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[7091] ちょっとした彼の話  (人外系 異世界ファンタジー風味)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/31 01:03


 前書いときます。


 まず、何でも読んでやんよという剛の方と、既に本作をお読みの方は読まなくておk。
 ぶっちゃけどんな話か忘れた、前口上だけでも読んでやるか、って方は下をご覧あれ。
 間違えて開いちまったって方は、よければ読んでみて。あ、本編の方ね。無理っぽかったら戻るボタンを連打だ。

 そんな感じで、スルー or 覗いてみる、の選択をして下さいな。
 本編読む上で必須ではないので。スルーも全然おkっす。

 では、そんな感じで以下に前書きをば。












・本作品は人外系ハーレムの嫌いがあります

 そういうのがマジでドン引きの人にはお勧めしない。
 ハーレムとかバカじゃね、って思う人には、ある意味ファンタジーっす、サーセン、って言っときます。

 ぶっちゃけると、色々と人を変えて書きたいってのもあるんですわ。
 一人だけだとね、やっぱ中弛みして数書けないからね……作者の力量、っつーか気分的な問題で。


・本作品は主人公が受けっぽい描写がチラホラしてます

 一人称でエロって、どう書きゃ良いか悩んで。
 結局、さっぱり分からず、手探りで書いてたらこうなりました。
 ただ、受けって言っても、うちの作品は手緩い上にアレなのでね……あくまで「ぽい」だけなんで。
 人外的な感じの責めとかプレイはあるけど、逆レイプとかの路線は期待されても微妙です。

※ 追記
 どんなプレイしてんのか、気分転換にメモ帳に纏めてみたら、意外に主人公上位が多い気もした。
 作者的には、最初の方のイメージが強かったのかも知らんです。あれ、おかしいな……。


・ストーリーどうするべ

 大雑把にぶつかる事件は考えてるんですが。
 とある作の勉強用兼気晴らしに書き始めたもんだから、計画が全然っす。困った困った。
 キャラ登場が済むまでには、纏めたいとこなんだけども……。

 まあ一応、以前出した予告編の内容が完結編の予定です。
 そこまで続くかは自信ないですけど。現代っ子乙。





[7091] ちょっと淫魔と戦ってみた
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 15:35


 淫魔に襲われた話を考えてみた。
 エロ文章の勉強用の試作です。
 世界観はファンタジー的な、モンスターが居る設定でお考え下さい。
















「ねェ、お兄ィさんー?」


 首筋に絡みつく腕。
 耳元で囁かれる声の甘さ。
 背中越しに感じられる乳房の柔らかさ。
 オレはそれらによって、自分の油断を悟った。

 そう、油断だ。
 むせ返るような血の匂いと、耐え難い痒み。
 照り付ける太陽の暑さ。
 極度の緊張から開放された、注意の散漫さ。
 どれをとっても、オレの油断を誘う、恐るべき罠だったのだっ……。(ざわ……ざわ……)

 にしたって、である。
 モンスターが頻出するこの街道で、一戦やらかした後。
 何の警戒もなしにレザーアーマーを脱ぐとか、どうかしてるだろ、オレ☆
 どこのビギナーだよ。

 内心、現実逃避をしながら、オレは言った。

「サキュバス?」
「あったりィー。ねェ、アタシと遊ぼうよォ、お兄ィさァん」
「逃がす気なんてないくせに」

 オレの吐き捨てた言葉に答えてか、サキュバスが首筋を舐める。
 ピリピリするような刺激が残るのは、こいつの唾液の性質だろう。
 身体を敏感にする働きがある唾液を持つ種族がいるのだ。

 心構えが出来る前の攻撃である。
 ゾクリと、背筋に快感が鈍く走った。

 サキュバスは片腕を外して、下に手を下ろしてくる。
 胸を触り、腋に触れて、へその辺りを撫で回し────
 太ももをしつこく何度も擦っている。
 少しずつ、内に移動させながら。

「ねェ、お兄ィさァん」
「……なんだ?」

 サキュバスとの戦闘で捕まった場合。
 先ず、心理戦で勝つのは困難だから、話は聞かないのがセオリー。
 でも、反応しちゃったんだよね。下の話じゃないぜ!

「おっきくなっちゃってるよねェ?」
「…………」

 いや、だってね、旅の途上っすよ?
 溜まってんのよ、当然でしょ?
 モンスターっつっても、美人なんだぜ? 顔見えてないけど、声とかすげぇ淫らな感じで。
 勃たない方がどうかしてんじゃね?

 そんなオレの声が聞こえたわけじゃないだろうけど。
 一瞬だけ股間の方に手をカスらせて、サキュバスはクスクスと笑った。
 腰がピクッとしたからってそんなに笑うなよな!

「お兄ィさァん」
「……なんだ?」
「欲しくないィ?」
「…………」

 欲しいに決まってるじゃないか!
 そう言えたら良いんだけど、ここは我慢我慢。相手の油断を待つのが上策。
 サキュバスに捕まってる時点で、下策もいいとこだけどね。オレのバカン。

 もう一方の手で、サキュバスはオレの胸を擦っている。
 耳元で、ハアハアと息を乱しながら、身体をまさぐり続けるサキュバス。
 ふん、その程度の攻撃がこのオレに────って、うぐぅ! (台詞最後まで言わせて……)

 耳舐められた。
 耳の処女を奪われた。
 すんげぇ屈辱的、とか言いたいけど……これなに?
 なんかね、頭がボーっとしてくるのよ。

 くちゃっ、くちゃ、くちゃ

 ……段々ね、体を預けたくなっちゃうの。

 くちゃ、ぺろ!

 甘噛みされてるの……すげぇの、なんか、こう、腰に響くって、言うか……。

 はむ、くちゃ、ハムッ

 ……ボク、もう良いですか?
 諦めちゃって構わないですか?
 抱いて下さいって頼んじゃって構いませんか?

「お兄ィさァん?」
「な、なに、なに?」
「ンフッ、ねェ、お兄ィさァん?」
「え、ちょ、もういいから、もっと耳舐めて!」
「ねェ」
「な、何!?」

 ベチョリと一度、大きく音を立てて舐められた。
 背筋にゾクゾクってきてるんだけど、背中に当たってる乳が、気持ちよくって、興奮して、ゾクゾクするのが出てかない。

 やば、なにこれ、ちょー気持ち良いんですけど?

 触られてる胸とか、なんか、熱くてさ……心臓とかバクバク言ってんの、聞こえてるしさ……。
 足、足とか、もう、なんだろ、そこがもう気持ちよくて、でももう少しうちっかわとか、でも……。

「ンフ、欲しいィ?」
「……え、えうっ、あ」
「欲しいのォ?」
「…………ほ、ほし」
「どこに、どうして欲しいのォ?」
「あ、ああう、あ」

 声が上手く出なくて、何だろ、よく耳も聞こえてないような……。

「ちゃんと言ったらァ、ちゃんと、ねェ?」

 はっきりと聞こえた。
 叫んでた。

「く、くれるの!? ほんとに!!」
「ンフ、言えたらねェ」

 身体、小刻みに動かされてて、あたってる乳が、すげぇ気持ちよくて……。
 耳、舐め、なめ、なめられて、て、えっと、それで……。
 すげぇ、くんの。でも、ちょっと足りないって言うか……もっと、その、うちっかわの。も、もっと!

「ほらァ、どこに、どうして欲しいの!」
「あ、ああ、あああ」
「言いな! サキュバスに襲われて興奮してる変態が! 言え!」
「あ、ち、ちんちんをしごいてくださいいい!」

 腰が砕けそうになった。
 ぎゅっと握った手が、ズボン越しに触りたててる。
 でも、でも。

 たりない、たりない、たりない、たりないたりないたりないたりない!

「あらァ、残念ン。なにか布があるねェ」
「ぬ、ぬぐ、ぬぐから、お、おねがい」
「ンフ、いい子ね、でも脱ぐんじゃなくて、破るのよォ!」
「は、はい、はい!」

 必死になって力任せにズボンを破いた。
 下着もじゃまだから、必死になって破いた。

「あはははははは! モンスターの言いなりになって、必死で破いてやんのォ! 悔しくないのォ!」
「く、くやしくない、ないです! だ、だから、は、はやく、はやく!」
「じゃあ、言いなさいよォ、ぼくはあなたのドレイですって」
「は、はい、はい!」

 ガリッと。
 耳を強く噛まれる。
 千切れていないが、根元からダクダクと血が出ている。

 でも、ずっとなめられてたから。
 なめてくれてたから。
 気持ち良い。すっごく気持ち良い。
 もっともっとして欲しい……。

「要らないこと言わないでェ? やめちゃうよ?」
「は、あはい! ご、ごめんなさい!」
「ほらァ、言いなさい」
「ぼ、ぼくはっ」
「ぼくはァ?」
「あなたのドレイです! ドレイなんでしごいてください!」
「あははははははは! 堕ちた堕ちた」

 頭が真っ白になった。
 ふわふわしていた気分が全部ぶっ飛んで、身体がもう完全に力が抜けていた。

 片手で握られたそこは、熱くて、どうしようもなく熱くて。
 激しく擦られて。
 情け容赦なく擦られて。
 もう、すぐにでも出そうだった。
 我慢なんて少しも出来そうになかった。

「ほらァ、出しちゃいなさい! ドレイの汚いチンポから、薄汚いザーメン、ダクダク出しちゃいなさい!」
「は、はい! き、汚いザーメン出しちゃいます!」
「ご主人様のおかげよ、ほらァ、言わないと出させてあげないわよォ」
「ご、ご主人様のおかげです! ご主人様のおかげでチンポからザーメン出しちゃいます!」
「ほら、出しな!」

 びゅく、びゅびゅ、びゅくるるン!

 オレの人生で最高記録になるくらい、思いっきり撒き散らした。(嘘だけどね☆)
 白濁した液が、道を思いきり汚していた。

 もっとご主人様にもたれかかっていたかったのに。
 そのままドスッと、地面に転がされて。
 上からジュブっと、圧し掛かられ、入れられちまった。

 でもそこは、新しい天国だった。

「あははははははは、どう、サキュバスの膣(なか)はァ? 最高だろォ?」
「は、はい、ご、ご主人様の中はさ、最高です!」
「ほらほら、腰ィ動かしな!」
「は、はいぃ」

 ジュップジュップと、じゅぷじゅぷと。
 腰を動かせば動かすだけ、身体が熱くなって、頭が飛びそうになった。
 背筋が、うなじが、身体中がゾクゾクして。
 必死になって、相手に手を伸ばして、上体を抱き寄せてくる。

「ドレイの分際で、ご主人様の体をさわる訳ェ?」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! が、がまんんできないの、止めないでやめないで!」
「はん、良いさ、堕ちたてだし、しっかり搾ってやるよ」

 腕の中で乳房が潰れ、柔らかさが胸に伝わって。
 腹同士が擦れ合うのもたまらなく気持ち良い。
 上から押さえつけられてて、動きづらくて、でも最高に気持ち良いのだ。

 膣が、膣にある襞がグニィグニィと物を撫で回して、転がして、引っ張って。
 膣その物が、入るときは柔らかく、ぎゅっと締め付けてきて、出られなくて、締め付けられてたのにまた入ろうとしたら柔らかくなって。

 もう訳が分からず、二度目もすぐに出そうになっていた。

「も、もも、もう出、出ます!」
「あはははははははは、この早漏、早漏がァ! いきな、いっちまいなァ!」
「は、はいぃ」

 意識が朦朧とする中、二度目が出る。

 どぴゅどぴゅうどぴゅるるぴゅゆ!

 暗転する視界の中で、上体を上げたサキュバスが勝ち鬨を上げ────

「あははははっはははははっははは、ははは、は、は?」

 自分の腹に突き刺さったナイフに気が付いた。

 うん、すまない。
 そろそろ素に戻ろうと思う。
 ボクとか言ってたけど、オレ、普通に理性失ってません。余裕です。

「な、なんだい、お前、ど、ドレイの分際で」
「んなもん嘘に決まってるだろ」

 膣からブツを出して立ち上がり、オレはナイフの刺さったわき腹を蹴飛ばした。

「大体な、男っつーもんは一回出したら盛り下がるんだよ。ふぅ、ってな」
「んな、なんだって」
「だから、それまでに魔法できちんライン結んで隷従させねーと意味ねえの。分かる、ビギナーさん?」

 ナイフを引き抜き、オレは見下して言った。
 どこに隠し持ってたかって?
 男には色々と隠し場所があるんだよ。って、ケツじゃねーからな!

 青い血を流し続け、逃げ出そうともがいていた奴も次第に動きが鈍くなり。
 徐々に意識も薄れて言ってるようで、何かをうわごとのように言い続けていて。
 ……まあ、そのまま死ぬの待つのめんどかったんで、普通にナイフで何度か刺しちゃったんだけどね☆





「勝利はいつも虚しい……」

 仁王立ちで、オレは一言呟いた。
 二回抜けたんだし。まあ、足らんけど、上々じゃね?
 本当は隷従化魔法の対策とか練ってあったんだけどねー。刺青とかでしてあんのよ。

「まあ、問題はだな」

 下半身素っ裸のままって事だ。















 勢いとノリで一時間半くらいで書いた次第です。
 理性的になったら消すか、書き直し(せめて誤字修正)はするかも知れんです。

※ 修正したよ、改訂はしないよ(勢いは残しときたいので)



[7091] ちょっと姐さんと会ってきた 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 15:35


 無駄に妄想が膨らんだんで、今日も眠れず更新してみた。
 もっとコンパクトのはずが、なんで五時間も掛けて30kbも書いてるんだ……。
 もうね、頭うだっててね、前半と後半で主人公のキャラすら微妙に違ってるんだ。済まない。

 たまに彼に電波が降りますが、まあ仕様だと許して下さい。

 なお、本作内で、作者はTRPGを馬鹿にする意図は一切ありません。
 本作世界観における、テレビゲーム差別のような物とお考え下さい。
 時代が変わり、場所が変われば、似たような差別が起こるものと作者は考えております。

 あと、前と後はうだうだノリで書いているので、読み飛ばしてくれても全く問題ありません。XXX板的に。
















 おっす、オラ、ふるちん! いっちょ犯ってみっか!



 いや、どうもオレです。オレ、覚えてない? じゃあ覚えて帰れよクソども。
 ビギナーの淫魔と適当に遊んで、ま、ちぃっとノリ過ぎたとこあったけど、難なく撃破したオレだ。
 実戦じゃ、淫魔は初めてだったから、わりと真面目に闘ったんだ、お前らクソどもも覚えてくれてるだろ?

 オレの華麗かつ可憐な演技をな!(頭はうだってません、オレはいたって正気です)

 ズボンどうしたって? はあ?
 んなもん、荷物に換え、入れてたに決まってんだろーが。
 ま、まあ、懐的には痛い目にあったが、闘いっつーのは命に関わるからねえ。やむをえんよ。
 堕ちた振りの途中だったからね……のらん訳にゃいかんし……。

 ま、フルチンで街入るとかは、伝説のおっさんアーサーじゃねえんだからしねーって。
 あん? アーサー知らないの?
 そりゃちょいと物を知らんな。猛省しとけ。

 アーサーっつーんはだな、東のとある国にいたおっさんの名前だよ。名前。
 何がスゲェって、普段から露出の訓練してたんだよ。ガチで。
 剣士だかんな、闘技場で闘ってたんだけどよ、一撃食らったらバシーンっつって、鎧がバラバラになんのよ。そういう細工してたの。
 闘技場の観客を釘付けだな。ドン引きだ。
 更にスゲェのがな、晴れの舞台があってだな、さらわれた姫さんを助けに行く話があんのよ。
 そこで山賊のボスとやりあって、一撃もらってだな、それで倒したんだよ。
 その裸一貫のまま、姫さんのところに行ったっつーんだから、伝説のおっさんは伊達じゃない。

 ちなみに、その時の姫さんの反応はお話にゃ書かれてなくてな。
 絵本もあってな? ガキのころ読んだけどよ、パンツ一丁のおっさんに抱かれる嬉しそうな姫さん。
 オレは絵本を捨てたね。速攻だよ速攻。

 まあ、話がそれちまったけどな、そんな感じだよ、そんな感じ。
 何が悲しゅうて自分のホームに下半身露出して入らにゃならん。ありえねー話ですよ。マジ。

 ……あん? ホームもわかんね?
 ホントに物知らねーんだな、ま、オレが教えてやんよ。


 オレらギルド加入者っつーのは、大概がホーム、地元を持ってる。
 簡単に言や、登録してるギルドのある街のことなんだけどよ。

 んで、オレらって基本は近場での仕事なんよ。ギルドの仕事ね。
 たまに遠出する事もあってだな、先日のオレはちょうどそれだったんだが、それはおいとく。

 TRPGでお遊びやってる連中みたく、世界中を旅しようなんてないのよ。基本ね。
 お遊びは家の中でやってなさいって話。現実は違うのよ。

 いやな、TRPGやってんのでギルド加入してくるやつもいるんだけどよ。
 これがまた使えねーのが多いのなんの。
 仕事にみょーなこだわり持ってたり、技術取得にあれこれ文句付けたり、ギルドの命令に反抗したりよ。
 ま、それはそれで勝手だけどよ、パーティ組まされたりしたら正直ね。勘弁して欲しいわけ。

 こちとら、っつーかギルドのメンツは飯食ってるのよ、これで。
 ああいった手合いのせいで被害出たり、面倒なことになったりしたらね。もうね。
 正直、二三発くらい蹴り入れても普通でしょ?

 使えりゃオレも文句ねーけどさ。
 剣しか使えねえ戦士とか、正直なに考えてんだろうね? 死にたいの?
 まあ、クソみたいな設定を普及させた連中が悪いのかも知らんけどな。

 ま、愚痴っちまったけど、ギルドの仕事っつーのは基本が近場で、わりとがっちりしてるの。
 TRPGみたく、自分で仕事を選んで冒険、っつーわけにゃいかない。
 つか、自分で仕事選べるとかねーよな。常識的に。


 まあ、その地元に帰るのにフルチンはない。ありえない。
 知り合いの過半がいるんだ。
 見られたら、雷ぐらいの速さで全員に伝わるだろうしな。
 そしてオレは、アーサー二世として鎧をせこせこ作るんだ。死ねるな。


 ま、そんなこんなで、帰ってきたんよ。ホームに。
 予定外に淫魔狩ったから、ギルドに報告に向かってる途中です。

 しかしね、淫魔の分の報酬は出るけどさ……。
 正直、痛かったのよね。懐が。あのズボンがさ……。

 対魔法仕様もしてあったし、防刃仕様もあったしさ。
 遠出用のズボンって、高いのよ……。何があるか分からんし。
 報酬でとんとん、だと良いなあ。でも、ビギナーだったしな。
 アホなことして、手配されてたら良いんだけどな……。

 その意味じゃ、レザーアーマー脱いでたのよかったよマジで。
 あれで、レザーアーマーまで損壊してたら、オレは血反吐を吐くね。

 泣くとかそんな領域じゃない。
 一ヶ月は馬車馬みたく働いて、白湯で暮らさにゃならんよ。
 だってさ、レザーアーマーってさ、ギルドの貸し出し品なんだぜ……。


 そんな、幸運だか不運だか分からないことを考えていたら。
 ギルドの店頭目前で声を掛けられた。

「帰ってたのか、お前」
「おうよ。今日もにこにこ現金払いを貰いにきた」





 今のオレはほくほく顔だ。
 理由は二つほど。耳かっぽじってよっく聞いとけ。

 一つは、淫魔の報酬が破格だったこと。
 どうもね、マジであいつ、馬鹿だったらしいよ。
 東のサキュバス族のとある国で悪さしてね、逃げてたらしいのよ。
 マジ馬鹿じゃね。それもギルドに手配回るレベルってどんだけだよ。
 ま、オレ的にはオールオッケーだけどさ。馬鹿でありがとう。

 んで、もう一つなんだけどもよ────

「どうした、にやにやして」
「帰りに淫魔やったんだけど、意外に報酬入ってな」
「ふーん。上位クラス?」
「いや。ビギナーもいいとこだったよ」

 目の前でエール飲んでる女傑のおかげさ。

 女傑っつっても、綺麗なもんでね。
 金糸の髪とか、黒瑪瑙の目とか、桜貝の唇とか。
 挙句の果てには女神の生まれ変わりのような顔立ちとか。
 ギルドの何とか言うのがそうベタ誉めしてたけどな、それが分かるくらいこいつは美人だ。
 つっても、こいつらの種族は、まあ大概がこう、美人なんだけどさ。

 ラングダの一族。
 その一族の一人が、いままん前にいる女傑だよ。
 その女傑は、ぐいっと飲み切ったエールのジョッキを置いて、言葉を返した。

「なら、どんな手配が付いてた?」
「東の、なんつったか、淫魔の部族の国で悪さしたらしくてな」
「お前なあ。もう少し真面目に仕事をせんか」
「必要なもん以外は捨てる。これ、大人の常識っしょ」
「お前は両極端すぎるんだ」

 溜め息を付く彼女もまた、中々様になってるってもんだ。

 酒場っつーのもあるけど、口笛が飛んだり、いやらしい目がジロジロ彼女を見てたり。
 実に下品な店ですよ。いや、そんな店って知ってて来てんだけど。

 表面だけみりゃ、彼女は確実に上玉でしかも線の細いタイプ。
 裏街まわりゃ、引く手あまたに人さらいの大人気。消えるのに、数える時間はいらんわな。
 ま、正体知ってりゃ、そんな馬鹿なことするやつはいねぇだろうけどな。

 姐さんも好い加減慣れてるから、全くの無視だ。ガン無視。

「それよか、そっちの仕事はどうよ」
「大した事はない。つまらんもんだ」
「お前、この前、ショージョー狩りに行ったんだろ……それで大した事無いとか、なに、自慢? 自慢なの?」
「いや、あれは多数で押して狩ったからな」
「ランクA、初級デジャボンで詰まらないってどんだけだよ」

 オレは正直、呆れた。
 久々のやりとりだけど、こいつのこういうとこは呆れる。

 デジャボンってのは、ある一定以上の能力を持つモンスターの総称なんだけどな。
 それのランクA=初級ってのは、最低でも二流の戦士が五十人規模で闘うのが望ましい、って感じ。
 できればそこに、支援系の後衛士二十人は欲しい。

 害がなけりゃほっときたいよね。オレら的には。

 でも、こいつは違う。
 呆れるけど、ランクA以上のやつと差しでやりたいらしいのよ。
 んなもん、リスク高すぎて、ギルドが許すわけがない。貴重な人材なんだからねー。
 やっぱ、三百年とか生きてる連中の思考は分からんよね。

 ま、身体が美味しけりゃ、何でも良いんだけどさ。オレは。ぐふふ。

「……お前がいま考えてたこと、当ててやろうか?」
「当てるなら乳にしてくれ」
「言うまでも無かったか、この恥知らずが」
「安酒立ち飲みしながら上品とか、さすがラングダの姐さんは言うことが違う!」
「うるさい」

 頭を殴られた。
 つっても、本気じゃない。本気なわけない。
 本気だったら、オレの頭は見事、叩き付けられたデロル芋みたいに弾け飛ぶね。
 生身の人間が、モンスターと張り合えるわけない。

「つってもね、今日は夜、期待していいんでしょ?」
「……お前な、淫魔と一昨日、やってきたんだろ。少しは自重しろ」
「でもねー。結構自分で盛り上げたんだけどねー。ビギナーだったからね……」
「そんなに変わるもんなのか? やれば同じだろうに」
「ちがうよ。ぜんぜんちがうよ」

 オレは首をぶんぶんと振った。

「まずね、入りからしてダメ。オレがサキュバスかって訊いて、頷くのってどうよ」
「まずいのか?」
「あー、姐さんは淫魔種概論とか、対処系の授業とってなかったっけ?」
「ああ。必要なかったからな」
「ま、姐さんだったら力押しで上級もやれそうだしね。じゃ、ちょっと説明するけどさ」

 相手の行動を交えながら、説明することにした。

「まずね、モンスター的に種族がばれるとかね。人間舐めすぎでしょ」
「それは分かるが、種族ごとに特性は違うだろう。致命的とは言えまい」
「いやね、どの種族にしてもさ、淫魔って結局は男の精を媒介して生体エネルギー搾るのよ」
「それは分かる」
「んでね、その方法って、ま、単に出させりゃ良いってもんじゃないわけだよね。相手の精神的な穴からルートを作って、搾るのよ」
「ふむ、そうなのか?」
「そうなの。つまり、相手を隷従させるなり納得させるなりして、ルートを繋ぐ。
 淫魔、っつーかサキュバスって分かった時点でオレらは、その対処法を幾つか思いつくわけだ」
「なるほど」
「それに、何の種族かわかんなけりゃ、オレらだって手に迷うし、思考も制限される。
 十中八九、淫魔だと思っても、もしかしたらって思ったら、それだけで結構な負担なのよ。
 それを素直に頷くとか。馬鹿じゃない? 死んで当然でしょ」
「まあ、確かにな」

 その時点で、オレはビギナーと見当を付けた。
 オレには判別法が他にもあるから、淫魔であることは元から確信してたんだが。
 自分から頷くとか、本気で馬鹿。

「ま、セックスなんて技術的にはさ、人間が敵うわきゃないのよ。それはこっちも最初から分かってんの」
「ふむ」
「だから、多少快感に流されても大丈夫なよう、準備くらいしてる。当然でしょ」
「確かにな」
「すると、連中が狙わなきゃいけないのは、徹底的な嬲りによるこちらの自主的な隷属だわな」
「で、お前はそれに乗らなかったと」
「いや、乗った振りしてちょっと楽しんだ」
「……お前な」

 だってさ、金も払ってないのに淫魔とやれるんだよ?
 ちぃっと脳が足りてなくても淫魔は淫魔。中とかスゲェし。手とかだってちょー気持ち良かったよ。
 自分でも知らなかったけど、耳とかオレの弱点も把握してたしさ。あれ、本能だったんだろうね。

「だから、わりと頭も真っ白にして楽しんだのよ」
「それで大丈夫なのか?」
「いや、男ってさ、盛っててもわりと冷静なとこあんのよ、基本。そんな感じで、手数を見てたんだけど」

 ここでオレは私怨を込めて、怪気炎を上げた。

「あいつ、ありえねーの。出す直前に耳噛んだのよ、耳」
「ああ、そういえば、傷が残ってるな」
「唾液の性質あって、舐められてから快感もあるんだけどさ、結局は痛みな訳よ。あれで最後に冷めたね」

 思考的には、最初から最後まで、ノリノリだったけどね。
 いや、乗ってないと、即座にぶっ殺しそうだったしさ……。
 殺した後、おっ勃てたオレが一人、サキュバスの子羽(個体把握が出来るのよ。処理証明ね)切ってるとか、寒すぎる。

「しかもさ、ズボン破れ、とか言ってんのよ?
 あいつ、市場価格とか分かってなかったのか知らんけど、マジありえね」
「それでそのズボンだったのか」
「そうなんだよ! そりゃさあ、流れ作れなかったオレも悪かったけどさ」

 履いてるのは外出用じゃなくて、移動先で使う予定だったサラのズボン。安物だけど、新品なんだぜ。
 ノリノリで二発やったけどね、出してテンション下がったら出費に耐えられなくなって、つい刺しちゃった☆
 本当は、もう五、六発ばかりやらないと、元が取れた気がしねえんだけど。

「だから、ま、半端なとこでイラッてきて殺しちゃったの」
「だから、まだ溜まってる、か?」
「さすが姐さん、話が分かる!」

 オレが大喜びでお代わりのエールを注文する。
 今日はオレのおごりだぜ!

「ま、代金はいつもと変わらんぞ」
「さすが姐さん、容赦ねぇ……」

 オレのテンションは、塩のかかったチシャみてえに速攻でしぼんだ。















 何となくメモメモ。

アーサー:黒田的な方、ではない
ホーム:出張時における地元の呼称
TRPG:最近流行りだした娯楽
部防具:基本はギルド持ちで、平時は弁償責任あり
ギルド:人間種族における国際組織、一部人外国家も加盟
デジャボン:悪魔、ちょー強い、降臨系もいる
ランク:A、B、Cと強くなる
ショージョー:猩々の事
戦士:汎用型であり、ポジションは可動的
後衛士:後方支援特化型、戦闘が出来ないとか馬鹿な事は言わない
デロル芋:結構美味しいらしい、叩きつけるなんてとんでもない!
ルート:ラインと言ったりもする
塩をかけたチシャ:青菜に塩


※ 改めて読むと、主人公ウザイね。特にありえねーが癇に障ったのでかなり消した



[7091] ちょっと姐さんと会ってきた 中 (エロ部分)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 16:45


 連れ込み宿。
 安い酒場の近くにゃ、幾らでもこの手の店がある。
 酔わせてその後はグヘヘヘヘ、とまあ人の考えってもんは実に分かりやすい。


「ん……はぁ、あ……ん、む」

 キスしてるときの姐さんは、正直、こっちがテンパるくらいに可愛い。
 美人系の癖に、こんな媚びるような目で見るとか反則だよ。
 鼻息とか、遠慮がちに荒げる感じが、もうね、頭がうだるのよ、マジで。
 そんなこと考えながら、舌で、姐さんの唇をつつく。

「んんっ! ん、むぅ……むぁ」

 舌を入れようとすると、いつも驚いて。
 仕方ないな、って少し笑って、迎え入れてくれる。
 それがたまらなく良い。
 ラングダ族の特性か、舌がぬるっとしてる。口内が熱い。
 入れた舌が、いつも溶けちまう気がする。

 ベチョ……ベチョロ、ベチョリ……ベチャ、ジュルルル……

 唇同士とは思えないくらい、卑猥な音がする。
 それを恥ずかしそうにしていて、でも少しずつ理性を失っていく姐さん。

「んむ、む、んんん、むちゅ、んむ……」

 最初はおっかなびっくりな感じの舌の動きも。
 どんどんどんどん、こっちの舌に合わせて、絡めて、奥に招き寄せて、捕食するみたいにまた絡めて来て。
 こっちに舌を招くと、今までの遠慮が信じられないくらい獰猛に、口内をしつこく舐めてくる。
 姉さんにマーキングされてるみたいで、オレはこれがすげぇ好きだ。
 オレは姐さんの物。姐さんはオレの物。 
 そう言い合ってるみたいな時間。
 頭が沸騰してる。キスだけの事を考えてる。

 グチョ、グチョリっ! ……グチュ、グチュっ、グチュ、ベチャ……

 何度も何度も出し入れされて。
 オレの口の中は、姐さんに犯されてる。
 どうしてこうするか前に訊いたら、お前だけ突き刺すのが不公平だ、とか何とか言ってたけど。
 違う。姐さんの目を見たら分かる。
 そんな理性的な判断なんかじゃない。
 姐さんは、オレを犯したがってる。興奮しすぎて犯すことしか考えてない。

 グチョ……グチュ…グチョリ…グチョ、グチョ、グチョっグチョっグチョグチョグチョ

 少しずつ早くなる舌の動き。
 姐さんの唾液がオレの口の中を犯してる。
 姐さんの目は、欲情しきって涙すら浮かべてる。
 もう姉さんはオレの口の中に出すことしか考えてない。
 時にオレの舌を、上あごを、下あごを、舌の根の方を。
 縦横無尽にえぐり、舐め、突き刺して、動きを早めていく。

 鼻息が荒い。最初の遠慮なんてどこにもない。

 オレだって、どうしようもなく興奮してる。
 姐さんが、こんなに欲しがってくれるのはオレだけだ!
 オレだけが、姐さんを興奮させられて、姐さんとこうしていられる!
 姐さんが欲しい。姐さんに奪って欲しい。
 姐さんに口に出して欲しい。姐さんに出したい。

 頭がぐらぐらするような興奮が続いて。
 思い切り奥まで下が差し込まれる。
 思わずえづくような奥までで、オレが苦しそうに呻く。

 それを見ながら、姐さんは嬉しそうに舌先から腺液を放った。

 ビュビュ、ドピュブ、ビュルビュルビュルっ!

 それをオレはいつものように嚥下する。
 嬉しそうに目を細めている姐さんを見ながら。
 お互いの興奮しきった鼻息だけが耳に聞こえていた。


 最初、口から飲まされた時は何だこりゃ!と思った。
 次に、消化液か何かだったらどうしよう、と不安に思った。

 この腺液は、先祖の名残だそうで、弱い催淫の効果がある。
 射精と同じで、興奮していると出すことが出来るらしい。
 本来は、盛り上がってきたときに飲ませたり、口淫でブツに塗り付けて敏感にしたりするようだ。

 姐さんはこれで、擬似射精をするのが好きだ。
 今では毎回、こうして口同士のセックスをして、オレを犯してる。

 オレも、犯される興奮はさて置いても、これが好きだ。
 と言うのも、これをした後の姐さんは、ちょっと有り得ないくらい可愛い。

 興奮冷めやらず、荒れた息遣い。
 紅潮しきった頬。
 薄っすらどころではない額の汗。

 犯したことの興奮と、無理を押し付けてしまった罪悪感。
 もっとやりたいという欲求と、その欲求に身を預ける事への気の引け目。

 そんなもんを、腺液と唾液でまみれた顔で浮かべながら、ボーっとこっちを見てんだぜ。
 これは、ちょっと他の人には見せられねえ。オレだけの宝物だ。

 いつもはこれで、姐さんの射精は終わりなんだけど。
 オレは柔らかく抱き締めて(いままでは手を添えてただけなんだ)、耳に囁いた。

「今日は、耳も犯してくれませんか」
「はぁ、はぁ、……えっ」
「オレの耳を、姐さんの舌でぐっちょぐっちょにするんです」
「はぁ、ん、はぁ、はぁ、はぁ」
「バカな淫魔に噛まれたとこ、上からぐちゃぐちゃに舐め回すんです」
「あ、ああ、はぁ、はぁ、あ、ん」
「オレはそれで、情けなく鳴いて、姐さんは耳にベチャベチャになるまで出すんですよ」
「んはっ、はっ、はぁ、っは」
「どうです?」

 おれは抱き締めた手を緩めて、言った。

「やってみませんか?」

 返事は、驚くほど強い抱擁と、片耳を塞ぐ閉塞感だった。



 いやね、あの淫魔にやられたときに分かってたけどさ。
 やっぱ、やばいのよ、やばいやばい。これ気持ち良いとか言ってられない。

「んん、ぬむ、ヌミュ、ンム、ムム」
「あ、良い、姐さん良い!」

 べちゃ、ぐちゃ、ベチャ、グチャル、ジュム……

 片耳が塞がれて、しつこいぐらいに穴を攻められる。
 かと思ったら、怪我してるとこを優しく舐めてくれて。
 耳たぶの上の角を、いじるようにしつこく舐め回して。
 また気付けば、犯されてる。穴をこじ開けるみたいにしつこく突き刺される。

 やがてそれは、先程のように一つの動きへ。

 ジュプジュプジュプ、ジュプジュプっジュプっ!

 小さな穴を、まるで犯すように。いや正に犯して。
 しつこく穴へと舌先を突き刺し。突き刺し。突き刺し。また刺して。

 頭がおかしい。片耳の音が、なんだ、もう分からない。
 もうどうでもいい。

「あ、はぁ、は、良い、は、あ、姐さっ」
「ンムンムムムブチュヌムヌム、グチュジュチュ、ンムンムジュチュ」

 犯されてる。しつこいぐらい犯されてる。
 もうずっとこのままで良い。
 もっと犯して欲しい。姐さんにもっと。もっともっと。

 ふと頭を過ぎった。
 腺液の勢いはそれなりに強い。
 そのまま耳に出されたら、鼓膜にまで届いたら。

 ちょ、まず、それはまずいだろ!

「は、は、あ、姐さん!」
「ん、ん、ムム、ん、ん、む……」
「み、耳に、み、耳には、ちょ直接は」
「ん、ん、ん、ん……」
「あ、穴にださない、でん、く、ください!」

 何故か勢いが増した。

「ンン、ん、ンン、ンンっ、ん!」
「い、あ、いや、あ、姐、姐さ!」
「ンンン、ン、んン、ンンっ!」
「中、中は、あ、ま、まずいから、まずいって!」
「ん、んん、ん、んんん、んん! んん!」
「や、だ、だめ、あ、あ、あああああああああああ」
「んんっっ!!」

 グビュルル、ビュルる、ビュルルウル!


 ……………………。


「ひ、ひどい、姐さん、ひどいって」
「う、その、す、すまん」

 い、言ったのはオレだけどさあ。
 本当に中に出すとか、もうね。鼓膜破れなかったのは良かった。
 すげぇ興奮したけど、ダメだって、これ。

「提案したのって、お、オレだからさ、文句言うの筋違うけどさ」
「い、いや。私が悪かった。耳に腺液はまずかったな……」
「うう、まだちょっと違和感ある……」
「す、すまん」

 うう、強姦されて無理やり出されるのって、こんな気分なんだろうなあ。
 いや、人間なんかがやってると大概痛いから、これの比じゃないよな……。
 オレの二十五年ほどの人生で、初めて思い知りました。
 強姦してるやつ見つけたら、今度から容赦なくもぐ。もいでから殺す。

 ……まあ、でもね。
 興奮したのも、実際だしさ。
 気持ちよかったんだよね。本当に。

 だから姐さん、そんな潤んだ目で見なくて大丈夫ですよ?

「その、姐さん」
「う、うむ」
「また今度から、これして良いよ」
「い、いいのか!?」

 あまりの食いつきっぷりにオレは引いた。
 あ、いや、姐さんが顔突き出してきたから、後ろに引いただけね。頭突き痛いし。
 興奮してる姐さんに、軽くキスしてから告げる。

「直で出さなきゃ大丈夫だから」
「う、うん。もうしない、約束する!」
「オレも気持ちよかったからさ。それに────」

 再び柔らかく抱き寄せて、耳元で囁く。

「外で出すのって興奮しない?」
「あ、ああ」
「グチョグチョにするんだよ? オレの耳を」
「ああ、ああ」
「髪も、こめかみも、首もぜぇんぶ、グチャグチャに、ね」
「ああ……ああ……」
「姐さんの出した液で、グチャグチャに、ドロドロにするんだよ?」
「ああ……ああ……っ!」
「だから、また今度、しようね?」

 首が壊れるんじゃないかと言うくらい、姐さんはぶんぶん振ってましたよ、とね。



 さて、ここまでは立ち作業でして。
 何のための安宿だよ、って感じだよね。サーセン。

 そんなわけ、でもないけど、オレと姐さんはベッドに座った。

 攻めでもまあそんなやたら強く出ないんだけどさ。
 受けになると、やたらと弱いんだよね、姐さん。

「姐さん、服、脱がすからね」
「あ、ああ」

 外套を脱いだ格好で、先ずは上着のボタンを外す。(ボタンは技術的に云々はノーセンキューです。ファンタジー舐めんな)
 ボタンを外しながら、キスを欠かさない。
 姐さんを興奮から冷めさせないために。とにかくキスで攻める。

「ん、んん、ん」

 姐さんの鼻声を聞きながら、上着を脱がす。
 姐さんも興奮しながら、こっちのズボンの縛った紐を解いている。

 ここで舌を絡めるとまた姐さんのターン!なので、手早く上着を脱がし、唇を外した。
 チュポン、と音を立てるくらいに、吸い付き合ってたらしい。
 意識してなかったが、やっぱりオレも余裕ないくらい、興奮してるらしい。

 姉さんの肌着を引き抜くように脱がす。
 首、顎、下唇、上唇と少しずつ見えてくるこの感じがオレは好きだ。
 目が出てくると、興奮で爛れた視線がオレに向く。
 口が、もっとキスをと求め、喘いでいる。
 そこには理性なんて欠片もない。
 やっぱ姐さんは可愛すぎる。反則だ。

 オレは下着を外そうと苦闘しながらも、唇に吸い付くのを止められなかった。

 珍しく、姐さんから口を外したかと思うと、オレのシャツを少し強引に引き抜いた。
 一瞬暗くなった視界。
 その先にあったのは、オレの唇に釘付けの姐さん。

 オレは姐さんを抱き締めて、押し倒した。
 キスを降らせるみたいにしつこく続ける。

 舌を絡ませ始めた姐さんに、オレは乳房に手を伸ばして反攻した。

 姐さんとしつこいくらいキスをしていると、姐さんの性感は尋常じゃなく高まる。
 少し胸に触れたぐらいで身体を大きく揺らして、ゆっくり揉み始めると暴れ狂いそうになる。
 でもそうなると、キスが出来ない。
 だから姐さんは、必死になってオレに抱き付いて、キスを続ける。
 これのまた可愛いこと可愛いこと。理性が揺らぐよね。

 左右の手の動きに少し違いを付ける。
 強弱にも少し違いを付ける。
 交互に強弱、と見せかけて右だけ唐突に強くし続けたり。

 こんな簡単な手の動きにも、姐さんはあっさり翻弄される。
 力の強さに反応して、右に左に体をよじろうとして。
 でも、キスは続けたいから必死に手は離さない。

 オレもだんだんと頭がボーっとしてくる。
 さっきみたいな激しさはなくて、少しずつ頭が熱を持っていく感じ。
 オレの体の下で暴れ狂う姐さんも、少しずつ限界が近づいてる。

 やがて、姐さんはオレの口内に腺液を出す。

 それをオレは、自分の唾液と一緒に姐さんの口内へと送る。
 こうすると、少し淋しそうな顔をして、姐さんは飲み込むんだ。
 出したものを飲んでもらえないのは、我侭だけど確かに寂しくはあるもんねえ。

 飲み込むよりも早く、オレは囁きかけた。

「姐さん、姐さんの出した液でオレの物をグチュグチュにしてくれる?」
「ふ、ふぁい」

 口に溜めたまま、姐さんは嬉しそうに返事をした。



 本来、腺液は飲ませるか、下のブツに染み込ませるものだ。
 姐さんもその気質があって、口淫には抵抗がない。どころか、大好物のようだ。

 体勢を変えて、オレがベッドのヘッドに背中を預け、足の間に姐さんが入り込む。
 律儀に腺液を口に含んだまま、姐さんはニコリとこちらに笑いかけ、一気に物をくわえ込む。
 零したりして、腺液を無駄にする気なんて少しもない、と言わんばかりである。

 上目遣いでこちらの反応をつぶさに見ているのも、種族的特性かもしれない。
 淫魔系の伝統やら性質やらも受け継いでるからね、姐さん。
 だが、何にせよ、それはいまどうしようもなくオレを興奮させる材料に過ぎない。

 グジュ……ブジュ……ジュブ、ブチュ、グジュ……ブジュ……!

 唾液を口に多く含んだ、なんて物とは比較にならない。
 そんな卑猥な音に、再び頭がうだり始める。
 唇で強く締め付けられ、舌でヌラヌラと腺液を塗りたくられている。
 激しい前後の動きにも拘らず、舌を絡みつかせているのだ。

 腰が浮かない。完全に砕けている。
 尾骨の辺りに鈍い快感が走り続けて、動かないのだ。
 ブツはもうとっくに、限界にまで届いている。

「あ、姐さん」
「ん、んん、ん」
「も、もう、でるから……」

 姐さんは、オレの手を取る。
 そして、手を自分の頭まで運んで、押さえつけさせる。

 これはオレが言い出したことじゃない。
 姐さんが自分から、頭を押さえつけて突き込んでくれ、と言い出したのだ。
 これを聞いたときは、オレもおったまげたね。
 どこの世に、自分から強制口淫を望む女がいるもんかと。

 でも、ま、気持ちよければ何でも良いのだよ。うん。

 顔を抱え込むように、体を丸める。
 姐さんの頭は、オレが手で動かして、無理やり上下させ始める。
 姐さんもその動きに反発しない。
 亀頭での引っ掛かりが強く感じられるほど吸い付き。
 突き入れたときには、舌が丸々カリに、尿道に、絡みつき。
 オレの目の前がちかちかと、何も見えなくなり始め。

「で、出る!」

 ドビュウウルルル、ビュビュビュ、ビュル、ビュルル、ビュル……!

 思い切り喉奥まで突き入れて、そのまま躊躇わず出す。
 今日初めての射精に、目が眩んだ。
 腰ごと持って行かれそうになる。
 それくらい気持ち良い。それくらい放出の快感がある。

 そのまま緩やかに頭を上下させ。
 姐さんにお掃除は任せて、オレは射精後の気だるい気分に浸った。
 嬉しそうに舐め回してる姐さんを見ながら。



 さて、本番である。
 ここで姐さんの弱さが存分に発揮される。

 正上位で入れたときには、既に姐さんは出来上がっちゃってる。
 温かい膣、締め付ける膣道に、一気に持っていかれないよう気をつけながら。
 動かし始めたオレに、姐さんが力弱く悲鳴を上げ、囁くように言う。

「あ、い、入れたばっか、だけど」
「うん、どうしたの?」
「そ、んっ、その、あ、あ、い、いっちゃ、いっちゃったか、から」
「うん」
「そ、その、っちょ、ちょっ、と、とま、と、とまって」
「でもね、姐さん」

 ゆっくりとした抽送。身体にリズムを刻み込んでいく。
 そんな中で、オレは姐さんに言った。

「止まらないんだ」
「そ、そんな、そんなの、いつも、う」
「愛してるから」

 言葉攻めである。ある種の。
 この言葉は実によく効いて、姐さんは言葉に詰まる。

「姐さん、愛してる」
「あ、ああ、あ、あ、ん」
「姐さんが好きでたまらないから、止まらない」
「あ、は、はは、ん、あ、はぁ!」
「ね、いいでしょ? もっと一緒に気持ちよくなろ?」
「あ、ああ、は、はい! もっと、もっともっとぉ!」

 姐さんも動きを合わせて、少しずつ早まっていく。
 まだガツガツとはいかない。
 でも、姐さんの中は、元から暖かくて、たまらないのだから。
 いきなり動きを早めれば、自爆するだけ。

 だから言葉で彼女をその気にさせる。

「気持ち良いだろ?」
「うん、うん、はっ……は、あ、はいっ」
「気持ち良いって口に出して」
「あ、はい、き、きもちい、きもちいい、あ、き、きもち……」
「ほら、何度も良いって言って」
「……っ、い、いい、いいの、う、あっ、つぁ、いい、いい、いいいいっ」

 姐さんを押さえつけるように覆い被さる。
 姐さんも力いっぱいに抱き締めて、腰の動きを細かくしている。
 後はもう、何も考えず、ただ腰を動かすだけ。

「あああ、姐さん、姐さん!」
「ああああ、愛してるから、愛してるの、あ、愛して、あっ!」
「ああ、オレも愛してる!」
「あ、はぁっ、あ、いい、いくの、いっちゃうの、あ、あたま、あたまが、あ!」
「オレもいくから、姐さん、姐さん!」
「あ、あああ、ああああ、愛して、あ、あああっんんんん!!」

 姐さんの唇が見えた瞬間、必死にキスをして、かぶりついて。
 沸騰した頭で、本能に従って、入りきる奥まで突き入れた。

 ドビュ、ビュルウルウウる、ビュル、ビュルル!!

 姐さんの痛いぐらいの締め付けに、腰の滲むような痺れる感覚に。
 視界が真っ暗になるくらいの快感を感じながら、オレは姐さんの上に倒れこんだ。















 ちらっと読み返して、前半と後半の分量差に絶望した。
 何でせうか、作者は普通のプレイが好きですのに。何でこんなにカスカス。
 なんか、取り憑かれたんじゃね、って気がするくらい、前半に力入ってる。なんでだ。

※ ちょっと直してみたけど、大して変わらんね



[7091] ちょっと姐さんに会ってきた 後
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 16:46


 姐さんには、実のところ、淫魔としての血が混ざっている。

 ラングダの一族の歴史にも関わるから、その経緯は述べるのは控えるけど。
 あれやこれやして、姐さんは淫魔自体ではないけど、その性質を幾らか受け継いでいるのだ。

 ま、何にせよ、生体エネルギーを二度の射精でごっそり奪われて、オレは素で倒れこんでいたのですよ。

 あれ、二発?と思っただろうから、説明してみたぜ。
 姐さんとやると、口淫一発、本番一発以上はちときつい。
 搾られてるからね。ただ犯るのとは違うのよ。
 口淫飛ばせりゃ良いけど、姐さん好きだからなあ。外せないんだよなあ。
 出さないで終わらせると、すごい切なそうな顔で見てくるしさ。

 ちなみに、姐さんに前半、えらく嬲られたままなのは、オレの気性とかよりも、それが理由。
 最初から飛ばしてるとオレが持たない。試合のタイムが凄いことになる。
 まあ、オレも楽しんでるし。姐さんも楽しめるよう、色々と調整してるわけだよ。

 ところで、オレ、姐さんとセックスの相性がすごい良いらしい。
 最初なんて、入れただけで出しちまったしさ。姐さんもそれでルートから生体エネルギーもろに浴びて失神。
 いやあ、人には話せん体験だな。内緒でお願い。

 姐さんはオレから生体エネルギーを取るのに、それで慣れちゃって。
 他の相手から、ルートを繋いで奪うってのがひどく下手くそになってるとか。
 元から下手、と言うかそっちを敬遠してたところがあるし。
 何にせよ、オレ以外の相手とルートが結べなくなったって言ってた。
 何度か他の野郎とやってみたらしいけど、まあ快感的には置いといても、捕食が出来ないそうな。

 セックス的にもね、姐さん、結構細かいからね……。
 舌で攻めるのは必須だし、言葉で色々言って欲しいタイプだし。
 元のスパッとした性格とのギャップで、結構相手にその辺、嫌がられるらしい。

 それに、経験値少ない相手だと、口でも下でも瞬殺だろうしなあ……。

 ま、その上いきなり舌から腺液飛ばされたら、人間臭い姐さんの姿からビビるでしょ。
 明らかに、腺液で溶かすタイプのモンスターっぽいし。人間に擬態してるタイプね。

 そんなこんなで、その何人かも結局、別れたって話。

 もったいないことするよなあ。
 これだけ良い女なのに。
 ま、オレとしては嬉しいけどね。独占できて。



 余韻に浸りながら、姐さんが歯切れ悪く言って来た。

「そ、その、だな」
「どうかしたか?」
「その、さいごの、だな」
「ああ、愛してるとか、その辺?」

 顔を赤く染める姐さんはマジで家に持って帰りたい。

「あれ、マジマジ。毎度言ってるけど、姐さんとなら契約するよ?」
「いや、その契約はだな、良いんだが……」

 契約ってのは、淫魔が人間と結ぶ、法的に担保された契約のこと。
 淫魔系の国家と人間の国家が結んだ条約に書かれてあるんだけどね。
 元は、人と淫魔との黙約から来てるんだけど、大概が隷従化の言い訳に使われる。

 本義を正せば、双方に利益ある関係を結ぶことを、契約として公的に認めるって事なんだけども。

 オレとしては、別に法的に姐さんの所有物扱いだろうと奴隷扱いだろうと気にしないのだよ。
 姐さんは、このホームで間違いなく十指に入る良い女である。
 顔が良い、スタイルが良いなんて、そんなのは他にも幾らでもいるが。
 これだけ相性の良い相手も、いないし。姐さん好きだしね。

 しかし、どうも姐さんの言いたい事は違ったらしい。

「その、だな、あ、あの」
「あー、何でも引いたりしないで聞くから、どぞー」
「そ、そのだな、け、け、けっこ……」
「うん?」
「結婚を前提に付き合ってくれ!」

 オレはずっこけた。

「いや、姐さん、今の状況ってもう付き合ってるんじゃね?」
「そ、そうか、そうだったのか?」
「月に何回会ってると思ってんだよ……出張明けに一番に会ってんだよ?」
「いやしかしだな、こういうのは、しっかりと互いに気持ちを確認しあってだな」

 オレは溜め息を吐いた。

「あのね、姐さん」
「う、うむ、なんだ?」
「好き合ってもいない相手と寝れるほど、姐さんは軽くないでしょ?」
「あ……」

 呆けた表情がキュート。
 頬が赤らんでいくのもまた風情があってよろしい。

 まあ、こんなこと言ってるけど。
 オレは数日前に、愛もなくサキュバス抱いてたけどね☆

 あ、いやいやいや、姐さんが好きなのは事実よ。
 これで結構、付き合い長いし。
 戦士仲間として、これ以上ないくらい信頼してるし。

 姐さんの頭を撫でながら、オレは言葉を続けた。

「姐さんがしたいなら、結婚もしようよ」
「ほ、ホントか、嘘じゃないのか!」
「あのね、オレはアレな性格で浮気性かも知らんけど、こんな嘘吐かないって」
「う、浮気するのか、そのつもりなのか! も、もうしてるのか!」
「つかね、姐さん、先日オレは例のサキュバスと寝てたんですけど」
「…………?」

 この辺り、やっぱり淫魔の系統だよね、って思うわけだよ。
 身体の関係が全てじゃないんだからねえ。
 身体の関係があって、ライン結んで、契約結んで、その先に恋愛とか結婚とかがある。
 彼女らって、心の結びつきって点では存外、人間よりピュアなのだよ。知っとくとお得だぜぇ?

 姐さんは、その辺り、中途半端に人間に染まって、中途半端に元の感性を残してるから。
 まあ、さっきはああ言ったけど、必要がありゃオレの知らないところで誰かと寝れるのよ、多分ね。
 それが嫌なら、契約で縛るか、そもそも淫魔と関わらんべきだろうから、オレは気にしないけどね。

 でもね、その小首を傾げた姿に、オレは心臓丸つかみされてる訳でね。
 これだけで昼飯が十人前は固いね。十五人前もいけちゃう。

「あー、人間的に言うとね、浮気って肉体関係メインなの」
「そうなのか? そんなもの、無理やりでも出来るだろうに」
「レイプダメ、絶対。耳とかに出しちゃダメ!」
「あ、ああ、あれは済まなかった……」
「あ、大丈夫大丈夫。気にしてないから」

 顔を伏せちゃう彼女があまりに可愛くて、つい抱き締めちゃったんだ☆

「だからね、これからも仕事とか趣味とかで他とも身体重ねるよって話」(こいつ……マジ外道だ……ざわ……ざわ)
「ああ、それなら私も気にしないが」
「うーん。この泥棒猫!とかは聞けなさそうね。残念」
「……ラインを結ぶのは許さないからな」
「あ、先生ともう結んでるんだけど」
「……む」

 考え込んでしまった。
 って言うか、結んじゃったもんは、もうどうしようもないんだけどね。
 向こうに破棄してもらえば良いけど、色々事情があんのよ。大人的な感じの。(下の話じゃないぜ!)

 オレの肩に顎を乗せていた彼女が、ぼそりと言ってきた。

「名前」
「名前がどうかしたか」
「名前で呼んでくれたら、先生の件は別に良い」
「名前で呼ぶの、これからずっとか?」
「そ、そうだ。嫌なのか?」

 んなわきゃない。

「サヌーラ」
「ん……ぐっ、うぅ」

 いやいや、名前呼んだくらいで泣くとか。
 ホント、種族間の違いを思い知らされる。
 姐さん、人間種族の国に来て長い筈なんだけどね。

「サヌーラとは、結婚を考えながら、これからも付き合うから」
「う、ぐ、はい、はい……」
「オレも名前で呼んでくれる?」
「…………」

 あれ、これって戸惑うところか?

「その、な、済まないのだが」
「ん?」
「名前、聞いたことなかったんじゃないか?」

 涙ながらに言われた言葉に。
 オレはがっくりと首を折ってしまった。そりゃないわな。



「あ、あと、代金はきちんとしてもらうからな」

 さらにがっくし。















 長くなったので、分けてみた。
 と言うか休みだったからって朝まで書くとか……欝。
 甘々なのは他で書くつもりだったのに、ここで書いちまったか。ちくせう。

 しかし、書いてて自分の引き出しの少なさに驚かされる。
 割りと好きなんですけどね。官能小説って。

※ 色々と前後関係を調整したりしてみた



[7091] ちょっと先生の家まで行ってきた 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 16:44


 経緯。

・チラ裏の方書くのにも影響出た。もう今日は書かね。
・他の人の作品を見る。面白いな、やっぱり。
・チラ裏の方の書くネタが浮かんできた。
・これ書いてる。 ←いまここ

 何言ってるかわかんねぇだろ……作者が一番意味分かってないんだぜ……。
















 どうも、チシャどころの話じゃない見事な萎(しお)れっぷりのオレです。

 あれだよ、姐さんの相手した後って、身体中がギシギシ言うのよ。
 お互い本気だしさ、手加減なんざ出来やしないから、結局オレが倒れるまでやるハメになる。ガッデム。

 そりゃ、嫌じゃないけどさ……だからってねー。仕事に差し支えるレベルってのもねー……。
 ある種の爽快感もあるしさ、必要なことでもあるしさ。
 オレ的にはひいこら言いながら頑張るわけよ。偉いねオレ。頑張ってるねオレ。



 あん? リア充死ね? ち○こモッゲーロ?

 ああ、じゃあ代わってやんよ。
 ほれ、幾らでもやってくれりゃ良いさ。
 まともに姐さんの相手できる野郎、いや野郎に限らんけど、相手できるってんなら幾らでも代わるよ。
 ま、そうそうおらんだろうけどさ。

 じゃ、今度から頼んだよ、クソども。
 頑張れよ、死ぬんじゃないぞ。
 下手すると死ぬからな。



 そんなこんなで、ギルドの練兵場の隅でヘロヘロになってるオレ。
 いやね、きついね。模擬戦。いつも思うけど。
 姐さんはもう仕事に行っちゃってる。一人寂しくヘロヘロ。姐さんは結構余裕なんよね……。

 借りた武具防具を拭いてるけど、身体がギチギチ言ってます。ガチで。



 姐さんがセックスの代価に言ってくるのが、この模擬戦だ。

 姐さん、明らかバトルジャンキーだかんね……。
 オレみたいな半端もんとやるぐらいだかんね……飢えてるよ、姐さん……。

 勿論、フルパワー出されようもんなら、生身のオレは指先一つで真っ二つだわな。
 そのぐらいの力無けりゃ、Aランクデジャボン討伐の前衛は務められんよ。デジャボン舐めんな。

 だから、ま、リミッター掛けてやんのよ。
 それでもオレじゃ比べもんになんないくらい力あるし、速いしさ。
 オレとしては、姑息な手を使って逃げながら、ちびちび姐さんの防御壁を傷つけんのが精一杯。

 やってて虚しいけど、格上と闘うのは勉強になるよ。これマジ。

 格下と闘ってばっかだと、戦闘の緊張感が薄れるんよ。
 戦闘中に相手を嬲り始めたり、ちょっとした怪我も無視してたり。
 その挙句に、隙を突かれて死亡、なんてのは慣れ始めたビギナーにありがち。
 ギルド側も口酸っぱくして言うんだけどね。

 この道もそろそろ十年超えてるオレもさ、先日の淫魔で背後からやられたでしょ?
 中々ね、ずっと気ぃ巡らしとくとか、常人には無理だよ。
 だからパーティ組むんだけどね。先日の件はマジで例外。

 どうでも良いけどあれ、報告したら査定に響くだろうね……誰にも言えん。


 姐さんとは学校の頃からの付き合いだしさ。
 オレ的にはセックスの代価とか、どうでも良いんだけどね。
 勉強になってるから、普通に誘ってくれたらやるしさ。模擬戦。セックスもやるよ!

 どうもね、この代価、オレが最初に言い出したんだけどさ。
 姐さん的には、セックスするために言ってる節があったんだよね。
 姐さん、淫魔の血が入ってるけど、性にはかなり抵抗があったから。
 最初は特にそんなんだった気がする。

 あ、よく分かんない? そりゃそうだわな。
 あー、んじゃ、姐さんの種族、ラングダのこともちぃっと話しとくよ。


 ラングダは元は、二つの部族だったんだよ。かなり昔の話。
 片割れが淫魔系で、片割れが鬼の系統。
 黒の目とか、割りと種族的には似た二つの部族だったんだ。
 実は住んでた辺りも結構違ってたんだけどね。交流もそんな無かったみたいだし。

 んで、こっからは歴史のお勉強だ。
 学校で習ったはずなんだが、知らない君らクソどもは寝てたんだな。
 各国史は戦士には必須だから、君らクソどもは絶対にギルドに入るんじゃないぞ?
 オレみたいな真っ当な戦士が苦労するかんな。

 横道に逸れたな。
 この淫魔系の連中、独自に国家を作るぐらいの勢力じゃなかった。
 それで、東の辺りに点々と幾つか、村を作ってたんだ。
 ま、そこまではよろしい。良くある小勢力の部族だよ。

 まずかったのが、この時代、その辺りで勢力を伸ばした王国だ。

 あの国、歴史の教科書じゃ思い切りぶっ叩かれてンだけどな。
 その当時はえらい勢力だったらしいから、淫魔系のラングダ連中は取り込まれちまった。
 そこで始まったのが、歴史に悪名高い、村狩り。
 文字通り、性奴隷を狩るために村ごと襲われた。

 それだけならまあ、淫魔系ラングダの皆さんご愁傷様、で終わりだけどな。
 国家内の問題に過ぎないし、淫魔系はまとまり薄いから、国際問題になり辛い。づらい、ってだけよ。バレたらなる。
 ま、淫魔系は近隣に強いの居なかったみたいだし、高を括ってたんでしょ。たぶん。
 この国の連中はもうバカ丸出しだけど、また予想以上のバカで、誤って鬼系ラングダの村にまで手を出しやがった。
 少しだけどな、この国の範囲に住んでたんだよ。鬼系の皆さんも。
 連中、違いに気付きもしないで、そのまま性奴隷にしたんだよ。

 淫魔系の連中と違って、鬼系の連中はもうちょい西の国で結構な勢力を持ってたんだ。
 それも、鬼の部族が集まった部族国家だったんだよ。
 そこに聞こえてきたのが、自分たちの同族が性奴隷になってるって話。
 一発で国際問題通り越して国際紛争化。数日中に宣戦布告だよ。

 歴史的にも稀なくらい、馬鹿なことした国だよな。マジで。

 鬼だよ鬼。
 部族によっちゃあデジャボンぎりぎり手前の連中だよ。
 国もバリバリ武闘派で、今でもその国家は現存してるしさ。
 じゃあ、西の国はどうなったって?
 あっさり首都まで落とされちまったらしいよ。
 首都が焼かれなかったのは、性奴隷になった連中を殺さないため。
 そうじゃなけりゃ、首都は丸々火の海だっただろう、ってね。

 オレはその辺り、姐さんと関わってから色々調べたんだけど。
 相当だね。鬼の皆さん、思いきり頭にキてたみたい。
 国の首脳やら村狩り実行してた部隊やら、一週間は絶食できそうな殺戮具合でした。合掌。


 歴史的な経緯はそんな感じ。
 後は、淫魔系の連中も鬼系の連中が保護して、その部族国家に暮らすことになって。
 淫魔系の連中はごく早い段階で、自分から鬼系の連中と同化するのを望んだらしい。

 っつーわけで、今では鬼系と淫魔系の二つが混ざった連中を、ラングダの一族って呼んでるんだ。
 もうざっと千二百年ほど前の話らしいから、オレにゃ真偽は分からんけどね。
 そういうのは、その頃から生きてるデジャボン連中に聞いてくれ。

 そういやな、学者連中はすげぇぞ?
 マジで聞きに行くかんな。
 統計的に、三割くらいの確率で死ぬんだぜ? やばそうなのには行ってないのに。

 んで。
 淫魔系連中も性奴隷当時のトラウマもあったし。
 鬼系連中も馬鹿な国のせいで性的な部分での嫌悪感があったからね。性奴隷になってた連中もいた訳だし。
 気風的に、尚武って国に住んでたこともあって、自然と性的な面を敬遠する流れが出たんだ。

 実際、姐さんみたく、百年単位で生きてて、結婚どころか恋人もいたことねェって手合い。
 これが結構いて、それも年が上になるほど顕著みたい。
 戦場でのストレスも、性的に解消したりはせんらしい。なんかスゲェ連中だよな。武辺一辺倒。


 姐さんの場合、オレとは模擬戦の件で初めて犯ったとか。
 それで、これはオレの勝手な推論だけど、ルートから入る生体エネルギーに溺れたっぽい。
 人間的に言うと性の快楽に溺れてるみたいなもんだから、本人にゃ訊けた話じゃないけどな。

 今じゃ、昨日付き合ってることも確認したしさ。
 模擬戦の対価がセックスとか、割りとどうでもいい筈なんだけど。やりたきゃどっちもやりゃいい。
 まあなんだろうね。惰性と言うか、じゃれあいと言うか。
 恋人同士の仲良しこよしと思ってくれ。正にその通りなのだ。

 長々とノロケを聞かせて済まんのうクソども。はっはっは。



 ……まあ、のろけだろうと何だろうとね。
 オレの右手首がひん曲がってるのは変わらないんですけどね。
 汚れ取るの先だから、左手で鎧とか拭いてます。

 とほほ。姐さん相変わらず強すぎだって。



 オレは今日、休みだ。

 長期出張だったからなあ。三日ほどお休みいただいてます。
 おかげで姐さん張り切っちゃって、リミッター一段下げてたのよ。
 恋人のじゃれ合いが割りと痛いです。オレです。

 色々と鈍痛抱えながら向かうは我が家。
 とりあえず帰って、ゆっくりグァラ豆でも挽く。グァラ湯を飲みたいのよ。
 あの紫の深い色合いが良いんだけど、姐さんは理解してくれない。
 磯臭い感じも最高なのに。何でか、飲んでくれないんだよなあ。

 んで、辿り着きましたよ。我が家。オレの城です。

 久しぶりに帰った家、っつーかギルドの宿舎なんだが。
 どっさり手紙が溜まってます。何これ。

 縛った束が、ひい、ふう、みぃ……あー、ざっと二十くらい?

 あー。いやね。
 オレも手紙書くの好きだから、こうなるのは分かって筈なんだけどね……忘れてた。
 長期出張中は、本当は出張先に送ってくれるようギルドに申請すりゃいいんだけどね。
 今回の仕事は、ちょっと手紙見てる余裕なかったから、申請しなかったんだぜい。

 とりあえず、腕に抱えて(手に持ってのレベルじゃない)ベッドにポイ。
 古いのから探して読んでく事にする。
 ま、とりあえずは、宛名を確認せにゃならんけど。
 ギルドからの依頼とか、入ってたらしゃれにならん。

 たまにあるんだよね……出張だってのに、臨時でやってって召喚状が。
 単なる処理ミスだけど、ほっとくと査定に響いたりするし。
 たまに、帰ってきた日とかに間に合う設定になってたりするとマジ最悪。

 えー、なになに。
 悪友、悪友、表通りの飯屋のねーちゃん、悪友、親友、姐さん、悪友、裏街のねーちゃん……。

「あ」

 一通の宛名に、オレは情けない声を出して、青ざめた。

 とりあえず、二十束の皆さんに返信書くよりも先にやることががが。
 この人の手紙、二ヶ月待たせてるとかちょーまずい。今すぐ行かねば。

 と言う訳で、今からオレはすたこらっしゅです。














※ メモメモ。

練兵場:名ばかりで、単なるギルド構成員の訓練所
リミッター:出力制限、魔力変換補正の余剰だけど、これが便利なのだよ
防御壁:自然展開型の物理的魔法防御、なに言ってんだか分かんないね
模擬戦:姐さん的には「オレ」が突拍子もないことするから、それはそれで勉強になってる
学校:ギルドの戦闘要員育成学校
合掌:日本語的な表現で、「オレ」が死人に手を合わせるかは不明
グァラ湯:紫色で磯の香りらしい、味は知らん
手紙:メールないから、割りとポピュラーな連絡手段



[7091] ちょっと先生の家まで行ってきた 後
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 16:44


 うは。
 もうね、名前の件とかどうでもいいや。
 いや、もうどうでもいいってことにしてくれません……?


 目覚めたオレは、辺りの暗さに目を細めた。
 昼過ぎに訪れて、ずっこんばっこんやった後、気絶して。
 そしたら気付けば夜も更け始めてる。
 寝すぎだろ、オレ。

 傍では先生が、裸のまま内股に座って、こっちを嬉しそうに眺めていた。
 オレは密かに溜め息を吐いて、覚悟を決めた。

「先生」
「起きたのね」
「先生、正直に言って下さいね」

 先生はにこにこ笑っている。

「魅惑の術まで使ったんです、言い逃れは聞きませんよ」
「ええ。何でも訊いてね?」

 先生はにこにこ笑ったままだ。

「オレに、愛してるって言わせて、どうしたいんですか?」
「決まってるでしょ?」

 先生は透明に笑った。

「愛して欲しいの」

 やっぱり先生は、淫魔だなって思う。


 淫魔の常套手段。
 それは相手の隙からルートを結ぶことだ。

 今だけ。
 嘘で良いから。
 口だけで良いから。

 それこそ言葉だけ、口だけのことである。
 逃げ道を幾つも作って、相手に考えさせる隙を持たせず。
 自分の望む言葉を、自分の望むように言わせるのだ。

 だから、愛して。
 私だけ見ていて。
 私の物だけになって。

 心に一点でも、相手の要求を聞く気があったのなら。
 その一点から、淫魔はルートを繋いで。
 人を食い物にする。

 先生とは既に、オレはルートを繋いでるから、それとは違うけど。
 先生の言い口、遣り口は、それこそ淫魔の真骨頂と言える。


「先生。契約をしたいなら口で言って下さい。多重契約でよければ幾らでも応じます」
「もう。私はね、こう言ったのよ」

 やっぱり透明に笑いながら、先生は言った。

「愛して欲しいの」

 オレははっきりと溜め息を吐いた。


「こう言っちゃなんですけどね、先生も姐さんも、オレのどこがそんないいんです?」
「あら、言っていいのかしら」

 頬を赤く染め、手を添える先生は本当に綺麗だ。
 先程、目を媒介とした魅惑の術を使って、オレを堕としたとは思えないくらい。

 いくら天然だろうと、やっぱり淫魔は怖い。
 何しろ、先生は上級淫魔なのだし。

「どうせね、オレの精が目当てなんでしょ?」
「もういやね。そんなことある訳ないじゃない」

 クスクスと笑う先生。

「ただ、精が目当てなら、愛してとは言わないわ。契約すれば良いんですもの」
「ああ、それは確かにそうですね」

 微笑んで、先生はオレの頬に手を伸ばした。

「本当にね。愛してくれる人って、少ないのよ?」
「はあ? 先生、そりゃ自分を見くびり過ぎですって」
「んもう、分かってないんだから」

 頬を膨らませる先生を見ながら、オレは首を捻った。

 先生は美人の淫魔で、節度を弁え、いじらしくって。
 ギルドに所属しているから社会的にも地位は高い。
 これでモテないわけがないし、愛してくれるやつなんて幾らでもいるだろう。
 オレみたいなやつを捕まえとく必要はないだろうにね。

 オレの頬を撫でながら、先生は言う。

「最初は私もね、興味本位だったのよ。貴男の噂は聞いていたし」
「あー、そりゃあねえ。あれだけ淫魔関係で騒がれりゃねぇ……」
「でもね、精のこととか、いまはもうどうでもいいの」

 小首を傾げて、先生は言った。

「貴男が欲しいから、貴男に愛してって言うの」
「……細かいことは置いときますけどね、オレは先約済みですよ」
「あら、もしかしてラングダの?」
「……そうです。結婚を前提に付き合ってます」
「んふ、それっていつから?」
「……確認しあったのは昨日です」
「やっぱり」

 先生は花開くような、華やいだ笑みを浮かべた。

「彼女には私から言っておくわ」
「ちょ、先生、それはオレへの死亡宣告っすか」

 死んだ。オレさようなら。こんにちは土。
 マジに遺書を書くべきか悩み始めたオレに、先生は咎めるように言ってきた。

「もう! 愛して欲しいのに、死亡宣告だなんて……言うわけないじゃない」
「ですよねー。常識的に有り得ないですよねー」

 凄い勢いでオレは首を振っている。
 ここを上手く乗り切らないとまずい。
 変な流れになったら、リアルにオレは死体だ。

 必死にもなろうものである。

「でもね、先生、そもそもオレ、先生を愛するとは一言も言ってないんですが」
「あら、愛して下さらないの?」

 眉をね、可愛く斜めにするのはやめて! オレ的にピンチですから!

「ラングダの彼女の事は置いておいて、ね。私のこと、どう思うの?」
「……仕事でもないのに、手紙見た瞬間に走ってきたんですよ? 今日、オレは」
「まあ」

 頬を赤く染めて笑う先生は、可憐の一言だ。
 オレまで赤くなる気がする。うーあー。

「先生のこと、好きですよ。それは否定しません。誤魔化したりしません」
「……嬉しいわ、本当に」
「でもね、彼女、サヌーラを裏切る気はありません」

 覚悟を決めてる俺はマジ無敵。
 ……先生がどんなに怒っても、泣いても、これは撤回するつもりはなかった。
 サヌーラを選んだのは適当なんかじゃないのだよ。マジマジ、大マジ。

 ただ、先生がこれで笑っているのには度肝を抜かれた。
 あれ、オレからかわれた?

「あの、先生?」
「んふ、それでいいのよ、それで」
「は?」

 やっぱりからかわれた臭い。
 よし、オレは今日からアーサー二世になろう。
 今からこのまま先生の家から飛び出してやる。
 伝説になるのだ。レッツチャレンジ!

 ああ、今の時間なら学生もウロウロしてんだろうなあ……。
 ギルドの店の連中も、学園裏を通って中央市場に向かう頃だろうなあ……。

「あら、どうかしたの?」
「いや、先生にからかわれたのがショックでして。社会的に自殺しようかと」
「いやだわ、私、貴男をからかったりなんて、しないわ」

 は?
 何だろうか。
 もはや、オレには対処不能な領域?

 オレは本気で首を捻り、うんうん唸ってもみた。
 さっぱりわからん。先生、何言ってるの?

「分からないかしら?」
「はあ、さっぱり」
「もう、だからね、貴男が私とラングダの彼女を愛してくれればいいのよ」
「……その、二重結婚は公国の法律で禁じられてまして」
「結婚はね、いいの。そう言うことじゃないの」

 はて。
 先生は以前、結婚に憧れているようなことを言っておったような。
 いつ頃宗旨を変えられたのだろう。

「結婚は、彼女とすればいいわ。私が欲しいのは貴男の愛」
「ぐっ、先生、それ笑顔で言うの、半端ない破壊力です……」
「んふ、淫魔ですもの」
「納得しました……」


 何だかよく分からんかったけど。
 とりあえず、先生は彼女と話すことになった。
 オレが死なない流れになることを切に願いたい。



「ところで先生、話変わりますけど」
「うん? なにかしら」
「オレの名前って覚えてます?」
「…………?」

 先生、生徒の名前は覚えて下さいって、マジで……。















 ふぅ……。
 いやぁ、あれ、何で朝まで書いてるんでしょうね……。

 もうね、知らない。書けたからうpした。
 反省も自重もしない。


※ 微調整、あんま要らなかった、
  この辺りから、もう次話に繋がってるしね、先生の態度とかさ
  しかし、先生可愛いな、作者も人外だから仲間に入れてくれないかな……



[7091] ちょっと姉さんに拉致られた 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 17:35


 今夜は長いの書けないだろうなーと、空いた隙にせこせこ書いて。
 深夜に続きを書いてる作者は死ねば良い。

 そういや、一度出た女性が再登場するかは特に考えてないっす。
 ストーリーとかも全く考えず、思いついた場面で書いてるからね……。
 この人良かったよ、ってのがあったら書いてくれたら考慮します。
 気晴らしに書いてるもんなんで、書くかどうかはシチュがイメージできるか次第なんですが。

 あと、よく見てみたら、炉利分が全く無いですね。何故だろ?
















 fjかds;jふぁdlk;lk;あjkl


 ……………………。


 よう、オレだ。
 皆の衆。大儀であったな。よしよし。

 元気してるか? クソども。
 オレは肉体的にも生体的にもアレだ。限界近い。

 TRPGじゃないんだかんな。
 人間にゃ、寝たら全快とか有りえんわな。
 特に生体系はね……寝てすぐ治るなら、淫魔連中は目の色変えて人間襲うよ。これマジ。

 先生に仕事のこととかアレコレ話して、家を出たオレだ。
 んで、その後すぐ、ちょっと拉致られちまってるオレだ。

 相手の顔見て、あ、この人か、って納得したんで、今は現実逃避中。
 紫の髪が長くたなびいてて、横顔に見えた少し淡めの紫の瞳、高い鼻。知ってる人だった。
 そのうち目的地に着くだろ。だからオレは寝る。

 しかしね、明らかオレは肩にかつがれてんすけど。
 ズタ袋のノリでえっちらおっちら拉致られてんだぜ?
 表の往来だぜ、おい。裏街じゃねーんだよ。
 世も末だよな、だれか警邏兵に伝えろって。

 皆が皆、オレを見て「ああ……」「あれが噂の」って納得するのもどうなんだよ。
 つーか、噂ってなんだ。学生時代のか? あれもそろそろ風化してんだろ。



 クソども、暇だろ、先生の出身のパリイカの話とかしてやんよ。聞いとけ。
 オレは寝るかんな、夢うつつ的な感じで教える。分かりづらかっても気にすんな。

 パリイカの一族はマジで由緒がはっきりしてんのよ。
 歴史の教科書に名前載ってんだぜ? 淫魔族ハンドブックにも載ってる。
 祖はエールスファハン、ってな具合にな。

 あ、わざわざ覚えてんのは、先生に淫魔学概論教えて貰い始めたときに、先生が言ってたんよ。
 例に出しただけなんだろうけどよ、上級淫魔って速攻でカミングアウトされて、生徒全員ドン引きだったよ。
 そりゃ覚えもするって。やっぱ天然だよなあ……。

 基本、精でエネルギー食ってる淫魔は、生殖と性交が分離してる。
 ただ、性的に開放的なのが影響してか、生殖にもどん欲でね。結構雑食なんよ。
 その結果、交合が進んで、元がよう分からんようになった連中も多い。
 そこらへんを一まとめにして、サキュバス、って呼ぶ。
 ここ、テストに出たから。先生、問題がやさし過ぎるよ……。なんだよ、淫魔の総称は、ってよ……。

 ちなみに、サキュバスって呼び方、別に蔑称じゃない。
 サキュバスらしく食って食われた結果だかんな。恥じることじゃないわな。
 純正の種族連中も、別にサキュバスって言われて怒ったりしない。
 性に過敏な人間種族がたまに、これを蔑称にしたりするけど、彼女らは鼻で笑うだろうな。

 それはさておき、由緒正しいパリイカの一族。
 こいつらは珍しく、族内でしか交配しない。なんでかは知らんけど。
 先生に訊いたら、こう言ってたんだぜ、

「そう言えば、どうしてだったのかしら?」

 先生、そこははっきりしときましょうよ……淫魔学者なんだから……。

 何にせよ、純粋な淫魔は極めて少ないんよ。これは先生も言ってた。
 純粋な分、種族特性も濃いし、能力に幅はないけど力は一級品なわけ。
 そのこともあって、パリイカは淫魔系の連中の中で、ちょっと変わった地位にある。
 かと言って、パリイカの国って他種族は入らないで的な感じで排外主義、ってわけでもないらしい。
 ホント変わってるよな。

 たまにな、先生みたいな天然ばっかなんかな、とか妄想するんだけどな。
 そんな楽園なら、是非とも行ってみたい。

 ただね、政策とかちぃっと見てみたけど、わりとえげつないことも普通にやってんのよ。
 そういうとこ見てると、先生の天然はちょー怖い。
 平然ととんでもないことしそうだし。(って言うかパーティ組んでるときも色々……)

 そのパリイカの中でも、人間種族の国家に定住してる先生は更に変り種。
 ましてや、モンスター保護機関を謳いながら、平然とモンスター殺しまわってるギルドに所属。
 ま、そんじょそこらの変わりっぷりたぁ訳が違うわな。

 そんなわけで、先生のギルド内で地位は結構高い。貴重だかんね、上級淫魔。
 本当は先生なんかしなくても良いんだけどね、先生、教えるの好きらしいから……。
 生徒の評判も悪くない。
 いきなり搾ったりとかは(滅多に)しないから、ってのもあるけどね。

 たまにね、生徒で味見のつもりで、搾りまくるやつとかでんのよ……。
 訓練学校に居て、体験したやつが大半だろうな……。オレもそうなんだよ……。

 淫魔に搾られるとかうらやましい、って思ったクソども。
 ま、そう思えるのは一度搾られるまでだ。
 戦士目指すなら、授業の内か、友達同士で体験しとけよ?
 戦場で初体験とか、死亡フラグ以外のなんでもない。

 下級でもな、一度相手に主導権奪われりゃ、マジで血反吐吐くぞ。
 生体エネルギーどころの騒ぎじゃない。魂まで持っていかれんだよ。
 死ぬよりえぐい目に遭う。戦場でそれはやめとけ。
 快楽地獄とか夢見てんじゃねーぞ。


 そんな相手に先日、オレは遊んでたんだけどね☆
 ま、ビギナーだったし。むしゃくしゃしてたから。反省はしてない。


 先生はね、ギルド所属だから、そっち系の仕事も担当すんのよ。
 先生とパーティ組んだこともある。ってか、それがオレ的に始まりだったんだが。
 その辺りでなんやかんやあって、先生とオレはルートを結んだ。
 そのなんやかんやで先生も常任を辞めて、今じゃたまに教えてるだけ。

 その辺はね、まあ、寝ながら話すような軽いのじゃないから。
 もうそろそろ限界。オレは寝落ちするから。あと頼んだよ……クソども……。






 起きた瞬間おめめパッチリ!

 戦士は睡眠の浅さが売りだ。なんかあったらすぐ起きる。これ大事。
 なんかあった間にオレが寝た気もするけど、そんなこともなかったんだぜ!

 漂うのはブール湯の微かな香り。
 良いよね、この柑橘系のちょっと酸っぱい感じ。唾液出る。
 飲んでみると、思ったより甘くてこれもいい感じなのよ。
 たまにびっくりして吐くやつもいるけど、そいつらはとりあえず死んでこい。

 オレがベッドで身体を起こすと。
 オレを拉致った姉さんがテーブルで、書類片手にブール湯飲んでた。
 白いシックなドレスワンピースに胸辺りの複雑な紋様。淡い青のニーソックス。
 ギルドの正規職員が着る服ですね。分かります。

 オレは取りあえず、手を上げて挨拶した。

「物好き姉さん、久しぶり」
「なによ、その物好きってのは」
「眼鏡とか、姉さんに必要ないでしょ?」
「魔法具なの!」
「さいですか」

 オレは前の席に座って、置いてあったブール湯を楽しむ。
 良いね、酸っぱさがほどよく強め。オレ好み。

 姉さんも書類を置いて、ブール湯を飲み干す。

 しかしね、視力調整できる姉さんが眼鏡ってね……。
 単純に物好きなんだと思うけど……。

「ま、何にせよ、久しぶり」
「……どうせ、手紙も読んでなかったんでしょ?」
「あのね、姉さんも知ってるっしょ? 原住討伐よ? 読んでる暇ねーって」
「あっちにね、私も行ってたのよ」
「げっ、マジで?」
「マジもマジ」

 猫のように目を細め、書類とカップを端に寄せる姉さん。

 ……まっずいなあー。
 旅の恥はかき捨てって言うじゃん?
 結構ね、あっちで色々してきたかんね……。

 姉さんには黙っておいてもらわねばばばば。

「そのー、姉さん姉さんネエサン」
「なぁに?」

 にやりと笑って、姉さんはテーブルを乗り出し、オレの方に寄ってくる。
 ぐっ、この笑いは自分の優位を悟ってやがんな。

 あれ、オレってもしかして、また搾られんの?
 犯るのはまあしゃーないけど、えーと、搾られんのはちょっと……。

「その、回数は良いんすけど、生体エネルギーはちょっと……」
「えーっ! もう打ち止めなのっ!?」
「すんません、ラングダの姐さんと先生とやって、正味、一回の睡眠分しか残ってないっす……」
「んもぅ、あっちでも我慢してたのにぃ」

 じゃあ、あっちで搾っといてくれよ!
 帰ってこの方、休んでないオレを拉致るとかエグイって!
 あ、いや、あっちじゃあっちで犯ってたから無理じゃん。オレのバカス☆

 でもなー、やっぱ眼鏡姉さんの甘え声はやべぇよ。半端ねぇ。
 澄ました顔して受付してんだぜ、これで。
 昨日は非番だったみてぇだから、見てないけどなー。

「ね、じゃあね……」
「う……、ナンスカ」
「向こうでのことぉ、黙っててあげるからぁ」

 オレのカップを奪い取って、姉さんは口に含む。
 そのまま濃厚なキスをお見舞いされた。
 姉さんの眼鏡がオレの目に押し付けられる。

「ん、んむ、んん、ん」

 こっちに魅惑の術を使うかのように、目を覗き込みながら、姉さんは笑ってる。
 オレはただ、姉さんがくれるブール湯を、唾液を、飲み下すだけだ。

 ……口移しって良いよね。
 飲ましてくれる眼鏡姉さんに惚れそう……。
 すごくね、こっちが飲みやすいように調整してくれてんのよ。
 なんかねえ、このまま姉さんに全部任せちゃいたい感じ……。

「ぷはっ、はぁ、はあ……ねぇ」
「は、はい?」
「今日はね、思いきり、させてよね?」

 オレは思わず、頷いていた。















 メモメモ。メモメモ。

ブール湯:ホットレモンっぽいよね、この記述。違うんだ、蜂蜜みたいな甘さなんだ
書類:紙があるのかって? 知らね



[7091] ちょっと姉さんに拉致られた 後
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/08 17:36


 しっかしね、姉さんの中も、尋常じゃないよね。
 素で気絶した。生体エネルギー抜くのとか無しでさ。
 さすがはB級デジャボンの末裔。犯るのまで一流とか、もうね……。


 今更だけど、姉さんは淫魔じゃない。
 水妖の一族たる、ヤムゥーの一族の出身だ。

 姉さんの口の中の唾液が凄かったのとか。
 姉さんに入れた後、愛液で物が凄い締め付けられてたのとか。
 その辺は、姉さんの元から持ってる能力なのよ。そう聞いた。

 だからいっつも、ずっこんばっこんするときは、凄い音だよなー。
 あと、掃除が便利。水なんかは自由に動かせるから。
 液体全般に利くから、ソースに頑張って手まで来てもらったりもできる。
 実は油断さえしなけりゃ、ぶっ掛けも避けれるんだぜ。すげぇや!

 まあ、そんな事に力使うのどうよ、とは思うけどね。
 三百歳越えてからようやっと使えるようになるらしいしね。水の自動化。



 おめめパッチリ第二弾だぜ!
 正直抜きすぎとか思ったんだけど、そんなこともなかったんだぜ!

 つうかね、先生の家から出てすぐだからさ、普通に連続だしさ……。
 数えてみりゃ、ひい、ふう、みい────あれ、十回以上……?

 今日はもうね、姉さんと話したらここで寝る!
 姉さんに拒否られないよう頑張って話す!
 手紙書くの明日。明日に回す。また家出て拉致られるのやだ!


 そんな幼児退行などしてみながら、オレは身体を起こした。
 姉さんは裸のまま、グァラ湯を作ってくれてた。
 姉さん、オレの知り合いの中では珍しく、この良さを分かってくれんだよね。

「起きたわね。はい、これ」
「あんがと。家で飲み損ねたからマジで嬉しい」
「それは良かった」

 微笑んでいる姉さんを見ながら、取りあえず一口。
 口内から鼻に立ち上る磯の香り。痺れるね。最高。

「んは、やっぱ姉さんの入れる湯は美味いよ、ホント」
「いつでも飲みに来てくれていいのよ?」
「ごちになります! 出来れば抜くのは無しでね!」
「それでもいいのよ?」

 オレは無駄なテンションを止めて、姉さんを見遣った。
 姉さんはやっぱり、嬉しそうに微笑んでいる。

 不穏な気配。話を変えるかね。

「あんね、姉さんの、犯ってるときの話もあるんだけどさ」
「うん、何か他に話があるの?」
「まあ、姉さんと頼って訊くんだけど」

 オレは一つ、疑問を持っていた。
 先生が言っていた、愛してくれる人が少ない、という話。
 大まかに、先生の話をして、この件を言ってみた。

「先生ぐらいのさ、まあ言うちゃあれだけど、スペック?
 あれで愛してくれる人いないとかね、ネーヨ、って思わない?」
「そうね、表向きだけなら愛してくれる人はたくさんいるでしょうね」

 あれ?

「それってーと、真実の愛!的な物を持っているのはこの世に五人だけ、とかそんな感じ?」
「どんな感じよ、それ……」

 さすがに姉さんも呆れてるけど、オレもきょとん。
 いやだってさ、ねえ?

「よく分かんないから、姉さん教えて、お願い!」
「んー、私って淫魔じゃないから、ちょっと違うかもよ?」
「姉さんの答え聞いて、参考にするだけだから。答えは自分で出すって」
「あはぁ、それなら言わせてもらうけどね」

 姉さんはグァラ湯を呑んで、教えてくれた。

「淫魔が、人間の中で生きていくって、結構大変でしょう?」
「そりゃあもうね」
「その中で生きていくのって、どうあっても強くなるしかないの。
 あの先生、って私は授業受けてないけど、あの人もね、それで強くなった口じゃないかしら」
「姐さんにもちょっと、そういうとこあるしね……」
「国に戻れるならともかく、私もそうだけど、ラングダの彼女もパリイカのあの人も、そうそう帰れないの。
 そんな逃げ道のない中、差別されながら、この国で生きてきたの」

 ピロートークにしちゃハードすぎるね☆

「だからね、表面上優しくって、愛してくれてるように見える人。
 そんな人を信じられるまで、私たちはずいぶん、時間が掛かるわけ」
「ふーん。それは初耳です」
「ただ、人を信じるだけでもね、結構ね……。
 付き合いを持つだけなら、そうでもないけどもね」

 言いたい事は分かる。
 オレだって、身内じゃないモンスターとか容赦なく殺せるし。
 姉さんも、身内じゃなかったら、オレら人間を殺せるだろう。

 元からして、人とモンスターは違うんだ。
 考え方も、在り方も、生き方も違う。
 人間と対立している種族も、そんな少なくない。
 違うのだから、そういうのあっても仕方ないし、だからこそ理解しあう努力をせんと。本来は。

 オレら戦士は、学識求められるからその辺が分かる。
 分かっていながら、国からそんな異端や異分子を排除させる仕事に就かされてる。
 ある意味、悪循環よ?
 違って当たり前の連中を、違ってることの意味を知っていて、違ってると言って殺す。
 何が何だか分からんよね。オレも分からん。

 オレの同期だって、精神的に耐えられなくなったやつ、どんだけいるんだか。
 退職申請出す前に死んだ奴含めりゃ、半分以上じゃね?


「だからね、本当の意味で私たちを愛してくれる人。
 そんな人をね、私も、ラングダの彼女も、パリイカのあの人も、求めてるのよ。たぶんね」
「それでオレ? やめとけやめとけ、こんなの」

 姉さんが少し睨んできた。

「私たちを安く見ないでよ。そんなに目が曇ってると思うの?」
「いや、全然。オレのメッキが凄いだけでしょ」
「……もう、分からず屋」
「姉さんこそ、物好き姉さん」
















Q.せんせー、長くならないんじゃなかったんですか?
A.うん。なんと前回より3kb程も短いよ。28kbだよ、短いね!

Q.せんせー、どの辺でよていがくるいはじめたの?
A.うん。ただ受付嬢の姉さんと犯るだけの短編のはずが、演技とかしだした辺りからだね!

Q.せんせー、ちょっと詰めこみすぎじゃない?
A.うん。なんか、書きたい様に書いたらこうなった。ごめんね!

Q.せんせー、前のかんちがいにきづいたのに、なおさないの?
A.うん。まあ、今日余力があったら、最初の話から直すよ、でもエロを見直すのって辛いね! あ、直してるよ!

Q.せんせー、話ひろげすぎじゃない?
A.うん。書けそうになくなったら消すから気にしないで!

Q.せんせー、炉りはかくよていあるの?
A.うん。今ん所ない。ごめんね!

Q.せんせー、この質もんとこたえっていみあるの?
A.うん。ない。謝らない!



[7091] ちょっと後輩君と遊んできた 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/27 02:20


 今回は書き溜め放出型で。
 そのせいか、正直、エロの辺りがグダグダ過ぎる。なんだこれ。

 ネタは少しずつ出てきてる(四、五個くらい)んだけど、どうも書けなかったもんで。
 更新止まってたのは正直すまんかったです。
















 オレオレオレオレオレ。オーレですよ奥さん。



 オレオレのオレ。どうもオレです。
 どうも、ご無沙汰してるね? 元気だったか、クソども。

 クソどもはもう忘れたかも知らんが、オレは結局姉さんの家で寝ました。熟眠。
 人が居たら眠れないとかは戦士的にダメーだよな。
 信頼できる相手か否かぐらい、肌感覚でわからんと。やってられんよ。

 まあ、実際、姉さんの肌は最高なんだけどな!
 抱き枕って素晴らしい。肉布団万歳。クソどもの諸君は羨むと良い。

 しかしね、姉さんもオレの名前、覚えてなかったんよ……なに、今時の流行ですか、そのボケ……。
 名前覚えてない相手に名前呼べとかね。何なのその不公平。ギルドで訴訟に掛けるよ?
 そんな複雑な名かねぇ。だったら愛称でも決めてくれりゃ良いのに。

 姉さんの場合はちょっと事情があったりもするんだけんどもね。


 毎度おなじみ、種族紹介だ。クソどもは聴いてくれてるか?
 オレが知的なのが嫌で、耳塞いでたりするんじゃね?
 ま、嫉妬するのは分かんよ。ぐふふ。

 ま、何にせよ、無知な諸君にはオレみたいな素敵な紳士が教えてやらにゃならん。義務っつーやつだわな。
 有り難く拝聴しとけ。がっつんがっつん教えてやる。


 姉さんは水妖。水棲の妖物だわな。
 ちぃっと古い血筋の、ヤムゥーの一族の出だ。

 ヤムゥーの一族は、水妖にゃ珍しく、陸周辺で暮らしてる。
 っつーのもだな、祖のナハルビの辺りにあれでそれな話があるんだよ。
 まだ時間もありそうだかんな、その辺りも教えといてやる。

 ナハルビは降臨したデジャボン。しかもB級デジャボンだ。

 おっと、B級っつーのを勘違いすんじゃねえぞ?
 A級で戦士五十人分なら、B級なら三桁、とか寝言言ってんじゃねえぞ?
 B級っつのーはな、軍勢と対抗できるランクだ。最低で四桁後半、出来りゃ五桁の人数が欲しい。戦うならな。

 ナハルビは、特定変化を起こし得た、と伝えられてるんよ。
 ある種族に羽を授けた。(羽コキ好きにゃたまらんね)
 ある種族に角を授けた。(角とか攻めてみたくね?)
 ある種族に生殖の能力を与えた。(グッジョブ過ぎる)
 そうやって、トンでもねェ勢力作り上げてたの。
 今じゃナハルビも隠居してるから、ナハルビ勢そのものは、んな別に怖かねえけど。
 ファミリーは今でもそこら中に居るんよ。(z○q? 何じゃそら)

 そん中でも、姉さんの一族、ヤムゥーはちょっと特殊。
 実験でもしたんかね、水妖に地上でずっと生きられる能力を付けたんよ。
 しかも、なんか気に入ったらしくってな、近くに置いといて。
 その辺りに何があるかなんざ分からんよ。ナハルビに訊いてくれ。訊いたら死ぬけどな。
 訊きに行って死んだ奴、知られてんのだけでもう三桁行ってんじゃね?

 そん後にごたごたがあってな、ナハルビは隠居したんだけどよ。
 そん時、ヤムゥー一族は地上にほったらかされた。
 これね、今じゃ口に出来るけど、当時のファミリー連中はすげぇ嫌悪感持ってたらしいんよ。
 元が特別の地位にあって、嫉妬されてたみたいだし。反発で、初っ端からゴミみたいな扱い受けたみたい。

 結局、槍持て追われ、ヤムゥー一族はファミリーの国々を追い出された。
 所々で虐殺もあったらしいし、相当アレだね。

 こん辺りも、姉さんと犯るようになってから色々調べたんだけどな。
 ナハルビファミリーはマジ、結束強いかんな。大してわからんかったよ。
 ヤムゥーの連中も、生き残った連中が伝を残してくれてるだけだから、虐殺に関する情報も今一つ。少々の体験談が残ってる程度だ。

 ま、何にせよ、ヤムゥーは移住することになったんよ。
 今でも、混淆系の国家にヤムゥーの一族は暮らしてる。
 割合、固まってる方じゃね? 勢力もすごくおっきぃです……が三個くらいだし。


 姉さんは、そん中でも異色で、合いの子なんよ。淫魔とのね。
 淫魔の外観や器官なんかは大して受け継いでないけど、実際ハーフにゃ変わらん。
 姉さんとこは、淫魔の連中と隣接して暮らしてたらしいから、割りと自然な流れだったんだけど。

 合いの子ってね、ヤムゥー、っつかファミリーで嫌われんのよね。べらぼうに。
 最近はちいっと増えてきて、制度的に改善始まってんだけどねー。
 姉さんが生まれた頃って、バリバリの差別の時代でさ、姉さんもギルド入るまで苦労してたみたい。
 人間中心の国に定住してる辺りで、まー察してるクソも居るだろうけんどな。いるよな?

 つかね、姉さんと犯ってるの、ちらちら見てたクソの皆さんは分かるだろうけどな。
 すんげぇ気持ちいいのよ。天然でグッジョングッジョンだし、身体とかすげぇ柔らかいしさ。
 連中が身内で独占してんのとか、マジ死ねばいいと思わね?
 いや、オレは姉さんいるからどうでもいいけどね。


 あー、オレの名前を覚えてもらってない云々の話してねーな。忘れてたよ。

 姉さん、名前を覚えるのがちいっとね、苦手なのよ。
 これね、水妖のもとからの性質っぽいのよ。先祖帰りの一種かね?

 つーのも、本来、水妖って単独生活してる。
 呼称を覚える必要がないのよね。そういう文化がないし、思考回路もないのよ。
 あと筋肉とか凄い。水ん中、すげぇスピードで泳げるかんね。

 地上で暮らすようになって、大概退化してるけどさ。
 たまーに、その性質が出てきたりする連中があんのよ。

 名前を覚えない。筋力がすげぇ。天然。そんな感じ。
 天然、らしいよ? いや、オレも詳しいことは知らんけど。

 ハーフの姉さんが、天然以外の二つが出てんだから、遺伝ってのはわからんね。

 あー、考えてみりゃ姉さん、天然だった可能性もあんな。
 苦労してんのは確かだしさ。今の性格が元のもんとも限らんし。
 もしかしたら、デレたら天然になるかも知れんなあ……頑張ってみるかね?


 おーそろそろ時間ねえや。
 姉さんとの馴れ初めとか、その辺はおいとくべ。
 拉致られたのもその辺に理由あったんだけどな。教えてる暇ねぇなおい。

 すまねえな。多忙なもんでな。
 今度に期待しといてくれや。



 オレはギルドに顔出してた。
 姉さんの家を出て、自分の家でせこせこ返信書いて。
 先ずは第一陣を郵送、ってな訳だ。これでも束三つ分あるんだぜ……。

 これで休みが潰れんじゃねえかな、とギルドの待合室で微妙に黄昏てると。
 元気一杯な声が聞こえた。

「先輩っ、本当に帰ってきてたんですね!」
「おうとも。ぬくぬく布団が恋しいんで、明日まで休み入れてもらってんけどな」

 この子の元気分けてもらいてえ。
 正直、帰ったその場から三人相手にしてんので、普通にへばってるし。
 そう思いながら振り返って、目を逸らした。

 つかね、なんで訓練学校時代の礼服来てんのよ!

 白を基本色に、青のラインと胸元の大きなギルド章が特徴の貫頭衣。
 薄い青のベリーショートの髪に、紺の角帽がよく似合ってまして。
 沈んだ緑の二目は愛嬌があって、色々と思い出させましてね。

 ……学生時代によく犯ってた格好ですよおい! これはねーよ!

 あのね、ギルドでおっきっきするのは流石に嫌なんすけど……。
 あの頃思い出すとね、やっぱやばいんよ。色々。色々な。

「ちょ、先輩、どーして目ぇ逸らすんですか!」
「いやな、お前、格好考えろ、格好」
「え? だって、私、こんなにバシッと決めちゃってんのに────」

 言葉が止まったので横目でチラ見。
 おーおー、顔真っ赤にしてやんの。可愛い可愛い。

「わ、や、そ、そな、そんな、せ、先輩にあああ会っちゃうとか、そそそ、そげなことかかかかか」
「おk。落ち着け。人間種族の言語でおk」
「だ、だだだだだだだだだだってててて」
「よし。人の混乱見ると、落ち着くな」

 うちの息子さんは元気になりそうだけどな!

 オレは叱咤激励、しちゃ不味いな、叱咤して大きなおちんちん様にご退場願って。
 後輩君の頭を荒っぽく撫でた。角帽越しだけど。
 優しく撫でるのは不味い。愛撫になっちゃう。

「あわわわわわわ、せ、せせせせんぱぱぱぱぱぱ」
「誰がせんぱぱぱぱだ。ほら、落ち着けって」
「だだだだっててて、こここのかかかかかかっこうかっこうっかっこうくっくるー」
「仕様がないやつだな」

 オレはにこやかに笑って。
 魔力込めた拳で頭ぶん殴った。容赦はしてないよ。突っ込み的な意味で。



 昏倒したのに十五秒で再起動した。
 やっぱ頑丈だよなあ。こいつ。なんで後衛士なんだか。

 角帽直しながら説明してくる後輩君に、オレは適当な返事を返した。

「ふーん。同窓会、ね」
「ちょっと調子乗って、こんなの着てきたんですけど。まさか先輩と会うとは」
「ま。長期出張中だったからなあ。普通は思わんでしょ」
「ですよね、ですよね!」
「ほう、それは会いたくなかったって意味かな、後輩クン」
「わわわ、そうじゃないんですよ、そうじゃ」

 言いよどんで、真っ赤になる後輩君は相変わらずかぁいい。
 一家に一台置いとくと、和むだろうね。良いんじゃなかろうか。後輩クン。

「その、ね……先輩と、色々、そのぉ、ですねぇ、あったじゃないですか……」
「いや、分かってるって。じゃなきゃ、オレもさっき目ぇそらさねえし、やばいと思ったりもせんよ」
「……やばいと思ってくれたんですか?」
「そりゃもちろん。じゃなきゃ、あの頃だってあんな猿みたく、犯りまくったりせんて」
「んんん、先輩ー、今は、今は?」

 改めて、全身を見渡してみた。 

 肉の付き方がしっかりしてきている。
 当時からしてスレンダーだったが、今は特に贅肉が絞れてる感じ。
 鋭利な刃物を思わせるこの感じは、スピードファイターに相応しい。

 ……あれ?
 だからこいつは後衛士だから。
 後方支援であってね、前衛の突撃型じゃないんすけど。

 オレが首を傾げているのを見て、後輩君はがっかりしたような声を出した。

「先輩ぃ……。これでも私、結構いい女になってきたって、自信あったんですけどぉ……うう」
「あー、お前さんはいい女になってる。それは保証するけどな。っていうか、お前、その肉の付き方おかしくねえか?」
「え、えええええ、け、結構、絞まってきたって思ってたんですけど……」
「じゃなくてね。後衛士がバリバリスピードファイターの体型とかおかしくね?」

 後輩君はきょとんとした。

「へ? 先輩、私、前衛士に変わったんですけど。言ってませんでしたっけ」
「……聞いてねーーー!」



 一年も前に変わってたそうですよ、奥さん。
 あれ、実はオレ、こいつとそんな仲良くないの?

 なんで手紙に書いてないの?
 なんで会ったとき言ってもらってないの?
 なんでそないオレをいじめるん?

 そこらの雑魚と一緒にぶち殺すぞワレェ……!(じわじわとな、嬲り殺してやんよ……!)



 いやまあ、んな変なテンションはさておいて。
 聞くところによりゃ、まあ、分からんでもない理由だった。

「あ、あははははは、そういや、パーティ組むときにびっくりさせようって思ってて、それで忘れてました」
「あー。そういや、ここ一年はパーティ組んでなかったしなあ」

 今のオレの地位は、教導っぽいとこがある。
 学校出てばっかの連中から調子こいてる辺りの連中まで、広くしごいてやってんのよ。
 新加入で能力未知数のタイプなんかも任されてて、最近はパーティがカオス。

 そのせいで、オレが差別バリバリだって知られてんのに、TRPG組と組んだりすんのよ。
 匙投げたらね、査定に響くかんね、頑張るしかないのよ……。
 マジでね、仕事舐めてる連中は死ねばいい。と言うか死ぬけどな、マジで。
 みんな、後輩君ぐらいになってくれよ。そしたら文句言わねぇし。(後輩君はTRPG出身じゃないが、結構好きらしいのだ)

 こいつ、これで元が戦士系の経験も積んでたしなあ。
 学校でもオレの二個下だったから、経歴的にも十分、熟練って言えるし。
 ギルド的にも、期待してる戦力の一人な訳でね。
 今更オレとパーティ組ませる意味ないって思ってるのかもね。

 いや、あの大将なら違うか。
 どうせ盛るんだろう貴様ら、とか言いそう。そして否定できないオレ。てへり。

「まあ、なんだ。前からお前は前衛向けだとは思ってたよ」
「誉められちゃうと、なんかむず痒いです」
「これって、誉めてんのかね。ま、組む機会あるか、すんげぇびんみょーーだけどよ、頑張れよ」
「えーー! 先輩と組むと楽できるし、私的には組みたいんですけど……」

 オレは夏のソルビア河岸くらい爽やかに告げてやった。

「じゃあ、大将に言っとくれ。意見書出しても良いぜ。
 でも多分ね、オレ予想ではこう言うよ────『なぜわざわざ私が、貴様らの盛り場を提供してやらんといかんのだ』」
「あは、ははは、先輩似てますけど、それ、リアル過ぎて嫌です……」

 角帽のズレを直して、後輩君は苦笑した。

「ま、頑張れよ。何にせよな」
「先輩、久しぶりに会いましたし、お茶でもしませんか? 早上がりですし」
「あんなあ。同窓会なんだろ? ああいうのは人が集まる内に行っとけよ。今のオレとかひでぇぞ?」

 オレの代だと、そういうのが好きなの、死んじゃったからねぇ。
 まあなんだ、オレが主催しても良いけどな。
 久しぶりに開いてみるかね。何人集まるもんやら。

 ただ、ま、死んだ連中の思い出話で浸る酒は、まだちと早い。年齢的にね。
 繋がりが切れるとは思わんけど、ジジイになってから、そういう酒は一緒に飲みたい。

 それまでオレが生きてたらの話だけどな。

 あれ、なんか死亡フラグチックじゃね?
 まあ、そんなもんで死ぬくらいなら、ギルドで十年も生きてられん。気にも留めん。
 流石オレ、格が違うね。

 とまあ、オレがちと感傷に浸ってると。
 どういう思考の経過を辿ったか、後輩クンがもじもじしてる。
 はれ? 発情するタイミングおかしくね?

「せんぱぁい、そのぉ」
「いやね、マジで行っとけって、同窓会」
「いや、そのぉ、まだ時間あるんですよぉ。半ドン、いきなり貰っちゃったからぁ」
「ちなみに何時間くらい?」
「その、五時間くらい……」

 オレは口笛を吹いた。

「じゃ、大将にもらえねー盛り場を、自分らで作っちまいますか」
「さすが先輩! 好きです! 抱いて!」

 なんだ、その適当な返しは。














 メモメモ。メモメモ。


水妖:人魚とか磯女とかそんな感じ
B級デジャボン:特殊能力系が多くて、討伐はかなり厄介
手紙の郵送:ギルド経由でのサービス、ギルド所属の場合割安に!
訓練学校の礼服:色々必要な場面があるらしい。グラフィックイメージは欧米の卒業式のあれ
魔力込めた拳:人を相手に使わないように、人外には可の場合も
能力未知数のタイプ:経歴があって、ちょっと学校入ってきてとは言いづらいタイプ、主人公のホームにも時々押し付けられる
夏のソルビア河岸:びゅんびゅん風が吹いてるらしい



[7091] ちょっと後輩君と遊んできた 中 (微エロ?)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/27 02:06


 執拗に撫で、揉みしだく。
 すんすんと鼻を鳴らすのを耳にしながら、オレは後ろから後輩君の尻を弄んでいた。

 贅肉の少ない身体だけど、弛緩させてるっぽいから十分柔らかい。
 どの道、彼女は種族的に、身体が柔らかいんだけどもね。
 オレに体重掛かってっけど、それもそれで良い重みだわな。
 つか、後輩君ぐらいの体格なら、思いきりのっ掛かられても大して困らん。

 肩口に顔を乗せて、のんびりもみもみしていると。
 後輩君が、泣き言を言うような声で言ってきた。

「ん、んふ、んん、せ、先輩ィ」
「どした?」
「きょ、今日は、ん、どうします?」

 オレは後輩君の耳をカジカジしながら考えた。
 くすぐったそうな後輩君の喘ぎが、思考をぐちゃぐちゃに掻き混ぜる。
 ま、これで興奮して面白いこと思いついたりするからおkだけんど。

 後輩君も、姉さんと同じで色々と設定するのが嫌いじゃないタイプだ。
 オレも調子乗って、あれこれ設定するんだけどな。
 オレはふっと後輩君の耳に息吹き入れて、訊いてみた。

「今日は先輩系と先生系、どっちがいい?」
「せ、せんぱぁい、そ、その、前から、ん、したかっ、たのが」
「ん? どんなの?」
「ん、んあっ! ああ、そ、その、隊長って、んんん、ど、どうですか?」
「ほおほお。そりゃ新しいな」

 片手を胸に移して両手それぞれに緩急を付けながら、オレは考えた。
 喘ぎが聞こえる。零れた唾液が見える。
 意識がそっちに飛んでたのに気づいて戻す。オレも随分、興奮し始めてるみたいだね。

 提案どおり、隊長で行ってみるのも良いけど、久しぶりだしなあ。
 一つ、言ってみるかね。

「なあ。こっち向いて」
「は、はあ、ん、はい……」

 ムリムリに振り向いた後輩君に、オレは出来るだけソフトなキスをした。
 こういう甘いの、好きなんだよね、この子。

 舌を絡め始めたけど、性急にしたりはしない。
 ゆっくりと、胸に置いてある片手も動きを緩めて、少しずつ頭を茹だらせていく。
 尻にあった片手を彼女の頭に回して、優しく撫でる。撫でる。

 後輩君の目が急激に濁っていくのが分かる。目ぇ見合ってるからね。
 合わせた唇の間から、だらりとだらしなく唾が落ちる。
 鼻息も、病的なくらいに激しくなりつつあった。

 ありゃ、こりゃ酸欠になるね。ってか、ちとなり気味か。
 オレはゆっくりと口を外して、彼女に告げた。

「なあ」
「はあ、はあ、はあ、はあ……!」
「全部やってみたいと思わないか?」
「は、はあ、ぜ、全部、です、か?」

 耳に口を寄せる。囁く。

「お前の大好きな先輩も、苛めてくれる先生も、罰を与えてくれる隊長も。
 全部、今日はやってみたくないか?」
「ぜ、ぜんぶ……! い、いいんです、か?」
「ああ。時間あるだろ。数はこなせんけど、ゆっくり、全部だ。全部」
「……先輩ぃ……! なんか今日、優しいです……」

 後輩君は振り返って、抱き付いてきた。
 胸に顔を埋める彼女を抱き締め、頭を撫でてやる。

 いやね。
 本当言うと、彼女との縁をどうするか、微妙なんよ。
 ルートは結んでないけど、学生時代からの縁だからねえ。
 そこらの淫魔相手にするのと訳が違う。
 その辺り、姐さんがどう思うやら。

 後輩君とはお互い、楽しくやってきたつもりだけど。
 姐さんがもう相手するなって言うなら、オレは後輩君とバイバイだ。
 まあ、後輩君も上玉だし、相手なんざ幾らでもいるだろうからね。
 別に気にするこったねぇだろうけど、多少は気になる訳よ。オレも心優しいし。

 先生とか、姉さんとかなら事情あるから、また別なんだけどねえ。
 後輩君の事情って、これまた微妙なんだよね。

 この辺り、いま言ってもしゃーないし、犯った後にでも言うつもりだけどな。
 とりあえずいまは、楽しむ楽しむ。無粋なことは後々。

 オレは後輩君の頭の上から訊いてみた。

「良いじゃん別に。苛めてる訳じゃなし」
「そーですけど……」
「んで、どれから始めたいんよ?」
「んん。じゃあ折角だから、隊長から」
「ほいよ。設定詰めないとな」



 二、三ほど話し合って決める。

 発端は後輩君の失敗を咎める隊長の話。
 隊長のスタンスは後輩君を叱るつもりで軽く性奉仕の提案。
 隊長に好意を持ってる後輩君がそれを承諾。

 どうでも良いんだが、どうしてオレはこう、シナリオを決めるんだ。
 普通に恋人同士、とかだけで良いのに。なんでだろ。(そりゃ作者のしゅ……ry)

 ベッド脇のテーブルにあった椅子を取ってきて、適当に座る。
 いや、部屋の中心に置こうかと思ったんだけどね。幾ら安宿の狭い部屋とは言え、ど真ん中でオレがポツンと座ってるのもね……。
 その前に来て立ち止まった後輩君に、オレは言った。

 演技の始まり始まり。

「それで? 自分で何したか分かってる?」
「……はい」

 憔悴しきった顔で後輩君は言う。

 んー、姉さんほどじゃないけど、やっぱ後輩君も演技派だよね。
 いや、女ってもんはそんなもんか。姐さんとかは微妙だけど。

 オレは不機嫌な口調で質問を重ねる。

「前衛がさ、ああやってうろちょろしちゃ困るんよ。
 戦線がガタガタになったの、はっきり言ってやるけど、お前が下がってきたからだからな……。
 オレが中衛で死ぬ気でバランス取ってたんだよ。お前、オレに喧嘩売ってんの?」
「そ、そんなことは────」
「口ごたえでもしようってか?」
「い、いえ!」

 オレは露骨な溜め息を吐いた。

「お前がさ、中衛組のために戻ってきたんは分かってるよ。
 だからってな、これは戦闘だ。模擬戦みてぇなお遊びじゃねーの。
 戦線が崩れたら、採点が悪くなるだけじゃ済まんのよ。分かってる?」
「……はい」
「中衛組の誰かが好きかなんか知らんけど、お前もいい加減、中堅なんだぞ?
 前衛引っ張って、仕事こなせよ。出来て当然だろうが。
 まともな仕事できないなら、ギルド辞めるか、せめて他ぁ行ってくれ」
「す、すいません! 何でもします、だから、それだけは……!」

 オレは目を細めて、皮肉気に言った。(どうでも良いが、このシチュに慣れてるオレが欝だ……)

「何でも? この場でオレに犯られても良いってわけ?」
「や、やられ……」
「お前の種族知ってるオレが、言ってもおかしくないだろうが。
 苛立ってんだよ。分かるだろ? 誰のせいだと思ってんだよ、クソ!」

 吐き捨てた。
 後輩君が割りとマジにびくってしたくらい、きつく。

 うは、モロにリアル路線だな、これ。
 いやねえ。最近のパーティ、これくらいオブラート包んで言ってんのよ。
 色々種族が違うの多いから、難しいのよね。
 同じ人間ならアホか死ね、で終わりなんだけどね。

 あー、やべ、なんかマジで腹立ってきた。
 前にね、同じとは言わんけど、似たミスした馬鹿いたんだよね……。
 今回みたく、オレに好意持ってたとかじゃねーし、マジで馬鹿だったし。
 あんときは荒れたね。先生にえらく世話になった。

 俺の隊で人死に出て平然としてられるほど、オレもまだ達観しとらんのよ。
 その気分が出たか、オレは後輩君の返事を食う勢いで言い連ねた。

「なあ? オレ、人死に出したくないんよ。重傷出したくないんよ。分かる?
 両腕無くなったやつの先の人生、考えたことあるか?
 恋人の死因、告げに行ったことあるか?
 こんな仕事だからしゃーない、じゃすまねえんだよ!」
「……すいません、すいま、せ、せんでした」
「お前が泣いても、例えこの場で自殺しても、誰かが死んでたかもしんねえのに変わりねえんだよ。
 ああ、クソ、死人出なかったけどな、お前、次やったらタダで済むと思うなよ?」
「……は、はい……」

 あれ? どうエロに持ってこう。
 自分でやっときながら、思いつかん。

 まあ良いか。適当に終わらして、仕切り直しするべ。

「じゃ、もういいよ。お前も疲れてるだろ。
 さっさと休んどけよ。明日は報告もあるからな、寝坊すんなよ」
「……た、たいちょう」
「あん? あやまんなよこれ以上。切れるぞいい加減」
「そ、そうじゃ、な、ないんです」

 マジに嗚咽している後輩君にオレは首を捻った。
 あれ、こういう経験あるんかね。聞いた覚えはないけど。
 古傷抉っちまったなら、後で謝らんと。

 これで、好意持ってる隊長に見放されたみたいで辛かった、とか設定組んでたら。
 オレは後輩君の演技力を姉さん並にまで評価し直そうと思う。

 オレはひどく乱雑に、捨てるような言い口で言った。

「早く言え。オレも寝てぇんだよ」
「そ、その、言ってたの……」
「どれだよ。早く言えっつってんだよ」
「犯る、ってその……」

 お、軌道修正するのね。
 やるなあ。オレ諦めかけてたのに。

 オレは胡乱気な目を向けた。

「なに? 相手してくれんの? 溜まってるから容赦せんよ」
「か、構いません……こんなことでも、私に出来るのなら……」
「ふぅん? 殊勝なこっただけどな、そんな根詰めんで良いぞ?
 ダメだったら隊に居られないってだけだしな」

 優しい声で挑発してみる。
 おー、なんとか軌道修正できたじゃん。グッジョブ後輩君。

 後輩君は涙を指で切って、オレをしっかりと見て言った。

「大丈夫です。私を、な、慰み物に、して下さい」
「ほいよ。じゃ、とりあえず口で頼むわ」

 オレは立ち上がって、後輩君の前まで歩いていった。



 うめえ。やっぱ。
 こいつには、テクニックがある。

 元から相性の良い姐さんとは違う。
 元から上級淫魔である先生とも違う。
 元から水妖で年を重ねた姉さんとも違う。

 後輩君は、純粋に、テクニックがある。
 これは正直、境遇を考えても、すげぇの。いや、境遇を考えればこそ、さらにすげぇか?


 淫魔系ってのは、大概が自分の才能に溺れてる。
 それでも力押しが利くのは、本来、対象の人間が性的快楽に強くないためだ。

 快楽に踊らされてると、だな。
 力は入らない、意識は薄れる、判断が付かない、相手の言葉を聞いてしまう。
 良いことなんざ一つもない。戦場じゃ死ぬ。タイマンでもかわんねえな。
 
 だから逆に言えば、対淫魔で最重要なのは相手の能力の見極め。
 能力磨くような殊勝なタイプは滅多にいないからね。手の内の幅は狭いのよ。
 これを間違うとね、確実に死ぬ。
 上手くいっても二度と戦場に立てない体になる。
 そんだけ怖いのよ。対淫魔戦って。

 ビギナーの内は、まともに戦おうとせんこっちゃな。普通に死ぬから。
 前に読んだお話かなんかで、無限の快楽地獄に落とされるとか、馬鹿なこと書いてたんだけどね。
 有り得ない。普通に吸い尽くされて殺されるだけ。気持ち良いのなんて一瞬よ。
 そういうのをお望みなら、友人のツテで信頼できる淫魔系と契約しとけ。これが無難。

 まあ、オレの場合、周りがエグイのばっかだかんね……。
 正直、交雑系のサキュバスくらいなら、不意を取られやせんよ。大概ね。
(後ろから襲われちまうくらいに油断してたのは、オレも正直意外だったんだけどな。そこまで気ぃ抜いてなかったし)

 でも、後輩君が相手だったら、ちときついかな。
 テクニック鍛えてるタイプの淫魔は、はっきり言って一番戦いたくない。
 先生とか姉さんでも、敵対するなら隙を探せるけど、この手のタイプは一番隙がないかんね。

 そんな事をぐだぐだ考えながら、オレは後輩君に声を掛けた。

「なあ。そんなもんなのか」
「ん、……んん、ん、ん」
「これじゃ、いつまで経っても終わらんて」

 そう、後輩君はわざわざ稚拙なよう、演技してくれてる。
 口に入れるのが精一杯で、舌も動かないし、顔も動かせない。吸い付きもしない。
 ただ、必死にどうにかしようと、生暖かい口内を少しずつ動かしてるだけだ。

 この手の演技って、へたすりゃだれてるだけにしか感じられんから、やっぱ上手いよね、後輩君。

 ちなみに、隊長さんはさておき、オレはこういうの好きなんだけどね。
 頑張ってくれるタイプは好きだし。頭撫でたい。
 それに、慣れてないやつの自分用カスタマイズって燃えねえ?

 そんなことを思いつつ、オレは溜め息を吐いた。

「いいよ。もう。帰れって。別に隊でハブったりはせんから。
 これじゃ、オレもお前も寝不足になっただけ、それも欲求不満抱えて、ってなるぞ」

 ひどくつまらなそうに言って、オレは彼女から離れようとする。
 必死に付いて行こうとする後輩君だが、結局あっさりと、オレのブツは口から出ていった。

 後輩君はハアハアと荒く肩で息をしてる。

「お前さんの前衛としてのポテンシャルは評価してる。
 後は頭使えってことだ。今日は、オレは自分でやって寝るからお前も適当に寝ろよ。じゃあな」

 そう言って、ベッドの方に向かおうと振り返った。

 なんか、素が多い気がするなあ。ポテンシャルとかはガチ。
 後輩君がマジでとちったら、こんな流れかね。
 まあ、後輩君がセックスで問題外なんて有り得ないけど。

 と、後輩君が腰に縋りついてきた。
 必死にこっちに言ってくる。

「た、たいちょう、お願いします、もう少しさせて下さい!」
「つってもな。オレは無能が嫌いなんだ。知ってるだろ?」

 残酷なオレの言い口に、後輩君は言葉に詰まり、また嗚咽を漏らし始めた。
 オレはいかにもやれやれと言わんばかりの溜め息を吐く。

「あんね。お前が前衛の仕事ちゃんとするってなら、もうちっとは相手してやるよ。
 お前、約束できるか?」
「……は、はひ、ん、します、約束、します……」

 テーマは、律儀な部下に呆れてしゃーないから相手しよう、の図。
 苛立ってるから犯ると乱暴になりそうなんで、適当に引き剥がそうとしてた設定ね。
 それでもまだ犯ろうってんで、まあちったぁ荒れるの我慢してやるか、とか考えてる流れ。

 後輩君を立たせて、抱き締めてやる。
 縋りついてくる後輩君に、オレは軽くキスをして、ベッドまで抱えて運んでいった。
 ベッドの上に横たえて一言。

「犯ってやるよ。服脱げ」

 うは、ムードもクソもねえな。
 隊長のあまりの男っぷりにオレが惚れそうだ。

 んな下らないこと考えながら、オレも服を脱ぐ。

 互いに全裸になってから、オレは覆い被さるように後輩君の上にのっ掛かった。
 柔らかい。肉布団再び。ゴツゴツしてないのは、やっぱ女だよなあ。
 そのまま目を見て言う。

「手加減もなんもしねぇ。オレが犯りたいように犯す。覚悟、出来てんだろ」
「はい。隊長の好きなようにして下さい」

 いじらしさに、つい頭がカッとなる。
 こういうしおらしい態度が、後輩君の一番得意なところだ。
 目元に涙を溜めたまま、言うんよ。たまらんね。

 オレは体重をかけたまま、荒々しく口付けた。
 舌も容赦しないでぶち込んで。好きなだけ動かす。
 必死に合わせようと舌を動かす後輩君を、まるで気に掛けないで蹂躙する。

 ジュプジュプと。ぬめぬめと。またジュプジュプと。

 犯すように舌を動かし。
 それを受け入れようとする後輩君。
 稚拙で必死な動きに、オレは熱を感じて、また動きを早め。
 後輩君もまた、それに応えようともっと必死になって。

 あー、やっぱ後輩君のこの感じは良いね。骨抜きにされそう。

 オレは物が随分と膨れ上がってるのを感じて、後輩君の股の辺りに擦り付けた。
 後輩君も喉奥で喘ぎ、目元を赤くして、キスで応えてくる。

 オレはそんな後輩君を無視して、好き勝手に舌を抜き、口を離して、言った。

「もう入れるぞ。前戯もなんもねえ。ぶち込んで、犯るだけだ。それでいいだろ?」
「はい。たいちょう、たいちょうのを、ダメな私に、ぶちこんで、犯して下さぁい!」

 良い訳ないだろうに、後輩君は切れ切れにそう言って。
 理性を壊されたオレは、後輩君の脚を開いて、そのままぶち込んだ。宣言通り。

 オレの物を包み込む、後輩君の中は湿っぽく、温かく、優しくて。

 どんなに暴れても、包み込んでくれるような優しさがある。
 どんな我侭も、受け入れてくれるかのような優しさがある。

 オレ、これに弱いんだよね……。

 再び口付けた口内で、舌の動きに熱が入る。
 抱き締めた腕も、力が入る。痛いぐらいじゃなかろうか。
 それでも、後輩君の抱き締め返してくれている腕は、優しく抱き止めていてくれて。

 ジュププ、ジュプ、ジュプ、ジュプッ、ジュププ、ジュプっ────

 抽送が、熱を帯びた頭や背筋にうだされて、速まって。
 腰が抜けるほどの、芯に来る刺激に、ただただ逆らうように腰を振り。
 外れた口から洩れる後輩君の声に、更に頭はうだって。

「く、くはっ、た、たいちょ、たいちょうぅぅ……!!」
「か、あ、い、いぃ、ぞ、おま、え」
「あ、あああ、ああ、たいちょ、たいちょ、たいちょ……!!」

 必死に抱き締め返してくる腕の、優しさが好きだ。
 いつでもこっちに必死に応えてくれる、その優しさが好きだ。

 オレは、やっぱり、こいつが昔から────

 うだった頭に浮かんだフラッシュバック。
 ごちゃごちゃに絡まったそれを、ボーっと眺めて。

 ドピュルルルル、ドリュウルルウ、ドピュ、ドピュウうウ!

 オレはそのまま、後輩君の中に思い切り、いつもの液を吐き出していた。






 息が収まるまで、後輩君と横で並んで倒れてて。
 暫くしてから、オレはなんとなく、首を捻った。

「なんかさ、結局いつもみたく、最後は純愛ぽかったよな。嫌いじゃねぇけど」
「うう、でも先輩、途中まで言い方きつかったです……正直」
「すまん。なんかリアルのパーティ思い出して、変になってたわ。
 途中でエロ諦めかけたし。後輩君、軌道修正グッジョブだったわ、マジで」
「いや、だって、あのまま終わっちゃったらマジ泣きしそうだったんですよぉ」

 お。
 ってことは、あれはやっぱ嘘泣きなのね。
 やるね、後輩君。久しぶりなのに。びっくらこいた。

「おー。じゃああの泣きはマジじゃなかったか。後輩君の演技評価を上げとく」
「うー。でも、半分泣き入ってたんですよ? あれ、ひどかったですって」
「いやねえ。後輩君がしそうなミスじゃない? 多分、パーティ組んでしくったらあんな感じにするから」
「えぇー! 先輩とパーティ組みたいって言ったの、無かったことにしてもらえませんか……」
「こらこら。あれでダメとか、お前そりゃねぇって。オブラート多重だったし」
「あれでオブラート……先輩、どんなけ外道なんですか」
「そりゃ、命掛かってんだよ。口で言えてるだけ、耳で聞けてるだけマシだろ、普通」
「うぅ。それはそうですけどぉ」

 泣きの入った後輩君の頭を撫でる。
 まあ、あそこまで露骨なミスはせんでしょ。この子の場合。

 ああそうか、あんまミスしたことないんだな。こいつ。
 叱られたことないっつーのは考えられるわな。
 そりゃまずいなあ。こいつ、そろそろパーティ組む頃だろうに。

 っつーわけで、ピロートークなのに説教開始。

「お前もさ、パーティ組む頃だろ? きちっと言ってやらんといかんよ。
 きつい言い方でもしとかんと、分からん馬鹿は端から死んでくぞ」
「せ、先輩、そんな激戦区ばっかなんですか?」
「つかね、戦闘なめちゃいかんよ後輩君。死ぬときゃお前もオレも死ぬんだよ。
 中衛ってのは、それをさせねえためにマジで馬車馬みたいに働くんよ。いつもね。
 ましてやパーティ組むってんなら、死なせなきゃいいってわけでもねーし」
「あー。ちょっと分かります」
「ちょっとじゃダメだっての。自分のせいで誰か死んでからじゃ遅いのよ。分かる?」
「うわー、はい、分かりますけど、ピロートークじゃないですよね、明らか」
「後輩君と会う機会少ないしなあ。いや、良い機会だと思ったんよ、先輩的にね」

 後輩君が組むようなパーティで、被害出るのはガチでまずい。
 主力級に傷とか入ったら、へたすりゃ大将の進退問題になる。
 大将、何だかんだ言って後輩君庇うだろうしね。

 先生とか姐さんとかも色々言い出したりすると、本部とうちで亀裂入りかねん。
 んなことなったら、どうせしんどいのはオレだろうしな。
 本部から派遣されてる姉さんも立場的にきつくなるだろうし。

 そこまで後輩君に考えろ、とは言わんけどね。
 仕事はきっちりしてもらわんと。困るんだよねー。マジで。

「ま。説教臭いのはさ、あんま聞いても分からんでしょ。
 その内、姐さんと一緒に揉んでやるから。正規訓練でな。覚悟しとけよ」
「あ、はは、はははは、はああぁぁぁ」

 乾いた笑いと溜め息。
 いや、オレと姐さんのコンビはマジで鬼よ。
 オレが足止めて姐さんがタコ殴り。学生時代負けなし。

 ボコられりゃ、自分の未熟も分かるでしょ。
 即座にこんなプランが出るオレは、仕事が丁寧で律儀だね。惚れそう。

 ま、仕事の話はこんなもんにして。

「んじゃ、次の役いっとこうぜ。そろそろ落ち着いただろ?」
「はい。えーと、どっちからいきます?」
「先生系はタイプ被るしなあ。先輩系?」
「私的には先輩系は後に残したいなあ、と思うんですけど」
「ふんふん。じゃあ、先生系でちと変則型か」

 ちと頭を捻ってみた。
 基本、先生系はオレ主導のセックスなわけよ。
 結構ムリムリな流れとかもさせたりするんだけど。
 さっきそれっぽいの、やったしなあ。命令系の意味でね。

 じゃ、純愛系一色でいってみるかねえ。
 後輩君も好きそうだし。

「んじゃ、適当にいってみっから、合わせて」
「えぇー! 設定、ちゃんと組みましょうよ……」
「いいじゃんたまには。昔もそんな組んでなかったし」
「そりゃまあ、そうですけど」
「オレが先生やってたころ思い出してやってみよーぜー。そら、部屋の真ん中いくぞ」








[7091] ちょっと後輩君と遊んできた 中の下 (エロ?)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/27 02:07


 ベッドから離れて、部屋の真ん中に立つ。
 あ、服は着なおしてるよ? 雰囲気出るし。
 後輩君には目の前に立って貰ってる。

 後輩君に教えてた短い時期のこと、ちぃっと思い出しつつ。
 真顔で、オレは後輩君を直視した。

「オレはお前の事が好きだ」
「…………!」
「お前はさ、オレの事、気紛れに搾ろうとしか思ってないかも知らんけどな」

 テーマは、搾ろうとした淫魔に実は惚れてた先生。
 捕まったその場で告白した流れからはいってみた。うは、後輩君、分かるかなあ。

 くさい科白を繰り返してみる。

「オレはお前の事が好きだ」
「え……あ……うぅ」
「だから、お前が搾りたいなら、幾らでも付き合う。いつでも付き合う」
「せ、せん、ぱ……先生……」

 こらこら、素に戻るな。

 睨んだオレに気づいて、後輩君は慌てて言い直した。
 どうでも良いが、慌てる後輩君はかぁいいね。苛めたくなる。

「ほら、幾らでも犯ってくれて構わんぞ」
「せ、せんせい……、ほ、ほんとに、いいんですか?」
「そう言ってるだろう」
「だ、だって、い、いっぱい、いっぱいいっぱい、搾っちゃいますよ?」
「望むところだ」

 オレはなるべく混ぜ物無しの笑顔を浮かべた。
 目指すは先生。あの澄んだ感じが理想。無理だけどな!

 それでも後輩君には効果があったようで。
 一瞬目をそらして、目線を泳がせた。(ん? これも演技か?)

「お前がな、オレだけを見てる時間が長ければ、長いだけ良い。
 だから、幾らでも搾れ。幾らでも相手になる」
「せんせぇ……」

 じわりと涙を滲ませる後輩君に、さらに惚れる先生役のオレ。
 いや、実際オレも結構くるもんあるんだけど。

 それでもまだまごついてる後輩君に、オレは優しく訊ねた。

「何か、気になる事でもあるのか?」
「せんせぇ、その……」
「何でも言え。お前の事なら、何でも受け止めてやる」

 先生、オレは早くも口から砂糖を吐きそうです。ゲロゲロですよ、半端ねぇ。

「その……でも……」
「オレはな、お前の事なら、何でも知りたい」
「うう、せんせぇ……」

 躊躇いながらも、貫頭衣の裾を捲り始める後輩君。
 ああはいはい。それね。

 股のすぐ下まで捲ると、そこで手を止め。
 右の腿、それも少し内側の辺りに手を持っていった。
 人差し指と中指で、ある場所を横に引っ張ると。
 ぐぱっと、何もないように見えたその場所に、卑猥な穴が開いた。

「せんせぇ……気持ち、悪いでしょ?」

 泣きそうな声で後輩君は言った。

「こんなところに、吸精器があるような、出来損ない。気持ち、悪い、ですよね……」

 いや、知ってるオレには、そんなの言われても意味無いけどね。
 先生にも効果ないみたい。(なりきると、その辺の感情は割りと独立してんのよ)

「そこだけか?」
「えっ?」
「お前の吸精器はそこだけなのか、と訊いている」

 溜まっていた涙をボロボロ零し、後輩君は答えてくれた。

「うっ、ん、あ、こ、腰と、んっ、ひっく……左の、ん、脇腹、に……」

 涙を拭わず、立ち尽くす後輩君に。
 先生的なオレは、目の前まで近づき、優しく抱き締めた。

「あ、ああ、ん、せんせぇ、せんせぇっ!」
「何回ずつが、良い?」
「ん、ああ、せ、せんせぇ……?」
「お前の穴の中に、何回ずつ出せば良い?」
「え、えあ、あああ、ああああっ」
「お前の口と、下と、合わせて五つか。一度ずつで良いのか? 二度ずつか? それ以上か?」

 先生、オレ、二度ずつ以上はちょっと……体力的に……。

 そんな素の自分を無視して先生は喋る喋る。(そしてオレは口から砂糖を吐く吐く)
 抱擁をちと緩め、顔を覗き込むようにして言った。

「オレの精は、全部、お前のものだ。何度でも出してやる。
 ほら、何回が良いんだ? 言ってくれ。二度以上はさすがに覚悟せんといかんからな」

 呆けたような顔で、後輩君は動きを止めて。
 それから、本当に珍しい事なのだけど。
 我武者羅に、遮二無二に。

 オレに、噛り付くようなキスをしてきた。



 荒々しい息を押さえようともしないで。
 零れた涙を拭おうともしないで。

 後輩君はただただキスに専念していた。必死だった。

「ん、んんんっ、んんっ!」

 何を言いたいのか。オレにゃ分からんけど。
 後輩君は鼻から抜けた声で、唸りみたいなもんを吐き出して。
 手はオレの背中を締め付けて離さず。痛いくらいの締め付けで。

 どっか、親にしがみつく幼子みたいに、ただただ必死にオレに縋りついていた。

 良いなあ。後輩君良いよ、やっぱり。
 テクもあって、もう何回も犯りあってるってのに。
 どうして後輩君はいつも必死なんだろう。
 どうしてこうもまあ、可愛いんだろうな。

 オレも、頭が浮つくのが止められない。
 魅惑の術も、淫術も、房中術も、何もないってのに。
 昔っから、後輩君相手のときは、マジで理性が暴走する。

 唾液が甘い。
 身体がオレを全部受け止めてくれてる。
 息の荒さも、赤い頬も、流した涙も。
 ────全部オレのもんだ。オレだけのもんにする。

 骨抜きにされちまったオレは。
 受けに回っていたキスを、攻めに変えて。抱き締めて。

 後輩君が、笑った。
 本当に嬉しそうに。涙を流したまま。



 切れたオレが、後輩君を抱きかかえて。
 それでも、後輩君は首に回し直した両手を外さず、付けられた唇も、舌すらも外さず。
 必死に求めてくる後輩君に、オレはまた何本か頭の線が切れ。

 もう後輩君しか見えていなかった。

 ベッドに押し倒した彼女は、半身を傾けて、右の内腿を見せて。
 貫頭衣を上げた手もそのままに、熱っぽく言って────叫んできた。

「せんせえ、せんせぇせんせぇ……!」
「ああ」
「ここ、ここがいいの、ここ、ここここっ!」
「ああ……!」
「せんせぇの、早く、せんせぇのぶちこんでくださいっ! はやくぅっ!」

 返事をする暇もなく。
 既にズボンを脱ぎ捨てていたオレは。
 思考も何もあったもんじゃないまま、そこに物を突き入れていた。

「……ぐっ」
「そ、そう、そうです、もっと、ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅって」
「あ、……ああ」
「もっともっと、せんせぇ、もっとぉ!」
「ああ……!」

 久しぶりの彼女の中は。
 どうしようもなく気持ちよかった。

 熱い。膣と比べ物にならないぐらい熱い。
 柔い。どこまでも突き入れられそうなくらい深くて、柔い。
 吸う。食われているとしか思えないくらい、しつこく吸ってきている。

 ああ、頭で考えるとか。
 理性だとか。
 どうでもいい。ここで果てたい。ここで出したい。

 ぐチュ、グチュウうグ、グギュチュチュ、グチュ…………

 姿勢が悪い。腰が振りづらい。
 彼女がしがみついてきて、動きづらい。
 頭に手を回され、口に吸い付かれて、頭も動かない。

 いやどうでもいい。
 ただ腰を振る。しつこいぐらい。

「んん、んはぁっ、ああ、そ、もと、もっと、っそう、そ、んん、んっ!」

 口を離した彼女の声が響いて。
 オレはまた口付けて、腰を振るだけで。
 オレの中には、ペース配分も何もなかった。

 だから、一回目の射精はあっけなく。

 ドビュルルるうウルる、ビュリュリュルル、ビュルルるる!

 空気を吸おうと口が離れ。
 彼女の歓声が耳に入り。

 壊れた理性で、もっと腰を振ろうとするのだけど。

「はっ、あぁ、あぁぁぁあああ! せんせぃ、せんせぇえっ」

 顔を抱き締められて。
 足を絡められて。
 動けないことに不満を覚えて。
 包まれたことに満足を覚えて。

 そんなことはあっても、オレは彼女の言葉だけ、聞いていた。
 夢中になって、聞いていた。

「次は、腰で、お願い、しますっ! 
 その、次は、わき、で。
 一回、ずつ、で、いい、んで。かまわ、ない、んで────」
「あ、あぁ」
「たくさん、たくさん、あい、あいして、く、ださい……!」

 途切れ途切れの言葉を聞きながら。
 オレは緩められた彼女の手足を抜け、彼女をうつ伏せて。
 腰椎の右脇に、出してばかりのブツを突き入れた。



 彼女の腰穴の中は、粘着質だ。
 湧き出る液はギトギトにへばり付いてくる。
 それを無理に抽送していると、中は熱を帯びてくる。

 その熱は、オレの物に、腰に、頭に、胸に、心に、消えない火を灯す。

 入れてはいけない場所に入れているかのような背徳。
 後ろから犯しているかのような背徳。
 泣き叫ぶ彼女を無理に犯しているかのような背徳。

「やぁ、あああ、やぁあああ、そこ、ああ、んん、あああああぁあああっ!」

 ここは滅多に使わない筈なのに。いつでも敏感だった。

 ここに突き入れると、彼女は悦び泣き叫んで。
 微妙な腰の動きの違い一つに、悶絶し、身体中を引きつらせ、暴れようとする。
 それが無理にしているかのような興奮を呼び起こすのだ。

 少し斜めに、身体の中心に向かって突き入れる。
 身体を守るかのような、粘着質な液が、それを邪魔する。
 それを破ろうと無理に腰を振り、泣き叫びが聞こえ、また興奮して腰を振り。

 気付かぬうちに、背後から彼女を抱き締めていた。

「ああうあああ、せ、せんん、せんせぇ、せんせぇええ!」
「い、いま、だす、だしてやるから」

 出したてで、そんなにすぐ出る筈がないのに。
 身体は疲れが溜まっていて、出したいと思う筈もないのに。

 彼女の声を聞いているだけで、また出そうと思って。
 突き、引いて、突き、引いて。
 抽送を繰り返して。

 グググジュ、ジュブぶ、ブブウビュジュ、じゅウブジュ、ブジュるジュ、ジュジュジュ、ジュジュッ、ジュル────

 耐え切れずに身体を丸め、、背後から彼女の首に縋りついて。
 彼女の後頭部に顔を埋めた。

 汗の香り。薬湯の薬草の香り。戦塵の残り粕。
 全部、彼女の匂いだ。全部、自分の物なのだ。
 そんな思いで、しつこく何度も吸う。何度も何度も。吸い尽くすように。

 その間も、腰は動きを止めず。むしろ速まって。

 ジュジュッ、ジュジュ、ジュプる、ジュジュッ、ジュジュ、ジュ、ジュ、ジュっ……!

「せんせ、せんせぇ! せんせせんせせんせ……!」
「だすぞ!」
「おくおく! ふかいとこ、おもいきり、おくぅ! せんせぇっ!」

 背を腰をそらして叫んだ彼女に。
 オレも、元から大したことがなかった臨界を超えて。

 ビュルル、ビュルうるル、ビュル、ビュビュビュ、ビュルッ!

 オレは思い切り腰を突き入れて、どこまで続くか分からない中に、出せるだけ吐き出していた。



 彼女は止まらなかった。
 物惜しそうにオレの物を抜くと、振り返って。
 胸に縋りつくような姿勢で、オレの物をまさぐって。

「あぁ……は、はぁ、んん、はぁ、あぁん」

 ふと姿勢をずらし、右の肋骨の端にオレの物を入れた。

 連続の射精と、止まらない快楽にオレは目の前が白くなり始める……。

 ざらざらと乾いた中で、ぬるぬるになったオレの物は、想像以上にスムーズに入り。
 すぐに行き止まりに辿り着いた。
 彼女の脇穴は狭い。その分、奥まで突ける。

 彼女はもどかしげに身体を動かして、出し入れさせようとする。

 理性の切れた頭の中で。
 小さな、懐かしい過去の映像が浮かぶ。
 そういえば、先生をしていた頃も、彼女はこうして、必死に、身体を、うごかして、いて────

 そんな、脳の余白に生まれた思索も。
 彼女の声に押しつぶされた。

「せんせぇ……せんせ、せんせ、せんせ……」
「あ……あぁ」
「突いて、中身ぐちゃぐちゃにするくらい、いっぱい、おもいっきり、ついでくださぁい!」

 目の前が暗くなった気がした。

 気がつくと、腰を振って、何度も何度も、彼女の体の壁を叩いていた。

 胸にまで振りかかるほど、涎を撒き散らして叫ぶ彼女。
 必死に取り縋ろうとして、悪い姿勢も気にせず背に手を回そうとしている彼女。
 口淋しそうに、オレの腹に口付け続ける彼女。

 ああ、なんだろうか、もう、なんて、彼女は────

 突き、当たり、引いて、また突いて。
 吐き出し、また吐き出し。

 ドビュルルるう、ビュビュルルる、ビュビュビュ……!



 目の前が暗い。

 あれ。
 いつの間に、オレは、キスしてたんだ?
 つか、正面ってことは、もう脇穴では出したのか? 終わってたのか?

 ああ、しかし暗いな。
 久しぶりに見たわな。暗闇の中の光の渦。

 口が外された。
 ありゃ、中がなんかおかしいね。

 声。声が聞こえる。

「────肆の肆は死、伍の伍は誤、陸の陸は碌でもなく」

 思わず、声が洩れた。

「ん、な……」
「結実は信の証し。信約は偽りなるかな。されど信は失せず」

 急速に危機感が湧く。
 言葉は知らないが。言葉なんて何でも良いんだ。
 その言葉が、自分の言葉であれば、何でも良いんだ。

 感じる力は、確かに、生体の物で。根源の物で。

 これ気付いて、危機感を覚えないやつぁ戦士失格だ。
 むしろ、生物としても失格だろ!

「ちょ、あ、ま、んん……!」
「……んぷはぁ、先輩、貰っちゃいますから」
「んな!」

 上から乗られ、覆い被され。
 彼女の、膣は、本当に温くて、オレを誘い込む罠で。

 もう一度、キスされたとき。
 何の準備もなく、射精させられていた。
 洩れでるように、噴出すように、勢いよく出ていた。

 静かに閉ざされる意識。
 抱きすくめられる感覚だけが残って。

 ごっそりと奪い取られる生体エネルギー。
 たんまりと与えられる生体エネルギー。



 ああ、クソ、死ななきゃいいけどな、おい……。



 街道での、淫魔に襲われたときと比べ物にならないくらい、迂闊だったってのに。
 騙されたこたぁ、口惜しくて堪らないはずなのに。
 命に関わるかもしんねぇ事態だってぇのに。

 ああ、どうして。

 オレは、こんなにも、喜んでるんだろうなあ……。















 微妙に綺麗に書こうとしてる気配が感じられる。
 あんまりエロくなくて申し訳ないっす。



[7091] ちょっと後輩君と遊んできた 後
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/27 02:15


 熟睡から覚め、跳ね起きたオレの第一声は、悲鳴だった。

「ちょ、こら! 殺す気かお前!」
「え、ええ、えええええっ!」



 後輩君が渡してくれた水をがぶ飲みして、オレは口から力無く声を漏らした。

「あーあーあーあー」
「……先輩、その」
「いや、言い訳はいらんて」

 コップを握り締めたまんま、オレは目線を落とした。

 いやね、マジで死ぬかと思ったんよ……。
 生体エネルギー的に言うとな、さっきは枯渇状態に近かった。
 連日、淫魔系に吸われてるんだ、贅肉をこそぎ落とされていく感じだった訳だ。
 このまんまじゃ、もうそろそろ、基幹部分まで犯されかねんぐらいの勢いだったし。

 やばいやばい。マジで死ぬ。

 まあ、後輩君、上手くやってくれたからさ、大分回復したけどな。
 あれ、一つ間違ってたら、オレは物言わぬ木偶になってました。洒落にならん。

 オレが大きめの溜め息を吐くと。
 後輩君は、沈黙に耐えかねたように、震える声で言ってきた。

「せ、せんぱい……」
「なんだ?」
「その……、せんぱ、いが、いや、なら、わた、わたし……その」
「なあ、おい」
「は、はいっ!」

 オレが顔を上げると。
 泣き出しそうなほど、顔を歪めた後輩君の顔が見えた。

 ああ、はいはい。
 成程ねえ。

 勝手に契約結んだの、気にしてんのね。

 オレは未だ服も着ていない後輩君の頭を撫でた。
 後輩君は、何も言わず、顔を伏せた。

「あんなぁ……契約、オレが嫌って言ったら切る、ってか?」
「は、はい……そりゃ、その、わたしが、かってに……あ、んん、うぅ」
「言いたいこと全部ぶちまける前に、言っとくが」

 後輩君の頭をぽんぽんと叩きながら、オレは言い捨てた。

「あんなぁ。何が悲しゅうて、死に掛けなんながら結んだ契約を破棄するってんだ」
「で、でも私が勝手に……って死に掛け!?」
「おうよ。マジで死に掛けたぞ。猛省しとけ」

 顔を上げた後輩君が、呆けたような顔をしていた。
 オレ的には、その顔もかぁいいと思う訳だが、のん気に見てたら風邪引きそーだったんで。
 無視して脱ぎ散らしていた服を着始める。

 大体着終わった辺りで、後輩君は活動を再開した。
 手をぶんぶんと振りまわしながら言ってくる。

「いやだって、先輩! あれぐらい、先輩のエネルギー量からすれば……」
「そう思ってんのか知らんけどよ、姐さんも、先生も、姉さんも、みんなして搾るからだよ……」
「えええええええ!」

 何故か目を見開いて、口をパクパクさせている。
 どうでも良いが、後輩君、ちゃんと服着ないと風邪引くぞ。

 後輩君の服もついでに回収していると。
 後輩君が取り縋ってきた。腕に抱きつく感じで。

「だだだだって、そんな話、聞いてませんよ!?
 回ってたのだって、おととい帰ってきたってだけで……」
「話、聞いてない? 回ってただぁ?」

 振り返って、後輩君にジト目を送る。

 そういや、こいつ、妙にオレのことに詳しかったりする時がある。
 どこそこに行ったとか、どこそこで任務があったとか。誰それと寝たとか。

 話を先に出してくるんで、どこで聞いたのやらと思ってたけどな。
 なにやら、ちぃっと訊きたださにゃならんらしいな。
 特に、回ってたとってのは頂けん。誰だ、オレの情報を回してるやつ。

 オレの表情を見て、後輩君ははっと口を押さえた。
 かぁいいけど、だからって容赦はせんよ?

「わわわぁ、い、今のなしで、報告洩れにしといて下さい!」
「ふふん、お前、今の立場分かってんのか」
「う、うぐぐう」
「唸ってりゃ済まされるとは思うなよ、なあ?」
「うう、先輩、私の方が申し訳ないはずなのに、何だか私が被害者みたいです……」

 失敬な。オレが加害者だと?
 ……ああ、まあ、後輩君よく弄るし、基本的に加害ではあるわな。

「そいつは後に回してやる。気の効いた言い訳でも考えてろ。
 ま、口にした瞬間、リアルにお前、隊長モードでオブラート捨てて話すからな」
「そそそれって、きょきょきょ恐喝じゃ……」
「良いんだぜ、やりたきゃやれよ。拳骨で済むたぁ思うなよ、おい」
「出来る訳ないじゃないですか……女性の身体を大事にする的な意味で……」
「大事にしとけや。お前さんの身体、これからはずっとオレだけのもんなんだから」

 視線を逸らしていた後輩君が、驚いたように、ばっとこちらに向き直って。
 目を見開いて、口を開いて、呆けていた。

 んな、不思議なこと、口にしたもんかね。

 生体同士の繋がりでの契約なんぞ、最高位の契約だかんな。
 破棄に後遺症が残りかねんレベルだ。並大抵のもんじゃない。

 まず、普通ね、淫魔なんぞに生体エネルギー搾られたら死ぬんよ。これ常識。

 だから、最高位の契約でも死ぬ場合がある。
 わざわざ直で生体エネルギー交換する訳だかんね。
 繋がった部分なんか、ある意味でもう自分自身の一部だし。千切ったら不味いのよ。

 繋いだ以上は破棄できんし。
 契約結んだ以上は、互いの身は互いの物。
 まあ、オレの場合は多重契約な訳で。これで何件目だおい。

 いつまでも黙って睨み合ってるのにも飽きたんで。
 オレは服着せながら、ぶっちゃけておくことにした。

「つかね、契約切るとか、ないって。契約なめてんの?」
「だだ、だって、だってだって、私が勝手に……」
「あんなあ。契約っつーもんの仕組み、知らん訳じゃねーだろ。
 オレが賛同したから結ばれた。一方的に出来るもんじゃねーんだよ」
「でも、でもでも!」
「ああ、めんどうくせぇなおい」

 角帽まで被せてから。
 オレは後輩君を抱き締めた。

 身体をビクつかせる後輩君を手で撫で、宥めながら言う。

「事前通知ねぇのはまあ、礼儀知らずだけどな。
 今更、お前とオレとで、礼儀がどうだのこうだの、くだらんわな」
「………………」
「お前さんが契約したくて文言言って、オレが承諾した。それで良いじゃねぇか」
「でも、騙したのは、変わらないですから……」
「そだな。んじゃまあ、例えばの話だ」

 そのままの姿勢で、背中を撫でながら。
 オレはなんでもない口調で言う。

「この流れでなかったら、オレはお前に、お別れ言ってたかも知らん」
「……お、わか、れ……?」
「おうよ。姐さんとな、ぐだぐだ付き合ってきたけど、一昨日ほど、正式に付き合うって言いあったんだわ。
 姐さん次第だけどな、お前さんとの付き合いが多分、いま一番問題がある。
 先生とか、姉さんとか、あの辺は事情汲んでくれるだろうけど、お前はね……。
 悪ぃけどな、お前と姐さんなら姐さんの方、選ぶから」
「……そう、ですか……そうです、よね」
「それ考えりゃ、お前さんの選択に文句は言えんよ。
 契約結んだの、姐さん飛び切り怒るだろうけどねえ……ま、姐さんも淫魔系だから。納得してくれるでしょ」

 俺の手を振り解いて。
 後輩君は、ボロボロ涙を流しながら、言ってきた。

「違う、違うんです。そんな、そんなの、わ、わた、私、私は……!
 前から、私、ずっと、先輩と、契約結ぼうって、結びたいって、思ってて……。
 だって、だから、そんな……せんぱい……!」
「んじゃ、良いじゃん」

 オレは笑った。

「お前が契約結びたかった。だから文言言った。
 オレが結んでも良いと思った。だから承諾した。
 あんなあ、これのどこに問題があるってんだ、おい」

 後輩君は泣いた。
 声を出して。あんあんと。



「落ち着いたかー」
「……はい」

 オレの胸元から顔を上げた後輩君は、恥ずかしげに顔を逸らした。
 うむ、やっぱり一家に一台欲しいな。後輩クン。
 家に帰ったときに、すげぇ癒されそう。

 角帽のない後頭部を撫でながら、オレは告げておいた。

「契約の件はもういい。死に掛けたのだって、状況言ってなかったオレが悪かったんだし」
「そ、そういう訳にはいきませんって」
「んじゃ、ルーブリーフ亭で晩飯でも奢ってくれ。今度で良いから」
「財布的には目ん玉飛び出るほど痛いのに、全然贖罪には間に合ってないという恐ろしい罠……っ」
「いや、まあなぁ。一々、死に掛けたぐらいで贖罪うんぬんとか、お前律儀だな」
「……先輩、どんなギルド生活送ってるんですか……」
「死んでねえし、後遺症もねえんだから、どうでもいいと思うけどな」

 普通にオレは首を捻った。

 一々怨み残してたら、ギルドの面々の六割くらいは縊り殺してるはずだ。
 利害なんつーもんは、いつでも牙を剥く。恋人を縊り殺したいと思うぐらいには、あっさりと。
 姐さんだって、オレと組んでてでかい失敗りもあるし、オレだって当たり前にある。

 十年、酔狂でやってきた訳じゃねぇんだ。
 逐一、覚えてられんよ。覚えてたら生きてられん。

 そういや、姉さんにも言われたなあ。
 男は淡白で良いわねって。女はやっぱ、一々覚えてるもんなんかねえ。

 顔を上げてきていた後輩君は、やがて、胸に顔を寄せてきた。

「分かりました。晩飯一つで許して貰えるなら、私は喜んで飛びついちゃいます、その案」
「葡萄酒はエルポール産な。十五年物で」
「……やっぱ恨んじゃいませんか、先輩?」
「オレ的にはね、オレの知らないとこで情報網作ってた方がムカついてる」
「あ、あは、あははははは」

 乾いた笑みを浮かべる後輩君。

 泣きながら、何故だか色々と話してくれた後輩君によるとだな。
 あの姐さんを筆頭に、オレ関係の情報交換ネットワークがあるらしい。しかも学生時代から。
 姐さんと先生の情報交換連絡に、後輩君が入ってきて、わざわざネットワークを構築したとか。先生謹製で。

 大事なとこでは情報の出し惜しみする癖に(ここ二日の件が伏せられてる時点で明らかだわな)、俺の情報は結構細かいらしく。
 姐さんとの活動履歴、先生がオレから聞き出した事件の詳細、姉さんが保有しているギルドの活動履歴、その他諸々。
 会ってなくても、大体、オレが何をしているか把握できていたらしい。
 後輩君とは一年ぶりに会ったのに、大してブランク感じないのは、その辺りにも理由があるんだろうね。

 しかしね、姐さんと先生とか。
 一番信頼してた牙城を崩された気分だわ……。
 発案が姉さんとかなら、さいですか、と思うんだけどね。
 時期的に考えて、学生時代からあるんなら、姉さんはないわな。

 ただ、ま、ネットワークの軽量化等のカスタマイズはしたらしいけど。姉さん。
 淫魔専門の研究者の先生より、淫魔ネットワーク(ネットワークの土台に使われている触媒)に詳しいとかね。さすが姉さん。すげぇ。
 姉さんの実用志向の性格は、確かにそっちにも向いてそうだとは思うけどね。
 余談によりゃ、姉さん、姐さんと同じくらい淡白な内容の癖に、妙に面白いのを回すらしい。嫌な余談だな、おい。

 と、言う訳でね、オレは立腹中なのですよ。ぷりぷりですよ、ガチで。

「だから、ま、契約のこたぁ気にすんな」
「……はい」
「でもまあ、一個教えろ」
「なんです?」
「何日か前からな、不思議なことだらけなんよ」

 始まりは、あのしょぼいサキュバスからだ。

 そもそも、あのランクのサキュバスが襲ってくること自体がおかしい。
 アリがレンブロン山に立ち向かうくらい有り得ないんよ。
 つーのも、サキュバスってどいつもこいつも、鼻が良い。例えの意味でね。
 危険は絶対に回避する。淫魔慣れしてる相手なんて、上級淫魔でも避ける。
 オレが美味そうに見えたって、手を出してくるとか、普通に有り得ない。

 その上で。
 姐さんからの告白。
 先生の愛して発言。
 姉さんの名前を呼べ発言。

 そして、ここに至っての、後輩君の無断契約交渉。
 ここまできて、何も不思議に思わんやつの方がおかしいだろ。

 その辺りを、割りと丁寧に説明してみたんだが。
 どうも、反応は芳しくない感じ。

「申し訳ないですけど、他の方のことは、ちょっとわかりかねます……」
「オレ的には、後輩君がいきなり契約迫ってきたの、理由がわかりゃ良いんだ」
「うーん。説明しづらいんですけど」
「頑張って説明してくれや」

 後輩君は首を捻ってから、胡乱気な感で言ってきた。

「なんと言うか、今言っとかないと、後悔する時が来るって、そんな感じだったんです」
「お別れ辺りを考えりゃ、微妙に当たってるな。いや、違うか。オレの考え読んでたとかじゃないわな?」
「じゃないです。なんか、それとはまた違ったような気がします」
「ふーん。姐さんとかにも訊いてみるかねえ」

 後輩君は頷いた。

「あ、それじゃ、ネットで訊いてみますよ、私も」
「それで、オレとの契約のことを言い触らして、姐さんを激怒させる訳か」
「あ」
「あ、じゃねぇっての」
「あ、あはははは、そ、そんな、大丈夫ですって」

 オレは笑って言ってやった。

「……後輩君、知ってるかなあ。ルーブリーフ亭にゃ、蜂蜜酒のアイスがデザートのコースがあってだな」
「は、破産じゃ済みませんってそれ!?」
「おう。小さい家建つらしいな」
「……す、すみません、先輩の了解が出るまで、情報出すのは控えます……」
「分かればよろしい」

 オレは後輩君の頭を撫でてやった。






「と、ところで、先輩……」
「おう、なんだ」
「今日、全部、やってくれるんです、よね?」
「おー。この状況でそれを訊くお前にオレは脱帽」
「いや、帽子脱がされてんのは私ですけど」

 後輩君の角帽を回しながら、言って返した。

「それで、先輩版もやっときたい?」
「はい、まだ少しなら、時間もありますし、久しぶりですから……」
「生体エネルギー少しでも吸ったら、お前、蜂蜜酒のデザートコースな」
「は、ははははははい! どどどどないしょー、ななななんんかかかか、しくしくしくじりそうそうそう」
「はいはい、落ち着け落ち着け」



 吸わないよう吸わないようビビッてる後輩君がかぁいくて。
 オレもノリノリで色々とやっちまって。

 結局、後輩君は同窓会に遅刻しちまったとさ。どっとはらい。















 長いって……総計が50(kb)の大台に乗ってるよ……。
 次くらいは、さくっと短いのを書きたい。と言うかその予定っす。

 んでは、メモを残しときます。


最高位の契約:本来の契約は口約束だが、これは生体エネルギー同士でラインを繋いだ契約、強制力が半端ない
後輩クン:うちにも欲しい
ルーブリーフ亭:主人公のホームの高級料亭、グレードの高いコースはマジで半端ねぇ
葡萄酒:エルボール産は賛否が分かれがちだが、十五年物は定評有り、だから高い
ネット:システム的にはMLで、淫魔の魔力的性質を利用して登録を行う仕組みらしい
レンブロン山:大陸南方のちょー高い山
蜂蜜酒のデザート:貧乏人は仰ぎ見る事すら恐れ多い至高のコース、主人公とこの大将のお気に入り



[7091] ちょっとお化けを家に連れ帰った 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/29 01:01


 短編で書けるか挑戦してたはずが。唖然。
 目指せ10kb。だったんだけどね……。
















 どうも、オレです。
 風が冷えてきてるね。クソの諸君も身体に気をつけろよ。

 ん? いつもとテンションが違うってか?
 ああ、まあ、いつものあれは、枯れてるから空元気なんだよ。頑張ってんのよ、オレも。
 今も空元気気味だけどな、一々、テンション上げていこうって気分じゃない。
 つっても、別に調子悪ぃとか、本気で死に掛けとか、そういう訳じゃあない。

 いや、後輩君にはマジで殺されかけたけどね。ルート繋ぐ辺りで。
 ついでに明日明後日辺りもやべぇ。主に姐さんが。

 いや、それで凹んでるんじゃないよ?
 落ち着いてるだけだわな。考えるときくらい、落ち着かんとね。


 オレもね、ちいっと時間かけて考えたいときぐらいあるさね。



 夕暮れの街中で、羊の串焼きなんぞを食みながら、オレは家まで歩いていた。
 表のバザールをわざわざ通っているのは、腹ごしらえもあるけどのんびり歩きたかったのもある。
 ぶっちゃけ、家まで帰るのに、バザール通ったら時間掛かるからね。ギルド界隈からだと。

 家に帰りゃ、手紙の束が待ってるかんね。
 あんま、のんびり考えてもられんのよ。読む、書くの自動魔法と化すよ、オレは。

 考えてるブツは、まあ、クソの諸君もお察しの通り、後輩君の事だわな。
 折角だから聞いてくれ。相談だよ相談。

 ついでだ、後輩君のこともちいっと説明しとく。聞いとけ。
 そんでだな、なんかアドヴァイス思いついたら、即座に連絡してくれよ?


 後輩君との付き合いは、どの辺からだろ、地味に微妙だ。
 一応先輩、後輩関係にあってだな、ぶっちゃけその当時、搾られたのが最初なんだけどな。
 あれから、微妙に会ってない時期も長いし、オレがギルド入ってからかね。実際の付き合いは。

 後輩君はね、実はサキュバスなんだ。
 サキュバス、つまりは交雑系の下級淫魔。
 血の混じりようがサキュバスらしく、半端じゃなくてね、どの種族が元にあるか全くわからん。

 憶測だと、調べたところによるけどな、多分、北のアルリアンリード族の血が強いね。
 魔法の発動条件と発動サインに癖があってね、そこが少し似通ってるんよ。

 あ、アルリアンリード族もちいっと説明しとくわ。
 脱線気味で悪いね。今回は素で謝っとく。

 アルリアンリード族は、アィリーとロッドの二人の婚姻から生まれた族らしい。
 この二人、それぞれが族を構える淫魔の頭領で、族の混交が起こったらしいよ。
 だからまあ、二つの族は元の名前(これは不詳)を無くして、アルリアンリードの名を族として冠したんだってさ。

 北はね、族の性情は別としても、環境的に閉鎖的なんよ。
 山とか大河とか山脈とか沼とか、何かしらで分断されてんのよね。土地が。
 アルリアンリードの勢力圏も、一部地域以外からは入れない、えらい場所にあってね。
 ここも、先生のパリイカ一族たぁ理由が違うけど、純潔系の淫魔としちゃ有名だったりする。
 いや、有名じゃなきゃ、オレもこんなには覚えとらんよ。

 オレ予想だと、その外部と繋がった一部地域に暮らしてたアルリアンリードの支族なんじゃないかね、後輩君のご先祖さん。
 そこじゃ交易もしてるし、その辺で生まれた子供が南下したりしたんじゃないかって思うんだよね。

 前にも言った内容かもだけど、後輩君がサキュバスだから問題がある訳じゃない。
 後輩君、アルリアンリードの勢力圏で生まれた訳じゃないらしいけど、そこで生まれてても同じで問題ない。
 いや、族の生まれから考えりゃ分かるけどね、交雑への差別とかはないんよ。

 ただねえ、どう血が出たのか、変なとこに吸精器が出ちゃったでしょ?

 すげぇ気持ち良いんだけどさ、あんなとこどういう姿勢で突っ込めって言うんだろうよ。
 犯ったの三桁で効かないかも知れんのに、未だにベストの姿勢が見当たらん。
 まあ、いつも理性飛んでるからって理由もあるかも知らんが。てへり。

 んで、吸精器の話だわな。
 混ざり子に変な場所の吸精器ってたまにあるらしいけどね、後輩君、三つも出ちゃったしね……。
 これ珍しくって、結構、好奇の目に晒されたとこがあるらしいのよ。

 それが嫌で後輩君、人間族の国まで来て、あれやこれやあってギルドの学校に入ったんだそうだ。
 そんで、同じ学生(主に人間)を好奇心で搾って回ってて、オレにぶつかった訳。
 お、ようやく説明が追いついたね。


 まあ、後輩君との付き合い始めはそんなだけどね。
 ちなみにだな、後輩君にも言った、後輩君との付き合いが姐さん的に悪いってのは、別にその辺が理由じゃない。
 オレと淫魔系の知り合いなんざ、大概がそんな出会いだしね。先生もそんな感じだったし。
 単なる同級生からだった姐さんはマジで貴重。

 ぶっちゃけね。
 後輩君とは一時期、普通に付き合ってたんよ。恋人的な意味でね。
 そこら辺が不味いだろうからね……姐さん的に。

 先生してた頃の話なんだけどねえ。
 あ、簡単に説明しとくとだな、ギルドを出てすぐぐらいに、どんな不便や驚きがあるか後輩に教える事があんのよ。それで先生。
 んで、その辺りで後輩君と再会して、色々あって付き合うことになったんよ。

 付き合ってる頃は、特に後輩君の相手ばっかしてたからね……。
 あん頃はわりと一途なとこ、オレにもあってね。あー、犯ってる時の先生版の演技はわりとあの辺りに近いかも。
 マジで後輩君にせっせと貢いでたからねえ。精とか、生体エネルギーとか。

 オレがそん辺りでわりと派手に事故って、先生にまで迷惑掛けちまうまで、関係は続いてたんよ。

 だからねー、姐さん的に、後輩君との付き合いって浮気の範疇じゃねーかな、って思う訳よ。
 姐さんが嫌だって言ったら、後輩君とはバイバイ、これは仕方ないわな。


 ん? 仕方ないならぐちぐち考えてるなって?

 あー、考えてんのは後輩君との関係の話じゃなくてね。
 長いこと話してたけど、今のは前座。大事なのはこっから。

 なにを考えてるんだっつーと。
 後輩君が言ってた、今言わないと後悔するってやつ。あれのこと。

 淫魔はねえ、後輩君とも話してたけど、やたらと危機回避能力が高いの。
 例えばさ、オレがほとんど無防備だった学生時代はさておき、今なんか不用意に襲われたりはせんよ。
 知り合いでもない相手に、最初から下手に交渉されることもちらほら。これ、人間相手にゃ珍しいのよ、ガチで。

 羨ましいとか考えんでくれよ?
 一回限りと思ってか、思い切り吸われんのも多いからね……。
 生体の方はきちんと約束しとかないと、たまにトンでもないことなるしね。
 別に、快楽に飢えてる訳じゃないし、わりとボランティアなのよ。無償じゃないけど。

 あーまた脱線したな。すまんすまん。
 んでだな、そういう危機回避能力高い連中がね、みんな揃って行動始めた訳よ。何かしらね。
 オレの周囲だけで、異常事態が五件。それも同時期にね。
 これ、休み明けに大将に報告するけど、とんでもない状況には違いない。
 多分ね、調査が入るよ。

 もしね、後輩君が言ってるような感覚が、他の連中にもあったならね。
 これはガチでなんかあるかも知れん。わりと洒落にならんのが。
 これがオレオンリー現象だった場合、オレに何かあるのか。彼女らに何かあるのか。
 その辺り、分かんのは調査の結果待ちだろうね。

 オレ的には、これからも知り合いの淫魔連中がなんかしてくるなら、それも色々対処を考えにゃならんよね……。

 ああいや、ここいらは悩まんよ。クソの諸君に相談したりもせんよ。
 オレの関係の話だかんね。相談してもしゃーないし。


 んじゃ、何が相談ってな。聞いてくれよ。

 そういった条件を踏まえた上でだな。
 ルーブリーフ亭での晩飯、メニューをどうするかって話だよ。

 何かしら仕方ない理由なら、情状酌量の余地はあるんだけどなー……。
 あそこ、最安のメニューは昼でね。晩はどれもデジャボン。ちょーやばい。
 子牛の炙り焼きがメインのコースだと、多分、ちょうど後輩君の蓄えがすっ飛ぶ。

 これよりランクを上げるべきか下げるべきか、それともこのランクでいくか。

 折角のルーブリーフ亭ってのもね、オレ的にはね……涎が出るわけでね……。
 大将にお祝いで連れてって貰った以来だから、何年ぶりだ。思いだせん。
 ちなみに大将は、言ってる子牛のコースで来たね。すげぇよ、大将、半端ねぇよ。

 昨日言った蜂蜜酒のコースなら、オレが寿命で死ぬ辺りまで後輩君、タダ働き決定だな。
 これはちょっとばかり可愛そうな話じゃね?

 あれ、もしかして、二、三十年くらいなら問題ない?(まさに外道の発想)
 まあ、淫魔の人生だしな、それぐらいならおkかも。
 それなら、折角だし、蜂蜜酒いっとくけどね。じゅるり。

 そん辺り、クソの諸君の意見を聞いておきたかったんだ。
 思いついたら教えてくれよ?

 腹減ってて、頭茹だってた訳じゃないよ?



 オレは、串焼きん時に買った麦酒飲みきって、炙り鳥のタコ食って歩いてたんだけどね。
 通りを過ぎようかって辺りで、なんかびんみょーな違和感を感じたんよ。

 危機って言うにゃ、今一つ足らんような。
 足音もないから、気のせいじゃね、的な感じの気配よ。

 いやまあ、オレも色々恨み買ってるし、襲われる事もあるかも知らんけどね。
 このびんみょーな感じは、何とも言えんな。
 素人が殺気立ってるなら、もうちっと足音はっきりしてるしね。
 本気でギルド連中が殺す気なら、もっとびんびんに危機感出てるよ。

 なんかねえ。なんだこれ。
 タコを食いきって、オレはちぃっと振り返った。

 後ろにゃ喧騒。いつも通りのバザール。
 ようわからんねぇ。潜んでるのかね。

 脇の屋台のおばちゃんがケチ付けてくる。

「あんちゃんあんちゃん、ってかあんたか。止まったならなんか買ってけ」
「おうよ。アプリクある?」
「旬すぎてるから、腐っててもうちに文句言うんじゃないよ」
「わぁってる、オレは言わん、うちの大将経由して本部から召喚状くれてやる」
「とんでもねぇ」

 保存アプリクを四つ買い、付けてくれた袋に詰めてオレは歩くのを再開した。
 袋からは甘酸っぱい感じの良い匂い。オレもちょー満足。良いよねやっぱ、アプリクは。
 グァラ湯と一緒に、手紙書きの手慰みにするつもり。

 ただ、気配はやっぱある。相変わらず微妙だが。

 もうなんなんだろうね。一体。
 うっとうしいことこの上ない。
 嫌がらせとしちゃ最適かも知らんが、やり方がこすいよマジで。

 もう一回振り返ってみる。
 やっぱり、該当者ゼロ。何だこりゃ。

 んで、いきなり止まったから、また脇の屋台のおっちゃんが声を掛けてきて。

「おう、あんたか。何にする?」
「んじゃ、マンタンくれ、六個ね」
「食うねえ、仕事頑張ってる?」
「仕事は明日まで休みだけどさ、どうもね、うちのこれが張り切っててね」
「かか、うらやましいね、うちのカカァなんぞ、最近はな────」

 まあ、うちのこれは複数な訳だけども。
 屋台の親父に、そこまでは説明せんのよ。

 マンタンを買い、包みは解いてその場で食い始め。
 そのまま歩き始めるとまた気配。
 振り返る。誰もいない。
 んで、脇の酒屋のおばちゃんが言ってきて……。

「休みだって? なんか飲んでクか?」
「良いや。家で飲むし。例の西の酒頂戴」
「芋? ライス?」
「ライスで。瓶また持ってくっから、瓶代まけといて」
「あいあい、割ったらもう一本、買っテもらうヨ」
「ほいほい」

 酒を一本買って、歩き始めて。
 また気配を感じて、振り返って────。

 って無限ループかこれは!
 おっちゃんも話しかけてくんな!

「あんた、下の方がお疲れだって? うちのスープ買ってけよ」
「買ってくよ! つかなんだよ、これ、新手の商売か?」
「大丈夫か? 頭がやべぇなら、こっちのがお勧めだぜ?」
「ひでぇな親父さん。あ、そっちの普通ので良いわ。つかね、なんか、妙なのに追われてるくさいのよ」
「毎度。へぇ、妙なのね」
「微妙なんよ。殺気立ってないし、大した気配もせんし、足音もせんし、振り返っても誰も居らんし」
「じゃあ、気のせいだよ。お疲れさん」
「あんま油断してっと刺されるしなあ」
「刺される覚え、あんの?」
「商売柄ね」

 スユッカシュを受け取り、片手で啜りながら、片手に持ったマンタンの残りも齧り。
 もう振り向かないよ。そこの総菜屋のおっちゃん、期待されてももう買わんよ。マジで。

 ……まあ、視線に負けて、クルトの角切り、一盛りほど買っちまったけどね……。

 ようやっとバザールを抜けて、両手のブツも食い終わったんだけどな。
 手にはアプリクの袋と、中に入ったクルト、顔を出してるライス酒の瓶。

 なんか、やたらと手慰みが増えたね。
 ま、今晩は一人でのんびりするから、良いお供だけどねえ。



 それに、ようやっと、気配がはっきりしてきたし。

 淫魔系。つくづく縁があるね、最近は。
 姉さんみたく、問答無用に拉致ったりしない分、良識ある新手の子かねえ。だと楽なんだけど。

 肩を叩かれる前に、前の空き具合を確認して。
 叩かれる直前で、一足飛びで前に飛び出して、振り返る。

 防具はねぇし、不意突かれたらマジで死にかねんからね。

「誰だ、しつけぇのは!」



 振り返った先で、なんか女がいましてね。
 なんか、肩叩き損ねた手を戻して、両手を肩口でね、こうだらんとしてましてね。

 言った訳ですよ。

「う、うら、うらめしや……?」
「はあ?」
「……じゃあなかったっけ?」
「聞かれてもな」
















 食い物はウイグル多いね。
 主人公のとこは種族混交の国家だから、別にウイグルがモチーフって訳でもないけど。

 メモとか。目元か。


麦酒:エール、もしくはビールのこと、姐さんと飲んでたのと同じ
タコ:タコス≠蛸、厚手の蕎麦粉クレープの包み系料理、肉でも魚でも合う万能の調理法
アプリク:アプリコット、杏のこと、この世界独自の保存法で保存されてるっぽい
召喚状:おめでとう、これで君もギルド本部お墨付きの悪徳商人だ!
マンタン:マンタ、饅頭のこと、この場合は羊肉に各種野菜を餡にした饅頭
スユッカシュ:スユック・アシュ、汁ソバの一種らしい、トマトベースのスープ
クルト:硬くて酸っぱくて塩辛いチーズ



[7091] ちょっとお化けを家に連れ帰った 前の下
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/29 01:01


 お化けはありまっせ。
 嘘なんかじゃおまへん。



 高位系の存在の場合、結構簡単に霊化して生き残ったりするんよ。
 戦闘終わったらとりあえずお祓い。
 これギルドの常識ね。訓練学校で結構最初らへんに習うよ。

 特にデジャボンぐらいになると、かなり大掛かりな祭儀をしたりするんよ。
 オレも、この前の西での原住討伐で見てきたとこなんだけどね。すげぇよ。
 あっちだと、荒ぶる神を鎮めたりもするらしいから、かなり強力な術式でお祓いしてるね。びっくらこいたよ。

 あと、美人だった。祭儀官のお姉さん。
 向こうにいる間、何度か相手してもらったけど、上手かったなあ。
 大体相手してくれてた、あの子のたどたどしさも良かったけど、祭儀官のお姉さんもすげぇ良かった。
 行く機会ないだろうけど、あったらまた会いたいね。本心で思うよ。

 んで、まあ、霊化して存在するっつってもね。
 主神教の一部会派が言ってるみたく、肉を失う訳じゃない。
 元がねえ、高位系は肉の改変も出来るからね、肉の維持もわりとポンポンやる。

 だから、飯食ったり、話したり、なんか覚えたり、趣味に走ったり。
 どこが死んだんだよ、的な輩もちらほら。
 B級指定のデジャボンとかにゃ、よういるんよ、こういうの。



「そんで、実はお前も高位存在だったと」
「ま、そういうこっただねぇ」
「アホ抜かせ」

 目の前でアプリク齧ってる淫魔に、オレは手を振って見せた。
 あれだよ、テーブルのゴミ払うような、そんな感じで。

「お前、明らかサキュバスだっただろうが。
 純正の淫魔ならともかく、交雑種で位階上げるの、方法知らん訳じゃねーだろ」
「そりゃあね。基本は吸精だよ」
「そうなんだよ。特に人間の生体エネルギーの吸精。
 お前な、自分の腕前、分かってねー訳じゃないだろうな?」
「うるさいねえ、どうせ下手だよ、あたしゃ」

 本当にうるさげに、舌を出す彼女にオレは溜め息を吐いた。

 燃えるような、鮮やかな赤髪と。尖ったような黒の二目と。
 顎の細い、鋭角を思わせる顔立ちには、まあ確かに、覚えがあった。
 身に纏った白ドレスも、ぶっ倒れてるの見てた時に見てたブツだし。

 まあ、耳後ろの小羽まで切り取った相手だからねえ。

 こいつ、数日前に街道で殺した淫魔にそっくりなんだよ。(「ちょっと淫魔と戦ってみた」の彼女ね)
 本人かまでは知らん。その辺は今から訊くし。

「んじゃ、ま、訊くけどさ」
「なんだい?」
「オレに襲い掛かったとき、前から、後ろから?」
「はん、疑ってんの? 後ろからだよ」
「そん時、オレはアーマーはどうしてた?」
「馬鹿な話だけどね、脱いでたじゃないか、あんた」
「よし、偽者決定だな」

 オレは深く頷いた。

「オレは思慮深く、聡明で、警戒を怠らない歴戦の戦士なんだ。
 戦闘直後の戦場でアーマー脱ぐとか有り得ない。お前、何言ってんの? 馬鹿じゃない?」
「馬鹿はアンタだよ、このトンマが!」

 飲んでたグァラ湯噴き出して、彼女は言い募った。
 それを見て、オレは視線を鋭くした。グァラ湯愛好家の前で良い度胸じゃねぇか!

「その歴戦の戦士が、場を清めもしないでアーマー脱いでんじゃないよ!
 屍体ん中にデジャボンの二歩手前だって居たじゃないか!」

 彼女の反応に、とりあえず怒気を押さえて応えた。
 卓に置いてあった布巾は投げつけたけど。

「おー。本物決定くさいな。あの淫魔の姉妹かなんかで、覗きでもない限り」
「クソ高いズボン自分から裂いた変態に、変態扱いされたくないね」

 オレの動きが止まった。止めたんじゃない。止まったんだ。
 そしてぶち切れた。

「おいこら、テメェがな、あんなクソみたいな段取りしてなけりゃ、お互い楽しく済んだんだよ!
 クソ、あともう五、六発くらいするつもりだったってのに、テメェがクソだから……!」
「こっちのせいにするんじゃないよこのあんぽんたんが!
 あたしゃ、別にズボン裂けまで言ってなかっただろ! 脱げっつってたの、あんたが勝手に破ったんだろ!」
「いーや! 裂けっつってただろうが、この野郎!
 そもそもお前な、オレ殺してから戦利品奪う気ならな、もっと早い段階で脱がすだろ普通!
 雑魚いサキュバス相手に、頑張って楽しもうとしてたオレなんだ、あの場でストップ効くかよ!」
「雑魚だってぇえええ! って言うかね、あたしのせいにするんじゃないよ!」
「お前のせいだろうが!」

 叫びあって、息が切れたもんだから、お互いぜいぜい息を吐き。

 彼女は無言で机に零したグァラ湯を拭き拭き。
 オレはグァラ湯の残りを相手と自分のカップに注いだ。

 お互い飲んで、一呼吸入れる。

「ああ、あんがとね。さっきは折角のグァラ湯、ダメにして悪かったね」
「構わんよ。グァラ湯飲んでくれる相手にゃ、オレは優しくなれる」
「あー、確かにグァラ湯、淫魔にゃ人気ないね……」
「人間にも今一つでね、このでかい街中で、専門店一つ、喫茶店三つってどうよ……」
「苦労してんだね、あんたも……」
「分かってくれるか……同志よ」

 冷静になってみて、何故か妙な点で分かり合った。
 いや、グァラ湯飲みの知り合いが出来るのはマジで嬉しいんだけど。

 大体がね、初めて飲んだ有象無象の分際が、「なんだこいつぁ、肥溜め以下の臭いだぜ」とか言ったりするんだよ……。
 磯の香りが理解できん愚物が、偉そうな口叩きやがって……!

 まあ、そんな輩にゃ、肉体的に制裁を加えることにしてるが。
 人が出したもんに、んなケチ付けんなっての。
 つかね、思ったからって口に出すなよ。どんだけだよ。


 そんなこんなで、向こうも冷静になったらしい。
 グァラ湯飲み干してから、話してきた。

「あたしゃね、特殊系なんだよ」
「ああ。んじゃ、生まれつきで高位?」
「いんや。これでも年重ねてるからねえ」
「取得の方か。なら高位もあるわな」
「やっと納得してくれたねぇ」
「つかね、年重ねてるなら、ギルドまで触れが出るようなことはすんなよ……」
「あれは事故だったんだよ」

 赤々とした頭を掻き、サキュバスは言ってきた。

「ちぃっとね。あっちの部族長の血族が絡んできてねえ」
「あー。面倒臭いことなったのね」
「そうそう。ま、詳しくはまだ話さないけどさ」
「いや、良いよ。そんな関わる気ないし」

 オレは手を振って言った。

 殺した相手が復活してきてだな、家に来た訳だ。
 それが復讐じゃなさげってことは、なんか理由があるんだろうけどね。
 あんま関わりたくないのよ。面倒臭いし。

 オレの言葉に、サキュバスはにやりと笑った。

「そうもいかないよ」
「オレ、一介のギルド構成員。ギルドの決定に従うだけ」
「はん、何が言いたいわけ?」
「討伐手配が出てるお前が復活したなら、討伐再開だろ。
 オレがお前に関わるとすりゃ、また殺しに行く時だけだから」
「いいね、そのドライな感じ。気に入ったよ」

 サキュバスは目を細めた。

「でもね、あたしゃね、もう小羽が無いんだ。
 あたしが誰だか、もう誰にも証明できないんだよ?」
「ああ、それもそうか。なら適当にどっか行って暮らせよ」
「連れないねえ」
「殺す殺される関係が終わったってだけだろ。無関係だろうが」
「戦場で寝た仲だってのにね」

 オレは胡乱気な目で、サキュバスを見遣った。

「お前、なに馬鹿なこと言ってんの? サキュバスと寝たから何だっての」
「おーおー、さすがはネットワークの長。言うことが違うね」
「……ネットワーク、だと……?」

 ちょうどさっき聞いた、嫌な言葉じゃねぇか。おい。

 つーかあれ?
 もしかして、なんか不味くね?

 サキュバスは、何ともまあ淫魔らしく、淫猥に、厭らしく笑って見せてきた。

「ここの国にね、淫魔連中を侍らしてる人間がいるってね。あたしも風の噂で聞いてるよ?」
「んな馬鹿な。ってかそもそも、ネットって、クローズドなシステムだろ、あれは」
「だからね、その情報がオープンネットに回されてたら?」
「……え、マジで?」
「マジ。ど真ん中でマジ」

 オレは愕然とした。素だ。

 え、もしかして、オレの話すげぇ勢いで出回ってるとか?
 あの、もしかして、姉さんに拉致られてた時の「噂の」って、それだったりします?

 いやいやいやいや。それは不味いって。激マズだって。

 普通にギルド活動履歴も流れてるんでしょ?
 ギルドのパーティ構成とか、流れてたりしたら、普通に情報漏えいだよ。
 俺の首どころか、関係者全員の処罰も有り得るし。

 普通に焦ってるオレに、サキュバスは優しげに笑んできた。

「大丈夫、安心しなよ。ちぃっとこんな話があった、くらいしか流れてないからさ。
 ギルド関係で重要な情報はロックされてるみたいだからね」
「グッジョブだ。先生、いや多分姉さんだな、マジでグッジョブ過ぎる」

 へたり込みそう。座ってたから大丈夫だけど。
 いやね、深刻な事態にならんなら、良いよ、もうそれで。
 ネット自体にムカついてたんだけどさ、もう良いよ、なんか気が抜けたし。

 相変わらず優しく笑いながら、サキュバスは軽く言ってきた。

「それでね」
「なんだよ」
「あたしもね、閲覧にゃ制限あるけど、ツテで投稿くらいは出来るんだよ」
「なん、だと……?」

 オレは再び驚愕した。

「あたしがね、あることないこと、流したりしたら……どうなるかねぇ?」
「……そんなもん、ボクの周辺の皆様は信じたりしませんもん。絶対」
「どうかねぇ。本当に信じられるかい?」
「ごめんなさい。頭下げます。それだけは勘弁して下さい」

 オレは素で頭を下げた。
 やばいのよ。マジでやばいのよ。姐さんとか。姐さんとか。
 ぶち切れたらこぇえの。ホント。マジで。ガチで。

 姐さん、素直だかんね、普通に真に受けそうだし。
 んなしょーもない誤解を解くためだけに、うちのギルド支部の一線級戦力と肉体言語とか。ないない。
 ようやっと出張から帰ってきて、恋人宣言して、その数日後にボコとかね。ないない。マジでありえない。

 その事態、回避するためならね、オレは何の躊躇もしない。いくらでも頭下げるよ!

 でまあ、頭の上から掛かった言葉はね、なんか呆れてんのよ。
 ぶちきれるぞこんちくしょー!

「あんたねえ……ちっとは躊躇しなさいって」
「うっせ。頭下げて済むなら何度でも下げる。これがオレの生きる道」
「いやもう、良いや。頭上げなって」
「おk。頭上げます。ご注意下さい」

 いや、前にね、先生に頭下げてたときにね、先生近寄っててね……。
 カポーンと後頭部で顎を打ち上げたことあんのよ。
 あの時の半泣きの先生には、かなりきたけどね。にしてもひでぇ話だった。

 頭上げてみたら、なんかね、サキュバス君はやたらと優しい感じなのよ。目尻とか下げてね。
 うは、すげぇムカつくんですけど。殴って良いですかね?

 まあ、殴ったら色々面倒臭そうだし。
 とりあえずイライラは適当にほっぽり出して、オレは訊ねた。

「それで、結局何が目的? 死んでくれとかは受け付けんよ」
「なに、手配受けてたんだ。死んだくらいでぐだぐだ言いやしないよ」
「うむむ。その辺の言い方は高位くさいな」
「まあねえ。あたしからすりゃ、転職みたいなもんだしね、感覚で言やぁね」
「無けりゃ無いし、有ったら有るぐらいか。少し勉強になったわ」

 この辺りの話は、普通に面白い。
 先生辺りに聞きゃ良いんだろうけどね。聞いたことないし、先生も天然だからなあ。どう言うやら。

 ま、とりあえず、これで危険度は下がったっぽいな。
 今までの話で、嘘も吐いてなさそうだし。

 襲い掛かってきたら、普通に殺すつもりで色々用意してたんだけどねぇ。
 わざわざ自宅まで連れ込んだのだってそうだし。

 オレが感心してグァラ湯を飲み干していると。
 サキュバスはそんなオレの様子を眺めながら、言ってきた。

「じゃあ、目的を言っても良いかい?」
「おうよ。受付に制限はあるけどな」
「大したことじゃあないよ、あんたにはね」

 彼女はにたりと笑った。

「ちぃっとね、力を貸しておくれよ」
















 メモメモ。目も芽も。


高位系:霊的に上位で、各種特典有り
お祓い:宗教関係なく有り、宗教系は強力なの使ったりする
主神教:とある一神教の俗称
グァラ湯:一応補足、紫色で磯の匂いがする飲み物
特殊系:族の主要な能力以外に、秀でた能力を持つ者の事
取得:より上位の能力や力を取得する事



[7091] ちょっとお化けを家に連れ帰った 中 (エロ)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/29 01:01


「ん、んふ、ん、んく────ぷはぁっ!」

 随分と長いこと触れ合っていた口を離して。
 ハァハァと、喘ぎのように息を吐き出しながら、彼女は言った。

「あ、ああ、こ、こんな感じ、かい?」
「そうそう。ちょっと分かりやすいだろ?」
「そうだね、こっちの方が、色々、分かるかも」
「んじゃ、もう一回いってみるか」
「ちょっと、まっ……んんん」

 彼女は、当てられた唇に目を白黒させながらも。
 突き入れられた舌に、ねとねとと唾液を塗りつけるように、舌を擦り付けてきた。

 動きは良い。滑らかで、満遍なく全体になすり付けている。
 小娘のような焦りきった息遣いも、必死に瞑った目も、彼女の蓮っ葉な性格と相俟って良い。
 前に襲われたときなんかよりもずっと、意識せずに興奮して来ている。

 朱の髪の中に片手を入れ、頭を直に触り。
 もう片方の手は、首に回して肩下をしっかりと押さえて。

 ベッドの上で、座り込んだ彼女の口内に、オレはより深く舌を突き入れた。

「ん……! んん、んふぅ、んにゅ、んんむ、ん」

 良い子良い子と、オレは髪の中の手を動かして、撫ぜた。

 オレの動きに一瞬だけ詰まった彼女だったが。
 すぐに舌の動きを再開させ、今度はオレの舌の付け根まで、舌先を伸ばしていた。

 オレの舌を。
 はっきり分かるほどざらついた前舌で引っかいて。
 ぬめぬめとへばり付く舌の裏で己の口内に引っ張り込み。
 ゆっくりと円運動で、全体を嘗め回し、甘い唾液で塗れさせる。

 んぐぷ、ぐぷ、じゅぷる、じゅぷ…………

 唾液を吸い取り、逆にオレの舌を唾液塗れにして。
 唇でしごき、舌先で突き合わせ、舌で口内に押し付け。
 必死になって、オレを気持ち良くさせようとしているのが分かる。

 ああ、可愛いもんだねえ。
 こういう必死さは好きだ。やっぱり。

 オレはふと、撫でていた手と、回していた手とを外して。
 彼女が浮かせていた手を取って、オレの首に回させて。

 オレも彼女の背中に手を回して、そのまま押し倒した。

「んん……!」

 呻く彼女を気にも留めず。
 オレはそのまま、片手を伸ばして頭を掴むように支えて。
 今まで以上に舌を突き入れて、蹂躙し始めた。

 舐めて、こそいで、頬を裏から抉り、上唇の隙間で出し入れさせ。
 出来る限り、色々な箇所に、舌を運ばせた。

 彼女の舌はオレの動きに追いついていない。
 手も、何かをするではなく、ただしがみ付いているだけ。

 宙に浮き、行き場を失っていた彼女の足に、オレは足を絡めた。
 足を絡め、指を指で弄び、腿を擦り付ける。
 そうやって彼女の動きを封じて、ただひたすら口で嬲る。嬲り続ける。

 彼女の鼻息が、どうしようもなく耳に付くようになってから。
 オレはゆっくりと口を離し、身体を緩めた。


 二連続の長い長いキスと。
 二度目の結構な攻めとで。

 彼女は暫しの間、口を開いて天井を向き、必死に息を吸っては吐いてを繰り返していた。






 彼女の要求は、思いのほか、理解の届く範囲のもんだった。
 ちとビックリしたけども。

「ふむふむ。しかしお前、勇気あるなあ」
「どういうことだい?」
「淫魔が人間に性技を学ぶなんて、かなり屈辱じゃないか?」
「……そうも言ってられないんだよ。この国で頼れる相手もいないしさ」

 彼女の話はこんなものだった。

 霊的存在である彼女は、存在維持のために生きていた頃以上のエネルギーが必要で。
 んで、今まで用いてきた能力を使い、力を吸収するのには、多少の憚りがあるらしい。
 であるから、本来の淫魔としての吸精の方で、力の吸収を行いたいとか。

 しかしまあ、一般人相手であっても、彼女の精の吸い方は不味いんよ。
 下手なの置いといても、非効率だしさ、セオリーを知らない。
 ここいらはオレ予測だけど、人間から吸える限界も把握出来てないんじゃなかろうか。

 っつー訳で、彼女的には、オレに指導してもらいたいとか。
 正面から犯りあって、普通に潰したからね……認められたのかも知らんね。

 まあ、んな高度なやつじゃなくて良いから、吸う上でアドヴァイスぐらいは欲しいらしい。
 ついでにオレの精気を吸って、消失までの猶予を引き伸ばしたいとのこと。

 でもねえ、別にオレ、テクニシャンとかじゃないしね……。
 まあ、淫魔相手に関しちゃ多少は詳しいから、アドヴァイスくらいは出来るかも知らん。

 素直に縋ってくるサキュバス君も、可哀相に思えるしねぇ。

「なあ、頼むよ。殺しちまった縁だと思ってさ」
「いや、良いよ良いよ。聞いちまったらね、無視も出来んし」
「悪いね、恩に着るよ」

 つかね、一般人吸い切るかも知んないサキュバスを放置とか出来ないしね……。ギルド的に。

 せめてどれくらいまでなら吸って良いのか、その呼吸だけでも教えとかんと。
 街ん中で何人も吸い尽くしてたら、そりゃギルドも動くしさ。
 気まずいじゃん、討伐行って、ほっぽり出した相手と顔合わしたらさ。

 そんな訳でね、オレとしては引き受けた訳だ。
 んで、とりあえず一つ、制限を置いてみた。

「んじゃあね、まず、オレの攻めでいってみよう」
「サキュバスが、素直に人間に襲われろってのかい?」

 不満げな彼女に、オレは説教モードで説き伏せた。

「その発想がもう駄目。誘い受けはサキュバスの基本だよ。
 オレら、襲い掛かられたら警戒するけど、自分から犯ってる時って、普通はそんな警戒しないの。
 交雑系で非力なサキュバスはだな、まずこの技術を覚えておくこと。マジで基本。
 襲う側は高等テクだから、慣れてから頑張れ」

 サキュバスはちょっとの間、きょとんとこっちを見ていて。
 急に慌てた様子を見せ、何度も頷いた。

「あ、ああ、そうだったのかい……勉強になったよ」
「お前さん、高位淫魔っつーんだったら、頑張りゃムリムリでもいけるかも知らんけどね。
 最初は安全策でいっとけ。和姦なら、しょっ引かれづらいしな」
「分かったよ、じゃあ頼んだよ」

 とまあ、こんな具合に、犯る方向を決めた訳だ。
 ……べ、別に、このサキュバスを犯ってみたくなったとか、そそ、そういう訳じゃないんだからねっ!



 そんな事を思い出しつつ。
 オレは訊いてみていた。序盤戦についてね。

「どだったよ」
「す、済まないね、二度目のキスの途中から、結構きてたから……下手だっただろ?」
「いや、前のお前さんに比べりゃよっぽど良かったよ」
「へ? そうだったかい?」

 座り直した姿勢で、不思議そうに首を傾げるサキュバス。

 あー。素の方が良いね。この淫魔さんは。
 やっぱ戦場はその意味で楽だわな。
 こうも表情が見えたら、面倒くさいことこの上ない。殺し辛いからね。

 ちょっと可愛らしい仕草に胸打たれながら、オレは説明をした。

「まずね、基本は素の反応にあるんよ。覚えとけよー。
 何を参考にしたか、前のお前さんは下手くそな嬲り言葉だっただろ?」
「うぐ……どの辺が下手だったか、教えてくれないかい?」
「借り物なんだよ。言葉が全部。ぜんっぜん、伝わってこない。
 状況がこうだから、こう口にしてるって感じ。しかも性急だったし」

 嬲るなら、もっとねちっこく、しつこく、時間を掛けないとねえ。
 あんなさっさと抜いてちゃ駄目でしょ。普通に。

「それに比べるとね、今さっきのは素だった訳だ。素だったよな?」
「口惜しいけどね、そうだよ」
「正直言って、可愛かったよ。素直に応えようとしてる感じとかすげぇ良かった」
「そ、そうだった、かい? そりゃ、嬉しいね」

 少し恥ずかしそうに視線を落としたサキュバスっ娘さん。
 良いね良いね、それだよそれ。

「全部演技するのでも、半々で本気でもさ、その素の部分が基本。
 その生々しさでこっちを興奮させてだな、相手の意識を性交に集中させる。
 そうすりゃ、抜く度のエネルギー量も増えるし、隙も出来る」
「ふんふん」
「半端な演技ほどね、こっちが冷めるもんもないよ。
 最初から最後まで、完全にこっちを騙すにゃ、経験が必要だよ。
 お前さんはそれが足らんから、今は出来るだけ素の反応を大事にしとけ」
「具体的にはどうするんだい?」

 彼女の質問に、オレはキスすることで答えてみた。
 いきなりのキスに驚きながら、彼女は何とか応えようと舌を伸ばし。

 深みにはまる前に、オレは口を離した。

「今の感じ。分かるか?」
「ん? どういうことだい?」
「だから、いきなりされて驚いただろ? それでもまあ、キスに応えようとした訳だ。
 その時の心の動きと、そこにあった感情をきちんと把握しておくよーに」
「分かったよ。でも、表情とか、そういうのは気にしなくて構わないのかい?」
「長期戦だわな。そっちは。
 決まった表情の動きなんて、分かるやつは一発で分かるし、気付くと相当冷めるし。
 バリエーション増やした上で、一回こっきりの相手ならメッタメタに使っても良いかも知らんけどな。
 頭であれこれ考えるより、感情のまま動いて、相手の反応見たほうが楽だし効率的だろ」
「ふぅん」
「ま、なんか思いついたら使ってみて、反応みりゃ良いさ。それが経験」
「分かったよ」

 髪を掻いている彼女に、言ってやった。

「今日はとりあえず、素で感じてみてだな。その感覚を覚えてみろ」
「だから、そっちが攻め、って訳だね」
「おうよ。犯りながら、あれこれ言うけどな、あんまり考えんな。とりあえず覚える方向で」
「分かったよ。よろしく頼んだよ」

 頭を下げた彼女の仕草に、少しの違和感を覚えながら、オレは頷いていた。



 何度か軽いキスを繰り返してから。
 オレは彼女を押し倒して、胸に手を回していた。

 揉み解しながら、耳元で言う。

「オレはな、いま、お前に夢中なんだよ」
「ん、あ、む、夢中、なの、かい?」
「ああ、だからオレの手はこんなにも揉んでるんだ。揉みたくて堪らないから、揉んでる」
「あ、ん、そう、そうなの、かい……?」
「お前の顔をな、唾液まみれにしたい。お前をオレだけの物にしたい」
「は、あ、んん、ああ、そう、ああ……」
「だからお前は、それを受けとめてりゃ良い。感じてれば良い」
「あ、ああ、あああ……!」

 言い終えて、耳を舌でほじった。
 唾液を出し惜しみせず、むしろ垂らすように、耳にまぶす。
 それを舌で広げ、耳たぶに、耳奥に、耳の凹凸に満遍なく。しつこくまぶし付ける。

 素直に喘ぐ彼女に、オレは興奮の盛り上がりを感じながら。
 舌を頬に移して、こそぐように舐めまわした。
 上へ動かし、鼻の付け根を舐め回し、目の周りを執拗に舐める。

 一度口を外してみれば、口を開いたまま、唾液を垂れ流す彼女が見えた。
 何とも可愛らしいもんだと思うよ。マジで。

「そう、今の感じだよ。マジで可愛いよ。
 その調子で、もっと感じて。それを覚えて」

 反対側の耳にそう告げて舐め回し。
 反対側の目を舐め、鼻の横をほじくり、頬を舌で撫で回した。

 そして────鼻に噛み付くように、吸い付いてみた。

「は、あああ、ああ、ん、ああ……!」

 彼女の声を耳にしながら、そろりそろりと手を移していき。
 鎖骨や喉元を丁寧に撫で回して、ドレスの首元から、服の内に手を突き入れた。
 そのまま胸を強く揉みしだく。

「あぁあ────んん、むむんんん、んんっ、んむんるんんっ!」

 声を上げかけた彼女の口を塞いで。
 しつこくしつこく揉みしだく。解すように。壊すように。
 顔は押し付けるように、重みを預けるように、深く深く口付ける。

 と。
 彼女がふと、落としたままだった手を首に回して。
 こちらのキスに応え、激しく舌を口を動かし、蠢かし始めた。

 おお、さっきのキスん時の行動、思い出したんだなー。

 感心しながら、下腹に当たっている強張りを布越しに擦り付けてみると。
 足を腿に回して、もっともっとと言わんばかりに腰を押し付けてきた。
 その不自由さの中で、オレも上から押し潰すように、律動的に腰を押し付ける。

「んんむ、んんん、んんふ、んんっ、んん、んん、んんっ!」

 ぬめぬめと、彼女が舌を押し付け、舌を滑らせ。
 オレの舌は、彼女の中で迎え入れられ、しゃぶられ、舐め尽されていた。

 その唾液がピリピリと来て、さっきからずっと付けられてるせいで、ちと敏感になってきている。

 腰の動きに、彼女は同期して腰を動かしていて。
 入れている訳でもないのに、たかが布越しの触れ合いなのに、それにも結構な興奮が呼び起こされている。

 だからオレは、一旦身体を外すと、手際よく服を脱いだ。
 適当に放り出して、はあはあと胸で息をするサキュバスの白いドレスも脱がしに掛かる。
 背で締まる編み紐を緩め、殻を剥くように、腕で脱がしながら手で身体をなぞっていく。

 まず肩口を落とし。
 脇を通り。腰を通り。
 下肢を抜けて、足先からドレスを抜いて。

 少し落ち着く始めたサキュバスに、オレは覆い被さり、声を掛けた。

「どう? 良い感じ?」
「あ、ああ。長いこと、生きてるけど、ね、受けは、初めて……んっ、だから、ね」

 切れ切れの返しに、オレは身体を絡ませながら耳を舌でほじり。
 手ではまた、身体中を撫で回し、反応を見ながら。
 また言葉を掛けた。

「んじゃ、よっく覚えとけよ」
「あ、ああ。分かってるよ」
「いっぱい感じてな……それを覚える」
「あ、ああ」
「感じてな……興奮するんだ……それを覚える」
「ああ、ああ……」
「興奮、してるか? いや、興奮するんだよ」
「こう、ふん、だね……」
「感じるんだ。感じてればいい。ほら、目、つむって」
「あ、ああ、こうかい……?」
「そう、そのまま、そのまんま、感じるんだぞ」

 片手を尻に回し、片手は背や脇を撫で。
 愛撫はあくまで言葉の支えにして。

 しつこいぐらい、何度も何度も。
 頭に染みさせるくらい、声を送る。

「ほら、どうだ?」
「あ、ああ、いいよ、うん……」
「感じてるよな?」
「あ、ああ、ああ、いい、いいよ、そのまま、んん」
「ほら、口に出して、気持ちいいって、感じてるって」
「んん、ああ、ああ、きもち、きもちい、いいよ、きもちいい……」
「もっと、何度も、繰り返して、ほら、自分に言うみたいにな」
「きもちいぃ、きもちぃ、いいよぉ、いい、いいよぉ、それ、それ……」
「何度も、ほら、口に出して、言って、ほら、口に出して、何度もな」

 ────セオリーの一つ。口に出させる。
 快感の認識を、口に出すことで強制させる。認めさせる。
 勘違いの誘導もこれが基本だから。これマジ大事なのよ。

 と言う訳で、身体を撫で回しながら、しつこく言わせる。

 何度も何度も、手の動きに違いをつけて。刺激を変えて。
 どれもこれも気持ち良いのだと思い知らせながら。

 キスの直前で、声を掛ける。

「キス、するぞ」
「いい、やって、いいのぉ、それ、いいからぁ、んん、やってぇ」
「声出せないから、ずっと頭で考えてるんだ、いい、気持ちいい、って」
「んん、うん、いい、いいから、んん、かんがえるからぁ」
「良い子だ」

 オレは頭を撫でてから。
 今更、まどろっこしいソフトなキスをする。
 舌なんて入れない。ほとんど、口が触れてるだけのような。そんなキス。

 物足りなさそうな彼女を手で宥めつつ、少しずつ深めていく。
 じっくりと時間を掛けてから、舌を突き入れてみると。
 口の中は唾でグチュグチュになっていて、どこか甘い味も濃く、ねちゃねちゃで。

 どうもね、興奮の具合で微妙に濃度とかが変わるっぽいね。
 後で言ってやらんと。メモメモ。

 手を使わないよう、邪魔してた片手を外すと。
 彼女は首に手を回して、食らいつくようにキスを深めてきた。
 必死で、それでもさっきより色々と考えて動いてるらしく、滑らかで、複雑な動き。

 単純な舌技で言えば、彼女は下手じゃないし。
 必死な感じが結構好みなもんだから、やばいね、マジで興奮してきた。

 必死で応えてるのは良いんだけども。
 まあ、今回はオレが攻めですから。
 ムリムリに口を外して、囁く。

「舐めてくから」
「あ、ああん、んん、もっと、きすして、もっと」
「お前の身体、全部舐める。舐めたいんだ」
「んっ、はっ、んあ、そ、そう、なの?」
「お前の身体、全部欲しいんだ」
「ああ、んん、うれ、し、んん、いい、よ、ん、いっぱい、んん、なめて」
「ああ、いっぱい、声、出してくれよ」
「んん、わか、た……」

 愛撫に反応しながらの彼女に、許可を貰って。
 オレは顔から、ゆっくりと舐め回し始めた。

 顎は、吸い付き、食むように唇でくわえ。
 おとがいは、舌を伸ばして舐めて。
 首は、前面に涎を落とし、それを伸ばすように舐めて。

 少しずつ少しずつ、下へと下へと動いていく。
 彼女の上げる歓声を耳にしながら。それでもゆっくり、じっくりと。

 肩。肩口。鎖骨。
 優しく、触れるだけのように、時に吸い付いて。
 喉元。胸元。
 跡を残すように、しつこく、何度も何度も吸い、甘噛みする。

 そして、右の乳房の先に吸い付いたとき。
 彼女はオレの後頭部に手を重ねてきた。

「そこ、んん、いっぱい、きもちぃから、んん、そこ、んんんっ!」

 今回は彼女の感じるの優先なもんで。
 遠慮せず、オレは吸い付いて、左の乳には手を回して。
 刺激は最初から強く、飛ばしていった。

 余った左手は、尻に回して揉み回した。

 二手が触れる場所はもう、どうしようもなく汗ばんでいて。
 滑らかな肌が、掴みづらくて、それが嫌でしつこく揉んで。

 それに彼女は、ただ啼いて叫んでいた。

「あ、あつ、ああ、ああん、んん、もと、んん、いい、いいからぁ、もっとぉ!」

 緩急付けたりせず、早く、強く。
 徐々に力を上げて、そのまま突っ切る。

「は、はぁっ、ああ、んん、もっと、きもちぃ、そのまま、そのままぁあっっ!」

 ビクリと身体を大きく震わせて。
 ギュッと彼女がオレの頭を押さえてきたから。
 思い切り吸い上げ、思い切り捻り上げていた。

 ビュブルる、ビュウウルウる────

 唐突に、口の中に何かを吐き出されて、ちぃっとオレは驚いたけど。
 姐さんと同じ味だったもんで、そのまま無警戒に飲み下した。



 興奮を納めるつもりはない。
 彼女の手が緩んだ隙に、下腹まで移動して。
 彼女の股を大きく開いた。

「ああ、ん、そこ、なめて、くれる?」
「もちろん。たくさん言ってくれよ、きもちいいって」
「ああ、ああ、いっぱいいうよ、いっぱいいっぱい」

 童女のように、あどけなく笑う彼女が可愛くて。
 わりと素で、我慢利かなくなって、そのまま目の前にしゃぶりついていた。

 足こそ手で止めているが。
 彼女はすぐに手を頭に乗せて、ぐいぐいと押し付けてきた。

「ああ、いいよォ、そのまま、もっと、いいからぁ、きもちいぃからぁ!」

 さっきまでの比でなく、はしたない声を上げ続ける彼女に。
 普通に興奮させられながら、舐め回す。
 表面を、しつこく。突起も、肉襞も、分け隔てなく。舐める。舐める。

 ぐっ、ぐっと押し付けられながら、舐めてた訳だけども。
 ただ、オレは漏れでた愛液の味に、ふと疑問を感じた。

 んだもんで、焦らしも何もなしに、舌を穴に突き入れる。
 入り口からして、中に引き込もうと、ギュッと動いてきて。
 軽く入れるはずが、思い切り奥まで突き込んでいた。

 はあはあと吐息を漏らし、何度も叫びながら、オレの頭を押さえる彼女。

 それに興奮はしてるんだけども。
 それはそれとして、オレは疑問を検分した。
 つっても、九割方確信あんだけど。

 つー訳で、彼女の手を無理に外して、また覆い被さる。
 彼女は不満げに言って来た。

「んんぅ、もっと、いっぱい、いっぱいほしいのぉ、もっとぉ」
「ごめんな、もうオレ、入れたいんだ」
「んんん、もう、がまん、できない、の?」
「ああ、お前の中入れたい。我慢できない。我慢したくない」

 それを聞いた彼女は。
 やっぱり、さっきみたいにあどけなく笑って、頷いた。

「いいよぉ、いっぱい突いて? ぐっちゅぐちゅんなるまで、いっぱい、いっぱぁい」
「ああ、ありがと」

 オレはそのまま突き入れた。



 まあ、ある意味、予想通りなんだけどね。
 やばいっす。マジで腰抜けそう。

 いやぁ、実は、前回の分でかなり下に見てたけどね。
 マジです。この淫魔さんは、マジで上級です。
 多少ね、経験が足らんっぽいから、前は今一つだったんだけどね……。

 愛液は間違いなく、催淫系の特にきついので。ピリピリ来るね。
 気楽に奥まで突っ込んだら、そこにゃ例の、淫魔特有の穴ぼこさん。
 吸い付かれて、貪欲に取り付かれて、腰ががくんがくん来てます。うは、やべぇ。

 押し倒して、攻めに回ってんのに、オレは腰が止められなくて。
 それどころか、取り縋って、両手で必死に抱きついて、言っていた。

「あ、ああ、ん、い、いいよ、マジで、お前、いいよ……!」
「んんあ、んん、ほぉ、ほん、と……? うそ、じゃ、んんぁっ、ない……?」
「ああ、マジで……やべ、腰抜けそ」
「あ、んんん、んじゃ、あ、もっと、もっと、いっぱ、いっぱい」

 笑顔が、綺麗で。
 魅惑の術でもないのに、顔だけしか、目が行かなくって。

 腰を振る。
 振ってる自分と、喘いでる彼女しか、見えてない。

 グジュ、ジュプジュジュ、グジュ、ジュプる、ジュプ、ジュプ、グジュ…………

 目がチカチカしながら、彼女だけ見て。

「グジュグジュって、グジュグジュって、もっと、もっとぉ」
「やべ、もう出る、から……」
「いいよぉ、いっぱい、入れて、あたしん中、いっぱい、いっぱぁいぃ」

 何度も何度も。
 突いては吸い付かれ。
 引いては戻そうと取り縋られ。

 突き。戻して。突き。戻して。
 腰が痺れて、感覚も虚ろになって。

 視界まで薄れてきた辺りで、オレは必死に彼女に縋って。

 出したいような。
 ずっと突いていたいような。

 こうしてずっと彼女の顔だけを見て。
 彼女の上げる声だけを聞いて。
 ずっとずっと、そうしていたいような。

 グジュ、ジュプ、ジュプッ、ジュル、ジュプ、ジュジュ、ジュジュ、ジュジュジュ、ジュジュジュジュ…………!

 頭がぐちゃぐちゃの中。
 ただ腰だけが、痺れて、砕けそうになりながら。動いていて。

 突いて。抜いて。突いて。抜いて。
 でも、中から抜き出そうなんて思いもよらず。

 気がつくと、吐き出していた。
 思いっ切り。

 それこそ、彼女が言うように。
 いっぱい、いっぱい。



 ドビュルルるるるウウルウ、ドビュビュウルルル、ビュルル────!



 そんでやっぱ、オレは。
 いつも通り気絶した。ちょっとだけだけども。
















 やっぱり、前後半のバランスがおかしい。
 以後の課題です。まる。



[7091] ちょっとお化けを家に連れ帰った 後
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/29 01:02


 うん。なんだろうね。
 ブール湯飲んだら苦かったくらい、驚愕。

 数秒ほどの前後不覚から覚めたオレは、そんな詐欺にあった気分だった。
 まだ息も荒く、うわ言みたく良い良い言ってる彼女に、告げた。

「お前なぁ」
「あ、はあ、いぃ、んん、は、あ、な、んん、なに?」
「……いや、何でもないわ」



 とりあえず、服着て新しくグァラ湯を淹れながら。
 まだベッドでそっくり返ってる淫魔さんと批評会を始めたのである。

 つっても、まあ、オレ的にはごめんなさいから入る訳だが。

「えーとな、おい、もう話せそう?」
「あ、ああ……なんとか、ね」
「んじゃ、とりあえずね、ごめんなさい」

 素で謝った。
 ぶっちゃけね、最後の方は全然ダメダメでしたね。
 上級舐めてました。マジでごめんなさい。

 こっちに顔を回した彼女は、きょとんとしてたんだけどな。
 オレ的には謝らんと駄目なのよ。仕事出来なかった訳だし。

「なにに、謝ってんの、か、さっぱり、だけど、ね」
「いやねえ。入れてから、全然余裕なくてね、普通にオレが楽しんでただけでね……」
「あ、ああ、そうなの、かい?」
「おう」

 ごめんなさい、ともう一回頭を下げる。
 いやあ、安易に淫魔のレッスンなんぞ、引き受けるんじゃないね。
 昔と違って今なら、とか思ったけど。テンで駄目でした。がっくし。

 そう反省しながら、頭下げてたんだけど。
 頭から掛かってきた声は、犯る前のあれと違って、別に呆れてはいなかった。

「い、いいよ。最後は気持ちよく、なってくれたんだろ?」
「いやいや。基本は気持ち良いんよ? そん中で、最後は歯止め利かんかったの」

 最後だけ気持ち良いとか。不感症じゃないんだから。
 不感症だったらね、一々引き受けたりせんよ。こんなめんどいの。

 でもなんだろね、妙に嬉しそうなんよね、サキュバスさん。

 まあ、色々あったんだろうねえ。
 じゃなきゃ、特殊系つっても、こんな下手なのはないでしょ。普通。淫魔なんだから。

「そうかい……。楽しんでくれたんだね……」
「あー。なんだ、色々あるのかも知らんけどね、とりあえず批評いっとこうぜ」
「あ、ああ。お願いするよ」

 頷くサキュバスさんに、オレは頷き返した。
 ま、今回、感じるて覚えるのが目的だったから、技術云々をあれやこれや言わんけどね。

「ちと分かったんだけどね、お前さん、自分が感じた分だけ有利になるタイプっぽいわ」
「するってぇと、さっきみたいに感じてた方が良いって事かい?」
「おう。素の反応で結構かぁいかったのもあるけどな。
 まずね、お前さんの場合、唾液と、乳腺から出た腺液、愛液の三つが変わるっぽい」
「感じてると、その三つが変わるってのかい?」
「そそ」

 オレは順々に説明していった。

「唾液に元から過敏にする効果があるのは、前のでも分かってたんよ。
 でもね、今回は催淫性も出てた。これは前と違ってたんよ」
「それが、あたしが興奮してたからって?」
「そそ。まあ、何回か試してみなけりゃ分からんけどね。
 そういうタイプっているみたいだから。多分あってるでしょ。過敏の性質も結構強くなってたし」
「ふぅん。そうだったんだ」

 自分の事だろ、とは突っ込まない。
 割りとね、サキュバスってそういう自分の事に無頓着だったりするからね。
 自分の事なんぞ、人間だって他人の方が知っててもおかしくないし。

 一つ頷いてから、オレは続けた。

「乳のやつも、多分そうでしょ。前から出てたか?」
「いや、その、んんん、覚えはないねぇ、確かに」

 胡乱気な反応。
 やっぱ、本気で経験少ないんだろうね。

「イったのがトリガーかは、オレにゃ分からんけどね。
 興奮とその局部への集中、この二つで出るんじゃないかと思うよ。
 知り合いに、舌からそんな感じで出すのもいるし」
「ああ、そこ感じてたらって出る、って感じなんだね」
「そそ。だから、誘って舐めさせるのも手だね。
 効果ははっきりせんけど、これも催淫性はあったっぽいし。
 出すとき、頭押さえてりゃ飲ませられるしね」
「なるほどねえ」

 感心気に頷かれてしまった。

「んで、愛液。これが一番やばい。
 疑ってた訳じゃねーけど、これで確信したね、お前さんが高位淫魔だって」
「そんな変わってたかい? 前のときは、そっちも演技できてたんだろ?」
「まあね。だから興奮の度合いで変わるんかな、と思ったんよ。
 快感を強制して起こさせる、その構造があるっぽいよ。かなりえぐかったし。
 今回はガチで逝った。制御利かんで、さくっと意識まで飛んだからね」
「そ、そんなに、凄かったかい?」
「おうとも。つっても、人間相手だから、普通っちゃ普通だけどな」

 嬉しそうな彼女に、オレはグァラ湯を渡した。
 身体を起こして、フーフーしながら口をつけてる。

「あれ、熱いの駄目だったか?」
「いま、神経尖っててね。元は大丈夫だよ」
「ほいほい。悪かったわ、熱々渡しちまった」
「構わないよ」

 オレもグァラ湯に口を付ける。あつあつ。オレでも熱いわこれ。
 目が覚めるから、良い感じだけどな。

「その三つと、あと、下の方も興奮で変わってんじゃね?」
「愛液以外にもかい? 膣?」
「いや、なんて言うか知らんけどね、淫魔って膣の奥になんかあるでしょ。
 グチョグチョで、引きずり込もうってしてる場所が。種族によってね。
 そういや、あれってなんて呼んでんの?」

 うちの先生も名前は知らなかったんよ。
 オレら戦士は、そこに気をつけろ、で終わりだから、名前とか付けてないし。

 案の定、彼女も首を傾げた。

「吸精用の空洞なんだけどね、人間にはないのかい?」
「人間に吸精用の器官があったらおかしいだろうに。
 人間にゃあね、その先は子宮の入り口があんのよ。
 犯るときはそこ突いたりするんだけどね、淫魔相手だとそこが無いのか、そういや」

 よく考えりゃ、恐ろしい話だわな。

 男の感覚的には、ガツンガツン突きたい訳でね。
 子宮口突き上げるのは、プレイの一環でもある訳だし。

 それで突いた先が特性の吸精器。
 そのまま搾り取られて死ぬってか。
 いや、よく出来てるとは思うけどさ。えぐいね。

 まあ、名前は知らんかったらそれまでの話で。
 二人で首傾げてるのもあれなんで、グァラ湯で一服。

「グァラ湯入れるの上手いね、あんた」
「おうとも。ちょっと自信あるよ。暇なときは大概入れてるから。
 まあ、うちの知り合いの姉さんには負けるけど」

 姉さんのグァラ湯は異常。
 あれ飲んで分からないやつは、相当違いの分からない野郎だね。

 それで、ちぃっと姉さんの話をしてたんだけどね。
 彼女がふと、また首を傾げた。

「ひょっとしてだけどね」
「なんだ?」
「サアリィのこと、言ってる?」

 誰だそれ。

「知り合いに覚えないな、その名前は」
「愛称だからね。淫魔だから」
「ああ、はいはい。特徴とか教えてよ」
「そうだねえ。髪と目が紫でね」

 オレはグァラ湯飲みながらピタッと止まって。

「ああ、あとね、知ってるか分からないけどね。ナハルビファミリーのヤムゥーって一族の出だよ」

 グァラ湯吹いた。



 もったいない……。
 一日に二回もグァラ湯無駄にするなんて……。

「いや、そんな凹まなくても」
「だってな、だってな! グァラ湯だぞグァラ湯……。
 折角、今日は上手く入れられてたのに……。
 オレ、死ねば良いよ、マジで……」
「そこまで思い詰めるもんかね……?」

 ごめんよ、グァラ湯。
 グァラ湯愛好家としてオレ、最低だな。
 今度姉さんに会ったときに、一発殴って貰おう。

 まあ、いつまでも凹んでてもしゃーないので。
 オレ復活。涙目は拭きとっといたよ。

 と言う訳で、ちぃっと訊いてみる。

「────んでだな、ギルド本部所属の姉さんと知り合い? なんで、ギルドに手配されてんだよ……」
「復活早いよあんた……いやね、あれは事故だったんだって。仕様がなかったんだよ」

 苦笑しながら、ふと彼女は目を細めた。

「それにしても、あの子、ギルドに入ってたんだねえ。知らなかったよ」

 感慨深げにグァラ湯を啜る彼女に。
 とりあえず突っ込んでおいた。(ナニじゃなくてね)

「あの子、って姉さんより年上なの? 姉さん、五百は越えてた筈だぜ」
「千は降らないよ、あたしゃね」

 今度はグァラ湯吹かないよ。意地でも吹かない。

 にしてもね、先生クラスとはね。
 純正淫魔でも珍しいんだけどねえ。このランクの長生きっぷりは。
 サキュバスで言やぁ、記録もんじゃねぇの。

 とりあえず更に突っ込んでおいた。

「そうすっとな。おかしいだろ、おい。
 千歳越えてて、あのど下手っぷりはないだろ。どんだけだよ」
「うるさいねぇ」

 彼女は、本当にうるさげに顔を逸らした。



 あれこれ話してる内に、思い出した。

「そういやさ、お前さ」
「なんだい?」
「バザールでオレ付け回してたろ。あれなんで?」

 別に、殺意ある訳でもなし。
 さっさと声掛けりゃ良かったのに。

 いやまあ、あの場で申し出されても引き受けたかは微妙だけどね。
 オレ的には、グァラ湯飲んでくれたのが、指導を引き受けた理由の半分くらいだし。
 その意味じゃ、あの鬱陶しい流れは、サキュバスさん的に良かった訳だけども。

 彼女は不思議そうに首を傾げた。

「付け回してた、かい?」
「おうよ。つか、しらばっくれる意味ねぇだろ。
 バザールじゃ振り返っても誰もいねぇし、止まる度に店に捕まるし」

 つー訳で、戦利品を指し示す。
 机の上にゃ、マンタンの包み(中身は食った)とスユッカシュの深皿(これも食いきってある)。
 後は転げたアプリクが二つと、袋にゃクルトの山と酒瓶。

 それを眺めやってから、唐突にサキュバスは感嘆の声を上げた。

「へぇ、あんた、気付いてたのかい?」
「あんな微妙な気配、気付いたオレもあれだけどな」
「いやいや、大したもんだよ。あの子に気付いてたなんてね」
「あの子だぁ?」

 オレは眉を顰(ひそ)めた。
 つか、あれ、本人じゃなかったのか。気付かんかった。

 するってぇとだな。
 淫魔さんに害意があったら、今もどこかにいる他の仲間がオレを狙ってたかも、ってか。
 洒落にならんよ。これは。

 ネットの事と良い、思った以上に厄介な相手だ。
 かぁいい振りして、オレ気絶させたりしたし。いや、あれは天然だろうけど。

 グァラ湯飲み干して、彼女は言ってきた。

「そう。あれ、式霊だったんだよ」
「式、っつー事は、西出身か」
「片親がね」

 彼女は頷いて続けた。

「式の使い手はね、うちの部族じゃ結構居たんだけどね。
 あたし、と言うかその片親の家系が特殊系だったからさ、あたしも部族でそこそこの地位だったんだよ」
「ふぅん。んで、何の使い手なんだ?」

 何気なく、特に考えずに訊いて。
 グァラ湯を飲み下そうとコップを傾けていると。

 彼女、何を思ったんだろうね。
 いきなり力使って言い出したんだよ。



「死霊術士、さ」



 くわっとね。
 彼女の後ろから亡霊が数十匹出てね。

 いやまあ、演出だったんだろうね。



 ……オレは口に含んでたグァラ湯吹いてね。

 素で泣いた。
 大泣きした。おいおい泣いたね。
















 無駄に報告すると、47.8でした。(kb)
 アボガドバナナだよなあ。10とか前でもう超えてるよ。

 目も芽も。メモメモ。


ブール湯:一応、甘酸っぱい香りの激甘飲料
グァラ湯:専門店一つだからこの街では割高だったりする
式:西独特の魔法で、符に刻んで魔法を短縮化したり、他人に使えるようにしたり出来る



[7091] ちょっとギルドに寄ってきた 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/30 04:01


 今回は、ある種の総集編。キャラ総覧っす。
 主人公が知り合いの話しても分からんと思うのでキャラのイメージ強化を。やべ、ぶっちゃけちまった。

 しかし、短編のはずがとんでもない事に。
 と言う訳で、前半のみ投下しときます。続きは明日以降に。
















 目がしぱしぱしとるね。(再試のために深夜まで起きてた流川的な意味で)



 どうもオレです。
 今日はちと目付きがキツめで悪いね。(借金取立てに魔法使いそうな感じよ)
 女性ならキッとするあの感じは素敵だけど、野郎だと普通に柄悪いだけ。
 早く治んないかね。朝からテンション駄々下がりなんだけど。

 あー、寝不足とかじゃないから。
 安心したまえ、クソの諸君。
 別にね、あの淫魔さんと朝まで犯りあってた訳じゃないよ。

 あの後、吸い加減の講習で二回ほど犯って、それで止めたからね。
 実に健全だ。清々しいくらい。

 んでだな、そん後の手紙の読み書きがね……アレだったんよ。
 読んだのと、返信書いたの、淫魔さんが整理してくれたんで、大分楽にはなったんだけどね……。
 そういや淫魔さん、やたらとスキル高かったよ。さすが姉さんの姉御分。

 そういや、姉御って呼ぼうかと思ったけどね、微妙って言われたから止めたんよ。
 まあ、オレ、先生側だからね……先生が生徒に姉御って確かにどうよ……。



「どうしたんだい?」
「手紙の見すぎで目がしぱしぱしてる」
「はん、あの程度でそれじゃあ、管理職はやってらんないよ?」
「うっせ。プライヴェートと日常は違うんだよ」

 んな訳でね。
 今日は朝から、あの淫魔さんとギルド向かってる。
 それまでにはだな、聞くも涙、語るも涙の経緯があってだな。

 まあ、クソの諸君は暇だろ。聞いとけ。
 ついでに、淫魔さんから聞いた話もしといてやる。


 淫魔さん、やっぱサキュバスだったんだけど。
 ただ、片方は結構純正な方の種族出身なんだそうで。特殊系持ちの方の家系の話ね。

 西のこたぁオレも詳しかねぇから、大して話すことねぇけどな。
 特殊系持ちの方はね、アチェッリって、西の北寄りの方面で有名なデジャボンの血筋らしい。淫魔系じゃない、天狗系ね。
 その血筋は代々、死霊術を扱うとかで、この淫魔さんの片親はその力見込まれて、とある国まで嫁いで行ったのだそうで。
 その国は大して有名ではなさげなので割愛。これも西の、サキュバスの国ね。

 んで、この淫魔さん、そこで長らく祭司官をしていたのだとか。
 祭司官って祭儀官の取り纏めなんだけど、そもそもが祭儀官ってかなり高い地位にあるから、この淫魔さんはマジでエリート。
 そんで、最近になって、お役御免になったから、方々をのんびり回っていたのだそうだ。

 で、そこで例の話があったんよ。

 東のとある部族んとこで、ちとトラブったそうでね。
 討たれかけたの、やり返して、その上死霊術まで使って反撃して。
 その一件の首謀者、っつーか襲ってきたのが、そこの部族長の血族だったそうでね。
 そいつ殺したら、カンカンよ、カンカン。
 部族長ぶち切れて、人間種族のギルドにまで手配出した訳。すげぇ。

 そのトラブルの経緯がね。ぶっちゃけ失笑もんでね。

 血族君、この淫魔さんを誘ってだな、淫魔さんもそれに乗ったのよ。
 んで後になって、淫魔さんが具合悪かっただの何だのって血族君、ぶち切れてね。
 もっと嬲れとか何とか、前に犯ったときのあの嬲り言葉にも関わってるらしいけど、散々言われたらしくてね。
 まあ、淫魔さんが長生きしてんので、変に期待してたんだろうね。

 淫魔さんも最初はちょっと耐えてたけど、その内切れて殴り合い。
 余裕でボコにしたら、お付の人も掛かってきて、それ淫魔さんボコにしたら、今度は守衛。
 あれよあれよと、いつの間にか淫魔さん対屯所の全部隊、とかなってたそうな。

 聞くところによっちゃ、最終的に死人はその血族さんだけとか。
 すげぇ話だけど、淫魔さん、生き死に関係なく相手を操れるのだそうな。
 それで同士討ちさせて、しつこかった血族さんボコにしてたら、結構脆くてあっさり死んだそうな。
 残念ながら中位淫魔だったらしく、そのまま土に返ったそうで。アホだな。それで上級に食って掛かるとか。

 しかし、その域の死霊術ってのは、さすが千年生きてるだけあるよね。
 使えるやつ、大陸全土でも数えられるんじゃね?
 なにのん気にオレに殺されてんのって感じ。

 ……あー、しまった、今の言い方は分かんなかったんじゃね。だったらめんご。

 ちと補足しとくわ。
 死霊術ってね、便宜上そう言ってるだけで、対象は死霊だけじゃないんよ。
 生霊も含めた、霊っつーもんへの干渉の術式でね。
 大概、霊の残滓たる死霊を使うから死霊術って呼んでんだけど。
 要は、実力次第で誰も彼も操り放題のトンでも魔法なんよ。
 まあぶっちゃけ、使えるかどうかは才能によるんだけどね。この術はね。


 それでだな、手配されながらまた各所を放浪して、末に死んじまったこの淫魔さん。
 死んじまったから、もう前の名前は使えんのよね。
 色々立場も複雑らしいし。

 まあ、旧名使ってたら、喜々として例の部族長さんが賞金掛け直すだろうしね。

 だから、新しい名前を作るんだけど。
 登録のためには、後見人が要るんよ。名付け親っつーか。

 オレは、姉さんに頼めば、って適当に言ったんだけど。
 淫魔さん的には、妹分に頼むのはちょっと、らしい。
 いやまあね、オレも後輩君に名付け親になってもらうのは、抵抗あるかも知らん。先生なら可。


 だからまあ。こうなる訳よ。

「頼むよ。殺しちまった縁と思ってさ」
「いや、良いけど。名前、気に入らなくても知らんぞ」
「構やしないよ。なんだったら、あたしが自分で決めて、形だけでも構わないからさ」
「んー? まあ、折角だし、一応幾つか言ってみるけど」

 と言う訳で、幾つか名前言ってみて。(珍しい機会だから、オレもちと頭捻ってみてね)

 わりとあっさり決まっちまいました。名前。おめでとうおめでとう。
 呼び名用の愛称も決めたしね。めでたいめでたい。

 それで、とりあえずギルド行く事になったんよ。
 ギルド経由で、淫魔系のネットワークに新たな名前を流すの。
 その辺り、はぐれで居ると色々面倒でね。手順踏む必要があるのよ。

 名前を変えりゃ、淫魔さんは新しく生まれたのと同じ。
 旧悪が消えるから、犯罪履歴も帳消しになる。
 ただ、過去の経歴もないから、身一つの裸一貫っつー事だわな。

 いや、経歴ない一流死霊術士ってのも、結構怖い物あるけどね。



 んな訳で、のんびり歩きながら、オレは訊ねてみた。

「そういやさ」
「なんだい?」
「お前さん、これからどうすんの?」

 淫魔さんは顔を顰(しか)めた。

「折角、愛称知ってんだから、愛称で呼んどくれよ」
「あ、はいはい。フゥッラ、これからどうするつもり?」

 オレの言葉に、フゥッラは微笑んだ。

 良いね。良い笑顔だ。
 夏のベレベレ丘陵の風みたく、カラッとしてる。

 殺した相手に向ける顔とは思えんね。

「どうしようかねぇ。ホント言うと、まだ考えてないんだ」
「形だけっつってもな、後見人としちゃあ、大雑把にだけでも教えて貰いたいが」
「んん、後見人か、なんだかこそばいね」

 嬉しそうに笑う彼女には悪いが。
 オレの思考はわりとドライ。

「いやね、しょっ引かれたりしたら困るのオレだし」
「良いねえ。試しに困らせてみようか」
「やめい、仕事しづらくなる」

 朝飯を物色しながら、オレは手を振った。

 後見の対象がギルドに捕まったりしたらね。
 査定に関わるし。ちょー怖い。

 最悪、姉さん辺りが上手いことやらかして、借り一つになりかねん。
 姉さんに借り作ると怖いよー。マジでね、搾り取られるよ?
 あ、精的な意味だけじゃなくてね、金銭的にもね。
 血涙出るよ。体調的にゃ血尿も出るね。

 そんな事考えてる内に、お目当ての屋台に着いて、フゥッラに声を掛ける。

「フゥッラ、何食べる? おっちゃん、オレはヒャッル魚の蒸しで」
「あいよ」

 蕎麦粉の薄焼きの上で、チシャを敷いてデロル芋も並べて、その上にヒャッル魚。
 わりと淡白な、オレ的に朝飯定番のヒャッル魚のタコが手渡される。
 代金払ってフゥッラの方見ると。
 結構難しげな顔で、並んだ食材を見ていた。

 タコ齧りながら、訊ねる。

「どうったの?」
「すまないけどね、まだこの国の食べ物に、なれてないんだよ」
「あー。どれが良いかわかんないって?」
「そうなのさ」

 オレは訊ねた。

「朝はどれ系? 魚か、肉か、野菜か、果物か」
「あたしも魚が食べたいねえ」
「淡白系? 結構味があるの?」
「スパイスが効いてるのが良いんだけど」
「んじゃ、おっちゃん、フェル魚の香味焼きで」
「あいよ、優しいね兄ちゃん」
「女に良い顔すんのは当然」

 適当にあしらって、代金を支払う。

「あ、自分の分くらい、自分で払うよ」
「いや、良いって。これで街道の一件はチャラでよろしく」
「……えらく高くつく奢りだねえ」
「だろ?」

 笑って、オレは受け取ったタコを手渡した。



 食べ歩き食べ歩き。
 フゥッラは物珍しそうに周りを眺めてる。

「なんか欲しけりゃ、言えよー」
「それも、街道の件の償いかい?」
「おうよ。当然だろ?」
「当然、って事はないだろうにねぇ」

 フゥッラは肩を竦めた。

「んで、話戻すか。どうすんの?」
「この先の事、だったね」
「そそ。多分ね、ギルドでも訊かれるし」

 明らか、フゥッラは産まれてきた類じゃないしね。
 訳有り間違いなしの淫魔相手に、はいはい名前登録しますね、で済む訳がない。
 オレの後見で、姉さんが協力してくれても、仕事をどうするか、ってのは当然訊かれる。

 適当に搾って暮らします、なんて言った日にゃ、ギルドで捕まって出られなくなる。マジで。

 そん辺り、関係した以上、地味に心配してるんだけどね。
 フゥッラは、首を捻ってから、ちとアレな事を言い出した。

「そうだねぇ。ギルドの訓練学校にでも入ってみようかね?」
「いや。あのね。フゥッラさん」
「なんだい、改まって」
「訓練学校ってのはね、基本、能力足りない奴が入るの。分かる?」

 小勢とは言え、軍と争える死霊術士なんて、お呼びじゃない訳で。
 そう言うと、なんだか残念そうにフゥッラは言った。

「そうなのかい。訓練学校に入れば、活きの良いの、漁れるって聞いてたんだけどね」
「なんだそのガセ。っつーか、そんな噂があるから、淫魔連中は気軽ーに搾りやがるのか」
「ガセだったのかい。結構、耳にする噂だったんだけどね」
「じゃあ淫魔ネットで流しといてくれ。それやったバカは、大概が訴えられて性的隔離一ヶ月だ」
「げっ」

 本気でフゥッラは顔を顰めた。

「そりゃとんでもないね。なんだって噂なんか出てるのか、分かったもんじゃないよ」
「穿った見方すりゃ、ギルド側の客寄せなんじゃね。実際、それで淫魔系、来てるやつもいるし」

 それが理由で、って程でなくても、多少惹かれる理由にはなるみたいで。
 オレが相手してるギルドの方々にも、その辺りを愚痴ってた方がちらほら。
 後輩君にもその気配あるね。直では聞いてないけど。

 ま、ご愁傷様だけどな、入学時の規約をきちんと読んでない方が悪いっちゃ悪い。
 あるじゃん、都市法に反した者は過去の判例に従って処罰する、って項目が。

「だったら、ギルドの構成員としちゃ、困るんじゃないかい? あたしが噂消したりしたら」
「ま、オレの勝手な考えだけどさ」

 タコを噛み砕いて、話す。

「ただでさえね、淫魔系が人間の国で暮らすの、大変なのにさ。
 ギルドに入るとかね、風当たりきついし、仕事もきついし、全然お勧めできんのよ。
 それを騙すみたいな形で訓練学校に呼び込むの、気に食わないんだわ」

 必要なのは分かるけどね。

 ちとね、淫魔側の意見をよく聞いてるから、同情意識はあるんよ。
 ギルド側の必要悪なんぞ、淫魔側からすりゃ、関係ない話でね。
 オレも大概ドライだけど、こんなしょーもないレベルなら、逆に同情くらいするし。

 フゥッラは意外そうに、目を細めてたけども。

「ドライな割りに、意外に情のあるとこもあるんだねぇ」
「つってもね。だからって別に、オレが何かしら動いてる訳でもないから。結局ドライよ」
「へぇ、割りきりが良いんだね、随分と」
「頭一個しかないかんね。切る分は切る。これ大人の常識」

 フゥッラは目を細めたまま、くつくつと笑った。



 オレは話を続けた。

「ま、なんにせよね、オレ的にゃギルドは勧めんよ」
「そうかい?」
「そうなの。特に支部に直で入るのは止めとけ」
「どうしてだい?」
「うちはそうでもないが、へたすりゃ使い潰されんぞ」

 うちは大将があれだから、ムリムリは少ないけども。
 普通ね、人間じゃねーやつが支部の委託とか、鬼畜路線まっしぐら。

 メンタル? 疲労? 根性でなんとかしろ、化け物どもが、とか言われたりね。
 月で合わせて足してみたら、睡眠がちょうど一日分だった、とかね。
 笑えんよね。実話だぜ、これ。

 うちの国はこれで比較的、種族の差別論者少ない筈なんだけどね……。

 問題なんは、仕事量が元から半端ないとこ。ギルドのね。
 考えりゃ分かるけどね、人間以外の全ての種族が対象で。
 そん中で問題起こしたの片っ端から捕まえる。やべぇのは討伐。
 んで、現場じゃ兵隊さんがガツンガツン死ぬのよ、新人熟練関係なくね。

 どこの支部も人が足らんのよ。
 ストレスも溜まるから、クソみたいな差別も出る。

 これ、悪循環っつーか、職場環境の問題なんよ。
 上がしっかりしてりゃ、大分マシになるし。
 そうすりゃね、差別だって、まあ大したことねぇ範囲になるしな。

 そもそも、オレ的にゃ、うちの大将の考え方に賛成なんだけども。
 つまり、長生き種族を差別するのアホじゃね、的発想ね。うちの支部の方針でもある。

 人間なんぞ、よく生きて五十年。一線で働けるのなんて精々二十年。
 一方で、寿命短い最下級の淫魔でも、普通に二百年は生きるし、そのほとんどの期間が働ける訳で。
 人材的にね、他の種族の方が長持ちするんよ。死ななかったらだけどね。

 ちなみにうちの訓練学校で、淫魔が搾るのに寛容なのは、大将のその方針も関係してる。
 下手なとこでコト起こしたりしたら、マジで打首獄門とかあるよ。


 その辺を大雑把に説明すると。
 フゥッラは顔を顰めて訊ねてきた。

「そんなとこに居て、サアリィは大丈夫なのかい?」
「姉さん? 大丈夫大丈夫、強かだからあの人」
「へっ? あの子が、強かかい?」

 素っ頓狂な声を上げるフゥッラの姉御。あ、姉御は呼ばないんだった。

 ああ、やっぱ姉さん、昔は性格違ったのね。
 もしかして、オレの姉さん元は天然説、来たんじゃね?

「昔は違ったの? やっぱ」
「そうだねぇ。良い子だったけど、ちぃっとズレてたかね」
「キタコレ。やっぱ天然だったんだな! 姉さんめ!」
「……ちょっと、なんでそんな嬉しそうなんだい?」
「いや、デレたときに天然見れたら良いなあ、とか思ってね」

 フゥッラはすっと、目を細めた。

「あんた、あの子とも犯ってたんだね」
「おうとも。姉さんとは仲良くさせて貰ってます」
「ひどいこと、してんじゃないだろうね……?」
「そんな、滅相もない」

 オレはぶんぶんと首を横に振り回した。
 いやね、顔に死霊纏わり付かされたら、みんなこうなるよ。誰だってそうする。(オレもそうする)

 こうね、くわっとね。映像的には顔齧られてんのよ。なんか猛獣にね。
 これ、実体化させられた瞬間、オレの顔が砕けるんじゃね?

 んじゃ、なにのんびりしてんのかって?
 そんなもん、対応くらいしてるに決まってんだろ。
 両手がタコと手紙で塞がってるからって、十年物のギルド戦士舐めんな。
 
 まあ、それでも、怖いもんは怖いんだけどね……。

「姉さんとの性生活は姉さんに訊くべし。オレに訊いても信頼できないぴょん?」(深津の電波キタコレ)
「なんだいその口調は。まあ、言い分は分かったよ」

 死霊消してくれました。良かった良かった。(名付けた相手を即、殺さんで済んで)

「話戻すと、姉さんの場合は、本部の出向組みだけどね。
 本部の方が嫌になって、うちの大将見込んでこっちきたんよ」
「大将ってのは、ギルドの支部長かい?」
「そそ。みんな大将って呼んでるけどね。ギルドにゃ珍しい、人外の支部長なんよ」
「へぇ。それでここは違うって言うんだね」
「人間的には半々だけどね、評価は」

 オレ的には、大将は結構公正なタイプだと思うけどね。
 人によるんよ、人外への扱いをどうしてるか、大将のその部分の評価。

 別にね、大将派がみんな良いもん、反大将派がみんな悪もんなんて言わんよ。
 色々さ、人それぞれ経験あるし。つか、学校時代の絞られるのだって、マジで人死も出てるしね。
 混交国家な分、人外にもアレなの多いのよ。だからギルド大忙しなんだけど。
 
 例の人外差別論者も考え方の一つだかんね。
 極端な犯罪は見逃せんけど、考え方一つに目くじら立てる話じゃないわな。
 その辺が大将を評価して無くても仕方ないでしょ。考え方違うんだから。

 とは言え、人外からすりゃ、こっちと違って差別論台頭気味のギルド本部はちときついらしい。
 最近、上役で人外比率が減ってきてるみたいだし。向こうは色々大変なんだろうね。
 その辺、バランス取らんとダメだと思うけどね。オレは。

 なんつっても、うぜーの堪らなくなって、あの我慢強ぇ姉さんがこっち来るくらいだからね。
 本部、本格的に不味いかも知らんね。

「まあ、アレコレあるけど、ここんとこの支部はそう悪くないわな。
 だからってお勧めは出来んけど。忙しいし」
「じゃあ、あんたのお勧めはなんなんだい?」
「死霊術使えるなら、口寄せも出来んでしょ? どこ行っても警邏部か政治部にゃ重宝されるでしょ」
「また行政に関わるのも、ナンだけどねえ」

 首を傾げ、タコを齧るフゥッラさんに、オレは適当な返しをしておく。

「うちは種族間抗争も大して激しくないし、政治的には安定してるから。
 技能ある分にゃ、行政系で働いた方が無難よ。多分ね」
「多分、ってあんたね」
「だってオレ、ギルドの人間だし。行政系は人伝でしか知らんし」

 ごっくんと。(飲精じゃないよ、念のため)
 口ん中でちびっこくなったタコを飲み込んで、オレは続けた。

「ま、なんにせよ、大雑把に決めといてよ。
 言ったのと違ってても、後で更新すりゃ良いから」
「そうかい。あんがとね」
「いんや。手紙手伝ってくれたしね」

 オレは片手に持っていた手紙の束を掲げて見せた。



 と、遠くの方からオレを呼んでるっぽい声が聞こえた。
 元気っ娘め、叫ぶとかどんだけ若いんだ。

 とか思ってる間に、後ろから抱きつかれた。はぇえ。

「先輩っ! おはようございまっす!」
「やめて! こんなみんな見てる前でだなんて……」

 恥ずかしい、でも感じちゃうの……。(ビクンビクン)

 とか、あほな事ほざいてないで、後輩君を引っぺがし、投げようとする。
 するりと抜けられたけどね。惜しい。

「うわー、鬼畜ですね先輩。相変わらず。抱きついてきた相手、投げ飛ばそうとしますか普通?」
「あんね、お前とはルート繋いだ件でただでさえ姐さんちょー怖いの!
 この上、こんなもんまで見られたオレ殺されちゃうから!」

 投げるために振り向いた姿勢そのまんまで、順々に説いてみたら、意外に分かってもらえた。
 おー、後輩君、理解力があがっとるな。オレ的に評価1プラスだ。

「あー……なんか、素でごめんなさい」
「おうとも。命掛かってるから、あんまオレいじるな」
「うぃっす。了解っす」

 ギルド式敬礼で答えた後輩君。
 その後ろから、付いて来てたらしい子が目に入って。
 それ気にして、声掛けようかと思ったのだが。

 フゥッラにからかわれた。



「貸し一つにしようか?」
「何の事でゴザイマショウカ?」
「ネット、ある事ない事、彼女さん激怒?」
「お願いだから、それ、定番にしないで……」
















 今日もメモ。


天狗系:修練でその力を得るタイプの、修行大好き族、頑張ればデジャボンも目指せる
祭儀官・祭司官:前者は儀を司る下っ端で、後者はそれを管理する管理職(つまり頭)
ベレベレ丘陵:観光地の一つ、夏の青葉が感動的で、吹く風がちょー気持ち良い
チシャ:レタス的なもの
デロル芋:ジャガイモ的なもの
ヒャッル魚:淡水魚
フェル魚:海水魚、スパイス漬けで内地に送られる



[7091] ちょっとギルドに寄ってきた 前の下
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/30 04:01


 実はフゥッラさん、有名人だったらしい。
 素性教えたら、後輩君とその連れ、ちょーテンション上がったね。

「うわーうわーうわー、マジなんですか?
 マジでアチェッリの、あのコナラックァの元巫女長さんなんですか!?
 仕事で憂鬱な朝から、先輩どころか、巫女長さんに会えるだなんて……!」
「わ、わわ、わたし、ファっファンなんです、ああああ、握手お願いできますか!?」

 オレは警笛っぽい口笛を鳴らし、割って入った。

「はいはい。ファンの子は下がってねー」
「え、ちょ、なんですか先輩、いきなり!」
「スケジュール押してるから、ほら、どいたどいた」

 フゥッラを守るように立ちながら、先に進もうとすると。
 後輩君のお連れさんが、オレの袖を引っ張ってきた。結構弱い力で。

「そ、その、すいませんマネージャーさん!」
「いや、警邏兵役ね」
「あ、はい、えっと、えっと、警邏兵さん!」
「ごめんねー、ちょっと急いでるからねー」

 まるで相手しないで先に進もうとすると。
 袖持つ力が倍の倍のドンになった。うは、後輩君並だこの子の腕力。

 結構大人しめの感じ気取ってるっぽいし。こりゃガンデゥル鳥の声真似してるタイプだな。
 必死になってる辺りで、素が出てるんだろうなあ。

「そ、そんな、お願いします、お願いします!」
「はいはい、通りで迷惑だからねー。会場外はプライヴェート。アポなしはご法度ご法度」
「先輩、なんでそんな手慣れてるんですか……」

 正気に戻った後輩君が、ぼそりと言ってきた。

 いや、そりゃギルドの業務に決まってんでしょうが。
 警邏兵と一緒に某歌姫を守る仕事したんだけどね。
 すげぇよ、ひざまづいて拝みだすお婆ちゃんまで居たし。

 歌姫さんもわりと引いててね。
 この国じゃ人気絶頂だもんなあ。大変だよ、ホント。

 しかしね、大将がオレに回す業務って、仕事内容かメンバーが面倒臭いのばっかだな、おい。
 なんでこんな雑用くさい仕事ばっか回すんだか。いじめか。
 まあ、ベッドの上じゃ、オレが責める訳ですが。ぐふふ。

 てんやわんやも、フゥッラさんのベキラ鶴の一声で解消。

「仕事は良いのかい、嬢ちゃんたち」

 後輩君とその連れは非常に複雑な顔をした。
 ぶつぶつ言いだしたりもしたよ。 

「こ、声かけてもらえた、声かけてもらえた……けど……」
「く、くやしい、このままじゃ遅刻しそうだなんて……」

 で、フゥッラさんが声掛けてね。

「今日、用事でギルドに行くからね。良かったら昼でも食べないかい?」

 二人は感謝感激で、卒倒しかけてから、去っていきましたとさ。



「あれ、結局片方の子、紹介受けてないな」
「私は二人とも、全く分からないままなんだけどねえ」

 二人で顔を突き合わせて、ハテナですよ。
 まあ、後輩君については教える事にしたけどね。

「あの、オレに襲い掛かってきた方が、オレの知り合いなんだけどね」
「ライン繋いでるんだって?」
「まぁね。非アクティブで、他にももう何本か繋いでるけど」
「……あんた、本当に人間かい?」
「先祖になんかいるんじゃね? 知らんけど」

 脱線しかけた話を戻して。

「まあ、あの子、後輩君はオレの学生時代の後輩でね。
 ギルドで働いてるし、昼飯は一緒に食えるか微妙よ」
「内勤じゃあないのかい?」
「バリバリの前衛。そろそろ中堅入るベテランさんよ」
「へぇ。見かけによらないもんだねぇ」

 オレは言って返した。

「別に見かけによらない、っつー訳じゃないけどな。
 フゥッラさんよ、あんた、えらい人気じゃねーか」
「いや、あたしもびっくりだよ。どこでそんなに人気があったんだか」

 二人して首を傾げながら、ギルド支部へと向かった訳ですよ。



「すんません、二番の姉さん居ます?」
「失礼ですが、どなたの事でしょうか、お客様?」
「あー。二番のサールさんお願いします」
「はい。立て札を持って少々お待ち下さい」

 すげぇ、久しぶりにあからさまな事務処理されちまった。
 本部派遣の、新しい姉ちゃんだったんだけどね。人間の。

 横でフゥッラも苦笑してたし。

「ねえ、あんた、実はギルドに入ってないんじゃないのかい?」
「ああ……なんかオレ、いますげぇ外様気分を味わった」

 ちょっと凹みつつ、フゥッラと待合室に移ると。
 何故だか知り合いが居た。

「あれ? 先生、待合室で何してるんすか?」
「ちょっとね、お仕事で来てるの」

 ニコリと、相変わらずの透明な笑み。オレはそれ一発で骨抜きね。
 その表情のまま、先生はフゥッラの方に視線を移した。

「そちらの方は?」
「あ。新名登録に来た淫魔さんです。先日殺したって言ってた」
「あら、高位の方だったの? 貴男から聞いた話で、下位とばかり、思っていたのだけど」

 首を傾げる仕草に、オレの心はズタボロ。
 場所考えないで抱き締めたいね。小一時間くらい。

 ……ただね、この可愛さでね、オレの情報垂れ流しネットワーク作ってた訳でね。
 それ、この十年近く、オレに黙ってた訳でね。
 やっぱ先生、天然でどえらい事するタイプだ。こえぇ。

 フゥッラはそんなオレの戦々恐々の顔を無視して、自己紹介し始めた。

「初めまして、アチェッリの末、コナラックァで先の巫女長をしていた、しがないサキュバスです」

 にこやかに言うフゥッラに、先生は目を見開いて頷き、応えた。

「まあ、お噂はかねがね、聞いております。
 私は当ギルド支部で淫魔学者をしております、エールスファハンの末、パリイカの逸れ者に御座います」

 先生がにこりと笑うんだけど。
 フゥッラは不思議そうな顔をしてる。
 仲立ちとして、オレは先生に訊ねた。

「その、噂ってのはなんなんですか、先生?
 さっき後輩君に会ったんですけど、彼女のファンだとか言い出して、どうしたんだと思いましたよ」
「まあ、有名な話なのに。貴男は知らないのね」

 首を傾げてから、ぽんと手を打つ。
 なんだ、どうしてそう、先生の仕草は全部が全部、可憐なんだ。

「淫魔ネットで流れてる噂なのだから、貴男が知らないのも、無理もない話ね。
 私ったら、つい、失敗しちゃったわ」

 微笑まないで! マジで抱き締めたくなるから!
 そんなオレの葛藤を余所に、フゥッラの姉御は顔を引き攣らせて、訊ねた。

「もしかして、あの神殿の件、ですか……?」
「一番はそれね。でも、私はね、雄牛の串刺しの話だとか、沼の生き埋めの話だとかの方が好きなんですけどね」

 なんだその物騒な話は。
 正気に戻って、オレがフゥッラの方に振り返ると。
 締められたグル蛙みたいな声で、呻いた。

「あんた……」
「おう」
「ネットの件、二度と言わないから、訊かないでおくれ……後生だよ……」
「おk。誰にだって訊かれたくない事はあるわな」

 まあ、どうせ姐さん辺りから聞いとくんだけどね!(外道)
 いや、フゥッラ、マジで辛そうな顔してるんで、どうするか悩むとこだけどね……。

 でも、その空気を読まないからこそ、先生は天然。
 嬉しそうに喉元で手を合わせて、先生は言い募った。

「あの雄牛の話なんて、本当に感動しましたよ!
 特にあの、怯え惑う東の人々の前で啖呵を吐いて、グサっと心臓を一突きにした結末だなんて────!」
「せ、先生、そ、その話はその辺で……!」

 いや、マジでフゥッラさん、泣きかけなんで!



 聞くところによるとね。

 どうもね、フゥッラは祭司官辞めてから各地回っててさ。
 趣味で淫魔ネットに上げてたその旅行記が、半端なく人気だったらしいの。
 いや、人気だったってのは先生の話で、フゥッラの姉御は読者数とか見てなかったらしいけど。

 淫魔ネット、有料なのにね、トンでもねぇ読者数だったそうで。

「いや、その、ね……中身に、ついては、ね……」
「あ、うん。マジで訊かないから。他の淫魔連中にも訊かないから」
「すまない、ね…………」

 マジで意気消沈なフゥッラさんに、地味に時めいたね。

 先生は仕事で、そのままささっと出て行かれたんだけどね。
 残ったフゥッラさんはこの調子なんですわ。

 とりあえず話変える事にした。なんか気まずいし。

「あのさ」
「なんだい……?」
「前の街道での話、訊いてもいい?」
「あ、ああ、なんでも訊いておくれよ」

 即座に飛びついてきた。
 そんなに嫌なのね、旅行記の話。

 でも、良いのかね。
 昼飯の時、すげぇ勢いで後輩君と連れの彼女、言ってくるんじゃないかね。
 その雄牛の話とか、あれこれ。根掘り葉掘り。

 あまりに不憫で、指摘しづらいんだけども。

 ま、辛い事は後回し後回し。
 一応、オレもフォローするかね。一緒に食ってたら無視も出来んだろうし。

「まずね、疑問だけども、なんでオレ襲ってきたの?」
「アーマー脱いでる間抜けな相手なら、おかしくないだろ?」
「いやね。それでもオレは霊的にね、結構エグイことなってるでしょ。
 これ見て、なんの警戒もなしに襲い掛かるって、そこまで迂闊じゃないでしょうに。フゥッラも」
「ああ、確かにね」

 崩していた姿勢を直し、改めてオレを見つめ。
 フゥッラは目をすがめた。

「とんでもないねぇ。トラップだらけじゃないか」
「ライン繋いで吸ってもね、オレの考え一つで、逆に吸い付くせるんよ?」
「おっとろしい。淫魔が吸われてちゃあ、世話ないね」

 そう苦笑してから、フゥッラは首を傾げた。

「そういや、なんでだったんだろうね?」
「いや、それを知りたいのはオレの方なんだけど」

 後輩君の話ともリンクするけどね。
 なんかあるなら、オレ個人でも情報は集めときたいし。

 赤頭を掻きながら、フゥッラは言ってきた。

「そのね、あたし、言っただろ? 死霊術で死霊食ってるって」
「いや、聞いてないけど」

 初耳な話を、あたかも話し済みであるかのように言わんで欲しい。

「そうだったかい? まあ、それで高位に上ったんだけどね。
 だから、昔からそんなにね、人を襲ったりはしてないんだよ」
「それは聞かんでも分かる。あのど下手ぶりで分からんやつはおらんよ」
「あんたもいい加減、しつこいね」

 呆れたようにフゥッラは溜め息を吐き。
 頭を掻く手を止め、続けた。

「まあ、それでね、あんたをどうして襲ったかって言うとね。
 とんと見当が付かないんだよ。何となく、としか言えなくてね」
「何となくで取り殺されかけたオレが哀れですね」
「いやいや、殺そうとは思ってなかったんだよ? 隷属させて、ちぃっと搾ろうとは思ってたけどね」
「それで返り討ちとか。こりゃ、一ヶ月は酒の肴に困らんね」(まさにプギャー)
「あんたねぇ……」

 フゥッラは溜め息をもう一つ。
 いや、溜め息吐きたいのはこっちもだよ。

 いやだってね、これはひどい話だよ。
 上級淫魔が気楽に襲って返り討ちとか。どんだけだよ。マジで笑い種だよ。

 つかね、搾るだけなら先にそう言えっての。
 マジで犯り合う必要なかったとか、マジで脱力もんだよ。オレのズボン返せ。

 しかもな。するとな。
 殺して小羽まで刈ったオレが悪党みたいじゃん。
 戦闘だったんだから、オレとしちゃ当然の対応だったんだけどね。
 こん辺りは、下手な話し方すっと後輩君とかがギャーギャー言いそう。

 ふと、視線を逸らしていたフゥッラさんが向き直って言ってきた。

「何と言うかね。死霊が囁いたとしか言えないんだよ」
「例え? それともマジで?」
「どっちとも付かないけどね。あんたをね、襲えって声、聞いたんだよ」

 おやおや。
 これはちと、メモっとく必要があるね。

 単にオレを潰す気の誰かが、魔法で囁いたとかなら別だけどね。
 千年生きてる高位淫魔が、魔法の干渉をあっさり受けるとは考えづらいっしょ。

 特にだな。
 高位淫魔が感じた、いわゆる“声”だって言うなら、話が違いすぎる。
 下手すりゃ、オレがどうとか言う次元じゃなくなる。

 こりゃまた、先生にも訊いとかないと。
 あ、しまった、さっき訊いときゃ良かったんだ。しくったな。

「どうしたんだい、考え込んじまって」
「いやね、実は最近、淫魔系で色々あってさ────」

 と話し始めたところに。
 待合室に姉さんが入ってきたのだった。

 オレは振り返って手を振る。
 いつものギルド服に今日も素敵な眼鏡姿。相変わらず物好きだ。

「お待たせ致しました、お客様……って、あれ? 今日まで休みだったんじゃないの?」
「あ。淫魔さんの新名登録あってね。オレが後見人すんの」
「相変わらず、淫魔と縁が深いこと」

 どこか呆れた様子の姉さんが、オレの背後に目を遣り。
 オレは身体をどけて、背後のフゥッラを見せた。

「お客様、わざわざおいで下さってありが────」

 頭を下げ、上げている途中で、姉さんは固まった。口までぽっかり空いてるぜ!
 フゥッラは優しく笑って(ムカつかない方ね)、姉さんに声を掛けた。

「久しぶり、サアリィ」
「……巫女のお姉ちゃん……?」

 呆然と、姉さんはそう呟いた。



 積もる話があったっぽいけどね。
 オレは早い段階で、適当にフゥッラに手を振って、表に出ていた。

 いやね、ああいう湿っぽい場でね。
 外様のオレがのんびり眺めてちゃ駄目でしょ。

 普通に姉さん泣いてたし。顔、グチャグチャにしてね。

 んな訳で、どこ行くかね、とか思ってたのよ。
 新名登録の事もあるから、外出るって訳にもいかんしね。
 基本はフゥッラが処理できるけど、後見人の承諾が必要な箇所もあるしね。

 微妙な空きだし、食堂でベルレン湯でも飲もうかと思ってたらね。
 今日はそういう日なのか、またまたオレの下の関係の知り合いに出くわした訳で。

 金の髪を一つに纏めて、歩いてる彼女に手を上げると。
 言葉のフックが飛んできた。

「お前、休みまで仕事しに来る柄だったか?」
「うは、姐さんはキツイね。確かに柄じゃないけどね」

 いやね、確かに柄じゃあないけどね。

 しかし。
 手を上げただけで、どうしてそこまで言われにゃならんのか。



 ベルレン湯片手に食堂で席取ると。
 コピ湯なんて俗な物を持った姐さんが、首を振った。

「相変わらず、お前の趣味は分からんな」
「つかね、姐さんこそなに、そんな俗な物飲んでんのよ」

 姐さんは眉を顰(ひそ)めた。

「お前な」
「どったの?」
「呼び名」
「は? 何を呼べって?」(呼びな、と聞こえた訳ね)
「だから、呼び名だよ、呼び名」

 ……あ、ああ、はいはい。呼び名ね。
 え、もしかして、こんな食堂で名前で呼べって言ってる?

「ちょっと待とうか姐さん。冷静になろう」
「なんだよ、名前で呼んでくれるって言ってたじゃないか」

 拗ねる姐さんも可愛いけどね。

「まずだな、うちの支部は淫魔系多いの。おk?」
「そんなことは分かってる。話を逸らすな」
「んじゃ、次にこのキーワード考えてみよう。名前の性的側面」
「……あっ」

 この辺がね、姐さんが中途半端なとこなんだよね。

「学校で習ったでしょうが」
「う、うるさいなぁ、忘れてただけだ」
「プライヴェートとか、二人で会ってるときとかは呼ぶからさ、許してよ」
「ああ、いや、私の方が悪かったよ」

 ラングダの姐さんは頭を下げてきた。

 つまりね、淫魔にとって名前って、大事と同時に生々しくもあるのよ。
 隠語バンバンでも全然気にせず飯食ってる彼女らも、名前聞いただけで目ぇ引ん剥くからね。
 食事の席で言ったりしちゃ駄目だよ。ドン引きだよ。
 愛称でも軽く引くからね、種族名とか特徴で言う事。これ基本。

 淫魔多いかな、と思ったら、店で連れの名前とか言っちゃ駄目だかんね。これ大人のマナー。

 まあ、姐さんの場合、混じってるから習慣も微妙でさ。
 名前呼ばれるの嬉しいのと、隠すのとはあるんだけど、羞恥心はないのよ。
 だから中途半端。

 まあ、人間のオレ的には別に構わんけどさ、礼儀に反するのはあれだよ。査定に響くのよ。
 ギルドの食堂なんて、誰が居たって居ておかしくない訳でね……。

 とりあえず、頭下げられてても目立つし、場を納めておいた。

「あー、頭上げて良いって姐さん。でも、配慮は大事よ」
「ああ。どうかしていたよ」
「ま、それは置いといてね」

 オレはベルレン湯に口を付けた。

 良いねえ、食堂のおっちゃん、良い仕事してる。
 このかぐわしい乾燥茸の、深みが尽きない微妙な香り、堪らないね。
 姐さん、どうして分かってくれないんだか。

 十分に堪能してから、オレは話を続けた。

「今日は実は、淫魔さんの新名登録にきたんよ」
「新名登録?」
「前に会ったときに言ったでしょ、街道で殺した淫魔さん。
 あれが実は高位でね、霊化してオレのとこ来たのよ」

 姐さんは心配げにこちらを見やった。

「高位……大丈夫だったか? 高位相手に襲われたのか?」
「あー。その辺は大丈夫。殺意とかさっぱりなくてね。頼る当てなかったから、オレんとこ来た感じ」
「ほぅ。殺意なし、か」

 感心したように、姐さんは顎を撫でた。

「新名登録なら、傍に居なくても良いのか?」
「ヤムゥーの姉さんの知り合いだったらしくてね。いま感動の再会中。
 一杯飲んでから戻りゃ良いでしょ」

 そう言って、フゥッラの話をあれこれ始める。

 つってもね、死霊術士である事だとか、素性だとかはポンポン話せないからねえ。
 んな訳で、例の手配の内容に、話はすぐ移ったんだけどね。 

「手配されてた内容聞いたんだけどね、失笑もんだったよ」
「どんな物だったんだ?」
「それがさ、東の何とか言う部族の国でコトがあってさ」
「お前、結局それなのか……」

 最初は呆れて聞いていた姐さん。
 ところが、フゥッラ対屯所の全部隊の下りで、急に目を輝かし始めた。

 しまった。
 考えりゃ分かるのに、ボケてた。
 これ、オルグル山の蛇塚だったよ。うわ、つついちまったよ。おい。

 いかにも興奮した様子の姐さん。
 自分のコピ湯を飲み干して言ってきた。

「その方はいま、待合室にいるんだな!?」
「あー、うん、そうっす」
「今すぐ行こう。紹介してくれ!」
「あの、まだ飲んでる途中なんですが……」

 あんね。
 日頃、あんだけオレの趣味を、外道外道と貶したててるあの姐さんがね。
 オレのベルレン湯、奪って飲み干し、そのまま立ち上がったんよ。

 いつもなら、ベルレン湯なんて飲んでくれない癖に……。

 やっぱね。うん。
 バトルジャンキー過ぎるって、姐さん……。



 んで、待合室では、やっぱ想像通りの流れに。

「お願いします」
「いきなり、そう言われてもねぇ」
「出来る限りのお礼をします。胸貸して下さい」

 オレの首根っこひっ掴まえるようにして、待合室まで来た姐さんは。
 すげぇ勢いで今、フゥッラに頭下げてる。
 フゥッラ、どう見ても困惑モードなのに、必死に縋りついてんのよ。

 そんなにしたいのかね、模擬戦。バトル好きの精神はよう分からん。

 ただまあ、フゥッラが強いのは間違いない。
 ランクAのデジャボン認定食らってて、おかしくないよ。手配の件だけでもね。
 姐さんとここで模擬戦すりゃ、出した能力次第だけどさ、普通に認定下りそうだしね。

 その様を、扉近くで苦笑して見ていると。
 オレは後ろから肩を叩かれた。

「どなた様?」
「あの、これを」

 手紙を手に押し付けられるように渡された。
 郵送班でもないだろうから、私信なんだろうけど。
 振り返ってみると、渡し手の彼女が出て行った後姿が見えた。

 後姿に見覚えはあった。

 なんなんだろうね。一体。
 いやまあ、手紙読みゃ分かるか。

 手紙読んで、オレが眉顰(しか)めてると。

 いつの間にか近くに来ていた姉さんが文句を言ってきた。
 涙でグチャグチャの顔は、もう修正済み。なんてプロっぷりだ。素敵過ぎる。

「ちょっと」
「どしたの?」
「あのラングダの子、いきなりどうしたのよ」
「いや、見ての通り、模擬戦やりたいらしいよ」

 カリカリしている姉さんを、オレはどうどうと宥めつつ。
 手紙を懐に仕舞った。

「姉さんもあの淫魔さんと久しぶりに会ったんだよね? 邪魔して悪いね」
「なに、君が悪かったの?」
「いや、どうだろ。そうだ、聞いてる? あの淫魔さんが手配掛かってたって話」
「……どういうこと?」

 知らなかったらしい。
 掻い摘んで話してみた。

「東のとある国でね、ちと一都市の軍隊と争ったとかでね。
 死人は一人だけなんだけど、軍隊潰す勢いで相手したとか。
 それで手配掛かってたんだけど、姐さんにそれ話したら、模擬戦したいって張り切ってね」
「……ああ、あの子、そういやそういう子なんだってね」
「ネットの投稿、見てても分かるでしょ?」

 カマ掛けてみた。
 まあ、姉さん、超冷静だったけど。さすが。

「なんのこと?」
「あ、大丈夫大丈夫。後輩君から聞いてるから」

 ぶっちゃけた途端、慌てたけどね。

「……いやね。あー。あれはね、そのね」
「大丈夫だって。文句は、いやそりゃ言うけどね、ぶち切れたりせんよ」

 姉さんが胡乱げにこっちを見た。

「……あのネット、十年近くあるのよ? その間ずっと、君の情報が流れてたのよ?」
「いや、イラッとは来るけどね。オレ大人だから」
「あはぁ、ホントかしらね」

 流し目を送る姉さんに、オレは肩を竦め。
 手紙に絡んだ用件を告げた。

「オレ予想だけどね、あの淫魔さん、姉さんに押し切られるね。
 だから、ネットの件チャラで良いから、練兵場の場所取りお願い」
「随分安いカードの切り方ね」

 流し目のまま、姉さんは目を細め、視線を鋭くした。
 いや、オレもそう思うけどね、実際、もう怒り収まってるし。
 わりとどうでも良かったりするんよね。

 ちとオレはこれから用があるから、その出汁に使っただけだし。

「ま、良いじゃん。許すって言ってんだし。オレ、ちぃっと出てくるから、場所取りよろしくね」
「ちょ、ちょっと、新名登録はどうするのよ!」
「昼にゃ戻るし、模擬戦もそんくらいには終わるでしょ? 食堂寄るから、そこで合流で」
「昼まで仕事しろっての?」
「んなわきゃないよ。今日は余裕あるから、午後に回しといて」

 姉さんはつくづく不思議そうな顔をした。

「今から行くの、そんな大事な用事なの?」
「いや、よぅ分からんけどね。このままここ居ると、模擬戦、巻き込まれそうだしね」
「ああ……」

 姉さんの納得した声が、洩れ出て空気中に霧散した。



















 詰め込みすぎですな。
 短編とか、誰が信じるんだおい。

 メモとか。目許か。


ガンデゥル鳥~:ことわざの猫を被ると同じ意味、姿隠して色っぽい声で獲物を呼び寄せる鳥
ベキラ鶴の一声:鶴の一声
ベルレン湯:どこか水っぽくて、喉越し悪い薬草感たっぷりの飲み物で、賛否両論過ぎる一品
コピ湯:一般に愛好される、黒で苦味と酸味のある飲み物
オルグル山の蛇塚:薮蛇の意



[7091] ちょっとギルドに寄ってきた 中の中 (微エロ)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/31 00:32


 グジュる、ジュプる、ジュプ、ジュプ、ジュプる、ジュプッ、ジュプっ────!

 唇だけでなく、口の中まで狭めて。
 彼女は顔を上下させ、締め付け、吸い取ろうとしていた。

「おー。うん、良い感じ良い感じ」

 オレが彼女の頭を撫でると。
 大人しげな様子で、静かに笑った。

「ちっと腰振って良い? 我慢効かなくなってきた」
「ふ、ふぁい」

 口に物を含んだままの、はしたない喋りも。
 どこか残る彼女の清楚さを犯せず。
 香り立つような優しい笑みで、オレを見つめていて。

 オレはそれに理性を緩やかに切られ、頭を掴んで、腰を振り始めた。

 小柄で、顔もあまり大きくない彼女。
 オレの物が、突かれる度に喉奥に当たり、苦しい筈であるが。
 そこはさすが淫魔と言うべきか、オレに目を向け、にこりと微笑みかけてきていた。

 あたかも、もっと突いて構わない、とでも言いたげに。

 締まりは変わらず良い。
 喉奥を突くと、その度にそこが温かくなっていく。
 その場所に突きたい欲が増してきて、ついしつこく突いてしまう。

 それでも受け入れ、舌すら絡める彼女に。
 オレも興奮の箍が外れて、もっと腰を早める。

 彼女も顔を前後させて、こちらに合わせてくれる。

 従順で、楚々とした風情の彼女に。
 ジュブジュブと開いた口に物を突き入れ、奥を叩く。
 強い締め付けは、拒むようで。
 奥の温かみは、迎えられてるようで。

 犯す快楽。それを受け入れられる悦び。
 ない交ぜになった感情は、微笑んでいる彼女の手で生み出された物なのだろうが。
 それを演出できる彼女に、オレは安心して流れを任せていた。

 取り縋られた腕や手の当たる場所が冷え冷えとし、快感が走る。
 手で押さえた頭でさえ冷たく、気持ちが良い。

 捻るように、口内が複雑に動くのもまた心地良く、腰椎にヒリヒリと痺れが走る。

 それらも、腰が抜けそうな激しい快楽ではなく。
 いつまでも突き入れていたい。そんな快楽だった。 

 やがて。

 口内に溜まった、粘ついた唾液を通り。
 絡み付いた舌を振り切って。
 ジュブジュブと淫猥な音を立てながら、唇に根が付くほど突き込んで。

 喉奥を強かに突いたオレは、そのまま気持ちよく出していた。


 ビュルルウルルる、ビュルッ、ビュルルッ────!


 手を腰に巻きつけてくれるのも。
 口内を蠢かせて、射精を優しく受け止めてくれるのも。

 彼女の優しい心立てと、受け入れの気持ちを感じさせてくれるようで、ひどく愛らしい。
 深い満足感を覚えながら、オレは彼女の頭を撫でていた。


 口を外して、オレの物を綺麗に舐め上げてから。
 どこか嬉しそうに、彼女は問うてきた。

「有り難うございます、気持ちよくなってくれて」
「ありゃ、もしかして勘違いしてる?」

 オレは首を傾げて言った。

「最初のも気持ちよかったし、楽しんでたんよ。
 今の感じの方が好みだし、満足感も大きかったけどさ」
「満足いただけたんですか?」
「おうとも。そっち路線の方が合うと思うよ」

 花のように鮮やかに笑う彼女に、オレは告げた。

「んじゃ、今ので最初の、チャラで良いから」
「あ、はい、さっきはすいませんでした。騙し討ちしちゃって」
「いや、構わんよ。慣れてるし」






 オレの射精を受けて。
 心底、嬉しそうにキスを堪能していた彼女は、ふと目を見開いた。

 深いキス。
 深々となされたキス。

 ────オレが、彼女の後頭を押さえてなされたキスだった。

 彼女の手は、背に回り。
 彼女の足は、腰に回り。

 蛇のように長く、身体を締め付けていた手足は、消えていた。
 オレの体も自由自在。動かされたりはしていない。

 オレがキスを外すと、彼女は口をカクカクと動かして、訊ねてきた。

「せ、んぱ、い?」
「おう、どうした?」
「もし、か、して……」

 正確には訊ねようとした、ってとこかね。
 そこで言葉を止めて、彼女は青ざめた。
 赤らんでいた肌が目に見えて色を変え、色を無くしたようですらあった。

 っつー訳で、オレは自分から推理とか。種明かしとか。言ってみた。

「幻術ねぇ。いや、大したもんだと思うよ。びっくらこいた。
 媒介は、膣奥の吸精器から出てた分泌液辺りだったんだろ?」

 彼女は固まったまま動かず。
 オレは言葉を続けた。

「体感まできちんとあったかんね。すげぇよ。嬢ちゃん、中位の淫魔なんだろ?
 後輩君より上のレベルとか、後輩君マジ涙目だな」

 どうも隠してたくさいしね。
 いや、媒介がオレの指摘通りなら、そうそうは使えん術だけどね。

 いくら淫魔でも、戦場で敵一匹ごとにずっこんばっこんは出来んでしょ。

「流れ上手かったし、良い感じだった。お兄さんは感心しました。えらいえらい」

 オレがえらいえらいと頭を撫でると。
 手から、足から、力が抜けて、彼女はずり落ちそうになった。

 一旦降ろしてから、膝と背を抱えて抱き上げる。

 彼女は、青ざめたまま、俯いていた。
 震えてすらいた。

 いや、そんなビビんなくても。
 昔からいるんだよなあ、遣り口見破られた後に妙に焦る子。
 じゃあ、元からするなよ、とは言いづらいし。淫魔だかんね。


 柔らかなマットの傍まで来て。(そういやこれ、何に使うんだ。ナニにしか使った覚えが無い)
 その上に横たえた辺りになって、ようやっと、嬢ちゃんは声を出した。

「お、おこって、ます、よ、ね?」
「騙し討ちのこと? いんや、別に」

 隣に座り、やっぱり頭を撫でながら、そう返した。
 いやね、あんまりビビられててもしゃーないし。どうどう、ってね。

「だ、だって、せっ、せんぱ、い、わたし……」
「あ、大丈夫大丈夫。よぅあるんよ。こういうの」

 顔を向けて、説明した。

「犯る条件話さないで始めてね、契約かまして、オレを玩具にしようって手合い。マジで多いよ。
 学生時代なんかは結構面倒くさい事になってね、色々揉めたけども。
 今は大丈夫よ、オレにゃ対応できるだけの経験もあるし」

 それに、準備もしてあるからねー。
 例えば、キスを媒介した術式解体とか。

 淫魔は、接触を条件にした魔法で攻めてくる事が多いんよ。性質上ね。
 だから逆にこっちも接触を媒介する事で、直に霊に触れて、その術を潰す。
 あの淫魔さんの死霊術だって、起点の淫魔さんに触れたら潰せるよ。
 まあ、あの淫魔さんも高位淫魔だかんね、こっちのディスペル、更に打ち破れるだろうけどね。

 これが淫魔さんが言ってたトラップだらけの一つなのですよ。
 迂闊にオレの生体エネルギー、搾ろうとすると危ないよ?
 古今東西、色々なブツを取り込んで、手ぐすねして待ってるからね。

 まあ、この子にそこまでは説明せんけども。

「ほら、どうどう、どうどう」
「あ、ああ、はい、でもせんぱい……」

 ありゃりゃ。
 すっかり落ち込んじゃって。

 真面目なんかも知らんね。元は。
 後輩君もあれで、真面目だからねえ。連れがそうでもおかしかぁない。

 オレは横から緩く抱いてやって、耳元で言う。

「じゃあさ、お詫び、してくれる?」
「おわびですかっ?」

 お。食いついてきた。
 オレはこっちに向いた嬢ちゃんの目を見ながら、小さく頷いた。(大きく頷いたら頭突きだしね)

「まだ欲求不満なんで、気持ちよく抜きたいの。お願いできる?」
「あ、はい。それなら、頑張りますっ」

 手を固めて、嬢ちゃんは頷いたんよ。



 ってな訳で、口で気持ちよく抜かせて貰いました。

 いや、マジで中々。良かったんよ。
 後輩君と同じで、自分で磨いてるタイプみたいだし。
 雰囲気とか、上手く利用してきてる。

 さっきはこっち舐めてたからね、楽勝だったんだけど。
 今からならちぃっときついかもね。


 ま、それで一休みついでに話してたらね。
 なんか変な方に話が飛んたんよ。

「いやいや。それ、物理的に無理でしょ」
「え。だって先輩、パリイカの先生と契約、結ばれたんでしょ?」
「そうだけども」
「高位淫魔と素で人間が闘うの、無理ありますって」
「いやいや。別に闘ってないしね」

 なんかね。
 この子、すげぇ古くさい手法、オレが使ってると思ってらしいんよ。

 古くさい手法っつーのは、性感コントロールの事。
 大体が魔法で感覚を閉じて、性感を著しく減退させるってやつね。
 淫魔と闘うなら、快楽感じなきゃよくね、って発想で一時期流行ったのよ。

 さっきまでのも、ずっとオレ、演技してんだろと思ってたとか。
 だから幻術で落として、隷属させてから搾るつもりだったらしいね。
 すげぇ勘違いです。びつくりですよ。

 そもそもね、この方法、致命的に無理があるのよ。
 だってさ、強い催淫性のある腺液ぶっ掛けられただけでお仕舞いだから。
 無理やり快楽引き出す中位以上の淫魔に、まるで歯が立たんのよ。
 今でも使ってるやつ居るって話だけど、下位サキュバスにしか通じんよ、この手法。

 だからね、今の主流は意識隔離。
 快楽によがりながら頭のどっかで隙を窺ってる方式。
 オレもこの方式使ってます。

 これね、慣れたら高位淫魔でも潰せるんよ。考えたやつすげぇよな。

 だってさ、淫魔的に最悪でしょこれ。
 いくら感じさせても、どう言葉引き出しても、隙見せたらグサリ。
 ルート結んでも何しても、意識が残ってる以上、いつでも攻撃可能な訳でね。
 ルート結んで非戦契約でも結ばん限り、この手法は破れないんよ。

 まあ、未熟な内はマジで意識飛ばしたりするし。
 感情的になったりしてても、意識が感情に邪魔されたりするけどね。

 ギルドの子だし良いかって事でこの辺の説明もしたんだけど。
 なんか納得いってなさげだった。と言うかえらく口惜しそうだった。

「そんな、なんて屈辱的な……っ」
「いやいや。別にね、こっちも普通に楽しんでんだし。良いじゃん」
「良くないですよ! 淫魔が、相手の意識も落とせないだなんて……!」

 マジに口惜しそうなんだけどね。
 いや、戦闘で意識飛ばされる熟練戦士とか。学校戻ろうか、って感じでしょ。

「ま、良いじゃん良いじゃん。そんなの。それとももう、今日はおしまいで良いって事?」
「え、あ、いや、そのぉ……もうちょっとくらい」

 慌てて表情を改める嬢ちゃん。
 いや、昼までまだ時間あるから良いけど。

「じゃ、お話は終わりで。話したいならまた昼に話そうや」
「はい」



 仰向けのオレの上に、彼女が乗っかかって。覆い被さって。
 ピチャリピチャリとオレの顔を舐めていた。

 舌は相当、長い。
 幻術ではなく、本当に二の腕くらいの長さがある。

 舌を伸ばしたまま、聞き取りづらい声で、彼女が言ってくる。

「せんぱぁい、こういうの、大丈夫です、か?」
「大丈夫。気持ちよけりゃ何でもいける」

 嬉しそうに目を細めた彼女は、オレの目に舌を近づける。
 片目を瞑ると、眼窩を舐めまわして、目尻と目頭を交互に穿った。
 どうも目やにを取られているようで、地味に恥ずかしい。

 反対の目も舐めまわして、彼女は微笑み。
 オレの耳に、舌を回した。

 うは、オレ、最近になって耳開拓されてるから、微妙に弱いんすけど。

 そのまま耳の形をなぞり、外耳の出っ張りを舐め上げて。
 耳の穴に舌先を突き込んだ。

 ってこれ、すげぇな……。

「あー。先細くも出来んのね」
「はひぃ」

 にっこり笑いながら。
 彼女は細くした舌先で、耳の穴を穿る。
 中の耳垢を穿られていて、気持ち良いような、くすぐったいような。

 まあ、理性ある分、これも結構恥ずかしいんだけど。

 両耳とも、ベタベタになるまで舐め回されて。
 彼女はようやく、舌を口に直した。

 呼吸を整えるついでに、訊ねてみる。
 互いに身体をまさぐりながらだけどね。

「さっきの手足も、やっぱ多少は伸びてるの?」
「その、私が未熟なんで、これくらいなんですけど……」

 と本当に恥ずかしげに片手を挙げ、手首の先を伸ばして見せた。

 いやいや。十分だって。
 片手で相手抱いて、一周回せそうだし。

「本当はですね、もっといくらでも伸ばせるん、ですけど……」
「ヴァーシュキィ一族って、蛇妖の一族でしょ? その血筋だよね?」
「あ、せんぱい、知ってらっしゃったん、ですか?」
「教科書で読んだ程度だけどね」

 これも北に居る部族だそうで。
 純正は少なくて、結構色々混血が進んでるって話でね。
 開けた部族だから、北の部族との交流のテストケースとして勉強したんよ。

 いや、別に蛇だから伸ばせるって理屈はないんだけどね。

「最初は幻術をするつもりじゃなくて、頑張って伸ばそうとしてたんですけど……。
 その、イメージだけ強くなって、学校の授業で幻術やったときに、こう……」
「実際も伸びるからイメージしやすかったのね。分かる分かる」

 幻術、マジでイメージ次第だからね。
 相手に自分のイメージを押し付ける訳だから、相当練られてないと素で破られる。
 逆に言やぁ、生体のトラップ使うまで破れなかった彼女の幻術、結構上手いのよ。

 ちなみにオレも幻術使えます。メイン張れるほど上手くないけど。
 どうもね、器用貧乏でね……。

「でも、それで内勤はもったいないよね。
 力も後輩君並にあるんでしょ? 能力的には、十分いけると思うんだけど」
「あ、わたしも予備で後衛士なんですよ?」
「予備役でももったいないと思うけどなあ」

 経験積めばだけど、中衛士向きだと思うしね。
 今までの感じからして、戦場を見分けるのは上手そうだし。

 オレの胸の辺りを撫でながら、嬢ちゃんは首を傾げた。

「先輩んとこ、ずっとパーティ申請してるんですけど、何故だか通らないんです」
「あー……。嬢ちゃんね、学校時代の後輩なんだよね?」
「あ、はい。最初隠すつもりだったんですけど、つい言っちゃいました」

 照れて笑うと可愛いね、今畜生。
 ちょっと顔を上げてキスしちまったよ。思わず。

「……んで、後輩君とは同期?」
「そうです。途中からですけど」
「転入ね。いやまあ、そりゃ、オレのパーティは無理でしょ」
「そうなんですか?」

 彼女は身体を落としてきて、鼻が触れそうな距離で訊ねてくる。
 オレは背に手を回して、答えた。

「今はオレのパーティ、新卒か新加入ばっかだしね。
 予備役でも、十年クラスの選手をオレのとこに回すのはない」
「でも、もう何年もそうなんですよ?」

 不満気な彼女にまた口付けて。
 ふと考えた。

 昔から犯りたかったってんなら、地味に嬉しいが。
 なんで申請、通らなかったんだ。昔なら別にパーティ組むくらいいけただろうに。
 後輩君も、姐さんも、先生も組んだ事ある訳だしね。

 ヌチュルヌチュルと、口の中を舐め回されながら。
 唾液を飲み、飲ませながら。
 オレは不思議に思っていた。

 いや、あれだよ、これが意識の隔離ね。
 オレくらい慣れてたら、思考の隔離も出来るんよ。

 一通り舐めあってから、口を外して。
 思いついた予想を告げた。

「もしかしてさ、大将に回してない?」
「ん、支部長、ですか?」
「そそ。申請、自分とこの部署で上司に言ったんじゃなくて、転属願いを提出したかって話」
「はい。きちんと提出しましたけど」

 あー。それだな。

「うん。不運だったね。大将に握りつぶされてるわ、それ」
「えぇ! 支部長はそういうことはしない方ですよっ!」
「いや。大将ね、オレのとこに淫魔入れるの嫌がるから。
 風紀乱れる、とか、お前の盛り場じゃないぞパーティは、とか、散々言われてるし」
「あ……あー……」

 妙に納得がいったらしく。
 唸りながら、嬢ちゃんはオレの顔の隣に、頭を埋めた。



「嬢ちゃんも、パーティでオレ、相手しようとか思ってたでしょ?」
「うう、はい、そうです……」
「ま。大将が風紀乱れるっつーのも分かるわな……」

 妙に二人で黄昏てしまった。
















 メモっとくぜ!


幻術:共有する媒介で相手に一意の幻覚を見せる術、熟練では感覚も覚えさせ、更に上では物理的作用も起こす
マット:飛行魔法訓練とか使い勝手はある、決してエロ専用ではない
蛇妖:大元に蛇系のデジャボンとかがいる種族、あんま遺伝的にあれこれしない事が多い



[7091] ちょっとギルドに寄ってきた 中の下 (エロ?)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/31 00:32


 気を取り直して。
 嬢ちゃんが上位のまま、本番本番。

「先輩、身体、上げて頂けますか?」
「ほいほい」

 対面座位で、彼女の身体を受け取ると。
 彼女は浮かせていた身体を沈め、己の中へとオレの物を誘い込んだ。

 おっ。
 足が回ったんだけどね。伸びてる伸びてる。
 踵がオレのへそを突っついてるのよ。

「先輩、これが、限界なん、です」
「こう、取り付かれるのは良い感じだけどね。
 嬢ちゃんと密着したいから、足はそっちの腰の方でよろしく」
「はい……」

 あー良いね。

 鳩尾のちょいした辺りに、彼女の胸がきていて。
 言い回すほど大きい訳じゃないけど、大振りの乳が柔く、心地良い。

 肩から首筋まで、普通に舌先を出して舐めてるのも良いね。
 舌伸ばして舐められるのも良いけど、この姿勢だと、身体動かして舐めてくれた方が良い感じ。
 その度にすり合わされる胸や、腹が、ひやりと冷たく心地良い。

 彼女の中のブツは、ちぃっと揺らされてるだけだったんだけど。
 奥まで届いててね。
 温かい訳よ。居心地が良い訳よ。

 このまま任しておきたいような、ぬるま湯の心地良さ。

 のんびり楽しみながら、背を撫で、脇や肩を撫でていると。
 彼女が言ってきた。

「せんぱぁい……?」
「どした?」
「キス、して頂けませんか?」
「ほいほい」

 背に回してた手を片一方、後頭に回して。

 オレは普通にキスした。
 彼女も普通に応えてくれた。

 なんだろうか。とても涼やかだ。

 身体の、中の、口内の冷ややかさが、ではない。
 彼女から感じる印象が、初めから変わらないままで。
 清楚で。たおやかで。

 それが涼やかだと思ったのだ。

 顔を斜めにして、深めのキスをして。
 目を瞑り、応える彼女が、涼やかだった。

 ヌラリと。ンチュヌチャりとキスを続け。
 手で掻き抱いて、足で抱かれ、膣で包まれて。
 オレの熱と、彼女の冷気が合わさって、混ざっている。 

 その心地良さに目を細めていると。
 ふと、目を開いた彼女が、微笑んだ。

 口を離すと、言ってくる。

「もっと、激しく、しますか?」
「どだろ。今のまんまも良いんだけどね」

 オレは素で首を傾げた。

 とは言え、今日はわりと時間が無い訳で。
 ここ数日は、時間計算せずにのんびりやれてたけど。今は違うし。
 終点をちゃんと計算しとかんと、オレも彼女も昼飯を食いっぱぐれちまう。
 
「ま、そろそろ終わり考えとかないとね」
「そう、ですね……」
「んじゃ激しくして、これで一回出して、後で正上位さしてくんない?」
「はい、分かりました」

 オレの我侭な提案に。
 彼女は微笑んで、頷いた。



 彼女が腰を上下させ始めると共に。
 膣の窄まりが強まり、内へ引き込まれる強さが高まった。

 グニュグニュと、吸い込まれるような、掘り入れるような。
 何とも不思議な感覚だった。
 腰が浮かせてしまうほどの、どこか得体の知れない悦楽。

 冷えた膣を抜け、温かな吸精部分に突き抜けると、爽快感があって。
 亀頭を擦り付けたくて、オレは彼女に合わせ、腰を動かし始めた。
 ジュブリジュブリと鳴る音に魅せられながら。

 彼女が汗ばみ始め、頬を紅潮させ始めている。
 低い体温のせいで、身体が熱を持つまで時間が掛かるのかもしれない。
 最初に見た、あの演技とはまるで違う、ひどく熱っぽい視線も。また魅力的で、強く惹かれていた。

 口を閉じ、喘ぎを鼻に抜けさせていた彼女が。
 口を開き、溜まった唾液を零して、水っぽく言ってきた。

「あ、はぁ、せん、ぱぁいっ……!」
「ん、んん?」
「もっとぉ、んん、ね、きもち、よぉく、ね……?」

 そう言って、口づけてきて。
 口内にタプタプと溜まった唾液を、こちらに送ってきた。

 ごくりと一口に飲み下すと。

 嬉しそうに、ひどく淫蕩に彼女は笑って。
 こちらの目を覗き込んだ。

 途端、身体の熱が、ぐいぐいと上がる。
 頭が茹だって、背中がグニュりと折れそうになり、腰が溶けかけた。

 彼女の目的が分かったオレは。
 返して、目を覗き込んでいた。

 ────彼女がつと、声を上げた。

 今までの物とは比べ物にならない位、切実に。
 赤の差し始めていた顔を、赤々と染めて。

「はっ! ぁ、ぁん、んん、ぇええ、あああ、ああ、せ、せんぱ、せんぱいっ!?」
「んん、いや、すごいね、これ、やる、ねぇ……!」

 それだけ言って、オレはキスを返し。
 唾液を交換し合った。

 眩むほどの熱さ。
 交換する唾液すら熱い。

 彼女の目が濁っていくのが見える。

 抱き締めたままで。
 抱き締め返したままで。

 彼女の足は、腰にしっかり巻きつけられたままで。

 口はキスで塞いで。
 互いの呼吸すら熱く、互いの顔にぶつけ合って、それにすらも興奮して。

 腰を、腹を、胸を鼻を。
 重ねあった部分に熱を感じている。
 熱さが身体に届き、強く痺れさせている。

 オレが下から突き上げて。
 彼女が上から振り落として。

 オレは物を、彼女の吸精器に何度も何度も、擦りつけた。

 膣奥から出ている液は、オレの腰まで滴っている。
 普通の愛液と混ざり合って、オレの竿を濡らし尽くしている。

 何もかもに、執拗なぐらい、興奮させられて。
 オレはそれを受けて、しつこいぐらい腰を突き上げていた。


 グュ、ギュルチュ、グュユチュルグ、ギュルリュ、グチュ、ギュチャグチャッ、グチッ、グチュッ、グチュグチグチュグツッ────!


 高揚。高揚。
 互いに、貪ることだけに熱中している。

 腰を振る事だけが大事で。
 快楽を貪る事が大事だった。

 頭は熱に溶かされている。
 視界は熱に埋められている。

 腹の奥から、熱く、溜まった物が。
 揚がる身体に残されて、揚がる心に残されて。
 身体の下へ下へと移っていって。

 ふと深く突き上げたときに。
 バラバラに離されて。

 そのまま、彼女の中に放たれた。


 ビュクッ、ビュルブリュるルルウル、ビュルルルルブルるウ────!


 オレは熱さに叫んで。
 彼女は喘いで叫んでいた。






 呼吸が整わない。
 ゼエゼエと肩で息をして、彼女の身体をマットに下ろす。

 膣から抜かれても何も言わず。
 力無く、彼女は仰向いたまま、胸で息をしていた。

 暫しの無言。喘ぎだけが残る用具室。

 ようやっと、息が落ち着いてきたんで。
 俺は正直に彼女を誉めた。

「おー……凄かったわ。嬢ちゃん、すげぇな」
「いや……せんぱ……せんぱい、の、ほうこ、そ」
「ああ、無理、せんで、いいって」

 いや、オレもあんま喋れんしね。
 いやはやしかし、この子、上位に上るのもうすぐなんじゃない?

 もう暫し、互いに息を落ち着けて。
 今度は彼女の方から、声を掛けてきた。

「先輩、幻術使えたん、ですね……」
「おうよ。媒介でむらがあるから、扱い難しいんだけどな」
「媒介は、なにを?」
「最初に出した精液、もう身体に吸収してんだろ?」
「ああ、なるほど……」

 別にオレの媒介、精液限定って訳じゃないけどね。
 オレの性的エネルギー存分に吸ってる精液は、結構優秀な媒介なんよ。

 しかも淫魔はそれ吸う訳だから、モロに魔法の直撃受ける訳。
 これもオレ的な対淫魔のトラップの一つ。
 普通のやつも出来るけど、普通の戦士は入れるより先に殺すよ。入れたら搾り殺されるし、大概。

 オレは彼女の横に、半身ずらして倒して。
 片手で乳の柔らかさを楽しみながら、訊ねた。

「嬢ちゃんさ」
「ん、は、はい」
「この感じでね、最初から来られてたら、オレもやばかったわ」
「え、あ、いい、いや、その……」

 横向く余力もなさげで、目線だけこっちに向けて。
 何故だか申し訳無さそうに、彼女は言ってきた。

「その、最後の方、どうな、んん、ってたか、よく、分かんない、です……」
「あー。無意識だったのね。すげぇ良かったんだけど」
「そ、あ、んん、そう、でしたか?」

 オレはそのまま頷き、耳元で続けた。

「嬢ちゃんさ、淫魔の盲点って、聞いた事ある?」
「え、んん、初耳、ですけど」
「んじゃ、ちぃっと説明するけどな」

 淫魔の盲点。
 オレが提唱して、先生が広めてる学説なんだけどね。実は。

 性的に奔放で、受け攻めどっちもいけるってスタイルが、淫魔的スタンダードだけどさ。
 実のところ、彼女らは一線を越えてセックスを行わない。
 戦士が冷静に隙を窺うのと同じように、彼女らも快楽のレベルを下げて性行為に臨んでる。

 夢中にならない程度に、互いに気持ちよく楽しむ。
 その方針でないと、情が残ったりもするかんね。搾るにゃちょうど良いわな。

 んで、オレの今までの経験上の話なんだけどね。
 淫魔ってのは、マジな意味で受けに回ると、より強い能力を発現する傾向がある。

「えっ、と……んんっ! つまり……」
「感じてるんじゃなくて、感じさせられてる側に回るって事。
 そうするとね、能力強化とか、新たな能力とかが見付かったりするんよ」

 先日のフゥッラなんかがモロにそう。
 乳の腺液なんかだとか、唾液や愛液の成分変化だとかね。

「さっき、結構感じてたでしょ?
 そっちが淫術系の幻術使ってきたから、オレも同じの返したんだけど。
 制限なく感じて、途中でブレーキ利かなくなったんじゃない?」
「あ、んん、はい、そう、です……っ」

 真面目な話しながら乳揉んでるオレ☆

「今も神経尖ってない?」
「あ、はい、んん、その、胸、だけで、汗が……」
「終わった後、敏感にもなるみたい。
 まあ、結構使いどころ難しいけど、淫魔の盲点、上手く使えば位階を上げれるよ」

 乳揉みを両手に変えて、上に覆い被さって話を続ける。

「ほら、いま、気持ち良い?」
「ああ、はい、はいっ、きもちぃ、良いです、いいんです……!」
「その感覚をね、頭に、刷り込むんだよ」
「すり、こむ?」
「覚える。忘れないの。覚えて。感じてるの。覚えて。覚えて」
「おぼ、える? 覚える? 覚える……覚える……」
「口に出して。良いってね。そうすると、覚えやすい」
「いい……いい……きもちぃ……きもち、いい……いい……きもちいい……気持ちぃ……気持ちぃ……」

 手を動かしたまま。
 足で股を開かせる。
 抵抗はない。

「ほら、キスするから」
「いい……キス?……いい……いい……キス、するの、いい?……いい……きもちぃ……?」
「そう、ずっと考えて、ほら、何度もな。何度も。考えて。口に、出せなくても。考えて」
「いい……考えて……キス……いい……きもちぃ……」

 手を止めずに、口付けて。
 オレは物を、そのまま彼女の中に再び、突き入れた。

 彼女はオレの口の中に、小さな叫び声を放った。



 まるで吸い込まれるかのように。
 練り、捻られ、突き入れるのを強要されている。

 冷ややかさは欠片もない。
 むしろ熱すぎる。灼熱のようだ。

 奥の吸精器だけが、涼やかで、そこが恋しくて。

 オレは彼女の上から突き入れながら、キスを続け。
 彼女の身体の熱さが移ってきて、息を荒げてしまっていて。

 彼女はオレの口の中で、何度も何かを叫んでいた。

 グツグツと、グジュグジュと、グプグプと。
 もはや、何が何であるかわからず。
 彼女も、とっくに理性を捨て去った目で、オレを見ず、宙を見上げ。

 突く。
 突きいれ。

 引きこまれ。

 吸われて。
 突く。

 引いた覚えがない。
 突いていた。
 奥だけが、俺の物を焼かないから。だから突く。

 身体が燃やされるんじゃないかと、怖くなるくらい熱い。
 腰に回された足も、脇下に回された手も。
 みんな熱くて、怖くなる。

 だから突いて。
 体内から、熱を吐き出したくて。

 唾液を吐き、飲ませれば。
 彼女はそれを嚥下して、また熱く身体を燃やして。

 汗ばむ彼女の身体が、張り付いて離れない。
 肌のそこここが、オレの体に取り付いている。
 離れようと、身体を揺すると、ベリベリと肌が引き千切られるような音を出し。
 その後がざらついて、揺する体を擦り、熱くさせる。

 怖い。ひたすら怖い。

 オレの中にあるのは強迫観念で。
 その思いに追い回されて、オレはただ突いていた。


 ズブリュ、ズルブルブブぅ、ブリルブブズウブゥル、ズブリュ、ズルブブ────!


 奥の涼やかなところを。
 そこだけが欲しくて。

 突いて。
 突いて。

 怖がって。突いて。

 吐き出していた。


 ブビュルルルウル、ビュルル、ビクリュルルウルウルル…………






 さっき以上に、呼吸が戻らんかった。

 うは、本当にすげぇはこの子。
 意識してこれ出来るなら、普通に上級いけるわ。

 何度も生唾を飲み込んで、圧し掛かっていた身体を上げ、どけた。

「すまんね、オレも限界で、動けんかった」
「ヒュ、は、んん、はぃ、フヒュ、はぁ、んんん……」
「あ、まだ喋れないんなら、無理せんようにな」

 オレが服を取ろうかと、身体を上げると。
 力ない、伸びた手が、オレの腰に触れた。

「や、ああ、んん、ヒュ、は、ああ、も、んん、ああ、と」
「えーと。なんだ、抱いといた方が良い?」
「んん、あ、い、あ、んん、は、ふぁ、は」

 解読不能。
 まあ、一応横から抱き締めてあげました。

 責める系やられた後って、結構ね、余韻楽しみたいらしいんよ。

 普通に搾る場合、趣味じゃなけりゃ食事だから、一仕事終わらした感じでね。
 あー、お疲れ、ほっこりやわ、って感じらしい。
 どっか男性の抜いた後に似てる気がせんでもないわな。

 でもまあ、わりとマジで感じた後は、どっちかっつーと女性的でね。
 結構、ベタベタしたいらしい。のんびりとね。
 別にオレも好きだから良いんだけどね……そろそろ時間がね……。

 とりあえず声を掛ける。

「大体ね、こんな感じなんよ」
「んん、は、はい、えっと……?」
「嬢ちゃんが受けに回って、色々能力出てたから。
 その辺はまた、食堂向かいながら話すけど、嬢ちゃんにゃ元からこんくらいの力がある」

 頭を撫で、背を撫でながら、オレは言った。

「その辺伸ばしたら、位階上げれるし、多分ね、身体変化も上達するよ」
「そう、なん、です、んん、か?」
「そそ。確率的には高いと思うよ」

 オレは一回だけ、軽くキスして言った。

「ごめんねー、オレもゆっくりしたいけど、そろそろ時間だわ」
「う、あ、も、もう、そんな、に?」
「昼食いにいこっか。嬢ちゃんと後輩君がファンの、淫魔さんも来るしね」

 何故だか、それほど大きな反応はなく。
 彼女はギュッと、背に回してきた手に力を入れただけだった。



 服着て、出て行こうって時に。
 彼女は言ってきた。

「先輩……」
「どったの?」
「その、手……」
「手?」
「手、握っても、良いですか?」

 オレは目を細めてから、笑った。

「良いよ。そら、食堂まで行こうか」
「……はいっ」

 手を握って、オレと嬢ちゃんは二人、一緒に用具室を出て行った。
















 色々実験的に表現弄ってみたら、訳分からんことに。
 全体に読みづらくて申し訳ない。(だから、エロ?に)

 ところで、これで彼女、ゲストキャラの予定だったんだけどね……。



[7091] ちょっとギルドに寄ってきた 下 (番外)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/03/31 00:32


 それは例えて言えば。
 風を相手にしているような物であった。



 サヌーラは、何度目かの悪態を吐いて、斧槍を構え直した。
 目の前だけでなく、周囲にも気を払い、魔の霧を噴出して相手を睨む。

 だが、相手はただ笑ったまま。
 腕組みして、突っ立っているだけであった。

 彼から話を聞いて、サヌーラは相手を、どんな豪傑だろうと思い描いていた。
 正規兵の数百人と戦い、あまつさえ生き残るだなどと、尋常ではない。
 己と同じ、鬼か何かの血族だろうかと思い、闘志を滾らせていたのだ。

 だが、現実は違った。
 豪傑どころの話ではなかった。

 彼女がいま相対しているのは、長らく希求して已まなかった相手。

 その域の相手に会えた喜び。
 その域の相手と立ち会える悦楽。
 その域に届かぬ自分への不甲斐無さ。 

 それらが綯い交ぜになって。
 彼女の口から、絶え間なく激しい罵りが吐き出されるのだ。



「ねえ、ラングダの娘」

 その彼女を一顧だにせず。
 バザールを歩くような気楽さで、相手は歩み寄ってきた。

 斧槍の間合いなど、まるで気にしていない。

「それで殺す気なのかい?」

 明確な嘲笑い。
 彼女はカッとなった頭もそのままに、斧槍を突き上げた。

 刺すは虚空。

 雷電の如き一撃は掠りもせず。
 確かに捉えた女の首を貫いたまま、すり抜けた。

 掻き消えた女を見、サヌーラは右に駆けた。
 元居たその場の地面にはボコリ、ボコリと穴ぼこが空けられていく。

 砂塵が上がるのは彼女の駆けた跡だが。
 穴ぼこは踏み込みの跡ではない。

 彼女の動いたその先から、その後に不可視の鉄槌が落とされているのだ。
 固く踏みしめられた地面を抉るほどの威力で。

 彼女を追っていく鉄槌の一撃は、彼女の足を砕き、手を潰すだろう威力である。

 だから、足を止めず、大きな円を描くように駆けたサヌーラは。
 そのままの勢いで、中空のある一点に狙いを付け。
 斧槍を一閃した。

 彼女に手応えはない。

 だが、その辺りから、ふっと女は現れ。
 緩やかに地上へと降り立った。










 練兵場の端で、目を見開いた少女が、己の薄青の髪を撫で付けて言った。

「うわー、あれ、全然勝ち目なくないですか?」
「そうね。蟻がレンブロン山に立ち向かった方が、まだマシじゃないかしら」

 応えた女も、飛び散った砂塵を嫌って、長い紫の髪を払った。

「まあ、仕方ないわよ。あの方が相手じゃあ、ね」
「ラングダの先輩も、うちの支部じゃあ最強だと思うんですけどねー」
「彼と一緒なら特にね」

 少女は小首を傾げて訊ねた。

「先輩が一緒なら、勝てますかね?」
「どうかしらね? 今よりはマシだと思うけど」

 ふと女は振り返った。
 扉が開いて、教職を表す黒の羽織を纏った女性が入ってきたのだ。

「あら、パリイカの先生じゃないですか。いらしてたのですか?」
「ええ。仕事でね。お久しぶりです、ヤムゥーの娘」
「はい。ネットのメンテナンス以来ですね」
「そうね」

 ヤムゥーの娘────サルフィーティはふと、顔を顰めた。

「そう言えば、ネットの件、彼にバレたのだそうですよ」
「まあ。それは一大事」
「そこにいる、バッダの出の子が、漏らしてしまったそうで」
「まあ」

 口元に手を当てて、パリイカの先生────エスラムウィーイェは驚いて見せた。
 落ち着いた彼女らとは反対に、バッダの子は大慌てで手を振った。

「わわわあ、わわわざとじゃああああありませんよぉおおお」
「あら。そのドモり癖、まだ直ってなかったのね。ダメじゃない」

 そう言ってにこりと笑うエスラムウィーイェに。
 サルフィーティは呆れたように息を吐いて、言った。

「聞いた話だと、怒っては……いるのかも知れませんが。激怒はしていないそうです」
「へ? 先輩、昨日はえらい勢いで怒ってたんですけど」
「あら、今日は落ち着いてたけどね?」
「昨日なんて、エルポール産の十五年物、飲ませろとか言ってきましたし」
「まあ、エルポール産の?」

 エスラムウィーイェは目を輝かせた。

「良いわね、あの子に買ってあげるの?
 あの子、不思議な飲み物ばかり飲んでいるから、心配してたのだけど……。
 エルポール産ね、良いわ、本当に」
「先生、人の好き好きですから」

 陶然と慶びを述べる先生に、グァラ湯愛好家のサルフィーティは釘を刺して。
 バッダの子へと目線を移した。

「昨日って、何時頃の話なの?」
「夕方過ぎまでですよ。私が会ってたの、そこまでなんで」
「じゃあ、あの方と、何かあったのかしらね」

 目を細めて、彼女は練兵場の中央を見遣った。
 同じく見遣り、エスラムウィーイェが口を開いた。

「そう言えば、貴女、昔はコナラックァに居たのね」
「はい、あの方には随分と世話になったもので」
「あの方って、コナラックァの元巫女長様の事ですか!」

 バッダの子が声を上げると。
 サルフィーティは小さく頷き、呟いた。

「ご健勝で、嬉しい事です……」
「それにしても、あの方、随分とお強いのね」

 小首を傾げたエスラムウィーイェに。
 バッダの子が力強く頷き、同意を示した。

「と言うか、巫女長様、先輩が一度殺してるって聞いてたんですけど。
 あらゆる意味で有り得ないですよね」
「確かに、信じ難い強さだけれど」
「……ちょっと、バッダの」

 サルフィーティが低い声を出した。

「その話、どういう事か教えてくれないかしら?」
「ちょ、そんな詰め寄られちゃ怖いですって!
 いや、訊いてません? 手配されてる淫魔を帰りに潰したって」
「……まさか、あの話の淫魔があの方だっての!?」
「ややや、私がやった訳じゃないんですからー!」

 詰め寄るサルフィーティと、寄られたバッダの子を余所に。
 エスラムウィーイェは首を傾げたまま、ポツリと呟いた。

「大変、興味深いわ」










 足を滑らせていた。
 そのまま姿勢が崩れ、引っくり返ったのだ。

 その瞬間、サヌーラは驚愕の声を上げていた。

「……なんだとっ!」

 足場に泥濘はない。乾いた土ばかり。
 穴に嵌った訳でもない。

 強く踏みしめた足が、滑る道理はない。

 だが、現実にサヌーラは足を滑らせ。
 天から降った見えない飛礫に、身体中を打ち付けられた。

 当たらぬ飛礫は土に当たり、霧散した。
 彼女に当たった飛礫だけが、激しい衝撃を伝える。
 彼女の防御壁を超え、衝撃を身に、骨に伝えてくるのだ。

 彼女はそのまま地面に叩きつけられたが。
 必死になって、身体を転がす。

 すぐ前に居た場所には、再びの鉄槌。
 硬い地面に、膝まで埋まるほどの大穴が開く。それほどの威力である。
 こればっかりは直撃する訳には行かない、と彼女は思いながら、必死に身体を起こした。

 暫時、よろめいてから、走り始めた。
 弾き飛ばされた斧槍を手にとって。


 歪な円を描いて走る彼女に、声が掛かった。

「頑張るねえ」

 中空から顔を出して。
 彼女の上から、女はくすりと笑った。

 サヌーラは激昂するが、抑えた。

「これで、五度目、かい?」
「うるさい!」

 突き出された一撃には、当初の鋭さが失われていた。
 疲労が、彼女の身体を蝕み始めていた。

 そんな状態で。
 未だに一度も当たっていない攻撃が、当たる筈もなく。
 中空の顔を、穂先は感触もなく突き抜けた。

 女の笑みは変わらない。

「駄目だねぇ。点でなってない」
「黙れ!」

 斧槍を突き出し、払う。
 刺し、斬り、払い続ける。

 その一つたりとて、当たらない。

 掻き消されもせぬまま。
 女の顔は語る。

「力押しじゃあ、あたしにゃ当たらないよ」
「……そんな事は、分かってる」

 吐き捨てた。
 言われるまでもない事であった。

 そのために今まで。
 溜めていたのだ。
 温めていたのだ。

 次の瞬間────。
 長い間、身体の内に秘めていた魔の水を、彼女は穂先から吐き出していた。

 女の顔に纏わり付くように、魔の水は囲い。
 女は目を細めた。

「ほぅ、良いねぇ。良い考えだ」
「言ってろ!」

 これなら、当たる。
 サヌーラの目に映る顔は、幻術ではないのだ。
 固定されたのは本体。実体を持たされた本体なのである。

 亡霊と言えど、魔の水で囲われれば、実体を現す。

 この瞬間をサヌーラは狙っていた。
 長い長い間、この一瞬だけを狙っていた。
 外さぬよう、相手が侮る瞬間を。
 それだけを狙って。

 そして。

 彼女は渾身の力を込め。
 踏み止まったその脚力一杯に、突き上げた。



 ────筈だった。



 滑ったのだ。
 踏み込んだ足が、滑ったのだ。

 すぐさま、鉄槌が下ろされ。
 背後から打ち付けられて。

 彼女は開いた口から苦悶の声を上げ、六度目の直撃に、倒れ伏した。










「あら、決着かしら」

 二人の話を聞かず、エスラムウィーイェが首を傾げると。
 バッダの子が、誤魔化すかのように話に乗った。

「あー、あれは駄目ですね。完全ダウンみたいです」
「……そうね、ラングダの子も、そろそろ限界だろうし」

 問い詰めるのを一時止めて、サルフィーティも同意した。
 中空に向かって頷いて。

「ですよね、コナラックァの司祭様?」
「様は止しとくれよ、サアリィ」

 ふっと。
 サヌーラを地に叩き付けた女────フゥッラは現れ、地に足を付けた。

「わわわ、巫女長様!」
「元、だけどねぇ」

 にんまりと笑って、フゥッラは少女に軽く手を振った。
 それだけで、少女は頬を赤らめる。

 と、エスラムウィーイェが目を輝かせて話しかけた。

「本当にお強いのですね、コナラックァの古きお方」
「パリイカを継ぐ貴女も、お強いでしょうに」

 笑顔を向けて、フゥッラは訊ねた。

「ここは一つ、手合わせ願えませんか?」
「まあ。有り難い申し出なのですけど、私は学に生きる者、要らぬ争いはいたしません」
「なるほど。この身もそうありたいものです」

 互いににこやかに返し合い。
 赤髪を掻き上げて、フゥッラは残りの二人を一瞥した。

「久しぶりに身体を動かしたからねぇ、ちぃっと、治まらないんだよ。
 二人であたしの相手、してくれないかい?」
「じゃ、バッダの、頼んだから」
「ええっ!? わわ、私がサシで巫女長様とっ!?
 ラングダの先輩であれじゃあ、私一人なんて絶対敵いっこないですって!」

 バッダの少女は目を見開いて言い募ったが。
 サルフィーティは酷薄に笑い、役を押し付けた。

「ネットの件、あったわよね?」
「げ。それ、ここで使うんですか……?」
「私、非戦闘員だから、頑張ってねー」
「うう、せめてヴァーシュキィのあの子が居れば……」

 泣き言を言いつつ、バッダの子は一人、行こうとしたが。
 サルフィーティも何者かに首根っこを掴まれ、付いて来ていた。

「あれ?」
「えっ、うそ、ちょ、待って下さい、司祭様!?」
「久しぶりだからねぇ、見てあげるよ?」
「いや、ダメなんです、そ、そう、ギルドじゃ非戦闘員で来てますんで!」
「あたしもね、ただのしがない祭司官だったんだよ?」

 二人の遣り取りを聞いて。
 バッダの子はにんまりと笑った。

「ヤムゥーのお姉さんっ」
「……なによ」
「頑張りましょーねっ!」
「……こうなったら、あのラングダの子、無理やりにでも起こすからね!」
「わわ、先輩バリの鬼畜ですね!」

 連れ去られる二人を見遣りながら。
 エスラムウィーイェは一人、笑んで、虚空に呟いた。

「コナラックァのお方」
「……気付かれてましたか」
「はい。ずっとおいでだったのでしょう?」
「流石ですねぇ」

 連れ去るフゥッラを眺めながら。
 虚空から、全く同じ姿のフゥッラが降り立った。

 それを見ずに、エスラムウィーイェは首を傾げた。

「模擬戦の相手でしたら、彼を待った方が良いのではないですか?」
「殺された相手と言うものは、ちぃっと苦手意識が出ますね」
「まあ、そう言えば、そうでしたのね」

 くすくすと笑うエスラムウィーイェとは別に。
 フゥッラは片頬をひん曲げ、呟きを漏らした。

「……未だにね、どこからあのナイフを出したのやら、分からないんですよ。
 殺された方法も分からないような相手とは、あたしはやりたくない」

 フゥッラが彼を襲ったとき。
 当然ながら、死霊が彼を見、監視していたのだ。

 それでも、ナイフを取り出した瞬間が、彼女には分からなかった。

「私もね、あの子が相手なら、ちゃんと殺せるかどうか。ちょっと分からないわ」

 エスラムウィーイェはそう応え。
 何でもないように、いつも通り、透明に笑った。






///



「まあそんな訳だったんだよ」
「それでこの始末か」

 オレは呆れた。

「あんね、ギルド職員を三人もノすの止めて」
「ふん、鍛え方の足らない向こうが悪いよ」
「上位淫魔にそうそう敵う訳あるか!」

 食堂行ったらね、居なかったんよ。みんな。
 もう昼時でね、食堂も込み始めようかって頃なのにね。
 ヴァーシュキィの彼女に席とって貰っといてね。来た訳よ。練兵場。

 そしたら、先生とフゥッラ以外、みんなノされててね。
 練兵場なんかもう穴ぼこだらけ。

 もう馬鹿じゃないかと。

「お前ね、新名登録の前にデジャボン認定食らってどうすんの!」
「不味かったかい?」
「不味いわ! ちょー面倒臭いんだぞ!」

 あああ、なんつー面倒臭い事を!
 後見人として、オレの保証範囲で足りるんか? いや、ギリいけるか。

 問題はあっちだよあっち、保証人の方だよ!

 デジャボンが街中で暮らすにゃ、法的保証が必要なんよ。
 保証人か、ギルドみたいな保護組織の保証か、どっちかによる法的な後ろ盾ね。
 一度手配食らってるし、ギルドの保証申請、通らないだろうなあ……。
 やっぱ、オレが保証人すんの……?

 素で凹んでると。
 気まずそうに、フゥッラが訊ねてきた。

「その……迷惑、掛けちまったかい?」
「いや、姐さんが吹っ掛けた話だから、非はこっちにあるけどね……。
 ここまで派手になると、保証人、どうしたもんかなあ」

 そう首を捻ってると。
 先生が唐突に、言ってきた。

「それならね、私が保証人になってあげるわよ?」
「へ? 先生、マジで良いんですか?」
「だって、貴男が困ってるのでしょう?」

 やっべ、先生好きだ。最高だ。愛してる!

 あ。
 ごめん、耐え切れずに抱きついちゃった。てへり。

「あんがと、先生! 愛してる!」
「有り難う、私も愛してるわ」

 オレの胸に手を付いて、オレを見上げた先生は。
 いつも以上に透明な笑顔を向けてくれたんだけど。

「……ほう、その話、聞かせて貰えるか?」
「あ」

 オレの目の前ね、見るとね。

 姐さんが起きてきてました☆



 オレ、さようなら……。
 こんにちは、土……。

 クソの諸君、元気でね……。
















 番外。最後以外三人称っす。
 じゃあメモを。


斧槍:イメージ的にごついハルバートで全然構わない
魔の霧・水:魔法の元になる力が表現された物
少女:後輩君まだ名前出てないからね……、バッダは出身の街の名



[7091] ちょっと姐さんと模擬戦した 前
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:0a17df80
Date: 2009/04/12 22:51


 絶対ね、前回の読んだ人、サヌーラって誰よ、って思ったと思うんだ。
 姐さんですよ。メインヒロインなんですよ。
 知らないとか、有り得ない、筈なんだ……。

 仕方ないけど、けどね、口惜しいから姐さん話を書いてみた。
 後ね、以下の羅列を見てみてくれよ。


・恋人(オレ)とは恋人未満友人以上の関係が続いていた(と彼女は思ってる)
・恋人の周りには悪い虫が多い
・恋人には過去付き合っていた相手がいる(後輩君)
・実は恋人を一途に思ってる
・ギルド支部で戦闘力が最も高く、自信があった
・でも新キャラにコテンパンにやられた(挫折→成長フラグ)
・近い内にライバル(戦闘的な意味で)が登場する予定


 どこからどう見ても本作の主人公はサヌーラです。
















 姐さん、凹んでるなあ……。
 嫌なもんだね。恋人が凹んでるの、見るのは。



 どうも、毎度毎度のオレです。
 クソの諸君、スマンがちと今回はオレもローテンションでいくわ。よろしく。

 姐さんね、コテンパンにやられたでしょ。
 姉さんと後輩君と三人がかりでも、マジで軽くあしらわれたって話だし。
 鎧袖一触って言ったりするけどさ、当たりもしなかったんだってさ。攻撃。

 オレ的に言わせてもらえば、相性悪いよ、フゥッラなんてのは。
 いやね、オレも直で見てないから、ちゃんと合ってるかまでは分からんけどね。推測はできるよ。
 直接的な打撃力、貫通力の高い姐さんは特に相性が悪いのよ。フゥッラのタイプとは。

 どうせ例の如く、クソの諸君も分かってないんだろ。
 そこら辺の事。説明するし。聞いとけよ。
 あーあ、やっぱテンションあがんねえわ。しゃーねーか。


 サキュバスのフゥッラ。
 フゥッラはね、自分で言ってた通り、死霊術士な訳よ。

 んで、死霊術ってのは、霊の残り滓とかを使って現象を起こす術でね。
 クソの諸君がこれでおk把握が出来たなら、後の授業は免除、休み時間です。
 分からない側のクソの諸君には補習をプレゼントだ。

 とりあえず、実際にあったって話で説明するとだな。
 姐さんが何度か足滑らせたんだってな。それとかちょうど良さげかね。
 あれはね、地面と規定された基礎構成部分の霊的側面を歪めたんよ。

 分かりづらいわな。すまんね。
 いくらテンション低くても、覚えてる資料の説明通りに言っちゃいかんわな。

 まずね、地面って踏みしめる場所。ここは異論ないね?
 地面は浮いたりしないし、お空と反転したりしない。だから踏みしめられる。
 ちぃっとばかりぬかるんだりしても、沼みたいにズブズブ嵌ったりはせんし。基本、立っていられて、踏み込みも利く。

 でもねぇ、魔法ってそれを歪めるんよ。
 法をね、曲げる訳。

 つっても、地面なんてトンでもなブツをどうにかするのなんて、まともな方法じゃ無理。
 それこそB級デジャボンでも上位クラス辺りでもない限り、広域で地面を弄るのは無理よ。
 それだけね、地面の基礎構成部分は強固に出来てるんよ。

 でもね、フゥッラは死霊術士で、霊を操る。
 地面の基礎構成部分の一側面である霊的側面をね、弄れる訳よ。
 これ、踏みしめられる程度の地面を、多少弄る事くらいは訳なく出来る、らしい。
 いや、実際に一流の死霊術士と闘った事がないから、知識ベースで推論してるんよ。らしい、ってのは見逃して。

 で、普通ならまあ、地面を泥濘に変えたりとか、ちょっと脆くして落とし穴にするとか。
 分かりやすい方向に操作するんだけどね。つかオレならそうする。コスト的な問題でね。
 ただ、フゥッラは違ってね、地面の基礎構成そのものを弄ってるっぽい。
 さっき言ったみたいに、地面が浮いたりするレベルの改変な訳よ。

 この辺は、オレも練兵場見てるから断言できるんよ。地面弄られてたから。
 何と言うか、片付け担当の人乙。オレもちぃっと直したけど、祓うの大変だろうなあ……。

 ま。何にしてもね、これねぇ、姐さんみたいな突撃型の戦士と相性最悪なんよ。
 分かると思うけどさ、まともに闘えないでしょ? 一撃の踏み込みを端から外される訳だし。
 これ一つとっても、姐さんに勝ち目ないの見え見え。タチ悪いよね。


 しかしね、こんな事してるからデジャボン認定食らう訳よ。
 幾らね、上級淫魔だからってここまで力使うとオレも思ってなくてね……。
 そりゃまあ、さあ、オレが殺した時みたく、一方的に姐さんにボコられるとかは無いとは思ったけどさ。
 逆に姐さん相手、どころか後輩君まで入れて、軽くボコれるとも思ってなかったんよ。

 あ、姉さんは除外ね。どんな闘い方するか知らんし。
 でも、最近人外に世知辛いギルド本部でね、務めてた姉さんがね、弱いとかは有り得ないだろうし。
 それ三人がかりでボコとか。マジで止めて。名前登録する前から目立ちすぎ。

 そもそも、姐さんボコにした件だけでね、認定にゃお釣りが出ようかって話なのに。
 ランク内の位階設定でも上位に行くでしょ。こんな事されちゃ。
 しかも、正規ルートで練兵場借りて、名前データの無い(死んだから)フゥッラが闘った訳だかんね。
 姐さんと姉さん(借りた責任者ね)で報告して、それに大将が判子ポン。これで認定終わりだよ……。


 ん? 攻撃当たらなかったのを説明しろ?
 ああ、そりゃ単に肉を消しただけじゃない?
 霊化したんだから、それぐらいの芸当は出来るでしょ。その上、死霊術士だし。

 姐さんが魔法で顕現化させたの、利いたっぽいんでしょ?
 他にも仕込があるだろうけど、基本はそれであってるんでしょ。

 その辺、詳しい話を知りたいなら、図書館にでも篭ってくれよ。
 現場のオレらは、そういう魔法とか技があって、それをどう破るか。それで十分だからね。あんま詳しくないんよ。
 つかね、霊化した意識ある相手とか、そんなデジャボンクラスの連中、そうそうは見んから。しゃーない。
 

 えー、穴ぼことかは何だ、って?
 そこいらは流石に勘弁しといて。
 普通に魔法だろうけど、該当する魔法が腐るほどあるから。

 簡単な槌の魔法を強化してるとか、実は衝撃その物を打ち出してたとか、キリないし。
 見てみんからにゃ、分からんよ。スマンね、クソども。



 昼飯でね。
 多分、フゥッラが一番凹んでるっぽく見えただろうね。周りからね。
 後輩君から旅行記の件、猛攻受けてたし。姉さんも色々訊いてるし。
 いや、先生が一番エグいんだけど。何気にトンでもない事訊くし。

 後輩君の友達の、嬢ちゃんって呼んでるあの子。あの子が一番落ち着いてるね。意外。

 フゥッラ、マジでヘタレててね、顔が引きつったまんま戻ってないでやんの。
 マジで何したんだろうね。
 どうせハチャメチャしてたんだろうけど。

 でもね、一番凹んでるのは姐さんなんだ。
 だから助けてあげたりなんかしない。
 そんなガブロ河で溺れてる人のような目でこっち見ても知らない。


 姐さん。一見は、いつも通りだけどね。
 姐さんはね、凹むと水を飲むんだ。少し多めに。
 受け答えだって大して変わっとらんし。普通に見えるけどさ。
 訓練学校の頃も、ギルドでパーティ組んだ頃も、凹んだ時はいつもそうだった。

 食事の席でね、渇いてるみたいにいつもより少しだけ水を多く飲む。
 そして、酒には絶対に手を付けない。

 これ、前に訊いた事があるんだけど。
 感情が悪い意味で高ぶると、ひどく渇いて堪らないんだって。
 その時に酒を飲むと、姐さんの種族ラングダって皆、ベロンベロンに酔うんだそうだ。
 だから、それを抑える為に水を飲むようにしてるそうだけど……。

 オレがね、先生の件を言い訳してる間は、まだ姐さんもマシだった。
 それが、話し終わって食堂着いて飯始めてみたら、姐さん明らか凹んでるのよ。
 いや、食堂の前でもう徴候は出てたんだけどね……。もう付き合い長いから、やっぱ分かるって。その辺は。

 そんなこんなで、オレもやっぱりテンション駄々下がり。
 さささと飯食い終わって、皆にね、

「ほらほら、あんまり騒いでちゃ迷惑になるでしょ」

 って言えちゃうくらい。
 うざいよね。盛り上がってるとこにこういう注意されんの。マジうざいよね。(大事なことなので二回ry)

 フゥッラはガブロ河で溺れてる内に偶の舟でも見たかのような驚き顔見せてたけどね。 
 いや、フゥッラのためじゃないんだけども。単にオレがテンション低かっただけなんで。

 まあ実際、食堂も込んできてたんで。
 ほどほどにローテで卓を離れてやらんといかんのも事実だけども。
 皆さん、オレの言葉に話のペースを落として、ほどほどに食い始めました。

 訓練学校当時のね、すげぇ叱られた後の食事みたいだった。
 えぇと。なんかスマン。



 うちのギルドは昼の休憩時間規定が緩い。
 と言うのも、多種族なもんだから、食い方も色々なんよ。食い物制限とかさ。宗教も色々だかんね。
 食う前やら、食った後やらにも、あれこれ手間暇掛かる習慣があったりする奴らも居るんよ。

 本部ではえらく肩身狭いらしいけどね。うちは基本、申請通れば何とでもなる。

 つってもね、食堂のメニューとかはそりゃまあ、そんな幅広かったりせんのよ。
 ある部族の昼専用の食事とかね、この馬鹿でかいギルド支部で一々用意は出来んし。
 ま、その辺は、バザールとか自炊とか、色々手はある訳だしね。

 んで、蛇妖のヴァーシュキィの末って言ってた彼女。
 あ、嬢ちゃんって呼んでる、後輩君の知り合いね。

 例えば彼女なんかだと、昼の後に午睡を取る必要があるのだとか。
 必須って訳じゃなくて、消化活動の問題で、仕事の能率がガクンと落ちるらしい。
 オレと犯ってた時間もね、その時間を前に移すよう申請して来てたらしくてね。
 うん。大将にバレたら酷い目見そう。主にオレだけが。

 だから、オレより早く食い終わってた彼女はそそくさと出て行って。
 午睡も出来ないとかで、ちぃっと今日は大変なんだそうで。
 そこまでオレと犯りたがってくれたんは、まあ光栄だけどねえ。
 仕事に影響でちゃ不味いよね。主にオレの立場的に。


 ま、規定が緩いっつっても、雛形はあるんよ。当然。
 受付業務なんかは当然、定時だかんね。姉さんもきっちりしてる。
 でも、今日はフゥッラに付きっ切りだろうからね。姉さんも、その辺で多少は余裕あるんよ。
 ペース落としてからは、フゥッラと穏やかに近況報告とかしてたね。

 先生はぶっちゃけお偉いさんでね。しかもギルド内で正規業務無し。
 仕事で来てるっても、資料申請に来てるだけだそうだし、その辺は許可待ちだし。
 余裕有りだよね。オレの次くらいに。のんびり食ってたよ。

 後輩君は雛形通り。
 姐さんとフゥッラの件は訓練見学申請は通してるけど、午後からは巡回と待機だそうで。
 自分とこのパーティと話をしに、嬢ちゃんの次にお暇しました。

 んでだな。
 姐さん。姐さんのサヌーラ。
 彼女の種族ラングダにゃ、特別な食事の習慣とかは無い。宗教的にも昼はほぼ問題なし。
 今日は一日訓練に当ててたみたいで、午後からも同じく。練兵場で訓練訓練。
 練兵場の申請が通ったの、えらく早かったけど、姐さんがもう場所取り済ませてたからなんだよね。

 だからさ。
 姐さんも、午前の報告書き上げて、さっさと練兵場に行かなきゃなんない訳でね。
 だってさ、正規で取った練兵所、ほったらかしてたら査定に響くしさ。
 待合室なんぞで、渋い顔して白紙の報告書睨んでる場合じゃないんよ。本来は。

 そんな訳でだな。オレは姐さんに声を掛けた。

「姐さん」
「…………」

 あー、駄目だこりゃ。
 オレに怒ってて、無視してるんじゃなさげ。
 頭ん中がごっちゃになって、聞こえてないんかも知らん。

 オレは待合室に人が少ないのを確認すると。
 姐さんの後ろに回って、上から覆い被さるみたいに抱きついた。
 びくりと身体を震わせて、振り向こうとする姐さんの耳に言った。

「サヌーラ」
「あ……ああ。な、なんだ?」
「調子悪い? まだ身体きつい?」
「あ、いや。大丈夫だ、私は」

 おー。良い反応。
 オレの方を向くのは諦めたか、また視線は報告書に落としたんだけど。
 オレの声に反応して、少し身動きするのとか。
 受け答えの声に、どこか虚ろな様子が感じられるのとか。

 待合室付いて来て、黙りこくってたさっきまでと全然違うね。良い反応良い反応。
 こんぐらい、皆の前でも素直に反応すりゃ良いんじゃね、ってオレは思うんだけどねー。
 無理に普通を装わんでも良いと思うんだけど。

 そんな事を思いながら、オレは訊ねた。

「でも、ま、とりあえず練兵場行かない?」
「……ここで、報告書、書いてから」
「提出後で良いんでしょ? ここに拘らんでも良いんじゃない」
「いや、だがな……」

 おーおー。姐さんにゃ珍しいね、歯切れが悪い悪い。
 つってもね、まあ、このままじゃ悪い訳で。

 オレも色々悪かったしさ、ちと働きます。珍しく無料で。

 首の辺りで絡めていた手を緩めて。片手で姐さんの頭撫でながら。
 オレは姐さんに言った。

「サヌーラ」
「あ、ああ」
「分かってるよな。練兵場、行かなきゃなんないって」

 姐さんは小さく溜め息を吐いて。
 言った。

「ああ」
「ん。良い子良い子」
「子供扱いするな」

 オレの手を振り払って、姐さんは立ち上がった。
 報告書を片手に、言ってくる。

「なあ」
「どったの?」
「良ければな、帰り、飲みに付き合ってくれないか」
「あー、そうだなー」

 オレ的には、もう帰るつもりなんよ。登録申請終わったらね。
 でもまあ、どっかで待ち合わせしても悪くないしね。

「んじゃま、そん辺りは、歩きながら話そうや」
「歩きながら……?」

 本気で怪訝気な姐さんに。
 オレは言い返した。

「練兵場まで、付き合うから」

 姐さん、目ン玉飛び出そうなくらい驚いてた。



 これはオレ予想。外れてるかも知らん。
 そん時はクソの諸君は笑ってくれ。

 姐さんね、普段から甘えるの、下手でね。
 性的な部分への嫌悪とか、ラングダの族の特徴も影響してるのかも知らんけど。
 恋人作った事が、無いのか、あんま無いのかまでは知らんけど。ホント下手。
 純愛路線とか好きなのにさ。

 姐さんの部屋にな。ブール湯に砂糖ぶちまけたみたいな恋愛小説、並んでるだぜ。
 学生時代にそれ見て吹いたら、マジで死に掛けた。あれは笑えん思い出だ。

 だから、まあ、なんだ。
 報告書書く間だけでも、オレの傍に居たかったとか、そんなんだったんでしょ。
 落ち込んでる時に恋人の近くに居たい。まあ、ありそうな話だわな。
 オレが名前の申請でさ、待合室から動けないと思っててさ。それで、待合室まで付いて来て。

 フゥッラの件は、オレがいなけりゃ出来ない後見人関連は、後回しでも構わんからね。
 ちぃっと姐さんに付き合うくらいは問題ないのよ。ぶっちゃけ。

 ん? 姐さん、オレに切れてたんじゃねーのって?
 いやいや。姐さん、先生の件じゃそんなには怒らんから。
 もうさっきのは、気にしてないっぽいよ。
 そもそも、姐さんってスパッとしてるからね。性格的に。引き摺らんのよ。

 とまあ、以上が付き合い長いオレ予想。的中率は五割。実は微妙なんだ、済まない。
 ま。可愛いもんだよね。姐さんのこういうとこ、オレも好きなんだ。

 でも、査定に響くのはどうかと思うんだZE☆



 歩きながら、夜の件を話し始める。

「一旦、オレは帰るしね。オレの家の方でなんか食わない?」
「あっちの方面か」

 姐さんは首を傾げた。

「レゴール亭辺りか?」
「あー。悪いけど、気分じゃないわ。あの店の味付け、西っぽいでしょ」
「出張で食い飽きたか。バルパロ亭は?」
「確か、休日だった筈。ロブルア亭は姐さんどう?」
「済まんが、最近、レポリト亭でバトゥ国料理は食べていてな」
「んー。ぱっと決まらんわな」

 オレも首を傾げ。
 ふと思い当たって、提案してみた。

「んじゃ、オレの家で料理しよう」
「りょ、料理、か?」
「姐さんも自炊、してるんでしょ」
「その、人並み程度だぞ?」
「そりゃオレも凝っちゃあいないさ」

 例外はグァラ湯。あれだけは凝ってる。
 それでも姉さんに敵わない。水の特性が分かる水妖ずるい。

 オレは笑って、言った。

「良いでしょ。バザールで食材買って、家で二人で料理」
「二人で、か……」
「新婚っぽくてね、良いんじゃないかと」
「し、新婚……」

 俯く姐さんに、オレはまた笑って。
 ちょっと表情を改めた。

「あー、ただ、あの淫魔さんがどうなってるか分からんけど。もし家に居たらごめん」
「家に居る、だと?」

 不快そうに眉を顰めた姐さんに、オレは謝った。

「うん。ごめん。名付け親としちゃ、家も決まらんうちからほっぽりだせんのよ」
「随分と情に篤いのだな」
「いや、査定に響くかんね」

 皮肉気な姐さんにオレは真正直に返して。
 もう一言付け加えた。

「ま。一度殺してるしね。こんぐらいはサービスするさ」



 と。
 姐さんがふと、足を止めていた。

「どしたの?」
「……ああ、そう言えば、そうだったな」

 いつの間にやら伏せていた顔を、ゆらりと上げると。
 爛々と光る目で、姐さんはオレを見て、射抜いて。言った。

「お前、一度、あの方を殺していたんだな」
「ちょ、後輩君じゃないんだから、そんなとこで怒られても」
「いや、怒ってはいない」

 ニヤリと笑った笑みがひどく邪悪で。

 オレは思ったよ。
 あ、レンダラ竜の尾を踏んだ、って。

「ちょうど良いな。模擬戦、して貰おうか」










 いや、仕事するとは思ったけどね。
 こっち路線の予定はなかったんだけど。

 しかしねえ。
 いつもなら、つか、一昨日ほどにボコられたんだけども、オレ。
 このね、目の前を行く斧槍に、手酷くやられたんだけども。

 蛇妖の嬢ちゃんに感謝感謝。



 まだ穴凹の残る練兵場。
 まあ、午前から午後に掛けて、ここは姐さんが取ってるかんね。保繕はその後になるんよ。

 そん中でオレは、姐さんと模擬戦やってる。
 姐さんはさっきと同じ斧槍。それを縦横無尽に振り回して。
 オレは模擬戦用のアーマーだけ着て。姐さんの攻撃を避ける避ける。
 いつも通りっちゃ、そうなんだけども。
 今日はちと違います。先日見たく、腕折られたりしてないし。

 かれこれ、もうさっきの飯の時間と同じくらいの間、やりあってるんだけど。
 場は停滞しとるのよ。変化が無くてね。

 理由は簡単。決定打が共に無くてね。
 いや、そもそも、攻撃の応酬すらない訳だけど。



「どう言う事だ!」
「いやいや。種明かしする訳ないでしょ」

 オレの右に左にと、飛んでいく斧槍の穂先を見遣りながら。
 オレは姐さんに言葉を返した。

 何てことはない。
 別段、珍しい手法を使っている訳ではない。
 むしろ、姐さんタイプと戦う際の常套手段。

 つまり、攻撃を当てさせない。
 ガチで殴り合えば、オレなんて一発でお仕舞いだかんね。
 だからまあ、オレは今、幻術を使ってる訳ですよ。

 姐さんには、今、オレが突けば消える、幽霊の類に見えているだろうね。
 もしかしたら、フゥッラを思い出させているかも知れない。

 オレは挑発した。

「それでやる気? どしたの? 調子悪い?」
「煩い、黙れ!」

 穂先は大きく外れた位置を突き。
 振られた斧も、オレから離れた辺りを裂いて行く。

 踏み込む先は見当違い。
 向いている先に見えるのは幻術。
 それでも姐さんは諦めず、食らい付き、打突を繰り返す。

 当たれば一撃必殺。
 当たらなければ、幼児の体当たりにも劣る。
 打撃系の辛いとこだよね。

 ま、オレにも余裕はあんまないんだけども。
 つか、そろそろ限界っす。

 幻術の維持は結構な力を使う。
 根源の魔の力をダクダク使うんよ。
 蛇妖の嬢ちゃんはその点、すっきりした魔法設計で幻術組んでてね。実に優秀。
 マジでパーティに来て欲しい。

 オレのよか効率良かったんで、パクらせて貰ってます。
 犯ってる時にも試してみたでしょ。あれで嬢ちゃんは吃驚してたんだけど。
 まあ、それで何とか実践で使えとるんですよ。でもやっぱ消費激しい訳で。
 姐さんバテるの待ってたら、枯渇しちまうってこれ。

 と言う訳で、オレとしては、ちと焦ってた訳ですが。
 何とかなりそう。良かった良かった。

 相変わらず、突き、薙ぎ続ける姐さんに。
 オレはにこやかに声を掛けた。

「姐さん、疲れてるんでしょ。無茶すんなって」

 その労いの言葉に。姐さんは言葉を失うほど激昂して。
 踏み込み一番、渾身の一撃を放とうとした。

 フゥッラが弄った辺りの地面に足を付いて。

 その瞬間、オレは右の手首を回して、トラップを発動させて。
 途端、踏み込みの足を取られ、姐さんは姿勢を崩した。

「なっ……!」
「はい、アウト」

 そっくり返った姐さんから、斧槍をもぎ取って。
 倒れた姐さんの前に、穂先を突き付けた。

「これで二度目か。姐さんに勝ったの」
「どう言う事だ……!」

 姐さんは短く吐き捨てた。



 座り込んだままの姐さんの隣で、使ったアーマーを確認しつつ。
 オレは二三ほど、説明した。

「見てないけどね、あの淫魔さんとの戦い、こんな感じだったんじゃない?」
「……よく分かるな」
「わからいでか。推論は戦闘技能の基本基本」

 言葉少なな姐さんとは対照的に。
 オレは姐さんに目を向け、笑って言った。

「姐さんのスタイルに対抗するなら、これが一番楽。
 つまりは、当てさせない。そんで攻撃させ続けて、こっちは決定打だけ打つ」
「ああ、そう言うことか」

 頭が冷めたのか。
 姐さんは幾分、冷静な表情で頷いた。

 姐さん、鬼の血族だからね。
 戦闘時はあんな感じで、すぐ頭に血が昇るんよ。
 あれで姐さん、冷静な方だかんね。鬼って怖い。

 姐さんが質問してくる。

「私が追っていたのは、幻術だったのか?」
「おうよ。新調したかんね。実践テストしてみた」
「確かに、お前の幻術にしては長かったな」
「んー。姐さん、オレの事理解してくれてるね。えらいえらい」
「子供扱いするなと言ってるんだ」

 姐さんは、頭を撫でたオレの手を払った。
 その動きは、疲労しているが、鋭い。

 随分と元気が出てきてるね。良い感じ良い感じ。

「それじゃあ、私が転んだのは何だったんだ?」
「オレの場合は、あの淫魔さんが弄った地面を利用しただけだけども」

 オレは説明を加えた。
 地面構造の変化と、それによる効果の付随。

 まあ、この辺は学校の授業でやった内容通り。
 その意味じゃ、教科書に載るくらいオーソドックスな術で。
 しかも常人にゃ真似できない技だった訳だ。
 フゥッラの場合は、死霊術って裏技があるけど、にしたってエグイ。

 再び姐さんは頷いた。顔が引き攣っていたが。

「……なるほど。どうしようもないな」
「そそ。攻撃を肉弾でやろうって姐さんにゃ、凶悪すぎるね」

 したり顔のオレに、姐さんは少し俯いて。

 ゆっくりと上げた顔からは、もう既にギラギラと強い意志が零れ落ちていた。
 食堂での、待合室での、あの虚ろさは、もうどこにも残っていなかった。

「どうやったら勝てる、と思う?」

 真剣な目の姐さんに、やっぱバトルジャンキーだよな、と思ったり。
 凹んだ所なんかもう取り戻して。再戦の事しかもう見えてないんだろうね。

 つかね、オレに一本取られたのとか、あんまり意識に上ってない臭い。
 普通ね、オレみたいな半端もんにやられりゃ、姐さんだって凹むと思うけども。

 そんだけ口惜しかったんだろうね。フゥッラにボコられたの。
 そんな事を思いつつ、オレは一つ提案してみた。

「そだなあ。んじゃ、姐さん」
「なんだ?」
「一発犯ってみてから考えよう」

 姐さんを元気付けようと思っての発言。
 うんうん。オレって律儀だよね。恋人思いだよね。



 でも、姐さんの反応は連れなかった。

「はあ?」











 



 前だけ更新で済まない。エロはまた後日。
 今日もメモをば。


ランク内の位階:ランクAとかの中にも区分があるんよ
ガブロ河で~:熟語、この大河で毎年溺死者が多数出てる
ブール湯:柑橘系の香りがする蜂蜜みたいに甘ったるい飲み物、姉さんが淹れてくれてたやつ
レンダラ竜~:熟語、地雷踏んだと同じ意味




[7091] ちょっと姐さんと模擬戦した 中 (エロ)
Name: 寒ブリとツミレ◆69dcb0e1 ID:9522d730
Date: 2009/10/22 03:58


 さらりと間が空いて、正直スマンカッタ。
 って言うか前編で止めてたとか、さすがにアレ過ぎる。反省。
 あと、エロ自体もテンポが悪い。これも反省。
















 纏め上げた髪を解くと。バッと広がって。
 姐さんの顔の周りを、豊かな髪が埋めていく。
 金の水流が白の岩に砕かれ広がるかのような。そんな幻想的な美しさだった。

 オレがちと、目の前のそんな情景に見惚れていると。
 姐さんが不審そうに問い質してきた。

「どうかしたのか?」
「いや。姐さんに見惚れてた」
「……あまり、からかうな」

 照れくさそうに目を逸らす姐さんが素敵。
 頭撫でてみた。振り払われたりはしなかった。

「こんなとこでするの、姐さん的にはアウトだろうけどね」
「当たり前だ」
「ま。訓練だから。その辺は大目に見てよ」
「……その話、本当なのだろうな」

 胡乱気な姐さんに、オレは笑った。

「信頼してよ。オレが姐さんに嘘吐いた事なんて無いでしょ」
「嘘を吐かれた事は、な」

 口元を歪めた姐さん。
 それに、オレは笑いながら、頭を撫で続けただけだった。



 うん。
 と言う訳で、姐さんとヤる事になった訳よ。(つっても、仕事なんだけどね)

 互いにアーマーは外して。常服に着替えてね。
 練兵場の部屋ん中からは動かんで、話なんかしてた訳よ。

 前戯に入るのかね、こういう会話って。

「それで、どうすれば良いんだ?」

 犯ると決めても、姐さんはやっぱり戸惑い気味。

 練兵場で犯るってのは、まああれだけどさ。
 それ別にしても、姐さん、受身な訳で。それじゃ訓練の意味がない。

「姐さん姐さん、これ、訓練なんだからさ」

 相変わらず頭を撫でつつ、オレは言った。

「戦闘で敵に、次どうしましょ、って訊く? そこは自分で考えんと」
「それはそうだがな――――」
「姐さん」

 オレは姐さんを遮って、目を見据えた。
 見返す視線にも、まだ戸惑いの色が移ろってる。

 まあ、練兵場で、それも勤務中に犯るとかね。
 いつもなら有り得ないんよ。姐さん的にも、当然オレ的にも。(蛇妖の嬢ちゃんの件は突っ込まんでよろしい)
 それに、オレがここまで強引なのも珍しいしね。普段は模擬戦との交換条件だし。

 その辺の認識は億尾にも出さず。
 オレは説明を続けた。

「姐さんはさ、その辺、ムリムリで押しちゃう。大体はそれで押せちゃうしさ。
 でもさ、だからあの淫魔さんには敵わなかった」
「……そうだな」

 苦い顔を隠さない姐さんが可愛くて。
 オレは姐さんを抱き寄せて、胸元に顔を掻き抱いた。

「だから、ま、訓練が必要なんよ。分かる?」
「それは……分かるが」

 オレの胸に顔を埋めたまま、姐さんは呟いた。

 されるがままだよね。
 姐さん、エロい方向じゃすぐ受け手になるんだから。

 でも今日は、それじゃ不味いんでね。

「ほら、姐さん。どうすりゃいいか、考えて考えて」
「ど、どう考えれば、良いんだ?」
「搾る時は相手の望む事を探る。殺し合いじゃ相手の嫌がる事を探る。
 相手のね、心理や思考を読むってのはどっちも変わらんのよ。だから考えるんだ」

 首を下ろして、耳元で囁く。

「オレが喜びそうな事。気持ちの良い事」
「気持ちの、良い事、か」
「そのためにはね、色々、前提条件を頭に入れる事」

 オレは続ける。小声で、囁いて。

「オレは姐さんの事が好きなんだ」
「あ、ああ、わ、私も……」
「今はね、オレの言葉だけ聞いて。それで考えて」
「あ、ああ」
「姐さんが好きだから、姐さんに喜んで欲しい」
「あ、ああ」

 オレは姐さんの頭を撫でる。撫でる。

「姐さん、渇いてたんだよね」
「そうだ」
「今も?」
「ああ。少し、だが」
「じゃあ、何か飲みたいよね?」

 姐さんが、喉を鳴らした。

「姐さんが、飲んでくれるとね。オレも嬉しいんだよ」
「ん、あ、ああ」
「姐さんはオレを気持ち良くする。しなきゃなんない」
「……ああ」
「じゃあ、答えは?」

 姐さんが顔を上げた。

 重なるオレの言葉を、受け入れて。咀嚼したためだろう。
 既に、その顔は欲情に濡れていた。

「お前のを、舐めて、飲ませてくれないか?」
「上出来」

 オレは姐さんの頭を一撫でし、身を離した。



 オレのズボンを脱がした姐さんは。
 今にも食らい付きそうなくらい、俺の物に顔を寄せていて。

 オレが手で、肩を止めてなかったら、とっくに始めてただろうね。

「駄目、なのか? 間違っていたのか?」

 戸惑いが、失意に変わっている。
 怖々と訊ねる姐さんは、常の姿からは程遠い。

「そうじゃない」

 そんな、どこか濡れた目で見上げる姐さんは凶悪に可愛いが。
 オレは冷静を装って、首を振った。

「姐さん、焦らしてみようよ」
「じ、焦らす、か?」
「そう。焦らすの大事だよ?」

 囁き声を上から落とす。

「オレが堪らなくなるまで、焦らすんだ」

 片手で頭を撫でる。撫でる。
 艶やかな金の髪の中、姐さんは頭を震わせている。

「オレがね、姐さんが欲しくて堪らなくなるまで焦らす。焦らすんだ。ほら、手で触って、擦ってみて」
「あ、ああ。こうすれば、良かったのだな?」
「ん。そう。そんで、オレの反応見て、色々、探って」

 顔を寄せたまま、怖々と両の手で俺の物を触り。
 撫でるように表面を触り、撫で付ける。
 本当に優しく。
 今にも壊れそうな古物にでも触れるかのように。

 確かに焦らしだけども。
 これじゃ、刺激が少な過ぎるよね。

「姐さん、ほら、握ってみて」
「あ、ああ」
「それで、擦って。そう、もうちょっと力を入れて。そう、そんな感じで。もっと色々と探ってみて」

 頷く姐さんに、俺は髪を撫で。
 姐さんは強張らせた顔で、ゆっくりと擦る。
 そのぎこちなさは、生娘かと見紛うばかり。
 俺の物から目を外せない姐さんを見下ろし、少し意地悪げに笑った。

 これじゃ、どっちが焦らしてんだか。
 先に進めない、そのじれったさを感じてんのは、どっちが上なんだろうね。

 姐さんの手も焦りがちで。雑。
 ほとんど口淫ばっかりだったからね。手淫は珍しいんよ。

 元が腕力も強靭性も人間と比べ物にならんから、力の加減に怯えがある。

 だから、ま。雑なんよ。
 もちろん、姐さんのしてくれる事は嬉しいし、素直に気持ち良いと思う。
 それでも刺激がまだまだ不十分なのも確か。

 頭を撫でながら、言った。

「姐さん、唾、手に付けてみて」
「あ、はあ、唾、か?」
「姐さんの唾でベタベタにしちゃおうよ。その方が、オレも気持ち良くなるしさ」
「ん、ああ、分かった」

 一度手を外し、唾液を零して。

「手にすり込んで。もっとたくさん。こっちを見て。ほら、もっとたくさん零して」

 息も荒く、涎を垂れ流しながら見上げる姐さんは、綺麗だ。
 何故だろうね。こんなに下品で、淫らどころかだらしなくすらあるのに。
 黒の目で見上げる姐さんは、本当に本当に綺麗で。
 今すぐ抱き締めて、時間を忘れて犯りたくなるくらい、素敵で。

 でも我慢我慢。
 オレが正気を失ってちゃ世話ないわな。

 オレは一度頭を振って、言葉を続けた。

「ほら。オレに見せるんだよ。手を。すり合わせるのを。見せ付けるんだ。そう。そうそう」
「ん、これで、良いのか?」

 グチョリグチョリと。
 手をこね合わせ、擦り合わせながら、姐さんは見上げる。
 媚びるような、泣いてしまいそうな目。
 そんな目が良い。
 惹きつけられて。耳が姐さんの手の音にだけ集中させられてる。

 やっぱり姐さんは良い女なんだよ。
 こちらを魅せる技術なんてなくても、そのままオレを魅了しちまう。

 元がこれだけ良いの持ってるのに、すぐ受身に回るんだから。勿体無い。
 オレは内心で苦笑しながら、言った。

「その手で、オレのを握ってくれるんだよね?」
「あ、ああ、そう、そうだ……」
「じゃ、それを口で言って。こっちに知らせて。興奮させるんだ。分かる?」
「あ、ああ」

 ごくりと、唾液と洩れ始めた腺液とを飲み込み。
 重ねていた手を開いて、おずおずと、姐さんは言った。

「い、今から、お前の、その、物をだな」
「うんうん」
「こ、この、唾液まみれの、手で、ん、擦って」
「擦って?」
「き、気持ちよく、させて、やるから、な」

 上出来上出来。
 隠語なんか言わない生真面目な姐さんにしちゃ、上出来ですよ、マジで。

 本当に、恐る恐る、といった風な具合の語り口。
 これで構わないか、とでも問いたげな上目遣い。

 オレは再び姐さんの頭を撫で、誉めた。

「そうそう。そうやってちゃんと口に出すのが大事なんだよ」
「い、今ので、良かった、のか?」
「今すぐにね、姐さん押し倒したいぐらい」

 そしてオレは促した。

「じゃ、今までの忘れないで。続けてみて」



 グジュルグジュると手にへばり付いた液が音を立てる。

 手の滑りは、悪い。
 舌から漏れ出た腺液が粘ついているからだ。
 その抵抗に応える様に姐さんは両の手に力を込め、すっていく。
 それは先程までとは全く違ったレベルの快楽だった。

 グジュプ、ジュプジュプ、ブジュプ、グジュプジュジュプジュプグジュプジュプ────

 腰が浮ついて、軽く振っている。無意識に。
 ただ締りの良いだけの膣にぶち込んでいるよりも、今の姐さんの手の方が何倍も気持ち良い。

「あ、姐さん……」
「ん、は、ああ、あ、な、なん、だ?」
「ん、い、いまの、これ、ね、きもち、いい、から」
「あ、ああ、ああ……!」

 今にも口付けそうな位置に顔を置き、姐さんは必死にこちらの反応を見ている。見上げている。

 興奮に理性の線が切れ始めてる。
 汗に塗れつつあるその顔は純粋に綺麗で、エロくて。

 今までの余裕はどこに行ったか、オレも仕事を半分忘れて、快楽を貪っていた。

 腰の振りが徐々に大きくなる。
 時折、姐さんの上向いた顔の、上唇や頬に、先がぶつかる。
 汗や唾液でぬめり、滑って、それはまた刺激となって、興奮を加速させる。

 時折力の加減が変わり、緩んだ手の内を強く突いた。
 腰を戻す時に、力が入り、未だにこびり付く液がひどく腰を重たくさせる。
 それで、またオレの腰は、もう一押しの力を使って、自分から快楽の嵩を増していく。

 じゅぷじゅぷ、じゅぷじゅぷと。

 姐さんの手の動きと、オレの腰の振りとが一体となっていた。
 オレは姐さんの手を犯し、姐さんは手でオレを受け入れている。

 完全に余裕を失っていたオレは、気づかない内に姐さんの頭を掴んでいた。
 もう限界なのだ。つっかえつっかえ、それを伝える。

「ん、あ、あね、さん」
「は、あぁっ、んん、なん、だ……?」
「おれ、も、んんっ、げんか――――っ!」

 喉奥で言葉がつかえた。
 代わりにオレは、呻きのような声を洩らしていた。

 手の、狭い狭い間が、抜けて。
 違った窄まりに、オレは物を突き込んでいた。
 いや、突き込まされていたんだ。
 その感触のいきなりの変化に耐え切れず、目の奥で火花が散った。

 吸い付き、離れない。
 ただでさえ悪かった滑りは、もうべとべとになって。動きすら難しい。
 そう思わせるくらいに姐さんの口内で、オレの動きは鈍った。

 だが、それは、腺液のせいだけじゃない。

 隔離されていた思考すら消し飛びそうな衝撃。
 圧倒的な快楽の渦に、オレは幻惑されていた。

 腰の動きはもう、オレの意思から外れていた。
 ぐちゅりと鳴る、穴の奥深くまで突いて、穴の入り口に引っ掛けるために引き戻す。
 ただ貪るためだけに、オレの抑えなんか忘れて、ただただその動きを繰り返していた。

 喘ぎ、見下ろすと、見上げる姐さんの顔が見えた。
 それは、訊ねる顔。
 蒸気が上がりそうなほど体温を上げ、顔を紅潮させながら。
 それでも、姐さんはオレに訊ねていた。

 これで、正しかったのか、と。

 ああ、そうだ。
 正(まさ)しく、これで良かったのだと。

 そう返事をする代わりに。
 オレは、姐さんの喉に、そのまま精を放っていた。
 堰を切ったかのように、激しい勢いで。どくどくと。



 抜き終わったオレは、茫然と意識を浮かせてたんだけど。
 その間も、姐さんは後処理まで丁寧にしてくれていた。

 ちょっとの間、まだ出るんじゃないか、と言わんばかりに、口内で物を弄んでた姐さん。
 一度口を離すと、綺麗にオレの物を舐め、精の残滓すら余さず拭い去って。
 オレから少し距離をとって、胡坐でその場に座り込んだ。

 頬に朱色を残したまま、姐さんは深々と嘆息した。

「結局、だな」
「結局?」

 姐さんの言葉に、オレも自分を取り戻して。聞き返す。
 姐さんは口元に苦さを浮かべて、呟いた。

「お前の言うことに、従ってただけだったな」

 オレはそれに、言葉は返さないで。
 周りに目をやって、お目当ての品を探してた。お、発見。
 あ、ズボンですよ。探してたのは。
 ずっと下半身丸出しってのも恥ずかしいもんでね。

 姐さんは、オレを横目に言葉を続けていた。

「考えろと言われて、このざまだ。情けない」

 衣擦れの音が残る。
 いや、オレが返事返さなかっただけなんだけどさ。

 ちとね、この後の段取りがぐるぐる回ってたんだけども。
 姐さん、ほったらかしてちゃいかんよね。反省。

 ズボンを履き直したオレに、姐さんがポツリと零した。

「終わりか?」
「ん?」

 再び落とした嘆息も深々だ。

「……やっぱり、駄目だったんだな」
「いや、違う違う」

 よっと。まあ、そんな感じに。
 姐さんの隣に寄ったオレは、そのまま腰を下ろした。

「違うって姐さん」
「何が違う? 何が違った?」
「いやいや。姐さん、上出来だったから」

 ふと上げた視線に、明るさが戻る。
 聞き返す声色も、少し上向いたものだ。(まあ、第一段階はクリア、だろうかね)

「……本当か?」
「マジマジ。嘘言ってもしゃーないでしょ」

 ぶんぶんとオレは首を振った。
 それでも姐さん、納得いってないみたいだけども。

「……しかしな」

 だから姐さんは、言い募るのを止めない。

 それを遮るオレは。
 一つ、シニカルに笑って言った。

「いや、ほらね。あれだよ」

 姐さんねぇ。
 多分ね。ちと、上見すぎなんだよね。

「姐さんはさ、まあ、あれなんだよ」
「だから何なんだ」
「性に関してだけど。卒業したてのヒヨっこバリなんよ」

 オレの適当な言い草に、姐さんはハテナ。
 ま、そりゃ今の言い方じゃ分からんわな。

「ヒヨっこばり? 何だそれは」
「訓練学校、卒業したばっかのヒヨっこ。オレのパーティによく来るような連中みたいって訳」

 姐さんの髪、手櫛で梳きながら。オレは説明を加える。

「姐さん、ヤる技術とかさ、あんま考えた事ないでしょ」
「あ、ああ。確かにそうだが……」
「学校で習って、実践でどう使うか考えてないのと同じ」

 髪が整って、オレは手を離した。
 そのまま手を広げ、伝える。ちと辛辣な話を。

「計画立てて、やってみて、それで評価する。
 これ繰り返してさ、経験って積む訳でしょ。戦闘経験も。性技も。
 こっちの分野で姐さん、そういう経験以前に、そんな事も考えた事ない。そういう訳よ」

 無言。
 姐さんの顔、良いね。集中してる。戦闘前の会議ん時の顔だ。

 姐さんはゆっくりと口を開いた。

「つまり……今の私は、素人同然、なのだな。
 何の経験も積んでいない、知識だけのヒヨっこ」

 屈辱をかみ殺すような声音。

 姐さんは、ラングダ。
 性を扱えぬ淫魔と鬼の混血。
 だから、姐さんが性技に達していないのは致し方ない。

 だからって、仮にも淫魔がね、人間にヒヨっこ扱いされたんだ。
 屈辱を感じない方がおかしい。
 特に、ギルドで勤め、淫魔と直で接している姐さんなら。淫魔としての自覚を持ちつつある姐さんなら。

 オレはあえて表情を動かさずに、頷いて返す。

「そそ。だから、先輩が指示する。それに従う。なんかおかしい?」
「いや。そうか。それで上出来、なのか」
「姐さんのレベルじゃ、まだオレが指示しなきゃいけない程度なの」

 すっと、小さく音が聞こえる。
 姐さんが息吸った音だ。

 こちらが身震いするくらい、姐さん、集中してる。

「それで、私はどうしたら良い?」



 良いね。
 本気で良いよ。姐さん。

 でもね、姐さん。
 姐さんがフゥッラと、こんな桁違いの相手と戦うなら、やっぱね。一足飛びでいかにゃならんのよ。
 並大抵の成長じゃあ、いつになるとも知れんから。

 視界の端で、祓われてない地面を見る。

 ったく、トンでもない。
 よくもまあ、オレなんかに殺されたもんだよ。戦場は怖い。

「姐さん」
「ああ」
「オレの目を見て」

 正面に回って。
 オレは姐さんを見据えた。

 座り、向き合ったオレと姐さんの間には、風一つ吹かない。静かだ。

 可憐とすら言える、薄い口唇をきっと閉め。
 姐さんもオレを見返している。
 黒の瞳が、全部、オレの目を、その奥を見詰めている。

 オレはちょっとだけ、目だけで笑って。言った。

「姐さん」
「ああ」
「キス。して、良いかな」


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