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[31177] ギャルのパンティおくれ!!【ネギま二次創作・オリ主】
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2015/02/04 15:53
※この作品は現在ハーメルンでも投稿しています。
※何故か何度やっても九話がエラーで投稿できない(泣)






「汝の願い、一つだけ叶えてやろう」

そう、目の前の存在が口にする。
非現実的なその光景に、俺は完全に混乱していた。















【ギャルのパンティおくれ!!】
















世の中、重度のオタクとまではいかなくても暇な時にアニメを見たりする人は結構な数いるのではないだろうか?
この場合、別にアニメの部分が漫画を読むに変わったり、PCでネット上にあふれる創作物などを楽しむ行為に変換してもいい。
俺もその手の人間の一人だった。
お気に入りの漫画が発売されれば購入して暇なときに読む。
話題のアニメがあればどんなものかと試しに視聴してみたりする。
最近の暇つぶしでは、既知の作品から派生した二次小説というものをネットで読んで楽しんでいた。
そこでよく目にするのが【転生物】というカテゴリーに属する創作物の数々だった。
既存の漫画やアニメの世界、または作者のオリジナルの世界に現代人が転生するという内容。
流行りの嗜好というだけでなく、これは自己の投影願望からくるものだろう。
ネット上には数えきれないほどの転生物の作品が溢れ返っていた。
そこではある法則がある。
稀に例外もあるが、ほとんどが主人公が神様に出会い、何か特殊な能力などを与えられてからの転生というもの。
これは能力であったり、武器であったり容姿であったり、とにかく特典としかいいようがないものを与えられるのだ。
何故そのような特典を神が主人公に付与するのか。
そこで語られるのが、神の不手際による謝礼といった形で付与されるものが多い。
神様がわざわざ人間一人を死なせたくらいでそこまで責任を感じるのか、という疑問は抱いてはいけない類のものなのだろう。
少なくとも、そこはテンプレートとして俺は読みながししていた。
だが、それでも一つふに落ちない点がある。
何故主人公たちは神という大きな存在を目の前にして、あそこまで冷静になれるのだろうか?
冷静、というのは何も神の過ちにたいして感じる感情についてのことではない。
そもそも怒ったり自分の境遇を受け入れたりと、それ自体が変であると言いたいのだ。
あまつさえ「転生に際し、願いをかなえよう」とか言われて自分の願望を正しく口にすることができているのだ。
これは明らかにおかしい。絶対にそんなことはできないはずだ。
俺は口を大にして断言できる。
何故なら、俺は実際に目の前の存在に威圧され、思ったことも口にできなかったからだ。
あまりのことにテンパッて、自身の願望とは全く関係のないことを口にしていしまったのだから。





気がついたら、知らない空間にいた。
地平線の先までどこまでも続く真白な世界。
白い空と白い大地しかない、無機質で生命の気配を一切感じさせないであろう世界。
そんな中に俺は一人で突っ立っていた……いや、一人じゃない。
この世界も、何もないわけじゃない。
俺の目の前の空に巨大な龍が漂っていた。
蛇のような長い緑色の胴体。
蛇にはない、短くも力強い四本の足。
頭部は蛇というよりも鰐に近く、強靭さを感じさせる顎。
首周りに毛が生えており、鼻の下からは二本の長い髭が生えていた。
それらは風もふいていない空中に、ゆらゆらと重力を感じさせない動きで浮いている。
眼光は鋭くこちらの内面までも見透かそうかというほどの光を宿している。
後頭部からは鹿の角……というよりも枝分かれした太い木の枝のような角が二本生えている。
ドラゴン○ールに出てくる神の龍が実在したらこんなのだろうな、という姿を体現した姿。
主にインドや中国にその姿を描いた絵が多く存在する。
典型的な巨大な東洋龍が俺を見下ろしていた。

訳がわからない。
その一言に尽きるといっていいだろう。

普通に眠ったと思ったら、いつのまにかこの状態なのだ。
どうしてこのような状態になっているのか……とか。
そもそもこれは夢で現実ではないのではないか……とか。
冷静な理性が少しでも残っていれば、俺は目の前の光景に疑いを覚えてそのような思考を巡らせていただろう。
しかし、目の前の圧倒的な存在感の龍が俺の思考から冷静さを、理性をことごとく奪い去っていく。
全身を金縛りにさせるかのような強烈なプレッシャー。
だというのに生命を感じさせないかのような、どこか遠い存在であるかのような感覚。
いや、後から考えればこの龍はそもそもの存在するステージが俺とは格段に違うのだろう。
人間のように生死といった概念に自身は縛られてなどいない、とでもいえばいいだろうか?
とにかく、そういう俺たち人間が知覚できることができる領域などとうに超越している存在だった。
だというのに、視覚情報として俺の目の前に姿を現している。
視覚から入ってくる、目の前の龍の存在の情報量の大きさに脳がパンクしてしまっている。
例えるならばまさにそのような状態であった。

「汝の存在が、理の輪から外れた」

龍が厳かな声で何かを話しているのは解る。
その声に、俺の耳が体が脳が、魂がびりびりと震える。
決して五月蠅い音ではない。
だけど、それは人に正しく聞こえる音域を超えているのだろう。

「故にこの世界に汝を留めておくことは不可能だ」

俺に向かって龍が話しかけているという事実しか、俺には理解できなかった。
最早俺に、会話を正しく行うだけの情報処理能力は残されていなかった。
簡単に言って混乱していたのだ。
テンパッていた。
思考がフリーズしていたといってもいい。
この龍が語る内容が俺についてのことであると本能的に察している。
だからこそ、伝えられる内容を正しく聞いて理解しようと本能が求める。
だけどそれができない。

「よって、汝にはこの世界とは別の世界へと旅立ってもらうこととなる」

龍の口が動き、その動きからは想像もできない発音の言葉がこちらに向けられる。
それがなんとなく日本語であるとは察しているのだけれど肝心な内容が頭に入ってこない。
重要なことを聞き流しにしている状態に焦りが生まれる。

「旅路に際し、来世での希望を聞いてやる」

龍を象った神が、俺を見下ろしながら語り続ける。
その眼光はお世辞にも優しいというものではなく、ただこちらのありのままを見ようとする視線。
敵視するでもなく、慈愛がこもっているわけでもなく。
ただ俺という存在を見定めるかのような、奥まで見透かすような視線。
さっきから全身を流れる汗が気持ち悪い。
これならまだ、敵意の視線を向けられた方が幾分ましであったかのように思う。
根性なんてこれといって持ち合わせていない俺は、死ぬような思いをするかもしれない。
それを考えたら怖いが、ここまで超越した存在に敵意を向けられればその時点で意識を失っていると思うのだ。
下手に意識を保っている今のほうが、むしろ精神衛生上よろしくないと言えるだろう。

「汝の願い、一つだけ叶えてやろう」

そう言われた時、俺は相変わらずテンパッていたままだった。
ネット上の創作物によくあること。神は俺の願いを叶えてくれるという。
冷静な状態であったならば、龍に対して色々と質問していただろう。
その上で色々と考えたはずだ。
危ない世界に転生なら、身を守れるだけの強い力を。
運命の名を持つゲームの主人公の魔術だったり。
科学と魔術が交差する物語のキャラの能力だったり。
青いネコ型ロボットのポケットのような魔法を使えるようにしてもらったり。
はたまた単純に肉体や魔力なんかの素質を高めてもらったり。
なんてことのない、平和な世界であったらリア充生活のためになることを。
容姿を整えたり性別を確定させたり。
生まれの家を金持ちにしてもらったり、頭脳を天才的にしてもらったり。
正直、ネットにあふれる作品を読みながら、俺も自分で色々と考えたこともあった。
もし自分がこのような状態に陥ったら、こういう要求をしよう。
そういう風に考えて色々と思考を巡らせて楽しんだこともある。
実際、いくつか候補もあった。
だがそれは頭が正常に働いているときだからこそ考えられたのである。
この時の俺は、目の前の龍が何を言っているのか理解していなかった。
転生特典として願いをかなえてやる。
そういう内容であることがわからなかった。
だけど龍が俺に対し、なんらかの発言を待っていることだけはなんとなくわかった。

「…………」

先ほどの言葉から、龍は何事も発さず無言で空を漂っている。
相変わらずその視線は俺に向けられていた。
早く何か言わなければ!!
無言の重圧に、俺の中の焦りが急激に膨れ上がった。
だからとにかく俺は咄嗟に出てきた言葉を、力を振り絞って叫んだ。
なんでこのタイミングでその言葉が出てきたのか。
おそらくは龍の外見が、先ほど言ったようにドラゴ○ボールの神の龍に酷似していたからと推測はできる。
でもいくらなんでもそれはないだろう。
今でもこの時のことが悔やんでも悔やみきれない。





「ギャルのパンティおくれ!!」





極限の焦りからテンパッていた俺は、空を浮かぶ龍に向かってそう大声で叫んでいた。

「いいだろう。その願い叶えてやる」

視界が光に包まれ、意識が遠のいていく。
この時の俺は自分が何を言ってしまったのか理解していなかった。
ただ、この場から解放される。
愚かしくもそのことに喜びを感じているだけであった。












…………そして現在。

「……バブゥ」

俺の胸にあるのはとてつもない後悔の念。
本当に、どうして俺は混乱していたとはいえあのような要求をしてしまったのか。
まだ赤ん坊で視界がはっきりしない。
だが、自分の小さな手の中に白い布が握られているのがわかる。
そしてそれが、自分の能力で作り出した布であることも理解していた。
俺が神に与えてもらった力。
それは「自由自在にギャルのパンティを作り出す能力」というものだった。




[31177] 一話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/13 23:01

幸か不幸か、転生した俺は前世での記憶を残していた。
おかげで精神は赤ん坊にして大人である。
まさかコナン君を超える存在になるとは思っていなかったな。
見た目は子供じゃなくて赤ん坊だし……まぁ、明らかに頭脳は彼の方が上だろうが。
そう考えるとむしろ存在としては下なのか?
とにかく、本来の赤ん坊なら何も考えなくとも「あーぶー」言ってるだけで時間は過ぎていきそうなものだ。
だが精神が大人な俺は無駄に思考が働いているため、退屈で仕方がない。
なんせ言葉も上手く発せられないどころか、体も満足にうまく動かせないのだ。
正直言って母親の乳飲んで小か大を漏らすしかできない。
最初の数日は羞恥心に悶えそうにはなったが、すぐに開き直った。
だって俺今赤ん坊だし。
だって与えられた能力が「自由自在にギャルのパンティを作り出す能力」だし。
これからの人生、この能力のせいで変態確実じゃないか。
まぁ使わなければ普通の人生になるだろうけど。
むしろここが危ない世界なら、そんな能力で危険なことができるとも思えなかった。
とりあえず大人しくしておこう……それが俺がした判断だ。
どういう生き方をするにせよ、今はまだ情報が足りない。
ここがどういう世界なのか、自分はどういう立場に生まれてきたのか。
生後数か月の今の俺ではそれすらも調べる術を持たない。
耳から周囲の声が聞こえてきて、少なくとも日本語で会話しているのは理解できた。
それが唯一の救いだろうか。
未だ俺がどのような立場の人間かといった情報は掴めていない。
だが、俺の名前がタロウというのはわかった。
十中八九「太郎」と書くのだろう。
明らかに日本人の名前だ。最近じゃむしろ珍しいくらいの典型的な日本男児の名である。
このことからここは前世と同じく日本か、もしくは日本を舞台とした物語の世界のような並行世界なのではないか。
太郎なんて最近じゃ聞かない名前だし、もしかして昔の日本なのだろうか?
少なくとも現代人の感覚ではもはや使わない名前だよなぁ。
これで名字が山田だったら、本名なのに偽名を疑われそうだよな。
偽名と言われて一番に思いつく名前と言われれば、多くの人間が「山田太郎」と答えるだろう。
むしろ思いつきすぎて逆に偽名として使われなさそうでもあるが。
まぁ、おそらく別の名字だろう。
もし仮にこれがネット上であふれる創作物の一つだったとしたらどうか。
その作者はどれだけ名前を考えるのが面倒くさかったかを露呈するようなものだろう。
これはまぎれもなく現実なのだが、俺はそのような思考遊びをして時間をつぶすのであった。











一話











そんな思考遊びをしていたのがいけなかったのかもしれない。
この世にフラグというものが存在しているというのなら、まさにその思考遊びが原因だろう。
俺の名前は「山田太郎」であった。
喋れるように発音が発達してきた俺は、好奇心旺盛な子供を演じて親に聞いてみたのだ。
確かに家の姓は山田であった。ちなみに俺は長男であった。
とくに昔でもなんでもなく、今は平成の世であった。
母親に聞いてみたところ「名前なんて飾りだ。識別できればいいんだよ」とのこと。
騎士と書いてナイトと読むような、親の正気を疑うような名前でないだけましかもしれないが。
明らかに名前負けするようなものでなかっただけ良しとするしかあるまい。
ちなみに母の名前は花子である。この親にしてこの子あり。
生まれながらにしてネーミングセンスは決まっていたようなものだ。
名前など、自分でどうにかできる問題ではない。
諦めて山田太郎という自分を受け入れるしかなかった。
まぁ、容姿が可もなく不可もなくな普通の日本人顔だっただけでも良かった。
前の俺は不細工といっていい顔だったしな。
イケメンよりもこういう普通の顔のやつのほうが、案外充実した生活を送れるものだ。

片親であり、唯一の親である母は放任主義な人であった。
幼稚園にも通っていない俺は、基本的に祖母の家で預けられている。
そのためあってか、孫を可愛がる祖母が一人にしてくれないので外を出歩いて情報収集をすることができなかった。
トイレなどで一人になった少ない時間、能力を確かめるように使用していた。
トイレットペーパーが切れていた時など、作り出したパンティで尻を拭いたくらいだ。
尻を拭いて安心した反面、トイレ前で待ち構えている祖母に見つからないように捨てるのが大変だったが。
それはともかく、この能力についていくらか判明したことがある。
一つが何の対価も無しにパンティを自在に作り出すことができること。
こういう場合、普通は精神力か何かしらを消費するものだが、特に疲れるということもない。
トイレの個室がパンティで埋め尽くされるほど作ってみたが特に体に変調を感じることもなかった。
二つ目、女性用のパンティしか作れないということ。
ギャルのパンティという願いだったためか、男用のパンティはどれも無理であった。
ブリーフ、トランクス、ボクサーと一通り念じてみたが反応はない。
逆に女性用はお子様パンティから大人な勝負パンティまで自由自在であった。
それはもう、純白から黒、横縞模様にヒョウ柄、紐パンやスケスケなものまでなんでもござれ。
念じるままにイメージした通りのパンティを作ることが可能であった。
ただしスパッツは駄目だった。
どうやらあれは神様基準でパンティに分類はされないらしい。
ちょっと悔しかったのは秘密だ。
三つ目、これは俺の主観的なものだから確かではない。
だがイメージすれば布強度をある程度変化させることが可能だ。
試しにトイレに行く際、ポケットに鋏をいれて入り、実験したことがある。
標準的なパンティは幼児の俺の力でも、鋏を使えば簡単に切り裂くことができた。
しかし強度を高くしようと念じて生成したパンティは、鋏をもってしても切り裂くことはできなかった。
触り心地などは変わらないというのに防御力は変化している、そんな感じ。
パンティが破れづらいからといって、特に何か得するわけでもないのだけれど。
まぁ、パンティパンティと真面目に考えていると、ふと冷静になった時になんとも自分が馬鹿馬鹿しく思えて悲しくなったこともある。
余談としては、あまりにトイレに閉じこもるのでよくう○こする子供と思われてしまっているのが難点か。
そんな生活を送り続け、俺は小学生にあがった。

小学生にもなると、友達と遊ぶという名目で一人で外出できるようになった。
門限は6時と決まっているが、格段に自由な時間をとりやすくなったといえる。
学校では周囲から浮かない程度に交友関係を保ち、休み時間などに遊んでいる。
だがあまり放課後は友人たちとは遊ばずに、一人で能力の開発をしていた。
何故俺は使えない能力と一度は判断したのにもかかわらず、こうして試行錯誤しているのか。
それは金銭面で使えると考えたからだ。
今の小学生の俺では無理だが、将来大人になったら女性用下着の製造会社を作るのだ。
それもパンティオンリーの会社だ。
ブラジャーなんて金のかかるものは売らない。
元手0でどんなパンティも作り放題。ぼろ儲けである。
完全に開き直ったといってもいい。
俺の人生はギャルのパンティに始まり、ギャルのパンティに終わる。もうそれでいいや……と。
将来の夢を下着会社の社長と応えて先生を困らせたのは母には内緒だ。
休み時間、未来ある小学生男児達を仲間に引き入れ、パンティのデザインについて語り合っているのは悪いとは思っている。
まるで俺が彼等を若くしてそういう趣味に目覚めさせたように、周囲の人間からは見えるだろう。
いや実際にそうなのだろうし、多少なりとも罪悪感は感じてはいる。
だが悪乗りしやすいお年頃。
う○こと同様、小学生男児とパンティは化学反応を起こした。
正直に言って利用した感が否めないが、彼等も楽しそうにしているのでいいだろう。
今では実に楽しそうに「俺の考えた新しいパンティ」のデザインを見せ合って楽しんでいる。
彼等の将来にとってはマイナスかもしれないが、これは俺の将来にとってはプラス以外の何物でもない。
大人な精神の俺では全く想像していなかったアイデアが、小学生の現実にとらわれない発想から生まれるのだ。
それは何もデザインだけにとどまらない。
履くだけで健康になるパンティ。
金運上昇パンティ。
足が速くなるパンティ。
テストで100点が取れるパンティ。
何の予備知識もないところから、穴が一つ多いスケベパンツを開発した米沢君は将来有望と見ている。
こうして学校では新しいパンティの追求を。放課後はそのパンティを実際に作ってみることで確認していた。
作り続けたおかげか、パンティ製作スピードも格段にあがってきた。
小学5年生の今では一秒間に200枚のパンティを作り出すことを可能にしていた。
一枚当たりにかかる時間が0.005秒。
タイムラグはほとんど感じない。マシンガンにも負けない自信がある。
さらに、アイデアで出た金運上昇などといった効果。
これを出せないか試行錯誤してみた。
だがただのパンティにそのような効果を付加させるのはなかなかに上手くいかなかった。
そこで取り入れたのがカラーイメージである。
色というものには色魂というものがあると考えられている。
その色にあった意味や言葉から連想した効果なら付加することも可能なのではないか。
結果は成功。
俺は以下のパンティを作り出すことに成功した。
金運上昇効果の金色の「黄金のパンティ」
身体能力上昇、赤色の「情熱のパンティ」
魅力上昇効果の紫色の「魅惑のパンティ」
疲労回復効果の水色の「癒しのパンティ」
食欲増強効果の黄色の「大食のパンティ」
今のところはこの5つだ。
このそれぞれのパンティは効果が絶大。
黄金のパンティを使えば、100メートル歩くだけで521円拾うことができた。
521円と侮ることなかれ。小学生には大金である。
情熱のパンティは、使用すれば3メートルも縦に跳躍することが可能となった。
魅惑のパンティは、使用者は魅力が上昇する。
ただし女性的魅力が上昇するのみで、男の俺が使ってもあまり意味はなかった。
事情を説明せずにプレゼントして試験者になってくれたクラスメートの雪奈ちゃんは、現在もてもてである。
パンティなどというものをプレゼントしたせいか、こっちを見る目が他と違うのが失敗か。
小学生とは思えないほど無駄に色っぽい目つきをするようになったのでひやひやである。
癒しのパンティは、100メートルを全力疾走した後の疲労を一瞬で回復した。
大食のパンティは使用者の食欲を増大させる。
どれもこれも極端なまでに効果を発揮した。
ただし、欠点として使用者は実際に履かないと効果を得られないということもわかった。
それも直に股間に触れていないと効果が発揮されない。
元々履いている男子用の下着の上からでは駄目なのだ。
この能力に関してはまだ誰にも言っていないので、自分の体を使って試すしかない。
人気のない近所の山で、一人ギャルのパンティを試し履きする小学生男児。
将来の金のためとはいえ、何か大事なものをどんどんと失っていく感覚に俺は目をつむっていた。


時は流れ、数ヶ月後には中学生になる。
そんなある日、母親から地元とは別の中学にあがるように言われた。
友人たちと同じく徐基の公立中学に進学すると思い込んでいた俺は、かなり驚いた。

「麻帆良学園?」

「そ、私立だけどこっちの公立よりも学費安いしね」

そこで初めて、俺はこの世界がネギまの世界であると知った。
小学6年生10月のことである。なんとも遅い。
テレビやネットで魔法やオカルト的なことも報じられてはいなかった。
魔法とかは存在しないというのが世間の常識だったこともあり、俺はこの世界が前の世界と同じものと思い込んでいたのだ。
まさか隣の県に麻帆良学園があるとは、灯台もと暗し。
もっと早くに地図を開いて確認するべきだったのだ。
この世界は危険なこともある世界だった。
麻帆良学園は、初等部から大学までいくつもの学校が集まった一つの都市を形成する学園である。
調べたところによれば、学生数は少子化の影響なんて受けていないかのように膨大な数の生徒がいる。
それもそのはず。
俺の母親のセリフにあったように、ありえないほどに学費が安いのだ。
それはもう、田舎の公立の学校のおよそ半分である。
採算がとれているとは到底思えないが、そりゃあ皆こぞって自分の子供を入れたがるわけだ。
おそらくは、生徒数を集めるためにそのようなことをしているのだと推測している。
確か、麻帆良学園には世界樹といったものがあったと記憶している。
もはや転生してから結構経っているので原作知識などあってないようなもんだが、それくらいは覚えていた。
そしてあの地は結構地脈的な点においても重要な土地とかだったと思う。違ったっけ?
その地を守る役割もあり、隠れ蓑として学校という形をとっていると考えているんだが。
だとしたら学校という形式を保つために、学生は多く欲しいはずなのだ。
学費に関しては質よりも量、といったところなのだろう。
麻帆良の近辺以外にも、安い学費目当てに各地から学生が集まっていると聞く。
しかも珍しいことに、外部からの入学に関して試験があるのは高等部からのみである。
今の俺のように中等部に入学する分には試験が必要ないのだ。
そのせいか、俺と同じく中等部に外部から入学する生徒が圧倒的に多いそうだ。
実際、俺も試験は必要ないと言われた。
ネギまの漫画は、正直途中で読まなくなったせいもありよく覚えていない。
なんか鬼とか吸血鬼とか出てきたような気もするけど、危なかったりするのだろうか?
転生後も合わせて、読まなくなってから10年以上は確実に経つし、原作知識なんて無いに等しいと思うのだが。
個人的に、とりあえず餓鬼が教師をしていて生徒とラブコメする話という印象しかない。
ぶっちゃければ、なんちゃって魔法で女子生徒が服を消滅させられて全裸になるような印象しかない。
残っている知識など、先ほどの世界樹とか特別な土地とかなんか適当な設定だけ。
どうだろう、俺はあの町に行って大丈夫なのだろうか。
しかし小学生の俺には、母親の決めたことに抗うほどの術はない。
というか既に入学手続き終わってるらしい書類を見せられたし。

「いや、待てよ……」

確か漫画の中で中学生の癖に店を持っているやつがいなかったか?
名前はタオパイパイ……じゃないけど、何か似たような中国系の名前のやつが店出してたはずだ。
普通中学生では店を持って商売をすることはできない。
だけど、あの学園都市は一種の治外法権なんじゃないだろうか。
だから外ではありえないこともある程度許容される。
上手くいけば、大人になるまで待たずとも俺も店を持つことができるかもしれない。
更にあの町では毎日だれかしらが主人公の魔法で全裸になってるんだろう?
パンティの需要もあるはずだ。
一般人も多いんだし、俺も一般人として生活していれば危ないことは専門家のキャラ達がなんとかしてくれるはず。
とりあえず危ないことに首突っ込みさえしなければ、パンティ売り放題なんじゃないか?
何かあっても情熱のパンティで強化された逃げ脚で逃げればいい。
…………こいつはいける!
こうして、開き直った俺は麻帆良学園への進学を決めたのだった。



後日、卒業式の日。
そのことを知った雪奈ちゃんが俺に魅惑のパンティを返してきた。
今まで、特殊な効果のあるパンティは彼女以外には渡していない。
別にそのことに理由なんてなかったけど、他の子には渡したことなどなかった。
だから、試験者をしてくれた彼女だけが僕の「ギャルのパンティを作り出す能力」を知っている。

「いいの、雪奈ちゃん?
 せっかく君にあげたパンティなのに……」

「いいのよ山田君。私はもう、十分にそのパンティに救われたわ。
 もう私はそのパンティがなくても大丈夫。新しい私を作っていく。
 今度は私の気持ちが向こうでのあなたを救うはずよ」

彼女の言っている意味は全く不明だったが、その顔は美少女というよりも美女であった。
今はもう魅惑のパンティを履いていないはずなのに、12歳にして妖艶な色気を感じさせている。
雪奈ちゃんなりに俺の門出を祝福してくれているのだと判断し、とりあえず受け取っておく。
何度も何度も履いたのか、微妙に生地が彼女の体に合うように伸びていた。
ほのかに温もりを感じさせる布は、つい今しがたまで彼女が実際に履いていたのだろう。
理屈じゃない。なんとなく本能的に感じた。
このパンティは彼女と僕との間にある、確かな絆なのだと。

「いつか、僕のパンティが世界に通用するようになったら、また試験者を頼めるかい?」

「ええ、喜んで。
 あなたのパンティブランドが、世界の山田になる日を楽しみにしているわ」

僕たちは互いの門出を祝福しながら、笑顔で握手をした。
二人の重なった掌の中には、魅惑のパンティが力強く握られていた。













―――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、本文の中に何回パンティという単語が出てきたでしょうか?
次回からネギまな感じになってくると思います。






[31177] 二話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/16 16:00

実家の最寄駅から、三回の乗り継ぎを経て電車で2時間。
隣の県とは思えないほどに時間がかかった。
さすが学園都市というべきか。
春休みだというのにもかかわらず駅のホームは中々に人が多かった。
その多くが10代と20代の人間で、学生ばかりの町だというのが窺える。
俺と同様、この春から入学する者や実家へ帰省していた人間が帰ってきているのだろう。
結構手荷物を持っているやつらが多い。
かくいう俺は、入居予定の男子寮の部屋にほとんどの荷物をすでに送っている。
よって手荷物は肩かけの鞄が一つのみであった。
これから、俺の夢へ向かう新しい一歩が始まる。
そのことを思うと、なかなかどうして胸が期待で高鳴るというものだ。

「けっこう集まったな」

歩くたびにジャラジャラと音を立てる鞄。
それも俺の胸を高鳴らせる要因の一つだ。
今回の人生で初めて、一番遠くまで来た道のりだ。
この機会を逃すこともないだろうと、俺は今黄金のパンティを穿いている。
おかげで金運が上昇し、ここにくるまでに小銭を拾いまくりであった。
遠足も林間学校も県内の山登りのみだったしなぁ……まぁ田舎の貧乏学校だったし。
今は鞄の中は小銭と試作品のパンティでパンパンである。
普通に歩いていても小銭を見つけることができる。
自動販売機のお釣りを確認すれば、前の人の忘れたお釣りが入っている。
電車の椅子に座ると財布が落ちているのを見つけたのは驚いた。
財布? 駅員に届けたよ……まぁいくらか中身もらったけど。
一番驚いたのは、一度目の乗り換えの駅のトイレに入った時に見つけたトランクケースか。
開けてみると札束の山であった。
さすがにここから中身を全てちょろまかしたら怖いことになりそうなので、一部だけにしておいた。
まぁそれでも束で5つほどもらっておいたのだが。
その分のトランクケースの空白に、パンティを生成して隙間を埋めておく。
そのあと何食わぬ顔で駅員に届けた。
これから新しい生活が始まるという時に、初っ端から面倒事は避けたいしな。
駅員はめちゃくちゃ驚いて混乱してたけど、名前とかを確認される前にさっさと逃げた。
次の乗り換えの駅でも何かあるかなぁ、とトイレに入ってみた。
すると、トランクケースは無かったが脱ぎ捨てられたパンティが個室の中に落ちていた。
男子トイレのはずなのに、何故か女性用の……ギャルのパンティだ。
それもデザイン的に俺と同じ中学生か小学生くらいのものであることが窺える。
駅員に届けると、何故か彼はいい笑顔で自分のズボンのポケットにパンティをしまった。
どうやら持ち主に心当たりがあるとのこと。
パンティの落し物は彼に任せ、俺は麻帆良学園に向かう。
黄金のパンティの効果は絶大である。少し怖いくらいに。
部屋に着いたら拾った金を勘定するのが今から楽しみだ。









二話







麻帆良学園男子中等部寮。
それが今日から俺が暮らす寮の名前だった。
膨大な数の生徒がいる麻帆良学園。
初等部、中等部、高等部、大学部と男女に別れてそれぞれで寮がある。
俺は入学する男子中等部が所有している寮に入ることになっていた。
寮とは名ばかりで、五階建てのその大きさはまるでマンションのようである。
うん、学生マンションって言った方がいいような大きさだ。
一階はロビーになっており、食堂やレジャー施設のようなでかい風呂まで完備されている。
内装はむしろマンションと言うよりもホテルだな。これで光熱費込で月々三万とかありえない。
さすがに食堂は金取るみたいだけど。自炊したほうが安上がりではある。
あてがわれた自分の部屋に向かうとどうやら二人部屋のようであった。
だって二段ベッドだったし。二人部屋で考えても十分に広い。
12畳ほどの広さの部屋に、キッチンとトイレが付いている。
でも表札には俺の名前以外載っていない。まさかルームメイトはいないのだろうか?
部屋の中には俺の分の荷物しかない……まぁ、後で確認するか。
段ボールを開くこともせずに、俺はさっそく鞄の中の戦果を確認するのであった。

「5034289円か……やばいな」

札束はやはり一つが百万円だった。
トランクケースの中身をそのまま全ていただいていたら、一体いくらになっていたのだろうか?
あの拾った財布から抜いた二万もでかかった。まさにパンティさまさまである。
だが小銭ばかりこんなにじゃらじゃらと持っていても使いづらい。
周囲の部屋に挨拶に行こうとも思ったが、寮長が今晩に食堂で新寮生の歓迎会を開くと言っていた。
別に今挨拶しなくてもその時にしたらいいだろう。
周辺の土地を把握するためにも、俺は小銭を銀行に預けることにしたのだった。
さすがに普通の中学生が一度に口座に五百万も入金していたら変かもしれないので、札束は今後数回に分けて口座に預ける方針である。
コンビニのATMではさすがに預けられないだろうし、銀行の支店が近くにあれば便利なんだが……
しばらく歩いていて、それはすぐに見つかった。
個室タイプの小さなATM。
小銭での取引は一度に50枚までだが、無駄に枚数があるのでけっこう時間がかかった。
やはり金は拾うよりも稼ぐほうがいいかもな。
ちなみに、部屋でパンティを穿き替えていたからかここまでの道のりでは金を拾っていない。
今は情熱のパンティを穿いている。
身体能力が上昇し、歩きまわる速度がかなり速くなっている。
最寄りの駅から通うことになる男子中等部の校舎までをぐるりと簡単に確認する。
どうやら女子の校区は駅の反対側のようだ。
駅周辺はやはり他よりも店が多いためか、男女比率が均等に近い。
逆に駅から離れるにつれ比率が男子に傾いてくる。
なるほどなーと感心しつつ、そこそこで探索を切り終えて寮に帰ることにした。
その時、本当になんとなく向けた視線の先に気になるパンティを見つけた。
それは本当に偶然だった。
いきなり突風が吹いたかと思うと、俺の視線の先にいた一人の女の子のスカートがめくれあがったのだ。

「あれはっ、まさか!?」

時間にして1秒にも満たない短い光景であったが、俺は確かにこの目で見た。
身長からして150もないだろう、小学生と思われる女の子。
春に誘われた小粋な風が彼女の股下を吹きぬけた。
ふわりと舞い上がるスカート。露わになる下半身。
膝上までを包んでいるニーソックスと股間を守護するパンティとの間に存在する肌色空間。
昨今、絶対領域という名称で世の男性の心を鷲掴みにしているそれは、離れた位置にいる俺の視線を引き付けた。
だけど俺の意識は絶対領域の少し上のところに向かった。
小学生のギャルが穿くようなパンティに比べ、下半身を覆う布面積が小さい。
特にクロッチ部分は子供ようのそれと比べて厚みも少し薄めであるのがわかる。
股下から走る皺の線がくっきりと見えた。
いや、問題はそこじゃない。そして小学生らしいプリントパンティでないという点でもない。
誰しも精神が大きくなるにつれて子供のころに履いていたパンティを卒業しようと考えるときがある。
かくいう俺も前世では、丁度小学生の高学年ごろになると無性にブリーフが恥ずかしくなったものだ。
親にせがんでトランクスを買ってもらい、初めてトランクスを穿いた日は自分が少し大人になった気分だった。
男子と女子の違いはあれど、そこまでの差異はないはず。
あの子にとってもパンティが成長するということは、それすなわち自身の精神が成長するのと同じだろう。
だが、さすがにあのパンティは小学生には背伸びのしすぎとも思える。
何故なら彼女のパンティの両サイドには小さくちょうちょ結びされた紐が見えたのだから。
決して装飾目的でつけられたリボンではない。
あれは腰でパンティを固定するための紐だ。
あのパンティは紐パンなのだ。
それだけを見れば、まだ小さいのに無理をしちゃって……と微笑ましくも思えるだろう。
だが彼女には紐パンティを穿いていることにおける恥じらいが少しも見えない。
威風堂々としたたたずまい。
紐パンティを穿いている自分を確固たる自身と認識している証拠である。
人間、穿き慣れないパンティを穿いていれば個人の差はあれど、多少は動きが鈍くなる。
それは新しい自分の発見と、一歩大人の階段を昇る期待と緊張からくる。
それらが彼女の動作には全く見られないのだ。
恥じらいなど、スカートがめくれ上がったことに対する羞恥心しか感じられない。
間違いない。彼女は日常的に紐パンを愛用しているのだと確信する。
その人の本質を見たければ穿いているパンティを見ろとは良く言ったものだ。
小学生の身では紐パンティなど、じゃじゃ馬のごとき扱いにくさだろう。
正直、そのようなパンティを穿きこなす小学生女児など俺は雪奈ちゃんくらいしか知らなかった。
あの子もなかなかどうして、あの年齢で立派なパンティストである。

「さすが麻帆良、侮れねぇな」

待ってろよ、いつか学園都市中の女子生徒たちに俺のパンティを穿かせてみせる。
あ、あと女教師も。
そしてあの女の子の箪笥の中の一部(パンティの入っているところ)を俺色に染め上げてやる!


その後、寮で新寮生歓迎会に参加した。
同じ学年のやつらは基本同じ学校に通うことになるので、これで入学前にすでに顔見知りになったことになる。
気さくな奴も結構いて、既に何人かとは友達になった。
喧嘩腰のやつらはパンティで買収した。
最早、この寮内の人間の心はほぼすべて掌握済みである。
少々馬鹿を演じて話しかければ、大概のやつはすぐに俺のパンティに興味を注がれ始める。
ここにいるのは中等部の学生とはいえ、寮生は最年長でも15歳である。
言いかえればつい3年前まで小学生をやっていたやつらだ。
精神が幾分大人びてきていようと、俺がこの数年間小学生相手に行ってきた事が全く通用しないわけではない。
さらにこの麻帆良の土地柄か、話しを聞いている限り学生は比較的にノリがいいという。
悪く言えば、ふざけるのが好きということだ。
人知れず口角が釣り上がる。
小学生の時同様、おふざけ感覚で最初の一歩を踏み出させればあっというま。
この場にいる寮生たちはパンティを口々に素晴らしいと湛えている。
俺が将来の夢はパンティの店を作ると口にすると、皆口々に応戦すると言ってくれている。
先輩の中には、将来彼女ができたらプレゼント用のパンティを作ってくれと頼んできた。
フッ……計画通り。
初日にして寮生の心を味方につけられたのは、順調な滑り出しといえる。
あとは、純粋に俺のパンティの知名度をどれだけ上げられるか、という点だろう。
そんな時、俺にとある妙案が生まれた。
それは先輩達の「一発芸をしろ」という無茶ぶりに新寮生一同は苦笑していた時のこと。
柄にもなく何をするか考え込んだ俺だったが、俺にできることなどパンティを作ることしかできない。
人前で能力をさらけ出すのはどうかと躊躇したが、発想の転換だ。
俺は手品を披露した。
「種も仕掛けもない、無限に手からパンティを取り出す手品」は大受けだった。

「すげぇ!?」

「どっから出してんだ!?」

「企業秘密です」

半袖のTシャツで、手の付近を隠すものなど一切ない。
その状況で手のひらから連続で飛びだす無数のパンティ。
まるで水芸の水がパンティに変わったように見えているだろう。
あっという間に、歓迎会の会場である食堂はパンティで埋め尽くされた。
口々に驚愕の声があがる。

「今年の一年は有能株だな」

「まるで魔法じゃないか」

「魔法じゃないです。手品です」

手品部に勧誘され入学前にすでに入部が決定した。
部の先輩たちも、入学後は「パンティイリュージョン」の名前で俺を大々的に売り出す予定らしい。
これで名前が売れて、パンティに注目が行けば儲けもの。
胸の内でひそかに計算を企てる俺であった。

歓迎会が終わり、部屋に戻る。
どうやら想像通り俺の部屋は二人部屋だが相方はいないらしく実質一人部屋であった。
入居者が新しく来れば、そいつと同室という形になるらしい。
だが言い換えれば、転入生でもこないかぎりずっと一人で使えるということである。
喜々として部屋を散らかすように段ボールを開いて中身をぶちまけていく。
まぁ、散らかすといってもほとんどパンティなんだけど。
以前はできなかったが、今では作り出したパンティを任意で消すことも可能なのでいざとなれば消せばいいし。
実質散らかっているとは言わなくてもいいんじゃないかと思う。
ちなみに、先ほどの歓迎会の際の手品と称して出したパンティの山。
あれらはすべて先輩たちが喜々として山分けして持って帰ってしまった。
まぁいい。先行投資と考えればいいのだ。
二日後の入学式に備え、俺は新たなパンティを開発すべくイメージを練ることにした。


コンコン。

「?」

夜も更け、時計を確認すれば時間は真夜中の零時過ぎ。
急に扉がノックされた。
こんな時間に誰だと思いながら、ベッドから抜け出て扉に向かう。
覗き穴から向こうを見れば、廊下に立っているのは隣室になった……たしか、影月鏡耶とかいうやつか。
互いに自己紹介した時は何て厨二的な名前だろうと思ったものだ。
本来なら、名前負けするような名を親につけられて不憫な、と思うものだがこいつは一味違う。
元々漫画の世界だから、そういう無駄に格好いい名前のやつとかもいるんだろうけどさ。
名は体を表すとはよく言ったものだ。
髪は銀髪で、緑と赤のオッドアイといういかにも厨二病な容姿をしている。
おそらく名前と同じくパンティもスタイリッシュなものを穿いているに違いない。
まぁ、俺のパンティには敵わないだろうがな。
この容姿が全て天然由来なら、一体どういう遺伝子してんだと疑いたくなる。
髪は染めてカラーコンタクトなら痛い子確定だ。
だが、この世界は普通に髪の毛が赤やら緑な原色の人もいるので、どちらともいえない。
むしろ髪の毛染めてる人って少ないし。
この影月というやつは、寮生の中で唯一俺のパンティイリュージョンを楽しんでいなかった奴だ。
まるで何かを怪しむかのように懐疑的な表情でこちらを睨んでいたっけか。
はいはい、どうせお前もパンティを卑猥なものだと決めつけてるんだろ。
頑ななやつってのはどこにでもいるもんだ。
今も、扉の向こうのこいつはこっちを敵視しているかのような目つきをしている。
さっきは恥ずかしかったけど、やっぱり僕もパンティが欲しいーとかいうむっつり顔には見えない。
おそらくはパンティを卑猥と決めつけて、こちらのことを一方的に悪と決め付けているのだろう。
そういう奴はまず外堀を埋めてから攻略にかからなければ面倒臭い。
今の状況では何を言っても火に油だ。
過去の経験でそれを知っている俺は、無視して明日に備えて寝ることにした。

「扉の向こうにいるのはわかっている。出てこい」

だが、扉から離れて寝ようと思った矢先、扉の向こうから声が掛けられた。
思わず立ち止まる俺の脚。なんだ、なんでわかった?
というか今日あったばかりの人間になんでこうも高圧的な態度なのか。
そこは普通、「ちょっと話せないか?」とか言うもんだろう。
出て来いって、なんで命令形なんだよ。
こいつはパンティに否定的がからこういう態度なんじゃない。
もとから嫌なやつだ。確信した。
溜息をつきつつ、これから隣人となる人間相手に初っ端から喧嘩するのも嫌なので扉を開ける。

「こんな時間に何?」

「単刀直入に聞く。貴様は魔法使いか?」

「はぁ? 魔法使い?」

何言ってんのこいつ……と思ったが、そこではたと気づく。
そういえばここはネギまの世界。魔法使いがわんさかいるのだ。
それも30歳の童貞ではなく、純粋になんちゃって魔法の使い手たちだ。
もしかしてこいつは、俺の能力を魔法と考えたのだろうか?
ってことはだ。おそらくこいつは魔法関係者の可能性が高い。
表情からして君の魔法の使い方おせーてーって感じじゃないし。
ならば、人前で魔法を使ったことを糾弾しにきたか。

「…………何寝ぼけてんの?」

「真面目に答えろ」

「魔法なんてあるわけないじゃないか。手品に決まってんだろ。頭大丈夫か?」

「……それがお前の答えか?」

「えっ、何? 君もしかしてその年で魔法とか信じてるの?」

そいつは悪いこと言った、みたいな顔を作る。
魔法を夢見る少年の前で夢を否定してしまった罪悪感。
そんな表情で影月を見た。

「……チッ、もういい」

俺の小馬鹿にした態度が気に障ったのか、影月は舌打ちをして部屋に戻って行った。
まぁ、世間一般の常識では魔法なんて存在しないことになってるしな。
それに嘘は言っていない。
俺の能力は「自由自在にギャルのパンティを作り出す能力」だ。
自由自在とつく通り、そこには対価など必要ない。
イメージすればいいだけで、魔力や気、体力を消耗することなどないのだ。
ましてや錬金術のように素材となるものを用意する必要性も皆無である。
そんな俺が、魔力や気を使えるわけもない。
現に未だに俺はそういうものが感覚として理解できていない。
生きている以上は俺の中にも魔力や気が少なからずあるんだろうが、使えなければないのと同じである。
つまり、俺は魔法を使えない=魔法使いじゃないという図式が成り立つ。
原作で魔法使いがいるという程度の知識はあれど、関係者に知人がいるわけでもない。
立場としては完全な一般人である。
あいつとしても、まるで魔法みたいに見えたのだろう。
だが魔力は一切感じられない。
それで探りを入れてきたのだと推測する。
しっかし、隣室が魔法関係者か……面倒臭いことになった。
だが、この寮内の生徒はあいつ以外はすべて心を掌握した。
大多数の一般人の心を味方につけている俺に対し、やつはこの寮でたった一人だ。
朱に交われば赤くなるは世の理。
いつまでもパンティに対して高圧的な態度をとれると思うなよ?






[31177] 三話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/19 13:24
森の中を、一体の異形を追って疾走する。
股間を守る真紅のパンティ……情熱のパンティがその効力を存分に発揮する。
およそ人の知覚できる速度を軽く超え、木々の間を縫うように駆け抜けた。
しかしそれでも、俺の目の前を走る異形の足には今一歩と言うところで追いつけない。
既に町は寝静まり、住民たちも一日の活動を終えて就寝している。
森の中にいるうちにこの異形を倒さなければ、町へと到達してしまうだろう。
このままでは、平和に眠るギャル達の身が危ない。

「シッ!!」

右手にパンティを生成し、目前の異形に向かって投擲する。
しかし何の考えなしに生成した強度が高いだけのパンティなど、当たったところでダメージなど無いに等しいだろう。
だが、向こうの意識をこちらに引きつけるのは十分だった。
自身よりも弱い存在に追われていては煩わしいと感じたのか、異形がこちらを振り返る。
紅い光を宿した眼光が、俺を捕えた。
瞬間、ゴウッという豪快な音とともに大気を切り裂くようにして振るわれた腕。
慌ててブレーキをかけて止まる。
加速した状態からの急な静止に足に急激な負担がかかったが、おかげで俺の命が潰えることはなかった。
目の前数センチを通過する剛腕。
あと少し止まるのが遅ければ、俺の頭部は石榴のようにはじけ飛んでいただろう。
だが、鋼腕により発生した風圧に吹き飛ばされるようにして5メートルほど後ろの木に叩きつけられた。

「カハッ!?」

背中を強打し、肺から空気が吐き出される。
身体能力を強化していても、俺のパンティは痛みを緩和してくれるわけではない。
一般人でしかなかった俺はパンティの力を持ってしても痛みに対する経験が圧倒的に足りなかった。
そのせいで、達人ならばこの距離の離れた瞬間に体勢を立て直すなりしただろうが俺にはできなかった。
この隙を見逃すほど、目の前の異形は優しい性格をしてはいない。
開かれたこちらとの距離を一瞬で詰めるかのように、驚異的な速度で突っ込んでくる。
俺の胴体と同じくらいの太さの腕が、岩のような拳が、背後の大木ともども俺を破砕しようと突きを放ってくる。
あんな攻撃を喰らっては俺は原形を保つことすらできないだろう。
咄嗟に手を前に突き出し、異形との間にパンティを生成する。

「パンティ障壁!!」

「何!?」

手の平から生成されたパンティが、マシンガンのように連続で放射され敵の攻撃を阻む。
それがパンティ障壁だ。
一枚一枚は布切れでしかないパンティだが、秒間1000枚を超える速度で無限に生成されるパンティ。
数値に例えるなら、仮に異形の突きによる攻撃力が10000としよう。
それに比べればパンティ一枚の防御力など1か2くらいのものだ。
だが小学校の時は秒間200枚が限界だった俺は、今なら余裕で1000枚を生成できる。
塵も積もれば山となる。有名なことわざだ。
パンティも同じこと。パンティも重なれば鉄の壁。
それも一枚一枚が強化されたパンティだ。
直線的な攻撃には鉄壁の防御力を誇る。
今まで魔法障壁以外の障壁をあまり見てこなかったからか。
それとも単純に弱いと思っていた俺が、やつの攻撃を防いだからか。
異形の顔に初めて驚愕の色が見えた。
その隙に跳躍し、再び距離を開ける。
今度は異形も俺を無視して町を目指すことなく、その場に立ってこちらを睨んでいる。
特に武器などを持っていない異形は、先ほどの正拳突きといった攻撃手段から見ても接近戦タイプだろう。
情熱のパンティで身体強化しているとはいえ、経験などあってないようなものだ。
そんな俺が殴り合いの戦いを挑んだところで相手の土俵で勝てるわけがない。
ならば選択は一つ。遠距離からの攻撃を仕掛ける。

「カラーチェンジ、トリコロール」

俺の呟きは、異形には何を呟いたのか理解できなかっただろう。
だが俺には分かっている。
ズボンの下のパンティが、それまでの赤から色を変えたのだ。
白の布地を基調としつつ青いレースに黄色で刺繍された「New-Type」というロゴ。
これは【新人類のパンティ】だ。
先ほどの情熱のパンティほどの身体強化能力はない。
その代わり、超人的なまでの直感と集中力に空間把握能力。
さらには脳内における情報処理速度の圧倒的な上昇という効果がある。
それによる副次的な効果がこれだ。
俺は幾つもの特殊なパンティを背後の空中に具現化させる。
それまでのパンティと違い、鋭角的なクロッチをしたデザインだ。
穿けばほとんど股間を隠せないだろう。
だが、それでいい。このパンティはそもそも穿くためのものではないのだから。
名を【パンティ型ファンネル】といい。通称をP-ファンネルと呼んでいる。
遠隔操作を可能としたパンティだ。
人の身では不可能な、無茶な三次元軌道を行える反面、一つ一つが操作にかなりの集中力を必要とする。
そのために複数同時に操作するためには新人類のパンティを穿いている必要があるのだ。

「いけ、P-ファンネル!!」

俺の背後から飛び出した合計12のパンティが、異形を囲む。
全方位から同時に異形に牙を向いた。











三話












「…………夢か」

放課後の訪れを告げるチャイムの音で、一斉に学校中が騒がしくなる。
かくいう俺も寝てしまっていたのか、チャイムの音で目を覚ました。
入学式の日から一週間が経った。
クラスメートの大半が同じ寮生ということもあり、すでにそれなりに親しい間柄である。
基本的にこの学園ではクラス替えをしないらしいこともあり、クラス内の人づきあいはかなり重要になってくる。
最初のうちはお互いがどこか探りをいれるかのように距離感を測っていたが、それも馬鹿らしいといえば馬鹿らしい。

「山田は今日も部活か?」

「いや、今日はちょっと職員室にようがあってな」

「なんだよ。入学早々なんかやらかしたのか?」

「うんにゃ、ただ聞きたい事があるってだけの話」

既に打ち解けあい、各々放課後の予定を話し合っている。
俺も隣の席の門松に部活に行くのかと聞かれ、今日の予定を話していた。
この一週間でここの生活にも慣れ、人間関係もあらかた固まってきたので次にうつろうかと思っているのだ。
そう、店の立ち上げのために必要なことを確認しに行くのだ。
生徒が何か店を立ち上げる場合、なんらかの許可が必要なのかどうなのか。
それを確認しに行くのである。

「…………」

「ん? どうした影月?」

「……別に」

「なんだよー、パンティが欲しいなら正直に言えよ~」

「いらん!! かぶせようとするな!?」

俺はギャルのパンティをポケットから取り出すようにして生成すると影月の頭にかぶらせようと試みる。
だがこいつは顔を真っ赤にしてこちらにつばを飛ばすようにして怒鳴ってくる。
ったく、なんなんだよ。じゃあなんでこっち睨んでるんだよ。
他のクラスメートとはうち解け、パンティに関する能力のこと以外は話している間柄となっている。
だがこいつとは未だに距離があいたままだ。
どういうわけか、初対面の時から妙にこちらを敵視してくるのである。
何かいうことあるなら正面から言えよな。これだからむっつりスケベは。
意趣返しのために俺は通り過ぎる瞬間、奴の鞄の内部にギャルのパンティを生成しておいた。
よくあるデザインの清楚な白い、小学生のギャルが穿いているパンティである。
ただし「山根」という所有者を思わせる名前入り。
何の気配も発生させずに生成したパンティに影月は気付く様子もなかった。
後日、俺のせいで剣道部の女の子にドン引きされたと詰め寄ってきたが俺は何があったかは知らない。
だって剣道部に知り合いいないし。
だって書いてある名前は山根だし? 俺の名前山田だし。
あくまで最後までシラをきるのであった。ごまかせたとも思ってないけど。




しかし先ほどの夢に出てきたパンティ、なかなか使えそうだな。
だが夢とは人の願望そのものともいうが俺に戦闘欲でもあるのだろうか?
そんなことを考えつつ職員室へと向かう。担任の堂島先生に話を聞くためだ。
入学してから初めて職員室に入ったがすぐに堂島先生を見つけることができた。
先生はまだ教師としては二年目らしい。年齢はまだ23歳とのことだ。
なんでも本来は副担任になる予定だったらしいが、担任になるはずの奥先生が事故にあってしまい急遽担任にくりあがったそうな。
髪の毛が緑色でワックスで固めているとしか思えない触覚のような寝ぐせが付いているのが特徴だ。
この一週間で俺たち1-Cの面々が持った彼女への印象はどんくさい人。
いつもあわあわと慌てていて、妙に挙動不審なところがある。
だから挙動不審な人を探せば一発で居場所がわかった。

「堂島先生、失礼します」

「あら、やみゃだ君……どうしたの?」

机に座っていた先生に話しかけると、彼女はこちらを振り返った。
俺の顔を確認して名前を言おうとして噛んでいた。
だが本人がまるでなかったかのように話をすすめたので、俺もそのことについてはスルーすることにした。
彼女が舌を噛むのはいつものことだし、おそらく生徒が職員室まで自分を尋ねに来たのは初めてなのかもしれない。
こういうところがいいというクラスメートもいるが、20歳以上は年が離れすぎていてあまりそそられない。
せいぜいが、こんなパンティは穿かせてみたいと考えるくらいか。

「少しお聞きしたい事がありまして」

「先生でわかることがあったら何でも教えるわよ」

任せなさい、と胸を叩いて自信ありげに言う先生。
童顔な顔とは裏腹にたぐいまれな母性を感じさせる胸がその衝撃に激しく自己主張していた。
だが俺は女性の下半身にしか興味はないので、二つの山に向かって青春を叫ぶことなどしない。
単刀直入に本題に入ることにする。

「麻帆良で店を出すのには何か許可とかいりますか?」

「お店? 山田君が?」

「はい。食品ではないので衛生管理とかは大丈夫なはずですが」

「えっと……」

そこで困ったようにおろおろとしだす堂島先生。
どうやらまだ先生になって二年目。
こういう細かいところまでのことは知らないようだ。

「おや、山田君は何か商売を始めたいのかね?」

「あっ、国崎先生」

困ったところを見かねたのか単純に会話に混ざりたかったのか。
国語の国崎先生が話しかけてきた。
それにあからさまにほっとした顔をする堂島先生。
国崎先生は50歳を迎えるベテランの先生で、物静かで柔らかい落ち着いた印象の教師だ。

「うちは生徒の自主性を重んじているからね。
 他の土地では無理だが、申請さえ出せば学園都市内なら許可されているよ」

「そうなんですか」

「とは言ってもあからさまに危ないものや、公序良俗に反するものは無理だけどね。
 学校側から資金が出るわけではないし、あまり店を出そうなどと言う学生もいないのも確かだ」

成程、まぁ一介の学生に自分の店を立ち上げるだけの金銭を用意するなんて無理だもんな。
それを考えたら原作の中国人は金持ちなんだな。
学園側からしたら生徒が自主性で行うお遊びみたいなもんか?

「それで山田君は何のお店をしたいんだね?」

「ランジェリーショップです」

「「「っ!?」」」

俺達の会話に聞き耳を立てていた教師たちが、驚愕の目でこちらを見ていた。
中にはお茶を噴き出すものや、椅子からずり落ちるものなどもいる。
隣の堂島先生は口をあんぐりと開け、国崎先生はいつもの人のいい笑顔が引きつっていた。

「えっと……本気かね?」

「本気ですよ。既に売るものは用意してあります。
 あとは店をどうやって立ち上げるかと、申請に関することがどうなっているかですね」

ほら、と見本として制作していたパンティを取り出す。
キメの細かい真白な絹のなめらかな肌ざわりのパンティ。
ふりふりのレースに、細かい花をデザインした刺繍が施されている。
良く見れば花びらの所が下品にならない程度にうっすらとピンク色になっているのがポイントだ。
何の特殊効果も付与していない、これから売り出す予定のパンティシリーズの一つである。
ちゃんとタグには『MADE IN YAMADA』と書かれている。

「これが俺の作ったパンティの見本です。
 ヒップサイズが87センチで合わせてありますから、ちょうど堂島先生のサイズにあうと思うのでよかったらどうぞ」

「あっ、可愛い……って何で私のサイズ知ってるんですか!?」

「そりゃあパンティを作るものとして女性のヒップのサイズは腰を見ただけで解りますよ」

俺は別に個人情報を盗み見たりなどしていない。
様々な人のパンティをイメージして作り続けているうちに身についたスキルである。
ごくごく単純な技術だ。
真っ赤になっている先生の手にパンティを握らせる。

「ぱ、ぱ、パンツを売るなんて卑猥です!!」

「何故ですか? 先生だって下着を着用しているでしょう?下着は立派な日用品ですよ。卑猥なんかじゃありません。
 それと一つ訂正させていただくならパンツでなくパンティです」

パンティが卑猥なものだというのなら、世の中のパンティを穿いている人は皆卑猥な人間と言うことになってしまう。
俺としてはむしろノーパンで日々を過ごす人間の方がよっぽど卑猥だと思うのだが。

「それとも先生はパンティを穿いていないんですか?」

ノーパン主義者ですか。残念です。
体育の金田先生が若干嬉しそうな顔をしているが、俺としては残念だ。
まさか自分の担任がノーパン原理主義者であったとは。

「違います! ちゃんと穿いてます!」

「本当ですか?」

「本当です!!」

「……あーその、まぁなんだ。
 まずは申請が通った時を仮定して、店舗をどうするか決めてからにしてはどうかね?
 しっかりしたテナントを借りるのもいいし、屋台を作るのもいいし。
 一番学生の店で多いのは屋台だがね」

真っ赤になった堂島先生をからかっていると、国崎先生が提案してきた。
確かに。今はまだ構想のみで実際に店舗をすぐに用意できるわけではない。
金銭面では黄金のパンティを着用すれば簡単だろうが。
どこかのテナントを借りるにしろ、店舗を買うにしろ用意がないことには始まらない。
申請が通っても店が作れませんでしたじゃ話にならないしな。
国崎先生のいうことももっともだ。

「確かにそうですね。
 じゃあ、店舗などもどうするか決めてからもう一度申請しにきます」

そうときまれば話は早い。
まずはこれから向かう部活の先輩たちに心当たりがないか聞いてみよう。
先生たちに礼をし、職員室をあとにしようとする。
すると体育の金田先生が俺に走り寄ってきて小声で呼び止めた。

「ちょっとまて」

「なんですか?」

「堂島先生のバストって何センチだ?」

「知りませんよ。俺はヒップサイズは解っても他は無理ですから」

だってパンティしか作れないし。ブラとか無理だし。






その後、大学部にある部室塔の手品部にやってきた。
この学園は発育の違いの差による歴然とした差が出る運動部とは違い、文科系の部活はほぼひとまとめになっている。
運動に関しては一つ学年が上がれば極端に差が出るが、文科系には技術的な差のみである。
そのため、大学から下は初等部までが同じ部で一緒に活動している。
手品部は部員の数が最も多いのが大学生で、部室も大学部にあった。
授業と違い、部活は男女で分けられていない。そのためこの部室には男女ともにいることになる。

「店舗ねぇ、やっぱりいい物件は高いんじゃないの?」

「ですよねぇ」

俺が今相談しているのは、この手品部の現在の部長を務める柳先輩だ。
柳先輩は大学部の経済学部に通っている女性で、女ながら部をまとめている人である。
経済学部に通っていることもあり、俺なんかよりも金に関しては詳しいだろうと思い相談に乗ってもらったのだ。

「敷金や礼金ももちろんだけど、何より集客率の高い立地のいい場所なんてのは家賃も高いから」

「まとまった金を作っていっそのこと買った方がいいんでしょうか?」

「それもありだけど、何の後ろ盾もない中学生にそんな物件を売ってくれるとも思えないし。
 現金一括払いなら話は別かもだけど、さすがにそんな大金はないでしょ?」

「はぁ……」

黄金のパンティを使えばすぐ集まるとは思うけどな。
今は即座に使える纏まった金は500万。
立地のいい物件を購入するには足りない。
むしろそんなことになれば金のでどころを怪しまれるか。

「とすれば、屋台なんかになるだろうけど……食べ物でもないのに屋台ってのも格好がつかないわね」

「屋台ですか」

「まぁ一番現実的な手段ではあるわね。
 もしくは店舗を構えずに完全に発注オンリーの店にするとか……」

「成程」

確かに、ネット販売での発注オンリーなら店舗は必要ない。
だけど実際に客と会って交渉もしたい気もする。
屋台かぁ、パンティの屋台とか新しいけど売れるかどうかが怪しいな。でもおもしろそうだ。
どうせ失敗するなら若いうちにしておいた方がいい。
ここは屋台でやってみることにしよう。
となると、屋台の確保だ。
自分で材料を入手して作ってもいいが、ここはやはり専門家に頼んで頑丈な作りになった方がいい。

「屋台でいってみます」

「そっか、パンティの屋台なんて私も聞いたことないからね。
 難しいとは思うけど頑張りなよ」

「はい」

「うちの工学部の学生はバイトで発注されたものを作ることもしてるし頼んでみれば?
 さすがに中学生が運転するものにエンジン付けるのは無理だろうけど、専門家に頼むより安くできるかもよ」

「本当ですか!?」

そのバイトをしている知人を、今度先輩が紹介してくれることになった。
その後、店を出すのはいつにするかなどのことを話し合いつつ、手品の練習をした。
自由自在にパンティを作れはするものの、やはりショーとして行うには魅せる出し方が必要になってくる。
手品師としてはまだまだ新米の俺は、そこらへんの演出の仕方をこれから学ばなければならなかった。

店を出すタイミング、それは話し合いでゴールデンウィーク後ということになった。
ゴールデンウィーク中に新入部員お披露目も兼ねたマジックショーを行うためである。
これは毎年、手品部とナイトメア・サーカスによるコラボショーとして世界樹前広場で行うものだ。
ナイトメア・サーカスというのは曲芸手品部という手品部から派生した部下だ。
外部からの人間も多数参加していて、主に手品というよりも曲芸を前面に出した部活らしい。
新人お披露目の場ではあるが、毎年派手に行われてなかなか盛況であるとのこと。
そこでパンティイリュージョンとしてショーの目玉の一つとして出て、同時に店の宣伝をすることにしたのであった。
パンティイリュージョンのランジェリーショップとして。また、ランジェリーショップのパンティを扱った手品として。
手品部とランジェリーショップのコラボ企画である。




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次回、4話はパンティイリュージョンで生徒たちの心をゲットだぜ!!の巻



[31177] 四話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/21 01:10
ショーの本番まであと3日。
俺たち手品部は、打ち合わせのためにナイトメア・サーカス団のテントに来ていた。
今日はこれから本番通りに通して見るということで、全員本番の衣装を着ていた。
タキシードを着ていたりピエロの格好をしていたり、その服装は様々だ。
俺も今回は紳士風のマジシャンをイメージしてタキシードを着ている。
蝶ネクタイなど付けたことがなかったので、首のあたりが妙な違和感を感じる。
だがこれも一つの様式美のためだ。仕方あるまい。
近くにある姿身を見れば、そこには黒いタキシードに身を包んだ俺の姿があった。
普段から情熱のパンティを穿いて動きまわっているからか、体はそれなりに引き締まっている。
165センチというのは中学一年生にしては結構高めの身長かと思う。
現に俺はクラスの中で二番目に背が高い。
ここ最近で第二次性徴期が訪れたのか急激に身長が伸びた。
今もなお伸び続けており、入学したばかりだというのにこのままでは数ヶ月後には制服を新調しなければならない。
少し大きめの制服を購入したはずなのだが今では肩幅がきついのであった。
まぁ、簡単にいえば体がかなり大人に近づいてきているといえる。
顔はまだ幼さが抜けきれず、子供と大人が混ざり合った微妙な外見というところか。

「……ん?」

そこで俺は姿見の中に映る一人の女の子と目が合った。
振り返ると、俺と同じく新入生のザジ・レイニーデイがこちらを無言で見つめていた。
彼女は曲芸手品部の部員であり、今回のお披露目会におけるサーカス団側の目玉とされている子だ。
褐色の肌にグレーの髪の毛。おまけに普段から眼の下にピエロのようなメイクをしている特徴的な女の子。
原色バリバリな髪の毛の人間もいる中で、ひときわ目立つ容姿をしている。
だが本人は目立つ容姿とは裏腹にいたって無口で、俺は彼女の声を例外を除いて聞いたことがない。
しかもポーカーフェイスなせいで感情もいまいち読み取れない。
何を考えているのか、もしくは何も考えていないのか。
それすらもわからない所謂不思議ちゃんな子というのが俺がレイニーデイに抱く感想だ。
今は彼女も本番のショーで扱う衣装を着こんでいる。
全身のボディラインがはっきりと出ているタイツに、ピエロのような首周りの飾り。
手首と足首には動きを大きく見せるための飾りがついていた。

「…………」

「…………」

なんとなく俺も無言になり、会話するでもなく立ち尽くしたままお互いを見つめる。
彼女は俺に何かしらの興味があるのか、練習で会うとこうやってよく俺を見ているのである。
最初は周囲の人間もレイニーデイが俺に気があるのだと茶化してきた。
だがそのほとんどは今はもうこの状況に何も言ったりしてこない。
おそらく皆、彼女が俺に恋心を抱いているわけではないと悟ったのだろう。
単純な興味から眺めているといったところか……その興味の内容がどういったものかは見えてこないのだが。
見られているだけというのもあれなので、俺は何回か彼女に話しかけたことがある。
だがそれらは全て会話が成立するまでには至らなかった。
何を話しかけても無反応か、よくて首を縦か横に動かすだけなのだ。
ほとんどコミュニケーションが取れていないといってもいい。

「…………」

「…………」

無言で見つめあう二人。
これでお互いが頬を染めていれば絵になるかもしれないが、少なくとも彼女は完全に無表情である。
この空気にどう対応すべきか悩んだ俺は、数日前にある打開策を編み出した。
今回も、悪いがさっそく使うことにしよう。
ズボンのポケットを探るようにしてパンティを生成、彼女の目の前に差し出す。

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

何の特殊効果も付与していないパンティ。
ただしデザイン的にはローレグと呼ばれるもので、申し訳程度の布面積しかないものである。
これといってフリルやレースをあしらったりはしていない。
シンプルなデザインのローレグパンティである。
その差し出されたパンティを、レイニーデイは頷きながらその手に取る。
そう、先ほどの彼女の声に関する例外というのがこれである。
パンティをあげると、彼女は小さく、だが確かにはっきりと「パンティ」と口にするのだ。
その瞳には何の感情も宿しているようには見えない。
だが少なくとも嫌ではないのであろう。差し出せば必ずレイニーデイはパンティを受け取った。

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パンティ」

「…………パンティ……」

「はい、パン「おい山田、いい加減にしろ!!」……」

「…………」

先輩の恫喝に気がつけば、レイニーデイは両手いっぱいにパンティを抱えていた。
足元には抱えきれずにこぼれたパンティが小山を作っている。
それでもなお差し出されたパンティを受け取ろうと、彼女は手を伸ばしていた。
とりあえず出してしまったものを渡さないのも気がひけたので、今回はこれで最後ということで彼女の掌にのせた。

「…………パンティ……」

レイニーデイは小さく頷いた。











四話











ショーの本番当日。
会場となる世界樹広場前には数多くの生徒が集まっていた。
中には教師だろう人物もちらほらと見える。
まぁ、このショーは春先にあるイベントで1、2を争う派手なイベントだしな。
おまけにお披露目会ってことで観覧料は無料ときたもんだ。
おそらく今現在、学園都市にいる人間で暇なやつは大半が来ているのではなかろうか。
今がゴールデンウィーク中だから、帰省している学生も大勢いるはず。
それを考えれば、他の時期にやっていたらもっと人ゴミがすごいことになるに違いない。
設置された舞台の裏で、俺は自分の出番を待っていた。
ステージでは先輩たちが、さすがの技術力の高いパフォーマンスを繰り広げている。
我らが手品部の先輩たちの人体切断ショーから、トランプマジック。
帽子からは鳩が飛び出し、箱に入った人間が次の瞬間には観客席から現れる。
サーカス団の面々は、玉乗りに火の輪くぐり、空中ブランコに綱渡り。
まさにプロ顔負けのパフォーマンスを行っている。
観客も大盛り上がりで、ところどころにまだ慣れていない新人の芸が挟まれてもテンションが下がることはなかった。
むしろ新人お披露目ということからか、まだまだ緊張の抜けきらない新人を応援する声までが聞こえてくる。
麻帆良にはなかなかに暖かい心の持ち主が多いようだ。
俺も今まで何度も能力を使用してきたが、それは個人で扱ってきただけにすぎない。
今回は手品として見せなければならないしそれなりに緊張していた。
高鳴る鼓動を、パンティを完璧に股間にフィットさせることで落ち着かせる。
今の俺は、今回のショーのために新しく作った新人類のパンティを穿いている。
そう、以前夢の中に出てきたパンティだ。
ギャルのパンティにしては流線型なフォルムをした、未来的なデザインをしている。
普段穿いている情熱のパンティなどは、基本的に形がギャルのパンティであることが前提の作られている。
そのため男の俺が穿くと完全にお稲荷さんが露出してしまっている状態なのだ。
だが新人類のパンティは少しクロッチ部分が幅広なため、お稲荷さんも半分ほど顔を出しているだけに留まっている。
それでいてお稲荷さんが揺れることのない絶妙なフィット感が俺の心を冷静にしてくれた。

「わー!!」

俺の出番が刻一刻と迫る中、ステージ側から一際大きな歓声があがった。
覗いてみれば、レイニーデイが新入生とは思えない動きでパフォーマンスを行っている。
高さ10メートルの空中ブランコ。
振り子のように揺られながら、時折体の上下を入れ替える。
ある時は両手でブランコを掴みぶらさがり、ある時は両足でブランコに引っかかり逆さまでぶら下がる。
何度かそれを繰り返し、何を思い立ってか一番高い所に来てブランコから手を離した。

「キャー!?」

失敗したと思ったのか、観客席から女生徒と思しき悲鳴があがる。
命綱のない状態で、高さ10メートルのブランコから落ちればどうなるか。
結果を想像するのは至極簡単である。
だが、レイニーデイは失敗したわけではなかった。
華麗に空中で回転すると、下にある綱渡り用のロープに着地してみせる。
あのロープは直径が4センチとロープにしては太めだが、あのような着地を軽々とこなせるような代物ではない。
彼女の驚異的なバランス感覚を思い知らされる動きであった。
舞台の左右から、サーカス団の人間がジャグリング用の棒を何本も投げる。
それを危なげなく全てキャッチし、見事にロープの上でジャグリングをして見せるレイニーデイ。
何度も棒を空に放り投げてはキャッチを繰り返す。
ロープの上の彼女は特に緊張した様子もない。
むしろあの無表情だったレイニーデイが笑顔を浮かべて楽しそうにさえしていた。
観客も興奮から皆、頬を赤くして完成を上げている。
これは、俺も同じ新人として負けていられない。
もうすぐ出番の時間だ。
俺は舞台裏から移動し、ステージの下に移る。
仮設されたステージの中央のちょうど真下にあたる部分。
そこは奈落と呼ばれる場所になっていて、そこからステージ上に昇れるようになっているのだ。
予定通り真上に黒い箱が置かれ、そこにレイニーデイが飛びこんだ。
すぐさま上から彼女が飛び降りてくる。
入れ替わるようにして箱からステージへと俺が飛び出す手はずなのだ。
彼女はステージ上の笑顔はどこへいったのか、今はもう先ほどの無表情になっている。
だが、俺と目が合うと何も語らないで片手をあげた。
今までと違い、彼女が俺に何を求めているかは簡単にわかった。
思わず口元がにやける。

「よっしゃ、いってくる!!」

「……ん」

すれ違いざま、俺は彼女のあげられた手にハイタッチをした。
それに満足げにうなずくレイニーデイ。
そのことに気を良くし、力一杯跳躍してステージへと飛び出した。
この間に綱渡りのロープなどは片づけられている。
派手にクラッカーが鳴る演出とともに舞台に姿を見せる。

『今回のショーの最後を締めくくるニューフェイスはこの男ぉお!!
 手品部期待の新人、その技はまるで魔法のようだ!!
 パンティを自由自在に操るパンティイリュージョンの山田太郎―――――!!』

「「「イェ―――!!」」」

俺の紹介をする声に続き、観客の一部から大声が聞こえてくる。
そこに目をやれば、クラスメートの面々が応援に駆け付けてくれていた。
まったくあいつら……これでテンションあがらなきゃ男じゃねえぜ!!
舞台上で栄えるように両手を広げる。
スポットライトを全身にあびながら、宣言した。

「……さぁ、パンティの時間だ」











先ほどまでのポップな音楽からBGMが変わる。
クラシカルな音楽とともに俺は握りこぶしを作り、くしゃくしゃとまるで何かをつぶしているかのように動かした。
するとどうだろう、手の隙間から純白のパンティがこぼれおちてくるではないか。
観客は初め、先ほどのレイニーデイの派手な動きとは違うことからあまり興奮している様子はなかった。
興奮した状態を見せているのは、俺がこれから行う内容をある程度知っているクラスメートくらいなものだ。
むしろ何故パンティなのかと戸惑っている様子の観客も大勢いる。
だが、手の中から出てくるパンティは一枚や二枚ではない。
くしゃくしゃと動かすたびに増殖するパンティにしだいに驚きの声があがる。

「おいおい、あれどうなってんだ!?」

「一体何枚でてくるの!?」

何も持っていない手から、何かしらの物体を出すというのはよくあるマジックだ。
だからこの程度ではあまり盛り上がらない。
こちらとてそれはよく分かっている。最初から大技を繰り出しても意味がないのだ。
これはまだまだほんの序の口である。何事も緩急が必要だ。
タキシードの胸ポケットからハンカチを取り出す。
真白なハンカチは表も裏も何も描かれておらず、いたって何の変哲もない布切れだ。
観客に向かってそれを見せたあと、ハンカチを丸めて握る。
その後丸めてある物を広げるとどうだろう。ハンカチが一枚のパンティになっている。
かぶっていたシルクハットを外し、その中に先ほどのパンティを入れる。

「ワン、ツー、スリー!!」

三つ数えてみると、シルクハットから噴水のように色とりどりのパンティが飛び出した。
おおっ、と驚く観客。
だが飛び出すくらいで驚いてもらっては困る。
空中に勢いよく飛び出した様々なパンティは、まるで蝶を思わせる動きで空中を飛んでいるのである。

「凄え!?」

「なんで、なんで飛んでるの!?」

これは、以前夢に見た遠隔操作型のパンティ【P-ファンネル】を使っている。
色こそ様々なパンティだが、実質的な効果はすべて同じだ。
現在着用している新人類のパンティによって、あたかも蝶が飛んでいるかのように操作しているのだ。
可愛らしく空中を漂うパンティに観客の目は釘付けである。
俺が両手をまるで曲に合わせた指揮をするように動かす。
すると、それまで何の統一もされずバラバラに飛んでいたパンティが、俺の真上に集まりだす。
手の動きに合わせて演奏をしているかのごとく、一糸乱れぬ動きで動きだした。
俺の意思で動かしているにすぎないが、観客からは生きたパンティを俺が使役しているように見えるだろう。
舞台のにアーチを描くように並ぶパンティたち。
だが、色がばらばらなために虹にしてはまだら模様である。
そう、これではまだパンティの虹とは呼べない。
そこで俺は指をパチリと一つ鳴らした。

「うぉお!? 虹になった!?」

「綺麗……」

「魔法みたいだ……」

指の音を合図に、端の方からどんどん色が変わっていく。
そこに現れたのは見事にパンティで作られた美しい虹であった。
本物そっくりな色の変化を見せるグラデーションが観客を魅了する。
もう一度、指を鳴らすと今度は虹が分解されてまた蝶になる。
再び俺の指揮のもと、飛び始めたパンティ達。
数えるのも馬鹿らしいほどのパンティが空を舞っているわけだが、数えれば丁度千枚あるとわかるだろう。
その千枚のパンティが一本の列を作る。まるで蛇のようだ。
俺は上を向くと、その蛇を飲み込んだ。

「ええっ!?」

「マジかよ、どうやってんだ!?」

ひらひらと俺の口の中へと吸い寄せられるようにして飛んでくる蝶たち。
傍目には、俺が喉を鳴らして凄いスピードでパンティを飲み込んでいるようにしか見えまい。
実質は口の中に入るとともに消しているだけだけど。
もし仮にこれだけの数のパンティを飲み込んでいれば凄いことになる。
なんせ明らかに俺の体の体積よりも総量が多いのだから。
本当は飲み込んでなどいないのだが、全てのパンティを消した後これ見よがしに口を拭いた。
まるで口の周りの食事後の汚れをふくかのように。
次に、舞台そでに視線を送ると、道化師の格好をした部員が一体の女性型のマネキンを運んできた。
ステージ中央にマネキンを立たせる。まだ服を着せていない、裸のマネキン。
デパートなどの服飾売り場でよく見かけるそれが、粋なポージングをして立っている。
ポケットからまた一枚のハンカチを取り出すと、それでマネキンの股間部分を隠す。
隠している時間は一秒もないだろう。
だがそのわずかな時間の間、観客の目から隠していただけでハンカチを外すとマネキンはパンティを穿いていた。
足を上げる動作など一度もさせてはいない。
またまた驚きの声をあげる客に、どこかマネキンの顔がどや顔に見える。
だがマネキンを使ったマジックで驚くのはまだ早い……このパンティは、人形に命を宿す!!
俺はマネキンと一緒に運ばれてきた皮靴をそれの足元に置いた。

「ええ!?」

「なんで!?」

もはや数えるのも忘れた何回目かの客の驚愕。
まぁ、そりゃあ驚きもするだろう。
明らかに人形でしかないマネキンが、ひとりでに動き出して皮靴を器用に履いたのだから。
それだけでは飽き足らず、あろうことかマネキンは俺の手拍子に合わせてその場でタップダンスを始めた。
カカカカッと靴底が床を叩く小気味のいい音がステージに反響する。
これはP-ファンネルの能力のさらに発展型といってもいい。
いや、考え方の違いで同じようなものかもしれないのだが。
パンティを穿いた対象をパンティを媒介にして遠隔操作で操っているのだ。
俺はこのパンティをP-ファンネルMK-Ⅱと呼んでいる。
生物を操ることはできなかったが、こうしてパンティを媒介に生物以外を操ることは可能となった。
何度も犬や猫で試してみたが、生物では一度も成功しなかった。
どうやら対象が持っている意識が、操作を阻んでいるようである。
だがこうして人形であるならば問題はない。
特に人の形をしているマネキンならば、動きをイメージしやすい分動かしやすかった。
もう何でもありである。パンティさまさまだ。
ポケットから取り出すように新しいパンティを具現化させると、それをマネキンの近くに放り投げた。
すると、そのパンティ達が意思を持っているかのように起き上がり、器用にタップダンスを始めた。
お気づきの方も多いだろうが、これも遠隔操作で操っているにすぎない通常のP-ファンネルだ。
布でしかないパンティがタップダンスを踊ったところであの華麗な音は出ない。
だが隣で踊るマネキンと息ぴったりなダンスは観客を魅了させる。
まるまる一曲分踊りきると、マネキンは周囲のパンティを重ね穿きの要領で回収して穿く。
その後自分の足で舞台から去って行った。
もはや観客のほとんどは呆然としている。
一部何故かこちらを睨んでいるようなやつがちらほらいるが何故だろうか?
その中に影月の姿が見えた。なんだかんだで応援しに来てくれているあたり、ツンデレというやつか?
険しい顔をしているのは照れ隠しからか。ふっ、愛いやつめ。
素直になれないあいつのために、今度また鞄の中にパンティをプレゼントしておいてやろう。
再び視線を舞台そでに移し、部員達とアイコンタクトを取る。
道化師の格好をした部員が、今度はホワイトボードを持ってきてくれた。
今度の手品には協力者が必要だ。それもできれば観客が望ましい。
俺は観客席をぐるりと見渡すと彼女を見つけた。
舞台に近い最前列付近に陣取っている二つの集団のうちの一つ。
服装からして女子中等部の人間だろうか。
レイニーデイの時に一番声を張り上げていたから、おそらくはレイニーデイのクラスメートなのだろう。
ちなみにもう一つの集団というのが俺の応援をしに来てくれた男子中等部の連中である。
レイニーデイのクラスメートらしき集団の中に、以前見かけたパンティストの女の子を見つけたのである。
周りよりもかなり低めの身長に、紫がかった長い髪。手に紙パックのジュースを持って観覧していた女の子。
そう、以前紐パンを目撃したあの子である。
うむ。座っている位置も舞台正面の階段に近いし丁度いい。
小学生じゃなくて中学生だったんだ……とか余計なことを考えつつ、一枚のパンティを彼女に向って飛ばした。

「え?」

「これから行うものは協力者が必要なんだが、手伝ってくれませんか? お嬢さん」

「私……ですか?」

自分が指名されたことに戸惑いを見せる少女。
目立つことを好まないのか、どこか乗り気でない様子ではあったが周囲の女の子たちに背中を押されて立ち上がる。
彼女とは裏腹に、周囲の友人たちは乗り気のようだ。
グッジョブ、レイニーデイのクラスメート。
エスコート役のパンティに案内され、少女が舞台に上がってくる。
俺は道化師に受け取ったマイクを彼女の口元に近づけた。

「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「……綾瀬夕映なのです」

「そう、綾瀬さんか。ご協力感謝します」

「いえ」

「それでは、綾瀬さんにはこのホワイトボードに即興でオリジナルのパンティを描いてもらいます」

「お、オリジナルですか!?」

即興で描けと言われて慌て始める綾瀬。もしかして絵には自信がないのだろうか?

「そんなに思いつめなくても大丈夫。
 簡単でいいので、好きな形や色、模様何かを描いてもらえれば結構です」

「簡単にですか………解りました」

数種類のマジックを受け取った綾瀬は、数秒ほど悩んでいたがおもむろにパンティの絵を描き始めた。
それは白い布地に横縞ラインが入ったパンティ。
横に紐が描かれているのからして、やはり紐パンのようだ。
それだけでなく、布地の部分にローマ字で「AYASE」と書かれている。
描き終えた綾瀬からマジックを受け取ると、俺は観客の方をを向いて声を張り上げた。

「ありがとうございます……それでは皆様!!
 これからこの綾瀬嬢の描いたパンティを実際にこの場に作りだしてみせましょう!!」

俺の言葉に、周囲は騒然となる。
何もない所からパンティを出してみせる手品はすでに見せている。
無理だという声と、彼ならできるんじゃないかという声。
できると思っている人間も、おそらくは俺と綾瀬があらかじめ打ち合わせていたと考えているかもしれない。
だがその本人である綾瀬は、俺の宣言に驚きを見せていた。

「そ、そんなの無理に決まってるのです!!」

「フッ、無理かどうかは実際にご覧あれ!」

俺はホワイトボードに描かれたパンティを隠すように手で触れる。
掌に隠したパンティで絵を消していきながら、あたかもそこから取り出すようにして何かを掴む仕草をして見せる。
絵を消し終えると、一旦手の中のパンティを消滅させて綾瀬デザインのパンティを作り出した。
観客に向かってパンティを掲げてみせる。

「うぉおおおお!?」

「本当に取り出した!!」

「すげえええ!?」

確かにそのパンティは横縞模様の紐パンで、AYASEと書かれている。
その文字の癖も先ほどと同じ。それは本人が一番よくわかっているだろう。

「そんな馬鹿な!? どうなってるですか!?」

俺の手のひらからパンティをひったくって確認する綾瀬。
このリアクションに演技はないと、観客も思ったようだ。
期待通りのいいリアクションをしてくれた彼女に思わずにやけてしまう。

「そのパンティは今日の記念にあなたに差し上げましょう。
 ご協力ありがとうございました」

いい笑顔で彼女を送り出す。
呆然としてパンティにエスコートされた綾瀬は観客席に戻って行った。
席に戻ると、周囲の友人たちにもみくちゃにされている。
友人たちはパンティを自分たちも確認しようとしているのか、四方から手をのばしていた。
ああっ、そんなにひっぱったらパンティが伸びる!!
俺の心の叫びは届けられぬまま、パンティは人ごみの中へ姿を消した。

「さて、三日後の5月9日に私はランジェリーショップを開くこととなりました。
 店の名前は【パンティYAMADA】、場所は主にこの世界樹前広場で開きます。
 パンティ専門の店ですが、皆さまよろしければご来店ください。
 では、これにてパンティイリュージョンを終了いたします」

結局、店の申請はあっさりと通った。
担任の堂島先生は渋っていたが、何故か学園長直々に許可がおりたらしい。
「儂、君のパンティには期待してるもんね」という手紙まで頂いた。
屋台の方も、工学部の方々がかなりいいものを作ってくれている。
本当にありがたいことだ。
店の宣伝も言えたことだし、これでショーは終了である。
あとは客の帰る時にパンティYAMADAのビラを配るだけだ。
そう思っていたのだが、観客から声を大にしてのアンコールの声が。
津波のように押し寄せるアンコールの言葉に胸が熱くなる。

『よし、いくわよみんな!!』

「「「「応!!」」」」

アナウンスの声で柳先輩がみんなにGOサインを出す。
次の瞬間、待ってましたとばかりに舞台裏からぞくぞくと部員たちが飛び出してきた。
皆おもいおもいにその場で手品を披露し、曲芸を披露する。
俺もじっとしているわけにはいかない。
純白のP-ファンネルを再び大量に生成し、空へと飛ばした。
観客席を縫うようにして飛ばすパンティは、光を反射してきらきらと輝いていた。




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次回、ランジェリーショップ『パンティYAMADA』開店。
そろそろチラ裏から移動しようかな?






[31177] 番外編(4.5話) パンティの裏側
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/24 01:31
※これは、本編の補足的な扱いです。
 あくまで番外編的なものであり、別に読まなくても本編に影響はさほどありません。
 超鈴音視点の日記調です。日記というよりも記録?
 そのため彼女の特徴である「~ネ」という語尾は使われません。
 あくまで記録なので……たぶん面白くならない。
 それでもいいぜ!という人はお読みください。




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【番外編:パンツの裏側 ~超鈴音の過去改変記録その1~】


2001.1.12

西暦2001年に無事、時間跳躍を行うことに成功。
本日より歴史改変に向けて活動を行う。
尚、私という人間がこの時代に来た以上、本来の歴史をたどるとは限らない。
よって何が改変を促すかを確認できるように本日より記録を残すこととする。
目的地である日本にいきなり行けば怪しまれるだろう。
現在地点は中国。これより戸籍を入手後、麻帆良へと入学を試みる。




2001.1.13

無事、戸籍を入手することに成功。
やはり記録にあった通り、この時代は日本よりも中国の方が戸籍を簡単に用意できるらしい。
安い金でとりあえずの経歴が作れてしまうのだから。
記録では未来に英雄となる者たちが麻帆良に集まるのは2003年。
時期が重なれば余計に怪しまれるだろう。
行動を早く起こすに越したことはない。
今年の中国からの留学生枠で入学を試みる。



2001.2.28

中国の中学校からの推薦という形で麻帆良に留学生の候補として打診させる。
金で買い取った推薦だが、能力は申し分ないはずなのでおそらくは通るだろう。
結果を待つ間、当面の資金を集める。


2001.3.15

麻帆良学園への留学が本決定。
しかし経歴を怪しまれてか、どうやら私の戸籍や過去の経歴を調べらている形跡がある。
やはり他国からの、それも魔法関係以外からの留学生は調べられるらしい。



2001.3.30

ついに麻帆良学園にやってきた。
初日から目をつけられると行動がとりにくくなるため、本日は大人しい生徒を演じる。
寮に案内されると、どうやら私のルームメイトはあのネギ・スプリングフィールドが後に受け持つことになる生徒の一人のようだ。
それどころか周囲の部屋はすべてがA組の生徒である。
このことから、私もA組への配属となっているようだ。
当初の予定と違って、彼女等と交遊関係を結ぶのが楽になった。
反面このクラスに配属されたということは学園側から関係者であると疑われている証拠でもある。
監視が付けられる可能性が高い。いや、もしくは既に監視されているか。
少なくとも不確定要素として見られているのは確かである。
今後の行動には注意が必要である。


2001.4.8

入学式を無事に終えて二度目の月曜日。
この一週間でクラスメートの簡単な人となりは把握した。
また、自身の地位を確立させるために様々な研究会に入会する。
計画のためには実験施設などを扱える立場が欲しい。
そしてできれば科学方面で優秀な助手となれる人材を確保したい。
また、資金集めをしていても怪しまれないだけのフェイクとしての何かが欲しい。
できれば店を開くなどして、金の流れをごまかせれば良し。
それらのことからロボット工学研究会、生物医学研究会、量子力学研究会に所属。
また、店を開くなら私の得意としている中華料理を利用することにする。
腕前を認識させるためにお料理研究会に所属した。
これらは当初からの計画に盛られていた通りの行動である。


2001.4.15

それぞれの研究会に所属してから一週間が経過した。
予定通り、知識の披露の成果が出る。
大学構内に個人で所有可能の研究室を得ることに成功。
また、ある程度の自由な実験に対する権限を得た。
それに乗じてクラスメートである葉加瀬聡美と研究仲間として交流を深めることに成功。
研究室を共同で使用すること引き換えに、私の実験の協力を取り付ける。
料理研究会ではクラスメートの四葉五月と交流を深めることに成功。
私が店を開くことを検討していることを話すと、協力者になってくれることを約束してくれた。
私一人が申請しても店を開くことに対する許可は下りないかもしれない。
だが申請時に彼女の名前を前に出せば、幾分許可も下りやすくなるだろう。


2001.4.17

中華料理の屋台「超包子」の申請が無事に通った。
屋台のほうの製作も順調に進んでいる。
同時進行で、学園の地下を走る水路の空間を拡張した格納庫の建設に着手する。
ここまでは概ね計画通りに進んでいる。


2001.4.18

昨日まで全て計算通りであったのに、今日にきて狂いが生じた。
工学部に山田太郎が訪ねてきたのだ。
なんでもランジェリーショップの屋台という珍妙なものを立ち上げるらしい。
その屋台の製作に協力してほしいとの依頼だった。
ここにきて歴史に狂いが生じている。
本来の時間軸の記録では、彼が麻帆良に来るのは2003年。
ネギ・スプリングフィールドと同時期となっていたはず。
これは私が時間を逆行してきたことにより生じたものなのだろうか?
それとも、私は同じようで似ているだけの、過去の並行世界に来てしまったのか。
まさか未来の英雄がすでにこの学園に在籍しているとは思ってもいなかったために調べが足りなかった。
この時間がどういうものなのか、慎重に調べなければならない。


2001.4.19

現在、歴史に他の誤差がないか調査中。
しかし山田太郎に関すること以外でのこれといった誤差は未だ発見されず。
だが彼という存在はこれからの地球の未来を大きく左右するために、小さな見落としも許されない。
英雄と呼ばれるだけあり、彼に関する逸話は数多く記録として残されていた。
念のため、私がもともといた時間に残る山田太郎の記録データを記す。


『山田太郎(1988生~2030没)』
 
・9月27日生まれ
・パンティイリュージョンの名で知られるマジシャン
・同時に、世界の下着シェアの実に9割を誇る「パンティYAMADA」の会長。
・どこからともなく無限にパンティを取り出して見せる様は、まるで魔法のようであったと人々に語らせる。
・しかし彼は一般人で、気も魔力も最低限人が持ち得るものしか持ってはいなかった。
・過去に二件の例があるレアスキル“U.B.W(アンリミテッドブラジャーワークス)”との関連が噂され、
 数多くの研究家が調査し論文を発表するも、真相は謎のまま。
・中学生のころにランジェリーショップを起業。
・瞬く間に「パンティYAMADA」は世界進出を果たす。
・また、その莫大な収入のほとんどを世界中の貧しい人々にパンティと食料を配布することに使用。
・世界中の紛争をパンティを布教することで止めてみせ、実質的な世界平和をもたらした。
・さらには世界から核ミサイルの完全な根絶までを成し遂げ、世界終末時計の針を大幅に戻した。
・彼のパンティにおけるカリスマは、地球温暖化の進行までも食い止めてみせた。
・これらのことから彼は多くの歴史家に、ネギ・スプリングフィールドと同じく【21世紀を代表する英雄】と呼ばれている。
 ネギ・スプリングフィールドが魔法界における英雄なら、山田太郎は地球における英雄だろう。
・それまでの平和の象徴が鳩であったのが、これ以降はパンティを咥えた鳩とされている。
・「さぁ、パンティの時間だ」「女性は虐げる相手ではない、パンティを穿かせて愛でる相手だ」
 「全てのギャルにパンティと安らぎを」「俺の敵だというのなら、今すぐパンティの染みにしてくれる」
  etc……などという言葉を多く残している。
・ 公式では地球における最後のテロに巻き込まれ、42歳という若さで亡くなっている。
・だが死体は発見されず、以後姿を目撃されていないことから死亡とされている。
・このテロ以降、地球上でテロ行為が行われなかったことから彼が死んだ原因となった事件を「ラスト・テロリズム」と呼ぶ。
・しかし彼の死を信じない人間も多く、諸説飛び交っている。
 曰く、あのテロは彼を快く思わない魔法使いの仕業だ。
 曰く、彼はテロで死んだのではなく、その後も生きて別の場所でパンティに埋もれて死んだのだ。
 曰く、いや腹上死だ。
 曰く、そもそも彼が死ぬはずがない……など。



彼が麻帆良でランジェリーショップを開くのは、歴史通りだ。
今のところは彼に関してのみ歴史が前倒しになっている状態である。
どのように接触するか検討しなおさなければならない。
山田太郎のパンティは世界に革新ももたらす。
できればこちらの味方につけたい。
未来でも彼自身、世界平和のために動いていたこともある。
性格的にはこちら側の人間だろうと推測している。
その辺をついて揺さぶれば可能性は大きい。
可能であれば、交渉に移る前に何か恩を売っておきたい。




2001.5.3

超包子の屋台、およびパンティYAMADAの屋台が完成。
山田太郎は明日の手品部と曲芸手品部との合同ショーに参加する予定とのこと。
明日は世界を動かす彼のパンティを見られる。期待感からか、今から胸が高鳴るのを感じた。






2001・5.5

ネット上で彼の手品が話題になっている。
同時に、私にとっては嬉しい時間軸における誤差が生じていた。
警察が彼について捜査しているという情報が入ってきたのだ。
なんでも学園に入学する前に、彼が駅でトランクケースを拾って届けたらしい。
そのトランクケースの中には2億円もの大金が入っていた。
ただし500万円は抜き取られ、代わりとして何故かパンティが入っていた。
警察は外見の酷似とパンティという接点から、参考人として近いうちに任意同行を求める方針でいる。
おそらくはその場で指紋の一つも採取されるだろう。
届けた本人と断定されれば、彼は困ることになるはず。
これは恩を売る絶好の機会になる。
そう確信した。






[31177] 5話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/01/28 02:42
※今回は短めです


――――――――――――――――――――――――――――――――



「いらっしゃいませ」

パンティYAMADAが開店してから三日が過ぎた。
ゴールデンウィークが終わり、最初の平日。
今日は学校の授業が終了してからすぐの開店となる。
休日は10時から18時まで。
平日、学校のある日は16時半から20時まで。
営業時間は短めだが、結構な反響を呼んでいる。
今日も学生たちは休み明けの授業が終わったばかりだろうに、屋台には結構人が集まっていた。
どうやら、先日ショーで行ったパンティイリュージョンが話題になっているらしい。
某動画サイトに録画動画があげられたらしく、実写かCGかで憶測をよんでいるようだ。
三日で再生回数が20万回を超えているというのだから驚きだ。
そのせいか、当日に見に来ていなかった人も客として来てくれている。
純粋にパンティを買いにではなく、ショーの勧誘としての人もいるのが予想外といえば予想外だが。
勧誘に関しては、今はパンティを売ることに集中いたいということで断っている。
基盤がしっかりするまで、パンティイリュージョンはあくまで麻帆良学園内のみで行う方針にした。
まぁ、いずれ世界を狙うつもりの俺としては麻帆良での基盤ができたら外に進出するつもり満々だけどな。
量産したパンティはどれも1枚300円。
100円ショップに行けばもっと安いのもあるだろうが、俺は品質には妥協していない。
そこらのランジェリーショップよりも明らかに安く、デザインも豊富で品質もいい。
サイズは、量産品ならS・M・L・LLの4種類。
当初の案の一つであるネット通販よりも、直にパンティに触れて確認できるので屋台は高評価だった。
個人のサイズでよりフィット感のあるパンティを望むならオーダーメイド性だ。
その場合は一枚500円である。
こちらも、この安さでデザインも自由、さらに製作時間もハンバーガー並と大好評。
オーダーメイドパンティを穿いたギャルからは、「もう二度と他のパンティは穿けない心地よさ」と感想を得ている。
あまりのフィット感に思わず甘い声が漏れたなどという口コミまで広がっているらしい。
だが、店を開く前に重要なことがあった。
俺はギャルの腰を見ればヒップサイズが一目で解る。
だけどそれだと信用されない――――――俺にそういう技術があるとまだ広まっていないからだ。
だから屋台のそばに簡易試着スペースも作った。
そこで実際に穿いてもらいつつ、サイズを測ってもらっているのだ。
俺としてはパンティに妥協したくないので、測定するなら俺が自ら測定したい。
だが、中には男が測定することを良しとしない女性もいる。

「……」

「ああ、ありがとうレイニーデイ」

だから、こうやって彼女……レイニーデイを雇って測定を頼んでいる。
まぁ、試着室に入る客を一目見ればサイズは解るから意味はないんだけど。
客に「ちゃんと測定してますよ」というのを見せる形式だけのものにすぎない。
レイニーデイから測定結果を受け取ると、屋台の工房スペースで瞬時に作成して客に渡す。
まるでファーストフード並みの速さで出てくるパンティに、客は皆驚愕の顔で帰っていく。
ちなみに、別に俺からレイニーデイにバイトを依頼したわけではない。
当初は手品部の誰かか、クラスメートにでも頼もうかと考えていたのだ。
だが、何を思ったかレイニーデイが俺のところにやってきて一言「……手伝う」と言ってきた。
断る理由もない俺はこうして彼女を雇ったわけだ。
まぁ、彼女が俺に声をかけてきた理由は何となくわかるんだが……
だってなぁ……彼女、バイト代の金を受け取らないんだぜ?
開店して今日で4日目。
ここ毎日手伝いに来てくれているが、一銭も現金を受け取ろうとしない。
その代りに仕事が終わると、俺に両手を突き出してパンティをねだるのである。
ショーまでの合同練習のときにあげたパンティをよっぽど気に入ってくれているらしい。
未だに彼女の表情は読めないが、パンティを渡すとどこかしら嬉しそうな空気を醸し出しているのは解るようになってきた。












5話











閉店時間の20時まであと30分ほど。
ようやく客も少なくなり、今日の分の仕事の終りが見えてきた。

「うん、今日もなかなかの売り上げだ」

屋台の金庫には今日の売上が入っている。
一日の目標は平日で3万円を考えているのだが、開店したばかりのせいかすでに7万近くある。
パンティとは衣類の中でも最も需要の高いものであるので、結構売れるようだ。
実際、上着やズボンに比べて嵩張らないし、消耗品なので数があって困ることなどないだろう。
元手は0なのでうはうはである。
レイニーデイは給与は現金の代わりに、本人の要望でパンティを作ってやるだけでいい。
これから先、彼女以外の人材も雇う必要性はあるだろう。
だがその人材費を考えたとしてもボロ儲けである。
俺は、人の空いてきた屋台の前で商品を眺めるカップルらしき二人組を眺めつつ、次の商品アイデアを考えていた。
うーむ、彼女さんは楽しそうにパンティを手にとって騒いでいる。
しかし彼氏さんはどこか居心地が悪そうだ。
やはり、ギャルのパンティは恥ずかしいものという既成概念にまだ囚われたままだろうしな。
いずれはそこらへんの意識改革も行っていかなければならないか。
男でも気軽にギャルのパンティを閲覧できる店を目指さなければなるまい。
男女どちらでも穿けるような、ジェンダーフリー的なデザインのパンティを開発するとか?
俺が作るのはあくまでギャルのパンティではあるが、イメージしだいでは可能だろう。
もしくは別の方向性……男がランジェリーショップにいても不思議じゃない環境を作る?
例えば、彼氏が彼女にパンティをプレゼントすることが流行になるようにしむけるとか……
うん、いいかもしれない。
誕生日などの記念日には、彼女へのプレゼントはパンティを送る。
花束というのは気持ちが伝わりやすいが、それも時代遅れではあるともいえる。
かといって、個人にあった品物を最初から考えていては難しい。
しかも学生には指輪などの貴金属を買うのは資金的に難しいだろう。
ならばこちらで意識誘導をして彼女にはパンティを、と思わせればいいのか。
俺の店のパンティなら手頃な値段だし、何よりデザインも豊富にそろえている……これからもっと増やすしな。
デザインによって相手に送る気持ちも現れるだろう。
セックスアピールならセクシー系、純情ならおとなしめ。
あぁ、その場合感謝の気持ちを表せるデザインも考えないとな。





閉店まであと3分。
外もすっかり暗くなっているからか、客足はほとんどなくなっていた、そんな時。
色々と試行錯誤していると、向こうから一人の老人がこちらに歩いてくるのが見えた。

「……マスター、例の物を頼む」

ふむ、昨日の夜に同じようにして屋台にきて注文をしていった客だ。
長そでのTシャツの上に半袖のアロハシャツを重ね着しているサングラスの爺さん。
後頭部が異様に伸びているうえに、その後頭部のみに生えている髪は異様に長い。
眉毛も相応にながく、その容貌からタダものではないと感じていた。
これだけ特徴的な外見をしているのである。
おそらく外見的に、確実に原作に出てくるキャラの一人だとは思うのだがこんな爺さんいたっけか?
もはや元々あってないような原作知識など忘我の彼方である。
とりあえず、どんな人物かは知らないが年をとっているだけのことはある。
パンティストとしての実力の高さも十分に感じられる、かなりの実力者だ。
さすがは年の功といったところか。

「ああ、出来てるぜ……これだ」

カウンターに腕を乗せて、サングラスの向こうからぎらつく眼を見せる爺さんに二つの紙袋を渡す。
袋の中には昨晩注文された品が入っている。
ちなみに俺が敬語を使っていないのは、昨日に必要ないと言われたからだ。
パンティスト同士の間にそのような隔たりは必要ない。
なかなかどうして男前な爺さんである。
無言で爺さんは頷くと紙袋を手にし、その場で口を開いて中を覗き確認した。

「サイズは問題ない。デザインもそれで大丈夫か?」

「ふぉっふぉっふぉ、問題ないわい。
 しかしさすがじゃのぉ、いい仕事をしよるわ」

彼の称賛に、素直に嬉しくなる。
爺さんは昨晩、俺に写真を二枚手渡してきてパンティの注文をしてきたのだ。
写真の1枚には妙齢の眼鏡をかけた、いい腰つきの美人の女性。
もう1枚には俺と同じくらいの年齢の、こちらは未来に期待な腰つきの美少女。
二人にそれぞれセクシーなパンティとキュートなパンティをセットで、との依頼だ。
おそらくは爺さんの娘と孫と思われる。
娘さんと思われる女性用には黒のTバックと、白をベースに薄い水色の糸で刺繍を施したパンティ。
片方は大人の色気を最大限に引き出せる露出度を、もう1枚は大人らしいデザインの中にもちょっぴり子供心を見せる出来栄え。
孫と思われる少女には、少女の冒険心をくすぐるピンクのローレグと、ふんだんにフリルを使った可愛らしい清楚なパンティ。
こちらも、中学生には際どいがクロッチ部分を広めに作っているので防御力はそれなりにあるローレグに。
清楚なパンティは可愛らしく、かつ派手にならないようにして子供っぽさをなくせるように。
本人を直に見ていなくとも身長は聞いている。
だから写真で会ってもヒップサイズは間違えていないはずだ。

「いや、こちらも写真の被写体を見てパンティを作るのは初めてだった。
 なかなかに面白い仕事だったさ」

「うむ。また今度注文をするときもよろしく頼むぞい」

「ああ、あんたの持ってくる仕事ならやりがいがありそうだ」

「金は例の口座に振り込んでおくからの」

「了解だ」

ご機嫌で去っていく爺さん。
俺も、別に銀行口座を彼に教えたりはしていない。
なんとなくノリで了承してしまった。
だが、まあいい。
仮に爺さんが金を払わずにトンズラしたとしても、俺としても彼の注文は有意義な仕事だった。
パンティストとしての眼力がまた1段階成長できたと自負している。
爺さんにオーダーメイドパンティの値段も説明していないことだし、金は勉強させてもらったと思って無しでも構わない。





……そう思っていたんだが。

「あの爺さん、やっぱり大物だったのか」

後日、銀行口座を調べるとあの日の翌日にある人物から入金がされていた。
振り込み人は「コノエ コノエモン」……近衛近衛門か。
まさかの学園長だったとはな。
しかも振込金額が20万円になっていた。
この瞬間、あの爺さんが俺の顧客リストないの上客ナンバーワンに輝いたのはいうまでもない。






[31177] 6話
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2012/02/06 12:37
ここから、やっと本編に関わってきます……たぶん。
あと、原作キャラのスリーサイズって作者知らないんだよね……
ウィキにも載ってないし、間違っててもまぁ、彼女らも成長期だしサイズ変動するよねと流してください。
あと、今回はギャグが全くないシリアス一辺倒です。
面白くないかも、ごめんちゃい。


――――――――――――――――――――――――――――――――




俺と彼女が出会ったのは二日前。
パンティYAMADAが開店から四日目の、閉店作業中のことだった。
今考えれば、あの日は初めての平日営業や学園長とのやり取りなど、なかなかに内容の濃い一日だったと思う。
だけど、老人の正体が学園長であると判明したのはその数日後のことだった。
そのことを考慮すれば……いや、考慮しなかったとしてもだ。
俺にとってはこの日、一番の上客ができたことよりも彼女との出会いの方が重要であったと考えている。
これは、ある意味で運命であったともいえるだろう。
俺が山田太郎であり、これからの山田太郎の人生を歩む上で必然であった出会いだ。
この出会いこそが、俺の今後のパンティ人生の方向性を大きく決めたといってもいい。
これが例え、彼女の言うところの歴史にない出会いであったとしても。
彼女が意図して作り上げた、作為的な出会いであったとしても。
やはりあの出会いは、俺にとっての一つの運命であったと強く思っている。
だからこそ、彼女―――――超鈴音との出会いは、やはり俺の人生を考察する上で最も語るべき事柄の一つなのだろう。













六話












学園長の背中を見送ってから閉店時間を迎えたパンティYAMADAの屋台。
今日の分の報酬であるローレグパンティをレイニーデイに渡した後、俺は商品を片付けていた。
さすがに後片付けまで彼女をタダ同然で手伝わせるのは気が引けたので、先にレイニーデイには帰ってもらう。
外部に取り付けていた試着室をたたみ、屋台の中に収納する。
この屋台は外見上はワンボックスタイプの大型車のようである。
だが、その実はエンジンを積んでおらず、自転車のように人力で運転が可能だ。
営業時は魚を三枚に下ろすように変形させることが可能で、簡単にコノ字型の屋台が完成する仕掛けになっている。
屋台を元のワンボックスタイプの形体に変え、商品の入った段ボールを収納する。
これで終わり。単純な作業だ。
あとは自転車のように男子寮まで漕いで帰るだけである。
ここまでに30分ほどしかかかっていない。

「こんばんわ、山田太郎サン」

さぁ、あとは帰るだけだという時になって声を掛けられた。
誰だと思い、屋台から出てその人物を確認する。

「初めましてネ、私は超鈴音というヨ。
 近くの屋台、超包子のオーナーをしてるネ」

日本人に近いが、どこか中国系を思わせる顔立ち。
肩までほどの長さの髪を、複数の三つ編みにして垂らしている特徴的な髪型をしていた。
超鈴音と名乗ったその少女は、年齢的には俺と同じくらいだろう。
というか、女子中等部の制服を着ているから年上の可能性はあっても中学生ではある。
小ぶりだがなかなかいい尻の形を思わせる腰つきをしている少女だ。
ふむ、誰だろうか?
完全に知らない少女である。
俺の名前を知っているからといって知人であるとは限らない。
先日のショーで結構名前が売れてしまっていることもあり、知らない人間が俺のことを知っているという状態もあるのだ。
というか、知人の女の子の名前を忘れることはあっても腰つきを忘れることはない。
この能力のおかげかなんなのか。
今や知っている女性なら、腰だけで誰かわかるようになってきたしな。
ん?……超包子?
ああ、そうか思い出した。
俺とほぼ同じタイミングでこの世界樹前広場で屋台を始めた中学生だ。
中華料理とは聞いていたが、まさか中国人がオーナーだったとは。
あれか、同じ場所で店を開いていることから挨拶に来たとかそんな感じか。
あー……俺の店は食い物関係じゃないから競争相手にならないと思って挨拶とか考えてなかった。
そっか、やっぱり店を開く上でそういうのは必要かぁ。
今度ちゃんと周囲の店に挨拶に行こう。

「悪いな。近くで店やってるのに、考えたらまだ挨拶しにいってなかったな」

「気にすることはないヨ、私もいままで挨拶に来なかたしお互い様ネ。
 貴方も初めて持つ店でいろいろと大変ダたろうからネ」

「そうか? そう言ってもらえると助かる」

良いやつでよかった。
やっぱり周囲の店とはいい関係を保っていきたいもんだよな。
俺の安堵する様を見てか、超はクスリと小さく笑った。
その仕草はどこか大人びて見えて、彼女が同年代の少女たちよりも精神的に成熟していることが窺えた。
俺に対して右手を差し出し握手を求めてくる。
それに応えるように、俺も彼女の差し出した手を握った。

「山田太郎だ、この屋台のオーナーをしている。
 改めてよろしくな。」

「こちらこそよろしくお願いするネ。
 貴方とはできれば友好な関係を築いていきたいと思っているヨ」

「中華料理の店なんだよな? 今度食いにいくよ」

「ふふ、それは楽しみネ。貴方ならいつでも歓迎するヨ。
 私も貴方のパンティにはかなり興味があるからネ、今度買いに来るネ」

残念ながら今日は閉店までに間に合わなかったようだしネ、と話す超。
なるほど、こいつも俺のパンティに興味を持ってくれているのか。
先日のショーを見てくれたのだろうか?
確かに、俺を見る視線の中にこちらに対する興味が窺える。
社交辞令としての言葉以上に、彼女は俺のパンティに興味を持ってくれているのだろう。
うん、今度時間がある時に超包子に食べに行ってみよう。
俺自身はまだ行ったことなかったけど、結構人は集まっているみたいだし評判のようだ。
そんで、パンティについて食事をしながら語り合うのも楽しいかもしれない。
超から感じるパンティストの臭いとでもいえばよいだろうか?
そういった類のものを感じ、俺は彼女とはいい友人になれそうだと感じた。

「そうだ、これはお近づきのしるしだ。良かったらもらってくれ」

挨拶代りにパンティを生成し、彼女に手渡す。
中国人ということで、中華風のイメージで刺繍を施したパンティ。
中国と言えばカラーイメージ的には赤や緑の原色なんだが、挨拶で渡すにはそれでは強すぎる。
だから白の布地に薄い赤の糸で、中華的な模様を施した。
あまり露骨な模様では、遊び心が過ぎるのであくまでアクセントとしてだが……
布地面積はローレグとまではいかないが、若干小さくしている。
チャイナ服にでも合わせて穿いてもらえればいい感じになるのではないだろうか?
ちゃんとヒップサイズを80センチに合わせてある。

「これは……本当にもらってもいいのカ?」

「ああ、挨拶代りのようなもんだ」

「そうか……そうね、大事にするヨ。
 貴方がうちの店に来るときは、うんと御もてなしさせてもらうネ」

差し出したパンティを一瞬呆けたように見た超。
受け取ることに一瞬戸惑いを覚えたようだが、俺の言葉に素直に受け取った。
まるで宝物でももらったかのように大事にその腕に抱え込む。
そんなに気にいってくれたのだろうか?
俺としても即興で作ったパンティを気に入ってくれたのなら嬉しい。
やはり自分の作品を認めてもらえるというのは、作り手にとっては嬉しいことなのだ。

「今日は挨拶ついでに貴方に教えることがあったから来たのだガ……
 私も何か渡せるものを持ってきたほうが良かたかネ?」

「……教えること?」

「そうネ。今度うちの店に来た時に御馳走するから、今日のところはこの情報で勘弁して欲しいヨ」

「いや、別にそんな気を使うなよ。で? 俺に教えたいことってのは?」

どうやら超は単に俺に挨拶しにきただけではないようだが。
一体、何について教えてくれるというのだろうか?
あれか、店を開く上でやらなければならないことができていないとか、そんな類のものか。
俺は商売をするのはこの店が初めてだし、なにかやらなければならないことが抜けていても不思議はない。
だけど、彼女が口にした言葉は俺の予想の斜め上をいっていた。

「山田太郎サン、貴方のことを警察が嗅ぎまわってるヨ」

「っ!?」

警察が? なんで??
素早く思考をめぐらせれば簡単にたどり着く。
この学園に入学する前、駅で拾ったトランクケース。
それを届けた際に中身を少しちょろまかした。
警察に目をつけられることなど、それくらいしか身に覚えがない。
もしかしたら、あの大金は何か事件に関わるような重要なものだったのか。
いや、それを抜きにしてもちょろまかしたのが極一部で会っても500万もの大金だ。
捜査するには十分な額か。
その場のノリで空いたスペースにパンティを詰め込んだのも悪かった。
今や俺はネット上でかなりの有名人である。
某動画サイトで、俺のパンティイリュージョンが世界中で話題になっているのだから。
名前を名乗らなかったとしても、パンティと年齢層から俺に結びつけて考えるのは難しいことではない。
くそ、これなら変に怖気づかずに全部もらっときゃ良かった。

「ふふ、心当たりがあるようネ?
 想像通り、貴方が拾った大金のことで怪しまれてるヨ」

「……くっ、なんでお前がそんなことを知っている?」

「私はこれでも独自の情報網を持っててネ、貴方のことを調べていたら辿り着いたネ」

俺のことを調べていた?
何故? 何かに対する脅しに使うため?
だがそれでは警察が調べていると話す必要はない。
もし俺に対し、このことを黙っていることと引き換えに何か要求するならそうじゃない。
彼女としては「協力しなければ警察に言うぞ」と言えばいいのだ。
だというのにまるで俺に対して忠告しているかのような発言内容。
それに、先ほどまでの態度は実に友好的だった。
今も俺に対する敵意や警戒は見られない。
何だ、何が目的だ?

「勘違いしないで欲しいヨ、私は貴方のことを単純に心配しているだけネ。
 こんな事で貴方の夢が邪魔されるのが嫌なのだヨ」

「…………何?」

「貴方のパンティは―――山田太郎のパンティは世界を革新に導くパンティ。
 その道をこんなくだらないことで妨げられるのが忍びない、それだけヨ」

その言葉に、俺はガツンと脳内を揺さぶられた。
これでも人の目を見れば、相手が本気で言っているかどうかくらいはそれなりに解る。
超が本気で俺のパンティをそのような物と考えてくれているのがわかった。
俺自身、いつかこのパンティYAMADAのブランドを世界のブランドにする気はある。
だが、まさか初めて会った他者からそれを言われるとは思ってもみなかった。
彼女はこんなにも俺のパンティを認めてくれているのか!?

「貴方さえよければ、私も貴方のパンティのこれからを仲間として一緒に見ていきたいと思ってるヨ。
 もし私の言葉を信じてくれるなら、明日のこの時間に超包子にきてほしい。
 警察は明後日にあなたに任意同行を求める気でいるし時間もそう無いからネ。
 きっと貴方の力になれるはずヨ」

彼女の言葉が本当であるという証拠はない。
だが、本当なら明後日には警察に任意同行を求められる。
そこで指紋の一つも採取されるだろう。
トランクケースは素手で触れていたこともあり、俺の指紋と照合されれば一発でばれる。
いくら俺がとぼけようとも決定的になるだろう。

「それでは、貴方が明日私のもとに来てくれると信じているヨ」

そう言って超は手をひらひらと振りながら歩いて去って行った。
俺は彼女の小ぶりな尻を眺めながら、どうすべきかを考えていた。










[31177] 番外編  地球の英雄
Name: 真田蟲◆686ee44f ID:d6025cbf
Date: 2012/09/13 02:09
※これは、作者がリハビリのために書いた番外編です。
超のいた未来の歴史では、どのようにして山田太郎は地球の温暖化を止めたのか。
長い間執筆から私用のために離れていたので、短いですがそれでもよければどうぞ。



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ここに来るまでの道のりは長かった。
思えば、俺と……いや、俺達とパンティの歴史が始まったのはパンティYAMADA開業からではない。
俺は、自分を挟むようにして両隣に立つ人物に目を向ける。

「米沢……」

「ああ」

右手に立っているのは米沢。
かつて小学生のころ、様々なアイデアで僕のイメージの可能性を広げてくれた漢。
大学で再会してから再び俺の友人として、否、戦友として時を歩んできた人物だ。
俺がその名を呼ぶと、こちらの考えを察して力強く頷いた。
彼は中学の時の転校にあわせて交友が途絶えた以降も、再会するまでの間も一人のパンティストとして日々精進していた。
米沢は、パンティとそれを穿くギャルに並々ならぬ愛を持っている戦士である。
その鍛え抜かれた筋肉は、ただひたすらに世のギャルたちを守るためだけに身につけられたものだ。
丸太のように太い腕には戦場でつけられた様々な傷が残っている。
これは銃弾飛び交う紛争地域で、危険にさらされ怯えるギャル達をその身で守りながらパンティの素晴らしさを語り、
俺と一緒に数々の戦場で停戦を呼びかけてきた証である。
最も目に引くのは、その傷のせいで失明してしまった右目だろうか。
実力が足りず、また、俺のパンティが間に合わなかったせいで目の前でギャルを死なせてしまった時にできた傷だ。
今の治療技術なら失明はまだしも、傷は消すことはできる。
それをしないで今も顔の右半分に及ぶ傷を消さないのは、自分への戒めだという。
俺は自分の今までの活動で、多くのギャル達の命を救ってきた自負はある。
だが、それでも戦場などの現地で最もギャル達を救っているのは、間違いなくこの男だと思っている。
米沢はパンティYAMADAの幹部の一人であり、シークレットサービスを含む全ての実行部隊を指揮させている。
表に出ることはあまりないが、この会社のナンバー3である。
俺が唯一、背中を預けられる男だ。

「雪奈……」

「ええ」

左手に立ち、俺に微笑むのは雪奈。
小学生の頃に俺の魅惑のパンティの実験に付き合ってくれたギャルだ。
40歳となった今でも、その美しさは健在である。
肌のハリは十分に10代でも通用しそうなほどであり、老いとは一切無縁の容姿をしている。
一見二十歳ほどに見えながらも、成熟した女性の色気を全身からかもし出している。
俺がパンティYAMADAを開業して一年ほどたった頃、経営という壁に阻まれ頭を悩ませていたときがあった。
そんな時彼女は俺の前に舞い戻るようにして現れてくれた。
以降、公私共にパートナーとして今までの人生を歩んできたのである。
俺の心が折れそうになった時、疲労で倒れそうになった時、いつも彼女の温もりと優しさが隣にあった。
引く手数多の彼女は、行く先々で男性から求愛されてきた。
各国の政治家や王族からの求婚などざらである。
だというのに彼女はそれらを全て蹴って俺とともにあることを選んでくれたのだ。
世界一のギャルが俺を支えてくれている。
その事実に、どれだけ俺の心が助けられてきたことか。
今の俺があるのは彼女のおかげであるといっても過言ではない。
雪奈は俺達の会社のナンバー2でもあり、副会長兼、俺専属の秘書のような立場でもある。

「そろそろ始めるか」

この場にいるのは、世界でも数少ない俺の能力について知っている人物だ。
いや、少ないはずの人物たちだったというべきか。
今回の作戦のために、国連のトップたちには協力を要請する上で話している。
彼らとは既に個人的にも友誼を結んでいることもあり、比較的に混乱もなく信じてもらえた。
自由自在にギャルのパンティを作り出せるといった時は、驚いた顔をしたものの「お前ならなんでもありな気がする」といって
むしろ皆呆れ顔だったのが印象的だった。
決して記録に残すことはしないという条件のもと、全てを話したのだ。
俺の能力は完全に自身のイメージに依存している。
逆に言えば、イメージさえできれば作れないパンティなどない。
しかし、今回作ろうとしているパンティは果てしなく難しいだろう。
考えただけでも、人間の脳の情報処理のキャパシティを超えている。
だが、戦争根絶を成し遂げた今、俺が次にするべきことは決めていた。
今更後には引けないし、引くつもりもない。
もしもの時は、俺がいなくなっても世界の平和を維持していく為の力として12枚のパンティを国連の平和維持軍に託してきた。
世に流通している普通のパンティと違い、能力を付加している。
これまでの人生で培われてきた経験から作られた、能力付加のパンティの雛形たち。
完成形変体パンティと名づけられたそれらは、今尚ゲリラ的に起こるテロリストとの戦いの力となるだろう。
国家間の戦争は終わりを告げたが、パンティによる平和を認めないものたちもいまだに残っているのである。
その正体は軍需産業により代々富を築いてきた企業たちである。
平和を迎えたこの世界で縮小を余儀なくされた彼らは、悪あがきのように散発的にテロを誘発させようと動いているとの情報が入ってきている。
その戦いも収束に向かってはいるが、少しでも俺のパンティが平和維持のための役に立てればと思っている。

「各地点、準備はいいか?」

『ポイント1、準備完了』

『ポイント2も準備完了よ』

『ポイント3、同じく準備完了』

『ポイント4、こっちも準備OKッス!』

通信用のマイクに声をかけると、世界各地に散らばった仲間たちから返答が来た。
ある者はビルの上から。
ある者は山頂から。
ある者は太平洋の船の上から。
世界各地に散らばった仲間から、作戦準備が整ったという報告が入る。
彼らには、今回の作戦のために協力してもらっている兵や現地の一般市民の指揮を頼んでいるのだ。

「雪奈」

「衛星から見ても問題ないわ。ちゃんと赤道上を一周するように各員配置完了よ」

「よし、これより地球回復作戦を開始する!!」

俺の宣言とともに、世界各地で人々がパンティを空に掲げた。
この作戦は表向きは世界中の人々が同じ行動を取ることによって、
国境などないのだということを実感させる言わばセレモニーのようなもの。
しかし実際は違う。
重要なのは、赤道上に地球を一周するように配置されたギャルの輪だ。
彼女達は他の人々とは違い特別なパンティを穿いており、彼女達を線で結べば地球の円周となる。
このことが重要なのだ。
彼女達が手にしているのは普通のパンティでしかないが、穿いているものは違う。
お気づきの方もいるかもしれない。そう、遠隔操作式パンティ……通称P-ファンネル。
その改良型である。
これは、今現在俺が穿いている超人類のパンティによって操作可能なパンティであると同時に、穿いている人物の思念を増大させる。
人々が穿くP-ファンネルが思念を増大させ、この場の俺のところまで現地のイメージを届けてくれる。
そうすることで、俺自身が地球の円周を直接イメージするのだ。
続々と、彼らの思念が集まり俺の体へとそれらが集約されていく。

「ぐぬぅ!?」

「山田!?……っ!!」

しかし、地球を一周するほどの人数の思念。
それは想像通り、俺の脳のキャパシティを大きく超えるもののようだ。
脳に走る激痛に思わずうなり声が出る。
俺の異変に思わず駆け寄ろうと米沢が動こうとするが、それを雪奈が無言で止めた。
彼女は解っているのだ。ここで俺が止められることを望んでいないことを。
視界に映る彼女は、俺にむかってにっこりと微笑んだ。
心配してくれているのに、それでも俺を止めずに微笑んでくれていた。
雪奈の手は表情とは裏腹に強く握り締められて爪が食い込んでいるのか、血がぽたりと指の隙間から落ちている。
それでも、俺を支えようと強がって笑みを浮かべて……

「……イメージ」

自分の女に心配だけかけさせて、それで途中で止めて無理でしたなんて格好悪い真似絶対にしたくない。
そんなの、男じゃない。

「……イメージ」

全身の筋肉が、収縮したかのように強張る。
腕に、額に血管が浮き出し、ビリビリと神経が電気信号を活発に流し始めた。

「……イメージ」

イメージだ。イメージするんだ。
この地球を一周するイメージを。
痛みを堪えるための力みを止めることができない。
顎が砕けそうなほどに奥歯を噛み締め、コブシを握りこむ。
あらかじめ想定して爪は深めに切っておいたのだが、それでも掌に食い込んだ。

「……イメェ……ジ」

力みすぎで、脹脛のあたりからプチンと嫌な音が聞こえた。
どうやら肉離れか、もしくは筋繊維が断裂でもしてしまったのか。
鼻の置くが熱くなり、何かが鼻の穴を通って流れる感触がした。
駄目だ、負けるな。
耐えてくれ俺の体。
もう少しなんだ、やっとここまで来たんだ。
最初は、単にギャルが俺のパンティを穿いているだけで満足だった。
次第に世界中のギャルに穿かせようという野望が芽生えた。
その野望のために世界中に支社を作り、世界を見て回った。
そして知った、その日穿くパンティも無く、貧困にあえぎ餓死していく人々がいることを。
理不尽な暴力に怯え、銃弾が飛び交う地域で身を震わせながら生活する人々を。
そんな彼らを救いたかった。
今、戦争根絶を呼びかけ、国際的なボランティア団体としても大きく成長したパンティYAMADA。
やっと……やっとなんだ。
やっと核ミサイルも全ての国が廃棄してくれたんだ。
飢え死にするギャル達も減り、多くの地域で銃弾が飛び交わないようになった。
今の世界のギャル達を救うことができたんだ。
あとは彼女達の、そして俺達の子供である未来のギャル達を救うんだ。
そのためには人間のエゴで弱らせてしまった地球を元気にさせる必要がある。
今の地球は温暖化で南極の氷がとけ、海面が上昇してきている。
小さな島国などが極端で、年々海面が高くなり住める地域が狭くなってきている。
それだけじゃない。
度重なる予期せぬ異常気象のせいで、多くの人々が亡くなっている。
今でこの状況なのだ。
この先きっと、このままでは俺達の子供、孫の世代のころにはもっとひどくなっている。

「い……め……じ……」

ゆっくりと対策を講じて、結果が出るのを待つだけでは駄目なんだ。
いくら人間がこれ以上の温暖化を防ごうとしたところで、もはや地球に元に戻るだけの活力が残されていない。
誰かがなんとかしてくれるのを待っていては駄目だ。
救うと決めた以上、俺達がなんとかしなければ。
俺達が未来のギャルの地球を守るのだ。
そしてこの状況まで来た以上、あとは俺以外にはできない。

「…………イ……メ……ージ!」

意識が朦朧としてきたのか、視界が霞む。
耐えろ、深く考えるな。
地球も一人のギャルだと考えるんだ。
今まで多くのギャルをこのパンティで笑顔にしてきたんだ。
今更もう一人くらいなんてことはないだろう?
ほら、あの子が元気ならどんな顔をして笑う?
いつものように想像してみろよ太郎。
まず地球は青い。海も空も。
きっとあの子は透き通るようなスカイブルーの髪をしているんだ。
そして、緑豊かな森を髣髴とさせるグリーンの瞳。
きっと笑うと大地のように人を安心させる、母のような雰囲気を漂わせるんだ。
それでいて空に浮かぶ雲のように自由で、捉えどころの無い性格をしていて。
そう、普通の女の子なんだ。ただ腰周りが地球の円周と同じだけだ。
単に大きなだけのギャルじゃないか!!

「見えた!!」

俺は思いっきり両手を空にむけて掲げる。
瞬間、ぐらりと体が揺らめいて地面に倒れそうになるが、背中を誰かに支えられた。
後ろを振り向くまでも無い、背中に感じるのは二人分の手の感触。
その心強い感触に思わず頬の緊張がゆるむ。
イメージはできた。
俺の能力は、何の対価もなしに自由自在にイメージしたパンティを作り出す。
つまり、すでにイメージできた以上、もはやこの山田太郎に作れないパンティではない。
赤道上に立つギャル達の上空に、一本の透明で巨大なゴムが出現する。
そして、南半球にはゴムから広がるようにして布が広がり、クロッチ部分を作り上げる。
尻に相当する部分には、平和の象徴である鳩がパンティを加えている絵が描かれた、プリントパンティ。
一般人には見えないように透明に作られているが、確かにそこに地球を包み込むパンティを感じた。

「地球よ……元気になあぁぁぁああぁぁああああぁぁあれえええぇぇぇえええぇええええ!!」

俺の叫びにより、吸い込まれるようにパンティが地球にフィットする。
その瞬間、青い髪をした幼女がパンティを穿いて笑う姿を幻視した。
やがて地球が不可視の光に包まれる。
成功……したのだ。

「はは、やった……やったぜ、みんな」

全ての緊張がほどけたからか、俺は雪奈と米沢が支えてくれる腕の中、意識を失った。









それから二ヵ月後、地球の温暖化の進行が停止しており、様々な数値の計測から地球の活性化が認められるようになったという。











[31177] 七話
Name: 真田蟲◆686ee44f ID:4a73ba62
Date: 2014/06/18 18:39

某警察署、其処の一室ではちょっとしたパーティーのように盛り上がっていた。

「本当にどうやっているんだい?」

「それは企業秘密ですよ」

「次、次はあのパンツが飛び回るやつ見せてくれないか?」

「さすがに何の準備も無しにはできませんよ。
 あと、何度も言いますがパンツではなくパンティです」

子供のように目を輝かせる刑事さんは、その言葉に少し残念そうな様子を見せる。
まぁ、本当は可能なんだけどね。
あえてこの場では出来ないネタがある事を主張することでパンティイリュージョンが種も仕掛けもある手品であると印象付ける。
超の言っていた通り、現在俺は任意での事情聴取を受けていたのだが、何故か今は署内で即興のマジックショーを開催していた。
署内にいる警察官の殆どの人が集まっているため、会議室ほどのそれなりの広さを持った部屋ではあったがあきらかに人口密度が過多となり狭苦しく感じる。
この人たちは仕事とか無いのだろうか?……無いんだろうなぁ。
今日も日本は平和です。










七話









誰に説明するというわけでもないのだが、いきなりな展開ではよく解らないだろう。
ちゃんと順番に話すから縫い目のしっかりとしたパンティのように安心して欲しい。
話は一昨日の月曜日、パンティYAMADAが閉店後に超鈴音が俺に意味深な言葉を残して去っていった後にまで遡る。
小ぶりながらも形の良い腰付きをした彼女の言葉を一晩ベッドの中で考えた俺は、誘いに乗ることにした。
やはり考えた通り、彼女が俺をわざわざ陥れようとしていると思えないのだ。
そもそもメリットもないはずだ。
中華料理の店をしているという事だし、俺の店と場所が近いといえど競争相手にはならない。
何より、俺のパンティを認めてくれているのだ。
そんな相手の話に耳を傾けられないとあっては俺はもはやこの地でパンティストを名乗ることができなくなってしまう。

次の日、俺はいつもより早めの店じまいをすると超飯子へと赴いた。
そこでは三人の女子中学生が大勢の客を相手に店を切り盛りしている光景があった。
昨晩俺と会話したあの超と、もう一人褐色の肌をした外国人の少女が広場の一角に設置されたテーブルの席へと人懐っこい笑みを浮かべて料理を運んでいる。
俺と同じく大学の工学科の先輩に作ってもらったのだろうか?
屋台と思われるそれはワンボックスの車を改造したような外見をしていた。
その屋台の厨房は外からも見えるようになっておし、そこでは少しふっくらとしながらも幼さの抜けきらない少女がプロ顔負けの包丁捌きで食材を刻んでいた。
見たところ、女子中学生三人で店を切り盛りしているようだ。
客は誰もが笑顔で運ばれてきた料理に舌鼓を打っている。
成程、いい店だ。
それは客の顔を見れば一目瞭然だった。
ウェイトレスをする少女達の笑顔に、料理の味に、皆笑顔になっている。

「おや、山田さんもう来ていたネ? ちょっと待っていてくれないかナ?」

俺に気がついたらしい超がお盆片手に近づいてきた。
それを俺は手で制する。

「構わんよ、まだ残ってる客を優先してやってくれ」

「そうカ? ありがとう」

せっかく客が集まっているのだからそちらを優先すればいい。
今回彼女がどのような話を聞かせてくれるのか興味はつきないが、順番を疎かにしてはいけない。
客がそこにいる以上、店を開いている限りはその客を優先する。
それが商売というものだ。
料理とパンティという違いはあるものの、そこに違いはないはず。
俺も彼女も店を持ってまだ間もないのだから、殊更客は大事にしなければならない。
無駄にでかい世界樹という呼び名の樹にもたれ掛りながら、俺は彼女達のチャイナ服姿の腰つきを眺めていた。



結局、客が満足して全て帰ったのはそれから約一時間後のことだった。
店じまいを二人に任せてきたのか、中学校の制服に着替えた超が俺に寄ってきた。

「こちらから呼び出したのにこんなに待たせてすまないネ」

「そう何度も謝るなよ、お互い店を持つ同士だ。客を大事にしなければならないのはわかっている」

「そう言って貰えると助かるネ……時間も遅くなってきタし、ここじゃ話づらいカ……」

場所を移動しよう、と超は言った。
彼女の後ろを歩きながら、何度か道を曲がる。
この土地に来てからまだ入ったことがない路地裏へと入っていった。
おいおい、女子中学生がこんな人気のないところに来て大丈夫なのかよ。
と、軽く心配しながらしばらく歩いたところで超は立ち止まりぼそりと小さく呟いた。

「フム、撒けたようネ」

「……は?」

呟くと同時、彼女は傍の建物の外壁に指をなぞらせる。
するとどうだろう、継ぎ目の無いコンクリートの壁しかなかったそこに扉が現れた。
待て、今この娘は何をした?
驚く俺をよそに何事もなかったかのように彼女は扉に手を触れた。
白魚のような指先が触れた場所が光り、どこからともなく機会音声が流れてくる。

『個人認証完了、オカエリナサイマセ』

自動ドアのように扉が開かれると、そこには地下へ続くと思われる階段があった。

「そんなに警戒することはないネ、別にとって喰ったりはしないヨ」

開いた口が塞がらないとはまさにこの事か。
自身の力はどちらかといえば魔法に近いものがある。
この世界も最近忘れがちではあったが元は漫画の世界である。
不思議なことがあってもおかしくはないが、どちらかといえば俺に訪れる不思議な事とは魔法っぽいものだとばかり思っていた。
そういえばおぼろげだがロボットの娘とかも出てきていたような気もするし、SFちっくな要素もあるにはあるのか。
そんな俺の様子に苦笑しつつ、彼女はついてこいとばかりに階段を降りていく。
数秒そのまま立ち尽くしていたが、俺は彼女の後に続いた。
まるで俺が入るのを待っていたかのように、階段へと足を踏み入れると背後の扉は閉ざされ、元の何も無いコンクリートの壁になっていた。
明らかに現代の科学力を超えている。
少しはやまったか、と頬に冷や汗が流れた。

階段を降りた先は空洞になっていて、地面には水が流れている。
どうやら下水道のようだが、あまり不衛生なイメージはなかった。
傍に流れる水は多少濁っていてお世辞にも綺麗とはいえなかったが、臭いはほとんど感じない。
周囲の外壁も特に汚れている印象はないし、暗くじめじめしていたりもしない。
一定感覚で配置された照明が、明るく照らし出している。
鼠どころか黒い虫さえ見当たらない。
随分と思っていた下水道とイメージが違うな。
下水道横の通路をしばらく歩くと目の前を歩く超が立ち止まった。

「さて、ここが私の秘密ラボ……秘密基地とでも言ったほうがそそられるかナ?」

振り向いた彼女は悪戯の成功したような顔で不適に笑みを浮かべていた。
そこにあった扉を開けると、30畳程の広い空間に様々な計器類が所狭しと並べられていた。
壁には大小様々なモニターが設置され、この都市の色々な場所を映し出している。
映されている場所が常に移動していることから固定された監視カメラの映像ではないようだ。
むしろそこに映っていたのはこの学園の教師と思われる人物達。
彼らをトレースしてカメラも移動しているらしい。
その1つでは、うちの中学の体育教師が俺の担任の胸を影からガン見している映像もあった。
あぁ、これは確かに外で今行動している教師達の映像だ。

「私の秘密基地へとようこそ。歓迎するよ山田太郎サン」

「お前……本当に何者だ?」

「ふふ、そうネ……未来の火星人とでも言っておこうカ?」

「未来人だと?」

いぶかしむ俺ににやりと笑みを浮かべる超。
近くにあった椅子に座ると足を組み、膝の上に両手を重ねた。

「そう、貴方のパンティが地球を救った未来からやってきた……その更に先。
 救われることのなかった火星生まれの人間ネ」

俺のパンティが地球を救う?……どういうことだ。
しかも彼女はその未来の地球ではなく火星人だと言う。

「信じられないという顔だネ? まぁ無理もないヨ」

ならば証拠を御見せしよう、と彼女が口にした途端。
目の前で彼女の姿が一瞬で消えた。

「なっ!?」

どこに行った!? 周囲を見渡すも彼女の姿は見えない。
情熱のパンティで日々強化されていった俺の動体視力も持ってしても彼女の姿がぶれるところすら見えなかった。
穿いているパンティの色をトリコロールカラーの新人類のパンティへと変化させる。
しかし更に鋭敏になった俺の感覚でも彼女の存在を感じ取ることはできなかった。
視覚に集中する――何かが動いた時におこる空気の流動で発生する埃の乱れすら見当たらない。
聴覚に集中する――足音どころかスカートやパンティが擦れる音すらしない。
嗅覚に集中する――何の臭いも感じない。
触覚に集中する――見られている時に感じる独特の感触も感じない。
味覚に集中する――やはり何か変化は感じられない。
ならば五感を超えた第六感――直感を集中させる。
だが、やはりこの部屋の空間に俺以外の人間の存在を感じ取れない。
だというのに、そこにいないはずの彼女の声が俺に語りかけてきた。

「見えないか……否、私の存在を感じられないかナ?」

「っ!?」

「私は変わらずここにいたのだがネ」

そんな言葉と共に、先ほどと全く同じポーズで超が姿を現した。
椅子に座り足を組んで、膝の上に両掌を重ねている。
悪戯の成功した子供のようににやにやとした笑みも変わらない。
移動する時に生じる髪の毛の動きすら感知できない。
例え瞬間移動なりで急にその場に現れたとしても、そこには空気の流動が発生するはずだ。
しかしそれも感じ取ることはできない。

「何をした?」

「何を、と言われても姿を消したとしか言えないネ……貴方の作ったパンティでネ」

「……どういうことだ?」

確かに俺は特殊な能力を持ったパンティを作ることはできる。
しかし特殊なパンティは今まで雪菜ちゃんにしか渡したことは無いし彼女が知るはずもない。
超自身が言っていた個人的な情報網をもってして調べたとすれば、まぁ知っていることくらいは不思議ではないが。
だが、そもそもの話、俺は姿を消せるようなパンティを作った覚えはない。
それも新人類のパンティですら感じ取ることができないほどに完璧な存在の消し方ができるパンティなど。

「間違いなくこれは貴方の作ったパンティ……といっても、“未来の”と言葉がつくがネ」

そういって椅子から彼女は立ち上がると、少し恥ずかしそうにスカートの裾をつまんだ。
そしてゆっくりとそれを捲りあげる。
スカートの動きに合わせて視線を上に太股に沿うようにして動かせば、そこには肌色の空間があった。
何も身に着けてないのではない。
大事な所を最低限隠すために、絆創膏が張られている。
しかし前張りだけでパンティなど……いや、違う!

「これはまさか!?」

「気づいたかナ?」

少し恥ずかしいのだろう、頬を羞恥の色に染めながらも不適な笑みを崩さない彼女。
その彼女の腰の肌のラインをよくよく見れば、弱冠の肌への食い込みが見れた。
パンティを穿けば、柔肌にしっかりと固定するが故に形成される少しばかりの曲線の歪み。
新人類のパンティを穿いていなければ解らなかっただろう。
その食い込みは1ミクロンもあるかどうかといったひどく小さなものだった。
おそらくは他のパンティを穿いていれば、如何にパンティストを自称する俺でも気づくことはできなかったはず。
あれは絆創膏を張っているだけに見えて違う。
実際は極薄で透明な、存在すら感知することが難しい布地に大事な部分を隠すためにそこだけ肌と同化する色の絆創膏を模したクロッチが施されている。
なんというレベルでの完成度なんだ。
あの薄さ、透明度は今の俺では到底作り出すことのできない技術力、イメージの深さ。

「そう、これは透明なパンティなのだヨ」

穿くためには色々と処理が多くて大変だがネ、とおどけて見せる超。
俺は戦慄を覚えずにはいられなかった。
これほどのパンティを俺以外が作り出したということに。
いや、彼女の言葉を信じるのであれば未来の俺、ということになるのか?
自分の今のパンティストとしても実力の未熟さに愕然とする。

「これは今から数十年後、地球から争いを無くしたとされる山田太郎が作り出したパンティ」

超がスカートの裾から指を離すと、はらりと元に戻り彼女の股間は姿を隠した。

「自分がいなくなった後も平和を維持できるよう、時の世界統一政府に託された十二枚のパンティ」

彼女の言葉がまるで直接脳内に届くように俺に流れ込んでくる。

「特殊能力を有した完成系変異パンティ―――

 ――第七のパンティ、所有者の姿をあらゆるものから感知できなくさせる能力を持つ――

 ――透布・無在」

それは未来の俺が自分の死後、新たに世界の脅威が現れた時に対処できるように世界へと託した力のひとかけらであった。





[31177] 八話(修正済み)
Name: 真田蟲◆686ee44f ID:4a73ba62
Date: 2014/06/26 22:55
超の秘密基地に来てからというもの、驚かされてばかりだ。
正直、未来の俺が作ったというパンティの実物がなければ到底信じられないものだったが。                            

「信じられないかナ?」

「普通に考えればな。だが君が持っていたあのパンティは俺が作ったものだ。
 それに関しては妙な確信がある。理解はできないが信じるしかないといったところか」

「今はまだそれでいいヨ」

ここからの話はまず信じてくれていなければ始まらないからネ、と彼女は笑みを浮かべた。









八話









超が指をパチリと鳴らすと、部屋の隅から昆虫を思わせる多脚型のロボットが床を滑るようにして現れた。
そいつは俺の足元まで来て止まると、器用に脚を折り畳んで、一辺が70cm程の完全な立方体へと変形した。

「話も長くなるだろうからネ、どうぞ座って楽にしてくれたまエ」

「……あぁ」

どうやらこのロボットに腰掛けろということなんだろうが……
こいつはいちいち俺を驚かせるために演出を考えているのではないかと疑いたくなる。
パンティイリュージョンで観客を驚愕させるべき立場の俺が驚かされている。
この流れはどうもいかんな、話の主導権を完全に握られてしまう。
せめて驚きが顔に出ないようにしなければ。

「まずは私が未来から来たといったネ、その元いた時代について話そうカ……」

彼女はスカートのポケットから小さな端末を取り出して操作する。
すると、部屋の中央に位置するモニターにとある映像が映し出された。
SF映画に出てくるような空を飛ぶ車に、宇宙まで届きそうな程の巨大な塔。
大小様々なロボットが街中を闊歩している。
国籍や人種を問わずに人が楽しそうに笑い合っている。
しかし、機械の姿は映し出されてはいるが映画とは違うところも見て取れた。
それは自然が残っていることである。
街路樹のように人工的に植えられた樹だけではない。
そこには自然に成長し、青々とした葉を茂らせる木々が生えた山々があった。
鳥が、獣が野山を駆け巡る。
空も海も、汚染されてはいない澄んだ色をしていた。
まるで理想の遠未来といったところか。

「これが、私の元いた時代の地球ヨ」

「へぇ……いいところじゃないか」

「そうだネ、この時代からは考えられない本当にいい世界ヨ」

彼女の語る未来の地球は、まさに理想とされる世界であった。
曰く、飢えに苦しむ人もない。
様々な国や宗教が存在するも、互いに争うこともない。
戦争が起きないために、最低限の治安維持や災害の際に対処するための部隊しか軍が存在しない。
核兵器は完全に廃絶されており、国境線で兵士が睨みあうこともない。
地球温暖化などの環境問題のほとんどが解決されている。
しかもそれを行った中心人物が他でもない、この俺だというのだ。

「貴方はパンティイリュージョンのマジシャンとしても有名だたネ。
 しかしそれ以上に名声を得ていたのがパンティYAMADAのオーナーという肩書きヨ」

なんでも、世界の下着シェアの実に9割以上を誇る大企業なのだという。
一代で会社を興し、そこまで育て上げた実績。
自身の得た利益を貧しい人々の衣食住を支えるために使うなどの社会貢献。
発展途上国を先進国と同じレベルまでの社会、医療制度のある国にまで次々と成長させてみせる。
実際、そのおかげで貧困から病気や飢えで死ぬ人間が随分と減ったらしい。
そしてその過程で築き上げた人脈のコネを使い、世界中の政府とのパイプを持つにまで至る。
人脈を使い、時には実力行使で紛争を止めてみせ、事実上、地球から戦争を根絶させた。

「おいおい、本当にそれは俺一人でやったのか?」

「一人ではなく仲間もいただろうがネ、貴方が中心人物であったのは間違いようのない事実ヨ」

モニターに映し出されたのは、国連のシンボルマークとして採用された鳩の絵。
ただし、その鳩は一枚のパンティを咥えていた。

「人は股間を隠すことで猿から人へと進化した種族ネ。
 同じくパンティを穿くもの同士、解りあえないはずがないのだから争いは止めよう。
 そういった想いがこめられたのがこのシンボルだヨ」

「成程な、それで鳩にパンティか」

……本当にそれは未来の俺なのだろうか?
とてもじゃないが、俺はそんな立派な考えを持った人間ではないのだが。
もしくは自分はこの世界に転生したと思っていたのだが、本当は憑依物だったのか?
本来なら世界を救う英雄になるはずだった人物に、俺の魂が入り込んでしまったのだろうか?

「疑問に思うのは当然だが、確かにこれは未来の山田太郎が行った偉業の数々だヨ。
 歴史上、英雄と呼ばれた誰もが最初から英雄足りえる人物だったというわけではない。
 貴方が駅で拾った大金の一部を懐へと入れたことに関しては善行とは言えないだろウ……
 だが、私は逆に安心したヨ。貴方にも馬鹿な事を考える人間らしさがあった証だからネ」

「ぬぐ……」

「実際、資料にも最初は山田太郎はただのパンティストの一人に過ぎなかったとあっタ」

俺の考えなどお見通しなのだろうか、超は微笑ましいものを見るかのように生暖かい視線を向けてくる。
精神年齢的には前世も合わせれば俺の方が相当高いはずなのに、妙に彼女の所作は大人びて見えた。
彼女の話では、俺が英雄と呼ばれるような行動を取り始めたのは、なんでもパンティYAMADAが世界に進出するようになってかららしい。
世界に目を向けたことで、今までに見てこなかった世界の真実を目の当たりにする。
そして俺は、世界中のギャルを笑顔にするために立ち上がったらしいのだ。

「それで、その俺が救ったっていう未来の地球から何しに来たんだ?」

「勿論それは未来を救うためヨ……あの絶望的な未来を回避するため」

「絶望? あれでか?」

「そう、地球は本当に良い時代を迎えた。絶望なき世界、人々の笑顔絶えぬ世界」

超の表情がそれまでのものから変わる。
どこか飄々として、微笑を浮かべていた彼女の顔は沈痛な面持ちへと変化した。
手元の端末を操作するとモニターの映像が切り替わる。
そこに映っていたのは先ほどまでとは全く違ったものだった。

「なんだ……これ……」

どこまでも続く不毛な大地。
獣どころか草木一本見当たらず、水分も碌にないのか地面が罅割れている。
空はどんよりとした雲に覆われており、ちらちらと何かが降っていた。
あれは雪じゃないな、灰か。
人々の多くは痩せこけ、虚ろな瞳をしていた。
歩く様は幽鬼のようでふらふらと力が感じられない。
着ている衣服はぼろぼろで……否、まだ着ている人間はましなほうか。
中には何人かは裸で、そのあばらの浮き上がった肌を露出させていた。

「最初に言っただろう? 私は火星人だト……これがあの時代の火星、私の故郷ヨ」

「地球と全然違うじゃないか」

「そうネ、一番の大きな違いは貴方がいなかったこと」

「どういうことだ?」

「山田太郎サン、貴方は魔法を知っているかイ?」

「いや、意味がわからんが」

話がいきなり飛んだぞ、意味が本当にわからない。
つい今しがたまで未来の俺がどうだのとSFな話をしていたんじゃなかったのか?
この映像の火星が超のいた未来なら、彼女は未来を改変しようとしている。
それはなんとなく想像がついたのだが、何故ここに来て魔法なのか?

「その様子では知らないようネ。未来の貴方も一応表の人間という扱いだタよ。
 こんな不思議なパンティを作れても、魔法の世界とは関わりがなかったらしい。
 むしろ魔法も使わずにこのようなアーティファクト級のものを作れるのが馬鹿げているがネ」

いやまぁ、魔法が存在しているのは知っていることは知っているがな。
あくまでもそれは原作知識というもので詳しいわけじゃない。
今生において関わりがあったわけでもない。
そもそもこんな話をしている以上、原作知識とか最早意味がないというか。
ネギま自体最初の方しか呼んでないから魔法も女生徒のパンティ脱がすやつくらいしか覚えていない。
つまり、全くと言っていいほど魔法については知らない。

「あらゆる歴史書にも山田太郎はあくまで表の人間、一般人だったと記載されているヨ」

不思議な能力を持っていたのではないかと推測されてはいたようだ。
事実、普通の人間が特殊能力を持ったパンティなど造れるはずも無い。
だがそれを裏付けるデータは何も残っていない。
気も魔力も一般人のそれと大差ない、最低限のものしか持ってはいなかった。
持っていたのはただパンティのみ。
先ほど超が口にしていたアーティファクトではないかと議論されたこともあるらしいのだが。
結果は違うという結論だったようだ。
何でも、アーティファクトというものは魔法の品である以上、なんらかの魔力を内包しているものらしい。
だが俺のパンティにはそれがない。
超が見せてくれた透布・無在のような完成系変異パンティなどを作り出す技術力。
どうやって作ったのかなどの一切が不明。
ただ、自身の最後を予期してか時の世界統一政府に託したらしい。
その数ヵ月後、未来の俺はテロに巻き込まれて帰らぬ人となったと超は言った。
完成系変異パンティが世間に公表されたのは約30年後。
魔法世界でもある火星――通称、新世界が地球に攻め入ってきた時だ。
圧倒的な数の魔法使いが地球に雪崩れ込もうとした。

「それを阻止したのは地球に住む魔法使いと政府の治安維持部隊。
 中心となり部隊を率いたのは政府から選抜されたパンティストの精鋭達」

火星の魔力を利用して生活していた新世界の住人であったが、その魔力が枯渇した。
逃げるように地球へとやってこようとした彼等は、あろう事か地球を侵略しようとしたらしい。
魔法の使えない一般人が大多数を占める地球など簡単に手に入れられると考えたようだ。
全くご先祖様たちも愚かなことをしてくれた、と超は自嘲するように笑った。
平和的解決を望み、まずは対話をと歩み寄った地球に対して武力行使した魔法使い。
新世界の民にも平和的に解決しようとするものはいたのだろう。
だが、当時は住む場所を無くす焦りからか短絡的な思考をするものが多かった。
地球側の魔法使いの使者を皆殺しにした新世界はそのまま宣戦布告。
これを地球側の統一政府は火星と地球を結ぶ門を封じることで阻止した。
魔法使いの数で圧倒的に勝る火星が勝利すると、そのときは新世界の民は信じていたらしい。
しかしそれは地球側の完全勝利となって終わる――誰一人地球人に死者を出さないという奇跡を持って。
奇跡を起こしたのは12枚のパンティに選ばれたもの。

第1のパンティ、輝布・照破

第2のパンティ、双布・連響

第3のパンティ、朧布・幻日

第4のパンティ、清布・乙女

第5のパンティ、轟布・雷電

第6のパンティ、玉布・花火

第7のパンティ、透布・無在

第8のパンティ、音布・仙楽

第9のパンティ、護布・金剛

第10のパンティ、裁布・閻魔

第11のパンティ、時布・悠久

第12のパンティ、廻布・地球

完成系変異パンティを穿くものと、彼等が指揮する部隊の前に新世界の住民は完封される。
そのまま魔力の枯渇した火星へと閉じ込められることとなった。
平和を享受する地球と違い、火星では地獄の日々が始まる。
仲間内で争い、限られた資源を奪い合う。
その日の糧を得るため、昨日まで友人同士だったものが刃を向ける。
醜い争いの果てに得た資源でも、長くは生活を保てない。
力の無いものから毎日数え切れない死者を出していた。

「私達にも貴方の、山田太郎のパンティがあれば……パンティの教えがあれば……」

いつのまにか超は何かを悔やむように涙を流していた。

「貴方があの時生きていれば、まだなんとかなったかもしれない」

彼女の語る願望は、身勝手で都合の良いIFでしかなくて。
例え未来の俺がその時生きていたとしても、攻め込んできた火星の民を救ったとは限らない。
未来の俺は俺であっても、今を生きているこの山田太郎ではないのだから。

「貴方がいれば地球のように救ってくれたかもしれない。
 目の前で人が次々に死んでいくことも無かったかもしれない。
 ……何故貴方はあんなにも早く死んでしまっタ?」

だからそんな縋るような目で見られてもなんと答えていいのか解らない。
今理解できることは、火星の民は一人も救われることが無かったこと。
そして、おそらくは超自身、誰か大切な人間が目の前で死んでいったのだろうということ。
彼女の瞳から流れる涙は、自身の経験を思い出して流しているものだった。
そこに嘘はなく、真実しかなかった。

「この無在は仲間が命をかけて入手し、私に託してくれたものだヨ。
 火星に生きる人間には最早自分達だけで生きていくだけの力が残っていないんダ。
 あの未来を、悲劇を回避するには貴方の助けが必要なんダ」

他力本願なのは理解しているのだろう。
しかし彼女が元いた時代の火星の民たちには、最早自分達ではどうしようもなかった。
地球に移住することは許されず、何かをするための資源もない。
超とその仲間達はこの歴史を改変するために過去へと跳ぶことを決意する。
そして選んだ時代が、俺のいるこの時代。
なんでも、俺を始めとして様々な将来英雄と呼ばれるようになる人物がこの時代、この土地に集まるというのだ。

「頼む。どうしても貴方の助力が必要なんダ!」

椅子から立った超は、躊躇うことなくその場で土下座して見せた。
先ほどまでの悪戯好きな少女を思わせる雰囲気は既に霧散していた。
そこにいるのは、真摯に願いを告げる一人のギャル。

「貴方が望むなら、私の全てを貴方に捧げよウ!
 嗅ぎまわっている警察も私がなんとかして見せル! だから……」

「はぁ……顔をあげてくれ」

未だ中学一年生のギャルに土下座させていることにちっぽけな俺の良心が痛む。

「年頃のギャルがそんなに簡単に自分の全てを捧げるなんて言っちゃ駄目だろ」

「しかし……」

「未だよく理解しちゃいないが、その、なんだ。
 俺としてはギャルが自分の作ったパンティを穿くだけで満足とか思ってたんだけどな?
 将来としてはやっぱり世界進出とか野望を持っていたわけで……」

「駄目カ?」

「いや、あれだよな?
 戦争だの食糧不足だのでギャルが笑えない世の中じゃ、気軽にパンティも穿けないよな」

どうやら俺の言わんとする所が解ったらしい、超は泣くのを止めて顔をあげる。
難しく考えるのはやめよう。
彼女に協力すれば、魔法世界とかに住んでるギャル達にも俺のパンティを浸透させることができるだろ?
正直まだ自分が英雄になるとか、社会貢献でどうのとかはピンとこないが。
それも追々知っていけばいいのだろう。

「よろしく頼むぜ、超鈴音」

「グスッ、こちらこそよろしくネ、山田サン」

そして超は、初めて純粋な喜びからくる笑みを見せた。
妙に大人ぶった態度を見せる時に浮かべていた微笑よりも、何倍も魅力的な笑みだった。

その後、秘密基地でとりあえず目下に迫った事案として、警察の対処について話し合うのだった。



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