなきゃいけない事があると思っていたので・・・・・・!!」

両者顔を思いっきり近づけて目から火花を飛び散らしながらエヴァとあやかが睨み合っていると、さっきからずっと二人を見物していた茶々丸がふとある一行がこちらに近づいて来ているのが見えた。

「マスター、帰ってきましたよ」
「何だ茶々丸、今こっちは忙しいんだ・・・・・・! この女のオールデリートを終わらしてから話を聞いてやる・・・・・・!」
「いえその前に・・・・・・」
「お~い、お前等またケンカしてんのか?」
「銀時ッ!」
「銀さんッ!」

ふいによく聞く声に呼ばれて、メンチを切り合っていたエヴァとあやかが咄嗟にそちらに見ると、そこにいたのはビニール袋を両手に持ってしかめっ面をした銀時の姿が
どうやら先ほど買い物から戻ってきたらしい

「本当会ったら毎回それだよな、飽きねえよな~お前等」
「・・・・・・どうせ根本の原因はお前だと思うけどな」
「天然のジゴロは罪だね・・・・・・」

呆れたように髪をボリボリと掻く銀時の姿に後ろに立っていた千雨と和美は何言っているのだと小言を言う。
この男、恋愛に関してはかなりの鈍感である

「とりあえずお前等ケンカはいいけどよ、バーベキューの準備とか出来て・・・・・・コンロに火も点いてねえじゃねえか・・・・・」
「それより銀時ッ! 雪広あやかの服装を見てどう思うのだッ!?」
「ちょ、ちょっとエヴァさんッ!」
「これで二回目なんですけど、流行ってるんですかその質問?」

グイグイと背中から恥ずかしがっているあやかを押し出してくるエヴァに銀時は疲れた調子で口を開いた後、とりあえずあやかの方に目を移す。だが一番目に映った場所に銀時の頬は引きつらせる、服装よりかなり目立った場所があるのだ

「お前・・・・・・制服だからそこまでわかんなかったけど、そんなに大きかったの・・・・・・?」
「え、えと・・・・・・」
「お前とか和美もそうだけど、最近のガキは何でそんなに発育がいいんだかねぇ」
「す、すみません・・・・・・」
「そこ謝る所じゃねえから、お前このチビに少し分けてくんねえか? コイツ胸が小さいのチビのクセにやたら気にするから」
「余計なおせわだバカ者ッ!」

あやかの胸の谷間を見た銀時はなるべく目をそっちに映さないようにそらして、エヴァの方に指さす。
ここまで二人のスタイルに差があるにも関わらず同じ学年というのがなんとも悲惨な現実だ。

「よくよく考えればこの中で一番まともなのって千雨ぐらいだろうな」
「・・・・・・は?」

突然銀時に話しを振られた千雨は戸惑いの表情を見せている中、メンバーの視点が一気に彼女の胸に注目される。

「確かに大きくもなく小さくもなく普通ですわね」
「見た目だけじゃなく胸まで地味だな、地味乳とでも言うべきか」
「違うよどっちかというと千雨ちゃんは美乳だよッ!」
「まあ確かに見た感じ綺麗な形をしてますわね」
「私から見れば中途半端だがな」
「薄っぺらいあなたよりはマシです」
「っておいッ! 私の胸で盛り上がってんじゃねえッ!」

自分の部位の所で何か熱くなっている三人に千雨が身を前に出して叫んでいると、メンバーが話している隙にエヴァのアルバムを家に戻しに行っていた茶々丸がバーベーキューに必要な物を持って家から出てきた。

「銀時様、バーベーキューに使う網と串を持ってきました」
「ご苦労さん、やっぱコンロに火も点けられねえガキ共よりお前の方が役に立つわ」

バーベーキューに必要な物を受け取って茶々丸を褒めている銀時を見て、咄嗟にあやかは彼に向かって弁解する

「ちょっと待って下さい銀さんッ! 私だってこの人の邪魔が無ければコンロに火を付けるぐらい出来ましたわッ!」
「どこの口がほざくんだ、小一時間コンロの中の薪に向かって火を点けようとしていたお前は見ていて哀れで仕方無かったぞ」
「あう・・・・・・」

彼女の言い訳も虚しく傍で聞いていたエヴァにあっという間に潰されてしまい、げんなりとうなだれる
あやかが必死に火を点けようと悪戦苦闘していたのをエヴァはずっと見ていた。無論手伝いをする気なんかこれっぽっちも無い

「だ、だってライターの火が弱すぎて薪に火を点けようにもすぐ消えちゃって・・・・・・」
「いいんちょあれはね、ライターだけじゃ火の勢いが弱いからティッシュや新聞紙とか、着火剤とかを入れてからじゃないと火は点かないんだよ・・・・・・」
「そんな・・・・・・・薪や炭だけでは燃えないんですか・・・・・・?」

苦笑しながら説明する和美にすがるような表情であやかがもう一度聞き直すと、そんな彼女に銀時と千雨がハァ~とため息をつく。

「点くわけねえだろうが、ま、バーベーキューもロクにやった事も無いお嬢様にはわかんねえか」
「お前って変な所でアホだったりするよな、一般常識が足りないっていうか・・・・・・」
「すみません・・・・・・」

こちらに向かってしゅんとしながら謝ってくるあやかだが、別に今に始まった事でも無いので銀時と千雨は気にする様子はなかった。

「とりあえずコンロに火点けようぜ、茶々丸お前は野菜と肉切っててくれや、火は俺が点ける」
「了解しました」

茶々丸にバーベーキュー用の材料を渡して命じた後、銀時はコンロに近づいて中に何を入れるか考える。

「何か燃やせる物・・・・・・よしチビ、新聞紙持ってこい」
「読売か? 朝日か? 産経か?」
「今日は読売を燃やしたい気分だ」
「どういう意味だそれッ!?」

エヴァとの会話で千雨にツッコまれた後、銀時はエヴァが家から新聞紙を持ってくるまでコンロの上に網を置くなど準備をする。
彼自身もあまりバーベーキューの経験は無いが基礎ぐらいは大体頭の中に入っているので準備するペースは早い

「俺みたいに器用な男は結婚しなくても全然困らねえんだよな」
「お前って全部一人でやっちまうもんな」
「お前等が俺に任せてばっかだからだろうが、少しは役に立てよ、お前ツッコミ以外取り柄あんのか?」
「ツッコミだけを人の特徴にすんの止めてくんないッ!?」
「でも銀さん、千雨ちゃんがいないとこの世界はボケで飽和しちゃうよ?」
「そういえばそうだな、悪かった、これからもどんどんツッコんでくれ」
「私のマイライフずっとこの調子かよッ!」

銀時と和美に諭されて千雨が自分の存在意義に疑問を持っていると、銀時は懐かしむように天を仰いだ

「いいか千雨、俺が江戸にいた頃に万事屋には新八と言う江戸一番のツッコミがいて・・・・・・」
「新八はもういいっちゅうねんッ! ずっと前から聞かされてるわッ!」
「あいつどうしてんのかな~、俺がいないと基本地味ツッコミメガネだからな~いや俺がいても地味ツッコミメガネだったな」
「どっちでもいいわ・・・・・・! お前の前の万事屋メンバーなんて興味ねえんだよこっちは・・・・・・」

めんどくさそうに銀時の話に水を差す千雨にあやかはふと首を傾げる

「まず千雨さんって銀さん以外の人に興味ってあるんですか?」
「ああ、そういえばねえな」

素の表情でさらりと言う千雨にあやかは体がカクンとずれてしまう

「当たり前のように言いますわね、てことは私にも興味ないんですか・・・・・・」
「ねえな、お前の話しなんて知ったこっちゃないし、基本私達って銀八がいないと交流ないだろ? プライベートでも滅多に会わねえし」
「そうですか・・・・・・」

ドライに切り捨てるように話す千雨にあやかは残念そうにうなだれる。
そもそも千雨は銀時と会うまでは元々他人とは接触を嫌う性格で、少々改善された現在でも銀時以外の人と自分から雑談などをする事はあまりしない。
しかしあやか本人は千雨の事を他人だと割り切れる関係だとは思っていなかった。

「私は千雨さんとは友達だと思ってるんですけど・・・・・・」
「と、と、と、友達ッ!?」
「イヤですか・・・・・・?」
「い、いや別にそういうわけじゃねえけど・・・・・・」

急にあたふたとパニくりながら口ごもる千雨。今まで彼女は友達など作った事などないので、急にそんな事言われてしまい混乱している様子。
だが千雨がテンパってるのも束の間、銀時に新聞紙を取って来いと命じられたエヴァが新聞紙を持ってそれをヒラヒラさせながら家から出てきた。

「持ってきたぞ銀時~ほれ読売、ていうかウチは元々読売しか頼んでなかった」
「ああそうだっけ? まあいいや、あやか火貸してくれ、コンロに火点けようとしてたんだからライターか何か持ってんだろ?」
「え? あ、はいッ! 銀さんの白衣に入ってたライターです」
「あんがとよ、アレ? おめぇ等何かあったの?」
「い、いや別に・・・・・・」
「ふ~ん」

あやかからライターを受け取った時、千雨とあやかの間に変な空気が流れていたので銀時は不審に思ったが、千雨がつぶやくように否定したので銀時はとりあえず納得してさっさと顔をコンロの方に戻して火を点けた。

「女同士で何考えてるか知らねえけど俺に迷惑かけんなよめんどくせえから、茶々丸、野菜と肉切れたか?」
「ご命令通りにちゃんとこのように」
「お~ちゃんと切れてるじゃねえか」

さっきまでこの敷地にテーブルを置いてエプロンを付け、包丁で野菜やら肉やらを食いやすいように切っていた茶々丸が食材が乗っているまな板を銀時に見せる。
感心しながらそれを見た銀時は「じゃあ次はこいつらを串に刺さなきゃな」と言って今度は自分がテーブルに行って野菜と肉を串に刺し始めた。
だが彼の行いに一人異議を唱える者が

「おい野菜なんかいらんだろ」
「オメーは絶対食え、最近好き嫌いばっかで野菜全然食わねえじゃねえか、肉が食いたかったら野菜も一緒に食えよ」
「私は私が食べたい物を食べる、それが私の生き方だ」
「ワガママ言ってんじゃねえぞしばくぞドチビ、ほれ、コレお前が食えよ」
「何だそれ・・・・・・?」

野菜嫌いのエヴァに銀時が見せた物は普通のバーベーキューではお目にかかれない物だった。

「上から『ピーマン』『ピーマン』『ピーマン』『マシュマロ』『ピーマン』『ピーマン』『ピーマン』のお前の為に作った俺特製の逸品だ」
「食えるかぁぁぁぁ!!! ていうか何でどさくさにマシュマロがチョイスされているのだッ!」
「それは俺の優しさだ、さすがにピーマンだけじゃ食えねえだろと思って」
「だったら肉入れろッ! マシュマロとピーマンを一緒に食えるなどこの世にお前とナギぐらいしかおらんわッ!」
「ほう、では一度食べてみて下さい、同じ事が言えますかね?」
「何パティシェ気どってんだ貴様ッ! って焼くなァァァァ!!!」

銀時はお手製6連ピーマンと彼の優しが入っているマシュマロが刺さっている串をポンと網の上に置いて焼き始める。
なんともカオスな光景だ・・・・・・
しばらくして

「上手に焼けました~ほれ」

ピーマンとマシュマロに見事に焦げが付いたので銀時はそれをヒョイと取ってエヴァの方に突き出すが、彼女は必死に首を横に振る。

「だから食えるかそんなモンッ! 雪広あやかッ! お前が食えッ!」
「銀さんがあなたの為に作ったんだからあなたが食べるのがセオリーでは?」
「うるさいこんなゲテモノ食えるかッ! 長谷川千雨ッ! ツッコミ以外に役に立つ事を見せてみろッ!」
「うるせえよッ! 私だってそんなの食えねえよッ!」
「く・・・・・! じゃあえ~と・・・・・・朝倉・・・・・・和美?」

あやかと千雨に却下されてエヴァは舌打ちした後、千雨の隣に立っていた和美を呼ぼうとしたがいささか不安がちに言う。
そんな彼女にまさかと思いながら和美は頬を引きつらせる

「何で私だけ呼ぶ時に疑問点付けるの・・・・・? もしかして名前うろ覚えだったとか・・・・・・?」
「ここまで連載続いているのにお前と絡んだ事が全く無いからな」
「あ~そういえばお互い周りの人気キャラに押し潰されてるせいか、ロクに出番が無いもんね・・・・・・」
「私と貴様を一緒にするなぁぁぁぁ!!! こっちはヒロインなんだぞッ!」
「えッ! そうなのッ!? 読者もビックリの新事実ッ!」
「殺すぞアマァァァァァ!!!」

演技無しでマジで驚いている和美にエヴァは地団駄を踏みながら怒り散らす。
エヴァが和美に向かって両手を上げて怒っている中、彼女の肩に魔の手がポンと叩いた。

「早く食えよ、冷えちゃうぞマシュマロさんが」
「だから私は食えんって言っているだろうがッ!」
「茶々丸」
「はい」
「コ、コラッ! 主人の私を羽交い締めにするとは貴様何考えているのだッ! 止めろッ!」

銀時の命令で茶々丸が瞬時にエヴァの後ろに回り込んで両手で彼女を拘束する。そのまま上に持ち上げて銀時と同じ目線に合わせる。


「野菜を食べない悪い子はやっぱこうやって食わせねえとダメだな」
「止めろッ! 食えるかそんなピーマン尽くしッ! 茶々丸離せッ! 私の命令が聞けんのかッ!?」
「命令を拒否します」
「だってよ、安心しろピーマン様の中にマシュマロ君もいるんだから」
「貴様等ァァァァ!! 何で貴様等は私にそんなに冷たいんだッ! 少しは優しくしろッ! 泣くぞッ!」

エヴァの猛抗議にも全く動じずに銀時は拘束されてる彼女に近づいてサッとピーマンマシュマロ串を取り出す。

「無理矢理食わせるにも串って刺さってるからよ、危ねえから一つずつ取って食わせてやるよ」
「いい加減にしろ銀時ッ! 本当に私を怒らすと・・・・・・ふぐッ!」
「一つ目のピーマン様が入店しました~じゃあ二つ目行ってみようか~」
「ふぐッ! ふぐふぐッ!」

口の中に串から抜いたピーマンを突っ込まれて気持ち悪そうにして、思わず涙目になりながら必死に首を横に振るエヴァだが、銀時は完全に容赦する気はない。

「大丈夫だ、あと二つピーマン食えたらお前にメシア(救世主)が現れる、マシュマロという名のメシアが」
「ふぐぐぐ~ッ!!」
「そうかそんなに嬉しいのかお前、じゃあ頑張って行こう~」
「ふぐぅぅぅぅぅ!!!!」

次々と既に泣いているエヴァの口の中にピーマンを詰め込んでいく銀時の姿に他の三人は呆然と眺めるしかなかった。

「完全にドSだアイツ・・・・・・」
「さすがにあそこまでやられるとエヴァさんが可哀想に見えてきましたわ・・・・・・」
「・・・・・・まあ私達は普通に食べようか・・・・・・」
「良かったなマシュマロさんがやってきたぞ」
「ふぐぅぅぅぅぅぅ!!!!」

銀時の容赦ない拷問に目を逸らして、エヴァの悲痛な悲鳴を聞きながら自分達でバーベーキューを進行させていくのであった。








































それから数十分後。エヴァ以外のメンバーが普通に肉やら野菜やらを串に刺して焼いていると、エヴァがようやく解放されて四つん這いになって息絶え絶えになっていた。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・食い終わったぞ」
「やっと終わったのか、まさか1ラウンドだけじゃなくて5ラウンドもあったのはキツかったな」
「口の中でマシュマロとピーマンが異種格闘技戦やってた・・・・・・二度と私のリングで戦って欲しくないカードだな・・・・・・」

肉と野菜を刺しながら焼いている千雨が辛そうに吐き気を感じているエヴァに話しかけていると、死にそうな彼女の下に再びあの男が現れた

「じゃあ次は『ピーマン』『ニンジン』VS『しいたけ』『マシュマロ』のタッグマッチでも行こうか」
「銀時お願い・・・・・・」
「え?」
「もうイヤだから止めて・・・・・・」

本当に辛かったのか目から滴をポロポロと落とすエヴァに懇願されてはさすがに銀時もやりすぎたと後ろ髪を掻き毟りながら反省の色を出す。

「・・・・・・・ワリィ、さすがに悪ノリしすぎた・・・・・・俺が悪かったからそんなに泣くなって・・・・・・」
「もうバーベーキューなんてやりたくない・・・・・・」
「悪かった悪かったもうしないって、肉あるから一杯食えって、茶々丸、肉のみで焼いて上げてくれ」


しゃがみ込んで彼女の頭を撫でながら謝っている銀時を見ていたあやかはポツリとつぶやいた

「・・・・・・銀さんでも女のマジ泣きには敵わないんですわね」
「男なんてみんなそういう生き物だよ、女の涙にはいくら銀さんでも敵いっこないって」
「何でそんな事和美さんがわかるんですか?」
「記者は何でも知ってるんだよ~」
「適当ですわね」

串に刺さった肉を食べながらこちらに笑いかけてくる和美。失礼だが彼女には一生無縁そうだなとあやかは感じる。
そんな事を考えながらあやかはふとある事を彼女に質問してみる事にした。

「そういえばあなたって男の人とお付き合いとかした事あるんですか?」
「う~ん、告られた事は何回かあるけど、私ってこれといって恋愛に興味無いから全部断ってんだよね、他人の恋愛は大好物だけどさ」
「まあ和美さんらしいったら和美さんらしいですわ・・・・・・」

彼女恋愛事にあやかはまあ納得と頷きながら理解する。どうみても和美は他人の恋愛にしゃあしゃあと首突っ込むタイプだ
そんな彼女は食べ終わったので串にもう一度肉と野菜を刺しながら、ふと銀時の隣に立って食べている千雨の方に顔を向ける。

「今興味あるのはやっぱり千雨ちゃんなんだよね~、あの子って異姓どころか人とも関わりを持とうとしなかったのに、銀さんが来てからちょっと変わったよね」
「そうですね本当に変わりましたわ、前はあの人がこんなに人と関わるなんて無かったのに」
「数年間一緒にいる私達にも心を開いてくれなかった千雨ちゃんを、あんな簡単に開かせるなんて・・・・・・時々思うんだけどやっぱり銀さんって凄い人なんだよね」
「当然です、だから私もあの人に惹かれたんですから」
「銀八ッ! 私の串に勝手にマシュマロ刺してんじゃねえよッ!」
「バカお前結構イケるんだぞコレ、肉とマシュマロが殴り合いの果てに仲良くなってくるこの素晴らしさがわかんねえのか?」
「わかりたくねえからッ! つうかお前しかわかんねえ事だからッ!」 
「グス、私の苦しみを貴様も味わえ・・・・・・・」
「お前は泣きながらマシュマロ刺すなァァァァ!!!」

自分が焼いている串にマシュマロを勝手に刺している銀時と、まだ涙目を浮かべているエヴァに千雨が怒鳴っているのを離れた所から和美とあやかは頬笑みながら見物するのであった。





















































数時間後、バーベーキューに使う食材も少なくなり、日もすっかり沈み夜になっていた。
どうやらバーベーキューもそろそろお開きのようだ。

「うえ・・・・・・口の中でまだマシュマロと肉が混ざり合った味が残ってる・・・・・・吐きそう・・・・・・」
「千雨ちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃねよ、銀八とエヴァに無理矢理変なの食わされたせいで気分ワリィよ・・・・・・」

どうやら銀時に食わされた物があまりにも口に合わなかったらしく、千雨は病人のような顔をして頭をフラフラしながらなんとか立っている。和美とあやかは心配そうに彼女を見つめる

「明日修学旅行なんですからしっかりして下さいな」
「安心しろい、こいつが気分悪くてもメガネだけ持って行けば何事も万事解決だ」
「いや何処も解決してねえよッ!」
「元気になられたようです」
「さすが千雨ちゃん、立ち上がりも早いね」
「ええ本当、マー君みたいですわ」
「野球選手で例えるなッ!! わかりづらいわッ!」

銀八に向かってさっきまでの疲れた表情をしていたのにも関わらず大声でツッコんで復活してる姿にあやかは大丈夫そうだとすぐに安心する。

「修学旅行は思い出をたくさん作りたいので千雨さんや銀さんも明日はちゃんと来て下さいね」
「んなこと言っても俺修学旅行とか全然興味出ねえんだよなぁ、そんなはしゃぐもんじゃねえだろ」
「私も生徒全員でそういう事する行事って昔から嫌いなんだよな、出来れば行きたくねえし、銀八がいなかったら仮病使って寮でずっと寝てたかもな」
「あなた達って本当自堕落ですわね」
「「まあな~」」
「ハモって言わないで下さい」

完全に修学旅行で楽しむ気が無い二人にあやかはジト目でツッコむ。なんだかんだでこの二人、性格が似てる所がある。
だから仲良くなったのであろうか・・・・・・
そんな事を推測しながらあやかはふと右手に付けている腕時計に目をやる。気が付けばかなりの時間が経っている

「そろそろ帰らなくては、明日の準備しなきゃいけませんわ」
「あれ? いいんちょってもう準備は済ませてるって言ってなかった?」
「私じゃなくて千鶴さんの準備です、あの人やる事なす事が物凄くのんびりだから私と夏美さんがいないと間に合わないんです」
「あ~あの人ってやっぱりそうなんだ」
「もう長い間一緒に住んでるので慣れました・・・・・・・でもずっと一緒にいる私でも何考えてるかわからないんですけどねあの人」

友人でありみんなのお姉さん的な存在の千鶴とはもう長い付き合いなので、彼女の性格は“イヤ”というほど理解しているし承知しているのだが、こんなあやかでも彼女の考えている事は未ださっぱりだ

「この前なんか、ゴリラさんが学校内をウロついてたとか言ってましたわ」
「言ってたね教室でそんな事・・・・・・いくらあの学校でもゴリラなんているわけないのに・・・・・・」
「千鶴さん大丈夫でしょうか・・・・・・」
「お前が気にする事はねえよ、ああいう奴はなんだかんだで長生きするモンなんだよ、何処でも生きていけそうだし」
「そうかもしれませんわね・・・・・・」

こちらに近づいて来た銀時のフォローに顎に手を当てながら静かに頷くあやか、確かに千鶴だったら雪山だろうがジャングルの中だろうが、はたまた異世界だろうが全く動じずに普通に生活している印象を感じる。

「周りに変わり者とかおかしな人間とか思われてる奴ほどどんな環境でもしぶとく生きていくもんだ、変わり者って事は普通の人と感覚がずれてるって事だからな」
「なるほど貴様が言うと説得力あるな」
「どういう意味だオイ」
「異世界という環境の中で普通に溶け込んで生活している変わり者といったらお前しかいねえだろ」
「あん? 俺の何処が変わってるんだよ」
「さっきまでマシュマロと肉を交互に食ってるお前の姿は紛れもない変人だったぞ」
「食わされても気持ち悪かったけど見てる時も気持ち悪かったな」

先ほどまで普通に肉とマシュマロを刺し、千雨に肉体的と精神的両方にダメージを与えた一品をまるで食べれて当然の如く食していた銀時に、エヴァと千雨が交互にツッコむ。
そんな二人に銀時は少し気を悪くする

「人の味覚馬鹿にしてんじゃねえよ、茶々丸、何か言ってやれ」
「銀時様の頭は天然パーマですので味覚もパーなのです」
「よし茶々丸、お前後でスクラップな」

茶々丸に向かって解体宣告をした後、銀時は何事もなかったようにバーベキューコンロの火を消して、片付けの準備を始めた。

「もう焼くもんもねえし解散だな、明日遅刻したら置いてくからな」
「さっさと帰れ貴様等、これからは私と銀時の大人の時間だ、ガキの貴様等は早々に消え去れ」
「銀さんまだ“焼けるモン”が私の目の前にいるんですが」
「食べたかったからご自由に焼いてくれ、銀さん協力するから」
「間違いなく食あたりするので結構ですわ」

こっちに向かって中指を突き立ててくるエヴァに目を細め睨みつけ、銀時と会話しながら対抗するあやか

「この人が京都に来ないって思うと“本当”気が楽になります、銀さんにまとわりつくこのチビッ子がいないと私もストレス溜めないで済みますし」

帰り支度をしながら嫌味をいってくるあやかにエヴァはフンとしかめっ面で鼻を鳴らす。

「私から見れば貴様と千雨の方がうっとおしいわ、学校ではいつもベッタリくっつきおって・・・・・・私もどうにかして京都に行けないものか・・・・・・」
「マスターは登校地獄の呪いをかけられているのでこの麻帆良市内から抜ける事は出来ません」
「そんな事言われなくてもわかってる、呪いをかけた本人のナギがいればこんな呪いからすぐ解放できるのに・・・・・・」
「そいつ今何処で何してんだろうな、とっとと捕まえてシメねえと俺も江戸に帰れねえよ」

バーベーキュー用具を片付けた銀時が髪を掻き毟りながらエヴァの方に近づいてくる。
彼はエヴァと自分の世界に連れて帰ってやると約束しているので、問題の彼を見つけ出さないとずっとここにいるハメになってしまうのだ。

「ま、案外ここの生活も悪くねえけどな・・・・・・」
「何か言ったか銀八?」
「言ってねえよ、さっさと帰れメガネ、そして俺を寝かせろ」

銀時に独り言に気付いた千雨が彼に質問するが、銀時は適当にごまかして手で追い払う仕種をする。
そんな彼にニヤニヤしながら笑いかける小さな同居人。

「銀時、今日はどっちの寝床で寝るのだ?」
「とりあえず俺はコイツを永遠に寝かせる作業しなきゃいけねえからお前等も帰って寝ろ」
「銀さんも大変ですわね・・・・・・」
「どうした急に?」
「いえ・・・・・・」

事情をよく知っているあやかは銀時に対して同情しているような目線を送っていると、彼は彼女に少し遠慮がちに喋りかけた

「ところであやかよ、・・・・・・お前にどうしても言いたい事が一つあるんだけど・・・・・・」
「あ、はいッ! 何でしょうかッ!?」

言おうか言わまいか悩みながらしばらくして銀時は再び口を開く。

「あのな・・・・・・俺と一緒にいるときはなるべくそういう格好しないで・・・・・・銀さん目のやり場に困るから」
「え? ああッ! す、すみませんッ!」 

今日はあまりあやかに顔を向けて銀時は喋りかけなかった。
一番の理由は彼女の着ている胸の谷間を強調する服装。
男としていちいち視線がそちらに向いてしまうので、いくら中学生に興味が無いと言い張る銀時でもついそちらに目がいってしまう。
銀時に注意されてあやかは顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに胸の部分を手で隠した。

「すみませんこんな服装で来てしまって・・・・・・」
「女友達とか恋人とかと一緒にいる時とかはいいと思うけどよ、教師の俺といる時にそういう服装はちょっとな・・・・・・」
「一応教師として自覚があるんだなお前」
「悪かったなコノヤロー」

あやかに向かって苦笑いを浮かべている銀時に千雨がボソッとツッコむ。その声に気付いて銀八は彼女にいつものペースで返す。

「まあいいや、じゃあな、それとも夜遅いから送ってやろうか?」
「ありがたいですけど、銀さんもそろそろ寝ないといけませんわよ、教師は生徒より何かと忙しくなるので」
「お前等と一緒にいるだけで俺は毎日忙しいよ、少しは休ませろ」
「フフ、ではまた」
「じゃあね銀さん、修学旅行の時は一緒に回ろうね」
「気が向いたらな」
「すっぽかすんじゃねえぞ銀八」
「お前に言われたくねえよ、明日来なかったら焼き討ち打ち首だからな」
「いやせめてどっちかにしろよ」

帰り際にこちらに向かって言葉を残しながら去って行く三人を、銀時はいなくなるまで見送った。
しばらくそのまま立っていると銀時は眠そうに欠伸をする

「どうしてこう俺の周りには・・・・・・疲れる連中が集まるのかねぇ」
「何つっ立ってるのだ、家に戻るぞ」
「わ~ってるよ、もう眠ぃ・・・・・・」

後ろからエヴァに呼ばれたので銀時は返事をして振り返る。
バーベキューの用具などは全て茶々丸が片付けておいてくれたらしい。

「さっさと布団入って寝るか・・・・・・」
「ちょっと待て銀時」
「なんだよ、言っとくがテメェと一緒に寝るのはもうゴメンだからな」
「いや別の事だ・・・・・・」
「うん?」

家の方に歩きながら銀時はついてくるエヴァに向かってだるそうに顔を向けると、彼女は神妙そうな顔でこちらを向いている。

「ちょっと二人で話さんか、今後の事についてだ」
「今後の事?」

エヴァの言っている事に首を傾げる銀時をよそに、家の前に設置されているテラスの方に歩いてそこにある椅子に腰かける。

「明日からお前とはしばらく会えなくなる、その前に伝えたい事がある」
「何だよ急に改まって・・・・・・手短にしろよ」

そう言って銀時は彼女の座っている椅子の向かいの方の椅子に座る。周りをよく見るとさっきまでいた茶々丸の姿もない。
暗闇の中で完全に二人だけの状態になった

「銀時・・・・・・」
「あん?」
「お前は『惚れた』事ってあるか?」
「惚れた・・・・・・?」
「私は600年ぐらい生きてるが、惚れた男は二人だけだ」

珍しく真顔でテーブルに肘をかけてそんな事を言うエヴァに銀時は黙って聞く。しばらくして再び彼女は口を開いた。

「最初に惚れたのがナギ、そしてその次が・・・・・・お前だ」
「・・・・・・」

エヴァに指差れ銀時は無表情で無言のまま彼女と目を合わせるだけ。そんな反応にエヴァは口元に若干笑みが出来る

「フフ、二番目だと聞いて少し妬いたか?」
「なわけねえだろチビ」
「安心しろもうナギの奴なんてもうどうでもいい、私をここで何年も放置する男など貴様と会ってからとっくに愛想尽きたわ」
「何が安心しろだ、俺は別にテメェの恋愛事なんざ興味ねえんだよ」
「ハハハ」

不機嫌そうに言葉をぶつけてくる銀時にエヴァはまた面白そうに笑った後、言葉を続ける。

「人と人との出会いというのは面白いな銀時、お前と会ってからそういう事を頻繁に思えてきた」
「そりゃあ良かったな」
「もしお前と会わなかったら私は今でもずっとつまらん学校生活を堪能していたんだろう、だがお前に会えて少しだけこの生活も悪くないと思った、あいつ等と遊ぶのも嫌いじゃないし、お前と一緒に生活するのも悪くない」
「・・・・・・」
「お前に会えたおかげで私は変わる事が出来た、まあ雪広あやかや長谷川千雨、他にも色んな奴等がお前を通して変わって行ったのかもしれんがな、人と人を結びつける絆の力・・・・・・それがお前の力だ」

テーブルにもたれながら見つめてくるエヴァに銀時は髪をポリポリと掻き毟りながら理解していない表情をする。

「それって俺がいたからそうなったのかねぇ」
「当たり前だろ、お前は私でさえ持っていない物を持っているんだぞ」
「股の間にぶら下がってる奴? 確かにお前持ってねえな」
「・・・・・・この状況で下ネタを言うか貴様?」 

空気を読まずにいきなり下ネタに走りだす銀時にエヴァは呆れたように手で頭をおさえる。
まあ彼とは一緒に住み始めてから結構経ってるので慣れては来てるが

「全く変な奴だよお前は本当」
「さっきから褒めるのかけなすのかどっちかにしろよ」
「・・・・・・だが私はそんな変な奴に惚れたんだ」
「・・・・・・」
「銀時・・・・・・」
「・・・・・・あん?」

いつもはおしゃべりのクセに今は全く口を開こうとしない銀時を見て、エヴァは頬を染めながら唇を震わせる。
彼女のそんな表情をジッと見て、銀時は目を逸らさずにまっすぐにエヴァを見つめる、それから数秒後

彼女はゆっくりとその口を開いた

「・・・・・・好きだ」
「・・・・・・」
「普段は憎まれ口を言い合う仲だが本当にお前の事を想ってる、これは紛れもない私の本音だ」
「・・・・・そうか」

真顔のまま銀時は彼女の言葉に何も言えずに静かに頷く。そんないつもは見ない彼の姿にエヴァは思わずフッと笑ってしまう。

「いつもみたいに「テメェみたいなチビを誰が相手にするかボケ」とか言わんのか?」
「うるせえよコノヤロー、つうかこのタイミングでぶっちゃけるお前の正気を疑うわ」
「ずっと前から言いたかったんだが恥ずかしくてな・・・・・・修学旅行には私はいけない、だからその前にここで言う事にしたんだ」
「恥ずかしいってお前なぁ・・・・・・」
「し、しょうがないだろ・・・・・・好きになった事は二回だが告白するのは生まれて初めてなんだぞ・・・・・・」
「俺だって告白されるの初めてだってえの」

顔を赤くしながらうつむくエヴァの姿に銀時は表情を悩ませる。こんな体験未だに彼もなかったのだ
恋愛経験はあるのだがこんな風にストレートに想いをぶつけられたらどう返せばいいのかわからない

「俺みたいな万年金欠の天パの男に惚れてもなんの得にもならねえぞ?」
「金が無かろうが天然パーマだろうが構わん、隣で笑ってくれているお前がいれば私は幸せなんだ」
「そいつは安上がりで嬉しいねぇ」
「私を傍に置いてくれるだけでいいんだ、そうすれば貴様が誰を嫁にしても構わん、もう目星が付いてるんだろ?」
「は? ちょい待て」

エヴァの発言に銀時は思わず手を出して一旦止める、彼女の発言に銀時は上手く理解できなかった。嫁? 目星?

「もし雪広あやかだったら私とは一生ケンカが絶えんだろうな」
「え? 何でそいつが出てくるの?」
「長谷川千雨だったらお前とあいつのケンカが絶えんだろうな」
「ねえ、いつ俺が自分の生徒に手ぇ出すって言った?」
「いっそのこと二人とも嫁にすればどうだ? って事は夜は三人がかりでお前と・・・・・・」
「テメェいい加減にしろコラァァァァ!!!」

エヴァの言う目星についてついに銀時が席から立ちあがって彼女に向かって叫ぶ。

「何俺の人生設計に勝手に新たな1ページ刻もうとしてんだコラッ! つうか俺はあいつ等とそんな関係になるなんて思ってねえよッ!」
「なんだお前等? まだそこまで進んでないのか?」
「進むも何も1ミリも進まねえッ!」

意外そうに銀時の訴えを聞いたエヴァは、彼に顔をそむけて小さな声でボソリと銀時に聞こえないようにつぶやく。

「・・・・・・お前がそう思っていても向こうはそう思ってるとは限らんがな・・・・・・・」
「ったくどいつもコイツもオランダも・・・・・・もう話は済んだだろ、寝るぞオラ」
「やれやれ鈍い奴はとことん鈍いんだな・・・・・じゃあ私もこれですっきりしたし寝るか、無論貴様と同じ布団でだがな」

一緒に席から立ち上がって家に戻る途中、エヴァにそんな事を言われた銀時は嫌そうな顔で彼女を睨む。

「一人で寝ろチビ、朝目覚めたらお前の寝顔が目の前にあると急激に萎えるんだよ」
「何言ってるんだ貴様ッ! 私の告白を受けといてそれはないだろッ!」
「それとこれとは話しは別だバカ」

そう言って銀時は家のドアを開けて中に入って行く。エヴァも後ろから一緒に中に入っていく
そして家の中から聞こえてくる会話

「茶々丸、お前何で俺達が話してる時に来なかったんだよ」
「二人の邪魔はしませんので」
「そういう所は気がきくんだな貴様は・・・・・・」
「カラクリのくせにそういう所はわかってんだな、あ~眠ぃ・・・・・・茶々丸、明日早いから早めに起こしてくれ」
「わかりました」
「待て銀時ッ! 私もッ!」
「しがみつくんじゃねえよッ! お前は自分のベッドで寝ろやボケッ!」
「私の初めての告白記念だ・・・・・・! きょ、今日だけは絶対に一緒に寝てもらうからなぁ・・・・・・・! 」
「この・・・・・・! 離しやがれこのクソガキ・・・・・・!」
「二人共本当に仲がよろしいようで」

家の中で二人の声が止むのはそれから1時間後の事であった。



































銀時とエヴァが互いに譲れないモノを賭けて真夜中にエキサイティングしている頃、万事屋の三人は女子寮へと戻っていた。

「それじゃあ、いいんちょと千雨ちゃんおやすみ~」
「ああ」
「おやすみなさい和美さん」

女子寮の廊下であやかと千雨を置いて和美さっさと自分の部屋に戻って行く。彼女も相当眠たそうで欠伸をしながらフラフラしているので、すぐに戻って寝床につきたいのであろう

「じゃあ私はこの部屋だから」
「そうですわね、千雨さんも明日はちゃんと来て下さいね」
「わかってるよ」

めんどくさそうにあやかに言葉を返して千雨は自分の部屋のドアを開けようとする、だがその前に再び

「千雨さん」
「何だよいいんちょ、まだなんかあんのか?」
「・・・・・・とりあえず千雨さんには報告しといておこうかと思いまして・・・・・・」
「はぁ? 私に報告する事ってなんだよ?」

報告と聞いて何だそれ?っと目を細める千雨をよそにあやかは急に周りに人がいる気配がないか確認して。
いない事がわかった後、千雨に向かって頬を染めながら口を開いた

「私、修学旅行の期間中に銀さんに告白しようと思ってますの」
「え?」
「ちょっとまだ怖いんですけど・・・・・・修学旅行はあの人に自分の想いを伝えるいい機会だと思いまして・・・・・・」
「・・・・・・別に私に言う事じゃねえだろそれ・・・・・・」
「そうですけど・・・・・・」
「お前が誰に告白しようが私の知ったこっちゃねえんだよ」
「・・・・・・」

あやかに向かってぶっきらぼうに突っ返した後、千雨派部屋のドアノブを開けて部屋に入ろうとする。だがまだあやかの話は終わっていなかった。

「千雨さんは・・・・・・・」
「あん?」

部屋に入ろうとする千雨の背中にあやかは静かに語りかける

「千雨さんは・・・・・・・銀さんの事どう思ってるんですか?」
「どうってそりゃあ・・・・・・」
「教師? それとも上司ですか? 仲間? 友達?」
「・・・・・・」
「千雨さん?」
「そういうのじゃなくてよ・・・・・・」

部屋に入ろうとせずに千雨はドアを開けたまま立ち止まり、あやかの方へ向かずにそのまま喋りだす

「教師とか上司とかそういう感じであいつと付き合ってるわけじゃねえんだ、友達とかそういうのでもない・・・・・・けど」

そこで千雨は振り返りあやかの方を見た

「ずっと一緒にいたいと思ってる、生きてる限り一生あいつの隣に立っていたい」

彼女の目は一片の迷いもなく決心する事に何の躊躇も無い、千雨の凛とした表情を見て思わずあやかは口に笑みが出てしまう

「・・・・・・千雨さんらしいですわね」
「そうか? じゃあおやすみ、修学旅行頑張れよ」
「はい」

最後にあやかに寝る前の挨拶した後千雨は開けたドアから中へと入って行った。
残されたあやかは自分の部屋への帰路に着きながら「ハァ~」っとため息をついた後つぶやく

「考えてる事私と同じじゃないですか・・・・・・」
























部屋に戻った千雨は修学旅行の準備もせずにそのまま置かれているベッドに倒れ込む。

「だ~もう疲れて何もする気しねえ~、準備は明日の朝にするか・・・・・・」

着替えはせずにメガネを取って髪をほどき、電気を消して千雨はベッドの中に潜り込む。
そのまま目を閉じで眠りに入ろうとするのだが。

(・・・・・・いいんちょと銀八がどうなろうと私は関係ねえのに)

あやかが言っていた事が千雨の頭から離れなくて中々寝付けない

『私、修学旅行の期間中に銀さんに告白しようと思ってますの』

両腕を枕にしてあやかの言葉を思い出しながら千雨は暗い天井をボーっと眺める。

(なんでだろうな・・・・・・)

天井を見つめながら千雨はふと考える、時々芽生えるこの感情
それは決まってある人物が関連している時に起こる悲しみと痛みが入り混じる感情

(胸がイテェ・・・・・・)

その痛みの意味を彼女はまだ知らない














































教えて銀八先生ファイナル!

銀八「今回で遂にこのコーナーも最終回だ」
沖田「長かったですね、「すぐに打ち切られるんだろ」って思ってヤケクソで作ったコーナーがまさかこんなにしぶとく生きるとは」
銀八「人生何が起こるかわかんねえな、まずは一通目ゼミルさんの質問」
 
女性陣の皆さん!お相手との子供は何人ぐらい欲しいですか!?

エヴァ「何人欲しい?」
銀八「どうやって生むんだよお前が」
のどか「え、ええッ!? えと・・・・・・」
土方「真面目に答えようとしてんじゃねえッ!」
夕映「具体的にそういうの考えてるんですか?」
近藤「・・・・・・何で俺に聞くの?」


銀八「二通目はきさんの質問」

えーっと。空知先生、じゃなかったカイバーマン先生に質問
この作品の人気投票ってやらないんですか?
出来たらやってほしいのですが、一人3票までとかいう感じで。(結構面白いことになりそうな気がするので)
ついでに順位争奪戦ネタも一緒に見れたらなと。

銀八「作者曰く『別にええよ』だそうです」
千雨「軽・・・・・・」
銀八「修学旅行の時ぐらいはそういうのもいいだろ」
沖田「人気投票のやりかたは後述に書いてるんで」
銀八「これで誰一人投票来なかったらどうしよう・・・・・・」
千雨「不吉な事考えるなよ・・・・・・」

銀八「三通目とびかげさんの質問」

質問コーナー最終回にちなんでぬらりひょんの命も最終回にしませんか?
勇者王よんで光にしましょう!

学園長「いやその理屈はおかしいッ!」
凱「出たなゾンダーッ!」
学園長「誰じゃッ!? てかゾンダーって何ッ!?」
千雨「いきなり金ぴかのオッサンが出てきたんだけどッ!?」
凱「オッサンはやめろ、俺はこれでもまだ二十歳なんだぜ?」
千雨「知らねえよ帰れッ!」


銀八「四通目テレフォンさんの質問」

エーリアンをつぶせば文化祭やらくていいんじゃね?
つーか文化祭関係なくエーリアンつぶしちゃっていいんじゃね?

銀八「まあそれがこのお話の本来の目的ですからね」
学園長「修学旅行編意味なくないッ!?」
銀八「苦難を乗り換えた俺が最終的にお前を潰して俺が学園長になるって筋書きだ」
学園長「それただのお前の野望じゃろッ!」


銀八「五通目、風凪五月さんの質問」

銀さんへ。
銀さんは誰が好きなんですか? 『誰も居ない』と言う選択肢も有りですが、私は是非聞いてみたいです……☆

銀八「あ? 結野アナとしずな先生だけど?」
あやか「アハハハ・・・・・・」
千雨「・・・・・・」
エヴァ「おい私はッ!?」
銀八「おもしれえ冗談だな」
エヴァ「貴様は相変わらずそういう態度か・・・・・・」


銀八「六通目、蛙さんの質問」

あやか・千雨・銀さんに質問。銀さんの授業中に居眠りしていたまき絵が、
「あの糞天パ、絶対に絞めてやる……いいんちょもデカ乳の割にヒロインの貫禄ないし……むしろ私がメインヒロイン……土方死んでくんないかな……千雨ちゃんの存在価値って眼鏡だけ……夏美ちゃん影薄い……山崎と同じ……土方死んでくんない……むにゃむにゃ」と寝言を口にしました。
どうしますか?

まき絵「まずそんな所を言ったシーンを教えて欲しい・・・・・・あががががッ!!」
銀八「締める前に締めてやるよ、首」
あやか「あなたがそんな事考えてたなんてショックですわね」
まき絵「考えてない考えてないッ!」
土方「俺が死ぬ前にお前を死なせてやるよ・・・・・・!」
まき絵「いやぁぁぁぁぁ!!!」
千雨「うっせえな・・・・・・」


銀八「何かまき絵の首からベキって音したけど大丈夫だろ、七通目Citrineさんの質問」

ラカンさんは現在どうしてらっしゃいますか?

銀八「知らねえよ」
ナギ「魔法世界にいんじゃね?」
アル「あんなのが来たら大変でしょうね」
ナギ「まあゴリラだしな」
近藤「え、俺?」
ナギ「お前じゃねえよ」


銀八「八通目q-trueさんの質問」

銀さんに質問です。
もうすぐ12月ですが、今年の年忘れ超GS大会のゲストはどうなるのでしょうか?
毎年ありとあらゆる世界から108人のゲストを招き、特設された次元にて学園長を凹るこの大会。
去年は『剣製の英霊』や『管理局の白い魔王』が参戦し、素晴らしい盛り上がりを見せましたね!
DIO様がいつもよりもノリノリで「無駄無駄ァ!」されていたのは印象深かったです。
質問コーナーも今回で終わりと言う事なので、もう学園長を生かしておく理由も消え、例年以上の盛り上がりが期待できるでしょう。
GS麻帆良支部の幹部の銀さんなら、多少は分かるのではないでしょうか?
一部でいいので、お願いします

銀八「海馬社長がいたってのは聞いてます、という事で今回コーナー最終回という事で特別ゲストで呼んできました」
学園長「はいッ!?」
海馬「ふぅん、俺によって負かされる事をあの世に落ちながら誇るがいい、行け三体のブルーアイズよッ! あの醜きモンスターを塵も残さず葬り去れッ!!!」
学園長「どぅほぉぉぉぉぉぉ!!!」
海馬「フハハハハハハッ! 強靭ッ! 無敵ッ! 最強ッ!」
学園長「ごはぁぁぁぁぁ!!」
海馬「粉砕ッ! 玉砕ッ! 大喝采ッ!」
千雨「やり過ぎやり過ぎッ!」


銀八「九通目エンジンさんの質問」

パルに質問。同人誌書いてる(BLもの)らしいですけどガンダムもの(SEEDシリーズ・00シリーズ)書いてますか?アスランに声が似ている人とかロックオンとかムウさんが銀さん側にいますけどもし会ったら(声的な意味で)発狂しますか?

ハルナ「先生の仲間にそんなのがいるのッ!?」
銀八「声だけな、中身は全然違うから」
ハルナ「大丈夫ッ! 声だけ当ててもらえればいいからッ!」
千雨「お前自主で同人のドラマCD作ろうとしてるだろ・・・・・・」


銀八「十通目正宗の胃袋さんの質問」

ロリコン天パ野郎に質問
GS組織で拷問道具はどこで調達しているのですか?噂では、色々な世界に拷問道具を調達していると聞いているのですが本当ですか?

銀八「最近貰ったのはこの『お手軽カンタン何処でも焼き土下座』ですね、これは焼けた鉄板に相手を押しつけてじわりじわりと焼きながら十秒間そこに土下座させるというなんともシンプルなモンで、悪い事をしちゃった人に対する時に使うお仕置きセットです」
学園長「可愛く言ってるけどメチャクチャ酷いんだけどそれッ!?」
銀八「はいジジィ~喋った罪で焼き土下座な」
学園長「喋る事さえダメなのワシッ!?」
銀八「ていうかこの世にいる事自体が罪だ」
学園長「存在のみで断罪されなきゃいけねえのかよッ!」


銀八「十一通目風の都さんの質問」

あやかさんへ
これからも、あやかさんのことを応援し続けていいですか?
銀さんの隣に相応しいのは貴女だと思います。ライバルもいますが(エヴァは既に論外)、絶対に栄光を掴み取って下さい。まき絵ちゃんの救済もお願いします!!
頑張って下さい!!!

あやか「ありがとうございます・・・・・・まあ、まき絵さんは絶対に無理ですけど」
まき絵「えッ!?」
あやか「だってまき絵さんですししょうがないでしょ?」
まき絵「そんな~・・・・・・・」
銀八「修学旅行楽しみだな『まき絵』」
まき絵「サボろうかな・・・・・・」


銀八「十二通目ウィルさんの質問」

最後の質問はやはり私が思うこの作品のメインヒロインの千雨に。修学旅行が始まるわけですが、銀さんとエヴァといいんちょの三人とどんな楽しい思い出を作りたいですか?エヴァは登校地獄がありますが学園長がどうなろうと私には知ったこっちゃないので何とかして呪いを誤魔化して修学旅行に参加して欲しいものです。

千雨「まあ銀八もいるんだし、退屈はしねえだろうな・・・・・・」
銀八「心配すんな京都行ったら俺の八つ橋巡りに連れてってやるよ」
千雨「旅行先でそんな事したいのお前・・・・・?」
銀八「嫌なら別に来なくていいですけど?」
千雨「わ~ったよ・・・・・・」


銀八「十三通目サハリンさんの質問」

ち○毛も天パ(銀時)に質問
11月21日にジャンプの銀魂で銀ちゃんの金玉潰されましたね、いっその事ち○こも捨てちゃえば?

銀八「そこは男として絶対に捨てちゃいけないモンだろうが」
あやか「銀さんのがなくなってしまったら子供が作れなくなりますわね・・・・・・」
エヴァ「いっそうの事なくなる前に作って来い」
千雨「お前等、何コソコソヤバい事相談してんだ・・・・・・」


銀八「十四通目、志翼さんの質問」

銀さんに質問
学生時代に修学旅行、どこに行ったのでしょうか?
文化祭では嫌な思い出があったようですが、修学旅行はどうだったのですか。


銀八「ぶっちゃけ行った事なんてないです、ただああいうテンションが嫌いなだけなんですよね、テンションを無駄に上げる女子を見るのがこの上なくウザいんです」
千雨「それ教師としてどうよ・・・・・・まあ私も同じだけど・・・・・・」
銀八「だから俺はバカレッドとかゴキみたいなのが一番嫌いなんだよな、何勝手に盛り上がってんの? みたいな、あいつ等本当空気読めねえよな」
千雨「私はどちらかというと朝倉の奴も苦手だけどな・・・・・・色々とうるさいし・・・・・」
銀八「色々?」
千雨「いやまあこっちの話しだから・・・・・・」


銀八「教えてコーナー最後の質問だ、十五通目ペケペケさんの質問」

学e・・・足の少ないパンデモニウムへ
あなたのサンドバック人(?)生。いったい何を目指しているのでしょうか?

学園長「これってワシの質問・・・・・?」
銀八「そうだよ、パンデモニウム」
学園長「呼び名にすんじゃねえよッ! え~ゆくゆくは世界一偉くなる事がワシの夢」
エヴァ「世界一卑下されている貴様がそんな夢持てるんだな」
学園長「えッ! ワシってそんなにランク低いのッ!?」
銀八「この世の底辺に君臨するのがお前だ、カーズの反対って事だな」
学園長「もう考えるのも止めようかな~・・・・・・」



















銀八先生からのお知らせ

銀八「という事で『教えて銀八先生』はこれで最後です、ここまで質問を投稿してくれた読者の皆さま本当にありがとうございま~す、今度は人気投票によろしく、それじゃあまた復活する事を願って」
沖田「バイQ~」
千雨「何その締め・・・・・・」
あやか「質問コーナーが終わっても連載は続きますのでこれからもよろしくお願いします」
沖田「次回からは沖田の調教コーナーが始まりますぜ」
千雨「ねえよッ!」




























次回予告











遂に











最終章開幕ッ!!!










三年A組 銀八先生! 最終章 修学旅行編

第三十五訓・「旅は道連れ世は情け」




注意事項
・原作の修学旅行編とは大きく違う点が所々あり、オリジナルに近いものとなっています
・原作にいた筈のキャラクターがいなかったり、逆にいない筈のキャラクターが登場する事があります
・これらの事項を了承してお読みください


修学旅行期間限定イベント・第一回『三年A組 銀八先生!』キャラクター人気投票開始
修学旅行編の間、本編のキャラクターに感想掲示板で投票してみよう、一人三票まで投票可能。
本作が更新されるたびにまた投票を行えるようにします。
原作の人気投票とは全く関係ありません







[7093] 第三十五訓 旅は道連れ世は情け
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/12/05 23:37
 早朝。チュンチュンと小鳥達がまるで挨拶をするように鳴き声が上げている中、森の中に佇む家で一人の男が少女と一緒に朝食にありついている。
修学旅行当日、鼻にかけた伊達メガネ、白衣とスーツ、履いてるのはサンダルという意外性200%の破天荒教師、坂田銀八モードの銀時が眠そうな瞼をこじ開けながらボーっとテーブルに出されたパンといちご牛乳を黙々と食べていた。

「・・・・・・眠ぃ・・・・・・」
「なんだ寝れなかったのか貴様? 私はグッスリ寝てたぞ」
「どっかのガキに抱きつかれてこっちは全然寝付けなかったんだよ・・・・・・!」

隣の席に座って同じ朝食を食べている少女、エヴァに向かって銀時は眠たい目をしながら睨む。
どうやら昨日の夜は『あの騒動』の後、遂に彼が根負けしてエヴァと一緒に寝ていたらしい。

「ゴ主人ニ興奮シテ寝レナカッタノカ? ケケケ」
「こいつが俺の貞操に襲ってこないか不安で寝れなかったんだよチビ人形、燃えないゴミにほおり投げるぞコラ」
「銀時様、姉さんは頑張れば燃えます、よって燃えるゴミに」
「オイ殺スゾテメェ」

テーブルに置かれているエヴァの従者のチビ人形ことチャチャゼロと同じく従者の一人の茶々丸が話している中、銀時がコップに入っていたいちご牛乳を飲み干す。
すると隣に座るエヴァがトーストにジャムを塗りながら彼の方へ話しかけてきた。

「今日から修学旅行か、呪いで行けない私の為にちゃんとお土産買ってくるのだぞ」
「ジャンプでも買って来てやるよ」
「京都で買う意味全く無いだろそれ、何処で買おうが全国共通だろジャンプは」
「実はちょっと違えんだ、京都のジャンプはな、ページの間に八つ橋挟んでるんだよ」
「嘘つけ不衛生極まりないわ・・・・・・京都のチビッ子全員泣くぞ」

眠そうに適当な事言っているのにエヴァがツッコんでいると、銀時はふとテーブルに置かれた時計をみる。それを見て彼のテンションが下がる

「もうこんな時間か・・・・・・眠いから全然行く気しねえな・・・・・・」

そろそろ行かなければいけない場所があるのに銀時のテンションは低い、誰かのおかげで全然目覚めが悪かったのでまだ眠い。
しかしその誰かことエヴァはそんな彼にニヤリと笑っている。明らかに良からぬ事を考えている表情だ

「じゃあその前に貴様の目覚めが良くなるまじないでもやってやろうか?」
「なんだよ、お前また変な事考え・・・・・・」
「ほれ」
「!!!!!」

銀時が彼女の方へ顔を向けた瞬間、口を何かで塞がれて思わず目を真開く。

こっちに顔を向けてきた銀時に、エヴァは不意を突いて自分の唇を彼の唇に合わせてきたのだ。

それからしばらくしてエヴァは彼との接吻を終えた後フフンと笑う。

「目は覚めたか?」
「・・・・・・テメェ何してんだコラァァァァ!! ちょっと一緒に寝てやっただけで調子乗ってんんじゃねえよボケッ!」
「イダッ!」
「ゴ主人ニ“チュー”サレテ目ガ覚メタカ~銀時? ソレトモ何カニ“目覚メタ”カ? ケケケ」
「これ以上おちょくるとマジでバラバラにすんぞコラ・・・・・・!!」

我に返った銀時がエヴァの頭に思いっきり手でバシンと叩きこんで、茶化してくるチャチャゼロには額に青筋を浮かべて噛みつく。

「さっさとあいつ等の所に行ってくるわ、まだ感触が残ってやがる気持ちワリィ・・・・・・おい茶々丸、俺の荷物持ってこい」
「わかりました」

エヴァのおかげですっかり目が覚めた銀時はそのままイライラした表情で席から立ち上がり、傍に立っていた茶々丸に指示しながら外出の準備をする。

「どうしよう、こんなちんちくりんなガキに唇二回奪われましたなんて江戸の奴等に知られたら俺もうあっちに帰っても生きていけねえ・・・・・・ていうかここでも生きていけない、バカレッドに知られたらあいつ一生軽蔑の眼差し向けてくるよ」
「案ずるな、元からあいつはお前の事軽蔑してる」

顔を手でおさえて落ち込んでいる銀時に、エヴァは席から立ち上がって彼に近づきながらツッコむ。アスナと銀時という二人は出会った当初から“ずっと”折り合いが悪い

「修学旅行でこれ以上評価を落とさないよう気を付けるんだな」
「お前にそんな事言われる筋合いはねえよ」
「あうッ!」
「銀時様、持ってきました」
「おう」

エヴァの眉間にパチンとデコピンしている銀時に、茶々丸が彼の私服の着物が入っている風呂敷と愛刀の『洞爺湖』と書かれた木刀、そして

「さっき物干し竿に使ってました桜咲さんの刀です」
「マジで? それバレたらアイツどころか木乃香にも怒られそうだな」
「最近出る幕ないと思ってたらウチの物干し竿になってたんだなそれ」
「丁度良かったので」

刹那から預かり受けた彼女の愛刀、『夕凪』。
だが茶々丸によりその名刀はあっという間に物干し竿にジョブチェンジするハメになっていたらしい。もし刹那がそれを聞けば大変な騒ぎになる。
とりあえず銀時はそれらを受け取り、腰には木刀、背中には野太刀の夕凪を差し、着替えが入った風呂敷をヒョイと持ち上げ出発する準備を完了させる。

「あそうだ、俺がいない隙に和室の押し入れ開けるんじゃねえぞ」
「どういう意味だ・・・・・・まさかお前変なモン隠してるんじゃあるまいな?」

家のドアを開けて出て行こうとする前に、こちらに振り返って意味深なセリフを吐く事にエヴァは疑惑の目を彼に向けた。
だが銀時は口元に笑みを広げて首を横に振る。

「変なモン? 違う『男の美学』だ、ガキの目に入ると悪影響だから見るなって事だ」
「茶々丸、和室の押し入れにある『男の美学』という物を全て燃えないゴミに出せ」
「了解しました」
「待て待て待てッ! 止めて俺の美学を捨てないでッ! ていうかアレどちらかというと燃えるモンだからッ! 見てると凄く燃えるモンだからッ! 俺がッ!」

エヴァが冷酷に茶々丸に命令した途端、銀時が必死に彼女に懇願する。そんな彼にエヴァは振り返って微笑を浮かべる。笑ってはいるが目は怒っている

「安心しろ、修学旅行から帰って来たらお前自体を燃やしてやる・・・・・・」
「わかった銀さんは燃やされてもいいッ! けど俺のナースと女教師達はそっとしといてッ! 押し入れの底でそっと暮らさせてあげてッ!」
「私がナースやら女教師やらにコスプレしてやるから問題ない、思う存分私で発情しろ」
「出来るかァァァァァ!! 色々な意味で出来るかァァァァ!!!」
「私の唇を二回も奪っといてよく言うわ」
「二回ともてめぇが奪って来たんだろうがッ! 主人公の大事なモンを二回も奪ったのお前だろうがッ!」

ドアを開けた手はそのままで銀時はもう片方の手で指さしながらニヤニヤ笑ってるエヴァに向かって叫んだ後、舌打ちをして家から出ようとする、そしてもう一度去り際に


「いいかッ! 俺の大事なモンこれ以上手ぇ出すんじゃねえぞッ!」
「銀時」
「んだよ何か文句あんのかコラッ!? しょうがねえだろ男は・・・・・・!!」
「・・・・・・気を付けてな」
「・・・・・・」

まだ話しかけてくるエヴァに銀時が噛みつくように振り返ると
彼女の表情は穏やかに笑っていた。

「ジジィに色々と厄介事押しつけられたらしいからなお前」
「・・・・・・俺じゃなくてネギだけどな」
「お前の事だから大丈夫だと思うが、無茶な事はするなよ、お前に死んでもらっては困る」
「ガキに心配されるほど俺はやわじゃねえよ、お前は家で大人しく俺が八つ橋持って帰ってくるの待ってろ」
「相変わらず素直じゃないなお前は、ククク」
「何笑ってんだよチビのくせに」

性格は根の底からへそ曲がり。そんな銀時にエヴァはケラケラと笑ってしまう。
笑われた本人は不満そうに鼻を鳴らす。

「俺はもう行くぞ、あっちのガキのお守りもしなきゃいけねえんだよこっちは」
「ああそうだったな、思いっきり京都で暴れてやれ」
「行ってらっしゃいませ銀時様、命だけは大事にして下さい」

ドアを開けて家から出ていく時にエヴァと茶々丸に見送りの言葉を貰った銀時は彼女達に振り返らずに歩きながら手を振る

「じゃあちょっくら行ってくるわ」

これからどんな苦難が前に立ち塞がるのも知らず































































第三十五訓 旅は道連れ世は情け

修学旅行先の京都へ行く為に新幹線に乗る為の集合場所の大宮駅。
教員として坂田銀八は普通の生徒達よりも早めにここに来なければ行けないのだが、彼は時間ギリギリのタイミングでペタペタとサンダルの足音を出しながらいつものだるそうなスタイルでやってきた。

「は~い銀さんのお通りだよ~」
「お、銀の兄貴が来やしたぜ兄貴」
「あッ! 銀さん遅いですよッ!」
「いや~途中でスタンド使いに襲われて大変だったわ」
「誰でもわかる嘘は止めて下さい・・・・・・」

集合場所にやってきて最初に出迎えてきたのは背中にリュックサックと杖を背負って、肩には使い魔のオコジョ『カモ』を乗っけているA組の担任のネギ。普通の授業時間にも遅刻するのに今日までギリギリの時間でやってきた銀八に彼は呆れながら注意する。

「教師なんだから遅刻しないで下さいよ・・・・・・」
「安心しろ“チビのおかげ”で目覚めはバッチリだ、お前が持ってる大事なモンは奪われないようにきっちり守ってやるよ、俺の大事なモンはもう奪われたけど・・・・・・」
「エヴァさんに何かされたんですか?」
「・・・・・・」
「銀の兄貴? なんでこっち見ないんスか?」

ネギの質問に銀八は無言で顔をそむける、本当の事は死んでも言えない。
銀八とカモを連れたネギがそんな事をしていると、修学旅行に参加する生徒の一人のアスナが意外そうに銀八を見ながら近づいて来た

「あ~アンタ来たの? どうせアンタの事だから来ないと思ってたのに」
「うわバカレッドが出た、あっちにいる木乃香の所に行けよ」

ネギの同僚の生徒の一人のアスナがやって来た途端、銀八がめんどくさそうにあっち行けと手で払うが彼の一言に彼女はムッとした表情を浮かべる。

「出たってどういう意味よッ! ていうかその呼び名止めろって何回も言ってるでしょッ!」
「バカをバカって呼んで何がワリィんだよこのバカ、毎回テスト赤点バカ、早くあっち行けバカ」
「この学校一の最低教師が・・・・・・!!」

シッシッと手で邪見に追い払いながらアスナをバカにする銀八。
ついでにいつも銀八がアスナの呼び名に使っている『バカレッド』とは、アスナと他四人組で編成されている成績ワーストトップ5集団、『バカレンジャー』というグループに付けられたそれぞれのあだ名である。
ちなみにアスナはワーストトップのナンバーワンに長年君臨している。
それを知った銀八が彼女を呼ぶ時はずっとバカレッドと呼ぶ事にしているのだが、さすがにアスナも我慢の限界なのか遂に沸々と溜まっていた怒りが爆発した。

「毎回毎回バカバカバカって・・・・・・・!! アンタにバカって言われたくないわよッ! このバカシルバーッ!!」
「オイィィィィ!! 何だよバカシルバーってッ!? テメェ等バカ軍団に勝手に入隊させるんじゃねえよッ!!!!」
「『腰に木刀背中に真剣、サンダル履いてる白衣の男』ってどうみてもバカで変な奴にしか見えないわよッ! はいバカシルバー決定ッ!」
「人のファッションにケリつけてんじゃねえよこのエテ公風情がッ! 人間様に向かって口開ける身分だと思ってんのかコラッ!?」
「うるさいわね誰が猿よッ! アンタなんか腐れ天然パーマじゃないッ!」
「ああッ!? 誰の頭が腐った天然パーマだぁッ!! オメーに天然パーマの苦しみがわかんのかッ!? そろそろ頭かち割るぞモンキーガールッ!!」
「望む所よジゴロ天パッ!!! いいんちょの所に泣きついて逃げるまでボッコボコにシメてやるわよッ!! それとも長谷川さんの方に行くのかしらッ!? もしかしてここにいないエヴァちゃんの所ッ!?」
「何で俺がガキ共の所にエスケープしなきゃいけねぇんだよぉぉぉぉ!!!」
「いや待って下さいよ二人共ッ! 修学旅行が始まる前に教師と生徒で血を出さないで下さいッ!」
「そうですぜお二方ッ! せっかくの楽しい修学旅行なんスからここは仲良くやっていきましょうよッ!」

お互いのオデコがくっついてるかくっついてないのかぐらいの微妙な距離のまま銀八とアスナが目を血走らせながら相手を睨みつける。
明らかにヤバい雰囲気が漂っている事にずっと眺めるしかなかったネギとカモが慌てて二人を止めようとするがこの二人からして一筋縄では行きそうになさそうだ。
そこでネギは閃いて銀八の方に向かって口を開く

「銀さんッ! そういえばいいんちょさんが銀さんの事探してましたよッ! 早く行った方がいいんじゃないですかッ!?」
「大体テメェは前々から・・・・・・・! ん? あやかが何だって?」
「兄貴ナイス・・・・・・!!」
「さっき僕に聞いて来てたんですよ銀さんの事ッ! ほらあっちですよいいんちょさんッ!」

ネギが慌てて指さす方向にいいんちょこと雪広あやかの姿がある、銀八はそれをみて仕方なそうに舌打ちする

「しょうがねえな・・・・・てめぇ絶対後でシメるから覚えとけよ」
「それはこっちのセリフよ、精々背後に気を付けなさい」

アスナに向かって中指をつき立てた後、銀八はあやかの方へ去って行く。そんな彼にアスナも中指をつき立てているが少なくともここでケンカをする事は無いだろうとネギはホッと一安心した。

「よかった、アスナさんと銀さんってケンカばっかしそうになるから気を付けなきゃ・・・・・・」
「ネギの兄貴、さっきいいんちょとかいう姉ちゃんが銀の兄貴を呼んでたのって本当ですかい?」
「うん嘘は言ってないよ、銀さんがここにくるまでずっと5分毎にいいんちょさんと千雨さんに銀さんの事聞かれてたから」
「へ~・・・・・・・」

万事屋メンバーのあやかどころか千雨もネギにしつこく銀八の事を聞いていた事にカモは複雑な表情を浮かべる。

「アンタねえ余計な事すんじゃないわよ、私そろそろアイツの事マジで殴らないと気が済まないのよ、人の事散々バカにして・・・・・・」
「しょうがないじゃないですか、あそこで止めなかったら修学旅行に二人共行けなくなっちゃいますよ

こちらに向かってブツブツと文句を言って来るアスナにネギはアハハと笑う。

「でもまだ銀さんには勝てそうにないよな・・・・・・いやでも奥の手使えば・・・・・・」
「アンタ何やろうと考えてんのよ・・・・・・」
「『同僚の教師一人と同居人の生徒一人を“静かにさせる”方法』です」
「笑顔で拳鳴すの止めなさい拳をッ! 最近アンタが笑うと殺気がすんごいこっちに向かってくるのよッ!」

笑ったまま不気味な事を言い、なおかつ自分の拳をポキポキと鳴らすネギにアスナが激しく叱る。注意されたネギはしょうがなさそうに後頭部を掻きながら彼女に謝った。

「すみません今度からなるべく隠すようにします、殺気」
「いや元から殺気なんか出すなッ!」
「ああ・・・・・・昔の優しくて可愛い兄貴は今何処に・・・・・・」

自分の主人が数年足らずでこんなにも変わるのかと、ネギの肩に乗っかっているカモは一人心寂しく感じるのであった。


























一方銀八はというと既に集合している生徒達の方に歩いて行ってとある生徒を探しに行っていた。
しばらくしてその生徒がクラスに何かを伝えているのを見えたので銀八は彼女に近づく。

「おはようさん」
「あら銀さんッ! 遅いですわよッ!」
「いや~途中でバッファローマンと決闘申し込まれて大変だったわ、ハリケーンミキサーの連打は銀さん避けるの大変だった」
「悪魔超人にケンカ売られるってどんな事したんですか・・・・・」

銀八はヘラヘラ笑いながら遅刻した理由を言い訳してくるのであやかは呆れた顔をする。
だがそんな彼女を尻目に銀八は彼女の格好をジーっとチェックしていた

(今日は制服か・・・・・・)

昨日の“目のやり場に困る服装”ではなく彼女が制服を着ている事に銀八は少しホッとした。よくよく思えば学校行事に生徒の彼女が私服を着る機会はあまり無い

銀八がそんな事を考えているのも束の間に、後ろからもう一人の万事屋メンバーが彼に話しかけてきた

「遅刻ギリギリじゃねえか・・・・・・教師のクセに生徒より遅いってお前・・・・・・」
「お前も来たんだ、どうせ千雨の事だから来ねえと少し思ってたが結局来たんだな」
「来ちゃ悪いかよ、私から見ればお前が来る方が意外だよ」

仏頂面でやってきた千雨と銀八がお互い皮肉を交えながら会話しているとあやかが銀八に向かって彼女の事を話す。

「千雨さん私より来るの早かったんですよ」
「い、いやそれはッ!」
「え~お前はしゃぎ過ぎだろ、何? 意外とこういうイベントにテンション上がっちゃうタイプなの? いるよね~普段は地味で目立たないのに修学旅行だけ無駄に空回りする奴、大体そういう奴って送迎バスでゲロって自滅するんだよな」
「はしゃいでねえよッ! 起きたのが早かったから少し早めに来ただけだっつーのッ!! ていうか誰が吐くかッ!」

あやかにバラされて思わず顔を赤らめている時にニタニタ笑っている銀八に勝手な推測を言われたので慌てて叫んで否定する千雨。
実は本当のところ彼女が一番ここに早く来ていたのだが・・・・・・・

「ったく・・・・・ところで修学旅行は私達と一緒に行動できるのかよ」
「まあな、めんどくせえけど一緒に歩いて回るハメになりそうだな」
「アハハハ、良かったね千雨ちゃん」
「うおッ!」
「うわッ! いきなり出てくんな朝倉ッ!」
「俺等の心臓が早鐘の様に鳴ってるぞコラッ!」
「ハハハ、ごめんごめん」

喋っている途中にいきなり二人の間にニュッと神出鬼没に出てきた朝倉和美に銀八と千雨は驚きの声を上げるも、和美自身は全く悪気を感じてない様に謝る。

「いいんちょと千雨ちゃんも私達の班だから、銀さんも一緒に行動しようね」
「あ~そういえばお前等同じ班だったな、他に誰かいたっけ?」
「千鶴さんと夏美ちゃんだよ」

メンバー説明を和美から聞いて銀八は一瞬イヤな顔をする。夏美は別に問題ないがもう一人はある意味問題児だ。

「あいつか、俺苦手なんだよな~」
「千鶴さんの事ですか? あの人は勝手に行動すると思うのでご心配なく」
「私達がそのフリーダムさに巻き込まれたらどうするんだよ」
「まあその時はその時ですわ、別に悪い人じゃないんですから、ただの天然です」
「天然っつうレベルじゃ済まねえと思うけどな、あれ?」

同居人の千鶴にあやかが「どうしようもない」と銀八と千雨に肩をすくめて話していると、銀八が彼女を見てある事に気付いた

「お前髪型変えた?」
「あッ! き、気付いてくれたんですかッ!?」
「そういえばいいんちょポニーテールにしてたのか・・・・・・いいよな~どんな髪型でも合う女って・・・・・・」

よく見てみるとあやかの髪型がいつものロングヘアーではなくポニーテールに変わってる事に改めて銀八が気付き、千雨はボソッとつぶやく。
観察してくる彼に思わずあやかは髪をいじりながら目を逸らす

「ポニーテールねぇ・・・・・・」
「似合わないですか・・・・・・?」
「いんや、俺はどっちかつうと好みの髪型に入るから嫌いじゃねえよポニーテール」
「あ、ありがとうございますッ!」
「何でお礼?」

銀八に好感触を貰ったのであやかは顔を赤くしながら彼にお辞儀する。だが何故そんな事されなければいけないのかと銀八が首を傾げる
『乙女心』というのを彼の頭の中では理解できないようだ。















そんなこんなで銀八が万事屋メンバーと合流している頃、“もう一人”の異世界の住人は楽しそうにはしゃいでいる生徒達がいる中で一人だけ鬼のような形相をしている。
その人物の名は鬼の副長こと土方十四郎。この修学旅行にとある理由で学園長から一緒に行くよう任命されて生徒達と一緒に京都に行くハメになり、生徒達と同様駅の中で京都行きの新幹線が来るのを待っているのだが腰に刺す刀がガタガタ震えているほどイライラしていた。

「タ、タ、タバコ吸いてぇ~・・・・・・」
「駅の中でタバコなんて吸ったらまた水ぶっかけますよニコ中」
「誰がニコ中だ殺すぞクソガキ・・・・・・! つうかお前それ飲むの止めろ、見てると吐き気がすんだよ、何だよ『抹茶コーラ』って、てめぇどんな味覚してんだ・・・・・・!?」
「一日中マヨネーズ吸ってるあなたに私の味覚をとやかく言う資格はありません」

タバコが吸えずにニコチン切れで苛立っている土方の隣で、毒舌を吐きながら『抹茶コーラ』というなんとも恐ろしげなモノを普通に飲んでいるのは綾瀬夕映、土方の天敵だ。

「宮崎、ここら辺の近くに喫煙所はねえのか・・・・・・?」 
「でも土方さん、もう新幹線の時間が来ちゃうんですけど・・・・・・」

夕映の反対方向の隣に立っている土方が唯一名前で呼ぶ生徒、宮崎のどかが自分の腕時計を彼に見せる。それを見て土方は短く舌打ちする

「クソッタレもうそんな時間か・・・・・・しょうがねえ新幹線の中に喫煙席があるのを願うか・・・・・・」
「あの~そんなに辛いならもうタバコ止めたらどうですか?」
「んなこと出来るか、俺にとってタバコとマヨネーズは生きる為に必要なカテゴリーとして永久登録されている、この二つが欠けるとすれば俺はもう土方十四郎じゃねえ、別のモンになる」
「そうなんですか・・・・・・」

土方に言い分に納得できるかどうかはわからないがとりあえず苦笑して頷くのどか、だが彼女の友人である夕映は

「ニコ中とマヨ中が無くなったら少しはまともに・・・・・・ああすみませんなるわけないですね、元からの性格が人として既に終わってますし」
「どういう意味だコラ・・・・・・これ以上俺にナメた口聞いてるとたたっ斬るぞ・・・・・・!」
「あなたは二言目にはすぐ斬るって言いますね、そんな短気だと早死にしますよ」
「こんのクソガキィィィィィ!! 最近少しはまともになったかと思ってたがやっぱりテメェはここで殺すッ!!」
「や、止めて下さい土方さ~んッ!」

抹茶コーラを口に付けながらも淡々と毒を吐いてくる夕映に、遂にキレた土方が腰の刀を抜いて斬りかかろうとするのでのどかが間に入って必死に彼を止める。
土方達も銀八とアスナがケンカしていた時の様な光景になっていると、そんな騒動を目にして生徒が二人近づいて来た。

「朝っぱらから白夜叉といいアスナさんといい、土方さんまで何やってるんですか・・・・・・?」
「おう丁度いい時に来たッ! お前そこの胸糞悪いモン飲んでるガキを押えろッ! 真撰組副長として俺が粛清するッ!」
「お嬢様の前で生徒の一人の首を取ろうとしないで下さい」
「土方さん朝から元気やな~でも夕映はウチの大事な友達やから斬らんといてや」
「・・・・・・チッ!」

ジト目で話しかけてきた同居人の桜咲刹那に早速土方が夕映を取り押さえるよう命令するが拒否して、土方を見て呑気そうに注意する幼馴染の近衛木乃香。
彼女の声に土方は渋々刀を鞘に戻した、夕映やアスナみたいなタイプなら遠慮ないのだがのどかや木乃香みたいな女性には彼は弱い。

「すみませんお嬢様、こんなチンピラみたいな人で」
「ええよ賑やかな方が好きやし、“ずっと大人しいせっちゃんといるよりも”こうやってみんなで騒いでるの見てる方がウチ楽しいわ」
「・・・・・・あの、お嬢様の口から私の心を深くえぐる様な言葉が聞こえたのは気のせいでしょうか? なんか「お前といても全然つまんねえだよ」的な・・・・・・」
「気のせいやない?」
「そうですよね・・・・・・お嬢様に限ってそれは無・・・・・」
「うらぁぁぁぁ!!」
「ゴウフッ!!」
「ああッ! うっかり刹那さんの頭に飛び膝蹴りかましちゃったァァァァ!! ごめんねごめんねぇぇぇぇ!!!」

笑顔の木乃香の口からキツイ事言われたような気がしたがすぐにそれは無いだろと自分に言い聞かせるように刹那がつぶやいていたら、突然後頭部に何者かの攻撃を思いっきり受けてそのまま前に倒れ込む。
何者にやられたのか刹那が考えながら上半身だけ起こして顔だけ振り返るとそこにいたのはやはりというか見知った顔だった

「何するんですかハルナさん・・・・・・」
「あ~締め切り近くてムシャクシャしてたら、ちょうど蹴りたい頭があったからつい」

中学生でありながらR-18の同人誌(女性向き)を執筆する事と友達の初恋に命をかけている早乙女ハルナは刹那に蹴りを入れたせいでズレたメガネを不機嫌そうにクイッと持ち上げる。

「いやムシャクシャするからって人の頭に蹴りいれていいと思ってるんですか・・・・・・私だから良かったものの、もしお嬢様だったらただじゃすませんよ」
「木乃香を蹴るわけないでしょ、あんただから私も思いっきり蹴れるんだから」
「あ~そうですか、じゃあ私も蹴りいれていいですかハルナさんのツラに一発?」

シレっとした口調で返してくるハルナに刹那は頬を引きつらせながら立ちあがり脅しにかかると、ハルナは急に隣にいる木乃香に甘えるような口調に切り替わって抱きつく

「木乃香~刹那さんが私に蹴り入れるとか言っててコワ~イ」
「せっちゃんそんな事しちゃいけへんって、暴力で解決しちゃダメやで」
「エェェェェェ!? ハルナさんはOKで私はダメなんですかッ!?」
「人の恋路を邪魔するオジャマ虫に権限なんかありませ~ん」
「それ勝手にあなた達が誤解してるだけでしょうがッ!」

人の恋路というのは恐らく親友ののどかの事であり彼女が想いを寄せているのは土方、ハルナはこの二人をなんとか結ばせようとしているのだが、その前にこの刹那という四六中土方と一緒にいる少女のおかげで思いのほか進まないのだ。
和美同様他人の恋愛事が大好きなハルナにとって刹那は邪魔以外のに何者でもない

「二人っきりにさせたいのにこのデコ出た小娘のせいでいつものどかは土方さんに近寄れないのよ、あの人が食堂で一人マヨネーズ吸ってる時しか二人だけになれないのよ、もう何なの刹那さん? どんだけ邪魔したいの? 暇なの? 他にやる事無いの?」
「ってあなたにそこまで言われる筋合いありませんよッ! それに私からじゃなくて土方さんから私を誘ってくるんですッ! 時々私から土方さんの所に行きますけど・・・・・」
「誘われたらすぐホイホイついていくんだ尻の軽い小娘ですね~」
「お尻が軽い? どういう意味なんハルナ?」
「ま~あれだよ最近の若いモンの特徴的な奴ですぐ男に股を開いて・・・・・・」
「止めろォォォォ!! 汚れなき清楚なお嬢様にけがわらしい事教えるの止めろォォォォォ!! それ以上言うとたたっ斬るぞッ!」
 
不思議そうに聞いて来た木乃香にハルナが淡々と説明しようとする所に刹那が慌てて止めに入る。

刹那がハルナの胸倉を掴んで土方の様に怒鳴っていると、生徒達全員にある教師の声が響き渡ってきた

「A組さっさと集合しろォォォォォ!! 私の命令を聞けんと全員叩きのめすぞッ! つかもう叩きのめすぞッ! ふうんッ!」
「おふッ!」
「まき絵が鬼の新田にいきなり殴られたッ!」

怒り狂ったようにスピーカーで生徒のほかに一般人がいるにも関わらず怒鳴り散らす教師は鬼の新田こと新田先生、銀八と仲の良い教師の一人で学園広域生活指導員でもある。
彼が理不尽に偶然近くにいた生徒の一人の頭をグーで殴っていると、そんな教師に同じく修学旅行を共にする教師が近づいてくる、銀八が何かと気にしてる女性教師の源しずな先生だ。

「ウフフ、新田先生、今日はいつになく機嫌が悪いですね、学園長がいないのに」
「うむ、修学旅行とかいう反吐が出るほどどうでもいいイベントに無理矢理駆り出された上に、私が楽しみにしていたミニ四駆の全国大会に行けなくなってしまったせいでな」
「いい年してミニ四駆なんかやってるんですか新田先生?」
「私のサイクロンマグナムは恐らく世界一速い」
「フフ、サイクロンでもシンクロンでもどっちでもいいですから教師の仕事はちゃんとやって下さいね」

しずな先生が笑いながらサラリと新田先生を注意していると二人に向かって優しそうな顔をしたスーツ姿の青年が話しかけに来た

「新田先生、A組以外のクラスは全員新幹線へと移動したようです」
「誰だ君は?」
「いや瀬流彦です・・・・・・あなた達と同じ麻帆良学園の教師です・・・・・・」
「そんな人ウチの学園にいたかしら?」
「いますよッ! 確かに影薄いですけどずっといましたからッ!」

まだキャリアの浅い瀬流彦を見て新田先生としずな先生がイマイチ思い出せないと眺めていると生徒達と話していたネギと銀八が教師陣の所に戻ってきた。

「A組の生徒はみんな集まってます、これから移動して・・・・・その人誰です?」
「あの~しずな先生? 京都で俺と一緒にガキ共置いて大人の場所にしゃれこみ・・・・・・誰だお前?」
「麻帆良の教師の瀬流彦ですッ! てかネギ君まで覚えてないのッ!?」
「ん~すみません記憶に無いですねセルピコ先生」
「瀬流彦ッ!」
「まあ完全にどう見てもモブキャラだから覚えなくていいだろ」
「殴って良いですか坂田先生・・・・・・」

覚える気が全く無いネギと銀八に瀬流彦はジト目で視線を送るが、銀八はそんな彼をほっといてしずな先生に近づいて行く。

「しずな先生、ガキ共なんか適当にどっかに捨てて俺と京都でランデブーしませんか?」
「ランデブー? もしかしてデートのお誘いですか?」

しずな先生の尋ねに銀八はヘラヘラ笑いながら下心の見える表情を浮かべる銀八。
彼にとって修学旅行で生徒達と絡むよりこっちの方がずっと嬉しいのだ

「あ~わかっちゃいました? やっぱ話が分かりますねしずな先生は、俺と一緒に京都の街を練り歩いて最後は俺とフュージョンとかしません?」
「フフフ、ダメですよ坂田先生、先生には三人も女の人がいるんですから」
「三人? あ~万事屋のバカトリオはそういうのじゃないんで、小さい方は留守番だし、後のメガネと世間知らずのお嬢様はしずな先生が邪魔だと思うなら清水寺とか華厳の滝にでも突き落とすんで大丈夫ですよアハハハ」
「坂田先生」
「いや待てよ、あいつ等を新幹線に乗せずにここに置いてくのも手だな・・・・・・それで行きましょうかしずな先生」
「後ろで“その二人”が怖い顔でこっち見てますよ」
「え?」

調子に乗ってきて自分の部下二人をどうしようかと笑いながら言っている銀八にしずな先生が彼の後ろの方に指差して笑いかける。
それと共に銀八の後ろから禍々しい殺気を二人分感じ、表情が一変する

「後ろに振り返ったらどうです? すんごい睨んでますよ先生の事?」
「・・・・・・ハハ、ハハハハ・・・・・・・」

銀八は振り返る事が出来ずに顔から焦ったように大量に汗を流して小刻みに震えるだけだった。

間もなくしてその彼に自業自得の悲劇が訪れたのは言うまでもない
























































数分後、三年A組は無事に新幹線の中に入る事が出来た。

「いやぁなんとかクラスのみんな新幹線に全員乗れましたね」
「そうだね、やっぱみんな一緒が一番いいよね」
「これから京都にみんなで行くの楽しみですね」
「そうだね、大勢で一緒に色んな所回る方が楽しいね」
「ところで銀さん・・・・・・大丈夫ですか?」
「・・・・・・全然大丈夫じゃないですよね~・・・・・・・」

三人分の席の中の窓際に座ってはしゃいでいたネギが隣で腕組んで座っている銀八を心配そうに尋ねる。よく見ると顔面には引っかき傷や殴られた跡が数か所見受けられる、服もボロボロで髪の毛もバッサバサだ。

「・・・・・・いいんちょさんとか千雨さん凄かったですね」
「あいつ等だけじゃないよな? ドサクサに紛れて関係ねえ奴も何人かいたよな? 俺ボコボコにされながらもちょっと見えてたよ」
「アスナさんと土方さんと刹那さん、あと夕映さんですね何か銀さん殴ってる時四人とも楽しそうでした、あとまき絵さんもクラスのみんなに押されて銀さんに一発決めようと思ったんですけど条件反射なのか銀さん思いっきりカウンター決めてました、顔面に」
「バカレンジャー隊員とその候補共か・・・・・・京都で覚えてろよあいつ等・・・・・・」

心身共にボロボロになりながら銀八は怨むようにブツブツとつぶやいている。
数分前にしずな先生を口説いているとあやかと千雨に現場目撃され、その場で天誅、そのリンチに紛れ込んで仲の悪い土方達と言いたい放題されていたアスナが乱入してきたらしい、ついでにまき絵も来たらしいが銀八はその時だけは避けて顔面カウンターを決めた、彼自身は記憶に無いが

「ったくよ、何で俺がしずな先生口説いちゃいけねえんだよ、何も悪くねえじゃん、ガキ共のアイツ等には関係ないじゃん、恋愛とかした事の無いガキ共のくせに人の恋路を・・・・・・ぶふッ!」

銀八がネギに文句を言おうとしたその時座っていた椅子の後ろにドンッ!と蹴られた感じがし、その衝撃で前のりにぶっ飛び前方の壁に顔面を強打する。

「アテテテテ・・・・・・」
「後ろの席いいんちょさん達だったんですね・・・・・・」
「あの金髪の姉ちゃんが銀の兄貴に暴力的になるなんて珍しいッスね」
「俺がああいう事するといつも“ああ”なんだよ・・・・・・時間を置いて冷ますのが一番だ」
「フン・・・・・」
「確かに今は近寄りがたいですね・・・・・・」

ネギがそっと後ろを座席の間から覗いてみると、やはり銀八の座席に蹴りを叩きこんだのは後ろにいた不機嫌そうに鼻を鳴らすあやかだった。千雨も彼女の隣の窓際の方に座り、耳にイヤホンを付けて音楽を聴きながらそっぽを向いている。あやかの左隣に座っている和美も苦笑を浮かべるしかないようだ

「駄目ッスよ銀の兄貴、いくらあんたハーレム主人公だからって、ヒロインじゃない人に手え出そうとしたらボコボコにされるって何処の世界でも常識ッスよ」
「うるせえよ誰がハーレムだコラ、“悟空”だからって他人にとやかく言う資格なんてあると思ってのかナマモノ?」
「あまり知られてないネタでついてくるんスね・・・・・・」

ネギの肩に乗っかってるカモに言われても銀八はしかめっ面をしながら腕を組んで適当に返すだけだ。

「これであのチビがいたらもっとめんどくせえ事になってたな・・・・・・良かったわあいつがいなくて」
「ほう、エヴァがいたらどんな目に合っていたのかな先生は? 凄く興味深いな」
「・・・・・・」

何時の間にか土方が座る筈の席に座っているストーカー二号(一号は江戸にいる)の龍宮真名に一瞬銀八の動きが止まり、そして

「お前は俺の半径3M以内に入んなッ!!」
「どぅふッ!!」
「銀さぁぁぁぁんッ! さっきまき絵さんをノシたばかりなんだからこれ以上生徒を傷付けないでッ!」

龍宮の後頭部を鷲掴みにして思いっきり顔面を前方の壁に叩きつける銀八。容赦をする気は全く無い
だが顔面から叩きつけられたおかげで鼻血をポタポタと流すもそれを手で隠しながら立ち上がり龍宮は座っている銀八を見下ろしながらフフっと変な笑みを浮かべる

「さすがは先生・・・・・・可愛い自分の生徒にも一切ためらいもせずに壁に顔面を叩きつけるとはさすがだ」
「オメーはただのストーカーだろ、それ以上でもそれ以下でも無い立派なストーカーだろ、マジで警察呼ぶぞ、ていうかゴルゴ呼ぶぞ」
「だが私は自らの体で先生の攻撃を受けてその力の源を探っているんだよ・・・・・・さあもっと殴ってみろ先生ッ! 私はなんの迷いもなくそれを全て受けようッ!」
「おいコイツどんどん気持ち悪くなってねえかッ!? しばらく出ない内にレベルアップしてるよ変態度がッ! 誰かこの子を助けてあげてッ! このまま進むとこの子間違いなくヤバいからッ! 今でも十分ヤバいけどッ!」
「・・・・・・もう手遅れだと思います」

両手を開いて殴ってみろと大声で叫んでくる龍宮に銀八がツッコむ。傍にいるネギはどうする事も出来ないだろと頭を手でおさえるだけだ。
完全にもう『行ってはいけない世界』に足を突っ込んでる

「喫煙室から帰ってみたら何やってんだテメェ等」
「土方く~んッ! 君の所の同居人が変態クラスにランクインしちゃってるからどうにかしてッ! お前上司も部下も変態なんだから変態の相手慣れてるだろッ!」
「人を変態専用のプロフェッショナルにするんじゃねえッ! チッ・・・・・・おい色黒そこにいると俺が座れねえ、さっさと退け」
「まだ先生に木刀で殴られるという経験をしていないんだが」
「・・・・・・とりあえず万事屋とそういうプレイするのは後にしろ、XXX版にでも行って思う存分コイツとやってくれ」

何考えてるんだコイツ?と土方がめんどくさそうにおっ払おうとすると龍宮が別の事に興味を示した

「XXX版? そこなら何やっても構わないのか? 先生に○○○されるとか×××とか、はたまた△△△、□□□、○○○○○○○とかも」
「おいコイツと班の一緒の奴誰だッ! 連れて帰ってリュックの中にでもブチ込めッ! そして二度と喋らせんなッ!」

立ちあがって龍宮の襟首を掴み生徒達全員に響き渡るように叫ぶ銀八。
しばらくして龍宮と同じ班の和泉亜子がやってきて彼女を連れて帰った。

「ったく・・・・・・まともなのがいやしねえよここのガキ共は、つうかお前デコ那とデコ助と一緒に俺の事蹴ってただろ、見てんだぞコラ」
「天罰だ、それよりテメェと同じ意見になるのはムカつくが同感だな、特に抹茶コーラとかいう訳のわからんモンを飲むような奴が一番異常だ、あれは一生結婚できないタイプだ」
「そう言わないで下さいよ・・・・・・・皆さん元気で楽しい生徒さんじゃないですか?」
「その一言で済む問題じゃねえだろここの連中は」

席に戻った銀八と土方が同意見で頷いて、ネギが生徒のフォローするが銀八がすぐにそれを潰す。彼の故郷の江戸のキャラの濃い連中と何ら変わりない生徒達だ。銀八にとってはこれはかなりめんどくさい

「京都に着くまで何も問題起こらなきゃいいんだけどな・・・・・・」
「あの~ネギ先生・・・・・・・」
「あれ刹那さんとザジさんどうしたんですか?」

銀八が不安そうにつぶやいていると三人の所に刹那とその後ろに小鳥を肩やら頭やらに立たせている不思議な生徒ザジ・レイニーディがやってきた。
それを見たネギはすぐに反応して、同時に土方も刹那の方に顔を向ける。

「何しに来たんだお前、さっさと席に戻れ」
「土方さんの席ってここなんですか、それはさておきネギ先生ちょっと問題が・・・・・・」
「何ですか?」
「実はエヴァンジェリンと茶々丸さんが修学旅行に来てないので6班は私達二人だけに・・・・・・」
「あ~そういえばエヴァさんは来れないんですよね、困ったな・・・・・・」
「どうするんスか兄貴?」

どうしたものかとネギが考えていると銀八がおもむろに刹那の後ろにいるザジに話しかける。

「ザジよぉ、お前はこいつと二人だけでいいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「死ぬほどイヤか、ネギ、コイツ等バラして別の班に入れてやろうぜ、こいつが可哀想だ」
「あ~その手がありましたね、じゃあそうしましょうか」
「いやちょっと待て白夜叉ッ! 本当にこの人そんな事言ったのかッ!?」
「言ってるね、ていうか現在進行形でお前の悪口言ってるよ、へ~そんなにイヤなのかお前」
「うえええええッ!! こんな無表情でどんな事をッ!?」

ザジの言葉は聞けるのは何故か銀八とあやかのみ、他の生徒達やネギにはわからないので大体この二人が通訳をしている。一体自分の事をどう思っているのかと刹那がザジをジト目で見つめていると、銀八の提案を貰ったネギが彼女達に報告する

「じゃあ刹那さんはアスナさん達5班の所に行って下さい、木乃香さんも嬉しい筈なので」
「お嬢様の所の班ですね、わかりました」
「お前と仲の悪いメガネもいる所だな」
「それは元々土方さんのせいなんですけどね・・・・・・」

土方が言ったのはもちろんハルナの事、根本の原因は彼だろうと刹那は小さくつぶやいた後、5班がいる席に向かって行った。
そしてもう一人ザジが残っているのだが

「じゃあザジさんは何処の班がいいですか?」
「・・・・・・・・・・」
「銀さん何言ってるか聞こえますか・・・・・・?」
「あ~はいはい、それでいいんだな、じゃあ俺が検討してやるよ」
「毎度思うんですけど何で銀さんザジさんの声聞こえるんだろ・・・・・・・」
「唇も動かして無いッスよねあの娘っ子・・・・・・」

普通の人から見ればただ口を開いているだけで何も聞こえないのに何故聞こえるのかとネギとカモが疑問に思っていると、銀八は立ちあがって彼女の手を引っ張って後ろの席に連れて行く。そこにいるのは無論、ヤンジャン(ヤングジャンプ)読んでいる和美と音楽を聞いてこっちを見ずに窓をボーっと眺めている千雨、そしてご機嫌ななめ一直線のあやかが真ん中に座って腕を組みこっちを細い目で睨んでる。

「・・・・・・銀さん何かようですか?」
「あのさ、こいつもお前等と同じ班に入れてくんねえかな? 一人ぼっちで困ってんだよこいつも、なあ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ほらな」
「全然構いませんわザジさん」
「・・・・・・お前等テレパシーかなんかで交信でもしてんのか?」

ザジが何を言ったのかはわからないがあやかは彼女をニコッと笑って受け入れているのに、彼女の隣で音楽を聴いていた千雨がイヤホンを方耳だけに付けたままツッコミを入れた。

かくして生徒達の配置が無事に終わった頃、新幹線の発車する音が聞こえてきた

「やっと京都へ行けるんですね僕等、楽しみだな~」
「おい、京都の名物とマヨネーズが合うのかまだわかんねえけど多分イケるよな?」
「いやわかりませんから・・・・・・」
「何処へでも勝手に行けよマヨネーズ野郎」

はしゃいでいるネギと席に戻ってきた銀八に土方は懐からマヨネーズを取り出して質問してくるが彼等は知らないし興味も無い。
至高のマヨラーの土方にとってマヨネーズに合わない食材はこの世に存在せず、オールマイティの調味料だというのが彼の考えだ。当然銀八とネギには理解できない事である。
そんな事は置いといて銀八はふと京都での問題ごとを思い出した

「そういえば向こうに行ったらお前が持ってるモンを奪いに来る連中がいるかもしれねえんだよな」
「はい学園長は妨害してくる輩が京都に潜んでいる可能性があると言ってました、何としても関西呪術協会の長に親書を渡さなきゃいけません」
「京都では気が抜けねえな・・・・・・」

大切な親書をネギが懐から見せて銀八はそれを見ながら顎に手を当て考えていると背後から気配を感じる

「銀さん・・・・・・」
「・・・・・・お前まだ怒ってんのか? 清水寺に突き落とすなんて冗談に決まってんだろ」
「修学旅行では私達から離れないように行動して下さいね、そうしないと許しませんわよ・・・・・・」
「いやちょっとネギと寄る所があんだけど?」
「じゃあ私達も連れてって下さい」
「お前等関係ねえからついて来なくていいって・・・・・・・」
「銀さん・・・・・・」
「あ~もうわかったから機嫌治せ、気分が滅入る、よくわかんねえけど俺が悪かったよ」

後ろの席から話しかけてくる機嫌の悪いあやかに銀八はだるそうに振り返らずに会話する。
しばらくして後ろの方から小さな笑い声が

「フフ、じゃあ修学旅行を楽しみましょうね」
「そうだな・・・・・・」

銀八はあやかの機嫌が治ったのかわからないが、笑っているので大丈夫だろうとひと安心して座席にもたれかかる。
間もなくして新幹線が動き始めた

「やっと動いたな」
「京都では色んな所回りましょうね銀さん、そして・・・・・・」

あやかがそこで口ごもるので銀八は思わず後ろに振り返って隙間から顔をのぞかせる

「そして?」
「いや、何でもありません・・・・・・すぐに分かると思いますわ・・・・・・」
「?」

あやかの声が若干トーンが下がった後に顔をうつむかせるので銀八は首を傾げていると、新幹線がスピードに乗り始め、窓から見える景色がどんどん速くなる。
窓際でそれを眺めていたネギは静かに決意を表す

「もし関西呪術協会の連中が襲ってきても、あの人の元で教わった僕は絶対に負けられない、いや負けるわけにはいかないんだ僕はもっと強くならなきゃ・・・・・・」

誰にも聞こえないようにつぶやいた時のネギの目は


師匠の目と同じ色をしていた







遂に舞台の幕が開かれる





































一方その頃、銀八達がいないおかげで静かになっている麻帆良学園では

「今頃楓さんや風香ちゃんや史伽ちゃんも新幹線に乗ってんだろうな~、ああちりとり使う?」
「ありがとうございます、山崎さんは銀時様や土方さんとご一緒に京都に行こうとしなかったのですか?」

学園内にある大きな広場で地味であまり目立つ印象が無い真撰組の密偵を務める山崎と茶々丸が一緒に掃除をしている。何とも意外性な組み合わせだ

「いや俺は学園長に何も言われなかったからね、何か色々と揉め事が起こりそうとか言ってたけど、戦力だったら旦那や副長だけで十分だし生徒の中にも何かやたらと強い連中もいるし、楓さんとか」
「一緒に行けなくて残念でしたか?」
「ハハハハ、逆に嬉しいぐらいだよしばらく一人で羽を伸ばせるしね、同居人がいると何かと気を使わないといけないから、家事とかもしなくていいし」

茶々丸の質問に笑い飛ばしながらちりとりで彼女が箒ではらっているゴミや落ち葉をすくう山崎、色々と彼も苦労しているのだ

「そういえば何で君は京都行かなかったの? 確か旦那とネギ君の所の生徒だよね?」
「私はマスターと共にいなければならないので」
「マスター? ああ旦那によくくっ付いてる金髪の小さい女の子か、確か旦那をここに魔法使って呼んだ子だっけ?」
「はい」

ゴミで一杯になったちりとりの中をを一回ゴミ箱に入れた後、もう一度しゃがんでゴミを茶々丸にはらってもらう山崎。銀時の事情は結構聞いているので大体の彼の人間関係は知っている

「旦那もまさかこんな所に来るハメになるとは思わなかっただろうな、まあ周りに一杯女の子囲ってるから旦那にとってはイイ事だったのかもね」
「山崎さんも楓さん達に囲まれてますよね?」
「ああ俺の場合は旦那とは全然違うから、あの三人は完璧便利屋としてか見てないからね俺の事、副長も時々コキ使ってくるし」

茶々丸に向かって愚痴を吐きながらため息も吐く山崎。再びゴミが溜まったので立ち上がってゴミ箱に捨てに行く。

「そういえば副長と仲の良い女の子がいたよなぁ前髪で顔があんまり見えない子、もしかすると俺の姐さんになる可能性があるんだよな・・・・・・どうしよう俺、年下に向かって姐さんって言わなきゃいけなくなんのかな・・・・・・」
「俺は歓迎だけどなぁあのマヨネーズバカの女に俺がキッチリと真撰組の隊士の女房としての心得を教えたいしねぇ」
「・・・・・・え?」

ちりとりのゴミを捨てていると江戸にいた時と同じあの声が・・・・・・

目の前には自分と同じ真撰組の服装と腰に刀を差すあの男がチューベットくわえて立っていた

「お、お、お、おッ!!」
「久しぶりだなぁ山崎、何お前女と一緒に掃除なんかしてんだ、密偵の仕事しろよ仕事」
「沖田隊長ォォォォォォ!!!」

山崎は大声を上げて後ろに跳び上がる。何せ目の前の男は山崎がよく知っている、今は江戸にいる筈の沖田総悟、別名サディスティック星の王子

「な、何でこの世界にいるんすかァァァァ!? あッ! もしかして俺を助けにっ!?」

山崎はもしやと近藤が来た時と同じ淡い期待を持ったが、沖田は吸い終わって空になったチューベットをポイッと茶々丸の前に捨てて彼の方へ顔を向ける

「なわけねえだろ俺はとっつぁんに頼まれた仕事をしに来ただけだ、ここに来たのも10分ぐらい前だな、おい女、俺の捨てたチューベットさっさとゴミ箱に拾って捨てろよ、口で拾え口で」
「口?」
「中学生の女の子にでさえその態度ッ!? いいよ茶々丸さんッ! こんな人の言葉聞いちゃいけないからッ!」

茶々丸に向かって目を細めて命令する沖田に山崎はツッコんだ後、颯爽と沖田が捨てたゴミを拾ってゴミ箱にスローイン、中学生の女の子にも一切の手加減はしない、むしろ上がっているドS行為、それが沖田総悟だ

「ハァ~・・・・・・それでとっつぁんに頼まれた仕事って何ですか・・・・・・?」
「あ? とっくに終わらせてるつーの、誰かと違って俺は仕事速えからな」
「え、そんな簡単な事だったんですか? ここに来たの10分ぐらいしか経ってないんですよね?」
「俺がここに来るだけでミッションコンプリートなんだよ、ちょっとしたテスト実験でね」
「へ~そりゃあ一体どんな実験を・・・・・・ぶふッ!」
「んな事はどうでもいいんだよ、おい山崎、あいつ何処だ? 俺はそいつに会うのが本当の目的なんだよ・・・・・・!!」

山崎が質問を言い終える前に沖田の手が彼の顔に伸び、両頬を鷲掴みした後すぐに話して血走った目で沖田が山崎に質問する。

「山崎ィ・・・・・・あいつ何処だ・・・・・・?」
「ふ、ふ、副長の事ですかッ!? あの人ならここの学校の生徒達と訳ありで修学旅行に行ってますッ!」
「土方のアホなんかどうでもいいんだよ、ガキはどうしたガキは?」
「ガ、ガキ?」

探してるのが土方ではなく子供だと知って山崎は汗をかきながら首を傾げる。
やがて沖田は顔をニンマリとして答えた

「土方に惚れてるガキ何処にいるかって聞いてんだよコノヤロー・・・・・・!!」
(ヒエェェェェェ!! 完璧にドSの目になってるよこの人ォォォォォ!!)

二枚目の腹黒い笑みは尋常じゃない怖さを持っている、山崎はそんな沖田を見て身を持って知った。彼が心の中で悲鳴を上げていると、それを見ていた茶々丸が口を挟んできた

「宮崎のどかさんの事ですか?」
「ああ?」
「だ、駄目ですよ茶々丸さんッ! この人に名前を教えちゃッ! 絶対この人あの子を獲物に・・・・・・あごッ!」

山崎が慌てて茶々丸を止めようとする前に沖田のアッパーが彼の顎に直撃、そのまま後ろに倒れる

「おい、さっき名前言った奴、何処にいんだ? 教えねえと殺すぞ」
「土方さんと同じ修学旅行に言った筈です、この時刻だと京都行きの新幹線に乗っている辺りです」
「なるほどねぇ2人で仲良く旅行かなんか行ってんのか・・・・・・・・おい山崎」
「は、はい・・・・・・?」 

素直に教える茶々丸の話を聞いて沖田は地面に倒れている山崎を呼ぶ。
山崎は殴られた顎をおさえながらかろうじて立つ、すると沖田がまたあの邪悪な笑みで

「追うぞ・・・・・・!」
「ま、ま、まさか隊長・・・・・・?」
「そうだ・・・・・京都へ行こう」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「まずはアイツ等を追う為の“足”が必要だな、行くぞ山崎、京都で可愛い生徒が俺を待ってるぜ」
「駄目ですよ隊長ッ! アンタが行ったら色々とヤバい事が目に見えてますってッ! ぐッ!」

計画を練りながら何処かへ歩きだす沖田に山崎が必死に彼の京都行きを止めるが、彼に今度は頭を鷲掴みされる

「おい山崎・・・・・・さっきからお前何で俺の事『隊長』って呼んでんだ・・・・・?」
「あ、あががが・・・・・・」
「今度から俺の事は『副長』と呼ばねえと殺すぞ・・・・・・!」
「へ? 何で・・・・・・アダダダダッ! すんませんでした副長殿ォォォォォ!! 副長の沖田様お許し下さいアダダダダダッ!」

鷲掴みにしている手に力をこめてくる沖田、必死に謝ってなんとか離して貰った瞬間、山崎はその場に倒れ込む。

「わかりゃあいいんだよ、ついでに今度から土方を呼ぶ時も「チンカス」にしろ、アイツはもう江戸では副長でもなんでもねえ、ただのチンカスだ覚えとけ」
「イ、 イエッサー・・・・・・」

倒れた山崎に土方の呼び名を変更させてそのまま倒れた彼の後ろ襟を掴んで引っ張って行く沖田。
山崎は意識がもうろうする中、視界に入った茶々丸に目をやる

「い、逝ってきま~す・・・・・・」
「お気を付けて」

茶々丸に最後に挨拶を交わしてしてそのまま引きずられていく
邪悪に笑う沖田によって


「どんなガキ共がいるか楽しみだぜ・・・・・・」





























「ヒッ!」
「どうしたんですかのどか?」
「いや・・・・・・何かわかんないけど悪寒が・・・・・・」
「?」
「ハッ!」
「どしたの柿崎?」
「今私の中の神が舞い降りてきた感覚がッ!」
「先生、柿崎の頭のネジが飛びました~」
「よ~し誰かそいつのネジ見つけてやれ~床に落ちてるかもしんねえぞ~」

ついにサドスティック星の王子が異世界に降臨したのだ















[7093] 第三十六訓 最近の中学生は修学旅行だからってはしゃぎ過ぎなんだよッ!
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/12/11 15:55
新幹線が京都へ向かい始めて数時間経っており、もういつ着いてもおかしくない頃、銀八はネギと一緒に生徒達と穏やかな遊びを過ごしていた

「攻撃力3000の『地縛神Ccapac Apu』と攻撃力3500の『セイヴァー・スター・ドラゴン』でまき絵に攻撃~」
「先生カードゲームでも私に容赦無いッ!」
「おおッ! まき絵のライフが6600から一気に100になったッ!」
「まき絵が鉄壁入ったッ!」

A組の生徒達がいる車両で銀八とネギは生徒達の数人とカードゲームをして京都までの時間潰しを行っていた。
銀八が道側、ネギが窓側に座って向こう側には今大ダメージを受けて双子の風香と史伽が後ろの席で見守っている中泣きそうなまき絵と、チューペットをくわえながら黙々とゲームをしている夕映がいた。
そんな二人の方をどちらを攻撃するか迷った後、ネギは生徒の一人を指さして攻撃宣言する

「攻撃力5000の『オシリスの天空竜』でまき絵さんに攻撃します」
「ひどッ! 残りライフ100に5000ダメージッ!?」
「すみません容赦なく責め立てた方がいいのかなって、まき絵さん相手にはそうしなきゃなって」
「何で私に容赦なく責めなきゃいけない義務があんのッ!?」
「ていうか夕映さんの場はカエルモンスターで一杯なので、がら空きのまき絵さんを先に潰した方がいいでしょ普通?」
「でも~5000の神のカードで100の相手を消すって・・・・・・」

完膚無きまでにオーバーキルされたまき絵がネギに向かって訴えるも代わりに銀八が鼻を小指でほじりながらめんどくさそうに口を開く

「ああもういいから負け犬は黙っとけ、お前は相方の敗北を見届けて懐から万札出す準備しろよな」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!? 確か負けたら100円だったよッ!? 何で100倍に跳ね上がってんのッ!?」
「お前でも計算できるんだな、まあなんつうかアレだ? やっぱり勝負というのは何事もハードにする方が面白いし人生の為にもなるんだよ、という事で今から負けたチームは相手に諭吉を払うってルールで」
「酷いよッ! 自分達が優勢だと知ったとたん急にルールを変更したッ!」

中学生相手に万札を奪おうとする汚い大人代表の銀八にまき絵が悲痛の叫びをするが銀八は両手を後頭部に回してまったく聞く耳持たない

「銀さんスペシャルルールです」
「鬼ッ! 悪魔ッ!」
「一文無しッ!」
「女たらしッ!」
「おいなんつったんだ双子コラ、特に後の方」

まき絵の叫びに合わせて双子の風香と史伽も悪ノリする、銀八はそちらの方を睨みつけて黙らせる

「夕映ッ! どうしよう私修学旅行前に諭吉を手放したくないよッ!」
「落ち着くです役立たず」
「こっちも酷ッ!」

こっちを見ずにチューベットを咥えながら自分を突き飛ばす夕映にまき絵は深くうなだれた

「ほらテメェのターンださっさとカード引きやがれデコ、どうせカエルばっか出してくるんだろ? カエルだろ? カエルなんだろ? さっきからカエルしか出してないもんなお前、デッキの中カエルしかいねえんだろ? つうかもうお前それデッキじゃなくてカエルじゃね?」
「うるさい人です、まあ口を早く動かすことぐらいが取り柄ですからしょうがないですね」
「黙っとけカエル娘、早くカードをドローしてサレンダー(降参)しろ、そして諭吉をよこせバカ」

銀八のマシンガントークにだるそうに受け答えする夕映に更に銀八は追撃を止めない。
口喧嘩では夕映と互角に渡り合えるのはこの男だけだ。
そんな銀八に隣に座っているネギが恐る恐る彼に顔を向ける。

「銀さん、教師が生徒相手に諭吉を奪うのはちょっと・・・・・」
「わかった、じゃあお前等ネギはいいから負けたら俺の方に一万をよこせ合計で二万だ」
「・・・・・・教師としての資格0ですね」
「・・・・・・ヤクザとしては資格十分ッスね」

ネギと彼の胸ポケットから顔を出しているカモがボソッと生徒達に向かって金を請求する銀八を見ながらつぶやいてると、夕映がデッキからカードを引いて手札に加える。

「さっさとターン終了して俺の地縛神に殴り殺されろよ、言っとくけどこいつは直接攻撃が出来るからてめぇの場に出てるカエル軍団は全部無意味なんだぜ」
「いえもう“揃いましたから”終わりです」
「へ?」
「エクゾディアパーツ5枚揃いました、これで私達の勝ちです」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」

銀八が余裕気にカードの解説をしていると夕映が自分の手札を公開したので銀八がそれを驚いた表情でマジマジと見る。隣で一緒に見たネギが彼に向かって解説する

「あ~これ僕等負けましたね、手札に5枚揃えば無条件で勝てる『エクゾディア』パーツを揃えてたとは」
「マジかよ・・・・・・何だよその小汚い戦法・・・・・・」
「小汚くても勝てばいいんです、それを一番わかってるのはあなたでしょう?」

ネギの解説を聞いてるかどうかはわからないがその場にがっくりとさっきのまき絵のようにうなだれる銀八。落ち込んでいる彼を置いて夕映のおかげで勝利できたまき絵と、そして何故か双子達も一緒に喜んでいる

「やったぁぁぁぁぁ!! 夕映が勝ったァァァァァ!!」
「あれッ!? てことは先生達が負けたからネギ先生と銀八先生は夕映とまき絵に諭吉を上げなきゃいけないんじゃないのッ!?」
「銀さんスペシャルルールはそうだったよ~」
「えッ! 僕もですかッ!?」

ツリ目の風香とお団子頭の史伽の言葉にネギが思わず身構える。
だが夕映は首を横に振って口を開く。

「ネギ先生は例え自分が勝っても生徒から貰わないと言っていたので奪いません、ここは生徒から金を巻き上げようとした堕落した教師から貰うのがセオリーです」

夕映の説明を聞いてネギはホッとしたのも束の間、金を請求させられるべきが誰だか理解する

「え~てことは・・・・・」
「決まってるです」
「銀八先生ッ! 私達に諭吉・・・・・・っていないしッ!!」
「逃げましたね」
「早ッ! 何の気配も無く煙の様に消えたッ!」
「逃げ足めっちゃ早いッスね~・・・・・・」

まき絵が請求する前に忽然と姿を消した銀八に一同呆れたようにつぶやく。
勝てそうになったらつけ上がり、負けたら何の恥じらいもなく逃げる。そんな銀八の駄目っぷりに残されたメンバーはため息を付くしかなかった

「まあ別に一万円なんて大金貰うつもりは無かったんですけどね」
「え~私貰うつもりだったのに、今まで散々酷い目に会ってるんだからそれぐらい欲しかったな~・・・・・・え?」
「どうしたんですかまき絵? 弁当の中に嫌いな物でもあったんですか?」
「・・・・・・・・・・・」

まき絵はそんな事を言いながら消えた銀八の事を恨めしそうに思った後、さっき女性の店員から貰った弁当箱を食べようと開ける、すると彼女の表情が不思議な物を見る目に変わった。
不審に思った夕映が彼女の弁当箱を覗きこむと・・・・・・

「ゲコゲコ」
「・・・・・・・カエルですね」

緑色のファンシーなカエルが一匹入っていた

「店員さんはこれを食えと・・・・・・」
「ゲコ」
「ぎゃあぁぁぁぁ!! 顔に向かって跳んできたァァァァ!! 間一髪で回避ッ!」

呆然と見ていたらふいにこちらに向かって跳んできたカエルにまき絵はさっと頭をのけぞらして緊急回避。
彼女がそんな事をしていると周りの生徒達も悲鳴を上げている。
カエルは一匹では無かったのだ

「きゃぁぁぁぁぁ!! カエルが水筒からゾロゾロで出てきたッ!」
「カエルが私のバッグの中から大量に出てきたァァァァァ!!!」
「きっとスタンド攻撃でござる、この車両の中にジョルノかウェザーが」
「マジでッ!? 私サイン貰おうッ!」
「アスナおらへんって・・・・・・」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!! ちづ姉ッ! 弁当箱でカエルが子作りしてるんだけどッ! どうすればいいのこれッ!? どうすればいいのこれっ!?」
「黙って見届けなさい夏美、命の生まれる瞬間を」
「えぇぇぇぇぇ!!!」
「クーフェイはよう私の頭にあるカエル取ってぇぇぇぇ!!」
「任せるヨロシ亜子ッ! アチョォォォォッ!」
「メメタァッ!」
「脳天からカエルをチョップしたのにカエルは無事だッ! 和泉は気絶したのにッ!」
「これぞ波紋アルッ!」
「変な技使わなくていいからッ! ていうかそれやる意味がわからないからッ! 起きろ亜子ォォォォ!! カエル達に襲われるぞォォォォ!!」

そこら中にカエルがゾロゾロ、生徒のみんなは悲鳴をしたり走りまわったりパニック状態である。
席から立ち上がったネギがそんなカオスな空間を見渡す

「これは・・・・・・!」
「もしかして関西呪術協会の仕業じゃねえかッ!? 兄貴の親書を奪う為にこんな真似をッ!」
「そんな・・・・・・! ってあそこでのたうち回ってるの・・・・・・」

この光景の正体ににいち早く気付いたのがネギの使い魔で知識も豊富なカモ、彼が説明している間にネギは先ほど逃げた銀髪教師が床に倒れてる所を大量のカエル達に襲われているのを見かけた

「のわぁぁぁぁぁ!! マジすんませんでしたマジすんませんでしたッ! もう二度と出過ぎた真似はいたしませんッ! だから許してカエル様ァァァァ!!」
「千雨さんッ! 銀さんに覆いかぶさっているカエル達を取って下さいッ!」
「ムリムリムリムリッ!! 私カエルとか触れないッ! いいんちょが取ってやれよッ!」 
「私だって無理ですッ!」
「テメェ等俺が必死なのに何揉めてんだァァァァ!! カエル口に突っ込むぞオラァァァァ!!」

カエルに向かって懸命に謝って暴れている銀八の周りでは彼と仲の良い生徒のあやかと千雨がどっちが彼のカエルを取ってあげるか揉めていた。
見かねたネギが彼等に近づいて銀八に襲いかかっているカエル達を素手で取り除く

「何やってんですか銀さんッ!」
「あんたカエルぐらいでビビる人なんッスかッ!?」
「え・・・・・・? これ俺がデコ助に闇のゲームで負けたから罰ゲームであいつのカエル様が俺に襲いかかって来てるっていうわけじゃないの?」
「違いますからッ! 夕映さんは千年アイテムの所持者でも何でもないですからッ!」

カエルを払いながら銀八を救出して勘違いしていた彼にツッコんだ後、ネギは一匹のカエルを拾ってジッと観察する。

「このカエル達、微量の魔力を・・・・・・銀さん、僕達関西呪術協会の手先に襲われてる可能性があります」
「チッ、京都に行く前にもう敵が来たのかよ・・・・・・」
「とにかくカエルを捕まえ・・・・・・! あれ?」

ようやく立ちあがった銀八と共に生徒達を混乱させるカエル達を捕まえようとしていたら、不意にカエル達の鳴き声が少なくなっている事に気付く。

「カエルの数が減ってる・・・・・・?」
「てめーら何遊んでんだ、ったくこんなナマモノで必死こいてちゃこの先不安だぜ」
「土方さんその袋に入ったカエル達はッ!」

ボケっとしているネギと銀八に話しかけてきたのは大量のカエルが入っているビニール袋を持っている土方だった。どうやらこの騒動を早急に対処したのは彼らしい

「ほとんどのカエルは俺とコイツで回収しといた、冷静に状況を見渡せばこんな子供だましな芸当すぐに鎮圧出来る」
「全く世話のかかる先生達だ」
「龍宮さんも・・・・・・・・すみません・・・・・・」
「ケッ、テメェらでも役に立つんだな」

土方の後ろでカエル達が入ったビニール袋を肩に担いでため息を付いている龍宮にネギはしょんぼりと謝る。銀八は面白くなさそうな顔をするが
別段気にせずに土方はカエル入りのビニール袋を床に置いてネギに近づき、彼と一緒に生徒達の目の届かない所まで移動する

「大事なモンは取られてねえのか?」
「え?」
「この混乱の隙を乗じてそいつを奪いに来た可能性があるんだぜ」
「あッ! そうか奴等の目的は親書ッ! ん~と・・・・・・大丈夫無事ですッ!」

土方の言葉にネギが不安そうに親書が入っている胸ポケットを探り出す。だが別に盗られておらずちゃんとある事を安心するように土方に見せる

「いや~良かったこれ奪われたら大変・・・・・・え?」
「ネギの兄貴の手から親書がァァァァ!」

ホッとしているのも束の間ネギの手にあった親書が急にヒュっと消える。
土方はその瞬間を目で捉えていた、親書を奪ったのはツバメ、そのまま生徒達がまだ群がっている車両の奥まで逃げていく

「クソッ! カエルの次はツバメかッ!」

土方はまだあやかや千雨に「何でさっさと助けねえんだよッ! 銀さんメチャクチャ焦ってたんだかんなッ!」と説教しながら車両の真ん中に立っている銀八に向かって

「万事屋ッ! その鳥捕まえろッ!」
「あ? 何だよニコチ・・・・・・うおっとッ! 間一髪で回避ッ!」
「いや何やってんだお前ッ!」

状態を後ろにのけぞらして間一髪に跳んできたツバメの突進に緊急回避する銀八に土方の怒声が飛ぶ

「バカかお前はッ! 避けんじゃねえッ! 受け止めろよッ!」
「無茶言ってんじゃねえよッ! あんなド級のストレートが飛んできたらそりゃ避けるに決まってんだろッ!」
「とにかく追わないとッ! 見失っちゃいますよッ!」
「ありゃあ式紙だな、日本式の魔法ッスね、早く行かないとヤバいッスよッ!」
「元はといえばテメェ等がボサっとしてるから取られたんだろうがッ!」
「すみません・・・・・・」
「面目ないッス・・・・・」

口論している土方と銀八にネギとカモが止めに入るが、逆に土方に怒られる。考えてみれば確かにそうだ
三人と一匹がそんな事をしている間に親書をくわえたツバメはどんどん先に進んでしまう。
それを追う為に銀八を先頭に土方とネギが必死に追う

「おい早く追わねえとどっかに行っちまうぞッ! どっかの天然パーマが捕らなかったせいでよッ!」
「知るかボケッ! カエルばっか捕まえてねえでああいう奴警戒しとけよタコッ!」
「うるせえわかるわけねえだろッ! 何もやってない上にカエルに襲われてたバカよりはマシだッ!」
「んだとてめぇカエル様の恐ろしさわかってねえのかッ!? カエル様はなッ! ヌルヌルしてスッゲー気持ち悪いんだぞッ!」
「二人共走ってるのはいいんですけどケンカしながら走るのは止めてくれませんかッ!?」

走りながらも口喧嘩を止めない銀八と土方にネギがツッコミをいれていると、ツバメが生徒達の車両から逃げて奥まで飛んで行く。

「オイィィィィィ!! あいつ逃げちゃうよッ! 時空のかなたに飛んでっちゃうよッ!ネギッ! 魔法かなんかでどうにかしろよッ! お前この作品始まってからロクに魔法使うシーンなんてねえじゃねえかッ!」
「この作品でその発言はタブーですよッ! 駄目ですここだと生徒達に見られますッ!」
「よしチンピラ警察ッ! お前等周りのガキ共1秒で全員に目潰ししろッ!」
「出来るわけねえだろうがァァァァ!!」

まだ漫才を繰り返しながら銀八と土方は必死に追う。生徒達の車両に出てそのまま一番奥の車両まで走るとツバメを見つけた瞬間そこにいたのは

「挟み撃ちするためにここまで誘導していただきありがとうございました」
「せ、刹那さんッ!?」
「てめぇこんな所にいたのかッ!」


新幹線の一番奥の誰もいない車両の奥に立っていたのは土方の付添い役の桜咲刹那。
ツバメがこちらに飛んでくるのをわざわざ待ち構えていたのだ。
そんな彼女に土方が唾を飛ばしながら叫ぶ

「おいガキッ! 早くそいつを止めろッ!」
「言われるまでも・・・・・・!」

刹那はそう呟きながら制服のシャツからある物を取り出す。
取り出したのは黒色のお札・・・・・・・
それを見た銀八は一瞬我が目を疑う。

「ありゃあ・・・・・・!」
「こんな低級の式神・・・・・・」

そのお札を振りかざすとその札は姿を変え

「なッ!」
「この刀で斬るのに造作も無い・・・・・・!」

黒い札は刀身が黒い刀へと変貌した事に銀八は口を開けて驚く
向かって飛んできたツバメを刹那はその黒刀を持ってスパンと真っ二つに横一閃、その瞬間ツバメは紙になってしまいその場にヒラヒラと落ちていった。
慌ててネギがその場に走り寄り、親書がその場に一緒に落ちていた事に安心してすぐに懐に戻す

「良かった親書は無事だ・・・・・・ありがとうございます刹那さんッ!」 

ネギは刹那に深々とお辞儀をしてお礼を言った後、彼女が持っている黒い刀を指さす

「そんな刀、刹那さん持ってたんですか・・・・・・?」
「これはその・・・・・・『夕凪』が無いと何かと不便だと思ったので代わりとして使ってるんです、こっちの方が持ち運びに便利ですし」
「そんなモンがあるのをどうして今まで俺に言わなかった」
「すみません別に隠すつもりは無かったんですが・・・・・・」

土方はしかめっ面で彼女に注意した後、フンと謝って来た刹那に鼻を鳴らす

「まあ役に立ったからよしとするか、俺はもう戻るぞ、ガキ共とトランプやってたからな」
「いや刹那さんのおかげで助かりました~本当にありがとうございます」
「良かったッスね~ネギの兄貴~」

ポケットに手を突っこんだまま土方は生徒達の車両へ戻って行く。最後にネギがもう一度刹那にお礼を言ってカモを肩に置いたまま土方の後を追う。







残されたのは真顔で刹那を見据える銀八と彼女のみ

「おい、テメェ・・・・・・そりゃあ“あいつ”から貰った・・・・・・」
「『死装束』・・・・・・お前と戦った時に使った妖刀だ」

土方達がいなくなったのを確認した後、銀八に向かってその刀をよく見せる。

かつて刹那が出会った攘夷志士、高杉晋助からの貰い刀だ。
銀八はそれを見て刹那に歩み寄る。

「何でその刀を持ってやがる、あの時俺が確かに折った筈・・・・・・」

銀八の確かな記憶だと数ヶ月前、暴走した刹那との戦いで最後に彼女が持っていた死装束は折れてその力を失った筈、だが何故彼女がまだその刀を持っているのか

「・・・・・・この刀を私は捨てなかったんだ、最初は自分の戒めと思って取っておいたんだが、葉加瀬さんと超に直して貰った、私がお嬢様を護る為にはやはり剣が必要だと思ってな」
「チッ、そこまでバカだとは思わなかったわ・・・・・・寄こせその刀」

刹那が持っている死装束を銀八が無理矢理奪おうとするが彼女はそれを拒み首を横に振る

「超が言っていた、この刀にはいくつもの怨霊が宿っていると」
「怨霊だと?」
「怨霊による呪い、その呪いにより持った者の人格を少しずつ奪い最終的には私の様に暴走する・・・・・・それがこの刀の力の源、だが葉加瀬さんと超が何とかその力を抑制してくれた、今じゃ“ただの刀”だ」
「危険はねえのか」

伊達メガネ越しから銀八の目が鋭くなる。彼の問いに刹那はボソリと答える

「長く刀化を持続させると何が起こるかわからないと言っていた・・・・・・あくまで抑制だからな、時間が過ぎていけば、やがて眠っていた怨霊達が目覚めてしまう」
「だからそういう所がバカなんだよお前・・・・・・それが危険なんだよ・・・・・・!」

銀八の口調は明らかに呆れと怒りが混じっていた。刹那が言うには札の状態では危険は無いが長い間刀に変化させていると、暴走化の可能性もゼロではないと。
銀八は背中に差している元々刹那の愛刀の『夕凪』を鞘ごと抜いて彼女に突き付ける。

「この刀返してやる、そんな刀さっさと捨てちまえ」
「その刀はお前が使え、関西呪術協会の連中がいる京都に木刀だけで行くのは危険だ」
「何言ってんだテメェ、俺よりそれ持ってるお前の方が危険だろ」

銀八は刹那に向かって冷静な表情のまま睨む。だが刹那も変に頑固な所があった。

「私はお前や龍宮、エヴァンジェリンを殺そうとした・・・・・・」
「それは高杉がお前を口車で踊らさせたからだろうが、お前じゃなくて悪いのはあいつだ」
「そうだあの男に踊らされた・・・・・・そんな未熟な私がその刀を使う権利なんて無い」
「だからあいつから貰った妖刀で戦うってか? いつ自分の意識が呑まれるかわかんねえ刀であいつを護るってか?」
「今度はもう力に溺れない、私はもう絶対にこの刀に負けない」
「その根拠が何処にあんだ、いい加減にしねえとテメェをぶん殴ってでもその刀奪い取るぞ・・・・・・!」

夕凪を床に捨てて刹那の胸倉を掴み、彼女をそのまま壁に叩きつけた銀八は至近距離から睨みつける。
彼の付けている伊達メガネが鋭く光る、明らかに彼の表情は怒っているのだ。刹那はその顔を真正面から目を逸らさずに見据え続けたまま口を開く

「私は誓う・・・・・・この刀の力に屈せずに、逆に飲み込むほどの強さを自分で手に入れると・・・・・・・」
「・・・・・・」
「もうお前や他のみんなを傷付けはしない・・・・・・二度と妖刀の力は借りない、信じてくれ白夜叉・・・・・・」
「・・・・・・もういい・・・・・・」

刹那の悲痛な訴えに銀八は言葉を吐き捨てるように吐いた後、掴んでいた彼女の胸倉を乱暴に離した後、床に捨てた夕凪を背中に戻しそのまま背を向ける

「好きにしろ、もう面倒見切れねえんだよ、お前の世話はあのニコチンに任せる」
「白夜叉・・・・・・」
「さっきの誓い忘れんじゃねぞ、もう“あん時”のお前と戦うのは俺はゴメンだからな」
「ああ、絶対に忘れない・・・・・・」

背を向けたまま喋りかけてくる銀八に刹那は固く決心するように強く頷く。そのまま長い沈黙が二人の間に流れる。

二人の沈黙を破ったのは遂に京都へ着いたという車内アナウンスが流れた時だった

















































第三十六訓 最近の中学生は修学旅行だからってはしゃぎ過ぎなんだよッ!

A組一行が京都に降り立って数時間後
場所は京都での有名な観光地の一つ『清水寺』。その場所からの高い景色は絶景なのだが、そういう事に全く無頓着な銀八はボーっと千雨やあやか達と共に清水寺の下を眺めていた。

「おいまき絵ちょっとここから・・・・・・あれ? あの野郎、身の危険を察知して逃げたか・・・・・・」
「あの人はもう別の場所に移動しましたわよ」

いつものようにまき絵で“何か”しようとしたが銀八の目の前から彼女が忽然と消えていた。どうやら銀八に無茶な事やらされる前に逃げ出したらしい。

「しょうがねえ代わりに千雨、気張って行け気張って、飛べ」
「気張って行ける問題じゃねえッ! そこから飛べるのは人生にフライトしたい奴だけだッ!」

まき絵がいない代わりとして銀八は千雨に向かってここから落ちろと顎でしゃくる。勿論出来るわけないので千雨がそれを激しく拒否

「まあ千雨さんなら最悪死ぬぐらいですし大丈夫ですわ」
「最悪がもう死ぬって時点でもう大丈夫じゃないよなッ!?」
「やってみなきゃわかんねえだろう、昔、諦めたらそこで試合終了だってケンタッキーのおっさんが言ってたぞ」
「ケンタッキーのおっさんじゃなくて安西先生じゃボケッ! ケンタッキーのおっさんが何の試合すんだよッ!」
「バスケですわきっと」
「何でそこだけケンタッキーから安西先生に変換するんだよッ!」

一通りツッコミ終わった後、千雨は疲れた調子でその場から立ち去ろうとする。

「もう行こうぜここにいても景色ぐらいしか見るものないし、ていうかみんなとっくに行っちまってるしよ」
「マジで? 何だよアイツ等俺放置して勝手に行っちまったのか」
「銀さんがずっと呆けてるせいでしょ、何かあったんですか?」
「ちょっとな、大したことじゃ・・・・・・ねえんだといいんだけどな・・・・・・」
「?」

顎に手を当て考え事をする銀八に隣にいたあやかは首を傾げる。しばらくして銀八がすぐに顔を上げた

「まあこのまま何事も起きなければ問題ねえだろ・・・・・・行くぞお前等」
「だから行くってさっきから言ってるだろうが」
「うるせえ、おいあやか行くぞ」
「あ、はい」

仏頂面で返してくる千雨に返した後、銀八はあやかを呼んで千雨と一緒にネギ達がいる所を探しに行くのであった






















































一方銀八達がA組のクラスの所を探している頃、ネギが率いるA組は何処にいるのかというと、銀八が歩いている地点からそんなに遠くない『地主神社』という所を観光していた。

「ネギ先生見て~ッ! これが恋占いの石だってッ!」
「へー目をつむってこの石から歩いてあの石まで着いたら恋が実るって奴ですか、パンフで読みましたよ」

ハルナが指さす方向には二つの自分の膝辺りまでの大きさの石が20M間ぐらいで置いてある。ネギが眺めているとハルナは隣にいたのどかをバンバンと背中を叩いた。

「という事でのどかゴーッ! 実らせろ初恋ッ!」
「わ、私・・・・・・!?」
「今恋してる人がやらなくてどうすんのよッ!」
「うん・・・・・・やってみる」

言われるがままのどかは実行しようと片方の石の近くに立ってどうすれば向こうの石に辿り着けるか考えていた。

「女性ってこういうの好きなんですねぇ」
「そ~じゃない? 私はあんまり興味とかないけど」
「あれ? アスナさん何処行ってたんですか?」
「近くの団子屋、腹減ってたから」
「アスナがどうしても食べたいいうてわざわざ買うてきたんよ・・・・・・」

近くに寄って来たアスナにネギが質問するとアスナが短絡的に木乃香が苦笑しながら返す。
よく見るとアスナの口には団子の串が一本くわえられている。

「そういえば土方さんもいたで あれ? せっちゃん、何であの人と一緒に行かなかったん?」
「いえちょっと考え事をしていたのでしばらく一人にしてくれって頼んでいたんです・・・・・・それにしても、お嬢様みたいにもうちょっと女の子らしく出来ないんですかアスナさんは・・・・・・」
「それ刹那さんに一番言われたくないんだけど」
「いやまあ確かにそうですけど・・・・・・」
「せっちゃん、土方さん帰って来たで」

一人ポツンと立っていた刹那がネギ達に近寄りアスナと他愛も無い話をしていると、木乃香が急に彼女の腕を掴んで指を差す。
見ると修学旅行の同行者の土方が片手に紙袋を持って口にはタバコと団子の串の両方を咥えているという姿で歩いて来た。

「ちょっくら団子食いに行ってた、ん? 宮崎の奴フラフラ歩いて何やってんだ?」
「恋占いの石とかいう奴ですよ、目をつぶって向こう側の石に辿り着ければ恋が実るとか」
「ふ~ん、ガキが好きそうな遊びだな」

刹那の説明に土方は生徒の声援を貰ってフラフラ歩いてるのどかを見ていると

「それよりホレ」
「え?」
「団子だ、一本やる、土方特製マヨ団子だ」

おもむろに紙袋から一本のマヨネーズがテンコ盛りの団子を取り出して、刹那の方へ顔を向けずに押しつけるようにそれを渡す。受け取った刹那は何故こんな物を? と言いたげな表情を浮かべた

「お前ここに来てからやけに考えこんでただろ、何考えてるか知らねえがそういう時は胃にマヨネーズ入れとけ、マヨネーズは悩みをスッキリ解消させる事も出来る」
「そんな効力ありましたっけ・・・・・・?」
「あるんだよ、何十年もマヨネーズを愛する俺が言ってんだぞ、その土方特製マヨ団子は俺のオゴリだ、食っとけ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・・」

土方のマヨネーズ論を聞いても未だ納得の出来ない表情のまま刹那は彼から貰ったマヨ団子を一口食べてみると、すぐに彼女はしかめっ面を浮かべる

「うえ・・・・・・」
「食のIT革命だろ」
「革命しまくりですコレ・・・・・・」

食べた瞬間思わず舌を出して不味そうにする刹那の隣で、土方はのどか達の方を眺めながら更に口を開く。

「こいつを食って少しは悩むの止めろ、一緒にいる奴がシケたツラしてるとこっちはイライラすんだよ」
「・・・・・・」

咥えていた団子の串を紙袋に戻しながらぶっきらぼうに土方は刹那の方へは向かずに告げた。
そんな彼の態度に刹那はふと彼から貰ったマヨ団子に目をやる

(もしかしてこの人なりの優しさなのだろうか・・・・・・『死装束』の事で悩んでいた私の為に・・・・・・食べないわけにはいかないな)

そんな事を考えると思わず刹那は少し笑ってしまう、土方も“誰かと同じで”他人と接するのがかなり不器用なのだ。

「ありがとうございます、土方さんのおかげで悩んでる自分がアホらしくなってきました」
「ああ? 俺のおかげじゃねえマヨネーズのおかげだ、つうかお前は元からアホだ」
「はいはい」

素直じゃない態度の土方に思わずまた笑ってしまいながら彼から貰ったマヨ団子を一口ほうばる刹那。


味はやはり酷かった










刹那がなんとかマヨ団子を食べ終えて数分後、彼女の離れた所にいる生徒達の群衆が歓声が起こしている
何故なら

「ゴ、ゴール出来た・・・・・・」
「よっしゃぁぁぁ!! のどかがゴールしたッ! まっすぐ進まずに色んな所歩き回ったけど何故かゴールに辿り着けたッ!」
「最初は不安でしたけどおめでとうですのどか・・・・・・私もやっといた方が良かったですかね・・・・・・」
「やったーッ! のどかがちょっと一回トイレに突っ込んだ時は駄目かと思ったけど気合いでゴールしたッ!」
「のどかがまき絵の首を絞めつけて、「え?コレが石」って言った時はもう駄目かと思ったけどゴールしたッ!」
「私もあの時死んだかと思ったけど(私が)、のどかがゴールした・・・・・・」

どうやらのどかは無事に恋占いの石に辿り着いてゴール出来たらしい、彼女がその場でヘロヘロになって目を開けて安堵している中、ハルナを始め多くの生徒達が歓声を彼女に送っている、まき絵は虚ろな表情で首をおさえているが
急いでのどかの元にハルナと夕映が近づく

「これであの人との恋が実るかもよッ!」
「いやこんな事で土方さんと・・・・・・・」
「俺がどうした?」
「ひ、土方しゃんッ! いつからここにッ!?」
「しゃん? 何テンパってんだお前? さっきからずっとお前の事見てたぞ」

突然現れて彼女達に近づいて来たのは、訝しげにタバコを咥えながらこちらを見る土方、のどかは急にオドオドし始めて軽いパニックになるが夕映はそんな彼に視線を向ける

「何持ってんですか?」
「団子屋でトッピングしてもらった土方特製マヨ団子だ、テメェにはあげねえからな」
「いえ死んでも結構ですから」

タバコを携帯灰皿に捨てている土方に夕映は手を振っていらないいらないと仕種をする。

(なんでのどかはこんな人に惚れたんでしょうか? ・・・・・・まあ私も人の事言えませんが)

そんな事を夕映が考えていると階段をあの男がサンダルの足音をたてながら生徒を二人連れてやってきた

「あ、いたいた」
「皆さんここにいたんですか」
「銀八が団子屋寄ってたから余計時間かかちまったじゃねえか」

銀八とあやかと千雨もようやくネギ一行と合流出来た、どうやらアスナや土方同様にここに来る途中で団子屋に寄ってたらしく、銀八は口に団子の串が挟んでいる

「よう、テメェ等先行き過ぎ、俺等迷っちまったじゃねえか」
「迷った割には口に団子の串咥えてますね・・・・・・」
「迷った挙げ句に見つけた団子屋でちょっと糖分補給してた」
「そうですか・・・・・・」

団子の串をその辺にペッと吐いて捨てる銀八に、ネギがいつもの事かと後ろ髪を掻き毟っていると、千雨の隣であやかが何かを指さして興奮している

「あ、あれはまさか恋占いの石ッ!? よしッ!」
「おい、いいんちょまさかやる気じゃねえだろうな・・・・・・」
「当然やりますわ、じゃあ行ってきます」
「オイオイオイ、あんなのやっても効力なんてねえだろ・・・・・・」

恋占いの石を見つけてテンションの上がったあやかはズンズンと出発地点にある石の方まで歩いて行ってしまう、それを見送るように眺めている千雨はやれやれと頭を横に振る

「まあいいんちょはこの修学旅行中が勝負らしいから、縁起担ぎでやるのもいいかもな・・・・・・」
「あれ? あやかの奴何やろうとしてんだ?」
「恋占いの石だとよ、パンフによると今いいんちょがいる所から目をつぶってそこにある石に辿り着ければ恋が実るとかどうとか」
「・・・・・・マジ?」

貰ったパンフを読みながら説明する千雨に、不思議と感じていた銀八は目をパチクリさせる。興味を示しているらしい

「まあ私はそういうの無縁だしそういうのも信じないタチ・・・・・・ってオイッ!」
「しずな先生ィィィィィィ!!!」
「行っちまった・・・・・・・バカがバカな願望叶える為に行っちまった・・・・・・」

銀八が想い人の名を叫びながらあやかのいるスタート地点に所に疾走。そんな駄目教師の姿に千雨は呆れた表情でため息をつく

一方あやかはというとスタート地点の石からどうやって目をつぶってあそこまで辿り着けるか計算していた

「ここからゴール地点は20Mぐらいの距離・・・・・・まっすぐ進めればなんて事無いですが果たしてそうするには・・・・・・」
「何ブツブツ言ってんだめんどくせえ、こういうのはパパッと行っちまえばいいんだよ」
「ってあれ銀さんッ!?」
「目をつぶって・・・・・・だっしゃぁぁぁぁ!!」
「ま、待って下さいッ!」

突然現れた銀八にあやかは一瞬戸惑いを見せるも彼はそんな彼女を尻目に目をつぶったまま向こう側の石に向かって全力疾走、慌ててあやかも目をつぶって追いかける。
 
「何で銀さんが恋占いの石に挑戦するんですかッ!?」
「しずな先生のハートは俺が貰ったァァァァ!!」
「やっぱりそれが目的ですかッ! いい加減諦めてくださいッ!」
「あんッ!? テメェなんか惚れた相手なんていないって前に一緒にファミレス行った時に言ってただろうがッ!」
「そ、それは・・・・・・」

走りながら返してくる銀八にあやかは思わず動揺する。
惚れた相手にそんな事言われたらあの時はそう答えるしかなかったのだ。

「相手もいねえのに俺の邪魔すんじゃねえッ!」
「ああもうそれは・・・・・・・!! とにかく銀さん待って・・・・・・!」
「うぉりゃぁぁぁぁ!!!」

何か言いたげだったがすぐに顔を赤くして押し黙るあやか、銀八はそんな彼女をほっといて一気にゴールへ・・・・・・の筈だったのが・・・・・・・

「ん?」
「イタッ! どうしたんですか急に止ま・・・・・・」


突然ズボッと何か変な物を踏んだ感覚があった銀八は思わずその場に足を止めたので、後ろから目をつぶって走っていたあやかは彼の背中にそのままぶつかってしまう。何事かと彼女が思っていると

「きゃあッ!」
「おわッ!・・・・・・のふッ!」

突然音を立てて二人がいた地面から穴が開いて、銀八とあやかはそのまま一緒に穴に落下する。

「何だよこの穴・・・・・・がふッ!」

2M半ぐらい落下した穴の中で銀八が何事かと思っているとすぐにあやかも彼の腹の上に落ちてきた。

「す、すみません銀さん・・・・・・」
「謝る前にさっさと俺の上から降りろコラ・・・・・・!ってアレ? あの緑色の物体の御方はもしかして・・・・・・」
「「「「「ゲロゲロ」」」」」
「ギャァァァァァ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」 

あやかに銀八が怒鳴ろうとするがその前に穴の中のいた大量のカエル達に驚く方が早かった。
あやかも驚いて思わず銀八に泣きそうな表情で抱きつく。

「銀さん助けてッ!」
「「「「「ゲロゲロ、ゲロゲロ」」」」」
「こっちくんじゃねえよカエル様ッ! さっき新幹線で会ったばかりなのにどんだけ俺に対して積極的なんだよッ! 俺はこういう積極的な愛情は嫌いなんだよッ!」

首に手を回して抱きついているあやかを両手で抱えた銀八は、襲いかかってくるカエル達を蹴飛ばしながら悪態をつく。
しばらくして上から慌てた表情で千雨が顔を覗かせてきた

「おい銀八ッ! いいんちょッ! うわッ! 第二次カエルフェスティバルッ!!」
「千雨早く助けろォォォォ!! なんか先住民の皆さんのおかげでこの穴ヌルヌルしてスッゲー気持ち悪いんだよッ!」
「千雨さん早くして下さいッ! いやでもしばらくこのまま銀さんと一緒に・・・・・・」

銀八に抱き抱えられたまま頬を染めているあやかが変な事考えている事に気付いた千雨は

「いいんちょさっさと手を伸ばせ、早く助けて欲しいんだろ」
「・・・・・・もう」

いち早く彼女に仏頂面で手を差し伸べる。あやかは不満げに千雨を見ながらその手を取って穴から脱出した。

「お~い次は俺だ、さっさと助けろガキ共~」
「それが助けを求める態度かよ・・・・・・・ほら」
「銀さん、私の手も」
「おう、ったく何でこんな所にカエルの溜まった落とし穴があんだよ・・・・・・」

千雨とあやかの差し伸べてきた手を二つ持ち、悪態をつきながら銀八もようやく落とし穴から脱出した。

「一体誰がこんな事手の込んだイタズラを・・・・・・」
「よくもまあこんなに掘ったもんだな・・・・・・やった奴はよっぽど暇なんだろうな」

銀八を助けた後あやかと千雨は落とし穴を覗きながら誰がこんな事やったのかと考えているが、その後ろでしゃがみ込みながら銀八は誰がやったのか大体予想はしていた

「やっぱコレもネギが持ってるモンを狙っている連中の仕業・・・・・・だろうな」

そんな事を考えながらようやく立ち上がった銀八にさっきまで姿を現さなかったネギがカモを連れて歩いて近づいて来る

「銀さんさっき何か凄い音しましたけど何かあったんですか?」
「お前がどっか行ってる間に俺とあやかがカエル地獄に遭ってたんだよ」
「え? てことは関西呪術協会の連中がまた来たんスかッ!?」
「ただの落とし穴だ、カエル入りのな」
「すみません・・・・・・ちょっと新田先生達と生徒の皆さんの移動の手続きをやっている隙にまさかそんな事になるとは・・・・・・」
「お前が悪いわけじゃねえんだから気にすんなよ」


頭をこっちに下げて謝ってくるネギに銀八は別段気にせずに頭を掻く。元々悪いのは関西呪術協会の連中だ、狙われてるネギに非はない。

二人がそんなやり取りをかましていると少し離れた場所でA組の生徒がまだ騒いでいた。

「ねえゆえゆえッ! あれは何ッ!?」

ハルナが興奮したように指差す方向には三つの小さな滝が流れている何とも不思議な建築物。
夕映は空になった水筒のフタを開けながら説明する

「『音羽の滝』、飲めば右から『健康』・『学業』・『縁結び』の効果が貰える1000年以上前から存在する水です」
「マジンガーッ!?」
「Zです」
「よしッ! のどか、恋占いの石だけじゃ心元無いから飲みまくるわよッ! 無論一番左の縁結びだからねッ!?」
「う、うん・・・・・・」

夕映の説明を聞いたハルナはのどかの手を引っ張って縁結びの滝の方に連れて行く。
すると他の生徒達ものどか達がいる所になだれこんでくる。

「私も一番左ッ! 恋愛運上昇ッ!」
「柿崎・・・・・・アンタ彼氏いるじゃん・・・・・・」
「まき絵は学業の方飲んだ方がええやろ?」
「亜子、それはもう諦めてるから平気、むしろ私の不憫さを気遣ってくれる男の人が欲しいんだよ・・・・・・」
「どれどれ千雨ちゃんの為に縁結びの水を水筒に入れておくか・・・・・・うごッ!」
「あらごめんなさい、思わず横っ腹に肘打ちかましちゃったわ」
「ちづ姉何で朝倉に・・・・・・」

A組の生徒でワイワイと一番右の縁結びの滝から流れる水を飲んでいるのを見て銀八達も近づいて来た

「オイオイ何はしゃいで滝の水飲んでるのあいつ等?」
「『音羽の滝』だってよ、一番左の滝を飲めば『縁結び』の効力があるとか書いてあるぞ、いいんちょ飲みに行ってこいよ」
「当然です、恋占いの石に失敗したならばここでなんとか運気上昇をしなければ」
「あっそ・・・・・・・」

張り切って一番左の滝に向かうあやかを見て、持っていたパンフをしまいながら千雨は彼女に少し哀れみを感じていた。

「必死だなあいつ・・・・・・まあ相手が相手だからな」
「何処行ってもはしゃぐ事しか脳みそにインプットされてないのかねぇあいつ等・・・・・・」
「お前は行かないのかよ? しずな先生の為に縁結びでも飲めばいいじゃねえか」

皮肉交じりに話しかける千雨に銀八はあやか達の方を眺めながら首を横に振った

「いややっぱ縁担ぎなんかしても肝心なのはテメーの度胸次第だし、あんまり意味ねえなって気付いてよ」
「必死に恋占いの石にやった奴が言ってるとは思えないセリフだな」

銀八に向かってツッコんだ後千雨もあやか達の方へ目をやる。のどか達や色々な生徒がガブガブ飲んでる光景を見て若干引いている視線を送った

「何であいつ等貪るように飲んでんだ・・・・・・? たかが水だろ?」
「男に飢えてんじゃねえか?」

興味なさげに銀八が言っていると、後ろから来たアスナと木乃香を連れたネギが突然彼の手を引っ張る

「銀さん」
「ん? ネギどうした?」
「あの・・・・・・生徒さんの様子おかしくありませんか?」
「いつもおかしいだろ、むしろ正常な頃のあいつ等を知りたい、特にそいつとか」
「私も正常なアンタを知りたいわよこの万年異常者」
「はいはいその辺にしといてな二人共」

腕を組んで突っ張ってくるアスナに銀八が睨みをきかせているのを木乃香が二人の間に入って喧嘩する前に止める。
ネギの肩に乗っかっているカモはそんな光景を見ながらため息をつく

「気を抜くとすぐ喧嘩するから疲れるッスねこの二人・・・・・・」
「僕はもう慣れたけどね・・・・・・そんな事より銀さん、やっぱり生徒の皆さん様子おかしいですよ、僕ちょっと見てきま・・・・・・ってッ!!」

銀八とアスナから生徒達の方へ視点を変えた瞬間ネギが驚いた様子のリアクションをとる

「銀さん大変ですッ!」
「どうした? まき絵の首が吹っ飛んでたか? 気にすんなすぐに新しい顔が生える」
「いや生えねえよ、いつ佐々木はエイリアン張りの再生能力手にしたんだよ」
「生徒の皆さんが顔真っ赤にして倒れてますッ!」
「「は?」」

ネギの叫び声に銀八と千雨が同時に生徒達の方へ目をやる。
見るとそこには

「のどか起きるです」
「起きてまひゅ~」
「ねえ夕映、のどかもしかして酔ってる・・・・・・?」
「柿崎ッ! こんな所で倒れてたらヤバいってッ!」
「御主人様~もっと罵ってくだひゃ~い」
「何この子気持ち悪ッ! 誰か頭専門のお医者さん呼んでッ!」
「まき絵大丈夫か~?」
「無理・・・・・・吐きそう・・・・・・」
「ちづ姉は何で平気なの・・・・・・?」
「何でかしら?」

顔を真っ赤にしたA組の生徒達がゴロゴロと屍の様にその場に横たわっていた。銀八達は勿論我が目を疑う

「こいつは・・・・・・」
「何であいつ等顔真っ赤にして倒れてんの・・・・・・?」

千雨が唖然と見てると後ろから土方と刹那が慌ててこちらにやってくる。

「万事屋ッ! 何があったッ!?」
「生徒の皆さんがどうしてあんな事に・・・・・・」

銀八はしばらく目を細めて生徒達を観察した後、土方と刹那の方に振り返る

「あのツラから見てわかんだろ、酒だよ酒、水じゃなくてあいつ等酒飲んだんだ」
「酒ッ!? ここから流れる滝は酒なんか出ないぞッ!」
「じゃあどうせネギの持ってるモンを奪いに来た連中だろ」
「まさか関西呪術協会か・・・・・・!?」
「まるで俺等をおちょくってるようなやり方だぜ・・・・・・」

刹那と推測しながら銀八はふと思い出す。そういえば“彼女”もあそこの水を飲みに行って・・・・・・

「千雨ッ! あやかはどうしたッ!」
「銀八ッ! いいんちょが死んでるッ!」
「オイィィィィ!!」

倒れている生徒達の群れの中に入っていた千雨が銀八に向かってあやかが倒れている所を指さして叫ぶ。慌てて銀八はその場に向かって、倒れているあやかを見つけた。

「すみませんお客様ァァァァ!! 終電ですから起きて下さぁぁぁぁいッ!!」
「はひ~?」
「おいあやか起きろォォォォ!! 酔っ払ってるのバレたらお前停学になるよきっとッ! 俺も責任取るハメになるんだから勘弁しろよッ!!」
「ふにゃ~?」

倒れた彼女の上体を掴んでユサユサと激しく揺さぶるが完全に酔っているのか顔を真っ赤にして銀八に向かってヘラヘラ笑っている。こんな彼女の姿今まで見た事がない

「うにゅ~」
「うにゅ~じゃねえよッ!」
「銀八ッ! いいんちょ大丈夫かッ!?」
「コレ見てみろッ! 完璧に酒に飲まれてる状態の人間だろうがッ! 飲まれまくってうにゅ~言ってんだぞッ!」
「うにゅ~」
「うにゅ~って何?」
「知るかボケェェェェ!!」

ヘラヘラ笑っているあやかを揺さぶりながら銀八が千雨に吠えている頃、ネギや土方達も他の生徒達の安否を調べていた。

「亜子さん大丈夫ですかッ!?」
「ウチはあんまり飲んでなかったらなんとか大丈夫やけどまき絵が・・・・・・・」

フラフラしながら亜子が指さすとそこには吐きそうな様子で横たわっているまき絵の姿が

「気持ち悪いよ~・・・・・・」

ネギはそんな彼女を見てすぐに近寄り上体を起こし

「僕に任せて下さいッ! ふんッ!」
「ごふッ! おろろろろろッ!」
「ネギ先生任せるって何でまき絵にボディブローッ!? めっちゃ吐いとるッ! まき絵がめっちゃゲロ吐いとるッ! 滝の様に吐いとるッ!」

思いっきり腹に向かってネギに拳を入れられたまき絵は滝が出る所の隣で口から吐瀉物を吐きだす。驚いてる亜子に向かってネギは笑顔で

「いや~全部吐いちゃった方が楽になると思いまして」
「無理・・・・・・・私もう死ぬ・・・・・・・」
「楽どころかそのまま昇天しそうな勢いなんやけどッ!? 」

全て吐きだした後のまき絵の死んだような表情を見て亜子がネギに向かってツッコんでいる頃、土方と刹那も倒れているのどかの容態を調べていた。

「おい宮崎、しっかりしろ」
「ハハハハ、土方しゃんが一杯います~」
「のどかぁぁぁぁ!! しっかりしてぇぇぇぇ!!」
「完璧にベロンベロンですね・・・・・」

上体を起こしてのどかの意識を確認する土方だが、彼女は目を回しながらろれつが乱れている、完璧に酔ってる状態だ、付添いのハルナと夕映も心配そうに見る。
のどかの状態を土方の隣で見ていた刹那は彼の方へ顔を向ける

「どうしますか土方さん」
「決まってんだろこういう時は・・・・・・」
「え?」

こんな状態になっているのどかにも土方は冷静にある物を懐から取り出す。
それは彼が常に持ち歩いている地上最強の調味料

「マヨネーズだ、こいつを飲めば何事も万事解決だ、どんな状態でも治せる、それがマヨネーズだ」
「はいッ!?」

懐からマヨネーズの入ったボトルを取り出してフタを取ってのどかの口に直接突っ込ませようとする土方に刹那が驚きの声を上げる。当然夕映もそんな彼を制止させようとする。

「それだけで万事解決するのはあなただけですから、そんな物をのどかに・・・・・・」
「待って夕映・・・・・・!」
「何ですか友達がマヨラーの餌食になりそうな時に」

夕映が土方を止める前にハルナが彼女の肩をガシっと掴む。何事かと夕映が振り返るとハルナはそっと彼女に耳打ちする。

「アレって土方さんが常に持ち歩いてるマイマヨボトルだよね・・・・・・?」
「そうですね、いつもあの人は持って吸ってますね、気持ち悪くてしょうがないです」
「って事はもしかしたらこれ・・・・・・土方さんのマイマヨをのどかが口につけたらそれ関節キスになるんじゃないの・・・・・・!?」
「いやハルナ確かにそうですけど・・・・・・」

ハルナが言うにはこのままいけば土方が常に吸ったり使用しているマイマヨをのどかの口に当てることで関節キスになるだとか、だが夕映はそれを聞いても複雑な表情を浮かべる

「ここはのどかの為に大人しく見守ろう・・・・・・!」
「ハルナ、ジュースとかならそういう展開もアリですけどマヨネーズでそういうシチュエーションは・・・・・・」
「イケる・・・・・・! これで刹那さんに勝てる・・・・・・!」
「はぁ・・・・・・」

かなり興奮状態のハルナに何言ってるんだコイツ?と夕映がため息を付いてると、土方は持っているマイマヨを酔っているのどかの口につけようとしていた

「土方しゃ~ん」
「待ってろ、いますぐこのマヨネーズをテメェの胃に届けてやる」
「あの~やっぱり土方さん止めた方が・・・・・・」
「黙ってなさいこのスカポンタンッ! マヨネーズは万物に対応できるオールマイティの調味料なのよッ! 何もわかんない奴がシャリシャリ出てくんじゃないわよッ!」

土方の行動を止めようとした刹那に向かってハルナが怒鳴りつける。だが彼女の言葉に土方がピクっと反応した、

「おい触角メガネ、もしかしてお前・・・・・・」
「え?」
「俺と同じ・・・・・・マヨラー戦士か?」
(・・・・・・何マヨラー戦士って? 何処の神殿で手に入る職業なのそれ?)

頬を引きつらせて混乱しているハルナをよそに土方はフッと笑った。どうやら彼女が咄嗟に言った事に何か通じるモノを感じたらしい

「まさかこんな所で俺と同じマヨネーズを愛する者に出会うとはな・・・・・・」
「・・・・・・どうしよう夕映、なんか同志だと思われてみたい私・・・・・・」
「しょうがないです、のどかの為にここはそのままつっ走って下さい、マヨナ」
「張り倒すわよ夕映・・・・・・!!」

思わず親友に向かってワナワナと握り拳を振り上げているハルナに対して土方は好印象を覚えた後、のどかの口に自分のマイマヨを付けて注ぎ込んだ

「おお・・・・・・! 遂にのどかが土方さんと関節キス出来た・・・・・・!」

小声で呟きながら興奮してその瞬間を見ているハルナ、すると土方は彼女に口元に笑みを浮かべながら口を開く。

「一本丸々注入すればすぐに回復する、だよな?」
「(なんかお前もわかってるよなって感じになってるんだけどッ!?)そ、そうですねッ! マヨネーズ飲めば大概の人間はヒットポイントMAXになりますよねッ!」
「何言ってんですかハルナさん・・・・・」
「うっさいわねッ! マヨラーの常識なのよッ!」

ジト目でこっちを見てくる刹那にハルナは泣きそうになりながらも自分の存在を捨てて叫んでいる頃、土方のマヨネーズを丸々一本飲まされたのどかはというと・・・・・・

「ひ、土方さん・・・・・・」
「のどかが蘇ったァァァァ!!」
「何か口の中凄く気持ち悪いんですけど・・・・・・」
「でも人生最悪の表情をしてますが?」

意識を回復させたはいいが、物凄く気分が悪そうに起き上がるのどか。だが彼女の酔いが覚めている事がわかった土方は既に同志と思い込んでいるハルナに顔を向ける。

「酔いが覚めたようだな、やっぱマヨネーズは最強だな」
「そうですねッ! マヨネーズ無双ですよねッ!」
「にしても最初は邪魔くせえムカつく奴だと思ってたが、まさかお前が俺と同じマヨを求める狩人だったとはな・・・・・・確かお前の名、『ハルナ』とか言ってたな、覚えておくぜ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
「・・・・・・」

自分に向かって今まで見た事無い輝きを見せて笑ってくる土方に、もう否定も出来なくなったハルナはつまらなさそうに見てくる刹那をよそにそのまま彼に頭を下げる。
そんなハルナの隣で夕映がボソッと

「ハルナ、あなたがあの人の評価を上げてどうするんですか」
「ごめん・・・・・・」

土方とのどかの関節キスは成功したが、その代わりに彼の自分に対する評価が上がったのはなるべく彼女にはバレたくないと思うハルナで会った










































数時間後、銀八達はどうにか生徒達を無理矢理バスに入れて両館まで運びこみ、新田先生達には酔っている生徒達の事は「はしゃぎ過ぎて疲れてしまい、今は部屋で休ませてる」と言って真実を言わなかった。

「いや~まいったまいった」
「もし生徒さん達がお酒飲んでたのバレたら僕等のクビが飛ぶ上に生徒さん達も停学ですよ・・・・・・」

旅館の中にある自動販売機が置いてある待合席で銀八とネギが談話しながら腰かけており、さっきまで二人は酔った生徒達を部屋に押し込むのに奮闘していたのだ(部屋に向かって酔った生徒をぶん投げるだけだが)。二人がため息ついてる頃、銀八の背中にもたれかかっている千雨が彼に話しかけてきた


「そういえば銀八、いいんちょどうした?」
「ちっとはマシになったけどまだ「うにゅ~」とか「はひゃ~」とか「あう~ん」とか時々口に出すからまだ酔いが覚めてるとは言えねえな」
「のどかさんも土方さんに酔い覚めとしてマヨネーズ一本飲まされてずっとグッタリしてる様ですね・・・・・・」
「何で酔い覚めでマヨネーズなんだよ、そんなマヨネーズ王国でしか通用しない事をここでやるんじゃねえよ、銀八、あの土方って奴なんなの?」
「決まってんだろバカだバカ、マヨネーズバカ」

千雨に土方の事を尋ねられたので銀八は短絡的に返す。
彼の事を説明するにはそれで十分事足りるのだ


「ところでよぉ千雨、ちょっとあやかの容態見て来てくんねえか? 同じ部屋だろ」
「何で私が・・・・・・私なんかよりお前が行った方があいつ喜ぶぞ」
「いいから行け、行かねえとお前のメガネかち割るぞコラ」
「しょうがねえな・・・・・・」

銀八に言われて千雨は不満げな表情をするも、仕方なくブツブツ文句を言いながらあやかのいる自分の部屋へと戻って行った。
千雨がいなくなったのを確認した銀八はネギの方へ振り向く


「連中・・・・・・俺達どころか生徒の奴等にも危害くわえてくるな」
「そうですね、まさか生徒の皆さんにも色々と工作してくるなんて・・・・・・」
「カタギに手出すなんざゲスがやる事ッスッ! ネギの兄貴ッ! 何としてでも親書を本部に持って行きましょうやッ!」
「わかってるよ、こんな酷い事されて更に親書まで奪われるワケにはいかないよ」

自分の肩で怒りながら話しかけてくるカモにネギは縦に頷く。そんな彼に思い深げに銀八が口を開いた。

「にしても連中、カエル地獄とかガキ共に酒飲ませるとか俺等をバカにしてるとしか思えねえな」
「僕等完璧にナメられてるって事ですね・・・・・・」
「うぉぉぉぉ!! マジムカつくッスねッ! コレやった奴よっぽど性格悪いッスよ絶対ッ!」

カエル騒動や落とし穴、更に滝から出る水を酒に変えるなど関西呪術協会の連中は余程タチが悪いようだ。
うなだれているネギの肩でカモが怒り狂っていると銀八も不機嫌そうに髪を掻き毟る

「ま、好きにバカにさせてりゃいいさ、そんな事やってる内に俺達はブツを送り届けちまえばいいんだ」
「その為には生徒さんの目の裏をかいくぐって僕達だけで本部に行かないといけないですね、銀さん時間あります?」
「あるっちゃあるけどよ、あやかと千雨がな・・・・・・あいつ等基本俺にくっついてくんだよ、別にあいつら連れても問題ねえが、連中になんかされそうだからあんま連れて行きたくないんだよな・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」

個人の考えとしてはあやかと千雨はあまり連れて行きたくない。彼女達は魔法使いと戦う程の戦力も持ってないし出来れば何も知らずに修学旅行を楽しんで欲しいのだが・・・・・・
銀八がそんな事を考えていると廊下から誰かがこちらにツカツカと歩いてくる音がする。

「あら坂田先生とネギ先生、こんな所で何してるんですか?」
「すみませんしずな先生、男同士で猥談してました」
「ちょッ!」
「フフ、ネギ先生に変な事教えないで下さいね」

あらぬ事を言われてネギは慌てて銀八に目をやるが、浴衣姿のしずな先生は楽しそうに微笑む。

「ところで坂田先生とネギ先生、猥談は結構ですけどそろそろお風呂に入ってはどうですか? 教師は早めにお風呂済まして下さいな」
「わかりました、じゃあ俺と一緒に入りませんかしずな先生、背中洗いますよ、俺背中洗いの達人ですから、免許皆伝ですから」
「どんな達人ですか」

親指を立てながら言う銀八の誘い文句にネギがツッコんでいるとしずな先生が笑顔で「すみません私はさっき入ったので」と言って去ってしまった。残された銀八は残念そうにため息を付く

「ダメか・・・・・・しょうがねえさっさと風呂に入るか・・・・・・」
「じゃあ銀さん先に行ってて下さい、僕は土方さん呼んでくるんで」
「ヘイヘイ、ったくしずな先生とじゃなくて野郎共と一緒かよ・・・・・・」

しかめっ面で文句を言っている銀八をよそにネギは立ちあがって土方を呼びに行く。
一人ポツンと残された銀八もだるそうに腰を上げた

「部屋戻って着物取りに行くか・・・・・・あ~めんどくせえな本当」

まだブツブツと文句を言いながら銀八は自分の着替えを取る為に教師用の個人部屋に戻って行く。その足取りは重い

「少しぐらいさぁしずな先生とTOLOVEるみたいなイベントやりてえよ、もうカエルイベントとかたくさんだよチクショウ・・・・・・」

そんな事をタラタラ言いながら銀八は待合席から去って行った。






そして誰もいなくなった待合席、辺り一帯が無音と化して自動販売機の機械音のみが聞こえる、しかし数分後

「よっと、何だよ用心しとけって言われたけど全然じゃねえか」

突然待合席のある天井裏からシュッと足音を立てずに男が降りてきた。彼の顔は前髪が長くてよく見えない、忍び装束の上に青いコートという特殊な服装の持ち主だ

「まあいいやさっさと仕事終わらせてジャンプの読書タイムに洒落込むか、確かコレだな・・・・・・」

男はそんな事言いながらコートのポケットからお札を数枚取り出して中から一枚選ぶ。

「さあてやっと本格的に作戦開始だ、俺が敵に回っちまったのを後悔するんだなジャンプ侍」

一枚だけ手にしたお札をプラプラさせながら男は堂々と廊下を歩いて行く。もはや用心する必要は無いと察したらしい

「摩利支天・服部全蔵、参る」

かつて江戸でお庭番衆史上最も恐れられた忍びが遂に動きだすのであった







[7093] 第三十七訓 夜中に気を付けるのは見知らぬ女と見知らぬ忍者
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/12/18 15:06
A組の生徒達が旅館で各々の部屋で休んでいる頃、銀時はと言うと


「あ~生き返る」

銀時は今、腰にタオルだけを巻いて湯気の立ち起こる何十人でも入れるような広い温泉に肩まで浸かって疲れを癒していた。
今日は一日中トラブルに巻き込まれた彼もやっと落ち着ける時がやってきたのだ

「これでしずな先生がいれば完璧だったんだけどな・・・・・・次入ってくんのはマヨとガキ、なんで野郎三人で温泉入んなきゃいけねえんだよコンチクショウ」

愚痴を呟きながら銀時は一人で温泉の中を顔だけ出して暇なのでふと温泉の中を探索し始めてみる。湯気が立ち起こっていて周りがよく見えないので前に気を付けて軽く泳ぐように移動していた。

「湯気で何にも見えねえな・・・・・・ん?」

温泉の中を探索していると銀時の視界に人影が二つぼんやりと見えてくる。温泉に入っていたのは彼一人ではなかったと気付いた銀時はすぐに誰がやってきたのか想像できた

「んだよもうあいつ等入ってきたのか? 声ぐらいかけろよ、しょうがねえ魚雷戦法でビビらせてやるか、ヘヘヘ」

意地悪い笑みを見せた後、温泉の中に顔の下まで沈めて銀時はそっと音を立てずにその人影に近づいて行く。
少しずつくっきりと見えてくる二つの人影、銀時はそこで顔を一回沈ませて水の中で息を止めながら移動を開始する。

(いきなり近距離から浮上して驚く面を見てやる、あそうだ、ついでにチ○コのデカさでも見てやるか、ネギの奴意外とスゲーモン持ってるかもしれねえし、マヨは・・・・・・あいつ心小さいからチ○コも小せぇんだろうな)

そんな事を考えながら銀時はぐんぐんと対象物に近づいて行く。だが近づいて行くたびに妙な違和感が出てきた。
目の前に温泉に浸かっている裸体はネギのように小さい体でもなく土方のような屈強な体でもない。銀時は水の中で首を傾げながらその二つの体の目の前に行く。
そしてその二人の裸体を見て銀時は心臓が止まりそうになった。

(あ、あれぇ・・・・・・もしかして)

頬を引きつらせながらその体を見て銀時は少しずつ顔を浮上させる。チャポンと水面から顔の上半身だけを出すと

「・・・・・・」
「は・・・・・・?」
「ひ・・・・・・!」

顔を出した瞬間、銀時がさっきまで見ていた体の持ち主達と目が合ってしまった。
しかもその人物は

「・・・・・・よ、よう・・・・・・お前等も風呂入ってたんだ、ハハ・・・・・・」
「お、お、お、お前・・・・・・!」
「え・・・・・・何で・・・・・・どうして・・・・・・?」

いつも付けてるメガネを頭に乗っけて入浴している長谷川千雨と、お酒のおかげでジンジンする頭を手でおさえている雪広あやかがそこにいた、銀時がその二人を見て固まっていると、あやかは顔を真っ赤にして、千雨はワナワナと恥ずかしさと怒りで震え

「こ、こんな所で何してんだァァァァ!!」
「ごふッ!」
「ああ・・・・・・」
「いいんちょッ! しっかりしろッ!」

顔だけ水面に出している銀時に向かって千雨は立ち上がり頭に向かってチョップをかます。その衝撃に銀時の顔がまた水面に沈む。
同時にあやかが銀時に自分の裸体を見られた恥ずかしさのあまり後ろにある大きな石にもたれかけながら温泉の中で意識を失いかけている。千雨は銀時にかました後、すぐにそちらに顔を向けた。

「おいッ! こんな所で気絶すんなッ! ここで気絶させされたら洒落にならねえよッ!」
「よ・・・・・・酔い覚ましの為に千雨さんと温泉に入りに来たら・・・・・・銀さんがこんな所に・・・・・・・しかも私の・・・・・・私の・・・・・・あふぅ・・・・・・・」
「いいんちょぉぉぉぉぉ!!」

何故銀時がここにいるのかとパニック状態になりつつあやかは目を回しながら石に背中を預けガクッと気絶した。千雨が激しく彼女の上体を揺すぶっても一向に目を開けようとしない。

「勘弁してくれよ・・・・・・お前のその気絶する習性どうにかしてくれよ、ていうかそもそも・・・・・・」
「ぶはッ! アテテテ・・・・・・」
「何で男のお前がここにいんだよッ!」

水面から再び出てきて頭をさすっている銀時に、千雨はとりあえずあやかをその場に放置した後振り返って思いっきり彼に叫ぶ。すると落ち着きを取り戻したのか銀時は顎に手を当てながら口を開く

「そうか、もしかしてここ混浴なんじゃね?」
「こ、こ、混浴ぅッ!? 男と女が一緒の温泉に浸かるあの混浴ぅッ!?」
「だろうな、男女の着替えは別だが中に入る温泉は一緒ってわけか・・・・・・ますますしずな先生を誘えなかったのがショックだな」
「ふざけんなよ何で混浴なんだよッ! 何でお前がここにいんだよッ! 何で私達がここにいんだよッ!」
「何言ってるのかわかんねえよお前、まずは落ち着け、あ・・・・・・」
「何だよッ!」

千雨の方へ顔を向けた瞬間すぐにそっぽを向く銀時に彼女がキレかけていると彼は手を震わせながら指差してくる。

「あの千雨ちゃん、早く座って・・・・・立ってるとあの・・・・・・“全部”見えるから・・・・・・」
「・・・・・・ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

混浴だと聞かされてパニックを起こしている千雨に向かって銀時は彼女から目をそむけながら顔を引きつらせて指摘する、さっきからずっと彼女の裸体が銀時の視点から丸見え。悲鳴を上げて千雨は慌てて温泉の中に体を沈める

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・銀八・・・・・・・見たかお前・・・・・・・?」
「・・・・・・上から下まで全部見た」











顔を真っ赤にしている千雨に向かって銀時は無表情でぶっちゃけた。

「テ、テ、テ、テメェェェェェ!!!」
「うぐッ!」
「殺してやるッ! ここで殺してやるッ!」

すぐに銀時の後ろに回って彼の首に腕を回してクリンチし、そのまま締め殺そうとする千雨。初めて身内以外の異性に自分の裸体を見られた事に彼女はもう完全に錯乱している。

「集団に入るのが嫌だったからこうやっていいんちょと二人だけで早めに入りに来たのに、何でお前と一緒に入るハメになるんだよッ!」
「うごごごごごッ! 今は教論が入る時間だからお前の方が悪いんだろうがッ!」
「知るかァァァァァ!!」
「あがががががッ! 何か背中に“色々”当たってるッ! 体の一部が色々当たってるッ! 俺的にはそっちの方がヤバいんだけどッ!?」

背中に自分の体をくっつけてくる千雨に銀時は慌てて叫ぶ。これ以上彼女とこんな事していると非常にマズイ

「傍から見たら裸のまま二人で抱き合ってる様にしか見えねえからマジでッ! この光景人に見られたらどうすんだテメェッ!」
「うるせえなッ! いいんちょは寝てっから大丈夫だよッ!」
「その発言なんかヤバいから止めてくんないッ!?  アァァァァァ!! もうダメ千雨ッ! もうお前の体全部背中に当たってるッ! 一旦離れてッ! 銀さんからの一生のお願いッ!」
「絶対離れねえッ!」

銀時の意見も耳に入れずに千雨は彼の背中に自分の体を押し付けたまま離れようとせずにそのまま腕で彼の首を締め付ける。だがふと何かの気配を感じて、千雨と首を絞められた状態の銀時は恐る恐る顔をそちらに向ける、見るとそこには

「・・・・・・」
「「あ・・・・・・・」」

腰にタオルを巻いて立っている土方がタバコを咥えながら無表情で温泉の中で抱き合っている銀時と千雨と、その近くで気絶しながら温泉に肩まで浸かっているあやかを眺めていた。今ちょうど温泉に入りに来たようだ

「・・・・・・」
「あ、あの土方君・・・・・・これはね・・・・・・」
「土方さ~ん、温泉どんな感じですか?」
「パンフで見たんスけどここ混浴なんスよね~、やっぱ女の子とかいるんッスかね~? へへへ」

何考えているのか分からないが絶対に誤解しているのだと思い、銀時が頬を引きつらせながら説明しようとするのだが、その前に教論のネギが腰にタオルを巻き、頭にオコジョのカモを乗せて元気そうに男子更衣室から出てきた。だが彼がこっちに来る前に土方は彼に近づきガシッと肩を掴む

「坊主、帰るぞ」
「え? 何でですか? 僕等まだ温泉に入って・・・・・・」
「ガキのお前に見せちゃいけないモンが中にいた、ここは一旦出直すぞ」
「見せちゃいけないモン・・・・・・ですか?」
「なんスかそれ?」
「いいから帰るぞ、邪魔しちゃ悪いからな」
「「?」」

土方の発言にネギとカモが首を傾げるが、そのまま彼に連れられて男子更衣室に連れ戻された。そしてピシャリと障子を閉める音が銀時と千雨の耳に聞こえてくる。

抱き合ったまま呆然としている二人と気絶している一人を残して、土方は自分なりに彼等の『フォロー』をしてあげたのであった。



































第三十七訓 夜中に気を付けるのは見知らぬ女と見知らぬ忍者

温泉に入ろうとする寸前で“見てはいけないモン”を見た土方は、入らずに旅館にあった浴衣だけを着て温泉から戻ってきた。

「悪いな風呂に入れなくて、だが俺達があそこに行ったら邪魔者になる、ここは空気を読んで消えるのが大人のフォローだ」
「あの~土方さんもしかして誰かいたんですか?」
「坊主覚えとけ、例え嫌いな野郎でもそいつの色恋の邪魔だけはするな、わかったか?」
「なんかよくわかんないけどわかりました・・・・・・」

男子更衣室から土方と一緒に出てきた彼と同じく浴衣を着ているネギは、タバコの煙を吐きながら言う彼の教えにイマイチ理解できなかったがとりあえず頷いておく。
例え普段から仲の悪い相手でもそいつの恋愛事情には決して邪魔だけはせずに静かに消える。
それが土方十四郎の『フォローテクニック』だ。

「それにしてもまさか万事屋の奴等があんな所まで進んでるとはな」
「ん~? どうかしたのアンタ達?」

銀時と千雨の進み具合に土方は眉をひそめていると、廊下から数人の生徒がやってくる。
先頭にいたアスナが更衣室の前で止まっていた土方とネギに尋ねてきた。

「アスナさん、皆さん揃って温泉入りに来たんですか?」
「ハルナと夕映はいないけどね、何か今後のスケジュール考えるとか言ってた、嫌な予感しかしないけど・・・・・・で? アンタ達もう風呂入ったの?」
「入ろうとしたんですけど土方さんが入っちゃいけないって・・・・・・」
「何よそれ、背中に入れ墨付けた人でもいたの?」

アスナの質問に土方は静かに口からタバコの煙を吐き出す。

「そっちの方が全然マシだったな、とりあえず今はお前等も入るな、わかったか?」
「はぁッ!? 何で私達まで入っちゃいけないのよッ!」
「土方さん、何かヤバいモンでもあったん?」
「また関西呪術協の者に何かされたんですか?」
「お、お化けでも出たんですか・・・・・・?」

勝手な言い分を口走る土方にアスナは抗議の目を彼に向けて、後ろにいた木乃香と刹那、のどかも追及してくる(ついでにのどかがいるのでカモは喋れない)。そんな彼女達に言おうか言わまいか迷った挙げ句、土方は遂に重い口を開いた。

「ここは混浴だ、それで今は万事屋の野郎がいつも連れて歩いてるメガネと金髪と一緒に温泉入ってる、お前等そこに入れんのか?」
「ええッ!?」

土方の情報を聞いてのどかが手を口に当てて驚いてると木乃香とアスナも深いため息をつく

「それは無理やわ・・・・・・」
「え? なんでですか?」
「ここ混浴なの・・・・・・あ~あ、天パにとってはイイ事尽くしってわけか・・・・・・」
「え? なんで白夜叉にはイイ事尽くしなんですか?」
「刹那さんみたいに頭の中お花畑の人にはわからない事よ」

よくわかっていない様子の刹那にアスナはしっしっと手で追い払う、生まれてから一度も男と女の恋なんて恐ろしいほど無縁だった彼女は理解できないようだ。
そんな彼女はさておき、ようやく土方から教えてもらった事情を隣で聞いていたネギも頷く。

「温泉に入れなかったのって銀さんが千雨さんといんいんちょさんと一緒にいたからなんですか・・・・・・」
「そうだ、という事でしばらくお前等温泉入ろうと考えるなよ、少しはお前等も空気ぐらい読んでやれ」
「あれ? やけに土方さん銀さんに優しくありませんか・・・・・・・?」
「さっき言っただろ嫌いな奴でも色恋の邪魔はすんなって」
「ああそういう意味だったんですか・・・・・・・」

小指で耳をほじりながらあっけらかんと言う土方にネギは苦笑しているといきなり「ヒッ!」という木乃香の小さな叫び声が聞こえる。二人は彼女の方へ顔を向けると彼女が震える指でアスナを指さしていた。

「ア、アスナ・・・・・・」
「どうしたの木乃香、そんなに顔を引きつらせて?」
「お・・・・・・おサル・・・・・・」
「おサル? 木乃香いくらアンタでもぶっ飛ばすわよ」
「ちゃうちゃうッ! アスナの足元におサルがッ!」
「はぁ~? おサル~?」

慌てて自分に指を指してくる木乃香に何言ってるんだと眉をひそめた後とりあえずアスナは足元を見てみると・・・・・・

「キー」
「・・・・・・何コレ?」

一匹の小さな子猿がアスナの足元にまとわりついていた。

「何で私の足元にこんなおサルがいんのよ」
「テメェの弟か?」
「とりあえずマヨこっち来なさい、顔面に一発入れたいから」

冷静に尋ねてくる土方にアスナがカチンと来ていると、足元にいる子猿が何時の間にか増えてる事に気付く。

「「キーキー」」
「あれ増えてない? 私の足元にいるサルが増えてない?」
「テメェ仲間だと思われてるんじゃねえか?」
「おーい、いい加減にしないとアンタ半殺しじゃ済まないわよ~」

タバコを携帯灰皿に捨ててる土方に向かってアスナが脅しで拳を振り上げた瞬間

「きゃあッ!」
「「「「「キーキーキー!」」」」」
「「「「「ウキーウキーウッキッキー!!」」」」」」
「うわッ! 子ザルの群れがあっちこっちからッ!」

いきなり何かに躓いたようにアスナがその場で転んで尻もちを付く。気が付くと周りにはゾロゾロとアスナの周りにいるのと同じ子猿達が群れで押し寄せてきたのだ、ネギは慌てて子猿の群れに一歩引く

「すみませんアスナさんって何人家族なんですかッ!?」
「修学旅行にこんなに家族連れて来て何様だテメェッ! 少しは常識ってモンをしろッ!」

刹那と土方に呼ばれながら子猿に転ばされたと思われるアスナはお尻をさすりながら起き上がる。

「アテテテ・・・・・・何抜かしてんのよアホコンビッ! そもそも私は家族いないのよッ! コイツ等とは全く無関係よ私はッ!」
「じゃあこの子猿は・・・・・・」
「チッ! 敵の仕業か・・・・・・!」

彼女の説明にようやく理解した刹那と土方は互いに武器を取り出す、刹那は持っていたお札『死装束』を黒刀に変え、土方は浴衣姿でも腰に差していた刀を鞘から抜く。

「「「「「ウキーウキー」」」」」
「コイツ等も恐らく式紙です、斬ればただ元の紙に戻るだけです」
「そいつは都合がいい、動物愛護団体に怒られなくて済むわけだ」
「きゃあッ!」
「はッ!」

刹那の話を聞いて余裕たっぷりに土方が刀を構えていると、突然女性の悲鳴が二人に飛んでくる。

「せっちゃ~んッ!」
「お嬢様ッ!?」
「「「「「ウキッキー!!!」」」」」

咄嗟に刹那がそちらに顔を向けると子猿達が集団で木乃香を胴上げしながら何処かへ攫おうとしている所。それを見た瞬間刹那の目つきが変わる

「お嬢様に・・・・・・!!」

右手に持つ死装束に力を込めて刹那は悲鳴を上げている木乃香を攫う子猿の集団に一気に近づき

「触るなッ!」

横一閃、その瞬間子猿の群れは一瞬で大量の紙切れになった。

「大丈夫ですかお嬢様ッ!」
「ありがとうせっちゃん・・・・・・けどその刀って・・・・・・」

子猿が消えてその場に倒れる木乃香に慌てて刹那が近寄り安否を聞いてくる、木乃香はそんな彼女にお礼を言いながら彼女が持っている刀に心配そうに目をやる。
『死装束』・高杉から貰った妖刀だ、木乃香も見た事がある

「その刀って前に“あの人”から貰った刀やろ・・・・・・」
「大丈夫です今はもう葉加瀬さん達のおかげで何もない無力なただの刀になってますので」
「ホンマに・・・・・・?」
「・・・・・・ホンマです」
「そう・・・・・・よかった・・・・・・」

ホッとしたように安心している木乃香を見て刹那は複雑そうな顔をする。
もし本当の事を言ったらまた彼女に余計な心配をかけてしまうからだ。
死装束が危険の無い刀になるわけがない、それは刹那自身が一番知っている事である。

刹那が木乃香の救出に成功している頃。土方も刀を両手に持って振りかぶり、乱暴に子猿たちをめった斬りにしていた

「チィッ! 数が多いだけかコイツ等ッ! ちっとは骨がねえとこっちは退屈だぜッ!」
「土方さんが斬ったおサルさんが紙に・・・・・・一体どうなってるんだろう・・・・・・」
「ウキーーーーー!!」
「きゃあッ!」

斬り刻まれた子猿が次々と紙になっていく光景見て、のどかが呆然としていると一匹の子猿が彼女に飛びかかる。

「ボケっとしてんじゃねえッ!」
「ひ、土方さんッ!」

だがのどかに触れる前にその子猿は土方によって刀で真っ二つに斬られた。

「あ、ありがとうございます・・・・・・」
「たく・・・・・・」

ドギマギしながらも頭を下げてお礼を言ってくるのどかに土方はプイとそっぽを向いて、新しいタバコを取り出し火を付ける

「そろそろ片付いて来たな・・・・・・おい坊主、ブツは無事か?」

火を付けたタバコを口に咥えながら土方は親書を持っているネギの方へ向いて尋ねると。彼は不思議そうな顔で土方の方へ向く。

「ええ、何故かわからないけど僕より木乃香さんの方におサルさん達が行ってたようなきがしたんですが・・・・・・」
「あの娘っ子に? どういう事だ?」
「親書じゃねえんだよ“俺達”が欲しいのは」
「きゃあッ!」
「一人でボーっとしてると危険だぜツインテールのお嬢さん」
「「!!」」

突然見知らぬ声が聞こえ土方とネギはハッとして同時に声のした方へ振り向く。そこにいたのは青いコートを着たのどかと同じぐらい前髪が長い男、しかも彼はあろうことか生徒の一人を拘束している

「悪いねぇ、俺も元々こういう仕事は好きじゃねえんだけど、やっとかないと俺の雇い主マジでヤバくなるらしいからさ」
「あなたは・・・・・・・! アスナさんッ!」
「くおらぁッ! 離しなさいよ変態ッ!」

突然見知らぬ男が現れてネギは戸惑いを見せるも彼が右手をアスナの首に回して捕まえている事の方に危機を察知した。

「なんなんですかあなたはッ! アスナさんを返して下さいッ!」
「そうよ今なら100発殴るだけで許してあげるから離しなさいよッ!」
「だけじゃねえよ、殺る気満々じゃねえか」

腕の中でじたばた暴れながら激しく抵抗を見せるアスナに男はツッコんだ後、気を取り直して再びネギに向かって余裕気に話しかける。

「このツインテールのガキを返して欲しかったら近衛木乃香の方を差し出せ」
「お、お嬢様をッ!?」
「渡さねえとこのガキの命は無いぜ」
「く・・・・・・すみませんアスナさん・・・・・・お嬢様の代わりに死んで下さい・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「おいそこのアマァァァァ!! 一秒も考えずに私の命諦めてんじゃないわよッ! そこは何か色々と悩む所でしょうがッ!?」

見た目は悔しそうだがあっさりアスナの命より大事な木乃香の方を優先する刹那に、男は戸惑う表情を見せて、アスナは彼の腕に捕まりながら刹那に向かって叫ぶ。だが彼女はしらっとした表情で

「『お嬢様が誘拐される』『アスナさんが死ぬ』どうみてもここは後者を選ぶべきでしょ?という事でアスナさん死んで下さい」
「せっちゃんアカンってッ!」
「正直そいつが死のうがどうでもいい、勝手に殺せ」
「土方さんッ!?」
「ダ、ダメです~!」
「ねえアンタッ! あそこの銃刀法違反者の二人を殺しなさいよッ! 私全力で協力するからッ!」
「何でそうなるんだよ・・・・・・・」

拘束されながらも刹那と土方を見ながら叫んでくるアスナに男は少々困った表情でつぶやく。
まさか速効で人質の命を切り捨てる輩がいるとは思わなかった・・・・・・

「まいったなこれ、まさか全く人質に使えねえ奴を人質にするなんてよ」
「うるさいわねッ!」
「しょうがねえ、お前殺しても後で化けて出てきそうだし・・・・・・」

アスナを拘束している右手ではなく左手で顔をおさえてブツブツ呟いた後すぐに顔を上げ

「直接お嬢様奪っちゃおうか」
「なっ!」
「そらよ、返す」

そう言った瞬間捕まえていたアスナを刹那めがけて思いっきり投げ飛ばす

「きゃあッ!」
「うわッ!」

飛んで来たアスナに刹那はそのまま彼女の下敷きに、それを見た土方がすぐに男の方へ刀を構えて走りだす。

「俺がいるのを忘れてんじゃねえよッ!」
「アンタの事は“よく”覚えてる、だからこれを使うんだよ」 
「煙玉ッ!?」
「よっと」

驚いている土方を尻目に男は懐から取り出した紫色の手のひらサイズのボールの様なものを取り出し、それを床に叩きつける。その瞬間辺り一面が紫色の煙に囲まれてそこにいたメンバー全員の視界を失ってしまう。

「前が見えねえ・・・・・・! まさか敵に忍びの道具を使う奴がいるとは・・・・・・」
「・・・・・・こうみえて俺は元お庭番衆でね“真撰組の鬼の副長殿”・・・・・・・」

背後から聞こえた男の声に土方は驚いた表情で振り向く、相手は自分の素姓を知っている。

「どうしてそいつを・・・・・・・! 何者だテメェッ! 何であのガキを攫おうとするッ!」
「そいつはちょっと言えないねぇ・・・・・・」

叫びながら男を探すも周りは煙のおかげで何も見えない。声が聞こえても姿は見えない、完全に八方塞がりだ

「テメェ等気を付けろッ! いつ襲われるかわかんねえぞッ!」

土方は周りに向かって叫ぶも、男は誰も襲おうと考えていなかった。何故なら

「あれ・・・・・・すんませぇぇぇん! 近衛木乃香さんいますかァァァァ!!!」
「オメェも見えてねえのかよォォォォォ!!!」

彼も自分が作った煙で前が見えないのだから

「こうなったら闇雲に探すしかねえッ!」
「待てコラァァァァ!! 何処いんだバカ忍者ッ!」
「土方さんッ! 怪しい奴捕まえましたッ!」
「ドアホッ! 私捕まえてどうすんのよッ!」
「なんか妙に二つの柔らかい物がここにッ!」
「ネギ・・・・・・私の胸捕まえてどうすんのよぉぉぉぉ!! 」
「あだッ!」
「コントやってんじゃねえよッ!」



煙の中で土方達が見えない中必死に叫びながら探すが何処にも男の姿は無い。しばらくして

「ハハッ! テメェ等が遊んでるウチに俺はもう捕まえちまったぜッ!」
「何ッ!?」
「お嬢様ッ! おのれそこかッ!」
「だから私だってつってるでしょうがッ!」
「木乃香さんッ!」
「安心しろ怪我はさせねえと思うぜ、あばよ」

最後に男は言い残した時、煙が消えていきメンバーの視界もようやく見えてくる。だが男の姿は何処にもなかった。

「逃げられたか・・・・・・・! クソッタレッ!」

逃がした事に土方は悔しそうに思いっきり拳で床を殴る。彼の隣にいたアスナはネギを見つけて慌てて詰め寄る

「ネギッ! アンタの持ってるのを奪うのが目的だったんじゃないのッ!? 何で木乃香を攫ったのよあいつッ!」
「僕だってわかりませんよッ! まさか修学旅行でこんな事になるなんて・・・・・・銀さんがいれば・・・・・・」
「あいつこんな肝心な時にいいんちょ達と温泉なんかに・・・・・・」

銀時の不在にアスナが歯ぎしりしながら腹立っていると、ふと近くでブツブツと声が
聞こえてきたのでそちらにチラッと目を向ける。

「お嬢様を守れなかった・・・・・・私はもう生きてる資格ありません・・・・・・何で今こうやって生きてるんでしょうか私・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・私死ねばいいのに・・・・・・」
「何しゃがみ込んで詠唱唱えてるの刹那さん・・・・・・怖いから止めて」

体育座りでネガティブ思考に入っている刹那を見てアスナが呆れていると、彼女は突然立ち上がり土方に近づいて今度は彼の近くで正座する

「土方さん私もう生きてる価値無いので切腹するんで介錯お願いします・・・・・・・」
「おう、綺麗に飛ばしてやるよお前の首」
「何バカな事やろうとしてんのよッ! 死んで逃げようなんてそうはいかないんだからッ!」

死装束を持って自分の腹に突き刺そうとする刹那にアスナが彼女の後ろ襟を掴んで止める。

「離してくださいアスナさんッ! お嬢様を守れなかった私なんて便所に吐いたタンカスのような存在なんですッ!」
「どんだけ卑屈になってんのよッ!」
「だって・・・・・・」

後ろ襟を掴まれアスナに宙ぶらりんされてる状態で刹那はうなだれる

「本来なら私はお嬢様を護る為の存在なのに、あんな男に・・・・・・」
「どうしたんせっちゃん?」
「何言ってんですかお嬢様・・・・・・お嬢様があの男に攫われ・・・・・・え?」
「ウチがどうかしたん?」

















攫われた筈の木乃香がキョトンとしながら立っている事にそこにいたメンバー全員は表情が固まった。

「何でお嬢様いるんですか? さっきあの男が攫ったって・・・・・・」
「そうよ、得意げにあの変態忍者アンタを手に入れたって・・・・・・」
「え? ウチ何もされてへんよ? 煙がモワモワしてた時もしゃがみ込んでじっとしてただけやで?」

ジト目で聞いてくる刹那とアスナに木乃香は首を傾げながら答える。それを聞いて土方は口にタバコを咥えながら疑問に頭を悩ます。

「ちょっと待ておい、じゃああいつ何かっさらったんだ?」
「あの~土方さん・・・・・・」
「どうした坊主、何かわかったか?」

ネギが非常に言いずらそうな顔をしていると彼の肩にずっと乗っかっていたカモが代わりに緊張しながら土方に向かってゆっくりと口を開いた

「トシの兄貴と仲の良い宮崎のどかっていう女の子が・・・・・・いないんすけど・・・・・・」

土方は絶句の表情を浮かべたままポロリと口からタバコを落とした。











































それから数分後

元お庭番衆『服部全蔵』は大きな布袋を背中に担いである場所に到着していた。
『本能寺』ここが彼とその雇い主の秘密のアジトだ

「お~い連れて来たぜ」

本能寺の中へ入り全蔵は誰かに呼び掛けるように叫ぶ。すると暗闇の中から足音が聞こえてくる。

「いつまで待たせる気やと思うとったらやっと戻ってきおったわ・・・・・・忍びのクセに何してんねん全蔵」

現れたのはメガネを付けて肩まではだけている着物を着た京都弁を使う黒髪の女性。彼女を見て全蔵は頭をポリポリと掻く

「連中の邪魔が入ってな、まあこうやっておたくが欲しいモン持ってきたんだから文句言うな」

そう言って全蔵は担いでいた大きな布袋を床に置く。その瞬間布袋が激しく動き出す。

「俺はこういう仕事嫌いなんでね、出来ればもう御免こうむりたい」
「安心しなはれもう無いわ、この娘っ子がいればウチの策は成り立つんや・・・・・・それじゃあ“木乃香お嬢様”とのご対面でもするかえ」

女は口元に笑みを浮かべながらまるで『クリスマスに貰ったプレゼントを楽しそうに開ける子供』の様に全蔵が持ってきた布袋の紐を解く。すると

「ぶはッ!」
「こんにちは木乃香お嬢・・・・・・ん?」
「こ、ここ何処・・・・・・?」
「・・・・・・は?」













袋の中から出てきた前髪の長い少女を見て女はまるで『クリスマスに貰ったプレゼントの中にDSが入ってると考えていたのにワクワクしながら開けてみたらワンダースワンカラーが入ってた子供』の様に固まった。

「な、何で私・・・・・・こんな所に・・・・・・」
「・・・・・・全蔵」

布袋から顔を出して周りをキョロキョロしながら怯えているのどかを見て女は全蔵に向かってポツリと呟く。すると彼はバツの悪そうに笑いながら

「い、いや~・・・・・・間違えちゃった」
「あ~間違えちゃったんかい、それなら仕方あらへんな~・・・・・・ってそれで済むと思ってんのかボケェェェェ!!」
「ヒッ!」

女の怒鳴りにのどかは身を縮こませる。

「何で近衛木乃香じゃない娘っ子を連れてくんねんッ!」 
「悪い悪いなんせ煙玉使ったからあんま見えなくてよ」
「忍者が煙玉で何も見えないってどういう事やドアホッ!」

悪びれる様子も無い全蔵に女はツッコんだ後「ハァ~」っと深いため息をつく

「どうすんねんコレ・・・・・・ただでさえウチら『あの人』に下っ端扱いされてるのにこんなミスしたらホンマ殺されるで・・・・・・」
「ミスしたってどうしたんや千草は~ん」
「うげッ!」

突然本能寺の入り口からひょっこり顔を出してきた少女に千草と呼ばれた女は思わず一歩後ずさりする。
現れたのは一見ゴスロリ衣装を着た可愛いメガネっ娘、だがその手には刀と脇差の二本の得物を持っているのでかなり不気味な印象がある。

「月詠・・・・・・」
「あの人に千草はんの応援と“監視”をしろと命令されたのでここに来たんどす~、あともう一人いたんやけどその人はどっか行ってしもうたわ~」

鞘から刀を抜いて刀身を見せる少女に、女は冷や汗を流す。この月詠と呼ばれる少女は本来は『天ヶ崎千草』こと自分が護衛として雇ったのだが、今ではすっかり“あの男”ともう二人の方に懐いてしまっている。

「そんでミスというのは~?」
「あ~悪い俺がやっちまった、近衛木乃香を捕まえたと思ったら別のガキを連れて来ちまった」
「奇遇稀に見ないミスの仕方どすな~全蔵はん」

腕を組みながら事の説明をする全蔵に月詠はケラケラと笑った後、また口を開く。

「ところでウチ全蔵はんの声聞くとなんかどっかで会った様な気がするんやけど」
「俺もアンタの声聞いてると妙に江戸にいたチャイナ娘を思い出すんだけどなんでだろうな?」

月詠と全蔵の話がおかしな方向に進んでると思った千草はズイっと二人の間に入って口を挟む

「んな事はどうでもいいんや、まずこれをどうにかせんと・・・・・・」
「あとお前の『千草』って名前も前にどっかで聞いた事あるような気がすんだけどなんで?」
「それウチも思ってました~」
「これ以上世界を崩壊させかねん発言は控えんかいッ! 今はこの娘っ子をどうするか考えるのが先やッ!」

首を傾げている全蔵と月詠にツッコんだ後、千草はまだ布袋に入っているのどかを指さす。
指を指されたのどかはまだ自体の成り行きを理解していない表情だ。

「ど、どうして私をこんな所に連れてきたんですか・・・・・・・?」
「別にわてらもアンタをここに連れてく気は無かったんや、わてらが欲しいのは近衛木乃香、アンタやない」
「何で木乃香を・・・・・・」

何故自分の友達を攫おうとしているのか、のどかはわけがわからない様子だが千草は全蔵をジロッと見ながら話を続ける

「それはこの痔持ちの忍者が間違えてアンタをここに連れて来たからや、全く・・・・・・」
「痔持ちの忍者ってなんだよ、まるで忍者に痔になっちゃいけない見たいじゃねえか」
「うっさいわ当たり前やろ、忍者で痔ってもうその時点で忍者やなくてただの痔持ちのアホや」
「痔になった事無えからそんな事言えんだよ、想像してみろ自分のケツの穴に灼熱の様な痛みが走る事を・・・・・・もう死ぬほど痛えんだよ・・・・・・ウ○コすんのもつれぇんだよ・・・・・・」
「女三人を目の前にしてケツの穴とかウ○コとか言うなボケェッ!」

辛そうな表情をして訴えかけてくる全蔵の頭をパカン!っと勢いよく叩く千草。
会話の通り服部全蔵は重度の痔持ちだ。

「もうアンタの肛門の事なんかどうでもええ、とにかくこの娘をどうするかや」
「さすがに殺すのは後見が悪いしな、今日は暗いし明日の早朝に宿にまた送り返すか、そうするしかねえだろ」
「わてらの顔思いっきりこの娘っ子にバレたけど・・・・・・まあ仕方あらへんか・・・・・・」

全蔵の意見に千草は頭を手でおさえながら承諾する。顔がのどかに見られてしまったが、さすがに子供相手に口封じする事なんて出来ない。

「そう言う事や月詠、娘を捕まえるのはこちらの不手際で明日や、あの人に伝えといておいてくれやす」
「あいあい~、はようお二人さんはお嬢様捕まえといて下さいね~、でないとあの人に殺されちゃいますよ~」

笑いながらゾッとする言葉を残した後、月詠は楽しげに本能寺から去ろうとする。
千草はそんな彼女を見送った後、全蔵に向かって手違いで捕まえてしまったのどかの事を指示する。

「その娘っ子の世話はアンタに任せたさかい、ほな」
「おい待てよ、普通そういうのは同姓のお前だろ、何で俺がそんな事しなきゃらならねえんだよ」
「二人共前髪が長いキャラやないか、頼むで」
「ちょッ! 何だよその理由ッ!」

全蔵の声も虚しく千草は手を振りながら月詠の様に何処かへ行こうとする。
残された彼と布袋から出ようとしないのどかはどうしていいのか困ってしまう。

「・・・・・・まあお互いBASARA出てる身だし仲良くしようぜ」
「あの・・・・・・どうして皆さん木乃香を捕まえようと・・・・・・・」
「それは話せねえな、ぶっちゃけ俺もそこん所詳しくねえんだよ、あいつなら知ってると思うぜ」
「忍びクセにペラペラと喋るなドアホ・・・・・・ったく・・・・・・」

全蔵の態度に千草はだるそうに本能寺の戸を開ける。すると目の前にさっき帰った筈の月詠が立っていた。

「まだ行ってなかったんかい?」
「いや~帰ろうと思うたんですけど、“この人達”が絶対通してくれへんやろうな~と思って」
「この人達・・・・・・? げッ!」

にこやかに説明する月詠に千草が頭に「?」を浮かべながら、外を見るとすぐに驚いた表情を浮かべる。

「真撰組、土方十四郎・・・・・・少女誘拐の罪でテメェ等全員俺が粛清してやる・・・・・・!」
「僕の生徒を返して貰います・・・・・・!」
「悪党ども神妙にお縄につけやがれぃッ! 今の俺っちのセリフ超カッケ~・・・・・・」

本能寺の前にある広場にいたのは口にタバコを咥えて鬼の様な形相を浮かべ既に抜刀している土方の姿が、その隣にはカモを肩に乗せて杖を持つネギの姿もある。

「本屋ちゃんッ! 生きてるなら返事して~ッ!」
「お嬢様私の背中についてて下さい、絶対に離れないように」
「うん・・・・・・」

土方達の後ろにはアスナや刹那、それに木乃香もいるではないか、何故彼等が自分達の居場所を特定できたのか千草は慌てる

「何でここがわかったんやッ!」
「俺と宮崎が買った携帯だ、宮崎の携帯にはGPS機能が搭載されてるんだよ、あいつが何処にいようが俺にはすぐわかる」
「はぁぁぁぁぁ誰がどこにいるかすぐ特定できるあのGPSッ!? まさかお前等デキとるんかッ!?」
「違えよバカッ! ハルナに携帯買うの手伝ってたもらってたらあいつが勝手にオプション付けてたんだよッ! つうかお前誰だッ! さっさとアイツ攫った忍者出しやがれッ!」
「ふんッ! 全蔵ッ! アンタ指名されてるでッ! ついでにあの娘っ子も持ってこいッ!」
「へいへいっと」

千草に呼ばれた全蔵はめんどくさそうにのどかをようやく布袋から出して表に出る。姿を現した全蔵と彼に後ろ襟を掴まれているのどかに土方は額に青筋を浮かべる

「てめぇそいつに何もしてねえだろうな・・・・・・!」
「安心しろい、おたくの娘さんは怪我ひとつねえよ」
「土方さんッ!」
「待ってろ宮崎ッ! すぐにそいつ等血祭りにして助けてやるッ! その上そいつ等を晒し首にするッ! そして閻魔に頼んでそいつ等地獄に叩き落とすッ!」
「いやそこまでしなくても・・・・・・」

刀を持って今にも暴れそうな土方にのどかの頬が引きつっていると、全蔵は思慮深げに広場にいるメンバーを確認する

「千草、こいつはチャンスじゃねえか?」
「敵に囲まれてそんな事が言えるんか、頭おかしくなったんか?」
「バカかお前、向こうの連中を見てみろ、俺達が欲しがってたお嬢さんがわざわざ俺達の所にやって来たんだぜ」
「そうやけど・・・・・・」

土方達が木乃香を連れて来たのは恐らく一人にさせるより一緒に連れて行った方がいいと思ったからだろう。更に全蔵は話を続ける

「それに見る限りあの銀髪のヤローはいない、いるのは神鳴流のガキと鬼の副長殿だけだ、俺と月詠でなんとかなるだろ」
「ウチの出番ですか~?」

隣にいた月詠がはしゃぐように全蔵の方へ向く。彼から見ると彼女の腕はかなり高いようだ。千草もなるほどと頷く

「そういえば『坂田銀時』の姿は何処にもないな・・・・・・・戦力は黒髪の男と神鳴流のガキ、それにあの子供先生・・・・・・ある意味一番危険やな・・・・・・」
「そうなのか?」
「わてから見れば『坂田銀時』より危険になる可能性が高いのはあのボウズや・・・・・・」

苦々しい表情で千草は全蔵と会話しながら広場にいるネギを見る。千草にとってはなるべく彼を敵に回して直接戦いたくない理由があるらしい

「まあ今はそんな事言ってられへんか・・・・・・全蔵ッ! 月詠ッ! 奴等を倒して近衛家の娘っ子を奪い取るんやッ!」
「はい~」
「あいよ」

千草が手を振り上げた瞬間、月詠は土方達の方に疾走し、全蔵ものどかを千草に預けて走り出す。それを見た土方達も戦闘態勢に入った。

「野郎遂に来たか・・・・・・坊主、あの二人は俺とこのガキに任せろ、お前はあの女の所に行って宮崎を取り返してくれ、こんな緊急事態だ、魔法とかバンバン使え」
「わかりました」
「了解ッスッ!」

土方の指示にネギは頷いて肩にいるカモもビシッと敬礼する。次に土方はアスナの方に振り返る。

「それとツインテールの小娘、お前は狙われてる娘っ子の盾になれ、お前が死んでもその娘っ子を守れれば俺達の勝ちだ」
「は?」
「お嬢様の代わりに死んでくれたらお葬式に行きますんで」
「なんかもう私絶対こいつ等と仲良く出来ないって自信が湧いてきたんだけど」
「い、いやふざけてるだけやから・・・・・・多分」
 
振り返りながら縁起でもない事を言う土方と刹那を見てアスナはジト目で彼等の事で木乃香に相談するが彼女は苦笑するしかなかった。

のどか奪取の作戦指示が終わった途端、全蔵と月詠が同時に反対方向から襲いかかって来る。
戦闘開始

「月詠ッ! お前はどっちを狙うッ!?」
「ウチは黒髪のお兄さんで~異世界の人は強い人ばっかやから期待してるんです~」
「じゃあ俺は・・・・・・神鳴流のガキか・・・・・・!」
「くッ!」

全蔵は走りながら向こう側にいる月詠と会話した後、すぐさま刹那に向かって襲いかかる、彼の手には一本のクナイ、刹那はすかさず黒刀になった死装束を取り出して応戦する。

鈍い音が聞こえ全蔵のクナイと刹那の死装束がぶつかる。

「お互いまだ自己紹介してないよな・・・・・・俺の名は服部全蔵、元お庭番衆だ・・・・・・」
「桜咲刹那・・・・・・神鳴流剣士のお嬢様を守る刀だ・・・・・・!」
「『刹那』・・・・・・いい名前じゃねえか、楽しくやろうぜ」
「お前等と楽しくやる気など・・・・・・無いッ!」

余裕気に笑みを見せている全蔵を刹那は死装束に力を込めて弾き飛ばす。だが全蔵は全く怯む様子も無くコートの下からすぐさま大量のクナイを指に挟んで取り出す

「まさか忍びが一本のクナイだけで戦うと思ってたのか?」
「そんなにクナイをもつ忍びの方が珍しいと思うがな・・・・・・」
「まあな、俺はどっちかつうと誘拐より・・・・・・殺しの方が生業でね・・・・・・!」
「!!」

ニヤリと笑った後全蔵は指に挟んでいた大量のクナイを投げる、刹那がそれに驚くがすぐに刀を構え戻す

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

次々に飛んでくる全蔵のクナイを刹那は時には避けて時には刀で弾き飛ばしながら全蔵に向かって突っ込んでいく。

「こんな攻撃で私に勝てると思うなッ!!」
「へ~ガキの割には結構歯ごたえありそうだな」

突っ込んできた刹那に全蔵は再びクナイを手に持って斬りかかってくる彼女の刀を受け止める。

「いい刀だな、何処で買ったんだそれ?」
「お前には関係ない・・・・・・!」
「つれねえな・・・・・・素直に攘夷志士の一人から貰ったって言えばいいのによ・・・・・・」
「なッ!!」

小声で耳元に呟いてきた全蔵に刹那は目をカッと開く

「何でお前・・・・・・その事を・・・・・・・」
「聞きたかったら俺を倒してろよ、“刹那”」
「言われ・・・・・・なくても・・・・・・! ぐッ!」
「腹が“お留守”だぜ」

全蔵のクナイに刀が若干押され始めてきたので刹那が焦り始めている時、更に追い打ちのように全蔵は余ってる方の手で彼女の腹に思いっきり拳を入れる、刹那はそれに短く呻き声を上げた後、状態を立て直そうとつばぜり合いを止めて数歩下がる。

「くそ・・・・・・!」
「さて温まって来たしそろそろ全力で行かしてもらうか・・・・・・!」
「何でお前があの男の事を知っているのか・・・・・・教えてもらわない限り私は絶対に倒れない・・・・・・!」

再びコートの下から大量のクナイを取り出す全蔵に刹那は挑戦するかのように刀を構える。
全蔵と刹那の戦いはなおも続く







全蔵と刹那が戦っている頃、土方の方は木乃香とアスナを後ろに置いてもう一人の敵と戦っていた。

「アハハ~お強いんどすな~本当は銀髪のお兄さんと戦いたかったんやけど、黒髪のお兄さんも十分強いどす~」
「あんな今頃ハーレム決め込んでる奴と一緒にすんじゃねえ」

月詠は笑いながら土方に刀を振るう、しかも一本では無い、右手には普通の刀、左手には脇差を持って攻撃してくるのだ。土方はタバコを口に咥えながら襲ってくる二本の刃を一本の刀で受け止める。

「二本の刀を両手に持つ二刀流を自分の物にするのには時間と経験が必要、その若さで習得するとは対したもんだ」
「お褒めの言葉ありがとうございます~」
「マヨッ! 敵に感心してる場合じゃないでしょッ! 早く倒しなさいよッ!」
「うるせえッ! 俺は女が相手だと苦手なんだよッ!」

後ろから飛んでくるアスナの野次に答えながら土方は月詠と何度も刀をぶつけ合う。刀のぶつかり合いが止む事が無い光景をアスナと木乃香はその戦いの末を見守るしかない

「木乃香、刹那さんの方は?」
「押されとる・・・・・・あの忍者の人メチャクチャ強い・・・・・・」
「一体何なのよコイツ等・・・・・・何で木乃香を狙ってくんのよ・・・・・・」
「わからへん・・・・・・・何でこんな事になってるのかも・・・・・・ところでネギ君は大丈夫なん?」
「ネギは・・・・・・」

心配そうにつぶやく木乃香を見てアスナはふとネギのいる方向に目をやる。

刃物がぶつかり合う音がしている中、ネギは杖を持って本能寺に立つ千草を静かに見上げていた。

「欲しいのはこの娘っ子どすか?」
「ネギ先生この人達危険ですッ! 逃げて下さいッ!」
「心配しないで下さいのどかさん、僕は大丈夫なので」
「でも先生子供ですし・・・・・・」
「アハハ、子供でも生徒を守るのが僕の義務です」

笑いかけてくる千草の腕にはのどかが捕まっている。のどかは必死にネギに逃げるよう促すがネギは笑いながら大丈夫だと諭す。それを見ていた千草は「ふーん」と興味深そうに眺める。

「こんな状況でも笑ってられるなんてやっぱ“師匠”の影響を受け取るんやな~」
「え・・・・・・?」
「わてはアンタの事色々知ってるんやで子供先生、幼少期に宇宙海賊『春雨』に村を襲われた過去を持つサウザンドマスターの息子、そして・・・・・・」

千草はそこでニヤリと笑って

「あの夜兎族の神威の唯一の弟子なんやろ? ネギ・スプリングフィールド、神威に色々と教えてもらったで」
「!!」

肩に乗っかっているカモはちんぷんかんぷんな表情をしているがネギは口を開いて驚いている。目の前の女性が神威に会った事があるという事実に

「どうしてあなたが神威さんと・・・・・・!」
「それは直接本人に聞いた方がよろしゅうと思いますで、それじゃあ始めましょうか神威のお弟子はん・・・・・・」

そう言って千草は懐からお札を何枚か取り出す。

「舞台は盛り上げないとつまらへんからな、ネギ先生・・・・・・」
「く・・・・・・!!」

ネギと千草の戦いも遂に始まろうとしていた。






































ネギ一行が本能寺で乱戦を行っている頃、銀時はというと千雨とあやかを連れて夜の京都を散歩しながら土方達を探していた。念のため腰には木刀を差しているが、夕凪は旅館の部屋に置いたままだ。

「アイツ等何処行ったんだよ、ザジの奴が「急ぐように旅館から出て行った」って言ってたけど・・・・・・本当さっきの誤解を解かねえと後々ひ孫まで語り継がれる事になるぞコラ」
「お前と関わるとロクな事にならねえな本当・・・・・・」
「そんな事言ってる割にはいつも一緒にいますわよね千雨さん」
「・・・・・・」

隣にいるあやかの意見に千雨が黙っていると銀時は大きな橋を渡ってる所でピタッと止まる。

「ん? どうしたんだよ急に止まって」
「あの女・・・・・・」
「あの人がどうかしたんですか?」

不審な物を見るような目で銀時はこちらに歩いてくる女性を見る。フードで顔をすっぽり隠してそこからはみ出ている長い金髪を揺らし、ローブの下から見える女の体をくっきりと見せる美しい金色のドレス。地元人どころか観光客でもあんな恰好をする筈、しかもこんな夜中を一人で歩いてるとは。だが銀時はそれよりも別な事に気になっている事がある。

「千雨、あやか・・・・・・・」
「なんだよ?」
「はい?」
「下がってろ、あの女はヤベェ・・・・・・」
「何言ってんだよお前・・・・・・確かに見た目怪しいけどよ」
「銀さん?」
「・・・・・・・」

銀時の指示に千雨とあやかが首を傾げている間に向こう側から歩いてくる女はどんどんこちらに近づいてくる。一歩一歩近づいてくるたびに銀時の目つきは変わって行く。

「半端ねえんだよ・・・・・・」
「は? あ~確かに半端なく美人かもしんねえな、お前が夢中のしずな先生見たいにスタイルも良さそうだし」
「“殺気”をガンガン俺にぶつけてくんだよあの女」
「・・・・・・え?」

思わぬ銀時の一言にしかめっ面をしていた千雨が一瞬呆気にとられていると女はユラ~と手を水平に上げる。次の瞬間

「剣・・・・・・!?」
「西洋のつるぎ・・・・・・何故あんなものが突然・・・・・・!」
「お前等逃げろ、マジで」
「銀さんはッ!?」
「ここからは大人の男と女の時間だ、ガキは帰れ」

女の目の前に突然空中に現れる日本刀とは形が違う金色の刀身を持つ剣。それを手に持って女は構える。そして

「銀八ッ! あの女急にこっちに走ってッ!」
「言われなくてもわかってるつうのッ!」

剣を片手で持って肩に担ぎながら女はこっちに走ってくる。慌てる千雨をよそに銀時は瞬時に木刀を抜き、そして

ガシィンッ!っと女と銀時が剣と木刀でつばぜり合いを開始する。

「銀八ッ!」
「銀さんッ!」
「オイオイ、マジで何様ですかあなた・・・・・・! この世界で女の怨みなんか買った覚えねえぞ・・・・・・!」
「・・・・・・」

千雨とあやかが銀時に向かって叫ぶ中、彼は辛そうに笑みを作りながら女に話しかけるが彼女は無言のまま剣に力を込めて行く。

「千雨ッ! あやかッ! とりあえずもっと後ろに逃げろッ!」
「は、はいッ!」
「銀八ッ! そいつ一体何なんだよッ!」
「んなもん俺が・・・・・・知りてえよッ!」
「銀八ッ!」

千雨とあやかが心配そうに銀時と女性から5Mぐらい離れると、彼は力を込め女の剣を弾き、つばぜり合いを止め一気に攻めかかる。だが女性は何の支障も無さそうに銀時の剣撃を余裕で金色の剣で受け止める。
木刀と剣のぶつかり合いが数分経った頃、また銀時と女は木刀と剣でつばぜり合いを始める。

「テメェ・・・・・! 何で俺を狙いに来たんだよ・・・・・・!」
「・・・・・・」
「何とか言えよ・・・・・・! 無口な女は嫌われるんだぞコノヤロー・・・・・・!」
「・・・・・・これが・・・・・・」
「あんッ!?」

何も喋らない女に銀時はつばぜり合いの途中イライラしながら彼女を見る。するとフードの下からちらりと見えた彼女の口がボソリと動いた。

「これが高杉晋助のかつての同志の力か・・・・・・・」
「な・・・・・・! 高杉だとッ!?」

女の言葉に銀時は表情に驚きを隠さなかった。高杉晋助、銀時にとってある意味縁の深い人物の一人だ

「なんでアイツを知ってんだテメェッ! 答えろッ!」
「・・・・・・ここで死ぬ奴に教える必要などない・・・・・・」
「ぐッ!」
「銀さんッ!」
「ぎ、銀八ッ!」

急に女が力を剣に込め始め銀時の体は徐々に後ろに下がって行く。押されている彼を見てあやかと千雨が悲鳴のように叫ぶ。

銀時は苦しそうな顔で後退させられながら女性のフードの下からうっすら出ている顔を見る。








女の目は氷の様に冷たい目だった



[7093] 第三十八訓 転ぶ先に一筋の光
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2009/12/25 13:22
人気のない場所にある大きな橋。そこに一人の男が二人の少女に見守られながら一人の女とお互い牙をむいて戦っていた。

「くおらぁぁぁぁ!!」
「・・・・・・」

銀時の木刀による乱舞攻撃もフードで顔を隠す謎の女は無言のまま持っている金色の剣で華麗に受け流し、銀時の攻撃の隙を付いて女は剣を前に突き出す。

「チッ!」

女性とは思えない早さに不意をつかれたのか銀時はその突きを肩に掠めてしまい一歩下がる、それを後ろから見ていた千雨は彼の肩に出来た傷を見て体が震える。

「ぎ、銀八・・・・・・血が・・・・・・」
「・・・・・・こんなモン唾つければ治る」
「で、でも・・・・・・!」
「お前はそこでジッとしてろよ、すぐに片付けっから」

後ろにいる千雨に振り返らずに話し終えた後、銀時は肩から流れる血を気にせずに女に向かって走り、持ってる木刀を横薙ぎに振るう。だが女はその剣撃を受ける前に上に飛翔

「なッ!」

ゆえに3Mぐらいの跳力を見せる女に銀時が唖然としてると、そのまま彼女は空中で前宙して回転力を入れ銀時に剣を振り下ろす。

「へッ! 曲芸師ですかコノヤローッ!」
「・・・・・・」
「ぐッ! 重てぇ・・・・・・! この力・・・・・・本当に女か・・・・・・!?」

剣を振り下ろしながら落ちてきた女の攻撃に銀時は木刀の両端を持って受け止める。その威力に彼の体が若干沈みそうになり、思わず顔に苦しそうな表情を浮かべていく。

「銀さん・・・・・・!」

銀時の持つ木刀が女の金色の剣によってミシミシと悲鳴を上げているのに、千雨の隣で一緒に見守っていたあやかは考える、何とかしなければ

「警察に・・・・・・千雨さん警察を呼びにッ!・・・・・・千雨さん?」
「・・・・・・」

あやかが話しかけても千雨は体を震わせながら銀時と女を瞬きも忘れて凝視している。
今まで彼女は本気で戦っている銀時の姿を見た事が無い、いつもふざけた調子の彼があんな顔になって敵と対峙している事に千雨の体の震えは止まらない。

「銀八が・・・・・・銀八が・・・・・・」
「千雨さん・・・・・・」
「いいんちょ・・・・・・あいつ大丈夫だよな・・・・・・大丈夫だよな・・・・・・」
「・・・・・・大丈夫に決まってますわ」

銀時が殺されるのではないかという不安に押し潰されになっている千雨にあやかは安心させるように頷く。今までこんなに震えて不安と恐怖に駆られている千雨の姿を見るのは彼女も初めてだった。

木刀が折れる前になんとか体をずらして横っ飛びし、そのまま女をギョロリと睨んで攻撃に転じる銀時を見ながら千雨の息はだんだん荒くなってきた。あやかも警察の所へ行くなど忘れて彼の安否を心の中で必死に祈る。

これが彼女達が初めて見た銀時のもう一つの姿であった















































第三十八訓 転ぶ先に一筋の光

銀時が謎の女と刃を合わせている頃、京都にある本能寺ではまだ戦いが繰り広げられていた。

「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・」
「オイオイもう終わりか? 俺はまだピンピンしてるぜ、せめて一撃ぐらい俺に当ててみろって」

疲労と苦痛に耐えかね四つん這いになって息を荒げている刹那の姿に、彼女の敵である服部全蔵は持ってるクナイを振り回しながら嘲笑っている。
刹那の両太ももと左腕にはクナイが刺さり、立つ事も辛いし刀を持つのも辛い。だが彼女はそれでもなんとか立ち上がろうと顔を上げる。

「お前みたいな奴には・・・・・・絶対に負けない・・・・・・!」
「そうかい、ホレ」
「うぐッ!」
「せっちゃんッ!」

歯を食いしばってこちらを睨みながらなんとか立ち上がった刹那に、全蔵は振りまわしていたクナイを投げ彼女の右腕に突き刺す。両足の次は両手の自由も奪われ、再び倒れてしまう刹那に見てられなかった木乃香が泣きそうな顔で走り寄る。

「せっちゃんしっかりッ!」
「お嬢様・・・・・・お逃げ下さい・・・・・・」
「さてさて姫様を守る騎士も倒した事だし、そろそろお宝を頂くとするか」

目の前で刹那を抱きかかえている木乃香を見て全蔵はまるで終わったようにツカツカと二人に近寄って行く。

「悪いが俺もこうみえて結構必死でね、あんたを連れて行かないと俺の雇い主が殺されちまうし、そいつの命だけは助けてやるからこっちに来い」
「何で・・・・・・何でウチを・・・・・・」
「さあな、俺はただの腕を買われた忍びだ、俺も月詠も雇兵みたいなモンだからな、ただ命令に従うのみなんだ、俺が思う限り知ってるのはあそこにいる女と・・・・・・」

全蔵はネギと対峙している千草に目をやった後、すぐに目に涙を溜めている木乃香の方に顔を戻す

「過激派攘夷志士の高杉ぐらいじゃねえか?」
「た、高杉って・・・・・・!」
「高杉晋助・・・・・・前に私達の学校に現れた左目に包帯を巻いた男です・・・・・・」
「あの人が・・・・・・またあの人が何かやってるん・・・・・・・」

全蔵と自分の腕に抱かれている刹那が言った名前に木乃香は息を呑む。
彼女は一度だけ彼に会った事がある。女物の着物を着て口元に常に笑みを作り、その目は今まで見た事のないほどの深い闇に覆われている様だった。言葉巧みに自分の幼馴染の刹那を操って銀時と戦わせた張本人。高杉晋助、彼はまた自分達に何かしようと企んでいるのだろうか。

「俺は千草に同行した時にあいつと何度か会ったことあるが・・・・・・いけすかねえ目をした男だったぜ・・・・・・何をやるつもりか知らねえが、イイ事じゃねえのは確かだな」
「そんな・・・・・・またあの人アカン事しようと・・・・・・」
「まあもっと詳しく知りたいなら本人に聞いてみればいい・・・・・・俺が連れてって会わしてやるよ・・・・・・」
「い、いやや・・・・・・!」

歩み寄ってくる全蔵に木乃香は涙を流しながら首を横に振る。だが全蔵は情を捨て近づいてくるのを止めない、彼にも雇い主の命がかかっているのだから。
するとこっちに来る全蔵に刹那の妖刀死装束に一瞬禍々しい輝きが映り出した。

「高杉の犬の分際でお嬢様に・・・・・・・!」
「ん?」
「近寄るなァァァァッ!!」
「おっと」
「せっちゃんッ!」
「お嬢様は渡さないッ!」

残った力を限界まで振り絞って刹那は持っていた死装束を近づいてきた全蔵に振り上げる。
咄嗟に反応して後ろに下がった彼を睨みながらかろうじて立ち上がり、刀をまた構え直す。

「お嬢様・・・・・・私の後ろに隠れて下さい・・・・・・」
「せっちゃんもう無理せえへんでええよッ! ウチ土方さん呼んで・・・・・!」
「ダメです・・・・・・・あの人だって戦ってるんです・・・・・・ネギ先生だって・・・・・・この男は私だけで・・・・・・」

刹那は疲れた表情で後ろにチラッと振り返る。土方が二刀流の月詠と一瞬で何十回も刃を会わせながら戦っている。彼の戦闘を見るのはコレで二度目だが、本当に強い。

「私も・・・・・・あの人や白夜叉の様に強ければ・・・・・・」
「あ~らら~無理しちゃって、そういう生き方してる奴は長生きしねえんだぜ?」
「黙れッ! お前や高杉の好き勝手にはさせないッ!」
「しょうがない・・・・・・お前みたいなガキ嫌いじゃねえんだけどな・・・・・・」

噛みつくように叫んでくる刹那に全蔵は頭を手でおさえてやれやれと首を横に振った後コートの下から再び大量のクナイ手裏剣を取り出す。

「ここらで大人の怖さって奴をその身に叩きこんでやるよ・・・・・・」
「来い・・・・・・例えこの身が塵になろうが木乃香お嬢様だけはお守りする・・・・・・!」
「いいねぇ、いい顔になって来たじゃねえか、俺もなんかゾクゾクして来たぜ・・・・・・!」

決意を決めた刹那の表情に全蔵は楽しそうに笑みを作り長い前髪の間から目を光らせる。互いの得物を取り出した今、間もなく戦いの火蓋が再び切って落とされる。

「せっちゃん・・・・・・」

両手で祈り合わせ木乃香は必死に幼馴染の無事を祈る事しか出来なかった。















































刹那と全蔵が戦っている頃、彼女達の後ろでは土方が月詠相手に奮戦していた。

「ちょこまかしやがって・・・・・・」
「ハハハ、こっちどす~お兄さん」

茶化すようにそう言うと月詠はピョンピョン跳ねながら二本の刀を振るってまだ口にタバコを咥えている土方に斬撃を行ってくる。彼はそれを一本の刀で防いで弾き飛ばして、状態を崩した月詠に攻撃を当てようとするも、またピョンと跳ねてバックステップを取り土方から距離を取る。

「めんどくせえ相手だ、カエルみたいに跳びやがって」
「はう~ウチ女の子やからもっとカワイイので例えて下さ~い」
「モウドクフキヤガエルでいいか? 黄色くて可愛いぞ」
「結局カエルじゃないですか~~しかも猛毒ってワード付いてます~~」

冷静な土方に月詠は刀を握っている両手をブンブン振りまわして抗議する。
そんな彼女を見て土方はハァ~とため息とタバコの煙を同時に口から吐く。

「お前腕はいいのは確かだがやっぱガキだな・・・・・・やりずれぇ」
「ガキだからってあんまり舐めない方がいいですよ~」
「おっと」

今度はこちらに向かって跳んでくる月詠に土方は体を捻って避ける、だが彼女はすぐに振り返って脇差で心臓めがけて突いてくる、彼はそれを刀で受け止める。

(攻撃のテンポが上手く読めねえ・・・・・・こんなガキだが油断してるとすぐに命持ってかれるな・・・・・)
「お兄さん本当にお強いどすな~でもあそこで戦ってるお兄さんのお連れさんは全然です~~」
「何? なッ!」

脇差しと刀でつばぜり合いをしている中、月詠が呑気そうに話しかけて後ろの方に振り返る。土方も見てみるとそこには彼の連れである刹那が敵の一人のあの忍者に追い込まれている所で会った。

「クソッ! あのバカあんなになるまでやられてんのかよッ! どけッ! テメェの相手は後だッ!」
「あ~ん」

刀を思いっきり横に振るって月詠を一気に吹き飛ばし、冷静さを忘れて土方は刹那の方へ走る。だが瞬時に来る後ろからの殺気

「チィッ! 素直に行かしてくれるわけねえかッ!」
「いけず~ウチともっと遊んで~」
「めんどくせえの相手にしちまったぜ・・・・・・」

今度は脇差しではなく刀の方で襲ってくる月詠に土方は舌打ちしながら迎え撃つ、どうやら彼女を倒さない限り刹那への応援は出来ないらしい。

「あっちはあっちで遊んでるんやから、ウチらはウチらで楽しみましょ~~」
「・・・・・・そうか俺とそんなに遊びてえか?」
「え?」
「だが俺がやりたいのは遊びじゃねえ・・・・・・」


刀と刀をぶつけ合わせた状態の時に、土方は口に咥えていたタバコをプッと捨てた後、足場を固め月詠み向かって横薙ぎに振るう。あまりにも突然の早さに月詠は思わず一歩退く、だがそれを見逃さず土方は彼女に向かって突っ込む。

「俺がやりてえのは・・・・・・喧嘩だ・・・・・・!」
「うわ~瞳孔めっちゃ開きおった~~、やっと本気になってくれたんどすか~嬉しいわ~~」
「派手なパーティをお始める・・・・・・・!」
「わ~い」

瞳孔が完全に開いた土方による度重なる連続攻撃を月詠は笑いながら二刀の刃で受け止める、だが彼女と同じく口に笑みを浮かべている土方は攻撃を止める気配を一切見せない

「ショータイムだ・・・・・・!」
「お付き合いしま~す」

のほほんと笑いながら月詠は土方の斬撃を軽く受け流していく。
どうやら刹那と違ってこちらはまだどちらが優勢かわからないようだ。












一方ネギと千草の所はというと

「喰らえなはれッ! 三枚符術・京都大文字焼きッ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!! 火出た火ィィィィィ!!」
「兄貴ィィィィ!! 俺達このままだと死ぬッスゥゥゥゥッ!」

人質に使えるのどかを一旦後ろに置いた千草は、懐から出した札をネギ達に向かって放つ、その瞬間彼等の頭上に向かって大の字の形をした炎が落ちてくる、ネギの使う西洋魔術とは違う関西呪術だ。
後ろについて眺めていたアスナとネギの肩に乗っかっているカモがパニくっていたが彼は落ち着いて上に向かって杖を突きだし

「風化・風塵乱舞ッ!」

ネギの叫び声と共に突然暴風が彼の周り起き上がり、飛んでくる炎をあっという間に吹き飛ばして消滅。

「これぐらいの魔法どうって事ないです」
「呪布使いのウチの炎がこんな簡単に・・・・・・・」
「助かったッス・・・・・・」
「ちょっと危ないでしょッ! 女子供になんちゅうもんやってくるのよッ!」


術が効かなかった事に苦々しい表情を浮かべている千草にアスナがカンカンになって怒っるが彼女は悪びれる様子もなくしかめっ面をするだけ。

「神威の弟子なんやから殺す気でいかんとアカンやろ、けど本当に殺さへんから安心せい」
「・・・・・・」
「もしアンタを殺したらこっちがアイツに殺されるわ」

意味ありげな笑みをこちらに向かって浮かべてくる千草にネギは黙ったまま杖を構える。
一方千草の話に全くついていけない様子のアスナとカモは頭がこんがらがる

「神威? 誰ッスかそれ?」
「松山ケンイチ主演の奴?」
「姐さん、それ『カムイ外伝』」

とんちんかんな事を言うアスナにカモがツッコんでいるとネギがボソリと二人に向かって呟く。

「神威さんは僕に戦い方を教えてくれたお師匠さんです・・・・・・麻帆良で会ってそれからずっと色々と戦術を学ばさせてもらいました」
「しッ!?」
「師匠ッ!?」

ネギの思わぬカミングアウトにカモとアスナが同時に驚く。そんな事全く予想だにしていなかったのだ。

「師匠ってアンタそんなのいたのッ!? しかも麻帆良で戦い方教えてもらってたッ!? 意味わかんない何でアンタがそんな事必要なわけッ!? つうかそもそも何で私に一言も言ってないのよッ!?」
「すみませんアスナさん、神威さんに絶対に他言無用だって言われていたので・・・・・・」
「他言無用って・・・・・・アンタその神威って人何者なの?」
「俺っちも気になるッス、どうみてもそいつ怪しいッスよッ! 他人同然の兄貴に戦い方なんて教えるなんてッ!」
「それは・・・・・・」
「そこのナマモノとお嬢さんは知らないようやな、あの神威って奴の事」

アスナとカモが心配そうに追及してくるのでネギはどう言えばいいのか困っていると不意に千草が彼等に向かって話しかけてきた。

「神威って奴は人間やない、『夜兎』や」
「・・・・・・」
「夜兎? 何それ?」

『夜兎』その名前を千草から聞いた三人の反応はそれぞれだった。ネギは下唇を噛み、アスナは「は?」と目を細めて首を傾げる。一方ネギの肩に乗っているカモはその名を聞いて震えだす

「や、や、やや、ややややや・・・・・・!」
「どうしたのよアンタそんなに慌てて」
「夜兎ォォォォォォ!? ちょッ! 夜兎ってマジっすかッ!? 兄貴そいつただのヤバい奴じゃありやせんッ! 危険中の危険ッ! 超デンジャラスな化け物じゃないっすかぁぁぁぁぁ!!!」
「えッ! カモ君、夜兎を知ってるのッ!?」
「当たり前ッスよッ! あらゆる場所を旅してきた俺っちにとって夜兎ってのは一番関わっちゃいけないモンでトップ3に入ってるんスからッ!」

ワタワタと両手を振りながら慌てているカモが知っている事にネギは驚く、カモは再び話を続ける。

「夜兎っつうのは昔かつて魔法界に突然宇宙から殴りこみにきた謎の種族の名前ッスッ! 兄貴知らなかったんスかッ!?」
「ええッ! そうなのッ!?」

聞いた事無かった情報にネギが驚いているがアスナがまた首を傾げている。

「ネギ、魔法界って何?」
「あ、そういえばアスナさん達にはまだ言ってませんでしたね・・・・・・」

ネギは頭を掻き毟りながら質問してきたアスナに意を決して答える。魔法も知っている彼女なら別に話してもOKだろう

「実は魔法使いだけが住んでいる『魔法世界』というのががこの世界の裏側にあるんです」
「へ~・・・・・・はッ!?」
「僕みたいに修業で来たり普通の人間を装って生活する為にこの世界に来る魔法使いもいますが、基本は魔法使いは魔法界にいるのが主流だって言われてますね」
「天パの世界以外にも異世界ってあんの・・・・・・なんかどんどん頭痛くなってきた・・・・・」

銀時のいる世界とはまた別の世界の存在をネギから知り、アスナは頭を手でおさえながらため息を付く。一体この世にはどれぐらい別の世界があるのだろうか・・・・・・

そんな事を考えているアスナをよそにカモは話を続行する
 
「魔力が無いにも関わらず戦闘能力は並の魔法使いだと一瞬で屍に変えちまうほどの圧倒的強さ・・・・・・しかもその一族を率いていた首領は一人だけで魔法界の国を何個も滅ぼしたもう魔王どころか大魔王・・・・・・いや超魔王に君臨出来る程の野郎だったという話ッス・・・・・・!」
「ちょっと待ってよ一人だけで国を潰すッ!? 何よその化け物ッ!?」
「だから化け物だっつってるっしょッ! 幸いその時はネギの兄貴の親父さんの『サウザンドマスター』とその仲間達がなんとか首領含め、夜兎族全員を魔法界から追い出す事に成功したらしいんスけど・・・・・・まさかまだここに夜兎が残ってるなんて・・・・・・・」

カモはそこで話を終えてため息を付く。魔法使いでもないただのオコジョ妖精の彼でも余程ショックな出来事らしい、しかも知り合いが関わっている事に更に落ち込む。
だがそんな不安で一杯一杯のカモをよそにネギは一人で考えに没頭していた。

「父さんが夜兎族を追い出した・・・・・・僕の恩人の星海坊主さんは夜兎族・・・・・あの人確か父さんの古い知り合いだって言ってたけどまさか・・・・・・」

ブツブツとネギがつぶやいている姿を見て千草はようやくカモの話が終わったのかと三人に向かってだるそうに話しかける

「もう夜兎族と魔法使いの歴史の話は終わったんかえ?」
「あ、ゴメン、そういえばアンタがいる事忘れてたわ」
「腹立つ小娘やなぁ~・・・・・・」

自分の存在に今さっき気付いたようにこちらをみるアスナに、千草はカチンと来たような顔をして睨む

「まあええわ・・・・・・・それでわかったやろ、この先生の師匠さんはとんでもなくヤバい奴やって」
「・・・・・・」
「戦闘本能の塊のような種族『夜兎』、ウチの知る限り神威って男は正に夜兎族を代表する様な戦闘狂や、ホンマそんなのと付き合ってよう生きてるな」

呆れたようにこっちを見る千草にネギは黙ったままうつむいていると、アスナも彼に向かって心配そうに話しかける、

「アンタねぇもうちょっと付き合う相手考えた方がいいわよ・・・・・・あの女が言ってるのが本当だったら危険人物ってモンじゃないわよ」
「ええまあ確かにちょっと怖い所もあるんですけど悪人ってわけじゃないんです・・・・・・僕が悩んでる時も相談に乗ってくれましたし・・・・・・・」
「どんな相談持ちかけたのよ?」

そんな奴によく相談なんてしたなとアスナが呆れたようにネギに目を向けると、彼は色々会った事を思い出すように口を開いた。

「えと「アスナさんがワガママで手がつけられない」とか「アスナさんが銀さんといつも揉めてて困ってる」とか「アスナさんが絶望的なほど成績が低くて困ってる」とか」
「ちょっと全部私の事じゃないのッ! アンタいつもそんな事考えてたのッ!?」
「それを聞いた神威さんはの答えは大体全部「殺しちゃえばいいじゃん」でしたね」
「根本的な所から問題を解消させようとしてるじゃないッ! 何考えんてんのよそいつッ!」
「さすがに僕も一分ぐらい悩んで無理ですって答えましたね」
「何で一分もシンキングタイムがあんのよッ! 即決で答えなさいよそこはッ!」 

苦笑しながら神威との思い出話を語るネギにアスナが飛びつくように叫ぶ。自分の知らない所でそんな物騒な事を話していたとは・・・・・・
アスナはまだ顔も見た事ない神威という男にいささか嫌悪感を持ってきた。

「やっぱりアンタがそんなのと付き合うのは絶対間違ってるわね・・・・・・」
「い、いえアスナさんが考えてるほど怖い人じゃないんですよッ! ちゃんと僕が食料を持って行ってもお礼を言ってくれますし、僕が戦術の一つをマスターしたら頭撫でて褒めてくれますしッ!(その後「まだ俺に瞬殺されるぐらい弱いけどね」って言いますけど・・・・・・)」

慌てて否定してくるネギにアスナはハァ~と深いため息を付く。

「アンタその他人をすぐに信用しちゃう性格直した方がいいわよ・・・・・・」
「子供ってのホンマ怖いモン知らずや」

アスナの意見に同意するように頷いた後、千草もポツリと呟く。そんな彼女にネギは振り返ってそちらを見る

「それにしても神威さんの事をそんなに知っているあなた達は一体・・・・・・・?」
「ホホホ、知りたかったらウチを倒して見る事どすな、それじゃあ長話もここまでにしてそろそろこちらも動きましょか」

千草は笑いながらそう言うと再び胸元からお札を二枚取り出す。どうやら魔力のこもったお札を使って様々な戦法を使うのが彼女の戦い方の様だ。

「今度はさっきの炎とは違いますえ、それッ! 神威の弟子をボッコボコにするんやッ!」
「兄貴ッ! あの女は符術使いだッ! どんな事が起きるのかわかんねえぞッ!」

二枚のお札をこちらに向かって投げてきた千草に警戒するカモにネギは大丈夫だと頷く

「どんな事が起きても僕は負けないよッ! 蛇が出ようが竜が出ようがッ!」

二枚のお札が地面に突き刺さり姿を変えていく。ネギは目つきを変えて杖を背中に差し、拳を出してジリっと構える。
姿を変えていくお札はどんどん形を変え大きくなりそして

「ウキーッ!」
「クマ~ッ!」













二メートル近くある巨大なファンシーな猿と熊が二体ネギ達の前に立ち塞がる。
だが三人はそれを見て少々複雑な顔をした。なんか想像していたのと180度違う

「蛇でも竜でも無いッスけど可愛くてデカイ猿と熊の二体出て来たッスね」
「またおサルさんですか・・・・・クマも微妙におサルさんと見た目被ってますし・・・・・・」
「芸が無いわね、一発屋の芸人みたいだわ」
「うっさいわッ! 言っとくが見た目で騙されたら痛い目にあうでッ! 『猿鬼(エンキ)』ッ! 『熊鬼(ユウキ)』ッ! アイツ等に見せてやりなはれッ!」
「名前を無駄にカッコよくしてるのが逆にサブいわね」
「黙っとれ小娘ッ! ウチが徹夜で考えた名前にケチ付けんなッ! やれッ!」
「ウッキーッ!!」
「クマーッ!」
「うわッ!」
「ちょっとネギッ!」

いちいちダメ出ししてくるアスナに千草は怒鳴った後、猿の猿鬼と熊の熊鬼に向かって命令する。すると二体は叫び声を上げながらネギに向かって跳び、そのまま拳を振り下ろして来たので、慌ててネギはアスナの腰を抱いて横っとびし攻撃をかろうじて避けた。猿鬼と熊鬼の拳はそのまま地面にぶつかり大きな穴を二つほど開けてしまう。

「見た目では考えられないほど早いし力もある・・・・・・!」
「何よアレッ! 見た目に反してメチャクチャ強そうじゃないのッ!」
「兄貴ッ! ありゃあ符術使いがよく使う魔力で動かす『善鬼護鬼』って奴だッ! 術者を守る為の使い魔みたいなもんで中々手ごわいですぜこれはッ!」
「てことはさっきからずっとヤムチャ見たいに解説しかしてない僕の使い魔のカモ君より全然凄いって事ッ!?」
「どういう意味ッスかそれッ!? 俺っちの繊細なハートにグサリとグングニルの槍を突き刺さないでくだせえッ!」

アスナを地面に置いて状態を立て直しながら肩に乗ってるカモに彼の気にしている所にダメージを与えた後、猿鬼と熊鬼を睨む。

「二対一か・・・・・・・カモ君、アスナさんの所に行って・・・・・・僕が終わらせる」
「え? ちょッ!」
「ネギッ! アンタ一体何考えてんのよッ!」

肩に乗っているカモを後ろにいるアスナに向かってほおり投げるとネギは杖も持たずに素手の状態で二体の敵に向かって歩いて行く。そんな彼の後姿を見てアスナとカモが慌てて叫ぶ。

「相手が二人がかりなのよッ! お子ちゃまのアンタが勝てるわけないでしょッ!」
「そうッスよ兄貴無茶言わんで下さいッ! あんな奴等と戦ったら兄貴殺されるかもしれねえんですぜッ!」
「アハハ、心配しないで下さい猿でも熊でも僕の邪魔をするなら・・・・・・」

ネギはそこで言葉を切ってアスナ達の方に振り返る。戦いに行こうとする顔ではなく、まるでおもちゃを与えられた子供の様な笑みを浮かべていえるネギがそこにいた。

「全部潰します」
「ネ、ネギ・・・・・・・?」
「兄貴ッ! 後ろッ!」
「ウキッキーッ!!」
「クマクマーッ!!」

こんな状況でも笑っているネギにアスナは背中にゾクッと悪寒を走らせる、だがそんな彼女と違い彼女の肩に乗っているカモが慌ててネギに向かって叫ぶ。後ろから猿鬼と熊鬼の二体がネギに向かって襲いかかって来た

「ウキーッ!」
「クマーッ!」
「・・・・・・30%解放」

ネギはそう呟いた瞬間、体が少し赤く光った。アスナとカモがそれに首を傾げているとそのまま襲いかかってくる二体の敵に瞬時に振り返って対峙し、そして

「ウキッ!?」
「クマッ!?」
「それでは“準備も出来ましたので”始めましょうか」

襲いかかって来た猿鬼と熊鬼の飛んできた拳をネギは口に若干笑みを作りながら受け止めた。二体の使い魔が予想外の事態に驚いているような様子を見せているとネギはそのまま二体の手を弾いてまずは熊鬼の懐に突っ込み

「ク・・・・・・マ・・・・・・!?」
「まずは一体・・・・・・・」
「なッ!」

手をナイフの様に突き出したネギの一撃は熊鬼の腹を貫通、そのまま熊鬼は苦しそうにパン!とはじけて消滅。その一瞬の出来事に眺めていた千草が驚愕した。

「くッ! “例の禁術”をもうあんなに扱えるようになってるんかいッ!」
「ウキィィィィィ!!!」

千草が驚いているのも束の間、もう一体の相手猿鬼が仲間をやられたのを怒ったようにネギに殴りかかってくる。だがネギはそれをジャンプして避け、そのまま手刀を猿鬼の頭上に向かって

「もう二体目ッ!」
「キィィィィィッ!!」

ネギは叫びながらの手刀はそのまま猿鬼と頭から体を縦に真っ二つに斬り下ろす、半分には割れた猿鬼も熊鬼同様破裂して消滅する。
熊鬼どころか猿鬼も一瞬で消滅させたネギに、千草は悔しそうに舌打ちする

「熊鬼と猿鬼が瞬殺やと・・・・・・!」
「ネ、ネギ先生って・・・・・・あんなに強かったんだ・・・・・・!」

千草の後ろにずっと隠れていたのどかもネギの戦闘能力を見て目を見開く。
普段は優しい子供先生(時々怖いが)だった彼が目の前で二体の敵を素手のみで倒した事に驚きを隠せないようだ、無論それはアスナとカモも同様だ

「何よアレ・・・・・・あんなに強そうだったおサルとクマをあんな簡単に・・・・・・」
「肉体強化の呪文・・・・・・いやちげぇ、そんなレベルじゃないぐらいの戦闘能力だぜ・・・・・・」

二体の敵を倒しても何事も無かったように首を鳴らしているネギを見てアスナとカモは呆然と眺めるだけだ。いつもの彼とは全然違う姿と目つきに恐怖すら感じる。
獣を狩るときの目をした狩人、アスナが感じた印象は正にそれだった。

「もう終わりですか? それとも今度は“あなた”が来ますか・・・・・・・?」
「アンタ・・・・・・一体どれぐらいその術を解放出来るようになったんや・・・・・・」

千草の質問にネギはより一層目つきが鋭くなる

「神威さんから聞いたんですか? あの人は30%以上いくと“リスク”がデカクなると言っていたので僕は30%が限界です」
「フン、あいつも優しい所あるんねんなそんな忠告言うなんて、“高杉のガキ”にも妙に優しい所あるし案外子供好きか?」
「高杉のガキ・・・・・・・?」
「だがそんな力も弱みを握ってるこっちのモンや、これ以上こっち来たら・・・・・」
「きゃッ!」
「のどかさんッ!」

千草はしばらく独り言を言った後、後ろにいるのどかを乱暴に引っ張って腕で拘束する。
突然の事にのどかもビックリしてそのままされるがままに前に突き出された

「この娘っ子どうなっても知らんで・・・・・・?」
「ネ、ネギ先生・・・・・・!」
「僕の生徒を離して下さいッ! 卑怯ですよッ!」

のどかが人質にされたのを見てネギの目つきがいつもの状態に戻り、慌てて千草に叫ぶ。だが彼女は鼻で笑っただけでなんの効果も生まれない。

「卑怯? 神威の奴に何も教わらなかったんかえ? 世の中勝つか負けるが一番大事なんや」
「く・・・・・・!」
「ずるいわよアンタッ! 正々堂々と戦いなさいよッ!」
「そうだぞコラァッ! 人質にするならそんなか弱いレディーじゃなくてこっちの姐さんを使えぃッ!」
「ナマモノ殺すッ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!! すんません美人でカワイイレディィィィィ!!!」

悔しそうにしているネギの後ろに移動したアスナがカモをとっちめていると千草は勝利を確信したかのように微笑む。

「月詠はまだ決着着いてないようやけど・・・・・・全蔵はもう終わるようやな」
「え? せ、刹那さんッ!」
「ちょっとネギッ! あのままだと刹那さんが死んじゃうわよッ!」
「俺っちも死んじゃいそうです・・・・・・」

千草が顎でしゃくった方向をネギとアスナが見ると、全蔵とずっと戦っていた刹那が刀で体を支えて膝をついている所だった。
既に満身創痍の彼女に全蔵は余裕綽々の態度で一歩一歩近づいて行く。

「フゥ・・・・・・フゥ・・・・・・」
「いやいやマジで驚いた、両手両足にクナイを打ち込まれてもそこまで戦えるとは思わなかったぜ、ま、もう終わりの様だけどな、楽しかったぜ神鳴流のガキ」
「ま・・・・・だ・・・・・・!」
「ん?」
「終わって・・・・・・ない・・・・・・!」

一瞬“黒い霧の様なモノ”が刹那の周りを囲ったように見えた事に全蔵が不思議に思っていると、木乃香が彼女の後ろから必死に泣き叫んでいる

「せっちゃんもう止めてッ!」
「お嬢様だけは・・・・・・どんな事をしても絶対に守ります・・・・・・!」
「せっちゃん・・・・・・お願い誰か・・・・・・誰かぁ・・・・・・」

刹那の周りから出る黒い霧を見て木乃香はイヤな気配を感じる。彼女の持つ死装束はやはりまだ死んでないのだ。

「誰かお願い・・・・・・せっちゃんが・・・・・・あのままだとせっちゃんがまた・・・・・・誰でもええからお願い・・・・・・」

四つん這いになりながら嗚咽を繰り返しながら、誰かに助けを求めるかのようにつぶやく木乃香、そしてありったけの力を振り絞って

「せっちゃんを助けてぇぇぇぇぇ!!!」
「・・・・・・承知した木乃香殿」
「・・・・・・え・・・・・・?」

叫んだ後、後ろから聞こえた見知らぬ声に木乃香が涙を流しながら後ろに振り返る。見るとそこには

「遅れて済まなかったな、少年が場所を突きとめるのに時間がかかった」
「誰・・・・・・?」
「案ずるな敵ではない、お主の父君に色々と借りを作っている者だ」

草鞋を履いて着物姿、腰には一本の刀を差している長い髪をした男。木乃香はその見知らぬ男を見て泣きながらもキョトンとする。だが彼に気付いた全蔵はハッと見て驚いている

「お前は・・・・・・・!」
「久しぶりだな、、前に会ったのは確か奉行所で戦った時だな、随分と前だったが俺はお主の事を色々と覚えてるぞ、確か・・・・・・」
「なッ!」

長髪の男は言葉を切った後、すぐに全蔵に向かって走る。いきなりの突進に慌てたのか全蔵も懐のクナイを投げるのが一瞬遅れてしまう、その遅れの隙を付いて長髪の男はあっという間に全蔵の背後につき腰に差してる刀を鞘ごと引っこ抜く、そしてそのまま

「闘魂注入ッ!!」
「お・・・・・・!」
「確かお主は“痔持ち”だったな、俺みたいに日頃の鍛錬が怠っているからそんな病気になるのだ」

男は鞘ごと全蔵の痔を患っているお尻に向かって注入、その瞬間、全蔵はとたんに体全身に痙攣を起こした後・・・・・・

「おがぁぁぁぁぁぁ!!! 痔がッ! 痔がァァァァァァ!!」

さっきまで余裕の表情をしていた全蔵が人選最大の苦痛だと言わんばかりの表情でお尻をおさえながら地面をのたうち回っている。そんな彼をよそに長髪の男は倒れている刹那の方に近づいた

「お主は大丈夫か?」
「あ、あなたは一体・・・・・・!」
「せっちゃんッ!」
「お嬢様・・・・・・」

腰に刀を戻して立っている男に刹那は目を見開かしていると、そんな彼女に木乃香が泣きながら抱きつく。その時刹那の周りにある黒い霧がフッと消えた

「あのままやったらまたその刀でおかしくなる所やったんやろッ! もうそんなに自分を追い込むのアカンでッ!」
「すみません・・・・・・あなたもどなたかご存知ありませんが、ありがとうございます・・・・・・」

泣きついてくる木乃香に刹那は申し訳なさそうに謝った後、長髪の男に向かってお礼を言う。だが男は首を横に振り

「礼などいらん、俺は侍としての行動を取ったまでだ」
「侍・・・・・・・?」

男の言葉に刹那が「?」と首を傾げていると、月詠と交戦中の土方が刹那たちの方が静かになったので、戦いの最中ちょっとだけ様子を見ようと後ろに振り向いていた。
するとそこにいた長髪の男を見て我が目を疑う。

「あ、あいつはッ! あのウザったい長い髪の男はッ!」
「ふふふ~、戦ってる時によそ見しちゃアカンよお兄さ~ん」
「しま・・・・・・!」

長髪の男を見て思わず驚いている土方に月詠は背後から容赦なく二本の刀で挟むように彼を襲う。土方はそのまま腰から真っ二つに斬られるのかと思いきや

突然ガシッと彼女の両腕が何者かに掴まれる。

「へへ、兄ちゃん、油断してると“こいつ”簡単にタマ(命)持っていくんやで、あっちのネエちゃんよりこっちの方を心配せんと」
「あんれ~? なんであんさんがここに・・・・・・あ」

自分と土方の間に現れた学生の制服を着て、頭には犬の耳の様なモノがぴょこんと出ている少年、彼を見て月詠が口を開けてビックリしているのも束の間、彼女に向かって土方の一閃が入る。

「戦ってる時によそ見してんじゃねえよ」
「うう・・・・・・一対一で戦いたかったのに~・・・・・・」

土方は後ろで月詠がバタッと倒れた音を聞いて後ろに振り返った。

「安心しろ峰打ちだ、女子供は殺したくねえ」
「そんな甘い考えやとこの先地獄どすえ、ふふふ・・・・・・」

不吉な言葉を残した後、月詠はその場で意識を失った。
そんな彼女をしばらく見つめていた後、土方は助けてもらった見知らぬ少年の方へ視線を移す。

「テメェ何モンだ・・・・・・? さっきこいつと知り合いみたいに話してたように見えたが・・・・・」
「まあ知り合いや、俺は最初コイツと仲間やった時があってそん時に何度か会ってたんや、今は俺仲間やないけどな、やっぱあいつと一緒の方がずっとええわ」
「あいつだと・・・・・・?」

明らかに年上であろう自分に向かって気さくに笑いかけてきた少年が長髪の男の方に顔だけ振り返る。
その姿を見て土方は眉をひそめた。
何故ならあの男は・・・・・・



















土方が少年に警戒しているその頃、千草は口を開けてさっきまでの余裕とかけ離れた表情で呆然と場の状況を眺めていた。

「なんやコレ・・・・・・ロン毛の男が突然現れ、全蔵が一瞬で弱点のケツをやられてKO負け・・・・・・月詠も・・・・・・あのガキやっぱ裏切りおった・・・・・・! 前々からずっと怪しいと思ってたんや・・・・・・! ん?」

千草が二人の刺客がやられた事にイライラした様子でのどかを人質にしながら地団駄を踏んでいると、ふと自分の横に何かの気配を感じてそちらに顔を向ける

「・・・・・・・え?」
『助っ人参上』

ペンギンの様なアヒルの様な・・・・・・とにかくデカイ変な生物が文字が書いてある手持ちのボードを持ってつっ立っていた。

「いや助っ人って? え? どういう意味・・・・・・ぶはぁぁぁぁぁ!!」
『こういう意味じゃボケェェェェェ!!!』

混乱している千草に向かってその生物は一切容赦せずに黄色い足で蹴りを入れる。千草はそのまま吹っ飛びその拍子にのどかがバサッと謎の生物の両腕に落ちた。

『大丈夫か?』
「え、えとその・・・・・・・あ、ありがとうございます・・・・・・」
『惚れるなよ』
「そ、それは大丈夫なのでご心配なく・・・・・・」
『惚れろよ』
「えッ!?  ど、どっちなんですか・・・・・・!?」

手持ちのボードに文字を書きながら会話している事になんの違和感もなさそうにのどかがツッコんでいると、ネギ達が慌てて彼女に近寄る。

「のどかさん怪我してませんかッ!?」
「ネギ先生・・・・・・あのこの人誰ですか?」
「知りませんしていうかコレ人ですかッ!? コレが人類だったら冷蔵庫も人類にカウントされるんじゃないですかッ!?」
『通りすがりの仮面ライダーだ』
「100%分かるウソこいてんじゃないわよッ! ペンギンだかアヒルだかよくわかんない生物のクセにッ! なんなのよこの気持ち悪いのッ!?」

変な生物に向かってアスナがツッコんでいるとネギ達の方にさっき刹那を助けた長髪の男が近づいてきた。

「気持ち悪くない、エリザベスだ」
「うわさっきのッ! いきなり現れてあの変態忍者をやっつけて・・・・・・アンタ達一体誰なのよ?」
「通りすがりのコーディネイターだ」
「アンタまでウソついてんじゃないわよ」
「いやウソじゃないんだけど・・・・・・・」

冷たく突き飛ばすアスナに長髪の男は少し残念そうな顔をしていると、アスナの隣にいたネギが彼に向かって話しかける

「あなた達は僕達の味方なんですか・・・・・・?」
「うむ、今夜は近衛詠春殿の一人娘の近衛木乃香殿を守る為にやってきてな、あそこの少年とそこにいるエリザベスも俺の仲間だ、他にもう一人いるんだがそっちとは別行動をしている」
「そうなんですか・・・・・・けどどうして・・・・・・」
「そうやどうしてウチらの邪魔するんやッ!」

ネギの言葉をさえぎって謎の生物ことエリザベスに蹴られて吹っ飛ばされていた千草が数M飛ばされた所で勢いよく起き上がる。着物についた砂を払いながら彼女は長髪の男を睨む。

「もしかしてアンタがあのガキにいらん事言って裏切らせたんかッ!?」
「俺は別に何も言っていない、お主らを裏切ったのはあの少年が自分で考えてやった事だ」
「悪いな千草のネエちゃん」
「チッ! アンタウチ等裏切ってこのロン毛男につくんかいッ!」

桂とネギの間からひょっこり顔を出してきた少年に千草が恨めしそうに叫ぶと彼は頭を掻き毟りながら彼女に向かって笑いかける

「いや~俺はアンタ等とツラを合わせるよりやっぱヅラと一緒の方が好きや」
「ヅラ?」
「ヅラじゃない」

少年と千草に向かって男は否定した後、千草の方へ刀を抜いて突き出す。

「桂だ」

『狂乱の貴公子』と呼ばれた桂小太郎が遂に舞台へと上がった。













[7093] 第三十九訓 女が心配してるのに男って奴は・・・・・・・
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/01/01 00:25


修学旅行一日目の夜、長期に渡っている戦いに銀時は謎の女に苦戦を用いられていた。

「ぬおッ!」
「銀さんッ!」

戦いが長引くにつれ銀時の顔にも疲れが見えてきた、そこを女は見逃さずに無言のまま静かに猛攻で襲ってくる。疲弊しながらもかろうじて木刀で女の剣を受け止めている銀時を見て見守っているあやかも気が気でならない。

「・・・・・・なあちょっと休憩しねえか・・・・・・? 銀さんここらでハーフタイム希望したいんだけど・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・つうかアンタ本当に人間? もしかしてサイボーグか何かですか? ショッカーにでも改造されたんですか?」
「・・・・・・」
「だんまり決め込んでないで・・・・・・なんか喋ろってッ!」

体もそろそろ疲れのおかげで鈍くなってきているにも関わらず、銀時は女に向かって跳びかかる、跳んだ状態で持っている木刀を女に向かって片手で振り下ろすが瞬時に女はそれをちょっと後ろに動いただけで避け、振り下ろした木刀は戦っている場所である橋を少し破壊しただけだ、その時、女の持っていた金色の剣が光り、そして・・・・・・

「ぐふッ!」
「そんな・・・・・!」
「ぎ、銀八ィィィィ!!」

金色の剣が遂に銀時の左肩を貫いた。刺した箇所から肉を貫く生々しい音と、そこから流れる大量の血に、あやかも目の色を変え、さっきまでずっと黙って見ていた千雨も銀時に向かって叫ぶ。

「ぐ・・・・・・! クソッタレ・・・・・・!」
「・・・・・・」
「俺をマジで殺す気でいやがる・・・・・・何が目的だ・・・・・・何で高杉のヤローを知ってる・・・・・・てめえあいつとどんな関係・・・・・がはぁッ!」
「銀・・・・・・八・・・・・・・」

銀時が喋り終える前に女は右手で彼の肩を貫いてる剣を持ったまま左手の拳を彼の腹に思いっきり入れた、女性とは思えないその力に銀時は口から吐血する。
千雨は生まれて初めて見る“本物の“命の取り合いに恐怖で体の震えが止まらなかった

「銀八ぃ・・・・・・!」
「ごほッ! ごほッ!・・・・・・千雨・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「さっきから何不安そうに見てんだよ・・・・・・」

銀時は後ろにいる千雨の方に振り向かずに口から出る血を右腕で拭いながら話しかけてきた。彼女もそれに泣きそうな顔で答える

「だってお前・・・・・・そんなに血が・・・・・・怪我もしてるし・・・・・」
「こんなモン全然屁でもねえ・・・・・・お前は何も心配すんな、俺は死なねえよ・・・・・・」
「銀八・・・・・・」

右肩にも切り傷、左肩は貫かれ出血多量、口からも吐血をしているにも関わらず銀時は少し笑ってるような声で千雨に話しかける。彼女の瞳には傷だらけの男が負け惜しみを言っているのではなく、まだ勝機はあると諦めていない真の侍が見えた。

「こんな所で死ねるかよ・・・・・・」
「・・・・・・」

銀時は息を荒くして傷と疲れに倒れそうになっても、まだ目は生きた状態で女を睨む。
女はやはりそれも無言で睨み返すだけだ、フードから見える氷の様な冷たい目。
左肩を剣で貫かれた状態で銀時は女と見つめ合ったままある事に気付いた

「オメー・・・・・・」
「・・・・・・・」

銀時はそこでクスリと口に笑みを作った。

「・・・・・・よく見たらおっかなく見えんのは表だけじゃねえか」
「・・・・・・!」
「どれぐらい泣けば・・・・・・そんなに辛そうな目が出来んだ」
「貴様・・・・・・!」
「うごッ!」
「銀八ッ!」
「銀さんッ!」

銀時が放った一言に初めて動揺の様な物見せた女は、彼の左肩に突き刺さっている剣を抜いて、右足に力を込めた回し蹴りを彼の横っ腹に当てる。銀時はそのまま橋の手すりに大きな音を立てて背中からぶつかる。

「がはぁッ!!」
「お前も・・・・・・! 高杉と同じ事を言おって・・・・・・!」
「フゥ・・・・・・・マジでヤベえなコレ・・・・・・」
「死ね・・・・・・!」

口から大量の血を吐き出し、体もいうこときかなくなった銀時は手すりに持たれかけながらため息を付く。
そんな彼にコツコツと足音を立てながら女は銀時の血で塗られた金色の剣を持って近づく。
銀時を斬れる間合いに置いた女は剣を静かに振り上げ、彼をそのままたたっ斬ろうとしているその瞬間、彼女の前に一人の少女が立ち塞がった。

「何の真似じゃ・・・・・・」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・!!」
「銀さん大丈夫ですかッ!」

銀時を庇うように目の前に現れた千雨に女は冷徹な視線を飛ばす。視線だけで人を畏怖させる眼差しに、千雨は膝をガクガクと笑わせながらも怯えた表情で見返す。その隙にあやかが銀時に近づいて体の安否を調べる

「貴様等も殺すぞ・・・・・・女子供だからって容赦はせぬ・・・・・・」
「コイツだけは・・・・・・殺さないでくれ・・・・・・」
「千雨・・・・・・」
「もっと一緒にいてえんだよ・・・・・・だから・・・・・・だから・・・・・・・」
「千雨さん・・・・・・」
「殺さないでくれよッ! 私の大切な人なんだよッ!」
「・・・・・・」

一人の少女の必死の訴えに女と、後ろで銀時を介抱しているあやかも、そして銀時もただ静かに聞いていた。
しばらくして女は千雨に近づいていく。

「貴様にとってその男が何よりも大事なのはわかった・・・・・・」
「・・・・・・」
「だからといってその男を殺す事に変わりは無い・・・・・・」
「何で・・・・・・何でそんなに殺したいんだよッ! こいつに恨みでもあんのかよッ!」

千雨の訴えも通じずに女は未だ銀時に向かって殺意を放つ。そんな彼女に千雨は噛みつくように叫んだ。
すると女は千雨とは対照的に冷静に

「命令された」
「命令って・・・・・・」
「それだけじゃ、私はただそれを実行するだけ」
「ふざけんなッ! そんな事でこいつを殺す事なんてさせねえッ!」

銀時に歩み寄ろうとする女に千雨は彼女の腰に抱きついて止めようとする。
あやかも倒れている銀時を守るように抱き締めて自分の身で彼を庇う。

「この人は私にとっても大切な人なんですッ!」
「絶対に・・・・・銀八は・・・・・・死なせやしない・・・・・・・!」
「おめぇ等・・・・・・」
「どけ貴様等・・・・・・さもないと・・・・・・!」

抵抗するあやかと千雨を見て銀時は真顔で彼女達を見る。女は少し躊躇しながらもそんな二人に向かって剣を光らせる。
その時だった

「しばらく見ない内に随分とイメージチェンジしましたね」
「・・・・・・!」
「お久しぶりです」
「貴様・・・・・! 何故ここに・・・・・・!」

今にも銀時達が殺されそうになっていた時、足音を立てながらローブを着た一人の男が近づいてきた。女はそんな男を見て驚いているように目を見開く。

「貴様“も”夜王にやられた筈じゃ・・・・・・!」
「ああ、私あの時偶然“あの人“に助けてもらってたらしいんですよ、けどそれから封印を解いてもらえずこの京都で6年間も詠春の所で眠りにつかされてたんです、いや~酷い話ですよねホントに」
「6年経っても変わらんようじゃな貴様は・・・・・・」
「6年経ったら随分と変わりましたね貴女は」

女に対してかなり軽い口調で話す中性的な顔をした男を銀時は目を丸めて見つめる。

(なんだコイツ・・・・・・この女と知り合いか・・・・・・? それにこの女はさっき確かに『夜王』って・・・・・・)

男の方から女の方へ銀時は視線を移す。『夜王』という名前には覚えがあるのだ。
銀時がその事について疑問を思っていると女が持っている剣が急にフッと消える。そして腰に抱きついている千雨を片手で掴んで引き離し突き飛ばすと、急に男と銀時達の方にそっぽを向き

「興ざめじゃ」
「おや帰っちゃうんですか? もっと色々と話したかったのに」
「貴様と話す事など無い、私はもう春雨の幹部じゃ、昔の私はとっくのとうに死んでいる」
「春雨だと・・・・・・!」

女の言葉に銀時は力を振り絞って立ち上がろうとするが、あやかがそれを慌てて制止する。

「銀さんまだ体がッ!」
「春雨ってどういう事だ・・・・・・・! 何で俺の世界にいる連中がここにいんだよ・・・・・・! それにお前さっき夜王がどうのこうのって言ってただろ、お前あいつとどんな関係だ・・・・・・!」

あやかに抱き締められながらも女に向かって懸命に叫ぶ銀時、すると彼女は彼に振り返って考える様な仕草をした後、口をゆっくりと開いた。

「夜王は・・・・・・私の夫を殺した張本人じゃ・・・・・・」
「な・・・・・・・!」
「殺されたんですか・・・・・・・あの人が?」

女の突然の告白に驚いているのは銀時だけではない、フード姿の男も夫の事を知っているかのように彼女に向かって質問する。すると女は男の方へ顔を向けた、

「吉原へ行った春雨の幹部の一人から聞いた、夫を封印しているマジックアイテムは何処にもなかったと・・・・・・つまり殺されたのじゃろ・・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」

聞いた事にショックを受けたように男がうつむいてると、女は一瞬悲しみに暮れる様な表情をした後、すぐにまた無表情に戻り銀時の方へ冷たい目を向ける。

「貴様が夜王を殺したおかげで本当の所、真実はわからんのじゃがな」
「・・・・・・そこまで俺の事知ってんのか」
「春雨の幹部の中にお前に“惚れてる”男がいるんじゃ、お前の話はよく聞いている」
「・・・・・・・」

女と銀時はしばらく見つめ合った後、踵を返して女は去ろうとする。

「次会ったら今度こそ貴様を殺す」

去り際にそう残して女は夜の闇にまぎれて去って行く。
女がいなくなって数秒後、急にぐらっと銀時は座ってる状態からバタッと横に倒れた。

「銀八ッ!」
「銀さんしっかりしてッ!」
「やべぇな思ったより出血が・・・・・・」

銀時の左肩からドクドクと血が流れている。右肩も負傷してるし恐らく女に腹を思いっきり殴られたことでアバラ骨もやられているようだ。よく見たらあやかの来ている浴衣にも彼の血がベットリ付いている。

「お前等どっちでもいいから救急車呼んできてくんねえか・・・・・・?」
「千雨さん急いで救急車をッ!」
「言われなくてもわかってるよッ!」
「別に救急車呼ばなくて結構ですよ」
「え?」

あやかに言われる前に慌てて携帯を取り出して救急車を呼ぼうとする千雨に、さっき現れた男が笑いかけてくる。男のセリフに一瞬千雨は我が耳を疑った。

「救急車呼ばなくていいって・・・・・・・?」
「お金もかかりますしもったいないでしょ、その人この世界の保険証なんて持ってないでしょうし」
「何言ってんだよアンタッ! このままだと銀八が死んじまうんだよッ!」
「死なせませんよ、私が治療して上げますから」
「・・・・・・は?」

思わず彼を見てポカンと口を開ける千雨、この男何言ってるのだろうか・・・・・・
千雨がそんな事を考えていると、男は倒れている銀時の方に近づいていく

「時間はかかりますが全快には出来ると思います」
「さっきの女と言いオメエも何モンだ・・・・・・?」
「ただのしがない魔法使いですよ」
「まほ・・・・・・! いづッ!」

男が魔法使いだと聞いて銀時は驚いて身を起こそうとするが肩の激痛にまた横に倒れる。
慌ててあやかが彼に近寄って、彼の一番出血している左肩の方を手でおさえる

「銀さんはもう体を動かさないで下さいッ!」
「アハハハ、このままだと出血多量で死にそうなのでさっさと治癒呪文かけてあげますね」

男はこんな状況でも呑気にローブの下から手を出す、そんな彼をまだ信用していないのか銀時はあやかに支えられながら上体を起こして目を細める。

「名前は何て言うんだよ魔法使いさんよ?」
「クウネル・サンダースと呼んで下さい」

クウネルと名乗った男は銀時にニコッと笑い後付けをつける。

「桂さんから色々と聞いてますよ、“白夜叉の銀時さん”」
「!!」

温泉の中に千雨とあやかがいた時よりも、夜中に謎の女に襲撃された時よりも銀時は驚いた


何故なら男の口から聞かされた人物の名が何よりも一番衝撃的だったのだ。

































第三十九訓 女が心配してるのに男って奴は・・・・・・・

銀時がクウネルから桂の名を聞いたその頃、その桂はというと今本能寺で木乃香を狙う敵の一人である千草に刃を向けて対峙していた。

「さて、お主達には色々と喋ってもらわねば、大筋の事は少年から聞いたがお主はもっと詳しそうだしな」
「くッ!」

刀を向けながら一歩一歩迫ってくる桂に千草が万事休すかと思っていると彼女でも予想にしない出来事が起こった。

「かぁぁぁぁつらぁぁぁぁぁ!!!」
「む?」
「死ねェェェェェェ!!!」

いきなり桂に刀を持って突っ込んだのは本来千草にとっては敵である筈の土方、何故彼が桂に襲いかかったのか千草はわけもわからず首を傾げる。

「どういう意味やコレ?」
「まさかこんな所でテメェと会えるとはなぁ・・・・・・!」
「ふん、幕府の犬か、俺もよもやこんな所で会えるとは思わなかったぞ」

刃をぶつけながら土方の表情が鬼の形相に変わる。対して桂の方は涼しげな表情で彼の刀を同じく刀で受け止めている。
土方の理解不能な行動に全蔵との戦いで負傷をしている刹那が、ネギ達よりいち早く土方に向かって叫ぶ

「土方さん何やってるんですかッ! その人は私を助けた・・・・・・」
「うるせえお前は黙ってろッ! こいつは俺達真撰組がずっとマークしてた奴だッ!」
「え・・・・・?」

土方に怒鳴られて刹那がどういう事かと考えていると。
桂と土方がやり合ってそこにいるメンバー全員がそれを眺めている隙に千草は逃げる準備を始めていた。

「月詠の奴気絶しとる・・・・・・・全蔵ッ! こいつ持って逃げるでッ!」
「ちょいタンマァァァァ!! ケツが爆発するんだよこのままじゃッ!」
「爆発してもええから行くでッ! 何か知らんが仲間割れみたいなの起こしとるからこの隙にエスケープやッ!」
「千草ちょっと俺のケツ見てくれないッ!? 火出てるッ! コレ絶対ケツの穴から火出てるッ!」
「誰が見るかボケェェェェ!! ほら月詠持って走って逃げるでッ!」

痔持ちの全蔵が千草に向かって悲痛な叫びをもらした後、倒れている月詠の方に近づいてなんとか肩に担ぐ事が出来た。そのまま千草と共に本能寺から脱出する為にお尻を押えながらヨタヨタと走る、そんな彼等の行動に土方と桂に気を取られていたネギがやっと気付いた。

「あッ! 敵が逃げちゃいますッ!」
「次会ったらこうは行かんでッ! 覚えてなはれやッ!」
「千草マジでヤバい・・・・・・! 俺の肛門から大文字焼きが撃てるかもしんない・・・・・・!」
「ケツ穴からウチの呪文と同じ技放ったらシメるでッ! ほなさいならッ!」
「ま、待って下さいッ!」

ネギの叫びも聞かず、千草と月詠を肩に担ぎならお尻を手でおさえている全蔵はスタコラサッサっと本能寺から去って行った。敵を逃がした事にネギは深くため息をつく。

「逃がしちゃった・・・・・・」
「兄貴、そんなに落ち込まなくてもいいッスよ、どうせアイツ等また来るらしいしそん時に捕まえましょうや」

彼の肩に乗っかっているカモが優しくフォローしている頃、敵がもう去ったにも関わらずまだ土方は桂相手と苛烈な戦いを行っていた。

「こんの腐れロン毛ッ! 大人しくその首寄こしやがれッ!」
「腐れロン毛じゃない桂だ」
「チィッ!!」

土方の連続斬撃に桂は優雅に土方を刀で吹き飛ばす。刀ごと飛んだ土方だが空中で立て直して地面に着地し、再び桂に猛攻を仕掛けようとするが、その前に刹那とのどかの叫び声が彼の耳に届いた。

「土方さん待って下さいッ!」
「その人達は私達を助けてくれたんですよッ! なのにどうしてッ!」

二人の声を聞いても土方は刀を抜いたまま鋭い眼光で桂を睨む。引く気は毛頭ないらしい。
土方の放つ殺意に桂の後ろにいる獣の耳を頭に付けた少年は、両手を後頭部に回しながらしかめっ面で彼を眺める。

「なんや助けてやったのに斬りかかってくるなんて、恩知らずにも限度っちゅうモンがあるんやで兄ちゃん」
「そうですよ土方さんッ!」
「さすがにそれは無いッスよトシの旦那ッ!」
「謝りなさいよマヨッ!」
『地面を舐めるように頭下げて土下座しろ、つうか舐めろよ』
「うるせえよテメェ等ッ! つうかボードに書いてるのなんだそれ殺すぞコラッ!」

少年だけではなくネギやカモ、アスナや謎の生物エリザベスにさえ文句を言われ完全に四面楚歌状態の土方は全員に怒鳴った後、ため息を付く

「そいつの名は桂小太郎、『狂乱の貴公子』と呼ばれている俺達真撰組の敵だ」
「敵? どういう意味ですか?」

何を言っているのかと問いただしてくる刹那に土方はポケットからタバコを一本取り出しながら答える。

「その男は攘夷志士だ」
「攘夷志士・・・・・・それってッ!?」
「俺達の世界の凶悪犯と恐れられる攘夷志士の中でも最も危険なテロリスト、『高杉晋助』と並ぶぐらいの男だ、そいつも過去に何度もテロ活動をおっ始めてる」
「高杉と同じ・・・・・・!」

桂があの高杉と同等に危険人物と称されると聞かされて、刹那は瞬時に死装束の札を取り出して桂を睨みつける。

「あなたもあの男と同じ攘夷志士なんですか・・・・・・・?」
「ほう、あの男とはもしや高杉か? アイツの事を知っているのか?」
「あの男の様に・・・・・・あなたも罪のない人々を利用したり傷付けたりするんですか・・・・・・?」
「せっちゃんッ!」

刹那の桂への質問に木乃香が諭すように叫ぶ。だが刹那の耳には届いていない、もしこの男が高杉と同じだとしたら・・・・・・

「俺は奴とは違う」
「違う? 同じ攘夷志士なのにですか・・・・・・?」
「確かに昔は奴と似たような過ちを行っていたが、今は古い友人のおかげで過激派から穏健派になった、つまり一滴の血を流さずに俺は世界を変えたいのだ」
「・・・・・・」

高杉と自分の思想は違うと説明する桂に、刹那は信じていいのかどうか無言のまま頭を悩ます。そんな彼女を尻目に桂は土方の方へ目を戻す

「だがしかし、あの男の様な輩には俺が過激派だろうが穏健派だろうが関係ないのだがな」
「当たり前だコラァッ! さっさとお縄頂戴しやがれッ!」
「土方さん止めてくださ~いッ!」
「どけ宮崎ッ! 何でお前を助けたのかは知らねえがッ! それに免じて逃がすなんて真似出来るかッ!」

刹那が高杉について桂に聞いている頃から、目の前でワタワタ手を振りながら止めさせようとするのどかに土方が吠えている、桂はやれやれと首を横に振った後少年の方に顔を向ける

「少年逃げるぞ、幕府の犬にこれ以上付き合うのも面倒だ」
「なあいい加減少年って呼ぶの止めろや」
『じゃあクソガキでいいか?』
「なんやとッ! お前なんかQ太郎やないかッ!」
『あ? やんのかコラ? お前最近桂さんにベタベタくっついて生意気なんだよ』
「喧嘩をするんじゃない、さっさと退くぞ」

エリザベスと少年がお互いケンカ腰になっている所をすかさず桂が叱り、懐からある物を取り出した。棒状の小さな菓子、『んまい棒』だ。
桂はそれを取り出した後、急にネギ達の方へ顔を向ける。

「そういえばお主達に忠告しとかなければな、木乃香殿を絶対に一人にするな、奴等はきっとまた彼女を狙ってくる」
「え? あ、はい」
「ちょっと待ってアンタ等何か知ってるのッ!? アイツ等が木乃香狙ってくる理由とかッ!」

ネギの隣にいたアスナが身を乗り上げて桂を問いただす。彼は首を横に振り、土方がまだのどかと揉めているのを確認した後、彼女に向かって口を開く。

「詳しくは俺も知らん、だが恐らく目的は木乃香殿の膨大な魔力だ、奴等はその魔力を利用してとんでもない事をしようとしているに違いない」
「木乃香の魔力・・・・・・?」
「ウチの魔力?」

狙っている理由は自分の魔力、その事に木乃香はあまり分かってないようだ。前に刹那を自分の魔力で治癒した事あるが、あの様な事普通の魔法使いも出来るのではないか・・・・・?
そんな事を木乃香が考えていると桂はんまい棒を上にかかげながら彼女の方へ向く。

「用心しておくといい木乃香殿、連中はあれだけではない、宇宙海賊『春雨』の幹部とあの高杉の奴もいる、お主やその周りに何をするかはわからんぞ」
(春雨ッ!)
「どうしたのよネギ? 急に驚いたような顔して」
「い、いえ・・・・・・」

桂の言った言葉にすぐに反応したネギにアスナがキョトンとするが彼はごまかすように手を振った後顎に手を当てる。

(春雨・・・・・・僕とネカネお姉ちゃん、アーニャの村を悪魔と一緒に襲った連中だ・・・・・・奴等がここに・・・・・・)

過去に自分の村を悪魔と共に襲い、多くの知人達を殺して行った宇宙海賊『春雨』、そこの連中の幹部が今ここにいる、そのニュースにネギは深い衝撃を受けた。
そんな彼の心境を知らずに桂はネギを始め周りの生徒に聞こえるように口を開いていた。

「それではお主達、ここでさらばだ、まあ時が来ればまた会えるであろう、それでは・・・・・・」
「ま、待って下さいッ!」
「逃がすかテメェェェェェ!!!」
「土方さぁぁぁぁん!!」

んまい棒を掲げて別れの言葉を残す桂にまだ彼の事を信用できない刹那と腰に抱きついているのどかを引きずったまま走ってくる土方を残して

「んまい棒、蛇弧夜姫(タコヤキ)ッ!!」
「うおッ! また煙幕かッ!」

叫び声とともに桂がんまい棒を地面に叩きつけた瞬間、その場に立ち起こる煙、土方は思わず腕で目を隠す。

「何かほのかにタコ焼きの匂いがするのがスゲェムカつくッ!」
「ハ~ハッハッ! さらばだ諸君ッ!!」
「またな~」
『歯磨いて寝ろよ』
「くそッ! 待ちやがれ桂ッ!」 

土方の声空しく桂と少年、エリザベスの三人が煙によって姿を消す。
煙が消えて視界が良好になる頃には三人は何処にもいなかった。

「逃げられたか・・・・・・んにゃろ~テメェ等のせいだぞッ! 何でさっさとあいつを取り押さえなかったッ!?」

桂一行にまんまと逃げられた事に土方がタバコの煙を黙々と吐きながらネギ達に向かって怒鳴る。だがネギ達から見れば彼等は自分達のピンチを救ってくれた恩人だ

「土方さんには悪いですけどあの人が悪人なんて思えません」
「ウチも思ったわ、あの人せっちゃんやみんなを助けてくれたエエ人やって」
「わ、私もそう思いますッ! あのペンギンさんはちょっと怖かったけど・・・・・・」
「お前等なんでそうやって初めて会った他人を簡単に信用できるんだ? しかもよりにもよってあの桂を・・・・・・」

ネギ、木乃香、のどかが口を揃えて桂を庇う光景に土方は手で頭をおさえる。
江戸の世界で桂小太郎と言えば、知らぬ人はいない程の超有名な攘夷志士なのだが、そんな事を全く知らない三人には桂はただ窮地を救ってくれた恩人なのだ。
このお人好し三人組では話にならないと思った土方は、神妙な表情で固まっている刹那の方へ目を向ける。

「お前はどうなんだ?」
「私は・・・・・・まだ信用できません・・・・・・いくら助けてもらっとはいえ攘夷志士は攘夷志士、私達を脅かす可能性はゼロでは無いと思います」
「お前にしちゃ上出来な意見だ、それじゃツインテール娘、てめぇは?」

刹那の意見に感心したように土方は頷いた後、眠そうに欠伸をしているアスナの方に話を伺う。

「さあ? ウザい長髪たらしたアホみたいな男だとは思ったけど危険人物だとは思わないね、だってガキと変な生物連れたテロリストなんて聞いた事無いわよ」

あまり深く考えていない楽観的な意見を言うアスナの肩に乗っかっていたカモも賛成するように腕を組みながら頷く

「俺っちも大丈夫だと思いますよあの連中は、敵だったら俺達の事なんてほっとく筈ですぜきっと、トシの旦那の大事な娘っ子も助けてくれたんですしここは大目に・・・・・・うげッ!」
「俺がいつそんな事言ったんだ、ああんッ!!」
「す、すんませんでした・・・・・・!」

話の後半からカモがニヤつき始めた瞬間、土方はアスナの肩にいる彼をむんずと鷲掴みにして額に青筋を浮かべる。締めつけてくる手の中でカモはジタバタしながら苦しそうに彼に謝った。

土方はカモを地面に叩きつけた後、難しい表情を浮かべながら腕を組む。咥えていたタバコをプッと捨てた後、土方は深いため息をついた

「よりにもよってこんな時に桂と会うとは・・・・・・坊主、帰って作戦会議だ、話の整理を付けねえと頭が痛え」
「わかりました」

土方の意見にネギはコクリと頷く、今夜だけで驚く事が膨大な数で押し寄せてきた。ここは一旦全員で話を整理して色々と対策を練るのが一番だろうというのが土方の意見だ。
それに彼が一番問題にしている事に解決しなくては、それは

「あ、あの土方さん私、何がなんだかわかんないんですけど・・・・・・いきなり忍者に攫われたり、火とかおサルさんとかを出す女の人が現れたり、ネギ先生が怖くなったり、変なペンギンが出てきたり・・・・・・」
「・・・・・・」

今一番最も混乱している少女、のどかが土方に向かってオロオロしながら話しかける。
ただの一般人のだった彼女が今夜体験した事はまさに非日常のファンタジー尽くし、現実ではありえないハプニングの連続で驚かない筈がない。
土方はそんな彼女に疲れた調子で頭を掻き毟りながら

「・・・・・・帰ったら全部話してやる」
「土方さん・・・・・・」

自分の事情をのどかに全部説明する事を決めた土方に負傷した体を引きずりながら刹那が不安そうに見つめるが彼は仕方なそうに舌打ちをする

「ここまで突っ込んでおいて教えねえわけにはいかねえだろ」
「そうですけど・・・・・・うわッ!」
「よし、帰るぞテメェ等」
「ちょッ! ちょっと土方さんッ!」

まだ何か言いたげな刹那だったが土方はそんな彼女を急に持ちあげて背中に担ぐ。突然の出来事に刹那は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「わ、私は大丈夫ですからッ!」
「黙って俺の背中に掴まっとけ、軽い傷でもねえだろオメーの体はよ」
「ですけど・・・・・・」
「なんだよ」
「のどかさんがいますし・・・・・・」

全蔵戦でかなりの深手を負った刹那の事を案じて土方はおんぶしてくれているであろう。だが彼女から思えば彼とこうゆう事をするとのどかに悪い気が・・・・・・

「すみませんのどかさん・・・・・・」
「わ、私は平気ですからッ!」
「・・・・・・」

土方におぶられながら謝る刹那にのどかは手を横に振りながら気にしてないとアピールする、彼女のそんな姿に土方は少し居心地が悪くなってスタスタと帰路に着く事にした。

「・・・・・・モタモタしてると置いてくぞテメェ等」
「せっちゃん、土方さんにおんぶされてどう?」
「何か恥ずかしいやら罪悪感やらで一杯です・・・・・・」

土方におんぶされている刹那を見て木乃香が楽しげに彼女に質問するが、刹那にとっては何処か浮かばれない気分だ。
土方と刹那、それに木乃香の後ろからはカモを肩に乗せたネギとまだ欠伸をしながら眠り瞼をこすっているアスナと慌てながら土方を追いかけるようにのどかが早足で歩いてくる。

「のどかさん何処か怪我とかしてませんか?」
「何もされなかった本屋ちゃん?」
「いえ大丈夫です、色々とご心配かけてすみません・・・・・・それと助けてくれてありがとうございます」
「私は何もしてないんだけどね、それより私達にお礼言う前にマヨにお礼言ったら? アイツ凄く本屋ちゃんの事心配してたんだから」
「そうなんですか・・・・・・?」

まぶたを重そうにフラフラと歩いてるアスナから土方の事を聞いたのどかはほんのり顔を赤らめる。彼女のそんな態度を見てアスナは一段と大きな欠伸をした。

「帰ったらあいつにお礼言っときなさいよ・・・・・・」
「はい・・・・・・」
「ネギ~私もう眠いんだけど・・・・・・あんた力あるんだから私おぶりなさいよ」
「え~アスナさんは別に何処も怪我してないじゃないですか・・・・・・」
「今日は色々あって疲れてんのよ、忍者が出るわおサルは出るわ、変な生物は出るわウザったい長髪は出るわで、ヘトヘトよ・・・・・・」
「しょうがないですね・・・・・・よいしょっと」

浴衣の裾をグイグイと引っ張っておぶってくれと命令してくるアスナに、ネギは渋々と彼女を背中にヒョイっとおぶる。そのまま土方達の後を追うネギ

「あんたさっきの術使わなくても力あるのね・・・・・・」
「日常の時でも5%ぐらい自然に発動してるんですよこの術は、アスナさんぐらいの体重なら余裕で持てます、神威さんだったら楽勝で100kgぐらいの大岩も指一本で持ちあげちゃいますが」
「へ~」
「それに神威さんってアスナさんより大食いなんですよ? それも朝飯程度で牛一頭軽く食べれるぐらいな、見た目は普通の人なのにバクバク食べるから最初ビックリしました~」
「ふ~ん」

なんか楽しそうに自分の師匠の喋るネギの話にアスナは不機嫌そうに相槌を打つだけだ。
自分の知らない所で彼はそんなにも神威と一緒の時間を作っていたのか・・・・・・

「随分とそいつに懐いてるのねアンタ・・・・・・」
「まあちょっと怖い人ですけど僕にとっては“お兄さん”みたいな人でしたから」
「お兄さんねぇ・・・・・・」
「ヘヘヘ、もしかして嫉妬してるんすか姐さん?」

アスナがネギの背中におぶられていると彼の肩に乗っかってやらしい笑みを浮かべているカモが話しかけてくる。アスナはそんな彼をジト目で睨みつける

「なわけないでしょ、ナマモノのクセに何言ってんのよ・・・・・・」

本当はカモを掴んでぶん投げてやりたいのだが眠気と神威に対する不思議な苛立ちのおかげで元気がないアスナは、そのままネギの背中でだるそうに目をつぶる。

(神威か・・・・・・一度会ってみたいわねそいつと)

そんな事を考えながらアスナはネギの背中で眠りにつく。今日は本当に色々会ったのだ

こうして銀時を除くメンバー達は修学旅行初日のハプニングを無事に乗り切り、やっと『嵐山』の宿屋に帰ることとなったのであった。


































一方、銀時はその頃、謎の男クウネルの治癒魔法で、千雨とあやかが不安そうに見守る中体の傷を治してもらっていた。

「終わりましたよ」
「すげぇなお前、傷口どころか折れた骨まで治せるのか」
「ハハハ、全盛期はもっと酷い傷も一瞬で治せたんですけどねぇ、どうにも眠ってたおかげで力が戻ってこない」

肩の傷も塞がり折れたアバラ骨までも治してくれたクウネルに銀時は感心しながら自分の体の状態を見直す。
さっきまで死ぬかも知れないほどの重症だったのにあっという間に回復してしまった。だがクウネルからみれば昔はもっと早く出来たらしいのだが

「まあアレだ、あんがとよ」
「いえいえ」
「銀さん大丈夫なんですか・・・・・・?」
「おう、この通り銀さん完全復活だ」
「よかった・・・・・・」

まだ心配そうに見つめてくるあやかに銀時はピョンと立ち上がって完全に治った事をアピールする。それを見てあやかはホッとしたように一安心するが、千雨の方はまだ不安そうだ

「本当に大丈夫なのかお前・・・・・・」
「大丈夫だっつってんだろ、お前今日はやけに心配性だな、いつもは俺が何されても平気なツラしてたクセに」

千雨の態度に銀時はヘラヘラ笑いながら冗談を言うが彼女は怒ったようにカッと目を見開いて

「当たり前だろッ! マジで殺されかけたんだぞお前ッ!」
「千雨さん・・・・・」
「殺されかけても結局生きてんだからいいだろ、そんな急に怖い顔すんなよ、な?」
「うるせえッ! こっちがどんだけ心配してたのかわかってんのかッ!」
「・・・・・・・」

どうやら千雨は本気で怒ってるらしく銀時はバツの悪そうに表情から笑みを消して頬をボリボリと掻く。千雨が銀時に怒っているのを見たあやかも辛気そうな顔をして大丈夫かと二人を交互に見る。
そんな気まずそうな雰囲気を出す三人に明らか空気を読んでいない男が笑いかけながら銀時に向かって話しかけてきた。

「あの~すみません、ちょっと空気が悪い中でこんな事も言うのもアレですが、ちょっとお話いいですか?」
「ん? ああそういえばお前の事聞くの忘れてたわ、で? 何でヅラの野郎の事も知ってたよ」
「ええあの人と会ったのは数か月前です、どうやらここに意図的に幕府の連中に飛ばされたらしくて、それで桂さんはしょうがなくここで生活を余儀なくされてるんですよ」
「山崎が言ってた江戸の神隠しに巻き込まれたのかアイツ・・・・・・・あれ、てことはつまり・・・・・・」

桂がこの世界にいるとクウネルから聞いて銀時は口をへの字に曲げる

「ヅラの奴この世界に来てるってわけだよな?」
「来てますよ、それにいる場所はこの京都、離ればなれになった幼馴染に会えるなんて嬉しいでしょ~」
「全然嬉しくない、俺があんな奴がここに来ても全然嬉しくない、つうか殺してやりたい、高杉の次はヅラか・・・・・・勘弁してくれよ全く・・・・・・」

おちょっくてるのか素ではしゃいでいるのかわからないが楽しげに話すクウネルに銀時はだるそうに言葉を返す。二人が話しているのを傍で見ていたあやかは銀時の方に恐る恐る尋ねる

「あの何かあったんですか・・・・・・?」
「どうしたもこうしたもねえよ、前にお前に話しただろ、俺の世界にいるヅラとかいうバカ。あいつこっちの世界に来てるんだとよ」
「ヅラ・・・・・・銀さんの幼馴染で一緒に戦争に参加した人ですか?」
「そうですよお嬢さん、桂さんはこの人、あと高杉さんと一緒に攘夷戦争で活躍した侍です」

銀時の代わりにクウネルがあやかに簡単に桂について説明すると、それを聞いた彼女が静かに頷く、しかし後ろから千雨がまだイライラしたような表情で身を出して来た。

「で? 銀八の幼馴染だとかいう奴とアンタはどういう関係なんだよ」
「ん~と・・・・・・仲間みたいなもんですかねぇ、私は攘夷とかそういうのには興味ありませんが、結構ここでは随分といいお付き合いをさせてもらってます、一緒にいると退屈しないんですよあの人」
「・・・・・・じゃあ何でそんなアンタが銀八の所に来たんだよ」
「そりゃ決まってるでしょ、桂さんのお知り合いをこの目で見る為です、あの人からよくあなたの話を聞いていたので、まあ来てみたらいきなり“あの人”と戦ってたのは予想外でしたが・・・・・・」

千雨から視線を変えてクウネルは銀時の方へ目を向ける。そしておもむろに彼に向かって顔を近づけていく。

「ふ~む・・・・・・」
「近い近い、顔近づけ過ぎ、離れろよバカ」
「アハハ、すみません」

物凄く自分に顔を近づけてくるクウネルに銀時が嫌そうな顔をして片手で突き放す。観察されるのもいい感じしないのに、あそこまで顔を近づけられると少し恐怖感が湧く。

「・・・・・・で? 本当に俺に会いに来ただけなのか?」
「ああそうでした、あなたに言い忘れていた事が一つ」
「んだよ?」

まだ話があるのかと銀時はふと眉をピクっと上げる。

「明日のお昼時に奈良公園で待ってて欲しいんです、色々と話をする事があるので、高杉さんの事やさっきあなたを襲った人についても知りたいでしょ?」
「高杉の奴もここに来てんのか?」

さっきの女といい目の前の男といいやけに高杉について何か知っている匂いがする。銀時がそんな事を思っていると案の定、彼も何か知っているらしい。

「ええ詳しくは明日話します、あと桂さんの所まで案内しましょうか、久しぶりにお会いしたいですよね」
「それは別にいいから、なんで異世界にまで来てヅラなんかと会わなきゃいけねえんだよ」
「そんな事言わずに、あの人はあなたとの再会を心待ちにしているんですよ? それに来てくれないとお話しませんよ?」

こちらに向かってニコニコ笑いながら話してくるクウネルに銀時はしかめっ面を浮かべる。
何故かはよくわからないがこういう男は苦手だ。

「・・・・・・言っとくけど俺はヒマじゃねえんだぞ、空きがあったら行ってやる、ヅラにそう伝えておけ」
「ありがとうございます、桂さんにも伝えて置きますね、ご友人が是非あなたに会う事を心待ちにしていると」
「こっから川に叩き落とすぞコラ」
「ハハハハ、それではまた明日」

銀時に悪態をつかれた後、クウネルは一度彼に頭を下げてそそくさと帰って行った。桂の所へ向かったのだろうか。
銀時は去って行くクウネルを見えなくなるまで見送った後、ポリポリと頭を掻いてため息を付く。

「次から次へとわけわかんねえ連中が押し寄せてきやがって・・・・・・とりあえずさっきの女の事はネギ達にも話した方が言いな、アイツ等も襲われるかもしれねえんだし」
「私達も帰りましょうか・・・・・・」
「そうだな・・・・・・もう眠いわ俺・・・・・・」
「待てよ」
「あん?」

大きな欠伸をした後、あやかの言う通り銀時は旅館に帰ろうと思い歩き出した。だがその前に着物の裾を突然千雨に引っ張られたので、立ち止まって振り返る。

「さっきの男の話信用するのかよ・・・・・・お前の幼馴染と知り合いだとか、前にお前と会った『高杉』とかいう奴の事も話すとか、敵の正体を教えてやるとか」
「嘘付く必要もねえだろ、それにあいつが敵だったら俺の傷を治す必要なんかねえよ」
「じゃあ明日、あいつの言ってる事が本当だったら会いに行くのか、桂って奴と・・・・・・」
「う~ん、しずな先生とデート出来なかったら行くかもしれねえな」
「真面目に答えろよッ!」
「千雨さんどうしたんですか・・・・・・!?」

千雨がまた銀時に怒鳴った事にあやかが不安そうに彼女を見つめる。今まで千雨が本気で怒っているのを見た事はあやかや銀時でさえ見た事がない。

「さっきの男、敵の話をするだとかどうだとか、まるでお前も一緒に戦ってくれみたいな事言ってたじゃねえか・・・・・・」
「・・・・・・」
「もし一緒に戦おうとか言われたらお前どうするんだよ・・・・・・?」

銀時と千雨はしばらくお互い見つめ合っていると、彼は突然クルリと後ろに振り返って歩いて行ってしまう。

「さあな」
「おいッ! ちゃんと答えろよッ!」
「落ち着いて下さい千雨さんッ!」

適当に流しただけでそのまま行ってしまう銀時に千雨が食ってかかるように飛びかかろうとするが、その前にあやかが彼女を必死に止める。だが完全に怒っている彼女はそんなあやかを振り払って走って銀時の前に出て仁王立ちする。

「私はお前が戦うのは反対だからなッ! さっき死にかけたのにまた死ぬような事になるかもしれねんだッ! そんな事絶対にイヤなんだよッ!」
「・・・・・・」

千雨からみれば彼が戦う事だけは絶対にして欲しくない、さっきの命の取り合いの戦いを見てわかった。さっきの“彼を”見るのは二度とゴメンだ。
銀時はしばらく前に立ち塞がって睨みつけてくる千雨を見つめた後、ポンと彼女の頭に手を置く。

「心配してくれてありがとよ」
「・・・・・・」
「行こうぜ、お前等とっくに就寝時間なのにこんな所にいたらマズイしよ」
「銀八ッ! まだ話が・・・・・・!」
「千雨さん帰りましょう、班のみんなが心配してしまいますわ・・・・・・」

頭から手を離して去って行く銀時を呼びとめようと千雨が彼に手を伸ばそうとするがすぐにあやかがその手を掴んで諭す。そんな彼女に千雨はキッと睨んで

「いいんちょお前はいいのかよッ! 銀八が死ぬかもしれねえんだぞッ!」
「私だって本当は戦って欲しくありませんわ、けど・・・・・・」

あやかの本音も銀時には戦って欲しくない。本気で命をかけた戦いなんて彼女だって千雨同様絶対にしてほしくない、だが

「あの人が何かの為に戦いたいと望むなら、私達に止める権利はないと思っています」
「・・・・・・もしそれであいつが死んでもいいのかよ」
「いいわけありませんわよ、でも私はあの人の納得のいくまま進んで欲しいんですの・・・・・・生き方を変えずにまっすぐに・・・・・・」
「・・・・・・」

思いつめた表情であやかが前に進んでいく銀時の背中を見つめている姿に千雨は少し羨ましく感じた。今の自分ではそんな考え絶対に出来ないからだ
彼女がそんな事を考えていると急にあやかがこちらに向かってニコッと笑いかける

「早く行きましょう千雨さん」
「ああ・・・・・・」

あやかに手を引っ張られてまだ何処か納得のいかない表情を浮かべていた千雨だったが、彼女に手を引っ張られたまま銀時に追いつく為に早足で歩きだす。















この先、もっと過酷な激しい戦い繰り広げられていく事も知らずに・・・・・・







































年越し記念・短編・「銀さんからのお年玉」

場所は麻帆良学園の万事屋。すっかり真冬になった外を窓から眺めながら、銀時は千雨とあやかと一緒に部屋の中央に用意したこたつの中に入ってみかんをほおぼっていた。

「は~紅白とかK-1とかガキ使スペシャルも終わってようやく年越せたなと実感湧いてくるよ、やっぱ正月はこうやってるこたつでみかん食うのが一番だわ」
「そうですわね、でも本編がシリアスになってきてるのに私達はこんな所で何しているんでしょうか?」
「そういう話はいいから・・・・・・・ところで銀八よぉ、なんで私達ここに呼んだわけ?」

こたつの真ん中に置いてあるみかんを拝借して皮をむきながら銀時に向かって千雨が話しかける。すると彼は軽く舌打ちした後しかめっ面で

「お前さぁ今日は何の日かわかってる? 正月だよ? ハッピーニューイヤーだよ? こういうめでたい日は人呼んでとわいわい楽しむのが普通だろうが、本当常識わかってねえなお前」
「千雨さんは普段こういうイベントでも家でゴロゴロしてそうですから仕方ありませんわ」
「うっせえな余計なお世話・・・・・・・おいッ! 私が皮むいたみかん勝手に取るなよッ!」

言いたい放題の銀時とあやかに千雨がイライラした調子で返していると、勝手にあやかが彼女がむいたばかりのみかんをヒョイと持ってって食べてしまう。千雨はそんな彼女に叫ぶがあやかはしらっとした表情で

「あら? 私の為にむいてくれていたんじゃないですか?」
「何でそうなるんだよ・・・・・・たく」

遠慮なくみかんを食べるあやかに千雨は一睨みした後、またみかんを取って皮をむく作業をする。

「そういえば銀八、お前こういう日は私達に渡すモンあるんじゃねえのか?」
「何だよ渡すモンって? ひょっとして俺が録画してた亀田選手と内藤選手の試合のビデオ? あれ興奮したよな、だってあんな気持ちの良い試合は初めてみたもん俺」
「違えよッ! なんで正月始まって早々中学生の女子が「亀田戦貸して」なんて言うんだよッ! 普通正月と言ったら・・・・・・・おいッ! だからいいんちょ私のみかん勝手に食うなってッ!」

銀時と千雨が話している隙にまたしても皮をむき終わったみかんをこたつの上に置いた瞬間すぐに取り上げて食べるあやか、さすがに二度もやられて千雨も段々腹立ってくる。

「なんで自分でむかないんだよッ! 自分でむいて食べればいいじゃねえかッ!」
「だって千雨さんがむいたみかんの方が美味しいんですもの」
「誰がむいたって同じ味だよッ! 大貧民がむこうが大富豪がむこうが味は絶対に変わらねえんだよみかんはッ! 誰にだって平等で接するんだよみかんはッ!」
「銀さんも千雨さんに皮むいてもらったらどうですか?」
「いや俺もうとっくの前に皮むけてるからね、もうずっと前から脱いでるから」
「お前は正月早々下ネタに走ってんじゃねえよッ!」

あやかと銀時に正月早々ツッコまされるハメになった千雨はため息をついた後、またみかんを取ってむく作業を行う事にした。

「正月って言ったら普通お年玉とかなんかあるんじゃねえのかお前・・・・・・? まあ期待なんて元からゼロだったけどよ」

正月といったらやはりお年玉、万年金欠の銀時にとってはそんなこと死んでもしない筈だ。
そう千雨がぼやいているのを聞いた銀時はいつもの死んだような目で「ふ~ん」と頷く

「お前お年玉欲しかったんならさっさとそう言えよ、ちゃんと用意してるよ銀さん」
「えッ! マジッ!?」
「本当ですか銀さんッ!?」
「いつも顔を合わせているお前等に俺がなんのねぎらいもしねえわけねえだろ」

銀時はそう言って千雨とあやかが唖然とする中、自分の傍に置いていた紙袋をゴソゴソと探り出す。まさかこの男が自分達にお年玉を用意しているとは・・・・・・
二人が少し銀時に感心していると彼は紙袋からある物を取り出して、まずはあやかの目の前にポンと置いた。
彼女はそれを見て思わず目が点になってしまった

「はいお年玉、金じゃなくて物だけどよ」
「・・・・・・なんですかコレ・・・・・・?」
「何ってアレだよ、『ホームレス中学』と『ホームレス大学生』、お前みたいなお嬢様とはかけ離れた生活をした兄弟の熱いヒューマン小説だ、こういうの読んでいかに自分が恵まれているのか考えろ」
「正月になんちゅう事考えさせようとしてんだよッ!」

目の前に置かれた二冊の本にあやかが頬を引きつらせていると銀時が腕を組んで頷きながら説明する。どう見てもお年玉に渡す様な物では断じて無い

「ブックオフで大量に安く売ってたから買って来た」
「生々しい事言ってんじゃねえよ・・・・・・つうか中古の本をお年玉にするな」

銀時の付け足しに千雨がツッコむと今度は彼女の方に向きながら彼は紙袋をゴソゴソと探り出す。

「まああやかにもある事だし、当然お前にもあるわけで」
「いやもういいから、私その本もう読んだ事あるしいらないから・・・・・」
「ちげえよ、お前には田村兄弟の本じゃなくてもっと別のモン用意してんだよ、お前にはコレを常に仏壇に置いて日々ツッコミに精進して欲しいと思ってな、ホレ」

銀時は取り出したお年玉をカチャと千雨の目の前に置く。
出て来たのは地味な感じのメガネだった。

「・・・・・・なんでメガネ? 私持ってんだけどもう」
「バカ野郎ただのメガネじゃねえんだよ、これはなんと江戸一番のツッコミと言われたあの有名な志村新・・・・・・ってオイィィィィ!!」

銀時が説明する前に千雨は目の前に置かれたメガネを無表情のまま拳を下ろして叩き壊した。バキッ! と鈍い音を立ててメガネは粉々で見るも無残な姿に

「何してんだお前ッ! 新八が粉々になっちまったじゃねえかッ! おい新八しっかりしろッ! 新八ィィィィィィ!!!」
「うるせえよ知るかよ新八なんて、つうかそれ新八じゃなくてただのメガネじゃねえか」

完全なるゴミへと変わってしまったメガネに銀時が悲痛な叫びを上げるが千雨は小指で耳をほじりながらポツリとつぶやく。

「やっぱお前にお年玉なんて期待なんてするもんじゃねえな、なあいいんちょ」
「読んでみて思ったんでけど、なすびの方が文才ありましたわね」
「読んでるのかよッ! ホームレス中学生読んでるのかよッ! ていうかお前結構マニアックだなおいッ!」

千雨がむいたみかんを勝手にほおばりながら黙々と「ホームレス中学生」の読書に勤しんでいたあやかに千雨が叫んでいると、銀時は新八もとい壊れたメガネを部屋の隅に置いてあるゴミ箱にほおり投げて、ハァ~と深いため息を付く。

「人がせっかく上げたモンをスクラップにしやがって・・・・・・」
「何でお前さっきあんなに必死に叫んでたのにあっさりポイしてるの? 新八ポイしていいの?」

千雨のツッコミを無視して銀時はパンと自分の膝を叩いた後、急にキリッと顔を上げる。

「しょうがねえ死んだ新八は忘れて俺達は前を向いて歩こう」
「いや新八死んでないから、別サイドで頑張ってるからね?」
「という事で読者のみなさん今年も最終回までよろしく」
「もう最終回が見えて来てますけど今年もよろしくお願いしますわ」
「え? こんな感じの締め方でいいのコレ?」








[7093] 第四十訓 子供は早く寝ろ、じゃないと大人が夜更かし出来ないでしょうが
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/01/13 20:46
時計の針が午前零時を指した頃、3年A組の生徒が泊まっている嵐山の旅館にて朝倉和美を初めとする3班は、就寝時間を過ぎた中まだ部屋に戻って来ないある二人の生徒を待っていた。

「千雨ちゃんといいんちょ遅いね~・・・・・・何処で道草食ってんだろう?」
「あやかはその辺の道端に落ちてる雑草なんか食べないわ」
「そういう意味じゃないよ・・・・・・少し前に慌てた様子で土方さん達探しに行くって銀八先生と何処かへ行ったきりだね二人共」

旅館の人が用意してくれた布団に入らずに、座布団の上に腰かけてベランダ側の近くにある和室のテーブルに膝をつき千雨とあやかの帰宅を置いてあった煎餅を噛みしめながら心配そうな表情で待機している和美。そんな彼女に相槌をうったのは同じ班の夏美だ。

「先生と長谷川さんといいんちょと三人でかぁ・・・・・・こんな夜中まで何やってるんだろう・・・・・・」
「『三体融合』でもしてるんじゃないかしら? それとも『トリプルジョグレス』?」
「エロいんだかエロくないんだかわからないネーミングで発言するの止めてくれないちづ姉?」

隣でのほほんと怪しい事を連想させかねない発言を発するちづ姉こと千鶴に、夏美は和美と同じ所に置いてあった煎餅を口に咥えながらツッコむ。だが千鶴の話はまだ終了していない。

「でももしそうだったら、先生はどっちと先にアハ~ンな事するのかしら?」
「何アハ~ンって? ちづ姉その伏せ方止めて、先生とあの二人が変な事してるみたいじゃん、ここで語れない事やってるみたいじゃん」
「私としてはあやかと最初にアハ~ンして欲しいわ、あなたもそう思うでしょ夏美」
「う~んどっちが先でも別に・・・・・・って何言わせようとしてんのッ!」

会話の内容がどんどん変な方向に進ませようとする千鶴に夏美は思わずテーブルを両手で叩きながら彼女の方へ叫ぶ。すると和美も千鶴の話に興味を持ったようにジト目で煎餅をボリボリと噛みながら

「銀さんなら千雨ちゃんの方を先に選ぶんじゃないの~? アハ~ンするなら」
「いや朝倉も悪ノリしないでよ・・・・・・」
「長谷川さんには悪いけどあやかの方が綺麗だしスタイルもいいんだから、先生は三人でアハ~ンするなら最初は絶対あやかの方を選ぶわ」
「見た目だけで銀さんは選ばないから、千雨ちゃんはいいんちょが銀さんと知り合う前からずっと一緒にいたんだよ? しかもああやって気軽に銀さんと接する姿勢は奥手のいいんちょには無理だし、銀さんが三人で最初にアハ~ンするなら最初の相手は千雨ちゃん、はい決定」
「え、なにこの関係無い人同士の争い? ていうかアハ~ン多用しないでよ、女の子同士の会話じゃないよこれ」

ニコニコ笑っている千鶴とぶすっとした表情で彼女とテーブル越しに火花を散らして睨み合っている和美の交互を見ながら夏美が口を挟むも二人は全く聞いてやくれない。

「和美、あなたももうちょっと大人になればわかるから、男には隣で歩く女より、一歩後ろに下がって支えてくれる女の方が必要とするのよ」
「今時そんなねぇ、さだまさしみたいな考え古いからね? 最近の女の人は男と対等な立場で物事と対処しなきゃいけない時代なの、後ろにいるより隣にてくれる女の人が必要としてるんだよ最近の男は」
「何で修学旅行で二人の女子生徒が現代社会の男女論を始めてるの? 何で恋愛経験ゼロの二人が男と女について議論してるの?」

恋愛なんてこれっぽっちもした事のない女子校の生徒が口論しているのを夏美は呆れるように眺めていると、2人はテーブルから身を乗り上げてお互い顔を近づける。

「和美、あなたが長谷川さんを支持してるのはわかってるわ、でも先生が選ぶのは雪広あやかよ、頭のいいあなたならそろそろわかっていると思ったのに」
「千鶴さぁん、もう前々から何十回も言ってるよねぇ・・・・・・ボケと言ったらツッコミ、ウッチャンと言ったらナッチャン、銀さんと言ったら千雨ちゃん、もうこれ誰でもわかりきってる事だから、そろそろその花畑牧場の脳みそにインプットしてくれないかなぁ・・・・・・・」
「あれ? 雰囲気悪くなってないここ? 二人の熱気が凄い押し寄せてくるんだけど? ねえザジも寝てる所悪いけど何か言ってよ、この二人修学旅行先で喧嘩しちゃうよ、ていうかしちゃってるよもう・・・・・・」

千鶴は相変わらずのなごやかな口調で、対照的にドスの効いた口調でメンチの切り合いをしている和美の両者を見て遂に夏美が耐えられなくなり、先に布団に潜り込んで就寝モードに入っている同じ班のザジに助けを求めると彼女はムクリと夏美の方へ顔だけ向いて

「・・・・・・・・・・・」
「そういえばいいんちょか銀八先生じゃないとザジが何言ってるか全然わかんないんだった・・・・・・」

口を開いて何かを言っているんだろうがザジの声が聞き取れない夏美は困ったように首を傾げると、ザジは手を伸ばして目の前にある自分のバッグからスケッチブックと鉛筆を取り出して・・・・・・

『何時だと思ってんだよ寝かせろボケ』
「ああ、そう言ってたんだ声が聞こえないからわざわざ字で書いてくれてどうもありが・・・・・・ザジってそんな口調だったのッ!?」
『なんの個性もねえキャラのクセに話しかけてんじゃねえぞコラ』
「何故か知らないけど人のキャラに難癖つけてきたよこの娘ッ! 常識人キャラという立場を捨てて思いっきりぶん殴ってやりたいッ!」

スケッチブックに字を書いて何を言ったのか教えてくれたザジだが、彼女の口調が意外にもガラが悪い事の方が夏美は驚いた。そんな夏美を尻目にザジはまた布団に潜り込んですぐ就寝モードに戻る。

「もっとマシな班に行きたかったよ・・・・・・いや何処もかしこもまともな班なんて存在しないんだった」

そもそも変人だらけのクラスなのでまともな人達で編成されている班なんてありゃしない。
その事に気付いた夏美はハァ~と深いため息をついてまだ和美と千鶴がいがみ合っているのをほっといてテーブルに腕を組んで顔を伏せる。
一人は寝て、二人は喧嘩中、一人は自分の存在理由について考えていると。

コンコンと部屋のドアを叩く音が聞こえた。

その音に和美と千鶴も口喧嘩を止め、夏美もガバっと顔を上げてドアの方を見る。
ついでにザジは何もリアクションを起こさず就寝中。

「もしかしてあの二人帰って・・・・・・おふッ!」

突然誰かの踏み台にされて夏美が叫び声を上げた中、和美と間違いなく自分を踏んだ筈の千鶴がドアの前までダッシュしている。

「千雨ちゃん、いいんちょより先に銀さんとアハ~ン出来たッ!?」
「あやか、私わかってるから、あなたが出来る子だって私わかってるから」

そんな事を言いながら和美と千鶴は両者同じタイミングでドアの前に着く。ドアの向こうから千雨とあやか、もしくは銀時と一緒に現れると二人が待っていると。ドアがガチャリと開かれる、だがそこにいたのは予想だにしない人物だった。

「万事屋の野郎はここにいるか? アイツの部屋にいってももぬけの殻だったからどうせここにいんだろ?」
「あら?」
「え?」

タバコを口に咥えて偉そうな態度で浴衣姿の土方十四郎が、口をポカンとして呆然としている千鶴と和美を見据える。

「何で土方さん? 銀さんは?」
「ああ? てことはここにいねえのか万事屋の奴?」

和美の反応に土方が眉をひそめると彼女も困った表情で経緯を話す

「実は銀さん、千雨ちゃんといいんちょ連れて外出中なんだけど・・・・・・」
「こんな時間でか? 自分ところのガキ二人連れて夜の京へ・・・・・・あの野郎まさかそこまで腐ってやがるのか?」

話を聞いて土方はタバコの煙を口から吐き出しながら銀時に悪態をつく。どうやら彼も何処か誤解しているらしい・・・・・・

「朝帰りするって可能性もあるって事か」
「いや千雨ちゃんのガッツがあればッ!」
「あやかなら朝どころか昼まで頑張れるわきっと」
「お前等生々しいから止めてくんない?」

テンション高めに叫ぶ和美と優雅に微笑みながら凄い事を言う千鶴に、土方は目を細めてツッコむ。

(こいつら他人の恋路にどこまで首突っ込めば気がすむんだ・・・・・・)

吸い終わったタバコを携帯灰皿に戻しながら土方はそんな事を考えながら目の前の和美と千鶴を眺めていると、こちらに向かってくる足音に気付いた

「なんだテメェ、ウチの生徒の部屋になんか用でもあんのか?」
「万事屋ッ! てめえさっきまで何処にいたッ!?」

廊下から歩いてきたのは旅館の浴衣を着らずに自分の私服用の着物を着ている坂田銀時。その後ろにはあやかと、一目見ただけで不機嫌だとわかる表情を浮かべている千雨がいた。
土方はそんな二人を連れて来た銀時に目を鋭く光らせる。

「まさか本当に教師として誤った道を進んだんじゃねえだろうな?」
「は?」
「あ、銀さんッ! ねえ千雨ちゃんといいんちょ、どっちと先にアハ~ンしたッ!?」
「アハ~ン? 何言ってんのお前?」

土方と和美に向かって髪をポリポリと掻きながらわけのわからない表情を浮かべる銀時。そんな彼をほっといて千雨はさっさと自分の部屋に戻って行く、いつもよりかなり荒れた態度で

「朝倉そこどけ、もう寝る」
「あれ? 千雨ちゃんなんでそんなご機嫌ななめなの・・・・・・?」
「知らねえよ」
「いや知らないって・・・・・・」

困惑している和美をよそに千雨は彼女と千鶴の間をすり抜けてさっさと部屋へ戻り、メガネを取って自分の布団にもぐりこんでしまう。そんな彼女を和美は呆然と見送る。

「千雨ちゃん何かあったの・・・・・・?」
「ちょっと色々ありましたので・・・・・・」

不思議に思っている和美に疲れたように笑みを浮かべながらあやかも部屋に入ってくる。
詳しく言おうとしないあやかにますます和美は怪しいと首を傾げる。

「一体どれだけ激しいプレイを銀さんと・・・・・・」
「何でそうなるんだよ」
「あだッ!」

和美が変な事を考えていると察した銀時は彼女の頭をグーで殴る。

「奈良公園にいる鹿のフン腹いっぱいに食わされてえのかテメェは」
「イタタタ・・・・・・・」
「和美ったらいつもそんな事ばっか考えてるのね、下品な人」
「いやアンタが言えるかそれッ!」

頭をさすりながら痛がっている和美に千鶴がわざとらしくため息を付く、すかさず和美が彼女に向かってツッコミを入れていると、部屋に戻って来たあやかが銀時の方へ振り返って一礼する。

「今日は色々と大変でしたけど・・・・・・ゆっくり休んで下さいね、千雨さんの事は大丈夫ですから、きっと朝起きたらケロっとしていつも通りに戻りますわ」
「そういう単純な奴じゃねえだろあいつはよ」

天然パーマの髪をいじりながら話しかけてくる銀時にあやかは微笑む。

「それではまた明日・・・・・・」
「ああ」

銀時にもう一度礼をした後あやかは和美と千鶴を押しやって部屋のドアをパタンと閉めた。残された銀時はふと隣にいる土方に目をやった。

「で? お前等も結局何処行ってたんだ?」
「宮崎を誘拐した忍者追っかけて本能寺行ってた」
「・・・・・・はい?」

突拍子もない事を言う土方に銀時は我が耳を疑うが、彼の表情からしてどうやら冗談を言っているわけではないらしい。

「詳しくは俺の部屋で話してやる、てめぇも参加しろ作戦会議だ」
「まてまてまて、忍者って何? もしかして俺を襲った女の仲間か?」
「・・・・・・女?」

銀時の新たな情報に土方は眉をひそめていると後ろからトテトテと駆けてくる小さな足音が

「ああ、銀さん着替えて来られたんですね、いいんちょさんも大丈夫ですか? なんかジェイソンに襲われたぐらい血が付いてる浴衣着てましたけど?」

現れたのは土方と一緒に本能寺へと足を運んでいたネギ、彼に尋ねられた銀時はめんどくさそうに首をコキコキと鳴らしながら返す

「当たり前だろあんなに血が付いてる着物なんて着れるかよ、まあ私服用の着物4枚持ってきている俺に死角はねえがな、あやかには部屋に俺用の浴衣が一枚あったからそれ貸しといた」
「まあそうしないと班のみんながパニックになりますからね・・・・・・・」
「ちょっと待て」
「はい?」

銀時と会話するネギに土方が突然入って来て口を開く。

「坊主、もしかしてお前コイツに会ってたのか?」
「ええさっきの事ですけど、アスナさんと木乃香さんを部屋に連れて行った後、自分の部屋で待機していると、血まみれの着物と浴衣を着た銀さんといいんちょさん、あと千雨さんと一緒に突然部屋の窓から入ってきたんです・・・・・・服持ってすぐどっか行っちゃいましたが」
「血まみれってお前等一体何が・・・・・・」
「そりゃまあすげえ美人な女と過激なプレイをしていましてね、もう殺されるぐらいな」

両肩をすくめておどけた調子で笑みを浮かべる銀時を見て土方はしばらく沈黙した後、ポケットから新しいタバコを一本取り出す。

「・・・・・・どうやらテメェからも色々と聞かなきゃいけねえようだな」
「わ~ってるよ、けど早めに終わらせろよ、俺明日早いんだからさ」
「銀さん明日予定あるんですか?」
「パチンコだよパチンコ、京都のパチンコを観光すんだよ」
「日本中あらゆる所を行ってもパチンコはパチンコなんですけど・・・・・・」

タバコを口に咥えた土方を先頭に銀時とネギが話しながら後ろからついて行って歩いていく。

深夜零時過ぎ、銀時達による敵の素姓を調べる為の話し合いが始まる。




































第四十訓 子供は早く寝ろ、じゃないと大人が夜更かし出来ないでしょうが

大半の生徒達が爆睡している事、個室の部屋にて土方やネギをはじめとする事情を知っているメンバーが集合して話を始めていた(木乃香とアスナはもう自分の部屋で寝てしまっている)。当然銀時も参加して、土方の代わりにカモが本能寺での話を彼に教えた

銀時がいない間に突然おサルと共に忍者がやって来た事
その忍者はネギの持つ親書ではなく生徒である近衛木乃香を誘拐しようとした事
だが間違えてのどかを攫って行った事
それに怒り狂った土方が抜刀してその場でしばらく刀を振りまわしてた事
なんとか本能寺でのどかとその忍者がいる事を突きとめ急いで向かった事
本能寺に着くまで土方が電車の中でいつになったら着くのだと電車の扉にガンガンと頭を打ち付けていた事
やっと本能寺に着いたと思ったら忍者だけではなくそこにいたのは変な女性と小さな女の子もおり、その三人が組んで木乃香を攫おうとしているのを知った事
刹那が忍者と土方が少女と、ネギが変な女性と戦った事
しばらく戦っていると小学生ぐらいの男と変な生物を連れて攘夷志士の桂小太郎が参戦してきた事
その三人のおかげでのどかが救出され、刹那の命も救われたのに土方は恩を仇で返して桂に斬りかかった事
だが結局、桂達は自分達に情報を残した後、さっさと消えてしまった事

大体の話を終え、カモは一つコホンと咳をしてずっと座布団に腰かけて話を聞いていた銀時に目をやる

「俺っち達の話はここまでです、なんか感想ありますかい?」
「とりあえず敵の事より土方君の地獄少女好きにはちょっと引いた」
「とりあえずいっぺん死んでみるか?」

向かい側に座ってタバコを咥えている自分を眺めながら銀時がポツリと呟いた事に土方は無表情で脅した後、口からタバコの煙を吐く

「奴等が狙ってくるのは坊主の持つモンじゃなく、本当の目的はここの生徒の京都弁のガキだというのがわかった、敵も三人だけではなくあの過激派攘夷志士、高杉晋助、更に俺達の世界からやってきたと思われる宇宙海賊春雨の幹部もいると桂の野郎が言っていたらしい」
「春雨とあいつねぇ・・・・・・」

土方の情報に考え深げに銀時は頷いた後、ふと彼の隣にいる人物が視界に入る

「で? それはわかったけどよ、そいつはここにいていいのかよ?」
「何がだ?」
「俺の目が正しければお前の隣に地獄少女が座ってるんだけど? そいつがいる前で俺達の世界やら宇宙海賊やら攘夷志士やらペラペラ喋っていいの?」

目の前にいるのは土方だけではなく右の方には包帯を体中に巻いて座っている刹那と、左には体をユラユラと動かしながら落ち着かない様子の宮崎のどかの姿が銀時には見える。彼女はただの一般人の筈だが

「す、すみません・・・・・・」
「毎度の事ながらなんでイチイチすぐ謝るんだよ、なんでそいつはOKなのに銀さんの事は怖いんだよ」
「すみません・・・・・・」
「おいワザとやってんだろお前、言っとくけどこっちは結構傷付いてるんだぞそれで」

問いかけると何故か頭を下げて謝ってくるのどかに、銀時が軽くショックを受けていると自分と似た雰囲気を持つのに何故かのどかに懐かれてる土方がタバコを咥えながら口を開く

「こいつには俺の事やお前の事、魔法云々の事もお前がいない間に全部俺が話しといた、こんな事件に巻き込まれて置いて、あんな事が会って何も教えねえとこいつの頭がどうにかしちまうしな」
「そんな簡単にバラしていいのかよ自分の素姓・・・・・・という事はあれもか? 江戸では語尾に「マヨ」を付けてるのもバラしちゃったわけ?」
「マ、マヨッ!?」
「ありもしねえ事を俺の素姓にカウントしてるんじゃねえよ・・・・・・!」

自分の事におかしな嘘情報を入れてくる銀時に土方は怒りに震えながら睨む。隣ではのどかが誤解している様に彼の方へ振り向いていた。

「語尾にマヨって付けてるんですか・・・・・・?」
「ああ、「近藤さんちょっとマヨネーズ畑に行ってくるマヨ~」とか「お腹空いたマヨ~、マヨはマヨネーズ食べたいマヨ~」とか言ってたんだよ」
「ほ、本当ですか土方さん・・・・・・?」
「付けてるわけねえだろッ! 全部コイツのデタラメだッ!」

ありもしない嘘でどんどん話を飛躍させていく銀時に遂に土方が彼を指さして怒鳴る。マヨネーズ好きとはいえさすがに彼はそこまでおかしくない・・・・・・筈

「こいつにこれ以上変な嘘を吹き込むんじゃねえぞ・・・・・・」
「おやおや真撰組の鬼の副長と呼ばれた男がすっかり過保護になっちゃって~、なあせっちゃん」

自分の恋愛には疎いが他人の恋愛には興味津々の銀時、鼻息荒くのどかに変な事をこれ以上言うなと怒っている土方を見てニヤニヤ笑いながら彼の右の方に座っている刹那に話しかけるが

「くか~・・・・・・」
「あれ? 座りながら寝てるんだけどコイツ?」

座布団の上で正座しながら刹那が爆睡している事に銀時は気付いた。

「なんか喋らねえと思ってたらこいつもしかしてずっと正座したまま寝てたわけ?」 
「マジか? 今まで気付かなかったぞ」
「きっと刹那さんも疲れてたんですよ、今日は刹那さん大変な目に遭いましたし」
「か~・・・・・・・」

全蔵との戦いの疲れが出て来たのか正座したまま頭を揺らしながら幸せそうに寝ている刹那、よく見ると彼女の開けている口からダラ~ンと長いよだれが出ている

「おいおい、よだれ出てるぞよだれ」
「きったねえコイツ、幸せそうに寝てるところもまた腹立ってくる」
「くか~・・・・・・」
「うおッ! 汚ねえだろ寄りかかんなッ!」
「おごッ!」
「ひ、土方さんッ! 刹那さん怪我してるんですよッ!?」

よだれを垂らしながら肩に顔をもたれてきた刹那に土方はすかさず蹴りを彼女の顔面に入れる。
それを見たのどかが驚いてる隙に刹那はそのまま吹っ飛んで畳の上に倒れる

「せ、刹那さん大丈夫ですか・・・・・・?」
「・・・・・・」
「刹那さん?」
「こけ~・・・・・・」
「まだ寝てる・・・・・・」

土方に蹴られて倒れている刹那に恐る恐るのどかは尋ねるがまだよだれを垂らしながら幸せそうに夢の中へ。物凄く疲れていたのか筋金入りのバカなのか・・・・・・
そんな彼女を土方は呆れたように視線を送る

「俺はこんな奴とさっきまで死線をくぐり抜けていたのか・・・・・・」
「オメーの上司と部下よりはマシだろ」
「いや同じぐらいだな、そんな事よりお前」
「ん?」
「お前もあるんだろ、俺達に話す事が」

今度は銀時の話を聞かなければと土方は顎で彼をしゃくる。銀時はしばらく考え込むように頭を掻き毟った後、パンと両手で自分の膝を叩く

「そうだったな、前々から言おうと思ってたんだが実は俺・・・・・・人間の姿を借りた堕天使なんだ」
「おい堕天使、そろそろ真面目に話させえと天使の輪っかを頭に付けるぞ」
「んだよノリが悪い奴だな・・・・・・ハァ~しょうがねえ話してやるか」

冷たくツッコんできた土方にぶすっとした表情でため息をついた銀時はようやく本題に入る事にした。

「ここら辺の大きな橋渡ってる時、春雨の幹部の女に殺されかけたんだよ」
「春雨の幹部の女・・・・・・?」
「春雨・・・・・・」
「兄貴どうしたんスか?」
「いやちょっと・・・・・・」
「?」

銀時の言った春雨という言葉に反応を見せるネギにカモは不思議に思うが、銀時は話を続ける。

「金髪でスタイルのいい綺麗な女、見た目は細っこい体のクセに何十分も斬り合いをしても汗一つかかねえし力も化け物レベル、ただの人間じゃねえって事は確かだ」
「斬り合い? てことはそいつの得物は刀か?」
「俺達が持ってる刀とは全然違う刀だけどな、金色に光る両刃、ありゃあ西洋の刀だ」

敵の一人である謎の女の情報を銀時から聞いた土方はなるほどと深く頷く。

「金色の剣を持つ金髪の女か・・・・・・おめぇが手こずる相手って事は相当の手練らしいな」
「銀さん、よくそんな奴と戦って生きてこられましたね・・・・・・」
「さすがに俺もヤバかったな・・・・・・まあ間一髪変な魔法使いに助けられてよ、女にやられた傷も治してくれて病院行くハメにならずに済んだわ」
「変な魔法使い・・・・・・?」

銀時の新たな情報に隣に座っているネギが首を傾げる。本来魔法使いというのは普通の一般人の目の前には姿を現さない筈だが・・・・・・・

「その変な魔法使いって何者ですか・・・・・・?」
「さあな」
「さあなって・・・・・・何も話さなかったんですかその魔法使いと?」
「俺さぁ、あんとき大量出血で貧血気味だったから詳しく覚えてねえんだわ」

適当に手をブラブラとネギの前で振って誤魔化す銀時、本当はその魔法使いは桂の仲間らしいのだが、土方がいるなかでそんな事を伝えるわけにはいかない。
銀時の態度を見てネギは少し疑惑の目で見つめていたがすぐにやれやれと首を横に振った。

「まあ確かにあの時の銀さんの着物には血がベットリ付いてし凄い傷だったんでしょうね、いいんちょさんのも・・・・・・あれ、なんでいいんちょさんの浴衣にも血が付いてたんですか?」
「あれは俺の血が付いたんだよ、ったく血まみれのまま夜の京都を歩くのは大変だったぜ、誰かに会っちまったら即通報だしな」
「ハハハ・・・・・・だから旅館の入り口からではなくわざわざ窓から入って来たんですか・・・・・・」

何故銀時があやかと千雨を連れて窓から入って来たのか疑問に思っていたが、ようやく謎が解けてネギは苦笑する。本当に誰にも見られていなかったのか少し心配だが

「とにかく今日だけで色んな敵の情報がわかりましたね、謎の忍者や謎の関西協会の術者、謎の女剣士に謎の春雨の女幹部」
「いや謎ばっかじゃないッスか、何一つわかってねえじゃんですよ、合コンでいうとまだ相手の電話番号も聞いてねえ状態ですぜ」
「だってあの人達全然教えてくれないんだもん・・・・・・木乃香さんをつけ狙う理由も自分達の事もそれに・・・・・・」

目の前でズッコケてツッコんでくるカモにネギはポツリと呟く。やはり一番敵の正体を知っているのは自分達に色々と情報を与えてくれた・・・・・・・

「桂の野郎は何か知っているようだがな、あの野郎を捕まえて色々と吐いてもらうしかねえ」

膝に肘を付きながらタバコを咥えている土方がネギの考えている事と同じ事をつぶやく。ネギの場合捕まえるではないが一度会わなければいけないのは確かだと思っていた。
だが目の前でニコチンを摂取しているこの男は会うだけでは済む問題ではないらしい

「一応聞いときますけど、もし捕まえても桂さんが吐かなかったらどうするんですか・・・・・・?」
「ああ? 決まってんだろあいつの首をすっ飛ばすまでだ、つうか吐いてもその後すっ飛ばす」
「ですよねぇ・・・・・・」
「こ、殺すって意味ですかッ!?」

アハハと苦笑いを浮かべているネギとは対照的に桂を殺す事を聞いたのどかは表情に焦りを見せながら隣にいる土方の方へ向く。

「あの人は私達を助けてくれたんですよッ!?」
「あいつは俺達の世界ではテロリスト、俺達『真撰組』は奴のような輩を仕留める事が存在理由、そこに恩も義理もクソもねえんだよ」
「そんなッ! 殺すなんて駄目ですッ!」
「あのな・・・・・・」
「だってあの人達は私にとって恩人なんです・・・・・・そんな人達が殺されるなんて・・・・・・」
「・・・・・・」

必死に桂の命を懇願してうつむくのどかに土方がしばらく沈黙をしていると、黙って二人のやり取りを見ていた銀時はおもむろに立ち上がる。

「話が終わったんなら俺達は部屋に戻るか、行こうぜネギ」
「え、でも・・・・・・」
「・・・・・・行くぞ」
「・・・・・・そうですね」

銀時の意見に最初は少し抵抗を見せるが、珍しく真剣な目でこちらを見てくる彼にネギも理解したのか、肩にカモを乗せて座布団から腰を上げ襖を開けて銀時の後ろについていく。
廊下に出て最後に土方の方へ向いて軽く会釈した後、ネギはパタンと襖を閉めていった。

部屋に残ったのは呑気に寝ている刹那、そして黙りこくっている土方へ前髪からつぶらな目を覗かせているのどかだけになった。
しばらくの間お互い無言になっていると土方がふと自分の後ろに置いてあった鞘におさまってる刀をのどかに見せた。

「・・・・・・俺が刀を持っている理由がわかるか?」
「え・・・・・?」

突然の質問にのどかは一瞬戸惑いの表情を見せる。するとタバコの煙を口から吐きながら土方はゆっくりと口を開いた。

「真撰組の大将を護る為だ、俺にとってあの人は真撰組の“魂”、そして部下の俺達はその魂を護る“剣”だ」
「・・・・・・」
「あの人に仇なす者は俺が全てたたっ斬る、ゆえに俺は手に刀を持ち、多くの敵を斬っていく」
「・・・・・・」

土方が言っている大将というのは恐らく土方の上司と名乗っていた近藤勲なのであろう。のどかはあの男が土方に内緒で麻帆良学園に来ていたのでその姿を見た事がある。
最も大切な存在、それを護る為なら自分はそれを護る為に戦う。彼の言葉をのどかは黙って聞く事しか出来ない。

「俺はお前が考えてるほど綺麗な人間なんかじゃねえ、真っ赤な血で汚れた人間だ」
「・・・・・・」
「わかっただろ、もう俺に関わるな、人殺しの俺なんかよりお前にはもっと・・・・・・」
「・・・・・・土方さん」
「ん?」

ふいに口を開いてきたのどかに土方が持っていた刀を畳の上に置いてそちらへ顔を向ける
見ると彼女は落ち着かない様子で体をそわそわしながら顔を赤らめていた。

「あ、あ、あの・・・・・・あの・・・・・・!」
「なんだよ言いたい事があるなら言え、俺は別にお前に怖がられようが嫌われようが気にしねえよ」

相変わらずオドオドしながらうつむいているのどかを見て、土方はため息をつきながら咥えていたタバコを携帯灰皿に入れる。
だが彼がポケットからタバコを取り出して口に咥えた直後に決心したようにのどかが顔を上げる。
そして思いっきり息を吸い込んだ後
























「あ、明日の自由行動は私と一緒に回りませんかッ!?」


















「・・・・・・へ?」
「ぐがー・・・・・・」

予想だにしていなかったのどかの頼み事に土方は手に火を点けたライターを持ったまま固まる事しか出来ない。
そんな彼をよそにその場でずっと寝ている刹那は一層大きないびきをかいていた。










































一方隣の部屋では既にネギと銀時は電気を消して布団に潜り込んでいた。
使い魔のカモもネギの近くで既に腹を表にして寝ている

「・・・・・銀さんまだ起きてますか?」
「・・・・・・何?」

眠れそうにないネギが暗闇で前がよく見えない中、隣で布団に入って寝ている銀時に話しかけると、不機嫌そうに彼の声が飛んできた。

「早く寝ろよ、若い時に睡眠時間を取らねえと成長バランスが崩れ去るぞ」
「そうなんですけど連中がいつ木乃香さんを狙って襲ってくるかのかと思うと眠るに眠れないんです・・・・・・銀さんは不安じゃないんですか?」
「心配いらねえって敵さんもきっと今頃疲れてシエスタ決め込んでんだろ、お前も今は何も考えず寝ろ、もしくは何か数えて寝ろ」

単なる楽観的なのか余裕なのかはわからないが銀時は敵襲に不安を抱えているネギに心配ないと答えてきた。
彼の答えに100%の納得は出来ない顔をするもとりあえずネギは彼の言う通り渋々眠る事にした。

「わかりました銀さんの言う通り頑張って寝ます・・・・・・・黒モジャの死体が1体・・・・・・黒モジャの死体が2体・・・・・・黒モジャの死体が3体・・・・・・」
「おい待て~、そこ普通羊数えるんじゃねえの~? 何黒モジャの死体って? もしかして脳内で黒羊殺してるぅ?」

いきなり隣でネギが殺意を込めながら発する呪文の様な声に銀時がすかさず横になりながらツッコむ。

「黒羊でも黒執事でもありませんよ、僕にとって一番殺したい奴を脳内で次々と殺していき熟睡する僕の安眠法です」
「どんな安眠法だ殺された相手永眠してんだろうが、てか誰だよ黒モジャって、それ隣で聞いてる俺は全然眠れねえから止めてくれよ頼むから・・・・・・ん?」
「銀さん・・・・・・!」
「ああ」

ネギに眠そうにツッコんでいる時にふと部屋の中でガタガタと小さな物音が聞こえてきて銀時はのそっと布団から起き上がる。ネギも急いで立ち上がって部屋の電気を付けた

「さっきの物音は何処から・・・・・・」
「このデッカイ壺の中だ、さっきから妙に誰かに見られてると感じると思ったが・・・・・・」

銀時は部屋の隅に置かれている最初から飾りとして置いてあった大きな壺を指差した後、近づいていく。念のため布団の近くに置いといた愛刀の洞爺湖を持って

「おい壺の中にいる奴、ツラこっちに出しやがれ、さもねえとお前ごと壺持ってここのベランダから下の池にほおり投げるぞコラァ」

木刀を肩に担いでジリジリと銀時は近づいていき壺の中にいる人物に向かって言葉を発するが返事は無い。ならばと銀時はそーっと壺の中を覗こうとすると

「こんばんは」

壺の中にいた人物、龍宮真名がヒョコっと顔を出して銀時と目が会った。

「よくわかったな先生、毎度のことながら素晴らしい」
「龍宮さん・・・・・・アンタ何してるんですか・・・・・・?」
「何っていつものストーキン・・・・・・」

現れた銀時のストーカーである龍宮にネギが呆れていると、銀時は彼女が言い終える前に壺に入っている彼女ごとその壺をヒョイと両手で持って、ベランダに出る。そして

「そい」
「あ」

ほおり投げた。壺に入っていた龍宮はそのまま気温の低い夜の中、下にある池に音を立ててダイブ。しばらく池にブクブクと沈んでいく龍宮が入った壺を冷たい目で見下ろしていた銀時はすぐにベランダから部屋に戻っていく。

「そろそろ警察とか呼んだ方がいいのかねぇ」
「大丈夫ですか・・・・・・? 池にほおり投げたようですけど・・・・・・」
「元々“大丈夫”じゃねえ頭してる奴だから心配あるめえよ、明日の朝になったら朝食広場で何食わぬ顔で普通にいるさ、そんなバカだあいつは」
「そうですか・・・・・・」

龍宮の扱いに慣れている銀時によると彼女は「まず死なない」らしい。
それなら敵と戦う為の戦力になるのではないかと考えながらネギはまた布団に戻っていく。
かくしてネギの波乱の修学旅行一日目はやっとこさ終わりを告げるのであった。













































銀時とネギが眠りについているその頃、ポニーテールから髪を下ろした雪広あやかはベランダの手すりに膝を付いてボーっと夜の京都を眺めていた。
他の班の人は全員布団に入って就寝しており、彼女だけ眠れずにこうやって外を見て暇を持て余していた。

「銀さん・・・・・・」

銀時が木刀を持って金髪の女性と戦っていた事がまだ彼女の脳裏に鮮明に焼き付いている。
彼が戦争体験者でもあるのも昔からそういう事には慣れっこだというのはよく本人から聞かされていたのだが、本当に生死をかけた戦いをいざ見てみると彼女の心は揺れに揺れまくった。千雨には大丈夫だと言ったが本当の所、不安なのだ

このまま彼を戦わせていいのだろうか?
いつか彼は戦いで死んでしまうのではないのだろうか?
もし彼が死んでしまったら自分は一体どうなってしまうんだろうか?

そんな事を何十回も頭の中で考えながらあやかは表情を段々と険しくさせる。めんどくさがりやで不真面目で自堕落、子供の様にはしゃいだり笑ったり怒ったり、でも時々誰よりもカッコよくなる、そんな彼があやかにとっていつもの姿なのだ。

「・・・・・・」
「いいんちょ眠れねえのか?」
「え?」

考え事をしている時に不意に呼ばれたのでふと振り返ってみると

「私も全然眠れねえや・・・・・・」
「千雨さん・・・・・・」

髪を結ばずにメガネを付けてない状態で千雨がだるそうに立っていた。しばらくしてフラフラした足取りでベランダの中へと入って来る。

「あいつの事考えてたら全然眠れなくなっちまった」
「そうですか、私と同じですわね・・・・・・」

あやかの隣に立った千雨はそこで彼女と同じように夜景を眺める。どうやら二人共彼の事で頭が一杯になっていたようだ。

「あいつ・・・・・・明日、桂、っていう幼馴染に会いに行くんだよな?」
「いつも銀さんが『ヅラ』って言ってる人です、正直お話しか聞かされてないのでどんな人なのかはまだよくわかってませんわ」
「もし銀八を戦いに引き込もうとする奴だったらぶん殴ってやる」
「殴らないで下さい、ていうかあなたもしかして銀さんと一緒に桂さんに会いに行く気ですか?」
「当たり前だろうが、お前は行かないのかよ?」

何当たり前のこと言ってんだと言わんばかりに振り向いてきた千雨に、あやかは複雑そうな表情で彼女から目を逸らす。

「行きたいか行きたくないかと言われると正直行きたいです、ですけど私達がいちいち首突っ込んでいたら銀さんに迷惑かけるのではないかと・・・・・・」
「そうかよ、だったら明日は私一人であいつについて行く、あいつに迷惑だろうがなんと思われようが知ったこっちゃねえからな」
「・・・・・・」

キッパリとこっちを向いて宣言する千雨にあやかはどうしていいのか困ったようにうつむく。そんな彼女を見て千雨はポリポリと頭を掻き毟る

「いいんちょは明日までに決めとけよ・・・・・・私一人じゃ不安だから・・・・・・・」
「? 最後なんて言いましたか?」
「な、なんでもねえよッ! とにかくもう寝ようぜ明日の事もあるんだしッ!」
「あ、はい」

若干頬を染めてごまかした後千雨はさっさとベランダから部屋に戻って行く。あやかもそんな彼女に首を捻りながら彼女の後へついて行った。







彼女達が眺めていた夜の京都でまだ獣が動いているのも知らずに・・・・・・



































「アンタが桂小太郎でしょ?」

夜の京都、今は誰もいない本能寺で、エリザベスや少年も連れずに一人で捜索活動する為に戻って来た桂小太郎に、何者かが後ろから声をかけた。

「・・・・・・人違いだ」
「とぼけなくていいわよ、アンタも高杉の昔の仲間なんでしょ? あいつがアンタの事をよく話してたから知ってるわ」
「何?」

女、しかもまだその声はまだ幼い事に気付いた桂はハッと後ろに振り返る。
そこにいたのはローブを着た幼い少女、赤髪のツインテールをしたその少女に桂はある事に気付いた

「前に異国で見た高杉をこの世界に召喚した魔法使いの少女か・・・・・・」
「よく覚えてたわね私の事」
「何故お主がここにいる、お主のような小さな少女がこんな場所を夜中に散歩か?」
「散歩だけじゃないわよ、ちょっとやる事があるの」
「やる事・・・・・・む?」
「“私達”の周りをうろつく輩がこの辺にいるって聞いてね、ちょっと駆除しようと思って来たのよ」

桂は夜の闇に紛れてゆっくりと殺気を放ちながらこちらに歩いてくる少女の腰に差している物が見えた。
小さな少女が持つにはあまりに長すぎて大きい物、それは

「刀? お主もしや・・・・・・」
「御名答・・・・・・!」
「ぬッ!」

気が付いた途端には既に少女は刀をおさめている鞘を持って桂に急接近する。すかさず彼も腰の刀を抜く、その瞬間高速で鞘から抜いた少女の刀が桂の刀と火花を散らして衝突した。

「やっぱ簡単には死なないわよねぇ・・・・・・」
「居合いか・・・・・・」
「高杉に教えてもらった剣術よ・・・・・・」

少女は刀にグッと力を込めるも桂は全く動じずに刀で受け止める。
桂の力に押し返されそうになり、まだ自分の実力が彼に及ばない事を悟った少女は悔しそうに下唇を噛む

「“これ”の扱い方がもっと上手になれれば、アンタや坂田銀時だって倒せるのに・・・・・・」
「銀時?」
「坂田銀時もアンタも、もう一人の男も・・・・・・アンタ達がいる限り私は・・・・・・」
「こんな所にいたのかいお嬢ちゃん、高杉殿から捜索願いを出されておりますよ」
「はッ!」

二本の刀が交わっているその時、少女を呼ぶ男の声が突然上から飛んでくる、声がした上空に少女と桂が同時に顔を上げると月をバックにして一人の男がスタッとこちらの近くに舞い降りてきた。桂と少女がすぐにつばぜり合いを止めて一旦離れる。
無精ひげとボサボサ髪が特徴的な男が体にマントを巻きつけているような服装で桂と少女の前に現れた

「お嬢ちゃん勝手に夜出歩かないで欲しいな、おじさんこうやってパシらさせられるのはごめんなんだよ」
「春雨のクセに余計な邪魔しないで・・・・・・!」
「春雨だと?」

今に噛みつくような表情を浮かべる少女が目の前の男へ春雨という言葉を発した時、桂はこの男が宇宙海賊春雨の一人だと知った。
そんな彼を尻目に男は少女の方へツカツカと歩いて行った。

「その春雨のおかげで強くなれたのはどこの子かなぁ? 考えたのは高杉晋助でもその刀を造ったのは俺達、春雨なんだぜ?」
「く・・・・・・!」
「帰るぜお嬢ちゃん、俺達春雨の幹部の一人に勝手に命令した件、そして今夜の勝手な外出した件に高杉殿はかなりおかんむりだ」
「わかったわよ・・・・・・」

男の話を聞いて少女は眉をひそめながら彼の意見に従う。男はそれを聞いてさっさと帰る為にその場から去って行こうとする、少女もそれにトボトボと歩きながらついていく。

「それじゃあ兄ちゃん悪かったね、あばよ」
「待たれよお主等、お主等に話を詳しく聞きたい、高杉の目的はなんなのだ?」

去ろうとする男の後ろ姿に向かって桂は刀を抜いたまま口を開く。すると男はこちらに振り返って

「“鬼退治”する前に揃うといいな“アンタ等”」
「鬼退治?」

意味深な一言のみを残して、男は少女を連れて夜の闇へと消えて行った。
残された桂は一旦刀を鞘に戻した後、顎に手を当てて考える。

「鬼退治鬼退治鬼退治・・・・・・はッ!」

男の言っていた事に桂は驚くような表情をして衝撃的な事実に気付いた。

「考えても何が何だかさっぱりわからんぞッ!」

いくら考えても自分一人ではなんにもわからないと気付いた桂はフゥ~とため息をついて夜空を見上げた。

「今日は疲れたし帰って寝るか、いやその前にコンビニでんまい棒とファミチキを買ってからにしよう、美味いからなファミチキは」

そう言って桂はスタスタと歩いて本能寺から去る。
ある意味この何処か抜けた性格が桂のカリスマ性なのかもしれない

















更なる波乱が起きるとは知らずに騒動に巻き込まれた人達はしばしの休息を取るのであった。












[7093] 第四十一訓 マナーを守らない奴はとりあえずTKO
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/01/14 20:59
修学旅行二日目、昼前、教員として白衣とスーツ、サンダルのダルダルファッションに身を変えた坂田銀八モードでいる銀時と(念のため腰には洞爺湖を、背中には夕凪が差してある)、千雨やあやか、和美達がいる3班の生徒達と一緒にある場所に来ていた。

「へ~ここが奈良公園っつう所か、シカとウンコばっかじゃねえか」
「おい銀八、勝手に行くなよ」

周り全体を見ると多くのシカ達が自由気ままにその辺で歩いてるのを見ながら銀八が勝手に歩いて行く事に生徒である千雨が咎める。

「勝手に『桂』って奴の所に会いに行かれたらこっちは困るんだよ」
「なんで困るんだよ」
「それは・・・・・・」
「お前もしかしてついてくる気じゃねえだろうな?」
「い、いいだろ別にッ!」

質問にムキになったように叫んでくる千雨を見て銀八は「ハァ~」と大きくため息をつく。

「お前は関係ねえんだからついてくんじゃねえぞ、あいつに会いに行くのは俺一人でいいんだよ、お前は他のガキ共と一緒に楽しくその辺にいるシカに煎餅食わせてろ、楽しくその辺のシカのウンコでも見てろ」
「奈良公園の楽しみ方になんでシカのウンコ見るのが入ってんだよッ! 全然楽しくならねえよッ!」
「なんか見てると芸術的じゃね? 丸っこくてなおかつトゲトゲ的な所とか? なんかもうパンクロック的なトゲトゲが凄くね? 「俺等ウンコですけど一度尖ったらめっちゃ怖いッスよ」っていうパンク的な匂いが漂ってる、ウンコだけに」
「うまい事言ってんじゃねえよッ! ていうかもうそれ芸術でもなんでもねえよッ! ただのグレたウンコじゃねえかッ!」

遠くにいるシカ達を眺めている銀八に千雨がツッコミを入れていると二人の所に二人の生徒がバタバタと駆け寄ってくる。

「銀さんシカ煎餅買って来たよッ! 銀さんもシカにご飯上げなよッ!」
「千雨さんさっき下品な事を叫んでるのが聞こえましたわよ・・・・・・女の子なんですからそういう事を言うのは・・・・・・」
「じゃあ何て言うんだよ・・・・・・」
「「お尻から出てくる茶色いあの御方」でどうでしょうか?」
「表現キモッ! そっちの方がアウトだろッ!」

シカ煎餅を数枚持ってはしゃいでる和美と、千雨に向かって軽蔑のまなざしをするポニーテールのあやかが一緒に銀八と千雨の所にやってきた。

「はいシカ煎餅ッ!」
「オイいらねえよッ! テメェ等ガキ共みたいにはしゃげる年じゃねえんだよ俺はッ!」
「却下しますッ!」
「俺の意見笑顔で却下ッ!?」

笑いかけながらきっぱり意見を斬ってくる和美に銀八がうんざりした表情を浮かべていると、そんな彼にあやかも口を開く。

「銀さん少しでいいですから生徒達と一緒に行動して下さい・・・・・・教師は生徒との時間を大切にする事が必要ですわ」
「チッ、しょうがねえな、和美、煎餅寄こせ」
「あ、はい」

あやかに言われてしかめっ面を浮かべる銀八だが、しょうがなく和美からシカ煎餅を受け取る。銀八は薄くて握り拳ぐらいの大きさのシカ煎餅を貰った瞬間すぐに

「はい千雨、銀さんからのプレゼント、遠慮なく食え」
「いらねえよッ!」

間髪いれずにシカ煎餅を差しだてくる銀八に千雨が怒鳴っていると、あやかが銀八の手をとって指を差す。

「ほら銀さん、千雨さんじゃなくてシカさんに上げて下さいな、そこにいますから」
「いやシカより千雨に全力でこれ食って欲しいんだけど?」
「何がお前をそう駆り立てるんだッ! いいからシカにあげてこいシカにッ!」

千雨に背中から突き飛ばされて銀八は渋々目の前にいるシカの方へと歩いて行く。シカに向かって持っているシカ煎餅を上げようとすると、上げる前にふとシカの隣にいる物体を見てピタッと動きが止まった。

目の前にいたのは二足で立って『トナカイによる京都・奈良観光ガイド』というボードを首に紐でくくりつけてぶら下げている、角を生やしたオッサン見たいなシカ、否、角を生やしたオッサン見たいなトナカイが立っていた。

「・・・・・・何してんだお前ココで?」
「あん? こっちは仕事だよ、トナカイが仕事して文句あんのかよ? クリスマス意外にもこうやってバイトしねえと食っていけねえの」
「ありまくりだよッ! ありすぎて腹いっぱいだよッ! お前確か俺の世界にいたサンタのオッサンと一緒にいたトナカイのベンだろッ!? 何でここにいんだよッ!」
「ベン・・・・・・!?」

自分の世界にいたトナカイのベン、クリスマス行事に参加するべき筈のベンが何故ここの世界にいる事に銀八が思わず叫ぶが、ベンと呼ばれた事にトナカイのオッサンは表情をハッとさせていた

「ベンってまさか・・・・・・数十年前行方不明になった俺の兄であるあのベンかッ!?」
「オイィィィィィ!! まさかの衝撃の急展開ッ!? あいつここの世界の住人だったのッ!?」
「あんた知ってるのかッ!? 一つだけ教えてくれッ! 兄貴は元気にやっているのかッ!?」
「いや・・・・・・・よく知らねえけど元気でやってるんじゃねえの?」

兄のベンとそっくりな姿をする弟に銀八が頭を掻き毟りながらそう言うと安心したかのように弟は安堵の笑みを浮かべる。

「そうか・・・・・・兄貴が元気でやっているのが分かればそれでいい・・・・・・だがもし兄貴に会える機会があるなら伝えて欲しい、「ジョンソンは兄貴がいなくても元気にやってます」と・・・・・・グスッ!」
「兄がベンで弟ジョンソンッ!? 凄いよ二人合わせたらベンジョンソンだッ! あいつの名前にはそんな秘密があったんだねッ! どうでもいいけどなッ!」
 
大量の涙と鼻水で顔がすんごい事になっているベンの弟の名前がジョンソンと聞いて銀八がツッコんでいると、彼等の所に白ひげをたくわえて真っ赤な服を着たいわゆる『アレ』見たいな人がお馴染みの大きな白い袋を持ってやってきた。

「おい何やってんだジョンソン、暇なら俺の所を手伝えよ」
「サンタのオッサン・・・・・・・!? まさかてめぇも行方不明の親戚がいるとかねえよな・・・・・・」
「何・・・・・・!」

もしやと思い銀八がサンタらしきオッサンに疑問を尋ねるとそれを聞いたサンタらしきオッサンは表情をハッとさせた。

「それってまさか・・・・・・数十年前行方不明になった俺の弟の妻の従弟のそのまた従弟の父親の友達のそのまた友達の息子の犬を拾ってあげた男の友達のアイツの事を言ってるんじゃねえだろうなッ!?」
「親戚でもなんでもねえただの赤の他人じゃねえかッ! ていうかよくそんなに遠い奴とコンタクト取れたのか不思議でしょうがねえわッ!」
「あんた知ってるのかッ! 一つだけ教えてくれッ! ・・・・・・あいつはもうFF13をクリアしたのか・・・・・・?」
「知らねえよそんな事ッ! なんでそんな赤の他人がFF何処まで進んだか気になってんだよッ!」

恐らく異世界にいたあのサンタの果てしなく遠い知り合いであろうサンタに銀八がツッコんでる間にそのサンタはゴソゴソと持っていた袋の中身を探り出した。

「まあいい、アイツの知り合いに会えたのもなんかの縁だ、これ安く売ってやるわ」
「いやいいから・・・・・・お前等サンタって本当くだらない物しか持ってないの俺知ってるか・・・・・・」
「そういうなって最近の流行りモンだぞコレ、ホレ、ベーゴマだ」
「何処が流行りモンだァァァァァ!! 昭和の匂いが辺り一面漂ってんじゃねえかッ! 平成何年だと思ってんだコラッ!」   

手のひらに鉛で出来たベーゴマを乗せて見せつけるように微笑むサンタに銀八が叫ぶ。この世界でベーゴマが流行っているなんて異世界出身の銀八でさえ知っているのだが、サンタは「いやいや」と言って首を横に振る。

「最近ベイブレード?とかいう奴が流行ってんだろ? コイツはアイツ等の先輩だからね? あいつ等なんか完璧舎弟だからね? コイツが「ジュース買ってこいよ」って言えば焼きそばパンも一緒に買ってくるぐらいペコペコするからねアイツ等」
「先輩どころかジジィクラスだろうがッ! 孫に向かって「ちょっと肩叩いてくれんかの?」ってレベルの人生の先輩だろうがッ!」
「一個五百円の所を今なら二個で千円にまけてやるよ」
「まけてなくねッ!? ピタ一文まけてなくねッ!? 完璧ぼったくりじゃねそれッ!?」
「しょうがねえだろッ! こっちだって生活かかってんだよッ! 買わねえと顔面にベイシュート決め込むぞッ! アレ当たるとメチャクチャ痛えんだぞッ!」
「本格的に脅しにかかってきやがったよこのジジィッ! もう子供に夢配る優しいおじいさんというイメージが怒涛の如く崩れてくよッ! つうかベイブレード持ってんならそっちよこせッ! チビが欲しがってたからッ!」 

ベーゴマを袋から大量に取り出して額に青筋を浮かべて強引に売り出そうとするサンタに銀八が抗議の声を上げていると、ふとサンタの背後でキャーキャー言いながら歩いている数人の生徒のグループが目に入った。

3年A組の生徒達の4班だ。銀八はその中で一番はしゃいでる生徒の一人をジーッと見つめる。銀八がよくイジリにイジリまくっている佐々木まき絵だ

「お前等、あそこにいるピンクの髪したヘラヘラ笑ってるアホ面いるだろ? あいつカモだ、ベーゴマ買わせるなり観光ガイドさせてくれるなりなんでもやってくれるぞ」
「マジかッ!? おいジョンソン今日はいっちょやるかッ! そこのお嬢さんベーゴマいかがっすかぁぁぁぁぁ!!」
「すんませぇぇぇぇぇんッ! 今ならトナカイジョンソンの『さんまを超える超腹筋崩壊悶え死に爆笑トーク付き京都・奈良観光ガイド』実施中なんですけどぉぉぉぉ!!!」
「いやハードル上げすぎじゃね?」

走り去っていくサンタの後ろについていくジョンソンに銀八がポツリと呟いた後、彼の目の前でサンタとトナカイの突撃によりまき絵が悲鳴を上げていた。

「え、何ッ!? 何なんですか一体ッ!?」
「まき絵の知り合い?」
「こんなに所にサンタとトナカイの知り合いなんていないよッ! 変な事言わないでよ亜子ッ!」
「ベーゴマいかがっすかぁぁぁぁ!!」
「ガイドいかがっすかぁぁぁぁ!!」
「イダイッ! サンタに何故かベーゴマ投げつけられたッ!」

銀八は彼女がサンタにベーゴマを投げの嵐に遭っている所まで見た後、そっぽを向いて千雨達のいる所へと戻って行ってしまった。

「ただいま」
「・・・・・・さっきずっとお前と話してたオッサン二人が佐々木にベーゴマ投げつけてんだけどなんで? トナカイなんかハリケーンミキサーやってるけど?」
「さあ? 俺は知らねえよ」
「ふ~ん」

戻って来た途端千雨に質問されたのですぐにとぼける銀八。そんな彼を千雨は「まあどうせコイツが原因なんだろうな」と思っている様子で見つめるが別に彼女にとってはまき絵なんてどうでもいい存在なので、追及する気はなかった。

「そんな事よりお前、シカに煎餅あげれたの? なんかオッサンとずっと喋ってたけど」
「ああ、あげるの忘れてた、しょうがねえシカの代わりにここはお前で」
「だからいらねえよッ!」

再びシカ煎餅を目の前でフラつかせてくる銀八に千雨が叫んでいると、眉間に眉を寄せてあやかが銀八に話しかけて来た。

「銀さんもうシカでも千雨さんでもいいですから煎餅あげてください、楽しいですわよ」
「なんで私でもいいんだよッ! 食わねえしつうか食えねえよッ!」
「諦めんじゃねえよ千雨、食えないって決めるな、お前ならきっと食える、やれば出来るって、もっと熱くなれよ」
「そこで修造が出る必要性もわかんねえよッ! いくら修造に言われても絶対食わねえからなッ!」
「もしコレ食ったらヅラの所に連れて行ってやるよ」
「ふんごッ!」
「「間髪入れずに食ったッ!!」」

さっきまであやかや銀八に言われても絶対にシカ煎餅なんか食べるかと豪語していたのに、いきなり銀八が持っていたシカ煎餅を一瞬で口で直接ほおばる。その勢いに彼女にあげようとしていた銀八や隣にいるあやかまで同時に驚く。
そのまま千雨はシカ煎餅をボリボリと噛んで最後にゴクンと飲み込んだ後、やり切った表情で銀八にニヤリと笑いかけた。

「ハァハァ・・・・・・食ったぞ銀八・・・・・・」
「イヤだ何この娘、動物のエサ食べたよ、引くんだけど? おもクソ引くんだけど?」
「千雨さん、さすがにそれは人としてどうかと思いますわ・・・・・・」
「テ、テメェがさっきから食え食えって言ったんだろうがァァァァ!!」

シカ煎餅を完食した事にドン引きしている銀八とあやかに千雨が唾を吐くぐらい怒鳴り散らしていると、そんな三人の所にさっきまで何処へ行っていたのか和美が慌ててこちらへ戻って来た。

「銀さん銀さんッ! ビッグニュースッ! 奈良公園に変な生き物現るッ!」
「こっちにもシカのエサ食べた珍妙な人間がいるけど?」
「シカの煎餅を引くぐらい美味しそうに食べれる異様な人間ならここにおりますわよ?」
「おいそろそろマジでぶっ殺すぞ金銀バカコンビッ!」

指をさしてくる銀八とあやかに千雨が叫んでいるのを見て状況をわかっていない和美は首を傾げる。

「何かあったの? それよりさッ! さっき変な生き物がこの辺をウロウロ歩いてるって情報を双子から聞いたのッ! ペンギンの様なアヒルの様なとにかくわけわかんない生き物がッ!」
「はぁ?」
「わけわかんない生き物?」
「何それ?」

銀八とあやかと千雨は和美の言っている事がイマイチ掴めていない。そんな三人を尻目に和美は自前のカメラを取り出す。

「奈良公園に現る謎の怪人ッ! そんなの絶対に撮らないと・・・・・・アッ! いたッ!」
「マジかよ一体どんな生き物・・・・・・あ」
「な、なんですのあの珍妙なナマモノはッ!?」
「おったまげた・・・・・・私初めてUMA見たかも・・・・・・」

和美が指差した方向に万事屋トリオは振り向くと銀八は思わず頬を引きつらせ、あやかは両手を口に当てて驚き、千雨でさえ唖然とした表情で我が目を疑う

「キャーッ! 見てみて夏美ッ! すっごい変な生き物がこっち見てるッ!」
「目を合わせちゃダメちづ姉ッ! 取り憑かれるよッ!」

そこにいたのは珍しくはしゃいでる姿の千鶴の手を引っ張って夏美が必死に“ある物”から遠ざけている所だった。
白い肌と黄色いクチバシ、そして合わせたら吸い込まれそうな目をしている謎の生物。
その生物の指の無い手には『銀髪の天然パーマの男見なかった?』と書いてあるボードを持って千鶴達に質問しているようだった。

「銀さんなんですかアレ・・・・・・なんか銀さんの事探してる見たいですけど・・・・・・」
「やっぱアイツもこの世界に来てたのか・・・・・・」
「知ってるんですか?」

腕を組みながらポツリと銀八が呟いた事にあやかが尋ねると彼は彼女と千雨に向かって説明する。あの生物はなにをかくそう

「あのUMAはエリザベス、ヅラのペットであり仲間だ」
「エ、エリザベス・・・・・・? 桂さんのペット・・・・・・? 桂さんはどういう経緯であんなのをペットにしようなんて思ったんですか・・・・・・?」
「ヅラはバカだからな、ついでにアレをヅラに送った奴もバカだ」
「何処のオバQだよありゃあ・・・・・・」

銀八の話を聞いてあやかは理解不能だという表情で固まり、千雨も怪しい物を見る様な目でエリザベス眺める。事実怪しい生物だからしょうがないが。
一方和美はというと、エリザベスをカメラにおさめて何十回もシャッターを押している所だった。

「まさか修学旅行先であんなUMAと会えるなんて私感激なんだけどッ!?」
「よかったな、俺はもう江戸で見飽きたよあいつ、いつもヅラにくっついてるし」
「あッ! こっち来たッ!」
「なに?」

こちらに向かってドスドス走ってくるエリザベスに和美はすっかり狂喜している。エリザベスと銀八達の距離がどんどん縮まり

「すいませんUMAさんッ! ちょっとインタビューもらえ・・・・・・のごぉぉぉぉッ!!」
『人に許可なく写真取ってんじゃねえよこのクソアマァァァァ!!』
「朝倉ァァァァァ!!」


近づいてきた途端インタビューしようとしてきた和美に向かってエリザベスは容赦無しにドロップキック。和美はエリザベスの攻撃に成す術も無く顔面を蹴られそのまま後ろに倒れる、千雨が慌てて彼女に近寄って安否を調べるが気絶してしまったようだ。銀八は気絶した和美を置いといてエリザベスの方へと歩み寄る。

「おい、ウチの生徒KOしてんじゃねえよ、なんかトラウマ覚えたらどうするつもりだコラ」
『久しぶりだな同志よ』
「勝手に同志にすんな」

ボードを持って会話するエリザベスに向かって銀八が短くツッコむとエリザベスはすぐに本題に入った。

『じゃあ桂さんの所へ行く?』
「ああ、本当は会いに行きたくねえけどよ、色々とあいつから聞きてえ事があるんだ、案内してくれ」
『了解した』

エリザベスはそうボードに出すとクイクイと手で銀八にこっちだと指示をする。

桂の使者であるエリザベスと久しぶりに対面した銀八はいざ桂の所へと向かうのであった。










































第四十一訓 マナーを守らない奴はとりあえずTKO

銀八がエリザベスと共に桂の所へ向かっているその頃、もう一人の教師のネギはアスナ達5班を連れて奈良の大仏殿へと来ていた。

「うわ~大きいんですね大仏殿って」
「木乃香大丈夫? 勝手に一人で変な所行かないでよ、昨日の事もあるんだから」

目の前に大きく立ちはだかる大仏殿にネギが感動を漏らしている後ろでアスナが隣で歩いている木乃香の方へ口を開く。だが彼女は元気そうに笑って

「心配せんでええよ、修学旅行中はせっちゃんや銀ちゃんもおるし、それにあの人もここにおるし」
「あそこで呆けてる奴でしょ・・・・・・今日のあいつは使い物にならないわよどう見ても・・・・・・」
「あの人から全く生気が感じられないのは気のせいでしょうか・・・・・・」
「なんかあったんスかね?」
「あったらしいわよ、今日の朝、ハルナから聞いたんだけど・・・・・・」

疑問を感じているネギと彼の着ているローブの内ポケットにいるカモにアスナは木乃香も近くに呼び寄せてヒソヒソと話をしているその頃。


























「・・・・・・」
「土方さん、さっきから落ち着かない様子ですけどどうしたんですか?」
「いや落ち着いてる、すげえ落ち着いてる」
「持ってるタバコが尋常じゃないぐらい震えてますけど?」
「これは武者震いって奴だ・・・・・・」

アスナがネギ達に土方の事を話している時、話の中心人物である土方は、大仏殿の前で手に持っているタバコをブルブル震わせて虚空を見つめていた。それに気付いた刹那が眉をひそめて尋ねる。

「昨日私が寝てた時に何かあったんですか?」
「・・・・・・」
「あの土方さん、本当にどうしたんですか・・・・・・・?」

いつもの彼ならもっと覇気がある筈なのに今日の土方はすこしおかしい。刹那が段々心配になっていると

「土方さんッ! コ、コーヒー買ってきましたッ!」
「お、おう・・・・・・」
「のどかさん?」

土方の方へ走り寄って来たのは同じ班出る宮崎のどか、彼女が持っていたコーヒーを顔を赤らめながら土方に渡す。すると彼は少し挙動不審な態度でそれを受け取った。
そんな二人に刹那は違和感を抱いているとふとある事に気付く。

「のどかさん、髪型が・・・・・・どうしたんですか急に?」
「こ、これはその・・・・・・イメチェンです・・・・・・」
「イメチェン・・・・・・?」

よく見るとのどかの髪型が少し変わっている、長かった前髪を後ろの方に束ねたらしく今日の彼女は顔がちゃんと見えるようになっていた。

「土方さん、その・・・・・・私の髪型、変ですか・・・・・・?」
「・・・・・・変じゃねえよ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・!」

素っ気なく呟いた土方にのどかは嬉しそうにお辞儀すると、お辞儀された土方はそっぽを向いて落ち着く為に彼女から貰ったコーヒーを一気飲みしてしまった。
恥ずかしそうに顔を赤らめているのどかと土方の焦り具合を見て刹那はますますわけがわからなくなる。

「二人共どこかおかしい・・・・・・うわっぷッ!」
「はい刹那さ~ん、“今回”はマジで邪魔したらダメだからねぇ~」

二人に向かって刹那が話しかけようとすると急に後ろから何者かに羽交い締めに拘束される、振り向くとそこにいたのはのどかの親友である早乙女ハルナがニヤつきながらこっちを見ていた。

「いつもアンタ邪魔するんだからさ、今日だけは本当に土方さんから離れて、マジでお願い」

羽交い締めにしたまま刹那をズルズルと土方達から離してネギやアスナ達の所にいる方へとハルナは引きずって行く。

「なんですかいきなりッ! ちょっと離してくださいッ!」
「はいはい今日は一日アンタは木乃香達と一緒に行動してなさ~い」

暴れながら抵抗する刹那を必死におさえつけながらハルナはようやくネギ達、そして何時の間にかいた夕映の所まで彼女を運ぶ事が出来た。

「もう何ですか一体ッ!」
「じゃあネギ先生とアスナと木乃香は、コレ(刹那)連れてって別の場所に移動してね、土方さんとのどかの邪魔になるから」
「ええよ~」
「じゃあ刹那さん行きましょうか」
「いや意味分かりませんッ! なんで土方さんとのどかさんから私が離れなきゃいけないんですかッ!」

ようやく拘束から解放されて混乱している刹那をよそにハルナがネギ達に向かって指示、木乃香も陽気な声で賛成して教師であるネギもそれに承諾して刹那を誘う。だが事の理解を全くしていない彼女にはさっぱりだ。

「ちゃんと訳を教えて下さいッ!」
「教えても鳥と同じぐらいのあなたの脳みそでは理解できないと思いますが?」
「夕映の言う通りだよ、刹那さんはハトと同じぐらいしか脳みそに許容できないじゃん」
「何言ってるんッ! せっちゃんはそんな頭悪くないッ! カラスと同じぐらいはある筈やッ!」
「全然フォローになってませんお嬢様ッ! せめて鳥類から脱却させて下さいッ!」
「それは無理やッ!」
「断言されたッ!」

夕映とハルナどころか木乃香にまで鳥と同じぐらいしか頭に入らないと決めつけられる刹那、そんな彼女にネギがこっそりと近づく。

「刹那さん、さっき僕もアスナさんから聞いたんですけど実は土方さん、昨日の夜、のどかさんからデートのお誘いがあったらしんですよ・・・・・・?」
「デ、デートのお誘いッ!? 私が寝てた隙にそんな事があったんですかッ!?」

ネギの情報に刹那は度肝を抜かれる。あの土方にのどかがそんな事をするなんて思いもよらなかったのだ。

「はい、だから今日はなるべく土方さんとのどかさんを二人っきりにしようかとみんなで相談して・・・・・・」
「何言ってるんですかこんな大変な時にデートなんて不純極まりない事をするなんてッ! お嬢様がいつ襲われるかわかんない時に戦力になる人がデートなんかというくだらない事にうつつを抜かれてはいけませんッ! 私ちょっと土方さんに話をしてきますッ!」

担任の教師に言われても全く納得していない様子の刹那は急いで土方とのどかの所へ向かおうとするが、すぐに目の前にアスナが歩み出て止められる

「止めなさいよ刹那さん、せっかく本屋ちゃんがあのマヨにデートのお誘いが出来たのよ? そこにアンタ割りこめるの?」
「せっちゃん今回ぐらい空気は読もう、な?」
「お嬢様その言い方だと私がいつもは全く空気読めてないと言う事になりますけどッ!?」

アスナに隣に現れた木乃香に刹那がツッコんでいると後ろからポンポンとハルナに肩を叩かれる。

「過去形でも現在進行形でも空気を読めない女はさっさとアスナ達と一緒にどっかへ行った行った、アンタがいても邪魔になるだけよ、のどか達のフォローは私と夕映で十分なんだから」
「ですが・・・・・・って何であなた達は土方さん達の所へ行くつもりなんですかッ!?」

土方達の所へ行くなと言っているにも関わらずハルナと夕映は行く気満々の体制。当然刹那が抗議の声を上げるもハルナはチッチッチと舌打ちしながら指を横に振る。

「大切な親友が一世一代の大博打に出てるんだよ? 私達はその為にのどかと土方さんを影から見守るという使命があるのよ」
「あの人のキョドり具合が面白くて面白くて、今日は是非観察しようと思います」
「ハルナさん隣の人全然親友の事考えてないッ! 自分の我だけで行こうと思ってますッ! 親友より自分の我を重んじてますッ!」

ハルナの隣に立っている夕映の不純な動機に刹那は叫ぶが、ハルナは刹那から目を逸らして聞こえないフリをしている。

「いいから早くどっか行ってよ刹那さん、ネギ先生達お願い」
「じゃあ行きましょうか刹那さん、奈良の街でも探検してみましょうよ」
「せっちゃん行こ~」
「・・・・・・わかりました」


しかめっ面を浮かべまだ納得していないブスっとした表情だが、仕方なさそうに土方抜きでネギ達と一緒に行動する事を渋々承諾した刹那。木乃香に連れられて彼女はトボトボとネギ達と共に奈良の街へと向かう。
アスナもハルナと夕映の方へ向いて「出過ぎた真似はするんじゃないわよ」と言った後ネギ達と共に行ってしまった。

「これで邪魔者はいなくなったわね・・・・・・」
「さすが刹那さん、あそこまでゴネるとは」
「よしッ! これで土方とのどかのラブラブデートの観察に・・・・・・!」

ハルナは勢い良く土方とのどかの方へ振り返る。だが

「・・・・・・あれ? あの二人は?」
「どうやら私達が喋ってる間に大仏殿の中へ入ってしまったようですね」
「マジでッ!? ちょっと夕映ッ! さっさとあの二人を追うわよッ!」
「そんな慌てなくてもいいでしょ全く・・・・・・」

すっかりテンションが有頂天になって大仏殿の中へと突っ込むハルナに夕映は呆れたようについて行った。






























土方とのどかは大仏殿の中へと入り、奈良の名物である大仏を二人で見上げていた。
歴史ある巨大な建造物には見る物全て圧倒される様な威圧感を感じる。奈良の大仏はまさしくそれを象徴するような代物だった。

「でけぇな・・・・・・」
「そ、そうですね・・・・・・」

二人でしばらく大仏の顔を見て短い会話をすると土方が急に彼女の方へ顔を向ける

「ところで宮崎、ノド乾いたか? 買って来てやる」
「え? なんでいきなりそんな事を? それに私別にノドなんて乾いて・・・・・・」
「遠慮するなさっき買ってもらった礼だ、ポカリでいいだろ」
「あ、土方さんッ!」
(俺のノドが乾いてるんだよ・・・・・・クソ、さっきコーヒー飲んだのにもうカラッカラだ・・・・・・!)

のどかの話も聞かずに鬼気迫る表情で土方は走り去ってしまった。その場にポツンと一人残されてしまったのどかはどうしようかと途方に暮れる。

「・・・・・・やっぱり私なんかと一緒にいるのイヤなのかな・・・・・・・」
「のどかッ!」
「ハルナッ! 夕映ッ!」

思わず自虐的な事を考えて塞ぎこんでいるいるのどかの所に親友のハルナと夕映が走り寄って来た。どうやら自分達を追いにここまで来たようだ。

「のどか、土方さんは何処ッ!?」
「飲み物買いに行くってどっか行っちゃって・・・・・・」
「ほほう、そのまま逃げる可能性もあるですね」
「そ、そんな・・・・・・!」

思わず泣きそうな顔をするのどかに少々口が悪かったかと夕映は頭を掻き毟る。
しばらくして夕映が後付けするようにまた口を開く。

「まああの人はさすがにそんなことはしないと思いますが それよりのどか、ここにある『大仏の鼻の穴』って知ってますか? 大仏の鼻と同じ大きさの穴がある柱があるんですが、その穴をくぐり抜ける事が出来れば恋だろうが願いだろうが叶うという御利益があるらしいですよ」 
「そ、そんな物がッ!?」
「よしのどかッ! 土方さんが戻ってくる前にそれくぐっとこうよッ! 縁起かつぎは恋する乙女には鉄則だよッ!」
「う、うんッ!」
「はい行ってみようッ! え~と・・・・・・・『大仏のケツの穴』だっけッ!?」
「ケツじゃなくて鼻です、ぶっ飛ばしますよハルナ」

夕映に『大仏の鼻の穴』という縁起かつぎの物がここにあると知ってハルナは興奮したようにのどかの背中を叩いていると急に彼女達の方に

「アハハハハッ! すんまっせ~んッ!」
「え?」

のどかはふと聞こえた方向に目をやると・・・・・・

「穴くぐろうと思ったら出られなくなったきんッ! ちょっと助けてくれんかのッ!? アハハ、アハハハハッ!!」
「「「・・・・・・」」」

そこにいたのは今さっき話していた『大仏の鼻の穴』に体を半分ほど出して丸いサングラスを付けた黒パーマの男が自分達に向かって笑いかけていた。



















のどか達がサングラスを付けた黒パーマの男に会っているその頃。

(何で俺は小娘と二人で観光なんてしてるんだ・・・・・・?)

自動販売機を探す前にまずはニコチンを補給する為に土方は大仏殿から出て喫煙エリアでタバコを吸っていた。だがタバコを吸ってもさっきから全然落ち着けない様子

(戻ったらどうやって宮崎と接すればいいのかわかんねえよ・・・・・・)

そんな事を考えながら土方は口から煙を吐く。彼女の事は嫌いではない、そんな彼女に好意を向けられている今、恋愛にウブな土方はどうすればいいのか困っている。

「ハァ~・・・・・・死んでも総悟には見せられねえ状況だぜ・・・・・・」

土方は自分の一人の部下の事を考えながらその場で困ったように立ちすくむのであった。























そしてのどかはというと・・・・・・

「ぬ、抜けませ~んッ!」
「さっさとここから抜けて早くのどかにここくぐらせてよッ! 大仏のケツの穴ッ!」
「だから鼻の穴です、ケンカ売ってんなら買いますよハルナ?」

見ず知らずの男の手をハルナと一緒に引っ張って、なんとか大仏の鼻の穴から脱出させようと奮闘しているのだが全然抜けない。だが男は依然ヘラヘラ笑ったまま

「おんし等と同じ制服着た女の子にここの穴くぐれば願いが叶うと聞いたから入ってみたんじゃがケツが詰まって抜けなくなってのッ! もうにっちもさっちもいかんじゃッ! どうしようかのこれ、どうしようかのこれ、アハハッ! アハハハハッ!」
「何他人事みたいに笑ってんのッ! 夕映ッ! 逆側から思いっきり押してッ!」
「おお名案じゃッ! ささッ! はようわしのケツを押してくれぃッ!」
「死んでもイヤです」
「アハハハハッ! 冷たいの~おんしはッ!」

夕映に冷たくあしわられても相変わらず男は笑い飛ばす、そんな状態もう5分ぐらい続いていると三人と男の所に一人の女性が現れた。
金髪のまだ若い綺麗な女性、彼女は年下の少女達に助けられている男を見た途端心底呆れた様な目で話しかける。

「何してるのあなた・・・・・・?」
「おおッ! さっきまで何処行ってたんじゃおんしはッ!」
「知り合いの子がいないかちょっと探してたのよ、であなたは?」
「わしか? わしはこっからケツが詰まって抜けなくなったのじゃッ! ネカネさんわしの尻を押してくれんかのッ!? アハハハハッ!!」
「なるほど、いつも通りバカやってたって事ね・・・・・・」

男が笑いながらわけを説明すると、女性は深いため息をついてのどか達の反対方向に周り、彼のお尻に向かって

「ふんッ!」
「あだッ! ネカネさんケツを蹴るんじゃなくて押してくれぃッ!」
「何か言いました? 聞こえませんけど?」
「いやだから押して・・・・・・おふッ!」
「今すぐ抜けたいなら我慢しなさい」
「おぐッ! あごッ! だはぁッ!」

お尻に向かって何十発も蹴りを入れる女性、その度に男は叫び声や苦痛の表情を上げる。
のどか達はそれを見て表情を強張らせていると、しばらくして

「おほッ! おッ! 抜けたァァァァァ!!!」
「世話のかかる人ね本当・・・・・・」

女性の止めの蹴りに男はついにポン!と大仏の鼻の穴から抜ける事が出来た。男は嬉しそうに立ちあがって飛び跳ね、そんな彼を見て女性は疲れたような顔で睨む。

「もうどうしてこんな穴に入ろうとしたのあなた・・・・・・?」
「ようやっとこの穴くぐれたけ~ッ! ネカネさんこの穴はの、くぐる事が出来たら願いが叶うっちゅう後利益があるんじゃきんッ!」
「へ~・・・・・・」

男の情報に女性は素っ気なさそうに相槌を打つ。すると彼はさっきまでの笑いとは違い不敵な笑みを浮かべた

「フッフッフ・・・・・・これでわしの恋も実る筈じゃ、きっと今わしの気持ちを相手に伝えれば恋も成就する筈じゃて・・・・・・・」
「えッ!?」
「そう、わしが惚れた相手は何をかくそうッ!」
「ちょ、ちょっと待ってッ! こんな所でそんな事ッ! ま、まだ心の準備がッ!」

男の態度が変わったのを見て、女性がアタフタと顔を真っ赤にして慌てるが男はスゥ~と息を吐き、そして

「好きじゃおりょうちゃぁぁぁぁぁんッ! わしの想い異世界まで届けぇぇぇぇぇ!!! アハハハハッ! アハハハハハッ!! アハハハあばッ!!」

大仏殿の中で天井を見上げながら大きな声で想い人の名を叫んだ男に女性は容赦無しの右フックを彼の顔面にぶち抜く。殴られた男はその場でクルクルと空中でコマの様に回った後、バタンと倒れる。
女性はそんな彼をゴミを見る様な目つきで見下ろした後、男の片足を掴んでズルズルと引きずりながらその場を後にした。
残されたのどか達はそれを見て唖然とするしかない

「なんだったんだろう今の・・・・・・」
「オイ、なんでそいつ等もいるんだ?」
「あ、土方さんッ!」

のどかが呆然と去って行く男女を見つめていると不意に呼ばれた声に慌てて振り向く。そこにいたのはポカリとコーヒーを両手に持った土方がしかめっ面で立っていた。

「今お帰りになったんですか・・・・・・?」
「ちょっとタバコ吸ってたから遅くなった・・・・・・ほれポカリ」
「ど、どうも・・・・・・」

のどかにぶっきらぼうに持っていたジュースを渡すと、今度はハルナと夕映の方に目をやる

「で? なんでテメェ等がここにいんだ?」
「え? ああすみませんッ! 今すぐ消えますんでッ! ほら夕映行こうッ!」
「・・・・・・」

慌ててその場から立ち去ろうとするハルナだが夕映は動かずに土方を睨む

「夕映?」
「・・・・・・もしこの子を泣かしたら打ち首獄門ですからね」
「・・・・・・」
「じゃあ行きましょうかハルナ」
「ん? ああうん・・・・・・」

最後に言葉を残して夕映はハルナと一緒に何処かへ行ってしまった。彼女の言葉を聞いた土方は無言のまま立ちすくむ。隣にいるのどかも困ったようにドギマギしている。

「あ、あの・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
「その辺散歩・・・・・・しましょうか」
「・・・・・ああ」

か細い声で呟いたのどかの提案に土方は彼女の方へ向かずただ頷いて見せる。

二人はおぼつかない足取りでその場を去って行く。



































一方桂の所へ向かっている銀八は案内役のエリザベスと共に活気づく奈良の街を歩いていた。そして銀八の後ろには無理矢理彼等についてきた感のある彼女の姿が

「お前本当あんなバカ会ってもなんも得しねえよ? あんな奴に会うよりガキ共と一緒に京都とか奈良の観光地巡ってた方がよっぽどタメになるって」
「んなこと私の勝手だろ」

銀八の隣で歩いて動向しているのは生徒の千雨。実は散々銀八が彼女が一緒に来るのを嫌がっていたのだがどうしても千雨が聞く耳持たないので、しょうがなく彼はエリザベスと共に彼女も連れて一緒に桂の所へ行く事になってしまったのだ。

「ったく・・・・・あいつのバカがうつっても俺は責任取らねえからな」
「フン」

銀八に言われても千雨は鼻を鳴らすだけだ。二人がそんな事をしていると、エリザベスが突然ある料理店の前で立ち止まり『ここに桂さんがいるから会いに行ってくれ、俺はちょっくら用事があるから』と書かれたボードを出してすぐに去って行った。残された銀八と千雨はお店の前に止まって見上げる、店の看板にはデカデカと文字が書かれていた。

『侍チュートリアル』

「やっと着いたか」
「なんか私この店と似たような名前の番組、深夜のテレビで見たことあるぞ・・・・・・」
「そろそろそこでコソコソとついてきてる奴も、隠れてねえでさっさとこっち来たらどうだ」
「え?」

突然後ろに振り返って誰かに向かって呼びかける銀八に千雨は頭に『?』を付けて彼と同じく後ろに振り返ってみると

「やっぱりバレましたわね・・・・・・」
「い、いいんちょッ!」
「最初からずっとバレてんだよ、頭に生えてる金髪が思いっきり目立つんだよお前は」

多くの通行人が歩いている影に隠れていたあやかが申し訳なさそうに顔を出した。彼女が自分達を尾行していた事に千雨は驚くが銀八はどうやら最初から彼女が隠れながらついてきていたのを知っていたらしい。

「ガキが一人増えようがもうどうでもいいやめんどくせえ、お前等そんなにヅラと会いてぇのか?」
「銀さんの幼馴染ってどんな人なのか興味がありましたので・・・・・・・・」
「私は別にお前の知り合いに興味は無い」
「千雨、お前本当になんで来たの?」

銀八に手招きされてこちらに急いで走り寄って来たあやかは遠慮がちに来た理由を答えると、千雨はキッパリと桂に対してなんの感情も持ってないとぶっちゃける。そんな彼女に銀八はダルそうにツッコむと、すぐに言葉を返して来た

「お前を見張る為だよ、いつ何処で勝手にまた死にかけたら困るしな」
「なんでヅラに会いに行くだけで俺が死にかけるんだよバカ」
「会った帰りにあの女に襲われる可能性もあるじゃねえか、この前も突然現れたんだしいつまた現れるか・・・・・・・」
「あの女ねぇ・・・・・・」

しんみりした表情で呟いた千雨に銀八は顔をそむけて顎に手を当てる。春雨の幹部と名乗った謎の女、高杉ともコンタクトを取っているらしいが詳しい事はまったくわからない。だが昨日の夜会った桂の仲間と言う魔法使いは彼女を知っているらしいが

「色々と聞いとかねえとな、行くぞお前等」
「はい」
「おう」

久しぶりにあの男と会う為に、銀八は後ろにあやかと千雨を連れて店の入り口をガララと開ける。
中に入ってみるとあまり広くはないものの内装は綺麗で、まだ開店したばかりの雰囲気が漂っている。程なくしてこの店の人と思われる男が銀八達にニコニコと笑いかけながら近づいてきた、見た限り結構なイケメンだ、胸についている名札には「店長・徳井」と書かれている。

「ども~店長の徳井っていいます~、いや~お客さん女の子二人連れて店の中に入られてきたんでビックリしましたわ~、もう~ウチはラブホテルちゃいまっせッ! 健全なそば屋ですよッ!」
「おい、その二枚目のツラに思いっきり一発叩き込むぞ」
「ハハハ冗談に決まってますやんッ! それにしても憎いね~このこの~ウチの福ちゃんにそのモテッぷりを分けて欲しいわホンマ、あ、“僕は”モテるんで大丈夫ですよ」
「何コイツ? マジで殴っていい? マジで殺っていい?」

ヘラヘラ笑いながら脇で小突いてくる店長に銀八が額に青筋を浮かべて頬を引きつらせていると、後ろにいた千雨は銀八を茶化している店長を見て首を傾げた。

「なんか誰かと似てる様な・・・・・・」
「どうしたんですか千雨さん?」
「・・・・・・まさか“本人”じゃねえだろうな?」

“誰か”と似てる様に見える店長に千雨は目を細めて観察していると、その店長は口を開いて銀八に話しかける。

「そういや、ウチの常連のお客さんが銀髪の天然パーマで死んだ魚の様な目をした男が入って来たら奥の個室に通してくれって言うてたんですけど」
「あの野郎・・・・・・そうだよヅラの知り合いだよ」

銀八がイライラした様子で自分だと名乗ったので店長は「ですよね~目が見事に死んでますもんね~」と接客業の人とは思えない事を言いながら笑った後、すぐに厨房にいる店員の方に振り返って叫んだ。

「福ちゃ~んッ! 銀髪のニイちゃん一人とッ! 金髪のネエちゃん一人ッ! あとえ~と・・・・・・メガネ一個ッ!入ったでッ!」
「何で私だけメガネなんだよッ! しかも個数だしッ! つうか普通にお客さん三名様でいいじゃねえかそこッ!」
「うおいッ! 中々ええツッコミやんッ! なになにウチの福ちゃんよりいいモン持ってるんやないッ!?」
「なんなんだよこの人・・・・・・」
「デヒャヒャヒャヒャッ! じゃあ個室に行きましょかッ!」

店に入ってきて早々帰りたくなってきた千雨を尻目に店長は大声で笑った後、三人を手招きして桂の所まで案内を始めた































店長に連れられて銀八達は店の奥まで連れかれると個室部屋と思われる襖を閉めた和室の部屋がそこにあった。

「じゃあお客さんはこん中におるんで、あ、なんか用が会ったら呼んで下さいすぐに私かウチの店員の福田君っていう油顔の子が駆けつけますんで」

店長はそう言ってそそくさと急いで去って行く、そんな彼を見送った後、銀八は襖の前にスタスタと歩いて行く。

「ようやくヅラとご対面か」
「どんな人なんでしょうか・・・・・・」
「・・・・・・」

襖の取っ手を掴んで銀八はスッと開けた。中は綺麗な和室でありそこにいるのは

「数時間ぶりです」
「オメェか、やっぱ本当に仲間だったらしいな“そいつ”といるって事は」
「もしかして疑ってたんですか? 酷い人ですねぇ、皆さんもお揃いで何よりです」
「あッ! 昨日銀さんを助けてくれた人ッ! じゃあその隣の人が・・・・・・」
「この男が銀八の・・・・・・」
「久しぶりだなヅラ、まさかこんな所で会えるとはよ、とんだ腐れ縁だわチクショー」

和室に座布団を敷いて座っていたのは、昨日の夜、銀八の傷を治してくれたローブを着飾った魔法使いの男、そしてその隣で座っている着物を着た長髪の男こそ・・・・・・

「ヅラじゃない桂だ」

銀八に向かって慣れたように返すと桂はフッと笑った。

「相変わらず変わらんようだな、銀時」

幼馴染でありかつての戦友である桂小太郎と久しぶりの再会であった。














[7093] 第四十二訓 侍ってのは高倉健の様に不器用な生き物
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/07 14:05
昼過ぎ、銀時は生徒である千雨とあやかを連れ、とあるそば屋にてかつての戦友、桂小太郎と謎の魔法使いクウネル・サンダース、本名、アルビレオ・イマと個室で対談を始めようとしているのだが

「久しぶりだな銀時、風の噂によるとお前はこの世界で教師をやっているらしいな、この不景気で教師などという職務を全うするなど不可能に近い、今すぐ俺の所に来い」
「いいです」

親友にあった第一声が相変わらずいつもの攘夷志士、テロリストへの勧誘なので銀時はすぐに拒否する。それに対して桂はフンと面白くなさそうに鼻を鳴らした

「それでも侍か銀時、侍なら侍らしく刀を持ち、国を護る事に命をかけるべきだ、そう俺の様に」
「あなたが言っても全く説得力ありませんね」
「何を言う俺は常に天人の手から国を救おうと常に考えている、飯を食べる時も、風呂に入ってる時も、厠に入ってでもだ、つまり肛門からウンコを捻り出しながら頭からアイディアも捻り出してるのだ」
「おいヅラ、もう下ネタ発言は前回散々“コイツ”がやったから止めろ」

隣に座っているアルに向かって話しかけている桂に銀時が親指で自分の左に座っている千雨を指さす。彼女はそんな彼を細い目で睨みつける

「ほとんどお前のせいだろ・・・・・・!」
「ところで銀時、何故俺との対談におなごを二人も連れて来ているのだ? 嫌がらせか? 女性と全く絡みのない俺への嫌がらせと取っていいのか?」
「連れて来たわけじゃねえよ勝手について来ただけだ」

腕を組みながら質問してきた桂に銀時はダルそうに答える。すると桂の隣にいるアルが「ほう」と縦に頷いて見せた。

「昨日の夜もご一緒だったですものね、失礼ですがどあなたとその二人のお嬢さんはどのような関係なんです?」
「え~とその・・・・・・!」
「“ただの”教師と生徒、上司と部下だよ、妙な事考えてるとそのニヤけたツラに蹴り入れるぞコラ」
「・・・・・・」

質問されてちょっと慌てふためくあやかをよそにイラついた調子で銀時はアルに返す。彼のそのキッパリとした発言には少しあやかも残念そうな顔を浮かべた。
そんな彼女をよそに千雨はというと銀時に向かって囁くように

「銀八・・・・・・」
「何?」
「こいつら本当に大丈夫なのか? なんかバカっぽいぞ?」
「大丈夫だよバカだから、まともな奴よりバカの方が信用出来るモンだぜ実際、つーか俺の知り合いだしよ」

銀時が千雨に向かって囁いた言葉にすかさすアルが楽しそうに反応した。

「おや私の事ですか?」
「お前じゃねえよヅラだよ、なんでお前になるんだよ」
「何言ってるんですか、私とあなたは同じ団員じゃないですか」
「おいヅラ、“古泉”がうるさいからさっさと話を始めようぜ」

危なげな発言をするアルにすぐに銀時がウンザリした表情で桂の方へ話しかける。だが桂はというと・・・・・・

「それで銀時と出会ったのは何時頃なのだ?」
「ほんの数か月前です・・・・・・」
「ほほう、それで一体銀時は週何回ぐらい顔を合わせている仲なのだ」
「え、えと・・・・・・ほぼ毎日です・・・・・・教室とか万事屋で・・・・・・」
「プライベートの時間でも会う時があるのか?」
「あんまりないですけどたまに一緒に出かけたりとか・・・・・・ごく稀に街の中で会う時が・・・・・・」
「ふむ」

顔を少し赤らめて説明するあやかになるほどと桂は頷く、なんとなく彼女のその反応に何かに気付いたのだ。そしていきなり目を光らせ

「では単刀直入に言うがお主は今銀時の事どう思ってる」
「え、ええッ!?」
「あいつももう結婚する年だ、幼馴染の俺としてはそろそろ結婚してあのちゃらんぽらんな性格を修正・・・・・・どはぁッ!」
「何してんだボケェェェェ!!」

本人そっちのけで勝手に結婚話をあやかに持ちかける桂の顔面に、額に青筋を浮かべた銀時が投げた茶碗がヒット。

「俺がいつ結婚しようが俺の勝手だろうが、何勝手に人の生徒に俺への縁談をさせようとしてんだテメェは、 俺よりもお前のその性根を修正しろや、つーかお前も結婚する年・・・・・・いや無いかお前は、だってヅラだし」
「ないない、桂さんには絶対に無いです」

ため息と同時に呟いた銀時の言葉にアルも賛同するように頷く。すると桂は顔面をさすりながら立ちあがり

「お前等それはどういう意味だッ! 俺だって相手ぐらいすぐ見つけられるぞッ! ただ俺が惚れた相手はいつも結婚しているから実らないだけだッ!」
「それ人妻じゃねえかッ! なんちゅー歪んだ性癖してんだアンタッ!」
「歪んでないッ! 歪んでるのはこの腐った世界だッ! 人妻が好きで何が悪いッ!」
「いやアンタの頭の方が腐ってるッ! ていうか腐り果ててるッ!」

桂の雄叫びに千雨がすぐにツッコミを入れると初めて千雨に気付いたように立ったままジーッと見つめる

「な、なんだよ・・・・・・」
「お主・・・・・・」
「だから何・・・・・・うわッ!」

いきなり顔面を近づけて来た桂に千雨は驚く。すると桂はそんな彼女の目を見ながら

「お主でもいい、あのちゃらんぽらんの嫁になってくれ」
「は、はいぃぃぃぃぃ!?」
「今は一人身でも問題ないが、このまま何十年もそれが続くと末はきっとその辺で野垂れ死にな・・・・・・あづぅぅぅぅぅッ!」
「テメェに俺の老後を心配なんてされたくねえェェェェェ!!!」

今度は千雨にも催促しようとしている桂だが、わけがわからず混乱している様子の彼女の隣では銀時が茶の入ってるあやかの茶碗を奪い、熱いお茶を桂に向かって盛大にぶっかけるのであった。

































第四十二訓 侍ってのは高倉健の様に不器用な生き物

銀時達が桂達と店の中でドタバタしているその頃、何も知らないネギはアスナ達と一緒にとあるゲームセンターに足を運んでいた。

「ぶち抜けッ! ブラックフェザードラゴンの攻撃ッ!」
「ってうわッ! 負けちゃいましたッ!」

新幹線でやっていたカードゲームのゲーセン版なのであろうか、巨大なモニターではネギの出したモンスターが相手側のモンスターに破壊されている。対戦相手は背の低いオレンジ髪のやたら逆立った髪型をした見知らぬ男だった。

「凄い強いんですねッ!」
「へッ! お前もちっこい割には中々の腕前だったぜ」
「自分だってちっこいじゃない」
「うるせえッ! 俺はまだ成長期が来てねえんだよッ!」
「あっそ」

ネギと一緒にいたアスナに気にしてる事を言われたのが癪にさわったのか男は両腕を振って怒鳴る。そんな男をアスナが呆れたように見つめていると刹那がボーっとした表情で彼女に近づいてきた。

「アスナさん・・・・・・」
「どうしたのよ、天パ見たいな目になってるじゃない、死んでるわよ目が」
「のどかさん、もしくは土方さんからデート終わったって連絡来てませんか?」
「なんで私にそんな連絡があるのよ、来てるわけないでしょ」

ガックリした表情で「そうですか・・・・・・」とため息まじりに呟く。珍しく土方と別行動してるこの時間なのだが、ずっと元気のない様子の彼女、アスナはダルそうにそんな刹那に話しかける

「別にいいじゃないデートなんて、修学旅行ってのは各々楽しむ為のイベントなんだから」
「違うんです、別に土方さんが誰とデートしようが構わないんですけど、なんかイライラするというか・・・・・・何処か納得のいかないというか・・・・・・」
「いやあのね・・・・・・」
「あぁぁぁぁぁぁ!! アスナさんちょっと殴っていいですかッ!? なんか殴りやすそうな顔してるのでッ! 何かに八つ当たりしないと腹立ってくるんでッ!」
「その前にカウンター決め込むわよ・・・・・・! 完璧小姑気分じゃない、少し落ち着きなさいよ」 

イライラしたように頭を両手で掻き毟っている刹那をアスナがなだめていると、突然刹那がハッとした表情で顔を上げる

「根本的な問題ののどかさんを仕留めればこの腹の中から出てくる感情も消えるかも・・・・・・」
「それヤンデレな妹的解決方法ッ! アンタそれだけは絶対にやめなさいッ! マヨに間違いなく殺されるからッ!」
「すみませんアスナさん、ちょっと携帯でのどかさんがいる場所を聞いてのどかさんだけを人気のない所に誘って下さい、大丈夫ですアスナさんには迷惑かけませんから・・・・・・」
「完璧殺る気でしょアンタッ! ネギッ! 今すぐこのキングオブバカどうにかしてッ!」

遂に犯罪に身を染めようと考えている刹那にツッコんだ後、アスナが助けを求めるようにネギの方へ振り向く。だが

「王者の鼓動、今ここに列を成すッ! 天地鳴動の力を見るがいいッ! シンクロ召喚ッ! わが魂、レッド・デーモンズ・ドラゴンッ!」
「うわッ! なんか強そうなドラゴンがッ!」
「大人げねえなジャック・・・・・・相手は子供だぞ」
「クロウ、相手が子供と言えど全力でデュエルするのがこの俺だ、散るがいいッ! アブソリュート・パワーフォースッ!」
「あ、聖なるバリアミラーフォースで破壊します」
「なにぃぃぃぃぃ!!!」
「オイィィィィ!! まだやってんのアンタッ!」

さっきの男とは違い、白いライダージャケットを着た、背も高く獅子の様な金色の髪をした男とカードゲームを再開しているネギにアスナが叫ぶ。すっかり教師の責務を忘れているらしい

「教師のクセに変な奴等とカードゲームでエキサイティングしてんじゃないわよッ!」
「変な奴じゃないジャック・アトラスだッ!」
「どうでもいいわよそんな事ッ!」 
「ん~? こんな所で何やってるんや子供先生?」
「え?」

何処かで一度聞いた声がこちらに向かって聞こえて来た。アスナがそちらに振り返るとそこにいたのは

「狙われてるネエちゃんほっといてゲーセンで遊ぶのはちと不用心やないかい?」
「あッ! アンタ昨日、ウザったるい長髪と変な生物と一緒にいたガキンチョッ!」

見た目はネギと変わらなそうな年、ニット帽と黒い制服を着た男の子の姿を見てアスナが慌てて指をさす。昨日の夜、本能寺にて会った少年だ。少年は不機嫌そうにアスナに言葉を返す

「犬上小太郎や、ガキ言うなや」
「さっき偶然会ったんよ、なんか一人でブラブラ歩いてたから」
「木乃香、拾った犬は持ち主に返してきなさい」
「誰が犬やッ!」

小太郎と名乗った少年の背後から木乃香が陽気そうに戻って来た。アスナがすぐに彼女に指図すると小太郎はすぐに叫ぶ。

「ったく・・・・・・で? こんな所でアンタ等何やっとるんや?」
「それはこっちのセリフよ、ねえ刹那さん」
「こんチクショーがッ!」
「モグラたたきやってる・・・・・・」

アスナと小太郎が会話している隙に刹那は溜まったイライラを解消する為かゲーセンの定番であるモグラたたきに勤しんでいた。なんというかモグラを叩く威力が半端ない

「どうしてッ! いつもッ! のどかさんがいる時はッ! 私の事をッ! ハブくんですかあの人はッ!!」
「一発一発の重みが凄い事になってるわね・・・・・・」
「せっちゃん凄~い新記録やって~」
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・あ、お嬢様何時の間に・・・・・・あ」
「よう、なんかムカつく事でもあったんか? モグラ殺す勢いでやっとったけど」

木乃香がパチパチと拍手しながら称賛を送ってきた所で初めて刹那は彼女の存在に気付き、そして小太郎の存在にも気付いた。

「あなたは確か昨日の夜、攘夷志士の桂小太郎と一緒にいた・・・・・・」
「犬上小太郎や、なんやよく見たらヅラに助けられてたネエちゃんか」
「助けられた・・・・・・まあ一応そうなるんでしょうね・・・・・・」

桂に助けられたと言われて刹那は少々苦い表情を浮かべる。彼女自身、高杉の件や土方が言っている事もよく聞いていたので「攘夷志士」というのに嫌悪感を持っているのだ。桂も例外ではなく助けられた恩はあるものの、あの男の事はあまり信用していない

「・・・・・・桂小太郎とは一緒じゃないんですか?」
「いや知り合いの男と会う言うてどっか俺になんも言わずにどっか行ってしもうたわ・・・・・・ヅラのクセに・・・・・・」
「知り合いの男・・・・・・?」
「そういえば俺も聞きたいんやけど、昨日いたヤンキーみたいなニイちゃんはここにいないんか?」
「・・・・・・・」

不意に質問された事に押し黙ってしまう刹那の代わりに木乃香が近づいてきて答えてあげた。

「土方さんはここにおらへんよ、あの人とは今別行動やから」
「そうかそりゃあ良かったわ、あのニイちゃんどうやら向こうの世界でヅラ追ってた連中らしいし、ヅラの仲間の俺も捕まえようとするかもしれへんしあんま会いたくないんや」

両肩をすくめてそんな世間話を言う小太郎に木乃香は「う~ん」と首を捻る。

「なんで土方さん、桂さん捕まえようとすんのかな~」
「テロリストやからな一応、アホやけどあいつも犯罪者だからそりゃあ捕まえようとするでネエちゃん」
「でもウチら助けてくれたエエ人よ」
「まあ悪い奴やないな、なんやネエちゃんわかっとるやないかい」
「そりゃそうよ、せっちゃんやみんなの事助けてくれた恩人やもん」
「そうかそうか」

木乃香が笑って桂の事を良く評価してくれるので小太郎も嬉しそうに笑っている。だがその反面、刹那はムッとした表情で二人に近づいてきた。

「お嬢様あまり楽観的にあの男を評価しないで下さい。桂小太郎という男は昔から爆破テロ等を繰り返し国家転覆を企んでいる危険人物だって土方さんが言ってました。そんな男に助けられたからといって簡単に信用しないで下さい」
「せっちゃんそういう事言うの止めてよぉ・・・・・・」
「ああ? なんやアンタあのニイちゃん派? 攘夷志士はみんな敵だ~とか思うてる人間かい、うわめんどくさ、ああいう物騒な奴が一番めんどくさいねん」

木乃香に言われても、しかめっ面を浮かべてる小太郎に言われても、刹那の表情は相変わらず不機嫌そうだった。

「良い人だろうが悪い人だろうが攘夷志士は全員敵です、確かにあの時はあの男に助けられましたがそれとは別、今度会ったら桂小太郎は捕まえます」
「恩知らずなやっちゃな~、まあヅラがアンタみたいな奴に捕まえられる訳ないんやけどな、見た目はああやけど、実力は化け物クラスやであいつ」
「御心配なく土方さんがいるので」
「あのニイちゃんでも無理やって、あの時一回ヅラと刀を交えとってたけど、完璧ヅラに翻弄されてたで、力の差が見えとったな」
「あの時はあの人も疲れてたからです、本気になればあんな男すぐに仕留められます」
「もう二人共止めてえな仲良くしよう、な?」

マズイ雰囲気に陥っている刹那と小太郎の間に木乃香が慌てて割って入る。だがそんな彼女に言われようとも二人は未だ険悪の状態だ

「今は敵同士やないんやからここは手を取り合って仲良くいこうな」
「俺は別に仲良くしてもええんやで? けどこのネエちゃんがヅラの文句ばっか言うから腹立つねん」
「そっちだって土方さんをバカにしてる様な事を発言している気がするんですが? それに私の言ってる事は文句じゃありません、事実です」
「どアホ何処が事実じゃ、攘夷志士だけの理由でヅラの文句延々言ってるだけやないかい。にしてもヅラに命救われてこの態度、こんなアホな奴だとは思わなかったわ、フン、これじゃあアンタが買ってるニイちゃんも対した事無さそうやな」
「なッ! 言わせておけば・・・・・・!!」
「あ~もう止めてよ~ッ! ネギ君、アスナ~、なんとかして~ッ!」

火花散らしてメンチを切り合っている刹那と小太郎の間で木乃香が泣きそうに叫ぶ。だが助けを求められたネギとアスナはというと

「小僧もう一度デュエルだッ! 今度こそ誇り高きレッドデーモンズの力を見せてやるッ!」
「望む所ですッ!」
「遊星の奴はアキと二人で楽しんでる筈なのに、なんで俺はジャックと二人でこんな所にいんだろうなぁ・・・・・・」
「それは私の台詞よ、ハァ~・・・・・・・修学旅行なんだから色んな所で遊びたい・・・・・・」
「ネギ君、アスナ・・・・・・その人達誰・・・・・・・?」

ネギとカードゲームですっかり熱くなっている背の高い金髪の男と、アスナと一緒にジュースを飲みながら遠い目で虚空を見つめている背の低いオレンジ髪の男を、刹那と小太郎がギャーギャー言い始めているのも聞こえずただ呆然と木乃香は眺めていた。


























































ネギパーティが小太郎と+変な連中と会っているその頃、桂達と銀時達は話しあいを続けていた。

「ではまず自己紹介から始めよう、俺の名は桂小太郎、日本の明日を担う攘夷志士だ」

頭から盛大に被ったお茶をおしぼりで拭いながら桂は名乗る。銀時に対してではなく初対面の千雨とあやかに向かって喋っているらしい。だが千雨はそんな彼にしかめっ面を向ける。

「攘夷志士ねぇ・・・・・・」

千雨は攘夷志士については江戸出身の銀時からも少し聞いたことある。天人を江戸から排除しようとする考えを持っている人、昨日の騒動に関係している高杉という男も攘夷志士であると聞いたが、目の前の男も高杉と同じだというのがどうもしっくりこない
千雨がそんな印象を覚えてると今度は隣にいるアルの方へ顔を向けて桂が紹介する。

「今ここにいないが一人子犬のような少年もいてな、後さっきお主等をここまで送ったのは俺の昔からの友であるエリザベス、そして俺の隣にいるのが昨日会ったと思うが俺の同志であるアル殿だ」
「クウネル・サンダースです」
「アル殿だ」
「クウネル・サンダースです」
「アル殿だ」
「クウネル・サンダースです」
「アル殿だ」
「クウネ・・・・・・・アルでいいです」

何度訂正してもすぐさま本名をバラす桂に遂にアルは折れてため息をついた。桂はお構いなしに更に話を続けていく

「アル殿は腕利きの魔法使いでな、なんでも昔は『サウザンドマスター』とかいう伝説の魔法使いと一緒に行動していたらしい」
「サウザンドマスター?」

桂の紹介を聞いて銀時は「ん?」と首を傾げる。サウザンドマスター・・・・・・たまに聞く名だ

「・・・・・・もしかしてあのトリ頭か? 」
「おや、あなたナギの事知ってるんですか?」
「知り合いにやたらアイツの事を知ってる奴がいるんでね」
「へ~まあ彼は魔法使いでは誰でも知ってる英雄ですからね」
「あ、そう」

髪を掻き毟りながら銀時は興味無さそうに答える。彼にとってナギが昔凄い魔法使いだったという話など本当にどうでもいい、だが初耳だったあやかは銀時に向かって少し首を傾げる。

「サウザンドマスターなんて魔法使い、何処で聞いたんですか?」
「チビだよ、アイツから色々と聞いたことある、ついでにサウザンドマスターって奴はネギの親父だ」
「ええッ! その凄い魔法使いがネギ先生のお父様ッ!?」
「そうだよ、息子はよく出来てるけど親父は全然ダメダメなんだよ、まるでダメダメな親父、略してマダオだな」
「へ~そりゃあネギ先生も災難ですわね、自分の父親がマダオなんて」

二人でナギの事をそんな風に会話している姿にアルは面白そうに微笑を浮かべる。

「まああながち間違ってませんけどね・・・・・・あなたとそっくりですし」
「アル殿どうかしたか?」
「いえいえ、なんでもないですよ」

桂に向かってアルはごまかすように手を振る。その事に別に桂は気にせずに「そうか」と今度は銀時達の方へ向き直る。

「それで? そちらにいるおなご二人はなんという名なのだ?」
「あ、はい、雪広あやかです、初めまして桂さん、銀さんかよく聞いていましたわ」
「うむ、それでお主は?」
「長谷川千雨・・・・・・」

緊張しながらも銀時の幼馴染である桂にほがらかにニコッと笑って挨拶するあやかとは対照的に、千雨は無愛想に目をそらしてポツリと自分の名を言っただけだ。そんな彼女の態度に桂は「?」と首を傾げる

「こちらは機嫌が悪いようだが、何かあったのか銀時?」
「バカかお前察しろよ、思春期のガキがイライラするってのは“あの日”に決まってんだろ」
「ちげえよッ!」
「そうか、それはすまなかった、俺は男だからわからんが聞く所によると、かなりイライラするらしいな“あの日”は」
「だからちげえよバカッ!」

女性に対してデリカシーのない発言をする銀時に千雨がすぐに否定する。銀時は隣ではあやかが少し軽蔑するような眼差しで見つめてくるにも関わらず桂に向かって口を開いた。

「自己紹介も済ませたんだ、とりあえず俺に話があるんだろ? それさっさと言えよ」
「そうだなこれ以上“女の子の日”で会話を広めるのも不謹慎だしな」
「お前等が勝手に広めまくってるだけだろッ! ていうか違うからなッ! 本当に違うからなッ!」
「千雨さんそんな激しく否定されると返って本当にそうかと疑ってしまいますわよ・・・・・・」

違うのはわかってるのに必死に何度も否定する千雨をあやかがうとめていると銀時がほっといて桂とアルに話を進め始めた。

「で? 早速聞くが高杉のヤローは今何処にいるんだ?」
「悪いがそこまでは知らん、だが今回の件には奴が関わっているのは事実、関西呪術協会の者、春雨の団員、全て奴によって動かされているのは過言ではない」
「その根拠は何処にあんだ?」

銀時の意見にすぐさま桂は返事をする。

「実はさっき俺の仲間と言った子犬の様な少年がいると言っていたであろう、実は元々あちら側にいた人物だったのだが、どうやら俺側に着く事を決めたらしい、それによって向こうの情報を手に入れることに成功したのだ」
「元々敵側の奴を自分の所に引き入れたって事か」
「桂さんって凄いんですわね・・・・・・」
「フハハハ、そうだろ俺のカリスマ性はどんな輩でも惹きつけれるのだぞ」

感心している千雨とあやかに桂は満足そうに笑みを浮かべるとすぐさま、大人組の銀時とアルが小突く

「何がカリスマだ、お前の回りなんてロクなもんしか集まんねえじゃねえか、エリザベスとそいつがいい例じゃねえか」
「どんな輩でも惹きつけるって自分を追いかけてくる連中も惹きつけたら本末転倒じゃないですか桂さん、昨日の夜も命狙われたとかなんとか」
「フ、カリスマの高い人間は常に昔から危険と隣り合わせなのだ、これがカリスマたる俺の宿命か・・・・・・」
「中二ぶってんじゃねえよただのバカだろお前」
「バカじゃないカリスマだ」

目の前にいる銀時と隣にいるアルに言われて桂はいつもの調子で言葉を返すと、アルの言葉で思いだしたのか、すぐに銀時の方へ口火を切る。

「そういえば昨日の夜、高杉の仲間と思われる少女に命を狙われてな」
「少女? てことはオイ高杉の仲間にガキが混じってるのか?」
「そう言う事だな、赤髪のツインテールをしたまだ年も小学生ぐらいの年齢であろう、おかしな刀を持って俺に襲いかかって来た」
「小学生ぐらいの子供が・・・・・・・」
「マジかよ・・・・・・」

敵側に年も自分達よりいっていないであろう少女がいる話を聞いてあやかと千雨の表情が曇る。もし銀時が彼女と会ったらどうするのだろうか・・・・・・二人が同時にそんな事を考えてる間に桂は話を続けた。

「その少女と共に現れた春雨の幹部と名乗った男が妙な事を言っていてな」
「妙な事?」
「「鬼退治する前に揃うといいな」と奴は言っていた、銀時、この意味がわかるか?」
「はぁ? 鬼退治?」

桂の言葉に銀時は何の事だかさっぱりわからないように首を捻る。

「なんだよ鬼退治の前に何か揃えばいいのか? ドラゴンボール的なモンでも集めればいいのか?」
「鬼退治ならきび団子とかじゃないですか?」
「そうかきび団子か、よし千雨、今すぐきび団子を作る作業に入れ」
「作らねえし違うだろ間違いなく」

銀時とあやかの意見にすぐに千雨は仏頂面で否定する。三人でそんな事をしているとアルが突然会話に入って来た。

「実は私達は『鬼退治』という意味だけは理解できたんですよ、この地域にはある強力な“モノ”が封印されてましてね、恐らく鬼とはそれを指しているのかと私は予感しています」
「モノ? ヘヘ、シェンロン的ななんか? 7つのきび団子で出てくるのそいつ?」

銀時がテーブルに膝をついて茶化すようにヘラヘラ笑っているとアルもニコッと笑って答える

「いえ文字通り「鬼」です、「大鬼神・リョウメンスクナノカミ」、その辺の魔物とは比べられないほどのデカくて強大な力と魔力を兼ね備えた化け物です」
「・・・・・・・マジ?」
「マジですよぉ」

楽しそうに話をするアルの言葉を聞いて銀時の表情が固まる。つまり鬼退治という意味はその化け物と戦って勝つという意味なのだろうか

「てことはつまり・・・・・・」
「ええ、恐らく高杉さんはその鬼神を木乃香さんの膨大な魔力で封印を解こう計画しているんだと思います」
「オイオイオイオイオイ、それで昨日の夜、木乃香の事を狙った連中が現れたって事か?」
「木乃香さんが狙われてるんですかッ!?」

敵の狙いが木乃香だと知ってあやかは慌てたように叫ぶ。アルと桂が同時に頷き彼女に説明を始めた。

「木乃香さんは並の魔法使いより尋常じゃない魔力を持っているとあの人の父親から聞いてましてね、リョウメンスクナノカミを復活させるには恐らく彼女の魔力が必要なのでしょう」
「それに相手はあの高杉だ、もし木乃香殿があの男に捕まったら恐らくあの娘はただではすまん、下手をすれば封印を解いた後、用済みになった彼女を殺す、もしくは死ぬまでその魔力を利用しようとしてるのかもしれんな」
「そんな・・・・・・」
「マジかよそんな事になっているなんて・・・・・・・」

二人の説明、とくに桂の最後の話にはあやかと千雨が愕然としていた。平凡な人生を歩んできた彼女達にとってはそんな非現実的な事に打ちのめされ理解するのに手間取った。
だがそんな二人をほっといて桂は立ち上がり、さっきから黙ったまま何かを考えている銀時を見下ろす。

「そこで俺が考えた、銀時、俺はこの話をする為にお前をここに誘った」
「なんだよ」

腰に差す刀の入った鞘を抜いて桂は銀時の視線に合わせる様に上げる。

「俺と一緒に高杉を止めれくれんか、お前の力が欲しい、俺と一緒に剣を取り、高杉達の野望を食い止めるため、共に戦って欲しいのだ」
「「!!」」
「俺の力・・・・・・ね」

桂の放った言葉にあやかと千雨は同時に驚いた表情で彼を見る。一方銀時はなんのリアクションも取らず首をコキコキと鳴らすだけだ。

「俺がいないとあいつをぶっ飛ばせねえのか?」
「私や桂さん達だけでは戦力的に差があるんです、関西呪術協会の連中だけではなく強力な手だれの春雨の幹部も数人いると聞きます、ですがあなたは桂さんが言うにはかなりの腕前を持つ剣豪だと聞きました、あなたがいればもしかしたら高杉さんの野望を止めれるかもしれない、そう思って今日あなたをここへ誘ったんです」
「銀時、かつて攘夷戦争で「白夜叉」と呼ばれ敵味方から恐れられたお前の力で、一緒にかつての俺達と同じ戦友であった高杉を止めてくれないか」
「・・・・・・」
「木乃香殿の命もかかってるこの戦い、逃げる事は出来んぞ」

アルと桂両方に頼まれても銀時は依然押し黙ったままだ。本当はそういう面倒事はごめんだ、だが自分の生徒の命がかかってる事を知った今・・・・・・・

「仕方ねえな・・・・・・・」

銀時はゆっくりと口を開いて答えを返そうとする。その時だった

「・・・・・・くだらねえ」
「なんだと?」

不意に飛んできた声、桂がそちらへ向くと。
怒ったように睨みつけてくる千雨がそこにいた。

「俺と一緒に戦えだ? 銀八をわざわざここに呼び付けた理由がそんなくだらねえ理由だったのかよ」
「千雨さんッ!」
「いや待たれよあやか殿」

桂に対して失礼なことを言う千雨にあやかが叫ぶが、桂はそれを制止して立ったまま腕を組み、真面目な表情で千雨の目を覗く

「千雨殿、それはどういう意味だ」
「意味も何もそのまんまだよ、銀八はもうとっくに戦いから身を引いてる人間なんだろ、何でそんな奴を無理矢理戦いに引きずり降ろそうとしてんだよテメェは」
「銀時は確かに攘夷戦争が終わったと共に戦いから一線を引いている、だがこの男は腐っても俺と同じ侍だ、侍は侍のまま生き、侍のまま死ぬ、この時に侍が戦わずにしていつ戦うのだ」
「侍とかそんなのどうでもいいんだよッ! そんなクソッタレな事で死ぬかもしれない戦いに銀八を誘ってんじゃねえッ!」

遂に千雨も立ちあがり心配そうにあやかが見つめてる中、桂に向かって怒鳴りつける。だが彼はそんな彼女も見据えたまま冷静に返す

「侍は恥じて死すより戦って死ぬ事を選ぶ、お主の様に何も知らずごく平凡な人生を送って来た人間にはわからない事であろう、だが俺や銀時はお主等とは文字通り「違う世界の住人」なのだ、何かを護る為なら自分の身を盾にして戦う、俺達はそういう人生を歩んでいる、昔も今もな」
「わけわかんねえ理屈述べやがって・・・・・・! 銀八もう帰ろうぜッ! こんな奴等と話してもなんもねえよッ!」

もう限界だという風に千雨は桂からそっぽを向いて、テーブルに頬杖を付いてずっと自分と桂の会話を聞いていた銀時に向かって進言する。だが銀時は彼女をチラッと見た後、すぐに桂の方へ顔を向けてしまった

「銀八・・・・・・?」
「高杉のヤロウはマジでここで寝てる化け物起こす為に目覚まし時計代わりになる木乃香を狙ってるんだよな」
「そうだ、アル殿と、少年が関西呪術協会の者から聞いた情報を合わせると間違いなくその線が正しい」
「おい銀八・・・・・・」
「めんどくせえ事企みやがって相変わらず・・・・・・しょうがねえな」
「お前まさか・・・・・・・!」

ハッとした表情で千雨は銀時を見る。すると彼は桂の方へ向いたまま

「協力してやるよ、ただし俺は自分から高杉を探す事なんてしねえからな、そういうのはお前等でやっとけ、俺は木乃香を護る為に行動する、お前等は高杉を探せ、んで見つけたら一緒にぶっ飛ばしてやるよ」
「本当か銀時ッ! さすが俺と同じ侍だッ!」
「良かったですね桂さん、私も白夜叉と言われたあなたの力を是非拝見したいと思ってます」
「んな事言われてたけどそれから何年も経ってるんだぜ? 相当ブランクがあるんだから銀さんに過激な重労働押しつけんなよ」

銀時が了承した時、桂とアルは嬉しそうにリアクションを取っている。銀時もそんな二人に笑いかけながら冗談を言っているがその反面、二人の少女は凍りついていた。

「どうして・・・・・・」
「千雨さん・・・・・・」
「どうして乗るんだよ銀八・・・・・・・死ぬかもしれねえんだぞ・・・・・・」

両膝をガクッと付いて千雨は銀時の両肩を掴み、震えた表情で口を開く。銀時は彼女の視線をただ見つめるだけ

「高杉なんてコイツ等に任せればいいじゃねえか・・・・・・もう戦わなくていいじゃねえか・・・・・・戦いから逃げてもいいじゃねえか・・・・・・」
「・・・・・・大丈夫だって問題ねえ」
「え?」
「何度も言ってんだろ、俺は死なねえ、今まで生きた中で何度も死にかけてんだけどな、日頃の行いがいいのかねぇ、この通りピンピンしてんだぜ俺、だから今回の戦いも死なねえよ」
「お前・・・・・・!」
「大体心配し過ぎなんだよお前は、もうちょっと気軽に生きようぜ、な? ハプニングなんて俺はとっくに慣れっこなんだよ、イチイチ俺の事をそんな心配なんてしてたらお前の身が持たな・・・・・・」

パシンッ! という快音が突然個室に響き渡った。

その瞬間部屋の中にいたメンバーは静寂に包まれる
銀時の頬に千雨の平手打ちが飛んだのだ。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・!」
「千雨・・・・・・」
「人がどれだけお前の事心配してると思って・・・・・・!」

千雨に叩かれてほんのり赤くなった頬をさすりもせずにただ呆然と銀時は彼女を見る。息も荒く完全に怒っている表情で千雨は彼を睨みつけた後、スクッと立ち上がる

「ここまでわからず屋だとは思わなかった・・・・・・」
「千雨さん待って・・・・・・!」

戸を開けて出て行こうとする千雨に、ようやく目の前の出来事に理解できたのか我を取り戻したあやかが呼び止めようとする。が、千雨は最後に銀時の方へ向いて一言

「もう何も言わねえよ、勝手に戦って勝手に死にやがれ・・・・・・!」

そう言って戸をピシャリと閉めて千雨は出て行ってしまった。残された部屋の者は更に静かになり物音も立てない、しばらくしてあやかがようやくポツリと呟く。

「銀さん・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
「さっき言ってた事・・・・・・本当に最低でしたわ」
「・・・・・・そうかい」

真顔でこちらを向き、正直に意見を述べるあやかの言葉に銀時はため息をしながら頭をポリポリと掻く。

「こういう時の女の扱いは下手なんだよ俺は・・・・・・」
「言い訳になってません」

冷淡な口調で銀時の言い訳をピシャリと斬るあやか。桂とアルも居心地が悪そうに黙っていると突然銀時がスクッと立ち上がった。

「俺もう帰るわ、もう話終わったんだろ、行くぞあやか」
「失礼します・・・・・・」

戸を開けて自分達も後にしようと出て行く銀時、あやも桂達に一礼して銀時の後から個室へ出る、そんな二人の後姿に桂がゆっくりと口を開いた

「銀時、俺は千雨殿に何か悪い事をしてしまったな・・・・・・」
「オメーが気にすんなバカ」
「根本的な問題は全部この人のせいですから気にしないで下さい」
「俺、お前にまで怒られたら面目丸潰れなんだけど?」
「もうとっくに潰れてますわ」

あやかもどうやらさっきの銀時の態度に怒っているようだ。どうしたもんかと困ったように首を捻った銀時は店を後にしようと一歩前に出る。するとすぐに後ろからアルに呼び止められた

「そういえばこんな時になんですが、もう一つあなたに伝えなきゃいけない事あるんでした」
「なんだよ、こっちはあいつにどう対応していいのか困ってるのに・・・・・・」

めんどくさそうに銀時は部屋の中にいるアルに振り返る

「昨日の夜、あなたを襲った人物についてです。彼女が何者かあなたに一応教えとこうと思いまして」
「鳳仙に旦那を殺された女だろ?」
「それだけじゃないんです、あの人は昔、私と一時期行動していた事があるんです、特にサウザンドマスターと呼ばれたナギ・スプリングフィールドと」
「・・・・・・どういう意味だ?」

昨日の夜襲ってきた謎の女の話を聞いて銀時は隣に立っているあやかと一緒にいるジッと聞く。そして・・・・・・

「彼女の本名はアリカ・アナルキア・エンテオフュシア、だが結婚して姓が変わりましてね、今の彼女の本名はアリカ・スプリングフィールド」
「!! おいまさか・・・・・・!」
「ええ、そうです彼の夫の名前は正真正銘ナギ・スプリングフィールド、つまり」

あまりにも意外な事に銀時は口を開けて驚く。そしてアルは最後の言葉を付け足した

「あなたと一緒にいるナギの息子、ネギ・スプリングフィールド君の母親なんです」
「「!!!!」」

銀時と、共にいたあやかもその衝撃的な事実に目を見開くしかなかった。






























「いやぁ、すっかりゲーセンに長居しちゃってましたね」
「ほとんどアンタのせいだけどね、なんか色んな奴等とゲームしてたわね・・・・・・」

ネギ達は今、ようやくゲーセンから抜け出して街中をブラブラと散歩していた。先頭は楽しげに歩いてるネギとしかめっ面のアスナ、そしてその後ろは

「おいネエちゃん、ちょっとツラ貸せや、俺ヅラを悪く言う奴はこの手でシメるって決めてるねん」
「いいですよ、いつでも戦りますよ」

まだピリピリしている刹那と小太郎、その少し後ろからついて行ってるのは二人の仲を心配している木乃香

「もう仲良くしてホンマにッ! 会った時からずっとずっとケンカしてぇッ!」
「自分、不器用ですから」
「高倉健でごまかさんといてよせっちゃんッ!」
「よ、よく知ってましたね・・・・・・・」

昭和のネタにすぐにツッコんできた木乃香に刹那が驚いてると、前で歩いてるネギは不意に歩きながら彼女達の方へ向く。

「そういえば今日は昨日の様に敵が襲って来ませんね、僕はてっきり毎時、怒涛の如くやってくると思ってたんですけど」
「怖いわよ」
「敵もそんな数が多いわけやないねん、連中も今は疲れて休んで、俺等が油断した所を突いてこのネエちゃんを攫おうとしてんのやろ」
「敵が多くないってどうしてわかるのよ?」
「そりゃ決まってるやろ、元々俺はあっち側についてたんやから」
「えッ! それ本当・・・・・・アダッ!」

小太郎の言った事にネギが我が耳を疑っていると突然前から猛スピードで来た何かとドンッ!と当たって吹っ飛ぶ。まあ前方を見ずに歩いてたネギが悪いのだが

「イタタタタ・・・・・・」
「ちゃんと前見て歩きなさいよ、ねえ木乃香、今走ってきたの千雨ちゃんよね?」
「なんか怖い顔で走ってたけどなんかあったんかな?」

その場で尻もち付いたネギにアスナが注意しながら近づき、さっき走って来たのが同じ生徒である千雨だと気付く、木乃香も彼女の顔を見たらしいが、なんであんなに怒った顔しているのかサッパリだった。

「千雨さん僕等に気付かなかったんですかね・・・・・・」
「なんか何も見えてない状態だったわね、天パと痴話喧嘩でもやったのかしら」
「銀さんならありうることですね」
「おぬし、そこで座ってたら他の通行人に邪魔じゃぞ」
「え? ああ、すみません」

地べたに座ってアスナと会話しているネギに後ろから不意に飛んできた注意にネギは慌てて立ち上がり、声がした方向へ振り向く。
そこにいたのは純白の服装が似合う金髪の綺麗な女性。
だがネギを見た瞬間、彼女は驚いたような顔を見せる

「お、おぬしまさか・・・・・・・!」
「え? 僕の事知ってるんですか?」
「い、いや人違いのようじゃ・・・・・・すまん・・・・・・」

女性は慌てたようにネギからすぐに目を逸らしてすぐに走り去ってしまう。残されたネギは何事かと彼女の走り去る後ろ姿を眺める。

「なんだろう・・・・・・あの人の顔が一瞬懐かしく・・・・・・」
「どうしたんすか兄貴?」
「ああ、なんでもないよ・・・・・・気のせいだったのかな・・・・・・」

急に思いにふけった顔をしてネギが呆然としていとローブの下からピョコっと使い魔であるカモが顔を出してくる。ネギは髪を掻き毟りながら「う~ん」と考えた後、またアスナ達と一緒に前に向かって歩き出した。
































「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・!」

金髪の女は髪を揺らしながら街の中を疾走していた。そしておもむろに人が近寄りたがらないような路地裏を見つけ、急いで中に入る。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・! なんでじゃ・・・・・・!」

女は息を荒げ混乱している様に独り言を呟く。彼女の中で長年忘れていた感覚が再び目覚め始めて来たのだ。

「なんであの子がここに・・・・・・! なんでわらわの近くにあの子が・・・・・・・!」
「あれ? 慌てた様子でどうしたの?」
「はッ!」

自分一人だけだと思っていたが突然暗い路地裏からコツコツと足音が聞こえる、そこにいたのは女が春雨の一員となった頃から近づいてくる唯一の人物。

「神威・・・・・・!」
「そんな必死な顔して何かあったのかなぁ? 同じ組織の一員として相談に乗ってあげるよ、俺」

闇に包まれるように現れたのは中国風の服装とサーモンピンクの髪色、そして後ろで一本に髪を束ねている髪型とニッコリ笑ってる笑顔。彼女と同じ春雨の幹部の一人である神威の姿だった。

「神威・・・・・・貴様前に一人の少年を鍛えていると言っていたな・・・・・・それってまさかわらわとナギの・・・・・・」
「ああそれ覚えてたんだ、そうだよ、アンタの子供だけど?」
「!!」
「やっぱアンタとサウザンドマスターの子供は覚えが早いね、もしかしたら昔の俺より早いかもしれない、すぐに強くなれるよあの子は」
「くぅッ!!」

笑顔を崩さずに楽しげに話す神威の姿に女は目を見開いて体中から殺意を放つように彼に近づく。

「どうしてわらわに何も・・・・・・!」
「だってアンタ、もう『母親』を捨ててるんだろ? アンタはもうあの子とは関係ない、あの子はもう『俺のモン』だヨ」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・!」
「何? もしかしてあの子の母親としての自分の感情が今更戻って来たの?」
「だ、黙れ・・・・・・・!」
「ハハハハ、図星だったかな~?」
「黙れッ!」

自分を茶化すように話しかけてくる神威に女は荒々しく言葉を叫ぶと、ハッとある事に気付いた。そういえば前にこの男から・・・・・・

「禁術じゃ・・・・・・」
「ん?」
「前に、鍛えてる少年に一つの禁術を学ばせたとか言ってたがお主“何を”あの子に教えたのじゃ・・・・・・!」
「何? 知りたいの? フフ、過保護だねぇ“お母さん”」
「早く言えッ!」
「急かさないでよ、え~とどういう名前だったかな、確かあの女から一回聞いたんだけど・・・・・・」

荒い口調で話しかけてくる女にも神威はわざとらしく顎に手を当て悩む仕種をする。そしてしばらくして「あ、そうだ思い出した」と楽しげにポンと手を叩く。

「『夜王再臨』」
「!!!!」
「これって習得するのに高い魔力が必要でね、あの子は親の血をよく受け継いでるから割とラクに習得できたよ、まあ、“うっかり”するとあの子死んじゃうんだけどね・・・・・・」

目を開き、口元に笑みを浮かべながら、神威は女の反応を見る。悪寒が走ってる様に体全身を震わせ、その禁術の正体を知っている様だった。

「あの子はあの鳳仙によって人生を引き裂かれたのじゃ・・・・・・! そんなあの子にまだ鳳仙の鎖を繋ぐつもりかッ!」
「そういえばそうだね、鳳仙によって親と引き離され、鳳仙によって住んでる村を滅ぼされた子、そして今は鳳仙の“孫弟子”になってるわけだ、そして禁術によってあの子の体には今・・・・・・」

女は神威が何かを言う前に突然彼の首を掴んで壁に叩きつける。全身から来る怒り、彼女の目はもう完全に人を殺る目だ。

「どうしてお前達はわらわ達をそこまで・・・・・・!」
「あの子が俺の弟子になった事、禁術を学んだことはあの子の意志だ」
「貴様・・・・・・・!」
「もっともあの子は俺の正体なんか知らないけどね、よもや自分の師が自分の人生を何もかもメチャクチャにした人物の関係者なんてあの子が知ったらどう反応するか、フフ、想像するだけで楽しくなってきたヨ」
「この場で貴様を殺しても構わんのだぞ・・・・・・!」
「止めときなって、俺はアンタに殺される程甘くはないよ?」

神威は自分の首を絞めてくる女の手を乱暴に振り払って彼女を軽く突き飛ばす。依然ずっと笑ったままの彼に女は沸々と怒りがこみ上げてくる。そんな彼女に神威は話を続けた

「そういえば昨日、俺のお気に入りのお侍さんを殺そうとしたでしょ? 止めてよね、あれは俺の“獲物”なんだ」
「坂田・・・・・・銀時か・・・・・・」
「アンタが殺したくて殺したくてしょうがなかった夜王鳳仙を倒した男、俺はあのお侍さんに惚れたんだよ、人間でありながら夜兎と匹敵する魂と実力を兼ね備えた男、俺にとって最高級の獲物だ」
「そうか・・・・・・なら」

神威の話を一見静かに聞いていた女だったが、突然壁を拳で思いっきり叩いて彼を睨みつける。

「ならば私が坂田銀時をお前より先に殺してやるッ!」
「へえ・・・・・・そう出るか」
「これ以上貴様の楽しみに付き合ってられん・・・・・・!」
「ふ~ん」

女の目から放ってくる巨大な殺意に神威は怯まずに笑顔を浮かてるだけだ。元々昔から仲が悪いのでこういう揉め事は日常茶飯事だが、今回のは少し違うようだ。

「俺の獲物を奪おうなんていい度胸だネ、まあいいややってみなよ、アンタを倒した後のお侍さんを殺すのも面白そうだ、きっと更に強くなってるだろうし」
「フン、わらわがあいつを殺したら貴様はどうするつもりじゃ」
「ハハハハ、そんなの決まってんじゃないか」

挑戦とも言うべき女の言葉に神威は笑い飛ばした後、ゆっくりと目を見開いた。

「アンタを殺す」




[7093] 第四十三訓 いつかは生まれるその感情に逃げるべからず
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/17 11:52
「あの女がネギの母親・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
「事実です、あなたが昨日戦った春雨の幹部であるアリカ・スプリングフィールドはナギの妻であり、ネギ・スプリングフィールド君の実母なんです」

アルが言った事に銀時とあやかは衝撃を受けた。昨日戦った謎の女の正体はネギの母親・・・・・・
信じられない事実である。

「・・・・・・なんでネギの母親が春雨の幹部なんかになってんだ」
「そこまではわかりません、何故あんな風に変わってしまったのかもね・・・・・・」

昔の姿を知っているアルにとっては自分の手を血で汚そうとする氷の様な目をしている彼女の今の姿が嘘の様に思えた。彼の話を聞いた銀時はふと彼女との会話を思い出す

「あの女・・・・・・夫を鳳仙に殺されたって言ってたがまさか・・・・・・」
「ええ、ナギは既に死んでるのかもしれません」
「マジかよ・・・・・・チビに何て言えばいいんだ・・・・・・」

ナギがもう死んでいるという事は彼に呪いを変えられているエヴァンジェリンの呪いは永遠に解けないのかもしれない、銀時が落胆しているとあやかも悲しそうな顔でうなだれる

「お父様は死んでしまって、お母様が敵側についてるなんて知ったら・・・・・・ネギ先生」
「あいつ・・・・・・」

もしあの年端もいかない小さな少年がこの事を知ってしまったらどうするのだろうか・・・・・・
言っておくべきなのかそれともずっと言わざるべきか、銀時がそんな事を考えているとアルは隣にいる桂と相談している

「母親と息子がこんなタイミングで同じ場所に集まるなんて、何者かに仕組まれた可能性が高いですね」
「何を考えてそんな事をするのだろうか、フン、性格のいい奴ではないのは確かだな」
「色々と調べる事がありますか・・・・・・」
「銀時、お前も何かわかったら情報をくれ」
「・・・・・・お前等もな、あばよ」

桂とアルの方へ向かずに手を振ってさっさと店を後にする銀時、急いであやかも後について行く。残されたアルと桂は

「これからが大変ですね」
「ああ、高杉とアリカ殿を俺達の手でなんとしてでも止めるぞ」

二人はかつての仲間と戦う決意をする




























店を後にした銀時とあやかは二人で街の中をブラブラと歩いていた。
お互い黙々と無言で歩いているとあやかが沈黙を破って銀時に話しかける。

「大変な事になりましたわね・・・・・・」
「ああ、まさかあの女がネギの母親だったとはな、あんな美人なのに人妻の上に子持ちとはビックリだ」
「それだけではありませんわ」
「ん?」

歩きながら銀時はあやかの方へ顔を向ける。少し彼女が怒っている様に感じるのは気のせいだろうか

「千雨さんの事です、銀さんのせいであの人・・・・・・」
「ああ、アイツね、大丈夫だよ俺がなんとかするから」

素っ気ない銀時の態度にあやかはムッとした表情で睨む。

「本当に“なんとかしよう“と考えてますか? そうは見えないんですけど?」
「考えてるつーの、なんだよお前まで・・・・・・」
「そもそも自分が悪いって自覚してるんですの?」
「わかったわかった」
「銀さん真面目に聞いて下さい」
「俺はいつだって真面目だよ、そんな怒るなよったく・・・・・・」
「逃げないで下さい」
「逃げてねえよお前が歩くのが遅いんだよ」

普段怒らない人間が怒る時が一番怖い
滅多にないあやかの本当の怒りに銀時は逃げるように早歩きで進む。

「怒った女のなだめ方」というのを銀時は知らないのだ










































第四十三訓 いつかは生まれるその感情に逃げるべからず

「奈良って凄いですね、こんなに古風な家が未だ残っているなんて」
「ウチは実家やからもう慣れてるんやけどなぁ」
「歴史深き家なんでどうでもいいわよ、上手いモンがあればそれでいいの」
「アスナさん何時の間に八つ橋を口にくわえて・・・・・・」
「さっき買って来た」
「ネエちゃん素早いなヅラに匹敵するで、あいつも見ない内に変なモン持ってくるからな」
「あんなのと一緒にしないで」

相変わらず建築物を眺めながら奈良の人通りの多い所を歩いているネギ一行と、桂の仲間である犬上小太郎。アスナがネギ達の見てない所でどうやって八つ橋を買って来たのかは疑問だがネギ達は周りを観察しながら街の中を歩いて行く。

「ここら辺でもし昨日の関西呪術協会の人達がやってきたら大変だな・・・・・・」
「兄貴、敵は生徒にも危害を加える外道だ、襲ってこない保証はないぜ」
「土方さんもいませんしね、ですが私がいます、みすみす木乃香お嬢様をさらわせません」

ローブの中にいるカモと会話しながら周りに注意を払っているネギに、戦力になる生徒の一人の刹那が話しかけてきた。だがその後ろでは両腕を後頭部に回して小太郎が細い目で彼女を見る

「全蔵相手にボロボロになってた奴がよう言うわ」
「ぐ・・・・・・」
「まああいつは結構な腕を持った忍びや、実際俺でも一人でアイツ相手はきついし、あれはあれで健闘してたんちゃうか?」
「あの忍びの事をよく知っているようですね・・・・・・」
「俺が知っとる敵側の人間は千草のネエちゃんと、ゴスロリのネエちゃん、あと千草のネエちゃんに雇われてる全蔵だけや、高杉とか春雨の奴等は名前しか聞いてないねん、もしかしたら命令だけしてここにはおらへんかもしれんな」
「高杉・・・・・・」

小太郎自信はそこまで深く敵の組織に関与していなかったらしい、それを聞いた刹那だが、高杉という言葉に反応して黙りこくってしまう。
しかしネギ達の歩いている先に奇妙な物体がある事に気付いたので、刹那は高杉の事を考えるのを一旦止めそちらに目をやる。

「なんですかあれは・・・・・・」
「デカくて白いのが倒れてますね、刹那さんどう思います?」
「敵の罠でしょうか・・・・・・お嬢様離れて下さい、それでアスナさんはアレに近づいて下さい」
「オイさらっと人をエサにしようとしてんじゃないわよ、アンタが近づきなさいよ」

さりげなく囮にしようと考えている刹那にアスナがツッコんでいると、小太郎はその白くて大きな物体を見た時、ため息をつきながら近づいて行った。

「敵やない、エリザベスや」
「エリザベス・・・・・・? ああッ! 昨日の変なナマモノッ!」
「てことは桂小太郎の仲間の一人ですか」
「しっかりせいエリザベス、なんかあったんか?」

道端の真ん中で倒れている物体がエリザベスと知ってアスナが驚いて、刹那が理解していると小太郎はエリザベスの頭の部分を叩いて起こす。
小太郎の声に気付いたのかエリザベスはすぐにガバッと起き上げた。

『く・・・・・・まさかこんな事になるとは・・・・・・』
「どうしたんや?」
『奴は手ごわかった・・・・・・今の俺ではまだまだ実力不足・・・・・・』
「えッ! もしかして敵に襲われたんですかッ!?」

ヨロヨロと起き上がり持っているボードで会話をするエリザベスに、ネギはもしや敵に襲われたのではと尋ねるとエリザベスは疲れたようにボードをヒョイと上げた。

『パチスロのエウレカセブン・・・・・・・・奴は悪魔だ』
「「「パチスロォォォォォ!?」」」

エリザベスの上げたボードにネギとカモ、刹那は同時に叫ぶ。どうやら倒れていた理由はパチスロに負けて何もやる気も無く自暴自棄になっていただけの様だ

『全てを持って行かれた・・・・・・』
「何ッ!? パチスロで負けただけなのッ!? 敵に襲われたわけじゃないのアンタッ!?」
「まあそんな事やと思ってたわ、ほら帰るで」
『アネモネェェェェェ!!!』
「わかったわかった」

落ち込んで座りこんでしまったエリザベスにアスナが青筋立てながら怒っていると小太郎はいつもやっている様に彼の手を引っ張って立たす。

「じゃあ俺、こいつ連れてヅラの所に戻るわ、じゃあな子供先生」
「あ、はい・・・・・なんかそっちも大変そうですね・・・・・・」
「いやもう慣れた、俺以外みんなアホやから、そっちも気を付けて帰るんやで」
『ドミニクゥゥゥゥゥ!!!』
「それはエリザベスさんなりの別れの挨拶なんですか・・・・・・?」
「違うと思うで」

小太郎はネギ達に別れを告げて、まだボードを雄叫びの如く掲げているエリザベスを連れてそそくさと帰って行ってしまった。

「う~ん、桂さん達って本当僕等の味方なんでしょうか・・・・・・」
「ていうか頼りになるのアイツ等?」
「腕っぷしだけは高い様ですから戦力“だけ”は使えると思いますよ」
「ああ、てことは刹那さんと同じですね」
「私をあの人達と一緒にしないで下さい・・・・・・」

なるほどとポンと手を叩くネギに刹那が嫌そうな顔でツッコんでいると彼等の前方に近づいてくる二人の人物が

「あら、皆さんお揃いで」
「お前等こんな所で何やってんの?」
「あ、銀ちゃんといいんちょ」
「アンタこそ何やってんのよ」

現れたのは銀時とあやかが何処か元気なさげにネギ達に近づいてくる。そんな彼等を見て思い出したのかアスナが銀時に話しかける。

「そういえばだいぶ前だけど千雨さんが怒った顔で一人で走ってたわよ、アンタなんかしたの?」
「そうや、凄い怒ってたようやで、なんで千雨さんあんなに怒ってたん?」
「関係ねえだろテメェ等には」
「銀さんが千雨さんに酷い事言ったせいですわ」
「オイッ!」

アスナと木乃香に余計な質問をされたので話したくない銀時は手を振ってごまかす。だが隣にいるあやかはアスナ達に簡単に事情をバラしてしまった。
それを聞いたアスナはハァ~とこれでもかというぐらい深い溜息を吐く。

「いつかやると思ってたわ、アンタのデリカシーのなさには程々呆れてたのよ、今まで千雨さんと何も揉めなかったのが奇跡に近いわ、アンタ他人に対する思いやりとかなさそうだし」
「お、俺が全部悪い風に言うんじゃねえよッ!」
「何を言ってるんですか、全部あなたが悪いのでしょう」
「あれ・・・・・・今日のいいんちょ、銀ちゃんに対して凄く怖いなぁ・・・・・・」
「ええ、私も怒ってるので」

アスナには呆れられ、あやかには怒られ、非難を受けた銀時は居心地の悪そうにうなだれる

「何でこんな事になったんかね~・・・・・・」
「千雨さんと喧嘩したのか白夜叉」
「千雨さんに何て言ったん?」
「いや別に・・・・・・「俺の事そんなイチイチ心配してんじゃねえよ」って言っただけだよ・・・・・・」

小声でボソリと事情を説明した銀時の話を聞いてあやかは腕を組み、目を細めて彼を睨みつける。

「最低ですわ」
「何なんだよお前はッ! そば屋からずっとお前が悪い、お前が悪いってッ! いい加減しつけえんだよッ!」
「だってあなたが本当に自分のやった事を真剣に考えないからッ!」
「考えてるんだよこっちはちゃんとッ! つうかお前は関係ねえんだから俺に突っかかって来るんじゃねえッ! これは俺と千雨の問題だッ!」
「そんな言い方ないでしょうッ! 私と千雨さんは友達ですッ! 友達が傷付けられたのだから突っかかるのは当然ですッ!」

文句を言ってくるあやかに向かって銀時が遂に怒鳴り散らして、通行人が見てる中、大声で二人は口喧嘩を始めてしまう、それをネギが焦ったように銀時とあやかを交互に眺める。

「ど、どうしよう・・・・・・! まさか銀さんといいんちょが喧嘩するなんて・・・・・・!」
「この二人が喧嘩するなんて今まで一度も無かったっすよね・・・・・・とにかく兄貴、教師としてここは急いで止めねえとッ!」
「そ、そうだッ! ここはとにかく何としてでも二人の喧嘩を止めさせないとッ!」

カモの助言を聞いてネギは教師としてなんとかこの喧嘩を止める為に慌てて二人の間に割り込む

「二人共喧嘩は止めて下さいッ! せっかくの修学旅行なんですから楽しくやりましょうよッ!」
「ネギ・・・・・・」
「ネギ先生・・・・・・」
「え・・・・・・どうしたんですか?」

いきなり出て来たネギに銀時とあやかは怒りもせず八つ当たりもせずにただ呆然と見るだけ。さっき一緒にいたアルの話が再び脳裏に浮かんで来たのだ
そんな二人にネギは若干困惑の表情を浮かべる。

「一旦ここは落ち着きましょうよ、確かに最近ハプニングが続出してピリピリするのはわかりますけど、ここは本来の教師と生徒として二人で仲良くやって下さい」
「あのネギ先生・・・・・・実は」
「おい、あやか」
「でも・・・・・・」
「ここで言う事じゃねえんだよそれは」
「はい・・・・・」
「どうしたんですか二人共・・・・・・?」

ネギに何かを言おうとするあやかに銀時がすかさず止める。さっきまで怒っていたのに急に空気が抜けた風船のように消沈した二人に、ネギはわけがわからない様だ

「とりあえずここは仲直りして、僕等と一緒に宿屋に戻りませんか? 千雨さんも宿屋には戻る筈ですから、その時に銀さんも仲直りすればいいですし」
「ん、ああまあ・・・・・・俺も大人げなかったのは認めるわ、悪かったなあやか、ちゃんと千雨と話するから」
「私もすみませんでした・・・・・・銀さんに対して急にカッとなってしまって・・・・・・」
「おお兄貴凄え・・・・・・あんなに怒ってた二人をすぐに仲直りさせちまった・・・・・・」
「いや僕ほとんど何もやってないんだけど・・・・・・」

お互い謝って仲直りする銀時とあやかを見て感心したようにネギの肩に乗っかったカモが話しかけるが、ネギ自身何故こうなったのか理解できていない。

「それじゃあ行きましょうか、銀さん何処か行きたい所ありますか?」
「いや別にねえよ、なあ?」
「はい・・・・・・」
「それじゃあ出発しましょう」

銀時とあやかの意見を聞いてネギはまた楽しそうに歩いて行く。
二人も彼の後ろからついて歩き始めると、アスナが隣にやって来て銀時に話しかける。

「アンタ達急に仲直りしたわよね、なんかあったの?」
「・・・・・・あいつの事考えたらこんな事で喧嘩してる場合じゃねえやと思ってよ」
「誰の事?」
「・・・・・・知らねえ」
「は?」

言ってる事がわからないと首を傾げるアスナを無視して銀時はあやかと一緒に歩いて行く。
後ろではさっき話していたアスナが木乃香や刹那と一緒に銀時が言った事に頭を悩ませているのを尻目にあやかが銀時に話しかける。

「銀さん、ネギ先生にはご両親の事言っといた方がいいんでしょうか・・・・・・」
「こんなタイミングで言えるわけねえだろバカ・・・・・・」
「そうですわね・・・・・・」

前のネギとカモに聞こえないよう銀時とあやかは細心の注意を払って会話を続ける。
こんな事彼に聞かれたら大事件だ

「でもこのまま言わないのも・・・・・・」
「俺が何とかするって・・・・・・高杉の事もネギの事も、あと千雨の事も全部俺がやるから」
「私も協力します」
「いやいいって」
「協力します」
「俺がやるから」
「私だって役に立ちますの、協力させて下さい」

何度断ろうとしてもあやかは聞く耳持たずだ、そんな彼女をジト目で見ながらふといつも自分の周りにいる三人の女性の共通点を銀時は見つける。三人とも性格違えど、コレだけは同じなのだ

「頑固者だよなお前等って・・・・・・お前といい千雨といいチビといい俺の周りはざわざわ森のガンコちゃんだらけですかコノヤロー」
「ありがとうございます」
「褒めてねえよ」

皮肉ったのにお礼を言うあやかに銀時がツッコミを入れて彼女の頭をぺチンと叩く。
かくしてネギと銀時と生徒達は周囲に敵がいないか気を配りながら奈良の街を歩いて宿屋に戻る事にしたのであった。























































一方、銀時と喧嘩して店から抜け出した千雨はというと

「・・・・・・」

再び奈良公園に戻って見晴らしの良い所に座り、ボーっと風景を眺めていた。
広い草原にポツンと座り一人ぼっちで何かを考えている少女。否一人ではなかった

「あれ? 何でこんな所に一人でいんの千雨ちゃん?」
「・・・・・・んだよ朝倉かよ」

後ろから話しかけられ千雨がめんどくさそうに後ろに振り返ると、同じ班の朝倉和美が立っていた。それを見た千雨はすぐに興味無さそうに彼女からそっぽを向くが和美は遠慮なく近づいて来て隣に体育座りする

「・・・・・・いつにも増して暗い表情だね、どうしたの?」
「お前には関係ねえだろ」

無愛想に和美を突き飛ばす千雨だが、そんな事で和美が引くわけがない。彼女はある事に気付いて更に千雨に話しかけてくる。

「銀さんとなんで一緒じゃないの?」
「・・・・・・知るかあんな奴」
「・・・・・・喧嘩でもしたの?」
「うるせえよ、さっさとあっち行け」

今度は少し機嫌の悪さが垣間見える口調で言葉を返す千雨、いつもよりトゲの多い彼女の喋り方には和美もやれやれと頭をポリポリと掻き毟った

「私でよかったら相談に乗るけど?」
「お前どうせ記事にしようとか考えてるんだろ」
「友達のプライベートを記事にするほど私は性格悪くないよ」
「いつお前と友達になったんだよ私が・・・・・・」
「細かい事は気にしない気にしない、ほら、話して見たら案外楽になるかもしれないよ?」
「・・・・・・」


勝手に和美に友達扱いされた事に千雨は少しムッとした表情を浮かべるが、何を言ってもこの女は自分から話を聞きたがるであろうと思い、千雨はとりあえず話して見るかと風景を眺めながら口を開いた。

「銀八の奴が、死ぬかもしれない頼みを簡単に引き受けやがったんだよ」
「ん~まああの人って困った人がいたらすぐそういう事行動しそうな人だもんね」
「それで私がすぐに止めるように何度も訴えたんだ、だって死んじまったら終わりなんだぞ、あいつの一度っきり、私達と一緒にいる事が出来る一度っきりの人生、私もあいつとこれからもずっと一緒に人生を生きてぇんだ・・・・・・なのにあいつ」
「・・・・・・どうしたの?」
「「心配し過ぎだ、お前が俺の事をイチイチ心配する必要なんてねえんだよ」あいつ笑いながら怒ってる私に・・・・・・」
「あらら・・・・・・」

千雨の話を聞いた和美は舌を少し出して頭上を見上げる。

「そりゃあ銀さんが悪いね」
「だから私それで頭に完全に血が上って・・・・・・一発あいつに平手打ちをしたのは覚えてるんだけどそっからの記憶があんま無くて・・・・・・気が付いたらここにいた」
「なるほど・・・・・・」

喧嘩の経緯を話し終えた千雨に和美は難しい表情で頷く。要するに銀時が心配する千雨に安心させるように放った言葉が彼女にとっては腹の立つ行動だったのか

「私がいない間にそんな事があったんだねぇ・・・・・・銀さんって女の扱い上手いんだか下手なんだか・・・・・・」
「あん時私どうすればよかったんだ・・・・・・どうすりゃああいつは戦う事を止めてくれるんだ・・・・・・」

自分の膝に顔をうずめて弱々しい声を千雨が漏らす。相談相手の和美はそんな隣にいる彼女の方へ顔を向けず前を眺めながら話しかける

「千雨ちゃんは銀さんの行動をどうしても止めたいんでしょ?」
「当たり前だろうが」
「じゃあどうしてそこまで千雨ちゃんは銀さんの事心配してるの? 生徒として? 万事屋として? 友達として?」
「それは・・・・・・」
「千雨ちゃんは・・・・・・銀さんの事を本当にどう思ってる?」

度重なる和美の質問攻めに千雨は思わず口ごもる。今まで一度も見た事のない和美の真剣な眼差しに少し驚いてるのもある。

「私が銀八の事を心配してるのはあいつが・・・・・・」

自分の頭の中で改めて今まで彼と一緒に過ごした時が思い浮かぶ。

(最初は嫌いだった、けど少しづつあいつに惹かれて、万事屋に入って、あいつと一緒に行動する事がどんどん増えて行った。根暗で誰に対しても壁を作っていた私をあいつはその壁を取り払って世界の広さを教えてくれた、いつしか私の周りは様々な奴が集まって、こんな私ででも仲良くなってくれる仲間も出来た・・・・・・全部あいつのおかげ、そして隣にいてくれるあいつの事を常に私はいつも・・・・・・)

「違う・・・・・・」

ふと自分の頭の中に出て来た一つの『答え』に千雨は頭を横に振って否定する

「違う違う違う・・・・・・! 私はあいつに対してそんな感情持ってない・・・・・・!」
「千雨ちゃん」
「違うんだよ・・・・・・! 私が銀八の事をいつもそんな風に考えてたなんて・・・・・・!」
「自分に嘘ついちゃ駄目」
「!!」

首を横に振りながら無我夢中に否定している千雨に向かって和美が口を開く。その声を聞いてハッと千雨は彼女へ顔を向ける、いつもの笑っている表情の彼女ではなく真顔で自分の事を見ていた

「自分があの人の事をどう思っているのかもう気付いたんでしょ」
「だって私・・・・・・私なんかが銀八に・・・・・・」
「もう自分の中の感情から逃げちゃ駄目、真面目に向き合ってその思いを全部あの人にぶつけてみな、そうすればあの人も千雨ちゃんに本気でぶつかって来てくれる筈だから」
「朝倉・・・・・・」
「私は・・・・・・・千雨ちゃんの『想い』がきっと銀さんに届くって信じてるから」

そう言って微笑んでくれた和美の顔を見て、千雨は自分の中にある感情の存在を初めて気付いた。

「ありがとう、私がなんで銀八の事を心配してるのか・・・・・・その答えがやっとわかった」
「ハハハハ、気付くの遅いよ、千雨ちゃんも銀さんと同じ鈍感な所があるんだね」
「けど私出来ねえや・・・・・・」
「え?」
「怖いんだよ・・・・・・」

声を震わせながら千雨は和美にボソッと弱音を吐く。自分の中の答えがわかった、けどそれを彼に言う勇気なんて・・・・・・

「あいつにとって絶対迷惑なんだよ・・・・・・こんな私が・・・・・・」
「迷惑なわけないでしょ、何言ってんの千雨ちゃん」
「イヤだ、絶対にイヤだ・・・・・・もしそれで銀八との関係が崩れたら私、絶対にイヤだ・・・・・・」
「千雨ちゃん・・・・・・」

彼に全てをぶつける事なんて出来ない、千雨はもう泣きそうな顔で鼻をすする。こんな弱気な彼女の姿を見た事がない和美はどう言っていいのか迷う。
しばらくして千雨がスクッと立ちあがる。

「私、先に宿屋に戻ってる、相談とか乗ってくれて本当ありがとな・・・・・・」
「待ってよ千雨ちゃん、銀さんの事はどうするの・・・・・・? 」
「ごめん私にそんな事・・・・・・出来ない・・・・・・」

こちらへ顔を見せずに声を震わせながら呟くとそのまま行ってしまう千雨、和美は彼女の後も追わずただそこに座っていた。

千雨が和美の目の前から姿を消して、空を夕焼けが赤く照らした頃、ようやく彼女はそこから立ちあがる。

「友達の為に私が一肌脱ぎますか・・・・・・」

何かを決心したように呟いて腕を組む和美、自分が彼女の為に何かをするのか、友達の為にやるべき事は何か、そんな事を考えていた頭の中でアイディアが浮かび上がった瞬間、和美はすぐにそれを実行に移す事を決める

「他の生徒達を巻き込んで大騒動、こりゃあ夜が楽しみだ」

何か企んでるのが一目で分かる表情で和美はそそくさと奈良公園を後にした。

やがて始まる一世一代の大イベントの為に




























夕日がどんどん沈み始めて来た頃、真撰組副長、土方十四郎はA組の生徒である宮崎のどかと一緒にとある観光地の休憩所にあるテラスで空を眺めていた。

「もう日が落ちる時間か、時が過ぎるのが早えな」
「はい・・・・・・土方さんと色んな所に行けて楽しかったです」
「・・・・・・俺も退屈はしなかったぜ」

カチっとライターを点けてタバコに火を点ける土方。向かいに座っているのどかはしばらく彼がタバコを吸っている姿を見ていたが、ふととある二人組が視界に入ってそちらに目をやる

「遊星、次はあっちに行ってみましょう」
「待ってくれアキ、もうそろそろ日が落ちる、俺も疲れたしそろそろクロウとジャックと合流して宿屋に戻らないか・・・・・・」
「あら、まだ夜にもなってないわよ?」
「・・・・・・それはつまり夜通し遊び回るつもりか・・・・・・?」
「フフフ、さあ行きましょう」
「せめてDホイールを持ってくれば・・・・・・それにしても鬼柳の奴は何処に行ったんだ・・・・・・」

はしゃぎながら笑っている女性が寡黙そうな男性を連れて歩いている。カップルなのだろうか?

「楽しそうですね」
「そうだな、男の方は疲れてる様に見えるけどな、蟹みたいな髪型してんなあいつ・・・・・・」
「私、ああいうの憧れてるんです」
「男をああやって振り回す事がか? 感心しねえな」
「ち、違いますぅ・・・・・・」

疲れてそうな男性の手をグイグイと引っ張って歩いている女性を眺めながらボヤく土方に、のどかが慌てて否定する。

「そうじゃなくてああやって二人で手を繋いで色んな所をデートする事とか・・・・・・」
「今日俺と一緒に歩き回ったのは・・・・・・デートじゃねえのか・・・・・・?」
「デ、デ、デートですけど・・・・・・ま、まだ手とか繋いでないので・・・・・・」
「・・・・・・」

カァッと顔を赤らめながら小さな声でつぶやくのどかに、土方はタバコの煙を吐きながら難しそうな表情を浮かべる。なんというか彼女がどんどん積極的になってる気がするのだ

「き、今日はありがとうございました・・・・・・一生の思い出です」
「そうか、じゃあもう帰るか、生憎さっきの二人とは違って俺は夜まで付き合う真似なんかせんぞ」
「大丈夫です集合時間とかありますので・・・・・・でもその前に」
「ん? どうした」
「・・・・・・土方さんに伝えたい事があるんです」
「・・・・・・何?」

改まってこちらに向き直るのどかの姿に土方は眉をひそめる。
まさか彼女がやろうとしている事は・・・・・・
そしてのどかは深呼吸した後、顔を赤らめながら土方に向かって

「私、土方さんの事が・・・・・・!」
「止めろ」
「・・・・・・え?」
「それ以上は言うんじゃんねえ」

のどかが意を決して伝えようとした言葉を土方がすぐにタバコを咥えながらカッと睨んで止める。そんな彼の姿を見てのどかは悲しそうに顔をうつむける

「やっぱり私なんかと・・・・・・無理ですよね」
「そうじゃねえ、前に言っただろ俺は『人斬り』だ」
「ですけど・・・・・・!」

彼が異世界で真撰組という組織で犯罪者達と戦っているのはのどかも知っている。
土方にとって自分の人斬りという立場は彼女にとっては重荷にしかならないと考えているのだ

「人を斬って行く、そして最後は俺も斬られて死ぬ、人斬りの人生なんてそんなもんだ」
「・・・・・・・」
「俺と一緒になってもお前は幸せなんかにはなれねぇ・・・・・・他にイイ男見つけろ、人斬りの俺なんか相手にするな」
「土方さん・・・・・・」

土方はのどかのこの先の人生の為に彼女を拒絶した。
昔の様に・・・・・・

「あらら~なんか邪魔した様な感じで気がひけますな~~~」
「「!!」」

二人が気まずい雰囲気を出している中、突然走ってくる殺気に土方とのどかは不意にそちらにバッと顔を向ける。なんとそこにいたのは

「また会いましたな~、黒髪のお兄さん、ウチ、嬉しいどす~~」
「昨日の夜にネギ先生達を襲った人・・・・・・!」
「チィッ! よりにもよってこんな時にッ! 宮崎下がってろッ!」

昨日と変わらずゴスロリ衣装で身を包み、のほほんとした口調で話しかける少女、敵の一人である月詠だった。
手に持っている二つの刀は怪しく光り、土方はすぐにのどかに指示して腰の刀を握る。

「何で俺の所に来やがった・・・・・・! ここにはお前等が欲しがってる娘っ子はいねえぞ・・・・・!」
「ウチはそういうのあんまり興味無いんですよ~~、今日はお兄さんに会いに来たんです~、ウチとお兄さんまだ決着着いてないじゃないですか? せやから・・・・・・」

ニコッと笑って月詠は二本の刀を構え土方に飛びかかる体制を取る。土方もそれを受け止める為に腰に差す刀を固く握る。

「どっちが強いか勝負しに来ました~~~!!」
「くッ!」
「土方さんッ!」

月詠は叫びながら土方に襲いかかってきた、互いの距離がどんどん縮まって行く。土方は刀を遂に抜いて彼女の刀と真っ向からぶつかる体制に入る。
お互いの刀がどんどん近づいて行き、そして・・・・・・

「ごはおぉぉぉぉぉぉ!!!」

土方に向かって走って来た月詠が轟音と共に一瞬で吹っ飛ばされて何処かへ飛んで行ってしまった。




















取り残された土方とのどかは突然のアクシデントに呆けた顔を浮かべている

「・・・・・・何処行ったアイツ?」
「何処からともなくやってきた車に轢かれて吹っ飛ばされて星になっちゃいました・・・・・・」
「そうか何処からともなくやってきた車に轢かれて吹っ飛ばされて星になったのか、謎が解けて良かった、で?」

土方はのどかの説明で月詠が車に吹っ飛ばされてしまったのを理解したように頷いて、ふととある方向に目をやる。

高そうな黒い車が電信柱に向かって思いっきり煙を立てながら突っ込んでいた。

「あれは何だ?」
「さっきの人を轢き飛ばした何処からともなくやってきた車です・・・・・・」
「一体全体誰があんな真似しやがったんだ・・・・・・」

シューと音を立てながらもう使い物にならない車、土方が不審な目で見ていると、車の助手席の方のドアがパカッと勢い良く開く。

「何やってんすかッ! さっき思いっきり女の子轢いちゃいましたよッ! それに車もボロボロだしッ!」
「山崎ッ!?」

助手席から出て来たのは自分と同じ服装の真撰組隊士である密偵の山崎退。どうしてこんな所にやってきたのか困惑している土方を尻目に運転席の方のドアも開いた。

「いや~ブレーキ効かなくてやっちまったな、ったくボロッちい車だぜ、まあ借り物だから別にいいか」
「血走った目で思いっきりアクセルをガン踏みしてたでしょうがッ!」
「あれ、そうだっけ?」
「お、お、お、お前は・・・・・・!」
「土方さん知ってる人ですか・・・・・・?」

誰もが二枚目と言うであろう程のさわやかフェイス、人一人を轢いたにも関わらずなんの悪びれもしない態度、土方はそんな十代ぐらいの青年を見て動揺を隠せない。
隣に立って来たのどかに尋ねられてもあまりの事態に彼は全く聞いていない。

「何でアレいるんだ、何でアレいるんだ、何でアレいるんだ・・・・・・!」
「ひ、土方さん大丈夫ですか・・・・・・!?」

落ち着きが無さそうに目が泳いでいる土方を見てのどかが心配していると、青年と山崎が二人の方へ振り向いた。

「副長~俺達本当探しましたよ~・・・・・・」
「あれ? なんかお取り込み中でしたか土方さん・・・・・・すみません俺本当空気読めなくて・・・・・・」

疲れた調子で話しかける山崎、反対にいやらしい笑みを浮かべている青年。
土方はそんな彼に向かってビシッと指をさす

「なんでテメェがここにいんだ総悟ォォォォォォ!!!!」

動揺しながらも叫んでくる土方に沖田総悟はフッと笑みを浮かべる。

















真撰組の新副長でありドSの王子沖田総悟が、遂に京都にやってきてしまった





[7093] 第四十四訓 仲間の助けを借りて走っても走り抜けれるかはテメー次第
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/09 16:48

修学旅行二日目の夜、銀時とネギ達一行は宿屋に戻っていた。いつもの着物姿に戻った銀時はネギと一緒に廊下を歩きながら雑談している。

「どうやって千雨さんと仲直りするんですか銀さん?」
「あいつ晩飯の時にも来なかったからな、こりゃあマジで怒ってるのか・・・・・・? やっちまったな・・・・・・」

しかめっ面を浮かべながら銀時は舌打ちする、彼女に対してではなく自分に対してだが。
そんな彼にネギは一つある事を思い出す。

「来なかったといえば土方さんも来なかったですねご飯の時間に」
「あんな奴どうでもいいだろ」
「そうはいかないですよ、大事な仲間なんですから」
「あんなの仲間なんかじゃねえよ、ドラクエでいうトルネコみたいなもんだよ、表面上仲間って事になってるけど実際はずっとメインに入れず馬車の中にずっと引き籠ってる的な奴だよ ブライと一生馬車に引き籠ってろバカヤロー」

そんな事を話しながらネギと銀時が廊下を歩いていると、ふととある一室が凄く騒がしい事に気付いた。

「なんかうるせえな・・・・・・」
「あ、土方さんの部屋からですよ」
「だからオメェ何もねえって言ってんだろうがッ!」
「何言ってるんですかい、二人で一緒に仲良くやってるの俺見てたんですよ、もう証拠は上がってんです。いい加減白状したらどうですかい?」
「コノヤロ~・・・・・・! 山崎ッ! なんでコイツをここに連れて来たッ!」
「だ、だって隊長が無理矢理俺をここまで・・・・・!」
「おい山崎、隊長じゃなくて俺の事は副長と呼べと言ってるだろ」
「なんでテメェが副長なんだよ副長は俺だッ!」
「誰と喋ってんだアイツ・・・・・・」

土方の部屋から聞こえる数人の騒がしい声、不審に思った銀時とネギがソーッと彼の部屋の襖を開けると・・・・・・

「大体テメェがなんでこの世界に来てんだッ! 総悟ッ! オメーが来るとややこしくなるんだよッ! さっさと江戸に帰れッ!」
「俺が何処にいようが関係ないでしょ、それともなんですかい? 俺に見られたくない事でもあるんですか土方さんは?」
「オイそのニヤけたツラ止めろ・・・・・・! 斬り殺すぞテメェ・・・・・・!」
「だぁぁぁぁ!! 副長こんな所で刀抜こうとしないで下さいよッ!」
「おい山崎、いい加減にしねえと頭刈り上げるぞ、こっちはもう副長じゃねえ、ただの恋する無職だ」
「誰が恋する無職だッ! だから何でテメェが副長なんだよッ!」

部屋の中で同じ服装をした三人組が取っ組み合いをしている。一人は土方、そしてもう一人は麻帆良にいる筈の山崎、そしてもう一人は・・・・・・

「お、おいまさか・・・・・・!」
「誰でしょうかあの人・・・・・・初めて見ました、土方さんの仲間でしょうか?」

土方に胸倉を掴まれても涼しげな顔を浮かべる青年を見て、ネギが襖の間から覗きながら首を傾げる、だがネギの頭上から一緒に襖を覗いていた銀時はあの青年を知っていた。
銀時はすぐに襖をガッと掴み

「なんでテメェがここにいんだァァァァァ!!!」

叫び声を上げながら銀時は思いっきり襖を開ける。すると青年は彼に気付いて土方に胸倉を掴まれながら

「あ、旦那お久しぶりです」
「お久しぶりじゃねえよッ! おいッ! なんでこのサディスティック野郎がこの世界に来てんだよッ! 土方君、状況を説明したまえッ!」
「こっちだって知りてえよボケッ! ちょっと前にいきなりこいつが山崎と一緒に車に乗ってやってきたんだよッ!」
「山崎だぁ・・・・・・?」

土方の話を聞いてズカズカとネギを連れて土方の部屋に入って行く銀時、そして端っこで居心地の悪そうに座っている山崎に目を向ける。

「おい、お前何か知ってんだろ、なんでコイツがここにいんだ」
「え~それがどうやら・・・・・・新しく開発した転送装置の実験の為にここに来たらしくて・・・・・・」
「実験?」
「ええ、旦那みたいにこの世界に流れ着いてしまった漂流者、もしくは攘夷志士を運ぶ為の装置でさぁ」

山崎の代わりに青年こと沖田総悟が説明し出したので、銀時はそちらに細い目を向ける。

「じゃあ何? お前はその装置で来たわけ?」
「いや俺は土方さんや山崎と同じこの小型転送装置を使ってきました、でも俺が持ってるのはちと特殊でしてね、これはあっちの世界へと通信ができる機能が備わってるんですよ、んでもって俺が江戸にいる近藤さん達と通信を取ればすぐに旦那を助けれる“モン”がやってきますよ、まあ向こうが準備できてるならの話ですけど」
「ふ~ん」
「アレ、旦那嬉しくないんですかぃ?」

喜びもせず、驚きもしない銀時の反応に意表を突かれた沖田は少し違和感を感じる。
この男ならすぐにでも江戸へ返せと言って来ると思っていたのだが

「今はちょっと忙しいんだよ、帰れるなら帰りてえけどよ、色々とここでやらなきゃいけない事が出来ちまってな」 
「そうですかい、お節介焼きの旦那らしいって言えば旦那らしいですね、俺もここでやる事ありますし、しばらく滞在するつもりですから、帰りたくなったらいつでも俺に話しかけて下さい」

銀時の言い分を理解して沖田が頷いていると、土方がタバコにライターで火を点けながら話しかける。

「おい総悟、何でオメーがここでやる事なんてあるんだ?」
「そりゃあ決まってんでしょ土方さん、“土方さんに恋する乙女”と楽しいお話しする事ですよ、元々俺はそれが目的でこんな所に来たんですからねぇ」
「ぶッ! ゲホッ! ゲホッ!」

沖田の言った言葉に反応して土方は吸っていたタバコの煙で思わずむせてしまう。そんな土方を見て沖田はニヤリを笑みを口元に浮かべる

「あり? 土方さん何動揺してんですかぃ?」
「だ、誰も動揺なんてしてねえよッ!」
「おい山崎、確か土方さんに惚れてるガキって宮崎のどかちゃんって言うんだよな」
「ええまあ、俺の情報によるとそうですね」
「山崎・・・・・・! お前こいつにチクリやがって・・・・・・! 後で絶対に後悔させてやる・・・・・・!」
「えぇぇぇぇぇ!! だってしょうがないじゃないですかッ! 沖田“副長”に言い寄られたらそりゃもう言わないとこっちが殺されるって言うか・・・・・・」

顔を引きつらせながら言い訳する山崎に土方はギョロリと目でメンチを切る

「安心しろ、俺が殺す」
「あ、結局どっち道殺される運命だったんだ俺・・・・・・」
「それより総悟、もう一つ気になる点がある」
「なんですかぃ“元副長”の土方さん」
「だれが元副長だ、俺は昔も今も近藤さんを支える真撰組の副長だ、どうしてお前、さっきから自分が副長だと名乗ってんだ」

土方が気にかかってたもう一つの疑問、それは沖田がおおっぴろげに副長とアピールしている事だ。
本来ならば副長という座は自分の筈なのだが・・・・・・。
その疑問に答えるように沖田は胸の内側ポケットからある物を取り出す。

「残念ですが土方さんはもう江戸では副長じゃないんですぜ、ほら」
「お前の警察手帳? それがどうし・・・・・・」

沖田が差し出した警察手帳を受け取り、土方はタバコを咥えながら彼のプロフィール見てみる、その瞬間、土方は唖然とした表情で口からタバコをポロっと落とした。何故ならそこに書いてあったのは

『真撰組・代理副長 沖田総悟』

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!」
「だって土方さんがこの世界で滞在してる間、近藤さんの右腕は誰がやるんですかぃ? だから俺が副長になって近藤さんを支えてるわけです、あ、土方さんもう帰ってこなくていいですよ、アンタはのどかちゃんと一生この世界にいて下さい、でも俺たまにここに遊びに来ますから、のどかちゃん目当てで」
「ふざけてんじゃねえぞッ! お前なんかに真撰組の副長を任せられる訳ねえだろッ! こんなのぜってぇ認めねえッ! 近藤さんが許しても俺が許さんッ!」

沖田の警察手帳を思いっきり畳の床に叩きつける土方。長年その座にいた土方にとって、いつのまにかその座を一番奪われたくない相手に奪われた事がムカつくらしい。
だが肩を上下させながら怒りに震えている土方の肩に優しくポンと叩く者がいた。

「もういいじゃん、お前の時代が終わったんだよ、もうこの世界に一生住んであのガキと仲良く暮らせ、結婚式ぐらい行ってやるから」
「万事屋てんめぇッ! お前までふざけてると殺すぞコラッ!」
「土方さん結婚式俺も呼んで下さい、花嫁のツラにウェンディングケーキをぶん投げる役目は俺に任して下さい」
「何処の部族の儀式だそれッ! つうか誰が結婚するかッ! 誰が宮崎と結婚するかッ!」

茶化してくる銀時と沖田に土方は額に青筋立てながら怒鳴る。だが彼の一言を聞いて二人の目がキュピーンと光る。

「あれ~? 俺、お前がのどかちゃんと結婚するなんて一言も言ってないんだけど土方く~ん」
(しまった・・・・・・! つい口が滑っちまった・・・・・・!)
「土方さんもう完璧それ花嫁候補に考えてるって事ですよね、いや~俺の姐さん、のどかちゃんか、こりゃあ面白くなりそうだ」
「なわけねえだろッ! ていうかテメェ等がアイツの名前言うんじゃねえッ!」

ニヤニヤ笑いを浮かべている銀時と沖田に噛みつくように叫んでも二人は全然応えていない、むしろ更にテンションが上がっている。

「え? ひょっとしてジェラシー感じてるんですか土方君? 自分以外の男に嫁の名前言われてジェラシーをガンガン感じてるんですか土方君?」
「こりゃあ自分の嫁をガンガン束縛するタイプでさぁ、嫉妬心メラメラ燃やして他の男を一切近づけないタイプですよ。土方さんはときめくほどにあの子に夢中~」
「フォ~エバ~」
「歌ってんじゃねえよッ! テメェ等打ち合わせでもしたのかッ!」

息の合ったコンビネーションで土方を茶化す銀時と沖田のコンビ。それを傍から見ているネギにとって、二人の連携プレーは完璧イジメだ。

「あの、なんであの二人あんなに土方さんをいじるの慣れてるんですか・・・・・・?」
「旦那と副・・・・・・もういいや間際らしいし、旦那と沖田隊長はドSコンビだからじゃない。 基本は万事屋と真撰組は対立する仲だけど何かとウマが合うんだよあの二人」
「そうなんですか・・・・・・」

ネギの疑問に何時の間にか横に立っていた山崎が答える。要するにイジメッ子同士だからああやって仲良く相手をボロクソに出来るらしい、見てる側には別にいいが、やられる側としては最悪だ・・・・・・。

「沖田さんって怖いんですねぇ・・・・・・」
「警察なのにヤクザよりタチが悪いからね、麻帆良学園からここまで来る為に何したと思う? 学園にいた一般の教師をボコした挙げ句、脅して無理矢理車借りたんだよ、しかもその車も電信柱に突っ込んでスクラップにしたし・・・・・・」
「え、そんな事やってたんですか・・・・・・?」

あんな綺麗な顔をしているのにやる事は悪魔の様にえげつないのか、沖田の外道行為にネギが戦慄を感じる
生徒を使って(特にまき絵)本能のまま遊びつくす銀時といい勝負なのかもしれない。
そんな事を考えていたネギだが一つ引っ掛かる事があった。

一般教師の誰から車を取ったのだろうか・・・・・・

「すみません、その車の所有者って・・・・・・どういう先生でしたか?」
「え~と俺も初めて見た人だったからよく覚えてないけど・・・・・・メガネを付けて無精髭を生やしたスーツ姿のおっさんだったかな? なんかよく知らないけど俺と隊長が一緒に歩いてたら、泣きながらいきなり殴りかかって来てさ、でも沖田隊長が問答無用にキャラメルクラッチ浴びせて首が変な方向に曲がってたなぁ、だから本当は向こうから襲って来たんだよ、まあそれから車とキーを無理矢理奪ったのはこっちが100%悪いけど・・・・・・」
「タカミチ・・・・・・」
「誰だか知ってるの?」
「いえ知りませんよそんなおっさん、僕は無関係です」

知り合いだと思われたくないので、思わずネギは真顔で嘘をつき、山崎からそっぽを向いた後、頭を掻き毟りながらため息を吐く。

「もう泣くほど出番欲しがってたんだ・・・・・・」





































第四十四訓 仲間の助けを借りて走っても走り抜けれるかはテメー次第

銀時達が真撰組の三人と会話していた頃、風呂を済ませた3年A組の生徒達は全員浴衣を着て、各々の部屋で雑談をしていた。

「土方さんにフラれたァァァァァァ!?」
「うん、まだちゃんとした返事貰ってないけどそうなるのかな・・・・・・」
「あんのマヨネーズ王国の王子がぁ~・・・・・・」
「大丈夫ですよのどか、今度あの人の上司の近藤さんが来たらあの人に切腹を申しつけて欲しいと頼んどきますから」
「止めてよ夕映・・・・・・」

部屋の中でのどかは先刻、土方に告白しようとしたのだがその前にフラれてしまった事を親友のハルナと夕映に話していた。それを聞いて両者とも怒り心頭だ。
だが傍からのどかの話を聞いていた刹那はわかってたようにうんうんと頷く

「のどかさんには悪いですけど当然の結果です」
「黙ってなさいこのアマァァァァ!!」
「そもそも土方さんとのどかさんでは年の差がありますし」
「年の差なんてクソ喰らえじゃぁぁぁぁ!! お前なんかもっとクソ喰らえじゃぁぁぁぁ!!」
「なんで私がクソ喰らえなんですかッ!」
「刹那さん、ハルナ、落ち着いて・・・・・・」

刹那とハルナがいがみ合うように揉めているのをのどかが必死に止めようとする。
そんな状況を窓側にある木製の椅子に座って眺めているのは彼女達と同じ班のアスナと木乃香

「あのマヨ、本屋ちゃんの事フッたんだ」
「う~ん、何がいけなかったんやろなぁ・・・・・・」
「まああいつの事だからちゃんと理由があるんでしょ、年の差だけで本屋ちゃんを振るような奴じゃないわよ、平気で三股出来る天パと違ってあいつは恋に真面目そうだし」
「そうやな、銀ちゃんと違ってウブそうやもんな土方さん」

そうやって二人で呑気に話しているとコンコンと部屋のドアがノックされる。それに気付いたアスナはハルナ達の間をすり抜けて部屋のドアを開ける。

「はいどなた~」
「どうも~ッ! 朝倉・・・・・・」
「はいおやすみ~」

開けたドアの先にいたのは和美だと知った途端、アスナは彼女の元気な挨拶も聞かずにすぐに閉める。だが和美はまだ帰らずに部屋のドアをバンバンと叩く。

「ちょっと開けてよぉ~ッ!!」
「開けたらロクな事になりそうにないからヤダ」
「そんな邪険に扱わなくても・・・・・・じゃあ伝えたい事だけ言うね、今日A組メンバーで私が考えた“楽しいイベント”やるから私の話聞く為に全員一階のロビーに集まって欲しいんだけど?」

ドア越しに聞いてみると、どうやら和美はクラス全員で修学旅行恒例の夜中の大イベントを行おうとしているらしい、だがアスナは全然乗り気がなさそうにジト目でしかめっ面、いつもならこういうのには参加したがるのだが、主催者が和美なのが一番の理由だ。

「イベントって何? クラス全員で天パをボコす的な奴ならやるけど?」
「それアスナだけだよ楽しいのッ!」
「私も楽しいです」
「なんでそこで夕映が入ってくんのッ!? あ~もうとにかくみんな一階のロビーに集合してよッ!? それじゃあッ!」

ドアの向こう側から走り去って行く音が聞こえる。どうやら和美は言うだけ言ってすぐにどっか行ってしまったらしい

「朝倉の奴何考えてるのかしら?」
「あの人(銀時)の所で働いてる人ですからどうせロクな事考えてないです」
「まあ行かないと後でうるさそうだし・・・・・・行くっきゃないか」

本当は行くのは御免こうむりたいのだが、仕方なくアスナは行く事を決める。
だが隣にいる夕映はというと

「私はパスで」
「全員来いって言ってたでしょ、アンタも来なさい」
「うう・・・・・・めんどくさいです・・・・・・」

仏頂面でイヤがる夕映をアスナは叱りつけて強制的に連れて行く。
数分後、アスナ達は一階のロビーに行く為に全員部屋から出発する。



























アスナ達が一階のロビーに着く頃には既にA組の生徒達が一杯集まっていた。どうやら和美はアスナ達の班の所へ行く前に他の班の生徒達にもとっくに伝えていたらしい。

「朝倉の奴みんなを呼びだして何やらかす気かしら・・・・・・」
「大体土方さんとのどかさんって全然違うタイプじゃないですか、果敢に敵と日夜戦ってる侍と引っ込み思案な図書委員。吊り合う筈ないです」
「なにその悟ってる様な口振りッ! 腹立つぅぅぅぅ!! 恋愛なんかした事ない奴が言ってる所がまた腹立つぅぅぅぅぅ!! のどか、なんか言ってやんなさいよッ!」
「そうですよね、全然住む世界が違いますもんね、私と土方さんじゃ・・・・・・」
「いや負けんなぁぁぁぁぁ!!! こんな奴に負けんなぁぁぁぁぁ!! もっと熱くなれぇぇぇぇぇ!!」
「まだやってるのアンタ等?」

ここに来るまでずっと口論しているハルナと刹那に、アスナが呆れたように目を向けていると彼女の元に一人の生徒が歩み寄って来た。
今日、ちょっとだけ一緒に行動していたあやかだった

「あらアスナさん来たんですの、今日の晩御飯をやけにバカ食いしてたから部屋で横になってるのかと思ってましたわ」
「フン、あんなのまだ全然食ってない方よ、私が本気になればここの旅館の食べ物を全部胃の中に閉じ込められるわね」
「ブラックホールみたいな食欲ですわね、幼馴染ながら心底呆れます」

あやかに軽く毒を吐かれるアスナだが、彼女はちょっとした違和感に「ん?」と首を傾げる。

「そういえば千雨さんは? 晩御飯の時にいなかったけど大丈夫なの?」
「ええ、一応私が無理矢理ここまで連れて来ましたんですけど、なんか塞ぎこんしまってて・・・・・・」
「何処にいんのよ?」
「そこのソファで座ってますわ」
「あ、本当だ、目が死んでる」

あやかが指差した方向を見ると一応自分達と同じく浴衣を着ている千雨がソファに座ってボーっと虚空を見つめている。周りの生徒達を見向きもせずにただ虚ろな目で何か考え事をしている様だった。

「やはり銀さんとの喧嘩が相当こたえたんだと思いますわ・・・・・・」
「え? 私はいつも天パと喧嘩してるけど、あんなに悩まないわよ?」
「あなたと千雨さんを一緒にしないで下さい、脳みそのスペック差が天と地ほど違うんですから」

自分を指さして首を捻るアスナにあやかは冷たくツッコミを入れた。

二人でそんな事をしている頃、ここに生徒達を呼んだ張本人、主催者である和美がやっとこさ姿を現した。

「ヤッホーみんな集まった~?」
「あッ! 朝倉ッ!」
「いきなりこんな所に呼び付けてどういうつもりッ!?」
「私達部屋で女の子同士のY談やってたのにいきなりアンタがここに集合しろって言うからわざわざ来てやったんだからねッ!」
「私なんかテレビで亀田の次男坊の世界タイトルマッチ見てたからもうめっちゃ気になってるアルッ!」
「ふむ、クーフェイと一緒に見てた拙者も同じ気持ちでござる、面白みのない用事なら拙者達は亀田戦の続きを見る為に部屋に戻りたい」
「亀田カッケーアルッ!!」
「修学旅行先でなんで亀田に夢中になってんのアンタ等?」

和美が来た瞬間、多くの生徒達が歩み寄って彼女を問い詰めるが、和美はそれを「まあまあ」と笑いながら流して静かにするよう促す。

「実はさ、昨日はみんな二日酔いのおかげでほとんどダウンしてたじゃん? だから今日はその分派手にこの旅館を使ってゲームでもやろうかな~と思って」
「な、なんですってッ! そんな事委員長であるこの私が許しませんわッ!」
「そうだよッ! それにそんな事したら鬼の新田に何されるかわかんないよッ!」

和美の提案にあやかとまき絵が抗議する。もしこんな夜中に生徒全員で騒ぎまくっていたら、生活指導員である新田先生に怒られるのは目に見えているのだ。だが和美にとってそれも想定内である

「そりゃもし新田に見つかったら散々な目にあうだろうね、けどそれぐらいスリリングじゃないと“このゲーム”は盛り上がらないよ」
「どんなゲームッ!? わかったッ!『ずくだんずんぶんぐんゲーム』だッ!」
「私あれ得意だよッ! 一回もお姉ちゃんに負けた事無いんだからッ!」
「えッ! あれって勝ち負けとかどうやって決めんのッ!?」
「はい双子とまき絵ちゃんは黙ってて~、話が進まないから」

双子とまき絵が変な方向に曲げようとするので和美がすぐさまその勢いを止める。
そして生徒達が静かになっているのを見計らい和美は一つコホンと咳をした後、大きく息を吸い込んで

「題してッ!『くちびる争奪ッ! 修学旅行で銀さんとラブラブキッス大作戦ッ!!』」

























「「「「「なんだそりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」

和美が言った言葉に生徒全員が長い沈黙をした後、一斉に大声で叫ぶ。ここまで理解不能な題名に生徒のほとんどが混乱している。そして一番混乱しているのは

「どういう事だ朝倉ァァァァァ!!!」
「あがッ!」
「おおッ! 長谷川さんが朝倉に行ったァァァァ!!」

さっきまでずっとうつむいていた千雨がいきなり和美に向けってドロップキック。そのまま彼女は吹っ飛んだ和美に馬乗りになって胸倉を掴む。

「お前これどういう意味だ・・・・・・答えによってはお前をここで血祭りに仕立て上げるぞコラ・・・・・・」
「千雨ちゃんちょっと落ち着いてッ! これには深いわけがあるんだよッ! ちょっと耳貸してッ!」

もはや銀時と同じ目つきになっている千雨に慌てて和美が上半身を起こして他の生徒達に聞こえないよう彼女の耳にそっとささやく。

「だって千雨ちゃんこのままだと一生銀さんと仲直り出来ないし“大切な事”を伝える事も出来ないよ? それでいいの?」
「それは・・・・・・」
「だから私なりに考えたんだ、千雨ちゃんが銀さんと向き合えないなら、こうやって第三者の私が千雨ちゃんの背中を押して上げる、まあ半ば私が楽しみたいってのも入ってるんだけどねぇ」
「お前なぁ・・・・・・」
「さあ、それではゲーム説明を始めようッ!」
「おいッ!」

千雨に自分の本来の目的を耳打ちした後、彼女を押しのけて立ちあがり和美は自分勝手に話を進めて行く。
まあこれが彼女の長所であり短所でもあるのだが・・・・・・

「ルールは超簡単ッ! 各班から二人ずつを選手に選び、新田先生達の監視を潜りながら旅館内の何処かにいる銀さんの唇をゲッチュッ! 班対抗で相手の選手に対して妨害可能、ただし武器は枕のみ、一番先に銀さんの唇をゲットした人はもれなく明日の自由時間、銀さんを一人占めに出来る権利をプレゼントッ! なお新田先生達にみつかったら過酷な罰ゲームもある筈だから覚悟してねッ!」
「いやそれ新手のイジメッ!?」
「私達的には銀さんに唇奪われる事自体が罰ゲームだよッ!」
「ていうかコレ罰ゲーム以外の何者でもないよッ! ネギ先生ならともかくなんであんな“凶師”の銀八先生とキスしなきゃいけないのッ!? しかもあの人を一人占めにする権利とかいらんわッ!」

色んな所から来る大量のブーイングとバッシング、当たり前だ、彼に対して好意的に接する生徒なんて少ないうえに、そもそも銀時に対してそんな真似したら間違いなく彼に殺される。もしくはあやかに八つ裂きにされる。
そしてそのあやかはというと・・・・・・

「銀さんとキス・・・・・・」
「朝倉の奴、何考えてるだろねぇちづ姉」
「いや違うわ夏美、これはあやかにやってきた千載一遇のチャンスよ」
「ちづ姉、偉い嬉しそうだね・・・・・・」

頬を染めて何か考えているあやかの傍で夏美と千鶴が会話していると、おもむろに千鶴は隣にいるあやかの肩を叩く。

「応援するわ、あやか」
「え? ええッ! ちょっと私まだやるって決めてな・・・・・・!」
「だってウチの班で銀さんにある人なんてあなたと長谷川さんしかいないじゃない、二人で頑張りなさい、そして最後は長谷川さんを蹴落として銀さんとあんな事こんな事するまでもつれ込むのよ」
「あんな事とこんな事とそんな事ですってッ!」
「いやそんな事は言ってないよ、いいんちょ」

あやかに向かって夏美がボソッとツッコんでいる頃、ざわざわと騒いでいる生徒の中から和美に向かって一人挙手する者が現れる。

「朝倉ッ! ゲーム内容の変更を求めるわッ!」
「なあにハルナ? 言っとくけど銀さんじゃ駄目ってのはナシだよ?」
「違うわその逆よッ! キス出来る人の対象を増やして欲しいのよッ! 例えば土方さんとかッ!」
「土方さん? あ~いいんじゃない、そっちの方が盛り上がりそうだし」

手を上げてまで自分の意見を述べたかったハルナの内容に和美は特に問題なさそうに許可する。するとハルナは急いで隣にいるのどかの両肩を掴んで

「のどかやったわねッ! これで一気に嫁入りよッ!!」
「いや私、土方さんにフラれてるし・・・・・・」
「まだちゃんとした返事貰ってないんでしょ・・・・・・?」
「そうだけど・・・・・・」
「恋する乙女は最後まで突っ切るのよ、まだチャンスが残ってるうちはもう一回挑戦してきないのどか」
「もう一回土方さんに・・・・・・」

ハルナに言われた事にのどかは深く悩む。
そりゃ出来ればもう一度アタックしたい、だが彼がもう一度自分に会ってくれるのか疑問だ・・・・・・
そんな不安に駆られているのどかにまたもやあの土方の壊刀が

「絶対に駄目ですッ! こんな時に恋だのなんだのやってる場合じゃないんです土方さんはッ!」
「刹那さん・・・・・・」

もはや顔を赤らめるのも隠さずに刹那がカンカンに怒っている。そんな彼女に少しのどかも表情が強張るが、隣にいるハルナは拳を鳴らしながら刹那に近づく。

「のどか、アンタはこのゲームに絶対参加して土方さんに思いっきり告白しなさい、私はその間・・・・・・このアホウドリを焼き鳥にするから・・・・・・!」
「じゃあ私がのどかと一緒にゲームに参加しましょう、心配しないで下さい別に私はあの人に興味なんか毛ほどもないので」
「ハルナ、夕映・・・・・・」

友人の応援(?)にのどかは感謝しながらある決意を心に固く誓う。

「もう一度・・・・・・土方さんに告白しよう・・・・・!」

強く頷いて彼女がそう決心していると、和美がまた生徒達に大声で話しかける。

「じゃあまずは10時半までに班からだす二名の選手を私に報告、ゲーム開始は11時からねぇッ!!」
「誰が得するんやろこのゲーム・・・・・・」

ゲームの存在意義に首を傾げるのは関西弁を使う短髪の少女、和泉亜子。そしてそんな彼女の元に呑気に友人であり同じ班のまき絵が笑いかける

「でも見てる分には面白そうだよ、選手になるのは死んでも嫌だけどさ」
「何言うてんの、ウチの班代表はまき絵に決まってるやろ」
「はぁぁぁぁぁ何でッ!?」

友達の予想外の一言にまき絵がさっきまでの楽しんでる表情から一変して驚愕する。

「私、銀八先生とキスなんて絶対ヤダよッ! 新田に捕まるのもヤダッ!」
「いや、常識的とか空気的に考えてここはまずまき絵がアリやろ?」
「そうだな、ここは私も空気を読んでまき絵に託そう」
「一切付き合いのない龍宮にまで言われたッ!」

いきなり出て来た龍宮にも後押しされるも、まき絵がまだ納得のしてない表情で嫌がっている。だが選手として選ばれるのは時間の問題だろう。

やはりあやか達やのどか達には美味しいイベントだが、他の生徒達から見れば選手になるなどデメリットしかない。
しかし個性的なゲームには個性的なメンツがいるわけで一応人数は揃う筈、和美はそう確信していた。

「お祭り好きのA組の奴らならキス目的じゃなくても集まるっしょ」
「お前に話しちまった事を全力で後悔してきた・・・・・・」
「なんか言った千雨ちゃん?」
「いやもういい・・・・・・」

彼女に何を言おうがもうこのイベントは止まらない。千雨は諦めた表情で天を仰いだ。

「私には逃げる選択肢も無いのか・・・・・・」
「千雨さんあの・・・・・・」
「ん? いいんちょか、何か用か?」
「千雨さんはこのイベントに参加するのかと思いまして・・・・・・ほら千雨さんは今、銀さんと色々と・・・・・・」

心配そうに歩み寄って来たあやか、自分の事をそんなに考えてくれていのかと千雨は彼女に対してそんな事を考えながら、髪を掻き毟りボソリと呟く

「参加・・・・・・するよ」
「え?」
「万事屋の私が参加しないでどうするんだよ、まあアイツとキスするなんて絶対にイヤだけどよ、そこはいいんちょに譲る」
「千雨さん・・・・・・」
「それに私・・・・・・・仲直り・・・・・・してえし」

恥ずかしそうにそっぽを向きながら本音を言う千雨にあやかは思わずクスッと笑う。
何処ぞの銀髪天然パーマとそっくりである。

「わかりましたわ、私がなんとしてでも千雨さんと銀さんを会わせましょう」
「ああ、いいんちょがいれば大半の生徒には遅れは取らねえだろうしな」
「当たり前です、私がいる限り銀さんの唇を他の生徒なんかに取らせませんわ」
「いや誰も興味無いと思うけどな・・・・・・」

自信満々に胸を叩くあやかに千雨が苦笑しながらツッコむ。いつも通りの二人だ

かくしてラブラブキッス大作戦は優勝商品である銀時達の見えない所で着々と準備が始められて行くのであった。















しかし、その状況を廊下の影からコッソリと見る男の姿が

「面白そうな事やらかそうとしてんじゃねえか・・・・・・」

楽しそうにはしゃいでる生徒達を品定めするように覗いているのは真撰組、代理副長の沖田総悟、その口元には不敵な笑みが作られている。

「こりゃあのどかちゃんを初め生きのいいガキ共と交流するいい機会だな・・・・・・」
「おい総悟、勝手にこの辺ウロつくんじゃねえよ」

ゆっくりと舌を出しながらか弱い草食動物を狙う肉食動物の心境になっている沖田に、後ろから声をかける。声の主はもちろん土方だ

「ったく、トイレだったんじゃねえのかよ」
「あり? 土方さんどうしたんですかこんな所に?」
「お前を探しに来たに決まってんだろ、部屋に戻るぞ」
「へいへい」

案外素直に土方に言われるまま、沖田は彼の後に着いて行き生徒達のいるロビーを後にした。











しばらく無言で廊下を歩いていると沖田がふと前にいる土方に話しかける。

「さっきちょっとあそこにいたガキ共の声が耳に入ったんですけどねぇ」
「あん?」
「のどかちゃんが土方さんに告白する~とか言ってたんですけど?」
「・・・・・・」
「どうするんですかぃ土方さん? 俺が察するにアンタもまんざらではなさそうですが?」

面白い事を見つけたように笑みを浮かべながら茶化す沖田、だが土方は無言で黙ったままだ。いつもなら青筋立ててキレたりするタイミングなのだが

「俺は一度あいつをフった」
「フった? のどかちゃんをですかぃ?」
「総悟、俺達は人斬り集団と言われている真撰組だ」
「そうですけどね、そんなの愛があれば関係ないんじゃないですかぃ?」
「ざけんな、俺は真面目に考えてるんだ」

笑いかけてくる沖田に土方はタバコに火を付けながら真顔で返す。のどかにはのどかなりの決意があって彼にも彼なりの決意があるのだ。

「人斬りや鬼とも呼ばれ、一体どれだけの恨みを買っているのかもわかんねぇ、いつ殺されてもおかしくない俺に女なんか必要ねえんだよ」
「じゃあのどかちゃんがもう一回告白して来てもそれを断るつもりですかぃ?」
「当たり前だ、あいつは優しすぎる・・・・・・いつ死ぬかわかんねえ男を覚悟出来る女じゃねえんだよ」
「ふ~ん」

土方の言い分に納得のしてない表情で沖田は目を細めて前を歩く彼を見る。
奇妙なデジャヴを感じた

「だから俺はこれ以上あいつとは一切関わりを持たない事にする、総悟、しばらくしたら江戸に帰るぞ、あいつとはもう二度と会わん」
「・・・・・・あ、土方さ~ん」
「なんだよ、お前まだ俺に文句が・・・・・・」

陽気な口調で沖田に呼び止められたので土方は不機嫌そうに足を止めて後ろに振り返る、が

「そい」
「おぶッ!」

沖田の飛び蹴りが土方の顔面に直撃した、咥えていたタバコを口から落とし、そのまま後ろに吹っ飛ぶ土方

「テ、テメェッ! 何しやがるんだコラッ! いい加減にしねえとマジ切腹にするぞッ!」

顔面を蹴られてもすぐに立ち直って顔を押えながら沖田に対して土方は唾を吐くほど怒鳴る。
だが沖田はなんの悪びれる様子も無い

「まさかここまでとはねぇ・・・・・・土方さん、アンタやっぱ最悪のバカでさぁ」
「んだとコラァッ! もう一度言ってみろッ!」
「まだ引きずってるんですかぃ?」
「何をだよッ!」
「俺の姉上の事ですよ」
「・・・・・・!」

沖田に言われた事に土方はすぐに彼から目を逸らして黙り込む。そんな反応に沖田はやれやれと首を横に振った。

「さっきから土方さんがのどかちゃんにやろうとしてる事は、俺の姉上にやった事と一緒ですよ土方さん」
「チッ、んな事わかってる・・・・・・だからこそ女一人も幸せに出来なかった俺があの小娘に惚れられるような資格の男じゃねえってのもわかってんだよ、俺が惚れた女は・・・・・・一人だけで十分だ」

沖田の実姉であるミツバ、土方にとって彼女の存在は大きく、彼女が亡くなった後も決して忘れられる事は出来なかった。
そんな未だ彼女の事を引きずっている土方を、彼女の弟である沖田は心底呆れたようにため息を突く。

「いい加減俺の姉上引きずるの止めてくれませんかねぇ」
「んだと・・・・・・!」
「一生、他人と恋をしない、それであの世にいる姉上が喜ぶと思ってるんですかぃ?」
「・・・・・・」
「土方さんがやっているのはただの自分勝手な意地ですよ、姉上の時の様にそうやって意地張って突き飛ばして、その時点でもうあの娘っ子を不幸にしてるんじゃねえですか」
「もしそのままあいつを受け入れたら・・・・・・もっとあいつが不幸になるのかもしれねえんだぞ・・・・・・!!」

瞳孔が開いた状態で歯を食いしばり、土方は沖田を睨みつける。しかし沖田はサラリとした口調で

「だったら守ってやればいいじゃないですか」
「な・・・・・・!」
「人斬りの女なんて不幸になるかもしれねえ、ならアンタがその身を張って守る度胸ぐらい持ったらどうです?」
「・・・・・・」
「姉上の事を忘れろとは言いません、けどね、それで土方さん自身がつまらない意地張って悩まれると姉上も安心してあの世で暮らせねえんでさぁ」
「総悟・・・・・・」

二人以外誰も存在しない空間にしばしの長い沈黙が流れた。そして

「・・・・・・わかった、今度あいつに会ったら何があいつに正しい事なのか考えておく」
「やれやれ、土方さんは剣では一流なのに、女の事になると全然駄目ですねぇ」
「まさかテメェなんかに教わる事になるとはな・・・・・案外お前も副長の器になれる奴かもしれん」
「なれる奴じゃなくて俺はもうなってますから、元副長の土方さん」
「・・・・・・うるせえ」

土方は最後にボソリと言葉を残した後、沖田を置いて先に行ってしまった。残された沖田は廊下に佇んで土方の背中が見えなくなるまで見送る。

(土方さん・・・・・・アンタはあの娘と一緒にいなきゃならねえんです、じゃねえと・・・・・・)

沖田は目をつぶって顔を上げる。


























(じゃねえと・・・・・・面白くならねえだろッ!!!)

目をカッと開いて土方がいなくなった方向を睨む。さっきまでの顔とは別人の如く変わり、Sッ気全開モードになっていた

そう彼の目的は土方の恋する少女、宮崎のどかを

(近藤さんからお前等の事を聞いた瞬間から俺のプランは決まってんだよッ! そう、テメェに惚れた宮崎のどかを俺の全力を持って苛め抜く事だッ! あのガキの告白を拒否するなんてお前にそんな権限はねえんだよ土方ぁッ! お前と宮崎のどかがくっつかねえと俺のプロジェクトが成立しねえんだよッ!)

すっかりサドの目になっている沖田は沸々と秘めている事を心の中で叫ぶ。ドSである彼にとってか弱い女子中学生ののどかは自分の欲望に満足出来るかっこうの獲物なのだ。

(姉上の事引きずってるらしいけどなぁ・・・・・・姉上はもうとっくのとうにお前の事なんかどうでもいいと思ってんだよッ! 姉上はもう俺を見守る守護霊になってんだ、姉上にとって精々お前なんか便所に端っこにこびり付いたウンコ程度の存在なんだよッ!)

突然の変貌、だがこれが真撰組随一の問題児、沖田総悟なのだ。

「さあて、バカはバカなりの考えをしている隙に俺は色々と準備しなきゃなぁ・・・・・・」

邪悪な笑みを浮かべながら沖田が良からぬ事を企み始めていると、ふと後ろに誰かの気配を感じる、振り返ってみるとそこにいるのは自動販売機の前に立ってジュースを買おうとしているA組の生徒だった。紫色のロングの髪が目立つ柿崎美砂だ

「試合観戦の為に飲み物一杯買っとかないとね~、あ」

もうすぐ始まるゲームを前に笑みを浮かべながら、美砂は財布から小銭を取り出そうとする、だがその拍子に一枚の小銭がポロっと落ちてしまった。
小銭はコロコロと転がって近くに立っていた沖田の靴にコツンと当たる。

「にゃはは~すみませ~ん」

美砂は初対面の沖田に笑いかけながらしゃがんで、彼の前にある小銭を拾おうと手を差し伸べる、が

「あがぁぁぁぁぁ!!!」
「あれぇ、どうしたの君? どっか痛いの?」
「足ッ! 足ィィィィィ!! 私の手を足で踏んでるぅぅぅぅ!!!」

美砂の出した手を沖田は躊躇なく思いっきり足で踏みつける。だが痛がっている彼女に対して沖田は無表情、なんの罪悪感も無いのだ。

「早く足をぉぉぉぉぉ!! 手の骨が砕けるぅぅぅぅぅ!!!」
「へ~じゃあ救急車でも呼ぶ?」
「いやアンタが私の手から足どければいいのよッ! わかってんでしょそんな・・・・・・にゃぁぁぁぁぁぁ!!! イダイイダイダイッ!!」
「最近のガキは年上に対して口のきき方がなってねえな」

足を上げる所か、美砂の手を踏んでいる足の踵を回して彼女に更に激痛を与える沖田。彼女が泣き叫ぶような悲鳴を上げても沖田は涼しげな顔で懐から何故か魚肉ソーセージを取り出している。

「お願い足上げてぇぇぇぇぇ!! 本当に痛いのッ! 本当に手の骨が砕けちゃうのッ!」
「お願いしてる態度じゃねえな、人に頼みごとをする時はちゃんとした礼儀ってモンがあんだろうが」
「れ、礼儀・・・・・・?」

取り出した魚肉ソーセージを優雅に食べながら、なおも足を上げようとしない沖田に美砂は激痛の中、泣きそうな顔で

「何処のどなたかは存じませんがお願いしますッ! どうかこんな私の頼みを聞いてくれて足を上げてくれないでしょうかッ!? 本当にお願いしますッ!」

痛みから出た涙で顔をぐしゃぐしゃになっている美砂は、沖田に手を踏まれた状態で土下座して懇願する、これでなんとか足を上げてくれるだろうと思い彼女は恐る恐る顔を上げるが

「ん? 何やってんの?」

魚肉ソーセージを食べ終わった沖田は口の中でクチャクチャ言いながら一言、美砂は彼のあんまりな行為に固まってしまう。そんな彼女の顔を見て沖田は携帯を取り出してカシャと写メを撮る。

「うわこの泣きっ面最高、待ち受けにしよう」
「あ、あの・・・・・お願い・・・・・・」

携帯をカチカチといじりながら独り言をつぶやいている沖田に、美砂がもう限界だと言わんばかりに泣きながら呻いていると、彼は携帯をポケットにしまい彼女を見下ろす。そして

「さあてそろそろ・・・・・」
「え・・・・・・?」

ドSモード・オン

目が赤く光り、口元にニタリとゆっくり笑みを広げる沖田。






ゲームは既に始まっているのだ



[7093] 第四十五訓 時には意外な物が武器になる
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/17 11:54
修学旅行二日目の夜、A組の生徒達がドタバタと騒いでいるのも知らずに一緒の部屋で泊まっている銀時とネギは寝る準備をしていた。

「だ~さっさと寝て明日に備えようぜ」
「いいんでしょうか銀さん」
「何がだよ?」
「だって僕たち教師なのに見廻りもせずに寝ちゃって、それに敵が昨日の様に夜襲を仕掛けてくる可能性もあるのに・・・・・・」

寝る為に押し入れから布団を取り出した浴衣姿のネギが心配そうに銀さんに尋ねる。だがまだ浴衣に着替えていない着物姿の銀時はそんな彼に向かって大きな欠伸をする。

「何言ってんのお前まだ子供じゃん、子供は早く寝るのが仕事なの、睡眠不足で明日敵にやられたらどうすんだよ? 子供は明日に備えてグッスリ睡眠取っとけ」
「銀の兄貴は大人ッスよね一応? なんで寝ようとしてんすか?」
「あ? 眠ぃからに決まってんだろ? 今日は本当に色々とイベントが多くて俺もう疲れたんだよ、HP回復しねえと身が持たねえんだよ」

ネギの頭に乗っかっている使い魔のカモに銀時はだるそうに言葉を返す。よくみると彼の表情にはかなり疲労が溜まっている様子がうかがえた。
旅館に置いてある浴衣を手にして銀時は着替えようとする、すると彼が着替える直前に部屋のドアが勢いよく開いた

「坂田先生~」
「あれ? しずな先生、」

部屋にやって来たのは銀時とネギの同僚の教師のしずな先生、彼女がやって来た途端、銀時は着替えようとするのを止めてすぐに歩み寄った。

「どうかしたんですか?」
「ウフフ、対した事じゃないんですけどね、実は今日は部屋から一歩も出ずにジッとしていて欲しいんです」
「え、なんでです?」

珍しく敬語を使う銀時にしずな先生は自ら彼に歩み寄る。そしてなんと彼の首に両腕を回し

「私、『準備』出来たらまたこの部屋に来ますね・・・・・・」
「は、はいッ!? そ、それどういう意味・・・・・?」
「わかってますよね坂田先生・・・・・・大人の男女が夜な夜な部屋で会うって事は・・・・・・」
「・・・・・・マジですか?」
「ウフフ、そう、ぱふぱふです」
「ぱふぱふぅぅぅぅぅ!! ガキ共がわんさかいるこの旅館でぱふぱふぅぅぅぅ!!!」

しずな先生が魅惑の微笑を浮かべた時、銀時の体が硬直する。まさか今までずっと望んでいた事が・・・・・・・
大人の男女、夜の旅館、後ろにはネギが用意してくれた一つの布団・・・・・・

「ネギィィィィィィ!!!」
「は、はいッ!」
「お前ちょっと旅館の外言ってパトロールして来いッ! あともうこの部屋に戻ってくるなッ! 寝るんならアイツ等(真撰組)の所で寝ろッ!」
「え? 子供は早く寝ろとか言ってませんでした?」
「バッキャローッ! いつ敵が夜襲仕掛けてくるかわかんねんだぞッ! そんな時にグースカ寝ようとか考えてんじゃねえよッ! 若いんだからそのあり余った体力使ってこいッ!」
「え~・・・・・・」

さっきまで言ってた事と180度変えて怒鳴ってくる銀時にネギは口をポカーンと開ける。
そして銀時はすぐにしずな先生の方に向き直り笑みを浮かべる。

「邪魔なクソガキは消えました、これでゆっくりとあなたと超融合出来ますね・・・・・・」
「ウフフ、じゃあ私が来るまで部屋で“ずっと”待ってて下さいね」
「待ってますッ! 永遠に待ってますッ!」
「フフ、それじゃあまた」

すぐに布団の上で正座して待っているポーズをとる銀時に、しずな先生は優雅に微笑みかけながらドアを閉めて部屋を後にした。
彼女がいなくなった後、銀時は勢い良く立ちあがる。

「待っていたぜこの時を・・・・・・!! 考えてみればこの世界に来てからはずっとガキ共に囲まれてたせいで一度も経験値が稼げなかった・・・・・だが遂に、俺の“はぐれメタルの剣”を振るう時が来たッ! 会心の一撃しまくって経験値ガッポリ稼いでレベルアップ上げまくってやるぜぇぇぇぇぇ!!!」
「銀さん、コレ一応全年齢対応の小説なんですけど?」
「お前まだいんのかよッ! “ひのきのぼう”レベルのクセにさっさとこっから消えろやッ! ぱふぱふはまだお前には早えぇぇぇぇぇッ!」 
「うわッ!」

冷静な対応でツッコんで来たネギに、銀時は大声で怒鳴りながら彼の座っている場所に敷かれている布団を思いっきり引っ張り上げるのだった。































待ちに待ったこの夜のイベントに銀時のテンションがうなぎ上りになっているその頃、部屋を後にしたしずな先生は旅館の中を疾走していた、そして

「フフフ、私の変装術にはさすがの銀さんも見抜けなかったようだね」

しずな先生の覆面とカツラを取って和美が笑みを浮かべながら走る。
パパラッチとして秘密裏に行動する用に彼女が習得したルパンの如き高度な変装術、銀時はいともたやすく騙されていたのだ。

「それにしても銀さんあんなにしずな先生にベタ惚れだったなんて・・・・・・もしネギ先生があそこにいなかったらあの人に押し倒されてたかも私・・・・・・」

いつもの自分達生徒への対応と違い、好意的に接して来た銀時に和美は走りながらハァ~とため息を突く。さすがにそんな事態になった場合友人達に顔向けできない。

「銀さんは部屋に待たせて置くのにも成功して、土方さんはまあ勝手にしてればいいかな、千雨ちゃんとあの人は関係無いし、本屋ちゃんには悪いけど」

とりあえず土方は放置してさっさとゲームの進行を進める準備を行わなければと和美はある部屋を目指して走る。





ゲームがスタートする午後11時の10分前、まもなくゲーム開始









































第四十五訓 時には意外な物が武器になる

和美がゲームの準備を淡々と進めているその頃、千雨はいいんちょ共に両手に枕を持って旅館の廊下で歩いていた。

「う~・・・・・・」
「千雨さんもしかして緊張してるんですか?」

落ち着きが無さそうにそわそわしている千雨に隣にいるあやかが声をかける。

「もっとリラックスしないと他の人達にやられますわよ」
「これから銀八に会いに行くのにリラックスなんて出来るか・・・・・・つうかお前も顔赤い」
「えッ!?」
「ったく、こんな調子で私達本当に銀八の所に辿り着けるのかよ・・・・・・」

千雨に指摘されるとあやかは初めて自分の顔が緊張のあまり顔が赤くなっている事に気付く。目的が想い人である銀時のキスなのでその反応は自然なのだが
こんな緊張ガチガチのコンビで他の班の連中に勝てるのかと千雨は段々不安を感じて来た。






















一方その頃、和美は事前に仕掛けていたビデオカメラが覗けるコンピュータ室で、A組全員の生徒達に実況を行っていた。

「さあ、遂に始まった銀さん争奪ッ!ラブラブキッス大作戦ッ! 解説と実況は報道部兼万事屋である朝倉がお送りするよーッ!」

生徒達の部屋には彼女の声も聞こえるテレビが設置してあり、更にテレビには各箇所に仕掛けてあるビデオカメラの映像が見えるというなんとも本格的なゲーム中継になっているのだ。

「選手紹介ッ! まずは3班代表の千雨ちゃんといいんちょッ! 千雨ちゃんといいんちょは普段から万事屋で銀さんと一緒に働いてる二人だがコンビネーションは未知数ッ! しかし銀さんに対しての愛はみんな知ってる通りずば抜けて高いッ! もちろん優勝候補ナンバーワンだッ!」
『なんか朝倉がまた余計な事言ってる気がする・・・・・・』
『もう、千雨さんったら』

ビデオカメラには疲れた様子で廊下を歩いている千雨とそれをなだめるあやかが映った。残念ながら千雨の予感は当たっている

「次に2班からはクーフェイ選手と楓選手ッ! 二人共武闘派であり体力はピカイチッ! バカと思って油断したら命取りになるコンビだッ!」
『亀田の試合見るよりこっちの方が楽しそうアルッ!』
『ん~これは銀時殿と戦えるいい機会でござる』

ピョンピョンと跳ねてはしゃいでいるクーフェイと呑気そうに楓が枕を持って歩いている二人が映る。どう見ても二人共銀時とのキスより銀時との勝負を望んでいるようだが

「続いて4班からはまき絵選手と裕奈選手ッ! 普段から銀さんにイジメられているまき絵選手が何故か降臨ッ! そして本作品初登場のの祐奈選手はどれぐらい頑張れるのかッ!」
『ヤダァァァァァァ!! 初めてのメインでまき絵とコンビで登場なんて絶対ヤダァァァァァ!!』
『なにそれどう意味ッ!』
『こっち来ないでよッ! まき絵の不幸がうつるじゃんッ! 年中死兆星が見えるクセにッ!』
『んだとぉぉぉぉぉ!! 人がどれだけの思いでこの苦しみの輪廻を回ってると思ってんだコラァァァァ!!』
『一生一人で回ってろぉぉぉぉぉ!! 私を巻き込むなぁぁぁぁぁ!!!』

廊下でお互いの顔を近づけていがみ合っているまき絵と、彼女と同じぐらい運動神経抜群の明石裕奈。始まって早々険悪なムードが漂っている。

「続きまして1班代表の双子の風香選手と史伽選手ッ! 瓜二つなこのコンビに翻弄される可能性アリッ! 更にコンビネーションも抜群ッ! ここでまさかの大穴かもッ!?」
『私、銀八先生より、ジミーの方がいいな~』
『でもジミーは今頃学校だよ? あ~あ、どうしてヤンキー兄ちゃん見たいに私達と一緒に来なかったんだろ』

少し残念そうな表情でお団子頭の史伽とツリ目の風香がブーブー文句を言いながら階段を上っている。ちなみにジミーとは彼女達の同居人である山崎の事だ。

「そして最後のメンバーは5班代表ののどか選手と夕映選手ッ! 目的は銀さんではなく、あのチンピラ警察24時という異名を持つ土方さんッ! 夕映選手はともかくのどか選手が彼に惚れているのは衆知の事実ッ! 何事も正反対の二人が今夜遂に結ばれるのかッ!?」
『夕映~どうしようなんか怖くなってきた・・・・・・』
『たかがあの人に会うだけじゃないですか、別に怖くもなんともありません』
『そうじゃなくて・・・・・なんかこの旅館に凄い怖いモノがいる感じがするの・・・・・・私それで寒気が止まらなくて・・・・・・』
『なんですかそれ?』

二階の待ち合わせ室で待機していると、怯えてる様に体を震わせているのどかに夕映が「は?」と首を傾げる。
何か得体の知れない物でも感じるのだろうか・・・・・・

選手紹介を終えて和美はチラッと付けている腕時計を見る。もう時間だ
「さあてメンバーも揃った事だし、時間も11時ッ! 準備はいいかな~ッ!? それではラブラブキッス大作戦ッ! スタートッ!!」



































「始まったわねぇ」
「のどかぁぁぁぁぁ!! 頑張れぇぇぇぇぇ!!!」
「ハルナうるさい」
「大丈夫かなぁ、新田先生とかに見つかったらエライ目に合わされるできっと」

のどか達がゲームに参加しているその頃、彼女達と同じ班であるアスナ達も見守る為、部屋の電気を消してテレビ鑑賞をしていた。映っているのはビデオカメラの映像、和美の実況を聞きながらのどかと夕映のコンビが無事に土方に会えるのか眺めている。

「新田の奴は・・・・・・一階のロビーでタバコ吸ってるわね、あそこ禁煙じゃなかったけ?」
「のどかと夕映がいる場所より全然遠い所や、会わへんで済むかもな」
「行けェェェェェ!! のどかぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさいつってるでしょアンタはッ!」
「いやアスナの声もうるさいで」

新田先生や選手達が映っているカメラに向かってエールを送るハルナに、布団に入って頬杖をついてるアスナが怒鳴る。新田先生も危険だが他の教師に起きてるのがバレてしまうのはごめんだ。

「なあせっちゃんものどか達の事応援してや」
「いくらお嬢様の願いでもそれは無理です、ていうか・・・・・・」

後ろに振り返って来た木乃香に刹那は不服そうに首を横に振る、というか首以外動かせないのだ、何故なら・・・・・・

「ここから出してくれませんか・・・・・・?」
「いくらせっちゃんの願いでもそれは無理やわ」
「アンタすぐ暴れるからそこでジッとしてなさい」
「大人しくそのまま土方さんをのどかに奪われるのをその目に焼き付けてるがいいわッ!! ハーッハッハッ!!!」
「アンタもそろそろ縛るわよ、口にガムテープ貼って」

布団にヒモで巻かれている刹那が木乃香達の後ろで拘束されていた。
どうやらハルナとアスナ、そして木乃香が彼女が何か問題事を起こさないようにこの様に身動き取れない状態にしたらしい。

「どうして神鳴流剣士の私がこんな目に・・・・・・」
「大丈夫やでせっちゃん、明日になったらそこから出してあげる」
「ええッ! 明日まで私このままなんですかッ!?」
「お、いいんちょと長谷川さんのペアが」
「どうしたんアスナ?」
「お嬢様ぁぁぁぁぁ!! こっち向いてぇぇぇぇ!! 私この状態で朝までなんて無理ですッ! トイレも行けないじゃないですかッ!」
「はん、そこですればいいじゃない?」
「テメェは黙ってろメガネッ! ここから抜けたらマジで絶対殺すからなッ! 後で覚えてろよコラァッ!!」

口調がまんま土方になっている刹那が目の前でいやらしく笑っているハルナに向かって噛みつくように叫んでいると、そんな二人を無視してアスナと木乃香はテレビに映っているあやかと千雨に注目していた。






















あやかと千雨は歩きながら廊下をキョロキョロと探索する。いつ新田先生やら他の生徒が出てきてもおかしくない空気だ

「いいんちょ、段々私怖くなって来たんだけど・・・・・・」
「それ言ったの何回目ですか千雨さん? いつもの威勢はどうしたんですか全く」
「銀八に会いに行くの怖くなってきた・・・・・・」
「もう腹をくくって下さい、今更蛇が出ようが龍が出ようがもう当たって砕けろですわ」

不安そうに腕にしがみついてくる千雨にあやかがジト目で叱りつける。
廊下の曲がり角を曲がって一刻も早く銀時のいる部屋に行こうとするあやかと千雨、だがその時だった。

「誰にも会いませんように~・・・・・・ああッ!」
「まき絵さんと裕奈さんッ! あなた達も参加してたんですかッ!」
「おい、佐々木はある意味蛇や龍よりヤバくねえか・・・・・」
「うわ~ッ! よりにもよってこの二人に会っちゃったッ! やっぱまき絵のせいで不幸だぁぁぁぁぁ!!」
「いや私のせいじゃないよッ!」
『いいんちょと千雨コンビの前に突然現れたのはまき絵、裕奈コンビッ! 遂に生徒達の乱戦開始だぁッ!!』

廊下の曲がり角でバッタリでくわしたのはまき絵と裕奈のコンビ、いいんちょは一歩身を引き、千雨はすぐに彼女の後ろに回って背中にしがみつく

「オイィィィィィ!! どうすんだよいきなり敵が出てきたぞッ!」
「落ち着いて下さい千雨さんッ! 相手はまき絵さんと裕奈さんッ! 私達のコンビネーションがあればどうって事ない相手ですわッ!」

慌てる千雨をなだめるようにあやかが一喝、だが千雨は首を激しく横に振って嫌がる。

「無理無理無理ッ! だってアイツ等身体能力抜群じゃねえかッ! 私、運動神経最悪だしあんなの勝てるわけないッ!」 
「運動神経は負けても銀さんへの対する気持ちは私達の方が遥かに勝ってますッ! 行きますわよ千雨さんッ!」
「うそぉぉぉぉぉぉ!!!」
『いいんちょは千雨ちゃんが腰にしがみつかせたまま、まき絵と祐奈のコンビに勝負を仕掛けるッ! さあてこれが吉と出るか凶と出るかッ!!』

腰に抱きついたまま嫌がる千雨をよそにあやかはそのまま両手に枕を持ってまき絵達に突っ込む。廊下の曲がり角でまさかの3班と4班の戦いが始まったのだ。

「うわッ! いいんちょが来たッ!」
「しょうがない・・・・・!! 行くよまき絵ッ!」
「もう~私こんなのやりたくて京都に来たんじゃないのに~ッ!!」

泣きそうになっているまき絵を連れて、祐奈が果敢に突っ込んでくるあやかに枕を持ってこちらも突っ込む。

「食らえいいんちょッ! ダンクシュートッ!!」
「甘いッ!」

飛びあがって枕を思いっきりあやかの頭に叩きつけようとする祐奈だが、彼女のモーションでどう動くか理解していたあやかは瞬時に左手に持ってる枕で受け止める。

「フ、さすがはバスケ部のエースである裕奈さん、見事なスピードですわ、銀さんがいつもあなたの事を言ってました「あいつのオヤジはよく金貸してくれるから何かと便利」って」
「それ私の事じゃなくて私のお父さんの事じゃんッ! つうかあの人私のお父さんに金借りてるのッ!? しかも何便利ってッ!? 金ヅル扱いって事それッ!?」
『だろうね』

あやかにツッコミながら、裕奈は両手の枕で激しくラッシュを攻め立てる。あまりの連続攻撃にあやかは受け止めるのがやっとだ、だがその隙にもう一人の敵が

「いいんちょが裕奈に気を取られているッ! その隙に私は長谷川さんをKOだッ!」
「しまったッ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!! コイツいつの前に私達の後ろにッ!」
『千雨ちゃんの前にまき絵選手登場ッ! あの子いつもヘタレなのになんでこんな時に・・・・・・』

裕奈があやかの気を引いている間にまき絵は素早く移動してあやかの背中にピッチリ張りついている千雨の方に回る。普段から銀時に酷い目に合わせれている彼女だが、実を言うと運動神経はかなりのモンなのだ

「ナイスまき絵ッ! これで挟み撃ちだッ! どうだ私達のコンビネーションッ!」
「私だってやる時はやるんだからッ!」
「くッ! 千雨さんそっちは頼みますッ!」
「クソッ! もうヤケクソだッ!」

もう覚悟を決めたのか千雨は両手に枕を持って戦う姿勢を見せる。ジリジリと近づいてくるまき絵、機動力なら彼女の方が何枚も上手だ。

「チッ! まさか佐々木なんかに足止めされちまうなんて・・・・・!!」
「フッフッフ、私をあまりナメ過ぎた事を後悔するんだね、最も長谷川さんはここで再起不能になってもらうからもう遅いけど・・・・・・」

いつもとは全く違う黒い笑みを浮かべながら、まき絵は両手に枕を持って千雨に一歩一歩と近寄って行く。

「銀八先生に何度も弄られ今じゃすっかり今じゃすっかり『イジメられキャラ』のレッテルを貼られてるけど・・・・・・それも今日で終わりじゃぁぁぁぁぁ!!」
「おい佐々木」
「何よッ!? 今私は永い眠りから覚め、サナギから美しい蝶になり華麗に羽ばたこうととしてる時・・・・・・」

千雨に向かって飛びかかろうとする直前、いきなり後ろから誰かに呼ばれたのでまき絵がキレた状態で後ろに振り返ると・・・・・・

「こんな時間に何エキサイティングしてんだ貴様等・・・・・・」
「新田・・・・・・先生」
「ヤバ・・・・・・」
「最悪ですわね・・・・・・」
「あちゃ~・・・・・・」
『ヤバッ! 新田が来たッ!』 

そこに立っていたのは額に思いっきり青筋を浮かべている生活指導員の新田先生。就寝時間はとっくのとうに過ぎているにも関わらず、こんな所で騒いでいる4人の生徒にすっかり堪忍袋の緒が切れているらしい。
そして一番距離の近いまき絵を睨んで

「まずは佐々木、お前からだ」
「ヒッ! え、遠慮しますッ!」

歩み寄って来た新田先生にまき絵は慌てて千雨とあやかの二人を横切って逃げようとする。だがそんな彼女に冷静に新田先生はスーツの右ポケットからある物を取り出し

「アラウンドザワールドッ!」
「え・・・・・・? ぐえッ!」
「何人たりとも、私のハイパードラゴンから逃げられん・・・・・・」

新田先生がある物を投げた瞬間、まき絵の首に何かが絡まる。メガネをカチリと上げ、冷静な顔でまき絵を捕獲する新田先生。

「く、首にヒモがぁぁぁぁ!! こ、これってまさか・・・・・・ヨーヨーッ!?」
『まさかの新田の隠し玉ッ! ハイパーヨーヨーだッ! つうかなんで修学旅行なのにヨーヨー持ってきてるのッ!? 教師がおもちゃ持ってきていいのッ!?』 
「ぐえぇぇぇぇ!! く、首が絞まるぅぅぅぅ!! 裕奈助け・・・・・えぇぇぇぇぇ!!!」

首に絡まったヨーヨーの紐でまき絵は窒息状態に陥り、それでも必死に友人でありパートナーである祐奈に助けを求める。だが

祐奈は彼女の方へ一切向かず逃げる態勢に入っていた。

「じゃあねまき絵ッ! アンタと一緒には死にたくないからッ!」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!! それでも友達なのッ!? マイフレンズなのッ!?」
「え?・・・・・そうだったけ?」
「だぁぁぁぁぁ!! アンタとはもう絶交だぁぁぁぁ!!」

こちらにほくそ笑む裕奈にまき絵は首を絞められながらも絶叫。だがしかし、新田先生は友人を捨てて逃げようとする裕奈も逃がさない、今度は左の方のポケットから何かを取り出し

「いくら明石教授の娘でもこの新田容赦せん・・・・・行けッ! 私の最強マシンよッ!」
『新田の奴がまた変な物を取り出したッ! あれは・・・・・・え?』
「ミニ四駆ゥゥゥゥゥ!!」
「明石を捕まえろッ! 私のサイクロンマグナムッ!!」

新田先生が床に置いた瞬間、シャーと爽快な音を立てて走って行くミニ四駆。かなりのスピードで逃げようとする裕奈の前に回り、そこでピタッと止まった。

「は~? いくらなんでもこんなおもちゃで運動部所属の私を捕まえようとしてんの新田の奴・・・・・まき絵はともかく私がこんなお子ちゃまが遊ぶおもちゃで・・・・・」
「かっとべッ! マグナァァァァムッ!!」
「え?」

目の前に立つチンケな車のおもちゃに思わず祐奈が嘲笑していると、新田先生が叫んだ瞬間、そのマシンはいきなり裕奈に急発進して物凄いスピードで突っ込む。そして

「マグナムトルネードッ!!」
「マグナムがいきなり回転して飛んできたぁぁぁぁ!! ごはぁぁぁぁぁ!!」 
「凄いですわねマグナム・・・・・・」
「マグナム強え~・・・・・・」
『子供の持つおもちゃじゃなくなってるよマグナム・・・・・・』

スピードを上げていきなりマグナムが何も無い所で華麗にジャンプ、そのまま高速回転を付けて裕奈のお腹に体当たり。あまりの衝撃に彼女はその場で白目をむいてダウン。倒れた彼女に同情するようにあやかと千雨は目を向けた。

「さて・・・・・」
「「!!」
「雪広、長谷川、お前等も私の“息子達”の餌食になってもらおうか・・・・・・」
『ちょッ! 千雨ちゃん逃げてッ!』 

倒れた裕奈に気を取られていたあやかと千雨の後ろから殺意がこもっている低い声が、恐る恐る二人で振り返ってみると新田先生がメガネを光らせて立っている。
新田先生が右手に結んでいるヨーヨーの紐をクイッと上げると、口から泡を吹いて気絶しているまき絵の首に巻かれていたヒモが瞬時に戻り、パシッと新田先生の元に彼の愛用のハイパードラゴンが戻る。新田先生が左手で指パッチンするとまるで生きているかのようにサイクロンマグナムが彼の元に戻る。

「さてお前等はどれに狩られたい・・・・・・」
「おい自首させる気ねえよこの人ッ! 完璧私等殺る気だッ! つうかなんであの人が持ってる奴、あんなあり得ねえ動きするんだよおもちゃなのにッ!」

メガネの奥にある目から殺気を放っている新田先生に千雨は後ずさりしながらツッコむ。彼女と一緒に一歩引いたあやかも新田先生には戦慄を感じる

「まさか新田先生が・・・・・・あの伝説のホビー王だったなんて・・・・・」
「ホビー王って何ッ!? 何処で伝説になってたのそれッ!? 何処の伝記に残されてたのそれッ!?」
「あらゆるホビー商品を自在に操り、数多の敵を壊滅させ、「ホビーを扱わせれば神にも勝る」と称されていた最強のホビー王、それが今私達の目の前に立っているなんて・・・・・」
「フ、昔の話だ・・・・・・今じゃただのしがない教師だ」
「オイィィィィィ! なんだそのどうでもいい正体ッ! つうかアンタいい大人だろうがッ!!」

ミステリアス風に話をするあやかと新田先生に千雨は勢いよくツッコんだ後、あやかの手を引っ張り、曲がり角で曲がって新田先生から逃げる為に走る。

「ホビー王でもホビー神でもとにかく私達が手に負える相手じゃねえッ! とにかく新田を振り切るぞッ!」
「そうするしかありませんわねッ!」
「待てお前等ッ!」
「こんな所で捕まってたまるか・・・・・・!!」

後ろから怒鳴っている新田先生の声も聞かずに千雨とあやかは持っている二つの枕を捨てて並行して走る。
だがまた曲がり角に刺しかかった時、いきなりある人物が姿を現した。

「なんか騒がしいですけど何やって・・・・・・うわッ! 君達ッ! 就寝時間過ぎてるのに何やって・・・・・・!!」
「「このッ!!」」

こちらに向かって走ってくる千雨とあやかに驚いているのは一応麻帆良学園の教員である瀬流彦だ。慌てて彼は二人を止めようと前に出て両手を出すが、千雨とあやかは止まらずに二人三脚の様に肩を組みそのまま突っ込む。そして

「「邪魔だぁぁぁぁぁ!!!」」
「へぶッ!」
『ここで誰だか知らない人に千雨ちゃんといいんちょのダブルアタックが炸裂だぁッ!!』

立ち塞がる瀬流彦に二人は勢い良くジャンプしてそのまま同時に飛び蹴りを彼の顔面にお見舞いする。
瀬流彦がバタッと倒れたと同時に千雨とあやかもスタッと地面に着地した。

「オイ、なんか合体技みたいなので思わず倒しちまったぞ・・・・・・」
「私達のコンビネーションの勝利ですッ!」
「いや勝利って言うのコレ?」

ガッツポーズするあやかに千雨が「?」と首を傾げる、ふと後ろに振り返ってみると大の字で倒れている瀬流彦いた。顔には二つの赤い痕が残っている

「どうするコレ・・・・・・知らねえ人だけど」
「教師だとマズイですが、一般人なら別に大丈夫ですわよ」
「教師なんですけど・・・・・・」
「いや一般人でもマズくね?」
「教師なんですけど・・・・・・」

二人がどうしたもんかと呑気に相談している所にいちいち瀬流彦が倒れた状態でツッコンでいると

「パワーショットッ!」
「「え?」」

千雨とあやかが声がした方向に同時に顔向けた瞬間。
ヒュンと小さなビー玉が二人の間を物凄い速さですり抜けた

「この私とバトルフェニックスの前でお喋りとはいい度胸だなお前達・・・・・・」
「ヤバッ! 新田に逃げてる時にこんな事やってるヒマなんてなかったッ!」
「千雨さんッ! あれ今じゃかなり希少価値の高いビーダマンであるバトルフェニックスですわッ! しかもクリア版ッ!」
「お前結構ホビーアイテム詳しいなおいッ!」

新田先生が両手に持っているビーダマンに興奮したように叫んでいるあやかの手を引っ張って千雨は思いっきり逃げる。
残された新田先生はフンと不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「追って捕まえてもいいが、ここにいる二人の生徒をロビーに持って行かなければならんからな、しょうがない、あの二人は確か坂田君と仲がいい生徒だった筈、連絡して彼に捕まえてもらうとするか、ん?」
「に、新田先生・・・・・・」

目の前で大の字で倒れている瀬流彦に初めて気づいたように新田先生はそちらに顔を向ける。

「さっきあの二人に・・・・・思いっきり蹴られたんですけど僕・・・・・」
「いやまず誰だよお前? 怪しい奴だ、このバトルフェニックスで成敗してやろう」
「ちょッ!」
「フルパワーショットッ!!」
「どぅほぉッ!!!」

すっかり瀬流彦の事を忘れている新田先生は、不審者扱いとして彼に向かって思いっきりビー玉を発射、しかも股間に向かって。

「・・・・・・また詰まらぬ物を撃ってしまった」
「ぼ、僕にとっては・・・・・・た、大切な物なんですけど・・・・・・」

死にかけている瀬流彦を無視し、スーツの内側から一本のタバコを取り出し火を付けて吸い始める新田先生。まるで一仕事終えたかのように口から煙を吐いた・・・・・・

















ちなみにここは禁煙である。

























千雨とあやかが旅館の中を必死に走っているその頃、のどかと夕映はトボトボと旅館の中を歩いていた。目的地は無論土方の所である。

「夕映、なんか色んな人の叫び声が聞こえたんだけど・・・・・・」
「もう何処かで一悶着やっている様ですね、ですがあの人の部屋までもうすぐですから問題ないでしょう、誰にも会わなかった事は幸運です」

オドオドしながら後ろに何度も振り返るのどかに隣で歩いている夕映が心配させまいと話しかける。
彼女の言う通り土方の部屋までもう少しだ、だがそこで思わぬ者に遭遇してしまった。

「ん? あの人は?」
「あ、土方さんの所の・・・・・・」

あの階段を上がれば土方の部屋はすぐそこだという所に立っていたのは

「おう、何やってるんでぃこんな所で」
「こ、こんばんは」

階段の下で立っていたのは真撰組、代理局長である沖田総悟。
のどかは彼に言葉をかけられた途端急に寒気が走って来たが、気にせずにお辞儀する。

「夕映、この人土方さんと同じ組織の人だよ」
「ほう・・・・・・近藤さんの所の」
「沖田総悟って言うんでさぁ、アンタは確か宮崎のどかちゃんって言うんだよね? 土方さんからよく話を聞いているぜぃ」
「は、はい・・・・・・! 名前を覚えてくれてありがとうございます」
「・・・・・・」

好意的に接してくる沖田にのどかが嬉しそうにまたお辞儀をするが夕映はふと彼に違和感を感じる。
夕映が疑う目つきに変わっていると、沖田はのどか達の方に歩いてきた

「そういえば君にどうしてもプレゼントしたいモンがあるんだよねぇ」
「え?」

上っ面だけの様な笑みを浮かべながら沖田は内側のポケットからジャラっと出す。
それは何故入っていたのか不思議と思うぐらい長い

「鎖・・・・・・?」
「そう鎖、そしてこの鎖の先っちょにあるのは?」
「首輪・・・・・・?」
「正解」

わけがわからなそうな表情で答えを言うのどかに沖田はニコッと笑った後、その首輪の付いた鎖を回しながら彼女達の元に一歩一歩と歩み寄って行く。

「絶対似合うと思うんだよねぇ」
「え? え?」
「なんでのどかがそんなの付けなきゃいけないんですか、アホですか?」
「決まってんだろぃ・・・・・・」

混乱してる様子ののどかと一緒に不気味な彼に後ずさりを始めなが夕映は彼に問いかける。
すると沖田は鎖を回すのを止め、そして・・・・・・

「サドる為に決まってんだろうがァァァァ!!」
「ひッ!」

いきなり恐ろしい表情に変貌した沖田が咄嗟に投げて来た首輪が付いた鎖を、のどか反射的に体を逸らして避ける。首輪はのどか達の後ろに置いてあった高そうな壺を粉々にした。

「避けんじゃねえよ・・・・・・! 俺がこの時をどれだけ待ってると思ってたんだ、ああッ!?」
「そ、そんな・・・・・・!」
「最低ですッ! 女の子にこんな事して酷いと思わないんですかッ!?」

怯えるのどかの前に立っていつも冷静な夕映が口調を荒げ、沖田に向かって叫ぶ。だが彼はニヤっと笑って

「全然、むしろ今が楽しくてしょうがねえ。もっと怯えろ、もっと怖がれ、もっと絶望を感じろ・・・・・・」
「夕映・・・・・・こ、この人怖いよぉ・・・・・・」
「もう少しであの人に会えたのに、こんな所で思わぬ敵が出現するとは・・・・・・」
 
鎖を引き戻し首輪を自分の元に瞬時に戻す沖田は最高だと言わんばかりに笑みを浮かべながら泣きそうな顔をしているのどかと悔しそうにしている夕映に近づいて行く。


真ドSモード・オン


目を真っ赤に光らせ、沖田は口元にこれでもかというぐらい笑みが広がっていく。





サディスティック星の王子が遂にのどか達に牙をむく。














[7093] 第四十六訓 ドSは決して自重しない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/17 11:47

生徒と教師、ドSがドタバタしているその頃、銀時は布団の上で一人で正座してムラムラしながらしずな先生を待っていた。

「まだ準備が出来てねえのか・・・・・・いや落ち着くんだ俺、きっとアレだしずな先生はきっとシャワーで身も心も綺麗にしているんだ、そうに違いない」

数分前に部屋にやって来たしずな先生が和美が変装した偽物だとも知らずに銀時はそんな勝手な解釈をしながら布団の上で頷いていた。

「どうしよう俺もシャワーでもいいから入ろうかな、でも今の俺は身も心も今完全に欲望で汚れてるからな、中々落ちねえぞこれ、どうすんだこれ、このまましずな先生を欲望の赴くまま汚していいのかこれ・・・・・・うおッ! なんだ電話か・・・・・・」

オタオタしながら突然立ちあがり、落ち着けない様子で布団の上をウロウロしだす銀時。
そんなアホな事をしていると突然部屋の電話が鳴ったので、思わず彼はビクッと反応した。

「何でこんな時に電話鳴るんだよ・・・・・・いやまさか旅館の奴が気をきかせてオプションでも・・・・・・!」

そういう勝手な解釈をしながら銀時は恐る恐る受話器を握りそっと耳に当てる、そして

「あ、すんません、ヌルヌル感抜群のローション頼んます」
『生憎私はローションより何も無しの方が好きだから持っていない』
「ってあれ? その声新田先生?」
『坂田君、君にある事を頼みに来た』

旅館の人かと思いきやまさかの同僚の教師である新田先生だという事に銀時は目を見開く。
こんな時間に何の用なのだろうか?

『実は君がいつも仲良くしている生徒が二人程いるだろ、雪広と長谷川、その二人がこんな時間にも関わらず夜な夜な部屋を抜け出して騒ぎまくっている、そこで彼女達と仲の良い君に捕まえて欲しいのだ、君には容易い事だろう』
「あ、すんません、今ちょっと大事なようがあるんです、しずな先生とプロレスの試合をやらなきゃいけないので、寝技バンバンかけなきゃいけないんで」
『しずな先生とエキサイティングプロレスする前にまず自分の生徒達捕まる事にエキサイティングしてくれ、このままだと旅館の人達に迷惑がかかる、それじゃあ頼んだぞ』
「いやガキ共なんかより今はしずな先生と・・・・・・あれ新田先生? 新田先生ーッ!!」

どうやら用件だけを言って新田先生はすぐに電話を切ってしまったらしい。ツーツーと電話音しか聞こえなくなり、銀時はその場で固まる。

「あ、あのガキ共ぉ~・・・・・・! 俺のワールドプロレスリング世界王座決定戦をよくも台無しにしやがってぇ~・・・・・・!」

沸々とこみ上げてくる怒りで思わず持っていた電話の受話器を握り潰す。怒りの矛先は無論こんな時間にまだ騒いでいる千雨とあやか。

「とっ捕まえてリアルプロレス技かけてやるぞコラァァァァァ!!!」

すぐさま傍に置いてあった木刀を取って銀時は部屋から勢いよく出て行くのであった。










































銀時が旅館の中を疾走しているその頃、のどかと夕映と同じ班であるアスナ達はテレビにくぎ付けにされていた。
テレビに映っているのは二枚目な顔を持ちながら鎖を振り回し、容赦なくのどかと夕映を襲っている男だ。

「ちょっと・・・・・・本屋ちゃんと夕映とんでもないのに襲われてるじゃない」
「誰よこの人ッ! 女の子に対してなんで平気であんな事出来るのッ!?」
「のどかと夕映はよう逃げなッ! 捕まってまうでッ!」

まるで獲物を追い詰めてから食べようとする獣の様にのどかと夕映をジワジワと追い詰めて行く男。
しかもこの男よく見てみると・・・・・・

「マヨと同じ服装・・・・・・」
「沖田さんですよ、土方さんの所の仲間です」
「へ~・・・・・・え? ネギッ! アンタ何でこんな所にいんのよッ!」
「すみません、ドアの鍵開いてたんで勝手に入ってきちゃいました」

男が土方と同じ格好をしている事にアスナが目を細めると、何時の間にか自分の背後に立っていた担任の教師であるネギが男の事を教えてくれた、が、何故彼がこんな所にいるのだろうか・・・・・・

「アンタ天パと一緒の部屋だったんじゃないのッ!?」
「いや~それがよくわかんないんですけど銀さんに部屋から追い出されちゃって・・・・・・だから今日はアスナさんの所で寝かせて欲しいんです・・・・・・」
「はぁッ!?」

ネギの突然のお願いにアスナが混乱していると、ネギに向かってその場にいる刹那がふと声をかける

「白夜叉に部屋から追い出されたんですか? あの男は一体何を考えてるのやら・・・・・・」
「そうですよねぇ、ていうか刹那さんなんで布団に包まってんですか? 趣味ですかぁ?」
「趣味でこんな事しません」
「それは失敬、刹那さんそういう趣味の類の人かと思いまして」
「それは龍宮です、私じゃありません」

ネギが刹那の方へ笑顔で振り返ってみると何故か布団に巻かれ、更にその上からヒモできつく縛られているなんとも異様な姿で彼女がそこにいた。当然刹那の趣味ではなくここの班の連中にやられただけである。

「ところでネギ先生、すみませんがここから私を出してくれませんか・・・・・・?」
「別に良いですけど、出して大丈夫なんですか皆さん?」

助けて欲しいと願い出て来た刹那にネギがとりあえず部屋の住人達に話しかけると、彼女達はテレビから顔を逸らさすにすぐに返す

「ダメ、ったくなんなのよアイツ・・・・・・」
「絶対駄目 うおぉぉぉぉ!! のどか逃げてぇぇぇぇぇ!!!」
「せっちゃん暴れるから駄目や、うわ~どんどん追い詰められ取る・・・・・」
「そういう事ですみませんが助けられません」
「ちょッ! ネギ先生ッ!?」

アスナとハルナそして木乃香にまで出すなと言われたので、仕方なくネギは刹那に向かって笑顔で拒否。刹那は必死に叫ぶが、それも無視してネギはアスナ達の近くに座りこんで一緒にテレビを見る。

「こんな時間にみんな何やってるんですか・・・・・よく見たらいいんちょさんや千雨さんまでいるし」
「今はいいんちょ達を見てるヒマなんてないのよ、アンタが言ってた沖田って奴? そいつがのどかと夕映を追いかけてんのよ、何者なのコイツ?」

アスナが指差した方のビデオカメラの映像にはさっきからずっとのどかと夕映を追いかけ回している沖田の姿が。それを見てネギがうーんと考えた後、彼女に向かって答える。

「確証はありませんが、銀さんや同僚の土方さんや山崎さんの情報によりますと、かなりのドSらしいですね」
「いや確証ありまくりよ、これ以上無いぐらいありありよ」

目の前に映っている沖田を見てアスナがすかさずネギにツッコむ。可憐な少女をあんな態度で接するのはどうみてもドS以外の何者でもない。

「ていうか何であんなのがここに来てんのよ」
「ここを調査する為に来たらしいですよ? そのついでに仲間の土方さんの所に来たらしいんですが、なんか随分とこっちではっちゃけてますね・・・・・・」
「はっちゃけすぎてはち切れて欲しいわよ全く」

テレビに映る沖田をジト目で眺めながらアスナはボソッと呟いていると、ハルナと木乃香が慌てながらテレビに更に近づく。

「あ~のどかが捕まるゥゥゥゥ!!!」
「もうダメや・・・・・・」
「こうなったら・・・・・・!」
「ハルナ何処行くん?」
「もうルールとか知らんッ!」

謎のドSによって、絶体絶命の危機に瀕しているのどかと夕映の姿にもう我慢できず、ハルナは突然立ち上がり部屋を出て行った。

残された生徒と教師は呆然とするしかなかった。

「あの、本当に早く出して下さい・・・・・・」

泣きそうになっている一人を除いて










































第四十六訓 ドSは決して自重しない

『ラブラブキッス大作戦はただいま、まき絵選手と裕奈選手の2名の選手が脱落ッ! そして今のどか選手と夕映選手が大ピンチッ! ていうかあの人誰・・・・・・?』
「お、追い詰められちゃった・・・・・・」
「しつこいですね本当・・・・・・」
「クックック・・・・・・」

実況の和美が観ている生徒達に向かって叫んでいる頃、のどかと夕映は沖田によって角の隅っこに追いやられていたのだ。不気味な笑いをしながら沖田は二人に近づいて行く。

「もう逃げられねえぜ・・・・・・」
「ゆ、夕映~・・・・・・」
「あの人の部屋まで随分と遠い所まで逃げてしまいましたね・・・・・・」

のどかを守るように前に立つ夕映にもさすがに焦りの色が出ている。目の前にいるのは銀時よりもサディスティックな男、追い詰められた今成す術が無い

「まさかこんな人に出会ってしまうなんて」
「テメェ等があのマヨネーズ王子(土方)の所に行くのは読めてたからな、あそこでずっと待ってりゃあ宮崎のどかが来るに違いねえと思ってたんだ、そしたら案の定ノコノコとターゲットが姿を現してくれたって事さ」
「なんでのどかをつけ狙うんですか、この子は別にあなたとはなんの関係もありません」
「そのガキがあの鬼の副長こと土方十四郎に惚れてる時点で俺にとって極上な獲物さ、しかもイジメがいのある中学生の小娘、こいつはたまんねえぜ・・・・・・」
「ひ・・・・・・!」

一歩一歩と、目を光らせながら歩いてくる沖田にのどかは小動物のように震えだす。完全に沖田総悟というものはが危険な人物だとわかったのだ。
夕映は恐怖に震えるそんな彼女を守るため、逆に沖田に一歩前に出る。持っていた枕はとうに逃げる為に投げ捨てているので丸腰だ

「この子をあなたみたいなサディストに渡す事はできません、のどか、私がこの人をしばらく足止めしますから、あなたは全力で逃げて下さい」
「そんな・・・・・・そんな事したら夕映が・・・・・・」
「私の事は心配しないで下さい、あなたはあなただけの事を考えて、急いであの人の所へ」
「夕映・・・・・・」

自分の身一つで沖田を止める事を決意した親友の夕映に後ろで縮こまっているのどかは思わず泣きそうな顔をする。だがそんな二人を見ても沖田は平然と口元にニヤッと笑みを浮かべた

「いいねぇガキ同士の友情ってのは・・・・・・安心しなデコチビ、仲良く二人共葬ってやるからよ」
「くッ!」
「かすがもお市も、独眼竜に会う前にここでゲームオーバーだ・・・・・・!」

ゆっくりと手を伸ばす沖田に夕映は覚悟を決めて、のどかは思わず両手で顔を伏せる。

やられる、そう覚悟した時だった。

突然ボンという小さな爆発音の様な音が聞こえ、3人のいる空間に大量の黒い煙が発生する

「ああ・・・・・・?」
「これはもしや・・・・・・煙幕?」
「どういう事これ・・・・・・きゃッ!」
「のどかッ! わぁッ!」

周りに黒い煙が出現した事に二人が動揺していると、突然何者かの手に引っ張られる。

「二人共こっちアルッ!」
「うむ、あの者がこれで怯んでる隙に早く遠く参ろう」
「その声は・・・・・・」

見知った声に夕映がもしやと思いながらその者に手をひかれていると、今度は男の声も聞こえてきた

「煙幕が消える前に早くこっちッ! 急がないと沖田隊長に殺されるぅぅぅぅ!!」
「そう急かさないで欲しいでござる」
「のどかッ! もっと早く走るアルッ!」
「ちょ、ちょっと待って~ッ!」

最後にのどかの声が聞こえた数秒後、沖田の周りはようやく視界が晴れた。
だがそこにはのどかと夕映の姿もない、さっきの煙幕が張ってる間に逃げだしたのだ。

「チッ」

苦々しい表情で舌打ちした後、沖田は周りを見回す、一体どっちに行ったのか検討もつかない。だが彼にはもう一つ気がかりな点があった、さっきの煙幕だ

「何処のどいつか知らねえが俺に対してふざけた真似しやがって・・・・・・しょうがねえここは“アレ”を使うか」

苛立ったように髪を掻き毟った後、すぐにポケットから携帯を取り出してピッピと番号を打った後、耳に当てる。電話は恐ろしいほど早く繋がった

「さっさと来いメス豚、以上」

何者かに要件を一瞬で言ってすぐに切る沖田、そして楽しそうな表情でまたニヤリと笑った。

「目には目を、ガキにはガキだ・・・・・・」
















































「ここまで来れば大丈夫でござる」
「つ、疲れたぁ・・・・・・」
「全力で走ったのは久しぶりです・・・・・・」

沖田の魔の手からようやく脱出に成功したのどかと夕映は、息を荒げながら廊下でへたり込む。二人は座りこみながらふと助けてくれた恩人を見上げた。

「やはりあなた達でしたか」
「楓さんとクーフェイ・・・・・・ありがとうございます」
「同じバカレンジャーのよしみアルよ、バカブラックッ!」
「手遅れにならなくてよかったでござる」

夕映と同じバカレンジャーと称されている二人のバカブルーこと長瀬楓、バカイエローことクーフェイ。二人共夕映とのどかを救出出来て満足しているようだ。そしてそこにはもう一人意外な人物も立っていた。

「あ~やっぱ沖田隊長の事だからやると思ったんだよな~俺・・・・・・」
「山崎殿が助言してくれなかったらヤバかったでござるよ」
「でも沖田隊長にバレたら俺間違いなく殺されるよ・・・・・・」
「カワイイ女の子二人を助けれたんだから良かったではないでござるか」

沖田と同じ服装の真撰組隊士の一人である山崎が真っ青な表情をしながら楓と話していた、彼の存在に夕映は「?」と首を傾げる。

「なんで“地味崎さん”がこんな所にいるんですか?」
「え~と学校にいたら沖田隊長に無理矢理ここまで連れてこられて・・・・・・ていうかなに地味崎って?」
「さっき道端で偶然にも地味崎殿に出会ってしまい、そのおかげであの男の情報をいち早く知る事が出来たのでござる」
「のどかを狙ってるって聞いて私達急いで駆け付けたアルッ! 地味崎のおかげヨロシッ!」
「あの地味崎を通称にしないでくれる? ていうかそれじゃあのどかちゃんも入るんじゃない? ほら名字『宮崎』だし」

やたらと地味崎、地味崎と連呼するので山崎が頬を引きつりながら訂正を求める。だが夕映がサラリと

「のどかとあなたを一緒にしないで下さい、地味がうつるです」
「なんだよ地味がうつるってッ! 感染するものじゃねえんだよ地味はッ! 持って生れし物なんだよ地味はッ!」
「ところであなた、さっきの人と同じ組織の人ですよね?」
「え、まあそうだけど?」

夕映に質問された事に山崎はキョトンとしながら答えると、彼女は疑ってる目つきで彼を見る。

「本当はあっち側のスパイなんじゃないですか?」
「えぇぇぇぇぇ!! 違う違うッ! 確かに沖田隊長とは同じ組織だけどッ! 俺は女の子をイジめる事なんかに加担しないからッ!」
「ホッホッホ、山崎殿はどちらかというとイジめられる側でござるしな」
「全然嬉しくないフォローなんですけどッ!?」

スパイ説を否定してくれている楓に向かってツッコむ山崎。当然彼は沖田のスパイでもなんでもない、ただの苦労人だ

「俺はスパイじゃないからね・・・・・・それにしても沖田隊長に目を付けられるとはついてないね君」
「えッ! やっぱりあの人って怖い人なんですか・・・・・?」
「怖いとかそういう次元の人じゃないんだよな・・・・・・まず沖田隊長がどういう人物なのかと言うと」

のどかの反応に沖田の事をあまり知らないとわかった山崎は、夕映と彼女の為に沖田の話を始める事にした。

「沖田隊長はあの若さで組織の中でも剣の腕だけでは右に並ぶ者もいないと言われているほどの剣豪でね、俺達が束になってもまず勝てないと思うよ」
「そんなに強いアルかッ! じゃあ私勝負してくるアルッ!」

沖田がかなりの猛者と聞いてクーフェイが血気盛んに喜ぶも、山崎は彼女に向かってすぐに手を横に振る。

「いやいや絶対行ったらダメ、相手が女子供でも容赦しないのが沖田隊長だから、さっきも見たでしょ、あのサディストかつ無尽蔵、俺達隊士でもあの人に口出しが出来る人はいないに等しいんだから、まあ局長だったらなんとか上手くコントロール出来るかもしれないけど」

山崎の言った局長と言った言葉にすかさず夕映は反応する。彼女がよく知ってる人物だからだ

「局長って近藤さんの事ですよね?」
「そうそう、元々沖田隊長は局長がいるから真撰組に入った人だし、局長の事は結構素直に聞くんだよねあの人」
「なるほど・・・・・・では将来的には私もあの人をコントロール出来るようにならなければいけないんですか・・・・・・」
「え? どういう意味それ?」

頷きながら夕映が呟いている言葉に山崎が疑問を感じるが、そんな彼を無視して夕映は話を続ける。

「それでは近藤さんのいない今、あの人を誰も止められないと?」
「いや副長ならなんとか出来ると思うけど・・・・・・こっから副長の部屋はだいぶ距離あるんだよな」
「ふむ」

夕映と山崎の話を聞いていた楓はふと楽しそうな表情で糸目の目を若干開けた

「てことは拙者達でなんとかするしかないのでござるか」
「はぁッ!?」
「私と楓でやっつけてやるアルッ!」
「何言ってんすかッ! 中学生の女の子二人で勝てる相手なわけないでしょッ! 沖田隊長は数多の死闘を生き残って来た猛将ですよッ! 勝てるわけないじゃないですかッ!」

あの沖田に戦おうとしている楓とクーフェイに山崎が必死に止めに入るが、そんな彼に向かって楓は肩をポンと叩いた。

「いやいや拙者とクーフェイだけではござらん」
「え?」
「拙者とクーフェイ、そして山崎殿でござる」
「えぇぇぇぇぇぇ!!!」
「私達三人でドS討伐アルッ!」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!! 無理に決まってんだろッ! あの人に刃向かうなんて真似したらそれこそバラバラにされるだろうがッ! 俺を巻き込まないでッ! 俺はそっとしといてッ! 俺に平穏を送らせてッ!」 

勝手に仲間として加入されている事に山崎が思いっきり沖田討伐への参加を拒否する。山崎にとって沖田は上司、もしそんなのを相手にしたら切腹なんてもんじゃない、間違いなく彼直々に殺される。

「俺は絶対嫌・・・・・・ん?」

だが山崎が沖田と戦う事を強く拒んでいる所で、ふと人の気配を感じそこにいたメンバーはハッとする。

「む? もうバレたでござるか?」
「ドSアルかッ!?」
「どうしよう夕映・・・・・・」
「ここはこの人達に任せましょう」
「それに俺はカウントしないでね・・・・・・」
「来るでござるッ!」
「「「「「!!」」」」」

のどかと夕映の会話に山崎が口を挟んだ瞬間、楓が前方の曲がり角に人影が見えた事を確認する。
その場にいる者が全員息を飲んでいると、その人影は徐々にこちらに向かって歩いて来ている。
そして

「あ」
「柿崎・・・・・・?」
「何でこんな所にいるアルか?」

現れるのは沖田かと思いきや出て来たのはまさかの同じクラスの柿崎美砂だ。彼女もこっちに気付いたような反応をする。

「お主はこのゲームに参加していたのでござるか?」
「・・・・・・」
「危険アルッ! ここは今ドSが徘徊していてさっきのどかと夕映が襲われそうになったアルよッ! 早く部屋に逃げるヨロシッ!」
「・・・・・・」
「なんか無反応だけど彼女どうしたの?」
「様子がおかしいですね・・・・・・」
『柿崎ってゲームに参加してたっけ・・・・・・? 確かあの子の班からは双子の二人だった筈だけど・・・・・・』

目の前に立っている美砂に楓とクーフェイが声をかけても彼女は反応もせずただ無表情でこちらを見ているだけ。そんな美砂の態度に山崎と夕映は不自然さを感じていると、不意に彼女は浴衣の袖の中からある物を取り出す。

スポーツでよく審判等が使っている高音を放つホイッスルだ。

「なんでそんなの持ってるでござるか・・・・・・?」
「・・・・・・」

楓の質問も無視して美砂はそれを口に当てる。そして

「ピィィィィィィィ!!!!」

強烈な超音波の様な高音が彼女の吹くホイッスルによって周囲一帯に発生する。

「うわッ! 音デカッ! ちょっと楓さんッ! あれどういう意味ッ!? あの子なりの挨拶なのッ!?」
「いや柿崎はそういうキャラでは無かったのでござるが・・・・・・」
「ダメアルッ! 柿崎ッ! そんな事やったらこっちに気付いてドSが来ちゃうアル~ッ!」

耳の痛くなる様な柿崎の鳴らすホイッスルに耳を塞ぐ一同。すると彼女達のいる前方の左側の窓ガラスから

「チェストォォォォォ!!!」
「なんとッ!」
『ド、ドS来たぁぁぁぁぁぁ!!!』
「お、お、沖田隊長ぉぉぉぉぉ!!!!」
「ドSアルッ!」
「あ、ああ・・・・・・」

突然目の前にある窓ガラスを豪快な音を立て割って出て来たのは、サディスティック星の王子である沖田だった。口に笑みを浮かべながらこっちに目を合わせる。

「新しく見る奴等もいるが・・・・・・・またあったなデコチビ、それと宮崎のどかちゃんよ、これもディスティニーって奴か?」
「ど、どうしてここが・・・・・・」

再び現れた沖田にのどかが恐怖でまた震えだす中、隣に立つ夕映は何故彼がこんなにも早く自分達を見つけられたのか考える。そして一つの結論が頭を与切った

「もしやあの笛が・・・・・・まさかッ!」
「そう、そのまさかよ、この女は俺の偵察要員さ」
「柿崎さん・・・・・・」

不敵に笑いながら沖田が指を鳴らすと美砂は素直に沖田の隣にすぐ歩み寄る。彼女の正体にのどかはショックを受けたようだった。
そして今まで無表情だった彼女がゆっくりと目の前にいるクラスメイト達に笑みを広げた

「今頃気付くなんてね・・・・・・やっぱバカレンジャー三人如きの知恵じゃ“ご主人様”の策を看破するなんて無理って事よ」
「ご、ご主人様ッ!? もしやその男の事でござるかッ!?」
「当たり前でしょ、私にとってご主人様はこの御方だけ・・・・・・ご主人様の為なら仲良くしているクラスメイトを裏切る事だって出来るのよ」
「なんか柿崎おかしいアル・・・・・・まるで別人ヨ・・・・・・」
「ま、まさか沖田隊長・・・・・・」

忠実な下僕のごとく沖田を崇拝する柿崎の姿に一同混乱するが、沖田と長い間付き合っている山崎は彼女のそんな姿を見て確信する。

「間違いない・・・・・・あの子は沖田隊長にもう既に調教されている・・・・・・」
「調教? そんなので柿崎はああなってしまったのでござるか?」

山崎の結論に楓は耳を疑う。ただの調教でクラスメイトがあそこまで・・・・・・だが山崎は知っているのだ、沖田総悟にかかれば容易い事だと

「沖田隊長の調教は並大抵のレベルじゃないんです、あの人にかかればどんな女の子もたちまち彼女みたいに・・・・・・」
「お手」
「はい、ご主人様」
「伏せ」
「はい、ご主人様」
「ちんちん」
「ありませんご主人様」

沖田に命令された事にに一瞬の躊躇も見せずに従う(3つ目はさすがに首を横に振った)美砂の姿を目のあたりにして生徒達は唖然とする。

「完全なる忠実なメス豚・・・・・・もう彼女は君達の知るクラスメイトじゃない、沖田隊長の忠実なメス豚なんだ」
「嘘アルッ! 柿崎は私達の大切なクラスメイトアルッ!」
「ちょっと走って疲れたな、おいメス豚、そこに四つん這いになって俺のイスになれ」
「はい、ご主人様」
『柿崎ィィィィィィ!!!』 
「何やってるアルかァァァァ!!!」

山崎に向かって大切なクラスメイトとしてそんな現実を受け入れようとしないクーフェイだが、目の前ですぐに四つん這いになって沖田にドカッと背中に座られても嫌な顔一つしない(むしろ恍惚の表情をしている)柿崎の姿に思わず吠えた。

「私のクラスメイトがドSのせいでメス豚になっちゃったアルッ!」
「よし、ここはクーフェイと拙者、そして山崎殿の力でメス豚モードの柿崎を救おう」
「だから俺入れないでッ!」
「おい山崎」
「ヒッ! え、え~と・・・・・・な、なんですか副長の沖田様・・・・・・・」

また自分をメンバーに入れようとする楓に山崎が抗議するが、不意にまだ美砂に座って足を組んでいる沖田が彼に話しかける。山崎はぎこちない笑みで恐る恐る目を合わせた。

「まさかそこのチャイナ娘と糸目女を手引きしたのはテメェじゃねえだろうな? もしそうだったらテメェも一緒にその二人共々処刑だからな」
「へッ!?  何言ってんですかそんな事俺がやるわけ・・・・・・」

実際そうなのだが山崎は嘘をついて首を横に振る。だが彼の両隣りにいる二人は・・・・・・

「山崎殿はお主の不埒な悪行三昧に限界を感じて拙者達と共に遂に立ち上がったのでござる」
「はいッ!?」
「「お前みたいなドSバカとはもう付き合えねえんだよこの変態野郎ッ!」とも言っていたアル」
「おいアンタ等何捏造してんだァァァァ!! 違いますからね沖田隊長ッ! 俺はそんな事これっぽっちも言った事も考えた事もありませんからねッ!」

楓とクーフェイの捏造発言に山崎が慌てて沖田に向かって両手を振りながら否定。だが沖田は悪そうな顔でニヤッと笑う。

「死ぬ覚悟とテメェの入る墓石の用意は出来たか山崎・・・・・・」
(殺る気だァァァァ!! 間違いなく俺もこの子達共々殺る気だァァァァ!!! つうかあの人完璧悪役じゃねえかァァァァ!!!)

柿崎から立ちあがりながら、殺意の放った言葉を呟く沖田を見て山崎は頭を両手でおさえる。こうなった彼はもう近藤か土方でもいないと止まられない。

「そんじゃあ、のどかちゃんを捕まえる前にまずテメェ等を始末してやるか」
「沖田隊長ォォォォォォ!!!」
「上等アルッ!」
「拙者達の実力を侮っては怪我するでござるよ」
「アンタ等構えんなァァァァ!! つうかアンタはそのクナイどっから出したァァァァ!!」
「乙女の秘密でござる」
「乙女がそんな殺傷武器隠し持つわけねえだろォォォォ!!!」
『ていうかゲームのルールでは枕以外の武器は所持禁止だったんだけど?』

沖田に対して戦闘態勢を取るクーフェイと楓に向かって山崎はツッコむ。しかも楓に至っては両手に忍びの使うクナイ手裏剣を所持していた。
山崎と違って戦う構えを取る二人に沖田はフっと鼻で笑った後、指を鳴らす。
するとさっきまで四つん這いになっていた柿崎がすぐに立ちあがった。

「チャイナ娘と糸目忍者と山崎なんざコイツ一人で十分だ、やれメス豚」
「はい、ご主人様」
「何ッ!? まさか拙者達相手に柿崎を戦わせるつもりかッ!? なんという卑劣ッ!」
「クラスメイト同士で戦わせつもりアルかッ! 汚いアルッ!」

美砂を単身で自分達にぶつけさせようとしている沖田のやり方に楓とクーフェイがブーイング。だが彼は「クラスメイト同士だからやりずらい筈」という事で彼女一人で戦わせようとしている訳ではない

「慌てんなよガキ共、おいメス豚、テメェの力をあいつ等に見せつけてやれ」
「はい、ご主人様」

沖田の言われるがままに美砂が彼の前に出て戦う態勢に入る。そして

「んにゃぁぁぁぁぁ!!!」
「柿崎がこっち向かって走って来たアルッ!」
『ちょっとぉぉぉぉ!! 何この展開ッ!? 私の計画に入ってないんだけどッ!?』

こちらに向かって腰をかがめながら突進してくる美砂に対してクーフェイは彼女を止める為に彼女に向かって逆に突っ込んだ。

「止めるアル柿崎ィィィィ!!!」

態勢を低くしている彼女の頭を押さえようとクーフェイが手を出す。が、その瞬間美砂のめがギラリと光った。

「にゃぁぁぁぁぁ!!」
「アダッ!」

突っ込んで来たクーフェイに美砂はその場でバック宙してからの蹴りを彼女の顎めがけてヒットさせる。その動きは一瞬であり、動体視力が高いクーフェイでさえも見抜けなかった。

「ム、ムーンサルトッ!?」
「柿崎があんな動きするの初めて見たでござる・・・・・・」
「シャァァァァァ!!」
「うわ俺ぇぇぇぇぇ!!!」

夕映と楓は一瞬でクーフェイに一撃を食らわした美砂の戦闘力に驚愕している隙に、彼女は鳴き声を上げながら休む暇なく目の前に立ってる山崎めがけて走る。そして彼の目の前に来た瞬間、美砂はその場で大きく飛翔し、そのまま山崎の顔めがけて

「んにゃにゃぁにゃにゃにゃにゃにゃッ!!!」
「イデェェェェェ!! ちょっとこの子、爪で引っ掻いてくるッ! 誰か助けてぇぇぇぇ!!!」
「山崎殿ッ!」

猛烈に両手の爪で引っ掻き攻撃を繰り出す美砂に山崎が痛烈な声で助けを求めると、楓が慌てて彼女を止めようとするが、美砂はすぐに察知してその場からバック宙、バク転を繰り返しながら沖田の所へすぐに後退した。

『ここでまさかの柿崎の暴走ッ! さっきから人間の動きというより『バイオハザード』の中型ゾンビ並の動きを見せる柿崎に3人とも翻弄されているッ!』
「山崎殿大丈夫でござるかッ!?」
「楓さん胸当たってます・・・・・・」

美砂によって顔をズタズタに引っ掻かられて、死んでる様な表情をしながら赤い線が痛々しく残っている山崎を楓が安否を調べる為抱き起こすが、彼女の豊満な胸が山崎の顔に思いっきり当たり、彼にとってそっちの方が気になる。

「うーむ、これは少々厄介な相手でござる・・・・・・」
「楓さん、胸が・・・・・」
「クーフェイは大丈夫でござるか?」
「ちょっと油断しただけヨッ! まだまだやれるアルッ!」

山崎の注意も聞かずに楓はクーフェイの安否も尋ねると、彼女はすぐに起き上がってまだ戦う姿勢を見せる。
そんな三人の姿を見て、沖田は猫の様にお座りポーズをとっている美砂の顎を撫でながら一層口元に笑みを浮かべた。

「ちっとはタフらしいな、遊びがいがあるぜぃ」
「柿崎は元々そこまで運動能力の高い者ではござらん、だがさっきの動きはまるで別人、お主一体何を・・・・・・」
「ちょいと俺好みに調教したらこの通りだ、さてこりゃあ俺も遊ぶとするかねぇ」

楓との会話の後、柿崎を撫でるのを止め、沖田はポケットに手を入れながら前に出る。

「テメェ等ガキ共に俺の力を見せつけるいい機会だ」
「山崎殿、まだやれるでござるか?」
「いや元々沖田隊長とはやれるなんて一言も言ってないんですけど俺・・・・・・」

ツッコミながら山崎はようやく楓に抱き抱えられた状態からヨロヨロと立ち上がり、死んだ目つきで目の前にいる沖田と対峙する。
戦闘で使えるメンバーは楓とクーフェイ、負傷している山崎、対して向こうは美砂とサドプリ沖田。
両陣営が硬直し、どちらが先に動くか互いの手を待つ。
















だが突然、沖田達の後ろから楽しそうにキャッキャッと女の子の声が二人分聞こえて来た。

「む?」
「あれこの声って・・・・・・」

よくしっているその声に楓と山崎は嫌な予感が頭を余切っていると、案の定見た目小学生の様な少女二人が・・・・・・

「こっちから楓姉達の声が聞こえたッ!」
「待ってよお姉ちゃんッ! 私疲れちゃったですぅッ!」
『ここでまさかの風香選手と史伽選手が合流して来たァッ!』
「ぎゃぁぁぁぁぁ!! なんちゅうタイミングに君達来てんのォォォォ!!!」

楓達の声が聞こえたらしく仲良し双子の風香(姉)と史伽(妹)が楽しい事があるのかとドタバタしながらやってきた。だが彼女達の目の前には楓達だけではなく、背中を見せている沖田と美砂の姿。
彼女達に気付いたのか沖田はふと後ろに振り返る。

「なんでぃ、ここはこんなチンチクリンなガキ共まで世話してんのか?」
「む、ボク達はチンチクリンじゃないやいッ!」
「こう見えても私達中学生なんですよッ! チンチクリンなんて酷いですッ!」
「止めてぇぇぇぇぇ!! その人に関わっちゃダメェェェェェ!! 簡単に首すっ飛ばす人だからァァァァ!!!」

目の前に立っている沖田に向かって風香と史伽が頬を膨らましながら怒るのをすぐに止めるよう、山崎が慌てて二人に向かって叫ぶ。すると山崎の声に気付いたのか彼女達は沖田と美砂の向こう側にいる方に顔を向けた。

「あッ! ジミーだッ! どうしてここにいるのッ!?」
「本当だジミーッ!! わーいジミーも京都にやって来たんだ~ッ!」
「俺の事はいいから二人共その人から離れてッ! 何されるかわかんな・・・・・・」

山崎がいたことに風香と史香がその場で飛び跳ねるほど喜ぶが、山崎は二人が沖田の近くにいる事が危なっかしくてしょうがない。彼はすぐに沖田から離れるよう彼女達に声をかけようとする、が、その前に沖田が指をパチンと

「このチンチクリンなガキ共はテメェが始末しろぃ」
「にゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁッ!」
「なにこれぇッ!」

命令内容は風香と史伽の始末、そんな非情な沖田の命令もすぐに頷いて叫び声を上げながら壁に向かって飛びかかった後、両手両足の力のみで壁を走るように動く。そして二人の脱出路を防ぐために彼女は回りこんで二人を閉じ込めた。

『バイオハザードのリッカーの如く柿崎が壁をよし登って風香選手と史伽選手の後ろを取ったァァァァァ!! ちなみに「バイオハザードのリッカーって何?」って思った人は今すぐググってねッ!』
「ど、どうしたの柿崎・・・・・・」
「こ、怖いですぅ・・・・・・」
「シャァァァァァ!!!」
「「ひいぃぃぃぃぃ!!」」

既に人間としての自分を忘れているんじゃないだろうかと心配になるぐらいバイオ化している美砂に、風香と史伽は抱き合って壁の隅っこで震える。

「た、助けて楓姉とジミーッ!」
「うえ~んッ!」
『双子が泣いてる中、ジリジリと近づいて行く柿崎ッ! 本当にT-ウイルスにでも感染してんじゃないの?』
「ど、ど、ど、どうしましょう楓さんッ! このままだとツインデビル・・・・・・じゃなかった風香ちゃんと史伽ちゃんがリッカーの餌食にッ!」

迫ってくる美砂に二人が遂に泣きだしてしまっているのを、山崎が見るに耐えられずに楓に話しかける。だが彼女は難しそうな表情で前を見る。

「助けたいのは山々でござるが、“目の前にいる人物”が拙者達を素直にあの二人の元へ行かしてくれると思うでござるか?」
「あ、沖田隊長・・・・・・」
「「うえ~んッ!!」」
「鼻フックでもかけて黙らしてやろうか?」

泣きわめいている双子を沖田がだるそうに呟いているのを楓と山崎が眺める。
どう見たって素直に前を行かしてくれるわけない。

「おいドSッ! その双子は関係ないアルッ! 無関係の奴等を巻き込んでいいアルかッ!?」
「うるせえよチャイナ娘、俺の勝手だろうが」

クーフェイに向かってつっけんどんに返した後、沖田はそんな彼女に向かって目を細めながらまた口を開く。

「ていうかお前の口調ウザい、江戸にいるお前みたいな小娘思い出すから黙っててくれる? キャラ被ってんだけど? ていうかさ俺思うんだけどアルって何? それでキャラ立ってると思ってんの? 今時それ古過ぎじゃね? こんな時代に「語尾にアルついてるから中国人キャラですよ」みたいな表現古くね? 」
「うおぉぉぉぉぉぉ!! 気にしてる事を言われたアルゥゥゥゥ!!」
「いや気にしてたんかいッ! 別にいいだろアルアルチャイナ娘でもッ! 古典的だけどかなりキャラ立つんだよそれッ!?」
『いやまあ、古いっちゃ古いよね確かに・・・・・・』

沖田の言葉がクーフェイにジャストミートに突き刺さり両手で頭を抱えて絶叫する彼女に山崎が必死に励ます。あまり悩む事はなさそうな彼女だが、意外とそういう事には悩むタイプらしい。

「もうどうするんですか楓さんッ! どうやってあの双子を助けるんですかッ!?」
「心配ござらん山崎殿、拙者はさっきいい策を思いついた」
「・・・・・・なんか悪い予感しますから一応聞きますけど、なんですか?」

笑みを浮かべた楓に山崎は不安を感じる。そしてその悪い予感は見事に的中した。

「拙者があの者を止めてる間、山崎殿が風香と史伽を救い、なおかつお主は双子を連れてのどかと夕映を安全な所へ連れて行く。簡単でござろう?」
「へ~なるほどって出来るかァァァァァ!! だってあっちにはリッカーもいるんですよッ! 俺また引っ掻かれるのイヤですからねッ!?」
「柿崎の名称がリッカーになってるのがちと気になるが、大丈夫でござるよ」

また美砂に襲われるのはコリゴリな山崎は楓の策に絶対に賛成できない。だが楓は心配するなと彼に頷く。

「柿崎にはクーフェイが当たればいいでござる、いけるでござるなクーフェイ?」
「私もう語尾にアル付けるのが嫌になったアル・・・・・・あ、また語尾にアルって」
「クーフェイ・・・・・・」
「あなたの場合語尾にアル付けないとキャラ立ち出来ませんよクーフェイ」
「マジでか・・・・・・それはヤバいアル・・・・・・」
「あそこでイジけてる奴なんかに頼れねえよッ!」

夕映とのどかの近くで座りこんでブツブツ彼女達に向かって呟いているクーフェイを見て山崎がツッコむ。意外と繊細な所もあるらしい

「あ~なんだって沖田隊長と戦う事に・・・・・・元々俺って地味キャラだからこんなの向いてねえんだよ・・・・・・帰りたい、局長達のいる江戸に帰りたい・・・・・・」
「ほう、自分が地味キャラだからと言い訳して逃げるのでござるか?」
「うッ!」
「戦う事に主人公とか地味とか関係ござらん、戦う事に逃げても主人公も地味も関係ござらん、そこで逃げたらただの負け犬でござる」
「・・・・・・」

現実逃避している山崎に楓があえて厳しい言葉をぶつける。生涯地味キャラと自分で決めつけていた山崎にとってその言葉はナイフの様に胸に突き刺さった。

「でも俺、旦那や副長見たいな真似出来るわけないし・・・・・・ましてや女の子を救う柄でも無いし・・・・・・」
「何を言うか、あの二人が今助けを求めているのはお主でござるぞ」
「助けてジミ~ッ!」
「柿崎がバイオになって怖いよジミ~ッ!」
「!!」

楓に言われてふと風香と史伽を見ると泣きながら自分に助けを求めている。普段から銀時や土方の影に埋もれ全く評価もされず生きていた山崎、だが彼女達は今、自分を必要としているのだ。
山崎はぐっと目をつぶって自分に念じる

(逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ・・・・・・!)
『ねえなんでシリアスっぽくなってるの?』

実況している柿崎のツッコミも届かず山崎は目を開けて決意する。自分が何のためにやるのか、それが今わかった

「楓さん、あのドSを・・・・・・頼みまぁぁぁぁすッ!」
「山崎殿ッ!」
『山崎さんが双子を助ける為、ドSに向かって突っ込んだァァァァ!! しかしそれをドSはッ!』

風香と史伽を救う為に山崎は沖田達めがけて走る。だがドSこと沖田は笑みを浮かべながら走ってくる彼に向かって腰に差す刀を抜いて構える。

「俺に喧嘩を売るとはいい度胸だな山崎、敬意を称して一撃であの世に送ってやるよ」
「ギャァァァァァ!!」
『刀を抜いて完璧殺る気だァァァァ!!』

刀を低く構えてすくい上げる様な形を作る沖田に、山崎は首を飛ばされる覚悟をしながらも前に突っ込む。ここから逃げる事なんて出来ない。
山崎が自分の範囲に入った瞬間、沖田は刀を山崎めがけて振り上げようとする、だがその時だった。

「拙者を忘れるとは笑止ッ!」
「何ッ!?」
「楓さんッ!」

山崎が斬られる寸前、楓は持っていたクナイを沖田めがけて大量に投げる。それに気付いた沖田は山崎を斬るのを諦めて襲ってくる大量のクナイの方を向いて撃ち落とす。

「あの糸目女、やっぱくのいちか・・・・・・!」
「今でござる山崎殿ッ!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!」

楓の叫びを背に山崎は双子めがけて走る。が、それを沖田は許さない

「させ・・・・・・! チッ!」
「行かせないでござるよ」

沖田は逃げる山崎を追おうとするが、今度は楓が走って来て沖田が振ろうとした刀をクナイで止めた。
そして沖田が楓とつばぜり合いになっている隙に山崎は双子達の所に辿り着く事に成功する。

「二人共助けに来たよッ!」
「え~んッ! 怖かったよジミ~ッ!」

姉の風香が助けに来てくれた山崎に抱きついた、余程美砂が恐かったのだろうか。
だが妹の史伽は慌てて彼の後ろを指さす。

「ジミー後ろッ!」
「え? あァァァァァ!! リッカーさんんんん!!!」
「シャァァァァァァ!!!」
『ドSを掻い潜り双子を助けられた山崎さんに、今度はバイオ柿崎が襲いかかって来たァァァァ!!!』

またもや奇声を上げながら飛びかかってくる美砂に山崎は万事休すかと諦めていると

「アチョォォォォォ!!」
「へぶッ!」
『おおっとッ! ここでまさかのクーフェイが柿崎に飛び蹴り一発ッ!』

美砂が飛びかかってくる前に先ほど落ち込んでいた筈のクーフェイが彼女に向かって気持ちのいい飛び蹴りを炸裂する。柿崎はそのまま壁に激突、床に着地したクーフェイは彼女が立ちあがってくるのを待つ

「これがアルアル中華娘の力アルッ! 語尾がアルだってなんぼのもんじゃいッ! 早く行くヨロシッ!」
「なんか色々ツッコみたい事あるけどとりあえずありがとうッ! 風香ちゃん、史伽ちゃん、早くここから逃げようッ!」 

自分のキャラ性を強調しながらクーフェイは山崎に指示、それに何か言いたげな山崎だったが、ここはまず自分に抱きついている双子の救出と、のどか夕映を安全な所へ連れて行くのが優先だと思い、素直に礼を行った後すぐにのどか達の方へ戻る。

「とりあえず沖田隊長とリッカーから遠くへ行かないとッ! のどかちゃんッ! 夕映ちゃんッ! ここから逃げるよッ!」
「はいッ!」
「地味でもたまには役に立つ時ってあるんですね」
「おいそこのアマ今なんつったッ!」
『山崎さんが双子とのどか選手と夕映選手を連れて逃走成功だッ! ヨッシャァァァァ!!!』

どさくさにぼそりと呟いた夕映の一言に山崎は吠えた後、風香と史伽を抱き上げた状態で彼女達を連れてその場から逃げだす。

「待ちやがれのどかッ! テメェは俺の獲物・・・・・・クソッ!」
「ここは通さないでござるよ」

その一同を見て沖田も追おうとするが目の前になおも立ち塞がってくる楓。沖田は珍しく声を荒げた後、彼女に向かって刀を構え直し

「テメェに用はねえんだよ糸目くのいちィィィィィ!!」
「な・・・・・・! ぐッ!」

瞬速の横一閃、沖田がマジで本気になったその一撃は楓のクナイを破壊して、そのまま山崎達が逃げた方向の壁まで吹っ飛ばす。

「俺が本気になればテメェ等なんざ一瞬で肉塊に出来るんだぜ、おいメス豚、あいつ等追うぞ」
「はい、ご主人様ッ!」

右肩を疲れたように回しながら、沖田は後ろでクーフェイと戦っている美砂に指示を飛ばす。彼女はすぐに頷いた後クーフェイを弾き飛ばして、山崎達を追う為に走り出した沖田の元に走り寄る。

「待ちやがれのどかぁぁぁぁぁ!!!」
「行っちゃったアル・・・・・・あッ!」

楓とクーフェイの足止めを振り切り沖田と美砂は山崎を追いに行く。
その場に残されたクーフェイはしばし息を荒げながら立ち止まっていると、さっき沖田に吹っ飛ばされた楓に気付いて慌てて近寄る。

「楓ッ! 大丈夫アルかッ!?」
「うむ心配ござらん・・・・・・軽く吹っ飛ばされただけでござる」
「救急車ァァァァァァ!!!!」
「いやだから問題ないと・・・・・・」
『・・・・・・ていうかそんな原始的な方法で救急車が来るわけないでしょ』

楓の言う事も聞かず突然窓を開け、大声で叫びだす。
そんな彼女にさっきからずっとビデオカメラで見ている和美はボソリとツッコむのであった。






次回、沖田乱入編完結






[7093] 第四十七訓 なんだかんだで両想い
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/20 08:55

深夜零時、山崎は双子とのどかと夕映を連れて人気のいない旅館を走り回っていた。
左手に姉の風香、右手に妹の史伽を脇に抱きかかえている山崎はしんどそうに呟く。

「ハァ~まさか俺がこんな事をやるハメになるなんて・・・・・・」
「ジミーさっきカッコ良かったよッ! 僕がお嫁さんになって上げようかッ!?」
「ダメですお姉ちゃんッ! 私がジミーのお嫁さんになるんですぅッ!」
『おおーっとッ! ここでジミーこと山崎さんが双子のフラグを立てたかぁッ!?』 
「いやあのね・・・・・・」

風香と史伽の発言に山崎は戸惑った表情を浮かべる。
双子の発言が冗談なのかマジなのかはどうでもいいとして、とりあえず山崎は後ろに振り返って夕映に尋ねる

「夕映ちゃん、後ろから沖田隊長来てるかわかる?」
「ほう、あなたごときの身分で私に命令ですか? いい度胸です」
「さっきからどんだけ俺のこと下に見てんだよッ! 俺光ってたじゃんッ! 地味なりに頑張ってたじゃんッ!」

走りながらやや反抗的な態度を取る夕映に山崎は振り返りながら叫ぶ。
美砂に襲われる寸前の双子を助け、更にこうやってのどかと夕映を連れて逃げている事は、我ながら凄い事をやっているなと実感している山崎だったが、どうにも彼女は認めていないらしい

「何言ってるんですか、そもそも近藤さんとあの人(土方)の部下であるあなたがのどかと私を助ける事は当たり前です、のどかはあの人の嫁確定ですし、実を言うと将来的には私もあなた達の姐・・・・・・」
「夕映ッ! 後ろからッ!」
「ん?」

山崎に向かって語りかける夕映の話を中断させて、慌ててのどかが後ろに振り返りながら指をさす。

「シャァァァァァァ!!!」
「くおらぁぁぁぁぁ!! 待ちやがれのどかぁぁぁぁぁ!!」
「お、沖田さんとリッ・・・・・・柿崎さんが追いついて来ちゃったッ!」
「のどか、今柿崎さんの事リッカーって言いそうになったでしょう?」

珍しくボケをするのどかに夕映が静かにツッコんでいると、こちらに向かって走って来ている美砂と沖田は完全に目が血走っている状態でどんどん近づいてくる。。

「メス豚ァッ! さっさと宮崎のどかを捕獲しろッ!」
「はい、ご主人様ッ!」

沖田に吠えられるとすぐさま美砂は行動を移す。目の前で必死に逃げているのどかに標準を合わせると、彼女は走りながら壁を・・・・・・

「にゃぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃッ!!」
『出たァァァァ!! リッカー柿崎の四足壁走り走行ッ! もうダメだあの子人間に戻れない・・・・・・』

壁に両手両足をついてそのまま壁を走り出す美砂。のどかは逃げながらそれを見て思わず悲鳴を上げる、ホラーゲームに出て来そうな今の彼女は、ある意味沖田より怖い物を持っている。
二人の距離は近づいて行き


「逃がさないわよッ! おらッ!」
「ああッ!」
『のどか選手が遂に捕まったッ! やっぱリッカーからは逃げられないか・・・・・・』

捕まえる範囲に入って来たのどかに向かって美砂は飛びかかる。見事に捉え、そのままのどかは彼女の下敷きになってしまった。

「うう~クラクラするですぅ~」
「のどかッ!」
「のどかちゃんッ!」
「御主人様ッ! 宮崎のどかをこのメス豚が捕まえましたッ!」

下敷きにされたショックで目を回しながらのどかはフラフラする、彼女の後ろ襟を掴み、美砂は勝利だと言わんばかりにのどかを片手でそのまま掲げた。
そんな彼女に沖田はニタリと笑いながら指でクイクイと指示する。

「よくやったメス豚、早くこっちに持ってこい」
「はいご主人様ッ! おらさっさと自分で立ちなさいよッ!」
「うう~・・・・・・」

のどかを床に下ろして乱暴に手を引っ張って歩かせようとする美砂だが、急にのどかに顔を近づけて睨みながらそっとささやく。

「言っとくけどあんたがご主人様のお気に入りだからって私は容赦しないわよ・・・・・・」
「いや・・・・・・あの人も私に対して容赦しなさそうなんだけど・・・・・・」
「口答えすんじゃないわよッ! 大体なんでアンタなんかがご主人様のお気に入りなのよッ! どうして私じゃないのよッ! この泥棒猫ッ!」
「く、首がグラグラするから止めて~・・・・・・」
「さっさとのどか持って来いつってんだろメス豚。殺すぞ」
『柿崎ッ! ご主人様を放置してのどかと昼ドラ開始だぁッ!』

無表情でドスの聞いた言葉を出す沖田も無視して美砂はのどかの体を激しく揺さぶる。
どうやらさっきからずっと彼女には激しい嫉妬感を抱いていたらしい。

「ムキィィィィィ!! アンタなんかにメス豚の座は渡さないんだからァァァァ!!」
「い、いや~・・・・・・・!」
「おいメス豚、マジで斬り殺されてえのかさっさと来い」
「別にのどかちゃんは沖田隊長のメス豚になりたいとは思ってないと思うんだけど・・・・・・」
「当たり前です、あれはどうみても痛すぎる柿崎の痛すぎる妄想です」
『・・・・・・』

沖田の声も聞いてなく、悔しそうにのどかを横にブンブン振る美砂に、両手に双子を抱きかかえてる山崎と夕映が哀れ身の視線を送る。
実況している和美も彼女の姿に言葉が出なくなってしまう。

「どうする? 今の隙にのどかちゃんを助けれるかもしれないよ?」
「あなた如き地味男がバイオ化してる柿崎に勝てるんですか?」
「いや、さすがに勝てはしないと思うけど俺が行けば足止め程度には・・・・・・」
「その必要はないわよ、え~と山崎さん」
「え?」
「む?」

どうやってのどかを救出するか山崎と夕映が相談をしていると、意外な人物の声が聞こえたので二人はそちらに振り返る。
親友の早乙女ハルナがニヤケ顔で立っていた

「ハルナ? どうしたんですかこんな所で?」
「このままだとのどか捕まっちゃうと思ってね、ルールとか無視して呼んで来ちゃった」
「と、言いますと?」
「だからのどかを一番大切にしてる人を呼んで来て上げたのよ」
「・・・・・・まさか」

誇らしげに言うハルナに向かって山崎はただ首を傾げ、彼女が誰を呼んだのか察知する夕映。
そして彼女の予想通り、“その男”はもう既に柿崎に襲われているのどかの近くに立っていた。

「おい」
「何よッ! 男のクセにあっち行きなさいよッ!」
「あッ!」

柿崎に体を揺さぶられる中、のどかは彼がそこに立っていたのがわかった。
いつも着ている服装。
いつも腰に差してる刀。
いつも口にくわえてるタバコ

「そいつに何やってんだテメェ・・・・・・!」
「は? ひでぶッ!」
「きゃあッ!」

柿崎がふと男に向かってそちらに顔を向けた瞬間、彼の思いっきり振るった鞘を付けた状態の刀が彼女の顔面を直撃。そのまま沖田の所まで美砂は回転しながら吹っ飛ばされてしまう。

「女だろうがガキだろうが・・・・・・こいつに牙向ける奴は殺すぞ・・・・・・!」
「土方さんッ!」
「副長ッ! 来てくれたんですねッ!」
『のどかのピンチに土方さんの登場だァァァァァ!!!』
真撰組副長、土方十四郎がのどかの危機を聞きつけてここまでやって来たのだ。

「ハルナ、あなたがあの人をここまで?」
「「のどかがドSに襲われてるよ~」って言ったら一発で」
「なるほど、あの人らしいです」
「副長ッ! じ、実は沖田隊長がッ!」
「説明はいらねえ、ハルナから聞いた・・・・・・!」
「え?」

ハルナの説明に夕映が納得していると、土方は山崎の話も聞かずに前方にいるのが“敵”と確認する。

「総悟~・・・・・・! テメェこいつに何やってたんだ・・・・・・? 俺が分かるように説明しろ・・・・・・!」
「へ~思ったより早かったじゃないですかぃ・・・・・・元副長の土方さん」

恐怖で思わず自分の腰に抱きついているのどか、彼女の頭に手を置きながら、土方はタバコをくわえた状態で目の前でほくそ笑む沖田に恐ろしい形相でガンを飛ばす。

まもなく沖田最終戦スタート





















































第四十七訓 なんだかんだで両想い

遂に沖田の所に上司である土方がやって来た。恐ろしい形相で睨みつけてくる土方に対し沖田は涼しげな表情で目を合わせている。その距離3M、すぐにでも相手に突っ込んで斬り合いに転じれる間合いだ。

『か弱い少女のピンチにヒーローが参戦ッ! これはドSどう打って出るかッ!?』
「どうしたんですかぃ土方さん、そんな鬼の様な顔して、瞳孔も開きまくってますよ」

とぼけたように話しかける沖田に、土方はくわえていたタバコを携帯灰皿に戻しながら口を開く。

「テメェの態度が怪しいと思っていたが、まさかコイツを狙ってとはな・・・・・・」
「ヘヘ、安心してくだせえ土方さん、俺はまだのどかちゃんに何の手も出してないんで、まだですけどね・・・・・・」
「ひぃッ!」

最後の言葉に念を押しながら沖田は土方の腰にしがみついているのどかに視線を動かす、その瞬間のどかは縮こまって土方の背後に逃げる。

「ひ、土方さん、あの人私の事を狙っていて・・・・・・・」
「もうちょっと早く言っとけば良かったな、あのサディスティック星の王子は恐らくお前が生涯会う人間の中で危険人物1位とランクインされる男だ。永久的にそうなるだろうな」
「やっぱり恐い人なんだ・・・・・・」
「言いがかりはよして下さいよ土方さん、俺はちょいとのどかちゃん達と遊んでただけですぜ、おっと、首輪が落ちちまったぜ」
「嘘付けェェェェ!! なんだその首輪ッ!? それで何する気だッ!? それでどういう事する気だったんだッ!?」

沖田がポロっと服の内側からワザとらしく落とした頑丈そうな首輪に土方は指をさしてツッコむと沖田はそれを拾い上げながらしらっとした表情で

「変な誤解しないで下せえ、これは土方さんへのプレゼントです、ほら、前に江戸にいる時に「俺はカワイイ女の子に首輪を付けられて、人が群がっている所の中で引きずられる事が夢なんだ」とか言ってたじゃないですかぃ」
「言ってねぇぇぇぇぇ!!! 何処の世界の俺だそいつはッ!」
「ひ、土方さんの夢ってそういうの・・・・・・」
「お前も真に受けるんじゃねえッ!」

言葉を真に受けてしまっている様子ののどかに土方が即座に否定する。もちろん沖田のでまかせである。

「ったく、こんなくだらねえ事やりにわざわざ江戸からここに来たのかお前は・・・・・・」
「土方さんこんなくだらねえ事とはなんですかいッ! 俺にとって宮崎のどかを思いっきりサドりたい事がくだらないなんて酷過ぎやしませんかッ!?」
「酷過ぎるのはお前の頭だッ! つかやっと本性現しやがったなサディストッ!」

怒ったように叫ぶ沖田に土方がツッコミを入れる。だがまあ沖田にとってそれがここに来た本来の目的なのだが

「バレちまったらしょうがねえ、やっぱりアンタを倒してのどかちゃんをゲットするのが一番手っとり早い方法ですね、元副長の土方さんよ」
「ほざいてろ、何でテメェがこいつにそんなに入れ込んでいるのかは知らねえが、こいつに指一本でも触れてみろ、一片の欠片も残さず切り刻むぞ・・・・・・!」
『ドSと土方さんが腰の刀に手を置いて・・・・・・え、マジで?』

互いに腰に差す刀に手を置いて戦う姿勢を取る沖田と土方。
そして

「下がってろ宮崎ッ!」
「そこでくたばってろメス豚ッ!」
「土方さんッ!」
「は、はいご主人様・・・・・・」

同時に刀を抜いて土方は後ろにいるのどかに指示して、沖田はその場でKOされている美砂に言葉を残して、両者は刀をぶつける。
刀と刀のぶつかる激しい音が廊下で鳴り響く 

『なんという展開ッ! ドSと土方さんの一騎打ちッ! まるでアクション映画みたいなバトルが始まったァァァァ!!』
「死ね土方ァァァァァ!!」
「テメェがくたばりやがれェェェェ!!」

一歩も引かずに相手を殺す気満々で刀を何度もぶつけ合う沖田と土方。刀同士の衝突の度に火花が散るその戦いにのどかは土方の指示通り、夕映やハルナ、山崎の達の所まで離れて見守っていた。

「ど、どうしよう夕映ッ! あれ? ハルナが何でここに?」
「ああ、私が土方さん呼んだのよ。アンタの事言ったら表情一変してのどかを探す為、旅館中走り回ってたのよあの人」
「そうなんだ・・・・・・」

ハルナが言った経緯にのどかがじっと考え込む表情をすると、山崎に抱きかかえられていた風香と史伽が床に降りて彼女に向かい

「愛の力だッ!」
「愛の力です~ッ!」
「あ、あ、愛ッ!?」
「はいはい双子ちゃん、のどかちゃんを茶化さないで」 

双子に言われた事に思わずのどかが顔をカァと赤くすると、山崎がすぐに双子を彼女から引き離す。のどかは顔を赤らめながらふと土方の方へ目を向ける。

「くたばれ総悟ォォォォォ!!!」
「生憎まだこの世に未練があるんで死ねません」
「うっせぇさっさと地獄落ちろォォォォ!!」
「あ~地獄に落ちるのはいいかもしれませんね、地獄少女に会えますから結果的にのどかちゃんに・・・・・・」
「やっぱ地獄落ちんな天国逝けェェェェ!!」

沖田に向かって怒鳴りながら刀を振っている。
彼は何のために戦っているのだろうか・・・・・・・
のどかがそんな事を考えているのを表情で読み取ったのか隣に立ってる夕映が彼女に向かって呟く。

「あなたが大事な人だからでしょ」
「え?」
「だからこそ、ああやって必死に戦ってるんです」
「そう、なのかな・・・・・・?」 
「それ以外に無いでしょう、あの人単純ですし」
「・・・・・・」

夕映の土方に対しての観点にのどかは深く黙りこむ。
彼にとっての自分は何か、自分にとっての彼とは何か
性格も全然対照的だし年齢差もある。一緒にいる期間も長くはないし住む世界も違う。しかも一回彼には振られてる。
けど

「わたしはそんな土方さんが・・・・・・」
「オラァァァァ!!」
「!」

のどかが思考に集中していると、ふと大声が聞こえたのでハッと顔を上げる。
土方が沖田と激しいつばぜり合いを始めていたのだ。
互いの刀が擦れ合っている中、土方は目の前の沖田に向かって睨みつける。

「おい・・・・・・さっさと斬り殺されてくんねえか総悟・・・・・・!」
「土方さんやっぱ刀一本だとキツイですかぃ? いつもみたいに刀6本持って英語叫びながら戦うのがスタイルですもんね」
「Don't worry・・・・・・! テメェなんざ一本の刀あれば十分だ・・・・・・! Let' partyッ!!」
『伊達政宗ッ! じゃなかった土方さんの猛攻開始ッ!』

額に青筋を浮かべながら土方は沖田に連続攻撃を始める。
あらゆる場所から飛んでくる斬撃、だが沖田は全く慌てずに流暢に流しながら

「感情だけで戦っても俺には勝てませんぜ、よっと」
「チィッ!」

土方の攻撃を掻い潜って沖田は刀で一突き、それに舌打ちをしながら土方は始めて後ろに下がった。

「やっぱ相手が総悟だと一筋縄じゃいかねえか・・・・・・」
「そろそろ終まいとしますかぃ、安心してくだせぇ、俺はいつでも土方さんが死んでもいいように土方専用の墓石買っておいて上げてますから」
「バカ言うな、テメェの買った墓石なんかの下で眠りたくねえ」

悪態をつきながら刀を構え戻す土方。沖田も刀を構える。

「Final roundだ・・・・・・! Are you ready?」
「まだ独眼竜になってたんですかぃ、OKに決まってんでしょう筆頭」
『互いに刀を構えて相手を睨みつける二人・・・・・・私、侍同士のガチ決闘初めて見た・・・・・・』

お互い最後の一撃だと握った刀に力を込める土方と沖田。方や守るため、方やサドる為、己の信念のまま両者は一歩も譲らず一本の刀に託す。
そして

「総悟ォォォォォ!!!」
「土方ァァァァァ!!!」
『おおっと遂に決着だァァァァッ!!』

全身全霊を込めた刀で相手をぶった斬る為に土方と沖田は走る。
もうすぐどちらかが勝者となるか決まる。
だがその時

「すみませ~ん、ウチのあやか知りませんか~?」






























「「は?」」

いきなり間の抜けた言葉に土方と沖田は刀を持った状態で固まる。
声がした方へ思わず同時に振り向くと。

「すみません、あやかの事知らないですか? 私あの子の事助けに来たんだですけど何処にもいないのよ~、困ったわねぇ・・・・・・」
『あ・・・・・・』

本当に困ってるのかと疑問を感じるぐらいのほほんとした表情と口調で、何時の間にか二人の近くに立っていた女性。3年A組の姉的(?)存在の那波千鶴がそこにいた。
とりあえずお互い刀を下ろして一旦戦いを止める沖田と土方。

「土方さん・・・・・・この空気の読めない女は誰ですかぃ?」
「ツラは何度か見たことあるがどんな奴だったか覚えてねえな・・・・・・おい山崎、この女知ってるか?」

目の前でニコニコ笑ってる千鶴を指さして土方は山崎の方へ向く。そこにいたメンバーも彼女が突然現れた事に戸惑ってる様だ

「千鶴さん・・・・・・ですね、旦那の所の生徒です、一応」
「何であの人がここにいるのよ?」
「どうせハルナと似た理由でいいんちょでも助けに行こうとしたんでしょ、それで迷ってここまで」
「でも千鶴さん、あそこにいたら危険じゃ・・・・・・」

夕映の推理を聞ながらのどかは心配そうに千鶴の方へ顔を向ける。
土方はともかく沖田は女性にとって一番の危険人物だ。当然彼女にも容赦などという文字は無い筈・・・・・・
のどかが早く彼女がそこから逃げるようにと伝えた方がいいかと考えていると、山崎の説明を聞いた土方は千鶴の方へ口を開く。

「万事屋の所の生徒か、ここは今お取り込み中だ。さっさとどっか行って欲しいんだが」
「ねえ、金髪の女の子とメガネを付けた女の子見ませんでしたか?」
「いや人の話聞けよ」
「私、早くあやかに会わないと行けないの、あの子が先生に会う事が出来ればいいんだけど、そこに長谷川さんいたらはっきり言って邪魔じゃない? だから私があやかの代わりに長谷川さんを池に沈めて・・・・・・」
「人の話聞かない上にヘラヘラ笑いながらバイオレンスな話始めやがったッ! 何コイツ絡み辛いッ! 絡み辛い上に恐いッ!」
『だぁぁぁぁぁ!! 千鶴さんといいハルナといいルールわかってんのかなッ!? 特に千鶴さんッ! それマジにやったらアンタを沈めるよッ! 無理だと思うけどッ!』

笑顔で色々と恐ろしげな言葉を放つ千鶴に思わず叫ぶ土方(とモニター室にいる和美)。
隣に立ってる沖田はすっかり彼女に翻弄されている彼にため息をついた。

「何やってんですかぃ、女という生き物はガツンと言ってやりゃあ、すぐに尻尾巻いて逃げまさぁ、おい女」
「あら、私の事ですか?」
「テメェに決まってんだろがボケ、邪魔だからさっさと消えな、消えねえとここに来た事をトラウマになるぐらい後悔させてやるぜ」
「ガツンどころじゃねえだろそれッ! メッタ刺しじゃねえかッ!」
『初対面の千鶴さんにいきなりサドったァァァァァ!! 相手が誰であろうと容赦ないドSッ! いたいけな少女にこれは酷いッ! 悪魔の様な所業だッ!』

いきなりサディスティックな言葉を連発する沖田に土方はすぐにツッコむ。
だが沖田は全く罪悪感など持っていない。
大抵の女性はこれで恐怖に震えるに違いない。
そう沖田は考えていたのだが

「ダメですよ女の子に対してそんな言葉使っちゃ」
「え?」
「人はね、誰からでもそんな事言われるのイヤなの、もっと人と接するときは優しくならなきゃダメですよ」























千鶴が依然変わらぬ笑顔、更に言葉を返して来た事に沖田の表情は凍りついた。土方を初め少し遠い所から見ているのどか達も驚いている。

「・・・・・・テメェどうやら俺の事ナメてるらしいな、ちょいと痛い目見ねえとわかんねえんのか、あ?」

だがそんな状況でも沖田は今度こそと彼女を睨みつけてドスの聞いた口調で言葉を発する。だが千鶴はやはり

「別にあなたの事舐めてませんよ、舐めるんならアイスクリームとかの方が好きです」
「いや、そういう事じゃなくて・・・・・・」
「美味しいのよアイスクリーム、バニラとかチョコとか色々・・・・・・あら、想像したら食べたくなってきちゃった、部屋に戻ったら夏美に買って来て貰いましょう」
「・・・・・・」

ドSワードがまったく効いちゃいない、これには沖田も思わず驚愕した表情で額から汗を流す。

(なんだこの女・・・・・・俺のサド攻撃に笑顔で受け流すだと・・・・・・)

今までこんな事が無かったので沖田は動揺を隠せないでいると、千鶴は今度は土方に向かって話しかけている。

「そういえば、ん~と土方さんでしたっけ? ここで何してたんですか?」
「ん? いやその・・・・・・コイツと喧嘩してた」
「あらあら」

土方も彼女と喋るのが苦手なのか言葉少なめに説明する。だがそれを聞いた千鶴は両手で口を隠して驚いた様なリアクション。

「せっかくの楽しい修学旅行なのに喧嘩なんてダメですよ~、そこの人もこんな綺麗な旅館に来てるんだから、喧嘩しないで楽しみましょうね」
「ぐッ!」
「なッ! どうした総悟ッ!」

千鶴に優しい言葉をかけられた瞬間、まるでボディブローを食らったように腹をおさえる沖田。これには土方もどうしたもんだと慌てて近づく。

「おいどうした、腹でも痛えのか?」
「い、いや・・・・・・あの女に話しかけられると・・・・・・」
「どうしたんですか? もしかしてお体の調子が悪いんですか? 私で良かったら助けになりましょうか?」
「ぐわぁッ!」
「オイィィィィ!! どうした総悟しっかりしろッ!」
『突然ドSがダウンだァァァァァ!! コレは一体どういう事だァッ!!』

今度は胸をおさえてその場に倒れ、苦しがる沖田。何がどうなってるんだと土方が彼を抱き起こしながら混乱していると、遠くで見ていたのどか達も混乱する。

「ど、どうしたんだろ沖田さん・・・・・・」
「千鶴さんが来てからなんかヤケに苦しそうだけど・・・・・・」
「なんかの病気とかじゃないですか?」
「う~ん・・・・・・もしかすると、もしかするかな?」

のどか達が疑問に思っていると後ろから山崎は頬を引きつりながら近づく。沖田の事は彼女達よりは知っている彼にとってあくまで仮定だが理由がなんとなくわかった。

「沖田隊長って、女の人から優しい言葉かけられるのほぼ無いんだよね・・・・・・」
「それがどうしたんですか?」
「俺達が住んでる江戸にいる女の人って基本ガサツで乱暴者が多いからさ、あの沖田隊長が相手でも噛みつくんだよ、それに普通の女の子でも隊長のドSには大体抵抗を見せる、もしくはあの人に従う、君とあの子見たいに別れるだろ?」
「はぁ・・・・・・」

のどかと目を合わせた後、山崎はそこに倒れてる美砂を指さす。つまり沖田に対する女性は基本、噛みつく、嫌がる、従うの3つに分かれるのだ。だが千鶴は・・・・・・

「あの人はどの分類にも入ってない、噛みつきもせず、嫌がりもせず、従いもせず、温和な態度で沖田隊長に声をかけてくれる。そんな事今まで実姉のミツバさんしかいなかったし、だから動揺してるんだ」
「なるほど、その3つのカテゴリーに入らない千鶴さんに対してはあのドS隊長も手も足も出ない、と言う事ですね」

山崎の説明を理解したように夕映が頷いていると、沖田はやっとこさ自力で立ち上がる。表情はかなり苦しそうだ。

「チィ・・・・・・俺の心に響くこのダメージは一体なんでぃ・・・・・・」
「どうしたんですか苦しそうにして・・・・・・? やっぱり何処か痛いんじゃ」
「うっせえななんでもねえよ・・・・・・つうか話しかけんな」
「なんでもないわけないでしょッ! 私って確かに見た目通り中学生だけど、役に立つ事だってきっと出来る筈ですッ! 何処が痛いんですかッ!?」
「がはぁッ!」
(いやどうみても見た目中学生じゃねえだろお前)

また叫び声をあげて倒れた沖田に近づいていく千鶴に、土方が心の中でツッコミを入れる。初めて見る人によっては大学生クラス、もしくはそれ以上だ。

「何処が痛いんですか? 救急車呼びましょうか?」
「うぐッ! 何処も痛くねえから俺に近づくんじゃねえ・・・・・・」
「私に心配かけさせない為にそんな事言ってるの? 優しい人なんですよね」
「おごッ! 今入ったッ! 思いっきりヘッドショット入ったッ!」
「え? 頭痛いんですか?」

思いっきり苦しそうに悶えている沖田に、彼が苦しんでいる理由の張本人である千鶴は彼を抱き上げながらう~んと考え、そして

「熱でもあるんじゃないかしら?」
「おい止め・・・・・・!」

嫌な予感を感じて必死に抵抗しようとする沖田に。
千鶴は無理矢理おでことおでこをくっつけて熱があるのか確認。
その瞬間沖田の中の時が止まる。

「熱はないようね」
「・・・・・・ごふ」
「総悟ォォォォォ!!!」
『ド、ドSが死んだァァァァァ!!!』

数秒間白目をむいた後、沖田は口からダラダラだと血を吐く。どうやらあまりにも女性に優しくされたので、サドれないストレスであっという間に胃に穴でも空いたらしい。
土方が慌てて彼から千鶴を引き離し沖田の状態確認。

「おい総悟ッ! 大丈夫かしっかりしろッ!」
「大変ッ! この人いきなり口から血を吐いたわッ! 急いで手当てしましょうッ!」
「いやもう来なくていいッ! 俺がやるからッ! お前の優しさは十分わかったからッ! ちょっとあっち行ってくれッ! 頼むからッ!」

とりあえず千鶴に離れろと土方は沖田を抱きかかえながら慌てて指示、すると沖田は息絶え絶えに彼に話しかける。

「ひ、土方さん・・・・・・」
「総悟ッ! まさかお前にこんな弱点があるとは・・・・・・!」
「ええ、俺も初めて知りやした・・・・・・よもやこんな世界にこんな化け物が潜んでるとは・・・・・・」

化け物とは当然千鶴の事である。沖田にとって唯一優しく接してくれた女性は今は亡き姉のミツバのみ。彼女以外に初めて優しさくされた事に、沖田は気が動転して一気に瀕死の状態にまで陥れられたのだ。

「どうやらここは俺の負けの様ですね土方さん・・・・・・」
「いやあいつは俺達とは全く関係のねえ奴だぞ・・・・・・」
「結果は結果です・・・・・・あんたが立って俺が倒れた・・・・・・ここはとりあえず認めてやりまさぁ、あんたとのどかちゃんを・・・・・・」
「もう喋るな総悟・・・・・・真撰組と近藤さんを支える柱の一本であるお前がここで死ぬ様な男じゃねえ筈だ・・・・・・」
『いやさっき斬り殺そうとしたじゃん』

和美のツッコミが入る中、土方は沖田の身を案ずる。すると最後に沖田はニヤリと笑って

「二人共・・・・・・幸せになってくだ・・・・・・せぇ・・・・・・」
「総悟? おい総悟、どうしたんだ起きろ。こんな所で寝てんじゃねえよ」
「・・・・・・・」

ゆっくりを瞼を閉じて手をパタリと床に落とした沖田。そんな彼に数秒間固まった後、土方は肩を震わし、そして

「総悟ォォォォォォォ!!!!」
「一体誰があの人に酷い事したのかしらねぇ・・・・・・」
『「「アンタだよッ!!」」』

絶叫している土方の後ろでは千鶴がのどか達に向かって他人の様な一言、ハルナと山崎、そして実況の和美のツッコミがすかさず同時に入った。


































「沖田さん大丈夫だったんですか?」
「とりあえず新田先生が生徒シゴいてる一階のロビーのソファで寝かせて来た、明日になれば復活すると思うが・・・・・・まさか総悟が中学生の女にやられるとはな・・・・・・」

場所変わってここは土方の部屋。和美の仕掛けたビデオカメラはここには存在せず、部屋の中にいるのは土方とのどかだけ。電気も付いておらず明りはベランダからさしこむ月の光だけだ。
他のメンバーは何処に行ったのかは二人共知らない。

「お前も今日は大変だったな、ほれ飲むか?」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」

緊張しながらソファに座っているのどかに土方は冷蔵庫から取り出した中見入りの缶を一本渡す。
ジュースかなんかだろうと思い、のどかは缶のフタを開けてグイッと飲むと

「うぐッ! こ、これってもしかしてッ!?」
「なんだ酒も飲んだ事無いのか?」
「み、未成年にお酒なんて飲ませないで下さいッ!」

飲んだ瞬間、クラっとしたのですぐに酒だとわかったのどかは、ちょっとしか飲んでないお酒を目の前のソファに座った土方に返す。
返されたお酒をなんの抵抗も見せずに飲みながら、土方はそんな彼女に口を開く。

「未成年でも酒の一つや二つぐらい飲めるだろ。俺がまだ十代で近藤さんや総悟と一緒に田舎道場で剣を磨いてた時には、もう酒グイグイ飲んでたぞ、誰かのおかげでな」
「誰ですか未成年にお酒なんて進める人って・・・・・・」
「なんかフラ~とよく俺達の道場に遊びに来てたオッサンだ、筋肉ムキムキのデッカイゴリラみたいなオッサン」
「ゴ、ゴリラみたいなオッサン・・・・・・?」
「ありゃあ近藤さんなんか比べ物にならないゴリラだったぜ・・・・・・そういえば近藤さんあのオッサンとすげえ仲良かったな、あのオッサンのせいで近藤さんもゴリラ似になったのか?」

昔話をしながら土方はのどかから貰った酒を一気に飲み干してテーブルに置いた後、深いため息をつく。

「そん時はまさか江戸で悪党退治に精を出したり、こうやって小娘共と仲良くするなんて想像もしなかったけどな」
「・・・・・・」

胸ポケットからタバコを取り出し、ライターでを火を付けてタバコを口に咥える土方。
そんな彼の姿をボーっとのどかが眺めていると、おもむろに彼は立ち上がった。

「今日はお前も色々疲れただろ、さっさと部屋に帰って寝とけ。俺が部屋まで送ってやる」

のどかに背中を見せて土方は口からタバコの煙を吐く。こっちを見ようとしない土方にのどかはどう言っていいのか困っている様な表情をした後、決意したようにスクッと立ちあがる。

「部屋に戻る前にどうしても今日、土方さんに伝えたい事があります・・・・・・」
「・・・・・・」
「一回振られてるのにこんな事言うのもなんですけど・・・・・・まだ私、土方さんの事・・・・・・」
「・・・・・・宮崎」
「え? あ、はいッ!」

想いを伝える前にまたもや土方がストップ。こちらに振り返りもしない土方の態度に、「またダメか」とのどかがネガティブに考えていると

「お前、“男が死ぬ覚悟”が出来るか?」
「え?」
「ある男は常に生死を分ける戦いに赴きながらも、今まで生き長らえて来ている、だがそれも何年までかはわからねえ・・・・・・一年後に死ぬのか、三ヶ月後に死ぬのか、一週間後に死ぬのか、明日死ぬのか、それもわかんねえまま男はそうやって生きている」
「土方さん・・・・・・」
「宮崎、もしお前がそんな男に惚れて、そいつが死んでもお前は立っていられるか? 剣しか能のねえバカなその男が、死ぬかもしれねえ戦いに行くのをお前は覚悟出来るか?」
「・・・・・・」

こちらに顔も合わせないように土方はのどかに問いかける。
自分はいつ死んでもおかしくない身、そんな自分がいつ死んでもその時を覚悟出来るのか。土方が知りたかったのはそれだった。
彼が質問を問いかけた後、お互い無言になり、時計の針のみがカチッカチッと鳴り響く。
それが5分ぐらい経ったのだろうか、ようやく黙っていたのどかがゆっくりと顔を上げてそっと口を開いた。
彼女なりの答えを

「その人が死ぬ覚悟なんて私は出来ません」
「・・・・・・」
「でも」

のどかは背中を見せる土方の方に一歩一歩と近づいて行き。

そっと彼を背中から抱きしめた。

「その人が死なないよう“祈る覚悟”は出来てます・・・・・・」
「宮崎・・・・・・」
「死ぬかもしれないなんて言わないで・・・・・・どんな事になろうとも絶対生きて帰る事だけを考えて・・・・・・私がずっと待ってますから・・・・・・あなたが生きて帰ってくれるよう祈って待ってますから・・・・・・」
「・・・・・・お前」

それが彼女なりの覚悟だった。土方は背中から抱きしめてくれたのどかを優しく離した後、
振り返ってのどかと目を合わせる。
一瞬だけ、今は亡き自分がかつて惚れた女とのどかの姿がダブったように見えた。

「・・・・・・もう俺は間違えねえ」
「土方さん・・・・・・」
「本当に待ってくれるのか? そんなバカでどうしようもねえ男でも・・・・・・見守ってくれるのか?」

土方の最後の質問、それにのどかはクスリと笑った。
答えは決まってるのだから

「たとえどんな人でも、私は土方さん・・・・・・十四郎さんをずっと見守ります、誰よりも私は・・・・・・あなたの事が好きだから」
「・・・・・・ああ」
「!」

のどかの想いを真正面から受け止めた土方は、彼女を不意に抱きしめる。
彼の胸に驚いた表情で顔をうずめながら、のどかはふと彼の口に咥えてるタバコの匂いが鼻に入る。
思えば出会った時からずっと彼が愛用しているタバコの匂いは、いつしか彼女の好きな匂いになっていた。

「例えどんな事があっても、俺は生き続けてやるよ・・・・・・」
「はい・・・・・・」
「これが俺の返事だ・・・・・・のどか」
「・・・・・・はい」

月の光が部屋の中を照らす中







二人の男と少女はしばらく無言のまま抱きしめ合った。
















































「良かったですねのどか・・・・・・」
「ほ、ほ、ほ、本当に良かった~ッ! グスンッ!」
「ふ、副長~・・・・・・!」
「何泣いてるんですかあなた達・・・・・・」

二人を除いたメンバーがいた場所、それは二人がいる部屋のドアの前だった。どうやら全員でドアに耳を当てながら土方とのどかの会話を盗み聞きしていたらしい。
のどかの告白が無事に終わってホッとする夕映の両隣りには、嗚咽するほど涙を流してるハルナと、ハンカチで涙を拭きながらドアに耳を当てる山崎がいた。

「うう・・・・・・! のどか、アンタ遂に恋を実らせて・・・・・・おめでとう、私も応援してて良かった・・・・・あ、鼻水出て来ちゃった」
「ばっちいです、私に近寄らないで下さい」
「俺わかったよ・・・・・・例え他の隊士の奴が認めなくても、俺はのどかちゃんを姐さんと認めるッ!」
「それはいいから鼻から出る汁を止めて下さい、両方の穴から流れ出てます」
「クシュンッ! ああ~鼻水出た~」
「お姉ちゃん風邪ですかぁ?」
「もはやのどかと何の関係も無いじゃないですか」

自分の周りにいる連中に夕映がツッコんでいると、そこにもう一人女性がいるのがわかった。

「本当に良かったわねぇ~」

ドアの前で号泣しているハルナと山崎を眺めながら、千鶴も嬉しそうに微笑む。
だが彼女は二人が泣いてる意味を知らない・・・・・・

「それにしてもここ何処? あやかは?」

嗚咽と鼻水をすする音が周り一帯に聞こえる中、千鶴はこの状況で首を傾げて困っているようだ。
そんな彼女を見て夕映は一言

「もう部屋に帰ったらどうですか?」
「それもそうね、そろそろ夏美が心配するし」

意外にもあっさり夕映の提案を受け入れる千鶴。
彼女の性格から察するにもう疲れて眠りたいのかもしれない

「それじゃあおやすみ」

最後に手を振って千鶴はどっかへ行ってしまった。





























数分後、新田先生に会ってそのまま連行されたのは言うまでもない。



































[7093] 第四十八訓 三つの愛 一つの運命
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/24 17:58
土方達がドタバタと騒いでいた頃、銀時に会いに行く為に千雨とあやかは、新田先生や教師達に見つからないようにひっそりと廊下を歩いていた。

「銀さんの部屋って何処なんでしょうか・・・・・・」
「今更かよ・・・・・・」

あやかの突然の疑問に千雨は呆れる。会いに行くのならば彼の部屋ぐらい熟知しておくのが常識である。

「ここでしょうか?」
「おいッ! 一般の客もいるのにノックもせずにドア開けちゃ・・・・・」

あやかが非常識にも適当にある部屋の一室をノックもせず開けると

「俺って実は甘い物とか嫌いなんだよな、そもそもホワイトデーになったら三倍返しにして返すんだろ? か~めんどくせぇ、女からチョコ貰わなくて良かったぜ」
「なるほど、バレンタインデーチョコを貰えない哀れな男がする定期的な言い訳だな、ところでクロウ、何泣いてるんだ?」
「泣いてねぇぇぇぇぇ!!」

銀時ではない男が二人で揉めていたので、あやかはすぐにバタンとしめる。

「間違えましたわ」
「当たり前だろ、銀八の部屋だという保障もねえのに勝手に開けるな・・・・・・」
「隣の部屋はどうでしょうか?」
「っておいッ!」

有無も言わずに今度は隣の部屋を開けようとするあやか。千雨の話も聞いちゃいない。
あやかがすぐにドアを開けてみると

「何か用かしら?」
「きゃあッ!」
「し、しずな先生・・・・・・」

ドアを開けた瞬間、麻帆良の教師であるしずな先生が浴衣姿で優雅に微笑んで目の前に立っていた。
いきなりの教師出現に、あやかは思わず短い悲鳴を上げる。

「な、なんで私達がドアを開ける前にそこに立ってたんですか・・・・・・?」
「え? ドアの前に人の気配を感じたからに決まってるでしょ?」
「どこの殺し屋だ・・・・・・」

しずな先生の底知れぬ能力に千雨がボソリと呟いていると、しずな先生はふとあやかと千雨に向かって首を傾げる

「ところであなた達、何か私に用でもあるの?」
「え?」
「こんな時間に来るんだから余程大事な事?」

思わぬしずな先生の質問にあやかは呆気に取られてしまう。

「あ、あの・・・・・・私達の事を捕まえないんですか? こんな夜遅くまで旅館を徘徊しているのに・・・・・・」
「あら捕まりたいの?」
「い、いえッ!」

笑いながら尋ねて来たしずな先生に、あやかは慌てて首を横に振る。
彼女は自分達の学校の教師だ、本来ならこんな夜遅くまで部屋を出ているあやか達を、新田先生の様に厳しく取り締まる筈なのだが

「子供達が夜中大人の目を掻い潜って旅館を探検。私、そういうスリリングなの好きよ」
「しずな先生って教師だよな・・・・・・」
「この人の考えは私達のレベルじゃ到底理解出来ないと思いますわ・・・・・・」

捕まえる気がサラサラないと言うしずな先生に、千雨とあやかが小声で会話していると。あやかはふと何かに気付いたのか、しずな先生の方へ顔を戻す。

「しずな先生、そういえば銀さんの部屋ってわかりますか? 教師のしずな先生ならわかると思うんですけど・・・・・」
「ああ、坂田先生の部屋が知りたいのね、それならここからまっすぐ右に行って一番奥の部屋よ」
「あ、ありがとうございますッ!」
(やけにすぐ教えてくれたな・・・・・・どうせしずな先生の事だから変な事で追及してくると思ったのに・・・・・・)

意外にあっさりと銀時の部屋の場所を教えてくれたしずな先生にあやかは頭を下げる。
後ろにいる千雨も軽く彼女に会釈した。

「ウフフ、お礼はいいから早く坂田先生に会いに行ったら?」
「え?」

ふとしずな先生は二人の方に顔を近づけてくる。そしてクスりと笑い

「あなた達、恋してる顔になってる」
「は、はいッ!?」
「!!」
「フフ、頑張ってね」

謎の言葉を残して、しずな先生はこちらに手を振りながらドアをパタンと閉めて行った。
残された二人は、ゆっくりとお互いの顔を合わせる。

「私の顔・・・・・恋してる顔なんですか・・・・・・?」
「いや私が知るかよ・・・・・・」

自分の顔を触りながら紅潮しているあやかに千雨は素っ気ない態度で返す。
しずな先生の言った言葉がやけに引っ掛かるのだ。

『“あなた達”、恋してる顔になってる』

「・・・・・・」
「千雨さん行きましょう」
「あ、そうだな・・・・・・」

あやかに言われて千雨は我に返り、彼女と一緒に廊下を歩きだす。




ラブラブキッス大作戦の終わりが刻々と迫って来た。




































第四十八訓 三つの愛 一つの運命

「あそこが銀さんの部屋ですわね」
「ここまで来るのに時間かかったな・・・・・・」
「ええ」


あやかがふと指差した方向にある一室が銀時が止まっている部屋。
二人は遂に銀時の部屋の前へと着いたのだった。

「殿方の部屋に入るのってなんかドキドキしますわね・・・・・・」
「銀八・・・・・・」
「今度はちゃんとノックしますわよ」
「ま、待てよッ! 心の準備ってのがまだッ! あッ!」

落ち着こうと胸をおさえている千雨をよそに、銀時の部屋のドアをノックしてしまうあやかに彼女は思わず声を上げる。
だがドアをノックしても彼の返事が返って来ない。

「こんな夜中にすみません、私と千雨さんです、起きてますか銀さん?」

今度はドアの前で叫んでみるがやはり返ってこない。

「銀さん」

またノック、だが返ってこない

「坂田銀時さん」

もう一度ノック、やはり返ってこない

「杉田さ~ん、平野さんが呼んでますよ~」
「中の人で呼ぶな中の人で」

4度ほどノックを繰り返したがやはりダメだった。恐らく銀時は部屋にいない、もしくは

「もう寝ちゃったのでしょうか・・・・・・」
「さすがにこんな時間だしな・・・・・・」
「あ、ドアに鍵かけてませんわね」
「ってお前・・・・・・!」

ふとドアには鍵がかかってない事に気付いたあやかは、慌てる千雨を置いて銀時の部屋のドアを開けてしまう。
部屋の電気が点けっぱなしだが、人の気配は無い。

「どうやら何処かへ出かけてるらしいですわね、では失礼します」
「バカッ! 勝手に部屋に入ったらマズイだろッ!」

玄関に入ってそそくさとスリッパを脱いで部屋に上がっていくあやかに、慌てて千雨が止めようとする。だが彼女は千雨に振り返って平然と

「別に銀さんの部屋なんですから大丈夫ですわよ、千雨さんは部屋に入らないんですか? 一人で班の所に帰ってもいいですけど?」
「ひ、一人で帰れるわけねえだろ新田がいるのに・・・・・・! 私も入る・・・・・・」

観念したのか千雨もスリッパを脱いで部屋の中へと入る。
銀時はネギと一緒に止まっているので部屋の中は二人分の個室。畳の上には銀時が寝る為に用意した布団が一枚置かれている。

「銀さんのお布団・・・・・・」
「何考えてんだお前・・・・・・・ところで銀八がいないこの部屋で何するんだよ、待ち伏せでもする気か?」

銀時の布団を凝視しているあやかに、千雨は傍にあった座布団の上に座りながら問いかけた。するとあやかは悩んだような表情をした後、すぐに手を叩いて

「まず押し入れに入りましょう」
「は?」
「千雨さん早く入って」
「い、いや、頭どうかしたのかお前?」

部屋にある一つの押し入れにあやかが無理矢理下の段に千雨を入れる。混乱している彼女をよそに、あやかも押し入れの中へと入って急いで襖を閉める。

「アスナさんと違って私の頭は優秀ですわ、プランBでいきましょう」
「プランBどころかプランAも知らねえんだけど私・・・・・・とりあえず作戦名は?」
「何言ってんですか千雨さん、ここは「押し入れで銀さんが帰ってくるまで待機して、もしあの人が帰って来て布団に入ったら、こっそり押し入れから出て眠りにつこうとしている銀さんを二人がかりで夜這いする作戦」に決まってます」
「作戦内容全部入ってるだろそれッ! しかもあらゆる視点で危険過ぎるじゃねえかプランBッ! 出来るわけねえだろそんなスネークイーター作戦ッ!」

説明してくれたあやかに、千雨は暗闇の押し入れの中ですかさずツッコむ。だがあやかは少し頬を赤く染めながら

「私だって大胆になる時はなるんです・・・・・・! 今日こそは本気で銀さんとの関係を進歩させようと・・・・・・!」
「進ませ過ぎだッ! 間違いなくオーバーランだし天元突破するッ!!」

興奮したように千雨に説明するも、千雨はやめるようにとあやかに叫ぶ。どうやらマジで今夜決めようとしているらしいが、展開が早すぎる。
だが心拍数を上がっているあやかは聞いちゃいない。

「ところでどちらが先に銀さんとチョメりましょう・・・・・・あ、じゃあどちらが先にするかを決める為にジャンケンでもしますか・・・・・・!? 恨みっこなしですわよ・・・・・・!」
「チョメってなんだよッ! やらねえよバカッ! とりあえず落ち着けっていいんちょッ!」

今のあやかの姿には千雨は呆気にとられるが、なんとか落ち着かせようと千雨は彼女の両肩を掴む。

「・・・・・・いいんちょちょっと頭冷やせ、銀八と会う前に興奮しすぎて頭パーンになってる」
「わ、わかりました・・・・・・!」
「ただでさえ狭いのにお前の熱気のせいで暑い・・・・・・もう押し入れから出ようぜ意味ねえし」

未だ興奮が冷めないあやかが息を荒げているおかげで押し入れの中が暑い。
耐えきれずに千雨は顔を赤くさせているあやかの手を取って、襖を開けて押し入れから出ようとするが・・・・・

「あ~何処にもいやしねえじゃねえかコノヤロー」

ドアが開く音と男の声がした時、千雨は押し入れの中でビクッと反応して外に出ようとするのを止める。
ここで出たらなんで人の部屋に勝手にいるのか、そして押し入れの中に何故入ってたのか深く追及されそうだからだ。
坂田銀時が部屋に戻って来たのだ

「やば・・・・・・! 銀八の奴が来ちまった・・・・・・!」
「そ、そんな・・・・・・! 千雨さん私・・・・・・頭がパーンしそうですわ・・・・・・!」
「わかったから静かにしろ・・・・・・! それと息を荒げるなよ・・・・・・!」

銀時が帰って来た事に心拍数が更に上昇し始めたあやかを静かにさせながら、千雨はそっと押し入れの隙間から部屋に入って来た銀時を見た。

さっき千雨が座っていた所にあぐらを掻きながら、いつもの銀髪天然パーマで死んだ目をしている男、坂田銀時が欠伸を掻いていた。

「ファ~・・・・・・眠ぃしもう寝るか? いやでもまだ来るかもしれねえしな・・・・・・」
(何を待ってんだあいつ・・・・・・?)
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・!」
「静かにしろバカ・・・・・・」

布団に入ろうかどうか迷っている銀時を押し入れの中で観察しながら、一緒に隙間から覗いて息を荒げているあやかの口をおさえて黙らせる。

(ったく・・・・・・どんだけいいんちょの奴ムラムラしてるんだか・・・・・・)
「それにしても今日はマジで疲れたな~・・・・・・けど」
(?)

だるそうにしながら銀時が独り言を言った最後に付け足した言葉に、千雨が首を傾げると彼はゆっくりこちらの方に振り返って

「まだネズミ駆除が残ってんだよな・・・・・・」
「!」

こちらに刺す様な視線をぶつけてくる銀時。
千雨が驚いてる隙に、彼は置いてあった木刀をすぐに持って

「こんの賊がァァァァ!!」
「「ひぃッ!」」

千雨が気が付いた時には、目の前には彼が押し入れの襖に向かって突き出した木刀が。
木刀が刺さった場所はちょうどあやかがいる所だったので、彼女はその場で予想外の事にビビったのか震えている。

「まさか“探し物”が自分の部屋にあったとはな」
「あ、あ・・・・・・・」
「ぎ、銀八・・・・・・・」
「ったく」

しかめっ面で銀時は襖に刺さった木刀を抜いて、押し入れに近づき開ける。

「ぎ、銀さん・・・・・・」
「い、いきなり木刀突き刺してくんなよバカ・・・・・・!」
「こんばんはお嬢さん方、今夜は随分と暴れしていた様ですね」

銀時にとって生徒の中でも特別な存在である雪広あやかと長谷川千雨が、腰を抜かした状態で押し入れの中に入っていた。















































銀時は自室に無断侵入してきた千雨とあやかを捕まえて、畳の上で正座させ、自分は布団の上であぐらを掻いている。その顔はいささか不機嫌なのが見える

「どうして先生がこんなに怒ってると思いますか? それは馬鹿な生徒のおかげでせっかくの計画がおじゃんになった事です、あなた達にはこの責任を取ってもらう義務があります、OK?」
「なあ銀八・・・・・・」
「んだよメガネ」

話してる時に突然口を開いてきた千雨に銀時はだるそうな表情で彼女を見る

「なんで私達がこの部屋にいるってわかったんだ・・・・・・?」
「は? 玄関にご丁寧に二人分のスリッパがあったからに決まってんだろボケ」
「あ~そういえばそうだな・・・・・・」
「不覚でしたわ・・・・・・」

銀時に言われて初めて知った失念に、千雨とあやかは呟きながらうなだれる。
今は銀時しかいない筈のこの部屋で、彼がいない時に二人分のスリッパが玄関にあったら中に誰かいるってのは明白だ。

「とりあえずこれから色々と言いたい事があるんだけどよ、まずはこれを言っとくわ」

そう言って銀時は首を伸ばしてさっきから黙っている千雨とあやかに向かって睨みつける。

「どこの港に沈められてえんだ・・・・・・?」
「すみません銀さん、私・・・・・・」
「ていうかあやかさんあなた学級委員長ですよね? こんな時間に生徒さんと一緒に何やってるんですか? 委員長としての責務はなんですか? こんな時間にウロつく生徒を止めることですよね? そうですよね?」
「すみません・・・・・・」
「すみませんで済んだら織田祐二も柳葉敏郎必要ねえんだよコノヤロー、俺の有意義な時間を潰しやがって・・・・・・」

わざとらしい敬語を使った後恐る恐る謝って来たあやかに、銀時は即座に切り捨てる。
どうやらしずな先生と夜を過ごせなかった事でかなり腹が立ってるらしい。

「それとメガネ、お前がこういうテンション上がって生徒達が夜な夜な旅館を走り回ってバカ騒ぎするイベントなんぞに参加するとは銀さん思わなかったよ、いつからそういう柄でもない事やるキャラになったんだ“ちうちう”?」
「・・・・・・」
「おい千雨、シカトぶっこいてんじゃねえよ」
「銀さん、まだ千雨さんと喧嘩してるの忘れたんですか?」
「あ・・・・・・」
「・・・・・・」

ジト目であやかに睨まれたことで銀時はふと千雨とは少し前に喧嘩していた事を思い出した。彼女も銀時より先に思い出していたのか、ブスっとした表情でそっぽを向く。
そんな態度の千雨に銀時は髪をポリポリと掻き毟りながらブツブツと

「ったく意味わかんね、なんで喧嘩中の相手の部屋に来るわけ? しかもアポなしで無断侵入? 本当何がしたいの?」
「銀さん・・・・・・」
「あらあら、また不機嫌モードですかあやかさん、でも今回は絶対テメェ等の方が悪いんだからな、生徒はもうとっくに寝る時間なのに勝手に教師の部屋に上がり込んで来るのはぶっちぎりアウトだからな」
「銀さんが教師らしい事言っても全然説得力ありませんわ」
「チッ、うるせえよガキ・・・・・・」

ネチネチと言い合う銀時とあやか。最後に銀時が舌打ちしてあやかに悪態を突いた後、長い沈黙が生まれる。
千雨も何も言わずにただ銀時から顔を背けるだけで動こうとしない。
一方銀時もそんな彼女に話しかけようともしない。
あやかはあやかで本来は二人の中を戻す為に仲介役に来たにも関わらず、千雨にそっけない銀時の態度に思わず怒ってしまってから、彼に目も合わせようとしない。

部屋の中、3人で顔や目も合わせず、しばし長い沈黙が流れた。









































無音の時間が10分は経った頃

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ハァ~」

気まずい雰囲気が流れる中で最初に沈黙を破ったのは銀時のため息だった。
この空気の居心地の悪さを感じ、ウンザリした表情で目の前にいる二人に顔を向ける。

「もういいわかった、あやか、どうすりゃあコイツと仲直り出来るんだ?」
「自分の言いたい事を伝えて、相手の言いたい事も受け止める、常識ですわそんな事」 
「知るかよんな事・・・・・・」
「今度は私と喧嘩するつもりですか?」
「はいはいわ~ったよッ!」

あやかがの目がどんどん鋭くなって来たので銀時は不満そうに頷く。
それからしばらくして、銀時は思い切って千雨に話しかけてみる。

「ったくめんどくせえな・・・・・・おい千雨」
「・・・・・・」
「そりゃあ銀さんだって戦いたくねえよめんどくせえし、けどな、色々と込み入った事情があんだよ」
「・・・・・・知るか」
「ハァ~・・・・・・どうしたもんかねぇ~」

何を言っても通用しなさそうな千雨の素っ気ない態度に銀時はまたため息をつく。あやかに心配そうに見られてる中、銀時はそっと千雨の近くに移動した。

「なあ千雨よぉ」
「・・・・・・」
「・・・・・・俺が悪かったよ」
「銀八・・・・・・」

銀時の口から素直に謝罪の言葉が出た事に思わず千雨は彼の方へ振り向く。思いもよらぬ事態に千雨と、二人を見守っていたあやかも驚いていた。

「お前が俺の事を一番心配してるのはあやかから聞いた、俺が戦って死んじまうのがイヤなんだろ?」
「当たり前じゃねえか・・・・・・バカ」

銀時に問いかけれた質問に千雨はすぐに答えた。

「どんだけ心配してるのかわかってんのか・・・・・?」

千雨は苛立つようにギロっと睨みつける
すると銀時は少し口に笑みを浮かべて

「そこまで心配してくれるイイ女を残して、俺が死ぬわけねえだろ?」
「!!」
「心配してくれてあんがとよ」

銀時に不意に言われた事に千雨は思わず顔を赤面させる。熱くなった顔を手で触りながら、千雨は銀時の顔を直視できなくなってしまった。
心の中で眠っていた“あの感情”が湧きあがってくる。

「銀八・・・・・・」
「ん?」

顔を赤面させてうつむき、口をゆっくりと開く千雨に銀時は反応する。
すると彼女は自分の荒くなっていく息をおさえながら、顔を上げる。

「何で私がこんなにお前の事心配してるかわかるか・・・・・・?」
「誰だって知り合いが死にそうになったら、心配ぐらいするだろ普通」
「お前は私にとって知り合いなんて存在じゃねえよ・・・・・・」

湧きあがってくる感情を隠しながら、千雨は徐々に銀時の方へ近寄って行く。

「私がお前と知り合って結構経つよな・・・・・・」
「そうだな」
「最初会った時、私はお前が嫌いだった・・・・・・・」

いきなり自分のクラスの副担任としてやってきた銀髪天然パーマの男、坂田銀八。
死んだ魚の様な目をしたその男は自分の生徒に対して無愛想に、だるそうに、時には生徒より子供になって接する彼の態度に千雨にとって彼の印象は最悪だった。

「けどお前と初めて付き合う仲になった時、面白い奴だと思ってた・・・・・・」

色々なトラブルがあったきっかけで銀時とよく行動するようになった時、彼の奇抜な生き方に何時の間にか惹かれていく。いつしか彼の背中を追うようになっていた。

「お前の万事屋で働くようになったのも、お前と一緒にいる事も、楽しいからいつもいるんだと思ってた、でもそれだけじゃなかった・・・・・・」
「千雨・・・・・・?」

千雨が喋っていく度に彼女の目が段々赤くなってる事に銀時は気付く。
だが彼女は腕を目を拭った後、声を震わせながら話を続けた。

「外出用の服なんて全然興味もなかったし買おうともしなかった・・・・・・けどお前といつも一緒にいるうちに、興味が無かった筈のファッション雑誌とか調べて、いつの間にか一人で他の生徒の奴等にバレないよう隠れて流行りモンの服とか買ってた・・・・・・おかげで金欠になった・・・・・・」
「・・・・・・」
「やった事もないのに、ネットで料理の作り方とかを見て・・・・・・初めて一人で料理を作ってみようと思った・・・・・・部屋がちょっとしたボヤ騒ぎになった・・・・・・」
「・・・・・・」
「いつも付けてる伊達メガネを取って化粧とかして、思い切ってこれで万事屋に行ってみようかなとか考えたけど・・・・・・こればっかりはさすがに出来なかった・・・・・・」

語り続ける度に声が震えたり嗚咽が少しずつ入る。千雨のこんな姿を銀時は今まで見た事無い。傍にいるあやかも真剣な表情で彼女を見ている。

「なんでだと思う・・・・・・?」

目頭が熱くなっている事を感じながら千雨は顔を上げた。
銀時は真面目な顔で彼女のその目を見る。

「なんでだろうな私・・・・・・ファッションとか料理とか全然ダメな奴だったのに・・・・・・お前と出会ってから鏡見て私服をチェックしたり、料理本持ってフライパン焦がしたり・・・・・・ヒック・・・・・・バカみたい・・・・・・」
「千雨・・・・・・」
「け、けど・・・・・・わ、私気が付いたんだよやっと・・・・・・ヒック・・・・・・・」

最後に大きな嗚咽をした後、千雨は目を潤わせながら苦笑する。
彼女にはどうしても銀時に伝えたい事がある。

「銀八ィ・・・・・・」

今まで彼と一緒にいても気が付かなかった

「私・・・・・・わ、私は・・・・・・」

けど彼と少し離れた間、ある感情が自分の中にあると知った。

「ぎ、銀八の事が・・・・・・」

自分でも気が付かない内に彼の事がずっと・・・・・・





































「ずっとずっとッ! 好きだったんだよ~ッ!」

銀時に想いをぶつけた瞬間、千雨の目からは涙がポロポロと滴になって落ちる。
仲間としての好きではない、“女として”銀時を好きになっていたのだ。

「少しは立派な女になる為にファッションとか料理とか調べたり練習したりしてッ! いつか銀八に見せようと思ってたッ! 一杯褒めて貰いたかったッ!」
「・・・・・・」
「だってお前の事が・・・・・・大好きだから・・・・・・! 一秒たりとも忘れた事が無いほどお前の事ばっか考えてたから・・・・・!」
「お前・・・・・・」
「銀八~・・・・・・! 銀八~・・・・・・!」

泣きながら彼女は目の前に座ってる銀時に抱きつく。彼女の涙で濡れた頬が銀時も頬も濡らしていく。

「好きだからお前の事こんなに心配してるんだよ~ッ! お前が死んじゃったら私もう生きていけないんだよ~ッ!」
「ああ・・・・・・」
「私が好きな人は一生お前だけ・・・・・・最初で最後・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
「絶対に離れたくない・・・・・・お前から絶対に離れたくない・・・・・・銀八といつも一緒にいたいよぉ・・・・・・なんでもする・・・・・・なんでもするから私の前からいなくなったらヤダよぉ・・・・・・」
「・・・・・・ああ」

泣いてる彼女に返事をしながら強く彼女を抱きしめる。

これが千雨の全力の告白。

彼女の想いを全て受け取った銀時は彼女が泣きやむまでずっと抱きしめていた。

















































「静かになったと思ったら寝やがったよコイツ・・・・・・」
「もう真夜中ですし、今日は本当に色々会って疲れてたんでしょ・・・・・・」

数十分後、思い切り泣いていた千雨は、銀時に抱かれながら静かな寝息を立てて眠ってしまった。
あやかも一安心するかのように彼女の寝顔を眺める。

「やっぱり千雨さん好きだったんですね、銀さんの事が」
「お前知ってたのか?」
「大体感づいてました、銀さんって鈍いですわね」
「マジか」

あやかの頬笑みに、千雨の頭を撫でながら銀時は目をぱちくりさせる。
普段は勘のいい所があるのに恋愛に関しては本当に鈍感、それが坂田銀時。

「本当に鈍いんですわね・・・・・・こんなに愛されてるのに」
「まさか千雨があんな事言うなんて想像も出来ねえだろ普通、この仏頂面のツッコミ娘から告白だよ?」
「ふふ」

だるそうに千雨の寝顔を覗きながら話す銀時に、あやかはクスッと笑った後、彼に近づいて行く。

「少し聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「んだよ、言っとくけど今の俺冷静そうに見えるけど、頭はかなりこんがらがってんだぞ、わかってると思うが天然パーマの事じゃねえからな」
「私があなたの事をどう思っているか知りたいですか?」
「は?」

突然の質問に銀時は口をへの字に曲げる。そんな事考えた事が無い。
そう思っているうちにあやかはどんどん顔に接近してくる。

「鈍感なあなたはずっと気付いてないと思いますけど」
「あの、その・・・・・・顔近くね?」

もはや鼻が当たるか当たらないかの距離、何故あやかがここまで近づいて来ているのか銀時は理解出来ていない。

「私も千雨さんの様にずっとずっと前から・・・・・・」
「え?」

あやかの両目に自分の顔が映っているのがわかる。それぐらい顔が近づいてる事に銀時が戸惑っていると、急に彼の顔をあやかは両手で触る。

「銀さん」
「あ、あの・・・・・・あやかさん・・・・・・?」

両頬をあやかに触られてこんがらがってる頭が更にこんがらがる銀時。そんな彼に向かってあやかは優しく微笑んだ

「とりあえずコレだけ受け取って下さい・・・・・・」
「は・・・・・・? んッ!」
「ん・・・・・・」

あやかは両手で彼の首に手を回し、目をつぶって自分の唇を銀時の唇に強く押し当てた。
突然の出来事に銀時は千雨を抱きしめながらパニック状態。
だがあやかは顔を真っ赤にしながらも彼と絶対に離れないようとしない。
彼女のファーストキスの瞬間だった



キスを始めて3分ぐらい経ったのだろうか。
あやかはようやく銀時の唇から自分の唇を離した。
恥ずかしそうにうつむいた後、上目づかいで銀時に向かって小さな声を出す。

「ファーストキスです・・・・・・案外柔らかいんですわね、銀さんの唇って・・・・・・」
「ど、ど、ど、どういう事コレ・・・・・・?」
「こ、告白はまた日を改めてやりますわ・・・・・・」
「こ、こ、こ、告白・・・・・・!? ウ、ウソ・・・・・・え? マジ? お、お、お、おおおお前も・・・・・・!?」

衝撃的な事実に銀時は額から大量の汗、全然気づきもしなかった。
まさかエヴァや千雨どころか彼女も自分の事を・・・・・・
その事に銀時が初めてわかったという風に声も出せず驚いていると、あやかは突然立ち上がって、もう帰ろうと玄関まで歩いて行く。

「今日はもう遅いんで帰りますわ・・・・・・朝になったらまた会いましょうね銀さん」
「い、いや俺の思考回路がショート寸前なんですけど・・・・・・ちょ、ちょっと待て・・・・・・! 聞きたい事がすんげえ残って・・・・・・! あ」

何もかもがこんがらがってまだ状況が上手く掴めていない銀時を置き。
あやかは最後にこちらに微笑んだ後、ドアを開けて出て行ってしまった。
残された銀時が手を伸ばした状態で固まっていると、ふと抱きかかえている千雨を見る。
銀時がこんな目にあっているのも知らずに幸せそうに寝息を立てていた。

「・・・・・・そういえばコイツ」

あやかがいなくなる前にもっと早く気付けばよかった



この少女を何処に寝かせればいいのだろうか・・・・・・





































銀時の部屋から出ていた後、あやかは一人でトボトボと廊下を歩いていた。

「わ、私ったら・・・・・・! なんてはしたない事を・・・・・・! しかも千雨さんが寝てる隙に銀さんとキ、キ、キ・・・・・・!」

頭を思いっきり掻き毟りながらあやかは顔を真っ赤にして歩く。
自分でやった事が信じられなかった。まさか真夜中の旅館で銀時と唇を合わせる事になろうとは

「あそこまで私が積極的になれたなんて・・・・・・やはり千雨さんの告白に釣られてついあんな事を・・・・・・明日、銀さんにどんな顔で会ったらいいのか・・・・・・」
「おお、いいんちょ発見」
「はい?」

ブツブツと困ったように独り言を呟いているあやかの所に思わぬ人物がやって来た。
このゲームの主催者である朝倉和美がこちらに手を振りながら現れたのだ。

「銀さんに会えたの?」
「ええ・・・・・それより朝倉さん、あなたゲーム主催者なのになんでこんな所に?」
「いや実はドSが死んだ辺りでさ、新田の奴に各場所に設置してたビデオカメラがバレてあの人に全部破壊されたんだよね・・・・・・」
「は?」
「いつ新田の奴がビーダマン持ってモニター室に来るかわかんないから、途中で実況と映像を打ち切って命からがらここまで逃げて来たのよん。明日になったら生徒のみんなにボコされるかも・・・・・・」

どうやらラブラブキッス大作戦の実況をしている途中、旅館を徘徊していた新田先生に隠しカメラの存在がバレてしまったらしい。
カメラ全てを問答無用でビーダマンで破壊していくので、自分のいるモニター室に来るのではないかと恐れた和美はすぐにその場から退散したと言うのだ。
だがあやかはもっと気になっている事がある

(ドSってなんですか・・・・・?)

和美の言う『ドS』に疑問を抱くあやか、だがそんな彼女を見て和美はふとある違和感に気付いた。

「それよりいいんちょ、ちょっと気になった事あるんだけど?」
「なんですか? もう私かなり疲れてるので手短にお願いします」

腕を組んで話を聞く体制になったあやかに和美は即座に尋ねる。

「千雨ちゃん何処?」
「あ・・・・・・」

彼女の質問に初めてあやかは気付いた。そういえば千雨を銀時の部屋に置いてきたままだ

「銀さんの部屋にいますわきっと・・・・・・」
「ええッ! もしかして千雨ちゃん、いいんちょを先に帰らせて銀さんと二人で・・・・・・!」
「違いますッ! 千雨さんでしたら銀さんの部屋で疲れて寝てますッ!」

変な誤解をする和美にあやかがムキになったように否定する。それを聞いて和美も「な~んだ」と笑いながら頷いた。

「じゃあ千雨ちゃんは銀さんと仲直り出来たんだよね?」
「モチロンですわ」
「よかったよかった、ギスギスした二人なんて見たくないしね」
「ええ、それに仲直りするどころか告白まで・・・・・・はッ!」

会話の途中でつい口が滑ったのであやかが慌てて口をおさえる。
だが時すでに遅し。
和美はあやかの口から洩れた衝撃的な情報に目を光らせていた。

「告白ッ!? 千雨ちゃん銀さんに告白しちゃったのッ!?」
「い、いやその・・・・・・!」

あやかはどう言っていいのか困ったように頬を引きつる。
だが和美は嬉しそうにフッと笑って頭を掻き毟る。

「やっと自分の想いにぶつかれたんだね、千雨ちゃん」
「あ・・・・・・」
「このゲームって実は千雨ちゃんを後押しする作戦だったんだよね・・・・・・」
「・・・・・・やはりそうだったんですか」

このゲームの本来の目的は千雨が銀時と真正面から向き合わせる為だった。
それを見事に彼女がやってくれたと聞いて、和美は安心するように頷いた。

「本当に良かった」
「朝倉さん・・・・・・」

満足そうに頷いている彼女を見てあやかは複雑そうな顔をする。
千雨は銀時に告白できた、だが自分は・・・・・・

「てことはラブラブッキス作戦の優勝者は千雨ちゃんでいいんだよね?」
「え?」

ニヤニヤしながら不意に言った和美の言葉にあやかは思わず目を見開く。

「キスはしてないけど告白は出来たんでしょ? だったらもう優勝だよ優勝、朝になったら生徒のみんなに報告でも・・・・・・ダメかな? いや結局バレるモンなんだからさっさとみんなに教えとくか」
「ま、待って下さいッ!」
「ん?」

やっぱダメなのか? 
和美がそんな事を考えながらあやかの方に振り向くと、彼女は声を震わせながら

「朝倉さん・・・・・・確かに千雨さんは銀さんに告白しました、けど優勝したのは・・・・・・私になるんです」
「え? それってどういう・・・・・・あッ!」

あやかの言った言葉に和美が一瞬理解出来なかったがすぐに我に返る。

「ま、まさかッ!」
「千雨さんが寝てる時に・・・・・・私、銀さんとキスしましたの・・・・・・」
「・・・・・・マ、マジ?」

思いもよらぬ新事実に和美はぎこちない動きであやかに近づく。するとあやかは一瞬躊躇を見せたが、申し訳なさそうに

「・・・・・マジですわ」

コクンと頷いた。




























「ウソォォォォォォォ!!!!」

あやかのぶっちゃけによってその場一帯に和美の叫び声が響き渡った。

午前1時47分。ラブラブキッス大作戦終了



優勝者・雪広あやか






[7093] 第四十九訓 人の道それぞれ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/02/28 11:43
修学旅行三日目の朝。日が昇り始めた頃、熟睡していた長谷川千雨はパチリと布団の中で起きる。

「ふにゃ? いつのまに私寝てたんだっけ・・・・・・?」

ムクリと腰を上げながら千雨はボーっとしながら考えていると、気付いてみたらいつも付けてた伊達メガネも外されて、結んでいた髪もとかれていた。

「・・・・・・誰か私の事寝かしてくれたのか?」
「おいチビそれ俺のだ、吐きだせボケェ・・・・・・」
「ん?」

誰がやってくれてたのかと考えていると、隣から班の生徒ではない声が聞こえたので千雨は素顔のまま横に目をやる。
するとそこにいたのは

「俺のパフェ食うとはいい度胸だなチビ・・・・・・罰ゲーム・マインドクラッシュだ、ヘヘヘ・・・・・・・」

変な笑い声を出しながら寝言を言う坂田銀時が、千雨のすぐ隣の布団の中でくるまっていた。

「ぎ、ぎ、ぎ、銀八ィィィィィィ!!!」
「なんだようるせえな・・・・・・」

彼女の叫び声で不機嫌そうに銀時も起きた。布団の中から顔を覗かせ銀時は千雨の方に目をやる。

「お前こんな朝っぱらからデカイ声出すなよ・・・・・・」
「な、何でお前が私の隣で寝てんだよッ!」
「俺の部屋だからに決まってんだろ」
「あ・・・・・・」

布団の中から目だけを覗かせている銀時の返しに千雨はやっと思い出した。
昨日の夜、銀時にありのままを告白して、そのまま疲れてウトウトしながら銀時の腕の中で寝てしまい・・・・・・

「アァァァァァ!!!」
「だからうるせえんだよメガネッ! ぶん殴られてえのかッ!」

急に顔を真っ赤にして頭の上に両手を置きながら千雨が絶叫する。
そんな彼女に遂に銀時がキレて布団から出て来た。

「わ、わ、私・・・・・・昨日の夜・・・・・・」
「ああ、そういえばお前に告られたな、アレはビックリしたわ」
「そうだった、私ったら銀八の事好きだとかどうとか言いながら泣きじゃくって・・・・・・それで疲れて眠っちまったんだ・・・・・・」

自分がやった事が今更になって恥ずかしくなり顔を両手で隠す千雨に、銀時は髪を掻き毟った後、彼女の肩に手を置く。

「これからもよろしく」
「・・・・・・それはどう捉えればいいんだ私・・・・・・?」

解釈の仕方がわからない銀時の言葉に千雨が困ったようにリアクションを取っていると、そんな彼女を置いて銀時はまた自分の布団の中に潜り込んでしまった。

「お前の好きにしろ、じゃあ銀さんもうひと眠りすっから、朝飯の時に起こしてくれよ、ハニー」
「ハニーって呼ぶな気持ち悪いッ! 体中に鳥肌が立ったわッ! つうかいいんちょは何処行ったんだよッ! 昨日の夜ここにいただろッ!?」
「あ~? あやかだったらお前が寝た後・・・・・・」

布団の中で怒鳴ってくる千雨にめんどくさそうに銀時が説明しようとする。が、ふともう一つ思い出した事があった。
千雨が眠りについた後あやかと二人で色々と喋ってた。
そしてその内、彼女がどんどん自分に顔を近づけて・・・・・・

「アァァァァァァ!!!」
「なッ! お前もいきなりデカイ声出すなよッ!」
「俺、お前が寝てる時にあやかと・・・・・・イヤァァァァァ!! 銀さんもうお嫁に行けないィィィィィ!!」
「ちょっと待て冷静になれよッ! ・・・・・・私が寝てる時にいいんちょと何があったんだよ?」

顔を両手で隠して布団の上でゴロゴロとのたうち回る銀時に、千雨が慌てて問いかけると。
彼はピタリと止まって指の隙間から目を出した状態で額から冷や汗をかきながら千雨の方を見る。

「お前が寝ちまった後・・・・・・」
「いいんちょに何されたんだよ?」
「・・・・・・唇奪われた」
「あ~なんだそんな事かよ、別に大した事・・・・・・エェェェェェェ!!!」

いきなりの事実に立ち上がる程驚く千雨。自分が寝てる時にあやかが銀時にキス?
彼女がそこまで積極的に、なおかつ自分が近くで寝てる状態でそんな事をやってのけたのか?   

「なんでいいんちょお前にキス出来たんだよッ! あいつあんなに奥手だったのにッ!」
「知らねえよッ! 俺今日どうゆうツラであいつに会えばいいんだよォォォォ!! 教えてハニィィィィィ!!」
「ハニー言うなボケェェェェ!!!」

まだ生徒達が寝静まっている頃、銀時と千雨は朝っぱらから部屋の中で大騒ぎだった。


修学旅行、運命の三日目が始まる。















































第四十九訓 人の道それぞれ


「どうしたんやまき絵と裕奈? 目の下にすんごいクマ出来てるで?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

朝食を済ませ、今日は私服で自由行動できる日なのでこれからどうするか1階のロビーで話している3年A組。
その中で昨日の夜行ったゲームの途中で新田先生に捕まり、罰を受けたまき絵と裕奈が、一睡も寝てない状態でボーっと立っていた。
同じ班の亜子に聞かれたので、まき絵と裕奈は機械の様に同時に彼女の方へ顔を向ける。

「・・・・・・新田の奴に朝までミニ四駆作りさせられてた・・・・・・」
「しかも塗装とか肉抜き、チェーンアップまで・・・・・・目をつぶるとシャイニングスコーピオンのボディがまだ見える・・・・・・」
「はは、それは災難やな・・・・・・」

まき絵と裕奈の行った新田流の罰ゲームに、亜子はひきつった笑みを見せる。
生徒に対してそんな事が出来る教師がいるこの学校は一体・・・・・・
亜子がそんな事を考えていると、まき絵は隣にいる裕奈に横目で睨みつける。

「それもこれも私を裏切って逃げた裕奈のせいで・・・・・・」
「うるさい疫病神・・・・・・あんたのせいでこっちも不幸になったじゃない、どうしてくれんのよ・・・・・・」
「んだとコラ・・・・・・・」
「やんのかコラ・・・・・・」
「ちょ、ちょっと二人共口調変わっとる~」

お互い覇気のない表情で喧嘩を始めようとするまき絵と裕奈に慌てて亜子が止めに入った。

ちなみにゲーム参加者ではないが突然参戦してきた千鶴も彼女達と同じく新田先生に捕まり、キツイ罰ゲームを食らっていた筈なのだが

「あの二人は元気ないのに、なんでちづ姉はいつも通り元気なの・・・・・・・?」
「貴重な体験が出来て面白かったわ~」
「へ~、なんかちづ姉って地球が突然爆発しても普通に宇宙空間で泳いでそう・・・・・・」

新田先生の罰ゲームさえも効いてない様子でお日様みたいに笑ってる千鶴を見て、夏美は心の底から彼女の事を認めた。

『完全無敵』と


































「どうしたんせっちゃん? 目の下にすんごいクマ出来とるで?」
「・・・・・・」

一階のロビーに集まっていたアスナ達の班の中で、刹那が寝不足の状態で何も無い壁をジッと見ていたので、心配そうに木乃香が話しかける。すると刹那はゆっくりと首を動かして

「・・・・・・何でもありませんよお嬢様」
「すみません僕、木乃香さんじゃないんですけど」
「・・・・・・こりゃあ重傷ね」

木乃香の方に向くのかと思いきや何故かネギの方に向かって話しかける刹那。虚ろな目で何処か呆けてる彼女にけだるそうな表情でアスナは何が原因なのかを察知する。

「大方、マヨと本屋ちゃんがくっついたから相当ショック受けてるんじゃない?」
「そうやなぁ、朝食の時にハルナがみんなに言いふらしてたもんなぁ、その後ハルナ、土方さんにシメられとったけど」

アスナと木乃香の会話に刹那はピクリと反応してムスッとした表情で振り返る。

「私は別にそんな事気にしてませんから・・・・・・」
「おいおい神鳴流のお嬢ちゃんよぉ、そんな顔で言われても俺っちはもうわかってんだよ、あの二人がくっついたのが気に食わないんだろ、ヘッヘッヘ」

ニヤニヤ笑いながらネギの肩に乗って茶化してくるオコジョ妖精、カモ。
刹那はそんな小動物をジト目で睨みつける。

「ネギ先生、そのナマモノを惨殺する許可を」
「いやまあ別にいいんですけど、ここで殺ったら生徒達の目に入るのでちょっと勘弁してくれませんかね?」
「兄貴ィィィィ!?」

笑顔で言うネギに悲痛な叫びを上げるカモ。基本ネギは自分の生徒や使い魔でさえ容赦しない。
そんな事をしている頃、ネギ達の近くでは刹那がずっと気になっている二人、土方とのどかが修学旅行三日目の予定を決めていた。その様子を刹那はじっと見る。

「あ、あの私、シネマ村って所に興味あるんですけど」
「シネマ村? なんだそりゃ?」
「京都の観光スポットの一つです、映画やドラマとかで撮影に使用されるセットがそのまま公開されている所らしくて、まるで映画の世界に入ったような気分になれると夕映から聞いたんです、十四郎さんが他に行きたい所がないならここに行きたいんですけど・・・・・・」
「ふ~ん退屈しなさそうだな、別にいいぜ」
「あ、ありがとうございますッ!」
「・・・・・・」

前よりも仲良く見え、なおかつのどかが土方を名前で呼んでいる。そんな光景を不機嫌そうに刹那が見ていると、二人の所に怪しい影が現れた

「土方さ~ん何処行くんですかぃ、俺も暇なんでついて行っていいですかねぇ?」
「ひ・・・・・・!」

出て来たのは昨日のゲームでお騒がせしていた土方の部下のである沖田総悟だった。彼が現れた途端周りの生徒は一斉に逃げ出す。恐らく彼がどんな人間なのかを昨日のゲームでわかっているのであろう。
一番の被害者であるのどかも彼が来た途端短い悲鳴を上げる。

「沖田さん・・・・・・」
「総悟テメェ、あんなに手ひどくやられてたクセにもう復活しやがったか・・・・・・」
「しやがったってなんですかぃ、まるで俺が復活したのが嫌そうな言い方ですね」
「当たり前だろうが、どうせお前またコイツにちょっかいかけんだろ?」
「人聞きの悪い事言わないでくれやせんかね? 俺がいつの土方さんの女をイジめようとしたんですかぃ」
「か、刀でグリグリしないで下さ~い・・・・・・」
「現在進行形でやってるだろッ!!」

しらばっくれる沖田だが、鞘に収まった刀の先っぽで嫌がるのどかの頬っぺたをグリグリしている。土方はすぐに彼の手から刀を取り上げた

「ったく相変わらずテメェは・・・・・・もうそいつにつきまとうな、さもねえと俺が今度こそたたっ斬るぞ」
「わかりやした、もうしませんぜ」
「ふえ、ほ、頬っぺたツネらないで~・・・・・・」
「だから言ってるそばからやってんじゃねえかコラッ!」

今度は素手でのどかの頬っぺたを思いっきり引っ張りだす沖田に、土方は怒声を浴びせる。すぐに彼からのどかを引き離して自分の後ろに置いた。

「どんだけサディストなんだテメェは」
「残念ですがねえ土方さん、俺は手足もぎ取られようが、首を飛ばされようが、絶対にのどかちゃんをイジメ抜くという固い決意を持っているんでさぁ」
「その執念は一体どっから出てくるんだお前、その執念深さをもっと別の所に行かせ頼むから」

ニヤリと笑ってみせる沖田に土方が呆れたように口を開く。
まあ彼は絶対に聞かないとわかっているのだが

「昨日は“あの女”のおかげで邪魔されやしたが、どうです土方さん? ここでいっちょ再戦でもしますかい・・・・・・」

そんな事言うと沖田が邪悪な笑みをしながら近づいて来る。
ドSは一度負けてもすぐに蘇る。
だが・・・・・・

「あら? 昨日の人?」
「う・・・・・・」

突然後ろから聞こえた女性の声、それが耳に入った途端沖田は物凄く嫌そうな顔をする。
昨日たまたま現れたにも関わらず、沖田に深い傷口を作った人物である千鶴だ。

「大丈夫でしたかぁ? ロビーのソファでずっとうなされてましたけど?」
「・・・・・・じゃあ土方さん、また・・・・・・」

話しかけられても千鶴の方へ絶対に振り向かず、沖田は逃げるように早歩きでどっか行ってしまった。彼にとって千鶴は唯一の苦手な女性、絶対に関わりたくない相手なのだ。

「おかしいわね、私何かしちゃったかしら? 待って下さ~い」
「今度から総悟に襲われそうになったらあいつの所に行け、すぐに追っ払ってくれる」
「はい・・・・・」

自分がやった事に気付いていない様子で逃げる沖田を追いかけて行く千鶴を、親指で指差しながら土方はのどかに向かってアドバイスする。
沖田の天敵、千鶴。この二人の関係性をキッチリと覚えなければ
のどかと土方がそんな事を考えている頃、さっきまで他の女子達と話していたハルナと夕映が戻って来た。

「やあやあ、二人共ラブラブの様子で・・・・・・おぐッ!」
「殴るぞ」
「言う前に殴るっていうお決まりのパターンをやらないでよ・・・・・・」

ヘラヘラ笑いながら声をかけて来たハルナの頭にゲンコツを一発。ちなみに土方は朝からずっとハルナが他の生徒に自分とのどかの関係性をバラすので何度も殴っている。

「イタタタ・・・・・・コブ何個出来たんだろう」
「照れ隠しが殴るとはいやはや暴力的です」
「その発言はゲンコツより刀の方を所望してるのか、ああ?」

頭をおさえて痛がっているハルナを見ながら夕映はポツリ。その言葉に土方は反応してひと睨み。だが沖田同様、彼女には彼の脅し文句は通用しない

「全くすぐに斬りたがりますねあなたは、本当にのどかはこんな人でいいんですか?」
「ほ、本当は優しい人なんだよ、それに頼りになるしカッコいいし・・・・・・」

不意に夕映に話しかけれたのでのどかは彼をぎこちなく援護する。彼女なりに土方の事を本当に好きなのだと夕映は「ふ~ん」とよく分からない反応で納得する。

「・・・・・・私はこんな暴力的なニコチンヤンキーより、もっと温厚で器のデカイあの人の方が一兆倍マシだと思うんですけどね・・・・・・」
「何か言った夕映?」
「人の趣味もそれぞれって言ったんです」
「・・・・・どういう意味?」

夕映の意味深な発言に首を傾げるのどか。
時々彼女が何を考えているのか親友の自分でもわからない時があるのだ。


































一方そんな彼女達の姿をまだ刹那は見ていた。

何かに思いっきり八つ当たりしながら


「ぐぐぐ・・・・・・」

ソファの上に座って腹立つ心を静める為に刹那はソファにガブリと思いっきり噛みついている。

「何で旅館のソファ噛み千切ろうとしてんのお前?」
「はッ!」 

後ろから声をかけられたので、刹那は我に返って後ろの振り向く。
そこにいたのはいつもと変わらない着物を着て、腰に木刀、背中には自分の愛刀の夕凪を差している銀時がいた。

「なんだ白夜叉か」
「なんだ白夜叉かじゃねえよ・・・・・・」

呆れたように言葉を返しながら銀時は彼女の隣に座り、さっき刹那が見ていた方向に目をやる。

「あ~なるほどねぇあれが原因か、俺も最初ガキ共から聞いた時ビックリしたよ。絶対茶化してやろう」
「まさかのどかさんが土方さんとそんな関係になるなんて・・・・・・こんな大変な時期によくもまあぬけぬけとあの娘は・・・・・」

しかめっ面でのどかを眺めながら声をひそめて文句を言う刹那に、隣にいる銀時は面白い物を見るかのようにニヤッと笑う

「お~嫉妬心燃やしちゃって~、お兄ちゃんを知らない娘に奪われたヤンデレ妹気分ですかコノヤロー」
「べ、別に嫉妬なんてしてない・・・・・・!」

ムッとした顔で刹那は否定するが、銀時は「へいへい」と言って、これっぽっちも信じてないような態度で手を振る。

「俺の時みたいに今度はあのガキを闇討ちするとか考えるなよ」
「やるわけないだろ・・・・・・ところで白夜叉」
「あん?」
「お前の隣に雪広さんが座ってるぞ」
「え? アァァァァ!」
「お、おはようございます・・・・・・」

刹那が自分の後ろを指差したので銀時がすぐに振りかえると、いつの間にかあやかが緊張したようにちょこんと座っていた。顔を少し赤らめながら銀時に挨拶、だが突然現れたので銀時はソファの上で驚いて飛び上がる。

「おまッ! なんの気配も出さずにいきなり隣に出てくんじゃねえよッ! ソリッド・スネークかッ!」
「すみません・・・・・・あれ? 銀さん、千雨さんは?」
「あいつならトイレだよったく・・・・・・」

千雨の事を聞かれ銀時は自分の肩を揉みながら答える。
すると、タイミングよくトイレから帰って来た千雨が銀時達の所へやって来た。
銀時の隣に座ってるあやかを見た途端しかめっ面になる。

「いいんちょ、お前昨日私を銀八の所に放置して部屋戻っちまっただろ?」
「・・・・・・すみません、ちょっとあの場から逃げ出したい事があったのでつい・・・・・・」

申し訳なさそうに謝るあやかにため息をついた後、彼女の隣に座ってポツリと

「銀八とキスしたからか?」
「ど、ど、どうしてそれをッ!!」
「コイツから教えてもらった」
「銀さんッ!!」

千雨がすぐさま銀時に向かって指を差すと、あやかは怒ったように彼に向かって立ち上がる。彼女の反応に銀時は後頭部を掻きながらごまかすように

「い、いやぁ実は口がキム・ヨナの如く華麗に滑っちまってさ・・・・・・ハハ」
「どうしてそう大切な事をよりにもよって千雨さんに・・・・・・!」
「私は別に気にしてねえよ」
「え?」

銀時に向かって歩み寄るあやかに千雨は仏頂面で呟く。思わず彼女を見てあやかは目を丸くする。

「私、千雨さんの好きな人とキスしたんですよ?」
「元々銀八の事好きだって言ってたのはいいんちょだろ、だったら私の事なんか気にせずにさ、頑張ってくれよ、いいんちょだったら私、全然文句ないからさ」
「千雨さん・・・・・・」

好きになった人が同じなのに千雨は意外にもあっさりとしていた。彼女に応援されて少々複雑な気持ちがあるものも千雨に向かってあやかは強く頷く。

「わかりました、今日中に銀さんの・・・・・・子供作りますッ!」
「「何でだよッ!!!」」

いきなりのぶっちゃけ発言に千雨と銀時が同時に立ちあがってすかさずツッコミを入れる。
そんな三人の姿を遠くから見るように眺めながら刹那は

「3人共仲良いんだな・・・・・・それに比べて私は土方さんに名前さえ呼ばれない・・・・・・」

基本土方は彼女の事を「お前」と「コイツ」と「ガキ」としか呼ばない。刹那が今最も気にしている事である。
それらの事を思い出して刹那はガックリとうなだれるのであった。
















































数十分後、銀時はある事について相談する為にとある大きな一室にて、何人かの生徒と教師、関係者を集めた。(本来なら山崎も来る筈だったのだが、同居人の双子と楓に拉致されて何処かへ行ってしまった)
関西呪術協会の連中、春雨、そして高杉がいる筈の京都。今後ここで何をするべきなのかをみんなで対策と行動するのかを決める為だ。

「は~い、では今日一日の方針を決める重要な会議を始めま~す」
「いよッ! 待ってやしたッ!」
「黙れ食材」
「しょ、食材ッ!?」

銀時がここに呼んだ一人のネギ、彼の頭に乗っかっているカモに向かって銀時は睨みつける。別にカモはただ盛り上げようとしただけなのだが。
そんな小動物をほっといて銀時は淡々と話を続ける

「え~会議を始めるその前に、皆さんにご紹介させなきゃいけない人を紹介します」
「異世界で真撰組の副長やってる沖田で~す」
「誰が副長だ誰が・・・・・・」

土方は小さな声でツッコむ中、銀時の隣に座っていた沖田が一同に軽く頭を下げる。千雨やあやかは彼とはここで初対面、だが昨日の夜にテレビで彼の奇行を観ていたアスナは不機嫌そうにフンと鼻を鳴らす。

「本屋ちゃんをつけ狙う変態でしょ」
「土方さん言われてますぜ」
「お前だッ!」

タバコを口にくわえながら沖田に向かって叫ぶ土方。
二人のいつもの掛け合いは終わり、銀時は話を続ける。

「んじゃ、まずは今の状況を言う、わけのわかんねえ事企んでる敵がわんさかいる、いつ襲われるかわかんねえ、以上、さあお前らどうする?」
「状況説明短・・・・・・」

短絡的に説明した銀時に千雨が呟いていると、沖田は腕を組みながら銀時に話しかける。

「土方さんに聞きやしたが、攘夷志士の桂や高杉、春雨の野郎共が潜伏してるんでしたよね確か、しかもなんかえげつない力を持ったここの娘っ子を狙ってるとか」
「はい、それに関西呪術協会の人達も木乃香さんを狙ってるんです」
「木乃香?」

ネギが言った言葉に沖田は目を細める。ここにきて数日しか経っていない彼は彼女の事を知らない。すると本人である木乃香が勢い良く手を上げた。

「あ、ウチです」
「ふ~ん、テメェが高杉が狙ってるガキか・・・・・・」

沖田は彼女の顔をジロジロと見ながら感想を一言。

「のどかちゃん程じゃねえがイジメたくなる面構えだ」
「ええッ!?」
「アンタ木乃香には手を出すんじゃないわよッ!」
「例え土方さんの仲間であってもお嬢様を傷付けさせる真似は許しませんッ!」

ぶっちゃける沖田に反応して木乃香の両サイドにいたアスナと刹那が、彼に対してすぐに身を乗り出す。
すると沖田は無表情で銀時に

「旦那ぁ、あの頭の悪そうなガキ共どうにかしてくれやせんかねぇ?」
「きび団子でもやれば家来になるんじゃねえの? 猿と鳥だし」
「いつも思うんだけど本当銀八の世界の奴等ってロクな連中いないよな・・・・・・」
「ええ・・・・・・」

銀時に相談を持ちかける沖田を見て千雨とあやかがそんな事を会話していると、意外な人物が銀時に向かって手先を震わせながら手を上げた。
土方の隣に座っているのどかだ。

「あ、あ、あの・・・・・・銀八先生・・・・・・」
「なんだよ」
「すみません・・・・・・あの私、土方さんと行きたい所があるんですけど・・・・・・ダメですか?」
「あ? 別にいいけどそん時は木乃香とこのガキも連れてけ、連中の狙いは木乃香だからな、せっちゃんだけじゃ護衛としては物足りねえしここはマヨネーズ侍が必要だ」
「は、はい、わかりました・・・・・・」

恐る恐る意見を述べるのどかに、銀時はとりあえず条件付きで了承する。だがそれに対してのどかは少し残念そうな顔をする。
隣に座る土方は彼女の気持ちを察して口を開いた。

「このゴタゴタが済んだらいつでもオメェと二人だけで何処へでも行ってやる」
「十四郎さん・・・・・・」
「旦那、俺も今日は土方さん達について行っていいですかぃ?」
「え?」
「許す」
「えぇぇぇぇぇ!?」

自分も土方達の所に行くと名乗り出た沖田に銀時はすぐに許可する。
のどかにとって最も恐い男と一緒にいなければならない。その事に思わず彼女は叫び声を上げた。

「戦力はあった方がいいからな」
「まあ仕方ねえな、総悟がいれば連中とも上手く戦える、こうなったらハルナとデコ助も呼んで来い、もしテメェがあいつに襲われそうになったらあの二人を囮にしろ、いいな」
「そんなぁ・・・・・・」
「へ、ガキ共と一緒にこの世界を観光出来るなんてな、仲良くしようぜのどかちゃん・・・・・・」
「け、結構です~・・・・・・」

口に笑みを浮かべてこっちを見る沖田にのどかが首を小さく横に振る。
一体何を考えてるのやら、想像するだけで恐ろしい。

のどかが恐怖に怯えていると、今度はネギが銀時に話しかけた。

「銀さん、僕も今日絶対に行かなきゃ行けない場所があるんですけど?」
「絶対? 何処にだよ?」
「関西呪術協会の本部です、とりあえずこの親書を渡しに行かないとマズイかなと思いまして・・・・・・」
「あ~そういえばジジィから頼まれてたんだよなそんな事、めんどくせえな・・・・・・」

懐からネギが取り出したのは一枚の手紙。学園長が関西呪術協会の長に渡すようネギに命じた親書だ。
木乃香の事で夢中になっていたのですっかり銀時はそっちの事を忘れていた。

「こっちの親書より敵は木乃香さんを狙いに行く可能性が高い今、さっさと渡しに行った方がいいですよね、上手く行けば協会の人の助けも貰えるかもしれませんし」
「まあ、そうかもしれねえけど、危ねえじゃねえか?」

心配そうに尋ねてくる銀時に、ネギは笑って返す。

「僕一人でなんとかなりますから心配しないで下さい、僕一人のせいで戦力をさく事は出来ません」
「ちょっとちょっと、アンタまさか一人でそこ行く気?」

一人で行くと主張するネギに隣に座っているアスナがしかめっ面で会話に入ってくる。
するとネギの頭にいるカモが胸を張って

「俺っちがいますッ!」
「・・・・・・アンタ一人じゃ不安よ、私もついていくから」
「シカトッ!?」

カモを華麗にスルーしてアスナはネギに身を乗り出す。だがネギはそんな彼女に不安そうな表情で

「でもアスナさんは普通の生徒さんじゃないですか、万が一にも敵が出てきた時は下手したら大怪我するかもしれませんよ・・・・・・」
「アンタと違って魔法は使えないし、マヨや刹那さん見たいに剣で戦ったりする事は出来ないわ、けど頑丈さは誰よりも凄いと思ってるから私、足手まといにはならないわよ」
「けど・・・・・・」
「お子ちゃまのアンタが一人で京都ぶらつく事自体無理でしょ、はい決定」
「・・・・・・アスナさんって時々銀さんみたいな強引さがありますよね」
「うっさいわね」

自分のペースで話を進めて自分の都合に合わせる。アスナと銀時の意外な共通点にネギが気付いていると、その銀時がまた話を進めている。

「んじゃ、バカレッドはネギと一緒に行くとして、木乃香はお前等に任せる、いいな?」
「依存はねえ、総悟とコイツがいれば問題ねえしな。連中は前の時の様に最低でも三人がかりで来る可能性がある、だったらこっちは三人いればまともに戦える筈だ」
「ま、本屋ちゃんとデートしながら木乃香の護衛も頼むわ」
「黙れ三股白髪頭・・・・・・! ん、ていうかちょっと待て、そういえばお前は何すんだ、お前が何をするかこっちは聞いてねえぞ?」

まだ銀時が何をするのかを聞いていない。それに気付いた土方が彼に口を開く。
すると銀時は自分の膝に頬杖を突きながら初めて気づいたように「あ」と声を出す。

「そういや俺何処行くか決めてなかった、パチンコでも行こうかねぇ?」
「銀さんあの・・・・・・もしよろしければ・・・・・・・」
「あん?」
「その・・・・・・」

何て言っていいのか困っている様にあやかが正座しながらモジモジしている事に、銀時はしかめっ面を見せる。

「んだよ言いたい事があんなら言えよ」
「えと、嫌なら別にいいんですけど・・・・・・・」

軽く頭を下げながら上目づかいであやかは銀時に向かってゆっくりと口を開いた。

「私と・・・・・・デートしてもらえませんか?」
「デ・・・・・・! デートォォォォォ!?」
「はい・・・・・・」

いきなりのあやかのデートのお誘いに銀時は死んでいた目が思いっきり開く。
彼女も言った事を恥ずかしそうにしてうつむく。

「ダメだったらいいんですわ・・・・・」
「い、いやまあ・・・・・・何も予定入ってないし・・・・・・ヒマだから付き合ってやるよ・・・・・・」
「えッ!?」

頭を掻き毟りながら目を逸らす態度でデートの約束を了承する銀時。
さっきまで自信なさげだったあやかの表情が一変してパッと輝きを見せる。

「わ、私とデートしてくれるんですかッ!?」
「ああそうだよ・・・・・・いいよな千雨」
「いいんちょなら文句はねえって言ったろ、行ってこいよ、私は邪魔しないから」

不安そうに尋ねて来た銀時に千雨はため息交じりにつぶやくと、立ち上がって部屋を出ようとする。

「いいんちょと喧嘩しないで仲良くやれよ、銀八」

最後に銀時に振り返って言葉を残し、千雨はドアを開けて部屋を出て行った。
残されたメンバーは一斉に銀時に視線を向ける。特に土方とアスナは心底呆れたという表情をしながら銀時を見ている。

「なんだよ・・・・・・」
「「・・・・・・いや別に」」
「んだよッ! 言いたい事あんなら言えよッ!」

口を揃えて同時に目を背ける土方とアスナに銀時は立ち上がりながら叫ぶ。
すると沖田は面白いモンを見つけたように目をキランと光らせた後、銀時に顔を近づけ

「旦那、今のメガネのガキとそこの金髪のガキとはどういう関係ですかぃ?」
「・・・・・・ノーコメントだ」
「総悟、それは俺が話してやる、コイツはなぁ三人の小娘を同時に手込めにし・・・・・・」
「オイィィィィ!! 何勝手な事説明してんだコラァッ! ていうかテメェもガキ一人手込めにしてんじゃねえかッ!」
「オメェと一緒にんすんじゃねえッ!」

沖田に向かって土方が冷静に話を始めようとすると銀時がすかさず怒鳴る。まあある意味事実なのだが。
銀時と土方が一触即発ムードになっている。
そんな彼をあやかが心配そうに見つめていると背後にやって来たアスナが声をかけて来た。

「アンタも変な奴の事好きになったわよねぇ、趣味悪いんじゃない?」
「フン、べ、別にあなたには関係のない事ですわ」
「なあに、アンタがキスする程好きな奴なんだから、私は別に止めろとは言わないわよ」
「何言ってんですか、例えあなたに止めろと言われても私はずっと銀さんの事を・・・・・・ってッ! 何で私が銀さんとキスしたの知ってるんですかッ!?」

サラリと言った言葉に思わず聞き流す所だったがアスナの口から衝撃的な秘密が出て来た事にあやかは慌てて後ろに振り返る。
アスナは首を傾げながらジト目で

「ん? 生徒のみんなは全員知ってるわよ、そういえばいいんちょ、爆睡してて朝食の時間来なかったんだっけ? 朝食の時に朝倉の奴がみんなに言いふらしてたわよ、「昨日のゲームで銀さんとキス出来たのはいいいんちょ、だけど千雨ちゃんはなんと銀さんに告白しました~」とかなんとか、その後長谷川さんと天パにボコボコにされてたけど」
「な、な、なんですってェェェェェ!!」

数少ない三人の秘密を知っている和美があろうことか生徒のみんなに報告していたというのだ。確かにゲームの一環であったし、主催者の和美はそれを生徒に報告する義務はあるのだが・・・・・・

「通りでなんかやけに皆さんニヤニヤしながらこっちに視線送ってくるなとは思ってましたが・・・・・・まさか千鶴さんにも?」
「聞いた瞬間、すっごい喜んでたわね」
「ハァ~・・・・・・」

アスナの話を聞いてあやかは肩を落としてため息を吐く。
なんというか一番知られて欲しくない人に知られてしまったような気がする。
そうあやかが考えながらうなだれていると、アスナが急に彼女のおでこに向かってデコピン

「イタッ!」
「とりあえず言っとくわ、優勝おめでとう」
「あなたに言われても馬鹿にされてるとしか思えませんわね・・・・・・」
「別に馬鹿にはしてないわよ」
「・・・・・・」
「ま、あの長谷川さんだって告白できたんだし、いいんちょも出来るわよきっと」

赤くなったおでこをおさえながらあやかは眉をひそめる。
昔から仲の悪いアスナにそんな事言われて自信が湧いてきた、そんな自分自身に少し腹が立ったのだ。

「・・・・・・まさかアナタみたいな野蛮人に元気づけられるとは不覚ですわね」
「誰が野蛮人よ」

目の前で遂に銀時が土方と殴り合いを始めてしまっているのを眺めながらアスナはあやかに即座に返す。
幼馴染には幼馴染なりの勇気付けがあるのだ。

「ところでアンタさ、天パとデートするのはわかるけど何処へ行くの? そこまであいつに任せてたらデート場所がパチンコにされるかもしれないわよ」
「ご安心を、すでに行く所は決まってますわ、江戸に住んでいた銀さんならきっと気にいる所です」
「そんな所あったけ?」

アスナが首を傾げるとあやかは口に小さな笑みを作って答えた。

「シネマ村ですわ」






























部屋であやかとアスナが会話している頃、部屋から出て行った千雨は一人で廊下を歩いていた。

「いいんちょの奴デートの約束なんかして・・・・・・告白する前にまた気絶するんじゃねえか?」

独り言を呟きながら千雨があやかの事を少し心配する。真っ昼間から生徒達が京都中を歩き回っているのにもし見られでもしたらそのまま銀時の前で倒れるかもしれない。

「隠れて見に行こうかな・・・・・・いやさすがにそれはマズイか?」
「およ? 銀さんはどうしたの千雨ちゃん?」
「うわ、お前かよ・・・・・・」

廊下の曲がり角でバッタリ出くわした和美に千雨は嫌そうな顔をする。

「お前に用はねえって、さっさと他のクラスメイトと一緒にどっか行け」
「あらら・・・・・・まだ怒ってるの? でも良いじゃんどうせバレるモンだったんだし」
「そういう問題じゃねえよバカ」

和美のおかげで自分が銀時に告白した事が生徒達の間に広まってしまった。
それにより千雨は和美に対してはすっかり機嫌が悪い。
そんな彼女をなだめるように「まあまあ」と和美が千雨の肩に手を乗せる。

「そんな事よりさ、銀さんとは一緒じゃなかったの? 恋人同士じゃん」
「だ、誰が恋人同士だッ!」 

和美に恋人同士と言われた途端、急に顔を真っ赤にした千雨は照れているのを隠す為に大きな声で

「銀八はいいんちょと一緒にデートするんだよッ!」
「ええッ! やっぱいいんちょの奴キスした途端少し積極的になってきたねぇ・・・・・・どうする千雨ちゃん?」
「いやどうもこうもしねえって・・・・・・」
「千雨ちゃんも一緒に行けばいいのに、三人でデート、楽勝じゃん」

他人事なので随分と簡単な事を言う和美。千雨はそんな彼女に頭を掻き毟りながら呟く

「いいんちょはこのデートで銀八に告白するんだろ? そこに私がいたら邪魔じゃねえか」
「う~ん別に遠慮しなくてもいいのに・・・・・・」
「話は済んだか? じゃあ私は部屋に戻って寝っから」
「あ、待ってよ千雨ちゃん」

観光地を巡るとかそういうのに興味が無い千雨が部屋へと戻ろうとしたその時、慌てて和美が彼女の肩を強く引っ張る。

「暇なら私と一緒にどっか行かない?」
「はぁ? なんでお前と・・・・・・」
「とりあえず千雨ちゃんが銀さんに告白出来た記念に、私が面白い所に連れてってあげる」
「なんか嫌な予感が・・・・・・面白い所って何処だよ」

千雨が疑っている目つきで和美を見ていると、彼女は口元に笑みを広げて行く場所を発表した。

「シネマ村」






[7093] 第五十訓 絡まる糸はほどく気がなければほどけない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/01 09:45

「ここが関西呪術協会の本山かぁ・・・・・・」
「なんか出そうな空気ねぇ」

ネギとアスナの前には神社によくある赤い門が大きくそびえ立っている。
ネギとアスナ、そして使い魔のカモは銀時と土方のパーティから離れ、親書を渡す為に関西呪術協会の本部の前まで来たのだ。

「兄貴、警戒は怠るなよ、東からの使者が歓迎されるかどうかはわかんねえぜ」
「うん、アスナさんも気を付けて下さい」
「危なかったらアンタ囮にしてすぐ逃げるわよ」
「ハハハ、僕に背中見せたらどうなるかわかります?」
「いや言わなくていいわ・・・・・・」

笑顔で若干殺意のこもっているネギの発言にアスナが目を逸らして手を横に振る。
逃げた瞬間背中を撃ち抜くとか、そんな物騒な事考えてるのではないかと、アスナが疑っていると、今度は口元だけに笑みを浮かべるネギ

「冗談ですよ、アスナさんは僕が守ります、生徒を守るのが教師の務めですから」
「え・・・・・・?」

自分より年下であり背も低いネギに急にそんな事言われてアスナは少し動揺するも、すぐにネギからそっぽを向いてツンとした態度で一言。

「フン、ガキのクセにませた事言ってんじゃないわよ・・・・・・」
「姐さんひょっとして照れてるんすか? ヘッヘッヘ・・・・・・ぐへッ!」
「このナマモノはいつになったら学習するのかしらね」

ネギの肩に乗っかっているカモがいやらしい笑みを浮かべた途端、アスナが振りかえってパンチ一発。カモはそのまま砂利道に吹っ飛ばされる。

「イテテ・・・・・姐さんと銀の兄貴ってなんで俺に対してこんなに・・・・・・うおッ!」
「なんやこのナマモノ? 喋れるんか?」
「ぬおぉぉぉぉ!! 尻尾を持つなッ! 千切れるゥゥゥゥ!!!」
「あれ、君は・・・・・・」

飛んで来たカモをヒョイと尻尾から吊り上げるニット帽を被った少年。
ネギは突然やって来たその少年の事を知っている。

「桂さんの所の・・・・・・小太郎君だよね?」
「おおそうや、なんやお前等、ここに用があったんかい」
「尻尾がァァァァ!! 俺っちのチャームポイントが取れるゥゥゥゥ!!」

小太郎によって宙ぶらりんの状態にされているので尻尾に自分の体重が乗っかり、そのせいで尻尾に激しい激痛がカモを襲う。
そんな彼を無視してネギと小太郎は関西呪術協会の本山の前で会話を始めた。

「僕とアスナさんはここの本部に関東魔術協会からの使者として親書を渡しに来たんだよ」
「へ~そりゃあご苦労なこっちゃな」
「アンタは何でここに来たのよ?」
「ん? 俺か?」

ネギとは違い不審な物を見る様な目でアスナは小太郎に尋ねる。子供とはいえ攘夷志士の一人の仲間、油断はできない。
まああの桂小太郎の仲間なので土方や刹那の様にそこまでアスナは警戒心は無い。

「俺はヅラに会いに来たんや、アイツここに住んでるからな」
「えッ! 桂さんが関西呪術協会の本部に住んでいるッ!? どういう事ッ!?」
「おお、そういや言わんかったな、なんか異世界からここに来る時、偶然落ちて来た場所がここの関西呪術協会の本部なんやって、そのままここにちゃっかり住まさせてもらってるっちゅう話や」
「そうなんだ・・・・・・桂さんと関西呪術協会の本部が繋がってたなんて・・・・・・」
「兄貴ィィィィ!! 俺っちの“繋がってる”尻尾の方は千切れそうなんすけどォォォォ!!」

悲鳴の様な声を上げて助けを求めているカモの声も聞こえていない様子でネギは難しい表情をする。そんな彼の顔を見て小太郎は歩み寄って一言。

「別にここは危険やないで、あの嬢ちゃんを狙ってる関西呪術協会の女は、今はこことはなんも関わり持ってへん」
「そ、それ本当ッ!?」
「ああ、あの千草っていうネエちゃんは西洋魔術に個人的な怨み持ってるからな・・・・・・・」
「怨み?」


苦い表情をしながら小太郎が呟いた言葉にネギが眉を潜ませる。
一体彼女は何故西洋魔術に怨みを持っているのだ・・・・・・・?

「ま、その話は歩きながら話そうかい、本部に親書渡しに行くんやろ? ほな一緒に行こか」
「え? あ、うん、桂さんからも色々と話を聞きたいし」
「げ、ヅラに会うの・・・・・・? なんかアイツ天パと同じ匂いがするのよね、正直なるべく関わりたくないというか」
「関わりたくなくとも無理矢理絡んで来るで、アイツ」
「やっぱめんどくさいタイプなのね・・・・・・」

楽しそうに桂の特徴を教えてくれる小太郎に、アスナは嫌な顔をする。
どうも異世界の人間とは自分と相性のいいタイプがいない。

「ほら行くで、あとこれ返すわ、ホレ」
「兄貴~~~ッ!!」
「よっと」
「ええッ!? むぎゅぅッ!!」

小太郎がほおり投げて来たカモをネギはつい反射的に避ける。そのままカモは下に顔から鈍い音を立てて落ちた。

「あ、兄貴・・・・・・いくらなんでも酷過ぎッス・・・・・・」
「ごめん、つい前に神威とさんと試しにやった亀田流トレーニングのクセでつい」
「俺っちはピンポン玉ですかぃ・・・・・・」

地面に顔をうずめながら後頭部を掻いて謝るネギに弱々しくツッコむ。

かくしてメンバーに桂の仲間である犬上小太郎を加入したネギとアスナは、遂に関西呪術協会の本部へと足を踏み入れる事になったのだ。









































第五十訓 絡まる糸はほどく気がなければほどけない

ネギ一行が本山へと入った頃、銀時とあやかも二人でシネマ村に着いていた。
銀時の世界にある町、『江戸』と似通った建物や風景に銀時は目を見開いて辺りをキョロキョロと見渡す。

「ふ~ん、着物着てる奴までいるよ、なんだ江戸とそっくりだなここ、久しぶりに江戸に帰って気がするぜ」
「ウフフ、来て良かったですか?」
「まあ暇つぶしにはなるわな」
「素直じゃないですわね・・・・・・」

満更でもない様子なのに正直に言わない銀時にあやかはため息をつく。
まあ彼の性格は今まで一緒にいた期間で十分わかっているのだが

(せめて二人っきりの時は素直になって欲しいですわね・・・・・・)

あやかのそんな心情を知ってか知らずか、突然銀時は彼女の手を引っ張る。

「きゃッ!」
「とりあえず軽く団子でも食おうぜ、色々見てたら腹減って来たんだよ」
「わ、わかりましたから、そんないきなり手を握らないで下さいませ・・・・・・!」

手を強く握ってくる銀時に、あやかは周りの目を気にしながら彼に団子屋の前に引っ張られていく。

そんな二人の姿を、建物の影からコッソリと覗いている少女が二人。

「あいつ等のデート先“ここ”だったのかよ・・・・・・!」
「い、いやぁ、さすがに私もこれにはビックリ・・・・・・! いいんちょがデート先に選んだのがシネマ村なんて予想できなかったよ、てっきり人目の付かないような場所に行くと思ってたのに」

物影から顔を出している二人の少女は長谷川千雨と朝倉和美。二人はたまたまここに来ていたのだが、まさかこんな所であの二人に会えるとは夢にも思わなかったらしい。

「まあ確かに・・・・・・いいんちょだったらもっと一般客がいない所行く筈だよな」
「そうだよね・・・・・・でもここって江戸出身の銀さんなら好むかもしれないよ、自分の都合に合わせないでちゃんと相手の方が喜びそうな場所をチョイスするなんて・・・・・・いいんんちょの奴、マジで決める気だね・・・・・・!」
「どうだかねぇ、ホレ、団子喉に詰まらせてやんの」
「ええッ!」

店の前にある腰かけに座って銀時が買ってくれた団子を食べていたあやかだが、隣に銀時が座っている緊張で思わず喉に団子が詰まらせてしまう。胸をドンドンと叩いた後、慌ててお茶を飲む彼女の姿に、千雨は呆れ、和美は苦笑する。

「あの調子で告白なんて出来るのかよ・・・・・・」
「ハハ・・・・・・健闘を祈るとしか言えないね・・・・・」

ゼーゼーと息を荒げながら銀時に背中をさすられているあやかの姿を見て、二人は段々と心配になって来た。

「あの調子じゃあさすがに告白するステップまで踏めそうにないよ、いきなり足思いっきりグネってるもん・・・・・・私って千雨ちゃん派だけど、あれは可哀想だよ・・・・・・」
「場所選びは良かったけど本人がアレじゃあな・・・・・・」


「お前大丈夫か? 慌てて食うからだぞ」
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・す、すみません・・・・・・」

銀時に背中をさすられながらあやかは苦しそうな顔で謝る。どうやらここまで来て、銀時と二人一緒にいる事によって緊張がピークに達したらしい。

(こんな人が一杯いる中で銀さんと二人っきり・・・・・・無理です私、恥ずかしくて頭がどうにかなりそうですわ・・・・・・)
「良くなったか? ったく年寄りでも無いクセに団子なんかで喉詰まらせて・・・・・・うぶッ!」
「え?」

落ち込んでいるあやかを見て銀時は呆れたように団子を口にほおばる。その瞬間彼はいきなり何かが喉に詰まったような苦しそうな表情になる。

「!」
「もしかして・・・・・・銀さんも・・・・・・?」
「!!」
「あ、お、お茶ですかッ!? はいッ」

さっきのあやかの時と同様胸を叩いた後、即座に彼女に向かってお茶を求める銀時。あやかはすぐに持っていたお茶を差し出す、銀時はそれを奪い取るようにひったくり、慌てて一気に飲み干した。

「・・・・・・あ~一瞬綺麗な川が見えた・・・・・・」
「大丈夫ですか・・・・・・?」

安堵のため息をつく銀時にあやかが心配そうに尋ねる、すると彼は彼女に向かって背中を向けて

「まだちょっと苦しいんだよ・・・・・・悪いが背中さすってくれや」
「ええッ!・・・・・・わ、わかりましたわ・・・・・・」

男の背中を触ると言う事に恥ずかしさにあやかは少し強張るも、他でもない銀時の頼みなので緊張した様子であやかは彼の背中をさする。
そんなおかしなコンビを見て千雨と和美はどんどん不安になる。

「ダメだ、いいんちょもいいんちょなら銀八も銀八だ・・・・・・」
「ハハハ・・・・・」

二人の不安をよそに、銀時はその場からヨロヨロと立ち上がり、その後ろについてくるあやかと共に別の場所へと移動するのであった。



































団子屋を後にした銀時とあやか。二人はシネマ村を適当にブラブラ歩いていると、ふとある場所が目に入った。

「銀さん銀さん、ここの更衣所は着物や様々な衣装を貸してくれるそうですの・・・・・・」
「俺とっくに着物だから間に合ってるよ」
「いや銀さんじゃなくて私が着物を・・・・・・それに着物以外にも衣装はあるだろうし、銀さんが着たがるような物もきっとありますわ、せっかくこんな所に着たんですし、ね?」

緊張しながらも入りたそうに更衣所を指差すあやか、だが銀時はブスっとした表情であまり乗り気じゃない、あまりそういう事に興味無いのだ。
だがここで無下に断るとなんか悪い気がするので銀時は仕方なそうにため息をつき

「そんなに着物着たいなら付き合ってやるよ・・・・・・」
「あ、ありがとうございますッ! じゃあ早く入りましょうか」
「はいはい」

彼女の手に引っ張られて銀時は更衣所へ入って行く。

二人の一部始終をちょっと離れた所から隠れて見ていた千雨と和美は二人が中へ入った所を確認した。

「いいんちょの奴こんな所に来たがってたのか」
「着物かぁ、私達も着る?」
「そうだなぁ・・・・・・ネットアイドルとしては今後のコスプレ衣装として試しに着てみるのも・・・・・・・」
「アイドルがなんだって?」
「い、いや別に・・・・・・」

和美と会話中につい考えてた言葉が口に出てしまったので慌ててごまかす千雨。パパラッチの彼女にネットアイドルの事をバレてしまったら一巻の終わりだ。

「つ、つうかまだ入れないだろ? ほら、いいんちょと銀八が中にいるし」
「そうだねぇ二人がいなくなった後に借りに行こうか」

二人でそんな事を会話していると、10分後

「あ、銀さんといいんちょが出て来た」
「何? 随分早いなアイツ等・・・・・・」

まだ二人が中に入ってそんなに時間が経っていないのに銀時とあやかは衣装に着替えて更衣所から出て来た。何故かわからないが二人の息は荒く、逃げるように出て来た感じだ。

「な・・・・・・何で“アイツ等”がいんだよ・・・・・・!」
「まさかあの人達もシネマ村に来てたなんて・・・・・・思わずすぐに着替えて出てきてしまいましたわ・・・・・・」

その場で疲れたように息を荒げた後、深呼吸して落ち着き、改めて二人はふとお互いの着ている服に目が入った。特に銀時はあやかの事を食い入れるように見つめた。

「お、お前・・・・・・!」
「ど、どうでしょうか・・・・・・?」

恥ずかしそうに銀時に向かって着物姿を披露するあやか。
咲き誇るような桜の花びらがくっきりとよく出ている模様、透き通るようなピンク、実に彼女らしい着物だった。
あやかの着物姿を初めて目のあたりにした銀時はしばし目を見開いていると、ハッと我に気付いてすぐに目を逸らす。

「ま、まあ悪くねえな・・・・・・」
「そうですか? 時間が無くて舞子さんみたいなカツラを被れなかったのが少し残念ですけど、やっぱ着物は黒髪の方が合いますし・・・・・・」
「いや金髪でもそれはそれで味があって文句ねえよ・・・・・・」
「本当ですか? あ、ありがとうございます・・・・・・」

目を合わせないでボソリと銀時が呟いた言葉に、あやかは照れながらも頭を少し下げる。
ふとあやかも銀時の着ている衣装を見る。もっとも彼の服装は彼女が選んで着させて上げたのだが

「銀さんもその衣装どうですか? なんか本当に戦場で戦ってたような姿ですわよ?」
「その表現は100%当たってるよ、だってお前この格好・・・・・」

改めて自分の服装をチェックする銀時。白い大きな羽織に白い額当てが特徴を表現していて他にも様々な物を付けているが今の姿はどう見ても・・・・・・

(思いっきり攘夷戦争の時の俺の格好じゃねえか・・・・・・)

透明な窓ガラスが傍に合ったので銀時はそこで自分の姿を眺める。
腰に偽刀だけではなく木刀も差している所と、背中に夕凪を差していなければ完璧昔の自分の姿のままである。

(まさかまたこの格好になるとは夢にも思わなかったな・・・・・・)
「あの、変でしたか・・・・・・? 銀さんらしくするよう色々、素材を集めて合わせてみたんですけど・・・・・・やっぱり私のセンスじゃ・・・・・・・」
「いやお前のセンスはピカイチだから、これ完璧表現出てるよね? 背中から変な汁が出るぐらい出てるよね? 今というより昔の銀さんだけどかなり表現されてるからね?」
「え? そ、そこまで良かったですか・・・・・・?」
「銀さん検定があったらお前に銀さん一級を与えたいぐらいだ」
「ありがとうございますッ!」

自分の姿をまだ見ている銀時に向かってあやかは嬉しそうに声を上げる。
見たわけでもないのに攘夷戦争時代の銀時の格好を偶然とはいえそのまま表現するとは・・・・・・
これには彼も彼女に感心するしかない。

「なんかこう見てると昔の自分に会った様な気がして気味悪いな・・・・・・んじゃ、ま、他にも色々と巡ろうかお姫様よ」
「お、お姫ッ!?」
「なんかそれっぽいだろ今のお前、行くぞ」
「ああッ! お、お待ちになってお侍様ッ!」
「いやキャラは作らなくていいから」

自分なりの姫様キャラを作るあやかに銀時はツッコんだ後、二人で一緒にどっかへ行ってしまう。
二人の後ろ姿を千雨はボーっとして眺めていた。

「やっぱいいんちょって着物姿も綺麗だなぁ・・・・・・」
「ねえ千雨ちゃん、今の内にここ入って着替えようよ、早く早く~」
「うるせえな・・・・・・わかったから背中押すなよ」

着物姿のあやかをみて感想を呟いている千雨の背中を押して、彼女を更衣所に入れようとする和美。
千雨は表面的にはめんどくさそうにするが内面では和美同様一度着物を着てみたいと思っていた。
一体どんなもんなのかと期待を胸に千雨は和美に押されながら中へ入ってみると・・・・・

「のどか、似合ってるな~土方さんが見たら顔赤らめてぶっ倒れるかもしれへんで?」
「や、止めてよ木乃香・・・・・・」
「「・・・・・・はい?」」

着物姿で待ち合わせ室でワイワイはしゃいでいる近衛木乃香と宮崎のどかの姿があった。


































場所は変わりシネマ村のとある建物の屋根の上。
そこにはある三人組の姿があった。

「ここに例のお嬢ちゃんがいるのはホンマか?」
「ふ、元お庭番衆最強の忍びと言われた俺の情報だぞ、抜け目はねえ」
「そうか」
「ここにあのお侍さんもいるんかなぁ・・・・・・」

関西呪術協会の陰陽術師、天ヶ崎千草と彼女の雇った忍びであり、銀時と同じ世界の住人、服部全蔵。そして若くして二刀の使い手の月詠が屋根の上からシネマ村を眺めていた。

「いると思うぜ、向こうだってみすみすあの娘っ子を奪われないよう護衛を周囲に固めてる筈だ。さて、どうする千草」
「決まってるやろ、誰が相手になろうが全て蹴散らす、今度こそ木乃香お嬢様をさらわんと高杉の奴にマジでウチら殺されるで」

隣で寝そべって少年ジャンプを読みながら尋ねて来た全蔵に千草は若干焦りの入った口調で返す。
高杉晋助の元で二度も失敗してはどんな目に遭わされるのやら・・・・・・

「考えるだけで恐ろしいわ・・・・・・全蔵、今回はマジで捕まえるで」
「わかってるつうの、俺もそろそろ覚悟を決めたんでね」
「ほう、そんなら異世界の忍びも遂に本領発揮という事か・・・・・・」
「そうらしいな、俺もそろそろ我慢の限界だ」

いかにも悪役らしい笑みを見せてくる千草に、全蔵はジャンプを置いてニヤリと笑う。

「遂に俺のケツに住みつく悪魔、痔を手術する日を決めたぜ」
「フッフッフ、これで長年全蔵を苦しめた痔もいよいよ・・・・・・ってアホかぁぁぁぁ!!! なんや痔の手術決めたってッ! 覚悟って手術する方の覚悟ッ!? そんな覚悟欲しがっとらんわッ! ウチが欲しいのは木乃香お嬢様を奪う為に戦う覚悟やッ!」
「あ、ワリぃ、医者から手術をやる前はしばらく運動控えろって言われてるんだよね俺」
「そんなん知るかボケェッ!! つうかこんなクソ肝心な時に何病院通ってんねんッ!」

真顔で手を横に振って戦う事を拒否する全蔵に千草は屋根の上で大声を上げて怒鳴りつける。彼女にとって全蔵の痔などどうでもいい存在だ。

「ったく、テメェは痔になった事ねえからわかんねえだろうけどよ、そりゃもう歩くのもままならない地獄の様な痛みがケツに襲ってくるんだぜ、俺もうそろそろ地獄に通うの嫌なんだよ、ブサイクだらけの天国行きてぇんだよ」
「一生痔で苦しんでろドアホ・・・・・・」
「痔ってどんなんどすか~? ウチもかかる可能性ありますか~?」
「いや若い子はならねえんじゃねえの? これはアレだから、運命に選ばれてしまった哀れな罪人、もしくは漫画家がかかってしまう病気であってだな、まあ少し長くなるがつまり・・・・・・」
「いたいけな子供になんちゅうモン教えようとしてんねんお前はッ!」

興味津々に目を輝かせている月詠に全蔵がゆっくりと痔について説明をしようとすると、千草のかかと落としが彼の頭に直撃。

「もうこんなくだらん話は終いやッ! さっさと木乃香お嬢様を奪う準備をするでッ!」
「いや準備も何も、春雨の幹部の奴等はとっくにそれぞれどっか行っちまったぜ」
「フン、アイツ等はウチの事甘く見てるからな・・・・・・自分達で勝手にやろうと考えてるんやろ・・・・・・」

頭をさすっている全蔵に千草は苦々しい表情をする。元々自分や春雨も高杉を総大将とする集団だが、あちらの連中は千草の事をずっと下に見ている。高杉も彼女の事は下っ端扱いだ。

「今に見てろや・・・・・・最後の最後にアイツ等にウチをナメとった事を後悔させたる」
「ま、頑張れよ、俺は病室でお前の健闘を祈ってるわ」
「ドサクサに入院する事暴露したやろッ! 絶対逃がさへんぞッ! お前は一生ウチの元で働けッ! いいなッ!?」

全蔵は千草の叫び声をやかましそうに耳を塞いだ後、すぐに脇に置いていたジャンプを拾って読書タイムに

「やなこった、俺は醜面の女が好きなんだ、べっぴんさんのアンタには興味ねえ、用が済んだらとっとと元の世界に帰る手段でも見つけるさ」
「腹立つぅぅぅぅぅ!! 西洋魔術に復讐し終わったら、ホンマ呪い殺したるからな・・・・・・!」
「へいへい」

彼女が高杉の計画に加担した動機を知っている全蔵はジャンプを読みながらため息交じりに呟いた

「復讐ねぇ・・・・・・」



































































「両親を戦争で失った? それで西洋魔術に復讐を?」
「そやそや、千草のネエちゃんの目的はあくまで両親を殺した西洋の魔術師達への報復。難儀な話やなぁ」

シネマ村から遠く離れた関西術師本部の本山、カモを肩に乗せたネギ、アスナと小太郎は話をしながらまだ歩いていた。

「自分の復讐の為に木乃香さんや僕達を巻き込んでるってわけか・・・・・・」
「俺はあのネエちゃんはとは結構会ってたけど、そんな他人を利用して悪どい事出来る人間には見えなかったんやけどな・・・・・・どっちかつうとありゃあ悪役としても小物や」
「小物って・・・・・・」
「てことは兄貴、親玉の高杉がやっぱ元凶っちゅう事ッスね」
「う~ん、まだ詳しい事はよくわかんないからその推論が正しいのかどうか・・・・・・」

小太郎とカモの話に難しそうに悩むネギ。はっきり言って謎だらけの今、何が正しいのか分からない。
ネギがどうしていいのか困っていると、後ろで歩いているアスナが息を荒くしながら話しかけて来た。

「ネギ・・・・・・まだ着かないの?」
「うわぁ、随分と死にそうですねアスナさん、止め刺しましょうか?」
「・・・・・・これ以上歩いても着かなかったら頼むわ・・・・・・」
「何物騒な会話してんねん・・・・・・・でも確かに気が付いてみれば・・・・・・」

疲れてヘトヘトの状態のアスナにネギは輝くような笑顔で戦慄する一言。小太郎はそんな彼にジト目でツッコんだ後、立ち止まって周りを見る。

奥まで続く長い通路、左右は奥が見えないほど雑木林がある。小太郎はしばし周りをグルリと見た後、眉間にしわを寄せた。

「こんなに長い通路やないでここ・・・・・・前来た時はもっと短かった筈や」
「どういう事よそれ・・・・・・」
「あかん、なんか敵さんの術法にかかってるかもしれへん・・・・・・」
「ええッ! じゃあもしかして僕達ここに閉じ込められたんじゃッ!?」
「そこまではわからんけど、この空間は敵さんがやったっちゅうのは確かや」

小太郎の結論にネギは驚いたように声を上げる。
さっきからずっと無限に続く通路、こんな事するのは恐らく本部へ行かせないようしている敵の仕業。小太郎の推論にネギが顎に手を当てて考えていると、彼の肩に乗っかっているカモをアスナがヒョイと掴む。

尻尾から

「イデデデデデデデッ!!」
「アンタ、結構魔法とかの知識あるわよねッ! だったらこの通路がなんでこうなるのかわかるでしょッ!?」
「イデデッ! 俺っちは陰陽道の術式系統はあまりわかりやせんッ! ていうか尻尾から持たないでくだせえッ!」
「知らないわよッ! こっちは疲れてんだからさっさとこっから脱出する方法見つけさないよッ! このナマモノォォォォ!!」
「ちょォォォォォ!! 姐さん尻尾握ったまま振り回さないでェェェェ!!」

疲れているにも関わらずアスナはカモの尻尾を握ったまま縦に高速回転。ネギ達の周囲でカモの絶叫が響く。だがしばらくして

ブチ、という嫌な音と共にカモが地面に思いっきり叩きつけられた。

「ふべしッ! イッテ~これで二回目ッスよ全くいきなり離すなんて姐さん酷いッス・・・・・・」
「あ」
「へ? どうしたんスか?」
「尻尾」
「尻尾?」

何かに気付いたように口を開けてカモ指さすアスナ。尻尾がどうかしたのかとカモが振り返ってみると

そこにはいつもお尻についていた尻尾は無く、代わりに噴水の様に血が噴き出す。

「オォォォォォ!! 俺っちの尻尾ねぇぇぇぇぇ!!!」
「ここにあるわよ、ほら」
「姐さぁぁぁぁぁんッ!!!」

自慢の尻尾が無くて絶叫しているカモにアスナは呑気そうに手に握っている彼の尻尾を見せる。
どうやら振り回していたら切れてしまったらしい

「どうするんすかコレッ! 俺っちの可愛い尻尾が俺っちから融合解除しちゃったじゃないッスかッ!」
「いいじゃん、元から必要あるわけでもないしこんなモン、人間はこんなモン無くても元気に生きていけるのよ」
「あるでしょッ! オコジョにとって尻尾は大事ッ! つまりこれあってこそ俺っちでしょッ!!」
「安心して、食べる部分があればアンタはギリギリ存在価値あるから」
「俺っちの存在価値ってギリギリ食用ッ!? 」

尻尾の部分から血を発射しながら泣き叫んでいるカモに、アスナはだるそうに彼の取れた尻尾を目の前でプラプラさせながら酷い言葉を浴びせる。
そんな事をやっている一人と一匹を見て小太郎は頬を引きつる。

「おい子供先生、お前のペットの尻尾取れたで・・・・・・」
「いや~元から必要あるわけでもないし問題ないよ」
「お前もあのネエちゃんみたいな事言うんやな・・・・・・」

同い年ぐらいの少年のさりげない一言に、小太郎が若干恐れ始めていると、突然何かに気付いた。

「・・・・・・ん?」
「どうしたの?」
「人がこっち来る気配を感じるんや・・・・・・」
「あ、本当だ・・・・・・」

人の気配に気付いた小太郎は100Mぐらいまで続いている奥の通路に目を越す。ネギも一緒に奥に向かってジッと見つめる。アスナとカモも二人を見てとりあえず静かになる。

しばらくしてコツコツと音を立てて歩いてくる足音が奥から聞こえてきた。

「誰だろう、敵かな?」
「かもな、そっちの方が確率が高いしな・・・・・・」
「でも足音の重さからして子供ぐらいだよ?」
「お前そこまでわかるんかい・・・・・・」

ネギの洞察力と気配の読みに小太郎はジト目で見て内心驚く。
そんな所まで気が付くのか・・・・・・
小太郎がそんな事を考えている間に足音はどんどんこっちに近づいてくる。すると小さな人影少しずつ見えて来た。

「やっぱり僕達とそう変わらない子供だ・・・・・・ローブを付けた子供」
「何モンや・・・・・・?」
「気味が悪いわね・・・・・」
「俺っちの尻尾・・・・・・」

アスナから返してもらった尻尾を持って泣きながら見つめるカモを覗いて、他の三人は近づいてくる子供に目を凝らす。

ぼんやりとした人影は徐々にはっきりと映り、その次はより鮮明に姿が見えるようになった。ネギ達とその子供の距離がぐんぐん近くなる。
30M
20M
15M
5M
・・・・・・3M

「そこで止まれや」

小太郎が命令するように鋭く放った一言に、ローブを付けたその子供はピタッと止まった。
この距離なら十分相手の姿が観察できる。

漆黒のローブ、顔はフードに覆われて見えない、しかし身長はネギや小太郎とは対して変わらなかった。だが腰の部分に装着してある日本刀からはかなりの威圧感を感じる。
装着している子供より長いのだ。

「なんやこのガキ・・・・・・あんな自分より長い刀で戦うつもりか?」
「・・・・・・」
「どうしたのよ、ネギ」
「あの子供・・・・・・僕知ってる様な・・・・・・」
「なんですって・・・・・・?」
「プッ」
「え?」

隣で目の前にいる子供を凝視するネギの言った言葉にアスナは目を細める。
すると目の前でだんまりしていた子供が意外にも含み笑いをした。

「相変わらずトロいわねアンタは」
「その声・・・・・・!」

ネギは聞いた声に誰なのかとや気付いて目を見開く。
その反応にフードの下からバカにするように歯をニンマリと出しながら

「全く、顔隠してるぐらいで幼馴染のレディを忘れるなんて、アンタそれじゃあ一生紳士になれないわよ」

その子供は頭に被ってるフードをそっと取った。

「やっぱアンタは私がついてないとね」
「アーニャッ!」
「俺っちの尻尾~・・・・・・・ん? ええッ!?」

ちょっと昔に別れたばかりなのに何処か懐かしく感じる再会。
赤髪のツインテールとツリ目をして、いつものツンとした態度を取るまだあどけない少女
ネギの幼馴染であり同じ学校の卒業生、一つ年上のアーニャだった。
ネギと尻尾を抱いているカモが驚いたように叫ぶが、初対面のアスナと小太郎は首を傾げる。

「アーニャ?」
「誰やそれ?」
「イギリスで一緒に学校を通っていた僕より一個上の幼馴染ですよッ! でも確かアーニャはフランスで占い師をやってるって言ってたよね? なんでここにいるの?」
「ふふん、ちょっとばかし大事な用があってね、それでアンタを驚かせる為に内緒で来ちゃった」

困惑しているネギにアーニャはニコリと笑みを見せる。だが彼女の腰にあるベルトに装着している長い日本刀、あれは一体・・・・・・

「久しぶり、ネギッ!」
「う、うん・・・・・・」

元気そうに挨拶してくるいつものアーニャにネギはぎこちなく頷く。
変だと感じているのはネギだけではなくカモも同じで、取れた尻尾を左脇に挟んだまま、ネギの肩に乗っかって耳打ちを始める

「兄貴・・・・・・あの嬢ちゃんは確かイギリスの学校で一緒だった幼馴染っすよね・・・・・・? 少しおかしくありませんかい・・・・・・?」
「僕もちょっと変だと感じてるんだ・・・・・・アーニャがなんで京都にいるのか、なんでこの閉鎖されてる空間に入って来れたのか・・・・・・それにあの刀・・・・・・」
「もしかして、俺っち達を錯乱する為に用意した、敵の幻術って可能性があるんじゃないですかぃ?」
「幻術ッ!?」

ネギが思わず叫んでしまった一言にアーニャはムスッと不機嫌そうな顔を浮かべる。

「誰が幻術よッ! 私は占い師としてフランスで活躍するアンナ・ユーリエウナ・ココロウァッ! そしてボケでチビのネギの世話係であるアーニャよッ!」
「う~ん、そのキツイ口調は確かにいつものアーニャだ・・・・・・」
「それにあれは幻術やないで、紛れもない実体や」

昔から変わっていない彼女の態度を見てネギは苦笑しながらうんうんと頷く。小太郎も彼女の事を実体だと察知したようだ。
だが謎が全て解明されたわけではない。ネギは思い切って彼女に疑問をぶつけてみた

「ところでアーニャはどうしてこんな所にいるの? ここは今危険だよ? それに腰にそんな長い剣差してちゃ駄目だよ、ここには危ない連中がいるんだから」
「あー大丈夫よ、問題ないわそんな小さな事。それよりさ・・・・・」

ネギの注意も小さい事と称して軽く受け流すアーニャはすぐに話を変える。

その時彼女の声のトーンが突然低くなった。

「今日はネギにちょっと一緒に来て欲しい所があるのよ・・・・・・」
「来て欲しい・・・・・・所?」

アーニャの周りの空気が変わった。
ネギがそれを察知したと同時に、アーニャはゆっくりと顔を上げる。

その顔は、先ほどのあどけない少女の顔とはまるで別人だった。

「高杉の所よ・・・・・・」
「「「「!!!!」」」」

アーニャの言葉にそこにいた一同は耳を疑う。高杉、それはネギ達の敵である男の名なのだ。
きっと聞き間違えたんだと思ったネギは声を震わせながら問いかける

「ご、ごめん・・・・・・もう一度言ってくれないかな・・・・・・」
「高杉晋助」
「!!」
「私達の世界とは違う世界では、攘夷志士の中で最も過激な部類に入ると呼ばれている男。ネギ、一緒に高杉の所に行きましょ。大丈夫、わたしがついてるから・・・・・・」
「ど、どうしてアーニャがその人の事を・・・・・・!」

今度はちゃんと確信のある口調で返してくるアーニャ、しかも彼女と昔からの友人であったネギでさえも今まで見た事のない妖艶とした笑みで。

「アンタも・・・・・・私と高杉と同じ側の人間の筈なのよ・・・・・・そうでしょネギ・・・・・・!」
「そんな・・・・・・! アーニャ、何で君があの人を・・・・・・!」

ネギは混乱しながらアーニャから思わず後ずさりするも、彼女も狂喜に駆られた目をしながら歩き出す。ベルトに装着している刀を揺らしながら。

絡まっていた糸はやがて一本の糸となる






[7093] 第五十一訓 隠し事はバレてこそ意味がある
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/04 13:02

友人とは時に衝撃的な出会いを果たす事がある。
しばらく会わない内に相手が社会的な大出世を遂げていたり。
あるいはとんでもないどん底に落ちている時。
そして




こちらと対立する側として現れる時だってあるのだ

幼馴染同士のネギとアーニャもまた、しばらく会わなかった内にいつの間にか『対なる存在』となってしまったのだ。

「まずは話してあげるわ、数ヶ月前、私はある召喚魔法を唱えてみたの。まだ半人前の私には決してできない筈だったのよ? 面白半分だったのに・・・・・・」
「・・・・・・・」
「だけどその召喚魔法は成功してしまった・・・・・・それで来たのが高杉よ」
「アーニャ・・・・・・てことは・・・・・・!」
「そう、高杉をこの世界に呼んだのは私なのネギ、ここで起こっている事は全て・・・・・・元は私のせいで起こっている事なの・・・・・・」

物語の発端を話ながらアーニャは鋭い目つきで近づいてくる。だが昔とは違う雰囲気を持った彼女の姿に、ネギは恐怖を感じ、地面に根を張ったように足が動かない。

「でも別に後悔なんてしてないわ、むしろこれは神様が私に与えてくたチャンス・・・・・・だって私にとって一番欲しかったのが手に入ったんだもの」
「何言ってるんだよアーニャ・・・・・・! 高杉さんは危険だって銀さんや桂さんも・・・・・・!」

ネギの口から出て来た銀時と桂という名前にアーニャは鼻で笑って嘲笑する。

「坂田銀時や桂小太郎の話なんかを、アンタ本当に真に受けてるの? あんな奴等、高杉の強さに恐れてるただの臆病者じゃない?」
「なんやと・・・・・・!」
「これは異世界の話だけど、攘夷戦争が終わって弱腰の幕府を壊そうとしてるのは高杉だけよ。桂も穏健派と言って戦わず、銀時に至っては過去を忘れて戦いから逃げてる男、ネギ、あんな奴等の事なんか聞いても耳に垢が溜まるだけよ」

せせら笑いを浮かべて見下した態度を取るアーニャ。
彼女の話を黙って聞いていた小太郎は、ある人物を卑下された事に反応して、奥歯を噛みしめながらアーニャの前に出た。

「さっきから随分とイカれてる娘やなホンマ・・・・・・頭のネジが全部抜けてるんちゃうか・・・・・・?」
「何? アンタとその女には用は無いんだけど? 目ざわりだからさっさと消えて頂戴」
「お前に言われなくてもこっちから喜んで消えるわ、せやけどな・・・・・・」

射殺すように睨んで来るアーニャを睨み返した後。
小太郎は何の前触れも無しに突然彼女に向かって

「お前を一発殴りたくなったッ!」
「小太郎君ッ!」
「ガキンチョッ!」

アーニャに向かって拳を上げて突っ込んでいく小太郎に慌ててネギとアスナが叫ぶ。

「目の前でヅラの事を臆病者呼ばわりされて・・・・・・こっちは腹わた煮えくり返ったわッ!」

仲間である桂の事を見下された事に小太郎は怒りをあらわにしながら吠える。だが突っ込んできた彼に対してアーニャはつまらなそうに腰のベルトに装着されている刀を鞘ごとカチッと音を立てて外し

「“臆病者の飼い犬”なんかに用は無いのよ」

彼女が呟いた途端、小太郎と彼女が接触。だが何も起こらず、なんの音もせず。
アスナからはただ小太郎がアーニャの横を通り過ぎただけの様にしか見えない。
しかし隣で彼女と一緒に眺めていたネギには“見えて”いた。

「そんな・・・・・・!」
「どうしたのよネギ、何があったの?」
「へ~、ネギ、私のが見えたの? 中々の動体視力じゃない」

驚愕しているネギにわからなかったアスナが尋ねていると、アーニャは何事もなかったように嬉しそうに彼を見つめる。

「私の“居合い”が見えるなんて、強くなったのねネギ」
「何処でそんな剣術を・・・・・・」
「チッ、油断した・・・・・・」
「ガキンチョッ!」

交差してアーニャの後ろにいた小太郎がアスナ達の方に振り返ると、彼の首には一本の短い細い赤筋が

「あとちょっと回避が遅かったら、ホンマ首が飛ぶ所やった・・・・・」
「ふ~ん、犬のクセによく避けたわね、まあいいわ」

小太郎に向かってアーニャは小馬鹿にする言葉を振り向かずにぶつけた後、彼女はそんな彼をほっといて

「こんなくだらないお遊びなんてやってないでもう行きましょ、ネギ」

目の前にいるネギに優しく手を差し伸べるアーニャ、だがそんな彼女にネギはぐっと拳に力を込めながら、ゆっくりと口を開く。

「アーニャ・・・・・・高杉さんは他人を口車に乗せて狡猾に操る事が出来る悪い人だって刹那さんや木乃香さんが言ってた、きっとアーニャも高杉さんに騙されてるんだよ・・・・・・」

ネギの発言にアーニャはクスリと面白そうに笑う。

「騙されてないわ、私はあいつがやってる事全部ひっくるめて正しいと思ってるの。そして私は・・・・・・・あいつの事を『希望の光』だと確信している」
「希望の・・・・・・・光?」
「そうよ」

どういう意味なのか理解できていないネギにアーニャは笑みを見せる。
狂気に満ちた笑顔を

「春雨に復讐する為に高杉は私の・・・・・・! いえ私達の希望の光なのよ・・・・・!」
「!!」
「ふ、復讐ですって・・・・・・!」

思いがけない一言にネギ、そして隣にいるアスナも目を思いっきり開く。


忌々しい過去と向き合う時がやって来た

































































第五十一訓 隠し事はバレてこそ意味がある


後ろにいる小太郎と目の前にいるネギとカモ、アスナに聞こえるようにアーニャはゆっくりと昔話を始める。

ネギと自分の人生を変えたあの6年前の惨劇を

「私とネギがもっと小さかった頃、イギリスのとある村に住んでいた。小さくて大したモンもなかった村だったけど、ママや友達、知り合いのみんなが一杯いて楽しかった・・・・・・けど、突然アイツ等が私達の村を襲ったのよ・・・・・・」
「異世界からやって来た宇宙海賊春雨と悪魔・・・・・・」
「そうよ、アイツ等は村を焼き、悪魔は呪いで村の人達を呪いをかけて石化させ、春雨の連中は好き勝手暴れて大勢の人達を殺したわ・・・・・・! 私のママも呪いで・・・・・・友達や仲良くしてたおじさんやおばさんもみんな春雨の奴等に殺された・・・・・・!」
「ネギ・・・・・・本当なの・・・・・・? 春雨ってヅラが言ってた悪い組織の事よね・・・・・・?」

あまりにも残酷な話に、アスナは震えながらネギに尋ねる。
彼はあの出来事を思い出して苦しそうな表情でコクンと頷いた。

「はい・・・・・・・」
「アンタ・・・・・・その年でそんな目に遭ってたなんて」
「俺っちも初めて知りやした・・・・・・」
「胸糞悪くなる話やな・・・・・・」

アスナとカモが初めて聞いたネギの過去にショックを受けてる中、小太郎は苦々しい表情を浮かべる。村の住人を皆殺しにするなど、正気の沙汰ではない。

「あの時は大変だったわ、私とネギもネカネお姉ちゃんは夜兎の星海坊主さんに助けられたけど、生き残ったのは私達三人だけ・・・・・・」
「夜兎の星海坊主・・・・・・?」
「僕とネカネお姉ちゃん、アーニャを春雨の連中から助けてくれた恩人です、神威さんと同じ夜兎族の一人で、僕の父さんの仲間だったそうです・・・・・・」
「あ、兄貴、夜兎に助けてもらった事があるんですかい・・・・・!? 随分と変わった夜兎もいるモンッスね・・・・・・」

ネギの肩に乗っかっているカモが口をあんぐりと開けて驚く。
本来夜兎族は人助けという真似なんてしない筈なのだが・・・・・・
星海坊主の説明をネギが終えたと同時にアーニャはまた話を続ける

「幸い、学校と星海坊主さんのおかげで不自由ない生活は出来た、けど・・・・・・心の傷は残ったままだったのよ私は・・・・・・」
「僕と一緒に学校を通っていた頃から・・・・・・?」
「ええ、この手で春雨に復讐することばっか考えていたわ、ネギと楽しく勉強したり遊んでる時もずっと・・・・・・」
「・・・・・・」
「でも奴等がまた目の前にやって来るなんて保障は無い、それに私は例えアイツ等が来ても、アイツ等を殺す力も無い・・・・・・その現実を考えただけで胸が引き裂かれそうにな毎日だったわ・・・・・・ネギ、あなただってそうでしょ?」

アーニャの問いかけにネギは下唇をぐっと噛みしめる。彼のそんな反応を自分の意見の同意と受け取ったのか彼女は満足そうに微笑む。

「そうよ、あなただって心の中に春雨に対する憎しみはある筈、ネカネお姉ちゃんもきっと春雨の事を怨んでるわ」
「ネカネお姉ちゃんも・・・・・・?」
「私ね、春雨に村を襲われてママと一緒に逃げてた時見たのよ・・・・・・」

一瞬言うのをためらうかのような動きをするアーニャ、しかしネギには言っておかなければならないという使命感が勝り、彼女はポツリと呟いた

「ネカネお姉ちゃんの両親が春雨の連中に殺されたのを・・・・・・」
「!!」

その事実にネギは驚愕する。彼の親戚の姉的存在であったネカネはそんな事一度も言わなかった。

「あの人の両親は春雨に殺されていたのよあの時」
「そんな・・・・・・! ネカネお姉ちゃんそんな素振り全く見せなかったのよ・・・・・・! てっきり悪魔の呪いでまだ石化状態にされてるだけだと思ったのに・・・・・・!」
「私達に隠してたんだと思うわ、その事がバレたらあなたと私も悲しむと思って、私もアンタが悲しむと思って今まで言えなかった・・・・・・」
「ネカネお姉ちゃん・・・・・・」

ネカネの思いやりをアーニャから聞いてネギは握り拳に力を込める。
まさか両親の死を隠したままあんなに気丈に振舞っていたなんて・・・・・・
アーニャも悲しそうな表情を浮かべたまま、うなだれているネギに対して話を再開する。

「私とネギ、ネカネお姉ちゃんも考えてる事は一緒の筈よ? 春雨は私達の親友達、知り合いを殺した仇。心に傷跡をつけたまま何も出来ないで、平和に生きて行く事なんて出来ないでしょ? だからあなたは現に力を求めている・・・・・・」
「アーニャの言う通り、僕はまだ春雨の事を許そうとなんて考えていない・・・・・・僕達の人生を滅茶苦茶にした奴等・・・・・・でも」

うなだれていたネギは顔を上げ、アーニャに向かって口を開く。

「僕は春雨の連中を殺したくて力を求めたわけじゃない・・・・・・・父さんや銀さん、星海坊主さんの様に誰かを護れる力が欲しかったんだ」

キッパリとアーニャに向かって宣言したネギ。
殺す力ではなく護る力、ネギが本来欲していた力はそれだった。
しかし彼女はそれを聞いて口に小さな笑みをうっすらと浮かべた。

「そうね、だからアンタは神威から力を学んだ。周りのみんなを護るとかどうとか言って、アイツの殺しのスキルを会得していった・・・・・・」
「アーニャも神威さんの事知ってたの・・・・・・・?」

ビックリした様な表情でネギが聞いてきたので、薄ら笑いを浮かべていたアーニャが更に笑みを広げた。

「ええ、だってアイツは一応、私達側の奴だから」
「か、神威さんがそっち側・・・・・・!?」
「ネギ、今あなたの敵には高杉と私、関西呪術協会の奴等だけじゃないのよ。高杉と同じく異世界から来た宇宙海賊春雨の幹部もここにいる、私達の仇がすぐそこに来てるの、そしてアンタは・・・・・・」

アーニャはジリジリとネギに近づいて行く。怒りと憎しみ、そして喜びが混ざっているというなんとも異様な目をギラギラさせながら。



















「アンタはね・・・・・・春雨の幹部から戦い方を教わっていたのよ」






















長い沈黙が流れた。
ネギはアーニャが言った事が理解出来ていないように固まる。
だがしかし、他の二人と一匹は意味を理解していた。
今までネギに戦い方を教えていた神威という男は・・・・・・・。
村のみんなの仇である春雨の一人だったのだと。

「そん・・・・・・な・・・・・・・」
「アンタに戦い方を教えてたのは・・・・・・アンタの村を襲った組織の一人だったって事なの・・・・・・?」
「てことは自分を憎んでいる相手にそいつは、何食わぬ顔で兄貴が強くなる事を手伝っていた事になるッスよ・・・・・・」
「やってる事がホンマにどうかしてるで・・・・・・自分を殺すかもしれないガキに殺し方を教えるなんて・・・・・・」

アスナとカモ、後ろでアーニャの動きを見張っている小太郎が神威の行動に戦慄を感じる。
だがネギはまだ事態を掌握出来ていない様だった。

「嘘だ・・・・・・神威さんが春雨の幹部だなんて嘘だ・・・・・・!」
「嘘じゃないわよ」

凝視して睨みつけてくるネギにアーニャはキッパリと返した。

「理由はわからないけどアイツは元々アンタに会う為に麻帆良に行ったの、サウザンド・マスターの息子であるアンタを強くする為に。アイツがどうしてそんな真似をしたのかはわからないけど、そんな事どうでもいいわ」

神威が何故ネギに鍛錬を施したのかはアーニャ自身もわからなかったようだ。
そればっかりは彼しか知らないが、アーニャはそんなの考える事でも無いと首を横に振る。

「私はアイツがアンタに戦い方を教えてると聞いた時、復讐の為の好機だと思ったの。春雨の連中が私達と同盟を組んでいると“思って”ここにいる、そして高杉が私の傍にいる・・・・・・」

まるでいつも自分の事を気遣う姉の様にアーニャが優しく語りかけながら近づいてくる。もうネギとアーニャの距離は手を伸ばせば届く位置に達していた。後ろの小太郎は彼女がどう出るか慎重にうかがう。

「ねえネギ、私と高杉と一緒に春雨を倒しましょ? アンタが神威の事をどう思っていても、アイツは私達の敵、殺さなければいけない敵なの・・・・・・」
「・・・・・・・出来ないよそんな事」
「何言ってるの?」
「神威さんが例え春雨の一人だと知っちゃっても・・・・・・僕はあの人と一緒にいる時間が長すぎて・・・・・・例えちょっと恐くて物騒でも、時々鍛練中にマジで殺しにかかって来たり、自分の仇だった組織の一人でも・・・・・・僕にとって神威さんは大切な人なんだ・・・・・・」

アスナが心配そうに見つめる中、ネギは悲しそうにうなだれる。
まだ年端もいかない少年には春雨の連中を殺す事なんて出来ない。
ましてや親しかった“彼”を殺す事など。
そんなネギの姿を見てもアーニャは鋭い目つきで少し声を荒げる

「神威はアンタが思ってるほど綺麗な奴じゃないわよ、何考えてるか分かんない奴だけどそれだけは言えるわ、あんなヘラヘラ笑ってる奴・・・・・・」
「・・・・・・」

アーニャに言われてもネギは黙ったままだ。しばらくしてそんな彼にアーニャはゆっくりと手を差し伸べる。刀を持っていない方の右手で

「高杉の所へ行きましょうネギ、これから私がアンタに色々と教えて上げるから、こんな所にいてもアンタは強くなれないわ」
「アンタ・・・・・・!」

笑みを浮かべながらネギを自分の所に引き抜こうとしているアーニャにアスナが一歩前に出て身構える。が、アーニャは即座に彼女を横目で睨んで

「私の近くにそれ以上近づいたら首が飛ぶわよ?」
「く・・・・・!」
「後ろのアンタも手に持ってる札を捨てなさい、この女が死んでもいいなら別だけど」

アスナが悔しそうに下がると今度は後ろにいる小太郎にも振り向かずに警告する。
それを聞いて小太郎はしかめっ面で手に持っていた式神を呼び寄せられるお札をポケットにしまった。

「ネエちゃんもっとそいつから離れとけや・・・・・・魔術師でもあらへんクセに・・・・・・」
「う、うっさいわねッ!」
「そこのネギの肩に乗ってる小動物も消えなさい」
「何言ってんでぃコンチクショーッ! お、俺っちが尻尾が無くなっても兄貴に対する忠誠心は無くならねえッ!」 

取れた尻尾を両手で刀の様に持ってカモはネギの肩に乗っかったまま立ち上がって構える。
が、威勢は良いのだが物凄く震えている。

「き、斬れるもんなら斬ってみやがれッ! お、お、俺っちの尻尾はダイヤモンドも斬り裂くんだぜッ!」
「本当にいいのかしら・・・・・・? 尻尾どころか腰から下まで無くす事になるわよ?」
「・・・・・・すんませんでした・・・・・・」
「アンタねえ・・・・・・」

殺気のある目でアーニャに睨まれた瞬間、カモが持っていた尻尾はへにょと情けなく折れる。すぐに謝ってネギの肩から飛び降りる彼の姿に、アスナは呆れたようにため息をついた。
もう自分とネギの周りには誰もいない、アーニャは改まって彼に手を差し伸べる。

「行くわよネギ」
「僕は・・・・・・行けない」
「え?」
「高杉さんのやってる事が正解だとは思えない・・・・・・」

ネギに拒絶された事にアーニャは目を大きく開いて意外そうな表情を浮かべる。

「ネギ、アンタまさか・・・・・・春雨をこのまま身勝手にさせる気なの・・・・・・?」
「・・・・・・・僕の力の使い道はみんなを護る為なんだよ」
「・・・・・・」
「復讐するために得た力じゃないんだ・・・・・・」

首を横に小さく振って誘いを断るネギ。
自分の力は己の為ではない、仲間の為なのだ。
彼に断られてショックを受けたような表情をした後、アーニャは深いため息をつく。

「しょうがないわね・・・・・・“コレ”をまだアンタに言うのは早いと思ったんだけど・・・・・・」
「アーニャ?」
「アンタ、両親の顔・・・・・・覚えてる?」

虚空を見つめる様な目つきをしながら首を傾げた状態で尋ねてくるアーニャにネギは少しゾクッと恐怖で背筋が凍りつくも、フルフルとまた首を横に振る。

「僕がまだ赤ん坊の時に、僕の母さんが一人でネカネお姉ちゃんの家に僕を預けに来たのはお姉ちゃんから聞いてるけど・・・・・・それっきり母さんと父さんも行方不明として扱われて、僕は二人の顔さえ知らないよ・・・・・・」
「そう、やっぱりね」
「何でそんな事を突然・・・・・・」

全く関係ない話が唐突に来たのでネギが困惑していると、アーニャはさみしそうな表情を浮かべながらゆっくりと口を開いた。

「私、アンタの母親と会ったのよ、ここで」
「なッ!!!!」
「・・・・・・神威の奴に正体を聞かされて驚いたわ」

さっきから彼女の話には驚かせられっぱなしだったが、今回の話は一番驚くニュースだった。
アーニャは行方不明だった筈の自分の母親と会った。しかもこの京都で

「な、なんで母さんがここにいるの・・・・・・」
「実はアンタの母さん・・・・・・」

ネギに向かってアーニャは隠し事を話すように声を潜ませる。

だがその時だった。

「おやおやぁ? こんな所で小太郎君は何やってるんですかぁ?」
「お、お前ッ!」

不意にアーニャの後ろから男の声、彼女は話を中断してバッと振り返る。
そこにいたのは彼女にとって招かれざる客だった

「子供達だけで内緒話でもしてるんですか? 私も混ぜてくれませんかね?」
「アルビレオ・イマ・・・・・・!」
「え、誰?」
「い、いえ僕も知りません・・・・・・」
「何処の二枚目の兄ちゃんッスか?」

小太郎と同じく桂小太郎の仲間の一人のアルが突然現れた事にアーニャは歯ぎしりするが、ネギとアスナとカモは彼の事を知らない。
するとアルは呑気そうな口調でアーニャと三人に向かって

「クウネル・サンダースですよぉ、一応偽名使ってんですからそっちで覚えて下さい、ねえ小太郎君」
「あ、頭撫でるなボケェ~・・・・・・」
「おや? 桂さん以外の人には撫でられたくないんですかぁ?」
「ちゃうわアホ~・・・・・・」
「なんでアンタがここに・・・・・・! あの女の術でここには結界が張られてる筈・・・・・・!」
「ああ、それでしたらこの人がパパッと消してくれました」
「何ですって?」

嫌がる小太郎の頭を無理矢理撫でながらアルはヒョイと横に動く。するとそこにはもう一人別の男が立っていた。
彫の深い顔と知識と威厳が伝わる様な風貌と眼鏡、袴を着て左手には鞘に収まっている長い野太刀。

「初めまして、関西呪術協会の本部の長である近衛詠春です、ここで好き勝手暴れては困りますね、お嬢さん」
「チッ・・・・・・! よりにもよって呪術協会の長が来るなんて・・・・・・!」
「あなたが関西呪術協会本部の長・・・・・・!」
「何アレ渋すぎッ! 私のめっちゃタイプッ! 結婚したいッ!」
「姐さん・・・・・・」

招かれざる客として現れた二人目の人物は桂の居場所を提供している近衛詠春。関西呪術協会本部の長が現れた事にアーニャは苛立つように舌打ちし、ネギは驚き、アスナは狂喜し、カモはそんな彼女を見て引いていた。

「アル、ネギ先生や他のみんなを連れて私の本部へ行け、私はこの子の相手をする」
「相手をする・・・・・・は! まさか詠春ってロリコンだったんですか・・・・・・・! これは衝撃的な事実ですね・・・・・・」
「つまらん冗談など言ってないで早く行けぇッ! 私に斬られたいのかッ!」

真面目に悩んでそうな表情をするアルに詠春は怒鳴りつける。
アルはそれを聞いて仕方なく渋々と彼の言う事に従う。

「ま、人の趣味は色々ありますからね・・・・・・ではそこの二人も早くこっちに来て下さい」
「でも僕は・・・・・・」
「ネギッ! まだ私との話は・・・・・・!」

慌ててネギを取り押さえようとアーニャは彼に手を伸ばす。が、彼のローブを掴もうとしたその瞬間、ネギは思いっきり何かに引っ張られ彼女の目の前から姿を消す。

「あのガキンチョはカッコいいオジ様に任せるわよッ!」
「ア、 アスナさんッ!」
「俺っちの事も忘れないでくだせぇ~ッ!」
「くッ! なんてすばしっこい女なの・・・・・・!」

ネギの後ろ襟を掴んでアスナは猛スピードでアルの方に急いで逃げる。カモも必死にそれに追いつこうと大事な尻尾を持ったまま二本足で走る。
アーニャが気付く頃には彼女達は刀の範囲外まで走り、すぐにアルと小太郎の元へ辿り着く

「ねえ、そこのホモっぽいのッ! 私達何処まで逃げればいいのッ!?」
「あ、わかっちゃいました?」
「エェェェェェ!! アンタマジでガチホモッ!?」

爽やかに笑いながらぶっちゃけるアルにネギを片手で持っているアスナは一緒に走りながら驚く。しかし彼女の問いかけに今度は流すように

「私がノーマルかアブノーマルかは置いといてさっさと行きましょう、この奥を走り抜ければ本部までもうすぐですから」
「気になる所を適当にはぐらかされた・・・・・・」
「あいつとまともに話しようしても無駄やで、ヅラと同じ電波系やから」
「ヅラといいコイツといい、あの変な生物といい・・・・・・アンタも大変ね」
「・・・・・もう慣れたわ」

小太郎と苦労話しながらアスナはアル達と一緒にネギを連れてアーニャから逃げる。

「アーニャ・・・・・・」
「お母さんの事、聞きそびれたわね・・・・・・・」
「はい・・・・・・」

アスナに片手で掴まれてる状態で会話しながらネギは一度後ろに振り返る。
こちらをじっと殺気を込めて睨みつけてくるアーニャが立っている。

その光景を最後に、出口に達した瞬間目の前は光に包まれ何も見えなくなった。
























































残されたアーニャは、ネギを連れ去られた事に怒りで体をワナワナと震わせながら、足止め役として残っている詠春を睨みつけていた。

「どうして私とネギの邪魔を・・・・・・! 私はあの子を高杉の所に連れて行くのッ! そこをどいてッ!」
「いやぁ・・・・・・さすがにそれは出来ないな・・・・・・」

命令口調で叫んでくるアーニャに詠春は困ったように苦笑する。すると彼女は持っている刀を鞘から抜いて刃を彼の前に突き出す。

「ガキだからって甘く見るんじゃないわよッ! 刀の使い方ならこっちだって心得てるのよッ!」
「ふむ・・・・・・その刀、かなり細工されてるね、それに君からではなく刀からの方が巨大な魔力を感じる」
「・・・・・・」
「まるで君が刀を使ってるのではなく、刀が君を使っているみたいだ」
「うるさいッ!」
「おっと、危ない」

淡々とした解説を詠春がしていると、アーニャは突然その刀で襲いかかってくるも。
全く動じず詠春は持っていた野太刀を鞘から抜かずにそのまま彼女の刀を受け止める。

「くッ!」
「コレでも昔、アルやサウザンドマスターの仲間をやっていてね、年を取って随分腕も衰えたが神鳴流としてはまだ現役だよ」

アーニャがどんなに刀に力を込めても詠春はビクともしない。圧倒的力の差、それを理解したアーニャは悔しそうに彼から一歩下がる。

「過去の英雄がシャリシャリ出てくるんじゃないわよ・・・・・・!」
「それもそうなんだね・・・・・・けど君達がやらかそうとしてる事は長として絶対に阻止しなければならない。“鬼神復活”は君の言う復讐とやらには必要な事なのかい?」

刀を持ったまま構えている詠春の問いかけにアーニャはフンと鼻を鳴らす。

「鬼神を手に入れれば高杉の力はもっと強くなる、春雨を潰すにはもっと力が必要なのよ」
「なるほど、狙いはあの人が言っていた宇宙海賊とやらか・・・・・・ま、残念ながら私はどんな理由であれ君の意見には賛同できないだろうな」

メガネをカチリと上げ、前にいる復讐心の塊の様なアーニャを遠い目で見据える。

「大事な娘を危険にさらそうとしている輩は例え女子供でも、私は容赦しないよ」
「・・・・・・」

ジッと見てくる詠春にアーニャは黙ったまま睨み返すだけ、衰えても未だ目の前の男は仏にも鬼にもなれるのだ。

しばらくして、アーニャは苦々しい表情をした後、クルリと詠春の方に背を向けた。

「・・・・・・一旦引かせてもらうわ」
「そうしてくれると助かるよ、女の子と喧嘩なんてしたら娘に顔向けできないしね」

刀をカチャンと鞘におさめてアーニャは目の前から去ろうとする。それに詠春が安堵の笑みを浮かべていると、突然彼女が首だけ振り返ってこちらに視線を向けた。

「娘の事が心配なら早く会いに行ったらどう? こうしてる間にとっくに“私達の物”になってるかも知れないわよ?」
「ああ、それなら心配ない。あの子には刹那がついてるし、それにあの人もいる」
「あの人?」

自信ありげに言った詠春の言葉にアーニャは疑問を感じると、彼はフッと笑って呟いた。











「狂乱の貴公子という侍さ」




































シネマ村のとある道。普段は何て事ない道なのだが今日の観光客は少し異様な光景を目のあたりにした。

道のど真ん中に青いゴミ箱がポツンと置いてあるではないか。

「木乃香殿を早く探さねば、しかし真撰組がいる可能性もあるし堂々と道を歩けん、俺はやどうすれば・・・・・・」

ゴミ箱の中でボソボソと男の独り言が聞こえるのがより一層周りの人を不気味にさせる。
だがしばらくしてそのゴミ箱に果敢にも近づく一人の男が・・・・・・

「おおッ! ネカネさんおっかしいモンが置いてあるぞッ! なんか入ってそうじゃの~アハハッ!」
「変な物に触らないで、特にあなたが触ったらなお危険になるんだから・・・・・・」
「アハハハハッ! 心配せんでよかッ! 何が入ってるか確かめるだけじゃいッ!」
(腹の立つ声と腹の立つ笑い声だな・・・・・・はて? 何処かで聞き覚えが・・・・・)

ゴミ箱の中にいる者が知り合いの男と被るその声に首を傾げていると、突然ゴミ箱のフタがパカッと開いて上から光が降り注ぐ。

「宝物でも出てこ~いッ!・・・・・・・ありゃ?」
「ん?」
















ゴミ箱を開けた男とゴミ箱の中にいた男が目を合わせ数秒間固まる。
そして

「アハハ・・・・・・アハハハハッ! 宝物が入ってると思うたらヅラが入ってたわッ! 傑作じゃッ! アハハハハッ!」
「坂本ォォォォォ!!!! き、貴様何でこんな所にいるッ!?」
「高杉だけかと思うとったらおまんもこっちにいたかぁッ! 本当わし等は腐れ縁じゃのッ! アハハハハッ!」

黒いパーマのグラサンの男、攘夷志士として戦っていた侍の一人、坂本辰馬がゴミ箱の中にいたかつての戦友である桂小太郎が驚いてる様を見て、思わず天を仰ぎながら大笑いしている。
彼と一緒に行動しているネカネ・スプリングフィールドは何事かとジト目で首を傾げた。

「本格的にイカれたのかしら・・・・・・?」





















































『おまけ』

話はネギがアーニャと遭遇した所から始まる。
シネマ村にて千雨と和美は銀時とあやかのデートの尾行がてら、江戸風の衣装に着替えられる更衣所に入ってみた。するとそこで思わぬグループに遭遇する。

「・・・・・・お前等もここに来ていたのか?」
「うん、さっきいいんちょと銀ちゃんにも会ったで」
「だから銀さん達逃げるように出てったんだ・・・・・・」

待ち合わせ室に腰かけていたのは同じ生徒である木乃香とのどか。二人共綺麗な着物を着て他のメンバーが着替え終わるのを待っているらしい。

「長谷川さんと朝倉も着物着替えにきたん?」
「ああ、そうだけど・・・・・・」
「でもさ、二人共着物姿似合うよね、写真撮っていい?」
「えへへ、そんなん言われると照れるわぁ」
「わ、私は別に似合ってませんから・・・・・・!」

自前のカメラを持って写真を撮ろうとする和美に木乃香とのどかは恥ずかしそうに手を横に振る。
ちなみに木乃香の方は濃い赤と黒を混ぜた着物を着て、のどかはというと・・・・・・

「ねえ、千雨ちゃん、本屋のあの格好ってさ、何かに似てるよね」
「極道の女みてえだな」
「ええッ!?」

のどかの着ている着物はほぼ黒でそこに紫色が薄く入っている。千雨が漏らした感想にのどかは口を開けて驚く。どうやら彼女自身でそういう狙いでやったわけではないらしい。

「そんな恰好に見えるんだ・・・・・・夕映におススメされたから変だとは思ったけど・・・・・・」
「アイツのおススメを素直に聞くなよ・・・・・・」
「まあ旦那が極道見たいなもんだしいいんじゃない?」
「だ、旦那さんでもないし、極道じゃないよ十四郎さんは・・・・・!」

笑いながら茶化してくる和美にのどかは顔を赤らめて否定する。
4人でそんな事をしていると女性陣の方がゾロゾロと戻って来た。

「着替え終わったよ~、あれ? 長谷川さんと朝倉も来てたの?」
「早乙女、お前の格好何・・・・・・・?」
「んん? 柳生十兵衛だけど?」

出会いがしらに質問してきたハルナに千雨は逆に質問する。彼女が着てる物は女性用の着物ではなく、腰に刀を差した男性用の袴姿、しかも左目に眼帯を付けている。

「九じゃなくて十だからね」
「そういう発言は止めろ・・・・・・」
「ああ、せっちゃんやっぱ似合っとるな~」
「そ、そうですか?」

変な事を言う笑って言うハルナに千雨が小声で呟いていると、木乃香が一緒に同行している刹那の服装を見て感激している。
青と白の羽織り、背中には誠の文字が浮かんでいる。その格好はまさに・・・・・・

「ホンマ、新撰組の美少年剣士見たいやわ~」
「美“少年”ですか・・・・・・複雑ですね」
「オイオイオイこの作品でその格好はマズイだろ、新撰組っておま・・・・・・」
「あれ? 羽織りに人の名前が書いてあるで?」
「『土方歳三』って書いてますね、なんかこの名前に惹きつけられて思わず選んでしまいました」
「偉人の名前まで出すなよ、ゴチャゴチャするだろ・・・・・・」

羽織りの前襟に書いてある名前を口走る刹那に千雨がボソッとツッコミを入れる。すると刹那とハルナと一緒に出て来た夕映も自分の格好を千雨に見せる。刹那と同じ“新撰組”の格好で、羽織りを誇らしげに広げる。

「私のは『近藤勇』ですぅ」
「お前等本格的にあの連中潰す気か・・・・・・?」
「いえ、どちらかというと応援してますよ、一人だけですが。それ以外は別に潰れてもいいです」
「へ?」

千雨に意味深な発言を残した後夕映は刹那の方へ向いてさっきのように羽織りを両手で持って広げる。

「近藤勇は土方歳三の上司なんです、と言う事で私の命令は素直に従って下さい刹那さん」
「なんでそうなるんですか・・・・・・」
「腹切って死んで下さい」
「涼しい顔でそんな事言わないで下さい・・・・・・」

サラリと切腹を申しつける夕映に刹那がジト目でツッコむ。そんな事をしていると、男性陣の二人も帰って来た。彼女達と一緒に行動している“真撰組”の土方と沖田だ。

「オラオラオラァッ! 新撰組のお通りでぃッ!」
「一番着たら間際らしい奴等が着ちゃってるし・・・・・・!」

真撰組ならぬ新撰組の格好を着て現れた沖田と土方に、千雨がすかさず身を乗り出す。 
すると沖田は青い羽織りをなびかせながら彼女に近づき

「俺の名は“沖田総司”、新撰組の一番隊隊長だ」
「よりもよって同じ人の羽織り着てるよこの人・・・・・・本当何がしたいのお前等、何をゴールにして生きてんのお前等?」
「心配しなくて大丈夫でぃ、土方さんはこれっぽっちも問題ない奴のを着てるんでね」
「問題ない奴って誰だよ・・・・・・」

ツッコんでくる千雨に沖田はニヤリと笑って後ろでタバコを咥えている土方を指差す。
彼も刹那達と同じ新撰組の格好なのだが・・・・・・。
千雨が疑問に思っていると、土方はタバコを咥えながら自分の着ていた羽織りの裏を自信満々にバッと千雨の方にめくる。
そこに書いてあった名前は・・・・・・

『ミッ○ーマウス』
「アウトォォォォォォォォ!!!! 色んな意味あらゆる事全部含めてアウトォォォォ!!!」

親指を突き出して千雨は思いっきり叫ぶ。だが土方はフンと鼻を鳴らして。

「俺の隊士にはこいつの名前はいなかった、よってこれは何も問題はねえ」
「いや問題あるだろッ! 問題ありすぎじゃねえかッ! よりにもよってなんで地上最強のキャラクターを・・・・・・ってオイッ! よく考えてみればなんで新撰組の格好なのにそのキャラクターの名前載ってんだよッ!」
「そりゃお前、ミッ○ーが新撰組だったからに決まってるだろ」
「普通にミッ○ー言うなッ! なわけねえだろッ! あいつは浦安にある巨大テーマパークのドンだよッ!」  

冷静にとんでもない事を言う土方に呆れたようにつぶやく千雨。すると沖田が両手に描写出来ない代物を持ってきた。

「土方さん、これもあったんで頭に被ってくだせえ、そうすれば完璧にミッ○ーになれますぜ」
「そんなの誰が被るか」
「オイィィィィ!! なんだそのモザイクの塊ッ!? 完璧それアレだろうがッ! 巨大テーマパークで女性がよく被るアレだろうがッ!」 

沖田が持っているモザイクの塊を千雨が慌てて取り上げて捨てる。何処にあったのだろうか・・・・・。

「マジで『D』に潰されたいのかアンタはッ!」
「うるせえ小娘だな、じゃあミ○ーの方だったら良かったって事か?」
「なわけねえだろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「土方さんって結構ボケるんだね・・・・・・」
「うん・・・・・・」

若干引き気味のハルナがのどかに話しかける。あまり見ない土方の姿にのどかも立てに頷いた。

「おいなんでテメェが近藤さんの奴着てんだ、殺すぞ脱げ、つうか脱いでも殺す」
「いやですぅ」
「なんで揉めてるんやそこの二人?」
「なんか譲れない事でもあるんじゃないですか・・・・・・?」

土方と千雨が話してる近くで、理由は分からないが沖田が夕映と揉めている。
木乃香と刹那はその意外な組み合わせに疑問を感じる。

ネギ達がどういう状況なのかも知らず、千雨達はシネマ村でおおいにはしゃぎまくっていたのであった。






[7093] 第五十二訓  闇と光は表裏一体
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/07 21:32
関西呪術協会の長の近衛詠春によってアーニャから無事に逃げれたネギ一行は、綺麗な川が流れているのが見える場所にある大きな岩の上で詠春を待つ為休憩をしていた。

「いやはや大変でしたねぇ」

一緒に休んでいるアスナと小太郎、尻尾を持って号泣しているカモにアルはニコッと笑う。

「でもこれからもっと死にかけたり、トラウマが芽生える様な悲惨な事があるかもしれませんけど、一人も欠けずに無事に生き残りましょう」
「不吉な事言わないでよ・・・・・・」

爽やかスマイルで話しかけてくるアルにアスナは嫌そうな顔をする、この状況だと冗談には聞こえない。
そんな彼にネギ達と同行していた小太郎が被っていた帽子を取って、髪を掻き毟りながら気になった事を尋ねた。

「つうか何でお前がこんな所に来たんや? ヅラの奴はどうしたん?」
「桂さんは近衛木乃香さんの護衛に行っています。私はというと元々本部で暇を持て余してたんですけど、近くでやけにおかしな魔力が発生していたので詠春と共にここに駆け付けたんです。すみません私じゃなくて桂さんが良かったですよね小太郎君は」
「川に投げ込むぞアホンダラ・・・・・・」

ボサボサになっている黒髪をかき乱しながら小太郎は、茶化してくるアルにしかめっ面を向ける。

だが、ふと彼の方を向いていたアスナは目に入った“ある物”に気付いて、小太郎の頭部をジッと見た。

犬の様な耳が二つぴょこんと出ている・・・・・・

「何その耳・・・・・・? 犬耳のコスプレ?」
「はい、これは私が小太郎君がの萌え度をより上昇させる為に画策した・・・・・・」
「ちゃうわボケェッ! 生まれつき俺の耳やッ! 俺は『狗族』の血が流れてるからお前等普通の人間とは色々違うだけやッ!」

アスナの問いかけに目を光らせてデマカセを口走るアルに小太郎はその耳を引っ張りながら吠える。
それを聞くとアスナは「またか」と言っている様な目で彼の犬耳を眺める。

「ウサギ(夜兎族)の次は犬(狗族)? なんかまどろこっしい種族が一杯いるのねぇ」
「この世界や異世界では私達人間とは違う様々な種族がいますよ、特に魔法世界とか、ね? アスナさん?」
「は? 私が行った事も無い世界の事を知ってるわけないでしょ、ていうか何で私の名前知ってるのよアンタ」
「ははは、それにしても昔と違って随分とおてんぱ娘になられましたねぇ」
「私はアンタみたいなホモと会った事無いわよ、変な奴・・・・・・・」

意味深なセリフを吐くアルにアスナが不審者を見る目つきで視線をぶつける。
だがアルはニコニコ笑いながら全く気にしていないようだ

(・・・・・・星海坊主さんが今の彼女を見たらビックリするでしょうね)
「それよりネエちゃん、あそこでボーっとしている子供先生を一人にさせといて平気なんか?」
「別に飛びこもうとしてるわけんじゃないんだから大丈夫よきっと」

小太郎の唐突な質問にアスナは頬杖を突きながらだるそうに答える。
アスナ達の輪に入らず、一人で川辺に立って色々な事を思いつめているネギ。
彼を遠くから眺めながらアスナはハァ~とため息をついた。

「幼馴染と師匠が敵になってたんだもん、そりゃあの腹黒のガキだって悩むに決まってるでしょ・・・・・・」
「姐さん、俺っちも今悩みに悩みまくってるんすよ・・・・・・」
「あら、アンタ生きてたの?」
「生きてるっすよッ! 勝手に死亡者として登録しないでくだせぇッ!」 

今初めてその存在を知ったような口ぶりに、アスナの足元にいたカモは必死に叫ぶ。
そして彼はおもむろに持っていた自分の尻尾を彼女に見せつける。
アスナのせいで取れてしまったカモの大事な尻尾だ

「それより姐さんこの尻尾ッ! どう責任取ってくれるんすかコレッ!? 俺っちの萌えアイテムが姉さんのせいでブチ切れたんッスよッ! 俺っち自身も姐さんにブチギレてるッスからねッ!?」
「んなちっぽけな事で私に怒らないでよ、どうせ生えるでしょ」
「いやトカゲじゃないんすからッ!」
「しょうがないわね今度のりでくっつけて上げるわよ」
「なんでのりッ!? せめてボンドとか接着剤にして下さいよッ!」

カモの抗議にめんどくさそうにアスナが対応する。
彼女はいい加減な態度を取るが、カモにとっては重要な大事件の様だ。













一人と一匹でそんな事をしているとアーニャの足止め役をやっていた詠春がようやく戻って来た。

「やあ、遅くなったね、あの子は意外にあっけなく引いたから問題ないよ。また来るかもしないが・・・・・・」
「オジ様ッ!」

若干疲れている様な顔をしながらやってきた詠春にアスナはキャラが変わったように明るく黄色い声を上げる。
余談だが彼女の好みのタイプはカッコ良くて渋いおじさん系だ。

「さて、これからどうしようか。まずは本部に戻ってそれから・・・・・・」
「私と二人で京都をデートしましょうオジ様ッ!」
「いやいやいや・・・・・・その選択肢は色々とマズイから遠慮させてもらうよ」

いきなりすっ飛んだ事を言うアスナに詠春は困った顔で手を横に振る。
その時、改めてアスナの姿を詠春は拝見した

(しばらく見ない内に随分と大きくなられたな・・・・・・)
「姐さんッ! デートより俺の尻尾・・・・・・・!」
「・・・・・・あ?」
「・・・・・・いえ今度のりでお願いします・・・・・・」
(そして随分とキャラが変わられたな・・・・・・・)

泣きそうなカモに思いっきりメンチを切っているアスナを見て詠春は心なしか寂しくなる。
もう彼の知っている彼女は何処を探してもいないのだから

「・・・・・・コホン、それよりアル、ネギ先生は何処にいるんだ?」
「常盤台中学じゃないですか? もしくは上条君の所」
「小太郎君」
「あっちの川辺に立って考え事しとるで、俺が呼んでこようか?」
「ああ、頼むよ」
「私は自分のボケをスル―されるのが一番傷付くんですけど・・・・・・」

自然に自分のボケを流された事に詠春に向けてアルは珍しくショックを受けた様な顔をする。
無論、詠春はそれも無視したが












川辺に立ってボーっとしているネギに小太郎が近づいてポンと彼の肩を叩いた。

「ほら、行くで子供先生」
「え? ああ・・・・・・うん」

ぎこちない反応をして振り返るネギに小太郎は両手を後頭部に回しながらポツリと呟く。

「・・・・・・やっぱ幼馴染と師匠が敵ちゅうのはツラいモンなんか?」
「そうだね、それもあるけど・・・・・・」
「・・・・・・母ちゃんの事か?」

小太郎の問いかけに図星だと言う風にネギは小さく頷く。

「母さんの事は顔も覚えていないんだけど、やっぱり一度でいいから会いたいと思ってた人だから・・・・・・」
「会いたいねぇ・・・・・・・ならウジウジ悩む前にさっさと問題事全部終わらせて、母ちゃん探しに行った方がええんちゃう?」
「ハハ・・・・・・そうだよね」
「ほな、行こか」
「・・・・・・うん」

まだ半ば納得してない表情でネギは小太郎の背中についていく。

(アーニャ、神威さん、母さん・・・・・・僕の知らない所で三人は何をしているんだろう・・・・・・ん?)

暗い表情でネギが歩きながら考えているといきなり頭の中に知らない声が聞こえる。

『悩む必要など無いだろ・・・・・・貴様はもう・・・・・・闇に囚われている者ではないか・・・・・・』
「!!」

聞いた事のない男性のしわがれた声が頭の中に入って来て、ネギはハッとした表情で頭をおさえて立ち止まる。声はすぐに聞こえなくなった。
彼が立ち止まった事に気付いた小太郎はすぐに後ろに振り返る。

「どうしたんや?」
「いや・・・・・・ねえ、さっき変な声聞こえなかった?」
「声? いや別に何も聞こえてへんけど?」
「気のせいだったのかな・・・・・・ううん、ごめん気にしなくていいよ、多分僕疲れてるんだ」

今日だけで色々と驚く出来事が一杯あったのでそのせいで疲れが溜まり、幻聴でも聞こえたのだとネギはそう解釈しながら小太郎と一緒にアスナ達の元へ向かう。




























体の奥底に眠る力の源と共に































第五十二訓 闇と光は表裏一体

ネギ達が本部の前で色々やっている頃、木乃香の護衛役をしている土方や刹那達、千雨と和美がシネマ村の中を必死に走っていた。

「よりにもよってこんな時に来るんじゃねえよアイツ等・・・・・・・! さっきからずっと後ろから殺気を感じる」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「う、うんちょっと疲れてるけど大丈夫・・・・・・」

メンバーの先頭を走っているのは真撰組ならぬ新撰組の格好をしている土方と刹那、そして着物姿の木乃香が刹那の手に引っ張られて何かに逃げるように走っている。そしてその少し後方は

「なになにッ!? いきなりマラソン大会ッ!?」
「はひゅ~・・・・・・! はひゅ~・・・・・・!」
「ハ、ハルナッ! 夕映が今まで聞いたことない様な息吐いてるッ!」
「げぇッ!」 

土方達の後をついて行っているハルナ、夕映、のどかだが。夕映の方が苦しそうに変な息を吐いている。肉体系に自信のない彼女にとって慣れない格好で走り回る事は苦行に近い。

「土方さん夕映が死にかけてるッ!」
「そいつはいいニュースだ、安心しろ、葬式には行ってやる」
「と、十四郎さんッ!」
「はひゃ~・・・・・・あのマヨネーズバカは絶対近藤さんに頼んで島流しにしてやるです・・・・・・」

友人がピンチなのにクールな表情で振り返って縁起でも無い事を言う土方にのどかがビックリして叫んでる中、隣で必死に走っている夕映は恨めしそうにつぶやいた。

一方夕映達の後方にはまだ別の生徒と男が追走している。

「なんで私達銀八といいんちょの後をつけようとしてたのに、着物姿でシネマ村を走ってるんだ・・・・・・?」

透き通った銀色の着物を着ている千雨が荒い息を吐きながら走っている。隣には江戸時代の賭場で見かける様な着物を着た和美がニンマリと彼女に笑いかけて

「千雨ちゃん似合ってるよ着物姿、きっと銀さんイチコロ、いやニコロはいくよ」
「こんな時にわけのわかんねえボケ入れるな、ツッコミきれん・・・・・・」
「オラオラさっさと速く走れよ万事屋二代目メガネ、早くしねえと敵に追いつかれるだろうが」
「イタッ! ったくなんなんだよアンタはッ!」

二人が喋っていると後ろから沖田が千雨の背中に向かって鞘に収まった刀でしつこく突いてくる。彼女が振りかえって抗議すると沖田はしれっとした表情で

「敵さんがやって来てんだよ、奴さんの狙いはあの小娘、その周りの戦力になる連中は当然駆除対象・・・・・・旦那のほうは大丈夫かねぇ」
「はぁ? 何が何だかサッパリわかんないんだけど?」

沖田の説明を聞いても理解できていないような反応をする和美。だが彼女と一緒にその話を聞いていた千雨はハッと思い出す

銀時をつけ狙っていた金髪の女・・・・・・・

「銀八が危ねえ・・・・・・!」
「ちょッ! 千雨ちゃん待ってよッ!」
「銀八ッ!」
「あ~もうッ! 私の知らない所で何があったんだか・・・・・・落ち着いたら全部教えてよねッ!」

慌てて土方達のパーティーから抜けて横へと走り、銀時を探しに行ってしまう。和美も驚きながらも彼女について行く。。

「騒がしいガキ共だぜ、全く・・・・・・ん?」

走って行く千雨達の方に顔を向けながらだるそうに沖田が走っていると、突然誰かに当たった感触がする。
ふと前を見ると前方で困ったようにしているハルナが立っていた。

「おい、何止まってんだよ、ケツに刀ぶっ刺されてえのかコラ」
「いや進むも何も・・・・・・・土方さん達が急に橋の前で立ち止まって・・・・・・」
「あん?」

ハルナが指差した方向に沖田は視線を泳がすと、そこには神妙な面持ちで橋の真ん中につっ立ている人物を睨んでいる土方と刹那の姿が。木乃香はというと彼等を心配そうに後ろから見守っている。
三人の態度を見て何かあったのかと沖田は土方の方へ駆けて行く。

「ミッ○ーさん何かあったんですかぃ? もしかしてサン○オのキテ○の野郎が喧嘩を売りに?」
「ミッ○ー言うな・・・・・・総悟、刀をいつでも出せるよう準備しとけ」
「・・・・・・敵です」
「ん?」

土方と刹那が見てる先には橋の上で楽しげにこちらに手を振るメガネをかけた女の子が

「こんちにわ~木乃香お嬢様を奪いに来ました月詠どす~~、おおきに~~」
「あの小っこいガキが敵ですかぃ・・・・・・」
「そうだ」

手を振ってくる敵の一人である月詠に沖田はしかめっ面を浮かべる。
見た目はまだ小さな少女、あれが敵だとういうのか・・・・・・・?

「・・・・・・なんか拍子抜けですぜ、もうちっと歯ごたえのありそうな奴が相手だと思ってたんですけど」
「見かけに騙されるな総悟、あのガキの剣の腕は確かだ、俺でもてこずる相手だ」

タバコに火を付けながら説明する土方に沖田は少し意外だと言う風に頷く

「へ~ミッ○ーさんがそこまで言いますかい」
「・・・・・・お前どんだけ『DR』に喧嘩売りてえんだ?」
「土方さん、ここは私が出ましょうか?」

沖田に向かってタバコの煙を吐きながら土方がツッコんでいると、刹那が真剣な表情で彼の前に出る。だが土方はフ~と口から煙を吐いた後。

「お前はこのガキ守っとけ、あいつは俺がやる」
「わかりました、私はお嬢様と一緒に何処隠れる事が出来る場所へ」

刹那に自分が行くと主張した後、土方は腰に差す刀を握って橋の真ん中に待つ月詠の所へ行こうとする。だが

「待ってくだせえミッ○ーマウス」
「どうした総悟ていうか止めろそれ、そろそろマジで恐くなってきた」
「ここは俺にやらして貰えませんかね?」
「何?」

仏頂面で自分を親指で差す沖田に土方は意外そうに振り返る。

「昨日“色々会って”こっちはストレス溜まってるんですよ」
「あの女(千鶴)のせいでな」
「ええ、考えただけで胸焼けするぜチクショウ・・・・・・だから“ウサ晴らし”にちょいとあの娘狩らして下せぇ」
「ウサ晴らしってな・・・・・・」
「大丈夫でさぁ、殺しはしないんで・・・・・・」
「・・・・・・お前、あのガキに何かする気だろ?」

ニヤリと笑う沖田に土方が不審そうに問いかけるが、彼は無視して橋の方へ一歩一歩しっかりと歩いて行く。そんな部下の後姿を見て土方はため息を突いた後、タバコを携帯灰皿に入れる。

「逃げるぞ、ああなった総悟はもう止まらねえ、おいガキ、その娘っ子連れて何処か逃げるぞ」
「え? あの人を一人で置いていいんですか?」

刹那は心配そうに沖田に目をやるが土方は全く問題なさそうに

「奴は頭は空だが剣の腕は真撰組随一って言われてるんだ、ガキ相手に死ぬタマじゃねえ」
「そ、そうなんですか・・・・・・?」

まだ自分ともそんなに年の差は無い筈の沖田が土方よりも強い可能性を持っていると言う事に刹那が少し驚いていると、土方はのどか達三人娘に指示をしている。

「お前等もここからは別行動だ、こっからは俺とコイツとこの娘で三人だけで行く、お前等の事を狙う様な真似をする連中じゃねえから安心しろ」
「なんか・・・・・・色々と厄介事が起きてる様だね・・・・・・」
「あなたは本当にトラブルに巻き込まれるのが好きですね」

現状を理解できていないハルナと悪態を突く夕映。そしてのどかは心配そうに顔を上げて

「十四郎さん・・・・・・」
「・・・・・・すぐ戻る、ちょっと小蠅を潰さなきゃいけねえからな」
「・・・・・・気を付けて下さいね・・・・・・」
「ああ、安心して待ってろ」

心配そうだがそれを隠す様に笑ってくれるのどかに土方はまっすぐな目で頷いた。
そんな二人を見て木乃香とハルナは邪魔しないよう注意してはしゃぎだす

「おお・・・・・・! ここでまさかのラブシーン・・・・・・!」
「ウチこういうのドラマでした見た事無いから生で見るの初めてやわ・・・・・・!」
「・・・・・・」

テンションが上がっているハルナと木乃香を尻目に刹那はイライラしたように歯ぎしりしながら土方とのどかを睨んでいる。

「こんな時に何やってるんですか全く・・・・・・」
「負け組嫉妬乙ですぅ」

隣で土方とのどかの二人を写メで撮りまくっている夕映に言われた事に刹那はしかめっ面をする。

「どうしてあなた達と白夜叉はそういう変な誤解をして・・・・・・」
「おいガキ、そろそろ行くぞ」
「あ、はい・・・・・・」

のどか達に別れを告げて来た土方に呼ばれたので刹那は少し寂しそうに頷いた後、黙って木乃香と一緒に彼の後ろについて行く。

(せめて名前で呼んでもいいのに・・・・・・・一緒に住んでる私との方が付き合い長いのに・・・・・・)
「せっちゃん目が恐いで・・・・・・」
「・・・・・・敵が何処にいるか探ってるんです」

隣で走りながら尋ねてくる木乃香に向かって適当にごまかした後、刹那はムスッとした表情のまま前を走る土方に黙ってついていく。

土方に対して日に日に不満が募っていく刹那であった


















































土方達が何処かへ逃走した後、月詠との相手として残った沖田は、橋の上で彼女と静かに対峙していた。

「沖田さ~んッ! よくわかんないけど頑張れ~ッ!」
「相討ちになってください」
「夕映・・・・・・」

後ろからハルナ、夕映、のどかの声を受けながら沖田は月詠に対してすました顔で近づいて行く。

「お前みたいな奴ミッ○ーの手を煩わせる程でもねえ、この新撰組の沖田総司が刀の錆にしてやらぁ」
「ん~本当は黒髪のお兄さんの方がウチは嬉しかったんですけどね~~~、でもお兄さんもかなり強そうやからエエか~」

のほほんとしながら喋る月詠に沖田は真顔で剣を構え、彼女が両手に持っている刀を抜こうとするのを待っている。

「いいから早く得物抜けよガキンチョ、こっちは昨日からストレス溜まりまくってるんでぃ、さっきからあの女のツラが頭にチラついてどんどん溜まってくんだよ、テメェで解消させてもらうからな」
「ウチも前に何か良く知らん車に轢かれてストレス溜まってるんですよ~~、そちらさんが戦いたいなら喜んで戦います~、けどその前に・・・・・・」

月詠はパッと両手から物凄く大量のお札を突然取り出し、バッと投げる。そして・・・・・・

「ひゃっきやこぉ~~!!」
「!!」

札が突然奇抜な姿をした今まで見た事のない生物、妖怪に様変わりして、規制を上げながら沖田の方に大量に突っ込んできた。
これには沖田も驚き、後ろの方にいるハルナ達も飛んできた妖怪達に声を上げる、

「ぎゃぁぁぁ!! なんか変なナマモノ一杯出て来たァァァァ!」
「写メに撮って今度近藤さんに見せましょう」
「そんな事やってないで早く逃げ・・・・・・!」 
「カッパァァァァ!!!」
「おぐすッ!!」 
「ハ、ハルナッ! 夕映ッ! ハルナがカッパにアッパーされて倒れちゃったッ!」
「傑作ですぅ」

友人が謎の妖怪に攻撃された事を聞いても夕映は問題なさそうに妖怪達を携帯で撮っている。末恐ろしい少女である。

だが妖怪達はハルナだけではなくその後ろの一般客達にも襲い始めた。その中にはA組の生徒も多く混じっており・・・・・・

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「まき絵がヒトデマンみたいな生き物に体当たりされてもうたッ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「まき絵が凄くちっちゃい女の子達に着物の下めくられてもうたッ!」
「退けぃ虫けらがぁッ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「まき絵が呂布奉先が乗る赤兎馬に轢かれてもうたッ!」
「ジャイロォォォォォッ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「まき絵がジョニィ・ジョースターの乗る馬に轢かれてもうたッ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「まき絵が・・・・・・!」
「もうええわぁぁぁぁぁ!! 何で他に生徒が一杯いるのに私をピンポイント爆撃ッ!? ていうか馬二回出てきてるしッ!」

生徒の中には何故か他の生徒より集中的に狙われてるまき絵やそれを実況する亜子。
そしてもうひと組

「ちづ姉、なんか変なの一杯出て来たよッ! うわッ! 傘お化け飛んできたッ!」
「あら夏美、あなたのお友達? 私、お茶でも持ってこようかしら?」
「激しく違うよッ! 私は友達もっと選ぶ方だよッ!」

全く物事に動じずに落ち着いている千鶴に一緒に行動している夏美が叫ぶ。すると一緒にいた同じ反応ザジはスケッチブックを取り出し高速で何かを書いて夏美に見せた。

『お前、友達選ぶ権利あると思ってるの? 超ーウケるんですけどwww』
「ザジてんめぇぇぇぇ!!!」
「大丈夫よ夏美、知り合いから聞いたんだけど私達の学校の高等部に高音さんって人がいるんだけど、その人って中等部の子とよく一緒にいるんだけど、その人実は同級生の友達は一人もいないらしいの。だから夏美、あなたはまだ全然マシよ」
「何そのどうでもいい情報ッ!? 何で今したのッ!? それに哀しくなるから止めてくんないッ!? 私いるからッ! そんな人と違って私友達いるからッ!」

千鶴はきっと夏美を励まして上げようと思って言ったんだと思うが、正直意味不明。
夏美は即座にツッコミを入れる中、その高等部の先輩に哀れみを感じる。




他の生徒達もドタバタと騒ぎながら妖怪達と戯れているのを見て、橋の上で眺めている沖田は「へ~」と面白そうに声を出す。

「ガキ共イジメるのに使えそうだな、今度やり方教えてくれよ」
「ウフフ~羨ましいでしょウチのお友達です~~~、周りのヤジ馬はあの子達に任せて・・・・・・ウチ等も楽しみましょうか・・・・・・」

呑気な口調で喋っていた月詠が一転して目を赤く光らせ沖田に近づいて行く。
両手に持っていた刀は既に抜かれている。

「ルールはどちらかが倒れるまで斬り合う・・・・・・フフフ、あんさんは何分まで持ち堪えれるんかな~・・・・・・」

殺気を放ちながら歩み寄ってくる月詠。戦闘狂の彼女は常に血と血で争う戦いを求めているのだ。
だがそんな彼女に対して沖田はまだ生徒達と暴れている妖怪達の群れを眺めている。

「面白えな~あのナマモノ軍団、俺一匹しか持ってないから欲しいわ本当」
「一匹?」

首を傾げる月詠に沖田はやっと彼女の方に振り返り

「お前の後ろにいるそいつが俺の下僕」
「え?」

無表情で後ろの方に指差すして沖田が言うので、月詠はつい足を止めて後ろを振り返ると・・・・・・

「こ~の~ア~マ~・・・・・・・!! ご主人様と何仲良く喋ってんのよウジ虫が~~!!」
「ヒィィィィィ!! 本物の妖怪ィィィィィ!!」

自分の長い髪を逆立て月詠に対して嫉妬心を爆発させている美砂がすぐ後ろに立っていた。
沖田の忠実な下僕、柿崎美砂。月詠が思わず彼女見て悲鳴を上げるが、美砂はすかさず彼女に飛びかかって後ろから羽交い締めにする。

「ご主人様ッ! 今の内にこの女をギッタギタに殺って下さいッ!」
「デカしたメス豚、今度、土方特製犬のエサスペシャルを食わしてやる」
「ちょっと~~! 二人がかりって卑怯ですよ~~、正々堂々とウチとタイマンでやってくださ~いッ!」
「え? タイマン? 何それ? そんなルール聞いた事ねえや」
「そんな~~~!!」

最初からまともに月詠と戦うつもりがなかった沖田は、事前にいつでもあらゆる場所に出現できる美砂を彼女の背後に配置していたのだ。
美砂に羽交い締めにされた月詠はじたばた暴れるが美砂は絶対に離さず、沖田は腰に差してある刀を抜いて彼女達に近づいてく。
だが彼が抜いたのは真剣ではない。衣装用の為に差してある木製の偽刀の方だ

「これだったら死なねえからな・・・・・・」
「あら? 真剣じゃないんどすか? フフ、やっぱりウチを殺す気なんておたくら無いんですね~~~、例え女子供でも敵であったら問答無用で斬るのがあなた達の役目なんじゃないどすか~~~?」
「へへ・・・・・・バカだなオメェ・・・・・・」

拘束されながらも挑発的な笑みを浮かべる月詠に対して、沖田はどす黒い笑みを浮かべて彼女めがけて偽刀を振り上げる。
そう彼は真正の・・・・・・

「すぐ殺したらつまんねえだろうがよぉ・・・・・・」
「・・・・・・へ?」
「トゥゥゥゥゥス!!!」
「のがぁぁぁぁぁ!!!」

月詠の顔に一切手加減もせず全力で偽刀を横に振り抜く沖田。その時彼の目が妖しく光る。

ドSモード・ON

「もういっぱぁぁぁぁぁつッ!!」
「ほぐぅぅぅッ!!」
「もういっちょぉぉぉぉぉッ!!」
「あごぉぉぉぉッ!!」
「次行ってみよぉぉぉぉぉ!!」
「おげぇぇぇぇぇ!!」

容赦なんてしない。沖田の一発一発の攻撃がそれを語っている。
偽刀による往復ビンタ。そのキツイ一撃に月詠は何度も悲鳴を上げる。
4発目を終えた沖田は一旦攻撃を止めて美砂に羽交い締めにされている彼女の状態をチェックする。
死んでいる様にグッタリしていた。

「おいメス豚ァ・・・・・・こいつがさっき言っていたルールによるとどちらかが倒れたら終わりらしいからなぁ・・・・・・“絶対に倒れないように”はなすんじゃねえぞ・・・・・・」
「そ、そ、そ、そ、そんなぁ・・・・・・!」
「イエッサー、マイマスターッ!」
「よぉぉぉぉぉしッ!」
「「うぎぃぃぃぃぃ!!!」」

美砂がはっきり返事をすると沖田は月詠どころか彼女にも勢いよく偽刀を縦に振り下ろす。
いくら偽刀とはいえ、頭部めがけて落ちて来たその威力は当たり所によれば死ぬ可能性もあると思うのだが・・・・・・

「まだ終わんねえぞコラァ・・・・・・!!」
「ひぃぃぃぃぃ!! 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!」

自分をここまで恐怖を感じさせた人間はいない。
月詠は泣きながら慌てて誰かいないかと後ろに振り返る。だがそこにいるのは一人の少女だけ、しかも

「ああ、もっと殴って下さい・・・・・・」
「えぇぇぇぇぇ!! なんなんこの人ッ!?」
「へいらっしゃいッ!!」
「「おごぉぉぉぉぉ!!!」」

この状況でヘブン状態に入っている美砂に月詠は心の底から驚く。しかし彼女が驚いている隙にまた彼女達の横っツラ目掛けて沖田は偽刀を横一閃。

周りに妖怪達が渦巻いているカオスな状況の中。
気絶しようが白目をむこうが、月詠に対して一切攻撃を止める気は無いサド王子であった。








































沖田がドSモードを展開している頃、攘夷戦争時代の衣装を着た銀時と着物を着ているあやかは、土方やネギ達の方でトラブルが起きてるのを知らずに呑気にシネマ村を歩いていた。

「ファ~・・・・・・やっぱ寝不足だな・・・・・・ねみぃ」
「何かあったんですか?」

大きな欠伸をして瞼をこすりながら歩いている銀時に普通にあやかが質問するので、彼はそんな彼女に皮肉交じりに

「いや聞いてくれよあやかちゃん、昨日の夜、いきなり部屋に押し込んで来たガキに告白された上、そこから今度は別のガキに唇奪われてさぁ、いや~大変だったよ本当」
「す、すみません・・・・・・」

あやかは気付いたのか、縮こまって頭を下げる。
いくら銀時といえどあの状況で簡単に寝付けれるわけがない。

「あの時は私もどうかしてましたわ・・・・・・」
「別に悪いとは思ってねえって」
「本当ですか・・・・・・?」
「当たり前だろバカ・・・・・・だからこうやってお前と一緒にいるんだろ・・・・・・」
「・・・・・・!」

そっぽを向きながら言う銀時にあやかは体の体温が急激に上がる。自分の心臓の鼓動音が聞こえてきて、彼女は思わず胸をおさえる。

「あ・・・・・・」
「どうした?」
「い、いえ大丈夫ですわ、それより・・・・・・」
「あん?」
「手・・・・・・繋いでいいですか?」
「・・・・・・はい?」

顔を赤らめ、上目をウルウルさせながらお願いしてくるあやかに銀時は頬を引きつらせる。
彼女が言った事に若干動揺しているらしい。

銀時がどう答えればいいのか汗を掻きながら困っていると

「銀八ッ!」
「俺とお前で手繋ぐの・・・・・・? いや別にいいんだけど・・・・・・ん?」
「銀八ッ!」
「銀さんッ!」

突然自分を呼ぶ声が聞こえたので銀時はそちらに顔を向ける。
見ると着物姿の千雨と和美がこちらに走り寄ってくるではないか

「・・・・・・何でアイツ等ここに来てんの?」
「千雨さんと和美さん・・・・・・!」

千雨と和美の出現に驚いているあやかを尻目に千雨は慌てた様子で銀時に駆け寄る。

「銀八ッ! 前に来た金髪の女はここに来てねえのかッ!?」
「いいんちょなら銀さんの隣にいるじゃん」
「いいんちょの事言ってんじゃねえよッ! 前に銀八を襲った奴の事を言ったんだよッ!」
「襲われた?」

言ってる事がさっぱりわからず、きょとんとしながら和美は首を傾げる。
しかし話の意味を知っている銀時は千雨の話を聞いた途端、目つきが鋭くなっていた。

「千雨、何かあったのか?」
「真撰組の方の奴等が敵が来たとかなんとか言ってて・・・・・・」
「んだと? あの女がアイツ等の所に来たって事か・・・・・・・?」
「それはわかんねえ・・・・・・・けどあの女、また銀八を襲いに来たんじゃないかと私、不安になって・・・・・・」
「その不安は的中だよ」
「「!!」」

千雨と銀時の会話をしてる中に飛んできた男の声に二人は同時に反応して声がした方向へ振り向く。
こんな晴れた日に傘をさし、しかも体を覆う様なマントを着たボサボサ頭の無精髭の男が平然と立っていた。
銀時はそんな男を見て誰かと気付く。

「お前、吉原の時の・・・・・・こっちに来てやがったのか」
「覚えてくれていて嬉しいね、春雨の幹部を務める“神威殿”の部下であり同じ夜兎である阿伏兎だ、以後お見知り置きを」

かつて江戸にある吉原という夜王が支配するその地で、敵味方として戦った事がある阿布兎。
彼の出現に銀時は睨みつけながら腰に差す木刀に手を置く。

「テメェ等は早く離れろ・・・・・・ワリィなあやか、デートは一時中止だ・・・・・・」
「何がどうなってるんだか・・・・・・」
「銀さん気を付けて下さい、あの人なんかヤバそうですわ・・・・・・」

阿伏兎を見てもどういう事なのか混乱している和美をよそに、あやかは現れた男から発する異様な気配に気付いて銀時に警告して和美を連れて一緒に後ろに離れる。
だが銀時が戦って欲しくないと思っている千雨は

「銀八・・・・・・」
「“あの夜”の時に言ったろ、お前みたいなイイ女残して死ねるかって・・・・・・」

不安そうに裾を掴んで来る千雨に銀時は彼女の肩に手を置きながら話しかける。

「こちとら何度も修羅場くぐり抜けて来てんだ、あんな奴どうって事ねえよ」
「絶対だからな・・・・・・」
「おうよ」

銀時が腰の木刀を抜いて目の前の阿伏兎と対峙する形になった時、千雨は泣きそうな顔で彼から離れてあやか達の元へ移動する。
彼女達が離れた事を確認した銀時はジッと目の前の敵を見据える。

「待たせたな、いつでもかかってこいやコラ」
「フ・・・・・・何か勘違いしてる様だなおたく」
「何?」
「戦うのは俺じゃねえよ、こんな天気だしな」

傘の下から阿伏兎は日の光を見上げる。夜兎族の彼にとって太陽は一番の天敵。長く日に当たってれば死ぬ可能性もある種族なのだ。

「じゃあ何でテメェが来たんだ」
「実はな、アンタ達の戦いの見届け人として俺はやってきたんだ。戦うのは・・・・・・」
「なッ!」

不敵に笑いかけてくる阿伏兎は話している途中に銀時は頭上から何かが降ってくる気配を感じる。慌てて横っ跳びすると、彼がいた地点に一瞬で轟音を立てて何かが降って来た。

降って来た所から大量の砂埃が舞う・・・・・銀時がその中心に立っているのが何かと目を凝らす。
金色の髪と着ている者のボディラインを強調するかのようになっている純白のドレス、そして手に持つのは髪色と同じ色の西洋の剣。

「わらわじゃ・・・・・・」
「アンタか・・・・・・!」

誰もが美女と称するであろう誠に美しい女性。
アリカ・スプリングフィールドがあの氷の眼で再び銀時に対して剣を構える。

「坂田銀時・・・・・・貴様にはここで死んでもらう・・・・・・」
「そいつはゴメンだな、俺はアイツ等と約束してるんだ」

口元に笑みを浮かべながら背中に差してある夕凪を抜き、右手に洞爺湖、左手に夕凪の二刀の構えを持ってアリカと対峙する。

「アイツ等残して、俺は死ねねぇんだよ」
「出来もしない約束などするとはな・・・・・・お前はここで死ぬ・・・・・・私に狙われた時点でそれは決まっているのじゃ・・・・・・」
「へ、殺れるもんなら殺ってみろよ」

互いに悪態を突きながら構える銀時とアリカ。心配そうに見守る三人の少女、面白い物を見る様な目で眺めている阿伏兎。

そして

「うおらぁぁぁぁ!!!」

銀時の叫び声と同時に二人は対峙する相手に向かって突っ込む。
アリカは無言のまま一本の剣を持って、銀時は二本の野太刀と木刀を持って。


二人の二度目の戦いが始まる。






[7093] 第五十三訓 バカと役立たずにも五分の魂
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/10 09:38

敵の追手を振り切る為に逃走している土方、刹那、木乃香。
三人はとりあえず身を隠そうとある建物に入って行く。

「このお城の様な建物はここから中に入れるようです」
「ええのかな、こんな所から所無断に入って・・・・・・」
「こんな時に悠長な事言ってんじゃねえ、入れ」
「う~ん・・・・・・」

シネマ村に建ててある巨大なお城のレプリカ。
刹那が開けた関係者用の裏口のドアに、土方に言われるがまま木乃香は渋々中に入って行く。

「うわ~スゴ~イ」

中に入り階段を上っていくとそこはドラマや映画で見る様な城内が完璧に作られている。
高杉達に狙われてるにも関わらず木乃香は呑気に目をランランとさせながら感想を漏らす。
木乃香が感動していると、土方と刹那も階段から上って来た。

「観光用の割にはよく出来たセットだな、どうするこの辺に隠れるか?」
「いえ土方さん、残念ながら・・・・・・」

難しそうな表情を浮かべる刹那が天井を見上げる。
天井の裏を小さな生き物が大量に駆け回っている音が聞こえて来た。

「気付かれてます、恐らく関西呪術協会の女の式神のあのおサルでしょう・・・・・・この場所一帯に張り巡らしていたのでしょうか・・・・・・」
「キーキーキー」
「ふん、どうやらそうらしいな・・・・・・アイツ等の足の方がよっぽど早いらしい」
「ど、どうすんの・・・・・・?」

天井裏を声を上げながら走り回ってるのは千草の式神の子猿達に違いない。
天井を見上げながら悪態を突いている土方と刹那に木乃香が不安そうに尋ねる。

「このままだとウチ、捕まるの・・・・・・?」
「心配ありませんお嬢様、私達が付いてますから」

木乃香を安心させるように話しかける刹那。そしてすぐに土方の方へ向いて

「この場所も奴等にバレています、直に奴等もここに来る、もしくは既に。ここはまた別の所に逃げた方が」
「いやもう逃げるのはゴメンだ、どうせ逃げても追いつかれしな」
「てことは・・・・・・」

大体予想できるが一応刹那は尋ねる。すると土方は腰に差す刀に手を掛け

「連中がノコノコと出て来た所を俺が斬る・・・・・・」
「やっぱそういう結論に至りますよね私達じゃ・・・・・・」
「ん? ねえねえせっちゃん」

瞳孔を開きながらドスの効いた声で一言。喧嘩早い土方の解決方法に刹那が苦笑していると、彼女の裾をグイグイと木乃香が引っ張る。

「あそこにおサルがいるで」
「キー」
「ほう、俺に斬られ来たか・・・・・・」

木乃香が指差した方向には小さな子猿が一匹だけで座っている。それを見た土方はすぐに腰に差す刀を抜こうとする。

「いい度胸だエテ公、すぐに首刎ねてやる・・・・・・」
「待って下さい土方さん、あのおサル、様子がおかしくないですか?」
「何?」
「なんか「ついて来い」って言ってる様な・・・・・・」
「キキキ~」

おサルは土方に睨まれても平然としながらこっちに手招きしている。
確かに刹那の言う通り何処かに誘っている様には見えるが・・・・・・

「どうします、間違いなく罠だと思うんですけど私・・・・・・」
「罠ッ!? じゃあヤバいんちゃうッ!?」

敵の陽動作戦の可能性が高いので刹那がその子猿に警戒していると木乃香も慌てる。
だが土方は望む所だと言う風に鼻を鳴らした。

「何が罠だ、罠って事はつまり奴等がいる可能性もあるって事じゃねえか、面白え、その罠喜んで掛からせてもらうぜ、オイ、案内しろエテ公」
「キキッキー」
「行くぞお前等」
「あ、はい・・・・・・」

行進するように楽しげに歩いてく子猿の後ろを歩く土方に言われたので刹那は木乃香を連れてとりあえず彼と一緒に子猿の後をついていく。

「大丈夫なのせっちゃん?」
「自ら敵の誘いに乗る、か・・・・・・これしか策はありませんし、私は土方さんについていきますよ」

不安そうな木乃香と苦笑する刹那は一緒に土方の後をついていく。一体この先何があるんだろうか・・・・・・






















































しばらく子猿の後をついて行っていると、子猿は大きな襖の部屋の前でピタッと止まった。

「キー」
「連中はここか、よし踏み込むぞ」
「はい」

恐らく襖の向こうには敵がいる筈。土方が慎重に襖を手を伸ばす中、刹那も懐から妖刀の『死装束』の黒いお札を取り出す。
そんな彼女を見て木乃香はあの時の助っ人を思い出して深いため息を突く。

「こんな時に桂さんがいれば良かったのになぁ・・・・・・」
「誰が攘夷志士の力なんか借りるか」
「そうですよ・・・・・・」
「ん~攘夷志士とか関係なく仲良くやればええのに・・・・・・」
「んな事出来るか、テロリスト相手に何言ってんだお前は、開けるぞ」

木乃香に向かって不機嫌そうに言葉を吐いた後、土方は襖を勢いよく開ける。

「御用改めであるッ!」
「新撰組の副長、土方歳三ですッ!」
「じゃあ俺は新撰組のマスコット隊長、ミッ○ーマウスだッ!!」
「いや土方さん、それ絶対違う・・・・・・」

衣装を着ているので新撰組になり切って名乗りを上げる刹那と土方だが、明らかに土方の言ってる事が違うという事に木乃香がツッコミを呟く。

部屋はこの城の中で一番大きな部屋だ。結婚式が出来るぐらい広い宴会席。
そこに寝そべって漫画を読んでいる男とこちらに優雅に微笑んでいる女が二人。
江戸の忍びである服部全蔵と関西呪術協会の一人である天ヶ崎千草だ

「やっぱ誘いに乗って来たんか、いやはや単純な連中どすな~、望み通り罠に掛けてやるわ、ほれ」

千草は土方達に挑発的な発言をした後、指をパチンと鳴らす。
すると土方達が開けた襖はすぐに閉まる。逃がすつもりは無い様だ。

「おもしれぇ、袋のネズミってわけか・・・・・」
「ミッ○ーですもんね土方さん」
「このタイミングで何上手い事言ってんだお前は」

すかさす自分の言った例えに食いつてきた刹那に土方がボソリと返していると、千草が奥から近づいてくる。

「今日こそは木乃香お嬢様頂きますで・・・・・・全蔵、ジャンプはもうええから出番や」
「ハンガー×ハンガーメチャクチャ熱いな・・・・・・ワンパークもすげえけどこっちも中々・・・・・・」
「全蔵ぉぉぉぉぉ!!」
「うっせえな・・・・・・わかったわかった」

せっかくジャンプの読書中だったのに怒鳴ってくる千草に邪魔をされ、全蔵は不機嫌そうにジャンプを脇に置いて腰を上げる。

「読書中に来やがって・・・・・・お、神鳴流のガキ」
「服部全蔵・・・・・・」
「前に俺と戦った傷はまだ完治されてねえだろ? そろそろ死ぬぜお前」
「誰が死ぬか・・・・・・!」

前髪で目の部分は見えないが口元だけ笑って近づいてくる全蔵に刹那は苛立ってくる。
前回はコテンパンに叩きのめされたが今回こそ・・・・・・

「土方さん、あの忍びは私がやります・・・・・・」
「せっちゃん駄目やってッ! あの人はアカンッ!」
「お嬢様、申し訳ございませんが負けず嫌いなんです私・・・・・・絶対に勝ちますからご安心を」
「・・・・・・」

木乃香が祈るように刹那を見届けていると、目の前に立つ全蔵を睨みながら刹那は持っていた死装束を黒刀に具現化させて構える。
土方もそれを見て腰の刀を抜いた。

「あの忍びは任せたぞ、俺はあのメガネを狩る」
「はい」
「フフフ、一度お前に負けた小娘がまた喧嘩売りに来るようやで?」
「一度どん底に突き落とさねえとわかんねえようだな・・・・・・行くぜ千草」

青いマントの裏からクナイ手裏剣を取り出す全蔵。
隣に立っている千草も裾の中から大量のお札を取り出す

「ウチ等の恐ろしさ・・・・・・たっぷりアンタ等に見せつけてやるわッ!」


互いのプライドをかけた戦いが今始まる





























































第五十三訓 バカと役立たずにも五分の魂

土方達が戦闘を始めている頃、銀時と春雨の幹部であるアリカも通行人がいる道の真ん中で一撃一撃に重みを加えながら相手に剣を振るう。
それを見て周りの観光客は「シネマ村のショーか何かか?」と呑気に遠くに移動して眺めていた。
二人の戦いを近くで見ているのはアリカと同じ春雨の一人である阿伏兎と、銀時の生徒であるあやか、千雨、和美のみだ。

銀時の横薙ぎに振った木刀の洞爺湖をアリカは一歩後ろに飛んで避ける。だがすぐに、野太刀の夕凪による縦振りを銀時は振るう。
それをアリカは片手で軽々と持っている金色の剣で彼女は受け止めた。

「木刀と野太刀の二刀流・・・・・・それがお前の流派か・・・・・・?」
「いや別に、俺は流派とかそういうの持ってねえから」
「・・・・・・わけのわからん奴じゃ・・・・・・」

両者話せる余裕を見せながら、アリカは剣で銀時の夕凪をはじき返す。
すかさず彼を串刺しにしようと剣で突きを行うアリカだが、寸での所で銀時が右手に持つ木刀で受け止められる。

「こりゃやっぱ気が抜けねえんな・・・・・・!」
「ほう、前よりは少々手ごたえがあるようじゃな・・・・・・」
「そいつはどうも・・・・・・それよりもここだと周りの観光客やあいつ等に被害が及ぶかもしれねえからよ、一旦あそこへ上がるってのはどうだ幹部さんよ?」

アリカの剣を木刀で受け止めながら銀時はクイッと首を建物の屋根の上に向ける。
その誘いにしばらく間を置いた後、銀時への突きを止めて。自分から屋根の上に飛ぶ。

「早く上がって来い銀時・・・・・・何処でやろうと貴様が死ねばそれでよい」
「へ、春雨のクセに物分かりがいいじゃねえか」
「・・・・・・・」

薄ら笑いを浮かべると銀時もアリカと同じ屋根の上に飛び乗った。彼とアリカの跳躍力は並の人間では真似できない。
屋根の上で戦いを再開する二人をあやか達三人はその屋根の下から呆然と眺めていた。

「今回は大丈夫でしょうか・・・・・・・」
「アイツが約束した・・・・・・絶対に死なねえって・・・・・・」
「なんかよくわからないけど・・・・・・銀さんがマジで命かけて戦ってるのはわかったよ」

鬼気迫る表情で洞爺湖と野太刀を操る銀時の姿に三人は各々の感想を漏らしていると、彼女達の近くに立っている阿伏兎は銀時の戦いを見ながら内心少し驚いていた。

(あの侍、食いついてやがる・・・・・・夜兎でもなく魔力も持たねえあの男が何故アイツとあそこまで戦える・・・・・・?)
「あなたは戦わないんですか?」
「ん? 俺の事か?」

考え事をしている最中いきなりあやかに呼ばれたので阿伏兎は顔をそっちに向ける。
明らかに彼女に敵意のある目で睨まれているので阿伏兎は思わずフッと笑ってしまう。

「おじさんも戦っていいのかい? そんな事したら間違いなくおたくのお侍さんは屍を晒す事になるが?」
「・・・・・・・」
「安心しろぃ、そうしたいのも山々だが、あの女がどうしても一人で倒すって言って聞かねえんだ」

肩をすくめて阿伏兎は苦笑いを浮かべる。そんな彼に今度は千雨が口を開く

「・・・・・・どうして銀八に対してあの女はそんなにこだわるんだ?」
「さあてね、正確に言えばあの侍にこだわっているのは俺の上司なんだがな、どういう因果かあの女も奴を殺す事に躍起になっている、二人の幹部に命狙われるとはつくづく災難だなアンタ等の所のお侍さんは」

阿伏兎に言われた事に千雨は目を鋭くさせて睨む。

「人殺し集団が・・・・・・!」
「おおっと、口の聞き方に気を付けた方が良いぜお嬢ちゃん、今アンタ等の目の前にいる奴も人殺し集団の一人なんだ、俺がその気になれば三人仲良くミンチにしてやる事も出来るんだぜ・・・・・・」
「・・・・・・クソッタレ」
「女の子がそんな汚い言葉使っちゃダメだって」

飄々とした態度で自分に悪意を持っている千雨を茶化す阿伏兎。

下でそんな事をしている頃、屋根の上では銀時とアリカの戦いはより白熱と化していた。

二刀の刃を繰り出す銀時の攻撃をアリカは一本の剣で受け止め、流し、隙あらばカウンターを使って銀時の急所を狙って攻撃を仕掛けるが、銀時もそれをわずかに体を動かしただけで避ける。最小の動きで最大の攻撃をする、お互いの戦略は今の所一緒だ。

「この前とは全然動きが違う・・・・・・何故じゃ?」
「悪いが一度戦った奴の動きはちゃんと覚えてるんでね」
「・・・・・・一度の戦いのみでわらわの技を全て見極めたというのか? 片腹痛いわ・・・・・・!」

冷酷な言葉を残した後、アリカは金色の剣を両手で持って銀時めがけて兜割り。しかし銀時は彼女が大技をするこの機会を待っていたのだ。
すぐに銀時は左に避け彼女に右に回り込む、アリカの振り下ろした剣は空を切って屋根の瓦を破壊するだけ。その破片が飛んで来ながらも銀時は右手に持つ木刀を強く握る

「とったぁッ!!」
「・・・・・・」
「なッ!」

自分の右側に回って銀時が飛びかかって来た瞬間、アリカは両手に持つ剣をすぐに離し、丸裸になった状態で身軽になり、銀時の前の方へ瞬時に体を動かす。そして銀時が驚いている隙に右手で彼の首を

「ぐふッ!」
「剣など無くても貴様程度容易に殺せるわ・・・・・・このまま首の骨をへしり折ってやる・・・・・・・」
「うぐぐ・・・・・・!」
「銀八ッ! おいしっかりしろッ!」

銀時の首を細い手で絞めつけていくアリカ。そのまま上に持ち上げられ銀時は苦しそうに呻き声を出しながら足をバタつかせる、下にいる千雨は必死に彼の名を叫んだ。
だがその声が銀時に届いているのかはわからない

「おい止めとけよアンタ・・・・・・・俺みたいな奴殺しちまったら綺麗な手が汚れるぜ・・・・・・?」
「侍のクセに命乞いか、無様だな・・・・・・それにわらわはもう既に今まで殺した連中の血で全身が汚れている、今頃貴様の血を被っても対して変わらん・・・・・・」

冷たい目でアリカは銀時を睨みながら、首の締め付けを更に強くする。
だが銀時は苦しそうな表情を浮かべながらも、何か企んでいる様な笑みを浮かべている事にアリカは気付いた。。

「バカだなオメェ・・・・・・・俺の血の汚れはそんじょそこらの奴よりよっぽど頑固でしつこいんだぜ、なんせその血が流れてる奴が・・・・・・・」
「!!」
「頑固でしつこいんでね・・・・・・!」

首を絞められながらも銀時は口の中にある小さな破片を二カっとアリカに見せる。そしてすぐに彼女めがけて吹く、アリカは慌てて顔をのけぞって避けるも。その瞬間、彼女の首の締め付けが弱まり、銀時は目を光らせる。

「悪いな、俺はまだ死ねねんだ・・・・・・!」
「くッ!」

銀時はすぐに左手にかろうじて握ってあった夕凪を残った力を込めて振り上げる。この近距離で真剣を受けたら、いくらアリカでもひとたまりも無い。彼女は即座に銀時の首から手を離して後ろに飛んで避けると同時に自分の剣を回収する。

「・・・・・・わらわがさっき剣で振りおろした時に壊れた瓦の破片か・・・・・・」
「口の中が気持ち悪くてしょうがなかったぜ・・・・・・・うえ」

舌を出しながらしかめっ面をする銀時にアリカは額から汗を一滴流す。
この男は少し隙を見せるととんでもない策で戦況をひっくり返そうとする。油断ならない人物だ。

「どうやらお主のくだらん猿知恵は軍神の知恵にも匹敵する猿知恵のようじゃ・・・・・・」
「お褒めのお言葉ありあがたく受けとっとくわ、こっちも必死なんでね。けどよ・・・・・・」

夕凪を肩に置いて木刀をアリカの前に突き出す銀時。今すぐにでも飛びかかってきそう彼にアリカも剣を片手で構え直す。だが銀時の口から思いもよらぬ言葉が放たれた。

「もう止めにしねえか?」
「・・・・・・何?」
「そんな物騒なモン置いてガキの所に会いに行ったらどうだ、お母さんよ」
「・・・・・・アルから聞いたのか・・・・・・・」

銀時に言われた事に驚きもせず無表情のままポツリと呟く。

「他人の貴様には関係のない事じゃ・・・・・・」
「他人だからこそ見過ごせねえモンもあんだよ」
「・・・・・・」
「なんで春雨なんかに入った、旦那が死んでおかしくなったわけじゃねえだろ」

両手に得物を下ろして銀時は戦意を持たぬまま話しかける、それを聞いてアリカは気難しそうな表情をするが、淡々と話し始める。

「わらわは貴様の世界である江戸に住んでいた時、長年の宿敵である夜王鳳仙に捕まった・・・・・・ナギは奴に封印され、わらわも殺されると覚悟したのじゃが、奴は思いもよらぬ提案をしたのじゃ」
「提案?」
「鳳仙はこうわらわに言った・・・・・・「貴様の正体を隠し春雨に入れて一生傀儡として生かしておいてやる、それがワシの貴様等に対する復讐だ。もし貴様が自害や殺された場合、すぐに貴様の世界にいる息子を殺す」と・・・・・・」
「なるほど・・・・・・そういう事か」

アリカの経緯を聞いて銀時はようやく謎が解けた。全ての原因は自分の世界にかつて存在していたあの夜王鳳仙が動かしていたのだと

「テメーのガキ守る為に春雨に入ったのか、ご立派な母親だぜ」
「人殺しになった母親が何処の立派じゃ・・・・・・それにわらわは春雨があの子の村を襲うと聞いた時止める事も出来なかったのじゃ・・・・・・あの子の人生を台無しにしたのはわらわのせいでもある・・・・・・」
「あいつそんな経験してたのか・・・・・・」

初めて聞く事実に銀時はため息を突く。そんな事彼から一度も聞いていなかった・・・・・・。

「もうわらわはナギの妻でもあの子の母親のでもない・・・・・・!」

アリカは下ろしていた剣を持ち上げて構える。その目は悲しみと憎悪の入り混じった目をしていた。

「わらわは春雨の幹部・・・・・・『金鬼姫(キンキヒメ)』と呼ばれた冷酷なる鬼じゃ・・・・・・!」
「何が鬼だそんな綺麗なツラしやがって・・・・・・テメェが鬼だったらこっちは夜叉だコノヤロー」
「鬼と夜叉か・・・・・・・面白いどちらが本物の化け物か決めるか・・・・・・」

どうやら力づくでやらないとアリカの心は開けないらしい。それを覚悟した銀時は白夜叉時代の衣装をなびかせながら、彼女の様に得物を構える。

『金鬼姫』と『白夜叉』。
互いを睨みあいながら再び苛烈な戦いが始まる。だがその時であった。

「「!!」」

突然赤い閃光が二人の間を目にも止まらぬ速さで音を立ててすり抜ける。
アリカはすぐに飛んできた方向へ目を向ける。

「新手か・・・・・・!?」
「アハハッ! アハハハハッ!」

そこにいたのは丸いグラサンをかけたモジャモジャ頭の男。右手に銃を持ってこちらにヘラヘラと笑っている。アリカは警戒するが銀時はそれを見て物凄く驚いた顔をする。

「嘘・・・・・・だろ・・・・・・!?」
「お二人共見つめ合ってる所邪魔してすまんの~ッ! でもこんな所で激しく戦り合ってたら回りの一般人に迷惑じゃきんッ 止めとけ止めとけッ! アハハハハッ! もしまだやるんなら・・・・・・」

アリカに睨まれているのに男は笑い飛ばしながら屋根の上を歩いてくる。そして器用に銃を片手でクルクルと回した後、カチャっと彼女に銃口を向け。

「わしが相手じゃ・・・・・・」

サングラスから覗かせるその目には常人には出せない程の殺気が見える。ただものではないと理解したアリカは警戒しながら彼に口を開く。

「貴様・・・・・・・何者じゃ・・・・・・・?」
「フッフッフ・・・・・・わしは宇宙をまたにかけて商人を生業とする快援隊のリーダー・・・・・・」

不敵な笑みを浮かべた後、男はグッと親指を立てて自分を指さす、

「坂本辰馬とはわしのことじゃァァァァッ! アハハハハッ! アハハ・・・・・・ずぼぉッ!」
「何してんだテメェはァァァァ!!!」

高らかに笑いながら名乗った坂本に銀時は走って彼の金的に蹴りを入れる。
かつての戦友との久々の再会にも関わらず、銀時はいきなり出て来た彼を速攻でダウン奪う。

「何でお前までこっちの世界にいんだよッ! あっちで宇宙彷徨ってる筈だろうがお前はッ!」
「あだだ・・・・・・それが宇宙彷徨ってたら偶然この世界に墜落しての・・・・・・いや~まいったまいった、アッハッハ~」
「アッハッハ~じゃねえよッ! 何動物園んの迷子的なノリで別次元突破してんだよッ! ヅラといい高杉といいなんでテメェ等とこんな所でもツラ合わせなきゃいけねえんだこっちはッ!」

倒れている坂本に馬乗りして銀時は彼の襟を掴んでグラグラと揺らしながら吠える。すると坂本はサングラスを指で上げてニヤリと

「フ、ワシ等の絆はどんな事があっても切れないという事じゃな・・・・・・それじゃあ改めて・・・・・・久しぶりじゃの金時ッ! あぐッ!」
「銀時じゃボケェェェ!! いい加減覚えろやァァァァ!!! 誰か切ってぇぇぇぇ!! こいつの絆だけでいいから誰かこいつとの腐れ縁を千切りにしてぇぇぇぇ!!」 

アリカとの戦闘中にも関わらず銀時は坂本の髪を鷲掴みにして下に叩きつけながら叫ぶ。
そんな状況をどうしていいかアリカが戸惑っていると、彼女の仲間である阿伏兎が下から屋根に飛び降りて来た。

「あれは坂本辰馬って男だ、前に一度会った事があるぜ」
「坂本辰馬・・・・・・? 何者じゃ」
「高杉やあの侍と同じ攘夷戦争の参加者だ。見た目はああだが実力は本物だ、俺でもてこずらされたぜ」
「ということは奴の仲間か・・・・・・」
「恐らくな・・・・・・なんかボコされてるけど」

阿伏兎の話を聞いてアリカは身構える。敵なら銀時と同じここで討つ相手、すると阿伏兎も戦闘態勢に入る。

「2対1じゃアンタが不利だ、ここは俺も出るぜ、あの男とは一度痛い目見せられたんでね」
「ふざけるな、貴様等夜兎などと誰が一緒に戦うか、わらわ一人で十分じゃ・・・・・・」
「そう言うなって、俺達は仲間じゃねえか、姫さんよ」
「貴様にその呼び方をされると虫唾が走る、それに貴様等と仲間になった事など今まで一度たりとも無い」
「寂しいねぇ」

形式上は仲間だがアリカにとって阿伏兎や神威とは今まで一度も組んで戦う事は無い。
同じ戦いに参加する事はあれど、そこだけは己のプライドが許されないらしい。

「わらわの子を襲った組織、ましてや夜兎の貴様の手など借りぬ・・・・・・」
「んなこと言っても、このままだとアンタやばいぜ? 攘夷戦争の歴戦の侍二人が相手じゃいくら『金鬼姫』のアンタでも負が悪い」
「・・・・・・」

阿伏兎の言い分にアリカは悔しそうに奥歯を噛む。確かに戦況はあまり良くない。
彼女がどうするか考えていると阿伏兎が呑気に彼女に向かって人差し指を立てた。

「さて、ここでアンタに選択肢だ。憎き夜兎である俺と仲良く協力してあの二人と戦うか、意地張って一人で戦ってボコボコにされて負けるか」
「なんじゃそのクイズは・・・・・・」
「え? どっちも得しないって? 固い事言うな、たかがクイズだ」

無邪気に笑いかけてくる歴戦の夜兎の戦士にアリカは嫌悪感を示す。
思い切って彼を斬ろうかと考えてしまうほどに。だが阿伏兎は更に話を続ける。

「人生は選択肢の連続だ、だがここで俺が言った選択肢をやらないというのもある。どうする?」
「それは引けと言う事か・・・・・・?」
「よくよく考えればここで人殺すと騒ぎになるしな、めんどいのはこっちもごめんこうむる。どっちにしろあの侍とは今夜また会えるチャンスがあるし、決着はそこで着ければいい」
「・・・・・・・」

その結論にアリカは少し納得のいかない表情するも、このまま銀時と坂本の二人に一人で戦っても勝機は無い、かといって阿伏兎と協力して戦うなど死んでも出来ない。
彼女はしょうがなく“第三の選択”を選ぶ事を決める。

「坂田銀時」
「オラ死ねぇッ! 俺の視界に入ってくんなぁッ! ん?」

マウントポジションを奪って坂本をボコボコにしている銀時に、アリカはいつもの冷たい声で話しかける。

「仲間に助けられたな、ここは不本意じゃが引いてやる・・・・・・」
「何・・・・・・!?」
「まあそう言う事だ、俺の所の団長にも命狙われてるから気を付けろよ」
「待ちやがれテメェ等ッ! 逃げようたってそうはいかねえぞコラッ!」

坂本を離して立ち上がり、銀時は両手に洞爺湖と夕凪を握る。だが戦う意欲を見せる彼を前にしてアリカは冷淡に返す。

「貴様との決着を直に付ける、精々その前に神威に首を取られぬよう気を付けるのじゃな」
「神威・・・・・・!? あいつも来てんのか・・・・・・」
「ああ来ている、しかも奴は貴様が知らない所である人物と親しい関係の間柄になっている・・・・・・」
「誰だよそんな命知らず・・・・・・」

アリカは銀時に背を向けて歩いていきながら、彼に振り向かずゆっくりと呟いた。

「わらわの子じゃ・・・・・・奴とあの子は師弟の関係になっている・・・・・・」
「!!!」
「もう話す事は何も無い、さらばじゃ・・・・・・・」
「おい待て・・・・・・!」

銀時自分の言った言葉に驚いている隙に、アリカと阿伏兎は屋根の上を飛び跳ねながら行ってしまった。残された銀時は彼女の残した新実に愕然とする。

「マジかよ・・・・・・シャレにならねえぞそんな事・・・・・・・!」
「うう~感動の再会なのにこんなに殴るとは酷いぞおんし・・・・・・お? どうしたんじゃ?」

頭をさすりながら坂本は起き上がり銀時に話しかける。それに気付いた銀時は振り返って露骨に嫌な顔を見せる。

「・・・・・・そういえばお前いたんだよな・・・・・・」
「おおッ! わしはお前が困った時はいつも近くにいるぜよッ!」 
「いやお前がいつも俺の事困らせてんだよね・・・・・・? 頼むから俺の事はもうそっとしといてくんない・・・・・・・? 今一番デリケートな時期だからね銀さん」
「これからはわしも一緒に協力してやるばってん、よろしくッ! アハハハハッ!」
「人の話を聞けーッ! つうかお前の手借りるぐらいならまだトイレットペーパーの方がマシじゃボケェッ!」
「ぬぐッ!」

思いもよらぬ事実が判明されたにも関わらず坂本のヘラヘラ笑いと空気の読めなさにムカッと来て、銀時は鉄拳制裁。
彼の一発をモロに顔面に食らった坂本はそのままヒューンと屋根の下からあやか達の方へ落ちていってしまった。

「のぎゃぁッ!」
「きゃあッ!」

落ちて来た坂本をあやかは短い悲鳴を出した後千雨、和美と共にすぐに避ける。
そのまま大きな音を立てて大の字で地面に倒れる坂本。

「アハ・・・・・・アハハハハ・・・・・・・」
「誰だコイツ・・・・・・?」
「銀さんと仲良さそうに話してましたが・・・・・・」
「いいんちょあれは仲良くとはいわないよ・・・・・・」
「銀さんと千雨さんも時々あんな風な事してますが?」
「あれは別だよ、両者愛を込めて殴り合ってるから」
「真顔で言うな・・・・・・」

あやかに向かって真顔で銀時と自分の関係性を話す和美に千雨はジロリと目を動かすと、何処からともなくこちらに誰かが走ってくる音が

「坂本さんッ!」
「おおネカネさんッ! ここじゃここじゃッ!」

彼と一緒に行動しているネカネがこっちに走ってくると坂本は即座に手を上げて両手を広げる。すると彼女は彼のおおらかな胸目掛けて・・・・・・

「勝手にフラフラ歩いてんじゃないわよッ!!!」
「がぼぉッ!!」

華麗なるドロップキック。坂本はまたもや派手に転がった後また大の字で倒れる。

「本当、歩いてるだけで厄介事起こしそうな人なんだからジッとしてなさいよ・・・・・・桂さんの言う通り首輪でも付けた方がいいかしら・・・・・・」
「あの・・・・・・・」
「あ、どうもすみません、もしかしてこの人に変な事でもされましたか?」
「い、いえ違いますわ・・・・・・・それより大丈夫なんですかあの人?」

さっきとは別人の様に丁寧に頭を下げてお辞儀をしてくるネカネにあやかが戸惑いながら倒れている坂本を指差すと彼女はニコっと笑って

「“バカ”はああやらないとわからないんです」
「は、はぁ・・・・・・・」
「ネカネさぁぁぁぁんッ!」
「うおッ! もう復活したッ!」
「わしのハグ受け取ってくれいィィィィ!!」

ネカネがにこやかに頬を引きつらせているあやかと会話をしていると坂本が復活して彼女に向かって飛びかかる。千雨が叫ぶも遅く、彼はネカネに両手を広げ抱きつく・・・・・・・

「女だからって見境なく襲おうとしてんじゃねえよタコッ!!」
「どほぉうッ!!」

抱きつく前に銀時が彼の背中めがけて屋根の上から落下。坂本は高い叫び声を出した後、彼に両足で背中を踏まれたままパタリと倒れた。

「銀さんッ!」
「あ、あら?」
「おい大丈夫かネエちゃん、もしかしてコイツに変な事されてねえか? あんま近寄るなコイツに、バカがうつる」
「い、いえ大丈夫です、それよりあなたはもしかして・・・・・・」
「ん、俺?」

自分の事を知っているような口ぶりのネカネに銀時がキョトンとすると、彼の下敷きになっている坂本がガバッと顔だけ上げて

「金時じゃッ!」
「あッ! やっぱりあなたが金時さんッ!」
「銀時じゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

嬉しそうに自分の名前を思いっきり間違えて指差してくるネカネに銀時は初対面の彼女に対して怒鳴る。
どうやら坂本のおかげで彼女まで銀時の名前を間違えて覚えてしまったようだ。















































銀時が坂本一派と出会っている頃、土方・刹那と千草・全蔵のダブルバトルも激戦の真っ最中だった。

「猿鬼ッ! 熊鬼ッ!」
「ウキィィィィ!!」
「クマァァァァ!!」
「邪魔だどけオラァッ!」

千草の出す大量の式神をさっきから一人で相手にする土方だが、全く臆せずにさっきから一体一体、着実に葬っている。そして今も千草の中でも切り札扱いにされているファンシーな風貌の猿鬼と熊鬼を横一閃で瞬殺した。

「ウキ~・・・・・・・」
「クマ~・・・・・・・」
「フゥ・・・・・・もう終いか?」
「く・・・・・・・! 思ったよりやるやないか・・・・・・!」

自分の部下達を次々とただの紙に変えて行く土方の実力に千草は悔しそうに手元に一枚だけ残ったお札を取り出す。

「こいつはもっと最後に使いたかったんやけど・・・・・・いけッ! 牛鬼ッ!」
「ふん、猿と熊の次が牛か、どうせまたディ○ニーに出て来そうなファンシーな・・・・・・」

千草が投げたお札を見ながら土方は余裕そうにタバコを吸い始める。さっきから彼女の召喚する式神は全て可愛らしいファンシーなキャラ、それとは裏腹に確かに強いが敵では無い。とっておきの最後もきっとそうなんだろうと土方はたかをくくっていたのだが・・・・・・

「ブモォォォォォォ!!!!」

現れたのは4Mにも及ぶデカさの凶悪そうな面構えをした牛。赤いマントと彼用の大きな兜を付け、両手には人を軽く潰せるような巨大な棍棒。そんな牛鬼にギロリと視線だけで殺す様な目玉で睨まれた瞬間、土方は口からタバコをポロっと落として固まる。

「な、なんでだァァァァァ!! なんでさっきまでのファンシー路線からここまで急転換したッ!? ディ○ニー何処行ったッ!? ディ○ニーがニュージーに帰ったのかッ!?」
「いるやろこういうのディ○ニーにも?」
「いねえよッ! ディ○ニーどころかユニバー○ルジャパンだってこんな牛魔王いねえよッ! こんなよだれ口からダラダラ流しながら返り血みたいなの浴びてる奴出てきたらチビッ子の心臓止まるわッ!」
「しょうがないやろ、可愛く作ろうと思うてたのに寝不足のせいでついウトウトして作ったらこんな風に失敗して・・・・・・」
「寝ろよッ! 一晩寝てから目パッチリの時に作れよッ! これもう失敗以前の問題だろッ! トゥーンタ○ン破壊するだろこんなのいたらッ!」

目の前で威圧感をガンガン放ってくる牛鬼を指さしながら、めんどくさそうに頭を掻き毟っている千草に向かって土方は怒鳴る。だが色々言われた事に腹が立ったのか千草は彼に向かって指さして

「うっさいわお前にウチのセンスわかってたまるかッ! いけ牛鬼ッ!」
「バボォォォォォ!!!」
「チィッ! 見た目通りさっきの連中とは比べ程にもならないようだな・・・・・・・!」

千草の命令を受けた瞬間、牛鬼が雄叫びを上げる。周りが大きく揺れるほどの振動と風圧が土方にも伝わり、刀を構えるのもやっとだ。
すると千草はそんな彼に愉快そうに彼の後ろを指さしながら笑う。

「ほれほれ、早くコイツを倒さんと後ろの嬢ちゃん助けに行けへんで、あのままだとマジで死んでしまうで~」
「何ッ!?」

咄嗟に土方は後ろへ振り返るとそこには全蔵と刹那の姿。だが明らかにもう戦っている構図では無い。
刹那は息絶え絶えに刀で体を支えながら、全蔵は一撃も食らってない様子でクナイを手に大量に持っている。彼が彼女を殺す気があればその瞬間、刹那の人生は幕を閉じる。
そんな場面を見て土方は慌てて彼女の元に駆け寄ろうとするが、それを牛鬼が手に持っている棍棒を彼の目の前に降り下ろして阻止。

「ウガァァァァァ!!!」
「ぬおッ! クソッ!」
「ハッハッハッ! いくらあんさんが強くてもパートナーは全然どすなッ! まあ並レベルよりはマシらしいけど、全蔵を相手にするには荷が重すぎるっちゅうわけやな」
「おいガキ聞こえるかッ! 俺はいいから小娘と一緒に逃げろッ! 命令だッ!」

この声が刹那に届くかはわからないが土方は思いっきり刹那に向かって叫ぶ。そして刀を構え直し目の前に立ちはだかる牛鬼を睨みつけて

「ファンシーがどういう事なのか・・・・・・ファンシー界最強のボス、ミッキーマ○スが直々に教えてやるッ!!!」
「ヌガァァァァァァ!!!!」

自分よりずっとデカイ巨大な牛鬼に土方は飛びかかった、早急にこの式神倒さなければ刹那の命が本当に危ないのだから。































































刹那は全蔵を目の前にしてボロボロの体のまま睨みつける、傷口は浅いのから深いのまで体中に痛々しく刻まれているにも関わらず。

「フゥ・・・・・・フゥ・・・・・・!」
「前の傷が開き、今もかなりの傷を負っているお前が、どうしてそこまでして俺の目の前に立つ?」
「お嬢様の為なら・・・・・・・私は絶対負けない・・・・・・!」
「せっちゃんッ! さっき土方さんの声が聞こえたッ! 早く逃げろってッ! ウチと早く一緒に逃げよッ!」

ずっと後ろで不安そうに刹那を見守っていた木乃香が彼女の背中にしがみついて逃げようと懇願する。だが刹那は疲れた表情で首を横に振る。

「お嬢様だけお逃げ下さい、私はもう無理です・・・・・・あの女はもう土方さんが戦ってる式神に全ての魔力を注いでる筈、それなら呪力で塞がれていたあの襖から逃げれる筈です・・・・・・・私は時間を稼ぎます、お嬢様の為に・・・・・・・」
「駄目ッ! 絶対にそんなの駄目ッ!」
「死してもなおそいつを護るつもりか、お前さんの忠義、敵ながらあっぱれだぜ」

刀で体を支えながら木乃香に向かって逃げるよう指示する刹那だが、木乃香はそんな言う事聞くわけない。
全蔵は刹那のそんな姿を見て敬意を称する。だが彼はそれで二人を見逃すわけにはいかない。

「けどな、俺にも目的ってモンがある、あの女の復讐を最後まで見届けるっていう目的がな」
「復讐だと・・・・・・・」
「あいつは両親を西洋魔術師に戦争で殺されている、それで西洋の奴等に両親の仇として復讐するんだとよ、バカげた理由だろ? けどそういう目的についていくのも、悪くねえって思ってよ・・・・・・」
「・・・・・・」

全蔵の話を聞いて刹那と木乃香は黙りこくる。千草にそれなりの理由があって行動しているのだ。そして目の前にいる男も

「だから俺はあいつの復讐を遂行させる、あいつはもうまともな人生なんざ送れねえ、まともな仲間さえいやしねえ、だから俺が最後まであいつに付き合ってやる」
「お前・・・・・・」
「その為ならガキを一人誘拐しようが・・・・・・ガキ一人の腕を一本を奪おうが・・・・・・雇われ忍びの俺は何でもやるぜ・・・・・・」

口調がどんどん急変して最後は重苦しい声で全蔵は一本のクナイを持って刹那を前髪に隠れる目で睨みつける。
刹那はそれを見て刀を持っている右腕に力を込める。

「私の腕を奪うつもりか・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
「どんなに非情にになろうともお前さんみたいなガキの命までは取れねえよ、だがお前の目は何度打ちのめされても抗おうとする目だ・・・・・・だったら・・・・・・」


一本のクナイを構えて刹那の腕を狙う全蔵。
虚ろな表情を浮かべている刹那はその攻撃を避ける術は無い。

「その腕、貰うぜ・・・・・・!」
「たかが腕の一本、欲しけりゃくれてやる・・・・・・」

口から血を流しながら刹那は飛んでくるクナイを見て目をつぶる。
きっとすぐに自分の右腕の感覚が無くなるのだろう、刹那はそんな事を考えていた。

だが急に

「ダメェェェェェェェ!!!」
「・・・・・・え?」
「なッ!」

動けない体が横にグラっと倒れた。

刹那がバタンと横に倒れた瞬間、肉を突きさす様な生々しい音が聞こえる。しかしその音は刹那自身の体から出た音では無かった。
彼女はすぐに体を音を出した張本人の方に向かせる。

「お嬢・・・・・・様?」
「せっちゃん・・・・・・大丈夫?」
「しまったッ! 攫わなきゃいけないガキを傷付けちまったッ!」

クナイの一撃を受けたのは刹那ではなく、彼女を横に押しやった木乃香。肩から多量の出血を流し、倒れながらも刹那にむかってぎこちない笑みを浮かべる。

「ちょっと痛いけど・・・・・・ウチは平気やから」
「どうして・・・・・・どうして私なんかを・・・・・・・!」
「友達やから・・・・・・」
「友・・・・・・達・・・・・・?」

最後の力を振り絞って刹那は倒れている木乃香を抱き上げる。すると彼女は嬉しそうに笑って

「友達護るのに・・・・・・理由なんかいらへんよ・・・・・・」
「あ・・・・・ああ・・・・・・」
「護られてるだけなんてイヤや、ウチもせっちゃんや土方さん、他のみんなみたいに何かを護りたいってずっと思ってた・・・・・・だからウチはせっちゃんを護った、ただそれだけ・・・・・・」
「このちゃん・・・・・・・このちゃん・・・・・・」

肩の傷は決して浅くない、だが木乃香は必死に痛みをこらえて笑いかけてくる事に、刹那は涙をポタポタと彼女に落としながら名前を呼ぶ。

「ウチの為に泣かなくてええんよ、せっちゃんの方がボロボロなんやから・・・・・・」
「このちゃんの事・・・・・・ウチ護れへんかった・・・・・・」
「せっちゃん・・・・・・」
「このちゃんの事ずっと護るって約束したのに・・・・・・護れへんかった・・・・・・ごめんな・・・・・・・ごめんな・・・・・・」

泣き顔で流れ出る涙を木乃香の頬に落としながら、刹那は彼女と昔遊んでいた頃の口調に戻る。木乃香はそんな彼女の顔を触って涙を拭う。
そして最後に木乃香は彼女の腕の中で意識を失った。
全蔵はその二人を無表情で眺めるだけ、攻撃もせず話しかけもせず。

だが突然、彼の後ろで何かが重い物でぶん殴られる音が

「ぐはぁッ!」
「ひ、土方さん・・・・・・!」

不意に自分と木乃香の隣に飛んできた土方に、刹那は悲鳴の様な声を出す。彼の顔からはダラダラと血が流れている。

「クソッタレ・・・・・・思ったよりやるじゃねえかコラ・・・・・・!」
「土方さんその傷・・・・・・」
「あん? テメェか・・・・・・早くそのガキ連れて逃げろ、俺がなんとかする・・・・・・」

刹那の方へ向かずに彼女に話しかけながら、目に入ってくる血を拭って土方はすぐに立ち上がろうとする。が、その足取りはかなりおぼつかない。

「おーら・・・・・・二人まとめてかかってこいコノヤロー・・・・・・俺はまだピンピンしてるぜぇ・・・・・・」
「土方さん駄目・・・・・・そのまま戦ったら死んじゃいます・・・・・・!」
「何弱気になってんだクソガキ・・・・・・俺がこんな連中相手にくたばるわけねえだろ・・・・・・ずっと俺と一緒にいるお前がわかんねえのか・・・・・・・」
「でも・・・・・・!」

刀を構え直す土方の姿を見て刹那は涙を流しながら止めようとさせるが、彼は全く聞く耳持たない。
そうしてるうちに式神を連れた千草とクナイを持った全蔵が近づいてくる。

「もしかして一人でウチ等二人と式神一体を倒すつもりどすか? 傑作や、アホ過ぎて笑えてくるで」
「うるせえ・・・・・・すぐにそのニヤけたツラすっ飛ばしてやる・・・・・・」
「真撰組の副長殿がここで命尽きるか、いやはや思いもしなんだ・・・・・・」
「誰が死ぬか・・・・・・死ぬのはテメェ等の方だ・・・・・・」

息を荒げながら勝利の笑みを浮かべる千草とクナイを向けてくる全蔵に悪態を突く。
彼の全身全霊の虚勢、それに気付いている刹那は涙を出しながら声を絞り出す

「イヤや、土方さん・・・・・・死んじゃイヤや・・・・・・」

意識を失っている木乃香を抱きかかえながら刹那は立っている土方の隣に寄りそう。
だが土方はそんな彼女を見下ろしてニヤリと笑みを浮かべる。

「フ、何だその喋り方・・・・・・・思いっきりその小娘の喋り方と同じじゃねえか・・・・・・」
「土方さん・・・・・・・ウチ・・・・・・・何も出来ない・・・・・・このちゃんも護れなかったし、土方さんも護れへん・・・・・・・役立たずや・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ウチがもっと強かったらこんなに迷惑かけなかったのに・・・・・・」

泣きながら謝ってくる刹那に土方はただ彼女の頭に手を伸ばしてコツンと叩く。

「言われなくても・・・・・・テメェが役立たずなんざとうの昔に知ってんだよ」
「・・・・・・」
「だがな・・・・・・」
「え?」

土方はフッと刹那に笑った。

「役立たたずでも役立たずなりに必死に俺の背中追いかけて頑張ってるお前の姿、嫌いだと思った事は一度もねえぜ・・・・・・」
「う・・・・・・うう・・・・・・」
「・・・・・・刹那」
「!」

土方の言葉に嗚咽をしていた刹那は驚いた顔を見せる。
今初めて彼が自分の名前を呼んでくれた。

「私の・・・・・・名前・・・・・・・」
「早く俺の前から消え失せろ、そのガキ連れて・・・・・・・足手まとい何だよお前・・・・・・」
「イヤやぁ・・・・・・土方さん残して逃げれへん・・・・・・戦うんならウチも戦うぅ・・・・・・」
「そんな状態で戦えるわけねえだろ、早く消えろ役立たず・・・・・・ぐッ!」
「土方さぁん・・・・・・!」

喋ってる途中突然膝を折る土方。どうやら戦いで蓄積された疲れがこのタイミングで足に来たようだ。刹那は血と汗、涙で顔を濡らしながら意識を失っている木乃香に力を込める。
絶体絶命とはまさしくこの事

「勘忍なぁお二人さん、木乃香お嬢様はウチ等が大事に利用させてもらうんで・・・・・・ってッ! なんでお嬢様傷付いてんねんッ!」
「いや~マジすまん、神鳴流のガキ狙ったのにあの子がそれを庇って一発肩に・・・・・・」
「ドアホッ! 忍びならもうちょっとスマートにやろうと努力せぇッ! ったく・・・・・・」

全蔵に罵声を送った後、千草は気を取り直して式神と共に近づいてくる木乃香は肩の刺し傷から流れる出血が元で意識を失い、土方も満足に動けない。
二人が傷付いてるのを見た時、刹那の中で何かが芽生えた。

「・・・・・・さない」
「ん?」
「許さない・・・・・・お前等を絶対に許してはおけない・・・・・・」

木乃香を土方の隣へ優しく置いた後、刹那は死装束を持ってフラフラとした足取りで千草と牛鬼、全蔵の前に立つ。その姿を見て千草はせせら笑う

「傷付けられた仲間の仇を取るってか? 全蔵にボロ雑巾の様にされた役立たずなアンタが?」
「例え役立たずでも・・・・・・」
「千草、あのガキの様子、なんかおかしいぞ・・・・・・」
「お前等の・・・・・・カスの貴様等の相手ぐらい容易に出来る・・・・・・・!」

刹那の周りから放たれる黒い霧。だが彼女は全く動じずにそれを受け入れる。全蔵は警戒して、土方も何が起きてるのか理解できないまま膝を折った状態で彼女を見る。

「殺してやる・・・・・・殺してやるぅ・・・・・・」
「全蔵、なんかあのガキやばいで・・・・・・・さっさと仕留めろや」
「もうとっくのとうにクナイは投げてるぜ、だがあの、黒い塊が盾になって邪魔しやがる・・・・・・」
「黒い塊・・・・・・?」

全蔵がクナイが効かない事に歯がゆそうにそう言うと、刹那の後ろでうごめいている黒い塊を顎でしゃくる。
千草はそれをよーく目を逸らしてみて初めてその黒い塊の正体を知った。

「翼やアレ・・・・・・黒い翼」
「何・・・・・・?」

千草がそう言った瞬間、刹那の周りを覆っていた黒い霧が消え、ようやく彼女が姿を現した。土方はそれを見て驚愕する。

「何があった・・・・・・・!」
「私の大切な人達を貴様等は傷付けた・・・・・・もはや生かす価値など無に等しい・・・・・・」
「あの姿は・・・・・・・全蔵、どういう事やコレ・・・・・・」
「カラス天狗に化けたのか・・・・・・?」

黒刀の死装束を手に持ち、爪は黒くなりギザギザに変形しており、両目は白目が黒目、黒目が赤目に変わっている。そして極めつけは背中に生えた二つの黒い翼。
だが刹那はそんな姿になっても全く動じず、むしろ狂気じみた笑みを浮かべる

「ドブネズミはまとめて駆除するのが一番手っと早い・・・・・二人仲良くあの世に送ってやるよッ!!」

妖刀、『死装束』の呪いが再発してしまったのだ。







[7093] 第五十四訓 人を傷付けたら必ず自分が傷付く事になる
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/12 22:24

それは偶然だったのか必然だったのか。
アリカと刃を交えていた時にかつての仲間である坂本と、ネギの姉的存在であるネカネの二人と出会った銀時達は、他のメンバー達の所まで、今まで起こった出来事を話していた。

「へ~ネギの親戚? じゃあおたくがあいつの保護者のネカネお姉ちゃんって奴か」
「ネギから聞いていたんですか私の事?」
「自慢のお姉ちゃんだとかたまに言ってたよ」
「まあ」
「もしネカネお姉ちゃんに彼氏が出来たら、手出す前に八つ裂きにするとも言ってたしな」
「まあ・・・・・・」

世間話をネカネと交えながら銀時は三人の生徒の群衆の中で何がおかしいのかヘラヘラ笑っている坂本の方へチラッと振り返り、もう一度ネカネの方に顔を向ける。

「よくもまああんな奴拾ったよなアンタ、俺だったらゴミ箱にポイだぜ?」
「ええ・・・・・・なんかほっとくと周りの人に迷惑かけそうだったので・・・・・・」
「アイツは周りにいる奴等を無理矢理巻き込む“ウイルスバカ”だからな」
「本当高性能な細菌兵器ですよ・・・・・・・」
「なんじゃ? わしのこと話してるのか? アハハハハッ!」
「うるせえこっち話しかけんなウイルスバカ、バカがうつる」

会話が耳に入ったのか、坂本は近づいてきながらこちらに笑いかける。
銀時は彼にしかめっ面を向けてで追い払おうとするが、この男はそんな事を聞いても慣れ慣れしく態度で銀時の肩に手を回す。

「にしてもこんなところでおんしと会えるとは最高じゃの~、飲もう飲もうッ! 今夜はヅラも混ぜて一緒に飲みまくろうぜよッ!」
「あ~くっつくんじゃねえよ、テメェの頭にくっついてるモジャ公が顔にくっついて気持ち悪い、ゴワゴワする感触が本当気持ち悪い」
「アハハハハッ! おまんも似たような髪型しとるじゃろうがッ!」
「俺の呪われし天然パーマとお前の陰毛ヘッドを一緒にすんな」

抱きついてくる坂本の顔を不快そうにグイグイと押して引き離す銀時。だが坂本はまだ彼に話し足りない

「ところでその格好どうしたんじゃ? 随分と懐かしい恰好じゃの~・・・・・・もしかして攘夷戦争にまた参加する気か? アハハハハッ!」
「ちげえよ陰毛頭、あやかと二人でいる時にあいつが更衣所で俺に着せて来たんだよ」
「あやか?」

白夜叉時代の衣装をツッコまれたのでつい銀時が言った名前に、坂本は口をへの字に考える。
しばらくして手をポンと叩いて、さっきまで色々と銀時と彼女達の素姓を聞いていたのを思い出した。

「あ~、ネカネさんとそっくりなあの娘の事じゃったな、アハハッ!」 
「全然似てねえよバカ・・・・・・」
「なんじゃデートでもしとったんか銀時ッ!? おんしもすみにおけんの~ッ! アハハハハッ!」
「おいネエちゃんコイツと会話するの代わってくれ、そろそろ限界だ・・・・・・」
「え、私も嫌なんですけど・・・・・・」

罰ゲームをもらった時の様な表情をするネカネの言葉も無視して、疲れた表情の銀時は坂本と彼女を前に残してあやか、千雨、和美の方に避難。

「ヅラとあいつに関わると本当ロクな事にならねえんだよなぁ」
「私もちょっと苦手ですわ・・・・・・」
「ああいうやかまし過ぎるテンションは私も・・・・・・」

銀時に対して遠慮がちにあやかが言うと千雨も嫌そうな顔で坂本の後姿を見る。
だが和美はというと銀時達三人に向かって首を傾げる。

「そう? 別に私は嫌いじゃないけどああいう人?」
「まあ私が見る限り同種族っぽいもんなお前等」
「バカみたいにやかましい所が同じだな」
「アホみたいにヘラヘラ笑ってる所もですわね」
「みんな私にそんな印象抱えてたんだ・・・・・・」

万事屋トリオにキッパリと言われて和美は少し傷心しながら一緒に歩いていると。
目の前にいる坂本とネカネがふと止まった。

「なんじゃあ? お祭りでもやっとるんかい? ハハハ、わしも参加しようかの~」
「こんな緊急事態に何言ってんのよあなたは・・・・・・」
「どうした? なんかやってんのか」
「それが・・・・・・」

後ろから銀時が話しかけてくるとネカネは走り出そうとする坂本の後ろ襟を片手掴んで止めながら、もう片方の手で前方を指さす。

「なんか変な生き物がウヨウヨと暴れているんです・・・・・・・」
「は?」
「それにもしかして、あそこで変なのに追われてるのってあなたの所の生徒さんでは?」

ネカネがそう言って指差すと、確かに自分の所の生徒がちらほらと奇怪な生き物と戯れているではないか。
実はこの奇怪な生き物というのは敵である月詠が召喚した“無害”な妖怪達なのだが、その事を銀時達は知らない。しばらくして・・・・・・

「カッパァァァァ!!」
「うおッ! 河童が自分の名称叫びながら降って来たッ! 朝倉ッ! カメラ寄こせッ! 仰天ニュースに投稿するッ!」
「えッ! ちょっと待・・・・・・!」

突然背後から降って来た褐色のいい河童を見て千雨が興奮したように和美に指示するが、彼女が首に下げたカメラを準備する前に

「そぉぉぉぉいッ!」
「ガバッ!」
「ってオイィィィィ!!」

銀時が一瞬で近づいて河童にアッパーを繰り出す。そのまま河童はパタリと倒れてボンとただの紙になった。

「よ~し、大丈夫か千雨、なんかお前がヌメヌメしたナマモノに襲われそうだったから銀さんビックリしたわ」
「いや河童に躊躇なく一発入れたお前にこっちはビックリだわッ!」

千雨にツッコまれながら銀時はヒョイとさっきまで河童の姿をしていた小さな紙きれを拾って、しゃがんで観察してみる。

「・・・・・・・なんじゃこりゃ?」
「あれぇ旦那方、ここで何してんですかぃ?」
「ん?」

不意に後ろから誰かに呼ばれたので銀時は立ちあがって振り返ってみる。
するとそこには爽やかフェイスをしながら物騒に町の中堂々と抜刀している男の姿が

「暇なら一緒に化け物退治してくれやせんかね? ガキ共にも無理矢理協力させてやらせてるんですが、一杯いて手が回らねえんでさぁ」
「お前・・・・・・」

新撰組の格好をしながら話しかけきたのは土方の部下である沖田。
銀時はそれに気付いて何があったのか聞こうとするが、沖田を初めて見た坂本が話しかけてくる。

「誰じゃ銀時? おんしの知り合いか?」
「あれ? そちらのお二方は初めて見るツラじゃねえか、旦那の知り合いですかぃ?」
「ハァ~・・・・・・・俺と同じ教師やってるガキの親戚のネエちゃんと、俺達の世界の出身者であるただのバカだ」

坂本の素姓を話すといちいちめんどくさいので銀時は適当にはしょって沖田に説明すると、坂本はヘラヘラ笑いながら

「アハハハハッ! ネカネさんバカって言われとるぞぉッ! 言いすぎじゃぞ銀時ッ! ぐぅふッ!」
「100%あなたでしょうが・・・・・・」
「なるほど、確かにバカのようですね」

腹にボディブローを思いっきりネカネに食らわされている坂本を「ふ~ん」と眺めながら沖田は納得したように頷く。

「この男も旦那と同じ異世界漂流者ってわけですかぃ」
「ま、そう言う事だ、残念ながら俺の昔からの知り合いでよ、一応戦力になるから連れて行くわ。それよりお前の所のニコチンキングは何処行ったんだ、木乃香の護衛役だろあいつ」

無理矢理話をまとめてふと土方の事を聞く銀時。すると沖田はめんどくさそうに

「ああ、テメーの女ほったらかしにして例の嬢ちゃんと頭の悪そうなガキ連れてどっか行っちまいやした、敵の追手から逃げる為のようですけどね」
「追手っていうのはお前が言ってた奴か・・・・・・?」
「そうだと思う・・・・・・」
「俺もさっきまで戦ってたんですよ、ま、すぐに終わらせましたが・・・・・・」

後ろに振り返って千雨と会話している銀時に沖田はポツリと呟くと、すぐに彼に再び口を開く。

「仮にも俺達真撰組の副長を経験したお人ですし、こんなわけのわかんねえ世界の連中なんざ、軽く始末してるでしょ」

呑気な事を言いながら沖田は髪を掻き毟る。
土方ならどんな相手が敵であろうと問題無用で倒せる実力を持っている。
日頃から彼を嫌っている沖田でも、一応土方の事をほんのちょっぴりだが認めている事は認めているのだ。

























だが沖田の考えとは裏腹に、土方は敵の存在よりもっと別問題の事でトラブルに巻き込まれているのであった。

“彼女”の暴走だ


























第五十四訓 人を傷付けたら必ず自分が傷付く事になる

沖田と銀時&坂本が出会っている頃。土方は傷付いてしまった木乃香の状態を調べながら“彼女”を見た。
敵は二人、式神一体というなんとも不利な状況なのに一人で戦っている彼女は全く押されずに、狂気じみた戦闘力で相手を圧倒している。
黒い翼を生やし赤い目で睨みながら、敵を容赦なく殺そうと黒刀を振るう少女
桜咲刹那の姿はドス黒く変わってしまった事に土方はただ事ではないと確信する。

「あいつに何があった・・・・・・」

歯を食いしばって土方は苦々しく呟く。
その答えを知っている木乃香は彼の胸元でまだ意識を失ったままだ。



状況を把握していない土方を尻目に、妖刀『死装束』の呪いで忌むべき力を手に入れた刹那は、その妖刀を振るいながらさっきまで苦戦を用いられていた全蔵に真っ向から挑む。

「そっちが手裏剣なら・・・・・・こっちはコレだッ!! ハッハッハ~ッ!!」
「くッ! あの翼は防御以外に飛び道具を打つ事も出来るのかよ・・・・・・! 正真正銘の化け物だぜ・・・・・・!」

刹那が両手を広げた瞬間、背中の黒い翼も大きく開く。すると翼から何百本物の羽がダーツのように襲いかかってくる。
全蔵はそれを後ろにいる千草に当たらない為に、大量のクナイを取り出して弾いて止める。

「全蔵ッ!」
「千草、そのデケェ式神にあのガキを殺すよう指示しろッ! 俺だけじゃあの化け物は止められねえッ!」
「せやけど子供を殺すなんてウチには・・・・・・」
「んな事言ってねえでさっさとしろッ! 早くしねえとこっちがマジで殺されるぞッ!・・・・・・アイツの目はマジで俺達を殺しにかかってる目だ・・・・・・!」
「・・・・・・クソ・・・・・・!」

こちらを睨んで来る赤い目。千草はそれを見て悔しそうに言葉を吐いた後、全蔵の言う通りに傍にいる巨大式神の牛鬼に命令する。

「牛神ッ! あのガキを・・・・・・・殺せッ!」
「ウンモォォォォォ!!!」

命令を受けた牛神は咆哮を発しながら、両手に持つ棍棒で刹那に襲いかかる。
土方でさえてこずる相手だが彼女はギロリと睨んで、全蔵への攻撃を一旦止めて牛鬼の方へ向く。

「・・・・・・そういえばこの醜い式神があの人を・・・・・・」
「ガァァァァァ!!」

ブツブツ刹那が独り言を言っている間に牛鬼の棍棒が彼女の頭上めがけて降ってくる。
だが刹那は全く恐怖も感じずに瞬速で翼を広げて横っ跳び。
そこから牛鬼と同じ目線まで上空に飛んで刹那は目の前の敵を睨みつけた。その迫力ある目に式神である牛鬼でさえ僅かな恐怖を感じる。

「バラッバラに・・・・・・! 殺してやる・・・・・!」
「ブ・・・・・・ブモォォォォォ!!!」

不気味な笑みから垣間見える恐怖から、逃げるように牛鬼は大きな口を開けて刹那を飲みもうとする。
しかし彼女はそれを見てフンと鼻を鳴らした後、逃げるどころか・・・・・・

「食えるもんなら食ってみろ・・・・・・!」
「ブモッ!?」
「な、なんやてッ!?」
「食えるかどうかは・・・・・・保障しないがな・・・・・・・!」

こちらに向かって刀を突き出したまま突っ込んで来る刹那に牛鬼と千草は驚く。刹那はそのまま牛鬼の口の中に突っ込み、そして・・・・・・・

「ギィィィィィィ!!」
「ハハハ、勢いつけ過ぎたか・・・・・・!」
「そんな・・・・・・頑丈な牛鬼の皮膚をあんな容易に・・・・・・・」

牛鬼の口の後ろを軽々と突き破って優雅に空中を舞う刹那を見て千草は唖然とする。
式神にも痛みというのがあるかどうかは不明だが悲鳴の様な声を叫びながら苦しむ牛鬼に、刹那はそのまま牛鬼の周りを旋回しながら刀を構え直して笑みを浮かべる。

「死ね・・・・・・!」
「ギ・・・・・・!」
「死ねッ! 死ねッ!! 死ねぇぇぇぇぇ!!!」
「ギィィィィィ!! グギィィィィィ!!!」

刀を振り回しながら刹那は牛鬼の周りを目にもとまらぬ速さで飛び回る。
その度に牛鬼の体には大量の刀傷が出来ていき、素直にただ斬られるしかない状況に。
桁違いの強さ、千草、全蔵、そして土方も彼女の驚異的に上昇した戦闘力に思わず見とれれてしまう。



攻撃が始まってから数分後、ようやく刹那は牛鬼の眼前で止まった。
既に牛鬼は目も当てられないほどの刀傷を負って瀕死に追い込まれている。
虫の息の式神を見て刹那はつまらなそうに睨みながら

「消えろ・・・・・・!」
「ギッ! ガァ・・・・・・」

刹那が刀を振った瞬間、牛鬼の首がおもちゃの様に綺麗に飛ぶ。
最後に叫び声を上げた後、牛鬼は白い煙と共に音を立てて消えて行った。
自分にとって最強の式神であった牛鬼がたった一人の少女になぶり殺しにされた事に、千草は口を開けて呆然とするしか出来なかった。

「嘘やろ・・・・・・ウチの牛鬼があんなあっさりと・・・・・・ウチの中で一番強い式神が・・・・・・」
「千草・・・・・・引くぞ」
「やっぱりウチみたいな奴・・・・・・高杉に利用されるだけの存在なんか・・・・・・?」
「千草ッ!」

ポツポツと虚ろな目で呪文の様に呟いている千草に全蔵は近づいて声を荒げる。
そのおかげで我に返った彼女はすぐに彼の方へ振り向いた。

「全蔵・・・・・・」
「このままだとマズイ、一回引くぞ」
「わかった・・・・・・けど足が震えて動けへん・・・・・・」
「しょうがねえ奴だな・・・・・・」

式神を失ったショックか、それとも逸脱した戦闘力を持つ刹那に恐怖心が芽生えたのか、千草の膝は笑ってしまって彼女の思い通りに動けない。全蔵はやれやれと首を横に振った後、彼女の両足を持ってお姫様だっこの用法で持ち上げていると

「フフフ・・・・・・」

こちらに向かってあの少女の無邪気な笑い声が聞こえてくる。
全蔵は思わず額から汗が一つ流し、顔を上げて前方を見る。

「逃がすと思ってるのかこのまま・・・・・・!」
「チ・・・・・・!」
「殺してやる・・・・・・まずはお嬢様を傷付けたお前を・・・・・・! 次はその女だ・・・・・・!」
「ひ・・・・・・!」

右手に持っているのは妖刀死装束、背中に生える黒い翼をなびかせながら、刹那は全蔵達の方へ一歩一歩と踏みしめていきながら近づいて行く。
それに対して全蔵は苦々しく舌打ちして、千草は怯えたように彼にしがみつく。
全蔵は彼女をすぐに下ろして後ろに退避させ、近づいてくる刹那にコートの下からクナイを取り出す。

「よもやコイツ等と立場が逆になるとは思いもしなんだ・・・・・・・千草、俺が時間稼いでる隙にさっさと逃げろ」
「何言っとんのやッ! お前残してウチ一人で逃げれるかッ! お前にもしもの事があったら・・・・・・ウチ、また一人ぼっちやないか・・・・・・イヤやそんな事・・・・・・」
「そういう言葉はべっぴんさんより醜面に言われる方が嬉しいんだがな・・・・・・」

泣きそうな声で呟く千草の声を背に、全蔵は口元に笑みを浮かべた後クナイを両手に大量に持って刹那に向かって身構える。

「摩利支天、服部全蔵、参る」
「神鳴流剣士、桜咲刹那、執行する・・・・・・!」

飛行能力を使わずに刹那は全蔵に向かって突っ込んで行く。彼を殺すことだけを考えて。
しかしそう簡単には死にはしないと全蔵も大量のクナイを彼女に向かってガトリングのように投げつける。

「そらそらそらそらぁッ!!」

四方八方から飛んでくる全蔵のクナイ手裏剣。
この攻撃にさっきから苦渋を飲まされ続けていた刹那だが、今の彼女にはそんな攻撃の対抗策など容易に出来る。

「人の力で・・・・・・私に勝てると思ったかァァァァ!!!」
「やっぱ駄目か・・・・・・・」

全蔵の手裏剣が飛んで来た瞬間、刹那は一度止まって再び翼を広げる。ダーツの様に羽が再び発射され、全蔵の手裏剣は全て撃ち落とされてしまった。
だがそれを見ても彼は怯まず、右手にクナイを持って一気に彼女に迫って行く。

「飛び道具が駄目なら肉弾戦で行かせてもらうぜ」
「まだ抗おうとするか・・・・・・・その肉体を死滅させなければわからないらしいなぁ・・・・・・」

走ってくる全蔵に刹那は体をユラユラ動かしながらおかしそうに笑った後、目をカッと開いて死装束を強く握る。

「神鳴流奥義・・・・・・・」
(殺しの経験は俺の方が上だ・・・・・・人を殺す覚悟もな・・・・・・!)

両者がぶつかろうとするその時、刹那の妖刀が赤く光る。

「百花繚乱ッ!!」
「ぐぅッ!」
「全蔵ッ!」

呟いたと同時に刹那は刀の先からほとばしる『妖気』。一瞬の躊躇もせずに刹那はそれを全蔵にぶつける。
その衝撃をモロに食らった全蔵は口から血を吐きながら、後ろにいた千草の所まで吹っ飛び壁に激突する。
周りには黒く染まった桜の花びらが大量に舞っている。

「がはッ! がはッ! 神鳴流の剣術はあんな事も出来るのか・・・・・・恐れいったぜ・・・・・・」
「神鳴流が扱うのは『気』や・・・・・・あんな禍々しいモンやない・・・・・・それにあんなちっこいガキがこれほどの威力を出すなんて・・・・・・」
「チッ・・・・・・悪魔に魂でも売ったんじゃねえのかあいつ?」

千草の肩に手を回して起き上がりながら、全蔵は目の前に立ってこちらを睨みつけてくる刹那に舌打ちする。

「簡単には殺さない・・・・・・その手と足を千切って・・・・・・最後に首を飛ばす・・・・・・二人共だ・・・・・・!」
「随分と物騒な性格になったぜあのガキ・・・・・・・」

黒い桜吹雪の中を刹那がこちらに向かって歩いてくる。まだなんとか動ける全蔵は千草をまた後ろに隠して懐からクナイを取り出す。
互いに戦う意欲を見せる二人。しかし・・・・・・

「おいクソガキ・・・・・・」
「・・・・・・土方さん」

声の本人は刹那と親しい間柄である土方。口にタバコを咥えながら意識を失っている木乃香を背負って後ろから近づいてきた。
刹那はそんな彼にいつもの調子の声で振り返る。どうやら土方や木乃香に対しては理性という物が働くらしい。
そんな彼女に土方はいつも通りに接する。

「もう勝負はついた、こいつ等しょっぴいて連れて行くぞ、敵の情報がわかるかもしれん」
「いえ・・・・・・お嬢様とあなたを傷付けたコイツ等に、生かす価値などありません・・・・・・」
「俺の命令が聞けねえってのか? いつものお前なら俺の言う事はちゃんと聞いていた筈だが?」
「・・・・・・」
「その姿の原因はなんだ、お前何か俺に隠してるモンがあんだろ? 正直に吐け」
「・・・・・・わかりました正直に言います、しかし・・・・・・」

土方との会話の途中で一旦言葉を切った後、刹那は急に後ろに振り返って全蔵達の方に殺意のある目を向ける。

「アイツ等を殺してから・・・・・・!」
「刹那ッ!」

死装束を強く握って刹那は全蔵達の方へ突っ込む。土方の叫びにも耳を貸さない。

「私の大切な物を傷付ける者は・・・・・・誰であろうと引き裂いてやる・・・・・・!」
「やっぱり来るか・・・・・・千草、俺の後ろに隠れてろ、魔力もほとんどねえお前じゃむざむざと殺されるだけだ、俺が守る」
「ウチの為に・・・・・・ごめんな・・・・・・」
「勘違いすんじゃねえよバカ・・・・・・」

涙ながらの感謝の言葉を千草に言われて照れくさいのか、全蔵は頭を掻き毟る。
そして突っ込んで来る刹那に全蔵は身構える。

「かかってこいよ化け物娘・・・・・・!」
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」

牙をむいて襲いかかってくる刹那に全蔵はクナイを持って対峙する。
刹那は彼めがけて刀を振り下ろす。だがその時

「待たれよ」
「なッ!」
「貴様・・・・・・!」

いつの間にか二人の間に割って入って来て、刹那の縦斬りを刀で受け止めた男。
ウザったらしい程の長い黒髪を揺らしながら現れたその男の正体は・・・・・・

「例え敵と言えど、お主の様な子供が手を血に染めるのは武士として見過ごせん、刀を引け」
「お前、どうやってここに・・・・・・!」
「桂・・・・・・小太郎・・・・・・!」

現れたのは全蔵達にとっては敵、刹那達の方面では半分味方、半分敵と認識されている攘夷志士、桂小太郎。刹那は彼に刀を受け止められながら射殺す様な視線を向ける。

「邪魔をするな・・・・・・! お前も殺すぞ・・・・・・!」
「この者達にはまだ聞く事がある、ゆえに殺す事は許さん。それにしてもお主、随分とイメチェンしたな、一瞬誰かと思ったぞ」
「黙れ・・・・・・!」

つばぜり合いの状態で刹那と桂がそんな会話をしていると、後ろにいる土方も彼が現れた事に驚いていた。

「あれは桂・・・・・・・! 何の真似で俺達の前に現れた・・・・・・!?」
「う~ん・・・・・・桂さん?」

土方が桂の存在に疑問を抱いていると、彼におぶられていた木乃香が瞼をこすりながらようやく意識を回復した。
彼女の左肩には土方の着ている新撰組の衣装の切れ端が巻き付けられてる。

「娘っ子、意識が戻ったのか・・・・・・早速だがお友達がやべえ状態だ、理由を知ってるなら説明してくれ」
「え?」 

そう土方に言われて木乃香はおぶられながら刹那の方へ目を向ける。黒い翼と赤い目、そして黒い霧に覆われたあの刀を見て彼女はショックを受けた。

「そんな、せっちゃんまた・・・・・・! 大丈夫やって言ってたのに・・・・・・」
「なんであんな姿に変わった、詳しく教えろ」
「高杉さんの・・・・・・」
「高杉だと?」
「前に高杉さんから貰ったあの刀が原因なんよ・・・・・・」
「なにッ!?」

意外な人物が原因だと知らされて土方は驚愕する。
一方同じく外野にいる全蔵と千草は

「そのまま同士討ちでもやってくれ、俺達は帰らせてもらうぜ」
「まさかあの男のおかげで救われるとはな・・・・・・命拾いしたでホンマ・・・・・・」

二人が戦ってるうちにそそくさと部屋の窓を蹴破って逃げてしまった。

































一方、桂と刹那は近距離でお互い一歩も引かずに得物同士で斬り合いをしている。
理性が飛んでいる刹那にとって桂は駆除対象としか認識されなかったのだ。
殺すつもりで襲いかかってくる刹那に対して桂は冷静に彼女の剣撃を受け流す。

「目が真っ黒だぞ眼科に行ったらどうだ?」
「攘夷志士のクセに私に話しかけるなッ!」
「やれやれ、これでは幕府の犬の方がまだまともに会話出来る・・・・・・」

呑気な会話をしながら手に持つ刀は何十回もぶつかり火花が飛び散る。一見互角に見える勝負だが、異常なほどに戦闘能力が増加されている刹那は、銀時と同じ歴戦の猛者である桂を少しずつ押していっている。

「殺す・・・・・・! 攘夷志士は全員殺す・・・・・・!」
「正気になれ、ここで俺達が殺し合って何になるというのだ。俺達の志は同じの筈だ」
「うるさいお前なんかと一緒にするんじゃないッ!」
「木乃香殿を護り、高杉の野望を打ち砕く、立場は違えど目的は一緒の筈であろう」
「へらず口を叩くなッ!」
「しま・・・・・・!」

一発一発に重みを入れて行く刹那の攻撃に、遂に桂の刀が弾かれた。丸腰状態になった彼を見て、刹那は目を光らせる。

「死ねッ!」
「く・・・・・・!」

桂の頭を真っ二つに斬ろうと刹那は叫びながら縦に大きく刀を振り下ろす。
丸腰の桂には成す術がない・・・・・・かと思いきや

「ふんッ!」
「なッ!」
「真剣白刃取り・・・・・・!」

降り下ろされた刹那の刀を桂は膝を折ってしゃがみ込み、瞬時に両手を出して挟む。
九死に一生、ここでまさかの真剣白刃取りを桂は実行したのだ。

「クソッ! さっさと死ねッ!」
「まだ死ねぬ・・・・・・! 冷静になるのだ、木乃香殿はきっとこんな事で無駄な血を流すのを望まぬ筈だ・・・・・・!」
「お前がお嬢様の名前を出すなッ!」

止められた刀を振り下ろそうと刹那はどんどん刀に対して力を込めて行く。
桂は険しい表情でそれをなんとか阻止しようと奮闘する。

「人が人を殺すというのは必ずなんらかの理由が存在する・・・・・・! 何かを護る為、何かの目的を得る為・・・・・・!」
「まだ喋る余裕があるか・・・・・・・」
「最初にお主を本能寺で見かけた時は・・・・・・・木乃香殿を命を賭けて護るという立派な志を持った侍だと思った・・・・・・しかし今のお主は侍ではない・・・・・・」
「・・・・・・」
「こんな事をして木乃香殿が喜ぶか? 木乃香殿は救われるか? お主がやろうとしているのは・・・・・・・ただの自己満足に過ぎぬ・・・・・!」
「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!」

桂の言葉に刹那は耳を貸さず吠える。
徐々にせまってくる刀、桂はそれを必死に両手で止めようとするが彼女の力の方が上手だ。
これまでか、桂がそう感じたその瞬間。












「刹那・・・・・・」
「え?」
「熱くなり過ぎだ、落ち着け」
「土方・・・・・・さん?」

不意に後ろから抱きしめられて、刹那は目を真開いて刀に力を入れるのをピタリと止める。
抱きしめて来たのは土方、それに対して刹那は動揺の色を顔に見せる。

「妖刀なんかに負けてんじゃねえよバカ、俺も人の事言えた義理じゃねえが・・・・・・」
「わ、私は・・・・・・・」
「刹那、お前はなんで剣を持った」
「剣・・・・・・」

持っている刀を直視ながら黙りこむ刹那に、土方は隣にいる彼女を顎でしゃくる。

「この小娘を護る為、だったんじゃねえのか」
「せっちゃん・・・・・・」
「お、お嬢様・・・・・・!」

木乃香が意識を回復したのを今気付いた刹那は少し驚いたような顔をする。木乃香はゆっくりと彼女に近づき頭を撫でる。

「ウチが怪我したのは・・・・・・ウチが勝手にやった事やからせっちゃんは悪くないんよ・・・・・・」
「違いますお嬢様・・・・・・全て私の不甲斐なさのせいで・・・・・・!」
「もう自分を責め続けるのは止めて・・・・・・」
「・・・・・・!」
「一人で何もかも抱え込んでるやん、ウチや土方さん、銀ちゃんとか他のみんなに頼ってよ・・・・・・・」
「わ、私は・・・・・・!」

戸惑っている様子で刹那が木乃香に向かって何か言おうとすると、土方が彼女抱きしめた状態で口を開く。

「お前、俺に頼っても意味がねえとでも思ってんのか?」
「え、そ、そんなわけ・・・・・・!」
「だったら俺にお前の抱え込んでるモン全部吐きだせ、こっちは困った同僚を上と下に持ってんだ。お前の悩みの一つや二つ、あの二人に比べればなんて事ねえよ」
「土・・・・・方・・・・・・・さん」

刹那の持っている刀がカタカタと揺れ始める。彼女がもう刀に力を入れて無い事がわかった桂は両手を開いて一歩引いて立ち上がり、彼女達と土方を黙って見守る。

「一人で背負いすぎるから高杉のヤローの刀なんかに屈するんだ、仲間の俺達をもっと頼れ、一人で生きようとすんじゃねえ」
「私・・・・・・私・・・・・・」
「気軽に話し合える仲間なんやからウチ等とせっちゃんは」
「は、はい・・・・・・」

笑いかけてくる木乃香を見て、刹那は安堵の表情をしながら目に涙を浮かべる。
すると彼女の体が徐々に元の姿に戻って行く。
翼も白に変わり
目もすぐに元に戻った。

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

土方と木乃香に向かって最後にそう言い残した後、刹那は両手に持っていた死装束を落としてカクンと土方に抱かれたまま眠るように意識を失った。








































「治まったようだな」
「前はもっと酷かったんやで・・・・・・前よりは刀の呪いが弱まったのかもしれへん・・・・・・」
「これより酷かったのか、想像もしたくねえな・・・・・・」

そんな事を言う土方に抱き抱えられながら目を閉じている刹那。
ホッとしたように木乃香がしゃがみ込んで彼女に顔を向ける。
いつもの状態の彼女だ。

「あの二人には逃げられてしもうたな・・・・・・」
「そうだな、だがある意味もっと重要な奴に出会えたぜ」
「え?」

誰の事かと木乃香が首を傾げると、土方はその男を睨みつける。

「桂、逃げれると思うんじゃねえぞ・・・・・・」
「ほう、仲間の一人は意識不明、自分も傷ついているにも関わらずまだ俺に噛みつこうとするのか、さすがは幕府の犬だ」
「ノコノコとここにツラ出した攘夷志士を見逃すわけには行かねえな」

吹っ飛ばされた自分の刀を拾って鞘におさめる桂に土方は睨んだまま口を開く。
すると桂は腕を組んで言葉を返す。

「俺はある人物に木乃香殿の護衛を頼まれてやって来たのだ。貴様等、真撰組とじゃれあうつもりなど無い」
「ウチの護衛? 誰に頼まれたん?」
「お主をよく知っている者だ」
「?」

言っている事にピンと来ていない様子の木乃香から目を逸らして、桂は土方に方へ向く。

「それでは木乃香殿は俺が預かるぞ、もうお主等には任せておけん」
「え、ええッ!」
「何言ってんだテメェ・・・・・・・!」

とんでもない事を口走った桂に木乃香自身が驚き、土方も刹那を横に寝かせた後、怒ったように立ち上がる。
攘夷志士に木乃香を渡すなど出来るわけがない。

「お主達に預けるより俺はもっと安全な所を知っている、そこに木乃香殿を置いた方が高杉も容易に手が出せない筈、真撰組の役目はもう終わった、さっさと江戸へ帰るが良い」
「ふざけんじゃねえ、テメェみたいな奴にコイツを預けれるか・・・・・・!」
「本来はお主等にずっと預けておいた方が安全かと思っていたのだが、やはり相手はあの高杉だ、念には念を入れなければ木乃香殿が危険だと感じてな」
「信用出来るか高杉と同じ攘夷志士のクセに・・・・・・・俺を騙そうたってそうはいかねえぞ・・・・・・」

ドスの効いた声を出した後、腰に差してある刀を握る土方に桂はフンと鼻を鳴らす。

「騙す? そんな事をして俺になんの得がある、少しは状況を見極める事を理解したらどうだ」
「テロリストのお前にこの娘を渡す事なんて俺がすると思ってんのか? ああ?」
「テロリストではない、江戸に寄生する天人を排除して侍の国を作り直すのが俺の使命、悪を討つ為に日々戦っている侍だ」
「ほう、奇遇だな俺も悪を斬る仕事だ・・・・・・攘夷だとか天誅とかほざいて国家転覆を企んでる様な連中を始末するのが俺の仕事だ・・・・・・・!」

両者ゆずれない信念が火種となり口げんかを始める桂と土方。いつ刀を抜いてもおかしくない様子だ。
そんな二人を見てどうすればいいのか困ったように木乃香はオロオロしている。

「う~二人共仲良くしてよ~・・・・・・」

目的は一緒なのだが桂は攘夷志士、土方は攘夷志士を倒す事を行う真撰組だ。
反対方向に生きている二人だけに意見が合う筈もない。

なんとかする手立ては・・・・・・・

最善の策は無いかと木乃香が顎に手を当てて模索していると

ふと前に夕映がとある国の戦の話をしてくれたのを思い出した。





『三国志演義の中ででかなり知名度が高い戦と言ったら赤壁の戦いというのがありましてね、10万人の兵力を持つ呉軍が2万人程しかいない劉備軍と手を結んで、100万人の兵力を持つ魏軍を倒すという戦です。本来なら敵同士である二つの軍ですが、互いの力を尊重して手を組めば、圧倒的兵力を覆す程の強力な軍になる事もあるという事です、簡単に説明すると抹茶とコーラを合わせると本来の何十倍にも美味しくなるのと一緒ですね』





最後のくだりはともかく彼女から何気なく聞いた事がまさかのヒントになった。
木乃香は閃いたように桂と土方の方へ顔を上げる。

「桂さん、土方さんッ! ええこと思いついたッ!」
「「ん?」」

口喧嘩を止めて桂と土方は同時に彼女の方へ向くと。
木乃香は二人を交互に指差していく。
そして彼女の口からとんでもない言葉が飛び出た。

「同盟ッ!」
「「は?」」
「攘夷志士の桂さん達と、真撰組の土方さん達が、高杉さんを倒す為に同盟を結ぶってどうッ!?」
「な、なにッ!?」
「攘夷志士の桂と真撰組である俺達が同盟を結ぶだとッ!?」

木乃香の提案に桂と土方はすっときょんな声を出すと、彼女はニッコリ笑って頷く。
相対する二つの組織が一つの勝利の為に手を取り合って協力。
長き因縁を持つ桂と土方にとってそれはとんでもない策だった。

「高杉討伐の為に真撰組と同盟・・・・・・」
「出来るわけねえだろ小娘ッ! 俺達は日々血の滲む戦いを繰り広げて来た敵同士だぞッ! そんな簡単に手を組むなんざ・・・・・・・」
「いや、単純でありながら名案だぞ木乃香殿」
「なッ!」

そんな事出来ないと叫ぶ土方とは対照的に桂は腕を組んで木乃香に向かって頷く。
1:1:1より、2:1ならば高杉の野望をより効率的に止められる、桂の考えはコレだ。

「俺達の敵は今は高杉ただ一人だ、ここは一時期手を結び、団結した方が勝率が上がるかもしれん、攘夷志士の刃と真撰組の刃、合わせてみれば何倍にも強くなれる可能性もある」
「誰がテロリストのお前なんかと組むかッ! 駄目だ駄目だそんな作戦、こっちにはプライドっつうモンがあんだ」

同盟を結ぶという提案に意外と肯定的な意見を言う桂だが、土方は手を振って否定的。
彼に対して木乃香はムッとした表情で口を尖らせる。

「プライドとかそんなん今は関係ないやんッ! 桂さんと仲良うなった方が絶対高杉さんを止められる筈やッ! もしバラバラに言って負けたらどうすんのッ!?」
「んなこと言ってもな、同盟相手がこの桂だ。俺達真撰組は何度もコイツに煮え湯を飲まされ・・・・・・」
「もし土方さんが死んじゃったらのどかとせっちゃんが悲しむんやでッ!」
「う・・・・・・」

木乃香の口から思いがけない二人が出てきて土方は言葉を詰まらせる。
確かにこの戦い生き残る保障は無い、もし自分が死んでしまったら・・・・・・

「ウチだって土方さん死んで欲しくないもんッ! だから桂さんと仲良くしようッ! 生き残る為に一緒に戦おうッ!」
「のどかとコイツの名前出すんじゃねえよ・・・・・・それ言われるとこっちも困るだろうが・・・・・・」
「土方さんッ!」

まだ悩んでいる土方に木乃香が一喝。それにウンザリしたように彼女を見た後、諦めたように。

「あ~わかったッ! 桂と組めばいいんだろッ! 組めばッ! 高杉を倒すまでだからなッ!」
「やった~ッ!」
「まさかこのガキに言い包められるとは・・・・・・」

遂に土方が桂との同盟を決意。それにバンザイポーズを取って喜こぶ木乃香を見ながら土方はため息交じりに呟く。するとそんな彼に桂が近づいて

「俺は異論は無い、木乃香殿の言う通り、ここは攘夷志士も真撰組も関係なく手を取り合って戦えば、きっと高杉の軍勢に勝てる筈だ」
「この騒動が終わったら絶対捕まえてやるからな・・・・・・・!」
「フ、いいだろう、終わったらまた遊んでやる、お主等との鬼ごっこは退屈せん」
「マジで殺してやる・・・・・・!」

ナメたように鼻で笑ってくる桂に土方は息を荒げていると、木乃香が上機嫌の様子で二人の手を持つ。

「どういう真似だ?」
「仲良くするんやから握手するの当たり前やろ?」
「なッ! 俺がコイツと握手ッ!?」

またとんでもない事を言う木乃香に土方が拒もうとするが、桂はまた鼻で笑う。

「今ぐらいしか出来ない貴重な体験だな、短い間だがよろしく頼むぞ、土方殿」
「ほら土方さん、桂さん手を出してるで」
「ぐぬぬ・・・・・・! チッ!」

木乃香に言われて土方は、桂の差し出してきた手を物凄く嫌そうな表情で握って握手する。

「攘夷志士と真撰組の最強タッグ結成や~ッ!」












それは因縁の組織同士が一つの目的の為に手を組んだ瞬間だった。
















「ふんぐぅ・・・・・・・!」
「折れろコラァ・・・・・・!」
「二人共止めて~ッ!」

同盟を結んで早々、桂と土方は睨み合いながら”握手”で互いの拳の骨を握り潰そうとする


本当に仲良く出来るのだろうか・・・・・・・







[7093] 第五十五訓 昨日の敵は今日の友
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/16 21:12
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・!」

京都が誇る観光名所の一つであるシネマ村。

修学旅行でやって来た麻帆良学園の三年A組の“極普通の生徒”佐々木まき絵もまた、観光気分でシネマ村に訪れていた。
だが現在、まき絵はある物から必死に逃げている。

「ギャァァァァ!! だ、誰かァァァァァ!!」
「ハハハハハッ! 俺様から逃げれると思ったかッ!」

逃げても逃げても追いかけてくる追跡者。路地裏に逃げ込んだまき絵だが運悪く行き止まり。

「あ~ッ! なんでいつも私ってついてないのォォォォ!? 一度でいいから良い事起きてよォォォォ!!」
「追い詰めたぜ・・・・・・・さあ、“闇のゲーム”の始まりだ」

低く唸るように声を出す追跡者にまき絵は震えながら振り返る。
尖った髪の毛、見るからに凶悪そうな面構え、額には目の様な形がくっきりと出ている。
そして左手に付けているおかしな装飾品。男は舌舐めずりしながらまき絵を御馳走のように視線を向ける。

「俺様の名はマリク・・・・・・王の墓を守る者・・・・・・さあ俺様とのデュエルで死のダンスを踊らせてやるぅ・・・・・・!」
「いやいやいやッ! デュエルディスクとか持ってないんでッ! 神様変な人に襲われていますッ! まき絵を助けてくださぁぁぁぁいッ!!」

天に向かって祈りをささげるまき絵に、男はニヤリと笑う。

「生憎だが神は俺の手中だ・・・・・・! 太陽神ラーの恐ろしさをその身で味わうがいいまき絵・・・・・・!」
「のええッ! 名前覚えられたッ!」
「まき絵、貴様に地獄の業火を体験させてやるぜ・・・・・・!」
「名前連呼されたッ! もう誰でもいいから助けてぇぇぇぇ!!」

とにかく誰か助けが来て欲しい、この男を倒してくれる様な勇敢な人を・・・・・・
まき絵がそれを願いながら叫ぶと、彼女の願いが通じたのか、頭上からキランと光が

「待ちな」
「なにッ!」
「あ、私の祈りが遂に・・・・・・へぶッ!」

頭上から降ってくるその人物にまき絵が天に感謝しようとすると、まさかのその人物に思いっきり顔面を踏まれるまき絵。降って来た男は気にせずに彼女から下りて追跡者と対峙する。

「俺の名は鬼柳京介、デュエルに飢えた死神、ここは俺が相手になってやる」
「ほほう、まき絵を救いに来たのは神は神でも死神という事か・・・・・・!」
「いやあの・・・・・・・誰?」

追跡者に説明をした後、顔面をさすりながらまき絵はフラフラと立ちあがって、やってきた男を見る。
白髪の長い髪を揺らしながら優雅に佇む青年、顔には黄色いマーカーが付いていて左手には追跡者と同じデュエルディスクが付けられている。

「遊星達とはぐれて迷子になっちまってたら・・・・・・まさか俺を“満足”出来そうなデュエリストに会えるとはな」
「中々生きの良い奴だなぁ・・・・・・その余裕に満ちた表情に絶望をうえ付ける事が出来るなんて嬉しくてしょうがないよぉッ! 闇のゲームは勝者は生き残り、敗者には死より残酷な罰ゲームが待っている・・・・・・お前が負けたらお前とまき絵には俺様特製の豪華ディナーを贈呈してやるぜぇ・・・・・!」
「へらず口は今の内に叩いてるんだな、まき絵、後ろに下がってろ」
「え、何で初対面の私の事みんな名前で呼ぶの・・・・・・?」

舌を器用に回しながら恐ろしげなことを言う男に怯える様子もなく、青年は後ろにいるまき絵に指示。
何故二人が自分の名前をそんな早く覚えられるたのかまき絵は疑問を感じながら素直に下がる。

「お待ちかねのゲームの時間だ・・・・・・!」
「さて・・・・・・俺を満足させて貰おうじゃねえか・・・・・・!」

二人はデュエルディスクを取り出す。
今、互いのプライドと命を賭けた決闘が始まる。

「「デュエルッ!!」」

































「デュエルじゃねえよッ!」
「ぐわぁッ!」

と思いきや追跡者の男の後ろからゲームとは関係ない蹴りが飛んでくる。男めがけて蹴りを入れたのは白夜叉衣装からいつもの着物姿に戻っている坂田銀時。
蹴られた男はその場でグルグルと回転して吹っ飛ぶ。

「ったく、何本格的なデュエル始めようとしてんだよ・・・・・・一話まるまる終わっちまうじゃねえか」
「痛い痛い・・・・・・へへぇ、デュエル中はプレイヤーに対する妨害行為は禁止だぞ・・・・・・」
「うるせえよ、おまえちょっと来い。お前もここに口寄せされた妖怪だろ? ボコしてただの紙にしてやる」

むんずと男の髪を掴んで銀時は引っ張って連行する。それに男は頭をおさえて声を上げた。

「イダダダダッ! マジ痛いッ! 髪を引っ張るのを止めろッ! セットするのに何時間掛かると思ってるッ!」
「はいはい、黙って歩けボケ、妖怪のクセに人間様になんだそのクチは」
「俺様は妖怪ではないッ! 俺様は王の墓守りッ! そしてユニバーサル○ャパンを訪れに来た闇のデュエリストよッ!」

銀時に髪を引っ張られながら男は邪悪な笑みを浮かべる。すると銀時は彼の髪を引っ張るのをピタッと止める。

「ユニバーサル○ャパンはオメー、ここじゃねえよ、大阪だよ、ここシネマ村、京都」
「なんだとッ! まさかスパイ○ーマンやジョー○はここにはいないと言う事かッ!?」

仰天する男に銀時はしらっと

「いるわけねえだろ、ほら大阪までの道のりが書いてあるパンフレット、あっちで売ってるから買ってこいよ」
「ほ、本当かッ!? それは助かる、クックック・・・・・・待ってろウッ○ィウッドペッカーッ! 貴様等のゲームを俺様が支配してやるぜッ!」

高笑いしながら去って行く男の後ろ姿を見ながら銀時は疲れた表情で頭を掻き毟る。

「んだよただの観光客かよ、間際らしい格好してんじゃねえよ・・・・・・・」

ブツブツ文句を言いながら銀時は男と反対方向へ歩いて行ってしまう。
路地裏に取り残された青年とまき絵はただ呆然と固まり、そして・・・・・・

「・・・・・・満足できなかったから帰るぜ」
「・・・・・・他作品からわざわざ御苦労さまです・・・・・・」

去って行く死神デュエリスト鬼柳京介に、精神的にも肉体的にも疲れている表情のまき絵が一礼した。







































第五十五訓 昨日の敵は今日の友

真撰組というのは悪即斬もいとわない武装警察だ。市民を守る為に日夜戦う組織、幕府を仇なす攘夷志士も無論捕縛対象。なのだが・・・・・・
真撰組代理副長の沖田は今、帰って来たばかりの副長土方に、ある疑問を抱いていた。

「土方さ~ん御無事で何よりです、俺心配しましたよ~」
「・・・・・・全く心がこもってない棒読みの台詞をありがとな」
「ところで一つ聞いていいですかぃ?」
「なんだ、手短に話せ」

何故一緒に行動していた刹那が彼におぶられて寝ているとか、何故木乃香が肩に傷を負っているのかと、様々な疑問が浮かぶが。
一番妙な点は土方が“ある男”と一緒にいる事である。

「なんで攘夷志士の桂の野郎を連れて歩いてるんですかぃ?」
「・・・・・・」
「まさか土方さん、近藤さんの恩を忘れて攘夷志士に寝返ったとか・・・・・・」
「なわけねえだろッ!」

土方の後ろで木乃香と一緒に立っているのは紛れもない攘夷志士、桂小太郎。
真撰組が日々血眼にして捕まえようとしている攘夷志士の一人だ。

「おい桂、まさかテメェ、自首しに来た訳じゃねえよな?」

首を伸ばして桂に向かって喋りかける沖田。桂は腕を組みながら平然と答える。

「誰が自首などするか、俺とこの男が一緒にいるのはただ一つ。打倒高杉の為の同盟だ」
「同盟だと?」
「土方さんや沖田さんが、桂さん達と喧嘩なんかせえへんで仲良うして、一緒に高杉さんを止める作戦や」

桂の代わりに木乃香が笑いかけながら口を開く。すると沖田は目を細めて

「土方さん、何言ってんですかぃこのガキ?」 
「信じらねえと思うが娘っ子の言う通りだ・・・・・・俺達真撰組は、攘夷志士の高杉を倒す為に、攘夷志士の桂と同盟を結ぶ・・・・・・」
「は? 土方さん正気ですかぃ?」
「悪党を倒す為に悪党と組む。兵法でもそんなのあるだろ」
「あ~土方さんがマヨネーズの多量摂取のせいでおかしくなっちまった」

タバコの煙を吐きながら土方が言った言葉に沖田は呆れたようにため息を突く。
そうこうしている内に、A組の生徒ののどか、夕映、ハルナも土方がいる事に気付いて走ってやって来た。

「お帰り~・・・・・・はッ! なんで刹那さんおんぶしてんの土方さんッ!?」
「スクープですぅ」
「誤解してんじゃねえッ! コレは色々会った経緯を踏まえて成すべき結果であって・・・・・・っておいッ! 何携帯で撮ってんだクソガキッ! 殺すぞッ!」
「おっといけねえ」
「なんでお前も撮るんだよッ!」

刹那を大事におんぶしている土方を見て驚愕しているハルナを尻目に、夕映とそれに便乗した沖田が写メを撮りまくる。
それに土方が手を振りながら止めさせようとしてると、のどかが苦笑しながら

「べ、別にそういう事じゃないんですよね・・・・・・・?」
「そういう事でもああいう事でもねえよ、俺はお前一筋・・・・・・」

タバコを咥えながら土方がのどかに随分と大胆な事を言おうとしたその時。

「アハハハハッ! 銀時ッ! 妖怪はもう何処にもおらんかったぞッ!」
「俺の所にもデュエリストしかいなかったよ」
「あれ? 銀時さん、あの三人の女の子は?」
「更衣所でまだ着替えてるよ、遅いから先に出ちまった」
「アハハッ! いっちょ覗きでもするか銀時ッ!」
「・・・・・・・目玉ほじるぞ」
「ハハハ・・・・・・目がマジになっとるぞ銀時・・・・・・・」

沖田達の後ろで合流している三人組を見て土方はふと止まる。
一人は腐れ縁の仲である銀時だとわかるが、バカみたいに大笑いしている坂本とネギの親戚であるネカネの事を土方は知らない。

「総悟、誰だアイツ等」
「ん? ああ、旦那の知り合いらしいです」
「知り合いだと?」
「男の方は旦那と同じ偶然こっちの世界に来ちまったクチらしいですぜ」
「てことは漂流者ってわけか・・・・・・?」

写メを取りながら説明する沖田に土方が難しそうな表情をしていると、銀時達がふと土方に気付いてこちらへ近づいてくる。

「あん? やっと帰って来たのかオメー、オメーがいない間妖怪騒ぎで大変だったぞコノヤロー、ん?」
「おおヅラッ! お前そんな所で何しちょっと・・・・・・むぐッ!」
「桂さ・・・・・・」

土方に悪態をつく銀時はすぐに彼の後ろにいる桂に気付く。銀時同様それに気付いた桂とネカネは話しかけようとするが、銀時はすかさず二人の口を塞ぐ。

「・・・・・・バカかお前等、あのタバコ吸ってるふてぶてしい奴とこのサディストは攘夷志士を取り締まる警察だっつうの・・・・・・こんな所でヅラと気安く喋ってみろ、知り合いだって奴等に勘付かれるだろうが・・・・・・」
「あ、すみません・・・・・・」
「めんどくさいのぉ、別にバレても問題ないんじゃなか?」
「それこそもっとめんどくせえ事になるだろうが・・・・・・・」

坂本に向かって正論を述べた後、銀時は二人の口から手を離す。
桂も三人の存在に気付いてるのかあえてこちらには視線を向けてこない、と思いきや

「あ、ウインクして来たんですけど桂さん・・・・・・」
「すげぇぶっ殺して~・・・・・・」

時折、桂が銀時達の方にアイコンタクトみたいなウインクをしてくるので、銀時は平静を装いながら額に青筋を立てる。やはり桂も坂本同様、何処かネジが抜けてる。

「にしてもなんでヅラがあいつと一緒にいんだ・・・・・・?」
「銀さん、ただいま戻ってきましたわ」
「んあ?」

桂と土方が一緒にいる事に銀時が顎に手を当てて考えていると、不意に後ろから声を掛けられたので、変な声で返事をして振り返った。

「お前等やっと来たのかよ」
「銀さんはもう元に着物に着替えてたんですわね」
「勝手に行きやがって・・・・・・」

そこにいたのは私服姿の千雨とあやか、和美。あやかは別に文句はなさそうだが、銀時に置いてけぼりにされた事に千雨はご機嫌斜めの様子。しかし銀時はそんな彼女にだるそうに

「男の着替えは早えんだよ、つうかお前等長すぎ、待ってられねえよ」
「仕方ねえだろ、着物ってどうやって脱ぐのか全然わかんねえんだよ」
「いや~千雨ちゃんは着物脱ぐのにかなり苦戦してたもんね」
「・・・・・・ふん」
「その一部始終を写真で撮ってあるんだけど銀さん見る?」
「は?」
「ってオイッ! ひ、人の許可なくそんなもん撮ってんじゃねえッ!」

ニヤニヤしながら写真を取り出す和美に銀時は首を傾げ、千雨は顔を真っ赤にして怒鳴る。
そんな事をしていると坂本が和美にヘラヘラ笑いかけながら

「アハハハハッ! じゃあわしが見ようかのッ! ほぐッ!」
「いい加減になさい・・・・・・」
「ネカネさん・・・・・・わし、口から魂出たかとおもったぞ・・・・・」
「出したらどうですか? 別に誰一人悲しみませんから・・・・・・・?」
「ネカネさんはいつも恐いの~・・・・・・」

渾身のストレートをネカネにダイレクトに腹にお見舞いされて、坂本が苦しそうに呻く。
だがそんな彼を見るネカネの目はゴミを見る様な目つきに変わっている。
物凄く機嫌が悪い証拠だ。

「全くいつもふざけて・・・・・・」
「冗談じゃ冗談、わしは子供を女としては見れんけ、アハハハハッ!」
「・・・・・・」
「銀さんどうかしたんですか?」
「いや・・・・・・別に」

ネカネに睨まれている坂本の笑い声が響く中、銀時はふと彼から目を背ける。不審に思ったあやかが尋ねるが、銀時はブルーな表情で首を振った。

「そういや神楽と同い年だったなコイツ等・・・・・・ん?」

ため息交じりにそんな事を言っていると、前方から妙な生物がこっちにドスドスと走って来ているのに気付いて、銀時は顔を上げた。

「あれはもしや・・・・・・エリザベスか?」

桂の仲間であるアヒルだかペンギンだかわけのわからない生物、エリザベスだ。
『うぉぉぉぉぉ!!!』と書いてある手持ちのボードを持って、血走った目でこちらに走って来たのだ。それを見て和美はすっときょんな声を上げる。

「UMAッ! 昨日、私に蹴りを入れたUMAだッ!」
「エリザベスだろ・・・・・・銀八の知り合いだよ」
「エリザベスッ!? 何そのふざけた名称ッ!?」
「エリザベスはエリザベスですわ」
「いや全然意味分からないんだけどッ!?」

あの生物を知っている千雨とあやかが和美に名前を教えている頃、エリザベスは突然銀時達の前で止まった瞬間、大きくジャンプ、そしてそのまま銀時達と少し離れていた桂と一緒にいる土方のグループへ・・・・・・

『天誅ゥゥゥゥゥ!!!』
「総悟、次行く所は桂の・・・・・・ん? ぬおぉぉぉぉぉ!!」

まだ眠っている刹那をおんぶしながら沖田に何か話している土方の所に、突然白いペンギンが空中から回転を付けながら蹴りをお見舞いしようと降って来た。
土方はすぐに横に避けて間一髪で回避。

『ち、外したか・・・・・・』
「あ、あぶねえな何すんだテメェッ!」 
「大丈夫ですか十四郎さん・・・・・・!」
『桂さんは渡さねえぞゴラァッ!!』

ボードに書いてある文字によると、どうやらエリザベスはかなりキレているらしい。驚いている土方にのどかが駆け寄っていると、桂はそんなエリザベスをなだめるように

「落ち着くのだエリザベス、今はこの者達は俺の味方。一時の同盟を組んだいわば同志なのだ」
『マジッすか桂さんッ!?』
「俺達は高杉打倒の為、真撰組と和睦協定を結んだのだ。ゆえにエリザベス、この者達に危害を加えるな、まあ高杉の問題が終わったら潰しても構わんが、むしろ潰したい」
『イエッサーッ!』
「か、桂さぁ~ん・・・・・・・」

本当は桂達と真撰組はこれからもずっと仲良くして欲しいと思っている木乃香なのだが、桂とエリザベスにはその気が無いらしい。そんな二人に弱々しく声を上げた後、木乃香はエリザベスの方へ顔を向ける。

「はぁ~・・・・・・白ペンギンさんも桂さんと同意見なんやな・・・・・・」
「白ペンギンさんではないエリザベスだ」
『ちーす』
「そうそう、エリザベスやったな」

軽い態度で接してくるエリザベスに木乃香が頷いていると

『惚れるなよ』
「いや別に惚れへんから・・・・・・」
『惚れろよ』
「え、ど、どっちなん・・・・・・?」

突然変な事を言って来るエリザベスに木乃香が反応に困っていると、桂とエリザベスを初めて見たハルナと夕映は木乃香が仲良く話しているのを見て興味本位で近づいて来た。

「ねえねえ木乃香、このウザったい長髪の人とこのナマモノは何?」
「変な人と関わるなとあれほど言ってるの・・・・・・」
「ああ、こっちの男の人が桂さんでこっちの白ペンギンがエリザベス、悪い人やないから大丈夫よ」
「悪い人だと思って心配してるわけでなく、変な人だから心配しているんですが・・・・・・・」

簡単に桂とエリザベスを紹介する木乃香に夕映がボソッとツッコんでいると、木乃香は桂の方に振り返って今度は夕映達の方を紹介する。

「桂さん、こっちとあっちにいる子達はウチの友達で、背の高い方がハルナで低い方が夕映、それであっちで土方さんと話しているのがのどか」
「ほう、木乃香殿の学友か」

顎に手を当てながら二度頷くと、桂は夕映とハルナの前に一歩出る。

「俺の名は桂小太郎、天人共を駆逐する為に立ちあがった攘夷志士だ」
「いやそんなん言っても夕映達はわからんから・・・・・・」

いきなり攘夷志士と名乗る桂だが、夕映達がわかるわけないとすかさず木乃香がツッコむも桂は更に話を続ける。

「攘夷志士というのはだな、真撰組やという幕府の手先を華麗に退け、江戸を支配する天人達を正義の元に鉄槌を下し、虐げられていたか弱き市民を救う。ま、いわば攘夷志士と言うのは救世主(メシア)だと覚えておいてくれ」
「だからわからへんって・・・・・・それに真撰組を馬鹿にせんといてよ・・・・・・」
「悪いが木乃香殿、例え一時の同盟を結んでいようとも真撰組は俺達の敵である事に変わりはない」
「う~ん・・・・・・」

きっぱりと言われては木乃香もグウの音も出ない。桂と真撰組は長年戦っている敵同士、
おいそれと簡単に仲良くなれるわけないのだ。
するとそんな桂に夕映はジッと見つめる。

「真撰組の連中と仲悪いんですか?」
「おおそうだ、俺ぐらいの革命家になるとああいう輩が必死こいて捕まえようとするのだ。いやはや困ったものだ、ハッハッハ」
「ほう」

土方達の方へ向きながら嘲るように口を開けて笑う桂を見て夕映はいつもの無表情で彼に視線を送る。

(てことは近藤さんの敵ですか・・・・・・仲良くは出来ませんね)
「木乃香、この変な生き物一体何なの? 中に人とか入ってないよね?」
「ウチもようわからへんのよ、でも桂さんとは仲良しやから心配ないって」
「いや、私はその桂さんの事も正直怪しい奴だと思ってるんだけど・・・・・・・」

夕映が桂にある印象を抱いていると、木乃香とハルナはエリザベスの方に近づいてジロジロと眺める。どうみても怪しい、だが奇想天外な三年A組の生徒である二人にとってはあまり仰天するわけでもない。
しばらくしてハルナがフッと笑いエリザベスに手を差し伸べる。

「でもこんなカワイイ女の子達と仲良く出来るなんてアンタも儲けもんだね、特に私と、よろしくエリー」

友好的な握手だとハルナが笑いかけて手を出すと、エリザベスはジーっとその手を見て、その次にハルナをジーっと見る。そして数秒間眺めた後

『せい』

パシンとエリザベスがハルナの手を思いっきり弾いた。

「・・・・・・え?」

いきなりの拒絶にハルナが頬を引きつらせながら固まっていると、エリザベスの真っ暗な口の中から、赤い光が二つ。

「・・・・・・調子ぶっこいてんじゃねえぞ不人気メガネ、ミンチにすんぞ・・・・・・・」

























エリザベスの口の中から放たれた見知らぬオッサンの声に、ハルナは呆然と立ち尽くしかなかった。






































「はぁ? 同盟軍?」

5人の侍と一人の女性、一匹の珍獣とたくさんの女子生徒達というなんとも奇妙なグループは今、ある場所へ向かう為に駒を進めていた。
桂と銀時は少し離れて前方を歩いている土方達から聞こえないよう、二人でコソコソと会話をする。

「そうだ、真撰組と俺達が合わせればより強固な力になると木乃香殿が提案してくれてな、ゆえにこの様な状況になっているのだ」
「江戸ではあり得ねえタッグだな。まあ別にお前等が同盟とか結束の力とかやんのはいいんだけどよ、こっちに迷惑かけんなよ」
「高杉を倒すまでの間奴等に協力するだけだ。銀時、お前にも色々と働いてもらうぞ、」
「ヅラ、そういうのが迷惑っていうんだ」
「ヅラじゃない桂だ」

馬鹿真面目な桂とめんどくさそうな銀時がやり取りを交わしていると、後ろから二人に向かって坂本が二人の肩に手を回して抱きついてくる。

「いや~三人揃うなんて久しぶりじゃの~ッ! これで高杉の奴がいれば完璧なんじゃが、とりあえず今日は三人でパァ~っと昔話しながら飲み明かそうぜよッ!」
「おいヅラ、この空気の読めないバカに八つ橋食わせてやれ、死ぬほど」
「八つ橋などもったいないコンクリートで十分だこんな男」

大笑いしている坂本に両サイドにいる銀時と桂は疲れた表情で無視する。いくらこの二人といえど彼と比べればまだマシな方・・・・・・・?

「ネカネ殿から色々と聞かしてもらったが、相変わらずらしいなお前は」
「おう、わしは何処の世界にいようとも坂本辰馬じゃ、アハハハハッ!」
「ガンダムの世界にでも行ってくれよ頼むから」

ウンザリした表情で銀時が坂本に呟いていると、桂の隣にネカネが不安そうに歩み寄ってくる。

「ところで桂さん・・・・・・あの生き物は大丈夫なんですか? なんかあの目見てると吸い込まれそうなんですけど・・・・・・」

ネカネが後ろを指差すとそこにいるのは生徒達の後ろで『俺の後ろに立つな』と書いてあるボードを持つ、キリッとした眉毛と目をしたエリザベスの姿が。後方の護衛要員らしい。
それを見て桂は安心させるようにネカネに口を開く。

「心配ない、エリザベスは何があっても俺を裏切らない最高のパートナーの一人と言っても過言では無い、あと結構チャーミングだろ」
「は、はぁ・・・・・・」

真顔でチャーミングだと言われてネカネは困惑した様子で苦笑する。
やはり桂もまた坂本の仲間だから少しどこかおかしい
彼女がそんなことを考えていると、坂本もエリザベスの方に振り返る。

「あの生物と会うのも久しぶりじゃな、ヅラと仲良くやっとるようで安心したぞ」
「そういえばお前がエリザベスを拾って来たのだったな」
「あの生物って、あなたが桂さんに渡したんですか?」
「ヅラが喜ぶと思ってのアハハハハッ!」

元々エリザベスと桂が会った経緯は、坂本が桂の所にエリザベスを勝手に置いていった事から始まったのだが、坂本はすっかり他人事の様子で笑い飛ばす。
結果的には桂もエリザベスと上手くやっている様だからいいのだが・・・・・・

桂と坂本がネカネと会話を交わしている頃、銀時は彼等から離れて後方にいるあやか達の方に移動する。
ふとあやかが彼の方へ向くとその目はいっそう生気が失われていた。

「ヅラとアイツのダブルセットなんて・・・・・・キャラ濃すぎて腹壊しそうだわ」
「そこに銀さんも混じってトリプルセットですわね」
「ダブルバカバーガーと一緒にすんな」
「一緒だろ? イダッ!」

あやかと会話していると右からやってきた千雨が余計なひと言。銀時はすぐに彼女の頭にげんこつを入れる。

「俺はあいつ等よりはノーマルだ」
「それだと普段はアブノーマルって意味になるぞ・・・・・・」
「うるせえよ、つうか何でお前等ついて来てんだよ、危ねえから帰れ」

頭をさすっている千雨にぶっきらぼうに銀時がそう言うと、後ろにいる和美が口を挟む。

「何が危ないのかは私あんまわからないけど、万事屋として私達は銀さんが何処へ行こうがついてくよ」
「そうですわ、例え江戸へ行こうが宇宙の果てまで行こうが、何処までも銀さんについて行きます」
「・・・・・・」

和美とあやかにそんな事まで言われて無下に断る事が出来ない、銀時はしかめっ面をしてもう一人の万事屋メンバーである千雨の方を向くと

「私はお前が死んで地獄に行ってもついていく」
「お前もかよ・・・・・・」
「当たり前だろ」
「真顔で言うな・・・・・・」

キッパリと言われて銀時はハァ~とため息を突いた後、首を横に振る。
気付かない内にここで生まれた新万事屋軍団も、いつのまにか自分が思ってるよりずっと固い絆で結ばれている様だ。

「新八と神楽に何て言おうかねぇ・・・・・・・」

江戸へ帰ったら彼女達もついてくるのだろう。
その時に旧万事屋メンバーにどう説明すればいいのか、“様々な事”を踏まえて大いに悩む銀時であった。














































後方で銀時があれこれ考えながら歩いてる頃、前方にいる土方グループは木乃香の指示のまま目的地へと歩いていた。刹那はまだ眠っているが彼女の制服はちゃんと木乃香が袋に入れて持ち歩いている。

「こっちこっち、この奥を歩いていけばもうすぐ着くで~」
「・・・・・・なんで桂の目的地をお前が知ってんだ?」
「桂さんと話してる時に居場所聞いたんやけど、実はそこってウチも知ってる所なんよ、えへへ~楽しみやな~」

土方の疑問に私服姿に着替え終えたばかりの木乃香が朗らかに答えるとスキップしながら先へ進む。肩に傷を負っているにもかかわらずその足取りは軽い。

「土方さん、こりゃあ桂とあのガキの罠って可能性もあるんじゃないですかぃ」
「バカかお前、あの娘っ子が桂とグルなわけねえだろ」
「こ、木乃香はそんな人じゃありません・・・・・・!」

疑惑の目で木乃香を見る沖田に、刹那をおぶっている土方とのどかが否定すると、沖田は目をキランと輝かせのどかの方に近づく。

「え? じゃあどういう人なののどかちゃん? 俺が髪の毛引っ張ってる間に答えてみろ、早く答えねとブチッといくぜ」
「い、痛いです~ッ!」
「総悟ォォォォォォ!!!」

容赦無しに痛さに悲鳴を上げるのどかの髪の毛をむんずと掴んで引っ張る沖田に土方が思いっきり怒鳴る。すると沖田はすぐに彼女の髪から手を離し、のどかはすぐに土方の元へ泣きついた

「十四郎さ~んッ!」
「どうしてお前はいっつもいっつもこいつを・・・・・・!!」
「すみません土方さんの女と分かってもね、そのガキの反応が面白くて面白くて」
「お前の苦手な女呼ぶぞコラ・・・・・・」
「あ、それはマジで止めてくだせぇ」

千鶴の存在が出ると無表情ですぐに手を横に振る沖田。彼女の反応は沖田の求める物と反対方向の物だ。

「俺にもイジメがいのあるガキとそうでない人間がいましてね、後者は例の女で、前者はのどかちゃんですから」
「女の敵ですね、そんな子供じみた真似ばっかしてると一生結婚なんてできませんよあなた」
「あ?」
「ちょ、ちょっと夕映、この人にその言い方はマズイって・・・・・・」

土方と会話をしている途中でいきなり食ってかかって来た同行者の夕映に、沖田は振り向きざま睨みつける。
ハルナに咎められ、沖田の刺す様な視線が来ても負けじと夕映は仏頂面で言葉を返した。

「あなたみたいな子供とニコチンマヨネーズなんかを部下にして、上司は大変苦労してるでしょうね」
「おいおいなんだテメー、なんかウザそうなチビガキだと思ってたが予想通りだなオイ、俺に文句垂れるとはいい度胸してんじゃねえかコラ」
「おい、あのガキどさくさに俺の事も馬鹿にしなかったか?」
「き、気のせいですよ・・・・・・」

前を歩きながら土方とのどかがそんな会話をしていると、夕映の方に振り向きながら沖田は腰に差す刀をチラつかせる。

「忠告しておくが俺は強気な態度で噛みついてくるガキも調教対象なんだぜ、メス豚になりたくなかったら口に気を付けるんだな“クソチビ”」
「そんな事したらあなたの上司に・・・・・・む」

挑発的な笑みを残して土方の方へ戻る沖田の後姿に向かって、夕映がまた何か言おうとしたその時、ハルナが彼女の口を慌てておさえる。

「夕映頼むから黙って、マジでお願い・・・・・・・じゃないと今日あの人にボコボコにされてた女の子みたいになっちゃうよ・・・・・・・?」
「むぅ・・・・・・」

ハルナに言われて夕映はまだ不満ありげな表情で黙りこくる。
言いたい事は言うのが彼女の性格なのだが、噛みつく相手が今度ばかりはかなりタチ悪い。

「・・・・・・近藤さんに会ったら全部言い付けてやるですぅ」
「近藤さん? あ~あのゴリラみたいな人だっけ? 記憶に残りやすい人だから覚えちゃったよ」

一回だけ面識があるのでハルナが近藤の顔を見て思い出し笑いしていると、夕映が即座に反応して彼女を見つめる。

「ほほう、いくら親友のあなたでも近藤さんは渡しませんよ、ハルナ」
「いや物凄くいらないんだけど、全力で蹴るから・・・・・・え? ていうかそれどういう意味?」
「そういう意味です」

済んだ瞳で言われた事にハルナの思考が止まる。もしや・・・・・・

「え? てことは・・・・・・・アレ? ごめんちょっと状況の整理が出来ない・・・・・・夕映があのゴリラと・・・・・・ちょい待ち、ないよね?・・・・・・そういうのないよね・・・・・・・!?」

次第に動揺していくハルナは恐る恐るこちらに振り向かずに先に行ってしまう夕映に尋ねる。すると彼女は振り向かずに一言

「安心するですハルナ、結婚式には一応呼んであげますから」
「whatッ!? え、夕映ちょっと結婚とかそれ以前に考えなおしてッ!! それは無理ッ! 絶対無理ッ!」
「フ、あの人とのどかは応援したのに私と近藤さんには反対とは、取り残される危機感に必死ですねハルナ」
「いやいやいやいやいやいやッ!!!」

負け組を見下すように勝ち組の笑みを作る夕映にハルナは全力で首を横に振る。
確かに危機感は持っているがそれは自分ではなくて彼女にだ。

「あのね“ユエユエ”ッ! 私は土方さんとのどかは全力で応援できるッ! けど夕映とあのゴリラは絶対駄目だってッ! いくらラブ大好きな私でも異議ありだよッ! ラブ臭どころかあの人、オッサンの臭いしかしないよきっとッ!」
「いいえバナナの臭いもあるはずです」
「バナナの臭いあったらそれこそ完璧なるゴリラじゃんッ! 完全究極体ゴリラモスじゃんッ! ねえ止めようよ夕映~、今ならまだ引き返せるって~」
「なんでそう反対するんですか・・・・・・・誰に反対されようと絶対に止めませんから」
「あ~~、夕映がゴリラに毒された~」
「うるっさいですねぇ・・・・・・・」

背中を掴んで来るハルナに夕映にやや不機嫌の混じった声で突き飛ばすと、彼女は両手で頭をおさえ上空に向かって叫んだ。
それに夕映はブツクサ文句を言いながら先を歩く。

『美女と野獣』という恋物語はあるが、この恋物語はそれ以上にきつく険しい道のりである事をまだ夕映は知らない。



























一方刹那をおぶり、のどかを連れて歩いている土方は、一緒にいる沖田から「自分がいない間、なにか会ったか」と話をしていた。だが沖田の口から想像だにしないファンタジーな話が出て来た事に土方はリアクションに困る。

「妖怪大戦争だぁ・・・・・・?」
「ええ、“ツッキー”が大量に呼びだした妖怪が町の中を暴れ回ってこっちは大変だったんですぜい、旦那方とガキ共がよく働いたおかげですぐに鎮火できやしたが」

自分がいない間そんな事があったのかと土方がしかめっ面をしてたが、ある疑問が生まれたのですぐに沖田に尋ねる。

「いや待て、ツッキーって誰だ?」
「忘れたんですかぃ土方さん、俺達を待ち伏せてたメガネを付けたくぎゅボイスのガキですよ、月詠だからツッキー、俺が付けやした」
「・・・・・・なんで敵に向かってそんな親しげなアダ名つけてんだ」
「敵? ああ敵でしたねそういえば」
「は?」
「大丈夫でさぁ土方さん、ツッキーは俺が倒しました、それに『二度と俺に刃を向けない』よう“言い聞かせて”おいてるんで」

言い方が少し引っ掛かるが、とりあえず沖田が言うには彼女はもう倒したので問題無いらしい。一応のどかにも聞いてみるかと土方は彼女の方へ向くが慌ててのどかはすぐに顔を伏せる。
その反応によっぽど月詠に恐ろしい事を沖田がしたのは確かだと理解した。

「・・・・・・まあ敵が一人減ったんなら文句はねえな」
「う、う~ん・・・・・・もっと・・・・・・」
「あれ? 十四郎さん、刹那さんが・・・・・・!」
「ん? やっとお目覚めか?」

背中でモソモソと動き出した刹那に気付いたのどかが慌てて指をさす。
やっとこさ起きたのかと土方が彼女の寝顔を見ようと後ろに振り返ると

「もっと・・・・・・この卑しいメス豚の私を思いっきり罵ったりぶったりして・・・・・・・」
「どんな夢を見て出てくるうわごとだそれッ!」
「そうよ銀さん私をもっと・・・・・・あれ? 土方さん・・・・・・?」
「起きたか・・・・・・とりあえずどんな夢見ていたかは聞かない事にする」
「聞くのも恐いですしね・・・・・・」

呆けた顔で起きた刹那に土方とのどかはとりあえず夢の事は聞かない事にする。
あの男の名前が出た事が少し気になるが・・・・・・

「随分と長い間眠ってた様ですね私・・・・・・」
「せっちゃんッ! やっと起きたんッ!?」
「はい・・・・・・心配かけて申し訳ございませんお嬢様・・・・・・それに土方さんも」
「ふん」

喜ぶ木乃香と素っ気ない態度の土方に謝ると、自ら彼の背からすぐに下りる。

「色々と助けてくれて・・・・・・本当に感謝します土方さん」
「別にそこまで感謝される事なんざやってねえよ」
「そういやこのガキが倒れた理由とかも聞いてませんでしたねぇ、なんかあったんですかい?」
「実はその・・・・・・」

後頭部を掻き毟りながら質問してくる沖田に、おぼつかない足取りで歩きながら刹那が素直に本当の事を言おうとした。
だがその前に・・・・・・

「大したことじゃねえ」
「え?」
「ちょっと疲れて寝ちまっただけの様だ、ハタ迷惑なモンだぜ全く」
「土方さん・・・・・・・」
「・・・・・・ふ~ん」

刹那が本当の事を沖田達に告げる前に土方がその話しを強引に流す。そんな彼を黙って刹那は見つめるだけ、沖田はというと、半信半疑だというような目で彼に視線を送る。しかしすぐにそっぽを向き。

「“大したことじゃねえ”ならそれ以上聞きやせんよ俺も」

そう言い残して沖田は三人から離れて後ろにいる銀時達の方に行ってしまった。

「あいつ少し感づいてるな・・・・・・別にいいが」
「土方さん・・・・・・私」

沖田の方へ振り向きながら土方が目を細めていると、刹那がドギマギしながら話しかけようとするが、上手く声が出せない。代わりに土方が先に口を開く。

「お前の話は後で全部聞かせてもらうからな、高杉会ってる件についてもその刀についても、ガキのクセに俺に秘密作るなんざ100年早えんだよ」
「・・・・・・わかってます、隠しててすみません。あと・・・・・・」

立ち止まって頭を深々と下げた後、刹那は土方に向かって顔を上げる。

「私の事を本当に気遣ってくれてありがとうございます・・・・・・」
「・・・・・・謝るか感謝するかどっちかにしろ」
「はい・・・・・・」

ぶっきらぼうに土方に言われても、刹那は口に少し笑みを作りながら彼の後についていく。

その光景に非情に焦っている少女がいるのも知らずに
のどかは慌てて土方と刹那の二人から離れて夕映とハルナの方に助けを求める様に駆け寄る。

「どどどどうしよう・・・・・・夕映!」
「ピグ○ットの真似ですかそれ?」
「いや違うよ・・・・・・ほらあの二人・・・・・・」

のどかが前方を震えた指をさす、少し前を歩いている土方と刹那だ。だがそれを見ても夕映は無表情で眺めるだけ。

「別に刹那さんがあの人について行ってるだけじゃないですか、何をいまさら焦ってるんですか、刹那さんなんてのどかの敵じゃありません、ていうかもうのどかが勝ってますし」
「で、でもさっき、ちょっとあの二人いい雰囲気だったような気がして・・・・・・」

不安そうに指と指と突き合わせながらボソボソと呟いているのどかに対して、夕映は「は?」と首を傾げる。

「いい雰囲気? あの二人がですか?」
「う、うん・・・・・・確証は無いけど・・・・・・・」
「私は問題無いと思うんですけどね、あの人はすっかりのどかの魅力にメロメロですし」
「恥ずかしい事言わないでよ夕映・・・・・・・」
 
しれっとした表情でとんでもない事を言ってのける夕映にのどかが顔を赤面させながらツッコんだ後、さっきから黙りこくってるハルナの方へ意見を聞く。

「ねえハルナはどう思う? ハルナはそういうのに敏感だからわかるよね?」
「本当ごめんのどか・・・・・・今ちょっと夕映のおかげで頭が一杯で・・・・・・」
「夕映?」

頭を手でおさえながらいつもみたいな覇気を失っているハルナにのどかが不審に思っていると彼女の元気を失わせた張本人の夕映がさらっと答える。

「私が近藤さんと結婚するって教えてあげたら、いきなり親でも無いクセに反対だ反対だとか連呼して、終いには私の頭がおかしいだとか正気じゃないだとか言って来るんですよ? ハルナのクセに何言ってるんだか」
「そんな事があったんだ、へ~・・・・・・」

夕映の説明にのどかがようやく理解したように頷いてしばらく間が空いた後。

「最初の所もう一回言ってッ!?」

衝撃的過ぎた冒頭の部分に、のどかが軽いパニックになった。













































数分後、総勢15人の大グル―プは遂に目的地の前へと到着した。しかし入る前に・・・・・・
その豪華で巨大な門を見てメンバーは入る前に唖然とする。

「なんちゅうデカイ入口だ・・・・・・」
「お嬢様ここって・・・・・・」
「うん、桂さんがここに住んでたんやって」
「なッ! 桂がッ!」

タバコを咥えてその門を見上げている土方の横では木乃香が刹那に説明して上げている。すると、噂をすればなんとやらと桂とエリザベスが二人の前に一歩出た。

「ようやく着いたな、ま、俺の場合戻ってきたと言うべきか」
『ただいま』
「桂ッ! なんで攘夷志士のお前が私達と一緒に行動しているんだッ! それにこの場所をなんでお前がッ!」

呑気に見上げている桂に向かって刹那は噛みつくように叫ぶ。すると今初めて彼女の存在に気付いたように桂は腕を組んで横に目をやる。

「ようやく起きたかせっちゃん殿、お主が寝ている間に色々と話が進んでな、わけあってお主等と行動している、詳しい話はそこでタバコ吸ってる男にでも聞いてくれ」
「せ、せっちゃん殿・・・・・・!?」
「木乃香殿から色々とお主の話を聞かせてもらってな、ハハハハ」
「ま、待てッ!」

そのままエリザベスを連れて先へ行ってしまう桂に、慌てて刹那が後を追う、木乃香も一緒だ。

「あいつら勝手に行きやがって・・・・・・」
「どうするんですかぃ土方さん」
「今更引き返せねえだろ、総悟、刀を抜けるようにしとけ」
「言われなくてもわかってまさぁ」

腰に差す刀を握りながら沖田はけだるく返事をする。土方も腰の刀に手を乗せる。
未だ罠と言う可能性もゼロでは無いからだ。

「抜かるなよ、総悟」
「へいへい」

刀を構えたまま土方と沖田はダッシュ、そのまま門の中へと入って行ってしまった。
残されたのどかは呆然と彼を見送る。

「十四郎さんが行っちゃった・・・・・・」
「私達も行きますか」
「うん・・・・・・そういえば夕映とハルナってなんでここに来たの?」
「興味本位というのもありますが・・・・・・」

門へ向かいながら歩いている時に、話を一旦区切った後、のどかの方へ向いてボソッと

「・・・・・・もしかしたら近藤さんに会えるんじゃないかという予感がしまして」
「そうなんだ・・・・・・夕映って何時の間にあの人の事・・・・・・」
「反対だからねッ! 私は反対だからねッ!」
「あなたにそんな事言われても私は揺るぎません」
「のどか~、アンタもなんとかしてよ~」
「わ、私・・・・・・!?」

急に叫んでくるハルナに夕映は相手にもせずにさっさと先へ進んでしまう。ハルナに後ろから抱きつかれながら困ったように口ごもっているのどかも、彼女と一緒に門の中へと入って行った。

その後を坂本が楽しげにネカネの手を引っ張ってついていく。

「アハハハハッ! なんか面白そうな所じゃの~ッ! ネカネさん突撃じゃ~ッ!」
「はいはい」

疲れた調子で言葉を返すと、坂本に手を引っ張られるがまま中に入って行く。和美も二人と一緒に門の中へ突撃し、振り返って銀時達の方に手を振る。

「銀さんも中に入ろうッ! なんか面白そうなのが一杯あるかもしんないよッ!」
「あなたのテンションとその思考って・・・・・・なんとなくこの人と似てますね」
「えええええッ!?」

ネカネに言われた事に和美は口を開けてショックを受けるが、そのままガックリ頭を下げてトボトボと彼女の後をついて中へと入って行った。

残されたのは銀時とあやかと千雨のみとなった。

「・・・・・・」
「どうかしたんですか銀さん?」
「早く中に入ろうぜ」

中へ入ろうとせずに黙って門を眺める銀時に、あやかと千雨が言葉をかける。
しばらくして銀時は顔をまっすぐ向きながら、二人に向かって口を開いた。

「ここから俺と一緒にこの先行ったら、二度と帰ってこれない可能性もあるんだぜ」
「え?」
「なんだよ急に・・・・・・」
「帰るなら今の内だ、それでもしつこく俺と一緒に行くって言うなら・・・・・・何が会っても俺はお前等を護る」

何処か遠い目をしながら銀時が呟いた後、三人の周りに沈黙が流れる。
そして

「わかりきった事を聞かないで下さい・・・・・・」

フッと笑った後、あやかは銀時の左手と手を繋ぐ。

「どこまでもついていくって、さっき言ったじゃねえかバカ」

しかめっ面を浮かべた千雨は銀時の右手と手を繋ぐ。

「銀さんがいる所に私達ありです」
「心の底からお前とずっと一緒にいてえと思ってるんだ、何言っても絶対に離れねえからな」
「お前等・・・・・・」

彼女達はこの先どんな危険があっても自分から離れない、これからもずっと一緒だ。
両手を二人に手を繋げられた状態で銀時はその手のぬくもりと同時にそれを感じた。

「最初はただのガキだと思ってたのによ・・・・・・」

自分の中で出て来た感情に銀時は思わずニヤッと笑ってしまう。
生徒でもなく万事屋の仲間としてでもなく
もっと別の感情が二人を通じて生まれた事に気付いた。
厳密に言うと三人だが

「行くか」
「はい」
「おう」

銀時と手を繋いだ状態であやかと千雨は先へ進む。心に秘めている想いと一緒に。










門の上から見える赤く光る夕日がやけに眩しい






[7093] 第五十六訓 親バカもシスコンも度が過ぎると引くから少しは自分を抑えて
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/19 11:55

銀時はあやかと千雨と一緒に桂と木乃香りの言う目的地へ。
三人は他のメンバーが待っている筈の門の中をくぐる。
一瞬夕日の光が目に差しこんだ後、すぐに元に戻る。そして視界が旅行になった瞬間。
想像だにしない光景が三人の目の前に映った。

「「「「「おかえりなさいませ木乃香お嬢様ッ!」」」」」
「いいッ!」
「まあッ!」
「うげッ!」


何十人ものの巫女衣装を着飾った女性陣が列を作ってこちらに頭を下げてくる。この光景に三人は思わず驚きの声を上げた。

「なんだコイツ等ッ! ていうかさっき木乃香お嬢様って・・・・・・」
「なんだ知らんのか銀時」

驚いている銀時にフッと笑いながら桂が近づいてきた。

「関西呪術協会本部は木乃香殿の実家なのだ」
「はぁッ!? ちょっと待て関西呪術協会ってネギが言ってた奴だろ・・・・・・それが木乃香の実家ッ!?」
「そうだ、それに俺やエリザベス、アル殿も色々会ってここに住ましてもらっている、今では俺にとって我が家同然だ」

そう言って桂はクルッと振り返って、列をみなして歓迎してくれている女中達に目をやる。

「あの女中達とももう顔見知りだ、皆の者帰ってきたぞ」

桂が手を振ると女中は一斉に

「死ねッ!」
「このカスがッ!」
「さっさと出てけッ!」
「消えろ殻潰しッ!」 
「長にコレ以上迷惑かけんなクソロン毛ッ!」
「ハッハッハ~、ここの女中は全てツンデレ属性でな、俺に対していつもああゆう態度をするのだ、困ったものだな」
「ツンデレじゃねえよッ! 思いっきり毛嫌いされてんだよアンタッ! すげぇ剣幕で睨まれてんじゃねえかッ!」
「毛嫌いじゃないツンデレだ」
「現実を見ろッ!」

あらゆる方向から罵声が飛んでくるにも関わらず桂は笑って受け流す。彼の勘違いっぷりにさすがに千雨もツッコんだ。



桂と銀時達が話している頃、土方と沖田、のどかと夕映、ハルナ達5人もこの光景にやはり驚いていた。刹那と木乃香は別に驚いてなく自然体だが

「なんじゃこりゃあ・・・・・・!」
「凄いこんな山奥に人が一杯・・・・・・」
「まるで映画の世界にでも入った様ですね」
「ねえねえなんなのコレ、どういう事ッ!?」
「わ~みんな久しぶり~」
「相変わらず凄い歓迎ですね」

木乃香と刹那以外のメンバーが驚いていると、一緒にいる沖田も女中たちを見渡しながら額から汗を流している。

「マズイですぜ土方さん・・・・・・!」
「ん? やっぱ何がマズイ事でもあるのかコイツ等・・・・・・?」
「ええ、こんなにいると、いくら俺でも全員調教するのに時間がかかりますぜ・・・・・・!」
「どんだけ狩りつくす気だお前ッ! モンスターハンターでもやってろッ!」

目を光らせ女中の中から獲物を探ろうとしている沖田に土方は叫ぶ。こんなに女性がいるとあっち方向ばっか考えるのが沖田だ。
しかしそれはあの男も似たようなもので

「うほッ!」

最も彼の場合は女性が一杯いる=ハーレムという単純な構造なのだが

「最高じゃァァァァァ!! 誰でもいいからわしとユニゾンしようぜよ~ッ!」

銀時達と一緒に行動しているかつての攘夷志士である坂本辰馬が女中達に向かって狂喜乱舞しながらピョ~ンと飛びかかる。だが

「ノーセンキューッ!」
「だがぁッ!」

一人の女中に股間を蹴られそのまま地面に倒れる坂本、股間をおさえて悶絶する坂本に呆れたように同行者であるネカネが近づく。

「バカ・・・・・・底なしのバカ・・・・・・」
「ぬごぉ・・・・・・二度と使いモンにならなくなったかもしれん・・・・・・」
「そっちの方が世の女性達の為になるわよ」

苦しそうに悶えている坂本にネカネは吐き捨てる様に言葉を残した後、ふと違う方向に目をやる、意外な人物(?)が女中達と戯れていた。

「エリザベス様、お茶が入りました」
『御苦労』
「エリザベス様、高級和菓子でございます」
『褒めてつかわす』
「エリザベス様、火と灰皿でございます」
『苦しゅうない』
「エリザベス様、ストックのボードを持ってきました」
『大義である』

大勢の女中達に囲まれて豪華なイスに座ってキリッとした目つきで優雅に葉巻を吸っているエリザベスを見て、ネカネは目を疑う。

「モテてる・・・・・・アレが・・・・・・」
「UMAの特徴、巫女さんとハーレムしている」
「それ特徴ッ!?」

頬を引きつらせているネカネの近くでブツブツと呟きながら、メモ帳にペンで書き込んでいる和美。そんな事を覚えてどうするつもりなのだろうか・・・・・・

ネカネがそんな事を考えている頃。土方は木乃香と刹那から色々と話を聞いていた。

「実家だとッ!? ここがオメーのッ!?」
「そうやで」
「実家いやこれ実家ってレベルじゃねえだろオイッ! 将軍レベルだぞこれッ! お前の先祖将軍やってんのかッ!? 現役バリバリで将軍やってんのかッ!?」

その場一帯にある屋敷の膨大な数に土方は口をあんぐりと開けながら叫ぶ。
一番奥の屋敷なんかもう城と言ってもおかしくないぐらいデカイ
木乃香の実家がこんなにも大きい事に目を開いて驚いている土方に、刹那は説明をして上げる。

「お嬢様の実家は関西呪術協会の本部なんです、だから多忙な身の長はこれほどの広大な私有地を所持する必要があるんです」
「関西呪術協会? どっかで聞いたような名前だな・・・・・・」

土方が思い出そうと頭を捻っていると、ふと一番奥から一人の男性がこちらにやってくる。
メガネを付けた引きしまった顔の袴姿をした中年の男性、こんなにも大人数で来たにも関わらず落ち着いた態度で男はメンバー達に礼儀正しくお辞儀をした。

「初めましてみなさん、関西呪術協会の長を務めている近衛詠春と言います」

頭を下げて来た詠春に土方はピクリとある事に反応する。

「その声、もしかして小十郎か?」
「いえここでは詠春です政宗様・・・・・・」

真顔でそんな事を行って来る土方に詠春は早速ツッコミを入れる。

対高杉同盟軍は木乃香護衛の為に、彼女の実家である関西呪術協会の本部に辿り着いた。








































第五十六訓 親バカもシスコンも度が過ぎると引くから少しは自分を抑えて

広大な私有地を所持する関西呪術協会の本部。見た目も巨大であるが中身もかなりの大きさで会った。

「ここが大広間です、どうぞ皆さんの席は用意してありますのでお座り下さい」
「「デケェェェェェ!!!」」
「銀さん、千雨さん恥ずかしいから止めて下さい・・・・・・・」

歓迎ムードが漂う所で詠春がメンバー達に笑いかける。だがこういう場所に慣れていない銀時と千雨は落ち着かなさい素振りでそわそわと周りを見渡す

「おい座れって言ってるけど、どの辺に座ればいいんだ・・・・・・? 真ん中にある座布団でいいのか? 本当に座っていいのか?」
「落ち着かねえ・・・・・・体中から変な汗が出てくる・・・・・」

大広間の真ん中にある座布団に座っていいのか駄目なのか困っている銀時と千雨。だがあやかはそんな二人を尻目にそそくさと座ってしまう

「早く座りましょう、みっともないですわよ」
「いいんちょの奴落ち着いてるな・・・・・・」
「あいつの家も金持ってるからな、慣れてるんだろこういうの」

元々彼女の実家もここと負けないぐらいの大きさを誇っている。あやかにとっては慣れっこなので二人と違って随分と落ち着いている。
彼女に言われるまま銀時と千雨も恐る恐る座布団に座った。

他のメンバーも席に座った頃、詠春は全員を見渡せる場所に立ち、軽く会釈をした。

「改めまして、関西呪術協会の長の近衛詠春です、遠い所からはるばるとここまで来た事誠に嬉しく存じ上げます」
「ハハ、なんか固っ苦しいオッサンじゃの」
「しッ!」

銀時達の後ろでネカネが坂本を疎めていると、詠春は銀時の方に目を向ける。

「あなたが確か麻帆良で教師をしている異世界から来た噂の坂田先生ですね」
「え? 何で俺の事知ってんの?」
「ハハハ、義父と娘から色々と聞いていますよ」
「は?」

詠春の言ってる事に理解できていない様子で銀時は首を傾げる。すると彼は目の前にいる木乃香の手を取って

「いつも“娘”の木乃香がお世話になってます」
「はッ!? アンタが木乃香の親父ッ!?」
「うん、ウチのお父さん」
「お嬢様の実家なんだからわかるだろ普通・・・・・・」

思わず詠春に指をさす銀時に、木乃香は笑いかけ刹那はジト目で呟く
。この二人が血のつながった親子だった事に銀時はかなり驚いている様だ。

「マジかよ・・・・・・俺はてっきり木乃香はあのエイリアンジジィが攫ったモンだとつい・・・・・・・」
「エイリアンジジィってもしかしてお義父さんの事ですか・・・・・・」
「まさか攫ったのは木乃香じゃなくて木乃香の母親だって事か・・・・・・」
「いえ違います、ちゃんとエイリアン・・・・・・じゃなかったお義父さんと血が繋がってますから・・・・・・」

頭を手でおさえながらそんな事を言う銀時に詠春は苦笑した後、再び木乃香の方に向き直る。

「それにしてもこうやって会うのも久しぶりだね、普段は手紙や電話でしか連絡とってないからこんなに成長してるとは思わなかったよ」
「ウチもお父さんと久しぶりに会えて嬉しいわ~」
「ハハハ、ホント見ない内に母さんとそっくりに・・・・・・」

ほのぼのと親子でそんな会話していると詠春は木乃香の頭を撫でながら彼女のある場所に視点がうつる。
木乃香の左肩に破れた布が巻かれており、その上から若干血が・・・・・・

「ぐはぁぁぁぁぁ!!!」
「「「「「長ッ!!」」」」」
「お父さんッ!?」

彼女が怪我してる事に気付いて詠春はその場で叫びながら倒れ込み口から泡を吐きだす。慌てて近づく女中達、父のリアクションにビックリする木乃香だが、詠春はヨロヨロと起き上がり

「早く病院に・・・・・・娘が怪我をしている・・・・・・至急医療レベルの高いアメリカの病院に運ばねば・・・・・・」
「本当ですか長ッ!? すぐにヘリをチャーターしますッ!」
「お嬢様ッ! 応急処置をしますのでこちらにッ!」 
「お嬢様ッ! 傷口からバイキンでも入ったら命に関わりますッ! さあ早くッ!」
「い、いやウチ平気やから・・・・・・」

詠春を始め大慌てで木乃香の周りドタバタと女中達が飛び交う。
そんな光景に銀時達は目をぱちくりして静かに眺めていた。

「おいおい、娘の事になったらキャラ変わりまくってるぞあのオッサン」
「親バカってレベルじゃねえよあのリアクション」
「いいんじゃないですか娘の事を本当に大切にしているんですわきっと、少々行き過ぎですが・・・・・・」

銀時と千雨とあやかがそんな感想を漏らしていると起き上がった詠春が盛大に吠えている

「誰だぁぁぁぁぁ!!! 傷を付けたのは何処の犬の糞だァァァァ!! 前出ろッ! 前だッ!」

ものすっごい剣幕で怒鳴り散らす詠唱。一同唖然としていると、そこへ刹那が一歩前に出てかしづき

「長、お嬢様が傷付けられてしまったのは全ては私が原因なんです、責任は全て私・・・・・・」
「お前か娘を傷付けたのはァァァァァ!!」
「ぬごォォォォッ!!」

別に刹那が木乃香を傷付けたわけではないのに、いきなり彼女の頭上めがけて詠春が鉄拳制裁。娘の事で頭が一杯の詠春は彼女に怒りの矛先を向ける。

「オイ誰か鉄網持ってこいッ! このクソ鳥をすぐに焼き鳥にしてしまえッ! 晩飯にして食うッ! 娘を傷付けた奴は誰であろうと死刑じゃッ!」
「「「「「はッ!」」」」」
「ち、違いますッ! 別に私がお嬢様を傷付けたわけじゃッ! た、確かに私が不甲斐ないばかりにお嬢様に危険に巻きこんだのは紛れもない事実・・・・・・ですが私がお嬢様を傷付ける様な事は決して・・・・・・」

刹那がわけを言おうとすると、その前に詠春のメガネがギラッと光り、拳を振りかざし・・・・・・

「ピヨピヨピヨピヨうっせえんだひよこコラァッ!」
「ごはァァァァ!!」
「お父さ~んッ!」

またもや刹那の顔面に全力パンチ、更にそこから馬乗りになってラッシュをかける詠春

「死ねコラッ! 死ねコラッ! 死ねコラァァァァ!!」
「ごふッ! あがッ! ぐぎぃッ!」
「お父さんもう止めてぇぇぇぇぇ!! せっちゃんは悪くないから~ッ!」

木乃香の悲痛な叫びにも耳を貸さず詠春は刹那に向かって攻撃を連打。
土方は彼女を殴られる様を優雅にタバコを吸いながら眺めていた。

「何言っても聞きやしねえなあの親父」
「と、十四郎さん、刹那さん助けなくていいんですか・・・・・・?」

袖を引っ張って恐る恐る尋ねてくる隣に座っているのどかに、土方は澄ました表情で振り返る。

「なんで俺がそんな事しなきゃいけねえんだよ?」
「え・・・・・・」
「あいつは見た目より丈夫だからあんなの大した事ねえよ」
「刹那さん・・・・・・・」

すっかり傍観者モードになっている土方にのどかは刹那に同情するように彼女の方に目を向ける。

詠唱が冷静になるのはそれから数分後の事であった。




















































そして数分後、詠春は落ち着いた。

「いやはやみっともない所を見せて申し訳ない、娘の事になるとつい取り乱してしまって」
「あが、ががが・・・・・・」
「おいお父さん、娘さんの友人が危篤状態だぞ」
「大丈夫です、この子は丈夫なので」

体中ボロボロにして白目をむいて倒れている刹那を見て銀時にツッコんでも、詠春は微笑んで受け流す。

「とりあえず木乃香、君はその傷を治療するため席を空けなさい、この子の治療を頼む」
「わかりました5分でヘリを飛ばすよう指示しておきます」
「3分だ」
「だからヘリはいらん~~~ッ! 傷薬と包帯だけでええ~ッ!」

まだ親バカが収まっていない詠春と女中の会話に木乃香が両手を振って制止する。
自分で立ち上がって彼女は女中達に治療させてもらう為に“ある男”がいる別の部屋へ移動してしまった。

「よくよく考えれば治癒呪文が使えるアルの存在を忘れていましたよ、大人げない態度をお見せしまって申し訳ない」
「いや現在進行形で大人げないよアンタ」

行ってしまった木乃香を見送った後、頭を掻いて照れ隠しする詠春に銀時はサラッとツッコんだ後、彼の目の前で倒れている刹那を指差す。

「ていうかコイツも治療してやれよ、こっちの方がヘリ必要なんじゃね?」
「うう・・・・・・」
「ああ忘れていた、誰か、この子も頼む」

呻き声を上げている刹那を見てすっかり忘れていた詠春は彼女を指さして女中に声をかける。すると女中の一人は真顔で

「塩ですか? タレですか?」
「知っているだろう、私は塩派だ」
「あ、俺タレ派なんでタレも」
「お前等食おうとしてんじゃねえよッ!」

もはや刹那を焼き鳥にする事しか考えていない様な素振りで詠春と更に銀時も悪ノリして便乗する。
思わず千雨も初対面の詠春に対しても厳しめのツッコミを入れた。

程なくして刹那も女中達にズルズルと引きずられていく。
まさか本当に焼き鳥にするのでは? と千雨とあやかが怪訝な目で見送っていると詠春は今度は土方と沖田の方にしゃがみ込んで話しかけていた。

「あなた方は桂さんを日々追っている警察の真撰組の皆さんですね」
「・・・・・・その言い方は桂の過去にやって来た事を知っている素振りだな」

友好的に話しかけてくる詠春と違って土方の目は鋭く光る。

「桂が犯罪者だと知ってる上でかくまっているという事かアンタ?」
「ハハハ、まあ厄介者と関わるのは慣れていますので、それに私はあの人が悪人とは到底思えないんですよ」
「お人好しのアンタに忠告しておくが、攘夷志士は例外なく全員悪党だ」

土方は詠春を睨みつけたままタバコを咥えて火を付ける。
すると詠春はフッと笑って

「最初に言っておきますがここで桂さん達に手を出さないようにして下さい」
「・・・・・・もし手を出したら?」
「そしたら神鳴流最強の剣士と称されているこの私がご相手させてもらいます」
「・・・・・・」
「昔の話ですがね、ハハハハ」

陽気に笑っているが一瞬詠春から胸を刺す様な殺気を感じた土方は無言でタバコの煙を吐く。
恐らく今の警告は本気だろう。
土方がそう感じていると、突然桂が立ちあがり詠春の方に近づいて行く。

「案ずるな詠春殿、今の真撰組は我々と同盟を組んでいる為手出しはせん筈だ、侍ならば一度交わした約束は破らん筈だろ?」
「フン」

不敵に笑いかけてくる桂に土方は面白くなさそうに鼻を鳴らすだけ。
同盟を組んでいる限り土方も沖田も桂には手出し出来ない。高杉を倒す為、この先もしかしたら彼等の力が必要になるかもしれないのだ。

「真撰組だろうが攘夷志士だろうが、侍という事に関しては一切変わりは無い。詠春殿、この者達は木乃香殿を護る為に必死に戦ったのだ。その点に関しては感謝して欲しい」
「それはわかってます、私にとってはそんな組織の関係なんて知ったこっちゃないですからね、娘の事を護ってくれたことに感謝してます、本当なんとお礼を言ったらいいのか」

木乃香の事を護ってくれた土方達に詠春が感謝の言葉を漏らすと、土方はタバコを咥えながら

「お礼なんかいらねえ、これが俺達の仕事だからな」
「現金で頼みまさぁ、こんだけデケェ屋敷持ってんだ、金持ってんでしょ?」
「総悟、オメーは黙っとけ」

クールに返す土方とは対照的に沖田は金銭要求。すぐに土方が後ろに振り返らずに黙らせる。すると詠唱はフフッと笑って

「現金は無理ですが、今夜は皆様に歓迎の宴を用意しております、関西呪術協会の長として盛大にやらせてもらいますよ」
「宴じゃとッ!? ちゅうことは酒と食いモン食い放題じゃァァァァァ!!! 飲もう飲もうッ! お主等も一緒に飲もうッ!」

詠春の放った言葉にピクリといち早く反応したのはさっきまで座布団でずっと頬杖を突いて呆けていた坂本だった。彼は咄嗟に前に座っている夕映とハルナの飛びついて肩に手を回す

「うわッ! 変なモジャモジャッ!」
「触らないで下さい気持ち悪い・・・・・・」
「アハハハハッ!!」
「もう・・・・・・! 女の子が恐がらせるような真似はやめなさいッ!」

驚いてるハルナとかなり不快感を感じている夕映に坂本は笑いながら抱きついている事にイライラした調子でネカネが叱りつける。

ネカネが坂本を夕映達から引き離そうと躍起になって騒いでいると、土方とのどかも宴をするとかで話し始める。

「宴だとよ、お前酒飲めたか?」
「の、飲めませんッ! 未成年ですし無理ですッ! 前にも言ったじゃないですかッ!」
「んだよせっかくオメーと酒飲めると思ってたのに・・・・・・」
「え、ええッ!」

意外にも子供っぽくふてくされた態度を取る土方にのどか口を開けて驚いた。
一緒に酒を飲むのは彼なりの楽しみ方なのだろうか、のどかが断った事に少し後悔し始めていると、後ろに座っていた沖田が突然彼女に手を回してくる。

「大丈夫だよのどかちゃん、俺が浴びるほどドンぺリ飲ましてやっから、泣こうが喚こうが俺が無理矢理飲ましてやるって、そうすりゃ酒の味もわかるだろぃ」
「い、いいですッ!」
「遠慮するんじゃねえよ、氷割りとか水割りとかそんなちゃちなレベルじゃなくて、オールストレートで一気飲みコースをご堪能させてやるぜ」
「ほ、本当にいいですぅぅぅぅ!!!」

不敵な笑みを口元に広げながら未成年の少女に対して容赦無い事を口走る沖田、のどかは泣きそうな表情で首を激しく横に振った。
彼女が沖田から解放されるのは恐らくこの先ずっとないであろう。

一方、さっきから黙っていた銀時は千雨とあやかの方に振り返り

「お前らちょっとここで待ってろ」
「え?」

そう言った後、突然席から立ち上がり、あやかと千雨を置いて詠春の方に近づいて行く。
桂とエリザベスは何処かへ行ってしまったのだろうか、姿が見えない。

「詠春さんよ、アンタに一つ質問してぇんだけどいいか?」
「どうぞ、あなたは桂さんのご友人ですしね」
「いや違えから」

詠春の言った事を即座に斬り捨てた後、銀時は口火を切る。

「アンタなんで俺達がここに来るの知ってたんだ? まるで意図的に俺達が来るのがわかってたみてえじゃねえか」
「ああ、私は関西呪術協会の長としてここら関西地域のほとんどに式神を配置しているんですよ、私の“目”となる」
「目?」

言ってる事が理解できない銀時が首を傾げると、詠春はハハハと笑って話を進める。

「一般人にはただのノラ猫、カラス、ネズミ、ノミとしか見られませんが、それらの中には私が常に関西地域の情報が分かるよう『目』として動いている式神が潜んでいるんです」
「オイオイオイ、そんな事も出来んのか・・・・・・」
「プライバシーの侵害だと思われますが、関西呪術協会の長としてあらゆる事を把握しておかなければいけないので」
「いやどっかのジジィとはエライ違いだわ」

自分の所の学校でいつも自室でふんぞり返っている老人を思い浮かべて銀時は言葉を返す。
あの老人が詠春のような事をやっているとは到底思えない。

「てことは俺達がここでやってたことは全部知ってたって事か?」
「全部ではありません、あくまで大体です、私の力も最近衰えが来ているので目となる式神の数も減っているんです。本当は娘の周りに1000匹ぐらい私の『式神ゴキブリ』を配置したいんですがね・・・・・・」
「そうか衰えて良かった、娘さん泣くから絶対に止めろよそれ」

何気に恐ろしい事を自然に話す詠春に銀時はすぐに却下させる。
娘に対する愛情が深いのは分かるが、そこまで行ったら嫌がらせに近い。

「親バカも大概にしとけよアンタ」
「ハハハ、生前の奥さんにもよく言われてましたけどこればっかりはどうも・・・・・・それより私からも一つお願いしていいですか?」
「あん?」

小指で鼻をほじっている銀時に不意に詠春は口を開く。

「実は今、お義父さんから預かった親書を持ってきてくれたネギ先生がお見えになっているんですけど」
「あッ! やっぱアイツも来てんのかココッ!?」
「ええ、だいぶ前に」

銀時が鼻から小指を抜いて驚いていると詠春は更に話を続ける。

「あの子に会っても・・・・・・両親の件は黙っていて欲しいんです・・・・・・」
「父親が死んでいて母親が敵だって事をか?」
「まだ10歳の子供にそれを話してしまうのはあまりにも残酷すぎるので・・・・・・」
「・・・・・・」

真剣な眼差しで見つめてくる詠春に銀時は黙ったまま頭を掻き毟る。確かにまだあんなに小さい子供にそんな事を聞かされて動揺しない筈がない。塞ぎこんでしまう可能性もある。

「わかったよ・・・・・・親の事は言わねえ」
「ありがとうございます・・・・・・」
「それでいいのかはわかんねえけどよ」
「そうなんですよね・・・・・・」

詠春は銀時に頭を下げてお辞儀をした後、表情を険しくさせる。
こればっかりは何が正しいのか、詠春も銀時もわからない。

「じゃ俺は千雨とあやかと一緒にその辺ウロついてるわ、宴会の時間が来たら知らせてくれや」
「わかりました時間が来たらすぐに式神ゴキブリを」
「止めろ」

二カッと歯を輝かせる詠春に銀時は言葉を残した後、すぐに踵を返して座っている千雨とあやかの元に行く。そこには何故か彼女の姿もあった。

「ねえ隠し事してないで私にも色々教えてよぉ、私と夕映とハルナだけなんか疎外感MAXじゃ~ん」
「あ~後ろから抱きつくなうっとおしいッ!」
「何やってんのお前等?」

嫌がっている千雨の背中に、和美が猫撫で声を出しながら抱きついて離さない。
じゃれ合っている二人に銀時が不審な物を見る目つきをしていると立っていたあやかが話しかけてくる。

「あら銀さん、お話はもう済んだんですか?」
「終わったけどよ、なんで和美の奴は千雨の奴に抱きついてんの?」
「今まで起こった事を話して欲しいそうですわ」
「んだそんな事か」

訳を聞いた銀時はハァ~とため息を突く。よくよく考えれば和美や夕映とハルナは今起こってる事件の事を何にも知らない筈だ。

「ここまで来てんだ、ありのままに起こった事を全部教えてやってもいいだろ」
「いいんですか? 朝倉さんはわかってますが、夕映さんとハルナさんは魔法使いとか異世界とか知りませんし・・・・・・パニックになるかもしれませんわよ・・・・・・?」
「そんな事でパニックになる連中だったら、こんな所までついてこねえだろ」
「それもそうですけど・・・・・・」

楽観的に銀時は答えると三人の生徒を置いて大広間から出ようとする。

「お前等そいつ等に全部教えてやれ、俺はネギとバカレッド探す」
「あ、私も行きますわッ!」
「私もッ! むぎゅッ!」

開いてる入口から出て行く銀時にあやかが慌てて彼の後ろについていく。千雨も行こうとしたが、背中に乗っかっている和美にのしかかられて押し潰されてしまった。

「千雨ちゃ~ん、起こった事を全て私にぶちまけて~、千雨ちゃんの着替えを撮った写真クラスのみんなに配っちゃうよ~」
「・・・・・・教えてやるから、早く下りろバカ・・・・・・・」

脅しともとれる和美の催促に千雨は観念したのか、彼女に押しつぶされながら呻くような声で呟く。

数分後、千雨は和美、ハルナ、夕映相手に一人で世界の法則が歪みまくるぶっちゃけ話を渋々話し上げるのであった。























































夕日が沈み段々空が暗くなってきた頃、銀時はあやかを連れて木乃香の実家である屋敷の長い廊下を歩きながらネギとアスナの事を探していた。

「デカ過ぎだろここ、人の家で迷子になるのはゴメンだぜ」
「ネギ先生とアスナさんは何処でしょうね・・・・・・」
「しらみ潰しに探せば見つかるだろ」

曖昧な返事をしながら銀時はふと窓際に目をやる。
もうすぐ日が沈む。

「・・・・・・時が経つのは早えな」
「ええ、楽しい事や大変な事が続くと特に・・・・・・」
「楽しい事?」

銀時があやかの方に振り返って彼女の言った事に「?」と呆けた顔をすると、突然緊張したようにあやかは斜め下を向いて答える。

「あ、あなたと一緒にシネマ村をデート出来た事に決まってますわ・・・・・・・」
「ああそれか、忘れてたわ」
「なッ!」
「でもま、俺も楽しかったと思ってるよ、お前と二人にいる時間ってあんま無いしな」
「!!!」

珍しく素直に若干笑みを浮かべて感想を言ってくれた銀時にあやかは顔を紅潮させる。
彼の性格上どうせ不満をだらだらこぼすのかと思いきやまさかの・・・・・・

「反則ですわ・・・・・・」
「へ?」

震えながら呟いたあやかの言葉に銀時が後ろ髪を掻き毟りながら目をぱちくりさせる。
すると彼女は顔を上げて

「銀さんのそういう所が反則なんです・・・・・・」
「・・・・・・は?」
「そうやって恋愛の仕方がわからない少女を3人もたぶらかして・・・・・・」
「いや人聞きの悪い事言うなよ・・・・・・」
「・・・・・・・私の想いを知ってる上に更に畳み掛けてくるなんて酷いですわ」

怒ってるのか照れ隠しなのかわからないがいきなり銀時に文句を言ったあやかは、突然飛びついて彼に抱きつく。

「ってオイッ! いきなり抱きついてくんじゃねえよッ!」
「・・・・・・もう」

腰にしがみついてくるあやかに銀時は声を荒げながらパニックになっていると、銀時の胸に顔をうずめているあやかがボソッと呟いた。

「・・・・・・銀さんの女たらし」
「ハァ~・・・・・・悪かったな、こういう男なんだよ俺は」
「銀さん・・・・・・」
「あん?」

まだ言うかと銀時はため息を突いていると、あやかは抱きついている状態で銀時の方に顔を上げてニコッと笑った。

「今度はあなたの方から私をデートに誘って下さいね」
「!!!」
「銀さん?」
「お前も反則技持ってんじゃねえか~・・・・・・やべぇよこの娘、えげつない凶器隠し持ってたよ、審判何やってんの、ちゃんと没収しとけよチクショー・・・・・・」

いきなり顔を背けて小声で独り言をつぶやく銀時にあやかはキョトンと首を傾げる。
額から汗を掻いて動揺する銀時、あやかの思わぬ武器は、大人の姿勢を取っていた彼にはかなり効いたらしい。

「一瞬KOされるかと思ったわ・・・・・・」
「フフ、やっぱりこうやってると落ち着きますわね・・・・・・」
「お前だけだろ、こっちは落ち着かねえよ・・・・・・」

自分の胸に顔をうずめて笑っている様子のあやかに銀時は冷や汗を流しながらしかめっ面をする。
しかしそれから10秒も経たずに・・・・・・・

「腹減った~早くご飯食べた~い」
「アスナさん、いっつもお腹空いてますね・・・・・・」
「うっさいわね、成長期なのよ」
「兄貴、尻尾をのりで付けて見たんですけどどうッスかね・・・・・・?」
「いや無理だと思うよ・・・・・・帰ったら接着剤でも買って上げるよ」
「かたじけねえ兄貴・・・・・・」
「尻尾の一つや二つ取れたからって大げさなのよ、もっと自分に自信を・・・・・・」

突然向かいにあった襖から他愛のない会話をしながら出て来たのは、銀時とあやかが探していた、ネギとアスナ、そして使い魔のカモ。
二人と一匹は襖を開けた瞬間、目の前で抱き合っている銀時とあやかを見て、時が止まったようにフリーズする。
銀時とあやかもすぐに気付いて彼等の方に振り向く。
しばらく真顔で目が会う両者。
そして

「「「ごゆっくり」」」
「待てぇぇぇぇぇ!! 何気を使おうとしてんだテメェ等ァァァァ!!!」

襖をゆっくりと閉めて行くアスナ達に我に返った銀時があやかを引き離して飛びかかり、襖が閉まる前に両手でこじ開ける。

「違うからッ! これはアレだからッ! アメリカ式ハグだからッ!」
「何その下手な言い訳、ここ日本なんだけど?」
「銀さんも達もここに来たんですね、それと・・・・・・」

慌てた様子で銀時が言い訳するがアスナはジト目でそんな彼を睨みつけて全く信じていない様子。隣に立っているネギは軽く軽蔑のまなざしで銀時を見る

「前から思ってたんですけど何人もの生徒に手を出すのは僕はどうかと?」
「うるせえッ! 一番お前にだけは言われたくねえよッ! 自分の作品読めぇぇぇぇ!!」
「しょうがないッスよ兄貴、銀の兄貴だから」
「ナマモノそれどういう意味だコラッ! おいあやか何か言ってやれッ!」

ネギと彼の肩に乗っかっているカモにそんな事を言われて銀時は後ろに振り返ってあやかに助けを求める。だが彼女はフラフラした足取りでこっちに近づき、そして

ポフッと銀時に再び抱きついた。

「もういいですわ・・・・・・好きなだけ見て下さい」
「オイィィィィィ!! 何してるかわかってんのあやかちゃぁぁぁぁんッ!?」
「へ~成長したじゃないいいんちょ、どうせ気絶でもするのかと思ったら」
「あ~もうわかったよッ! そうやってずっと俺に抱きついてろッ! ハァ~・・・・・・それよりネギ」
「あ、はい」

また自分の胸元に顔をうずめてしまうあやかに銀時はもうどうにでもなれと諦め、ネギの方へ振り向く。

「お前のネエちゃん来てたぞ、早く会いに行ってこいよ」
「お姉ちゃん? えッ! それってもしかして金色の髪を揺らしてクリリとした目がカワイイ、すれ違ったら誰もが振り返るであろうな絶世の美女のネカネお姉ちゃんの事ですかッ!? どうしてまたッ!?」
「どんだけお前にとってネカネお姉ちゃんランク高いんだよ・・・・・・大広間にいるから会ってこい」
「わ、わかりました」

銀時にそう言われてわけもわからずにネギは頭を掻き毟りながら彼の横を横切る。

「なんでネカネお姉ちゃんが京都に来てるんだろ・・・・・・」
「久しぶりに兄貴の顔見たくなってきたんじゃないッスか?」
「それならこっちからウェールズに行ったのに・・・・・・」

混乱している様子でカモを連れてネギは大広間に向かって行った。
残されたアスナは一人でジーッと銀時に抱きついているあやかを眺める。

「幸せそうね」
「こうやってる時が一番幸せなんです・・・・・・・」
「あ、そう」
「あの~あやかさん、そろそろ離れてくれない?」
「すみません、もっとアスナさんに見せびらかしたいので・・・・・・」
「いや別に俺は見せびらかしたくないんだけど? 出来れば誰にも見られたくないんだけど?」

モゾモゾと胸に顔をうずめて動くあやかに、銀時は他に誰も来ていないか辺りを窺っていると、アスナはフンとあやかに向かって鼻を鳴らした。

「私だって抱きしめてくれる相手ぐらいいるわよ」
「嘘おっしゃい、銀河系全てを巡ってもいやしませんわ」
「どんだけ私モテないのよ・・・・・・! ちゃんといるわよッ!」
「じゃあ誰ですか?」

銀時に抱きつきながらあやかがアスナに疑ってる視線をぶつける。
アスナはフフンと笑い

「ここの家主の詠春さんッ!」
「は?」
「あの渋さがたまんないのよッ! 私決めたあの人と結婚するッ! 今度から木乃香には私の事を“お母様”と呼ぶよう義務付けさせるわッ!」
「・・・・・・」

親友の父親を真剣に狙っている表情をするアスナにあやかはしばし唖然とした表情。

しかしすぐにそんな彼女にゆっくりと笑みを浮かべボソッと呟いた






















「救急車呼びましょうか?」







[7093] 第五十七訓 酒は飲むモンであり飲まれるモンではない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/22 17:02

アスナや銀時達から去った後、ネギは急いで大広間へと足を運んだ。銀時が言うには自分の親戚の姉的存在であるネカネ・スプリングフィールドがこの京都に来ていると言うのだ。

「アーニャといい何処にいるかわからない母さんといい・・・・・・なんで僕の知り合いが一つの場所に・・・・・・」
「誰かに仕組まれてるんじゃないですかい?」
「わからない・・・・・・けど何かとてつもない嫌な予感が・・・・・・」

肩に乗っているオコジョ妖精カモと話をしても明確な事は未だ分からない。不安と好奇心が入り混じる中、ネギは大広間の襖の前で急ブレーキして急いで開ける。

「ネカネお姉ちゃんッ!」
「ネギッ! あなたもここにいたのッ!?」

人目もはばからずネギは大声でネカネの名を叫ぶ。彼女は振り返りネギの存在に気付くと、ビックリしたような表情をする。

「ネカネお姉ちゃん・・・・・・」
「ネギ・・・・・・久しぶりね」
「お姉ちゃぁぁぁぁんッ!!」

久しぶりに会えたネカネとの再会に疑問も不安も吹っ飛び、ネギは彼女の元へ両手を広げて普通の子供の様に走り寄って抱きつこうとする。
だが

「アハハハハッ!」
「わぷッ!」
「ネギッ!」
「おんしがネカネさんがよく言っとったネギかッ! 写真で見るよりカワイイ奴じゃのうッ! アハハハハッ!」

ネカネの前に突然現れ、突然抱きついて来た男にネギは一瞬混乱する。
ネギに抱きついて来たのは坂本、ネカネからネギの話を少し聞いていたらしい。
大笑いしながら坂本はネギの頭をグシャグシャさせなら乱暴に撫でる。
しかしネギはしばらくして彼の腰をがっちりクラッチ、そしてそのまま・・・・・・

「せぇいッ!」
「ぐえぇッ!」
「ネ、ネギッ!」

上体をのけ反らして自分より背も体重もある坂本をバックドロップ。脳天を床に叩きつけられた坂本は呻き声を上げ、慌ててネカネが近寄って来る。

「しばらく見ない内にたくましくなったわね・・・・・・」
「色々あってね」
「あ~やっぱりネカネさんの親戚じゃ~、躊躇なく暴力振るってきおった・・・・・・」

乱暴に坂本をほおり捨てた後、ネギはニッコリと頬を引きつらせているネカネに笑いかける。そうしていると坂本が頭を手でおさえながらヨロヨロと上体を起こした。

「親の顔が見たいぜよ・・・・・・」
「・・・・・・お姉ちゃん、この黒モジャ頭の男って僕とネカネお姉ちゃんの家に住んでた男だよね?」
「やっぱりあの手紙見たのね・・・・・・そうよ、この黒モジャ頭は坂本さんっていってね、銀時さんや桂さんと同じ異世界の人間なのよ」
「ええッ! 銀さん達と同じッ!」

坂本が異世界の人と知ってネギが驚いていると、もう復活した坂本がまた彼に向かって今度は後ろから抱きつく。

「ヅラと金時はわしの友達じゃ~ッ! アハハハッ!」 
「・・・・・・僕に触るな黒モジャのクセにッ!」
「ぐふぅッ!」

笑いながら両手を首に巻き付けてきた坂本に、ネギは額に青筋を立てて彼の腕を掴みそのまま一本背負い。受け身も取れずにそのまま坂本は顔面から床に落ちた。

「この男が異世界の人なのはわかったよ、けどなんでネカネお姉ちゃんがコレと一緒に住んでんのッ!?」
「いやその・・・・・・拾ったから仕方なく」
「そんな捨て犬感覚で知らない男をホイホイ家に入れちゃ駄目だよッ! 男はみんな狼だって銀さんが言ってたよッ!」
「だ、大丈夫よネギッ! この人私に手なんて一切出してないからッ!」

弟同然のネギに物凄い気迫で怒られ、あたふたしながらネカネが答える。するとまたすぐに復活した坂本がすくっと立ち上がって

「安心しろ坊主、わしはネカネさんの言う通り、おんしの大事なネエちゃんに手なんぞ出し取らん・・・・・・」
「ほらね、大丈夫よネギ、心配しないで・・・・・・」
「・・・・・・・」
「まあ一緒にいるうちにいつか手を出しちゃうかもしれんがのッ! アハハハハッ!」
「「おらぁッ!!」」
「げほぉッ!」

茶目っけたっぷりに笑っている坂本の顔面にネギとネカネが同時に右ストレートを叩きこむ。坂本はそのまま後ろに大の字に倒れてダウン。

「ネカネお姉ちゃんッ! やっぱこんな男と一緒にいるなんて駄目だよッ! ダメ人間じゃんッ! もうダメ人間の見本ですって図鑑に載るぐらい完璧なるダメ人間じゃんッ!」
「ネ、ネギ落ち着いて、確かにこの人はダメダメ超人だけどいい所もあって・・・・・・」

口をもごもごさせて倒れている坂本をチラチラ見ながら弁明しようとするネカネ。
しかしネギにとってそんな事関係無い。

「いい所があっても無くてもネカネお姉ちゃんが男と一緒に住むなんて絶対駄目だよッ! 麻帆良学園にいる時にある人に言われたんだ、僕がネカネお姉ちゃんが彼氏なんて作ったらどうしようって相談したら・・・・・・・」

『どうしたらいいでしょうか?』
『男の首の骨を反対方向に捻ればいいんじゃない? 死ぬから』
『うわ~さすが神威さん』

「って僕の親しい人が教えてくれたよッ! これ今やっていいッ!?」
「ネギィィィィ!! なんであなたそんな危険な人と付き合ってるのよッ! 思考がアウトゾーンに思いっきり曲がってる人じゃないッ! すぐに縁切りなさいッ!」

親指を立てて誇らしげに言うネギに、まずネカネは相談の結果以前に相談した相手に対してツッコむ。するとネギは顔をムッとさせて

「僕と神威さんの前にまずネカネお姉ちゃんがその黒モジャと縁切ってよッ!」
「いや私達よりあなたの方が先よッ! そんな危ない人の事を聞いちゃいけませんッ!」
「確かに危険度Sだけど問題無いよッ!」
「あるわよッ! この人より問題ありまくりよッ!」
「そっちの方が危ないじゃんッ! あらゆる方向視点からして危険度SSランクの黒モジャじゃんッ! 絶対ネカネお姉ちゃんの事狙ってるよッ!」
「ネギッ! この人の事を何も知らないクセにそんな事言うなんてッ! いい加減にしなさいッ!」
「ネカネお姉ちゃんこそ神威さんの事なんにも知らないじゃんッ!」

親戚同士声を荒げてギャーギャー口喧嘩を始めるネギとネカネの近くで、坂本は大の字で倒れながらため息を突く。

「仲がええんじゃな二人共・・・・・・」
「坂本の旦那、ちーす」
「ん? おお、おまんは確か・・・・・・・」

倒れている坂本の元にカモが彼の顔に近づいてくる。すると坂本は彼の存在に気付いて顔をほこらばせる

「“カマ”ッ!」
「“カモ”ッス・・・・・・それじゃまるで俺っち男が好き見たいんじゃないッスか・・・・・・」
「アハハハハッ! そうじゃったそうじゃったッ! すまんのぉカマッ!」
「相変わらず俺っちの名前覚える気無いッスよね・・・・・・」

一度訂正してもまた名前を間違えるバカ丸出しの坂本にカモはもう諦めムードを漂よわせていた。

ネギとネカネが合流した所でまもなく宴開始










































第五十七訓 酒は飲むモンであり飲まれるモンではない

すっかり日も暮れて夜になったが、木乃香の実家である屋敷からは多くの人達の賑やかな声がワイワイと聞こえてくる。
大広間にて一行の歓迎の宴が始まっているのだ。
屋敷の女中達が豪勢な料理や酒を客達の前に持ってきて、楽器を用いて宴会ムードの音楽を漂わせる。
だが先刻まで喧嘩していたネギとネカネは隣に座れど目も合わせず話もせず、黙々と目の前にある料理を食べているだけだった。二人の間にいるカモはどうしていいか困っている様だ。
その光景を眺めていた千雨は隣にいる銀時に話しかける。

「銀八、あの二人なんかあったの? 確か親戚同士で仲の良い筈じゃなかったか?」
「オメー俺が何でも知ってると思うなよ、銀さんだって分かんない事がまだまだこの世にいっぱいあるんだから、あ~ここの酒うんめ~」
「お前それで何本目だ・・・・・・飲み過ぎだよ止めろ」

目の前にある料理を豪快に食いながら酒をガブガブと飲み干すのを、さっきからずっと繰り返している銀時は、すわっている目で横にいる千雨の方に振り向く。

「ヒック・・・・・・」
「お前酔ってるだろ・・・・・・・」
「酔ってませ~ん」

ヘラヘラ笑いながら答える銀時に千雨はやれやれと頭を掻き毟る。

「こんな時に酔っ払いやがって・・・・・・」
「だから・・・・・・酔ってねえつってんだろうがぁ~ッ!」
「うわッ!」

酔いの勢いに身を任せて銀時は千雨に突っかかってそのまま押し倒す。
思わず顔を赤らめている千雨に、もっと顔を酔いで赤らめている銀時が四つん這いの状態で顔を近づけて来る。

「酔ってねえ・・・・・・ヒック」
「ちょっとッ! 人様がいる前で何危ない事やろうとしてるんですかッ!」
「違うっていいんちょッ!」 
「私も混ぜて下さいッ!」
「なんでそうなるんだよッ! おい銀八早く離れろッ!」
「うおっと」

銀時の隣にいたあやかが怒ったように声を上げると、慌てて千雨は彼女にツッコミながら右手で銀時の顔を押し上げて上体を起こし、何とか彼を引き離す。しかし彼女に押された銀時はそのまま後ろに倒れてあやかの方に・・・・・・

「きゃあッ!」
「ん? なんかマシュマロみたいな感触が頭に二つ・・・・・・」
「ぎ、銀さん・・・・・・それ私の胸・・・・・・」
「胸?」

勢い良くあやかの方に倒れた銀時はそのまま彼女の胸の中へ頭から落ちる。
そんないきなりの銀時の行動にあやかは息を荒げながら顔を頬を赤くさせると、酔い潰れている銀時は再び思いがけない行動を

「きゃッ! ぎ、銀さん何を・・・・・・!」
「相変わらずデケェオッパイだなオイ、片手でやっと掴めるぐらいだぜ、ほら」
「あ・・・・・・こんな人前でダメです銀さん・・・・・・」
「オメーの方が危ねえよッ!」

完璧に酔っている銀時があやかの胸に顔をうずめながら突然片手で揉みだす奇行に走ったので千雨が彼の後ろ襟を引っ張って強引に引き離した。
あやかは顔を真っ赤にして両手で自分の頬を触る。

「こんな積極的な事をされるなんて・・・・・・」
「恥ずかしがってるわりには嬉しそうだなおい・・・・・・銀八、お前ちょっと横になってろ」

満更でもなさそうに照れているあやかをジト目で視線を送った後、千雨は支えてるおかげでかろうじて座れている銀時に寝とけと指示。
彼女の指示に銀時は意外にも素直に従った。

「そうさせてもらうわ気持ち悪いし・・・・・・少し経ったらすぐに起こしてくれや、よ」
「ってなんで私の膝を枕代わりにすんだよッ!」
「カー・・・・・・・」
「もう寝やがった・・・・・・」

自分が正座している所に銀時がコテンと両膝に頭を置いてそのまま一瞬で寝てしまう銀時に千雨は複雑そうな顔をする。
あやかは彼の寝顔を眺めながら

「疲れてたんでしょきっと」
「こっちだって疲れてんだよ、勝手に私の膝の上で寝やがって・・・・・・」
「あら? じゃあ私が代わりましょうか?」

意地の悪い笑みをしながらあやかは千雨に問いかける。すると千雨は仏頂面で

「・・・・・・いい、このままにして置く・・・・・・」
「フフ」
「何笑ってんだよ・・・・・・」

両膝に銀時を寝かせながら呟いた千雨の言葉にあやかは思わず口を押さえて笑ってしまう。
そんな彼女を千雨はブスっとした表情で睨む。

「言っとくけどこれは仕方なくてだな・・・・・・」
「はいはい、あれ? 銀さんのお酒まだ残ってますわね、そういえば千雨さんが銀さんに告白できたお祝いがまだでしたしね、一杯どうです?」
「わ、私はお酒なんて・・・・・・」
「将来的にはお酒飲めるようにならないと、銀さんと一緒に飲めませんわよ?」
「・・・・・・」

なんか妙に茶化してくるあやかに千雨はしかめっ面を浮かべる。対してあやかは優雅に微笑んで手に持っているお酒を彼女に見せた。

宴はまだ続く。





















































銀時がお酒で千雨の膝の上で寝入っている頃、土方も酔い潰れそうになりながらも飲んでいる。
フラフラと体を揺らしながら酒をコップに入れてすぐに飲み干す、既に彼の目は焦点が合っていない様子だ。

「う~・・・・・・のどか、もう一本出せ」
「駄目ですよもう・・・・・・十四郎さん目が完全にイってます・・・・・・」

顔もすっかり赤くなっている土方に隣に座っているのどかが心配して注意すると、土方は隣にいる男の方に目をやる。

「バカヤロー、桂のヤローに負けてたまるか」
「フッフッフ、まさか鬼の副長とこんな対決をする日が来るとは・・・・・・おえ」
「桂さんも死にそう・・・・・・」

のどかも目をやると本来なら敵同士である土方の隣に座っているのは攘夷志士、桂小太郎。
彼もすっかり出来上がっており、不敵に笑いながら時々口を手でおさえる。
そんな姿に隣に座っている彼の仲間の一人である犬上小太郎が、頭についてる犬耳をピコピコさせながら疎める。

「ヅラ、もう飲むの止めろや、こんな所で吐かれたら最悪や」
「ヅラじゃない桂だ・・・・・・うぷ、真撰組に負けてたまるか・・・・・・もう一杯」
「無理や、自重せい」

桂が手に取ろうとした酒の入った瓶を小太郎は即座に取り上げる。すると桂は苦しそうに目を細めながら呟く

「この勝負に勝たなければ日本の夜明けは見られぬぞ・・・・・・」
「これ以上飲ませたら夜明けじゃなくてゲロを先に見る事になりそうやからイヤや」
「侍がゲロなど吐くわけ・・・・・・! うッ! 無理無理無理ッ! ちょっと厠行って来るッ!」
「俺も・・・・・・限界だッ!」
「十四郎さんッ!」
「言ってる傍から吐くんかいッ!」

突然胃からこみあげて来た吐き気に遂に限界を感じ、桂は突然立ち上がってダッシュで厠まで走る、土方ももう駄目だと彼と一緒に大広間から出て行く。

「ったく・・・・・・いい年こいて酒に飲まれるなドアホ・・・・・・お前も飲むの止めろや、結構飲んでるやろ」

あぐらを掻きながら小太郎は隣でガバガバと酒をんでいるエリザベスに注意する、しかし彼は一気に酒を飲み干した後、澄んだ表情でボードをヒョイと掲げて小太郎に見せる。

『うるせえクソガキ』
「なんやとッ!」
『酒の味もわかんねえ青二才は一生コーラでも飲んでな』
「ぐッ! こんなモン楽勝で飲めるわッ! よこせッ!」

言いたい放題言われすぐに闘争本能を燃やした小太郎は、エリザベスが持っているジョッキに入ったビールを横からかっさらう。するとそれをみたのどかが慌てた様子で叫ぶ。

「ダメッ! 未成年はお酒飲んじゃだめだよッ!」
「知るかそんなのッ! こんな妖怪アヒルに負けられるかッ!」
「お酒は子供が飲む物じゃないのッ! 飲んじゃ・・・・・・・あ」

のどかの注意も聞かずに小太郎ジョッキを片手にグイッと一気飲み。ビールはぐんぐん彼の口の中に吸い込まれていき、最後には全部無くなってしまった。
ビールが無くなり空になったジョッキをエリザベスの前に大きな音を立てて置いた後。

「アカン・・・・・・頭クラクラする・・・・・・」
「あッ!」

ろれつの回っていない様子で頭をおさえながら小太郎は呟いた後、バタンと後ろに倒れてしまった。
すぐにのどかが彼に近寄る。

「大丈夫ッ!? しっかりしてッ!」
「アハハ・・・・・・」

目を回しながら倒れている小太郎にのどかが何度も叫ぶが返事は出来ない様子。
そんな小太郎の姿を見た後、エリザベスは勝ち誇ったようにボードを掲げる。

『雑魚が』




のどかが小太郎を介護しているその頃。

「オイ、テメェ等これはどういう真似でぃ」
「もちろん、沖田さんがのどかに手を出さないように防衛網を張っているに決まってるじゃん」

彼女の席の隣ではハルナと夕映がのどかっそちのけで宴会を堪能していた。
間に沖田を挟んで・・・・・・

「安っちい防衛網だ、こんなんで大将の首を守れると思ったら大間違いだぜ」
「なにをーッ! 私達の事ナメてたら痛い目に・・・・・・へぶッ!」

のどかを守る為に両手を広げるハルナに沖田は問答無用に無表情で顔面にパンチをお見舞いする。

「テメェ等見たいな小便臭いガキ共じゃ、雑兵にもならねえよ」
「女の子の鼻に思いっきり一発入れるなんて・・・・・・」
「ハルナ、いい加減この男の性格を覚えたらどうですか?」
「やば、鼻血出て来た・・・・・・」

口からエビの尻尾を出しながら夕映はハルナへ指摘するが、ボタボタ出て来た鼻血を慌ててティッシュで拭いている彼女は聞いていない。
そんなハルナを見ながら沖田はだるそうにフンと鼻を鳴らす。

「付き合ってらんねえや」
「ちょっと何処行くのッ!? まさかのどかの所へ行くんじゃないでしょうねッ!」
「ションベン」

席から立ち上がった沖田に鼻にティッシュを詰めながらハルナが叫ぶと、彼は一言だけ残してそそくさと大広間を後にしてしまった。

「ホント、あんな部下を持ったあの人も大変だよねぇ・・・・・・いつもどうやって対策してるのかな?」
「近藤さんがですか?」
「土方さんの方に決まってるでしょ・・・・・・」
「それじゃあ興味無いです」
「アンタねえ・・・・・・・」

ハルナが近藤の話をしようとしているわけではないとわかると、すぐに夕映はそっぽを向いてムシャムシャと口に咥えていたエビを口の中に入れていく。
近藤の話なら食いつくが土方の話など彼女にとっては心底どうでもいいのだ。

「なんでアンタみたいな子があのゴリラに惚れたのかさっぱりわかんないよ・・・・・・」
「男は見た目だけじゃなくて中身ですよハルナ」
「いや中身もダメだった様な気がするんだけどあの人・・・・・・」
「あの人の中身の奥底さえ見抜けぬとは、ハルナ、あなたに男を語る資格はありませんね」
「ちょっとッ! 土方さんや銀八先生に吐いてる様な毒を友人の私にも吐かないでよッ!」
「すみません、ちょっと腹が立ったので」

毒舌攻撃を仕掛けて来た夕映にハルナが非難するも、夕映は全く悪びれる様子もなく黙々と口の中にナマコやらクラゲやら変な物を好んで食べ始める。そんな彼女にハルナは重いため息を吐く。

「どんだけゴリラ信者なのよ・・・・・・ていうか相変わらず変なモン食べるの好きだね」
「あげませんよ」
「いらないから・・・・・・」

キッと睨んで来る夕映にハルナは全く興味無さそうに首を横に振った。
そんな事をしていると彼女の後ろから顔を真っ赤にさせた酔っ払いの男がやってくる。

「アハハッ! なんで飲んでないんじゃ~ッ!」
「え~と・・・・・・夕映、このグラサン付けた変な人って坂本さんって言うんだっけ?」
「知りません」

尋ねて来たハルナに夕映は興味無さそうに首を横に振ると、すっかり出来上がっている坂本はハルナと夕映の真ん中に立って大笑い。

「そうじゃ坂本辰馬じゃ~ッ! おまん等もっと飲めぇッ! アハハハハッ!」
「いや私達未成年なんで・・・・・・」
「あっち行って下さい」

ハルナはぎこちなく笑みを作って追い返そうとするが、夕映は遠慮なく冷たく突き放す。しかしそんな夕映の背後から別の人物が突然抱きついてくる。

「ユエユエ~一緒に飲もうよ~、こんな事普通では滅多にない事なんだからさぁ~?」
「・・・・・・何やってんですか朝倉?」
「え~? アメリカ式ハグ、アハハハハ」

抱きついて来たのが和美だと気付くと夕映は後ろに振り返る。顔をほんのり赤くしてヘラヘラしている和美がそこにいた。

「・・・・・・もしかしてあなた酔ってるんですか?」
「酔ってないよ~酷いよユエユエ~」
「いつもよりウザいその絡み方、それに酒臭い・・・・・・あなたやっぱり飲んだでしょ?」
「ウザくないし臭くないよ~、そんな酷い事言わないでよユエユエ~、私泣いちゃうよぉ?」
「あ~ウザいし臭い、ウザ臭いです・・・・・・頼むからこの男の人と一緒にどっか行って下さい」

笑ったり泣きそうな顔したりして抱きついてくる和美にイライラした様子で夕映がグイッと引き離す。どうやら彼女、酒を少し飲んでしまったらしい。
やたらと夕映に絡みつこうとする和美を観察してハルナは納得したように頷いた。

「やっぱ朝倉の奴って絡み酒だったんだ・・・・・・」
「アハハ~じゃあ私は~?」
「え? ってアスナッ!」

今度は自分の方に誰かが抱きついて来たのでハルナは後ろに振り返る。見ると和美同様顔を真っ赤に染め上げたアスナは目をトロンとさせて笑いかけて来る。

「私は何なのよ~? 早く教えなさいよゴキブリのクセにぃ」
「アンタも飲まされたの・・・・・・・? アンタも絡み酒よきっと、それに誰がゴキブリよ誰が・・・・・・」
「そっかぁ“カラミティ”かぁ~、私カラミティだったんだ~アハハ~」
「いやカラミティじゃなくて絡み酒だって・・・・・・」

何がおかしいのやら天井を見上げながらヘラヘラ笑っているアスナを見て、ハルナが段々心配になって来ていると、突然アスナの目がギラリと光り

「落ちろォォォォ!!」
「ぐむッ!」

何処から取り出しのか突然片手に酒の入っている一升瓶を握りしめて、それをハルナの口に思いっきり突っ込むアスナ。口元には狂気の笑みが広がっている。

「オラオラオラオラァァァ!!」
「げほッ! ちょっと夕映助け・・・・・・! むぐぅッ!」

隣にいる夕映に助けを求めようとするが、アスナは容赦なく彼女の口に酒を無理矢理飲ませて行く。
それから一升瓶の中が空になるまで飲まされたハルナは口からポフッと湯気を出した後、すぐに顔が赤くなってきた。
焦点も合っていない親友の姿に、夕映はクラゲをクチャクチャと噛みながら首を傾げる。

「大丈夫ですかハルナ?」
「はひょん? なんでゴワスか?」
「・・・・・・大丈夫じゃなさそうですね」
「大丈夫だっぷりん~」
「こりゃあ重傷です、手遅れかもしれませんね」

和美やアスナ同様の笑みを広げるハルナを夕映はジト目で眺める。
すっかり酔っ払いになってしまった様だ。

「酔うのは結構ですが私には絡まないで下さいよ」
「おまんは飲まんのか~? 酒はうまいんじゃぞ~?」
「飲みません、もしかして朝倉とアスナさんに酒を飲ませたのってあなたですか?」
「アハハッ! ネカネさんが相手にしてくれないけ~、わしは一緒に楽しんでくれる同胞が欲しかったんじゃ~、アハハハハッ!」
「なんというはた迷惑な男・・・・・・・」

笑いながら事情を説明する坂本に夕映は呆れたような視線を送っていると、和美、アスナ、そしてハルナも酔っ払って彼と意気投合している。

「坂本さ~ん、ユエユエのノリが悪いよ~」
「黒モジャ~私カラミティなんだって~、で、カラミティって何?」
「坂本ちゃ~ん・・・・・・なんだっけ?」
「細かい事なんぞ気にせず飲め飲めぇッ! 同じ席で酒を飲み合えば友達じゃ~ッ! アハハハハッ!!」
「「「アハハハハッ!!」」」
「う~もう嫌ですこんな連中・・・・・・」

坂本を中心とした酔っ払い四人組の笑い声に夕映が限界だという様に歯ぎしりした後、すぐに立ちあがって、のどかの方に急いで避難した。
気絶している小太郎の隣でボーっと座っているのどかの隣に夕映は座る。

「助けて下さいのどか、バカが四人もいて困ってるんです」
「・・・・・・・」
「のどか?」
「・・・・・・んだよ」
「・・・・・え?」

親友の夕映に対してのどかはギロッと横目で睨みつけてくる。その姿に夕映は一瞬別人か?と思ってしまうほどであった。

「のどか・・・・・・ですよね?」
「当たり前だろ・・・・・・ヒック」
「の、のどか? もしかしてこの人達みたいにお酒を飲んだんじゃ・・・・・・」
「あ? ジュースしか飲んでねえよ」

いつもと違い荒っぽい口調で喋るのどかに夕映は嫌な予感を感じる。すると案の定のどかが手に持って見せて来たジュースと言う物は・・・・・・

「どうみてもジュースだろ、ヒック」
「のどか、それって・・・・・」
『それ、俺のチューハイじゃね?』
「チューハイって・・・・・・やっぱりお酒じゃないですか・・・・・・・」

のどかの隣で顔を赤くして倒れている小太郎に、めんどくさそうにうちわを振って涼ませてあげているエリザベスはボードを上げて夕映に報告する。
どうやらのどかはエリザベスが持ってきたチューハイをジュースと間違えて飲んでしまったらしい・・・・・・

「のどか、それジュースじゃなくてお酒・・・・・・ってのどかッ!」
「あん? うっせえなどうした」
「な、なんでタバコなんて口に咥えてんですかッ! そんなもんお酒以上に体に毒ですッ! すぐに捨てなさいッ!」

ちょっと夕映が目を離していた隙にあろうことかのどかは土方が置いていったタバコを一本口に咥えてライターでを火を付けて吸い始めている。慌てて夕映が珍しく声を上げて叫ぶが彼女は夕映に向かって目を細め呟く。

「タバコ吸おうが吸わねえがこっちの勝手だろうが」
「未成年で喫煙するなんて何考えてんですかッ!」
「知らねえよんな事、ゴチャゴチャ言ってると殺すぞ」
「そんな・・・・・・・! あの純粋無垢でいつも優しいのどかがまるであのチンピラニコ中のように私に向かって殺すと・・・・・・」

自分の話も聞かずに口からタバコの煙を吐き出しているのどかの姿に、ショックを隠しきれない夕映は壁にもたれかける。

「夢なら覚めて下さい・・・・・・」

バカ騒ぎしている坂本達やすっかり荒れているのどかを見て、目の前で起こっているこの現実に夕映は逃避するかのように体育座りして顔をうずめた。
だが未だ宴は終わらないのだ。









































夕映が現実逃避しているそんな頃。
空には月が昇り下にある雑木林からは虫やカエルの鳴き声が聞こえてくるそんな風情を、関西呪術協会の長である近衛詠春は一人窓から眺めていた。

「あれ? あなたは宴会行かないでんですか?」
「ん?」

後ろから呼びかけて来た声に詠春は反応して後ろに振り返る。
かつての仲間であり戦友のアルビレオ・イマが微笑んで立っていた。

「結構面白楽しくやってるっぽいですよ? さっき桂さんと真撰組の人が猛スピードでトイレに向かって走ってましたが」
「いや・・・・・・どうも“ある事”が気がかりで今は楽しめる気分じゃないんだ」
「娘さんとそのご友人なら私が治癒魔法で治してあげましたが?」
「その事じゃない、『彼女』の事だ」
「ああ」

神妙な面持ちで話しかけて来る詠春の顔を見て、アルは誰の事で悩んでいるのか理解する。
彼の隣に立ち、一緒に窓から風景を眺めながらアルは呟く

「アリカ・スプリングフィールドの事ですか・・・・・・」
「・・・・・・あの御方が何故『春雨』という異世界の組織に入り、なおかつ何故我々に刃を向けるのか・・・・・・なんでこんなこんな事になったのかさっぱりわからない」
「それは私も同感です、夫のナギは死んだと彼女は言っていましたが、果たして本当の事なんでしょうか」
「どうかな、少なくともあのちゃらんぽらんが死ぬとは思えない」

顎に手を当てながら考えながら詠春が呟くと、アルは窓から見える雑木林に向かって目を凝らしながら口を開く。

「“鳳仙”が相手ならわかりませんよ、魔法世界を食らいつくそうとした暴君と言われた彼ならナギを殺せる実力は十分にあります」
「夜王か・・・・・・正直あの男の事はあまり思い出したくないな・・・・・・」
「ハハハ、魔法世界の住人はみんなそう言うでしょうね」
「ナギが最後に会ったのが夜王だとしたら、殺されている可能性もあるというわけか・・・・・・」

難しい表情で頷いた後、詠春はしばらく黙りこくる。
かつての仲間であった二人が自分達の知らない所で何があったのだろうか・・・・・・

「困ったもんだよ全く・・・・・・」
「ナギ・スプリングフィールドは行方不明、妻のアリカ・スプリングフィールドは宇宙海賊になってここに来ている、そして息子のネギ・スプリングフィールド君は幼馴染と仲間によって板挟み状態。本当トラブル尽くしの一家ですねぇ」

他人事のように話してくるアルに詠春は急に老けた様にため息を突く。

「今度は一家総出で私に悩みの種を作るかナギの奴・・・・・・」
「そういう男なんだからしょうがないですよ、今度会ったら色々文句言ってやったらどうですか?」
「そうさせてもらうよ・・・・・・む?」

窓際に肘掛けているアルに詠春は頷いた後、ふと人の気配を感じ、前方の曲がり角に目を凝らす。

「・・・・・・そこにいるのは誰かな?」
「ああ、すんません」

警戒しながら詠春が呼びかけると、意外にも隠れていた人物はすぐにヒョイと顔を出した。

「ちょいと聞きたい事あったんすけど、なんか話し中だったのでここで待機してやした」
「ん? 君は確か真撰組の・・・・・・?」
「“副長”の沖田です、この屋敷やたらとデカくて厠が何処にいるかわかんなくてねぇ、教えてくれませんかぃ? 早くしねえと漏れそうなんでさぁ」

頭を掻き毟りながら沖田が仏頂面で詠春に訳を説明する。どうやらトイレが何処にあるかわからず困っているらしい。
なんだそんな事かと理解した詠春はすぐに彼にトイレの場所を教える。

「トイレなら一階ごとに何個も置いてあるよ、ここから一番近いのはあっちだね」
「あざーす、あー漏れる漏れる」

丁寧に説明してくれた詠春に軽く会釈した後沖田は颯爽と彼とアルの前を横切って行ってしまう。
沖田の後姿を眺めながらアルは唐突に呟く。

「もしかして私達の話を聞いてたんじゃないですか?」
「さすがにそれは無いだろ、彼は江戸の人間だ。ナギやあの御方の事など知っている筈ないし、聞いても意味が無いだろ」
「・・・・・・でも何か妙に引っ掛かる表情だったんですよね彼」

沖田が消えるまで怪しんでいる目つきで彼を眺めるアル。
詠春は違うと言うがどうも彼に変な違和感を覚えた・・・・・・

「さっきの仕種、わざとらしい演技に見えた様な気がしたんですけど・・・・・・」
「お前は時々疑り深い所があるな、それより一緒に宴会を見に行ってみるか? 私も少し小腹がすいて来た」
「・・・・・・ん? ああいいですよ」

あまり深く考えていない詠春はアルを宴会へと誘う、彼は素直に頷いて一緒に宴会場所へと足を運ぶ

「娘さんとその友人も全快して今頃着いてる筈ですし、それにしてもあなたの娘さん母親似で本当可愛らしいですねぇ、父親に似なくて本当良かった」
「当たり前だ私の娘が可愛くないわけがない」
「おや皮肉が通じませんでしたね・・・・・・」

親バカっぷりを見せつけて来る詠春にアルが苦笑していると、詠唱は鋭い目つきで彼を睨む。

「アル、万が一娘に手を出したらただじゃ済まさんぞ・・・・・・」
「出すわけないでしょ、考えた事もありません」
「何? 銀河系一可愛い私の娘に手を出そうと考えないとは・・・・・・」

きっぱりと否定したアルに信じられない物を見る目つきで詠春は呟く。

「やっぱりお前、男が好きなのか・・・・・・・」
「・・・・・・どうしてそういう結論になるんですかね?」

娘を持つ父親というのは全員こうなのか?
宴会所へ向かいながら詠春にホモ疑惑を持たれたアルは、そんな疑問がふと頭の中に浮かぶのであった。

































一方、アルと詠春から去って行った沖田は廊下を歩いていると突然ピタッと止まり、後ろを向いて誰もいない事を確認する。トイレはもうとっくに済ませてあるのだから行く必要が無い。
ふと懐にしまっている手帳を取り出してパコっと開け、そこに書いてあるメモを見つめ、何かを確信したかのように沖田は小さな笑みを口に浮かべた。

「まさかとは思ったが・・・・・・ビンゴだぜ」

沖田の手帳に書いてあった言葉はただ一つ

『依頼人、ナギ・スプリングフィールド。依頼内容、行方不明者である妻のアリカ・スプリングフィールド(調教不可→やっぱ可)の捜索』

「女は宇宙海賊春雨の一員やってんのか・・・・・・通りで見つかんねえわけだぜ」

先ほどのアルと詠春の会話を最初からずっと聞いていた沖田はナギとアリカの現状をはっきりと分かった。ナギはここでは行方不明者、そして妻のアリカは自分の世界では有名な犯罪組織の一員なのだ。

「さて、どうしたもんかね・・・・・・お」

手帳をしまって沖田は腕を組み歩きながらどうしようかと考えていると、突然彼の胸ポケットにしまっている“ある物”が音を立てて震え始める。沖田はそれをすぐに取り出した。

「タイミングいいな、さすが近藤さんだぜ」

取り出したのはこの世界に来るために使ったジャスタウェイ型転送装置。沖田は笑みを浮かべながら転送装置の頭の先についている赤いボタンをポチっと押し、転送装置に向かって話しかける。

「もしも~し」
『ガーガー・・・・・・おおようやく繋がったッ! 心配したぞ総悟ッ!』

転送装置から聞こえて来るノイズと共に男の声も聞こえて来る。その声を聞き沖田はすぐに誰だかわかる。

「すみません近藤さん、ちょっとゴタゴタが続きましてしばらく連絡取れませんでした」
『なに気にするな、色々とそっちも大変なんだろ。それより例のモンが遂に動かせるようになった、これで俺、いや隊士の奴等もすぐにそっちに行ける筈だ、高杉と春雨に好き勝手に異世界で暴れてもらったら困るからな』

沖田は向こうの世界に周りのメンバーから隠れて前々から何回も通話をしていたのだ。当然向こうの連中もこっちの状況を全て知っている。
そして今、通信相手の近藤の朗報を聞いて沖田はニヤッと笑う。

「そいつはいいや、近藤さんがいれば敵無しだ」
『フ、お前等だけで楽しませてたまるか、こっちもしばらく派手な事やってねえんだ。久しぶりに暴れさせてもらうぜ』
「へへ、ここの世界の奴等がビビっちまうぐらい暴れてくだせぇ。それより近藤さん、さっきちょっとした情報を偶然聞いちまったんですがねぇ・・・・・・」
『ん? どうした?』

周りをキョロキョロ見渡した後、沖田は転送装置に向かって呟く。

「・・・・・俺達の世界で魔法使いとかなんとか名乗ってる『ナギ』っていう男いましたよね・・・・・・」
『ああいるな、今は万事屋の所で二代目やってる奴だろ?』
「ええ実は今から俺が言う事、あの男にも教えといて下さい、知りたがっているでしょうし」
『え? なんで?』

理解していない様子の近藤の声を無視して、転送装置に向かって口を近づけた後、沖田はゆっくりと口を開く。























「あの男のカミさんの場所と今何やっているかが分かりました」








[7093] 第五十八訓 時に酔いは人の本性をさらけだす事もあるんです
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/25 17:26
土方や桂、沖田が席を外している頃、大広間でワイワイと騒いでる人達の中で居心地の悪そうに座ってるいる者が二人いた。
ネギとネカネだ。

「ネギ、坂本さんが確かにバカでアホでマヌケでまるでダメな男略して『マダオ』クラスの人だってのは認めるわ、だけどあの人は“極極稀”に頼りになる人なの、私達にも力を貸してくれる人なんだから悪い人じゃないのよ」

ネカネなりの庇護なのだろうが、ネギは彼女の方へ向かずムスッとした表情で前だけを見る。そしておもむろにある方向に指差して重い口を開いた。

「・・・・・・僕の目の前で僕の生徒さんにお酒を飲ませているあの人が悪い人じゃないって保障が何処にあるの?」
「え? ああもうシットッ! あの人何やってんのよ・・・・・・」

見ると問題の主役である坂本が和美やアスナ、ハルナ達と一緒にどんちゃん騒ぎしている。
それを見てネカネは頭を押さえながら舌打ちすると、二人の間にいるカモがお猪口に入った酒を飲みながら彼女に向かって声をかける。

「随分前から姐さん達に酒飲ましてたりしてましたぜ」
「ちょっと懲らしめて来るわ・・・・・・ネギ、あの人はちょっと頭がおかしいから仕方ないの、きっと子供好きだからああやってみんなで楽しみたいのよ」
「いやあのさネカネお姉ちゃん・・・・・・・」
「坂本さんと仲良くしてね」

そう言葉を残した後、ネカネは坂本の方に歩いて行ってしまった
有無も言わず彼の顔面に右フック。
その威力に吹っ飛び倒れた坂本に追い打ちをかける如く馬乗りになって頭突き。
ネカネの血祭りショーを間近で観戦しながらアスナ達は大笑い。
そんな状況を見てネギはボソッと呟く

「無理でしょどう考えても・・・・・・」
「兄貴~止めないんですかぃ?」
「あのままネカネお姉ちゃんがあの黒モジャ殺してくれればそれでいいから」
「そうッスか・・・・・・」

だるそうにそんな事を言いながらネギは目の前に置かれている焼き鳥のレバーを一本取って食べる。それにしても本当に様々な種類の料理が置かれているものだ。

「兄貴、“ねぎま”もありますぜ」
「僕それ焼き鳥の中で一番嫌いだからカモ君食べていいよ」
「ええ~それって色々とマズイんじゃないッスか・・・・・・?」

覇気のない口振りでネギはカモが持っている『ねぎま』を拒否すると、今度は皮を食べ始める。複雑な表情を浮かべるカモは仕方なく代わりにねぎまを食べ始めた。

「それにしても焼き鳥食べてると刹那さんが頭によぎるのは何でだろう・・・・・・」
「私がどうかしたんですか?」
「ってッ! 刹那さんいたんですかッ!?」
「ちょうど今お嬢様と一緒に来た所です」

後ろからヒョコっと顔を出して来た刹那にネギは驚いて声を上げる。
桂の仲間である魔法使いのアルのおかげですっかり体の傷は治ったようだった。

「私も食べていいですか? ずっと何も食べて無くて」
「焼き鳥を・・・・・・ですか?」
「ええ、私の好きな食べ物ベスト3に入る一品ですし」
「後の2つが気になるランク付けですね・・・・・・」
「1位が唐揚げで2位がチキンライスです」
「鳥系じゃないですか・・・・・・」

何故か彼女の口から鳥好きと聞くと妙な違和感を覚える・・・・・・。
そんな事を考えながらネギは隣で様々な種類の焼き鳥をガツガツと食べ始める刹那を遠い目で見つめた。

「何もそんな豪快に食べなくても・・・・・・そういえば木乃香さんは何処ですか?」
「おひょうしゃまはあひぃふぁに」
「は? すみません何言ってんですか・・・・・・?」

口の中をモゴモゴさせながら言葉を発する刹那だが何を言っているのかネギにはさっぱり分からない。すると彼女はレバーとねぎまの二本持った左手で木乃香がいる方向を指差す。

「あっひぃれふ」
「ああ、あんな所にいたんですか、よかった黒モジャに酒でも飲まされてなくて」
「でも兄貴・・・・・・」
「うん?」
「近くでタバコ吸ってる嬢ちゃんがいますぜ・・・・・・」
「えええッ!? うわ本当だッ! しかも本屋さんッ!? な、何であんなキャラ変わってんのッ!? 顔恐ッ!」

刹那が指差した方向には何故か体育座りして塞ぎこんでいる夕映と一緒にいる木乃香の姿が,そして
彼女達の前にはタバコを吸って女中達に灰皿を持ってこいと命令しているのどかの姿が

「と、とにかく急いで止めさせなきゃッ! お酒もマズイけどタバコはもっとマズイよッ!」
「目が座ってて何処ぞのヤンキー見たいッスね」
「そんな事言ってる場合じゃないよッ!」

呑気そうにカモが感想を漏らす中、ネギは慌ててカモを連れて彼女達の方に走り寄る。残された刹那は両手に焼き鳥を持って幸せそうに口の中に次々と入れて行った。

「おいひぃいれふ・・・・・・ん?」
「だからお前等離れろって・・・・・」

感嘆した声を刹那が漏らしていると、坂本やネギ達のいる方向では無い所から呻き声が聞こえる

「銀さ~ん、にゃふ~」
「何がにゃふ~だよ・・・・・・おい千雨、お前までベタべタくっつくいてんじゃねえよ」
「・・・・・・」
「こっちは無言で睨みながらしがみついてくるからもっと恐えわ・・・・・・」

何故か顔を赤くさせながら両腕に抱きついて来るあやかと千雨、彼女達に向かってうんざりしたように呟く銀時の姿。
刹那は口の中には行ってる食べ物を全て飲み込んだ後キョトンとする。

「白夜叉?」









































第五十八訓 時に酔いは人の本性をさらけだす事もあるんです

銀時が眠っている頃、あやかと千雨は彼が残したお酒を興味がてらに一杯だけ飲んでみた。
しかしそれがまさかこんな事になるとは・・・・・・
現在、銀時は酔いに身を任せて抱きついてくる二人の生徒に疲れ果てた顔をしている。

「お前等なぁ・・・・・・人の酒勝手に飲んだだろ・・・・・・」
「ふにゃぁ、銀さんの温もりポカポカ~」
「こいつはキャラ変わってるし・・・・・・そしてこっちは」

甘えた口調で左腕にしがみついて頬ずりしてくるあやかに銀時は一瞥した後、右腕にしがみついているもう一人の少女と目を合わせる。

「・・・・・・」
「睨むの止めろ」
「・・・・・・」
「ちうちう~お前の腕の締めつけ方半端ないんだけど~?」
「・・・・・・一生離さない」
「ハァ~・・・・・・」

ギュッとあやかより力を込めて腕に抱きついて睨んで来る千雨に銀時はガックリ頭を下げてため息を突く。
無理矢理彼女達に起こされてからずっとこの調子だ。

「お前等のおかげで酔いが吹っ飛んじまったよ・・・・・・」
「白夜叉」
「ん?」

ふと声が聞こえたので銀時はすぐに顔を上げる。刹那がジト目をして自分の前に立っていた。彼女の目から軽く軽蔑されているような感じが見える。

「大変な時期なのにお前は何イチャついてんだ、それでも土方さんと同じ侍か・・・・・・」
「ヅラ見たいな言ってんじゃねえよ、しょうがねえだろコイツ等酔ってんだし」
「銀しゃ~ん」
「・・・・・・」
「ほらな、イチャつける相手がいないからって俺に八つ当たりしてんじゃねえよ」
「誰が八つ当たりだ・・・・・・・」

左腕に頬ずりしているあやかと、右腕に顔をうずめる千雨、そんな二人にもうすっかり諦めている感じの銀時。
三人を見て刹那は若干イライラしたように頭を掻き毟る。

「私は別に土方さんとそんな事・・・・・・」
「ああ? 誰もアイツの事なんて言ってねえんだけど?」
「う・・・・・・」
「ま、アイツはあのガキ一筋らしいからお前は一生そんなのと無縁だろうな」
「べ、別に土方さんとイチャつこうとだなんて思ってないッ!」

口元にニヤニヤと笑みを浮かべる銀時にムキになった様に刹那が叫んでいると、彼女の後ろから誰かが近づいてくる気配が
銀時は刹那の後ろにいる“彼女”を見て口をポカンと開けて唖然とする。

「え、誰あの子・・・・・・・?」
「本屋さんッ! タバコ咥えて何処行こうとしてんですかッ! 教師の僕の言う事を聞けないんですかッ!」
「うるせえ、あっち行ってろガキ」
「すみません調子乗ってましたッ! 僕が悪かったですッ!」

ネギが慌てて止めようとするがその少女は睨んで突き飛ばした後、ズンズンと刹那の後ろに近づいて行き、そして・・・・・・

「おい」
「え?」

後ろから呼ばれたので刹那がふと振り返ると

タバコを口に咥えて瞳孔を開かせてフラフラしているのどかの姿があった。

「何でお前がここにいんだよ・・・・・・」
「・・・・・・のどかさん? うッ!」
「質問に答えろよ・・・・・・」
「へッ!? どうしたんですか一体ッ!?」

いきなりのどかに胸倉を掴まれて刹那は驚く。何故彼女がタバコを吸ってるのかもおかしいが、その口調も完璧別人のようだ、一体何があったのかと刹那は頭が混乱する。

「ネギ先生ッ! なんでのどかさんキャラ変わりまくってるんですかッ!」
「あそこで塞ぎこんでいる夕映さんから聞いたんですけど、どうやらジュースと間違えてお酒飲んじゃった様で・・・・・・」
「いやお酒飲んだだけでここまで変わりますッ!? 土方さん、もしくは竹内力の兄貴みたいじゃないですかッ!」
「誰がミナミの帝王だコラ」
「イダダダダッ! のどかさん髪引っ張らないで下さいッ!」

ネギと喋っている途中でのどかが乱暴にサイドポニーを引っ張ってくるので、刹那は悲痛な声を上げるが、酔っているのどかはギロっと彼女を睨みつける。

「前々から言おうと思ってたんだけどよ」
「な、なんですか・・・・・・?」
「お前、あの人の事どう思ってるんだ? え?」
「土方さんの事ですか? え~と・・・・・・」
「お前いつもあの人にくっ付いてるだろ・・・・・・」
「え・・・・・・まあそうですけど」

段々ドスが効いている声になって行くのどかの口調に恐怖しながら、刹那は胸倉と髪の毛を掴まれながらコクンと頷く。するとのどかはタバコの煙を吐いた後。

「これからは二度と近づくな」
「ええぇぇぇぇ!! そんなの無理ですッ!」

睨んで来るのどかに髪を引っ張られながらも刹那は手を横に振る。するとのどかの頭からブチンという音が聞こえ・・・・・・

「無理ってどういう事じゃコラァァァァ!!!」
「ギャァァァァァ!!」
「もし私の男に手を出そうと考えてるならッ! ここでテメェの人生終焉にしてやらぁッ!!」
「イダイですッ! それ以上髪引っ張ったら抜けちゃいますッ!」

ブチ切れたのどかが刹那の髪を掴んだままその場で引きずり回す。あっちへ引っ張りこっちへ引っ張り、あまりの乱暴に刹那は涙目になって訴えると、彼女は意外にもピタッと止まった。

「のどかさん・・・・・・?」
「眠い・・・・・・」
「はい?」
「・・・・・・寝る」

目をトロンとさせて刹那に向かって呟いた後、のどかは口に咥えているタバコをプッと床に捨てて、彼女の髪から手を離し、その場にバタンと横に倒れてしまう、しばらくして寝息が聞こえてくる
どうやら酒の眠気のせいで熟睡してしまったようだ。

「スー・・・・・・」
「お酒って恐いですね・・・・・・」
「本当恐いわ、こっちもヤベえよ」
「銀にゃ~ん、フフフ~」
「それはまだマシな方だろ、私なんか髪の毛むしり抜かれる所だったんだぞ・・・・・・」

両脇に少女二人抱きかかえている銀時に向かって刹那がツッコんでいると、床に倒れて寝ているのどかの元に慌ててネギと、彼女の友人である夕映が近づく。

「本屋さん大丈夫ですかッ!」
「のどかッ! しっかりするですッ!」
「二人共私の心配はしてくれないんですね・・・・・・こっちは大変だったんですよ」

ボサボサになったサイドポニーを撫でながら刹那が二人に向かって呟くと、夕映が顔を上げて真顔で返す

「は? 私があなたの事を心配? あなたの今後を心配するならダンディ坂野の今後を心配した方がまだマシです」
「腹立つ・・・・・・本当にこの人腹立つ・・・・・・」
「せっちゃ~ん」
「ああ、やっぱりお嬢様はこの人でなしと違いますね・・・・・・」

倒れているのどかの元に行く前に自分の方に駆け付けてくれた木乃香に、刹那はホッとしたように口元に笑みを浮かべる。
だが木乃香は彼女に近づいた途端ニコッと笑って

「のどかにも聞かれてたけどホンマ土方さんの事どう思ってるん?」
「・・・・・・へ?」
「前々からウチも気になってるんやけど、やっぱ好きなん?」
「もしかして・・・・・・その話しする為にこっち来たんですか・・・・・・」
「ねえねえどうなん?」

これっぽっちも心配なんてしていない木乃香の態度を見て、刹那は心に深くダメージを食らいながら疲れた表情でボソッと呟く。

「別に私は土方さんに対してのどかさんみたいな感情は持ってませんから・・・・・・」
「じゃあ何でいつも一緒にいるん?」
「それはその・・・・・・」

純粋な瞳で尋ねて来る木乃香に、刹那はどう言えばいいのか困った様に腕を組んでいると、大広間の入り口の襖が突然開き、四人の男がやってきた。

「はは、随分と皆さん楽しんでる様ですね」
「あ~まだ気持ち悪ぃ・・・・・・」
「あまり羽目を外し過ぎないようにして下さいよ、あなたもね」
「久しぶりの酒は胃に来るな・・・・・・うぷ」

木乃香の父親の詠春とぐったりしている土方と桂、そして彼等に注意するアルの姿もあった。
刹那と木乃香はそれを見て、まず辛そうな表情を浮かべている土方に近づく。

「その姿から見て随分とお酒を飲んでたようですね・・・・・・」
「うるせえな・・・・・・ていうかお前もう治ったのか?」
「ええ、こちらの人のおかげで私もお嬢様も完治しました」

刹那が言うと、彼女達を治した本人であるアルがズイッと土方の前に飛びだす。

「私が治したんですよ、凄いでしょ」
「お前がか? つうかお前誰だ? 厠に戻る途中にバッタリお前等と出くわした時からずっと気になってたんだが」
「この男はアル・・・・・・『クウネル・サンダース』と言いまして私のかつての仲間です。結構名の知れた有名な魔法使いなんですよ」

首を傾げる土方に詠春は一応アルの事を偽名で紹介してあげた。あまり意味が無いと思われるが
紹介されるとアルは嬉しそうに微笑んで、土方に話しかける。

「今は現役よりずっと弱いですけどね、随分と長いブランク期間がありまして。ついでに私があなたが敵対している桂さんの仲間です」
「ふん、桂の仲間か、なら礼をする必要なんかねえな・・・・・・ん?」

説明を聞いた土方は警戒した様な表情を浮かべると、ふと刹那と木乃香の後ろの方に目をやると誰かが倒れているのが見えた。
よく見ると何故か宴会席のど真ん中でのどかが気持ちよさそうに寝ている・・・・・・

「・・・・・・なんであいつあんな所で寝てんだ?」
「お酒のせいです・・・・・・」
「のどかがお酒飲んだらすっごい性格変わるんよ、ウチビックリしたわぁ」
「酒?」

たかが酒でどれほど変わったのか検討もついてなさそうな土方に刹那が淡々と話してあげる。

「まずお酒を飲んだのどかさんは土方さんのタバコを吸ってました」
「は?」
「私に向かってチンピラみたいに絡んできました」
「・・・・・・」
「罵詈雑言を叫びながらみんなの目の前で私の髪を引っ張って引きずり回し・・・・・・うぐッ!」

話が終わる前に土方は刹那の腹に一発ボディブロー容赦無しに入れる。腹を押さえてしゃがみ込む彼女に、彼はフンと鼻を鳴らした。

「俺がいない隙にあいつがタバコ吸ってお前に絡んだ上に髪引っ張ってきただ? ウソつくんならもうちょっとマシなウソ考えとけ、あるわけねえだろそんな事」
「い、いや本当ですってッ!」
「せっちゃんが言ってるの本当やで土方さん」
「お前までコイツの下手くそなウソに乗らなくていいぞ、そんな現実性のない話、誰が信じれるか」

のどかが暴れたなどとそんな事は土方にとっては考えられない事、刹那の言っている事を単なる狂言と思って、寝ているネギと夕映が介抱しているのどかの方に行ってしまう。

「おい、そいつよこせ、部屋まで連れてってやるから」
「のどかを部屋に連れ込んで何する気ですかあなた?」
「土方さん、木乃香さんの実家でそれはちょっと・・・・・・」
「何想像してんだテメェ等ッ! 普通に担いで部屋で寝かせるだけだッ!」

ドン引きしている夕映とネギに向かって土方が声を大きくして誤解を解く。
そんな彼の後姿を見ながら刹那は腹を押さえながら立ち上がり、落ち込んだように呟く。

「本当の事なのに・・・・・・」
「アハハ・・・・・・土方さんにとってのどかはいつも純粋で優しい子やから、それ以外考えられへんのちゃう・・・・・・?」

苦笑しながら肩を下ろしている刹那を木乃香が励ましていると、二人の近くに立っている詠春の方へあの男が“彼女達を連れて”歩み寄ってきた。

「すんませ~ん」
「おや、どうしましたか?」
「いやその、酔い醒めの薬とか無いっすかね? 段々俺、両腕の感覚無くなって来て、特に右腕」
「にゃ~ん」
「・・・・・・」

左腕にもう火でも点くのではないかというぐらい頬ずりして抱きついているあやか、右腕に思いっきり力を込めて抱きついて顔をうずめている千雨を連れて銀時が辛そうな笑みをしながら立っている。詠春の隣にいるアルはそんな彼を見て感心したように頷いた。

「両手に花とはあなたもモテますね、なんとも華やかな光景です」
「オメーもいたのか、両手に花とかそんな事言ってられねえんだよ、その花に両腕封じられてる上にへし折られそうなんだ、なんとかしてくれ、」

もう限界だと言う風に疲れた声を漏らす銀時を見て、アルは突如真顔になって彼をジーット上から下まで眺める。

「なるほど、両腕が封じられている今、あなたの“お尻”は無防備状態・・・・・・というわけですか」
「おい何考えてんだお前? 何をしようとしているんだお前? 何をぶっ刺そうと企んでんだ銀さんの引きしまったヒップに?」
「誤解しないで下さいほんのジョークです」
「うるせえよ、やっぱお前ホモだろ、絶対ホモだろ」
「さあ? どうですかねぇ」

ニコニコしながら両肩を上げてすっとぼけるアルに銀時は警戒するように一歩下がる。

絶対に彼と二人っきりにならない。銀時はそう心に固く誓った。

「もういいわ、こいつ等部屋に寝かせて俺も寝る・・・・・・もう疲れたしよ」
「いいんちょと長谷川さんと一緒に寝るん?」
「なわけねえだろうが、なんとかコイツ等両腕から剥がして布団に投げつける、俺は個室で一人で寝るよわ」

天然で危なげな事を言う木乃香にツッコんだ後、銀時は両腕に少女をぶら下げたままだるそうに、詠春達が入って来た襖から出て行こうとする。そんな彼の背中に向かってアルが微笑んで

「あなたが何処の部屋で寝るのか教えてくれませんか?」
「くたばれホモ」

立ち止まって最後に言葉を残した後、銀時はスタスタと大広間を後にした。

「連れないですねぇ」
「アル・・・・・・お前はああいう方が好みなのか・・・・・・・」
「おや? どうしたんですか詠春?」
「いやなんでもない、友人として長年一緒にいたのに、お前の事を何も知らなかった自分を恥じてるだけだ・・・・・・」

顔をおさえてアルからそっぽを向く詠春。人の趣向はそれぞれであるからして、アルに向かって自分がとやかく言える筋合いではないのだ。
詠春が頭を悩ましていると、寝ているのどかを背中におぶりながら土方も帰ろうとこっちに向かって来た。

「ちょっくらこいつ寝かしてくる」
「ああどうぞ、部屋は適当に使って下さい、一杯あるので」
「そうさせてもらう、それと刹那」
「あ、はい」

詠春の方へ報告した後、刹那の方へ振り向く土方。怪訝そうに彼女に口を開く。

「俺がここに置いてたタバコがかなり減ってたんだが、お前吸ったか?」
「は、はいッ!? いえいえ吸ったのはのどかさんですよッ!」
「今度からはちゃんと俺に聞いてから吸えよな」

そう言って土方はのどかをおぶって刹那達の前から姿を去ってしまった。
残された刹那はしょぼんと頭を下げてため息を突く。

「嘘つき呼ばわりされた上にあらぬ誤解までされてしまいました・・・・・・」
「タバコは体に毒やからなせっちゃん」
「私は吸いませんから・・・・・・それは土方さんと“のどかさん”に言って下さい・・・・・・」

人差し指を立てて注意してくる木乃香に刹那は顔を上げてジト目で呟く。
無論彼女は一度もタバコなど吸った事が無い。
そもそも刹那は未成年なのだ。のどかもだが・・・・・・

二人がそんな会話をしている頃、桂とアルはずっと飲みまくっているエリザベスと、彼の隣でぶっ倒れている小太郎の方へ歩み寄って話しかけていた。

「エリザベス、少年が屍になって倒れてるぞ、何があった?」
『大人の階段昇ろうとしてころげ落ちました』
「頭痛い~、ヅラ~助けてくれ~・・・・・・」
「大方、酒でも飲んだでしょう、カワイイですね~」
「全く、たかが酒に酔ってぶっ倒れるとは、それでは立派な侍になれんぞ」
「酒に溺れてトイレでゲーゲー吐いてた人が何言ってんですか?」

倒れて呻き声を出している小太郎に説教している桂にアルが後ろから笑顔でツッコんでいると、
横から慣れ慣れ態度で彼に近づいてくる男が

「お~飲もう飲もう~ッ! 誰だか知らんが一緒に飲もう~ッ! アハハハハッ!」
「桂さん、この人誰です?」

いきなり自分の首に手を回して一升瓶片手に抱きついてくる男にアルは平静に桂に尋ねると、うちわを振って小太郎を涼ませながら桂は説明して上げた。

「さっきここに来る前に話したであろう、そいつは俺と同じ攘夷戦争を生き残った一人の坂本辰馬だ」
「ああこの人があの噂のバカ・・・・・・失敬、初めまして桂さんの仲間のクウネル・サンダースです」
「なんじゃヅラの仲間かッ! アハハッ! よろしくッ! にしても“カーネル・サンダース”ってどっかで聞いた様な名前じゃのッ! アハハハハッ!」
「カーネルじゃなくてクウネルです」
「細かい事は気にすんなアハハハハッ!」

大笑いしながら肩をバンバンと叩いてくる坂本のハイテンション振りに、アルは困ったように桂の方へ向く。

「賑やかな人ですね桂さん」
「賑やかじゃない、バカだ」
「アハハハハッ!」

キッパリと断言する桂に坂本は顔を赤くさせながら大爆笑、どうやらかなりの酒を飲んでいるらしいが、そんな上機嫌の彼に・・・・・・

「この・・・・・・!」
「たばぁッ!」
「知らない人にまで絡んでんじゃないわよッ!」

突如背中から蹴りを食らって前のりに転がる坂本。蹴りをした本人、ネカネがイライラした様子で倒れた彼を睨みつける。

「せめてネギの前ではしっかりしてなさいッ!」

後ろからネギが坂本の事を思いっきり軽蔑のまなざしで見ているのに気付いて、ネカネがお願いするようにに叫ぶ。すると坂本と一緒にはしゃいでいた、あの三人娘も悪乗りして

「しっかりしなさいッ!」
「しっかりしんさいッ!」
「しっかりしんしゃいッ!」

倒れている坂本の傍に和美、アスナ、ハルナが高々と叫ぶ。
すると坂本はひょこっと立ち上がって

「しっかりしま~すッ! アハハハハッ!」
「「「アハハハハッ!!!」」」
「「「「アハハハハッ!!!!」」」」

坂本が言った直後、和美達は何がおかしいのか爆笑、一緒に坂本も大笑い。そんな空間に
耐えられなくなったのかネカネがその場でしゃがんで塞ぎこんでしまった

「もうイヤ・・・・・・」
「同感です」

色々な意味で泣きそうなネカネに同調するかのように、後ろに立っていた夕映が紫色の変なキノコを口に咥えながら(恐らくここで出た食材の一つだと思うのだが)彼女の肩をポンと叩いた。

銀時達や土方とのどか、そして沖田がいなくなっても、坂本や三人娘を中心に宴はどんちゃん騒ぎで大いに盛り上がりを見せるのであった。















































一方酔っているあやかと千雨を連れて銀時はようやく客室についた。
なんとか二人を引き離して、押し入れから布団を出し、彼女達を無理矢理寝かそうとするのだが、酔っ払っているあやかが猫撫で声で駄々をこね始める。

「銀しゃんも一緒~ッ!」
「遠慮するわ」
「一緒一緒~ッ! 一緒に寝たい~ッ!」

部屋から立ち去るのを止める為に背中にひっついて離れようとしないあやかに呻き声を上げる

「勘弁してくれよ・・・・・・頼むから元のお前に戻ってくれよ・・・・・・ん?」
「銀八あの・・・・・・一緒に・・・・・・」

また右腕に絡みついてくる千雨に銀時はウンザリした表情を浮かべてため息を突いた。

「お前も早く酔い醒ませよな」

そう言ってなんとか部屋を出ようとする銀時、だがそんな彼に千雨はポツリと

「醒めてるよ・・・・・・」
「・・・・・・へ?」
「この部屋に来たぐらいから・・・・・・とっくに醒めてる」

いきなりの告白に銀時はしばし目をパチクリさせて彼女と目を合わせる。
あやかと違い千雨はもう酒の効力が切れて落ち着いて来たらしい。

「へ、へ~・・・・・お前将来酒に強くなれるかもしれねえな・・・・・・そんじゃ」
「待てよ」

頬を引きつらせながら去ろうとする銀時の右腕を、酔っていた時の様に千雨が強く握る。

「い、一緒に寝るぐらい・・・・・・いいじゃねえか・・・・・・」
「・・・・・・・お前まだ酔ってる?」
「だから酔ってないって・・・・・・私の正直な気持ちだよ・・・・・・」
「男に向かってそういう冗談を言うの止めろ・・・・・・」
「自分の気持ちにもう嘘はつかねえって決めたんだ・・・・・・」

ひしっと腕に抱きついてくる千雨に銀時は困ったように顔をうなだれた。
教師に対して何を考えているんだこの生徒は・・・・・・
銀時がそんな事を思っていると千雨が小細い声で呟く

「好きな人と一緒に寝たいって考えるのは・・・・・・普通だろ?」
「いや好きってお前・・・・・・」
「私、銀八の事好きだし・・・・・・一度でいいからお前と一緒に寝たいなとか考えてて・・・・・・」
「・・・・・・」
「一生のお願い・・・・・・」

うなだれている銀時に向かって千雨が懇願するかのように彼の前に回って抱きついてくる。
彼女の頭に手を置きながら銀時が返答に困っていると

「うん・・・・・・銀しゃん・・・・・・」
「あやか?」
「眠くなってきた・・・・・・でしゅ・・・・・・」

背中に張り付いていたあやかが銀時に向かってゆっくりと口を開いた後、フラっと彼が敷いた布団の上に倒れる。
そのままスースーとあやかは寝息を立てて眠ってしまった。

「・・・・・・ったく、騒ぎに騒ぎまくって終いには勝手に寝やがった」
「銀八・・・・・・」
「手間かけさせんじゃねえよ、めんどくせえ」

眠っているあやかの寝顔を見下ろしながら銀時は舌打ちした後、千雨から離れ、背中と腰に差してある二本の得物を床に置いた後、彼女の髪を解いてちゃんと寝かして、押し入れから掛け布団を出して彼女に上に敷いて上げる。
その場にしゃがみ込んであやかの寝顔を見ている銀時。千雨がしばらくそれを見ていると不意に銀時が

「千雨」
「ん?」
「ちょっとこっち来てみ」
「う、うん」

こっちへは向かずチョイチョイと人差しを動かして来いと銀時が合図する。千雨はそれに素直に頷いて、恐る恐る彼の隣にしゃがみ込むと・・・・・・

「せいッ!」
「あッ! きゃあッ!」

いきなり後ろ襟を掴まれて千雨は銀時と一緒に布団に突っ込む。そのままもみくちゃにされながら二人はあやかが眠っている布団の中へ潜り込んだ。

「ぎ、銀八ッ! わ、私経験無いからどうすればいいのかわかんないしッ! それに隣でいいんちょが寝てるのにそんな事ッ! で、でも優しくしてくれれば私・・・・・・」
「違えよバカッ! ここは全年齢対象だぞッ! そんなの出来るわけねえだろッ!」

布団の中に入れられた挙げ句、自分の上で馬乗りになっている銀時に千雨は顔を真っ赤にして息を荒げるが、すぐに銀時が額に青筋を立ててツッコんだ後、ゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・今回は特別だぞ」
「・・・・・・え?」
「頼むから静かに寝かしてくれよな、いびき掻いたら蹴り入れる」
「そ、それって・・・・・・」
「そこどけ、俺が真ん中で寝るから」

けだるい口調で喋りながら、千雨をあやかとは反対方向の端に飛ばして、自分は真ん中で腕枕を作って寝る態勢に入る。

「電気消してくれ」
「銀八・・・・・・」
「勘違いすんじゃねえよ、他の部屋が全部使われてて厠で寝るハメになるよりは、テメェ等の部屋で一緒に寝た方がまだマシだって思っただけだ」
「なんだよそれ・・・・・・」

こちらに寝返ってブスっとした表情で口を開く銀時に、千雨は思わずクスッと笑ってしまった。
立ち上がって天井の電気を消した後、すぐに彼女は布団の中に潜込む。
銀時はすぐにあやかの方へ寝返って千雨にそっぽを向いてしまった。

「早く寝ろよ」
「うん・・・・・・おやすみ」
「にゃふ~おやすみなさい・・・・・・」
「コイツ寝ぼけてやがる・・・・・・」

嬉しそうにしている千雨にあやかが寝言で返事をすると、銀時は呆れたようにボソッと呟いた。

そろそろ彼女達の事を生徒ではない“別のモン”に意識し始めて来た銀時にとって、三人で一緒に寝るのは結構キツイのであった。

















「銀八の体っていいんちょの言う通りあったかいんだな・・・・・・」
「抱きつくな・・・・・・」
「ムニャムニャ・・・・・・銀しゃん・・・・・・」
「お前も抱きついてくるな・・・・・・」






































銀時達が寝て数時間後・・・・・・

「う~頭痛い・・・・・・」

結局あれからずっと宴会席で坂本達と騒ぎまくっていたアスナはようやく酔いが醒めて、キリキリ痛む頭をおさえながら少し夜風の当たる大きなテラスで一人で休んでいた。

「あのグラサンの男のせいではっちゃけまくちゃったわ・・・・・・」

手すりにもたれて頭を掻き毟りながら、アスナは疲れたように独り言を呟く。
酒が回ってるせいでついテンション上がって変な事ばっかしてしまった。

「あ、酔った勢いで木乃香のお父様押し倒せばよかった・・・・・・」

危険な事を匂わせる事を呟きながら、アスナは手すりに頬杖を突いて空で光っている大きな月を見上げる。
月も真上に上り、もう結構遅い時間なのかもしれない。

「時間を気にせずにこんなの遊んだの久しぶりね・・・・・・それにしても・・・・・・」

上空の月を見上げながらアスナはポツリと呟く

「今日は随分と月が綺麗ね」
「本当だな・・・・・・・」
「え?」

不意に飛んできた男の声にアスナはさっと横に振り向く。

手すりの上に見知らぬ男が座っていた。

「こういうお月様が綺麗な日は、なんか特別な事でもあるんじゃねえかと思っちまうな・・・・・・?」
「アンタ・・・・・・誰?」

こちらに向かって笑いかけて来る男にアスナは頭が痛いのを忘れて反射的に一歩下がる。
蝶の刺繍が入った紫色の女性用の着物の腰には刀が差してあり、左目には包帯が巻かれ、口には初めて見るキセルを咥えている。

「ウチのガキが世話になったな・・・・・・クックック・・・・・・まあ礼はキッチリ返してやるからよ・・・・・・」
(直感的に感じる・・・・・・コイツヤバい・・・・・・)

口からキセルの煙を吐き出しながら、ニヤリと笑いかけて来る男に、アスナは自分の体から冷や汗が出るのを感じる。
恐怖感ともいうべき感覚が、この男を見てると襲ってくるのだ。

「一体何者なのアンタ・・・・・・・」
「アスナさん、こんな所にいたんですか」
「せ、刹那さんッ!」

いきなりテラスに入って来たのは生徒の中で唯一制服姿をしている刹那。
眠そうに目をこすりながらアスナ達の方に近づいてくる。

「お嬢様ももうそろそろ寝ますのであなたも部屋に戻った方が・・・・・・」

アスナの方に近づいた所で刹那はふとピタッと止まる。
彼女の隣にある手すりに座っている男が見えた。

「!!」
「ん? 何処のお嬢ちゃんだ・・・・・・?」
「刹那さん、誰だか知ってるの?」

その男が誰だと気付いた瞬間、刹那は拳を強く握り歯を食いしばる。
忘れる筈が無い男の顔、姿、特徴。
彼を見た瞬間湧きあがる憎悪、刹那はそれを飲み込むかのように目の前の男を睨みつける。

「どうして貴様がここに・・・・・・!」

一歩一歩男に向かって刹那は歩いて行く。

「やはり全ての黒幕はお前だったんだな・・・・・・」

男の目の前に来て刹那は足を止め、憎しみのこもった視線を彼にぶつける。
だが男は刹那に向かってフッと笑っている。そんな彼に・・・・・・

「高杉ィィィィィィィィ!!!」

近くにいたアスナがビクッとする程、刹那は腹の奥底からこみあげて来る感情と共に咆哮を上げた。

かつて攘夷戦争を銀時達と共にくぐり抜けて来た男。
過激派攘夷志士、高杉晋助を目の前にして、彼に利用された事を恨みに刹那の感情は爆発した。






[7093] 第五十九訓 混沌招く血の宴
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/29 11:21
蝶が羽ばたいている刺繍と妖艶な色をした着物。
腰にぶら下げるのは一本の日本刀。
金色のキセルを持ち歩き。
左目には包帯を巻いて、残った右目の奥底からは殺戮と快楽を求めている狂気が垣間見える。
高杉晋助。
『人であって人ではない』そんな男である。

そして彼は今、木乃香の実家である屋敷にて優雅にアスナと刹那がいるテラスで笑みを浮かべ、手すりに座り彼女達を眺めていた。

「“奴のエサ”になるガキは何処だ? 俺が用あんのはそいつだけなんだが・・・・・・」
「コイツが高杉・・・・・・天パとヅラが言ってた敵の親玉・・・・・・」
「高杉・・・・・・高杉ィィィィィ!!」
「ちょっと刹那さんッ!」

余裕気にいる高杉を見て湧きあがる憎しみを抑えきれずに、刹那は懐から昔彼に貰ったお札『死装束』を取り出し、すぐに黒刀へと変化させ噛みつくように突っ込む。
だが高杉は向かってくる彼女を見ても特に動きもせず、プカプカとキセルから煙を吐いている。
二人の距離が縮まり刹那が高杉を斬れる範囲に入った瞬間、突如上空から何者かが・・・・・・

「なッ!」

宇宙海賊春雨の一人で、神威の部下である夜兎族の阿伏兎が、刹那の前にいきなり上から降って来た。
彼が着地した瞬間、周りに振動が走り、そして持っていた夜兎の主武器である傘をすぐに握り

「悪いね」
「ぐあッ!」
「刹那さんッ!」

問答無用で阿伏兎が横薙ぎに振った傘の一撃は、刹那の腰にめり込むようにして、そのまま彼女を横に吹っ飛ばす。柱にぶつかり崩れ落ちる刹那に、アスナが血相を変えて近づいた。

「しっかりしてッ!」 
「く・・・・・油断しましたけど・・・・・・まだ戦えます・・・・・・」
「うわ・・・・・・アンタやっぱ私と同じぐらい丈夫ね・・・・・・」

苦しそうにしながらも懸命に立ち上がる刹那にホッとした後、アスナはすぐに振り返ってキッと阿伏兎を睨みつけた。

「ちょっとアンタッ! 女の子相手に暴力振るうなんて酷いじゃないのッ!」
「例えガキだろうが女だろうがこちらに刃を向けるならば容赦なく殺す、それが俺の『戦場』だ」
「なんですって・・・・・・!」
「さっきの一撃は殺すつもりだったんだがね、瞬時に体をずらして急所に当たらぬよう避けたか?」
「殺すつもりって・・・・・・」

平然とした顔で殺そうとしていた事を話す阿伏兎にアスナは怒りがこみ上げて来ると同時に恐怖を覚える。刹那も同じで、彼から漂う血の匂いに戦慄する。

「近衛木乃香以外の人間は別に殺しても構わんとこの男に言われているんでね」
「アンタ達やっぱり木乃香の事を・・・・・・!」
「お嬢様は・・・・・・渡さないッ!」

無精髭を撫でながら笑いかけて来る阿伏兎にアスナは歯を食いしばる。
やはり狙いは木乃香を攫う事か・・・・・・
彼女の後ろにいた刹那は、横っ腹を押さえながら死装束を持って一歩前に出て構えた、まだ戦える気力が残っているのだろう。
すると高杉は彼女を見て何かに気付いたように手すりから下りて「ああ」と声を漏らす。

「よく見たら“あん時”のガキか、忘れてたぜ」
「貴様・・・・・・!」
「俺があげた“刀”と上手くやってる様だな・・・・・・」

殺意を放ってくる刹那に涼しい表情をしながら高杉はジッと目を合わせる。もはや彼にとって彼女などなんの興味もないであろう。
高杉はゆっくりと彼女とアスナに向かって言葉を放った。

「いいのかこんな所にいて・・・・・・?」
「・・・・・・何?」
「どういうことよそれ・・・・・・」
「この屋敷には俺達以外の奴等も潜んでる」

キセルを口に咥えてこちらに向けて煙を吐いた後、高杉は不気味な笑みを浮かべる。

「今頃例の嬢ちゃんを掻っ攫ってる所じゃねえか?」
「「!!」」
「早く行かねえと、お別れの挨拶が出来なくなるぜ・・・・・・」
「そんな・・・・・・刹那さん急いで木乃香の所にッ!」
「目の前にいる高杉より・・・・・・ここはお嬢様を護る事が先決・・・・・・・」

すぐそこにいる高杉に刹那は苦々しい表情を浮かべると、振り返って慌てているアスナの方へ向く。

「お嬢様はまだ大広間にいる筈です、行きましょう」
「わかったッ!」

踵を返して高杉と阿伏兎に背中を向けて刹那とアスナは走り出す。
だがすぐに高杉の声が後ろから

「・・・・・・お前等の所に先生やってるガキいんだろ」
「え?」

耳に入って来た事に思わずアスナは足を止めて高杉の方に振り返る。
先生やってるガキというのはネギの事では・・・・・・

「・・・・・・そのガキ死ぬぜ・・・・・・・」
「・・・・・・何言ってるのアンタ・・・・・・」
「アスナさん早く行きましょッ!」
「う、うんッ!」

高杉の謎めいた予言にアスナは眉をひそませる。だがすぐに刹那に呼ばれ、彼女はすぐに振り返ってとりあえず刹那と一緒に大広間へ向かう。

走り去って行く刹那とアスナの後ろ姿を眺めながら高杉は隣にいる阿伏兎に顔を向けた。

「“春雨”はとっくに動いてるのか?」
「ああ、上層部の連中に何言われるかわかんねえが、アンタの言う通りの事はしたさ、あのガキ共も毛一本もこの世に残さず死ぬだろうな」
「へぇ・・・・・・もしかしたらこの場で殺してた方がアイツ等にとっては幸せだったかもな・・・・・・」

ニタリと笑い、高杉は彼女達がいなくなった方向を見つめる。
恐らく彼女達とはもう会えないだろう・・・・・・そんな感じがした。

「ところでよ、アイツ等の言う“お嬢様”は何処にいるんだ?」
「ああ、もうそろそろ“来るんじゃねえか?”」

振り向いて尋ねてくる高杉に阿伏兎は曖昧に頷いた時、またもや頭上から何者かが振って来る。
両腕に何かを大事そうに抱きかかえている服部全蔵と、天ヶ崎千草が二人の前にスタっと着地してきた。

「ふう、案外事が楽に運んだわ・・・・・・」
「なんでこんな簡単な事すんのに俺達二回も失敗してんだ?」
「失敗の話はすんなっていつも言うとるやろ全蔵」
「ご苦労さん、それが例のガキか?」

ブツブツと会話している全蔵と千草に阿伏兎は労いの言葉を言った後、全蔵が両腕に抱き抱えているのを見る為に近づく。
全蔵が両腕に持っているのは、口封じの札を口に貼られて縄に縛られている木乃香だった。

「んーッ! んーッ!」
「一人でノコノコとトイレにいる所をさっと、余裕だったぜ」
「ふ~ん、こうやって見るとただのガキにしか見えねえな」
「見た目はただのガキやが、体内には並の魔法使いでは考えられへん様な膨大な魔力が入っとる。そしてこの嬢ちゃんが奴の封印を解く鍵になるんや、どや高杉、これでええんやろ?」

阿伏兎と一緒に全蔵の両腕でじたばたともがく木乃香を見た後、高杉の方に向かって笑いかける千草、高杉も彼女に向かってフッと笑みを浮かべる。

「ようやく準備は整ったな・・・・・・」

キセルを懐にしまって高杉は木乃香の方に近づいて行く。
彼と目が会った瞬間、木乃香はビクッと彼に気付いて震え出した。
恐怖にブルブル震える彼女を見て高杉は満足げな笑みを浮かべた後、顔を上げて夜空の月を眺める。

「派手な祭りの始まりだぜ・・・・・・」






























































第五十九訓 混沌招く血の宴

まず最初にその部屋で物事の異変気付いたのは屋敷の女中の一人だった。

「結界が破られているだと・・・・・・」
「・・・・・・はい」

そろそろ宴会もお開きというムードになり(坂本はまだ飲んでる)、生徒達も眠そうにしている中、詠春は女中の話を聞いてハッと顔を上げる。
隣にいた桂は一体何事かと彼の方へ振り向く。

「どうしたのだ、何かマズイ事でも?」
「この屋敷一帯には不審者が近づかないよう強力な結界が張られているんです・・・・・・しかし何者かがそれを全て破壊したとか・・・・・・・」
「一体誰がそんな事・・・・・・」
「長ッ!」
「む?」

珍しく焦った口調で説明する詠春に桂はただ事ではないと把握する。すると突然女中達の緊迫した叫び声が。

「大変ですッ! 屋敷内に奇怪な妖怪達が侵入して来ましたッ!」
「何ッ!」
「すぐにこちらへ向かっていますッ! 私達が何とか食い止めようとしていますが数が多すぎて・・・・・・」
「何て事だ・・・・・・」

慌てた様子で入口を開けて伝令を飛ばして来た女中に、詠春が顔を真っ青にしていると、桂はふと天井を見上げて不審そうに見つめる。

「詠春殿」
「どうしたんですか桂さん」
「どうやらここも、奴等に囲まれているらしいぞ」
「えッ!」

桂が言った言葉に詠春が驚くのと同時に、天井に突然穴が空き、桂の頭上目掛けて何かが降って来る。その正体は・・・・・・

「桂ァァァァ!! 死ねぇッ!」
「ギャァァァァァァ!!! 天井から化け物降って来たァァァァ!!」
「チッ! やはり春雨の連中か・・・・・・・!」

鎧を着飾り槍を持った牛の様な顔をした化け物が桂に向かって降って来るのを見て酔いも醒めたハルナが慌てて指差す。桂は舌打ちした直後、降って来る化け物を紙一重で避けて

「ぐわぁッ!」

刀を抜いて無言で一閃、化け物は首を押さえて噴水の様に出て来る血を止めようとするが、すぐに血を吐いてその場に息絶えた。
化け物を殺した桂は動じずに冷静に倒れた化け物を見下ろす。

「宇宙海賊春雨の天人だ」
「天人ですってッ!」
「どうやら高杉は幹部だけではなく、春雨の恨みを買っている俺と銀時を殺すという名目で兵隊も雇ったらしいな」
「てことはまだこの天人の仲間が・・・・・・」
「ああ、数えきれん程いる筈だ」
「「キャァァァァ!!!」」
「ゲヘヘヘ・・・・・・皆殺しだぁ・・・・・・・」

凍りついた詠春に向かって桂が説明すると、大広間の入り口から桂の言う通り春雨の兵が武器を持って現れた、その数5人。女中達は慌てて逃げ、ハルナ、和美も初めて見た天人に畏怖する。夕映も額から汗を一つ流す。

「何コレ何コレ何コレェェェェェェ!!!」
「物騒な連中がゾロゾロと出て来ましたね・・・・・・」
「千雨ちゃんが言ってた木乃香を狙う敵でしょッ! 奥に逃げようッ!」

急いで天人共からハルナと夕映と一緒に桂の元へ逃げる和美、しかし天人はそんな彼女達の背中を見逃さない

「死ねぇぇぇぇぇ!!」
「「ギャァァァァァ!!」」

追いかけて来る鬼みたいな天人の一人に和美とハルナは逃げながら同時に悲鳴を上げる。
背中から斬りつけようと刀を振りあげる天人。それを見て和美が死を覚悟したその時

一発の銃声が部屋に鳴り響く。

「あ・・・・・・が・・・・・・・」
「・・・・・・え?」

突然短い声を上げてバタっと後ろに倒れる天人。眉間には銃弾を撃ち込まれた跡が

「ふう、危なかったなおまん等」
「さ、坂本さんッ! もしかして坂本さんがやったのッ!?」
「アハハハハッ! 飲み仲間を殺されたらたまらんからのッ!」

右手に持った銃を掲げ坂本が得意げに和美達に笑う。そして撃ち殺した天人に近づいていき、彼が持っていた刀をヒョイと拾う。

「ピストルは弾に限りがあるけ、久しぶりにコイツを使って見るか」
「坂本さんも銀さんや桂さんみたいに刀使えるの・・・・・・?」
「昔の話じゃがな、アハハッ!」
「へ~・・・・・・」

死んだ天人の刀を肩に掛けて笑い飛ばす坂本に和美達が不安を感じていると、4人の元に慌てた様子でネカネが近づいてくる。

「みんな落ち着いて、まとまって行動していれば生き残れるわ」
「生き残れるッ!? この辺に警察本部でもあるっていうのッ!? ここら辺全部アイツ等みたいな化け物に包囲されてるのにここにいて生き残れるわけないでしょッ!」
「落ち着きなさいハルナ」 

冷静さが吹っ飛びネカネに向かって怒鳴り散らすハルナに、彼女とは反対に冷静を保っている夕映が口を開く。

「何事も落ち着いて対処するです、私はこれをいつも心がけて生きています、あなたもやってみてください」
「はぁッ!? 落ち着けるわけないでしょうがこの状況下でッ! さっき殺されそうになって・・・・・・」
「ぎやぁぁぁぁ!!!」
「うわぁッ!」

自分と違って仏頂面で話しかけて来る夕映に軽く腹が立ったのかハルナがイライラしながら話していると、隣で天人の叫び声と鮮血が飛び散る。それにハルナは驚いて咄嗟に夕映に抱きつく。
見ると化け物が一刀両断され、桂が血が滴り落ちている刀を持って平然としている。恐らく彼がやったのだろう。
まっ二つ斬られた天人が持っていた刀を拾い上げ、桂は後ろにいる詠春にほおり投げる。

「御助力願う」
「・・・・・・ハァ~」

ため息を突いた後、詠春は目の前に落ちている刀を拾う、その瞬間

刀を拾った同時に詠春は桂の前を走り抜ける。そして目の前にいる蛙顔の武装している天人三人に刀を構え・・・・・

一瞬で三人の間を通り抜けた。


「・・・・・・神鳴流・五月雨斬り・・・・・・」
「ぐうッ!」
「げはぁッ!」
「なんだと・・・・・・!」


静かに詠春がそう呟くと同時に三人の天人は体中から大量の血飛沫を出して倒れる。
三人の敵を瞬殺、伊達にナギやアルと共に修羅場をくぐり抜けてるわけではないのだ。

「ふむ、まだまだやれますね私は」
「あ、あの人メチャクチャ強いじゃん・・・・・・ただの親バカじゃないんだ・・・・・・」
「アスナがいたら完璧惚れてたね・・・・・・」

余裕気に刀についた血を払い落している詠春に、ハルナと和美が感想を漏らしてると、詠春は集まっている女中達に指示を出す。

「ここを拠点にして屋敷に巣くう天人を桂さん達と共に殲滅します、あなた達はこの子達を守って下さい」
「わかりました・・・・・・」

ざわざわとしながらも一人の女中が素直に頷く。だが彼女の隣にいる女中が恐る恐る手を上げる。

「長、二つ程報告してよろしいですか・・・・・・?」
「なんだい?」
「木乃香お嬢様がトイレ行ったきり戻って来てないんですが・・・・・・あとネギ様のお姿も見えません・・・・・」
「・・・・・・」

女中の報告に詠春は気難しい表情で黙りこむ。ネギも心配だがやはり連中の狙いは木乃香だ、もしやもう既に連中に・・・・・・

嫌な予感を頭によぎらせていると、不意に誰かがこちらに向かって来る足音が聞こえる。
詠春は顔を上げて拍子的に刀を握るが、入口からやって来たのは天人では無かった。

「長ッ! 敵襲・・・・・・・ぬおわッ!」
「どうしたの刹那さん? うおい何よこの化け物ッ! 死んでるのッ!?」

入って来た早々、目の前に広がる天人達の死体を見て、駆けつけて来た刹那とアスナはすっときょんな声を上げた。












































宮崎のどかはみんなで騒いでいた宴会の時の記憶が曖昧だった。
気が付いたら布団の中にいて、何かの物事で起きたのだ。
それと同時に、何故か自分の布団の横で座っていた土方に手を握られて、彼と一緒に急いで部屋から出る。
そして今、彼女は目の前で起こっている事が現実なのか夢なのか混乱していた。

「人間だ~ッ!」
「殺せ~ッ! 殺・・・・・・ぐえぇッ!」

土方に固く手を握られ、のどかは息を荒げながら彼の後をついて行く。
行く先に突然現れる化け物達。化け物が土方に斬り殺される姿に恐怖を覚えながら

「チッ! 高杉の野郎はこんな奴等も使ってたのか・・・・・・大丈夫か?」
「だ、大丈夫です・・・・・・」
「無理すんな、こんなに血を見る経験なんてした事ねえだろ?」
「はい・・・・・・」

土方の目の前にあるのは二つの天人の遺体。ついさっきまでこちらを殺そうといきり立っていたが、あっという間に土方が肉塊に変えてしまった。
血が滴り落ちる刀を右手に持ちながら、左手には絶対に離さない様にのどかの手を強く握る。

「とにかく仲間と合流しねえとマズイ、いつまで俺の体力が持つかわかんねえからな・・・・・・」
「ハルナや夕映、木乃香や他の皆さんも心配です・・・・・・あッ! 十四郎さんッ!」
「ん?」
「ヒャッハーッ! 汚物は消毒だァ!」

会話中に突然のどかが慌てて土方の後ろを指さす、彼が降り返るとそこにいたのはモヒカン頭の天人が襲いかかって来る。土方は軽く舌打ちした後、刀を光らせるがその時。

「あべしッ!」

突然背中から赤いトサカが付いたと思わせるぐらいの盛大な血飛沫を出した後、天人は後ろにのけ反って倒れる。すると土方とのどかの前にまた別の人物の姿が

「汚物はテメェだろうが」
「総悟ッ!」
「沖田さんッ!」
「あれ? お邪魔でしたかぃ?」

殺した敵に最期の言葉を投げかけているのは、仲間の一人である沖田だった。
こちらに向かって叫んでくる土方とのどかに、さっき使った刀を肩に掛けながら茶化した口ぶりで話しかけて来る。

「こんな夜中にお二人さん、デートかなんかですかぃ?」
「変な冗談は止めろ、ていうかお前何処行ってたんだ」
「ああ、ちょいと色々と・・・・・・」
「は?」

後頭部をポリポリと掻き毟りながら適当にごまかす沖田。そんな彼に不審そうに土方が見つめていると、沖田は急に別の話題を切り出す。

「俺の事よりまず春雨のザコ共の退治でしょ、ここに来るまで何人も殺してるのに全然数が減りやしねえ、完全に奴等に制圧されてますぜここは」
「そんな・・・・・・・一体どうしたら・・・・・・!」

沖田の報告にのどかが泣きそうな声を出すと土方がポンと彼女の頭に手を置く。

「心配すんな、俺がついている」
「十四郎さん・・・・・・」

不安にさせまいと声をかけてくれた土方にのどかがホッと安心していると・・・・・・

ピロリロリンといつの間にか沖田が持っていた携帯の機械音が鳴った。

「おい、何したんだお前・・・・・・」
「いや別に何もおかしなことはしてませんぜ、土方さんの口からすげえカッケーセリフが出たんで録音しただけです」
「すぐに消せ・・・・・・」

声を震わせながら土方がそう言うと、沖田は携帯のボタンをピッと押して

『心配すんな、俺がついている』
「消せェェェェェ!!!」
「と、十四郎さんッ! そんな声大きくしちゃうと気付かれます~ッ!」

携帯から出て来る自分の声に土方が額に青筋を立てて沖田に向かって思いっきり叫ぶので、のどかがあたふたしながら彼に大声を出さぬよう注意する。

「この辺にまださっきの恐いのがまだいるかもしれないんですから・・・・・・」
「チィッ! 総悟、それ絶対後で消せよ」
『心配すんな、俺がついている』
「春雨全員斬り殺したら次はお前だ・・・・・!」

返事する代わりにニヤニヤしながら沖田が携帯の録音ボイスを聞かせて来るので、土方は怒りに震えながら、右手の刀に力を込めるが、沖田は恐がりもせずに携帯をしまう。

「へいへい、いつでも相手務めまさぁ、それよりまだ取り残された奴がいるか探しながら、大広間へ向かいましょうぜ、ガキ共はあそこにたむろってる筈ですし」
「ったく・・・・・・」

とりあえず土方は沖田とのどかを連れて敵に見つからぬように、まだ部屋に取り残されてる人がいるのではないかと探しながら大広間へ向かう事にした。


















































大広間へ向かいながら途中に見つけた部屋を開けてい土方達、だがどの部屋を開けても人っ子一人いない。もう全員何処かへと避難したのだろうか・・・・・・

「こんなに部屋があると探すのも一苦労だな」
「みんな大広間にいるんでしょうか・・・・・・」
「そうだといいが・・・・・・」
「土方さん、取り残された住人見つけやした」
「何ッ!」

心配そうにしているのどかに土方が苦い表情を浮かべ答えていると、前の部屋の襖を開けていた沖田が顔だけ部屋の中に突っ込みながら彼に報告する。
それを聞いた土方は急いで沖田の所へ向かって、その部屋の襖を勢いよく両手で開けた。

「カー・・・・・・・」
「スー・・・・・・・」
「ん・・・・・・銀八・・・・・・」

部屋の中にいたのは一つの布団に入って仲良く川の字で寝ているあやかと千雨。そして銀時であった。
土方はそれを見て愕然とした表情をする。

「・・・・・・この状況下でこいつら何してんだ・・・・・・」
「土方さんも見習ったどうですかぃ?」
「何処を見習えばいいんだよ、女二人両手にはべらしてる野郎に何を見習えばいいんだよ」
「先生達ってこんなに進んでたんだ・・・・・・」

沖田に向かって土方は即座にツッコむ中、のどかも部屋の中を見て驚いている様な羨ましい様な声を漏らす。添い寝など恐らく土方はやってくれないからだ。
しかもこんなにゴタゴタ騒ぎが起こっているのにも関わらず、この三人は未だ仲良く爆睡しているのだ。
すると沖田は部屋に入って銀時達の頭上に立ち、再び携帯を取り出す。

「しょうがねえな、ここは土方さんのイカしたハスキーボイスで旦那方を現実に引き戻してやりましょう」
『心配すんな、俺がついてる』
『心配すんな、俺がついてる』
『心配すんな、俺がついてる』
「人のセリフを目覚まし代わりに使うんじゃねえッ!」

取りだした携帯からさっき録音した土方の肉声ボイスを銀時達の耳元で連呼させまくる沖田に、土方がブチギレていると、眠っていた銀時が嫌そうにモソモソと動いた。

「うっせえな・・・・・・なんだよ耳元でウゼエ声響かせやがって・・・・・・」
「あ、旦那起きやしたか? すんませんお楽しみ中に起こしちゃって」
「・・・・・・ん? あれ? 何でお前ここにいんの?」

布団から呆けた顔でようやく起きた銀時、上体を起こし自分の肩を揉みながら、いつの間にか部屋の中に入っている二人の男と一人の少女に首を傾げると、ふと自分の両隣りで寝ているあやかと千雨を見下ろした。
その瞬間、銀時の顔からとてつもない量の汗が流れ出す。

「あ、コレはその・・・・・・」

どう答えていいのか目を泳がせながら動揺している銀時に向かって土方達はポツリと

「まあなんだ・・・・・・覗くつもりはなかったんだ、悪いな・・・・・・」
「す、すみません・・・・・・!」
「さすが旦那、俺達に出来ない事を平然とやってのけるとは」
「いやあのな・・・・・・」

各々の感想を呟く目の前の三人に銀時が額の汗をぬぐいながら困惑していると、両隣りにいるあやかと千雨も何事かと瞼を開けてムクリと起き上がった。

「なんですか騒がしい・・・・・・アレ? なんで私布団の中で眠って・・・・・・って銀さんッ!」
「う~ん・・・・・・銀八、もう朝か?」

起きた瞬間、何故ここにいるのかと疑問を感じたと同時に隣に銀時がいることにビックリするあやかとは対照的に、まだ寝ぼけているのか頭を掻き毟りながらボーっとした表情で銀時に尋ねる千雨。そんな彼女の達に銀時は頬を引きつらせた。

「ハハハ・・・・・・おはようさん・・・・・・」
「なんで私が銀さんと千雨さんと一緒に寝てるんですかッ!? ってッ! なんですかあなた達はッ!」
「ん?・・・・・・うわッ! 銀八なんなんだよコイツ等勝手に私達の部屋に入って来てッ!」 

目の前にいる三人を見てあやかと千雨は寝起き早々驚いた表情で同時に銀時に抱きつく。
彼女達の反応に銀時もどうしていいのかマジで困惑している。

「ハハハ知らない・・・・・お目覚めドッキリのスタッフかなんかじゃね?」
「旦那、残念ながら違いまさぁ、寝ていたからわかんないようですが、今とてつもなくヤバい状況になってるんですよ」
「ああなってるね、今、とてつもないヤバい状況になってるね俺・・・・・・」
「いや旦那のほうじゃなくて」

壊れた様に笑っている銀時にすぐツッコミを入れた後、沖田は銀時達、三人の前にしゃがみ込んで話を続ける。

「春雨のヤロー共がこの屋敷に攻めてきやした」
「は? 春雨・・・・・・?」
「高杉の野郎が春雨の兵隊を使って俺達を皆殺しにしようとしてるんだと思いまさぁ」
「チッ、あのヤロー・・・・・・」

話を聞いた銀時は苦々しい表情で舌打ちすると、沖田は澄ました目をして今の彼の状況を眺めながら口を開く。

「だから旦那、ガキ共とイチャイチャするのは後回しにして俺達に手を貸してくれませんかね?」
「だ、誰もイチャイチャなんてしてねえよッ!」
「ガキ二人と抱き合ってる人が言える言葉ですかぃそれ?」
「・・・・・・」

唾を吐き散らかしながら否定する銀時だが沖田にバッサリと斬られ、何も言えずに押し黙る。
さすがに今回ばかりは舌の動きが早い銀時でもこの状況を打破する言葉が見つからない。

「あの・・・・・・“コレ”みんなに黙ってもらえる・・・・・・? バレたらその・・・・・・教師としてマズイかもしれねえからさ・・・・・・・」

他の連中に言わないようにお願いを申し出てきた銀時だが、目の前にいる沖田は無表情で彼を見つめるだけ、そして

「じゃ、支度したら早く行きましょうぜ旦那」
「オイィィィィ!! テメェ絶対バラす気だろッ!」
「ハハハ、ほら早くしねえと春雨の連中がここにウヨウヨやってきますぜ、あ~江戸にいる奴等にいい土産話が出来たぜ」
「・・・・・・チクショウ、コイツにだけはこんな所を見られたくなかった・・・・・・」

笑ってごまかして部屋から出て行く沖田に、意気消沈した銀時はグッタリした表情で立ちあがって布団の横に置いてあった洞爺湖と夕凪を拾う。あやかも急いで髪を結び、千雨も髪を結んでいつもの伊達メガネを付ける。

「銀八、春雨の連中ってどんな奴等なんだ?」
「ほぼ天人で構成されている人殺しもやる化け物集団だよ、もう俺から離れんじゃねえぞ、アイツ等に殺されるからな」
「私千雨さんと一緒にお酒飲んだ所から記憶が無いんですが・・・・・・その間に大変な事が起こってたんですわね・・・・・・」

神妙な面持ちで呟くあやかに千雨と会話していた銀時はジト目で彼女に視線を移す。

「記憶ねえのかよ・・・・・・俺にあんな事までして置いて・・・・・・」
「あんな事ってなんですか?」
「ここでお前に気絶されたら困るから言わねえよ」
「へ? どういう意味ですか千雨さん?」

核心には触れずに銀時は準備が出来た千雨と一緒に部屋を出て行く。残されたあやかは困惑したように頭を悩ました後、すぐに彼の後を追った。

部屋を出るとそこに待っていたのはポケットに手を突っ込んでタバコを吸っている土方と、その土方の服にしがみ付きながら、怯えたように周りをキョロキョロと見渡しているのどか、そして呑気に欠伸をしている沖田の姿が合った。

「旦那、こっからはマジで死ぬ危険もありますから気を付けて下さいよ」
「へいへい、お前等も俺から離れんなよ」
「わかってますわ」
「・・・・・・お前も死ぬんじゃねえぞ・・・・・・」
「誰が死ぬかこんな所で、俺はな、死ぬならしずな先生の太ももの上でと決めて・・・・・・あ、すんません」

誇らしげに語ろうとすると、二人の少女がすぐにムッとした表情をしたのでさすがに学習したのか銀時はすぐに謝る。
さすがにここで彼女達に殺されてはたまったもんじゃない

「冗談だってのがわかんねえのかねぇ・・・・・・ん?」

後頭部をボリボリと掻きながら銀時はため息を突いていると、ふと自分を刺す様な視線に気付いて庭の方へ振り向く。
庭の向こう側にある雑木林の中からこっちに向かって放たれる鋭い殺気、銀時は後頭部を掻きながら、ジッと眺める。

「・・・・・・」
「どうした万事屋」
「悪い、お前等先行っててくれ」
「何?」

尋ねて来た土方に銀時は雑木林に目を向けながら口を開く。

「どうやら御指名が入ったようでね」
「・・・・・・どういう意味だ?」
「安い焼酎しか飲まねえような客はお前等に任せる、俺は“超VIPのお客様”とドンぺリ祭りだ」

銀時がそう言うと雑木林からザッザッと地面に転がっている枝や草を踏みしめて、こちらに歩いてくる影が、あやかと千雨、土方達も気付く。

「早く行け、俺は俺のやる事があんだ、テメェ等にはテメェ等のやる事があんだろ?」
「・・・・・・フン」

こちらに振り返ってニヤッと笑いかけて来た銀時に、土方はタバコを携帯灰皿に入れた後鼻を鳴らす。

「何か込み入った事情があるようだが・・・・・・仕方ねえ、ここは大人しく消えてやる、行くぞお前等」
「わ、私と千雨さんは・・・・・・」

銀時に背中を向けて去ろうとする土方に千雨の隣にいるあやかが何か言おうとすると、彼は彼女達の方へ向いて口を開く

「万事屋の事は頼んだぞ」
「・・・・・・」

あやかと千雨にぶっきらぼうにそう言った後、土方は首を戻して歩き出す。

「行くぞ、のどか、総悟」
「先生、いいんちょ、長谷川さん・・・・・・どうかご無事で・・・・・・」
「じゃ、ご健闘を祈りますぜ旦那、アンタに死なれたらちと退屈になりまさぁ、生きて会いましょうぜ」

銀時達に向かって一礼するのどかと、手をブラブラと振って気楽に別れの言葉を言う沖田も土方と一緒に大広間へと行ってしまった。

残された銀時は後ろにいるあやかと千雨と一緒に雑木林からやってくる影を待つ。

「銀八・・・・・・・・・・・・」
「あの人ですわね・・・・・・」
「モテる男はツライぜコノヤロー」

心配している千雨と生唾を飲み込むあやかに銀時がだるそうに呟いていると、遂に雑木林からある人物が出て来た。

フードで顔が見えないように隠しているが、その美しいプロポーションと手にもつ金色の剣は“彼女”だという確固たる証拠であった。

「さあて、“コブつき未亡人”のお客様をもてなしてやるか、俺の指名は高くつくぜ?」
「・・・・・・」

フードの下か見える氷の様に冷たそうな眼。
春雨の幹部でありナギの妻、ネギの母親。
アリカ・スプリングフィールドの三度目の登場の瞬間だった。

























































数分前、ネギはカモを連れて単独で屋敷内を歩き回り、階段を上って京都の街が一望できる高い場所に夜風に当たりながら一息ついていた。
しかし・・・・・・。

「なんだガキか~ッ!? まあいいや殺すぜぇッ!」 
「く・・・・・・!」
「兄貴ィッ! なんすかこの妖怪ッ!」

突然やってきたのは異形の姿をするカマキリの様な天人。パニくっているカモを肩に乗せているネギに向かって叫び、両手に持つ鎌を振り回しながらネギに襲いかかる。

「シュゥゥゥゥ!!!」
「あの姿・・・・・・・もしかして春雨の・・・・・・カモ君下がってッ!」
「言われなくてもそうするッスよ俺はッ!」

走って来るカマキリ男にネギは奥場を噛みしめた後、カモをすぐに後ろに逃がした。
そして自分は“あの男”から教わった禁術の片鱗を使う。

「・・・・・・30%解放」
「ヒャ~ハハハハハッ! 俺達春雨は無敵だぁッ!」

ネギの周りに微量な衝撃波が発生し、彼の着ていたローブがバサバサとなびく。
カマキリ男は一切気にせずに雄叫びを上げながらネギに突っ込んだ。
彼の目つきがさっきと変わった事も気付かずに

「やっぱり春雨・・・・・・」
「シェェェェェ!!・・・・・・ヒョ?」

カマキリ男の前からネギが突然姿を消した。何処へ行ったかとウロウロ辺りを窺っていると。

「こっちだッ!」
「い、何時の間に俺の上にッ!」

突如自分の頭上に振って来たネギにカマキリ男は焦った声を上げる。
彼の頭を両足で挟みながらネギは思いっきり

「ふんッ!」
「コケ・・・・・・」
「兄貴ッ!」

ネギが両足を捻った瞬間、カマキリ男から何かが折れる音が後ろから眺めているカモの耳に響く。
男は短い鳴き声を漏らした後、口から泡を吹いてバタっと倒れた。
同時にネギも、動かなくなった彼から下りる。

「・・・・・・」
「あ、兄貴・・・・・・もしかして殺しちまったんですかぃ・・・・・・?」

恐る恐る倒れた天人に近づきながら、尋ねてきたカモにネギはまだ目つきが鋭くなっている状態のままボソッと呟く。

「いや気絶させただけ・・・・・・」

自分もアーニャの様に春雨に怨みを持っているのは確かだ。
しかし彼女の様に非情にはなり切れない。
その事にネギは歯がゆそうに下唇を噛んだ。

「いくらコイツ等に恨みを持っててもやっぱり殺す事なんて僕には・・・・・・」
「・・・・・・何甘えた事言ってんのかな?」
「!!」
「だ、誰だテメェはッ!」

突然聞こえた声にネギはハッと顔を上げる。

「俺の弟子なら、そんな甘っちょろい考えは持たないと思うんだけど?」
「あ・・・・・・」

何時の間にか目の前に立って微笑みかけて来る男
紛れもないネギの知る彼の姿だった。

触角の様にピンと一本だけ出ている髪の毛を揺らし、楽しそうにこちらに笑いかける男の正体は・・・・・・

「神威さん・・・・・・」
「久しぶりだネ」
「神威ッ!? つうことはこいつが兄貴の師匠ッ!」

首を傾げていつもの様に親しげに話しかけて来る男の名は神威。
ネギの師であり、アーニャが言うには春雨の幹部の一人だ・・・・・・。
ネギが呆然と立ち尽くす中、カモが驚いていると、神威はふと彼の方へ顔を向ける。

「あ、悪いけど外野はしばらく黙っててくれないかな?」
「え?」
「俺はこの子と大事な話があるんだ、邪魔したら殺すよ」
「は、はいッ!!」

笑いながらサラッと恐ろしい事を言う神威にカモはきょうつけのポーズを取って勢い良く返事する。
彼が言うとなおさら冗談には聞こえなかったのだ。

「さて、話の続きを始めようか」
「だ、団長・・・・・・」
「はッ!」

そうこうしている内に倒れていたカマキリ男が息を吹き返した事にネギが声を上げる。
だがこちらに向かって這いずりながら近づいてくる男を、ただ神威は笑って顔を向けるだけ。
這いずりながらようやく男は神威の足もとに近寄る。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
「・・・・・・」
「助けてくだ・・・・・・」

男が言い終える前に前に神威は無言で足を彼の頭に振り下ろす。
卵の様にグシャリと音を立てて簡単に割れた。

「うるさいから黙ってて」
「そんな・・・・・・その人は神威さんの仲間じゃ・・・・・・」
「ヒデぇ・・・・・・」
「ハハ、会話の邪魔されるとイラっとするんだよネ」

頭をこっぱみじんにされピクピクと体だけ痙攣している屍を見て、ネギとカモは戦慄する。しかし仲間を殺した事になんの罪悪感も無い表情で神威はネギに話を続ける。

「じゃあ邪魔者も殺した事だし本題に入ろうか」
「・・・・・・」
「いきなりこんな事言うのもなんだけど」
神威は笑いながらゆっくりと瞼を開ける。

「ここやあの小娘の所じゃなくて、俺の所に来ない・・・・・・?」
「!!」

無言で視線を合わすだけがやっとだったネギは神威の思わぬ発言に驚く。
再会した師の目的は自分が怨みを持つ組織に勧誘する事だった。






[7093] 第六十訓   死
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/03/31 12:59
かつての師、神威との再会を果たしたネギで会ったが、その出会いは緊迫したムードを漂わせていた。
神威は銀時や裏切りアーニャの所でもなく自分の所へ誘う為にネギの近くにやってきたのだ。

「僕が神威さんの所へ・・・・・・?」
「俺はね、弱い奴には興味が無い」

相変わらず不気味な笑みを浮かべながら、神威は驚愕しているネギの方へ近づいて行く。

「でも強くなりそうな子には興味がある」
「・・・・・・」
「こんな所で才能を腐らせなくてもいいんじゃない? 俺ん所にいればもっと強くなれるよ? 君には素質がある、お侍さんや父親を超える素質が」
「神威さん・・・・・・」
「ん?」

小さな声を漏らすネギに神威は無邪気に首を傾げる。するとネギは顔を上げて

「いくら神威さんの誘いでもお断りします」
「あれれ、どうしてかな?」
「・・・・・・」

クスッと笑いかける神威に少しビクッと反応しながらもネギは彼に向かって勇気を振り絞る。

「僕が欲しいのは誰かを殺す力じゃない」
「・・・・・・」
「僕が欲しいのは生徒のみんなや他の人達を“護れる力”、色んな人の為に力を使いたいんです。神威さんについて行ったら、生徒のみなさんや銀さん達にも会えなくなりますし・・・・・・それじゃ意味が無いんです」
「ふ~ん、なるほどね」
「だから僕は・・・・・・神威さんと一緒に行く事は出来ません」
「よく言った兄貴・・・・・・!」

自分より強大な力を持つ神威に対して啖呵を切るネギに対してカモが遠くからガッツポーズを取っているが、神威は両手を後頭部に回し、ネギに向かって優雅に微笑んでいる。

「思ったより自分の考えが持ててるんだネ、やっぱり君の事は嫌いじゃない」
「え?」
「さて・・・・・・」

何を言っているのかさっぱりわかっていないネギに対して、神威は両手で拳をポキポキと鳴らし始める。
その動きだけでネギは彼が何をしようとしているのか想像ついた。

「久しぶりにやろうか? 今までとは違い俺は本気で君を殺すつもりだよ、だって・・・・・・」

神威は拳を構えてネギと対峙する。その場に足踏みしながらもう完全に戦う事しか考えていない。

「誘いを断った以上、俺達はもう敵同士だろ? それ以上もそれ以下も無い」
「神威さん・・・・・・でも僕はまだ神威さんの事・・・・・・・」
「早く構えなよ、一瞬で決着が着いたらつまらない」
「・・・・・・」

子供の様に催促して来る神威に何か言いたげな表情をするも、魔法使いの主武器である杖を背中に差したまま
ネギは構える。神威に教えてもらった技、それが教えてくれた本人に通用するかどうかはわからないが、“あの術”ではないと彼とまともに戦える事なんて出来ない。

「30%解放・・・・・・」
「そう、俺は君と楽しみたいんだ、師も弟子も関係なくお互いが全力を出して潰し合いをする・・・・・・」

目の前にいるネギが禁術を発動した時に神威は本気で来ると知って嬉しそうにする。
そして瞼を開けネギに対して妖艶な笑みを浮かべた。

「本当の殺し合いって奴をさ・・・・・・」
「!!」

放たれる巨大な殺気にネギは肌で感じて戦慄した瞬間、神威は彼に向かって距離を詰め。

「ぐうッ!」
「兄貴ッ!」

一発の拳がネギの腹に思いっきり入る。たった一発の拳、しかしそれが夜兎族の拳となるとトラックでも突っ込んできた様な威力と匹敵するほど大きなものである。
ネギは衝撃で体を宙に浮かせて後ろに吹っ飛ぶ。
カモが後ろから悲鳴の様に叫ぶが、すぐにネギは体を回転させて下に着地。そして今度は自分から神威の方に襲いかかる。
鋭い目つきで走って来るネギに神威は頬笑みながら口を開く。

「そう、俺が何者でも君にはもう関係ない」
「こうなったら・・・・・・40%解放ッ!」

突っ込んできたネギと同時に神威も拳を振る。

周りに大きな音を立ててお互いの拳は相手の顔面に入った。
神威はネギの右目に入れ、ネギは神威の頬に入れる。

「人を殺す事に理由なんて必要ない・・・・・・」

相討ちの状態から神威は一歩引いて、即座に握り拳を解いて手刀に変え、それを見たネギもすぐに構えを変えた。

「まだまだ死なないでよ?」
「・・・・・・まだ死ねませんよ・・・・・・50%・・・・・・!」

互いに相手に言葉を呟いた後、神威とネギは一気に距離を縮めて手刀による『刀の無い斬り合い』が始まる。
両者の手刀は今はナイフの様に鋭く、それを弾きながら突き刺そうとし、突き刺そうとしながら弾く。
本気の殺し合い、そしてあまりにも早すぎる二人の動きに、傍観しているカモは

「ヤベェ、マジでヤベェ・・・・・・」

一歩も引かずにただ無心に避ける、突き刺す、殴る、蹴るを繰り出していく神威とネギに、ただ呆然と決着を見守る事しか出来なかった。




















































第六十訓 死

ネギと神威が屋敷の一番高い所で戦っている頃、大広間にて詠春や生徒達と合流を果たした土方一派。
彼等もまた、夜襲を仕掛けて来た春雨の軍勢と斬り合いに勤しんでいた。

「チィッ!」
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
「斬っても斬ってもキリがねえ・・・・・・ちっとは休ませろ・・・・・・」
「ぐげぇぇぇぇぇ!!」
「私も年なので少々疲れて来ましたよ・・・・・・」

大広間に乱入してくる大群の天人達を斬り伏せて行きながら土方と詠春が背中を合わせてダルそうに会話する。どうやら敵はここを集中に攻めて来ているらしく、魔術を扱える女中達の手を借りても数が違いすぎるのだ。

「娘が心配です、一体何処へ行ったのやら・・・・・・」
「連中はあの娘っ子が目的だ、殺しはしねえと思うがこの状況じゃあ捕まった可能性は高い」
「やはりそうですか・・・・・・」

苦々しい表情で詠春がうつむいたその時

「では俺が木乃香殿を助けに行ってこよう」
「「ぐあぁッ!!」」
「え?」

二人の会話に割って入って来たのは、ついさっき一太刀で二人の敵を瞬殺した桂、全く疲れている表情もせず詠春に提案する。

「鬼はこの辺に封印されているのであろう、恐らく木乃香殿はそこにいる」
「ええ、この屋敷の裏にある山の奥に確かに鬼神リョウメンスクナノカミを封印している大岩が・・・・・・」
「裏山か、封印を解かれる前に木乃香殿を救わねば・・・・・・」
「一人で大丈夫ですか? 向こうだって素直に返そうとはしない筈ですよ」
「案ずるな、俺には仲間がいる」

春雨の軍勢を相手にしながら桂がチラッと後ろに振り返る。彼が見る先には小さな体を駆使しながら戦っている小太郎、両手にボードを持って大暴れしているエリザベスと、5人の天人を相手にしてたった一つの呪文を放ち一瞬で消滅させるアルの姿が。

「ヅラッ! どっか行くんなら俺も連れてけッ!」
『抜け駆けしてんじゃねえぞクソガキッ!』
「ザコ相手はもう疲れました、あなたと一緒に行く方が楽そうでいいです」

意気揚々と同行に参加する姿勢を見せる三人に桂はフッと笑って詠春の方に振り向く。

「ひとクセある奴等だが俺にとっては頼もしい侍だ」
「なるほど、これなら問題無いですね」
「アハハッ! ヅラッ! ならわしも行くぞッ!」
「坂本・・・・・・?」

詠春と桂の所に笑いながら天人から奪った刀を持って坂本が近づく。
後ろには天人の軍勢を掻い潜って必死に彼について来たネカネの姿が

「こんなバカ騒ぎをやらかした張本人の高杉の奴に久しぶりに会いたいんじゃ・・・・・・あいつは昔からお調子者じゃから一言いわんとわからんきん・・・・・・」
「・・・・・・ふん、お調子者で済むかこんな事が・・・・・・まあいい、来るなら来るがいい、弾避けにはなる」

急に真顔になって話しかけて来る坂本に桂は無愛想についてくるのを許可する。
すると坂本は何時も通りに戻って二カッと嬉しそうに歯を見せて笑った。

「ほんにお前は話が分かる奴じゃの、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」

周りが大騒ぎしている中、自分の肩に肘を乗せて馴れ馴れしい態度をしてくる坂本に桂がぶっきらぼうに返していると、それを見ていたネカネも彼に口を開く。

「私も一緒に行かせてください、この人が何かしでかすかもしれませんし危険で離れられません、それに私もちゃんとした魔法使いの一人です、治癒呪文を覚えているのであなた達の力になれます」
「なるべく悟れぬよう少人数で行きたかったんだが仕方ない・・・・・・坂本、お前が守ってやれ」
「おうッ! わしに任せろッ!」
「ありがとうございます」

ため息交じりに桂がネカネの同行も認知すると、坂本が胸を張って自信満々に叫ぶ隣で、ネカネが桂に一礼する。
これで6人、木乃香救出チームのメンバーは決まった。
しかし彼女の事を心配で気に病んでいる人物が詠春以外にもう1人いた。
現在、土方と一緒に春雨の兵達を相手にしている木乃香の親友である桜咲刹那だ。

「・・・・・・」
「お前も桂達と一緒に行ってこい、あのガキのダチなんだろ?」
「え? でもそれでは土方さんが・・・・・・」

黙ったまま桂達の方へ目を向けている刹那達に気付いたのか、土方はタバコを口に咥えながら話しかける。
それに刹那は口をモゴモゴさせて何か言いたげな表情をするが、土方はそんな彼女を見下ろして。

「問題ねえよテメェが抜けても、さっきから一人も斬ってねえだろお前」
「はい・・・・・・やはり天人といえど私は・・・・・・」

こんなに大勢の敵がいる中、刹那が刀を振っているのはわかるが全て峰打ちだと言う事に土方は気付いていた。
しかしそれが普通だ、例え天人でも殺す事なんて中学生の女の子には荷が重い。

「殺せねえならこんな所にいても邪魔なだけだ、さっさと桂の所へ行っちまえ」
「土方さん・・・・・・でも私・・・・・・」
「命令だ、早く行け」
「・・・・・・は、はい」

冷たい土方の言葉に刹那はしゅんとしたまま、桂達の方へ向かった。残された土方は彼女の方へ振り向かずにフンと鼻を鳴らした後、目の前にいる敵を片っ端から斬り伏せる。

「おぼぉッ!」
「ざばぁッ!」
「ぎぇおッ!」
「はがぁッ!」
「・・・・・・人斬りの俺は間違いなく地獄に行く」


4人の敵を走りながら肉塊に変えて行く土方は刀を振り抜いた状態でボソッと呟いた。

「・・・・・・地獄にまでついて来られたらいい迷惑だ」

タバコの煙を吐きながら土方は天井を見上げる。

















彼女には自分と同じ罪を背負わせたくない。












































のどか達は今、大広間の奥の詠春の自室にて隠れている。10畳ぐらいの広さで何処か薄暗い感じの部屋だ。
部屋の外から聞こえる叫び声や悲鳴、何かが斬られる音や爆発する音、それらを耳に入れながらいつ敵がこの部屋に入って来るのかと恐怖していた。

「大丈夫かな十四郎さん達・・・・・・」
「外はどんな地獄絵図なんだろ・・・・・・」
「気になるなら出て行ったらどうですかハルナ? 漫画の参考になるかもしれませんよ?」
「・・・・・・」

仏頂面で血生臭い戦場に行ってこいと催促してくる夕映をハルナはジト目で振り向く。
少なくともこの状況で友人に対して言う事じゃない。

「私が書く作品に北斗の拳みたいな世紀末なシーンは無いから行っても無駄、だったら朝倉が行けば? スクープ間違いないんだから撮ってくればいいじゃん」
「ハハハ・・・・・・呑気に写真撮ってたら土方さんに怒られそうだからいいや」

苦笑しながら和美は手を横に振って拒否すると、ハルナは今度、のどかの方へ顔を向ける。

「じゃあのどかは? 土方さんの戦いぶりを目に焼き付けてくればいいじゃん」
「え、えええッ! 絶対邪魔になるから無理だよッ!」

ハルナに向かってのどかが激しく首を横に振ると、それを見ていた夕映が軽蔑のまなざしでハルナの方へ口を開く。

「友人に対して死ぬかもしれない場所に行けと言うなんて・・・・・・あなたそれでも人間ですか? 最低です」
「オイコラァァァァ!! さっき私に似たような事言ってた奴は何処のどいつだッ!」

指差して夕映に向かって矛盾点をツッコむハルナ。だが夕映はそれを華麗にスルーする。
4人の生徒で緊張感のかけらも無さそうにゴタゴタしているが、ここには5人目の生徒も一緒にいた。
さっきここにやってきたアスナが部屋の端っこでボーっと体育座りしている。

「・・・・・・」
「ん? どうしたのアスナ、いつも騒ぎまくってるアンタが珍しい」
「いやちょっと・・・・・・ネギの奴が心配なのよ・・・・・・」
「ああ・・・・・・」

不安そうに話しかけて来た和美にアスナは覇気のない表情で呟く。
大広間にネギの姿は無かった、なら彼は今何処に・・・・・・
和美も彼女の気持ちを察したのか隣に座ってため息を突く。

「ま、生きてるんじゃない? あの子たくましいし」
「・・・・・・でも、何か嫌な予感がするのよ・・・・・・」
「嫌な予感?」

髪を掻き毟りながらアスナは高杉の言っていた言葉を思い出す、ネギが死ぬ事を暗示させる不吉な言葉だった・・・・・・

「やっぱり・・・・・・!」
「ちょ、ちょっとアスナッ!? 何処行く気ッ!?」

いてもたってもいられなくなったアスナは、立ち上がって部屋の襖に手をかける。
戦場である大広間へ向かおうしている事に気付いて和美は慌ててアスナの方へ駆け寄る。

「今行ったら自分が死ぬよッ!? ネギ先生の事は銀さんや土方さんに任せておけばいいじゃんッ!」
「間に合わないかもしれないのよ・・・・・・! それじゃ」
「あッ! アスナッ!」

切羽詰まった表情で和美に向かって口を開いた後、アスナはすぐに襖を開けて混乱ひしめく大広間へ突っ込む。
襲いかかって来る天人達を自慢の脚力で避けて行きながら、アスナは大広間から出て行ってネギを探しに行ってしまった。
その光景を顔だけ部屋から出して見ていた和美は

「おったまげた・・・・・・やっぱり肝っ玉が座ってるわあいつ・・・・・」
「そこに隠れてたか人間ッ!」
「げッ!」

アスナの後姿を眺めながら和美が感心するように頷いていると、彼女が首だけ出している事に気付いたのか天人の一人が大剣を持って走って来る。和美が突然の出来事に硬直している隙に、天人はどんどん近づいてくる。

「死ねェェェェ!!!」
「ひッ!」

泣きそうな顔で和美が短い悲鳴を上げて目をつぶった瞬間

「が、がぁぁぁぁぁぁ!!」

天人の背中から一本の日本刀が出て来る

「獲物一点に集中してると怪我するぜい、こういう風にな・・・・・・・」
「沖田さんッ!」

天人の後ろからいつもより声の低い喋り方をする沖田に気付いて和美が声を上げる。
腹から大量の出血を出し、口からもブクブクと赤い泡を吐いた後、天人はバタリと倒れ、二度と動かなくなる。
沖田は天人が死んだ事を確認すると周りに気を付けながら首だけ出している和美の方へ近づいた。

「なに隠れてる場所から首だけ出してんだオメー、その首すっ飛ばされたいのか? なんなら俺がすっ飛ばしてやろうか?」
「いや違うからッ! 一緒にいたアスナっていう女の子がここから出て行ってネギ先生の事探しに行っちゃったんだよッ!」
「はぁ? こんな状況で外出るなんざクレイジーにも程があるぜぃ」

話の経緯を和美から聞いて沖田は呆れながら舌打ちした後、後ろへ振り向く。
大広間にいる敵はまだゾロゾロと湧いて出て来る。ここを自分が留守にするわけにはいかない。

「悪いがそのガキ一人の為にここから離れるわけにはいかねえ、生きて帰って来る事を祈るんだな、あばよ」
「お、沖田さんッ!」

素っ気なく言葉を残した後、沖田は行ってしまった。残された和美は渋々首を部屋に戻す。

「まあこの状況なら仕方ないよね・・・・・・せめてもっと味方がいてくれたら・・・・・・」
「大丈夫ですよ、約束してるんです」
「え、約束?」

圧倒的兵力の差を覆す方法は無いのかと和美が頭を悩ましていると、夕映が問題なさそうに口を開く。

「助けを呼べばすぐに駆けつけるって、あの人が約束してくれたんです」
「あの人って?」

夕映が言っている事がよくわかっていない和美に対し、ハルナは凄く嫌そうな顔を浮かべる、

「夕映もしかして・・・・・・」
「ええ、もちろんあの人です」
「来るわけないじゃん・・・・・・」
「いえ、彼は必ず来ます」

確信しているかのように夕映が自信満々に頷く。

「近藤さんは必ずやってきます」
「・・・・・・誰?」

近藤を知らない和美は思わず目が点になった。


























































土方達と別れた銀時は今、アリカとの三度目の戦いを屋敷の裏庭で興じていた。
あやかと千雨が後ろで見守る中、銀時は木刀と野太刀を振り回し、アリカは一本の剣で対応する。
火花が飛び散る程の激しい刃のぶつかり合い、だが二人共そんな戦いを繰り広げながら何処か冷めた表情をしている。

「・・・・・・子供に会いに行かねえのか?」
「・・・・・・」
「こんな事やってねえでよ・・・・・・」
「・・・・・・黙れ」

喋らせぬように放ってくるアリカの殺気に銀時は怯まずに応戦する。
二本の刀を器用に動かし、なんとかアリカを止めようとする銀時だが、彼女の底知れぬ戦闘力の高さに悪戦苦闘していた。

そんな時だった。あやかと千雨の元に走り寄って来る一人の生徒が

「いいんちょッ!」
「アスナさんッ! あなたどうしたんですかこんな時にッ! 皆さんと一緒じゃなかったんですかッ!?」

いきなり廊下を走ってやってきたアスナにあやかが困惑の色を浮かべる。
アスナは彼女の前で息を荒げながら深呼吸した後、すぐに顔を上げた。

「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・ネギ見なかった・・・・・・?」
「ネギ先生?」
「見てねえぞ」 

彼女からネギの事を尋ねられてわけも分からない様子であやかと千雨は首を横に振る。
その反応にアスナは胸を押さえながら

「早くアイツに会わないと・・・・・・大変な事に・・・・・・え?」
「上から凄い音が聞こえますわ・・・・・・」
「何だよコレ・・・・・」

アスナが呟いた瞬間、上から何かを壊すような大きな音が聞こえて来る。
異変を察した三人は慌てて、庭に移動して上を見上げる。


「ネギッ!」
「ネギ先生が戦ってますわッ!」

見るとなんと屋敷のてっぺんの屋根の上でネギと神威が戦っているのだ。屋根の上を疾走しながら何度もぶつかり合っている。
だが明らかにネギが劣勢の状態、体中から血を流して息が荒い。
そんな状態のネギを見てあやかは思わず口を押さえる。

「ネギ先生・・・・・・・!」
「これがアイツの言ってた事だって言うの・・・・・・・」
「銀八ッ! 大変だッ! ネギ先生が・・・・・・!」

血相を変えて銀時に振り向いて千雨がネギの事を言おうとしたその直後。
上ではもはや瀕死ともいえる状況のネギに神威が追いうちの如く彼を横に蹴っ飛ばす。
屋根の上からネギがこちらの方へ降って来る。

「ネギッ!」

アスナが叫んだと同時にネギは屋敷のてっぺんから裏庭に大きな音を立てて激突。
落下地点は銀時とアリカがいる所の10M先だった。
戦いに集中していた二人も思わず何事かとそちらへ振り向く。
しかし周りに土ぼこりが立ち起こる中、ネギはまるで痛みを感じない様にむくりと立ち上がった。

「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・」
「ネギ・・・・・・アンタあそこかた落ちたのになんで生きてるの・・・・・・?」
「ネギ先生ッ!」
「90%まで解放したのにこの差・・・・・・そろそろ意識が・・・・・・」
「おい・・・・・様子がおかしいぞ・・・・・?」

ブツブツと何かを呟いているネギはアスナ達や銀時達の事にやっと気付いていたのか、キョロキョロと周りを見渡す。そしてふとアリカの方へ顔を向けた
突然降って来たネギの存在に当然アリカもたじろいだ。

(前に奈良でぶつかった女の人・・・・・・あの人敵だったんだ・・・・・・)
「ネ、ネギ・・・・・・!」
「なんでテメェが上から降って・・・・・・!」

わけもわからず混乱しているアリカと銀時の所に、屋根の上から神威が下りて来る。
彼の手には何故かグッタリしているカモが握られていた。

「俺が落としたんだよ」
「お前・・・・・・!」
「久しぶり、お侍さん」
「神威ッ!」

ネギの数メートル前に着地した神威は銀時とアリカに向かって笑いかける。
そして手に持っていたカモをポトッと地面に落とす。

「この子一人をあそこに残してたら可哀想だったからさ」
「こ、腰が・・・・・・」
「あれ? ちょっと強く握り過ぎちゃったかな?」

苦しそうな表情で腰をおさえながらカモは神威の前から一目散に逃げ出してアスナの方へ向かう。

「姐さん・・・・・・マジでヤベぇ・・・・・・ネギの兄貴あのままだとアイツに・・・・・・」
「ナマモノッ! 一体どういう事なのよコレッ!」
「あの男が神威です、前に聞いたでしょ・・・・・・兄貴の師匠の夜兎族の男です・・・・・・」
「あ、あいつが神威・・・・・・・!」

全身を震わせながらカモはアスナに教える。あの男が神威、ネギに戦いを教えた人物であり、夜兎族。
そして春雨の幹部でもある。

「神威ッ! 一体この子に何をしたのじゃッ!」
「別に、アンタには関係ないでしょ」
「!!」
「こんな時に母親の真似事なんて笑わせる、家族を捨てたアンタにそんな資格なんてない」
「く・・・・・・」

痛烈な神威の一言にアリカはすぐに黙ってうなだれる。
一方ネギはというと彼が言った言葉の意味が上手く掴めなかった。

「母親の真似事・・・・・・?」
「・・・・・・」
「何言ってるんですか神威さん・・・・・・」
「・・・・・・」
「答えて下さいッ!」

口から血を流しながらも必死に神威に向かって叫ぶネギだが、彼は黙って笑ったまま。
何も言わない神威に苛立つようにネギは重傷の状態で拳を構える。

だがその時

「ネギ・・・・・・・」
「え?」

“彼女”の声が突然耳に入って来た。
ネギは拳を構えたまま、彼女の方へ振り向く。

「もう止めろ・・・・・・止めるのじゃ・・・・・・」

両手を地面につけて泣きそうな声を上げているアリカにネギはキョトンとしたまま固まる。

「お主のそんな姿・・・・・・わらわはもう見たくない・・・・・・」
「・・・・・・あなたは一体何者・・・・・・」

消え入るような声を出しているアリカにネギはジッと彼女を見る。

「・・・・・・全てを捨てたと思っても、お主だけは捨てる事が出来ない・・・・・・」
「・・・・・・どうして僕の事を知って・・・・・・」

呟いているアリカにネギは近づこうとすると、後ろから神威がはニコッと笑って現れた。

この時を言う時が来たという風に





















「母親だからに決まってるだろ」





















「・・・・・・え・・・・・・・?」

神威の一言にネギは一瞬時が止まった様な感触を覚えた。
しかし彼が言った事がずっと頭の中ででリピートされている。
母親・・・・・・
あそこにいる女が・・・・・・
両手を地面について泣きそうな女が・・・・・・
自分の事を心配してくれているあの女が・・・・・・

「そ、そんな・・・・・・」
「アリカ・スプリングフィールド・・・・・・そんな名前だったっけ彼女」
「あの人が僕の・・・・・・!」

食い入るようにネギはアリカを凝視する。
自分を生んでくれた母親が今、目の前にいる。

「あなたが・・・・・・」
「・・・・・・」
「そうなんですよね・・・・・・・」
「・・・・・・」
「母さ・・・・・・!」

ネギは彼女に一歩一歩近づいて両手を差し伸べようとする、が





















突如肉を貫く生々しい不快音がその周りにいる者達の耳に入った。

「母親との感動のご対面・・・・・・」
「神威・・・・・・さん・・・・・・・!」
「俺からの・・・・・“最期”のプレゼント、気にいってくれたかな?」
「がはッ!」
「さようなら・・・・・・俺の小さなお弟子さん」

自分の息子に何が起こったのかアリカは気付いて呆然と立ち尽くす。
口から大量の血を吐きだしたネギの後ろにいるのは、いつもの様に微笑んでいる神威の姿、そして彼の右腕は・・・・・・






























ネギの心臓がある箇所をいとも簡単に貫いていた

「ネギィィィィィィ!!!!」

アリカは半狂乱になってネギの方に走り寄る。神威が彼から生々しい音を立てて自分の腕を引き抜いた瞬間、ネギはまるで抜け殻の様に地面に倒れた。アリカはすぐに彼を抱きかかえる。

「・・・・・・冗談だろオイ・・・・・・・」
「そうよ・・・・・・ウソ・・・・・・でしょ・・・・・・・?」

目の前に起こった現実に銀時とアスナはショックを隠せず放心状態になる。
カモも何が起こったのか事態を把握できていない程、頭を抱えてパニくり、あやかも口を両手で隠して、一緒に見ていた千雨と一緒に体を震わせる。

「頼むお願いじゃ・・・・・・・! この子を・・・・・・この子を・・・・・・!」

ネギを抱きかかえたアリカは必死に彼に向かって治癒呪文をかけようとするが。
真っ赤に染まった右手をペロリと舐めながら、神威がアリカに宣告する。

「無理だよ、もう死んでいる」
「うう・・・・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」

瞼を開けない息子を両手に抱え、アリカは夜空に向かって銀時達の前で涙を見せて泣き叫んだ。
彼女の姿を見て、銀時はぐっと奥場を噛みしめる。

「神威ィィィィィィィ!!!!」

両手に握る刀に力を込めて銀時は叫ぶ。腹の奥底から湧きあがる怒りのみが彼を動かす。


遂に果たした親子の再会は残酷な形でピリオドを迎えたのであった。



しかしネギの死がまた新たな始まりを生む。






[7093] 第六十一訓 夜王再臨
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/04 10:56

目を開けるとそこは真っ黒な空間。
光の一筋さえ見えず、両手を突き出して探っても何も無い。
『無』、まさにここはそんな感じであった。
手さぐりしてても仕方ないので、思い切って歩いてみる事にした。

自分の足音さえ聞こえない、どれだけ歩いてもずっと同じ暗闇の中。
こんな暗闇の中を歩いているのに何かに足をつまづく事も起こらず、ただ無心になって歩き続けるしかなかった。
しかし心の中ではもう理解しているのだ。

ずっと歩いていてもこの先に出口など見つからないと。
ここはきっと、自分が死んだ事によって生まれた『無』なのだ。
よく死んだ者は天国か地獄へ行くと言われているが、本当に死んでしまったら人間はこういう空間で永久に存在し続けるのだと、暗闇の中をキョロキョロと見渡しながらそう思った。

死んでしまっても自分の体はあるのだな、ここでもお腹は減るのだろうか? と呑気な事を考えながら、自分は暗闇の中を歩いて行く。

闇に飲まれて行くように・・・・・・




















































どれぐらい歩いたのだろうか、数分だけしか経っていないのか、数時間経っているのか、はたまた数年間経っているのかもわからない。
不思議とこんなに歩いていても一向に疲れもせず、足の痛みや眠気も襲ってこない。

暗闇をただ無我夢中で歩く。どうせ先には何も無いのはわかっている。だが何故か自分は前に向かって進む。

まるで向こう側から何かに呼ばれているような感覚がするのだ。

不思議な感覚にとらわれながら、自分は進んでいく。













見知らぬ男が遠い場所に一人でポツンと立っていた。
その男に向かって走る。
恐らくあの男が自分を呼んだのだと。
そう解釈しながら走っていると、男は気付いたのかこちらに振り返る。

黒くて古風な着物、真っ白な長い後ろ髪を垂らした、かなりの年はいってる筈の老人だった。

ようやくその老人の前に辿り着く。近くで見るとかなりの長身だ。
目の前に立った自分を見下ろして彼は口を開いた。

「・・・・・来たか、童(わっぱ)・・・・・・」

低くしわがれた声の中に威厳をただよわせる雰囲気を感じる。
その風貌も凄いが、老人の放つ威圧感も凄い。
見下ろされているだけで心臓を掴まれている様な気持ちだ。
いや心臓はついさっき潰されたのだが・・・・・・。

「童、貴様は自分の見に何が起こったのか知っているか・・・・・・?」

突然の質問に自分は素直にコクリと縦に頷く。
自分はあの時殺されたのだ、“あの人”の目の前で、自分の師によって・・・・・・

「こうなる事は貴様がわしを“中に入れた”時点で決まっていた・・・・・・」

中に入れた? この老人は一体何者なのだ?

「童、貴様は死んだ、だがその代わり、わしは貴様のおかげで再び現世に蘇る事が出来る・・・・・・」

自分のおかげで? 死んでしまった自分のおかげでこの老人が代わりに生き返る事が出来るのか? よくわからないがそういう事なのであろう。

「ほれ・・・・・・」

老人はこちらに手を差し伸べる。

「貴様はわしの魂を縛る鎖をほとんど解いておる、最後の鎖を解くがいい、そうすればわしは再び現世に戻る事になる・・・・・・」

魂を縛る鎖・・・・・・そうか“あの術”は、彼を解放する為の術だったのか・・・・・・

「さあ言え・・・・・・貴様の最期の仕事だ、キッチリ果たせい・・・・・・」

老人に言われて自分はゆっくりと口を開けた。
どうせもう死んだ身だ、何が起ころうが構やしない。















「・・・・・・100%解放」

自分がそう言った直後、老人はこちらを見つめながら真っ白な光に包まれて消えていった。
もうここには自分以外誰もいない・・・・・・。
そんな事を考えていると突然、上から何か聞こえる。

「ネギ・・・・・・お願いじゃから目を開けてくれ・・・・・・ネギ・・・・・・」
 
必死に自分の名を呼ぶ女性の声、その声を聞いてふと暗闇しか見えない上に向かって顔を上げる。

「母さん・・・・・・」

出来ればもう一度、あの人の顔を見たかった・・・・・・














































第六十一訓 夜王再臨




































月が昇った真夜中で、屋敷の裏庭からは雑木林がざわめく中、激しい音が響いている。
銀時は木刀と夕凪を持って目の前の敵に刃を振るっていた。

もはや正義や悪などそんな事どうだっていい、仲間の仇を取る事、それだけが彼を動く理由だ。

「怒ったお侍さんも素敵だね」

こちらに向かって笑いかけて来る神威に銀時はギロっと睨みつけて夕凪を振り上げる。
彼の表情は今、誰も見た事が無いほど憎悪に満ちている。
神威は振り下ろされた夕凪を咄嗟に片手だけで掴んで止める。

「けど怒りは時に周りを見えなくする、そして攻撃はいたって単純になってしまう、俺はそんな感情いらないな」

掴んだ右手から血を流しながら冷静に喋りかけて来る神威に銀時は何も言わず今度は右手で持っていた木刀を横薙ぎに振る。だがそれも神威は左手で掴む。

「こんな攻撃じゃ俺に勝てるわけ・・・・・・・」

神威が何かを言い終えるうちに銀時は血走った目で膝蹴り、それを腹にモロに食らい神威は両手を離して後ろに吹っ飛ぶ。
しかし神威は両足で地面を削るほど踏ん張ってブレーキ。さほどダメージは無いらしい。

「やれやれ、知り合ってたかが数カ月足らずの子供を殺されたぐらいで・・・・・・・」

足についた砂をはらっている神威に銀時は何も喋らずに一瞬で彼の前に走り寄る。
彼の頭を木刀を持っていた筈の右手で鷲掴みにし、そのまま地面に思いっきり叩きつけた。
地面にヒビが入る音が周りに鳴り響き、馬乗り状態になって、銀時は左手に握る夕凪を光らせる。

「怒りで何も聞こえないのかな? あ~あ」

振り下ろされた夕凪を今度は両手で挟んでガード、刃は神威の目の先3ミリの所で止まった。

「俺はやっぱ、いつものお侍さんの方が好きかな?」
「!!」

相手が上に乗っかっているにも関わらず、神威は刀を両手に持ったまま上体を起こす。どんなに銀時が力を振り絞っても夕凪は神威の笑った顔を突き刺す事が出来ない。

「よっと」

一瞬の隙に神威は顔をのけぞらして両手から夕凪を離す。刃は空を切るが、若干、神威の右頬も切る。だがそんな事全くお構いなしに彼は右手で握り拳を固めて、銀時の腹めがけてお返しと言わんばかりの一発。

「ぐッ!」

並の一撃ではない夜兎の本気の拳を受けた銀時は呻き声を出した時には既に後ろに吹っ飛んでいた。
地面を滑るように滑走した後、銀時は腹の激痛を押さえながら上体を起こす。

「大丈夫か銀八ッ!」
「・・・・・・」

すぐ後ろにいた千雨に心配かけまいと声を漏らすと、彼女に何も言わずすぐに銀時は立ち上がる。
今銀時の目は死んだ魚の様な目でもなく、ビシッと決める時に決める侍の目でも無い。
初めて見る銀時の姿に千雨が戸惑っていると神威はわざとらしいため息を突く。

「俺はまだお侍さんの事殺したくないのになぁ・・・・・・」

神威が首を傾げながらふと銀時から少し視線をずらす。

近くで数人の女性が一人の血まみれの子供の周りに集まっていた。

「ネギ・・・・・・頼むから目を開けてくれ・・・・・・」
「ネギッ! 目開けなさいよッ! こんな時に寝てんじゃ・・・・・・ないわよ・・・・・・」
「兄貴ィィィィィィ!!!」
「ネギ先生・・・・・・」

もう呼吸も停止し目を閉じて、生命の活動が停止しているネギの亡き骸に必死にアリカが涙を流しながら抱きしめている。
隣にしゃがんでいるアスナも涙声になり、カモも彼女の肩に乗って絶叫。
そしてあやかも目から出る涙を何度も拭って嗚咽をくり返している。

身近な人の死が初めてではないあやかにとって、親しい間柄であったネギが殺された事は精神的にもかなりのショックだった。それは当然、ネギの母親であるアリカも同じで

「ナギも死んで・・・・・・そなたまで死んで・・・・・もうダメじゃ・・・・・・わらわは・・・・・・」
「アンタ・・・・・・敵の筈なのにどうしてそんなにネギの事・・・・・・」
「そのお方は・・・・・・ネギ先生のお母様ですわ・・・・・・・」
「!!」

泣きじゃくるアリカをアスナが不審そうに眺めていると、あやかがか細い声で教える。
アスナはその事実に驚いて目を見開く。

「母親ですって・・・・・・ちょっとアンタッ!」
「なんじゃ・・・・・・ん? ぬしは・・・・・・」

いきなりアスナに呼ばれたのでアリカは生気のない目で横に目をやる、するとアスナを見て何かに気付いた様な反応をするが、アスナはすぐに彼女の胸倉を両手で掴んだ。

「親のクセにどうしてコイツを殺した奴と同じ組織に入ってんのよッ!」
「何・・・・・・」
「こいつを親戚に預けておいて自分は何ッ!? 人殺しの組織に入って息子ほったらかしッ!? それでもアンタこいつの母親・・・・・・・ひッ!」

胸倉を掴んで怒鳴り散らしてくるアスナにアリカは目の色を変えて彼女の両手をすぐに払い、逆にアスナの胸倉を掴んで睨みつける。

「何も知らないクセに・・・・・・人の苦しみも知らないクセに口出しするなッ!!」
「・・・・・・」

涙を流しながら迫って来るアリカにの迫力にアスナは何も言葉が出ない、すると一人の男がこんな状況で「アハハ」と呑気に笑っている。

「アンタが泣いてるの久しぶりに見たね」
「神威ぃ・・・・・・!!」 
「今の顔の方がアンタの本当の顔に見える、結局アンタは“鬼”にはなりきれないんだ」

目の前に立つ神威を見て、アリカは涙をぬぐって立ち上がり、金色の剣をフッと突然空中に出すと、それを右手で握る。
もはや相手が春雨の男でも関係無い、目の前にいるのはただ一つ。
息子の仇だ。

「正直に言うと貴様の事はそれほど嫌いでは無かった・・・・・・だが全てを知った今・・・・・・」
「夜王に夫を殺されて、今度は夜王の弟子に息子を殺されて、今どんな気持ち?」
「絶対に貴様を許さぬ・・・・・・!」
「あ~なるほど」

もう既に涙を流すのを止めてアリカは両手後頭部に回して笑いかけてくる神威に歯を食いしばる。
銀時も神威を鷲掴みにする時に咄嗟に捨てた木刀を拾い上げた後、目の前に立つ彼を睨みつけた。

「テメェ、アイツの師匠だったんだろ・・・・・・」
「ん? ああそうだよ、俺はそういうつもりじゃなかったんだけどあの子がそういうのに憧れててね、そういう間柄だったね一応」

可笑しそうにクスクスと笑った後、神威が銀時に話を続ける。

「嫌いじゃなかったよ俺はあの子の事、お人好し過ぎるほど優しくて純粋無垢な心、人を疑う事を知らないまっすぐな目、そして天性の才能。ちょっと背伸びしたがる所もあったけど、一緒にいて色々と楽しかった」
「だったらなんで殺しやがった・・・・・・」
「そうじゃ・・・・・・貴様、何の真似でネギを・・・・・・!」

殺気を放ちながら得物を握りしめる銀時とアリカに全く恐れる様子も見せずに、神威はアスナとあやかの元にあるネギの亡き骸に向かって瞼を開ける。

「この子は選ばれたんだ・・・・・・」
「・・・・・・選ばれたじゃと・・・・・・」

しばらくネギの亡き骸を見つめた後、神威はアリカの方を見てニコッと笑う。

「魔法ってのは凄いね、俺は興味無いけど」
「貴様を何を言って・・・・・・」

理解不能な神威の言動に、銀時とアリカは目を細める。だがその瞬間、アスナがハッとして顔を上げる。

「天パッ!」
「あ?」
「ネギの指が動いたッ!」
「なッ!」
「なんじゃと・・・・・・」

死んでいる筈のネギの指が微かに動いた。すぐに気付いたアスナは声を震わせながら銀時に言うと、アリカも予想外の出来事に唖然とする。
銀時の後ろにいた千雨も慌てて驚きのあまり両手で口を押さえているあやかの方に近づいて、ネギの体を見る。

「し、心臓に風穴開かれてるんだぞ・・・・・・! 気のせいに決まってんだろ・・・・・・!」
「でもさっき本当に指が動いたのよッ!」

ネギの体を指差して千雨が言うと、アスナが必死な形相で叫ぶ。だが彼女の隣にいるあやかが申し訳なさそうに。

「アスナさん・・・・・・死んだ肉体は極稀に五体の一部が痙攣起こす事があるんですの・・・・・・きっとそれだと・・・・・・」
「そんな・・・・・・」

あやかの説明を聞いてアスナが深く落胆すると、再びネギの指がピクピクと動いた。
さっきより少し動きが大きい。

「本当にこれ・・・・・・」
「・・・・・・なんか前より激しくなってないッスか?」

指の次は手、手の次は腕が次第に動き始める。アスナと彼女の肩に乗っかっているカモは怪訝そうにその腕を眺めていると千雨がある事に気付いて目を丸くする。
信じられない事だった。

「塞がってる・・・・・・」
「え?」
「傷口が塞がってる・・・・・・!」
「なんですってッ!」
「ほら、ここにあった大穴が・・・・・・!」

仰天するアスナに千雨が震える指先でネギの胸元を指差す。
確かに神威が開けた筈の箇所が何時の間にか治っている・・・・・・

「どういう事よこれ・・・・・・いいんちょッ!」
「私だってわかりませんわッ!」
「ナマモノッ!」
「俺っちだってわかりやせんよッ! 死んだ体の傷が勝手に治るなんてさすがに俺っちだって聞いたことありやせんッ!」

予想だにしない事態にアスナ達はパニック状態に陥る。ネギの体の傷の治癒はそれだけでは無く、他の箇所も次々と元通りになっているのだ。

「ねえッ! アンタは何か知ってるのッ! ネギの母親なんでしょッ!」
「バカ者・・・・・・たとえ親でも・・・・・・こんな状況わかるわけない・・・・・・なんなのじゃこの現象・・・・・・」
「黄泉から帰って来る為の準備さ」
「神威ッ!」

まるでわかっていたような口振りをする神威にアリカは顔色が良くなっていくネギを凝視するの止めて振り向く。

「一度死んだ魂は蘇らない、けどそれはあくまで人が生み出した勝手な推測、だってそうでしょ?」

驚いている銀時とアリカに向かって頬笑みながら神威は肩をすくめる。

「一つの体に魂が一個だけとは限らない」
「テメェなんか知ってる様だな・・・・・・」
「実は俺は元々子供は殺さない主義でね、子供は成長したら強くなるかもしれないし」
「は?」
「この子も強くなれる素質を十分に兼ね備えている優秀な俺の“弟子”、本当はここで殺すなんてもったいない事はしたくなかった」
「・・・・・・何企んでんだテメェ・・・・・・」

思慮深げに尋ねて来る銀時に、神威はニヤッと笑う。

「悪いけどそれはお侍さんや“同僚”にも言えないネ・・・・・・」
「天パッ!」
「んだよ今度はッ!」
「ネギの心臓が・・・・・・動いてる・・・・・・・」
「!!」

会話の途中に突然アスナの報告が入ったので銀時はすぐに神威に背中を見せてネギの元に走り寄る。アリカもすぐに後を追う。

「気のせいじゃねえのかッ!?」
「気のせいで傷が治ったり心臓が動くかよッ! ほら顔色もよくなってるッ!」
「まさか・・・・・・」

銀時と千雨が慌てながら会話しているのをよそに、横たわるネギの近くに立っていたアリカがそっとネギの顔を触ろうと腕を伸ばすと・・・・・・

なんとその腕を突如ネギの手がパシッと掴んだ。
一同それを見て口を開けて驚く。
しかもあろうことか永遠に空く事は無いであろうと思っていたネギの瞼が開いている。

「あ、兄貴が・・・・・・」

カモはその事に言葉を震わす。そしてすぐにバッと両手を上げて

「兄貴が生き返ったァァァァァ!!!」
「うそ・・・・・・やった・・・・・・やったァァァァァ!!! 何かよくわかんないけどネギが生き返ったァァァァ!!!!」

目を開けてくれたネギを見てカモとアスナは大はしゃぎ。だがあやかと千雨、そして銀時は『死者蘇生』という現象に喜ぶどころか戸惑っている。

「ど、どういう事ですの・・・・・・」
「夢じゃねえのかコレって・・・・・・・」
「ありえねえ・・・・・・」

三人が怪訝な表情を浮かべる中、ネギに腕を掴まれているアリカも信じられない現象に何も言葉が出ない。ようやく落ち着きを取り戻すとアリカはそっとネギに向かって恐る恐る口を開く。

「ネ、ネギ・・・・・・?」

自分の声が震えているのを感じながらアリカは息子の名を呼ぶ。するとさっきまで死んでいた筈のネギは目だけ動かして彼女を見る。

「・・・・・・・」
「どうしたんじゃネギ・・・・・・? 何処かまだ悪いのか・・・・・・・?」

無表情でただアリカの顔をジッと見るだけでなんの反応もない。アリカが心配そうに見つめていると、ネギは小さく口を開ける。










その瞬間、アリカの後ろに立って目を開けている神威の口元に笑みが広がった。

































「久しぶりよのう、『災厄の魔女』・・・・・・」

















その声はネギだけではなく明らかに別の声も入っていた。
子供の様な声と低くしわがれた声、それを聞いた瞬間、全員がしんと静まり返った。

「まさかまたこうやって貴様と会うとは思いもせんかった」
「ネ、ネギ・・・・・・うッ!」
「こうして再び世に戻れたのも、馬鹿な弟子と貴様の息子のおかげか、のう、アリカ・スプリングフィールド・・・・・・?」
「・・・・・・そなたは一体・・・・・・」

尋常じゃないほどの握力で握っているアリカの腕をへし折ろうとするネギ。いつもと様子がおかしいのがすぐにわかる。目つき、それに彼のこの声は・・・・・・

(こいつの声と喋り方・・・・・・)

銀時が何か思い出そうとしていると、アスナとカモがさっきまでとは一転して恐る恐るネギに向かって口を開く

「ネ、ネギ・・・・・・どうしたのよアンタ・・・・・・?」
「兄貴・・・・・・どっか調子悪いんすか・・・・・・・?」

それに対してネギはアリカの腕からそっと手を離して、アスナの方へ振り向く。

「・・・・・・ふむ、随分と変わったものだな『黄昏の姫巫女』」
「・・・・・・・アンタやっぱりちょっとおかしいわよ・・・・・・?」

真顔で話しかけてきたネギにアスナがわけがわからなそうに首を横に振ると、ネギは今度は・・・・・・
銀時の方へ首を動かして数秒間ジッと眺める。

「ほほう・・・・・・」

ネギはまるで懐かしむように口元に笑みを広げた。




















「貴様とは吉原で世話になったな、侍よ・・・・・・!」
「!!」






















ネギの言葉を聞いた途端、銀時は立ち上がって木刀を彼の体めがけて振り上げる。

「銀さん何をッ!」
「おい銀八ッ!」

そのいきなりの行動にあやかと千雨が驚いて声を上げるが、銀時は有無も言わずにその木刀をネギの腹に向かって突き下ろす。
しかし木刀は虚しくズンとただ土に突き刺さるだけ
突き下ろした場所にネギが既にいないのだ。


「クックック・・・・・・この体は中々しっくりくる」
「チィッ!」

いつの間にか銀時達の頭上にある木の枝に乗っかっているネギに銀時は苦々しく舌打ちする。
あの目つきと口調と声、自分の予想が正しければ間違いない・・・・・・。

「テメェ、一体どうして・・・・・・・!」
「ネギ・・・・・・まさかお主・・・・・・!」
「フン、まだわしの事を童の名でいうかアリカ・スプリングフィールド・・・・・・」

銀時と同じ感づき始めたアリカも頭上にいるネギを緊迫した表情で顔を上げる。
ネギの口調が“ネギではない”、あの口調は正しくあの男・・・・・・

「まさかこの場で二人も・・・・・・」

ローブをマントの様に翻しながらネギは神威の隣に向かって跳び下りる。そしてこちらにニヤリと笑って

「この“夜王鳳仙”の怨敵と会える事になるとはな・・・・・・!」
「夜王・・・・・・!」
「鳳仙じゃと・・・・・・!」

その名を聞いて二人は愕然とする、あやかと千雨はピンと来ていないようだが、名前だけ聞いているアスナとカモは驚く。

「夜王ってあの・・・・・・」
「知ってるんですかアスナさん?」
「世界を窮地に陥れた夜兎の王の名前ッスよ・・・・・・」
「なんだよそれ・・・・・・なんでそんな奴の名前をネギ先生が名乗ってんだよ・・・・・・」

アスナの肩に乗っているカモの話に千雨が首を傾げていると、ネギはフンと鼻を鳴らす。

「まだわからんか小娘、この体はもはや貴様等の知る童の体では無い・・・・・・この体はもうわしの体、つまり夜王の魂をおさめる事が出来る唯一無二の『器』よ・・・・・・」
「器って・・・・・・」

目つきも以前より大きく変わり、戦闘本能の塊の様な鋭い目つきに。それに今までネギが見せた事のない表情や言動に、千雨は思わず一歩後ずさりする。

そしてネギの隣にいる神威はアリカと銀時の方を向いてさらっと話を始めた。

「『夜王再臨の書』、俺が前にあの子に読ませた禁術が書かれた呪文書だ、それはアンタも知ってるよねお母さん?」
「存じている・・・・・・その本を一度読んだ者は魔法使いの身でありながら夜兎族同然の力を得る事が出来る、ただの肉体強化とは全く次元の違う肉弾戦最強の上級術・・・・・・」

そこで一旦言葉を切ってアリカは首を横に振る。

「しかし並の魔法使いがそれをむやみに使おうとすると、力に飲み込まれ破滅する。そういったケースを踏まえてこの術は決して使ってはならない禁術として世に封印された筈じゃ・・・・・・」
「そう、“表向き”にはそう呼ばれていた・・・・・・けど実際は少し違うんだよネ」
「何・・・・・・」

茶化してるかのような感じのする神威を見てアリカは少々苛立ち始めるが、彼はお構いなしに話を続ける。

「夜王再臨の書、これは術を使った人をただ強くさせるだけじゃない、書に封印されていた夜王鳳仙の魂の一部を入れる器となる為に身をささげる術なのさ」
「鳳仙の・・・・・・器じゃと・・・・・・!」

術の本来の意味を知ったアリカが目を見開いていると、夜王に体を乗っ取られているネギが神威の代わりに話し始める。

「わしは昔・・・・・・魔界の魔術師に一つの術を作らせた」
「術のコンセプトは魔界じゃったのか・・・・・・」
「魂を一部だけを切り離し、この夜王が死に絶えた時にもう一度生を得る為に作られた術、そしてそれを・・・・・・この童は扱える事が出来た」

自分の両手をジッと眺めながらネギは話を続ける。

「並の脆弱な魔法使い共が覚える事も出来ずに死滅したこの術を・・・・・・この童はいとも容易く習得する事が出来たのだ・・・・・」
「ネギは・・・・・・神威にそそのかされてお主の為に身をささげたと言うのか・・・・・・?」
「さすがあの男と貴様の息子だ・・・・・・小さな体のクセにわしの魂を十分に受け入れられる器を持っている・・・・・・気に入ったぞこの体」
「く・・・・・!」

自分の体を観察しながら話しかけて来るネギにアリカは歯を食いしばる。
つまり神威はネギの事を最初からただの料理を乗せる器程度としか思ってなかったのだ。

「神威ぃ・・・・・・貴様は夜王の魂を蘇らせる為だけにネギの命を・・・・・・!」
「・・・・・・」

普通ならすぐに逃げ出したくなるほどの睨みをきかせてくるアリカに向かって、神威は平然と笑ったまま何も答えない。
そんな彼に銀時も一歩前に出て睨みつける。

「弟子を殺して・・・・・・死んだ男を蘇らせて・・・・・・こっちはテメェがやってる事が全然理解出来ねえよ・・・・・・けどな」
「・・・・・・」
「テメェの事が気にいらねえんだよ・・・・・・!」
「・・・・・・ハハ」

手に持つ夕凪の刃を光らせながら凄みのある啖呵を切る銀時に、神威は静かに笑い声を上げた後クルリと踵を返して銀時達に背を向ける。

「理解しなくてもいいし俺を許さなくても構わない、俺は俺の道を貫き通す、それだけだ、じゃ行こうか“旦那”」
「フン」

目の前にある山を指さした神威に不服気味に鼻を鳴らした後、夜王となったネギは神威と一緒に銀時達から去ろうとする、だが。

「何勝手に行こうとしてんのよネギ・・・・・・」
「む?」
「私を置いていこうとするなんて・・・・・・いい度胸してるじゃないの・・・・・・」

ローブを引っ張られる感触、ネギは後ろに振り返ると、項垂れているアスナが自分のローブの裾を掴んでいた。

「何が夜王よ・・・・・・・」
「・・・・・・離せ、黄昏の姫巫女」
「こんな時に教師のアンタがいなかったら・・・・・・A組のみんなはどうすればいいのよ・・・・・・」
「貴様の教師はもうこの世におらん、離せ」

バッとローブの裾を自分で引っ張ってアスナの手を振りほどく。すると彼女はガクッと両手を突いてその場に崩れ落ちた。精神的に酷くやられているアスナを前にしてネギは去る前に彼女に向かって口を開く。

「黄昏の姫巫女、昔世話になった礼に童の魂をこの世に戻す方法を教えてやる」
「え?」

とんでもない情報にアスナは思わず顔をネギの方に上げる。すると彼はフッと笑って

「この夜王を殺してみろ・・・・・・」
「アンタを・・・・・・」
「童の魂は死んでおらん、わしの中にまだ存在している・・・・・・わしを殺せばあ奴は蘇り、奴が死ねばわしが再び蘇る。クックック・・・・・・」
「そんなの出来るわけ・・・・・・!」

自分に世界を滅ぼそうとした男を倒せるわけがない、アスナが思わず泣きそうな声を漏らすと、満足そうに笑みを浮かべて踵を返す。

「ならばそこで死に果てろ、星海坊主も“あの男”もいない今、貴様等では到底この夜王を倒せん、一人骨のある奴がいるがな・・・・・・」
「・・・・・・・」
「さらばだ」
「そんな・・・・・・待って・・・・・・!」

最後に銀時の方へ視線を向けた後、ネギは神威と一緒に木の上に飛翔して、そのまま山の方へ駆けて行った・・・・・・・。

残された者達は落胆しているアスナが嗚咽をくり返している中、夜王に乗っ取られたネギの背中を見送る事しか出来なかった。

「まさかアイツがまたこの世に蘇るなんてな・・・・・・」
「・・・・・・お前、アイツの事知ってるのか?」

やりきれない気持ちで頭を掻き毟る銀時に隣に立ってきた千雨がボソッと尋ねると、彼はすぐに返した。

「元々あいつは俺達の世界の天人だ。昔やり合った事がある、そん時に俺があいつを倒した・・・・・・」
「・・・・・・だからお前の事、怨敵だとか言ってたのか・・・・・もしかしてお前に復讐しに来るんじゃ・・・・・」
「心配すんな、すぐにまた倒してやるよあんなジジィ、もう一回冥土に戻してやる」

千雨の頭を撫でながら口に笑みを浮かべて答えるが、明らかに不自然だ。心の底からそれが出来ると思ってはいないようだった。千雨は彼に撫でながらそんな事を考えていると、銀時の前でしゃがみ込んでいるアリカがゆっくりと口を開く。

「無理に決まっておるじゃろ・・・・・・」
「あ?」
「もう何もかもお終いじゃ・・・・・・ナギも死んでネギも夜王に乗っ取られ・・・・・・大切な物は全て失ってしまった・・・・・・ハハハハ・・・・・・」
「アリカさん・・・・・・」

乾いた声で笑い声を上げるアリカにあやかが心中察するかのように近づく。

「まだネギ先生を助けれるかもしれませんわ・・・・・・私達と協力して下さいませんか?事が上手く進めばきっと・・・・・・」
「事が上手く進むだと・・・・・・?」

あやかの言葉に反応してアリカは立ち上がって彼女を睨みつける。

「神威、阿伏兎、春雨の兵、そして高杉。リョウメンスクナノカミも復活するのにそんな相手を前にして夜王となってしまったネギをまだ救えると思えるのかお主は・・・・・・?」
「私は銀さんの事信じてます・・・・・・例えどんな方が相手でもきっと銀さんなら・・・・・・うッ!」
「あやかッ!」

安心させようと笑いかけて来るあやかの顔を見てアリカは突然彼女の首根っこに片手を伸ばして締め上げる。銀時はすぐに彼女達の元へ歩み寄ろうとするが、アリカがギロリとあやかの首を絞めながら彼に目をやる。

「それ以上近づいたらこの音の首をへし折るぞ・・・・・・・」
「テメェ・・・・・・」
「何が協力じゃ、何が信じるじゃ・・・・・・そんな事で物事が全て解決するとでも思ってるのか貴様は?」
「ア、アリカさん・・・・・・」
「耳障りな言葉をわらわに聞かせるな・・・・・・昔の自分を思い出す・・・・・・」
「ぐうッ!」
「いいんちょッ!」

首を爪が食い込むほど締めつけて来るアリカにあやかは苦しそうに呻き声を上げる。千雨は額から汗を出して近寄ろうとするもアリカに睨まれて踏み出せない。

「私達が力を合わせれば・・・・・・きっとみんなも・・・・・・ネギ先生も助かりますわ・・・・・・」
「もう喋るな、虫唾が走るわ」
「がはッ!」
「いいんちょッ! アンタいい加減に・・・・・・!」

息絶え絶えにしながら懸命に呼び掛けようとするあやかの腹に、拳を一発入れて気絶させるアリカ、千雨は怒ったように口を開くが、彼女は平然とした態度で銀時と彼女に口を開く。

「ここの山を登ってまっすぐ行った所に橋がかかっておる、銀時、そこで貴様との因縁を断ち切る・・・・・・」
「・・・・・・」
「10分、そこでお主の事をそこで待っておる、もし過ぎても来なかったらこの女は橋の下の谷底に落とすぞ・・・・・・」
「・・・・・・」
「もう全てがどうでもよい、こんな世界本当に腐ってしまえばいい・・・・・・フフ」

奈落に堕ちた様な暗い表情をしたアリカを見て銀時は黙って歯を食いしばる。
すると彼女は雑木林の中に一歩足を入れた。

「いいな、10分以内に来るんじゃぞ、そこで貴様と死合う・・・・・・」
「いいんちょッ!」

雑木林の中に消えて行くアリカとあやか。
千雨が慌てて手を伸ばそうとするが、あっという間に見えなくなってしまった。
銀時は何も言わず黙ったまま微動だにしない。

「どうして・・・・・・修学旅行はみんなで楽しく思い出を作るためのイベントなのに・・・・・・どうしてこんな事になるのよ・・・・・・」
「神楽坂・・・・・・」

周りに響くはアスナの嗚咽のみだった。


























































一方、銀時達と離れた神威はネギの体を乗っ取った夜王鳳仙と共に、木と木の間を飛び越えながらある場所へと向かっていた。

「いやぁ、旦那とこうやって一緒にいられるなんて嬉しいなぁ、見た目は俺より若返えっちゃいましたけど」
「・・・・・・神威」

笑いかけてくる神威を見てネギはジロっと観察するように彼の顔を見る。
そして一本の木に飛び降りた時にふと立ち止まった。

「何故貴様がこのわしを蘇らした・・・・・・・」
「あれ? どういう意味です旦那?」
「貴様が知らぬ筈ない・・・・・・この夜王の人生は既にあの場で終わったのと」

目を細めながらネギは呟く、彼が言っているのは恐らく吉原で銀時に倒された時だろう。
鳳仙にとって自分の人生はあそこで終わる“べき”だったのだ。

「わしはもうあの時この世に何の未練もないと悟った、しかし貴様は、そんなわしをわし自身が当に忘れていた術でこの世に蘇らせた・・・・・・」
「何が言いたいんです? “お師匠さん?”」
「クックック・・・・・・神威、貴様の師匠であるこのわしが弟子の貴様の企みに気付かぬとでも思ったか・・・・・・」

笑みを浮かべて木の上で立ち止まってこっちを見ている神威の前にある木に、ネギは不気味な笑みを浮かべながら飛び乗る。

「貴様はわしを蘇らせる事が本当の目的では無いのであろう・・・・・・」
「・・・・・・成程、死んでもまだ洞察力は劣って無いというわけか・・・・・・」
「ふん、貴様が見ているのはわしではない・・・・・ここにいる童・・・・・・違うか?」

ネギは自分の胸を叩く。そう神威は夜王の復活が本願ではない。
彼の真の狙いは・・・・・・。

「“童をわしの餌”にしたのではない・・・・・・・“わしを童の餌”にする気じゃろ・・・・・・」
「・・・・・・」
「弟子に自分の師を食わせるとは考えたものだな神威・・・・・・だが」

ニヤリと笑ったネギは神威の顔にズイッと近づく。

「例えナギの血を持った童でも、数多の戦場を生き残り多くの相手を血に染めたこの夜王鳳仙を飲み込むなど無理な真似よ・・・・・・」
「フフ・・・・・・」
「親鳥は雛鳥の口に合う餌を与えねば雛鳥は飲み込めずに死ぬ。餌がデカ過ぎたのぅ神威・・・・・・貴様を師として敬ったこの童が哀れでしょうがない・・・・・・」
「・・・・・・旦那」

小さい体でとてつもない威圧感を放ってくるネギ、夜王鳳仙としての力は未だ現役らしい、
しかし神威は平然としながら軽く彼の胸をトンと指で突く。

「俺の弟子を甘く見ないで欲しい」
「何・・・・・・」
「俺はあの子の師匠だ、あの子の事はアンタより知っている・・・・・・いつかアンタは俺の弟子に食われる、間違いない・・・・・・・なんてネ」

しばらく冷静に喋った後ニコッと笑う神威、それに対してネギは凄みのある目つきに変わった。

「随分な物言いだな・・・・・・この場でわしに殺されたいのか神威・・・・・・」
「アンタじゃ俺は殺せないと思うけど?」
「・・・・・・ふん」

神威の言い方にネギは不機嫌そうに鼻を鳴らす。ここで神威と本気で戦ったら恐らく周りは何も残らなくなる。
つまらない事でそんな事をしてもなんの意味もない。

「じゃ行きましょうか旦那、新しい仲間にまずは挨拶しなくちゃ」

そう言い残して神威は先に行ってしまった。仲間というのは恐らく高杉達の事だ。
残されたネギは顔を上げて夜空に昇るたくさんの星達を眺める。

「わしはこの世界に興味などもう無い・・・・・・この世に生を持って生き返っても、やることなど一つもない、だが・・・・・・」

独り言を呟いた後、ネギは背中に差してある杖を抜いて固く握った。

「もし一つだけあるとしたら、コイツの持ち主と決着を着ける事・・・・・・それさえ出来ればこの夜王、なんの悔いも残らん」

そう言ってネギはその杖を後ろに向かって勢いよく投げて捨てた。

杖はそのまま暗闇の中に消えて行く、ネギは杖が消えたのを確認した後、すぐに神威の後を追った。

























杖の持ち主が刻々と近づいて来ているのも知らずに






[7093] 第六十二訓 仲間を信じて顔上げて歩け
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/07 13:18
弟子を殺めた神威。
夜王鳳仙の器となったネギ。
失意の果てに銀時との決着を望むアリカ。
三人の関係は複雑に絡まりながら交差する。
そして銀時もまた
アリカに攫われたあやかを助ける為に彼女との戦いに興じる事を決意した。

「じゃ、行って来るわ」

屋敷の裏庭でしばらく立ち尽くしていた銀時だったが、そう言葉を残して千雨とカモ、そして地面に両手を突いているアスナの前を立ち去ろうとする。だが

「・・・・・・・私を置いて行くなよ」
「は?」
「お前と“あの人”の戦いを見届けたいのもあるし・・・・・・いいんちょが攫われたんだ、私もお前について行く」
「・・・・・・・死ぬかも知れねえぞ?」

背中を向けて警告の様な事を漏らす銀時に千雨は一歩も引かずに逆に前に出る。

「“友達”が危険に巻き込まれているのにこんな所でジッとしてられるか」
「うわ、お前が友達って言葉使うの似合わねえな・・・・・・」
「うるせえな、ほっとけよ・・・・・・・」

頭を掻き毟りながら振り返って、自分の言葉に苦笑いを浮かべる銀時に、千雨はムスッとした表情で返す。いささか顔が赤い。

「まあいいや、そんじゃあ行くぜ」
「銀の兄貴、大丈夫ッすか・・・・・・」
「ガキ護る事が教師の仕事だ、特にあいつは・・・・・・」

不安そうに小さな体で近づいてくるカモに踵を返すと、銀時は千雨と共に雑木林の中へ入ろうとする。だがその時

「なんでよ・・・・・・」
「ん?」
「なんでなのよ・・・・・・!」

さっきまでずっと四つん這いになって落ち込んでいたアスナが、顔に涙の跡をつけて急に起き上がり銀時を睨みつける。

「なんでアンタはいつも迷わずに行動出来るのよッ!」
「神楽坂・・・・・・」


急に大声を上げるアスナに千雨が心配そうに振り向くが、銀時は背中を向けたまま何も言わない。

「ネギもわけわかんなくなっていいんちょもネギのお母さんに攫われてッ! 屋敷のみんなは大混乱だし木乃香の行方も分からないッ! どうしてこんな状況でもアンタはいつもまっすぐ前に歩いていけるのよッ!」
「・・・・・・ツラ下げなきゃいいんだよ」
「え・・・・・?」

ぶっきらぼうに銀時が呟いた言葉にアスナは彼の背中を見る。
振り向こうとせずに銀時は木刀を肩にかつぎながら口を開いた。

「ツラ下げてたら前は見えねえ、さっさとツラ上げてテメーの大切なモンを護る事だけを考えて歩け」
「・・・・・・」
「そういう信念っていうのがよ、俺を迷わずに進ませてくれんだ」
「・・・・・・アンタに大切なモンって何よ」
「決まってんだろ」

また頭を下げてうなだれるアスナに。
銀時は彼女の方に振り返った。凛としたまっすぐな目だ

「俺の武士道(ルール)だ」
「・・・・・・」
「こいつばっかりは絶対に誰にも譲らねえ」
「天パ・・・・・・」

顔を上げたアスナが深く考え込むのを見て、銀時はすぐに前を向く。

「テメーのモンを護る為に何をするべきなのか、オメェも考えてみろよ、じゃあな」
「あ・・・・・・」

最後に手を振った後、銀時は千雨と一緒に雑木林の中へ消えて行った。
残されたアスナはしばらく呆然とした後、深いため息を突く。

「本当ムカつくわねあの天パ・・・・・・」
「姐さん・・・・・・」
「アイツのおかげで全部吹っ切れたのが更に頭に来るわ・・・・・・」
「でも姐さん・・・・・・俺っち達どうすれば・・・・・・」
「決まってんでしょ」
「へ?」

いつもの調子の口調に戻ったアスナが近づいて来たカモにしらっと答える。

「私は天パやマヨと違ってか弱い乙女だからこんな事しか出来ないけど・・・・・・」
「か、か弱い乙女・・・・・・そんなまさか・・・・・・姐さんまでおかしくなっちまった・・・・・・」
「もう一度引き千切るわよその粗末な尻尾・・・・・・」

怯えた目つきで体を震わすカモをジト目で睨みつけた後、アスナはすかさずポケットからある物を取り出す。

「一応“あの人”の電話番号入ってるのよね・・・・・・ネギや木乃香の縁で」
「誰かに電話するんですかぃ?」
「そうよ、いつも偉そうにしてるんだからたまには仕事させないと・・・・・・」

だるそうにそう言うとアスナは携帯に登録されているある人物の名前にカーソルを合わせてボタン押す。
すぐに携帯に耳を付けるアスナ。
何度も鳴るコール音、早く出ろと言わんばかりにイライラしながらアスナは携帯を耳に押しつける。
そして



























『はいもしも~し、超偉くてモテる学園長じゃけど何か用? つうか誰?』

電話をかけた相手はこの状況ではあまりにも意外な人物であった。














































第六十二訓 仲間を信じて顔上げて歩け


































銀時達とアスナが次々と行動を始めている頃。
桂達もまた、攫われた木乃香を救う為に山を登っている所だった。
しかしその中に一人だけ腑に落ちない表情を浮かべる者が最後尾をトボトボと歩いていた。

「土方さん・・・・・・・」
「なんやもうさっきから~、ヅラ、このネエちゃんがさっきから土方さん土方さんずっと呟いてるんやけど~?」

最後尾を歩きながらさっきからブツブツと呟いている刹那に嫌気がさしたのか、前を歩いていた小太郎がしかめっ面で一番前にいる桂に話しかける。すると呼んでも無い筈の男が振り返ってくる。

「小太郎君がヅラヅラ言うのと同じですね」
「お前は黙っとれドアホ」

桂の隣にいたアルが楽しそうにこっちを見て来たので小太郎はすぐにめんどくさそうに返すと、ちゃんと呼んだ対象である桂の方が立ち止まってこちらに振り返ってくれた。

「刹那殿、そんなにあの男が心配なら戻ればいいのではないか?」
「私は・・・・・・お嬢様の盾だ。お嬢様がさらわれたと思われる今、助けに行かないでどうする・・・・・・・」
「ふむ、では木乃香殿とあの男、お主にとってどっちが大切なのだ?」
「それは・・・・・・」

突然急な質問をしてくる桂に刹那は困ったように口ごもる。
そんな事明確に答えられない、両方とも自分にはかけがえのない人物だ。

「木乃香殿はきっと救える、俺の仲間は頼りになるからな。余計な者も数名混ざっているが・・・・・・・」

桂はチラッと坂本とネカネの方に目を向ける。二人共同時に首を傾げた。
自覚は無い。

「・・・・・・とにかく木乃香殿は問題無いだろ。しかしあの男はどうだろうな、今まさに多くの敵と少数で対峙している、俺が察するに死ぬ危険性も高い」
「・・・・・・私はあの人に直接お前の所に行けって命令されたんだ、今更戻れるわけないだろ・・・・・・」
「だったらウジウジ悩むなやホンマ、見てるこっちはイライラすんねん」
「なんだと・・・・・・」

軽く舌打ちする小太郎に刹那はキッと顔を上げる。すると彼はフンと鼻を鳴らして彼女に声をかける。

「迷い道があっても構わず突っ込んでみ、そうすりゃ自然に答えが出るモンや」
「・・・・・・・」
「俺はそうコイツに教えられた」

不意に小太郎は桂を指差す。すると桂は眉をひそめて

「そんな事言ったか?」
「いや忘れてるんかいッ!」
「全く記憶にない、過去より未来を見る、それが侍だ」
「もうええわボケッ!」

全く覚えてない様子の桂に小太郎が叫んでいると、刹那は顎に手を当てて考える。
その場に立ち止まって迷うより、まずはなりふり構わず突っ込んでみる・・・・・・

「桂小太郎・・・・・・」
「む?」
「本当に木乃香お嬢様を救えるのか・・・・・・」
「侍として誓おう、木乃香殿は俺達が助ける。侍は一度した約束は決して破らん」
「そうか・・・・・・」

腕を組みながら凛とした表情で頷く桂の顔を見て刹那はまだ安心していない表情で彼に口を開ける。

「私は・・・・・・攘夷志士という連中は例外なくみんな嫌いだ、桂小太郎、当然お前の事も嫌いだ」
「ケッ」
『こっちもお前の事嫌いだっつーの』
「二人共そんなにふてくされないで下さいよぉ」

刹那の言葉に桂より反応して侮蔑の混じった視線を彼女に送る小太郎とエリザベスをアルが朗らかに制する。
桂は黙って刹那の話を聞いていた。

「絶対にお前を捕まえてやろうと思っている、しかし土方さんとお前が平和協定を結んでいる今、お前と私は仲間だ・・・・・・」
「・・・・・・」
「仲間として・・・・・・お前に託す」

握り拳をグッと固くした後、刹那は踵を返して桂達に背を向けた。

「木乃香お嬢様を・・・・・・絶対に救ってくれ・・・・・・」
「・・・・・・無論だ」

背中を向ける刹那に桂もまた彼女に背を向けた。

そして両者共に反対方向へと進みだす。
桂達は木乃香のいる所へ、そして刹那は・・・・・・・
















地獄へ堕ちる事になるであろう修羅の道へ





































土方は大広間にて次々と湧いて出て来る春雨の部隊達を殲滅せんと奮闘していた。
何人斬ったのかも忘れ、周りは血の海。そろそろ体力もマズい。

「クソッタレ・・・・・・」
「私も・・・・・・さすがにこれだけの数が相手だと疲れて来ましたね・・・・・・」
「桂の野郎共がいなくなっただけでこんなにシンドくなるとはな・・・・・・」

疲労の色が見え始めている土方の顔を見て詠春も額の汗を拭いながら頷く。
呼吸する暇もないこの状況で会話をするのもやっとだ。
土方は必要最小限に口を開いた後、すぐにまた目の前にいる敵を斬滅する。

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」
「コイツ等一体何処から来てんだ・・・・・・拠点を叩かねえとどんどん出て来るぞ」
「山の中じゃないですかぃ?」
「何?」

いきなり隣に出てきて敵を瞬殺していく沖田が、血に塗られた刀を払いながら呑気そうに土方に話しかける。

「連中が山から下りて来るのが見えたんでね、多分桂が向かった先に奴等の巣が」
「てことはあいつ等が早くしねえと、こっちにゾロゾロと・・・・・・」
「ずっとリアル無双プレイでさぁ」

互いに背中を向けながら体力どころか現状もとてもマズイ事になってしまっている事に土方は舌打ちする。だが沖田は相変わらず全く動揺していない表情で

「仕方ねえ、ここは俺の“秘密兵器”を使うしかねえか、」
「秘密兵器だと?」
「ええ、本当は“土方さん暗殺要員”として働かせようとしてたんで土方さんには隠しておきたかったんですが」
「そうか、今俺もお前の暗殺要員が欲しくなった、あの女(千鶴)ならお前殺せるか?」
「“アレ”は誰の言う事も聞かないと思いますぜ、土方さんの命令なんて聞くわけないでしょう」

妙な会話を楽しみながら、沖田は懐から携帯を取り出す。そんな彼の姿を見て土方もピンとある事を思い出した。

「そういえば・・・・・・」

沖田が携帯で会話するのを見て土方も携帯を胸ポケットから取り出す。
あの男の存在をすっかり忘れていた。ただでさえ影の薄い男なので仕方ないが

バッタバッタと斬り伏せながら土方は携帯を耳に当てる。

急いでこの状況を彼にも伝えねば・・・・・・





































土方や沖田と同じ真撰組の一人である山崎退は、彼等の現状も知らずに3年A組が泊まっている旅館で平和に勤しんでいた。

「副長も沖田隊長も・・・・・・旦那達まで何処行ったのかな~・・・・・・」

一人自室にてポツンと風呂上がりの浴衣姿で、コーヒー牛乳を飲んでのんびりしている山崎。
独り言をつぶやきながらイスに深々と座り、ため息を突いている。

「でも正直あの人達がいない方が世の中幸せ・・・・・・・ん?」

本人達がいないのをいい事に好き勝手ぼやいていると突然テーブルに置いてあった携帯が鳴りだす。山崎はコーヒー牛乳を一気に飲み干した後、携帯に手を伸ばす。

「なになに、楓さん? それとも風香ちゃんと史伽ちゃん? 夏美ちゃんかな? もしくはまき絵ちゃん? いやもしかして学校にいる茶々丸さんかな・・・・・・」

顎に手を当てて考えながら次々と候補を上げていく山崎はとりあえず携帯を手に掴む。
意外にも地味に色んな生徒と交流しているのだ、正直上司の土方より彼の方が生徒との交流は深い。

山崎は携帯のボタンを押して耳に当てる。そして・・・・・・

『山崎ィィィィィィィ!!!!』

鼓膜を破りかねないその声に山崎は思わず携帯から手を離して気絶しそうになった。
自分の名を叫ぶあの声、間違いなくあの人だ。
山崎は落とした携帯を拾い上げて恐る恐る耳に当て直す。

「もしもし・・・・・・ふ、副長ですか・・・・・・」
『当たり前だろうがッ! おい山崎すぐにこっちに来いッ!』
「え?」
『現状況で宇宙海賊春雨の軍勢に襲われているッ! それに敵の親玉はあの高杉だッ!』
「えぇぇぇぇぇ!! なんすかそれいきなりッ! なんでそんな状況になってんですかッ!? 俺が楓さん達と大阪行っている間に何があったんですかッ!」
『ゴチャゴチャ行ってねえでさっさと来いッ!』
「わ、わかりましたッ!」 

電話越しに土方にどやされて山崎は慌てて浴衣姿のまま刀だけを持って部屋を出る。
時間も時間なので人の気配は全く無い。

「けどそこ何処なんですかッ!? 俺今旅館にいるから時間かかりますよッ!」
『飛べ山崎ッ!』
「飛べませんよ俺ッ! 改造人間じゃあるまいしッ!」

無茶な要求をする上司に山崎が即座にツッコみながら廊下を走る。
とにかく一旦外に出なければ、電話の向こうから天人の叫び声や刀で斬る音が聞こえて来る。冗談じゃないのは確かだ。

「とりあえず何処なのかだけを教えて下さいッ! 俺今からすぐにそっちに・・・・・・・ぬほッ!」
『おいどうした山崎ッ! 山崎ィィィィィィ!!!』

土方が叫ぶ中、山崎は何かに足をつまづいて倒れていた。

「イテテ・・・・・・」

腰をさすりながら山崎は上体を起こす。すると後ろから何者かの声が

「どうしてそんなに慌ててるでござるか?」
「へ・・・・・・?」

山崎は混乱した様子で後ろに振り返る。そこにいるのはさっき自分の足を取った人物と思われる楓と

「なんか困ってるなら私達に話すアル、力になるヨ」
「報酬さえ払えば助けてやっても構わないぞ」

楽しそうにこちらに手を振るクーフェイと、壁にもたれて腕を組んでいる龍宮がいた。










































一方、アリカとの決着を付ける為に雑木林の中を歩いていた銀時は、後ろに千雨を連れて歩きながら、やっとある場所に出られた。

アリカと約束をした場所
深く暗い谷底が下で待ち構えている長い橋だ。

銀時は木刀を持ったままその橋に近づくと、その橋の真ん中に彼女は既に立っていた。

「来たか・・・・・・」
「あやかは?」
「・・・・・・あそこじゃ」

橋の真ん中に立つアリカが後ろに指をさす。見ると雑草の生い茂っている地面に目をつぶって横たわっているあやかの姿が

「いいんちょッ!」
「あの者を救うにはこの橋を渡ることは必定、ゆえに橋に立つわらわを倒す事も必定じゃ」
「なんも関係無い筈のいいんちょまで巻き込みやがって・・・・・・!」

銀時の隣にいる千雨はアリカに対して嫌悪感を込めた目つきで睨みつける。しかし彼女にそんなの全く通用しない。
愛する者を失ったアリカの心は完全なる闇へと変貌してしまった。

「さあわらわの前に来るがいい銀時・・・・・・お主との戦い、これで最後じゃ・・・・・・」
「銀八・・・・・・」

あの冷たい目に戻っているアリカに指示されて銀時は橋にゆっくりと近づく。千雨も不安そうに彼の後をついていくが、銀時は橋の前に来た途端ピタッと止まり、背中に差してある夕凪を鞘ごと引っこ抜く。

「千雨、こいつ持っててくれ」
「え?」
「必要ねえからよ」
「お、おい銀八ッ!」

ぶっきらぼうに千雨に向かって夕凪を投げると、彼女が驚いている様子をよそにミシミシと鈍い音が鳴る橋を歩いて行った。
銀時の持っている武器は木刀である洞爺湖のみ。
近づいてくる彼に向かってアリカは苛立つような顔を見せる。

「ナメておるのか貴様・・・・・・木刀だけでわらわと戦えるじゃと・・・・・・」
「テメェなんざこれ一本で十分だ」
「おのれ・・・・・・」

静かに、そして冷静に挑発してくる銀時にアリカは手に持つ金色の剣にグッと力を込める。
しかし銀時もまた、腹の奥底では怒りに満ち溢れている。

「人のガキに手を出しやがって・・・・・・覚悟は出来てるんだろうな・・・・・・」
「あの女の事か・・・・・・ふん、もしや惚れているのか貴様?」
「テメェに言う筋合いなんかねえよ・・・・・・」

あやかを傷付けられた事が彼の逆鱗に触れた様だ。
木刀を突き出して構える銀時にアリカはギロっと睨みつける。

「貴様はナギと何処か似ているな・・・・・・」
「死んだ旦那と見比べられてもこっちは全然嬉しくともなんともねえよ」

互いに対峙して一定の距離を保つ銀時とアリカ。
周りは恐ろしいほど静かだ。聞こえるのは風の音とその風で揺れる木の枝の音。
橋の前に立っている千雨の荒い息。

「銀八・・・・・・」

体を震わせて息を荒げ、この緊迫した空気に耐えられそうにない様子だが、彼から預かった夕凪を持って千雨は懸命に祈る。
ただ一つ、銀時の勝利を

「勝って・・・・・・・いいんちょと私の為・・・・・・みんなの為に・・・・・・!」

夕凪を持つ両手に力を込め、千雨は心から必死に彼の健闘を祈り続ける。
そして

戦いの火蓋が切って落とされた。

「これがわらわ達の・・・・・・! 最後の戦いじゃ銀時ッ!」

右手に持つ金色の剣を構え、アリカは銀時に向かって走ると、銀時もまた無言で木刀を構えて前に突っ込む。

木刀と剣が激しい音を立ててぶつかる。その衝撃に壊れんばかりにきしめく橋、しかし二人に橋が壊れるなどそんな心配する余裕などない。

「貴様が死ぬか、わらわが死ぬか・・・・・・今ここで決するッ!」

鍔迫り合いの状態でアリカは銀時に向かって歯を食いしばって吠える。

白夜叉と金鬼姫。ついに二人の因縁の戦いがここで終結する。













































銀時とアリカの最終戦が始まったちょうど、詠春の自室にいた夕映達は天人達に隠れているのがバレてしまい、押し寄せて来る天人達を入って来させまいと必死に抵抗していた。

「人間だぁッ! この結界が張られてる部屋の中に人間のガキが隠れているぞッ!」
「シャ~ハッハッ! 殺しちまえ~ッ! 地球人のガキは柔らかい肉だから上手いんだぜぇッ!」
「腹減った所だし食っちまおうぜッ!」
「夕映ぇぇぇぇぇぇ!! 私達食われるぅぅぅぅぅ!! このままじゃ朝マック感覚で食われるよぉぉぉぉぉ!!!」

襖の向こう側から聞こえる天人達の会話にハルナが汗を垂らして襖を閉めながら、後ろにいる夕映に叫ぶ。すると彼女は冷静に

「食われたくなかったら絶対にそこ開けないで下さい」
「そんな事言ったって・・・・・・私とハルナの力じゃ防ぎ切れないよ~・・・・・・」

ハルナと一緒に襖を開けさせまいとしている和美が弱気な発言を漏らす。すると夕映はとなりで怯えているのどかの手を取って

「のどか、今の内にこの窓から逃げましょう」
「ゆ、夕映・・・・・・それはちょっと・・・・・・・」
「ハルナと朝倉の犠牲を無駄にしてはいけません」
「「勝手に殺してんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」」

彼女達が死ぬ事は決定事項だと言う風に話す夕映にのどかがどう反応していいか困っていると、汗を流しながら奮闘しているハルナと和美が同時にツッコむ。
しかし夕映は相変わらずスル―して部屋の窓に手を伸ばす。が

「ヒャァァァァァ!!」
「!!」
「きゃッ!」

突然見た事のない様な奇怪な姿をする天人が、窓を割って入って来た。
驚く夕映と怯えた声を出すのどか。二人を見て刀をユラユラと構えながらスキンヘッドのチンピラみたいん天人が舌舐めずりする。
「ヒエッヒエッヒエ・・・・・・窓から入って来て悪いなぁ・・・・・・」
「う・・・・・・」
「恐いよ夕映ぇ・・・・・・」

泣きそうな声を上げるのどかを夕映はかくまうように前に出るも正直彼女自身も恐怖でどうにかなりそうだった。体を震わせながらも“いつも通り”の自分を装う。

「あ、あなたみたいな化け物・・・・・・ぜ、全然恐くも何ともないです・・・・・・すぐにここにあの人達が助けに・・・・・・」
「バカかお前、この部屋に入るにはあの襖開けるしかねえだろ・・・・・・開けたらお前等の仲間より先に俺達の仲間が来るぜ・・・・・・」
「う・・・・・・」

体にまとわりつく恐怖感が拭えない夕映はいつもみたいに素早く口で人をあしらう事が出来ない。
うっすら涙目になって息を荒くする。
恐い・・・・・・生まれて初めて殺されるかもしれない危機感に夕映はその場に崩れ落ちそうだった。

「ひ・・・・・・」
「まずはテメェから殺してやる・・・・・・」

刀をゆらりと振り上げる天人に夕映は懸命に涙をこらえる。

「ゆ、夕映ぇぇぇぇぇ!! あれ?」
「襖の向こう側にいた敵の声が消えた・・・・・・」

襖を閉めていたハルナが目を見開いて叫ぶが和美と一緒にふとある事に気が付く。
さっきまで結界の張った襖を開けようと躍起になっていた天人達の声が消えた・・・・・・

「ゲヘヘヘ・・・・・・死ねぃ・・・・・・」
「た、助けて下さい・・・・・・」

近づいてくる凶悪な天人を前にして、初めて放つ弱気な言葉、そして夕映は震えながら必死に願う。

「死ねェェェェェェェ!!!」
「夕映ッ!」

無情にも天人は刀は夕映に振り下ろす。悲鳴のように叫ぶのどかの声も聞こえず夕映はあの男の姿を思い浮かべ目をつぶり・・・・・・

「助けて下さいッ! 近藤さぁぁぁぁぁんッ!!!」





























その時ハルナと和美が閉めていた襖がいとも簡単に蹴破られた。

「「うわぁッ!!」」
「な、なんだ?」

暗闇の部屋に差す一筋の光、今まさに夕映を殺そうとした天人は思わずそちらに目を向ける、だが次の瞬間。

「き、貴様は・・・・・・・! おげぇッ!!」

目にもとまらぬ速攻、天人はいきなり部屋に入って来た“男”により一瞬で首を刀で飛ばされた。
天人の最期の叫び声に夕映はハッと目を開ける。
するとそこにいたのは・・・・・・・

「あ・・・・・・」
「約束したからな」

侍の魂である刀を鞘におさめ。
土方や沖田と同じ服装。
夕映よりずっと背が高く屈強な体。
そして表裏も無い優しそうな微笑みと、まっすぐな目。

「助けを呼んだら俺はどこからでも駆けつけるってな」
「こ、近藤さん・・・・・・」

夕映が唯一心おきなく接する事のできる異性。
真撰組局長、近藤勲の登場だった。
彼が目の前に現れたとわかった途端、緊張がほぐれたのか目から出る涙も気にせずに、夕映は泣きながら彼の腰に抱きついた。

「来てくれるって・・・・・・絶対来てくれるって信じてました・・・・・・」
「恐い思いさせて悪かったな、本当はもっと早く来れたんだが・・・・・・」
「いいんです・・・・・・あなたが来てくれた事だけで私はもうそれでいいんです・・・・・・」

抱きついて来た夕映の頭を手でポンポンと叩きながら謝る近藤に、夕映は嗚咽しながら嬉しそうに呟く。
夕映の後ろにいたのどかも彼女の姿を見て安堵したように微笑むが、ハルナと和美はいきなり出て来た近藤に唖然としていた。

「こ、近藤さん・・・・・・夕映の言う通り本当に来たよ・・・・・・」
「なんでゴリラみたいな人と夕映が抱き合ってるの・・・・・・・何コレ?」
「朝倉も変だと思うわよね、やっぱり夕映とあの人じゃ・・・・・うおッ!」
「どうしたのハルナ? ひゃあッ!」

二人で近藤と夕映の事で会話しながらふと襖の開いた後ろに振り返ってすっときょんな声を上げる。
そこにあるのはさっきまでここをこじ開けようとしていたと思われる三人の天人の無残な姿であった。
既に息は無く、三人共々刀で斬りつけられた跡がある。
もしや目の前にいる男が宇宙海賊の三人を相手に・・・・・・

「さて、再会の喜びに浸っている場合じゃねえんだった。夕映ちゃん、ちょっくら仕事して来るわ」
「ぐす・・・・・・仕事ですか・・・・・・?」
「なあにすぐ終わるさ、俺達真撰組が下衆な奴等に遅れは取らんよ」

そう言い残して近藤はまだ泣いている夕映を離し、腰に差す刀を握って優しい顔からキリッと目つきを鋭くさせて指揮官の顔になる。
まだ驚いているハルナと和美の二人を横切り、部屋から出た近藤は大広間を見渡せる高台に立って深呼吸して・・・・・・

「一人残らず討ち取れぇいッ!!!」
「「「「「オォォォォォォォォ!!!!」」」」」
「うわぁッ! ひ、土方さん達と同じ服装の人が一杯ッ!」
「どういう事コレッ!? どういう事コレッ!?」

恐る恐る顔を部屋の外に出したハルナと和美が見た光景は、土方や沖田や近藤と同じ真撰組の服装をした集団が天人達と戦っている姿だった。
あまりにも急な出来事にハルナと和美がパニくっていると、近藤は振り返らずにフッと笑う。

「安心しろ俺達は助っ人だ、真撰組はか弱き民衆を護る為の組織、異世界だろうがそれは変わらん」

ゆっくりと語った近藤にハルナは頬を引きつらせて一歩下がる。

「え・・・・・・なにこのゴリラ・・・・・・最初会った時とキャラ違うじゃん・・・・・・気持ちワル・・・・・・・」
「いやちょっと何それッ!? なんでいい事言ったのに気持ち悪いって言われなきゃいけないの俺ッ!? ていうかゴリラじゃないしッ!」
「あ、それだわ」
「それだわって何ッ!?」

何故かハルナにドン引きされたので、さっきとは打って変わって慌てた様子で近藤は振り返る。だがその反応にハルナはホッとしたように一安心。

彼女にとってこっちの姿の方が『近藤勲』というキャラクターなのだから。


























































一方、思わぬ援軍が現れた事に一番驚いているのは彼女達では無い。
同じ真撰組隊士である土方十四郎その人であった。

「な、なんでテメェ等がここに来てんだァァァァァ!!!」
「元副長ッ! お久しぶりですッ!」
「元副長ッ! 久しいッスねっ!」
「元副長ッ! 髪切った?」
「誰が元副長だ現副長だボケッ! テメェ等まとめて切腹にしてやろうかッ!!」

戦いながらも嬉しそうに笑いかけて来る隊士たちに土方は唾を飛ばしながら叫ぶ。すると後ろにいる沖田がポンと彼の肩に手を置いて。

「まあまあ、落ち着いて下さいよ“元土方さん”」
「元土方ってなんだよ・・・・・・未来永劫、輪廻転生後も俺は土方一本だ・・・・・・・」
「それでも元副長ってのは変わらないんですけどね、何て言ったって俺が副長ですから」

親指で自分を指差す沖田を見て土方はタバコに火を付けながら深いため息を突く。

「やっぱテメェの入れ知恵か・・・・・・ていうか何であいつ等がこの世界に・・・・・・」
「ああ、俺が呼んだんです」
「なんだと・・・・・・・?」
「実は俺達の世界で大人数を運べる巨大な転移装置を作りましてね、それでコイツ等こっちに来たんでさぁきっと」
「お前俺になんの報告もせずにコソコソとそんな事してやがったのか・・・・・・」
「何言ってんですかぃ、どうして現副長のこの俺が、いちいち元副長のアンタに報告しなきゃいけねえんですかぃ」

しれっとした表情で話す沖田に土方はタバコの煙を吸いながらイライラしたように髪を掻き毟る。

「俺がこの状況から生きて江戸に帰ったら、絶対お前隊長に戻れよ・・・・・・もしくは腹斬れ」
「生き残れたらですけどね、まだ勝てるかどうかもわかってないですぜ土方さん?」
「生き残れるに決まってんだろ」
「後ろから俺が土方さんの背中をグサって」
「お前が言うとマジに聞こえるから止めろ・・・・・・」

カオスな会話を終えた後、土方はタバコの煙を吐きながら沖田と一緒に敵陣に刃を向ける。

「真撰組だ、悪いが縄かける余裕なんざねえ、一人残らず殲滅させてやる」
「泣く子も黙る武装警察の総出で歓迎されるなんて中々ねえぜ。ラッキーだなお前等、みんな仲良くあの世に行けるぜぇ・・・・・・」
「な、なめやがって・・・・・・」
「援軍が来たからって調子に乗るんじゃねぇぇぇぇ!!」

10人はいるであろう春雨の兵隊が一斉に土方と沖田に襲いかかる。
その時、二人は笑みを浮かべ刀を妖しく光らせた。

「どっちが何人斬れるか勝負するか総悟・・・・・・!」
「いいですねぇ、それでどっちが上なのかその身に教えてやりまさぁ・・・・・・!」

突っ込んで来る軍勢に土方と沖田は真っ向に挑む。

春雨対真撰組。異世界を超えた二つの勢力が今まさにぶつかる。







[7093] 第六十三訓 ただ愛ゆえに
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/14 18:26
近衛家の屋敷の大広間は現在、豪快な嵐が巻き起っている。
援軍として参戦した真撰組達の介入により状況は一変。
近藤率いる血気盛んな隊士達に春雨の天人達は苦戦を強いられていた。
しかも真撰組だけではなくあの男の姿も・・・・・・

「死ねぃッ! 虫ケラ共ッ!」
「「「ぎやぁぁぁぁッ!!」」」
「おおッ! さすがとっつぁんだッ!」

左手に持つショットガンで三人の天人を撃ち殺す、まるで極道の様な風貌とグラサンを付けた男。
近藤達真撰組を組織した人物であり、彼等をここに連れて来た本人、松平片栗虎だ。
敵陣突破して豪快に天人達を切り刻みながら、近藤はとっつぁんの姿を見て驚く。
しかしとっつぁんは不満げに鼻を鳴らした。

「こんな奴等の相手するよりオジさんはあそこにいる綺麗なネエちゃん達を相手にしてぇよ、一人ぐらいケツ触ってもバレねえかな?」
「アンタ本当に警察?」

目の前で戦っている屋敷の女中達を眺めながら警察にあるまじき行為をしようかと考えているとっつぁんに近藤は軽くツッコむ。

「これが終わったら俺が一緒に飲んでやるよ」
「なんでお前みたいなゴリラのツラ見て酒飲まなきゃいけねえんだよ、酒がマズくなるだろうが」
「ぐはぁッ!」

悪態を突きながらとっつぁんは目の前にいる天人に向かって躊躇なくショットガンを放つ。天人の頭は一瞬で吹き飛び、周りの仲間もとっつぁんの存在に段々怯え始めた
それを見てとっつぁんは休憩とばかりにタバコを一本取り出して優雅に吸い始め、後ろにいる近藤に振り返らずに突拍子もない話を始める。


「ところで近藤、テメェが連れ込んだ四人の一般市民、どっか行っちまったぞ」
「何ッ! マズイな俺達と一緒に行動しろってちゃんと言ってたんだが・・・・・・」
「そして近藤、オメーいつになったら結婚するんだ? 三十路近えんだからさっさと所帯を持て」
「そっからその話にいく普通ッ!?」

いきなり唐突に話の内容が変わった事に近藤がツッコミをいれるがとっつぁんはお構いなしに話を続けた。

「で? どうなんだ?」
「悪いけどまだそんな予定はねえよ・・・・・・お妙さんが全然その気じゃねえんだ」
「いやお前結婚以前に付き合ってもねえじゃねえか、むしろ汚物の対象して見られるぞあの子に」
「違う、お妙さんは自分の心に素直になれずに俺の前に巨大な壁を作ってるだけだ。それを俺が愛という名の熱い拳でブチ壊す」
「近藤、その壁よく見ろ、テメェの拳を串刺しにする毒を仕込んだ剣山が突き出てるから」

後ろで奮闘している近藤にさらりと返してとっつぁんはタバコの煙を天に向かって吐く。

「オメーはどうしてそんなにオジさんを困らせるんだ」
「ヒャーッ! 仲間の仇だぁッ!」
「うるせえ」
「ぎッ!」

そして上を向いたまま近づいて来た天人を見向きもせずにまた撃ち殺す。悲鳴を与える隙も残さず瞬殺だった。
とっつぁんは銃を下ろして耳の後ろを掻きながらどうしたもんかと悩む。
こんな状況よりも近藤の未来の方が心配なのだ。
このままだと彼がずっとお妙を追い求めていると一生独身の可能性がある。ていうか確実だ
親の様な存在のとっつぁんはため息交じりに彼の方に振り返る。

「諦めろ近藤、きっとまだ地球にはお前の事を好きになれるという悪趣味な女もいる・・・・・・」

近藤の方に振り返った直後、とっつぁんは思わず口からタバコをポロっと落とした。
おかしな光景が視界に入ったからだ。

「おいゴリラ・・・・・・」
「ああもうとっつぁんッ! 結婚の話はまた今度にしてくれよッ! 状況わかってるッ!?」
「いやまずお前の状況の方がオジさん気になっちゃうんだけど?」
「え? どういう意味それ?」

こっちを見ずに次々と天人を斬っていく近藤を見て、とっつぁんは彼に向かって指差しながらポツリと呟く。

「お前の背中、座敷わらし憑いてるぞ」
「座敷わらし? とっつぁんこんな時に変な冗談止めてくれよ、ハハハ」

いきなりおかしな事を言うとっつぁんに近藤は振り向いて苦笑いした後、一応自分の背中の方に顔を向ける。
するとそこには・・・・・・
















何時の間にか自分の背中に張り付いていた夕映の姿が合った。

「アレェェェェェ!? 何でユエユエ俺の背中に憑いてんのッ!? 軽くて全然気付かんかったッ!」
「あなたにくっついていると落ち着くので」

こちらに向かって驚いた様子で叫ぶ近藤に夕映は無表情で問題なさそうに口を開く。
恐らくさっき前に近藤が彼女を助けた時に取り憑いたのだろう。

「お気になさらず続けて下さい」
「いや気になるからッ! なんでこんな血飛沫舞う戦場で隊のリーダーが背中に座敷わらし背負って戦わないといけないのッ!? 早く下りなさいッ!」
「イヤですぅ」
「あらヤダこの子ッ! なんかヤモリの様に背中に張り付いて取れないッ!」
「なんでお母さん口調なんですか」

上着に張り付く夕映を近藤は必死に振り落とそうとするも彼女は一向に離れる気配は無い。敵と戦いながらそんな事をしている近藤を見てとっつぁんは顎に手を当てて顔をしかめる。

「おいゴリラ、そのミッフィーみたいなちっこいガキ誰だ? まさかお前モテないからって遂に法を破る様な真似を・・・・・・」
「いやとっつぁん誤解だッ! 俺とこの子はただの・・・・・・・」

背中に張り付く夕映をとっつぁんの方に見せながら近藤が焦り顔で説明しようとする。
しかしその前に彼女がとっつぁんの方に顔を前に出して・・・・・・

「ただの夫婦です」
「何ィィィィィィィ!! この腐れゴリラッ! テメェなんで俺に隠してたァァァァ!!」
「ちょっと変な冗談は止めてぇぇぇぇぇぇ!!! このオジさん冗談通用しないからァァァァァッ!」

あまり驚くリアクションが取らないとっつぁんが、夕映の電撃発言に口を開けて叫ぶ。
後に彼女の発言により真撰組の中で大問題が発生するのだが、それは“もう少し”先の話であった























































夕映を背負った近藤ととっつぁんが戦いそっちのけで別の話題で話しあっている頃、未だ戦闘中の土方は援軍が来た事によって俄然やる気が出て来た。
さっきまで疲労の影が見えていたも、高まる士気と共に何時の間にか疲れも吹っ飛んでしまう。

「ぐあぁッ!」
「二十六ゥッ!」
「ぬべぇッ!」
「二十七ァッ!」

次々と斬り伏せていく春雨の天人達の返り血を浴びながら、土方は何人斬ったかを数えている。その形相はまるで鬼の様だ。

「あふぅッ!」
「二十八ィッ!」
「フフ、仲間が来た途端、刀のキレが上がりましたね」
「うぎゃぁッ!」
「へ、そういうアンタも随分と派手に暴れ回るじゃねえか」

近くで戦っている詠春から言葉を貰うと土方は口元に笑みを浮かべて返す。
既にこの二人によってかなりの敵がやられている。
詠春は突っ込んできた敵を一太刀で斬った後、彼に向かってフッと笑いかけた。

「私も熱くなってしまったんですよ、絶望的な状況に味方が来てくれたんです、これほど心強い事はありません」
「熱くなりすぎて無茶するなよ、アンタもいい年なんだろ」
「なんのなんの、これを機会に現場復帰を考えるぐらいまだイケますよ」

楽しげにそう言うと詠春は後ろからやってくる敵の気配に気付いて、瞬時に振り返って一閃。そのまま土方を置いて敵陣に斬りかかる。
確かに剣の腕はかなり高い。自分の所の組織に欲しいぐらいだ。
華麗な剣撃を見せる詠春を見ながら土方はそんな事を考えていると、横から不穏な気配が・・・・・・

「三十ッ!」
「ぬおぉぉぉぉぉ!!」

いきなりこちらに向かって突き出して来た仲間である沖田の刀を土方は慌てて後ろに飛んで避けた。すると沖田は悔しそうに舌打ち。

「惜しい・・・・・・」
「何が惜しいだテメェェェェェ!!! 俺じゃなくて敵を斬れッ!」
「いや、記念すべき三十人目は土方さんって決めてたんですけどねぇ。しょうがない、土方さんは五十人目にしまさぁ」
「お前にだけは背中絶対任せねえからな・・・・・・」

爽やかな顔で腹黒さを露出する沖田に対して土方が苦々しい顔を浮かべていると・・・・・・

「呑気に喋ってんじゃねえッ!」
「何ッ!」

後ろから来る本物の殺気、慌てて振り返るとそこには猿、豚、河童の姿をした三人の天人が同時に刀を掲げてこちらに飛びかかって来る。
仲間の援護が来たという安心感のおかげでほんの少し警戒心を解いていた所に思わぬ強襲。
自分の油断が招いた事に土方は顔を苦ませながら、慌てて飛んできた天人を刀を斬り落とす。

「テメェ等なんぞに殺されるかァッ!」
「「ぐえぇッ!!」」

二人は斬った、しかし三人目の猿の天人は他の二人より知恵と実力があったのか土方の一閃を避けて横に回り、瞬時にまたもや彼の背中を取る。

「早い・・・・・・!」
「土方さんッ!」
「ここでくたばりやがれェェェェ!!!」
「チィッ!」

笑いながら刀を振り上げる天人に土方は首だけ後ろに振り向いて目を見開く。
他の敵と戦いながら沖田は思わず彼の名を叫んだ。しかし叫び声だけでは彼を助けられない。

こんな所で無様に死ぬのか?
土方がそう覚悟した時。

























「はあッ!」
「がぁ・・・・・・!」
「な・・・・・・!」

殺しにかかって来た天人が目の前で真っ二つに両断された。
一瞬の出来事に土方は我が目を疑う、詠春や女中達、他の隊士達もあっちで戦っているし、沖田も目の前で別の敵と戦っている。
だが自分を殺しにかかって来た天人は今、刀によって斬り伏せられた。
ここに残る事を許可しなかった筈の彼女によって

「・・・・・・」
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
「どうしてテメェがここにいる・・・・・・」
「これで私も・・・・・・地獄行き決定ですね・・・・・・・」

ゆっくりと土方は後ろに振り返る。そこには息を荒げながら血が滴り落ちている刀を持ち、顔についた天人の返り血を、刀を持ってない方の腕で拭う刹那の姿があった・・・・・・・。

「なんでここに戻ってきた・・・・・・お前はあの小娘を助けに・・・・・・」
「迷いましたがお嬢様の救出は桂に託しました、彼等と共に行くより、私は土方さんを護る為にここに・・・・・・」
「バカヤローが・・・・・・」

申し訳なさそうに項垂れる刹那の顔を見て土方は顔を手でおさえる。
こんな事自分は望まなかった。

「例え天人だろうが、お前がさっきやった事は人を斬った事となんも変わらねえんだぞ・・・・・・」
「でもそうしないと・・・・・・土方さんを護れませんでした・・・・・・」
「・・・・・・」
「危なっかしいんですよ本当、なりふり構わず私達の盾になって傷付いて・・・・・・のどかさんにコレ以上心配かけてどうするんですか・・・・・・」

項垂れたまま刹那が言った言葉に土方は難しそうな表情をしたまま黙りこむ。
確かに今、彼女の力によって護られた。
自分が護るべきだと思っていた彼女に・・・・・・・

「だから決めたんです」

顔を土方の方に上げて、刹那は決意が込められた目で彼を見る。

「あなたと同じ場所に立ちたい」
「刹那・・・・・・」
「その為なら地獄だろうがなんだろうが、あなたの駒となり従います」

紛れもない本気の表情だった。ジッとこちらの目を覗く少女の目。
まだ年端もいかない彼女にこんなにも信頼されている、そんな事に土方は頭を掻き毟りながら疲れた表情で彼女を見下ろす。

「ここまでオメーがバカだとは思わなかった・・・・・・」
「すみません、けど私、お嬢様や土方さん、他のみんなを護れるなら『人斬り』と呼ばれようが構いません」
「言ってる事わかってんのかお前?」
「バカにしないで下さい」
「・・・・・・ハァ~」

ムッとした表情でキッパリと言う刹那に対して土方はため息を突く。

「仕方ねえ、考えたってお前はもう極楽には行けねえだろうしな・・・・・・」
「・・・・・・そうですね」
「刹那」
「はい」

名を呼んだ後、土方は彼女の前に一歩出る。
遠くを見渡すとまだまだ敵は残っている、一刻も早く殲滅させなければ・・・・・・。
土方は敵の方に刀を構えて、刹那に向かって振り返らずに口を開く。

「これからはもっとコキ使ってやるから覚悟しろ」
「・・・・・・はいッ!」

初めて自分を頼ってくれた土方に刹那は嬉しそうに頷く。しかし次の瞬間。

「土方さんッ!」
「ん? うおっとッ!」

後ろから刹那が叫び声を上げたと同時に土方めがけて大量のクナイが飛んでくる。
彼女の声でいち早く気付けた土方はすぐに刀で飛んでくるクナイの方を向いて全て叩き落とした。

「危ねえ危ねえ・・・・・・・」
「フン、仕留めそこなったか」
「テメェはッ!」

ツカツカとこちらに向かって足音を立てて近づいてくる者に土方はすぐに刀を構え直す。
周りの天人とは全く違う匂いのする男、自分達と同じ人間だ。
刹那は彼を睨みつけてチャキっと刀を構える。

「服部全蔵・・・・・・!」
「よう」
「お前もここに来ていたのか・・・・・・」

陽気に笑いかけて来る男の正体は、服部全蔵。
青いコートの下からクナイを大量に取り出し、刹那、土方と対峙する。

「高杉の命令で天人共の助っ人として遊びに来てね、ま、俺ぁコイツ等(天人)嫌いだからさっさと終わりにして千草の所に帰らして貰うぜ」
「上等だ何度も邪魔しやがってッ! テメェなんざ俺が直々にぶった斬って・・・・・・!」
「待って下さい土方さん」
「あん?」

刀を掲げて土方が全蔵に向かって血気盛んに叫ぶと、刹那が彼の前に出て手を上げて制止する。

「この男は私一人でやります」
「は? バカ言ってんじゃねえ、お前コイツに何度ボコボコにされてるかわかってんのか? まさかまたその高杉から貰った刀でおかしくなって勝とうとか考えてんじゃねえだろうな・・・・・・」

またもや自分一人で全蔵と戦うと言う刹那に土方はウンザリした表情で止めさせようとする。だが刹那は彼の方へ向いて首を横に振った。

「死装束の呪いにはもう絶対に負けません」
「何だと?」
「それだけは信じて下さい、私があなたを信じる様にあなたも私の事を」
「・・・・・・」
「迷いもためらいも全て吹っ切れました、悩んでばかりでウジウジしている私はもうここにはいません」

凛とした表情でこちらに頷いてくる刹那の目を土方はジッと眺める。
恐らく彼女がこの先自分の後をついていくと決めたのなら、もう普通の少女としては生きて行けないだろう。
戦いに明け暮れる血生臭い舞台を見て生きていかなければならない。
しかし彼女の目はそれも百の承知と言わんばかりに輝いていた。
自分に想いを告白してくれたあの少女の様に・・・・・・・。

「刹那」
「土方さん」

こちらの目を見て答えを待っている刹那に、土方は彼女の表情を見てゆっくりと頷いた。

「死ぬんじゃねえぞ」
「・・・・・・はい」

その言葉は戦って来いという意味、刹那は彼に頷き返すと踵を返して全蔵の方に向き直る。
その間に土方は彼女に背を向けて、向こうで戦っている沖田達の援護をしに走り去った。

刹那と全蔵の周りにはもう誰もいない。

「待たせたな・・・・・・」
「いや待たせ過ぎだ・・・・・・やっぱりお前一人で俺の相手すんのか?」
「そうだ」
「あのな・・・・・・」

やれやれと髪を掻き毟ると、全蔵は手に持つクナイをプラプラ揺らしながら刹那に向かって口を開く。

「何度やったって、お前一人じゃ俺に勝てねえんだよ、それともあの化け物状態にでもなるか? そうすりゃ勝てるかもな、ヘヘヘ」
「確かに私は今までお前に何度も醜態をさらした、それは認める。だが」
「!!」

突如刹那の背中から生えた大きな二つの翼に全蔵は思わず一歩引く。
前見た時は黒き禍々しい翼だった。しかし今は

真っ白に輝く美しき翼となっていた。

「修羅の道をあの人と共に突き進むと決めた今、私はもう二度と歩くのを止めない」
「ほう・・・・・・」

翼を広げ、死装束を構える刹那の威風堂々の姿を見て全蔵はニヤッと口元に笑みを浮かべる。

「やっとお前と“本当に”戦える気がするぜ、前もいいツラ構えだったが今はもっといいツラしている、醜面だったら口説いてるかもしれねえな」

今までの彼女とは別人の如き姿に、全蔵は初めて彼女の事を“好敵手”として認めた。
この戦い、決して避けられない。

「決着を着ける。最後の勝負だ、服部全蔵」
「来な、俺の全てを持って歓迎してやるぜ」

互いに自分が頼るべき得物を構えて対峙する。
二人の向こう側では天人や真撰組達ががむしゃらに戦っている姿があった。
しかし二人にはもはや関係無い。

ただ目の前の相手を決着をつける事だけに集中する、それだけが全て。






















第六十三訓 ただ愛ゆえに
























因縁があるのは刹那と全蔵だけではない。
別の場所でもとある男女が決着を決める為に戦っていた。
深く大きい谷底を繋ぐ為に作られたのだろうが、今は老朽化の進んでいる木製の橋。
こんな橋の上で暴れては何時壊れてもおかしくない。
だが二人は戦う、一人は仲間の力を、もう一人は己の力のみを信じて。
銀時とアリカ、最終戦は次第に激化していく。

「銀時ィッ!」

橋の上という足の不安定な場所で、アリカは全く関係無く銀時に剣撃をお見舞いする。
その一撃一撃は完全に彼を殺す事に力を注がれていた。
常人の人間ではあっという間に横にスライスされるであろうアリカの一閃。だが銀時はそれを一歩後ろに飛んで凌ぐ。ほんのちょっぴり反応が遅れていたら間違いなく死んでいた。

「この女・・・・・・!」
「ふん」
「オラァッ!」

一歩後ろに飛んだ後、すぐにまた銀時はアリカに襲いかかる。
手に持つ木刀を振りあげ、兜割りを彼女に向かって振り下ろした。
アリカはそれをすぐに片手で持つ剣で防ぐ。しかし銀時の斬撃は重く、二人を支えている橋からミシミシと壊れそうな音を立ててアリカは少し沈む、橋は今にも壊れそうだ、だが戦いに集中している二人はそんな事一切気にしていない。
ただ一撃一撃に全身全霊を込め刃を振るうのみ。

橋の前で二人の戦いを見ている千雨は、彼から預かった夕凪を握りしめて必死に彼等の動きを目で追う。

「一体どっちが優先なのかわかりやしねえ・・・・・・」

平凡な生活をずっと生きていた少女にとって、生死を賭けた戦いを見る事などそうそう滅多に無い。
思えば銀時に出会った時から自分の人生の歯車は勢いよく狂い始めた。
しかし彼と触れ合った事に千雨は後悔などしていない。
生きる事の本当の楽しさを彼は教えてくれた。

「勝て銀八ッ! いいんちょを救う為にッ!」

聞こえるかどうかはわからないが千雨は夕凪を握りしめながら心の底から願うように叫ぶ。
目の前では銀時とアリカの激しい接戦。木刀と剣は何度もぶつかり合い、お互い歯をむき出して仕留めようと目が血走っている。
そして木刀と剣が勢いよくぶつかった所で、銀時とアリカは両手に得物を持ってつばぜり合いを始める。

「何故貴様は戦う度に強くなる・・・・・・! 最初剣を交えた時はわらわの方が圧倒的に・・・・・・!」
「俺が強くなってんじゃねえ、テメェが弱くなってんだ・・・・・・」
「なんじゃと・・・・・・・!」
「迷い怯えた剣なんかじゃ・・・・・・一生かかっても俺には勝てねえよ」
「何を根拠にッ!」

両手に力を込めてアリカは剣で銀時と木刀ごと空中に弾き飛ばす。
銀時は難無く空中で後転して橋の上に着地。すぐにアリカの元へ再び走り

「喧嘩は刀だけでやるもんじゃねえんだぜッ!」
「くッ!」

突っ込んできた銀時が仕掛けた技はなんと前蹴り、まさかの体術にアリカは少し驚くも、すぐに剣でそれをガードする。だが銀時は蹴りをガードされたと同時に右手に持つ木刀に力を込める。

「コイツをどうだッ!」
「効くかそんな棒きれッ!」

こちらに向かって突き出して来た木刀をアリカは身を屈めて間一髪で避け

「調子に乗るなッ!」
「うおッ!」

腰を屈めたままそのまま体当たりをお見舞いする。一本足で立っていた銀時はバランスを崩し、そのまま後ろに仰向けに倒れ、アリカはすかさず彼の上に乗って馬乗り状態になる。
息を荒げながら冷たい目で見下ろしてくるアリカに、銀時は不利の状況にもかかわらず苦笑いをする。

「俺は人妻に押し倒される趣味はねえんだけどな」
「まだ余裕を持っているとはの・・・・・・」

冷徹な視線を送った後、アリカは右手に持った剣を銀時めがけて振り上げる。

「苦しみも与えず一瞬で済ませてやろう・・・・・・」
「銀八ッ!」

アリカに乗られて身動きが出来ない状況の銀時を見て千雨は思わず彼の元に行こうと足を進めようとする。だが

「来るんじゃねえッ!」
「でも・・・・・・!」
「ったく落ちたらどうすんだよ・・・・・・」
「え?」

全く殺される事を恐れていない様子で喋る銀時に千雨は口をポカンと開けた。そしてふと彼の言葉が少々頭に引っ掛かる。

落ちたらどうする・・・・・・・?

「なあ母ちゃんよ」
「・・・・・・・」
「ちいとばかし揺れるぜ、しっかり掴まってな」
「なッ!」

何時の間にか銀時の左手は橋を固定する為に何本もあるロープの一本を握っていた。
彼の首めがけて剣を振り上げていた状態でアリカはそちらの方に目を向ける。

「まさかッ!」
「言っただろ」

ニヤリと笑ったまま銀時はぐっと握ったロープに力を込める。
そして

「喧嘩は刀だけでやるもんじゃねえッ!」

引っ張った瞬間ブチッと音を立ててロープは簡単に切れる。その瞬間、バランスを失った橋がガタンと勢いよく左に傾き、刀を持っていたアリカもグラグラと揺れる橋に思わずバランスを崩しだす。

「おのれッ! 小癪な真似を・・・・・・はッ!」

その隙を見逃さず、銀時は瞬時に上体を上げて木刀を近距離にいるアリカに振り上げる。
すぐに顔を下げて木刀を避けるが、今度は銀時の左腕が首に向かって伸びてくる。

「ぐッ!」
「絶望的な状況こそに最大の勝機はある」
「がはッ!」
「ガキの頃、俺がある男に教わった言葉だ」

一気に首を絞めに掛かって来る銀時にアリカの顔には焦りと苦痛の色が同時に窺える。
このままではマズイ、そう察したアリカは、力任せに彼の左腕を引き離してすぐに立ち上がって引き下がる。銀時も彼女は立った瞬間にバランスの悪い橋にすぐに立った。

「仕留めそこなったな」
「ゲホッ!ゲホッ! 奇抜な戦法の次は大胆な力技・・・・・・よくそんな事を咄嗟に考えれるものじゃ・・・・・・」
「慣れてるんでね」

首を押さえながら咳をするアリカに銀時は耳の穴を小指でほじりながらフッと鼻で笑う。
攘夷戦争時代に白夜叉と称された侍、坂田銀時にとってこんな戦法朝飯前であった。

「こちとら死にたくねえんだ・・・・・・・お前だってそうだろ・・・・・・」
「死が恐いだと・・・・・・? ふ、生憎、わらわにそんな感情とうに無い」
「何?」
「もうこんな世界に用など無い、正直、貴様に殺されて死ぬのも悪くないと思うておるのじゃぞ?」

冷たい表情でボソッとアリカが呟くと、銀時は木刀を下げた状態で彼女に一歩だけ歩み寄る。僅かに怒りの色が見えた

「マジで言ってんのかそれ・・・・・・」
「当然じゃ」

銀時の問いかけにアリカは静かに剣を構える事で答える。
まだ戦う気らしい

「貴様と戦って死ぬ、例え貴様に勝ってもここで自害する気じゃ、もう生きる意味も無い・・・・・・ならばわらわはここで死を選ぶ」
「そんな・・・・・・・」

本気の表情で平静に言うアリカに銀時の後ろで見守っている千雨は彼女に対して悲しそうな表情になる。
自ら死ぬ事を望んでいるなんて・・・・・・
銀時はアリカの前にもう一歩前に出る。

「・・・・・・ネギの奴はどうする気だ・・・・・・・」

冷静に言いながらも少し言葉に震えがある、彼女の自分勝手な考えを聞いたせいで。
刺す様に睨んで来る銀時。しかし彼に対してアリカは唇を噛みしめた後、意外にもニヤッと笑った。

「あの子はもう助からないに決まっているじゃろ」
「テメェ・・・・・・」
「夜王、神威、阿伏兎、高杉、春雨の軍隊。これらを相手にするのに貴様等の軍勢だけでは到底足元にも及ばん、もう決まっておろう、あの子が二度とこの世に戻って来れない事を」
「それでも親か・・・・・・」
「親じゃと・・・・・・?」

揺れ動く橋の上でバランスを取りながら、アリカは銀時に対して。

嘲り笑いを浮かべた。

「あの子の親などもう何処にもおらぬ」
「!!」
「父親は自らの存在を取りこんだ男に殺されたしの。母親はこのザマ、死んでるも同然じゃ」

遂に親としての感情も捨てた。
自暴自棄に陥っているアリカに銀時は全身を震わせる。

「アイツの事も考えないで勝手にほざきやがって・・・・・・・」

一歩ずつしっかりと踏みながら、銀時は目の前に立ちはだかるアリカに近づいて行く。

「アイツの代わりに・・・・・・俺がテメェをぶん殴る」
「銀八・・・・・・」

感情を押さえながら銀時がアリカの方に歩いて行くのを見て、千雨は思わず彼の背中に向かって名を呟く。
終わりが近づいているの悟ったように

「女だからって手加減しねえ・・・・・・・親の道を踏み外した外道のツラに・・・・・・思いっきり入れてやる・・・・・・」
「・・・・・・」

木刀を持って歩いてくる銀時にアリカは剣を構えた状態で対峙する。
冷たい目つきと笑みを浮かべて

「無理じゃな、わらわの最期の舞台無惨に散るのは貴様の方じゃ」
「やれるもんなら・・・・・・やってみやがれェェェェェ!!!」

片手に持つ木刀を振りかぶった状態で銀時は叫び声と共に突っ込む。
対峙するアリカも彼に向かって剣を振りかぶって走る。

次の瞬間、壊れかけた橋が激しく振動するほどの衝撃波が二人の間から発生する。
金色の剣と木刀は全く互角の力でぶつかり合っていた。

「テメェはアイツの母親だろッ! なんで助けれるって信じねえんだッ!」
「わらわはもう母親ではないと言ったであろうッ! わらわは金鬼姫ッ! ただ機械の様に数多の敵を手にかける殺人鬼ッ! それ意外にもう何も無いッ!」
「うるせえッ!」

ガキィンという鈍い音と共に両者の得物が同時に弾かれる。つばぜり合いから一転、銀時とアリカは息をする隙も無いほどの激しい剣撃戦を始めた。

「例え聖人だろうが極悪人だろうが親は親だろうがッ! お前少しはアイツの気持ちをッ! 親として息子のあいつの気持ちを理解しようと思った事はねえのかッ!」
「知った風な口を叩くなッ! 貴様に何がわかるッ!」

火花を散らせながら銀時とアリカは得物を振るう。己の本当の気持ちと共に、己の伝えたい事共に。

「アイツから逃げんじゃねえッ! 例えテメェが血に汚れていようが・・・・・・そんな事で親を見捨てる様な腐った奴じゃねえんだよアイツはッ!」
「黙れッ! 罪人の母親なんて息子にとっていない方がマシじゃッ!」
「それはテメェの勝手な考えだろうがッ! アイツに直接聞いたのかそれッ!」
「!!」
「何もわかってねえのはテメェなんだよッ!」

上へ下へと木刀と剣を何十回も交えながら銀時はアリカに目をむき出して怒鳴る。

「つまんねえ意地張ってアイツから逃げるのはもう止めろッ! アイツは親の顔さえ覚えてねえッ! 親の温もりさえ覚えてねえよッ! けどなッ! どんな奴だろうが親ってのは大切な存在なんだよッ!」
「黙れと言っているであろうッ!」

感情のままにアリカは剣を両手に持って力を注ぎ、銀時の頭に振り下ろす。
銀時はすぐに両手で木刀を持って防ぐ。しかし彼女の一撃はかなりの重さだ。
苦しそうに歯を食いしばってその攻撃に耐えながら銀時はアリカの方に顔を上げる。

「親がいない子供の事、テメェは考えた事あんのか・・・・・・・」

圧し掛かって来る重圧に銀時は耐えながら彼女に向かって話しかける。

「父ちゃんと母ちゃんと手を繋いで楽しそうに笑ってる自分と同い年ぐらいの奴を・・・・・・羨ましそうに眺める事しか出来ない子供の事・・・・・・考えた事あんのか・・・・・・」

徐々にアリカの剣を上に押し上げながら銀時は彼女を睨みつける。

「母ちゃんに抱きしめられたくても抱きしめてもらえない子供の気持ちを・・・・・・テメェは考えた事あんのかァァァァァ!!!!」
「黙れェェェェェ!!!!」

後ろにいる千雨にも聞こえるほどに吠える銀時にアリカは自分の手元に剣を引く。そして一瞬で彼の腹にめがけて

「終わりじゃッ!」
「うぐぅッ!」
「ぎ、銀八ッ!」

銀時は自分の腹に強烈な痛みが走るのがわかった、その拍子に手に持っていた木刀を離してしまう。
アリカの剣が自分の腹を思いっきり貫いたのだ。
しかし銀時は痛みに耐えてまだ彼女を睨みつける。

「親の仕事は親となった時から死ぬまであんだよ・・・・・・・! 道を歩くのはアイツだ・・・・・・けどそれを見守るのは親の仕事だッ!」
「貴様、腹を貫かれてもまだ・・・・・・!」

腹を思いっきり貫かれているにも関わらず銀時は貫く剣を抜く所か、逆にアリカの方に歩み寄って行った。腹や口から滴り落ちる血を気にせずに銀時は驚いて動けないアリカだけを見つめる。

「テメーの所の息子はまだちっこいガキだッ! せめて・・・・・・アイツが親になる瞬間まで・・・・・・」
「!!」

銀時は木刀を落とした方の右手で拳を固く握って振り上げる。その形相はまさに夜叉。
それを見てアリカは全身が金縛りになったように動けない。
そして

「テメーのガキが親になる時までッ! 親としての仕事を果たしやがれェェェェェ!!!」

右手に全神経の力と思いを込めて、銀時はアリカの顔に向かって拳を振るった。



























































それはもう昔の話。まだアリカがナギと一緒に江戸で住んでいる頃の話だ。















今、一人で両手に赤子を抱きかかえたまま、着物姿のアリカは自分達の住んでいる家の下にある『スナックお登勢』に足を運んでいた。

「まさかあのダメ亭主が人の親になっちまうとわねぇ・・・・・・大丈夫かぃ?」
「なんとかなるじゃろ、これで奴が少しは仕事熱心になるといいんじゃが」
「無理だね、あれは根っからのぐうたらだよ」

アリカがため息を突いて喋っているのはスナックの亭主、お登勢。目の前に小さな赤ん坊を抱きかかえて席に座っている彼女に考慮して、今はタバコを吸っていない。

「で? その子のぐうたらな親父は今何処だい?」
「うむ、最近開店したばかりのオカマバーの店主に捕縛された。今頃精を出して仕事に励んでいる頃であろう」
「本当に不安だね、そっちの仕事ばっかやらせるとそっちに目覚めるって事は無いだろうね」
「別に奴がオカマになろうが、わらわは一向に構わん」
「いや子供の方は泣くと思うよ私は」

澄ました表情で別に夫がどうなろうが知ったこっちゃない態度のアリカにお登勢はさらりとツッコむと、彼女が抱きかかえている赤子に目をやる。

「ちょっと私にも抱かしてもらえないかい?」
「落とさないなら構わんぞ」
「誰が落とすかい、こう見えてかぶき町の赤子を数えきれないほど手に持ってんだ、アンタより上手だよ」
 
そう言ってお登勢はアリカが両手で差し出した赤子に手を伸ばして器用に抱きかかえる。
父親と同じ髪の色、目は母親とそっくりだった。

「なんだかんだで可愛いもんだね」
「当然じゃ、わらわの子じゃぞ」
「でも父親みたいにさせるんじゃないよ、あんなのに育ったら将来ロクな大人にならないからね」
「わかっておる」

赤子をあやしながらお登勢が注意するとアリカは何度も縦に頷く。余程父親みたいな人間に育って欲しくないのであろう。
そんな彼女に対してもお登勢は口を出す

「父親がああなんだから母親のアンタがしっかりしないと駄目だよ、未だに私が見て無いと料理や家事さえまともに出来ないんだ。これを機会に一人でやれるよう覚えな」
「う、うむ・・・・・・」

ぎこちなく返事をするアリカを見てお登勢は少々不安そうな顔をする。
本当に大丈夫なのだろうか・・・・・・

「私にコレ以上世話かけさせるんじゃないよ、こっちはアンタ等家族の面倒事に付き合わされる程ヒマじゃないしね」
「確かにお主には何かと世話になっておるな・・・・・・ところでお登勢、一つ頼みごとがあるんじゃが」
「アンタさっき私が言った事聞いてなかったのかい?」

図々しくまた何か頼みこもうとするアリカにお登勢はウンザリした表情で彼女に目をやる。

「言っとくけどガキが生まれようと今月分の家賃はキッチリ取り立てるよ」
「いや家賃の事ではない、家賃の相談は明日する」
「おい」

アリカがキッパリと答えるとお登勢は短く返す。しかしアリカはそんな彼女が抱きかかえる自分の子を指差して話を続けた。

「その子の名前を・・・・・・お主に決めて欲しい」
「ちょっとアンタ、それ本気で言ってるのかい? 名前を決めるのは普通親だろ?」
「何から何までお世話になったお主にこそ、この子の名前を決めて欲しい」
「そんな事言ってもねえ・・・・・・・」
「頼む」
「ったく・・・・・・こういう面倒事はもうごめんだよ」

身を乗り出して頼み込んで来るアリカの目を見て無下に断れないと思ったお登勢は、とりあえず名前を付ける事を承諾した後、周りになにかいい名前を付けるキッカケの物は無いかと見渡す。
するとある物が目に映った。

カウンターの端っこに置いてある食材が入っているスーパーの袋。
自分がさっきスーパーに買い出しに行った時にあそこに置いたものだ。
お登勢はそのなかにある食材の一つをジッと見てピンと思い浮かんだ。

「『ネギ』って名前はどうだい?」
「・・・・・・ネギ?」

予想だにしなかった名前にアリカは首を傾げる。何故そんな名前なのかと疑問を感じながら彼女はふとお登勢が見る方向に視点を移した。
スーパーの袋の中からあらゆる食材の中で、一本のネギが元気よく飛びだしている・・・・・・・

「お登勢・・・・・・お主もしやあそこにあるネギを見てその名前を・・・・・・・」
「ちょうと親父の名前は『ナギ』だしね、覚えやすくていいだろ?」
「なんじゃそれはッ! そんな安易にわらわの子が一生使う名前を決めるなッ!」
「名前なんてほんの些細な事で生まれるモンなのさ、それに私はただ親父と名前が似てるからってだけで決めたわけじゃないよ」

立ち上がって抗議してくるアリカにお登勢は赤子に向かって笑いかけながら口を開く。

「ネギってのは育てるのはかなり難しくてね、一年かけてじっくり愛情込めて世話しないと立派に成長出来ない。少しでも怠ったらそのネギはまっすぐに生きられずにすぐ枯れちまう」
「・・・・・・」
「ガキと同じさ、親が愛情込めてちゃんと世話してあげればその子はまっすぐに育つ、親がその子に愛情を注がなければすぐに枯れちまうんだ」

赤子の頭を撫でながらお登勢は黙って聞いているアリカの方に目をやる。

「テメーの子供を育てるのは難しい。親のアンタにも常にそれを覚えて欲しいし、アンタみたいに親になるであろうこの子にも受け継いで欲しいと思ってね、そういう意味を込めてネギって名前に決めたのさ」
「・・・・・・なるほどの・・・・・・」

名前の由来を聞いてアリカは少々戸惑いながらも縦に頷いた。
そう言われると別に不満でも無くなったし、むしろいい名前なのかもしれない。

「子は愛情を注ぎこんでこそ成長する、その意味を込めてネギ・・・・・・悪くないの」
「親父には相談しなくていいのかい?」
「する必要も無い、わらわはお主が考えた名が気にいった、その名がいい」
「そうかい、じゃあ私がこの子の名付け親になるって事だね」

満足げに笑みを浮かべるアリカにお登勢はフッと笑った後、抱きかかえる赤子の方に目をやると、赤子も目の前の自分をキョトンとした目で見つめ返す。

「今日からアンタの名前は『ネギ』だ。親の愛情を受けてまっすぐにノビノビと成長するんだよ」
「バブー」
「フフ、もう返事が出来るなんて凄いじゃないか」

赤ん坊らしく答えた“ネギ”にお登勢が嬉しそうに微笑んでいると、それを眺めていたアリカがある事に気付く。

「お登勢」
「なんだい」
「ネギが物凄い量のおしっこをお主の両腕にひっかけておるぞ」
「バブブ~」
「このクソガキィィィィィィ!!!」
















































昨日の事の様に覚えている数年前の出来事を思い出しながら、橋の上で仰向けに倒れているアリカは夜空に浮かぶを星達を眺めていた。


「あの時決めた筈なのに・・・・・・あの子をちゃんと育てる事が出来なかった・・・・・・」

左頬の痛みのせいなのか、それともこんな自分が情けなくてしょうがないのか、アリカは目から一筋の涙を流す。
それを銀時は腹から出る血を押さえながら黙って見下ろしていた。

「母がこんなに弱くなければ・・・・・・すまん、ネギ・・・・・・」

星空に向かって泣きながら謝るアリカ。
銀時も星を見上げながらボソリと呟く。

「あいつに直接言えよ・・・・・・母ちゃん」












[7093] 第六十四訓 ただ愛のために
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/14 17:21

激闘の末にアリカとの決着を付けた銀時。
しかし戦いのダメージは浅くは無く。腹からおびただしいほどの出血が流れ出ていた。
荒い息を吐きながら銀時はその場に膝をがくりと落とす。

「クソ・・・・・・こりゃあ思ったより・・・・・・」
「おい銀八ッ!」

ずっと戦いを見守っていた千雨が銀時から預かった夕凪を持って、今にも壊れそうな橋を慎重に渡り銀時の方に歩み寄る。

「大丈夫なのかよそれッ! し、死なないよなッ!」
「耳元で喚くなこのツッコミメガネ・・・・・・俺の事より向こうで寝てるあやか起こしてこい」
「でもお前の方が・・・・・・」
「早く行けって・・・・・・」
「・・・・・・わかった」

顔に苦痛を滲ませながらも懸命にこらえて銀時は千雨の頭を軽く叩く。
それに答えて少し心配気味だが、彼の指示通りに目の前で倒れているアリカをまたいで、急いで向こう側で倒れているあやかの方に向かって行った。

「がはッ! がはッ!」
「このままじゃと死ぬな貴様は・・・・・・」
「誰のせいで死にかけてると思ってんだクソアマ・・・・・・」

咳をする度に口から微量の血を吐く銀時に、まだ夜空を見上げているアリカがボソッと呟くと、銀時はすぐに悪態を突く。

「お前傷を治せる魔法とか覚えてるか? 出来ればちょっとやって欲しいんだけど?」
「生憎わらわはさっきいくつもある肉体強化の呪文をずっと同時に使用していた、もう魔力切れじゃ・・・・・・」
「・・・・・・マジで?」
「一種のドーピングじゃからわらわの魔力の消費も、肉体の損傷も回復するのが遅くなる・・・・・・つまりわらわは当分魔法も使えんし戦えんのじゃ・・・・・・」
「ウソだろオイ・・・・・・このままだと俺死んじまうぞ・・・・・・」

アリカの強さの源はいくつもある肉体強化の呪文を一度に同時に使用していた事から生まれていた。常人の魔法使いには出来ないが、元々多大な才能と魔力を兼ね備えている彼女だからこそ出来る芸当だ。しかしデメリットも生じて彼女は今、魔力も失い肉体も銀時との戦いで疲れ果てている。
今の彼女は何もできないただの女性、それを知って銀時は酷く落胆する。
一方、橋から下りて向こう側に辿り着いた千雨は、倒れているあやかを急いで抱き起こして頬を引っ叩いていた

「いいんちょッ! さっさと起きろってッ!」
「・・・・・・ん・・・・・・」
「いいんちょッ!」
「・・・・・・千雨さん?」

ぼんやりと目を開けて虚ろな表情であやかは起きた。千雨はホッと安堵の表情を浮かべる。

「いいんちょ・・・・・・よかった本当に・・・・・・」
「・・・・・・なんで私、千雨さんに抱き締められてるんですの・・・・・・?」
「細けえ事はいいんだよ・・・・・・」
「・・・・・・はい?」

一体何が何だか理解できていないまま千雨に急に強く抱きしめられてあやかはまだ眠そうな表情で首を傾げる。彼女を抱きしめたまま千雨は橋の上にいる銀時の方に急いで報告をした。

「銀八ッ! いいんちょ無事だッ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・銀八?」

銀時に向かって嬉しそうに報告する千雨だが、それを聞こえた筈の銀時から返事が無い、ただ下にうつむいて息を荒げている。千雨はその不穏な気配に不安な表情になる。
しかし彼女の不安をよそに更に銀時に不幸が襲いかかり始めた。

「おい・・・・・・死にかけている貴様には悪いがもう一つ悪い事が起こるぞ」
「バカヤロー、コレ以上ヤバい事なんてあるわけねえだろ・・・・・・」
「もうすぐこの橋は壊れる・・・・・・」
「はッ!?」

倒れた状態で目の前にいるアリカの言葉に銀時は我が耳を疑う。だが確かに橋から嫌な音が聞こえてくる。
橋を支えているロープが切れていく音。彼女の言う通りこの橋はさっきの戦いのせいで遂に限界を迎えてしまったのだ。

「このままだと・・・・・・わらわと貴様は深い谷底に落ちて死ぬぞ・・・・・・」
「呑気に説明してんじゃねえッ!」

揺れる橋の上で銀時は言葉を吐き捨てた後、痛みを堪えて立ち上がり、急いで千雨達の方に行こうとするが、次の瞬間。

後ろの方から橋を支える為の二本の重要な太いロープが同時に両方切れる音。

「え? ぬおわぁぁぁぁぁ!!!」
「銀八ィィィィィ!!!」

後ろのロープが切れて銀時とアリカのいる場所が急に後ろに思いっきり傾く。
このままだと暗い谷底にまっさかさま。そんな事はゴメンだと銀時は必死に手を伸ばしてかろうじてさっき切れたばかりの太いロープを片手一本で掴む。そしてもう片方の手を伸ばして何かを掴んだ。

「絶対手ぇ離すんじゃねえぞッ!」
「貴様・・・・・・! 何故わらわを・・・・・・!」

腹からくる痛みを必死に耐えながら銀時がもう片方の手で掴んでいるもの。
自分に重傷を負わせた筈のアリカの手だった。

「チッ、やっぱこの体で二人分の体重は・・・・・・ぐッ!」
「何をしているのかわかっておるのかッ! さっさと手を離せッ!」
「うるせえ黙ってろ・・・・・・」

手をしっかりと離さぬように強く握りながら、叫んでくるアリカに銀時は呟く。

「あの世に逃げようたってそうはいかねえぞ・・・・・・」
「銀時・・・・・・」
「絶対にテメェを息子と正面から向き合わせてやる・・・・・・」

手に汗がが出始め滑りそうになるも銀時は絶対にアリカの手を離さない。絶対に彼女を息子であるネギに会わす、それが彼の魂を動かす。
そんな彼の姿を見てアリカはどうすればいいのかと途方に暮れていると、急に自分の体が上に向かって動き始めたのを感じた。
千雨とあやかが女性の身でありながら急いで銀時達を救う為に橋のロープを引っ張っているのだ。

「銀八ッ! 絶対落ちるんじゃねえぞッ!」
「私が気絶してる間に何があったんですか全くッ! 千雨さんもっと力入れてッ!」
「体育を『1』以外取った事が無い私にコレ以上力求めるなッ! ていうか腰に蹴り入れるな痛いッ!」
「もっと腰に重心を保てという意味ですわッ!」
「口で言えッ!」

上で叫び合っている二人のおかげで銀時とアリカはどんどん上に上がっていく。
なんとか助かる見込みが生まれた事に銀時がとりあえず安堵していると、手を繋いでいるアリカが困惑した顔で彼に口を開く

「・・・・・貴様がいつも連れているあの者達は一体貴様のなんなのじゃ?」

突然のアリカの質問に銀時は上を見上げたままボソッと呟いた。

「・・・・・・教えねえ」









































第六十四訓 ただ愛のために





















場所変わり、ここは銀時達がいる山の頂上。
湖が張り巡らされ、そこに設置されている謎の祭壇の目の前には卵の様な大きな岩が湖の中でそびえ立っている。
そしてその祭壇の奥にある台に寝かされている少女。近衛木乃香だ。
寝ている彼女の前で、高杉の部下の一人である千草が何やら祈祷を始めている。
何を言っているのかさっぱりわからないが、鬼神復活の儀式であろう。

だがそこにいるのは祈祷している千草と寝かされている木乃香だけではない。
千草の後ろでは二人の男女が祭壇の手すりにもたれかけて立っている。
一人は親玉である高杉、そしてもう一人は高杉に忠誠を誓う少女、アーニャの姿だった。

「いつになったら鬼神は蘇るのよ・・・・・・」
「・・・・・・知らねえよ」
「それにあのいつもニヤけたツラしてる春雨の幹部は何処?」
「いちいち俺に聞くなそんな事」

どこか元気の無い表情のアーニャの問いかけに、高杉はそっけない態度で彼女に顔を背けてキセルを吸っている。
そんな彼の姿にアーニャはもっと不安そうな顔を浮かべて最後の質問を尋ねた。

「ネギが“ああなる”事をアンタは知ってたの・・・・・・?」
「・・・・・・さあな」

曖昧に返事をすると、高杉はアーニャを置いて千草と木乃香のいる方へ行ってしまう。
残された彼女はしゅんとした表情でうなだれる。

「ネギ・・・・・・」
「小娘、この童の知り合いか・・・・・・・?」
「!!」

幼馴染の声としわがれた声が同時に聞こえ、アーニャはパッと声のした方に振り向く。
何時の間にか自分のすぐ隣にその男は立っていたのだ。
幼い顔立ちには似合わない鋭い眼光。ネギが死んだ事によって復活した夜王鳳仙の人格を持つネギの姿だった。

「童の体を乗っ取ったこのわしが憎いか?」
「当たり前よ・・・・・・! 占いでネギが死ぬ様な目に合う事はわかってた、けどまさかアイツ(神威)に殺されてアンタみたいな年寄りがネギの体を乗っ取るなんて・・・・・・!」
「“年寄り”であろうともわしにかかれば貴様など一瞬に塵に屠れる・・・・・・小娘、言葉の使い方に気を付けろ・・・・・・」
「・・・・・・」

腕を組んで睨みつけてくるネギにアーニャは思わず後ずさりする。
見た目は昔からよく遊んでいた幼馴染であるネギ。
しかしその実態は数多の戦いでどんな敵であろうと殲滅し続けた夜兎最大の暴君。
その事実はアーニャにとって大変ショックなものだった。

「どうしてこうなるのよ・・・・・・私はネギと一緒に奴等を・・・・・・」

目の前にいるネギには聞こえぬよう、アーニャはうなだれたままポツリと呟いていると、ある男が祭壇の方に向かってくる。

アーニャが憎む春雨に所属している一人、夜兎族の一人である阿伏兎だ。
彼がこちらにやって来ると千草達の方にいた高杉が彼に歩き寄る。

「何かあったか?」
「・・・・・・お客さんだ」
「ん?」

阿伏兎が目をやった方向に顔を向けると、ここからずっと先に桂一派と坂本一派の姿があった・・・・・・

「もうここに来たの・・・・・・!」
「フ、こりゃあ、大変だ・・・・・・」

驚いている様子のアーニャに対して高杉は嬉しそうに笑みを浮かべる。
まるで二人が来る事を待ち侘びていた様な。

「銀時の姿はねえか・・・・・・残念だな久しぶりに四人揃うと思ったんだが・・・・・・」

そう言って高杉は楽しげに笑みを浮かべながら歩きだす。

「アーニャ、阿伏兎、お前等も来い、邪魔されたらたまんねえしな」
「・・・・・・わかったわ」
「あいよ、久しぶりに奴と戦えそうだな・・・・・・ん?」
「阿伏兎・・・・・・貴様もここに来ていたのか」

高杉の誘いに素直に頷いてすぐに彼の元へ行くアーニャを見て、阿伏兎も彼等の後をついていこうとしたが、ふとこちらに視線を送って来るネギに気付いた。

「これはこれは、まさか本当にガキの体を奪って復活しちまうとは思いもしませんでしたよ“夜王殿”」
「ほう、わしだという事をよくわかったな」
「アンタの弟子から話は聞いていたんでね、それに姿は変われど声と目つきはアンタそのものだ」

目の前にいる子供が夜王とすぐに察知した阿伏兎は呑気な調子で語りかける。こんな小さな子供があの鳳仙だというのは少し意外だが、見た目以外は夜王そのものの威厳を漂わせている。

「生き返った気分はどうですか夜王鳳仙殿?」
「最悪だ、わしは現世に興味などとうに失せておる、こんな所にいてもわしにはもう何も無い」
「そうですかい、ま、この世界も悪くないんでなんか楽しい事が見つかるといいですな」

ひょうきんな態度でネギに向かって笑いかけた後、阿伏兎は彼を残して高杉の方に行った。
彼が言った事を頭の中でもう一度再生させてフンと鼻を鳴らす。

「・・・・・・この世界にわしの欲望に応えれる者はおらん・・・・・・」


























ネギが不満げにしている頃、高杉はアーニャと阿伏兎を連れて桂と坂本達と対峙していた。

「久しぶりだな、ヅラ、坂本・・・・・・」
「高杉・・・・・・!」
「アハハハハッ! 久しぶりじゃのう高杉ッ! 元気にしとったかッ!?」
「この人が・・・・・・」

遂に目の前に現れた高杉を前に、桂は目を見開き、坂本は呑気に笑う。
彼の隣にいたネカネは初めて見た高杉の姿に驚くが、彼の隣にいた人物を見て更に驚いた。

「アーニャッ!」
「・・・・・・・」
「やはりあなたはその人に・・・・・・・」
「親を殺されたアナタならわかってくれると思った・・・・・・」
「!!」
「だけどやっぱり、誰もわかってくれない様ね・・・・・・」

悲しそうにポツリと呟いた後、アーニャは腰に差す刀をネカネに見せつける。

「ならば戦うまでよ」
「アーニャ・・・・・・」
「下がっときやネエちゃん、このガキには色々と借りがあるんや」

うつむくネカネの前に桂の仲間である小太郎が前に出てアーニャを目の前にして拳を鳴らした。

「女だろうが容赦はせえへえんで」
「桂小太郎の仲間のアンタ程度じゃ私に勝てないわよ・・・・・・」
「そいつはやってみればわかるやろ」

アーニャの挑発に小太郎は微笑で返す。
静かに対峙する二人。それを見ていた阿伏兎も坂本の方に視線を泳がす。

「じゃあ俺はそこの男かね? 前に一度やり合ったが決着は着いてないかったからな・・・・・・」
「アハハハハッ! 誰じゃったかのおんしッ!?」
「あ~あ忘れちゃってるよこの人・・・・・・・」

どうやら阿伏兎の事をすっかり忘れているらしい。豪快に笑い飛ばす坂本に阿伏兎が呆れたようにため息を突く。

「じゃあ“今度は”その体にキッチリ刻みつけてやるか、夜兎族と戦う事がどれだけ無謀だという事を・・・・・・」
「坂本さん・・・・・・!」
「フフ、ネカネさん・・・・・・」

こちらに近づいてくる阿伏兎に坂本の隣にいるネカネが心配そうに彼を見ると、坂本はサングラスを上に上げながらニヤッと笑い。

「夜兎ってなんじゃ?」
「うわ・・・・・・底知れないバカね本当・・・・・・」

あまりにもバカすぎる坂本にネカネは思いっきり軽蔑のまなざしを彼に向けている頃、高杉と桂は腰に差す刀に手を置いて立っていた。

「ヅラ、久しぶりにやるか・・・・・・」
「ヅラじゃない桂だ」

腰の刀を抜き両手に持って高杉を睨みつけながら、桂は後ろにいるエリザベスとアルに
ささやき声で話しかけた。

「・・・・・・エリザベス、アル殿・・・・・・俺達が戦いを始めたらその隙に急いで祭壇に行き木乃香殿を救出して来てくれ・・・・・・」
『アイアイサー』
「エリザベスさん、会話してるのバレますよ」
『マジで?』

手持ちボードを掲げて返事をするエリザベスにアルがサラリとツッコミを入れる。
幸い高杉は見ていないようだが・・・・・・

「俺達を結ぶ糸がこんなにも切れねえか・・・・・・こりゃあ銀時が来るのも時間の問題だな、お前もそう思うだろ?」

高杉も腰の刀を抜き不気味な笑みを見せつける。それに対して桂は面白くなさそうに刀を構える。

「一刻もこんな絆は早く切りたいものだな、特に高杉、俺は誰よりもお前と一番関わりたくない。だが・・・・・・」

刀を構えながら桂は高杉へ一歩前に出て、目を細める。

「もし目の前に立ちはだかるなら、俺はいつでもお前を斬れる覚悟を持っている・・・・・・」
「クックック・・・・・・俺もだ」
「お前を斬るのは俺か銀時、幼馴染である俺達のどちらかがやるべきなのだ」
「まだ俺の事幼馴染だと思ってくれるのか・・・・・・銀時もそうだが相変わらずお前も甘いな・・・・・・」
「フン、この甘さがお前をそこまで変えてしまったのかもな・・・・・・」
「そうだな・・・・・・!」

桂との会話の途中で一瞬だけ真顔なるがすぐに狂気の笑みを浮かべ、高杉は桂に向かって走る。

二人の刀は激しい音を立てて豪快にぶつかった。

「簡単に死ぬなよヅラ・・・・・・!」
「お前こそな・・・・・・!」

山の頂にて一つのケジメを取る戦いの火蓋が今切って落とされた。

















































高杉が動き始めたその頃、千雨とあやかはようやく銀時とアリカを救出。
急いで二人は、腹を押さえてその場に倒れ込む銀時に駆け寄る。

「銀八・・・・・・」
「しっかりして下さい銀さん・・・・・・」
「イテテテ・・・・・・」

出血を止める為に銀時はなんとか手で押えるが一向に止まる気配は無い。
それをみたあやかはすぐに銀時の後ろに回って後ろから抱きしめる様な感じで自分の手を彼の手の上に重ね、背中の方にもある傷穴を自分の体で塞ぐ。

「無茶ばかりして本当に・・・・・・」
「綺麗な手と服が汚れちまうぞ・・・・・・・」
「あなたの血ならどんなに汚れても構いませんわ・・・・・・」
「あのな・・・・・・」

強く後ろから抱き締めて来るあやかに銀時は疲れた表情でため息を突いた。
なんか恥ずかしい。銀時がそう考えていると、目の前にいる千雨は彼等の姿を見て居心地の悪さを感じたのか、複雑そうな表情で立ち上がり踵を返す。

「じゃあ私・・・・・・助けがいないかちょっと周り探って来る・・・・・・」
「おいおい大丈夫かよ、ここら辺一帯は春雨の天人共が一杯いるって真撰組の奴等に聞いたぜ」
「そうですわ千雨さん、もし貴方まで取り返しのつかない事になってしまわれたら私・・・・・・」
「心配すんなよ、危なくなったらすぐ戻るからさ・・・・・・」

銀時とあやかの不安をよそに千雨は雑木林の中へ入って行ってしまった。

「あいつって、意外と度胸あるんだよな・・・・・・」
「・・・・・・銀さんの為だから当たり前ですわ」
「いい部下を持って銀さんは幸せモンだよ・・・・・・・」

そう呟いた後、銀時は両足を伸ばして後ろで介抱してくれるあやかの方に重心を傾けた。
もう座る事さえもキツイらしい

(目がかすんできた・・・・・・早くなんとかしねえと・・・・・・)
「傷を付けたわらわが言うのもおかしいが・・・・・・」
「あ?」
「・・・・・・すまなかったな・・・・・・」

銀時が目を開けるのもツラくなって来た頃、助けられた時からずっと黙っていたアリカがようやく重い口を開いた。
悲しそうな表情でこちらに頭を下げる彼女に銀時がどう言っていいか困っていると、あやかの方はキッと彼女を睨みつける。

「頭を下げても銀さんの傷は治りませんわよ、魔法使いのあなたなら傷を治す事ぐらい出来るんじゃないですか?」
「無理じゃ・・・・・・わらわにもう魔力はこれっぽっちも無いし動く事もままならない・・・・・・助けになれなくて本当にすまん・・・・・・」
「・・・・・・」

弱々しくうなだれるアリカの姿を見て、あやかはもうそれ以上追及なんて出来なかった。仕方なくあやかは銀時の方に首を戻して、彼の意識が途絶えないよう顔を近づけて懸命に話しかける。

「銀さんまだ意識ありますか? 目の前に死神とかいませんわよね?」
「お前しか見えねえ・・・・・・」
「ま、まあ銀さんったら・・・・・・こんな時にそんな嬉しい事言って下さるなんて・・・・・・」
「いや別に口説き文句じゃねえから・・・・・・」

顔を赤らめて嬉しそうに微笑むあやかに銀時は瀕死の状態ながらもすぐにツッコむ。
“そういう訳”で言ったわけじゃない。
あやかは銀時の腹の傷口を両手で押さえ、背中の傷口を自分の身で押さえながら。彼に顔を近づけて必死に介抱を続けた。

「あなたは本当に自分の体を大切にしませんわね・・・・・・」
「そういう性分だからな」
「私はともかく千雨さんに心配ばっかかけちゃダメですわよ・・・・・・」
「・・・・・・考えとくわ」
「全く・・・・・・」

曖昧に返事をする銀時にあやかは少々不満げな顔をするもすぐにクスッと笑みを浮かべる。

「本当におかしな人・・・・・・私達が何言ってもその身が傷付いてまで私達を護ろうとして戦ってくれる・・・・・・私、あなたよりバカな人見た事ありませんわ、アスナさんよりバカですわ銀さんは」
「バカレッド以上かよ、なんか泣きたくなってきたんだけど」
「でも・・・・・・」

更に強く銀時を抱き締めながらあやかは彼に微笑んだまま口を開いた。

「そんなあなたが大好きですわ」

初めて目を合わせながら彼女の言ってくれた言葉に銀時はどうしたもんかと彼女から目を背ける。

「・・・・・・こんな時にサラッとぶっちゃけんじゃねえよ、反応に困るだろ」
「旅館で私の気持ちは先に教えましたでしょ、あなたの事が好き。ぶっきらぼうでいつもけだるそうにしてるけど、時々誰よりもカッコよくなるあなた、全部ひっくるめて大好きなんです」
「・・・・・・」
「好きすぎてどうにかなっちゃいそうな事ばっかりあったんですわよ、なのに鈍感なあなたはいつもスル―して・・・・・・でもそんな鈍感な所も、また可愛くて好きです・・・・・・」
「あの、あやかさん・・・・・・そんな言われると恥ずかしくなるんだけど・・・・・・ほら、人の目があるし・・・・・・」

顔を赤らめた状態で鼓動を激しくしているあやかに銀時は苦笑したまま、チラッとこっちをずっと凝視しながら座っているアリカの方に目を送る。
するとアリカはすぐにパッと顔を横に背けた。

「わ、わらわの事は気にするな・・・・・・そのまま二人で続けてくれ・・・・・・」
「変に気を遣ってんじゃねえぞコラ・・・・・・俺はコイツに押されるとなんにも出来ねえんだよ・・・・・・」

意外にも空気を呼んでくれるアリカに銀時が悲痛な声で訴えると完全に熱の入っているあやかは彼女の言う通りに更に銀時を強く抱きしめる。

「銀さん・・・・・・」
「お前まだ酒が残ってんじゃねえか・・・・・・?」
「酔ってません正真正銘の素面ですわよ、告白は大胆になる事が肝心なんです、だからその・・・・・・告白の記念としてキスしていいですか・・・・・・?」
「も、もう勝手にしてくれ~・・・・・・」
「で、では遠慮なく・・・・・・」

そう言うとあやかは目をつぶって自分の唇を銀時の唇に押しつける。
銀時は疲れもあるので抵抗もせずに仕方無くそのまま受け入れた。
彼が何度も口から血を吐いていたので、銀時との二度目のキスは血の味が口の中に染み渡る。あやかはそう感じながらずっと彼と唇を押し当てた。

隣で「わらわは何も見ていない、わらわは何も見ていないのじゃ・・・・・・」という声がするのも無視して。

しかし彼女のそんな幸せの一時もそんなに長く続かなかった。







前方の雑木林の奥からガサゴソと揺れている音が聞こえる。
あやかはすぐに銀時との接吻を止めてそちらを不審そうに見つめた。
アリカも雑木林に向かって身構えるが、あやかとの一息に身をゆだねていた銀時はグッタリしている。

「千雨さんでしょうか・・・・・・」
「いや・・・・・・これは複数で歩いている音じゃ・・・・・・しかも鎧を付けてる音も聞こえる・・・・・・」
「ここに来て何回唇奪われてんだよ・・・・・・しかも神楽とタメの奴と・・・・・・」
「銀さんお静かに・・・・・・・」

ぼやき始める銀時に向かってあやかはすぐに彼の口を手で押さえる。
目の前の雑木林から聞こえる足音がどんどんこちらに近づいてくる。しかもアリカの言う通り複数の足音。
そして・・・・・・

「血の匂いがプンプンすると思ったら・・・・・・」
「俺達春雨のブラックリストに載ってる銀髪の侍じゃねえかぁ・・・・・・」
「しかも奴は重傷の様だぜぇ、こりゃあチャンスだぁ・・・・・・」
「こ、これが・・・・・・」
「チッ! 春雨の天人共か・・・・・・!」

雑木林の中から現れたのは身の毛のよだつ程奇怪な姿をした三人の春雨の天人。
血の匂いに惹きつけられ、どうやらここの場所が奴等に特定されてしまったようだ。
初めて見た天人達にあやかが強張っていると、銀時は彼の手を振り払い立ち上がろうとする。

「お前ら下がってろ、アイツ等の狙いは俺だ・・・・・・・」
「ちょっと銀さんッ! その体で何する気ですかッ!」
「こんな傷たいしたこと・・・・・・ぐうぅッ!!」
「銀さんッ!」

作り笑いを浮かべてすぐに立ち上がろうとするが、銀時の膝はすぐに折れる。
灼熱の様な痛みが全身に襲いかかり、一瞬その痛みで意識が飛びそうになった。
それを見てあやかはすぐに彼の元に近寄り、アリカは春雨の天人達を前にしてヨロヨロと起き上がって近づいた。

「こいつはわらわの獲物じゃ・・・・・・・貴様等は邪魔するな・・・・・・!」
「あ? テメェは『金美鬼』じゃねえか、随分と弱っている様だな・・・・・・」
「春雨の幹部として命令するッ! 今すぐここから立ち去れッ!」

刺す様に睨みつけて啖呵を切るアリカ。だが春雨の先頭にいる鎌を持った天人は弱っている彼女と銀時の姿を見てニタリと笑みを浮かべた。

「そうはいかねえ、こちとら目の前に“二つ”も御馳走があるんだからな・・・・・・」
「な・・・・・・!」
「春雨を脅かす銀髪の侍も、前から気に入らなかったテメェをここでまとめて殺すのも悪くねえって事だよ」
「まとめてあの世に送ってやるぜぇッ!」

どうやら銀時どころか仲間であるアリカさえも殺そうと連中は企んでいるらしい、三人が一斉に武器を構えるとアリカがぐっと歯を食いしばる。

「この下衆共・・・・・・!」
「なんとでも言いやがれ、おらッ!」
「ぐぎッ!」

弱っているアリカの腹に先頭にいた天人が前蹴りを彼女に腹に浴びせる。
その場で崩れ、腹を押さえて苦しそうに咳をするアリカ。更に今度は別の天人が彼女の頭を強く踏みつけた。

「ヒャ~ハッハッハッ! なんだそのザマはッ! いつもの威勢はどうしたんだッ! ああッ!?」
「くそ・・・・・魔力があればこんな奴等に・・・・・・ぐッ!」
「オラオラどうした金美鬼ッ! もうくたばっちまったのかッ!」 
「ぐうッ! ぐはッ! ごふッ!」
「ネギ先生のお母様・・・・・・! もう止めて下さいッ!」

頭の次は何度もアリカの背中を笑いながら踏みつける天人にあやかは銀時を抱きかかえながら悲痛な声で叫ぶ。そして一旦銀時を地面に寝かせ、傍に落ちてあった彼の所持品である野太刀、夕凪を拾う。

「さもないと私が・・・・・・!」
「止めろあやか・・・・・・! そいつ等はお前みたいなガキにやられる様な連中じゃねえ・・・・・・!」
「私だって銀さんみたいに誰かを護る事だって出来ますわッ!」
「あやか・・・・・・」
「もう護られてばっかりなんてイヤなんですッ!」

銀時に向かって声を上げた後、あやかは恐怖に怯えながらも夕凪の鞘を抜いて、目の前でほくそ笑む天人に向かって刀を構えた。

「ほう、ガキのクセに俺達に一人で盾突くってか・・・・・・?」
「おもしれぇなこのガキ・・・・・・殺しがいがあるぜ、ヒッヒッヒ・・・・・・」
「こ、こ、この二人は私が護ります・・・・・・!」

声も震わせ身も震わせ、されと目には一点の曇りも無い。
手に持つ夕凪はカタカタと音を鳴らして震えているが、あやかは勇気を振り絞ってグッと強く握り

「か、かかってきなさいですわコノヤローッ!!」
「じゃあまずはッ!」
「テメェから殺してやるッ!」
「ヒャッハーッ!」

睨みをきかせながらあやかが吠えると、三人の天人は一斉に鎌や刀、棍棒を持って襲いかかって来る。
涙目になりながらもあやかは逃げずに夕凪を構える。

(この人を護れるなら私は・・・・・・)

あやかは真っ向から向かってくる敵と対峙する。
だが次の瞬間。



















「「オラァァァァァァ!!!!」」
「「がふぅッ!」」
「な、なんだぁッ! なんだテメェ等はッ!」
「・・・・・・え?」

いきなり両サイドにいた天人が何者かに後頭部から一撃を食らって速攻で撃沈。リーダー的存在であった天人は突然の出来事にその場で足を止め慌てた様子で周りを見渡す。倒れた天人の近くに立っていたのは銀時でもアリカでもない。

「誰だか知りませんが、そこのダメ人間を護ってくれてありがとうございます」
「こっからは私達の出番ネ」
「あ、あなた達は一体・・・・・・!」

呆然としているあやかの方へ笑いかけるメガネを付けた少年とチャイナ服の少女。
彼女は混乱している様だが銀時はハッと顔を上げる。

「お、お前等・・・・・・!」
「全く、久しぶりに会いに来たのになんですかその格好は・・・・・・ま、どうせまた無茶したんでしょうけど」
「女の子に守られるなんてカッコ悪いアル、それでも侍かヨ」

いつも通りの悪態をついてくる少年少女に銀時は思わず痛みも忘れて立ち上がる。
江戸で常に顔を付き合わせていた二人が、今目の前に立っている・・・・・・・

「どういう事だよ一体・・・・・・どうしてお前等がここに・・・・・・!」
「銀八ッ!」
「銀さんッ! 千雨さんが戻ってきましたわッ!」

銀時が髪を掻き毟りながら理解に苦しんでいると、助けを呼ぶ為にメンバーから抜けていた千雨がこちらに向かって走って戻ってきた。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・! やっぱり私より先にこっちに着いてたんだコイツ等・・・・・・」
「もしかして千雨さんがあの人達を・・・・・・?」
「適当に山の中彷徨ってたら偶然出会ってよ、誰だか知らなかったんだけど私、無我夢中で助けてくれる人探してたから・・・・・・とりあえず事情を説明したんだけどそしたらすぐにすっ飛んで行きやがった・・・・・・アイツ等何モンだ、お前の事知ってる見たいな感じだったぞ・・・・・・?」
「・・・・・・・」

息を荒くさせながら千雨は説明するが、銀時はまだ頭を掻き毟りながら混乱している様だ。
千雨はふと天人と対峙している二人の少年少女の方に目を向ける。

「あれ? よく見ると二人しかいねえじゃねえか?」
「何?」
「あの男何処行ったんだ?」
「は? 男?」

首を傾げる千雨に銀時は眉をひそめる。
あの二人と一緒にいた男?
一体誰の事言っているのだ・・・・・・?

「おい千雨、男ってどんな奴だ?」
「ん? 赤髪でローブを着た20代ぐらいの男だけど?」
「・・・・・・誰?」
「だから知らねえって、けどなんかネギ先生と似てたな」
「ネギ先生と・・・・・・」
「似てる・・・・・・?」

千雨の情報に更に謎が深まっていく。ネギとよく似た男・・・・・・? 何故そんな人物があの二人と一緒に・・・・・・
銀時とあやかが深く考え込んでいると、さっき天人にやられていたアリカがフラフラした足取りで彼等の方にやって来た。

「そ、それはまことか・・・・・・?」
「え? そ、そうだけど・・・・・・」
「まさか・・・・・・いやそんな事絶対にありえぬ・・・・・・あの男は既に死んで・・・・・・!」

急にしどろもどろになって首を何度も横に振るアリカ。
そんな彼女を銀時が不審そうな表情で尋ねようとすると・・・・・・

「おい、そこの鎌持ったオッサン」
「ぬッ! 今度は誰だぁッ!」
「俺が誰だって? 生憎、低俗な小悪党に名乗る名前なんざ持ち合わせてねえよ」

突如上から聞こえる男性の声。呼ばれた天人が声がした方向へ見上げる。
一本の木の上にローブをなびかせ立つ男。月の光による影で顔はよく見えない。
だがメガネを付けた少年とチャイナ服の少女はそんな彼に顔を上げて呼びかける。

「あれ? 何処行ってたんですか」
「いやちょっと、こっち向かう途中で草むらで小便してた」
「おい小便男、さっさとこっち下りてこいヨ、そんな所でカッコつけて恥ずかしくねえのか」
「んだよッ! ヒーローはこういう高い場所でクールに決めるのがセオリーだろうがッ!」
「すみません、小便って言ってる時点で既にヒーロー路線から脱線してます」
「早く下りてくるアル小便ヒーロー」
「誰が小便ヒーローだッ! ああもうお前等のせいでグダグダだよチクショウッ! 下りればいいんだろ下りればッ!」

男は半ばヤケクソにそう叫ぶと、木の上からこちらにバッと飛び降りる。

下にいる天人を下敷きにして

「ばおッ! き、貴様ぁッ!」
「あれまだ生きてる、えい」
「ギャァァァァ!!!」

下敷きにした天人に更に手から電撃を放って追い打ち。
天人は絶叫を上げた後すぐにバタッと倒れた。

「もうちょっとカッコよく登場したかったんだけどなぁ俺・・・・・・」

ボリボリと頭を掻き毟りながらため息をついた後、男は倒した天人の上から下りた。
銀時達はそこで初めて彼の顔を見た・・・・・・
千雨とあやかは彼の事はよく知らない。だが銀時とアリカは彼の顔を覚えている。
特にアリカにとって彼は・・・・・・

「そんな・・・・・・」
「お前・・・・・・!」
「「?」」

男の姿を見て驚愕している銀時とアリカに彼の事を知らないあやかと千雨は首を傾げていると。千雨の言う通り赤髪でローブを着た、ネギによく似ている風貌をしている男は、さっき助けに来てくれた二人の少年少女を連れてこちらに近づいてくる。

「迎えに来るのが遅れて悪かったな、アリカ・・・・・・」
「ナギ・・・・・・お主生きていたのか・・・・・・」

死んでいた筈の男が目の間に現れ、アリカは思わず目から一筋の涙を流す。
そんな彼女を、“一人の夫”として男は強く抱きしめた。

「やっとアンタに会えた・・・・・・」
「バカ者・・・・・・こんなに待たせおって・・・・・・」

死んだと思われていたアリカの夫でありネギの父親。
サウザンドマスターことナギ・スプリングフィールドだった。

あやかと千雨はその事実に大変驚いていた。

「ナギッ!? ナギってもしかして・・・・・・ネギ先生のお父様のッ!? お亡くなりになってたんじゃないですかッ!?」
「えッ! これあのネギ先生の親父ッ!? マジでッ!?」
「ああ、そうだよ・・・・・・それであいつ等が・・・・・・・」

銀時は二人の会話にしんどそうな表情で入って来ると、ふとネギの父親であるナギが連れて来た二人の方に顔を向ける。すると二人は彼にゆっくりと笑いかけた。

「迎えに来ましたよ、銀さん」
「相変わらずのアホ面アルな」

少年の名は志村新八、少女の名は神楽。
かつて江戸にいた頃銀時が家族同然に付き合っていた万事屋メンバーの二人だ。
久しぶりに対面できた二人に銀時が思わずフッと笑う。
そして

























そのまま後ろにバタリと倒れ、白目をむいて意識を失った。

「銀さん死んじゃイヤァァァァァ!!!」
「ヤベェそういえばコイツ死にかけてたんだッ! おい銀八ッ! 銀八ィィィィィ!!!」
「ちょっとッ! 久しぶりに会ったのになんでいきなりぶっ倒れてるんですかッ! ナギさん早く何とかして下さいッ!」
「あ、ごめん後にして」
「おいこのトリ頭ァァァァァ!! イチャついてないでさっさと銀ちゃん治せやコラァァァァ!!!」

感動の再会も束の間、一瞬にしてその場は完全にパニック状態となった。























































場所は大きく変わってここは麻帆良学園。
すっかり夜になった今、生徒はおろか教師さえも帰宅して、学園全体は暗闇に閉ざされている。

ただ一つの部屋を除いては・・・・・・

学校で一番の権力者を持つ者がいる『学園長室』だけは唯一明りが付けられているのだ。

「トホホホホ、なんでワールド級に偉い身分のワシがこんな目に・・・・・・こうなったらタカミチ君を呼んで・・・・・・・あ、ダメじゃ自分探しの旅に出ててしばらく帰って来ないんだっけ? もうクビにすっかな~アレ」

学園長室で独り言をつぶやきながら、机に座ってペッタンペッタンと何かにハンコを押す学園の最高責任者である学園長の姿があった。

「ていうかこれしんど過ぎじゃね? もうちょっと楽な方法無かったの? ハァ~、孫の命が助かる前にワシが天に昇るかもしれんのぉコレ・・・・・・」

ブツブツとぼやきながら学園長は周り一帯に山の様にドッサリある紙一つ一つにハンコを押していく。

学園長がハンコを押している紙には短くこう記されていた。

























『エヴァンジェリンの京都行きは学業の一環である』







[7093] 第六十五訓 ただ愛こそすべて
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/19 23:27
突如やって来た三人組。
その正体はかつて銀時と江戸で万事屋をやっていた志村新八と神楽、そして死んだと思われていたナギ・スプリングフィールド。
三人の出会いによって銀時達とアリカは過酷な状況をとりあえず乗り越える事が出来たのであった。

「ホレ、傷は治してやったぜ、これで死ぬ様な事はもうねえよ」
「あ、ありがとうございます・・・・・・!」
「別にいいっつうの・・・・・・コイツに死なれたらガキ二人を本格的に引き取らなきゃいけなくなっちまうし・・・・・・」

めんどくさそうな態度を取りながらも、意識を失って倒れている銀時の傷を治癒魔法で治したナギ。
そんな彼にあやかが丁寧にお辞儀をすると、ナギは照れくさそうに頭を掻き毟る。
だが銀時の傷が治ったのを見計らっていた神楽は銀時の上に乱暴に乗っかって

「さっさと起きろ天パァァァァァ!!」
「オイィィィィ!! 治った直後にまた危篤状態にする気かッ!」

意識を失っている銀時の顔面に何度も拳を入れる神楽に、新八が慌てて彼女の両腕に手を回して銀時から遠ざける。

「ここは銀さんが目を覚ますのを待とうよッ! 元々頑丈な人だしすぐに起き上がるってッ!」
「銀ちゃんが起きるのを呑気に待ってる事なんて出来ないアルッ! 私がすぐに起こしてやるネッ!」

話を聞こうともしない神楽は新八を振り払おうと鼻息を荒くしながら暴れていると。
目の前に先ほどまでナギにお礼を言っていたあやかが冷静な表情で彼女を見据える。

「そのメガネの人の言う通りですわチャイナさん」
「いやメガネの人って・・・・・・」

なんか妙に適当な通称を付けられて新八が不満そうな顔をするが、あやかは無視して神楽に向かって話しかける。

「銀さんは目が覚ますまで安静にして置く事が必要です、誰だか知りませんがお二人共しばらく静かにしてもらえませんか? 銀さんの看護は私と千雨さんでやりますので」

ちょっとキツイ言い方をするあやかの態度に、神楽もおろか新八も表情をムッとする。
銀時の看護は自分達でやるだと?

「ちょっと待つネ、なんで私達をさしおいてお前等が銀ちゃんの看病するアルか」
「そうですよ、大体あなた達は何者なんですか。素姓も知れない人に銀さんを任せるなんて出来ませんよ」

腕を組んで佇むあやかに、まだ目が醒めぬ銀時を間に挟んで神楽と新八が食ってかかる。
すると一人ボーっとしゃがんで銀時の顔色をうかがっていた千雨が彼等の方にだるそうに顔を上げる。

「万事屋・・・・・・」
「「・・・・・・え?」」
「私達と千雨さんは銀さんの所で働く万事屋メンバーの一員ですわ」
「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」

誇らしげに名乗るあやかに新八と神楽は同時に口を開けて叫ぶ。
思いもよらぬ事実だ。

「アンタ等が万事屋メンバーッ!? 何言ってんですかふざけないで下さいッ! 銀さんが率いる万事屋メンバーと言ったらッ!」
「私と定春アルッ!」
「新八だろうがッ! なんで僕よりマスコット優先なんだよッ! 銀さんと僕と神楽ちゃんで万事屋トリオだろッ!?」 

親指で自分を指差して高らかに叫ぶ神楽に向かって新八はすぐに叫び散らす。

突然現れた謎のチャイナ娘と特に謎的要素もないメガネの少年。
そんな彼等をしばらく見ていた千雨は何かに気付いて、無表情で彼等に指をさす。

「もしかしてお前等・・・・・・“あの神楽と新八”?」
「え? 僕等の事知ってるの?」
「「ヒロイン要素ゼロのゲロ吐き大食いチャイナ娘と、ツッコミしか出来ない役立たずのメガネとの二人と一緒に江戸で万事屋やってた」って銀八が言ってたよな?」
「ああ、言ってましたわねそんな事」

千雨が銀八の言葉を思い出しながらあやかに言うと、彼女も思い出したかのような表情で頷く。
そしてあやかは新八と神楽の方へ目をやって

「てことはあなた達が銀さんがよく言っていた元万事屋メンバーのダメヒロインとダメツッコミという事ですか? 完全に場違いですわね、早く元の世界に帰ったらどうです?」
「助けてもらった人に向かってよく言えますねッ! ていうかアンタ性格キツくないですかちょっとッ!?」 
「誰がダメヒロインアルかッ! この世界に私ほどヒロインの素質を持つ者なんてこの世にいないアルッ!」

指差して叫んでくる新八にも、額に青筋立てている神楽に対してもあやかはツンとしながら返す。

「万事屋メンバーは私と千雨さんで十分ですわ、あとオマケで朝倉さんとエヴァさん。あなた達はまあ・・・・・・ふ、精々二軍程度ですわね」

その一言に神楽と新八の頭の中で何かがブチッと切れた。

「言いやがったなこの金髪デカ乳娘ァァァァッ! ヒロインである私に喧嘩売ってただで済むと思うんじゃねえぞコラァッ!」
「金髪デ、デカ乳娘ッ!? なんて破廉恥なアダ名をこの私につけてんですかッ!」
「銀さんと出会って間もない筈のアンタ達よりッ! ずっとあの人と苦楽を共にしていたですよ僕達はッ!」
「大事なのは共にいた時間だけではありませんわッ! 互いに一緒にいて居心地良いと思いあえる関係を築く事が大事なんですッ!」

喚きだす神楽と新八に向かってさっきまで冷静に返していたあやかも急に身を乗り上げて叫んでいる。
そんな彼女に隣に座っている千雨は頬杖を突きながらハァ~とため息を突いた。

「銀八寝てんだから静かにしてくれよ・・・・・・」

そう言って千雨はまだ目を覚まさない銀時の髪の毛をそっと撫でてあげる。

















新万事屋と、初代万事屋。
全く環境が違う二つはやはりうまく噛みあう事は難しそうだった。
































第六十五訓 ただ愛こそすべて



















「それで?」
「それでって?」

銀時の回復を待っている新八と神楽、千雨とあやかが銀時の周りに座って彼が起きるのを待っているのを眺めながら、妻であるアリカは夫であるナギに尋ねる。

「お主は何故ここにいて、何故生きてるじゃ?」
「ああその事」

隣に座って顔を近づけて来るアリカにナギは大きな欠伸をした後、彼女の方へ顔を向ける。

「星海坊主に助けてもらった」
「あの男が・・・・・・?」
「吉原で鳳仙が死んだ直後、俺を封印していたマジックアイテムを鳳仙の屋敷からあいつが回収してたんだとさ」
「そうじゃったのか・・・・・・だから神威はお主を見つけられなかったのか・・・・・・・」

生きている訳を聞いてアリカは少々複雑そうな表情を浮かべて静かに頷く。
それを知っていればこんな事になるまで・・・・・・

「それからはお前に会う為に色んな所を行って探しまわってたんだけどな・・・・・・」
「・・・・・・」
「まさかカミさんが宇宙海賊になってるなんて誰が想像できるかよ、“ゴリラの組織”のおかげで助かったぜ」
「・・・・・・すまぬ」

しゅんとした表情で頭を下げて謝って来るアリカ。ナギは左肩を手で揉みながらそっぽを向く。

「いいよ俺の方が悪いんだから、カミさんと子供ほったらかしにして何年も眠ってた俺の方がよっぽど駄目な親父だ」
「ナギ・・・・・・」
「何年も一人にしちまってごめんな・・・・・・」

両手をアリカの首に回してナギは彼女を抱き締める。
お互いの体温を感じながらアリカは、そっと彼の耳元に呟いた。

「構わぬ・・・・・・・」

何年か振りにアリカは優しそうな微笑みを顔に浮かべた。
彼女の冷え切った心は、親の役目を教えてくれた銀時と、夫であるナギによって人としての温かみが徐々に戻り始めていく。

「おぬしが生きていただけで・・・・・・それだけでわらわは十分じゃ・・・・・・」
「お前を置いて死ぬわけねえだろうが・・・・・・」

抱きしめながらアリカの頭に手を置きナギはぶっきらぼうに返す。
どんなに遠く離れようとも、この夫婦の愛は昔と変わらない。

そんな二人が固く抱きしめ合っているのを、銀時の傍に寄り添いながらあやかと千雨は考え深げに眺めていた。

「羨ましいですわね・・・・・・」
「・・・・・・どっちが?」
「無論、何年たっても夫に愛されている奥さんの方ですわ」
「ああ・・・・・・」

嬉しそうな顔で頷くあやかに曖昧な返事をした後、千雨はふと銀時の方に視線を移す。

(こいつとそういう関係を築ける日が来るのかな・・・・・・)

そんな事を一瞬考えて千雨は思わず顔を赤くしていると、銀時の瞼がムズムズし始めた。

「・・・・・・んあ?」
「銀八ッ!」
「銀さんッ!」
「銀ちゃんッ!」

瞼をゆっくりと開ける銀時、それに気付いた千雨がすぐに声を上げるとあやかはすぐに彼の顔に顔を近づける、一緒にいた神楽もだ。

「意識が戻ったんですのね銀さんッ!」
「・・・・・・俺なんで倒れてんだ?」
「銀ちゃん私達と会った途端いきなり白目向いてぶっ倒れたアルッ!」
「そうだっけ? あんま覚えてねえや・・・・・・」

ずっと意識を失っていたので銀時は寝ぼけてる様な表情をしたまま上体を起こす。
そしてふと、ずっとあった腹の激痛が無くなっている事に気付いた。

「あり? 腹に風穴開いてたのになんで治ってんだ?」
「ナギさんが魔法で治してくれたんですよ、焦りましたよ僕、ハハ、アンタいきなり倒れてるんですもん」

苦笑いを浮かべながら説明してくれる新八を銀時はボーっとしながら眺めた後。

「・・・・・・誰だお前?」
「うおいッ! 長年付き合っている僕の事忘れんなやッ!」
「冗談だって、ちゃんと覚えてるよ新二君」
「新八だろうがッ! なんだそのロボットアニメの主人公みたいな名前はッ!」

安易なボケに相変わらず高速でツッコミを新八が入れてため息を突く。

「こんなに心配させておいて・・・・・・アンタやっぱり相変わらずですね」
「ていうかお前等どうやってこっちに来たんだ?」
「近藤さんのおかげですよ」
「は?」

まだ寝ぼけている様子の銀時が新八の言っている事に首を傾げていると、神楽が突然抱きついてきた。

「銀ちゃ~んッ!」
「だーもうくっつくな、今大事な話してるんだから・・・・・・」
「な、何してんですか銀さんにッ! そんな事は私が許しませんのよッ!」

銀時の顔に嬉しそうに頬ずりしている神楽にあやかが怒ったように叫ぶ。
すると神楽はムスッとした表情を浮かべながら銀時と目を合わせて

「銀ちゃん、この金髪デカ乳がさっきからうるさいネ、どうにかしてヨ」
「お前、俺が寝てる間にあやかと何かあったのか? 仲良くしろよお前等、同じ万事屋なんだから」
「同じじゃないネッ! 私達が本物であっちはパチモンアルッ!」
「いや両方とも作ったのは銀さんだからどっちも本物なんだけど・・・・・・」
「よう、やっと起きたか」
「ん?」

あやかの方を指差して叫ぶ神楽に銀時がジト目で呟いていると、後ろから声がした。
一旦神楽を引き離して銀時は声がした後ろに振り返ると、そこには死んだと思い込んでいたナギがこちらに笑いかけながら立っている。

「俺のおかげで命助かったんだぜ、ありがたく思えよ」
「うるせえな、お前の奥さんのおかげでこっちは死にかけたんだよ。旦那のお前が助けるのは当然だろうが」
「あ? 助けてやったのになんだその態度? 喧嘩売ってる?」
「いやいやそっちこそ何その態度? 言っとくけどアレだからね? 俺お前の奥さんが谷底に落ちそうになった所を助けたんだからね? お前の奥さんにとって俺は命の恩人なんだからそこん所踏まえて態度改めてくんない?」

傷も治ったのですぐに銀時は立ち上がると助けてくれたナギに向かって言いたい放題。
そんな彼にカチンと来ながらナギは後ろにいるアリカの方に振り返る。

「コイツが言ってる事本当か・・・・・・?」
「う、うむ・・・・・・わらわを助けてくれたのは本当じゃ・・・・・・」
「そうか・・・・・・」

縦に頷いたアリカを見てナギはため息をついた後、銀時の方に首を戻す。

「カミさんが世話になったな・・・・・・ありがとよ」

そう言ってナギは軽く銀時に向かって頭を下げた。
がさつな性格だがナギは妻を助けてくれた恩人にお礼を言わないなんて事はしない。
すると銀時は彼に向かってスッと手を差し伸べ

「金」

現金によるお礼を求めた。

「有り金全部出せや駄目親父、有名人なんだから一杯金持ってんだろコラ」
「・・・・・・・」

自分が頭を下げたのにこの態度、ナギの頭の中で何かがブチッと勢いよく切れた。








































数分後、ボロボロになった状態で、また倒れていた銀時はムクリと上体を起こした。
隣でボロボロに倒れていたナギも体を起こす。

「「・・・・・・俺なんで倒れてんだ?」」
「お前等がいきなり殴り合いを始めて終いにはクロスカウンターで両方沈んだんだよ」
「「ああ」」

目の前でしゃがみこんで経緯を話してくれた千雨に銀時とナギは同時に頷くとお互いに顔を合わせる。

「じゃあもう一回やるか?」
「かかってこいよ、白髪頭」
「うるせえよトリ頭、立てやコラ」
「上等だコラ」
「止めろバカ者共ッ!」

立ち上がって睨み合う二人に遂にアリカが大声を上げて怒鳴りつける。

「こんな事態なのにお主等は仲間割れなんぞしてアホだとは思わんのかッ!?」
「俺はこんな奴と仲間になった覚えはねえ」
「コイツと俺が仲間? おいハニー、冗談はそのバディだけにしてくれよ」
「コイツ等・・・・・・」

全く仲良くしようとしない銀時とナギにアリカは頭を手でおさえる。

「何故仲良く出来んのじゃ・・・・・・・」
「銀さんとナギさんって所々似通ってる所がありますからじゃないですか」
「全然似てないアル、銀ちゃんの方がまだマシヨ」
「ん? お主達は誰じゃ?」
「あ、すみません。自己紹介はまだでしたね」

呆れた様な表情で近づいて来た新八と神楽にアリカが目を細めると、新八は礼儀正しく一礼して笑いかける。

「初めまして志村新八です。元々は銀さんの所で万事屋として働いていたんですが、今はわけあってナギさんの所で万事屋の仕事をしています。あとこの子は神楽ちゃん、この子も銀さんの所で働いていたんですが、僕と同じく今はナギさんの所で」
「仕方無くあのバカの所で働いてるだけアル、銀ちゃんが帰って来たらあんな男すぐにマダオがいる公園に捨ててやるネ」
「ほう、そうじゃったか・・・・・・」

自己紹介してくれた新八と神楽にアリカは顎に手を当てて頷くと、新八は更に話を続ける。

「あなたの事もナギさんから聞きました、あの人の女房のアリカさんですよね?」
「うむ、一時のテンションに身を任せて奴の妻になってしまったアリカ・スプリングフィールドじゃ」
「アハハ、ナギさんから何度もあなたの話を聞いてたんですけど本当ですね。気が強いけど美人でスタイルも良くて・・・・・・」

話の途中で新八は腕組みして立っているアリカの体を下から上へと視線を泳がしながら硬直した。

(ほ、本当に美人だしスタイルも凄えぇぇぇぇぇッ! うおッ! なんだあのやわらかそうで大きな胸はッ! あんなん初めて見たッ! 姉上とは天と地ほどの差じゃないかッ! 戦闘力で言うとヤムチャとブロリーぐらい格が違うッ! 恐るべし異世界ッ!)
「新八、どうしたアルか?」

16年間の人生の中でこれほどの美人は見た事が無い。、隣で首を傾げて尋ねて来る神楽の声にも耳を貸さず、ただ新八はアリカの姿を凝視する。

 (ナギさんはこんな美人でスタイル抜群な人と結婚できたのか・・・・・・クソッ! なんて羨ましいんだッ! 僕もいつかこんな美人な人と・・・・・いや何考えてんだ志村新八ッ! 僕はお通ちゃん一筋だッ! あんなオッパイがなんだッ! あんなのただの脂肪のかたまりじゃないかッ! 女の子の胸っていうのは大きからず小さからず、ほんのちょっぴりふっくらしてるのが一番なんだッ! さすがに神楽ちゃんクラスは選考外だけど・・・・・・)
「おいメガネ、返事しろヨ」
「どうしてこの者は突然苦しそうに歯を食いしばっておるのじゃ?」
「知らないアル、でもなんかムカつく事考えてる気がするネ」

こちらにそっぽを向いて歯を食いしばりながら頭の中で自問自答している新八を見てアリカが尋ねると、神楽は軽蔑のまなざしで彼を見つめながら呟く。
男というのは本当にバカな生き物なのだ。
神楽はそんなバカをほっといてさっさと今は一人でつっ立っている銀時の元へ行ってしまった。

「銀ちゃん、さっさと江戸に帰るアル、みんな心配してるネ」
「いや、やる事残ってるからまだ帰れねえんだわ」
「ふ~ん」

呟いた後神楽はふと傍に立っていた千雨とあやかの方に顔を向ける。

「問題無いネ、あんなの私一人で十分ヨ」
「それはどういう意味ですかチャイナさん・・・・・・?」
「察しろよ、私一人でテメェ等なんざ簡単に始末出来るって事だよ。胸に栄養入り過ぎて頭の方は栄養足りてねえじゃねえのか」
「何コイツ、急に普通の口調で毒吐いて来たんだけど・・・・・・」
「ていうかさっきから私の胸の文句ばっかり言ってますわこの人・・・・・・」

無表情でサラリとドスの利いた毒を放ってくる神楽に千雨とあやかは困った様なリアクションを取りながら銀時と一緒にいる彼女の方に近づいて行く。

「銀さん、このチャイナさんなんとかしてくれませんか? さっきから私に対してセクハラ発言ばっかりで・・・・・・」
「ああ? 聞き流せよそんな事、いちいちセクハラセクハラって過敏に反応してたら身が持たねえぞ」
「そうアル、おっぱい妖怪」
「誰がおっぱい妖怪ですか・・・・・・」

銀時の腕にしがみ付きながらこちらを睨んで来る神楽にあやかは頬を引きつらせる。
この少女、何故か自分に対してかなり敵意を持っている様だ。

「こんな人と長年もよく一緒におられましたわね」
「ま、腐れ縁って奴だよ、俺はどうやら厄介者に好かれるタチでね」

そう言って銀時は神楽の頭をクシャクシャになるぐらい撫でる。
彼に頭を撫でながらこちらに向かって睨みつけて来る神楽にあやかはジト目で睨み返した。
この少女とは絶対に仲良くなれない。
あやかがそう確信していると、銀時は神楽の頭からパッと手を離してふと両手で頭をおさえて悶え苦しむように動いている新八を、不審者を見る様な目つきで眺めていたアリカの方に近づいた。

「これからどうするんだオメーは? 俺達と一緒にガキ助けに行くか?」
「・・・・・・わらわはお主を殺そうとしたのじゃぞ・・・・・・?」
「んな事は関係ねえよ、アイツを助けたいのはお前も一緒だろ? 大事な一人息子なんだし」
「銀時・・・・・・いやダメじゃ、春雨の幹部であるわらわがお主達の方に寝返ったのが“奴等”にバレてしまったらマズイのじゃ・・・・・」
「何?」

難しそうな表情で口ごもるアリカを銀時はジッと見つめる。その時始めて気付いた。
彼女の首に拘束具のような黒い首輪が巻かれている事に

「何だそれ・・・・・・?」

銀時はそっとアリカの首に巻かれている首輪に手を伸ばそうとすると



















「無暗にそいつを触らない方がいいよお侍さん」
「「!!」」

突然聞こえて来た男の声に銀時とアリカはハッとして声のした方向へ振り向く。

「下手すればその人の首が吹き飛んじゃうから」
「お前は・・・・・・!」
「神威・・・・・・!」

雑木林の中から出て来たのは春雨の幹部であり、ネギを殺した張本人。
夜王鳳仙の弟子でもある夜兎、神威だった。今回は手に夜兎族専用の武器である傘を持っている。
ニコニコしながら近づいてくる神威に銀時とアリカが気付くと同時に、その場にいたメンバーも彼の存在に気付く。

「あなたはさっきいたッ!」
「ネギ先生を殺した男じゃねえか・・・・・・」
「あれって神楽ちゃんの・・・・・・」
「神威ッ! どうしてお前がここにいるアルかッ!」

神楽が彼に向かって思いっきり叫ぶと、神威は笑顔を浮かべながら彼女の方へ顔を向けた。

「なんでこんな所にいるの?」
「お前ッ!」
「弱い奴に興味は無い、さっさと元の世界に帰ったら?」
「神威ぃ・・・・・・!」

歯を食いしばって睨みつけて来る神楽にまったく興味無さそうにすぐにそっぽを向くと、銀時とアリカ、そして少し離れていた場所に立っていたナギに視線を移した。

「そっちの人は初めてみる顔だネ」
「あ? 魔法世界のスーパースターと呼ばれる、“サウザンドマスター”、ナギ・スプリングフィールド様のツラを知らねえだと?」
「ナギ? じゃあもしかしてあの子の父親かな? 生きてたんだ、てっきり死んでたと思ったのに」

相も変わらず笑っている神威に怪訝そうに見つめた後、ナギは隣にいる銀時に話しかける。

「おい天然パーマ、誰だアイツ? 気持ち悪ぃんだけど?」
「神威、夜兎族の一人で春雨の幹部をやってる野郎だ。テメェの息子の師匠と同時にアイツを殺した張本人、俺達の敵だ」
「息子って・・・・・・ネギを殺しただと・・・・・・!? お前それマジで言ってんのか・・・・・・!?」
「あ、完全に殺した訳じゃないから」

銀時の説明を聞いてナギが戦慄を覚えていると前方にいる神威が会話に入って来る。

「まだ生き返るチャンスはある、あの子の体を奪った夜王を殺すか、あの子が自力で夜王からの呪縛を解くか。ま、両方とも確率はほぼゼロと言っていいけどネ」
「何言ってんだコイツ・・・・・・」
「ネギの体は今、夜王鳳仙が現世に残していた魂の一部によって支配されているのじゃ・・・・・・」
「なッ!」

うつむきながら呟いたアリカの情報にナギは目をカッと開く。
夜王鳳仙、まさかその名をまた聞く事になるとは・・・・・・

「生き返ってしまった鳳仙を倒さねば・・・・・・ネギは一生あの世から戻って来れん・・・・・・」
「チッ、鳳仙の野郎・・・・・・俺とお前だけじゃ飽き足らず今度は俺達の息子にまで手を出しやがったのか・・・・・・・!」

忌々しい過去を思い出しながらナギは苦虫を噛みしめる様な表情で舌打ちする。
家族をバラバラに引き裂いた張本人、どうやら彼とまた戦わねばいけないようだ・・・・・・

「息子の体を奪った鳳仙の野郎は今何処にいんだ・・・・・・」
「この山の頂上だけど?」
「!!」

頭を悩ましているナギに敵である神威がいきなり情報をあげる。
そんな行為に思わずナギは顔を上げると神威は更に話を続けた。

「俺達は今、この山の頂上にある湖で眠っている鬼を起こそうとしていてね、“旦那”もきっとウチの総大将と一緒にいる筈だよ?」
「敵のお前がそんなに味方の事をペラペラ喋っていいのか・・・・・・?」
「味方? そんなもの俺は持った事無いヨ」

笑顔を浮かべながら神威はこちらに一歩だけ近づいてくる。

「俺の味方は“俺だけ”だ」
「・・・・・・」
「さっさと山のてっぺんに行って来れば? 息子さんが待ってるよ、“お父さん”」

こちらにむかって笑いかけて来る神威に、ナギは彼に対してかなり『不気味』という感情を覚えて行く。
まるで仮面を貼った様な笑顔・・・・・・一体何を考えているのかさえわからない表情だ。
ナギは彼にそんな感想を抱いた後、隣にいるアリカに口を開く。

「山道登れる体力残ってるか?」
「わ、わらわも行くのか?」
「当たり前だろ、息子の一大事なんだぞ?」
「わらわは・・・・・・」

さっき銀時が誘った時の様に急にアリカの挙動が怪しくなる。ナギがそんな妻の姿に疑問を持つと神威が首を傾げた状態で

「その人と一緒に行くのは止めた方がいい、彼女が首に付けている首輪がアクセサリーだと思う?」
「なんだと?」

神威に言われてナギはアリカの首の方に目を動かす。
確かにおかしな黒い首輪が巻かれている・・・・・・・。

「コレは・・・・・・」
「わらわが裏切らせぬようにと春雨が仕掛けた・・・・・・首輪型の爆弾じゃ」
「ばッ! 爆弾だとッ!」

首に巻きつく首輪を震える手で触りながらアリカがボソッと言うと、ナギは思わず声を上げ、周りにいた人達もそれに驚く。

「随分とセンスの悪いモン付けてんなと思ってたが、それ爆弾だったのか・・・・・・」
「・・・・・・これがある限り・・・・・・わらわは組織を裏切れぬ・・・・・・一生わらわは奴等の手先じゃ・・・・・・」
「クソッタレ・・・・・・」

泣きそうな表情で頷くアリカに銀時は思いっきり悪態を突く。無論彼女にではなく彼女の自由を奪った春雨に対してだ。
神威はそんな彼の反応を見て面白そうに話しかける。

「その人はまだ俺達の組織の一員だ。山の頂に行けば阿伏兎もいるだろうし組織と繋がっている総大将もいる。誰か一人にでもバレたらすぐにその一人は宇宙に彷徨っている俺達の母船に連絡をする、そしたらすぐに・・・・・・・」

拳を握りしめて銀時達の方に掲げた後楽しそうに手を開く。

「ボン」
「テメェ等・・・・・・」
「カミさんを奴隷の様に扱いやがって・・・・・・」

あまりにも非人道的な行いに銀時とナギが怒りをあらわにする。もちろん他のメンバーもだ。
いつ爆発するかもわからないような物を首に仕掛けるなんて卑劣以外の何者でもない。

「力づくで壊そうとしても無駄だよ、故意にその首輪に力を入れたらすぐに爆発する仕掛けになっているらしいから」
「くッ!」
「解除するにはその首輪の爆弾の機能を停止できる鍵が必要だ、さて何処かな?」
「そんなものあるわけ・・・・・・!」

おちょくってる様な口調で話しかけて来る神威に、アリカの首輪をなんとかしようと悩んでいたナギは彼の方へ向く。しかしその瞬間、彼の表情は強張った。

黒くて小さな“鍵”の様な者を、神威が手で持ってプランプランと振っていたのだ。

「正解は俺が持っている、でした」
「「!!」」
「神威ッ! どうして貴様がこの首輪の鍵をッ!」
「ちょっと前に春雨の上層部の連中からくすねてネ、楽に奪えたよ」
「どうしてそんな事を・・・・・・」
「君に言う必要はないネ」

驚いている様子のアリカに頬笑みながら神威はその鍵をズボンのポケットにしまう。
どうやら彼女の為に素直に渡してあげるなんてこれっぽちも思っていないらしい。

「さあどうするそこのお二人さん? アリカ姫を救うにはどうやら俺を倒さないといけないようだ。どっちが来る?」

手に持った傘を肩にかけて神威はクイクイと指でこちらに向かって誘いをかけて来る。
狙いは銀時とナギらしくこちらの方にしか顔を向けない。
ナギはそんな彼をキッと睨みつける。

「子供がヤベエって時にコイツはまるでゲームみてぇに・・・・・・!」
「お前はネギの所行け、コイツは俺がぶッ倒す」
「お前が・・・・・・?」

銀時からの突然の提案にナギは困惑の色を浮かべるが、既に銀時は前に出て得物である夕凪と洞爺湖を両手に持っている。

「女房は俺に任せろ、お前は息子を助けに行ってこい」
「何言ってんだ、他人のお前にコレ以上俺の家族の面倒事を押し付けるなんて事は・・・・・・」
「いいんだよ、俺が好きで介入してるだけだから。ていうか今更そんな事言ってもよ、もう俺はどっぷりお前等の家族騒動に巻き込まれてんだ」

けだるそうに喋りながら銀時は背中に夕凪を差して腰に洞爺湖を差すと、後ろにいるナギの方へ振り向かずに口を開く。

「さっさと息子にツラ見せてこい駄目親父」
「銀時・・・・・・」
「報酬は後でキッチリ取り立てるからな」

ツンとした態度を取る銀時の背中をしばし見つめた後、ナギはアリカの方へ顔を向けると、彼女はコクリと力強く頷いく。

「あの子を頼んだぞナギ」
「・・・・・・わかってるよ、俺とお前の大事な一人息子だからな」
「今度こそ夜王鳳仙を倒してくれ・・・・・・」
「ああ、アイツとの因縁を・・・・・・終わらしてくる」

そう言い残してナギは踵を返して山の中へ走って行った。
こちらへ振り向かずただまっすぐに暗闇の中へと消えて行く。
アリカは心配そうに彼を見送った後、すぐに隣にいる銀時の方顔を向ける。

「まさかお主にこんなに色々と世話になるとはの・・・・・・感謝するぞ銀時」
「惚れてもいいけど俺はもう“先客”がいるからな」
「「「「え?」」」」

ぶっきらぼうにアリカに言葉を投げかけた銀時に、あやかと千雨、更に新八と神楽も同時に表情をキョトンとする。
先客って一体誰の事を言っているのだ・・・・・・・?
4人の疑問をよそにアリカはそんな彼にフッと笑う。

「残念じゃが、わらわは生涯あのろくでなしの亭主しか愛さないと心に決めているのじゃ」
「そうかい」

キッパリと言ったアリカに銀時は短く返事をするとさっさと歩いて行く。
そんな彼の後ろ姿を眺めながらアリカは彼に聞こえない様に小さな声で呟いた。

「もしわらわがナギに会ってなかったら・・・・・・惚れてたかもしれんの」

自分の言った事にまたもや口に笑みがこぼれる。
彼は何処かナギと似ている、そんな気がするのだ。

彼女がそんな事を思っているのも知らずに、銀時は笑顔で待っていた神威の前に姿を現した。

「さあていっちょやるか」
「相手はお侍さんか、あの『金鬼姫』を倒した実力。見せてもらうかな」
「ケツの穴まで見せてやるよ」

腰に差す木刀を抜いて構えを取る銀時。夕凪は背中に差したままだ。
神威もまるでおもちゃを貰った子供の様な笑みを浮かべて傘でトントン自分の右肩を叩く。

そして

「「!!」」

一瞬で二人は一気に間合いを詰める、銀時はすぐに木刀を彼に向かって、神威も同時に傘を彼に向かって振り下ろす。
開始して一秒もせずに銀時と神威は豪快な音を立ててつばぜり合いになった。
アリカの方に移動してそれを眺めていたあやかと千雨はそんな一瞬の出来事に驚いている。
だが彼女達が驚くのも束の間、銀時はつばぜり合いの状態から左手をすぐに自分の背中に伸ばしてある物を握る。
野太刀、夕凪。最初からこれで勝負をつけるつもりだったのだ

「こっちは急いでんだ、・・・・・・さっさと終わらせるぜッ!」

左手に夕凪を握った銀時はすかさず神威に向かって振り下ろす。
だが

「バレバレ」
「げッ!」

向かってくる夕凪を神威をいとも簡単に右手で止めた。先ほどまで右手で傘を持っていた神威だったが、銀時の策を予想して気付かれぬよう瞬時に左手に持ち替えていたのだ。
素手で握っている神威の右手からはポタポタと血が地面に垂れている。
だが彼は全く動じずに依然変わらず笑っていた。

「残念だお侍さん・・・・・・・」
「チッ!」
「そんな実力じゃ俺にはまだまだ勝てない」
「!!」

つばぜり合いの状況で神威は彼の木刀を傘で受け止めるのではなく受け流しにし、銀時が驚いている隙に夕凪から手を離して、神威はするりと彼の前から消える。
銀時の目でも追えないほどのスピードで神威は彼の背中に回ったのだ。

「ここでお別れだネ・・・・・・・」
「やっぱテメェを一人で相手にするのは無理だったか・・・・・・!」
「お侍さんとはもっと遊びたかったんだけどな」
「銀さんッ!」
「銀八ッ!」
「銀さんッ!」
「銀ちゃんッ!」
「銀時ッ!」

周りから銀時の名を叫んでいる連中の声を聞きながら、神威は目を開けて悔しそうにこちらに振り返って睨んでいる銀時の背中を串刺しにする為に傘を構えた。

一瞬で絶命するであろう一撃を入れる為に神威は傘を左手に持ったまま力を込める。
だがなんと、信じられない事が起こった。




























「ほう、この私の男に手を出そうとするとは死ぬ覚悟は出来るのか貴様・・・・・・」
「!」

耳元に突然聞こえた見知らぬ少女の声、それと同時に力を込めていた左腕が動かなくなる。
珍しく驚いた表情で神威は目を開けた状態で自分の左腕を見るとそこには少女の腕が。
その細っこい腕からは想像も付け難い凄い力で、怪力を誇る自分の腕を止めていたのだ。

「・・・・・・誰?」
「私を知らぬか、ならば仕方ない・・・・・・」

少女の腕をたどって神威は視線を動かすとその先になんと自分の影。
しかしそこには間違いなく何かが潜んでいる・・・・・・
神威がそう思った次の瞬間。

「その体にちゃんと教えてやらねばな・・・・・・」
「!」

影から金髪の少女が突然現れ、高速で間合いを取って自分の腹に思いっきり拳を入れた。その一撃は少女とは思えないほどの尋常ではない力であり、神威が自分の身に起こった事にビックリする間に、次々と太い木をへし折りながら銀時がいる所からずっと遠くまで吹っ飛ばされた。

あまりにも突然の出来事に、さっきまで殺されそうになっていた銀時は呆然と神威が吹っ飛んでいった所を眺め、そして彼に予想外の一撃を入れた“彼女”の方に顔をゆっくりと向けた。
黒いゴスロリ衣装を身にまとった少女は銀時と目を合わせると意地の悪そうな笑みを浮かべる。

「やっぱり私がいないとお前は全然ダメだな銀時」
「エヴァ・・・・・・!」

金髪の少女の正体は、ナギのかけた呪いによって修学旅行に参加できなかった筈の悪の魔法使いであり、銀時と一緒の家で生活しているエヴァンジェリンだったのだ。

「どうしたんだお前、呪いのせいで京都に行けないとか行ってたじゃねえか・・・・・・!」
「私達の愛を妨げる障害など何も無い」
「何言ってんだチビ」

自信満々に胸を張るエヴァに銀時はボソッと一言。すると突然後ろから・・・・・・

「銀時様、私が代わりに説明しましょう」
「のわぁッ! って茶々丸かよッ! 後ろから突然出て来るなッ!」
「すみません」

いきなり現れたのはエヴァの従者である、絡操茶々丸。
メイド服の格好で巨大なレールガンを手に持ったまま、銀時に向かって丁寧に謝った後、彼に向かって口を開く。

「マスターにかかっている呪い『登校地獄』に対抗すために、今現在複雑な儀式魔法の上、学園長が『エヴァンジェリンの学業は授業の一環である』という書類に5秒に一回の速度でハンコを押しています。最初はあの人も嫌がっておられたのですがスクリュードライバーをかけたらすぐに快く了承してくれました」
「フン、ヒマなジジィに仕事を与えたんだ、私があっちに戻るまでずっとハンコ地獄だな。これ終わったらユニバーサルジャパンでも行くか?」

茶々丸の話の後にエヴァはせせら笑いを浮かべてくると銀時もニヤリと笑う。

「ユニバーサルだろうがディ○ニーだろうが何処でも連れてってやるよ」
「本当か? 嘘ついてたら怒るぞ?」
「エヴァさんッ!」
「ん?」

学園長の事など全く気にしていない様子の銀時とエヴァの所に、先ほどまで銀時と神威の戦いを見ていたあやかと千雨、新八と神楽が駆けよって来る。

「なんでエヴァさんがいるんですかッ! あなたこっちに来れなかったんじゃなくてッ!?」
「私と銀時の愛を妨げる障害など何も無いのだ」
「なッ!」
「もう頼むからお前黙っててくれ」

ニヤついているエヴァの頭を銀時は軽く叩く。こう言っても聞かないのはわかっているのだが

「銀さん銀さんッ! 誰ですかこの子ッ! いきなり出てきて“あの人”を簡単にふっ飛ばしましたよッ!」
「ホビット族だ」
「すげぇ私初めて見たアルホビットッ! おいホビットさっさと指輪火山に投げ入れてこいヨッ!」
「ホビットじゃないヴァンパイアだッ!」

指を差して命令口調で叫んでくる神楽にエヴァは一喝するとすぐに銀時の方へ顔を向ける。

「銀時ッ! 何なんだコイツ等ッ!」
「俺が江戸に置いて来た仲間だ」
「江戸に置いて来た仲間? ああ、あっちの世界の万事屋の連中か、何でこっちの世界におるか知らんが・・・・・・やかましい連中だな」
「お前等と対して変わんねえよ・・・・・・」

エヴァと銀時がお互い欠伸をしながらそんな会話をしている頃
千雨は彼女と一緒に現れた茶々丸に話しかけていた

「いきなりエヴァが出てきたり、お前も上から落ちてきてビックリしたけど、お前が持ってるデッカイ銃も何だそれ・・・・・・?」
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲です」
「アームストロング二回出て来たぞッ! ていうか名前長えよッ!」

ネーミングセンスを疑う巨大な兵器に千雨がツッコんでいると、彼女の声を聞いてあやかと、まだ体力が回復していないアリカがヨロヨロとそっちに歩み寄る。

「どうしたんですか千雨さん? あらネオアームストロングサイクロンジエットアームストロング砲じゃないですか、完成度高えーなオイ」
「何でお前が知ってんのッ!?」
「ん? その武器はネオアームストロングサイクロンジエットアームストロング砲ではないか、完成度高えーなオイ」
「完成度以前に何でお前等が知ってるのかが私が知りたいよッ!」

茶々丸が持っている武器に向かってあやかとアリカが腕を組んで感想を漏らしていると、千雨が二人に向かって指差しながらツッコミを入れる。
そんな彼女をふと新八は遠い目線で眺めていた。

(あれ? おかしいな、ああいうツッコミは本来僕の出番なのに・・・・・・)

新八が千雨に向かってそんな疑問を持っている頃、彼の前にいる銀時とエヴァはやっと戦況の話を始めた。

「銀時、敵の親玉は誰だ?」
「高杉だ、春雨を操って山の頂にいる鬼を復活させようとしている」
「フン、あのいけすかない男か・・・・・・・狙いはリョウメンスクナノカミの様だな、くだらん」

不機嫌そうに鼻を鳴らすエヴァ、彼女自身も高杉の事を快く思っていない一人だ。

「それでさっき私が吹っ飛ばした相手は誰だ?」
「宇宙海賊春雨の幹部の一人、神威だ」
「傘を持っていたがもしかして“夜兎族”か?」
「夜兎を知ってんのか?」
「昔見た事があるのだ」

ニッと笑みを浮かべるエヴァに銀時は目をぱちくりさせる。
本来夜兎族は自分達の世界の住人の筈だが・・・・・・
だが銀時がその事を尋ねる前にエヴァは神威が吹っ飛んだ方向に目を送る。

「思わず本気で遠くへ吹っ飛ばしてしまったが、まだ奴が生きている気配がする。私ほどではないが夜兎は丈夫だな」

神威が飛んで行った場所から彼は戻って来ない。どこかに潜んでいるのか、それとも反撃の準備をする為に何かしているのだろうか。
銀時が何処かに神威がいないかキョロキョロと周りを見渡していると、そんな彼にエヴァが口を開く。

「お前は高杉の所へ行ってこい、アイツは私一人でやれる」
「何?」
「今の私には登校地獄も呪いも消えて魔力で十分に戦える、とりあえずアイツを倒せばいいのだろ?」
「・・・・・・・大丈夫なのか?」
「フフ、私を誰だと思っている」

心配そうに見つめてくる銀時にエヴァは不敵に笑った。

「私は600年以上を生きた不死の吸血鬼だぞ」

何時もの様に自信満々にエヴァは言ってのけた。
銀時でさえ未だ見た事のない彼女の本気、それに賭けてみるのも悪くない。

「・・・・・・死ぬなよ、テメェの葬式に行くなんざ俺はゴメンだからな」
「当たり前だ早く行け、終わったら思いっきり甘えさせてもらうからな」
「・・・・・・好きにしろ」

最後にエヴァの頭に手を置いて乱暴に撫でた後、銀時は踵を返してあやかと千雨のいる方へ振り向く。

「ちょっくら“同窓会”行って来る。チビが代わりにアイツと戦ってくれるって言ってたんでな」
「だ、大丈夫ですかエヴァさん一人に任せて・・・・・・」

不安そうにエヴァを見つめながらあやかが呟くと近くにいた茶々丸が無表情のまま返す。

「マスターはやれば出来る子です」
「でもよ・・・・・・」

確信するように茶々丸は頷くが千雨は少し心配そうだ。
銀時でさえてこずった相手と彼女は戦えるのであろうか。
だがそんな事を考えている千雨に向かって銀時はだるそうに口を開く。

「“万事屋のマスコット”を信じてやれって、という事でお前等はここに残ってアイツの応援でもしてくれ」
「え?」
「じゃあな」
「っておいッ! 銀八ッ!」

自分達を残して行ってしまおうとする銀時に千雨が慌てて呼び止める。

「私達も・・・・・・!」
「いらねえよお前等なんか、今回はマジで規模のデカイ戦だしな、戦力になるどころか返って足引っ張るだけじゃねえか」
「それはそうだけど・・・・・・」
「それにテメェ等だけは絶対に死んで欲しくねえんだ、お前等だけは絶対に」
「銀八・・・・・・」

そっぽを向きながらそう言うと、銀時はさっさと山の中へ入って行ってしまおうとする。
千雨は何も言えずにただ頭を下げて震えている。だが隣にいるあやかは

「銀さん・・・・・・一つだけ聞きたい事があるのです私・・・・・・」
「ああ?」

か細い声を耳にして、銀時はあやかの方に振り返らずに返事をした。
彼女は顔を真っ赤に染め上げながら恥ずかしそうに彼に向かって口を開く。

「私と千雨さんとエヴァさんは・・・・・・一体あなたのなんなのですか・・・・・・?」

直球的な言葉に銀時は黙ったまま頭を掻き毟った後、あやかと千雨、そしてエヴァのいる方向へ笑みを浮かべながら振り返った。






















「俺の女だ」






























嘘偽りのないまっすぐな言葉。
その言葉に三人は何も言えずにつっ立っていると銀時は首を前に戻して歩き出す。

「最初からテメェ等の内から一人を選ぶなんて考えてねえよ、三人の女に告白されたなら・・・・・・」

背中に差す夕凪をブラブラさせながら銀時は振り返らずに歩いて行く。

「三人共俺が貰ってやる」

最後にそう言うと、銀時は深い闇の中へと消えて行った。
残された三人は同時に目を合わせる。

「リアル三股侍・・・・・・」
「あいつの世界では一夫多妻なのか・・・・・・?」
「違うと思いますけど・・・・・・」

千雨とエヴァとあやかは彼の決断に表情を悩ます。
だがすぐに・・・・・・三人揃ってため息交じりに笑みを浮かべた。

「「「ま、いっか」」」
「いや、いいのかそれで・・・・・・?」
「いいのです」

一言で簡単に済ませる三人に頬を引きつらせてアリカがツッコむと茶々丸が彼女に向かって頷く。
なにはともあれ“四角関係”という複雑な交差は一本の糸に繋がったのであった。

しかしここでまた新たな問題がまた一つ・・・・・・

「か、神楽ちゃん今の聞いた・・・・・・・? 銀さんが・・・・・・・銀さんが・・・・・・」
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

先ほどの一部始終を見ていた銀時と長年仲間としてやっている新八と神楽は絶句の表情を浮かべていた。
そして

「銀さん待って下さぁぁぁぁいッ! 話がッ! 僕等どころかかぶき町の住民がひっくり返る様な話が聞こえたんですけどォォォォォ!!!」
「おい天パどうしたァァァァァ!!! 私達とずっと離れていたせいで頭おかしくなっちゃったアルかァァァァァ!!!」

行ってしまった銀時の後を急いで彼の正気を疑いながら新八と神楽は追う。

人の好みも、人の愛の形も、人それぞれなのだ。









[7093] 第六十六訓 戦場を色取るのは忍者とチャイナとストーカー、そしてあんパン
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/04/25 16:25

神威がエヴァ達の前に姿を現したのは銀時がいなくなり新八と神楽が彼を追った直後だった。
否、最初に来たのは“彼自身”ではない、最初に“飛んで”来たのは・・・・・・

「はぁッ!? な、なんだアレッ!?」
「フン、子供だましだな」

巨大な木が次々とこちらに向かって雨あられに飛んでくる。千雨は思わずその光景に仰天して腰を抜かすが、エヴァは冷静に手のひらを前にかざす。

「まさかこれで仕留めようと思ってるわけでもあるまい」
「「!!」」

エヴァが手を前にかざすと、突如横に10M、縦に15Mはあろう透き通る様に美しい氷の壁がエヴァの前に現れる。彼女の魔法を初めて見たあやかと千雨、そしてアリカにも攻撃が及ばぬように張った盾だ。
木は次々と氷の壁にぶち当たって轟音を立てて地面に落ちる。

「これはマスターの動きを見る為の威嚇射撃かと」
「そんな事は知っている、だがこんな小細工、腕一本動かすだけで十分だ」

隣に立っている茶々丸に余裕そうに返すエヴァ。
いつもと全く違う彼女の姿を千雨とあやかは呆然と眺める。

「凄えな・・・・・・」
「ええ・・・・・・エヴァさんってもしかして本当は凄い人・・・・・・」
「フフフ、もっと褒めろ、敬え、這いつくばれ、そして自分達がこのエヴァンジェリンの足元に及ばないというのをここで宣言しろ」

意地悪く笑って振り返るエヴァに千雨とあやかは目を細める。

「あ、なんだ。いつものエヴァじゃねえか、凄いと言った自分がアホらし」
「ええ・・・・・・エヴァさんってやっぱりお子ちゃまですわね、本当可愛くない」
「マスター、ああ言われておりますが」
「あの男を倒したら次はあの二人だ・・・・・・!」

二人の方へ振り返っている茶々丸にエヴァは木が飛んでくる方向を向いて苦々しい表情で呟いていると。

突然槍のように飛んで来た木がピタリと止まった。

その代わりに、こちらに向かって歩いて来る足音が聞こえる。

「コイツは凄い」

闇の中から聞こえた男の声、そして声を出した張本人はすぐにエヴァ達の前に姿を現した。

「それが魔法って奴か」

草陰から現れたのはさっきまで木をぶん投げていた神威。
腰に自分の主武器である傘を差し、右肩を鳴らしながらニコニコとエヴァ達に笑いかけている。
もう飛び道具を使うのを止めたと察したエヴァはジロっと彼を睨みながら腕を下ろす。
氷の壁はすぐにフッと消えた。

「あんなチンケな攻撃をして来るとは貴様の実力もたかが知れてるな」
「言ってくれるねぇ、そんな事言われたの久しぶりだよ」

腰に差す傘を抜いて、エヴァの挑発に怒りもせずに彼女の方に近づいて行く神威。
そんな彼に対しエヴァはふと隣にいる茶々丸に向かって口を開く。

「お前は別の場所に行って他の敵を殲滅して来い、恐らく今ヤバいのは近衛家の屋敷だ」
「よろしいので?」
「“私一人”で十分だあんな若造」
「・・・・・・わかりました」

一人で戦えると言う所を強調して喋りかけてくるエヴァに茶々丸は行儀よく頭を下げた後、千雨とあやかの方へ振り返る。

「マスターを頼みます」
「え? お前何処に・・・・・・」
「ここはマスターに任せて、私は屋敷の方へ急がせていただきます」
「屋敷ってここから遠いぞ? どうやって・・・・・・ってぬおわぁッ!」

背中に付いてるリュックサックの様なバックパックから飛行機が飛ぶ前のジェット音を鳴らした後、茶々丸は一瞬で飛来し、千雨達の真上の上空で一回転した後、屋敷の方へあっという間に飛んで行ってしまった。
彼女の思わぬ性能に、千雨は驚いた表情で上を向いたまま硬直する。

「カッケー、ガンダム見てぇ・・・・・・私アレ欲しい・・・・・・」

見えなくなってしまった茶々丸に千雨は感想をポツリ。
もう結構な付き合いになるがあんな事出来るなんて知りもしなかった。

千雨の中で茶々丸の株が一気に上昇している頃、一人で戦うと決めたエヴァは、神威の方に足を踏み出す。

「この私を前にして震えもせずに立っている事は褒めてやろう」
「小さな小さな女の子を見て震えるって、普通の人でも無いと思うけど?」
「小さなを二回も言うなッ!・・・・・・・まあいい・・・・・・・」

笑顔で首を傾げる神威に怒鳴った後、エヴァは笑みを浮かべて彼と対峙する形になる。

「さっさと貴様を倒して銀時にハグしてもらうとするか・・・・・・」
「エヴァさん大丈夫なんですかッ! その人銀さんでもてこずる相手ですわよッ!」
「なあに負けはしないさ、夜兎とは昔一度だけ戦った事があるしな」
「え?」

心配そうに後ろから見つめるあやかにエヴァは一度だけ振り返って意味深なセリフを吐く。
あやかは理解していない表情だが隣に座っているアリカは彼女の言った事を理解できる。

「かつて・・・・・・『闇の福音』と呼ばれ人々から恐れられた悪の魔法使いエヴァンジェリンは、ある夜兎族の男と戦った事がある」
「エヴァさんが?」
「その戦いは激戦の激戦、たった二人だけの戦いでその周りは核弾頭でも落とされたぐらいの巨大なクレーターが何個も出来上がっていた」

昔話をあやかに向かって喋りながらアリカはエヴァの方へ顔を上げる。

「結局結果は引き分けじゃったが、あの男と互角に戦えたという時点で既に彼女は、魔法使いの中では5本の指に入るであろう最強クラスと評価出来る」
「そんなに強い人だったんですかその夜兎の人は・・・・・・?」

エヴァの後ろを眺めた後、今度は神威の方へ向いてアリカはあやかと、いつの間にか近くに座っていた千雨に話を続けた。

「星海坊主・・・・・・・」

戦場の中で長い黒髪を揺らし、鋭い目を光らせながら巨大な傘を肩にかける戦闘狂を脳裏に浮かべながらアリカは呟いた。

「現在ネギの体を奪った夜王鳳仙と同等の力を持ち、夜兎でありながらナギやわらわに何度も力を貸してくれた男。しかも・・・・・・」

話を一旦止めた後、アリカは神威を見たままゆっくりと口を開く。

「あそこにいる神威の父親じゃ、エヴァは奴の父親と互角に渡り合える実力を持っている」
「「!!」」

予想だにしない情報に千雨とあやかが目を見開いた瞬間、エヴァと神威がぶつかり合う。
神威が傘を豪快に横に振るうと、エヴァはすぐにしゃがみ込んで地面に手を置く。
すると神威の背後から氷の刀が何本も地面に生えてきて、それら全てが彼の背中を刺さんと襲いかかる。
しかし神威は瞬時にその場でバク転して避け、襲いかかって来た氷の刀を空中に浮いた状態のまま傘の一振りで粉砕。
そして地面に着地した瞬間、一気にエヴァとの距離を詰める。
対してエヴァはすぐに手のひらを前にかざして氷で出来たガラスの破片の様な物体を何百個も出現させた。
彼女が手を振り下ろした瞬間、その破片は一気に神威に弾丸の様に飛んで行く。
飛んでくる氷の破片を右手に持つ傘で撃ち落として行きながら神威は突き進む。頬に破片がかすって血が出ようとも、彼は笑ったままだ。

そして
エヴァを自分の攻撃範囲に入れた神威は彼女に向かって傘を振り下ろす。
彼女は一瞬の早さで氷の刀を手の中に出現させそれを受け止める。
しかも彼と同じく笑みを見せて

「どうした若造、まさかそれが貴様の本気か・・・・・・?」
「・・・・・・」

つばぜり合いのままエヴァは神威の方に言葉をかける。
だがエヴァ自身わかっていた、彼がまだ実力を全開で発揮していない事に。
その証拠に彼の口元にはまだ笑みが残っている。

「クックック・・・・・・」

戦いの中、神威は頬にしたる血を垂らしながら不気味な笑い声を上げた。
その笑い声は遠くにいる千雨とあやか、アリカの耳にも入って来る。

「己と同等・・・・・・それ以上の剛なる者の血をもって初めて・・・・・・」

そう言うと神威は瞼を・・・・・・ゆっくりと開けた。

「俺の魂は潤う・・・・・・!」

狂気の目と笑みを浮かべる神威にエヴァは目を細めて睨みつける。

(この若造の目・・・・・・)












昔、自分と引き分けた男、星海坊主と同じ目だ。



































第六十六訓 戦場を色取るのは忍者とチャイナとストーカー、そしてあんパン





















一方ここは近衛家の屋敷の大広間。
真撰組、春雨の兵達が乱れ合い、血が飛び交う戦場と化している。
そしてここでもまた、苛烈な戦いを繰り広げる男女が牙を交えていた。

神鳴流剣士の桜咲刹那と、元お庭番衆の忍びだった服部全蔵。

真撰組や天人達が戦っている中にいるにも関わらず、二人は相手のみしか視界に入っていないほど集中している。
ほんの少し相手に気を緩ませるただけで負けるとわかっているからだ。

「チィッ! どうなってやがるッ!」

焦った表情をしながら、全蔵はコートの下にあるクナイ手裏剣を大量に投げる。
威嚇でも何でもない本当に相手の息の根を止める為に投げた飛び道具、だが刹那はそれを冷静に見極めながら背中に生える白い翼を大きく広げ

「はぁぁぁぁぁッ!!」

手に持つ妖刀、死装束を用いて弾き飛ばした。
だが全てを弾く事は出来ず一本だけ膝に刺さってしまう、だが問題なさそうに彼女はそれを抜いて地面に捨てる。

「どうやらそっちも・・・・・・ガタが来てる様だな・・・・・・手裏剣のスピードがだいぶ落ちてるぞ・・・・・・」
「へへ・・・・・・マジかよ、この俺がこんなちっぽけなガキと互角にやりあってるだと?」

荒い息を吐きながら刹那が話しかけると全蔵は疲れた表情に無理矢理笑みを作る。
目の前にいる刹那は出血こそ所々の箇所にしているが全て急所を外している。
前までは避けるだけで精一杯だった筈なのに、今の彼女は全く別人と言っていいほど動きが違っていた。

「何があった・・・・・・何がお前をこんな短い間で成長させた・・・・・・」
「・・・・・・三つの覚悟」
「何?」
「己の全てをさらけ出す覚悟・・・・・・そして人斬りになる覚悟・・・・・・そして」

両肩を激しく上下させながら刹那は全蔵に話しかけ、そしてチャキッと刀を全蔵に向かって突き出す。

「くだらないプライドを捨てて生き抜く覚悟・・・・・・・どんなにこの身が血や泥に汚れようと、絶対に私はこの戦いに生き残る・・・・・・!」
「・・・・・・成程な」

刹那の覚悟を聞いて全蔵はポケットに手をつっこみながら静かに頷いた。

「どうやらお前はもう剣術かじっただけのガキじゃねえ様だ。刹那、お前は正真正銘立派な侍だよ、俺みたいな裏でコソコソやるチンケな忍びとは違う。けどな・・・・・・」

両手を入れていたポケットから二つのクナイを取り出す。彼が持っている武器はもうこれだけだ。残りは全て刹那に弾かれた。

「こんな俺にも覚悟ぐらいある・・・・・・お前の様に護りてえモンの為なら、喜んで泥でもなんでも被るさ」
「お互い負けられない様だな・・・・・・」

武器を構え刹那と全蔵はジリジリと距離を詰めて行く。
疲労が溜まっている今、早く勝負を決めなければとお互い考えているのだ。

「出来ればお前とは違う形で出会いたかった・・・・・・」
「御託はもういらねえだろ・・・・・・テメェと俺、互いの覚悟を賭けて決着を着ける。俺達にはもうそれ意外に何もねえ」
「ああ・・・・・・」

口元に笑みを小さく浮かべた刹那は同じく笑っている全蔵の意見に素直に頷く。
それから数秒間の沈黙、時が止まっている様な感覚を受けた後、互いの相手を睨みつける。

「この戦いも・・・・・・!」
「ここで終わりだ・・・・・・!」

両者同時に踏み込んで相手に突っ込む。全蔵は二本のクナイを持って、刹那は自らの体を蝕もうとする死装束を持って。

戦いの終わりは刻々と近づいて行く。














































刹那と全蔵が最後の戦いを始めている頃、彼女と違い非戦闘型の少女達は襲いかかって来る天人達から必死に逃げていた。

「待てやコラァァァァ!!!」
「「ギャァァァァァ!!」
「ふ、二人共待ってよ~ッ!」

追ってくる天人から逃れようと大広間の中を走り回るハルナと和美、そして彼女達を懸命に追いかけるのどか、ずっと隠れていた部屋が天人達にバレてしまい、こうやってずっと逃げ回っているのだがそろそろ限界だ。

「ハルナ~ッ! 朝倉~ッ!」
「ナムアミダブツ・・・・・・のどかッ! アンタの死は無駄にしないわッ!」
「ええッ!?」
「私達の心の中でこれからも生き続けてッ!」
「か、勝手に殺さないで~ッ!」

逃げながらこちらに振り返り非情な事を言うハルナと和美にのどかが泣きながらツッコんでいると、彼女と追いかけて来る天人の真ん中にフラリと一人の男が。
真撰組副長、土方十四郎だ。

「オイこの腐れ天人・・・・・・念仏でも唱えろ・・・・・・」
「え? ぐわぁぁぁぁ!!」

念仏を唱えろと言ったにも関わらず、土方は天人に何も言わせずに刀で袈裟懸けにぶった斬る。
瞬殺して倒れた天人を土方は凶悪な目つきで見下ろす。

「誰の女に手を出そうとしてんだコラァ・・・・・・・」
「十四郎さん、もう聞こえないと思いますよ・・・・・・」

既に屍になっている天人に向かって呟く土方にのどかはボソッと呟く。
すると遠くまで逃げていたハルナと和美が急いで二人の所に戻って来た。

「あ~良かった~、土方さんが来てくれた~」
「これでもう逃げ回らなくて済むよ~」

さっきのどかを置いてエスケープしようとしたにも関わらずハルナと和美は土方の出現で一安心したかのように胸をなでおろす。
だが土方は不機嫌そうに二人を見て

「あ? 俺が守るのは“コイツだけ”だ、コイツ置き去りにしようとしたテメェ等なんて死のうが知ったこっちゃねえ、むしろ死ね」
「「ええええッ!?」」

隣にいるのどかの肩を持って自分の方に引き寄せる土方に二人は慌てて声を上げる。
このまま彼に見放されてしまったら、本当に死んでしまう可能性大なのだから

「いや待って土方さんッ! こんなカワイイ眼鏡ッ子を死なせていいのッ!」
「うるせえゴキブリッ子、お前が死んでも他に30匹程いるんだからお前の代わりはいくらでもいる」
「遂に土方さんにまでゴキ扱いにッ!」

焦りながら叫んでくるハルナに土方は冷静にスパッと切る。
完全に助ける気が無い土方にハルナと和美が途方に暮れていると、

「オラァァァァァ!!」
「うげぇッ!」

後ろから雄叫びと共に悲鳴が聞こえ、何かが倒れる様な物凄い音が響く
二人は振り返ってみると・・・・・・

「獲ったどぉぉぉぉぉ!!!」
「姐さんすげぇぇぇぇぇ!!!」
「ってぇぇッ! アスナッ!!」
「アンタ何時の間にッ! ていうかもしかしてその天人アンタが倒したのッ!?」

そこにいたのは口から舌を出して気絶している大型の天人の上にまたがり咆哮を上げているアスナと、彼女を称しながら肩に乗っているオコジョのカモの姿が。
ハルナと和美が驚きながら呼びかけるとアスナがすぐそっちに振り返る。

「あ、アンタ達まだ生きてたんだ」
「生きてるわよッ! 死にかけながらも必死に逃げのびてるのよッ!」
「逃げるですって? ふん、そんなチキンな考えでこの状況を看破出来ると思ってんのアンタ?」
「いやチキンって・・・・・・」

天人の上に立ちながら嘲笑してくるアスナにハルナが呆然としながら呟くと、アスナはそんな彼女に口を開く。

「逃げる為に足を使うんじゃなくて、敵のどてっ腹に蹴りをする為に足を使いなさいよ」
「何言ってんのよバカチンッ! 普通の中学生が出来るわけないでしょうがそんな事ッ!」
「何よそれッ! 私が普通の中学生じゃないっていうのッ!?」
「出来てる中学生ここにいたよッ! アンタ元からたくましかったけどそこまで行ったらダメでしょッ!」

指を差してツッコんでくるハルナにアスナはフンと鼻を鳴らす。

「私は私が出来る事をやり通そうと思っただけよ。天パやマヨ、それに刹那さんまで戦ってるのに震えて逃げてるだけなんてもうウンザリ、やられたら一万倍にしてやり返す、そうするって決めたの」
「さすが姐さん、“男の中の男”ッス」
「その辺の敵陣にぶん投げるわよナマモノ・・・・・・」

凛とした表情でガッツポーズを取るアスナに肩に乗るカモがうんうんと頷くと、アスナはドスの効いた声で返す。
そんな彼女を見てハルナは周りをキョロキョロと見渡しながら恐る恐る話しかけた

「いやあのねアスナさんちょい待ってくんない? 私達こんな生死を賭けた戦いなんて見た事もないしやった事も無いでしょ? そんな私達が戦うなんて返って土方さん達の足手まとい・・・・・・」
「ぬがぁぁぁぁぁ!!」
「あぎゃぁぁぁぁぁ!!」

ハルナがアスナに警告している最中に突如ヒョウの顔をした天人が四足方向で襲いかかって来る。それを見てハルナが思わず絶叫を上げると・・・・・・

「食らえッ! 改造に改造を施し殴っても絶対に壊れないデジタルカメラッ!!」
「もぐずッ!!」
「ちょッ! 朝倉ちゃぁぁぁぁんッ!?」

ずっと首にぶら下げていたカメラ。和美はそれを首から外してヒモを持ち、飛びかかって来た天人の顔面に向かってフルスイング。見事カメラを思いっきり食らった天人は鼻血を出しながら遠くへ吹っ飛んでしまった。

「よ~し、いっちょあがり」
「な、何やってんのよアンタッ! 化け物共に目を付けられたらどうすんのよッ!」
「アハハハハ、大丈夫、大丈夫」

唾をまき散らしながら怒鳴って来るハルナに和美はヘラヘラ笑ったまま手を振る。

「やっぱアスナの言う通り逃げてるだけじゃ駄目だと思うんだよね私、みんなが死に物狂いで戦ってるのにその辺ずっと走り回ってるとかなんかマヌケだよね?」
「朝倉、アンタまでアスナと同じバカだったなんて・・・・・・あ~もうわかったわよッ!」

果敢にも天人と戦う姿勢を見せるアスナに感化されたのか、真面目なトーンで言う和美にハルナは髪を滅茶苦茶に掻き毟りながらヤケクソ状態になる。

「こうなったら私もバカになってやるわよッ! かかってきなさいよ化け物軍団ッ! こちとら現役の同人作家じゃボケェッ! げほぉッ!」

アスナ達の影響で勢いよく天人達に啖呵を切ったハルナだが、その瞬間近づいて来た天人の一人の右フックが思いっきり顔面にヒット。そしてそのままぶっ倒れたハルナに更なる悲劇が

「人間風情が生意気なッ!」
「死ね死ねぇいッ!」
「袋にしちまえぇぇぇぇぇ!!」
「な、なんで私だけ集団でボッコボコッ!? ごめんやっぱ無理ッ! 誰か助けてぇぇぇぇ!!」

天人の集団に蹴るわ踏まれるわのリンチ攻撃にハルナはすぐに悲痛な声で助けを求める。
すると・・・・・・

「か弱き少女を痛めつけるとは下衆な野郎共だッ! 真撰組の刃をその身でしかと味わえッ!」
「「「がはぁぁぁぁぁ!!!」」」

ハルナを踏みつけていた天人達が一斉に悲鳴を上げて倒れる。ハルナは四つん這いの状態でゆっくりと顔を上げると

「ハッハッハッハ、春雨の奴等に向かってあんな事を言うなんて中々勇気あるじゃないか」
「ゴリ・・・・・・じゃなかった近藤さんッ!」
「あれ? 今ゴリラって言いそうになった?」

笑顔で手を差し伸べてくれた近藤にハルナは彼の手を取りながら嬉しそうな声を上げるが、近藤は少し寂しそうな表情になる。

「死ぬかと思った・・・・・・ありがとうゴリラ・・・・・・じゃなかった近藤さん」
「あ、今完璧にゴリラって言ったよね? 命の恩人をゴリラにしようとしたよね?」
「ハルナ大丈夫? 良かったね、ゴリラに助けてもらって」
「は? なんでマヨと同じ服装をしたゴリラがこんな所にいるのよ?」
「・・・・・・」

悪気は無いのだろうがハルナどころかほぼ初対面の和美や、今ここで初めて会ったアスナにまでゴリラ扱いされる近藤。
それに対して思いつめた表情をすると、向こうからのどかを連れた土方がやって来る。

「調子はどうだ近藤さん、こっちは結構敵の数を減らしてるぜ」
「トシ・・・・・・俺が近藤勲だってわかるのか・・・・・・」
「・・・・・・そりゃわかるだろ何だよ突然・・・・・・アンタは近藤さん以外の何物でもねえだろ、どうしたまたゴリラと勘違いされたのかアンタ?」
「だ、大丈夫ですか近藤さん・・・・・・?」
「いやなんでもない・・・・・・わかってくれればそれでいいさ」

タバコに火をつけている土方に真顔で言われ、彼にしがみついて心配そうにこちらを見つめるのどかに近藤は辛そうな顔で首を横に振った後、別の話題を始める。

「・・・・・・それよりだいぶ減ったな敵の数、このままいけば俺達は勝てるかもな」
「敵の士気が落ち始めてるしな、だが油断は禁物だぜ」
「当然だ、真撰組の大将として絶対に敵に背中は見せんさ、俺の背中にはお前等の命が乗っかってるからな」
「フ、さすが近藤さんだ、その調子なら誰もアンタの背中を取れな・・・・・・」

タバコを口に咥えた状態で土方は前で仁王立ちする近藤に笑いかけた瞬間固まる。
のどかも目を点にして彼を見つめる。
たくましい近藤の背中に何故であろう、ずっと前からはぐれてしまっていた夕映がしがみついていた。

「近藤さん・・・・・・そのガキがいるから俺達の命が乗っかるスペースがねえんだけど・・・・・・」
「ゆ、夕映?」
「なんですか?」

近藤の首に両手を回した状態で夕映はいつも通りの澄ました表情でのどかに振り返った。
のどかの隣にいる土方は彼女に向かって目を細める。

「なんですかじゃねえ、なんでお前が俺等の大将首に張り付いてんだよ」
「あなたには関係ないでしょ、あなたはただのどかを護る事だけを考えてなさい」
「そうはいかねえだろうが・・・・・・おい近藤さん、背中に憑きモンがついてる、早く除霊してくれ」

無愛想に返してくる夕映に土方は苛立つのを押さえながら、彼女を背中におぶったまま前を向いて現状視察をしている近藤に口を開く。
すると近藤は土方の方に振り返らずにただ一言

「座敷わらしだ」
「違うわぁぁぁぁぁ!! そんな可愛げのない座敷わらしなんか存在しねぇぇぇぇ!!!」

その一言に土方が夕映を指差して大声で叫ぶと、彼の声を聞いてハルナと和美、先ほど合流したアスナが近づいてくる。

「どうしたの土方さ・・・・・・なんで夕映がこの人の背中に張り付いてるの・・・・・・」
「あ、夕映こんな所にいたんだ。何処行ったんだろうと思ってた」
「私はチラチラ見えてたから知ってたわよ、別に興味も無かったからスルーしてたけど」
「このクソガキがッ!」

各々感想を漏らす三人だが夕映本人は土方に後ろ襟を掴まれ、近藤から無理矢理引き離されそうになっていた。

「さっさと離れろッ! そこにしがみついてたら近藤さんが戦いにくくなるだろうがッ!」
「いやですぅ」
「離れろつってんだろうがぁ・・・・・・!」
「いやですぅ・・・・・・絶対に離しません・・・・・・」

土方が思いっきり力を入れるも夕映は近藤の首を強く抱きしめて踏ん張る。
だが夕映に首を絞められている状態の近藤はというと

「ト、トシ・・・・・・それ以上お前が力入れると俺この子に絞殺される・・・・・・」
「夕映と十四郎さんッ! 近藤さんがく、口から泡出してるッ!」

顔を青くしてぶくぶくと口から泡を吐く近藤を見てのどかが慌てて二人に叫ぶも土方と夕映は全く耳を貸さない。
このままいけば間違いなく近藤は自分の友人と想い人に殺される・・・・・・
のどかがそんな事を心配していると、土方の肩に優しくポンと手を置くグラサンをかけたこわそうな中年の男が現れた。

「おいトシ、その子を近藤から引き離すんじゃねえよ、頼むからそのままにしてやってくれ・・・・・・」
「とっつぁんッ! なんだよいきな・・・・・・ってアンタなんで泣いてんのッ!?」

肩を掴んで声をかけてきたのは松平のとっつぁんだとすぐに気付いた土方はバッと後ろに振り返ると、そこには何故かグラサンの奥にある目から涙を滝の様に流すとっつぁんの姿が。

「よかったな近藤・・・・・・おじさんあまりのめでてぇ事に涙が止まんねえよ・・・・・・」
「・・・・・・どうしたんだアンタ・・・・・・」
「・・・・・・あ、所でよトシ、オメーもめでてぇ事があったんだよな」
「は?」

とっつぁんはグラサンの下の目を腕で拭った後すぐに顔を上げて、こちらに向かって混乱している土方の手を取り、ポケットからある物を取り出して彼の手に置いた。

「少ねえかもしれねえが取っとけ」
「・・・・・・なんだこの札束?」

何故か手に置かれたメチャクチャ分厚い札束を見ながら土方はとっつぁんに問い返す。
するととっつぁんはしらっとした表情で

「結婚費用に決まってんだろ」
「結婚費用・・・・・・? 誰のだよ?」
「とぼけんじゃねえよお前に決まってんだろ、結婚すんだろ?」
「・・・・・・はぁッ!?」

いきなり突拍子のないとっつぁんの発言に土方がすっときょんな声を上げると、夕映を背中におぶったままの状態の近藤が彼に近づく。

「おおそうだ、トシ、結婚おめでとう」
「待て待て待てッ! 何勘違いしてんだアンタ等ッ! 俺は結婚なんかしねえよッ!」
「何言ってんだ、俺とお前の間に隠し事なんぞ無用だ」

額から汗を流しながら首を激しく横に振って否定する土方を見て近藤はおもむろに彼の隣にいるのどかの方を見る。

「総悟から無線で聞いたぞ、なんでももうのどかちゃんのおなかの中には既に新しい命が・・・・・・」
「オイィィィィィ!! そんなのあのバカの大ウソに決まってんだろうがァァァァ!! アンタなんでいつもアイツの話をバカ正直に受け止めんだよッ!」
「そそそそそ、そうですッ!」

土方と同じくのどかも必死に近藤に向かって叫ぶと、彼の顔の横から夕映がひょこっと顔を覗かせて。

「できちゃった婚ですか、まさかのどかはその人とそこまで進んでいたとは、友人として大変ショックです」
「夕映まで誤解しないでよ~ッ!」
「できちゃった婚なんかするわけねえだろッ! 俺は銀髪パーマと違って全うした道を歩くッ!」
「言い訳言ってないでできちゃったモンはちゃんと認知してください、のどかのお腹にいる子供が可哀想です」
「だからデキてねえッ!」 

疑ってくる夕映に思わず土方は刀を抜こうとするが、彼女は今近藤におぶられているので手を出すわけにはいかない。

土方がどうしたもんかと考えていると、疑いを作った張本人。
沖田総悟が戦いの中、刀を肩に掛けながら歩いてきた。

「なあにくっちゃべってんですかぃ土方さん、さっさと全身にダイナマイト巻き付けて敵陣に突っ込んで玉砕して下さいよ」
「やるわけねえだろそんな事・・・・・・! ていうか総悟、お前近藤さん達につまんねえデタラメ吹き込んだだろ・・・・・・」
「あり? どうですかね覚えてませんや。そうそう、土方さん、これ俺からの祝儀でさぁ」

後頭部を掻きながら適当にとぼけた後、沖田は懐からのどかを捕まえる為に使用していた鎖付きの首輪を取り出す。

「コイツをのどかちゃんの首に巻き付けて江戸内をひきずり歩くのが土方さんの夢でしたからね、遠慮なく使ってくだせえ」
「そんなサディスティックドリームテメェ以外求めてねえッ! いるかそんなモンッ!」
「そうですかぃ、じゃあ俺が使わしてもらいやす。お~らのどかちゃん、コレ首に付けて俺と一緒にこの血みどろの戦場を散歩しようぜ」
「いいですいいですいいですぅぅぅぅぅ!!!」

首輪をジャラジャラと音を立てて近づいてくる沖田にのどかはすぐに土方の後ろに回って泣きそうな顔で首を横に振る。
こんな状況でも相変わらずのどかに対してはかなりのSっぷりを見せる沖田、そんな彼に夕映がぶすっとした表情で口を開く。

「いい加減にするですこの変態」
「あ? うるせえよ関係ねえだろデコ助・・・・・・」

後ろから夕映の声がしたので沖田は不機嫌そうにそちらに振り向くと、すぐに目を細める。

「・・・・・・なんで近藤さんがそのガキおぶってんですかぃ?」
「いや、いつの間にか俺の背中に・・・・・・」
「へ~、じゃあ俺がすぐに取って上げますよ、背中こっちに向けて下さい」
「待って総悟ッ! なんで刀振り上げてんのッ!?」

涼しい表情で持ってる刀を振りあげる沖田に近藤が慌てて両手を出して警告していると・・・・・・

「ご主人様ァァァァァ!!」
「ん?」

突如見知らぬ声が後ろから聞こえたので近藤が振り返ると。
長い髪を揺らした少女が手に鎖を持ったままこちらに走り寄って来る。

「ご主人様ッ! メス豚弐号機がまだ抵抗を見せるのでここまで来るのに遅れましたッ!」
「遅えんだよ、これ終わったらお仕置きだからな」
「ありがとうございますイエッサーッ!」
「いやそこ礼言う所じゃねえから」

すぐに沖田の前に立って敬礼のポーズを取るのはここにはいなかった筈のA組メンバーであり、沖田のメス豚奴隷である柿崎美砂。
何故彼女がここにいるのか、聞いていないのどかは口をポカンと開ける。

「柿崎・・・・・・何でこんな危ない所にいるの・・・・・・?」
「私はご主人様に呼ばれたら何処へでも行けるのよ泥棒猫ッ!」
「まだ勘違いしてる・・・・・・どうしよう十四郎さん・・・・・・」
「もう手遅れだ、構うな」

心配そうに声をかけて来たのどかに向かって美砂は噛みつくように怒鳴り散らす。
のどかはすぐに土方に助けを求めるが彼は素っ気ない態度でタバコの煙を口から吐いた。
沖田に調教された時点で彼女はもう現世に戻る事は出来ないのだ。

「おいメス豚壱号機、肝心の弐号機の調子はどうだ?」
「はい、さっき言った通りこのゴミクズは中々言う事聞きませんでしたが、何発か腹の溝に入れて無理矢理ここまで引っ張ってきました」

美砂は得意げに自分が持っている鎖の先に目をやる。
鎖の先っぽには首輪を付けてぐったりしている少女の姿が。

「も、もう堪忍して~・・・・・・」

特徴的なゴスロリ衣装とメガネ、紛れもない月詠だった。

「まだご主人様に忠誠を誓おうとしないんですよこのクソメガネは」
「チッ、やっぱ急ごしらえの調教じゃまだ駄目か、これ終わったら本格的に教育しねえと」
「誰か助けておくれやす~~・・・・・・」
「あのメガネどっかで見たぞ・・・・・・」
「私もです・・・・・・」

乱暴に沖田に胸倉を掴まれたまま月詠が上を見上げてぼやいているのを見て、土方とのどかは彼女の姿をじっくり眺める。
間違いなく自分に何度か襲いかかってきた敵の一人の月詠だ。

「総悟、お前それどうした?」
「殺しちまうのがもったないなかったのでゲットしやした、安心してくだせえ、もう俺達に刃向かう様なマネはしやせんから、なあツッキー」
「はいぃ~、もう二度とご、ご主人様達には刀を向けません・・・・・・あんなのもうコリゴリや~・・・・・・」
「ほらね」

震えながら沖田に必要以上に首を縦に振る月詠を見て、土方はドン引きしながら沖田の方に目をやる。

「お前このガキにどんなトラウマ植え付けたんだ・・・・・・?」
「この作品をここで終わらせたかったら言ってもいいですぜ」
「・・・・・・じゃあ言わなくていい、お前とそいつの思い出の中に入れとけ」

とんでもない事を言ってのける沖田に対して土方はボソリと呟いて背を向ける。
何をやったのか想像できないが、聞かない方が身の為だと悟った。

「アレでわかったろ、お前は絶対にアイツに近づくな」
「わ、わかってます・・・・・・」
「アンタ柿崎に何してくれてんのよッ! 私のクラスメイトをこんな目に合わせてタダで済むと思うのッ!」

のどかに念入りに土方が沖田について警告していると、アスナが美砂を連れている沖田の方に歩み寄って怒鳴り出す。
すると沖田は髪を掻き毟りながら

「こいつはまいった、活きのいいエテ公が俺に吠えてきたが人間の俺には何言ってるかわかんねえ。バナナ持ってねえからお前にやるエサなんてねえぞ」
「だ、誰がエテ公よッ! アンタ女の子に対してよくそんな事平気で言えるわねッ!」
「うっさいわよ類人猿ッ! そもそもアンタ如きモンキーがご主人様に話しかけるなんて無礼にも程があるわッ!」 
「ア、アンタ私が心配してあげてるのにッ!」
「ご主人様、こんなサルを相手にするの時間の無駄でございます、さっさと敵の殲滅に行きましょう」

唾を飛ばしながらアスナに向かって美砂は吠えた後、沖田の手を引っ張って群衆の方へ行ってしまった。

「だ、誰かウチをこの人達から解放して~~・・・・・・」

鎖に繋がっている月詠を引きずりながら・・・・・・

「腹立つぅぅぅぅぅッ!! サドと柿崎本当腹立つぅぅぅぅぅッ!!」
「まあまあアスナ落ち着いて」
「サル呼ばわりされてクールになれるわけないでしょッ! ん?」

残されたアスナを和美が笑顔でなだめていると、アスナはふと不穏な気配を向こうの扉から感じる。

「何かしら・・・・・・あそこにある扉の向こうから嫌な匂いがする・・・・・・」
「お、アスナの野生の勘?」
「姐さんマジパネぇッス、ジャングルの中で鍛え上げた危機察知能力ッスね」
「アンタ等までサル呼ばわりするならぶっ飛ばすからね・・・・・・」

隣にいる和美と肩に乗っかるカモをジト目で睨んだ後、アスナは再び扉の方に目をやる。
その瞬間、扉が乱暴に壊され

「がぁぁぁぁぁ!! 援軍のご到着だァァァァァ!!」
「野郎共ッ! これで一気に人間共を皆殺しにしてやるぞッ!」
「「「「「オオォォォォォォ!!!!」」」」」

壊れた扉の中から次々と春雨の天人達が大広間に流れ込んで来る。
敵もさすがに真撰組の加入により焦ったのだろう。いざという時に残しておいたと思われる兵達はどんどん真撰組達の方に押し寄せて行く。

「何よアレッ!?」
「ば、化け物がまた増えやがったッスッ!」
「アスナアスナッ! ゴーッ!」
「ゴーじゃないわよッ! タイマンならイケるけどあんな人数を相手にするのなんて無理よッ!」

ノリで命令してくる和美にアスナが怒鳴っていると、それを見ていた土方達も表情を苦ませていた。

「敵の増援か・・・・・・このタイミングで出されるとヤバいな・・・・・・・」
「こっちの隊士は疲れが見え始めている、叩く時はこの時だと奴等もわかったんだろう、トシ、すぐに行くぞ」
「言われなくても、大将(アンタ)が行くなら俺は何処へでも行くぜ」

腰に差す刀を抜いた近藤に土方は力強く頷いた後刀を抜く。
自分達もかなり疲れているがここで逃げるわけにはいかない。
そして近藤はとっつぁんの方に振り向きすぐに口を開く。

「とっつぁん、アンタはこの子達を頼むぞ」
「おう、その子の為にも死ぬんじゃねえぞゴリラ」
「あれ? まだ俺の背中にくっついてたの・・・・・・?」

少女達の護衛をとっつぁんに任せた近藤だが、とっつぁんに言われて改めて背中の少女に気付く。
頬を引きつりながら近藤は夕映の方に目をやると彼女は無表情のまま

「大丈夫です、私が身を呈してあなたの背中を護りますから」
「俺的には君の安全の方が重要なんだけど・・・・・・?」
「私的にはあなたから離れない様にする事が重要です」
「おい近藤さん、さっきから気になってたんだが、なんで“それ”はアンタにそんなに懐いてんだ・・・・・・・?」
「いやぁ正直俺もサッパリ・・・・・・・」

真面目な表情で聞いてくる土方に近藤は困ったように首を捻る。
土方にとってあの夕映がここまで異性に入れ込む事なんて異常事態だ。
元々自分や銀時に対しては冷たい態度を取る彼女がどうして近藤にはこんなにも懐くのか・・・・・・?
土方が疑問を感じていると近藤はため息をついて背中に張り付く夕映に喋りかけている。

「仕方ない、俺の背中から手を離すなよ夕映ちゃん」
「当たり前です、例え両腕を切られようが歯であなたの背中にしがみ付きます」
「いやそれは恐いから病院行って、そんな光景を隊士達が見たらめっちゃビビるから」

さらりと恐い事を言う夕映に近藤は即座にツッコミを入れ、すぐに隊士達の所へ向かって行った。
土方も彼の後を追おうとするが、その前に後ろで心配そうに自分に視線を送っているのどかの方へ振り向く。

「ちいとめんどい事が起こったがすぐに帰る、それまでこのヤクザみたいなオッサンから離れるんじゃねえぞ」
「十四郎さん・・・・・・私、祈ってますからね?」
「土方さんッ! のどか置いて死なないでよッ!」

けなげに両手を合わせて呟くのどかの隣にいたハルナは焦った表情で土方に叫んだ。
すると彼女達に背を向けて戦場に足を運びだした土方は、彼女達に見える様に親指を立てた後。

「真撰組副長、土方十四郎のお通りだァァァァァ!!!」

名乗りを上げながら敵陣の中へと突っ込んでいき、目の前に現る天人達を一瞬で斬り殺す。

「お前等ッ! こんな奴等如きに俺達の剣は折れねえッ! 片っ端から斬り伏せろッ!」
「わかりやした“元”副長ッ!」
「局長や“元”副長の為に俺達頑張りますッ!」
「元付けんじゃねえって言ってんだろうがッ!」

江戸でよく一緒に行動していたスキンヘッドの原田や他の隊士達に向かってツッコミながら土方はなりふり構わず敵を斬っていく。

(この数はやっぱマジイな・・・・・・・このままやり合ってたら全滅の可能性もあるかもしれん・・・・・・・)

斬っても斬ってもすぐに湧いて出て来る天人達に土方は苦戦を強いられる。
柄にもなく思わず弱気な事を考えていると・・・・・・

「「「「「がはッ!」」」」」
「なッ!」

目の前にいた天人達が悲鳴を上げて一気に倒れたのだ。その光景に土方は一瞬呆気に取られるがすぐに近づいて天人達が倒れた原因に気付く。

「コイツ等全員眉間の同じ位置に銃痕が・・・・・・こんな正確に狙える銃撃者なんざ・・・・・・」
「弾一発につき10万だからな」
「!!」

天人の屍を観察していた土方の後ろ姿にある女性が呼びかける。土方は慌てて振り返ると。

「助っ人としてやってきた、ま、ビジネス絡みだけどな」
「オメエは万事屋のストーカー・・・・・・!」

そこに立っていたのは私服姿のまま体中を銃やら手榴弾やら武装で強化している長身の女性。
銀時によくストーカー行為を働く生徒、龍宮真名だった。

「刹那も厄介なのと戦っていたが、あなたも相当苦戦してる様だな」
「なんでテメェがここに・・・・・・・?」
「ホアタァーッ!」
「あん?」

周りの敵を眺めながら話しかけてくる龍宮に土方が尋ねようとすると、またもや別の女性の声、土方は思わずそっちに目をやると

「うおおーッ! なんか気持ち悪い生き物ばっかりアルッ! あ、ここにもいたヨッ!」
「おお戻ってきたのか万事屋のチャイナ娘ッ! あれ? 色違くね? 2Pカラー? だはぁッ!」
「食らえゴリラの化け物ッ!」
「クーフェイこの人は一応人間ですから敵では無いです」

立ち塞がる天人達を拳や蹴りで吹っ飛ばして行きながらはたまた近藤までも蹴飛ばす少女の姿が。
龍宮と同じく3年A組の生徒。カンフーチャイナ娘のクーフェイだ。

「チャイナ二世・・・・・・あいつまで・・・・・・テメェ等なんでここに?」
「あなたの部下に頼まれたからだ」
「部下? まさか・・・・・・」

腕を組んで一言だけ述べる龍宮に土方はもしやとある一人の部下を思い出した。
そういえば彼の事をすっかり忘れていたような・・・・・・。
土方がそんな事を思っていると龍宮が彼に話しかける。

「ところで先生(銀時)は何処だ? ハプニング好きのあの人ならきっとここにいるだろ?」
「あいつはここにはいねえよ、別の所でやりあってる筈だ」
「そうか、じゃあそっちに行こう。私はビジネスより先生に虐げられる事を優先する」
「おい待てコラァァァァ!!」 

普通にスタスタと行ってしまおうとする龍宮を土方はすぐに手を伸ばして彼女の後ろ襟を掴む。

「なんで万事屋に虐げられる事がお前にとって重大なカテゴリーになっているかは知らねえがッ! 来たんだから少しは仕事しろボケッ!!」
「あなた達の助けをするよりも私は一刻も早く先生にイジめられたい。あの人に言葉攻めにあったり殴られたりすると気持ちいいんだ、あと興奮してくるしすんごいムラムラする」
「聞いてもねえのに勝手にテメーの気持ち悪い性癖語るんじゃねえッ!」
「オイ・・・・・・・」
「ん?」

こちらに振り向かずに語り出す龍宮に土方が怒鳴っていると・・・・・・・

「俺等が囲んでいる中で仲間同士でくっちゃべってるとはいい度胸じゃねえか・・・・・・・」
「・・・・・・」

気がつくと凶悪なツラ構えをした巨大な天人達が自分達を周りを取り囲んでこちらを見下ろしている。
土方は彼等が持っている巨大な棍棒を見て、思わず咥えていたタバコをポロっと落として苦笑いを浮かべた。

「俺はコイツと違って殴られて喜ぶ変態じゃねえぞ・・・・・・・」
「私だって先生にしか殴られたくない、私は先生だけの変態だ」
「つべこべ言ってねえでさっさと死ねーッ!!」

天人の一人は叫びながら豪快に棍棒を二人めがけて振り上げる。
だが次の瞬間

「おっと、そんなモン人に振りおろしたら危ないでござる」
「ぬッ!」

呑気な声と共に天人が振り上げた腕に何本もの手裏剣が刺さり、持っていた棍棒を落としてしまう。
すると今度はさっきの声と違い男性の声が

「すみませ~ん、ここで”祭り”やってるって聞いたんですけど~? 受け付けは何処で済ませばいいんですかね~?」
「んだテメェッ! 祭りだとッ!?」
「そんなモンやってるわけねえだろッ!」

棍棒を落とした天人ともう一人の天人がそちらにむかって叫ぶと男は口元に笑みを浮かべたまま

「いやいや何言ってんですかアンタ等、俺が両手に持ってるモン見てわかるでしょ?」
「「え?」」

二人の天人は呆気に取られて思わずその男を見てキョトンとする。
その男が両手に一つずつ持っているのは・・・・・・

「今日はヤマザキパンの春祭りでしょ?」

真撰組密偵、山崎退が浴衣姿のまま、両手にあんパンを持ってニカッと二人の天人に笑いかけた。
そして・・・・・・・

「しっかりあんパン噛みしめやがれぇぇぇぇぇ!!」
「「ごふぅぅぅぅぅッ!」」

床を蹴って大きく飛翔した山崎はそのまま天人の顔面にあんぱんを思いっきりぶつける。
二人の天人は一撃で地面に倒れ気絶した。

「ハッハッハ、中々の腕前でござるな山崎殿」
「俺だって真撰組ですからね、伊達に修羅場くぐり抜けてないんで」

唖然としている土方の目の前で山崎は糸目の忍者、長瀬楓とハイタッチ。
さっき手裏剣を投げたのは当然彼女だ。
そして山崎は土方の方へ振り向いてビシッと敬礼する。

「助っ人三人を連れて山崎退ッ! 援軍として参りましたッ!」

劣勢に追い込まれていたピンチに、まさかこの男が判定を覆すかもしれない様な真似をするとは・・・・・・
土方は胸ポケットにあるタバコ箱から新しいのを一本取り出した後、口に咥えて火を付ける。そして煙を吐きながら彼に一言














「なんで浴衣なんだよ・・・・・・・」







[7093] 第六十七訓 凛と咲く桜の如く美しくありけり
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/05/17 01:16
目の前に広がるは薄暗い闇、まるでこの先にある物を警告している様な不気味なしずけさと共に銀時、新八、神楽の初代万事屋トリオで山を徒歩で登って行く。
しかし三人の周りは重い空間が漂っていた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ぺッ!」
「・・・・・・あのさぁ神楽ちゃん・・・・・・・」

隣で睨んで来る神楽に思いっきり唾を吐かれても銀時は怒らずに丁寧に彼女に話しかける。
額には彼女の吐いた唾がついていた。

「どうしてそんなに機嫌悪いの? 銀さんに言ってみ?」
「話しかけるんじゃねえヨ、ロリコン侍」
「ロリコン侍ってさ・・・・・・・その言い方は酷いんじゃねえの? ねえ新八君?」

額を拭いながら銀時は反対方向にいる新八に尋ねる。
軽蔑の眼差しを刺す様に銀時にぶつけながら、新八はボソッと呟いた。

「話しかけんなよ三股侍」
「・・・・・・」

二人揃ってこの態度、銀時はそのまま黙ってしまう二人の間で寂しそうに頭を手で押さえる。

「いやさお前等さ・・・・・・しばらく会わない内になんか冷たくなってない? 銀さんは常にお前等の事を心配してたんだよ? 俺がいない間あいつ等どうやって暮らしてるのかなぁっとか、確かに久しぶりの再会だから恥ずかしいのは分かるよ? でももう少し暖かく接しようぜ? 俺達仲良し万事屋トリオじゃん? 壁を作るのは止めよう」
「新八、ロリコン侍が何か言ってるアル」
「本当だね、僕等をほったらかしにして女の子達とイチャついてたクセにね」
「・・・・・・ちょっとここで一旦ストップ」

真ん中にいる銀時を無視して彼の話を始める神楽と新八に、遂に銀時は足を止めその場で深いため息を突く。
早く高杉や夜王の所に行かなきゃいけないのだが、こんなぎこちない空気で決戦の舞台に行く事なんて出来ない。

「んだよテメェ等さっきからロリコンだとか三股だとか・・・・・・三股は認めるけどロリコンはまだセーフだろうが」
「いやセーフじゃないでしょ、思いっきり“ちっこい女の子”いたじゃないですか、楽々アウトですよ、コレ以上無いくらいに誰もがアウトと言えますよ、世界中の人達の声が一つになるぐらいアウトですよ」
「ああチビの事? アレはお前アレだよ、アイツ実は600歳だから、色々会ってずっとあの体のまんまなんだよ、600歳だからセーフです~、後の二人だって14だけど見た目が大人っぽいからセーフです~」
「そんな大ウソ子供でも騙せねえよ・・・・・・・え?」

半ばヤケになっている状態で銀時は新八に向かって両手を横に振ってセーフのポーズを取る。だが新八はボソリとツッコんだ後、彼が後に言った事に口をあんぐりと開けて驚愕した。
あそこにいた三人の内二人の少女はまだ14歳だと・・・・・・・?

「じゅ、14ッ!? あの二人神楽ちゃんと同い年だったんですかッ!? てことは・・・・・・ぼ、僕より年下じゃないですかッ!」
「マジかヨッ! オメーずっと私の事そういう目で見てたアルかッ! マジキモいアルしばらく私に近づかないでッ!」
「お前みたいなゲロ吐き娘に興味なんてこれっぽっちも持った事ねえよッ!」

声を荒げる神楽に銀時は額に青筋を立てて怒鳴る。
確かに彼は今まで神楽の事をそういう目で見た事は欠片も無い。

「いいかお前等・・・・・・大事なのは中身なんだよ」
「あんな金髪デカ乳娘なんてどうせ中身は脂肪だけアルッ!」
「いやそれ胸限定だろ」

隙あらば金髪デカ乳娘ことあやかに悪態を突く神楽に銀時は即座に返す。
すると今度は新八が指を突きつけて

「じゃあ銀さんッ! コレだけは言わせてもらいますよッ! あのメガネを付けた女の子は絶対ヤバいですッ!」
「何がヤベえんだよ、どっちかつうとあの三人の中では比較的常識人だから問題ねえぞアイツ」

新八の言っている事に銀時は口をへの字にして首を傾げる。
言っている意味が理解出来ないらしい、
新八はそんな彼に首を激しく横に振った。

「だからあの子は危険なんですッ! 常識人かつツッコミというポジションッ! ほらッ! 彼女がいる限り僕の立場はどうなるんですかッ!?」
「モブに降格だろうな、まあたいしたことじゃねえし別にいいんじゃね?」 
「原作レギュラーがモブに落ちる事をそんな簡単にあしらうなッ! いいですか銀さんッ! 志村新八という希代のツッコミが地道に築いたポジションをッ! あの女の子はいけしゃあしゃあと奪い取ろうとしてんですよッ! 許せるんですかこんな外道な行いッ!」
「新八、話の論点がズレてる」
「ツッコミキャラどころかメガネキャラまで奪われたら僕なんにも残ってないじゃないですかッ! これからどう生きて行けばいいんですかッ! このままだと僕はマジでモブキャラになっちゃいますよッ!」
「いいじゃんなれよもう」

論点がどんどん変わっていく新八の話に銀時はうんざりした口調で突き飛ばす。
神楽も彼に向かってムッとした表情で口を開いた。

「誰がツッコミ役やろうがどうでもいいアルッ! 私はあの金髪デカ乳娘の方がヤバいと睨んでるネッ! アイツ絶対私のヒロインポジション奪う気アルッ!」
「心配するな神楽、元々お前はヒロインポジション立ってないから」
「お嬢様口調でキャラ作ってる感もムカつくアルッ!」
「お前が言うなアルアルチャイナ娘」

怒りの根拠が意味不明な神楽に銀時はつっけんどんに返す。
どうやら二人共銀時の恋愛事情より自分の立場を心配している様だ。

口やかましく吠える新八と神楽に銀時はやれやれとそっぽを向いていると

「うるせえな・・・・・・落ち着いて小便出来ねえじゃねえか・・・・・・あ」
「「「あ」」」

銀時が向いていた前方の茂みの中からガサゴソと音を立てて。
ついさっき前にネギを助けに行ってしまったナギがこちらに気付いた表情で現れた。
彼の出現に新八と神楽も叫ぶのを一旦止めた。

「ナギさん・・・・・・アンタまだこの辺うろついてたんですか・・・・・・?」
「何でお前等ここにいんだよ? おい銀髪天然パーマ、あの薄気味悪い夜兎ともう決着着いたのか?」
「助っ人が来たからそいつに任せたんだよ、問題ねえよアイツなら。つうかお前こそ何でここにいんだよ」

茂みから出て来たナギに眉をひそめて銀時が尋ねると、ナギは頭を掻き毟りながら

「茂みの中にいたんだから小便してたのに決まってんだろ、すげえ出てきて困った」
「アンタどんだけ小便出るんだよッ! 数分前にしたばっかだろうがッ!」
「もう小便ヒーローじゃなくてただの小便野郎アル」
「うるせえな、出るモンなら出した方がいいだろうが」

ドン引きしている様な目つきで睨んで来る神楽にナギはぶっきらぼうに返すと、銀時の方へ視線を動かす。

「てことはお前等も頂上目指してここまで来たのか?」
「そうだよ、さっさと行くぞバカ親父、声変わりした息子が待ってるぞ」
「俺に指図すんな」

命令口調が癪に障ったのかナギは不機嫌そうに銀時に返すと、歩きだした彼の一歩前に出る。

「・・・・・・」

それに対して銀時は無言で足を速めて彼の前へ出た。

「・・・・・・何の真似だ天然パーマネント?」
「え? 何の事?」
「とぼけんじゃねえよ、何俺の前歩いてんだよ、お前は俺の後ろだ」
「あ? 普通主人公が一番前だろうが、テメェが後ろだ」
「いやお前が」
「いやテメェが」
「いやお前だってつってんだろバカ」
「いやいやテメェが後ろだろうがボケ」

互いにどちらが前を歩くかをゆずらないナギと銀時。
後ろにいる新八と神楽はそんな二人を観客席から眺めるように見てると、銀時とナギの足が徐々に早くなっていく。
そして・・・・・・

「テメェは俺の後ろだっつってんだろうがトリ頭ァァァァァ!!」
「オメーが俺の後ろだクルクル頭ァァァァァ!!!」
「ちょッ! いきなり走らないで下さいよッ!」

些細なことでいきなり徒競争を始める銀時とナギに新八が叫ぶも二人にはもう聞こえない。

「あ~もうあんな所まで行っちゃって・・・・・・ん?」
「どうしたアルか新八?」

消えて行く二人に新八は呆れた後、ふとナギが出てきた茂みと反対方向の方に目をやる。
神楽が彼に首を傾げていると新八は、茂みの中へと入っていきある物を見つけた。

「なんだろうコレ・・・・・・まるで漫画とかでよく見る魔法の杖みたいだ・・・・・・」
「そんな棒っきれ拾ってないでさっさと行くヨ新八、早くしないとあのバカコンビ見失っちゃうアル」
「あ、待ってよ神楽ちゃん」

新八が茂みから見つけた不可思議な杖に神楽はなんの疑問を持たず、すぐに銀時達の方へ行ってしまう。新八も慌ててその杖を持ったまま彼女を追う。








目指すは夜王と高杉達がいる山の頂。






































第六十七訓 凛と咲く桜の如く美しくありけり





































銀時達が高杉達の所へ目指して突っ走っている頃。
真撰組対春雨軍の戦いはいよいよ大詰めと迫っていた。

「ホチャーッ!」
「あぎッ!」

前に立ち塞ぐ天人達に一切恐れもせずに飛び蹴りをかますクーフェイ。

「ほい」
「うぐおッ!」

彼女が天人の一人をノックアウトさせたと同時に、一緒にこの戦場に赴いていた生徒、楓は別の天人の首を腕で締めつけて失神させる。

「ふむ、宇宙海賊の実力はこの程度でござるか?」
「じゃんじゃんかかってくるヨロシッ!」

互いに背中を預けて余裕たっぷりに構える楓とクーフェイの姿に、周りを囲んでいるにも関わらず天人達は彼女達の強さに足がすくむ。

「な、なんなんだこのガキ共はッ!」
「こんな事はありえんッ! 我等春雨がこんなたかが小娘如きに劣勢を強いられるなどッ!」
「たかが小娘だと?」
「ぐッ!」

背後から鋭い殺気を感じた天人は咄嗟に振り返るがその直後、彼の心臓を黒い弾丸が貫く。
屍となった彼の目の前には銃を持って優雅に構えている龍宮の姿が

「残念ながらお前等が目の前にしている者はたかが小娘と決めつけられるレベルでは無い。特に私はお前等をなんの躊躇もせずに殺せるヒットマンだ」
「き、貴様・・・・・・!」
「我々の同胞を殺してタダで済むと思うなよ・・・・・・!」

じりじりと怒りの表情をあらわにして近づいてくる天人達。だが龍宮は問題なさそうに銃を持ってない方の左手でポケットから手榴弾を一個取る。

「タダでは済まないか」
「「「「「!!!」」」」」

手榴弾に付いているピンを器用に口で抜く。

「それはよかった」
「や、止め・・・・・・・!」

ピンを床に吐き捨てた後、前方の天人達に向けて龍宮は野球のボールの様に手榴弾を投げる。そして投げた手榴弾にすっと彼女は銃を向ける。

「タダより恐いモンは無い、そうするのも、そうされるのも」
「うわぁぁぁぁぁ!! ぶべしッ!!!」

天人が叫んだ瞬間、その場一帯に銃音と爆音が鳴り響く。手榴弾は叫び声を上げた天人の目と鼻の先で勢いよく爆発し、周りにいた仲間も巻き添えにした。
だが彼女は無反応のまま、平然と他の天人達に銃を突き付ける。

「悪いが早く済ませたいんだ」

右手には小振りなハンドガンにして強力なデザートイーグル、そして何時の間にか左手にはかなりカスタムされているスナイパーライフルを持っていた。

「私はお前等の顔なんかより先生の顔が見たい」

あの死んだ魚の様な眼をした銀髪天然パーマを思い浮かべながら彼女は引き金を引く。



































































三人の少女達が屈強な天人兵に対して善戦している。
そんな光景を見て鬼の副長、土方はタバコを咥えながら後ろで疲れ果てている隊士達の方に振り返った。

「テメェ等ッ! ガキ共がああやって戦ってるんだッ! 大人としてッ! 真撰組の隊士としてテメェ等がやる事はなんだッ!」
「そうだ・・・・・・女子供の前でこんな無様な姿は晒せねえ・・・・・・」
「俺達真撰組の剣はまだ折れちゃいねえ・・・・・・」

土方の一喝を受けて倒れていた隊士達が次々と起き上がる。彼等もまた侍、魂が腐らない限り戦うと近藤と土方に誓っているのだ。
そんな彼等を見て土方は腰に差す刀を抜いて思いっきり振り上げる。

「春雨の軍団、そしてあそこにいるガキ共にも俺達の凄さを見せつけてやれッ!!!」
「「「「「オオォォォォォォ!!!!」」」」」」

怒鳴るように叫んだ土方の号令に隊士達は一斉に刀を振り上げ、敵陣の方に向かって走りだす。
彼等の後姿を見送った後、土方はふとある人物の方に目をやる。

「アンタは大丈夫か? その分だともう足腰立たねえ状況だと思うが」
「ええ全くその通りです・・・・・・いやはやお恥ずかしい・・・・・・」
「長・・・・・・」

土方に声を掛けられたのはこの屋敷の持ち主である木乃香の父親、近衛詠春。
先程まで戦っていたのだがとある理由で今は女中の一人に肩を持ってもらわないと立つ事も出来ない。

「ぎっくり腰です・・・・・・やはりこの年で無茶は出来ませんね・・・・・・」
「長は神鳴流の達人です、しかし今ではすっかりオッサンになってしまったので腰が弱くなり、長い戦いは出来ないのです」
「自分の雇い主をオッサン呼ばわりしないで下さい、傷付くでしょ」
「ったくしょうがなねえな」

自分の肩を持っていてくれている女中に詠春がツッコんでいるのを見ながら土方は口からタバコの煙を吐く。

「アンタはもう見学してろ、こっからは俺達真撰組が締めに掛かる」
「ありがたいですね・・・・・・申し訳ございませんが私は安全な所で待機させてもらいます」
「ああ」

辛そうな顔で詠春は土方に頭を下げた後、女中と共に何処かへ行ってしまう。
残された土方は咥えているタバコをプッと捨てる。

「さてと、俺も行くか」

握る刀に力を込め、土方は隊士たちのいる敵陣へゆっくりと歩いて行った。


























































士気が下がった春雨の部隊。そこを見逃さずに土方の号令を受けた真撰組の隊士達は一斉に斬りかかった。
そして彼等だけでは無く、ある男に服従されて逆らう事が出来ない少女も

「うわ~ん、なんでウチがこんな事~~~」
「ぐぎゃぁッ!」

泣きそうな声を上げながら天人達を次々と斬り伏せて行くゴスロリ少女。
沖田によって倒され、沖田によって調教され、沖田によってここに呼ばれ。
元は彼等、春雨側の方で会った月詠だ。

「もうイヤや~、あの人の恐怖の下で生きるのは~~~」
「ウダウダ言ってないでさっさと仕事しろクズがッ!」
「ひゃいんッ!」

ぼやいている月詠の背中を何処から持って来たのかムチで引っ叩くのは、彼女と同じ境遇でありながらその状況を甘んじて受け入れているメス豚一号こと、柿崎美砂であった。

「う~痛い~~~・・・・・・・」
「ご主人様が頑張って戦っているのに何やってんのよッ! 口じゃなくて体を動かしないこのクソメガネッ!」
「お前もな」
「ん?」

ヒリヒリする背中をおさえて泣いている月詠に向かって吠える美砂の頭をむんずと鷲掴みにする手。
彼女達のご主人様である沖田総悟であった。

「テメェもさっさと仕事しろ」
「え? それどういう意味ですかご主人様・・・・・・のふッ!」
「「「ごはぁッ!!」」」

美砂の頭を鷲掴みにしたまま沖田は乱暴に天人達の方に目掛けて彼女をぶん投げる。
その勢いで美砂は三人の天人を巻き込んで吹っ飛ばした。

「使えねえなあのメス豚、爆弾でもくくりつけて奴等もろとも吹っ飛ばしてやろうか?」
「ご、ご主人様~~ウチもう限界~~~! 帰らして~~~!」
「・・・・・・この俺からその限界以上の苦痛を味わいてえのかメス豚弐号・・・・・・」
「す、すみません~~!!」

泣きじゃくる月詠に沖田がギロリと睨みつけると彼女はすぐに謝って敵の方に向き直って二刀の刃を振るう。
間違いなく彼の目はマジであった。

一種のトラウマを抱えている月詠が春雨相手と戦っているのを見た後、沖田は彼女に背を向けて一息つく。

「こんな事ならもうちょっといい手駒を手に入れとけばよかったぜ」
「こんな状況で・・・・・・!」
「ん?」
「何考えてんのよアンタはッ!」

沖田のぼやきにツッコミを入れたのは突然彼の目の前にいる天人をかかと落としでKOして現れたアスナであった。

「ていうかボサっとしてないでコイツ等倒しなさいよッ! アンタ達の仕事でしょッ!」
「うるせえよエテ公、俺はサルよりゴリラ派なんだ。日光に帰れメスザル」
「キーッ! もうアッタマ来たッ! この・・・・・・!」

言いたい放題言われてアスナは堪忍袋がブチ切れて拳を振り上げて突っ込む。
それに対して沖田もニヤリと笑って

「上等・・・・・・」

持っている刀を光らせ彼女めがけて走る。
そして

「うおらぁッ!」
「あらよっと」
「「うぐわぁぁぁ!!!」」

アスナは沖田の背後から迫っていた天人を拳でぶっ飛ばし、沖田もアスナを後ろから襲いかかっていた天人目掛けて刀を振りおろして斬殺。
出会って間もないにも関わらず上出来のコンビネーションだった。

「中々やるじゃねえかメスザル、ご褒美に俺の調教リストに入れてやろうか?」
「何がご褒美よサディストバカッ! 体が勝手に動いただけよッ! よく覚えてないけど、遠い昔に誰かに喧嘩の仕方を教えてもらったような気がするのよね・・・・・・」

お互いに背中同士をくっつけた状態で沖田は口に笑みを浮かべて呟くと、アスナは彼の方へ向かずに叫んで、そして自分が何故こんな事が出来るのかと首を傾げる。

「それにしても、なんでアンタなんかと一緒に戦わなきゃいけないんだか・・・・・・」
「戦ってるのはそっちが勝手にやってる事じゃねえか。戦いのプロは俺達だ、素人はすっこんでな」
「フン、誰がアンタの命令なんか聞くもんですか、私の事は私で決めるわよ」
「この俺が直々に警告してやってるのに、死んでも知らねえぜぇ」
「こんな所で死ねないわよ、絶対アンタより長生きするんだから」

悪態を突き合いながら沖田とアスナは周りを囲んでいる天人達に向かって構える。

「これ終わったら殺してやるからなサル」
「その言葉そっくり返すわよドS」

そう言い残して二人は反対方向に走った。
反りの合わない二人は天人達を相手に立ち向かう。





















































沖田とアスナが戦っていると、二人とは少し離れた場所で、大将である近藤は他の隊士達や楓達援軍を連れて来てくれた山崎と共に戦神の如く敵を殲滅していた。

「かかれーッ!! 女子供相手に遅れを取るんじゃねえぞお前等ァッ!」
「了解です局長ッ!」
「アイツ等の戦いぶりを見て俺等も黙っちゃいませんよッ!」

自分が先陣を取って近藤は隊士達を鼓舞しながら目の前の敵を次々と斬り伏せて行く。
彼の剣の腕も土方や沖田に引けを取らないほど強い。
更に荒くれ者の隊士達を一つにまとめ上げられる技量とカリスマ性を兼ね備え、何より誰にでも対等に接する近藤の姿は隊士達の誰もが認める大将なのだ。

「さすがは俺達をまとめられる唯一のお方、局長のおかげで敵は総崩れだ。アレ?」
「オイ、局長の背中・・・・・・・」
「なんか憑いてね?」

だが彼のそんな大きく頼もしい背中にいる一人の少女を見て隊士は一斉に我が目を疑った。
最初にその疑問を突いたのは唯一旅館の浴衣姿である山崎。

「あの~局長、一つ質問していいですか・・・・・・?」
「なんだ山崎ッ! ていうかなんでお前浴衣なんだッ!」
「あ、すみません着替えてる暇も無かったんで・・・・・・そんな事より局長」

敵を倒して一旦刀を振るのを止めた近藤の背中に山崎は頬を引きつらせながら指をさす。

「なんでその子、背中におぶってんですか・・・・・・?」

近藤の背中にはさっきからずっとしがみついている夕映の姿がある。
彼女の事を知っている山崎にはその光景は不思議でしょうがない。
だが彼女をおぶる近藤は

「ク、クレーンゲームで取った人形だッ! あまりにも愛着が湧き過ぎて持って来てしまったッ!」
「嘘つけぇッ! そんな無愛想なツラした人形誰が欲しがるんだよッ! つうか俺その子知ってるからッ!」
「無愛想とは失敬な、特になんの特徴も無いあなたよりはマシです」
「思いっきり人形が喋ってるんですけど局長ッ! しかも俺の存在概念にケチつけて来る憎たらしい言葉を込めてッ!」

こちらに振り返って失礼な事を吐き捨てる夕映を指差しながら山崎が叫ぶが、近藤はキッパリと

「お喋り機能だッ!」
「ねえよこんな相手に対して失礼極まりない事を発言する人形はッ!」

山崎は即座に額に青筋を立ててツッコむ。

「なんで俺達の大将が背中に女の子背負って戦ってんですかッ! しかもよりによってその子をッ!」
「いやだってよ・・・・・・はッ! 山崎ッ!」
「え?」

困った表情で頬を掻いていた近藤だが、咄嗟に山崎に向かって血相を変えて叫ぶ。
山崎もその叫びに一瞬きょとんとするが、すぐに背後から殺気が迫っているのを感じる。

「幕府の犬がぁッ!」
「しまったッ! ぐうッ!」
「山崎ッ! この野郎がッ!」
「ぎゃはッ!」

隙を突いて背後から襲いかかって来た天人の剣に山崎は避けようとするも、左腕を斬りつけられてしまう。
近藤は山崎を斬った天人に向かって走り、あっという間に瞬殺すると慌てて山崎の方に駆け寄る。

「大丈夫か山崎ッ!」
「イテテテテ・・・・・・大丈夫です、思ったより傷は深くないっぽいですから」

確かに本人の言う通り山崎の腕はさほど深く斬られてはいない。だがかなりの出血だ、この状態で戦うのは難しい。

「俺に構わず先に行って下さい・・・・・・・」
「バカヤローそんな事出来るかッ! お前等一旦山崎を安全な場所へ移動させるぞッ!」
「わかりました局長ッ!」

腕を押さえて痛みをこらえている山崎に近藤は一喝した後、すぐに隊士達の方へ指示を出す。
だが次の瞬間。

「その任は皆様の代わりに私がやらせて頂きます」
「え? うおわぁッ!」
「うおッ!」

女性の声と共に豪快な音を立てて山崎と近藤の間に何者かが落ちて来た。
巨大なレールガンを持った機械人形、絡操茶々丸だ。

「貴方達は、引き続き敵の殲滅の対処をお願いします」
「何者だアンタ、見る限りからくりの様に見えるが・・・・・・・オイ山崎ッ! このからくり娘の事は知っているかッ!?」
「え、ええ・・・・・・でも茶々丸さんって確かここに来れなかったんじゃなかったけ?」
「色々会って援軍としてここに来れました」
「あ、そうなんですか・・・・・・」

短絡的に返す茶々丸に山崎が返しに困っていると、近藤は両腕を組んで彼女に話しかける。

「本当に山崎の事を任せていいのか?」
「はい、元より私は援軍として来ているのですから。あなた達の助けになる為に行動するのが私の義務です」
「ようしわかった、お前等ッ! 山崎は彼女に任せて俺達は敵陣を突きに行くぞッ!」

強く頷く茶々丸の目を見て近藤はニヤッと笑った後、隊士達の方へ振り向いて再び号令をかける。

「いいんですか局長ッ! こんな見ず知らずの女に山崎を任せてッ! 相手が女だろうがからくりだろうが春雨の野郎共は容赦しませんぜッ!」

十番隊隊長の原田が茶々丸の方を怪しむように眺めるが近藤はフンと鼻を鳴らす。

「この世界の奴等は俺達の世界の奴等と負けないぐらいクセ者ぞろいだ、俺はそれに賭ける」
「だけどよ局長・・・・・・」

頑なに信じる近藤だが、原田はまだ腑に落ちない。山崎の友人である彼にとって、初めて出会った茶々丸に託すのは少し不安なのだ。
だがそこに近藤の背中にしがみついている夕映が彼の方に振り向いて目を細める。

「局長の命令を聞けないんですか、つべこべ言わずに大人しく従いなさい丸坊主」
「局長・・・・・・何様なんすかそのガキ・・・・・・・?」
「オイオイなんなんだあのガキ・・・・・・局長にくっついてるばかりか俺等に命令しやがったよ・・・・・・」
「スッゲー上目線じゃね? まるで自分が上司だと言わんばかりにスッゲー上目線じゃね?」

夕映の毒舌に原田が額にピキッと青筋を立てると後ろにいた二人の隊士もヒソヒソと彼女の事で会話している。
非情に空気が悪くなった事に気付いた近藤はそんな彼等の声も無視して、額に汗をかきながら夕映をおぶったまま前方に向かって走る。

「お、お前等俺に続けぇぇぇぇぇ!! 誰一人遅れを取る事は許さんぞぉぉぉぉ!!」
「ちょッ! 待って下さいよ局長ッ!」
「まだアンタの背中にくっつているガキの事聞いてないんですけどッ!?」
「聞こえない聞こえないッ! な~んも聞こえませ~んッ!!」

後ろから原田を初め隊士達の声が聞こえてくるが近藤はそれもスルー。
そんな彼の後姿を見て仕方なく山崎の事や夕映の事は諦めて、原田達は彼の後に着いて行く事にした。
残った山崎は出血する腕をおさえながら茶々丸と共に呆然と見送る。

「どうしたんだ局長・・・・・・?」
「怪我の方は大丈夫ですか山崎さん?」
「ん? ああ、それほど重傷じゃないから大丈夫だよ」
「・・・・・・そうですか」
「?」

ホッと一安心するかのような表情をする茶々丸に山崎は首を傾げる。
常にポーカーフェイスの彼女がこんな表情をするのは珍しい。

「それではお手数ですが、私の背中にあるバックパックを開けてもらえないでしょうか?」
「え? それなら全然お安い御用だけど?」

山崎の疑問も知らずに茶々丸は背中を見せて丁寧にお願いしてくる。それを素直に聞いて山崎は彼女の背中にあるランドセルの様なバックパックを怪我していない方の右手でカチャっと開けると・・・・・・

「ケケケケケッ!」
「うわぁぁぁぁぁッ!!」

開けた瞬間、いきなり飛び出して来た小さな人形に山崎は驚きのあまり尻餅を突く。
しかもこの人形、茶々丸にバックパックに収納が出来たのが不思議なくらい自分よりずっとデカイ剣を持っていたのだ。

「オ~、ヨウヤクシャバノ匂イヲ嗅ゲタゼ」
「ちゃ、茶々丸さんッ! 何この人形ッ!?」
「私の姉のチャチャゼロです」
「姉ぇぇぇぇぇぇ!?」

茶々丸の言葉に山崎は彼女の差し出した手を取って立ち上がりながら思いっきり驚く。
まさか彼女にこんなちっこい姉がいたとは・・・・・・
山崎がそんな事を考えながら驚いていると、茶々丸の姉、チャチャゼロは巨大な剣を振り回しながら彼の方へ振り向く。

「何ダコイツ? 殺ッチマッテイイノカ?」
「ダメです姉さん」
「イイジャン殺ラセロヨ」
「ダメです姉さん」
「随分と物騒なお姉さんだね・・・・・・」
「すみません」

駄々っ子みたいにごねながら剣を振り回すチャチャゼロに山崎が感想を呟くと、茶々丸は律義に謝る。

「こんな姉ですが護衛としては申し分ない腕を持っています」
「本当に・・・・・・? すっごい不安なんだけど・・・・・・」
「ゴチャゴチャウルセエナ、殺スゾコラァ」
「メチャクチャ不安なんだけど・・・・・・こっちに向かって凶器光らしてんだけど・・・・・・」
「大丈夫です」

山崎の不安をよそに、乱暴に剣を振り回しているチャチャゼロに視線を送りながら茶々丸は縦に頷いた。
その自信は何処から来るのやら・・・・・・
山崎が更に不安になっていると、茶々丸はそんな彼に口を開いた。

「ただいまから山崎さんを安全な場所へ移動させるという任務を開始します。まずは山崎さん」
「あ、うん」
「腕を損傷しているあなたは私と姉さんの後ろに常にいてください。戦闘は私達でやりますので問題はありません」
「ケケケ、使エネエ奴ハ大人シクシテナ」
「・・・・・・」

茶々丸と、彼女の肩に乗っかっているチャチャゼロにそう言われると山崎は無表情で黙る。
しばらくして彼は負傷した腕を押さえながら首を横に振った。

「悪いけどそれは出来ない」
「・・・・・・え?」
「そんなデッカイ武器を軽々と持ってこんな危ない所に来ちゃうんだし、君とその人形の実力が相当だってのはわかってるよ、けどね」

負傷していない方の右腕で山崎は持って来た刀を鞘から抜く。

「俺はこれでも局長や副長、沖田隊長達と同じ真撰組の隊士なんだ。女の子の後ろで隠れるなんて無様な真似は出来ない」
「・・・・・・・」
「左腕が使えなくなってもまだ右腕はある。俺はまだ戦える、君と一緒に」
「山崎さん・・・・・・」

キリッとした表情でまっすぐに目の前で戦っている隊士達や天人を見つめる山崎の姿に、茶々丸はボソッと呟いた。


「・・・・・・侍とは不思議な生き物ですね」
「ハハハ、バカな生き物でしょ?」
「いえ、己の生き方をずっと全うできる素晴らしい生き物だと思います、銀時様や貴方も」
「そ、そう・・・・・・」

茶々丸にそんな事を言われるとは思ってなかったのか、山崎は後ろ髪を掻き毟りながら思わず顔を赤らめて苦笑する。
すると、茶々丸の肩に乗っかっていたチャチャゼロがピョーンと彼の肩に飛び移って

「照レテンジャネエヨ」
「おごッ!」
「ケケケケケ」

頬に思いっきりワンパンチ。肩の上でケラケラ笑うチャチャゼロに山崎は頬をさすりながらしかめっ面をしていると、茶々丸は突然前方に向かって持っていたレールガンを片手で構える。

「アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲、発射開始10秒前」
「え? 何やってんの茶々丸さん? ていうか名前長くないその武器?」

いきなり自分の得物を構え出す茶々丸に山崎が恐る恐る尋ねると彼女は構えたまま彼の方へ振り向く。

「山崎さん、一生に戦うと言ってくれた事感謝します。ですから私も、貴方の為に出来る限りの事をさせて頂きます」
「それはありがたいけど・・・・・・・何する気?」
「まずは・・・・・・」

持っているレールガンがどんどん光を帯びて行く。山崎はそれを心配そうに見つめる中、茶々丸は彼に向かってさらっと答えた。

「出来る限り敵を一掃させます」
「・・・・・・へ?」

山崎が口をポカンと開けた瞬間。
茶々丸が持っていたレールガンの発射口が紅く光った。

そして

「チャージ完了、発射します」
「「「「「「「「「「ギャァァァァァァァ!!!!!」」」」」」」」」」」」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

地響きの様な轟音を立てて、前方で戦っていた天人を一瞬で赤い光でかき消してしまった。















































レールガンが発射態勢に入っている一方、松平のとっつぁんはショットガン片手に戦闘に参加できない少女達の護衛役を買って出ていた。

「ぶるわぁッ! 何人たりともトシの花嫁に指一本触れさせねえぞッ!」
「おおッ! すげえぜこのオヤジッ! 見た目通りの凄腕ヤクザだぜッ!」 

襲いかかって来る天人をあっという間にハチの巣に仕上げるとっつぁんの豪快な銃術に、彼の後ろで避難していた和美の肩に乗っているカモが狂喜乱舞していた。

しかし

「ぬおわぁッ!」
「何事ッ!?」
「すっごいビーム飛んで来たッ!」

豪快に名乗りを上げていたとっつぁんに向かって巨大な赤い光線が飛んでくる。
とっつぁんは咄嗟にしゃがみ込んで回避。ハルナと和美は大げさなリアクションで紅い光線を見て叫んだ。

「危ねえ危ねえ・・・・・・俺の頭取ろうとはいい度胸じゃねえか・・・・・・」
「だ、大丈夫ですか・・・・・・?」

頭をおさえて砲撃が飛んできた方向を睨みつけるとっつぁんにのどかは心配そうにしゃがみ込む。するととっつぁんは彼女の方へ向いて

「市ぃ・・・・・・この信長の心配をする前に自分の心配をしたらどうだ・・・・・・?」
「い、いや・・・・・・ここでは市じゃないんですけど兄さん・・・・・・・」
「あ、声優ネタッスか?」
「のどか、アンタはボケちゃダメよ。この世界で唯一のまともキャラなんだから・・・・・・」

意味深なかけあいをするとっつぁんとのどかをみて和美の肩に乗っかっているカモがポンと手を叩くと、隣にいるハルナがジト目でボソリと口を入れる。
そうこうしている内に、さっきまで天人達と戦っていた土方が彼女達の方へ走り寄って来た。

「オイとっつぁんッ! さっき砲撃がそっちに飛んできたが大丈夫かッ!?」
「おおトシ、安心しろオメーの花嫁はまだ生きてるぜ」
「花嫁じゃねえつってんだろ・・・・・・!」

立ち上がった後、のどかの後ろ襟を掴んで土方に方へ突き出してくるとっつぁんに土方はイライラした調子で返す。

「ったく・・・・・・ま、そいつが無事なら俺はそれで構わん」
「あの、十四郎さん・・・・・・」
「ん?」
「刹那さんの方は・・・・・・大丈夫なんですか・・・・・・?」
「・・・・・・あいつか」

懐からタバコを取り出して口に咥えた土方にのどかは不安そうに尋ねる。
さっきから刹那の姿が何処にも無いのだ・・・・・・。
土方はタバコを咥えたまま上を見上げる。

「まだ戦ってんじゃねえか・・・・・・・?」
「助けに行かなくていいんですか・・・・・・・?」
「そんな無粋な真似はするか、アイツは一人の侍としてあの男と戦うと決めたんだ」
「・・・・・・」
「心配すんな」

顔をしゅんとして頭を下げるのどかの頭を土方は安心させるように手を置く。

「すぐにいつものバカ面ひっさげて帰って来る」

確信してる様に土方はのどかにに向かって頷いて見せる。

「なにせこの俺の直属の部下だからな」

それは彼なりの彼女に対する敬意だった。












































星々が輝く夜空が天から見下ろし、春だというのに寒々とした風がなびく中。
刹那と全蔵は今、近衛家の屋敷の頂上に立っていた。
この二人の戦いは大広間の敷地ではどうにも収まらなかった様だ。

「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・まさかこんな所まで移動するハメになるとは・・・・・・」
「お互い戦いに集中し過ぎて周りが見えなくなっちまってた様だな・・・・・・」

屋根の上でバランスを取りながらも肩で息をして限界が来ている刹那に全蔵は呑気に呟く。
彼も疲れている様だが表情には出さない。

「お庭番衆として長年幕府を支えていた事がある俺でも、こんなに長い戦いは初めてだ」
「そうか・・・・・・だが」

背中に生える白い翼をヒラリヒラリと動かしながら、刹那は全蔵に向かって両手に握る死装束を構える。

「この戦いももう終わる・・・・・・・」
「その様だな・・・・・・」

刹那の言葉に全蔵は両手に持った二つのクナイを構えて答える。
長きに渡ったこの戦いも、遂に終わる時が来たのだ。

「あの世で俺を怨むなよ」
「それはこっちの台詞だ・・・・・・」

互いに武器を構えて一定の距離を取ったまままま静かに見つめ合う。

そして

「行くぜぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

同時のタイミングで二人は相手に向かって突っ走る。全蔵はクナイ持ったまま滑るように、刹那は力強く咆哮を上げながら自らを呪わんとする妖刀を持って。

「勝つのはッ!」
「私だッ!」

二つの影は勢いよくぶつかる。
鉄の音を鳴らしながら、二人の武器は擦れ合って火花を散らした。

「手裏剣で私の刀を止めれると思ったら大間違いだぞ・・・・・・!」
「そうだな、クナイ“一本”じゃ数秒止めれるのがやっとだ」
「!!」

笑みを浮かべてくる全蔵の表情を見て刹那は表情をハッとさせた。
両手で振り下ろした刀を今止めているのは、彼が右手に持つ一本のクナイのみ。
確か全蔵が持っていたクナイは二本の筈・・・・・・

「だがその数秒で・・・・・・!」
「しま・・・・・・!」
「テメェから大事なモンを奪えるッ!」

ドスの効いた声をしながら全蔵は左手に持つクナイを光らせる。
刹那がそれに気付いた時には二本目のクナイは


















右目に強く突き刺さっていたのだ。

「ぐッ! ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
「どうだお嬢さん・・・・・・目玉を潰された感覚は」

右目から流れる大量の血、それと共に灼熱の様にやってくる痛みに刹那は思わず雄叫びを上げる。
今まで味わった事が無いほどの激痛、頭がどうにかなりそうだ。
全蔵は彼女の右目にクナイを食いこませながらニタリと笑みを浮かべる。
このままクナイを脳の方に押し込めば刹那は死ぬ。長い戦いもこれで終わりだ。
だが

「ぐぅッ!!」
「何ッ!」

正気さえ失ってもおかしくないぐらいの痛みがあるにも関わらず、刹那は刀から右手を離して自らの右目に突きささるクナイを持つ彼の左手を勢いよく掴む。
そして残った左目で全蔵を睨みながら刹那はその手を

「がぁッ!」
「くッ!」

力を振り絞って横に払う。
その拍子に全蔵の持っていたクナイは横に吹っ飛び、クナイに突き刺さっていた自分の眼球も一緒にえぐられて飛んでいった。

「光を半分失ってもッ!」
「!!」
「私にはッ!」

残った左目で全蔵を睨みつけながら、刹那はすぐに両手で死装束を握り直して残った力を振り絞る。
全蔵が持っていたクナイはピキピキと鳴りだし・・・・・・


ガラスの様な音を立てて割れた


「護るべきものがあるんだッ!」

その瞬間、刹那は全蔵の左肩から腰までを袈裟がけに斬る。

「なんてこった・・・・・・」

数秒後、全蔵は両手を広げ。

「お前さんの勝ちだ・・・・・・刹那・・・・・・・」
「全蔵・・・・・・」

体から大量の血を噴水の様に流しながらバタンと倒れた。

武器も失い、重傷を負った彼にはもう戦える術は残されていない。
刹那はさっきまで右目があった箇所を手で押さえながら呆然と彼を見下ろす。

「目を奪った俺を怨むか・・・・・・・?」
「・・・・・・右目が無くなってもまだ私には左目が残っている・・・・・・それに両耳もあるし鼻もある・・・・・・戦いにおいてこんな支障は微々たるものだ・・・・・・」
「へ、どんだけ前向きなんだよお前・・・・・・」

なんの問題も無さそうに喋る刹那に思わず全蔵は口元に小さな笑みを浮かべる。
口から滲み出る血を手で拭った後、全蔵はそんな彼女にゆっくりと口を開いた。

「楽しかったぜ・・・・・・」
「私も・・・・・・お前と戦えた事を誇りに思う」













互いに認め合った二人の苛烈な戦いは。




































「恥ずかしい事言ってんじゃねえよ、バーカ・・・・・・・」





ようやく終わりを迎えた







[7093] 第六十八訓 バクチ・ダンサー
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/05/16 22:23
廊下を歩く彼女の足取りは非情に重々しく辛そうだった。
握っている黒い刀からは禍々しい妖気を放っている、まるで疲労困憊の彼女を誘惑する様に。
だが少女はグッと歯を食いしばってその力に屈せずに歩みを止めない。

この呪いに抗い二度と魂を奪われないとある男に誓っているのだから。

「約束してるんだ・・・・・・あの人と・・・・・・・」

そして少女は、やっと自力でとある部屋の前に辿り着く。
苛烈な激戦を繰り広げている大広間、向こう側から聞こえる悲鳴や、斬撃音、爆発音。
自分の戦いが終わっても未だにここの戦いは終わってないとわかってもなお。

少女は重い腕を上げて大広間の襖をあけた。

左目に飛び込んできたのは“彼”が一人で無数の天人に向かって怒鳴り声を上げながら戦っている姿だった。

「テメェ等ザコ風情が百人集まろうが千人集まろうがッ! この土方十四郎の首は取れねぇぇぇぇぇぇ!!」
 
人というよりまさしく『鬼の副長』という異名にふさわしい鬼の形相で、よってたかってくる天人達を刀で片っ端から殺していく。その刀の動きに迷いは無い。
程なくして彼に襲いかかっていった天人達はあっという間に全滅してしまった。それを見た天人達はビクビクと怯えた目つきで腰を抜かしたまま這いずるように彼から逃げて行く。
彼はそれを追わずに刀を鞘におさめ、ポケットからタバコを取り出して火を付けた後、彼女の方に背中を見せてゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・そっちは終わったのか?」
「・・・・・・終わりました」
「・・・・・・奴に勝てたのか?」
「・・・・・・なんとか勝てました」

タバコの煙を吐きながら、土方は制服が大量の血で染まっている刹那の方へ振り向いた。

「ご苦労だったな・・・・・・・刹那」
「ありがとうございます・・・・・・・」


土方の言葉に思わず刹那は頭を下げた後、もう歩く事もままならない状態にもかかわらず、自分が持つ死装束を杖代わりにしてヨロヨロと彼に近づく。

「すみませんこんなみっともない姿で・・・・・・」

ボロボロになった状態でも律義に謝って来る刹那に、土方は自分から彼女に近づいていく。

「テメェが謝る事なんざなんもねえ、俺の部下としてテメェは十分に戦った」
「土方さん・・・・・・」
「今はゆっくり休んどけ、後はもう俺達の仕事だ」
「・・・・・・こんな状態でなければすぐに戦線復帰が出来たのでしたが・・・・・・」

申し訳なさそうにへこんだ顔をする刹那の体には無数の切り傷があり、更に右瞼からはドス黒い血が流れている。
それは全蔵に勝利するための代償だった。

「目ん玉潰されたのか・・・・・・」
「はい・・・・・・」
「・・・・・・大丈夫かお前?」

珍しく身を案じて来る土方の言葉に刹那はフッと微笑む。

「心配しないで下さい、片目を失っても・・・・・・決心は揺るぎませんから」
「・・・・・・・」

裏など無い正直な一言、それを聞いた土方はしばらく黙った後、タバコの煙を天井に向かって吐く。

「当たり前だろうが、片目失おうが片腕失おうがテメェは俺の部下だ。これからもずっとな」
「・・・・・・」
「俺から逃げようなんてしたらすぐにその場で粛清してやる、わかったな?」
「・・・・・・はい」

咥えていたタバコを手で持って自分の方に突き出しながら、土方はぶっきらぼうに宣言。
そんな彼に刹那は感謝の念を込めて深々と頭を下げるのであった。
すると・・・・・・

「せ、刹那さんッ!」

後ろから聞こえた慌ただしい少女の声、それに気付いた刹那ははっと振り返る。

「のどかさん・・・・・・! こんな危険な場所にいて大丈夫なんですか・・・・・・!」
「刹那さんこそ体がッ! 早く手当てしないとッ!」

心配する刹那よりもっと心配した表情をしてるのは同級生である宮崎のどか。
血相を変えて刹那に近づき、まじまじと彼女の傷だらけの体を眺める。

「こんなになるまで・・・・・・」
「・・・・・・どうやら心配かけていたようで、すみません・・・・・・」
「いいんです・・・・・・あなたが生きて帰って来てくれただけで十分ですから・・・・・・」
「のどかさん・・・・・・」

優しさと温かみが伝わって来るのどかの笑みに刹那が思わずジッと見ていると、後ろから肩にポンと土方に手を置かれる。

「のどか、コイツをとっつぁんと一緒に女中達の所に連れていけ、傷を手当てしてもらえる筈だ。敵はあらかた殺したしお前でも出来る」
「は、はいッ!」

指示を出した土方にのどかは彼の目を見て力強く頷く。
彼女のそんな意外な姿に刹那は思わず目を丸くした。

(何時の間にかこの人はこんなにも“強く”なっていたんだな・・・・・・)

そんな事を考えていると、土方はのどかと自分に背を向けて腰の刀を抜く。

「俺は残ったゴミを燃えるゴミに出してくる、じゃあな」
「頑張って下さいね十四郎さん・・・・・・」
「言われなくても俺はいつも頑張ってる」

心配そうな顔をするのどかの方へ振り向かずに土方は手を振りながら春雨の勢力を潰しに行った。
残された二人は黙ったまましばらく彼の背中を目で追う。

「・・・・・・刹那さん」
「・・・・・・なんですか」
「・・・・・・ありがとうございました」
「え?」
「私や十四郎さん、他のみんなの為に戦ってくれて本当にありがとうございました」

自分の傷付いた体を癒す様な安堵の笑みと、綺麗な澄んだ声でお礼を言うのどか。

不思議と刹那は、その言葉を聞いて目頭が熱くなった。

「そうなんだ・・・・・・こんな私でも・・・・・・役に立てたんだ・・・・・・」

右瞼から出て来た一滴の黒い滴が彼女の頬をつたう。

それが血なのか涙なのかは誰もわからない。






























第六十八訓 バクチダンサー
























真撰組対春雨もいよいよ大詰め。
局長である近藤は刀を掲げて隊士達全員に聞こえるぐらいの声量で激を飛ばしている。

「お前等ァッ!! ザコ一匹残すんじゃねえぞぉッ!!」
「「「「「おおーッ!!!」」」」」

その言葉を聞いて隊士達は群がる春雨の天人達に襲いかかる。
士気の上がった真撰組と、彼等の到着、はたまた腕の立つ少女達の登場により士気が下がっていた春雨の兵隊はその怒涛の攻撃に押され始める。

「ひ、ひるむなぁッ! ここから我々の力を見せつけ・・・・・・ぐべッ!」

兵をまとめる隊長格の風貌漂うサイの顔をした天人が吠えた瞬間、一人の少女によってあっけなく首を飛ばされた。
元仲間の月詠によって

「す、すみませ~~ん!」
「このガキィ! うぐッ!」

血に濡れた刀を払った後、何故か申し訳なさそうに謝ってくる月詠に、殺された仲間の仇打ちとして別の天人が刀を振り上げるも、突然自分の腰に大量のクナイが刺さったので思わず顔に苦痛を滲ませる。
だが彼が苦しんでいる間に

「とぉーッ!」
「おぼろげッ!」
「うぎッ!」

何者かによって顔面を思いっきり蹴飛ばされ、天人は月詠の上に倒れてダウン。
潰された月詠は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらガクッと気絶した。

蹴飛ばした本人は床に着地した後、すぐに後ろに振り向く。

「援護サンキューアル楓」
「なんのなんの、戦場では助けあいが肝心でござるから」

親指を立ててガッツポーズを取るクーフェイに、後ろにいた楓は陽気に笑いかける。
この二人、命を賭けた戦いに身を置いているにもかかわらず、戦いを楽しんでいるように見えた。
しかしそんな能天気な二人に天人達はすっかり激昂したように襲いかかる。

「コイツ等俺達の事完全にナメきってやがるぜッ!」
「こうなったらプライドもクソもねえッ! 一人ずつで襲うのではなく袋にして殺せッ!!」
「ヒーハーッ!」

異様な姿をした天人達が一斉にクーフェイと楓を殺そうと走り出す。
だが

「うごッ!」
「あげべッ!」
「ぶつぶッ!」
「ぬこぉッ!」
「ぐがッ!」
「あふッ!」
「・・・・・・あれ?」

テンポよく銃声が鳴る度に一人ずつ天人が倒れて行く。何時の間にか一人になってしまった兵はキョロキョロと周りを見渡すと。

「一つの場所に突っ込む兵など、狙撃手にはただの的にしか見えない」
「げッ!」
「あの世で出直してこい」
「ごばッ!」

スナイパーライフルの銃口をこちらにむける龍宮の姿が。
彼女と目が合った瞬間、天人は成すすべなく眉間を撃ち抜かれた。

「数だけ揃っててもこの状況では頭の回転も上手く回らないんだろな敵も」
「相変わらずの腕前でござるなぁお主は」
「救い料一億万円、ローンも可」
「相変わらず金にがめついでござるなぁお主は」
「この不景気にこそ金を溜めとかなきゃいけないだろ」
「ハッハッハ、友情より金でござるか、まったくお主は本当に最低でござる」

真顔のまま冗談では無い口振りでジッと見て来る龍宮に楓は口を開けて笑う。
彼女の対応はなんとなく心得ている。

二人でそうこうしていると、天人達を蹴散らしながらこちらに突っ込んで来る侍の気配が。

「テメェ等が狙う大将はこの俺だぁッ! 大将首が欲しかったらこの近藤勲を討ち果たしてみろッ!」
「「「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」」」

豪快に天人達を切り刻んで突き進んで来るのは、真撰組局長の近藤。
彼が近くにやって来た途端、龍宮は咄嗟に目を細める。

「この近くに動物園もあるのか? ゴリラが脱走して暴れてるぞ」
「うむ、すぐに檻に閉じ込めなければ、まずはバナナでおびき寄せて」
「誰がゴリラだぁッ!」

誤解している二人に近藤は倒れている敵に止めを刺しながらツッコむ。
するとそんな彼にさっきまで遠くにいたクーフェイが近づいて来てすぐに構えた。

「勝負アルゴリラッ!」
「だからゴリラじゃないってッ!」

またもや彼女にゴリラ呼ばわりされてしまい近藤はウンザリした表情で突き返す。

「ていうかさぁ君達よく考えてよッ! ゴリラが刀なんて持つわけないだろッ!」
「はッ! そういえばそうヨッ! さては人間の様な知性を兼ね備えたインテリゴリラだったアルなッ!」
「そこまでいってんならもう人間でいいじゃんッ! ゴリラじゃなくて人間としてカウントしてくれよ俺をッ!」

冗談では無くマジで仰天しているリアクションを取るクーフェイに近藤は必死な声で叫ぶ。
一応彼にも人間としてのプライドはある。

「やんなっちゃうよなぁチクショウ・・・・・・・」
「別にあなたがインテリゴリラだろうがただのゴリラだろうが私は大丈夫ですよ」
「君が大丈夫でも俺自身はそれを認めたくないから・・・・・・」

両手を自分の首に回してぴったりくっついている夕映に近藤は疲れた調子で返しながら、彼女が言った事に少し引っ掛かる。

「あれ? ていうか大丈夫って何が・・・・・・?」
「あなたが何者であろうが私はあなたの全てを受け入れるって事です」
「受け入れるってどういう意味・・・・・・? ひょっとしてちょっと前にとっつぁんと会話してたアレってマジ? え? 違うよね?」

変な汗をダラダラと流しながら近藤の顔に焦りの色が見え始めるも、夕映は黙ってそっぽを向いてしまう。
この少女の思惑は一体・・・・・・

「なあ夕映ちゃん、もしかして俺の事・・・・・・」
「近藤さん」

そっぽを向いたまま夕映は近藤に口を開く。

「言わなくてもわかってますよね? 私があなたの事をどう思っているか?」

彼女の言ったその一言に近藤は声も出ずに絶句の表情をする。

(マ、マジでェェェェェェェェ!?)
「楓、ゴリラがすんごい顔してるぞ」
「威嚇でござろうか、ていうかなんで背中にリーダー(夕映)をおぶっているのでござるかあのゴリラは」
「あッ! きっと保存食にして食べる気アルッ!」

近藤の表情に対して3人娘は呑気にそんな事を話していた。
するとそんなグループに一人の男が

「近藤さん助けに来たぞ、隊士の奴等の調子はどうだ?」

やってきたのはタバコを口に咥えている土方。近藤は彼を一瞥した後、すぐにそっぽを向く。

「ああ、アイツ等は絶好調だけど、俺は迷走ルートに突入しててさ・・・・・・」
「何を今更、アンタはいつも迷走してるだろ」

近藤の一言に土方は即座に返す。だが近藤は彼の方に焦り顔で振り向いて

「いや今日はマジで物凄く迷ってるんだってッ! このままだと永久にラビリンスの底から抜け出せねぇッ!」
「訳わかんない事言ってんじゃねえよ・・・・・・男ならビシッと決めろ」
「いやいやいやッ! ビシッと決めるべき道がねえから困ってんだよッ! 」
「?」

何をそんなに悩んでいるのか見当もつかない。
迷える子羊ならぬ迷えるゴリラと化している近藤に、土方が首を傾げていると・・・・・・

「副長ォォォォォ!! 避けて下さぁぁぁぁぁいッ!」
「あ?」

聞いた事のある声がしたので土方はそちらにめんどくさそうに目を向ける

まっすぐ得体のしれない紅い光線が天人達を飲み込みながらこちらに飛んで来た。

「ってうおぉぉぉぉぉぉ!!!」

すぐに頭を抱えて避ける土方。後少し反応が遅ければどうなっていた事やら。
土方は声とレーザービームが飛んで来た方向に向かって伏せた状態で吠える。

「あ、あぶねえだろうがッ! 一瞬走馬灯が見えたわッ!」
「申し訳ございません土方さん」
「ん?」
「何ぶん敵を一掃する事に専念していたので貴方達の存在を忘れていました」

持っているレールガンから硝煙を出しながら丁寧に謝った後、光線を打った本人は無表情のまま土方の方に歩いて来た。
前に一度やり合った事のある生徒、絡操茶々丸。そして彼女の後ろには何故か仲間である山崎が、肩に不気味な人形を乗っけて頬を引きつりながら後頭部を掻いている。

「だ、大丈夫ですか副長・・・・・・」
「・・・・・・山崎、何でお前は浴衣着てんだ、何でこの女がここにいんだ、何でこの女とお前が一緒にいんだ、そして何でこの女は俺に向かって大砲ぶっ放したんだ・・・・・・・!」
「ほ、本意で狙ったわけじゃないですから・・・・・・・」

両手を振って睨んで来る土方に山崎は誤魔化し笑いをするも、彼の肩に乗っかっているチャチャゼロがまたいらん事を

「ケケケケ、死ンデネェンダカラギャアギャア騒グンジャネエヨ」
「おい山崎ィ・・・・・・! お前腹話術使えたのか、何俺に向かってふざけた態度取ってんだコラ・・・・・・!死ぬ気か?」
「えぇぇぇぇぇぇ!? 違いますよ今のは俺じゃなくてこの人形本体がッ!」

誤解されてしまった山崎は、立ち上がって物凄い形相で睨んで来る土方に慌てて話をしようとするが、やはりチャチャゼロが

「ソウダゼ俺ハ山崎ダ、頭悪ソウナクセニヨク見破ッタナ、コノチンピラヤロー、ケケケケケケ」
「山崎ィィィィィィ!!!」
「ヒィィィィィ!! だから違うんですってばァァァァァ!!」

山崎の肩に乗っかっているチャチャゼロが生きているのを知らない土方は彼に向かって拳を振り上げ一気に接近する。
悲鳴を上げながら山崎は思わず両手で顔をおおい隠した。

だがそんな彼の目の前に突如、茶々丸が入って来る。

「待って下さい」
「は?」

すかさず突っ込んで来る土方にレールガンをガコンと向けた。

「どういつつもりだテメェッ!」
「私は山崎さんに仇なす敵を掃討する事を任務としています。もしあなたが山崎さんに危害を加えた場合、あなたを敵と判断し攻撃させていだきます」
「ええッ! 茶々丸さん俺の上司に何言ってんのッ!? ねえ何言ってんのッ!?」
「上等だコラッ! またその首刎ねてやるッ!」

そうする事も辞さない表情をする茶々丸に山崎がツッコんでいる間に頭に血が上っている土方は刀を振りあげて戦闘態勢に入るが。
それを見ていた近藤は夕映を背中におぶりながら慌てて止めに入る。

「おいトシ落ち着けッ! こんな所で味方同士でやりあってどうすんだッ!」
「味方もクソもねえッ! 俺に生意気な口叩く奴は誰であろうとぶっ殺すッ!」
「頭に血が昇ると本当言ってる事がバカそのものですねあなたは」
「よぉぉぉぉしデコ助ッ! やっぱお前を最初に斬っていいかッ!?」
「待ってトシッ! この子はきっとアレだッ! 今流行りのツンデレなんだきっとッ! ツンの次はデレがあるぞ絶対ッ! お妙さんと同じなんだッ!」
「コイツとあの女にデレ成分なんかねえよッ! “ツンツン”じゃねえかッ! つうかツンデレブームはとっくに過ぎてるだろッ!」 

茶々丸より先に夕映の方を斬ろうとする土方に近藤が必死に落ち着かせようと説得するも、一向に通じない。

すっかり戦いを忘れてそんな事をしていると・・・・・・

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
「ほげぇぇぇぇぇ!!」
「ぶべらばぁぁぁぁぁ!!」
「ん?」

二人が揉み合っている中突然、複数の天人が白目をむいて彼等の方に飛んできた。
土方はいきなりの出来事に天人が飛んできた方向に目をやると・・・・・・

目を赤く光らせて漆黒のオーラを放っているアスナと沖田が敵陣を睨みつけている

「女の子達の一大イベントである京都・修学旅行を邪魔する悪い子は・・・・・・」
「だ~れ~だ~・・・・・・」
「ひえぇぇぇぇぇ!!!」
「お助け~ッ!!」

怯えまくっている天人達に悪役の様に近づいてく二人を見て近藤はハッとする。

「あ、あれは妖怪『祇園囃子(ぎおんばやし)』ッ! 京都で修学旅行を楽しんでいる女子生徒達に迷惑行為をするチャラ男をこらしめる古の妖怪だッ!」
「いや違うと思う」

近藤の説明にすぐに土方のツッコミが入った。
無論、そんなものではなくただの荒れに荒れているアスナと沖田である。
だが近藤はこれが好機とばかりに刀を抜いて二人の後に続く。

「京都の神が舞い降りたぞぉッ! 勝利は我等の手にありいけぇーッ!!」
「山崎さんの敵を全て根滅させて頂きます」
「オレノ獲物~ケケケケケ」
「二人共絶対に俺の仲間には攻撃しないで下さいよッ!」

敵陣を総崩れにしていく沖田とアスナに続いて近藤も暴れ出すと、茶々丸とチャチャゼロ、そしてそれを心配そうに追う山崎が彼の後を追う。

土方もそれを見てため息を突いた後、最後の仕上げをすると言わんばかりに彼等の方に歩きだす。

「どいつもこいつも・・・・・・この俺に向かってナメた態度取ってんじゃねえぞコラァァァァァァァ!!!」

春雨の集団に向かって土方は突っ込んで持っている刀を血に染め上げる。



天人との長き戦いも遂に終わる時が来たようだ。





































敵の軍勢さえも覆し優勢的な真撰組。
だが一方、山の頂にいる桂達は春雨の兵とは比べられないほどの強さを持つ敵達に苦戦を虐げられていた。

「こ、このアマッ! ちょこまか跳び回ってないで正面からかかってこいやボケェッ!」

ひょんな事から桂の仲間に入っている犬上小太郎は、自分の周りで高速に動きまわりながら攻撃を行ってくる一人の少女に向かって罵声を上げる。
こちらも数奇な運命で高杉と出会ったアーニャ、彼女は小太郎に無表情のまま腰に差す刀を鞘から抜く。

「ホンマ可愛げの無いガキ・・・・・・うぐッ!」

悪態を突く暇も無く小太郎は飛んで来た刃を上体をのけ反らして避けようとするも右膝を勢いよく斬られて血を流す。
彼女の攻撃方法は居合いで戦う抜刀術。
高速な攻撃スピードと翻弄する動きに小太郎はまともに相手に出来ないのだ。

「・・・・・・どっちが可愛くないガキよ、さっさと死になさい」
「へ、コソコソ逃げ回って攻撃するようなチキン娘に殺されるかドアホ」
「なんですって・・・・・・!」
「やっぱ飼い主の高杉がおらんと一人じゃ何も出来ないんか?」
「この・・・・・!」

笑みを浮かべて小太郎が軽く挑発してやるとアーニャは歯をむき出して乱暴に斬りかかって来る。
どうやら無感情なのは上っ面だけで、中身自体は軽く突けばすぐに素に戻るらしい。

(・・・・・・こりゃあ挑発に乗って自分で墓穴掘るタイプやな・・・・・・)

鋭かった動きに更にスピードを入れて跳び回っているアーニャを見て小太郎は目を細める。
スピードこそは前よりも凄いが、少し無駄な動きが目立つ。その隙を取れれば・・・・・・。

(あのガキの動きを止めれるのは簡単や、けど俺一人で決定打を打ち込められるか・・・・・・止められるのも恐らく一瞬やぞ・・・・・・)

状況を考えながら小太郎は上から降って来たアーニャの居合いを必死に避ける。
彼女の持つ刀が紅色に光りスピードがどんどん上がって来ている。まるで刀自身が意志を持っているかのような動きに小太郎は額から出る汗を拭う。

「アカン、策を考えている間にこのままじゃあの変な刀に斬り殺されるな・・・・・・」

他の者は別の敵を相手にしてこちらを救援する事なんて出来ない。
ましてや『助けを呼ぶ』という事をする自体自分のプライドが許されないのだ。








小太郎とアーニャが静かに戦っている頃、その近くではアーニャとは正規の仲間では無い阿伏兎と、かつて攘夷志士として桂や銀時、そして高杉と同じ飯を食べていた坂本辰馬が傘と剣を交えて戦っていた。
徐々に阿伏兎の傘が坂本が死んだ天人から拾った刀を砕かんと押し込んでいく。

「本当によぉ、俺とまともに戦えるとは大したモンだなお前さん」
「ハハハ、これでも昔は攘夷志士じゃけぇ・・・・・・・おまん等天人との戦いは日常茶飯事でやっとったわ」
「オイオイオイ、俺をアンタ達が今までに攘夷戦争で相手にしていた天人共と一緒にするなんてヒデぇな」
「ぐぐぐ・・・・・・!」

ゆったりとした口調のまま阿伏兎は力をぐっと入れて辛そうにしている坂本の持つ刀にピキピキとヒビを入れていく。
そして

「ぬおッ!」
「坂本さんッ!」

刀はガラス細工の様に音を立てて割れる。坂本は驚きながらも飛んでくる刀の破片を腕で受け止めて、急いで後ろで見守っていたネカネの方に後退する。

「やっぱ化け物じゃのコイツ・・・・・・・アハハハ」
「そんな化け物とずっと持ち堪えているあなたもかなり化け物じみてるわよ、ほら治癒魔法で傷を治さないと」
「すまんのうネカネさん」

こんな状況でもふざけた調子で笑っている坂本に呆れつつも、ネカネは両手を彼に近づけて治癒魔法を放つ。
先程刀の破片が刺さった腕があっという間に元に戻った。

「こんな事しかでしか役に立てなくてごめんなさい・・・・・・」
「アハハハ、十分じゃけ。ネカネさんはそうやってわしから離れずに立っておればそれでええ」
「え?」

元通りになった腕で胸の内側ポケットから銃を取り出す坂本にネカネは口をポカンと開けると彼はすぐに振り返る。

「わしはアンタみたいな綺麗なネエちゃんが傍にいるだけで幸せじゃ」
「・・・・・・・バカ」
「アハハハハッ!」

思わず顔を赤らめてしまうネカネに坂本はゲラゲラと笑い飛ばしながら、阿伏兎の方に振り返る。

「やっぱりわしはこのピストルの方が似合っとるの、そうじゃろ?」
「ふぅん、前みたいに俺の隙を突かねえと弾丸は当てられねえぜ?」
「ハハハハ、まあなんとかなるじゃろ」

銃口を突き付けられても全く動じない阿伏兎に向かって笑みを浮かべながら、坂本は持っている銃の重みを確かめる。

(残り3発か・・・・・・)

刀だけではなく銃の扱いにも長けている坂本は、自分の愛銃の残り弾数を重さだけで察知する。

(3発だけで勝てる相手かの・・・・・・? どうにか向こうの動きを止めれればいいんじゃが・・・・・・)
「何柄にも似合わずに考えに浸ってんだアンタッ!」
「ぬッ!」

計算に夢中になっていた坂本に向かって阿伏兎は一気に近づいて横薙ぎに傘を振るう。
我に返った坂本はそれをかかんで避け、咄嗟にそのまま前転して阿伏兎の両足の間をすり抜ける。そして阿伏兎の背後に行けた坂本はすぐに立ち上がって彼の背中に銃口を向けるも、坂本が引き金を引く前に阿伏兎は後ろを取った彼の方に振り返り、目でギロっと睨みつけながら持っている傘に力を込める。

「うおらぁッ!!」
「おっと」

目にも止まらぬ速さで阿伏兎は傘を坂本の方に乱暴に振る。
坂本はかろうじて避けるも、銃を持っていた右腕は少しかする。

「俺の後ろを取れたのは褒めてやろう、だが一つ教えてやる、夜兎にとって敵が正面から来ようが背後から来ようが関係無い、範囲に入ったらすぐに殺せるよう勝手に体が動いちまうんだ」
「こいつはマズイの・・・・・・」

不敵な笑みを浮かべる阿伏兎に坂本はしかめっ面を見せた。
右腕にはスパッとかまいたちの様に斬られた傷が出来ている。

「坂本さん・・・・・・・」

不安そうに見つめているネカネの視線に気付きながら坂本はニヤッと笑った。

「死ぬかもしれんの・・・・・・」





















































小太郎と坂本が苦戦を強いられている中、彼等の大将である桂は同じく総大将である高杉と刀をぶつかり合わせていた。
互いの実力はほぼ互角、何十回、何百回刃を交えても終わりが見えてこない。

「引け高杉ッ! 俺達の世界どころかこの世界さえも破滅に導く気か貴様はッ!」
「おうよ、俺が生むのは破壊だけだ。それ意外に何もいらねえ」
「愚かな・・・・・・! 高杉ッ! 貴様の思い通りにはさせぬぞッ!」

会話を交えながら桂は刀を高杉の頭上目掛けて振り下ろす。
高杉はそれを笑みを浮かべながら刀で受け止めた。

「ヅラァ、テメェにはこの世界を護る義務なんざねえだろ? どうして俺の邪魔をする」
「例えどんな世界、どんな者であろうと信念を持って護る者が侍だッ! 俺は命をかけて救ってみせるッ! ここにいる者も、同じ江戸に住む者も、そしてお前も・・・・・・!」
「俺も救おうってか、相変わらずバカだなお前も・・・・・・」

つばぜり合いの中必死に話しかけて来る桂にニタリと笑い返した後、高杉は彼の刀を弾き返して一歩下がる。

「悪いが俺は救いなんざいらねえ、俺が欲しいのは獲物を狩る牙だ」
「あの少女もお前の牙か・・・・・・まだ年端もいかない小さな子供だぞ・・・・・・?」
「・・・・・・さあな」

一瞬だけ笑みが消えて、何か思いつめた表情をする高杉だが、すぐに元の表情に戻す。

「くだらねえ事言ってねえでさっさと俺を倒したらどうだ? 早くしねえと・・・・・・」

高杉は余裕気に笑いながらクイッと自分の後ろを親指で指差す。

「鬼が目を覚ますぜ・・・・・・?」
「く・・・・・・」

そこには銀時とネギの教え子である木乃香を祭壇で祀って儀式を行っている千草の姿が。
そして彼女を止めようとしているエリザベスとアルの前には思いもよらぬ者が立ちはだかっていた。









































「こんな所にいたのか貴様・・・・・・星海坊主も味な真似をする・・・・・・」
「まさか“ここで”あなたと再会できるとは・・・・・・」

桂の仲間であるアルは今、エリザベスと共に千草を止める為に祭壇の前へと来ている。
祭壇の周りが手薄になっている今こそ好機、しかしその考えは過ちだった事に今更気付いた。

何故なら突如目の前に現れた男はここにいる誰よりも強いであろう人物なのだから。

「この威圧感にその喋り方は何処の世界を探してもあなたしかいませんよ・・・・・・」
「フン、鋭さは相変わらずの様だな・・・・・・」

そこにいるのは友人の息子である筈のネギ・スプリングフィールド。
だが彼から放つ強大な殺気と風貌はとても子供が出せるレベルでは無い。
アルは一歩下がってその獣の様な目をする少年に戦慄を感じながらゆっくりと口を開く。

「夜王鳳仙・・・・・・私の友人の息子の体を奪って現世に帰ってきたという事ですか?」
「バカな弟子のおかげでな」

体を乗っ取られ夜王鳳仙となっているネギは面白くなさそうにアルを見据えながら、自分が付けていた小さなメガネを外してグシャリと手で握りつぶす。

「もうこの体はワシの物、この体の持ち主を救うにはワシを殺すしか方法は無い」
「あなたを殺す? 冗談きついですねえ私には荷が重すぎますよそれは・・・・・・」

目の前にいるネギの目つきはあの時の鳳仙そのもの。現役でも一人では勝つ事さえ出来なかったのに、ブランクがある今ではとても勝てる可能性など見つからない。
額に汗をかいて珍しくアルが動揺していると後ろにいるエリザベスが遠慮がちにボードを上げる。

『俺ってもしかして場違い?』
「ええ、素晴らしいほど場違いです」
「来い、あの時殺せなかった貴様をこの体を使って殺してやる」

エリザベスとアルの会話を無視して、“夜王ネギ”は子供と大人の声が混じった声で二人と対峙した。






























































「あの少年が何故・・・・・・」
「クックック・・・・・・あれはもうガキじゃねえよ」

苦虫を噛んでいる様な表情をする桂に高杉は戦闘中にも関わらず腹を押さえて笑う。

「俺と同じ獣だ・・・・・・」
「高杉、あの少年に何をした・・・・・・・」
「俺は何もやっちゃいねえさ、やったのはアイツの師匠とそのまた師匠だ」
「・・・・・・どういう事だ?」
「どうでもいいだろ、お前には何も関係ねえ話だ。俺にだって関係ねえ話だしな」

両肩をすくめて話を中断させた後、高杉は持っている刀を肩に掛ける。

「さっさとやり合おうぜ、こんなムダ話しているヒマもねえんだろ?」
「・・・・・・」

刀で肩をトントンと叩きながら高杉は不敵な笑みを浮かべている。桂もそれに無言で応えて刀を構える。

だがその時だった。

「待て待て待て待てぇぇぇぇぇ!!!!」
「ん?」
「この声は・・・・・・・」

その場一帯に響き渡る様な大きな叫び声、高杉と桂は咄嗟にそっちの方に目をやる。

銀髪の侍・・・・・・坂田銀時が木刀を持ったまま猛スピードでこちらに向かって走って来る。
しかも後ろにいるのは・・・・・・

「新八ッ! 神楽ッ! テメェ等わかってんなッ!」
「はいッ!」
「おうよッ!」

後ろにいるのは万事屋として長年苦楽を共にしている志村新八と神楽、三人は短い会話を終えるとすぐに三手に別れる。
神楽は右に曲がって戦っている小太郎とアーニャの方へ。
新八は左に曲がって坂本と阿伏兎の方へ。
そし銀時は・・・・・・・

「高杉ィィィィィィィィ!!!」

まっすぐに走ってすぐさま高杉と桂の方へ。

「来たか銀時ッ!」
「クックック・・・・・・これで四人揃ったな」

現れた銀時に桂が驚いたように叫び、高杉は持っている刀をギラつかせる。
そして

額に青筋を立てている銀時の持つ木刀と高杉の持つ刀が激しい音を立ててぶつかった。

「同窓会に遅れて悪かったなぁ高杉・・・・・・! その代わり俺が派手に盛り上げてやるよ・・・・・・!」
「いいねえ、早く俺を楽しませてくれよ、銀時・・・・・・!」

激しいつばぜり合いをくり返す銀時と高杉。
そんな二人の幼馴染を見て、桂は刀を持ったまま天を見上げた。

「あの世にいる“あの人”はこんな俺達を見てどう思っているのだろうか・・・・・・」














































銀時と高杉が剣を交えた頃、神楽は小太郎とアーニャの方へ突っ込んでいた。

「うおらぁぁぁぁ!! ってどっちが悪い奴だコノヤローッ! 両方ともぶん殴っていいのかッ!? アアンッ!?」
「あっちやあっちッ!」
「新手ッ!?」

猪の様に突っ込んで来る神楽に小太郎はアーニャの方を指さして叫ぶ。
すると彼女の出現に驚愕したアーニャはとっさに構える


「チッ!」
「悪いなガキ、一瞬だけ動き止めさせてもらうで」
「このッ! チンケな術で邪魔するんじゃないわよッ!」

小太郎が掌から放って来た魔力の気弾にアーニャは驚きながらそれを刀で撃ち落とす。
いざという時に隠していた小太郎の魔術の一つだ。
彼女がその気弾に注意を注いでいる隙に神楽はぐんぐん彼女の方に迫っていく。

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」
「誰だか知らないけど私は高杉と一緒に行う夢が・・・・・・!」

気弾を全て撃ち落として神楽の方へ向いたアーニャが何か言おうとするがその前に神楽は彼女を攻撃範囲に入れ・・・・・・・

「知るかボケェェェェェェ!!!」

吠えながら右手に持つ傘では無く、左手による拳での一撃をアーニャの頭にお見舞いする。

「が・・・・・・・は・・・・・・・」

その一撃の痛みに耐えかねてアーニャは意識を失った状態で前頼みに倒れた。
彼女を見下ろして神楽は地面にペッと唾を吐く。

「小便臭いガキが、私に勝てるなんて一兆年早いアル」
「いや一兆年は長過ぎやろ」
















神楽がアーニャの方へ向かって行ったと同時に、新八もまた別の方向へと走っていた。
吉原で出会った阿伏兎と、上司の友である坂本、新八は一気に彼等の方へ突っ込む。

「坂本さんッ! アンタこんな所にいたんですねッ!」
「おおッ! 銀時の所のツッコミメガネッ! なんじゃあの女の子(千雨)にポジション奪われてリストラになったと思っとったわッ! アハハハハッ!」
「奪われてねえよッ! 現役バリバリのツッコミメガネだッ!」

こちらを見て思いっきり笑い飛ばす坂本にツッコミを入れた後、新八は阿伏兎と彼の間にすかさず入り、目の前に立つ阿伏兎に持っている木刀を構える。

「コイツ生きてたのか・・・・・・・坂本さんッ! 僕に出来る事ありますかッ!」
「じゃあ悪いがアイツを“一瞬だけ”でええから止めてくれんかの?」
「わかりましたッ!」

少しの躊躇も見せずに新八は、かつて吉原で戦った事があり、全く相手にされなかった阿伏兎に真っ向から挑んでいった。
それに阿伏兎は二カっと笑った後、右手に持つ傘を振り上げる。

「こんな所でもお前さん達に会えるとはな、感動の再会をしたいのも山々だが・・・・・・」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「残念ながらそちらさんはさっさと俺とお別れしたいらしいなぁ・・・・・・」

突っ込んで来る新八に阿伏兎は振り上げた傘にぐっと力を込める。
そして

「元の世界では無くさっさとあの世に帰りな坊主ッ!」

手加減もせずに渾身を込めた一撃をお見舞いせんと、阿伏兎は傘を振り下ろす。
だが新八は怯まずに右手に持っていた木刀ではなく、左手に持つ“不思議な物”を両手にに持ってガードする。

「ふんぬらばッ!!」

両手を、全身に重くのしかかって来る阿伏兎の一撃、新八はそれを歯を食いしばって止める、
何故ここに来る前に拾っただけの棒きれでガードしようとしたのか新八自身も分からない。
ただこの杖を持っているととても勇気が湧いて来たのは確かだ。
そしてその新八に、まるで杖は応えるかのように

(俺の一撃を食らっても折れないだと・・・・・・・! なんだこの棒っきれ・・・・・・!?)
「んごぉぉぉぉぉぉ!!!」

どれだけ力を入れてようが全く折れない杖、それに対して驚愕する阿伏兎だが。

「足止め御苦労さん」

カチャっと銃口が向けられた音に思わず顔を上げる。
そこには銃をこちらに向けて静かにたたずむ坂本の姿が

「狙い撃つぜよ」
「・・・・・・あり?」

置かれた状況に意外にもあっさりとした言葉を呟く阿伏兎に向かって。

3発の黒い弾丸は音を立てて飛んで行った。

「ぐ・・・・・・がはぁッ!」

鉛玉は見事に阿伏兎の体に3発とも命中。
口から血を噴き出した後、阿伏兎はその場に片膝を突く。

「ウソだろオイ・・・・・・俺が同じ相手、しかもちっぽけな人間に二度も苦汁を飲まされるだと・・・・・・何かの冗談だろ?」
「急所を当てたのにまだ生きとる。ほんに丈夫な奴じゃの~」
「生憎俺はやわな人間とは体のつくりが違うのさ・・・・・・」

体に空いた三か所の穴から血を流しながらも阿伏兎はニヤリと笑ったまま立ち上がる。
坂本もそれには呆れ、新八も杖と木刀を持ったまま目を見開く。

「化け物だ・・・・・・!」
「へ、ちとツライがまだお前等を殺す事は出来・・・・・・」

辛そうにしながらもそれを隠す様に笑みを浮かべながら、阿伏兎が傘を構えようとしたその時・・・・・・

ドゴッという鈍く生々しい音を立てて、阿伏兎の後頭部に彼の頭ぐらいの岩が直撃した。





















いきなりの出来事に新八と坂本が唖然としていると。

「マジかよ・・・・・・」

阿伏兎は白目をむいてフラ~ッと前にドスンと大きな音を立てて前に倒れた。

「・・・・・・あれ? なんか倒しちゃったんですけど・・・・・・・」
「・・・・・・誰が岩なんて投げたんじゃ?」
「坂本さんッ!」
「あ」

気絶しているのか死んでいるのかわからない状態の阿伏兎を見下ろしながら、新八と坂本が口ポカンとしているとネカネが坂本の方に走り寄る。

「大丈夫ですか、私、あなたの助けにならないかと思って咄嗟に投げたんだけど・・・・・・」
「え? ネカネさんがこの重そうな岩投げたんけ?」

縮こまった態度のネカネがボソッと呟いた言葉に、坂本が今はパックリ二つに割れているが先程阿伏兎をKOさせた岩を指差すと、彼女は恥ずかしそうにコクンと頷く。

「何をしたらいいのかわかんなくて・・・・・・とりあえず大きな岩を見つけてそれを思いっきりこの男に向かって・・・・・・」
「いや思いっきりわかってますよね、完全にこの男の息の根止めようと思って投げましたよね?」

ネカネとは初対面だが新八はすぐに頬を引きつらせながらツッコミを入れる。
まさかこんな女性があの大男に止めを刺す事になるとは・・・・・・・

「やっぱ何処の世界のおなごも強いのう、アハハハハッ!」
「その一言で片づけてんじゃねえよ・・・・・・」








































万事屋が三人の敵相手に奮闘している頃。
アルとエリザベスはそれにさえ気付かずに夜王ネギを前にして緊迫した状態で固まっていた。

「そのままジッとして動かぬつもりか・・・・・・?」
「エリザベスさん、あなたアレ相手に戦えますか?」
『シリアスバトルなんて出来ねえよッ!』
「ですよね」

ペンギンだかアヒルだかわかんない恰好でこんな所にいる事態が不自然なのに、こんな強敵を相手に戦える筈がない。

「やはり私が・・・・・・」

一人でやるしかない、アルはそう決心して両手を彼の方に突き出して構える。


「よせよ、そいつは俺の獲物だ」
「・・・・・・・ん?」
「子を助けるのは親の義務だ」
「!!」

昔から何度も聞いた事がある懐かしい声が上空から聞こえて来る。アルは急いで顔を上にあげると

「久しぶりだな、アル。それと死に損ないのクソジジィ」
「ナギッ!」
「ナギ・スプリングフィールドッ!」
『誰?』

数年の時を経ても変わらない姿のまま、優雅に宙に浮いているのはサウザンドマスター・ナギ・スプリングフィールド。
エリザベスは彼に向かってクエスチョンマークを付けるが友であるアルと因縁深い夜王は突然現れた事実に驚いていた。

「ナギ・・・・・・あなた生きてたんですか? てっきり死んだかと・・・・・・」
「勝手に決め付けんな、お前も姫さんもどうして俺をすぐ殺したがるんだよ、俺がそう簡単に死ぬと思ってたのか?」
「・・・・・・それもそうですね」

小馬鹿にした調子で笑い返すナギを見て、アルはフッと笑う。
見た目も性格も、まるで昔と変わっていない。

「さてと・・・・・・」

ナギは首を動かして自分の息子であるネギの方へ振り向く。
最も今の彼はナギの息子であって息子ではない存在なのだが。

「しばらく見ない内にこんなに成長してたんだな、俺の息子は・・・・・・・」
「フフ・・・・・・フハハハハハッ!!」

遠い目で見つめて来るナギに対して夜王ネギは大きな声で高笑いをする。
出会う事はもう無いと思っていた男が、こんなにも早く自分の前に現れたのでは。

彼にとってこれ以上嬉しい事は無い。

「ハハハハハハハッ! これが貴様とワシの天命かッ! 今初めて現世に蘇った事に喜びを感じるぞナギ・スプリングフィールドッ!!」
「そうかい、俺は全然嬉しくねえがな、人のガキの体奪いやがって・・・・・・」
「ワシが望んだのではない貴様の息子が選んだ道だ・・・・・・!」 
「この野郎・・・・・・!」

笑みを浮かべる夜王ネギを目の前にしてナギはぐっと下唇を噛む。
彼の笑みが昔、自分に屈辱を浴びせた時とそっくりだったからだ。

「さあワシと戦え、ワシを殺せば貴様の息子が現世に還って来れる・・・・・・そして貴様と戦うそれこそがワシの今生の本願ッ!」
「言われなくてもやるに決まってんだろうが・・・・・・! すぐにあの世に返してやるぜッ!」

拳を鳴らしながらこちらに笑みを浮かべて立っている夜王ネギに悪態を突いた後、ナギは後ろにいるアルに話しかける。

「手を出すなよアル、これは俺とアイツの因縁だ」
「それは良かった、私はあの男と戦いたいなど滅相もありませんから」
『俺も』
「アル・・・・・・なんだよこの生き物」
「エリザベスさんですよ」
「いやエリザベスってなんだよ」

ニコッと笑って隣にいるエリザベスを説明するアルにツッコんだ後、ナギは再び宿敵へと首を戻した。

間もなく何十年も前からあった二人の因縁が終わる戦いが始まる。

だがその時だった。

「ハッハッハ」

パチパチと両手を叩く音とバカにする様な笑い声に夜王ネギとナギはそちらに視線を向ける。
夜王の後ろで鬼神復活の儀式を行っていた千草だ。

「まさか死んだと思われていたサウザンドマスターと夜王が鉢合わせするとはな、そんなえらい熱い展開に水を差すようで悪いんやけど、ちょっとしたニュースがあるんでよろしいでっか?」
「失せろ小悪党が・・・・・・ワシとこの男の邪魔をするな・・・・・・」

完全に見下した目で睨みつけて来る夜王ネギに思わず千草はビクッと一歩下がるも、負けじと彼に向かって口を開く。

「フフフ・・・・・・・さすがは魔法世界を食い荒らした夜王鳳仙、見た目がガキになってもホンマ迫力あるわぁ、けどなぁ」

企み笑いをした後、千草はばっと右手を横に上げる。

「“コイツ”も負けてへんで」
「「「!!!」」」
『揺れる揺れる!!』

彼女が手を上げたのがまるで合図だったかのように周り一帯にゴゴゴゴゴと大きな振動が発生する。
そこにいた四人は何事かと驚き、ナギは千草の方を視線を向けるも、そこに彼女の姿は無い。

「ここやでサウザンドマスターさん」
「何してんだあの女・・・・・・?」

上から声が聞こえたのでナギは顔を上げると、そこには眠っている木乃香がフワリと浮かせたまま、一緒に千草も宙に浮いているではないか。

「アンタ等がドタバタしていたおかげでこっちは鬼神復活の儀式が終わった、これでウチの本願も叶うっちゅう事や」
「鬼神復活の儀式・・・・・・? 鬼神ってまさか・・・・・・?」
「リョウメンスクナノカミ、あなたが現役時代に詠春と一緒に倒したと言われている伝説の鬼ですよ・・・・・・」
「なんだとッ!」

アルの報告にナギが驚いていると、地面はどんどん揺れが大きくなっていく。

無論、この揺れは高杉や銀時達の方にも感じていた。

「これはッ!」
「オイオイオイなんかヤベエ事になってねえかコレッ!?」

自身の様な揺れに不穏な気配を感じた桂に高杉とつばぜり合いをしながら銀時は叫ぶ。
すると高杉は笑みを浮かべながら

「・・・・・・・これが俺が欲しかった牙だ」
「牙・・・・・・まさか鬼神かッ!」

銀時と刃を交えていたにも関わらず桂の答えを聞いた瞬間、高杉は小さな声で呟く。

「御名答」
「っておいッ!」
「銀時ッ! アレを見ろッ!」
「あん? なッ! なんじゃありゃッ!」

刃を交えていた状況から、高杉は一歩下がって彼等から離れる。
その瞬間、祭壇の方から何か大きな物が湖の中から少しずつ起き上がっていくのが見えた。

それはまさしく鬼の様な風貌をした怪物。翼を持ち、前と後ろには二つの顔、金色に光った体は60Mぐらいの大きさを誇っている。
しかもそんな鬼の頭上では生徒である木乃香が眠った状態で千草と共に浮いているのだ。

「木乃香殿ッ!」
「あのガキ・・・・・・チッ!」

桂が指差した方向に木乃香が見えた瞬間、歯がゆそうに銀時が舌打ちすると、高杉は満足そうに笑いながら彼を見据える。

「さて、お手並み拝見といこうじゃねえか」
「グオォォォォォォォォ!!!!!」

高杉が粒いたと同時に彼の後ろにいるリョウメンスクナノカミが耳が痛くなるほどの咆哮を上げる。

「“テメェ等が”勝つか、それとも“俺が”勝つか。祭りもそろそろクライマックスだ・・・・・・」

狂気を帯びた高杉の目には一点の迷いも無かった。


リョウメンスクナノカミ、銀時達が危惧していた猛り狂う鬼神が遂に目覚める。







[7093] 第六十九訓 鬼が恐くて侍が務まるわけねえだろコノヤロー
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/05/16 22:27
銀時達の救援として京都にやって来たエヴァは、春雨の幹部である神威と戦っていた。
後ろでアリカ、あやか、千雨が見ている中、かつては『闇の福音』と呼ばれていた彼女は一人の“バトルジャンキー”を前にして一進一退の攻防を繰り広げていた。

助走を付けて跳んで来た神威の回し蹴りを、エヴァは両手で受け止めて反対方向に投げ飛ばす。勢い良くほおり投げられ、あわやそのまま神威は木に激突するのかと思いきや、体を上手く捻って両足で木の側面に着地し、そのまま一回転して地面にスタっと着地した。

「気持ち悪い奴だな、ヘラヘラ笑ってばっかで、貴様には表情というのが・・・・・・ぬッ!」

両腕を組みながら目を細めて話しかけて来るエヴァに対して神威は無言かつ笑ったまま走る。
喋らせる余裕も与えてくれない彼に対してエヴァは一回舌打ちした後、突っ込んで来る神威に向かって右手をかざすと、すぐに右手から氷の弾丸がガトリングの様に発射された。
しかし

「!!」

まるで神威はそれを予測していたかのように足で急ブレーキ、その勢いで上に上がり、下で氷の弾丸が飛んでいる中、優雅に空中を舞ってエヴァの背後に着地する。
そして

「がはぁッ!」
「エヴァさんッ!」

エヴァが振り向く前に神威は右手に持つ傘で彼女のどてっ腹を貫いた。その瞬間、周り一帯に彼女の血が飛び散る。

「これでお終いか、つまんないや」
「ぐ・・・・・・!」
「エヴァッ! ウソだろ・・・・・・」

傘をエヴァの腹から乱暴に引き抜きながら不服そうに神威が呟いているのを見て、千雨がショックを受けたように呆然と立っているとアリカが近づいてくる。

「案ずるな」
「え?」
「ここで死ぬ様な奴じゃったら600年以上も闇の魔法使いとして恐れられていたわけなかろう」
「でも腹にあんなデッカイ穴作って・・・・・・」
「奴には人が必ずや一度は求めるであろう“許されざる力”を持っている」
「許されざる力?」

全く問題なさそうな顔で説明するアリカに千雨とあやかが困惑していると、そんな二人に向かって口から血を流しながら、エヴァが二ィッと口元に笑みを広げた。

「神の意に背く力だ・・・・・・今からそれを見せてやろう」
「あれは・・・・・・」
「コウモリ・・・・・・」

その瞬間エヴァの周りを漆黒の色をしたコウモリ達が鳴き声を上げながら取り囲む、その異様な出来事に千雨とあやかは理解不能の様子、神威でさえビックリしたように目を開けて口を開けている。
そして

「人が最も恐怖する出来事は『死』だ、だが・・・・・・」
「「!!」」

コウモリが途端にフッと消えた瞬間、そこにいたのは先程まで腹に風穴を開けて大怪我してた筈のエヴァが、完全回復してその場に不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

「吸血鬼である私にとっては『死』は最も恐れない出来事。死ぬ事など私にはあり得ないからだ」
「なんで傷が消えて・・・・・・・」
「奴は年は取る事も知らんし死ぬ事も知らん『真祖の吸血鬼』じゃ、肉体をどれだけ損傷してもすぐに元の姿に戻る。『不老不死』という奴じゃな」
「そんな凄い力を持っていたんですかエヴァさんって・・・・・・」

アリカの話に唖然としながらあやかはエヴァを見つめていると、しばらくして手をポンと叩いて千雨の方に話しかける。

「だから何時まで経ってもあんなに小さいんですわね」
「あ、そっか。不老だからずっとチビのまんまなんだ」
「おまけに死なないから一生ちっこいまま生きて行かなければいけないんですわね」
「それ聞くと泣きたくなるな、一生チビか。可哀想だなアイツ・・・・・・・」
「頭まで子供のままですからね」
「おい聞こえてるぞ・・・・・・・」

自分の事をヒソヒソ声で話すあやかと千雨の方にエヴァはジロッと目を向ける。

「お前等私が不老不死という化け物じみた能力を見て恐怖とか感じないのか・・・・・・」
「失礼ですけど、その能力を持っているのがあなたですから全く恐くありませんの」
「だな」
「くッ! 恐怖で顔が凍りつく貴様等の顔が見たかったのに・・・・・・」

何も感情が無い表情でこちらを見て来るあやかと千雨にエヴァは悔しそうにしながらそっぽを向き、改めて神威の方に向き直った。

「フン、まあつまり・・・・・・貴様の攻撃などではこの私を倒せないと言う事だ」
「不死身か、聞いた事はあるけど実際に目で見たのは初めてだ・・・・・・」

元に戻っているエヴァの姿を見て、ニコニコしながら神威は頷く。
そして笑っていた目をゆっくりと開けて

「でも本当に“不死身って不死身”なのかな?」
「何?」
「何百回、何千回も殺せば・・・・・・いつかその体も朽ちていくんじゃない? 無限に続く生なんてこの世に存在しないと俺は思うけど」
「ほう、面白い事言うな、“アイツ”もそんな事を言っていた」

自分なりの憶測を言う神威にエヴァはニヤリと笑う。

「だったらこの私を何万回でも殺してみろ、貴様の様な若造に出来ればの話だがな」
「こんな相手と戦えるなんてネ、やっぱりこの世界は面白い」

腕を組んで睨みつけて来るエヴァに対して神威は傘を構える。
相手が不死身だと知っても彼の辞書に恐怖という言葉は載っていない。
相手が強ければ強いほど興奮する。それが夜兎族の本能だ。

神威は笑みを浮かべながらエヴァに攻撃を仕掛けようとする、だがその時。

「な、なんだよオイッ! こんな時に地震かッ!?」
「こ、こんなに揺れる地震は今まで体験した事ありませんッ!」
「これは・・・・・・!」

突如、周りを覆う木がザワザワと不吉な音を立てて枝を動き始め、大地も強く揺れ始める。
千雨とあやかが思わず抱き合って驚いている中、アリカは山の頂上に目を送る。

山の頂上には神々しい光が降り注いでいた。

神威は突然の出来事に動じずにアリカと同じく山の頂上に視線を送る。

「ああ、やっと起きたんだ」
「何が起きたのだ?」

自分と同じように山の頂きにある光を眺めながらエヴァが呟くと、神威はニコッと笑いながら彼女に歩み寄っていく。

「よそ見してるとまた死ぬよ?」































第六十九訓 鬼が恐くて侍が務まるわけねえだろコノヤロー


















ビリビリと大地が揺れ、湖は大きく波を打って荒れている。
それもその筈、この山の頂にはある魔物が目を覚ましたのだから

「グオォォォォォォ!!!」

リョウメンスクナノカミ、数多の国で暴れた強大なる力と体を持つ鬼神。
彼の雄叫びを聞いた途端、銀時は両耳をおさえる。

「うるせえ奴だな本当ッ! 寝起きのクセにメチャクチャ元気じゃねえかッ! 夏休み中のわんぱく坊主ですかコノヤローッ!」
「あれがこの地に眠る鬼神・・・・・・木乃香殿の魔力を使って蘇ったリョウメンスクナノカミか、あそこまでデカイとは想像以上だ」
「呑気な事言ってんじゃねえよッ! どうすんだよあんな化け物ッ! どうやってあんなモン倒して、しかもあそこにいる木乃香を助けれるんだよッ!」
「俺が知るか」 
「知っとけそれぐらいッ!」

大きく振動する橋の上で体を揺らしながら銀時と桂が口論を始める。

「こんな事なら木乃香殿をもっと厳重に警護しておけば良かった。あの年頃のおなごはみなデリケートだから少し距離を置く程度でいいと思っていたのに」
「なにそのお固い考えッ!? ガキ相手に何気を使ってんだよッ! だからテメェは昔から女と付き合うのが下手なんだよッ!」
「お前みたいなふしだら恋愛しか出来ない奴と一緒にするな。男はな、おなごに対しては紳士的にエスコートしなければならない、特に夫が最近家に帰って来なくて寂しい思いをしている妖艶な女性にな」
「オメーのほうがふしだらな恋愛じゃねえかッ! この人妻フェチがッ!」
「人妻フェチじゃない人妻ラブだ。 む?」

転ばない様に何とかバランスを保ちながら叫び合っていると桂はある事に気付く。
さっきまで自分と銀時の前に立っていた高杉の姿が何処にも無い。

「何処行ったあの男・・・・・・」
「高杉の事か、そういえばアイツ・・・・・・あッ!」

眉をひそめる桂を見て銀時も高杉が何処へ行ったのかとキョロキョロ周りを見渡すと。

何時の間にか高杉は自分達の後ろの方に行き、小太郎と神楽が倒したアーニャの方へ近づいてしゃがみ込んでいた。
高杉はアーニャを両手で持ち上げた後、銀時と桂の方へ目を向ける。

「俺は遠くから見物させてもらうぜ」
「高杉ッ!」
「もしかしたらコイツが今生の別れになるかもな、あばよヅラ、銀時。坂本によろしくな」
「待ちやがれッ! 逃がすわけねえだろうがコラッ!」
「そうだッ! まだ貴様との決着が・・・・・・!」

こちらに背を向けてアーニャを両手で持ち上げながら去ろうとする高杉に慌てて銀時と桂が彼の方へ走ろうとすると

「銀ちゃ~んッ! なにアルかあの化け物~ッ! デカくてキモいアル~ッ!」
「ヅラッ! なんやねんアレちゃんと説明せいッ!」
「ぐはッ!」
「うぐッ!」

スクナを見て驚いていたのか、神楽と小太郎が凄いスピードで突っ込みながら銀時と桂に抱きつく。
無論、神楽が銀時に。小太郎が桂に。

「ちょっとちょっとッ! お前等邪魔すんなッ! 俺は今からアイツの所へ・・・・・・!」
「私を置いてあのデカ乳の女の所へ行くのねッ! 酷いわッ! 私はもうお払い箱ってわけッ!?」
「お前は昼ドラに感化されてんじゃねえよッ! なんでこのタイミングであやかの所へ行くんだよッ! あ~クソッ! お前のせいでデカ乳=あやかっていう方程式が俺の中で生まれちまったじゃねえかッ!」

自分の腰に顔をうずめながら嘘泣きする神楽に銀時は怒鳴り声を上げる。
どうせまたテレビで覚えたセリフであろう。
小太郎も桂の着物の裾を掴んで声を荒げる。

「ヅラお前何処行く気やッ 行くんなら俺も連れてけッ!」
「いや待てッ! 今は事を争うからお主と一緒には・・・・・・!」
「つ、れ、て、け・・・・・・!」
「こ、と、わ、る・・・・・・・!」

無理矢理にでも行こうとする桂を小太郎は歯を食いしばって彼の裾を離さないよう踏ん張る。

そんな事をしている内に何時の間にか高杉は何処かへ行ってしまった。


































































一方、さっきまで夜王ネギと戦おうとしていたナギは、アルとエリザベスと共に目の前に現れたスクナを見上げていた。

「オイオイオイオイ、現役の時はイケたけどよ・・・・・・」
「今の私達でアレとタイマンやったらすぐお陀仏ですね」
『無理ぽ』
「ガァァァァァァ!!!!」
「な、なんだよオイッ!」

突然こちらの方へ顔を動かして目を光らせるスクナにナギが一歩後ずさりすると・・・・・・

「グオォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「のわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「走りますよエリザベスさん、当たったら即死ですからね」
『当たり前だボケェェェェ!!!』

口から放つは光り輝く破壊光線。ナギは悲鳴を上げながらアルとエリザベスを連れてまわれ右して急いで逃げに徹する。その間もずっと光線は追って来る。

「ハッハッハ~ッ! サウザンドマスターと謳われていた英雄が必死こいて逃げ取るわ~ッ! これがスクナの力、ウチはついに英雄を超える力を手に入れたんやッ!」

スクナの攻撃に全速力で逃げているナギ達を上から嘲り笑う千草。
そんな彼女をつまらなさそうに見上げるのは先程までナギと戦おうとしていた夜王ナギ。

「邪魔をしおって・・・・・・興が醒めたわ」

彼が立っていた場所は祭壇だったのでスクナの攻撃の範囲外。夜王ネギは眼前でここまで来るために作られた橋が壊されていくのを眺めながら、腕を組んでフンと鼻を鳴らす。

「まあいい、あ奴がコレに負ける程度だったらワシが戦うまでもないわ」








































逃げるナギ達の前に現れたのは銀時と桂達。

「ん? 何でお前こっち来てんだよ段取りと違・・・・・・ってオイィィィィ!!」

こっちに向かって走って来るナギ達に銀時がしかめっ面をするが、すぐ後ろについてくるスクナの波同攻撃を見て、急いで神楽を片腕で持ち上げて旋回してダッシュ。桂も小太郎と一緒に急いで逃げる。

「なんだよアレッ! いきなりビーム撃ってくるとかボスキャラのクセに全然マナーが成ってねえよッ! ああいうモンは最後に撃つモンだろうがッ!」
「俺に言うんじゃねえよッ! 挨拶がてら撃ってくるボスもいるだろッ! テイルズでもよくやってんじゃねえかッ!」
「俺はドラクエ派だッ! テイルズなんてチャラついたモンに興味はねえんだよッ!」
「おいテメェッ! テイルズナメると殺すぞッ! テイルズはゲームで初めて声優を取り入れるという斬新なシステムを導入した・・・・・・」
「ドラクエでもテイルズでもFFでもいいですから喋る事より走る事を重要視してくださいね~」

こんな状況になりながらも目の前でギャーギャーケンカする銀時とナギにニコッと笑ってたしなめるアル。
すぐ後ろからはドドドドドと盛大に橋を壊していくスクナの波動砲がどんどん迫って来る。

そして今度は倒れている阿伏兎の意識を確認している新八と坂本とネカネに鉢合わせ。

「あ、銀さん見て下さいッ! 僕等頑張ってコイツを倒し・・・・・・って何事ォォォォォォ!!!」
「アハハ、ハ~ッ! デカイ怪物がビーム撃っとるぞ~ッ!」
「本当こういう時でも笑っていられるあなたを尊敬するわッ!」

新八が誇らしげに近づいて来た銀時に振り返った途端すぐにパニック状態。坂本は依然坂本だが

「さっさと逃げろボケェェェェェ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!! 助けて僕の勇気が出る杖ェェェェェ!!」

銀時達と一緒に逃げながら(阿伏兎はあのままにいしておくとヤバいので坂本がなんとか背負った)新八はここまで来る道中で拾った不思議な杖を強く握りながら泣き叫ぶ。そんな彼が持っている杖を見てナギは目を見開いた。

「おまッ! その杖って・・・・・・・!」
「このまま逃げてもいつか追いつかれちまうじゃねえかッ! お前ら一か八か一気に横に飛ぶぞッ! いっせーのッ!」

ナギが新八に向かって口を開こうとした時に銀時が神楽を抱きかかえたまま全員に向かって横へ飛ぶよう指示。
そして

「せいッ!!」
「くぎゅッ!」
「くッ!」
「とうッ!」
「おおッ!」
「よっと」
『ちぇりおッ!』
「ヒィッ!」
「アハハッ!」
「きゃッ!」

銀時、神楽、ナギ、桂、小太郎、アル、エリザベス、新八、阿伏兎を背負っている坂本、ネカネの順に大きく横っ飛びする。スクナのビームはすぐ後ろを通り過ぎて雑木林に生える木を次々と消滅させていきながらやっと消えた。

銀時は倒れた体を起こして頬を引きつりながらそんな光景を呆然と眺める。

「アハハ、アハハハハハ・・・・・・・辰馬じゃなくても笑っちゃうよねこんな事・・・・・・」
「う~銀ちゃんのせいで私、地面に顔ぶつけたアル・・・・・・」

銀時に抱えられていた神楽は彼が横に緊急回避した瞬間、顔面を地面に激突。泥がついたかおをさすりながら悪態を突く。

「あ~あ、何情けねえ事やってんだろ俺・・・・・・」
「ていうかアンタ誰や?」

上半身を起こしながら尋ねて来る小太郎にぼやいていたナギはジト目で彼の方へ目を向ける。

「大英雄、ナギ様だよ。サイン欲しけりゃやるぞ坊主」
「ああ、アルが言っとった『サウザンド・バカ』とか呼ばれていた奴か、生きてたんかい」
「おお、お主が噂で聞いていた『サウザンド・アホ』だったのか、リーダーと新八殿がいる事にも驚いたが、まさかお主の様な男も助っ人としてやって来るとは」
『サウザンド・マヌケ』
「違いますよ皆さん『サウザンド・中二病』です」
「殴っていいかテメェ等・・・・・・!!」

桂パーティに向かって額に青筋を浮かしてナギが拳を振り上げていると。新八は持って来た杖を地面に突き立てて行きながら、震える体でなんとか銀時の方へ歩み寄る。

「ぎぎぎぎぎ、銀さん、ななななな、何ですかあのエヴァンゲリオンみたいなのは・・・・・・」
「ありゃあ昔からずっとここに眠っていた鬼だ・・・・・・どうやら高杉の仲間の奴がアイツを叩き起こしたらしい。さっきのビームだってあいつにとって挨拶みてえなモンだろ」

体どころか声まで震えまくっている新八に銀時はスクナを眺めながら説明する。
それを聞いて新八は口をあんぐりと開けて固まった。
さっきの攻撃がほんの挨拶代わりだと・・・・・・?

「ああああああんなのどうやって倒せっていうんですかッ!?」
「そうだな」
「いやそうだなってッ! 何そんな普通に言ってんですかッ! あんな攻撃やられまくったら僕ら確実に全滅ですよッ!」
「新八、お前ここでタイマンであの巨人に勝ったらMVP確実だぞ? 凄いな~新八君は、さすが名ツッコミメガネ。よし逝ってこい」
「倒せるわけねえだろうがッ! つうか完全に僕が死ぬ事わかってんだろッ!」

死んだ目でスクナを指さして指示してくる銀時に新八は恐怖を忘れて大声でツッコむ。
16年間の剣術修行だけでは到底あんなのにタイマンで勝てるわけがない。












そんなコントやっている頃、スクナの頭部の上で眠っている木乃香と共に浮いている千草は、数百メートル先にいる銀時達連合軍の慌てっぷりを見て満足げに笑う。
一時はどうなるかと思った作戦だが、スクナを手に入れた今、勝利はこっちのモノだと確信したのだ。

「これで西洋の連中から親の仇を取れるで・・・・・・どうや異世界の脆弱な侍共ッ! そして過去の功績にすがりつく英雄ッ! まずはアンタ等にこの鬼神の恐ろしさをたっぷりと時間かけて見せつけてやるわッ! すぐには殺さへんからありがたく思いなはれッ! ハ~ハッハッハッハッハッ!!!!」

甲高い声を上げて千草は連中に向かって挑発した後高笑い。
スクナの力に随分とご満悦の様だ。

だがかなり遠い場所にいてスクナを見ている銀時達には彼女の挑発は遠過ぎて耳に入らず、ただ突然上を向いて笑っている彼女の姿しか見えなかった。

「オイいきなりアイツ笑いだしたぞ、気持ちワル」
「多分僕等のこんな姿を見て悦に浸ってるんじゃないですか・・・・・・?」
「なんだと、それはムカつくな。おい辰馬、お前も笑い返してやれ」

新八の話を聞いた後、銀時はすぐに阿伏兎の下敷きになっている坂本の方へ振り向く。
それに応えるかのように坂本の黒いサングラスがキラーンと光った。

「よ~し見ちょれ・・・・・・・・アハハッ!! アハハハハハハハハッ!!!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
「うるさいッ!!」
「はうんッ!!!」

千草に対抗する為に坂本は今までより熱を入れて笑い声を上げるが、すぐに隣にいたネカネが彼の頭を一発ぶん殴る。
頭に大人一人分の拳ぐらいのコブが膨れ上がったまま坂本はバタンと気を失った。
銀時はそれを見てすぐにそっぽを向き、だるそうに隣にいるナギにスクナの事について尋ねる

「お前等の世界の化け物だぞ、どうやって倒せるか知ってんだろ?」
「俺はああいうデカイ奴を相手にする時はいつも力押しだ。昔と違って魔力が随分と減っちまった今の俺には無理だけどな」
「そんなモン俺達だって無理だわ、真っ向からあんなのに勝負挑もうなんざ自殺行為もいいとこだ」

すくっと立ち上がり銀時とナギは鬼神に対して難しい表情をして目を細める。
スクナはさっき一発だけビーム撃った後から一向に動かない。
恐らくこちらを余裕で殺せると千草がわかってじっくりいたぶるつもりなのだろ。

「クソ、せめてあのデカブツの弱点でもわかりゃあ色々と作戦が練れるのによ」
「・・・・・・しばらく俺が寝てた間に大変な事が起こってんな・・・・・・」
「あん?」

聞き慣れない声が聞こえたので銀時は後ろに振り返る。
気絶している坂本の上に乗っかっている無精ひげを生やしたボサボサ頭の男。
神威の部下、つまり銀時達の敵である阿伏兎が息を吹き返したのだ。
目をぱちくりとさせながら彼はスクナをジーっと見つめる。

「あれがリョウメンスクナノカミか・・・・・・資料に書いてあった説明より随分とデケェな、おいアンタ等、このままだと俺も奴に殺されるかもしれねえ。いい情報をやるよ」
「なんだよ」
「奴を止める方法さ」
「何?」

疲れた表情をしている阿伏兎に近づいて銀時はしゃがみ込んで彼に口を開く。

「お前等春雨は、高杉の仲間だろ? いいのかそんなモンをバラして」
「同盟こそ結んではいるが、お互い仲間だとは思った事もねえだろうよ俺達とアイツは。実は元々あの化け物は俺達が封印を解いた後すぐに回収する事をやろうとしてたんでね。おたく等の介入のおかげでおじゃんになったが」
「んなこと企んでたのか?」
「攘夷志士の高杉があんなの手に入れたら俺達天人の脅威になりかねん、手を組んでるフリして横からかっさらうつもりだったのさ」

思いも寄らぬ話に銀時が眉をひそめると、阿伏兎は坂本の上から下りて立ち上がり、更に銀時に向かって話を続ける。

「奴を殺す事は出来ねえが、奴の体の機能を停止する方法が一つだけある」
「体の機能を停止?」
「ただのデクの棒にするって事よ、あの娘っ子の魔力を注ごうが何しようが、それをやっちまえばリョウメンスクナノカミはまた何年もの長き眠りに入るだろうな」
「・・・・・・どうすれば出来んだ?」
「どうせ無理だと思うが教えてやるよ。なんせ俺を二度も負かしたアンタ等だからな」

不気味な笑みをすると阿伏兎はゆっくりと銀時に顔を近づけて口を動かした

「一度だけしか言わねえから耳垢かっぽじってよく聞けよ。奴の弱点は体の中にあるコアだ、その箇所は・・・・・・」

銀時はジッと彼の話す言葉を絶対に聞き洩らさない様に専念する。

そして

「心臓の部分だ」
「心臓?」
「そこに奴の動力源であるコアがある。あの巨大な体に大きな穴でも作り、コアを露出させろ。そこからアンタ等の剣なり魔法なりと注ぎこみ、上手く損傷を与えれば奴の動きも直に止まる」
「あんのムキムキの体に穴開けろってか・・・・・・」
「言っとくが奴の体は例え大砲でも傷一つ付かない。逃げようとしても無駄だ、あの化け物はコアを潰さない限りずっと追ってくる」
「・・・・・・」

顎に手を当て無言になって考えている銀時に阿伏兎はニヤッと笑みを浮かべた。

「さあどう選択する? 戦って死ぬか、逃げて死ぬか? 難しく考えさんな、どっち道死ぬ運命なんだよアンタ等は」 

死に方の選択肢を選べと笑いかけて来る阿伏兎に対し、銀時は考えている状態からおもむろに顔を上げ、“いつの間にか阿伏兎の後ろに潜んでいる人物”の方を視界の中に入れながら彼に口を開いた。

「情報あんがとさん、じゃ、もう眠っていいぞ」
「え?」
「そいッ!!」
「おぐッ!!!」
「ってオイィィィィィ!!」

銀時が言った瞬間、いきなりネカネが阿伏兎の頭を後ろから拾ってきた岩でぶん殴った。

再び白目をむいて坂本の隣にドサッと倒れた後、阿伏兎は頭に坂本同様大きなタンコブが出来る。
突然起こった出来事に思わず新八が銀時の方へ近づいた。

「情報貰っといてそりゃないでしょアンタ等ッ!」
「いいんだよ実際はコイツ敵だから。倒し方さえわかればもう用済みだ」
「その外道極まりない思考でよくアンタ主人公気どれるなオイッ! ていうかアンタも極当たり前の様にこの男を二度もぶっ倒さないで下さいッ!」

うんうんと頷きながら勝手に自己解釈する銀時に新八はツッコんだ後、すぐ様ネカネの方にもツッコミを入れる。すると彼女は真顔で

「わかりました、じゃあ三度目からはちゃんと殺します」
「あのすみませんッ! 僕等本当に悪に立ち向かう側の人間なんですかッ!? お腹真っ黒な連中ばっかなんですけどッ!?」

彼女の腹黒い返答に新八は周りに向かって叫びだす。確かにここにいるメンバーは何処か従来の正義のヒーローとは物凄くかけ離れている。
だが彼の訴えを聞いたアルは頬笑みながら話しかける。

「いいじゃないですか黒くても。悪に立ち向かう側が正義とは限りませんよ、汚れの無い綺麗な連中でも、ちょっと薄汚れてる連中でも凄く汚い連中でも、何かを救おうと思う心があればその人は侍にも英雄にもなれます、魂さえ綺麗ならそれでいいんです」
「おお、なんかこの中で唯一まともっぽい人がいい事言った・・・・・・」

アルの話に新八が感心したように頷くが、すぐにアルは銀時の方へ視線を移し

「でも私は“ある汚れ”を知らない無垢な体も大好きです、そしてその体に色々と教えてあげるのも」
「こっち見んなホモ」
「一番まともかと思ったら一番危ない人じゃねえかッ!! やっぱダメだ僕達ッ! こんなダメ人間軍団じゃあんなモンスターに勝てるわけないッ!」

冗談とは思えない口調で銀時に話しかけているアルを見て新八は両手で頭をおさえて叫ぶ。
こんなメンバーでスクナに勝てるわけない。
新八がそう思った時だった。

「あっちこっち探しとったが・・・・・・こんな所におったんじゃな、“わし等の大将”は」
「え?」

ザッザッと雑草を踏みながらやってくる人の足音が・・・・・・
足音と共に聞こえて来たのは訛りが混じっている女性の声、新八がキョトンとして声が下方向に振り向くと、銀時もすぐさまそちらに顔を向ける。

「誰だ?」
「フラフラ勝手に部下を置いて何処かに言ってしまうバカ大将の・・・・・・」

目の前にある枝や葉っぱを掻きわけながら銀時達の前に一人の女性が現れた。
道中合羽に三度笠、人狂風の衣装を来た彼女の正体は

「世話をしちょる者じゃ」
「お前・・・・・・!」
「陸奥さんッ! 何処行ってたんですかッ!?」
「は?」

現れたのは坂本の作った組織、快援隊で働いている陸奥。
前に遭った時の様にポーカーフェイスの顔を向けて来る彼女に銀時が目を見開いて驚いていると、隣にいる新八が異世界に彼女がいる事に驚きもせず話しかけた。
銀時は「?」と首を傾げる。

「何でお前コイツが異世界に来てるのに驚かねえんだ?」
「この人も坂本さんを探す為に僕や神楽ちゃん、ナギさんと一緒に真撰組の人達と同行させてもらってたんです」
「ああ、なるほどね」

新八に説明に銀時が納得したように頷いていると、陸奥は坂本の方に近づいてしゃがみ込む。

「ずっと前から一人でフラフラと歩いてこの男を探しとったんじゃが、ようやく見つけたと思ったらなんで頭にタンコブ作って倒れてるんじゃ?」
「わかりません、ミステリーです」
「いやアンタのせいでしょ・・・・・・つうかこんなモンミステリーでもなんでもねえよ」

疑問を感じる陸奥にネカネがキッパリと言うのに対し、新八がボソッと呟く。
ちょっと前に彼女が坂本の頭をぶっ叩いて気絶させたのはその周りにいる者全てが知っていた。

「さっさと起きんかい大将」
「あふんッ!」
「うッ! 男として一番のウィークポイントを・・・・・・!」
「ヒデェ、女ってのはどうしてああいう悪魔の様な事を平気で出来るんだよ・・・・・・」

倒れている坂本の金的に向かって陸奥は普通に蹴りを入れるので銀時とナギが自分の股間を押さえながら呟くと、蹴られた本人の坂本は呻き声を上げながらフラフラと立ち上がった。

「なんじゃあ・・・・・・? なんか金玉から電流が流れてる様な痛みがあるぞ?」
「わし等にコレ以上迷惑かけるとほんに“ふぐり”(金玉)潰さしてもらうぜよ」
「ん? おおッ! 陸奥ッ!」

知り合いの女性の声が聞こえたので振り返ると懐かしい顔がそこにあった。坂本は急に上機嫌になって痛みを忘れて彼女の肩を片手で強く叩く。

「久しぶりじゃのう陸奥ッ! 元気にしとったかッ!?」
「何が元気にしとったかじゃ、部下達を放置してこんな所で遊び呆けてるとは腹を斬る覚悟は出来取るんか大将?」
「アハハハハッ! おまんはいつも冷たいのうッ! 再会を祝って酒でも飲もうぜよッ!」
「おんしと一緒に飲む酒なんて飲めるもんじゃなか」
「凄いやこの人・・・・・・陸奥さんがここの世界にいる事になんの疑問も抱かない」

冷たく陸奥に突き返されてもヘラヘラ笑いながら怒りもせずに驚きもしない坂本を新八が呆然と眺めていると陸奥はおもむろに坂本の耳を掴む。

「イテテテテテッ!」
「さっさと元の世界に帰るぜよ大将、こんな所で油売っとるヒマなんぞアンタにはないけ」
「い、いや陸奥ッ! ちょっと待っちょれッ! 元の世界に帰る前にどうしても片付けて置かなきゃいけんモンがあるんじゃッ!」
「なんじゃ? また変な問題事に首でも突っ込んでるんか?」

怪訝そうな表情で耳をグイグイと引っ張ってくる陸奥に坂本は痛がりながら湖の中にいる怪物の方を指差す

「アレじゃアレッ! あの化け物倒さんとこっちの世界がマズイ事になってしまうんじゃぞッ!?」
「ん? なんじゃアレ? 生き物か?」
「あ、あれは・・・・・・」

坂本の耳から手を離して、数百メートル先にいるスクナを見ながら陸奥は首を傾げると、さっきからずっと坂本と彼女のやり取りを黙って眺めていたネカネが恐る恐る彼女に口を開く。

「この世界に眠っていた強力な力を持つ鬼です、アレを倒さないとこの場所がすぐに火の海に・・・・・・だからもしかしたらその人の力が必要になるかもしれません・・・・・・すみませんがその人と元の世界に帰るのはもうちょっと待ってくれませんか?」
「おまんは誰じゃ?」
「ここでその人を拾って世話をしていたネカネ・スプリングフィールドです」
「いや世話ってネカネさん・・・・・・」

さらりと自分に対して酷い事を言うネカネに対して坂本は苦笑する。
すると陸奥はそんな彼女に無表情のまま「ほう」と呟いた。

「そうじゃったか、わしは一応この男の部下をやっちょる陸奥じゃ、ウチの大将の面倒を見てくれて礼を言う」
「・・・・・・陸奥さんはその人と本当に上司と部下の関係なんですよね・・・・・・?」
「・・・・・・どういう意味じゃそれ?」
「い、いえ!」

意味深な質問に陸奥が目を細めるとネカネは慌てた様子で首を振る。
陸奥はしばらくそんな彼女の態度を不審そうに見つめた後、坂本の方に振り返る。

「という事はつまり、“アレ”を倒さんとアンタは元に世界に帰りとうないという意味じゃな?」
「当たり前じゃろ、ネカネさんがいる世界に、あんな危ないモン置いたまま帰れる程わしはアホじゃないけ」
「ふむ、じゃあ早急に対処しよう、さっさとおんしには元の世界に戻って溜まってる仕事をやってもらわなぁいかんからの」
「そげん簡単に言うな陸奥、あんなバケモンどげんすればいいのか銀時とヅラもわからんのじゃぞ」

無表情を崩さず淡々と話を続ける陸奥にさすがに坂本が呆れた調子で話しかけると、彼女は懐からゴソゴソとある物を取り出す。

「何柄に似合わず弱気になっとんじゃ大将、わしはもしもの時の為にいつもコイツを持ってるんじゃ。対巨大エイリアン用に作られた天人達が開発した破壊兵器・・・・・・」

取りだした物を陸奥は坂本や他の連中に見せる様に前に出す。
一見、ただのメカメカしいだけのリボルバータイプの黒い銃にか見えないのだが・・・・・・

「『山崩し』、見た目はこげんちっぽけなピストルじゃが、中には無数のエネルギーが蓄えられていて容易に山一つ破壊できるという天人が作った最新兵器じゃ。値段もその名の通りコイツと弾一発で山一個ずつ余裕で買えるぐらいの代物ぜよ」
「何ィッ! おまん何時の間にそんな凄いモン買ってたんじゃッ!?」

そんなおっかない物を日常的に持ち歩いていたと知って坂本は陸奥に向かって驚くが、彼女はしらっとした表情で

「歩く危険物のアンタに教えるなんちゅうそげん馬鹿な真似出来るか」
「アハハハハッ! そういえばそうじゃのッ!」
「そこは認めるんですか・・・・・・・」

陸奥に言われた事にケロッとした表情で笑い飛ばす坂本にネカネが呆れたようにため息をついていると、銀時が興味深げに陸奥の方へ近づいて行く。

「そのピストルの中に入ってる弾の数は?」
「一発じゃきん、二発も三発も買える程さすがにウチは余裕を持っとらん」
「一発か・・・・・・けど一発で山吹っ飛ばせるぐらいの兵器ならいくら奴のたくましい胸板でも・・・・・・」

彼女が持って来た銃ならこの状況を打開出来るかもしれない。銀時は腕を組んで頭を下げた状態で黙りこくる。

そして

「これしかねえか・・・・・・おいテメェ等、今から重要な事を言うからよく聞いとけよ」
「おっと、遂にあなたから私への告白イベントですね、長かったですね~」
「ねえよバカ、お前にはヅラルート一択だけだ」
「残念ですが桂さんには既に小太郎君というメインヒロインがいます」
「さっきから何変な会話をしているのだお主等は」
「蹴落としてお前がヒロインになれ、俺の見解によるとヅラはお前に惚れてる」
「銀時、斬り殺されたいのか?」
「あの、気持ち悪い会話してないでさっさと話進めませんか銀さん?」

BLトークを普通に始めている銀時とアルに向かって桂と新八が小さな声で呟いていると、銀時は頭を掻き毟りながら話題を元に戻した。

「あの“エセエヴァンゲリオン”を倒す、その為の作戦プランを考えたからお前等各々の役割を覚えてくれ」
「え・・・・・・まさか銀さんッ! アレに勝てる方法思いついたんですかッ!?」
「当たり前だろ、今まさに俺等“オーシャンズ11”の結束の力を試す時が来た。見せてやろうぜ“虎の威を借る狐”に」

驚く新八に銀時は自信満々に頷き、数百メートル先に立っているスクナの上で、こちらに嘲笑を浮かべる千草の方へ向いてニヤッと口元に笑みを広げた。











































「侍と魔法使いが力を合わせりゃ鬼だろうが魔王でも倒せるってな」

もはや何処の世界の人間だろうが関係ない。
同じ志を持った11人の絆が今繋がる。






[7093] 第七十訓 生半可な覚悟で正義や悪を語るものではない
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/05/24 01:12
木乃香の力によって封印を解かれたリョウメンスクナノカミ。
鬼神という強大な敵と対峙する事になった銀時は阿伏兎の情報、そして陸奥が持って来た兵器をヒントにしていき一つの作戦を生みだす。
ここにいる11人のメンバーだけで鬼神を倒し、なおかつ木乃香を救う作戦を
銀時はひとまずメンバー全員で円になるように陣形を作り、その円の中心に立った彼が作戦を話し始めた。
時間は一分も使わなかった。

「・・・・・・という事でコレが俺の作戦プランだ。もうこれっくらいしかアレに勝つ方法はねえ、気合いでやるぞ気合いで」
「お前の考えに乗るのは癪だけどよ・・・・・・仕方ねえか」
「腕っぷしだけではなく頭のキレも・・・・・・いいですねぇ、ますます興味を覚えました」

要点だけをまとめた作戦内容を手早くそこにいるメンバー全員に伝えた銀時。
彼の話の内容を聞いてナギは不満げにアルは意味深な笑みを浮かべて了承するが、新八はボーっとした表情で銀時を見つめる。

「あの銀さん・・・・・・・作戦は理解できたんですけど僕の役割に一言・・・・・・」
「バカヤロー、ツッコミキャラ特有の誰の耳にも入るお前の“ツッコミボイス”を見込んで、銀さんはお前に“この役割”を上げたんだよ」
「いやさっきアンタが僕に与えた役割にツッコミ役関係無かったですよねッ!?」
「でもツッコむ時って大体声がデカイだろ、その声のデカさに俺が期待してるんだよ。頼んだぞ初代ツッコミ総長・志村新八」
「それ声がデカイ人なら誰でもいいって事じゃねえかッ! あ~もうなんですかそれッ!テンション駄々下がりですよそんな不毛な役割ッ!」

自分の存在意味に異議を唱えだす新八に銀時はめんどくさそうに小指で鼻をほじりながら、ボソッと彼に一言。

「ここでいっちょかましてやればツッコミポジションを千雨から奪えるかもしれねえぞ」
「いよぉぉぉぉぉしッ! テンション上がって来たァァァァァ!! 僕の中に眠るアドレナリンが一気に放出したァァァァァァ!!」
「単純な奴アル」

銀時の一言を聞いた瞬間いきなりハッスル始める新八に、神楽は冷え切った視線を送った後、すぐに銀時の方に顔を向ける。

「銀ちゃん、私も文句があるアル」
「こっちはお前等の文句聞いてるほど暇じゃねえんだぞ?」
「いいから聞けよロリコン三股天パ」
「・・・・・・聞いて上げるからその呼び方止めて」

クリっとした純粋な目で強烈な毒を放ってくる神楽に銀時は少しテンションの下がった表情で呟いた。
すると神楽はすぐ隣で腕を組んでいる桂の仲間、犬上小太郎を指を差す。

「なんで“ウルトラビューティーヒロイン”の私がこんなワン公と協力しなければならないアルか? 同じ犬なら定春がいいネ」
「んなッ! こっちだって願い下げやッ! なんで女のお前なんかと一緒にッ!」

自分に対して文句を言う神楽に対し小太郎は顔を上げて彼女を睨みつける。
だが神楽はそんな彼を見下した態度で

「あん? 誰があの時助けてやったんだコラ?」
「う・・・・・・」
「ケツの青いガキがこの“ギガアルティメットパーフェクトヒロイン神楽ちゃん”についてくるなんて到底無理アル、私一人でなんとかなるヨロシ、ガキは家帰ってファミコンでもしてな」
「コイツすんごいムカつくわッ! 自分だってガキのクセにッ!」
「あ~もう黙れガキ共。ガキはガキ同士で仲良くしろ」

いきなりいがみ合いを始める神楽と小太郎に銀時は適当に手を振りながらあっちへ行けと追い出すと、今度は一人でポツンとつっ立って何かを眺めているナギの方へ自分から近づいていった。

彼の視界に入るのはスクナではなく、湖の真ん中に浮かんでいる祭壇だった。

「こっちはアイツと決着つけなきゃならねえのに・・・・・・」
「・・・・・・もうちっと待ってろ、すぐにあのバケモンを片付けてやっから」
「・・・・・・決着をつけるの鳳仙だけじゃねえしな」
「あん?」

隣に立って来た銀時の方へ向かずに、ナギはまっすぐに前を見つめながらそっと呟いた。

「息子の命を助ける為に親として何をするべきなのか。俺はそれにテメーでケジメをつけるって決めた」
「・・・・・・」
「俺はアイツに何一つ父親らしい事をしてねえ、だから今日は・・・・・・初めてアイツと正面からぶつかり合う、手足がもげようがアイツを助けれるなら構わねえ、それが俺のケジメだ」
「・・・・・・へぇ」
「な、なんだよ・・・・・・・」

真面目なトーンで話をするナギに向かって銀時は口元に小さな笑みを浮かべる。
顔を赤らめながらナギはそんな彼の方へ向いてムッとするも、銀時は笑ったまま見つめ返す。

「まるでダメな親父、略してマダオのお前でも父親らしい所があるんだなと思ってよ」
「なんだよマダオって・・・・・・」
「オメー等見たいな親がいるアイツが羨ましいわ・・・・・」
「は?」

いきなり虚空を見つめる表情を浮かべる銀時にナギが首を傾げていると、二人の背後から恐る恐るネカネが近づいていく。

「あの・・・・・・陸奥さんと坂本さんはもう準備出来た様です」
「あいよ、じゃあそろそろこっちも作戦開始するか」
「ああネカネ、ずっとゴタゴタしてて言えなかったけどよ」
「え?」

髪を掻き毟りながらナギはネカネの方に振り返り、二カっと笑った。

「大きくなったな、こんな所でお前に会えるとは思わなかったわ」

久しぶりの再会にもかかわらずえらくシンプルな言葉にネカネは思わずフッと笑い返す。

「はい、ナギさんもお元気そうで良かったです」
「今までネギの事を護ってくれててありがとよ、後は俺に任せてくれ」
「少し不安ですけどお願いします、父親としてあの子の事を護って下さいね」
「お、おう・・・・・・」

他人に言われるとやはり恥ずかしいのかナギはネカネにそっぽを向いて顔をまた赤らめる。

しばらくしてナギはその場から逃げる様に草陰の方に行ってしまった。

「ちょっと行って来るわ・・・・・・・」
「何処にだよ」
「しょ、小便・・・・・・」

明らかに逃げる為の口実だとバレバレな態度のナギの後姿に銀時は鼻で笑った。

「どんだけ小便出るんだよ、あんな調子で大丈夫かあの親父」
「本当ですね、けどあの子の父親が生きていてよかった・・・・・・」
「ん?」
「親がいないって子供には一番の不幸なんだと思います。私も数年前に両親を失ってますからわかるんです・・・・・・・」
「・・・・・・」

初めてネカネのそんな話を聞いた銀時は頬をポリポリと掻きながら真顔で彼女に口を開く。

「一人ぼっちってのは・・・・・・あんまいいモンじゃねえよな」
「はい・・・・・・あ、でも私には両親の代わりに護ってくれる人がいます、ぶっきらぼうですけど優しくて強くて頼りになって、私の父親代わりになると言ってくれた人がいるんです」

そう言ってネカネはさっきの暗い表情から一転してニコッと銀時に笑いかけた。

「だから私は幸せです」

表裏も無い純粋な彼女の笑顔。
それを見つめながら銀時はそっぽを向いてボソッと呟く。

「・・・・・・親か」
「え?」
「なんでもねえ。そろそろ作戦始めるぞ、お前は辰馬の傍にいてやってくれ」
「あ、はい」

銀時が言った事にネカネは聞き取れなかった様子だが、すぐに彼の言う通りに坂本のとこへ移動する。
残された銀時は作戦を実行する為にその場を去った。




























間もなく深夜4時44分。
スクナ討伐の為にいよいよ作戦開始される。















第七十訓 生半可な覚悟で正義や悪を語るものではない





















「リョウメンスクナノカミッ! そろそろ敵さん達を一人残らず殲滅するでッ!」
「グガァァァァァァ!!」

銀時達が行動を開始している一方、木乃香の魔力を己の力に変える為に行動を停止させていたスクナが顔を上げて咆哮を上げながら銀時達の方へその巨大な体で一歩前に出る。
とてつもない大きな足音、その衝撃に湖が大きく波打っている。

「フッフッフ、コイツの力があれば高杉や春雨にも負けんかもしれへんな・・・・・・さて、侍と英雄さんに今度は連発でスクナの波動砲を受けてもらいまひょか・・・・・・」

眠っている木乃香をお嬢様抱っこで持ち上げた後、千草はスクナの右肩に着地し、笑みを浮かべながら銀時の軍団の方へ目を細める。

だが

「ん? 変やな、ガキ共が見当たらへんぞ・・・・・・」

スクナがどんどん数百メートル先の敵の団体に近づいて行くのだが、よく見ると銀時やナギ達、その他の大人達はいるものの。神楽、新八、小太郎の子供三人が見当たらない。
それに何故かあの変なアヒルペンギン(エリザベス)の姿も・・・・・・。

「ガキ共だけ逃がしたっちゅう事かいな?」

そんな推理をしながら千草が首を傾げる。
子供は逃がして大人達のみでこちらを片付けようとしているのだろうか?
しかし彼女のその曖昧な考えはある少年によって唐突に引き裂かれた。

「僕の歌を聞けェェェェェェェェェェェェ!!!!!」
「ぬぐッ!! な、なんやこの声ッ!!」

木乃香を持っている状態でスクナの右肩に乗っている千草の耳に、突如信じられない程の大きな声が聞こえる。
千草は慌てて、すぐ右にある岸の方へ目をやると

「アイラ~ブッ!! お通ちゃ~んッ!!! 君を見てるだけでアイムゴートゥヘヴ~ンッ!!!! ゴートゥヘヴ~ンッ!!!!」
「メ、メガネ付けたあの地味なガキッ! うッ! なんやこの破壊超音波ッ! 耳がねじり切れるッ!!」

そこにいたのは万事屋初代ツッコミ総長、志村新八。マイクを持って(何処にあったのかは不明)ノリノリで自分で作ったと思われる歌をノリノリで熱唱している。
だが彼の歌声は音痴を通り越して精神を破壊する殺人ボイス。
千草はあまりの騒音に木乃香をスクナの肩に下ろして自分の耳を必死に押さえる。

「君が僕に視線を向けられたら~ッ!! 僕のライフはエブリディハッピーさ~ッ!!! アイラ~ブッ!! お通ちゃ~んッ!! お通ちゃ~んッ!!」
「チッ! 人間ってあそこまで音痴になれるなんて一種の才能やでッ! ていうかッ! なんでこんな状況で歌ってんねんあのメガネッ!」
「オメェもメガネだろうがッ!! キャラ被るからメガネ取れやボケェッ!」
「なんかツッコンで来よったッ!」

歌の途中に千草にツッコまれた瞬間、すぐにツッコミ返しをする新八。
千草は驚くも耳を押さえながら彼の放つ騒音を懸命に堪えてスクナに向かって急いで指示を出そうとする。

「スクナッ! 侍共は後やッ! あのガキをさっさと静かにせんと耳が・・・・・・・おぐッ!」

銀時達から新八へ標準を変えろと千草がスクナに命令しようとした瞬間、彼女の顔面に謎の手持ち用のボードが鼻に直撃する。
あまりの痛さに千草が鼻を押さえながらボードが飛んできた方向にキッと睨みつける。

「誰やウチに向かってこんなん投げたのはッ!!」

ボードが飛んで来たのはさっきからずっと熱唱を続けている新八の方向。そして彼の隣に何時の間にかいた人物(?)は

『いやあサーセンwww』
「おのれかおばQゥゥゥゥゥ!!!」

新八の歌声が聞こえない様耳にヘッドフォンを付けているエリザベスが、こちらに向かってなんの悪びれもない言葉が書いてあるボードを持っていた。

「お前等あの高杉の知り合いの坂田銀時と桂小太郎にくっついてるただの金魚のフンやろうがッ! フンならフンらしく黙って・・・・・・うぎッ!」
『いやそれお前に言われたくねえし』

金切り声を上げる千草の鼻にまたもやボードが命中。ポタポタ出て来る鼻血を必死に腕で拭いながら千草はスクナの肩でペタリと座りこむ。

「あんなふざけた連中にこんなコケ食らうとは・・・・・・・」
「君は僕の目の前に下りて来たエンジェルゴッドさぁぁぁぁぁぁ!!! お通ちゃぁぁぁぁぁぁんッ!!」
「だぁぁぁぁぁぁ!! もううるさいんじゃボケコラカスッ! エンジェルかゴッドどっちかにせんかッ!!! つうか誰やお通ってッ!」
「オラァァァァァ!!! 江戸一番のアイドル寺門お通を知らないとは何処の便所のカスだコラッ! それでもお前人間かァァァァァ!! お前の母ちゃん・・・・・・・」

顔だけ覗かせてこちらに叫んでくる千草に新八は殺気の入っている顔のままスゥ~と一度大きく深呼吸して・・・・・・・




















「××だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ぬぐぅぅぅぅぅ!! 鼓膜がッ! 鼓膜がただの地味なガキのただの音痴に破られるぅぅぅぅぅ!!!」
「グガァァァァァ!!」

この山にいる者全てに聞こえるのではないかというぐらい大きな声に千草もタジタジ。
心なしかスクナもうるさがってる様に首を横に何度も振っている。
鬼神さえ怯ませる新八の常日頃からツッコミによって鍛えられた声量。
そしてさっきから事ある事に千草の顔面にボードを投げて来るエリザベス。

だが彼等の攻撃はまだこれだけではない。

「オラオラオラオラオラァァァァァ!! 隠れてねえで出てこいよコンチクショウッ! ギャハハハハハッ!!」
「うわっとッ! 今度は銃弾ッ!?」

音痴やボード攻撃の次はなんとマシンガンの様に飛んでくる実弾。千草は頭を両手で押さえて慌てて伏せる。
新八とエリザベスは精神的なダメージの方だが、実弾を食らったら洒落にならない。

「ギャハハハハッ!! これがヒロインの力だ思い知ったかコノヤローッ!」
「撃ってるのはあのチャイナ娘か・・・・・・!」

銃弾が飛んでくる方向に四つん這いのまま千草はそっと覗きこむ。

新八達とは少し離れた場所で、夜兎専用の自慢の番傘から弾を乱射して高笑いしている神楽の姿が・・・・・・・

「死に晒せアル金髪デカ乳ッ! ヒロインは私一人ッ! テメェとその他二人はエキストラの役でも貰ってろコラァッ!」
「いやウチ金髪やないんやけど、誰の事言ってるんやあのガキ・・・・・・? まあええか、スクナッ! こっちに実弾撃ちこんで来るチャイナ娘をやれッ!」
「ガァァァァァァ!!」

神楽が言っている事にさっぱり理解できない様子の千草は一旦頭を傾げた後、すぐにスクナに向かって彼女を先に討伐するよう命令する。

「堪忍な、ウチ等に喧嘩売ってる時点でアンタ等は骨の一本や二本失うだけじゃ済まへんかもしれん」

スクナは左拳を大きく振り上げたまま、自分よりずっと小さい神楽を視界の範囲に入れる。
そしてようやく千草が彼の右肩の上で立ち上がり、彼女が神楽に向かって笑いかけると

「一撃で病院送りにさせたるわ」
「ゴォォォォォォ!!」
「!!」
「神楽ちゃんッ!」

問答無用にスクナは神楽に向かって拳を振り下ろす。
巨漢に似合わずあまりにも早いその一撃に神楽は逃げられずに思いっきり真正面からぶつかった。
その衝撃に地鳴りが鳴り響き、スクナの攻撃をモロに食らってしまった神楽に新八が慌てて彼女の名を呼び掛ける。

すると

「ヌグググググ・・・・・・・!」
「か、神楽ちゃんッ!」
「う、嘘やろ・・・・・・」

ゴゴゴゴゴと音を鳴らしながらスクナの拳が徐々に上へ上がっていく。
そして苦しそうに踏ん張る“彼女”の声を聞いて新八は驚き、千草は血の気が引いた。
そう、神楽の血には最強レベルに達する父や兄と同じく。

「火事場ヒロインの・・・・・・! クソ力ァァァァァァ!!!」
「スクナの一撃を生身の体で止めたやとォォォォォォォ!!」

体中に汗をかきながら神楽が両手を使ってスクナの拳を止めている事に千草は口をあんぐりとあけて叫んだ。
その化け物じみた力がスクナと渡り合えている事は千草にとって信じられない事だったのだ。
夜兎の血を引く神楽。彼女の底知れぬ力は日々進化している。

「ありえへん・・・・・・こんな事・・・・・・・こんな真似出来るわけ・・・・・・」
「行けェェェェェ!! ワン公ォォォォォォ!!!」
「誰がワン公やッ! だが礼を言うでチャイナ娘ッ!」
「!!」

千草が戦慄を覚えている間に神楽はスクナの拳を止めながら必死に“彼に”叫ぶ。
その声を聞き、彼女の後ろでずっと待機していた小太郎が躍り出て、すぐに彼女が止めてるスクナの拳の上に飛び乗った。

「これでネェちゃんの所まで行けるッ!」
「しまったッ! 狙いはそっちかッ! あの二人と一匹はフェイクで本命はアンタか小太郎ッ!」
「そこでネンネしてるネェちゃんを返してもらうでッ!」
「チィッ!」

スクナの拳に飛び乗ると小太郎は傾斜があるのも気にせずにまっすぐに千草の元へ登っていく。
新八とエリザベスと神楽のはただの時間稼ぎ。本当の狙いは直接こちらに来てスクナのリモコン代わりとして働いている木乃香を救出する事だったのだ。

そう推理した千草は苦々しく舌打ちした後、向かってくる小太郎を睨みつけながら懐からお札を取り出す。

「ガキのお前がこの天ヶ崎千草に勝てると思ってんのか小太郎ッ!」
「試してみいやしょうもない“小悪党”ッ!」
「なんやとこの・・・・・・! ぶッ!」

挑発的な笑みを見せて走って来る小太郎に千草が何か言おうとしたその時、彼女の顔面にまたもやメッセージボードが直撃。

『小僧、貴様を助けるのはこれっきりだ』
「うぐぐ・・・・・・またあのUMAに・・・・・・!」
「エリザベスッ! これ終わったら飯でも奢ったるわッ!」

目の前で千草が顔にボードをぶつけて崩れた事に、小太郎はチャンスとばかりに援護をしてくれたエリザベスに感謝しながら一気に走る。

「ガキだからって・・・・・・・!」
「こんのォォォォォォ!!」
「舐めんなやッ!」
「なんやとッ!」

千草と小太郎の距離はもう目の鼻の先。
そこで彼は大きくジャンプして、顔を押さえながらもこちらに手を伸ばしてくる彼女を避けきる。
そして小太郎は横たわっている木乃香の前に綺麗に着地した。

「このネーちゃん奪えば“コイツ”はもうアンタの命令を聞かなくなるんやろ、千草のネェちゃん」
「くッ! その娘っ子に指一本でも触れてみいッ! ウチが手に持ってる『劫火の札』ッ!コイツはアンタとその娘っ子を残りカスも出ないぐらい燃やせるんやでッ!」

こちらに振り返ってきた小太郎に千草は目を見開いた状態で手に持っているお札を見せつけて脅しにかかる。
だが小太郎はその脅しに全く通用していない様子で頭をポリポリと掻きながら目を細める。

「このネェちゃん殺したらそっちも困るんやないか?」
「みすみすお前等に奪われるよりはマシやッ!」
「無理やって、千草のネェちゃんどうみても人殺しなんか出来へん柄やもん、アンタの相方の全蔵なら出来るやろうけど」
「ウ、ウチだって出来るに決まってるやろがボケッ! いいかッ! マジで殺すからなッ! 絶対にその娘っ子に近づくんやないぞッ!」

完全に錯乱状態に入り始めている千草を見て小太郎はやれやれと首を横に振る。
木乃香に近づいたら殺す。彼女はそう言っているが・・・・・・

「安心せえや千草のネエちゃん、俺はこっちのネエちゃんには絶対に毛一本も触らんから」
「え? な、なんや、意外と素直になれるんやな・・・・・・わ、わかればそれでええんや」

素っ気ない態度だが素直に言う事を聞く小太郎に千草は驚きながらも頬に笑みを引きつらせる。
だが小太郎はそんな彼女にジロッと見て

「何勘違いしてんねん、俺は元々このネーちゃんを“自分一人”で助けるなんて考えてへん」
「へ?」
「あそこにいる三人が囮で俺が人質奪還役。千草のネエちゃんはそう考えてるんやろ?」
「そ、そうや、当たり前やろ・・・・・・」
「残念やなぁ」

両腕を後頭部に回しながら小太郎は千草にニヤッと笑って見せる。

「こんな策さえも見抜けないなんてやっぱ千草のネエちゃんは悪人向いとらんわ」
「なんやとッ!?」
「だって俺もあの三人同様“囮”やからな」
「・・・・・・は?」

千草が首を傾げてしかめっ面を浮かべると、小太郎はふと銀時達のいる左側へ顔を向ける。

「ぎょうさん時間稼がせてくれてありがとな。ホレ」
「ん? げッ!」

小太郎が顎でしゃくったその先に振り向いた瞬間、千草は鳩が豆鉄砲でも食らった様な表情で思いっきり驚く。

「アンタが俺等に集中している内にもう“あの二人”が来おった、この鬼さんはどうやらアンタに操られてる限り命令以外の行動は出来へんらしいな」
「油断してた・・・・・・! まさかこうやってウチとスクナの近くにやってくるなんてッ!」

千草が悔しそうに奥歯を噛みしめる。
彼女の先にいるのは紛れもない・・・・・・・
















「遅いぞアル殿ッ! キノコを食べてスピードアップだッ!」
「食べません、あなたが私の上に降りてくれればそれで済みます、大人一人背負って飛ぶの大変なんですよ?」
「いやここで俺が降りたら意味無いだろッ! 銀時に怒られてしまうではないかッ!」
「じゃあ我慢して下さい、小太郎君達がだいぶ時間稼ぎしてくれたおかげでようやくここまで距離を詰めれたんですから」

狂乱の貴公子、桂小太郎をおぶった状態のままこちらに飛んでくるは最強ランクの魔法使い、アルビレオ・イマ。

みるみるこっちにやって来るその二人に千草はしまったという風に口を手で押さえる。

「桂とアルビレオ・イマ・・・・・・! お前等ガキ共の狙いはあの二人をウチに気付かせぬように接近させる事やったんかッ!」
「おお、ようやくわかったか。ま、もう遅いけどな」
「何言ってんねん勝負はまだまだやッ! スクナッ! あそこで飛んでる二匹の蠅を叩き・・・・・・!」

ヘラヘラ笑ってる小太郎の顔にカチンときた様子で千草は額に青筋立てながらスクナの方へ指示をしようと口を開く。
だがやはり・・・・・・・

「あがッ!」
『ストラ~イク』

抜群のコントロールでエリザベスのボードが飛んで来た。
すっかり忘れていた千草は成すすべなく後頭部に直撃を食らう。

「さっきから何回もウチがスクナに命令しようとする時に邪魔して・・・・・・!」
「お通ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!」
「うがぁぁぁぁぁぁ!! またあの地味メガネッ! あの二人のせいで精神が狂ってまうッ!」

エリザベスの地味な嫌がらせとノリノリで歌う新八の熱唱力。

肉体的にではなく精神に来るダメージに千草は両耳をおさえたまま疲労困憊の表情を見せた。
そして怯んでいる彼女の隙を突き、遂にあの二人がこちらとの距離をある一定の所まで到達する。

「ここで降りるぞアル殿」
「どうぞご自由に」
「あッ!」

千草が気が付いた時にはもう遅い、こちらに向かって来てた桂とアルが既に自分達の真上を5Mぐらい上の所で飛んでいるではないか。

アルにおぶられた状態の桂は彼の背中から手を離し、そこからこちらに向かって降って来る。

「可憐な少女を己の道具として使いなおかつこの街を消滅させかねない主の行動、正義と言う名の下に俺が天誅を与える」
「何を偉そうな事言ってるんや侍のクセにッ! 骨も残さず燃え尽きれッ!」

落ちて来る桂に千草は持っていた『劫火の札』をすかさず投げる。
だが桂は冷静に腰に差す刀をカチっと手に持って。

「!!」

空中にいるにも関わらず高速の横一閃、術が発動する前に桂は彼女の札を真っ二つに斬ってしまった。
その早技に千草は驚きを見せていると、小太郎はコッソリと彼女に近づき・・・・・・

「ほな、さいなら」
「あり?」

足払い。
小太郎の気配に気付いていなかった千草は彼に思いっきり足をすくわれ、スクナの肩の上でバランスを崩す。
そして
















「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

泣きそうな声で悲鳴を上げながら千草はスクナの肩からまっさかさまに落ちていった。
そのままドボーンと大きな音を立てて頭から湖の中に着水。

しばらくして落下の衝撃と蓄積された疲れのおかげで白目をむいて気絶してしまっている千草がプカーと湖の上に浮かんできた。

「やっぱあのネエちゃんは悪役向いとらんわ」
「よく時間稼いでくれたな、偉いぞ少年」
「おうヅラ、早かったな」
「ヅラじゃない桂だ」

湖に浮かんでいる千草を見下ろしていると着地の音と共に桂の声が。
小太郎がそちらに目を向ける頃には桂は既に眠っている木乃香をお嬢様抱っこで持ち上げていた。

「お主達の活躍のおかげで木乃香殿を救出出来た。これでもうスクナはさっきの者の命令を聞かなくなる」
「もう命令できる状態でもないしなあのネエちゃん」
「それもそうだがな。よし俺達はもう役目は済んだ脱出するぞ。後は銀時と坂本達に託そう」
「おうッ! ってうわッ!」
「む?」

木乃香を両手に抱き抱える桂に小太郎が力強く頷いた瞬間、いきなりグラグラと立っている場所が揺れ始める。
突然スクナが動き始めたのだ。

「ゴガァァァァァァァ!!!」
「マズイな、自らを操っていた者がやられた事を知って己の自我が目覚めたらしい。このままだとこの鬼は全てを消すまで止まらんぞ」
「呑気に言ってる場合やないやろッ! 今ここにいる俺等がまっ先にヤバいんやでッ!」

両手を上げて月に向かって咆哮を上げるスクナを冷静に観察する桂に、小太郎は必死にバランスを保ちながらツッコむ。
早急に脱出せなば、だがさっきここに来れたルートはもう存在しない、スクナが両腕を上げているのだから。

「クソッ! ヅラッ! 思い切って湖の中に飛び込むかッ!?」
「俺とお主なら問題ないだろうが、魔力を失って心身ともに衰弱している木乃香殿には冷えている湖は体に毒だ」

両手に持つ木乃香の顔を覗き込みながら桂は小太郎の案を断る。
弱っている木乃香にコレ以上負担はかけられない。
すると小太郎はパニくった状態で頭を掻き毟りながら

「じゃあどうすんねんッ!」
「あの~すみません、私の事忘れてませんかね?」
「ん? あッ! そういえばホモがおったッ!」
「名前みたいに呼ばないで下さい、ホモじゃなくて私の名前はクウネル・サンダースです」

ニコニコ笑いかけながら空中を浮遊しているアルを見て小太郎は慌てて指をさす。
飛行能力を持つ彼ならこの状況をなんとか出来るからだ。

「でも私一人ぐらいしか背負いきれませんよ? さすがに三人分の体重は無理です」
「いや木乃香殿だけ預かってくれればそれで十分だ。俺と少年は湖に飛び込む」
「わかりました、女性を触る事に抵抗はありますが仕方ありませんね」
「ますますゲイ疑惑に拍車を掛けるような発言すな」

笑顔でサラッと危険な匂いを漂わせるアルに小太郎がボソッとツッコンでいる中、桂はアルに木乃香を渡す。
そしてすぐに桂は小太郎に近づき、彼の腰に右腕を回して

「頭から落ちるかもしれんが意識は絶対に失うな」
「わかっとるわそれぐらい」
「ゴガァァァァァァ!!!」
「そろそろここにいるのも限界か・・・・・・行くぞ少年」
「いつでもええで」

話しかけて来る桂に小太郎は素直に頷き、彼の腰に抱きつく。

次の瞬間、二人は暴れるスクナの肩の上で勢いよくジャンプして湖の中に落ちていった。

「無茶なことしますね全く」

木乃香を両手に抱きかかえて宙に浮かびながらアルがそんな事を二人に言っていると、すぐに二人は湖の中に大きな音を立てて頭から着水。

そして

















「ぶはぁッ! おい少年無事かッ!」
「げほッ! げほッ! 一瞬三途の川が見えたけど大丈夫や・・・・・・・」

湖の中から桂と小太郎は同時に顔を出す。
慌てて自分の安否を確かめて来る桂に小太郎はなんとか問題無いと言う。
すると桂はフッと笑って

「そうか、あそこに少女しか乗っていない丁度いい小舟がある。あれに乗せてもらおう」
「オイィィィィィ!! 現在進行形で川バッチリ見てるやんけッ! それに乗るなヅラッ! 一生ここに帰って来れへんぞッ!」
「む? 俺は何が見えてたんだ・・・・・・?」

自分よりもっと見えてはいけないものを見てると気付いて慌てて小太郎は桂の顔を平手打ち連打。
幸い桂はすぐに正気に戻ったが、このまま行かせてたらどうなってた事やら・・・・・・

そんな事をしていると、彼等より先にプカーと浮いていた女性が気絶した状態でこちらに流れて来た。

「あ、千草のネエちゃんや」
「うう・・・・・・」
「誰にでも救いの手を差し伸べる事は侍にとって大事なことだ、この者も救出しよう」
「酔狂な奴やなぁ・・・・・・」

敵である千草の手を取って岸に向かって泳ぎだす桂を見て小太郎は呆れたように濡れた髪をワシャワシャと掻き毟った。

「ま、それがヅラか」



























































千草を撃破し、無事に木乃香りを救出した桂達。
彼らの活躍を遠目で確認していた銀時は、後ろでスタンバイしている坂本、陸奥、そしてネカネの方に振り返る。

「ヅラが人質奪還に成功した。次は俺達の番だ、用意はいいか」
「おうよ、いつでも発射OKじゃ」
「あの連中の時間潰しのおかげで山崩しのチャージは完了、あとはフルバーストであのバケモンの胸板ぶち抜くだけじゃ」

地べたに座って坂本がスクナめがけて構えているのは天人が作った強大な力を持つ銃、『山崩し』。
陸奥が持って来た戦利品なのだが、どうやら彼がスクナを狙撃するらしい。
もっとも山崩しはかなりの破壊力を持つ兵器なのでその反動も恐らくかなりのもの、それを想定して彼の後ろでは陸奥とネカネが彼の背中を支えている形になっている。

「本当はわしだけで十分なんじゃが、この者がどうしてもウチの大将の手助けをすると言って聞かなくての」
「わ、私は皆さんの助けになりたいと思って・・・・・・」
「アハハハッ! いい心構えじゃネカネさんッ! これからもわしの背中支えて欲しいのッ! な~んてなッ! アハハハハハッ!」
「!! ヘラヘラ笑わうの止めなさいッ! 標準がずれるわよッ!」
「・・・・・・なんなんじゃこの二人・・・・・・・?」

ネカネを茶化している坂本と、それに対して頭を真っ赤にしながら彼を叩いているネカネ。
“そっち方向”の物事に疎い陸奥は訳が分からない様子で首を傾げた。










陸奥がネカネと坂本から微妙な疎外感を感じている頃。

銀時とその隣に立つナギは一緒に湖の中で体をくねらせて大暴れしているスクナを全く動じずに眺めていた

「ゴガァァァァァ!! ゴガァァァァァ!!」
「えらいハイテンションになったなアイツ、すげぇ動きまわってるからこりゃあ辰馬も大変だわ」
「俺とお前でなんとか誘導するしかねえだろ、お前のダチが撃ち損じたら俺達は三途の川渡る事になっちまうんだからな」

顔を合わせずにナギと会話しながら銀時はある言葉に反応して嫌そうな顔を浮かべる。

「俺とお前ね・・・・・・・ハァ~・・・・・・・」
「何不満げにため息突いてんだコラ、元々お前が考えた案だろうが、それが俺が嫌々引き受けてんだからありがたく思えっつーの」
「そうだよな、飛べる奴がお前とホモしかいなかったからしょうがねえんだよな。“飛べるだけ”で良かったのにな本当、俺を背中に乗せて飛べるんなら別にデッカイゴキブリでも良かったのにな、つうかお前におぶられるならゴキブリの方がマシだな、チェンジしてゴキブリさんに代えてくんねえかな?」
「テメェの口はよくそんなにベラベラと憎たらしいフレーズが出て来るな、いっつもそんなひねくれた性格してるから髪まで捻りまくってんだろうな」
「これは生まれつきだバカヤロー」

こんな状況にも関わらず二人は普通に口喧嘩。
恐らく一種の“同族嫌悪”という奴であろう。

「ったくまさかこんなダメダメ親父とコンビ組まなきゃいけなくなるなんてよ」
「こっちだってテメェみたいなふざけた奴と組むなんてゴメンだっての、これっきりだからなテメェとこんな事するのは」

ブツブツと文句を言いながらナギが銀時の前に出て彼に背中を見せると、銀時はフンと鼻を鳴らした。

「いい年した男同士でこんな事するなんざ気色悪いったらありゃしねえ」
「ならさっさと面倒事を済まそうじゃねえか、俺は“アイツ”との決着にケリ着けなきゃならねえしよ」
「それもそうだな・・・・・・」

銀時はナギにだるそうに頷いた後、後ろに振り返って坂本達に最終確認を取る。

「お~いお前等、もう俺等行くからな。俺等がアイツを引きつけるからちゃんと心臓の部分狙い撃てよ」
「頼むぞ銀時ッ! 一緒にこの世界を救うんじゃッ!」
「頑張って下さいナギさんッ! 私達とネギの為にもッ!」
「ここが執念場じゃ、生きるか死ぬかはわし等の腕にかかってるけ。決してムダ死になんぞせんでな」

坂本、ネカネ、陸奥に激励された銀時とナギは三人に手を振った後、彼等に背中を見せて湖の方へ目を向ける。

そこにいるのは鬼神と称されるリョウメンスクナノカミと、湖に浮かぶ祭壇に一人たたずんで、自分達がスクナを倒すのを待っている夜王ネギの姿が。
銀時をそれを遠い目で眺めながらナギの両肩を強く掴む。














「行こうぜお父さん」
「ああッ!」













































































夜王ネギは一人祭壇に立ってスクナと銀時達の戦いを静かに観戦していた。

「ガァァァァァ!! グオォォォォォォ!!!」
「操られた事に怒りを感じてるのか、もしくは眠りを妨げられていた事に怒っているのか・・・・・・・」

その場一帯をすっちゃかめっちゃか暴れ回るスクナがかなり近い距離で暴れているのに夜王ネギは全く動じずに眺めている。

すると遠くからこちらへ勢い良く飛んでくる気配が・・・・・・・

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

聞いた事のある声が二人分聞こえたので夜王ネギは冷たい目つきのまま顔を上げる。

「もっとスピード上げろよバカッ!」
「これで全力だバカッ! お前おぶってるせいでこっちは飛ぶのも保つのもやっとなんだからなッ!」
「あやつ等・・・・・・」

銀時を背中におぶった状態でナギがスクナに向かって飛びながら突っ込んでいく。
その光景に夜王ネギは唖然としていると、スクナは彼等に気付いたのか怪しく目を光らせた。

「ガァァァァァァァ!!!」
「あ、やべ気付かれたッ!」
「攻撃が来るぞッ! しっかり背中掴まってろッ!」
「ゴガァァァァァァァ!!!!」

ナギが叫んだ瞬間スクナは右腕を掲げ、彼等に向かって手を開く。

そして

「グオォォォォォォォ!!!」
「オイィィィィィ!! なんかかめはめ波みたいなの撃って来たぞアイツッ!」
「チッ! 振り落とされるなよッ!」


飛んでくるは何もかも飲み込んでしまいそうな光り輝く波動砲。
向かってくるその一撃に銀時がすっときょんな声を上げるとナギは舌打ちして急いで右に旋回、なんとかスクナの攻撃を避け切った。

「相変わらずバカみたいにデカイ奴撃ってくるぜ」
「危ねえな、敵も容易に近づけさせねえってか」
「このまま行ったら死ぬかもな、引き返すか?」
「アホかテメェ、つまんねえ冗談言ってんじゃねえよ」

こちらに振り向いて笑いかけて来るナギに向かって銀時はニヤリと笑みを浮かべた。

「かめはめ波が飛んでこようがギャリック砲が飛んでこようが、俺達はこのまま奴の懐に突っ込むだけだ」
「おうよッ!」

銀時の言葉にナギはテンション上がった状態で返事をすると、今度は口から光線を発射させようとしているスクナに真っ向から突っ込む。

「鬼神なんざ怒ったカミさんに比べれば屁でもねえんだよッ! カミさんの機嫌直すよりテメェを寝かせる方が何百倍も楽だっつうのッ!」
「あいつを上手く引きつけながら近づけッ! 絶対に後ろに下がるんじゃねえぞッ!」
「へッ! 俺はサウザンド・マスターと呼ばれた男だぜッ! この状況で引き下がるなんて選択はハナっからねえよッ!」
「グゴォォォォォォォ!!!」

さっき手から放った攻撃よりもずっとデカイ光線がスクナの口から放たれた。
今度はナギは左に旋回してすぐに上昇する。
スクナの波動砲はナギと銀時の足元ギリギリに通過していった。

「さあてどんどん行くぜッ! 絶対に手ぇ離すんじゃねえぞッ!」
「ったりめえだッ! 遮二無二に突き進めッ!」

死と隣り合わせの状況にいるにも関わらず二人の男は子供の様にはしゃいでいた。

それを祭壇から顔を上げて眺めていた夜王ネギはゆっくりと口を開く。

「己以外の為に自分の命をかけて戦うなどわしには到底理解出来ぬ事、人間とは実に馬鹿で愚かな生き物だ」

そう言った後、夜王ネギは口元に二ィッと笑みを広げた。





























「だからこそ面白い」







[7093] 第七十一訓 その長き続く因縁に終止符を下ろせ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/05/30 09:48
この戦いの元凶の一人である天ヶ崎千草を倒した銀時達。
そして今度は千草の最期の駒、リョウメンスクナノカミを倒す時が来た。

「大将ッ! あのバケモンがあの二人に引きつけられている隙にこちらに体を思いっきり見せちょるッ! 撃つなら今じゃッ!」

湖の上で銀時とナギがスクナに近づいて攻撃を避け続けているのを見て、珍しく陸奥が声を荒げて自分が背中を支えてあげている坂本の方へ叫ぶ。
彼女と一緒に坂本の背中を支えているネカネも額から汗をかきながら、彼の方へ顔を向けた。

「こんな距離から狙撃するなんて大丈夫なのッ!?」
「こういうのは感覚でやるもんじゃッ! 陸奥ッ! ネカネさんッ! わしの体が動かんようにしっかり支えてくれッ!」
「ええッ!」
「気張るんじゃぞ大将、ここで外したら全ての計画が塵と消えるけえの」
「そん時はそん時じゃッ! アハハハハッ!」

力強く返事をするネカネと警告してくる陸奥に坂本は豪快に笑った後、グッと持っているリボルバー型の銃を握り、標準を合わせる。
『山崩し』、山一つを楽に消し飛ばせるほどの威力を誇るこの銃ならスクナの弱点であるコアの箇所を破壊できるかもしれない。

「ハロがいれば楽なんじゃがの・・・・・・」
「アレはずっと前におんしが地球のキャバクラで、店の女に酒のノリであげてしまったじゃろうが」
「アハハハッ! そうじゃったのッ! 元気にしとるかのハロはッ!」

意味深な会話をする坂本と陸奥にネカネは口をへの字にして首を傾げる。

「何を話してるんですかあなた達・・・・・・」
「わかる人にはわかる、わからん人にはわからん話じゃ」
「は?」

ますます意味のわからない発言をする陸奥にネカネが混乱し始めていると、坂本は銃を両手で構え、サングラス越しに目を鋭く光らせながら暴れているスクナの心臓部分に狙いを定める。

「この長う戦もコレで終わりじゃ・・・・・・」

まばたきもせずに坂本はキッとスクナを睨みつける。

そして

「捉えたぜよッ!」

坂本はターゲットが絶好のポイントに入った瞬間。





一切の躊躇も見せずに引き金を引いた。























































その頃、銀時をおぶっていたナギはというと暴れまわりながらビームを乱射してくるスクナの攻撃を避けるのに必死だった。

「うおッ! マジで今のはヤバかったッ!」
「オメーしっかり避けろよッ! オメーがミスったら俺もおっ死ぬんだぞコラッ! テメェと仲良くあの世行くなんざ俺はゴメンだからなッ!」
「うるせえな俺だってテメェなんかと一緒に死にたくねえよッ! つうかテメェ少しはおぶられている事に感謝し・・・・・・」

自分の背中にしがみ付きながら抗議してくる銀時にナギが反論しようとした瞬間。

「ゴォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「ん? ってオイッ!なんだよアレッ!」
「・・・・・・」

突然スクナに胸に黒く巨大な稲妻が周り一帯に響き渡る様なド派手な音を立てながら直撃する。
ナギはその光景を見て驚くが銀時はその稲妻が飛んできた方向に目をやる。

数百メートル先で稲妻が放たれている山崩しの衝撃に歯を食いしばって耐えていると坂本と、それを懸命に支えるネカネと陸奥の姿が。

「やるじゃねえか」

遠くにいる三人を見てニヤッと笑った後、銀時はすぐにスクナの方へ顔を戻す。

当たった箇所は狙い通りの心臓部分。山崩しの稲妻は雄叫びを上げるスクナの体に徐々に食い込んでいき・・・・・・

「ゴガァァァァァァァァ!!!!!」

心臓のある箇所で大きく爆発した。
鬼神と言われ恐れられていたスクナもこの攻撃には顔と両手を上げて悲鳴を上げる。
そしてすぐにナギと銀時の方にも強烈な爆風と爆音が襲いかかった。

「くッ! すげえなコレッ! 落ちるなよッ!」
「俺の事はいいからさっさとアイツに近づけッ! 最後の鉄槌をかましてやらねえとッ!」
「ああ、わかってるぜッ!」

向かってくる爆風に耐えながらナギは銀時を背中におぶったままスクナの方へ突っ込む。

山崩しの直撃を受けたスクナはその場で口を開けたまま硬直、心臓の部分には巨大なクレーターが出来上がっていた。
そしてスクナの体の中にある“アレ”が、出来上がったクレーターから大きく露出している。
金色の光を放ちダイヤモンドの様な輝きを放つ2Mぐらいの球体。
ナギと銀時はそれを見て確信する。

「アレがコイツの動力源の“コア”か・・・・・・!」
「ここまで“モロ見え”だと全然ありがたみ感じねえよ、オイ」
「あん?」

軽い冗談を言いながら、銀時は自分をここまでおぶってくれたナギに後ろから話しかける。

「相棒、俺をあそこまで正確に投げれるか?」
「やれって言うんなら簡単に出来るぜ」
「じゃあいっちょ頼むわ」
「あいよ」

銀時の尋ねられた事にナギは快く返事をすると、すぐにおぶっている銀時の方に手を回して彼の胸倉を掴み。投げる態勢に入る。

「全力でぶん投げるぜ、その勢いを生かしてあのコアを派手にかち割ってくれよな」
「あったりめえだ、俺達十一人分の一撃。目覚めの悪い鬼にかましてもう一回寝かしつけてくる」

最後の確認を取った後、ナギと銀時は数秒間制止したまま、動かなくなっているスクナを見据える。

そして

「コイツでッ!」
「しめぇだァァァァァ!!!」

背負い投げの用法でナギは全力で銀時をスクナのコアのある穴に向かって弾丸の様にぶん投げる。
背中に差す野太刀、夕凪を抜きながら銀時は一気にコアの眠る穴に入っていき・・・・・・
































「チェストォォォォォォォォ!!!!」
「グッ! グガァァァァァァ!!!!!」

銀時の持つ夕凪が遂にスクナのコアを突き刺さったのであった。

「ガァァァァァ!! ガァァァァァァ!!」
「ぐぬッ! 動くんじゃねえコノヤローッ!」

生命原であるコアを傷付けられた瞬間、スクナが意識を取り戻して銀時がコアに刀を刺してる状態で大暴れする。

だが銀時は振り落とされない様、スクナの体に出来ている穴に両足を置いてふんばった。

そしてそのまま夕凪をコアの内部に突き進ませていく。

「さっさと壊れやがれェェェェェェェ!!!」
「グオォォォォォォォォ!!!!」

叫びながら銀時は夕凪をどんどんコアに突っ込んでいく。

しかし

「!!」

ガキィン!という音を立てて突然夕凪が鞘から真っ二つに折れたのだ。
元々は近衛詠春の刀であり、そこから刹那へそして銀時の元へやってきた刀だが、数多の激しい戦いのせいで遂に天寿を全うしてしまった様だ。
だが銀時は一瞬驚いた表情をするもすぐに鞘だけになった夕凪を腰に差して、代わりになる“得物”を抜く。

銀時の愛刀である木刀『洞爺湖』

「押し込んだらァァァァァァ!!!!」

刀身のみ残りコアに刺さっている夕凪に向かって銀時は洞爺湖でそれを一気に押し込んだ。
銀時の意志に応えるかのように、折れた筈の夕凪の刃がみるみるスクナのコアの内部へ入っていく。

「ゴガァァァァァァァ!!!!」
「こんな所でくたばるわけにはいかねえんだよ・・・・・・!」

耳をつんざくようなスクナの悲鳴を聞きながら、銀時は歯をむき出して木刀をぐっと力を込めて握る。

「グオォォォォォォォ!!!!」
「アイツ等残してッ! 死ぬわけにはいかねえんだコラァァァァァ!!!」

夕凪と洞爺湖、二つの刀が力を合わせた攻撃にコアにヒビが入っていく。
ピシピシと聞こえる鈍い音を聞いて銀時は全ての力を降り注ぐ。

そして

「万事屋銀ちゃんはッ! 永遠に不滅だァァァァァァ!!!!」

雄叫びを上げながら銀時は木刀を最後の押し込んだ瞬間。
















リョウメンスクナノカミの生命原であるコアがガラスの様に弾け飛んだ。

その瞬間、銀時は破壊したコアの衝撃波で後ろに思いっきり吹っ飛ぶ。

「うおッ!」
「グオォォォォォォォォォォォ!!!!!」

最期の雄叫びが如く力の限り吠えるスクナの咆哮を聞きながら銀時は湖へまっさかさまに落ちていき・・・・・・

「ぐぼッ!」

頭から水の中に突っ込む、それと同時にスクナも巨体を両手を広げて後ろに大きな音を立てて倒れた。

遂に銀時達は敵の切り札であったリョウメンスクナノカミを倒したのだ。
しかし銀時は勝利に浸っている暇は今は無い。

何故なら彼は・・・・・・

「がはぁッ! え?ちょッ! ここ深ッ! 足届かねえじゃんッ! やべぇ死ぬッ! 溺れ死ぬッ! ヘルプッ! ヘルプアンドコミュニケーションッ!!」

湖の中でバシャバシャと手を動かしながら銀時はパニックになりながら助けを求める。
しばらくしてナギが空から降りてきて彼の方に手を差し伸べた。

「泳げねえのかよお前ッ!」
「がはッ! がはッ! あ~死ぬかと思った・・・・・・・」

ナギの手をすぐに掴んだ銀時は、息を荒げながらようやく安堵の表情を浮かべた。

「終わったのか・・・・・・?」
「お前が終わらしたんだろうがカナヅチ・・・・・・ったく、ぶっ倒れたスクナの上に下ろすぞ、そこで休んどけ」
「ん? ああ、てか誰がカナヅチだコラ」


水びだしになって疲れている表情を浮かべている銀時はナギに悪態を突いた後。

彼にそのまま運ばれて大の字で倒れているスクナの上に来ると自分で飛び降りた。

「コイツもう動かねえよな・・・・・・」
「心配あるめえよ、このままずっと放置してたらコアが再生して蘇るかもしれねえが、詠春の奴がコイツをまた元通りに封印し直してくれるだろうし」
「そいつは良かった、俺はもう二度とこんなバケモンと戦いたくない」
「俺から見ればお前の方がバケモンだ、鳳仙倒したのってお前だろ?」

スクナの右足部分にドカッと座って休んでいる銀時にナギが尋ねると、銀時は口をへの字にしてだるそうに口を開いた。

「あんなんただの袋叩きだ、今俺達がやった事と変わんねえよ、俺だけの力じゃどうにもならなかった」
「お、意外に謙虚な所があるんだなお前」
「うるせえよ」

無愛想な表情で突っ返してくる銀時にナギはケラケラと笑い飛ばす。
なんとなくだが銀時という男がどういう人間なのかわかってきた。

そしてナギは彼へ背中を見せて歩きだす。

「お前はそこで休んでろ、今度は俺が戦う番だ」
「何? なッ!」
「・・・・・・お前にだけいいカッコさせられねえよ」

座った状態のまま銀時はスクナの頭部に立っている“ある人物”に目を見開いた。

ナギは“彼”に向かってコツコツと足音を立てて行きながらスクナの体の上を移動する。

腹の部分にナギが到達した瞬間、その男は頭部から降りてこちらへ歩み寄っていく。

「くだらん余興は楽しかったか、ナギ・・・・・・?」
「やれやれ、まさかラスボスが実の息子なんて悪い冗談だぜ・・・・・・」

見た目は正真正銘自分の息子。だが中身は死してなお自分の家族を引き裂く暴君。

夜王ネギ、口元に笑みを浮かべる息子を目の前にして父親であるナギは乾いた声で笑った。

本当の最終決戦はここからなのだ















































第七十一訓 その長き続く因縁に終止符を下ろせ




















銀時達のいる山の頂から少し下山した場所。

春雨の幹部、神威と闇の福音、エヴァンジェリンは未だ戦いを行っていた。

「まさかここまでタフだとは思わなかったな・・・・・・」
「ハハハ、こんな長い戦い久しぶりだネ」
「まだ疲れの色も見せないか・・・・・・・私と渡り合えるなんてコイツもかなりのチートだな・・・・・・・」

楽しげに笑っている神威に向かってエヴァは呆れたようにため息を突く。
さっきまでずっと一進一退の攻撃を繰り広げて来たが。
エヴァの魔法は神威にかすり傷程度しか作れず。
神威の攻撃を食らっても吸血鬼のエヴァはすぐに肉体再生。

終わりの見えない長い戦いがずっと続いていた。

「すげえなコレ・・・・・・コレが銀八がいつも見ている“世界”か・・・・・・」
「戦いの世界・・・・・・あの人も今頃・・・・・・」

静かに対峙している神威とエヴァに顔を向けながら。
二人の戦いをずっと観戦していた千雨とあやかポツリと呟き、山の頂の方へ顔を上げる。

すると山の頂にあった光が突然フッと消えた。

「あれ? 何があったんだ?」
「光が消えましたわね・・・・・・・銀さん達に何かあったんでしょうか」
「むしろ光ってた事自体異常だったからな・・・・・・・その光が消えたとすると・・・・・・」
「光を出す存在が無くなったという事じゃな」

山の頂に目を凝らして眺めている千雨とあやかに向かって後ろから彼女達と一緒にここに残ったアリカが冷静に口を開く。

「もしかしたら銀時とナギがスクナを倒したのかもしれん」
「マジかよッ!」
「てことは銀さん達が高杉さん達に勝ったんですわねッ!」
「俺がどうしたって・・・・・・・?」
「「「!!」」」

アリカの話を聞いて千雨とあやかが表情をほころばせていると、突然低い声がこちらに向かって聞こえて来る。
千雨とあやか、そしてアリカが慌ててそちらに視線を向けると。

「なんか聞こえると思って来てみたら・・・・・・・女子供がこんな所でなにうろついてんだ・・・・・・」
「高杉晋助・・・・・・・! 貴様何故こんな所に・・・・・・・!」
「えッ! この人があの・・・・・!」
「高杉・・・・・・てことはコイツが銀八と戦っている相手の親玉・・・・・・!」

妖艶な女性の着物を着飾り左目に包帯を巻く一人の男。
そして両腕には赤髪の女の子を抱えている。
銀時達が最も倒さなければいけない男、高杉晋助がニタリと笑みを浮かべながら茂みの中から現れた。

高杉は驚く三人に一瞥した後、ふと神威とエヴァの方へ目を向ける。

「神威、どうやら鬼神はやられちまったようだぜ」
「あり? もうやられたの? つまんないなぁ」

笑顔のままそんな事をぼやく神威に高杉は両腕に赤髪の少女、アーニャを抱えたままフッと鼻で笑う。

「拍子抜けだぜ全く。最強の鬼神だと聞いたから協力してやったのによ、結局は俺には必要ねえモンだった様だ」
「ふ~ん」
「貴様は高杉か・・・・・・」
「ん?」

神威と話している最中、突然鋭い口調で話しかけて来る声が聞こえたので高杉はそちらに目をやる。
神威の相手をしているエヴァが目を細めてこちらを睨みつけていた。

「桜咲刹那の一件以来だな・・・・・・・」
「・・・・・・銀時にくっついてた吸血鬼か」

見た目からは到底思えないほどの威圧感を放ってくるエヴァに高杉は笑みを浮かべたまま見据えると、彼女は彼が両手に見知らぬ少女を抱きかかえている事に気付く。

「なんだそのガキは? そんなガキが貴様の仲間か?」
「テメェには関係ねえ事だ」
「フン」

素っ気なく返してくる高杉にエヴァは意地の悪い笑みを見せた。

「成程、貴様にもそういうものがあるのか・・・・・・・」
「くだらねえ推測してんじゃねえ、コイツにはまだ利用価値があるから生かしておいてやってるだけだ」
「そうだったんだ、俺はてっきりアンタはその子の保護者かなんかだと思ってたよ、アンタはいつもその子と一緒だったし・・・・・・・」
「あ・・・・・・?」

会話に割り込んで来た神威の方に目を動かして睨みつける高杉。

自分とアーニャはそんな関係では無いとその目がものがたっている様だった。

神威は高杉に目を開いてニヤッと笑った後、ゴソゴソとポケットからある物を取り出しエヴァの方へ振り向いて“それ”をポイと彼女の目の前に投げ捨てる。

アリカの首に付いている首輪型の爆弾を取り外す為に必要な鍵だ。

「悪いけど俺は行かなきゃいけない場所がある。もう十分楽しかったしそいつはあげるよ」
「ん? なんだこの鍵?」
「じゃあネ」
「っておいッ! 何処へ行くつもりだッ! まだ私と決着をつけてないだろッ!」

さっきまで好戦的に戦っていたにも関わらず、急に自分との戦いを放棄して何処かへ行こうとする神威にエヴァは慌てて叫ぶ。
すると神威はいつも通りにニコニコした表情で振り返り。

「鬼さんが死んじゃったら後は“あの人とあの子”があの男と戦う番だ。俺にとってそれだけは見逃せない」
「あの人とあの子・・・・・・・?」
「君と戦えて楽しかったよ、それと・・・・・・」

首を傾げているエヴァに向かって笑いかけた後、チラッと神威はアリカの方へ目を動かす。

「アンタに一つ教えて上げる」
「なんじゃ・・・・・・・貴様などと喋りたくないから手短に言え・・・・・・」

物凄い不機嫌そうな表情をするアリカに神威はフフンと笑う。

「これから起こる戦いを、アンタは絶対に立ち会わなきゃいけない」
「・・・・・・どういう意味じゃ・・・・・・?」
「父親の力だけじゃあの子を救う事は出来ない。母親のアンタも必要なんだ」
「・・・・・・」

意味深、そして不可解な事を言う神威をアリカはジッとみる。
一体この男は何を考えて・・・・・・

「神威、貴様は何を企んでいるのじゃ・・・・・・? お主の目的はあの子を利用して夜王鳳仙を復活させる事だけじゃなかったのか?」
「俺はハナっから一つの目的をやり遂げる事しか考えていない」

目を見開いて神威は不敵に笑う。

「どんな事をしてでもあの子を強くさせる事、俺がやりたいのはそれだけだ」
「あの子を一度殺す事もか・・・・・・」
「必要だったから、『死』を覚えればあの子は己の限界を超えて新しい力を手にいれられる。屈強なる強さを求めるならそれ程の代償を払わないといけない。ただ戦い方を教わって手に入れる強さなんてたかが知れているだろ? 『与えられる』より『奪い取る』ってネ」
「・・・・・・成程、それが貴様の持論じゃったか・・・・・・馬鹿げていて言葉も出てこない」
「わかってもらわなくていいよ、俺は俺のやり方、俺の育て方がある」

そう言って神威は呆れた目つきでこっちに視線を向けるアリカに手を振った後、山の頂の方へ踵を返した。

「俺は先に行ってるよ、あの男の戦いも見たいからネ、鳳仙の器となったあの子とどう戦うか見ものだ」
「神威ッ!」
「ちゃんと来てよネ、“お母さん”?」

無邪気に微笑みながら神威は茂みの中へ飲み込まれるように行ってしまった。
残されたアリカは呆然と彼が行った方向を見送る。

「わらわには理解出来ない・・・・・・奴がそこまでしてあの子を強くさせようとする事が」

うつむきながら小さな声でアリカが呟いていると、傍から気味の悪い男の笑い声が。

「・・・・・・じゃあ俺はそろそろ帰るとするか、こんな所にいても時間の無駄だしな」
「高杉・・・・・・」
「そのガキ共と一緒にいる所から見て、どうやらテメェは春雨から手を切ったらしいな。ま、見逃してやるよ、お前さんへの興味はもうねえからな・・・・・・」

目の前にいるアリカに向かって高杉は相変わらずの不気味な笑みを浮かべる。
もはや彼女の存在など眼中にないらしい。

「神威からお前の事を聞いたからわざわざここに呼んでやったのに、テメェは飛んだ期待外れだったぜ・・・・・・」
「貴様の様な獣に期待を持たれても嬉しくもなんともない」
「クックック・・・・・・そうかい」

キッパリと宣言して睨みつけて来るアリカに高杉はニヤニヤしながら視線を返す。

神威もそうだがこの男の考えもわからない・・・・・・

アリカがそう肌に感じていると、高杉の方は千雨とあやか、そしてさっき神威が投げ捨てた鍵を拾って首を傾げているエヴァの方へ振り向いた。

「こんな奴等連れてきてもただの足枷にしかならねえ、銀時は相変わらずバカだなぁ」
「お前があいつの何を知ってんだよ・・・・・・」
「あ?」
「千雨さん・・・・・・!」

嘲り笑いを浮かべ自分達をただの『足枷』と称して来た高杉に、あやかの制止を振り切って千雨が目をキッとさせて睨みつける。

「お前がアイツの幼馴染だとか戦友だったとかどうでもいいんだよ、コレ以上アイツに近づくな。今アイツの隣にいるのは私達なんだよ」
「クックック・・・・・・コイツは傑作だぜ」
「お前・・・・・・!」
「千雨さん落ち着いて・・・・・・!」

笑い飛ばされた事に腹が立った様子で、千雨は思わず彼に一歩歩み寄ろうとするもあやかが慌てて彼女の肩を持って止める。
すると高杉は笑うのを止めて千雨の方へ顔を上げた。

「何も知らないクセに調子乗るんじゃねえよガキ」
「!」
「幼馴染だとか戦友だとか、そんな言葉で表せられるようなモンじゃねえんだよ俺達は」

さっきまでの不気味な笑みから一転して禍々しい眼光を光らせる高杉。
それと共に伝わって来る殺気。千雨はそんな彼にゾクッとする恐怖感を覚える。

「アイツの隣にいるのがお前等だ? バカも休み休み言え、アイツの隣にいるのは今も昔も変わっちゃいねえ。アイツの隣に立っているのは・・・・・・“あの人”ただ一人だ」
「あの人・・・・・・?」

あの人を知らない千雨はそれを聞いて眉をひそめる。
するとあやかは顎に手を当てながら前に銀時と二人でファミレスで聞いたある男を思い出した。

「もしかして・・・・・・親がいなかった銀さんを拾って育ててくれた人ですか・・・・・・?」
「・・・・・・テメェ何処でそれ知った?」
「前に銀さんと一緒にいる時に話がチラッと、詳しくは言いませんでしたが・・・・・・」
「フン」

恐れながらも面と向かって口を開いたあやかに、不機嫌そうに高杉は鼻を鳴らした。

「それ以上余計な詮索すんじゃねえぞ、お前等如きが知っていいお人じゃねえんだ」
「ほう、獣のお前でも敬意を払う人間がいるのだな」

高杉の態度から見て『あの人』とは銀時はおろか彼にとっても大切な存在らしい。
それを察知したエヴァは、彼に対して何の恐怖も感じずに嘲笑を浮かべる。

「あの銀時を拾った人間か・・・・・・フフ、一体どんな奴だったか興味深いな。ま、あの男を育て上げたのだから相当の人間、もしくは変わり者なのだろうな」
「・・・・・・・吸血鬼」
「私の名前はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」

吸血鬼とだけ呼称された事にムッとした表情でエヴァが自分の名前を名乗ると、高杉はギロリと彼女を睨みつけながらニタリと笑う。

「・・・・・・ここで死にてぇのか・・・・・・?」
「!!」

今までのとは比べれらい程の殺意が向けられた事にエヴァの表情はこわばる。
神威の放つ殺気とは違う、こちらの方は禍々しく、そしてドス黒い。
常人の人間なら向けられただけでその場で崩れ落ちる程の威圧感さえ覚える。

(私が吸血鬼と知っていてもなお、この男は絶対に殺せるという自信を持っているのか・・・・・・)

自惚れでも虚勢でもない。本当に自分を殺そうとしている鋭い眼光。
何百年も生きて来たエヴァでさえそんな男に言葉が出なかった。
しばらくして高杉はアーニャを両腕に抱きかかえながら自分の着物の裾から突然おかし物を取り出した。
野球ボールぐらいのサイズであり、機械物が所々に付けられた鮮やかに輝く蒼色の石・・・・・・・

「お前等と会話していても時間の無駄だ。俺はとっとと退散させてもらうとするぜ」
「なんだそれは・・・・・・?」

今まで見た事のない物体にエヴァが不審そうにそれを眺めていると、アリカはボソッと小さな声で高杉に尋ねる

「もしや・・・・・・春雨の『物体転移装置』か・・・・・・・?」
「御名答・・・・・・さすが春雨の幹部だな・・・・・・」
「物体転移装置?」
「わらわも詳しくは知らんが・・・・・・現実に存在する場所、そこに行きたいと念じるだけでその場所に転移出来る装置じゃ」
「んなッ!? そんなモンがこの世に実在するのかよッ!」

アリカの説明を聞いて千雨が仰天する。
そんな漫画やアニメの世界にある様なアイテムが実在するだと?

「わらわもなんでそんな高性能な物が春雨が持っているのかわからん・・・・・・何故かは最近、春雨はまるで遠い“未来”から来たような高度な文明の物を数多く所持するようになったのじゃ・・・・・・」

何故春雨があらゆる場所を自由自在に行けるという“遠い未来からの贈り物”の様な物を所持しているのかは、春雨の幹部であるアリカでさえわからない。

高杉はそんな彼女達の反応を見て満足げに笑うと踵を返してアーニャと共に何処かへ行こうとする。

「コイツのおかげで俺は何処へでも逃げれるってこった。お前等、銀時によろしく伝えておいてくれ、今度は俺達にもっとふさわしい舞台で派手に暴れようぜってな」
「待てッ! 銀時にとって一番の障害である貴様を逃がすわけにはいかんッ!」
「クックック・・・・・・」
「おいッ!」

歩き去ろうとする高杉に向かってエヴァは慌てて彼に近づいて手を延ばすも。

高杉は笑い声を残しながら煙の様にフッと消え、エヴァの手はスカッと空を切るだけだった。

「逃がしたか・・・・・・・くッ!」
「・・・・・・・あんな奴が銀八の・・・・・・」

みすみす逃がしてしまった事にエヴァが悔しそうに地面を蹴ッ飛ばすと、千雨は歯がゆそうに呟く。
一般人の自分でもわかる、あの男は危険過ぎるのだ。

だがそんな二人とは違い、あやかはある一つの事に疑問を抱いていた。

「あの人が両腕に抱き抱えていた女の子は一体何者だったのでしょう?」
「高杉によって狂気と憎しみに染まってしまった哀れな少女じゃ」
「・・・・・・・それってどういう意味ですか?」

尋ねて来たあやかにアリカは山の頂へ目を向けながらそっと話しかける。

「あの男は人の心を操るのが長けている。親を失った少女一人を洗脳して自分の道具にする事など容易であろう」
「そんな・・・・・まだあんなに小さい子でしたのに・・・・・・」
「情もクソもあるわけなかろうあの男に、例え女子供であろうが利用できる者は徹底的に利用し、使えなくなったら即斬り捨てる。それが高杉晋助、人の皮を被った獣じゃ」
「ひどい・・・・・・」

高杉の話を聞いてあやかは酷く悲しそうな表情うつむく。
あの少女も、ただ彼に利用されているだけの存在なのだろうか・・・・・・?

あやかがそんな事を考えていると、突如アリカが彼女達三人の方へ顔を向けた。

「それでお主等はこれからどうするのじゃ? ここで銀時の帰りを待つか? それともわらわと共にあそこへ行くか?」

そう言ってアリカは山の頂を指差す。
あそこにはきっと銀時達やナギもいる。

「神威の言う事を聞くのは非常に癪じゃがわらわはあそこへ行く。夫と息子があそこで待っているのじゃ、妻として母親としてわらわも行かなければ」
「私も一緒に行く、ここで銀八の帰りを待ってるなんて苦痛以外の何物でもねえからな・・・・・・」
「私も行きますわ、銀さんがあそこにいるんですもの。エヴァさんももちろん一緒に行きますわよね?」
「・・・・・・・」
「エヴァさん?」

アリカの誘いに千雨は髪を掻き毟りながらだるそうに呟く。
あやかも彼女と一緒に頂きへ登る事を賛成し、後ろにいるエヴァに振り返って話しかけるが、彼女は持っている黒い鍵を手でクルクル回しながらジーっと見て聞く耳持たずだった。

「何故あの男は私にこんなものを差し出したのだ? 一体何の鍵なのだこれは?」
「何やってるんですかエヴァさん、それは彼女の首輪を外す為の大事な鍵ですわ、変にいじらないで下さい、壊れたらどうするんですの」
「貴様は相変わらず腹が立つな雪広あやか、いつ貴様は私のお母さんになった・・・・・・で? 誰の首輪を外すというのだ?」

刺々しいあやかの言い方にエヴァがブスっとした表情で睨んだ後、鍵をブラブラさせたまま口を開く。
するとアリカが少し手を上げたまま彼女に近づいて行った。

「ああ、わらわじゃ。礼を言うぞエヴァ、お主がいなかったら神威から鍵を奪えなかったかもしれんからな」
「ん?」
「どうした?」

やってきたアリカを見てエヴァは思いっきり怪訝そうに彼女を見つめる。
そんな彼女の態度にアリカが首を傾げていると・・・・・・

「何故アリカ・スプリングフィールドがこんな所におるのだ・・・・・・?」
「・・・・・・・まさかお主、わらわとずっと一緒にいたにも関わらず気付かなかったのか・・・・・・?」
「うむ、乳のデカイ女がいるという気配はあったのだがな」

真顔のままそんな事を平気で言うエヴァにアリカはハァ~と重いため息を突いた。

「昔から何も変わっておらんの・・・・・・・」
「うむ、私はいつだって私だ」

誇らしげに胸を張るエヴァにアリカは言葉も出ない。

数十年ぶりに出会った吸血鬼は

肉体的にも精神的にも全く変わっていない様だった

































































エヴァやアリカ達が山へ登り始めた頃、その頂上では今まさに因縁の戦いが始まろうとしていた。

銀時達がやっとの思いで倒したスクナの上に立つのはナギと、その息子のネギの体を奪っている夜王鳳仙だ。

それを近くの岸で他のメンバー達と一緒に眺めていた新八は目を見開く。

「やっと化け物を倒したのに今度は一体・・・・・・それにあの子、なんだかナギさんに似ている・・・・・・」
「そりゃそうですよあの子はナギとアリカ姫の大事な一人息子のネギ君なんですからね」
「息子・・・・・・! ってあの人子供いたんですかッ!?」
「ナギだって結婚してるんですから子供ぐらいいますよ」

何時の間にか隣に立って説明してくれたアルに新八はすぐに彼の方へ向いて驚く。
アルはさらに話を続けた。

「今彼の中に宿る魂はナギの息子のネギ君の魂では無いですけどね、あれは間違いなく夜王鳳仙、見た目が変わってもあの強大な覇気はどうみても彼の物です。夜王、もしくはそれに近しい人物が何かしらの術をネギ君に施して、彼の肉体を奪ってこの世に蘇った・・・・・・そんなシナリオですかね?」
「鳳仙・・・・・・! 銀さんが倒すまでずっと吉原を支配していたあの夜兎の事ですかッ!? ど、どうやってあの鳳仙が蘇ったんですかッ!? それにどうしてあの人がナギさんをッ!?」
「蘇った方法はわかりませんが、彼がナギを怨んでるのは昔、ナギと戦って苦渋を飲まされた事が魂胆でしょうね。その頃からナギと夜王は深い因縁があるんですよ」
「・・・・・・復活した夜王の目的はナギさんを倒す事・・・・・・しかもあの人の息子の体を使って・・・・・・」

夜王とナギの決して切れなかった長き因縁。それを知った新八はあまりにも非現実的な話に頭がこんがらがる。

死んだ人間が蘇る・・・・・・憎んでいる相手の息子の体を巣にして

二人の話しを傍で聞いていた神楽はスクナの上で対峙している親子を眺めながら彼等に口を開く。

「てことはアイツはテメーのガキと戦う為にあそこに立ってるアルか?」
「神楽ちゃん?」
「そうですね・・・・・・中身が夜王であれ肉体は自分にとってかけがえのない息子。本来なら戦いたくないでしょ彼だって父親なんですから」
「・・・・・・」

アルの話を黙って耳に入れる神楽。
父親と息子の命を賭けた戦い。彼女にとってそれは思い入れのある事だからだ。

「だが父親だからこそ息子と戦わねばならない時もある」
「ヅラ・・・・・・」

思いつめた表情をする神楽に桂が腕を組みながら一歩歩み寄った。

「ナギ殿は少年を殺す為に戦うのではない、救う為に戦うのだ。それが血の繋がった家族の絆というもの。この戦いはナギ殿にとって絶対にゆずれない戦いになのであろう、俺達他人が首突っ込める事ではない」
「桂さん・・・・・・てことは僕達はここで黙って見てる事しか・・・・・・」
「それしかないかもしれんな・・・・・・」

悔しそうな表情で尋ねて来る新八に桂は難しい表情をする。
これはいわばナギと夜王ネギの一騎打ち。自分達が足を踏み込んではいけない戦いだ。
するとさっきまでナギの話をしていたアルが新八が手に持っているある物に気付く。

「その杖・・・・・・何処で拾ったんですか?」
「え? これはこの山登る時に茂みの中から拾った物ですけど?」
「・・・・・・・ふむ」

新八が持っている杖を眺めながらアルは面白い物を見つけたように無邪気に笑った。

「どうやら影ながらあの人の力になれるかもしれませんね、私達全員の絆が」









































夜王の器となったネギと、父親であるナギは静かに視線を逸らさずに対峙していた。

これは一対一の戦い、周りにいるのは黙って座っている銀時のみ。
父親としてのケリを着ける為に、ナギはグッと歯を食いしばった。

「ネギよぉ、お前はやっぱ俺の子だな。厄介な奴に好かれちまう所は俺そっくりだぜ」
「貴様の息子はわしの中にいる・・・・・・」

バサッとローブをなびかせ夜王ネギはナギに向かってせせら笑う。

「救いたければわしを殺せ、それ意外に貴様の道はない・・・・・・」
「ケ、言われるまでもねえっつうの。すぐにあの世にまた帰してやるぜ」

キッと夜王を睨みつけた後、ナギは拳にグッと力を込めた。
逃げる道など無いし逃げる必要も無い。
自分で決めた運命を乗り越える為に自分はここに来たのだから。

「・・・・・・一人で大丈夫なのかお前?」
「手助けなんざいらねえよ、コイツは俺一人で決める」

後ろにいる銀時に話しかけられてもナギは振り向かずにキッパリと言う。

「ネギがこうなっちまったのも俺の罪だ、だから俺の罪は俺以外の奴には背負わせない。俺だけの力でコイツをぶっ倒す」
「・・・・・・」
「お前等にコレ以上世話かけさせられねえんだよ・・・・・・」

そう言い残すとナギは神妙な面持ちをしている銀時を残して前に進んだ。

「テメーのケツはテメーで拭くモンだろ?」

目の前に立つは恐らく今まで自分が戦った中で最も困難を極めるであろう相手。
夜王ネギ。最も大切な存在と最も強敵な存在が融合した存在。

ナギは両手に電撃を溜めながら夜王ネギはポキリと拳を鳴らしてニヤリと笑う。

そして

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

スクナの頭部に立っている夜王ネギの方へナギは雄叫びを上げながら走った。

「今日ここで貴様との因縁の鎖は断ち切られる・・・・・・かかってこいナギッ!」
「テメェとの腐れ縁はここで終わりだッ! 夜王ッ! テメェは俺がぶっ倒すッ!」

両手を大きく開いて待ち構える夜兎の王にナギは飛びかかる。

ここで全てを終わらせる為に・・・・・・










最終決戦が遂に火蓋を切って落とされた。








[7093] 第七十二訓 宇宙一最強の魔法使いは宇宙一馬鹿な親父
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/06/06 14:32


関西呪術協会本部の屋敷はやけに静かになっていた。
大広に転がるは天人の屍の山。沖田はその山の頂上にドサッと座ってフ~と一呼吸。

「やっと終わったぜ」
「隊長ッ!」
「あ?」

屍の上で休憩している沖田の背後から一人の隊士が近づいて来た。
瓶眼鏡、角刈りが印象的の一番隊に配属されている神山だ。

「やりましたな隊長ッ! 隊長の熱き奮闘に敵は完全壊滅ッ! そしてッ! 隊長と自分の華麗なるコンビネーションが勝利に導いたッスッ!」
「いやお前俺と一緒に戦ってねえだろ、つうかお前何処いた?」
「ところで隊長は何故にそんな所で座っておられるのですかッ!」
「聞けよ人の話」
「はッ! まさか外道な春雨の連中に尻を刺され負傷したのですかッ!? それともケツですかッ!? アナルですかッ!? アヌスですかッ!? 肛門ですかッ!?」
「結局全部ケツじゃねえか、つうか話聞けつってんだろ」

大きな声で尻の通称を連発する神山に沖田は冷たく返す。彼等がそんな事をしていると近づいてくる一人の影が

「ご主人様になれなれしく喋ってんじゃないわよォォォォ!!!」
「うおーっとッ!」

いきなり飛んで来た長い鎖を神山は上体を思いっきり逸らして避ける。何事かと彼はそちらに目をやると、そこには沖田が数日前に調教して手駒にしていた柿崎美砂が、自分の首輪に付いている長い鎖をブンブン振り回しながら威嚇していた。

「ご主人様は私だけの神なんだからッ!」
「お前の神になった覚えはねえんだけど?」
「なんスかこの娘ッ!! 自分のライバルポジションのキャラッスかッ!? 隊長の隣は誰にも渡さないッスよッ!」
「いやどっちも俺の隣に置かせねえから、お前等置くんなら冷蔵庫でも置いとくわ」
「勝負ッス小娘ッ! 隊長の一番部下はこの俺ッスッ!」
「やってやるわよッ! この牛乳瓶ッ!」
「神様、どうかこの生き物達をジャッジメントで潰して下さい」

後ろでギャーギャーと刀と鎖で戦っている神山と美砂の方へ目もくれず、天井を眺めながらポツリと沖田は呟く。
するとそんな彼の所に・・・・・・・

「・・・・・・お疲れ」
「・・・・・・キャラに合わねえ言葉使うんじゃねえよ」
「何よッ! 私だって労いの言葉ぐらいアンタに掛けてやるわよッ! ありがたく思いなさいよッ!」
「なんだよその労いの掛け方。まったく労らってねえじゃねえか」

やってきたアスナは沖田に優しく言葉を掛けるがすぐに元に戻ったので沖田は呆れたようにジト目でツッコむ。
そしてアスナはおもむろに彼が座っている所に目をやる。

「アンタ、自分が調教したガキの上に座ってるわよ」
「お、本当だ、コイツは気付かなかった、まあいいや」

天人の屍に交じって白目をむいて倒れている月詠にやっと気付いた沖田だが、別に問題なさそうに彼女の頭の上に尻を乗せて一息つく。

「もうウチをどうとでも好きに扱っていいです~~~・・・・・・・」
「女の子にこんな事するなんてアンタ本当に最悪ね」
「褒め言葉として受け取っておくぜぃ」
















































沖田とアスナが休んでいる頃、土方はタバコを咥えたまま辺りを詮索していた。
辺りは屍だらけもう生き残っている天人は一人もいない。

「もう敵は全員叩きつけたようだな、ウチの方も負傷者はいるも死んだ奴はゼロ。今回は運が味方した様だ」
「十四郎さん・・・・・・」
「ん?」

名前を呼ばれたので土方は振り返ると、そこには怯えたような目つきでこっちを見ているのどかがいた。
無理も無い、今日は数えきれないほどの死体を見たのだから

「だ、大丈夫ですか?」
「そりゃこっちのセリフだ、あまり死体を眺めるなよトラウマになる」
「は、はい」
「まだガキのお前等に、こういうモンは見せたくなかったんだがな・・・・・・」


タバコを深々と吸いながら土方が呟くと、のどかは恐れながらも彼の隣に歩み寄っていく。

「・・・・・・・十四郎さんの戦いはこれからも続くんですよね?」
「俺は刀持って死ぬまで戦う事しか出来ねえよ、今回は生き残れたが次はどうなるかはわかんねえけどな」

デリカシーのない土方の一言にのどかは顔をムッとさせる。

「そういう事言うの止めて下さい、私はずっと十四郎さんには生きていて欲しいんです・・・・・・」
「・・・・・・わりい、悪い事言っちまったな、今度マヨネーズオゴるから許してくれ」
「マヨネーズはいいですから私の前では死ぬかもしれないとかそういう事言うの止めて下さいね? 約束ですよ?」
「わかったわかった、なんかお前急に気が強くなったな? なんか変なモンでも食ったか?」
「わ、私だって怒る時は怒ります!」
「あ、ああ・・・・・・」

いきなり両腕を振ってプンスカ怒鳴って来るのどかの気圧に土方は思わず一歩後ずさりする。
のどかは息を荒げながら自分と落ち着かせると、彼に向かって口を開けた。

「私は・・・・・・・」

のどかは土方の目をジッと覗きこむ。

「どんな事があってもあなたの傍にいると誓います、私の命が続く限り」
「・・・・・・」
「時間はかかると思います、『死』をこんな近くで見送らなきゃいけないなんて・・・・・・」

そう言ってのどかは死んだ天人達の方へ向いて目をつぶり両手を合わせる。
どんな敵であれ彼らもまた一つの生命を持った生き物だったのだ。
死んでいった彼等に対して自分が出来る事はあの世に行ける様祈るしか出来ない。

「こういう覚悟を決めなきゃいけないのも、私の役目ですから」
「・・・・・・殺した俺が言うのもなんだが、お前の祈りなら安心してコイツ等もあの世に逝けるさ」
「『死』を見るのは絶対に慣れる事じゃないのはわかってます。十四郎さんがその死と隣り合わせなのも。だからこそ・・・・・・私はあなたとの時間を最期まで一緒に過ごしたいんです・・・・・・」
「・・・・・・」

恐怖に打ち勝とうする強い意志を持つのどかの目を見て、土方は自分の頭を手で押さえた。

「お前は強えな・・・・・・・」
「そ、そんな・・・・・・強いだなんて私・・・・・・刹那さんみたいに刀も持てないし・・・・・・」
「そういう強さじゃねえんだよ、俺と刹那とは違う強さをお前は誰よりも大きく持ってる」
「私が・・・・・・ですか?」
「ああ」

タバコをポケットにあった携帯灰皿に入れた後、土方は立ち上がり首を傾げているのどかにそっぽを向いて彼女に聞こえない様ボソッと呟いた。

「だから俺は惚れちまったのかもしれねえな」
































土方とのどかが一緒にいる一方で、近藤もずっと背中におんぶしていた夕映を下ろして、他の隊士達に指示を行っていた。

「負傷した隊士は女中達に手当てしてもらえッ! 五体満足の奴等は天人の屍を回収しろッ! ここの屋敷の主が丁重に葬ってくれるらしいッ!」
「わかりやしたッ!」

近藤が部下達に伝えている指示は負傷した隊士の治療と自分達が殺した天人の遺体回収。何時もよりずっと真面目な表情で部下達に命令している彼の表情を夕映は隣でジーっと見つめていた。
すると近藤は視線に気付いたのか彼女の方へ振り向く。

「・・・・・・他の女の子達は何処にいったんだ?」
「あそこですよ」

夕映はすぐに自分のクラスメイトがいる所を指さす。

「もうヤダ・・・・・・こんな体験もうしたくない・・・・・・早く寮に帰って同人の続き掻きたい・・・・・・銀×土の」
「ハハハ、この光景はさすがに私でも撮れないわ・・・・・・」
「右目が無いと歩きづらい・・・・・・あれ? 土方とのどかさんあんな所で何して・・・・・・」

しゃがみ込んでブツブツと現実逃避しているハルナと、目の前に広がる惨状に苦笑するしかない和美。
そして失った右目の部分に包帯をグルグル巻きにしている刹那がフラフラと歩いていた。

「あなた達のおかげでみんな問題無く健康体です。刹那さんはなんか目ん玉一個取れた様ですが」
「無事ならばそれでいいさ え? 目ん玉取れた?」

三人の生徒を一瞥した後近藤はうんうんと頷いた後、夕映が普通に混ぜた言葉に目をぱちくりさせる。
目ん玉取れた状態は健康体では無いのでは・・・・・・?

「局長、この度の戦の勝利おめでとうございます」
「ん? おお山崎」

考え事していた近藤に山崎が後ろで楓とクーフェイを連れて、更に隣には茶々丸、自分の肩にはチャチャゼロを乗せているというなんとも賑やかな集団で戻って来た。
嬉しそうに山崎が敬礼すると近藤は頬笑みながら彼の腕を見る。
包帯が巻かれている状態だが、彼の状態から見てそこまで深くは無いらしい。

「怪我の方は問題なさそうだな」
「はい、茶々丸さんが俺の周りにいる敵を全滅させたんで誰にも襲われる事無く救護班の所へ直行できました」
「私は山崎さんの安全の確保を最重要に行動していただけです」
「・・・・・・容赦なく撃ちまくっていたのは俺の気のせい?」

淡々と説明を述べる茶々丸に山崎が虚ろな目でツッコむと今度は肩に乗っかっているチャチャゼロが

「オイ、オレモタクサン斬リ殺シタゼ」
「ちょっと目を放してた隙に俺の仲間何回も殺しかけていたけどね、バーサーカー状態で暴れないで頼むから」
「凄いな山崎、お前何時の前に腹話術なんて覚えたんだ? 今度俺にも教えてくれ」
「違います局長、コレ生きてますから」

真顔で山崎とチャチャゼロの会話を見ながら感心したように頷く近藤に、山崎はすぐにチャチャゼロを指差して指摘する。
長年地味に生きていた山崎にそんな能力など無い。

「ガキ共もよくやったな、俺達真撰組に負けないぐらいの活躍ぶりだったぞ」

気を取り直して近藤は山崎の後ろにいる楓とクーフェイに話しかける。するとクーフェイははしゃいだ様子で

「おおッ! ゴリラに褒められたアルッ!」
「あ~もうだから俺はnotゴリラだってッ! ちょっとゴリラに似てる人間なだけなのッ! コレ以上俺の精神を貫く言葉を言うのは止めてッ!」
「礼はバナナでござるか?」
「ゴリラ繋がりコンボ止めろッ! それにバナナはゴリラの好物だッ! 誰にも渡さんッ!」
「局長、ゴリラの気持ち入ってますよ」
「ていうかあなた元々バナナ持ってませんよね」

クーフェイと楓に向かって吠える近藤に山崎と夕映が冷静に呟く。
そんな事をしていると夕映はある事に気付いた。

「そういえば龍宮さんは何処ですか?」
「およ? 龍宮ならあそこでござるよ?」

二人と一緒に戦っていた筈の龍宮がいない、夕映が疑問を感じていると楓はすぐに彼女がいる方向へ指さした。

遠くの方で床に寝転がりながら苦しそうに悶絶してる

「龍宮が言うには『先生禁断症状』が起きてしまい、早く銀時殿に罵声やら暴力を貰わないと死ぬらしいでござる」
「何その気持ち悪い病気ッ!」
「ぐはぁぁぁぁぁ!! 早く先生殴ってくれッ! 踏んでくれッ! 冷たい池にぶん投げてくれェェェェェ!!!」
「気持ち悪い病気のにかかってる上にすっげえ気持ち悪い事連呼してんですけどッ!? 早くあの子を病院に行かせてあげてッ! 頭専門のッ!」

周りの隊士が気味が悪そうに見てるにも関わらず大声を上げながらのたうち回っている龍宮を見て山崎が力強く叫ぶ。
そして近藤はそんな彼女の姿を見てうんうんと頷いて

「俺はあの女の気持ちは痛いほどわかるぞ、愛する者と離ればなれになる事は死ぬほどツライ。俺も『お妙さん禁断症状』という不治の病を患っているからな」
「共感しないで下さい局長、ていうか人の上に立つ存在のアンタはもう治して下さい頼むから」
「きっとお妙さんは俺が家に来ないから心配して涙を流しているに違いない、ああ・・・・・・早く枕を涙で濡らしながら寝ているあの人の元へ行ってあげたい・・・・・・」
「普通に寝てますよきっと、女の子がいる前で捏造120%の妄想は止めて下さい」

腰をクネクネさせながら不気味極まりない動きを行う近藤に山崎は冷めた表情でツッコむ。
例え何処にいようが愛する女性の事は絶対に忘れないらしい
すると夕映はそんな彼を見て目をキラーンと光らせる。

「ほほう、やはり私のライバルはその“お妙さん”という人になりそうですね」
「いやいや局長が一方的に姐さんに惚れてるだけだからそれは無いって・・・・・・・え?」

夕映が言った事に山崎は一瞬我が耳を疑った。

(ライバル? なんの?)
「結婚への道はまだまだ障害が残っている様です」
(結婚? 障害? 何言ってんのこの子?)
「まあまずは形から入らせてもらいましょうか」

混乱している山崎の方に、夕映は仏頂面のまま振り向いた。

「今度からあなたは私の事は絶対に“姐さん”と呼ぶ様にしてください、一度でも間違えたら切腹ですからね地味崎さん、いくら地味なあなたでも“局長の妻”になる予定の私の命令ぐらい出来ますよね?」
「・・・・・・」
「山崎殿、すんごい汗でござるよ」

いきなりのぶっちゃけ話に山崎は無言のまま額から大量に汗を流し続ける。
そりゃあそうだ、今まで好印象を持った事のないこの少女が、あろうことか自分達の局長の・・・・・・・
















「嘘だッ!!!」
「なんでひぐらしでござるか?」
「嘘だと言ってッ! 副長はあの子だからオールOKだけどッ!? 君なんかウチ来たら真撰組で内乱が勃発するってェェェェェ!!!!」
「嫌ですぅ」

山崎の雄叫びは大広間にいた人間全員に聞こえるぐらい大きな声であったそうな。













































第七十二訓 宇宙一最強の魔法使いは宇宙一馬鹿な親父























真撰組連合軍の戦いが終わりを迎えていた頃。
倒されたリョウメンスクナの上でサウザンド・マスターことナギ・スプリングフィールドと数多の星を壊滅させた暴君の魂を持つ夜王ネギが最後の決戦を始めていた。

「雷の・・・・・・!」
「はぁッ!」
「ぐッ!」

手に魔力を溜めて呪文を放とうとするナギだが一瞬にして夜王ネギは彼の前に現れる。
そこからすかさず彼の腹に拳の一撃、呻き声を上げて前に倒れそうになるナギに、夜王は更に彼の背中に両腕を振り下ろす。

「ぬんッ!」
「がはぁッ!」

背中から骨がきしむ様な鈍い音を立てながらナギはスクナの体に叩きつけられる。
その反動でバウンドしたナギに向かって夜王は一歩引いて目を怪しく光らせ・・・・・・

「はぁぁぁぁぁ!!」
「うぐ・・・・・!」

小さな体とは思えない豪快な蹴り、それを思いっきり腹に食らいナギは後ろに思いっきり吹っ飛ぶ。
このままだと湖の中に頭から突っ込む。だがそんなナギの所に素早く人影が。

「うッ!」
「銀時ッ!」

飛んで来たナギをさっきまでしゃがんで休んでいた銀時がすぐに体を使って受け止める。
間一髪でナギの場外退場を防いだのだ。

「始まって3分も経ってねえだろうが・・・・・・こんな早くくたばろうとしてんじゃねえよ」
「誰がくたば・・・・・・! がふッ!」

疲れた体を無理矢理動かしてナギを止めた事で銀時は苦しそうな表情をしているが、彼よりナギの方がずっとツライ表情で下に向かって血を吐き散らす。

夜王が本気で繰り出した三連打、並の者ではこれだけで既に息絶えているであろう。

「随分と弱くなったな貴様・・・・・・かつてわしを追い詰めた事のある者と同一人物とは到底思えぬ」
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・・誰のせいでこんなに弱くなってると思ってんだコラ・・・・・・」

銀時に支えられながらぐっと歯を食いしばって無理矢理笑みを作るナギに夜王ネギはギロリと睨みつける。

「貴様はわしが認めた数少ない人間の一人。無様に殺される事はわしが許さん」
「だったら少しは手加減しろやコンチクショウ・・・・・・・安心しろ、俺はまだまだ限界が見えてねえよ、まだやれるさ・・・・・・」
「・・・・・・お前大丈夫か? なんなら俺が加勢するぞ?」
「いらねえよお前の助けなんて・・・・・・・」

腰の木刀を抜こうとする銀時に対してナギはバッと手をかざして制止させる。

「コイツは俺とあいつの喧嘩だ、誰の助けもいらねえ。俺が絶対にネギを救う・・・・・・」
「・・・・・・」

息を荒げながら立ち上がって息子の方へ歩いて行くナギに銀時は思いつめた表情で見送る。

反対に夜王はフンと鼻を鳴らして右手を振りかざす。

「ナギ、貴様がわしに勝てない理由は“圧倒的力の差”だけではない」
「何・・・・・・?」
「貴様の目と魂だ」
「・・・・・・目と魂?」

夜王が言った事にナギは口をへの字にしてわけのわからない様子で首を傾げる。
すると夜王は彼に向かって指をピッと突き出した。

「今の貴様は既に“死人”だ」
「・・・・・・」
「自らの命を犠牲にしてでもこのわしを倒そうとする気だな・・・・・・」
「へ、だからどうしたんだよ」

ニヤリと笑みを口元に広げるナギに夜王はジッと彼の目を覗きこむ。

「哀れな男よ、はなっから相討ち狙いで戦いに来るとは」
「息子助ける為に俺の魂が消えるだけで済むなら・・・・・・」

ポキリと拳を鳴らしながらナギは夜王との距離を詰めていく。

「安いもんさ」
「・・・・・・」
「!!」

無言のまますかさず夜王は拳を振り上げたまま水平に飛んでくる。
ナギもすぐに拳を上げて彼の拳に正面からぶつかった。

「がッ!」

拳と拳の衝突、だがやはり夜王の一撃の方が重かったのかナギは後方に下がっていく。

「貴様の覚悟は評価してやろうッ! だがそれではわしに勝つ事は断じて無いッ!」
「何を根拠に言ってんだ・・・・・・やってみなきゃわかんねえだろ・・・・・・!」
「貴様の後ろにいる男はこの夜王を唯一倒せた男だ・・・・・・」

口元に笑みを広げながら夜王は自分の拳をどんどんナギに向かって押し込んでいく。

「人間とは末恐ろしい生き物よ、アリの様によってたかってくるクセに、どんなに踏み潰してもすぐに這い上がってわしの力にあがこうとする、“あの時の奴等”こそ、わしが最も苦手とする存在を彷彿させる存在・・・・・・」
「ぐぐぐ・・・・・・」

苦い表情をしているナギの拳をどんどん後ろに押し込んでいきながら、夜王の目はカッと開いた。

「あの力こそがわしを倒す事の出来る唯一の力ッ! 死人の目をする貴様では持つ事さえ許されぬ力よッ!」
「うぐッ!」
「ナギッ!」

乱暴に夜王が拳を振り切った瞬間、ナギは思いっきり後ろにのけ反る、そして夜王はすぐに飛び上がって彼の頭目掛け・・・・・・

「わしに殺される前にその力を得てみろッ!」
「がはぁぁぁ!!!」

かかと落とし、その夜王の一撃は意識を失いかける程の衝撃と痛みだった。
スクナの上にひれ伏したナギだが、すぐに頭を押さえながら必死の形相で起き上がる。

「ガハッ! ガハッ! まだだ・・・・・・」

懸命に立ち上がったナギはキッと夜王を睨みつけた。

「死ぬのはテメェを倒した後だ・・・・・・!」

息子の魂を救わなければという一心で・・・・・・

ナギは単身で夜王に挑みかかる。















































「ちょっとちょっとッ! あれヤバくないですかッ! ナギさんボッコボコにされてるじゃないですかッ!」
「はい、あのままだと確実に死にます」
「いやよくそんな普通に言えますね・・・・・・」
「ご心配なく、私達がなんとかすれば・・・・・・早く“それ”貸して下さい」
「え? あ、はい」

ナギと夜王ネギが戦っているのを岸から見ていたメンバー達の中で、新八が慌てた様子でナギを指差すもアルは笑顔で答え、新八からナギの杖を受け取る。

「魔法使いの人にはわかると思いますがこれは魔法の杖です、しかもナギが愛用していた杖、何の因果でここにあるかはわかりませんがコイツがあれば鳳仙に勝てるかもしれません」
「これ魔法の杖だったんですかッ!? 通りでなんか不思議な力を感じると思った・・・・・・」

奇妙なオーラを放つその魔法の杖に新八がボソッと呟くと、杖を持っているアルに神楽がズイッと近づく。

「じゃあこれアイツに渡せば勝てるアルかッ!? 私に任せるヨロシッ! こっから思いっきりぶん投げて届けるネッ!」
「いえ、“今の杖の状態”ではナギに渡してもまだまだ鳳仙には遠く及ばないでしょ。ですから・・・・・・」
「ん?」

血気盛んに身を乗り出す神楽にアルは静かに首を横に振った後、彼女の前に杖をスッと持ち上げる。

「ここにいる皆さんの力を、この杖に注いで下さい」
「どういう意味アルか?」
「杖の力を増長するのは持ち主の魔力です。そして・・・・・・」

首を傾げる神楽の前でアルはぐっと杖を強く握る。
その瞬間、杖が突然火が灯った様に光り輝いた。

「心の力、自分が何をしたいのか何のために戦うのかを心の底から願って杖にその思いを注ぎ込むんです、そうすればきっと杖は持ち主に答えてくれます」
「それってもしかして・・・・・・僕達みんなの心の力をその杖に込めれば、ナギさんに僕達の力を貸す事が出来るって事ですか?」

神妙な面持ちで新八が尋ねるとアルはニコッと笑って口を開いた。

「はいそうです、魔法使いではないあなた達でも可能な事ですよ」
「じゃあこれならナギさんが夜王に勝てるかもしれないんですねッ!」
「ほう、魔法の杖とは便利なものだな」
「侍が剣に己の魂を込めるように。魔法使いも杖に心を込めるんですよ」

背中に寝ている木乃香をおんぶした状態で感心したように桂が頷くとアルは頬笑みながら返して、杖を全員の視線に入る様に前に突き出す。

「杖に触って心の底から思いを注ぎ込む様に念じて下さい、それが心の力となりこの杖の力ともなります」

アルがそう言うと同時に次々とメンバーが杖に近づいていった。

「ヨッシャーッ! おい聞けコラァッ! 誰が何を言おうと私がヒロインアルッ! わかったかコラァッ!」
「アホな上司のふぐりを潰してくれい」
「アホなモジャモジャ頭のふぐりを潰して下さい」
「アホなヅラから電波キャラというスタンスを取り外してくれや」
『パチンコ大勝ち、エウレカ圧勝』
「アンタ等この人の話聞いてたッ!? それほとんど自分の希望じゃねえかッ!」

アルが手に持つ杖に神楽、陸奥、ネカネ、小太郎、エリザベスの順に触っていき心の力を込めていくも誰一人ナギが勝つようにと祈っていない。これでは全く意味が無い。

「こんな状況でコントしないで下さいよッ! 僕等が念じるのはナギさんが夜王を倒す事でしょッ!? 早くしないとナギさん死んじゃうんですから真面目にやって下さいよアンタ等ッ!!」
「ほう、何やら興味深い事をやっているようじゃな」
「え?」

後ろから声が聞こえたので新八は反応して後ろに振り返る。
そこにいたのは・・・・・・

「わらわ達も混ぜてくれんかの?」
「あなたはナギさんの奥さんッ!」

いきなり姿を現したのは首に装着されていた黒い首輪を外した状態のアリカ・スプリングフィールドだった。
しかも彼女だけではない。

「あり? 銀八の奴何処にいんだ?」
「本当ですわね、何処にいったんでしょうか・・・・・・」
「ふん、なんだか一杯いるな」

アリカの後ろから出て来たのは銀時の創立した二代目万事屋のメンバーである千雨とあやか、そしてエヴァ。
三人の声が来た途端、桂とアルはふとそちらに目を向けた。

「む、銀時の所のおなご二人と・・・・・・あの幼き少女は誰だ?」
「おお、これはこれは、まさかあの子とこんな所で会えるなんて」
「知っているのかアル殿?」
「私は女性は苦手なのですがあの子だけは別なんですよ、ああ昔となんにも代わって無いですねぇあの子・・・・・・」

だるそうにしているエヴァを見た瞬間、アルが嬉しそうに笑みを浮かべるとエヴァも彼の方へふと目を向ける。
エヴァはすぐにギョッと驚いた。

「き、貴様もしやッ! アルかッ!?」
「覚えていくれたんですか、嬉しいですねキティ」
「ええいその名で呼ぶのを止めろッ! どうして貴様がここにいるッ!」

お互いに顔見知りにの様に会話するアルとエヴァを見てあやかはふと首を傾げる。

「エヴァさんこの人の事知ってるんですか?」
「当たり前だッ! 昔コイツに何千回も嫌がらせを受けた事があるッ! そして私が生涯二度と会いたくない人間の一人だッ!」
「酷い言い様ですね~、私はただ子供とのスキンシップとしてあなたと遊んでいただけですよ?」
「何がスキンシップだこの変態め・・・・・・それにしてもアリカ・スプリングフィールドといい貴様といい何故こんな所にいるのだ?」
「まあ色々と込み入った事情がありましてね、それに・・・・・・」

怨みがましい目で睨んで来るエヴァ、そんな彼女の反応を楽しむかのようにアルはある人物の方へ目を向ける。

「あそこにもう一人あなたがよく知ってる人がいますよ、ほら」
「ん? ぬおッ!」

倒れているリョウメンスクナノカミの上で戦っている二人の男の内一人を見て、エヴァは思いっきり目を見開く。

あの男は自分がずっと探し、待ち焦がれていた・・・・・・

「ナ、ナ、ナ、ナ、ナギだとォォォォォォォ!!!」
「ううん、私の思惑通りとてもいいリアクションですね~」
「まさか・・・・・・こんな所で・・・・・・・こんな所でアイツに会える事になるなんてッ! うわ~なんでこんな所にいるのだ~ッ!」

頭を押さえながら額から汗を流すエヴァを見てアルは嬉しそうに眺めている。
一方あやかはスクナの上で戦っている夜王ネギとナギの戦いを見ていた。

「なんでネギ先生とあの人が・・・・・・? あッ! 銀さんあんな所にッ!」
「あ、本当だッ! なんでアイツあんな所にッ! ていうかアイツ等が上に立っているあの巨大なバケモンはなんだよッ!」
「詳しい話は終わった後でよかろう、アル、時間が無いのであろう、さっさとナギを救う準備をするぞ」

次々と疑問点が浮かび上がっているあやかと千雨を疎めると、アリカはまだエヴァが苦悶している姿を観察しているアルに話しかける。
するとアルはニコニコ笑ったまま彼女の方へ振り返った。

「え? あなたいつから私達の味方になったんですか? おかしいですねぇ私の記憶から察するとあなたは春雨の幹部だった筈なのですが、てことは私達の敵ですよね?」
「う・・・・・・確かにそうじゃったが今はもうわらわは自由の身じゃ、春雨とはもう無縁、夫と息子の為にわらわはお主達と協力して一役買いたい・・・・・・」
「本当ですかぁ? 信じがたいですね~、なんせ前に久しぶりに再会した時に“あんな”冷たい態度を取っていたあなたが今になって手のひら返して仲間になるなんてねぇ、自分勝手というかワガママというか都合がよ過ぎるというか・・・・・・」
「うう・・・・・・」

ネチネチと痛い所を突いてくるアルにアリカは呻き声を開けて苦い表情を浮かべた。
昔からこの男は自分に対してこういう態度を取る時がある。

「相変わらずお主はわらわの事が嫌いらしいの・・・・・・・」
「はい、あなたがナギと結婚したと聞いた時から“大嫌い”です」
「・・・・・・」

素晴らしい笑顔で答えるアルにアリカはやれやれと首を横に振ると、桂は彼女の存在に気付いたのか、会話をしているアルの方へ話しかける。

「アル殿、この女性は何者だ?」
「ああ、春雨の幹部だったクセに今はホイホイこっちに鞍替えした尻の軽いナギの妻のアリカ姫ですよ」
「その説明の仕方を止めんか・・・・・・」
「何? この者がナギ殿の妻だという・・・・・・」

初めて見たアリカの姿を桂はまじまじと見つめる。下から上へ、そして上から下へと彼女の姿を眺めた後目をキランと光らせ、背中に木乃香をおんぶしているにも関わらず、一瞬で彼女との距離を詰めて、すぐに彼女の両手を右手で取った。

「おぬしがナギ殿の妻のアリカ殿だったか、噂はかねがね聞いていたぞ。俺の名は桂小太郎、攘夷志士だ、いきなりですまないが腐った江戸を立て直す為に俺と共に不倫という危ない賭け橋を歩まんか?」
「は?」
「攘夷活動関係無いじゃないですかそれ」

いきなり積極的なアプローチをかけてくる桂にアリカはしかめっ面を浮かべるとアルがすぐにツッコミを入れる。
どうやら桂の人妻好きに火が付いた様だ。

「ただ一人の男との愛を育むだけなど退屈極まりないであろう、ここは少しスリルのある遊びをするのが一興だと思うのだが?」
「誰が見ず知らずのお主とそんな遊びしなきゃならんのじゃ、わらわが生涯愛する男はナギだけじゃ、はよう手を離せ」
「フ、さすが人妻はガードが固い、だがそれこそ攻略しがいがあるもの、俺がじっくりと夫以外の男の事を手とり足とり教えてやろう」
「アル、この男はバカか?」
「バカです」

次々と口説き文句を放ってくる桂にアリカは呆れた様子でアルの方に尋ねると、彼はすぐに返事をくれた。

「バカと言うより電波ですけどね」
「そうか、通りでお主と似たような匂いがすると思った、まごう事無き変態の匂いがな」
「フフフ、そんなキツイ言葉を言おうが俺の心は折れんぞ」
「ヅラ、人妻口説くのは後にしてくれへんか、早くせんとあの男死ぬんやけど」
「おっとそうだった」

夜王にボコられているナギを見ながら小太郎が呟くと桂はやっとアリカの手を離した。
すると桂の背後に立っていた坂本がケラケラと笑いだす。

「ヅラはほんに人妻が好きじゃの~」
「ふん、お前には分からない事だ」
「桂さんってやっぱりあなたと同じ変な所があるのね・・・・・・・」
「アハハハハッ! わしぁ色恋ならヅラよりマシじゃてッ!」
「どうかしらね・・・・・・」

隣にいるネカネが桂に対しての感想を呟くと坂本は豪快に笑い飛ばす。
確かに複数の女性を自分のモンにする銀時や人妻との不倫を求める桂より坂本の方が恋愛に関してはまともかしれない。

坂本がアハハハと笑っていると、近くにある茂みに生える大きな木からガサガサと何かが動く音が聞こえた。

「面白そうな事やってるネ」
「ぬおッ! 誰じゃぁッ!?」
「俺にも参加させてよ」
「ごふッ!」
「坂本さんッ!」

坂本が木の上へ顔を上げた瞬間、顔面に何者かの足が降って来た。
直撃した坂本は顔に赤い足跡を作られてヨロヨロとしながら倒れる。

足蹴にした“男”はなんの悪びれもせずに桂達の前に振り降りた。

「こんばんは侍さんの皆さんと魔法使いの皆さん、あとその他大勢」
「神威ッ! やはり貴様ここにいおったのかッ!」
「神威てんめぇッ! ノコノコとツラ見せやがってッ!」

現れたのは敵である筈の神威、彼を見た途端アリカと神楽が噛みつくように一歩前に出るが神威は笑顔のままそんな二人に手で待ったをかける。

「あ~今は別にアンタ等と戦うつもりは無いからさ」
「どういう事じゃ・・・・・・・?」
「俺の力も使ってよ」
「何ッ!?」

戦うどころか力を貸すと発言する神威にアリカは目を見開いて驚く。
敵でありながら自分達の為に力を貸すだと?

「あの男(ナギ)がてんで弱くてね、このままだと夜王に殺されちゃうから助けてあげる」
「・・・・・・お主は一体誰の味方なのじゃ・・・・・・?」
「俺は“俺の”味方」
「・・・・・・」
「ふざけんなよコラァッ! お前の助けなんていらないネッ!」

アリカと会話している神威の所に神楽が叫びながら食ってかかろうとすると、神威はそんな彼女に髪を掻き毟りながらめんどくさそうに口を開く。

「君には関係ないだろ、俺は夜王に憑かれたあの子を助けてあげたいだけだ、死ぬ事を覚えたあの子は将来もっと強くなる、けどここで助けないと元も子もない」
「・・・・・・あのガキの事言ってるアルか?」
「ああ、君なんかより全然強くなれる男の子だよ」
「・・・・・・」

バッサリと言い捨てる神威を神楽は黙って睨みつけた後、ふとナギと戦っている夜王ネギの方へ視点を動かす。

自分と違って神威に認められた男の子、見た目からして自分より年下の筈なのに・・・・・・

「神楽ちゃんどうしたの?」
「・・・・・・なんでもないアル」

ボーっとしている彼女に新八が不安そうに尋ねると、神楽は元気のなさそうにポツリと呟いてブスっとした表情で振り返る。

何故かいささか不機嫌な感じを漂わせている彼女に新八は「?」と首を傾げた。

だが新八の疑問をよそに話は淡々と進み始める。

「何故か春雨の人達も混じっていますがどうやらナギに勝って欲しいという気持ちは一緒らしいです、ということで皆さん全員の心の力をこの杖に」
「わらわはもう春雨の幹部は止めとると言うたじゃろ・・・・・・」
「すみませんねぇ、忘れてましたよ“元”春雨幹部のアリカ姫」
「もういい・・・・・・」

まだ難癖付けてくるアルにアリカは重いため息を吐いた後、すぐさま彼が持っているナギの杖に手を添える。

「ナギ・・・・・・絶対にネギを救ってくれ・・・・・・・」

呟きながらアリカはその思いを頭の中で何度も念じていると杖はさっきアルがやった様にポウと光り輝いた。

「想いが強さに変わる、か・・・・・・他の者も早く杖に力を注いでくれ」
「なんでナギが・・・・・・・なんでナギがここにいるのだぁ~・・・・・・・」
「やだエヴァさん・・・・・・・いつもよりもっとおかしくなってますわ」
「どうせどっかで変なキノコでも拾い食いしたんじゃねえか?」
「・・・・・・そこにいる者もナギに協力してやってくれ・・・・・・・」

頭を押さえながらブツブツと呟いているエヴァ、それを見守っているあやかと千雨に向かってアリカは杖を持ったまま近づく。

「ネギを救う為にナギに夜王を倒して欲しい、そう心から念じてこれに触れてくれ」
「え? 別にいいですけど・・・・・・」
「大丈夫だよなコレ・・・・・・・寿命が減るとかそんなの無いよな・・・・・・・?」
「ナギはもう過去の男だ未練など無い・・・・・・・今の私には銀時がいるのだ・・・・・・未練なんかあるものか・・・・・・!」
「エヴァ、おぬしさっきから何わけのわからない事を呟いているのじゃ?」

なんかもう泣きそうな顔になっているエヴァにアリカは困惑した表情を浮かべるが、彼女もあやかと千雨と同様、ナギの杖を触る。

三人分の光が杖に灯った。

「次はネカネ、ぬしじゃ、ていうかまさかお主と会えるとはの・・・・・・」
「久しぶりですねアリカさん、前に会った時はあなたが赤ん坊の頃のネギを預けに来た時でしたもんね・・・・・・」
「あの時は迷惑をかけた・・・・・・」
「フフ、私はネギと一緒に住み始めた頃から一度も迷惑だなんて思ったことありませんよ」
「・・・・・・あの子の母として礼を言わしてもらうぞ」

頬笑みながら杖に手を添えるネカネにアリカは深々とお辞儀をした後、今度は彼女の両サイドにいる陸奥と坂本の方へ

「そちらも頼むぞ」
「なんかおんしの口調わし等と口調が微妙に被っとらんか? まあ別にいいんじゃが」
「わし等と同じ故郷かもしれんぞ、アハハハハッ!」
「・・・・・・わらわは魔法世界育ちじゃ・・・・・・」

笑いながら陸奥と一緒に杖に触る坂本にアリカはボソッと呟くと、次に小太郎とエリザベス。

「俺等の力、アンタの旦那に貸したるわ、後でちゃんと返せや」
『現金でな』
「助かる、現金は無理じゃ諦めろ」
「なんや英雄なのに金もっとらんのか、しょーもな」
『貧乏英雄乙』
「・・・・・・本当の事じゃから何も言えん・・・・・・」

無邪気に笑う小太郎と、金銭を要求するエリザベスに言葉を返した後、アリカは一番絡み辛い桂とアルの元へ

「・・・・・・頼むぞ」
「わかっている、俺の愛でお主のハートを射止めて見せる」
「わかってないじゃろ・・・・・・」
「ジョークだジョーク、ナギ殿に力を貸す事などお安い御用だ、礼はデートで構わんぞ」
「無理じゃ」
「私はもう最初に杖を掴んだ時に心の力を注いでいますので、“あなたよりも早く”」
「何故そこを強調する・・・・・・・」

真面目なのか不真面目なのかわからない態度を取る桂とアルにツッコんで、今度は新八と神楽の元へ

「そちら等はナギと一緒に行動していた所から見て、どうやら何かしらの縁があったようじゃの」
「短い付き合いですけけどね、まあ悪い人じゃないのはわかってますから、あの人って何処か銀さんと似てる所がありますし」
「私はアイツの事嫌いネ、銀ちゃんの場所横取りしやがって・・・・・・でも」

好感的に力を貸してくれた新八とは対照的に神楽はしかめっ面をしてナギに対して否定的。だが鼻をフンと鳴らした後、アリカの持つ杖をむんずと掴む。

「アイツの息子に悪いから力を貸してやるアル、ありがたく思えよコノヤロー」
「ありがとの、おぬしはいい子じゃな」
「・・・・・・フン」

また鼻を鳴らしてそっぽを向く神楽にアリカは優しく微笑んだ後、最後の男の方へ振り向く。

「神威・・・・・・」
「心の底からあの男が夜王を倒して欲しいって念じればいいんでしょ? 軽い軽い」
「ぬしは何故、ネギに対してそんなに執着しておるのじゃ・・・・・・」

笑顔のまま杖に手を触れる神威にアリカは疑問を問いかけると、神威は彼女の方へ顔を向けないまま目を開いてボソリと呟いた・・・・・・

「あの子は昔の俺と似ている・・・・・・・」
「ん?」
「フフフ、なんでもないヨ」

神威が呟いた事によく聞き取れなかったアリカだが、神威はヘラヘラ笑ったままごまかす。
それと同時にナギの杖は今まで心の力を注いだ人数分の輝きを放ちだした。

「これがわらわ達全員分の想いが込められた力・・・・・・」
「いやまだだよ」
「ん?」

輝く杖を見つめるアリカに神威は口を挟んだ後、彼女から強引にその杖を奪い取る。

「後一人残ってる」

スクナの上で戦っている夜王ネギとナギ、そして彼等を見守る“一人の男”の方へ視線を向けた。












































夜王ネギの攻撃は次第に激しさを増していった。己の本来の体ではないにも関わらず、夜王はネギの体を何不自由なく使いこなしていた。

「せいやぁッ!」
「がはッ!」

そして今まさに夜王の拳は倒れているナギの腹に思いっきり入った。
口から吐血を繰り返しながらナギは既に瀕死の所まで追いやられている。

「自分の息子の拳で殺される気分はどうだナギ?」
「・・・・・・クソ食らえだな・・・・・・!」
「ぬッ!」

眼前に顔を近づけて来た夜王を睨みつけながらナギは咄嗟の行動で彼の足を自分の足で払う。
油断していた夜王はバランスを崩すもナギからの追撃を避けるため、足の代わりに両手を地面につけて彼から後転宙返り。
ナギと夜王の距離は3Mぐらいになった。

「クックック・・・・・・まだ噛みつく牙が残っていたか、既に全部抜けているのかと思うたわ」
「は、俺の牙はサメみたいに抜けてもすぐに生えるんだよ・・・・・・」
「だがその牙では息子のこの体に歯型一つ付けられないらしいな」
「チ・・・・・・!」

余裕気にローブを翻してたたずむ夜王にナギは悔しそうに歯を食いしばる。
かつてはサウザンド・マスターと呼ばれ最強の魔法使いと称されていたのだが。
過去に夜王によって数年もの間封印されたこの体はどうやら目覚めたばかりの今の状態では思った様に動けないのだ。

(俺にもっと力がありゃあこんな奴・・・・・・・!)
「・・・・・・コイツはやべぇな」

己の不甲斐なさに苛立ちながら夜王攻略に苦悩するナギ。
そんな彼を銀時はジッと見つめて“ある行動”を行おうとしていた。

夜王やナギに気付かれぬよう銀時がそっと立ち上がろうとしたその時・・・・・・・

「銀八ッ!」
「え? ぬおわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

聞き覚えのある声が聞こえたので銀時はふっとそちらに目を向けると、こちらに向かって木製の杖が勢いよく突っ込んでくるではないか。

銀時は反射的にそれを慌てて右手でキャッチ。

「オ、オィィィィィィィィ!! いきなり何すんだコラァッ!」

何事かと杖を持ったまま銀時は飛んで来た方の岸に向かって叫ぶ。
岸の方では神威の胸倉を掴んで千雨がガミガミ怒鳴っていた。

「アンタ絶対銀八を殺そうとしていただろッ! 投げるスピード尋常じゃねえんだよッ! 」
「ごめんごめん、緊急事態なんだから仕方ないだろ」
「緊急事態でも危険フェイズでも何かを渡す時には相手の生命に関わらない様に投げろッ!」
「アイツ等・・・・・・」

口喧嘩している千雨と神威、そしてその他のメンバーが揃っている事に気付いた銀時。
そしてそんな銀時に向かって新八が声を大きくして叫ぶ。

「その杖にナギさんが夜王に勝つようにと念じて心の力を注いで下さい銀さんッ!」
「は?」
「僕達の力が込められたその杖でッ! ナギさんは夜王を打ち砕く力を持てるんですよッ!」
「マジでかッ!? よしッ! しずな先生を俺の嫁にしずな先生を俺の嫁に・・・・・・」
「「何願望ねじこんでるんじゃボケェェェェェ!!!」」

杖に向かって必死に祈り出す銀時に新八と千雨のツッコミが同時に入った。

「ちゃんよやれバカッ! しずな先生って誰だよッ! アンタ後何人の女性に手ぇ出せば気が済むんだッ!」
「お前には緊張感とかそういうのねえのかッ! ていうかいい加減しずな先生は諦めろッ!」
「チ、うるせえツッコミメガネコンビだな・・・・・・真面目にやりゃあいいんだろ真面目にやりゃあ・・・・・・」

新八と千雨に言われたので銀時はだるそうな表情をした後、立ち上がって杖を強く握る。

その瞬間、杖は今までとは比べられないほど大きく、そして美しい輝きを見せる。
ここにいる全員の力が一本の杖に注がれたのだ。

「頼むぜ、宇宙一馬鹿なクソ親父」

その言葉が銀時が杖に注いだ最後の思い。

銀時はみんなに託されたその杖を力強く握って目の前で戦っている夜王、そしてナギに目を向けた。






























「ナギィッ!」
「うおッ!」

夜王ネギの連続で繰り出す拳をかろうじて後退しながら避けるナギ。
しかしもう後ろには地面は無い、湖だ。
体もすっかり重傷で、このまま戦い続けたら間違いなく死ぬのは目に見えている状態だ。

「そろそろ終わらせるか・・・・・・」
「くッ!」

冷酷な目つきで拳を振り上げる夜王にナギは万事休すと覚悟した。

「貴様との因縁もこれで終わりだッ!」

夜王の鉄槌がナギに向かって降り下ろされる。
最後の抵抗かという様にナギは両腕それをガードしようとする

だがその時

「ふんばらばッ!」
「むッ!」
「なッ!」

ナギの前に颯爽と駆けつけた何者かによって、夜王の拳は彼の持つ木刀によって受け止められる。

「ぐぎぎぎぎぎ・・・・・・! やっぱ夜兎族の一撃半端ねえ・・・・・・!」
「貴様ッ!」
「銀時ッ!」

木刀一本で夜王の拳を止めたのは銀時、彼が現れた途端、夜王とナギは驚くが、ナギの方はキッと彼の背中を睨みつける。

「加勢はいらねえって言っただろうがッ!」
「勘違いすんじゃねえよすっとこどっこい・・・・・・・テメェにコイツをあげたら俺はとっとと退散するわ、こんな化け物と二度と戦いたくねえからな・・・・・・」
「コイツ?」
「コレだよコレ・・・・・・」
「それは・・・・・・!」

夜王の一撃を止めながら銀時は額から汗をダラダラ流しながら苦しそうな表情で、左手に持つ杖をナギに見せる。

「コイツにはここにいる俺達全員の力がぶち込まれててな・・・・・・・その力でこのショタジジィをぶっ潰せ・・・・・・」
「お、俺は俺一人の力で・・・・・・・!」
「・・・・・・何勝手に全部テメーで背負いこんでんだよ、ちっとは俺達の事も頼りにしろバカ」
「!!」
「お前が背負ってるモン俺達も担いでやるよ。だからもう死ぬなんて言うな」
「銀時・・・・・・」
「そらよ」

そう言って銀時は杖をナギに向かって乱暴に投げる。
ナギはそれに戸惑いながらも片手で受け取った。

「それにテメェがここで死んじまったら、テメーのガキとアイツを誰が養うってんだ?」

夜王の拳に押されつつも自分の後ろの方に目を向けている銀時を見て、ナギはハッとして後ろに振り返る。

「ナギッ! しっかりせいッ! それでも最強と謳われたサウザンド・マスターかッ!」
「アリカ・・・・・・」
「その子の父親は貴様しかいないんじゃぞッ!」

そこに立っている妻の凛とした姿を見てナギは思いつめた表情をした後、ぐっと歯を食いしばって目の前にいる息子の姿を見る。

「ナギッ! わらわ達は家族じゃッ! 死ぬ事など断じて許さんからなッ!」
「そういや俺はまだネギに誕生日さえ祝ってやってねえんだ・・・・・・」

己の杖を強く握りしめたままナギの表情が変わる。

「俺はまだ・・・・・・・! こんな所でくたばっちゃいけねえんだッ!」
「ぬッ!?」

ナギが啖呵を切った瞬間、彼の持つ杖から暖かい光が放たれた。
夜王は一瞬たじろぎ銀時は決意を決めた彼を見てフッと笑みを浮かべる。

「いいツラしてんじゃねえか父ちゃん・・・・・・」
「せいやッ!」
「ぐおッ!」

感嘆の言葉を漏らす銀時の横っ腹に突如夜王の蹴りが入る。
銀時はそのまま横に吹っ飛び、ゴロゴロとスクナの上を転がりまわる。

「いででででで・・・・・・」
「銀時ッ!」
「俺の事なんかどうでもいいだろうが・・・・・・・テメェは今前にいる男を倒せ」
「お前・・・・・・」
「お前だけの力じゃなく俺達の力と一緒に・・・・・・夜王をぶっ潰せッ!」

横っ腹を押さえながら吠える銀時の言葉を受けて。
ナギは杖を振りかざして夜王を睨みつける。
そして

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「なんだとッ!?」

杖だけではなく全身から金色のオーラを放ちだすナギに夜王は驚きながら思わず一歩後ずさりする。
その金色のオーラは瞬く間に瀕死に陥っていたナギの傷を消していく。

「他の者の力で・・・・・・体の奥底に眠っていたサウザンド・マスターの力が蘇ったというのか・・・・・・!」
「鳳仙・・・・・・これが“結束の力”って奴だ、こっからは本気でいかしてもらうぜ」
「フフフ・・・・・・・フハハハハハハッ!」

体も魔力も、力も元通りになったナギの姿を見て夜王は、老人と子供の声が混じった二重の声で高笑いした。
これこそ自分が望んでいたもの

「面白いッ! ならば貴様等のその結束の力という奴でこのわしを倒してみよッ!」
「後悔すんじゃねえぞッ! 覚悟しやがれゾンビジジィッ!」
「フハハハハハッ! 死ねぃッ!」

高笑いをしながら夜王は再びナギに向かって腕を振り上げて、一気に全身全霊の拳を振り下ろそうとする。

だが

「ネギッ! お主の父親は今目の前にいるぞッ! 早く目を覚ませぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むッ!!」


突如遠くからアリカの叫び声が、そして夜王が拳を振り下ろそうとした瞬間。

突然腕が金縛りに会った様にピタリと止まった。

「何故だ、何故体が言う事を聞かぬッ!」
「雷のッ!」
「!!」
「斧ッ!」
「ぐッ! ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」

混乱している夜王の隙を突いてナギが放ったのは自分の得意とする雷系の呪文。
雷で作られた金色の斧は夜王を瞬く間に包み込んで吹っ飛ばす。

後ろに飛ばされた夜王はナギから数メートル離れた所へ音を立てて落ちた。

「おのれ・・・・・・・どういう事だこれは・・・・・・!」
「どうやら、戦ってるのは俺達だけじゃねえ様だな」

初めて傷付いた自分の体を眺めながら夜王が困惑していると、ナギは彼に向かって杖を構えたまま歩き出す。

「テメェの中にいるアイツも戦ってるんだ」
「馬鹿なッ! あの童がこの夜王鳳仙の力に抗えたというのかッ!」
「ったりめえだろ、なんせ俺の息子なんだからな・・・・・・」
「!!」

何時の間にかすぐ目の前に来ていたナギに夜王はギョッと目を疑い彼の顔を見る。
彼の目はもう既に死人の目では無い・・・・・・・この目は・・・・・・

「うおらァァァァッ!」
「ごはァァァァ!!!」

ナギの拳が夜王の腹にねじりこむように入った。
夜王ネギが呻き声を上げながら口からを思いきり血を吐く。

「うぐッ! 貴様の目はもう既に死人の目などでは無い・・・・・・・」

腹を押さえながら夜王はヨロヨロと立ち上がり、ナギの目を真正面から睨みつける。

「貴様の目は、貴様の魂は・・・・・・・! 吉原の女共やあの侍・・・・・・わしが太陽と称したあの女と同じッ!」
「お前との戦い・・・・・・・」

気高き魂を持つある女性とだぶらせている夜王に。
ナギは杖を彼に向かって突きつけた。

「“俺達の”力で終わらせる」

間もなく日が昇る






[7093] 第七十三訓 新しい朝
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/06/13 09:02

午前6時過ぎ、ここは江戸のかぶき町。
とある場末のスナックの戸がガラガラと音を立てて開く。

スナックお登勢の住み込み従業員であるネコ耳団地妻のキャサリンが水やりをする為に出て来たのだ。

「昨日ハ馬鹿共ガ騒イデテウルサカッタデスネお登勢サン」
「ホントだよ、真夜中に二階でギャーギャーギャーギャー大騒ぎして、近所の皆さんに迷惑かけんじゃないよ全く」

持っている桶に入っている水を柄杓ですくい取って水やりを開始するキャサリンを後ろから見ながらスナックの亭主、お登勢は咥えているタバコにカチッとライターでを火をつける。
どうやら昨日この店の上に住んでいる住人が何やら騒いでいたようだ。

「しかもいきなり店に上がり込んで来て「カミさん見つけたから今からすぐに連れ戻してくる」、「必ず朝には帰って来る」だ? んなもん私にはどーでもいいことだっての、そんな事報告しなくていいからさっさとテメーの女の所へ行けってんだ」
「でもあの時のお登勢様の表情はいつになく嬉しそうでした」
「ん?」

戸に背もたれしてタバコを吸って愚痴をこぼしているお登勢の所にからくり家政婦のたまがお掃除用(?)のモップを持って店から出て来た。
お登勢さんはそんな彼女に目を向けながら口からタバコの煙を吐く。

「まあね、私から見りゃああいつはバカ息子みたいなモンだからね、その息子の女房もアンタ達と同じ娘同然に可愛がってたから、見つかったと聞いてつい顔がほころんじまったよ」
「アノ男ノ女房ニナル女ナンテドウセ低スペックナ女ダッタンデショウネ、コノ私ト比ベテ数段見劣ッテイルノガ目ニ見エマス」
「いやそれは無い」
「即答カヨッ!?」

素っ気ない態度で高飛車な態度を取るキャサリンの鼻をへし折ったお登勢は、フッと笑みを浮かべたまま上空を見上げる。

「・・・・・・もうすぐ日が昇るね、朝になったらアイツ等戻ってくるとか言ってたけど・・・・・・・」
「お登勢様は昨日から寝ずにずっと待っているのですか?」
「こんな状況に眠れるわけないさ、わたしゃあ久しぶりに出て行った娘が帰って来ると思ってんだから」
「逃ゲタ女房ガアンナ旦那ノ所ニ帰ッテクルンデスカネ」
「大丈夫だよ。あの男はがさつでおおざっぱで誰から見てもダメ人間だけど、あいつは昔こんな事を言っていた・・・・・・」

空に昇ろうとする太陽を見上げながらお登勢は静かに微笑む。


















「テメーの家族は何者にも比べられない宝だって」






























第七十三訓 新しい朝
































京都、関西呪術協会の本部の近くある大きな山の頂。

そこで今、二人の男が雌雄を決する為に互いの全力を振り絞ってぶつかり合っている。

ラストバトル。これが因縁の相手との決着を迎える最後の聖戦なのだ。

ネギの体を乗っ取った夜王鳳仙。
銀時やアリカ、他の仲間達の絆の力を受け継いだナギ・スプリングフィールド。

二つの巨星は拳を振り上げて激しい音を立てて正面からぶつかりあった。

「この夜王の力ッ! 多くの虫ケラ共を恐怖で支配したこの力をッ! 貴様等や貴様の童程度に負けるかァァァァァァ!!!」
「一人でしか戦えないお前なんかッ! こっちはちっとも恐くねえんだよォォォォ!!」
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

咆哮を上げながら拳をぶつけ合わせる夜王ネギとナギ。
本来なら単純な肉弾戦ならば夜兎族の血を持つ夜王の方が強い筈。
だが仲間達のおかげでサウザンド・マスターとしての力を取り戻し、更に仲間達の希望を託されたナギの一撃は今までとは比べられないほど重い。

(このわしが生身の勝負で押されている・・・・・・!)

自分の右手から所々に出血を始めている事に夜王はぐっと歯を食いしばる。

(この体は元々わしのモノではない・・・・・・しかし夜兎のわしが魔法使いとの肉弾戦に押されるなどあってはならぬッ!)

屈辱と己への怒りに燃えながら夜王は右手の拳にさらなる力を加えようとする。
だが

「むッ!?」

拳に力を加えようとしているのに何故か力が上手く入らない。
さっきの時と同じ様に・・・・・・・

「童ァッ! 貴様またもやわしの・・・・・・!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉッ!」
「ぐッ!」

拳の脅威を失い始めた夜王に向かってチャンスとばかりにナギは拳を振り切る。
隙を突かれた夜王はそのまま後ろに吹っ飛んで上体をのけぞらせる。ナギは冷静に彼を見つめながら杖を強く握って

「雷の斧ッ!」
「ぐはぁッ!!!」

のけ反った相手に最も効果的な肉弾戦と近距離上級呪文のコンボ。
再び巨大な雷が夜王の全身を襲い、今度は派手に空中に浮いたまま後ろに吹っ飛んだ。
戦いのフィールドとしていたスクナの上から飛び出して場外の湖の方へ突っ込んでいく夜王を、ナギは見逃さずに追走する。

「まだまだ終わらねえぜ俺の攻撃はァァァァァ!!!」

浮遊能力を持つナギは空中を平行移動で矢の様に飛んでいく夜王を追いかける。

段々と夜王との距離を詰めていき、ナギが一撃を加えようとしたその時。

夜王の目がカッと開いた。

「“夜王震天雷(ヤオウシンテンライ)”ッ!!!」
「はッ!? うごぉッ!!」

猛々しく夜王が叫んだ瞬間、突如彼を中心にして黒い雷で作られた巨大な球体が出現。
ナギが思わず驚いて下がろうとした瞬間にその球体は音を立てて拡散。
予想だにしない出来事にナギはその攻撃を成す術なく食らってしまった。

「ナギッ!」
「チィッ! 大丈夫だ大丈夫ッ! ぐぅッ!」

電撃をモロに食らったナギは節々に血を流しながらも、後ろから見守っている銀時に心配なさそうに叫ぶ。

「なんだよさっきのッ! まさかあのジジィが・・・・・・!」
「そのまさかよ・・・・・・・」
「!!」

湖の上に宙に浮きながらせせら笑いを浮かべる夜王にナギは目を見開く。
彼はネギの体だけを支配していただけではない、彼はネギの中にある・・・・・・

「貴様がここに来る前に色々とこの体に潜む能力を覚えてな、どうやら貴様と同様わしも魔力を扱える事が出来る様だ・・・・・・貴様の息子には感謝せねばな」
「テメェッ! ネギの肉体だけじゃなく魔力まで使いやがって・・・・・・!」
「宿主には色々と力を与えていてやったからな。わしがこやつの力を使っても文句はあるまい」

手からバチバチと電気を出しながら睨んで来るナギを鼻で笑い飛ばす夜王。
どうやら精神を共有していただけあって、夜兎の力だけでなくネギが持つ膨大な魔力も扱えるようになったらしい。
上手い具合にいくわけがないとわかっていたが、ナギにとってこれはかなりキツイ状況だ。

「夜兎の上に魔法使いかよ・・・・・・まいったなこりゃあ・・・・・・」
「魔力を扱う事は面白いものだなナギよ、例えばこの様に・・・・・・」

しかめっ面を浮かべるナギの前で夜王は右腕を振りかざす。
そして

「夜王降臨(ヤオウコウリン)ッ!」
「いッ!」

金色の光を放つ神々しいナギの電撃とは違い、黒色の光を放つ禍々しい夜王の電撃は瞬く間に夜王の右手の中に形の形状を作る。
あの形は正に・・・・・・

「夜兎であるわしの主武器になる“コイツ”を造形する事さえ出来るのだからな」
「へ、へぇ・・・・・・懐かしいなソレ、昔それで何回ぶっ飛ばされたっけ・・・・・・・」

夜王が今右手に持っているのは(正確には持つというより“ある”)黒い雷で作られたネギの身長よりも大きい巨大な傘。
かつて夜王が自分の得物として使っていた日傘だった。

電を自分好みの形にして、なおかつ自分の武器として使うとは・・・・・・

夜王とネギの思わぬ魔法の才能にナギは言葉も出ずに思わず乾いた声を漏らす。

「完璧チートだな、お前もネギも・・・・・・・けどこっちも負けるわけにはいかねえんでね」
「クックック、わしと己の息子の力をその身で体験するがいい」
「だから言われなくても・・・・・・わかってるつーのッ!」

方や雷の傘、方や雷を纏う杖を持って、両者は一気に上に飛び上がる。

「むしろこんぐらい派手になる方がおもしれぇんだよッ!」
「減らず口は相変わらずの様だなッ! だがその威勢も今の内よッ!!」

叫び合いながらナギの杖と夜王の傘が激しい音を立ててぶつかり合った。

戦いの終焉は刻々と近づいて行く






































































「あ~あ、なんかドラゴンボールみたいな戦い方始めちゃって~。いいなぁあのジジィ、俺もかめはめ波とか界王拳とか必殺技が欲しいなぁ~」

スクナの上で呑気に上空で空中戦を始めている夜王とナギの戦いを眺めているのは銀時。
しばらくして彼の所にふと二人の人影が近づいてくる。

「派手にやりあっとるの」
「私が加勢に行けばすぐにカタが付くと思うのだが」
「あれはナギと夜王の戦い、余計な手出しは無用じゃ」
「あり? 何でこっち来たの?」

フワッと宙に浮くエヴァの手を持って一緒にやって来たアリカに銀時はだるそうに顔を向けると、彼女はエヴァと一緒に彼の方へ歩みながら淡々とした口調で

「ここからの方が夫の戦いを見れるからじゃ、それにわらわは夜王とナギの決着を間近で見送りたい」
「酔狂な奴だねぇ・・・・・・・ま、気楽に見物してようぜ、うおッ!」
「銀時~ッ!!」

自分の隣に立つアリカに銀時は両肩をすくめて呟いていると、突然エヴァが黄色い声を上げて腰に抱きついてきた。

「テメェいきなりなんだよッ! 離れろよバカチビッ!」
「私が好きなのはお前だけだぞ銀時~ッ!」
「わかったから離れろってッ!」

慌てて銀時は彼女の頭を掴んで引き離そうとするが、意地でも動かないという風にがっちり両腕を自分の腰に巻き付けている。

「あう~、“生”銀時の匂いを嗅ぐのは久しぶりだ~」
「生銀時って何ッ!? 生肉みたいに言うの止めてくんないッ!? 腐りかけ銀時とかないからッ!」

自分の腰に顔をうずめて幸せそうに言葉を漏らすエヴァに銀時はすかさずツッコミをいれた後、その場にドカッとあぐらをかいて座る。
エヴァはすぐに彼の膝の上にちょこんと乗って、銀時はそんな彼女の頭をクシャクシャと撫でて上げた。

そんな二人の姿に視線を向けながらアリカは感心したように「ほう」と頷く。

「エヴァがこんなに懐く人間がいたとは驚きじゃな」
「何言ってんだ、頭撫でればすぐに尻尾振るじゃねえかコイツ、なあ?」
「ふふ~ん」

銀時に頭を撫でられたエヴァは満面の笑みで彼の胸の中でゴロゴロしている。

そんなエヴァの姿にアリカは軽く引いた。こんな姿今まで見た事が無い。

「『闇の福音』と呼ばれ多くの魔法使いに恐れられた吸血鬼が一体何をやっているのじゃ・・・・・・」
「銀時~」
「よ~しよしよしよし、ハイジはいつも元気じゃなぁ」
「アルムおじいさんか・・・・・・・全くこの状況下で緊張感のない者共じゃな」

じゃれてくるエヴァの頭やら背中などを撫でながら裏声で喋っている銀時を見て、アリカは呆れたようにやれやれと首を横に振った後、もうすぐ日が昇ろうとする空を見上げる。

「ナギ、頑張ってくれ・・・・・・」
「へ~結構強いじゃんアンタの旦那、俺も一度戦って見たいな~」
「むッ! いきなり出て来るな神威ッ! ていうかどうやってここに来たッ!」
「夜兎の跳躍力ならこんなモンひとっ飛びさ」

金色の雷と黒色の雷が空中で何度もぶつかっている光景を見上げながらアリカはポツリと呟いているといつの間にか隣に神威が現れた。
アリカは驚くが神威は相も変わらずニコニコと笑ったまま空を見上げている。

「あ~あ、鳳仙の旦那もあんなに楽しそうにはしゃいじゃって。見た目はちっちゃな9歳の子供だけど中身は一度天寿を全うしたジイさんなんだから無理しない方がいいのにネ」
「ネギの体に夜王を宿したのはお主じゃろうが・・・・・・」
「ま、そうなんだけどネ。あ、やば、もうすぐ日が昇るじゃん」

アリカのツッコミをサラッと受け流しながら、神威は背中に差してある傘を抜いてバンと開く。
夜兎にとって太陽は天敵、日避けの傘をさした神威はフゥ~と軽いため息を突いた。

「いつか太陽にも勝ってみたいな」


































































「魔法が使えるからって・・・・・・・いい気になってんじゃねえぞッ!!」
「ふんッ!」

空中で交差しながらぶつかり合うナギと夜王。
緊迫したムードを漂わせながら、ナギは彼に向かって杖を振るう。

「サウザンド・マスターの千本の雷の矢を・・・・・・・! その身に味わえぇぇぇぇぇぇ!!!」

ナギが杖を振った瞬間、彼の前から突如無数の雷の矢が出現し、夜王めがけて発射される。
属性を持つ精霊を矢の様に飛ばす魔法使いが覚える基本呪文。
だが例え基本呪文であってもそれを使用するのはサウザンド・マスター。千本の雷をまとった矢など、並の人間では跡かたも無く消し飛ばせるレベルだ。

だが当然夜王は“並の人間”などというランクに部類されない。

「夜王神槍弾(ヤオウシンソウダン)ッ!!」
「はッ!? 今度はなんだよッ!」

夜王がナギから見て逆さまになった状態から手に持つ傘を振るった瞬間、彼の周りに円型に黒き雷を纏った2Mぐらいの槍の様な物が12本出現する。

「言った筈だ、貴様が来る前にわしはいくつかの術を創造し覚えた、この術もその一つ・・・・・・奴のくだらん矢を撃ち落とせッ!」

態勢を元に戻しながら夜王は命令するように叫んだ。
雷の槍は瞬く間に発射され、こちらに向かって飛んで来ていた千本の矢と衝突した。

両者の術がぶつかり合った瞬間、その場一帯に爆風が発生した。

「くそったれッ! お前なぁッ! 魔法使いが一つのオリジナル呪文を作るだけでさえ大変なのに、短期間でこんなモン作るとかどんだけデタラメなんだよッ!」
「貴様だけには言われたくない言葉だな」

ローブで爆風を避けながらこちらに悪態を突いてくるナギに、夜王が静かに返していると。


突如ナギの前にさっき夜王が放ってきた槍の一本が

「!!」
「相殺したと思ったのか? 甘いわッ!」
「ぐあッ!」

向かってくる槍にナギは舌打ちした後すぐさま横に飛んで回避に映ろうとするも、一瞬遅かったのか、夜王の槍はナギの左肩にグシャリと突き刺さった。

「く・・・・・・! チィッ!」
「クックック・・・・・・・どうやらわしの術の方がサウザンド・マスターの術よりも優れているのかもしれんな」

突き刺さった槍がフッと消えた途端、ナギの左肩から大量の出血が発生。
その姿を見て夜王は余裕の笑みを浮かべるも、ナギはキッと顔を上げて彼を睨みつける。

「ふざけんなよコラ、だったら俺の最大上級呪文の一つをテメェのそのニヤケ面に叩きつけてやる、とっておきのな・・・・・・」
「ほう、どうやらまだ期待できる力を秘めている様だな。面白い、では・・・・・・」

左肩を押さえながらもまだナギの目が死んでいない事に気付いた夜王は笑みを浮かべたまま、右手に持つ雷の傘を自分の肩に掛ける。

「ここからは“夜王鳳仙”としての力を見せてやろう」
「へ、やっぱり殴り合いが好きなんだな」
「わしの真の力とは、どんな物であろうと踏み潰す己の力よッ!」
「だったら俺も見せてやるよ、サウザンド・マスターの戦いって奴をなッ!」

突っ込んで来る夜王にナギは杖を構えて迎撃態勢に入る。

そして

「はぁッ!!」
「んぎッ!!」

ナギを攻撃範囲に入れた瞬間、夜王はすぐに雷の傘を振り下ろす。
その一撃は豪快凶悪。ナギは杖を水平に掲げてそれを受け止めるがあまりの重い一撃に一気に額から汗を垂らす。

「んぎぎぎぎぎぎぎッ!」
「ハエの様に叩き落としてくれるッ!」
「んがァァァァァァ!!!」

全身の筋肉と骨が悲鳴を上げる様にきしみ始めている事に気付きながらもナギは夜王の一撃を堪える。

だがただ死ぬまで堪えるだけなんてナギには出来っこない。

「こなくそぉぉぉぉぉ!!!」
「むッ!」

傘の一撃を杖でガードしながらナギは夜王との距離を一気に詰める。
そして顔を思いっきり後ろにのけ反らした後・・・・・・

「オラァッ!」
「ぐッ!」

強烈な頭突きを夜王にお見舞い、意外な行動に夜王は一瞬力がそがれ、その隙にナギは彼の傘の重みから脱出してすぐに後方へと下がる。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・・!」
「ぐぐぐぐ・・・・・・こんなくだらぬ事をやりおって・・・・・・」
「俺にとっては生きるか死ぬかの“大博打”よ・・・・・・お前との戦いはいつも博打で嫌になるぜ」

額から流れる血を手で拭いながら睨みつけて来る夜王ネギにナギはニヤリと笑って貫かれた左肩を手で押さえる。

正直こうやって意識を保っていられるのもやっとなのだ。治癒呪文を使いたいところだがそんな暇をこの男の目の前でやる事は自殺行為。この傷を負った状態で夜王を倒すしかない。

「何度も俺の前に出て問題事起こしやがって・・・・・・そんなに俺と友達になりたいのか?」
「胸糞悪い、わしは夜王、一人で生き、一人で戦い、一人で死ぬ。仲間同士で傷を舐め合う貴様等人間とは格が違う」
「ふ~ん・・・・・・そいつは本心か?」
「何?」

冷淡な発言をする夜王にナギは口元に血をしたらせたまま首を傾げた。

「さっきからお前と戦って見てわかったんだが、どうも昔と違う感じがするんだよお前。昔のお前の方がもっと凶暴で冷酷非道な悪魔みたいな奴だった筈だぜ?」
「・・・・・・何が言いたい」
「いや、実を言うと俺自身も何言っているかわかんねえんだけどよ・・・・・・」

額をポリポリと掻きながらナギはフッと笑う。

「嫌いじゃねえんだよ、お前の事。昔からあんなに憎んでいたお前が、今じゃ全然お前を見ても恨みが湧いてこない」
「・・・・・・・」
「俺が寝てる間に・・・・・・お前、なんか大切な事に気付いたんじゃねえのか? 鳳仙?」

予想だにしないナギの言葉に、夜王は黙ったまま彼を見つめる。

自分を見て恨みが湧いてこないだと? 
魔法世界を滅茶苦茶にし
家族をバラバラにした上に数年の眠りに封じ込めた自分を憎んでいないだと?

「・・・・・・甘っちょろい言葉を吐きおって・・・・・・・全く反吐が出る」
「気にすんな、ただ一人の個人的なプライベート意見だ」
「貴様が昔一度わしに負けたのはその甘さだ。他人に対する情などを持ち合わせているからわしみたいな男に足元をすくわれる、未だにそれに気付かぬとは愚かにも程がある」

吐き捨てる様に呟きながら睨みつけて来る夜王にナギはヘラヘラ笑いながら杖を構えた。

「何ムキになってんだよいいから早く続きやろうぜ。答えは決着着けた後でいいだろ?」
「ほざけ・・・・・・」

傷を負いながらもまだ笑える余裕を持っているナギに対して夜王も雷の傘を構える。

「勝つのはこのわし、夜王鳳仙よ」
「ところがどっこいッ! そうはいかねえッ!」

勝利宣告する夜王に向かってナギは杖を振り回しながら飛ぶ。

「ヒーローは一度負けた奴ともう一度戦う事になったら絶対に勝つってのがセオリーなんだよッ!」
「ぬかせ小僧ッ!」

飛んで来たナギに向かって夜王は傘を横に振るう。
ナギは頭を引っ込めてそれを回避。その後すぐに彼の懐に入って術を起動しようとする。

「千の・・・・・・!」
「こざかしいッ!」
「うげッ!」

傘が避けられたならば次は足、だという風に近づいて来たナギの顎に右足を振り上げて蹴りをかます夜王。
ナギはモロに食らってしまい、そのまま後ろに宙返り。だが

「雷の斧ッ!」

逆さまのまま十八番の「雷の斧」を発動、しかし夜王はその攻撃を読んでいた。

「何度も食らうかこのような術ッ!」

飛んで来た電撃を雷で作られた傘で乱暴に振り払う。雷の斧は真っ二つに両断された。
そう何度も同じ手が夜王に効く筈も無い。

そんな事ナギだってわかっている筈だ、しかしそれがナギの狙い目、雷の斧を放ったナギは更に上空へと飛びあがり・・・・・・・

「こいつで決めるッ!」
「!!!」

夜王だって疲労している、雷の斧に神経を集中させた彼に、今こそ最大級の呪文を撃つ好機。

杖を向け下で呆気に取られている夜王に標準を合わせる。

そして

「千の雷ッ!!」

激しい震動と音を立てて。

今までの術とは比べられないほどの膨大な大きさと威力を誇る電撃が。

息子の肉体を持つ夜王に大きな口を開けて噛みつくように降り注いだ。

「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

全身に襲いかかる灼熱の痛み。ナギが覚えている術ではトップクラスの威力を誇る『千の雷』を前にして夜王は地獄の業火の様な苦しみを味わう。

だが夜王はまだこんな攻撃で死ぬ気など更々ない。

「これしきの痛みで・・・・・・・このわしが屈すると思うたかァァァァァ!!!」

降り注いでくる電撃を体に受けながら夜王がガバッと顔を上げて、千の雷を範囲外へとかっ飛ぶ。

電撃の範囲外から出た夜王は襲いかかる痛みも気にせずに術を放っているナギの方へ目をギロリと向ける。

「ナギィィィィィィ!!!」
「よし次は雷の幻影・・・・・・げッ!」

雄叫びを上げながら飛びかかってくる夜王にナギはすっときょんな声を上げて驚いている間に、夜王は彼の襟首を強い力で掴み取った。

「あと一歩の所だったが貴様の負けだッ! このまま地面に叩きつけてくれるッ!」

そう言って夜王はナギの首を掴んだまま湖に浮かぶスクナの体めがけて急降下。

落ちるスピードはどんどん早まり、スクナの姿が段々とくっきり見えるようになる。

そしてそこにいる銀時、エヴァ、そして神威とアリカと目が合った瞬間・・・・・・・





























「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

豪快な音と共に夜王はスクナの腹に向かってナギを頭から叩きつけた。
鬼神の体に巨大な衝撃波の跡が丸い形で出来上がる。

「てこずらせおって・・・・・・・」
「・・・・・・」
「クックック・・・・・・死んだか」

もはやピクリと動く事も返事もしなくなったナギの姿を見下ろして夜王はニタリと笑みを浮かべる。

「このわしの勝ちだッ! フハハハハハハハッ!!!」
「ナ、ナギィィィィィィ!!」
「落ち着くのじゃエヴァ」
「なッ! 貴様目の前で夫を殺されたのになんだその態度はッ!」

勝ち誇って高笑いをする夜王に踏みつけられているナギに向かって涙目になってしまっているエヴァが近づこうとするがアリカは手をバッと差し出して制止させる。

「夜王・・・・・・やはり貴様も随分と老いたようじゃな」
「何ッ!」
「昔のお前なら、ナギの考える程度の策、すぐに看破出来た筈じゃ、老い、そしてナギに勝とうとする焦り。お主の敗因はそれじゃ」
「フンッ! 死んだ自分の男を前にして気でも狂ったか」

意味不明な発言をするアリカを前に夜王は哀れむ様に鼻を鳴らす。
だが彼女は真剣な眼差しで彼をただ見つめるだけ。
夜王はそんな彼女の姿を見て一体何を考えているのだ?と疑問を覚えていると・・・・・・

突然足の下殺した筈のナギの姿がバチバチ!と静電気の様な音を立てて消えた。

「なッ! これはッ!」
「お主が今殺したと思っていたのはナギの幻じゃ、本体は・・・・・・」
「はッ!」
「貴様の真上じゃ」

倒したと思っていたナギの正体が雷で作った幻だとわかった瞬間、真上から近づいてくる“あの男”の気配。
そう夜王がナギの首を掴んだほんの一瞬の前に
ナギの幻影術は発動していたのだ。

「夜王ォォォォォォォォォ!!!!」
「!!!!!」

寿命が尽きぬ限り辺りを明るく照らす太陽を背中に受けながら。
ナギが拳を振り上げて猛スピードでこちらに急降下してくるのが見えた。

「俺の想いと仲間の想いッ! ネギの想いが繋がったこの拳でッ! テメェの因縁ともおさらばだァァァァァァ!!!」
「ほざけぇぇぇぇぇぇ!! 何が想いだッ! 何が愛だッ! 何が絆だッ! そんなくだらない戯言貴様もろとも砕いてくれるッ!」

突っ込んで来るナギに夜王が吠えながら手を開いて掲げ上げた瞬間。

「ぐッ! 体が・・・・・・・!」

全身の筋肉が硬直したように動けなくなった事に夜王は歯を食いしばる。
するとそれを近くで座りこんで見物していた神威は「ハハハ」と笑って

「だから言ったじゃん」
「童ァァァァァァ!!!」

体の自由が効かなくなり心の中にいるネギに向かって叫んでいる夜王に。
目を見開いた神威はボソッと口を開いた。

「俺の弟子を甘く見るなって」
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

息子の力で動きを封じ込められた夜王に向かって。























ナギの全身全霊の拳は思いっきり彼の腹にのめり込むほど入った。

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

スクナの全身が激しく揺れる程の振動と音と共に、夜王鳳仙の最期の咆哮がその場にいる生き物全員に響き渡るぐらいに聞こえる。

(・・・・・・・わしは・・・・・・)









































場所変わってここは江戸。

かつて夜王が支配していた快楽街『吉原』にはサンサンと明るく照らす太陽の光が注がれていた。

「うわッ! 母ちゃん今日凄い晴れてるよッ! スゲーッ!」
「なんかイイ事が起きるんじゃないかと思うぐらい太陽が昇ってるね、今日も一日頑張ろうって元気が湧いてくるよ」

吉原の中心にある小さな店から顔を出したのは、かつて銀時達が救った少年晴太と夜王鳳仙が唯一愛した女性、日輪。
車椅子に乗った日輪を押しながら輝く太陽に晴太が嬉しそうな声を上げていると、店の中からキセルを口に咥え、顔に傷を付けた綺麗な女性が出て来る。

「わっちにとっては常に一番の“太陽”が近くにあるから別にどうでもいいの」
「あれ? 月詠のネエちゃん今日も見廻り?」
「夜王亡き後も吉原にはネズミ共がゴロゴロいる。わっちはこれからもネズミ駆除をやらねばいかん」

吉原の治安を守る部隊『百華』のリーダー、月詠は夜王がいなくなった吉原でも未だに戦っている。
この街はまだ未完成、彼女がいないとこの街はすぐ荒れ果ててしまう状況なのだ。

「こんな天気に大変だねアンタも。少しは休んだらどうだい?」
「気遣い感謝するがそれは無理な話、最近吉原のキャバクラにこの辺では見かけない謎の“筋肉ダルマゴリラ男”が出没しているらしくてな、百華総動員でその男を詮索している所じゃ」
「筋肉ダルマゴリラ男ッ!? 何その長ったらしい名前ッ! それがキャバクラでなんか悪い事してるのッ!?」
「店の女の下着を目にも止まらぬ速さで容易に奪う上に、その辺のゴロツキを半殺しにする程の男じゃ、吉原の治安を守る者として早急に捕まえなければならん」
「凄いんだか凄いくないんだかよくわかんないんだけど筋肉ダルマ男ッ!」
「晴太、筋肉ダルマゴリラ男じゃ、ゴリラが抜けちょる」
「いやそこは心底どうでもいいと思うよッ!」

ボケなのか天然なのかわからないが真顔で話をする月詠に晴太はバシッとツッコミを入れる。
筋肉ダルマゴリラ男・・・・・・・一体何者だろうか・・・・・・・

晴太が疑問を感じていると、日輪はふと彼の方へ振り向く。

「筋肉ゴリラの事より晴太、アンタ店の方は大丈夫なのかい?」
「母ちゃん筋肉ゴリラだとそれもはや人じゃなくてただのゴリラだから・・・・・・。あッ! そうだ早く店の方に行かないとッ!」

日輪に言われて思い出したのか晴太は焦った様な声を出した。
吉原に住む晴太はまだ少年なのにも関わらずこの街にある「おもちゃ屋」の店を任せられているのだ。
ちなみにおもちゃ屋はおもちゃ屋でも“大人の”おもちゃ屋である。

「今日はすんごい商品がウチの店に入ってくるんだよッ! アレをアレにしてアレをアレするとッ! なんとアレがアレになって簡単にアレができるすんごいあのアレがッ!」
「何言ってるのかさっぱりわからんぞ・・・・・・アレってなんじゃ?」
「まあ、そんなモンでたらアレやアレとかアレもアレ放題だね」
「日輪、わかるのかぬし・・・・・・・」
「うんッ! だからオイラアレを今月の目玉商品にするんだッ! アレ絶対売れるからッ! じゃあオイラもう行って来るねッ! アレをアレしなきゃいけないからッ!」

楽しげに話しあう親子の姿を見て月詠が困惑の色を浮かべていると晴太は元気いっぱいに大人のおもちゃ屋の方へ行ってしまった。

「アレって一体なんなのじゃ・・・・・・」
「フフ、アンタは知らなくていい事だよ」
「気になる・・・・・・」

何故か日輪に秘密にされたので月詠がジト目で悩んでいる表情をしながらキセルから煙を吐いていると、日輪がフッと顔を上げて空に浮かぶ太陽を遠い目で眺め始める。

「晴太の言う通り今日は本当に一段と綺麗な太陽・・・・・・まさかこの吉原でこんな綺麗で美しい太陽が拝められる日が来るとはね・・・・・・」
「銀時達のおかげじゃ、夜王を倒しこの街に太陽をくれた上に、地雷亜の時も助けてくれた。今度奴等に何らかのお礼をやらねばいかんの」
「じゃあ銀さんと一日デートでもしてくればいいんじゃないかい?」
「なんでわっちがそんな事・・・・・・しかも何故銀時なのじゃ」
「あら?嫌なの?」
「・・・・・・デートじゃなく買い物程度なら付き合ってやらんわけでもない・・・・・・」
「ウフフフ」

顔を背けてウブな反応をする月詠を見て笑った後、日輪は太陽の光を体で感じながらふと彼女に話しかける。

「こうやってお日様の下で・・・・・・あの人とこんな何気ない会話をみんなでしたかったねぇ・・・・・・」
「鳳仙の事か? あんな男がわっち達と仲良く会話するなど想像もできんぞ」
「大丈夫だよ、あの人は最期に私に“本当の自分”を教えてくれた・・・・・・」

そう言って日輪は太陽をそっと見上げる。





























「あの人はただの寂しがりやなおじいちゃんなのよ」
































































戦いを終えたナギはヨロヨロとしながら倒れる夜王へ近づいて行った。

「夜王・・・・・・」
「・・・・・・」

太陽を背に受けながら大の字で倒れている自分を見下ろすナギの姿を見て。
夜王はニッと笑って彼に呟いた。





























「わしのワガママに付き合ってくれて礼を言うぞ・・・・・・ナギ」






[7093] 第七十四訓 鬼の力 仏の心
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/06/27 00:40
「これでわしはもう悔いはない・・・・・・」

夜王ネギとナギの戦いは終わり、宿敵であるナギに敗れた夜王は天を仰ぎ見ながらそんな事を呟いた。

「わしがこの世に一つだけ残されていた未練、ナギ、最期に貴様とお互いに本気でぶつかり合う事だった・・・・・・深き因縁を持った貴様に『夜王鳳仙』としての人生に真の終止符を打ててもらえたことがなんと心地いいか」
「鳳仙、お前・・・・・・」

安堵の表情を浮かべ自分に対して思いを告げる夜王の姿に、治癒魔法で自分の傷を回復していたナギは少し驚いた様な表情をした。

今ここに倒れている彼は『夜王』という称号など持っていない。
ただ一生を孤独に生きた哀しい男、愛を望もうとしても手に入れる事が出来なかった一人の老人だ。

「心の底では誰からも愛される貴様の事を妬んでいたのかもしれん・・・・・・貴様と違い、どれだけ仲間を作ろうともわしには“友”と呼べる存在などいなかった・・・・・・フ、欲しい者は全て力づくで奪い取ってきたわしの事など誰も愛するわけないというのに・・・・・・」
「夜王、だからお主はナギに執着しておったのか・・・・・・」

自分の言った事に思わず笑ってしまう夜王に、戦いを見送っていたナギの妻であるアリカが近づいて行く。
弱っている彼を目の前にしてアリカの心にある彼に対する憎しみは不思議と消えていた。

「馬鹿な男じゃ・・・・・・本当に・・・・・・」
「・・・・・・信じるのは己のみ、それが夜兎の本能なのだ、わしはそれに逆らわずその本能に従って生きて来たまでの事よ、後悔など無い」
「・・・・・・もしかしたらお主とわらわ達は友になる事だって出来たのに・・・・・・全く・・・・・・貴様は夜王ではない、ただのうつけ者じゃ」
「フフフ、貴様等と友になるか・・・・・・」

目に涙を溜めて吐き捨てる様に呟くアリカの姿を見て、夜王はニッと笑った。

「あり得ないが・・・・・・・それも悪くなかったかもしれんな・・・・・・」

そう残して夜王鳳仙は深い眠りに入る為に。


静かに目を閉じた。










その時の表情は安らぎに満ち溢れていた























































鳳仙が次に目を覚ました時には周りは深き闇の中に包み込まれていた。
己の姿も元に戻っている。

「また会いましたね」
「童・・・・・・・」

そしてその闇の中でつっ立っている一人の少年が彼に向かって話しかけた。

「ずっとここからあなたと父さんの戦いを見てました。おじいちゃんも父さんに負けないぐらい強かったですよ」
「童、あの時何度もわしの動きを止めたのは貴様の仕業か」
「そうだと思います、あの時は必死だったんでよく覚えてませんが・・・・・・」
「そうか・・・・・・」

後頭部を掻いて苦笑している少年に特に追及もせずに鳳仙は彼の隣を横切って行く。

「このわしの力に打ち勝てた事を誇りに思え。貴様はナギの息子、もっと強くなれる筈だ」
「はい、おじいちゃんとお父さんの戦いを見て、僕は何をするべきかわかりました」
「そうか・・・・・・ではさらばだ」
「何処へ行く気ですか?」
「わしは黄泉へ還る」

少年の問いに鳳仙は闇の中を歩きながら答えた。

「この闇の中に出口があるのかどうかはわからん、だがわしの様な存在はコレ以上お前の中にいる必要などない」
「・・・・・・」
「貴様の体を借りたおかげでわしはこの世で十分に楽しめた、礼を言うぞ童」

そう言い残して鳳仙は彼の前から消えようとした。

しかし、突然着ている着物の裾をむんずと掴まれる。

「待って下さい」
「・・・・・・なんだ?」
「僕のお願いを・・・・・・聞いてくれませんか?」
「・・・・・・・手短に話せ」

自分の服を引っ張って来た少年に鳳仙は彼の方へ振り返りぶっきらぼうに返事をした。
すると少年は口元に軽い笑みを浮かべて

「もしよろしければ、これからも僕の中にいてくれませんか?」
「・・・・・・ほう」
「おじいちゃんの力が僕にはまだ必要なんです」
「面白い事を言うな童・・・・・・」

意外な事を頼みこんで来る少年に鳳仙はニヤリと笑みを浮かべる。

「貴様の家族を引き裂き、なおかつ貴様の体を奪っていたのはこのわしだぞ?」
「知ってますよ、だからなおさら手離すわけにはいかないんですよ」
「何?」

鳳仙に向かって少年はニコッと笑った。

「色々と僕の家族に迷惑かけて来たおじいちゃんを、僕がノコノコとあの世に逃がすと思います?」
「・・・・・・フ」
「当分罪滅ぼしのつもりでここにいて下さい、多分ここをずっと歩いて行ってもあの世になんか辿り着けませんよ? 僕が一人前になっておじいちゃんの術を解呪出来るようになったらあの世に戻してあげます、ちなみに僕の中の家賃はあなたの力」
「フハハハハハッ! さすがはあの“バカ弟子”の弟子よッ! このわしを前にして恐がるどころか脅しをかけに来おったわッ!」

少年の姿を見ていると自分の弟子の子供の頃をよく思いだす。
鳳仙は上を見上げて豪快に笑った後、彼の方へ顔を戻した。

「いいだろう、貴様が一人前の力を手に入れるまでわしは貴様の中にいよう。退屈なあの世よりここから貴様の人生を眺めるの悪くないかもしれん」
「これからもよろしくお願いします、友達として」
「・・・・・・今なんと言った」
「友達です、お父さん達の代わりに僕がおじいちゃんの友達になります」

少年は笑いかけながら答える。
そんな少年の姿を見て鳳仙もまたフッと遠くを見る様な笑みを浮かべた。

夜王と呼ばれ人々から恐れられていたあの鳳仙とは思えない慈愛に満ちた優しい笑顔で

「・・・・・・友・・・・・・家族共々酔狂よのぉ・・・・・・」

ネギ・スプリングフィールド。

鳳仙が少し“彼”に興味を持った瞬間であった。






























第七十四訓 鬼の力 仏の心 


























闇の世界は突如、光に包まれていく。あまりの眩しさにネギは目を閉じた。

次にネギが目を開けた時はそこには・・・・・・

「・・・・・・」
「ネギか? それとも鳳仙か・・・・・・?」

倒れている自分にしゃがみ込んで顔を近づけてくる自分とよく似た一人の男。

ぼんやりと目を開けた状態でネギはボソリと呟いた。

「ネギのほうだよ、父さん・・・・・・・」
「お、おおッ! よっしゃぁぁぁぁぁぁ!! ネギが生き返え・・・・・・! おぐしッ!!」

夜王の声が混じっていない、肉体が本来の宿主であるネギに戻ったのだ。
それにナギが嬉しそうに両手を上げてガッツポーズを取ろうとした瞬間。
問答無用ににネギの右ストレートが彼の顔面に入った。
喜びから一気に痛みに変わり、その場で顔を押さえて悶絶するナギ。

「うおぉ・・・・・・・イッテェよッ! いきなり何すんのパパにッ! ドミスティックバイオレンスッ!?」
「星海坊主さんに父さんと出会った時はとりあえず殴っとけって言われてたから」
「あのハゲ・・・・・・・俺の息子に変な事吹き込みやがって・・・・・・」

夜王戦で疲労しているナギの体にコレ以上無い仕打ち。父である彼を殴ったネギは眠そうにしながらもようやく立ち上がる。

「体の節々が痛いけど・・・・・・鳳仙のおじいちゃんと入れ換わったから傷は回復してるな・・・・・・」
「ネギ・・・・・・大丈夫か? ていうか本当にネギなんじゃな?」
「僕は正真正銘あなたの息子だよ、母さん」

自分の体を眺めているネギにアリカが恐る恐る尋ねるとネギは彼女に笑いかけながら答えた。

「僕が闇の中にいた時、母さんの声が聞こえたんだ。母さんと、戦ってくれた父さんのおかげで僕は闇の中から光が見つける事が出来た」
「すまなかったのネギ・・・・・・春雨などに踊らされたわらわはお主には母親と呼ばれる資格などないないというのに・・・・・・」

嗚咽を繰り返しながら涙で頬を濡らすアリカに。

ネギはそっと近づいて彼女の胸の中に飛び込んだ。

「僕の母さんは母さんだけだから・・・・・・」
「ネギ・・・・・・」
「フフ、ようやく母さんって呼べた」
「すまなかったな・・・・・・寂しい思いをさせてすまなかったな・・・・・・」

互いの温もりを感じながら抱きしめ合う母と子。
そんな二人を見守るように銀時とエヴァ、ネギに殴られた鼻を押さえているナギが眺めていると








「ハハハハハ、勝った勝った、夜王相手に勝っちゃった」

日避けの傘をさして嬉しそうにネギとアリカに向かって称賛の声を上げるのは彼の師である神威。
彼の声を聞いてネギはアリカと抱き合うのを止めて振り返った。

「俺の望み通り、君はあの夜王鳳仙の力を手にする事が出来た、でも気をつけるんだね。また命を失うハメになると君の体はまた夜王のモノになる」

そう言って神威はクイッと自分を親指で差した。

「例えばまた俺に殺されるとかされたらネ、試してみる?」
「貴様ッ! もしやまたネギをッ!」

ネギの後ろにいるアリカが激昂の声を上げて身を乗り出そうとすると。
ネギは彼女の方へ向かずに手をスッと差しだして制止させた。

「鳳仙のおじいちゃんはもう無理矢理僕の体を使おうとだなんて考えてませんよ神威さん」
「ん?」
「さっき僕の心の中で鳳仙のおじいちゃんと友達になりましたから」
「夜王と友達?」

聞かされた事に神威は首を横に傾けるが、アリカとナギの方は慌てた様子でネギに方へ歩み寄る。

「ネギッ! それはまことかッ!?」
「うん」
「鳳仙と友達とかお前何考えてんだッ! お前さぁッ! コイツでわかったんだからちっとはまともな奴と仲良くしろよッ!」
「お父さんは黙ってて」
「なんで俺に対しては反抗期ッ!?」

両親に言われても全く動じないネギを見て、神威はヘラヘラ笑い出す。

「俺でもそんな馬鹿なことしないよ、自分の体を奪おうとした奴と仲良くするなんて」
「神威さん、ちょっと質問いいですか?」
「ん? 何?」

神妙な顔でネギは師である神威にゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・神威さんはなんで僕を殺したんですか?」
「ああ・・・・・・俺が君にあの変ちくりんな本を渡した時から、君の事は殺そうと考えていた」
「・・・・・・どうしてですか?」
「どうしてって? 決まってるだろ、夜王鳳仙を君の体で蘇らせるためさ」
「・・・・・・」

さしている傘をクルクル回しながら、神威は黙っているネギに話を続ける。

「そして鳳仙は再び死に、また君の心の中に戻り、君は夜王と完全に融合する。これで俺のもくろみは成功ってわけ。俺が君に望んだのは『教えられる強さ』じゃなくて『奪う強さ』だ。真の強さっていうのは誰から貰うモノじゃない、自分で勝ち取るモンなんだよ」
「奪う強さ・・・・・・・」
「現に君は鳳仙の旦那の力をもう奪い取っている。あの夜王さえ食らったんだ、これからもっと食らいつくせばもっと強くなれるよ?」
「・・・・・・それが神威さんの望みだったんですか・・・・・・」

神威の話を聞いてしゅんとした様にうなだれて呟くネギに、神威は目を細く開いて企み笑いを浮かべた。

「俺が憎ければいつでも殺しに来るがいい、言っとくけど今の君の力はまだ不安定だ。今から俺を殺そうとしたら死ぬのは君の方だ」
「・・・・・・」

自ら戦いの誘いをネギに行う神威、ハッタリではない雰囲気からして本気らしい。

そんな彼の顔を見ずにしばらくうつむいて黙りこむネギ。

神威は自分を利用し殺した張本人だ。
しかも昔、自分の大切な物を全て奪ったあの春雨の一人。
本来ならアーニャの様に殺したいほど憎しみが芽生えてもおかしくない。

だが・・・・・・























「・・・・・・僕は神威さんを殺せませんね」

顔を上げてネギは答えた、口元には神威と似た様な笑みがある。

「だって僕は神威さんの事、今でも好きですもん」
「ネ、ネギッ! お主何を言うておるッ!」

突拍子もない事にアリカは慌てて叫ぶも、ネギは話を続ける。

「確かに神威さんはいい人じゃありませんよ、すぐに殺そうとするし、食い意地も悪いし、いつもヘラヘラ笑って変な事企んでそうな感じが常にプンプンしてますけど・・・・・・」

ニッと笑ってネギは宣言した。

「そういう所ひっくるめて僕は神威さんの事大好きですから、例え一度自分を殺した相手だとしても僕はこうやって生き返っている、あなたが春雨の一人だからって、あなたはあの時僕の村を襲った人じゃない。『終わりよければ全てよし』、だから憎んでるとか怨んでるとかこれっぽっちも無いですよ?」
「・・・・・・ふ~ん」

頬をポリポリと掻きながらネギの話を聞いていた神威は笑みを浮かべたまま両肩をすくめた。

「鳳仙の旦那はともかく俺まで怨んでないなんてよく言い切れるネ、頭にバカが付くほどお人好し、君には呆れたネ。そんな理想みたいな生き方じゃ長生きできないよ?」
「自分でもそう思いますよ、でも僕もう決めたんです」
「何を?」

決意を込めた表情で拳をグッと握り締めているネギに神威は愉快そうに首を傾げた。
するとネギは一度大きく深呼吸した後彼の目を見て・・・・・・

「僕は神威の言う『奪う強さ』じゃなく、『絆の強さ』を選びます」
「絆? 仲間同士でじゃれあって強くなれるお侍さんや君のお父さんがやってたアレ?」
「生徒の皆さんと銀さん達や桂さん達と真撰組の皆さん、そして父さんと母さん。みんなの絆がより強く結ばれる事で、人は何かを護る為に肉体的にも精神的にも強くなれる事を銀さんと父さんに教えられました」
「・・・・・・」
「だから僕は一人で強くなるんじゃなく、みんなと一緒に強くなりたい」

拳を握りしめて縦に頷くネギ。
弟子の決意を知った神威は「ふ~ん」と全く動じずに頷き返した。

「なるほど、結局そこに行きついたのか。ま、いいんじゃない君が選んだ事だし? 俺の力の方が全然上だと思うけどなぁ」
「この力で救いたい人がいるんです、僕の幼馴染は今とても深く邪悪な闇に囚われている。あの子は僕の友達・・・・・・絶対に救わなければいけない・・・・・・」

高杉と共に生きる道を選んだ“彼女”への思いを言った後、ネギは神威の方に向き直る。

「そして僕にとっては・・・・・・鳳仙のおじいちゃんや、神威さんも僕にとって大切な絆を持った一人です」
「俺も?」
「神威さん・・・・・・」

恐る恐るネギは言おうかいわまいか迷った後、神威に向かって思い切って口を開いた。

「もし僕が将来もっと強くなれたら・・・・・・戦ってくれませんか?」
「・・・・・・俺は別にいいけどどうして?」
「神威さんの言う奪う力と、僕の言う絆の力。どっちが強いか試してみたいでしょ?」
「へぇ・・・・・・面白そうじゃん・・・・・・」

大胆不敵な挑戦に神威はニヤリと笑って目を開ける。
ネギも額に汗を流しながら笑みを返した。

一方後ろにいるアリカは心配そうに彼の肩を掴む。

「さっきから何言ってるんじゃネギ・・・・・・! こんな男を相手にするなど正気か・・・・・・!?」
「僕は・・・・・・絆の強さで神威さんに勝って、その強さを認めて欲しい」
「・・・・・・認めて欲しい?」
「“相手に勝つことだけが全てじゃないという事を”あの人に教えてあげたいんだ」

ネギの言っている事にアリカはもしや?と顔をこわばらせた。

「・・・・・・まさかこの男とも仲良くつもりでないだろうな・・・・・・?」
「いや、僕と神威さんは元々仲良しだよ」
「なッ!」

驚くアリカにネギは振り返る。
ネギは神威と同じ笑みを浮かべていた。

「だって神威さんは僕のお師匠さんだから」
「ネ、ネギ・・・・・・お主そこまで神威の事を・・・・・・・!」
「あの人から色んな事を教わった、いい事も悪い事も凄く悪い事も。だから僕はそのお礼に・・・・・・神威さんに大切な事を教えてあげたい」
「うう・・・・・・」

物凄くショックを受けたようにネギから後ずさりするアリカに今度は神威が口を出す。

「悪いね~お母さん、どうやらおたくの息子さんはとことん俺に惚れてるようだ」
「貴様は黙っとれッ! 何という事じゃ・・・・・・ネギがこんな奴に懐いてしまうなんて・・・・・・」
「まあしょうがねえよ“姫さん”・・・・・・息子が決めた事に親の俺達がいちいち口を出すのもどうかと思うぜ?」
「アホウッ!! ネギはまだ子供ではないかッ!」

苦笑しながら自分の肩をポンと叩いて来たナギにアリカは物凄い剣幕で叫ぶ

「ナギッ! お前は神威の父親を知っているかッ!?」
「知らねえよ」

小指で耳をほじりながら興味無さそうに返事をするナギにアリカはビシッと神威を指差して

「こやつの父親は“星海坊主”じゃッ!」 
「星海坊主・・・・・・え? もしかして?」
「唯一夜王と互角に渡り合えた夜兎ッ! お前が昔、何度も殺し合いをした男の息子なんじゃぞコイツはッ!」 
「げぇぇぇぇぇぇぇ!!! マジでかぁぁぁぁぁぁ!?」
「ええッ! 神威さんのお父さんが星海坊主さんッ!?」 
「ハハハ、バレちゃった」

父子が自分の正体に気付いてすっときょんな声を上げたので神威はクスクスと笑う。

神威の父親あの星海坊主・・・・・・ナギだけではなくネギさえも仰天した真実。

まさか命の恩人である星海坊主と師である神威が親子関係だったなんて・・・・・・・

「神威さんッ!」
「アハハ、俺も認めたくないけど残念ながら俺とあの人は血が繋がってるんだよ」
「なんでそんな大切な事を今まで・・・・・・」
「俺はあの人の事嫌いだから、名前や存在さえ口にしたくない、殺したいとも思ってるよ」
「えええええッ!!!」
「ネギ」

笑顔でサラッと実の父親を殺してもいいと告白する神威にネギがすっときょんな声を上げると、アリカが彼の肩に手を置く。

「神威はの、夜兎族の大昔に伝統とされていた『親殺し』をやったことがあっての。その伝統に従って星海坊主と戦い殺されかけたのじゃ」
「親殺し・・・・・・?」
「そうか、あん時、ハゲの片腕を斬り落としたのはお前だったのか・・・・・・」

アリカの情報を聞いてナギは神威の方へ視線を向けながらボソッと呟く。

「実の息子にやられたとか言ってたが・・・・・・オメーなら確かにそんな事やりそうだ」
「懐かしいなソレ、あん時は“飛んだ邪魔”が入って結局決着が着かなかったんだよなぁ」

物思いにふけて懐かしむ様に笑顔を浮かべる神威にネギは一つの疑問を抱く。

あの星海坊主とこの神威の戦いの中に“邪魔”を出来た人物がいたのか?

ネギがそう思っていると、背後からとある少女の大きな雄叫びが・・・・・・

「神威ィィィィィィィ!!!!」
「え? うわッ!」

叫びながら岸からこちらへひとっ飛びでジャンプしてきたのは神楽。
こちらにキレた様子で飛んでくる少女にネギが驚いていると神威はだるそうにため息を突く。

「噂をすれば出て来たよ、お邪魔虫が」
「へ? それって・・・・・・」
「どっせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ネギが神威に問いかけようとした瞬間に神楽は勢いよく彼の隣に両足で着地する。
手に持つは一本の日傘、ネギはそれを見てハッとするが神威はすぐに神威に襲いかかろうとする。

「そのニヤケ面に一発叩きこんでやらぁッ!!」
「ちょッ! ちょっと待って下さいよッ! いきなりなんなんですかッ!」

拳を振り上げて神威に殴りかかろうとする神楽をネギは慌てて彼女の腰を両手で掴んで止める。

「もしかして神威さんの事をよく知っている人ですかッ!?」
「離すアルラスボスッ!!!」
「その呼び方止めてくれませんッ!? なんか傷付くんでッ!」

凄い力で振り切ろうとする神楽にツッコミを入れながらネギは引きとめる。
すると神楽は歯を食いしばりながら・・・・・・

「バカ兄貴を止めるのは私の役目ネッ!」
「兄貴? え?もしかして・・・・・・」

恐る恐るネギは神威の方に目を向けると彼は笑顔で一言。

「うん、一応それ俺の妹」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「マジでかッ! てことはコイツ星海坊主の娘だったのッ!?」
「それはさすがにわらわもわからなかったの・・・・・・」

神威が星海坊主の息子だというのにも驚いたが今度はまさかその星海坊主の娘であり、神威の妹がここにいる神楽だという事実に、ネギとナギ、アリカさえも驚いた表情をした。

「出来の悪い妹の上に見ての通りかなりのじゃじゃ馬でね、よかったらこの子嫁として貰ってくれない?」
「いやいきなりそんな事言われても・・・・・・・うぐッ!」
「こんなチビに貰われるわけねえだろボケェッ!」

いきなり神楽を嫁にしてくれと要求してくる神威にネギが困惑の色を浮かべているとすぐに神楽の肘鉄が彼の頭上に直撃。

「ビリビリは上条君の所に嫁入りしてくるアルッ!! 姑インデックスと朝から晩までネチネチ言い争ってろコラァッ!」
「いや今の僕は男ですからッ!」

意味深な事を叫んでくる神楽にネギが勢いよく返していると。




「なんだよコレ・・・・・・・」
「え?」
「俺が寝てる間に全部終わっちゃたのか・・・・・・」
「うわッ! また変な人がッ!」

スクナの上に今度は一人の男が日傘をさしたままヒラリとジャンプしてこちらに飛び下りて来た。
神楽や神威と違ってこっちはずっとおじさんだ。

「このバカ団長の部下の一人であり同族、阿伏兎だ。坊主とは一応初めましてかな?」
「神威さんの部下・・・・・・?」

驚くネギに神威の部下である夜兎、阿伏兎は丁寧に自己紹介した後、隣にいる神威にバツの悪そうな顔を浮かべた。

「こうやってスクナがぶっ倒れて、あの坊主が元に戻ってるって事はやっぱ負けたのかこっちが?」
「どっかのオッサンがその辺でずっとノビてたせいでね、夜兎としてのプライドはあるの? 阿伏兎?」
「・・・・・・いや悪かった、まさかたかが人間の男女にあそこまで醜態見せるとは思わなくてさ・・・・・・」

ボサボサの髪を掻き毟りながら謝ってくる阿伏兎に神威は笑みをニコニコと浮かべたまま近づく。

「“今度”は許すわけにはいかないよ阿伏兎、お前は一度ならず二度も負けたんだ、弱い夜兎はいらない」
「ああわかってる、遠慮なくスパッと首を刎ねてくれ・・・・・・俺はもうこれ以上夜兎としての誇りに傷をつけたくない」

阿伏兎は目をつぶってその場にしゃがみ込む。神威は彼の後ろに回って手を振り上げる。

そして

「えい」
「はうッ!!」

背中のある部分を神威は思いっきり指で突いた瞬間、物凄い苦しそうな表情をしながらバタンと倒れる阿伏兎。

「“身体静止の秘劫”を突いた。これでお前はしばらく五体全てが使えない」
「な、なんで俺にそんな北斗真拳みたいな真似を・・・・・・! てかどこで覚えたんだよそれッ!」
「神威さんッ!」

倒れる彼を見てネギは思わず叫んだ。

すると神威は全く動じずに笑みを浮かべたまま倒れた阿伏兎に話しかける。

「いいか阿伏兎、お前に一つ頼みがあるんだ、ここで死ぬか俺の頼みを聞くかどっち? お前の大好きな選択肢だ、好きに選べばいい」
「・・・・・・どっちも死ぬ匂いがするがとりあえず後者で・・・・・・」
「俺がしばらくこの子を置いて遠くへ行く。その間はお前がこの子の近くにいて世話をして欲しい」
「はぁッ!?」

いきなり訳のわからない事を言い出す神威に阿伏兎は顔だけを彼に向けた。
だがどうやら冗談で言っているわけではないらしい

「よろしくネ」
「ちょっと待てよすっとこどっこいッ! 何で俺がアンタのお気に入りのガキの面倒なんか見なきゃいけねえんだよッ!」
「だって俺がいない間に鳳仙の旦那だけじゃ心もとないだろ? だからお前がこの子の事を鍛えてあげといてくれ、拒否したらこの場でお前を殺すけどいいの?」
「ふざけんなよバカ団長ッ! 第一このガキがいるのは女子供の溜まり場なんだろッ! 俺みたいな奴がいれる環境じゃねえだろうがッ!」
「だってよ、どうなの?」

首を横に振って激しく嫌がる阿伏兎を見て、神威は笑みを浮かべたままネギの方へ顔を上げる。
するとネギは彼と同じ笑顔で

「確か女子寮の管理人さんが多量ストレスによるノイローゼで辞めたらしいので丁度いいですね」
「おい待てぇぇぇぇぇぇ!! まさかお前そのノイローゼにかかる程の危険地帯の場所に俺を入れる気かァァァァァァ!? 師匠も師匠なら弟子も弟子だなコンチクショウッ!」

首だけをじたばた暴れさせる阿伏兎に対してネギは神楽を止めながら遠慮なく話を続ける。

「え~と、阿伏兎さん。まず管理人の仕事は女子寮のあらゆる場所の掃除と消灯時間のチェック、あと夜間の見廻りもありまして・・・・・・」
「俺もう管理人決定済みッ!? いきなりこの子職場説明始めたんだけどッ!? クソッタレッ! 誇り高き戦闘民族である夜兎としてそんなデンジャラスなガキ共の巣窟なんかに住むなら死ぬ方がマシ・・・・・・! おごッ!」

夜兎としてのプライドを捨てられない阿伏兎はその条件を断ろうとするが神威は即座に彼の後頭部に思いっきり蹴り。

ずっとぞんざいな扱いにされていた阿伏兎はそのままガクッと白目をむいて気絶してしまった。

「大丈夫だって阿伏兎、お前もきっとこの子を気にいる。この子の匂いは夜兎に好かれる匂いなんだ」
「神威さん、阿伏兎さんもう聞ける状態じゃないんですけど?」
「あ、本当だ、ハハハ」

部下が気絶した事に初めて気づいた神威は愉快そうに笑った後、ネギや神楽達に踵を返して背を向けた。

「春雨にはもう戻れない、いっぱい連中の兵を死なせちゃったからネ、戻っても捕まって首を飛ばされるだけだ、しばらく雲隠れしてほとぼりが冷めるのを待つよ」
「じゃあ何処へ行くんですか?」
「さあね、しばらくこの世界を観光してみる。上手いモンの食べ歩き世界一周の旅をするのも悪くない」
「そうですか・・・・・・」
「神威ィィィィィィ!! 逃がすかコラァァァァァァ!!!」

彼らしい答えを聞いてネギは思わずフッと笑う。
そして暴れ狂う神楽を止めながらネギは彼の方へ顔を上げた。

「暇になったら麻帆良に遊びに来ていいですよ」
「ん? いいの? お侍さんや君の両親は怒るんじゃないの俺が来たら?」

可笑しそうに尋ねて来る神威にネギは首を横に振った。

「僕と神威さんは一生師弟ですから他人に何を言われようと関係ありません。遊びに来たらもう一度僕の修業に付き合って下さい、お師匠さん」
「・・・・・・フフ、わかった。またいつか遊びに行くよ」
「はい、何時でも歓迎しますから」
「・・・・・・神威・・・・・・」

楽しげに語り合うネギと兄である神威を見て神楽は複雑な気持ちになっていく。
すると神威は彼女に向かってヒラヒラと手を振った。

「バイバイ、出来の悪い妹、あのハゲ親父によろしく」
「お前・・・・・・!」

ムッとする神楽を無視して神威は最後にネギの方へ目を向ける。

「じゃあね、俺の小さなお弟子さん」

そう言い残すと神威はスクナの上からバッと岸の方に飛んで、木から木へと飛んでいきながら何処かへ行ってしまった・・・・・・。

「行っちゃった・・・・・・次はいつ会えるんだろうあの人に・・・・・・・・おぐッ!」
「いい加減離すアルッ! ビリビリッ!」
「あ、す、すみません・・・・・・」

またもや顎にカッパー決めて来た神楽にネギは顎を押さえて謝りながら彼女から手を離す。
ようやくネギから解放された神楽だが依然不機嫌なままだ。

「ったく・・・・・カワイイレディの体をただで触るなんてこんなスケベなガキの親の顔が見たいアル」
「お前の目の前にある二名の男女がそうなんだけど?」
「フン、こんな親父のガキだったら納得ネ」
「あ~こんな暴力的で平気で毒舌吐いてくる小娘があのハゲの娘か、すげぇ納得できるわ。お前も絶対将来ハゲるぞ? ツルンツルンになるぞ?」
「私はマミーの方に似てるからあんなクリリンカットになるわけねえだろうこのタコが」
「タコはお前の親父だ、タコから生まれたタコ娘」

突然いがみ合いを始める神楽とナギにアリカとネギは呆れた様な視線を向ける。

「ナギ、ネギが見ているというのにいい年してこんな子供と喧嘩するな」
「止めてよ父さん・・・・・・息子として恥ずかしいから」
「待てやお前等ッ! さっきから俺に対して冷た過ぎねえかッ!? 俺超頑張ったよなッ!? 鳳仙倒したの俺だよなッ!?」 

軽蔑した一言を漏らす二人にナギは食ってかかるように振り返った。
もちろん彼のおかげで夜王を倒しネギを救えた。
だがアリカはそんな彼に向かってフンと鼻を鳴らす。

「それとこれとは別じゃ、父親なら子供の前では父親らしく振舞ってみるのが常識じゃろうて、子供と喧嘩する父親など論外じゃろ」
「うわ~僕の父さんってこんな人なんですね~、ホント大人げないというか、子供っぽいというか」
「ぐッ! お前だって子供っぽくないガキのクセに・・・・・・!」
「テメーのガキに言われてやんの、ギャハハハハッ!」
「オメーは黙ってろ小娘ッ!!」

妻や息子、知り合いの娘まで言いたい放題。神楽に向かってナギが額に青筋を浮かべて拳をワナワナと震わせていると。

そんな彼の両隣りにある男女が近づいて来た。

「まあそんな怒るなよ本当の事なんだからさ」
「ん?」
「やはり父親になっても頭の中はガキのままか、全く成長しないなお前は」
「あ?」

左肩をポンと手で叩いて来たのは銀時、右側のわき腹を肘で小突いてきたのはエヴァ。

二人の姿を見てナギは表情をキョトンとさせる。

「・・・・・・いつからいたのお前等?」
「「最初からいたわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

ナギの素朴な質問に二人はブチ切れた様子で同時に叫んだ。

「こっちは何処でボケようかツッコもうかスタンバってたのにどんどんお前等だけで話進ませやがってッ! もう何もかも終わっちまったじゃねえかッ! 言っとくけど俺が主人公なんだぞッ!」
「私はヒロインなんだぞッ!」
「へ~残念な主人公とヒロインだな」
「おいダメ親父そろそろ天に帰してやろうかッ!? あッ!?」
「私の貴重な出番を台無しにしおってッ!」
「あいあい、二人でギャーギャーわめくなよ耳元で」

騒ぎに騒ぐ銀時とエヴァにめんどくさそうに対処するナギだが、ふとエヴァがいた事に改めて気付いた。

「そういえばお前が何でここにいるんだよエヴァ、お前確か俺が術かけて学園から出られない筈だろ?」
「フンッ! 貴様の呪いなど私が少し頭を捻れば簡単にだませるわッ! ていうか貴様こそ今まで何処に行ってたッ! 私はお前が帰ってくるのをどれだけ待っていたと思うッ!」
「は、しょうがねえだろ行ける状態じゃなかったんだから。俺は自分と家族の事でいっぱいいっぱい・・・・・・」

怒鳴り声を上げるエヴァにナギはだるそうに返そうとするが・・・・・・

「ナギッ!」
「父さんッ!」

突然目を虚ろにして背中から倒れようとする。
夫のいきなりの出来事にアリカが慌てて彼の体を手で受け止めた。

「どうしたんじゃいきなりッ! しっかりせいッ!」
「悪い姫さん、そろそろ俺限界・・・・・・疲れ果ててもう立つ事も出来ねえや」
「は?」
「ちょっくら寝かしてくれ・・・・・・昔みたいにあんたの膝の上で・・・・・・」
「全く・・・・・・ホントに何も成長しないなお主は・・・・・・」
「ヘヘヘ・・・・・・」

体を横にして倒れニヤリと笑うナギを、アリカはため息を突きながら自分の両膝の彼の頭を乗せて上げる。
すぐにナギは彼女の両膝の上で眠ってしまった。

「せめて詠春の屋敷まで我慢できんのか・・・・・・」
「うおぉぉぉぉいッ! いきなり何するアルかこのチビッ!」
「ん?」

神楽がすっときょんな声を上げたのでアリカはそちらに目をやる。
すると彼女の背中にナギと同じく疲労困憊の様子でもたれかかるネギの姿が

「すみません・・・・・・僕も色々あったせいで疲れちゃいました・・・・・・」
「だからって私に寄りかかるんじゃないネッ!」
「ごめんなさい、でも僕もう指一本動かせる状況じゃなくて・・・・・・・くう」
「私の背中で寝るなコラァァァァァ!!!」

慌てた様子で背中にのしかかるネギを起こそうとするが、寝息を立てて熟睡状態に入った彼はもう何をやっても起きない様子だ。 

父親同様疲れ果てて眠ってしまったネギを見て、エヴァはやれやれと首を横に振る。

「これからが大変だというのになんと呑気な奴らだ・・・・・・そうだろ、銀時」
「いいじゃねえか、家族も元に戻ったし因縁の鎖も断ち切れた。アイツ等はよくやったよ」
「それもそうだがな・・・・・・」
「あと俺もそろそろ・・・・・・」
「え? っておいッ!」

会話の途中でいきなり銀時がナギ同様背中からバタッと倒れる。
どうやら彼も限界の様だ。

「家族のもめ事に巻き込まれてこっちは散々だったぜ・・・・・・後でキッチリ請求しとかねえとな」
「え~とッ! え~とッ! 銀時ッ! 私が膝枕してやろうッ!」
「いらねえよ、お前のちっちゃい膝に頭乗せられるか」
「何をォォォォォォ!! お前の頭ぐらい乗せられるわッ! ほれッ!」
「いで」

顔を赤面させながらエヴァは銀時を強引に自分の両膝に彼の顔をうずませる。
確かにアリカと比べてちっこいが一応膝枕としては成立していた。

「どうだ銀時、私の柔らかい膝枕は極楽に登れるほど気持ちかろう」
「・・・・・・ハァ~」

ニヤニヤと笑みを浮かべるエヴァの両膝でため息を突いた銀時は、「よっこいしょ」と呟いて顔を真上に動かした。

目の前にはキラキラと輝く太陽が一つ空に浮かんでいる。

エヴァに頭を撫でながら銀時は。

空高くから光を降り注がしてくれる太陽を見上げてフっと笑った。



























「・・・・・・ようやく終わったな」






[7093] 第七十五訓 その契りは永遠に
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/06/27 00:38

とある田舎のとある小さな村の中にある一つの屋敷。

その屋敷の中では様々な種類の子供達が共に学問を学び勉学に励んでいた。

しかしある時、その屋敷で子供達に学問を教えていた先生が風邪で寝込んでしまったのだ。

すると彼の教え子である三人の少年がある物を持ってきて彼の寝ている部屋に上がり込んで来たのである。

「これを私の為に?」

布団から半身を起こしてまだ若いであろう男性の先生の問いかけに、彼の目の前に座る三人の子供の二人は強く頷き、一人はプイッと顔を逸らした。

男が手に持っているのは泥だらけのひと束ほどの小さな薬草。三人の少年の来ている服に草やらクモの巣やら泥がついている所から見て、どうやらわざわざ山の奥から風邪に効く薬草を子供達だけで採ってきたようだ。

それに気付いた若い先生はニコッと三人に笑いかけた。

「ありがとう、あなた達のおかげで私の風邪もすぐに治りそうです」
「先生ッ! 風邪なんかさっさと治してくれよッ! 先生の授業がねえとつまんねえんだよ俺ッ!」
「ええ、あなた達の為に一日でも早く治さなければいけないですしね」

三人の中で一際元気そうな少年に言われて男性が頬笑みを浮かべながら頷いた。
するとその少年の隣にいた長髪を一つに束ねて礼儀正しそうなもう一人の少年はブスっとした表情で彼に横目を向ける。

「毎回ボケっとしながら先生の授業を聞いているお前が何を言っているんだ」
「うるせえなッ! 俺はああいう状態でもちゃんと聞いてるんだよッ! お前みたいにバカみたいに礼儀正しく聞かなくてもちゃんと先生の言っている事は頭に入れてんだッ!」
「フン、どうだかな」
「んだとッ!」
「全くお前はすぐに頭に血が昇るな、だからお前は背が低いのだ」
「いや背は関係ねえだろうがッ!」
「ハハハハ、二人はいつも喧嘩していますね、悪い事では無いのですがほどほどにお願いします」

尊敬する先生である男に咎められると二人は渋々睨み合いながら座り直す。
そんな彼等を見て男はニコッとほほ笑むと、二人からほんのちょっぴり離れて端っこで座っている一人の少年の方を見た。

二人とは距離を取っている様に座ってそっぽを向くボサボサした銀髪の少年。両手には大事そうに子供には重いであろう一本の刀が握られている。

男は笑いかけながらその少年の頭に手を伸ばして髪がクシャクシャになるぐらい撫でて上げた。

「君も彼等と一緒に山へ行ったんですか」
「・・・・・・」
「そいつさぁ、なんか知らねえけど、俺達が先生の為に薬草採りに行くって言ったら勝手に俺達の後をついてきたんだよ、俺達が何を言っても無視するしなんか愛想がねえっつうか」
「背の低いお前にきっと警戒していたのだろう」
「だから背は関係ねえだろッ! どこまで俺のコンプレックスに蹴りいれてくるつもりだテメェはッ!」

また怒りだす少年を冷静に受け流す少年に見守る様に目をやった後、男は銀髪の少年の頭から手を下ろす。

「この二人と一緒に夜中まで山へ登っていってどんな気持ちでしたか?」
「・・・・・・」
「あなたが初めて、自分と同年代の子と仲良く出来たんですね」
「・・・・・・」

男に何を言われても少年はそっぽを向いて目を合わせようとしない。だが男はそれに怒りもせずに悲しみもせずに優しく微笑むだけ。
しばらくして銀髪の少年は三人を置いて何も言わずに刀を持ったまま部屋を出て行ってしまった。
残された二人の少年は立ち去る少年の背中に目をやる。

「なんだアイツ、先生に何も言わずに行っちまいやがって」
「きっと背が低いお前と一緒の部屋にいるのがイヤなんだろ」
「おい、大人になったらいつかお前を見下せるぐらいデカくなってやるからな・・・・・・」


何度も似た様な嫌味を言ってくるのでわんぱくそうな少年は長髪の少年を見て額に青筋を立てていると、男はそんな二人に向かって口を開いた。

「あなた達にお願いがあるんですけどいいですか?」
「なんでしょうか?」
「俺先生の頼みならなんでも聞くけどッ!?」

片方は正座したまま礼儀良く、片方は立ち上がってはしゃいでいる姿に、男は頬笑みを浮かべたままそのお願いを言った。

「今後もあの子と仲良くしてくれませんか?」
「さっきの銀色の髪の子ですか?」
「え~、アイツすっげぇ愛想悪いんだよなぁ、何考えてるかわかんねえし、子供のクセに刀持ってやがるし」
「お前、先生の頼みならなんでも聞くと言っただろ」
「ていうか俺、コイツとも友達じゃねえし~」
「俺だってお前なんか友達などと思っていない」

またもや口喧嘩を始め出した二人に男はクスクスと笑った後。両手を伸ばして、二人の肩にポンと手を置いた。

「あの子はまだここに来てまだ間もない、ですから彼にここの事を色々と教えて上げてやって下さい」
「わかりました」
「お前は気真面目だな~、ま、先生の頼みなら仕方ねえか」
「ありがとう」

コクリと縦に頷く少年に横目を向けた後、もう一人も不服ながらもとりあえず承諾してくれた。
男は二人に礼を言うと突然布団から出て立ち上がる。

「では、私はちょっと用があるので」
「先生ッ! お身体は大丈夫なのですかッ!?」
「そうだよ先生ッ! 風邪は寝ねえと治んねえぞッ!」

部屋から出ようとする男に二人の少年は慌てて声をかける。
だが男は二人の方振り返って優しく一言。

「用が終わったらすぐに戻ってきますよ」





































銀髪の少年は一人刀を大事そうに持ったまま、屋敷の庭の前で腰かけてボーっとしていた。
茂みから聞こえるフクロウの声や鈴虫の音を耳に入れながら、少年はなんの目的も無くそこにいた。
だが彼の背後からスーッと近づいてくる何者かの気配が

「ここにいたんですね」

呼びかけられた声が聞こえたので少年はパッと後ろに振り返る。
そこには探し物を見つけた子供の様に笑っているあの男の姿が

「隣? いいですか?」
「・・・・・・」

男の問いかけにやはり少年は無言で背中を見せるだけ。
だが男はそれに構わず彼の隣に腰かけた。

「人は独りで生きて行く事はとてもツラく、哀しい。君がそれをその年で既に体験している」
「・・・・・・」
「出会いというのは時に残酷な未来へ辿る結果になる可能性もあります。だからって己の周りに壁を作る事は私はお薦めしない。時に人との出会いには一生の幸福になる場合だってあるのですから」
「・・・・・・」
「あの二人と君が将来どんな道を歩んでいくのか誰もわかりませんが。人生というのは長いようで短い、君自身彼等に一歩だけでも歩んでみなさい。一人で生きて行く事しか出来なかったあなたには見えなかったモノが見える筈ですから」

少年は隣で語りかけて来る男の方を向いて無言で聞いていた。

しかし突然

「どんな道を歩んでいくのか誰もわからない? 私は知っているぞ、その男達の未来とやらを」
「!!」

目の前にある庭の奥の茂みの中から聞いた事のない少女の声が聞こえた。

銀髪の少年は目を見開いて驚いた様子でそちらに目をやる。
男の方は全く動じずに少年の見る方向に笑いかけた。

「こんな夜中に誰が迷い込んで来たのですか?」
「迷ってなどおらんわ」

大人びた口調で少女はそう言うとガサゴソと音を立てながら茂みの中から出て来た。

髪は美しいと思えるほどの綺麗な長い金色、そしてこの辺では見かけた事のない服装をしているまだ小さな少女だ。

「・・・・・・これはこれは、もののけのたぐいか何かですかな?」
「別に私の事をどう思おうとも構わんよ、だが安心しろ、私はお前等に危害を加えるつもりなど毛頭ない。だからそこにいるチビッ子、刀を抜こうとするのを止めろ」
「・・・・・・」

庭に下りて持っている刀を鞘から抜こうとする少年に、少女は指差して言葉を投げかける。
少年は額に汗を垂らしながら用心深そうに刀を鞘にしまい戻した。

「これがチビッ子の時の“アイツ”か・・・・・・てことはお前はコイツに勉学を教えていた先生とやらか?」
「一応その身ですが」
「ふ~ん」

男に質問した後、少女は少年の方に近づいてジロジロと眺める。少年は手に持っている刀をいつでも抜ける様に構えながら彼女に警戒の視線を送る。
だが少女は一瞬にして彼の眼前に立ち

「お前のファーストチュー貰うぞ」
「!!」

フッと消えた途端いきなり目の前に現れた事に慌てさせる隙も与えずに少女は強引に少年の唇に自分の唇を押し当てた。

「フハハハハ、も~らったも~らった」
「!!」

何故少女が嬉しそうにしているのかわからずに、少年は一気に顔面を真っ赤にさせ、慌てて屋敷の中へ上がり、すぐに男の背中に隠れた。
男は赤面している少年と喜んでいる少女の方へ目をやりながら愉快そうに笑みを浮かべる。

「もののけはこの子をからかいに来たのですか?」
「いや違うぞ、私はただそのガキとお前を見に来ただけだ。お前等の知らないそれは遠い遠い未来からな」
「未来、ですか」

未来から来たと名乗る少女に男は笑みを浮かべるだけで全く動じようもしない。

「まさか遠い未来からお客さんが来るとは思いもしませんでした」
「ん? 疑わんのか?」
「疑う理由などありませんからね」
「面白い奴だなお前、いや変わっているというべきか」

男の返しに少女はケラケラと笑った後、彼の方へ顔を上げる。

「で? 知りたいと思わんのか?」
「何をです?」
「未来をだ、私はそこのガキ、ここにいるであろう二人のガキの未来も知っている。どういう未来になるか教えてやろうか?」
「結構ですよ」
「答えるの速いなッ!」

即答で凄い暴露話を断る男に少女は思わずツッコミを入れてしまう。
男はそんな未来から来た彼女に口を開いた。

「生憎私には必要のない事ですから、この子達にも」
「・・・・・・未来が分かればもしかしたら今後起きるかもしれない事を変えれるかもしれんのだぞ?」
「だからこそ聞かないんですよ」
「どうしてだ」

問いかけてくる少女に、男は自分の背中に身を潜めている少年の後ろ襟を掴んで自分の隣にポンと置いた。

「この子が将来どうなるかを今知ってしまったら、面白くないでしょう」
「あ・・・・・・」
「あなたの言う遠い未来でこの子達がどうなるのかは、私は私の目で見ておきたいんです」
「・・・・・・」

慈愛に満ちた表情で銀髪の少年の頭を優しく撫でて上げている男を見て少女は悲しそうな表情でうつむく。
まるでこれから先の出来事で彼に何が起こるのかを知っているかのように・・・・・・

「・・・・・・本当にそれでいいのなら、私はもう何も言わん・・・・・・だが去る前にちょっといいか」
「どうぞ」
「いや何をやるかぐらい聞けッ! お前には警戒心とかそういうのは無いのか全く・・・・・・」

何も聞かずにすぐに承諾する男に少女は叫んだ後、彼の隣にいる少年に近づいていく。

少年は黙ったまま目をキッとさせて彼女を睨みつけるが、少女はそんな少年の表情を見てフッと笑った。

「私はお前の敵になるなど決してない」
「・・・・・・」
「私はお前の、お前の血を引く者の一生の護り人だ」
「・・・・・・」

何を言っているのかは理解出来なかったが、そう優しく語りかけてくる少女の目を見ると次第に警戒心は失っていった。
少女は彼の両手を取りしげしげと眺める。

「ちっちゃな手だな・・・・・・」
「・・・・・・」
「お前はいつかこの手で多くの人々を護り抜けれる様な男になれ、例えどんな目に遭おうとも自分の魂だけは裏切らない侍にな」
「・・・・・・」
「約束だぞ、いいな?」

少女の言う約束に少年はぎこちなく小さく縦に頷く。
すると少女は悲しそうな目を浮かべたまま彼をひしっと抱きしめた。

「きっとお前は私との出会いなど忘れてしまうだろうな・・・・・・この先に待っている出来事の方がお前にとって根強く残るんだから」
「・・・・・・」
「オイ、コイツの先生。記憶を飛ばすのは勘弁してやるから私とここで出会った事は忘れろ、いいな」
「ええ、この出来事は私の胸の中で閉まって置く事にしますよ、ですがこの子が大人になったら話しても構いませんよね?」
「・・・・・・ああ」

男は頬笑みながら頷くと、少女はそんな彼を見て思わず目を潤ませる。そして一層強く少年を強く抱きしめた。

「何があろうとも、私の力も心も愛も・・・・・・全部お前のモノだからな・・・・・銀時」

























第七十五訓 その契りは永遠に





















銀時は深い眠りからようやく目をパチッと覚ました。
何時の間にか布団の上で目の前には木造りの天井、きっとここは近衛家の屋敷の中であろう。
窓からは月の光が降り注いでいる、さっきまで太陽が昇っていたのにもう月が。

どうやら山の頂から眠っている自分を誰かがここまで連れて来たらしい。

(半日も寝てたのか俺・・・・・・それにしてもさっきの夢・・・・・・・あれ? 思い出せねえ? 確か昔あった事だったような気がすんだけどな・・・・・・ん?)

さっきまで見ていた夢を思いだそうとするがやはり思い出せない。仕方なく銀時は諦めると、自らの体重に乗せられる圧迫感、謎の重圧が自分に襲いかかっている事に気付く。

しかも、突然その体に乗せられている重圧が、モソモソと“動いた”

「?」

体に乗っかるその重みが自分の体の上で動いている事に銀時は疑問を感じる。

そしておもむろに寝たまま両手を布団の中に入れて、自分にのしかかっている“何か”を触ってみた。

「んあ・・・・・・そこダメ・・・・・・・」

弾力感のある柔らかいソフトボールぐらいの球体が二つ体の上に乗っかっている。
そこから気持ちよさそうに女性が声を上げたが、まだ寝ぼけてる銀時は聞こえなかったようで、両手に掴んだソフトボールをプニプニと何度も触って一体これはなんだと確かめる。

「・・・・・・マシュマロ?」
「あうぅ、そんなに揉むなぁ・・・・・・ん」

1分ぐらいそれを揉み尽くした後、銀時は手をそこから下に移動させる。

「はぁぁぁ・・・・・・・」

さっきからやたらと聞こえる喘ぎ声を銀時は「まだ夢の中?」と認識しながら体の上に乗っかるモノを手でまさぐり出す。

「・・・・・・なんだコレ?」
「はうッ! そこお尻・・・・・・ダメだそこは・・・・・・うんッ!」

先程両手に掴んだ二つのマシュマロソフトボールとは違う弾力を持つモノ。
銀時はその不思議な柔らかさに寝ぼけたまま両手で少し強く掴んだ。

すると

「あああッ!」
「ん?」
「お尻ダメぇッ! そんなに強く掴んじゃダメぇッ!!」
「あ、すんません・・・・・・え?」

布団の中から聞こえた女性の大声で、銀時は初めて布団の中に人がいる事に気付いた。
虚ろな目で銀時は恐る恐る布団の中を覗いてみると・・・・・・

「お尻を強く揉むな、変な声が出ちゃうだろ・・・・・・・こういうのは初めてなんだからもっと優しくしろ・・・・・・」
「・・・・・・」

長い髪を乱した金髪の女性が、露出度の高い漆黒のドレスで自分の上に乗っかってこちらに向かって目をトロンとさせていた・・・・・・





















「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

重りの正体がこの女性だとわかった途端、我に返った銀時は布団の中から滑るように脱出。
そのまま後ろにあったタンスにゴンと頭を打って悶絶する。

「イテテテテ・・・・・・」
「何やってんだ銀時?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

布団からのそっと出て来た女性が近づいてきたので銀時は頭の痛みを堪えながら這いずりながら部屋の隅っこに逃げる。
起きたら何時の間にか布団の中にいた見知らぬ女性。銀時が驚くのも無理は無い。

「だ、誰だテメェェェェェェェ!!! どうやって俺の布団の中に忍びこんだッ!」
「忍びこんだわけじゃないぞ、お前をこの部屋まで連れて来たのは私だ。最初からお前と私は一緒に添い寝をしていたのだ」
「・・・・・・え? ああ~そうか・・・・・・もしかしてそういうアレ?」
「へ?」

不敵な笑みを浮かべながら女性が説明をすると、銀時は頭の中で一つの結論が出たと手をポンと叩く。

「ここの屋敷の主人が大活躍した銀さんの為にご褒美として・・・・・・・あ~そうですかはいはい」
「何を言っているのだ貴様・・・・・・・?」
「で? 延長は何時間までいいの? アレだよね? 金はもうここの主人に貰っているとかそういうアレだよね?」
「なんだアレって・・・・・・? それに延長ってなんだ? そんなモン私は知ら・・・・・わッ!」

あっという間に元に戻った銀時は何時もの死んだ魚の様な目で女性に近づいて、彼女の両肩を掴んでマジマジと顔を眺める。

「あれ? おねえちゃんスッゲー美人じゃない? 俺って見た目こんなんだけど実は教師やっててさ? 同僚でしずな先生っていう人がいるんだけど、お前その人と互角に渡り合えるぐらいべっぴんだよ? 俺のストライクゾーンド真ん中だよ?」
「え・・・・・・お、お前がそんなに褒めてくれるなんて・・・・・・・きゃッ!」

赤面させて嬉しそうな声を上げる女性を褒めちぎった後、銀時は力づくで彼女を布団に押し倒す。
この後、銀時が自分に何をやるのかと想像して、思わず女性は心臓を激しく鳴らして息を荒げる。

「俺、ドSなんで~、なんかこうあんな事こんな事大変な目にあわせちゃうけどいい? ねえちゃんに新しい世界を見せる事になっちゃうけどいい?」
「・・・・・・うん」

恥ずかしそうに頷く女性の顔に銀時はグイッと自分の顔を近づける。

「いいよね? これ全年齢板だけど、もう最終回の一歩手前だからこういうサービスシーンもいいよね?」
「・・・・・・うん、うん」

コクコクと何度も頷く女性を押し倒したまま銀時はおもむろに彼女の豊満な胸に手を伸ばしてムニュっと強く握る。

「き、来て・・・・・・・」

意味深な会話を交えながら銀時は目を光らせて獣の如く女性にまたがろうとした。


















だがその直前、銀時の背中にあった部屋の襖が突然乱暴にピシャっと開かれる。

「銀八ッ! 起きたのかッ!・・・・・・っておいまたかよ勘弁してくれよ本当・・・・・・・」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・ん?」
「何してんだよお前・・・・・・」

襖を開けた音と聞いた事のある声を聞いて銀時は女性を押し倒したまま恐る恐る後ろに振り返る。

長谷川千雨が額に青筋を浮かべながら腰に手を置いて怒りに震えていた。

「オイィィィィィ!! またお約束のパターンかよッ!」
「“銀八先生”は毎度毎度こういうシチューションに飽きないんですねぇ、いい加減にしてもらえます?」
「い、いや敬語は止めてくれない千雨ちゃん、なんかこう殺気みたいなものを感じるからさ・・・・・・」

明らかに怒っている目つきで睨んで来る千雨に銀時は慌てふためた様子で手を激しく振って見せる。

「こ、これは仕方ねえってッ! だってこのねーちゃんは俺へのご褒美として屋敷の主人が・・・・・・!」
「はぁ? 何言ってんだよお前?」
「え?」

呆れた目つきに変わった千雨は顎で銀時が先程押し倒した女性を顎でしゃくる。

「それ、エヴァだぞ?」
「・・・・・・ワッツ?」

一瞬千雨が何を言っているのか理解できなかった。
銀時はふと荒い息を吐きながら横たわる金髪美人を今度はじっくりと観察する。

そういえば前にエヴァの夢の中へ行った時・・・・・・・

「え? ウソだろオイ・・・・・・ウソだと言ってくれよ」
「何を言っているのだ・・・・・・私は正真正銘・・・・・・へくちッ!」

呆然とした表情を浮かべる銀時に女性は首を傾げた後、大きな音を立ててくしゃみ。

その瞬間、ボンと音を立てて女性の姿は一瞬にして・・・・・・・

「う~~、久しぶりにやった幻術が解けてしまった・・・・・・・お前をここまで運ぶまでずっと持続していたからな」
「・・・・・・」

先程までのスタイル抜群の美女は消えてそこにいるのは鼻をすするちっこい金髪の女の子。
それを見た銀時は口をあんぐりと開けて絶句の表情を浮かべる。

「チェ・・・・・・チェ・・・・・・」
「ん? どうしたのだ銀時?」

体全身を震わせている銀時にエヴァはキョトンとしながら首を傾げる。
すると銀時はすぐに後ろに振り返って。

「チェェェェェェンジッ!!! 孔明の罠に騙されたからチェェェェェンジッ!!」
「なんでだぁぁぁぁぁぁ!!!」

急にさっきとは打って変わった態度を取る銀時にエヴァは立ち上がって怒鳴る。
そして千雨はこちらに向かって叫んで来た銀時にブスっとした表情で腕を組みながら

「申し訳ませんがお客様、こちらのお店では一度指名した女の子はチェンジできません」
「何言ってんだコラァッ! さっきまでここにあった『ダブルマシュマロン』が『まな板』にチェンジしてるじゃねえかッ! 客の意見も聞かずにチェンジするとかぼったくりだろうがッ!」
「なんだまな板ってッ! もしかして私のおっぱいの事言ってるのかッ!」

こちらを指差して千雨に叫んでいる銀時に向かってエヴァはムッとした表情で食ってかかると、銀時はブチ切れた様子で振り返り

「ったりめえだろうがまな板娘ッ! 俺はダブルマシュマロンを指名したんだよッ! まな板はキッチンに帰れッ!!」
「そんなッ! 本当の私よりお前は幻術で変化した私の方がいいのか・・・・・・?」
「そうだよボケ、お前の幼児体型なんて見てたら逆に冷めるだけ・・・・・・いッ!!」
「う・・・・・・グス・・・・・・・うう・・・・・・・」

思わず強く突き飛ばしてしまった事に後悔してももう遅い。
銀時の一言でエヴァは鼻をすすって目からポロポロと滴を落としていた。

「お前の前で幻術なんて使うんじゃなかった・・・・・・さっきあんなに私の事を褒めていたのは全部幻術状態の私の事だけだったんだな・・・・・・正体が私だと知った瞬間手のひら返して」
「そ、それはその・・・・・・・・」
「嬉しかったのに・・・・・・初めてあんなに褒めてくれたから凄い嬉しかったのに・・・・・・」

嗚咽を繰り返しながら涙で顔をぐしゃぐしゃにするエヴァに銀時はあたふたした様子で何て言おうか迷っている。
だがそこに千雨が冷たく一言

「あ~あ、泣かしてやんの」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!! もう限界だッ! おいチビいい加減にしろよッ! 自分では悪の魔法使いだ600年も生きた吸血鬼だとか散々言ってるくせにちょっと言っただけでいつもピーピーピーピー泣きやがってッ! 長生きしていても精神年齢はずっとガキのまんまじゃねえかッ! だからテメェはいつまで経ってもナメられるんだよッ! だからテメェはいつまで経っても泣き虫チビなんだよッ!!」

遂に堪忍袋の緒が切れた銀時がエヴァに向かって怒鳴りつけるが、一瞬エヴァは泣くのを止めた後大声で

「うわぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!」
「泣いたッ! 本格的に泣いたッ! もうヤダこの子どうにかしてッ! 銀さんもう限界ッ!」
「知らねえよお前が撒いた種だろうが、責任はちゃんと取れ」

両耳を押さえて天井に向かって叫ぶ銀時に千雨は冷淡な口調で突き返す。
しょうがなしに銀時は渋々泣き叫ぶエヴァの両肩を持って

「もう泣きやんでくれよおチビちゃん頼むから・・・・・・お前を傷付けた事は謝るからさ・・・・・・」
「クスンクスン・・・・・・チュー・・・・・・」
「へ?」
「チューしてくれたら許す・・・・・・」
「・・・・・・」

何言ってんだこのガキ、という様な視線を涙で顔を濡らすエヴァにぶつける銀時。
だがコレ以上泣かれると泣き声に気付いて千雨以外の人達もこっちに来る可能性はある。
銀時はしばらく頭の中で葛藤した後、チラッと千雨の方に目をやった。

明らかに気を遣っている様子で彼女はこちらにそっぽを向いている。

「・・・・・・ハァ~」
「銀時ぃ・・・・・・・」
「・・・・・・わかった、神威の件の礼もまだだったしな」

腹をくくったのか銀時はエヴァの両肩を掴んだまま顔を近づけていく。

「別にお前となら・・・・・・これぐらいどうって事ねえよ」
「それも幻術状態の私に言ってるのか・・・・・・?」
「バカ、泣き虫チビのお前に決まってんだろ」
「んッ!」

ウルウルした目で不安そうに言うエヴァにぶっきらぼうに返すと共に銀時は自分から彼女の唇を奪った。

いきなりの行動にエヴァは驚くがすぐに彼の唇の感触に目をウットリとさせて幸せな気持ちに。

この時間が永遠に続いたら・・・・・・・そんな事考えながらエヴァは銀時との接吻に夢中になっていると・・・・・・

「あ、ヤバッ!」
「あら千雨さん、銀さん起きてますか? この4人がどうしても銀さんと話し合う事があると・・・・・・」
「起きたか銀時、ちょっとお前の小耳に挟まなければいけない情報が・・・・・・・」
「アハハハッ! 銀時ッ! わし等元の世界に帰れ・・・・・・」
「おい天パ侍、起きるの遅えんだよハハハハ・・・・・・・」
「銀時、お主には色々と礼を・・・・・・・」
「!!」

焦った声を千雨が上げた瞬間、あやかと桂、坂本、ナギ、アリカがゾロゾロと部屋にやってきてしまった。
5人は部屋の中の光景を見てフリーズしたように固まる。

銀時が小さな少女を抱きしめて熱烈な接吻を施していたのだ。
やってきた客人に気付いたエヴァは慌てて彼から唇を離す。

「銀時ッ! 後ろッ!」
「は? なにその志村後ろみたいな?」
「いいから後ろだッ!」
「なんだよったく・・・・・・・」

まだ後ろにいるメンバーに気付いていない銀時にエヴァは指差して叫ぶんだ。
訳のわからない様子で銀時は後ろに振り返ると・・・・・・













「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

あやかはともかく最も見て欲しくなった一同がその場に立っていた。
銀時は雄叫びを上げてバンザイポーズで驚く。
だが桂達は冷静に

「・・・・・・銀時、実は高杉についての情報なのだが」
「・・・・・・銀時、おまんは帰るんか? ここに残るんか?」
「・・・・・・姫さん今何時?」
「・・・・・・午後10時半じゃ」
「オイィィィィィ!!! 何私達見てませんよ的な空気かもし出してんだコラァァァァァ!!!」

ぎこちない態度を取りながらもあくまで自然に振舞ってくれるメンバーに銀時は立ち上がって咆哮を上げる。

「いつもみたいに俺を罵ればいいじゃねえかッ! 大丈夫だよ俺慣れてるからッ! こういうハプニングTOLOVEるはこの世界に来てからもう結構な数で経験してるんだからさぁッ! ほら言えよッ! ロリコンだとか幼女趣味だったとかッ!」

その場にいる人達にもはやヤケクソ状態の銀時。だがそれを聞いても桂と坂本はクイッと親指を立てて

「お前が例えどんな人間であろうとお前は俺の友だッ!」
「銀時ッ! わしぁあおまんのそういう事含めて好きになっちゃるきんッ!」
「止めろぉぉぉぉぉぉ!!! お前等のそんな優しさなんかいらねぇぇぇぇぇぇ!!!」 

銀時の訴えが屋敷の中に大きく響き渡るのであった。































 





































「そうか、高杉の奴はもうどっかいっちまったのか」

落ち着いた銀時は今、屋敷の外で待っている真撰組やネギや生徒達の所へ行く為にメンバー達と一緒に廊下を歩いていた。
そこで彼は桂から高杉はもうここにはいないと聞く。

「アリカ殿とお前の所の三人組がそう言っていた、なんでも赤髪の少女を連れていずこへ消えたと・・・・・・全くお前といい高杉といい・・・・・・」
「おい、俺はもうロリコンでもなんでもいいけどあいつだけは許してやってくれよ」
「む? 俺は何も言っておらんぞ、俺はお前の趣味は頭でちゃんと理解しているつもりだ」
「いやだから、俺はロリコンなんだよ、お前等がドン引きするぐらいロリコンなんだよ。もう俺悟ったわ、今度から自認するよロリコンを」

髪を掻き毟りながら自暴自棄に陥っている銀時に、隣にいる桂は強い眼差しで訴える。

「自分を責めるな銀時、俺はお前を知っているぞ。例えどれだけ見た目が汚れようと、中身は“まごう事なき美しい魂を持った侍”だと」
「いいよもう俺は、自分の事は自分が一番わかってるから。中学生三人と三股して、その上その中のロリチビと隠れて変な事してる“まごう事なき変態の侍”なんだ」
「大切なのはその者を愛する気持ちだ、そう俺がアリカ殿を愛するように。それだけで十分なのだ」
「おいウザったい長髪したバカ、人のカミさんに何考えてんだコラ」

どさくさに自分の趣向をバラした桂に、後ろにいたナギが睨みつける。
桂は廊下を歩きながら彼の方へ振り返り

「夫が前に立ち塞がろうと俺は己の愛の為に斬り伏せるのみだ」
「そうか、じゃあここでいっちょやるか? その長髪を全部切ってクリリンにすっぞ?」
「やめろナギ、相手にするなコイツは」

喧嘩腰に入ったナギに隣にいるアリカがポンと彼の肩をたたく。
すると桂はフッと笑って

「待っていろ、俺がすぐに新しい愛の形を教えてやる」
「・・・・・・攘夷戦争参加者はみな変態になってしまうのか?」
「アハハハッ! わしゃぁ普通じゃぞッ!」
「貴様は見た目で既に卑猥物じゃ」
 
後ろで笑いながら話しかけてくる坂本にアリカは振り返らずに冷たく一言。
そんな事言われても坂本は自分が言った事に更にゲラゲラ大笑い。

「アハハハハッ! そうかわしゃぁチ○コと同列かッ! アハハハハハッ!」
「オイコラァァァァ!!! 俺のカミさんの前でチ○コとか下ネタ使うなァァァァァ!! カミさんの前でチ○コ禁止だかんなッ!」
「お前も言うてるではないか・・・・・・」

軽蔑の眼差しで坂本に怒鳴っているナギにツッコんだ後、アリカは疲れた様にため息を突く。

「・・・・・・『赤き翼』の連中に負けないぐらいの馬鹿共じゃな」
「アルと“あのゴリラ”はともかく、俺もセットにするな、少なくとも俺は何処ぞの銀髪と違ってこんなロリババァと付き合おうだなんて思った事ハナっからねえ。悪いなエヴァ、俺はあん時からお前に興味なんてゼロだ」

そう言ってナギは自分の後ろにいる女子三人組の中で一際小さいエヴァの方へ目をやる。
腕を組んで歩いていたエヴァは不機嫌そうに鼻を鳴らして

「悪いが私はもう過去に惚れたお前などとうに忘れているぞ、今私が見えているのは銀時だけだ」
「そうかいそうかい、そりゃあすげえ良かった。あいつと末長く一生一緒にいろ。大丈夫だよお前等なら、お前が今惚れてる男は俺と違ってロリコンだから」
「・・・・・・ふん、あ、そうだ」

なんの未練も無さそうに手を振って助言してくるナギにエヴァは少しカチンと頭に来ると同時に一つ大切な事を思い出した。

「そういえばナギ、早く私の呪いを解け。もう十分だろ」
「あ~、登校地獄の呪いか・・・・・・」

ナギはチラッと後ろに振り返る。
エヴァを挟んであやかと千雨の三人で会話を始めていた。

「さっきからエヴァさん、ナギさんと何かあったんですか?」
「私は昔、アイツに惚れてた。そしてアイツに呪いをかけられた。それだけの関係だ」
「あ~そういえばあの人、銀八と少し雰囲気似てるかもな」

並行しながらあやかとエヴァと千雨がそんな会話をしていると、あやかは「ふ~ん」とエヴァを観察するように目をやる。

「普段はぶっきらぼうなのにいざという時には優しくしてくれる、そんな殿方が好みのタイプなのですね、エヴァさんは」
「人の好きなタイプを特定するな雪広あやか、ていうかお前と長谷川千雨だって銀時に惚れたんだからお前等もそういう事になるんだぞ」
「私が好きなタイプは『銀さん』ですから。なんせ初めて恋をしたのは銀さんだけなので、それ以外の男に尻尾を振った事がありませんからわかりませんわ」

ただ単に恋愛経験が無いだけのクセに自慢げに言うあやかにエヴァはキッと睨みつける。

「銀時に会うまでは恋愛のれの字も知らなかったクセに・・・・・・」
「でももう大体恋愛のコツは掴んでますから、実は私、銀さんとこの修学旅行中に二回キスしてますの」
「フ、勝った。私はさっきのを入れて三回目だ」
「なッ!」
「フハハハハッ! 正直貴様の様なウブな女が銀時と二回もチュー出来たのは驚きだが、私に比べればお前などそんなモンよッ!」

歩きながらガッツポーズを取るエヴァにあやかは物すごく悔しそうに拳を強く握りしめる。

「くッ! こんなちっちゃくて子供思考でヘタレな泣き虫エヴァさんに負けるなんて・・・・・・人生最大の屈辱・・・・・・!」
「ってどんだけ私の事を下に見ているのだ貴様ッ!」
「いいだろうがよそんな事、誰が何回キスしただとかそんなモン」

悔しがるあやかにエヴァが食ってかかろうとすると、千雨が冷静に彼女の肩を掴んで引きとめる。

「くだらねえ事で勝負してんじゃねえよ」
「くだらないとはなんだッ! 私があいつとチューするのにどれだけ覚悟を用いたか・・・・・・ん? そういえばお前は銀時とチューした事あるのか?」
「ひゃッ!?」

いきなりこっちの方に話を向けて来たエヴァに千雨は思わず声が裏返る。
あやかも興味津津の様子で彼女の方へ振り向いた。

「私も聞きたいですわねそれ、千雨さんっていつもは銀さんとガミガミ言い合いしてますけど。実は銀さんと二人っきりの時は物凄く深い関係になっていて・・・・・・」
「もう腹に子供でもいるんじゃないか? 二人目が」
「なわけねえだろッ! 己の妄想をフルパワーで駆け巡らせて勝手な事言うんじゃねえッ! お前等が考えてる関係に陥ってないし腹に子供もいねえよバカッ! つうか二人目ってもう一人生んでるって事じゃねえかッ! あるかそんなのッ!」

ムキになった様な感じで二人の構想を即座に否定する千雨。
恥ずかしくてこんな話さっさと終わらせたい。
千雨はそんな事考えているがこのぐらいの年頃の女の子はこういう話は大好きだ。

「へ~、でもキスぐらいはしてるんじゃないですか? 私とエヴァさんが出来たんですから千雨ならもうとっくにしててもおかしくないですわよね?」
「へぁッ!? キ、キスッ!?」
「・・・・・・さっきからなんですのその声・・・・・・・」
「べ、別にッ!」

変な声が出てしまった事に思わず顔を赤らめてそっぽを向く千雨。だがエヴァはニヤニヤしながら彼女を観察。

「照れてるぞコイツ、ハハハ、意外と女の子みたいな所があるんだなお前」
「うるせえよッ!」
「そうですわよね、千雨さんが銀さんに告白した時の姿は本当に可愛くて可愛くて・・・・・・」
「ほう、その時を話を詳しく知りたいな」
「ふ、ふざけんなぁッ! いいんちょ絶対に言うんじゃねえぞッ! 言ったら絶交だからなッ!」

必死に押し隠そうとする千雨の話に、エヴァはどんどん興味が湧いていく。

「いいだろ減るモンじゃないし、私とお前の仲であろう?」
「どうせこの先一緒にいたらこの人ずっと話を聞こうとしてきますわよ」
「お前にしちゃあ話が分かってるではないか」
「最悪・・・・・・」

あやかが教えて上げると言いエヴァがそれにニヤリと笑っているのを見て、千雨はもはや泣きそうなレベルで落ち込み、うなだれた。

そんな三人の姿を見た後、ナギは前に向き直る。

「ああやって笑ってられるなら・・・・・・・」
「問題ねえよあいつは」
「ん?」

ボソッと呟くナギに、前を歩いていた銀時が振り返らずに相槌を打った。

「アイツは何が大事なのか何を護るべきなのかもうわかってる、アイツはもう二度と悪さなんかしねえさ」
「・・・・・・そうか」
「アイツにはダチもいるし俺もいる・・・・・・」

前を向きながら銀時はフッと笑った。

「お前がアイツに呪いをかけた理由はアイツに“大切な仲間って奴”を作ってやりたかったんだろ? なら安心しろ、この命続くまでアイツと一緒にいてやる、例えこの身が死んでも、俺のガキがチビの面倒を見てやるさ」

エヴァを麻帆良学園に封じ込めた理由をなんとなく察していた銀時は手を振って大丈夫だとナギに言ってやる。
するとナギは頭を掻き毟りながらため息を突く

「・・・・・・信じていいのか?」

最後の問いかけに銀時は口元に笑みを浮かべてナギの方に振り返った。

「わかりきった事聞いてんじゃねえよバカ」
「・・・・・・だな」
「なんだお前ッ! てことは結局銀時とチューしていないのかッ!? 告白はしたのにかッ!?」
「しつけえなッ! 物事には色々と順序があるんだよッ!」
「多分お願いしてくれたらやってくれるんじゃないですか? あの人案外押されると弱いんですわよ?」
「ハハハッ! じゃあ行って来い長谷川千雨ッ! さっさと銀時と初チューしてこいッ!」
「で、出来るかァァァァァァ!! もうほっといてくれよ私の事はッ!」
「そう言われると余計ほっとけなくなるな、いつか無理矢理にでもお前を銀時に前突き出してチューさせてやる」
「ふざけんなぁッ!」

後ろでまだ仲良くあやかと千雨と会話しているエヴァを見てナギは安心するように微笑んだ。

「綺麗な光に巡り合えてよかったじゃねえか・・・・・・おいエヴァ」
「あ? なんだナギ? 今取り込み中だ後にしろ」
「まあそう言うなよ」

嫌がる千雨の服の袖を引っ張っているエヴァにナギは突然その場に立ち止まり笑みを浮かべながら口を開いた。

「お前の登校地獄の呪い、今から解いてやろうと思ってよ、どうせあっち行ったら別れの時間があるんだから今やっといた方がいいだろ?」
「本当かッ!? ではさっさとやれッ! ほら早くッ! 」 
「そう急かすなよ、え~と・・・・・・」

呪いを解いてやると聞いてエヴァはその場でピョンピョン跳ね上がってはしゃいでいる。
ナギはローブのポケットから小さな本、様々な術が書かれているアンチョコを取り出した。

「解呪の仕方どこに書いてあんだ?」
「ってお前、自分で呪いをかけたクセに治し方は覚えてねえのかよ」

ペラペラとアンチョコをめくりながら解呪の方法をまさぐるナギに銀時がしかめっ面を浮かべると、彼は申し訳なさそうに頭をポリポリと掻き毟りる。

「いや俺術とか覚えるの苦手だからさ、コイツないと基本攻撃呪文しか使えねえんだわ。まあ最悪ここに書いてあるもん全部エヴァにかけてみれば・・・・・・」
「何考えてるんだ貴様ァァァァァ!!!」

ボソッと危険な匂いを漂わせたナギにエヴァは両手を上げて怒鳴りつけていると桂と坂本、アリカはその場を後にして屋敷の外へ向かう為にまた歩き出す。

「俺達は先へ行っている、用事が終わったらすぐに来るんだぞ」
「陸奥とネカネさんを待たせ取るんじゃ、じゃあな銀時」
「チビの呪いが解けたのを確認したら行くわ」
「わらわもネギが待っておるんでな、ナギ、はよ終わらせるんじゃぞ」
「あいあい、ちょっとぐらい手伝ってくれよ・・・・・・」

立ち去る桂と坂本に手をブラブラと振った後、銀時は壁にもたれて腕を組み、ナギがエヴァの呪いを解いてくれるのを待つ姿勢に入った。

そしてふと、残っているのは自分とナギとエヴァだけではなく、千雨やあやかもいる事に気付いた。

「別にお前等はここに残らなくてもいいんだよ、終わったらすぐチビとコイツと一緒に行くから先に行って他のガキ共に会ってこい」
「いえ、私は銀さんと一緒にここでエヴァさんの用事が済むのを待ちますわ」
「私も、どうせお前ら以外の奴等と私が喋れる連中なんて朝倉ぐらいしかいねえし」

自分と同じの様に壁にもたれて待機するらしいあやかと千雨。
銀時はそんな二人に目をキリッとさせて厳しめな口調で喋る。

「おいおい何悠長なこと言ってんだよ、もしかしたらチビがいきなり爆発するかもしれねえんだぞ? 目の前でダチがこっぱみじんになる光景なんて見たかねえだろ?」
「エヴァさんなら体が四散しても再生すると私は信じてますわ」
「そこから再生する光景だったら見たくねえな・・・・・・」
「誰が爆発するかッ! 誰がッ! 私の爆発前提に語り合うのを止めろッ!」
「虚無の魔法・・・・・・? かつて伝説のツンデレヒロインが覚えていたという必殺の・・・・・・・」
「そしてお前は何を読んでるんだッ! 本当に爆破する気かッ!? それだけは私にやるなよッ! 絶対にやるなよッ!」

不吉な話を始める三人に、何やら聞き覚えのある呪文を見つけて興味を持っているナギにエヴァは大声を上げてツッコむ。

「お前等普段から私の事ナメ過ぎだろッ! 呪いが解けたら承知しないからなッ!」

カンカンに怒っている様子のエヴァ、そんな彼女に近づいてポンと頭を撫でて上げながら銀時はだるそうに話しかける。

「大丈夫だって、こいつ等も本心では一応お前の事を心配してるからここに残ってくれてんだよ」
「・・・・・・本当か?」
「「いや全然」」
「オイッ!」

ちょっと期待の込めた目を壁にもたれているあやかと千雨にエヴァは目を向けるが二人は同時に即答。
これにはエヴァも少し傷付いた。

「なんなんだアイツ等は・・・・・・この私を一体誰だと思っているのだ・・・・・・」
「いいじゃねえかよ、本音で言い合えるダチなんてそう簡単に手に入るモンじゃねえぜ?」
「・・・・・フン」

頭を撫でてくれる銀時にそう言われて、エヴァは恥ずかしそうに顔をうつむきながら。
彼だけに聞こえるぐらいの小さな声でボソッと呟いた。

「お前と同様アイツ等も絶対に離さないからな・・・・・・」
「・・・・・・あいよ」
「呪いが解けたら・・・・・・もう悪さをするのはもう飽きたな、これからは私の力はお前に全部やる」

そう呟くとエヴァは自分を撫でている銀時の手を両手で掴み、振り返って彼に向かって無邪気に子供っぽく笑いかける。




























「何があろうとも、私の力も心も愛も、全部お前のモノだからな銀時」






[7093] 第七十六訓 出会いもあれば別れもある 経験するたびに人はより成長していく
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/07/04 00:17

近衛家の屋敷の前の壮大な敷地にはガヤガヤと賑やかな声が聞こえていた。
それもその筈、そこには春雨と高杉の連合軍を退かせたメンバーのほとんどが集合いしているのだ。
しかもそこには一段とその場にいる者を驚かせる江戸で作られた巨大な物体が・・・・・・

「巨大時空戦艦ジャスタウェイD4C(ディーフォーシー)ィィィィィィィィィ!!!!」

敷地の真ん中に威圧感と迫力満点でありながら、何処か抜けている表情をしている顔を持つ全長30メートルはあるであろうジャスタウェイを見上げて、松平のとっつぁんが全員に聞こえるような大きな声でその物体の名を叫んだ

「大人数を一気に異世界へと運ぶ為に俺が作らせた最新科学の結晶体よッ! コイツがありゃあ俺達は何時でも多くの人材をこの世界に派遣可能だぜッ!!」
「人の敷地内になんちゅうモンを勝手に置いてるんですかねこの人は?」

誇らしげに説明をしているとっつぁんの後ろで、ここの敷地内の持ち主である近衛詠春は綺麗なスマイルを浮かべながらツッコミを入れていた。

そんな彼等を傍から見ていたアスナは、彼等の目の前にある巨大な戦艦をふと見上げる。

「・・・・・・あのふざけたツラはともかくD4Cってどういう意味?」
「Dirty Deeps Done Dirt Cheap」

後ろから意味深な言葉をペラペラと言う声を聞いてアスナは怪訝そうに振り返ると。
一人で夕映がボーっとつっ立ていた。

「夕映、アンタ何時の間にエジプト語話せるようになったの?」
「英語です。意味は『いとも容易く行われるえげつない行為』。D4Cというのはそれを暗示してるんじゃないですか?」
「なんでわかるのよ?」
「ウルトラジャンプを読んでいる者は全員知っています。ちなみにウルトラジャンプは私の愛読書の一つです」

相変わらず無表情で意外な事を言ってのける夕映に、アスナはジト目で彼女の方に首だけ振り返りながらボリボリと頬を掻く。

「私、週刊少年ジャンプの方しか読まないのよね」
「荒木大先生という神のいない週刊少年などもはやジャンプと呼べる代物では無いと思いますが?」
「フン、まあ確かにあの御方がいなくなったのは痛いけど、アンタ『ギンタマン』という存在を忘れてるんじゃないでしょうね? アレはもはや神どころか邪神なんだからね?」
「まだあんな落書きを載せているんですか週刊少年は? ていうかよくそんなモン読めますね、受け狙いで言ってるんですか? 笑えませんね、『もう中学生』のコント見てるぐらい笑えませんね」

ブチィッという生々しい音がアスナの頭の中から聞こえた。

グサリと突いてくる夕映の毒舌はアスナの怒りのボルテージをMAXにさせるのに1秒もいらなかった。

「このアマァァァァァァァ!! お前の母ちゃん××だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわ~ッ! アスナ夕映に乱暴せんといて~ッ!」

夕映の胸倉を掴んで掲げ上げ、ブランブラン振り回しているアスナを体調回復した木乃香が偶然居合わせて慌てて止めに入った。

「せっちゃん一緒にアスナを止めてッ!」
「わかりました」

木乃香の呼びかけに隣にいた彼女の友人である刹那が心強く頷く。
彼女の右目にはまだ白い包帯が巻かれている。

「アスナさん落ち着いて下さいッ! 確かにその人に衝動的に殺意を持つのはわかりますが今はとりあえずおさえてくださいッ! ええもう本当に殺したいってのは物凄くわかるんですよッ! ムカつきますよねその人ッ! しかし今夜は真撰組の皆さんやお嬢様奪還を協力してくれた方達を送る為だけに私達はここにいるんですから無用な殺生は止めて下さいッ! 修学旅行が終わったら私も協力してその人一緒にぶっ殺しますからッ!」
「あ~もうわかったわよ、しょうがないわね・・・・・・アンタとはいつか決着をつけてやるから覚悟しなさい」

なんか恐ろしげな事をぶちまけている刹那だが、そんな彼女の説得を聞いてアスナは渋々夕映(終始無表情だった)を地面に下ろした。
そんな彼女の姿を見て木乃香はホッとした後、アスナを説得してくれた説根の方へ目を向けた。

「せっちゃん、さっきの本音がめっちゃ出とったんやけど? ていうかもうそっちが主役になってへんかった?」
「・・・・・・いやだって・・・・・・」

木乃香にそう言われると刹那は暗い表情で肩を落としうなだれ、自分の失った右目の部分を触る。

「だってあの人、前々から散々私の事をバカにして・・・・・・しかも救護室でこの目の治療をやっていた私に向かって・・・・・・」

『無くなった目玉の代わりにこのミカンでも入れてみますか? 地味なあなたでもキャラ立ち出来ますよ、ま、のどかには遠く及びませんが』

















「取れた目ん玉の代わりにミカン入れてみるか?って普通言えますかッ!? てかなんでミカンなんですかッ! あんなもん目に突っ込んだら確かにキャラ立ちしまくりでしょうけど、アホの子決定じゃないですかッ!」
「いや多分やけど、目が無くなってしもうたせっちゃんが落ち込まない為に言ったんやと思うで、あの子って素直じゃない所あるけど根はええ子やから、それにええやん元々せっちゃんアホやし」
「・・・・・・色んな人に言われてるんですけどそんなに私ってアホですか・・・・・・?」
「うん」
「そうですか・・・・・・」

サラッと言ってくる木乃香に刹那がショックを受けた様に呟いていると、そんな二人の方にボソボソと何は話しあっている男女の声が聞こえた。


「おい千草、俺達どうなっちまうんだ・・・・・・」
「まさか相手方にあんなに助っ人が来るとかないやろ・・・・・・ていうかなんでスクナがあんな連中に負けんねん・・・・・・負ける事なんて絶対あらへんと思っとったのに・・・・・・」
「ダメだ人の話全然聞いてないわこいつ・・・・・・」

一人の忍びと一人の魔法使いが背中合わせに一本の縄に縛られた状態でその場に座り込んでいる。

江戸から来た元お庭番衆の全蔵、まんまと高杉に踊らされた千草だ。

「江戸に強制送還、もしくはここで何らかの罪払いをしなきゃいけねえのかな・・・・・・」
「あ、ウチをさらったりせっちゃんの目を取ったりした人」
「ん?」

自分の罪状の大きさを計算している全蔵の元に木乃香がトコトコ近づいてきた。
昨日本気でぶつかり合った刹那も一緒だ。

「傷の方は大丈夫なのか全蔵」
「ああ、どっかのバカがくたばる寸前の俺を救護室まで運んでくれたからな」
「死なせて化けて出てきてもらったら面倒だと思ったからだ」
「ったく余計なことしやがって・・・・・・」

右目を奪った自分に塩を送ってくれた事に全蔵が不機嫌そうな様子で悪態を突ていると、木乃香はおもむろに刹那の顔を心配そうに眺める。

「ところでせっちゃん本当に今大丈夫なん? この人に右目取られたせいでせっちゃん、なんかフラフラ歩くようになってるんやけど・・・・・・」
「いえ、問題ありませんお嬢様、まだ平衡感覚を掴めないだけですから慣れれば元の生活に戻れる筈です」

ずっとフラフラしながら歩いている自分の事をずっと心配してくれていた木乃香を安心させるように刹那は彼女に笑いかける。
木乃香もそれに「そっか」と嬉しそうな顔になると、人差し指を立てて彼女に注意をして置く

「言うとくけど右目が無くてもウチはせっちゃんの事嫌いにならへんからな」
「え?」
「先にこう言わないとまた逃げるかもしれへんやろ?」
「ああ・・・・・・」

刹那がしかめっ面を浮かべると、木乃香はニコッと彼女に笑いかけた。

「せっちゃんがどうなろうとウチはせっちゃんとずっと友達やからな」
「あ、ありがとうございます・・・・・・このちゃん・・・・・・」
「エヘヘ、昔のあだ名で呼ばれると嬉しいなぁ・・・・・・あ」
「どうしたんです?」

かつてのあだ名で呼んでくれた事に少し照れた表情を浮かべると、木乃香は刹那の後ろからやってくる人物を指差した。

「桂さんや」
「何ッ!」
「なんだ、もうすっかり体調が回復した様だな木乃香殿」

二人の元へやって来たのは攘夷志士、桂小太郎。腕を組みながら近づいてくる彼に木乃香は無邪気に手を振って、刹那は警戒心をあらわにする。
真撰組側の人間である刹那にとっては攘夷志士である桂は本来なら敵なのだ。

「何でお前がここにッ! ここには真撰組の人達がゾロゾロとッ!」
「関西呪術協会と繋がっている俺をここの敷地内で捕まえる事など奴等には出来んよ、それに共同戦線での戦ったのだから、今日ぐらい奴等と同じ場所に立ってもいいであろう」
「確かにお前にはお嬢様を助けてくれた借りがあるからな・・・・・・」

桂の意見に刹那は苦々しい表情を浮かべた後、彼の横を仏頂面で横切る。

「今は見逃す、それで借りはチャラだ。次会った時はお前は私が捕まえる」
「いつでもかかってくるがいい、お主が真撰組側である限り、俺とお主は敵なのだからな」
「当然、攘夷志士は例外なく全て土方さん達の標的だ、つまり私にとっても標的だ」

そう言い残すと刹那は何処かへ行ってしまった。
木乃香はというとそんな彼女の背中に目をやりながら不機嫌な表情になる。

「もう・・・・・・桂さんがええ人ってわかってるのになんでせっちゃんと土方さんはあんなにわからず屋なん?」
「俺には俺の正義がある様に、連中には連中の正義があるのだ。これっばかりはどうする事も出来んのだ木乃香殿」
「む~」

いささか不満がちな表情をする木乃香だが、桂の横顔を見てある事にハッと気付いた。

「そういえば桂さんは土方さん達と一緒の世界から来たんやろ? もしかして土方さん達が用意したアレで帰るん?」
「いや俺はここに残る、幕府の犬共がいる戦艦などで帰ったらすぐに牢獄入りだと目に見えてるからな、俺は別の方法で帰る事にする」
「へ~ここに残るんや~なんかちょっと嬉しいかも」

攘夷志士の身である桂は真撰組の人間達と一緒に帰る事など出来ない。それを知った木乃香は呑気に笑っていると、桂は腕を組んで戦艦を眺めながらボソッと呟く。

「帰るのは坂本と・・・・・そして銀時だな」
「えッ! 銀ちゃんがッ!」

銀時の名を聞いて木乃香は驚く。確かに彼も桂達と同じあちら側の世界の住人だが・・・・・・

「当然帰るだろう、江戸にはあいつを待っている人たちが大勢いる、そんな連中を裏切ってここに永住するなど奴が絶対にするわけがない」
「そんな・・・・・・だって銀ちゃんウチ等の教師やのに・・・・・・」

悲しそうな顔をしてうなだれる木乃香に目をやりながら、桂は彼女に向かって話しかけた。

「あいつの住む世界はここではないのだ、わかってくれ木乃香殿、あの男もきっとお主等と別れるのはツライに決まっている筈だ」
「・・・・・・」

何も言えずに押し黙る木乃香の肩を桂は優しくポンと叩いた。

「出来るなら、笑ってアイツを見送ってくれ」
「ウチはええけど・・・・・・いいんちょと長谷川さんとエヴァちゃんが・・・・・・・」

いつも銀時と一緒だったあの三人、彼女達は一体どうするのだろうか・・・・・・

木乃香の頭の中で不安と心配が募る中

別れの時間は刻々と迫っている。




















第七十六訓 出会いもあれば別れもある 経験するたびに人はより成長していく


































「うわ~ッ! なになにこの物体ッ! すっごいデカイ上にすっごいアホ面ッ!」
「これが異世界の芸術ッ! よっしゃあ漫画のベスト資料ゲットォォォォォォ!!!」

テンションMAXで生徒二人が巨大戦艦ジャスタウェイD4Cの前ではしゃいでいる。
一人はその戦艦をカメラで激写している朝倉和美と、二本の触角の様なアホ毛をビンビンと跳ねながら興奮している早乙女ハルナだ。

「いや~コレは生徒のみんながビックリする一大事・・・・・・いや駄目かコレってこっちの世界のじゃないし・・・・・・でも一応私の思い出として何枚か撮って・・・・・・ん?」
「ん? ああすみません」

独り言をつぶやきながらカメラを撮りながら和美は後ろに下がっていると、誰かの背中に軽く当たってしまう。

一体誰?と和美は撮るのを止めて後ろに振り返ると、そこにはメガネを付けた地味な青年が申し訳なさそうにこちらに謝って来た。

「え~と・・・・・・銀さんと同じ世界の人かな? 着物着てる所からして?」
「あ、はい。初めまして、銀さんの所で万事屋として働いている志村新八です」
「えッ! 君が銀さんがよく言ってたあの新八君ッ!? へ~本当に見た目地味~」
「いや初対面の人にいきなり地味っておかしいでしょ・・・・・・」

近づいて来てしげしげと観察してくる和美に新八は少し顔を赤らめながらツッコミを入れた。

「地味でヘタレでツッコミしか能が無いダメガネって銀さん言ってたけど、こう見ると普通の人じゃん」
「あの天パ野郎、僕の事をどんな風に説明してやがんだ・・・・・・ってうわぁッ!」

まだここに姿を見せていない銀髪の男に新八が悪態を突いていると、突然彼の手を取って和美が両手で強く握る。
いきなりの彼女の行動に新八は驚いた声を上げる。

「私も一応銀さんの所の万事屋メンバーなんだ。てことは新八君は私の先輩って事になるんだ~、住む世界は違うけどよろしくね~」
「ははははは、はいッ!」
「あれ? どうしたのなんかすっごい汗かいてるけど?」
「ななななななんでもありましぇんッ!」
「?」

かなりきょどっている態度で額からダラダラと汗を出している新八に和美は彼の手を離した後首を傾げる。
彼女は新八の事をまだよくわかっていないのだ。
彼は昔から同世代の異性と接する機会は神楽を除いてほとんどないのに、いきなり現れた和美に手を握られたので、思春期真っ盛りの彼の頭の中はパニック状態になってしまったのだ。

(うおぉぉぉぉぉぉ!!! いきなり手を握るという高ランクの技をいきなりしてくるなんてこの人何考えてるんだッ! こちとら柔らかい女の人の手なんて触ったの久しぶりなんだよチクショーッ!)
「どったの? なんか汗が凄い事になってるけど? どっか痛いの?」
(あれ? この人よく見ると・・・・・・・)

頭の中で必死に叫んでいる新八に和美が心配そうな表情で顔を近づける。
そんな彼女に新八は両手で頭を押さえながらハッとする。

(め、めちゃくちゃカワイイィィィィィィィィ!!! コレ以上無いというぐらい僕のタイプだッ! やばどうしよッ! 好きになっちゃうかもッ! 会ったばかりの女の子好きになっちゃうかもッ! いや待てぇぇぇぇぇぇぇ!! お通ちゃんがいるんだッ! 僕にはお通ちゃんがいるんだッ!) 

新八の体の中で激しい電流が駆け巡る。
改めて気付いたのだ、目の前にいる和美は物凄くスタイルもいい上に美人だと

(江戸だったらこんなカワイイ子見つけるなんてドラゴンボール探すより難しいっていうのにッ! もうここドラゴンボール散らばりまくってるじゃんッ! 神龍何体出せるんだよこの世界ッ!)
「大丈夫? 目の焦点が合ってないよ?」
「だ、大丈夫大丈夫ッ! ちょっと寝不足なだけッ! 僕、思春期だからさッ! 布団の中に入っても変な事考えちゃって中々寝れないんだよ本当ッ! アハハハッ!」


女の子である和美にはわからない様な事を言ってごまかすと、ようやく落ち着いて来た新八はため息を突いてうなだれる。

(ハァ~・・・・・・・教師やってた銀さんはこんなカワイイ生徒の和美さんと一緒にワイワイ楽しんでたんだ・・・・・・そう思うと、あの人に沸々と殺意が芽生えて来る・・・・・・)

顔を赤らめながらチラッとキョトンとしている和美の方へ目を向けながら、新八は銀時に忽然としない苛立ちを覚えていると、彼の元にまた別の生徒が・・・・・・

「朝倉~、誰と話してんの?」
「ああ、この人は銀さんの仲間の新八君、私と同じ万事屋メンバーなんだよ」

さっきまでジャスタウェイに興奮していたハルナが、和美が誰かと話している事に気付いてやってきたのだ。
和美は簡単に新八の事を説明してあげると、彼女はいきなりしかめっ面になって目を細める。

「銀八先生の仲間? この人が?」

興味津々に新八を観察していた和美と違って、ハルナは胡散臭そうな目つきで新八を眺める。
しばらくしてハルナは新八からプイッと顔を背けると面白くなさそうに呟いた。

「ボツ」
「は、はぁッ!? ボ、ボツってなんすかいきなりそれッ!?」
「だって見る限り全くなんの個性も無いじゃない、モブキャラでももうちょっとマシなのいるわよ? 唯一の個性と呼べる存在がメガネだけ、しかもそれさえも私と長谷川さんに被ってるし、あまりにも地味過ぎて笑えないわこりゃあ、アンタはこの世界に来ちゃいけない人間だったのよ」
「んだとォォォォォォォ!!!」

鼻で軽く笑って見せるハルナに新八は激怒の表情に。
好意を持ってしまった和美の目の前でここまで言われて黙っていられる筈がない

「アンタなんかが僕にいちゃもんつける権利なんてないだろッ! どうしてアンタみたいな人にいきなり僕のキャラとしての存在全てを否定されなきゃいけないんだッ! 担当かアンタはッ!」
「朝倉~、こんな地味ツッコミダメガネに付き合ってないで、土方さん達の所に行かない?」
「人の話聞いてねえしッ!! ウザッ! このメガネ、ウザッ!」

自分の熱い主張を無視して和美に向かって話しかけているハルナに、新八の怒りは頂点に。
するとハルナはだるそうに彼に振り返って対峙する。

「私はなんの個性も無いその辺の石ころと同じぐらいの地味なキャラなんかどーでもいいのよ、私が興味あるのは漫画の資料になるほどの濃いキャラだけ、背景と混ざっても違和感ないダメガネはさっさと自分の世界に引きこもってなさい」
「うっさいわ不人気メガネッ! もう一人のメガネとは天と地の差ぐらい人気の差があるの知ってんだぞッ!」
「あああッ! 一番気にしていた事をよくもッ! ていうかアンタだって不人気メガネじゃないのッ! もう一人のメガネとアンタの差もメチャクチャ・・・・・」
「フハハハハハハッ!!」
「「ん?」」

ハルナが新八が互いに相手に悪意のあるコメントを述べている途中にいきなり上機嫌な様子の高笑いが。

新八とハルナは同時にそちらに振り返ると・・・・・・・

「どすこぉぉぉぉぉぉいッ!!!」
「「もげらぁッ!!!」」

今までに見た事のないほどのテンションが有頂天に達しているエヴァが笑いながらハルナと新八の顔面に飛び蹴りを入れた。

二人が仲良く後方に吹っ飛んで倒れるとエヴァはスタッと地面に着地した。

「不人気メガネコンビ如きが私の前に立つなッ! 身の程を知れッ! ハ~ハッハッハッ!!」
「おいチビ~見てるこっちが恥ずかしくなるから止めろ」
「丸で体中を縛りつけていた鎖が全て断ち切られた様な感覚・・・・・・遂に忌々しいナギの呪いが解けたぞ~ッ!」

両手を上げてガッツポーズを取っているエヴァの元に背中の夕凪をプラプラさせて坂田銀時がけだるそうにやってくる。
どうやら長年支配していた呪いがナギによってようやく解呪されたらしい。

すぐに万事屋メンツである長谷川千雨と雪広あやかも彼の後ろからやって来た。

「子供思考なのも呪いのせいだと思ってましたがどうやら関係無かったようですわね、いつものエヴァさんですわ」
「フフフフフ、雪広あやか。今の内に好き勝手ほざいていろ、そしてこれから自分の身に起こる苦痛と恐怖に身を悶えるがいいわッ!」

やって来た早々自分に向かってジト目で呟くあやかに、エヴァは不敵な笑みを浮かべながら指を差す。

「今までよくも散々子供扱いしてきたなッ! だがそれも今日までッ! 呪いを解けた私の力で貴様を死ぬほど泣かしてやるッ!! 貴様にはそれなりの償いをしてもらわないと私の気持ちがおさまらんッ! 覚悟するがいいッ!」

意気揚々とあやかに向かって宣言するエヴァ、今まで彼女にはずっと子供扱いされていた事で相当恨みを抱えていたらしい、だがそんな彼女の両肩を銀時が後ろから強くおさえる。

「おいチビ、言っとくけど俺の許可が下りない限り魔法使うんじゃねえぞ」
「何ッ! ちょっと待って銀時ッ!」 
「だから今も使うな。約束だぞ絶対に忘れんなよ、お前は“俺のモン”なんだからな」
「ぐぐぐぐぐ・・・・・・・」

確かにちょっと前に彼女は自分の全ては銀時のものだと約束した。
しかし納得のいかない表情を浮かべるエヴァはあやかを指さして銀時に抗議する。

「それでは私が今からやる『雪広あやかめがっさ昇天劇場』が出来ないではないかッ! 私がどれだけアイツに屈辱を受けていたのかわかっているだろお前もッ!」
「もしアイツに魔法でも使ってみろ、お前とは金輪際口聞かねえからな」
「く、口聞かないッ!? そんなのイヤだぞ私はッ!」
「だったら俺の許可が下りない所でテメーの力を使うな。ガキのお前に魔法なんざ使われたら迷惑極まりねえんだよ」
「う~~~~~~・・・・・・・」

悔しそうに口をつむぐエヴァ、ようやく解放された力で好き勝手暴れたかったのに銀時にくぎを刺されてはそんな事出来ない。
仕方なく力を使うのを諦めたエヴァは恨めしそうにあやかの方にチラッと振り返る。
するとあやかは挑発とも取れる笑みを浮かべて

「早く私を泣かしてくれませんか? 泣き虫お子ちゃまのエヴァさん?」
「う~~~~~うがぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ええッ!?」

あまりの悔しさに目に涙を溜めながら、エヴァは両手を突き出してあやかに突進する。
よもや彼女が泣きながら襲いかかってくるなんて想像していなかったあやかは絶句の表情を浮かべた。

「あなたどんだけ子供なんですかッ! 恥ずかしくないんですかそんな姿を晒して・・・・・・イタッ!」
「うぐ~ッ! うぐ~ッ!」

こちらん向かって叫んでくるあやかに向かって、我を忘れているエヴァは飛びかかり、彼女の頭めがけて吸血鬼特有の鋭い牙を光らせそのままガブリと噛んだ。

「イタタタタタッ! あ、頭に噛みつくの止めて下さいッ!」
「私は子供じゃないッ! 私は闇の福音と呼ばれ人々から恐れられていた偉大なる悪の魔法使いだッ!!」
「悪の魔法使いがこんな小学生みたいな真似するわけないでしょッ! 人の目があるんですから離れて下さいッ! 私にまで恥をかかせないでくださいッ!」
「うるさい私は正真正銘の不死の吸血鬼、エヴァンジェリンだッ! 銀時を護る牙なのだッ!」
「その牙で私の頭やら腕に噛みつかないで下さいッ!」
 
体中に噛みついてくるエヴァにあやかが痛みをこらえながら怒鳴りつける。
エヴァはエヴァ、あやかにとって彼女というのは
『本当にイザという時には頼りになるかもしれないけど普段は泣き虫で幼稚なちっちゃな子供、反抗期の娘的な存在』という印象なのだ。

「銀さんはどうしてこんな子供と三回もキスを・・・・・・私とは二回しかしてませんのに・・・・・・・」
「子供って言うなッ!」
「イタッ! もういい加減にしなさいッ!」

ため息を突いてぼやいていらエヴァが今度は腕に噛みついてきたので、あやかは遂に完全に怒って左腕に噛みつく彼女の頬を思いっきりもう一方の手でぐに~と引っ張る。

「このおチビッ!」
「うるひゃい妖怪デカパイ女ッ!」
「何やってんだか・・・・・・」

レベルの低い喧嘩を始めているエヴァとあやかに千雨は呆れている視線をぶつけていた。

「毎度毎度コイツ等も飽きねえよなぁ・・・・・・ん?」

一人で呟いている千雨の足元に倒れた二人組が。それに気付いた千雨は不審そうに眺める。

「・・・・・何してんだお前等? 大丈夫か?」
「フンッ! アンタみたいな人気メガネに同情の言葉なげかけられてもこっちは傷付くだけなのよッ!」
「何をやっても人気が貰えない僕達に対して哀れみの目なんけ向けんじゃねえッ! 勝者の目かッ! 勝者の目で見下しているのかッ!?」
「いや本当に大丈夫かお前等の頭・・・・・・?」

いきなりガバッと立ち上がって自分に向かって叫んでくるハルナと新八に、千雨が素っ気なく返していると、今度は和美が両手を上げたまま彼女に向かって

「千雨ちゃ~んッ! 会いたかったよ~ッ!」
「うわッ! いきなり抱きついてくんじゃねぇッ!」

和美はテンションの赴くままに千雨を強く抱きしめた。
それを銀時はボーっとした表情で見つめる。

「お前等って全然タイプ違うのに結構仲良いよな」
「まあね、私は千雨ちゃんの恋をアシストすると同時に一番の友達だから。千雨ちゃ~ん、銀さんとキスとか出来た~? あと子供出来た~?」
「その一番の友達との会話の話がいきなりそれかッ! 出来るか両方ッ! 特に後者ッ!」
「私ね~、千雨ちゃんと銀さんの子供をこの手で抱きかかえるのが夢なんだ~」
「他人の子供抱きかかえる計画立てる前にまず自分の子供を抱きかかえるプランを練れッ!」

ベタベタくっつていくる和美にいつも聞いてくる話しの内容に千雨はウンザリした表情で返す。
彼女と会ったらいつもこれだ。

(コイツの事嫌いじゃないから別にいいんだけどよ・・・・・・毎度毎度これじゃあ身が持たねえよ)

抱きついてくる和美の嬉しそうな顔をチラッと見てそんな事を千雨が考えていると。

今度は銀時に向かって走り寄ってくる生徒の姿が

「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!!!」

大声を上げて銀時に猛スピードで突っ込んで来たのは、彼専用ストーカー、龍宮真名だ。

ここに来てようやく会えた銀時に龍宮は雄叫びを上げながら和美の様に両手を水平に上げ・・・・・・

「何も言わずに抱いてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!! はぬすッ!」

バカ丸出しの発言をして襲いかかって来た龍宮の頭に。
容赦なく銀時の鉄拳が振り下ろされ、彼女は石畳の床に思いっきり頭から直撃した。

「ハァハァ・・・・・・!  この痛み・・・・・・・最高だ・・・・・・・!」
「もういい加減死んでくんねえかなお前? ホント10円上げるから死んでくんないかな? もうお前を視界に入れるという事だけでこちとらだるくて仕方ねえだよ。おら」
「おぐッ!」

ヘブン状態に陥っている龍宮を見下ろして教師とは思えない暴言を吐いた後、彼女の頭を思いっきり足で踏みつける銀時。

「ストーカー女は一人でもウザくてやってられねえんだよ、あっちにもいてこっちにもいるとかどんだけ俺はストーカーに好かれる性質なんだよ。テメェ等まとめてこの世から消えてくれよ、地獄落ちてくれよ」
「もっと・・・・・・もっと踏みながら罵ってくれ・・・・・・! ああ、興奮してきた・・・・・・!ムラムラしてきた・・・・・・! 私をもっと虐めてくれせんせぇぇぇぇぇいッ!!!」
「ダメだ銀八、そいつ変態だから何やっても逆効果だわ・・・・・・・」

グリグリと頭を踏まれてもなお歓喜の絶叫を上げる龍宮を千雨はドン引きした目で銀時に忠告しておく。
まさかここまで彼女の中にあるドM属性が進行していたとは・・・・・・

「重症だな、治る見込みなしだわこりゃあ」
「千雨ちゃんッ! まさか銀さんに踏まれる龍宮を羨ましく思ってるッ!? ダメだよそっち方向はッ!」
「ねえよバカッ! あんな人間として最底辺の人生なんか私はエンジョイ出来ねえッ!」

緊迫感のある声で呼びかけて来る和美に千雨がすぐにツッコミを入れていると、銀時に近づくもう一人の人影が

「白夜叉、帰って来た途端それか・・・・・・・」
「あん?」

龍宮を踏みつけている銀時の前に現れたのは先程桂と木乃香の前から去った刹那。
銀時は足元にいる彼女のルームメイトを踏んづけながら顔を上げた。

「よう、ってお前、右目に包帯巻いてどうした? まさか・・・・・・」
「戦いの中で失った、それだけだ」

当たり前の様にさほど重要視していない口調で話した刹那に銀時はハァ~とため息を突いた。

「そんな短絡的に言うんじゃねえよ、お前目玉片っぽ取れちゃうなんて今後どうするんだよ」
「右目が無い状態でも戦える戦い方を身につけるさ」
「ふ~んお前にしちゃあ珍しいポジティブ思考だな」
「・・・・・・私がいつもネガティブ思考みたいな言い方だな」
「あったりめえだろ、ネガティブじゃなきゃ俺をあんな理由で襲わねえよ」
「・・・・・・だから傷口に塩を塗るのを止めろ・・・・・・」
「塩じゃねえ、俺が塗ってるのはマヨネーズだ、お前の好きな」
「どっちでもいいから止めてくれ・・・・・・あと別にマヨネーズは好きじゃない」

自分としてはあまり思い出したくない出来事なのにサラッとほじくり返して来た銀時に、刹那がイヤな顔を浮かべると彼の足下で後頭部を踏まれたまま顔面を地面にめり込ませている龍宮がその状態で口を開いた。

「先生、刹那はきっと一種の悟りを得たのさ、例え右目を失っても護りたい者を護る事だけが自分の中の一番の幸福だと。私がこうやって先生に踏まれ罵倒される事こそが人生の中で一番の至高の幸せと悟った様に」
「お前のと一緒にだけはするなッ! ていうか戻って来い龍宮ッ! まだお前はこっちの世界に帰って来れるッ!」
「戻るだと? むしろお前がこっちに来い刹那、お前にはきっと才能がある、天性のドM才能が、その声がお前を物語っている」
「あるかッ!」

何を根拠に言っているのだと刹那は銀時に踏まれたまま普通に喋りかけて来る龍宮に叫んでいると、銀時はそんな彼女をジッと見た後、何かに気付いたように背中に差してある一本の刀を鞘ごと抜いた。
刹那の愛刀であった夕凪だ。

「おいさっちゃん、じゃなかったせっちゃん。預かってたもん返すぜ」
「今私を誰と間違えたんだお前・・・・・・ってうわッ!!」

刹那がジト目で銀時の方へ振り向いた直後にかつて使っていた夕凪が彼女の方に乱暴に飛んで来た。

「コ、コレは夕凪・・・・・・・どういう事だッ! これは私がッ!」
「もう十分だろ、俺が預かる必要なんかもうねえ」
「何・・・・・・?」

慌てて両手で夕凪を受け止めた刹那に、銀時は話を続けた。

「刀はあるべき所に戻るのが一番だ、そいつはお前の刀、お前が持つべき刀なんだよ」
「だが私の腕はまだお前の実力には程遠い・・・・・・」
「大事なのは剣の腕なんかじゃねえよ」

夕凪を受け取る事に躊躇を見せる刹那に、銀時は口元に小さく笑みを浮かべながら自分の胸を親指で差した。

「コイツだ」
「・・・・・・・」
「オメーはもう俺なんかよりも立派な侍になれる侍だ、だからその刀はテメェに返す。それだけだ」
「・・・・・・いいのだろうか、私がこの刀を使って・・・・・・」

両手に持つ夕凪を見つめながら刹那がそんな事を呟いていると、銀時は龍宮の上から足を下ろして、踵を返して彼女達とは反対方向に歩いて行く。

「いいも何もそいつは元々オメーの刀だろうが、じゃあな、ちゃんとそいつは返したぜ」
「あ、白夜叉ッ!」
「先生ッ! 延長を頼むッ!」

龍宮の変態丸出しの発言も銀時はスル―して、何処かへ行ってしまった。
残された刹那はジッと手に持つ夕凪を眺める。

「この刀は果たして私が持つべきものだろうか・・・・・・」
「おや刹那、こんな所で何やっているのかな?」
「お、長ッ!」

後ろから呼びかけて来た男の声に刹那は慌てて振り返る。自分が慕っている近衛木乃香の父親であり、自分にとっても親同然の存在である近衛詠春だ。

「木乃香を見なかったかい? さっきから何処にも姿が見えないんだ」
「お嬢様が・・・・・・・?」
「やはり式神ゴキブリ1万匹、式神ハエ3万匹ををあの子の周りに配置しておけばよかった・・・・・・」
「止めて下さい、本当に止めて下さい」

過保護のあまり恐ろしい事を企む詠春に刹那は真顔で否を唱えた。
無論、間違いなく木乃香のトラウマになるからだ。

「トイレにでも行かれたんじゃないですか?」
「それならいいんだが・・・・・・ん? それは夕凪かね?」
「え? あ、はいそうです」

娘の行方に頭を悩ましている途中に詠春は刹那が懐かしい物を持っている事に気付く。
夕凪、それは刹那が持つ前に彼が昔自分と共に数多の戦を経験した愛刀だ。

「私の刀を君に預けて正解だった、君は今回の戦で片目を失ってまでもよく貢献してくれた、心から礼を言わせてもらうよ」
「いやその・・・・・・実はこの刀は私はこの戦では使って・・・・・・」
「ちょっと見せてくれないかい?」
「あッ!」

申し訳なさそうに刹那が説明しようとする前に、詠春は彼女の手から夕凪を取る。
その何年ぶりかの愛刀の感触に、詠春は思わず顔をほこらばせた。

「やはりこの刀は素晴らしい、きっとこれほどの名刀は世に数本あるかどうかだろ。君もこの刀を使える事に誇りを持ちなさい」
「は、はい」
「どれ、この刀の美しい刃でも久しぶりに見てみるかな・・・・・・・」

詠春は鞘におさまる刀身を見ようと鞘を手に持って抜こうとする。

そして次の瞬間。

ポンと鞘を抜け、そこにはポッキリと折れ、ちょびっとしか残っていない刀身が現れた。

きっと今なお綺麗で刃こぼれ一つない刃を拝めると思っていた詠春はこの光景に時が止まった様にフリーズする。
刹那も何故夕凪の刃が無いのか混乱している様子だ。

「こ、これはどういう・・・・・・ま、まさか白夜叉ッ! アイツこの刀をッ!」
「・・・・・・説明してもらえますかな刹那?」
「へッ!?」
「私の愛刀をこんな無残な格好にさせた経緯を私が知りたいのだが?」
「ち、違いますッ! これは私がやったんじゃなくてッ!」

完全に疑っている目つきで睨みつけて来る詠春。神鳴流最強の剣士と謳われていた彼の凄みのある眼力に刹那は怯えながらも必死にわけを説明しようとする。

だが愛刀を折られて怒りに満ち溢れている詠春は彼女の話をハナッから信じようとしない。

「なるほどこの私の前でしらばくっれるのですか、侍の風上にも置けませんね」
「えぇぇぇぇぇぇ!! 本当にコレは違うんですッ! 私じゃなくて白夜叉がきっとやったんですよコレッ! 夕凪を折ったのは私じゃなくて白夜叉ですッ! 私は悪くありませんッ! 悪いのは全部白夜叉なんですきっとッ!」

まだ自分がやったんじゃないと連呼する刹那に向かって詠春はギロリと目を向ける。

「こんの駄鳥がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うごッ!」

問答無用に夕凪の鞘で刹那の頭を兜割りする詠春。その痛みに怯んだ刹那をすぐに足払いして倒し、馬乗りになって昨日の時の様に拳によるラッシュをかけまくる。

「私の刀をよくもポッキンしやがったなァァァァァ!!! 右目を取って政宗様気どりかッ!? なれるわけねえだろこのカスがッ! ボケがッ! チキンがッ! 家畜にも劣るクソドリがァァァァァァ!!!」
「いぎッ! おづッ! ほ、本当に私じゃないんですッ! ばさらッ!!」

キャラが激変して本能のまま殴りつけて来る詠春に刹那は涙ながらに訴えるも返事は鉄拳による制裁のみ。
そんな光景を龍宮は真顔で地面の上で寝転がった状態で眺める。

「こういうシチューションで私も先生とやってみたいものだ、フ、考えただけでムラムラしてきた」
「気持ち悪い事言ってないで助け・・・・・・なぐッ!」
「とっとと死にやがれッ! 死んだ後は焼き鳥にして式神ゴキブリのエサじゃボケェッ!」

アホな事を言っている龍宮に刹那は必死に助けを求めようとするも、詠春のフルボッコタイムは止まらない。


ちなみに実際の所夕凪を折ったのは刹那じゃなくて銀時である。





































その銀時はというと、今は集団から少し離れた所にある人目の付かない茂みの中をザッザッと草根を踏みながら歩いている。

その訳とは

「もうそろそろツラ出してくれてもいいんじゃねえか?」

誰かに尋ねる様に銀時が呟くと、彼の背後にある一本の木の裏からある少女がピョコンと顔を出した。
詠春が探していた彼の娘である木乃香。

「えへへ、やっぱバレてたん?」
「俺がここに来た時からずっと俺の事をつけてただろ? フラグか? 遂に俺はお前のフラグも立てちまったのか? どうしよう俺、さすがに4人は無理なんだけど?」
「そんなんちゃうって~」

可愛らしく舌を出す木乃香の方に銀時は冗談を言いながら振り返る。
木乃香は笑い飛ばした後すぐに思い悩んだ表情を浮かべて、銀時を前にして何を言おうかと躊躇する。

「え~とな・・・・・・・その・・・・・・・」
「俺の周りに他のガキ共がいると聞けなかったモンでもあるのか?」
「ああ、やっぱ銀ちゃん鋭いなぁ・・・・・・」

銀時の推測はズバリ的中だった。木乃香は彼に向かって苦笑した後、彼に向かって歩きながら思い切って尋ねてみる。

この先の彼の道を

「銀ちゃんは・・・・・・これからどうするん?」
「・・・・・・」

もし桂が言っている事が正しければ・・・・・・・。
しかし木乃香の頭の中ではもっと別の答えを期待していた。

この世界に残って生徒達と一緒に楽しく暮らすと・・・・・・

不安そうに見つめてくる彼女の目を、銀時はまっすぐに見据えたまま口を開いた























「帰る」

表裏も無い銀時のまっすぐな言葉がその茂みの中で静かに木乃香に聞こえた。

「俺は元々あっちの世界の人間だ、あっちにはこんな俺でも待ってくれる奴等がいるからよ、だから帰らなきゃいけねえんだ」
「そんな・・・・・・・それじゃあ万事屋のみんなはどうするん・・・・・・」

ショックで震える声を必死に抑えながら喋る木乃香に向かって、銀時は頬をボリボリと掻きながら答えた。

「・・・・・・・ここに置いてくに決まってんだろうが」
「!!」
「あいつ等まだ学生だからな、あやかと千雨には家族もいるし。そう簡単に江戸に連れて言っちゃマズイだろ、だから俺は一人で帰る」
「何言ってるんッ! あの三人がどれだけ銀ちゃんの事を好きかわかってんのッ! それに生徒の私達を置いてどっか行っちゃうなんてあんまりやッ!」

素っ気ない態度で簡単に言う銀時に木乃香は腹が立ったのか珍しく声を荒げて叫んだ。だが銀時はなだめるように彼女の頭をポンと手を置く。

「俺があっちへ行ったらこっちに戻って来ないとでも思ってんのか?」
「・・・・・え?」
「まず俺が江戸に戻ったらそうさな・・・・・・・かぶき町の奴等の場所回って伝えることだけ伝えとかねえとな」

木乃香の頭から手を離した後、銀時はある“一定の方向”に話しかける様に口を開いた。

「ちょっくら遠い所行って来るからしばらくここに帰って来れないってな」
「銀ちゃんそれって・・・・・・!」
「あっち行ったらまずはご近所周り、そん次は真撰組の奴等に頼んでここの世界に戻ってくる。けどな、言っとくけど俺はここに墓作らねえぜ」

ニヤニヤ笑いながら銀時は木乃香の方に向き直った。

「俺がここにいる期間はお前等が卒業するまでだ、それまではお前等ガキ共と付き合ってやる、光栄に思えよコノヤロー」
「そうなんや・・・・・・・よかった、もう銀ちゃんと一生会えへんかと思った・・・・・・」
「あ~あ、最初はお前等みたいなガキ共なんざと教師ごっこするなんてやってられねえって思ってたのによ・・・・・・」

踵を返してその場に木乃香を残して立ち去りながら、銀時はまたある方向を見つめたまま口を開いた。

「今じゃ教師ごっこも悪くねえなって思うんだよ、お前等見てると・・・・・・・」

そう言い残すと銀時はまた来た道を戻って他のみんながいる所へ行ってしまった。

それを満足そうに笑ったまま木乃香見送ると。

銀時が何回か視線を送った方向へ話しかけた。

「よかったなぁみんな、銀ちゃんあっち行ってもすぐに帰って来るって」

そう言った瞬間、木の裏からボロボロと数人の人影が

「あ~あ、絶対銀八にバレてたよ私達・・・・・・・なんでアイツあんなに鋭いんだよ、恋愛には鈍感のクセに・・・・・・いやそれは私もだけどさ・・・・・・・」
「エヴァさんが泣いたからいけないんですわよ、まったく耳元でメソメソして・・・・・・」
「だ、だってアイツ帰っちゃうんだぞ~? 短期間といはいえ私を置いて行っちゃうんだぞ~?」
「我慢しようよエヴァちゃん、すぐに帰って来るって言ってたんだからさ・・・・・・」

木の陰から次々と盗み聞きしていた万事屋が出てきた。
千雨とあやか、涙目になっているエヴァ、そんな彼女をなだめる和美。

4人の生徒が仲良く話している姿を眺めた後、木乃香は笑みを浮かべながらまた銀時が去った方向へと目を向けた。





















「いつになるかわからんけど、この子達をちゃんと連れ帰ってあげて



[7093] 第七十七訓 去る前にドタバタ騒いで最後の最後に別れを惜しめ
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/07/04 00:18
修学旅行4日目の夜。

阿伏兎はアリカ同様元々敵側の人間であったが今は真撰組や近衛家の者、女子生徒達がいる所に身を置いていた。
しかし彼は彼等の味方になるなど毛頭ない、あくまでネギの師匠の“代わり”としてこうなる事になってしまったのだ。

「あれ? なんでおたくは俺等みたいに鎖に繋がれてねぇんだ?」
「阿伏兎ッ! アンタまさかそっちに寝返ったんかッ!」

短い間だったとはいえ一応仲間として一緒にいた全蔵と千草が背中合わせに縛られている状態でその場に座っている。
阿伏兎は疲れた表情を浮かべて彼等を見下ろした。

「アホな上司に子守り任されたんだよ・・・・・・」
「え? そんなんで自由の身になれんの?」
「何処が自由だよ、むしろお前等見たいに捕まってた方がマシだっつーの・・・・・・」
「あ、こんな所にいたんですか阿伏兎さん」
「げ・・・・・・」

全蔵に向かってげんなりした表情でぼやていると背後からあの少年の声が・・・・・・。
阿伏兎はすぐにその場から逃げようとしたが、後ろから着ているマントをがっつり掴まれる。

「とりあえず生徒の皆さんに阿伏兎さんの事を話そうと思いまして」
「いや・・・・・・いいよ俺人見知りするタイプだし、ていうかマジで俺をお前等の所に連れて行く気か?」

マントを持ってズルズルと立っている阿伏兎を引きずりながらネギは彼の方に笑いかける。

「だって神威さんから聞きましたよ? このまま春雨に戻っても首を飛ばされるだけだとか。それなら僕等の所で暮らした方が全然マシですよね?」
「マシとかそれ以前にお前絶対俺を連れて行く気だろ?」
「神威さんに言われているので」
「ったく、すぐ神威、神威、神威って・・・・・・そんなにあのバカ団長が好きなのかよ・・・・・・」

ネギに引きずられるのを抵抗せずにそのまま阿伏兎は彼と一緒に行ってしまった。
全蔵は彼の姿を眺めながら後ろにいる千草にボソッと呟く。

「もし俺達もアイツみたいに自由になったらお前今後どうする?」
「・・・・・・お前はなんかあるんか?」
「いや、バイトでもやろうかなと思ってよ、配達業とか俺得意だし」

呑気な事を言う全蔵に千草はやれやれと首を横に振った。

「忍びが配達ってアホか・・・・・・・」
「で? お前は何するんだよ」
「う~ん、コンビニとかスーパーでバイトしようかな・・・・・・」
「お前こそ魔法使いのクセに何様だよ」
「うっさいボケ」

戦いが終わって緊張感が取れたのか、千草も随分と落ち着いて来たようだ。
しばらくして今度は千草の方から全蔵に話しかける。

「バイトするも何もお前はどうするんや? やっぱり元の世界へ帰るんか?」
「帰れるなら帰りてえけどよ・・・・・・アイツ等俺を連れて行く気ゼロだし・・・・・・」
「そ、そうか・・・・・・」

なんだかぎこちない返事をした後千草は彼からすぐにそっぽを向く。すると全蔵は彼女の方へ振り返らずに一言。

「またお前の所に身を寄せていいか?」
「はッ!?」
「この世界じゃ他に頼れるモンお前しかいねえし」
「ド、ドアホッ! そんな図々しい事を男のクセに・・・・・・・」
「ダメか、しょうがねえな、じゃあ一人で暮らすわ、じゃあな」
「ま、待たんかいッ! 何でそんな簡単に引くんやッ! 別に一緒に住むのが嫌とは言うてへんやろッ!」

千草は慌てて全蔵の方に振り返って叫んだ。それに「ん?」と全蔵は彼女と顔を合わせる。

「なんだその口ぶりだと一緒に住んでいいのか? 俺から言って見てなんだけど、お前そんな簡単に男を家に上げていいのか? それとも慣れてるのかそういうの?」
「ウチが男を自分の近くに置くのはお前が初めてやドアホッ!」
「てことはオメー彼氏とか作った事ねえのかよ。べっぴんなんだからそんぐらい何人かいたと思ってたんだがな」

勝手な推測をしていた全蔵に千草は顔を赤面させた状態で食ってかかる。

「その辺の尻軽女と一緒にすなッ!復讐の為に人生を費やしていたんやからそんなもん作る気も暇も無かったんやッ!」
「何それ言い訳? モテナイ女の言い訳? やっぱアレか? 性格がそれだからモテなかったのか?」
「キィィィィィィ!! 言い訳じゃないわボケコラカスッ! 本当に男なんて作る暇無かったんやッ! ウチがちょっとフェロモン出せば男なんてイチコロやッ!」
「お前のフェロモン吸い取ったらなんか一週間ぐらい体の全身が麻痺するとかありそうだよな」
「ウチのフェロモン毒ガスッ!? なわけないやろグレープフルーツのいい匂いやきっとッ!!」

互いに顔を向き合わせながら全蔵と千草は長々とどうでもいい会話を続ける。
なんだかんだで二人の仲は悪くないのだ。

こんな二人を置いて銀時を始め江戸側+αの連中は刻々と帰る準備を進めて行く。





































第七十七訓 去る前にドタバタ騒いで最後の最後に別れを惜しめ















一方阿伏兎はというと、ネギに連れられて何人かの生徒の前に立たされていた。
敵であった彼が現れた途端アスナは目を丸くさせる。

「ネギ、マジでコイツを女子寮に連れて行く気・・・・・・・?」
「はい」

即答するネギの返事を聞いてアスナはジーッとさっきから黙っている阿伏兎に両目を近づける。

「まあ確かによく見ると私のタイプにメチャクチャピンポイントストライクね・・・・・・ありっちゃあありよ、ていうかめっちゃありよ、ネギ、反対する奴は私が黙らせるから安心しなさい」
「え? お前俺みたいなオッサンがタイプとかどんだけ?」
「ハハハハ、アスナは昔からヒゲの合うオッサンが好きでござるからな」
「うおぉぉぉぉぉ!! すっげぇ強そうアルッ!!」

アスナの感想に阿伏兎が若干引いていると、彼女の近くに立っていた長瀬楓が相槌を打ってクーフェイは阿伏兎を見て興奮したように叫んでいた。

「まあ女子寮には山崎殿もいるし異世界の人間一人や二人増えてもなんら問題は無い」
「勝負するアルッ!」
「管理人もいないのは学校側も困る筈でござるしな、なんとかなるでござろう」
「勝負するアルッ!」
「おいこの色黒チャイナの言葉俺わかんねえんだけど? 通訳してくれ」

楓の説明の後にクーフェイが叫んでいるのだがまったく話と関係無い。阿伏兎がネギの方へ振り向くとネギは苦笑しながら

「あ~クーフェイさんは強そうな人見かけたらずっとしつこくそういう事言って来るんですよ、一回勝負しない限りずっと」
「勝負するアルッ!」
「ウチの団長でもここまでしつこくねえぞ・・・・・・」

まだ言うか・・・・・・・という目線でクーフェイを眺める阿伏兎。
するとネギが彼に向かって一つの疑問を投げかける。

「ところで阿伏兎さん、もしかしてクーフェイさんって夜兎族とかじゃないですよね?」
「なわけねえだろ、こんな色黒の夜兎族なんかいねえよ、太陽の光を浴びれない種族なのになんでこんな黒いんだよ? 夜兎は本来色白だ」
「ああそういえば・・・・・・いやなんかクーフェイさんって神楽さんとなんか似てるので、もしかしたらと思いまして」
「まあ、喋り方と性格は被ってるな・・・・・・」

ネギと阿伏兎はクーフェイ達には聞こえない様そんな会話をしていると・・・・・・・

「おうビリビリ、ガキ共とオッサン一人連れて何やってるアルか?」
「噂をすれば・・・・・・・」

クチャクチャ音を立てながら酢昆布を食べてこっちに来たのは神威の妹、星海坊主の娘、神楽だ。

「おいビリビリ、帰る前にまず言っとくアル、テメェの脳みそにしっかり入れやがれ。バカ兄貴を倒すのは私だからなコノヤロー」

ブスっとした表情で自分を親指で指差す神楽。そんな彼女にネギは決意を込めた眼差しで笑って見せた。

「僕だって神威さんを倒す事を目標にしているんです、例えあなたが神威さんの妹でもそこは一歩も譲る気などありません」
「フン、じゃあどっちがあのバカ兄貴を倒すか競争ネ」
「はい」

互いに譲れないモノを持つ者はライバルという形で競い合う。
ネギにとっても神楽がライバルという一つの存在になった頃。

「こんな所まで来てたのねこのナマモノは、私とすぐにイギリスに帰るわよ」
「待ってくれネカネの姐さ~んッ! 俺っちはネギの兄貴をアシストする使命がッ!」
「必要ないわよ」
「あれ? ネカネお姉ちゃん?」

 
傍から聞こえる二つの声を聞いてネギはそちらに顔を向ける。

彼の親戚であるネカネ・スプリングフィールドがオコジョ妖精のカモに、尻尾を掴んだ状態でブラブラさせながら話しかけていた。
更にその彼女の近くに立っているのは

「アハハハッ! そんな事しちょったら動物愛護団体に訴えられるぞッ!」
「このナマモノはいいのよ、散々私や他の女の子の下着を奪って・・・・・・イギリスに連れて帰って檻の中にぶち込んどくわ」
「坂本の旦那~ッ! 俺っちを監禁しようとするこの悪魔をなんとかしてくれ~ッ!」
「アハハハハッ! 無理じゃッ!」

カモの涙ながらの訴えをヘラヘラと笑い飛ばすのは坂本辰馬。しかも彼の後ろには部下である陸奥も立っている。

「喋るオコジョか、わし等の世界でもそうそう見かけん生き物じゃな」
「見かけない方がいいですよこんな生物、こんなんでも下心の塊なんですから」
「なんじゃウチの大将となんら変わらんじゃないか」
「アハハハハッ!」

上司である坂本に自然に陸奥がそう言うと、彼女に向かってネカネは目を光らせる。

「・・・・・・その話し詳しく教えてもらえませんか?」
「ん? 別にいいが聞いても面白くないぜよ? こんな性病を持ちかねない男の話など」
「性病・・・・・・? あなたどれだけ女遊びして来たんですか・・・・・・?」
「ハハハ・・・・・・・」

坂本の過去を聞いてネカネはキッと彼の方へ向いて睨みつける。
その威圧感に坂本はヘラヘラ笑いながら後ずさり、そんな彼を見てネカネは睨むのを止めてハァ~と深いため息を突く。

「こんな人でももう会えなくなっちゃうのはちょっと寂しいわね・・・・・・」
「会えなくなる? なんでじゃネカネさん?」
「だってあなた自分の世界に帰るんでしょ・・・・・・・?」

憂鬱な気持ちでネカネがそう言うと、坂本は「へ?」と首を傾げる。

「わしゃぁ確かに帰るが別にそれでもう会えなくなるわけじゃないぜよ?」
「え?」
「実はの、ネカネさんに会いに行きたくなったらいつでも行けるようにとウチで時空超越を故意に出来る船を造る気なんじゃ」
「私と会う為に・・・・・・?」

坂本が計画している話にネカネは呆然とした表情で呟いていると、陸奥は彼に向かって不満そうな目で口を開いた。

「大将、なんでそんなモンウチで造らなならんのじゃ? 造るならソロプレイでやってくれ」
「いいじゃろ陸奥~、これからは女遊びはほどほどにするきん、だから頼むぜよ」
「その決定事項はわしだけじゃ無理じゃ、他の仲間にも聞いとかんといけん」
「そうか~じゃあ早く帰らんとな~」
「当たり前じゃ、そんな船造るより前にアンタには仕事が山ほど残っているんじゃからの」
「アハハ・・・・・・イヤな事思い出させるんじゃなか・・・・・・」

頭を掻き毟りながら苦笑している坂本、彼のそんな姿を見てネカネは恐る恐る口を小さく開いた。

「またすぐ会えるって事よね・・・・・・?」
「アハハハハッ! 会える会えるッ! 仕事終わったらすぐに会いに行くきんッ! わしやぁネカネさんの事気にいっちょるけんのッ!」
「も、もう・・・・・・!」
「アハハッ! アハハハハッ!」

顔を赤らめてうなだれるネカネを見て坂本は大笑い。

だが

「「ふんッ!」」
「ふんぬがッ!」
「へ?」

突然ネカネの後ろから飛んで来た二人の人物の蹴りが坂本の顔面を襲った。

「なにネカネお姉ちゃんといちゃついてんですか黒モジャのクセに」
「見てるだけですっげえイライラするアル、バカップルの掛け合いほど見ててムカつくモンはないネ」

倒れる坂本を静かに見下ろすはネカネを異常なまでに慕うネギと、二人の空間に我慢できなくなった神楽だ。

「あなた達何やってるのよッ!」
「害虫駆除だけど?」
「バカップル駆除アル、文句あんのかゴラァ」
「あ~・・・・・・・見た目は可愛い男の子と女の子なのになんでこんなに腹黒に・・・・・・」

こちらに振り向く笑顔のネギと額に青筋立てている神楽を見てネカネが頭を押さえてショックを受けていると

「ネギ、こんな所にいたんじゃな」
「おい銀時のダチの馬鹿がぶっ倒れてるぞ、何があった?」

彼女とネギ達の所にやって来たのはネギの両親であるアリカ・スプリングフィールドとナギ・スプリングフィールド。二人が来た瞬間、ネカネはズカズカと二人に近寄る。

「アリカさんッ! 今後はあなたがネギの教育をしっかりして下さいッ! なんかネギの様子がおかしいんですッ! あんなに純粋でいい子だったのに今は笑顔で人を蹴るという悪魔に変貌してッ!」
「そ、それはわかるんじゃが・・・・・・・」
「あれ? なんで俺には頼まないの?」
「あなたに頼んでも無駄だって既に予測可能ですから、ナギさん」
「一体何なんだよ、親戚にまでダメだしされる俺って一体何なんだよ」
「ダメ人間アル」
「そうかダメ人間か、殺すぞチャイナ」

神楽とナギの掛け合いを無視してアリカはネカネに何て言おうか悩んでいる。
実は彼女にはどうしてもネギと一緒にいる事が出来ない理由があるからだ。

「すまんがネカネ、実はわらわ達はこの世界に住むと言う事が出来んのじゃ、わらわ達はわけあってお尋ね者みたいな身じゃからの」
「え? てことはつまり・・・・・・」
「悪いがわらわ達は異世界へ行かせてもらう、ここでネギと家族仲良く暮らすというのはまだ出来んのじゃ・・・・・・」
「そんな・・・・・・!」

申し訳なさそうにするアリカにネカネは呆然としたまま固まっていると、ネギが彼女の方へ歩み寄った。

「大丈夫だよネカネお姉ちゃん、母さんと父さんと離ればなれになっても僕には生徒のみんながいるし、それに・・・・・・」

そう言うとネギは後ろに振り返る。

「阿伏兎さんもいますし」
「うい~す」
「ってなんであなたがネギと一緒なのよッ! 石ッ! 人一人撲殺出来るのに丁度いい大きさの石はッ!」
「うん、もうそれ俺の中で結構トラウマだから止めてくんない?」
「ネギの兄貴ッ! この俺っちを差し置いてまさかこんなおっさんを自分の傍に置いとくつもりですかいッ! 俺っちという優秀な使い魔を置いてこんなおっさんを使い魔にするんですかいッ!?」
「そうだね、カモ君より阿伏兎の方がずっと強いし、じゃあネ」
「あっさり捨てられたッ! なんてこったいこの子供魔王ッ!」

周りをキョロキョロと見渡して手頃な石を探すネカネを疎める阿伏兎と、彼女がしっぽを持ってぶら下げているカモをバッサリと切り捨てるネギ。
そんな三人と一匹をアリカは呆れた調子で眺めていた。

「賑やかじゃの本当に・・・・・・・それにしてもまさかあの阿伏兎がネギと・・・・・・」
「あのニヤケ面の男よりは全然マシだろ、ったく俺達がしっかりしてりゃああんな奴をネギに近づけなかったのに・・・・・・」

ニヤケ面、神威の顔を思い浮かべながらナギがしかめっ面をすると、アリカはフンと鼻を鳴らした。

「過ぎた事はもうしょうがない、今はとにかくネギとの時間を作らねば」
「あっちの世界に住んでてもこっちの世界にちょこっと遊びに行ける事は出来るしな、なんでも真撰組の奴等がもっと自由にこっちとあっちを行き来出来る装置を作るらしいぜ?」
「それが出来ればすぐにネギの所に行けるの」
「ネギにも会えるし、アイツが普段どんな事をしているのかも知りたいしな・・・・・・」

ネギが教師をやっている姿や遊んでいる姿を一度は見てみたい。
アリカとナギがそんな思いをはせていると二人の背後からイヤな気配が・・・・・・

「ほう、そしてアリカ姫を置いて私との深夜の密会も可能もですね?」
「うおッ!」

いきなり二人の顔の間ににゅっと顔を出して来たのは二人の古くからの知り合いアルビレオ・イマ。そしてその後から桂が連れて行動している犬上小太郎とエリザベスがやってきた。

「おいホモ~、何子持ちの旦那を口説いてんねん、お前の惚れた相手はあの銀髪天然パーマやろ」
「ハハハ、実は私もあの人の様にハーレムルートを狙っておりまして、あの人とナギ、そして最後に桂さんも・・・・・・」
「死ね」
『死ね』

容赦なく冷たい一言を浴びせる小太郎とエリザベスにアルは笑みを浮かべたまま両肩をすくめる。

「おやおや、どうやら桂さんはライバルが多くて難解そうですね、まあそれでこそ攻略しがいがありますが・・・・・・」
「アル、やっぱり貴様ホモじゃったか・・・・・・もう金輪際ナギに近づくな」
「イヤですねえ冗談ですよ、冗談かもしれないけど冗談でもない冗談ですよ」
「いやそれ結局どっちなんじゃ・・・・・・・」

曖昧にして受け流したアルにアリカはジト目でツッコミを入れると、彼は目を彼女に向かって光らせ

「春雨という悪の組織に加担するあなたに私の真実はお答えできません」
「ネチネチネチネチとしつこい奴じゃな本当に・・・・・・・! お前のそういう所が昔からわらわは好かんかった」
「ご安心を、私もあなたの事は嫌いです」

笑顔でサラッと酷い事を言うアルにアリカはグッと歯を食いしばって睨みつけていると。彼の背後から勢いよく飛び出して来た人影が・・・・・・

「アリカ殿ッ! 俺はお主の事は嫌いじゃないから大丈夫だぞッ! むしろ好きだッ! 結婚してくれッ!」
「おやおやアリカ姫、あなたはどうしてこうも私の攻略対象を寝取ろうとするんですか? 嫌がらせですか?」

後ろからいきなり気配も出さずに出て来た桂にもアルは動じずに話を続けると、アリカはもう疲れて相手をする気も起きない表情でシッシッと手を振る。

「そんな奴お前にやる、わらわは絶対にいらん・・・・・・」
「ハ~ハッハッ! 素直じゃないなアリカ殿はッ!」 
「おい長髪野郎ッ! テメェどれだけウチのカミさんを口説けば気が済むんだッ! アリカの夫は俺なんだぞコラァッ!」
「長髪野郎じゃない桂だ。少年、エリザベス、まずはお前達が背後からあの男を襲い、その隙に俺がアリカ殿とフラグを立てる、やれるな?」

後ろにいる小太郎とエリザベスに最低の指令を伝える桂だが二人は動かずにシレッと。

「ヅラ、お前もホモと一緒に死ね」
『桂さん・・・・・・』
「男はみな人妻を求める狼なのだ」
「それはオメーだけだッ!」

特殊性癖の桂が言った瞬間、ナギは勢いよくツッコミを入れた。

桂小太郎の人妻好きを理解出来る者、少なくともここにいる者達は共感出来ない、間違いなく。










































「十四郎さん・・・・・・・もう帰っちゃうんですね」
「ああ・・・・・・」

桂一派とネギファミリーと違い、戦艦ジャスタウェイの下で待機している真撰組の中で。
宮崎のどかはその中で一人タバコを口に咥えてしゃがみ込んでいる一人の男に話しかけた。

「また会えますよね・・・・・・・?」
「当たり前だろうが」

心配そうに尋ねて来たのどかに土方はタバコを咥えたまま速攻で返事すると彼女の方へ顔を上げた。

「例え今は住む世界が違えど、俺とお前の繋がりは何があっても切れる事はねえ」
「は、はい」
「こっちに来れるようになったら今度はお前と二人だけでどっか遊びに行くか」
「ええッ! わ、わかりましたッ! 私、楽しみに待ってます・・・・・・」
「おう」

頬を紅潮させて恥ずかしそうに頷くのどかの顔を照れて直視できなかったのか、土方はそっぽを向いて返事をする。
すると・・・・・・・

「お~お~お熱いね~、中学生と恋愛育むなんて本当立派な警察官だね~」
「旦那、ちゃち入れないで下さいよ~、土方さんは普段はクールよそぶってるけど実はかなりのウブなんですぜ」
「お前等・・・・・・!」
「ぎ、銀八先生と沖田さん・・・・・・」

傍から冷やかしてくる二人組に土方は睨みつけ、のどかは一歩引く。
ドSコンビこと、坂田銀時と沖田総悟がニヤニヤしながら土方とのどかの会話を聞いていたようだ。

「ここまでいったらもうキスするしかないんじゃないの? これはもうするしかないよね~、何ていったってもう恋人同士なんだから」
「何言ってるんですかい旦那、土方さんとのどかちゃんは恋人同士じゃありませんぜ。正真正銘夫婦でさぁ」
「え? じゃあもうキスより凄いあんなことこんな事やっちゃてる系?」
「当たり前でさぁ、数ヵ月後には腹が膨らんでるのどかちゃんを拝めますぜ」
「おいおいおい~い、鬼の副長と呼ばれてる方は中学生相手にそんな事してたんですか~? まさに鬼の所業だな」
「や、止めて下さいッ!」

ちゃかしてくる銀時と沖田にのどかは恐がりながらも彼等に向かって叫ぶ。
そして彼女の後ろに立っていた土方は腰に差す刀に手を置いた。

「万事屋、テメェ人の事言えるのか・・・・・・! ああ・・・・・・!?」
「いや俺はお前と違ってまだ手ぇ出すつもりねえから、ヘヘヘ」
「こっちだってまだ出すつもりなんざねえよッ! つうかよく考えてみろッ! 俺よりお前の方がはるかに外道だろッ!」
「ほ~何を根拠にそんな事・・・・・・・」

タバコをプッと吐きだしてブチ切れた土方に一歩も引かずにニヤつきながら銀時が言葉を返そうとすると

「銀時~~~ッ!」
「え? うおいッ!」

泣き叫ぶような声が聞こえたので銀時は咄嗟に振り返るがその直後、金髪少女が自分の腰に頭から突っ込んで強く抱きしめてきた。
無論、エヴァンジェリンだ。

「私を置いて帰るとか何考えてるんだッ! 私も一緒に連れてけッ!」
「うぐぐ・・・・・・ったく出来るわけねえだろうがッ! ちゃんとお前等が学校卒業したら連れて帰ってやるってッ!」
「いやだいやだッ! そんなの待てないに決まってるだろ~ッ! 連れて行かないと泣くぞッ!」
「お前泣き過ぎなんだよ少しは自重しろッ! 一話ごとに泣いてんじゃねえのかッ!?」
「ふえ~んッ!」
「つかもう泣いてるしッ!」

ワガママ放題に叫んだ後、急に目から雫を垂れ流して泣いてしまうエヴァに銀時は苛立つのを押さえながらなだめようとする。しかしその時

「銀さんッ! もうその子を甘やかすのは止めて下さいなッ! さもないとどんどん調子乗りますわよその子ッ!」
「600年も生きてるんだろ、脳みそはずっと成長してなかったのかよ・・・・・・」

3年A組の『いいんちょ』こと雪広あやかがエヴァを指差したまま抗議の声を上げて近づいてくる。そして彼女の隣にはエヴァを見てもはや呆れてるというより諦めている長谷川千雨の姿が。
二人がやって来た瞬間、銀時はすぐに反論した。

「仕方ねえだろッ! コイツが耳元で泣かれるとうるさくてしょうがねえんだよッ!」
「いいんですッ! そんな子はほっといて好きなだけ泣かせばいいんですわッ! ずっと甘やかしてたら子供は成長しませんのよッ!」
「っておいッ! お前は私のお母さんかッ!」
「あなたみたいな可愛げのない子を私は銀さんと作った覚えはありませんわ、私が銀さんと作る子供はもっと素直でいい子の筈ですから」
「まだ作る事さえしてないのにそんな事言い切っていいのかよいいんちょ・・・・・・」

叫んでくる銀時に子育ての仕方を教えてエヴァには胸を張って自分の子供の事を喋るあやかに、千雨はボソリと小さな声で呟く。
すると聞こえていたあやかは彼女の方へ向いて

「千雨さん、他人事に考えては駄目ですわよ、あなただっていつ銀さんと子作りしてもおかしくないんですから」
「い、いや私はそんな予定は・・・・・・」
「子供作ろう千雨ちゃんッ! 銀さんと千雨ちゃんの子供ならきっと可愛いに決まってるからッ! 私が全力で保障するッ!」
「お前は何の前触れも無しに出て来るな朝倉ッ!」

少しだけ顔を赤くしながら首を横に振る千雨の後ろからガバァっと出てきてすぐに彼女に抱きつく朝倉和美。
そして千雨の頭にグリグリと頬ずり。

「子育ては私も手伝って上げるからさ~、あ、子供の名前はどうする? 私的には銀さんの『銀』の字と千雨ちゃんの『千』の字を取って、銀千代(ぎんちよ)って名前がいいと思うんだけどさ~? 千雨ちゃんはなんか候補ある?」
「何でそんな深く子供の名前まで考えてるんだよッ! まだ子供が生まれることも決まってないのに話進めんなぁッ!」
「新八君はいいと思うよねぇッ! 銀千代ッ!」
「は、はいッ! それは真に言い名だと思いまして候ッ!」
「あ、あいついたんだ、気付かなかった」

突然後ろに振り返って誰に叫んだかと思いきやそこには足をビシッと揃えて和美に向かって変な口調で叫び返す新八の姿。
和美はその神出鬼没の能力で気付かなかったが、新八は地味ゆえに気付かなかったのだ。

そんな事をやっている子供達を見て冷静さを取り戻した土方は腕を組んで銀時を睨みつける。

「おい万事屋、言っとくが江戸でも重婚罪は適用されるんだからな・・・・・・」
「重婚罪? くだらねえ、まずはそのふざけた法律をぶち殺す」
「出来るかバカ、グレートスペシャルバカ」

何言ってるんだコイツと言う風に土方は箱から取り出したタバコを口に咥えながらツッコむ。すると銀時は腰にエヴァを抱きつかせまま彼の方に振り返り

「法律じゃ俺を縛れねえんだよ国家の犬。結婚出来る相手は一人? はん、法律上はそうかもしれねえが俺の六法には書いてねえんだぜ」
「ってマジでお前この三人娘とそんな事する気なのかよ・・・・・・! チッ、まさかそこまで腐ってたとは・・・・・・」
「いいんちょや長谷川さん、エヴァさんまで・・・・・・・凄い」

土方が侮蔑の言葉を呟いてのどかが銀時のやる事に驚いていると。
沖田はそんな銀時にニヤリと笑みを浮かべる。

「さすが旦那だ、一気に三人を調教しちまうとはさすがに俺も出来ませんでしたぜ」
「コラッ! 逃げようとしてんじゃないわよメス豚2号ッ!」
「ふえ~~もう堪忍して~~~ッ!」

沖田の後ろでは彼が調教した柿崎美砂が首輪を付けたまま、メス豚2号こと月詠の首輪に付いている鎖をグイグイと引っ張っていた。

「俺はまだ二人しか出来てないのに、旦那は三人か。コイツは負けてらんねえな」
「人聞きの悪い事を言うな、俺は首輪プレイなんざゴメンだ」
「わ、私は別に・・・・・・」
「あやか、変な事考えるの止めなさい、銀さんからのお願い」

ドギマギしながら呟くあやかに銀時は彼女の顔を見ずに一言。

そんな危ない橋を渡る事もいとわない彼女を含めた三人を貰う予定の男を眺めながら、土方はフゥ~とタバコの煙を口から吐いてのどかの方へ目をやる。

「ああいう馬鹿共と違ってちゃんと俺は手順をふまえる。できちゃった婚とかねえからな」
「で、できちゃった婚ッ!? わ、わかってます・・・・・・・わかってますから・・・・・・」

とんでもない事を平気で言う土方にのどかは震えながらも何度も頷く。銀時のただれた恋愛などとは違い土方は一途の上に純愛だ。間違いなどするわけがない。

(でもなんで私なんかをこんなに十四郎さんは・・・・・・・)

のどかが一つの疑問を頭に浮かべ悩んでいると、そんな彼女と土方の元にまたもや一人の男女が

「だ~はっはッ! なんだトシッ! 夫婦で別れの言葉でも掛け合っているのかッ!? しばらく会えないだけなんだからそう固くなるなよッ!」
「これだから草食系の男は、抱きついてキスするとかそういう事も出来ないんですかあなたは」
「な、何言ってるの夕映ッ!」
「近藤さん・・・・・・あと最後までムカつく小娘・・・・・・」

二人の前に現れたのは声高々に笑う真撰組局長の近藤勲、そして土方が最も嫌いな少女、綾瀬夕映。
のどかは顔を赤らめ、土方は物凄く嫌そうな顔を浮かべた。

「近藤さん、ちゃかすのは結構だが一つ聞かせて欲しい。なんでアンタそのガキいつも連れてるんだ?」
「ギクッ! い、いやだなぁトシ、俺が元々子供に好かれやすいタイプだって知ってるだろ~」
「口でギクッ!って言ってる時点でメチャクチャ怪しいんだが?」
「違う違うッ! ギクッ!じゃなくて本当はザクッ!って言いたかったんだよッ!」
「なんでセリフの冒頭にモビルスーツが出て来るんだよ」

夕映との仲を土方が追及した瞬間、近藤の顔からさっきまでの笑みが消えて、急に汗をダラダラと流し始めて慌てて下手くそな言い訳をして誤魔化そうとするが。
どうも彼のそんな不審な挙動に土方はますます近藤を怪しむ様にジッと眺める。
だがしばらくして

「おうお前等ァ、もうすぐジャスタウェイD4Cを出すぞ。さっさと準備しやがれ」
「おおとっつぁんッ! ナイスタイミングッ!」
「は? 何がだよゴリラ?」

とっつぁんこと真撰組の創立者である松平片栗虎がやって来た途端近藤は話を流せるとガッツポーズ。当のとっつぁんは口をポカンとして首を傾げた。

「ま、ゴリラの戯言なんかどうでもいいとして・・・・・・・おい野郎共~、全員ここに集まれコノヤロー」

とりあえず近藤をスル―して、とっつぁんはその場に散らばっている真撰組隊士達に号令をかけてこちらに集合させる。
隊士達は迅速にとっつぁんの前に集まった。

「よ~し、おいトシ、ちょっくらのどかちゃんを貸せ」
「は? なんでコイツが必要なんだよ? このまま戦艦に入るんじゃねえのか?」
「その前にやらなきゃ行けねえ事があるだろ? いいから貸せ」
「いや意味わかんねえし・・・・・・まあいい、おい、ちょっととっつぁんの所に行ってやれ」
「あ、はい、わかりました・・・・・」

とっつぁんの言動に土方は不信感を募るも、上司の命令ならばと仕方なくのどかをとっつぁんの所に行けと指示、不安そうな表情で彼女はとっつぁんの隣に立った。
そこからの光景は今までに見た事のない景色・・・・・・・

「おいあれが副長の・・・・・・」
「なるほどなぁ、まだ小さいってのは聞いてたが・・・・・・」
(ちょ、ちょっと恐いかも・・・・・・)

武装警察・真撰組がチンピラ警察と呼ばれているのは伊達ではない。
のどかの目の前にいる隊士達はとても善良な警察官とは程遠く、恐ろしい形相でこちらを睨んで立っている。
もしかしたら土方と自分の関係を既に知っていてそれを快く思っていないのでは?
無理も無い、鬼の副長と呼ばれた土方の女がただのちっぽけな中学生だと聞いて不満と思わない方がおかしい。

(で、でも十四郎さんの仲間なんだからこんな所で逃げちゃダメ・・・・・・!)
「テメェ等耳の穴かっぽじってよ~く聞けッ!!」

彼女は恐れながらも必死に自分を奮い立たせてそこに直立不動で構えていると、とっつぁんは彼女の肩をポンと叩き。

「このガキはお前等の上司であるトシの嫁だッ! そして今度からお前等の姐さんだッ! わかったなら返事しろオラァッ!!」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!!! とっつぁん今なんつったッ!? もう一回言ってくれッ!」 

いきなりとんでもない発言を隊士達に叫んだとっつぁんに、のどかは顔を真っ赤にして驚き、のどかは慌ててとっつぁんに詰め寄る。
するととっつぁんはタバコをコートから取り出しながら冷静に。

「え? だからのどかちゃんがお前の嫁で、アイツ等にとってはのどかちゃんが姐さんになるって事だよ、二度も言わせんなよ、オジサンは同じ事を二度言うのは大嫌いなんだよ」
「ふざけんなッ! 俺とコイツはまだそこまで進んでねえッ!」 

本当はちゃんと結婚できる段階までステップが踏めたら隊士達に言おうとしていたのにこんなタイミングで言われると思っていなかった土方は激怒した様子でとっつぁんに歩み出る。

「勝手に変なこと隊士にほざきやがってッ! 考えてみろッ! 上司の俺の女がこんなガキだと知った途端奴等反対にするに決まって・・・・・・・!」

土方がとっつぁんにキレた状態で叫んでいたその時。
隊士達は同時にビシッと敬礼した。

「「「「「「「「「「了解しやしたッ!!!」」」」」」」」」」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「オイィィィィィィ!!! 何でお前等全員即決で認めてんだッ!」

何の異議も唱えずにすぐにのどかを姐さんと認める隊士達にのどかはまた叫んで土方も仰天した様子でツッコミを入れる。
すると隊士達の先頭にいた原田が嬉しそうに

「副長ッ! 俺達はアンタが選んだ女にとやかく言う資格なんかねえぜッ!」
「そうだそうだッ! しっかもめちゃくちゃカワイイしその子ッ!」
「そんな可愛い子が俺達の姐さんになってくれるんならこっちから喜んでついていくぜッ!」
「おめでとうございます副長ッ!」
「嫁さん泣かしたら切腹ですからね副長ッ!」
「お前等なぁ・・・・・・・」

次から次へと隊士達の温かい言葉を受け取り、土方は呆れた表情でため息を突く。

「おめでたい奴等だぜ本当に・・・・・・・」
「で、でも、嬉しいです。私の事認めてもらえて・・・・・・・」
「・・・・・・・まあな」

隣で隊士達を眺めながら顔をほころばせているのどかを見て土方もフッと笑みを浮かべた。
しかしそんな祝福ムードの中に空気を読めないあの片目少女が・・・・・・

「いやぁ、さすがに現段階で真撰組の姐さんと決めるのはどうかと思うんですが・・・・・・?」
「ん?」

不満げな声が聞こえたので土方はふとそちらに振り返る。そこにいたのはボロボロの姿で木の棒を杖代わりにして立っている桜咲刹那の姿が。
ちなみに彼女がボロボロになった理由は詠春の逆鱗に触れたせいである。

「だってのどかさんはまだ中学生ですよ? しかも土方さんと会ったのはほんの数か月前、決断が早過ぎると思うんですよ私。もうちょっとのどかさんも隊士の皆さんも冷静になって考えてみてくださいよ、か弱い女の子が屈強な男達を支えられる姐さんというポジションに立てるわけ・・・・・・ぬぐッ!」

嫌味ったらしくのどかが土方の正妻になる事に異議を唱えだす刹那。
だが彼女の長ったるいセリフは途中で止められる。
何時の間にか刹那の背後に沖田が回っており、彼女の頭を思いっきり拳でぶっ叩いたのだ。

「おいおいお~い、俺達の姐さんに向かってナメた口聞いてんじゃねえよ独眼女」
「お、沖田さん・・・・・・!」
「おいお前等」

元々疲れ果ててボロボロになっていた刹那は彼の一撃ですぐに倒れてダウン、そんな彼女を沖田は片手でヒョイと掴んで、隊士達の方へ向いて

「姐さん侮辱罪で粛清だ」
「え? ちょッ!」

いきなり隊士達の方に高くほおり投げられ刹那が驚いた時にはもう遅い。
「あぎッ!」と刹那が落ちたポイントは隊士達のド真ん中。さっきまでとは打って変わって恐ろしい形相で見下ろしてくる隊士達がズラリと彼女を取り囲んでいる。

そして

「オラァァァァァ!! 俺達の姐さんを虐めようとするとはいい度胸じゃねえかッ!」
「いやちが・・・・・・! あだッ」
「テメェ副長にコバンザメみてぇにくっついてた女だろッ! さては姐さんの場所を横取りするつもりだったなッ!」
「出来るわけねえだろッ! エセ独眼竜のクセにッ! 二度と姐さんに立てつけねえようにここでシバいてやるッ!」
「そ、そんな殺生な・・・・・・・! おぐッ!」

周りを取り囲んで隊士達のフルボッコが刹那を襲う。
彼女の叫び声やら悲鳴をのどかは震えながら聞いているが、後ろにいる沖田と夕映は澄ました表情でその光景を眺めていた。

「あわわわわ・・・・・・どうしよう刹那さんが・・・・・・」
「俺達真撰組の姐さん、俺は命令通りの事をしましたぜ、さすが土方さんの女だ、やる事が鬼だぜ」
「ええッ! 私そんな命令してませんッ!」
「さすがですのどか、これでわかったでしょう、あなたの命令ならあの人達はなんでも聞くと」
「だから私そんな命令してないよッ! 十四郎さんなんとかしてッ!」

沖田の狂言と夕映の恐ろしい発想にのどかに首を激しく横に振って否定した後、すぐに刹那を助ける為に土方に訴える。それに土方は新しいタバコを口に咥えながら応える

「わ~ってるよ、お前等、もういいからそいつをこっちによこせ」

めんどくさそうに土方が言うと、しばらくしてボロボロから更にズタボロになった刹那がポイッと土方の前にほおり投げられた。
体中に隊士達の無数の足跡が残っており、白目をむいてピクピクと体が痙攣している。

「コイツはもうちょっと勉強が必要だな・・・・・・隊士達とのコミュニケーションを取らねえと真撰組隊士としてやっていけるのはちと難しいからな」
「あが・・・・・・・あがが・・・・・・・」

呻き声みたいなのを上げた刹那を見下ろしながらそう呟いた後頭を掻き毟り、とっつぁんの方に目をやる。

「言っとくがとっつぁん、俺がコイツとそういうのになるのはずっと先だ、ていうかコイツまだ結婚出来る年じゃねえし」
「トシぃ、オジさんが正しいって言えばそれは正しいんだよ。ということで14歳でものどかちゃんはお前の嫁だ。で? 式はいつにする? オジさんすんごい楽しみなんだけど? 結婚式は全部オジさんがバックアップしてやるからな」
「アンタ本当に警察ッ!? 人のプランをハンマーでぶっ壊して突き進んでいくの止めてくんないッ!? 俺は俺でやるからハンマー返せッ!」
「おいおい、こういう役目は年寄りに任せてくれよ。やることねえんだよ、ヒマなんだよ、若者の恋話に首突っ込みたい年頃なんだよ~」
「結局アンタ面白半分で首突っ込みたいだけなんじゃねえかッ!」

自分の肩に手を回して猫撫で声で暴露するとっつぁんに土方は額に青筋を立てて叫ぶ。

結局彼は他人の恋愛話に参加したいだけなのだ、まあ真撰組の隊士達は彼にとっては息子同然なので、あくまで父親的な立場として参加したいのであろう。

「いいじゃねえか、のどかちゃんも奴等に姐さんとして認められたんだし、ねえのどかちゃん?」
「は、はい・・・・・・」
「猫撫で声でのどかに話しかけるな・・・・・・・」
「ほんじゃま、次行ってみるか」
「は?」

愛しい娘を見るかのようにのどかに喋りかけた後、とっつぁんは突然後ろに振り返る。
土方はわけがわからなそうに首を傾げるが、とっつぁんの視線の先には近藤の手を繋いで立っている夕映の姿が・・・・・・。

「ゆえっち~、ちょっとこっち来てくんねえかな~?」
「ふむ、遂に私の出番ですか、じゃあちょっと行って来るです」
「え? どういう事?」

困惑している近藤を置いて夕映は彼の手を離してとっつぁんの元へ。

「なるほど、こうやって改めてあの人の仲間達を見ると人相が悪いチンピラ集団ですね」
「あッ! あれってまさか局長の背中に張り付いてたガキじゃねえかッ!」
「はぁッ!? おいガキお呼びじゃねえんだよッ! 引っ込めッ!」

早速毒舌を吐く夕映に彼女の目の前にいる隊士達はブーイングの嵐。
するととっつぁんはそんな彼等を凄みのある形相で睨みつけて

「おいテメェ等黙って聞きやがれッ! この娘っ子を誰と心得ているんだコラッ!」
「は?」
「あのとっつぁん、何言おうとしてんの? なんか変な事言おうとしてない? すっごいヤバい事言おうとしてない?」

一喝するとっつぁんに土方は眉をひそめて近藤は額から汗を一滴流す。

そして
















「このゆえっちこそお前等の総大将、近藤勲の嫁ッ!!! つまりお前等にとってのどかちゃんと同じくこの娘っ子も姐さん、いや大姐さんになんだよッ!!!!」
「頭が高いですよあなた達、ひざまずきなさい」








































「「「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」」」」」」」」」」

長く長く時が止まった後、隊士達だけではなく周りにいた者全員が一斉に大声を上げる。
無理もない、何故ならこの仏頂面のツンとした女の子がまさか・・・・・・・

「とっつぁぁぁぁぁぁんッ!!! アンタ何言ってるのッ! 遂にボケちゃったッ!?」
「うう・・・・・・おじさんは人生最大級に嬉しいぞ近藤・・・・・・・まさかこんなにお前を好きでいてくれている女の子がいたなんて・・・・・・世の中って捨てたもんじゃねえんだな・・・・・・こんなゴリラだって幸せが掴めたんだもんな・・・・・・『あいのり』みたいな恋愛もあるって事だよコンチクショウ・・・・・・」
「ええッ!? とっつぁん泣いてんのッ!? ヤバいマジでボケたッ!」

パニック状態で近藤はとっつぁんに詰め寄るが、彼はハンカチで目を拭いながら号泣。
迫力満点のその泣き顔に近藤は思わず後ずさり。

「なんなんだコレッ! 全く話が掴めんぞッ! 夕映ちゃんッ! コレ一体どういう事ッ!?」
「どういう事も何も、こういう事ですよ“あなた”」

澄ました表情で夕映が今、間違いなく飛んでもない呼称で自分を呼んだのを聞いて近藤はその場に頭を抱えて崩れ落ちる。

「そ、そんなバナナァァァァァァァァ!!!」
「バナナじゃねえよッ! おいクソガキッ! なんで近藤さんにテメェみたいなガキが嫁になるんだッ! 冗談にも限度ってモンがあるだろうがッ!」
「ほほう、姐さんである私に対して随分と口の聞き方がなってないようですねぇトシ」
「オメェがトシって呼ぶんじゃねえよッ! どうせまた面白半分のつもりでとっつぁんにホラ吹いたたんだろうがなッ! この人はお前が考えてるよりずっと脳みそが単純に出来てるんだよッ!」 
「十四郎さん落ち着いて・・・・・・!」

夕映に向かってツッコミながら激昂する土方をのどかは慌てて止めに入る。
そして彼に向かって恐る恐る口を開いた。

「実は夕映って元々近藤さんの事が本当に好きだったみたいなんです、十四郎さんは知らなかったと思いますけど実は近藤さんは一度一人で麻帆良学園に・・・・・・・」
「は?」
「それでその時夕映は近藤さんとバッタリ出くわして・・・・・・・」
「ぶっちゃけ一目惚れに近いものがありましたあの時は」
「はぁッ!?」

たび重なるカミングアウトの連続、まさか正真正銘に彼女はこの近藤の事を・・・・・・・

「お前マジで言ってるのか・・・・・・・? 相手は近藤さんだぞ? 俺達真撰組の大将だぞ? わかってんのか?」
「わかってますよ」

険しい表情を浮かべる土方に夕映は全く動じずにさらっと

「けどそんな事全然構いません、私自身が選んだんです。私が誰を好きになろうと私の勝手、例えあなた達に反対されても私はこの想いを一生貫き通します」
「お前本気で近藤さんの事を・・・・・・」
「本気じゃないとこんな事チンピラの前で言うわけないでしょ、トシ」
「だからトシって呼ぶの止めろ・・・・・・・」

またもやあだ名で呼んでくる夕映に土方はタバコを口に咥え直しながら言葉を返す。
皮肉屋で毒舌家でのどか達以外の他人とのコミュニケーションが物凄く下手くそな彼女がここまで素直に想いを暴露してでも自分の所の大将に惚れているとは・・・・・・。

土方が少し思い詰めた表情をしていると、近藤の方は血気盛んな隊士達に猛抗議を受けていた。

「局長ッ! 何考えてんだアンタッ! なんであんなガキを嫁にッ! 俺達は絶対反対だぜッ!」
「そうだそうだッ! しっかもめちゃくちゃ態度悪いしこのガキッ! 俺達の事ぜってぇナメてるってあのツラッ!」
「こんなガキが俺達の姐さんになるんなら俺は喜んで真撰組を止めさせてもらいますからねッ!」
「ふざけんなロリコン局長ッ!」
「腹斬れ局長ッ!」
「おいお前等ぁッ! トシとのどかちゃんの時はあんなに祝ってたのに、何で俺と夕映ちゃんの時はそんな反抗意識むき出しッ!?」

夕映と自分、のどかと土方の扱いにここまで差が出るものなのかと驚きながら近藤が隊士達に叫ぶと、彼等はキッパリと

「副長と姐さんはいいんですよッ! 片ッぽは二枚目でもう片ッぽは特上級に可愛いしッ!」
「それに比べて局長なんかゴリラと仏頂面の生意気なガキじゃないッスかッ! 確かにあのガキもまあレベルは高いっちゃ高いと思いますけど、性格が酷過ぎるんですよッ! 俺ハゲって言われたんスからッ!!」
「おい上司に向かってゴリラとは何事だッ! 女子中学生達に散々ゴリラ呼ばわりされてたのにお前等にまでゴリラって言われたら泣きたくなっちゃうだろッ!」

隊士達にランクの違いを指摘されて近藤は逆ギレで怒鳴り返す。
別に本当に夕映を自分の妻にする事など考えていなかったのだがここまで言われるとつい。

そんな近藤の姿に、トラブルの元凶である夕映は優雅にボーっと眺めていた。

すると

「・・・・・・・おい」
「ん? なんですか? あなたから話しかけてくるとは珍しいですね、出来ればこれで最後にしてもらいたいですあなたから話しかけられるのは」

後ろから聞いた事のある声が聞こえたので夕映はすぐに振り返る。
そこには頬を引きつらせてプルプル震えている銀時が立っていた。

「いや俺もね、本当はお前何かと話したくねえんだわ、だけどささっきヤクザのおっさんがとんでもないこと言ってたのを耳に聞いちゃってさ・・・・・・」
 
己の耳がに入った言葉が真なのか確かめる為に、銀時は思い切って夕映に聞いてみる。

「なんかお前がゴリラの嫁になるだとかどうだとか・・・・・・」
「本当ですけどそれが?」
「うおぉぉぉぉぉぉぉいッ!! やっぱりマジなのかよッ! おいお前等このデコチビがゴリラの嫁とかになるってバカなことほざいてんだけどッ!?」
「えぇぇぇぇ!! 本当に夕映さんあのゴリゴリの実の能力者みたいな人とッ!?」

さらっと正直に言う夕映に銀時はビックリ仰天してすぐに後ろに振り返って叫ぶ。
あやかはすっときょんな声を上げたが、エヴァはそれを聞いて高笑い。

「フハハハハッ! バカか貴様はッ! 結婚という大事なイベントの相手をゴリラにするなど悪趣味にも程があるぞッ!」
「何処ぞの銀髪ダメ教師に惚れてる人よりはマシだと思いますが?」
「何をォォォォォォ!!」

バカにしてくるエヴァを一瞬で怒り心頭にさせる夕映。
そんな彼女をあやかの後ろで腕を組んで立っていた千雨は深いため息を突いた。

「まさかお前が男に惚れて、しかも相手があの声のバカでかいゴリラだとはな・・・・・・ていうか何者なんだよあのゴリラ・・・・・・」
「真撰組のトップ、近藤勲ですぅ」
「真撰組? あ~そう言えば確かにあの恰好はそうだな・・・・・・・あれがトップだなんて下の奴等は大変だな・・・・・・」

まだ隊士達と揉めている近藤を眺めながら千雨がボソッと呟く。
彼女は彼の一体何に惚れたんだろうか・・・・・・?
千雨がしかめっ面でそんな疑問に頭を悩ましていると、和美が慌ただしい様子で近づいて来た。

「千雨ちゃん大変ッ!」
「あ?」
「新八君がッ!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

和美がバッと指差した方向にはうつ伏せになって新八がゴロゴロと激しい動作で左へ右へと転がっていた。

「ウソだろオイィィィィィィィ!! なんで僕と同じ非モテキャラの近藤さんがァァァァァ! あんなのただのストーカーゴリラじゃんッ! ただの変態じゃんッ! なんで変態ゴリラががフラグ立てて僕だけ・・・・・・・! クソォォォォォォみんな死ねッ! 女の子にモテる野郎共はみんな死ねッ!」
「・・・・・・何アレ黒魔術の儀式でもやってんのか?」
「近藤さんの話を聞いた瞬間、呆然と空を眺めた後急にああなっちゃってさぁ。どうすればいいのかな?」
「知るかよそんなの」

人目も気にせずに転がりまわる新八に千雨は関わりたくなさそうに目を背け、苦笑する和美に冷たく一言。
例え同じ万事屋でも新八の事をあまり知らない千雨にとっては彼の事などどうでもいいのだ。

しかしその新八が突如何者かに思いっきり・・・・・・・

「邪魔よ童貞メガネッ!」
「誰が童貞・・・・・・おごぉッ!」

ショックでツッコミ役を放棄していた新八の腹に痛恨の蹴りが入り、そのまま彼は吹っ飛ばされてしまう。
蹴りを入れたのはのどかや夕映の友達である早乙女ハルナだ。

「夕映ッ! さっきヤクザのオッサンがとんでもないこと言ってたけどやっぱりあなたマジだったのッ!?」
「どうしてあなた達は私に対して疑り深いんでしょうか? 本当だって何回も言ってるでしょ、怒りますよ」
「それは日頃の行いとアンタの趣味の悪さのせいでしょうがッ!」

少々不機嫌になりつつある夕映をハルナはビシッと指差して叫ぶ。

「やめときなよ夕映ッ! 土方さんとのどかなら絵になるけどアンタとあのゴリラーマンじゃただのお笑い芸人だよッ!」
「やれやれ、どいつもこいつも私に反対意見ばっかですね・・・・・・」
「友人として当然ッ! でしょのどかッ!」
「え? 私?」

さっきからほとんどの人に反対意見を言われかなりウンザリしている夕映にハルナはすかさず土方の隣に立っているのどかの方へ目を向ける。
のどかは「う~ん」と人差し指を口に当てたまま考えた後、ポツリと一つの結論を述べた。

「私は別に反対じゃないけど・・・・・・近藤さんっていい人だし」
「のどか、やはりあなたは人を見る目があります、何処ぞのゴキブリメガネとは大違いです」
「コラァァァァァ!! アンタ等何言ってるのかわかってんのッ!? どんなに中身が綺麗でも見た目がゴリラ以外の何者でもないのよッ!?」
「もう俺の事をゴリラって呼ぶの止めてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うわぁッ! 急に出て来ないでゴリラッ!」

ゴリラこと近藤が話し合いで揉めている三人の中に飛び込んで夕映の後ろに回ると、その後すぐに彼を追いかけて隊士達が現れた。

「局長ッ! 俺達は絶対にそのガキを嫁に迎えるのに断固反対ですからねッ!」
「つうかアンタずっと片思いの女がいるじゃないッスかッ!」
「いや待てお前等ッ! 俺も色々と混乱してるからさッ! 話の経緯は全部まとめて江戸に戻ったら話すからそれまで待ってくれッ!」
「待たなくてもいいですよ、さっさと式上げましょう式」
「君は一番待ってッ! もう俺の想像を遥かに超えて行き過ぎだからッ!」

夕映の肩に手を置いてパニくりながらも近藤は必死に怒っている隊士達をなだめようとしながら夕映の口を手で押さえる。
コレ以上彼女に大胆発言されたら隊士達が黙っちゃいないのだ、いやもう既に黙っていないのだが。

しかし近藤は知らないのだ。
彼と夕映の結婚を一番快く思っていないのが誰なのかを・・・・・・

その人物は大勢の隊士達の中を掻きわけて一番前に出て来た。

サディスティックプリンス、沖田総悟だ。

「・・・・・・近藤さん」
「おおッ! 総悟ッ! お前ならわかってくれるよなッ! 俺と夕映ちゃんの事は誤解だってッ!」
「誤解じゃないです真実です、むぐっ」
「シャァァァァァラップッ!!」

また余計な事を言おうとする夕映の口を近藤は必死に抑える。
そんな光景を眺めながら沖田はフッと笑って見せた。

「何言ってるんですかぃ近藤さん、誤解だろうが真実だろうがどうでもいいでしょうよ、俺はもっと“シンプル”にこの混乱を鎮める方法を知ってるんですからねぇ」
「え? シンプル?」
「だから・・・・・・」

そう言うと沖田は自分の腰に差してある一本の刀を抜いた。
月の光で怪しく光る刀、そして沖田はすぐにその刀を構え夕映を睨みつけた。

「そのガキぶった斬れば万事解決ですぜ近藤さん・・・・・・!」
「総悟ォォォォォォォ!!!」
「前々から気に入らなかったからいつか殺そうと思ってたんだが・・・・・・どうやら殺す時が来たようだぜ・・・・・・」
「総悟ストップッ! その解決方法は一番ダメだッ! ようやく敵を全員やっつけてスッキリして江戸に帰れるのにここでこんな小さな少女を殺めるのはマズイってッ!」
「近藤さん、俺達の敵は一人残ってるじゃないですかぃ」

両腕で夕映を掲げ上げながら必死に止めようとする近藤だが、沖田は全く聞いちゃいない。
目を鋭く光らせ、笑みを浮かべて刀の鞘を強く握る。

「アンタが今両手で持っているモンこそ・・・・・・・俺達真撰組の敵だァァァァァァ!!」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

刀を振りあげ襲いかかって来た沖田に近藤は慌ててまわれ右して夕映を両手に持ったまま逃げた。
すると沖田だけではなく他の隊士達まで追って来る。

「局長まだこっちの話が済んでないんだけどッ!」
「そのガキを嫁にするとか絶対に考えないで下さいよねッ!」
「俺等のどかちゃんなら喜んで姐さんって呼びますがそのガキだけは絶対に駄目ッスよッ! だって俺の事ハゲって呼んだんスからッ!」
「お前そんなにハゲ気にしてたっけ原田ッ!?」

沖田や原田を始め追ってくる隊士達から近藤は必死に夕映を脇に抱えて逃げ回る。
夕映は動きもせずに仏頂面で素直に彼に抱きかかえられていた。
そして隊士達の後ろにはとっつぁんが額に青筋を立てて叫びながら追走している。

「おいテメェ等ッ! 上司に嫁が出来たんだから祝いの言葉一つぐらい送りやがれッ! おじさんが社交辞令のマナーをその身に直接教えてやろうかぁッ!」

夕映を抱きかかえて逃げる近藤。
それを追いかけるは沖田率いる真撰組隊士。
拳銃片手に隊士達を追いかけているとっつぁん。

周りの人たちはそれをただ呆然と眺めるのみであった。
土方とのどかもその一人で、土方はタバコを咥えたまま難しい表情を浮かべ、のどかは近藤に抱きかかえられて夕映が沖田に追われているのを心配そうに見つめている。

「・・・・・・こいつは真撰組の今後に関わる事件だぜ・・・・・・・」
「あ、あの十四郎さん・・・・・・?」
「あん?」

土方がぼやいているとのどかが不安そうに話しかけて来た。

「夕映が近藤さんと結婚とかそういうのになる事は・・・・・・十四郎さんはどう思ってるんですか?」
「決まってんだろ死ぬほどイヤだ、あのガキが姐さんになるとか想像もしたくねえ」
「やっぱり・・・・・・・」

煙を吐き散らしながらキッパリと言う土方にのどかはガックリ肩を下ろす。
すると土方はそんな彼女にボソッと話を続けた。

「だが結局は全て近藤さんが決める事だ、俺はそれがどうなろうとあの人についていく」
「え? じゃあ夕映が近藤さんの奥さんになっても・・・・・・」
「・・・・・・あの人がそうするなら腹をくくるさ、隊士達も俺がなんとかする」
「本当ですかッ!? よかったぁ・・・・・・・」

一応土方は夕映が本気で近藤を慕っているのは理解しているので、もし近藤がそう選ぶのであれば夕映の嫁入りを認めると言ってくれた。
のどかはそれに安堵と嬉しさが込もった声を上げる。

だが土方は彼女に聞こえないようそっぽを向いて小さく呟いた。


「だが総悟は絶対に無理だ・・・・・・」

タバコを携帯灰皿にしまいながら土方はやれやれと首を横に振る。

「この問題は俺でも一筋縄じゃいかねえな・・・・・・」

数々の課題を持ち抱えたまま

真撰組は故郷である江戸へと銀時達と共に帰還する




間もなく出発、そして別れの時だ。







[7093] 第七十八訓 さよなら銀八先生
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/07/04 00:20

ここはかつて江戸と呼ばれ多くの人々で活気にあふれていた大都市であった。
しかし今は敷地全てが砂漠に覆われ、とても人が住める環境ではない、一日に何度も起こる砂嵐、砂漠の奥底に潜むは人を食らう謎の生命体。一滴の水分さえ乾かそうとするかの如くさんさんと照らし続ける太陽。

とある出来事でこの星はもはや人の住める星ではなくなってしまったのだ。
今ここにいる者は江戸を守ろうとして最後まで戦ったほんの一握りの集団のみ。

真撰組、かつては人々にそう呼ばれていた幕府を護る武装警察である。

砂漠で荒れ果てたこの地で
戦いに負けたことを認められない愚かな男達は
この身果てるまで抗うことを誓ったのであった。

だがそれもいよいよ限界へと迫って来た。

「わりぃな近藤さん、こんな粗末は墓でよ・・・・・・もうこの辺には墓標になるもんなんて何処にもねえんだ」

砂漠のド真ん中にポツンと置いてある拠点場こそ真撰組最後の砦。
一帯にはズラリと散っていった隊士達の墓と思われるボロっちい板が刺さってある。
その中の一つの前で小汚いローブで身を包み静かに両手を合わせて祈る者は真撰組の頭脳と呼ばれていた、土方十四郎だ。

そして彼の前にある墓は彼が最期までつき従った大将、近藤勲の墓。

墓標の代わりにそこには一本の腐ったバナナが突き刺さっていた。

「俺達の明かりを何時も照らしてくれていたアンタが死んじまった今、俺達はもう何処に進めばいいのかわかんねえ・・・・・・どうやらアンタが最期まで護りたかったモンを俺は護れそうにない・・・・・・」
「へ~随分とふぬけた事言うようになったじゃないですか土方さん」
「何?」

急に後ろから自分を嘲笑する声が聞こえたので土方はパッと振り返った。
そこに立っていたのは真撰組一番隊隊長、沖田総悟。土方と同じく砂嵐対策として全身を覆う事が出来るローブを制服の上から着用している。
彼も土方同様数少ない生存者の一人だ。

「まさかかつて鬼の副長と呼ばれていたアンタが随分と弱気になっちゃいましたね、これじゃああの世へ先に逝っちまった近藤さんに顔向け出来ませんぜ?」
「・・・・・・・そうかもしれねえな」
「あり? もう噛みつく気も起きなくなっちまいやしたかい? タバコ吸えなくなっちまったからニコチン切れでブチキレると思ったのに」
「タバコなんて関係ねえよ、俺はもう疲れた。さっさと近藤さんの所に逝きてえとさえ思ってる・・・・・・」
「あらら、これじゃあもう副長の資格なんてありませんね土方さん」
「欲しけりゃお前にやる、俺にはもう必要ねえ」
「へ、近藤さんが死んじまった今、もう副長の座なんて欲しくもなんともないんですよこっちは。ん?」

現実に絶望してしまった土方はもはや死人同然。沖田はそんな彼にも自分らしい皮肉言葉で話しかけていると、突然彼等の足元でゴゴゴゴゴゴと地鳴りが生じる。

「こいつは・・・・・・・どうやら『奴』が来たようですぜ土方さん。よかったじゃないですかぃこれでもう俺等はあの世へ直行だ」
「チッ・・・・・・・」
「奴だァァァァァァァ!!! 奴が来たぞォォォォォォォ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

沖田と土方が感じた様に他に生き残った数人の隊士達も次第に大きくなる地鳴りに気付き、小さなベースキャンプから全員が出て来る。
隊士達が手に持つ刀はもはや刃こぼれで原形をとどめておらずとても使える状態ではない。

「近藤さん、どうやら俺達は江戸を救うなんて真似は出来ないらしい・・・・・・俺達はただの脇役、ヒーローなんかじゃねえんだ」
「土方さんッ! 来ますぜッ!」

隊士達が陣形を作っている間土方があの世にいる近藤に向かって呟いていると、沖田が目の前を指差して叫ぶ。

どんどん大きくなって行く地鳴りと共に、目の前から激しく砂をまき散らせ。
『奴』が現れたのだ。

「ウオォォォォォォォ!! オ前ノ母チャン××ダァァァァァァァ!!!」
「・・・・・・随分と立派になりましたね新八君も」
「自我を失いもはや俺達の事さえ忘れてやがる・・・・・・」

数十メートルはあるであろう身長を誇る巨大な志村新八が上半身だけ出して砂漠の上から現れた
白目をむいた状態で天に向かって咆哮を上げた後、すぐにこちらを見下ろして両手を振り上げる

「チョメチョメェェェェェェェ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

巨大化した新八が両手を振り下ろすとその場一帯に大量の砂埃が。
隊士の一人がその砂埃に飲まれ消えてしまった。
土方は咄嗟に残った隊士達に伝令を伝える

「全員後方に下がれッ! 今の俺たちじゃコイツに勝てないッ!」
「うわ~もう俺達おしまいだ~ッ! 俺達は全員あのメガネに殺されるんだ~ッ!」
「切腹しようにもこの刀じゃ・・・・・・クソ~ッ! せめて侍として死にたかった~ッ!」
「ダメですぜ土方さん、もう隊士の奴等はみんな魂が死んでるんでさぁ」
「く・・・・・・もうこれで終わりなのか」

目の前で大口を上げて雄叫びを上げている巨大新八を前にして隊士達はもうこの現状をどうする事も出来ないのに気付いたのだ。全員その場に崩れ落ちて泣き叫び、もはや生きる気力さえ失っている。
だが土方も沖田もわかっているのだ。

もう俺達に光は無いと・・・・・・・

「ガァァァァァァァ!! お通チャァァァァァァン!!!」
「テメェと一緒に死ぬ事になるとはな・・・・・・・最悪だ・・・・・・・」
「俺だってアンタと一緒に死ぬなんてゴメンでしたぜ」

右拳を振り上げこちらに鉄槌を振り下ろそうとする新八に、もはや戦機も失せた土方は沖田と一緒にフッと笑った。

これで死んでいった隊士達に会いに行ける。

「チョメチョメェェェェェェェ!!!」

新八の鉄槌が泣き叫ぶ隊士達を無視してこちらに突っ込んで来た、土方と沖田は最後の抵抗をせんと同時に刀を抜く。

だがその時であった。

二人の前に突如ある人物が新八の拳の前に立ちはだかったのである。

「は・・・・・・・!」
「副長、沖田隊長、お久しぶりです」

現れた人物に土方が驚いた瞬間、その男は突っ込んで来た拳をある物を使って受け止める。

それは彼が常に持っていたミントン・・・・・・・

「俺の“相棒”はありとあらゆる異能の力を打ち消す能力。つまり新八君、君のやわな拳など俺から見れば赤子同然さ」
「ウオォォォォォォォ!!!」
「お前は・・・・・・山崎ッ!」
「こいつは驚いた、てっきり数年前から姿を見せねえから逃げ出しちまったのかどっかで野垂れ死にしたと思ってたぜぃ」

目の前に立ち新八の拳をミントンだけで止めているのはなんとあの真撰組の密偵、山崎退。
土方と沖田はまるで幽霊を見ているかのように彼をジロジロと眺めていると、山崎は余裕気に新八の拳を止めながら彼等の方に振り返る。

「心配かけてすみませんでした、単刀直入にいますが実は俺、ある異世界へ飛ばされたんです」
「異世界だ? 異世界ってまさか・・・・・・」
「いえ、昔俺達が行っていたあの世界じゃないんです、別の文明を持った世界がもう一つあったんですよ副長」
「なん・・・・・・だと?」

山崎の話を聞いて土方は唖然とする、まさかここと自分の知っている異世界ではなくもう一つ異世界が存在していたとは・・・・・・・。
山崎は更に話を続ける

「俺はそこで数年間あらゆる経験と力を身につけました、そして救いを求める者の為に、俺はこの世界へ戻って来たんです」
「何故こんな地獄へわざわざ戻ってくる必要があったんだ・・・・・・もうここは江戸なんかじゃねえ、ただの地獄なんだ、俺達はただ死んでいくしか道はもうねえんだ」
「バッキャローッ!」
「!!」

突然大声でこちらに怒鳴り声を上げた山崎に弱気になっていた土方は目を見開く。
そして気付いた、山崎はもう数年前より別人の様なオーラを放っている事に

「こんな展開を、何のためにここまで歯を食いしばってきたんだッ!? アンタ達のその手でたった一つの江戸を救って見せるって誓ったじゃねえのかよッ!? アンタ達だって主人公の方がいいだろッ!? 脇役なんかで満足してんじゃねえ、命を懸けてたった一つの街を救いたいんじゃないのかよッ!? だったら、それは全然終わってねえ、始まってすらいねぇ・・・・・・ちょっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよッ! 手を伸ばせば届くんだッ! いい加減に始めようぜ真撰組ッ!」
「山崎・・・・・・・」
「土方さん、どうやら俺達は山崎のおかげで忘れていたモンを思い出しちまったようですぜ」
「・・・・・・そうだな、まるで目が醒めた様な気分だ」

山崎のセリフに感化したのは沖田はフッと笑って土方の肩に手を置く。
土方もそれに笑い返し、抜いた刀を目の前にいる巨大新八に突き出した。

「テメェ等何腑抜けてやがるッ! 山崎の言う通りだッ! 例え手に持つ刀が腐り果てようとも、俺達はまだ腐っちゃいけねえッ! 俺達は真撰組最期の剣だッ! こんな所でくたばちまったら死んでいった仲間に顔向けできねえぞッ!」
「副長ぉ・・・・・・・」
「そうだ・・・・・・真撰組の俺達がこんな不人気メガネに・・・・・・!」
「負けちゃいけねえんだッ!」

土方の熱い一言に隊士達はすぐにそこから起き上がる。彼等の目はもう死んでいない。
誠の侍の目だ。
山崎はそれを見てフッと笑った後、さっきから執拗に拳を振ってくる巨大新八の方に顔を戻す。

「しばらく見ない内に変わってしまった様だね新八君、これではもう君を救う事は出来ない、だから・・・・・・」
「ヌワァァァァァァ!!!」

思いっきり山崎がミントンを払った瞬間、新八は強風でバランスを崩し後ろにのけ反る。

山崎はその隙に両手を合わせ、『気』を溜める。

「や~ま~ざ~き~」
「総悟ッ! 山崎の周りに巨大な衝撃波が出てるぞッ!」
「どうやら山崎は新八君をひと思いに殺る気ですぜこりゃあ」

“あのポーズ”で何かを放とうとする山崎に土方と沖田が戦慄を覚えていると。

山崎は目をカッと開けた

「波ァァァァァァァ!!!」
「ウワァァァァァァ!!」

山崎の両手を合わせた場所から出て来た青色の破壊光線は巨大新八を砂漠から出して、そのまま新八の腹に入りながら彼と共に遥か遠くに飛んで行ってしまった。

新八は瞬く間にキュピーンと小さな星になる。

「さよなら、俺と同じ地味キャラだった新八君、君の事は忘れないよ・・・・・・」
「礼を言うぞ山崎、お前がいなかったら俺達はきっとあいつに殺されていた」
「やるじゃねえか山崎、お前こそ真撰組のエースオブエースかもしれねえな」
「いえ、俺は俺が出来る事をやったまでですよ」

星になった新八に思いを馳せていると土方と沖田が笑みを浮かべて称賛の声を上げてくれたが、山崎はまだ不安そうな表情を浮かべている。

「それに敵はまだまだいるんですよね?」
「そうだ、全ての黒幕である悪の大魔王、万事屋の銀髪天然パーマメントを倒さねえと俺達の江戸は救えねえ」
「旦那だけじゃねえですぜ、旦那の下には悪魔四天王と呼ばれる最強の四人がいるって話でさぁ、あらゆる空気をぶち壊す四天王のトップ『女帝千鶴』、千のホビーアイテムを巧みに操る鬼神『サウザンドホビーキング新田』、旦那に何よりも服従するメス豚『ドMスナイパー龍宮』、そして何故か強引に旦那に四天王にされたザコ『アホのまき絵』」

江戸を壊滅させた真の黒幕、坂田銀時、そして彼の配下に置かれた悪魔四天王。彼等を倒さなければ地球は死の星となってしまう。
かつては色々な事で仲良くしたり喧嘩していたりしていた男に山崎はいたたまれない気持ちで一杯だった。

「万事屋の旦那に悪魔四天王か・・・・・・・俺達はまだまだ戦わなきゃいけない様ですね」
「ああ、だがお前がいてくれれば俺達はもう何も恐かねえ、例え相手があの野郎でも」
「行こうぜ山崎、江戸を救う為に俺達も協力させてもらうぜぃ」
「副長に沖田隊長・・・・・・ありがとうございますッ!」

すっかり生きる希望を失っていた土方と沖田にとって今の山崎は太陽の様に美しく輝いて見えた。
他の隊士達もまた山崎に雄叫びを上げる。

「ザキさんバンザ~イッ!!!」
「アンタは真撰組の星だぁぁぁぁぁぁ!!!」
「YAッ! MAッ!! ZAッ!!! KIッ!!!!」
「ヤマザキ一番ッ!」
「局長はお前だ山崎ィィィィィィィ!!!」

次々と山崎に向かって盛大な歓声を上げる隊士達(ついでに近藤が墓場から涙を流しながら全裸で復活した)。
山崎は彼等の思いを背に受けキッと空を見上げる。

「待っていろ旦那、真撰組も江戸も、この星も全部俺が護ってやる・・・・・・!」

今ここに、地球に残されし全人類の救世主が戦いの舞台に舞い降りたのだ。
















新作品
「とある山崎の世界再生」



近日、連載開始



















































「むにゃむにゃ・・・・・・俺が真撰組の星だ~、へっへっへ・・・・・・」
「オイ、ナンカアホ面デニヤニヤ笑イナガラ寝言イッテルゾコイツ、キモチワリー」
「姉さん、寝ている人は大体みんなそうなるんです、マスターや銀時様も時々そういう状態になります」

場所変わってここは“現実世界”。近衛家の屋敷の中にある一つの個室。
山崎は今、布団の中で寝言を言いながら幸せそうによだれを垂らして寝ている。
彼の枕元にはエヴァ従者であるちっちゃな性悪人形チャチャゼロが。
そして布団の横で寝ている山崎を起こさない為に微動だにせずに正座している絡操茶々丸がいる。

時刻は夜、そして今まさに山崎以外の真撰組は屋敷の外で江戸へ帰る準備をしている。
本来なら密偵としてこの世界に来た山崎もようやく江戸に帰れるチャンスなのだが・・・・・・

「オイ、コイツ起コサナクテイイノカ?」
「ダメです、人間である山崎さんには今回の事件が原因でどっと疲れが溜まっている筈。ここは朝までグッスリと寝かしてあげるべきです」
「ソウカ~、ジャア起コサナクテイイカ、外ガナンカ慌タダシイケドヨ」

眠る山崎の寝顔をのぞき込みながら茶々丸は丁寧にチャチャゼロに説明してあげる。
彼も色々あったのだ、今はとにかく寝かせてあげよう。
それが茶々丸なりの彼に対する思いやりであった。

そして今、ここで一つの結論が打ち出される。


















山崎、異世界残留決定

「俺に続け野郎共~・・・・・・・へへへ・・・・・・・」









































第七十八訓 さよなら銀八先生




















「テメェ等早く入りやがれ~、もう出発すっぞ~」

とっつぁんは戦艦の中へ入りながら帰還メンバーに指示を出す。
山崎をすっかり忘れている真撰組はというと、巨大異世界転移装置のジャスタウェイD4Cに次々と乗って既に帰る為に出発開始の準備をしていた。
次々と戦艦の中へと入っていく真撰組隊士達。
土方も戦艦に乗り込もうとするがその前に最後にのどかの方へ振り返る。

「夏休みになったら今度はお前が江戸に遊びに来い。そん時は俺が色々と案内してやる」
「ありがとうございます、あの・・・・・・十四郎さんもまた遊びに来て下さいね・・・・・・?」
「ああ、達者でな。あと刹那、片目になっちまったのは残念だったがお前はまだ戦える、気を落とさずまっすぐに進め」
「私は別に落ち込みませんから大丈夫です・・・・・・・・それより土方さんッ! 私の事忘れないで下さいねッ! のどかさんの事ばっかり考えてッ!」
「お前みたいなキャラの濃い奴忘れられるわけねえだろうが」

のどかの隣にいた刹那とも言葉を交えると土方は戦艦の中へと入っていった。
それに入れ換わるように近藤がにゅっと戦艦の入り口から顔だけ出す。

「じゃ、じゃあね夕映ちゃんッ! ちゃんと一日三食食べて風邪引かない様にするんだぞッ!」
「バイバイで~す」

必死なツラをして叫んで来た近藤に夕映は無表情で手を振って送ってやると、近藤の背後に沖田が迫る。

「近藤さん、こいつの問題は後でゆっくりと屯所で聞かせてもらいやすからね」
「あ、ああ・・・・・・ぬおわぁッ!」

明らかに不機嫌そうな様子で沖田が言葉を放った直後、近藤は瞬く間に戦艦の奥へ引きずり込まれていった。
恐らく彼を夕映に会いに行かせない様に引っ張っていた隊士達の仕業であろう。
最後に沖田は戦艦の入り口から顔を出して仏頂面で立っている夕映を鋭く睨みつけながら

「テメェは俺が直々に殺してやっから覚悟しとけ・・・・・・」

ドスの効いた声でそう言うと沖田はさっと戦艦の奥へ行ってしまった。

「夕映、アンタどうするのよ・・・・・・なんか知らないけどあの人凄いアンタに殺気飛ばしてたわよ?」
「障害は乗り越えるのみです」
「乗り越えた先にあのゴリラ・・・・・・・ハァ~アンタ本当にバカね、さすがバカブラックよ」

あの沖田にターゲットにされてもめげない様子の夕映に隣にいたハルナは呆れながらため息を突く。
どうやら彼女は自ら茨の道に頭から突っ込むようだ・・・・・・

ハルナがそんな事考えている頃、真撰組全員(山崎除く)が収入された戦艦に、今度は異世界漂流者の一人であった坂本と、その坂本を迎えに来た陸奥が一緒に中へと入っていった。

「アハハハハッ! そんじゃあのネカネさんッ! わしゃあまた会いに来るけッ! そん時はまたよろしくのッ!」
「坂本さんッ! 今度は空から墜落してやってくるとか止めなさいよッ!」
「善処するけ~ッ! じゃあの~ッ! もふッ!」
「ネギッ!」

互いに笑みを浮かべながら最期の挨拶を交える坂本とネカネを見て、ネギはその辺で拾った石を思いっきり坂本にぶつける。
慌ててネカネが叫ぶもネギは笑顔で坂本に

「さっさと消えて下さい黒モジャ」
「ネギッ! 違うのよ本当にッ! あの人は皆さんと同じ立派な侍なのよッ!」
「あ、別に侍だろうがバカだろうが黒モジャだろうが関係ないよ、ただネカネお姉ちゃんにやたらとイチャつくから殺してやろうと思ってるだけ」
「ネギィィィィィィ!! あなたどうしてそんなに変わっちゃったのッ!? お姉ちゃんすっごい恐いわッ! あなたのその眩しい笑顔が更に恐いわッ!」

必死に坂本を庇おうとするネカネの言葉も聞かずにネギは爽やか笑顔で坂本をぶっ殺す発言。
ネカネは彼の両肩を持って激しく揺さぶり純粋で可愛かったあの時の少年になってくれるよう懇願する。
そんな事をしている彼女を、陸奥は気絶している坂本を引きずりながら頬をボリボリと掻いた

「お互い苦労する身じゃの・・・・・・幸運を祈る」

坂本を引きずりながら陸奥は戦艦の中へと入っていった。

そして次はネギの両親であるナギとアリカ

「しばしの別れじゃネギ、たまにそっちに顔出しに行くからの、元気でな」
「母さんも元気で、また春雨に入るとかバカな真似は止めてね?」
「う、うむ・・・・・・」

軽い毒を混ぜた別れの言葉にアリカは顔をこわばらせながらも縦に頷く。
するとアリカの隣にいたナギは自分を指差してネギに向かって

「おい、愛する息子よ、俺にはなんもなしか?」
「え? 僕が父さんになんか言う事なんてあったっけ?」
「・・・・・・泣いていいか?」
「え~と、母さんを生活苦で困らせるな、ぐらいかな? 父さんに言う事は」
「自身は無いけど頑張りますッ!」
「なんでネギに対して敬語つかっとるんじゃお主は・・・・・・」

笑いかけて来るネギにナギは力強く叫ぶのにアリカは冷ややかにツッコむと、ナギは突然自分が手に持っている杖をネギの方に見せる。

「本当にコレ俺が持って行っていいのか? この杖はお前の為にわざわざあのハゲに託して・・・・・・」
「大丈夫だよ、僕はその杖に十分力を貰ったし、それに今後は杖無しでの戦い方を学びたいんだ」
「そうかぁ・・・・・・息子に俺の自慢の杖を拒絶された感じでなんかヘコむなぁ・・・・・・」

自分の杖を見つめながらナギはしょぼんとしていると、アリカはネギに近づいて強く抱きしめる。

「わらわ達は家族じゃ、どんなに遠くへ離れていてもずっと一緒。ネギ、強く生きるんじゃぞ・・・・・・・」
「うん」

アリカの胸に顔をうずめながらネギが答えると、アリカは恐る恐る口を開いた

「・・・・・・だからお主を愛する母の望みを聞いてくれるかの・・・・・・・? 出来れば神威の事は忘れて欲しいじゃが・・・・・・」
「ハハハハ、無理」
「うう・・・・・・」

彼そっくりな笑顔で即答するネギにアリカは苦い表情を浮かべた。
やはりネギと神威の関係に口出しするのは家族である自分達でも無理な様だ。

「わらわがしっかりしてればこんな事には・・・・・・・阿伏兎ッ! コレ以上ネギがあの男みたいにならない様にキッチリ見張っとくんじゃぞッ!」
「へいへい、なんで春雨辞めたお前にそんな指図されなきゃいけねえんだか・・・・・・・」
「何か言ったかッ!」
「言ってませんよ元春雨幹部のアリカ姫」

ネギの後ろに立っていた彼の付き人的な存在である阿伏兎にアリカは声を上げて命令する。
小指で耳をほじりながら阿伏兎はめんどくさそうに返事をする所からして不満げな様子だ。
アリカはそれに少々気に障ったが、こちらに近づいて来た一人の男のせいでそっちに注意を向ける事になる。

「アリカ殿、俺の愛はいつまでもお主に・・・・・・・ラブ・イズ・フォ~エバ~」
「人が話している時にまた出てきおって・・・・・・あ~寄るな気色悪い、この男を見るなネギ、目に毒じゃ」
「母さん相手に何してるんですか桂さん・・・・・・・」

居残り組である桂、彼が自分の母親に向かって最後のアタックを仕掛けているのを見てネギはアリカの胸の中でドン引きした表情を浮かべるが、桂は彼を見下ろして

「少年よ、これからは俺の事をお義父さんと呼ぶがいい」
「マジ死んでください」
「ハッハッハ、親子そろってツンデレか」
「オメーは一度ウィキペディアでツンデレが何なのか調べてこいッ!」
「ぐはッ!」

冷たくネギにあしらわれても全くへこむ様子も見せずに笑い声を上げる桂に顔面にナギの飛び蹴りが入る。
桂はズザーッと地面を滑りながら倒れた。

「俺の前でよく出来るなそんな事ッ! なんなんだよこの長髪はコンチクショウッ! もうさっさと帰ろうぜッ!」
「そうじゃな・・・・・・・ネギ、また今度会いに行くからな」
「うん、二人共あっちでの生活頑張ってね」

倒れている桂に向かって悪態を突いた後、ナギはアリカの手を取って戦艦へと向かう。
アリカがこちらに手を振りながら別れの言葉を言うとネギも手を振って二人を見送る。

二人は真撰組と坂本達のいる戦艦の中へ入っていった。

程なくして今度は初代万事屋の新八と神楽が現れる。
二代目万事屋のあやかと千雨、エヴァ、和美も見送りにやってきた

「オラオラどけ小便臭いガキ共ッ! ヒロインのお通りだゴラァッ!」
「神楽ちゃん、もうお別れなんだから好感度下げる発言は止めようよ・・・・・・」

日傘を肩に掛けながらズンズンと歩いて行く神楽を新八が後ろから疎めていると、見送りに来たあやかがジト目でフンと鼻を鳴らす。

「チャイナさんはいつヒロインになったんですか?」
「ああん? 自分がヒロインだと思ってんのか金髪デカ乳がぁ?」

更に喧嘩腰になって顔を近づけて来る神楽にあやかはやれやれと頭を横に振る。

「あなたっていつも私だけに噛みつきますわね・・・・・・・千雨さんとエヴァさんはどうなんですか?」
「こんなん敵じゃないネ、特に金髪ミニ乳」

両肩をすくめてせせら笑いを浮かべた神楽に、エヴァは顔をムッとさせる。

「おい貴様、長谷川千雨は別に金髪でもないし貧乳でもないぞ」
「いやお前だよ、金髪ミニ乳ってどう考えてもお前しかいないだろ」
「何ィィィィィィ!! おい小娘ッ! この私をそんなあだ名で呼ぶとは死ぬ覚悟は出来ているのかッ!?」

サラッとツッコミを入れて来た千雨の話を聞いてエヴァはやっと気付いて激怒。
だが神楽はそんな彼女に見下して目を向ける。

「お前のその粗末なヒロインステータスじゃこの私の足元にも及ばないネ」
「ふざけるなッ! 私の方が遥かに貴様より上だッ! 雪広あやかと長谷川千雨さえ私には遠く及ばないのだぞッ!」
「いや私はエヴァちゃんより千雨ちゃんの方がヒロインだと思う絶対ッ!」
「お前の意見は聞いとらんわ朝倉和美ッ!」

二人の会話に全く関係のない和美がしゃあしゃあと出て来た事にエヴァが即座に彼女に向かって叫んでいると、ネギはふとある男が何処にもいない事に気が付いた。
木乃香から聞いた所によると彼も江戸に帰るらしいのだが・・・・・・・

「神楽さん、銀さんは何処行ったんですか? もしかしてもうあの中に?」
「銀ちゃんはちょっと前にウンコ行って来るとかいってどっか行っちゃったアル」
「ハァ~こんな時にもあの人は・・・・・・」

相変わらずのマイペース振りにネギが呆れてため息を突いていると、タイミング良く銀時がいつもの死んだ魚の様な目でコツコツと歩いて来た。

「あ~すっきりした、帰る前にここで食ったモン全部出しておかないとな」
「いやそういう決まりなんてねえから・・・・・・・」

やって来た早々けだるそうにそう言う銀時に千雨はブスっとした表情でツッコむ。
もうすっかりこの掛け合いには慣れた。

「・・・・・・やっぱ帰んのかお前?」
「あっちでかなり家賃滞納してるからヤベェんだよ、ババァに何言われるかわかったもんじゃねえし」
「・・・・・・」
「落ち着いたらすぐ戻ってくるからよ」
「・・・・・・きっとだからな・・・・・・」

帰ると聞いてしゅんとする千雨に銀時が髪を掻き毟りながらポツリと呟くと、彼女はそれにわかったように頷く。すると今度は銀時にエヴァが飛びかかる。

「銀時ッ! 私も連れてけッ!」
「うおッ!」 
「エヴァさんッ! なんて図々しいッ! そしてはしたないですわッ!」

慣れた手つきで銀時の腰に両手でしがみついて抱きついてくるエヴァ。そんな彼女にあやかが非難の声を上げるがエヴァは無視して銀時の顔へ見上げる。

「このチャンスを逃すかッ! 連れてけッ!」
「出来るわけねえだろッ! お前も一応学生なんだからッ!」
「知るかッ! 私が何年あそこに留年していると思っているのだッ! 雪広あやかや長谷川千雨を置いて私達の愛の巣で楽しもうではないかッ!」
「あの~すみません、その愛の巣には僕や神楽ちゃんもいるんですけど?」

銀時にしがみついて好き勝手述べるエヴァに新八が遠慮がちに会話に入ると、彼女は表情をキッとさせて

「いらんわ貴様らなど帰れッ! ていうかお前誰だッ!」
「いや新八ですけど・・・・・・アンタ達よりも銀さんと古い仲の志村新八ですけど・・・・・・」
「知ってるか雪広あやか?」
「チャイナさんの事は知ってましたけどこの人とは私も初めてお会いしましたわ、初めまして新二さん」
「ちょっとォォォォォ!! おたくら一度会ってますからねッ!? なんで神楽ちゃん覚えてて僕の事忘れてるんですかッ!? つうか僕、新八だからッ!」

エヴァどころかあやかにまで忘れられている事に新八は額に青筋を浮かべてツッコミを入れていると

「あ、もう銀ちゃんも帰るん?」
「木乃香から聞いたわよ天パ、アンタ私達ほったらかしにて帰るんでしょ? どんだけ自分勝手なのよったく・・・・・・」

去りゆく銀時に最後に挨拶しようと、ゾロゾロと生徒達がやって来た。木乃香にアスナ、それに楓とクーフェイも

「う~む、別れる前に銀時殿と一戦行いたかったでござる」
「銀ちゃん帰って来たらまた勝負するアルッ!」
「やるわけえねえだろ戦闘バカコンビ、まき絵とやってろまき絵と」

しがみついてくるエヴァを引き離しながら銀時は好戦的な二人を乱暴に突き返している。
そんな光景を眺めて新八は「へぇ」と感心した声を上げる。

「やっぱ銀さんはなんだかんだで何処行っても親しまれてるんだなぁ」
「う~ん、でもまだ銀さんの事を苦手とする生徒もいるんだよねぇ・・・・・・」
「うわぁッ! あ、朝倉さんッ!」

いきなり額に眉を寄せて悩み顔の和美が隣にやって来た事に新八はすっときょんな声を上げる。
だが和美は気にせずに新八の方へ笑いかけた。

「私達の代わりに銀さんよろしく」
「りょ、了解でありますッ!」

顔を赤らめながら敬礼する新八に和美は満足げに笑っている頃、神楽はというと・・・・・・。

自分と非常にキャラが被っているクーフェイに喧嘩を売っていた

「おい待てオラァッ!? お前ヒロインであるこの私とキャラ被ってるとかいい度胸してるアルなぁッ!?」
「むむッ!? 銀ちゃんの仲間アルかッ!? 勝負するアルかッ!?」
「くおらぁぁぁぁぁ!! 銀ちゃんを『銀ちゃん』と呼ぶのは私だけネッ! あと語尾にアル付けるのも私だけアルッ! 今すぐキャラ変えろコラァッ!」
「そんなの私の勝手アルッ!」
「私の2Pキャラみたいな色しやがってッ! 銀ちゃんこいつとっちめていいアルかッ!?」
「銀ちゃんこの子が私にキャラ変えろとか命令してくるアルッ!」
「あ~もうアルアルうるさい、黙れありきたりな語尾を使うアルアルチャイナコンビ」

ギャーギャーこちらに向かって喚きだす神楽とクーフェイに銀時は素っ気なく手でシッシッと払う。

「やっぱり二人合わせるとうるせぇなコイツ等・・・・・・神楽、それと新八。お前等先にジャスタウェイの中に入ってろ、ここにいられるとお前等誰かに喧嘩売りそうで恐い」
「私はもう喧嘩売ってるアルッ! 金髪デカ乳とこのキャラ被りは私が絶対倒すネッ! あとビリビリッ!!」
「そうか、じゃあ尚更早く行ってこい」

偉そうにあやかとクーフェイ、そしてネギをターゲットに絞る神楽に銀時は戦艦の方へ指さして指示。
すると今度は新八が彼の方に身を乗り出す。

「僕は誰にも喧嘩なんて売りませんよ神楽ちゃんと違ってッ! 平和主義なんですから僕はッ!・・・・・・もうちょっとぐらいこの人とお喋りしてもいいじゃないですか・・・・・・・」
「え、何? 後半よく聞き取れなかったんだけど?」
「な、何も言ってねえしッ!」

恥ずかしそうにそっぽを向いてか細い声で呟いた新八に銀時は口をへの字にして首を傾げると新八はムキになったように叫ぶ。
ちなみにあの人というのは当然和美の事である。

その後、神楽を連れて新八は怒った様に行ってしまった。

「ほら行こう神楽ちゃんッ! 銀さんが女子中学生とイチャつきたいらしいから邪魔しちゃダメなんだってッ!」
「え~またベタベタガキ共とくっ付く気アルかあの男、マジキモいアル」
「人聞きの悪い事言ってんじゃねえッ! ほらッ! 早く行けッ!」

勝手な思い込みで好き勝手言ってくる新八と神楽に銀時は早く行けと叫ぶと、二人は銀時に軽蔑の眼差しを向けながらスタスタと戦艦の中へ入ろうとする。
すると銀時の隣にいたネギが神楽に向かって

「神楽さ~ん、今度会う機会があったら昔の神威さんの話でも・・・・・・」
「誰がお前なんかに話すアルかッ! バッキャローッ!」

ネギが言い終えるうちに神楽は腕を振り上げて中指を立てて吼えた後、すぐに戦艦の奥へと引っ込んでしまった。
新八はそんな彼女に「なんであの男の子に対してもそんなムキになるの?」と疑問を投げかけながら後を追うが、間もなく戦艦の中でゴスッと鈍い音と「ほぐッ!」という痛烈な声が。
恐らくイライラしている神楽が新八を殴ったのであろう。

自分をほっといてあやか達と仲良くやっている銀時と、兄に認められてなおかつ彼を心から慕っている一人の少年を見るのが彼女にとって複雑な心境だったのかもしれない。

そして銀時もまた、いよいよ帰る時間がやって来た。

「さてと・・・・・・俺も帰るとするかね」
「は? アンタねぇ、帰る前にいいんちょ達と何か話して来なさいよ、別れの言葉ぐらい掛けてあげなさい男なんだから」
「そうやで銀ちゃん、ウチ等はともかくあの三人には・・・・・・」
「んな事言ってもよ・・・・・・・」

ジト目でこちらに警告してくるアスナと心配そうに口を開く木乃香に銀時が困った様にため息を突いていると

「白夜叉・・・・・・」
「あり? おまいどうしたのそんなボロボロの格好で?」

やってきたのは一度は詠春、二度目は真撰組隊士にボコボコにされて今じゃすっかりボロボロ状態の独眼の刹那であった。
銀時が首を傾げると刹那はキッと彼を睨みつけて

「誰のせいでこんな目に遭ったっと思ってるんだッ! よくも私が預けてた夕凪をへし折ったなッ!」 
「折れた? 何それ? 銀さん知らないよ? 何人のせいにしてんの?」
「しらばっくれるなッ! よくも長から譲り受けたこの刀を・・・・・・・!」
別れの時だというのに折れた夕凪を振り回しながらプンスカ銀時に怒りだす刹那。
だがそんな彼女に木乃香は呆れた目つきで

「んも~せっちゃん止めてよこんな時に、今はそういう空気読めへん事言うの止めて」
「えええッ!?」
「アンタたまには空気読みなさいよ。だから本屋ちゃんに勝てないのよ」
「なんでそこでのどかさんが出て来るんですかッ!? 別に戦ってるとかそんなんないですからッ!」

木乃香のアスナに批判されて刹那は納得いかない表情で叫んでいると、今度は銀時にとって刹那よりも性質の悪い人物が・・・・・・

「せんせぇぇぇぇぇいッ! 私も連れてってくれェェェェェェ!! そげぶッ!」

言わずも知れた龍宮が雄叫びを上げながら走って来たので銀時は躊躇せずに顔面にストレート。
銀時の拳は龍宮の顔に思いきりめり込んだ。

「お前連れてったらストーカーが二人に増えるだろうが、ふざけんな」
「く・・・・・・! 私にとって先生がいない学校など犬のクソと同価値なんだ・・・・・・だから私は先生の世界に・・・・・・・ああんッ!」

まだ言うかという風に今度はローキックを龍宮にお見舞いする銀時。
彼女はすぐにその場に倒れて足を押さえて悶絶する。

「犬のクソ以下のお前なんか連れてったら余計あいつ等になんか言われるだろうが、テメェは犬のクソ以下らしくそうやって地面に這いつくばってろ、カス」
「まさか殴られ蹴られ罵られる事にこんなにも快感出来るとは・・・・・・このままだと気持ちよ過ぎて壊れてしまう・・・・・・」
「もう壊れてるだろ、跡形も無くキャラ完全にぶっ壊れてるだろ」

地面に倒れながら恍惚の表情を浮かべる龍宮に銀時は冷たくボソッと一言残し、踵を返して戦艦の方へ行こうとした。

「ネギ、ガキ共の事はお前に任せたぜ」
「わかってます、銀さんもお元気で」
「銀ちゃんすぐ帰ってきてなッ!」
「アンタがいないと張り合う奴がいないのよッ! 帰ってこなかったらこっちから行くんだからねッ!」

銀時に言われてネギは力強く頷くと量隣にいた木乃香とアスナが彼の背中に向かって叫ぶ。
銀時は返事をせずにダルそうにブラブラと手を振るだけだった。
すると彼に突然抱きついてくる一人の少女が

「銀時~ッ! 帰っちゃやだ~ッ!」
「またかよチビ・・・・・・」

恥もへったくれもない様子で腰に抱きついて大泣きしてしまったエヴァに銀時がウンザリした表情を浮かべると、和美がすぐに近づいて彼女を両手で銀時から引き剥がす。

「あ~はいはい、エヴァちゃん泣かないで、すぐに銀さん帰ってくるって言ってんだから笑って見送ってあげないと」
「やだやだ~ッ! ここに残るか私を連れて行くかどっちかにしろ~ッ!」
「・・・・・・なんかどんどんガキになってきてねえかこのチビチビ?」
「察して下さい銀さん、エヴァさんにとってあなたは誰にも代えられない最も大切な存在なんですのよ」

泣きながら和美に持ってかれるエヴァを眺めながら銀時が感想をぼやいていると近づいて来たあやかは彼に微笑を浮かべた後、すぐに深いため息を突いた。

「でもあんなにベタベタと銀さんにくっつくなんて・・・・・・羨まし、いや破廉恥極まりありませんわ、でも・・・・・・・・私もエヴァさんみたいな破廉恥な事・・・・・・していいですか?」

最初は否定的だったのに徐々に顔を赤らめながら恥ずかしそうに要望を望むあやか、銀時はそんな彼女の顔を見て思わず鼻で笑ってしまう。

「特別だからな」
「ありがとうございますッ!」
「ぬおッ! 急に来るんじゃねえッ!」

銀時の許可を受け取った瞬間、あやかはすぐに彼の胸の中に飛びかかって顔をうずめる。
さっきまで恥ずかしそうだったのにいきなり大胆に攻めて来るあやかに銀時は困惑しながらも、とりあえず彼女の綺麗な金髪を撫でて上げる。

「最後に俺に何か言う事あるか?」
「ベタですけど、愛してます・・・・・・・」
「本当にベタじゃねえか、ちっとは捻れよ」

銀時がツッコむと、あやかは彼の胸に顔をうずめた状態からひょこっと赤面させた顔を上げて、恐る恐る銀時に向かって口を開いた。

「もう好きで好きで好きでたまらないんです・・・・・・人に恋するとこんなにも苦しいんだなんて思いもしませんでしたわ・・・・・・こうして例え短い間でも愛するあなたと離れる事がとても苦しくて死にそうですの・・・・・・」
「オイオイ、そんな重くすんなよ、すぐに帰ってくるから安心しろ」

いきなり目に涙を溜め出すあやかに、銀時は手で彼女の涙を手で拭ってあげる。
彼女の想いは銀時には痛いほど胸に染みた

「きっとですからね・・・・・・・私はどれだけ時間が経ってもあなたの事を待ち続けますわよ、だって私が生涯愛する人はあなただけなんですから・・・・・・」
「俺はお前含めて三人の子娘と三股してるんだけど?」
「別にいいんですのよ、ずっと一緒にいてくれればそれで・・・・・・」

自分の目からどんどん流れてくる涙を拭ってくれる銀時に、あやかはクスクスと笑った後、抱き合うのを止めて一歩下がり彼に向かって行儀よく頭を下げる

「あなたと出会えて本当に良かったですわ、帰って来たらまたみんなで騒ぎましょう」
「・・・・・・それはこっちのセリフだな」

頭を下げて来たあやかの頭に銀時が手をポンと叩くと、前方の戦艦から土方が顔を出してきた

「早くしろ万事屋ッ! もう出発すっぞッ! 近藤さんと隊士の奴等の間に嫌な空気が流れてんだよッ!」
「別れの挨拶ぐらいゆっくりとやらせろよったく」
「ホント、せっかちな連中ですわね」

早く来いと催促してくる土方に銀時とあやかはしかめっ面を浮かべて文句を言うも時間は時間だ。
もう銀時一人のおかげで時間を作る事はもう出来ないのだ。

「じゃあな、あやか。チビの子守りをよろしくな」
「あ、はい、出来る限りの事はやってみますわ」

互いに笑いかけながらそう言うと、銀時はスタスタと戦艦の方へ歩いて行く。

そんな彼を見て一人の少女は凄く焦った。

(やべえどうしよう・・・・・・! 私まだ銀八に・・・・・・!)

言おうか言わまいかずっと悩んでいた“二つの言葉”をここで言わなければ・・・・・・だがもうすぐ帰ってしまう彼を目にして焦りだけが芽生えて勇気が出ない。

(ただ言うだけ・・・・・・・言うだけなのに足が・・・・・・)
「千雨ちゃんッ!」
「うわッ!」

すると彼女のそんな態度を見て何かを読み取ったのか彼女の背中を強く叩く和美。
そして二カッと笑いかけて千雨に親指を立てる。

「ここで言わないと後悔する事があるんでしょッ!」
「・・・・・・い、いや・・・・・・・」
「行ってこい恋する乙女ッ!」
「!!」

和美にそう激を言われると不思議と体が軽くなった気がした。
千雨は自分を勇気づけてくれた友に感謝する前に。

愛する人の元へと走った。













「やっと江戸に帰れんのか・・・・・・まず帰ったらちょっくら長谷川さんとパチンコでもやりに行こうかね?」

戦艦の方へ歩いて行きながら銀時はそんな呑気な事を考えていると、後ろから彼を呼ぶ声が

「銀八ッ!」
「あ?」 

銀時はすぐに振り返るとそこには、千雨が緊張した面持ちで立っていた。

「まだ何か言う事あんのか千雨?」
「銀八・・・・・・」

こちらに振り返ってくれた銀時に千雨は段々と自分の息が荒くなっているのを感じるも、それを必死に抑えて彼に一歩一歩と近づいて行く。

「おまえのおかげでさ、私、沢山の出会いや出来事を経験できた・・・・・・・」

自分の声が震えている。

「その中には恐い事や嫌な事もたくさんあった・・・・・・けど私、それでお前と出会った事に後悔していない・・・・・・」

自分の頬に一筋の涙が伝っているがわかる。

「むしろ感謝してる、漫画を読むとか、テレビゲームをするとか、ネットに入り浸ってもこんな体験出来やしなかった・・・・・・銀八、本当に本当に・・・・・・」

何時の間にか銀時はもう目の前に立っている。千雨は黙って話を聞いてくれている彼に顔を涙で濡らしながら、ずっとずっと前から言いたかった言葉を呟いた。

「ありがとう・・・・・・・」

今まで経験して積み重ねてきたモンを全て含めた感謝の言葉。

泣きながら礼を言ってくれた千雨に銀時は静かに笑いかける。
そして自分の腰に差す木刀を抜いて

「千雨」
「え? うわッ!」

銀時がずっと持っていた愛刀、『洞爺湖』。その木刀が今銀時に投げられ、宙を舞いながら千雨の両手におさまった。

「俺が帰ってくるまで、そいつはお前が預かってろ」
「銀八・・・・・・」
「絶対にここに帰ってくるっていう俺の意志表示だと思ってくれや」
「わかった・・・・・・わかったよぉ・・・・・・・」

笑いかけながら大切な木刀を託してくれた銀時に、その木刀をしっかりと握りながら千雨は一層頬を涙で濡らす。

そして

「銀八ィッ!」

泣きながら千雨は銀時に向かって走り、木刀を片手に持ったまま彼に胸に飛び込んだ後、彼女はすぐに銀時の顔を見上げて


「んッ!」
「!!!!」

銀時が呆気に取られている間に千雨は彼の唇と自分の唇を押し当てる。
彼女のファーストキスだ、その感触は暖かく、温もりを感じる。

(ホントにホントに・・・・・・・)

彼の首に両手を回し抱きしめて、初めての口付けを味わった後、千雨は驚いてる彼の顔を見て涙を流しながらもフッと笑いかける。

その時の笑みは今まで銀時が見た中で一番の笑顔だった
そして彼女の口から放たれた最後の一言は・・・・・・・




































「大好き、銀八先生」






[7093] 最終訓 後悔ない人生を
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/07/11 00:11
銀時達との戦いが終わり数日後。高杉晋助とアーニャは今、イギリスのロンドンに帰って来た。
実を言うと高杉が所持している『時空転移装置』を使えば何処へでも行ける。
だが、特に目的もない今、慣れた土地にいる方が得策と考えたのだろう。

アーニャと高杉の住んでいる屋敷の屋根上、そこで少女はある4枚のカードを並べた状態で座り虚空を見つめていた。

「愚者と死神・・・・・・悪魔と世界・・・・・・・」

ブツブツと呟くアーニャの表情には年頃の少女とは思えないほど険しい色が見えていた。
そんな彼女の背後に着物を風でなびかせながら口にキセルを咥えるあの男が現れる。
アーニャが盲信するほど執着している男、高杉だ。

「お得意の占いにはなんて出たんだ・・・・・・」

キセルから煙をプカプカと出しながら高杉はアーニャの方へ見下ろして尋ねる。

彼女はいきなり背後に出て来た彼に動じずにボソッと呟く。

「自由の象徴である『愚者』は破滅と死を司る『死神』と力を合わせ、堕落を意味する『悪魔』、無限を象徴する『世界』といずれぶつかる・・・・・・そう出てるわ」
「へぇ・・・・・・」
「『愚者』はアンタの幼馴染の坂田銀時、『死神』は私の幼馴染のネギ。そして『悪魔』は私、『世界』はアンタの事を指してるのよ・・・・・・」

置かれた4枚のカードの意味とそのカードの存在が誰なのかを苦々しい表情で吐き捨てるアーニャ。どうやら占いの結果に納得がいかないらしい。

「裏切りや混乱を招く者、欲に支配された者という解釈さえ出来る『悪魔』が私ですって・・・・・・」
「・・・・・・」
「アンタのカードの『世界』、これは無限の時、無限の完全、無限の総合、無限の行いの成就を意味して一見とても縁起の良い様に聞こえるけど・・・・・・下手すれば無限の苦刑、無限の死とか悪い方向にもなる意味も含まれてるのよ・・・・・・」
「・・・・・・くだらねえ」

不安そうにうなだれるアーニャを見て高杉はそうバッサリ言った後、彼女の隣に不機嫌そうに座った。

「テメーでやった占いの結果にビビってんじゃねえ、お前はまだ半人前だろ」
「そうだけど・・・・・・・」
「半人前のお前がやった予知なんてたかが知れてんだ・・・・・・そんな事でいちいちビクついてたら前進むなんざ出来ねえよ」
「高杉・・・・・・」

そっぽを向いてキセルを吸う彼の姿を眺めながらアーニャは不思議そうに彼を眺めた後、久しぶりにフッと顔に笑みが浮かんだ。

「そうよね、私まだ半人前なのよね。占いも魔法も、力も・・・・・・」
「・・・・・・」
「私がもっと力を持っていれば春雨の奴等を叩きのめす事が出来た筈なのに・・・・・・私がもっと力を持っていればママを救えたのに・・・・・・・私がもっと力を持っていればネギを護れたのに・・・・・・」
「・・・・・・」
「ねえ高杉」

黙って話を聞いてくれている高杉、そんな姿を見てアーニャはギュッと彼の腕に両手で抱きつく

「絶対私強くなるから、もっと力を手に入れて高杉の役に立てる様に頑張るから・・・・・・だからアンタの傍にいさせて、私、アンタさえいればこんな世界どうだっていいのよ・・・・・・」
「・・・・・・ふん」
「まだこんな半人前の子供の私だけど・・・・・・・一人前にも十人前にもなれるぐらい強くなる・・・・・・・」
「・・・・・・勝手にしろ」

自分の腕にしがみついて涙を流す彼女の顔を見て、高杉はぶっきらぼうにそう答える。

(コイツといると感覚がズレちまう・・・・・・)

長く一緒にいるうちに彼女の存在が高杉にとってはかなり異質なモノとなっていた。
それがいったい何なのかは高杉自身も知らない事なのだが、彼にとっては苛立つ感情でしかない。

高杉が頭を押さえて遠い昔に忘れていたこの感覚が一体なんなのかと考えていると・・・・・・

「屋根の上で少女と日向ぼっこ、しばらく会わない内に随分と風変わりな事をする様になったでござるな、晋助」
「ん・・・・・・?」
「誰ッ!?」

二人しかいないと思っていた屋根の上で聞こえる澄んだ男性の声。高杉は聞いた事のある声に振り返り、アーニャはすぐに近くに置いていた自分の居合い刀を持って後ろに向かって声を荒げる。

そこにいたのは男性、サングラスを目に、シャカシャカと鳴り響いているヘッドホンを耳に付け、背中には三味線を差しているという奇怪な格好。この辺では絶対に見かけないであろう人物だった。

「何処へ行ったかと思えばよもやこんな所に来ていたとは・・・・・・・さすがに想像の範囲外でござった」
「ほう・・・・・・懐かしい顔が見れたモンだな」
「高杉・・・・・・アンタ知ってるのこの男・・・・・・・?」

ヘッドホンを取って男が呟くと高杉はニヤリと笑みを浮かべて立ち上がる。
そんな彼の姿にアーニャは居合い刀を構えながら混乱した。
この世界に彼の知り合いなどいない筈・・・・・・という事は。

「ふむ、一見してまだまだ子供の様だがその男と対等に喋れるとは大したもの、少女、名はなんと申す?」
「・・・・・・アンタこそ名乗りなさいよ、アンタ高杉の一体なんなのよ・・・・・・」

唐突にこっちに向かって話しかけて来た男にアーニャはギロリと睨みつける。
警戒は一切怠らないアーニャの姿に男はボリボリと頭を掻き毟った。

「これは失敬、名を聞く前にまず自分が名乗ればならなかったでござる」

丁寧にそう言った後、男は表情を変えないまま自己紹介を始めた。

「拙者の名は河上万斉」

アーニャに向かって名を名乗った後、万斉は核心を彼女に伝える

「その男の仲間でござる」





高杉が作った『鬼兵隊』のメンバーの一人で『人斬り万斉』という二つ名を持つ男。

彼との出会いによってアーニャの人生はまた一つ劇的に変わっていくのだろう。



































最終訓 後悔ない人生を


























場所変わってここは日本、麻帆良市。
短い様で長く感じ、長い様で短く感じた奇妙な修学旅行が終わって数日後。
麻帆良学園の生徒達の住む女子寮ではいつも通りの慌ただしい朝が始まっていた。

「アスナ~早くせんと遅刻やで」
「あ~はいはい・・・・・眠い、死にそう・・・・・・」

自分達の部屋の前で木乃香がまだ部屋から出てこないアスナを急かす。
常に登校時間のギリギリに起きるアスナ、今日も瞼を半分閉じた状態でだるそうに木乃香の前に現れた。

「ん~・・・・・・アレ? ネギ何処行ったのよ?」
「ネギ君ならとっくに学校言っとるよ、じいちゃんに呼ばれて修学旅行で起こった出来事をせっちゃんと一緒に報告しにいくんやって」

グラグラ体を揺らしながら廊下を歩いているアスナと一緒に木乃香は今はここにはいない子供先生の説明をする。どうやらネギは学園長と話をする為に木乃香護衛役の刹那と一緒に自分達より一足早く学校へ行ったらしい。
それにアスナは「ふ~ん」と特に関心の無さそうに返事をした。

「アイツも大変ね、修学旅行であんな事あったのにもう教師の仕事と魔法使いの仕事やらなきゃいけないんて」
「せやなぁ、銀ちゃんがいなくなっちゃったから自分が頑張らな思うて、張りきってるのかもな・・・・・・」
「あのバカ天パみたいになりふり構わず突っ込みそうで恐いのよね・・・・・・前々から結構無茶する奴だったし・・・・・・」

重い瞼を開けたり閉じたりを繰り返しながらアスナは彼の事を心配する様に呟く。

「この前なんか、「ちょっと後ろ髪伸ばしてみます」とか言ってたのよアイツ、アレ絶対あの“ニヤケ面の師匠”を意識してるわよ、絶対髪おさげにする気よあのガキ」
「別に無茶するのと髪型変えるのは関係ないんやない・・・・・・?」

ぶつくさ文句を言うアスナに木乃香が苦笑しながらツッコんでいると、ふと一階に下りた所でとある生徒に出会った。

長い黒髪をポニーテールにした髪型の背の高い女子生徒。
アスナや木乃香と同じA組の生徒の大河内アキラが、女子寮入口のすぐ近くにある管理人窓口の前に立っていた。

「何してるんのアンタ? 遅刻するわよ」
「“新しい管理人さん”に用でもあるん?」
「ああ、二人共、おはよう」

やってきたアスナと木乃香にアキラは軽やかに挨拶をした後、管理人窓口の方に再び首を戻す。

「実はとある事件があってここの新しい管理人さんに協力してもらおうと思って来たんだ」
「事件ッ!? なんかあったんッ!?」

事件と聞いて慌てふためく木乃香にアキラは難しそうな表情で答えた。

「私がみんなに内緒で飼育小屋から“お持ち帰り”してしまった可愛い白ウサギが朝起きたらいなくなっていてね、窓を開けっ放しにして寝てしまったのが最大のミスだ、どうやら逃げ出したらしい」
「いやそれ窃盗したアンタが原因でしょ、犯罪に身を染めて被害者面とかいい度胸してるわねアンタ」
「的確なツッコミありがとう、神楽坂」
「的確なストレートもぶち込むわよアンタ」

アスナがツッコミまくった後、笑みを浮かべて礼を言ってくるアキラ。

ここにいる生徒は誰一人まともなのがいないのか?

そんな疑問を浮かべながらアスナは彼女をジト目で見つめ返す。

管理人窓口の前でそんな事をしていると、先日来たばっかりの管理人がアスナより数倍だるそうな顔で窓口から顔を出した。

「・・・・・・なんか用かガキ共?」

ボサボサ髪に無精髭、室内なのに肌を隠すマントを着ている男。
ここの女子寮人の管理人になったばかりの夜兎族、阿伏兎であった。

「あ、阿伏兎さんおはよう」
「・・・・・・テメーを攫おうとしていた男によくもまあそんなノーマルに挨拶出来るなお前・・・・・・」

にこやかにこちらに手を振って挨拶してくる木乃香に阿伏兎は何か末恐ろしいのを感じる。
意外とこの少女、ネギ並に器がデカイ。

「・・・・・・・挨拶だけなら俺は部屋に戻るぞ、俺は朝食の準備で忙しいんだ」
「あ、待って下さい、用があるのは私なんです、ちょっと管理人さんに協力してもらいたい事があって・・・・・・」
「なんだよ、ったく・・・・・・なんで俺がガキの協力なんて・・・・・・」

不満ありまくりな様子だが阿伏兎はとりあえずイスに座って、管理人窓口からアキラの方へ目をやる。
一見かなり恐そうな風貌である阿伏兎にアキラは少したじろぎながらも恐る恐る彼に話をして見た。

「実はここの女子寮で極秘でお持ち帰りした一匹のウサギが・・・・・・」

阿伏兎に事件を経緯を伝えようとしたその時。
アキラは何時の間にか阿伏兎が片手で持っているある物を見た。

クリっとした赤い目の可愛らしい小さな白ウサギを・・・・・・
阿伏兎は真顔でウサギの長い耳を持って宙ぶらりんにして持っていたのだ。

「・・・・・・それはなんですか?」
「・・・・・・俺の朝食、さっき裏庭で捕まえたんだよ」

冷静に質問して来たアキラに阿伏兎もまた冷静に返した。
どうやら朝食の準備で忙しいというのはこの可愛らしい白ウサギを・・・・・・

「何処の民族の朝食ですかそれはッ!」
「いや夜兎族の朝食だけど?」

ウサギの命の危機にアキラが怒りの声を上げると、阿伏兎はさらっと答える。
夜兎族は元々戦場に生きる民族なので基本食えると思ったら何でも食うのだ。

「返して下さいッ! それは私が可愛いと思って最初に取ったウサギなんですからッ! 私が最初にかっぱらったんだから私の物ですッ!」
「あんなにいたんだから一匹ぐらいわけねえだろッ! 今からコイツを丸々唐揚げにするんだよッ!」
「そんな大胆悪質お手軽クッキングとか止めて下さいッ! アマゾンでやってくださいアマゾンでッ!」

ヒクヒク髭を揺らして自分の身に起こる事になんの不安も感じていないウサギを揺らしながらアキラに調理の許可を取ろうとする阿伏兎だが、当然小動物を愛してやまないアキラが許すわけないわけで阿伏兎から強引にウサギを奪おうとする。

「私のですッ!」
「俺の朝食だッ!」
「きゅ~」
「あ~ん止めて二人共~ッ! そのまま引っ張ったらウサギが引き裂かれる~ッ!」

両者譲らずにウサギの引っ張り合いを始める阿伏兎とアキラを、木乃香が慌ててウサギを助ける為に止めに入る。

そんな光景を見ながらアスナは眠そうに大きな欠伸をした後、必死にウサギを引っ張っている阿伏兎の方へ目を向けながらポツリと呟いた。

「ネギの奴も便利なモン連れて来たわね・・・・・・なんだかんだでウチの生徒と仲良くやっていけそうじゃない新しい管理人」










































そのネギはというと今は彼女達より一足早く刹那と一緒に麻帆良学園に着いていた。
学園長に呼ばれて彼の部屋に来た二人は修学旅行で起こった出来事を一通り説明し終えた所である。

「・・・・・・っとまあこんなわけで、学園長から預かった親書は父さんとの戦いが原因で跡形も無く残ってませんでしたけど、詠春さんはちゃんと関東と関西の和睦の手筈を整えると言っていました」

学園長の机の前で説明を終えたネギに学園長はイスに座りながら満足そうに頷いた。

「うむ、まあいいか。婿殿に話をつけて来たならそれはそれで君の功績じゃ、そんな困難な状況下で任務を全うできたことは立派じゃぞネギ君」
「いや~僕死んでたんであんまり活躍できなかったですよ?」
「一回逝った事を「いや~ちょっと寝てたんで」みたいに言うの止めてくんない?」

後ろ髪を掻きながら笑いかけるネギに学園長は即座にツッコミを入れた後、彼が手に持っているある物に興味を示した。
普通の一般的な傘より一際大きく頑丈そうな日傘だ。

「ところでネギ君、君が持っとるソレはなんじゃ?」
「ああこれはウェールズにいるネカネお姉ちゃんに頼んで送って来てもらった物です、僕の恩人から預かっている傘でして、今日届きました」
「ほう、じゃがこんな晴れた天気に傘など必要ないぞ?」

腕を組んで尋ねて来る学園長にネギは「ハハハ・・・・・・」と苦笑した。

「どうやら僕の中にいる鳳仙おじいちゃんの夜兎の血が僕の血に混じったみたいなんですよ、魔法使いの血と夜兎の血が混ざった状態になってしまいまして・・・・・・」
「なんじゃと? てことは君の体をめぐる血には夜兎の血が半分流れているというのか?」

思わぬネギの追加報告に学園長は気難しそうな表情をする。
魔法使いの血に夜兎の血が混じるという前例は過去に一度も無い。
だがもし夜兎族の血が流れているのであればその特性もネギの体に・・・・・・・

学園長の推測が正解だと言う風にネギはコクリと頷いた。

「はい、今じゃ夜兎の人達の様に太陽の光を浴びれなくなってしまって・・・・・・・死にはしませんが、体が重くなるし息苦しくなる様になってしまいました」
「そうか、そりゃあ大変じゃの・・・・・・ワシだったら絶対にゴメンじゃ」
「だからこうして朝と昼は傘を常に持っていないと駄目になっちゃいまして・・・・・・でもこの傘は父さんの杖に負けないほど素晴らしい武器ですし、日の光が浴びれなくなってもその分夜兎特有の力も見に付けましたから僕は全然平気です」
「ポジティブじゃの~、ま、ワシだったらは絶対にゴメンじゃ」
「なんで二回言ったんですか?」

ネギの体の構造が普通の人間とかなり変わっている事に学園長は二度拒絶した後、イスにもたれてネギにボソッと呟いた。

「それぐらい嫌なんじゃ、だって日焼け出来ねえし」
「え? 日焼けする気ですか学園長? それ以上日の光を浴びたら干からびて死にますよ、元から干からびてますが」
「ワシはミミズかよ、クビにすっぞガキ」

真顔でさらりと酷い事を言ってのけるネギに学園長はイスにもたれて天井を眺めながら言葉を返した後、態勢を戻して今度はネギの隣にいる刹那の方へ目を向けた。

「それにしてもお主も大変じゃったな刹那君、右目を失うというのは剣士でもあり女性でもあるお主には・・・・・・」
「御心配無用です」

心配そうに声をかけて来た学園長に刹那はキッパリと返事をする。
彼女にはもう右目は無い。その代わり右瞼の上には黒い眼帯が巻かれていた。

「片目が無くなろうとも私は私である事に変わりはありません、これからも木乃香お嬢様をお守りします」
「ほう、なんか知らんが今のお主、前より随分とたくましく見えるぞ?」
「土方さんや白夜叉のおかげです」
「土方? あ~ここにしばらくいてくれたあの男か、確か銀八と一緒に異世界へ帰ったんじゃったな・・・・・・あ」

剣の腕だけでは無く精神的にも強くなっている刹那が力強く頷くと、学園長は彼女が世話になっていた男を思い出す。
そしてもう一つ、“自分が一番望んでいたもの”が実現した事も思い出した。

「どうしたんですか学園長?」
「フェッフェッフェ・・・・・・そういえばあの忌々しい銀八が異世界に帰ってしまったんじゃったな」

学園長はイスを回転させながら不気味な笑い声を上げる。

「ワシの支配する学校に我が物顔で横暴の限りを尽くした銀八め。今度来たらワシの真の力を見せて二度とワシに逆らえんようにしてやる、グフフフ・・・・・・」
「・・・・・・なんでこんな人が学園長になれたんでしょうか?」
「それは誰もわからない事でしょうねきっと・・・・・・・」

下品な笑みを浮かべながらクルクル回っている学園長に刹那とネギが疑念を抱いていると、ふと刹那もまた学園長と同じくある事を思い出した。
もっともこれはネギに関わる事だが

「そういえばネギ先生、生き別れになっていたご両親にせっかく会えたのに、二人は土方さんや白夜叉と同じく江戸へ行ってしまったんですよね?」
「ああ、はい。なんでもここに残れない事情があるとかで、ま、ちょっとここに顔出す事ぐらいは出来ると言ってましたよ」

ネギの両親であるアリカとナギは今、銀時達と同じ江戸に住んでいる。
住む世界は別になってしまった、しかしネギは特に気にしていない様子でフッと笑う。

「きっと銀さん達と一緒に、夫婦仲良く暮らしてる筈でしょうねあの二人は・・・・・・」












































その夫婦はというと現在、江戸にあるかぶき町の『スナックお登勢』の二階に住んでいた。
無論そこは銀時の家である。
今ではリビングでいつもダラダラとくつろいでいる二人を万事屋従業員である新八はよく見かける。

「・・・・・・アンタ等いつまでここに住む気ですか?」
「う~ん、わかんね」

勝手に転がり込んで居候している夫婦の旦那の方であるナギに新八が冷たく尋ねると、ナギは全く動じずにソファに偉そうにふんぞり返りながら答えた。

「元々ここは俺んチだし」
「・・・・・・・銀さんにいつも「さっさと出て行けこの寄生虫夫婦が、この家でタマゴなんて産みつけたらお前等ごと燃やすからな」って言われてるのにアンタ等・・・・・・」
「そうそうムカつくよなアイツ、ホント何様だよ」
「アンタらこそ何様だよ・・・・・・王様か、王様と女王様気どりか?」

新八にツッコまれながらもウンザリした表情で銀時に文句を垂れるナギ。
すると彼の向かい側のソファに神楽と一緒に座っている妻のアリカが新八とナギの話に口を挟む。

「よいではないか、別に減るモンじゃなかろうに」
「“アネゴ”の作った卵かけごはんうんめぇぇぇぇぇぇ!!!」
「いや食費とか部屋のスペースが大幅に減ってんですけどッ!? ていうかなんで神楽ちゃんにご飯上げてんですかッ!?」

新八が気が付いた時にはアリカは何故か神楽にどんぶり一杯ぶんの白米に卵を二つ乗せた特大卵かけごはんを御馳走している。それをうまそうにすぐに食べ尽くすと神楽はアリカに方に向かって

「こんな上手い卵かけごはんを食わしてくれるならアネゴはずっとここに住んでいいアルッ!」
「ふむ、そうか、いつでも馳走するぞ。ていうかそれぐらいしかわらわは作れんがな」
「餌付けしやがったよこの人ッ! 何時の間にか神楽ちゃんもアネゴって呼んじゃってるしッ! マダオな旦那よりずっと世渡り上手だッ!」
嬉しそうにする神楽の表情から見てすっかりアリカの事を気にいっている様だ。
アリカが彼女の頭を撫でている姿を見て、新八はアリカの策略に舌を巻く。

「ダメだ神楽ちゃんは、美味しいモン食べさせてもらうとその人への警戒心ゼロになるんだよな・・・・・・このアリカさんって人、天然そうに見えて計算高い」
「は~? 食いモン貰えば懐くのかよ、さすがあのハゲの娘だ、子育てがなってねえぜ」
「それアンタが言える資格ないですよ」

子育てに関しては全く出来ていないナギに新八がジト目でツッコミを入れた後、ふとナギとアリカの姿を見てある違和感に気付く・・・・・・・。

「そういえば二人共・・・・・・9歳の子供持ってる割には若すぎませんか? 見た目どう見ても20代前半ぐらいに見えるんですけど、ぶっちゃけ年いくつなんですか二人は?」
「禁則事項だ」
「禁則事項じゃな」
「何で今までこの物語で数々のネタばれをやってきたあなた方がそこだけ伏せるんですか・・・・・・別にいいですけど」

両者キッパリと言いたそうにない様な反応を見せるので新八はすぐに折れてため息を突く。

(まあ魔法使いだから見た目だけ年を取らない魔法とか薬でも使っているのかもしれないな・・・・・・)

新八がとりあえずそう推測していると、今度はナギの方から彼に向かって質問が飛んでくる。

「ところで新八よぉ、あの『真撰組』とかいう奴等が異世界に行ける準備が出来たとかそいういう報告まだ来てねえのかよ?」
「え? いやまだ聞いてませんけど?」
「んだよおい~、使えねえ連中だな」

新八の返事にナギはガックリと首を垂れる。
ここからネギ達のいる世界にまた行くには真撰組、いやその上にいる松平のとっつぁんの力が無いと行く事は出来ない。
だが今の所、とある都合で異世界にはまだ行ける状態では無いらしいのだ。

「前に土方さんからここの世界と異世界を繋ぐのにはまだまだ時間がかかるって言ってましたね、どうやら僕等がここに来る時に使ったあの巨大戦艦で次元に大きな歪みを作ったせいでパイプ状のトンネル空間、『ワームホール』が壊れたらしいんですよ。だから土方さんや近藤さんが上司の人に異世界同士を繋ぐまた別の新しいワームホールを探してくれって頼みこんでる所なんです」

新八の解説にナギは目を細める。

ただの一般市民である彼が何故そこまで真撰組の内部事情に精通しているのだろうか

「新八、お前やけに詳しいな?」
「い、いやッ! 僕ももう一回異世界に行ってみたいんで土方さんから詳しく聞いてるんですよッ! それに銀さんもあっちの世界に行きたがってるしッ!」
「アイツはともかくお前があそこに行く必要なんてあんの?」
「ほ、ほらッ! あの時はドタバタしてゆっくり異世界を堪能できなかったんでッ! ちょ、ちょっと観光に行ってみたいな~と思いましてッ!」

顔を赤らめて慌てふためきながら説明する新八にその場にいる三人が怪しむ様な視線を送る。
実の所、観光に行く事より新八にはある目的があるのだ。

(あ、あっちに行けばまたあの子に会えるかもしれないし・・・・・・・)

あの子というのは新八が少しだけ会話をした和美の事。どうやら彼の中で小さな恋心が芽生えつつある様だ。

そんな新八にナギは怪しむ視線を送り続けた後、ふと天井を仰いでため息を突く。

「ったくよぉ、何でもいいからさっさとあっちに遊びに行かせろよ税金泥棒」












































その税金泥棒こと真撰組のいる屯所では、業務に復帰した土方がいつもの様にタバコを咥えて(全域禁煙令は土方が異世界へ行った直後にとっつぁんが限界になって撤廃したらしい)隊士達に命令していた。

「よし、それじゃあそのちまたで度々出没している筋肉ゴリラダルマ男とかいう変質者を早急に捕まえるんだ、犯人は一人、即刻しょっぴいてやれ」
「了解です副長ッ! ところで俺等の姐さんはいつ来るんですかッ!?」
「結婚式の準備はどうすればいいんスかッ!?」
「早く行けェェェェェェェェェ!!! ぶっ殺すぞッ!」

余計な事を聞こうとする隊士達に土方は声を荒げて叫んだ。
隊士達が去った後、土方は口から煙を吐きながら疲れた表情を浮かべる。

「アイツが来るとかそれ以前にまだ結婚とかそんなの決まってねえだろうが・・・・・・」
「ハッハッハ、こんなむさ苦しい所に可愛らしい女の子が来るかも知れないと思ってアイツ等も随分士気が上がったな」
「そんな簡単に言わないでくれ近藤さん・・・・・・」

後ろに立って笑いかけて来る局長である近藤に、土方は振り返って注意する。
すると近藤は彼に向かってビシッと自分を親指で指して

「ついでに俺の嫁さん候補のおかげで隊士達が血気盛んになっているのも事実だ、トシ、まさか俺とお前の嫁さん候補が真撰組に絶大なる力を持つとは思いもしなかったな」
「・・・・・・近藤さんの場合は隊士達に反対されてからだろ?」
「・・・・・・うん」

冷静に指摘してきた土方に近藤は少し寂しそうに返事をする。そう、彼の嫁さん候補である夕映は土方の嫁さん候補であるのどかと違って隊士達からほぼ100%の割合で反対されている。

「イイ子なんだけどな~・・・・・・・」
「イイ子でもあの口の悪さは問題だろ」
「いやあれはあの子なりの照れ隠しでッ!」
「それは無え、俺がどれだけアイツに毒舌吐かれたか知ってんのか?」

近藤なりに夕映を援護するが土方はすぐにバッサリ。
間違いなくあれは彼女が幼少のころから積み重ねて来た性格だ。

「ま、アンタがずっと惚れてるあの女と結婚出来ればこの問題も鎮圧出来るんだけどな」
「くッ! まさか夕映ちゃんとお妙さんのどちらかを選ぶ事にならなきゃいけないなんてッ! モテる男はツライぜトシッ!」
「あの女は全くアンタに興味ねえんだけどな」

ちょっと目を光らせてキメ顔を作る近藤に土方が手に持った灰皿でタバコの火を消しながらツッコミを入れていると。

「ご、ご主人様のご報告です~~~、最近夜中にスナック街に出現しているデカ筋肉ゴリラは、どうやらジャックバウアーみたいな声をしているという情報が入りました~~~・・・・・・」
「ああそうか御苦労・・・・・・・」

襖をあけてげんなりした表情で現れた月詠に土方は返事をした数秒後・・・・・・

「ってオイィィィィィィ!! お前あっちの世界にいた戦闘狂娘じゃねえかァァァァァァ!! どうしてここいんだよッ!」
「・・・・・・・ご主人様に無理やり連れてこられたんどす・・・・・・・」
「はッ!? てことはお前あの戦艦の中にいたのッ!?」
「はい~~ご主人様に脅されて、無理矢理冷蔵庫の中に・・・・・・・」

叫んで来た土方に無気力な表情で月詠はコックリと頷くと、その後ろからタイミング良く沖田が登場。

「近藤さ~ん、何時になったらまた異世界に行けるようになれるんですかぃ? 俺のメス豚製造計画がこのままだとおじゃんになっちゃいまさぁ」
「オメーはまだ増やすつもりかッ!」
「いや、こいつクズ過ぎて使えねえんですよ土方さん、最低でもあと2体ぐらい持ってかねえと」
「うう~~~ウチは役立たずでなんの使いモンにならないゴミ以下のクズどす~~~」
「なんかどんどん進行が進んでるだけどッ! 前と全然キャラ変わってんじゃねえかッ!」

突然沖田にかしづいて泣きながら自虐的なセリフを吐く月詠に土方はあまりの変貌ぶりに驚いた。
それにしてものどかや夕映より早くこの屯所に女性がやってくるとは・・・・・・
といっても“女性”とは扱われてないが

「ウチの屯所に変なの連れて来んじゃねえよ・・・・・・」
「ですってよ近藤さん、ということであのガキここに連れてくのは無理みたいなんで諦めてくだせぇ」
「オメーに言ってんだよサドプリッ!!」

腕を組んで近藤に話しかけている沖田に土方はズバッとツッコミを入れる。
まさか彼が月詠も連れて来るとは予想外だった、幸いもう一人のメス豚は連れて来てない様だが。

「ったく・・・・・・もしここにのどかが来たらお前だけは絶対にアイツの5M以内に入れさせねえからな」

土方はそう警告した後ポケットからタバコの箱を取り出すが、入っている筈のタバコが切れてしまっている事にチッと舌打ちした。

「クソ、タバコ切れちまった・・・・・・・仕方ねえ山崎に買いに行かせ・・・・・・あ」
「どうしたトシ」

自分が言っている事で何かに気付いた土方に近藤はどうしたのかと尋ねる。
土方は彼の方へ振り向いて、今までずっと忘れていた事を報告した。











「山崎、あっちに忘れた」






















































忘れられていた山崎、彼が今何処で何をしているのかというと。

案の定、麻帆良学園で清掃員兼雑用係をやっていた。

「閉門10分前で~す、生徒の皆さんは早く門をくぐってとっとと各々の教室に向かって下さ~い・・・・・・」

ゾロゾロと麻帆良学園の門の中に入っていく女子生徒達に向かって、ジャージ姿の山崎はメガホンを使い門の横に立って覇気のない声を出す。

土方達に忘れられてまたここに残る事になってしまった山崎、顔はやつれて、明らか死んでいる表情を浮かべていた。

「チクショウ、まさか寝ていた隙に局長達が江戸に帰っちまうなんて・・・・・・旦那も帰っちまったらしいし、一体俺はどうすればいいんだ・・・・・・誰でもいいから迎えに来いよコノヤロー・・・・・・」
「おはようございます、山崎“様”」
「ああ、おはよう茶々丸さん、え? 山崎様?」

すっかりやさぐれてしまっている状態の山崎の所に生徒である茶々丸が声をかけて来た。
山崎はすぐに我に返って返事をするが彼女の自分に対する呼称に変化が・・・・・・

「俺の事はいつも山崎さんって呼んでたのになんで様付け?」
「私自身分かりません、ですが何故か山崎様を呼ぶ時は山崎様と呼ぶ様にと私の電子頭脳がそう命令しているんです山崎様」
「ああ、うん。別にいいけど山崎様連呼すんの止めて、凄く恥ずかしいから」

茶々丸にツッコミを入れていると山崎はようやく元の顔に戻る。確かに江戸に帰れないのは残念だったがここの世界も悪くはないのだ、

(ま、別に一生帰れないというわけじゃないし、しばらくここにいてもいっか)
「そういえば銀時様や真撰組の皆様はあちらへお帰りになられたというのに山崎様はここに残られたんですね」
「あ、うん・・・・・・誰かが起こしてくれなかったせいでね・・・・・・」

突然尋ねて来た茶々丸に山崎はぎこちない笑みを浮かべる。
すると彼女はいつも通りの無表情のままポツリと

「山崎様が元の世界に帰れなかったのは残念だと思いますが、誠に失礼ですが私個人としては何故か少し嬉しいと思っています」
「へ? なんで?」
「わかりません、何故こんな事を考えたのも何故こんな事を山崎様に言ったのかも。恐らくバグかなんらかのプログラムミスが発生して私の電子回路が故障している可能性があるのかもしれません」
「ハハ、なんか知らないけど大変なようだね」
「はい、今度葉加瀬さんに頼んでチェックしてもらいます」

茶々丸自身もわからない感情、それがなんなのかは誰にもわからない。
それに対して特に深く考えていない山崎は気を取り直して彼女に話しかける。

「そういえばよく一緒にいる旦那の嫁さんは何処行ったの?」
「マスターはとっくに教室へ行っている筈です、私はここに来る前に朝ごはんの片付けなどをやっていたので、それにしびれを切らしたマスターは一人で学校の方へ走っていきました」
「え? あのいつも旦那と一緒に遅刻ギリギリで来てた子が?」
「マスターは銀時様のおかげで随分とお変わりになりました」

茶々丸と山崎が言っている女の子の事はエヴァの事。
彼女が真面目に学校に早く来ている事に山崎が少し意外だという風に声を上げると、茶々丸はふと麻帆良学園の方へ目を向けた。

「今頃、初めて出来たご友人達と仲良く教室ではしゃいでいる頃かもしれません」















































ここは麻帆良学園中等部、3年A組の教室の中。

「ハァ~・・・・・・・」
「のどか、アンタ元気ないわよ? 朝ごはんも食べてなかったし土方さんに会えないからってしょげてんじゃないわよ?」
「う、うん・・・・・・」
「私も近藤さんに会えなくて食事ものどに通りません」
「夕映、アンタは朝っぱらから白米三倍余裕で平らげてたじゃないの・・・・・・」

波乱の修学旅行からいつもの日常生活に戻ったのどか、ハルナ、夕映がそんな会話をしている後の方の席では

エヴァが腕を組んで同級生である一人の生徒に話しかけていた。

「その木刀をよこせ長谷川千雨」
「だから駄目だつってんだろ、私が銀八に預かったもんなんだから」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・! どうしてアイツはこの私ではなく長谷川千雨に大事な木刀を託したのだ・・・・・・!」
「知らねえって、アイツが帰ってきた時に聞いてみればいいだろ?」

悔しがるエヴァに対して素っ気ない態度で返しているのは千雨、彼女は今自分の席に座って両腕で大事そうに銀時から預かった木刀を抱きかかえている。
一日中こうしており彼女が木刀を持っていない時など誰も見ていない。

「この木刀は絶対に離せねえからな」
「クックック、ならばしょうがない・・・・・・闇の福音の牙を貴様の喉に味あわせてやる・・・・・・」
「おやめなさい、恥ずかしいったらありゃしませんわ」
「なんだとッ!?」

断固として拒否する姿勢を見せる千雨にエヴァは口の中にあるちっちゃなキバを光らせると、後ろから彼女をたしなめる声が。エヴァはすぐに振り返ると、そこにはしかめっ面を浮かべているあやかが立っていた。
髪型がポニーテールからロングに戻っている。

「結局ただ“噛みつく”だけでしょ? 全くこれだからおチビさんは・・・・・・・」
「いい加減子供とかガキとかチビとか止めろッ! 私が幻術使えばあの銀時でさえイチコロのナイスバディになれるんだぞッ!」
「ナイスバディって・・・・・・今頃そんな言葉使う奴いねえぞ」

エヴァの言葉遣いの古さに千雨が唖然とした表情を浮かべていると、あやかはエヴァを見下す様な目でフンと鼻で笑い。

「魔法を使わないと銀さんに愛されないって事ですわよそれ?」
「なッ! 違うぞッ! 小さい私でも銀時はきっと愛してくれるッ!」
「オホホホホ、必死に言い訳しているあなたの姿は相変わらず滑稽ですわね」
「う~~~~~ッ!!」

嘲笑を浮かべるあやかにエヴァは地団駄を踏んで悔しがっていると、後ろで千雨がすぐに呼びかけた。

「泣くなよ」
「ko,こんな事で泣くかッ!」

エヴァはすぐに否定するが彼女の目にはうっすら涙がもう溜まっている。
このパターンは大体エヴァが大泣きする時のパターンだ。付き合いの長い千雨はよく知っていた。

「お前よくそんなに泣けるよなぁ・・・・・・」
「ホントですわ、嫌な事があったらすぐに泣いて・・・・・・泣けば自分の思い通りになるとでも思ってるんですか? 銀さんに何時も言われてましたわよね? そんなんだからいつまで経ってもちっちゃいちっちゃいお子様なんだって」
「うるさいッ! 私が泣くのは、お、お前と銀時がすぐに私を泣かす様な事言うからに、き、決まってるだろッ! ヒックッ!」
「いいんちょもう止めとけ。嗚咽してる、コレ以上突っつくと破裂するぞエヴァ」

声が震え嗚咽を交えながら喋っているエヴァの姿を見て千雨があやかへ話しかけると、ウンザリした表情であやかはため息を突いた、

「銀さんみたいに上手くいかないんですわよね・・・・・・」
「アイツもよく泣かすけどな・・・・・・・ていうかアイツが原因で泣くからな大体コイツは」
「あ、そういえば千雨さんも告白の時と最後のお別れの時に泣いてましたわよね?」
「バ、バカッ! このタイミングで恥ずかしい事思い出させるなッ! あん時は感極まってつい・・・・・・」

いきなりそっちに振られるとは想像していなかった千雨は顔を真っ赤にして木刀を強く抱きしめて恥ずかしそうに目を逸らす。

するとそんな事を話している所に約束通りあの生徒が・・・・・・

「そうそう、私もあの時はさすがに泣きそうになったよ、千雨ちゃんはいつもツンツンしてるけどやっぱり銀さんと別れるのが寂しいんだな~とか思っちゃったり」
「あら、朝倉さん」
「お前はホント何の前触れも無しに出て来るんだな・・・・・・・」
「この私でさえ朝倉和美の気配がわからなかったぞ・・・・・・」

何時の間にか三人の真ん中に現れた和美に、千雨とエヴァが怪訝そうに見つめているとあやかは彼女に話しかける。

「朝倉さんって何かと千雨さんを押しますわよね・・・・・・」
「う~ん、私は恋愛毎が苦手っぽい女の子を応援するのが好きなタイプだからね~」
「自分は恋愛事なんてやった事ないクセに・・・・・・」
「だって興味無いもん」
「あっさり言うなよ・・・・・・」

笑いながらそう言う和美に千雨はジト目でツッコミを入れる。
予想通りの答えだがそこまで元気に言われると逆に心配になって来た。

「お前だって人を好きになる事だってあんだろ?」
「異性として好きになるって事? いや~まだ無いかな?」 
「お前な・・・・・・」
「今は千雨ちゃんと銀さんがいかにラブラブなれるかって事しか考えてないし」
「あっそ・・・・・・」

二カッと笑いかけてきた和美に千雨はハァ~と深いため息を突いて呆れていると。
おもむろに和美は教室の窓から見える空を見上げてボソッと呟いた。

「銀さん、いつ帰ってくるんだろうね?」
「・・・・・・すぐに帰ってくるとは言ってたけどな」
「ま、すぐに帰って来ないと絶対に許しませんわね」
「当たり前だ、もし来なかったら召喚魔法で無理矢理にでも呼び戻してやる」

和美の呟きに三人は一緒に空を見上げながら各々の言葉を漏らす。

「なんか唐突に帰ってきそうだな銀八の奴・・・・・・」
「銀さんは人が驚くのを見るのが大好きな人ですから」
「私達の想像を遥か超えた先の事を平気でやってのけるが銀時だからな・・・・・・」

一人の男を思い浮かべながら、三人は空は雲一つない綺麗な快晴の空を見上げる。

和美は三人を眺めながら愉快そうに、そして嬉しそうに笑った。

「モテる男はツライね~銀八先生、早く帰ってきて可愛い嫁さん三人を喜ばしてあげなきゃね」






















































「ちくしょ~、玉でねえ、全然出ねえよ。あっという間に玉が飲みこまれていくよ、ふざけんなコレ壊れてんじゃねえか?」
「ムカつくよな~、コイツ等絶対に俺等貧乏人を見下してるんだよ、俺等の少ない金を吸い取って悦に浸ってるんだよ、ひでえよ、俺達マダオに救いは無いのかよ? どうあがいても絶望とか死にたくなってくるよ」

ここはかぶき町のとあるパチンコ店内。
椅子に座って目の前にあるパチンコに悪態を突いているのは銀髪天然パーマの男、坂田銀時。腰に木刀は差していない
その彼の悪友であるグラサンがトレードマークのまるで駄目なオッサン、通称『マダオ』こと長谷川泰三が彼に相槌を打っていた。
財布は両方ともほぼ空だ。

「あ~あ、こりゃあ今回も駄目だな・・・・・・それにしても、また銀さんとこうやってパチンコに行けるとは思わなかったな。てっきり俺、銀さん死んだと思ってたのに」
「人を勝手に殺すんじゃねえよ、あ、リーチ」
「ていうか銀さん何処行ってたの? ここ最近姿が無かったじゃねえか」
「ちょっくら長期の仕事でな・・・・・・“ガキの子守り”とかやってたんだよ」

長谷川さんにだるそうに返事をしながら銀時はパチンコを動かしていた。
すると向かいのパチンコの台からボーナス確定のBGMと猛々しい大声が

「ハッハッハッハッ!!! ラカンフィーバァァァァァァァァ!!!!」
「チッ、うるせえな、誰だよ向こうで騒いでる奴」
「こういう小さなパチンコ店ってのはさ、各々個人で戦う遊び場所なんだから、ああやって一人テンション上がって喜んでる奴ってマナーがなってねんだよ」
「なに勝者の気分で喜んでるの?って感じだよな、「勝った俺を見て」とかアピールしてもこっちは自分の台しか見えねえんだよボケ、マナーなってねえ奴にパチンコの女神様は一生降臨しねえんだよ、ん?」

長谷川と一緒に向かいにいる人物に文句を垂れながら、銀時はパチンコを動かしていると、ふと画面上に揃った二つの7の隣に7がやってくる。
そして・・・・・・

スリーセブンが揃った。その瞬間、パチンコからボーナス確定という意味の大音量のBGMが流れる。

「来たァァァァァァァ!!! 銀さんフィーバァァァァァァァ!!!!」
「アレェェェェェ!? さっき言ってた俺達の言葉は何処行ったのッ!? 速攻ティッシュに包んで捨てたッ!?」
「うるせえ負け組ッ! テメェはずっと生物の最低辺コースを走り回ってろッ! 勝ち組の俺は今からパチンコの女神様と合コンだッ! いよ~し銀さんフィーバァァァァァァァ!!!」
「ひでえよこの人ッ! 数か月前とまるで変わってないよッ!」 

さっきまでとは打って変わって狂喜乱舞する銀時に長谷川がツッコんでくるのに叫び返して銀時は勝利の雄叫びを上げ続ける。

すると向かいのパチンコ台からまた叫び声が

「ラカンフィーバァァァァァァァ!!!」
「銀さんフィーバァァァァァァァ!!!」

それに銀時はすかさず対抗。

「ラカンフィーバァァァァァァァ!!!」
「銀さんフィーバァァァァァァァ!!!」
「ラカンフィーバァァァァァァァ!!!」
「銀さんフィーバァァァァァァァ!!!」
「ラカンフィーバーだっつってんだろ誰だ急に俺様の邪魔する奴はッ!!」
「銀さんフィーバーだっつってんだろコノヤローッ!!」
「銀さん、顔も見えない向かいの人と喧嘩すんなよ・・・・・・」

叫び声が怒鳴り声に変わり銀時は席から立ち上がって向かいにいる筈であろう人物と喧嘩している。
それに長谷川はボソッと口を挟んだ。

「ここは同じ店でパチンコやってる同士なんだから仲良くやろうって? 多分、向かいにいる人は声からして休暇を取ったジャックバウアーだ、24時間走り回ってんだからここでは休ませてやろうぜ?」
「ケッ!」 

長谷川になだめられて銀時は苦々しい表情を浮かべながらもとりあえずドカッと自分の席に座り直す。

「しょうがねえ、今はジャラジャラ玉が出まくって気分がいいから許してやっか」
「銀さん後で飲み屋で奢ってくれよな」
「ああ、奢る奢る、うっひょーすげえ玉が出て来る」

気を取り直して自分のパチンコ台を見てみると銀色の玉が大量に出てる。
これは年に一度あるかどうかの大当たりだ。

「ヘッヘッヘ、さっきまで股を閉じて全然入らなかった場所に、今はガバガバ開いて入れ放題だぜ。いや~お堅いタイプかと思いきや実はかなりの淫乱だなコイツ」
「銀さん、その下ネタはマズイって、マジでヤバい」

ニヤニヤ笑いながらパチンコを眺めている銀時に、長谷川はタバコを咥えながら冷静に一言。
すると、彼の台にも遂にチャンスが

「来たッ! ラストリーチッ! マダオフィーバーまでもう少しだッ!」
「おお、やったじゃん長谷川さん、けどリーチで浮かばれんなよ、淫乱プレイが出来るのはまだ先だかんな」
「いや淫乱プレイが目的みたいに言うなよッ! 俺は純愛な子が好みなんだからッ! 来いッ! 今度こそ俺をマダオ卒業に導いてくれッ!」

両手を合わせて必死に祈る長谷川、これでミスったらまた一文無しに戻ってしまうからだ。
そんな光景を見ながら銀時はふとある事を思い出した。

「・・・・・・そういやここで俺はチビのせいであっちの世界に飛ばされたんだよな・・・・・・」

自分の台で玉が出ているのを確認しながら銀時をポツリと呟く。

「アイツ等元気にしてるかな・・・・・・チビはいつも通りワガママ言ってそうだな、あやかは今頃ガキ共を上手くまとめてんだろうな、千雨は・・・・・・あいつまだネットアイドルやってんのか?」
「来る・・・・・・! 来る・・・・・・! 俺は勝利への階段を昇っている筈だ・・・・・・!」

隣で長谷川がパチンコを凄い形相で睨んでいるのを無視して銀時はボーっと玉が出るパチンコを眺めている。

「早く帰ってツラ見せねえと、アイツ等にまたボコられそうだな」

出て来る銀玉をドル箱で回収しながらそう呟く銀時の隣では。

気高いラッパ音のファンファーレ。大当たりのBGMが鳴りだした。

「き、来たァァァァァァァ!! マダオフィーバァァァァァァァ!!!」
「なあ長谷川さん、今日ここに呼んだのはさ、ちょっと報告したい事があってよ」
「なんだよいきなり~、今からパチンコの女神様とダンスする所なのによ~。へへへへ」

大当たりが確定して泣くほど大喜びしている長谷川に銀時がおもむろに話しかける。
完全に舞いあがっている長谷川は全く聞く様子も無さそうにパチンコからジャラジャラと玉が出て来るのをニヤニヤしながら眺めている。

そんな彼を見ながら銀時はパチンコのカウンターに肘を突き。

自分のこれからの人生を報告した。
























「俺、結婚するわ」

満面の笑みを浮かべていた長谷川は自分のパチンコ台に頭から突っ込んだ。








[7093] 第?訓 銀色の魂を受け継ぐ者
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/08/01 07:50
これはある男が異世界に初めて行った日から数十年後の話。



































ここは江戸、何年の時を経ても代わり映えのない都市。
未だに宇宙船は飛び交い、天人達もこの場所に居着いている。
何も変わらない風景。

そして


























未だ根強く生きている彼らもまた少なからず存在する。
























武士道という己の信念を貫き、魂を込めた一本の刀で弱き者を護る者

時代の激流に流れながらも

残された彼等は今日も江戸の風を肩で切りながら歩く

























そして彼等の血を受け継ぐ者達もまた・・・・・・・








































第?訓 銀色の魂を受け継ぐ者



































「また君ここに来たんだ・・・・・・」
「・・・・・・」

時刻はちょうどかぶき町が賑わうぐらいの真夜中。場所はとある部屋の小さな取調室。
一人の黒い制服を着た男が呆れた目つきで机に肘をかけ、向こう側に座っている少女を眺める。
ここは無く子も黙る武装警察『真撰組』の屯所内。
何十年も経った今でも江戸では凶悪事件が後を絶たない、おかげで彼等もこうして市民を護る為に日々鍛錬を怠らず活動している。

男は今、急遽上司に呼ばれ、この少女の尋問をしろと押しつけられ仕方なくここにやってきたのだ。

「君もさぁ、ここ何回目? 今度は何したの? また喧嘩?」
「・・・・・・」
「いや黙ってないで何か言ってくんないかな・・・・・・」
「・・・・・・」

少女はこちらに目を背けて一向に口を開けようとしない。
こんな態度を取る彼女に男はハァ~とため息を突いてイスの背にもたれて天井を見上げた。

彼の名は山崎退、この真撰組が生まれた時から働いているベテラン隊士だ。
数十年前より少し老けたがそれ以外はあまり変わらず、未だに現役バリバリで“地味に”働いている。
主な任務は雑用と密偵、監察。そして最近上司に命じられた“ある新人隊士達の教育”。
だが、いつもの様に目の前にいる少女がここにやって来ると彼は必ずその上司に呼ばれ相手をしなければならない。
昔から変わらず、“イヤな仕事”はすぐに彼に回って来るのだ。

「今日は何か言えない事をしちゃったの?」
「・・・・・・」

持っているボールペンを回しながら山崎は少女に尋ねるもやはり無言。
こういう時がたまにある。彼にとってこういう彼女の態度はもう慣れっこだ。
山崎は昔から彼女の事をよく知っている。

髪型は銀髪のストレートにしているつもりなのだろうが、所々にピンと跳ねているクセっ毛が所々にあり、ボサボサ頭にか見えない少女。
目は少し死んだ魚の様な眼をしているが、顔立ちは綺麗に整っているのでじっくり見てみれば可愛いと言えば可愛いし、綺麗と言えば綺麗。だがあの目を見て誰もそんな事を言う筈ない。
波柄模様の着流しをいつも着ていてその下には赤い線が襟に入った上着、靴は黒いブーツ。
極めつけは腰の帯に差す一本の木刀、柄には『洞爺湖』と彫られている。

つまるところ、この銀髪の少女は山崎がよく知っている“ある人物”と瓜二つの格好をしているのだ。

「あ~あ、今日はせっかくのオフだったのにさ・・・・・・あ、口笛止めて」

銀髪の少女に愚痴の様な事をボソッと呟く山崎。だが彼女は全く口を割ろうとせず、それどころか机に肘かけて口笛まで吹き出す始末。

天井を見上げながら「カミさんに帰りが遅れるって連絡しとこうかな?」とか山崎が考えていると。

突然、取調室のドアがガタンと音を立てて開いた。

「やっぱそいつがここに来てたのか」
「ん? 君まだ残ってたの? 副長と一緒にもう帰ったんだと・・・・・・あッ! だから子供はタバコ吸っちゃダメだってッ!」

山崎がドアの方に振り向くと、そこには目を覆うぐらい長い前髪から、右目だけを覗かせる様に切ってある髪型をした少女が、真撰組の制服を着て口にタバコを咥えたまま立っていた。
彼女がここにいた事に山崎は一瞬驚くが、すぐに彼女が咥えているタバコを見て注意する。だが少女をそれを聞いても山崎に向かってフンと鼻を鳴らして口から煙を吐いた。

「俺はガキじゃねえっていつも言ってんだろ」
「いやぶっちぎりの未成年だから・・・・・・・それに女の子なのにそんな乱暴な口調を使うのはどうかと思うんだけど、ただでさえ君母親似なんだから・・・・・・」
「うるせえな、アンタには関係ねえだろ」
「・・・・・・こんな極上の反抗期を育てられる人って本当凄いよな・・・・・・」

瞳孔開き気味の目で睨んで来る少女に山崎は頭を押さえる。
毎度の事だが彼女には年相応の女の子になって欲しいものだ・・・・・・。
現実逃避しながら山崎がボーっとしていると、その少女はツカツカとこちらに歩いて来て銀髪の少女の方に近づいて行く。

「山崎さん、コイツの親に連絡は?」
「え? それはまだ早過ぎるんじゃ・・・・・」
「アンタ“あの人”から何も聞いて無かったのか?」
「いや、どうせまたこの子が誰かと喧嘩したんだろうと思って、すぐに電話切ってここに来ちゃったんだよ俺」

苦笑している山崎に少女はタバコを咥えながらボリボリと頭を掻いた。

「この女がやったのは『家出』だ」
「えぇぇぇぇぇぇ!! い、家出ッ!? またやったのッ!?」

銀髪少女がやった事を聞いて山崎はすっときょんな声を上げる。

「コイツの母親から捜索願いが出されてる。それをあの人が見つけて保護したってわけだ。相変わらず人騒がせな野郎だなお前は・・・・・・・」
「・・・・・・」
「シカトぶっこいてんじゃねえぞ家出娘、山崎さん、早く連絡してくれ」
「う、うん、わかったッ!」

机の上に置いてあった灰皿でタバコの火を消しながら少女はすぐに指示。
山崎はすぐに取調室から出て行った。
残された二人の少女は黙ったままそっぽを向く。

だがしばらくして銀髪少女に向かって長い前髪を手でいじくっていた少女は重い口を開いた。

「何度目だテメェが家出してウチに来るのは? ウチは託児所じゃねえんだよ。コレ以上面倒かけんな」
「・・・・・・フン」
「あ?」

一応真撰組隊士である自分に対して不機嫌そうに鼻を鳴らす銀髪少女に彼女は目を細めた。

「んだよ文句があるなら言ってみろ」

苛立っている様に瞳孔を開かせて、彼女は銀髪少女を睨む。
するとそんな彼女に銀髪少女はだるそうに顔を上げた。

「あなたのお父様もわたくしに思いっきり同じ事言ってましたわよ」
「なッ!!」
「親子二代に伝承されてるんですかその説教ワードは? こっちはうんざりですわコノヤロー」
「う、うるせえッ! 親父が何を言おうがこっちは知った事かッ!」

顔を突然恥ずかしそうに赤らめる少女を見て銀髪少女はニヤリと意地の悪い笑みを見せる。

「極上の反抗期でも性格は親とそっくりですわね、“愛さん”」
「テメェ・・・・・・!」

名前を呼ばれた事に反射的に少女は瞳孔を開いて腰に差してあった刀を手に持った。

「その名前を言うんじゃねぇ・・・・・・! たたっ斬るぞ・・・・・・!」
「あら、自分のお母様にいつも呼ばれてるじゃないですか? 「愛ちゃん、お弁当作ったからお父さんと仲良く一緒に食べてね~」って」

銀髪少女がせせら笑いしながら言った一言に。
ヤンキーみたいな顔つきをしていた少女の頭の中で何かが勢いよくブチ切れる音がした。

























「フ~、連絡して来たよ。すぐに迎えに来るらしいから早く支度して・・・・・・って何やってんのォォォォォ!!」

先程銀髪少女の親に連絡を取っていた山崎が取調室に戻ってみると。

自分の組織で働き始めた新人隊士といつもここに戻って来る迷惑銀髪少女が得物を抜いてつばぜり合いをおっぱ始めていた。

方や真剣、方や木刀。互いに歯をむき出していがみ合っている二人の少女に慌てて山崎が近づいて止めに入った。

「取調室で何サムライチャンプルーやろうとしてんのッ! 二人共武器しまってッ!」
「コイツの母親には「娘さんはピンポンダッシュして逃げる途中で階段から転げ落ちて死んだ」って言えば問題ないッ!」
「いや問題しか残ってねえよッ! ていうか問題以前の問題になってるよッ! また新たな問題を創造してどうすんだよッ!」

目をギラギラ血走らせながら恐ろしい事を言う少女に山崎はすぐにツッコミを入れる。
すると彼女と刃を交えている銀髪少女が口元に笑みを浮かべながら

「そんな隠蔽工作して私を斬り殺そうとするなんて、ご両親にはよ~く言っておきますから、愛ちゃん」
「殺すッ!! 一欠片も残さずにコイツを千切りにして殺すッ!!」
「あ~もうッ! 君も愛ちゃんを刺激しないでよッ!」
「アンタも俺の名を言うんじゃねえッ!」

ドサクサに自分の名を言う山崎に向かって少女は叫びながら、とりあえず苦々しい表情で刀を鞘におさめる。一応山崎には世話になっているしここで彼を無視して暴れるわけにはいかない。
銀髪少女もそんな彼女を見て渋々木刀を腰に差す。

「君達って本当に親の遺伝子をがっちり受け継いでるね・・・・・・」


山崎に言われた事にムスッとした表情で黙りこむ二人の少女。認めたくない事でもあるのだろうか。

「んじゃ、ま、とりあえず君のお母さんが迎えに来るから、大人しく待っててよね」
「お母様が・・・・・・?」
「当たり前でしょ、君の事話したらすぐに行くって慌ててたよ?」
「・・・・・・」

母親が来る事を知って銀髪少女の表情に曇らせるも、しばらくして首をコキコキと鳴らしながら取調室のドアに向かって歩いて行く。

「お母様はここに来る前にちょっと用があるので行ってきますわ」
「え? 何処に?」
「“ウンコです”、全く、年頃の女の子に言わせないで下さいな、セクハラですわよ」
「いやそこトイレとかお手洗いでいいじゃんッ! わざわざ出すモンの名を言う必要ないからねッ! 年頃の女の子なら言葉の使い方改めてッ!」

ツッコんで来る山崎に手を振りながら、銀髪少女はドアを開けて出て行った。
彼女が言った後、山崎はジト目で愛という名の少女の方へ振り向く。

「二世になっても犬猿の仲は続くか・・・・・・・」
「・・・・・・親は関係ねえ」

ポケットからタバコを取り出して口に咥えた後、『マヨ形』のライターで少女は火を付けて優雅にタバコを吸い始める。
そんな彼女に対して山崎は頭を抱えながらやれやれと首を横に振った。






















「さすが真撰組鬼の副長、土方十四郎の娘だよ」
「だから親父は関係ねえだろ、俺は俺だ」
「のどかちゃん、じゃないや“姐さん”にはなるべく心配かけない様にね」
「わかってるよ」

タバコの煙を上に向かって吐きながら、少女はウンザリした様子で答える。

土方愛 それが彼女の本名

何年も前から今までずっと現役で真撰組を支えているある男と、ひょんな偶然から彼と出会った一人の異世界出身の少女の間に生まれた大事な一人娘だ。
今は父親の元で真撰組の新人隊士としてまだ少女でありながら日夜鍛錬の日々を送っている

ちなみに彼女の名前を決めたのは当然母親の方。

「ていうか山崎さん、いいのかアイツを行かしちまって」
「別にトイレ行っただけだよすぐ帰って来るって」
「何言ってんだ、そんなモンこっから抜け出す為だけの口実だろ、逃げたに決まってる」
「えええええッ!!! ウソでしょッ! もうすぐあの子のお母さん来るんだよッ!?」
「だから逃げたんだろうが、アイツは家出してたんだぞ?」

冷静に状況を話す愛に山崎は両手を頭に付けて仰天する。
あの銀髪少女の性格は彼女は昔からよく知っている。

「母親のツラぐらいまともに見れねえのかアイツは・・・・・・」
「お~すッ! 山崎さんッ! おッ! お前もまだいたのかッ!」
「あ?」

銀髪の少女に微かな苛立ちを覚えているその時、ガチャリと取調室のドアが開き豪快な声が飛んで来た。

そちらに目を向けてみると案の定、同じ真撰組の制服を着た自分よりもずっと背も高く体格もがっちりした男が笑みを浮かべて立っている。
パッと見でゴリラと思わせる様な顔だ。

「よう愛ッ! こんな時間になるまで勤務するとはさすが副長の娘だなッ!」
「おい、俺は鬼の娘とか副長の娘とか言われるの大嫌いだって昔から何度も言ってんだろうが」
「何を言うッ! 俺達がこうして生を受けたのは全て親のおかげッ! その立派な親の血を受け継いで認めれると言う事はとっても名誉なことなんだぞッ!」
「相変わらずこんな時間でもうるせえ奴だな・・・・・・」

急に熱くなって語り出す男に愛はウンザリした表情で目を背ける。
すると男は今度は山崎の方へ

「山崎さんも非番であるのに勤務ご苦労様ですッ!」
「君もね、それにしても日に日に父親の局長にどんどん似て来たね・・・・・・ホント似過ぎてクローンじゃないかと疑うぐらい・・・・・・」
「ダ~ハッハッ!! 親父の様な立派な侍になる為に俺は頑張りますよッ!」
「妹は母親そっくりで兄貴は父親そっくりか・・・・・・」

豪快に大笑いをする自分よりも背の高くなった男を見て山崎は頬を引きつりながら苦笑する。

この男の名は近藤勝(こんどうまさる)

見た目と性格で分かる通りあの真撰組局長、近藤勲の長男坊である。
愛と“もう一人の少女隊士”とは小さい頃からの幼馴染であり、数少ない愛が自分の名を呼んでいいと認めている人物だ。ちなみに愛より年は一つ上、そしてもう一人の少女とは二つ上だ。

愛はそんな彼の方へまた振り向くと今度は自分から話しかける。

「ところで近藤さん、今日は“妃”(きさき)の奴が見えなかったんが?」
「ああ、「ふてぶてしくタバコ吸ってる未成年が視界に入ったから気分悪くなった」って言って家に帰って行ったな」
「あんのサディスティック星のプリンセスは全然やる気がなってねえな・・・・・・一回ヤキ入れとくか?」
「よせ、愛。俺とお前、そして妃は偉大なる親父達の後を継がなければいけねえんだ、いつかあの三人の親父を超えれるよう立派な侍になる為に、三人で仲良くしようじゃねえか」
「親父を超えれる様になるというのは賛成だがアイツと仲良くするのはごめんだ」

力強く訴えて来る勝に愛は嫌そうな顔を浮かべてポケットからタバコを取り出して咥える。

「アンタは俺やアイツと仲良くやっていけるが、俺とアイツはお互いに死んで欲しいと思っているからな」
「う~ん・・・・・・あ、喧嘩するほど仲がいいって奴かッ!?」
「日頃の俺等を見てどう解釈すればそのことわざに結び付くんだ? 犬猿の仲だろ普通」

少ない頭で自分の覚えていることわざを言って見る勝に愛がズバッとツッコミを入れていると、山崎が勝の方に歩み寄って来た。

「もう君も帰った方がいいよ、家の人達が心配するからさ」
「いえッ! こんな時間にこそ江戸に危険が迫っている筈ッ! 今日は徹夜でパトロールに行ってきますッ! 真撰組はいかなる時でも江戸を護る事を最優先にするというのが仕事だと親父に徹底的に教わっているんでッ!」
「へ~頼もしいなぁ」

力強く叫ぶ若い隊士がここまでガッツを見せて来るとベテランのこっちまで元気が湧いてくる。
山崎がそう感じている時、突然、勝の制服のポケットに入ってある携帯の着信音が鳴った。

「あ、すみません」

携帯が鳴った後に一回山崎に謝った後、勝は携帯を取り出してピッとボタンを押して耳に当てる。

そして次の瞬間

「ママ~ッ!! どうしたの急にッ!」

携帯に耳を押し当てながらさっきまでとは一気に方向転換して満面の笑みを浮かべて甘えた声になる勝。
山崎は唖然とした表情を浮かべ、愛は普通にそれをタバコを吸いながら眺める。

「ええッ! 晩御飯のが冷えちゃうから早く帰って来てだってッ!? うんわかった俺ママの為に全速力で帰るよッ! じゃあねッ!」

電話の相手は彼の母親だろうか?
終始甘え声で電話をした後、勝は電話を切ってポケットにしまい、すぐに真顔になって山崎に向かって敬礼する。

「お袋が危篤らしいんですぐ帰りますッ!」
「さっきまでの一部始終を見せて嘘付くなァァァァァァ!!!」

白々し過ぎるウソを突く勝に山崎は額に青筋を立てて叫んだ。
近藤勝の異常なマザーコンプレックスを見て、愛はタバコの煙を吐きながらボソッと呟いく。

「アレさえなければな・・・・・・・」















































銀髪の少女は今、真撰組屯所から抜け出してブラブラとかぶき町を歩いていた。
家に帰る気など更々ない。
彼女は死んだ目で『洞爺湖』と彫られた木刀を腰に差して人波をかき分けて行く。

まるでこのかぶき町を颯爽と歩いていた一人の銀髪の男の様に

「いっその事“銀千代”を誘って万事屋やってみるのも悪くありませんわね・・・・・・」

だるそうにボサボサになっている髪を掻き毟りながら銀髪の少女は、夜にも関わらず光があちらこちらに照らされているおかげで明るい街並みの中を進む。

「お母様はいつまでわたくしの事を子供扱いすれば気が済むんですの・・・・・・」

ブツブツと文句を言いながら段々不機嫌そうな顔になっていく少女。
反抗期まっさかりなのか彼女は母親とは上手くいってないらしい・・・・・・

少女が苛立ちを隠せない様子でかぶき町を悠々と歩いていると・・・・・・







目の前に道中合羽を着て三度笠を頭にかぶった者がこちらに歩いてくる事に気付いた。
廃刀令のご時世に腰の両脇に二本の脇差しを差し、その任侠物のドラマで見た様な格好に少女は一瞬物珍しそうに視線を向けるがすぐにそっぽを向いて黙って横切ろうとする。

だが

「・・・・・・その着物と木刀は父親の?」
「!!」

突然相手が口を開いた事にも少女は驚くが

それより驚いたのは自分の服装と木刀の持ち主を知っている事である。

その声が自分とさほど年も離れていない様な女性の声だ。

すぐに少女はパっと振り返り、いつの間にかこちらに向かって立っている謎の女を睨みつける。

「なにもんだテメェ・・・・・・ツラ見せろ」
「せっかちな女ね・・・・・・」

先程までとは一転して荒々しい口調になった少女に言われて女はひょいと三度笠を取った。

そこに現れたのは薄いピンクと銀が混ざった様な髪色をした小柄の少女。
目はぱっちりと開いており顔つきも幼いのでパッと見だととても可愛らしいただの女の子だ。

「・・・・・・・この辺じゃ見かけねえツラだな」
「アタシの名前は佐々木銀鏡(ささきしろみ)」

銀鏡と名乗った少女はニッコリと少女に笑いかける。

「あなたは坂田銀時と坂田あやかの一人娘だよね? 坂田銀華(さかたぎんか)さん?」
「お前・・・・・・!」

己の名前を知っている事に少女は否、銀華は目を見開いて驚く。この銀鏡という少女は会った覚えも無いのに自分の事をよく知っている。

「ホントに何モンだ・・・・・・」
「フフフ~、アタシの正体知りたい? 後悔しない?」
「いいから言え、私はキレやすいんだ、特にあの“ダメ親父”の名前が出た後だとな」

既に死んだ目ではなく殺気を込めた目に変わっている銀華を前にして、銀鏡は茶化す様に笑みを浮かべたまま自分の頬を人差し指で突いて首を傾げる。

「しょうがないな~、ま、アンタが話聞いくれないと元も子もないし」
「なんなんだコイツ・・・・・・」

よくわからない性格をしている銀鏡に銀華はしかめっ面を浮かべる。

一体何を企んでるんだ・・・・・・・?

彼女の疑問をよそに銀鏡は話を始めた。

「アタシの母親ってさぁ、“佐々木まき絵”っていうんだよ、知ってる? アンタの母親の同級生で、アンタの父親の元教え子」
「テメーの両親の知り合いなんか知らねえし興味がねえな、たぶらかしてねえでさっさと話したらどうだ」
「別にたぶらかしてるわけじゃないよ~、必要な話だったから話したまでの事、そんじゃあ次はアタシの父親の話を・・・・・・」
「おいいい加減にしろよテメェ、オメーの家族なんざどうでもいいんだよこっちは」

母親とか父親とか銀華にとってはどうでもいい事だ。
そんな彼女睨まれながらも銀鏡はニヤリと笑って真っ向から目を合わせた。

「あたしの父親も・・・・・・坂田銀時って言うんだよね」
「・・・・・・何言ってんだお前・・・・・・」
「母親から聞いてないの? あん時は大変だったらしいよ実際~、なんせ元から妻が三人もいるのに、よりによってアタシの母親に手を出すとか、フフフ」
「な・・・・・・!」

自分の言っている事にニヤニヤ笑いだす銀鏡とは対照的に、銀華はショックを受けたように唖然とした表情で固まる。

銀鏡の正体、それは・・・・・・

「要するに私は佐々木まき絵と坂田銀時の隠し子、あれ、どうしたの? 顔が真っ青だけど?」
「クソッタレ・・・・・・!」

自分の反応見て愉快そうに笑みを浮かべたまま尋ねて来る銀鏡に、我に返った銀華はグッと彼女を睨みつける。

すると銀鏡は話を続けた。

「アタシって元々“こっち側”の人間じゃないんだよ、今までずっと“あっち側”の人間として生きていたけど、数か月前からここに来て色々と調査をしていたのよ」
「・・・・・・調査? 調査ってなんの調査だ・・・・・・?」
「私とアンタの父親の居所、ずっと前から行方不明なんでしょ?」
「なッ! お前ッ!」

銀鏡の目つきが鷹の様に鋭くなる。
父親の現況を知っている彼女に銀華は思わず声を大きくしてしまった。

そんな彼女に銀鏡は近づいていき、目の前に立つとスッと手を差し伸べた。

「アンタも知りたいんでしょ? いなくなった親が何処で何をしているのか? アタシも知りたいのよ、父ちゃんの顔は写真でしか見た事ないから」
「・・・・・・」
「ねえ銀華」

手を差し伸べたまま銀鏡はまたニッコリと笑みを浮かべる。

「アタシと一緒に坂田銀時を探さない?」
「!!」

あやかと銀時の娘として生まれた銀華
まき絵と銀時の隠し子として生まれた銀鏡

二人の出会いが、再び江戸と麻帆良学園に波乱をまき起こす。










































新シリーズ

【3年A組 銀八先生! 波乱未来編】

人気投票編後に連載開始






















































「嘘だけどな~、ハハハハハ」
「オイィィィィィィィィ!!!!」

ここは麻帆良学園の中にある万事屋、室内でソファに座っていた銀時が普通にぶっちゃけると、向かいに座っていた千雨が指差してすぐに叫んだ。

「今まで長々と語ってたのに結局やんねえのッ!?」
「は~? やらねえよ、例えテメーのガキでも主人公の座は渡さねえから絶対。キン肉マンとかジョジョ見たいになると思ったか? ねえよ、ここで完結だよ」
「コレだけの為にあんな長いウソ予告を・・・・・・」
「最近の読者は中々騙されねえからな、これぐらい大がかりじゃねえとすぐにバレちまう・・・・・・あ~あ、やっと終わった」

頭を抱えてうなだれる千雨に銀時はふんぞり返って説明すると、彼の隣に座っていたあやかが目をパチクリさせて、千雨の隣で足を組んで座っていたエヴァが彼の方へ振り向いた。

「え? 終わるんですかコレ?」
「おい、私がロクに出番が無いのにここで終わるのか? いいのかここで? 」
「え? 俺は終わるって聞いたんだけど?」
「誰からそんな事を?」
「ヅラから」
「・・・・・・ヅラってあのウザったい長髪の事か?」

桂の事を思い出してエヴァが首を傾げると、部屋のドアがバーンと勢いよく開き

「たのもーッ!」
『ちーす』

その桂小太郎と仲間であるエリザベスがテンションを上げて万事屋に入って来た。
銀時は二人の方を振り向いて眉間にしわを寄せる。

「何でお前等がここ来るんだよ・・・・・・」
「まあ待て銀時、このエリザベスを見てどこか変だと思わないか?」
「あん?」

桂が隣にいるエリザベスに指を指すので、銀時と他の三人もふとエリザベスの方を見る。

相も変わらない無表情でいつものボードを持ってつっ立っていた。

「・・・・・・いつも通りの変な生き物ですわよ?」
「いつも通りのお前の気持ち悪いペットじゃねえか」
「いつも通りじゃない、今エリザベスは猛烈に怒りを覚えているのだ。見ろエリザベスが持っているボードを」

目を細めるあやかと銀時に言われると桂はすぐにエリザベスが持っているボードを見ろと指示。
彼が持っているボードには『メラメラ』と四文字書いてあった。

「な?」
「何が「な?」だよッ! しかもそのどや顔すげぇ腹立つんだけどッ!?」

どや?って顔で微笑を浮かべる桂に千雨がツッコんだ瞬間、エリザベスが急に『ぬおぉぉぉぉぉぉ!!』と書かれたボードを振り上げて桂の隣で暴れ回る。

『うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「ハッ! どうしたエリザベスッ! 進化かッ!? 進化するのかッ!?」
「おい勘弁しろよッ! この部屋狭いんだから暴れんなッ!」

慌てて桂が止めようとするも、あっちこっちへボードを叩きつけながら暴れ回るエリザベスは彼の制止を振り払う。
だが銀時が自室を滅茶苦茶にしている彼に怒鳴り声を空けた途端。

エリザベスは急に静かになり、そこにいる者達に見える様ヒョイとボードを掲げた。






























『『3年A組 銀八先生!』のスピンオフ作品が制作決定』



































「「「「・・・・・・・え?」」」」
「ヘ~イッ!」
『ヘ~イッ!』

ボードに書いてあった言葉に銀時達万事屋一行は物事の事態を飲み込むのに時間がかかった。
その間に桂とエリザベスは元気にハイタッチ。そして桂はカメラ目線でビシッと指をさして

「という事でまた会おう」
『これからもよろしく』
「「「「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

万事屋メンバーの雄叫びが、部屋の外まで大きく木霊するのであった。




































最初で最後のあとがき

こんにちは、『3年A組 銀八先生!』を書いていた者です。
連載期間は一年と四カ月。最初は叩かれまくって辛かった時もありましたが、ようやく最後まで山を登れました。
ここまで読んでくださった読者の皆さま、誠にありがとうございます。
最後の最後に嘘予告とかやってすみません、もちろん未来編が続きなんてのはありませんのでご安心をw
色々伏線っぽいものが残っている様ですがここで銀八先生は一旦終了とさせていただきます。
ホントは書きたい話が一杯あるんです、読者さんからも要望があったのですが、結局出来なくて申し訳ございません。
色々考えていますが、とりあえず人気投票編を書いた後、少し休んでから決めようと思います・・・・・・・執筆の間ロクに寝れなかったのでw
それではまた会える事を祈りましょう。
最後にもう一度、本当に読んでくれてありがとうございました

カイバーマン

P・S
人気投票は8月1日まで投票可能とさせていただきます。
それから人気投票の結果で話を書きますので

※投票は既に終了しました








[7093] 番外編 人気投票など死んでくれ・・・・・・
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/09/20 10:22
人気投票最終結果!

1位(81票) 坂田銀時

2位(70票) 長谷川千雨

3位(55票) 雪広あやか

4位(42票) ネギ・スプリングフィールド

5位(30票) ナギ・スプリングフィールド

6位(27票) 近藤勲

7位(26票) 沖田総悟

8位(25票) エヴァンジェリンA・K・マクダウェル

9位(24票) 佐々木まき絵

10位(23票)アリカ・スプリングフィールド

11位(22票)坂本辰馬

12位(20票)桂小太郎

13位(19票)土方十四郎

14位(18票)桜咲刹那

15位(17票)宮崎のどか

16位(16票)高杉晋助

17位(13票)綾瀬夕映/山崎退

18位(12票)神威

19位(11票)神楽坂明日菜

20位(10票)村上夏美

21位(9票) 神楽/那波千鶴/柿崎美砂

22位(8票) 志村新八

23位(7票) 龍宮真名/操絡茶々丸/朝倉和美

24位(6票) アーニャ/犬上小太郎/エリザベス/アルビレオ・イマ/ネカネ・スプリングフィールド/服部全蔵

25位(4票) 近衛木乃香

26位(3票) 阿伏兎

27位(2票) カモ/早乙女ハルナ/長谷川泰三/松平片栗虎/長瀬楓/夜王鳳仙

28位(1票) お登勢/近衛詠春/チャチャゼロ/月詠(ネギま)/鳴滝風香/鳴滝史伽

合計693票 人気投票に参加して下さった皆様ありがとうございました。



















































思えば人は何故、なにかと順位を決めつけたがるのだろうか



















『ナンバーワンにならなくていい元々特別なオンリーワ~ン』とか何処かのアイドルユニットが歌っていたが現実はそんな綺麗に生きる輩などいやしない。
毎日順位を競い合って人間共は競争社会に徹している。
高みを目指し人間達は努力を続け、今日も何処かで順位づけをしているのであろう。

だがしかし

本来向上するべき場所に立ちながら、頑張っても頑張っても目標に決して向上する事のない番付があるとしたら?
向上心も泣く敗北心だけしか残らない番付があったとしたら?
はたしてそれは必要な事なのか?
















だからあえてここで言おう、人気投票って必要なのか?
仮に必要だったとしてもそれを人様に公開する事は必要なのか?







メインヒロインだったのに8位だった私は・・・・・・











必要なのか?





















番外編 人気投票など死んでくれ・・・・・・


























ザーザーと外で雨が鳴り響いている中、とあるファーストフード店の二階にて一人の少女はいた。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(8位)はボーっとした顔で窓から外を眺めている。

「あれ、エヴァさんじゃん。こんな所で何してるの?」
「・・・・・・」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえたのでエヴァはげんなりとした表情で後ろに振り返る。
そこには自分と同じこの人気投票にランクインされているキャラの一人が。

「・・・・・・なんだ9位か」
「9位って言ったね、別にいいけど普通に9位って言ったよね、まき絵だから、佐々木まき絵だからね」
「うっさい9位、仮に私が貴様の名前を呼んでも貴様が9位だと言う事に変わりは無いんだぞ、現実を受け止めろ9位風情が」
「ああもういいや9位で、今は好きに呼びなよ」

後ろからやってきたのは自分より順位が一つ下の9位こと佐々木まき絵が、自分と同じ死んだ表情で両手にハンバーガーやらジュースやらが乗ったトレイを持ってつっ立っていた。
エヴァに何を言われても傷付いた様子も無くまき絵は彼女の隣に座った。

「万事屋には行かないの?」
「・・・・・・どのツラ下げて行けると思ってんだ、相変わらず貴様の頭には何も入っていないのだな」
「ごめん、そうだよね。トップ3がいる場所になんて行く気しないよね・・・・・・」
「それを言うな、今は現実に直面する事だけでも鬱になるのだぞ・・・・・・・」

両方とも虚空を見つめ目も合わさずにそんな会話をしていると、エヴァの方がうなだれてどっと深いため息を下に向かって吐いた。

「・・・・・・なんでヒロインなのに8位なんだろうな・・・・・・」
「仕方ないよ、エヴァさん修学旅行編に参加したの終盤だったし。ちょっと運が悪かったんだよ、ちょっと運が悪くて30話ぐらい出番なかったからだよ」
「・・・・・・私と同じぐらいしか出ておらんのに5位の奴だっているんだぞ」
「・・・・・・」

掛ける言葉が見つからないほどにエヴァは激しく落ち込んでいた。
まき絵がどうしたもんかと考えていると、突然隣にいた彼女がガン!と両手の拳で強くテーブルを叩きつける。

「なんでヒロインの私が8位なんだッ!」 
「・・・・・・」
「私以外のヒロイン二人が主人公と仲良くトップ3に入っているのになんで私は8位とかいう中途半端な位置に座っているのだッ!」
「あの~エヴァさん落ち着いて、他のお客さんに迷惑だから・・・・・・」

何度も拳でテーブルを叩き始めるエヴァをまき絵は疎めようとするも、エヴァは椅子の上に立ち上がって抗議する。

「大体おかしいだろッ! なんでメインヒロインの一人が30話も放置プレイ食らわなきゃいかんのだッ! 上手いモンは最後に食べる為に残しておくというのがあるが時間かけ過ぎだろッ! こっちはもう完全に腐る所だったわッ! 修学旅行の序盤から出ていればこんな醜態晒す事無かったのにッ! 銀時と私でワンツーフィニッシュが出来たのにッ! 長谷川千雨のいる位置は私だったのにッ!」
「いやそれはどうかな、トップ3の投票数見る限り他キャラを圧倒しているし・・・・・・」
「黙れヒロインでもなんでもない脇役がッ! そもそも貴様と一つしか順位に差が無い事がムカつくッ! なんでこの私が貴様のような脇役と一票しか差が無いのだッ!」

自分を見下ろして怒鳴り散らしてくるエヴァ、うっすらと涙目を浮かべている彼女にまき絵は唖然とした表情を浮かべて目を合わせる。
まさかこっちに八つ当たりしてくるとは・・・・・・

「私だって・・・・・・私自身だってなんで9位とかいう一ケタ台に入っているのか不思議でしょうがないよ。シリアス回の終盤は出番なんて無かったのに・・・・・・本当はもっと後ろにいたかったのに読者がふざけて投票入れるからこんな位置にまで昇っちゃって・・・・・・」
「・・・・・・9位」

目の前に置かれた食べ物に全く手もつけずにまき絵はただうなだれてエヴァにギリギリやっと聞こえる様な小さな声で呟くだけ。
エヴァは八つ当たりするのを止めて静かに立っていた椅子に座り直す。
そういえばさっきからずっといつもの様な覇気がない。
本来なら彼女はいつも騒がしいポジションに立つキャラだった。
だが今の彼女は自分よりも衰弱しているのではないかと思うぐらい暗い表情を浮かべている。

「変にこんな順位になっちゃたから亜子や裕奈に「ちょっと調子乗ってるんじゃねえの?」的な目で見られたし・・・・・・いやホントに私、9位になんて高い順位なんかに入る人間じゃないんだよ、エヴァちゃんの言う通り私は脇役として脇役らしい所にいたかった・・・・・・人気は無いが不人気でも無い、出番は無いけどたまにウロチョロしながら登場してレギュラー達と絡む。そういう場所に立っている私がこんな位置にまで立てる資格なんてないんだよ・・・・・・」
「9位・・・・・・貴様そこまで思い詰めていたのか」
「いい加減名前で呼んでくれないかな・・・・・・・」

しんみりとした顔で聞いてくれているエヴァにまき絵はボソッとツッコミを入れるとおもむろに席から立ち上がった。

「私、ちょっと気分悪くなったから寮に帰るよ。なんか外も雨模様だからちょっとテンション暗くなっちゃった、ごめんね変な話しして、ちょっと愚痴の一つや二つ言ってみたくて・・・・・・聞いてくれた俺に私のハンバーガー食べていいから」
「・・・・・・言う相手を間違えてるぞ、今度から愚痴を聞いて欲しいなら朝倉和美にでも言え。私は悩むクラスメイトに励ましの言葉やアドバイスを送るとかそんな事が出来る女ではないのだからな」
「ハハハ、そうだね・・・・・・」

背を向けて去ろうとするまき絵の方に振り向かずにエヴァはぶっきらぼうに一言。
誰かの為にアドバイスを送る事など自分には出来ないと彼女自身がわかっているのだ。
そんな彼女にまき絵は申し訳なさそうに苦笑した後、最後に一言付け加えた。

「頑張ってね・・・・・・」
「ん?」

背後から聞こえた意味深なセリフ、まき絵が持って来たハンバーガーを早速食べ始めているエヴァは咄嗟に後ろに振り返るが。

そこに9位の少女の姿は無かった。

「頑張れって何を言っているのだあの9位は・・・・・・順位はもう決まってしまったのだから今更頑張っても意味が無いだろ。やっぱバカだなあいつは」

モグモグと両手で持ったハンバーガーを食しながらエヴァはいなくなったまき絵に呆れた調子で独り言をつぶやいた。
今更どれだけ頑張ろうが努力しようがもう遅いのだ、自分はもうどれだけ足掻いても8位から上の順位になる事も出来ない。
トップ3から五つ離れた所が自分の順位だと決まってしまったのだ。

「せめて4位だったらなぁ・・・・・・」

虚ろな目でハァ~とエヴァがそんな途方も無い望みを呟きながらため息を突いていると。

突然、後ろの方から誰かが話しあう声が聞こえた。

「今回の人気投票って絶対おかしいわよね、特に2位が」
「そうだな、この作品において先生の隣は私だって公式に決まっているのにな」
「公式とか勝手にねつ造しないで、ストーカーのあなたは一生天井裏に潜んでなさい。誰がなんと言おうと2位に立つべきは“ウチのあやか”だった筈よ」
(なんだ、また聞き覚えのある声がするぞ・・・・・)

二人の女性がある事について抗議を出し合っている。
嫌な予感を感じながらもエヴァは恐る恐る声が聞こえた方に振り返ってみる。

案の定、そこには見知った顔のクラスメイト二人が4人用の席に座って向かい合って喋っていた。
23位の龍宮真名と21位の那波千鶴という普段滅多に絡まないであろう二人が

(何やってんだアイツ等・・・・・・)
「龍宮さんも残念だったわねぇ、色々と出番があったのに不甲斐ない順位で」
「ああ、やはり全年齢対象板だったのがダメだったな。×××板だったなら間違いなく上位にランクインしてただろうに」
「あらあら、一体何やらかすつもりだったのかしら」

エヴァの疑問をよそに千鶴は口に手を当ててクスクスと目の前で腕を組んで座っている龍宮に笑いかけている。
どうやら今回の人気投票について語り合っている様だが・・・・・・

「そういえばあなたと同じ順位の朝倉さん遅いわね」
「ん? 朝倉は私と同じ順位なのか? あんなに出てるのに」
「そうよぉ、ほとんど出ずっぱりだったのに23位だなんてホント可哀想」
「それに比べて君はそこまで出てないのに私達より上なんだよな」
「嬉しかったわぁ、夏美も20位だったし。あやかの仁徳のおかげね」
「いや別に彼女は何も・・・・・・」
「綺麗で優しくて人との絆を大切にするあやかのおかげねぇ」
「・・・・・・なんでそこまで雪広をプッシュするんだ?」
「これ読んでる人にいかにあやかがヒロインとして素晴らしかったのかを教え込む為よ、『3年A組 銀八先生!』のヒロインはあやかが至高なのだと頭の根の底にまでねじり込んでおかないと」
「それ洗脳だろ」
(コイツ等って二人だけだとこんな会話するのか・・・・・・)

ニコニコと笑っている千鶴に龍宮がいつもの無表情で話しかけているのをエヴァは息をひそめて聞いている。別に二人が嫌いだと言う訳ではないが、苦手意識みたいなのがあるからだ。

(龍宮真名は銀時専用の変態マゾストーカー、那波千鶴は前々から銀時には雪広あやかが一番合うと言い続けてる女だからな。この二人に絡むとロクな事にならないのは目に見えている、単純な構図にするとコイツ等は敵勢力みたいなモンだしな)
「めんご~待った?」
(ん?)

エヴァが冷静に思考しながらオレンジジュースをストローで飲み干していると龍宮と千鶴のテーブルに一人の少女が階段を上ってやってきた。

「いや~ちょっと寝坊しちゃって」
「2位は連れてきて無いのか?」
「当たり前でしょ、私達下位と違って千雨ちゃんはコレ以上無い程のベストポジションにいるんだから」
「あら残念、“色々とお話したかったのに”」
「千鶴さんがいる所には絶対に連れてかないようにしてるから」
「ウフフ、どういう意味かしら」
(朝倉和美だと・・・・・・? なんだこの組み合わせは・・・・・・全く個性も考えも違う者揃いではないか)

現れたのは万事屋情報員担当の朝倉和美であった。エヴァが驚いている中、コーヒー一杯を片手に持ったまま和美は龍宮の隣に座り、席に着くなり頬杖を突いて大きなため息を突いた。

「あ~あ、それにしても千雨ちゃんは銀さんとワンツーフィニッシュという不動のヒロインとしての貫録を見せつけたのに私は23位か~・・・・・・・」
「君は修学旅行編ではかなりの登場頻度だったのにな」
「まあ私は元々千雨ちゃんのアシスト役として話に出てる様なモンだったからね、こんぐらいの順位が妥当なんだろうけど。欲を言えばもうちょっと欲しかったな~、まさか変態ストーカーと同格扱いされるなんて」
「朝倉、私はな先生に変態だとかマゾだとか、ストーカーだとか言われると興奮する。だがな、同級生のお前に言われても全然嬉しくないんだぞ」
「なにその理不尽かつ冷静な怒り方、恐いんだけど」
「ダメだな、お前にはマゾヒストのツボを突くサドヒストとしての才能が無い」
「そんなもんあってもすぐにティッシュに丸めて捨てるよ」
(このアホ共はこんな事を話し合う為にやってきたのか・・・・・・?)

コーヒーを飲みながら隣で腕を組んでマゾヒストについて冷静に語り出す龍宮を適当に流している和美を見てエヴァは呆れた目つきで物陰から眺める。
とても今時の中学生が会話する内容では無い。

(龍宮真名、那波千鶴、そして朝倉和美。まさかこんな三人組とこんな所で会うハメになるとわな・・・・・・)
「それじゃあまず上位にランクインされた人達を改めて検証してみようか」
(ん?)

テーブルの上に持って来た一枚のA4サイズの紙を和美が楽しげに広げると、龍宮と千鶴はその紙に書かれた内容を読む為に顔を近づける。
書かれているのはもちろん、本編で行われていた人気投票のランキングだ。

「上位って言ってもどこから上位なんだ?」
「う~ん、15位ぐらいからが上位だと思うよ」
「じゃあ15位から順にどんな人物なのかを改めて読者達に紹介して、なおかつなんで彼等が人気が取れたのかを私達で考察してみましょうか」
「この選ばれた15名は何故読者にウケが良かったのかを今後の為に調べておこう」
「ははは、面白くなってきた~。じゃあまずは15位から13位までをチェケラ~」
(・・・・・・なんか始まった・・・・・・)

8位という称号を頭の上に付けているエヴァがコッソリと眺めている中、和美、龍宮、千鶴の三人は自分達のテーブルに置かれたランキング用紙をジッと眺め始めた。

15位(17票)宮崎のどか

「15位は宮崎さんねぇ、非戦闘要員なのにここに食い込めるとはさすがね~」
「ほう、ていうことはアレか? 私があせくせ戦っている中、彼女はのうのうと票を増やしていたのか? 私が先生との会えない苦しみがピークに達している間、彼女はのうのうとニコチン男とイチャついてかつ票を貰っていたのか?」
「その言い方だとなんかのどかちゃんが悪く聞こえるから止めて・・・・・・」

感心している言葉を漏らす千鶴だが、龍宮の方はここにはいないのどかに向かって軽いジャブ。和美はすかさず目を細めて彼女に向かって指摘した後、次の順位を見る。

14位(18票)桜咲刹那

「む? なんで刹那が宮崎の上なんだ? コイツ読者に散々ヘタレだとか空気読めない子だとか言われていたキャラの一人じゃないか」
「全蔵さんとの戦いとか意外にシリアス方面で活躍したからじゃない? この子も一応修学旅行編の中で成長した人物の一人だし」
「シリアスで頑張れば票が貰えるの? じゃあ私次回からはシリアス方面で頑張るわ」
「一生無いよ、うん絶対」

笑顔で拳を顔の所まで掲げてガッツポーズを取る千鶴に和美は即座に口を挟む。
空気ブレイカーの彼女だけはどんな事があろうと間違いなくシリアスサイドの話にはならない。和美の直感がそう告げていたのだ。
千鶴にツッコんだ後、和美は再びランキング用紙に目を下ろした。

13位(19票)土方十四郎

「ここで名前が出たか~この人ならもっと上の方に行ってもおかしくない筈なんだけどな~、主役級に活躍してたよねこの人?」
「それほど上には上がいたんだろう二つの作品を合わせた人気投票だしな。原作通りの順位に入るのはこの空間では難しい筈。私も原作通りの順位だったらもっと上だった筈だしな」
「あら? 龍宮さんって原作だと24位だったわよね、今の順位より下じゃない?」
「だってよ龍宮さん」
「・・・・・・なんか無性にやりきれない気持ちになった・・・・・・31人に絞ってもそんな順位なのか私って・・・・・・」

両手で顔を押さえて塞ぎこむ龍宮、よっぽどショックなのであろう。
だがそんな彼女を隠れて見ているエヴァも思わず彼女同様やりきれない気持ちになる

(原作だと私3位だった・・・・・・なのにここだと8位・・・・・・)

原作とこの世界の人気の差に店内にも関わらずエヴァが床に両手をついて深く絶望していると、彼女の存在に気付いていない和美は次のランキング用紙を持って次の順位を発表した。

「じゃあ今度は12位から10位だね」

12位(20票)桂小太郎

「悪役でもあり正義の味方でもある桂さんの登場だよ」
「ああ、刹那が嫌っている男か」
「あらあら、桜咲さんはこういう長髪系の男の人は苦手なの?」
「長髪関係無くこの男と刹那は根本的な考えが違うんだ、だから刹那は彼を嫌っている。刹那の奴は完全に悪・即・斬の真撰組思考だからな。近衛もそれで苦労しているだとか」
「どうして近衛さんがそこで困るのかしら?」
「う~ん、木乃香はどちらかというと桂さんサイドだからね・・・・・・。今後が大変だよこの二人・・・・・・・まあそれは置いといて次は11位行ってみようッ!」
(切り替え早いな・・・・・・・)

11位(22票)坂本辰馬

「出たよ原作ではちょびっとしか出てないのに人気だけはある男、意外にバトルでも活躍したしコレぐらいの順位が妥当かな?」
「攘夷組が二人連続か」
「さっきの人といいここら辺は私ちょっとわかんないわねぇ・・・・・・」
「まあ桂さんと坂本さんは銀さんが言うには神出鬼没らしいからいつか会えるかもよ」
(止めろッ! その女とあの男達を絡ませたら余計この世界が破綻するだろうがッ! ただでさえグラグラしてていつ崩れるかわからない世界観なのにッ!)

立ち直ったエヴァが笑っている和美に心の中で叫んでいる中、千鶴も笑みを浮かべながら「そうねぇ、いつか会ってみたいわねぇ」と言って次の順位を見た。

10位(23票)アリカ・スプリングフィールド

「あらまた知らない人、誰かしらこの綺麗な人」
「ネギ先生の母親だよ」
「へ~ネギ先生のお母さんってこんな若くて綺麗なのね~、一体いくつの時に子作りしたのかしら」
「はい千鶴さんストップッ! 変な事考えなくていいからッ! それにしても修学旅行編では銀さんにとってのラスボスと言っても過言ではないネギママさん、まさかここまで上がって来るとは意外だな~」
「とりあえず私はこの人は嫌いだ、私の先生を何度も剣で突き刺したと聞いたからな」
「どさくさに私の先生とか言わないでよ、ストーカーはホント自己中的な考えなんだから・・・・・・」
「そうよ、銀八先生はあやかだけのモノよ」
「違うよ千雨ちゃんのモノだよ」
(お前等も自己中だろうが・・・・・・ていうか銀時は私のモノだッ! いやむしろ私がアイツのモノだッ!)

三人で誰が銀時に相応しいだとかを揉めているのを隅に隠れながら心で叫んでいるエヴァ。
普通の一般客から見ればかなり異様な光景である。

「まあいいよ千雨ちゃんが銀さんに相応しいってのはランキングでわかってるんだから、今更二人が何を言っても決まってる事だからいいんだけどね」
「ランキングなんか関係ないさ、大事なのは愛だ愛。読者が決めたランキングなどで誰がヒロインに相応しい等、そんなふざけた幻想ぶち殺す」
「フフフ、少なくともウチの作品は変態さんをヒロインに採用する事は無いと思うわよ」
「その幻想もぶち殺す」
「いや幻想じゃないから、事実だから、リアルだから、いい加減受け止めて現実を。さて、今度は9位と8位を・・・・・・」

真顔でアホ丸出しな事を言ってのける龍宮にツッコミを入れた後、和美はテーブルに置かれたランキング用紙に視線を送る。

9位(24票) 佐々木まき絵
8位(25票) エヴァンジェリンA・K・マクダウェル


だが次の順位を見た瞬間すぐに顔をしかめて

「ああ~・・・・・・9位と8位はパスでいっか」
(なにぃぃぃぃぃぃぃ!?)
「佐々木とエヴァンジェリンか。この二人は読者がノリと哀れみで入れたとしか思えないから別に学ぶ事も無いだろ」
「調子乗ったら墓穴掘る、反面教師的なモノは学べるけどね。ホントなんでトップ10に入ってんだろこの二人、その辺墓穴だらけのクセに・・・・・・」
(ふざけるなぁぁぁぁぁ!! 9位はともかく私は活躍しとるわぁぁぁぁぁぁ!! さっきまで「このキャラがここが凄かったから上位に入れた」とか言ってたのになんで私と9位の時だけは冷たいんだお前等ッ! 早く私の長所を上げろォォォォォォ!! ずっと楽しみにしてたんだぞコラァァァァァ!!)
「へ~こんな人達でも上位に入れるの、世の中って意外と適当に回っているのね、真面目に生きてるのがアホらしくなってくるわ」
(おのれに言われたくないわァァァァァァァ!!! つうかお前自分で真面目に生きてると思ってるのかッ!?)

さっきまでとは打って変わって冷めた表情の和美に龍宮が頷き千鶴も笑みを浮かべながら相槌を打つ。
このやり取りに8位のエヴァは怒りに悶えながら彼女達を血走った目で凝視していた。

(忌々しい下位順位トリオがッ! 私の人気に妬みおってッ! いや8位とかいう中途半端な位置だけど・・・・・・だがコイツ等に比べれば私の人気の方がはるかに上だッ! 今から殴り込みに行って痛い目見せてやろうか・・・・・・!)
「さてさて、中途半端の順位なのにプライドだけは無駄に高いエヴァちゃんが飛んでくるシチュエーションが入る前にさっさと順位を発表しちゃおう、ここから一気にベスト7からベスト4まで」
(チクショウ私の行動読まれたッ!)

エヴァの思考回路を先読みした和美は頭を掻き毟りながらさっさと次の順位の発表に取りかかる。

7位(26票) 沖田総悟

「出たよ出たよ・・・・・・ネギま世界最も脅威となる悪魔がッ! この人ホントなんでこっちの世界にやってきたのッ!? 完全にいちゃいけない人だったよねッ! 高杉さん以上に危険人物だったよねッ!?」
「ウチの生徒も何人かこの男に襲われたからな、先生に匹敵、いやそれ以上のサディストかもしれん。まあ私は先生のサドっぷりが一番だとわかっているがね」
「そんなに怖い人だったかしら? 私が話しかけるとすぐ逃げ出しちゃうから、女性に慣れていないちょっぴりシャイな男の子って感じだと思ってたんだけど?」
「さすがこの世界唯一無二のドSキラー・・・・・・この人がいればなんとかネギま界があの人に征服される事はないね・・・・・・」
「あらあら、人をカビキラーみたいに例えるの止めてくれないかしら?」

ニコッと笑って訂正を求める千鶴に「いや事実だからしょうがないじゃん、これからもよろしくドSキラー」と言って和美は軽く流し、すぐに次の順位に目をやった。

6位(27票) 近藤勲

「あ、あのゴリラが6位ッ!? 凄いッ! 奇跡ってこの世に存在するんだッ! なんか空から槍でもカエルでも降ってくるかもしれないよコレッ!?」
「ほう、やはり綾瀬とのラブコメがこのゴリラをここまで票を取らせたか、意外性ナンバーワンのカップルだからな」
「あら? このゴリラさん飼育小屋に閉じ込めてたのに逃げちゃってたの? まあ大変、今度見つけたらちゃんと頑丈な檻に閉じ込めておかないと」
「・・・・・・なんかあったのこのゴリラと?」

頬に手を当てて笑みを浮かべる千鶴に、和美は何か恐ろしいものを感じながらもランキング用紙に視線を落とした。

5位(30票) ナギ・スプリングフィールド

「あ~ネギパパかそりゃあそうだよね、ラスボスを倒したのはなんていったってこの人だからね。出番あんま無かったのにこんな位置にまで昇り詰めるとはさすが英雄」
「先生の活躍を横から掻っ攫った男か、やはりスプリングフィールド夫妻は気にいらないな。今度ヒマがあったら撃ち殺しに行こう」
「いや返り討ちにあうのが関の山だと思うよ」
「ネギ先生ってお母さんも若そうだけど、お父さんもお若そうね、きっとわたし達ぐらいの年の時に自らのノリとテンションに任せてネギ先生を作・・・・・・」
「千鶴さん、それ以上の憶測はプライバシーに関わるから喋るの止めて、出来れば一生」

暴走する龍宮と千鶴を巧みに黙らせながら和美はどんどん話を進めて行く。
こういう手順はすっかり万事屋の所で慣れている。司会進行はお手の物だ

「さ~て、次は4位だね」

4位(42票) ネギ・スプリングフィールド

「おおッ! 修学旅行編では出番も多かったし活躍の場もあったし、幼馴染との確執、師匠との予想だにしない再会、一度は死を経験をしながらも以前よりもずっと成長をして復活したネギ先生ッ! 序盤の銀八先生では予想だにしなかった結果だねッ!」
「ああラスボスか、やっぱ強いんだなラスボスは」
「ラスボスって言うなッ!」
「ラスボスになると人気が上がるの? じゃあ次回のラスボスは私が・・・・・・」
「アンタがラスボスになったら誰も勝てないでしょうがッ! ていうか無いからッ! 絶対無いからッ! ってかよくよく考えればこういう時にツッコむ人って千雨ちゃんが一番の適任者じゃんッ! なんで私がこんなことしなきゃいけないわけッ!?」
(今更か・・・・・・)

龍宮と千鶴のボケ合戦に遂に和美は両手をテーブルに叩きつけて吼える。
そんな彼女をようやく落ち着いて来たエヴァがこっそりと心の中で呟いていた。

(億が一にも無い事だが“コイツ等には”負けなくて良かったな。負けていたら私の高貴なプライドがズタズタに引き裂かれる所だった、いや8位でも十分ズタズタだが)
「はぁ~、もういいや気を取り直して・・・・・・・それじゃあ遂に本作品最も人気のあった三本指、「3年A組 銀八先生! 第1回人気投票」に見事ベスト3入りを果たしたキャラ達を紹介しようか」
(うわ・・・・・・遂にこの時が来たか・・・・・・)
「この3人はダントツで票を貰っていたからね、もう完全に出来レースだったよ。やっぱ主人公とヒロインの力は絶大だね」
(私もヒロインなのに・・・・・・)

ヘラヘラ笑いながら喋っている和美にエヴァが物陰からコッソリ顔を覗かせながら寂しげに心の中で呟いていると、「それじゃあ第1回人気投票でベスト3に輝いた猛者達を発表しま~すッ!」とエヴァの気も知らずに和美は軽い口調で龍宮と千鶴に向かって叫んでいた。

3位(55票) 雪広あやか

「ある時は万事屋のまとめ役、またある時は健気に恋の成就を夢見る純粋無垢な少女、更には世間知らずのお嬢様、銀さんと一緒にボケを連発するなど多彩な顔を持つヒロイン、その少女の名はいいんちょッ! 本作品で二人目のヒロインが3位を獲得ッ! てか55票とかどんだけッ!?」
(ホントにどんだけだ、私の2倍以上の票を獲得するとか意味がわからん・・・・・・・)
「ウチのあやかは別格だから」
「そうだね~まあその別格のヒロインを超えたヒロインは更に別格だと言う事になるけどね~」
「ウフフフ、朝倉さん。私だって“怒る時には怒るのよ?”」
「那波の背後から黒いオーラが出て来たぞ」
「ここで臆したら負けだ・・・・・・! 続いてみんなが待ってた2位を紹介ッ!」

目の所に影を作ってゴゴゴゴゴゴと奇妙な擬音を鳴らせながら笑みを浮かべる千鶴に対して和美は少し畏怖しながらも勇気を振り絞って次の順位を発表した。

2位(70票) 長谷川千雨

「万事屋、いや本作品のボケの飽和を防ぐ我らがツッコミ隊長ッ! そして女性キャラとしても最も人気の高い完全無欠のヒロインッ! 長谷川千雨ちゃんの登場だァッ! 者共頭が高いッ! 控えおろうッ!」
(クソ~やっぱダメだ、改めて見るとこの女の人気にはまるで勝てる気がしない・・・・・・)
「70票だと・・・・・・私と朝倉の10倍もあるとか化け物か・・・・・・くッ!」
「ええ、どれだけ自分で自分に票を入れたのかしらね。そんな事を裏でコソコソとやっていたなんて確かにウチのあやかとは別格ね、ウチのあやかはそんな事しないもの」
「千鶴さ~ん、残念ながらこの人気投票に不正は無いからね~、ありもしない事を平然と言ってのけないで~、いくらいいんちょが“負けた”からって千雨ちゃんに向かってそれは無いんじゃないかな~」
「あやかが負けた? や~ねぇ、長谷川さんが2位になれたのってあの子が読者の人気を得るが為にツンデレだとかダルデレだとかクーデレだとかその辺のジャンルを手当たり次第にやって必死に票を伸ばしたからじゃない。その点ウチのあやかはモジデレ(モジモジしながらデレるの略称)一角です、人気では負けたかもしれないけど女では勝ったわ」
「ふふ~ん、それって千雨ちゃんは幅広いジャンルに適応してなおかつそれぞれ特化してるって事だよね。一つのジャンルのみにしか特化していなかったいいんちょには悪いけど、それが3位と2位の違いなんじゃないの?」
「落ち着け朝倉、キャラが変わってるぞ」
「・・・・・ちょっとネギ買って来ていいかしら?」
「落ち着け那波、なんかこう全体的に落ち着いてくれ。黒いオーラがどんどん広がってるぞ」
(な、なんで魔力も持たない筈の那波千鶴が背後から漆黒の影を創成しているんだ・・・・・・)

不敵な笑みを浮かべる和美に対して千鶴は背後からどす黒いオーラを放ちながら口元だけを無理矢理笑わせている。
さすがにこの気まずい空間にいるのが堪えられなくなったのか龍宮は交互に彼女に話しかける。
ちなみにエヴァは千鶴の覇気に怯えて隠れたまま震えている。

「今日は長谷川と雪広のどちらかがヒロインに相応しいかと議論する為に集まったわけじゃないだろ、その議論は私がいない時に勝手に二人でやってくれ。お前等二人の近くに座っているだけでこっちは息苦しいんだからな」
「はぁ・・・・・・仕方ない、千鶴さんとの議論は後回しにしよう、なんか無限に続きそうだしここで話したら番外編がそれだけで潰れちゃうよ」
「そうねぇ・・・・・・ネギ持ってきてないし」
「一体何でそこまでネギに執着するのかはわからないけど・・・・・・とりあえず本作品最も票を手に入れ一位に君臨した人物を発表するよ~」

珍しく龍宮が仕切り役になり喧嘩が勃発しそうな和美と千鶴を疎める。
それを受けて二人は渋々と引き下がった。千鶴の方はまだ納得していない表情だが。
和美はそれにビビりながらもランキング用紙を手に持って、人気投票一位を発表した。

「『3年A組 銀八先生!』で一番人気の高かった人物、第一位は・・・・・・」

1位(81票) 坂田銀時

「やっぱり銀さんだァァァァ!! さすがは主人公、確固たる人気を持ち不動の地位に堂々と君臨ッ! なぜここまで人気があるのかは説明は不要ッ! 強いて言えばこの人はこの人だからこそ1位を取れたと言う事だけだねッ!」
「さすがは私の嫁」
「いえあやかの嫁よ」
「千雨ちゃんの嫁ッ!」
(そこ嫁じゃなくて婿だろうに・・・・・・う~銀時に三倍以上の票の差で負けてしまった・・・・・・ハァ~~~~~~)

相変わらずの不毛な争いをやっているのを呆れた顔で見送った後、エヴァは物陰に隠れながらその場にペタリと体育座りして大きなため息を喉の奥から吐いた。

(やっぱ出番が終盤のみだったのがダメだったんだな、出番さえあればきっと読者の奴等はおろか銀時でさえ私の魅力にイチコロだったのに・・・・・・)

泣きそうな表情でしばらく天井を眺めていたエヴァだが、突如スクッと立ち上がって頭を垂れながら変える準備を始めた。

(こんな所で連中の話を聞いていても返って惨めになるだけじゃないか・・・・・もう私が8位だという事は揺るがない事実、8位は私が一生背負わなければならない十字架なんだ・・・・・・さっさと家に帰ろう・・・・・・)

自分のトレイと先に帰ってしまったまき絵のトレイをトレイ置き場に置いて、和美達の方からは見えないようにエヴァは落ち込んだ表情でコソコソと帰ろうとする。




だがその時




「それじゃあベスト15のメンバーが誰だかわかった所で・・・・・・そろそろ“本題”といこうか」
「そうだな、だがそれは本当に出来るのか?」
「ふふん、まあやってみないとわからないけど、コレさえ出来れば・・・・・・」
(コイツ等まだつまらん事語り合う気か・・・・・・いい加減自分の順位を認めろ馬鹿共が・・・・・・)
「コレさえ出来れば順位が上がるのよね、上手くやれば私達も上位ランクに格上げよ」
(・・・・・・へ?)

三人の会話に最初エヴァは心底呆れた表情でさっさと帰ろうとした。だが楽しそうに言った千鶴の一言が、エヴァの足をピタリと止めるのは容易であった。

(順位が上がる・・・・・・? バカなッ! もうこの人気投票は既に結果が出ているッ! 投票キャンペーンは8月1日を持って終わっているというのにコイツ等一体何をッ!)
「人気投票とは読者からの票のみで競い合うゲーム、だけどこのゲームにはかっこたる抜け穴が存在する・・・・・・投票が終わった後でも、私達が上位にランクイン出来るという抜け穴をッ! それを今実証する時が来たよッ!」
「実証だと? どうやってやるんだ? まさか私達の中で・・・・・・」
「ご安心を、ここに来る前にちょっといい事あってね~、ほら」
「まあ、あらあら、こんなものよく手に入れたわね~」
「まあ“あの中”では一番取りやすいしな、さっそくコイツで試してみよう」
(ぬおぉぉぉぉぉぉ!! 気になるッ! 一体あいつ等はどういう方法で上位を上げる気なのだッ! 私だって順位を上げたいッ! ヒロインに相応しい順位になりたいッ!) 

和美達の言っている内容にすぐに食いついたエヴァは先程までは家に帰ろうとしていたのを忘れて三人娘の方へ振り向き気付かれぬように近づく。
そして・・・・・・




和美の手には「9位」と書かれたプレートあった。

(・・・・・・おいアレって)
「さっき偶然9位の人に会っちゃって~、まあそん時に・・・・・・アハハハハ」
「やだ~神様からの贈り物かしらね~、9位」
「9位は犠牲になったのだ、仕方ない、私達が9位の魂を受け継いでやろう」
(おいアレェェェェェェェ!!)

顔を横だけ出して覗いていたエヴァは驚きを隠せない表情で凝視する。
数分前に別れたクラスメイトの順位プレートが今和美達の手中にあるのだ。
恐らく自分と別れた矢先に和美と出会って・・・・・・

(殺ったのかッ!? 9位殺ったのかッ!? クラスメイト殺ったのかッ!?)
「じゃあ早速これ砕いてみようか」
(え?)
「えいや」
(ぬわぁぁぁぁぁ!! 9位がッ! 9位がァァァァァァ!!)

一瞬の躊躇も見せずにクラスメイトの順位プレートを強くに握って破壊する和美。
グシャリと音を立てて粉々になってしまった無惨な9位プレートに、エヴァは思わず手を伸ばして心の中で絶叫を上げてしまった。

しかし次の瞬間、彼女は更に驚く現実を目のあたりにする。

「やった~順位が22位に上がった~」(23位→22位)
「9位が消えたおかげで先生の順位に一歩近づけたな」(23位→22位)
「凄いわこんな事が出来ちゃうなんて、これでベスト20に入れたわ」(21位→20位)
(じゅ、順位が上がったァァァァァァ!! どういう事だ、9位のプレートが破壊された事によって奴等の順位が上がるなんて・・・・・・!) 

なんと和美達の順位が一つだけ上がっているのだ。嬉しそうにはしゃいでいる三人を見てエヴァは我が目を疑う。
人気投票の結果はとっくに決まっている筈なのになぜ順位が?

今目の前で行われた現実を受け止める為にエヴァは難しい表情で頭を必死に捻る。
そして10秒後、彼女はハッとして顔を上げた。

(もしや私達の上に付いているこのプレートは順位を決めているだけではなく人気投票の参加者という資格証明でもあるのかッ!? その資格証明を奴等は破壊した、破壊したのは9位・・・・・・よって9位から下のメンツは1つ繰り上がったという訳かッ!)
「次は誰にしようか? 夏美なら千鶴さんがお願いすれば順位譲ってくれるかもしれないよ、譲ってくれないならその時はその時だけど」
「この『志村新八』とかいう奴誰だ? なんで私の上にいるのかは知らんが狩ってもいいんだな?」
「上位になると強い人が多いから難しいわねぇ、次は誰から行こうかしら?」
(コイツ等上の順位を潰していって自分の順位を上げる気なのか・・・・・・? なんという強引なやり方だ、人気ではなく己の力のみを行使して順位を上げるとは・・・・・・)

楽しそうになんとも物騒な話を喋りあっている三人にエヴァは背後からぞくりと寒気を感じる。だが戦慄する恐怖と共にふといいアイディアが閃いた。

(イヤだが待て、これは私でも出来る事ではないのか? 私の上にいるメンツの順位プレートを奪えば、私の順位も跳ね上がるのではないか?)

和美達がやっていた事を行使すれば自分の順位を上げるチャンスである。さっきまでずっと落ち込んでいたエヴァの表情にニヤリと明らかに悪だくみしている笑みが現れた。

(人気投票争奪戦か・・・・・・面白い、その争奪戦に私も狩人として参加してやろうではないか、そしてゆくゆくは2位に、いや1位になってやるッ!)

よからぬ企みごとをしなければエヴァは踵を返してその場から去ろうとする。

(待っていろ私より順位が上の奴等・・・・・・特に雪広あやかと長谷川千雨は絶対に私の手で狩らなければな・・・・・・!)
「ん~、あ、決めたわ、この子にしましょう」
(ん?)

帰ろうとした矢先に千鶴が次はだれを標的にしようかと決めたのが耳に入ったので、またもやエヴァは足を止めてそちらに目を向ける。

しかしそれと同時に

「次は・・・・・・8位からやりましょう」

今まで見た事も無い妖艶な笑みを浮かべて。
千鶴はこちらにチラリと目を向けていた。
どうやら彼女はずっとエヴァの存在に気付いていたらしい・・・・・・

「ずっと隠れて盗み聞きしてたわよね・・・・・・けどエヴァさんにはもう必要のない事じゃないの?」
「ふ・・・・・・ふぇ?」

千鶴の放つ迫力と風貌ににエヴァはビクッと体を震わせ硬直する。
まるでヘビに睨まれたカエルの様に。
そしてエヴァは改めて自分の身の状況に気付いた。









自分は『狩人』としてではなく『獲物』として彼女に見られている事を



















「3年A組 銀八先生!」最後の戦いが始まる。








[7093] 番外編 人気投票など死刑だうわぁぁぁぁぁん!!
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/08/16 13:18

ガッシャーンッ!という音と共に一人の少女、エヴァンジェリン(8位)がファーストフード店の二階からガラスを割って出て来た。

エヴァはダン!と地面に両足で着地し必死な形相で荒い息を吐く。

「ハァッ! ハァッ!・・・・・・チッ!」

さっき飛び下りた2階から放たれた殺気に気付きエヴァはは咄嗟に体を横に翻す。
その瞬間銃声が鳴り、彼女がコンマ0.1秒前にいた地点に鉛弾が着弾した。

(ちょッ! 奴等マジでこの私を殺る気かッ!? ていうか町中で普通に実弾使うとか何考えてんだアイツはッ!)
「闇の福音と呼ばれた悪の魔法使いが逃げ腰に徹するとは情けないな」
「なにッ!」
 
挑発とも思える発言が耳に届き、すぐさまエヴァは振り返ってガラスを割って出て来たファーストフード店の二階に顔を上げる。

そこには片手でも扱うにはかなりの技術を要求される銃、デザートイーグルを両手に一丁ずつ構えながら龍宮真名(22位)がこちらを見下ろして立っていた。

「得意の魔法を使えば私たちなんて瞬殺出来るんじゃないか? 呪いはもう解呪されたんだろ?」
「ぎ、銀時から自分が許可下ろさない限り使っちゃいけないって言われてるのだッ!」

狙ってくるハンターに威嚇する獣の様に、エヴァはキッと尖った二本の八重歯を出して龍宮に向かって吠える。だが

「先生との契りは絶対に破らないと言う訳か、だがその強情が仇になるとも知らずに」
「ぬわッ!」

返事は二発目の銃弾だった。

狙いはやはり8位の順位プレート。狙う場所を知っていたエヴァは頭を前に下げて間一髪の差でそれを避ける。

「魔法は使わずとも身体能力は意外にあるんだな」
「龍宮さん倒せそう?」
「なに、魔法を使えないエヴァンジェリンなどビー玉の撃てないビーダマンと同じだ」
「いや例えが意味分からない」
(朝倉和美・・・・・・)

ヒョコっと龍宮の隣に現れ彼女に話しかけてる朝倉和美(22位)に視線を泳がせるエヴァ。

(コイツに戦闘力は無い、だがコイツはしつこいからなぁ・・・・・・逃げても中々振り切れんぞ絶対)
「ねえ、まだ終わらないの?」
「千鶴さん、なんで呑気にポテト食ってるの?」
「お腹が減ったからよ」
「いやそんなキリッと言われても・・・・・・」
(那波千鶴に関してはなんかもう勝てる構図が想像出来ん・・・・・・仕方ないここは一旦逃げるぞ)
「あッ! エヴァちゃんが逃げたッ!」

ポリポリとポテトを食いながらやってきた那波千鶴(20位)に和美がジト目で呟いているのを見送った後、エヴァは踵を返してその場から走り出す。
龍宮はその後ろ姿に銃口を向けるが数秒間静止した後スッと銃を下ろした。

「捨て置くか」
「えッ! どうしてよッ!?」
「エヴァンジェリンの行動は大体予測できる、彼女の交流の幅は狭いからな。行く場所は大体分かる」
「え? 何処? 自分の家に逃げり込むの?」
「いや・・・・・・」

タッタッタッタッと町の中を全力疾走するエヴァの背中を眺めながら龍宮は目を細めた。

「学校だな、あそこには彼等がいる筈だ」












「チィッ! バカ共め私に牙を突き付けた事を永遠に後悔させてやるッ!」

息を荒げ無我夢中で走り続け、エヴァはある場所に向かう事だけを考える。

とにかくここはあそこへ行かなければ・・・・・・・











そう













一位がいるであろう万事屋へ

















番外編 人気投票など死刑だうわぁぁぁぁぁん!!


















数分後、麻帆良校舎内
ダッダッダッダっと階段を二段飛ばしで駆け上がりエヴァは廊下も全力疾走で走る。

「アイツ等を撒けたか・・・・・・?」

走りながらチラリと後ろに振り返るがそこには和美達はおろか人っ子一人いない。
追って来ない、その怪しい雰囲気に戸惑りつつもエヴァは走るのを止めなかった。

あの男なら・・・・・・一位のあの男ならきっとなんとかしてくれる。

そのただ一つの希望の為にエヴァは廊下を駆け巡る。

そして遂に・・・・・・

「着いたッ!」

『万事屋銀ちゃん』と書かれた表札がある部屋を見つけ、エヴァは足で急ブレーキをかけてその部屋の前にピタリと止まる。

「この時間帯ならアイツはきっとここにいる筈だ、もしかしたら“アイツ等”もいるかもしれんが・・・・・・」

眉間にしわを寄せながらエヴァはドアノブを握る。だが

「ん? なんで鍵がかかってるのだ?」

ガチャガチャっと音が出るだけでドアは一向開こうとしない。
いつもは鍵などかけていないのに・・・・・・

「お~い銀時、いるか~?」
『ああ~?』
「銀時ッ! やっぱりここにいたかッ!」

試しに声を出して彼の名を呼んでみるとすぐ様返事が飛んで来た。
エヴァは顔を輝かせドンドン!と激しくドアをノックする。

「私だッ! 早く開けろ緊急事態なんだッ!」
『え、誰? 鶴屋さん?』 
「違うわッ!」
『すんません鶴屋さん、SOS団はもう終わりなんですけど?』
「だから違うと言ってるだろッ! さっさと開けろッ!」

この状況下でもふざけている人気投票一位の男、坂田銀時にエヴァはドア越しに怒鳴りつける。
しかしそこから数秒の沈黙が流れた後、ドアの向こう側にいる銀時は怪しむ様に

『・・・・・・じゃあお前誰だ?』
「はぁッ!? 貴様のヒロインのエヴァンジェリンに決まっておるだろうッ!」
『お前知ってる?』
『私、エヴァさんは知ってますがヒロインのエヴァさんは知りませんの』
「貴様等ァァァァァァ!! ていうかお前もいるのか雪広あやかァァァァァァ!!!」
『・・・・・・白井黒子ですの』
「嘘つけぇぇぇぇぇぇ!! 口調似てるからって騙されんぞぉぉぉぉぉッ! てかさっさと開けろォォォォォォ!!!」
『ジャッジメントですの』
『ああ似てる似てる、あいつもそんな感じだった』
「うっさいわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

部屋の中には銀時と恐らく3位の雪広あやかがいるのであろう。二人仲良く自分をダシにしてコントをしている。
あやかもいると知ってエヴァは怒り心頭で両手でドアを叩きまくる、するとしばらくして

『お前等コントやってないでさっさと開けてやれよ』
「ん? この声は長谷川千雨・・・・・・おい長谷川千雨さっさとここを開けろッ!」
『はいはい、開けるからドアを叩くのを止めろ。壊れる』

万事屋トリオ唯一の常識人にして2位の長谷川千雨も部屋にいた。
エヴァはドアを両手で叩きながらすぐ様彼女に向かって偉そうに命令すると、ドアからカチャリと鍵を解いた音が聞こえ、すぐにガチャっと開く。

「開けろ開けろッ!」
「ったく、んな大騒ぎして連中にかぎつかれでもしたらどうすんだ・・・・・・おふッ!」
「あ、すまん」

ドアを思いっきり拳で叩く事に集中していたおかげで、千雨がドアを開けたのも気が付かなかった。
ドアが開いて千雨が出て来た瞬間、エヴァは彼女の腹に思いっきり拳を叩きこむ。
突然の奇襲に千雨は成すすべなく腹を押さえてしゃがみ込んだ。

「いきなり腹殴るとかお前何考えてんだ・・・・・・!」
「だからすまんと言うておるであろう」
「あのな・・・・・・ところでお前どうしたんだ今日は?」

少しも悪びれもせずにしかめっ面で謝罪するエヴァに、千雨は彼女以上にしかめっ面になりながら腹を押さえて立ち上がる。
するとエヴァは彼女の頭の上にある“ある物”を見つけた。

1位の銀時に次ぐ2位と書かれた順位プレートを・・・・・・・

「せいッ!」
「ぐぶッ! コ、コイツ故意的に・・・・・・!」
「故意じゃないぞ~、間違えてしまったのだ。いや~すまんすまん」
「すげぇやコイツ、自分でやっておいてわざとじゃないかとほざいてやがるよ・・・・・・」

2位の順位プレートが目に入った瞬間、エヴァは間髪いれずに千雨の腹に真正面からストレート。
またもや腹を押さえてその場に崩れ落ちた彼女にエヴァは棒読みで謝罪する。

「そこでしゃがみ込んでると入れないではないか、さっさと退け」
「いやしゃがみ込んでるのは誰のせいだと思ってんだよ・・・・・・」

高慢な態度で近づいてくるエヴァに千雨は悪態を突きながらも彼女が部屋に入れるように立ち上がって一歩後ろに引く。

「全くこの私を部屋に入れる事だけにどれだけ時間をかけておるのだ・・・・・・」

やっと万事屋銀ちゃんの部屋に入ったエヴァは腕を組んだ状態で部屋の中を見回してみる。

別段変わった様子も無い、だが部屋の奥にある事務用の机に足を乗せながら椅子に座る銀髪天然パーマ、坂田銀時(1位)と、中央にあるソファにチョコンと行儀よく座っている雪広あやか(2位)が目に入った時、エヴァは二人を睨みつける。

「ドアぐらいさっさと開けろバカ者」
「なに言ってんだオメー、このサバイバル戦のバトルロワイヤルな状況で不用心にドア開ける甘い奴なんて何処にもいねえよ、ああいたわここに。千雨、お前警戒心無さ過ぎんだよ」

先程すぐにドアを開けた千雨に銀時はけだるそうに注意するが、注意された本人は口をへの字にして

「声でエヴァだって分かっただろ・・・・・・」
「だから甘えんだよ、今回はチビだからよかったものもし俺の順位を脅かそうと狙っている鶴屋さんだったら今頃俺達は3人仲良く順位圏外だぜ」
「そもそも鶴屋さんいねえよこの世界にッ!」

眉を潜ませ考察深い表情を作る銀時に千雨はビシッと指差してツッコミを入れる。
するとソファに座っているあやかの向こう側のソファに座ったエヴァは二人の会話にふと気になった事が。

「バトルロワイヤルな状況・・・・・・?」
「この校舎内で下位の順位が自分より上位の人を襲うという事態があるかもしれませんのよ」
「なッ! まさかお前等もそんな目にあっていたのかッ!?」

あやかの情報にエヴァはすっときょんな声を上げて驚く。まさか朝倉和美以外にもこの人気投票を歪ませようとする者達がいたとは・・・・・・
あやかは足を組み、ソファの肩かけに頬杖を突いて向かいに座るエヴァに向かって目を細める。

「まあ私と千雨さんと銀さんはトップ3ですからね、8位のあなたより敵が多いんですの」
「なんかそのムカつく言い方が癪に障るな・・・・・・」
「で? “8位”のエヴァさんも誰かに襲われたんですか?」 
「8位を強調するな殺すぞ。ついさっき朝倉和美含む三人の下位順位の連中に襲われた」
「朝倉さんが・・・・・・? 千雨さん」
「ん?」

イライラした調子でエヴァは吐き捨てる様に数分前の出来事を教えると、あやかは細めていた目をパチッと開き、後ろで腕を組んで立っている千雨の方に振り返った。

「朝倉さんもこの順位競争に参加してるらしいですわよ?」
「マジか? でもアイツだったら問題ねえだろ、どっちかというとこっち側の勢力じゃねえか」

別段心配してなさそうな表情の千雨にエヴァは顔を上げて

「ちなみに朝倉和美の仲間は龍宮真名と那波千鶴だぞ、そして数分前に9位を亡き者にした」
「前言撤回・・・・・・並大抵のレベルじゃない敵勢力じゃねえか・・・・・・」
「よくもまあそんな濃い連中が結束しましたわね・・・・・・」

和美の愉快な仲間達に戦慄を感じる千雨とあやか。
龍宮真名は戦闘術に関してはプロだし、千鶴に関してはその存在だけで恐ろしさを感じる。

「でもいいんちょは那波に襲われねえだろ、アイツと仲良いんだし」
「それだったら千雨さんも朝倉さんに襲われる心配はないじゃないですか、龍宮さんは銀さん意外全員狙う理由がありますが・・・・・・」

げんなりした表情でそう答えるあやかに千雨ははぁ~とため息をついた。

「どっちみちここに近づかせちゃいけない勢力ってわけか・・・・・・朝倉がこっち側だったら便利だったんだけどな」
「チッ、仕方ねえ」

さっきからずっと黙って彼女達の話を聞いていた銀時は、机に足を乗せたまま腕を組んで顎に手を当てる。

「和美が敵に回るっていうなら俺達もそれなりの作戦を立てなきゃな」
「銀八、まさか・・・・・・」
「このままここに隠れてるわけにもいかねえだろ」
「銀時」
「あん?」

心配そうな表情を浮かべる千雨と会話している銀時にエヴァがソファに深々と座りながら口を開く。

「朝倉和美達意外にも敵がいるのだろ? それは誰だ?」
「オメーはここに来る前に連中に会わなかったのか?」
「連中?」

小首を傾げるエヴァに銀時は不機嫌そうにフンと鼻を鳴らした。

「真撰組サイドだよ」
「真撰組サイド? まさかッ!」
「ああ、アイツ等はトップ3に入った俺達の首を狙っている、万事屋サイドの俺等を抹殺して自分達をもっと上位に食い込ませようとしているらしい」
「やはり朝倉和美達と考えてる事は同じか・・・・・・」

思わぬ敵勢力にエヴァが眉間にしわを寄せていると、今度はあやかが彼女に向かって話しかける。

「真撰組の例の御三家に咥え、刹那さんや宮崎さんもいますわ。しかもこの校舎内の何処かに潜んでいるらしいですの。だから私達はここで息をひそめて隠れていたんです」
「そんな奴等など私はここに来るまで一回も見なかったぞ?」
「ホントですか? でも私と千雨さんはいつも通りにここに来た時に連中が集まってコソコソと喋っていたのを耳に入れましたわ」

あやかがそう言うと後ろにいる千雨がエヴァの方に口を開いた。

「万事屋サイドを潰して読者の人気を自分達で総取りして。次回作の銀八先生スピンオフを『真撰組特番スペシャル』にするってな」
「・・・・・・いや無理だろそれ・・・・・・」
「だよな、別にそんな事しても一回や二回は真撰組の回はあると思うんだけど・・・・・・」
「あの人達は自分達の回だけで次回作をやりたいのでしょう、要するに人気投票トップ3の私達の存在が邪魔なんですの、自分達が負けた事を強引に捻じ曲げようとするなんて野蛮極まりありませんわ」

朝倉和美達に加え真撰組という強大な敵勢力。彼等の目的を聞いてエヴァは頬を引きつらせ千雨も同意するように頷き、あやかは呆れた調子で彼等に悪態を突く。
すると彼女達の話を聞いていた銀時は机から足を下ろし、スクッと立ち上がると。
三人に向かっていつもの死んでいる魚の様な目で話しかける。

「とにもかくにも連中の好き勝手にはさせねえ、俺達はなんとしてでもこの順位を護るんだ。やられる前にやってやるよ、真撰組だろうが和美達だろうがな」

はっきりと断言する銀時にあやかも強く頷く。

「ええ、なにせ私達トップ3ですから、この順位は絶対に死守しなければ。それにしてもメインヒロイン二人と主人公のトップ3・・・・・・なんかいいですわね・・・・・・」
「そうか? 私はこんな面倒事に巻き込まれるならもっと後ろの順位でも良かったぞ?」
「それは私に対して喧嘩をお売りになってんですか千雨さん・・・・・・!?」
「い、いやそんなつもりはないんですけど・・・・・・・な、なんかごめん」

やる気のなさそうにぶっちゃける2千雨にあやかは目を細めてキッと睨みつける。
銀時に次ぐ2位になれた千雨がそんな事言っても勝者の戯言にしか聞こえないのだ。
少し怒った調子になっているあやかに千雨が困った様子で後ろ髪を掻いていると、エヴァがあやかにジト目で話しかける。

「おい、さっきから私の事忘れてないか、私もヒロインで万事屋サイドなんだぞ」
「・・・・・・まあこんな所に素敵な捨て駒が一人おりましたわ、特攻要員に使えそうですわね」
「おいッ!」
「私達は2位と3位なのに8位だなんて・・・・・・フ、随分中途半端じゃありませんこと? それでヒロインって名乗れますか?」
「うう・・・・・・・」
「あらあらまたお泣きになるんですか? あなたはそればっかり、まあそういうキャラだから仕方ありませんわね。8位のエヴァさんにはふさわしいキャラですわ」

意地悪な事を行って来るあやかに、エヴァはすぐに目頭を熱くさせじんわりと涙目になりすぐに

「うわぁぁぁぁぁぁんッ! 好きでこんな順位についた訳じゃないんだぞ~~ッ!!」
「うわ、泣いた・・・・・・よっぽど気にしてたんだろうな、溜まったものが一気に爆発したよ」 
「こんな泣き虫と一緒で大丈夫でしょうか、前途多難ですわ」
「泣かしたのはお前だろうが・・・・・・ん?」

目の前で大粒の涙を流して人目も気にせずに泣きだすエヴァにあやかはめんどくさそうに首を振り千雨がそんな彼女にツッコんでいると、銀時が突然ツカツカと部屋の中を歩きだしドアの方へと近づいて行く。
そして怪しむ様に腰をかがめて鍵穴から目を覗かせる

「どうしたんだ銀八?」
「・・・・・・かったりいからスルーしていたがチビがこの部屋に来てからずっとこのドアの前に張り込む気配があってよ」
「はッ!? マジかよッ!?」
「どうにもそのチビはそいつに泳がされていたらしい。俺等が隠れている場所を見つける為にな、チビが誰にも会わなかったわけだぜ。今はもういねえがな、大方テメーの本拠地に戻ったんだろ」
「真撰組サイドの連中の一人か・・・・・・すげぇなそいつ、一応エヴァってそれなりの腕を持った魔法使いなんだろ? そんな奴に気付かれる事なく尾行なんてするなんて・・・・・・」

腐っても鯛、エヴァの実力が相当なのは修学旅行で千雨は十分熟知している。
そんな彼女に何一つ租も無く近づいて尾行出来るとは・・・・・・。

千雨が一体どんな者がエヴァを・・・・・・と考えながら後ろへ振り返ると

「え~んッ! え~んッ!」
「いい加減泣きやみなさいッ! みっともないですわよッ!」
「ヒロインなのに私だけのけもの扱いッ!! ふぇぇぇぇぇぇんッ!!! 」

涙&鼻水まみれのエヴァがあやかに叱られながらなお甲高く泣き叫んでいた。

「・・・・・・私でも出来る気がする」
「こんなチビ、チェ・ホンマンでも尾行出来るわ」

千雨の呟きに銀時はボソッと相槌を打った。












































万事屋一行がグダグダながらも事態を進行させようと思案している頃。
『3年A組』の教室の中で数人組のグループが集結していた。

「連中はやはり土方さんの予測通り万事屋室にいました。一位の白夜叉と二位の長谷川さん、三位の雪広さんと数分前にやって来た八位のエヴァンジェリンの合計四人がそこに現在缶詰め状態で籠っています」
「あのパイナップル頭のやかましいガキはどうした、アイツも万事屋の一味だと聞いているが?」
「朝倉さんの事ですが、どうやら彼女は万事屋とは別々に独自のグループを作りこの投票戦争に参加している様です。エヴァンジェリンがそのような事を白夜叉達に言っていました」
「ほう、さっそく内部分裂か。連中はそれを聞いてどんな反応だった」
「是非に及ばず・・・・・・・私達もろとも駆逐するような事を連中は言っていました」
「そうか」

先程までエヴァンジェリンの尾行&情報盗聴を行い、今は目の前でかしづいて連中の情報をくまなく伝えた桜咲刹那(13位)に。
真撰組副長、土方十四郎(12位)は口にタバコを咥えたままわかったと言う風に頷いた。

「でかしたな、それだけ情報を得れば十分だ。連中はお前の存在に気付けなかったのか」
「白夜叉は気付いてかもしれません・・・・・・他の三人は気付いて無かったようですが、エヴァンジェリンも・・・・・・」

一応相手があの大魔法使いのエヴァンジェリンだったので尾行もそれなりの注意を払ってやっていたのだが、彼女は全く気付かずにノコノコと自分を仲間のアジトへ案内し、しかも貴重な情報をペラペラと喋ってくれていた。
そんな彼女を脳裏に浮かべて刹那が呆れていると土方は嘲笑を浮かべて華を鳴らす。

「フン、まともに使える奴が一人もいねえとは。万事屋の野郎も随分気の毒だな」
「叩き伏せるのは容易だと思われます、こちらは5人であちらは4人。更に私達に匹敵する様な戦力を持つ者はあちらには2人しかおりません・・・・・・まあ私達の中にもまともに戦う事など出来ない人が1人いますけどね・・・・・・」
「わ、私の事ですかッ!?」

目の前の土方に向かって話している途中でチラッと横目でこちらに目をやって来た刹那に。
自分の椅子に座ってずっと大人しくしていた宮崎のどか(14位)が慌てて自分を指差した。

「け、けど、戦う事自体変じゃないですかッ! そもそもどうして私達があの人達と戦わなければいけないんですかッ!? 十四郎さんの考えが私わかりませんッ!」
「私はわかりますけどね」
「せ、刹那さん・・・・・・」

席から立ち上がり土方に向かって大声で抗議し始めたのどかに、嫌みったらしい笑みを浮かべて刹那が口を開いた。

「もしかしたらのどかさんより私の方が土方さんの考えを熟知してるかも知れませんね、だって本編の中で最も土方さんと一緒にいた人って私なんですから。のどかさんより私の方が土方さんと過ごした時間は多いですから。そもそも一緒に住んでましたし、順位も一つ差ですしね、そういえばのどかさんは・・・・・・ああ、すみません、私の一つ下でしたね、フフフ」
「う、うう・・・・・・」

なんだか本編の時よりかなりネチネチ文句に磨きがかかっている。
何も言えずにがっくり肩を落として落ち込むのどかに、刹那が「勝った」という風に鼻を高くしていると土方は彼女を睨みつけ

「おい刹那、それ以上コイツに舐めた事言ったら殺すぞ」
「へ? ええッ!?」
「お前もこんな奴の言う事を真に受けるな、俺はコイツなんかよりお前の方が大切だ」
「十四郎さん・・・・・・」

いきなり殺気をぶつけられて驚く刹那をよそに土方はのどかを安心させる為に優しく語りかける。
そんな雰囲気を邪魔しようと刹那は両手をアタフタと振りながら近づこうとするが

「の、のどかさんより私の方がよっぽど貴方の事を理解・・・・・・あぐッ!」
「ヘイヘイヘ~イ、俺達のアイドルのどかちゃんにウザッてえ事を言いやがるのは何処のマヌケのド低能でぃ?」
「お、沖田さん・・・・・・!」

いきなり自分の頭を強い握力で鷲掴みにされ、痛みで涙目になりながら刹那が後ろを振り向くと、ドSモード全開の一番隊隊長、沖田総悟(7位)がそこにいた。

「いいかゴミクズよく覚えとけ、テメェみてぇなカスに等しい存在がのどかちゃんをイジめるなんざ一兆年早ぇんだよ」
「あがががががッ! 鷲掴みにしたまま宙ぶらりんしないで下さいッ!」
「テメェのあるかないかわかんねえぐれぇちっぽけな脳みそに教えてやる・・・・・・」
「もふんッ!」

刹那の頭を鷲掴みにしたままブランブランと宙に浮かせた後乱暴に床に投げ捨て。倒れた彼女に向かって沖田は一瞬目を瞑り、すぐにカッと見開く。

「この世でのどかちゃんをイジめていい存在は俺だけだッ!」
「ふざけんなッ!」

沖田の啖呵にすぐさま土方がツッコミを入れた。 

「ていうかお前、本編終わってもまだコイツ狙ってるのか・・・・・・その執着心を仕事に生かしてほしいぜ」
「何言ってんですかぃ土方さん。これは俺の大切な仕事ですぜ、のどかちゃんをイジメにイジメ抜いて悦に浸る事の何処が仕事じゃないって言い切れるんですかぃ?」
「何処も仕事じゃねえだろ完全にお前の趣味だろ、完全にお前のプライベートドSタイムだろ・・・・・・!」
「おらおらぁ、この中で一番順位が低いんだから茶でも持ってこい茶でも」
「や、止めて下さい~」
「ゴラァァァァァァァ!!!」

会話の途中なのにのどかに近づき、器用に彼女の髪の毛一本だけをつまんでいびり始めた沖田に土方がタバコを咥えたまま遂にブチ切れた。
だが

「おい、うるさいぞお前等」
「ん? 近藤さん・・・・・・」

そんな騒ぎが起こっている教室にガララと扉を開けて入ってくる男が
我らが真撰組の頭、近藤勲(6位)だ。

「仲間割れなどするな、この人気投票は俺達、真撰組の大活躍集を公式に行う為の大切な戦いなんだぞ。一本の刀となるぐらい結束を固めるんだ」
「近藤さん・・・・・・アンタ今まで何処に」
「ちょっとトイレで一本グソを出していた、もう一度言うぞお前等、俺等は一本のクソとなるぐらい・・・・・・」
「オイィィィィィ!! さっきと全然変わってるぞッ!」

キリッとした表情で微笑んでいる近藤に土方は慌てて彼のセリフを止める。のどかがいる前で下ネタなどもっての他だ。
しかし彼が近藤に気を取られている隙に沖田はというと

「さすが俺等よりトップの上位に君臨する近藤さんだ、かっけぇセリフを一瞬にして下ネタに変化させちまうとは誰も真似出来ねえぜ、のどかちゃんも見習いな」
「イヤですッ!」
「ほほ~誰に対して反抗してるのかな~」
「あう~ッ! 刀でぐりぐりしないで下さい~ッ!」
「総悟ォォォォォォォ!!!」

顔を赤らめながら拒否したのどかに沖田は目を光らせ刀の鞘を使って彼女の頬をぐりぐりする。
のどかの悲鳴を聞き土方はすぐに眼光と腰の刀を光らせ、沖田に向かって飛びかかる。

「テメェはここでおっ死ねェェェェェェ!!!」
「いやでぃ、アンタが死んでくだせぃ。そうすりゃのどかちゃんは俺のモンだ」
「ふざけろこのドSがァァァァァァ!!」
「二人共止めてくださ~いッ!」
「ちょッ! だからお前等仲間割れしないでッ!」

お互い一瞬で刀を抜き、教室で剣撃をやり合う土方と沖田。
のどかはあたふたしながら止めようとし近藤も必死に叫ぶが二人はお構いなしに真剣で斬り合いを続ける。

「く、なんてこったこんな結束力じゃ奴等の出鼻を挫く事も出来ないッ! なんとかして俺達の人気を奴等より上にして『スッポンポンオフロ真撰組編』をやらなければならんのにッ!」
「スピンオフです、全然違います・・・・・・」
「俺とお妙さんのラブ話をやる為にもこの戦い負けるわけにはいかんのだッ!」
「夕映に言いつけますよ・・・・・・」

ドタバタと土方と沖田が騒いでいる中、低俗な野望を暴露する近藤にのどかが冷たくツッコミを入れた。






投票戦争、間もなく勃発



















































一方その頃、人気投票で戦争が始まっている事も知らないある家族はというと

「ネギ・・・・・・そなたちと食べ過ぎではないか?」
「え?まだ腹一分目だけど?」
「なんてこったい、しばらく会わない間に息子がトリコになっちまったよ」

とある焼き肉店にて。
母であるアリカ・スプリングフィールド(9位)が隣で心配そうに見守る中、息子であるネギ・スプリングフィールド(4位)は牛一頭は余裕で平らげるのではないかという勢いで次々と牛肉を焼いては食い焼いては食いを繰り返していた。父親、ナギ・スプリングフィールド(5位)はそれを隣で恨めしそうに眺めている。

「どうすんだ姫さん、愛する息子と一緒に美味そうに肉を食えるのは嬉しいがこの量は予想外の出来事だぞ。俺あんま金持ってねえのに・・・・・・」
「な! 息子の前で何を話しとるのじゃバカ者・・・・・・!」

困り果てた表情で話しかけて来るナギにアリカはビシッと黙らせるが、二人の間にいるネギの耳には普通に聞こえていた。

「ああいいよいいよ二人共、僕が払うから」
「よかったなぁ姫さん、俺達の息子がこんなにも立派に成長して、なんなら土産代も払ってもらうか?」
「父親として恥ずかしくないのか貴様は・・・・・・」
「全然」
「・・・・・・選ぶ相手を間違えた・・・・・・」

10歳にも満たない我が息子に奢らされるというのにナギは全く恥も知らずに肉を食べ始める。アリカは顔を赤面させ、申し訳なさそうにネギに顔を近づけ

「ネギ、いつか必ず返すからの・・・・・・」
「ハハハ、無理でしょ父さんの稼ぎじゃ」
「・・・・・・おいナギ」
「アハハ・・・・・・ちょっと泣きそうになった」

さすがに笑顔で痛恨の一撃を言われてはさすがにナギも頬を引きつらせ固まった。

「パチンコだな・・・・・・うん、パチンコで勝つしかねえわな」
「何言ってんですかナギさん、アンタ江戸中のパチンコ店でいつも身ぐるみ剥がされてるじゃないですか」
「うわおう新八、お前いつからいたの?」

何時の間にか向かいに座って肉焼き係に徹している志村新八(21位)にナギはわざとらしい驚き方をしてみせる。
新八は皿にのった肉をしかれた鉄板に焼きながら彼に向かってムスッとした表情で

「最初からいましたよ、こんな一生に一度食えるか食えない高そうな焼き肉を僕等がアンタ等だけに食わせるとでも思ったんですか?」
「8票しか貰ってないクセに焼き肉か、いい御身分だな」
「関係ねえだろチクショウッ! 人の傷口に泥を塗りたくってそんなに楽しいかッ!」

物凄く気にしていた事を容赦無しに言って来たナギに新八は突然青筋を立ててキレていると。
彼の隣に座っていた同じく万事屋メンバーの一員である少女、神楽(20位)が口に大量の肉を入れて来ながらビシッと箸で前にいるネギに突きつけた。



「おいビリビリィッ! その特上牛タンは私のネッ!」
「あの、僕の名前いい加減覚えてくれませんか・・・・・・?」
「ビリビリをビリビリって呼んで何が悪いアルか? 黒髪ツンツン頭にいつも呼ばれてんだろ?」
「いえアイツの話はここではしないで下さい・・・・・・ていうかそのネタどんだけ引っ張る気なんですか?」

複雑そうな表情でネギは呟くが神楽は食事に夢中の様で聞いちゃいなかった。
すると今度は何時の間にか神楽の隣に座っていた“あの男”が

「侍は常に質素な食事を取る、だがここはせっかくネギ殿が奢ってくれる場、遠慮するなど相手に失礼となる。ここはネギ殿に感謝を込めて遠慮せずに頂くとしよう」
「あの~僕、桂さんは誘った覚えないんですけど?」
「む? そんな小さな事を気にしては立派な侍になれんぞ」
「いや侍じゃなくて僕魔法使いですから、一応」

自然にそこに座っていた攘夷志士、桂小太郎(11位)にネギは普通にツッコむが桂は黙々と焼けた肉を食べ始める。

「アリカ殿、このホルモン中々の味だぞ、是非食べてみぬか?」
「箸を近づけるな、顔を近づけるな、息を吸うな、生きるな」
「そうか、まだフラグが立たんか」

銀時と戦ってた時の様な冷たい眼に戻って桂に酷い言葉を浴びせるアリカだが、桂は全くへこたれた様子も無く首を傾げるだけ。
アリカの隣にいるネギは彼にしかめっ面で

「一生かけても無駄ですからいい加減にして下さいよ、桂さん」
「いやいつか実る筈だ、銀時や坂本にヒロインがいて俺にヒロインがいない筈がない」
「本編終わってんですからもう無理ですよ・・・・・・」

頑固に言い張る桂にネギは深いため息を突き呆れ果てるとふとある事に気付く。
こんな数で焼き肉を食べてはさすがに自分でも払えないのではないか?

「マズイな・・・・・・僕や神楽さんは結構食べてるし、おまけにイレギュラーの桂さんまでいるんだから結構な額に・・・・・・」
「アハハハハッ! 安心せいッ!」
「え?」

困った様子のネギに豪快に笑いのけるのは

「ここはボンボンのわしが奢っちゃるきんッ! 子供は遠慮せずに食えばええんじゃッ!」
「ああ坂本さん・・・・・あなたといい桂さんといい一体何処から湧いて出て来たんですか?」
「細かい事は気にすんなッ! アハハハハッ!」
「細かくありません、唐突も無しにいきなりキャラが出て来る事は決して細かくないと思いますよ僕は」

桂や銀時の友である坂本辰馬(10位)がネギに向かってゲラゲラと笑い飛ばす。
それにネギは疑問を抱くが彼のおかげでこの経済危機を脱っせたのでそこはホッと一安心だ。

「よかった・・・・・・これでなんとかなる」
「ふぅ、さすがに息子の奢りで食べる事など出来んからの、これで安心してわらわも食べれる・・・・・・」
「え? 母さん食べてなかったの?」
「母としてそんな恥ずかしい真似出来るか」
「え、でも父さんは・・・・・・」
「うんめぇ~」
「ゴラァァァァァ!! その牛タンは私のだって言っただろうがァ!」
「知るか全部俺のだッ!」

反対隣にいる恥もへったくれもない様子でバクバクと焼き肉にありついている夫の姿に

妻は呆れ果てた表情でボリボリと頭を掻き毟った。

「あんな奴もう知らん・・・・・・」






[7093] 番外編 人気投票など・・・・・・あ、さっきからこれ言ってるの全部私だからな
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/08/23 00:00

ここは麻帆良学園校舎内、真撰組チーム、そして直にやってくるであろう朝倉チームを叩きつぶす為に万事屋チームは各自行動に移っていた。

最初の第一手は戦力を二つに分断して二人二人で学園内の敵の捜索だ。

「銀さん、もしくは千雨さんと組むなら文句も何もありませんでしたわ」

あやか(3位)は今、ツカツカと廊下を歩いて行きながら隣で一緒に行動している“彼女”に話しかける。









「でもエヴァさん、あなたと二人っきりで行動することに関しては不満と文句しかありまえんわ」
「私だってお前とこんな事するハメになるなんてゴメンだったわッ! よりによって貴様と組むとか不幸にも程があるッ! 普通は私と銀時の最強最愛コンビの筈だろッ!」

あやかの一言に頭に血管を浮かべて吼えるのはエヴァ(8位)。
どうやら戦力分断であやかとエヴァは二人で行動するハメになってしまったらしい。

「あなたと銀さんが一緒になったら戦力バランスが大きく出てしまうでしょ、ぶっちゃけ私と千雨さんだけでは真撰組の方達とまともに戦えるなんて無理ですし」
「なるほど、てことは銀時と私が弱いお前等の為に仕方なくこうやって別々に行動しているのだな、全く貴様等と違い強者である私にとってはこの上なくめんどくさい事だ」
「よかったですわねエヴァさん、こんな時ぐらいしかあなたロクに銀さんに期待されませんものね。腕っぷしだけが唯一の取り柄、それ以外は全部ヘタレ、しかも泣き虫、ホント魔法使いというキャラ性だけは残ってて良かったですわねエヴァさん」

自分の手首ポキポキを無意味に鳴らしながら好き勝手言うあやかをエヴァはジト目で睨みつける。

「その魔法を自分自身の体で体験してみたいと思わないか雪広あやか・・・・・・?」
「銀さんとの約束をお忘れになって? 今回は「敵のみに対しての魔法使用許可」でしたわよね、味方の私に一回でも使用したらあなたはその場で銀さんとの約束を破ったという事になりますわよ」
「私にとってはお前は敵の中の敵だ、コレ以上無いぐらいもっとも貴様が私の『敵』に相応しい、『エヴァちゃんの敵グランプリ』とかがあったらお前は間違いなくストレート優勝だ」
「じゃあ魔法なり血を吸うなり私にやって下さいませ。それであなたは銀さんに一生口聞いてもらえないという豪華特典がお付きになりますけど」
「ぐッ! それだけは絶対に嫌だ・・・・・・」
「だったら大人しくわたくしと行動しなさい、こんなつまらない事で揉めてないでさっさと敵さんを探しに行きますわよ」
「うー・・・・・・・」

子供に説教する母親の様な態度で、あやかは指差してそう言うと、言われた本人であるエヴァは突然立ち止まって両腕を上下して悔しそうなリアクションを取った。

「うーうーッ!」
「・・・・・・ハァ~~~」

やることが小学生レベルな彼女にあやかは呆れた様な目つきで彼女を見る。

「うーうーッ!」
「静かにして下さい・・・・・・敵に勘付かれでもしたらどう責任取ってくれるんですの?」

今にも泣き出しそうな表情で悔しそうに叫んでくるエヴァにあやかが少し怒った様に睨みつける。毎度のことだが600年生きてる割には精神面は見た目通りの幼さだ。

だがそう思ったその時

「安心しな、とっくの昔にテメェ等の行動はこっち側に筒抜けだ」
「!!」
「うーうーッ!」

廊下の曲がり角から突然、男の声がこちらに聞こえて来た、それと同時に足音も。
あやかは表情をハッとさせて声が聞こえた方向に振り向いた。
エヴァは叫ぶ事に夢中で気が付かなかったらしくまだ両腕を振っている。


「チッ、旦那とやり合って見てぇと思ってたのに。俺はどうやら外れくじを引いちまったらしいな」
「この気配は・・・・・・」
「うーうーうーッ!」
「うーうー言うの止めなさいって言ってるでしょッ!」
「うぐッ!」

曲がり角に隠れながら喋っている男の声にあやかは嫌な予感を感じ取っていたが、隣にいるエヴァがまだうるさく叫んでいるので遂に彼女の頭に鉄拳制裁。
鈍い音を立ててエヴァは頭を押さえて痛みに悶絶する。

「全くあなたって人は・・・・・・」
「グスッ、銀時に絶対に言いつけてやる・・・・・・」
「好きに言ってなさい、それより・・・・・・・」
「ん?」

頭を押さえて涙目で睨んで来るエヴァにあやかは前方を見るよう顎でしゃくる。
渋々エヴァはそちらに目を向けるとそこには・・・・・・

サディスティック星の王子

「旦那にはわりぃが・・・・・・テメェ等には俺達真撰組の生け贄になってもらうぜぃ」
「なッ! この状況でサドプリだと・・・・・・!」
「テニプリみたいな略し方やめてくれません?」

ズボンのポケットに手を突っ込み、口の中からクチャクチャとガムを噛んでいる音。
そんな隙だらけの格好に見えながら、突然現れたその男にエヴァとあやかは凍りついた。

「よりによってコイツの登場か、どうやら一人らしいが・・・・・・」
「頑張って下さい“私の大切な友達”のエヴァさん、あなたならきっとやれると信じてますわ。」
「ああ安心しろ、お前もあいつも二人両方消してやる」

この状況で都合よく持ち上げてくるあやかにエヴァは無表情で一言。
この女と仲良くなる事は未来永劫無いんだろうなとエヴァはしみじみ思う。

そうしていると目の前の男が一歩こちらに歩いて来た。

「金髪デカチビコンビ、テメェ等の順位を剥奪し俺達真撰組が上位を独走させてもらうぜぃ」
「ほう、威勢はいいが少し相手を間違えたらしいなお前、死ぬぞ?」

男が遂に動き出した。腰に差す刀を手に持ち、笑みを浮かべながらゆっくりと鞘から抜いていく。
エヴァもそれに対抗するかの如くニヤリと笑い返した。

サドプリこと沖田総悟(7位)、起動。























番外編 人気投票など・・・・・・あ、さっきからこれ言ってるの全部私だからな



















エヴァ。あやかペアが敵部隊の沖田と衝突したその頃。

もう一つの万事屋組の銀時(1位)と千雨(2位)は、あやか達とは反対方向の方に進んで敵の捜索活動を続けていた。

「なあ、やっぱり4人で固まって行動していた方が良かったんじゃねえか? いいんちょはともかく私はなんの戦力にもならねえぞ?」
「何弱気になってんだオメー、それでもネットアイドルランキング一位のちうたんか」
「いや関係ねぇしッ! それと他人に言われると恥ずかしいから止めろッ!」

顔を赤に染めて隣にいる銀時に叫ぶ千雨だが、彼は彼女の方へは向かずにそっと語りかけた。

「いいか“ちうちう”。武装警察真撰組とか呼ばれていても所詮俺達の敵じゃねえんだよ、俺は主人公だしチビは一応本編中最強クラスだし、いいんちょはテニプリだしお前はツッコミダメガネだし。」
「おういッ! 後半の二人は全く強さと関係ねえじゃねえかッ! つうかツッコミダメガネってなんだよッ!」
「そのまんまの意味だダメガネ。安心しろ、例えお前がツッコミしか出来ないメガネでも真撰組なんざバカ共余裕で叩きつぶせんだよ、例え二つに戦力分断しててもな」

相変わらずテンションの高いツッコミをしてくる千雨に銀時は余裕の笑みを浮かべて手をヒラヒラさせる。
1%たりとも向こうの連中に負けない自信があるらしい。

しかし

「ほう、随分と俺達に対してナメた口聞いてくれるじゃねえか。余程一位から降格してえらしい」
「一位の称号だけではなく首も奪ってやろうか白夜叉」
「うわぁッ! いきなり出てきやがったッ!」 
「早速テメェ等か・・・・・・」

真正面からこちらに歩いて来たのは真撰組サイドの土方(12位)と右目に眼帯を付ける刹那(13位)。
偶然の鉢合わせだがまさか捜索始めて早々この二人に出会うとは銀時も予想外だった。

「真撰組ん所のマヨネーズ中毒者と序盤のボスキャラが俺達になんの様だ」
「私のトラウマに触れるなァァァァァ!! さっさと殺しましょう土方さんッ!」
「落ち着け、つうかお前いつの間にボスキャラになってたんだ?」
「その事については一切ノータッチでお願いしますッ!」

聞かれたくない事に関して事更に敏感に反応する刹那に土方は首を傾げるも、とりあえず今目の前にいる標的の殲滅に重点を置いた。
口にタバコを咥えて火を付け。優雅に吸い始めながら銀時の方へ土方は目を向ける。

「“足手まとい”がついてるのに俺等二人に勝てると思ってんのか万事屋」
「う・・・・・・やっぱり私じゃ足引っ張るだけだよな・・・・・・」
「ああ? ウチの千雨ナメてんじゃねえよ」
「え?」
「いざとなったらメガネ族に伝わる眠れる力を覚醒させて巨神兵になるんだぜ。すげえだろビビったか?」
「本人の私が一番ビビるわそんなのッ! つかねえよそんな能力ッ!」

真顔で大ボラを吹く銀時に千雨が彼の後頭部に蹴りを入れると、土方は銀時に向かってフッと笑い。

「巨神兵とか対した事ねえな、ウチの刹那も第三の目を覚醒させてデイダラボッチになるんだぜ。お前等なんざ瞬殺だ」
「張り合って私にも変な設定付けないで下さい土方さん・・・・・・」
「ていうかなんでそこまでジブリキャラにトランスフォームさせたがるんだお前等ッ!」
「いて」

対抗して同レベルなホラを吹く土方の頭を勢い良く叩く千雨。
すると土方は頭を押さえながら額から汗を一滴たらす。

「・・・・・・ツッコミのドサクサにこの俺に一発を入れるとは・・・・・・」
「い、いやこれは勢いというか流れであって・・・・・・」
「刹那、どうやらこのメガネも本気で俺達とやり合おうとしているらしいな」
「はいッ!?」

銀時はおろか千雨に対しても本気を出す構えを見せる土方。
千雨が口をあんぐりと開けて驚いていると土方に向かって刹那はコクリと頷く。

「とりあえず2位のプレートを破壊した後、二度とこちらに立ち向かう事が出来ないよう再起不能になるまでボコっておけばいいんですね、わかりました」
「ちょ、ちょっと待てェェェェェェ!! 私お前等見たいに刀使えるわけでもないただの一般人だぞッ!?」
「問答無用です、順位とは強い者こそが上位に入るべきなんです、ただのツッコミダメガネのあなたでは2位の荷は重すぎます」
「敵にまでダメガネ言われたッ! クソッ! ど、どうすんだ銀八ッ! コイツ等私まで潰す気なんだけどッ!?」

黒い札をサッと取り出して一本の呪い刀、死装束に具現化させて構える刹那に、千雨は反射的に銀時の方へ振り返ると、彼はもう既に腰に差していた木刀を抜いた。

「オメェは下がってろ。おいお前等、二人まとめてかかってこいや」
「銀八ッ!」
「いいから下がれ、じゃねえとホントに足手まといになるぞ」
「う、うん・・・・・・」

銀時に言われ千雨は彼を心配そうに見つめながら彼の背中へと回る。
相手は二人だ、いくら銀時といえども真撰組副長と、神鳴流剣士では分が悪過ぎる。
そして土方と刹那は容赦なく彼等に刃を向けようと刀を構えた。

「テメェの居場所はもうここにはねえ、ここは俺達真撰組サイドが主役だ。さっさと学園都市に戻ってあっちのガキ共と戯れてろ」
「寝言ほざいてんじゃねえよ、『禁魂』だろうがここだろうが主役はこの俺以外にいねえ、そいつを今証明してやる」
(禁魂?・・・・・・え、キン○マ・・・・・・?)
(何でこのタイミングで下ネタ言ってんだコイツ・・・・・・)

シリアスな表情で土方と対峙している銀時に刹那と千雨はちょっと引いた。
この場面で何故に男の股にぶら下がってるモンを言う必要があったのだろうか・・・・・・
そんな疑問が頭に浮かぶ刹那と千雨をよそに。


銀時と土方は互いに構えを取った状態で互いに突っ込む。



「テメェ等真撰組はッ! 端っこでウロチョロしてる脇役がお似合いだァァァァァァ!」
「抜かしやがれェェェェェェ!!」
「それじゃあ私達も殺り合いましょうか」
「待てェェェェェ!! 非戦闘キャラの私がお前とまともに戦えるわけねえだろォォォォォォ!!」

いよいよ銀時と土方が戦おうとする中、刹那もまた首を激しく横に振る千雨に刀を構える。

銀時はともかく千雨は絶体絶命のピンチ。

だがその時、予期せぬ事態が起こった。







「あん?」
「コイツは・・・・・・煙幕かッ!?」
「一体誰がこんな事をッ!」

突如4人の周りを覆う黒い煙。その煙はあっという間に4人の視界を遮り、辺り一帯が暗闇と化す。
銀時と土方、千雨に斬りかかろうとしていた刹那が慌てて周りを見渡している中、千雨は頭を両手で押さえてその場にしゃがみ込んでいた。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! なんだよコレッ!? なんだよコレッ!?」
「やっほー千雨ちゃん」
「ん? この声何処かで・・・・・・」

パニくった千雨の頭上から聞いた事のある声、千雨が恐る恐る顔を上げると声の主は彼女の手をグイッと強く引っ張った。

「起きて起きて、さっさとこっから立ち去るよ。龍宮さんの説明だとこの煙あんま長く持たないから」
「うわッ!」
「銀さんも逃げるよ」
「うおッ! おい誰だいきなりッ!」
「いいからいいから、ここは私を信じて」

千雨を立ち上げた後、声の主は暗闇の中にも関わらず容易に銀時を見つけてすぐに彼の腕を取る。

「ふふ~ん、龍宮さんから借りた暗視ゴーグルのおかげで視界はバッチリ~」

煙幕で張られた環境の中、銀時と千雨の腕を引っ張って先導していく声の主は軽やかに走り出す。
そして銀時と千雨はこの声の主の正体に気付いた。この妙に軽い口調、間違いなく彼女だ。


「おいお前ッ! 確か俺達に反抗して・・・・・・!」
「私が銀さんと千雨ちゃんのツートップを妨害するとでも? 無い無い、天地がひっくりかえってもそれは無い」
「あ、朝倉ッ!」

黒い煙幕の中からやっと三人は抜け出す。それと同時に“彼女”は二人の腕を離した。
目の前に現れた彼女に千雨が走りながら声を掛けると、彼女は水中眼鏡の様な暗視ゴーグルを外して首に掛けて二カッと笑って千雨の方に振り向いた。

「はいは~い」

この土壇場で思わぬ助っ人(?)の登場だった。

朝倉和美(22位)、彼女のおかげで銀時と千雨が難を逃れている頃。













彼女が使った煙幕で視界をやられていた土方と刹那は無我夢中で周りを探っていた。

「チィッ! 煙幕食らうのはこれで二度目だッ! そこかァッ!」
「いだいッ! 土方さん私ですッ! なんですかこのデジャヴッ!?」

二人の視界が晴れるのはこれから数十秒後の事であった。












































銀時と千雨が和美のおかげで難を逃れた頃、先程衝突してしまったエヴァ達と沖田は廊下という狭いスペースで激しい音を鳴らしながら激線を繰り広げていた。

「ほれほれほれ~ッ! もう一発飛んでくるぞ~ッ! 避けるかッ!? 斬るかッ!? 死ぬかッ!?」
「だりぃなチクショ~、旦那のガキがまさかここまで可愛げのねえガキだとはな」

もはやその廊下は多くの生徒達が歩きまわれる環境では無い。
辺り一面にエヴァの魔法により氷が張られ、あらゆる方向から大量の氷柱がターゲットを襲っている。
エヴァは優雅に床から1メートル程浮いて腕と脚を組んで余裕の構え。
反対に沖田は刀一本で飛んでくる氷柱を叩き斬るのが精一杯だ。

「この分厚い氷のおかげで体も寒さで鈍っちまう、認めたくはねえが。不利だな」
「ハ~ハッハッハッ! 見たかコレが私だッ! もう誰にもヘタレだとか泣き虫などとは呼ばせんッ! 私こそが地上最強の魔術を持った吸血鬼ッ! 『闇の福音』エヴァンジェリンだッ!」

辺り一帯の温度はみるみると膨大な冷気のおかげで低下している。
真撰組最強と称されている沖田でさえ、さすがにこの環境では刀の動きが鈍る。
それを見てもはや勝ちは決まったと確信したのかエヴァは宙に浮いたまま大笑い。
散々バカにされていた屈辱を遂に挽回する時が来たのだ。

だがそんな彼女のおかげで。

彼女の作った氷のフィールドのせいで沖田だけではなく、一緒にいたあやかも体を震わせ廊下の片隅でかじかんでいた。

「ななななな何してんですかアナタはッ! わたくしを凍死させるおつもりですかッ! こんな氷さっさと消しなさいッ!」
「ええいなんだその口の効き方はッ! 私のおかげで敵を倒せそうなんだぞッ! 胸だけが取り柄の貴様は隅っこでガタガタ震えてろッ!」
「だだだだ誰が胸だけ・・・・・・う~ホントに寒くて死にそうですわ、逃げようにも足が震えて動けないし・・・・・・」

強がって言い返そうにもそれよりもこの極寒が薄着の格好に響く。
白い吐息を吐きながら苦しそうにしゃがみこんでいるあやかを見て、エヴァのテンションはMAXに達した。

「ガハハハハッ! みっともない姿だな雪広あやかッ! そうだコレが私とお前の力の差だッ! 今の貴様の姿こそが一番の貴様のお似合いの姿だッ! 泣けッ! 喚けッ! ひざまずけッ! 私の怒りと憎しみその身に刻めッ!」
「く~~~~絶対に後悔させてやりますわッ!」
「俺の事忘れてコイツ等勝手に仲間割れ始めやがった、まあいいや、やっぱりガキはガキだって事だな」

沖田の事を忘れ、悔しそうに睨みつけて来るあやかの方に振り向いて高笑いをしているエヴァ。
不用心にバカ丸出しで背中を見せている彼女に沖田は刀をチャキっと構える。

「8位殺っても順位は減らねえが、そこにいる3位なら別だ。二人まとめて地獄に送ってやる」

飛びかかる体制に入ってターゲットに狙いを定め沖田は刀を強く握った。

しかし、そんな時



“彼女”はやって来た。















「ふ~んふふ~んふ~ん、そんな所で何やってるのかしらあやか?」
「!!!」

前方から鼻歌交じりに楽しそうにスキップで歩いてくる“彼女”に。
沖田は珍しく目をギョッとさせた。

この世界には唯一無二、この沖田に対抗できる女性が一人だけ存在する。

その女性とは・・・・・・

「なんだか寒そうで苦しそう、ウチのあやかをこんな酷い目に合わせたのはだ~れ?」
「ち、千鶴さんッ! あなたもここにッ!」
「ぎやぁぁぁぁぁぁ!! なんで貴様がこんな所にィィィィィィ!!」
「おいおいマジかよマジかよあり得ねえだろオイ・・・・・・なんであの女がここにいやがるんでぃ・・・・・・・」

あやかは寒さに震えながらも驚き、エヴァは頭を押さえて絶叫を上げ。
沖田に至っては呪文の様にブツブツと呟きながらガックリと肩を落とした。



のほほんとした微笑を浮かべて千鶴(20位)がこの戦場にやってきたのだ。




































































「な、なんだか外から凄い音が一杯聞こえてきますね・・・・・・・十四郎さん大丈夫かな・・・・・・」
「なあに、トシが女子供に負けるタマじゃないだろ。まあ万事屋ならわからんがな、アイツの底の強さは長い付き合いの俺達でもわからん」
「じゃあもしかしたら十四郎さんはぎ、銀八先生に・・・・・・」
「きっとトシが無事に帰ってくると信じてやるのが君の任務だ。大丈夫、あの男がテメーの女を置いて死ぬわけないさ」
「はい・・・・・・」

ここは3年A組の教室。
中では心配そうにのどかが窓から目を覗きこみ、土方達が何処にいるかキョロキョロと窺っている。
そんな彼女を安堵させる為に護衛役として残った近藤は優しく声を掛ける。

モグモグと焼き芋をほおばりながら。

「あ、あの近藤さん・・・・・・なんで焼き芋食べてるんですか、ていうか何処から・・・・・・」
「いやぁなんか何もしてないとそれはそれで腹が減っちゃってさ。屯所から持って来た『ザキのお手製、真撰組紫焼き芋』、食べる?」
「いいです・・・・・・」
「大丈夫だって、ここにいるの俺と君だけだし。トシもいないんだから屁の一発や二発やっても構わんよ。無礼講、無礼講」
「いいですッ!」

焼き芋がたくさん入った紙袋を口をモグモグさせながら差し出してくる近藤にのどかは顔を赤らめて拒絶する。
気になるお年頃の少女を前にいかがわしい事を自然に言えるとはさすがはモテないゴリラだ。

「皆さんが大変な目に遭ってるかも知れないのに焼き芋なんて・・・・・・」
「食ってる内に食っておかんといざという時に身が持たんぞ。腹が減って動けないとか、それこそ仲間の足を引っ張る事になる。局長命令だ、一緒に焼き芋を食おう」
「はぁ・・・・・・まあそんなに言うならわかりました・・・・・・」

どんな局長命令だよというツッコミをするのは置いといて。
のどかは遠慮がちに近藤に近づいて、彼が手に持つ焼き芋を受け取る。

江戸から持って来たというのに不思議とまだほっこりと温かった。

「十四郎さん怪我とかしてないかなぁ・・・・・・」
「君はいつもトシの事を考えてるんだな」
「夕映もよく近藤さんの事話してますよ」
「ああ夕映ちゃんか・・・・・・」

同じ方向に体を向けながら近藤とのどかは戦場である事を忘れて焼き芋を食べ始める。

「そういえばあの子いつも思うんだけど基本はずっと無表情だよね。もう喜んでるのか怒ってるのか楽しんでるのかいつもわかんなくてさ」
「あまり感情を表に出さない性格ですからねあの子。でもずっと付き合ってるウチに私は大体わかってますよ? 近藤さんの事話してる時は心なしか嬉しそうにしてます、アチチ」

舌を火傷しないよう気を付けながら食べているのどかの話に近藤は「う~ん」と頭を捻って芋を食べる。

「そうなのか、俺はまだ付き合い短いから全くわからんのよな。でもなんか初めて会った頃の総悟に似てるんだよなぁあの子」
「お、沖田さんとですか・・・・・・」
「まあ総悟の方がずっとやんちゃだったけどな」
「へ、へぇ~・・・・・・」

親友が最も自分が恐怖の対象としている人物とダブらせている事にのどかは複雑な気持ちで苦笑する。
まああの沖田でさえ素直にできる近藤の人格こそが夕映が懐いた原因なのかもしれない

「コレが終わったらちょっと会いに行ってみるか、せっかくこっちに来たんだし」
「そうですね、夕映もきっと喜びます」
「君も今日はトシとどこか行って来るといい、アイツも顔には出さないが溜まっていた仕事のせいで疲れている。二人っきりで遊びに行ってアイツの疲れを癒してくれ」
「え? いいんですか?」
「それぐらいの時間ぐらい作ってやるさ、俺は真撰組局長だぞ?」

頬っぺたに芋のかけらを付けながら近藤は二カッとのどかに笑いかけた。
やはりコレぐらいの度量がなければ真撰組などというチンピラ警察24時の頭は務まらないのだろうか。
のどかもそれに感謝を込めて頭を下げた。

「あ、ありがとうございます・・・・・・でももし十四郎さんにイヤだって言われたら・・・・・・」
「トシが君の誘いを断るとでも? 心配するな、アイツが君の誘いを断るわけないさ」
「え~とその根拠は・・・・・・」
「ハハハ、野生の勘って奴だッ!」
「アハハ・・・・・・どうしようなんだか凄く不安になって来た・・・・・・」

キランと歯を輝かせグッと親指を立てる近藤にのどかはちょっとばかり顔を曇らせる。
野生の勘で当たって砕けろとはいかにも彼らしい。しかしそれが果たして自分にも出来るのだろうか・・・・・・。

「でも、後ろ向きで考えてちゃダメですよね・・・・・・近藤さんみたいに前向きに生きて行かなきゃ・・・・・・」
「おういい心がけだぞのどか君ッ! それでこそ鬼の副長の嫁だッ! 略して鬼嫁ッ!」
「き、決まってもないんですから勝手に私が十四郎さんのお嫁さんになるって言わないで下さいッ! それに鬼嫁ってなんか別の単語になっちゃってますッ!」

顔を真っ赤にさせながらペシペシと叩いてくるのどかに近藤は大笑い。

「前向き前向きッ! 前だけ見とけばきっとトシの嫁になれるさッ! 挙式の時は俺とっつあんと一緒に裸踊りやっちゃうかもッ! ダ~ハッハッハッ!」
「もう勝手に話を飛躍させないで下さいッ!」
「挙式の時は君の所のクラスメイトも呼ぶかッ! この世界で式をやるのならば是非招待しなきゃなッ! 真撰組隊士全員も来るし賑やかな結婚式になりそうだッ! それに万事屋の奴等も呼んでやろうッ! あいつ等ならきっと場をもっと盛り上げてくれるぞッ!」
「ハァ~もう・・・・・・そうかもしれませんね」

まだ決まっても無い筈の結婚式で勝手に盛り上がっている近藤の姿を見てのどかももう呆れかえって思わず顔をほこらばせてしまう。

戦場の中でのほんの一時の安らぎの時間。







だがそんな安らぎが終わるのも唐突であった。





















「そういう会話は“死亡フラグ”だと相場で決まってるんだがね」














「「・・・・・・へ?」」

背後からの声に近藤とのどかの思考が一瞬停止する。
そして次にカチャリと鳴る金属音。
まるで銃の引き金を引いた音の様に・・・・・・

「ここはいつ最悪なアクシデントが起こってもおかしくない戦場だ。背後の警戒は常に怠るべからず、無駄な会話をするべからず、大きな音を立てるべからず。そんな軍隊で習うべき基礎中の基礎も出来ないのか?」
「こここここ近藤さん・・・・・・ななななななんか後頭部に冷たい金属を当てられる気がするんですけど・・・・・・」
「アハ、アハハハハ・・・・・・奇遇だねのどか君、俺も細っこい金属で頭ゴリゴリさせられちゃってるよ・・・・・・」

冷たくて細っこい金属を後頭部に当てられながら二人は目を泳がせながら顔を合わせる。
この状況、どう考えてもピンチとしか言いようがない。

二人の頭に当たっているのは。

紛れも無い二つの拳銃。

デザートイーグル。“彼女”の愛銃だ。

「素直に両手を上げろ。脳みそを“スパゲッティ”にしたいなら話は別だが」
「ヒィィィィィィ!!」
「すんません俺スパゲッティよりうどん派なんですけどッ!」

彼女の脅しにのどかは悲鳴を上げ近藤は緊張感のない叫びを上げながら、二人は急いで両手を上げた。
彼女は冷たい口調で話しを続ける。

「ここからは私の命令通りに動け、少しでもおかしな行動取った場合は君等の順位を撃ち抜く」
「は、は、はい・・・・・・」
「勘弁してッ! やっと自力で手に入れた一桁順位なのッ! もう手放したくないのッ!」
「ホントはこの場で君達を抹殺してもいいのだが、実は私も“ある人物”の命でここに来てね、どうやら彼女には彼女の思惑があるらしい、君達にはその彼女の作られた舞台に上がってもらう」
「ぶ、舞台ですか・・・・・?」
「そう」

両手に拳銃を構えてのどかと近藤をホールドアップしながら。

彼女は、龍宮真名(22位)は淡々とした口調で答えた。
目を怪しく光らせその両手に持つ愛銃を強く握る。










「血沸き肉躍る人気投票の天王山へ」















今こそ天下分け目の時







[7093] 番外編 人気投票などに踊らされた哀れな道化共め
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/08/30 09:21

人気投票戦争の最中に三人の侵入者。

その三人が誰だかはまだ知らない土方と刹那は用心しながら麻帆良学園内で万事屋一行を探していた。

薄暗い廊下を歩いて行きながら土方と刹那は並走して歩き、つい前の出来事を改めて考察してみた。

「さっき煙玉をまき散らしやがったのは恐らく万事屋の所のガキの一人が独立して作った軍だ、この校舎内のどこかに潜んでいると見るのが賢明だろ」
「煙が晴れたらあの二人(銀時と千雨)が消えていた・・・・・・朝倉さん達は二人を助けようと動いたんでしょうか?」
「対立しているのかと思いきやどうやらそうではないって事か」
「敵の増援という可能性も高いって事ですか・・・・・・厳しいですね」
「何言ってやがる、所詮ただのガキだ、戦闘経験豊富な大人が三人もいるこっちの方がずっと分がある」
「だといいんですけど・・・・・・」

刹那は表情を曇らせる、果たしてそう簡単に事が動くのだろうか・・・・・・。和美は普通の少女では無い、ならばその仲間も普通では無いのは確かなのだが・・・・・・

(そういえば朝倉さん達の方のチームに他に誰がいるのかまでは聞いてなかったな・・・・・・一体どんな人があの人に加担し、どういった目的で戦争に参加しているんだ・・・・・・?)
「オイ、ありゃあ総悟じゃねえか? なんであんな所で固まってやがる」
「え?」

顎に手を当て自分なりに頭を悩ましていた刹那に土方の言葉が耳に入る。
その言葉に反応して刹那が顔を上げると、そこには廊下のクロスロードの所で立ちつくす沖田の姿があった。
しかし何処かいつもの彼と少し違う・・・・・・

「珍しく表情に焦りが見えますね・・・・・・」
「あの総悟にあんな表情を作らせるとは・・・・・・・おい総悟ッ! 何があったッ!」

二人と沖田の距離は大体3メートルの所に達した所で、とりあえず土方は沖田に尋ねてみる。
すると沖田は彼等の方に振り返り額から汗を垂らしながらニヤリと笑った。

「コイツはやばいですぜぃ土方さん・・・・・・連中の隠し玉の中にとんでもねえモンが混ざってやした」
「とんでもねえモンだと?」
「土方さん、悪いですが俺はあの女とまた戦うのはゴメンでねぃ・・・・・・・」
「・・・・・・まさか」

土方は沖田の近くまで移動し、バッと彼が向いている方向に目をやる。

見るとそこには・・・・・・
















「あらそう、エヴァちゃんがこの廊下を寒くしてウチのあやかを酷い目に合わせたのねぇ~」
「そうですわ、この事は絶対に銀さんに伝えておきますから覚悟するんですわね」
「ちょっと待てッ! 私はあのドSを倒す為にここに氷の結界を作ったのだッ! 雪広あやかを狙ったのではなくあの男を狙ったのだッ!」

辺り一面に氷が張られた奇妙な廊下。
必死に言い訳しているエヴァと彼女を冷たい目で睨みつけるあやか。

そして

「経緯はどうであれ結果はあやかを寒がらせた事に変わりは無いのよエヴァちゃん? 罰として一週間私の作ったネギのみ弁当を昼食として食べる事を義務付けるわ」
「ネギのみ弁当ッ!? なんだそれはッ!?」
「簡単に言うと生ネギ一本よ、それ以上もそれ以下も無いわ」
「要するに生のネギ一本丸々食えって事ではないかッ! 食えるかそんなモン私はネギが大ッ嫌いなんだぞッ!」
「あら? 拒否権は無いわよ~」

抗議を申し立ててくるエヴァにニコニコと笑いながら恐ろしい刑を下している千鶴があやかの隣に立っていた。

「・・・・・・あの女、唯一一度総悟を叩きのめした唯ガキ」
「那波さん・・・・・・!」
「あの女は俺の天敵でさぁ、正直勝てる気がしねえ」

非戦闘員でありながらほとんど敵無しの実力を持つ千鶴の出現に目を疑う土方と刹那。
一方、過去に起こった千鶴との出会いを思いだし、沖田は苦々しい表情を浮かべる。

「あの女の声を聞いていると調子が狂って俺のドSゲージがみるみる減らされちまうんでねぃ」
「なんてこった、普通のガキだけなら総悟一人でカタが着くと思っていたんだが、まさかあの女がここに参戦して来るとはな」
「ここに来たって事は朝倉さんのチームでしょうか・・・・・・?」
「かもな、しかもあんなに親しげに万事屋の所のガキと話しをしてるって事はやはり万事屋側に回ってるのかもしれねえ」
「雪広さんと村上さんぐらいしか対処出来ませんよあの人・・・・・・」

沖田にとって千鶴は最も厄介な存在だ。それは土方と刹那も同様であり、彼女の突然の出現に頭を悩ます。
幸い、今はエヴァに向かって説教中であってこっちには全く気付いていない様子だが。

「こっちには気付いてないからここはひとまず状況を見る為に一度撤退してみましょうか」
「気付いてるわよぉ、桜咲さん。帰っちゃダメよ」
「気付いてました」
「お前に言われなくてもわかる」

状況の不利な事に戦略的撤退を試みようとした刹那だが、背後から千鶴がエヴァの方へ向いたままそっと呟いた。気付かれてる、これが一番厄介である。

「だがあの女は今金髪の小さいガキの方の説教に夢中らしいんで気付かれようが撤退は可能ですぜ、さっさと逃げましょうや」
「総悟、お前やけに消極的じゃねえか」
「あの女だけは苦手なんですよ、相手がのどかちゃんなら遠慮なくガブリと行くんですけどね」
「お前がガブリと行った瞬間、俺がお前にガブリと行くからな」

弱点の女がいる前でもサド魂を忘れない沖田、土方はそんな彼を目を細めて威嚇するもふと彼女の事を思い出し頭を掻き毟る

「そういやアイツ大丈夫か? 近藤さんが護衛をやってくれているがまさか今頃敵に捕まってるとか・・・・・・」
「考え過ぎですぜぃ土方さん、近藤さんがいるんですぜ?」
「そうですよ、近藤さんがいるのなら敵もそう簡単に攻めきる事は出来ませんよ」
「いや、背後突いたら余裕だったぞ」
「背後突いたら余裕だったらしいです、え?」

のどかの事に関しては人一倍心配性になる土方、そんな彼を安心させる為に刹那が声をかけるが横の廊下から女性の声が。

どこかで聞いた声? そう感じながら刹那がそちらに振り向くと

「そこから一歩でも動いたらこの人質とゴリ質の命は無いと思うんだな」
「十四郎さ~~~ん・・・・・・!」
「トシィィィィィ!! 総悟ォォォォォ!! 助けてぇぇぇぇぇ!!!」
「って何やってんだお前等ァァァァァァァ!!」
「龍宮ッ!」

怯えているのどかと泣いている近藤の背後に銃を突きつけて。
刹那のルームメイトである龍宮が仕事着を着て現れた。
千鶴の次は戦闘のスペシャリストの彼女の登場、しかも仲間の内二人を捕まえてる事に土方と刹那は慌てて叫んだ。

「テメェェェェェェェ!! そのガキに傷一つ付けてみろッ! 全身全霊を持って殺して殺して殺しまくってやるッ!!」
「トシィィィィィ!! 俺はッ!?」
「今なら殺すのは一回だけにしてやるからこっちに大人しくそのガキを引き渡せッ!」
「トシィィィィィ!! 俺はッ!?」
「ていうか殺すのは一回だけってその時点で私の人生が終了してしまうのだが?」

額の青筋が強く浮き出て怒りが大噴火している土方、既に腰の刀に手を置きいつでも抜刀できるよう準備している(近藤の事はすっかり忘れているらしい)。
反対に龍宮は冷静に人質に銃を向けながら落ち着いて対処する。

「やれやれ、真撰組の副長も自分の女を人質に取られてはただの猛犬だな」
「野郎・・・・・・! まさかあのストーカー女があっち側に着いていたとは・・・・・・!」
「想像の範囲外でした・・・・・・まさか龍宮がこの戦いに出て来るなんて・・・・・・」
「少しでもこっちに近づいたら彼女の命は無いぞ」
「くッ! どうしてお前がそんな卑怯な真似をッ! 止めろ龍宮ッ!」
「おい、お前なにどさくさに一歩前進しようとしてんだ?」

龍宮との会話のさ中、そろりと一歩足を進めようとする刹那の肩を土方はガシッと強く握って止める。
シリアスなフリしてこんな真似をやってける彼女こそ一番卑怯かもしれない。

「クソッタレ、のどかを人質に取られちまったら戦う事も引く事も出来ねえ」
「俺は普通に出来ますぜ、のどかちゃんやられようが遠慮なくストーカーなんざぶちのめしまさぁ」
「のどかさんはきっと私達の為に犠牲になってくれるでしょう」
「よし、まずテメェ等を殺しとくか?」

のどかと近藤が捕まっているにも関わらず戦闘態勢に入る沖田と刹那にポケットからタバコの箱を取り出しながらガンつける土方。
この二人は人質がどうなろうが知ったこっちゃ無いらしい。

「俺の周りはバカしか集まらねえのか・・・・・・? あ、のどかは別か」
「あり? あそこにいるの真撰組の奴等じゃねえか」
「本当だ、しかもエヴァやいいんちょもいるぞ。ってアイツ那波・・・・・・」
「あちゃ~ここで出くわしちゃったか」
「ん?」

右の廊下には千鶴、エヴァ、あやか。
前の廊下には龍宮、のどか、近藤。
そして左の廊下から・・・・・・

「お~い、また会ったな税金泥棒共」
「挑発するなよ、斬りかかって来たらどうすんだよ」
「そん時は銀さんが身を呈して千雨ちゃんを守ってくれるよ」
「万事屋ッ!」
「長谷川さんもいますしやはり朝倉さんもいます・・・・・・」
「やれやれ全員集合って事ですかぃ」

人気投票トップ2の銀時と千雨、そして彼等のアシストを行った和美がこちらにやってくる。

これで人気投票戦争参加者は全員集まった。

















































番外編 人気投票などに踊らされた哀れな道化共め












人気投票編の最終戦が始まるその頃、そんなモノが始まっていた事さえ知らないメンツは焼き肉店の個室で大騒ぎしている。
スプリングフィールド一家+万事屋二人+坂本&桂というメンバーで。

「飲――んで飲んで飲んで飲んで飲――んで飲んで飲んで飲――んで飲んで飲んでッ!!! 飲んでッ!!!!」
「ダハハハハッ! ヅラァこのモヤシヅラとそっくりじゃろッ!? ダハハハハッ!!」
「フハハハハッ! それならこのワカメも貴様そっくりだッ! フハハハハッ!」
「大騒ぎって酒飲んだバカ三人だけじゃねえかァァァァァァ!!! 勝手に盛り上がってんじゃねえよッ! 未成年人置いてけぼりなんだよッ!」

ナギ、坂本、桂。宴会の席で酒を飲んだ彼等は、わずか数分で泥酔状態に陥った。
ナギはテンション上がって顔を真っ赤にして立ち上がり、同じく坂本と桂も顔を赤く染めて会話にならない会話を行っていた。
酒が飲めない人達は放置され、このままではマズイと察した新八は立ち上がって三人に叫ぶ。

「ほらほら皆さん飲み過ぎですよッ! ちょっと落ち着いて下さいッ!」
「食らえロックオンッ! アスランパーンチッ!」
「ぐほぉッ! にいさぁぁぁぁぁんッ!」
「月光蝶キーークッ!」
「ティエリアァァァァァ!!!」
「テメェ等アサルトバスターで撃ち抜かれてえのかッ!」

制止も聞かずに嬉しそうに笑っている坂本にパンチやら飛び蹴りやらを入れてテンションマックスの桂とナギ。新八の額の血管が青く浮かび上がった。

「つうかアンタ等どんだけ飲んでんだよッ!」
「アハハハハッ! いいじゃろユズヒコッ!」
「そうだそうだお前も飲め春原ッ!」
「宴会はまだまだ続くんだから酒に飲まれて気分を味わうのだジャグジー・スプロットッ!!」
「なんでこの流れで見事にガンダム声優ネタを避けるんだよッ!! ウッソでいいじゃんッ! 絶対ここウッソの流れじゃったじゃんッ!」

酒のせいで完全に頭の回転が狂いだしている三バカにツッコミを入れた後、新八はため息を突いて自分の席に座り直す。

「ダメだこのガンダムバカ、大気圏に突入して死んじまえばいいのに」
「オイッ! なんで私にガンダムネタ振らなかったアルかッ! 私だってガンダム出てるぞッ! めっちゃ出てたぞッ! ネーナはガンダムキャラじゃないとうお前等独特のイジメアルかッ!」
「もうガンダムネタから離れろよッ! いいじゃんガンダム語りたいなら向こう行けばいいじゃんッ!」

隣にいる神楽に意味不明な抗議を受けてもはやヤケクソ気味に返す新八、仕切り役の新八にとってこのテンションはかなりツラい。

「ハァ~・・・・・・ネギ君もこれから大変だね、こんなガンダムバカが自分のお父さんなんて」
「別に~、私、こっちより今は学園都市で頑張ってる身だし~、興味無いわよ」
「興味無いって・・・・・・え? 私?」

自分と同じく未成年組であるネギに新八を気を遣って話しかけたが、彼の喋り方に違和感を抱く。
学園都市・・・・・・・?

「ねえ、ところであの銀髪バカは何処にいるの? わざわざこの御坂美琴様が来たってのにいないとかいい度胸してるじゃない」
「オイィィィィィ!! もう声優ネタどころじゃねえよッ! 中の人だけ残ってキャラが転生しちゃったよッ!」 

常盤台中学のお嬢様、御坂美琴。別作品『禁魂』(銀魂×禁書)からこのノリとテンションの中やってきて、やるせない表情で勝手に肉を焼いて食べていた。

「アンタ向こう側の人ですよねッ!? 禁魂のキャラですよねッ!?」
「きん・・・・・・アンタ女の子に向かって何言ってるのセクハラよそれ、レベル5の私に喧嘩売ってんの?」
「オメェ等の作品のタイトル言ってんだよッ! 喧嘩売るなら作者に売れッ!」

バチバチと頭の上で微量な電気を発生させて少し機嫌が悪くなった美琴に新八は怯えもせずに堂々とツッコむと、ふと頭の中に一つ気になった点がある。
いきなり息子が別キャラに転生してしまった母親であるアリカは、この状況下でパニックにならないだろうか・・・・・・・。

そう感じた新八はバッと美琴の隣にいる筈であろうアリカの方に目を向ける。

だが彼女は全く動じずに落ち着いていた。

ていうか・・・・・・

「ネギ、学校ではちゃんと教師を出来ておるのか?」
「いや、今はネギじゃないんですけど?」
「母であるわらわに何を言うておる、ホレ酌してやる、オレンジジュースで構わんじゃろ?」
「ああ、すみませんどうも」
(気付いてねぇぇぇぇぇぇ!! 息子が別人に変わってんのに何も違和感覚えてねえよッ! なんなんだよあの人ッ! 声だけで人を識別してるのッ!?)

別人に変わっている事も気付かずにアリカは美琴のコップにジュースを注いでいた。
ボケでやっているのか天然でやっているのか、それは彼女のみぞ知ることである。
そんなアリカに美琴は戸惑いながらも彼女から受け取ったオレンジジュースを飲みながら話しかける。

「ていうかあそこにいる“三バカ”見たいにお酒でも飲んだらどうですか? 別に私達に気使わなくていいですしどんどん飲んだり食べたりした方がいいですよ」
「ネギ、何故に母であるわらわに敬語なのじゃ・・・・・・やはり何年もの離ればなれになっていた事で心のバリケードというものが出来てしまっておるのか・・・・・・?」
「いやだから私、ネギじゃないですから・・・・・・眼科行ってきたらどうです?」
「まあだがせっかくネギが酒でも飲めと言ってくれたのじゃからわらわも飲むとするかの」
「だからネギじゃないって・・・・・・」

何度も否定するが聞く耳持っちゃいないアリカに美琴は疲れた表情を浮かべるも、アリカは気にせずにナギ達が飲んでいたお酒に手を伸ばそうとする。

だがそれを見た瞬間、泥酔状態だったナギは一瞬で素面に戻って慌てて彼女に手を伸ばした。

「ちょォォォォォォッ! 姫さんアンタが酒飲んだらダメェェェェェェ!!」
「はぁ? 別にいいじゃろ、こんなめでたい席じゃしせっかくの機会じゃ。普段は全く酒を飲まないわらわもここは一杯ぐらい飲んでみる」
「いやいやいやいやいやいやいやッ!! アンタの酒癖の悪さは夫の俺が一番知ってるから止めてッ!!」
「酒癖が悪い? そんな覚えは無いぞわらわには」
「記憶飛んでるんだよいつもいつもッ!」
「酒の一杯で記憶が飛ぶ人間など何処におるのじゃ、貴様等だけで楽しんでいて不愉快じゃ、わらわも飲んでやる」
「ちょッ! おまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ムスッとした表情で自分のコップに酒を一杯分注ぎ込み、それを豪快にグイッと飲み干すアリカ。ナギが必死に止めようとしたのだが残念ながら酒は彼女の胃の中に入ってしまった。

「ヤベェ・・・・・・・これ絶対ヤベェ・・・・・・」
「・・・・・・」
「お、おいアリカ・・・・・・」
「・・・・・・」

酒を飲みほした後急にガックリと肩を落として黙りこむアリカ。ナギが恐る恐る声を掛けてもピクリとも反応しない。
するとそんな彼女にあの泥酔組の一人である桂が

「ハッハッハ~ッ! どうしたアリカ殿元気が無いぞ~ッ! テンション上げて行こう~ワハハハハハッ!!」
「おい止めろバカッ! 今のそいつに話しかけ・・・・・・!」

お猪口を片手にベロンベロン状態の桂がアリカの頭をペチペチと叩く。
眠れる獅子を起こそうとする彼をナギが慌てて彼を止めようとした次の瞬間

「どばァッ!!」
「ぬわぁぁぁぁ!! 1コマでバカが天井に刺さったッ!」

一瞬の出来事であった。
アリカの頭を上機嫌で叩いていた桂が消えたかと思いきや何時の間にか天井に頭から突き刺さっており、アリカの方は左拳を振り上げたポーズで固まっている。

「や、やべぇ・・・・・・ここは逃げねえと焼かれ・・・・・・」
「・・・・・・おい」
「ひッ!」

急いでこの場から避難しようと逃げ出す手立てを考えていたナギに。
しばらく無言だったアリカがドスの低い声を出して彼の方へ顔を上げた。
たった一杯で顔を赤く染め、目が座っている。

「酒・・・・・・もっと持ってこい・・・・・・」
「・・・・・・え?」
「酒もっと持ってこいつってんだろうがこんボケコラァァァァ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ナギさぁぁぁぁぁんッ!!」

いきなりプッツンした様子で立ち上がったアリカはナギの頭上目掛けて空になった酒瓶を叩きつける。
その部屋一体にナギの悲鳴が飛び、新八も慌てて叫んだ。

「なんじゃこりゃァァァァ!! 前にアリカさんは酒飲んだら人格変わるって聞いたけど変わり過ぎだろうがッ! もはや別人の領域だよッ! 親子共々別キャラになっちゃったよッ!」
「誰か酒持ってこいくおらぁぁぁぁぁぁ!!!」

口からシュ~と謎の白い煙を吐きながら魔王と呼ばれてもおかしくない様な威圧感を出すアリカに新八は恐怖に屈しない様気張るように叫ぶ。
桂はともかく夫のナギまで瞬殺するとは・・・・・・。

「うう・・・・・・」
「ナギさんしっかりッ!! それでもアンタ英雄とか呼ばれてる凄い魔法使いですかッ!」
「新八・・・・・・後は任せた・・・・・・・」
「オイィィィィィ!! あんな化け物僕がどうにか出来るわけねえだろッ! レベル99の勇者でもウンコ漏らして母親の待つ家に帰るぞアレと遭遇したらッ!」

気を失う寸前に後のこと全てをナギに押し付けられて、新八は気絶した彼の半身を起こして激しく揺さぶるも、白目をむいてピクリともしなくなってしまった。

「桂さんは一発昇天だし、ナギさんはこうなっちゃたし・・・・・・てか何だこの展開ッ! バトル路線に変更ッ!?」
「・・・・・・『何だ』?」 
「え?」

新八の言った言葉にピクリと反応したアリカ、すると座った目を酔っ払ってまだヘラヘラ笑っている坂本に向けた。
目だけで彼はなにかわかったのか、酔ったままフラフラと彼女の隣に移動し。
彼が隣に来るとアリカと坂本は酔いで頭を回しながら楽しそうに大声で

「なんだかんだと聞かれたらッ!」
「答えて上げるが世の情けッ!」
「世界の破壊を防ぐためッ!」
「世界の平和を守る為ッ!」
「愛と真実の悪を貫くッ!
「ラブリーチャーミーな仇役ッ!」
「ムサシッ!」
「コジロウッ!」
「銀河を駆けるロケット団の二人にはッ!」
「ホワイトホールッ! 白い明日が待ってるぜッ!」
「だぁぁぁぁぁコイツ等めんどくぇぇぇぇぇぇ!!! 酔いが回ってんのにそのセリフだけは完璧に覚えてんだなッ!」
「アハハハハハッ!」
「おいニャース、さっさと酒持ってこいッ!」
「誰がニャースだッ!」

一通りの“あの”決め台詞を行った後、坂本はゲラゲラ笑ったまま大の字でぶっ倒れ、アリカはこちらに向かって酒の注文をしてくる。
このカオスな展開に新八はブチ切れたままツッコミを入れるもてんで効果ない。

この状況、一人で打破する事は難しい・・・・・・

そう思った新八は咄嗟に隣に座っている神楽の方に振り返る。

「神楽ちゃんッ! アリカさんを押さえ付けてッ!」
「テメェそのカルビは私が最初に目ぇ付けてたんだコラァッ!」
「はぁ!? 何言ってんの!? 焼き肉に目を付けるとか意味無いのよ! 最初に取った奴がその肉を食う権利を与えられるのよ!」
「うおいッ! なに小さい事で喧嘩してんだこのダブルバカヒロインッ!」

何時の間にかネギの代わりに出て来た美琴と鉄板の上に並ぶ肉の取り合いをエキサイティングしている神楽に新八は美琴含めて両方に怒鳴り散らす。肉より大事なことが今目の前起こっていると言うのに・・・・・・・。

そうこうしているウチにアリカはどっかから調達した酒をグビグビと飲んで「プハー」と満足そうに声を出すとキョロキョロをボーッとした表情で周りを見渡す。

「にしてもせっまい所じゃなぁ・・・・・・」

そう言ってしばらくした後、アリカは目を怪しく光らせ微笑を浮かべた。

「・・・・・・燃やすか・・・・・・・」
「すみませんッ! 色々と略しすぎてどういう経緯でそこの行き着いたのか説明してくれませんかッ!」
「ニャース、火じゃ、火を持って参れ」
「だからニャースじゃねぇよ!! てかアンタ放火する気ッ!? 肉どころかこの店全部燃やすつもりッ!?」
「一枚一枚焼くのめんどくさいじゃろ・・・・・・?」
「どんだけめんどくさがり屋さんなんだよッ!」

ケラケラ笑ったまま危険な匂いを漂わせるアリカを新八は必死で止める。
この空間で唯一まともなのは自分だけだからだ。

「・・・・・・なんでこんな連中で話進めてなおかつ完結出来たんだろ・・・・・・」
「ヘヘヘへ、マッチの火じゃ中々燃え移らんな・・・・・・・」
「ギャァァァァァァ!! 誰かこの放火魔止めろぉぉぉぉぉぉ!!」

店の中での新八の叫びに、誰も答える事は出来なかった。


































































「おいなんだ今のシーン、戦う前にいきなり変な奴等が出てたぞ」
「アイツ等見ないと思ってたら焼き肉食ってたのかよ・・・・・・」
「ねえ銀さん、ネギ先生の代わりに出てた女の子誰?」
「『禁魂』読め、そこでわかるから」
「キンタマ・・・・・・?」
「おい銀八、いい加減にストレートな下ネタ止めろよ、聞いてるこっちが恥ずかしくなる」
「文句を言うなら作者に言え」

場所戻って麻帆良学園内。
人気投票戦争参加者が全員そろい踏みした中、銀時は両サイドにいる千雨と和美と会話していると廊下の曲がり角からあやかが“彼女”を連れて走ってくる。

「銀さんッ!」
「ああ、お前無事だったのか」
「ええ運良く千鶴さんが来てくれましたから」
「は? アイツ?」
「あら先生~」
「げ、私の一番苦手な奴がこっちに来た・・・・・」

嬉しそうにやって来たあやかと共に後ろから頬笑みを浮かべながら千鶴もやってくる。
それに対して千雨は苦虫を噛んだような表情で一歩後ずさりする。
なんだか彼女の笑顔は慣れない。

「朝倉、なんであの女を仲間にしたんだよ・・・・・・」
「いやねぇ、向こうからぐいぐいやって来て断るに断れなかったんだよ・・・・・・」
「長谷川さんも元気~?」
「・・・・・・アイツが私に向かって笑う時なんか背筋がゾクッとするのは気のせいか?」
「気のせいじゃないと思うよそれ、千鶴さんがなんか放ってるんだよきっと・・・・・・」

笑ってこちらに挨拶をしてくる千鶴だが、千雨の背後に何故か電流の様に悪寒が流れ出し思わずブルルと震える。
和美はそんな彼女を心配そうに声を掛けながらふと周りを見てると。

「あり? エヴァちゃん何処?」

もう一人の万事屋メンバーがいない事に気付いた。

「ねえ、いいんちょ。エヴァちゃんは?」
「ああ・・・・・・エヴァさんですか、それならその辺で隠れてるんじゃないですか?」
「え?」

機嫌の悪そうにそう言うあやかに和美はなんで彼女がこんなにも機嫌が悪いのか小首を傾げる。
隠れている? とりあえず和美はキョロキョロと周りえを探して見ると

「・・・・・・」
「あ、エヴァちゃん」

廊下の曲がり角から顔をちょこんと出しているエヴァを発見。
いつもなら銀時の腰に飛びこんで抱きつく筈なのに何故にあんな所で隠れているのだろうか。
和美は疑問を覚えながらもあやかと会話している銀時に教えてみる。

「銀さん、あそこにエヴァちゃんいるよ?」
「あん? あ、チビ。おい、何してんだそんな所で?」
「わ、私は悪くないぞッ!」
「は?」
「悪くないったら悪くないッ! 私はドSを倒す為だけに魔法を使ったのだッ!」
「・・・・・・アイツ何言ってんだ?」

顔だけを覗かせながら必死に訳のわからない弁明を繰り返すエヴァに銀時は口をへの字にして舌打ちする。
そんな彼にあやかはハァ~とため息を突いた後、ボソッと事の経緯を伝えた。

「先刻、エヴァさんが沖田さんを倒す為に魔法を使ったのですの」
「ああ、別に俺は敵に対してのみなら魔法使ってよしって約束したから問題ねえよ」
「でもその魔法のせいで近くにいた私は寒くて凍え死にそうでしたの」
「あ~それは仲間への配慮がなってねえなおいチビ、こっちこい」
「銀時ッ! 私は悪くないぞッ!」
「いいから、さっさと来い」

あやかの報告に銀時は軽く頷いた後、端っこで隠れているエヴァにこっちに来るよう催促。
それに従って彼女はやっと姿を現して彼の方にトテトテと移動した。

「私は悪くないッ!」
「よくそんな事言えますわね、私に対して好き勝手言っていたのは何処のどなたですの?」
「う、それは・・・・・・」
「まあ事が事だから仕方ねえ所もあるが。とりあえずコイツに謝っとけチビ、こんな状況で仲間内で衝突されたらたまんねえ」
「な、なんで私が雪広あやかなんかにッ!」
「一生口聞かない刑の方がいいか?」
「・・・・・・」

銀時に言われエヴァは悔しそうに歯ぎしりしながらツーンとした表情でこちらを見下ろしているあやかの方に振り向き。

「わ、わ、悪かった・・・・・・許せ」
「“ごめんなさい”じゃないですかそこは?」
「ぐぅぅッ!」
「はい、もう一回、頭も下げて下さいね」
「ぬぐぐぐぐぐ・・・・・・・ご、ご、ご・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

プライドもほおり投げてエヴァは目を血走らせながら頭を下げた。
それに対してあやかは腕を組んで見下ろしたままフンと鼻を鳴らして

「反省している様子はありませんが、まあここは寛大な態度で許してあげますわ」
「いつか・・・・・・いつか絶対ギャフンと言わせてやるぅ~・・・・・・」

この屈辱絶対に忘れないという風に上目遣いであやかを睨みつけながらエヴァは荒い息を吐く、余程彼女に謝るのが嫌だったのであろう。

それを見ていた銀時は両手をパンパンと叩いて一件落着だと言うかのようにエヴァの頭をポンポンと叩く。

「もうすんなよ」
「わかってる、こんな事二度とゴメンだ・・・・・・・」
「よし、じゃあ真撰組の奴等といっちょやるか」

怒り心頭だったのだが銀時が頭を触ってくれたのでエヴァの怒りは若干冷めた。
そんな彼女を見てもう大丈夫だと察した銀時は目の前にいる真撰組メンツと改めて顔を合わせる。

「待たせたなコノヤロー」
「待たせ過ぎだ、テメェ俺等を完全に忘れてただろ?」
「ああ、ぶっちゃけ俺等だけで話進んでるのかと思ってた」
「上等だ・・・・・・」

偉そうに言いのけた銀時に向かって、土方は腰の刀を抜く。
戦う準備と理由は出来た。
土方は後ろにいるのどかと近藤を人質にしている龍宮に、振り返らずに話しかける。

「おい、色黒女。テメェが執着している銀髪頭を殺されたくなきゃ大人しくのどかと“ついてに近藤さん”を引き渡せ」
「フン、生憎私は先生が負けるなどとこれっぽっちも考えた事無い。だが・・・・・・」

龍宮はそこで言葉を切ってのどかと近藤の背中に突きつけていた銃を二つとも下ろした。

「先生が来るための時間稼ぎは十分にしたからな、もうこの人質に用は無い、ほれ、早く男の所に戻ったらどうだ?」
「う、後ろから撃たないで下さいね・・・・・・?」
「・・・・・・このままずっと目の前にいられるとそれもあり得るな」
「ひッ! 十四郎さ~んッ!」
「トシ~~ッ!」

ボソッと呟いた龍宮の言葉に慌ててのどかは土方達の方に駆け寄る、ついでの近藤も。

「すみませ~ん、近藤さんと喋っていたら突然龍宮さんにピストルを突きつけられて・・・・・・」
「トシ~~怖かった~~~ッ!」
「近藤さん気持ち悪いから止めろ・・・・・・人質を楽に解放するとは随分と余裕じゃねえか色黒女。大方テメェも万事屋側だろ、アイツ等とまとめて駆除してやるから覚悟しろ」

駆け寄ってきたのどかの頭を撫でながら今にも抱きついて来そうな近藤をたしなめた後、土方は龍宮の方にイラついた様子で視線をぶつける。
彼にとって結果はどうであれのどかを危険に陥れた罪は地獄よりも深いのだ。
だがそんな彼に龍宮はフッと笑みを見せた

「いや、先生側の人間ではないよ」
「・・・・・・なに?」
「私は・・・・・・」

龍宮がザッと足を広げると彼女の来てい茶色のコートが大きくなびく。
そしてそのコートの裏側に隠されていたのは

「すべてのキャラを抹殺するよう“依頼”を受けているんでね」
「なッ!」
「手榴弾ッ! 皆さん下がって下さいッ!」

コートの裏に隠されているのは大量の重火器、龍宮はその内の一つの手榴弾を取るとピンを口で抜いてこちらに投げる体制に。
刹那が慌てて驚いている土方達に叫んだ瞬間、小型爆弾はこちらに飛んで来た。

そして
カチンと鳴った後、耳をつんざく爆音が鳴り響く。

「「「「「おわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

軽く人を吹き飛ばすレベルに値する爆弾の破裂音、廊下のクロスロードの真ん中に豪快な焼跡を残す。
その手榴弾の脅威に間一髪、土方達は横っ飛びしてなんとか回避に成功。

「あ、あの野郎ォォォォォ!! 順位プレートどころか俺達自身をふっ飛ばしに来やがったッ!」
「龍宮は昔から加減を知らないんですよ・・・・・・」
「ていうかあのマゾ女、旦那側じゃなかったんですね。旦那を餌にして仕留めようと思ったのにこれじゃあ厄介ですぜぃ」

間一髪で避けた土方に刹那と沖田はすぐに態勢を立て直す為に立ち上がる。
のどかと近藤はまだ床に顔をつっ伏しているが。

「大丈夫かオイ、しっかりしろ」
「は、はいなんとか・・・・・・こう言うの前にあったので・・・・・・」
「トシ・・・・・どうやらこりゃあ予想以上にヤバそうだな・・・・・・」
「近藤さん床に顔うずめてないでさっさと顔上げて準備してくれ」

半身を起こして頭がクラクラするのを我慢しているのどかと顔をうずめたまま喋り出す近藤に声を掛けると、土方は一本のタバコを咥えて前を見る。

「戦だ」

土方達が戦う姿勢を見せる中、銀時達万事屋一派もそれを迎え撃つ為に準備を始める。

「やり合う前に言っておくぞ、チビ、魔法は敵だけに当てろ」
「わ、わかった・・・・・・」
「俺に当てたら容赦しねえからな」
「う、うん絶対しないぞ・・・・・・」

今度はミスしない様にとエヴァは緊張しながらコクリと頷く。

「りゅ、龍宮さんッ! なんでなんでッ!? 私達の味方じゃなかったのッ!?」
「アイツ、私たちどころか銀八までやるつもりか? つうかお前は私達の味方なのか?」
「もちろん、私が狙うターゲットは真撰組軍団とエヴァちゃんって決めてたからッ!」
「いやエヴァは外してやってくれッ!」

自信満々に胸を張る和美に千雨は友の免除を願い入れる。

「千鶴さん、あなたも私達の味方ですわよね?」
「私? ウフフ、私はいつでも“あやかの”味方よ?」
「・・・・・・・」

少し引っ掛かる言い方でニコニコ微笑む千鶴を見てあやかは少し不安な気持ちになるも。
とりあえず彼女を信じて上げる事にした。

準備は整った、こっからがいよいよ本番である。

「よ~しいっちょやるか、チビ、お前は特攻して連中を一匹残らずぶち殺せ」
「それはいいがお前はどうするのだ?」
「俺は後ろの奴等を守りながら戦う、千雨とあやかの順位は俺の次に高いからな、狙われるのが目に見えている。その点お前は・・・・・・」
「あ~もうそれ言うなッ! 傷付くッ!」
「8位だ」
「だから言うなッ!」

最後に隣にいる銀時に向かって叫んだ後、エヴァは前方に佇む龍宮と左廊下の方にいる土方達真撰組を視界に入れた。

「人気投票に踊らされた哀れな道化共め・・・・・・」

ギリっと歯噛みした後、エヴァは目の前に二つの氷の剣をシュンっと出現させてそれを両手で取った。

「己の愚かさを身を持って知れ」

二つの剣を交差してエヴァは龍宮達に向かって構える。

ラストゲーム、開幕。







[7093] 番外編 人気投票など関係無い! 私達は私達だ!
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2010/09/05 17:17




















番外編 人気投票など関係無い! 私達は私達だ!















麻帆良学園校舎内の十字になっている廊下は今熱気に包まれている。

人気投票戦争、最後の聖戦が幕を開けたのだ。

「悪いがここにいる者全てを駆逐させてもらう」

先手を仕掛けたのはこの場にいる全員に反旗を翻した龍宮だ。前方に向かって大きく飛来し、両手に持ったデザートイーグルで銀時達一向に狙いを定める。

だが

「豆鉄砲など効かぬわッ!」

龍宮が飛びかかってくると同時にエヴァが両手に持った氷の剣を地面に突き刺す。すると彼女の目の前から巨大な氷の壁が下から生えて来る。それを見た龍宮は一旦銃を腰のガンベルトにしまってコートの下から手榴弾を取り出した。

「闇の福音が守りに入るとは・・・・・・らしくもない」

一歩後ろに飛びのいて龍宮は手に持った手榴弾をエヴァの作った氷の壁に向かって投げる。

その瞬間、強烈な爆音が鳴り、氷の壁は跡かたも無く崩れ去った。
しかしそれもエヴァの計算の内だ。

「私が守りに入るだとッ!? 馬鹿めがッ!」
「!!」

氷の壁が崩れたと同時にエヴァが右手をかざしてこちらに飛んで来た。
なんらかの手段で龍宮が防御結界を壊すのを予測して、既に壁の向こう側で飛びかかる準備を行っていたのだ。
そのあまりにも速い攻撃に龍宮が呆気に取られた隙を突いてエヴァは彼女をその場で強く押し倒す。
馬乗りの状態で龍宮の上を取ったエヴァは右手の黒爪を妖しく光らせ、彼女の目にその爪を近づける。

「こんなくだらない人気投票などで私達に謀反を起こすとはな・・・・・・」
「何を言っている私は元々君達の味方になった覚えはない。私は私の腕を買ってくれた人の依頼を引き受けるだけだ」
「・・・・・・どういう意味だ? ならば貴様に依頼をしたのはもしや朝倉和美・・・・・・」
「いや違うね、彼女はただ私に利用されただけの存在に過ぎない」
「何ッ!?」

馬乗りのまま尋問を開始するエヴァに龍宮は意外にも素直に話を暴露し始めた。

「元々彼女にこの人気投票戦争を仕掛けさせたのは私だ、依頼人の頼みでね、出来る限り多くの人間をこの戦争に参加させたかったらしい」
「・・・・・・・私はてっきり朝倉和美が考案した計画だと・・・・・・」
「全ては私の依頼人の手の内だ、こうやってまとまって決戦を始めるのも“彼女の計算”だったのだろう」
「くッ!」
「君達は最初から彼女の手の上で踊らされていたに過ぎないんだよ」
「教えろッ! 貴様にそんなふざけた依頼を行った奴をッ!」

これまでの行いは全て誰かが仕組んだ計画の一つだっただと? それを知ったエヴァはぐっと怒りを押さえて、龍宮の胸倉を掴んでその依頼を行った人物が誰かと問いただす。
だが龍宮は涼しげな表情でフンと鼻を鳴らした。

「依頼人の名を言う事は仕事上タブーなんでね、それを言ってはこの道の仕事を続けることが出来ない。残念ながら私の口から教える事は無理だね」
「貴様のプライドなど知るかッ! さっさと吐けッ! さもないと頭の上に付いている粗末な順位を破壊してやるぞッ!」
「ああ、構わんよ。どうせここにいる者全てが・・・・・・・」

無理矢理にでも吐かせようとしてくるエヴァに龍宮がフッと嘲笑を浮かべると。

「じゃあお死になさい」
「ぐはぁッ!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!! 龍宮の22位がァァァァァ!」

彼女の順位がガシャーン!と音を立てて何者かに踏み潰された。
たかが順位プレートを破壊されただけなのに龍宮は口から血を吐いてガクッと気絶してしまう。

22位・龍宮 脱落

一体誰が彼女を。エヴァがバッと顔を上げるとそこには冷めた表情でこちらを見下ろす顔があった。

「何してるんですか? さっさと銀さんの所行ったらどうですのエヴァさん?」
「雪広あやかッ! 貴様どうして龍宮の順位をッ!」
「この人あまり好きじゃないんですの・・・・・・いつも銀さんに付きまとって付きまとって・・・・・・もう限界でしたわ」
「せっかくこの戦争の黒幕の正体がわかったのかも知れないのに・・・・・・」
「黒幕の正体を知るより先に他にやる事があるんじゃなくて?」
「ん?」

めんどくさそうな表情で右手で髪を掻き上げながらあやかはふとある所に視線をずらす。
エヴァもそちらに目を動かすとそこには。










「くたばりやがれ万事屋ァッ!」
「夕凪を折ったを罪をここで償え白夜叉ッ!」
「だぁぁぁぁぁぁ!! テメェ等二人がかりとか卑怯だろうがッ! タイマンで来いタイマンでッ!」

敵である真撰組サイドの土方と刹那の四方八方から飛んでくる斬撃に。
大将首である銀時が一人壁を背にして木刀でなんとか防いでいた。

「私があそこへ行ってもただの足手まといにしかなりませんわ、悔しいですけど今回だけはエヴァさんが適任ですの」
「ぬおぉぉぉぉぉ銀時ィッ! 貴様等ァァァァァァ!! 私の銀時に手を出すなァァァァァァ!!!」
「単純ですわねホント」

苦戦を強いられている銀時を見てエヴァは黒幕の正体など忘却の彼方に消し去りすぐに彼の方へ向かって走る。
確かにあやかの言う通り、ここは戦いに勝つ事が一番先決。その為にもまずは大将首である銀時を守ってかつ相手の順位を破壊せねば。

「貴様等ァァァァァァ!! 私が相手だァァァァァァ!!!」
「チッ、金髪の小さい方か」
「噛ませ犬の匂いがプンプンしますが一応強敵ですね」
「貴様等に言われたくないわッ!」

銀時と自分達の間に躍り出てきたエヴァに土方と刹那は苦い表情を浮かべるも、攻撃を止める姿勢は見せない。

「こうなったら手っとり早く1位と8位をまとめて潰して俺等の順位を二つ上げてやる」
「そうすれば土方さんトップ10入りですもんね」
「上等だコラッ! 覚悟しろ下位順位共がッ!」
「私と銀時のコンビネーションをナメるなよッ!」

刀を構えて真っ向から突っ込んで来る土方と刹那に、銀時は吼えてエヴァは再び氷の剣を取り出して迎え撃つ。

だが一つ問題が生まれた。
銀時とエヴァの大事な戦力が行ってしまったので、龍宮を仕留めたあやかはある男と対峙してしまったのである。

「あの二人が土方さんとバカ刹那に気を取られている隙に、俺もちょいと狩りでも楽しもうじゃねえか」
「お、沖田さん・・・・・・・」

一人戦場に取り残されたあやかの元へ近づいたのはドSプリンス、沖田だ、その目は獲物を狙う狩人の目。
ポケットに手を突っ込んでジリジリと近づいてくる沖田にあやかはゴクリと生唾を飲み込んで後ずさりする

「いい女じゃねえか、旦那の女じゃなかったら真っ先に調教フラグ立たせてやってたぜぃ」
「フン、『女の敵』というのはあなたのような下劣な人を意味するんですわねきっと」
「この俺を前にしてまだそんな口叩けるとは驚きだぜ、ま、すぐに仕留めてやらぁ」

笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる沖田。何か手は無いかとあやかは必死に考えをめぐらす。
しかし彼女は忘れていた、ここにいる自分の友人こそが目の前にいる男に最も脅威だという事を

「ウチのあやかには手を出させないわよ」
「!!」
「千鶴さんッ!」

さっとあやかの前に両手を広げて彼女を庇うように現れた人物こそまさにその人、千鶴。
沖田はつい反射的に一歩下がり警戒する姿勢にすぐに入る。
だが千鶴はそんな彼にキラキラとした笑顔で

「話し合いで済ませましょう、あなたはきっとわかってくれる優しい人だわ」
「ぐはぁ!」
「ナイス千鶴さんッ!」

千鶴の裏表も無い清らかな一言、優しい言葉に免疫が無い沖田は口から吐血して苦しそうにその場に片膝を折った。
それを見てあやかは庇ってくれた千鶴に親指を立てた。

「さすが千鶴さんですわッ! 3年A組唯一のサディスティックキラーッ!」
「く・・・・・・! さすが頭ん中花畑女だ・・・・・・俺が一番呼ばれたくない事を平然と言いのけやがる」
「あら私なにか失礼なこと言いました? ごめんなさい、いつも夏美に「空気読めてない」って言われてるから注意してるのに」
「あ~もうダメだ、コイツといると精神が保てねえ・・・・・・」

千鶴のフワフワした喋り方に沖田は完全にやる気を失った様だ。ダルそうな表情で千鶴とあやかの二人から徐々に引き下がって行く。

「こうなったら向こうのメガネん所行くか」
「なッ! そんなッ! でもこっちには・・・・・・千鶴さんッ! 千雨さんを助けて下さいッ!」

目標を千雨に変更させて行ってしまう沖田にあやかはすぐに千鶴に急いで後を追う様進言する。

だが

「頑張ってね~、私応援してますから」
「千鶴さんッ!」 

旅に出る息子を見送るよう母親の様な感じで沖田に手を振って激励する千鶴の予想外の行動に、あやかは慌てて彼女を凝視した。

「このままだと長谷川さん達がやられてしまうんですわよッ!」
「どうしてぇ? それの何が悪いの?」
「・・・・・・え?」
「だって・・・・・・」

ニコニコと笑いながら千鶴は頬に手を当てて首を傾げた。

「だってあの人が長谷川さんの順位を圏外にしてくれたらあなたは晴れて銀八先生とツートップになれるのよぉ? 私それが夢でここに来たの、ウフフ」
「な、なんという・・・・・! 純粋無垢であると同時にそんな腹黒い事も考えているなんて・・・・・・千鶴さん、恐ろしい子ッ!」
「楽しみねぇ~」

朗らかな笑みを浮かべながらのほほんとした態度とは裏腹にお腹真っ黒な千鶴を見て。
あやかは右手で口を押さえ戦慄を覚えた。









ところでその裏で千鶴に狙われている千雨はと言うと。

「あ~だりぃ、早く終わんねえかな・・・・・・」
「銀さん達頑張ってるね~、勝てるかな?」
「銀八とエヴァなら問題ねえよ、不死身設定だし」
「・・・・・・エヴァちゃんはあったけど銀さんにあったっけ不死身設定?」
「だって何度も死にかけてんのにすぐ完治して復活するんだぜ、強化人間だろ」
「あ~そうかも」

廊下の角に隠れて身を屈め、先程からずっと銀時達の戦いを和美と一緒に見守っている。
どうやら無駄に戦うのは避けて逃げに徹した様だ。

「私達はあいつ等に手間かけさせない様こうやって目立たずにしていようぜ」
「目立たず? それは少し異議ありだね、メインヒロインである千雨ちゃんが目立たないようになんて考えちゃダメだよ、コレを機会に戦いを覚えていき、ゆくゆくは『千雨ちゃん修行編』が始まるぐらい戦いに積極的にならないと」
「その異議は却下。やらねえよそんな修行編、私体動かすの嫌いだもん」

後ろからブーブーと文句を垂れる和美に千雨が素っ気なくそう言っていると・・・・・・

「だったらその五体二度と動かなくさせてやらァァァァァァ!!!」
「のわァァァァァァ!!!」

千雨が瞬きした間で、先の鋭い刀が彼女の目の前を横切り壁に突き刺さる。

「チッしくじちまった、残念、一瞬であの世に送ってやろうと思ってたのに」
「ギャァァァァァァ!! ドS野郎ォォォォォォ!! いやジェイソンッ!?」


油断していた所にまさかの沖田出現、千鶴から逃げ出し、しょうがなく千雨の所にやってきたのだ。
突然の出来事に千雨は叫び声を上げ、後ろにいる和美に思わず抱きついた。

「どどどどどどうすんだ朝倉ァッ!」
「可愛い・・・・・・しょうがないこうなったら・・・・・・」

千雨に助けを求められて満更でも無い気分に和美は浸りながら、ふと廊下の中央で大の字で気絶している龍宮が視界に入った。

そういえば彼女の服には大量の武器が隠されていた様な・・・・・・

「千雨ちゃん・・・・・・・」
「ん?」
「龍宮さんの所まで逃げるよッ!」
「えッ!? ちょっと待てッ!」
「あん?」

何か妙案があるのか和美は千雨の手を取って沖田の横を走って逃げきろうとする。

だがそこでみすみすと逃がす沖田では無いのだ。

「オラよ」
「がはァァァァァァ!!」
「朝倉ァァァァァァ!!」
「ガキ如きが俺を出しぬけると思ってんのか?」

沖田と朝倉が横一線に並んだ瞬間だった。
彼女の頭に付いていた22位という順位プレートは。
いとも簡単にたやすく刀で真っ二つに斬られてしまった。

22位・和美 脱落

順位を失い圏外になってしまった朝倉は、その場でバタンと両膝を突いて崩れ落ちようとする。
だがその寸前に

「こんの・・・・・・! こなくそォォォォォォ!!!」
「え? うおッ!」
「なにッ!」

力尽きる前に和美は左手で握っていた千雨の手を強く引っ張り、豪快に千雨を龍宮の方に投げ飛ばしたのだ。
予想外の動きに沖田は呆気に取られてそれをみすみす見逃してしまう。
和美の決死の覚悟のおかげで千雨は「ふぎゃ!」と呻き声を上げて顔面から龍宮の隣に不時着する。

「イデデデデ・・・・・・はッ! 朝倉ッ!」
「千雨ちゃん、私の分まで守り通して・・・・・・・自分の順位だけじゃなく・・・・・・自分の生き方も・・・・・・」
「朝倉ァァァァァァ!! なんかいい事言って死んだァァァァァァ!!! てか順位破壊されたら死ぬのコレッ!?」
「いや精神的にだるくなる・・・・・・・」
「死んでねえのかよッ!」

死んだようにぶっ倒れた和美に千雨が龍宮の状態を確かめながらツッコミを叫んだ。
結局順位が破壊されても死にはしないらしい、まあ当たり前なのだが。

「間際らしい真似すんなよ・・・・・・いやそれより・・・・・・・」
「チ、今の女俺より下の順位かこれじゃあ上がりやしねえ、やっぱり狩るなら2位だな」

龍宮の隣に座り込んで千雨は彼女の腰に付いている“ある物”をゴソゴソと取り出そうとする。
そこに刀を抜いたままゆっくりと近づいて行く沖田。

「無駄な足掻きは止めな、安心しろい、オメーもすぐにあの世に送ってやらぁ」
「無駄かどうかなんて・・・・・・」
「あん?」
「誰にもわかんねえだろッ!」
「!」

千雨が龍宮のガンベルトから取り出したブツを見て沖田は思わず目を見開く。
龍宮の愛銃であるデザートイーグル、それが今千雨の両手に握られ、沖田の上にある順位プレートに向かって狙いを定める。

「朝倉の仇だッ!」
「面白れぇ・・・・・・撃てるもんなら撃ってみなッ!」

千雨派慣れない持ち方で震えながら銃を握り、愉快そうに突っ込んで来る沖田の順位プレートに狙いを定める。

そして

ダンッ!という小さくも鋭い銃音が鳴り。
一発の黒い弾丸は沖田の順位プレートに見事命中して破壊したのだ。

だがここで一つ計算外な事が起きた。

銃のリコイル(反動)に耐えきれず撃った本人である千雨が後方に吹っ飛んだ。

「うおッ! おぐッ!」

反動によって後ろに吹っ飛ばされた千雨はそのまま壁に頭から激突。
同時に彼女の順位プレートも潰れてしまった。

「イデデデデ・・・・・・な、何が起こった・・・・・・? 記憶がなんか飛んでる・・・・・・」
「ガンスキルが無い君にアドバイスだ・・・・・・デザートイーグルの旧式の一発分のリコイルは、撃ったのが女子供なら肩の関節が外れる程の衝撃だ」
「ハハハハハ・・・・・・そんな化け物銃学校内で持ち歩くなバカ・・・・・・」

重たい体を起こしてわざわざ銃の扱い方を注意してくれた龍宮に。
千雨は頬を引きつらせ笑いながら最後にツッコミを入れ目を回して気絶してしまった。

そして彼女に順位プレートを撃たれた沖田も

「へ、油断しちまったぜ・・・・・・まあいいや、あの女に殺されるよりは・・・・・・マシ・・・・・・」

両膝からガクンと崩れ落ちそのままバタリと倒れ動かなくなった。

7位沖田・2位千雨 脱落

「千雨ェェェェェェェェ!!」
「おお長谷川千雨とドSがッ! やったぁこれで私の順位が二つも上がったぞッ!」
「やったわあやかッ! 2位になったわよッ!」
「これでわたくしと銀さんがツートップに・・・・・・何故でしょう友が殺られたというのにこの暖かい高揚感は・・・・・・・ウフフ」
「テメェ等一体どっちの味方だよッ! なんで仲間やられたのにテンションMAXッ!?」

銀時が慌てて倒れた千雨に叫ぶも、隣で一緒に戦っているエヴァは6位にランクアップした事にはしゃいで飛び上がり、千鶴は千鶴で順位が変わってないというのにあやかの手を嬉しそうに取る。
そしてあやかでさえ念願の2位になれた事に喜びを噛みしめていた。
ぶっちゃけ千雨がやられた事にショックを受けたのは銀時だけである。

「もうちょっと結束力あっただろ俺達ッ! どうすんだよツッコミやられてッ!」
「心配するな私がいるッ! 銀時ッ! 足元気を付けろッ!」
「は? ってうおいッ!」

順位が上がった事で有頂天な気分になったエヴァは床に両手を付ける。
その瞬間、周り一帯にピシピシと床に氷が張っていき・・・・・・










「フハハハハハッ! やはり魔法を使うのは気分が良いッ!」
「おいチビッ! こういう魔法使うならもっと先に言えッ!」

あっという間にその場一帯の床に分厚い氷が張られてしまった。
床一面に張られた氷の床、これには彼女と戦っていた土方と刹那も顔をしかめる。

「あのガキ、戦いにくい環境にしやがって・・・・・・」
「自身でこうしたという事は、彼女にとってこの地形は絶好の狩り場という事になるんでしょうね・・・・・」
「気を付けろ、滑って転んで自滅なんて恥ずかしい真似なんてしたら侍の名折れだ」
「わかってます、さすがにそんな醜態を見せるわけには・・・・・・」

土方に厳しい表情でそう言われ刹那も愚問だと言う風に頷く。だが彼等の後ろで・・・・・・

「うおぉぉぉぉぉッ! 大変だトシィィィィィ!! いきなり床に氷が張られてめっちゃ・・・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「近藤さん気を付けてキャァァァァァァ!!!」
「・・・・・・・なんで仲良くスケート楽しんでんだよあの二人、金メダルでも狙ってんのか?」
「楽しんでいるというよりパニック状態だと思うんですが・・・・・・・」

凍らされた床の上はツルツルしており少し歩いただけでも転びそうなぐらい滑ってしまう。
土方と刹那はそれらを考え慎重に行動しようと考えていた矢先、待機していた近藤とのどかが綺麗に滑りながら後ろで慌てふためていたのだ。
これには土方と刹那も呆れた表情で二人に視線を送る。

「何やってんだ、思いっきり敵のド壺にハマってどうすんだよ」
「助けに行きますか?」
「いやいい、ほっとけ。戦が終わるまで適当に滑らせとけ。どうせ脅威はこの二人だけだしな」


近藤達を指差して尋ねて来る刹那に土方が素っ気なく言ったその瞬間・・・・・・・

「のわァァァァァァ!! ああちょっとどいてそこッ! 止まらないのッ! マジで止まらな・・・・・・・うごッ!」
「二人共どいてくださ~~~いッ! それか助けて・・・・・・ひゃあッ!」
「あらあらゴリラさんがこっちに向かって滑って来たわ、すぐに止めて檻に閉じ込めないと・・・・・・きゃ」
「仕方ないですわね・・・・・・・に、2位であるわたくしが特別に助けて上げてもよくて・・・・・・あら?」

華麗に滑っていたその先には勝利の余韻に浸っていた千鶴とあやかの姿が。
近藤とのどかが慌てて二人に叫び声を上げるもそれと同時に遂に足がもつれる。
千鶴とあやかも彼等を助けてやろうと一歩前に進もうとしたが氷で上手く足を滑らせてしまう。

そして

辺り一帯に4つの鈍い音と、パリンという何かが割れる音が4つ分聞こえた。
近藤は千鶴と、のどかはあやかとまさかの頭から転んでゴツンと思いっきりぶつかってしまってのだ。当然頭に付けていた順位も割れた。

「無念・・・・・・・」
「目が回りますぅ・・・・・・」
「ウフフ・・・・・・」
「せ、せっかく銀さんとツートップに・・・・・・・」

バタンと同時に倒れ込む4人。
チーンという音が脳内で響き、その場に残された銀時・エヴァと土方・刹那は唖然とした表情でリタイアした4人を見つめた。

5位近藤、12位のどか、18位千鶴、2位あやか。リタイア

「「「「なんでだァァァァァァァァ!!!!」」」」

銀時達4人の叫び声が綺麗にハモってこだました。

「のどかァァァァァァァ!!」
「土方さん、近藤さんはッ!?」
「あやかァァァァァァァ!!」
「ヒャ~ヒャッヒャッヒャッ!! 雪広あやかが死んだ~ッ! ざま~みろッ!」

各々吠えたりツッコんだり喜んだりする4人。
そして残されたキャラはもう彼等4人だけになってしまったのだ。

「テメェ~~~よくもウチのガキやってくれたじゃねえか~・・・・・・!」
「いや俺等も被害こうむってるからおあいこだろ、俺達は悪くねえよ」
「元はといえばそこにいるエヴァンジェリンンのせいだろッ!」
「知らん、最近寒くなったからきっとそのせいで床に氷が出来たんだろ」
「学校の中に氷柱が出来るってどんな氷河期だッ!」

目を背けてしらばっくれる銀時とエヴァに激昂する土方と刹那は、滑る床で必死にバランスを取りながら得物を構え出す。

「もう俺等しか残ってねえんだ最後ぐらいは正々堂々と俺達と戦え・・・・・・」
「そうだ、オチは綺麗に片づけるモンだろ・・・・・・」
「しょうがねぇな・・・・・・・」

めんどくさそうにボリボリと髪を掻き毟った後、キリッとした表情で銀時は顔を上げて木刀を右肩に掛けて構える。

「かかって来い、こっからは真剣勝負だ」
「私達だって最後ぐらいは真正面から斬り合っても構わんと思ってるしな」
「へ、上等だ・・・・・・・」

銀時の隣にいるエヴァも不敵な笑みで承諾、土方と刹那は二人を睨みつけてぐっと刀を握る。

そして

「派手なパーリィはそろそろ終いにしようぜッ!」
「白夜叉ッ! ここで貴様を超えるッ!」

氷の床で滑らない様に歩くのではなくあえて氷の上を滑りながら突っ込んで来る土方と刹那。
刀を構え特攻覚悟で突っ込んでくる二人の姿は何処か勇ましい。

だが

「バカめが」
「「へ?」」

つまらなそうに一言呟いてエヴァがパチンと指を鳴らすと。






氷の床は一瞬にしてパッと消えた。

「げッ!」
「なッ!」

先程まで滑れたはずの床が一瞬にして普通の床に戻ったので、思わず二人はつんのめって前に倒れようとする。
そこを鬼畜コンビは逃さない。

「正々堂々で勝負だぁ?」
「そんな事してもなんの得もあるまい」
「「!!」」

ニヤニヤ笑って木刀を横に構える銀時と
同じく笑みを浮かべたエヴァが氷の剣を水平に構える。

そして土方と刹那めがけ目をギラリと光らせ

「「勝てばいいんだよッ!」」

ガシャーン!と二人の順位プレートを横一閃で斬り裂く銀時とエヴァ。
銀時は土方を、エヴァは刹那のを破壊。
銀時が木刀をスッと腰に差し戻したと同時に土方と刹那はバタリと無言で前に倒れた。

「これでようやく長かった戦いも終いか・・・・・・」
「そうだな、私もいつの間にか4位にまでランクアップしてしまった・・・・・・」

真撰組サイドも朝倉軍団も全滅した。残ったのは銀時とエヴァのみだ。
銀時は改まって後ろに振り返る。

「だが犠牲が多過ぎたな・・・・・・千雨とあやかもやられちまったし」
「私はお前がそこ(1位)にいればなんの不満も無いのだがな、無事に守り通せたな王者の座を」
「ケッ、この作品で俺以外に1位になれる奴なんていやしねえんだよ。コイツは俺の永久欠番だ」
「そうだな・・・・・・」

顔を背けてつっけんどんした態度で銀時がそう言うと、エヴァは長き戦いを終えた事でようやく安堵した笑みを浮かべる。


かくして長き人気投票の戦いはここで静かにか幕を閉じたのであった・・・・・・・




























「ところがギッチョン」
「「へ?」」
「悪いが二人共道連れだ」

エピローグでも流れるのかと思った矢先。
倒れていた龍宮がムクリと顔を上げて。

千雨に奪われた方ではなくもう片方のデザートイーグルを取り出し、銀時とエヴァの頭の上に乗っかっている王者の座と4位の座を
早撃ちでパリンという音を立たせて破壊してしまった・・・・・・




















「ふざけんなコラァァァァァァ!!」 
「このストーカー女ァァァァァァ!!」
「テメェよくも俺の一位の座をォォォォォォォ!!」

上位からあっという間に圏外にされてしまった事に激しい怒りを覚え、倒れる龍宮に銀時とエヴァは咆哮を上げながら襲いかかる。
倒れる龍宮の胸倉を掴み、銀時は額から青筋を浮かべ顔を近づけた状態でメンチを切った。

「このクソアマ最後の最後によくもやってくれたなコラ・・・・・・・おいチビッ! 三角木馬持ってこいッ! このマゾ女にピッタリなお仕置き食らわしてやるッ!」
「茶々丸に連絡してすぐ持ってこさせるッ!」
「ハァハァ・・・・・・・! それはとても素敵で魅力な提案なのだが悪いね先生、仕事に私情は持ち込まない主義なんだ私は。出された依頼には絶対にやり遂げなければいけないからね」
「依頼だと? テメェそれどういう意味だ?」

三角木馬と聞いて少し興奮した様子の龍宮だが、彼女の言った事に銀時は口をへの字にして追及する。だが彼女はフッと笑い

「最初から踊らされていたんだよ私達は」
「なにッ!?」
「全ては上位グループを陥れる罠だったのさ」
「・・・・・・誰がそんなクソッタレな計画を仕組んだんだ」
「依頼人が誰かなんて私の口から言えるわけないだろ、ただ・・・・・・」

銀時に胸倉を掴まれた状態で龍宮はふと彼の後ろにいるエヴァに目を向ける。

「彼女なら黒幕の正体が掴めるかもしれないよ?」
「は? 私か?」
「チビが?」
「なにせこの人気投票で彼女と依頼人は同じ境遇だったからね」
「それとこれと一体どんな関係があると・・・・・・ん? 同じ境遇?」

最初からなにがなんだかわからない様子で首を傾げるエヴァだったが、頭の片隅に“とある彼女”のセリフが再生される。
あの時はなんであんな事を言ったのか理解できなかったが、今ならその意味がわかる。

『頑張ってね・・・・・・』



「・・・・・・もしやこの騒動が始まるのを知っていたからあんな事を・・・・・・・」

頭を手で押さえながらエヴァはブツブツと呟きながら推理を進めて行く。
もし黒幕の正体が彼女だったら・・・・・・

「いやだが待て、あの子娘は朝倉和美に潰されて圏外になってる筈だ、だったらこんな事する意味が無い・・・・・・」
「私が潰した? 何言ってんのエヴァちゃん?」
「は?」

エヴァの呟きが耳に入ったのかリタイアして倒れていた和美が疲れた様子で顔を彼女に向けた。

「私はこの戦いで誰一人も潰してないよ?」
「何を言ってるんだ貴様? 他の二人と合流する時にあの子娘を殺ったのは貴様であろう」
「子娘? ああ、あの子ね。ううん違うよあの子は“自分から”私に順位プレートをくれたんだよ」
「!!」
「「私にはもう必要のないモノだから」とか言って押しつけるように私に差し出したんだよ、だから私が潰したんじゃなくてあの子が自分からくれたの」
「なんだと・・・・・・・」

和美からの情報にエヴァの頭の中で形成されていたパズルが遂にカチリとくっついて完成した。
黒幕の正体は・・・・・・

「・・・・・・銀時、悪いがちょっと用事を思い出したから行って来る」
「おいチビ、オメェ何処行く気だ?」
「わからん、けど・・・・・・」

全てを理解することが出来たエヴァは尋ねて来る銀時に背を向けて。
突然バッと走り出す。

「“アイツ”はこの学校の中の何処かにいる筈だ・・・・・・!」

“本当の最後の戦い”を終わらせる為に。

エヴァは全力疾走で学校内を駆け巡った。










































少女は一人学校の屋上で空を眺めていた。
広い屋上にポツンと一人たたずみ、安堵の表情を浮かべ空を見上げていた。

先程自分が仕組んだあの戦いは自分の望んだ結末を迎えた。

欲望に溺れた者とはなんと醜くき存在か・・・・・・

「人間ってのは、争いの中でしか生きれない生物なんだね・・・・・・」

少女は一人呟きため息を突く。
すると彼女の背後からキィッと屋上に出る為のドアが開く音が聞こえた。
荒い息を吐きながらこの屋上にやってきた者をすぐに“彼女”だとわかった少女は、後ろに振り替えずに彼女に話しかけた。

「あなたもそう思うよね・・・・・・・エヴァさん」
「ハァハァ・・・・・・・! やはり貴様だったか9位・・・・・・いや・・・・・・・」






















「佐々木まき絵」





















呼吸の乱れを止めようとしながらエヴァは目の前にいる少女、佐々木まき絵(圏外)を睨みつけた。
まき絵はそこでやっと後ろに振り返りエヴァを見てゆっくりと微笑む。

「やっと名前で呼んでくれた」
「全て貴様の仕業だったのだな・・・・・・私自身も驚いたよ」
「よく私がここにいるってわかったね」
「学校中を必死に走り回って探したのだ。「お前はきっとここにいる」、そう確信していたからな、おかげで体もヘトヘトだ・・・・・・」

笑いかけて来るまき絵にエヴァはニヤリと笑い返し、疲れた体を引きずって彼女の元へ一歩一歩と歩いて行く。

「教えてくれ・・・・・・どうしてお前はこんな真似をしたんだ・・・・・・・」
「・・・・・・」
「自分の順位をワザと落とし、人気順位を変動させ。皆の欲望を刺激し騒ぎを起こさせ混乱に導く・・・・・・」
「我ながら上手くいったと思ってるよ、龍宮さんに頼んだ回があったね」
「お前、私と二人で話してる時に言ってたよな? 自分はこんな位置に立つ人間じゃないって」 
「・・・・・・」
「そしてお前は今、自分どころか他の奴等さえも道連れにして順位を奈落に落とした・・・・・・これで満足なのかお前は・・・・・・」

トボトボと歩いて行きながらエヴァは段々とまき絵に近づいて行く。
その目には怒りの感情が見えるが、まき絵は全く恐がりもせずただ彼女を見つめ、ボソッと答えた。

「あの人達に知って欲しかったから・・・・・・」
「・・・・・・なに?」
「ねえエヴァさん、私とエヴァさんって周りにいつもイジメられてる、イジメられっ子キャラだよね?」
「・・・・・・」
「別に私はそんな役割でも構わない、けどね。あの人達は私達がどれ程の苦労と痛みを背負って毎日を生きているのか何も知らない、知ろうともしないんだよ」
「それは・・・・・・」
「知って欲しかった、自分達イジメられっ子が誰も見てない所で必死に頑張っているのかを。あの人達が『花』なら私はなんの変哲もないただの『土』、それはわかってる。けど知って欲しかった・・・・・・・誰もが見ようとしない所で花を輝かす為に毎日戦っている土の気持ちって奴を」
「佐々木まき絵・・・・・・」

彼女にも彼女なりの動機があったのだ。私利私欲の為とかただ楽しみたかったとかではない。
彼女自身の立場を他のみんなに知って欲しかったのだ。

「だから私は今ここにいる、実はさっきまでエヴァさん達の戦いを隠れて見ていたんだよ、みんなの順位が圏外になる様をね」
「何故そんな事を・・・・・・」
「あの人達は私がどんなに叫んでも耳を傾けない、だからこの人気投票というイベントに便乗してこの計画を立てた。上位陣のキャラ全てを私達『土』がいるべき最低辺に落とす為に」
「そんな事をする為に銀時達をわざわざ・・・・・・」

まき絵との距離が目と鼻の先の距離まで来た時、エヴァはワナワナと震える拳をぐっと固めた。

「そうだよねバカみたいんだよね、でも私バカだからこんな事しか考えられなかったんだよ・・・・・・ぶッ!」
「この愚か者がァッ!」

自虐的に微笑を浮かべたまき絵の頬に向かってエヴァは右手を振り上げ拳を振り切る。
まき絵はそのまま地面につっ伏し、倒れた彼女をエヴァはキッと睨みつけた。

「イジメられっ子の気持ちなんて誰も知ろうとしない・・・・・・確かにそうだ、けどなッ! 同じイジメられっ子はちゃんと知ってくれてるんだぞッ! 私はちゃんと貴様を知っているッ!」
「エヴァさん・・・・・・」
「土と呼ばれようが踏み台と呼ばれようが構わんッ! 人気の順位なんか関係ないッ! 私達は私達だッ! もう一度言うぞ佐々木まき絵ッ! 私はちゃんと佐々木まき絵という存在を知っているッ!」

感極まり目からボロボロと涙を流すエヴァを見て思わずまき絵も目が滲み始めた。
彼女もずっと自分と同じ気持ちだったのだ、どんなに踏まれようが蹴られようが見向きもされなかった自分と。
この世界で唯一彼女だけはそんな自分の事を知ってくれていたのだ・・・・・・・

「俺達だって知ってるよ」
「「!!」」

いきなり聞こえた“彼”の声にエヴァとまき絵は同時にハッと声のした方向に振り返る。
そこにいたのは銀時、そして他の投票戦争参加者のメンバー全員の姿が。

「銀時・・・・・・・それに貴様等全人揃って・・・・・・・」
「銀時先生・・・・・・・」
「お前等、頭の上見てみろ」
「「え?」」

銀時に言われ、何が何だかわからない様子で二人は頭の上を見上げる。

そこには圏外ではなく光り輝くの一つの順位があった。

『1位』

「どうやら神様もお前等の気持ちって奴を知ってくれたらしいぜ」
「こ、これは・・・・・・! うわッ!」
「私とエヴァさんが・・・・・・・この作品の1位・・・・・・! ひゃッ!」

紛れなく輝く1位の称号に、二人が驚いているや否や。
銀時達は粋な計らいで一斉に彼女達を囲んで胴上げしてくれたのだ。

「よしッ! 今日くらいは俺達が踏み台になってやろうぜッ!」
「今回だけはエヴァさん達を花にさせて上げますわッ!」
「エヴァちゃんとまき絵ちゃん、今まで頑張ってくれてありがとね~ッ!」
「君達がいたからこそ俺達は輝けたッ! 真撰組局長として君達を祝福しようッ!」

賛辞の言葉、感謝の言葉。温かい言葉を送ってくれる人達に胴上げされながらエヴァとまき絵は涙を流しながら目を合わせる。

佐々木まき絵・・・・・・

エヴァさん・・・・・・・

みんな・・・・・・・わかってくれていた・・・・・・・

私達の気持ちをわかってくれていた・・・・・・・

私達だけじゃなかったんだ・・・・・・・

支えられていたのは私達も一緒だったんだ・・・・・・

ありがとうみんな大切な事に気付かせてくれて・・・・・・・

そしてありがとう人気投票、大切な事を教えてくれて・・・・・・

人気投票ばんざ・・・・・・・














エヴァとまき絵がみんなに感謝を送ろうとした所で。

二人は胴上げされてる最中・・・・・・

屋上から外にほおり投げられた。

「本当に二人ともありがとう、そして・・・・・・」

空中にフワリと浮いた数秒間の間で。

まき絵とエヴァはこちらを見送るメンバーを顔が合った。



















「さっさとテメーの“持ち場”に戻るがいい」

微笑を浮かべ立っている彼等の顔が一瞬見えた後。

エヴァとまき絵は仲良く真っ逆さまに下に落ちて行った。

「人騒がせな事しやがって、ふざけんなボケ」
「エヴァさんとまき絵さんが1位になるとかありえませんわ」
「銀八~、腹減ったから飯食いに行かねぇ?」
「私も連れてって千雨ちゃ~ん」
「佐々木には今度膨大な報酬金を請求しなければな」

上から聞こえる彼等の声を耳に入れると、二人は落ちて行く中互いに目を合わせフッと笑った。


みんなに・・・・・・もう一度聞いていいか・・・・・・?












人気投票って・・・・・・













必要か?











































一方、人気投票戦争が終わった事も全く知らない焼き肉メンバーはというと・・・・・・

「ガ~・・・・・・・」
「はぁ・・・・・・やっとアリカさん寝てくれたよ、もう店が燃えそうでヤバかった。ちょっとしたボヤ騒ぎになったけど・・・・・・・」

大人陣全員、口を開けていびきを掻きながら爆睡。つまるところ全員酒に酔って最終的に騒ぎに騒いだ挙げ句ぶっ倒れてしまったのだ。アリカを始め坂本、桂、ナギも死んだように眠っている。
シラフでいるのはもうため息を付いて疲れ果てている新八と、こんな状況でも黙々と焼き肉を食べている神楽。

そして・・・・・・

「ふぅ~食った食った、私寮暮らしだから中々焼肉食べる機会とか無いのよね~、ごっそさん」
「まだいたのかよアンタッ! いい加減巣に戻れよッ!」

しこたま焼き肉食いらげて、今は壁にもたれて爪楊枝で歯の間のカスを取りながら満腹感たっぷりの御坂美琴がいた。
そんな彼女に向かって新八がキレた様子で叫ぶと、彼女の向かいで焼き肉を食べていた神楽は彼女の頭上のある物を見て驚いた。

「おいッ! ビリビリが1位になってるアルッ! どういう事アルかコレッ!?」
「うおッ! 本当だッ! なんでこの人1位になってんのッ!? ていうかそもそもそこにいるべきはネギ君だった筈なんだけどッ!?」
「え? あ、本当だ。私1位じゃん、なんの1位か知らないけど」

どうやら銀時達の争いによって、ネギの順位が格上げされ自動的に1位になってしまったらしい。
そこに美琴が今いるとなると・・・・・・・



3年A組 銀八先生! 人気投票暫定結果 第1位 御坂美琴

「なんでだよォォォォォォォォ!!!」






[7093] 山崎編 ZAKINOTE Ⅰ 学籍番号1番~10番
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2011/07/18 13:22

これは俺、真撰組密偵、真帆良学園清掃係である山崎退の記録したレポートである。
仲間達に忘れ去られこの学園に取り残されてしまった俺は、いつ帰れるのかという不安を抱きながら、特にやる事もない時間を利用して真帆良学園の生徒、3年A組と一部の学校関係者についてまとめてみた。

特に面白味もない地味な文章だが、この記録がどうか真撰組とこの世界に役立つ事を俺が願う。







そして早く俺を迎えに来てくれ、もう本編終わって一年経ってんだろうが

























学籍番号1 相坂さよ
江戸に帰ってしまった旦那と副長、教師であるネギ君と生徒の一人であるのどかちゃんの情報をまとめてみると、どうやらこのクラスには女子生徒の幽霊がいるらしくそれが彼女らしい。
幽霊か、そういえばウチの屯所でも幽霊騒ぎとかあったよな……アレは幽霊じゃなかったけどこっちは本物らしい
その幽霊は幸か不幸か俺には見えない、ネギ君にも稀にしか見えないようだ。
だがたまに誰もいない教室で「千の風になって」を歌っている声が聞こえる事がある。
もしかしたら彼女が……いやないないない、なんで幽霊がテメーを成仏させかねない歌を熱唱すんだよ






学籍番号2 明石裕奈
特に俺は彼女と接点が無いので彼女の親友であるまき絵ちゃんから色々と教えてもらった。
バスケットボール部に所属していて元気一杯の運動系女の子、そして自他共に認めるファザコンらしい。
最近の思春期の女の子はお父さんに対して敵対心MAXになるのに今時珍しい子だ。
前に体育館の清掃をしている時に彼女がクラスメイトや旦那と一緒にバスケをしていたのがあったが、旦那でも全く勝負にならなかった。
余裕気にあの旦那からボールを掻っ攫う姿は少しカッコ良かった
ボロ負けした旦那は腹いせにまき絵ちゃんをボール代わりにダンクシュート。
あの人はいつになったら大人になるのだろう。






学籍番号3 朝倉和美
旦那とよくツルんでいた女の子の一人。どんな情報でもすぐに見つけ出せる報道部の敏腕記者、どっからでも神出鬼没に出て来て記事にする為アポ無し取材する姿はさながら欧米のパパラッチを彷彿させる。仕事が出来るとはいえ旦那も彼女にはかなり手を焼いていたようだ。
誰とでも話しかけられるタイプなのか、色んな事に首を突っ込んで生徒と交流を交えている。
周りにめんどくさがれる事もよくあるがそれに全くめげずに奮闘する彼女を見て、俺も少し見習いたいと思った。
旦那と一緒にいる仲だったせいか千雨ちゃんとよく一緒に行動している事が多い。
どう見ても正反対のタイプなのだが仲はかなり良好のようだ。
だが逆に千鶴さんとは仲が悪い、たまに口喧嘩を二人でしているのを何度か見た事がある。
なんか銀さんは千雨ちゃんの嫁だとかなんとか叫んでたような……。
……逆じゃね?






学籍番号4 綾瀬夕映
恐らく現在形で真撰組の中で数多の攘夷浪士や罪人の群を抜いて最も危険と称されているのは彼女だろう。
彼女はあろうことにウチの組織のトップに惚れこんでいるのだ。
「美女と野獣」ならぬ「ゴリラと毒舌娘」。一体誰得のカップリングなんだろうか?
ていうかウチの局長の事を好きになったのかはさっぱりわからない。本人に聞いても

「そんな事もわからないからあなたは何時まで経っても地味なんです、ていうかあなたは早く次の就職先を探したらどうですか? 私が正式にあなた達の姐さんとなったあかつきにはまずは地味で役に立たないあなたを即座にクビにしようとしていますので、せいぜい私にゴマをするなりして頑張って下さい、まずはそうですね、とりあえず購買部でウルジャン買ってきて下さい」

……女の子に殺意が芽生えた事に自分でも驚いた……ウルジャンはジャンプより高かった。
なんと言っても口が悪い、口を開けばすぐ毒を撒き散らす。上から目線は基本で完全に俺達大人をナメている、俺をナメている。
こんな子を絶対姐さんとは呼びたくない、なんとしてでも局長と彼女の縁談を阻止せねば。
旦那や副長とも相当険悪な仲だったらしい、まあお互いすぐ喧嘩腰になるから妥当だろう。
局長は人のいい性格だから彼女とでも上手くいけるかもしれないが、俺達隊士は絶対に無理だ。
特に沖田隊長、あの人は間違いなく彼女を殺しにかかるよきっと。いやマジで





学籍番号5 和泉亜子
まき絵ちゃんとルームメイト。関西弁を使い、髪と目の色が薄いのが特徴の少女だ。
まき絵ちゃんのイチ押し情報曰く、惚れっぽい性格。いやどうでもいいんだけど……。
クラスメイトと一緒にバンド活動とかもやっているらしい、確かバンド名は「でこぴんロケット」だっけ? たまに体育館や音楽室で演奏しているを観る。
俺は音楽とか興味無いからわからないから、「まあ上手いんじゃない?」って感じだ。
前に旦那が彼女の所属するバンド名を聞いて「は? ポコちんロケット? 誰のナニをロケットにする気だテメェ、言っとくけど銀さんのは飛ばさねえぞ」と言った瞬間彼女が泣きだした。
あの人は年頃の少女に対してなんであんなに平然と下ネタを使えるのだろうか





学籍番号6 大河内アキラ
水泳部所属で小動物をこよなく愛し、無口だが世話焼きが好きな優しくていい人。
なんというか千鶴さんや楓さんとは違う雰囲気のお姉さんオーラを持っている、傍にいて安心すると言うか落ち着く。あの二人といても一秒たりとも落ち着けないしな……。
争い事とか人の迷惑になる事や困らせる事が「超」が付く程嫌いだとか。
旦那とは絶対に仲良くなれないだろうな、だってあの人、争い事とか困らせる事とか大好きだもん……沖田隊長と同じ真正のサディストだもん。
案の定、旦那の事はあまり快く思っていなかったらしい、一度も会話した事無いししたくも無かったとか、まあそりゃそうだよね。
ちなみに彼女の情報はまき絵ちゃんからと俺が直接彼女から聞いた事をまとめて作った。
直接聞けた所から察するにどうやら俺の事は嫌いじゃないらしい。
少しだけ旦那に勝った気分
あと、最近寮の管理人となった新人の阿伏兎さんと廊下で話してる光景を見た。

「ヘビって可愛いですよね、あのつぶらな瞳とチロチロと出す舌が……」
「まあ食ったら美味ぇんだけどよ、アイツ等たまに毒持ってる奴いるよな?」
「可愛い小動物には棘があるものです」
「その棘でウチの部隊が全滅しかけた事あってさ、団長のバカが大量に毒ヘビ捕って来てよ、何も知らない俺達に食わせたんだよ。もう全員戦う前から腹の中が戦場になっちまってあの時はさすがに俺もヤバかったわ」

どこからどうツッコんでいいのかわからなかったので俺は話しかけずにその場から去った。


学籍番号7 柿崎美砂
今時の女の子といった感じ、“だった”。
A組では唯一の彼氏持ち、“だった”。
沖田隊長に調教されて身も心もメス豚になって“しまった”。
だが隊長がいないときは至って普通、たまに奇声を上げたりどこかへ失踪したりするらしいけど……
亜子ちゃんの所のバンド、「でこぴんロケット」のメンバー。
前は普通に演奏してたらしいが、沖田隊長と出会ってからはデスメタルに目覚めたらしい。
演奏中にハイテンションにデスボイスやっていたり、ギターを焼いたり叩き壊したりしたり、同じメンバーに奇声を上げながらドロップキックしているのを俺は見た。
あのバンドは上手くやっていけるのだろうか……なんだか心配になって来た、主に彼女に対して。





学籍番号8 神楽坂明日菜
彼女は旦那や沖田隊長に対しても全く怯まずに真っ向から勝負を仕掛ける事が出来る。
俺の知る中でA組で一番命知らずの女の子だ。
頭は空っぽだが運動神経はズバ抜けていて、生身にも関わらず天人を単独で倒せる実力を持っていたりと、色々とぶっ飛んでいる。ぶっちゃけ俺より強いんじゃないか……?
普段は同じ部屋に住むネギ君の姐さん的存在で、嫌々な態度を取っておいてなにかと彼の世話をしてあげているらしい。
ネギ君曰く口癖は「勘違いしないでよね!」。お手本のようなツンデレだ。
旦那とは結構折り合いが悪かったようだ、お互い負けず嫌いな部分があるし度々喧嘩をしていたとか。中学生、しかも女の子とマジ喧嘩する旦那って一体……!
ちなみに俺は全く彼女と交流が無い、たまに「あらアンタいたの?」と言われるぐらいだ、地味キャラはツラいぜ……。






学籍番号9 春日美空
陸上部でありながら学校の敷地内にある教会でシスターをしているという変わった女の子。
影が薄い事は自覚していて、あの濃いキャラ層に埋もれかかっていても気にしない。俺と新八君も見習わなければ……
足が速く、運動神経がバカみたいに凄いアスナちゃんと互角、もしくはそれ以上に機敏に動ける。
旦那と昼飯代を賭けてグラウンド一周レースをした時も凄かった。
「足で勝負するとは言ってねぇから」と言ってニンマリと笑い原付にまたがる“最低の大人”を相手に彼女はなんと足だけで勝ったのだ。
旦那はそのまま無表情で原付に乗った状態で学校外へ逃亡した。汚い、さすが旦那汚い





学籍番号10 絡操茶々丸
学校敷地内を掃除してる時に偶然彼女が俺と同じ様に掃除していたのがキッカケで仲良くなった子。人間ではなくからくりの一種だ
戦闘態勢に入ったらロケットパンチもできるし目からビームも撃てる。どこからともなくデッカイ銃を取り出して天人をジェノサイド、なんでもアリだ。
そして切り札として指の先からはなんと醤油が出る。
……いやなんで醤油?
旦那ともう一人の子と同じ家に住んでいて世話役を担当していると言っていたが、あの破天荒な二人に対して冷静にいられる彼女の肝っ玉が凄い、まあ何事も冷静に対処出来る彼女だから旦那達と上手くいけるのかもしれないけど。
ところで彼女は最近、学校の授業が終わった放課後はよく俺の所に来るようになった。
なんで俺なんかの所に来るのかは自分でもわからないらしい。なんかのバグかもしれないとか言ってたけど……。話し相手になってくれたりとなにかと俺に好意的に接してくれるし、なにか助けになってあげたいものだ。だって侍だもの









[7093] 山崎編 ZAKINOTE Ⅱ 学籍番号11番~20番
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2011/07/19 17:10




学籍番号11 釘宮円
彼女の名前を聞いた時、万事屋の所のチャイナ娘が頭に浮かんだ、何でだろう。
人懐っこくて明るい性格、友達思いでみんなの頼れる兄貴的存在だ、女の子に言うのもなんだけどマジで兄貴みたいだ。男勝りっていうのかな?
クラスメイト二人と一緒にチア部に所属している、他の二人を上手くまとめていいツッコミを連発している、将来有望だな、ツッコミ役として。
裕奈ちゃんがバスケの試合している時、体育館の観客席から黄色い歓声を上げながら踊って応援していた彼女達三人。
心の底から応援している気持ちが無ければあんなに迫力ある踊りは出来ない、ああ、純粋にいい子なんだな彼女は……
そんな彼女達を下からガン見してスカートの下を覗こうとしていた旦那。
ホントこの人一回死んだ方がいいんじゃないかな?
ちなみにその後旦那はアスナちゃんに美味しくシメられました。






学籍番号12 古菲
漢字が出ない事で散々作者を悩ませた二代目チャイナガール。
口調は万事屋の所のチャイナ娘と瓜二つだし性格も単純で口よりも手が先に出るタイプ。肌の色だけが違うのでなんだか1Pカラーと2Pカラーって感じ、当人達に言ったらぶん殴られそうだが。
事あるごとに俺に勝負を仕掛けてくる、旦那やネギ君も散々仕掛けられてるらしいが軽く流して煙に巻いてしまう。俺はそれが出来ない、逃げようとしてもすぐに追いつかれてボコられる、現在37戦 0勝37敗だ、楓さんが数えてた。
頭はアスナちゃんやまき絵ちゃん同様空っぽらしい、英語の問題を全て自信満々に母国語で書いていたとかネギ君が言っていた。英語のテストなのに中国語で書かれたテスト用紙を見てさぞかしあの子供先生も頭を悩ませたであろう。
あと、旦那には思いのほか懐いていた印象があった。
そんな彼女に旦那も少し彼女に優しかったような気がする、まあおおよそ江戸にほったらかしにしているチャイナ娘を思い出すのだろう。他の生徒にもあれぐらい優しくしとけばいいものを……。





学籍番号13 近衛木乃香
修学旅行では誘拐させられるわ、幼馴染を殺されかけるわ、はたまた自分まで生け贄にされるわでホント散々な目に遭った可哀想な女の子。
だがそんな事に遭ったにもかかわらず今ではすっかり彼女は立ち直っている。
あんな事に遭ってもキラキラとした笑顔を振りまく姿はさながら菩薩様、カオスの巣窟となっているA組では一際後光が差している。たまに影から手を合わせて一礼しているのは秘密だ、後利益とかありそうだし。
ちなみに学園長の孫娘だ、二人を比べて遺伝子の素晴らしさがよくわかった、DNAの神秘。
A組ではかなりまともな生徒に属する、とにかくよい子、メチャクチャよい子、何処ぞの毒舌小娘に彼女の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
アスナちゃんやネギ君と同じ部屋に住んでいて家事一般をほとんど自分で行って、なおかつ二人の世話をしてあげている彼女のアガペー精神には心服する。ええ子や……
そんな彼女にはさすがの旦那もデレる、基本優しい人には旦那も優しくなるのだ。
旦那を始めどんな人物に対してもニコニコと笑って彼女は接している。だが本当に“どんな人物”に対してもそんな感じなのだ。
まず寮の管理人の阿伏兎さん。菩薩様、その人はあなたを誘拐しようとした犯人の一味ですよ?
そして俺達真撰組のにっくき相手、攘夷浪士の桂小太郎。菩薩様、その男に対しては警戒して下さい、テロリストですから。
しかもどうも彼女は俺達真撰組と桂には仲良くなって欲しいと考えているようだ、無理な話だ。警察とテロリストが仲良く手を繋ぐなんて天地がひっくり返ってもある筈がない。
困った菩薩様だよ全く……。





学籍番号14 早乙女ハルナ
のどかちゃんや木乃香ちゃん、それとあの毒舌小娘といつも仲良くしているメガネっ子。
思い返すとセリフの大半が叫びまくってた気がする、そんぐらいうるさい子。
和美ちゃんに負けないぐらい行動派、なんでも彼女の乱暴な押しのおかげでのどかちゃんも副長にアタック出来たとか。まあ根はいい子なのかもしれないね。
のどかちゃんから聞いた事だけど、なんでも同人誌というものを描いているらしい。
試しに一冊借りて読んでみたけど、絵はやはり上手かった。
そこにはあられもない格好にされたネギ君が旦那に別の意味で襲われる姿が。

「ネギ受け攻め銀! いや~これが意外にコミケに来てた女の子の心を鷲掴みにしちゃってさ~。今じゃすっかりアタシの人気シリーズになっちゃった! あと京都にいたあのホモッぽい人も買いに来ててさ!」

旦那が知ったら間違いなくブチ切れるな。

「ちなみに山×土の同人も人気高いよ~! モチロン山崎は受けで土方さんが鬼畜攻め!」

旦那がブチ切れる前に俺がブチ切れた。






学籍番号15 桜咲刹那
副長が自分の「懐刀」と称したぐらい凄腕の女剣士。
性格は気真面目な上に裕通が利かないし空気も読めない。プライベートで一緒にいてもつまらないタイプなのは間違いないな。
木乃香ちゃんとは幼馴染だが性格はまるっきり違う、少しは彼女を見習ってほしい。
修学旅行で起こった事件の際に片目を潰されてしまっている。
女の子にとっては痛々しい事だがあまり気にしていないようだ、だが片目を失った事でバランス感覚にズレが出来たのかたまにフラフラとした足取りで歩いているのをよく目にする。
そんな女剣士といえどやはり女の子なのか、のどかちゃんに対して一方的にライバル意識を持っている。格の差は歴然だというのをどうしてわからないのだろうか?
最初に言っていたように彼女は副長とは親しい間柄だ、もしかしたらのどかちゃんよりも長く一緒にいたのかもしれない。しかし副長の嫁はのどかちゃんだ、絶対に譲れない。
将来は彼女もウチの所に来るのだろうか、副長の評価から察するに江戸の明日を担う女性隊士になるのはそう遠くは無い。

だが副長の嫁はのどかちゃんだ、それだけは絶対に譲れない。大事な事なので2回言いました。






学籍番号16 佐々木まき絵
このレポートを作るに当たって一番積極的に協力してくれたのが彼女だ。
なんというか俺と彼女は気が合うのだ。互いに「同じ匂い」を感じているのだろう。
イジめやすいオーラでもあるのか、彼女はいつも旦那にイジめられていた。
旦那が帰ったと知った時の彼女の反応を俺はずっと忘れないだろう。
人間というのはあそこまで喜びを表現出来るものなのかと。
しかし、彼女は旦那だけではなくクラスメイトからも扱いが悪い、イジメられはしないが度々殴られたり忘れ去られたり、特に2代目チャイナ娘には散々シメられている。
それでもめげずに学校に通っている姿を見て俺は心の底から同情する。
俺もそういう経験があるからよくわかる、仕方ないのだ、イジられキャラはそういう定めだ。俺達は常に周りにイジられないとキャラが立たないのだ。調子に乗ったら即落とされる、それでも俺達はいつか主役になるのを夢見て今日も誰かにイジられる。
どうか彼女には強く生きて欲しい、それが俺にとっても励みになるからだ。
お互いに頑張ろう、年も性別も世界も超えた友よ。





学籍番号17 椎名桜子
いつも口を開けてヘラヘラ笑っている少し変わった女の子。
どんな事があってもヘラヘラ笑っててプラス思考、そしてまき絵ちゃんと並ぶぐらいノー天気だ。
ギャンブラー顔負けの凄腕の剛運を持つらしい、賭け事に関しては右に出る者はおらずなにをやっても百発百中で当たりを引くとか。羨ましい能力だ、それさえあれば宝くじだけで一生遊んで暮らせるのも夢じゃない。
そしてその事を知った旦那はいち早く彼女を連れてパチンコ店へ行こうとしたらしい。
だめだこいつ、早くどうにしかしないと……。
結局未成年をパチンコ店に入れる事は出来ないので門前払いにされ、それでもめげずに旦那は彼女を連れて競馬場に連れて行こうとした。
しかしよこしまな考えしか持てない旦那の所にネギ君と木乃香ちゃんに偶然道中で出会ってしまい、彼はその場で正座させられて3時間の説教を食らうハメになったようだ。
どうせ懲りやしないだろうな、だって旦那だもの





学籍番号18 龍宮真名
金さえ貰えればどんな標的でも仕留める事の出来る敏腕スナイパー。
その腕の高さは楓さん曰くプロの中でもトップクラスに入り、A組ではある人を除けばナンバー1と称されると。確かに修学旅行で彼女の戦う姿をチラリと見たが正に無敵と呼べるぐらい強かった。俺達の世界でもあんな武人をお目にかかる事は滅多にない。
だがいかに無敵と呼ばれる彼女にも弱点がある。
旦那だ。
俺はその経緯を知らないがどうやら彼女はえらく旦那に依存して度々ストーカー行為を繰り返していたらしい。
普段はクールで渋くて金にがめついスナイパーだが、旦那の事になるとたちまち変態にジョブチェンジ。旦那に冷たく蔑まされる事に至高の喜びを感じているらしい、正に変態だ。
旦那が江戸に帰ってからの彼女はそりゃもう落ち込んでいる。
最近は旦那と同じ世界から来た俺に「先生の世界に連れてけ」と無表情で銃口を額に押しつけられる事がある、引き金を引く事に躊躇が無い冷たい目で。
旦那、俺の為に一刻も早く帰って来て下さい。





学籍番号19 超鈴音
古菲ちゃんとまさかのキャラ被りのチャイナ娘3号。
成績は常に一番の上にスポーツ万能、学校内で中華店をやっている完璧超人。
……だが実の所、彼女の情報はあまり集まらなかった。まき絵ちゃんも彼女の事は詳しくは知らないらしく、あの多彩な情報網を持つ和美ちゃんでさえ彼女についてはよくわからない点があるらしい。
一体何者なのだろうか……。






学籍番号20 長瀬楓
俺が一番最初に会って一番世話になってる人。
彼女の事は「楓さん」と呼んでいる。俺よりもずっと年下なのだが何故かさん付けで呼んでしまう、何故なら彼女の外見はとても女子中学生には見えないから。デカイのだ、色々と。器とか胸とか胸とか胸とか。
ちなみに俺は楓さんを始め、自分より大人っぽく見える人には思わず敬語やさん付けで呼んでしまう。龍宮さんや千鶴さん、あと五月さんとか。女子中学生相手に敬語を使う俺って……。
双子ちゃんの姉代わりとして接している中、忍びとしても抜群の実力を持つ彼女。
俺に無理難題を押し付けたり家事一般をやらせたりとなにかと強引な彼女だが住む家を提供してくれた恩はデカイ、胸もデカイ。
勉強は全然ダメだが俺や双子ちゃんにとっては頼れる人物。あ~俺もこういう人になりたい、あの毒舌小娘からも全然頼りにならないだの使えないだの言われてるし。
局長や副長、それに沖田隊長や旦那。この世界の住人であるネギ君や楓さんのように周りに頼りにされている人間というのはどうしてこう背中が大きく見えるのだろうか。
こういう人達を眺めているといかに自分が小さいのかがよくわかる。
俺もいつかこういう頼りにされる真の侍というものになれるのだろうか。








[7093] 山崎編 ZAKINOTE Ⅲ 学籍番号21番~31番
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2011/07/20 22:14





学籍番号21 那波千鶴
作中最強キャラに君臨するほんわかお姉さん。
サディスティック星の王子である沖田隊長を無傷で倒した唯一の御方。この時点でその強さは怪物だ。
だが彼女には特別力が強い訳でもなく特殊な能力も持っている訳ではない。
天然なのだ、彼女の持つ最強の武器は天然。
生徒同士によるトラブルにも「あらあら」と言いながら駆け寄って瞬く間に解決、まあ解決というより彼女が現れるとその場にいる人達が全員無気力になるのだ、なんかこう喧嘩する気が失せるらしい。
いつものほほんとしていてクラスメイトを優しく見守るポジションに立っている彼女。正に母性の塊の様な存在。
しかし「女子中学生には見えない」とか「実年齢より年取って見える」、「老け顔」、「おばさん」などそういう言葉は彼女には絶対に禁句である。
言ってしまった人にはもれなく彼女からの盛大な殺戮ショーがプレゼントされるからだ、その時の彼女は「優しく見守るお姉さんキャラ」をティッシュにまとめて捨てて旦那や沖田隊長も逃げ出す「鬼」になる。彼女に狙われたらもう念仏を唱えるしかない、ちなみに旦那は3回程彼女に制裁を食らっているらしい。「口は災いの元」という言葉はあの人の辞書には書かれてないのだろう。
彼女は旦那の所にいつもいるあやかちゃんとはルームメイトで仲が良いらしい。
彼女達と同じルームメイトである夏美ちゃん曰く、「いつもいいんちょにしょうもない事を教えているよ」だとか。
本当によくわからない人だ。一体いつも何を考えているのだろう……。
そして願わくば彼女だけはウチの世界に来て欲しくない。
沖田隊長撃退兵器としては使えるが。





学籍番号22 鳴滝風香
俺が一緒に住んでいる双子ちゃんの姉の方、妹よりツリ目で強気な性格。
どっからどう見ても小学生、下手すれば幼稚園児にも分類される。本当に中三なのか?
楓さんの事を「楓姉ちゃん」と呼んで非情に懐いており、傍から見れば姉と妹、だが同い年……本当にこの学校の生徒はちんちくりんな輩が多い。
イタズラ好きであり一緒に住んでいる俺に対してしょっちゅう色んな悪事を働いている。
まあ微笑ましいと言えば微笑ましいが、たまに洒落にならないイタズラを仕掛けてくる事があるのでこっちも油断できない。
この前なんか俺が飲んでるお茶の中に下剤を入れた。
その前なんか俺が屋根裏に隠していた俺の大量のあんぱんを妹と一緒に全て食った。
ホント油断できない……しかも俺に「ジミー」などという変なあだ名を付けるし。
しかもそういうイタズラは10割俺だ、旦那や副長には一切やらない、まあ仕返しが怖そうだしなあの二人は。
試しにたまには俺だけじゃなくて旦那や副長にもやって見たら? と言ってみたが彼女は笑って

「僕のイタズラしてあげる相手はジミーだけだよ!」と答えた

全然嬉しくねえよ……





学籍番号23 鳴滝史伽
双子ちゃんの妹の方、こっちはどちらかというと姉より大人しめで弱気。
大人しいと言っても姉がやるイタズラに一緒に参加したりクラスのイベントに積極的に参加したりする所はやはりA組の生徒のノリを兼ね備えている。この学校の生徒は基本ノリがいいのだ、ウチの世界の奴等と同じく。
姉同様楓さんに懐いており俺にも甘えてくる。まあまんざら悪い気はしない……言っておくけど俺は旦那と違ってロリコンでは無いからね。
姉の方は旦那に対しては別に普通だったが、彼女は旦那に対してかなり怯えていた。
まああの見た目で生徒に暴力振るったり汚い言葉吐いたり卑怯な事を平然としたりと自堕落に生きているダメ人間だ、怯えるのも無理は無い。
ちなみに副長に対しては普通、あの人は見た目ヤンキーだけど旦那みたいに性格悪くないし。
あとなぜか阿伏兎さんに対しても自然な対応で接していた。
彼女の恐い基準がよくわからない……





学籍番号24 葉加瀬聡美
麻帆良研究部で日夜研究に勤しむマッドサイエンティスト、らしい。
開発するのはピンからキリまで、役に立つ物からてんで全く役に立たないゴミ同然の物まで造りだす。夢はアインシュタインの様な偉大な研究功績をこの星に残す事だとか、なんかよくわからないけど凄い夢だってのはわかる。
しかし研究熱心にも限度というものがあるのだ。
俺は前に一度研究所に拉致されて「異世界の人間の体の構造原理はこちら側と同じなのか」という研究データを取る為に危うく生きたまま解剖させられる所だった……。あの時は楓さんが来てくれて助かった……。
ちなみに旦那にも同じ事をやろうとしたのだが研究所を半壊された上にすぐに逃げられたらしい、旦那にもやろうとしたとは恐ろしい子……!
あの謎の少女である鈴音ちゃんと仲が良いらしい。あの少女の情報を集めたい俺としてはそんな彼女から詳しく聞く為にコンタクトを取りたいと思っている。
だが遭遇した瞬間拉致って人体実験する様な女の子から、どう情報収集すればいいのだろうか……。






学籍番号25 長谷川千雨
ご存じ旦那の傍にずっと一緒にいてあげた女の子、ツッコミヒロインの千雨ちゃんだ。新八君の宿命のライバルでもある。
昔はずっと不機嫌そうな表情をしたまま他の生徒達に壁を作って周りの物事に一切無関心な態度で学校生活を送っていたらしい。しかしそれも旦那に惚れた影響で今では周りに対してほんのちょっぴり丸くなったとか、和美ちゃん談。
元々皮肉屋で無愛想で思った事をすぐ口に出すタイプだが天性のツッコミセンスも持っている。作中に置いて見事にツッコミ役である新八君不在の穴を埋めてくれた功績はデカイ。
旦那との相性はA組の中で一番、説明は不要だろう。人気投票の結果では彼女と旦那でツートップだった。しかもぶっちぎりで。
俺は彼女と話した事も無いし情報もあまり持っていない、いつも彼女と一緒にいた旦那に聞けば1から100まで教えてもらえるかもしれないが、生憎あの人は彼女を置いて江戸へ帰ってしまった。
その為彼女についてわかる事があるとするならばそれは、彼女の旦那に対する強い想いだろ。
俺が見る限りでは彼女は旦那から預かった木刀を片時も離さない。まるでその木刀が離れている旦那との繋ぐ鎖のように。
無愛想であまり他人との関わりを持たない彼女、だが一度ついていくと決めた人物には絶対的な信頼と愛情を持ち続ける。
いや~ホント、旦那にはもったいない。





学籍番号26 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
千雨ちゃんと同じく旦那側の生徒。旦那に住まいを提供したのは彼女だ。
そして旦那がロリコンになったのも彼女のせいでもある。
ネギ君と同じ「魔法使い」だが大昔から数多の罪を犯し続け「最凶の魔女であり災厄の吸血鬼」と呼ばれる程悪名高い魔法使いだったらしい。茶々丸ちゃんから聞いた事だけど。
しかし俺からはいつも旦那にイジメられながらも必死に後をトテトテとついていく子供にしか見えなかった。
事実彼女は見た目通りに子供っぽい、茶々丸ちゃんは600年以上も生きる「不死の吸血鬼」と説明してくれたが、そんなものには全く見えない、どうみてもませたチビッ子。
授業中いつも寝てばっかりいるのか成績はかなり低め、後もう少しでアスナちゃん率いるバカ5人組のラインに入るとか、もしそうなってしまったらまたもや「不死の吸血鬼」という己の称号からかけ離れた存在になるだろう。
戦闘力だけなら作中3本の指に入るぐらい強いらしいが旦那やその他の生徒のおかげでいい感じにおもちゃにされているのでその強さの片鱗が全く見えない。
とどのつまり彼女はまき絵ちゃんに匹敵するほどのイジられキャラなのだ。自覚は無いと思うけど多分旦那にいい感じに調教されてるんだろうなこの子。
普段は周りに対して高圧的な態度を取って上から目線が基本だが、旦那に対してはめちゃくちゃ甘えん坊。いつもあの人にベタベタくっついていた。旦那もめんどくさそうな顔をしながらもそんな彼女の甘えを許していたし満更でも無いのだろうか。
嫌がりながらも幼女と手を繋いで学校の廊下を歩く20代前半の男性。
お巡りさんこっちです。






学籍番号27 宮崎のどか
副長の嫁にして俺達真撰組隊士の姐さんである。
中学三年生の子供が姐さん? いいんだよ! 年なんて関係ねえ! 彼女は俺達の女神なんだ! ただし毒舌小娘、テメェはダメだ。
いつもオドオドした感じで引っ込み思案な彼女だが、いざ腹をくくるとその度胸と根性は大人顔負けである、さすが俺達の姐さん! 肝っ玉もデカイ!
誰に対しても優しく、慈愛に充ち溢れた精神を兼ね備え。副長を始め俺達隊士からは絶大な人気を誇っている、沖田隊長は別の意味で彼女に興味を持っているらしいが、いやホント止めて下さい隊長……彼女だけは勘弁して下さい……あの、毒舌子娘の方ならオールOKなのでどうぞ。
成績優秀で頭もよくてこの性格。さすがです姐さん、貴女ならいつでも副長をやれます。
ちなみに毒舌小娘の方はいつも成績はワースト5入りだ、こんな子に局長はやれない。ジャングルにでも行ってモノホンのゴリラと結婚しなさい。
男性に対しては少々抵抗感を持っている、いわゆる男性恐怖症という奴だろう。
副長のおかげで少しは軟化したらしいが旦那だけは別である。
か弱い小動物のような存在である彼女にとって、旦那は口を大きく開けて目をギラつかせながら獲物を狙う肉食動物。なので旦那が現れると彼女は恐くて何も言えなくなるらしい。俺達の姐さんを恐がらせるとは、旦那にも困ったものだ。
旦那とは打って変わって俺達の副長は相性MAXだ。俺の勘だがこれを書いている年内に結婚していてもおかしくない、法律? なにそれおいしいの?
既に長年連れ添った夫婦の風格を持つあの二人なら今後の苦難や障害もきっと乗り越えるだろう。ちなみに俺の言う苦難や障害とは7割が沖田隊長である。
彼女も数年経ったら俺達の世界に来る筈だ、その時は盛大に俺達真撰組が歓迎しよう。
だが毒舌小娘、テメェはダメだ。





学籍番号28 村上夏美
俺と仲が良い生徒の一人。よくよく考えると俺って結構仲の良い生徒多くね?
千鶴さんの暴走を必死に止める事だけで一日を使い切ってしまう苦労人だ。
しかしそれだけでも彼女の存在価値は十分にある。何故ならアレをコントロールするにはそれなりのスキルと経験が必要だからだ、千鶴さんの手綱を引っ張れるのは彼女だけで旦那だって無理だ。
型は基本ツッコミ型。多くのトラブルに巻き込まれても千鶴さんへのツッコミは忘れない。
そばかすや胸の発育が乏しい事にコンプレックスを感じているだとか、そりゃああのスタイルも美貌も抜群な千鶴さんと長年いればそんなモン一つや二つ感じるだろう。しかし年頃なのはわかるが俺から見れば見た目は普通の中学生だ、見た目からして明らかにおかしい連中が多いA組の中ではどこか浮く感じがするかもしれないけど……。
自分が普通だとか地味な所とかも彼女自身相当悩んでいるらしい、なんでも「A組の生徒はみんな可愛いのに私だけフツーの中学生なんですよ……だからちょっとみんなに疎外感とか感じちゃってて……」だとか。
“みんな可愛い”という言葉に俺が疑問を感じたのは言うまでもない。
多大なコンプレックスを抱く彼女だが、そんな自分を変える為に彼女は演劇部に所属している。ネガティブ思考が激しいせいか未だ主役として立った事は無いらしいが。
前に出る勇気が無いって言うのかな? きっと彼女はそんな感じなんだと思う。
旦那やネギ君なら彼女の悩みを解消できるかもしれないな……






学籍番号29 雪広あやか
千雨ちゃん、エヴァちゃんと並んで旦那サイドの生徒でありA組をまとめる学級委員長、通称「いいんちょ」である。
文武両道であり他の生徒を上手く仕切ったり出来る正にリーダー的存在、実家もかなりの金持ちだとか。そしてボケとツッコミを器用にこなすオールマイティ型でもある。弱点ないなホント……。
いつもは旦那と千雨ちゃんと行動する事が多く、三位一体で色々な仕事やトラブルを解決していたとか。旦那は自分の世界でもこっちの世界でもやる事は変わらないって事だ。
千雨ちゃんの数少ない「友達」と認める人物でもあり、旦那がいなくなった後も一緒にいる事が多い。和美ちゃん同様あの千雨ちゃんにそう認められる所からしてそれなりの器のデカさがあるのだとよくわかる、
彼女もまた千雨ちゃんと同じく旦那に一途であるが、こちらは千雨ちゃんのように「愛する者の“隣”に立って同じ世界を見る」というタイプではなく「愛する者の“後ろ”から見守ってその者を支える」といったタイプだ、ちなみにエヴァちゃんは「愛する者の“前”に立ってその者の為に立ち塞がる障害を粉砕していく」というタイプらしい。全部和美ちゃんから聞いた事だけど。
クラス関係は比較的良好だがアスナちゃんとはよく喧嘩している事がある。
昔からいがみ合っている関係らしく、なんでも二人は小学生の時からの幼馴染だとか。
喧嘩するほど仲が良いって奴? きっと旦那と副長みたいな感じだろう。
それとエヴァちゃんとも度々喧嘩している光景をよく目にする。
こっちは純粋に仲が悪いだけ。主に旦那関連の事で衝突するらしい。
千鶴さんが言うにはどうも天然な所があるらしい、今日のお前が言うなスレはここですか? 
とにかく名家のお嬢様である彼女だからこそ、庶民である俺達との間隔にズレが生じてしまうようだ。その辺をよく旦那が教えてあげていたようだが。
旦那との相性は千雨ちゃんやエヴァちゃんと同じく非常に高い。一途に愛するだけではなく時に励ましたり、時に叱ったりと彼女はいつも影ながら旦那の事を支え続けていたらしい、千鶴さんからの情報だと。
そんな彼女に旦那もそれなりの好意を持っていたとか、恐らくA組の生徒の中で一番旦那が優しく接していたのは彼女かもしれない。そういや千雨ちゃんやエヴァちゃんよりも大分扱いが違っていたような……
もしかしくて旦那、彼女に無自覚に惚れてたんじゃないのか? いやまさか……





学籍番号30 四葉五月
鈴音ちゃんと一緒に学校内にある中華料理店・「超包子」で働いている女の子。親しく接している人は“さっちゃん”と呼んでいる。 ん? 今誰の事想像した?
教師とか生徒とか関係なく幅広い人達に人気があり、仁徳の深さもまた中三とは思えないほど凄い。あの旦那やエヴァちゃんでさえ認めるほどだ。基本上から目線なあの二人が認めるとは異例中の異例である。
とにかく料理がとんでもなく美味い、学生に合わせた安さにも関らず死ぬほど美味い。俺も食ってみたけど江戸でもこんな美味いモン食った事無かった。この世界に来てよかった……。この料理のおかげで「もうここに永住しようかな?」と考えてしまったのは秘密だ。
だが彼女の人気が高いのはその料理の美味さではない、彼女自身の器だ。
なんというかデカ過ぎる、A組の生徒の中には凄い人とか一杯いるが、彼女はその中で群を抜いて心の大きさがデカイ。そして彼女を見ていると癒される……。
俺達の世界には絶対にいない女の子、彼女を眺めているといかに俺達の世界の女勢が酷いものなのだとよくわかる。
やっぱここに永住しようかなぁ……。






学籍番号31 ザジ・レイニーディ
正体不明、彼女に関してはわからない事だらけだ
なに聞いても無表情だし喋らないし、会話のキャッチボール自体成立できない。
旦那やあやかちゃんなら通訳可能だと夏美ちゃんが言っていた。いやなんであの二人わかるの? てか彼女何も言ってないよね? テレパシー的なモンでも感じるの?
修学旅行の時はスケッチブック持参でそこに文字を書いて周りとコミュニケーションを取っていたらしいが学校に戻ってきた今は何故かやらなくなったらしい。理由を是非本人に問い詰めたいが、なにを言っても無反応。今度あやかちゃん連れて来て通訳して貰おうかな……。
全く持って謎だらけ、彼女の正体を知るにはまだまだ時間がいる様だ。








[7093] 山崎編 ZAKINOTE Ⅳ 教職員&学校関係者
Name: カイバーマン◆7917c7e5 ID:56da04f8
Date: 2011/07/21 20:39






寮管理人 阿伏兎さん
修学旅行で俺達をけしかけて木乃香ちゃんを奪おうとした連中の一人。そして何故か今ではウチの寮の管理人に。一体なにがあったんだ……。
彼は一応俺達側の世界の住人である。万事屋の所のチャイナ娘と同じく傭兵部族の「夜兎」の一人だとか。
だが今の彼は夜兎の威厳のプライドも捨てたただの管理人さんである。
ネギ君に無理矢理ここに連れて来られ無理矢理この仕事に就かされたらしいが、嫌々言いながらも職務をキチンと全うしている。
生徒からも恐がれもせずに普通にコミュニケーションを交わしていた。
だがたまに「俺なにやってんだろ……」って暗い表情でブツブツと呟いている。
俺もなにやってんだろ……いつの間にかすっかりこっちの暮らしに馴染んで……。
同じ境遇の為か俺と阿伏兎さんはすっかり仲良くなったのはここだけの話だ。






教職員 ネギ・スプリングフィールド
9歳にして教師兼魔法使い兼第二主人公兼ラスボス。
カオスなA組を小さな体で懸命にまとめようと日々努力する子供先生だ。
性格は子供ながら責任感が強くて少し背伸びした感じ。普段は心優しくていい子なんだけど、たまにニコニコと笑みを浮かべるようになった状態の時の彼はメチャクチャ恐い……。なんでも彼の師匠の受け売りらしいが、その時の彼はサラリと物騒な事を口走ったり暴力的になるので、もしこの時の状態の彼に出会ったら回れ右してウチに帰ろう。
阿伏兎さんが言うには、なんでも彼の中には夜兎族の親玉のような存在が憑いているらしく、そのおかげで色々と体の状態が不規則に変化しているらしい。
太陽が昇る時間帯をデカい日傘を差して歩いているのも、彼の体に流れる夜兎の血が影響していて。日光に対して肌がひどく弱くなっているので日が昇る内は色々と行動に制限がかかられるようだ。まあ強過ぎると作品バランスが破綻するから弱点の一つや二つ持っておかないといけないよね?
華奢な体だが肉体能力は夜兎と同じなのでその実力は計り知れない、力だけなら旦那でさえ遥かにしのぐらしい。
おまけに夜兎の力を持っている上に彼は魔法使いでもある。元々9歳にして己の眠る魔力を上手く引き出せる才能のある天才チビッ子魔法使いなのでまさに鬼に金棒。ただの子供だと思ってナメた瞬間には一瞬で肉塊に変えられるだろう、阿伏兎さんと学園長からの情報。
彼の力にはまだまだ俺の知らない事がたくさんあるらしい。魔法使いにして夜兎の力、二つの世界の力を持った彼がこの先どうなっていくのかは誰にもわからない。
願わくば敵に回したくない……楓さんが言うにはもし俺が彼と戦ったら、俺がまばたきした瞬間には俺の存在がデリートされているらしい。ホント味方で良かった~……
だがノーマル時は基本生徒に振り回されたりするチビッ子先生だ、殺意の波動に目覚めない内は基本危険性は無いと思っていて欲しい。
クラスの中では一緒に住むアスナちゃんや木乃香ちゃんと仲が良いし、基本クラスメイト全員と仲は比較的良好を築いている。何処ぞの旦那も見習ってほしい
それにこの子は旦那みたいに女の子を囲んでハーレムはべらかすとか無いし。






教職員 学園長
本編で一度も名前を使われなかったから、あえてここは名前は出さずに学園長で。
麻帆良学園の最高責任者で一番偉い存在。だからなのかいつも偉そうにふんぞり返っている。口癖は「ワシ偉いから」、「権力フルに使ってクビにすっぞ」
魔法関係のシステムやその他幅広い知識を持ち合わせていて正に仙人みたいな風貌なんだけど、そのダメダメな性格の為かあまり他の人に尊敬されていない。むしろ嫌われてる。
ネギ君や他の教師にもナメられてる上に旦那に関してはもう彼の事を人としても扱わない鬼畜っぷり。もはやこの学校は事実上旦那が支配している様なモンである。
ちなみに旦那はいつも学園長に対して「ジジィ」「クソジジィ」「腐れ洋梨」と酷い呼称を用いていた
彼もまた旦那に対して相当嫌悪感と憎悪を抱いていて、彼が江戸へ帰ったと知るや大層喜んで鬼の居ぬ間に好き勝手言いたい放題していたらしいが。
その日の夜に手榴弾入りの包み箱が彼の元に届けられて自分の部屋もろとも大破したらしい。
その次の朝は木乃香ちゃんの機嫌がえらくよさそうに見えたのは気のせいだろうか……?





教職員 新田先生
見た目は大人で中身は子供の先生。顔は厳格そうだがいい年してコロコロコミックが愛読書。ネギ君と学園長の時点で気付いていると思うけど、この学校の教師にまともな人はいません。
他人に厳しく己に甘く、教師ながら旦那に負けず劣らず不真面目な人。自分の上司である学園長への態度もひどい。
そういうアブノーマルな性格の為か旦那とは相性が良く、あの人にとって一番付き合いの多かった先生だったとか。
ちなみに既婚者らしい、あんな人と結婚するなんて一体どんな人なんだろうか……。
気になったので思い切って本人に聞いてみた。

「すみません、新田先生の奥さんってどんな人なんですか?」
「私の元教え子だが」

俺は無言でその場を立ち去った。






教職員 源しずな先生
とんでもないデカイサイズの胸を持ったナイスバディな美人教師。
けど優しそうな見た目とは裏腹にメチャクチャ腹の中が真っ黒。てかドス黒い。
同僚は勿論、生徒でさえ自分の手のひらで踊らさせる魔性の女。彼女のやる事成す事には全て裏があると思っていた方がいい。
そんな彼女だが旦那はえらくゾッコンで事あるごとにアプローチを仕掛けていた。
まあ成功した試しが無かったらしいけど。





教職員 瀬流彦先生
俺以上に存在が地味だった人。俺よりも地味な人間がいるとはこの学校も凄い。
周りに忘れられがちで毎回、「新任の教師ですか?」と尋ねられるらしい。
特にネギ君と旦那に……
ちなみに俺の飲み仲間だったりする。





教職員 タカミティン
正体不明。常にフランスパンを両手に持っている。
ていうか教師なのかどうかもわからない。
学校内で度々出没する、見た目は恐いが話しかけると意外に友好的なので遭遇したら挨拶してあげよう。
ただし言葉が通じるかどうかは保証しない。






教職員 二ノ宮先生
ここから先は本編に出なかった教師の紹介
体育の教師であり新体操部の顧問の女の先生。
放課後には体操部であるまき絵ちゃんに熱血指導を施している。
俺の記憶だと確か泣き叫ぶまき絵ちゃんに鞭を振るって火の輪くぐりとか爆破脱出マジックとかやらせていた。
体操に役に立つのかどうかは本人も知らないらしい。じゃあなんでやらせた!?






教職員 ガンドルフィーニ先生
角刈りでメガネを掛けた黒人の先生。妻子持ち。
生徒だけではなく同僚に対して、そして己に対しても厳しい。少しばかり頭が固い性格のようだ。
生徒に振り回されて度々失敗するネギ君にもよく怒っていた気がする。
無論異世界の住人である旦那に対しても例外ではなかったようでよく厳しく指導していた。旦那は全く聞く耳持たずだったが
頑固者の彼が万年不真面目な旦那と上手く行く筈もなく、教師陣の中では一番旦那と仲が悪かった。
ただし酒の席だと何故か仲が良い。






教職員 明石教授
裕奈ちゃんの父親、中学ではなく大学の教授。学園長に呼ばれたり用事があったりとたまにこっちに顔を出す事がある。
人がいいというか騙されやすい性格をしている。あんま人に警戒しないタイプなのでそこをつけ狙った旦那に度々金を貸してしまう。しかも旦那は江戸に帰ったので借りパク。そして怒らない教授、いやいやそこは怒った方がいいって。
そんな教授でもファザコンの娘にはかなり手を焼いているらしい。
どんだけファザコンなのかというと中三にして「大人になったら父さんと結婚する」と宣告されたとか。
しかも真顔で。
娘の将来に物凄く不安を抱えているお父さんでした。





教職員 弐集院光先生
ちょっと小太り、というかかなりぽっちゃり体型の目の細い男の先生。
常に何かを食べている程食べ物が好き。職員室にいる時でも、廊下を歩いている時でも、会議の時でも、授業を教える時でもなにか食ってる。
とりあえず食べ物というカテゴリーに入るなら何でも好きで手に持ったら自動的に口に入れてしまうとか。
口癖は「それは食べれるのかい?」。好きな食べ物は肉まん
そんな食いモンジャンキーである彼でも奥さんと娘さんがいる。
こんな人でも結婚出来るのか……。






教職員 神多羅木先生
オールバックでヒゲとグラサン。教師に見えないコワモテ。おまけにいつも黒スーツ着てるのでどうみても極道かそれ系列の人にしか見えない。
昼食の時は見かけに反してお子様ランチを食べている。いやその見た目だと逆に恐いんですけど……。
生徒からは「グラヒゲ先生」と呼ばれて何故か親しまれている。俺は絶対そんな風に呼べない……。
あと旦那には「長谷川さん二号」とか呼ばれていた。長谷川さんって千雨ちゃんの事だろうか……?




教職員 葛葉刀子先生
ストレートロングの綺麗な人だがちょっとお固い印象を持つ結婚適齢期の女性。
昔から刹那ちゃんに色々と剣術を教えてあげていたとか。この世界ではウチの世界と違って女剣士が多いのか?
普段はかなりクールだけど婚期を焦っている事とか、バツ1だという事を指摘されるとプッツンする、そりゃあもう周りが止めようとしても制御出来ないほど暴れるらしい。
主にキレられるのは言わずもがな旦那です、あの人は平気で他人の痛い所を突く上に抉り出すプロなんで。ええ、その後はすぐに彼女から必死に逃げ回ってましたよ。
残念美人とは彼女の事を指すんだろうなぁ




教職員 シスターシャークティさん
褐色の肌をしたシスター、美空ちゃん達見習いシスターの上司でもある。
美空ちゃん曰くかなり厳しいお人らしいが、一般人である俺達には思いやりのあるいい人だ。
週に一回、迷える子羊である俺は教会で彼女に話を聞いてもらっているのはここだけの話だ。
ちなみに同じく迷える子羊である阿伏兎さんもたまに話を聞いて貰っている。




教職員 タカミチ・T・高畑
一応この学校に配属されているらしいが俺は見た事が無い。
どんな人かと他の教師に聞き回ってみたが、誰に聞いてもみんなそんな人知らないらしい。
一体何者なのだろうか……教師名簿に書いてあるのに学校に不在の教師……。
恐くなったので彼の事は今後一切関わらないようにしようと思う。






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