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[18630] ゼロのひどい使い魔(オリジナル主人公)
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2011/12/17 21:37
――――――――――――――――

あいさつ

初めまして。
どうも、castakeです。
誤字脱字などあれば指摘してくれると助かります。
初投稿になるのでお手柔らかにお願いします。


【注意点】

主人公最強系
ご都合主義あり
色々なネタあり
ハーレム系
にしようと思ってます。
以上が嫌い、苦手な人は別の素晴らしい作者の作品を読んでください。

なお、”これはひどいオルタネイティヴ”の影響を受けてます。

プロローグですが、別に読まなくても大丈夫です。


―――――――――――――――――――――――
更新履歴

2010年5月6日
そろそろテスト版から移動しようと思ってます。
じゃ(_´Д`)ノ~~


2010/05/07

プロローグを切り分けました

2010/05/07

PV10000超えただと?
誤字修正。

2010/05/07
誤字修正。
感想見るとアレっすね。
しばらく原作に忠実です。
具体的に言うと原作の二巻くらいまでは原作に沿って進みます。
これはひどいは褒め言葉。


2010/05/08

新たに投稿しました。
作者からの伝言。

駄文ですが読んでくれる方々に感謝。

作者はタバサ萌である。

2010/05/09

誤字発見。
トリステイン学園ってなってました。
12からの投稿では、トリステイン学院に訂正してお送りします。

2010/05/11

13は分割したらえらく増えました。

2010/05/12

追加、やっと13終。
家に届いた新しい嫁、マックさんは気難しい。
外伝は基本的にタバサを扱っていこうかと。

2010/05/16

17について。
プリンセスウェールズw
女になってたw
修正は……、いいか!
外伝で女装させるから許してorz

2010/05/18

更新分を追加。
外伝は予告通りです。

以下妄言。

フェイス・チェンジ。
風と水の合成魔法。スクウェアスペル。
顔を変える。

顔を変えるだけ?
固定化が、原子配列変換という無茶を可能にしてるのに、土のドットでも使えるっぽい魔法だ。
ならスクウェアスペルのフェイス・チェンジが顔だけというのはおかしい。
つまりTSして楽しむ貴族が苦し紛れに顔だけしか変わらない!
と言い張ったに間違いない。

追記

友人A
誤字脱字多いんじゃボケ!

ヾ(゚д゚;) スッ、スマソ←私の反応

友人A、B
Q:ウェールズとのアーッな展開は?

A:ナッシングです

テメーは私を怒らせた!

2010/05/20

1~13中4まで修正を加えました。
誤字脱字を修正したり、文章を追加したり、削ったりしました。

報告、プロットレベルでは大分進みました。

2010/05/21

誤字報告の件。
ハルケギニア、タルブに修正しました。
迷惑かけましたorz

XXXのネタは考えてますがエロに走っていいものかと←(それを言うか?)

問題はエロ文章に自信がないことです。
試しに、その内きっとXXX向けで書いてみるよ。たぶん……。


2010/05/23

PV139727だと……。

駄目文章を読んでくれてありがとうございます。
さて、100000を超えた記念にいっちょ、XXXでも書くか?!
いやいや、落ち着け。
まだ慌てる時間じゃない。
今後もよろしくお願いします。

2010/05/25

更新分を追加。
さて、原作三巻分のお話も終わります。
ここまでで30話越してます。単純計算で一巻分=10話前後。
そろそろ、原作にない話も増やしていいと思います。
なにせ、ウェールズ生きてるし、フーケは仲間だし。

次回より、そろそろ原作とは違う流れにしていこうと思います。
かと言って滅茶苦茶な話にもなりませんので、これからもよろしくお願いします。

2010/05/28
お知らせ。
仕事が変わりそうなので、更新速度が落ちるかもしれません。

2010/05/29

惚れ薬イベント。
誰にしようか迷いました。
まさかの人物に標的を絞りました。
えー、期待を裏切って申し訳。

2010/05/30

ルイズの中の人。釘宮さん。誕生日おめでとうございます。


2010/06/03

更新速度はしばらく維持できそうです。
感想あざーっす。
励みになります。
追記、ルイズがなにげに萌ポイント低い(出番少ない)気がしてます。
アンチルイズではありませんので、ルイズスキーの人は安心を。

2010/06/06

原作で言うと、五巻に突入しました。
一話分の文章量が短いので話数が増えるばかり。
次回から一話分の文章量を増やしていこうと思います。

2010/06/10

指摘修正。
43話の掛け金を修正。
エキューだとエラいことに。

2010/06/13

今度こそ43話修正。

2010/06/15

明日はいよいよサンホラ新曲発売日。
うん、関係ない話ですね。
外伝書く方が時間がかかる罠。

2010/06/20

外伝を書くのは楽しい。
しかし、時間がかかるよ。orz

作者の執筆工程。

平日にちょくちょく書いて、推敲。
週末にガッツり書いて推敲。
一話作るのに実質3~4時間くらい?
エディタはストーリーエディタ使ってます。
ストーリーエディタは便利。

今更ですが、初投稿から一ヶ月過ぎてました。
これからも頑張ります。

2010/06/27

投稿数が増え始めました。
その内、話数を統合して投稿数を減らすと思います。

2010/06/30

あっという間に7月ですね。
熱い。暑い。水着イベントフラグ……。

2010/07/05

今月は忙しいので更新が遅れがちになると思います。
楽しみにしてくださっている方々には申し訳。

2010/07/14
重大なお知らせ。
PCが故障しました。
バックアップは一応とってあるんですが、マックではストーリーエディタは開かない。
つまりは治るまで更新が停止します。
今月中には修理して更新できると思います。
更新を楽しみにしてくださっている方々には申し訳。

2010/07/22

ウインドウズが壊れてマックで執筆。
なんとなく筆が乗らないです。
うーん。
やっぱり、モチベーション的なものがマックだと上がりにくい。
徐々に慣れていきたいと思います。

2010/08/24
六話修正。
はじめの方、というか今もですが誤字脱字がありますね。(´Д`)
読み直しているので今は減ってきたと思ってます。
はじめの方も徐々に修正してるので報告してくれた方々に感謝(´▽`)

2010/09/23
あれ?
気づいたら一ヶ月更新ペース?!
楽しみにしている方すいません。
今後もゆっくりペースで進むと思います。

2011/05/14
楽しみにまっている方々にお詫び。
だいぶ遅れました。生きてます。
そもそも、元データ消えるとか、書き進んでいたプロットも消えるとか、仕事が忙しいとかで、手付かず。
初めから修正を加えようとしたのがそもそもの間違えだったのか、
今ではもうわからない。
今後は不定期更新になると思います。

2011/05/21
丁度書き始めて一年経ってました。
主人公ステータス変更
前々から変更しようと思っていたサイト憑依にしました。
題名は変更するつもりは無し。
とりあえず、加筆&修正しつつ更新頑張ります。

2011/06/25
尊敬する漫画家は富樫

更新しました。

2011/07/23
更新
原作者であるヤマグチノボル氏ががん治療という
ショッキングなことを知りました。
どうか無事健康にほしいです。

2011/12/17
という訳で本日で完結!
挫折と後悔と反省です。
しばらく時間をください。
再構築して書きなおそうと思います。

――――――――――――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 プロローグ>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/07 17:41





 24歳無職童貞ニート。この度、自分の不甲斐なさを改めて再認識した。
部屋の整理をしていたら出てきた小学生の頃の卒業アルバム。
読み返してみると、自分の将来の職業はゲームプログラマーだった。
ゲームを作る人になると昔は思っていたらしい。
その夢を追いかけて専門学校まで通ったが、
現在は絶賛ニート中。
現実は非常である。

涙を流すまでは行かないが、昔の思い出に浸り、心が折れた。

思えば行動派であったのに、今ではパソコンの前にへばりついている見事なインドア派になっている。
ああ、夢も希望もあったもんじゃない。
気がついたらネットで楽な死に方を探していた。

自殺。
自分で自分の命を絶つこと

たった一行で答えてくれたネット。

答えはシンプル。

死ぬのは等しく辛く、苦しい。

睡眠導入剤で眠ってるうちに練炭自殺がおそらく一番安楽死に近い。

用意するものは、車、睡眠薬、練炭、ガムテープ等。

それらを揃えるのに三日とかからなかった。

一番入手に困ったのは睡眠薬だった。

強力な睡眠薬ほど医療機関にお世話にならないと行けないらしく、偽造に手こずった。

運がいいのか悪いのか、友達のつてで、強力な睡眠薬を手にいれることに成功した。



運命の日。
というか、自分の命日(予定)である。
ここは最近見たアニメの影響で6月1日に決定した。
5月末の深夜に自殺の準備をすべて終えて翌日までに死んでおく。
われながら完璧な計画である。

辞世の句、というか遺書の用意をすっかり失念していた。
リミットまであと一週間を切っている。
「テキストで適当に書いてプリントアウトあとは、部屋に置いておく。これで完璧」

よくある文章を使い最後は先立つ息子を許せと書きおしまい。


五月末日深夜。
人気のない山奥ですべての準備を終えている。
「睡眠薬恐るべし」
誰も聞いてはいないだろうが彼が残した最後の言葉であった。


死後の世界は死んだものしかわからない。
あー、今思えばまだ続きが残ってる漫画と小説とアニメが残ってたな。
ん? そういや、なんで俺、”意識”があるんだ?
死にそこねた?
そう思って、状況を把握しようとしたが、うまくいかなかった。
夢を見ているような曖昧な感覚。
白昼夢だっけ、と適当に当たりをつけておいた。

なんというか、暇だ。
夢?ならば何かもっとこう、能動的なものがあるんじゃないか?
靄の掛かった霧の中にいるような感覚で視界はゼロ。
そう感じている。
白昼夢だと思っていたがなんだが変だ。
言葉は発せないし、体も動かない。
ただ思考できるだけ。
ぶっちゃけ、考える事はできるがそれ以外は何もできないことがわかった。
これが死後の世界なのか? だとしたら、天国だの地獄だのといった考えは嘘だったんだな。
それとも輪廻に入る前の順番待ちみたいなものか?
どれにしたって暇すぎだろ、常識的に考えて。

空腹感もなければ、睡魔も襲ってこない。
なんというか、満たされているようで満たされていない。状態。
体感時間でたぶん1時間くらいしか経過してないがこの状況に飽きてしまった。

妄想、オタクの得意技である。
ふと、考える。
この状況ってある意味おいしくね?
死なないし(既に死んでるけど)、全ての、欲求がわかない。
だとしたら、やることは妄想しかねーでしょ。
異世界にでも飛ばされりゃ第二の人生を謳歌できるな。
あー、なんだったらエロゲの世界でハーレム作ってもいいな。
ピンク髪のツンデレ娘の使い魔でもいいぞ。
そういや、原作終わりそうだったな。正直原作知識持ち込んでやりたい放題やったら、崩壊するだろうな。
アニメの世界も捨てがたい。
しかし、好きなガ●ダムはどのシリーズも死にまくるからな。
もう一度現世に生まれ変わったとしたらチートってレベルじゃねーぞ。
生まれ変わったらリア充になるんだ。
ってそれなんて死亡フラグ?
ゲームの世界は嫌だな。だいたいRPGって戦うもの。
戦うのしんどいし。
あー、せめてこの空間?にネット環境あればなぁ。
オンラインゲームしたら不眠不休でプレイできるのに。

そもそも、これって死後の世界なのか?
俺という自我があるし、精神世界とか?
中二病だな。

これって黒歴史?

せめて話し相手位欲しいね。

お?
おおおお?
なんか引っ張られてる?!

やだ、なにこれ?

アーーーッ!


「あんた誰?」
どうやらフラグを立ててしまったようです。
目の前にはピンク髪のツンデレロリがいました。
なんてこった(;^ω^)



[18630] <ゼロのひどい使い魔 1>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2011/05/21 02:52



SIDE:サイト・ヒラガ

「あんた誰?」
どうやらフラグを立ててしまったようです。
目の前にはピンク髪のツンデレロリがいました。
なんてこった(;^ω^)

死んだはずの俺。
死後の世界? で妄想という名の中二病を発病していたせいでどうやら見事にフラグを立ててしまったらしい。
しっかし、ルイズだな。うん、貧乳はステータスだよ。
現生でみるルイズはめちゃかわいい。
いや、髪の色とかピンクですけど、なんていうかコスプレ用のカツラとは違ってまさに天然ヘヤー。
周りを見渡すと原作通りに生徒たちが騒いでいた。

「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」
「さすがはゼロのルイズだ!」

なんという放置プレイ。
このままではダメだ。
人と人の出会いは第一印象が大事!

「あの~、これってどう言う事ですかね?」

とりあえず、何も知らない振りして近くにいたコルベール先生に問いかけた。
うん、ハゲ答えろ。
キュルケはやらんぞ。

「え?えぇ、そうですな。オホン。ここは、トリステイン魔法学院。私たちは、といっても生徒たちのことだが、二年に進級するための、春の使い魔召喚の儀式を行っている。君はその『使い魔』の召喚で呼ばれたというわけだ」

やっぱりそうか、そうなんだな。
ここは本当にゼロの使い魔の世界なんだ。
ん?
そういや、俺ってどういう格好してんだ?
この世界に来て初めて自分の体のことを思い出した。

「って、サイトの格好のまんまじゃん」

彼のトレードマーク?のパーカー着てるし。
なんつうかアニメのコスプレしてるみたい。
二次創作物も憑依?
まー、ありがちだよねー。
なんの因果か俺はサイトになっちまったのか?
まあいいっか。
まずは所持品の確認だ。
さて、この服には何があるのかと思いポケットやらを探る。
ん? なんだよハゲール先生じゃなかった、コルベール先生。
コルベール先生は鋭い目付きで俺の動作を見ていた。
ああ、そういえばコルベール先生は元軍人か。

「すいませんね。ちょっと所持品の確認してただけですよ?」
「「!」」

遠巻きにタバサも何故か俺を見て驚いていた様子。
といってもタバサは無表情がないのでよく解らんが、俺を凝視しているのでそうしておこう。

「はは、なんのことですかな?」

質問を質問で返すな!
と言いたかったが今のコルベール先生は擬態としてマヌケを装っているので適当に相槌をうった。

「ミスタ・コルベール!」
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」
「そんな、ヒドイわ。勝手に呼び出しておいて」

ギロリとルイズに睨まれた。
はは、そんな目をしても結果を知っている俺には通じんのだ。

「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」
「そうだ。決まりなのだよ。プリティガール」

ついつい会話に入っちゃうんだよね。

「それに、一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。奸むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」

ナイスだぜ。
俺は期待を裏切らないセリフに満足した。
さあ、チューだ。

覚悟はいいか? 俺は既に出来ている

ルイズはううぅ~とか唸っている。なんだそんなに嫌なのかよ。

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼は……」




SIDE:コルベール

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼は……」

ただの平民ではない。
そう言いそうになる。
いきなり召喚されたのにあの大人数の中で私を責任者として見抜いた洞察力。

所持品の確認といって誤魔化したが、あれは……、おそらく実力者を見ぬくための行動。
結局、武器は出さなかった。ここで暴れるのは得策ではないと考えたのか?
逆にこの程度の奴らならいつでも殺せると思ったのかは定かではない。

いずれにしろ、メイジに囲まれた状態で武器を出そうとする平民だ。
かなりの実力を持つメイジ殺しだ。


「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」

そういって彼に視線を向ける。


SIDE:サイト

やべ、そういや俺の名前どうしよ?
サイトってたしか16だったよな。
俺が死んだのは24か。
でも、体の感覚からしてなんか高校時代の絶好調~みたいな感じなんだよな。
なんつーか、何年も鍛えに鍛えた体みたいな感覚?
二次創作物の憑依による効果か?
なんてご都合主義。
もしかしたら、チート能力もちかもと、密かに期待。
ともかく、早いうちに力の具合を見とくか。
それよりも早くキスしたい。
キス、させろ~。

名前? もちろん平賀才人って言っちゃった(^ω^)
だって考えまとまらないうちに話し振ってくんだもん。

「――そういうわけなんだが、ヒラガサイトゥくん。悪いが契約してくれないかね?」
「いいっスよ」

SIDE:ルイズ

「いいっスよ」

なんなのこいつ?
ミスタ・コルベールもなんでこんな奴に畏まってるの?
そもそも、平民の癖に貴族に気を使わせるってどうゆうことよ?!

もう一度だけミスタ・コルベールにやり直しを要求しよう。

「君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね? 何回も何回も失敗して、やっと呼び出せたんだ。いいから早く契約したまえ」

それを言われたら何も言い返せない。
そもそも、やり直してもまた同じくらい時間をかけてしまうかもしれない。
いや、一番問題なのはうまく召喚できるかどうかだ。

留年……はまずい。というか両親にしれたら間違いなく私は家に監禁されてしまうわ。

「ねえ」
「んぇ?」
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

私は杖を振る。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「イヤ、近寄らないでぇ」
「いいからじっとしてなさい!」

ルイズの唇が、才人の唇に重ねられる。

SIDE:サイト・ヒラガ

ルイズの唇が、俺の唇に重ねられる。
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!

「ん……」
「んぅ……んんん!」

舌を入れてしまいました☆
ルイズが可愛かったからしかたなかったんだお。

「こ、このエロ犬~~~~!」
「くぎゅううう」

あ、やべ俺死んだ。
俺が見たのは眩しい光だった。



―――――――――

2011/05/21
加筆&修正



[18630] <ゼロのひどい使い魔 2>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2011/05/21 03:08


SIDE:サイト・ヒラガ

「知らない天井だ」

あまりにもこのシュチュエーションがアレだったので思わず使ってしまった。

「あ、起きました? すぐにミス・ヴァリエール様を呼んできますね」

はて、ここは?
原作通りならルーンを刻まれて悶絶したはず。
しかし、ここは見たこともない部屋だ。
しかもさっき出ていったのはシエスタだったな。それもアニメ版の。

「マジで?」

いや何がって、左手のルーンですよ。
まさにガンダールヴのルーンじゃ!
机にあるペーパーナイフを握ったら体が羽のように軽くなった。
マジか!体重が感じなくなるってこんな感じか。
なんつうか、水の中で浮いてるみたい。
マジでΣ( ゚Д゚)
ってなっちゃうね。

あらゆる武器を使いこなす。
身体能力の向上。

たった二つだが原動力が心の震えっていうわけわからん仕様。

なんというチート。

サイトは初めから理解してなかったから徐々に覚醒していって強くなったみたいだが、俺は既に知っている。
たしか七万を相手にしたとき衝撃波みたいなので複数人をぶっ飛ばしてたよな。
つまりは最終的には鍛えれば音速を超える剣術を扱えるってわけだ。
マッハパンチならぬマッハ切りだ。

「ちょっと、あんた何やってんのよ?」
「げぇ、ルイズ」

オーバーリアクションで驚いて見せる。

「呼び捨てにしないで」
「すいません」

ルイズの表情が、険しいものになった。色々と思うところがあるらしい。
乙女心はわからん。

「……なんであんたはのこのこ召喚されたの?」
「知るか」

マジで知るかってんだ。
うっかりフラグ立てちまったんだ。

「このヴァリエール家の三女が……。由緒正しい旧い家柄を誇る貴族のわたしが、なんであんたみたいなのを使い魔にしなくちゃなんないの?」

それは貴方が虚無の使い手だからです。
とりあえず、ここに長いしても意味がないのでルイズの部屋へ移動。
しかし、建築レベルは18世紀ってレベルじゃねーぞ。
魔法ってのは便利だな。
ちなみにペーパーナイフは原作通りに行かない場合も考えて懐に忍ばせておいた。

「それほんと?」

まあ、異世界の話をした反応は期待通りだった。
気絶したせいで既に夜になってるわけで。

「マジです。そもそも俺の世界は月が一つだ」

確かそんな話してたはず。

「信じられないわ」
「俺だって信じられん」
「別の世界って、どういうこと?」

並行世界だの多世界解釈の説明をしてもたぶんわかんねーだろうな。
そもそも、この世界にはガリレオもいなければニュートンもいない。

「非常に難しい解釈を説明しなければいけない上に、おそらくこの世界にいる誰も理解できないと思うぜぇ」
「何よそれ? 貴族をバカにしてるの?」
「そーゆうわけじゃないよ。というか、俺が異世界から来たって信じてないでしょ?」
「当たり前よ!」

当たり前ですか。じゃあ説明する意味ねーじゃん。

「なんか馬鹿にしてない?」
「イヤー、そんなことナイですよ?」

俺の知ってる知識を披露したらガリレオみたく異端として扱われるかもしれない。
だとしたら、ここは黙っておいた方がいいだろ。常識的に考えて。

「とりあえず、異世界の話は置いといて。これからの話をしたほうが建設的ではありませんか? 可愛いらしいご主人さま」
「ふえ? そ、そうね。使い魔のことを教えてあげるわ」

例の知らない天井の部屋を保健室としておこう。そこで俺は見た。
いや、まあ、サイトになってたね。
鏡で顔を見たもの。
こりゃ、完全にサイトになってんじゃん。
しかも、腹筋割れてるし、隠れマッチョだった。
体の作りは鍛え抜かれた高校生ってレベルじゃねー。
いつまでも父親と決着をつけない範馬刃●って感じだった。
うん、これ個人が国家と喧嘩できるレベルじゃね?
どこぞの神様のいたずらか、とりあえず俺は話をすすめることにした。

使い魔の説明はやっぱりおんなじ。

「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。使い魔が見たものは、主人も見ることができるのよ」
「エッチなのはいけないと思います」
「でも、あんたじゃ無理みたいね。わたし、何にも見えないもん!」←スルーした
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬って具体的になんのこと?」
「特定の魔法を使うときに使用する触媒よ。硫黄とか、コケとか……。あんた、そんなの見つけてこれないでしょ! 秘薬の存在すら知らないのに!」
「例えば、それらの秘薬を見つけ出したとして、ご主人さまは扱えるの?」
 「うっ」
「そ、そして、これが一番なんだけど……、便い魔は、主人を守る存在であるのよ! その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目! でも、あんたじゃ無理ね……」
「そうやって無理って決めるなよ」
「平民の癖にうっさいわね!」

はぁとルイズは一息ついて続ける。

「だから、あんたにできそうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑用」
「えー」
「えー、じゃない!」

結局サイトと同じかよ。


――――――――――
2011/05/21
加筆&修正





[18630] <ゼロのひどい使い魔 3>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2011/05/21 03:51

SIDE:サイト・ヒラガ

ストリップショーの始まりだっ!
寝るから着替えるといって見事な脱ぎっぷりを見せてくれた。
これ、悲しいけど初期の頃だけのものなのよね。

「じゃ、それ洗っといてね」
「クンカクンカ」
「ちょ! 何してんのよ?!」

口の中に入れなかっただけありがたいと思って欲しい。

「超痛かったんですけど?」
「あ、ああんたが!おかしなことするからでしょ!!!」

どこから出したのか知らないが、鞭でしばかれてました。
いや、鞭って処刑にも使われてますよ?
良くサイトは耐えたな。
俺はというと懐に忍ばせておいたペーパーナイフを握りガンダールヴの恩恵を受けて痛みを緩和している。
身体能力の向上と言っても実は耐久力も上がっているのだ。
ぶっちゃけ、原作のサイトも戦闘である程度、怪我してても動いてたのを思い出して試してみたら当たりだっただけだ。

「な~んか反省の色がないわね?」
「ごめん、マジで反省してます。そもそも、いきなり脱ぎ始めたルイズが悪いはず」
「ふん、便い魔に見られたって、なんとも思わないわ」

俺は思うけどここは黙っておこう。
しかしルイズ、君、生えてないんだね。
二次元の神秘かルイズの身体的な問題か。
ま、俺はどっちにしても嬉しいから問題ない!

「じゃ、寝るから」
「おやすみなさいませ」

そう、まだ召喚されて一日も立っていなかった。


人生初、床での就寝。
藁で寝ろって、日本のホームレスの方がいい寝床確保してるぜ。

眩い光で目が覚めたのはいいが今何時?
やることもない。
そういえばルイズを起こさないとな。

「ハアハア、ルイズたん」

ルイズは、ベヅドの中で寝息を立てている。あどけない寝顔であった。
それを見た俺は自重という名のリミッターを外した。

「ル、ル~イズちゃ~ん」

名前を叫びベッドにルパン式ダイブをする。

「な、なによ! なにごと!」
「朝だよ。ふじ、ルイズ」
「はえ? そ、そう……。って誰よあんた!それになんで添い寝してんのよ!」

寝ぼけてますね。分かります。

「サイト・ヒラガ」

名前はサイトから拝借した。面倒だからじゃないぞ?

「ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」

ルイズは起き上がると、あくびをした。そしてサイトに命じる。

「服」
「服?」
「着替させるのよ!」

ルイズのネグリジェ姿を視姦しながら着替を終わらせた。
羞恥心が芽生えない今なら見放題。

「なんか着替させるの慣れてるわね」
「それほどでもない」

もっと複雑なコスプレ衣装とか着せたり着たりしてたからな。
ルイズはまあいいわと気にしない様子で部屋を出た。それについてく俺。

 ルイズと部屋を出ると、ドアが壁に三つ並んでいた。
そういや、キュルケの部屋ってルイズの隣だっけ。
そう考えていると、そのドアの一つが開いて、中から燃えるような赤い髪の女の干が現れた。

キュルケ キタ━(゚∀゚)━!

デケェ、いや、身長も胸も。
たぶん160センチ以上、胸はFカップくらいか?
 一番上と二番目のブラウスのボタンを外し、胸元を覗かせている。
誘ってるんですね。分かります。

「おはよう。ルイズ」

 ルイズは顔をしかめると、嫌そうに挨拶を返した。

「おはよう。キュルケ」
「あなたの使い魔って、それ?」

 俺を指差して、バカにした口調で言った。

「そうよ」
「あっはっは! ほんとに人間なのね! すごいじゃない!」

褐色肌のパイオツもなかなか。
普通に揉みたい。

「『サモン・サーヴァント』で、平民喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」
「うるさいわね」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
「あっそ」
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよね。フレイム!」

 キュルケが、勝ち誇った声で使い魔を呼んだ。
キュルケの部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。
むんとした熱気が、俺を襲う。

「なんじゃコリャぁぁああ!ってトカゲ?」
「おっほっほ! もしかして、あなた、この火トカゲを見るのは初めて?」
「おー、よしよし、ここか? ここがええんか?」

俺は生フレイムのさわり心地を確かめていた。
トカゲって体温冷たいはずなのにフレイムは暖かかった。
さわり心地としてはトカゲを温めればこんな感じになるんだろって感じだった。

「あら、可愛がってもらってるわね」

 キュルケは手を顎にそえ、色っぽく首をかしげた。


SIDE:キュルケ


「あら、可愛がってもらってるわね」

おかしな平民。
フレイムに恐れを抱くこともなく、好き勝手に私の使い魔を撫で回している。
フレイムを見た時の反応からして初めて火トカゲを見たはず。
襲われると思わないのだろうか?
私が命令しない限りは襲うことなどはないが、普通の平民の反応ではないことは確かだ。

「これって、サラマンダー?」

ルイズが悔しそうに尋ねてきた。
私は自慢したかった。先祖代々からのライバルであるこの娘に。

「そうよ! 火トカゲよ! 見てよ、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火虫亀山脈のサラマンダーよ? ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ!」
「こいつって珍しいのか?いや、珍しいから値段がつかないのか」

前者の発言にカチンと来て、後者の発言に満足感がきた。

「ちょっとあなたそれどうゆうこと?」
「えぁ?なんかおかしなこといったっけ?」

言ったわよ。フレイムを珍しいのかって。その辺にいる動物みたいな言い方で。

「サイト、今キュルケの使い魔のことを馬鹿にしたのよ。少なくともキュルケ自信がそう感じているわ。使い魔のことはイコール主人のことでもあるの。だからキュルケ以外にはそんな風に言っちゃだめよ?」
「そーなのか」

ルイズの発言に完全に頭に来た。主人と使い魔揃って失礼な奴らだ。

「そーなのか、って私に謝罪はないわけ?」
「すいません。ごめんなさい。申し訳ありません。朝ごはんの時間がないので勘弁してください」
「「あ」」

そう言われて気づいた。確かに時間がかなり迫っていた。これは走らないとダメね。
その前に。

「あなた、お名前は?」
「サイト・ヒラガ」
「ヘンな名前」
「やかまし」

変な平民。ルイズも変なのを引き当てたものだ。


SIDE:タバサ


昨日の使い魔の召喚のことを思い出す。
ルイズが召喚した平民。

只者ではない。
彼が服を探ったとき直感的に何かあると思った。
杖を構える。
既に彼は私を捉えていた。
コルベール先生でさえも。
視線で殺す。
行動で制す。
熟練のメイジ殺しのなせる技だと思った。
だが彼は何もしなかった。
なぜ?
好奇心が私の心を駆け巡る。
彼は何者だろう?
メイジではないことは確かだ。
有名なメイジ殺しでもないことも確かだ。

私は今、学院から少し離れた森にいる。
彼を追いかけてきた。

彼は何をするつもり?
本来なら昼休みでルイズはたぶんテラスにいるだろう。
なぜ彼はルイズの側にいない?

「貴様、見ているな!」

彼が叫んだ。
なぜ私の存在がバレた?
隠密行動は完璧だったはず。

仕方なく私は彼の前に姿を表すことにした。


SIDE:サイト・ヒラガ



( ゚д゚ )

(つд⊂)

( ゚д゚ )


あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『俺は誰もいない所でジョジョネタを練習していた。そしたらタバサが現れた』
な… 何を言ってるのかわからねーと思うが
俺もなんでタバサが現れたかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…

「えー、と、どなた?」

もちろん俺はタバサの事を知っている。
だが、タバサとは初対面だ。

「タバサ」
「そのタバサさんがなんでこんなところに?」
「あなたをつけてきた」

ストーカー宣言ですね。
しかし、なぜタバサが俺を?
もしや、一目惚れ?
いや、それはねーな。クールになれ。
タバサがサイトに惚れるのは確か母親を助けてからだ。
オーケー。理由を聞こう。

「なんでつけてきたんですか?ああ、もしかしてルイズが探していたとか?」
「違う」

うぉい!
ルイズが呼んでるって逃げ道及び俺の退路を作ったのになぜ使わない。
空気嫁!!

「では、タバサさんの訓練ですか?」
「違う」
「使い魔と遊ぶとか?」
「違う」
「散歩?」
「違う」

無限ループ恐るべし。
じゃあなんで現れた?
さてはジョジョネタを理解している?
いやいや、それはありえん。
でも、アニメ版だったかエロ漫画がこっちの世界にあるらしいが。
ともかく、誤魔化さねば。
このままでは痛いヤツと思われてしまう。

「その、さっきのは偶然、そう偶然叫んだだけなんですよ。適当な言葉を叫んでいた。それに勘違いしたタバサさん。まるで俺がつけられていることに気づいたように錯覚しただけなんです」

というわけでといって脱兎の如く学院へ逃げ帰った。
タバサには悪いがタバサの言い分は聞かない。
彼女を論破するのは無理だ。

「イーヴァルディ」

タバサがなにか言った気がした。


SIDE:サイト・ヒラガ

タバサから逃げ出して学院へ戻ってきた。
ジョジョネタの練習を見られた。死にたい。

ん?
全力で走って戻ってきたのに息切れしてない。
一キロ位は走ったはずだぞ?

森⇒学院⇒ルイズの部屋

この工程を走り抜けたのになぁ。


―――――――
2011/05/21
加筆&修正





[18630] <ゼロのひどい使い魔 4>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2011/05/21 04:38




「う~~決闘フラグ決闘フラグ」

 決闘フラグを求めて全力疾走している僕はトリステイン魔法学院に通うごく一般的な使い魔だ。
 強いて違うところをあげるとすれば左手にルーンがあるってとこかナー。
 名前はサイト・ヒラガ
 ふと見るとテーブルの下に香水が落ちていた。
 ウホッ!いい香水……

 そう思ってると突然男は僕の見ている目の前で
 薔薇の杖を抜きはじめたのだ……!

 やらないか?

 そういえばこのヴェストリの広場は決闘の広場があることで有名なところだった。
 いい男に弱い俺は誘われるままホイホイと決闘の場所について行っちゃったのだ。

「諸君! 決闘だ!」

ギーシュが薔薇の造花を掲げた。うおッー と歓声が巻き起こる。

「ギーシユが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」

みんな暇なんだなぁと思いつつ話を聞いてやることにした。

「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
「よかったのかホイホイついてきて、俺はメイジだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ」

ざわっと観客から声が聞こえた。

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
「うれしいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあとことん喜ばせてやるからな」
「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」

女戦士の形をしたゴーレムが、俺に向かって突進してきた。
俺はポケットにあるペーパーナイフを左手で握りガンダールヴの力を使う。
見た目はポケットに手をつっこんだまま戦ってるわけだ。


SIDE:ギーシュ

さっきからあの平民が訳の分からない言葉をいっていたが、今この瞬間に全てを理解した。

『よかったのかホイホイついてきて、俺はメイジだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ』
『うれしいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあとことん喜ばせてやるからな』

どうせ平民の強がりだと思っていた。
だが、彼はポケットに手を入れたまま僕のワルキューレの攻撃を避けている。
さらに彼は避けたあとにワルキューレにケリを入れた。
たったそれだけで僕のワルキューレは吹き飛んでしまった。

「いいこと思いついた。お前、全力を出してみろ」
「なん……だと?」
「男は度胸何でも試してみるものさ」

いいだろう。今の僕の全力を見せてやる。
僕は薔薇を振る。花びらが舞い、全部で七体のゴーレムが、現れる。

「行け!ワルキューレ!!」



SIDE:ルイズ



自分の使い魔がギーシュと決闘するという話を聞き、急いで決闘の場所に来た。
よかった。
まだ決闘は始まっていない。

『よかったのかホイホイついてきて、俺はメイジだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ』

メイジを食べる?
聞き間違えだと思った。

ギーシュはドットとはいえ、実技では好成績だ。
平民が貴族に勝てるわけない。
たぶんここに居る全員がそう思っている。

ギーシュのワルキューレが一体現れる。
止めなきゃ。
でも待てよ?
あの生意気でおかしな使い魔にはいい薬だ。
多少ケガをしたところでご主人さまが助けてあげる。

ルイズは数秒のうちに思いついた考えをそのまま実行に移す。
できるだけ早く止められるように前に出てあとは観戦するだけ。

信じられないモノを見た。
ワルキューレの攻撃を避けている。
しかも蹴っただけでやっつけた。

『いいこと思いついた。お前、全力を出してみろ』

サイトの声が響く。

「んなっ」

平民が貴族に対して全力を出せと命令している。
怒り、喜び、不安、期待。
様々な感情が混ざってワケがわからなくなる。

吹き飛ばされたワルキューレ含め全部で七体のワルキューレが私の使い魔に襲いかかる。
駄目だ。
固く目を瞑ってしまう。



SIDE:サイト・ヒラガ


あ、あいつ人が活躍中なのに目瞑ってやがる。
くそっ!
一瞬でみじん切りにしてやろうと思ってたのに作戦変更だな。
それにしても、バ●のオヤジがいってた地上最強の生物理論の一つ。
どんな大人数でも4人で攻撃が限度は正しかった。
ギーシュの操作術のなさもそうだが、4人以上の同時攻撃はない。

避けるのにも飽きたしルイズも目開けたしそろそろ決着でいいだろ。

(ガンダールヴは心の震えで強くなる。うおおおお、シエスタと風呂入るんじゃぁああああ)

ワルキューレの攻撃を素早く回避。
ギーシュに向かって疾走。
右手だけをポケットから素早く出してギーシュのマヌケの杖を奪い取る。

「続けるか?」

取り上げた杖を見せつけて決まった。

「ま、参った」

あの平民、やるじゃないか! とか、ギーシュが負けたぞ! とか、見物していた違中からの歓声が届く。
気楽なもんだ。
ギーシュに杖を返して歩き出す。

「サイト!」
「おう、ルイズ」

ハイタッチしようと手を出す。

「こんのぉ、バカ犬」
「ぐふ、な、ナイスボディ、おいちゃんと世界を目指そう……」



所変わって、ここは学院長室。

ミスタ・コルベールは、泡を飛ばして、オスマン氏に説明していた。
春の使い魔召喚の際に、ルイズが平民の少年を呼び出してしまったこと。
ルイズがその少年と『契約』した証明として現れたルーン文字が、気になったこと。
それを調べていたら……。

SIDE:オスマン

「始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』に行き着いた、というわけじゃね?」

うーむ、コルベールくんは良い教師だが、ぶっちゃけ、つばかかってるんじゃが。

さてと、コルベールが描いた才人の手に現れたルーン文字のスケッチをじっと見つめる。

「そうです! あの少年の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じであります!」

じゃから、つばとんでるんじゃ。

「で、君の結論は?」

「あの少年は、『ガンダールヴ』です! これが大事じゃなくて、なんなんですか! オールド・オスマン!」
「ふむ……。確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、彼は『ガンダールヴ』、ということになるんじゃろうな」
「どうでしょう」
「しかし、それだけで、そう決めつけるのは早計かもしれん」

ルーンが同じだからと言ってガンダールヴとは限らない。
全く別の可能性もあるしの。様子見としとこうかのう。

「それもそうですな」

 ドアがノックされた。

「誰じゃ?」

 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。

「私です。オールド・オスマン」
「なんじゃ」
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」

全く、どこの貴族の子供だ。めんどくさいのぉ。

「誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か、相手は誰じゃ?」
「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
 
わしとコルベールは顔を見合わそた。

「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」

アホか、『眠りの鐘』は秘宝。たかが子供の喧嘩に秘宝など使っていたら学院の秘宝などとうになくなってるわい。
それに、あの少年の力を見る機会でもある。

「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」

ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
わしは、杖を振り様子をみることにした。
壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出される。
わしとコルベールは、『遠見の鏡』で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。
貴族相手に余裕じゃのぉ。それにあの動き。熟練の貴族でもなきゃ捌けんわい。

「あの平民、勝ってしまいましたが……」
「うむ」

見りゃわかるじゃろ。

「ギーシュは一番レベルの低い『ドット』メイジですが、それでもあんなに簡単にやられるとは。そしてあの動き!やはり彼は『ガンダールヴ』!」
「うむむ……」

ガンダールヴ。こりゃまずいことになりそうだわい。

「オールド・オスマン。さっそく王室に報告して、指示を仰がないことには……」
「それには及ばん」
「どうしてですか? これは世紀の大発見ですよ!現代に蘇った『ガンダールヴ』!」

だから、つば飛ばすんじゃないわ。

「ミスタ・コルベール、『ガンダールヴ』はただの使い魔ではない」
「そのとおりです。始祖ブリミルの用いた『ガンダールヴ』。その姿形は記述がありませんが、主人の呪文詠唱の時間を守るために特化した存在と伝え聞きます」
「そうじゃ。始祖ブリミルは、呪文を唱える時間が長かった……、その強力な呪文ゆえに。知ってのとおり、詠唱時間中のメイジは無力じゃ。そんな無力な間、己の体を守るために始祖ブリミルが用いた使い魔が『ガンダールヴ』じゃ。その強さは…」

軍隊を壊滅させられる。
つまりガンダールヴ、いや、虚無を保有する国は戦争で有利になるということじゃ。

「千人もの軍隊を一人で壊滅させるほどの力を持ち、あまつさえ並のメイジではまったく歯が立たなかったとか!」
「で、ミスタ・コルベール」
「はい」
「その少年は、ほんとうにただの人間だったのかね?」
「……。見た目はどこからどう見ても、平民の少年でした。しかし、ミス・ヴァリエールが呼び出した際に、念のため『ディテクト・マジック』で確かめようとしたのですが、彼に気づかれたのか警戒されてしまいました」
「ほう、して、現代の『ガンダールヴ』を呼びだしたのは、誰なんじゃね?」
「ミス・ヴァリエールですが……」

ああ、公爵家の。いい噂は聞かんが……。
コルベールくんの意見はどうかのぉ。

「彼女は、優秀なメイジなのかね?」
「いえ、というか、むしろ無能というか……」
「さて、その二つが謎じゃ」
「ですね」
「無能なメイジと契約した少年が、何故『ガンダールヴ』になったのか。まったく、謎じゃ。理由が見えん」
「そうですね……」
「とにかく、王室のボンクラどもに『ガンダールヴ』とその主人を渡すわけにはいくまい。そんなオモチャを与えてしまっては、またそろ戦でも引き起こすじゃろうて。宮廷で暇をもてあましている違中はまったく、戦が好きじゃからな」

それにあの少年。まだまだ、力を全く出してないしのぉ。

「ははあ。学院長の深謀には恐れ入ります」
「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」
「は、はい! かしこまりました!」

しっかし、このガンダールヴの少年。
油断も隙もあったもんじゃないのぉ。
こちらに気づいているのか、目が合うしのぉ。

「全く大したものじゃ。ガンダールヴ」

――――――――――

2011/05/21
加筆&修正



[18630] <ゼロのひどい使い魔 5>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:06


「シエスタ……?」
「お目覚めですか? サイトさん」
「ああ」

確かギーシュに勝った後、ルイズにボディ決められて倒れたんだっけ。
ルーンの使いすぎも重なってあっさり気絶か。

 そういや、ルーンの効果って継続時間の詳細は語られてなかったな。
 動くと体力と共に精神力も持っていかれるからだいたい10分くらいが限度?
でもサイトは七万と戦って敵を止めたんだからおそらく丸一日位は持つはず。
ただし鍛えてるやつに限るってか?

推測だが、ゼロ戦とか道具を使うだけならかなり長い時間もつはずだ。
戦闘だと鍛えないとそう長くは持たない。
武器の相性とかもあるだろう。
やっぱりデルフリンガーがいるな。

などと考えてるといつの間にかシエスタが飯を持ってきてくれた。

「あの……、すいません。あのとき、逃げ出してしまって」
「いいっスよ~」
「ほんとに、貴族は怖いんです。私みたいな、魔法を使えないただの平民にとっては……」

 シエスタは、ぐっと顔をあげた。その目がキラキラと輝いている。

「でも、もう、そんなに怖くないです! 私、サイトさんを見て感激したんです。平民でも、貴族に勝てるんだって!」

立った!
シエスタフラグが立った!!

「戦闘力……、83だと……?」

ガンダールヴの恩恵を発見したのだ。

名づけておっぱいスカウター

どうやら身体能力の向上は部分的にも可能らしい。
目に意識を集中させればなんとバストがわかってしまうんだ!!

ババァーン

な、なんだってー!!

「どうしたんですか?左手に何持ってるんですか?」
「いや、何でもないDEATH」

話を変えねば、もうシエスタフラグは立った。
ほっといてもこのエロメイドの称号を持つシエスタなら勝手に近づいてくるだろう。

「もしかして、ずっと看病してくれたのか?」
「違います。私じゃなくて、そこのミス・ヴァリエールが…」

やだ……何これ、可愛い。
ルイズは、柔らかい寝息を立てていた。

「ふぁああああああああ」

 ルイズは大きなあくびをして、伸びをする。それから、オレに気づいた。

「あら。起きたの。あんた」

それはこっちのセリフだ。

「その、ルイズ」
「なによ」
「授業は?」
「いいのよ」
「いいのかよ?!」

思い出した。
教室爆破フラグを避けるために学院から離れた森でジョジョネタやってたんだ。
そのままギーシュと決闘したから教室爆破フラグは回避したらしい。

「ちょっと今は教室使えないから自習よ」

あなたがぶち壊しましたからね。
原作知識で知ってるとはいえ、生で魔法授業見れなかったのが残念なんて思ってないんだからねっ!




SIDE:マルトー


長年学院に務めているがアレには驚いた。

『我らの剣』
まさか平民が貴族の坊主をあっさりと倒すなんて。

いや、決闘の噂では剣すら持たずなんとポケットに手を入れたまま杖を奪って降参させたとか。
なぜかシエスタと飯を食いに来た『我らの剣』は自ら言ってたっけ。

「剣とか使えます。でも自分不器用なんで。相手を傷つけないように勝つにはアレが一番よかったんです」

信じられるか? 貴族相手に手加減してたんだ。

「本当の達人というのは、こういうものだ! 決して己の腕前を誇ったりしないものだ! 見習えよ! 達人は誇らない!」

その時は厨房の連中にそう言った。

「やい、『我らの剣』。俺はそんなお前がますます好きになったぞ。どうしてくれる」

謙虚なやつは嫌いじゃない。

「ハハ、HA☆NA☆SE」

美味そうに飯を食う姿も料理人としてうれしいことだ。
驚いたことに平民、いや、サイトだったか。
飯のお礼にと言って薪割りを手伝っていた。

「夢中になった。今は反省している」

剣を扱えるというのは本当だった。
薪割りをしていた姿は異常の一言に尽きる。
空中に放り投げた薪を鉈で一閃。
あっという間にバラバラにしていったのだ。

「さすがは、『我らの剣』だ!」



SIDE:サイト・ヒラガ



薪割りという名のガンダールヴ運転試験を終え適当に学院を散策することにした。

トリステイン学院。
本塔とその周囲を囲む壁、それと一体化した5つの塔。

下手な大学よりよっぽど広い。
小学校4つくらい入る敷地あんじゃね?
ゼロ戦を飛ばせるくらいの広場もあるし、さすがセレブの集まる学校。

「広すぎだろJK」
「あら?あなたは確かミス・ヴァリエールの使い魔さんでしたか?」

声のする方を向くと緑色の髪に眼鏡をかけた妙齢の美しい女性がいた。
ミス・ロングビル、またの名を「土くれのフーケ」だった。

「ヒュウ、これは美しいお嬢さん。宜しければお名前をお聞かせください」
「あら、これは失礼を。私は学院長の秘書でロングビルといいますわ」

フーケって23だっけ、俺と一つしか違わないのに年上のおねーさんって感じだ。
まあ、今の見た目は17前後だからまさに年上のおねーさんでいいわけだ。

「その美人秘書さんはこんなところで何を?」
「ちょっと、宝物庫の目録を作ろうとしていたところですわ」

そういや宝物庫って学院長室の近くにあったっけ。うーむ記憶が曖昧だな。
原作読んだのがずいぶん前だし、いちいち細かなところまでは覚えていない。

「興味深いですね~。どんな宝があるんですか?」
「詳しくはわかりませんが、秘宝と呼ばれるものがいくつもあるという話ですわ」

鍵は学院長が持ってるんだっけ。

「へぇ~。ここが宝物庫なんですか?」

鉄の巨大な扉を指さして聞いてみる。

「ええ、そうです」
「これってどうやって開けるんですかね?」
「学院長のオールド・オスマンが鍵を持っていますわ。今はご就寝中なのですが」

アレこれって確かコルベール先生が魔法じゃ無理だ。
物理攻撃なら破壊できるぜって伝えるシーンじゃね?

「はあ、魔法の事はよくわかりませんが、こっちの壁でもぶっ叩いて壊せばいいんじゃないですかね~」

扉には強力な魔法がかけられて開けられないんだっけ。
でも近辺の壁にはそんな強力な魔法はかけられてなかった気がする。
ルイズが爆発で壊してたし。

「!」

フーケはその発想はなかったわみたいな顔をしていた。
アレ? 気づいてなかったのか?



SIDE:フーケ



「はあ、魔法の事はよくわかりませんが、こっちの壁でもぶっ叩いて壊せばいいんじゃないですかね~」

アタシとしたことがどうにかしてた。
確かにこの使い魔の平民が言うとおりだ。
アタシの目算でもゴーレムで叩けば壊せそうだね。

でも、何モンだい?
この平民。アタシが二ヶ月かけて調べてきたのにたった一度この宝物庫を見ただけで攻略法を導き出した。
只者じゃないね。
ゾクリと背筋に嫌な感じが走る。

そうだ。平民なのにこの扉にかけられてる魔法に気づきその堅牢さを見抜きあっさりと扉を開ける考えを捨てて別の方法を思いついた。
同業者?
いや、平民の盗賊なんてたかが知れてる。
じゃあこいつは?

「素晴らしい慧眼の持ち主ですわね。もしや名のある貴族様でして?」

没落貴族だとあたりをつける。

「いいえ、ただの使い魔ですよ。ところで、ミス・ロングビルは独身なんですか?」

それがなんの関係があるんだい?
そう思いつつも答えることにした。

「ええ、身よりもありませんし、まだこちらに来たばかりなものでして」
「なんとぉ、ミス・ロングビルみたいな美しい人を放っておくここの男たちはどうにかしてますね」

まあ、悪い気はしない。
なんだ、アタシに惚れたのかい?
イケない坊やだ。

「あら、嬉しいですわね」
「冗談ではないですよ? おっと、どうやらお昼の時間ですね。残念ですが今日は失礼しますね」

じゃ、と言ってあっという間に立ち去ってしまった。

しまった。話をはぐらされた。
こちらの思案に気づいていた?



SIDE:サイト・ヒラガ



フーケには宝物庫の攻略法を教えれたからこれでいいだろう。
しかし、フーケをモノにするには難易度高すぎです。乙。

 レコンキスタのことを伝えても今はまだ活動してないだろうし、アルビオンを救うにも戦力ねーし、テファをどうにかするといっても召喚されたばかりの俺がなぜ知っているということになる。
つまりは、詰んでる状態なわけで。

とりあえずはヒロイン達とフラグを立てることに専念するか。

「というわけで、図書館の許可書をくれ」
「何が、というわけよ? あんたどこうろついてたの? 使い魔のお披露目もまだすんでないんだからね!」

正直バカにされるだけとわかっているので行きたくない。

「まあまあ、次の授業でお披露目ってことで、ほら、御主人様みたいな大物は最後に披露するのがいいですよ」

適当にルイズのご機嫌を取っておく。
ま、原作通りにお披露目は馬鹿にされました。悔しくなんて無いんだからっ!
教室の爆破はフラグを回避したので起こらなかった。



その日の夜。

「お、フレイムじゃん」

ということはキュルケフラグか、結局キスしかできないんだっけ。
いや、乳くらいは揉んで見せる。

きゅるきゅる、と人懐こい感じで、鳴いているフレイムについていき、キュルケの部屋のドアをくぐった。

「扉を閉めて?」

 俺は、言われたとおりにした。

「ようこそ。こちらにいらっしゃい」
「真っ暗だな」

キュルケが指を弾く音が聞こえた。すると、部屋の中に立てられたロウソクが、一つずつ灯っていく。

イッツショータイム。

ぼんやりと、淡い幻想的な光の中に、ベッドに腰掛けたキュルケの悩ましい姿があった。
ベピードール、誘惑するための下着をつけている。

薄! 服、薄!

チキショー、もっと明るかったら全て見えるのに。

「そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」

キュルケはにっこりと笑って言った。

「座って?」

俺は言われたとおりに、キュルケの隣に腰掛けた。
あ、やば。いい匂い。

「あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
「キュルケさん?」
「思われても、しかたがないの。あたしの二つ名は『微熱』」

常に体調不良みたいな二つ名だよな。

「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。だから、いきなりこんな風にお呼びだてしたりしてしまうの。わかってる。いけないことよ」
「いけないことだね」

落ち着けまだ慌てる時間じゃない。
でも横のメロンちゃんを見てるとおっきしちゃうんだお(^ω^)

「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」
「許す?」

 キュルケは、すっと俺の手を握ってきた。
キュルケの手は温かかった。
そして、一本一本、俺の指を確かめるように、なぞり始めたのだ。
やわらけぇええ。

「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね」
「まったく突然だな」
「あなたが、ギーシュを倒したときの姿……。かっこよかったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ! あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる! 痺れたのよ! 情熱! あああ、情熱だわ!」
「情熱か、うん」

だったら二つ名を情熱にすればいいのに。

「二つ名の『微熱』、つまり情熱なのよ! その日から、あたしはぼんやりとしてマドリガルを綴ったわ。マドリガル。恋歌よ。あなたの所為なのよ。サイト。あなたが毎晩あたしの夢に出てくるものだから、フレイムを使って様子を探らせたり……。ほんとに、あたしってば、みっともない女だわ。そう思うでしょう? でも、全部あなたの所為なのよ」

そうですか、俺の所為ですか。

「俺の所為なら俺が何とかしなきゃね?」
「ええ」

答えたキュルケを抱き寄せる。
ボヨンっとした感触が体に伝わる。

「んっ」

ハーッハッハ、キュルケの唇は頂いた。
ムニュと乳を揉んだところで行動を停止する。

「あん、どうしたの?」
「いやー、お客さんが来たみたい」

俺がそう言ったとき、窓の外が叩かれた。
そこには、恨めしげに部屋の中を覗く、一人のハンサムな男の姿があった。

「キュルケ……。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば……」
「ペリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」

キュルケは、胸の谷間に差した派手な魔法の杖を取り上げると、そちらのほうを見もしないで杖を振った。

「今の誰?」
「彼はただのお友達よ。とにかく今、あたしが一番恋してるのはあなたよ。サイト」

キュルケが俺に再び唇を近づけた。
俺はこれからどうなるのか分かっているので、何もしなかった。
すると……、今度は窓枠が叩かれた。
見ると、悲しそうな顔で部屋の中を覗き込む、精悍な顔立ちの男がいた。

「キュルケ! その男は誰だ! 今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」
「スティックス! ええと、四時間後に」
「そいつは誰だ! キュルケ!」

 怒り狂いながら、スティックスと呼ばれた男は部屋に入ってこようとした。
 キュルケは煩そうに、再び杖を振った。
 再びロウソクの火から太い炎が伸びる。男は火にあぶられ、地面に落ちていった。

「……今のも友達?」
「彼は、友達というよりはただの知り合いね。とにかく時間をあまり無駄にしたくないの。夜が長いなんて誰が言ったのかしら!瞬きする間に、太陽はやってくるじゃないの!」

 窓だった壁の穴から、悲鳴が聞こえた。窓枠で、三人の男が押しあいへしあいしている。
 三人は同時に、同じセリフをはいた。

「キュルケ!そいつは誰なんだ!恋人はいないって言ってたじゃないか!」
「マニカン! エイジャックス!ギムリ!」

モテモテだな。まあ最終的には俺のものになるんで君たちはこれが最後の見納めだ。

「ええと、六時間後に」

 キュルケは面倒そうに言った。

「朝だよ!」

 三人は仲良く唱和した。キュルケはうんざりした声で、サラマンダーに命令した。

「フレイム!」

 きゅるきゅると部屋の隅で寝ていたサラマンダーが起き上がり、三人が押し合っている窓に向かって、炎を吐いた。三人は仲良く地面に落下していった。

「酷いことするね」
「さあ? とにかく! 愛してる!」
「まった!」

そう言ってキュルケを押さえつける。

そのとき……。
今度はドアが物凄い勢いであけられた。ネグリジェ姿のルイズが立っている。

「キュルケ!」
 
 ルイズはキュルケの方を向いて怒鳴った。
キュルケは俺から体を離し、振り返った。

「取り込み中よ。ヴァリエール」
「ツェルプストー! 誰の使い魔に手を出してんのよ!」
「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」
「そうだもん。好きになられたんだもん」

ルイズの鳶色の瞳は燗々と輝き、火のような怒りを表している。
やべ、外した?

「恋と炎はフォン・ツェルプストーの宿命なのよ。身を焦がす宿命よ。恋の業火で焼かれるなら、あたしの家系は本望なのよ。あなたが一番ご存知でしょう?」
「来なさい。サイト」

睨むのは結構ですが、鞭は勘弁してください。

「ねえルイズ。彼は確かにあなたの使い魔かもしれないけど、意思だってあるのよ。そこを尊重してあげないと」
「そうだ。そうだ。人権を認めろ」

 ルイズは硬い声で言った。

「あんた、明日になったら十人以上の貴族に、魔法で串刺しにされるわよ。それでもいいの?」
「平気よ。あなただってヴェストリ広場で、彼の活躍を見たでしょう?」

学生程度なら何人集まっても倒せる自信があるが、さすがに敵を作るワケにもいかない。

「行こうかルイズ」
「あら。お戻りになるの?」

目的の乳も揉んだしこれ以上の長いは無意味だ。


部屋に戻ったルイズは、慎重に内鍵をかけると、俺に向き直った。
そういや鞭でこの後叩かれるんだっけ。それは痛いのでイヤだ。

「ルイズ」
「な、なによ?」
「武器が欲しいです」

神の左手、デルフリンガーをね。

「ど、どうして?」

真面目な顔が効いたのか素直に聞いてくれた。

「ルイズを護るために必要だろ?」

キラッ☆という感じで決めてみた。

「そ、そうね、なかなか殊勝じゃないの」

チョロい小娘だ。原作を読んでいる以上性格は分かっている。

「なんか気にくわない顔ね。ま、いいわ。明日は虚無の曜日だから、街に運れてってあげる」

ホッと胸をなで下ろす。しかし、結局、キュルケとの関係を聞かされたのだ。




[18630] <ゼロのひどい使い魔 6>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/08/21 21:02




SIDE:キュルケ


 私は、昼前に目覚めた。今日は虚無の曜日である。
窓を眺めて、窓ガラスが入っていないことに気づいた。周りが焼け焦げている。しばらくぼんやりと寝ぼけた気分で見つめて、昨晩の出来事を思い出した。

「そうだわ、ふぁ、色んな連中が顔を出すから、ふっ飛ばしたんだっけ」

 そして、窓のことなどまったく気にせずに、起き上がると化粧を始めた。
今日は、どうやってサイトを口説こうか、と考えるとウキウキしてくる。
私は、生まれついての狩人なのだ。
化粧を終え、自分の部屋から出て、ルイズの部屋の扉をノックした。
そのあと、私は顎に手を置いて、にっこりと笑った。

 サイトが出てきたら、抱きついてキスをする。
しかし、ノックの返事はない。あけようとしたが、鍵がかかっていた。
私はなんの躊躇いもなく、ドアに『アンロック』の呪文をかけた。
部屋はもぬけの殻だった。二人ともいない。

「相変わらず、色気のない部屋ね……」

ルイズの鞄がない。虚無の曜日なのに、鞄がないということはどこかに出かけたのであろうか。窓から外を見まわした。
 門から馬に乗って出ていく、二人の姿が見えた。



SIDE:タバサ


普段の自分なら虚無の曜日は好きなだけ本を読んでいる。
だが、ふと窓の外を見た時、二人の姿が見えた。
間違えなく一人は彼である。

彼らを追うために準備を済ます。
すると丁度ドアが開いた。

「タバサ。今から出かけるわよ! 早く支度をしてちょうだい!ってアレ? どこかにいくの?」

彼らを追いかけるとは言えない。

「本を買いに行く」
「ふ~ん」

 納得してないようだが、私には関係ない。
 私は窓をあけ、口笛を吹いた。
 ばっさばっさと力強く両の翼を陽光にはためかせ、ウィンドドラゴンが飛び上がった。

「いつ見ても、あなたのシルフィードは惚れ惚れするわね」
「どっち?」

私は短くキュルケに尋ねた。
窓から見た方角して城下町の方だろう。
しかし、それを知っているということは彼らを追いかけるということをバラしてしまうことになる。よって、嘘をついた。

「わかんない……。慌ててたから」

 私は別に文句をつけるでなく、ウィンドドラゴンに命じた。

「馬二頭。食べちゃだめ」



SIDE:ルイズ



変わった使い魔だと思っていた。ギーシュとの決闘では圧倒的な力の差で勝ってしまった。
しかも素手で。
使い魔のサイト曰く、自分は剣を使った方がもっと強いとのこと。

ドットメイジを物ともしない強さを誇る使い魔。
剣を持たせたらもしかしてトライアングルクラスのメイジでもやっつけちゃうんじゃないのかしら?
そう思うと私は誇らしくなった。

こんな強い使い魔を呼び出す私はすごいんじゃないか?
そう思っていたのもつかの間。

「乗馬って難しいな。そして股が熱い」

馬に乗るのが初めてだったらしい。
股って言うな。

結局城下町に着いた時にはへばっていた。

強いのか弱いのかよく分からない使い魔だ。


SIDE:サイト・ヒラガ



馬で三時間って偉く遠いな。
車が恋しいです。
城下町ってまさにテーマパークだな。
夢の国といい勝負だ。
でも狭い。

「狭いな」
「狭いって、これでも大通りなんだけど」

道幅は五メートルもないのだ。
コミケよりは人は少ないがそれでも結構人もいる。
コミケの昼過ぎレベルだな。

「ブルドンネ街。トリステインで一番大きな通りよ。この先にトリステインの宮殿があるわ」
「ふーん」

そういえば、城って攻め落とされないように城下町って複雑にするようになってるんだっけ?
でも、空戦用の戦艦あるしそもそも魔法使いって空飛べるじゃん。
ドラゴンもいるから城下町複雑にしても意味ないんじゃね?

「ほら、ボーッとしない。すりが多いんだから! あんた、上着の中の財布は大丈夫でしょうね?」
「大丈夫だ。しかしこんな重いもんすられんよ」

エキューって円に換算するといくらだ?
まあいい、しかし、五百円玉をキロ単位で持つってどんなプレイ?

「魔法を使われたら、一発でしょ」
「貴族がスリなんかすんのかよ」

原作どおりの会話だった。

「きたねえ」
「だからあんまり来たくないのよ」

悪臭が鼻をつく。ゴミや汚物が、道端に転がっている。

「汚物は消毒だ~」
「何いってんのよ。あ、あった」

 掃除しろよな。というか貧乏メイジと平民総動して掃除する会社作れば雇用も安定するし街も綺麗になる。一石二鳥だ。今度ルイズに言ってみよう。

 店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りがともっていた。
壁や棚に、所狭しと剣や槍が乱雑に並べられ、立派な甲冑が飾ってあった。

ドラ●エの武器屋か!?

「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」
「客よ」

ルイズは腕を組んで言った。

「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげたー」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」
「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」

 主人は、商売っ気たっぷりにお愛想を言った。それから、俺をじろじろと眺めた。
なんだよ文句あっか

「剣をお使いになるのは、この方で?」
「わたしは剣のことなんかわからないから。適当に選んでちょうだい」

主人はいそいそと奥の倉庫に消えた。

「なあ、ルイズ。明らかにあの人はお前を剣を知らない鴨だと思ってたぞ?」
「しょうがないでしょ? 貴族は剣なんてふらないもの」

主人は一メートルほどの長さの、細身の剣を持って現れた。

「レイピアか?」
「そのとおりでさあ」
「あ~、スイマセンが、これは使い物になりませんね」
「といいますと?」

 刺すのに優れているが細いため耐久度がない。
それに俺が欲しいのはデルフリンガーだ。
適当にイチャモンをつけて他の剣を持ってきてもらうことにした。

「もっと大きくて太いのがいいわ」

何その卑猥な言葉?
デルフリンガーがしゃべりだすまでイチャモンを付ける。

「これなんかいかがです?」

宝石が散りばめられた剣だった。たしかメチャ高い剣だけどあっさりと折れるなまくらな剣だったな。

「ん~、それって戦闘用の剣じゃないね。どっちかっていうと式典用じゃね?」
「わかってるじゃねーか。小僧」

デルフですね。分かります。

「やい! デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」
「お客様? 剣もまともにふれねえような小僧っこがお客様? ふざけんじゃねえよ! 耳をちょんぎってやらあ! 顔を出せ!」
「それって、インテリジェンスソード?」

 ルイズが、当惑した声をあげた。

「そうでさ、若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣をしゃべらせるなんて……。とにかく、こいつはやたらとロは悪いわ、客にケンカは売るわで閉口してまして……。やいデル公! これ以上失礼があったら、貴族に頼んでてめえを溶かしちまうからな!」
「おもしれ! やってみろ! どうせこの世にゃもう、飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら、上等だ!」
「まあまあ、落ち着いてくださいよ」

そう言って俺はデルフリンガーを持つ。気づけよ?デルフリンガー。

「おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
「『使い手』?」
「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい。てめ、俺を買え」
「買うよ」

そのためにここに来たんだし。

「ルイズ。これにするぞ」

 ルイズはいやそうな声をあげた。

「え~~~。そんなのにするの? もっと緯麗でしゃべらないのにしなさいよ」
「だが断る」

有無を言わせ無い内に購入させる。

「あと、ついでに隠しナイフが欲しいんですが構いませんかね?」

ちゃっかりと隠しナイフも買ってもらったのだ。

「一目でわかったよ……アンタ俺に惚れてる」
「何いってんだ?」


―――――――――
2010/08/21
誤字修正しました。
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[18630] <ゼロのひどい使い魔 7>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:06


デルフリンガーを手に入れたということはフーケ戦か。
俺には何もないんだよなぁ。
学院長のポケットマネーをふんだくるか。

「どうしたんだ? 相棒? 考え事か?」
「しかし、よく喋る剣である」

質問という名の剣への尋問は結局、忘れたの一言で終わった。

俺はタバサにジョジョネタを見つかった森に来ている。
フーケ戦までに鍛えるためだ。

デルフリンガーを構える。

「九頭龍●!」

巨木に向かって剣を打ち込む。

「すげぇぜ! 相棒!」

正直俺も驚きである。
漫画の技がこうも忠実に再現できるとは。
ちなみに、抜刀術は無理。
剣が長すぎた。もともと、日本刀用の技なので諦めた。

「そうかい。次!」

剣を逆手に持ち替える。

「相棒、その持ち方は……」
「ア●ンストラッシュ!!」

早々都合のいい話はなかった。

「だめでした。●バン先生 orz」
「相棒、何がしたかったんだ?」
「いや、衝撃波ってゆーの? そういうの出せないかなって」
「はぁ~今回の相棒は頭がやわらけーな!」

アバ●流は再現不可でした。闘気技は出せないらしい。
闘気技?
そういや、心の震えで力が増えるんだっけ?
闘気ってアレだ、気合ってことだろ。
物は試しでやってみるか。

「はあああ」

(心の震えを闘気に見立てる!! フーケぇえええ、ヤラせろおおおおおおお)

「すげぇぜ相棒! おおお来た、来た、来たーー!!
思い出したぜ! そう、俺さまは伝説の魔剣デルフリンガー!
『神の左手』ガンダールヴの相棒、『ガンダールヴの左腕』、デルフリンガーさまだ!!」

やたらとテンションの高い剣は本来の姿を取り戻していた。こんなので覚醒するなよ。

「それにしてもこの剣、ノリノリである」

ガンダールヴの出力が上がったのでもう一度試す。

「ア●ンストラッシュ、ブレイク!!」

樹齢何百年の巨木がバッサリと切れた。
さらに追い打ちをかける。

「ふんがー」

倒れてくる巨木を細切れにする。
計画通り。
( ̄ー ̄)ニヤリ
俺という名前の切削機が巨木をバラバラにしていた。

「おふん」

力を使いすぎた反動か、体に力が入らない。
そのままゆっくり地面に寝転がる。

「おでれーた!」
「寝る」

うるさい剣を無視して意識を手放した。



SIDE:タバサ


「えらいものを見ちゃったのねー、さっそくお姉さまに報告するのねー」

声の主はその森を、根城にしている青い風竜だった。

窓の外を見る。
自分の召喚した使い魔がえらく慌てた様子で私を呼んでいた。
なにかあったのだろうか?
指令はなかったはず。

「きゅいきゅい!」
「今行く」

私はシルフィードの背に乗る。
学院ではしゃべることを禁じているのであの森の近く上空で話すことにした。


「シルフィード、しゃべっていい」
「ふはっ、やれやれ、やっと解禁なのね。辛かったのね。ひどいのね。
お詫びにご飯、いっぱい食べさせるのね、おにくがいいのね、おにくおにく、るる。るーるる」
「なにかあった?」

瞬間、まるで高速詠唱か! と思われるほどの勢いでおしゃべ……報告が始まった。
シルフィードの話を要約すると、
同時期に召還された少年が自分の寝床近くにやってきて、いきなり、剣を取り出して巨木をなぎ払った。
シルフィードの目をもってしてもその動きはわからなかったという。
そして、その力は断じて魔法ではないという。

「きゅい、あの人間はきっとドラゴンキラーなのね!」

馬鹿な、と思う。
ドラゴンの相手ができる人間はスクエアクラスのメイジでもごく一部だ。
まして平民にはまず不可能。
考えを改める。
凄腕のメイジ殺しではなく、ドラゴンを殺せるほどの実力者に。
そんな平民の物語を私は知っている。

イーヴァルディの勇者
私は好奇心を押えきれなかった。

「彼はいまどこに?」
「森の中で寝てるのね」
「行って」

彼のいるところにすぐに着いた。

その光景はあまりにも美しくまるで芸術品を見ているようだった。

寝ている彼の横には剣が突き刺さっている。
まるで勇者が戦いの末にやっとドラゴンを倒し休憩している様のようだ。
周りの木々が倒れ、彼の足元には数え切れない木片が転がっている。

「……」

彼はたぶん修行をしていた。
そして彼には今の私では勝てない。
修行の後を見て彼の実力を改める。
シルフィードの言ったドラゴンキラーはあながち間違いではないのでは?
彼のことを知りたい。

だが、起こすのは勿体無い。
もっとこの光景を見ていたいという自分がいる。
彼に助けを求めればもしかしたら、すんなり頼みを聞いてくれるかもしれない。
母を助けられるかもしれない。
気づくと私は歩いていた。

パキっという音を立てて枝が折れた。

「ぇあ?」

たったあの程度の音で目を覚ます。

「ごめんなさい」

自然と言葉が紡がれた。
芸術品に泥を塗ってしまったような罪悪感が残る。



SIDE:サイト・ヒラガ



「ごめんなさい」

ストーキング幼女という新ジャンル?
いやいや、なんでまたここに?

そんなに俺をストーキングして意味あるのか?
大佐からの命令か?
スネーク、見つかったらだめなんだぜ。

デルフリンガーを地面から抜き取り鞘に収める。
しゃべらせてややこしくしないためにね。

「なにか用事ですかね? タバサさん」
「……」

シカト? ひどくね?
ウホッいい韻竜。
空に飛ぶシルフィードを見つけた。

「まあいいや、これから学院に帰るからさ、よかったらあの竜に乗っけてくれないか?」
「わかった」

それはいいのかよ!?

「なんというブルジョア」

シルフィードの乗り心地は良かった。

学院に帰る途中、シルフィードの上でこんな会話があった。

「タバサさん」
「タバサでいい」
「タバサちゃん」
「タバサでいい」
「タバサたん」
「タバサでいい」

「タバサ」
「ん」

どうやら呼び捨て希望らしい。
ついでに文字も教えてもらう約束をとりつけておいた。
べ、別に幼女と仲良くなりたいわけじゃないんだからねっ!

一体いつタバサフラグを立てた?




なんというプレイ?
原作でもあったことだがこれは酷い。
他人を巻き込んで争うのはよくない。

「ちょ、おま。やめろって」

ロープに吊るされてます。
フーケ、早く。
俺が危ないじゃない。

「えいっ!」

ルイズが杖を振る。
しかし、杖の先からは何も出ない。一瞬遅れて、俺の後ろの壁が爆発した。
虚無というかルイズの魔法を目の当たりにすると畏怖するしかない。

見えない攻撃、強力な爆発。
普通に手強いぞ?
それを人体に向けて意図的に爆発できるようになれば腕か頭を爆発させれば無力化できるっつーの!
その可能性をここの教師も生徒も気づかないのかね~?
とりあえず、言うことがあるぞ。ルイズ。

「殺す気か!!」
「ゼロ! ゼロのルイズ! ロープじゃなくて壁を爆発させてどうするの! 器用ね!」

 ルイズは悔しそうに拳を握り締めると、膝をついた。

「さて、わたしの番ね……」

キュルケは余裕の笑みを浮かべた。ルーンを短く呟き、手慣れた仕草で杖を突き出す。
『ファイヤーボール』はキュルケの十八番だった。
あっさりとキュルケの勝ちがきまる。
俺はタバサが『レビテーション』をかけてくれたおかげで地面との激突はなかった。

すっと立ち上がりキュルケに物申す。

「よお、やってくれるじゃんかよ~」
「何よ、サイト?」
「ルイズとの決闘だったらキュルケが負けてたぜ~? つーか俺を使うなよな~。せめてどちらが俺を好きか勝負とか手料理対決にしといてくれよ」

俺の発言がイミフなのか全員ポカンとしていた。

「ちょっとそれどういう意味かしら?」
「ほら、女の子らしく手料理でうまい方が勝ちとかの方がわかりやすくていいじゃん?」
「そっちじゃないわよ。なんで私がゼロのルイズに決闘したら負けるのよ?」

その時である。
背後に巨大な何かの気配を感じて、俺は振り返った。
デケェ!
お台場ガ●ダムくらいあるぞ!

「「きゃぁああああああああ!」」←ルイズ+キュルケ
「な、なんなんなのよ。あれ……」←ルイズ
「わかんないけど……。巨大な土ゴーレムね」←キュルケ
「すごく……、大きいです」
「……あんな大きい土ゴーレムを操れるなんて、トライアングルクラスのメイジに違いないわ」←ルイズ

ここでやっつけてしまってもいいんだろうな?
いや、死亡フラグだから。

「ん~、タバサぁ。とりあえずキュルケとルイズ捕まえて逃げようか、あと教師呼んできて」
「わかった。あなたはどうするの?」
「適当に足止めして危なくなったら逃げる」

フーケは、巨大な土ゴーレムの肩の上で、薄い笑いを浮かべていた。
俺は視力を上げるために目に意識を集中させる。

「うおおおおい、そこの盗賊~、パンツ見えてっぞぉ~」

黒いローブががくっとなった気がしたが気のせいだろう。



SIDE:フーケ


 なんて緊張感のないやつだ。
と、ともかくこのまま宝を頂くよ。

 壁に向けて拳をブツける。バカッと鈍い音がして、壁が崩れる。
上手く行った。

ゴーレムの腕を伝い、壁にあいた穴から、宝物庫の中に入り込んだ。
 中には様々な宝物があった。しかし、アタシの狙いはただ一つ、『破壊の杖』である。
 様々な杖が壁にかかった一画があった。その中に、どう見ても魔法の杖には見えない品があった。全長は一メイルほどの長さで、見たことのない金属でできていた。アタシはその下にかけられた鉄製のプレートを見つめた。
『破壊の杖。持ち出し不可』と書いてある。
 アタシは『破壊の杖』を取った。
 その軽さに驚いた。一体、何でできているのだろう?
 しかし、今は考えている暇はない。急いでゴーレムの肩に栞った。
 去り際に杖を振る。すると、壁に文字が刻まれた。

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』







[18630] <ゼロのひどい使い魔 8前>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:07



 翌朝……。
 トリステイン魔法学院では、昨夜からの蜂の巣をつついた騒ぎが続いていた。
 何せ、秘宝の『破壊の杖』が盗まれたのである。
 それも、巨大なゴーレムが、壁を破壊するといった大胆な方法で。
 宝物庫には、学院中の教師が集まり、壁にあいた大きな穴を見て、口をあんぐりとあけていた。
 壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

「土くれのブーケ! 貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か! 魔法学院にまで手を出しおって! 随分とナメられたもんじゃないか!」
「衛兵はいったい何をしていたんだね?」
「衛兵などあてにならん! 所詮は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」

まあなんて汚い大人の責任転嫁だこと。最終的にはオスマン学院長が

「このとおり、賊は大胆にも忍び込み、『破壊の杖』を奪っていきおった。つまり、我々は油断していたのじゃ。責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい」

といって締めくくった。男だねぇ。

「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」


 オスマン氏が尋ねた。
「この三人です」

 コルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた三人を指差す。

ルイズにキュルケにタバサの三人である。
 俺は、使い魔なので数には入っていない。

( 」゚Д゚)」オーイ!

(´・ω・`)

\(^o^)/オワタ

など遊んでいたら怒られた。

「ふむ……、君たちか」
 オスマン氏は、興味深そうに俺を見つめていた。ヽ(*´∀`)ノ キャッホーイ!!
という顔をしていたがスルーされた。

「詳しく説明したまえ」

 ルイズが進み出て、見たままを述べた。

「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。扁に乗ってた黒いメイジがこの宝物庫の中から何かを……、その『破壊の杖』だと思いますけど……、盗み出したあと、またゴーレムの肩に乗りました。ゴーレムは城壁を越えて歩き出して……、最後には崩れて土になっちゃいました」
「それで?」
「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いローブを着たメイジは、影も形もなくなってました」
「ふむ……」

 オスマン氏はひげを撫でた。

「後を遣おうにも、手がかりナシというわけか……」

 それからオスマン氏は、気づいたようにコルベールに尋ねた。

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」
「それがその……、朝から姿が見えませんで」
「この非常時に、どこに行ったのじゃ」
「どこなんでしょう?」

 そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。
タイミング測ってたな? (・∀・)ニヤニヤ

「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! 大変ですそ!事件ですぞ!」

 興奮した調子で、コルベールがまくし立てる。
しかし、ミス・ロングビルは落ち着き払った態度でオスマン氏に告げた。

「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁のブーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」
「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

 コルベールが慌てた調予で促した。

「で、結果は?」
「はい。フーケの暦所がわかりました」
「な、なんですと!」

 コルベールが、素っ頓狂な声をあげた。 (・m・ )クスッ
 
「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」
「はい。近在の農晟に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

 ルイズが叫んだ。 ( ̄∇ ̄;) ハッハッハッ

「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」

 オスマン氏は、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。

「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「ブッ」

思わず吹き出す俺。
さっきから事あるごとにニヤついてるのに誰も何も言ってくれない。
こうなりゃヤケだ。俺に発言させてくれるまで嫌がらせしてやる。

「すぐに王室に報告しましょうー 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」
 
 コルベールが叫んだ。
 オスマン氏は首を振ると、目をむいて怒鳴った。年寄りとは思えない追力だ。
 流石におふざけしてる場合じゃないかな~と考えた。

「ばかもの! 王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ! その上……、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた! これは魔法学院の間題じゃ! 当然我らで解決する!」

 ミス・ロングビルは微笑んだ。それを俺が見逃すわけもなく。視線があう。
 オスマン氏は咳払いをすると、有志を募った。

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」
 
誰も杖を掲げない。困ったように、顔を見合わすだけだ。
俺がしゃしゃり出ていいのはルイズが杖を上げてからだ。

「おらんのか? おやぞ どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

ルイズは俯いていたが、それからすっと杖を顔の前に掲げた。やればできる子。

「ミス・ヴァリエール!」

 ミセス・シュヴルーズが、驚いた声をあげた。
うっせー。(゚д゚)バーカ

「ルイズ、さすが俺のご主人」
「当たり前よ。私は貴族よ!」

その声に反応したのかキュルケも杖を掲げていた。
いい度胸だ。俺の家に来て俺とファックしていいぞ。

「ふん。ヴァリエールには負けられませんわ」

 キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。

「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」

 キュルケがそう言ったら、タバサは短く答えた。

「心配」

 キュルケは感動した面持ちで、タバサを見つめた。ルイズも唇を噛み締めて、お礼を言った。
なぜタバサは俺を見てる?

「ありがとう……。タバサ……」


 そんな三人の様子を見て、オスマン氏は笑った。

「そうか。では、頼むとしようか」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険にさらすわけには!」
「では、君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ……、わたしは体調がすぐれませんので……」
「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」

 タバサは返事もせずに、ぼけっと突っ立っている。教師たちは驚いたようにタパサを見つめた。

「本当なの? タバサ」

まあ驚いてますな。俺は知ってるから驚かん。

「ミス・ツェルプストーは。ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女白身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
 
 キュルケは得意げに、髪をかきあげた。
 それから、ルイズが自分の番だとばかりに可愛らしく胸を張った。萌!
オスマン氏は困ってしまった。
誉めるところがなかなか見つからなかった。
 こほん、と咳をすると、オスマン氏は目を逸らした。
頑張れ学院長褒めてやれ。褒めるところもゼロだけど頑張れ。

「その……、ミス・ヴァリエールは数寿の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが? しかもその使い魔は!」

それから俺を熱っぽい目で見つめた。結局俺が優秀すぎるのね。

「平民ながらあのグラモン元帥の息予である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」

噂ってあんた確か遠見の魔法で見てたんだろ?
そう思ってると話は進んでいた。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 四人はミス・ロングビルを案内役に、早速出発した。

「ミス・ロングビル……、手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」
 ミス・ロングビルは、にっこりと笑った。
「いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから」

キュルケはきょとんとした。

「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」

 ミス・ロングビルは優しい微笑みを浮かべた。それは言いたくないのであろう。

「いいじゃないの。教えてくださいな」
「まあ、キュルケ人には言いたくないこともあるんだよ。例えばキュルケの乳が偽物だって秘密にしているみたいに」
「ブッ、サイトそれほんと?」

ルイズが興味深そうに俺に聞いてきた。

「そ、そんなわけないじゃない。本物よ!」
「とまあ、そんな風に気分が害されるから人の秘密は聞くものじゃないよ」
「ぐぬぬぬぬ」

うん、上手く和んだようだ。

「ったく……、あんたがカッコつけたおかげで、とばっちりよ。何が悲しくて、泥棒退治なんか……」
「とばっちり? あんたが自分で志願したんじゃないの」
「あんたが一人じゃ、サイトが危険じゃないの。ねえ、ゼロのルイズ」
「どうしてよ?」
「いざ、あの大きなゴーレムが現れたら、あんたはどうせ逃げ出して後ろから見てるだけでしょ? サイトを戦わせて自分は高みの見物。そうでしょう?」
「誰が逃げるもんですか。わたしの魔法でなんとかしてみせるわ」
「魔法? 誰が? 笑わせないで!」

 二人は再び火花を散らし始めた。

「キュルケではルイズに勝てない理由が知りたい」

タバサがそう告げると、ルイズとキュルケはこちらに視線を向けた。

「そういえばあの時はゴーレムが襲ってきて聞きそびれてたけど詳しく聞かせてもらえるわよね?」

駄々をこねて俺はデルフリンガー以外の剣は持ってきていない。
キュルケの買った剣は使えんからな。

「あー、じゃあ説明するからあの剣は使わなくていいよね? あの剣は戦闘用じゃないし」
「わかったわよ」

それよりも早く説明しろ。
ハリー、ハリーと体を寄せてくる。

「ほんじゃお話を始めましょうか。
キュルケがなぜルイズに勝てないのか?
それはルイズの扱う魔法が見えないからだよ!!」

なんだってー!!

って言ってくれ頼むから。

( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )

みたいに三人で話すなんて放置プレイですか?

「それだけ?」

タバサ、君だけだ俺の見方だ。

「事あるごとにキュルケとルイズは争ってるんだろ?
なのに決着つかず。キュルケってトライアングルメイジなのに失敗魔法しか使えないルイズになんで勝てないの?」

( ゚д゚)ハッ!

「というか、魔法を扱える精神力? つーの? それが少なくともトライアングル以下ってことはないでしょ? そもそも、俺はルイズの魔法は爆発魔法だと思ったし」

さすがに虚無の使い手といっても信じないだろう。なのでもっとも近い爆発魔法に変えてやった。
ドラ●エにも爆発魔法あるしな。

「爆発という系統はない」
「最も近い系統は私と同じ火ってことかしら?」
「嫌よ、なんであんたと同じ系統なのよ!」

ルイズはどこか嬉しそうだった。まあ、トライアングルクラスの精神力の持ち主ってことで喜んでるんだろ。
でも、原作じゃ虚無って精神力消費ハンパないんだっけ?
時には命を削るとかあったような。
でも、サイトに対する怒りで精神力補うシーンあったよな。
タバサのキスとか。
うーん怒りで強くなるって幽●の主人公かよ。
霊能力ってゼロがかかってるな。まさか作者はそこまで考えていた?

なーんてくだらないこと考えてたら三人がこっち見てた。

「単純に見えない攻撃をどうやって避ける?」

俺の問いにキュルケに話を振ると少し顔を青ざめていた。
ルイズが自分にたいしてケガをしないように魔法を使っていたことを理解したらしい。

たぶん今考えてることは伝えない方がいいね。フーケも聞き耳立ててるし。

そう、ルイズはどの魔法でも爆発する。
しかも威力は最低でも教室をめちゃくちゃにするレベルだ。
俺の世界でいう手榴弾レベルの爆発をポンポンと出せる。
それだけでもかなりの脅威だが、こちらの世界のメイジに当てはめるなら最短の魔法を唱えるだけで威力のある攻撃をポンポンと出せるわけで。

今のルイズでも一対一の戦いならスクエアクラスでも勝てるんじゃね?

ただし、ルイズが相手を殺す事全体だけど。

「ま、だらしない顔してるルイズだが、本気出せば強いんじゃねーのってことで」

 気づくと馬車は深い森に入っていった。

「ここから先は、徒歩で行きましょう」

 フーケがそう言って、全員が馬車から降りた。
 森を通る道から、小道が続いている。

「イヤ……、暗くて怖いの……」
「なにバカやってんの?」

自分で自分を抱きしめていたら注意された。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 8後>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:25


 しばらく歩くと、俺たちは開けた場所に出た。森の中の空き地といった風情である。
 五人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。

「ボロッ」
「うるさいわよ」

小声でルイズが注意してきた。
主犯のフーケは側にいるしあの小屋には誰もいないのを知っているので俺は普通に話していた。

「そういえばミス・ロングビルに聞きたいことがあるんですが」
「何かしら?」
「昨日の下着の色は?」

真顔で聞いた。

「あ、ああんた何聞いてるのよ?」
「しー」

ルイズに静かにするように注意する。

「そ、それが何かこの事件と関係あるのかしら?」
「ええ、極めて重要なことです」

嘘ですけどねー☆

「当ててみましょうか? 純白の白色ですね?」

ギョッとした顔をしたフーケ。

「いや、当たってしまったみたいですね~」
「どうしてわかったんですか?」

それでもフーケは表情を秘書モードから崩さない。

「いやね、実は俺は女性の下着の色を当てることができるんですよ」
「はあ?」

ビシッとルイズに人差し指を向ける。

「ルイズは淡いピンク」
「キュルケは赤色」
「タバサは水色」

 それぞれを指差して下着の色を当てる。
 全員がスカートを抑えて顔を赤らめていた。

「「「なんでわかったの?」」」
「それは秘密だ。さらばだ諸君!」

そう言って俺は小屋に向かって走り出す。

「フーケ、ゴルァ!!」

扉を蹴り破る。

「ここかぁ」

机をぶち壊す。

「それともこっちかぁ」

棚をぶち壊す。

「はっけ~ん」

壊したチェストの中から出てきた。

「ミッションコンプリート」

ルイズの元を離れて『破壊の杖』を手に入れ再びルイズの元へ戻る。
その間実に三十秒。

「破壊の杖」

 タバサが答えた。

「「あっけないわね!」」

ルイズとキュルケが叫んだ。
フーケはあっけに取られた顔で俺を見ていた。

すまん、やっぱりフーケも俺のハーレムに組み込むよ。


帰りの馬車。
フーケのは辺りを偵察してきます。という主張を既に破壊の杖を回収してるから意味ねーよって言いくるめた。

「気づいてるんだろ?」

ルイズたちは馬車の中で眠ってる。たいしたことしてないのに早起きで眠かったんだろう。

「はて? なんのことでしょう?」

馬車の運転席に隣りあって座ってフーケと話している。
フーケを取り込むためにも必要なんだよ。
決して、美人の隣に座りたかったってわけじゃないんだからねっ!

「アタシが土くれのフーケっだって気づいてるんだろ?」
「そーなのかー」
「とぼけるんじゃないよ」
「サーセン」

はあと毒気を抜かれたのかフーケは肩を落とした。

「いつから疑ってたんだい?」
「えー、実はパンツを見た当たりからです~」

黒ずくめの某警部補を真似てみる。

「パンツってどうゆうことだい?」
「ん~、フーケさん昨日の下着と今日の下着、同じ下着をつけてますね?」
「そ、それがどうしたってんだい?」
「不衛生なので履き替えることをおすすめしますー」

カァとフーケの顔が赤くなる。

「オホンッ、昨日見た犯人のパンツとあなたが履いているパンツが同じだったのでもしや? と思っていまして、それに、『破壊の杖』を奪われたことに気づいてすぐに調査をするのは関心できるのですが~、フフ、往復で八時間かかる道のりだけでも怪しいのにさらには聞込みまでして潜伏先を見つけたとあなたは言いました。時間的に不可能です~。さらに黒ずくめのローブを着ていましたが遠目から見て性別は判断できません~。あの話を聞いた時点であなたが犯人だと核心していました」

「はあ、とんだやつに目をつけられちまったね」
「ご愁傷様です~。ですがね。フーケさんに頼みごとがあるんです~」

そう言って俺はトリステインの城下町で思いついた清掃業のことを話した。
ハルケギニアには清掃業という概念が珍しいらしい。

「へぇ、そんなにうまくいくもんかね?」
「ま、騙されたと思って話に乗ってください。少なくとも損はさせませんよ?」

清掃業の後ろ盾はヴァリエール公爵家がやってくれると言い、年収数千エキューは固いと予測を述べた。さらにそこから事業展開して儲け話をしたら

「あんた、賢者かい?」
「まさか、誰でも考えられることですよ。それらの管理をフーケというかミス・ロングビルに頼みたいんですよ。表向きの仕事は誰かに押し付ければいいだけの話です」
「そうかい」

クククと笑い了承してくれた。秘書は仕事が軌道に乗るまでは続けるらしい。
ともかく、フーケを味方に巻き込めたことはでかい。
ワルドザマァw

「そういえばあんたの下着の色を当てるって本当なのかい?」

ふと思い出したように聞いてきた。

「いや実はいうと馬車に乗る前に全員の下着を覗いてたダケですよ」
「とんだペテン師だね」

フーケは呆れた顔をして俺を見て、こいつにはかなわないねとブツブツいってた。



 学院長室で、オスマン氏は戻った五人の報告を聞いていた。

「ふむ……。土くれのフーケは見つからなかったが。見事破壊の杖を取り戻してくれた」
「HA☆HA☆HAそんなに褒めるな」
「フーケは、取り逃がしたが、『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」

オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でた。俺とフーケは断ったが。

「君たちの、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサはすでに『シュヴァリエ』の餅位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」

 三人の顔が、ぱあっと輝いた。

「ほんとうですか?」

 キュルケが、驚いた声で言った。

「ほんとじゃ。いいのじゃ、君たちは、そのぐらいのことをしたんじゃから」

 ルイズは、俺を見つめていた。

「……オールド・オスマン。サイトには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は貴族ではない」

 俺は言った。

「これでいいですよ?」

 指で輪っかを作り金出せと伝える。
 オスマン氏は、しょうがないのぉとポケットマネーで払ってくれることを約束してくれた。

「さてと、今日の夜は『ブリッグの舞踏会』じゃ。このとおり、『破壊の杖』も戻ってきたし、予定どおり執り行う」

キュルケの顔がばっと輝いた。

「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」

 三人は、礼をするとドアに向かった。
 ルイズは、俺をちらっと見つめた。そして、立ち止まる。

「先に行っていいぞ。ここからは大人のお話の時間だ」
「なによそれ」

ルイズは怪訝そうな顔をしていたがおとなしく部屋を出て行った。

「なにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな」

 まあね、報酬のこととかカネのこととか金のこととか。

「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。君に爵位を授けることはできんが、せめてものお礼じゃ」

それからオスマン氏は、コルベールに退室を促した。
わくわくしながら俺の話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。

「オールドオスマン。報酬くれ。エキュー金貨で二千、新金貨なら三千でいいぞ?」
「なんじゃそりゃ? 立派な家と森つきの庭が買えるわい」
「やっぱり? んじゃいくらまで出せる?」
「五百」
「千五百でどうだ?」
「むむ、八百でどうじゃ?」
「しゃーねー、千二百」
「千じゃ、これ以上は無理じゃのう」
「じゃそれで」

ヒャッハー、千エキューゲットだぜっ。

「そんなあなたにお知らせがあります。俺はこっちの世界の人間じゃありません」
「本当かね?」
「イグザクトリー。俺は、ルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたんです」

 オスマン氏は目を細めた。

「あの「破壊の杖』は、俺たちの世界の武器なんですよ。あれをここに持ってきたのは、誰なんですか?」

原作と違ったらエラいことなので聞いておく。

「アレを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」

やはり、原作と同じだった。よかった。

「おぬしのこのルーン……」

話そうか悩むなオスマン。俺は知ってるんだぞ☆

「……これなら知っておるよ。ガンダールヴの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
「な、なんだってー」

ふぅ、やっと言えた。ガンダールヴ云々の話を聞き流し俺を返す方法を探すと言ってくれた。
といっても向こうじゃ死んでるから帰る気ないどね。
しっかし、自殺した人間がこうも行動的になるとはね。ニート中もひきこもりってワケじゃなかったが、ここまでアクティブでもなかった。まー、存分に異世界を楽しむさ。
もともとクリエイターの卵だった俺なんだ。何かを創造するのは得意だぜ?

オスマンからちゃっかり金を巻き上げルイズにバレないように管理する。
半額はフーケとの契約金で使ったけど、五百あれば十分だ。



アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。
タバサとフードファイトで敗北しハシバミ草の新たなる料理ハシバミ草で肉を巻いたお手軽料理を振舞った。ちなみにハシバミ草はピーマンを一段階苦くしたような味だった。

ハシバミ中毒者をいなしてバルコニーで休憩する。

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」

お代官の紹介かよってツッコミたかったがお腹一杯だったから無視した。

 ホールでは、貴族たちが優雅にダンスを踊っていた。
ルイズは誰の誘いをも断ると、バルコニーに寂しく佇む俺に気づき、近寄ってきた。

「楽しんでるみたいね」
「まあな」

デルフリンガーがルイズに気づき、「おお、馬子《まご》にも衣装じゃねえか」と言った。
デルフ、空気嫁。

「うるさいわね」
「ルイズは、踊らないのか?」

 正直苦しいから踊りを断りたい。

「相手がいないのよ」

 ルイズは手を広げた。

「いっぱい、誘われてたじゃん」

ルイズは、答えずに、すっと手を差し伸べた。

「踊ってあげても、よくってよ」
「えー」
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」

そう言われたら紳士な俺は断れない。

「ダンスなんてしたことねーよ?」

ルイズは「わたしに合わせて」と言って、俺の手を軽く握った。
見よう見まねでもなんとかなるもんだ
ルイズに合わせて踊りだす。

「ねえ、サイト。信じてあげるわ」
「なにをぉ?」
「……その、あんたが別の世界から来たってこと」
「わーい。って信じてなかったのか?」
「今まで、半信半疑だったけど……。でも、あの『破壊の杖』……。あんたの世界の武器なんでしょう」

そういや、帰ってから説明したっけ。
フーケのことも正体は教えなかったが清掃事業やっから何とかしてって頼んだら意外にもオーケーしてくれた。
収入を孤児院に寄付するとか多少着色した話を感動した様子で聞いてたしな。
ミス・ロングビルがなんで担当するかって話は彼女が孤児院出身だからと嘘も着いた。

「ねえ、帰りたい?」
「別に」

そうなの?と呟いてルイズはしばらく無言で踊り始めた。

「ありがとう」

ルイズが礼を言ったので、俺はなんのことだろうと思った。

「清掃事業のこと、家に手紙送ったら二つ返事で了承してくれたわ。なんでも、国のことを考えていた私のことをえらく褒めた文章だったわ」

「気にすんな。当然だろ」
「どうして?」
「俺は……、ヤバ、ゴメン。トイレ」

そう言ってルイズをほっぽり出してトイレに駆け込む。

「オエエエエ」

吐いちゃった☆







[18630] <ゼロのひどい使い魔 9外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/07 21:29

外伝


とある日。

「笑いがとまらないねぇ」
「おう、ミス・ロングビルどうした?」

学園のテラスでフーケと俺がかち合う。

「いやね。あんたのいった清掃事業の売上がすごいことになってね」
「ほう、仕事が早いね」
「まあね」

例の清掃事業だが俺はフーケに一任している。
俺の分の取り分は一番安くしてもらっている。
なぜなら金を持っても買いたいものがないからだ。

「で? どんなもん?」
「このまま行けば年間千エキューは固いね」
「へぇ」
「へぇってすごいことなんだよ?」

しらんがな。
平民の一般的な収入の五倍くらいはあるのはわかるが元から千エキューは行くと思っていた。

「がめついことするなよ~。滑ったら困るのは君だよ?」
「わかってるわよ。しかし、笑いが止まらないねぇ。ヴァリエールの後ろ盾もあるがあんたの考えた事業自体が有能すぎだ。貧乏貴族も平民も喜んでるよ」

そりゃ誰も損しない事業だからな。
街は綺麗になって衛生面でも安心できるし、雇用も安定する。
今までがどうかしてたと思うぜ。

「こんな簡単に設けられるなら盗賊なんてやるんじゃなかったよ」
「はは、そりゃよかった。清掃事業が安定したら次もあるからよろしく~」
「はいボス」

フーケには俺のことをボスと呼ばせている。
フーケからは生い立ちと仕送りしていることを教えてもらった。
ティファニアのことは隠していたが。
まだ信用に値しないのだろう。

「そういや、仕送りしてる孤児院のことだが、警備とかなしでいいのか?」

一度フーケの仕送りしている孤児院を大きくしてまとめて管理しようと案をだしたが、断られた。
ま、ハーフエルフいる時点で色んな意味でこれ以上の干渉は無理なわけだが。

「必要ないって言ってるだろ? あまり人目につかせたくないんだよ」

過保護にもほどがある。しかし、エルフを囲っている以上異端扱いを受ける可能性が高い。

「まー、詳しくは聞かないけど、何? カワイイ子でもいるの?」
「妹だよ。大切なね」

うん、美しい。結婚してくれ。



場所は移り変わり図書館へ。

「始める」
「了解」

タバサに文字を教えてもらっている。
なるほど、自動翻訳とはよくいったものだ。
文字を教えてもらって一時間。

「どういうこと?」
 いつもと変わらぬ抑揚で、タバサが言った。
「え?」

 タバサは、一文を指差した。

「ここには、〝皿の上のミルクをこぼしてしまった〟と書いてある。しかしあなたは、〝取り返しのつかないことをしてしまった〟って読んだ」

「そう読めたんだからしかたない」

 タバサは首を振る。

「ううん。あなたは間違えていない。この〝皿の上のミルクをこぼしてしまった〟という文章は慣用表現。その意味は確かに、〝取り返しのつかないことをしてしまった〟になる」
 
 タバサは言葉を続けた。

「あなたはさっきから、書いてあることと微妙に違う文章を読んでいる。でも、間違っていない。むしろよく要約されて、文脈からするとより的確な表現になっている。まるで文章全体を、言葉のように捉えているみたい。確かに、犬やネコを使い魔にすると、人の言葉をしゃべったりできるようになる。でも、それだけでは、要約が可能な理由の説明にはならない。今みたいな朗読はありえない」

「なんつうか、頭の中で言葉を理解して言葉にすると気にまた言葉用に文字を変換してるって感じがさっきからしてる」

例えばと思いついて指を指す。

「これタバサはなんて読む?」

俺の目にはスケベと書いてある。

「エッチ」
「俺にはスケベと読める」
「そう意味で言ってない」

どうゆうことだろうか?

「ここにはなんて書いてあるんだ?」

タバサの頬が赤くなっている。

「そ、それは、男性器のことが書いてある」

頬を赤らめながらタバサが答えた。

「なるほど」

チキショウかわいいな、チューしたい。

「んじゃこれは?」

俺には男女のキス模様が書かれているように読める。

「男はキスを求めている。女はそれに答え舌を使い濃厚なキスをしたと書いてある」

やっぱりおかしな翻訳になっている。
ふと思いついたことがある。
俺はペンを借りて紙に文字を書く。

「これなんて書いてあるかわかるか?」

タバサに文章を見せる。
するといつもより神妙な顔になった。

「ここに書いてあることは事実?」
「事実ってゆーかそのまんまの意味だけど? 読めるのか?」
「読める。ここにはタバサは俺の嫁と書いてある」

おい!頭の自動翻訳!
俺はタバサは俺のお気に入りと書いたはずだ。

「うむ、本当は俺はタバサは俺のお気に入りと書いたはずなんだけど?」

タバサの顔がどんどん赤くなっていく。

「そう」

そういって顔を伏せた。

「私もあなたのことを気に入っている」
「え? なんか言った?」

タバサのボソリと言った言葉は聞こえなかった。
なぜなら次はどんな卑猥な言葉を言わそうか考えていたからだ。

「なんでもない」
「そうか、文字については齟齬が発生するものの大体伝わるからこんなもんでいいよ」

 タバサは首を振った。

「最後まで付き合う」
「え?」
「難しい単語も存在する。ルーン文字だってある。一人じゃまだ無理」
「そうゆうことならまた今度頼む。この後はマルトーさんとこで俺の故郷の料理教えるんだ」
「わかった」

そう言ってお別れしようとしたら見事についてきて俺の作った料理を完食していった。

タバサ、お母さん助けたらキスしてやんぜ。





―――――――――――――――

思いつきで書いた。今は反省している。

―――――――――――――――






[18630] <ゼロのひどい使い魔 10>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:25



 「んもっふ」

 フーケのことも一段落してこれからが本当の地獄だ!?
アルビオンに隠密任務、七万相手に戦争、タバサの母親救出、やること多いぜ。
ワルドの野郎をどうすっかな?
今のままでも十分戦えるが殺すとなると話は変わる。
風のメイジが本気で逃げるとなると殺害はめんどい。
左手一本で勘弁してやろう。

ウェールズかぁ、イケメンはシネ!
と言いたいが、姫様誘拐フラグがなぁ。
生きてても死んでても迷惑な野郎だ。

「ちょっとなにしてんのよ?」
「考え事」
「な・ん・で、考え事を私のベッドの上で寝転がりながらしてるのかしら?」
「それはね、お前を食べるためだよ!!」

狼の振りをしたが、見事にクロスカウンターを食らった。

「月がふつくしい」

俺は床でふて寝した。


「あ、巻き毛ロール」
「誰が巻き毛ロールよ! モンモランシーだって言ってるでしょ?」
「ツレないね。その可愛らしい顔が台無しだよ?」
「台無しにしてるのはあなたでしょーが!」
「HAHAHA、さすがだ」

モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。
ギーシュの想い人だ。
脇役だが結構重要な存在だ。水の精霊とか惚れ薬的な意味で。

「く、あんたに借りさえなければっ!」

モンモランシーの言うとおり、彼女は清掃事業に組み込まれている。
水系統のメイジ確保として手頃なのを選んだつもりが意外にも働き者で実家のために頑張っている健気な娘だ。
平民をバカにしないという条件にも適応していた。
俺の影響だろうか、普通に平民と接していると報告がきている。

「んで、次の事業は順調かね?」
「え? ええ、平民向けの石鹸と香水ならある程度目処は立ってるわよ?」

そう次の事業は平民向けの商品だった。
モンモランシーの二つ名「香水」から思いつたのだが意外にも好評を得た。
数人の水系統のメイジを集めてもらって分担作業にして負担を減らしさらに生産レベルをあげる。
日本では割と普通の生産技術だったが、こちらでは物珍しかった。
そもそもメイジって個人プレイ多すぎ。非効率にも程があるぜ。

「キリキリ働きたまえ、そして俺を楽させろ」
「ぐっ、反論できないのが悔しい。本当に悔しいけどあんたの考えはすごい効率的だわ」
「ハッハッハ褒めるなよ? そして隠れスレンダー美人の異名を自分で暴露するな」
「な、なんで知ってるのよ? それに言い始めたのあんたでしょ? まったく、そうゆうとこがなきゃ……」

いい男なのにと言いかけてモンモランシーはやめた。

「ん? 次はギーシュを組み込むから気にすんな! そして卒業したら家に来いよな!」

ヴァリエール印の事業開発会社の勧誘も忘れない。
会社というか巨大な研究所みたいなものを既にルイズ領土に建設している。
もちろん、ルイズを騙してルイズの親を使って作らせたものだ。
ま、儲けは出してるし誰の迷惑にもなっていないので今のところ問題ないだろう。
代表取締役はルイズになってるし。

「はいはい、ってもう次の事業考えてるの? それにギーシュ? もしかして今度は土系統のメイジ捕まえる気?」
「イグザクトリー」
「なんて手の早い。そのうちトリステインを乗っとるき?」
「恐れ多いことを仰る。俺っちは既に四系統全ての事業を思いついているんだ!!」

そう言って右手を自分の胸の中心にして叫ぶ。

「なんだってー!!」

モンモランシーが叫ぶ。
これが俺の事業に参加するためのルールなのだ。
べ、別にネタを使いたかったから決めたわけじゃないんだからねっ!

「ふっ、よろしい。じゃ、またな~」
「ええ、またね」

そう言ってモンモランシーと別れた。


SIDE:モンモランシー


急な話だった。

「君が必要だ。だまって俺についてこい」

確かこんな風に勧誘された。

既に彼は学院中の噂になっている。

曰く、ギーシュに圧勝した平民
曰く、フーケから破壊の杖を取り戻したメイジ殺し
曰く、フーケは既に彼によって殺された
曰く、賢者である。
曰く、変態である。

破壊の杖を取り戻したまでは事実だと分かっている。
残りは噂に尾びれが着いたものだろうとされているが、彼の行動を見る限り、真実ではないかと言われている。

そんな彼がいきなり私の部屋を訪れ勧誘というなの拉致をしたのだ。

「というわけで、あなたには私の事業を手伝っていただく」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんで平民なんかの手伝いをしなきゃいけないのよ?」

私は貴族よ。そう思っていた時期もありました。

「君ぃ、知ってるんだよ? 実家、厳しいんでしょ?」

悪魔の囁きに耳を傾けてしまった。確かに私の実家の家計は厳しい。
そして彼の言う事業は成功すれば彼の言うとおりの報酬が得られるだろう。
それほどに理論的で現実的な事業だった。

「私どうすればいいの?」
「笑えばいいと思うよ」

意味が分からないことをよく彼は言う。
いや、聞いた時には分からないが後々になってその言っていた事の重大性に気付かされるのだ。

「ん~? どうしたのかね? モンモランシーくん? 断ってくれてもいいんだよ? そしたら別の水系統のメイジを宛にするから」

彼に勧誘された時点で逃げ道の無い袋小路に閉じ込められたも同じだ。

「わかったわよ。やればいいんでしょ?」
「もう少し素直になりたまえ君はスレンダー美人なんだから」

そう言われて悪い気がしない。

「ま、それに気づいている男は今のところ俺だけなんだがね。実は自分の体には自信のあるモンモランシーさんでした」

これさえなければ!

「んじゃ、前金の二百エキューね。無駄遣いすんなよ?」

不思議に思う彼が現れてからまだ一ヶ月も立っていないのになぜ彼はこんなにもお金持ちなのだろう?

「どっから調達してきたお金よ? まさか悪いことしてんじゃないでしょうね?」
「ははは、そこは男の子の秘密ってことで」


ほんとなんでこんな奴の話に乗ってしまったんだろう。



SIDE:サイト・ヒラガ



 風の魔法最強説の男だ。

「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」

 教室中が、しーんとした雰囲気に包まれた。その様子を満足げに見つめ、ギトーは言葉を続けた。

「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」
 
 何が現実的な答えだ。戦いなんて時々によって状況が変わるだろ。恒久的に最強が風系統なら軍隊は全部風のメイジで埋め尽くされてるっーの。

原作でキュルケが吹き飛ばされるのを知っているので黙ってキュルケが吹き飛ばされる位置に移動した。

ギトーの方を見ると炎の玉をかき消していた。そしてそのままキュルケは俺の方に飛ばされてきた。

「おっと」
「きゃ」

さり気なく乳を揉む。身長あるのに軽いな。

「あ、サイト。ありがと」
「どういたしまして」

ギトーは俺たちのことは気にせず言い放つ。

「諸君、『風』が最強たる所以を教えよう。簡単だ。『風』はすべてを薙ぎ払う。『火』も、『水』も、『土』も、『風』の前では立つことすらできない。残念ながら試したことはないが、『虚無』さえ吹き飛ばすだろう。それが「風』だ」

「んじゃ、ルイズの爆発は?」

俺が言った言葉で教室は静まってしまった。
アレ? 外したか?

「ミス・ヴァリエール、試してみなさい」
「え? でも」
「何時までもゼロと呼ばれていたくないだろう?」
「やります!」

そう言ってルイズは杖を振る。
ギトーは風を使わなかった。
なぜならルイズの杖からは魔法が放たれたように見えなかったからだ。

ボンという音を立ててギトーの手前で爆発がおきた。

「サイト、これがあなたが前に言ってたこと?」
「ん~、まあ理想は違うけど大体はあってるね」

ルイズが加減したのかギトーは服がぼろぼろになったのと髪の毛が見事にド●フのコントみたいにアフロヘアーになった程度ですんでいた。
ギトーが立ち尽くしていると、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のコルベールが現れた。
 いや、この学院はコントしたいんか?
明らかにズラとわかる金髪のカツラをつけてる。
貴族の美的感覚が本気でわからない。

「ミスタギトー?」
「は、私は何を?」

立ったまま気絶してたのか? 意外と根性あるな。

「あややや、ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」
「授業中です」
「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」

生徒たちが喜んでいた。気持ちはわかるが自重しような? な?

「えーおほん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります」

 コルベールは横を向くと、後ろ手に手を組んだ。

「恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」

 教室がざわめいた。

「したがって、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて、歓迎式典の準備を行います。そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること」






国の代表が来るのはいいが、そのせいで授業中止にしてたら将来困るのは自分ですよ? 姫様?






[18630] <ゼロのひどい使い魔 11前>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:26


 姫様の登場ということはアルビオン行きですか。
そうだ。アルビオンに行こう。みたいな軽いノリでルイズは命令受けちゃうからな。
なんとかアルビオンに行かないで問題解決できねーかな?
というか自分の尻拭いぐらい自分でしろよな姫様よー。

アルビオンにいっても美人フラグ立たないしやる気起きない。
ウェールズが死んで後々、姫様フラグに繋がるのはいいが、最終的に七万と戦わないと行けないし。

まあ生姫様は可愛かった。
ワルドはヒゲもじゃ。
マザリーニは骨。

トリステインを潰したいなら骨をボキりと折れば自滅するな。

図書館での知識、キュルケ、フーケ、先生達の話などを総括するとマジで原作どおりマザリーニがいるからこの国は持ってると言っても過言ではない。
日本でいうと首相と財務省大臣とほか複数の大臣を兼用してると考えれば彼が骨な理由がわかるだろう。

姫様はマジで飾りだ。政治のコマとして使うしかないっていうw
姫様とりこんで俺のやってる事業をルル●シュの虐殺姫がやったように経済特区化させようかな~。
いずれにしせよ姫様は使い道はある。
しょーがねーから影の薄いギーシュも使って手紙回収してやるか。

しかし、手紙の消滅なんて物理的に消滅させるんじゃなくて政治的にそんなものありませんと消滅させればいいんじゃね? ただしマザリーニの協力とか大人の協力が不可欠だけどな。
まー、原作に忠実に行きますか。

大人の野郎どもに目をつけられるのも嫌だしフラグ欲しいし。

「そして少しは落ち着けよ。ルイズ」

さっきからふらふらと部屋を歩き回るルイズに注意する。
ルイズはふらふら~とベッドに座り込む。
タイミングよくドアがノックされた。
ノックは規則正しく叩かれた。初めに長く二回、それから短く三回……。

俺は素早くドアを開けた。
そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった、少女だった。
なんとなくイラッとしたので少女の腕を引っ張り部屋に入れた。

「ヘイ、知ってるか? そういう格好してたら変態と間違えられても仕方ないんだぜ?」

頭巾をかぶった少女は、し─っと言わんばかりに口元に指を立てた。
それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から、魔法の杖を取り出すと軽く振った。
同時に短くルーンを呟く。光の粉が、部屋に舞う。

「……ディティクトマジック?」

 ルイズが尋ねた。頭巾の少女が頷く。

「やい、変態。いきなり魔法とは上等だ。男ならナニを切り落とす。女なら乳を揉む。だから顔を見せな」

ビクっと頭巾の少女が頷いて、少女は頭巾を取った。
 現れたのは、なんとアンリエッタ王女であった。

「ほう、女か。覚悟はいいな? 俺は出来ている」

そう言ってアンリエッタの乳を揉んだ。

ムニュムニュ。

やわらけー。メ(゚∀゚)メ

「ひ、ひ姫殿下になんてことしてんのよー。このバカ犬~」
「知らんね、俺は忠告した。こいつが無視した。それだけの話しだ。」

ガンダールヴの力を利用してルイズの攻撃を避ける。
暴力よくない。

アンリエッタはどうしていいのかわからずに、ぽけっと突っ立っていた。


SIDE:アンリエッタ


 こんな人はじめてだ。
有無を言わさずに自分の要求を通した。
ま、まあ、勝手に部屋に忍び込んだ私も悪いのですが、まさか本当に私のむ、胸を揉みしだくとは思いませんでした。

「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」

私は平静を装い懐かしの友人に挨拶をした。

「姫殿下!」
 
 ルイズが慌てて膝をつく。
一方胸を揉んだ彼はいつの間にか大剣を背負い手にはナイフを持っていた。
私は一瞬なんて失礼な人だろうと思った。

「なに? 最近の姫様は暗殺もするのか?」

どうやら彼は私をルイズの敵だと思っているようだった。

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」
「邪魔ですね」
「こ、このバカ犬なんてこというのよ?」

 初めてだった。借りにも姫の私を邪魔という人は。

「いいのです、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう? いやだわ。わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね」
「まったくですね、謝罪と賠償を請求する」
「はい? 恋人? あの生き物が?」

ルイズは彼の発言を無視したようです。私もそれに習った方がいいのかしら?

「姫さま! あれはただの使い魔です! 恋人だなんて冗談じゃないわ!」

 ルイズは思いきり首をぶんぶんと振って、私の言葉を否定した。

「使い魔?」

私は彼を見つめた。亜人かしら?

「人にしか見えませんが……」
「人です。姫さま」
「その目ん玉はお飾りですか? お飾りのお姫様?」

彼の発言にカチンときたがここはグッと堪える。
ルイズが物凄い目つきで彼を睨んでいるが彼はどこ吹く風といった感じで私から目を離さない。

「そうよね。はあ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
「好きであれを使い魔にしたわけじゃありません」
「好きで使い魔やってません。それに変わっているのは果たして誰でしょうね?」

 変わっているのは私だと言いたげに言葉を放ってくる。私が彼に何かしたのだろうか?

「ちょっと、サイト。いい加減にしなさいよ!」
「だが断る」
「なんでよ!」
「今の状況を王室の誰かに見られたら少なくともルイズが姫様を連れ出した現行犯にされるからだ」

 ああ、そうか、彼はルイズが心配なのだ。本当に使い魔なのね。

「すいません。私の勝手な行動が迷惑をかけてしまったようですね」
「そう思うなら誰にも見つからない内にさっさと帰ってください。本当に迷惑です」

 歯に衣着せぬ言葉だ。取り付く島もない。まるで私がルイズに頼みごとをさせないように退室を進めてくる。
ふとある話を思い出した。最近ヴァリエール家が大層な事業展開をしているだとか。
その事業は実は裏で『平民の賢者』『変態』など呼ばれている人物が糸を引いいているとか。

「もしかして、あなたが『平民の賢者』さん?」

そう聞かれた彼は露骨に嫌な顔をした。

「違います。じゃ、帰れ」
「あなたに聞いて欲しいことがあります」
「聞きたくありません。帰ってください」

 やっぱり、彼は私の何かをつかんでいる?
でも手紙の事は誰にも知られていないはず。
だとしたらなぜ彼は私を返そうとするの?

「賢者様あなたは私の何を恐れているの?」

 素直に聞くことにしよう。

「人の言い分を聞かないあなたの頭と耳が恐ろしいですね」

な、なんて無礼な。

「サイト! さっきから姫様になんてこといってるのよ! 姫様、こいつのことなんて無視してください」
「そう、ルイズ、私結婚するの」


SIDE:サイト・ヒラガ



 なんつー女だ。これだからメルヘン女は嫌いだ。
 頭に虫でもわいてるんだな。精一杯原作に抵抗してみたが無理なのね。

「今から話すことは、誰にも話してはいけません」
「なら話すな。俺は言いふらすからな」

 こうなりゃヤケだ。最後まで抵抗してやる。

「黙ってなさい。このバカ犬」
「なら俺は席を外す。俺は話を聞いたら言いふらすからな!」
「いえ、メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由がありません」

バッカじゃねぇの? 俺は言いふらすって言ってるだろ。

「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」
「ゲルマニアですって!」
「おめでとさん、いい加減帰れ」
「あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
「そうよ。でも、しかたがないの。同盟を結ぶためなのですから」

 無視かよ。まだまだぁ。

「ハッ、トリステインは弱小国だもんな。優秀な平民、貴族は全部ゲルマニアに流れてるって話だ。もういっそゲルマニアに支配されればいいだろ?」
「ちょっとなんてこと言うの?」
「いいのです。ルイズ。彼の言うとおりなのですから」

 覚悟を決めた女はつえーぜ。
 俺の発言にフォローを入れるようにアンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢を、ルイズに説明した。
俺がダシに使われてるだと、悔しいでもっ、ビクンビクン。

「そうだったんですか……」

 ルイズは沈んだ声で言った。

「いいのよ。ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めていますわ」

 ならウェールズを好きになるなっつーの。

「姫さま……」
「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。二本の矢も、束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね」

 アンリエッタは、呟いた。

「………したがって、わたくしの婚姻をさまたげるための材料を、血眼になって探しています」
「もし、そのようなものが見つかったら……」
「婚姻は破棄されてトリステインを攻め入る口実を作るってところだね。こんな原因作る奴は死ねばいいと思う」

ウッとアンリエッタ反応する。
(;^ω^)
そんな顔しても知りません。

「で、もしかして、姫さまの婚姻をさまたげるような材料が?」

ルイズが空気を読まずにアンリエッタに聞いた。
アンリエッタは諦めたように告げる。

「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」
「手紙?」
「そうです。それがアルビオンの貴族たちの手に渡ったら……、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」
「どんな内容の手紙なんですか?」
「……それは言えません。でも、それを読んだら、ゲルマニアの皇室は……、このわたくしを赦さないでしょう。ああ、婚姻はつぶれ、トリステインとの同盟は反故。となると、トリステインは一国にてあの強力なアルビオンに立ち向かわねばならないでしょうね」

 お前のせいでな。女で良かったな。男だったらここでナニを切り落としてたぜ。

「いったい、その手紙はどこにあるのですか? トリステインに危機をもたらす、その手紙とやらは!」

 アンリエッタは、首を振った。

「それが、手元にはないのです。実は、アルビオンにあるのです」

もうウェールズのところにあるって言っちゃいなよ。

「アルビオンですって! では! すでに敵の手中に?」
「いえ……、その手紙を持っているのは、アルビオンの反乱勢ではありません。反乱勢と骨肉の争いを繰り広げている、王家のウェールズ皇太子が……」

俺は二人の前を素通りして窓を開ける。
二人は俺の行動を目で追う。
すぅと大きく息を吸い込み。

「アンリエッタ姫はウェールズ皇太子にラブレター送ってるぞぉおおお」

と叫んでやった。
もう一度息を吸い込み。

「トリステインはもう終わり、もがもが」

口はアンリエッタに抑えられ体はルイズが抑えていた。



SIDE:アンリエッタ


 この殿方は頭がどうにかなってるのではないのか?
 確かに同席を認めたのは私です。言いふらすとも彼は言っていましたが、まさか話の途中に窓から叫ぶなどとは思いもしませんでした。

「なんてことをするのです?」

 彼の口を抑えながら訴えかける。

「HA☆NA☆SE」

いつの間にか私の手を振りほどき離せといってのけました。
そんなことをしたらあなたはもっと大きな声で言いふらすのでしょう?

「乳揉むぞゴルァ!!」

その手はなんです? 既に私の胸に手が添えられてるではありませんか?
もう片方の手でルイズの胸にも手を添えて全く器用な人です。

「な、ど、どこ触ってんのよ変態!」
「ル、ルイズ、彼を離してはいけません。これが彼の策なのです。耐えるのです」

見事な策だと関心する。女性に対して暴力を使わずに拘束を逃れる術としては最適ではないでしょうか?

そのとき、ドアがばたーんと開いて、誰かが飛び込んできた。

「きさまーッ! 姫殿下にーッ! なにをしてるかーッ! う、羨ましいぞ!!!」
「なんだお前?」
「ギーシュ! あんた! 立ち聞きしてたの? 今の話を!」

ギーシュと呼ばれた青年は私たちにとっては救いの人でした。
彼の意識がギーシュにいったことで、彼の手は動きを止めました。

「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ……、それでドアの鍵穴からまるで盗賊のように様子をうかがえば……、平民のバカが……」
 
 ギーシュは薔薇の造花を振り回して叫けびました。

「決闘だ! バカチンがぁあああああ!」







[18630] <ゼロのひどい使い魔 11後>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:09


「決闘だ! バカチンがぁあああああ!」

 さて、乳の感触も楽しんだ。そろそろ話を聞いてやる振りをしてやるか。

「ギーシュュウウ。貴様には選択肢が二つある。
一つ、姫様の言う事聞く。
二つ、姫様の言う事を聞かないでここで死ぬ。
さあ、どっちを選ぶ?」

「な、なにを言ってるんだね?君は」
「重大な機密を知ってしまった以上貴様は我々の言う事に従わなければならない。
それがここにいる条件だぁ」

そう言ってギーシュを殴りつける。
もちろん殴った意味はない。

「そうね……、今の話を聞かれたのは、まずいわね……」

アンリエッタは空気を読んでくれた。

「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「え? あなたが?」
「どうすんの? 姫様?」
「ぼくも仲間に入れてくれ!」

 殴られた頬を抑えながら、ギーシュはわめいた。

「どうしてだよ?」

 ギーシュは、ぽっと顔を赤らめた。

「出番が、じゃなかった。姫殿下のお役に立ちたいのです……」
「姫様! こいつも連れて行ってやりてぇんですが構いませんかね?」

アンリエッタが俺を見つめる。
その後、ギーシュを見てつぶやく。

「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「親の名前を使うなぁ!」

もう一度殴ってやる。
もちろん意味はない。

「痛いな! いいじゃないか、きっと役に立つ。だから連れてってくれたまえ」
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」

 熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。

「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
「自分で撒いた不幸の種を他人に狩らせる姫様をお助けてやってください。ギーシュ」
「き、君ぃ、姫殿下になんて失礼な口の聞き方だ。僕が修正してやる!」
「いいのです。ギーシュさん。彼の言うとおりなのですから」
「だってよ。がんばれよギーシュ。君に期待している。いい報告が聞けるようにここで待ってる!!」
「あんたもいくのよ!」

ちっ、だめか。

「えー」
「えー、じゃない!」
「くす」

わー、笑ってやがりますよ。この姫様。

「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」

 そして、すっと左手を差し出した。はいはい、キスね。

「いけません! 姫さま! そんな、使い魔にお手を許すなんて!」
「いいのですよ。この方はわたくしのために働いてくださるのです、忠誠には、報いるところがなければなりません」

アンリエッタはにっこりと俺に笑ってみせた。
俺はにっこりとアンリエッタに嗤ってみせた。

ズキューン!!

強引にアンリエッタの唇を奪う。ついでに舌も入れる。

「むぐ……」

アンリエッタの体から力が抜け、俺の手をすり抜け、そのままベッドに崩れ落ちた。

「姫殿下になにしてんのよッ! いいいいい、犬────ッ!」
「うるせー、これから戦地に向かってやるんだ。このくらいしたっていいじゃない。人間だもの」
「ぼ、僕も同じことしていいのだろうか?」
「ダメに決まってんでしょー!」

ルイズはギーシュをグーで殴った。
俺は避けた。

「い、いいのです。忠誠には報いるところがなければなりませんから」

ふん、貴様の唇を奪ったのはウェールズでもない。この俺だぁ!

 ギーシュはダメージのせいか、後ろにのけぞって失神した。

「大丈夫かこいつ?」

ルイズはギーシュなど気にせず、真剣な声で言った。

「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」
「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」
「じゃあ危険なんで中止ってことで」

俺に対するスルースキルを覚えたアンリエッタは机に座ると、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためた。

「えー、何々? 愛しのウェールズ様へ」
「何読んでるんですか?」

アンリエッタが俺を睨む。

「ダメ?」
「ダメです」

そう言って俺が離れたらまた手紙を書き始めた。俺も手紙を書いた。

「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」

 それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜くと、ルイズに手渡した。

「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」
「んじゃ、これは契約の前金ね。ちゃんとした報酬はきっちりと貰うからよろしく」
「何いってんのよ! 報酬なんていらないわ! 姫様からの命を受けた名誉で満足よ!」
「んじゃルイズはそれで、俺は報酬がないならどんな方法を使っても一歩もこの部屋からでないぞ」
「何が望みです?」
「お、話がわかるね。俺は名誉だとか要らないから一括払いの金でいいよ?」
「おいくらですか? 私が払える額ならば今すぐ払いましょう」
「エキュー金貨で一億。新金貨なら二億ね」

ブフゥとルイズとギーシュが咳き込む。ギーシュはいつの間にか復活していた。

「ちょっと国家予算レベルじゃない!」
「そうだよ。君、何にそんなお金使うかしらないがボッタクリだぞ?」
「いーや、正当な報酬額だね。むしろ安い方だ」

アンリエッタは( ゚д゚)ポカーンとしている。

「手紙が回収できなかったら戦争になるんだろ? だったら国家予算レベルで金かかるじゃん? それも一億なんてはした金のレベルで」
「しかし、個人に支払うには大きすぎる金額ですわ」
「えー、じゃあ五千」
「二千でお願いしますわ」
「しょうがない、三千にまけよう」
「二千五百が限界です」
「まいどー、払えなかったらアンリエッタ姫の処女貰うんで」


三人は俺を悪魔を見るような目で見ていた。
照れるぜ☆




――――――――――

別にアンリエッタが嫌いなわけじゃない。
扱いが酷いのは仕様ってことで。


――――――――――





[18630] <ゼロのひどい使い魔 12>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:26



 「お願いがあるんだが……」
 「あんだよ」

 報酬金は分けないぞ? お前は名誉が大事なんだろ?

「ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」
「ああ~」

ギーシュが足で地面を叩いた。
すると、モコモコと地面が盛り上がり、茶色の大きな生き物が、顔を出した。

「でっけぇモグラだな」
「ヴェルダンデ! ああ! ぼくの可愛いヴェルダンデ!」

モグラと言っても大きさは小さいクマほどである。この世界の生態系どうにかなってるな。

「そうだ。ああ、ヴェルダンデ、きみはいつ見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」

らめぇえ、ミミズがいなくなっちゃうぅう。俺の考えを知るわけもなく、モグモグモグ、と嬉しそうに巨大モグラが鼻をひくつかせる。

「そうか! そりゃよかった!」

 ギーシュは巨大モグラに頬を擦り寄せている。

「もう、結婚しちゃいなよ」
「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」←スルーした
「そうだ。ヴェルダンデはなにせ、モグラだからな」
「そんなの連れていけないわよ。わたしたち、馬で行くのよ」

 ルイズは困ったように言った。

「わたしたち、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れていくなんて、ダメよ」

 ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をついた。

「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンデ……」

 そのとき、巨大モグラが鼻をひくつかせた。くんかくんか、とルイズに擦り寄る。

「な、なによこのモグラ」
「ルイズがいい匂い放ってるんじゃね?」
「ちょ、ちょっと!」

 巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体をまさぐり始めた。

「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」

 モグラと壮絶なマットプレイをしている様子を俺は主にルイズのパンツを覗くことで時間を潰した。
 指輪の匂いも嗅いてる。ちゃんとその匂い覚えてくれよ。
 ルイズが暴れていると、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばした。
 ロリコンヒゲもじゃの登場である。

「誰だッ!」

 ギーシュが激昂してわめいた。
 羽帽子ってダセーよな。確か26だろこいつ。

「貴様、ぼくのヴェルダンデになにをするんだ!」

 ギーシュはすっと薔薇の造花を掲げた。
 一瞬早く、羽帽子の貴族が杖を引き抜き、薔薇の造花を吹き飛ばす。

「ギーシュ、負けてばっかりだな」
「僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」

 あの頭の弱い姫様め、なら初めからルイズに頼むなよ。
 ん? 原作じゃ頼んでたシーンあったっけ?
 ああ、嘘か。ギーシュに見つかる程間抜けな姫様から情報漏れたんだろ。


SIDE:ワルド


「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」

 こう言えばたかが学生では口出しできまい。
 昨晩いなくなった姫様を探していたら……

『アンリエッタ姫はウェールズ皇太子にラブレター送ってるぞぉおおお』

 思いもよらぬ情報を聞きつけた。我らがレコンキスタにとって喉から手が出るほど欲しい情報だった。
 風のスクウェアメイジである僕が聞き逃すはずがない。
叫んだものは密に処刑されただろう。その者がどこから情報を入手したかわからないが今となってはどうでもいいことだ。

「すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」
「ワルドさま……」

 立ち上がったルイズが、震える声で言った。

「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」

そう、今はこの愛らしいルイズとの再開に感謝しよう。

「お久しぶりでございます」

 ルイズは頬を染めて、僕に抱きかかえられている。

「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
「彼らを、紹介してくれたまえ」

 モグラの主である少年はグリフォン隊隊長の僕に憧れの目を向けているのはわかる。

( ゚ ρ ゚ )ボー

おそらく平民の彼からはなんの感情も読み取れない。

「あ、あの……、ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のサイトです」
 
ギーシュと指さされた少年は深々と頭を下げた。
使い魔と指さされた少年は相変わらず感情の読み取れない表情で僕を見ていた。

「きみがルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな」

 僕は気さくな感じを装ってサイトに近寄った。

「ぼくの婚約者がお世話になっているよ」
「そう思うならさっさと引きとってもらえませんかね? こっちはただ働きさせられてるんで」

まるで汚物を見るかのような目で僕を見ている。この平民は無礼だ。

「どうした? もしかして、アルビオンに行くのが怖いのかい? なあに! 何も怖いことなんかあるもんか。君はあの『土くれ』のフーケから盗品を奪い返したんだろう? その勇気があれば、なんだってできるさ!」

嫌味のつもりでいってやった。

「勇気と無謀は全くの別物ですよ。んで、これからの行動は無謀ってやつですよ? 隊長殿」

ムッとした。だが、こんなところで時間を食っている暇はない。昨晩の叫び声を聞いて僕のように頭の回るやつならそのうちここにたどり着いてしまう。
僕は使い魔を呼ぶために口笛を吹いた。



SIDE:ギーシュ



 (((( ;゚д゚))))アワワワワ

「君、グリフォン隊隊長によくあんな無礼な口を聞いて生き延びれたね」

僕は正直殺されると思った。貴族それも、王国勤務の部隊長相手にアレだけの口をきける平民なんていない。

「ぇあ? 少なくともここで殺すメリットねーだろ? それにルイズの使い魔だ。殺したらルイズになんて言われるかわかんねーだろ?」

馬で移動しながら話していたため僕は思わず馬から落ちそうになってしまう。
そこまで考えていたって相手がどう動くなんてわかるはずないじゃないか?!

「確かに君の言う事にも一理あるが、この先、というかこれからはもう少し抑えてくれたまえ」

とばっちりを食うのは僕らだ。

「えー」
「えー、じゃないよ」

まったくルイズはよくこいつの相手をしてるな。

「しかし、いいのかい?」
「何が?」

ワルド達はずいぶんと先に飛んでいっている。

「アルビオンの行き方はギーシュが知ってるんだろ? 頼りにしてるぜ」

頼りにされるのは嬉しいが。

「そういうことじゃないよ。僕が言いたいのはルイズのことだ」
「ん? ああ、ワルドね。別にどうとも思わん。ロリコンだし」
「はは、ひどいな。まるでルイズが婚約破棄するって思ってるんじゃないのかい?」

 思いついたことをサイトに告げてみる。

「イグザクトリー」

 短くそう答えた。自信に満ちた答えは男の僕でもカッコよく思える。

「ごめ、トイレ」

馬を乗り換えるタイミングでトイレに行ってしまった。これさえなければ彼はモテるんじゃないのか?



SIDE:アンリエッタ


 出発する一行を学院長室の窓から見つめていた。
 目を閉じて、手を組んで祈る。

「彼女たちに、加護をお与えください。始祖ブリミルよ……」

 隣では、オスマン氏が鼻毛を抜いている。
 私は、振り向くと、オスマン氏に向き直った。

「見送らないのですか? オールド・オスマン」
「ほほ、姫、見てのとおり、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますのでな」

 アンリエッタは首を振った。

「トリステインの未来がかかっているのですよ。なぜ、そのような余裕の態度を……」
「すでに杖は振られたのですぞ、我々にできることは、待つことだけ。違いますかな?」
「そうですが……」
「なあに、彼ならば、道中どんな困難があろうとも、やってくれますでな」
「彼とは? あのギーシュが? それとも、ワルド子爵が?」

 オスマン氏は首を振った。まさかと思うが私と同じ人物が頭を支配しているのでは?

「ならば、あのルイズの使い魔の少年が? まさか! 彼は平民ではありませんか!」

 無礼な平民なのは確かである。

「姫は始祖ブリミルの伝説をご存知かな?」
「通り一遍のことなら知っていますが……」

 オスマン氏はにっこりと笑った。

「では『ガンダールヴ』のくだりはご存知か?」
「始祖ブリミルが用いた、最強の使い魔のこと? まさか彼が?」

 彼の詳しい力は知らない。だが、報酬をふっかけてくるのだからそれなりに自信はあるのだろう。

「えーおほん、とにかく彼は『ガンダールヴ』並みに使えると、そういうことですな。ただ、彼は異世界から来た少年なのです」
「異世界?」
「そうですじゃ。ハルケギニアではない、どこか。『ここ』ではない、どこか。そこからやってきた彼ならばやってくれると、この老いぼれは信じておりますでな。余裕の態度もその所為なのですじゃ」
「そのような世界があるのですか……」

 私は、遠くを見るような目になった。その少年の唇の感触と体を触られた感触が、自分のそれに残っている。
私は、唇を指でなぞって目をつむると微笑んだ。

「ならば祈りましょう。異世界から吹く風に」









――――――――――

ワルドファンのかたすいません。
これからワルドの扱いが酷くなります。

―――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 13前>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:11


SIDE:フーケ


 もう二度と敵に回したくない。
サイトの顔を思い浮かべ、アタシはそう思う。

彼の発案する仕事はあまりに魅力的だった。絶対に成功する。と確信できるくらいに計画も完璧だった。
実際うまく行って儲けも出ている。
学院での生活も変わってしまった。
ミス・ヴァリエールは最近アタシを見つける度に孤児院を助けている聖女だと周りの生徒に言いふらしている。
彼の入れ知恵らしい。

ジジイのセクハラにはいつでも退職できると脅しているのでめっきりと減った。
彼曰くアタシが魅力的過ぎるのが行けないだとか。
うれしいこと言ってくれるじゃないの。

学院に戻ってからすぐに彼はアタシの元にきた。

「盗賊業すぐやめると金に困るだろ? 前金として五百エキュー渡しとくわ」

金貨の入った袋を渡してきた。

「アタシが言うのもなんだけど、学院長はかわいそうだねぇ」

彼の金銭感覚もおかしい。中堅商人の年収をぽんと渡してくる。

「あと頼みごとがある。そのお金には俺の頼みごとの依頼料も支払われています。ちなみに拒否権はない」

やっぱり。

「頼みごとってのは?」
「適当な貴族の宝盗んで頂戴」

盗賊業をヤメロといったのはあんただろ?

「そしたらたぶん怪しい奴らがあなたを勧誘してくると思うのでその話に乗って頂戴。んで、命が危なくなったら適当に逃げてね。あと、死体偽装してね。そうすれば世間的に土くれのフーケは死んでくれます」

ドキリとした。なんだかんだでアタシのことを考えてくれていた。

「怪しい奴らって誰だい?」
「禁則事項です☆」

ムッとする。だが、彼の言う事は正しい。
フーケは死んだということにすればアタシは自由だ。


そして話は冒頭に戻る。
彼の言う怪しい奴らはレコンキスタ。
本当に彼は何者?
レコンキスタに従う振りをして彼に敵対する行動をとることになるが、それすらも予定に組み込まれているのだろう。
ホント、彼を二度と敵に回したくないね。


SIDE:ルイズ


 魔法学院を出発して以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしであった。
サイトたちは途中の駅で二回、馬を交換したが、ワルドのグリフォンは疲れを見せずに走り続ける。乗り手のようにタフな、幻獣であった。

「ちょっと、ペースが速くない?」

ギーシュとサイトの姿は遠くに見えている。

「ギーシュもサイトも、きっとへばってるわ」

 ワルドは後ろを向いた。ギーシュとサイトは何かを話しているらしい。

「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんだが……」
「無理よ。普通は馬で二日かかる距離なのよ」
「へばったら、置いていけばいい」
「そういうわけにはいかないわ」
「どうして?」

 ルイズは、困ったように言った。絶対にサイトは何かを言ってくる。

「だって、仲間じゃない。それに……、使い魔を置いていくなんて、メイジのすることじゃないわ」
「やけにあの二人の肩を持つね。どちらかがきみの恋人かい?」

 ワルドは笑いながら言った。

「こ、恋人なんかじゃないわ」

 私はサイトの顔を思い出していた。黙っていれば結構いい男なのだ。

「そうか。ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」

 そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。

「お、親が決めたことじゃない」
「おや? ルイズ! 僕の小さなルイズ! きみは僕のことが嫌いになったのかい?」

 サイトの言葉を思い出す。

『選択肢に困ったらそれ以外の答えをくれてやれ、そしたらうまくはぐらかせることができる』

 今の選択肢は? 好きか嫌いか。
 ワルド様には悪いけど好きではない。もちろん嫌いでもないが。
 つまり答えは。

「どちらでもないわ」
「どうゆうことだい?」

 再びサイトのことを思い出す。

『困った時の最終手段は未来人が教えてくれた。たった一言、禁則事項です』

 サイトの話は荒唐無稽なものが多いが退屈しないので夜寝るまでの間に子守唄代わりに話してもらっていたのである。

「禁則事項です☆」

そう言って人差し指を口につけて言う。これがこのセリフの正しいポーズだとか。
ワルド様は驚いたような顔をしたあと、赤らめて何も言わなくなってしまった。

すごい効き目ね。



SIDE:サイト・ヒラガ



 月夜に浮かぶ、険しい岩山の中を縫うようにして進むと、峡谷に挟まれるようにして街が見えた。
 街道沿いに、岩をうがって造られた建物が並んでいる。

そろそろ襲われる時間かなぁ。

「おい、ギーシュ。股が蒸れてエラいことになりそうだ。休憩するぞ」
「そうだね。街も見えたし少し休もう」

二人して馬から降りる。
すると、崖の上から松明が何本も投げ込まれた。
馬は驚いて前足を高々とあげていた。

「危なかった。馬に乗っていたら落馬していたところだよ」
「ギーシュ、ワルキューレ出せ。奇襲だ」

俺はデルフリンガーを構えている。それを見たギーシュも急いでワルキューレを出した。
無数の矢が、俺とギーシュめがけて殺到した。
ワルキューレを盾替わりにして待機。

 一陣の風が舞い起こり、才人たちの前の空気がゆがみ、小型の竜巻が現れた。
竜巻は飛んでいる矢を巻き込むと、あさっての方に弾き飛ばした。
 グリフォンに跨ったワルドが、杖を掲げている。

「大丈夫か!」
「大丈夫じゃねーぞ。危うく死ぬとこだっただろ、どうしてくれる?」
「何言ってるんだい君は? 僕のワルキューレを盾替わりに使っていたじゃないか」
「相棒、寂しかったぜ……」

すまんデルフ、君の出番はもう少し後だ。

「夜盗か山賊の類か?」

 ワルドが呟いた。自作自演だろ。乙。
 ルイズが、はっとした声で言った。

「もしかしたら、アルビオンの貴族の仕業かも……」
「貴族なら、弓は使わんだろう」

 そのとき……、ばっさばっさと、羽音が聞こえた。
 タバサの登場だ。

「おや、『風』の呪文じゃないか」

 ワルドが呟いた。俺には何も聞こえなかった。そういや、風のメイジって耳がいいんだっけ。
 月をバックに、見慣れた幻獣が姿を見せた。ルイズが驚いた声をあげた。

「シルフィード!」

 確かにそれはタバサの風竜であった。地面に降りてくると、赤い髪の少女が風竜からぴょんと飛び降りて、髪をかきあげた。

「赤のレース付きか」
「お待たせ」

 ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。

「お待たせじゃないわよッ! 何しにきたのよ!」
「パンツ見せびらかしにきたんじゃね?」
「助けにきてあげたんじゃないの。朝がた、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こして後をつけたのよ」

 タバサ、こいつと絶交したほうがいいぞ。パジャマ姿が萌えくるわしい。

「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」
「お忍び? だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。とにかく、感謝しなさいよね。あなたたちを襲った連中を、捕まえたんだから」

 キュルケは倒れた男たちを指差した。怪我をして動けない男たちは口々に罵声をルイズたちに浴びせかけている。ギーシュと俺が近づいて、尋問を始めた。

「ギーシュ、まずは首から下を埋めちまえ」
「わかった」

動けない男たちはあっさり地上に生える生首となった。

「ひっ、助けて」
「だが断る」

男たちの顔は蒼白だ。
尋問するとあっさりと雇われたと言った。フーケやるじゃん。

「ギーシュ、ワルドにはただの物取りだと言ってこい」
「は? 雇われたということは彼らは明らかに工作員じゃないか!」
「黙りなさい」
「ひっ」

ギーシュにはワルドがどうも怪しい、おそらく奴はなにか企んでると言った。

「そんな、彼は隊長だよ?」
「裏切り者は役職が高いほど効果的だぜ?」

ギーシュはグラモン家の出身である。軍事に関しては多少心得はあるようで。

「た、確かに、お父様や兄様たちからも似たことを聞いた覚えがある」

さすが、元帥の息子。

「君の言うとおりにしてみるよ」

そう言ってギーシュはワルドに報告をした。

「子爵、あいつらはただの物取りだ、と言ってます」
「ふむ……、なら捨て置こう」

 ひらりとグリフォンに跨ると、ワルドは颯爽とルイズを抱きかかえた。

「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」

 ワルドは一行にそう告げた。


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13は分割してお送りします。
ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ


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[18630] <ゼロのひどい使い魔 13中1>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:27



 ラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした俺たちは、一階の酒場で、くつろいでいた。
 『女神の杵』亭は、貴族を相手にするだけあって、豪華なつくりである。テーブルは、床と同じ一枚岩からの削り出しで、ピカピカに磨き上げられていた。顔が映るぐらいである。
 そこに、『桟橋』へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。
 ワルドは席につくと、困ったように言った。

「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに……」
「おいおい、隊長は無能か~? てめぇが急いだせいだろ? なんとかしてこい」

全員が引き攣った顔をしていた。
そんな中、キュルケがなんとかしようとしたのだろう。

「あたしはアルビオンに行ったことないからわかんないけど、どうして明日は船が出ないの?」

 キュルケの助け舟に、ワルドが答えた。

「明日の夜は月が重なるだろう? 『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」

ワルドはこれ以上俺に発言させないように続けた。

「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った」

 ワルドは鍵束を机の上に置いた。

「キュルケとタバサは相部屋だ。そして、ギーシュとサイトが相部屋」
「もちろん俺が一番いい部屋なんだろうな? 隊長は男らしくこの失態の戒めとして一人で安い部屋に泊まるんでしょ?」

ルイズと二人きりフラグを折ってやる。

「そ、そうだね」

 ルイズはぎょっとして、ワルドの方を向いた。

「ルイズには悪いがルイズは一人部屋だ。僕は彼の言うとおり安い部屋で一人寂しく寝ることにするよ」

トボトボと歩いていくワルドを全員が見送った。

「サイト、容赦ないわね」

キュルケがそう言うと全員部屋に歩いっていった。



SIDE:ワルド


 クソッなんて奴だ。確かに僕の失態だった。ついルイズにいい格好を見せようとしたのが裏目に出た。
平民の彼の言葉など無視してもいいが、曲がりなりにもこの中では一番の大人で隊長だ。
ああ言われたら従うしかないじゃないか!

 貴族相手の宿、『女神の杵亭』で一番上等な部屋だけあって、ルイズの部屋は、かなり立派なつくりだ。忌々しいことに隣は彼とギーシュの部屋なのだ。

 先程の別れ際ルイズに後で大切な話があるといっておいてよかった。忍び込むような真似をしたら彼に何をいわれるかわからない。

 テーブルに座ると、僕はワインの栓を抜いて、杯についだ。それを飲み干す。

「きみも腰掛けて、一杯やらないか? ルイズ」

 ルイズは言われたままに、テーブルについた。僕がルイズの杯に、ワインを満たしていく。自分の杯にもついで、僕はそれを掲げた。

「二人に」

 ルイズはちょっと俯いて、杯をあわせた。かちん、と陶器のグラスが触れ合った。

「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」

 ルイズはポケットの上から、アンリエッタから預かった封筒を押さえた。
なるほど、手紙はルイズが持っているのか。

「……ええ」
「心配なのかい? 無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」
「そうね。心配だわ……」

 ルイズの顔は可愛らしかった。

「大丈夫だよ。きっとうまくいく。なにせ、僕がついているんだから」
「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね。あなたは昔から、とても頼もしかったもの。で、大事な話って?」
「覚えているかい? あの日の約束……。ほら、きみのお屋敷の中庭で……」
「あの、池に浮かんだ小船?」

 僕は頷いた。

「きみは、いつもご両親に怒られたあと、あそこでいじけていたな。まるで捨てられた子猫みたいに、うずくまって……」
「ほんとに、もう、ヘンなことばっかり覚えているのね」
「そりゃ覚えているさ」。
「きみはいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、デキが悪いなんて言われてた」

 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。

「でも僕は、それはずっと間違いだと思ってた。確かに、きみは不器用で、失敗ばかりしていたけれど……」
「意地悪ね」

 ルイズは頬を膨らませた。

「違うんだルイズ。きみは失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを放っていた。魅力といってもいい。それは、きみが、他人にはない特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」



SIDE:ルイズ


「まさか」

私はサイトのことを思い出す。
キュルケが私に勝てない理由を説明してくれた後の夜ことだ。

「ルイズの力を見抜く奴が出てくる。見抜いた奴がいたらこう思え、相手は凄腕のメイジだって」
「あんたはメイジじゃないでしょーが!」
「俺はこの世界じゃない世界からきたから価値観があなた達とは違うんです」
「ぐぬぬぬぬ」

確かにワルド様は凄腕のメイジだ。

「まさかじゃない。例えば、そう、きみの使い魔……」
「サイトのこと?」
「そうだ。彼が武器をつかんだときに、左手に浮かび上がったルーン……。あれは、ただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」
「伝説の使い魔の印?」
「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」

 ワルドの目が光ったように見えた。

「ガンダールヴ?」

 信じられない。いや、信じられるかもしれない。

「誰もが持てる使い魔じゃない。きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ」
「信じられないわ」

 私は首を振った。確かにルーンが光っている時の動きはちょこまかとすばしっこくて私の躾を逃げてるけど。あいつが伝説の使い魔? なにかの間違いでしょ。

「きみは偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、歴史に名を残すような、素晴らしいメイジになるに達いない。僕はそう予感している」

 なんだかサイトのよく使うだまし文句に聞こえてきた。

「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」
「え……」

 いきなりのプロポーズに、私ははっとした顔になった。
二日前にサイトから結婚詐欺についての話を聞いたばかりだった。
あの時は騙される女が悪いと笑っていたが自分はどうだろうか?

「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは、国を……、このハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」
「で、でも……」
「でも、なんだい?」
「わ、わたし……まだ……」
「もう、子供じゃない。きみは十六だ。自分のことは自分で決められる年齢だし、父上だって許してくださってる。確かに……」

 ワルドはそこで言葉を切った。それから、再び顔を上げると、私に顔を近づけた。

「確かに、ずっとほったらかしだったことは謝るよ。婚約者だなんて、言えた義理じゃないこともわかってる。でもルイズ、僕にはきみが必要なんだ」
「ワルド……」

 私は考えた。ワルドの使う言葉はサイトから聞いた結婚詐欺の話で使われた言葉にそっくりなのだ。

「きみの心の中には、誰かが住み始めたみたいだね」
「そんなことないの! そんなことないのよ!」

 私は慌てて否定した。

「いいさ、僕にはわかる。わかった。取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この旅が終わったら、きみの気持ちは、僕にかたむくはずさ」

ワルドはじゃあ僕は部屋に戻るよ、と言い残して私の部屋を出て行った。



SIDE:サイト・ヒラガ



ワルド、ザマァw

「いいのかい? こんなことして?」

ギーシュが小声で聞いてきた。
何をしてるかって?
隣のルイズの部屋を盗聴しているのだ。
もちろん壁はギーシュに薄くしてもらっているのでバッチリ会話が聞こえていた。

ルイズに結婚詐欺の話をしておいてよかったぜ。
もちろん題材はワルド、貴様だ。

「ちょっと、なにしてるの?」
「げぇ、キュルケ!」

壁に耳をつけている俺に抱きついてくる。

「ダメよ。新婚さんを覗くなんて。放っておいてあげなさい」

覗いてません。盗聴です。

「あたし、思ったんだけど、こんな風に壁に張りついて逢引するのも、割と乙なものね」
「僕もいる部屋で堂々と逢引というかね?」
「あら? いたの? ギーシュ?」

ギーシュに渾身の一撃が入った。

「へんじがないただのしかばねのようだ」

ギーシュはベッドにふて寝してしまった。

「邪魔者はいなくなったわ。さ、ダーリン楽しみましょ」
「ちょ、押すなー、押すなー」

薄くなった壁は見事に壊れた。

「あんたらなにしてんの?」

やっべ、言い訳をしようとしたら、キュルケの手で口をふさがれた。

「よよよ、他所でサカりなさいよね。ののの、野良犬同士」
「だって、ダーリンが部屋で逢引したいって言うんだもの」

 勝ち誇った声でキュルケがそう言うと、ルイズの足が飛んだ。
キュルケがひらりと身をかわして窓枠の上にのっかった。

「オホホホホ、じゃあね、ダーリン」

投げキッスをして窓から飛び降りていった。

「壁直して置きなさいよ」
「サー、イエッサー」










[18630] <ゼロのひどい使い魔 13中2>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:14



 翌日、俺がギーシュとの相部屋で目を覚ますと、扉がノックされた。
どうせワルドなので無視して二度寝を決め込む。
今日は船でないからやることもないのだ。
ドンドンと扉が叩かれている。
流石にうるさいのでギーシュを起こしてやる。

「なんだい? なんの騒ぎだい?」
「どうやらギーシュのファンが詰めかけているらしい。答えてやれ」
「そうかい!」

扱いやすい男だ。
ギーシュが扉を開けてそこにいた人物に抱きつく。

ギーシュ×ワルド

「え?」

 ギーシュはきょとんとして、ワルドを見た。

「すまないが、僕には婚約者がいるんだ。それに元からそういう趣味じゃない」

やんわりとギーシュの抱擁を退けるワルド。

「おはよう。使い魔くん」
「おはよう。すぐ出ていくんで気にしないでください。お幸せにぃ~」
「ま、待ちたまえ」

グッと腕をつかまれる。

「いや、触らないで!」
「君は勘違いしている。僕は男に興味はない」
「そうやって安心させておいてズブリってわけね! 恐ろしい子爵ね!」

腕を振りほどいてワルドと向き合う。

「やれやれ、とんだ誤解だよ」
「僕を騙したな!」

ギーシュが空気を読まずに会話に入ってくる。

「騙してない、勘違いさせたんだ」
「同じ意味だ!」
「ギーシュくん、君は寝ぼけているようだ。顔でも洗ってきたまえ」

そういってワルドはギーシュを部屋から追い出した。

「いやぁ、おいてかないで~。ギーシュさ~ん」
「断るね」

そそくさとギーシュは出ていってしまった。

「きみは伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」
「は?」

 ワルドは、なぜか誤魔化すように、首をかしげて言った。

「……その、あれだ。フーケの一件で、僕はきみに興味を抱いたのだ。さきほどグリフォンの上で、ルイズに聞いたが、きみは異世界からやってきたそうじゃないか。おまけに伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうだね」
「興味を抱いたって、やっぱりそうなのね?」
「そこは重要じゃない! 後半の部分が重要なんだよ!」

ワルドがそういって捲くし立てる。

「僕は歴史と、兵に興味があってね。きみに興味を抱き、王立図書館できみのことを調べたのさ。その結果、『ガンダールヴ』にたどり着いた」
「やっぱり、男が好きなんですね。わかります」

ワルドの顔が

(#^ω^)ピキピキ

となっていたが俺には関係ない。

「あの『土くれ』から盗品を奪い返した腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」
「えー、ホモ野郎に見せる腕はありません。股についてるものはもっと見せたくないです」
「いい加減にホモから離れてくれないかな?」

俺はワルドから離れた。

「いやそういう意味じゃなくてだな。僕はホモじゃない。ルイズという婚約者もいる!」
「ロリコン宣言ですね」
「ええぃ、やかましい。とにかく手合わせ願う。逃げるなよ!」

そう言ってワルドは部屋から出ていってしまった。



SIDE:ワルド


 なんて格好のつかない決闘の約束だ。
 しかし、手合わせの約束は強引に取り付けたので、中庭の練兵場に足を向けた。

………………………………
………………………
……………
……



「遅い!」

朝に約束をしたのだが、既に昼過ぎである。
立会人のルイズも既に立ち去っている。

「あれ~、こんなところにいたんですか~」

ぞろぞろと彼を筆頭に全員がついてきていた。

「何をしていたんだね?」
「朝ごはん食べて街に繰り出して昼飯食べて戻ってきたところです」
「君は僕と手合わせすると約束したはずだろ?」
「一方的な上、時間と場所を教えてくれなかったあなたが悪いかと」

ぐ、確かに約束だけ取り付けて場所と時間を教えていなかった。
だからってなんで普通に遊んでいる。これは任務なんだぞ。

「何をする気なの?」

おお、愛しのルイズ。助かるよ。

「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」
「もう、そんなバカなことやめて。今は、そんなことしているときじゃないでしょう?」
「そうだね。でも、貴族というヤツはやっかいでね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」

 ルイズはサイトを見た。

「やめなさい。これは、命令よ?」
「はーい、ということで手合わせは中止ってことで、ワルドさんも食事いってきたらどうです?」

確かに腹は減っている。しかし、ここで引いたら貴族の名折れだ。

「その必要はない。ルイズ、これは男と男の問題だ口を挟まないでもらいたい」

こうなったら意地でも戦う。

「ルイズ~、あの人はちょっと頭がおかしな人なんだよ。きっと戦えば落ち着くと思うから戦ってあげてもいいよね?」
「へ? そうなの?」
「きっと戦闘中毒なんだよ。人助けだと思ってギーシュと戦わせてやろう」
「そうね」
「なんで僕が? 君を指名してるんだ。君がいきたまえ」

僕の評判がおかしくなっているが口をはさむと煙に巻かれてしまうので黙って聞いてやる。

「では、介添え人の了承も得たことだし、始めるか」
「そーですねー」

よしきた。思えば長い道のりだった。


「サイトの勝ち」

メガネを掛けた青髪の少女が言った。

「なに? まだ何もしていないじゃないか」

少女を無視して戦闘態勢に入る。
腰から、杖を引き抜こうとする。
無い、視線を腰に落とすと杖があったはずの場所に杖がない。
視線を上げると彼が僕の杖をひらひらと振り回していた。

「なん……だと?」
「すいません、僕の勝ちのようです。杖なしでもいいのなら戦いますが?」

杖の無いメイジなど平民と同じだ。悔しい思いを押し殺して彼に敗北を告げる。

「降参だ。杖の無いメイジでは剣士である君には勝てない」



SIDE:タバサ



私は彼とワルトが戦うところを見たかった。
手合わせが始まる前から私は違和感を覚えていた。
ワルドには何かが足りない。
彼と手合わせすると言った。その時に違和感の謎が溶けたのだ。
彼は杖を持っていない。
腰につけている杖の入れ物にあるはずの杖がないのだ。

「では、介添え人の了承も得たことだし、始めるか」

既に勝負の決まっている。

「サイトの勝ち」

間抜けなワルドに私は伝えた。
私は早く彼に種明かしをして欲しかった。

「降参だ。杖の無いメイジでは剣士である君には勝てない」

ワルドがそういった。彼は杖を返した。

「ご飯を食べればきっと気分も晴れますよ?」
「そうすることにする」

そういってワルドはトボトボと歩いっていってしまった。

「助かったよ。タバサ」
「いつとったの?」

少しだけ彼が驚いた顔をして私の頭を撫でる。
心に暖かいものが入ってきたような気がした。

「HAHAHA、ギーシュ今朝のことを話してやれ」
「え? 僕かい?」
「早く話す」

私はギーシュに言った。

「あ、ああ、確か君が起こしてくれた後、扉の向こうに僕のファンがいるといって騙してくれたね。
おかげでワルド様に抱きつくはめになったじゃないか!」

ギーシュは思い出しながら怒っていた。そんな事があったのかと思う。

「なに~、ギーシュって男もイケる口だったの?」
「違う!ああ、もう、その後、君は仕切りにワルド様のことをホモだといってからかっていたね」
「なによそれ?」

キュルケはキュルケなりに笑い。ルイズもニヤついていた。

「その当たりで俺が腕を捕まれたろ?」
「ああ、君が僕らを残して逃げようとした時だろ?」
「そん時にスった」

私とキュルケ、ルイズはたぶん同じような顔をしているだろう。唯一、ギーシュだけが驚愕していた。

「な、一体、いつ? 君がそんな動きしてたなんて気付かなかったぞ?」

彼は説明する。

「掴まれたのは左腕だったろ? それを振り払うふりして左手を動かしている間に右手で杖をスった」

人の視線は動いているモノに行くただそれを応用して盗んだという。

「もし杖がないときにワルド様が襲われたらどうするつもりだったのよ?」
「え? 見捨てるつもりでしたけどなにか?」
「見捨てるなんて貴族のすることじゃないわ」

ルイズが怒る。言う事はもっともだが、彼は貴族ではない。

「俺貴族じゃねーし、それにワルドだって、軍人なんだから杖の無い時の対処くらいあるっしょ?
任務で死ぬことなんて軍人なんだから覚悟してるよ。奴には俺らの盾になってもらう」

「ははっ、なんてヤツだ、君は!」

そう言って笑うギーシュ。

「そうよねぇ、ワルド様って逞しい体してたし逃げることぐらいはできるわよね」

キュルケはそう言って納得した。

「でも」
「でもじゃない、ルイズ。これから先向かうところは戦場なんだぜ? この任務で誰も死なないとか思ってるわけ?」

私はドキリとする。

「そ、そうよね。そういえば戦場に向かうんだっけ」

彼はやさしい。きっと私たちに帰れというだろう。

「というわけで、タバサとキュルケは帰っていいよ。アルビオンに用事があるんで。こっから先は誰が死んでも不思議じゃない」
「連れないこといわないでよ、ダーリン」

私もキュルケに賛成だ。

「タバサもキュルケと同じか~?」


コクリと首を振る。
私は知りたいのだ。




―――――――――――

しばらく13は続きます。

―――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 13中3>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:14

 そしてその夜……。俺は一人、部屋のベランダで月を眺めていた。
ギーシュたちは、一階の酒場で酒を飲んで騒ぎまくっている。
明日はいよいよアルビオンに渡る日だということで、大いに盛り上がっているらしい。
キュルケが誘いにきたが、俺は断った。

 フーケが襲いに来るのを待ち構えている。
やることもなく、暇なので月を眺めていた。

「サイト」

 振り向くとルイズが立っていた。
 結婚の話するんだろ?

「私、どうすればいいかな?」
「へぁ?」

ちょ、上目遣いやめて、萌え死んじゃう。

「知ってるかもしれないけど、ワルド様に結婚しようって言われたわ」
「うん」
「どうしよう?」
「悩んでるなら断ればいいと思うよ?」

 ルイズの顔に表情はない。

「私が結婚するって聞いてどう思った?」
「驚いたよ」




SIDE:ルイズ



「驚いたよ」

月をバックにしたサイトは輝いて見える。

「ふーん、それだけ?」

サイトは私のことをどう思っているのだろう?
周りの女の子にはやさしい。と、特にちっちゃいタバサに。

「すごく動揺した」

 こいつでも動揺するんだ。もしかして私のことを……?
 サイトが私から目を逸らすように窓の外に見た。
恥ずかしいからって目をそらしたのね。い、いけない使い魔ね。
サイトは急に私の方を振り向いて抱きついてきた。

「ル~イ~ズ~」
「ちょ、ちょっとだめよ!」

ヒョイっと抱き上げられて部屋の出口に連れていかれた。
アレ? ベッドじゃないの?
するとさっきまでサイトのいた窓際が粉々に破壊された。

「え? え? どうゆうこと?」

窓の先にいたのは、巨大ゴーレム。
肩に、誰かが座っている。

「フーケ!」

私は叫んだ。

「感激だわ。覚えててくれたのね」

フードの被った人物からは女性の声がした。

「女?」
「親切な人がいてね。わたしみたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないと言って、あなたたちの場所を教えてくれたのよ」

 フーケは嘯いた。暗くてよく見えなかったが、フーケの隣に黒マントを着た貴族が立っている。あいつがフーケに私たちの場所を教えたのだろうか? 
 その貴族はしゃべるのはフーケに任せ、だんまりを決め込んでいる。白い仮面をかぶっているので、顔がわからないが、男のようだった。

「わははは、さらばだフーケ、余計なおしゃべりなんてしてるなんて間抜けな奴だ」

サイトはそう言って私をだきかかえたまま扉を蹴破り一階へ駆け出していた。

 下りた先の一階も、修羅場だった。いきなり玄関から現れた傭兵の一隊が、一階の酒場で飲んでいたワルドたちを襲ったらしい。
 ギーシュ、キュルケ、タバサにワルドが魔法で応戦しているが、多勢に無勢、どうやらラ・ロシェール中の傭兵が束になってかかってきているらしく、手に負えないようだ。

「よ、元気?」
「サイト!」

キュルケが真っ先に俺に抱きついてきた。

「怖かったわ~」
「参ったね」

 ワルドの言葉に、キュルケが頷く。

「どゆこと?」
「やっぱり、この前の連中は、ただの物盗りじゃなかったわね」

ギーシュは気まずい顔をしていたが俺がアイコンタクトで余計なことをいうなと制した。

「あのフーケがいるってことは、アルビオン貴族が後ろにいるということだな」

 キュルケが、杖をいじりながら呟いた。

「……やつらはちびちびとこっちに魔法を使わせて、精神力が切れたところを見計らい、一斉に突撃してくるわよ。そしたらどうすんの?」
「ぼくのゴーレムでふせいでやる」
「無駄なことすんな。それよりもさっさと逃げるゼェ」
「どうやって?」

 タバサが聞いてきた。俺はちらっとワルドを見た。

「このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、成功とされる」

 ワルドは低い声で言った。
 タバサはそれで理解したのか自分と、キュルケと、ギーシュを杖で指して「囮」と呟いた。

「じゃ、頼んだ。ギーシュ、君の活躍に期待している」
「え? え? ええ!」

 ルイズとキュルケが驚いた声をあげた。

「今からここで彼女たちが敵をひきつける。せいぜい派手に暴れて、目だってもらう。その隙に、僕らは裏口から出て桟橋に向かう。以上だ」

ワルドがそういうとキュルケは納得したようだ。

「ねえ、ヴァリエール。勘違いしないでね? あんたのために囮になるんじゃないんだからね」
「わ、わかってるわよ」
「なんというツンデレ」

俺たちが通用口にたどり着くと、酒場の方から派手な爆発音が聞こえてきた。



SIDE:キュルケ

 サイトはなんでギーシュに期待するのかしらと思っていた。
私は状況を確認する。
ここは酒場、私の系統は炎、ギーシュは土、タバサは風と水が使える。
なるほどね。四系統が揃ってるわけだ。しかも私とタバサはトライアングル。
ギーシュはドットだが、腐ってもグラモン家の息子。
負ける要素などないじゃない。

裏口の方へサイトたちが向かったことを確かめると、キュルケはギーシュに命令した。

「じゃあおっぱじめますわよ。ねえギーシュ、厨房に油の入った鍋があるでしょ」
「揚げ物の鍋のことかい?」
「そうよ。それをあなたのゴーレムで取ってきてちょうだい」
「お安い御用だ」

 ギーシュは、テーブルの陰で薔薇の造花を振った。
ワルキューレが厨房に向かって走る。
あれ? ギーシュってこんなにスムーズに魔法使えたっけ?
ギーシュのワルキューレが油の鍋をつかんだ。

「それを、入り口に向かって投げて?」

 私は、手鏡を覗き込んで、化粧を直しながら呟く。

「こんなときに化粧するのか。きみは」

 ギーシュが呆れた声で言った。それでもゴーレムを操り、言われたとおりに鍋を入り口に向かって、投げた。
 
「だって歌劇の始まりよ? 主演女優がすっぴんじゃ……」

 油を撒き散らしながら空中を飛ぶ鍋に向かって、杖を振る。

「しまらないじゃないの!」


SIDE:フーケ

 へぇ、なかなかやる。サイトが見込んでいる仲間だけあるってことかい?

アタシの隣に立った仮面に黒マントの貴族に、アタシは呟いた。

「ったく、やっぱり金で動く連中は使えないわね。あれだけの炎で大騒ぎじゃないの」
「あれでよい」
「あれじゃあ、あいつらをやっつけることなんかできないじゃないの!」
「倒さずとも、かまわぬ。分散すれば、それでよい」
「あんたはそうでも、わたしはそういかないね。あいつらのおかげで、恥をかいたからね」

 しかし、マントの男は答えない。耳を澄ますようにして立ち上がると、アタシ告げた。

「よし、俺はラ・ヴァリエールの娘を追う」
「わたしはどうすんのよ」

 アタシは呆れた声で言った。

「好きにしろ。残った連中は煮ようが焼こうが、お前の勝手だ。合流は例の酒場で」

 男はひらりとゴーレムの肩から飛び降りると、暗闇に消えた。まさに、闇夜に吹く夜風のように、柔らかく、それでいてひやっとするような動きであった。

「ったく、勝手な男だよ。なに考えてんだか、ちっとも教えてくれないんだからね」

 アタシは苦々しげに呟いた。男ってのはみんなこうなのかい?



SIDE:タバサ

 彼はギーシュに期待するといった。彼が意味のないことを言うはずが無い。
キュルケの油を使った炎を見て思いつく。彼は言いたかったことはこのこと?

私はギーシュの袖を引っ張った。

「なんだね?」
「薔薇」

 ギーシュが持った薔薇の造花を指差す。それを振る仕草を、私はしてみせた。

「花びら。たくさん」
「花びらがどーしたね!」

 ギーシュは怒鳴ったが、すぐにキュルケに耳を引っ張られた。

「いいからタバサの言うとおりにして!」

 その剣幕に、ギーシュは造花の薔薇を振った。大量の花びらが宙を舞う。

「花びらをゴーレムにまぶしてどーするんだね! ああ綺麗だね!」

 ギーシュが怒鳴った。
 私はぽつりとギーシュに命じた。

「錬金」
 
ゴーレムに張りついた花びらを『錬金』で油に変えた。
次にキュルケの唱えた『炎球』が、フーケのゴーレムめがけて飛んでいった。
 一瞬で巨大ゴーレムはぶわっと炎に包まれた。

「やったわ! 勝ったわ! あたしたち!」
「ぼ、ぼくの『錬金』で勝ちました! 父上! 姫殿下! ギーシュは勝ちましたよ!」
「タバサの作戦で勝ったんじゃないの!」



SIDE:サイト・ヒラガ



「もう、いい加減におろしてよ!」
「だが断る。コッチのほうが早い」

ルイズをお姫様だっこして桟橋まできていた。
それに下ろしたらこの後ワルトの分身に襲われるんだお。
それにルイズの温もりを感じていたいんだお(^ω^)

くく、ワルド、悔しいか! ねぇ今どんな気持ち?


SIDE:ワルド


 クッ、どうしてこうなった。
サイトに偏在で襲おうにもルイズが抱えられている以上危害は加えられない。
万が一にもルイズが傷ついてしまったら困る。
全くもって忌々しい使い魔だ。

「なんじゃこりゃああ」

港を見てサイトが叫んだようだ。

「なんだね、サイトくん。ここにくるのは初めてか?」
「おう!」

 船に乗り込むまで物珍しそうにサイトはキョロキョロとしていた。
 平民らしい部分もあるようだ。
僕も初めて来たときはこんな感じだったのかな?
懐かしい思い出が駆け巡ったが、すぐに切り替える。

「船長はいるか?」
「寝てるぜ。用があるなら、明日の朝、改めて来るんだな」

 僕は答えずに、すらりと杖を引き抜いた。

「貴族に二度同じことを言わせる気か? 僕は船長を呼べと言ったんだ」
「き、貴族!」

 船員は立ち上がると、船長室にすっ飛んでいった。
なんだか久しぶりに貴族らしいことをした気がした。



SIDE:サイト・ヒラガ


 魔法使えない今がワルド暗殺のチャンスじゃね?
船を浮かすために魔法は打ち止め中のワルド。

でもなぁ、ここで殺すと後々どうなるかわからん。
とりあえず保留で。

「うわぁ、ラピュタだ。」
「ラピュタ? アルビオンでしょ?」

浮遊大陸アルビオン。
ラピュタです。

「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」

空気を読まないウェールズ率いる空賊が現れた。

「いやだわ。反乱勢……、貴族派の軍艦かしら」

俺は空賊に襲われる様をジーっと見ていた。
普通の空賊はどうだか知らないが、こいつらは統率のとれた動きをしていることがわかる。
軍隊のことは詳しくないがきちんと上司らしき奴の命令は聞いてるし、動きも鮮やかだ。

仮装パーティーに付けているような変装小道具よりも出来はいいが、やっぱり生で生えてるものとは違う。

「船ごと全部買った。料金はてめえらの命だ」

頭の男、つまりはウェールズなわけだが、よく見るとヒゲとか偽物だ。

「おや、貴族の客まで乗せてるのか」

 ルイズに近づき、顎を手で持ち上げた。

「こりゃあ別嬢だ。お前、おれの船で皿洗いをやらねえか?」

 なんじゃそりゃ? 素直に娼婦やれとか、一発ヤラせろくらいは言ったらどうだ?

「下がりなさい。下郎」
「驚いた! 下郎ときたもんだ!」

普段は俺の言動にとやかくいうくせに自分はいいのか?
暴れる気も抵抗する気もないので素直に捕らえられておく。








[18630] <ゼロのひどい使い魔 13中4>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/20 11:15


 空賊に捕らえられた俺たちは、船倉に閉じ込められた。

「どうもおかしいね」
「なにがよ?」

 看守に聞こえないように船倉の隅に移動する。
 俺は剣を取り上げられ、ワルドとルイズは杖を取り上げられた。
 ただそれだけだった。目に見える武装だけ押収したのだ。
 ワルドは興味深そうに、積荷を見て回っているので俺はワルドにも会話が聞こえないよう小声で話すことにした。


「いやさ、あいつら俺らの武器とったけど、念入りに身体検査しなかったよな?」
「だから?」
「俺の隠しナイフと投げナイフはとられてないってこと」
「あ」

デルフを買ってもらった時についでに購入してもらった武器である。

「じゃあすぐここを出ましょう?」
「ダメだね。出たとしてもやれることがない」

むぅ~とルイズが膨れるがほっといてもそのうちウェールズ来るからじっとしときゃいいのに。

「まあ、飯でも請求しようぜ」
「あんたってホント緊張感ないわね!」

 俺は扉の近くによる。

「誰か~、腹が減って死にそうだ~。飯をくれ~」

看守の男が近づいてくる。

「うるさいぞ」
「腹減ってんだ。飯くれるまで騒ぐ」

それを聞いて看守はどこかへいってしまった。

「君は相変わらずだね」
「飯だ」

 ワルドの意見は扉が開いたので無視した。
 太った男が、スープの入った皿を持ってやってきた。

「これだけ? ここにいるのは貴族だぞ。もっといいもの持って来い」

そう言いながら俺は皿を取ろうとすると、その男は皿をひょいと持ち上げた。

「質問に答えてからだ」
 
 それを聞いたルイズが立ち上がった。

「言ってごらんなさい」
「お前たち、アルビオンに何の用なんだ?」
「旅行よ」

 ルイズは、腰に手を当てて、毅然とした声で言った。

「トリステイン貴族が、いまどきのアルビオンに旅行? いったい、なにを見物するつもりだい?」
「そんなこと、あなたに言う必要はないわ」

 空賊は笑うと、皿と水の入ったコップを寄越した。

「ほら」
「あんな連中の寄越したスープなんか飲めないわ」

 ルイズはそっぽを向いた。

「ガツガツ、足りん」
「もう! 毒とか入ってたらどうするのよ!」
「入ってなかったじゃん。さっさと食えよ」

 ルイズはしぶしぶ飯を食った。量が少なかったのであっという間に完食した。
 やることもなく、時間を無駄に潰す。
ウェールズ早ーく。
そのときに、再びドアがばちんと開いた。今度は、痩せすぎの空賊だった。空賊は、じろりと三人を見回すと、楽しそうに言った。

「おめえらは、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」
「どちらかというと美乳派です。しかし、おっぱいに好き嫌いはありません」
「おいおい、俺は巨乳派だ。って、そうゆう話じゃない。俺たちは、貴族派の皆さんのおかげで、商売させてもらってるんだ。王党派に味方しようとする酔狂な連中がいてな。そいつらを捕まえる密命を帯びてるのさ」
「じゃあ、この船はやっぱり、反乱軍の軍艦なのね?」
「いやいや、俺たちは雇われてるわけじゃあねえ。あくまで対等な関係で協力しあってるのさ。まあ、おめえらには関係ねえことだがな。で、どうなんだ? 貴族派なのか? そうだったら、きちんと港まで送ってやるよ」

お、こいつわかるね。ノリツッコミできるじゃん。

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか。バカ言っちゃいけないわ。わたしは王党派への使いよ。まだ、あんたたちが勝ったわけじゃないんだから、アルビオンは王国だし、正統なる政府は、アルビオンの王室ね。わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使ね。だから、大使としての扱いをあんたたちに要求するわ」
「そうだ。貧乳派は数は少ないかもしれないが、その分強力な絆がある」
「あんた、バカ?」
「誰がバカだ。バカはルイズだ! 貧乳派の素晴らしさを教えてやれ」

 俺はルイズの方をきっと向いて、怒鳴った。

「うるさいわね! あんたは黙ってなさい。」

 そんな様子を見て、空賊は笑った。

「正直なのは、確かに美徳だが、お前たち、ただじゃ済まないぞ」
「あんたたちに嘘ついて頭を下げるぐらいなら、死んだほうがマシよ」
「パットで胸を誤魔化す女は死んだ方がマシだ」
「頭に報告してくる。その間にゆっくり考えるんだな」

 空賊は去っていく。
 
「お前もおっぱい派閥についてゆっくり考えるんだな」
「もう! おっぱいから離れなさいよ」
「断る。おっぱいには擦り寄る」

 再び、扉が開く。先ほどの痩せすぎの空賊だった。

「頭がお呼びだ」


 狭い通路を通り、細い階段を上り、俺たちが連れていかれた先は、立派な部屋だった。
 後甲板の上に設けられたそこが、この空賊船の船長室であるらしい。
 がちゃりと扉を開けると、豪華なディナーテーブルがあり、一番上座に先ほどの派手な格好の空賊(ウェールズ)が腰掛けていた。
 大きな水晶のついた杖をいじっている。
 頭の周りでは、ガラの悪い空賊たちがニヤニヤと笑って、入ってきた俺たちを見つめている。
 女の子成分ゼロである。

「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」
「美乳派のサイトだ」

 俺を無視したルイズはきっと頭をにらむばかり。頭はにやっと笑った。

「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」
「マゾか、どうやら君とは仲良くなれそうだ」

 キッとルイズは俺を睨む。その後ウェールズの質問に答えた。

「大使としての扱いを要求するわ」
「王党派と言ったな?」
「ええ、言ったわ」
「なにしに行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまうよ」
「あんたらに言うことじゃないわ」
「そうだ。アンリエッタ姫からの勅命でウェールズ皇太子に当てた手紙の回収という任務なんて死んでもいえない」

 シーンと静寂が場を包む。それを打ち砕くように ウェールズは笑った。大声で笑った。 
わっはっは、と笑いながら立ち上がった。
ルイズたちは、頭の豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせていた。

「失礼した。私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……、本国艦隊といっても、すでに本艦『イーグル』号しか存在しない、無力な艦隊だがね。まあ、その肩書きよりこちらのほうが通りがいいだろう」

 そう言って変装をとくウェールズ。
そして、威風堂々、名乗った。

「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

 ルイズは口をあんぐりと開けた。ワルドは興味深そうに、皇太子を見つめた。

「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか、といってもそちらの貴族殿が言っていたが事実か?」
「はい、アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」

 ワルドが、優雅に頭を下げて言った。

「ふむ、姫殿下とな。きみは?」
「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵」

 それからワルドは、俺たちをウェールズに紹介した。

「そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢とその使い魔の少年にございます。殿下」
「使い魔?」

ウェールズは俺を驚いた顔で見ていた。

「イグザクトリー」
「な、なるほど! きみのように立派な貴族が、私の親衛隊にあと十人ばかりいたら、このような惨めな今日を迎えることもなかったろうに! して、その密書とやらは?」

俺のことをスルーしたウェールズ。無視すんな。

 ルイズが慌てて、胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。
 恭しくウェールズに近づいたが、途中で立ち止まる。それから、ちょっと躊躇うように、口を開いた。

「あ、あの……」
「なんだね?」
「その、失礼ですが、ほんとに皇太子さま?」

 ウェールズは笑った。

「まあ、さっきまでの顔を見れば、無理もない。僕はウェールズだよ。正真正銘の皇太子さ。なんなら証拠をお見せしよう」

 ウェールズは、ルイズの指に光る、水のルビーを見つめて言った。
 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。二つの宝石は、共鳴しあい、虹色の光を振りまいた。

「この指輪は、アルビオン王家に伝わる、風のルビーだ。きみが嵌めているのは、アンリエッタが嵌めていた、水のルビーだ。そうだね?」

 ルイズは頷いた。

「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」
「大変、失礼いたしました」

 ルイズは一礼して、手紙をウェールズに手渡す。
 手紙にキスとかそういう、性癖ですか?

「姫は結婚するのか? あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……、従妹は」
「さっさとやっちゃえばよかったっすね。ずぶりと。この無能が!」

 そう言って俺は隠しナイフを取り出しウェールズの喉元でピタリと止めた。

「な、なんのつもりかな? 使い魔くん」
「いえね、どこに裏切り者がいるかわかりませんから、身を持って奇襲の危険を体験させてあげたんです」

 隠しナイフをしまう。

「ななな、なにしてんのよ! バカ犬!」
「イテーな。寸止めしたからいいだろ」
「そういう問題じゃないわよ。あんた死刑にされるわよ?」

 ウェールズは笑っていた。

「はは、愉快な使い魔だ。肝に銘じるよ。ありがとう」

 なんと心の広い王子だ。女なら惚れてたぜ。

「しかしながら、今、手元にはない。ニューカッスルの城にあるんだ。姫の手紙を、空賊船に連れてくるわけにはいかぬのでね」

 ウェールズは笑って言った。

「多少、面倒だが、ニューカッスルまで足労願いたい」






[18630] <ゼロのひどい使い魔 13後1>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:27



 寝てたら艦はニューカッスルの秘密の港に到着していた。

「ほほ、これはまた、大した戦果ですな。殿下」
「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」

 ウェールズがそう叫ぶと、集まった兵隊が、うおおーっと歓声をあげた。

「おお! 硫黄ですと! 火の秘薬ではござらぬか! これで我々の名誉も、守られるというものですな!」
 老メイジは、おいおいと泣き始めた。
「先の陛下よりおつかえして六十年……、こんな嬉しい日はありませぬぞ、殿下。反乱が起こってからは、苦渋を舐めっぱなしでありましたが、なに、これだけの硫黄があれば……」

 にっこりとウェールズは笑った。
「王家の誇りと名誉を、叛徒どもに示しつつ、敗北することができるだろう」

 老メイジとのやりとりを見てなんか劇でも見ている気分になった。彼らは役者を演じている。

「して、その方たちは?」

 バリーと呼ばれた老メイジが、ウェールズに尋ねる。

「トリステインからの大使殿だ。重要な用件で、王国に参られたのだ」
「これはこれは大使殿。殿下の侍従を仰せつかっておりまする、パリーでございます。遠路はるばるようこそこのアルビオン工国へいらっしゃった。たいしたもてなしはできませぬが、今夜はささやかな祝宴が催されます。是非とも出席くださいませ」

 ウェールズに付き従い、城内の彼の居室へと向かった。城の一番高い天守の一角にあるウェールズの厨室は、王子の部屋とは思えない、質素な部屋であった。

「ショボイ部屋だな」
「あんたは黙ってろ!」

凄まじい形相で俺を睨むルイズ。

「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
「ついでに残りは全部燃やしてください。後で難癖つけられて困るのはこちらなんで」
「わかった」

ウェールズは意外にも俺の意見をすんなりと聞いてくれた。死にゆく者の潔さだろうか。

「あの、殿下……。さきほど、栄光ある敗北とおっしゃっていましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」
 ルイズは躊躇うように問うた。しごくあっさりと、ウェールズは答える。
「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もありえない。我々にできることは、はてさて、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」

 ルイズは俯いた。

「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
「は、笑わせる。貴様、それでも人の上にたつ王か?」
「どうゆうことだい?」

流石にウェールズもカチンと来たようだ。

「王なら最後に死ね。真っ先に楽になるなんて許されない。できれば生き恥をさらしてゲルマニアにでも亡命していってね!」

あんたに死なれると後がメンドイ。
ウェールズは少し考え答える。

「それはできんよ」
「嘘だ!」

ルイズとウェールズはビクっとなる。

「どうしてそういうこというかな? かな?」
「私は王族だ。必要とあらば死すら厭わない」

さーて、どうすっかな。説得して亡命するならいいが、アンリエッタの直筆の手紙にも亡命しろって書いてあっただろうし、それを読んだ上で亡命できんいうか。

「アンリエッタはどうするよ? お前が死んだらお前のために復讐するかもよ?」
「アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」

原作じゃするの! といっても伝わるわけねぇ。

「王女と言ってもまだ子供だ」
「はは、君も子供に見えるが気のせいか?」
「そういう話じゃねーよ」
「サイト、もういいの!」

 黙って話を聞いていたルイズが叫んだ。
その姿をみてウェールズは、ルイズの肩を叩いた。

「きみは、正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている」

 ルイズは、寂しそうに俯いた。

「忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい。彼のようにね」

俺になすりつけるな。

「そろそろ、パーティの時間だ。きみたちは、我らが王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」

 俺たちは部屋の外に出た。ワルドは居残って、ウェールズに一礼した。

「まだ、なにか御用がおありかな? 子爵殿」
「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」
「なんなりとうかがおう」

 ワルドはウェールズに、自分の願いを語って聞かせた。ウェールズはにっこりと笑った。

「なんともめでたい話ではないか。喜んでそのお役目を引き受けよう」


SIDE:ウェールズ


パーティーは既に始まっている。最後の晩餐だ。
皆、死なすには惜しい。
ラ・ヴァリエールの使い魔の言ったことが頭に残っている。

ゲルマニアに亡命しろ。

私は考える。トリステインに亡命したら攻め入る口実を与えるが、ゲルマニアなら?
アルビオンとてゲルマニアと一戦交えるとなると、かなり厳しい。
いや、敗色濃厚だ。
彼がもう少し早く私の前に現れてくれて助言してくれていたら従っていただろう。

会場を見渡すと、すぐに彼が見つかった。今思えば珍しい服装をしている。
私は彼の元に足を進めた。

「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔の少年だね。しかし、人が使い魔とは珍しい。トリステインは変わった国だな」

「トリステインでも珍しいですよ? ここ六千年はなかったんじゃない?」

始祖ブリミル以来なかったと?

「それは実に珍しいな!」
「ここだけの話、俺は伝説ですから」
「伝説とは?」

使い魔くんは左手のルーンを見せてくれた。

「ガンダールヴのルーン、神の盾。んでこいつが、神の左手」
「よお!」

インテリジェンスソード?

「本当かね?」
「おう! おれっちは初代のガンダールヴから使われてる神の左手デルフリンガー様よ!」

驚いた。まさか本当に?

「明日死ぬ奴に嘘なんてついて意味あると思うか?」

私の考えていたことを察したのか使い魔くんは答えてくれた。

「いや、すまない。正直信じられなかった。君の名前は?」
「サイト」
「サイトくん、最後に君の話を聞けてよかった」

サイトは怪訝そうな顔で私の顔を見ていた。

「なにか?」
「俺はお前が嫌いだ」
「なぜ?」

嫌いというわりに重大な秘密を話してくれたものだ。

「こっちに来てから初めて俺の思惑どおりにいかなかった奴だから」
「こっちに来たとはどういうことだ?」

サイトくんが言うには彼は異世界から呼び出されたらしい。
しかも、前の世界では自ら命を絶ったと言う。

「なぜ自殺なんかを?」
「あんたと似てるんだよ。やりたいことやれなくて、叶えたかったこと叶えられなかった。そんな自分が許せなかったような気がした。今は割と人生楽しんでる」

同族嫌悪というやつだろうか。彼との付き合いは短いだが、本心を聞けた気がした。

「きみは優しい少年だな」
「少年じゃねーよ。実年齢は24だ」

そうか、だからあの時子供だと言ったのか。

「そんで、今まではなんつーか、俺が俺じゃないように動いてきた。生まれ変わって人生改めたっつーの?
でも目の前に死んく奴ら見たら俺が俺である事を思い出したような気がしてな。だからお前嫌い」

彼は私たちを過去の自分のように感じているのだ。同じ過ちをすることを嫌っている。だから私たちを嫌いだと言う。

「そうか、だが、君は今は生きている。それでいいじゃないか」
「これから死ぬ奴に言われたくねーよ」
「王家に生まれたものの義務なのだ」

私が王家ではなく、彼と出会っていれば友人になっていただろう。アンリエッタとルイズも含めて一緒に遊び、学ぶ。それがどれだけ幸福なことか。

「ちっ、できれば普通に出会って俺とハルケギニア支配する手伝いして欲しかったね。ああ、支配っても商売での話だぞ。勘違いすんなよ?」

彼も私と同じ考えだった。胸が熱くなる。

「最後の最後に素晴らしい友人ができて嬉しいよ」

私は手を差し出す。
彼は手を握る。

「そうかい、友人として忠告する。ワルドには気をつけろ。あと最後まで生き延びて戦え、できれば逃げろ。そして俺んとこ来い。全力で囲ってやる」

頼れる友人ができた。こんなに嬉しいことはない。

「はは、わかったよ。アンリエッタには私は勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと伝えてくれ」
「お前が、ウェールズが死んだら必ず伝える。特別にタダで請け負ってやるよ」

握手を終え私は座の中心に戻った。






[18630] <ゼロのひどい使い魔 13後2>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:28



 やっべ、さっきの俺かっこよくね? 思わず青春しちゃった。
部屋に戻りさっきの光景を思い出して悶絶中。
キャー、恥ずかし。

「相棒、さっきはカッコよかっぜ」
「言うなー、忘れろ。黒歴史じゃー」

ベッドの上でジタバタしていると扉があいた。
ワルドだ。

「きみに言っておかねばならぬことがある」
「なんでしょう?」
「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」

 あっそ、今の俺は一人になりたい。

「おめでとさん」
「きみも出席するかね?」

早く出てって欲しかったので首を振った。

「ならば、明日の朝、すぐに出発したまえ。私とルイズはグリフォンで帰る」
「はいはい」

早く出てって!

「では、きみとはここでお別れだな」

そう言ってワルドは部屋を出てった。
クソッ、ウェールズめ、この気持どうしてくれる。

俺はトイレを済まして廊下を歩いていた。
抜いたらすっきりしたお(^ω^)
廊下の途中に、窓が開いていて、月が見えた。月を見て、一人、涙ぐんでいる少女がいた。
ルイズだ。

「泣いてるのか?」

俺が近づくとルイズは力が抜けたように、体にもたれかかった。

「いやだわ……、あの人たち……、どうして、どうして死を選ぶの? わけわかんない。きっと姫さまの手紙には逃げてって書いてあるのに……、サイトも逃げてって言ってるのに、どうしてウェールズ皇太子は死を選ぶの?」
「大事なものを守るためだ」
「なによそれ。愛する人より、大事なものがこの世にあるっていうの?」
「人それぞれだが、ウェールズはアンリエッタを護るために戦うぜ」
「わたし、説得する。もう一度説得してみるわ」
「ダメだ」
「どうしてよ」
「仕事の内容は手紙の回収だ。姫様に迷惑かけるつもりか?」

涙がぽろりと、ルイズの頬を伝った。

「……早く帰りたい。トリステインに帰りたいわ。この国嫌い。イヤな人たちと、お馬鹿さんでいっぱい。誰も彼も、自分のことしか考えてない。あの王子さまもそうよ。残される人たちのことなんて、どうでもいいんだわ」
「確かにウェールズは嫌いだ。さっき俺を汚しやがったからな。でもな、残される人のことどうでもいいとは考えてねーよ。残される人のこと考えてるから戦うんだ。じゃないと愛する人も死ぬことになる。わかったか?」

ルイズは泣きながら頷く。


「情けないところ見せちゃったわ」
「気にすんな。賢者タイムの今の俺は大抵のことは許せる」

なにそれって顔してたが男にはそういう時があるとだけ言って別れた。




SIDE:ウェールズ


 始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、私は新郎と新婦の登場を待っていた。
周りに、他の人間はいない。皆、戦の準備で忙しいのであった。私は何をしているのだろうな。
すぐに式を終わらせ、戦いの準備に駆けつけなければ。
礼儀として礼装に身を包んだが、友人、サイトのワルドに注意しろという言葉を信じ軽装だが防具も着込んでいる。

 扉が開き、ルイズとワルドが現れた。
二人の姿を見て私は確信する。
ワルドは何かを企んでいる。
新婦であるルイズは、アルビオン王家から借り受けた純白のマントをまとわせたが、ワルドは魔法衛士隊の制服である。

まるで、すぐにでも戦闘できるような体勢だ。

「では、式を始める」

サイト、君は何者だ?
ワルドは一体何を企んでいる?

「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」

 ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。やはり、おかしい。戦場だからといってなぜ杖を持っている?
狙いは私?
それともルイズ?

「誓います」

ルイズを見る。彼女を狙っているのだとしたらこの結婚式はおかしい。殺せるタイミングはいくらでもあったはず。

「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」

狙いは私だ。なぜ?

『いえね、どこに裏切り者がいるかわかりませんから、身を持って奇襲の危険を体験させてあげたんです』

船での出来事を思い出す。

「新婦?」
「緊張しているのかい? 仕方がない。初めてのときは、ことがなんであれ、緊張するものだからね」

裏切り者、奇襲、危険。ワルドはレコンキスタ?

「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」

レコンキスタだとすれば、私を狙うのは当然。
ではこの結婚式は偽装?
ルイズもレコンキスタの一員?
いや、ありえない。彼がついておいてそんなハズはない。
私の言葉の途中、ルイズは首を振った。

「新婦?」
「ルイズ?」

彼女は利用されている。そう考えるのが自然だ。

「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」
「違うの。ごめんなさい……」
「日が悪いなら、改めて……」
「そうじゃない、そうじゃないの。ごめんなさい、ワルド、わたし、あなたとは結婚できない」

やはりそうか。

「新婦は、この結婚を望まぬのか?」
「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」

サイトはなぜここにいない?
ワルドは私に見向きもせずに、ルイズの手を取った。

「……緊張してるんだ。そうだろルイズ。きみが、僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい。ワルド。憧れだったのよ。もしかしたら、恋だったかもしれない。でも、今は違うわ」

 するとワルドは、今度はルイズの肩をつかんだ。ワルドの表情が変わる。
 私はワルドの豹変に気づいた。

「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! そのためにきみが必要なんだ!」
「……わたし、世界なんかいらないもの」
 ワルドは両手を広げると、ルイズに詰め寄った。
「僕にはきみが必要なんだ! きみの能力が! きみの力が!」

サイトのいうハルケギニア支配は商売でという代名詞がつくが、ワルドは違う。本当の意味で世界を支配しようと言っているのがわかる。

「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか! きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう! きみは自分で気づいていないだけだ! その才能に!」
「ワルド、あなた……」

SIDE:サイト・ヒラガ


 や・ば・い
 寝過ごしたw


SIDE:ウェールズ


彼の主人であるルイズが危ない。ルイズとワルドの間に入ってとりなそうとした。

「子爵……、きみはフラれたのだ。いさぎよく……」

 ワルドはその手を撥ね除ける。

「黙っておれ!」

取りつかれたような目だ。確信した。こいつはレコンキスタだ。

「ルイズ! きみの才能が僕には必要なんだ!」
「わたしは、そんな、才能のあるメイジじゃないわ」
「だから何度も言っている! 自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」

 ルイズはワルドの手を振りほどこうとした。
しかし、物凄い力で握られているのか、振りほどくことができなかった。

「そんな結婚、死んでもいやよ。あなた、わたしをちっとも愛してないじゃない。わかったわ、あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという、在りもしない魔法の才能だけ。ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。こんな侮辱はないわ!」

ルイズが暴れた。ここで魔法を使うわけには行かない。ルイズにも危害を加えてしまう。
私はワルドの肩に手を置いて、引き離そうとした。しかし、ワルドに突き飛ばされた。
杖を抜く。

「うぬ、なんたる無礼! なんたる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ! さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」

ワルドの顔が笑っていた。覚悟を決めたと私は読み取る。

「こうまで僕が言ってもダメかい? ルイズ。僕のルイズ」

 ルイズは怒りで震えながら言った。

「いやよ、誰があなたと結婚なんかするもんですか」

 ワルドは天を仰いだ。

「この旅で、きみの気持ちをつかむために、随分努力したんだが……」

 両手を広げて、ワルドは首を振った。

「こうなってはしかたない。ならば目的の一つは諦めよう」
「目的?」

 ルイズは首をかしげていた。目的の一つか、いくつあるかは分からないがレコンキスタならばその目的に私の命が含まれているはずだ。
 ワルドは唇の端をつりあげると、禍々しい笑みを浮かべた。

「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」
「達成? 二つ? どういうこと?」

 ワルドは、右手を掲げると、人差し指を立ててみせた。

「まず一つはきみだ。ルイズ。きみを手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」
「当たり前じゃないの!」

私は詠唱を始める。

「二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」
 ルイズははっとした。
「ワルド、あなた……」
「そして三つ目……」

 私は杖を構えて魔法を発動させる。
 しかし、ワルドは二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。

「なに?!」
「やはり、貴様、『レコンキスタ』か」

私は攻撃ではなく、全力で逃げるための魔法を詠唱していた。







[18630] <ゼロのひどい使い魔 13後3>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/12 20:56


 「オルァ」
 礼拝堂の壁をぶち破り轟音と共に崩れた。
 烈風のごとく中に飛び込む。
「貴様……」
 ワルドが呟く。
 壁をぶち破り、間一髪飛び込んでの一撃をワルドは杖で受け止めていた。
 ウェールズ、生きてやがる。ちっ。

「ウェールズ! お前はやるべき事をやれ」
「ああ、任したサイト」

俺と入れ替わるようにウェールズが礼拝堂を出て行った。

「サイト!」
「ルイズは下がってろ」

俺の言葉に頷きルイズは下がる。

「なぜにここがわかった? ガンダールヴ」
「結婚するって言ってたろ。ウェールズに場所は聞いといた」

二、三度ワルドに切り込む。
ワルドは高く飛び上がり、それをなんなくかわした。

「なぜ、戦う? 君はルイズと僕の結婚におめでとうといったぞ?」
「あんときゃどうにかしてたのさ」

主にウェールズのせいで。

「そうか、手合わせの時はずいぶんとお世話になったね。初めから本気を出そう。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう」
「ずいぶんと女々しいことで、俺はお前を修正してやるよ」

 俺は飛びかかったが、ワルドは軽業師のように剣戟をかわしながら、呪文を唱える。

「ユビキタス・デル・ウィンデ……」

 呪文が完成すると、ワルドの体は分身した。
 一つ……、二つ……、三つ……、四つ……、本体と合わせて、五体のワルドが俺を取り囲んだ。

「回す気ね? イヤらしい」
「ホモじゃないと言ってるだろ!」
「じゃあ、自分で自分の相手するのか? それなんてオナニー?」
「ダマレェ」

五体の攻撃を 剣で、受け、流す。

(ウェールズ、無事に帰ったらアンリエッタと3Pだぁああああ)

SIDE:ルイズ


 何あれ? 本当に殺し合い?
 いい大人のワルドがサイトの言葉に翻弄されていた。
どんな時でもサイトはいつもどおりなのだ。

サイトは五体のワルドの攻撃を器用に避けては反撃をしている。
あ、一体倒した。

「わ、私もやればできる子!」

 私は呪文を詠唱し、杖を振る。『ウィンド・ブレイク』を唱える。その呪文が、三体のワルドにぶつかり、表面で爆発した。
 ぼごんっ! と激しい音がして、ワルド達は消滅した。

「え? 消えた? わたしの魔法で?」

本体であるワルドと生き残った一体がこちらを見る。

「どこ見とんじゃ~」

サイトの言葉とともに一体は姿を消し、本体のワルドはその隙に距離を開けた。

「どうして死地に帰ってきた? お前を蔑むルイズのため、どうして命を捨てる? 平民の思考は理解できぬな!」

ワルドが問う。

「時間稼ぎが見え見えなんだよっ」

サイトは答えない。そのかわりに凄まじい剣撃をお見舞いしていた。

「く、お前、ルイズに恋しているな? 適わぬ恋を主人に抱いたか! こっけいなことだ! あの高慢なルイズが、貴様に振り向くことなどありえまいに! ささやかな同情を恋と勘違いしたか! 愚か者め!」

サイト、そうなの?


SIDE:サイト・ヒラガ


 ルイズさん、見てないで攻撃してください。

「ワケわかんねーこといってんじゃねー。何が言いたい? 真面目に戦え!」
「真面目にやってるわ! 改めて問う。なにゆえ戦う?」

ち、時間稼ぎに付き合う気はねーのにうるせー奴だ。

「理由は単純。てめーは俺を怒らせた」

(うおおお、ウェールズ、アンリエッタ、ルイズ、そして俺。4Pだぁあああああ)

「すげぇぜ! 相棒、そうだ。心の震えが、俺を振る!!」

胴体を切り離すつもりで斬りに行ったが、さすがワルド。左腕を犠牲にして避けた。

「くそ……、この『閃光』がよもや後れを取るとは……」
「ふ、早漏勝負なら俺が負けてた」
「最後までフザケた奴だ」

 ワルドは残った右腕で杖を振り、宙に浮いた。

「今回は私の完敗だ。だが、どのみちここには、すぐに我が『レコンキスタ』の大群が押し寄せる!」

 そう捨て台詞を残し、ワルドは壁に穴を開けて、飛び去っていった。


「サイトォ!」

 ルイズが飛び込んできた。

「すごかったな。ワルド三体も倒して俺より目立ってんじゃん」

そう言って、ルイズをナデナデしてあげた。

「あ、当たり前よ。使い魔が頑張ってるのに主人が頑張らないなんておかしいじゃない」

ヤベー、デレルイズ萌える。おっきしゃうんだお(^ω^)

「なあ、ルイズ」
「なによ?」
「このままじゃ、そのうち五万の敵に囲まれちまう。そしたらいくら俺たちでも死んじゃうよな?」

ルイズの顔が強張る。

「そうね」
「死ぬ前にキスくらいしよーぜ」

ルイズは真剣な顔で俺を見つめた。

「そ、そそそうね。死んじゃう前にそれくらいしてもいいわよね」

ルイズを抱き寄せる。

「サイト、出会えてよかった」
「うれしいこと言ってくれるじゃないの」

お互いに目をつむる。

「ん」

唇と唇が重なる。

 しかし、そんな甘い時間もすぐに終わる。
 ぼこっと、ルイズの横に地面が盛り上がった。

「なにごと?」

 茶色の生き物が顔を出した。
巨大モグラが出てきた穴から、ひょこっとギーシュが顔を出した。

「こら! ヴェルダンデ! どこまでお前は穴を掘る気なんだね! いいけど! って……」
 土に塗れたギーシュが出てきた。
抱き合っている俺たちを見てとぼけた声で言った。

「おじゃまだったかな?」
「な、なんであんたがここにいるのよ!」
「いやなに。『土くれ』のフーケとの一戦に勝利した僕たちは、寝る間も惜しんできみたちのあとを追いかけたのだ。なにせこの任務には、姫殿下の名誉がかかっているからね」
「ここは雲の上よ! どうやって!」

 そのとき、ギーシュの傍らに、キュルケが顔を出した。

「タバサのシルフィードよってお楽しみ中?」
「キュルケ!」
「アルビオンについたはいいが、何せ勝手がわからぬ異国だからね。でも、このヴェルダンデが、いきなり穴を掘り始めた。後をくっついていったら、ここに出た」

 巨大モグラは、フガフガとルイズの指に光る『水のルビー』に鼻を押しつけている。

「ねえ聞いて? あたし達、あのフーケを倒しちゃったの。といっても黒焦げで誰が誰だかわかんないから倒したってことでいいわよね? ところでダーリン、いつまでそうしてるの?」

フーケも上手くやったようだ。しかし、キュルケ、丸焦げ死体を幾つ作った?
意外と残忍ですね。

「ちょっと、離してよサイト」
「HAHAHA、照れるなよ。と言っている時間もないので開放」

スッと抱擁をやめるとルイズは名残惜しい顔をしていた。

ウェールズ、最後まで諦めんなよ。
礼拝堂の扉の外を見つめて願う。

「サイト、早くしたまえ」
「今行く」


 ヴェルダンデが掘った穴は、アルビオン大陸の真下に通じていた。
 俺たちが穴から出ると、すでにそこは雲の中である。落下する四人とモグラを、シルフィードが受け止めた。
 風竜は、緩やかに降下して雲を抜けると、魔法学院を目指し、力強く羽ばたいた。
 俺は、アルビオン大陸を見上げた。

「バルス!」

思わず叫んでしまったが後悔はしていない。
シルフィードの上、ギーシュは疲れたのか背びれを背もたれにして器用に眠っている。

俺はと言うと右腕にキュルケが腕を絡ませ乳を押し付けてくる。
左腕にタバサが腕を絡ませナイチチを押し付けてくる。
膝の上にルイズが座っている。尻が股間に当たってます。

「嬉しいが身動きがとれない」
「いいじゃない」

なんというハーレム。


結局俺だけ眠れなかった。








[18630] <ゼロのひどい使い魔 14>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:28


SIDE: 魔法衛士隊

 戦争が近いという噂が、二、三日前から街に流れ始めていた。隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』が、トリステインに侵攻してくるという噂だった。

王宮はそんな噂もありピリピリとしている。
警戒態勢もいつもの倍厳しい。
王宮の上空は、幻獣、船を問わず飛行禁止令が出されている。
その禁止令を聞いていないモノがいた。

王宮の上空にあらわれた風竜。
マンティコアに乗って近づくと風竜の上には五人の人影があった。
しかも風竜は、巨大モグラをくわえている。
怪しすぎる。

ここが現在飛行禁止であることを大声で告げた。
しかし、警告を無視して風竜は王宮の中庭へと着陸したのだ。

五人を確認する。
桃色がかったブロンドの美少女に、燃える赤毛の長身の女、そして金髪の少年、眼鏡《めがね》をかけた小さな女の子、そして黒髪の少年だった。
少年は、身長ほどもある長剣を背負って鋭い目つきでこちらを見ている。
こいつは油断ならない。

一瞬でそう判断して杖を取り出す。

「杖を捨てろ!」

本当は剣を捨てろと言いたかったが杖を持っているモノがいたので仕方なくそういった。
優先すべきはメイジで平民など二の次だからだ。

 一瞬、侵入者たちはむっとした表情を浮かべたが、彼らにたいして青い髪の小柄な少女が首を振って言った。
「宮廷」

彼女がリーダー格なのだろうか?
いや、そうではない。
黒髪の少年は私から目を離なしていない。
こちらの油断を誘い攻撃してくる恐れがある。

 一行はしかたないとばかりにその言葉に頷き、命令されたとおりに、杖を地面に捨てた。

「今現在、王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」

 一人の、桃色がかったブロンドの髪の少女が、とんっと軽やかに竜の上から飛び降りて、毅然とした声で名乗った。

「わたしはラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。怪しいものじゃありません。姫殿下に取り次ぎ願いたいわ」

ラ・ヴァリエール公爵夫妻なら知っている。高名な貴族だ。
 俺は掲げた杖を下ろした。名乗った以上、敵対するというわけではないだろう。

「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」
「いかにも」

ラ・ヴァリエール公爵さまの三女を見る。

「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、要件を伺おうか?」
「それは言えません。密命なのです」
「では殿下に取り次ぐわけにはいかぬ。要件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」

 困った声でいってしまう。

「お耳ついてますか? 密命だって聞こえませんでしたかー?」

ムカッとするが、流石に怒鳴るのも大人気ない。剣を持っているので貴族ではない。
服装も見たことない。なにより口の聞き方がなっていない。

「無礼な平民だな。従者風情が貴族に話しかけるという法はない。黙っていろ」
「てめぇは黙って中継やってろ」

いかにも軽く見下した言い方にかちんときた。

「なに強がってるのよ。ワルドに勝ったぐらいでいい気にならないで」

 今なんと言った? ワルド? ワルドというのは、あのグリフォン隊の隊長のワルド子爵のことだろうか? それを倒した? どういう意味だ?
 なんにせよ「ワルドに勝った」とは聞き捨てならない。
 俺は再び杖を構えなおした。

「貴様ら、何者だ? とにかく、殿下に取り次ぐわけにはいかぬ」
「ったく、おつむの弱い奴らだ。姫様ももうちょい頭使って欲しいね」

聞き捨てならん。

「連中を捕縛せよ!」

黒髪の少年が初めて私から視線を外した。

「お、姫様発見! おーい。助けて~。おーかーさーれーるー」



SIDE:アンリエッタ


 なにやら中庭がずいぶん騒がしい。中庭の真ん中で魔法衛士隊に囲まれたルイズの姿を発見した。

 『助けて~。おーかーさーれーるー』

私は確かにそう聞いた。

ルイズが危ない?
私は駆け出してルイズの元にたどり着いた。

「ルイズ!」

私を見たルイズは顔をぱあっと輝かせた。

「姫さま!」
「ああ、無事に帰ってきたのね。うれしいわ。ルイズ、ルイズ・フランソワーズ……」
「よー、こいつが俺らを殺すらしいぞ?」

サイトが恐ろしいことを教えてくれた。

「彼らはわたくしの客人ですわ。隊長どの」
「さようですか」

 私の言葉で隊長は納得するとあっけなく杖をおさめ、隊員たちを促し、再び持ち場へと去っていった。
 隊長はなんだかすごく怒っている顔をしていたけど、なんだったのでしょう?

「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
 ルイズはシャツの胸ポケットから、そっと手紙を見せた。
 私は大きく頷いて、ルイズの手をかたく握り締めた。

「やはり、あなたはわたくしの一番のおともだちですわ」
「もったいないお言葉です。姫さま」
「友達、じゃなくて使える駒の間違だろ?」

私は、顔を曇らせる。私のやったことは彼の言葉の通りなのだ。

「ごめんなさい。ルイズ」
「姫様、頭を下げないでください。こいつの言う事なんて無視すればいいんです」

それができればどれほど楽なことでしょう。彼の言葉は胸に突き刺さる。

「あと、てめぇが差し向けたワルドだが、裏切り者の上にレコンキスタ所属だったぞ」
「あの子爵が裏切りものだったなんて……。まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて……」
「はいはい、その前に移動しようぜ。ここじゃ色々まずいだろ? それくらいすぐに思いつけ」

確かに彼の言うとおりである。

「わたくしの部屋でお話ししましょう。他のかたがたは別室を用意します。そこでお休みになってください」

 彼の引き連れた協力者を謁見待合室に残し、私はサイトとルイズを自分の居室に入れた。
小さいながらも、精巧なレリーフがかたどられた椅子に座り、私は机にひじをついた。

 ルイズは、私にことの次第を説明した。
 道中、キュルケたちが合流したこと。
 アルビオンへと向かう船に乗ったら、空賊に襲われたこと。
 その空賊が、ウェールズ皇太子だったこと。
 ウェールズ皇太子にサイトさんが亡命を勧めたが、断られたこと。
 そして……、ワルドと結婚式をあげるために、脱出船に乗らなかったこと。
 結婚式の最中、ワルドが豹変し……、ウェールズを殺害しようとしたこと、ルイズが預かった手紙を奪い取ろうとしたこと……。

 このように手紙は取り戻してきた。『レコンキスタ』の野望……、ハルケギニアを統一し、エルフから聖地を取り戻すという大それた野望はつまずいたのだ。
 しかし……、無事、トリステインの命綱であるゲルマニアとの同盟が守られたというのに、私は悲嘆にくれた。

「まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて……」
「それ、さっきも聞いた。裏切りって役職高い奴がやるから意味があるんだぜ? 俺がレコンキスタならマザリーニに裏切らせるけどな。そしてらトリステインは自滅。後はすき放題やるだけさ。よかったねマザリーニが裏切らなくて」

それを聞いて私は恐ろしくなりました。確かにマザリーニ枢機卿が裏切り者ならこの国は終わります。

「わたくしが、ウェールズさまのお命を奪ったようなものだわ。裏切り者を、使者に選ぶなんて、わたくしはなんということを……」
「おーい、聞いてなかった? ワルドにやられてねーし。ウェールズは戦場に行っただけで死んだわけじゃねー」

戦場に行っただけ、ですか。

「ならば、ウェールズさまはわたくしを愛しておられなかったのね」
「いい加減にしろっ」

ゴチンと頭に衝撃が走る。

「あああ、あんた、姫様になんてことするの?」
「気に食わなかったから殴った今でも反省はしない」

殴られた。私、初めて殴られました。

「愛してなかっただぁ~? 言っとくがウェールズはお前を愛してたぞ。亡命しなかったのもトリステインに攻め入る口実与えるからってしなかった。全部あんたのためだ。なんでそれをわかってやらねー? このままじゃウェールズは……」

私は泣いていました。嬉しくて、悲しくて。



SIDE:サイト・ヒラガ


 ウェールズよぉ。女を見た目で選んだんじゃねーよな? 
 とりあえずヤッていい? いいよね!

「泣ーかした。サイト死ね!」
「アンリエッタが死ね!」

ルイズのラッシュを避ける。

「ルイズ、いいのです。ウェールズさまが亡命しようがしまいが、攻めてくるときは攻めよせてくるでしょう。攻めぬときには沈黙を保つでしょう。個人の存在だけで、戦は発生するものではありませんわ」
「……それでも、迷惑をかけたくなかったんですよ。きっと」

 アンリエッタは、深いため息をつくと、窓の外を見やった。

「あ、ウェールズからの伝言あるわ」

アンリエッタは俺を見つめた。なんか小動物みたい。

「どのような伝言でしょう?」
「教えない」

( ゚д゚)
そんな顔しても駄目だ。

(´・ω・`)

絶対に教えんぞ。

「意地悪しないで教えてあげなさいよ」
「ダメだね。俺はウェールズが死んだら必ず伝えると言ったがウェールズは死んだのか?」
「あ」

貴族派『レコンキスタ」がアルビオンを制圧した。という噂はあるがウェールズが死んだという報は聞いていない。

「ウェールズ様は生きていると?」
「少なくとも死んだという事実がわかるまでは伝言はお預けだ。死んだなら必ず伝えに来る」

約束だしな。

「姫さま……。わたしがもっと強く、ウェールズ皇太子を説得していれば……」
「いいのよ、ルイズ。あなたは立派にお役目どおり、手紙を取り戻してきたのです。あなたが気にする必要はどこにもないのよ。それにわたくしは、亡命を勧めて欲しいなんて、あなたに言ったわけではないのですから」
「大体、てめぇーの頼み方が悪いだろ。そんなに愛してるならウェールズを連れてこいって頼めばよかったろ? そう言ってれば拉致ってきたのに」

アンリエッタはそうですね。といってにっこりと笑った。
なんだ、そんな顔もできるのか。

「わたくしの婚姻を妨げようとする暗躍は未然に防がれたのです。わが国はゲルマニアと無事同盟を結ぶことができるでしょう。そうすれば、簡単にアルビオンも攻めてくるわけにはいきません。危機は去ったのですよ、ルイズ・フランソワーズ」

 それを聞いて、ルイズはポケットから、アンリエッタにもらった水のルビーを取り出した。

「姫さま、これ、お返しします」

 アンリエッタは首を振った。

「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」

 ルイズは頷くと、それを指にはめた。

「あ、姫様、報酬よこせ。二億五千エキュー」
「なんだか十倍くらい水増ししていませんこと?」
「ばれたか、二千五百だ。さあ、だせ」

ふふ、とアンリエッタは笑顔だった。嫌な予感がする。この女まさか。

「出します。出しますが、サイトさんはその時と場所の指定まではしていません。
そのことを思い出してください。
つまり、私がその気になればお金の受け渡しは十年後、二十年後ということも可能ですわ」

「オーマイゴッドォォ!!」






[18630] <ゼロのひどい使い魔 15外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/13 18:18




~ サイト・ヒラガのクッキング教室 ~


 以前、タバサとフードファイトで敗北してハシバミ草の新たなる料理を振舞ったことがある。(ゼロのひどい使い魔 8後 参照)

タバサは俺のことをハジバミ信者と勘違いしたらしく、事あるごとに新たなるハシバミ料理を作って欲しいと懇願してきていた。

「以前食べた料理が忘れられない」
とか
「あなたはハシバミの可能性を示してくれた」
など
 いつもの無口はどうした?

 そんなタバサも萌えるが、しかし、女の子なら自分で料理しなさい。

「そんなわけで記念すべき第一回のハシバミ料理研究会を開催する」
「わー」

シエスタがパチパチと拍手してくれた。タバサもそれにあわせて拍手をしていた。
厨房にはマルトーさん含め数人の料理人がいる。
どうも、俺の作ったレシピに興味があるようで、仕込みを手伝ってくれた。

俺がハシバミ草を中心とした料理を提供するだけの会なのだが、参加者はいた。

タバサ、こいつが言い始めたことなので参加している。
キュルケ、タバサが珍しく自ら動いたのが気になったのか参加する。
ルイズ、俺が開催するということで主人として参加する。
フーケ、どこから聞きつけてシレッと参加した。
モンモランシー、いざという時の救護班として参加させた。
ギーシュ、声もかけてないのに勝手に参加した。

「食い意地はった奴らだな、このいやしんぼ!」
「君が何かするというので気になって来てみれば美味しいものを食べさせてくれるというじゃないか」
「なんでハシバミ草なの? もっといい食材あったでしょうに」

ギーシュ、モンモランシーがイチャモンをつけてきた。

「なら帰るといい。これは私の提案」
「ははは、タバサ、これはチャンスだ。ハシバミちゅう、じゃなかった。好きになってくれるかもよ
?」

タバサは少しだけ考えて声を出す。

「期待している」


SIDE:マルトー


いや、『我らの剣』が最近『平民の賢者』だとか『変態』だと呼ばれてるのは知っていたが、料理もできるのか。
しかも俺が聞いたこともない手法を知っていた。正しく賢者だな。

ハシバミ草は苦味が強くて食べれる人を選ぶ食材だ。

出汁っていうものを使えばどんな料理も多少うまくなるらしい。
『我らの剣』のいう、ショイウだったか? 悪いが聞いたことも無い調味料だ。
なんでも大豆から作るらしい。詳しい作り方はわからないらしいが、酒と同じように大豆を発酵させると言っていた。
今度試してみることにする。

前菜はハシバミ草を油でさっと炒めた後酒に砂糖と調味料を入れ煮込んだものだった。
一口頂いたが、苦味の中にも甘みがあった。これなら子供での食べられそうだ。

次に出したのは小麦粉を水でといたものを油で揚げたものだった。
テンプラとかいう料理らしい。

こいつも頂いたが酒のつまみに合いそうだった。

しかし、長年料理をしてきているが驚きの連続だ。

小麦粉、パン粉、溶き卵、を肉につけて揚げる。器用に肉に切り込みを入れてハシバミ草を挟み込んでいた。

腕も悪くない。作るものもうまい。
料理人として生きていけそうだ。

薄切り肉入り野菜炒めを作りながら『我らの剣』がいった。

「料理は楽しいな。久々にいい食材と道具使えたし、気持ちいい食いっぷりもよろしい」
「『我らの剣』よぉ、わかるかい? 料理人の喜びよ」

剣士で、賢者で、料理人。才能のあるやつは羨ましいね。



SIDE:キュルケ


 やだ、何これ、すごく可愛い。友人であるタバサを私は鑑賞する。
 リスのように口をもごもごさせて一生懸命食べている様が可愛い。
もう、そんな顔いつもなら見せてくれない癖に。

「あ、おいしい」

 感嘆の声が自然と出た。
 ハシバミ草の苦味を活かしている。
 いや、苦味がいつもより和らいでいて、丁度いい苦味だ。

「あらこれもおいしいわ」

テーブルに並ぶ料理をお皿に取り分けて食べる。
みんな私と同じように一口食べた後はどんどんと料理を食べていっている。

「ちょっと! タバサ食べるの早すぎよ! 私まだそれ食べてないわ!」

ルイズがタバサに注意したが、タバサは聞く耳持たないようすで料理を口に運んでいる。

「ルイズ、私の分でよかったら少し分けてあげるわよ?」
「へ? あ、ありがと」

 タバサの微笑ましい光景を私は邪魔したくなかった。


SIDE:モンモランシー


 初めて食べるものが多かったわ。それにしてもいつも見ているタバサじゃないわね。
 
ナイフとフォークを頻りに動かしている。彼女の小さな体のどこにあんな量が入るのだろう。
体を壊したら私が診てあげるのよね。救護班って何よって初めは思ったけどタバサを見ていると納得できるわ。

「あら、これもおいしいわね」
「そうだね、モンモランシー。いや、彼は本当になんでもできるな!」

ギーシュがそういった。確かに彼のできないことって何かしら?
召喚されて一ヶ月も経ってないのに姫様から密命を受けて手柄を立てたって噂が流れてるわ。
彼のやっている商売も考えると偉業なのではないだろうか?

彼は言う、商売相手に平民も貴族もエルフもない。全て平等に扱えと。
私は言う。

『それって、共和制? だとしたらあなた』
『バーカ、ロール嬢。民主制だ。』
『誰がロール嬢よ! って民主制?』
『政治家になるなら答えてやる。長い長いお話を理解できるまで教え込むよ』
『いいわよ。断るわ』

興味があったが、政治家になるつもりなどないのでこれ以上聞かない方がいい。

彼の話に間違はない。
彼の行動に無駄はない。

きっとこの料理につられて来た人たちは彼に組み込まれた人たちだろう。
私もとっくに組み込まれてるのが悔しいわ。



SIDE:ルイズ


 私はハシバミ草があまり好きではなかった。でもサイトの出すハシバミ料理は嫌いではない。
 むしろ好きな方だ。ほのかな苦味。お酒に合う。
 
 そろそろお腹も満たされた頃合いにデザートが出てきた。

「なにこれ?」
「クックベリーパイ、ハシバミ風」
 
私の好きな食べ物である。

「ハシバミ風ってなによ?」
「それっぽいってこと、まあ、食えよ。クックベリーパイ好きなんだろ?」

アレなんで私の好物しってるの?
疑問に思う。同時に嬉しくもある。

「ご主人の好物を出すなんて気が利くじゃない」
「気に入ったら有料で作ってやるよ?」(キラ☆)

ドキッ――
なんて顔すんのよ。

料理もできるし腕っ節もある。使い魔としてはかなり大当たりなんじゃない?
改めて私はこの使い魔を召喚できたことをよかったと思えた。



SIDE:タバサ


彼が悪い。
私はお腹をさすりそう思う。

「あら、たくさん食べたわね。なにそれ? ぷぷ」

私のお腹は妊娠したかのように膨らんでいた。

「子供ができたみたいですね」

ミス・ロングビルがそういうと周りは爆笑に包まれた。
顔が赤くなるのがわかる。

「不覚」

本当にそう思う。
少しだけ昔を思い出し彼にいたずらしてやることにした。

「彼との愛の結晶」

ビキッと空気が凍ったような気がした。
きっと気のせいだろう。

「言うわねぇ。タバサ、恐ろしい子」

キュルケがそう言った。
恐ろしいのは彼が作った料理であり私は悪くない。
そう、悪くないはずだ。

満腹感と幸福感に包まれながら私はそう思った。






――――――――――――――――――――――

外伝はどうしてもタバサになってしまうんだ……

――――――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 16>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/14 22:39


SIDE:マザリーニ


アンリエッタ姫の呼びつけで部屋に入るとギャンブルに大負けしたような平民の姿があった。
誰だ?
そう思ったが、中庭での報告を聞いていたので私はアンリエッタ姫の任務を受けたラ・ヴァリエールの関係者と思いついた。

「して、姫殿下どういったご要件で?」
「マザリーニ枢機卿、私が呼び出しましたが要件があるのは彼の方です」

そう言って指さしたのは打ちひしがれていた平民だった。

「彼は平民のようですが?」
「正確にはルイズの使い魔です」

ラ・ヴァリエール公爵の娘が平民を召喚した?
私は耳を疑った。

「マザリーニ枢機卿の思うところはわかりますが、私が保証します。彼は平民で、人間でありながら同時にルイズの使い魔なのです」

私は彼を見る。
格好は平民っぽい。持っている大剣からも平民を思わせる。
主であるはずのラ・ヴァリエールの姿が見当たらない。主と使い魔は一心同体。
ラ・ヴァリエールはいったい何処へ?
それよりも今は優先すべきことがある。。

「してその使い魔がどのような要件で?」
「姫様に一杯食わされたので八つ当たりです」
「そのようなこと言ってないで! さっき私にお話してくれたことをマザリーニ枢機卿にも言うのです」

この平民はなんだ?
姫様があんな言葉遣いをするなど、幼年期の頃のようだ。

「さっきある考えを姫様に言いました。俺のその考えは、姫様の発案にしろって言いましたがどうしても俺の発案にしろと聞きいれやがらないのであなたは呼ばれました。以上現場からの中継でした」
「サイトさん。あなたが伝える気がないのなら私がいいますよ? そのかわり報酬はなかったことになりますが」
「借金を帳消しにするとはいい度胸。俺から言う。お前は黙ってろ」

姫殿下に対してなんて失礼な態度をとる平民であろう。
私は兵を呼び出して捕まえる思案をしていたところにあろうことか姫殿下が私の思考を遮る。
 
「いいのです。マザリーニ枢機卿」
「ですが、姫殿下」
「サイトさんお話を」
「おk。マザリーニさん。アルビオンはレコンキスタによって制圧されたって噂が広まってます」

確かに、王家は破れ、貴族派の勝利となった。おそらく、次は我が国に攻めいるのは確実だろう。

「しかし、おかしなことにウェールズの死亡は噂されてません。つまり生死不明なわけです。それを有益に使いましょうって話です。簡単に言うとウェールズはなんとか生き長らえてゲルマニアに亡命したってのを広めてほしいんですよ」

 私は理解する。この平民は只者ではない。
 私は思考する。彼の言うとおりウェールズ皇太子が生きてゲルマニアに亡命したという話を広めればアルビオンの貴族派はゲルマニアと一戦することになる。勝敗は? 
今すぐ戦えば間違えなくレコンキスタは敗れる。
時間をかけるしか無い。しかもその噂の真相も探るために時間を取られる。
そのうちに私たちはゲルマニアと同盟を結び戦力を確固たるものにできたとすれば?
一点を覗いて私たちに不利益はない。

「しかしながらその噂をトリステインが広めたら結局トリステインがウェールズ皇太子の亡命を進めたことになり最悪アルビオンとゲルマニアに攻めいられますぞ?」
「ルイズ、俺の主人のことですが、学生です」

突然話に関係ないことを彼は言葉にした。

「それがどのような関係が?」
「ルイズのお友達にゲルマニア出身がいましてねぇ。大変仲がよろしいことで」

その話に私はピンときた。ツェルプストー家。ヴァリエール家と国境を挟んだ隣にあるゲルマニアの名家だ。

「噂はゲルマニアの方から流れました。今から同盟組む国の言う事なので私たちは信頼します。よってウェールズは生きてゲルマニアに亡命しました。肝は"ゲルマニアの方"から噂が流れたと言う事。決してゲルマニアが流したといわないこと」

とんだ詐欺師だ。ペテン師だ。
私は彼の考えが面白く顔を歪めてしまう。

「はは、確かにあなたの言うとおりだ。ゲルマニアの方から噂は流れたがゲルマニア自体が流したわけではない。方便ですな。実に面白い」

ゲルマニアには悪いが利用させてもらおう。なにせこちらに実害はない。むしろこちらに利益が生まれる。
同盟国として信頼しているという名義が生まれる。
さらに言えば所詮、噂である。
ゲルマニアもトリステインもアルビオンから真相を探られても表向きにはたかが噂だ。放っておけと言えばいいだけである。
となれば噂を流すのは早い方がいい。もしウェールズ皇太子が死んでいるという事実がわかってしまったらこの策は破綻してしまう。

「サイト!」

扉が開き彼の主人である人物が現れた。



SIDE:サイト・ヒラガ


 俺の提案した策はウェールズが死んでいないことが前提である。戦力差から言って死んだも同然だ。消息不明とは言うものの、死んでるって考えるのが普通だ。死体が見つからない内にできることはやっておいた方がいい。

「サイト!」

ツンデレ属性のルイズが現れた。

「あ、マザリーニ枢機卿じゃありませんか」
「これは、ラ・ヴァリエール嬢、ご機嫌麗しゅうございます。覚えていないとは思いますが幼年期いらいですな」
「いえ」
「あいさつはそれまでで良いっしょ? で、なんて?」
「あ、うん。キュルケはもう実家の方へいったわよ」

できるだけ早く俺の考えたことを実行するためにルイズに頼んでキュルケには実家に帰ってもらった。
ゲルマニアで噂を流してもらうためだ。現地にいる元ボーイフレンドとか有益に使えって言っておいた。

「タバサも行っちゃったわ。一刻も早くって言ったらタバサが協力してくれるって」
「友情ですなぁ」
「一体どういうことかね?」

骨が聞いてきた。

「ああ、さっき言ったことですよ。完璧に事後報告でした。でも、マザリーニさんならわかりますよね」
「ウェールズ皇太子の遺体が見つかっては意味がない。ということですかな?」
「イグザクトリー」

俺と骨は嗤い合う。

「もしやと思いますが、最近噂の『平民の賢者』とはあなたのことでは?」
「いつの間にかそうなってますね」
「あなたが貴族ならどれほどよかったことか」
「なら平民も貴族になれる制度でも作れば? ゲルマニアは金で貴族になれるって聞きましたが、トリステインはそういうのないんでしょ? あと言っとくけど俺は貴族になるつもりはないんで」

封建制度だっけ、俺の世界じゃ中世社会の基本的な支配形態だったか。差別社会ってレベルじゃねーぞ。

「賢者であるあなたの意見は傾聴に値する話ですな」
「マザリーニ枢機卿、こいつの言い分は話半分程度に聞いておいた方がよろしいですわ」

どういう意味だ、ルイズ。
そうかねと、何故か納得した骨はやることがあるのでと言って部屋を出ていってしまった。

「……」

アンリエッタは何か考えている様子。たぶんアレだ。アニエス率いる銃士隊の構想でも考えてるんだろう。

「もうやることもないし帰ろうルイズ」
「そうね」

二人して部屋を出て行く。

馬で学院に向かう途中で気づいた。


「あ、ギーシュ忘れてた」







[18630] <ゼロのひどい使い魔 17>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:29

SIDE:ワルド

 かつては名城と謳われたニューカッスルの城は、惨状を呈していた。
 彼は生きておるまい。最後までバカにした忌々しい使い魔を思い出した。
しかし、城壁の様子。
度重なる砲撃と魔法攻撃で、瓦礫の山となり、無残に焼け焦げた死体が転がっているのを見て流石の彼でも死んだと思う。焼け焦げた死体の中には雇ったフーケの遺体もあるだろうが、誰が誰だかわからない状態だ。

 攻城に要した時間は長かったがついには我々レコンキスタが勝利した。
 反乱軍『レコンキスタ』は、すでにアルビオンの新政府である……。
損害は想像の範囲を超えていた。三百の王軍に対して、損害は二千。怪我人も合わせれば、四千。戦死傷者の数だけみれば、どちらが勝ったのかわからないぐらいであった。
 しかし、所詮は多勢に無勢。時間の問題であった。
均衡は破れ、一旦、城壁の内側へと侵入された堅城は、もろかった。
王軍は、そのほとんどがメイジで護衛の兵を持たなかった。王軍のメイジたちは、群がるアリのような名もなき『レコンキスタ』の兵士たちに一人、また一人と討ち取られ、散っていった。

 敵に与えた損害は大きかったが……、アルビオンの革命戦争の最終決戦、ニューカッスルの攻城戦は、百倍以上の敵軍に対して、自軍の十倍にも上る損害を与えた戦い……、伝説となった。
 伝説の象徴プリンセスウェールズは消息不明。
 戦が終わった二日後、照りつける太陽の下、死体と瓦礫が入り混じる中、僕はウェールズの遺体を探す作業をしていた。

どこからともなくウェールズ皇太子は生きてゲルマニアに亡命したという噂が流れている。
手を打とうにも後手に回りすぎていた。
ゲルマニアにもトリステインにもされるがままであった。
アルビオンの新政府は、兵は先の戦いでままならない。内政も整っていない。
なにせ、ニューカッスルの攻城戦が終戦して一日程度で噂は広がったのだ。

 瓦礫の山を見る。いくらガンダールヴとはいえ、僕と戦って、力を消耗していたのだろう。
攻城の隊から、それらしき人物に苦戦したという報告は届いていない。しかし、彼がそう簡単に死ぬかな?

二日前まで礼拝堂であった場所、今ではただの瓦礫の山だった。
戦場を駆け抜けてアルビオンを脱出するのは不可能に近い。だとしたら籠城戦で戦うはずだ。
もしくは、礼拝堂に身を潜めて頃合いをみて脱出。いずれにしてもここに何かあるはずである。

 僕は呪文を詠唱し、杖を振った。小型の竜巻があらわれ、辺りの瓦礫が飛び散る。
 徐々に、礼拝堂の床が見えてきた。
 僕はルイズとサイトの死体を探した。 しかし……、どこにも死体は見つからない。

 代わりに手紙が見つかった。おそらくアンリエッタが、ウェールズにしたためたという手紙だろう。

「ふ、どうやら幸運は僕の方にあったな」

遠くから声をかけられた。

「子爵! ワルド君! 件の手紙は見つかったかね? アンリエッタが、ウェールズにしたためたという、その、なんだ、ラヴレターは……。ゲルマニアとトリステインの婚姻を阻む救世主は見つかったかね?」
「は、こちらに」

 やってきた男、『レコンキスタ』総司令官を務めている、オリヴァー・クロムウェルに手紙を渡す。

「おおお! 同盟阻止の救世主かね。理想は、一歩ずつ、着実に進むことにより達成されるぞ」
「閣下、内容をお確かめください」
「どれ」

 閣下は手紙を読み始める。すると見る見る顔が歪んでいく。そして私を見て声を発せられた。

「これは、どうゆうことかね? どうやら君に当てた手紙のようだが」
「は?」

 アンリエッタがウェールズに渡したはずの手紙がなぜ僕に当てた手紙になるんだ?
閣下から手紙を受け取り、内容を確認する。

"やっぷー。この手紙を読んでいるどこかの誰かさん。"
"実は君にいいことを伝える。これを読んでる君!できれば多くの人に広めてくれ!"
"トリステイン女王陛下魔法衛士グリフォン隊隊長ワルド子爵は実はホモだ。"
"奴の姿を見たら尻を隠せ。あいつはいい男なら誰でも構わず襲う狩人だ。君も気をつけろ"

汚い字でそう書かれていた。

「ワルド子爵、君の性癖は理解した。私以外なら好きにするといい」

憐れんだ顔で俺を見ている。

「違います。閣下! 決してそのような性癖はありません」
「皇帝だ、子爵」

 クロムウェルは笑った。しかし、目の色は変わらない。

「手紙の内容は嘘です。どうやら一杯食わされたようです。同盟阻止の手紙ではなかったようです」
「食わされたって、イヤ、そんな。子爵は受け? 私にはずぶりとする趣味もされる趣味もない」

そういってクロムウェルは後ずさった。

「違うって言ってるでしょ? ああもう、あの使い魔め!」

僕は瓦礫を吹き飛ばした。

「男のヒステリーはみっともないよ。おや? その穴は?」

 ぽっこりと開いた直径一メイルほどの穴を見つけた。風が吹いている。空に通じているようだ。

「どうやら逃げられてしまったようです閣下」

ふつふつとたぎる感情を抑えて報告した。

「どんまい! だから獲物を見る目で見るのは止めて」
「ホモから離れてください」
「いいのかい? ああ、じゃあここには要はないし帰るとする」

そう言ってクロムウェルはそそくさと逃げるように、走って帰っていった。

「く、はははは。殺す! 絶対にあいつは殺してやる!」

忌々しい使い魔を思い浮かべて復讐を誓った。



SIDE:サイト・ヒラガ


 魔法学院に帰還してから三日後。ウェールズは相変わらず消息不明のままであった。
噂はいい感じで一人歩きして今や平民の間にも知れ渡っている。
俺は個人的にウェールズの消息を確かめるために暗躍中である。
一方、アンリエッタは、帝政ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世との婚姻を発表した。
式は一ヵ月後に行われるはこびとなり、それに先立ち、軍事同盟が締結されることとなった。

同盟の締結式に何故か俺に出席の招待状が来たが、骨からの誘いだったので断った。

 アルビオンの新政府樹立の公布が為されたのは、同盟締結式の翌日。両国の間には、すぐに緊張が走ったが、アルビオン帝国初代皇帝、クロムウェルはすぐに特使をトリステインとゲルマニアに派遣し、不可侵条約の締結を打診してきた。

同盟の締結式を断ったはずの俺にそう報告する骨からの手紙が来た。
ついでに噂のおかげでアルビオン新政府は余計な金を使わされて涙目みたいなことも書いてあった。

追伸には、ハルケギニアに表面上は平和が訪れが、私たち政治家たちにとっては、夜も眠れない日々が続くだろうと追記されていた。

骨がかわいそうだが普通の貴族や、平民にとっては関係のない話である。
それは、俺でも例外ではないはずだ。
だからつかの間の平和を楽しむさ。








[18630] <ゼロのひどい使い魔 18>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/16 04:57




「なあ、こんなに頼んでもだめなのか?」
「だめだね」
「千までならだす」
「お金の問題じゃないよ」
「頼むって」
「い・や。こればっかりはアタシの感情の問題だ」
「俺のこと嫌いになったのね?」
「はん、そんな風に言って煙に巻こうとしても無駄だね」
「さすがは年の功」
「うっさいわね。アタシはまだ23だよ!」
「フーケ、お願い☆」
「可愛くしても無駄だよ。そもそも国王により家名を取り潰されているんだよ?」
「ぐぬぬぬ。強情だな!」

ウェールズ捜索隊にフーケを入れなければならない。アルビオンの地理にも詳しい上に、有能だ。
しかし、頑なに断られている。そりゃフーケにとってはウェールズは目の敵だ。
だが、ティファニアにとってはウェールズは従兄になる。厄介なことにウェールズの父がティファニアの両親を殺したのだ。

フーケ、マチルダ・オブ・サウスゴータ。アルビオン貴族の出身。
いつだったか、月の綺麗な夜にマチルダは半生を語ってくれた。
俺はマチルダのことは知っていたが、実際に聞くと少々同情してしまう。
話の最後に

『というわけさ。まあ、今はあんたのおかげでまっとうに生きてる。それだけは感謝してるよ』

そう言われて俺は嬉しかった。

『フーケ、いや、マチルダ。俺だ、結婚してくれー』

とハッチャケたのはいい思い出である。

「親の罪は子にはないって。恨む王国も新しくなったし気分も少しは晴れたろ?」
「それでも許せない物は許せないね」

手詰まりである。トリステイン、アルビオン、ゲルマニアから今や知らないモノはいないと思われる伝説を残し姿を消しているウェールズ。
三国の政治家達は婚姻に忙しい。既に潰れた国家の王子など知った事ではない。といった感じで捜索も早々と打ち切られた。
いや、トリステインのみ小規模で継続しているらしいが、機能してるかもわからない。

ウェールズがワルドに殺されなかった。これによる原作改変がどのような変化をもたらすか分からない俺は学院を空けることができない。
結局は、ウェールズが俺の元を訪れるのを待つばかりである。

「あ~もう、わかった。だが、約束しろ。ウェールズのことが何かわかったら必ず俺に伝えること。目の前に現れても殺さないこと。ウェールズが親の代わりに謝罪したら許すこと。わかったな?」
「アタシは死んでると思うけどね。もし現れたらあんたの言うとおりにしてやるよ」

マチルダは既にウェールズが死んでいると思い込んでいる。なのでどうでもいいように返事をした。

「絶対守れよ? 守らなかったら俺の愛人だからな」
「はいはい」


SIDE:ウェールズ



 私は目を覚ます。ここは? 見知らぬ天井が見える。
 服装は決戦時の時のままだ。杖もある。
私は思い返す。
貴族派が攻め込んできたという報告を受けた。その時に部下たちは私を逃がしたのだ。
私は最後まで戦い死ぬつもりだった。サイトくんのいう逃げろと言う選択肢は考えていなかったのだ。

すると部下は言った。
 
『あの変な少年からの伝言でしてね。ウェールズだけはなんとしても逃せ。ウェールズが生き延びればいずれ取り戻すことができるって。私らは王子のいない隙に退路をつくっておきました。もうここは落ちます。
だから生き延びてくだせぇ。これがここに居る全員の総意です』

『しかし、私は』
『へへ、あのお方の言うとおりだ。殿下、私はここに居る総意っていったんです。まさか王が国民の総意を無視するんですか?』

国民の総意。確かに私に使える国民はもう、ここにいるだけだ。
サイトくん。

『すまぬ。私だけ……』
『私たちの代わりに生き恥さらしてください。頼みます』
『さあ、長いは無用。いってくだせぇ』

「そうだ。私は逃げた。その後、敵に見つかり交戦して魔力を使い切った」

どこをどう馬で走ったかも覚えていない。確か、馬ごと倒されてその後……。
だめだ。思い出せない。

「あ、おきたの?」

目の前に現れた少女は美しかった。

「よかった。四日も眠ってたから……、目覚めないかと思って心配してたの」
「私はそんなに寝ていたのか……」

 改めて少女を見る。
粗末で丈の短い、草色のワンピースに身を包んでいたが、美しさを損ねるどころか、逆に清楚《さを演出していた。短い裾から細く美しい足が伸び、そんな足を可憐に彩る、白いサンダルをはいている。
 そんな素朴な格好をしていた。
 そして……、金色の髪の隙間から、ツンと尖った耳が覗いていた。

「エルフ……」

髪の隙間から覗いた自分の耳に気づき、両手で隠した。みるみるうちに、その頬が桃色に染まっていく。

「ご、ごめんなさい」

私は何をやっている。謝るのは私の方だ。

「私の方こそすまない。どうやら君は私を助けてくれた恩人のようだ」
「え? うん、すごい怪我してた」

私の体には包帯が巻かれていた。なるほど、記憶のないのはケガのせいらしい。

「治療もしてくれたのか、先程は本当にすまない。恩人に対して失礼した。助けてくれてありがとう。ほんとにありがとう」
「ど、どういたしまして。困ってる人を助けるのはあたりまえのことよ」

頬を赤らめたまま答えてくれた。

「そうか、世話になった。私はどうすれば君に恩を返せるだろう?」
「べ、別に返さなくてもいいわ」
「そうはいかない。王族である私がそんなの許さない」

といっても既に私一人だが。

「王族? あなた王子様だったの?」
「元、がつくがね」
「もしかして、伝説のウェールズ皇太子様? きゃ、すごい人に会えちゃった」

伝説? どうゆうことだ?

「なぜ私のことを知っている? いや、伝説とは? 今アルビオンはどうなっている?」
 彼女は驚いた顔になった。しまった。怖がらせてしまったか。
「すまん。気になってしまって焦っていた」
「え、ええ、私はあまり知らないけどウェールズ皇太子のことはすごい噂になってるわ」

そう言って彼女は話してくれた。

アルビオンの反乱は、ニューカッスルの攻城戦という名前がついた。
王党派は破れはしたものの伝説を残す戦いを繰り広げた。
貴族派が勝利したものの、王党派の主要人物つまり、私のことだが。
消息不明になった。
噂ではゲルマニアに生きたまま亡命した。それをトリステインも同盟国とうことで信じた。
よってアルビオンは翻弄させられたという。
消息不明の王子は亡霊となってアルビオンと戦っているなど。
結局、今はゲルマニアに亡命したということが真実じゃないかと囁かれているらしい。

「実際はアルビオンの森の外れにいたと、ハッハッハ。サイトくんだ」

噂を流した犯人を当てる。そもそもゲルマニアに亡命しろといった張本人だ。

「サイト? でね、昨日までだったら居場所を知らせるだけでも何年も働かないで暮らせる賞金かけられたんだけど、急になかったことにされちゃったの」

つまり、国同士でなにかあったわけだ。

「その噂の犯人は?」
「知らないわ。ただゲルマニアの方から噂が流れてきてるから皇太子自らがゲルマニアから噂を流しているって話もあるわ」
「そんなはずはないね」
「そうよね」

二人して笑いあう。

ガチャリと扉が開く。

「誰と話してると思ったらこりゃあ坊主の勝ちだね。はあ」




SIDE:マチルダ。


なんてこった。サイトに暇をもらって戦地であったアルビオンにいるテファが心配で戻ってきたら、誰かと仲良く話していた。珍しいと思い部屋に入ってきたらまさか親の仇と話してるなんてね。

「そういえばまだお名前いってなかったね。私ティファニア」
「ああそうだったね。失礼。私は既に知っていると思うがウェールズ・テューダー」

アタシをおいて自己紹介し始める二人。ティファニアは知らない。ウェールズが親の仇で従兄であることを。

「テファ、ちょっとおいで」
「なに?」

アタシは思考をめぐらす。さっきのやり取りを見ているとウェールズもテファの事を知らない。
それにエルフだとわかっているのに恐れない。
サイトの言っていたことを思い出す。

『ウェールズはおともだち、そう、おともだちなのよ』

ウェールズのことをなんで気にするか聞いた時の答えだったが妙な答え方をしていたのが引っかかる。
そもそも一日そこらで友達を名乗るか?
テファには悪いがウェールズと大切な話があるといって部屋を出ていってもらった。

「大切な話とは私になにかあるのかい?」
「ええ」

どう切り出そう。サイトと友達かいと聞いてしまうか?

「ウェールズ皇太子ご本人ででよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだ。といってももうそれを証明できるものはこの服装と指輪くらいだが」

確かにアルビオンの軍服を着ている。

「お仲間は?」
「知っての通り皆勇敢に戦い勇敢に死んで行った。私だけ生き恥をさらしているが友人との約束でね」
「その友人とは誰のことでしょう」

アタシは胸が高鳴る。サイトのことだ。本当にサイトとは友人なのだ。

「はは、変わった人間でね、そうかと思えば賢者のごとく冴えのあることも言う最高の友人だ」

間違いない。

「その友人のお名前はなんというのでしょう?」
「サイト」

複雑な想いがあるが、サイトとの約束だ。

「お迎えに上がりましたわウェールズ皇太子」







[18630] <ゼロのひどい使い魔 19>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:29




 マチルダは俺の頼みを聞いてくれなかった。

「お休みください」
「なんで?」
「アルビオンの孤児院が心配なので様子を見てきます」
「まじか~?」
「言っとくけど本当に孤児院の様子見てくるだけだからねっ! ウェールズの事なんか探しやしないよ」
「なんというツンデレ」

 別にテファのために休み上げたわけじゃないんだからねっ!


 朝からルイズがどうかしてた。ついにお着替えフラグがなくなってしまったのだ。

「向こうむいてて」
「えー」
「向こうむいてなさいって言ってるの!」
「ついにお兄ちゃんのこと異性として意識し始めたか」
「だれがお兄ちゃんだって?」
「サーセン」

杖を向けられたので素直に謝っておく。

アルヴィーズの食堂。あまり俺とは縁のないところである。
飯は厨房で貰っている。
朝飯はルイズが終わるまでお預けなのだが別に気にしちゃいない。

「今日からあんた、テーブルで食べなさい」
「マジで?」
「いいから。ほら、座って。早く」
 ルイズの隣に腰掛けた。
そこにいつも座っている。マリコルヌがあらわれて、抗議の声をあげた。

「おい、ルイズ。そこは僕の席だぞ。使い魔を座らせるなんて、どういうことだ」
「ほら、人間のような豚さんがああ言ってるぞ?」
「誰が、豚だ!」

 ルイズはきっとマリコルヌを睨んだ。

「座るところがないなら、椅子を持ってくればいいじゃないの」
「ふざけるな! 平民の使い魔を座らせて、僕が椅子をとりに行く? そんな法はないぞ! おい使い魔、どけ! そこは僕の席だ。そして、ここは貴族の食卓だ!」

 虚勢だとわかる。ちょっと震えているし。
 ギーシュに圧勝し、フーケから盗品を奪い返した俺はなんとメイジ殺しらしい。
そうゆう噂になっているのだった。
 おまけにルイズたちと数日学院を留守にしている間に、なにかとんでもない手柄を立てたらしい、ということさえ、昨日の今日なのに噂されていた。

「震えてる。初めてなの? 大丈夫、優しくするから」
「ひっ」
「バカいってないで、マリコルヌ、さっさと椅子持ってきなさい」
 
 マリコルヌは椅子を取りにいくために、すっ飛んでいった。

「な、なにヘンな目で見てるのよ」
「お兄ちゃんって言ってみて?」

一度でいい、くぎみーボイスで言われたかったのだ。さあ、俺を萌えさせてくれ。

「ぶざけんな!」
「ですよねー」

チキショウ、チキショオオオー。




SIDE:ルイズ


 
 何がお兄ちゃんと言ってみてよ。バッカじゃないの?
 教室に向かう。
 私が教室に入ると、すぐにクラスメイトたちに取り囲まれた。

私たちは学院を数日空けていた間に、なにか危険な冒険をして、とんでもない手柄を立てたらしい、ともっぱらの噂であったからだ。

ふふふ、何もしらないで。
気分は良くなった。

 キュルケとタバサとギーシュの周りも、やはりクラスメイトの一団が取り囲んでいる。

あー、気分がイイわ。ゼロと呼ばれ続けられていた私は初めて優越感に浸っていた。

「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでいったいどこに行っていたの?」

 腕を組んで、そう話しかけたのは香水のモンモランシーであった。なんで私に?
見ると、キュルケは優雅に化粧を直しているし、タバサはじっと本を読んでいる。
 タバサはぺらぺらと話すような性格じゃないし、キュルケもお調子者ではあったが、何も知らないクラスメイトに自分たちの秘密の冒険を話すほど、口は軽くない。

 クラスメイトたちは、押しても引いても自分のペースを崩さず何も話さない二人に業を煮やし、ギーシュと新たにあらわれたルイズに矛先を変えた。
 ギーシュは、取り囲まれてちやほやされるのが大好きなはずだったが、頑として口を開こうとしなかった。
なんでよ?

残る矛先が決定したクラスメイトは再び私を取り囲み、やいのやいのやり始めた。

「ルイズ! ルイズ! いったい何があったんだよ!」
「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれて、王宮までお使いに行ってただけよ。ねえギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」

 キュルケは意味深な微笑を浮かべて、磨いた爪の滓をふっと吹き飛ばした。
 ギーシュは頷いた。
 タバサはじっと本を読んでいた。
 取り付く島がないので、クラスメイトたちはつまらなそうに、自分の席へと戻っていく。
 みんなして隠し事をする私に頭にきたらしく、口々に負け惜しみを並べた。

「どうせ、たいしたことじゃないよ」
「そうよね、ゼロのルイズだもんね。魔法のできないあの子に何か大きな手柄が立てられるなんて思えないわ! フーケから盗品を奪い返したのだって、きっと偶然なんでしょう? あの使い魔が……」
「ロールちゃん。悔しくても嫉妬しない。いじめカッコ悪い」
「誰がロールちゃんですって?」

サイトが私をかばってくれている。ロールってあの見事な巻き毛のことよね?

「ぷぷ、ロールちゃんっていい名前じゃないの」
「なんですって?」
「喧嘩するなよ」
「あなたが悪いんでしょ?」
「だが、似合ってる。モンモランシー、君の髪はきれいだね。語尾にぱよってつけるときっと可愛い」
「ぱよ?」

モンモランシーは赤くなってしまっていた。
サイトは本当に話を逸らすのがうまい。感心していると、教室にミスタ・コルベールが入ってきた。

SIDE:コルベール

「さてと、皆さん」

フーケの一件やアンリエッタ姫の婚姻、どうでもよかった。
私は政治や事件にはあまり興味がない。
 興味があるのは、学問と歴史と……、研究である。
だから私は授業が好きだった。自分の研究の成果を、存分に開陳できるからである。
 そして本日、革命的な発明品を生徒に披露できる。
でんっ! と机の上に発明品を置いた。

「それはなんですか? ミスタ・コルベール」

 生徒の一人が質問した。
やはり見ただけではこの発明品のすごさがわからないか。
そんな中ただ一人感嘆の表情をした人物を見つけた。
サイト・ヒラガ。
『平民の賢者』と奇妙な称号を得ている彼にはこの素晴らしさがわかったらしい。

「えー、『火』系統の特徴を、誰かこのわたしに開帳してくれないかね?」

 そういうと、教室を見回す。教室中の視線が、キュルケに集まった。ハルケギニアで『火』といえば、ゲルマニア貴族である。その中でもツェルプストー家は名門であった。そして彼女も、二つ名の『微熱』の通り、『火』の系統が得意なのであった。
うむ、彼は答えないのか。

「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」
「そうとも!」

私は続ける。

「だがしかし、情熱はともかく、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます。諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては、いろんな楽しいことができるのです。いいかねミス・ツェルプストー。破壊するだけじゃない。戦いだけが『火』の見せ場ではない」
「トリステインの貴族に、『火』の講釈を承る道理がございませんわ」
「嫌味だねぇ。アレをガラクタだと思ってる内はまだまだ」

私は嬉しくなる。やはり彼はこの発明品の素晴らしさを分かっている。

「ダーリン、その妙なカラクリはなんなの?」

 キュルケは、きょとんとした顔で、机の上の装置を指差す。

「うふ、うふふ。よくぞ聞いてくれました。これは私が発明した装置ですぞ。油と、火の魔法を使って、動力を得る装置です」

 クラスメイトはぽかんと口をあけているが、私は続けた。

「まず、この『ふいご』で油を気化させる。
すると、この円筒の中に、気化した油が放り込まれるのですぞ」

私は円筒の横に開いた小さな穴に、杖の先端を差し込んだ。
 呪文を唱える。すると、断続的な発火音が聞こえ、発火音は、続いて気化した油に引火し、爆発音に変わった。
「ほら! 見てごらんなさい! この金属の円筒の中では、気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いておる!」

 円筒の上にくっついたクランクが動き出し、車輪を回転させる。回転した車輪は箱についた扉を開く。するとギアを介して、ぴょこっ、ぴょこっと中からヘビの人形が顔を出した。
「動力はクランクに伝わり車輪を回す! ほら! するとヘビくんが! 顔を出してぴょこびょこご挨拶! 面白いですぞ!」

「ブラボー!!」

ぼけっとする生徒をよそ目に彼は立ち上がり拍手をくれた。

 誰かがとぼけた声で感想を述べた。

「で? それがどうしたっていうんですか?」
「アレの偉大さをわからん馬鹿は黙ってろ。見てわからん奴には言ってもわからん」

私は嬉しくなり説明を始めた。

「えー、今は愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、たとえばこの装置を荷車に載せて車輪を回させる。すると馬がいなくても荷車は動くのですぞ! たとえば海に浮かんだ船のわきに大きな水車をつけて、この装置を使って回す! すると帆がいりませんぞ!」
「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。なにもそんな妙ちきりんな装置を使わなくても」

 生徒の一人がそういうと、みんなそうだそうだと言わんばかりに頷きあった。

「諸君! よく見なさい! もっともっと改良すれば、なんとこの装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ! ほれ、今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して、断続的に点火できる方法が見つかれば……」

「先生、言ってもわからぬ馬鹿ばかりにはもうこれ以上は意味ないっす。それよりも、それはエンジンって言うんですよ。いや、マジであんた天才だわ」
「えんじん?」
私は聞いたことの無い言葉に頭を傾げる。

「そうです。エンジンです。ここにいるバカどもはそれの価値をわかってませんが俺には宝に見えますよ」
「何を?平民が偉そうに」
「ふん、ならこの発明品の有能性を説明出来るか? ん~、できるんだろ~?」
「そんなのただのガラクタだ。有能性なんてないね!」
「だからお前はアホなのだ」

彼は生徒の一人に有無を言わせない気迫で言い放った。
その時、ミス・タバサが手を上げた。

「何かねミス・タバサ?」
「私には彼の言う価値がわからない。だが、彼が価値があると言ったのならそれはきっとすごいこと。だからそれのすごさを教えて欲しい」

教室がざわめく。そして授業の終了を知らせる音が鳴り響いた。

「ミス・タバサ、ミスタ・サイト。授業はここまでのようだ。よかったら夜に私のところに来てくれたまえ」
そう言い残して私は発明品を持って教室をでていった。








[18630] <ゼロのひどい使い魔 20外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/16 20:42


じゃがいもを薄切りにして油で揚げる。
そこに塩をふりかける。

ポテチの完成だ。

売り子を従えて街にくりだす。

俺の横には金髪の髪が美しいワンピース姿の使者がいる。
軽く化粧をして、女性物のブーツを履いている。
魔法は便利だと思った。

フェイス・チェンジを声帯だけにかける。
ちょっとした冒険をさせてみたら、上手く声が変わった。
ボイス・チェンジという新しい魔法を作ってしまった。
髪を伸ばす魔法はなかったので、ショートカットのまま。
しかし、胸に膨らみを、腰にクビレを出すためのコルセットを。
ウェールズは見た目、活発な的に見える美しい女の子になっていた。
学院の某所で完成した姿を見た女性陣の数人は、負けたとか、信じられない物を見たという反応をしていた。


「ばれないか?」
「どこをどう見ても女です」

街の男どもの視線を感じないのか?
横に並んで歩いていると香水の良い香りがする。
いやっ、俺は正常、俺は正常。

「言葉遣いがなってない。これから売り子するんだから」
「そうかね、オホン、これでよろしいですか? 御主人様?」

ぐっ、奴は男、奴はオトコ、奴はオトコの娘。

「よろしい。んじゃ、売りだしますか」
「はい」

ホテチを袋に詰めた物を売り始める。
ウェールズの美貌のおかげ?
買う人は男ばかり。
俺の描いたターゲットは若い女性なのだ。

しかし、時間経過と共にウェールズの中性的な顔に惹かれた女性陣がついに動いた。

「お姉さまぁ~」
「声をかけないでください。はい、次の人どうぞ」

俺は人の整理をする。ウェールズはひたすら売る。

「これで最後です。どうぞ~」

ウェールズが最後の一人に袋を渡して品切れになった。

「すいません、これで品切れです。次回をお楽しみに~」

取り巻きの人を解散させる。
しかし、男、女が数人ずつ残っている。ウェールズを狙っているのだ。

「おい、狙われてるぞ?」
「おや、困ったね、ならこうするしかないよ」

ウェールズは俺に腕を絡ませてくる。
イヤー、こいつは男!

それを見ていたウェールズを狙う人たちは悔しがり、妬ましい視線を向けながらも去っていった。
結局、街を出るまで、男同士で腕を組んでしまった。

「ひどい目にあった……」
「そう? 私は楽しかったわよ?」

そう笑うウェールズはとても可愛かったのだ。

それを見てどきりとした。
俺は心から大切な何かを失ったような喪失感を感じた。



――――――――――――――――――

全くの外伝。
本編には関係のない話。
私のミスで招いた外伝でした。
いや、楽しくかけたからいいけどね。

――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 21>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/18 22:18


SIDE:オスマン



 王宮から届けられた一冊の本を見つめながら、ぼんやりと髭をひねっていた。
古びた革の装丁がなされた表紙はボロボロで、触っただけでも破れてしまいそうだった。色あせた羊皮紙のページは、色あせて茶色くくすんでいる。
 ふむ……、ページをめくる。そこには何も書かれてはいない。およそ、三百ページぐらいのその本は、どこまでめくっても、真っ白なのであった。
「これがトリステイン王室に伝わる、『始祖の祈祷書』か……」

 六千年前、始祖ブリミルが神に祈りをささげた際に詠み上げた呪文が記されていると伝承には残っているが、呪文のルーンどころか、文字さえ書かれていない。

「まがい物じゃないのかの?」

 胡散臭げにその本を眺める。偽物かのぉ。しかし、王宮が送ってきたものである。
偽物は数多く存在する。それこそ偽物だけで図書館ができると言われているくらいだ。

「しかし、まがい物にしても、ひどい出来じゃ。文字さえ書かれておらぬではないか」

そのときノックの音がした。秘書であるはずのロングビルはいない。サイトに雇われ直して秘書は兼用なのだ。優先するのは給料のいい方、つまりはサイトの方が優先される。
新しい秘書を雇わねばならぬな、と思いながら、来室を促した。

「鍵はかかっておらぬ。入ってきなさい」

 扉が開いて、一人の少女が入ってきた。
桃色がかったブロンドの髪に、鳶色の瞳。
ルイズであった。何故か呼んでもいないのにサイトの姿も見えた。

「わたくしをお呼びと聞いたものですから……」
「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れはいやせたかな? 思い返すだけで、つらかろう。だがしかし、おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのじゃ」
「その件で儲けさせてもらいました。しかし、二度と姫様の命令は受けたくない所存であります」

相変わらずじゃのぉ。ワシからも金銭と秘書を奪っておいて。

「そして、来月にはゲルマニアで、無事王女と、ゲルマニア皇帝との結婚式が執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
「ない胸を張れっていうw」

あー、君、ややこしくなるから黙ってくれんかのぉ。ほれ、ミス・ヴァリエールも睨んでおるぞ。
暴れられないうちに『始祖の祈祷書』を渡しておくかの。

「これは?」
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書? これが?」
「白紙じゃん」

彼は素早く『始祖の祈祷書』をルイズから抜き取りペラペラとページをめくっていた。

「トリステイン王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばならんのじゃ。選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はあ」
「そして姫は、その巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫さまが?」
「あの、馬鹿が?」

姫殿下をバカ扱いかい。ここは無視しておこう。

「その通りじゃ。巫女は、式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えねばならぬ」
「えええ! 詔をわたしが考えるんですか!」
「そうじゃ。もちろん、草案は宮中の連中が推敲するじゃろうが……。伝統というのは、面倒なもんじゃのう。だがな、姫はミス・ヴァリエール、そなたを指命したのじゃ。これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
「王宮が推敲するもんをルイズに頼んでどーする? おめでとうって書いて送ってやれよ。後は王宮がなんとかしてくれる」

ほっほっほ。まったく愉快な少年じゃ。

「わかりました。謹んで拝命いたします」
「快く引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜ぶじゃろうて」


その日の夕方。俺は風呂の用意をしていた。
学院の風呂は天然温泉にある施設のようにだだっ広い風呂に香水を混ぜたお湯で張られていた。
なぜ知っているか?
清掃員を装い侵入して見学したからだ。

俺はマルトーに頼み込んでもらった大釜をギーシュを使って風呂にしていた。
水を排出する栓だってあるんだぜ。
しかも、固定化もかけてもらったので錆びない。

水を入れるのはバケツを使っている。これは体を鍛えるためだ。楽はしない。
ヴェストリの広場の隅っこに風呂を作った。
この広場は、人が来なさすぎ。逢引にはもってこいだね。

「おふぅ」

横の壁に立てかけたデルフリンガーが、俺に声をかけた。

「いい気分みてえだね」
「おう、久しぶり。つっても二人きりで話すの久しぶりって意味ね」
「なにいってんだ? 相棒?」
「こっちの話さ」

夕日の空を見る。きれいだ。

「ところで相棒、ずいぶんとモテてるが本命は誰だ?」
「モテてる……だと?」
「ああ、みーんな相棒のことよく見てるぜ?」
「マジで? 最近やること多くて気づかなかったわ」
「お、それより、相棒、誰か来たみてえだぜ」

あ、ああああああああああああ。
シエスタフラグじゃん。
キタ━(゚∀゚)━!

「誰だ?」

 俺が叫ぶと、人影はびくっ! として、持っていた何かを取り落とした。
がちゃーん! と月夜に陶器の何かが割れる音が響き渡る。

「わわわ、やっちゃった……。また、怒られちゃう……、くすん」
「シエスタじゃん、なにやってんの?」

俺と風呂に入るために来たんですね。わかります。

「あ、あのっ! その! あれです! とても珍しい品が手に入ったので、サイトさんにご馳走しようと思って! 今日、厨房で飲ませてあげようと思ったんですけどおいでにならないから!」

ドジっ子メイドもいいな!

「で、ご馳走って?」
「そうです。東方、ロバ・アル・カリイエから運ばれた珍しい品とか。『お茶』っていうんです」

そういや東方ってマジで日本文化あるのかねぇ?
中国製品かもしれんな。
そう考えているとシエスタは、ティーポットから、割れなかったカップに注ぐと俺にくれた。

「ありがとう」

緑茶ですね。わかります。
ふと心が落ち着く。
自然と目から涙がこぼれていた。

「ど、どうなさいました! だいじょうぶですか!」
「はは、泣いてやんの」

マジでどうしたんだろう? 懐かしい気持ちで胸がいっぱいだ。
哀愁っての?
振り返って思い出す。
なんで自殺したかな。
後悔。すげー、後悔してる。
涙が止まらなかった。

「だいじょうぶですかサイトさん?」
「いやー、なんだかすっきりした。まじでありがとうシエスタ。懐かしいねぇ。お茶」
「懐かしい? そっか、サイトさんは、東方のご出身なんですね」

なんだか救われた気がした。シエスタのはにかんだ笑みは女神が微笑んでいるようだった。

「うん。東方の方からきました。それにしてもよく俺がここにいるのわかったな」
「え、えと、その。たまにここで、こうやってお湯につかっているのを見てたもんですから……」
「覗いてたのね。イヤらしいメイドだこと!」
「いえ、その、そういうわけじゃ!(なんで女言葉なんだろ?)」←意味はない

 俺の言葉に慌てたシエスタは足を滑らせて風呂にダイブしてきた。

「きゃあああああッ!」
「なに? この国は服を着たまま風呂にはいるのか?」
「違いますけど……、わーん、びしょびしょだぁ……」
 
女の子がびしょびしょだ。なんて卑猥な表現だろう。

「気持ちいいですね。これがサイトさんの国のお風呂なんですか?」
「そうだねぇ。普通は服を脱いでからはいるけどな!」
「あら? そうなんですか? でも、考えてみればそうですよね。じゃあ、脱ぎます」

あら、決断の早い子。
シエスタはお湯から出ると服を脱ぎ始めた。見事な脱ぎっぷりである。
俺って男性なのよね。こうみえても。

「火で乾かすといいと思います」
「そうですね!」

なんとも早い行動で服を乾かす準備をして再びお湯の中に入ってきた。

「うわあ! 気持ちいい! あの共同のサウナ風呂もいいけど、こうやってお湯につかるのも気持ちいいですね! 貴族の人たちが入っているお風呂みたい。そうですね、羨ましいならこうやって自分で作ればいいんだわ。サイトさんは頭がいいですね」
「なければ作ればいいのよ!」

恥ずかしいのを誤魔化すために叫んでみた。
正直、たまりません。

「そんなに見つめないでください。わたし照れるじゃないですか。ほ、ほら、ちゃんと胸は腕で隠してるから! それに、水の中は暗くて見えないですよね?」

日本人特有の黒いワカメが見えてますがなにか?
シエスタって日本人の血が入ってんだよねー。今確信しました。
主に股に生えている黒いワカメを見て。

「ねえ、サイトさんの国ってどんなところなんですか?」
「俺の国?」
「うん、聞かせてくださいな」

といわれてもな。異世界人である俺の話は信じないだろ。しかし、言ってみる。

「とりあえず、月が一つで、魔法使いがいないね」
「いやだわ。月が一つだの、魔法使いがいないだの、わたしをからかってるんでしょう。村娘だと思って、バカにしてるんですね」
「してないっつーの」

だから、上目遣いで見のやめて下さい。というか、既におっきしちゃってるんだお(^ω^)

「一番違うことはそうだなぁ、食生活が違うかな」

和食と洋食の違いです。米食いてぇ。
 俺は当たり障りのない範囲で、日本のことを話した。

シエスタは、目を輝かせて、その話に聞き入っていた。
 異性と風呂に入りながら故郷の話をする。
その異性が美人ならなおさら話は弾み、いつしか、時を忘れてシエスタに、故郷の話をしていた。

 しばらく経つと、シエスタは胸を押さえて立ち上がった。
うお、急にたつな。見えてるから。色々見えてますから!

「ありがとうございます。とても楽しかったです。このお風呂も素敵だし、サイトさんの話も素敵でしたわ」

 シエスタは嬉しそうに言った。

「また聞かせてくれますか?」
「おk」

 シエスタはそれから、頬を染めて俯くと、はにかんだように指をいじりながら言った。

「えっとね? お話も、お風呂も素敵だけど、一番素敵なのは……」
「?」
「あなた、かも……」
「な、なんだと?」

シエスタは小走りに駆けていった。
俺は取り残された。

「シエスタの入った残り湯で楽しみますか」

シエスタ君に決めた!











[18630] <ゼロのひどい使い魔 22>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/18 22:20


 
 引くほど大量に出た液体を処理してルイズの部屋に戻ると、ルイズはベッドの上でなにかやっていた。

「あれ? 洗濯物は?」

 クンカクンカができないじゃないか。

「もう、洗った」
「洗ったってお前……」

俺の楽しみを奪いますか?

うっ! やだ、なにこれ、かわいい。
俺のパーカー着てやがります。
風呂の前にはパーカー脱いでいく。あっても邪魔だし風呂の後はシャツだけで十分だからだ。

ルイズは、たぶん下着の上に直に着ているのだろう。
袖も丈もぶかぶかなので、見ようによっては妙なワンピース姿にも見える。

俺を萌え殺すきか? こいつ。

「俺の服なんですけど?」
「だって……、洗濯したら、着るのなくなっちゃったんだもん」
「あるじゃん」

クローゼットを開けて見せる。

「だって、それはよそいきの服だもん」

 ルイズはベッドに正座して、拗ねたような口調で言った。

 ( ゚∀゚)・∵. グハッ!!

「普段着あるじゃん」
「そんなの着たくないもん」
「でも、俺それしかないのよ。返せ」

 しかし、ルイズは脱ごうとしない。それどころか、立てた指でシーツをこねくり回している。
 何その行動? べ、別にかわいいとか思わないんだからっ!

「これって、軽くて着心地がいいわね。なにでできてるの?」
「ナイロンだ」
「ないろん?」
「石油から作るんだ。俺のこの世界には石油あるのかなぁ」
「せきゆ?」
「化石燃料とも言われる。海の底にプランクトンが溜まって、長年かけて、油になるんだ。その油で作るんだ」
「ぷらんくとん?」

幼児をと会話しているみたいに、ルイズはきょとんとした目つきで、俺の言葉をオウム返しした。
ハアハア。
さっき抜いたのに大きくなってきてるんだお(^ω^)
デレルイズ。恐ろしい子!

自重出来そうになかったので布団を床にしいて寝ることにした。
すると、枕が飛んできた。

「なんすか?」
「今投げた枕持ってきなさい。き、今日はベッドで寝ていいわ」
「え? マジで、やった。そのベッド寝心地よさそうだったからな~」

くそっ、いいベッド使ってやがる。

「なあ、ルイズ」
「な、なによ?」
「お休みなさい、お兄様って言ってみて?」
「なに? 布団に戻りたいの?」
「すみません、調子に乗りました」

そのままベッドで一緒に寝る事に。
抜いといてよかった。



SIDE:キュルケ

この前の話はあの後のサイトのフォローでなんとも思わなくなった。たぶんあの場にいた全員に一人ひとり話をしたのだろう。
シルフィードに乗っている友人もさほど気にしていない様子だ。
今はルイズの部屋をタバサと一緒に覗いている。
珍しことに私が覗きに行くといったらシルフィードを出して私も一緒に行くと言ってくれた。
この子も恋してるのかしら?

「なによー、ホントに仲良くなってるじゃないの」

 アルビオンから帰る風竜の上、頬を染めてサイトの膝に座っていたルイズの顔が浮かぶ。ルイズは、まんざらでもなさそうだった。

「まったく、あたしだって、そりゃ、本気じゃないわよ? でもねー、あそこまであたしのアプローチ拒まれると、ついつい気になっちゃうのよね」

 今まで、自分の求愛を拒んだ男はいない。だが彼はやんわりと拒んでいる。
私はいらついていた。さっき、平民の娘といっしょにお風呂にまで入っていた。あたしを無視して二股。キュルケのプライドががさがさ揺らぐ。それに平民の娘がさっていった後……。
なんというか、すごかった。

「うーん、陰謀は得意じゃないけど、少し作戦練ろうかしら。ねえタバサ」
 タバサは本を閉じて、私を指差した。

「嫉妬」

 私は顔がほてる。珍しいことである。それからタバサの首をしめてがしがしと振った。

「い、言ってくれるじゃないの! 嫉妬じゃないわよ! あたしが嫉妬なんかするわけないじゃない! ゲーム! これは恋のゲームなのよ!」

 それでもタバサは堪えない。同じセリフを繰り返した。

「嫉妬」




[18630] <ゼロのひどい使い魔 23>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/18 22:25



 早朝。俺はデルフの声で起きる。
目覚まし時計もないこの世界で俺は最高の目覚まし時計を手に入れたのだ。

「デルフって寝ないのか?」
「しらね。寝てるような寝てないような」
「不思議だな」
「不思議だーね」

 謎の仕様だが気にすることはない。便利な剣と思っておこう。
早朝トレーニング。誰にも見られないのが良い。

ガンダールヴの力は基礎体力を上げることで底上げされる。
ストレッチ、ランニング、筋トレ、素振りが早朝のメニューである。

「ふぅ、いい感じ」
「おでれーた! ずいぶんと体力ついたじゃねーか」

しゃべる剣、デルフは意外にもトレーニングメニューを考案してくれたのだ。
『使い手』が現れないので腕のいい強者に媚を売って使ってもらっていた。そいつらのやっていることを律儀に覚えていたのだ。

「近代スポーツ学無視してね?」

ランニングは学院の周り十週以上だし、筋トレは百回は当たり前。素振りなんて千回ですがなにか?

「一ヶ月も続ければ慣れるよね。人体の不思議」

よっぽどのことが無い限り早朝トレーニングは続けている。
じゃないと死ぬし。

「相棒、センスあるぜ。普通はへばっちまうもんだ」
「そりゃどうも」

タオルで汗をふく。

「何してるの?」

タバサが現れた。

「うわっ! タバサか」

いや、見てたの知ってるけど驚いてみた。

「初めから見ていた。驚くのはなぜ?」
「なんとなくです」

そんな目で見ないで。

「いつもしてるの?」
「まあね」

タバサに早朝で会うのは今日が初めてである。というかこんな早起きしないで。

「タバサはなんでこんなところに? それもこんな時間に?」

ここは風呂場の近くである。つまりは人目のつかない場所なんだが。

「たまたま」

嘘である。たぶん。

「ふーん。何か用でも?」

じゃなきゃトレーニングを終わるまで見ているはずが無い。

「強くなりたい」
「十分強いじゃん?」

風系統のトライアングルメイジなのにまだ強くなりたいって、戦闘民族か?

「私は私自身を強いとは思わない」
「というと?」
「今の私ではあなたには勝てない」
「俺に?」

コクリとタバサは頷いた。まさか命令がきたか?
いや、命令があったら問答無用で攻撃してくるはず。
鍛えてやると言っても魔法の事はさっぱりだし、そもそも強くなられると襲われた時に困る。

「魔法ではなく、戦術を知りたい」

俺の考えを読んだのかそう答えた。

「戦術? うーん、教えれるものなんてないぞ?」

マジで教えることなどない。むしろ俺に教えて欲しいくらいだ。

「そんなことはない。あなたは『平民の賢者』」
「いやいや、賢者じゃねーし」
「謙遜」
「そんなことないヨ?」
「謙遜」

こいつはヤベェー、無限ループの匂いがプンプンするぜぇ。

「んなこと言っても、戦術って戦い方のことでしょ? ハゲ、じゃなかった。コルベール先生に聞けよ」
「なぜ?」

あー、そういやハゲはここじゃマヌケ装ってんだ。

「だって、先生の二つ名って『炎蛇』なんでしょ?」
「そう」
「二つ名のつく由来は?」

タバサは考え込む。

「人物の特徴?」
「ルイズは魔法成功率ゼロだからゼロ。キュルケは微熱、タバサは雪風、さてコルベール先生はなんで炎蛇なんでしょうね? 結構怖い二つ名ですな」

タバサは確かにという肯定的な顔になった。
タバサは知らない。コルベールの過去を。
そして俺は知っているコルベールはタバサの申し出を断ることを。

「断られたら?」
「一緒に風呂入ろう」
「わかった」

あっるぇ~?
呼び止める暇もなくタバサはどこかに行ってしまった。


 シエスタ確変中の猛追を捌き、ルイズの萌攻撃になんとか耐えて俺は気づいたらテントにいた。
風呂場近くに作りそこにフレイムとモグラを引き連れてきた。
一人ではつまらないのでペットを引き連れる感覚で連れてきたのだが余計なものまで捕まえてしまった。

「ヴェルダンデ! ここにいたのか!」
「ギーシュか、何しに来たんだよ?」

話を聞くと見慣れないテントと自分が関わった大釜があるので気になって来てみたとのことだ。

「モグラ、おいで。俺とお前はおともだちだろう?」
「なにをしてるんだね? きみは」
「ちょっとやんごとなき事情が」
「君でも困ることがあるのだね」

俺が女性の怖さを話したら思うところがあるらしく結構盛り上がった。

「はっはっは」
「いや、笑い事じゃねーし」
「ぼくはねー、モンモランシーにだって、あのケティにだってなにもしてないんだ。ケティは手を握っただけだし、モンモランシーだって、軽くキスしただけさ! それなのに君は……、ちきしょー!」

魂の叫びだった。
それから酒を片手にギーシュとは夜まで語り合った。
胸のこと、おっぱいのこと、女性の神秘のこと。

「ああ、サイト。今日から僕たちは友人だ」
「そうだな。ギーシュ」
「相棒、熱くなってるとこ悪いが客だぜ」

テントの入口を見るとキュルケがいた。

「楽しそうね。あたしも交ぜてくれない?」
「そのでっかいおっぱい、見せてくれたら、入れてあげてもいいよ?」

 ギーシュが立ち上がり、拍手をした。

「断然同意だ! トリステイン貴族の名にかけて! 断然! 同意であります!」

 キュルケは返事をする代わりに杖を抜くと、呪文を詠唱した。

「酔いは冷めて?」

 キュルケがそういうと、正座をしたギーシュは頷いた。
俺は酒は初めの一杯以降飲んでいなかった。

「じゃあさっさと出かける用意して」
「出かける用意?」

ギーシュは聞いた。

「そうよ。ねえサイト」
「初めて名前で読んでくれたんじゃね?」
「貴族になりたくない?」
「きき、貴族?」

 ギーシュが、呆れた声で言った。
 勧誘か? それとも俺を貴族にして結婚しようとでも?

「キュルケ、彼は平民だぞ? メイジじゃない彼が貴族になれるわけないじゃないか」
「トリステインはそうよね。法律で、きっちり平民の『領地の購入』と『公職につくこと』の禁止がうたわれているわ」
「そのとおりだ」
「でも、ゲルマニアだったら話は別よ? お金さえあれば、平民だろうがなんだろうが土地を買って貴族の姓を名乗れるし、公職の権利を買って、中隊長や徴税官になることだってできるのよ」
「だからゲルマニアは野蛮だっていうんだ」

 ギーシュが、吐きすてるように言った。俺はゲルマニアの考えには肯定的だ。

「あら『メイジでなければ貴族にあらず』なんつって、伝統やしきたりにこだわって、どんどん国力を弱めているお国の人に言われたくないセリフだわ。おかげでトリステインは、一国じゃまるっきしアルビオンに対抗できなくて、ゲルマニアに同盟を持ちかけたって話じゃないの」

キュルケのいうとおりである。

「サイトだってそう思うでしょ?」
「だから、俺に金の力で貴族になれと? お前の国で」
「その通りよ」
「そんな金、ねえよ?」
「嘘おっしゃい、知ってるんだから色々やってること」

ばれちょりました。手元には二百ほど金はある。それに事業の利益の金もそろそろ入ってくる。
アンリエッタの報酬は小遣い制で支払われている。俺は一括払いと渋ったが無駄だった。

 キュルケは手に持った羊皮紙の束を、見せてきた。

「なにこれ?」
「地図か?」

 ギーシュと俺は、その束を見つめた。

「宝の地図よ」

ゼロ戦回収ミッションである。
乗りたかったんだよね。アレ。

キュルケは、優しく俺を抱きしめた。胸当たってます。言ったらたぶん、当ててんのよって言い返されると思うので黙っておく。

「ねえ、貴族になれたら……、きちんと手順をふんで、あたしにプロポーズしてね? あたし、そういう男の人が好きよ。平民でも貴族でも、なんだっていいの。困難を乗り越えて、ありえない何かを手にしちゃう男の人……、そういう人が好き」
「本気?」
「本気よ」

真剣な顔で俺の顔を見つめている。やっべ、いつものノリもいいけどこういう真面目なキュルケもありだ。







[18630] <ゼロのひどい使い魔 24>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:31



「おらぁあ」

 オーク鬼の首を一閃。反転してもう一体のオーク鬼の胴体を切り離す。

「相棒、左だ」
「了解」

左から迫るオーク鬼の猛襲を捌き、飛び上がる。

「龍●閃!」

頭から真っ二つにしました。ビッと刀の血を振り落とす。

「相棒、好調だな」
「デルフのおかげさ、さすが、伝説の剣」
「あったりめーよ!」

ガチャガチャとうるさいやつである。
俺が八体ほど肉の塊にしたところで、全員が集まった。

「そっちはどうだった?」
「こいつが馬鹿だったわ」

ゴツンと拳骨を食らうギーシュ。

「いてて、さっき謝ったじゃないか!」
「作戦無視、なぜ連れてきた?」

キュルケの提案した宝探し。
学院を出発する際にシエスタに見つかり、彼女は強引についてきた。
タバサはキュルケから話を聞いていたのかシレッと一緒についてきていた。

「盾くらいになるとおもったんだが」
「ひどっ!」
「すごい! すごいです! あの凶暴なオーク鬼たちが一瞬で! サイトさんすごいですっ!」

それにしてもこのメイド、ノリノリである。

「確かに、サイトってすんごい強いのね」

キュルケは俺のことを呼び捨てにすることを決めたようです。

「強い……」

タバサはボソリと言った。いやいや、聞こえてますよ。

「私たちは五体だっけ?」
「そう」
「サイトは八体か、君は化け物かい?」
「ひでーな」

俺はゲームの経験値稼ぎの如くオーク鬼を倒した。
幕末の剣士の技を色々と試したかっただけである。さすがに一振りで三体は無理だっつーの!
ア●ン流に切り替えたり、オリジナル技を使ってみたり、力任せにやってたら、気づいたら終わっていた。

「すごいけど……、やっぱり、危ないことは、よくないですね」
「そうです。危ないです。これから先の戦闘はすべて俺に任せなさい」
「だめ」

タバサが断りを入れた。はいはい、強くなりたいのね。この戦闘民族が!

「ギーシュ、もうちょい空気読め、な、な!」
「わ、わかったよ。だから剣を向けるのはやめて」


 その夜……、一行は寺院の中庭で、焚き火を取り囲んでいた。
誰もかれも、疲れきった顔であった。ギーシュが、恨めしそうに口を開いた。

「で、その『秘宝』とやらはこれかね?」
「今回も外れなのである」
「これで、七件目だ! 地図をあてにお宝が眠るという場所に苦労して行ってみても、見つかるのは金貨どころかせいぜい銅貨が数枚! 地図の注釈に書かれた秘宝なんかカケラもないじゃないか! インチキ地図ばっかりじゃないか!」

一番戦闘で役に立たないやつがよくいう。

「うるさいわね。だから言ったじゃない。〝中〟には本物があるかもしれないって」
「いくらなんでもひどすぎる! 廃墟や洞窟は化け物や猛獣の住処になってるし! 苦労してそいつらをやっつけて、得られた報酬がこれじゃあ、割にあわんこと甚だしい」
「なんというw 近くの村とかに退治したからカネくれって言った方が儲かったな~」

空気が凍った。一瞬の静寂もシエスタの明るい声が、その雰囲気を払ってくれた。

「みなさーん、お食事ができましたよー!」
「こりゃうまそうだ! と思ったらほんとにうまいじゃないかね! いったいなんの肉だい?」

 ギーシュがシチューを頬張りながら呟いた。皆も、口にシチューを運んで、うまい! と騒ぎ始めた。シエスタは微笑んで言った。

「オーク鬼の肉ですわ」
「豚っぽいと思ったらあいつの肉って食えるのか。うむ、加工して売りだそうかな」

オーク鬼退治して金を貰い、そのまま死体を加工して売る。一石二鳥だ。あとギーシュは汚いから吐き出すな。

「じょ、冗談です! ほんとは野うさぎです! わなを仕掛けて捕まえたんです」
「なんだ。残念か」
「君は恐ろしいな」
「驚かせないでよね。でも、あなた器用ね。こうやって森にあるもので、おいしいものを作っちゃうんだから」
「田舎育ちですから」

田舎育ちとサバイバルスキルがどう繋がるのだろう。
飯は寄せ鍋だった。旨かったよ。だからそんな瞳で俺を見ないでおくれ。
俺はシエスタ、キュルケ、タバサの外での排便行為を思いながら抜いた。

さあ、次は『竜の羽衣』だ……。


翌朝、一行は空飛ぶ風竜の上にいた。うむ、朝飛行も良い。
シエスタが『竜の羽衣』の説明をしていた。
俺は話半分に聞きながらシルフィードに対してセクハラをしていた。
人間に変身すると、ナイスバディなのだ。
サワサワ

「どうして、『竜の羽衣』って呼ばれてるの?」
「それを纏ったものは、空を飛べるそうです」
「空を? 『風』系のマジックアイテムかしら?」
「そんな……、たいしたものじゃありません」
「どうして?」
「インチキなんです。どこにでもある、名ばかりの『秘宝』。ただ、地元の皆はそれでもありがたがって……、寺院に飾ってあるし、拝んでるおばあちゃんとかいますけど」
「へぇええ」

一行を乗せて、風竜は一路タルブの村へと羽ばたいた。
シルフィードは俺のセクハラに対して無反応だったので途中であきた。


SIDE:ルイズ

 サイトの姿が見えなかったので学院を歩き回っているとモンモランシーから話しかけてきた。
 珍しいと思い、話を聞いた。

「バカ(ギーシュ)とサイトとキュルケ、タバサは宝探しにいくって、一応伝えたぱよ」
「ぱよ?」
「もう! 聞かないで、サイトが伝言の語尾に入れたらお金増やすって言うから仕方なくよ」

モンモランシーはブツブツと顔を赤らめながら何かをつぶやいていた。
宝探し? 私聞いてない。

「なんだ楽しそうじゃないの、なんで私にいわないわけ? あのバカ犬」
「ああ、ルイズは贈る言葉を考えろって、私も行こうかと言ったけどルイズへのメッセンジャーにされたわ。ま、報酬はそこそこだったからよかったけどね」

そう、私は未だに詔《みことのり》を考えていない。

「あ、あと、最後の伝言だけど、聞く?」

なんだろう?

「なんで聞いてくるの? 聞くに決まってるわよ」
「じゃあ、言うわ。 ルイズ、俺が帰ってくるまでに言葉を何も考えてなかったら穴という穴を犯す。ってなんてこと言わせるのよ」

ボッとモンモランシーは赤くなった。私も伝言を聞いてカァと顔が熱くなるのがわかる。

「な、ななんてこと、モンモランシー。私犯されちゃうわ。手伝って」
「ええ!?」
「お願い」
「わ、わかったわよ」

よかった。帰ってきたら覚えてなさいバカ犬。









[18630] <ゼロのひどい使い魔 25>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:32


 『竜の羽衣』を見つめていた。タルブの村の近くに建てられた寺院にそれはあった。
寺院というか神社だった。
戦時を駆け抜けた兵器。一時は世界を轟かした日本の誇る芸術品。
数多くの若者の命を奪った殺人兵器。
彼らは何を思いこの戦闘機に乗ったのだろう。
日本の歴史。
博物館でもない、生で目の前にしたゼロ戦にしばらく心を奪われる。

「……」

原作のサイトはこれを見て何も感じなかったのか?
懐かしいような、嬉しいような、悲しいような。

「サイトさん、どうしたんですか? わたし、何かまずいものを見せてしまったんじゃ……」

シエスタがなにか言ったようだが俺の耳には何も残らなかった。
ギーシュとキュルケも何か言っているようだったが、俺はゼロ戦を見つめている。

「サイトさん、ほんとに……、大丈夫?」

 シエスタの顔が視界に入る。思わず肩をつかむ。

「シエスタ」
「は、はい?」
「お前のひいおじいちゃんが残したものは、ほかにないのか?」
「えっと……、あとはたいしたものは……、お墓と、遺品が少しですけど」
「それを見せてくれ」

 シエスタの曽祖父のお墓は、村の共同墓地の一画にあった。白い石でできた、幅広の墓石の中、一個だけ違うかたちのお墓があった。黒い石で作られたその墓石は、他の墓石と趣を異にしている。
 墓石には、墓碑銘が刻まれていた。

「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に自分で作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、誰も銘が読めなくって。なんて書いてあるんでしょうね」

俺はこの人より恵まれている。周りには仲間がいる。俺のことを理解してくれる人がいる。
だが、この人は本当に一人ぼっちで生きてそして死んだ。自分の墓まで用意して。
あんたの残してくれたもの。使わしてもらいます。人生の、歴史の大先輩に心のなかでそう想った。

「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」

「はい?」

俺はシエスタをじっと見つめる。あなたの残したものは元気でやってるよ。

「い、いやですわ……、そんな目で見られたら……」
「なあシエスタ、その髪と目、ひいおじいちゃん似だって言われただろ」

シエスタは驚いた声を出して答えた。

「は、はい! どうしてそれを?」

日本人の血が入ったメイド。じいさん。俺のものにするからな。


再び寺院に戻り、俺は『竜の羽衣』に触れてみる。
やっぱりそうか。
中の構造、操縦法が、俺の頭の中に鮮明なシステムとして流れ込んでくる。
俺はこれを飛ばせるのだ、と思った。コクピットの中にある異物を見て驚愕する。
日本刀だ。しかもこいつにも固定化がかけられていたのか全く錆びていない。新品同然だった。
ヒャッホーゥ!

ガス欠はハゲに何とかしてもらえる。日本刀にはさらにギーシュに硬化と固定化をかけてもらった。
新しい武器、ゲットだぜ。学院に帰ったらもっと強力な硬化と固定化かけてもらおう。

シエスタが遺品を持って戻ってきた。古ぼけたゴーグルだった。

「ひいおじいちゃんの形見、これだけだそうです。日記も、何も残さなかったみたいで。ただ父が言ってたんですけど、遺言を遺したそうです」
「遺言?」
「そうです。なんでも、あの墓石の銘を読めるものがあらわれたら、その者に『竜の羽衣』を渡すようにって」
「となると、俺にその権利があるってわけか」
「そうですね。そのことを話したら、お渡ししてもいいって言ってました。管理も面倒だし……、大きいし、拝んでる人もいますけど、今じゃ村のお荷物だそうです」

 お荷物ってひでーあつかいだ。

「うむ、なら俺が有益に使うとする」
「それで、その人物にこう告げて欲しいと言ったそうです」
「なんて?」
「なんとしてでも『竜の羽衣』を陛下にお返しして欲しい、だそうです。陛下ってどこの陛下でしょう? ひいおじいちゃんは、どこの国の人だったんでしょうね」

 とっくに返すべき人は死んでる。その子孫はいるけど。

「俺と同じ国だよ」
「ほんとですか? なるほど、だからお墓の文字が読めたんですね。うわぁ、なんか感激です。わたしのひいおじいちゃんと、サイトさんが同じ国の人だなんて。なんだか、運命を感じます」

うっとりとした顔で言ってきた。日本刀が手に入ったのでテンションがハイになっていた。

「シエスタァ、こいつをもらっても構いませんかね!」
 気づくと叫んでいた。
「は、はい」
「ヒャッハー、ゼロ戦は俺のものだー。日本刀は世界一ィィイイイ」
「ずいぶんと嬉しそうだね、彼は」
「そうね、あんなすぐ折れそうな剣がうれしいのかしら?」


俺はすぐにでも帰って日本刀を強化したかったが、シエスタの実家に泊まることになった。
平民が貴族を泊めるって珍しいのね。
そこそこな騒ぎになった。
俺は日本刀強化をギーシュにぶっ倒れるまでやらせた。

翌日も朝からギーシュになんども硬化と固定化をやらせた。

「もういいじゃないか」
「試し斬りして折れたらお前を一生こき使う」
「やればいいんだろやれば!」

半ば強引に頼み込んだ。適当なことは許さない。妥協は許さない。
折れたらそれで終わりなのだ。

「相棒、浮気はねーぜ!」
「うっせ、初代も片手には違う武器持ってたんだろ」

剣を黙らせる。

夕方、試し斬りを済ませて村のそばに広がる草原を見つめていた。
日本刀は素晴らしかった。
何より抜刀術のおかげで戦法が増えた。
さすがに石まで切り裂いた時は見物者達は驚いていた。俺も驚いた。

心底満足してボーッと風景を見ていた。

「ここにいたんですか。お食事の用意ができましたよ。父が、是非ごいっしょにって」

 シエスタは、恥ずかしそうに言った。

「遊びに来てくださいって言ってたら、ほんとに来ることになっちゃいましたね」
「この草原、とっても綺麗でしょう? これをサイトさんに見せたかったんです」
「父が言ってました。ひいおじいちゃんと、同じ国の人と出会ったのも、何かの運命だろうって。よければ、この村に住んでくれないかって。そしたら、わたしも……、その、ご奉公をやめて、いっしょに帰ってくればいいって」

シエスタの独壇場を俺は黙って聞いていた。

「でも、いいです。やっぱり、無理みたいね。サイトさん、まるで鳥の羽みたい。きっと、どこかに飛んでいってしまうんだわ」

いずれゼロ戦で東へ向かうだろうがずいぶんと先の話になるだろう。

「このサイト・ヒラガには夢がある!」
「サイトさんの夢ですか?」
「そう、俺は商業王になる。そしてハルケギニアを娯楽で支配する!」

思いついたことを適当に言った。今は後悔している。

「だから、シエスタ、僕を手伝ってくれ」
「はい!」

まぶしい笑顔に俺はどきりとした。すまん俺専用メイドに憧れてたんだ。









[18630] <ゼロのひどい使い魔 26>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:30


伝書フクロウが学院から届いた。モンモランシーからだ。
ルイズに報告終了。
さぼりはコルベール経由で学院長に通達。公欠にはならず。
また、コルベールには興味深いものを見せるとも通達完了。
メイドの方は追って学院から通達があるまで休暇せよとのこと。
と書いてあった。

追伸、ロングビルが緊急の用事があるとのこと。早く帰ってきて。ルイズの相手は……。

そこまで書かれていて後はぐちゃぐちゃに塗りつぶされていた。

はて、緊急の用事とはなんぞや?

ゼロ戦の運搬はギーシュが親のコネを使った。学院の中庭について運送代を聞いたときはビビった。
払えねーよ。

救世主はいた。

「きみ! こ、これはなんだね? よければ私に説明してくれないかね?」
 ゼロ戦を地面に下ろす作業を見守っていた俺は、コルベールを見てにやりとわらった
「よかった。これが見せたかった興味深いものですよ」
「おおこれが!」


SIDE:コルベール

当年とって四十二歳。私の生きがいは研究と発明である。
学院の広場に現れてたものを研究室の窓から見つけて慌てて駆けつけたのである。
サイトくんを見つけて私は驚愕した。
なんと、彼が見せたかったものとはこのことだったのだ。

疑問が湧いてくる。いったい、この平民の少年は何者なんだろう?
 あの日、ミス・ヴァリエールに召喚された、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。ロバ・アル・カリイエの生まれで、コルベールの発明品を『素晴らしい』と唯一言ってくれた人物……。

「これは『ひこうき』っていうんです。俺たちの世界じゃ、普通に飛んでる」
「これが飛ぶのか! はあ! 素晴らしい!」

知的好奇心を抑えられず物体を観察する。

「ほう! もしかしてこれが翼かね! 羽ばたくようにはできておらんな! さて、この風車はなんだね?」
「プロペラです。これを回転させて、前に進むんです」

 彼が答える。なんと! ほうほう、なるほど。考えついたことを述べてみる。私の手が勝手に震えるのがわかる。

「なるほど! これを回転させて、風の力を発生させるわけか! なるほどよくできておる! では、さっそく飛ばせてみせてくれんかね! ほれ! もう好奇心で手が震えておる!」

彼は困った顔をした。

「あー、実は、そのプロペラを回すためには、ガソリンが必要なんですよ」
「ガソリンとは、なんだね?」
「それを今から先生に相談しようと思ってたんですよ。ほらこの前、先生が授業でやっていた、発明品があるでしょ?」
「愉快なヘビくんのことかね?」
「そうです! あれを動かすために、油を気化させていたでしょう?」
「あの油が必要なのか! なんの! お安い御用だ!」
「いや、あれじゃ、ダメです。ガソリンじゃなきゃ」
「がそりん? ふむ……、油にもいろいろあるからのう」

そんな話をしていると彼に近寄る人物がいた。

「取り込み中のところ、悪いのだが、あの方たちに運び賃を払わないと……」
「あいつらだって、貴族だろうが。平民のためにただ働きしろよ」
「きみ。軍人は、貧乏なんだよ」
「しらんね。金ならギーシュの親に払ってもらえ。今の俺じゃ支払い無理だ。足りん」

私は彼に笑いかける。

「私でよければ運び賃を立て替えよう」


SIDE:サイト・ヒラガ


ハゲの頭がひかる。今だけ神々しく見えた。
しかしボロい掘っ立て小屋だ。

「初めは、自分の居室で研究をしておったのだが、なに、研究に騒音と異臭はつきものでな。すぐに隣室の連中から苦情が入った」

俺は何も聞いちゃいなかったが、勝手に話していた。
小屋のなかは理科室をゴチャ混ぜにしたような感じだ。せめて換気くらしろ。くせー。

「なあに、臭いはすぐに慣れる。しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく、この通り私は独身である」

いや、聞いてない。ハゲはガソリンを入れたつぼの臭いを嗅いでいた。
『固定化』のおかげで化学変化はおきていないらしい。
『固定化』便利すぎだろ。

「ふむ……、嗅いだことない臭いだ。温めなくてもこのような臭いを発するとは……、随分と気化しやすいのだな。これは、爆発したときの力は相当なものだろう」

さすが天才。わかってらっしゃる。
なにやらメモを取っている。

「これと同じ油を作れば、あの『ひこうき』とやらは飛ぶのだな?」

 俺は頷いた。

「たぶん壊れてないと思うので飛ぶと思います」
「おもしろい! 調合は大変だが、やってみよう!」

ハゲはブツブツ言いながら徐々にテンションが上がって騒ぎながら色々と動いていた。

「きみは、サイトくんとか言ったかね?」

 名前くらい覚えて欲しいものだと思いながら俺は頷いた。

「きみの故郷では、あれが普通に飛んでおると言ったな? エルフの治める東方の地は、なるほどすべての技術がハルケギニアのそれを上回っているようだな」

ガソリンの調合、運賃の支払い。俺の真実を伝えるからチャラにしてね。

「先生、実は、俺は、この世界の人間じゃないんです。俺も、その飛行機も、いつだったかフーケの盗んだ『破壊の杖』も……、ここじゃない、別の世界からやってきたんです」

ハゲがピタリと止まった。

「なんと言ったね?」
「別の世界から来たと言ったんですよ」

並行世界うんぬんは説明無理。そう思ってると俺をマジマジと見るハゲ。

「なるほど」
「あんまり驚かないんですね」
「そりゃあ、驚いたさ。でも、そうかもしれぬ。きみの言動、行動、すべてがハルケギニアの常識とはかけ離れている。ふむ、ますますおもしろい」
「先生は、変わった人ですね」

色んな意味で。

「私は、変わり者だ、変人だ、などと呼ばれることが多くてな、未だに嫁さえこない。しかし、私には信念があるのだ」
「信念?」
「そうだ。ハルケギニアの貴族は、魔法をただの道具……、何も考えずに使っている箒のような、使い勝手のよい道具ぐらいにしかとらえておらぬ。私はそうは思わない。魔法は使いようで顔色を変える。従って伝統にこだわらず、様々な使い方を試みるべきだ」

素晴らしい考えだ。マジもんの天才はよく変人扱いされるがそれは時代が追いついていないだけだ。

「きみを見ていると、ますますその信念が固く、強くなるぞ。ふむ、異世界とな! ハルケギニアの理だけがすべての理ではないのだな! おもしろい! なんとも興味深いことではないか! 私はそれを見たい。新たな発見があるだろう! 私の魔法の研究に、新たな一ページを付け加えてくれるだろう! だからサイトくん。困ったことがあったら、なんでも私に相談したまえ。この炎蛇のコルベール、いつでも力になるぞ」
「それはどうも、先生はまさに天才ですよ」


アウストリの広場に置かれたゼロ戦の操縦席に座って、俺は各部を点検していた。
操縦桿を握ったり、スイッチに触れるたびに左手のルーンが光る。そのたびに頭の中に流れ込んでくる情報が、各部の状況を教えてくれるのだ。

「ふむ、なるほど」

こ、こいつ、生きてる!
ガス欠以外問題はなかった。
ニヤニヤと笑いながら点検するのが気になったのか剣が話しかけてきた。

「うれしそうだね、相棒、あの剣といい……、すねるぞ?」
「うっせぇ、いいじゃん。早く飛びたい」
「相棒、これは飛ぶんかね」
「飛ぶ」
「これが飛ぶなんて、相棒の元いた世界とやらは、ほんとに変わった世界だね」

周りでは何人かの生徒が入れ替わり立ち代りでゼロ戦を見ていた。
さすがにこれがなんなのかわからない。わかってもらっては困る。
そこに一人の、長い桃色のブロンドを誇らしげに揺らした少女があらわれた。

「よお、元気だった? お兄さんが留守の間、寂しくなかった?」
「なにこれ?」
「飛行機」
「じゃあそのひこうきとやらから、あんたは降りてきなさい」

なにやら怒ってらっしゃる。
言われたとおりに降りた。
下手に怒らして爆発で壊されるわけにはいかんのじゃ。

「どこ行ってたのよ」
「宝探しとモンスターハンティング」
「ご主人様に無断で行くなんて、どういうつもり?」
「伝言聞いたろ?」

ルイズは腕を組むと、俺を睨みつけた。

「事後報告じゃない。主人の私には前もっていいなさいよ!」
「言ったら付いてくるだろ?」
「あたりまえじゃない」

虚無の魔法はできるだけ温存しておかないといけなかった。チャージ期間が長いし。宝探しで虚無を目覚めさせるかけにもいかない。

「ゴメンね☆」
「一週間以上も、どこ行ってたのよ。もう、ばか、きらい」

ルイズはぼろぼろと泣きはじめた。

「な、泣くなよ」

女性の涙がこんなにも破壊力のあるものだとは思わなかった。

「きらい。お兄ちゃんなんてだいっきらい」
「ぶふぉ」

ルイズの渾身の一撃が俺の急所にあたった。









[18630] <ゼロのひどい使い魔 27>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/21 09:32



二枚の手紙を見つめる。
ルイズの一撃のダメージは一日では抜けなかった。
アホどもが不可侵条約を破って戦火に入る。
その対策のための貴重な時間をルイズは奪ったのだ。
アンリエッタの結婚式予定日まで約十日間の猶予しか無い。

手紙の主は一方は骨。もう一方はロングビル。

内容を要約すると。

骨の方は力を貸してちょ。
ロングビルはお友達が見つかった。どうすればいいのか教えてちょ。

ウェールズは生きていたのだ。
ち、ちっとも嬉しくなんて無いんだからねっ!

ティファニアの初めてのお友達は俺なんだ。俺なんだ。大切な事なので二回言いました。

骨の方の返事は簡単だ。"知っている"ことをそれっぽく書いて返せばいい。
問題は生きていても死んでいても迷惑なプリンスの方だ。
不可侵条約は破られるから今の内に引き取る。
しかし、問題は居場所。
学院はまずい。
トリステインいるだけでアルビオンは大義名分とかいって条約破るだろうし。
やっぱり、噂を真実にしてしまうか。
きっとゲルマニアなら何とかしてくれる。

とうわけで可及的速やかに行動した。



SIDE:サイト・ヒラガ



気分はジャッ●・バ●アー。忙しい一日になりそうだ。

「キュルケ、俺だー、結婚してくれー」
「一体何?」

昼、キュルケを見つけた俺はズンズンと早歩きで近づいて叫んでいた。

「なんにもいわずに一人素性の知れないアホを引きとって隠居させてほしい」

タバサの母親をしたようにキュルケに匿ってもらうことにした。

「で? それをしてなんになるわけ?」
「君を幸せにするよ」

真摯な俺の願いを聞いて赤くなるキュルケ。
アレ? この手の口説き文句なんて聞き飽きてるんじゃ?

「本気?」
「俺が嫌なら匿う人を紹介してやる。かなりいい男だ」

嘘じゃない。ただそいつに想い人がいるが黙っておこう。

「私になんの得があるの?」
「俺の信頼度と好感度が大分上がります」

キュルケは金持ちなので金銭では交渉不可能だ。キュルケは考え込む。

「俺にできることならなんでもやってもいいよ?」
「『平民の賢者』に借りを作っておくのも悪くないわね」

悪魔の笑顔を見て、今、後悔しました。

えーい、次じゃ次。

「いた。おーい、タバサ」
「なに?」

図書館にタバサはいた。
こいつを動かすのは簡単だ。
うまいものだ。

「君にお願いがあります」
「なに?」
「キュルケと共にアルビオンに潜入してとある人物を回収して欲しい」
「わかった」

Σ(゚Д゚;エーッ!

すんなりと聞き入れてくれた。

「どうしてか聞かないのか?」
「必要ない」
「なんで?」
「あなたの言う事に無駄なことはなかった」

いい意味で勘違いしてる。

「んじゃ、任務ってことで、帰ってきたらうまいものを報酬として払うよ」
「期待している」

お手紙作成。

ロングビルにはキュルケとタバサがいくので仲良くするようにと書いた。
隠密行動の取れるロングビルとタバサがいるので大丈夫そうだ。
アルビオンからゲルマニアに逃げてキュルケの家で匿ってもらえと概略を書き終えて一息ついた。

「ふぅ」
「何書いてるの?」

ルイズである。当然、ルイズの部屋で手紙は書いていたので気になるか。

「骨、じゃなかった。マザリーニに手紙の返答。覗いちゃいやよ?」
「覗かないわよ。全くいつの間にマザリーニ枢機卿と手紙のやり取り始めたのよ?」
「姫様の給料に紛れ込んでた。返事したらいつの間にかペンフレンドになってた」

ふーんと言ってルイズは興味を失ったのかベッドに座った。

んで、骨への返答。

骨の手紙の内容は愚痴っぽいことが多かったがしらん。

とりあえず、不可侵条約を破ってせめてくることと、タルブの高原あたりに陣をおくと書いて最後に俺ならそうして攻めると書いてやった。
追伸としてもし戦場で得体の知れないものをみたら味方にうまく嘘をついて士気を上げろと書いて終えた。


俺はすっかり忘れていた。
ルイズが結婚式の言葉を思いついていなければ穴という穴を犯すという約束を。




[18630] <ゼロのひどい使い魔 28>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/23 12:19



「して、頼みとは?」
「こいつにできるだけ強力な『硬化』と『固定化』の魔法をかけてやってくれませんかね」

俺はオスマンに日本刀の強化を頼んでいる。

「宝探しの戦利品かの?」
「そうゆうことです」

学院の教師、生徒を総動員して『硬化』と『固定化』をかけてもらうべく交渉中である。

「しょうがないのぉ、断ったらエライ目にあいそうじゃし」
「当たり前です。俺、神の盾『ガンダールヴ』。それを召喚したルイズの正体をばらしちゃいます」
「むむ」

オスマン氏も思うところがあるのだろう。俺にルーンの事を教えたのが命取りだったな。

「安いですが報酬も出します」
「つまりは、断れば大損だが、受ければ皆が得をするということかの?」

さすがに年を食っているだけある。虚無の危険性をわかってらっしゃる。

「生徒を戦争の道具として使われるのいやじゃしのぉ、受けるしかあるまい」

立派な教育者である。
ついでにキュルケとタバサは課外授業扱いにしてもらった。
マチルダは一応まだ学院長秘書なのでそれを使った。

「ありがとうございます。いずれお礼はお返ししますよ」
「期待しとらんよ」

学院長の元を去る。そろそろガソリンができているはずだ。

「サイトくん! サイトくん! できたぞ! できた! 調合できたぞ!」

熱苦しいハゲだ。俺はゼロ戦を点検、整備していたのに。

「まず、私はきみにもらった油の成分を調べたのだ」

ワインのビン二本分のガソリンを入れる。
プロペラ位は回せるだろう。

「微生物の化石から作られているようだった。それに近いものを探した。木の化石……、石炭だ。それを特別な触媒に浸し、近い成分を抽出し、何日間もかけて『錬金』の呪文をかけた。それでできあがったのが……」
「ガソリンですね。わかります」
「早く、その風車を回してくれたまえ。わくわくして、眠気も吹っ飛んだぞ」
 
 俺は再び操縦席に座り込んだ。うるさいハゲだ。あせるなよ。
 ルーンの力でエンジンの始動方法、飛ばし方が頭に鮮明な情報として流れ込んでくる。エンジンをかけるには、プロペラを回さなくてはならない。

「先生、魔法でこのプロペラを回せますか?」
「これかね? これは、あの油が燃える力で回るのとはちがうのかね?」
「初めは……、エンジンをかけるために、中のクランクを手動で回す必要があるんです。回すための道具がないから、魔法でプロペラを直接お願いします」

コルベールの魔法でプロペラを回す。
タイミングを合わせて点火スイッチを押した。スロットルレバーを、心持ち前に倒して開いてやる。
ババババババッ! と、プロペラが回り始める。機体が振動した。

「うおおおお、うるせー」

車輪ブレーキをかける。ゼロ戦が少し動いた。
エンジン関係の計器は正常に動いている。やはりガス欠のみでほかに異常はなかった。
点火スイッチをOFFにした。
操縦席から飛び降りる。すると、コルベールと抱きついてきた。
むさくるしいぞ。

「さすが先生だ。エンジンがかかりましたよ」
「おおお! やったなぁ! しかし、なぜ飛ばんのかね?」
「ガソリンが足りませんね。飛ばすなら、樽で五本分はないと」
「そんなに作らねばならんのかね! まあ乗りかかった船だ! やろうじゃないか!」

 とりあえず、ゼロ戦を磨いた。工具がないので本格的な整備できないのが悩ましい。
ギーシュあたりに作らせよう。

「夕飯の時間よ。真っ暗になるまで、何をやってるの?」
「すまん、気づいたら夢中になっていた」
「そう。よかったわね」

相変わらずルイズの興味は薄い。

「エンジンが掛かった。もうちょいしたら飛べるゼェ」
「飛べたら、どうするの?」
「東に向かったり、このあたりを自由気ままに飛行しようかなぁ」
「あんたはわたしの使い魔でしょ。勝手なことしちゃダメ。あと、五日で姫さまの結婚式が行われるの。わたし、そのときに詔を読み上げなくちゃいけないの。でもね、いい言葉が思いつかなくて困ってるの」

ハッ。

「はーはっは、ルイズ約束を違えたな。犯すぞオルァ!」
「げ、な、何も考えてなかったわけじゃないわ。いい言葉が思いつかなかっただけよ!」

ルイズは部屋に帰った後、俺を前にして、『始祖の祈祷書』をひろげていた。

「じゃあ、とりあえず考えついた詔とやらを読み上げてみろ」

 こほんと可愛らしく咳をして、ルイズは自分の考えた詔を詠みはじめた。

「この麗しき日に、始祖の調べの光臨を願いつつ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。畏れ多くも祝福の詔を詠みあげ奉る……」

 それからルイズは、黙ってしまった。

「いうことはそれだけか?」

手をワキワキさせて聞く。

「こ、これから、火に対する感謝、水に対する感謝……、順に四大系統に対する感謝の辞を、詩的な言葉で韻を踏みつつ詠みあげなくちゃいけないんだけど……」
「踏みつつ詠みあげればいいじゃねえか」
「なんも思いつかない。詩的なんていわれても、困っちゃうわ。わたし、詩人なんかじゃないし」
「いいから思いついたこと、言ってみ」
「えっと、炎は熱いので、気をつけること」
「『こと』は詩的じゃないだろ。注意だね」

ちょっとカワイイと思った。

「うるさいわね。風が吹いたら、樽屋が儲かる」
「ことわざ言ってどうする」

ルイズには詩の才能がない。知ってたことだが改めて聞くとめちゃくちゃだった。

「ダメだね、ああ、全然ダメだ。罰として一緒に寝てもらおう」
「へ、それだけ?」

なにやら期待してたのか腑に落ちない表情を浮かべていた。

「まあ、何も考えてないわけじゃなかったし、なに? して欲しいの?」
「そ、そんなんじゃないわよ」

ルイズはベッドに潜り込んでしまった。
俺は部屋の明かりを落としてからベッドに入った。

「ねえ、ほんとに東の地に行くの?」
「気が向いたら」
「元の世界に帰りたくないの?」
「うーん、今のところは帰る気ないね」

ルイズにスッと近づいた。ルイズはビクっとなったがそれだけだった。

「いつになったら帰る気になるの?」
「みんなが幸せに笑えるようになったら、かな、かな?」
「なによそれ」

ルイズの微笑は可愛かった。

「抱き枕だぁ」
「きゃ」

軽く悲鳴は上げたが俺のされるがままに抱き枕と化したルイズだった。










[18630] <ゼロのひどい使い魔 29>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/23 12:20


ら、らめぇえええ。

 ルイズ覚醒フラグだ。これは必要なんだよ。ゼロ戦は所詮、戦術機。
アルビオン軍の戦艦相手に竜騎士が勝つようなものだ。うん。それ無理。
つーわけで、ルイズさんよろしく。


トリステイン魔法学院に、アルビオンの宣戦布告の報が入った。
骨は俺の助言を最大限に活かしたらしく、王宮からの使者は多少混乱していた程度だった。

事の始まりは、魔法学院の玄関先で、王宮からの馬車を待っているところであった。
ゲルマニアヘ俺たちを運ぶ馬車だ。
しかし、朝もやの中、魔法学院にやってきたのは一人の使者であった。
学院長に報告することがあると言ったので、俺たちもついて行ってオスマン氏と共に報告を聞いた。

「王宮からです。申し上げます。アルビオンがトリステインに宣戦布告しました。
そのため、姫殿下の式は無期延期になりました。王軍は、現在ラ・ロシェールに展開中です。
したがって、学院におかれましては、安全のため、生徒及び職員の禁足令を願います」

 オスマンは顔色を変えた。

「宣戦布告とな? 戦争かね?」
「いかにも。タルブの草原に、敵軍は陣を張り、ラ・ロシェール付近に展開した我が軍とにらみ合っております」

やっぱりそうなるのか。

「アルビオン軍は、強大だろうて」

 使者は、うわずった声で言った。

「敵軍は、巨艦『レキシントン』号を筆頭に、戦列艦が十数隻。上陸せし総兵力は三千と見積もられます。我が軍の艦隊主力はすでに交戦中、かき集めた兵力は四千。
国内の戦の準備はマザリーニ枢機卿により万全の体制です。
しかしながらそれより、制空権を奪われたのが相手に味方したようで、敵軍は空から砲撃をくわえ、我が軍をなんとか食い止めている模様です」

骨、やるじゃん。

「現在の戦況は?」
「敵の竜騎兵によって、タルブの村が多少のぼや騒ぎが起きた程度です。しかし、それも制圧は目の前だとか、しかし、同盟に基づき、ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましたが、先陣が到着するのは三週間後とか……」

 オスマンはため息をついて言った。

「……見捨てる気じゃな。敵はの頑張り次第では、トリステインの城下町を落とすじゃろうて」
「初めから助ける気はなかったんだろ? 同盟は単にゲルマニアとしてトリステインというか王族の血と姫様の人気が欲しかっただけのパフォーマンスってとこかね。アルビオンに潰されたらそれはそれで、トリステインと戦ったアルビオンを潰して両国をいっぺんに手に入れるってなんという漁夫の利」
「噂にたがわぬご考察でございます賢者様」

使者がそういって頭を下げる。ちっ、骨の仲間か。

「んで、あんたが来たのはそれだけじゃなくて敵を倒す決定打が欲しいって所?」
「は、アナタ様の意見を聞いて来いとのことです」

骨め、それくらい自分でなんとかしろ。俺は知らん。

「な、ななんてこと、たかが使い魔にマザリーニ枢機卿はどこまで信頼してるわけ?」
「ペンフレンドだし、いいこと思いついた。ルイズ、ゼロ戦に乗れ」
「ご自身が戦場に赴くと?」

使者が驚いた顔で聞いてきた。

「まさか、といいたいですけど、マザリーニさんは戦場にいるんでしょ? 直接伝えに行くだけですよ」
「はあ」

きょとんとした使者とオスマンをおいて俺は中庭に向かう。

「どこに行くのよ!」
「タルブの村」

ルイズを引き連れてコルベールの研究室へとたどり着いた。
ハゲは起きてた。くそ、頭に落書きしてから起こそうと思ったのに。

「ガソリンはできてますぞ。君の言った通りの量ができているよ。ほれ、そこに」
「じゃあ、それを運んでください! 今すぐ!」
「君の言っていたことが起きたと言うのかね?」

ハゲには骨と同じことを口頭で伝えてある。

「イグザクトリー」
「ちょ、あんた、戦争が始まるって知ってたの?」
「いや、かもしれないって言っただけ」

驚いているルイズを引きずってゼロ戦に向かう。
ハリー、ハリー。

助走距離が足りないがハゲの魔法に頼って見事に飛んだ。

「うわー、本当に飛んでるわ」
「うおー、飛びやがった! おもれえな!」

 ルイズとデルフリンガーが興奮したように騒ぐ。

「飛ぶさ。飛ぶようにできてんだからよ」

 ゼロ戦は翼を陽光にきらめかせ、風を裂き、異世界の空を駆けのぼった。

俺は風防から顔を出して、眼下のタルブの村を見つめた。
消火活動を終えたっぽいトリステインの兵士がたくさんいた。

空からの俯瞰で素人目に見ても地上戦の終りは近かった。
あれ? やることなくね?
そう思っていた時期もありました。
制空権をとっているアルビオン軍は空の戦いでは優位に立っていた。

『レキシントン』号。ルイズ覚醒のために的になってもらう。

その前にハエみたいに飛んでる奴らを倒さなければ。
機体を捻らせ、タルブの村めがけてゼロ戦を急降下させた。

「ヒャッハー、汚物は消毒だー」

弾を無駄遣いしないようにタタタ、タタタと撃って敵を倒していく。
シューティングゲーム感覚であるが、殺さずの誓で? ノー、単に臆病。
なるべくケガですむように加減している。

「すすす、すごいじゃないの! 天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士が、まるで虫みたいに落ちてくわ!」
「見ろ、人がゴミのようだ」
「相棒、右から十ばかりきやがったぜ」

高性能レーダー、デルフが教えてくれた。

「了解、ひねりこみ、入りまーす」
「きゃあ、もっと丁寧に操りなさいよ!」
「しゃべってると舌を噛むからしがみついてなさい」


SIDE:ルイズ

 もう、子供扱いして! 心の中で叫んだ。機体の中は激しく揺れる。
やっぱりくるんじゃなかった。
もしかしたら戦闘するかも? というかする! と言ってた。
私は行かなくてもいいじゃないと言ったが、サイトは、姫様の助けになると言った。
それに宝探しの時はついて行けなかったので今回はついてくることにしたのだ。

戦場でサイトが死ぬかもしれない?
まさか、殺しても死なないような奴だ。
危なくなったら一目散に逃げ帰るだろう。
サイトにしがみつきながらそう思った。

「ルイズ、『始祖の祈祷書』持ってる?」
「持ってるわよ。それがどうかしたの?」

『始祖の祈祷書』を握り締めた。

「指輪は?」
「ポケットの中、だからそれがどうしたっていうのよ!」
「指輪はめたらいい詩が思い浮かぶかもよ? ついでに『始祖の祈祷書』に思いついたこと書いとけよ。どうせ白紙だし」

呑気なものだ。そりゃ、あっという間に二十騎もの竜騎士を倒してやることないのはわかるけど。

「そ、そんなのダメに決まってるでしょ?」
「女は度胸、何でも試してみるものさ」

そう言われてしぶしぶ指輪をはめて『始祖の祈祷書』を開く。
もちろん何か書くつもりはない。ページを開いた。
その瞬間、『水』のルビーと『始祖の祈祷書』が光りだしたとき、心底驚いた。









[18630] <ゼロのひどい使い魔 30外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/23 12:47


「あなたは、何をしてるんですか?」

風呂に入ろうと準備をしに来たら先客が既に、風呂に入っていた。
赤毛の上にタオルを乗せて、二つの物体をお湯に浮かしていた。

「あら、サイト。お先に入ってるわよ」
「別に入るのいいけど、なぜ?」
「この前この辺りを歩いてたら気持ちよさそうにコレに入ってるサイトを見て気になってたのよ」

シエスタといい、学院にいる奴は覗きが好きなんですね。

「貴族用の風呂があるだろ。ついでに言えば俺が今から入る予定だったんだぞ」
「あら、なら一緒に入れば問題ないわね」

それが当然と言わんばかりに言ってくる。
よし、見てろ。俺を誰だと思ってやがる!
服を脱ぐ。
さすがに恥ずかしい部分はタオルで隠した。

「いらっしゃい。外でのお風呂もなかなかいいものねぇ」

風呂の所為で顔が赤いキュルケ。髪を纏めているので、いつもと印象が違う。
あと、物体Xを少しは隠せ。もろ見えだ。

「キュルケ、俺は男だ」
「そうねぇ」
「少しは恥らいとかないのか?」

キュルケは平然としている。
そこまで、堂々としてるとこっちが恥ずかしいわ。

「ここまで見せたのはサイトが初めてよ?」
「へ?」

一ダースいるはずのボーイフレンドはどうした?

「失礼なこと考えてない? こう見えても身体を許したことないわよ」

処女宣言である。

「意外だ。いや、うん。勘違いしてた。キュルケにとっては本当にお遊びってことか」
「そうゆうこと。青臭い子供相手に本気になるわけないじゃない」

キュルケも子供なんだけどねぇ。だが、俺はそれを言わなかった。

「だから、本気なのはサイトだけよ。ここまで見せたんだから責任とってね?」
「しらん。勝手に入ってこいって言ったのはそっちだ」

身勝手なのはいつもと変わらないキュルケ。
だが、真剣な表情だった。

「でもね。サイトには抱かれてもいいかもって思ってるわ。見た目は私と同じ位なのにしっかり知てるし、頭もいい。ゲルマニアにきて貴族になれば家族も納得するわ。そうしなさいな」

以前にも言われたことだ。
キュルケのマジな表情に少しドキッとした。

「お誘いはありがたいが、まだやることも多い」

火の魔法を使った事業も考え中だし。

「残念。私は諦めないからね」

キュルケ。
「火」の系統の魔法を得意とする優秀なトライアングルメイジだ。

「そうだ!」

バシャっと音を立てて立ち上がる。
思いついた。風呂、火の系統。
風呂屋作ればいい。
火の系統はボイラーの代わりにすれば銭湯ができる。
しかも、水、風、土も銭湯を作るには最適。
水には水の管理。
風には風呂場の建設及び、熱伝達の手伝い。
土は銭湯建設。

「きゃああ。サイト。前、見えてるから!」
「あ」

隠していたタオルはお湯の中。
キュルケの顔の目の前には俺のアレが。

「すまん。でも、キュルケのおかげで新しい仕事が思いついた」
「もう! 何考えてるのよ! あんなもの見せて!」

顔を赤らめて怒るキュルケは可愛かった。
恥じらう乙女。
キュルケの珍しい一面を見れた。




――――――――――――――――――――――

短いですが、外伝でした。
即興で作りました。ツン素直クール?なキュルケ。 
キュルケは母性的な女性だと思ってます。

――――――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 31前>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/24 12:02


SIDE:アンリエッタ

生まれて初めて見る敵に、ユニコーンに跨った私は震えた。
確かに我がトリステインは優勢に立っている。
マザリーニ枢機卿のおかげである。
彼曰く、頼もしいペンフレンドの助言だとか。

昨日のお芝居もうまくいきました。
会議にうんざりして一人で出て行く。
そして私が全軍の指揮をとる。
高級貴族を騙すことがあんなにも楽しいことだとは知りませんでした。

国内の準備も完璧で私たちの負ける要素はない。
しかし、さすがはアルビオン軍、制空権を保ったままだ。

「なかなか均衡が崩れませんわね」
「ここは落ち着いて様子を見ましょう。将が取り乱しては、軍は瞬く間に潰走しますぞ」

マザリーニは近くの将軍たちとすばやく打ち合わせた。
地上戦は私の見る限り、空中からの攻撃に気を配っていればいいだけだろう。
残るのは空中戦だ。
マザリーニが戻ってくる。

「勝ち目はありますか?」
「時間の問題かと……、しかし、アレをなんとかしないと我が軍は勝利したとは言えないでしょうな」

大型戦艦『レキシントン』を忌々しく見つめていた。



SIDE:ルイズ

私はサイトにしがみつくのをやめて、座席の後ろの隙間で、『始祖の祈祷書』を読みふける。

これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。
またそのための力を担いしものなり。『虚無』を扱うものは心せよ。
志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。
『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。
詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその強力により命を削る。
したがって我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』

 そのあとに古代語の呪文が続いた。
 私は呆然として呟いた。

「ねえ、始祖ブリミル。あんたヌケてんじゃないの? この指輪がなくっちゃ『始祖の祈祷書』は読めないんでしょ? その読み手とやらも……、注意書きの意味がないじゃないの」

 そして、気づく。読み手を選びし、と文句にある。ということは……。
 私は読み手なのか?
 よくわからないけど……、文字は読める。読めるのなら、ここに書かれた呪文も効果を発するかもしれない。
 私はいつも、自分が呪文を唱えると、爆発していたことを思い出した。あれは……、ある意味、ここに書かれた『虚無』ではないだろうか?
 思えば、魔法が爆発する理由を、誰も言えなかった。
 両親も、姉たちも、先生も……、友人たちも……、ただ『失敗』と笑うだけで、その爆発の意味を、深く考えなかった。
唯一、サイトだけは失敗ではなく、爆発魔法なのではと言ってくれた。

『魔法を失敗して爆発じゃなくて爆発する魔法を使ってるってことにすれば成功率百だね』

頭の中が妙に冷たい感覚がしている。
 
『女は度胸、何でも試してみるものさ』

 試してみる価値はある。
 私は腰をあげた。
 ごそごそと座席の後ろから、隙間をくぐって前に出る。

「ちょ、前見えねって、今戦ってんのよ?」

私は操縦席に座るサイトの開いた足の間に座った。
私は言った。

「いや……、信じられないんだけど……、うまく言えないけど、わたし、選ばれちゃったかもしれない。いや、なんかの間違いかもしれないけど」
「間違いなんかじゃねー、俺を誰だと思ってやがる!」

耳元で怒鳴られてうるさかった。

「いいから、このひこうきとやらを、あの巨大戦艦に近づけて。ペテンかもしれないけど……、何もしないよりは試した方がマシだし、ほかにあの戦艦をやっつける方法はなさそうだし……。ま、やるしかないのよね。わかった。とりあえずやってみるわ。やってみましょう」
「了解、いいねー、度胸のある女は嫌いじゃない」

サイトの真剣な表情を見つめて私はドキッとした。
いつもこの顔でいてくれればいいのに。

「ルイズ、今のうちに詠唱しとけ、いざ打てるようになったら合図を頼む。それまでになんとか船の近くにいく」
「頼んだわ」

私は息を吸い込み、『始祖の祈祷書』に書かれたルーン文字を詠み始める。



SIDE:サイト・ヒラガ


「相棒! 後ろだ!」

 はっとして後ろを見ると、一騎の竜騎士が、烈風のように向かってくる。
 ひげもじゃロリコンホモ野郎であった。
俺は風防をあけた。

「やーい、ホモ野郎! てめぇはおとなしく男でもほってろ!」

 ワルドは風竜の上で、にやっと笑った。

「会えて嬉しいぞ! 僕をホモにしたてやがって、絶対にゆるさん!」
「はは、その様子じゃ俺のお手紙読んだのお前か?」
「上司だよ! 話はこれまでだ!」

ワルドは素早く杖を抜き取り呪文を詠唱した。

(ルイズと兄妹プレイじゃあああ)

左手のルーンが、いちだんと力強く輝く。
スロットル最小。フルフラップ。
ゼロ戦は急減速した。
操縦桿を左下に倒し、同時にフットバーを蹴りこんだ。
鮮やかにゼロ戦は回転した。

ワルドがキョロキョロしている。ぐるりと回転してワルドの後ろに回り込んだ。
たぶんワルドから見ればちょっと目を離した隙に消えたって感じか。

さよならワルド。
弾を撃ち込む。
風竜とワルドに弾は当たった。
うへ、いったそー。
ゆっくりと、滑空するようなかたちで、ワルドを乗せた風竜は墜落していった。

俺は巨大な的に向かってゼロ戦を上昇させた。
早く、覚醒して!
砲弾の弾幕がやべーって。

SIDE:ルイズ


エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ
 
 私の中を、リズムがめぐっていた。一種の懐かしさを感じるリズム。
 呪文を詠唱するたび、古代のルーンをつぶやくたびに、リズムは強くうねっていく。
 神経は研ぎ澄まされ、辺りの雑音はすでに一切耳に入らない。
 体の中で、何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転していく感じ……。
 誰かが言っていたそんなセリフを、私は思い出した。
 自分の系統を唱えるものは、そんな感じがするという。
 だとしたら、これがそうなんだろうか?
 いつも、ゼロと蔑まれていた自分……。
 魔法の才能がない、と両親に、姉たちに、先生に叱られていた自分……。
 そんな自分の、これが本当の姿なんだろうか?
 
オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド
 
 体の中に、波が生まれ、さらに大きくうねっていく。
 
ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ
 
 体の中の波が、行き先を求めて暴れだす。
 私はサイトの肩に跨って足でサイトに合図を送った。
 サイトは頷き、操縦桿を倒す。
 ゼロ戦が、真下の『レキシントン』号めがけて急降下を開始した。
 しっかりと開いた目で、私はタイミングをうかがう。
 
 『虚無』

 伝説の系統。
 どれほどの威力があるというのだろう?
 誰も知らない。
 もちろん自分が知るわけがない。
 それは伝説の彼方のはずだった。
 
ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……

 長い詠唱ののち、呪文が完成した。
 その瞬間、私は己の呪文の威力を、理解した。
 巻き込む。すべての人を。
 自分の視界に映る、すべての人を、己の呪文は巻き込む。
 選択は二つ。殺すか。殺さぬか。
 破壊すべきは何か。
 烈風が顔をなぶる中、まっさかさまに降下する自分。
 目の前に広がる光景は巨艦。戦艦『レキシントン』号。
 私は己の衝動に準じ、宙の一点めがけて、杖を振り下ろした。
 






[18630] <ゼロのひどい使い魔 31後>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/25 12:17


SIDE:アンリエッタ


 信じられない光景を目の当たりにした。
 今まで散々自分たちに砲撃を浴びせかけていた巨艦のが上空に現れた光の球に包まれた。
 光の球はさらに膨れ上がり、視界すべてを覆い尽くした。
 音はない。
 私は咄嗟に目をつむった。
 目が焼けると、錯覚するほどの光の球であった。
 そして……、光が晴れたあと、艦隊は炎上していた。
 巨艦『レキシントン』号を筆頭に、すべての艦の帆が、甲板が燃えていた。

 あれだけトリステイン軍を苦しめた艦隊が、がくりと艦首を落とし、地面に向かって墜落していく。
 地響きを立てて、艦隊は地面に滑り落ちた。
 私は、しばし呆然とした。
 辺りは、恐ろしいほどの静寂に包まれていた。誰も彼も、己の目にしたものが信じられなかったのだ。

「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! 伝説のフェニックスによって!」

マザリーニが大声で叫んだ。

「フェニックス? 不死鳥だって?」

 動揺が走る。

「さよう! あの空飛ぶ翼を見よ! 伝説の不死鳥、フェニックスですぞ! おのおのがた! 始祖の祝福我にあり!」

 するとあちこちから歓声が漏れ、すぐに大きなうねりとなった。

「うおおおおおおぉーッ! トリステイン万歳! フェニックス万歳!」

 私は、マザリーニにそっと尋ねた。

「枢機卿、フエニックスとは……、まことですか? 伝説のフェニックスなど、わたしは聞いたことがありませんが」

 マザリーニは、いたずらっぽく笑った。脳裏に彼の顔が重なる。

「真っ赤な嘘ですよ。しかし、今は誰もが判断力を失っておる。目の当たりにした光景が信じられんのです。この私とて同じです。しかし、現実に敵艦隊は墜落し、あのように見慣れぬ鳳が舞っているではござらぬか。ならばそれを利用せぬという法はない」
「はあ……」
「なあに、今は私の言葉が嘘か真かなど、誰も気にしませんわい。気にしておるのは、生きるか死ぬか、ですぞ。つまり、勝ち負けですな」

まるで彼が言う事を代弁しているかのような気がした。

「使えるものは、なんでも使う。政治と戦の基本ですぞ。覚えておきなさい殿下。今日からあなたはこのトリステインの王なのだから」

使えるものは何でも使う、か。

「殿下。では、勝ちに行きますか」

 マザリーニが言った。私は再び強く頷くと、水晶光る杖を掲げた。

「全軍突撃ッ! 王軍ッ! 我に続けッ!」


SIDE:サイト・ヒラガ


 ルイズはぐったりとしていた。まー、あんだけすげぇ魔法使えばそうか。
 これが、虚無。そして、ルイズの16年分の魔法。

「よお、すごかったじゃん」
「うん、疲れた。さすが伝説ね」
「伝説? 伝説は俺とデルフだろ?」
「ちげーねぇ」

 家が数件焼け焦げた村を見る。
 うーん、確か原作じゃ、村が焼け焦げたんだよな。
 シエスタ無事かな~。


SIDE:シエスタ


弟たちを連れて森の中に逃げるはずが、あっという間にトリステイン軍が駆けつけてくれた。
家が数件燃えた跡が見えたがそれ以上の被害はなかった。
ここを任せられている軍の人は私たちに優しくしてくれた。
戦争の被害にあった家はどうやら国が補助金を出してくれるという話だ。

夕方……。
トリステイン軍の人がアルビオン軍を倒したと言ってくれた。
村に戻ると空から爆音が聞こえた。
見上げる。
私は驚いた。『竜の羽衣』が飛んでいる。
私は駆け足で追いかけた。


SIDE:サイト・ヒラガ

 思ったより被害が少ない。
 ゼロ戦で村を旋回して様子を見た後、タルブの草原に着陸させた。

 ルイズはすっかりと俺の腕の中で眠ってしまっている。
どうしよっかな~。

風防を開いて夕暮れに染まる空を見ていた。

「サイトさーん」
「シエスタ」

ゼロ戦から降りるわけもいかず操縦席から言葉をかけた。

「すまん、静かにしてくれ、ルイズが寝てるんだ」

シエスタは羽から登ってきて操縦席の横まで来ていた。なんという行動力。

「あら」

そう言ってルイズを見つめるシエスタ。
ちょんちょんとルイズのほっぺをつついていた。

「シエスタ、すまんこいつ頼んだ」
「ふにゃ」
寝ぼけるルイズをおいて、俺はゼロ戦から飛び出して、駆け出した。

「どこ行くんです?」
「トイレ!」

森で放尿をすました後。
ルイズの感触を思い出して抜いた。







[18630] <ゼロのひどい使い魔 32外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/25 12:18





タルブの一件から数日後のある日。

いつものように俺は風呂に入る準備をすませていた。
服を脱いで風呂に入る。

「ふぅ」
「相棒、客だぜ」

はて? シエスタでもきたのだろうか?

「誰だ?」
「私」

タバサであった。

「なんだ? 覗きか?」
「違う」

薄暗いのでタバサの表情がいつも以上にわかりにくい。

「?」
「私も入る」
「ん? 俺が出た後ならいいぞ」
「一緒に入る」
「へあ?」
「約束」

もしかして、アレか?
コルベールに断られたら云々の話か。
いや冗談ですよ。
そう言おうとおもったらタバサは脱ぎ始めた。

「おおぅ」

見事なロリ体型。

「お邪魔する」

タオルで胸から股の当たりまで隠して入ってきた。
本来、タオルをお湯につけるのはアレだが、注意して変態と言われるのも嫌だったので黙っていた。

「気持ちイイ」
「それはよかったな」

タバサはコクリと頷いた。
いや、本を読み始めるのはどうかと思います。

「風呂で本読むかね、タイトルは『イーヴァルディの勇者』か」
「文字、読めるようになった?」
「お陰さまで、今じゃ書けるようにもなった」

そういや、タバサと会話が成立するのって友達の証じゃね?

「体」
「あん?」
「よく鍛えてある」

腹筋は割れてるし引き締まってますね。地獄のトレーニングしてますから。

「タバサはもうちょい、成長するといいな」
「キュルケみたいなのが好み?」
「いんや、そういう意味じゃないよ」
「どういう意味?」

なかなか怖い目で見てくる。

「タバサ腕力なさそうだし、って女の子だからしょうがないか」
「これでも鍛えてる」

ジャバっと水音を立ててタバサが立ち上がった。
その、タオルはお湯の中にあるわけで。
丸見えなわけで。

「ぶふぅ、隠せよ」
「キャ」

すっごく小さい声で悲鳴を出してすぐに風呂に入り直した。出ていかないんですね。

「無表情より、ソッチの方がカワイイと思うぜ? 俺無表情属性ないし」
「無表情属性ってなに?」
「忘れてくれ」

同じように無口、無表情の宇宙人のことを思い出して言ってみた。

「お話」
「ん?」
「あなたの話が聞きたい」

メイドといい風呂に入ると俺は話をしないといけないのか?

「ではここは世にも恐ろしい幽霊の話でも」
「幽霊、怖い」

い、いやいやいや、反応しすぎだから。
抱きつくとか止めて、おっきしちゃう。

「こ、怖がり屋さんだなぁ」

ナデナデしてあげることにした。
これ以上はやばいんだお。
おっきしてるんだお。

「秘密」

落ち着いたのか俺から離れたタバサはそういった。

「怖がりを?」
「秘密」
「わかったから」

泣きそうな顔はやめれ。
タバサはそれを聞いて風呂から出て行った。

タバサ、君に決めた。
残り湯でお楽しむ。

どこかで、きゅい~と何かが鳴いた気がした。
うん、気のせいだ。



――――――――――――――――

久々にタバサを書いた気がします。

――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 32外伝 裏>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/25 12:20


 ~韻竜は見た~



おちびのお姉さまとあの使い魔がお風呂にはってるのね。
私もはいりたいのね。きゅい。

お姉さまはお風呂からでたのね。
あの使い魔の男が気になるのね。

きゅい、急に立ち上がったのね。
なんなのね。なんだか股に大きな棒みたいなものが生えてるのね。
握ってこすりはじめたのね。なんだかいけない気分になってきたのね。

すごく気持ちよさそうな顔してるのね。
なにかでたのね! 白い何かがでたのね!!

なんだか、すごくいけないものを見てしまったきがするのね。

きゅい~。

お姉さまに相談してみるのね~。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 外伝 ~記念~>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/25 18:04
 100000を超えた記念。

主人公がみんなをどう思ってるか

ルイズ 守りたい妹的存在。
デルフリンガー おしゃべり。
ティファニア 乳レボリューションを生で見たい。
キュルケ ハゲには渡さない。俺のもの。
タバサ 萌える。幼女に見える。
ギーシュ ヘタレ。
モンモランシー 役立つスレンダー。
シエスタ 献身的な子→暴走メイド。
マルトー メシウマ。
オスマン エロジジイ。
ロングビル 愛人にしたい。
コルベール 天才発明家。
アンリエッタ 頭の弱い子。
マザリーニ 骨。
ワルド ひげもじゃホモ野郎+ロリ。
ウェールズ おともだち。女装させると……。
アニエス まだ見ぬドS美人。

※以下カオス注意


ネタ。


  ( ゚д゚ )      ←作者
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /




  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /



 ⊂( ゚д゚ )
   ヽ ⊂ )
   (⌒)| ダッ
   三 `J



/  O | ̄| O  ヽ タバサはサブヒロインだから
|    / |    | 見たければ、外伝見れば良いじゃない!
ヽ、.  ├ー┤    ノ べ、別にアンタに見て欲しい訳じゃないんだからね!



以下小話です。読む必要は全くない。 

ついに来た。新しい嫁。
マックブックプロ。

(作者)「初めまして、これからよろしくね」
(マックさん)「ツーン」

こいつはぁ、手ごわそうだ。

「これ、プレゼントです」
「粗品(フリーソフト)なんて嬉しくないわ!」

しかし、強引にねじ込む。

「だ、駄目。私にその粗品(exeファイル)は合わないわ!」
「まあまあ」

なん……だと?!
嫁初心者の俺がしでかした初めのミス。

「らめぇえ、無理に入れちゃ、らめぇなのぉお」

モノをを入れる。

「あれ? あれ? うまく入らない??」

ウィンちゃんとそもそもの出来(OS)が違うことを失念していた。

「ごめんよ、上手くいかないや」

嫁が来て初夜。うまくいかなかった。
新たな嫁との生活は初日からダメダメだった。

【ポイント】

Macでexeファイルを実行は基本的には無理だぞ☆




[18630] <ゼロのひどい使い魔 33>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/27 12:20


 ウェールズは、ファントムマスクをつけている。
 額から口元までは隠れてるが、それ以外は丸見え、変装の意味ないね。
 格好はどこをどう見ても平民。
 杖は持ってるけど目立たないように工夫されていた。
 ここは学院のテラスである。

「あんた誰?」

俺はテーブルの正面に座る人物に問いかける。
流れる金髪の髪。

「はは、相変わらずなようだね」
「ちょっと、誰なのよ?」

ルイズが俺に聞いてくる。マジでわからんのか?
テーブルにはマチルダ、ルイズ、俺、キュルケ、タバサが居る。
マチルダとキュルケはニヤニヤとルイズと俺を見ていた。

「私を頼る理由がわかったけど、さすがサイトねぇ」

キュルケがファントムマスクを被った人物を流し目で見ながら言う。

「約束は果たしましたわ。ボス、報酬は弾んでくださいね?」

マチルダはにやりと俺に微笑かけてくる。

「なんでここにいるんだよぉ。俺の手紙の指示は無視?」
「いえ、中継しただけですよ?」

絶対に違う。

「だから、誰なのよ?」

ルイズがわめく。
正体を教えるべきかどうか迷う。

「久しいね、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

そういってアホは周りを見渡し素早くマスクをとって素顔を見せた。

「あ、あなた」

もう一度ウェールズはマスクを装着。
ルイズが騒がないようにウェールズは指を口の前に立ててシーッとやる。

「驚いたわ。なんでここに?」
「キュルケの思惑か?」

マチルダは頷いた。どうせ俺とウェールズは友達だと言ったのだろう。
何かと煮え湯飲まされているのマチルダのあてつけだ。

「さーね。どう? 感動の再会じゃないの?」
「私は反対したのだが、今はしがないただの人間だ」
「べ、別に嬉しくなんてないんだからねっ!」

ウェールズは手を差し出してきた。
いや、テーブルを囲んでる女性たちが見えんのか?
し、仕方なく握手してあげるんだからねっ!

「また会えて嬉しいよ」



SIDE:マチルダ


 男同士の友情ってやつかい?
 二人は恥ずかしそうに握手をしていた。
 本当は学院に寄る予定はなかったが、ミス・ツェルプストーが提案してくれた。
 
 あいつに合わせたらどんな反応するか見たくない?
 
 アタシは迷うことなく提案に乗った。
おかげでいいものが見れた。

「君には感謝しても仕切れないな。当分頭が上がりそうにないよ」
「はっ、ならなんかくれ」

女のアタシにはよくわからないが、この二人が心底喜んでいるのがわかる。
慈善行為も悪く無いね。

「生憎、今の私にはこの指輪しか無い。そうだな。私が持っていても疑われてしまう。これを受け取ってくれるかい?」

王家の指輪を軽々と渡そうとする。
あ、アレにどれだけの価値があるのかわかってるのか?

「求婚されちゃったわ。ルイズどうしよう?」

フザケた調子でミス・ヴァリエールに話を振っていた。

「しらないわよ。受けとれば?」
「えー」

言葉ではそういっているが、まんざらでもない顔をしていた。

「まあ、貰えるものは貰っとく。言っとくけど、求婚を受けたわけじゃないんだからねっ!」
「ははは、サイトくんは愉快だな。君か私、どちらかが女性だったら私たちはどうなってたろうね?」

ウェールズもサイトといい勝負である。
なるほど、一日で友人になるわけだ。

「この野郎。お前が女なら、ヒーヒー言わせてたさ。俺が女だったら姫様から寝とってやった」
「ふ、それは困った話だ。いや、男同士でよかったよ」
「ずいぶんと仲がよろしいようで」

呆気にとられている子供な女性陣をおいてアタシはいってやる。
くくく、なんだいその顔。


SIDE:ウェールズ


 友人との再開は嬉しいものだ。ミス・ロングビル。
 いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ。私の父親が迷惑をかけてしまった。
私はそれを聞いて素直に謝罪した。
その時は複雑な表情をしていたが、サイトくんとの約束で私を許してくれた。
私の前にいる友人には一生をかけて恩を報いる。
私は心の中でそう思った。
私はもう、迷わない。
生き恥を晒して生きる。
それだけだ。

「んで、いつまでここにいるわけ?」
「二、三日は滞在します。その後、ゲルマニアに向かいますわ」
「なら姫様にあうか?」

ドキリとする。もう二度とあえないと思っていた愛すべき人物のことだ。

「会えるのなら、そうしたいが、私がトリステインにいること自体まずいのでは?」

愛しのアンリエッタは今や聖女として崇められている。ゲルマニアとの婚姻も解消されアルビオンは惨敗した。
そしてそのままアンリエッタは女王として即位したのだ。

「情勢は日々変動してるのだよ」


SIDE:サイト・ヒラガ


 情勢を考える。アルビオンはもはや虫の息。
 ゲルマニアはトリステインとの同盟破棄された。国としての信頼が落ちている。
 トリステインは聖女誕生と女王即位でお株上昇。
 ガリアとロマリアは静観中。ガリアはアルビオンとの戦に参戦しなかったのだ。

 ウェールズをアルビオンに返して王に即位させるか? 
 対、七万軍のフラグを折れるが、そうなる前に未だにレコンキスタが暗躍しているので殺される可能性が高い。
それに、ウェールズをアルビオン王に即位させて、アンリエッタ女王と結婚させてトリステイン、アルビオン連合国家にしてもいいが、そうなると黙っていないのがガリアだろう。

無能王ジョセフ。
狂人だっけか。無能王のレッテルを貼られているが普通に国の運営はやり手だ。
無能は魔法だけでそれ以外は有能だ。
そのことに気づかせないジョセフはおそろしいやつだ。
魔法が無能って虚無だからしょうがない。
しかも、現在では虚無の使い手として覚醒している。
エルフと手を結んでいるあたり、相当な実力だと原作読んで思ったな。

ロマリア。

確かヴィットーリオが使える虚無、『世界扉』で元の世界に帰れる。
原作で、サイトは帰らなかったが。
地球の武器を幾つも保有している危ない国だ。
さらにいえば宗教団体である。
厄介なことこの上ない。
戦うと面倒な奴らである。

結局、現状維持しかなさそうだ。

「情勢は日々変動してるのだよ」
「つまり、私がアンリエッタにあっても問題ないと?」
「子どもができなければ問題ない」

ブフォっとウェールズが飲んでいた紅茶を吐き出す。

勝った。俺は勝ったぞ~。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 34>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/28 12:07


SIDE:アンリエッタ

 トリステインの王宮で、私は客を待っていた。
女王とはいえ、いつも玉座にこしかけているわけではない。王の仕事は、主に接待である。

 戴冠式を終えて女王となってからは、国内外の客と会うことが格段に増えた。
何かしらの訴えや要求、ただのご機嫌伺い、私は朝から晩まで、誰かと会わねばならない羽目になった。そのうえ戦時なので、普段より客は多い。

 それなりに威厳を見せねばならぬので、大変、気疲れがする。
マザリーニが補佐してくれるとはいえ、受け答えにも揺るぎがあってはならない。
すでにもう私は、何も知らないお姫さまでいることを許されない。

 しかし……、今度の客は、そのような作った表情と態度を見せないでもすむ相手だった。

扉が開いた。

 ルイズが立って、恭しく頭を下げた。
その隣にはサイトの姿も見える。さらにその後ろに見知らぬ人がいた。

「ルイズ、ああ、ルイズ!」
 
私は駆け寄り、ルイズを抱きしめた。顔をあげず、ルイズは呟いた。

「姫さま……、いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」
「そのような他人行儀を申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。あなたはわたくしから、最愛のおともだちを取り上げてしまうつもりなの?」
「ならばいつものように、姫さまとお呼びいたしますわ」
「そうしてちょうだい。ああルイズ、女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ」
「そんなにいやなら投げ出して母ちゃんに押し付ければいい」

 サイトさんも相変わらずだ。

「あら? お隣の殿方は?」
「さあね。さて、なにかあるかもしれないからディティクトマジックを頼むわ」

そう言われて隣の平民の格好をしてマスクをかぶっている人物は懐から杖をとりだした。
貴族?

「扉にはロック」

平民の格好をしているというおかしな貴族の男性は言われたままに魔法を行使している。
平民が貴族を従わせている光景に私は疑問を抱く。
仮にも女王である私の前で軽々と魔法を使う貴族は初めてだった。

「ここに居る人間以外に知られる危険は?」

謎の貴族は首を振る。

「一体何事です? 仮にも私は女王ですよ?」
「おー、さっそく権力を示すか」

カチンと来た。私は好きで女王やってるんじゃない。

「意地悪はもういいんじゃないかな?」

聞き覚えのある声がした。
まさか、いや、そんなはずは。

「んじゃ、ご対面を許可する。俺らは部屋にいるから、それでも気にしないならベッドインで」
「了解した」

そう言ってマスクを取った人物に私は驚いた。

「相変わらずだねアンリエッタ。なんて泣き虫なんだ」

私は泣いていた。

「ウェールズ様!」

私はウェールズ様に抱きついた。



SIDE:ルイズ


「姫様嬉しそう」
「見せつけれくれる。さあ、俺たちも負けないぞ」

サイトは手を広げていた。

「何いってんのよ。ばかじゃないの?」

二人を引きあわせた張本人である。
私はしばらく幸せそうな二人を見つめていた。
本当に良かった。
二人は抱き合い、キスをした。
まるで私たちがいないように。

「おーい、俺たちも居るゼェ?」

サイトは二人を引き離した。

「もう、空気読みなさいよ」
「知らんね」

こいつはどう思っているのだろう?
姫様とウェールズ様のこと、私のこと。

「すまない。アンリエッタ。私は生き延びてしまったよ」
「いいのです。あなたさえ無事なら私は……」
「ちなみに、俺、ウェールズに求婚されたからな」
「なんですって?! ウェールズ様?」

アレは冗談じゃないの。

「姫様、こいつの言う事はまともに聞いてはダメですって言ってます。確かにウェールズ様はサイトに指輪をプレゼントしましたが」
「ほれほれ、悔しいか?」
「アンリエッタ、これは彼に対する正当な報酬だよ。なにせ彼は私を救ってくれたからね」

ウェールズ様はサイトの言う事を気にしていなかった。
短いながら友人となったウェールズ様はサイトのあしらい方を私以上に心得ているように思えた。

「あ、あなたには助けてもらってばかりですわね。この前の戦勝もあなたとルイズのおかげだものね」

危惧していたことだった。
わざわざ私を呼び寄せた理由はやはり『虚無』のことだろうか?

「わたし、なんのことだか……」

私は誤魔化すために嘘をついた。


SIDE:サイト・ヒラガ


 誤魔化せる訳ないよねー。あんだけ派手に働いてれば誰かが気づく。
アンリエッタは微笑んで、ルイズに報告書を渡していた。
それをルイズと一緒に読む。

「ここまでお調べなんですか?」
「あれだけ派手な戦果をあげておいて、隠し通せるわけがないじゃないの」
「ですよねー」

アンリエッタは俺の方を向いて続ける。

「異国の飛行機械を操り、敵の竜騎士隊を撃滅したとか。厚く御礼を申し上げますわ」
「別に、謝礼はいいからカネをくれ」
「あなたは救国の英雄ですわ。できたらあなたを貴族にしてさしあげたいぐらいだけど……」
「貴族? 嫌だね」

メンドクセー。

「姫様、こんな奴を貴族にするなんていけませんわ」

おい、どーいう意味だ?

「彼は貴族という役柄にしばられるのが嫌なのさ。アンリエッタ」
「そう、ですか。しかし、多大な……、ほんとうに大きな戦果ですわ。ルイズ・フランソワーズ。あなたと、その使い魔が成し遂げた戦果は、このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類をみないほどのものです。本来ならルイズ、あなたには領地どころか小国を与え、大公の位をあたえてもよいくらい。そして使い魔さんにも特例で爵位を授けることぐらいできましょう」
「わ、わたしはなにも……、手柄を立てたのは使い魔で……」

ルイズの嘘はバレバレだ。誤魔化すつもりがあるのか?

「その通り。俺の手柄です。よって小国を買えるほどの金を請求する」
「あの光はあなたなのでしょう? ルイズ。城下では奇跡の光だ、などと噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。あの光が膨れ上がった場所に、あなたたちが乗った飛行機は飛んでいた。あれはあなたなのでしょ?」

スルースキルを覚えた姫様は俺の手を離れたようだ。

「相変わらず話を聞かないな! 奇跡など信じないとか言う癖に、さっきウェールズと抱き合ったとき奇跡だと思ったろ?」
「そ、そんなことはありません」
「嘘だ! いつまで手を繋いでる気だ?」

抱き合ってからずっと二人は手を繋いでいる。
嫉妬してるわけじゃないんだからねっ!

「サイトくん話を戻そう。アンリエッタ、何が言いたかったんだい?」

駄目だこいつ、早く何とかしないと。

「ルイズ、ルイズは『虚無』の担い手なのでは?」
「そうです。姫様」

あっさりばらしちゃった。






[18630] <ゼロのひどい使い魔 35>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/28 14:00


 「言っとくけど、先の戦いと同じ威力の虚無はもう使えなから」

 ルイズがあっさりと虚無であることをバラしたので俺は今後のために釘をさしておくことにした。

「どうゆうことですか?」
「頭使えバカ。ルイズのあの一発は16年分の一発だってこと。使った後は疲労で倒れた。つまり、もう一度あの時と同じ威力の魔法使うなら16年分の命を削るってことだ」

俺は古代のルーン文字は読めなかったので、ルイズから始祖の祈祷書に現れた古代のルーン文字の内容をすべて聞いていた。
虚無の使用には時として命を削る可能性がある。
そもそも、あんな強大な力がホイホイと使えてたまるか。

「なんてこと、ルイズ。もうあの力を使ってはいけませんわ」
「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」

そうきたか。こいつが原作の力か?

「ルイズ」
「あんたは黙ってて!」
「いえ……、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
「神は……、姫さまをお助けするために、わたしにこの力を授けたに違いありません!」
「神などいない。ルイズが力を持ったのは必然だよ」

ホントは公爵じゃなくてルイズが王女だったらどうなってたろうね。
女版無能王がオチか。

「必然とはどうゆうことかな?」

ウェールズが聞いてきた。

「爆発魔法が虚無ってわかっただけで、もともと強力な爆発魔法を使ってた。名前が伝説の虚無の使い手となっただけで、それがなきゃ、伝説の爆発魔法の使い手として歴史に名前を刻んでただけだね」
「つまり、結局彼女は伝説の使い手となっていたということか」
「なるんだよ。俺がそうする」

ウェールズは笑う。
アンリエッタは戸惑っている。
ルイズはなにやら顔を赤らめていた。

原作の力か、結局、『始祖の祈祷書』はルイズの物になり虚無の使い手は隠すようにとなった。

「これから、あなたはわたくし直属の女官ということに致します」
「え~」
「あんたにいってないわよ!」

俺をスルーして書類を渡していた。

「これをお持ちなさい。わたくしが発行する正式な許可証です。王宮を含む、国内外へのあらゆる場所への通行と、警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。自由がなければ、仕事もしにくいでしょうから」
「俺にもくれ。それを持って女性の居るあらゆる所に堂々と入るから!」

女王の権利を行使する許可はあったら欲しい。
俺が女王の名誉とかを地の底まで落としてやるから。

「だめです。あなたに渡すとなにか、とんでもないことをしそうなのであげません」
「当然ですわ、姫さま」
「くそっ、なんて奴らだ!」

しばし打ちひしがれている俺を置き再び、アンリエッタとウェールズはキャハハ、ウフフな空間を作り出してイチャついていた。
それを見て重要なことを思い出した。
レコンキスタによる女王誘拐事件。
今、ウェールズは生きて目の前にいる。
死体は操れない。
しかし、コピー人間を作れるマジックアイテムが存在したはず。
頭の弱い姫様は勘違いしてついていくだろう。

「やい、バカ女王。今後ウェールズが一人でここにくることは絶対にない。その足りない脳みそに叩き込んどけ。いいか、ウェールズは必ずここには来ない」
「なぜですの?」
「バッカじゃねーの? 噂を真実にするためにゲルマニアにお世話になるんだよ。しばらく、お別れだ。月一回はあわせてやるからそれで我慢しろ。我慢できなきゃオナニーしてな」
「んぁ、なぁんてこと言うのよ!」

ルイズのケリが俺の太ももに当たった。

「ぐふ、俺の足を止めるだと?」
「死ね、死んで償え!」

ローキックは続く。

「お、おおなにー?!」

アンリエッタは顔を真赤にしてしまった。

「ル、ルイズ、格闘技で世界を目指そう……」
「わははは、君たちは本当に愉快だな!」


SIDE:ウェールズ


 こうして笑っていられるのも彼のおかげだ。
 私は彼の言ったことを考える。
 なるほど、私は現在消息不明、誰かが私になりかわりアンリエッタをアルビオンに引き入れればレコンキスタは返り咲く。

「アンリエッタ、彼の言うとおりだ。もし私の偽物が現れた場合それはレコンキスタの策だ。
しばらく会えなくなるが死んだわけじゃない。それに月に一度は会えるようだ。だから彼を信じてあげてくれ」
「ウェールズ様が仰るなら。しかし、彼を信頼していますのね。女性の私でも嫉妬してしまいますわ」
「なに、君とルイズのような関係だと思ってくれ」

そう言ってアンリエッタに口づけをした。嫉妬した女性にはこれがいいはずだ。

「そうやって誤魔化して。サイトさんとはただならぬ関係なのではないでしょうね?」

私をなんていう目で見るのだ。
変わったな。
彼の影響だろうか。

「ふふ、そんなハズはない。彼は共に戦場を駆け抜けた戦友であり、私の生涯の親友だよ」
「親友ですか……」

おや、サイトくんがやられたようだ。






[18630] <ゼロのひどい使い魔 36>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/29 10:11


アンリエッタの部屋を出て十歩も歩かないうちにニコニコ顔の骨に見つかった。
ルイズたちは俺を置いてそそくさと帰っていってしまった。
おい、助けろバカ!

「まあまあ」

にこやかな顔で俺をどこぞの部屋に押し込めた。

「この度は誠にお世話になった。改めてお礼を申し上げます」
「いや、そんな大相な」
「いえいえ、お陰さまでアルビオンの捕縛した兵やら賠償金で我が国も強化されます」

土下座でもしないばかりにお礼をしてきた。

「なにが目的です?」
「今後のことにおいて何かご教授願えれば」

今後?
レコンキスタ撲滅させれば満足か?
だとしたら、アニエスの敵、裏切り者のことでも教えてやるか。

「ほう、我が国を裏切る貴族をあぶり出す策ですか」
「まだ実行には早いですけどね」
「確かに今では上手く逃げられる可能性が高いですな」

夏期休暇にやるからそれまで遊ばしてくれ。
その後、骨とは政治、経済、戦後処理について話しあった。
うう、俺は政治家じゃねーぞ。
なんでこんな色気のないことしなきゃならん。

一人寂しく城下町を歩く。
あ、アレは幻の!

「セーラー服だぁああ!」

店にあるセーラー服を全て購入した。全く後悔していない。
三着しかなかったが、今後入荷したら俺に連絡するよう店の亭主と契約を結んだ。
テンションの上がった俺は学院までガンダールヴの力を使い奔って帰った。

「相棒、めちゃくちゃだな」
「走ったことを今は後悔している」

馬での移動よりも確実に早く帰ってきたがその分、疲労は溜まった。

ルイズの部屋に帰ってきた。部屋ではベッドの上で上機嫌で始祖の祈祷書を開いていた。

「おっす、君が置いていったおかげで酷い目にあった」
「何いってるの? 枢機卿とはペンフレンドなんでしょ?」
「まあ、そうだが、全く、折角街はお祭騒ぎで華やかだったのに」
「知ってるわよ。ウェールズ様と回って帰ったわ」

おい、ウェールズ、何してる。

「なにそれ、俺がルイズとデートしようとしてたのに、許さんあいつぶん殴ってやる」
「デート? なに? サイト私とデートしたかったの?」

ニヤニヤと俺を見つめてくる。クソッ、カワイイじゃねーか。

「あー、なんだ、その。ほれ」
「なぁに? 正直に言いなさいよ」

俺はマゾじゃない。俺はマゾじゃない。俺はマゾじゃない。

「すいません。ルイズとデートしたかったですぅ」

負けた。

「ほっほっほ、それでいいのよ。犬!」

悔しい、でもビクンビクン。
まあ、可愛い顔してたので、帰りに買ったモノを与えることにした。

「プレゼントでございます。御主人様」

セーラー服ではなく、ペンダントをプレゼントした。
ルイズは驚いた顔をしたあと、もじもじとしながらペンダントをつけてくれた。

「どう?」
「似合ってる」

嬉しそうな顔してくれるじゃないの。

「ねぇ、今日も一緒に寝る?」
「いいの?」

ん、と短い返答をしてベッドを空けてくれた。
くぅ~、かわいいぞこんちきしょう。

セーラー服は明日でいいよね。


翌日。
アウストリの広場で天使を見た。

「シエスタ、最高ぉおおおおおおオオオオオ」

この一言に尽きる。

「で、でも、この服……」
「素晴らしく似合っている。これ以上の言葉は存在しない! 存在してはならない!」
「い、いえ……。だってこれ、軍服なんでしょう? わたしなんかが着ても、さまにならないんじゃ……」
「バカ言うなッ!」

ひっ、とシエスタは後退った。

「回ってくれ」
「え?」
「くるりと、回転してくれ。そしてそのあと、『お待たせっ!』って、元気よく俺に言ってくれ」

サイト、君は天才だ。

「お、お待たせっ」
「ちがーうッ!」
「ひっ」
「最後は指立てて、ネ。元気よく。もう一回」

シエスタは頷くと、言われた通りに繰り返した。

ズキューン。
こいつはすげぇ。なんて破壊力だ。

「次はどうするの?」
「えっと、次はスカートを……」

言いかけたところでギーシュとミニオーク鬼が現れた。

「それは、なんだね? その服はなんだねッ!」

 ギーシュは泣きそうな顔で怒っている。気持ちはわかるぞ同士。
マリコルヌも、わなわなと震えながらシエスタを指差した。

「けけ、けしからん! まったくもってけしからんッ! そうだなッ! ギーシュッ!」
「ああ、こんなッ! こんなけしからん衣装は見たことがないぞッ! のののッ!」
「ののの脳髄をッ! 直撃するじゃないかッ!」
「わかってくれるか!」

二人の目は燗々と輝き、シエスタを食い入るように見つめている
変態二人の視線を浴びてシエスタは「じゃ、仕事に戻りますっ!」と一声告げて走り去った。

「なんなんだよ! お前ら!」

 俺が怒鳴ると、二人は我に返った。
それから、ギーシュは俺の肩を抱いた。

「な、なあきみ。あの衣装をどこで買ったんだ?」
「聞いてどうする?」

 ギーシュは、はにかんだ笑みを浮かべて言った。

「あ、あの可憐な装いを、プレゼントしたい人物がいるんだ」
「モンモランシーか、いやしいやつめ!」
「ふ、いくらだい? 君には金で話をつけた方が早い」

随分と舐められたものだ。

「五エキューで売ってやろう。豚さんは着せる女がいれば売ってやる」
「買った!」
「ぐぬぬぬ、僕は、僕はぁ」

膝から崩れる豚さん。即決で買ったギーシュ。
モンモランシーに着せたら見せろよ。


――――――――――――――――――――――

気付くと50投稿。ここまでよく来れたと思います。
これからもよろしくお願いします。
次回、惚れ薬を飲むのは誰か?!

――――――――――――――――――――――





[18630] <ゼロのひどい使い魔 37>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/29 14:35


 その日の夜。
 長い金色の巻き毛と鮮やかな青い瞳が自慢のモンモランシーは、寮の自分の部屋でポーションを調合していた。

SIDE:モンモランシー

『水』系統メイジ『香水』のモンモランシー、つまり私のことだ。
 私の趣味は魔法の薬……、ポーション作りである。そして二つ名のとおり、香水作りを得意としている。私の作る香水は、独特の素敵な香りを醸し出す逸品と騒がれ、貴婦人や街女たちに大人気であった。今やサイトの事業の一つとなっている。

 私はあるポーション作りに熱中していた。
 ただのポーションではない。
 禁断のポーション。国のふれで、作成と使用を禁じられているシロモノである。

バレなければ問題ないわ。

サイトの事業でかなり収入があった。そのおかげで、闇の魔法屋で禁断のポーションのレシピと、その調合に必要の高価な秘薬は簡単に手に入った。

バカ(ギーシュ)に飲まして効果を確かめてやろうかしら?
そう思ったが既にギーシュとはお別れしている。
ギーシュの浮気性に心底呆れたのである。
しかし、知的欲求と好奇心から禁断のポーションを作ってしまったのだ。法をやぶるという背徳感が何とも言えない感覚を刺激する。

扉がノックされて、私は跳び上がった。

「だ、だれよ……。こんなときに……」

机の上の材料や器具を引き出しの中にしまう。
それから、髪をかきあげながら扉へと向かった。
完成したポーションは机の上においたままだった。

「どなた?」
「俺だよ、俺」

サイトの声がした。何か事業のことで話があるのだろうか?
そう思って扉を開けた。

「よ、失礼しまーす」
「ちょ、ちょっとレディの部屋に勝手に入らないでよ」
「まあまあ、細かいこと気にするなって」
「細かくないわよ!」

ズカズカと私の部屋に入っていくサイト。アレはああ見えて何かと鋭いのである。
ポーションのことがバレたらますます弱みを握られてしまう。

「もう、なんなのよ! 用がないなら出てって頂戴。私は用事の途中だったんだから!」
「いや、次の事業の話があってねー、ってこれは?」

サイトはテーブルの上にあるポーションを指差す。
まずいわ。

「あ、新しいポーションよ」
「香水?」
「違うわ。そ、その飲み物を美味しくするような、何かよ!」
「なんだそれ?」

そう言ってサイトはポーションの入ったビンを取り上げて興味深そうに眺めていた。
早く帰れ。早く帰れ。
私は気が気でない。

どう誤魔化すか考えている内にサイトは勝手に私の部屋を探ってワインを取り出した。

「ちょ、なにするつもりよ?」
「いやー、どんなふうに飲み物が美味しくなるのかなーって思って」
「だ、だめよ。完成してないもの」

惚れ薬。
飲んだ人物は初めに見た人物を好きになる禁断の薬。

「んじゃ、舐めてみるか」

そう言ってサイトはビンに入っている惚れ薬の原液をペロリとなめた。

この部屋には誰が居る?
私とサイト。
サイトは何をした?
惚れ薬の原液を少しなめた。
サイトは私を見ている。
つまり?
サイトは私に惚れてしまっている。

「うむ、無味無臭。ワインに入れてみよう」
「あ、あ、あれ?」

サイトはそう言って、惚れ薬を一滴たらしたワインを飲んだ。

「モンモランシー」
「は、はひぃ」
「味が変わってないけど?」
「アレ? アレ? あ、その、なんともないの?」

失敗した?
そんな?!


SIDE:サイト・ヒラガ


惚れ薬の効果を体験したかったんだ。
今は反省している。
やだ、何これ。
モンモランシーが可愛い。

SIDE:モンモランシー


「何を言っているかわからんが、とりあえず一緒に寝ようか」

アレ? 今サイトはなんて言った?

「え?」
「さあ、もう夜は遅い。寝るぞぉ」
「キャア」

私を軽々と抱き上げてベッドに連れていかれた。
なんだ、やっぱり効いてるじゃない。ってそんなことじゃないわ!

「なあ、モンモン。俺は思うんだ。君は美しい」
「誰がモンモンよ!」
「モンモランシー」
「な、なに?」

サイトは私を優しくベッドに寝かせてくれた。

「お前が欲しい」

私の手をサイトが両手で包み込む。
思わず顔が赤くなる。
真面目な顔をしているとサイトはカッコいいのだ。

その時、ドンドンと扉が叩かれた。

「ぼくだ。ギーシュだ! きみへの永久の奉仕者だよ! この扉を開けておくれよ!」
「ね、ねぇ、ギーシュが来てるわ」
「関係ないね。ギーシュとは別れたんだろ?」
「そうだけど」

扉はドンドンと叩かれている。

「まったく、空気を読まない奴だ。ちょっと待っててくれ。黙らせてくる」

そう言ってサイトは剣を抜いた。

「ちょっと! 乱暴は止めて!」
「君は優しいな。わかったよ」

剣を収めてくれた。サイトはそのまま扉を開ける。

「モンモランシー! 愛してる! ダイスキだよ! 愛してる! 愛してる!」
「やっぱりお前の方がホモだったか、俺にそんな趣味はない。それにモンモランシーは俺のものだ。じゃあな」

サイトはギーシュを押し飛ばして扉を閉めた。ギーシュは壁に頭をぶつけて気絶したようだ。

「さあ、邪魔者はいなくなった。これからは大人の時間だ」
「いや、止めて」
「わかった。優しくするよ。だからそんな顔しないでくれ」

サイトは私を優しく抱きしめた。
ギーシュ、もっと粘りなさいよ。

「無理矢理はしない。きっと君を振り向かせる。でも今日はこのままにさせてくれないか?」

私は少しだけ嬉しかった。

「絶対何もしない?」
「絶対何もしない。約束する。君を無理に襲わない。心の底から愛してる」

ギーシュとはひと味違う愛の囁きに私は気分が良くなった。
ついでに惚れ薬の効果も知りたかったので、つい魔が差したのだ。

「し、仕方ないね。今日だけよ?」
「嬉しいね。いずれ君から誘われるような男になるよ」

しょうがなく一緒に寝てあげた。いつも以上に安らかに眠れたのはきっと気のせいだ。




――――――――――――――

まさかのモンモランシーww

――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 38>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/30 19:51

SIDE:モンモランシー


 翌朝、教室中が入ってきた私たちに一斉に注目が集まった。サイトと手を繋いでいたからである。
 女子生徒たちがいち早く反応した。
 サイトは良い意味でも、悪い意味でも今や学院の注目の的なのだ。
 私は教室中の視線を独り占めにしたので気分がよかった。
 腰に手をやり、ツンと澄まして上を向いて、自分の席へと向かった。
 ルイズもあんぐりと口をあけて、私を見つめた。
 ルイズは私の元にきてサイトを見つめながら声をはなった。

「ちょっと、どうしてモンモランシーとサイトが手を繋いでるの?」
「え? だって、モンモランシーを愛してるから……」

 それが当然だという感じでサイトが言った。
 ルイズは、サイトの態度に怪しいものを感じたのか私に聞いてきた。

「ねえ、なにをわたしに隠してるの?」
「べ、別になにも?」
「そうだ。何も問題はない」

私はじっとりと冷や汗が流れるのを感じた。

「ならなんで手を繋いでいるの? それにモンモランシーを愛してるって私の聞き違えかしら?」
「なんだ! きみはぁ!」

ギーシュが私とルイズの間に入ってきた。

「おや、ギーシュくんではないか」
「そうだ。僕の恋人になにをしている?」
「元、だろ? 女々しいぞ。男なら諦めが肝心だ。心配するな。モンモランシーは俺が幸せにするから」
「なんだと?」
「なんですって?」

ルイズとギーシュが同じように怒る。
私は注目を浴びているのを忘れていた。

「ね、ねぇ。事情は話すわだから、今この話はおいときましょ?」
「な! 今すぐ話しなさい」
「そうだ。今すぐ話すんだ」
「ギーシュが偉そうに口を聞くな!」

サイトが高圧的に言うとシーンと静まり返った。

「モンモランシー、これで静かになった。さあ、席に座ろう」

私の腰に手を回して歩くのを施す。されるがままに歩いて席に座る。
味方にするとこうも頼もしいサイトをルイズはいつも足蹴にしている。
そう思うとサイトがかわいそうに思えた。

「ぐぬぬぬ、覚えてなさい」
「僕のモンモランシーが……」

私たちはそのまま授業を受けた。


SIDE:ルイズ

 
 どうも、サイトの様子がおかしい。昨日出かけて部屋に帰ってこなかった。どうせ、コルベール先生のところで研究の手伝いでもしていると思い、気にしなかった。

 授業中、サイトを監視していたら、やたらとモンモランシーに話しかけている。
モンモランシーとはビジネスパートナーとしてサイトと話すことは多かった、があの目。
まるで愛しの人を見ている目だ。
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
その目をむけるのは私でしょ?

モンモランシーも満更でもない様子だったのが私の怒りを加速させた。

SIDE:ギーシュ

なんだアレは!
確かに僕はモンモランシーに振られたが、僕の気持ちは変わらない。
ああ、愛しのモンモランシー、そんな顔で彼を見つめないでくれ。
僕はどうにかなりそうだ。
机の下で指を絡ませて手を繋いでいるのを見て僕は何かがキレた気がした。

「き、君! 何をしてるんだね!?」
「それは私のセリフだ。授業中だ。静かにしたまえ」
「ハッ、すいません」

クスクスと笑われた。僕は道化師じゃないぞ。
嫉妬心が高まる。
授業が終わったら決闘だ。


SIDE:モンモランシー


 何よ、みっともない。

「男の嫉妬はみっともないね。モンモランシーを好きになった奴だったから仕方ないが、モンモランシーは少し男を見る目を養った方がいいかもね。最も、今はその必要はないけどね」

まるで自分は最高の男だと言わんばかりだ。
言わないのが彼らしいと思う。

「そうかもね。サイトって何でもできるものね」

自分で言って気付く。
サイトの事を分析する。
剣士としては相当強いと思う。
召喚されて僅かの間に沢山手柄を立てている。
商売もうまい。
顔も、まあ悪くない。

アレ? サイトってどこがだめなの?
変態発言を除けばこれと言って悪い所がないのだ。
惚れ薬を飲んでも紳士的に接してくれるし守ってくれる。
もしかしてイイヤツ?
それは薬の力かもしれない。
私はしばらくサイトを観察することにした。


「うまいか?」
「ええ、とっても」

お昼はサイトが作って部屋に持ってきてくれた。
私だけのために作ってくれた料理に舌鼓を打つ。
そういえば料理もうまいのだ。

「やっと二人きりになれたね」
「そ、そうね」

まぶしい笑顔に少しドキリとした。
食堂に行くとルイズとギーシュに邪魔されるのでこうして部屋にいる。
意外にも気がきくサイトの一面を見た。サイトの話す話も退屈しない。

「それで、午後の授業はどうしようね?」
「うーん。出たらまた注目されちゃうし」
「サボろうか、授業も大切だが、俺としてはモンモランシーと過ごせる時間の方が宝石よりも貴重だ」

相変わらずサイトの言葉はうまい。

「モンモランシー、そなたは美しい」

サイトは優しく髪を撫でた。それほど嫌じゃなかった。

「そうやって何人の女の子を落としてきたの?」
「君が初めてだよ? 本気で好きになったのはモンモランシーが初めてだ」

心がズキッと痛む。そうじゃない。サイトは今、惚れ薬の力で勘違いしているのだ。
その時、扉がバタンと開いた。

「さあ、話しなさい」
「そうだ。サイトがなんでモンモランシーと急に仲良くなるんだね?」

ルイズとギーシュが入ってくるなり聞いてきた。
答える前に考える。
このまま、サイトに偽りの心を与えたまま惚れ薬が切れるまで恋人を演じる?
既成事実を作ってしまえばサイトは私と一緒になってくれるだろう。
しかし、そこに愛はない。ズキッとまた痛む。
ああ、そうか、私はサイトのことを――。
心の痛みを理解した。
私は素直に話すことにした。

「……惚れ薬よ」
「ほれぐすりぃ!」

 ギーシュとルイズは、大声で叫んだ。

「大声ださないで。お願いだから」

私はズキズキと痛む心を抑えるために胸に手を当ててぎゅっと握った。

「どうしたの? モンモランシー、貴方顔色悪いわよ?」

私は、二人に説明した。知的欲求と好奇心から惚れ薬を作ったこと。
それを誰に飲ませようかと企んでいたらサイトが部屋に入ってきてそれを飲んでしまったこと……。
ルイズは悲鳴をあげた。

「何とかして頂戴!」
「わかってるわよ!」
「どうしたんだい? モンモランシー、どうしてそんな泣きそうな顔をしてるんだい?」

ギーシュに言われて私は何とも言えない感情に包まれた。

「わかんないわよ!」
「モンモランシー、そんなにぼくのことを……」

ギーシュは惚れ薬を自分の為に作ったのだと勘違いしていた。
サイトが私の事を好きでいてくれるのは惚れ薬のせいだ。
偽りの気持ちに気づいて私は悲しくなった。
私は泣いていた。

「ギーシュゥ。泣かしたなぁああ!」

やたらとドスの聞いた声でサイトはギーシュを睨んだ。

「違うわ。違うの! 私が悪のよ」
「あとにして!」

 ルイズは二人をぐいっと引き離した。


SIDE:ルイズ


 私はわかってしまった。モンモランシーはサイトのことが好きになったのだ。
しかも、惚れ薬なんかじゃない。本気で好きになったのだ。
女の勘で直感的に感じ取った。

「ルイズ……」
「いいの。モンモランシー。貴方の気持ちはわかったわ。好きになっちゃったんでしょ?」

モンモランシーは泣きながら頷く。

「好きになったサイトの心が本心じゃなく、偽りの心だから辛いのね?」
「ごめんなさい」
「貴方は悪くないわ。悪いのはギーシュとサイトよ!」
「僕かい?」
「とにかく、一番悪いのはあんたよ! サイトの方は事故よ!」

そう言ってギーシュを引っ叩いた。知的欲求と好奇心から惚れ薬を作ったとモンモランシーは言ったが、もしかしたら浮気性なギーシュに薬を試そうとしたのではないかと私は思った。
なので、ギーシュを叩いたことは反省していない。

「はは、ギーシュ、辛いな。今度いい女紹介してやるよ。ただしモンモランシー以外な」
「半分は君の所為な気がするよ」

ギーシュがうな垂れるが、乙女心を傷つけた報いだ。

「サイト、今のあんたは病気なの! わかる?」
「俺は至って正常だ。できればこのまま二人にはご退場願いたい。モンモランシーとの貴重な時間がなくなってしまう」

モンモランシーがビクっとなった。これ以上放っておくとモンモランシーの心が危ないような気がした。

「モンモランシー、どうすれば治るの?」
「解除薬を作るしかないわ。でもお金が足りないの」
「私が出すわ」

どんと、有り金をおいた。
モンモランシーは力強く、頷いた。
きっと罪悪感が彼女を苦しめているのだろう。

「なんの話をしてるかわからんが、モンモランシーの調子が悪そうだな」

サイトはそう言って、モンモランシーの顔をのぞき込んでいた。
モンモランシーは赤くなっている。でも同時に震えていた。
私は本当にモンモランシーがサイトのことを好きになってしまったのだと再確認した。

「サイトは私の部屋にいなさい! モンモランシーの体調不良はあんたのせいよ!」
「サイト、お願い、ルイズの部屋に戻って。じゃないと私……」
「モンモランシーが言うのならその通りにしよう。行くぞギーシュ」

私は少し悲しくなった。モンモランシーが言うのなら、か。

「ねぇモンモランシー、今どんな気持ち?」
「辛いわ。あの感情は偽り。それに、惚れ薬が切れたら好きになった感情は消えるけど記憶は残るもの」
「サイトのどこがいいわけ?」

モンモランシーはカアとなってしまった。

「優しいし、紳士的だし、話はうまいし、強いし、甲斐性あるし、料理もうまいし、ああ、もう、ルイズはわからないの?」

私の使い魔を褒めちぎるモンモランシーは女の顔をしていた。

「恋って恐ろしいわね」

モンモランシーは解毒薬の材料を買うために部屋を出て行った。
軽くなったポケットとともに部屋に戻る。

「よおルイズ。モンモランシーはなんて?」
「女同士の秘密よ」

出て行ったと言ったらこいつは追いかけるだろう。

「そうか」
「あら、意外と冷静ね」

しつこく問いただしてくると思って色々な嘘を考えていたのに無駄になった。

「モンモランシーを信頼しているからな。いずれ話してくれるさ。それに危険な目にあったら必ず助け出す」

なんだかモンモランシーが羨ましい。

「もう寝ましょ?」
「そうだね、じゃ」

そう言って部屋を出ていこうとするサイト。

「どこ行くのよ?」
「モンモランシーと寝る。それがダメならお休みの挨拶をする」
「だ、ダメよ。モンモランシーは今大切なことしてるの! あんたが行ったらきっとモンモランシーは泣いちゃうわ」
「むぅ、ならやめとく」

なるほど、モンモランシーを引き合いに出せば言う事を聞いてくれるのか。
私としては複雑な心境だが、ここは我慢しよう。


 翌日の夕方、モンモランシーは青い顔をして私の部屋に入ってきた。

「お、久しぶりじゃんモンモランシー」
「どうしたの?」
「解除薬が作れない……」

 モンモランシーとギーシュは本日街に出て闇屋に向かい、解除薬の調合に必要な秘薬を探したのだが……。

「売り切れだった?」
「よし、ギーシュお前の股についてるものだせ」
「お、恐ろしいこと言わないでくれたまえ」

モンモランシーと出かけたギーシュをサイトがなにやらしようとしていたが私には関係ない。

「その秘薬ってのは、ガリアとの国境にあるラグドリアン湖に住んでる、水の精霊の涙なんだけど……、その水の精霊たちと、最近連絡が取れなくなっちゃったらしいの」
「なんですって!? ならラグドリアン湖に行くわよ!」

モンモランシーは覚悟を決めていたのか、力強く頷いた。
恋する乙女は強いと思った。サイトが正気に戻ったらどうするつもりだろう。しかし、今はサイトを治すことが先決だ。

「確かにサイトをあのままにしておくわけにもいかないな。恋人の僕も行くぞ」
「お前、弱い。それに元、恋人」

なにやらギーシュとサイトで騒いでいたが、私はモンモランシーと話を続けた。
出発は明日の早朝。
はぁ、サボりなんて初めてだわ、とモンモランシーがため息をついた。
私は昨日の午後から授業サボってるじゃないと突っ込むとモンモランシーはガクッとなって自室に帰ってしまった。



――――――――――――――――――――――――――――――――

裏話。
タバサ、キュルケは原作にある通り、任務を受けているので学院にいません。
フーケはウェールズと共にゲルマニアでお仕事しているため学院にいません。
手頃なところにモンモランシーがいたから選んだわけじゃないんだからねっ!

――――――――――――――――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 39>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/31 20:55


丘から見下ろすラグドリアン湖の青は眩しかった。
陽光を受けて、湖面がキラキラとガラスの粉をまいたように瞬いている。

サイトは一人で馬に乗るのをいやがったため、モンモランシーの前に跨っている。
モンモランシーと一時たりとも離れるのがイヤなようだ。

「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ! ヤッホー!」

 一人旅行気分のギーシュが馬に拍車をいれ、わめきながら丘を駆け下りた。
 馬は水を怖がり、波打ち際で急に止まった。
 ギーシュは馬上から投げ出されて湖に頭から飛び込んだ。

「足が付かない! 足が! 溺れるぅううう!」

 ばしゃばしゃとギーシュは必死の形相で助けを求めている。どうやら泳げないらしい。

「何しに来たのよ?!」
「やっぱりつきあいを考えたほうがいいかしら」

 私とモンモランシーが呟く。

「そうだね、友人からクラスメイトまで格下げをしたほうがいい」
「サイト」
「なに?」
「私が必ず治してあげるわ」

どんな結果になろうと、モンモランシーはサイトを治すことに決めたのだ。
なにより、私も今のサイトのままでは困るので治すつもりがなかったらモンモランシーを牢獄に入れてやるつもりだったが、杞憂に終わった。

モンモランシーはびしょ濡れのギーシュそっちのけで、じつと湖面を見つめたまま、首をひねった。

「どうしたの?」

私は尋ねた。

「ヘンね」
「どこがヘンなの?」
「水位があがってるわ。昔、ラグドリアン湖の岸辺は、ずっと向こうだったはずよ」
「ほんと?」
「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」

 モンモランシーが指差した先に、屋根が見えた。
私は、澄んだ水面の下に黒々と家が沈んでいることに気づいた。
モンモランシーは波打ち際に近づくと、水に指をかざして目をつむった。
 
モンモランシーはしばらくしてから立ち上がり、困ったように首をかしげた。

「水の精霊は、どうやら怒っているようね」
「理由はわかるか? モンモランシー。事と次第では君に危険が及ぶ」

モンモランシーは顔を赤くした。
 そのとき、木陰に隠れていたらしい老農夫が一人、一行の元へとやってきた。

「もし、旦那さま。貴族の旦那さま」

 初老の農夫は、困ったような顔で一行を見つめている。

「どうしたの?」

モンモランシーが尋ねた。

「旦那さまがたは、水の精霊との交渉に参られたかたがたで? でしたら、助かった! はやいとこ、この水をなんとかして欲しいもんで」
「わかった。なんとかしよう。心配するな。ここには優秀な水のメイジがいる」

農夫はサイトの言葉に感動したのかお礼を言って去っていった。

「ちょっと、何勝手なこといってるのよ!」
「大丈夫だ。モンモランシーならきっとやってくれる。な?」

複雑な顔をしたモンモランシーは腰にさげた袋からなにかを取り出した。
それは一匹の小さなカエルであった。
カエルはモンモランシーの手のひらの上にちょこんとのっかって、忠実な下僕のように、まっすぐにモンモランシーを見つめていた。

「カエル!!」
「ルイズはカエルが嫌いなのか? しかし、モンモランシーの大切な使い魔だ。それをバカにするならルイズでも容赦はしない」
「サイトはちょっと黙って。ごめんなさいルイズ」
「いいのよ」

記憶が戻ったときに散々懲らしめるから。

「いいこと? ロビン。あなたたちの古いおともだちと、連絡が取りたいの」

モンモランシーはポケットから針を取り出すと、それで指の先をついた。赤い血の玉が膨れ上がる。その血をカエルに一滴垂らした。

「なんてことを、すぐに治療しないと」

 サイトを無視してすぐに、モンモランシーは魔法を唱え、指先の傷を治療する。

「これで相手はわたしのことがわかるわ。覚えていればの話だけど。じゃあロビンお願いね。偉い精霊、旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい。わかった?」

カエルはぴょこんと頷いた。
それからぴょんと跳ねて、水の中へと消えていく。

「今、ロビンが水の精霊を呼びに行ったわ。見つかったら、連れてきてくれるでしょう」

サイトは黙ったままモンモランシーを見つめていた。

「な、なによ、サイト」
「いや、可憐だなと思って。キスしていい?」
「ダメに決まってるだろ!」
「えー」

サイトに好意を寄せられる度にモンモランシーは複雑な表情を浮かべていた。

私に置き換えて考える。もし、ちい姉さまの愛情が偽りのものだったら?
悍ましい感覚が身体を駆け巡る。きっとモンモランシーは私の感じている何倍もの悍ましさに包まれているのだろう。


「なんか来たぞ」

サイトが口にした瞬間、離れた水面が光りだした。

 水の精霊が姿をあらわしたのであった。

「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」
「うへぇ、グニョグニョだ」
「あんたは黙ってなさい」
「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系よ。カエルにつけた血に覚えはおありかしら。覚えていたら、わたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」

 水の精霊……、盛り上がった水面が……、見えない手によって粘土がこねられるようにして、ぐねぐねとかたちをとり始める。
 水の塊が、モンモランシーそっくりのかたちになって、にっこりと微笑んだ。

「やはりモンモランシーは美しい」

 サイトの言葉に反応するかのように、水の精霊は、表情をさまざまに変えた。
笑顔の次は怒り、その次は泣き顔。まるで表情の一つ一つを試すように、水の塊の顔は動く。
それから再び無表情になって、水の精霊はモンモランシーの問いに答えた。

「覚えている。単なる者よ。貴様の体を流れる液体を、我は覚えている。貴様に最後に会ってから、月が五十二回交差した」
「よかった。水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部をわけて欲しいの」
「さすが、水の精霊。わかってらっしゃる。その姿がこの世で一番美しいのだ!」
「しっ! 大声出さないで! 精霊が怒るじゃないの! だから滅多なことじゃ手に入らないの! 街の闇屋に仕入れている連中は、どんな手を使って手に入れているのか……、まったく想像もつかないわ」

 水の精霊は、にこっと笑った。

「断る。単なる者よ」
「だってよ。残念でしたー。さ、帰ろ。帰って愛を育もう」
「水の精霊さん! お願いよ! なんでも言うこと聞くから、『水の精霊の涙』をわけて! ちょっとだけ! ほんのちょっとだけ!」
 
私はたまらなくなって叫んだ。
私の剣幕にモンモランシーも同調した。

「お願い! 私も何でもするわ!」
「モンモランシーが頼んでるんだ。俺もモンモランシーのためなら何でもしよう。水の精霊。聞いてやれ」

 水の精霊はサイトに答えた。

「よかろう」
「まじで~?」
「しかし、条件がある。世の理を知らぬ単なる者よ。貴様はなんでもすると申したな?」
「モンモランシーのためならという条件がこちらにはある」
「ならば、我に仇なす貴様らの同胞を、退治してみせよ」

 私たちは顔を見合わせた。

「退治?」
「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ。そのものどもを退治すれば、望みどおり我の一部を進呈しよう」
「サイト」
「なんだいモンモランシー?」
「お願い、サイトのためでもあるの。協力してくれる?」
「愚問」

私たちは、水の精霊を襲う連中をやっつけることになってしまった。



――――――――――――――――――――――

戯言。

ルイズに惚れ薬飲ませてモンモランシーとの百合を考えていた時期がありました。
もう一つ、サイトがモンモランシーに惚れ薬を飲ませて惚れさせることも考えました。
原作でルイズ×モンモランシーあったし、サイト×モンモランシーだったら今のほうが面白いと思ったので悩んだ結果こうなりました。
サイト×ギーシュ、サイト×ウェールズは誰得?
崩壊するので作者は考えるのをやめた。
――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 40外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/05/31 22:58


私が自室に戻るといつの間にか部屋にはサイトがいた。

「遅かったね」
「って、なんでいるのよ?」
「なに、一緒に寝ようと思ってね」

昨晩はルイズが誤魔化してくれた。
手を打たなかったのを後悔した。

「ま、まだお風呂に入ってないわ」

お風呂場でルイズに助けを求めればいい。

「そうか! なら風呂に入らないとな!」

私はビクっとなる。しまった。サイトには専用のお風呂があったことを思い出す。

「え、えーと、今日は入らないわ」
「駄目だね。モンモランシーは女の子だ」

グイッと腕を掴まれて連れて行かれる。

「ちょ、ちょっとぉおおお」
「わはははは」

広場の隅にある。サイトのお風呂。
サイトは気にする様子もなく、服を脱いで既に入ってる。
私は恥ずかしかったが、どうしてもと懇願するサイトに負けてしぶしぶ一緒に入ることになった。

「あ、結構、気持ちイイわ」
「そりゃよかった。ほら、月を眺めながら風呂に入るのもいいものだろ?」

サイトはそう言って空を見上げる。
キレイな月に星々。
私はタオルで胸から下は隠している。
月明かりの下、サイトの身体をマジマジと見てしまった。
全体的に引き締まっている。
腹筋もキレイに割れている。
芸術品に見える筋肉。
そして、水のメイジとして見えるサイトに流れるモノが今まで見た人々より、強い。

「どうかしたか?」
「う、ううん。すごく、鍛えてるな~って」

そこで、気付く。サイトの身体には疲労が溜まっている。
私は杖を取るために一度お風呂から出る。

「かなり疲労が溜まってるわ。一体どうすればここまで疲労が溜まるのよ」

杖を取り再びサイトを"視る"と思った以上に疲労があることに気づいた。
それを治癒する。

「お、身体が軽くなった。いや、ありがとう。色んな意味で」
「え?」

言われて気づいた。
私は杖を握っている。
それだけだった。

「キャアアアア」

真っ裸を見られた!
恥ずかしくなり服を持って逃げるようにその場を去った。


「見たのが俺だけだから気にするなよ」
「そう言う問題じゃないわ!」

お嫁に行けないわ。
急いで部屋に戻った。少し間をおいて、サイトが当たり前のように私の部屋に帰ってきたのだ。

「まあまあ、髪も乾いてないじゃないか」

そう言って、サイトはタオルで髪を拭いてくれた。
まるで、妹か子供にするように。

「それくらい……、自分でできるわよ……」

私の力ない言葉が聞こえなかったのか、髪を拭き、ブラシで髪を梳かしてくれた。

「明日は早い。寝ようか」
「ええ」

なんとなく、家族といるような気分になり、一緒に寝ることを忘れて生返事をしてしまった。

「ほら、ベッドに入って?」

サイトは勝手に私のベッドに入っていた。
裸を見られたのだ。今更一緒に寝るくらい何てこと無い。
そう思ってベッドに潜り込む。

「あ、ちょっと?! 何するつもり?」

サイトが私を後ろから抱きしめてきた。昨日言ったことは嘘だったの?

「なぁ~にもしないって。少しだけこうさせてくれよ」
「怪しいわ! む、胸に手を置いてるし!」

サイトの顔は見えない。
私の後頭部に息が当たっている。

「これ以上何もしないよ……。無理にはしないって言ったろ?」

サイトはすぐに眠そうな声を出し始めた。黙っていればこのまま寝てくれそうなので、何も言わないことにした。

サイトはすぐに寝てしまったようだ。
年上に思えるところもあれば、子供に見えることもある。
サイトに抱きつかれるのはイヤでは無くなった頃に、私も寝てしまう。

夢うつつの中、明日のことを想う。
治ったら、私の事を――。
 
――――――――――――――――――

38と39の合間のお話と思ってください。
タバサの話を最近書けてない。
次回外伝はタバサに決めた。

――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 41>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/02 21:05


 サイトは岸辺に佇んでいた。
背中には大剣、腰には変わった剣を装備している。

「……」

目を閉じている。
さながら決闘前に気分を落ち着ける剣士のようだと思った。
バカ(ギーシュ)は酔っ払っていたので私は寝てなさいと言ってやった。
少しはサイトを見習って欲しい。

「ギーシュは陽動を頼む、ルイズは援護を」

短く、それだけ言ったサイトは変わらず佇んだままだった。
私には何も言ってこなかった。

「私は?」
「モンモランシーは離れて安全圏に、ケガをしたら回復を頼むよ。それが役割だ」
「サイトはどうする気?」
「戦って護るのが俺の役割」

それは本来、ルイズの為に向けられる言葉だ。
そう思うと気分が沈んだ。


それから一時間も経った頃だろうか。岸辺に人影があらわれた。
人数は二人。
漆黒のローブを身にまとい、深くフードをかぶっているので男か女かもわからない。
あらわれた人物が、水の精霊を襲っている連中だと、決まったわけではない。

のだが。

「どっせぇええい」

サイトが飛び出してしまった。
おおよそ三十メイルはあったはずの距離は一秒も立たないうちに詰められた。

 小さいほうの人影は、 すばやく身をひねり、杖を振った。
しかし、サイトが大剣を振るうと小さいほうの人影は驚愕していた。
背の高いほうのメイジが巨大な火の球を放ってきたが、大剣にかき消されてしまった。

「嘘、なにあれ?」

私は恐怖する。
二人のメイジを平民が圧倒している。
強い、そして何よりも速かった。
薄暗闇の中でのサイトの動きはほとんど見えない。
フードの被ったメイジの杖が弾き飛ばされる。

勝負に十秒もかからなかった。

「顔を見せろ」

サイトは大剣を二人に向けて言い放った。
二人のメイジは言われたとおり、かぶったフードを取り払った。
月明かりにあらわれた顔は……、

「キュルケ! タバサ!」
 
見ていただけのギーシュとルイズが叫ぶ。
しかし、サイトは大剣を向けたままだ。

「お願い、サイト止めて。事情を聞きましょう」
「そうだね。モンモランシー」

スッと剣を収めてくれた。

「あなたたちなの? どうしてこんなとこにいるのよ!」

 キュルケは驚いたように叫んだ。

私の水の魔法でキュルケとタバサの腕を治していた。
サイトは杖を弾き飛ばすと同時に腕に力が入らない程度に峰打ちしたらしい。
私はキュルケたちに事情を聞くことにした。

「サイト、やっぱり強かったのね! 殺されるかと思ったわ」

キュルケは負けたことがちょっぴり口惜しかったのか嫌味っぽくサイトに言った。

「モンモランシーが見てたから少し張り切ってみた。今は反省している」

キュルケがぽかんと口をあけて、私を見つめた。
しかし、すぐに何かに気づいたのか何やら考え込んでいた。

「サイトは事故で惚れ薬を飲んじゃったのよ」

事情を知っているルイズが簡潔に説明した。

「ふーん、それで、サイトがモンモランシーに惚れたってわけ?」

さすがは恋多き女だ。すぐに理解した。

「惚れたのではない。愛しているのだよ」

シレッとそんなことを言ったサイト。
肩を抱き寄せないで欲しい。
縮こまっている私を見てキュルケがピンときたらしい。

「モンモランシーもまんざらじゃなさそうね。その様子だとサイトに惚れたわね?」
「ぐ、そうよ。悪い?」
「まったく、自分の魅力に自信のない女って、最悪ね」
「わかってるわよ! しかたないじゃない! いきなり飲むとは思ってなかったんだもの!」

 私とルイズはキュルケにことの次第を説明した。
惚れ薬の解除薬を作るためには、水の精霊の涙が必要なこと。それをもらう代わりに、襲撃者退治を頼まれたこと……。

「なるほど。そういうわけであなたたちは水の精霊を守ってたってワケなのねー」

 キュルケは困ったように、隣のタバサを見つめる。
彼女は無表情に、サイトをじっと見つめていた。

「参っちゃったわねー。あなたたちとやりあうわけにもいかないし、水の精霊を退治しないとタバサの立つ瀬はないし……」
「こちらとしてもモンモランシーが困っている。ここは譲歩しよう。。水の精霊を襲うのは中止してくれ。そのかわり、水の精霊に、どうして水かさを増やすのか理由を聞いてみよう。その上で頼んでみる。水かさを増やすのはやめろって」
「水の精霊が、聞く耳なんかもってるかしら」
「俺がモンモランシーの為になんとかする」

キュルケはちょっと考えて、タバサに聞いていた。

「結局は、水浸しになった土地が、元に戻ればいいわけなのでしょ?」

 タバサは頷いた。

「よし決まり! じゃ、明日になったら交渉してみましょ!」


キュルケの声に皆散り散りに時間を過ごしていた。
私はと言うと、サイトがそばから離れないので困っていた。

「ミス・タバサ? なにか私に用かしら?」

彼女はフルフルと首を振る。

「ということは俺に? すまんが今はモンモランシーとの貴重な時間だ」
「手加減」

私は疑問が頭に浮かぶ。もともとタバサとは会話すらしたことがなかった。
なのでサイトに話しかけているタバサが珍しいと思った。

「モンモランシー、悪いがタバサと話してもいいか?」
「わざわざ聞かなくてもいいわよ」

こういう所はバカ(ギーシュ)も見習って欲しい。

「タバサはさっきなんで手加減したか知りたいんだろ?」

コクリとタバサが頷いた。
私は愕然とする。アレだけ圧倒的な強さを見せたのに手加減していた?!

「なに、心優しい癒し手がいるので血を見せるのは悪いと思ってね。それに捕縛して理由を聞き出したかったし」

全ては私のためなのだ。
心が痛むなか私はそう思った。

「あなたは後悔する」

タバサが私に言ってきた言葉は私の心に刺さった。






[18630] <ゼロのひどい使い魔 42>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/03 22:31

SIDE:モンモランシー

 翌朝……。
 私は昨日と同じように、カエルを水に放して水の精霊を呼んだ。

「水の精霊よ。もうあなたを襲う者はいなくなったわ。約束どおり、あなたの一部をちょうだい」

 私がそう言うと、水の精霊は細かく震えた。ぴっ、と水滴のように、その体の一部がはじけ、私の元へと飛んできた。それをビンに詰める。

「待ってくれ! 一つ聞きたいことがあるんだ!」
「なんだ? 単なる者よ」
「どうして水かさを増やすんだ? よかったらやめて欲しいんだけど。なんか理由があるなら聞かせてくれ。俺がなんとかしよう」

サイトがそう言った。キュルケ達のこともキチンと考えている。

「お前たちに、任せてもよいものか、我は悩む。しかし、お前たちは我との約束を守った。ならば信用して話してもよいことと思う」

水の精霊は私の姿をしている。恥ずかしいのでやめて欲しい。

水の精霊の話ではおよそ二年前に秘宝が盗まれたとのこと、それを取り戻すために水かさを増やし続けているという。
なんて気の長い話だと思うが、水の精霊には時間という概念があまりないらしい。
盗まれた秘宝は『アンドバリの指輪』。
私はそれに聞き覚えがあった。
確か偽りの命を死者に与える秘宝。
それを盗んだ人物の一人はクロムウェルだと言う。
キュルケが言うにはアルビオンの新皇帝の名前らしい。
そろそろ私の頭では処理しきれなくなりそうだ。

「わかった。その指輪をなんとしてでも取り返してくるから、水かさを増やすのを止めろ!」

サイトが言う。精霊にたいして失礼な物言いだが口を挟むとややこしくなるので、黙ることにした。

「わかった。お前たちを信用しよう。指輪が戻るのなら、水を増やす必要もない」

私の、いつまでに取り返せばいい? という問に私たちが死ぬまでと答えた。
やっぱり時間の概念が薄いなと私は改めて思った。

水の精霊はごぼごぼと姿を消そうとした。

「待って」

私は驚いた。いや、この場の全員が驚いてタバサを見る。
タバサが他人を……、いや人じゃないけど、呼び止めるところなんて初めて見たからだ。

「水の精霊。あなたに一つ聞きたい」
「なんだ?」
「あなたはわたしたちの間で、『誓約』の精霊と呼ばれている。その理由が聞きたい」
「単なる者よ。我とお前たちでは存在の根底が違う。ゆえにお前たちの考えは我には深く理解できぬ。しかし察するに、我の存在自体がそう呼ばれる理由と思う。我に決まったかたちはない。しかし、我は変わらぬ。お前たちが目まぐるしく世代を入れ替える間、我はずっとこの水と共にあった」

誓約か。サイトと? バカね。少なくとも薬が効いている内は無理。

「変わらぬ我の前ゆえ、お前たちは変わらぬ何かを祈りたくなるのだろう」

 タバサは頷いた。それから、目をつむって手を合わせた。いったい、誰に何を約束しているのだろうか。
その様子を見たサイトが私をつつく。

「なによ?」
「俺たちもここで誓約しよう。ほら」

私は首を振る。

「祈ってくれないのか? 俺に、愛を誓ってくれない……だと?」

 泣きそうなサイトの顔を見るのが辛くなる。

「ごめんなさい。正気に戻ってもう一度同じこと言ってくれたら本気で考えるわ」


SIDE:ルイズ

トリステイン魔法学院の女子寮の一室で私たちが見守る中、モンモランシーが一生懸命に調合にいそしんでいた。

「できたわ!」

 モンモランシーは額の汗を拭いながら、椅子の背もたれにどっかと体を預けた。
テーブルの上のビンには、調合したばかりの解除薬が入っている。

「これ、そのまま飲ませばいいの?」
「ええ」

 私はそのビンを取ると、サイトの鼻先に近づけた。

「くせっ」
「お願い。飲んで」
「飲んだら、キスしていい?」

モンモランシーは仕方無しに頷いた。
サイトは思いきったように目をつむると、くいっと飲み干した。
様子を見ていた私がモンモランシーをつつく。

「逃げないの?」
「ええ」

私ならたぶん逃げ出している。

「うっ」

それから、憑き物がとれたように、いつもの表情に戻る。



SIDE:サイト・ヒラガ

 
ちょっとした好奇心は身を滅ぼす。というのを生で実体験した。
さっきまでどうにかしてたんだ。モンモランシーが異常に可愛く見えてしかたなかった。
記憶が残るってどんな拷問だよ。モンモランシーが俺に惚れちまったとか本気ですか?
いやいや、彼女をハーレム計画に取り込む気はなかった。
ギーシュがいるし。ああ、でも別れたか。
しかし、責任というものはとらなければならない気がした。

「よう」
「ええ」

なんだか友達経由であいつお前の事好きなんだぜー、とお互いが知ってしまったような気恥ずかしさがある。
言葉が続かなかった。
だから抱きしめた。

「いやー、惚れ薬って怖いね。すべて忘れて欲しいし、忘れたいとこだけどバッチリ記憶に刻まれてる。だからさ、今は保留ってことで。起こったこと全部置いといてさ。保留にしようよ。いや、保留にしてください」
「うん」

弱々しく俺の胸の中でモンモランシーは頷いた。
アレ?
可愛いだと……?

「ねぇ、使い魔」
「サー、なんでしょうか。サー」
「一度、死んどきなさい。このバカ犬~」
「ごぶぇら」

今日だけは甘んじて攻撃を受けよう。




――――――――――――――――――――――――――――――――

魔法についての設定ですが、基本的にウィキペディアとゼロ魔の考察サイトを参考にしています。
日本刀にかけた固定化と硬化は謎の多い魔法ですねぇ。
原作に出てこない魔法は使う予定はありませんので安心してください。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 43>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/13 00:18

 結論から言おう。姫様誘拐事件は未遂で終わった。
 ウェールズの遺体が使えなかったのでどこぞのメイジさんが誘拐しようとアンリエッタの部屋付近に近づいたら予め警戒していた魔法衛士隊の隊員とたまたまマリアンヌの所に遊びにきていた「烈風カリン」が協力して犯人を捕らえた。

犯人曰く、なんでこんなに警戒態勢が高いの? バカなの? 死ぬの? 
「烈風カリン」がいるなんて聞いてないと言っていたらしい。

骨の手紙には久々に痛快な気持ちになったとか書いてあった。
姫様は誘拐されそうだったと後に聞いたとか。
「烈風カリン」がいたと聞いてその正体を知りたがっているらしい。
それより、事件のことを探れよ。

さらに付け加えて、犯人が首謀がレコンキスタと言ったのであら大変。
ならアルビオンに攻め入りますかと。
骨自体は戦争に反対だが面子の為に結局はアルビオンを攻めなければと書いてあった。

これが上手く運べばウェールズをアルビオン王に仕立て上げれる。

空のアルビオン、地のトリステインと駒が揃えばそれはそれで強力な連合国になるが、ガリアにはまだ劣る。

そろそろ、本気で対七万軍攻略法を考えないと。


一方、事業の方もそろそろ拡張しないといけない。
順調に儲けを出しているが今は水と土の系統魔法の事業のみ。
火の系統の下準備は終えており人材確保中。
風の系統は重労働向きなのだ。
平民向け商品も軌道に乗ったので今度は金のある貴族向けの商売をしている。
金属の食器を土系統が分担して土俵を作り風と水系統が彩る。
ステンレス製品に近い食器ができたときには流石に驚いたが、これもウケがよかったのでそのまま売り出した。

次の売上が楽しみなところである。

さらにもう一つのプロデュース活動がある。

『魅惑の妖精』の買取。

「スカロン店長!」
「ボスゥ、元気~?」
「ははは、元気ですよ。相変わらず盛況ですねぇ」
「ボスのおかげよ」

『魅惑の妖精』の制服はすべてセーラー服である。
服が大量に入ったので俺は思いついた。
ノーパンしゃぶ……じゃなく、セーラー服喫茶ならぬ、セーラー服居酒屋である。
スカロンさんは俺の話に大いに賛同してくれた。
オカマの考えることはわからんが、商売上手のようだ。

「じゃ、またそのうち来るんでそん時は知らない振りしてください。店長好みのカワイイ子もついてくると思うんで」
「あら~、もういっちゃうの? わかったわ。楽しみに待ってる」

男の投げキッスを受けて俺はダッシュで逃げ帰った。



「さて、明日から夏季休暇なんだけど」
「旅するには好都合だね。どこ行こうか?」
「あのゼロ戦で?」
「勝手に国境超えていいならやるけど壊れたら嫌だから馬の方向で」
「自由気ままに旅かぁ、ってそうじゃないわ。任務よ!」

正直やりたくない。
アニエスとかアニエスとかに任せとけよ。

「って聞いてた? あと姫様から追伸で彼に早く会いたいって。ウェールズ様のことよね?」
「聞いてました! アホ女王は国より個人が大事なようです」

ボカッと頭を叩かれた。最近は警告なしで叩くのがルイズの流行りのようだ。

「いてぇな。はいはい、すいませんでした。わるーございました」
「わかればいいのよ」

トリスタニアまでの移動。
学院の馬は使えない。
つまりは徒歩。
季節は夏、歩いて十分でやってられなくなった。

「荷物を背負う、そしてルイズをお姫様抱っこする。俺は何をするつもりでしょう?」
「ちょ、ちょっと何する気?」
「ズルイさん、俺はこう思ってるんです、旅は素晴らしいものだと!
その土地にある名産、 遺跡!暮らしている人々との触れ合い!
新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する!
しかし、目的地までの移動時間は正直面倒です、その行程この俺なら破壊的なまでに短縮できるゥ!
だから俺は旅が大好きなんです!!聞いてますかズルイさん、ズルイさァァァ~~~~ん!」

ガンダールヴの力を最大限に使って、走った。

「ハァァ~~~! また世界を縮めたァ……!」
「ルイズです!」

街についた俺は、暑さと猛ダッシュでへばっていたので、ルイズは一人で財務庁を訪ね、手形を金貨に換えた。
新金貨で六百枚。四百エキューである。

「うぇ~、もう二度とやらん」
「そう? 大分早く着いたからこれからアレで移動したかったのに」

この女、俺を殺すつもりか?!
とりあえず、格好が貴族なので平民に仕立てるために仕立屋に入って地味な服をきせた。
嫌がったが貴族の格好のまま活動したら姫様の依頼の意味がないと説明するとしぶしぶ納得してくれた。

「足りないわ」
「胸が?」

 ボカッ。
無言で叩くのはやめて欲しい。

「この頂いた活動費よ。四百エキューじゃ、馬を買ったらなくなっちゃうじゃないの」
「じゃあ帰れば?」
「それこそ依頼の意味ないじゃない」
「おい、ナイチチ、金が少ないのは平民に混じって情報収集するためだろ? 公爵家のナイチチとして頼むならそれなりの金はくれたさ。いいか、平民にまぎれるの! ドゥユゥアンダスタンド?」

ボカボカと殴ってくるがこれでわかってくれた。

「まー、胸は増やせんが金が増やせる場所はあそこにあるぜ?」
「博打じゃないの! あきれた!」
「ならその金でやりくりしろ。半分は俺の分として頂く」

俺はルイズから半分金をもぎ取り博打をすることにした。
赤か黒、ルーレットである。
とりあえず、十エキュー赤にかけてみる。

「ほら見ろ。増えた。自分の才能が怖い」
「わたしに貸してごらんなさい」
「自分の持分でやりな、俺にたかるな」
「なによ。いいわ。使い魔が勝てるなら、主人がやればその十倍勝つわ」

ルイズはいきなり三十エキューを黒にかけた。
俺はルイズが負けて全額スルのを知っているので逆に三百スゥ赤にかけた。

「いきなり大負けしてんじゃん。もうわかったろ? やめとけって」
「う、うっさいわね」

ルイズの目はギャンブラーのそれになっていた。

三十分後……。

「ルイズ」
「あによ」

ルイズは不機嫌な声で答えた。ルイズの手持ちあわせて四百エキューはスっている。
逆に俺はルイズのとは逆の目にかけて倍々に金を増やしていた。初めに三十スゥ賭けてから、もう十五回連続勝っている。三十が六十に六十が百二十にといった感じで増えていった。
所持金は十万エキューに近くなっており怖くなってやめた。
というか、それ以上勝たれると支払できないとオーナーに泣きつかれたので止めたわけだが。
面子があるのか十万エキューは払ってくれた。
ギャンブル狂になったルイズをおいて大金を財務庁で手形に変えてそれを学院にいるマチルダに送っておいた。

ルイズは、暮れゆく街の中央広場の片隅にぼんやりと座りこんでいた。

「その様子だと結局スったな?」
「ど、どうしよう」

捨て犬の顔をしていた。

「お金の怖さを身を持って体験しましたとさ」
「う~~~」

膝を抱えて、ルイズが悲しげにうなる。
ここで俺に金をよこせといわないのは貴族のプライドだろうか?

「ん?」

見覚えのあるオカマがいた。俺を見つめている。
俺はルイズの後ろでスカロンに手招きをした。
ニコッと笑ったスカロンが近づいてくる。

「なにやらお困りのようね。よかったら、うちにいらっしゃい。わたくしの名前はスカロン。宿を営んでいるの。お部屋を提供するわ」
「いやぁ、ルイズ。助かったな良い人がいたぞ」
「ほんとですか!」
「ええ。でも、条件が一つだけ」
「なんなりと」
「一階でお店も経営してるの。そのお店を、そこの娘さんが手伝う。これが条件。よろしくて?」

俺はスカロンにウインクした。
ルイズはしぶったが俺が睨むとおとなしく頷いた。

「トレビアン」

スカロンも俺に目配せをしてきた。

「じゃ決まり。ついてらしゃい」
「なんかイヤだわ。あいつ変」
「お前、えり好みできる立場だと思ってんのか?」

ガクリとルイズは肩を落とした。


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モンモランシーの人気に嫉妬wwwww

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 44>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/06 19:02


『魅惑の妖精』に新しいお仲間が増えました。

「ルイズちゃんは、お父さんの博打の借金のかたにサーカスに売り飛ばされそうになったんだけど、間一髪お兄ちゃんと逃げてきたの。とってもかわいいけれど、とっても可哀想な子よ」

お兄ちゃんと呼ばせたかったから兄妹にしたわけじゃないぞ?
ほんとなんだからねっ!

ルイズの紹介が終わって、ひきつった笑顔を浮かべるとルイズは一礼した。

「ルルル、ルイズです。よよよ、よろしくお願いなのです」
「はい拍手!」

念願のルイズのセーラー服も見れた。
ルイズはセーラー服のことについては聞いてこなかった。
今は貴族としてのプライドと任務との葛藤でも起きてるんだろう。

「さあ! 開店よ!」

俺は、皿洗いの仕事を与えられた。
飲食店のバイト経験で皿洗いは慣れていたので黙々と皿を洗っていた。

「手馴れてるねぇ。新入りのお兄さん!」

テンションの高い子である。

「あったしー、ジェシカ。あんた、名前は?」
「サイト」
「ヘンな名前」
「ほっといてほしいね」

皿を洗う。ひたすら皿を洗う。
バイトが懐かしい。

「ねえねえ、ルイズと兄妹ってうそでしょ?」
「うん、嘘、でもお兄ちゃんと呼ばせたいからそうした」
「へぇ~、なに? なに? どんなワケあり? あたしにだけ、こっそり教えて? ほんとはどういう関係なの? どっから逃げてきたの?」

ジェシカは興味深々に聞いてきた。

「仕事しなよ。店長に怒られるぞ」
「いいのよあたしは」
「なんでだよ?」
「スカロンの娘だもん」

知っていたが遺伝子を疑いたくなる。

「ほ~、あの人から君みたいなカワイイ子がねぇ」

じゃ、仕事行ってくると俺をおいて出ていってしまった。俺の言葉に照れもしなかった。
ルイズは当然のごとく失敗しまくっていたがここは兄らしく妹を見守ることにした。

「えー、では、お疲れさま!」

慣れない仕事で、ルイズはグダグダになっていた。

「はい、ルイズちゃん。サイトくん」

俺には日払いの給料、ルイズには紙切れ一枚が渡された。

「なんですかこれ?」

 俺がたずねるとスカロンの顔から笑みが消えた。

「ルイズちゃん、何人のお客さんを怒らせたの?」

 ルイズ、ため息をついた。

「いいのよ。初めは誰でも失敗するわ。これから一生懸命働いて返してね!」
 
ルイズと俺に与えられた部屋は、二階の客室だった。屋根裏部屋じゃないのね。
うーん、俺に気を使ったのかな。

「なによこれ!」
「普通の部屋だろ、妹」
「なによそれ!」
「兄妹だろ」

ルイズが怒っていたが俺は結構疲れてたので眠かった。

「なんであんたは順応してんのよ!」
「ほら、こっちこいよ」

ベッドに入ってルイズを誘うと怒り嬉しの混ざった表情だった。
難しい顔できるな~と関心したところで俺は寝た。


SIDE:ジェシカ

 変わった男だ。私の色香に乗ってくるが、隙は見せない。
女の子が大好きなのはわかるが、どこか一線引いている感じがする。
もしや、あの偽妹のことが好きなのだろうか。
ルイズと呼ばれているこいつの妹は店の隅で立たされている。
どこで拾われたかわからないが、明らかに貴族だ。
お皿の運び方も知らない、おまけに妙にプライドも高い。そしてあの物腰はよく見る貴族だ。

「ねえねえ、あったしー、わかっちゃった」
「なにが?」
「ルイズ。あの子、貴族でしょ」
「それで?」

否定しない。やっぱり貴族なのだろう。
好奇心が高まる。
没落貴族?
駆け落ち?

「なんか事情があるんでしょ?」

私の話に耳を傾けながら皿洗いをしている。
手を止めないあたりサイトはこの作業が慣れているのだとわかった。

「乳首見えてる」
「へ?」

嘘だ、そんな薄着してない。この水兵服はそもそもそこまできわどい格好はできない。
しかし、女の子である私は胸を確かめた。
やっぱり、隠れている。
サイトを睨もうとしたら目の前にいたはずのサイトはいなかった。

「わははは、さらばだ。ジェシカ」

振り向くとサイトは厨房から出ていくところだった。
逃げられた。

「ぜ~ったい、聞き出してやるわよ!」


SIDE:サイト・ヒラガ


 ふぅ。
 ジェシカの押し付ける胸攻撃を思い出して抜いた。
おとなしくチップレースで稼いでろ。






[18630] <ゼロのひどい使い魔 45>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/06 19:09


 チップレースはダントツ、ジェシカがトップ。
 ルイズはマイナスでダントツ、ドベ。
 ブービーは俺。時たま入ってくる女性客に接客してチップを貰った。

そして、泣いても笑っても今日がチップレースの最終日である。
ルイズはジェシカから何か学んだらしく上手くやっていた。
うん。ルイズが接客してる、あの男後で殺す。
などと思っていると、デブ中年が店に入ってきた。

「これはこれは、チュレンヌさま。ようこそ『魅惑の妖精』亭へ……」

思い出した。奴はヤラレ役だ。
店側の空気は最悪、嫌なやつが来たという空気が漂っている。
しかし、そこに空気の読めないバカ妹、つまりルイズが接客を始めた。

「強者だな。空気読めないってレベルじゃねーぞ」

チュレンヌとのやりとりを見ながらそう思う。
デブ中年は店から他の客を追い出した。嫌だねー、こうゆう貴族がいるからこの世界はよくならん。
と思っていると、デブ中年は、ルイズの薄い胸を触ろうとしている。
おい、それは俺のものだ。

「飛び蹴りぃ!」
「ぐはぁ」

見事に転がるデブ中年。

「き、貴様……、よくも貴族の顔に……」
「しらんね。こいつは俺のもんだ!」

デルフは邪魔だったので、今は日本刀だけしか持っていない。
だが、この程度の奴はこれで十分。
というか日本刀が汚れるから切りたくないので責任転嫁することにした。

「ルイズ、こいつがお前の胸がペッタンコでかわいそうだって! やっておやりなさい」
「さっきは洗濯板とか言ってくれたし、死ね!」

『虚無』呪文、エクスプロージョンが炸裂した。
普段撃たれてるからその恐怖はわかるぞ。
それだけは同情してやる。

「な、何者? あなたさまは何者で! どこの高名な使い手のお武家さまで!」

 チュレンヌはがたがた震えながら、ルイズにたずねた。
 ルイズは答えずに、ポケットからアンリエッタの許可証を取り出してチュレンヌの顔に突きつけた。

「……へへ、陛下の許可証?」
「わたしは女王陛下の女官で、由緒ただしい家柄を誇るやんごとない家系の三女よ。あんたみたいなどこぞのしょぼい役人に名乗る名前はないわ」
「し、し、失礼しました!」

チュレンヌは命乞いをしながら有金をおいて逃げていった。

「すごいわ! ルイズちゃん!」
「あのチュレンヌの顔ったらなかったわ!」
「胸がすっとしたわ! 最高!」

 スカロンが、ジェシカが、店の女の子たちが……、ルイズをいっせいに取り巻いた。

「ルイズ、魔法使ったら貴族ってばれるだろ。もう遅いけど」
「う……、だって……」
「いいのよ」
「へ?」
「ルイズちゃんが貴族なんて、前からわかってたわ」

スカロンが答えた。俺は貴族だとはばらしていない。いや、ジェシカが見抜けるくらいだ、父親のスカロンなら貴族と予測していたのだろう。

「こちとら、何年酒場やってると思ってるの? 人を見る目だけは一流よ。でも、なにか事情があるんでしょ? 安心しなさい。ここには仲間の過去の秘密をバラす子なんていないんだから」

このオカマ、漢である。
チップレースはチュレンヌのおいて行った金のおかげでルイズが優勝した。


翌日、ルイズは店の手伝いを休んだ。
きっと疲れたんだな。
すっかりと記憶から抜けてるイベントの事を思い出したのは、俺が部屋に帰ってからだった。

「おおぅ」

小悪魔っぽい何かがいた。

黒いビスチェ、『魅惑の妖精のビスチェ』と呼ばれる男を魅了するマジックアイテム。
いや、ただの服装なのだが、それは女の魔性と言っておこう。

「いつまでバカ面下げてんの。ほら、ご飯にしましょ」

やべ、顔に出てたか?
テーブルの上にはご馳走が並んでいる。

「なんだこれ?」
「わたしが作ったのよ」
「マジで~?」
「ジェシカに教えてもらったの」

 そう言って頬を染めるルイズ。

「さ、食べましょ」

俺は頷いてルイズの作った料理を食べた。
なんだ、その、初めて作る料理らしい出来栄えだった。

「味はどう?」
「そこそこ」

決してまずいと言わないのが紳士的な答えであり空気を読む俺の回答だった。

「そういえばサイトって料理うまいもんね」
「ルイズが作ってくれたことがうれしいね」

ルイズはえらそうに頷く。接客で多少こういったことに免疫がついたのだろう。

「でもって、わたしは、どう?」
「すごく似合ってる。可愛い。結婚したいかも」

ルイズはまんざらでもない様子で飯をくってた。
アレ? 返事はどーした?





[18630] <ゼロのひどい使い魔 46>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/10 22:23


ここはトリステインの魔法学院。
夏期休暇が始まったばかりの寮塔では、二人の貴族が退屈をもてあましていた。

SIDE:キュルケ

タバサと居るのは悪くない。

「ねえタバサ。お願いよ。さっきみたいに風を吹かせてちょうだい」

私の友人は本から目を離さずに杖を振る。

「冷たいのがいいわ。キンキンに冷えたのが。あなたのあだ名みたいに」

雪風が、私の体を冷やしていく。

「あー、気持ちいい……」

じっと本を読みふけるタバサを見つめる。
タバサはこの暑さにも汗一つかかずに、本に夢中になっている。
『雪風』の二つ名は、心だけでなく体も冷やすのだろうか?
タバサの家の事情を知った私は、今年の夏、ツェルプストーの領地へいっしょに帰郷しようとタバサを誘ったのだった。しかし、タバサは頷かない。

「ほんとにもう、こんな蒸し風呂みたいな寮に残ってるのなんて、あたしたちぐらいね」

私はサイトの作った風呂で水でも浴びようかしら?
人目に付かない所にあるし、この休みで誰もが実家に帰っているはずなので覗かれる心配なはい。
しかしそのとき……。
階下から悲鳴が聞こえてきた。
一瞬、私とタバサは顔を見合わせた。
私はがばっとシャツを羽織ると、杖を握って部屋から飛び出した。タバサもそのあとを追う。


SIDE:マチルダ


な、なんだいこの金額は!!

ゲルマニアでの用事を済ませ、学院に帰ってきた来た早々にサイトから送られてきた手形を見て思わず叫んでしまった。
一体何をすればこんな大金が手に入るのだろう?
手形と共に送られてきた手紙を読む。

"賭博で勝ちすぎた。自分の才能が怖い。この金で好きなようにしてちょ。半分位までなら自由に使うといいと思います。"

たったこれだけしか書いていない。
いやいや、賭博で勝ったってこの金額は異常だ。

ふと視線に人影が見えた。
しまった。アタシの声が聞こえた。

「あら、ごきげんよう」
「さっきの声は貴方なの? ミス・ロングビル?」

赤毛の生徒と、青毛の生徒、さらにビジネスパートナーの巻き毛の生徒とその付属品がアタシの元に揃った。

「とんだご迷惑をかけましたわ。まさかこんなに生徒が残ってるなんて思いませんでした」
「一体なにがあったの?」

巻き毛の生徒が聞いてくる。

「いえ、多少驚くことがありまして」
「驚くこと?」

赤毛の生徒が突っかかってくる。
そういえばこのメンバーを事業の協力者にしたいって言ってたっけ。

「ええ、これを」

たぶん見せてもいいだろう。

「なにこれ? ってえええええええ」

青毛の生徒以外が同じアタシと同じ用に叫んだ。


SIDE:モンモランシー


嘘、嘘よ。何これ? 何かの間違じゃないの?
下級貴族でも一生遊んで暮らせるわ!
手形を見て驚いた。
ほんの少し目を離すたびに私たちを驚かすことをしでかす。
私は前の惚れ薬事件の事も忘れてサイトのことを怖いと思った。
バカ(ギーシュ)はしつこく私に愛を囁いてくるが、サイトのように稼いでみろと言いたい。

「これ、どうするんです?」

サイトの秘書もやっているロングビルに私は聞く。

「こ、ここまで大きなお金だと逆に使い道に困りますね」
「サイトもすごいなぁ。一体どんな魔法を使ったんだ?」
「ホント、少し目を離すとエラいことしでかすわねぇ。でも、このお金で貴族になれるわ!」

キュルケがそういった。ゲルマニアでは確かに金さえあれば貴族になれる。
しかし、私はサイトから聞いている。

「サイトは貴族になるつもりはないって言ってたわ」
「それだと私が困るのよ。立派な貴族になってもらって結婚してもらうんだから」
「「「ええ!」」」


SIDE:ギーシュ


確かに宝探しの前にそんなことを言っていたが本気か?

「キュルケ、たぶん彼は冗談で言ったと思うよ? いやまあ、多少は本気だったかもしれないが」

なんともつかめない性格のサイトの考えを読むのは難しい。
だが、彼はおっぱいマスター。僕とは同士なのだ。

「冗談? 私は本気よ!」

そういえば最近キュルケは男を連れていない。
すべての男を振ったという噂は本当だったのか。

「しかし、困りましたね。この件はサイトが帰ってきたら聞くとしますわ」

ミス・ロングビルがそういった。

「なぁに、サイトに直接聞けばいいじゃないか」

何も考えずに言葉を発した。

「で? そのサイトはどこにいるかわかってるの?」

モンモランシーが聞いてきた。久々に話しかけてくれた。

「う、知らない。実は休みに入ったら彼と少し話をしようと思ったのだが初日に彼を尋ねたらもう出かけていたよ」

話というのはモンモランシーのことだったが、今は言わない方がいいだろう。

「タバサは何か知ってる?」

キュルケが聞いた。

「知っている」

全員が驚いた顔をしていた。

「なんで知ってるか、今は聞かないわ。で、どこ?」

キュルケの顔が恐ろしい。

「おそらく……」

彼女の答えた店は僕が一度行きたかった噂の店だった。




―――――――――――――――――――

ギャンブルの件。

桁を間違えてました。orz

98万エキューだと財政崩壊するぞwww
ってことで、初めにかけたお金を30エキューから300スゥにしました。
ちなみに貨幣単位は以下を参照。

銅貨 ドニエ 1
銀貨 スゥ 10
金貨 エキュー1000
新金貨 750


――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 47>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/12 00:24

SIDE:ギーシュ

 トリスタニアの城下町にやってきた僕たちは、ブルドンネ街から一本入った通りを歩く。
時刻は夕方に差しかかったばかり。
ブルドンネ街がトリスタニアの表の顔なら、このチクトンネ街は裏の顔である。いかがわしい酒場や賭博場なんかが並んでいる。

「いや、まさかここだったとは」
「ギーシュ、知ってるの?」

キュルケが聞いてきた。
ここに来たのは僕、モンモランシー、タバサ、キュルケだった。ロングビルは仕事があるのでと言って断った。

「どういう店なの?」

キュルケに続けてモンモランシーが聞いてきた。
久々に話しかけられたので嬉しくなり素直に答えてしまった。

「女の子が、可愛らしい格好でお酒を運んで……」
「いかがわしい店じゃないの!」
「面白そうじゃない」

キュルケが店に入っていく。
それに続いてなぜここにサイトがいるのか答えてくれなかったタバサも入っていった。

「待ってよ」

モンモランシーも入っていき僕は取り残された。

「待ってくれ、置いてかないでくれ!」


SIDE:モンモランシー


「いらっしゃいませ」

探していた人物はすぐに見つかった。

「この店は始めてですか? 貴族のお嬢様達。随分とお美しい方々だ。店の女の子が霞んでしまいます。私はこの店のボーイでございます。貴族のお嬢様達にふさわしい綺麗な席に案内いたしましょう」

流れる言葉と共に席に案内された。
サイトはまるで私たちと面識のないような振る舞いをしている。

「なにをしてるんだね君は?」

 ギーシュが不満げに問いかけた。

「貴方のような格好のよろしい貴族様に話しかけられるのは喜ばしいですが、私は貴方を存じません。失礼ですが、他人の空似だと思います」

ギーシュはあっけにとられていた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」
「この店で一番美味しいものを」

タバサが答える。

「畏まりました。可愛いお嬢様」

見事な一礼をして去っていくサイトを私たちは眺めていた。

「あれって、サイトよね?」
「そうみたいね。あのおかしな剣もってるし」

私の問にキュルケが答える。
確かに腰に剣を帯びている。
誰もその剣のことを注意しないのはこの辺りが治安が悪いからだろうか?
いや、サイトのことだ。無理を言って認めさせたのだろう。

「まるで別人のような言葉遣いだね」

バカ(ギーシュ)の言葉に私は頷いた。


SIDE:キュルケ


 彼の行動。別人のように接する態度。つまりは、知らない振りをしろと言いたいのだろう。

「お待たせしました」
「随分と早いのね」
「早い、安い、うまいがモットーなので」
「そういえば、女の子の格好はいつぞや君がシエスタに着させていた格好じゃないか!?」
「おや? それは偶然ですね。ここの店のウリでございます」

あくまでも他人行儀。いつもの軽口の方がやはり彼らしいのだ。

「ちょっとサイト、いつまでそうするつもりよ?」
「そうだ。薄気味悪いからやめてくれたまえ」
「そう申されましても、私はただのボーイの平民です。貴族様達に無礼はできません」

では、仕事があるのでと一礼してサイトは厨房に行ってしまった。

「もう、なんなの?!」
「おいしい」

タバサは気にする様子もなくご飯を食べていた。
それを見たらなんだか馬鹿らしくなった。


SIDE:サイト・ヒラガ


ルイズがキュルケ達とカチあわなくて良かった。

「ルイズ、そのまま厨房にいろ。今キュルケ達が来た」
「なんですって?」
「俺が上手く誤魔化しとくからここにいろよ?」
「わかったわ、任務については答えないこと」
「わかってる」

俺はキュルケ達のいたところに向かう。

丁度、ギーシュが何かをたずねようとしたようだ。
その時、店に新たな客が現れた。

貴族は、貴族を呼び寄せるのか客はまたしても貴族だった。

「いらっしゃいませ。貴族様、どうぞ我が『魅惑の妖精』亭で心のお疲れを落として行ってください」

セーラー服にしばらく感嘆の言葉を漏らしていた王軍の士官らしき貴族達は早々にキュルケ達に目をつけたようだ。

「あそこに貴族の子がいるじゃないか! ぼくたちと釣り合いがとれる女性は、やはり杖を下げていないとな!」
「そうとも! 王軍の士官さまがやっと陛下にいただいた非番だぜ? 平民の酌では慰めにならぬというものだ。きみ」

店中に聞こえる程のデカイ声を出していた。
必死ですね、貴族様。

キュルケは気にした様子もなくワインを飲んでいた。
ギーシュのアホは気が気でない様子。モンモランシーも似たような様子。
タバサは……、食い過ぎだ。

そのうちに声をかける人物が決まったらしい。
一人の貴族が立ち上がる。二十歳を少し超えたばかりの、なかなかの男前であると思うが、口ひげを生やすのって貴族の嗜みなのか?
ホモ野郎もそうだったが、貴族の考えることはわからん。

「我々はナヴァール連隊所属の士官です。恐れながら美の化身と思しき貴女を我らの食卓へとご案内したいのですが」

 キュルケはそちらのほうを眺めもせずに答える。

「失礼、友人たちと楽しい時間を過ごしているところですの」

士官から野次が飛んだが、ヒゲの男はしつこくキュルケをさそう。
潔く諦めるという選択肢はないらしい。
キュルケは見事に相手に喧嘩を売り、相手は酔った勢いでその喧嘩を買った。

「すいませんが貴族様達、お店の中で暴れるのは勘弁していただけますか? お客様同士の揉め事はお客様同士で解決してください」

「わかってるわよ」

キュルケはそう言ってタバサと共に店を出て行った。




 勝負はあっという間についた。野次馬根性で店にいる客は全て外の様子を見ているのだ。
タバサが杖を振ると士官が吹き飛び決着はついたのだった。
戻ってきたタバサを見て、店の客たちは驚きのうめきを漏らした。

「すごいですね、貴族のお嬢様」

 店内が拍手につつまれたが、タバサは気にした風もなく本のページをめくる。

「じゃあ、乾杯しましょ」

 ギーシュが首をひねりながらキュルケにたずねる。

「なあキュルケ……」
「なあに?」
「きみたちは、いったいどうしてそんなに仲がいいんだ? まるで姉妹のようじゃないか」
「気が合うのよ」

俺は側で話を盗み聞きしていた。

キュルケとタバサの出会い。勘違いの決闘。そしてそれ以降、友達となったこと。
うむ、仲良きかな。女同士の友情ですな。

「ふぁあああああああ」

 とキュルケは大きくあくびをした。せっかくの話も台無しだ。

「飲んでしゃべったら、眠くなっちゃったわ」
「宜しければお泊りになりますか? 貴族様には合わないかもしれませんが、二階は宿になっております」

そうするわ、と短く言ってタバサを引き連れて二階に行ってしまった。
金払えよ?

「そちらの貴族様達はどうなされますか? ああ、お部屋は余っていますので一人一部屋でよろしいですか?」
「そうねぇ、今から学院に向かうのも面倒だし泊まるわ」
「僕もそうするよ」

二人も二階に上がっていった。
入れ違いのタイミングで店の中に、先ほどタバサに吹っ飛ばされた貴族たちが顔を見せた。

「どうなされました?」
「先ほどのレディたちはどこに行かれた?」
「上で寝ております」

士官たちは顔を見合わせた。

「逃げられたか」
「御用であればお呼びしてきますが?」

にっこりと貴族は笑みを浮かべた。

「そうしてくれたまえ」

俺は一礼して部屋に戻る。

「よう、相棒、寂しかったぜ」
「そんな君にお知らせだ。出番だデルフ」
「よしきた!」

俺はデルフを持って下に降りる。

「どうした?」
「いえ、それが、実は彼女たちは私の知り合いでして」
「ほう、是非とも我ら、先ほどのお礼を申し上げたいと思ってな。しかし、我らだけでは十分なお礼ができそうもないので、ほら、かのように一個中隊引っ張ってきた。無駄にならずにすんだよ」

ニヤリと俺は笑う。何百人かいるが、こっちは七万と戦うハメになるんだ。

「私で良ければお相手いたしましょう。友のために」
「はっはっは、勇敢な平民だ。ご遠慮なさらずに、せいぜい暴れていただきたい!」
「畏まりました」

と大げさに一礼した。

何百人いようとここは街中で狭い通りである。
一度に攻撃できるのも四人程度。
俺は偉そうな奴から倒していった。
どうやら指揮官らしく、何人か倒したら兵隊はそいつらを担いで逃げていった。

「楽勝だったな、相棒」
「相手にとって場所が悪すぎた。派手な魔法も使えない。平民だと油断した。勝って当然」
「へぇ~、考えてるねぇ。さすが相棒だぜ」

それでもさすが軍隊である。二時間ほど粘られた。
店に戻るとキュルケがいた。

「どうしたの?」
「一つ貸しだ」


SIDE:アンリエッタ


 私は高等法院のリッシュモンと会談を行っている最中であった。
高等法院とは、王国の司法をつかさどる機関である。
ここには特権階級の揉めごと……、裁判が持ち込まれる。
劇場で行われる歌劇や文学作品などの検閲、平民たちの生活を賄う市場などの取り締まりをも行う。その政策をめぐり、行政を担う王政府と対立することもしばしばであった。

アニエスに気づいた私は、唇の端に微笑を浮かべ、リッシュモンに会談の打ち切りを伝えた。

「しかしですな、陛下……。これ以上税率を上げては、平民どもから怨嗟の声があがりますぞ。乱など起こっては、外国と戦どころの話ではないでしょう」
「今は非常時です。国民には窮乏をしいることになりましょうが……」
「戦列艦五十隻の建造費! 二万の傭兵! 数十もの諸侯に配る一万五千の国軍兵の武装費! それらと同盟軍の将兵たちを食わせるための糧食費! どこからかき集めれば、このような金を調達できるのですかな? 遠征軍の建設など、お諦めくだされ」
「しかしですな、陛下。かつてハルケギニアの王たちは、幾度となく連合してアルビオンを攻めましたが……、そのたびに敗北を喫しております。空を越えて遠征することは、ご想像以上に難事なのですぞ」

そんなことは知っている。そして、税率を上げているのはネズミを駆り出すためのものだ。

「知っておりますわ。しかし、これは我らがなさねばならぬこと。財務卿からは『これらの戦費の調達は不可能ではない』との報告が届いております。あなたがたは以前のような贅沢ができなくなるからって、ご不満なのでしょう? わたくしのように、率先して倹約に努めてはいかがかしら?」

 私は、リッシュモンが身につけた豪華な衣装を見て皮肉な調子で言った。
節約に関しては元から私が考えていたがマザリーニ枢機卿も同じことを考えたらしく、ならば上に立つ姫様から行動しては、といってくれた。
それに、財務卿から、最近十万エキューに近い額が入ったとも聞いている。
一体どこの誰が手形に変えたかわからないが、今は戦時である。ありがたく使わせてもらう。

「わたくしは近衛の騎士に、杖を彩る銀の鎖飾りを禁止しました。上に立つ者が模範を示さねばなりませぬ。貴族も平民も王家もありませぬ。今は団結のときなのです、リッシュモン殿」

リッシュモンは頭をかいた。

「これは一本取られましたな。わかりました、陛下。しかしながら高等法院の参事官たちの大勢は、遠征軍の編成には賛成できかねる、という方向でまとまりつつあります。そこは現実としてご了承いただきたい」
「意見の調整は、枢機卿とわたくしの仕事ですわ。わたくしたちには、法院の参事官たちを説得できる自信があるのです」


話を終えたのでリッシュモンは頭を下げて、退室の意向を告げた。

「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン、参上つかまつりました」
「調査はお済みになりまして?」
「はい」

 報告書を読む。やはり、この国に裏切り者がいるのだ。マザリーニ枢機卿からも同じく裏切り者がいると口頭で伝えてきた。その考えはどうやらペンフレンドからの入れ知恵らしい。
ペンフレンドの謎を知りたく問いただしたが、はぐらかされた。
良い人でも見つかったのだろうか?
いけないわ。それどころじゃなかった。

「あなたはよくやってくれたわ。お礼を申し上げます」
「私は、陛下にこの一身を捧げております。陛下は卑しき身分の私に、姓と地位をお与えくださいました」
「わたくしはもう、魔法を使う人間が信用できないのです。一部の古いお友達を除いて……」

頭に思い浮かぶ人物。ルイズ、裏切り者ワルド、愛しいウェールズ様、そして……。

「あなたはタルブで、貴族におとらぬ戦果を上げました。したがってあなたを貴族にすることに、なんの異議が挟めましょうか」
「もったいないお言葉でございます」

 私が新設したのが……、このアニエスが率いる銃士隊であった。
その名のとおり、魔法の代わりに新式のマスケット銃と剣を装備する部隊である。
隊員はメイジ不足ゆえに平民のみ……、それも女である。
私の身辺を警護するという名目で、女性のみで構成された。

私はアニエスの、功績が特別で貴族にしたわけではない。
そして、これを特例にするつもりはない。
有能なれば平民といえどどんどん登用し、国力を高めるつもりであった。
いつしかサイトさんから言われたことを実現しているに過ぎない。そして、いずれはサイトさんを引き入れるつもりだ。

「誇りをお持ちなさい。胸を張って歩きなさい。自分は貴族なのだと、鏡の前で己に言い聞かせなさい。そうすれば、おのずから品位など身につきましょう」
「御意」

サイトさん、私はやりますわ。
裏切り者の男には証拠がない。
だからあぶり出す。
そのためにもアニエス達の協力は必須。

「あなたはただ事前の計画どおり、男の行動を追ってくださればよいのです。わたくしの見立てが正しければ、明日、犯人であれば必ずや尻尾を出すでしょう。その場所をつきとめ、フクロウで知らせなさい」
「泳がすおつもりですか?」

私は不敵な笑みを浮かべた。


―――――――――――――――――――

今までの二話分くらいの量です。
多いぞ!
という意見が多い場合、元の量に戻します。

―――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 48>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/13 00:24


ルイズと劇を見る。という、デートを済ましていた。
うん、デートだ。デート。大事なことなので二回言いました。
劇は脚本は良かったが、役者がだめだった。
いずれ、劇場もプロデュースしようと誓った。
ロミオとジュリエット当たりがきっと受けるに違いない。

「ねえお兄さま」
「なんだい妹?」

ここ数日でお互いの呼び合いはこうなってた。

「今日も一緒に寝てくれる?」
「いいよ」

この妹、アマアマである。どうやら甘えん坊属性がついてきたルイズ。

「んじゃ、最後の仕事終わったら戻るから、遅かったら寝てていいぞ?」
「わかった」

ルイズは聞き分けよく部屋に向かった。

そろそろ、姫様が現れる頃だと思って布でぐるぐる巻きにしたデルフを背負っている。
かなり邪魔だし目立つので早く現れて欲しい。
裏口を開け、路地に出た瞬間、フードをかぶった女がこっちに向かって小走りに駆けてくるのが見えた。
こりゃ、ぶつかります。

どん!
と俺にぶつかる。倒れると危ないので腕を掴んで強引に抱き寄せる。

「大丈夫か? む、この感触」

ムニュ、俺の胸板に当たる胸に覚えがあった。

「……あの、この辺りに『魅惑の妖精』亭というお店はありますか?」
「そりゃ、ここだぜ。姫様」

そう言って、フードの裾を持ち上げて顔を確認した。
うん、やっぱり姫様だ。

しっ! と言われ、口を塞がれる。

「あっちを捜せ!」
「ブルドンネ街に向かったかもしれぬ!」

表通りの方から、息せききった兵士たちの声が聞こえてくる。
ここにいるぞぉ。

「……隠れることのできる場所はありますか?」

俺の口を塞いだままだったので、俺は兵士に知らせれなかった。
ごめんよ。兵士さん。

「こっちに来いよ」

ルイズのいる隣の部屋。つまり俺の部屋に案内した。
アンリエッタはベッドに腰掛けると、大きく息をついた。

「……とりあえず一安心ですわ」
「トラブルメイカーの貴方といると俺は安心できませんがね?」
「ちょっと、抜け出してきたのだけど……、騒ぎになってしまったようね」

俺をスルーしてアンリエッタは続けた。

「抜け出す姫様がバカなのか、抜け出すのを止められなかった奴らがバカなのかどっちでしょう」

アンリエッタは黙ってしまった。

「しかたないの。大事な用事があったものだから……。ルイズがここにいることは報告で聞いておりましたけど……、すぐにあなたに会えてよかった」
「よし、ルイズを呼ぼう」
「いけません」

アンリエッタは、俺を引き止めた。

「ちっ」
「舌打ちしました? しましたよね? ルイズには、話さないでいただきたいの」
「えー」
「えー、ではありません。私はあの子を、がっかりさせたくありませんの」

俺は椅子に腰掛けて、アンリエッタをにらんだ。顔はいいんだ。間違いなく。
体もナイスバディなのも認める。しかし、頭が弱い。

「んで、俺に用でも?」
「明日まででよいのです。わたくしを護衛してくださいまし」

俺はこれ見よがしに嫌な顔をした。

「そんなに嫌な顔をしないでください。今日明日、わたくしは平民に交じらねばなりません。また、宮廷の誰にも知られてはなりません。そうなると……」
「友達いないもんね」

ガクリと、うな垂れるアンリエッタ。
どうやら急所に当たったようだ。

「ええ、あなたぐらいしか、思いつきませんでした」
「報酬は?」
「う、今はありません。後に支払いましょう」
「今度こそ一括払いの現金な」

アンリエッタは目を伏せた。
おい、返事しろ。

「……大丈夫です」
「さっきの間は?」
「では、出発いたしましょう。いつまでもこの辺りにはいられませんわ」

スルーされた。くそっ、なんてやつだ。

「どこ行くの~」

力なき声で言った。

「街を出るわけではありません。安心なさってください。とりあえず、着替えたいのですが……」
「ルイズの服ならそこにある。しかも平民向けの奴が」

アンリエッタに服を渡すと、後ろを向いて着替え始めた。
貴族は他人がいようとお構いなしなようだ。
ナイス乳。
シエスタよりデカイだと!?

「シャツが……、ちょっと小さいですわね」

はちきれんばかりに詰めた乳は見ごたえがある。

「それの方が姫様っぽくなくていいな」

アンリエッタはさほど気にした風もない。

「行きましょう」

アンリエッタは俺を促す。
俺はアンリエッタの髪を掴む。

「髪型くらい変えよう」
「え?」

俺はポニーテールにしてやった。ついでに化粧も軽くしてやると、見事な街女にかわった。
こっちの方が、俺的には好みだ。

「ふふ、これなら、街女に見えますわね」

アンリエッタを引き連れて、こっそり裏口から路地に回る。
厳戒態勢がひかれてるじゃん。

「顔を堂々とだしとけ。あと、肩を組むぞ」
「はい」

アンリエッタは言われたとおりにされるがままに俺に肩を抱かれた。
報酬が見込めないのなら体で払ってもらう。

「もっと、恋人同士に見えるようにくっつけ」
「ええ」

ムニュっと胸が押し当てられる。
そのまま衛兵の側を通り過ぎる。
大通りに出たアンリエッタは、くすっと笑った。

「なんだ? ついに頭が本格的におかしくなったか?」
「いえ……、すいません。ちょっとおかしかったものですから。でも、愉快なものですわね」
「そーですね」
「こうして、粗末な服を着て、髪型を変え……、軽く化粧を施しただけで、誰もわたくしと気づかないのですから」

それを今、誰かが聞いたら意味ないけどな。

「でも、アンの顔をちゃんと知ってる人に見られたら気づかれますよ」
「アン?」
「こんな人目のあるとこで姫様などいってられん。アンで十分だ」
「わかりましたわ。サイトさん」

腕を組む様はリア充そのものだった。


夜も遅かったので、とりあえず宿を取った。
ボロかったが我慢してもらおう。

「ほんとにこんな部屋でいいのか?」

育ちのいいバカ姫に気を使うわけじゃないが、後々問題になると面倒なので、聞いておく。

「ええ。ちょっとわくわくするわ。市民にとっては、これが普通の生活なのだから不謹慎かもしれないけど……」

そう言ってベッドに座っているアンリエッタは可愛らしい仕草で足をぶらぶらさせる。
なんてこった。少し萌ダメージを受けてしまった。

「どうかなさったの?」

俺の凝視が気になったのか、杖を出してランプに明かりをつけたアンリエッタが聞いてきた。
ふと、率直に言葉を漏らしていた。

「思わず見惚れた」


SIDE:アンリエッタ


その言葉に私は嬉しくなった。
サイトさんにはてっきり嫌われていると思っていたから。

「そ、そうですか」
「そ、そう言えば、ルイズはちゃんと報告してるか?」

明らかに話を変えられたが、気恥ずかしいのもあって、それに答えた。

「あの子、きちんと毎日わたくしに、伝書フクロウを使って報告書を送ってきてくださいますわ」
「そうか、次からはこんな仕事は頼むなよ。主に俺が迷惑する」
「ええ……。ちゃんと、その日聞いたこと、噂になってること……。一つ一つ、細やかに。愚痴一つ書かずに、よくやってくれています。きっと平民に交じって、気苦労も絶えないでしょうに。あの子は高貴な生まれですから……。だから、体など壊してないかと心配になって」

そう告げる。たぶんまた何か言われるだろうと私は思っていた。

「元気でやってる。ルイズの情報は役に立ってるか?」

いつもの調子なら心配するくらいなら初めから頼むな~とか言ってくると思ったのだけど。

「わたくしは、市民たちの本音が聞きたいのです。わたくしが行う政治への、生の声が聞きたいのです。わたくしの元へ運ばれてくる情報には、誰かがつけた色がついてます。わたくしの耳に心地よいように……、それか、誰かにとって都合がよいように。わたくしは、ほんとうのことが知りたいのです。たとえそれが、どんなつまらぬことであっても」
「真実の声は辛いだろ? 特にアンみたいな年頃の女の子には」

思わず胸が高なる。私を女の子と見てくれる人がまだいたのだ。

「ええ……、でも真実を知るということは、ときにつらいことでありますわ。『聖女』などと言われても、実際聞こえてくるのは手厳しい言葉ばかり。アルビオンを下からただ眺めあげるだけの無能な若輩と罵られ、遠征軍を編成するために軍備を増強しようとすればきちんとに指揮できるのかと罵られ、果てはゲルマニアの操り人形なのではないかと勘ぐられ……、まったく、女王なんかになるんじゃなかったわ」
「いっそ投げ出して片田舎でヒッソリと暮らせばいいんじゃないですか?」

それができたらすぐにでもしたかった。
だが、甘い言葉に乗るとすぐにサイトさんはつついてくるだろう。
だから無視して聞いた。

「あなたの世界も、同じ?」
「ちっ、誰に聞きやがった?」

サイトさんは悪びれた様子もなく悪態をつく。

「失礼。魔法学院院長のオスマン氏に伺いましたの。あなたは異世界からいらしたって。驚きましたわ。そのような世界があるなんてこと、想像すらしたことがありませんでしたから。あなたの世界でも、人は争い……、そして施政者を罵るのですか?」
「アン、世界は違っても、人は人だ」

私はサイトさんの言いたいことがわかった。つまりは、どこも同じなのだ。
サイトさんはよく、諭すように物事を伝えてくれる。
どう見ても同い年くらいに見えるのにまるで年上のお兄さんみたいだ。
ついつい聞きたいことを口を滑らして聞いてしまった。

「私のこと嫌い?」
「囚われのお姫様を悲劇のヒロインみたいに思って文句垂れてた前は嫌いだった。今は少しながら自分で考えて行動してるから嫌いじゃない」

厳しい言葉だった。でも、嫌いじゃないと言ってくれたのが嬉しかった。

「戦争……、アルビオンと決着つける気だろ?」

私は驚いた。いや、さすがは平民の賢者だ。

「さすが……、ですわね。戦争はお嫌い?」
「嫌いだね」
「でも、あなたはタルブで王軍を救ってくださったわ」
「うるさい女だ。ただ、大事な人を護るためにやった」

口は悪いですが、根本的には良い人、なのでしょう。
そう思っていると、ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。

私は気分が落ち込んできた。戦争では少なからず人が死んだ。
そしてこれからももっと死ぬ。
私の所為で。

「不幸な奴だ。アン……」

サイトさんはそっと肩を抱き寄せ手を握ってくれた。
暖かかった。私の思いを汲みとってくれる。優しい人。
少しだけ、気分が楽になった。


―――――――――――――――――――――

43話を修正したと思っていたらテキストの方を修正しただけで、掲示板の方を修正するのを忘れてました。
キチンと修正しておきました。
文章の量は二話分でも問題ないようなのでこのままの量で投稿していきます。

―――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 49>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/13 02:59


SIDE:ルイズ

あんのバカ兄。私は降ってきた雨を見つめて、サイトのことを想う。
どこに消えた? 店を探したがどこにもいなかった。サイトの部屋にもいない。
やたらと兄と呼べと言ってくるサイトを思い出す。
そういえば、私はサイトのことを何もしらないのだ。
兄妹はいたのか? 異世界の両親は心配してないだろうか?

サイトはサイト自身のことを話したがらない。

『禁則事項です☆』

決まってこう言ってくるのだ。
少しは話してくれてもいいのに。

そう思い店内に戻る。

「いやねぇ、雨よ……。この雨じゃお客さんの足もぱったり止まっちゃうわね」
「なんかさっきから外が騒がしいけど、何かあったのかしら?」

やけに兵士が多かった。
私は一人の兵士に近寄って呼び止める。

「ねえ、なにが起こったの?」
「ええい! うるさい! 酒場女風情には関係ない! 店に戻っておれ!」
「お待ちなさい」

私はなおも呼び止め、懐からアンリエッタのお墨付きを取り出した。

「わたしはこのようななりをしていますが、陛下の女官です」
「し、し、失礼いたしましたぁ!」
「いいから話してちょうだい」

兵士は小さな声で、私に説明した。

姫様がどうやら行方不明になったらしい。護衛がいたが、役に立たなかったらしい。
王宮で詳細を知ろうと思い、王宮に向かう。
馬が欲しかったが、それすらなかった。
仕方なく、歩いて王宮に向かった。


SIDE:アニエス


リッシュモンの屋敷での用事を済ませて屋敷の外に出た。
せいぜい今の内に贅沢な暮らしを楽しむがいい。
そう思って馬に乗る。

「待って! 待った! お待ちなさい!」
 
なにごとだ? と思い、私は振り向く。

「馬を貸してちょうだい! 急ぐのよ!」
「断る」

何者かは知らない。邪魔をするなら鉛玉をくれてやる。

「どけ」

少女は聞かない。なにやら一枚の羊皮紙を取り出すと、私の前に突きつけた。

「わたしは陛下の女官よ! 警察権を行使する権利を与えられているわ! あなたの馬を陛下の名において接収します! ただちに下馬なさい!」
「陛下の女官?」

格好は水兵服をアレンジしたような変わった格好だ。
しかし、雨に汚れてはいたが、その顔立ちは高貴さが見て取れる。
少女が杖を引き抜いた。
反射的に私は拳銃を抜く。

「……わたしに魔法を使わせないで。まだ、慣れてないのよ。加減ができないかも」

拳銃の撃鉄に指をかけ、私も告げた。

「……この距離なら、銃の方が正確ですぞ」

沈黙が流れる。

「名乗られい。杖は持たぬが、こちらも貴族だ」

私は言った。

「陛下直属の女官、ド・ラ・ヴァリエール」

ラ・ヴァリエール? 
その名には聞き覚えがあった。アンリエッタとの会話の中で、幾度となく聞いた名だ。
そして、彼女の使い魔は……。

「では、あなたが……」
「わたしを知ってるの?」
 
私は拳銃を引っ込めた。
少女、いや、ラ・ヴァリエールも杖をおろし、きょとんとした顔になった。

「お噂はかねがね。お会いできて光栄至極。馬を貸すわけには参らぬが、事情は説明いたそう。あなたを撃ったら陛下に恨まれるからな」

私はラ・ヴァリエールに手を差し伸べた。

「あなたは何者?」

私の後ろにまたがったラ・ヴァリエールはたずねた。

「陛下の銃士隊。隊長のアニエス」
「あなたたちはいったいなにをしていたの! 護衛を忘れて、寝てたんじゃないの! おめおめと陛下をさらわれて!」
「だから事情を説明すると言っている。とにかく陛下は無事だ」
「なんですって!」

やれやれ、本当はラ・ヴァリエールではなくその使い魔の平民に会いたかった。


SIDE:サイト・ヒラガ


ベッドの上に腰掛けたアンリエッタは、俺の腕の中で目をつむっている。
( ^ω^ )どうしてこうなった!?
やわらけぇ~。なんか、可愛く見えたから真面目に話してみた。
今は反省していない。

「……」

心臓の音がやけに大きく聞こえる。ドクンドクン。
やべー、この音、絶対聞こえてるよ。

「ふふ」
「何がおかしい?」
「すごい心臓の音が聞こえますわ」

悪女め!

「べ、別に緊張なんかしてないんだかねっ!」
「あら、緊張なさっていたの? 私は何も聞いていませんよ?」

犯す。この女、犯してやる。
そのとき……。
ドンドンドン!
と、扉が激しく叩かれた。

「開けろ! ドアを開けるんだ! 王軍の巡邏のものだ! 犯罪者が逃げてな、順繰りにすべての宿を当たってるんだ! ここを開けろ!」

俺とアンリエッタは顔を見合わせた。

「わたくしを捜しているに違いありません」
「無視してやりすごしましょう」

そのうちに、ノブが回され始めた。しかし……、カギがかかっているので開けられない。
ガチャガチャ! とノブが激しくゆれた。

「ここを開けろ! 非常時ゆえ、無理やりにでもこじあけるぞ!」

バキッ! と剣の柄かなにかで、ドアノブを壊そうとする音が聞こえてくる。

「アン服を乱して、あとパンツ脱げ。早く」
「え?」

きょとんとしているアンリエッタの服を適当に乱して、パンツをずり下ろす。
そのまま俺もズボンを脱いで息子をさらけ出す。

「な、なにを」
「いいから!」

そのまま、アンリエッタを抱き上げる。

「腰に足を絡ませて」

言われたままにするアンリエッタ。
そのまま抱っこして駅弁スタイルになる。
アンリエッタを抱きかかえたまま扉をあける。

「よお、見てのとおりお楽しみ中だ。よーするに今、アンタたちは邪魔者だ。オーケー?」
 
兵士たちはじっとそんな様子を見ていたが……、そのうちに一人が一人につぶやいた。

「……ったく、こっちは雨の中捕り物だってのに。お楽しみかよ」
「ぼやくなピエール、終わったら一杯やろうぜ。ちきしょー、なんてうらやましいやつだ!」

そして、バタン! とドアを閉め、階下へと消えていった。

「アン、って、だめだこりゃ」

真っ赤なゆでダコのようになっていた。
バッチリ俺のギンギンになった息子がアンリエッタのへその当たりにあったっていますがなにか?



ルイズです。
アニエスにキスされました。
ネズミ捕りが大変だと知りました。
でも、誤魔化すために女同士でキスするとは思いませんでした。
アニエスは女同士の趣味はないと言っていました。でも、アニエスの部隊は女の子ばかりです。
私はそんな趣味はないです。

この気持は丁度捕まえたネズミにぶつけるとします。

ルイズでした。


SIDE:アニエス

この、ラ・ヴァリエールの調子がどうもおかしい。
しかし、今は任務中だ。
私は気にすることもなく計画通りに動く。

劇場の前で待つ。
任務の詳細も語れない。
手持ち無沙汰にひたすら待つしかなかった。

劇場の前でじっと待っている私たちの前に、懐かしい人影が姿を見せた。

陛下はうまく擬態している。
となりの男。
これが、平民の間で噂の『平民の賢者』。
ラ・ヴァリエールの使い魔でもある平民の剣士。

「……姫さま。サイト!」

ラ・ヴァリエールと陛下が抱き合う。

「心配しましたわ! いったい、どこに消えておられたのです?」
「優しい使い魔さんをお借りして……、街に隠れておりました。黙っていたことは、許してちょうだい。あなたには知られたくない任務だったのです。でも、アニエスとあなたが行動をともにしているとの報告を今朝聞いて、驚きました。やはりあなたはわたくしの一番のおともだち。どこにいても駆けつけてしまう運命にあるのですね」
「ぷ、ばぁっかじゃねのぉ? 何が運命だ。知ってた癖に」

聞き捨てならない。陛下に対してなんて失礼な口の聞き方だ。
私の聞いていた話では聡明で沈着冷静、剣の実力は凄腕の剣士。だったはず。
所詮は噂に尾びれがついたものか。

「貴様!」
「おお~、怖いね。おや? お知り合いが来たようですな」

現れたのはマンティコア隊を中核とする、魔法衛士隊であった。
ここで動くのはまずい。

「おや! これはどうしたことだアニエス殿! 貴殿の報告により飛んで参ってみれば、陛下までおられるではないか!」

慌てた調子で隊長はマンティコアから下りると、陛下の元へと駆け寄った。

「陛下! 心配しましたぞ! どこにおられたのです! 我ら一晩中、捜索しておりましたぞ!」
「ご苦労さん。しかし、目立ちすぎだな」

そう言ったラ・ヴァリエールの使い魔は陛下にローブのフードを深く被せる。
陛下は気にした様子もなくされるがままである。

「心配をかけて申し訳ありません。説明はあとでいたしますわ。それより隊長殿、命令です」
「なんなりと」
「貴下の隊で、このタニアリージュ・ロワイヤル座を包囲してください。蟻一匹、外に出してはなりませぬ」
「御意」

私は陛下と隊長のやり取りを見ていた。ここからは気を引き締めねば。
ふと、異変に気付く。

「陛下、連れの殿方が見当たりませんが?」
「あれ? サイトはどこにいったの?」

ラ・ヴァリエールも同じことに気づいたようだ。

「はぁ、ほっときましょう。それでは私は参ります」
「お供いたしますわ!」

ラ・ヴァリエールが叫んだ。しかし、陛下は首を振る。

「いえ、あなたはここでお待ちなさい。これはわたくしが決着をつけねばならぬこと」
「しかし」
「これは命令です」

私は本来の任務に戻ることにする。
馬にまたがる。
カサッ。
股に違和感を感じて座っている所を覗いてみると手紙がおいてあった。
表にはルイズへと書いてある。これはラ・ヴァリエールへの手紙だ。
私は馬を降りてラ・ヴァリエールの元へ戻る。

「ラ・ヴァリエール殿、これを」
「手紙?」
「馬に置いてありました」

ラ・ヴァリエールが手紙を読む。

「なんと?」
「あ、あのバカ犬、もうここには用がないから先に『魅惑の妖精』亭に帰ってるって」

プンプンと怒ったままラ・ヴァリエールは街に消えていった。

「いつの間に?」

その疑問を残したまま私は再び馬にまたがり任務に向かう。




[18630] <ゼロのひどい使い魔 50外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/15 23:10

「オーマイゴォォオオッドォオオオオ」

とある日、博打で儲けた話を聞いたらしいタバサが、俺に勝負を仕掛けてきた。
サイコロ博打。
要はチンチロリンなのだが、タバサが指定してきたサイコロ博打勝負で見事に負けた。

「約束、守ってもらう」

サイコロ博打に勝利した場合の取り決めがあった。
俺が勝った場合、シルフィードの一週間分の使用権とタバサと一日デートの権利。
タバサが勝った場合には俺が作る創作フルコース料理一週間分と使い魔(俺)の所有権を一日タバサに与える権利。

「イカサマしてね?」
「あきらめが肝心」

ピンゾロが二回も出た時点でやめとくべきだったぜ。
はぁ、一週間もタバサの飯の面倒を見るのかよ。
小柄なのに大食いだからな。食費がバカにならない。
まあ、可愛いからいいけどな。

「満足」
「朝から食い過ぎだ。その体のどこにはいるんだ?!」

朝から三人分の飯を食うタバサ。
わざわざ部屋に食事を運ばされた。
アレ?
二人きりで飯食ってるじゃん。
これって、役得?
うん、俺の出した飯がタバサの血肉になる。主婦か!
タバサの行動は規則正しい。
飯を食う。授業にでる。図書館か自室で本を読む。
だいたいこの三つの行動に分かれる。


「うむ、白、水色、縞パンか。ブラは……」
「何してるの?」
「げぇ、タバサ!」

何故か部屋の掃除まで任されたので下着を漁っていた。
音もなく後ろに立つのはやめて欲しい。
さて、どう誤魔化すか。

「いや、ルイズは俺に服の整理とかさせるし、着替も手伝わせるし、俺の目の前で着替え始めるからいいかなって」

今のルイズはそんなことしないし、させてくれないけどな。

「そう」

納得したのか、タバサは椅子に腰掛けた。
そして本を読み始める。

(つд⊂)

(;゚ Д゚) …!?

『男の扱い方上級編』

タバサの読んでいる本のタイトルがおかしいぞ。

「なに?」

俺の視線に気づいたのか本を読んだまま聞いてきた。

「いや、読んでる本なんだよ? そうゆうのが気になるお年頃か?」
「別に」

ペラッ。
やけに真剣に読んでいるように見えるのは俺の気のせいか?

「本を参考にするのもいいが、そうゆうもんは実体験がモノを言うぞ?」
「実体験……」

ジッと俺を見つめるタバサ。
なんだよ、萌えるだろ。

「あなたはどんな子がタイプ?」
「そうだなぁ、っていきなりだな!」
「答えて」

君がタイプだ!とタバサに言ったらどんな反応をするかなぁ。
というわけで

「タバサみたいな子はカワイイと思うぞ」

少しだけタバサの頬が朱に染まった。
あっるぇ~?
デレか? デレなのか?

「使い魔の使用権を今日使う」

イミフ。

その夜になって意味はわかった。
うん、パジャマ姿かわいい。

「マジですか?」
「いいから」

早い話、一緒に寝ることになったわけだが。
使い魔として一日中、ずっと近くにいろ。つまり傍から離れるなという意味だったらしい。
先にベッドに入ったタバサに続いて俺も潜り込む。

「うっ」

メガネを外したタバサと向き合う。
ヤダ……、何これ、かわいい。

「どうしたの?」
「別に、なんでもないです。ハイ」
「?」

寝転がりながら首を傾げるタバサに萌えた。

しばらくするとスヤスヤと眠り始めたタバサ。
お触りタイム~。
ヒャッホウ。

「お父様……」
「……」

寝言の後、抱きつかれた。

優しく抱き寄せる。
タバサの事情を知っている俺はなんだか、罪悪感に包まれた。

残りの数日はタバサに異常に優しくしてやった。

「おと、サイト。ありがとう」
「いいんだ。これからは暇があれば面倒見てやるよ」
「そう」

ナデナデ。
少しだけ俯くタバサ。
ほんの少しだけ恥ずかしがっているらしい。
かわいいぞ、ちくしょう。
ギュっと抱きしめる。

「なに?」
「これからはお兄さんと呼んでいいぞ?」
「……、必要ない」

少し間があったな。それに無表情とはいえ、ジッと見つめてるから満更でもないわけか。
目は口ほどにものを言う。
まあ、これ以上はやめとくか。

「じゃあな。一週間だったが、楽しかったぜ」
「……、そう、じゃあ、"またね"」




――――――――――――――――――――――――――

前回の外伝予告通り、タバサです。
更新速度が早いのはある程度書き溜めしてるからです。

――――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 51>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/17 00:48

SIDE:アンリエッタ

幕があがり……、芝居が始まった。
あの夜のことは、その、仕方なかったのです。
詳しくは覚えてませんが、気がついたときには服を正されてベッドに寝かされていました。
その後、妙に優しいサイトさんが不気味でした。
なんでも、男にはそうゆう時があると言ってましたがどうゆうことでしょう?

目的の人物を見つけて私は思考を止める。
その隣に腰掛ける。

「失礼。連れが参りますので。他所におすわりください」

その連れの御方は今頃、牢の中ですわ。

「聞こえませんでしたかな? マドモワゼル」
「観劇のお供をさせてくださいまし。リッシュモン殿」

リッシュモンは目を丸くして驚いた顔をしている。やっぱり、人を騙すのは面白い。

「これは女が見る芝居ですわ。ごらんになって楽しいかしら?」

嫌味も付け加えておく。だが、さすがは裏切り者の首謀者である。
すぐに落ち着いた態度を取り戻した。

「つまらない芝居に目を通すのも、仕事ですから。そんなことより陛下、お隠れになったとの噂でしたが……。ご無事でなにより」
「劇場での接触とは……、考えたものですわね。あなたは高等法院長。芝居の検閲も職務のうち。誰もあなたが劇場にいても、不思議には思いませんわ」
「さようで。しかし、接触とは穏やかではありませんな。この私が、愛人とここで密会しているとでも?」

ただの愛人との密会ならどれだけよかったことか。

「お連れのかたなら、お待ちになっても無駄ですわ。切符をあらためさせていただきましたの。偽造の切符で観劇など、法にもとる行為。是非とも法院で裁いていただきたいわ」
「ほう。いつから切符売りは王室の管轄になったのですかな?」

戯言では通じない相手。早々に、攻めるべく事実を述べることにした。

「さあ、お互いもう戯言はやめましょう。あなたと今日ここで接触するはずだったアルビオンの密使は昨夜逮捕いたしました。彼はすべてをしゃべりました。今ごろはチェルノボーグの監獄です」
「ほほう! お姿をお隠しになられたのは、この私をいぶりだすための作戦だったというわけですな?」
「そのとおりです。高等法院長」

この人がおとなしく捕まるはずがないと思う。

「私は陛下の手のひらの上で踊らされたというわけか?」
「わたくしにとっても不本意ですが……、そのようですわ」

リッシュモンのちっとも悪びれないその態度に、私は強い不快感を覚えた。
サイトさんとは違う本物の不快感だ。サイトさんはなんだかんだ言って私の味方でいてくれる。
しかし、リッシュモンは違う。
私は続ける。

「わたくしが消えれば、あなたは慌てて密使と接触すると思いました。『女王が、自分たち以外の何者かの手によってかどわかされる』。あなたたちにとって、これ以上の事件はありませんからね。慌てれば、慎重さはかけますわ。注意深いきつねも、その尻尾を見せてしまう……」
「さて、いつからお疑いになられた?」
「確信はありませんでした。あなたも、大勢いる容疑者のうちの一人だった。でも、わたくしに注進してくれた者がおりますの。あの夜、手引きをした犯人はあなただと」

信じたくはなかった。
王国の権威と品位を守るべき高等法院長が、このような売国の陰謀に荷担するなんて。
リッシュモンは言う。私は何も知らない少女なのだと。
無知な子供に国を任せるくらいならアルビオンに支配された方がいい、幼き頃に可愛がってくれたのは媚を売るためだと言う、私は何を信じればいい?

リッシュモンから見れば私は子供なのかもしれない。
でも、彼はどうだろうか?

私と同い年に見える彼。
彼は、真実を見抜く目を持っていると思う。
彼は、動じない。
年頃の男の子くらいには女の子の色香に惑わされるみたいだが、本心はどうなのだろう。

私は良い部分だけ見習うことにした。

「あなたを、女王の名において罷免します、高等法院長。おとなしく、逮捕されなさい」
「まったく……、小娘がいきがりおって……。誰を逮捕するだって?」

リッシュモンも口調が変わる。

「なんですって?」
「私にワナを仕掛けるなど、百年早い。そう言ってるだけですよ」

リッシュモンは、ぽん! と手をうった。
すると、今まで芝居を演じていた役者たちが……、男女六名ほどであったが、上着の裾やズボンに隠した杖を引き抜く。
そして私めがけて突きつける。
だが、私は動じない。

「陛下自らいらしたのが、ご不幸でしたな」
「それはどうかしら?」

舞台の中央、見慣れた大剣を構えている人物がいた。
その人物を見て、無用心に安心してしまう自分がいることに私は驚いた。

SIDE:サイト・ヒラガ


俺はリッシュモンの仲間だと嘘をついて舞台に立っていた。
ただの木の役だったが、剣を隠すには好都合だった。
アンリエッタには予め紛れ込むと言ってある。
うん、あの夜はオカズにしました。スイマセン。
ようやく出番だ。

「わははは」
「なにやつ?」

いい感じでリッシュモンが激昂している。

「名乗る名前などない! さあ、銃士隊みなさん、やってしまいなさい!」

俺の声を聞いて銃士隊の皆様が一斉に立ち上がり拳銃を撃つ。
同時に俺はアンリエッタの側に駆け寄る。
役者に扮したアルビオンのメイジたちは各々何発も弾を食らい、呪文を唱える間もなく全員が舞台の上に撃ち倒されていた。
あぶっねー、俺にも当たる所だった。

俺はアンリエッタを立ち上がらせて、後ろに匿う。
アンリエッタはどこまでも冷たい声で告げた。

「お立ちください。カーテンコールですわ。リッシュモン殿」

リッシュモンはやっとのことで立ち上がった。そして高らかに笑う。
銃士たちがいっせいに短剣を引き抜いた。

銃士隊とはいえ、女の子に囲まれてうらやましいぞ。
リッシュモンはゆっくりと舞台に上る。周りを銃士隊が取り囲む。

「往生際が悪いですよ! リッシュモン!」
「ご成長を嬉しく思いますぞ! 陛下は立派な脚本家になれますな! この私をこれほど感動させる芝居をお書きになるとは……」

お互いに芝居を演じてますね。さっさと捕まえろ。何してる銃士隊!

「陛下……、陛下がお生まれになる前よりお仕えした私から、最後の助言です」
「おっしゃい」
「昔からそうでしたが、陛下は……」

俺はリッシュモンに駆け寄る。
リッシュモンは舞台の一角に立つと……、足で、どん! と床を叩く。
すると、落とし穴の要領で、かぱっと床が開いた。
俺はリッシュモンに飛びかかる。

「詰めが甘い!」
「そう、姫様は詰めが甘いんじゃぁああ」

リッシュモンと一緒にまっすぐに落ちていった。


リッシュモンは『レビテーション』を使い、緩やかに落下している。

「いつまでつかまっておる! 貴様は誰だ?」
「好きでつかまってねーわ。落ちたら痛いだろ!」

ギャーギャー騒ぎながら地面に到着した。

「暗っ! 明かりつけて!」
「うるさいぞ!」

なんだかんだで杖の先に魔法の明かりがともる。

「しかし……、あのアホ姫にも困りましたねぇ……」
「ほほぅ、わかるかね。どうやら君は私の味方のようだ」

いいえ、敵です。
しかし、リッシュモンは俺の沈黙を肯定とみなして歩き始めた。

「おやおやリッシュモン殿。変わった帰り道をお使いですな」

ドS女アニエスが現れた。

「貴様か……」

リッシュモンは相手が平民だからほっとしたようだ。平民でもアニエスは強いらしいぞ。

「どけ。貴様と遊んでいる暇はない。この場で殺してやってもよいが、面倒だ」
「お前は、陛下といたではないか、私たちの敵だったのか?」

流れでついて来た。と言える空気じゃないです。どうやら勘違いなさっているので、そのまま悪役になることにした。
たまには悪役を演じてもいいよね?

「知らんなぁ。リッシュモン殿、貴方が手を下すまでもないですよ。平民は平民同士、貴族は貴族同士、そうでしょ?」
「はっはっは、君に任しても?」
「貴様! 裏切り者だったのか!」

アニエスさんが激昂してらっしゃる。拳銃を抜いて銃口を向けられた。
しかし、二十メートルほど離れている。たしか、これだけ離れていると銃弾は当たらないはずだ。

「銃など当たらん。命を捨ててまでアンリエッタに忠誠を誓う義理などないだろ? 誰かは知らんが、あんたは平民なのだから」

自己紹介してもらってないので、知らない振りをしておく。
アニエスはキレイで男勝りだ。復讐の為に生きるなんてもったいない。

「彼の言うとおりだ。素直に私を見逃したまえ」
「私が貴様を殺すのは、陛下への忠誠からではない。私怨だ」

リッシュモンを睨みながらアニエスが答えた。
う~ん。予想通り、復讐ですね。

「くだらん。銃士隊は口だけは達者なようだ」
「なんだと!」

アニエスは手に握った拳銃を投げ捨てた。
そのまま走って向かってくる。
リッシュモンのアホウは俺の後ろでアニエスを挑発していた。

「リッシュモン殿は動かぬように」
「ふ、任した。見せてもらおう君の腕を」

リッシュモンは俺の後ろの方へ少し下がる。
アニエスには俺を恨んでもらうか。
日本刀に手を添える。
抜刀。

「うぉおおおおおおおおおおおッ!」
「ふんっ!」

アニエスの振り上げた剣に向けて居合い斬りをブツける。
カランと金属音が響く。
タダの剣に負ける訳ないね。

「残念だったね」

ドン、とアニエスの鳩尾に拳を当てる。
ボクシングでいうハートブレイクショット。
バタリとアニエスが倒れた。
マジで気絶するんだ。ごめんよ。

「よくやった」

振り向いて隙だらけのリッシュモンにも同じようにハートブレイクショットを打ち込む。
ただし、かなり強めに。
どさりとリッシュモンも倒れる。なんか、骨が折れた感触がしたが、気にしないでおこう。

「安心せい、峰打ちだ」
「相棒、俺を使ってくれよ」

うっせ。
アニエスをおんぶしてリッシュモンは杖を取り上げておいて、足を持って引きずる。
女の子の人殺しはよくないよね?
ということで、リッシュモンは逮捕させることにした。
壁沿いに歩いて出口にでた。
街行く人の悲鳴があがったが、それを聞きつけた兵隊に事情を説明してリッシュモンを引渡しておいた。
アニエスも銃士隊の皆様に渡して俺はその場をさった。

「サイト・ヒラガは、クールにさるぜ」

その辺にいた銃士隊に聞こえるように呟いておいた。

わがままな妹を抑えるのは手間がかかる。

「すまんって言ってるでしょ?!」
「逆ギレ?!」

厨房で言い争う。

「姫様も言ってたろ? こっちは護衛してたの!」
「知ってるわよ」
「じゃあ、なんで怒ってるんだよ?」
「怒ってないわよ」

ならなぜ足を踏んだままなんだ?
羽扉が開き、二人の客が姿を見せた。深くフードをかぶっている。

「ほら、客だ」
「いらっしゃいませ」

しぶしぶルイズが注文を取りに行く。
客はそっとフードをもちあげルイズに顔を見せた。

「アニエス!」
「二階の部屋を用意してくれ」
「あなたがいるってことは……、もう一人は……」
「……わたくしですわ」

なにしてんの? 早く帰れよ。アニエス超睨んでるじゃん。
客の二人は勝手に二階の客室に向かう。


SIDE:アンリエッタ

「さてと……、ルイズ。まずはあなたにお礼を……」

私はテーブルを囲んだ面々を見回して言った。
ルイズ、アニエス、サイト……。
アニエスは軽症だった。何故かサイトさんにやられたというが、単に気絶させたれたようだった。
リッシュモンは骨折と酷い擦り傷だらけだった。
まるで地面に引きずり回されたように。
サイトさんに会う、と言った時のアニエスの顔はすごいものだった。
サイトさんを敵視しているようだ。

「いよー、元気?」
「お陰様でな」

リッシュモンは牢獄に入れられた。
アニエスは復讐の対象をサイトさんに奪われたことに腹を立てている。
サイトさんに迷惑のかからないようにルイズに話を向ける。

「あなたが集めてくれた情報は、本当に役に立ってますわ」
「あ、あんなのでよろしいのでしょうか?」
「あなたはなんの色もつけずに、そのままわたくしのところに運んでくださいます。わたくしが欲しいのは、そういった本当の声なのです。耳に痛い言葉ばかりですが……」
「このままだと、無能王に続いて無能女王の誕生だ。よかったな無能」

口が悪いです。アニエスが睨んでますよ?

「いえ、若輩の身、批判はきちんと受けとめ、今後の糧としなければいけません」
「それでいい」
「ちょっと、サイト。何様よ?! 姫様に意見するなんて!」
「そうだぞ」

ルイズの発言にアニエスも乗る。

「さすが、キスした者同士、仲がよろしいことで」
「んな、なんで知ってんのよ!」

話が進まないわ。

「ルイズ、耐えるのです。で、次はお詫びを申し上げねばなりませんね。なんら事情を説明せずに、勝手にあなたの使い魔さんをお借りして申し訳ありませんでした」
「そ、そうですわ。わたしをのけものになんて、ひどいですわ」

ルイズは、つまらなそうに言った。

「あなたには、あまりさせたくなかったのです。裏切り者に……、ワナを仕掛けるような汚い任務を……」
「高等法院長が裏切りものだったんですよね……」

私は内密に処理しようとしたが……、捕まえたのがサイトさんであったことから内密なんて無理でした。

「でも、わたしはもう子供じゃありません。姫さまに隠し事をされるほうがつらいですわ。これからは、すべてわたしにお話しくださいますよう」

私は頷いた。

「わかりました。そのようにいたしましょう。なにせ、わたくしが心の底より信用できるのは……、ここにいる方々だけなんですもの」
「えー、もしかして俺も~? 嫌なんですけど」
「え、ええ……。当然ですわ。あ、そういえば! 正式な紹介がまだでしたわね!」

私は誤魔化すような調子で、アニエスに手を差し伸べる。

「わたくしが信頼する銃士隊の隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン殿です。女性ですが、剣も銃も男勝りの頼もしいお方ですわ。メイジ相手に剣で臆することなく挑む……、英雄ですわ」
「私は英雄などではありませぬ」
「俺に負けたしね」

余計な一言を言う。
バカにした口調やふざけた様子がなければもっと良い人なのに……。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 52>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/17 22:17

SIDE:サイト・ヒラガ

魔法学院侵略防止作戦。あらため、コルベールフラグ折り作戦。

このままだと間違いなくコルベールがフラグ建築しまう。
それをさせないために手を打つ。

「コルベール先生」
「おお、サイトくん」

俺のいない間に随分ゼロ戦を弄繰り回していたようだ。
まあ、許可だしておいたからいいけど。

「いや~、実は相談がありましてね」
「ほう」

そこから俺は説明をした。
トリステインはアルビオンに攻め入り戦争になること、生徒も戦争に駆り出されること。
なにより、その戦争の隙に別働隊が、学院を占拠する可能性が高いことを話した。

「信じられん話だ。いや、戦争が始まれば確かに学院に残るのは少ない教師と女生徒のみ、占拠するにはもってこいだな」
「夜襲か早朝よりも早い時間に攻めるでしょうね。熟睡しているところを制圧、抵抗する暇もなく全員とっくかまるでしょう。なにせ、そうゆう荒行事のプロですから」

コルベールは考え込む。
俺の説明したことは今の時点では予測である。
だが、可能性は高い。もう一押しするために言葉を発する。

「ダングルテールの虐殺」

その言葉を聞いたコルベールは射ぬくように俺を見る。
気にせずに続ける。

「少し前、リッシュモンを捕まえる任務に駆り出されてましてね。おっと、これは機密なんで」
「そうか、君が……、サイトくんに隠し事は無理のようだね」

勝手に納得してコルベールはダングルテールの虐殺の事を語った。

『魔法研究所《アカデミー》実験小隊』の隊長を務めていたこと。
作戦は実は〝新教徒狩り〟だったこと。そして毎日罪の意識にさいなまれていること。

「破壊だけが……、火の見せ場ではない」

最後にそう言って締めくくった。

「その考えが広まれば生産的な社会になるでしょうねぇ」
「その通りだ」

ハゲは神妙に頷く。

「……、で、頼みごととは?」
「おそらく、いや、ほぼ間違いなくこの学院に奇襲してくる奴らを密かに制圧して欲しいんです」
「そんなことできるのかね?」

できる。はずである。
俺は説明する。
敵は船を使って空から攻めて来る。
その船に先制攻撃を加えて無力化する。
そのためには破壊の杖を使うこと。
以上を説明した。

「信じてみよう。外れたらそれに越したことはないが、サイトくんの話には現実味がある」
「おお、さすが先生。受けてくれたお礼にいいことを教えますよ」
「何かね?」
「事件の生き残りの女の子は元気で生きてます」

コルベールは嬉しいような、悲しいような顔をしていた。



「旅ってわくわくしますわね!」

シエスタの胸が当たっているわけだが。

「行き先は地獄です」

ルイズの実家へ向かう途中である。
シエスタは呑気なものだ。
草色のワンピースに編み上げブーツ。
清楚な雰囲気を出しているのはいいが、その中身は淫猥である。

「胸、当たってるんですけど?」
「あ、わざとですから」

強い女である。
人目があるといっても、御者はゴーレムである。
天は俺を見放した!!
段々とシエスタは大胆になっていく。

「……こうやって二人っきりになるのなんて、久しぶりですね」

そりゃそうだが、顔を近づけるな、耳に息を吹きかけるな。
気持ちイイ。もっとやって(ry

「いつか聞こうと思ってたんですけど、夏休みの間、ミス・ヴァリエールと何をしていたの?」
「金稼ぎしてた」
「そんな、お金のことならわたしに言ってくださればよかったのに!」
「いやぁ、それなりに稼いだからいいよぉ」
「ほんとですか? でも、入用なときには遠慮なさらずに言ってくださいね」
「はいよー」

適当に返事を返したのが悪かったのか、ひたすらくっついて来る。
悪くない。腕に当たる胸の感触を楽しみつつ、シエスタの体を触る。

「あんっ。サイトさん」
「イヤらしい娘にはお仕置きだぁ!」

ノッてきた時、馬車の屋根が吹っ飛んだ。

「ジーザス」
「私、負けませんからっ」

シエスタの尻を撫でながら空を見つめる。


SIDE:シエスタ


私はサイトさんにくっついている。『平民の賢者』と噂の人物を独り占めにしているのが楽しかった。
体を触られるのも嬉しかった。乱暴な触り方ではなく、愛でるような撫で方が一層に私を興奮させる。
屋根が無いことも忘れて、いっそ強くサイトに身体をすり寄せた。

「ねえねえサイトさん」
「いい天気だ」

空よりも私を見て欲しいと思った。

「旅行って楽しいですわね!」
「そーだね~」

何かを考えている様子だった。
一体何を考えているのだろう?
私たちでは思いつかないようなことを考えているに違いない。
もしかしたら戦争のこと?

「いやだわ」
「ん?」
「サイトさんも、アルビオンに行くんでしょう?」
「どうだろうねぇ」

嘘だ。彼はきっと行く。

「わたし、貴族の人たちが嫌いです」
「そうだね。俺も貴族は嫌いだ」
「自分たちだけで殺し合いをすればいいのに……。わたしたち平民も巻き込んで……」
「戦争は国家が自国の安全を守るためにするもんだ。つまり、シエスタとかその他大勢の平民の安全を守る為に戦争するらしいよ」
「守るためだろうが、戦は戦です」

サイトさんの言う事は正しいのかもしれない。
でも私には関係ない。サイトさんさえ、無事ならばそれ以外はどうでもいい。

「なんでサイトさんが行かなきゃならないんですか? 関係ないじゃないですか」
「行くとは言ってないけどねぇ。関係ないかぁ、確かに平民にとっては支配国がトリステインだろうが、アルビオンだろうが、関係ないだろうねぇ」

サイトさんは分かっているのに行くつもりだ。
恐らく、ミス・ヴァリエールの為に。
そう思うと悔しかった。

「死んじゃいやです……。絶対に、死んじゃいやですからね……」


SIDE:キュルケ

 
魔法学院─────。
私とタバサは、がらんとしてしまったアウストリの広場を歩いていた。

「いやいや、ほんとに戦争って感じねえ」

サイトも男子生徒もいなくなってしまった。士官に志願する者、実家に帰る者。
私も志願したが、女子ということで却下された。
男性教師も出征したために、授業も半減した。

暇である。
そんな暇を持て余した女子生徒達は、寂しげにかたまり、恋人や友人たちが無事でやっているのか噂しあっている。
ベンチに座って物憂げに肘をついていたモンモランシーの姿を見つけ、私は近づいた。

「あらら、想い人がいなくって退屈なようね」

モンモランシーはまっすぐ前を見たまま、人事のようにつぶやいた。

「誰の事を指しているのかしら?」

ギーシュとサイトの顔が浮かぶ。
ギーシュとは別れ、サイトとは微妙な関係であることは見ていて分かっている。
ギーシュはしつこく復縁を求めていたがモンモランシーは断っている。
サイトは、お友達からでという曖昧な交際を申し出ている。

「今、あなたが、頭の中に浮かべてる人のことよ」

モンモランシーは顔を赤らめて呟いた。

「全く、目を離すとすぐにどっか行っちゃうんだから、ルイズも大変ね」

なるほど、モンモランシーはサイトのことを想っているのか。

私はモンモランシーの肩を叩く。

「ま、始祖ブリミルの降臨祭までには帰ってくるわよ。親愛なるあなたのお国の女王陛下や偉大なるわが国の皇帝陛下は、簡単な勝ち戦だって言ってたじゃない。それに、サイトだったらまた何か大きな功績を持って帰るわよ」

私はサイトが死ぬとは微塵も思っていない。
彼はなんだかんだで、戦争に参加するだろう。
女の勘であるが、私はそれを信じる。

「だといいんだけどね」

モンモランシーは、つぶやく。そしてため息。

「なら、賭けない? サイトが功績を持って帰って来るか来ないか。もちろん私は功績をもって帰ってくるね」
「なら賭けにならないわよ。私もそう思うし。それにサイトからの手紙には俺が帰ってくるまでに鍛えてろって書いてあったわ」

嫉妬の炎が燃え上がる。私には手紙など寄越してくれたことがない。

「なら、鍛えないとねぇ。お手伝いしてあげるわ。さあ、来なさい」
「へ? ちょ、ちょっとぉ~」
「私も手伝う」

タバサも何か思ったらしい。ふふ、可愛い娘だ。

「トライアングル二人に鍛えられるって幸運よねぇ」


―――――――――――――――――――

戦じゃ、その前にルイズ宅で一休み?
さて、サンホラ最高。

―――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 53>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/19 00:56

SIDE:サイト・ヒラガ

ラ・ヴァリエールの領地。広い庭ってレベルじゃねーぞ。
軽く日本で言う市、一つ分の広さはあるじゃねーか?
東京ドーム何個分だよ!
実際に目の当たりにすると大貴族の金持ちぶりは恐ろしかった。
まあ、その広い土地のおかげで、事業の研究所が作れたわけだが。

馬車が止まる。同時にシエスタがルイズ達の馬車に駆けつけてドアをあけた。
うむ、しっかりと働くメイドである。
俺はその様子を馬車の中で見物していた。

「エレオノールさま! ルイズさま!」

ルイズ姉妹は村人たちの人気者だった。
俺は馬車の中にいたので村人に構われることなくやり過ごした。

「ここで少し休むわ。父さまにわたしたちが到着したと知らせてちょうだい」

その声で一人の少年が馬に跨り、速駆けですっ飛んでいった。
おー、よく働く。
俺たちは旅籠の中に案内された。ルイズとエレオノールがテーブルに近づくと、椅子が引かれる。
俺はルイズの後ろでそれっぽく立っていた。

エレオノール。
ルイズの姉で長女、性格はかなりキツイらしい。顔はルイズと似ており、悪くない。
胸は……、うん。ドンマイ!

村人たちは口々に色々言っていた。ルイズが大きくなっただの、エレオノールは婚約解消しただの。
やっぱり、婚約解消されるんですね。
そして、空気の読めないバカ。ルイズが言い放つ。

「ね、姉さま。エレオノール姉さま」
「なに?」
「ご婚約、おめでとうございます」

エレオノールは眉を吊り上げてルイズの頬をつねり上げた。

「あいだ! ほわだ! でえざば(ねえさま)! どぼじで(どうして)! あいだだだっだ!」
「あなた、知らないの? っていうか知ってて言ってるわね」
「わだじなんじぼじりばぜん(わたし何にも知りません)!」
「婚約は解消よ! か・い・し・ょ・う」
「な、なにゆえにっ!」
「さあ? バーガンディ伯爵さまに聞いて頂戴。なんでも『もう限界』だそうよ。どうしてなのかしら!」

有り余る利益よりもバーガンディ伯爵は自分の感情に素直だったことに関心した。
逆玉としては公爵家の長女、かなりの上物なのに、それを打ち砕くほどの性格のキツさなのだろう。
そんな考えをしていると旅籠のドアがばたーん! と開いて、桃色の天使が現れた。
天使は腰がくびれたドレスを優雅に着込み、羽根のついたつばの広い帽子を被っていた。

「まあ! 見慣れない馬車を見つけて立ち寄ってみれば嬉しいお客だわ! エレオノール姉さま! 帰ってらしたの?」
「カトレア」

ルイズの成長の可能性の一つ。カトレアさんの登場だ。
原因不明の奇病ってなんだろうね?
治せるなら治して公爵家に恩を売りたい。
できるならカトレアさんをハーレムに入れたいし。

「ちいねえさま!」
「ルイズ! いやだわ! わたしの小さいルイズじゃないの! あなたも帰ってきたのね!」

ルイズは立ち上がると、カトレアさんの胸に飛び込んだ。

「お久しぶりですわ! ちいねえさま!」

きゃっきゃっと辺りをはばからぬ大声で、二人は抱き合った。
なんだ、元気じゃねーか。
それより、ルイズの退行化でますます子供っぽくなったルイズに萌えた。

カトレアさんは口を半開きにして、見つめる俺に気づいた。

「まあ、まあ、まあ、まあまあ」

藤●Dか?←これがわかる君はどうでしょうマニアだ。
カトレアが近づいてくる。
やだ、何この良い匂い。

「なにか?」

カトレアさんは俺の顔をぺたぺたと触り始めた。
視力でも悪いのか?
いや、眼鏡かけてない。眼鏡かけたカトレアさんもいいなぁ。

「あなた、ルイズの恋人ね?」
「そうです私が、ルイズの恋人です」

シエスタにぎゅっと足を踏まれた。
ついでルイズが、顔を真っ赤にして叫んだ。

「ただの使い魔よ! 恋人なんかじゃないわ!」
「あらそう」

カトレアさんはコロコロと楽しそうに笑った。それから首をかしげて、とろけそうな微笑みを浮かべた。

「ごめんなさいね。わたし、すぐに間違えるのよ。気にしないで」

乳でけぇ。美人。おっとりお姉さん。いいね!

エレオノールの事を勘違いしてた。
カトレアさんの乗ってきたワゴンタイプの馬車に乗る際、エレオノールは顔を曇らせたが、カトレアさんに押し切られていた。
妹の言葉には弱いらしい。

カトレアさんは動物使いか? ってくらい馬車に動物を乗せていた。
ムツ●ロウさん並の動物好きだ。

「動物パーティーかっ!」
「ちいねえさまは、動物が大好きなのよ」

ルイズ、好きとかいう常識を超えてるよ。

「わたしね、最近つぐみを拾ったのよ」

カトレアが楽しそうな声で言った。

「見せて! 見せて!」

子供のようにはしゃぐルイズ。
それを見て、俺とエレオノールは同時にため息をついた。
シエスタは猛獣に驚いて絶賛気絶中。
ルイズとカトレアさん、二人のおしゃべりは延々と続いた。



ルイズの父は不在。どうせ、アルビオン戦のことで骨が呼びつけたのだ。
深夜であったが、ルイズたちの母親、ラ・ヴァリエール公爵夫人は晩餐会のテーブルで娘たちの到着を待っていた。
これが、「烈風カリン」か。

初対面だが、どう見ても四十、下手したら三十後半と見間違える。
実際は五十に近いはずなのだが全然見えない。
化粧と格好を変えれば三十代半ばに化けるんじゃね?
熟女趣味はないが、手を出そうと思えば余裕で出せる。
下世話な考えをしているとルイズママは纏っている雰囲気を強くしたように感じた。
「烈風カリン」の名は伊達じゃない。
明確な敵意と殺気を感じる。しかも、俺に向けて放たれている。

「母さま、ただいま戻りました」

とエレオノールがビクつきながら挨拶するが、ルイズママは俺から視線を外さない。
俺も同じく視線を合わせる。
気を抜いたら魔法が飛んできそうな雰囲気だ。
自然と視線に力が入る。いつでも戦闘できるように備える。

「あ、あの……、母さま」

ルイズママは返事をしない。
杖を出したらルイズをかっさらって逃げる。
魔法を使われたら俺が勝てる要素がガクッと落ちる。
かと言って先手を取れば公爵家を敵に回すことになる。
ルイズと逃げる以外の選択肢しか思い浮かばない。
姿勢はいつでも動けるようにしている。

「ルイズ、彼は?」

俺と視線を合わせたままである。

「私の使い魔です。母さま」
「ルイズは当たりを引いたみたいね」

ニッコリと微笑み俺を見る。
エレオノールとカトレアさんは意味がわからないという顔をしている。
纏っている空気が緩んだので俺も緊張をといた。
なんだったんだ?

三姉妹がテーブルにつくと、給仕たちが前菜を運んできて晩餐会が始まった。
後ろに控えた俺にとって息がつまりそうになる時間であった。
誰もしゃべらないし、何かとルイズママは俺を観察するように見てくる。


SIDE:カリーヌ

ルイズの使い魔は相当強い。
私は思考する。現役を退いたが、腕は鈍っていない。
だが、彼と戦って勝てるか?
魔法を使えば恐らく勝てるであろう。
しかし、私と対峙した時の彼の目。
杖を使わせないだろう。
杖を引きぬいて詠唱して魔法を使う。剣を抜き取り斬りかかる。
どちらの動作が早いか? 後者である。
並の剣士数十人でも一流の剣士の部隊でも勝てる自信があるが、彼ではどうだろうか?
実力を分析しきれなかった。

「烈風カリン」として考える。
一流の使い手は対峙すると相手と自分との力量を測れる。
「烈風カリン」と彼。
運次第で勝ちもするが負けもする。
先手を取られれば敗北。先手を取れれば勝率は高い。
チラリと彼を見る。
どう見ても平民なのだ。
しかも若い。ルイズと同い年だろうか。
彼がついていればどんな困難な状況でも生きて逃げれるだろう。
何故か確信してしまう。
思案していると、エレオノールが声をあげた。

「母さま! ルイズに言ってあげて! この子、戦争に行くだなんてバカげたこと言ってるのよ!」

なるほど、彼がついていればそう考えるのもうなずける。
ばぁーん! と、テーブルを叩いてルイズが立ち上がる。

「バカげたことじゃないわ! どうして陛下の軍隊に志願することが、バカげたことなの?」
「あなたは女の子じゃないの! 戦争は殿方に任せなさいな!」
「それは昔の話だわ! 今は、女の人にも男性と対等の身分が与えられる時代よ! だから魔法学院だって男子といっしょに席を並べるのだし、姉さまだってアカデミーの主席研究員になれたんじゃない!」

エレオノールは呆れた、というように首を振った。

「戦場がどんなところだか知っているの? 少なくとも、あなたみたいな女子供が行くところじゃないのよ」

私もエレオノールの意見に賛成だ。

「でも、陛下にわたし、信頼されているし……」
「どうしてあなたなんかを信頼するの? 〝ゼロ〟のあなたを!」

確かにルイズは魔法を使えない。いや、私でも理解不能な失敗魔法を使うのだ。
後ろに控えていた彼が初めて言葉を発する。

「ゼロねぇ。ではお姉さん。ルイズの魔法をどう説明しますか? いや、主席研究員の聡明なお姉さんならわかるでしょ?」

にやつく彼。私は表情を崩さなかった。
彼はルイズの魔法を何か知っている。

「うるさいわね。平民風情が!」
「ははは、わからないから怒ってるですね、研究員が聞いて呆れる。税金返せ」
「なんですってぇ!」

エレオノールに杖を抜かせたら彼はたぶん何かとんでもないことをする。
直感的にそう感じた私は言葉を発する。

「食事中よ。エレオノール」
「で、でも、母さま……」
「彼はルイズの使い魔。主人をバカにされたから抵抗しているのです。ルイズに謝りなさい」

エレオノールは悔しげにルイズに謝罪した。
ルイズは珍しいものを見るような顔でそれを受けた。

「ルイズのことは、明日お父さまがいらっしゃってから話しましょう」

それで、話は打ち切りにさせた。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 54>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/20 02:02


SIDE:サイト・ヒラガ

わーい☆
調子に乗りました。すいません。
ドアに佇む人物をみて心の中で謝罪した。
ルイズママである。シエスタじゃねーのかよ!

「なにか?」
「ルイズのことでお話があります」

有無を言わさずルイズママの部屋に連れていかれた。
人妻、熟女の誘い。悪くないね。
いや、そんな考えをする時期もありました。

「ルイズのことなら母のあんたが一番知ってるでしょ?」
「いいえ、貴方の方が詳しいですわ。失礼、お名前は?」
「サイトです」

ルイズの空気を読まない能力はこの人の遺伝だな。

「変わった名前……、『平民の賢者』! そうね? 聞き覚えがあると思いましたわ」
「何故かそう呼ばれてますねぇ」

急にフランクになった。たぶんこっちが素なんだろう。

「そう、サイトさんは、我が家に利益をもたらせてくれていたのね。ずっと会ってみたかったのよ」

急に若返ったような口調だ。まあ、コッチのほうが話しやすいからいいけど。
さすが、男装して軍に入るだけある。

「そりゃ光栄で。ルイズの母親に褒められるのも悪くない」
「カリーヌ。名前を聞いておいて自己紹介しないなんて貴族らしくないわね」

く、人妻なのに、熟女なのに。可愛いじゃん。

「お互いに知り合ったところで、話は戻ります。話って?」
「ルイズの使う魔法のことですわ」

やっぱり。
流石に虚無とはいえん。

「俺は平民なんで魔法のことはさっぱりわかりませんね」
「嘘ですわね?」
「しらん」
「嘘ですわね?」
「わからん」
「嘘ですわね?」

こいつ、無限ループを使うぞ?!

「はあ、なら逆に聞きますが、ルイズの魔法をどうみますか?」
「失敗するごとに爆発する魔法なんて聞いたことありませんわ」
「んじゃ、爆発する魔法なんでしょ?」

それを聞くとその発想はなかったわ、という顔をしたカリーヌ。

「しかし、どの系統魔法にも該当しないわね。火が一番近い? まさか虚無でもあるまいし」

正解がでました。

「爆発魔法ってないんですか?」
「近い魔法はありますが、失敗して爆発というのは聞いたことがありません」
「じゃ、新しい系統魔法なんじゃないですか~?」

テキトウに言った言葉にカリーヌさんは

( ゚д゚)ハッ!

という顔をした。

「え、いや、でも、虚無を外して考えると……、火でもない、風と火? うーん……」

考え込んでいるので逃げた。
これ以上話しているとなんだかイケない気持ちになりそうだった。


SIDE:ルイズ

珍しい出来事があった。それをちいねえさまと話す。

「私、エレオノール姉さまに初めて謝られたかも」
「そうかもしれないわねぇ」

コロコロとちいねえさまは笑った。

「ルイズ、小さいルイズ。あなたの髪って、ほんとに惚れ惚れするぐらいに綺麗ね」
「ちいねえさまと同じ髪じゃないの」

髪をすいてもらう。

「そうね。あなたと同じ髪ね。わたし、この髪が大好きだわ」
「エレオノール姉さまみたいな父さま似の金髪でなくてよかったと、わたし思うわ」
「そんなこと、エレオノール姉さまに聞かれたら大変よ。気を悪くするわ」
「いいのよ。わたし、エレオノール姉さまが苦手なんだもの」
「あら、どうして?」
「意地悪なんだもの。ちいねえさまとは大違い。昔から、わたしをいじめるんだもん」
「あなたが可愛いのよルイズ。可愛くて、心配なの。だからついついかまってしまうのよ」
「そんなことないもん」

そうだったら、嬉しいと思う。

「そんなことあるのよ。この家のみんなはあなたのことが大好きなのよ。小さなルイズ」
「そんなこと言ってくれるのは、ちいねえさまだけだわ」
「でもよかった。ルイズ、あなたはすっかり落ち込んでると思ってたから……」
「どうして?」
「ワルド子爵。裏切り者だったんですってね。半年ほど前に、ワルドの領地に魔法衛士隊がやってきて、お屋敷を差し押さえていったわ。婚約者がそんなことになって、あなた傷ついたでしょう?」

私は首を振った。

「平気よ。わたし、もう子供じゃないもの。幼い憧れと、愛情を取り違えたりはしないわ」

そうきっぱり私が言うと、ちいねえさまは微笑んだ。

「頼もしいわ。あなたは成長したのね、ルイズ」
「わたしはもう、子供じゃないの。だから、自分のことは自分で決めたいの」
「じゃあ父さまに反対されたら、勝手に出征する気なの?」
「できれば賛成してほしいわ。皆に、わたしのすることをわかってほしいの」
「でも、戦争はわたしも感心しないわ」

それでも私は何か役に立ちたかった。

「祖国の危機なのよ。そして姫さま……、いえ、陛下にはわたしの力が必要なの。だから……」
「わたしに言っても無駄よ。お城に閉じこもっている姉さんには、難しいことはわからないもの」

ちいねえさまは、私の頭を優しく撫でた。それからゴホゴホと激しく咳き込んだ。

「ちいねえさま! 大丈夫?」

ちいねえさまは体が弱い、ラ・ヴァリエールの領地から一歩も出たことがないのであった。

「お医者さまにはきちんとかかってるの?」

ちいねえさまは頷いた。

「国中からお医者さまをお呼びして、強力な〝水〟の魔法を、何度も試したのだけれど……。魔法でもどうにもならない病ってあるようね。なんでも、体の芯からよくないみたい。多少の水の流れをいじったところで、どうにもならないんですって」

私は、姉が不憫になってしまった。
そして、サイトの顔を思い浮かべる。
サイトなら何かわかるかもしれない。
『平民の賢者』と謳われているのだ。きっとどうにかしてくれる。

「どうしたの?」
「ちいねえさまの病気だけどなんとかなるかもしれない」
「あなたが連れてきた、さっきの男の子?」

私は力強く頷く。

「ちょっと、サイト呼んでくる!」

私は部屋を飛び出した。

SIDE:サイト・ヒラガ


与えられた部屋に戻るとシエスタが泥酔していた。
どこからかワインを持ち出して飲んでいたのだ。

「あれぇ、サイトさんだぁ」

目がすわっていた。こいつはやべぇ。

「じゃ」

ガシッと捕まった。
部屋に引きずり込まれる。
な、なんだと、この俺が力で勝てない?!

「わたし、こんなすごいお城に来たの初めてだわ。迷路みたいですね。このお城」

酔っぱらいの相手はしんどい。

「ミス・ヴァリエールより、むむむ、胸は確実に勝ってますわ。ひっく」

唐突に分けのわからないことを抜かす。

「なな、なーにが貴族ですか。わたしなんてメイドですわ。メイド。ういっく」

ワインを一気飲みし始めた。もう駄目だこいつ。

「おいサイト」
「酔ってるなぁ」
「お前も飲め」

うっとうしい。

「せいっ!」

軽く頚椎に刺激を与えてやった。
眠るように倒れるシエスタ。
すまん。
ベッドに寝かしつけて俺は床に寝転がった。

訪問者の多い夜である。

「よぉルイズ。シエスタが酔っ払って死んでるが気にするな」

あらぬ誤解を受けないよう先に説明しておく。

「へ? ああ、そう。ちょっときて」

ぐいぐいと引っ張られる。カリーヌと同じだ。やっぱり、親子なのね。
カトレアさんの部屋は動物のテーマパークだった。

「ちいねえさまを診て」
「見てますがな」
「ルイズ、それだけじゃ言いたいことはわからないとおもうわ」

コロコロと笑うカトレアさん。

「まー、大体予想はつくけど。俺は医者じゃねーぞ?」
「でも、なにかわかるかもしれない」

わかるか!

「じゃあ、診断書を見せやがれ」

ルイズはカトレアさんに診断書のありかを聞き出して、俺に渡してくる。

「はい」

渡されたのは書類の束だった。

「はぁ~、何もできなくても文句いうなよ?」
「言わないわよ。国中の水のメイジがさじをなげたんだもの」

じゃあなんで俺に頼むのかねぇ。
とりあえず診断書を読む。

強力な〝水〟の魔法を、試した。
しかし、効果はなかった。
体のどこかが悪くなり、そこを薬や魔法で抑えると、今度は別の部分が悪くなる。
今も様々な薬や魔法で症状を緩和している。
緩やかな死を待つばかり。
それぞれの診断書には結論として原因不明。
徐々に身体を蝕み三十まで生きられるかどうか、つまり余命は六年くらいか。
水の魔法ではお手上げ。

俺は考える。
テファの指輪。
アレがあればたぶん治るはずだ。
仮死状態を蘇らせるほどのマジックアイテムだ可能性は高い。
先住魔法ならなんとかなるかもしれんが、エルフのお知り合いはいません。
手持ちのカードを思い浮かべる。

ルイズの虚無、現代医学の儚い知識、テファの指輪、原作の知識。
ルイズは期待を込めた目で俺をみている。
カトレアさんはニコニコしているだけ。
何とかしてあげたい。

その時、俺に電流が走る。
圧倒的閃きっ……! 閃くっ……! この土壇場で……! 病気を殺す悪魔的奇手っ……!

「ルイズ!」
「な、なにかわかったの?」
「『始祖の祈祷書』は?」
「え? 持ってきてるけど?」
「今すぐ! ここに! 持ってこい!」

俺の気迫にルイズは驚いたのかダッシュで『始祖の祈祷書』を取りに行った。

「ぜぇぜぇ、もってきたわよ?」

俺はコップに水を入れて待っていた。

「解呪(ディスペル)をこの水にかけてみろ」


本当は死んだウェールズ相手に使うはずが、ある日突然『始祖の祈祷書』を読んでると使えるようになっていたのだ。
時間経過で自然に覚えるものか、と思っていたが今はどうでもいいことだ。
俺の考えをルイズは理解したようだ。
『始祖の祈祷書』を開き、長い詠唱に入る。

「ルイズ、それって」

カトレアさんが何か呟く。何かに気づいたらしい。

「少し黙ってな。集中してるんだ」

コクリとカトレアさんは頷く。
ルイズの詠唱が終わり、コップに入った水に解呪(ディスペル)をかける。

「これ飲んでみてくれ」

カトレアさんは頷いて素直にコップの水を飲み干した。

「ちいねえさま!」

いきなり、眠るようにカトレアさんは倒れた。
まさか、失敗した?

「すぅすぅ」
「寝た? ルイズ、看病するぞ。カトレアさんに布団をかけてあげろ」
「わ、わかった」

うまくいきますように。
俺は初めて始祖ブリミルに祈った。


―――――――――――――――――――――――――――――――

さすがにカリンはハーレムには入れませんよwww

原作とウィキを読んでも、カトレアさんの病気は原因不明。
アニメ版じゃ結構平気で動き回ってましたよね。
原作でも治らないまま終わりそうですねぇ。
―――――――――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 55>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/20 15:45


朝食は日当たりの良いこぢんまりとしたバルコニーでとるのが、ラ・ヴァリエール家の常である。
その日もテーブルが引き出され、陽光の下に朝食の席がしつらえられた。
上座にはラ・ヴァリエール公爵が腰掛け、そのとなりに夫人が並ぶ。
そして珍しく勢ぞろいした三姉妹が、歳の順番にテーブルに座った。


SIDE:サイト・ヒラガ


ルイズは昨晩カトレアさんの看病していたせいで、フラフラの体である。
俺が交代制にしようと言ったがルイズは聞かなかった。
そこそこ寝れたので俺は割と平気だ。

カトレアさんの病気はやはり、原因不明だった。
何がどう作用したかわからないが、カトレアさんの病状は一気に回復したようだ。
結果だけみれば、治療は成功だった。
長年の闘病生活で身体が弱っているもののカトレアさんは健康そのものになっていた。
原因不明が気に食わなかった俺だったがカトレアさんに抱擁されたのでまあいいかという結論に至った。
次にルイズの魔法、虚無がバレたので、内緒にしてくれと頼んだら快く引き受けてくれた。

ルイズパパは不機嫌だ。
まだカトレアさんのことを知らない。

「まったくあの鳥の骨め!」

開口一番、ルイズパパは枢機卿をこき下ろした。

「どうかなさいましたか?」

カリーヌが表情を変えずに、ルイズパパに聞いた。
カトレアさんが治ったことは未だルイズと俺しか知らない。
いや、カトレアさんが皆を驚かしたいから全員揃ったらと言って聞かなかった。

「このわしをわざわざトリスタニアに呼びつけて、何を言うかと思えば『一個軍団編成されたし』だと! ふざけおって!」
「承諾なさったのですか?」
「するわけなかろう! すでにわしはもう軍務を退いたのだ! わしに代わって兵を率いる世継ぎも家にはおらぬ。なにより、わしはこの戦に反対だ!」
「でしたね。でもよいのですか? 祖国は今、一丸となって仇敵を滅すべし、との枢機卿のおふれが出たばかりじゃございませんか。ラ・ヴァリエールに逆心ありなどと噂されては、社交もしにくくなりますわ」

そうは言いながらも、カリーヌは随分と涼しい顔である。

「あのような鳥の骨を〝枢機卿〟などと呼んではいかん。骨は骨で十分だ。まったく、お若い陛下をたらしこみおって」

ルイズはぶふぁっ! と食べていたパンを吹き出していた。
きたねぇなぁ。食っていたものが気管にでも入ったか?
口元を拭いてルイズが話す。

「と、父さまに伺いたいことがございます」

ルイズパパはルイズを見つめた。

「いいとも、だがその前に、久しぶりに会った父親に接吻してはくれんかね。ルイズ」

この親、娘バカである。

「どうして父さまは戦に反対なさるのですか?」
「この戦は間違った戦だからだ」

ルイズの後ろにいた俺が口をはさむ。

「パパさんの言うとおりだ」
「誰だ?」
「私の使い魔です」
「はじめまして、何故かルイズの使い魔やってます。サイトです」

一礼する。俺は場の空気を読めるのだ。

「して、なぜ私の言うとおりだとわかる?」
「わざわざ戦いで決着をつける必要がないからです」
「ほう」

関心したように俺の顔を見る。

「あなた、あなたの目の前にいるのが『平民の賢者』なんですよ?」
「ほほぅ、貴様が! よもや会える日が来るとは、いや、よくやってくれた。我が家の評判も貴様のおかげでうなぎのぼりよ」
「ありがたく思います。公爵家に認められるとは恐縮ですね」
「はっはっは、そうか、そうか」

バシバシと肩を叩かれる。

「で? 話の続きは?」

エレオノールが聞いてくる。

「はい。攻めこまずとも戦に勝つ方法は幾つもあるのです。アルビオンは空に浮いています。トリステインは地上で包囲して兵糧攻めにすればアルビオンはその内、降伏するでしょう」
「その通りだ。我々が攻め込む必要などない。噂どおり、さすが『平民の賢者』。お前たちも見習うといい」

「はあ」

エレオノールは気のない返事をした。

「しかしながら、包囲戦は時間と莫大なお金がかかります。だから骨は総力戦の短期決戦をしたいのでしょう」
「一理あるな」
「公爵家のようにお金がある貴族達は包囲戦でも納得しますが、それ以外は? 大多数は短期決戦を望んでいるのでしょう。だからこそ、骨はわざわざ退役した公爵様を呼びつけて『一個軍団編成されたし』と言ったのでしょうね」

ルイズパパは難しい顔を作る。俺 VS 七万軍のフラグをおるんだお(^ω^)
できればラ・ヴァリエール軍団を編成してついてきて欲しいのだ。
カトレアさんに目配せした。それに気づいたカトレアさんは頷く。

「ねぇ。お父様? 嬉しい知らせがあるの」
「なんだい? カトレア?」
「病気治っちゃった」

コロコロと笑うカトレアさん。


SIDE:カリーヌ


今なんて言ったの?
カトレアの言葉が理解できなかった。

「私の病気だけど、サイトさんが治してくれたわ」
「へ? 俺?」

確かに私は聞いた。
カトレアの病気が治ったと。
そして、それは彼が治したのだと。

「ほ、本当か? カトレア?」
「あら、嘘をつく必要があるの?」

夫は戸惑いながら聞く。
カトレアの顔を見る。
確かに以前より明るく見える。

「でも、どうやって?」

エレオノールが聞いた。彼女は研究員である。
彼女の勤めている魔法研究所でもカトレアの病気は原因不明だった。

「実は俺は東方の方から来ました。と言っても召喚されたんですが」

ルイズがうんうんと頷く。

「たまたま東方の秘薬を持っていまして、それを知っていたルイズがカトレアさんの病気に効かないかと言ってきたので、試しに飲ましたところ」
「治ったと?」

私が聞く。

「そのようですね。いや、まだよくわかりません。とりあえず、経過観察ということで」

彼は冷静だ。夫はカトレアにすがりついて泣いて喜んでいるというのに。

「なんてお礼を言ったらいいものか」

彼は私たちに様々な利益をもたらしてくれている。
清掃事業、カトレアの治療。

「ではお礼の代わりにルイズの頼みを聞いてやってください」

ぽんとルイズの肩を叩く彼。なるほど、いい使い魔だ。

「私は姫様の役に立ちたい」

聞こえがいいが、つまりは戦争に参加するということだ。

「いや、それは、しかし、恩もあるし……」

夫は悩んでいる。彼、サイトさんがニヤリと笑ったように見えた。

「なら一個軍団編成してついてきたらどうですか?」

私に衝撃が走る。サイトさんは初めからこれが目的だった。
例え、断られてもサイトさんはルイズと共に戦地に向かっただろう。
これは、もう私たちの負けなのだ。

「あなた、彼の、サイトさんの言うとおりにしましょう。私も今一度現役に復帰しますわ」
「おお、カリンまでも……、確かに借りは大きい。それくらいはするしか私たちにできることがないということか……」
「私もついていっちゃおうかしら?」

カトレアがいつものように笑っている。これ以上悩みのタネを増やさないでほしい。


SIDE:サイト・ヒラガ


イヤッッホォォォオオォオウ。
なんと、「烈風カリン」まで付いてくる。
これで、七万軍はなんとかなる。
ルイズパパとカリーヌは王宮に向かった。
ぷぷ、骨、驚け。
今、俺はテンションがマックスです。
与えられた部屋で嬉しくなって転がりまわっていた。

その時、ドアがノックされた。

「あいてるよん」

しかし、ドアは開かない。仕方なく俺はドアを開けた。

「おおぅ。これはカトレアさんじゃないっすか」
「お邪魔してもよろしいですか?」
「どうぞ。もう身体はなんとも?」

お陰さまでと言ってくるりと回った。うん、かわいいぞこんちきしょう。

「私はそんなにかわいくありませんわ」

ちっ、勘の鋭い奴。そういや、サイトの事をすぐに異世界人間だって気づいたんだっけ。

「ねえ、あなた何者? ハルケギニアの人間じゃないわね。っていうか、なんだか根っこから違う人間のような気がするの。違って?」

ワァオ、いきなり確信ついてきたよ。

「鋭いですねぇ」
「でも、そんなことはどうでもいいの。どうもありがとうございます。ほんとに」

深々と頭を下げられた。

「いいんですよ。お礼は貴方の両親からいただきますから」
「そう?」

カトレアさんはコロコロと笑う。

「サイトさんって不思議な人ね」
「なぜかよく言われます」
「そういう意味じゃないの。なんていうか、お話に出てくる主人公みたい」

ドキリとする。

「はぁ? 誰でも生きてりゃ主人公でしょ?」
「サイトさんを中心に話が動いている? ううん、サイトさんが話を動かしていると言った方がいいかしら」

舐めていた。鋭いどころじゃない。ほとんど正解に近い答えを導きだしている。
これはいかん。

「なんの話やら、おっぱい揉むぞ?」
「どうぞ?」

カトレアさんは胸を張る。
冗談を真に受けられた。
ま、負けないもん。
フニュ、フニュ。
はーっはぁ、揉んでやったぜぇ。

「それだけですの?」
「え?」

今なんて言ったこの人?

「私はサイトさんに救われたわ。私、お礼として、全てを捧げるつもりできましたの」

ソレナンテ・エロゲ?


―――――――――――――――――――――――――――――――

カトレアさんの病気治療法については異論を認める。

水の魔法を治療に使うことを分かっているのに虚無の魔法を治療に使えるとは考えなかったのだろうかと、原作を読み直して思ったので思わず使って治してしまった。
今は反省している。

というか、この世界では基本的に病気を魔法で治療しているっぽいし。
それを考えると虚無の解呪(ディスペル)ってあらゆる病気を治してしまうんじゃね?
と思いました。

それでも虚無なら……虚無ならきっと何とかしてくれる。


―――――――――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 56>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/21 22:07


SIDE:カリーヌ


久しぶりに戦慄を覚えました。
王宮ではマザリーニ枢機卿が待ってましたと言わんばかりに私たちを待ち構えていました。
聞けば彼は『平民の賢者』とペンフレンドであると。
たかが平民とトリステインを影から操っていると噂の枢機卿とペンフレンドという事実。
サイトさんは国の中枢に食い込んでいた?
最近できた平民だけの銃士隊にリッシュモンの逮捕。
以前起きた、姫様の誘拐未遂事件。
すべて、裏でサイトさんが動いていた?

「まさか。彼はあくまでもペンフレンド。"おともだち"ですよ」

私の問いにそう答える枢機卿。
怪しいが、枢機卿相手に追求するワケにもいかなかった。
急いで家に帰ってサイトさんに聞けばいいのだ。
夫に後を任せて私は一人、実家に向かった。

SIDE:エレオノール


悔しかった。
たかが、平民に言い負かされたこと。両親が何故か、信頼を置いていること。
なにより、カトレアの病気をあっさりと治してしまったこと。
早朝、誰よりも早く起きてルイズの使い魔のところへ赴いた。

ドアを開けたが、誰もいなかった。
それだけでも、私は頭に来たが冷静になって近くにいたメイドにアイツの居場所を聞いた。

「随分前に、中庭に向かいました」
「そう、ご苦労様」

かなり早起きしたつもりだった。それなのに、随分前にいなくなった?
私は気付くと急ぎ足で中庭に向かっていた。

「な、なによ。アレ」

拷問?
ルイズの使い魔はどこから持ってきたのか、大きな丸太を背負って走っていた。
それに、足には大きな鉛玉が鎖に繋がれている。
傍から見ると、大昔の奴隷がやる強制労働にも見える。
しかも、上半身裸なのだ。
私に気づいているはずだが、動きを止めない。
真剣な表情に声をかけるのも忘れて見入ってしまった。
丸太を身体に括りつけて、腕立て伏せを始めた頃に気づいた。
彼は鍛えているのだ。
素人でもわかる。
アレは異常だ。
我に返る頃、彼は汗だくになった身体を拭いていた。

「おや、何か用ですか?」
「い、いえ、その……」

上半身裸の男性、腹筋は綺麗に割れている。全身が引き締まっているのがわかる。

私たちメイジが魔法を鍛える場合、ただ杖を振っていればいい。
才能に左右されるが、そこそこ強くなれるのだ。
一方、平民は身体を鍛えるしか無い。
しかし、彼は歴戦の傭兵以上に鍛えていると思う。
拷問に思える、それほどに過酷なトレーニングをしていた。

「いつもあのようなことを?」

彼は『平民の賢者』だという。
私はてっきり頭のいいだけの平民だと思っていた。
しかし、彼はそれだけじゃない。強くなる為に人並み以上に努力しているのだ。
それに比べて私はどうだ?
ただの高飛車な物知らずの娘。
たまたま幸運で公爵家の娘として生まれてきた。
私はそれなりに努力はした。
結果は魔法研究所の研究員だ。
しかし、ルイズの魔法、カトレアの病気。どちらも私には分からなかった。
ルイズの魔法を失敗と決め付け、カトレアの病気は私もさじを投げてしまった。
一方、彼は、ルイズの魔法について何か知っている様子。
カトレアの方に至っては、治療してしまった。
私は無力だ。心の中で苦笑する。

「ありゃ、見られてましたか? ルイズには内緒にしといてください。俺って奴は臆病でしてね。鍛えてないと落ち着かないんです。それに、ルイズを守らないといけない」

人間が使い魔、前例を聞いたことがない。
しかし、ルイズを守るという使い魔らしい答えに、私は羨ましいと思った。

「つ、使い魔なのだから主人を守るのは当たり前です」

本当は違うことを言いたかった。貴方は努力している。すごいと認めてあげたかった。
しかし、貴族としてのしょうもないプライドが言葉を変えてしまった。

「良い人ですね。エレオノールさんは。ルイズのこと、心配なんだ」

彼の言うとおり、ルイズの事は大好きだ。
いつも、恥ずかしさで辛く当たってしまっているが、私はルイズを愛している。
私は心が見透かされているような感覚に落ちる。
つい、素直になってしまった。

「ええ、私の小さいルイズはアレでやんちゃなところがありますから。小さい時も目を離すとすぐにどこかに行ってしまって心配させるばかりで」

私は何を言っているのだろう。昨日今日あったばかりの男性に心を開いてしまった。

「ははは、ルイズはそれに気づいてないから意地悪されてると思ってますよ? 素直にそう言ってやればきっとカトレアさんにするように甘えてくると思います」

確かにカトレアとルイズの仲はいい。
私にも甘えてきて欲しいと思っているがその事を誰にも言ったことが無い。

「ホントに?」
「ええ」

彼の答えに私は少しだけルイズに素直に接してあげようと思った。
同時に、ここまで心を許せる男性に私の心は惹かれたような気がした。


SIDE:ルイズ

エレオノール姉さまの様子がおかしい。
私にやたらと優しくしてくれる。
おかしい。今日は一度もほっぺをつねられないし、怒られない。
極めつけは

「もっと甘えていいのよ」

と言われたことだった。
なんだか私の調子が狂う。
いつものエレオノール姉さまじゃない。
ちいねえさまが治った所為?
そういえば、やたらとちいねえさまはサイトに接している。
病気だったことを忘れて追い掛け回しているときは流石に驚いた。
いや、私以上にかわいがっている?
治療のお礼だろうか?
でも、まるで恋人のそれにするように。
アンリエッタ姫とウェールズ様のようにイチャついているようにも見える。
エレオノール姉さまもサイトにやたらと話しかけている。
サイトが家に来てから家族がおかしい。
お母様とお父様はサイトに事業の先のことでやたらと三人で話しているし、姉さま達もそれぞれ、部屋で何かお話をしている。
夜は私と二人きりになってくれるが、それ以外は何かと私の家族といるのだ。

もっと私をかまえ、と言いたかったが、サイトの代わりにエレオノール姉さまがやたらとかまってくるので、なかなか言い出せなかった。

私はサイトに家族を取られたように勘違いしてしまい。
思ってもいない事を口にしてしまった。

「サイトなんていなくなればいいのに!」

それを聞いたサイトは驚いた顔をした後、悲しい顔をした。
何も言わずにサイトは部屋を出て行ってしまった。
私はその言葉をひどく後悔する時が来るのをその時は知らなかったのだ。

そして、サイトの悲しい顔。
それが、私の見た最後のサイトの顔になる。

―――――――――――――――――――――――――

カトレアさんの病気は原作者のヤマグチ氏のみぞ知る。
さて、そろそろ、乳革命の出番だ!

―――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 57>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/26 13:38

SIDE:ルイズ

アルビオン侵攻は、怖いほど順調に進んだ。
お父様、お母様率いる、ラ・ヴァリエールの軍団は私を守るためだけに動いたと言っても過言ではなかった。
常に私の側にはお父様か、お母様がいた。
でも、サイトは側にいなかった。

私は姫様の側にいた。
それに、姫様の私に対する行動に思うところがあったのか両親が姫様と私に問い詰めてきた。
私が虚無の使い手であることが、両親にバレた。
サイトがいないと私は駄目だった。
虚無は使わせない。
両親の下した命令に私は従うしかなかった。
私は切り札として、姫様の側に居ることになった。

サイトの操るゼロ戦は空を駆け巡る。
次々とアルビオンの竜騎士達を落としていた。
私はサイトが無事で嬉しかった。
サイトの活躍は著しい。
空を駆けるフェニックスと謳われ、トリステインの盾とも言われた。
サイトは敵を殺さずに制圧している。
私はそれを聞いて誇らしかった。

そんな中、アルビオン軍主力が早くも動き出したと報告が届いた。
侵攻してわずか三日目である。
空にはトリステインの守り神、地上にはラ・ヴァリエール軍団。
さらに、風のスクウェアスペル、ユビキタス(偏在)による情報伝達方の確立がトリステインに戦果をもたらした。

「正直に言います。サイト殿の提案を使いました」

私と、姫様しかいない時マザリーニ枢機卿は静かに語った。

ユビキタスでの情報伝達により、軍の連携が上手くいくこと。
敵が戦力を拡大するまえに短期的に戦いを終えること。
そのためにはラ・ヴァリエール軍団とサイトを上手く使うこと。
捕虜には優遇してアルビオンの情報を聞き出すこと。

「彼にはお礼を仕切れない。彼は我が国の英雄だ。よくぞラ・ヴァリエールは彼を召喚してくださった」
「いえ、とんでもありませんわ……」

私はマザリーニ枢機卿の勢いに若干驚きながら答えた。
わずか三日でトリステインの盾と呼ばれるサイトのことを想う。
サイトとは家で別れて以来顔を見ていない。
悲しかった。
この戦が終わったら文句の一つでも言ってやる。


翌朝、私は顔を蒼白にする報告を聞いた。

シティオブサウスゴータに集結したアルビオン軍の主力五万。
そこにサイトらしき人物が一人で向かって行ったらしい。

「それ、本当なの?」
「はい。背中に大剣と腰に細身の剣を持った黒髪の少年が馬でシティオブサウスゴータに向かう所を見たと言う人物が何人もいます」
「サイトさん、ですわね……」

アンリエッタ姫も顔を蒼白にしている。
お父様はサイトの後を追うべくすぐに私たちの元を去った。
なにしてるのよ。サイト……。
普段のサイトでは考えられない行動だ。
サイト自ら死ににいくような真似をするなんて……、もしかして、私のせい?
私は居ても立ってもいられなくなり、部屋を飛び出そうとした。

「お待ちなさいルイズ!」
「離して! サイトを助けなきゃ!」
「今から行っても間に合いません!」

姫様に止められた。
気付くと私は泣いていた。

「どうして? サイト?」
「あなたを、そしてこの国の多くの人を守るためですわ」

姫様も泣いていた。五万の人間相手に生き残れるはずがない。
どうして、そんな無茶を?

「あなたの両親がきっと助けてくれるわ。今はサイトさんの無事を信じて待ちましょう」

私は母様の顔を思い出す。
「烈風カリン」として現役復帰した母様。
サイトのことを気にかけてくれていた。
サイトの単独行動の知らせを聞いていちはやく向かってくれたと聞いた。
母様ならきっとサイトを救ってくれるだろう。
助けるのが私ではないのが悔しい。

「……、分かりました姫様。サイトには帰ってきたらきつく言い聞かせます」
「私も……、それに賛成ですわ」

二人で笑いあう。
私は不安を心に秘めたままだった。


昼過ぎ、私と姫様の元に報告が入る。

「アルビオン軍五万の主力部隊がラ・ヴァリエール軍団により、壊滅的打撃を受けてアルビオンから降伏宣言がでました。なお、妙な報告が一つ。ラ・ヴァリエール軍団が到着した頃には相手は相当混乱していた様子で、ラ・ヴァリエール軍団はそれを叩いただけとのことです」

「ルイズ!」
「ええ、姫様。サイトですわ」

私は誇らしげに胸をはる。
しかし、嫌な予感がずっと拭えない。

「お母様?」

突然、私たちの元に顔色の悪い母様が現れた。

「ルイズ、落ち着いて聞きなさい。サイトさんが消えました。私たちが相手を制圧した頃には既にサイトさんの姿が消えていました」

私は母様が何を言っているのかわからなかった。
つまりサイトはどうなったの?

「母様、サイトはどうなったの?」
「わかりません。確かに途中までは一緒に戦っていたはずですが……」
「何故か姿を消したと?」

姫様が付け加えるように聞いた。
それに母様は頷く。

「私を見てこれ以上戦闘は必要ないと思ったのでしょうか? しかしながら、女王陛下、彼のような人を英雄というのでしょうね」

母様は遠くを見るような目で私を見ていた。

「彼は既に我がトリステインの英雄ですわ。トリステインの盾と噂されてますし……」
「ええ、私が見た彼はまるで……、英雄、いえ、勇者のように勇敢でした」

母様は言う、サイトの勇敢な戦いぶりを勇者だと。


SIDE:サイト・ヒラガ

五万も七万も変わらん。
朝もやのなか目の前にいる大軍を見てそう思う。
短期決戦が上手く行った。
のんびりしてると、降臨祭とかアンドバリの指輪で相手に援軍を作ってしまう。
べ、別にルイズに嫌われてムシャクシャしてやったわけじゃないんだからねっ!
それに、早く、早くおっぱ、ティファニアに逢いたかったのだ。
しかし、居なくなれってキツイこと言うぜ。
その言葉通り、しばらく居なくなるけどな。

「さて、おっぱ、ティファニアに出会うとしますか」

俺は俺自身の力を試したかった。
俺は走り出す。
危なくなったら逃げるからねっ!
それに、ラ・ヴァリエール軍団が後で何とかしてくれるだろう。


SIDE:ホーキンス

前衛の混乱が激しくなっていた。敵は見事な動きだと関心する。
単身で乗り込み多くの兵の中を器用に駆け巡る。
味方は同士討ちで混乱する。
その混乱がますます混乱を招いていく。
それも、相手は指揮官ばかりを重点的に狙っている。

自分の元に届く報告を聞いて頭を悩ませる。

「なんてヤツだ!」

 風のように速い敵だ。
 火のように強い敵だ。
 土のように動じない敵だ。
 水のように臨機応変な敵だ。

しかも相手は重傷者ばかり作っている。水のメイジが慌てふためいている。
死者を出さないというのがここまで厄介なものか。
けが人が転がっているため大軍を前に進めることもできない。

「散開して敵を囲め!」
「無理です! 指示系統がめちゃくちゃになってます。散開させたら逃げ出す兵士が出てきます!」

私は顔を歪める。
指示が遅すぎた。
相手の動きが早すぎた。

兵たちの間に動揺が走りつつある。

曰く、エルフの精鋭である。
曰く、悪魔である。
曰く、風の精霊である。

なんとも気に入らない。
対策を思案する。

「ホーキンス将軍! 敵の増援です! それを見て兵たちが逃げ出しています!」
「く、よもやここまでとは……」

敵の援軍は我が軍を蹂躙し始める。
どうやら向こうには圧倒的な風の使い手がいるようだ。
あっという間に制圧され始める。

「烈風カリンです! あの伝説の烈風カリンが……」

それ以上の報告は耳に入らなかった。
私は知っている。アイツの恐ろしさを。

「全軍! 戦闘は終了! 降伏する! 死にたくなかったら武器をおけ!」

私の指示に次々と兵たちは武器を置き始める。
たった一人にかき回された。
私は思う、二度とトリステインとは戦わない。

「単騎で大軍を止める、か。歴史の向こうに消えた言葉で言うならば、彼は『英雄』だ。わたしも将軍ではなく、『英雄』になりたかった」

本音だった。それを聞いた 副官も頷いた。

「ですな。つりあう勲章が存在しないほどの戦果ですな。残念なのは、彼が敵だということです」
「全くだ」

投降している兵を見ながら苦笑する。
そういえば、彼はどこへ消えた?
疑問に思いながら烈風カリン率いる軍団に投降した。


―――――――――――――――――――――

ルイズ、貴様にはしばらく休暇を与える!
さよならつるぺた。こんにちはボインちゃん。
忙しさ(サッカー観戦)にやられて更新遅れました。

―――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 58>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/27 04:03


SIDE:サイト・ヒラガ


俺はラ・ヴァリエール軍団より何故か先に到着した烈風カリンの姿を確認してから見つからないよう森に逃げた。彼女なら放っておいても大丈夫だ。

「ぜぇぜぇ、ここまでくればいいだろ」

俺は一人、森の中で呟いた。
どかっと、木に持たれる。腕試しとしては、やりすぎた。今は反省している。

「相棒、なんで殺さなかった?」
「殺すだけが戦いじゃねーんだよ。けが人を多く出すとそれだけで、軍隊にとっては迷惑なお荷物が増えるってこと。ハァハァ、疲れた」
「なるほど~、さすが相棒、考えてるねぇ」
「そりゃ、どうも、って、五万相手にこれだけの傷で助かったぜ」

擦り傷に、火傷、切り傷に打撲。
服はボロボロになってたが重傷になる傷は負わなかった。

「超疲れた、少し寝るから誰か来たら知らせてくれ」
「わかったよ。相棒」

後は烈風カリンと軍団が何とかしてくれる。
疲れがドッと押し寄せ俺は寝た。

数分か、数十分か、寝ぼけまなこで気がつく。
剣がわめいていた。

「相棒、誰か来たぜ?」
「ん~?? なんか大勢きてるけど?」
「いやね、さっき、子どもが相棒を見て逃げちまった。声をかけたが相棒が起きなかった」
「おいおい」

熟睡ってレベルじゃねーぞ。
しかし、立つのも億劫なのでそのまま木にもたれかかっていた。

「あれ? 起きてる。大丈夫?」
「いーや、疲れて死にそうだ」
「私の家近いから休む?」
「頼むよ」

見知らぬ男なのに優しいティファニア。
粗末で丈の短い、草色のワンピースに身を包んでいた。
短い裾から細く美しい足が伸びる。そんな足を可憐に彩る、白いサンダルをはいていた。
まさに妖精!
そして、胸革命……。

「レボリューション!」
「え?」
「すまん。なんでもないから。そんな無垢な目で見ないで!」
「ふふ、おかしな人」

森の中に隠すように佇む家。
ティファニアの家だ。
部屋に招かれて、簡素なベッドに横になった瞬間に俺は再び寝てしまった。
おっぱい……。


SIDE:ティファニア


変わった人。急に叫ぶし。でも、私の耳を見ても何も言わなかったわ。
今はスヤスヤと寝てる。ウェールズさんみたいに良い人だったらいいなぁ。
私は夕飯を作った。子供たちの分と、彼の分。

「まだ、名前も知らないわ」

彼を起にいく。彼の寝ている部屋に入る。まだ寝てる。
寝息は静かでまるで死んでいるみたい。
私は少し怖くなって慌てて脈を確認した。
よかった生きてる。
その時、パチっと彼の目が開く。

「ん? ああ、君に助けてもらったんだっけ? ありがと。俺はサイト。君の名は?」
「私、ティファニアっていうの」
「ティファニアか、いい名前だね。本当に助かったよ。ありがとう」

私は名前をホメられたことに嬉しくなった。
ウェールズさんと雰囲気が似てる気がする。
サイト……?
どこかで聞いた名前だったような。

「いいの。ティファニアって呼びにくかったらテファでかまわないわ」
「んじゃ、テファ。ありがとう。ついでに飯をくれると非常に助かる」
「うん、できてるわ。一緒に食べましょ」

それを聞いた彼の顔は笑顔だった。

「おいしいわ」

サイトが翌朝作ってくれた朝食は美味しかった。
昨日のお礼と言っていたが別に私は気にすること無いと言ったのに。

「それはよかった」
「サイトは何も聞かないの?」
「なんのこと?」
「私がエルフってわかってるんでしょ?」

サイトの視線は私の耳を見ていることが多かった。
だが、それを聞いてくることはなかったので私から思い切って聞いた。

「うーん、エルフだからなに?」
「え?」

私は驚いた。こんな人がいるんだ。

「エルフを恐がらない人なんて、珍しいわ」
「君みたいにカワイイ子を怖がる?」
「私が可愛い?」

サイトは頷いた。初めてそんなこと言われた。

「うん、可愛い、妖精みたい。エルフの知り合いはいないけど、こんなに可愛い子ばっかだったらもっと早くエルフに合えばよかったぜ」

私が可愛い? それにエルフにあいたい?
本当に変わった人だ。

「わたしはエルフだけど、混じりものよ」
「ハーフエルフってこと? それがどうした! テファはテファだ!」

なんだか私が認められたみたいで嬉しかった。

「テファにはケガも治してもらった。しばらくここでお礼の為にいさせてくれないか?」
「え? 気にすること無いのに」
「いいんだよ。行くとこもないし、しばらく休みたいんだ」

なんだかすごく悲しい目をしていた。
私はその目をみてサイトが気の済むまでいればいいと言った。


SIDE:サイト・ヒラガ

気づいたら一週間ほど過ぎてた。居心地が良すぎるぜ。
村に物売りにきた商人に情勢を聞いた。

アルビオンは降伏。
トリステインは大勝利。
戦争が終わり噂が出回っている。
一つは「烈風カリン」の現役復帰早々に武勲を立てたこと。
もう一つは、とある平民が一人でアルビオン軍五万相手に立ち向かい今や英雄とされていること。

戦後処理についてはトリステイン軍がアルビオンを巡回しているのを見て骨が上手くやってくれているとわかった。
テファの元に傭兵くずれが襲ってくるのを知っていたので治安強化を頼んでおいてよかった。

商人の話ではアルビオンの貴族派は自国民に好かれていなかった。
こりゃマジでウェールズをアルビオンの王にできるな。
思考を遮るようにデルフが話しかけてきた。

「よう、相棒、帰らねーのか?」

ウエストウッド村。
シティオブサウスゴータと港町ロサイスを結ぶ街道から、ちょっと外れた森の中にある小さな村だ。
ロサイスからトリステインに帰れる。

「金ない。もうしばらくしたら姫様当たりが捜索隊でも派遣してくるでしょ。それまではのんびり生活するさ」
「そうかい。鍛錬はサボってないからいいけどよー」
「五万相手にした後から急に鍛錬になったな。トレーニングで身体を作り終えたってことか?」
「相棒はルーンなしでも、十分戦える超人になってんだよ」

いつの間にそんなもんにしやがった。

「へー、俺、強くなってるんだ」
「俺の中じゃ一番だぜ。相棒」

そんなに褒めるな。

「サイトォ~」
「おう、テファ」
「薪は、ってすごい量ね。サイトってすごい!」

山積みにされた薪を見てテファは関心していた。

「戻ろうか」
「うん」

テファとの仲は良好。
指輪の力は使用していない。
今後大怪我した場合の保険ができた。
テファの周りにいる子供たちに俺は人気だ。
読み書きを教えて今は先生みたいな事をしている。
男の子には強くなるために剣術。
女の子には将来の為に家事全般を教える。
そうしている内に子供たちからはサイトお兄ちゃん。もしくはサイト先生と呼ばれている。

「相棒!」

一本の矢が薪に刺さる。

「テファは木の後ろに隠れてな」
「サイト」

心配そうな声をかけてきた。

「大丈夫、そこで見てな」

デルフを構えて走る。
十数人ほどの武装した集団に詰め寄る。
ちっ、治安強化も意味なかったな。

「なんのようだ?」
「おいお前。村長はいるか? いるなら呼んでこい」
「物取りか。さしずめ、元傭兵ってとこか?」

相手のリーダー格の男が驚いた顔をする。

「へへ、賢い坊やだ。戦争が終わっちまったから本業の盗賊として稼ぐのさ」
「ついてないな。気づいたら戦争が終わってたって口か?」
「その通り。たった一人のトリステインの英雄にやられちまった」
「運がないね」

俺は嗤う。
相手は怯えた。
その隙を見逃さずにリーダー格の男を殴り倒した。

「てめぇ!」

一対多数の戦い方でたどり着いたのは二刀流だった。
舞うように二本の剣を振るう。
防御でなく捌き。
ガンダールヴの特徴は速さである。
足を止めない、手を止めない。
速さを殺さない動きが俺の生存に繋がる。

「ま、参った」
「えー、もう?」

十数人を制圧するのに三十秒くらいか。
少し物足りない気がした。

「つ、強いな坊主」
「巡回してるトリステイン軍に投降してこい。それで命はとらないでやろう」

それを聞いた盗賊たちは逃げ出していった。

「すごい! サイト」

ぼよぉおんと腕に胸が当たる。
盗賊の武器より強力です!

―――――――――――――――――――――――――――

さて、待望の?
おっぱい、テファの登場です。
テファをハーレムに入れるかだと?
愚問だ。
当然入れるぞ!

―――――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 59外伝>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/27 22:39

『森の賢者』
トリステインの英雄が戦場から消えたと同じ時期にアルビオンから噂が広まった。

商人に経済を説き、平民には学を与え、メイジではないのに病気まで治すという。

SIDE:ウェールズ

「ふ、わかりやすいな。サイトくんだ」

親友の顔が浮かぶ。
ゲルマニアのミス・ツェルプストーの実家まで噂は届いている。
アンリエッタは気づいているかな。
私は手紙を書く。

"アンリエッタへ"
"サイトくんはどうやらアルビオンにいるらしい。"
"森の賢者の噂。正体は恐らくサイトくんだろう。彼は貴族を嫌うだろうから平民の腕の立つ人物に探してもらうといい。"

書き終えた手紙を送る。

アルビオンで助けられたティファニアのことを思い出す。
もしかしたらサイトくんはあそこにいるのでは?
そう考えるとサイトくんは滞在するだろうな。
胸が好きだと言っていたし。
やれやれ、ミス・マチルダにも手紙を出しておいた。
ティファニアは私の恩人だ。
サイトくんが手を出すとは考えたくないが、年頃の男女が生活していれば間違いも起こりかねない。

「まったく、困った親友だ」


SIDE:アンリエッタ

深々とホーキンスは頭を下げた。

「なにか?」
「陛下……、陛下の軍は、たった一人の英雄によって救われたのです。ご存知ですか?」

私は頷いた。
ラ・ヴァリエール軍団の報告。
烈風カリンの報告。
ラ・ヴァリエール公爵家が噂を出している英雄の張本人。
ホーキンスは私に語った。
アルビオン軍は、一人の剣士によって止められたこと。
鬼神のごとき強さ、誰も殺さない手際。
ホーキンスは目を輝かせてサイトさんのことを英雄だと言う。

「――たった一人の剣士が……、数万の軍勢にも匹敵する戦果をあげたのです。英雄には、その働きに見合う名誉を与えねばなりません」
「わかっています。ありがとうございます」

〝虚無〟の使い魔。
伝説のガンダールヴ……。
彼はトリステインを救ってくれたのだ。

その夜。
アニエスを呼びつけた。

「隊長どの、あなたに新しい任務を与えたいのですが」
「喜んで」

私は、昼間、ホーキンス将軍から聞いたことを話した。

「ミス・ヴァリエールの使い魔が?」
「そうです。彼は……、祖国を救ってくれたのです。なんとしても、見つけ出さなければなりません。アルビオン軍と彼が交戦した地点はサウスゴータ地方……、ロサイスの北東とのことです」
「かしこまりました」

アニエスの顔が一瞬だけ嬉しそうになったのを見逃さなかった。


SIDE:モンモランシー


ここはトリステイン学院。

時は夕刻……。

私は、ちょっとせつない気持ちになって散歩をしていた。
あまり人の来ない、ヴェストリの広場を眺める。
戦争が終わってすぐに噂が流れた。
アルビオン軍に壊滅的打撃を与えた一人の少年のこと……。
サイトのことだと思い、浮かれるのもつかの間、次の噂で漠然となった。
その噂が本当だとして、五万の大軍に立ち向かって、生きているわけがない。残念だけど、諦めたほうがいい、と……。

学院に帰ってきたルイズの隣にサイトがいなかった時、私は激しく落ち込んだ。
やっぱり、サイトは……。
しかし、ルイズはサイトが行方不明になったと言った。
どうやら、噂は湾曲したらしい。
ホッとする反面なぜ行方不明になったのだろう、なぜ帰ってこないのだろうと疑問に思う。
ふと、気付くと目に入ったのは、火の塔の隣にしつらえられたサイトのお風呂だった。
そういえば、以前一緒に入ったっけ。いや、アレは薬のせいだった。
初めて会った時はフザケた平民だと思った。
次に会った時は事業に参加させられていた。
気づいたら平民の賢者と呼ばれていたっけ。
サイトのおかげでお金のことで悩むことが無くなった。
そんな風に、サイトとの思い出に浸っていると……。
なんだか目頭がじーん、と熱くなる。

「サイト。私はやっぱりサイトが、五万のアルビオン軍を止めたんだと思うわ」

私はごしごしと目の下をこすった。
死んだわけじゃないのに、帰ってこないサイトを思い、悲しくなった。

「……、早く帰ってきなさいよ。バカ……」

SIDE:マチルダ

サイトの事は噂で聞いている。
随分と無茶をするなぁ。と思ったがアタシはサイトが生きていると確信している。
手元にある書類の束を見る。

"もしも俺が長期不在になった時の対策"

冒頭の書き出しからサイトはあらかじめ、長期不在をすることを知っていたらしい。
戦の前に渡されたのだが、まさかこんなに早く使うとは。

「本当に恐ろしい坊やだ」

自分自身がいなくなることさえ織り込み済みなのだ。
終戦から十日程たったある日、私の元に珍しい人物から手紙が届いた。

「な、なんですって……」

ウェールズ曰く、サイトはアルビオンにいるらしい。
しかも、アタシの可愛い妹、ティファニアのところにいる可能性が高い。
すぐにでもティファニアの所に向かおうと思ったが、サイト作の書類にアタシがいないと事業に支障がでると綿密な説明が書いてあった。

「はぁ」

学院を離れるわけにはいかない。事業に支障が出てティファニアに仕送りができなくなると困る。

「早く帰ってきなさいよ、サイト」


SIDE:キュルケ

私は、五万相手に大暴れしたサイトの噂を聞いておったまげた。
それをルイズの実家が噂を広めているという。
肝心のサイトは行方不明になっていた。
終戦から、かれこれ二週間以上サイトは行方不明のままだ。
どうして、帰ってこない?
そして、もう一つサイトらしき噂が増えた。
『森の賢者』
アルビオンのどこかの森から広まった噂らしく詳しくは不明。
商人に経済を説き、平民には学を与え、メイジではないのに病気まで治すという噂らしい。

「まったく、トリステインは無能の集まりなの?」

サイト捜索は国を挙げて行われていた。
だが、未だに見つかったという報告は私に届いていない。
サイトは生きている。
私はサイトが死ぬなど思っていない。
探しに行こうかしら?
冷静になって考える。
国を挙げて捜索している人物を一人で見つけられるわけがない。
それに探しに行っている間にサイトが帰ってきたら入れ違いになってしまう。
結局、学院でサイトの帰りを待つしか無い。

「なんか、恋人の無事を祈りながら待つ可憐な少女のようね……、早く帰ってきなさい。私のサイト……」



SIDE:アンリエッタ

「そろそろ、三週間が経つわね……」

アニエスの報告は全て捜索中。

「アニエスはサイトさんに味方している? まさか、彼女は私の近衛……」

私は捜索の人数を増やそうかと考えていた。
丁度、サイトの情報を定期的に聞いてくる者……、カリーヌが訪ねてきた。
考えていた人数の増員を伝える。

「……、あまり、大事にすると本気で彼が逃げ出すかもしれません」

カリーヌは悩ましげに答える。
トリステインを救ってくれておきながらお礼もさせてくれない彼。
いったいどこで何をしているのだろう。

SIDE:カリーヌ

サイトさんの無謀な行為。
これは許されることではない。
しかし、結果だけ見ると彼は多大なる貢献をした。
私も昔は男装して軍に入って功績を立てたが、どれもサイトさんの功績に比べると霞んで見える。

「まったく、心配ばかりさせて……、出来の悪い息子を持った気分だわ」

トリステインから実家に帰る道中、一人でつぶやく。
しかし、サイトの戦う姿は凄まじかった。
剣士ではあまり居ない二刀流だった。
舞のように美しかった。
竜のように強かった。
そして、何より、速かった。
その姿を思い出して少し胸がドキドキした。
私がルイズくらいの頃に出会っていたら惚れていたかな?
年甲斐ないことを考えてしまい、苦笑する。

「ふふ。まあ、彼ならその内帰ってくるでしょう」

SIDE:サイト・ヒラガ

森でイドを見つけた。

「イドに誰もいないよね? うん、いない」

中を覗き込んでみたが、水が入っていただけだ。

「って、俺は一体何を?」

気づいたらイドに夢中になっていた。

最近やたらと商人が俺に話を聞いてくるし、村の人達は俺に文字を教えろと言ってくる。
そんな奴らを相手にして金をせしめていた。
その金で以前のカトレアさんの件から俺は医学に手をだそうと考え、専門書を購入した。
しかし、早々に魔法に心を折られた。
魔法が便利すぎて医学の進歩が見られない。
仕方ないので医学は諦めて、覚えている範囲でケガの応急処置法と溺れた時の心肺蘇生法、それに食生活の改善などをまとめて本にして売りさばいてやった。
さて、用事も済ませたし、おっぱ、テファの元へ帰るか。


―――――――――――――

シリアスな話や、心踊らす戦闘描写は今後の私に期待。
というか、まだまだ文章力を鍛えてる未熟者なので、頑張りたいと思います。
サッカー観戦しながら書いていた分を一気に投稿。

―――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 60>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/06/30 23:14



テファの家でのんびり暮らし過ぎた。

己のこれまでの怠慢さに羞恥し悩みに悩み抜いた結果、サイトがたどり着いたのは、感謝であった。
自分自身を萌えさせてくれたテファへの限りなく大きな恩。
自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが一日一万回の素振り!!
気を整え剣を構えて振る。
一回の剣を振るのに当初は約五秒。
一万回素振りを終えるまでに初日は十三時間以上を費やした。
素振りを終えれば倒れる様に寝る。
起きてはまた素振りを繰り返す日々。
十日が過ぎた頃、異変に気付く。
一万回叩き終えても日が暮れてない。
己の限界を越え完全に羽化する。
感謝の素振りが一時間を切る!!
かわりに、祈る時間とテファとのコミュニケーションが増えた。
ついに、サイトの剣は音を完全に置き去りにした。

ここに豪傑が誕生した。


SIDE:サイト・ヒラガ


感謝のトレーニングを終えて修練に入る。
修練は心を鍛えることに重点をおく。

(テファのおっぱいテファのおっぱい)

煩悩でもルーンの力が発動する。
心の震えってテキトウね。

「相棒! 足りねぇぞ!」
「あいよ!」

(テファのおっぱいをこねくり回す。エルフ耳最高!)

「いいぞ。相棒、その調子!」

(テファのおっぱいで挟む。おっぱいで挟むんじゃぁあああ)

「よしきた。やれ! 相棒!」

木の枝からロープで吊るした薪を睨む。
デルフを右手で振る。同時に素早く日本刀を左手で振る。
×を描くようにクロスさせて薪の手前の空間を切る。
かつんッ! と音がして、薪が割れる。

「で、出来た!」

剣を使った擬似エアカッター。
俺はついに飛び道具を手に入れた。
飛距離は三メートル~五メートル。
それ以上離れると威力が落ちて薪は割れない。

「すげー、サイトお兄ちゃんすげー」

見物客である子供たちがわめく。
それから二時間近くルーンの力を使用する鍛錬が続いた。

「もう無理、もう疲れた」
「はぁ~、相棒は異常だぜ! ここまでルーンの力を使いこなす使い手は初めてだぜ!」

百八の煩悩も二時間すれば尽きる。

「あ、あの……」

振り向くと、ティファニアが立って、恥ずかしそうにもじもじとしていた。

「すごいね。サイト! カッコいい。見とれちゃったわ」
「そーかね。腹減ったしお昼ごはんにしようよ」
「うん」

テファと子供たちを連れて家の庭で料理を食べる。

「サイトって、不思議な人ね」
「どこが?」
「エルフを怖がらないし、すごく自然にお話してくれるわ。剣もすごいし、料理もおいしい。それに子供たちに文字を教えてくれてる。なんでもできるのに、貴族みたいに偉そうにしないわ」

尊敬の眼差しですね。エルフ耳に上目遣い。
萌え死ぬぞ?

「いやー、褒めんなよ。それに、テファは可愛いから怖がる必要ない」
「もう! そうやってからかって! でも、いいの? ここにいること知らせなくて」

テファは顔を赤らめたが、すぐに真顔に戻った。
そういえば、手紙の一つも書いていない。
ルイズもそろそろ反省したかな~。

「いいんだよ。たぶん迎えに来る人いるし。その人は悪い人じゃないから安心しな」
「サイトがそういうなら。あ、おかわり持ってくるね」

うーん、いい子だ。嫁にするならテファみたいな子がいいね。
どこぞのぺちゃぱ(ry

「こんなところで、何をしている?」
「昼飯食ってます」

銃士隊の隊長が、大荷物を持って現れた。


SIDE:アニエス


こいつには以前の借りがある。それに学院でのあの事件も話さないと気が済まない。

「苦労するかと思ったが、あっさり見つかるとはな。気が抜けた」
「そりゃ、幸運でしたね。いや、それより腰掛けたらどうです? おーい、子供たち、綺麗なお姉さんが食料くれるってよー」

それを聞いた子供たちが私の食料を強奪していった。
ポカンとその様子を見ていた。
その後、家から出てきた少女を見て驚いてた。

「なんだ、あの子供たちは? 誰だ彼女は……、それに、アレは?」
「孤児院の子供です。彼女はその代表ですね。アレって、たぶん、胸です」

私の目には信じられないモノが見える。
胸だと……。

「見ての通りテファはエルフです。女性にとっては天敵になるような物が育ってますがエルフの神秘ってことで」
「そ、そうか。エルフの神秘か」

私はエルフだろうが、敵意の無い者には危害を加えるつもりはない。
だが、アレが胸?

「ハーフエルフです。あ、あのエルフが怖くないんですか?」

テファと呼ばれた胸にありえないものをつけている人物が聞いてきた。

「敵意を抱かぬ相手を無闇に恐がる習慣は持ち合わせていない」
「そうですか、私ティファニア。よろしくね」

無垢な笑顔だ。彼がここにとどまるのも頷ける。

「サイト殿には色々話すことがある」
「おや? なんでしょうね」

その顔は私の話したいことを知ってそうだ。
さすが、『平民の賢者』ということか?
気にせずに話を始めた。


SIDE:サイト・ヒラガ


アニエスの話は簡潔だった。
俺とルイズがアルビオン軍相手にしている頃、学院に賊が忍び込んだ。
というか忍び込むはずだった。
自分、つまりアニエスがでっかい爆発音に気づいて急いで学院の周辺を調べると、近くの森で船が落ちていた。船に乗っていた人物はほとんどが重傷を負っておりアニエスたちの銃士隊が取り押さえた。
船を落としたと思われる人物はコルベールと呼ばれる教員で破壊の杖を使ったとわかった。
賊にいた炎の使い手が重傷にも関わらず抵抗したのでアニエスが殺した。
学院に賊が侵入したのは深夜にも関わらず手際の良さにおかしいと思ったアニエスはコルベールに問い詰めたら、サイト、つまりは俺の思惑だとしった。
学院の被害は破壊の杖が使えなくなったくらい。

「というわけだ。ミスタ・コルベールは手柄をすべて私たちに譲ってくれた。変わった人だ。さすが、サイト殿の知り合いだけある」
「呼び捨てでいいですよ。アニエスさん」
「はあ」

気の抜けた返事を返すアニエス。
うん。ハゲは上手くやったようだ。
これでキュルケフラグは無事に折れた。

「では、サイト。今のサイトはトリステインの英雄とされている」
「えー」
「アルビオン軍五万相手に単身で立ち向かい、あまつさえ、壊滅的打撃を与えたとラ・ヴァリエール家が広めている。しかし、その英雄が行方不明なので、捜索隊として私が選ばれたわけだ」

ルイズの家は公爵家。それが噂を出すってどうゆうことよ?

「ふーん」
「何? その薄い反応?! 名誉なことだぞ!」
「いやー、名誉とかいらないっス。アニエスさん働き詰めでしょ? しばらくここで休んでいきません? ほら、疲れてる顔してる」

ぶつぶつと何か言っているアニエスだったが結局、俺の提案に乗った。

「いいだろう。しばらく世話になる」

その夜。
俺は歌声で目を覚ました。

「……ごめんなさい。起こしちゃった?」

暖炉の前に、ティファニアがハープを抱えて座っていた。

「もう一度、歌ってくれないか?」

テファは再び歌い始めた。 演奏を聞いている内に懐かしくなった。
地球を思い出す。

テファはハープを奏でながら、涙を流していた。
懐かしい地球を思い、俺も自然と涙を流していた。
漫画の続き読みたかったな(ry

演奏が終わりテファが俺を見て聞いてくる。

「サイトも故郷を思い出したの?」
「うん」
「どこ? よかったら、教えて」
「ここじゃない。別の世界さ」

テファは意味がわからない顔をしている。

「信じないと思うけど、俺は別の世界から来たんだよ」
「意味がわからないわ」
「だろうね。でも、使い魔として呼び出された」
「人が使い魔だなんて、聞いたことないわ」
「俺には、どんな武器でも操れる能力がある」

左手のルーンをテファに見せる。
ルーンを見て使い魔であることを確認したテファは驚いた顔をした。
空気を読めない剣がしゃべりだす。

「相棒と、ハーフエルフの娘っ子が懐かしい気分になるのも無理はねえ。こいつは、ブリミルが故郷を想って奏でた曲さ。つまりだな、〝望郷〟ってやつがつまってんのさ」
「……そっか。だからわたし、あなたに親近感を抱いたのね」
「テファと同じ、帰れない故郷があるからね」

テファは悲しい顔を浮かべる。

「綺麗な顔が台無しだよ? テファにはそんな顔は似合わない」

 ティファニアは顔を赤らめた。

「…………」

なぜ黙る。軽いジャブ、冗談ではないか、いや、綺麗なのは冗談じゃない。

「何度も言わないで。照れるから」
「そうか」

テファは照れた様子で去っていった。
テファにこの手の冗談はヤメよう。
俺が萌え死んでしまう。


――――――――――――――――――

大きな感動をありがとう。
日本のサッカーも捨てたものじゃない。

そして、カリンの意外な人気に驚き。
59外伝のサンホラネタに反応してくれた人たち、ありがとう。
分からなかった人はスルーしてください。

―――――――――――――――――――





[18630] <ゼロのひどい使い魔 61>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/07/05 02:26

SIDE:サイト・ヒラガ

翌朝……。
いきなり部屋のドアが開かれた。
相手は俺が寝ていると思っていたらしい。
俺は丁度今からトレーニングに出かけるところだったのだ。

「相棒! 喜べ、握られてるとわかるんだけどよ、この銃士隊の隊長さん。いやぁ、なかなかの腕前だぜ!」
「この浮気者!」
「ほう、早起きだな。起きているとは思わなかった」

何故かデルフがアニエスに握られていた。

「なんでお前が握られてるの?」
「相棒が俺を置き去りにしたからだろ!」
「私も鍛えるぞ。サイトがトレーニングをしてるとこの剣に聞いてな」

駄目だこの剣。美人の女の人に握られておかしくなったか。

「まあ、無理しないでください。俺が言うのもアレですけど、キツイですよ?」
「望むところ」
「本当は組み手の相手だけで十分なんですけどねぇ」

苦笑しながらトレーニングに向かう。


SIDE:アニエス


私は鍛えてきたつもりだ。メイジ殺しとしても恐れられている。
女であるがそんなものとうの昔に捨てた。
サイトの剣、デルフリンガーというらしい。
この剣が指示するトレーニングは常軌を逸したものだ。

腕立て、腹筋、背筋、スクワットは五百を超える。
私はそれですんだ。サイトは大きな丸太を身体につけたまま私の倍の数はやった。
柔軟も一時間以上じっくりとやる。
素振りを千回終えた頃、私は充実した疲労感の中、サイトに聞いた。

「サイトは毎日これを?」
「まあね。でも、初めてでやりこなすなんてすごいですね。当初は半分以下から徐々に厳しくしていったのに」

段階的にトレーニングを厳しくしていくか、なかなか考えられたトレーニングだと感心する。


「軍にいるからな。鍛えているのは当然だ」

サイトは私の倍以上のトレーニングを終えて私に言う。

「女性でここまで鍛えるのは珍しですよ。んじゃ次で」
「え?」

終わりじゃないのか?
サイトのスタミナに驚いた。
サイトは本当に人間か?

「俺はこの棒切れで戦いますからアニエスさんはデルフか剣でよろしく」

これから組み手に入るらしい。
なるほど、五万を相手にできるわけだ。

「俺は特殊能力がついてます。でもそれは今回は使いません」

左手のルーンを見せてきた。これが使い魔のルーンか。
特殊能力だと?
私は疑問に思う。

「このルーンはあらゆる武器を使いこなせる代物です。いわば、素人でもメイジに勝てるズルな能力なんですよ。これを使うとアニエスさんに勝ち目はないですねぇ。というか修練にならないんで使いません」

ナメられていると思ったが、納得もいった。
いくら強いとはいえ五万相手に生き残るのだ。
それくらいの能力はあって当然だ。
強者と戦う。高揚感が私を包む。
以前からサイトと戦ってみたかったのだ。

「そうか、なら私は本気でいく。見せてもらおう。英雄の力を」


SIDE:サイト・ヒラガ

アニエス……ノリノリだな!
丁度、ルーンの力なしの俺の力量を確かめるチャンスである。
アニエスの顔が引き締まる。それを見て俺は動きだす。

「いっきまーす」

ルーンの力がなくてもそれなりに早く動けた。
開始の合図替わりに俺が言葉を発したが、アニエスは俺の動きに驚いたようだ。

「む、早い!」
「それ」
「くっ」

ルーンの力がでないように、武器が棒切れなので折れないように、そこそこ手加減して打ち込む。
うん、女性に暴力はよくないよね。
振り下ろした棒切れを切り返す。

「来るぜ、隊長さん」

普通に裏切るデルフ。
なんだよ。女に握られた方がいいのか!
袈裟斬りから胴へ打ち込む。
だが、デルフの指示で防がれた。

「ほれほれ、アニエスさんチャンス、チャンス」

アニエスはデルフを横一線に振るう。

「くっ、当たらん!」

見える。見えるぞ。
ルーンの力がなくても剣の動きがわかる。
アニエスの微妙な筋肉の動き、目線、重心の移動で先の動きが手に取るようにわかる。
当然、アニエスの攻撃は俺には当たらない。
棒切れで強めに攻撃をうつ。
ベチッと、アニエスに棒切れが当たる。

「くっ」

こりゃすぐに決着つけれるなぁ。
それはつまらん。
なので組み手中にいたずらすることにした。

サワッ。

「な、なにをする?!」
「いやー、胸やら尻を触られたら一回死亡ってことで」

棒切れを鋭く打ち込む。
ガキンッとアニエスが裏切り者のデルフで受け止める。

サワッ。ムニュ。

「くぅ」
「二回死亡」
「こ、このぉおお」

怒ったアニエスの猛追を避ける。

ヒョイ。

サワッ。

ヒョイ。

サワッ。

「はあはあ、何故だ? なぜ当たらん?」
「ふっ。アニエスも女性よのぉ。感じていらっしゃる」

アニエスの顔が赤くなり怒涛の勢いで斬りつけてくる。
棒切れで捌いていたのを忘れるほどの猛追。
ベキッ。

「あ、ちょ、アニエスさんタンマ、棒切れが、アーーーッ」


SIDE:アニエス


私はデルフリンガーと呼ばれる剣を背負っている。腰には愛剣がある。
サイトは思いつきのように私の胸や尻に触ってくる。
私はそれに対して、剣で斬りかかる。
峰打ちは以前でやめた。

朝、昼、夜。食事中に、入浴中。
サイトはお構いなしに襲ってくる。
変態だと思いつつも、私は神経が研ぎ澄まされていくのがわかる。
決定打が当たらない。
紙一重で躱される。
間合いの取り方が神業なのだと思う。
私の斬りつけは殺す気でやっている。
それにも関わらずサイトは避けるのだ。

「強い」

その一言に尽きる。
私は手加減されている。
一度もルーンの力を使われていない。
つまり、自力でも私より数段強い。
私はサイトを連れ戻すという任務を忘れ、サイトにルーンの力を使わせてやるという目標に心を奪われていた。


SIDE:サイト・ヒラガ


セクハラを物ともしないアニエス。
鍛えられた身体はアスリートの魅せる美しさに似ている。
さわり心地は絶品。
そろそろ、ガンダールヴの力なしで躱すのも難しくなってきた。

「アニエスさん。ルーンの力を使います」

アニエスは嬉しそうな顔をしていた。
痴漢まがいの行為を続けて一週間は経つ。
正直、もうアニエスの攻撃が手に負えなくなってきた。
この人、成長が早過ぎる。

「そうか! 私は強くなったのか?」
「まあ、かなり」

アニエスはますます、嬉しそうな顔をした。

「俺はこいつ、アニエスさんはデルフを使っていいですよ」

俺は日本刀に手をかける。
アニエスはデルフを構える。

「こいつが最終試験みたいなもんです」
「うむ、手加減は無しでお願いする」

俺は頷く。
お互いににらみ合う。

先に動いたのはアニエス。
デルフを振り下ろす。
後の先を取る。ガンダールヴの前では先手を取られても巻き返しができる。
俺は全力を出してアニエスの後ろに回り込む。

(アニエスとセクロスゥゥウウウ)

「き、消えた?!」
「勝負ありですね」

アニエスの腰に日本刀を軽く押し付ける。

「そうか……。ここまでとは」

振り向いたアニエスは眩しいほどの笑顔だった。


「テファ、本当にいいんだね?」
「うん、サイトお願い」

モミモミ。

「あ、もうチョッとやさしく……」
「う、うん」

ドキドキ。

「あんっ。気持ちイイ~」
「そうかね」

テファの肩を揉んでいるわけで。
べ、別にいやらしい声を聞きたかったわけじゃないんだからねっ!

「んっ、あ、そこ、それ、すごくいい」
「すごく……、硬くなってます……」

テファの肩がね!
俺のアソコじゃないぞ?!
どうしてこうなったかというと、日頃のお礼です。
そう、お礼だ。
声がそのまま、中の人の声だから余計に興奮する。

「あ、サイト……、そこは、む、胸だよ?」
「ごめん。手が滑った」
「もう、サイトったら」

顔を赤くして怒ってるのか喜んでいるのか、よくわからん顔をするテファ。
可愛すぎだろ。

「なあ、テファ、耳触っていい?」

以前から気になっていたエルフ耳の構造を確かめたかった。

「え? 別にいいけど」

テファはキョトンとした顔をした。
俺は耳元に顔を近づけてエルフ耳を触ってみた。

「あ、くすぐったいよ」

うん、どうなってんの? これ?
感触は耳たぶそのもの。
指で弾いたり、引っ張ってみたが人間の耳と変わらん。

「サイト。もうやめて、くすぐったい」

顔を赤くしてプンプンと怒ったテファは可愛かった。

「ごめん、夢中になった。今は反省している」

萌え狂うぜ……。


―――――――――――――――――――――

残念?
何が?というと、次回でルイズが帰ってきます。
さて、肩もみというありがちな事をしました。
投稿数60超えたので書き溜めが残り少なくなってきました。

――――――――――――――――――――――




[18630] <ゼロのひどい使い魔 62>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/07/08 22:08

SIDE:サイト・ヒラガ

昼過ぎ、商人達から情報収集を終えてテファの元へ帰る道のりで出会ってしまった。

鬼女ルイズ、暴走メイドのシエスタが現れた。

→逃げる。
しかし回り込まれてしまった。

「げぇ! ルイズ!」
「げぇ! じゃないわよ! なんで逃げた?」
「そうです! サイトさん! どれだけ心配したと思ってるんですか?!」

ルイズとシエスタは激しく怒っているようだ。
くそっ! やられた! 孔明の罠か?!
さてさて、どうしたものか。

「ボクハ、サイトデハアリマセン」
「何いってんのよ!! バカ! 生きてるならすぐに帰ってきなさいよ!」
「いなくなれと言ったのはルイズさんです。俺は悪くない。きっと悪くない」

ルイズはボロボロと涙を流していた。
不思議とルイズを目の前にすると、気分が良くなった。
そんなバカな。
俺は、ルイズに逢いたかっただと……?

「だからって本当に居なくなるなんて思ってなかったんだもん!」
「一ヶ月も音信不通で心配でした。サイトさんに何かあったんじゃないかって」

シエスタは抱きついてきた。しまった。胸の感触を楽しむのに気を取られた。
これじゃあ、逃げれない。
よくよく、考えるとルイズとシエスタに捕まってしまったらテファとお別れじゃないか。
しかも、黒ローブの人影が見える。
ついに、来てしまったか。
ジョセフの使い魔。
神の頭脳の人だ。

「感動の対面中で悪いんだけど私の相手になってもらうよ」
「誰?」
「お誘いありがとう。さっそく、あそこの茂みで……」

俺の発言を無視して、ルイズの問いに黒ローブが答えた。
ん?
確か、シエスタが操れるんだっけか?
しかし、シエスタがなにかする様子はない。

「はじめまして。ミス・ヴァリエール。偉大なる〝虚無の担い手〟私はシェフィールドと名乗っています。本名じゃないけどね」
「なら、げろしゃぶって名前にしない?」
「するか!」

なかなか鋭いツッコミである。
さすがは神の頭脳。
年齢は二十代後半くらいか?
ジョセフのお手つきだから寝取りになるな。
ちょっとヤル気でた。

「んで、げろしゃぶさんがなんの用で? ルイズのお知り合いか?」
「知らないわ。あんなヤツ」

シェフィールドの後ろから、何体もの騎士や戦士の格好をしたガーゴイルが現れた。

「友達居ないからってガーゴイルを連れにするなよ!」

少しだけシェフィールドが顔を歪めた。しかし、俺を無視して言葉を放つ。

「わたしの能力を教えてあげましょうか?」
「ガーゴイルオナニーの開発者?」
「違うわよ! 神の左手こと、ガンダールヴは、あらゆる武器を扱える。あなたがそうよね?」
「いいえ、俺は何も使えません。ムスコしか使えません」

なんだかシェフィールドは汚物を見るような目で俺を見ていた。

「わたしは〝神の頭脳〟ミョズニトニルン。あらゆるマジックア・アイテムを扱えるのよ」
「ミョなんとかの人! リアルな女性の人形をくれ!」
「ミョズニトニルンだよ! それにそんなものあんたにプレゼントするわけないだろ!」
「交渉決裂。仕方ないのでげろしゃぶさんを肉便器にします」

(アニエスとSMプレイ、アニエスをドMに開発ぅううう)

日本刀を抜刀、数メートル離れたシェフィールドに向けて擬似エアカッターを放つ。
スパリと黒ローブとまとっていた服が破れて全てが白昼にさらされる。

「ナイスおっぱい!」
「いやぁああああ」

ガーゴイルを放置してシェフィールドは逃げていった。
よく喋る神の頭脳だったな。

「なんだったの? アレ?」
「わからん」


ナイスおっぱいを晒したげろしゃぶ、じゃなかった。シェフィールド。
そろそろ、タバサの救出だ。
対エルフ。というか、やっかいな先住魔法の対策に俺は頭を悩ましていた。
しかし……。
一ヶ月も会っていなかったルイズ。
甘々な態度を取ってくる。

「キスしていいわ」

ルイスの先制攻撃。
知らん内に好感度が上がりまくり。断る理由も特になかったのでキスした。
なにこれ、超安心する。

「ぬ? ん~ん~」

こいつ、舌入れてきたぞ?
あ~、ヤバイ、気持ちイイ。
なんだか重要なことを思い出しそうだったがキスのせいで記憶がぶっ飛んでしまった。

「ぷはぁ」
「はぁはぁ、ルイズ、大胆な子!」

うるんだ瞳で俺を見つめてくる。
なんだよ。誰だこいつ?
ベッドの上でディープキス。うるんだ瞳。
セクロスフラグ?
あると思います!

「そんなにじろじろ見ないでよ……」
「ルイズ、もうだめ。しよう!」

ルイズを押し倒す。とっくに臨戦態勢は整っている。
俺はルイズの着ているブラウスのボタンを外す。
ブラらしき下着の上から胸を触った。
その時、ルイズは、泣きそうな小さな声で言った。

「明るいじゃない……」
「じゃ、じゃあ夜になったら……?」
「か、かか、神さまと母さまにお伺いを立ててから」

もうダメぽ。
夜に続きをしようと約束を交わして俺はトイレでヌいた。

すっきりして居間に向かうと、シエスタ、アニエス、テファがいた。
アニエスは朝ごはんを作っている。
アニエスに作らせたご飯も様になってきたな。

「昨晩襲ってきた連中は、何者なんだ?」

アニエスが聞いてきた。
襲撃があった時、放置されたガーゴイルをアニエスが攻撃してやっつけてくれたのだ。
俺に鍛えられたアニエス一人で十分だった。
大分強くなってますね。

「妙な人形を操っていたな」
「ミョズニトニルン……。あらゆる魔道具を操れる能力を持ってるって……」

ルイズは正直に答えた。別に隠すことはない。
虚無のことをアニエスは知ってるはずだ。
曖昧な記憶だが、この人は知っていても所詮、アンリエッタの駒だ。問題ない。

「ルイズの系統に関することです。姫様は言いました。最高機密だと」
「つまり、私が口を挟む問題ではないということか。失礼した」
「知ってるの?」

ルイズが心配そうな顔で聞いた。
口を滑らしたと思うなら良く考えてから話せよ。このお茶目さんめ!

「よく考えろルイズ。アニエスさんは姫様の直属だぜ? 近くにいるんだからそれなりの噂とか聞くだろ。それにあの馬鹿な姫様が漏らしてるかもしれん」
「なるほど。って、姫様を馬鹿にしてるんじゃないわよ!」

やっと、いつもの調子に戻ったルイズ。
夜の約束で緊張してたのが嘘のようだ。

「まあ、二、三日、休もうじゃないか。疲れているんだろう?」

あ、ダメ人間だ。
アニエスが包丁を磨きながらそう言った。

朝ごはんをみんなで食べた後、俺はテファの家から出た。
テファの家の庭で俺はデルフと日本刀を持って構える。
二刀流。
響きあうRPGの主人公の技。
片方の剣で敵を打ち上げる。同時に飛び上がり、もう片方の剣で叩きつける。
イマイチ。
回転しながら双剣で切る。
目が回る。
対エルフに備えて、俺はコンボ技と必殺技が欲しかった。

「やい、伝説の剣。必殺技とかねーの?」
「ねーなぁ」

駄目だこいつ。早く何とかしないと。
あーでもない。こーでもない。
色々とゲームや漫画に出てくる技を試す。
エルフに剣が通じるかわからんが、必殺技があったほうが後々役立つ。
なにより、カッコいいし。

ルイズは椅子に座って俺を眺めてる。
シエスタは憧れるような目で俺を見ている。
アニエスは学ぶように俺を見ている。
テファは物珍しい物を見るように俺を見ている。
アドバイスとかねーのかよ~。

「サイト殿、一体何を考えて剣を振るっているのだ?」

アニエスが一息ついた俺に聞いてきた。
公私を分ける軍人のアニエスは人の前ではサイト殿と呼ぶことにしたらしい。

「エルフを倒すような技を思いつかないかな~と」
「なんと! しかし、いくらサイト殿でもエルフ相手に勝利することは難しいかと思いますぞ」

しかし、予定表にはエルフと戦うことが入っている。

「いや~、勝負には絶対はない。って言葉もあります。それにね。男には負けるとわかっていても戦わないとイケない時があるんですよ」

キリッ。

できれば戦いたくねーけど、タバサフラグが~。
俺の悶えた顔をどう捕らえたのかアニエスは顔を赤く染めていた。


SIDE:アニエス


私の考えは浅い。平民でもメイジに勝てる。それが誇りだった。
しかし、彼は言う。エルフに勝ちたいと。
この人には私たちの常識というものが通じないらしい。
エルフの恐ろしさは噂でよく聞く。熟練のメイジでも恐れて戦おうとしない。
メイジでさえ戦いたくない相手に彼は勝つための算段を考えている。
私には戦うという選択肢はない。
エルフが敵対した場合。命令ならば刺し違える覚悟で戦うが勝利はありえないだろう。
せいぜい、時間を稼ぐ程度が限界だ。
命令でないなら逃げる。
彼の最後の言葉、エルフでも勝てる隙があるはずらしい。
それに、負けるとわかっても挑む、か。武人だと思う。
私もそうありたい。気付くと、とうに忘れたはずの女としての感情が芽生えていた。
サイトを死なせない。
なぜ?
剣を教えてくれたから?
違う。
ああ、そうか。私はサイトが好きなのだ。
あっさりと、納得出来た。
相変わらずでたらめに剣を振るうサイトを見る。
真剣な顔が眩しく見える。
胸が高なる。
周りにいる女性を見る。
ラ・ヴァリエール、メイドのシエスタ、ありえないモノをつけているティファニア。
皆、彼に好意的だ。私は恋を知らない。だが、負けるのは嫌いだ。
だから率直に言うことに決めた。

「失礼。サイト殿」
「ん?」

サイトは剣を止めて私に顔を向ける。
少しだけ恥ずかしくなったが躊躇わずに言う。

「どうやら私はサイト殿を好きになったらしい」
「「は?」」

私の言葉にサイトより先にラ・ヴァリエールと、シエスタが反応した。
ティファニアは驚いた顔をしていた。

「アニエスさん。今、なんて?」

シエスタが聞いてきた。肝心のサイトは黙っている。

「私はサイトが好きになったと言ったのだ」

つい、公私を忘れてしまった。
ラ・ヴァリエールは呆けた顔をし、シエスタは怒った顔をしていた。
ティファニアは顔を赤くしていた。
サイトは表情が固まっていた。

「唐突ですねぇ」

私は嬉しかった。拒否されなかった。
それに、どうもサイトは嬉しそうな顔をしている。

「わ、私が一番初めに好きになったんですから、後から出てきていきなりじゃありません?」
「恋に早いも遅いもないだろう。それとも、サイト殿は特定の誰かと付き合っているのか?」

二週間以上一緒に生活したが、浮ついた話はなかった、誰かと付き合っているということは無いだろうと当たりをつけていた。
それに付き合っている人物がいたとしたら一ヶ月もここに住み着いているわけがない。

「そ、それは、確かにサイトさんは誰とも付き合ってないですけど。ルイズさんもなんとか言ってください」
「誰が何を言おうと、サイトは私のモノよ」

ラ・ヴァリエールは自信たっぷりに言い放った。
それは、使い魔として?
しかし、あの自信。もしや、昨晩に……?

「わ、私は二番でいいです!」
「ほう、なら私は愛人でいい」

滅茶苦茶なことを言っているな。
しかし、どこかでそれでも愛されるならいいと思ってしまっている。

「結構言いますねぇ。アニエスさん、問題解決したければ姫様に一夫多妻制を認めさせればいいんじゃないっスか?」
「そ、それです! アニエスさん。お願いします。女王殿下に頼んでください!」

物凄い勢いで、シエスタは私に頼んでくる。
陳情にしては荒唐無稽にもほどがあるが、貴族達が愛人を囲っているあたり、もしかしたら賛成派は多いのでは?
いや、それをするとますます貧富の差が広がる。
金のある貴族なら格が近い貴族を囲んで自分の力を大きくするだろう。
力が大きくなれば王宮にも及ぶ。
つまりは、女王陛下に面倒な話が増えるというものだ。
それにサイトは気づいているはずだ。

「それはできん。だがサイトが貴族になり女性を囲うなら話は別だ。貴族なら愛人の一人や二人いても使用人としてごまかせるからな」
「サイトさん! 貴族になってください。私、メイドとして働きます。その、夜のオシゴトも頑張ります」
「……。え~、貴族イヤ。メンドクセ」

少し間があったが、サイトは貴族になりたくないらしい。
姫様の元に帰ったら有無をいわせず私と同じシュヴァリエにしてやろう。
同じ平民同士、同じ平民出身の貴族同士、今後サイトと接触する機会を増やさなければ。

―――――――――――――――――――

帰ってきたルイズさん。
気づくとアニエスが勝手にハーレムに立候補してました。
テファ?
もう少し待ってください。

―――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 63>
Name: castake◆d6014dec ID:c4e53ea4
Date: 2010/07/10 23:49

SIDE:モンモランシー

サイトが居なくなって一ヶ月は経つ。
ルイズは使用人のメイドを連れて探しに出掛けてしまった。
私もルイズの後を追うために準備をしていた。しかしそれも無駄になった。
狙ったように、ルイズの出発と入れ違いにサイトから手紙が届いたのだ。

"オッス。オラ、サイト。"
"この手紙が届いているということはたぶんルイズは俺を探しに行ってる頃だろう。"
"ギーシュのアホは勲章でも自慢してると思うので俺が帰るまでに鍛えとけと伝えろ。帰ったら決闘だ!"
"事業については俺が居なくなった時のマニュアル通りに動いていると思うのでそのままやっちゃってちょうだい"
"モンモランシーは回復の薬を作ってもらう。上質な水の秘薬を1ダースね。期限は俺が帰るまでな! できなきゃ犯す"
"じゃ、またな~"

「サイト……、無事なら早く連絡しなさいよね。あ~、また課題ねぇ」

サイトは事あるごとに課題という名の無理難題を押し付けてくる。
メイジとしてレベルが上がるので文句はないし、報酬も出るのでやるが、できなかった時の罰がほとんどセクハラまがいのものだ。
しかし、女性であることが助かっているのも事実である。
バカ(ギーシュ)がヘマをした時はボロボロになった上にタダ働きさせられていた。

「それにしても、なんでギーシュが勲章を自慢してるってわかるのかしら?」

戦地から帰ってきたギーシュはコレぞとばかりに教室で自慢しまわっていた。
それに比べてサイトの勲章は大きすぎる。
しかも自慢するどころか行方不明になって心配させる始末。
ギーシュがなにやら私に聞こえるように自慢話を初めていた。

「まあ、私には関係ないわね」

ギーシュの取り巻きには女の子もいる。
誰かと好き勝手にくっつけばいい。
それよりも、水の秘薬つくりに精を出そう。
あ、ギーシュへの伝言を忘れるところだった。

「ギーシュ」
「モンモランシー!」

未だに恋人だと思い込んでいるわね。
まあいいわ。

「はいこれ」
「なんだい? 手紙? ははは、サイトからじゃないか!」

ギーシュは手紙を読んでいく内に青くなったり赤くなったり顔色を変えていた。

「どうしよう? 僕は殺される!? なんで決闘なんだ~!」
「知らないわよ。じゃ、伝えたからね。私も忙しくなるから邪魔しないでね」

私はギーシュを置いて教室を出た。

「あ、いた。ちょっと、お願いがあるんだけど」
「え? あ、モンモランシー。またサイト?」

水系統の知り合い数人に声をかける。
随分と社交的になったものだ。
サイトの出す難題はそもそも一人でなんとか出来るレベルじゃない。
サイト自信も一人でやれとは言ってこない。
結果を出せるなら使えるモノは使う。

「そうなの。今度は上質の水の秘薬1ダース」
「うわぁ、キツイね。先輩と後輩、集めてくるわ」

そう言って私を置いて去ってしまった。
サイトの報酬は多い。そこから彼女たちにも分配する。
サポート料としては適切だと思う。
サイトの事業で家計の苦しい学院の生徒は優先的に拉致……、じゃなく勧誘されている。
清掃事業はいつの間にか国に認められた公共事業になってた。
それ以外のサイト個人の事業の手伝いを学院は黙認している。
不幸になる人物がいないし、授業にも影響がないのが理由だろう。
実際に、家族が助かったとお礼すらする子もいる。
大概は、学院を中退してサイトの仕事場ですぐに働きたいと言うが、

『中退する奴はウチでは採用しないぞ』

その言葉で皆、中退は諦めた。
おかげで中退を決めていた子たちと仲良くなれたので文句はない。
しかし、事業に勧誘するのは女の子ばかりなのはなぜだろう?

『すべてのおっぱ、じゃなかった。女性に優しい。それがこの俺。サイトさんです』

以前のサイトの答えが気になる言い方だったが、まあいいわ。


SIDE:ギーシュ


僕が何をした? サイトの手紙には帰ってきたら決闘とあった。
なぜだ~?
部屋に戻ると手紙を持った鳥がいた。
 
「なんだ?」

手紙を読む。

 "サイトです。君に出番をやろう!"
 "訓練その1 身の回りの世話はワルキューレにやらせろ。"
 "訓練その2 毎日ぶっ倒れる限界まで魔法を使い尽くせ。"
 "訓練その3 筋トレとかすればいいと思います。"
 "訓練その4 実戦の相手はトライアングルじゃないと意味ないよね?"
 "キュルケとタバサを相手にしろ。覗きでもして無理やり戦いに持ち込むといいでしょう"
 "健闘を祈る。じゃあな"
 "追伸、女の子は強い男に惚れやすい。モテたきゃ強くなれ"

それだけだった。
僕はそれからすぐにワルキューレを作り出し、身の回りの世話をさせた。
勲章をもらったのは老兵のおかげ。
それを恥じていた。

「くっくっく、サイト。僕は強くなるよ」

手紙の後半の内容でやる気がマックスになっていた。

その後、常に一緒にいるワルキューレを連れているギーシュは学院で戦争に頭をやられたカワイそうな子という噂が広まったとか。


SIDE:サイト・ヒラガ


「あ、あんたエルフだったの?」
 
気付くの遅すぎ。ルイズがテファの耳を見ていた。
デカすぎる胸が悩みという、全女性の敵、テファは答える。

「私はハーフですけど」

ついでに言えば虚無の担い手ですけど。なにか?
以前、盗賊達に襲われた後、テファに確認の為に聞いていた。

『襲われた時、テファはどうしてたの?』
『えっと……』

もじもじしながら虚無の目覚めから今に至るまでを語ってくれた。
君の敵はウェールズの父だ。と言いかけたがややこしくなるのでやめておいた。
テファは自分が虚無の担い手だというのに、ことの重大さがよくわかっていない感じだ。
しかし、テファが虚無の担い手という事実をどうする?

「ハーフエルフの娘っこは、〝虚無の担い手〟だ」

駄目だ、この剣。埋めるか?

「このバカ剣。ダメソード。人が考え事してたのにブチ壊しやがって」
「どういうこと?」

ほら見ろ。ルイズが聞いてきた。

「はぁ、テファもルイズと同じ虚無の担い手なんだよ」

困った顔の俺の顔を見ながらも、ティファニアは改めて語った。

エルフである自分の母は、アルビオン王の弟である大公の妾だったこと。
財務監督官でもあった父は、王家の秘宝を管理していたこと。
ある日、その王家の秘宝の一つである指輪をはめ、同じく秘宝であったオルゴールのふたをあけたら、自分の他には誰にも聞こえないメロディが聞こえてきたこと。
 エルフを妾にしていたことが、アルビオン王にばれ、騎士隊を差し向けられたこと。
その際に、父と母が命を落としたこと。
 そのとき、頭の中に浮かんだ呪文を唱えたら、騎士たちの頭の中から『自分たちを討伐するためにやってきた記憶』が消え、自分は助かったこと……。

「その呪文が〝虚無〟ってわけ?」

ルイズの質問にダメ剣が答える。

「そうだよ。〝忘却〟の呪文さ」
「どうして記憶を消すのが〝虚無″になるのよ」
「思い出せ。お前さんの持ってる始祖の祈祷書の序文には、なんて書いてあった?」
「系統魔法は、小さな粒に影響を与える。〝虚無〟はさらなる小さな粒に、影響を与える……」
「そうだ。人の脳みそは、小さな粒の集まりでできてる。記憶ってのは、この小さな粒のつながりさ。系統魔法での〝魅了〟や〝敵意〟、特定の感情を発揮させる呪文は、この粒に干渉して中の流れを変えてるだけなんだ。だが、虚無たる〝忘却〟は違う。さらなる小さき粒に干渉して、記憶の中枢たる〝小さな粒のつながり〟の存在を消しちまうんだ」
「そんなこと言われてもわかんないわよ」
「とにかく、あのハーフエルフの娘っこが唱えた呪文は、紛れもなく〝虚無〟だよ」

人の記憶って電気信号だっけ?
それはいいとして、虚無は原子に干渉できる。
わかっちゃいたが、『忘却』ってこえーな。
隠密行動して総指揮官に戦う目的の記憶消せば勝てるじゃん。

「ダメ剣のお墨付きもでたし、間違いなくテファは虚無の担い手ってことで」
「相棒、ダメ剣ってひでーよ」
「ところで、虚無の担い手って何人いるわけ?」

デルフを無視してルイズが聞いてくる。
相変わらず可愛顔をしているテファは虚無の担い手の重大さをわかってない様子。

「四人、俺みたいな使い魔合わせれば八人だな」
「なんでわかるのよ?」
「ダメ剣。説明してやれ」
「ブリミルは自分の子供たちと一人の弟子に、それぞれ秘宝を渡したんだ。その〝力〟も含めてな。三人の子供たちは、このハルケギニアに三つの王国を開いた。担い手はその直系の子孫……、だから四人さ」
「トリステイン、アルビオン、ガリア、そしてロマリアね」

ルイズは頷きながら言った。ダメ剣も少しは役に立つ。
四人って正確に知ってるのは原作知識だ。まあ、これは言うつもりはない。
しかし、使い魔の四人目、おそらくテファが呼び出せば揃ってしまうわけだが。
伝説の使い魔。テファの歌を思い出す。

神の左手ガンダールヴ。
勇猛果敢な神の盾。
左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。

神の右手がヴィンダールヴ。
心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。

神の頭脳はミョズニトニルン。
知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。

そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。

最後の一人については何も情報はない。
原作でさえ描写もない。

ガンダールヴ、あらゆる武器を使える。
ヴィンダールヴ、あらゆる乗り物を使える。
ミョズニトニルン、あらゆるマジックアイテムを使える。
最後の一人、おそらくあらゆる何かを使えると考えられる。
そして召喚されるのはたぶん人間。
ルーンは胸に刻まれるらしい。
もしかして、あらゆるおっぱいのサイズを操れる?
そんな馬鹿な。

―――――――――――――――――――――――――

原作読者は察したようですね。
サイトは使い魔の契約で頭をやられていたんだよ!

――――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 64>
Name: castake◆d6014dec ID:39f22571
Date: 2010/07/18 00:31

SIDE:サイト・ヒラガ

「さて、休暇は終わりだ。帰るぞ」
「えー」

裏切りのアニエス。もうしばらく滞在するって言ったのに!
手紙を出していやがったか。アニエスをダメ人間にしようとぬるま湯に大分浸からせていたのにしっかり者ですな。
そろそろ、学院の奴らも気になるし、タバサフラグのためにも帰らないと。
タバサ、タバサっと……。
彼女にお兄ちゃんと呼ばせるんだ!

「先日、お前の生存を伝える報告をしたら、急いで連れて帰ってこいとのことだ」

アニエスは銃士隊の隊長の顔になっている。こりゃ帰還ですな。

「知らせちゃったのね。この薄情者!」
「サイトだって、手紙書いてただろ」

バレてた。
アンリエッタが帰ってこいと言えばアニエスとルイズは帰るしかない。
当然、俺が残るという選択肢はない。
無理に居座ればバカ女王が本気で連れ戻しに来るだろうし。

「お別れだね。短い間だったけど、楽しかった」

にこっと笑って、テファが言った。
本当は彼女を連れて行きたかったが、今はまだ早い。

「テファ、俺と一緒に来いよ」
「なに、口説いてるの?」
「私、行けない」

テファは悲しそうに言った。
子供たちを置いて行けないのだ。
俺より、子供たちのほうが大切なのね?
ま、その内、子供たちの居場所とテファの居場所を作って迎にくるぜ。

「ちぇ、助けが必要ならすぐに呼べ。それに、テファを必ず迎にくる。それまで待っててくれ」
「今、舌打ちしたわ! ティファニア。気を付けなさい。何か企んでるわ」

ルイズがまくし立てるが俺は気にしない。
物凄く、後ろ髪をひかれる思いだったが、テファとお別れのあいさつをする。

「あは、ありがとう。わたし、あなたに会えてよかった。じゃ、元気でね」
「テファも元気で。またな」

嬉しそうな笑顔を浮かべたテファとお別れをした。
グスッ、あのおっぱいがしばらく見れなくなるのか。


ロサイスにつくと、異様な風体の巨船の姿があった。

「迎えにフネを寄越すと言っていたが……、ヴュセンタール号とはな。驚いた」
「無駄金使いすぎですねぇ」
「何を言う。それだけサイト殿は重要人物ということだ。よかったな」

アニエスは嬉しそうに俺に言ってきた、なんだか隠し事してる顔に見える。
軍艦に乗り込むと艦長が迎えてくれた。

「ヒリガル・サイトーン殿ですかな?」
「サイトです……」

艦長は俺を胡散臭そうな顔で見つめた。
そりゃ、詳細を聞かされずに軍艦まで出して迎えた奴が平民の少年だったらそうなるか。

「本艦を代表して、歓迎申し上げる。あなたがたの航海の安全を保障します」
「そりゃどうも」

部屋に案内するためについた士官は、興味深々に俺に聞いてきた。

「いったいどんな手柄をあげたんですか? 国賓待遇じゃありませんか。驚きましたよ」

まあ、五万の敵軍をアレだけむちゃくちゃにかき回したからな~。
こいつが知らないってことは軍の上層部連中くらいしか知らんのか?
しかし、カリーヌさんが随分と噂を広めてたな。
『平民の賢者』から『平民の英雄』にジョブチェンジする勢いな噂でした。

「手柄は何かしらんが、空の旅を楽しむことにする」

士官は意味ワカンネ。みたいな顔を一瞬したが、部屋に案内して去っていった。

「誰もあんたがアルビオン軍を壊滅状態にしたなんて信じないでしょうね」

ルイズはカリーヌさんから聞いているらしく、真相を知っていた。

「私も話半分に聞いていたがラ・ヴァリエール家が直々に噂を広めているのでなんともいえん。ただ、サイト殿は我が国の英雄であることはかわりない」
「しらんね。人違いか見間違えだろ」
「ふ、黒髪で大剣を背中に腰に剣をつけた人物が戦地に向かっていくのを随分と目撃されているようだったが?」

そういや、詳しい道のりがわからなかったから何人にも道を聞いたな。
駄目メイドがそれを聞いて物凄い勢いで身体をすり寄せて話していた。
ルイズも反対側で身体を俺に預けている。
大人のアニエスは熱っぽい視線を向けているだけだった。
シュバリエになるのは構わんが、アホが図に乗るから嫌がらせしてやるか。

SIDE:アンリエッタ

王宮の執務室で、私は客人の到着を待ちわびていた。
このときのために、今日は午後の予定をすべてキャンセルしたのである。

「ラ・ロシェールまで、竜籠をまわしたというのに……」

サイトさんが渋った?
それとも駄々をこねたのかしら?
大人でも敵わない才気を見せる一方、どこか子どもっぽいところがあると思う。
入り口に控えた衛士に「まだですか?」と尋ねた。
私は先ほどから、同じ質問を何度も繰り返していた。

「アニエスさまは、いまだお見えになりません」

つい癖で爪を噛んでしまう。私はどうしたというのだろう?
気がつくとサイトさんのことばかり考えていた。
ホーキンス将軍からも烈風カリンからも彼は英雄だと聞かされている。
たった一人の剣士によって大軍が壊滅状態に追い込まれた。
この噂は今や軍の上層部のみならず平民の間にも届いている。
噂の元凶は烈風カリン、つまりルイズの母親である。
正体を知って驚いたが、噂を流しているという事実の方が驚いた。
彼女曰く、私たちは真実を伝える。それが「鋼鉄の規律」である。とのこと。
彼女の手柄にしてしまっては規律違反だと言う事だろう。

「銃士隊隊長アニエスさまご一行、ご到着!」
「すぐに通してください!」

私は立ち上がり、自ら一行を迎え入れた。

「ただいま戻りました」

執務室に入ってきたアニエスは、深く一礼する。
背後に控えたルイズと不貞腐れた顔のサイト。
それを見て、私は笑顔を浮かべた。
久しぶりの、心からの笑顔だと思う。

「お捜しになられていた、ミス・ヴァリエールの使い魔の少年をお連れしました」


SIDE:サイト・ヒラガ


シエスタは悲しそうに学院に帰っていったな。ラ・ロシェールで別れたが、別れ際に誰にも見つからないようにキスされたことは黙っていよう。
テファの事は秘密にしておこうと言ったが、ルイズが聞くはずもなかった。
まあ、しばらくは隠居生活になるだろうが、必ず迎に行くから待っててくれ。
ついでにげろしゃぶ、じゃなかった。シェフィールドの事をルイズが伝えていた。
俺は沈黙を貫いている。

アンリエッタはルイズの他にも虚無がいることに驚いていた。
しばらくルイズと虚無のことを話していたがついに俺に話が回ってきそうだ。

「安心して、ルイズ。わたくしがいる以上、あなたに指一本たりとも触れさせません。……で、あるならば、なおさら必要がありそうですわね」
「必要?」

アンリエッタが俺の前に来る。何だその目は。久々に合ったアンリエッタ。
元気そうでなによりだね。早く帰らせろ。

「あなたは英雄です。祖国を、トリステインを救ってくださった英雄です」
「……」

俺は無表情で聞く。

「ありがとうございます。何度お礼を言っても足りません。本当にありがとうございます」

王冠をかぶった頭を、アンリエッタは何度も下げた。しかし、俺は反応を見せない。
冷たい態度を変えない。
アニエスがそれを見てなにか言いたそうだったが、さすがに女王の前でいきなり身分の低い者が発言しては失礼だと思っているのか、黙っていた。
乳の谷間が見えるから続けたまえ。

「これを受け取ってくださいまし」
「紙?」

ルイズが俺に渡された一枚の羊皮紙を覗き込む。
文字の読める俺は心底嫌な顔をした。

「近衛騎士隊隊長の任命状ですって!?」
「そうです。タルブでの戦に始まり、過去、あなたは非公式に何度も私を助けてくださいました。それだけで、あなたを貴族にする理由は十分だというのに……、こたびはアルビオンで大活躍。あなたが我が国にもたらした貢献は、古今に類を見ないほどのものです。あなたは、歴史に残るべき英雄です」

確かに、軍艦で迎えに来るとかアニエスを使って捜索するなど、VIP待遇だったが、俺はそんなものでは心が揺らがない。
というわけで、渡された紙を破り捨てた。

「なんてことを!」

アニエスが叫ぶ。
重要書類を破り捨てるのは結構気持ちのいいものだ。

「どうして俺が貴族にならなきゃならん?」
「お願いできないでしょうか? ヒラガサイト殿」

泣きそうな顔でアンリエッタが聞いてくる。
俺は無表情で答える。冷たい男を貫くのさ。

「答えはノー、イヤだ。断るね」
「な、なんですって? いや、私の使い魔だからいいのか? いえ、断るにしてもやりかったってものがあるでしょ!」

混乱しているルイズは可愛かった。アニエスは殺すぞこの野郎という目で見てる。

「しらんね。それに、お守りはルイズだけで十分だ。近衛騎士隊隊長だって? アニエスさんがいるだろ」
「だからって、破り捨てるなんて失礼よ!」

アンリエッタはにっこりと笑った。いや、笑わないでくれ。何を考えてる?

「わかりました。近衛騎士隊隊長就任は、しばらく保留にしましょう。でも、あなたの〝シュヴァリエ〟の称号授与は、すでに各庁にふれを出してしまいました。断られたら、わたくしは恥をかいてしまうことになります」
「そっちも断る。てめーが恥をかこうが俺の知った事ではない」


SIDE:アニエス


なんて奴だ。いっそ強制的に就任させればよかったか。
シュヴァリエの称号は私の推薦だ。
いや、女王陛下もそれを見越していて各庁にふれを出していたのだ。それすらも断るか。
変わった人間だと思っていたがここまでとは。

「何が不満だ?」
「は? 俺は手柄を立てた覚えがない。それに手柄を立てたとしても貴族になるつもりはないね」

五万の大軍を相手にしたことを自分でないと嘘をつくか。何を考えているんだ?
こうなったら搦め手でサイトを意地でもシュヴァリエにしてやろう。

「ほう、出世すればティファニア嬢に居場所を与えられるぞ?」
「ゲルマニアで土地を買うくらいの金はある」
「領土の購入は貴族になると同等だが? それにゲルマニア? 聞き捨てならん。亡命する気ならば私は止めなければならない」
「誰が俺が買うと言った? 代役を立てれば問題ない」

平然と違法行為を言ってのける。
凄腕の剣士でありながら聡明な頭の持ち主だと忘れてしまっていた。
『平民の賢者』を相手にするとなるとこちらは分が悪いな。

「それは違法行為だ。逮捕するぞ」
「証拠もなければ行動すらしていない。よって逮捕することはできない。職権濫用だ。貴族になった途端権力を振るいますか?」

カチンと来た。ああ、絶対にサイトを貴族にしてやる。

―――――――――――――――――――――

マックからの書き込みです。
メインPCが壊れてしまい、危うくデータを失うところでした。
バックアップをとっておいてよかった。
みなさんも気をつけてください。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 65>
Name: castake◆d6014dec ID:39f22571
Date: 2010/07/19 21:58



SIDE:アンリエッタ

珍しく、アニエスが怒っています。しかし、そこはサイトさん。上手くあしらってます。
そこまで貴族になるのがイヤなんでしょうか?

「なぜ、なぜそこまで貴族になるのがいやなのです?」
「あ~? お前に従うのがいやだから」

頭を殴られたような衝撃が私に走る。
そこまで嫌いになられるようなことを私はしただろうか?
いや、嫌われる理由は多い。
多分、ルイズを戦地に向かわせようとしたことが一番の嫌われる理由だろう。。

「なら、従わなければいい。サイト殿は思うままに行動せよ」

アニエスが信じられないことを言う。
だが、譲歩案だと私は気づいた。
つまり、私に従うのではなく、サイトさん自身が思ったように行動すればいいだけの話。
ウェールズ様も役職にしばられるのが嫌だと言っていた。

「アニエスの言うとおりですわ。サイトさんは思うままに行動していいですわ。だからシュヴァリエを受け取ってください」
「それって、シュヴァリエなくてもいいじゃん」
「それでは女王陛下が恥をかく」
「しらん。勝手にそっちがやったことだ」

サイトさんは頑なに断る。だが、打開策はある。

「お金ですか?」

ぴくりとサイトさんの顔が動いた。

「女ですか?」

ビクリとサイトさんの顔が動いた。
やはり、サイトさんにはお金と女が通じるらしい。
男らしいといえば聞こえがいい。欲望に素直な人だ、と私は思った。
同時に年相応の感情を持ち合わせていることがわかった。

「シュヴァリエになるなら私を好きにしていいぞ?」

アニエスが爆弾発言をした。

「ほ、本人が嫌がってるんだからそこまでする必要ないわよ!」

ルイズが顔を赤らめてアニエスに言う。
そうだ。彼はルイズのためなら納得してくれるかもしれない。

「サイトさん。ルイズのためでもあるのです。名実共に騎士《シュヴァリエ》となり、ルイズを守ってくださいませんか?」
「ぐっ」

初めてサイトさんに動揺が見れた。

「ルイズからもサイトさんにシュヴァリエになるように進めてくれませんか?」
「う、でも……。うーん? サイト、姫様があんなに頼んでるんだから受けなさい」

サイトさんは物凄く嫌な顔をした。
しばらく考え込む仕草を見せた後、返事をくれた。

「しょーがねーから受け取ってやる。だが、勘違いするなよ? 俺はいつでもシュヴァリエを辞める気でいるからなっ。絶対やめるからな!」

本当にしぶしぶと言った感じで了解してくれた。
ルイズには悪いと思ったが利用させてもらった。

「はぁ、前代未聞のやりとりでしたな。結局主人の言う事を聞くか、私の勇気を返せ!」

アニエスが何か言ってますが気の変わらない内に、略式でこの場で〝騎士叙勲〟を行うことにした。
私は水色の水晶があしらわれた杖を掲げた。

「略式ですが……、この場で〝騎士叙勲〟を行います。ひざまずいてください」
「やだ」

仕方ないので立ったまま続ける。

「目をつむってください」
「断る」

もう、どうにでもなれ。
立ったまま、目を開けたまま、ただ見つめ合う。

「始祖ブリミルの御名において、汝を騎士に叙する」

聞いたことも無い騎士叙勲式を終えた。


SIDE:サイト・ヒラガ


初めからシュヴァリエは断るつもりはなかった。
ただ、嫌がらせをしたかっただけだ。
そもそも、タバサ救出でシュヴァリエを捨てるつもりだ。
それに、平民上がりの貴族に風当たりが強い年寄りの貴族達がいるしな。
なに、つかの間の貴族生活を楽しみますよ。

学院に帰る。
いやいや、泊まっていって。
断る。
泊まれよ。
みたいなやり取りで結局俺たちは王宮に一泊した。

前回と同じく早々に骨に見つかり今後の対策だとか政治処理を手伝わされた。
報酬として五百エキューもらった。さすが、戦争で儲けただけある。

英雄じゃ~、英雄様だ~。
軍の上層部に顔が割れてしまった。
何故かサインを求められたので適当に名前を書いてやった。
どうも、公爵家の力はすごいらしい。
お前平民の癖に調子こいてるんじゃねーよって言ってくる貴族がいないだと?
心のなかのことまでは分からないが表面上は友好的に見せてる。
こいつら、公爵家の肩をもつことで何かしらの利益を狙ってるな。
腹の探り合いを終えて用意されてた部屋に入った。寝室は何故かルイズと一緒でベッドは一つだった。
ルイズは仕方ないといって一緒に寝てくれたが、そういえば、あの日の約束をはぐらかされている。
今度こそ挿入だと意気込んでいたが、王宮だからイヤと言われた。
また、焦らしですか……。

翌朝。
トリステイン学院に戻るため竜籠に乗り込んでいた。
見送り役のアニエスにマントを手渡された。

「纏ってみろ。きっと似合う」

マントを羽織る。まあまあ、心地良かった。
グ●ン団のカミ●みたいな感じにグレ●団の刺繍いれたろか。

「またな、サイト」

アニエスにぐいっと首を引っ張られて、口と口がふれあう。
もじもじと恥ずかしそうに手を振るアニエスはやたと可愛かった。

「学院よ。私は帰ってきた!」
「サイト! サイトじゃないか!」

竜龍がアウストリの広場に降り立つと、何十人もの生徒が駆け寄ってきた。
その中で一番先に声を上げたのがこのバカ、ギーシュだった。

「なんで俺が帰ってくるって知ってんだよ?」
「昨日、王宮から学院に連絡があったんだよ」
「それに……君があの五万のアルビオン軍を壊滅状態にしたってもっぱらの噂だった! それを昨日付けで王宮が公認したんだ!」

アンリエッタのアホめ。ギーシュは興奮したまま、続ける。

「ここに集まったやつらは、アルビオン戦役に学生士官として参加して、きみのおかげで助かった連中だよ」

それぞれ感謝の言葉を俺に送ってくる。
数十人もの貴族生徒に取り囲まれ、俺は気分が悪くなった。
だって、男ばっかだもん。

「シュヴァリエの称号じゃないの!」

女の子成分の登場。モンモランシーがいち早く気づいた。

「な、なんだってー!」

ギーシュがわかってやったのか、天然でやったのかわからんが、ネタっぽいことをしてくれた。

「ほんとだ! すごいじゃないか! みんな! 見てくれ! サイトがシュヴァリエだぞ!」
「シュヴァリエになっちゃいました。てへ☆」

おおーッ! と歓声が沸いた。
みんなノリが良かった。

SIDE:モンモランシー


信じられない、わけじゃないが、サイトが貴族になってしまった。
本人曰く、どうしても姫様になれって頼まれたからなった、らしい。
サイトが帰ってきてから目まぐるしい日々が始まった。
まず、コルベール先生がキュルケとタバサが共にいなくなった。
なんでも、壮大なものづくりがあるという。
次に滞っていた事業がわずか二日で全て元通りになった。
さらに次の事業展開まで発案していた。
サイトの乗っていた飛行機が戻ってきた。どこかに預けていたみたいだ。
私の秘薬の効果を見るためだけにギーシュがボロボロになっていた。手紙の通り、決闘したらしい。
四日目になるとサイトがシュヴァリエの年金を一年分前借りしてきていた。
どうやったかしらないが、普通は年金は十二等分されて支給されるはずである。
本当は十年分ふんだくろうとしたが駄目だったらしい。当たり前だ。

サイトに対する貴族の反応は様々だった。

事業に組み込まれて参加している者は変わらずだった。
それ以外の人たちはサイトの戦果に恐れを抱くもの。サイトをバカにするものがいた。
しかし、それもすぐに消えた。
バカにした貴族は例外なく、決闘させられてサイトに負けていた。
そのたびに私が駆り出されて治療させられた。
コレも修行の一環とか。
ルイズとの関係は相変わらずだ。
兄妹のように仲がいいと思う。恋愛感情はあるのかしら?
惚れ薬の事件以来、私はサイトのことが好きになっていた。
相手はもう、貴族だ。それに出世間違い無しの上玉である。
早いうちに手玉に取ろうと思う。
この時の私はどうかしていた。そう、魔が差したのだ。

「サイト。抱いていいわよ」

ぶっ飛んだ言い方をしたと後悔した。

「なに? また薬か?」
「ち、違いうわよ! 好きになったって言ったでしょ? それにもうサイトは貴族だし、いいかなって」

呆れられたかな?

「気持ちはありがたく受け取る。しかし、いきなり抱いてとは」
「そ、それは忘れて。でも、これから私みたいな子が増えるわよ?」
「なんで?」

わかってないのか。
トリステインの盾、平民の賢者……、今では平民の間でかなりの人気がある。
学院にいる平民のメイド達は虎視眈々とサイトを狙っている。
あの色目や、デザートの差し入れとかに気づいてないのだろうか?
それに、サイトがその気になれば男爵位の階級になれるだろう。

「だって、貴族になった上に、今じゃ出世間違い無しの上玉じゃない。私くらいの家柄の子ならみんなサイトを狙うわよ」
「金に目のくらんだ亡者め!」

サイトはモテるのがイヤなのか?
いや、私がサイトがモテるのが嫌なのだ。
しかし、私の告白に対して気持ちを受け取ってくれた。
それだけで私は満足だった。

―――――――――――――――――――――――

人が事件を起こすんじゃない、事件が人を起こすんだ。
踊る3見てきました。

愛用のWindowsが故障したので、しばらくはMacで執筆になりそうです。
ストーリーエディタの利便性を実感しました。
Macでもストーリーエディタのようなものがありますが、結局慣れたものが使いすい。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 66>
Name: castake◆d6014dec ID:39f22571
Date: 2010/07/24 01:33

SIDE:サイト・ヒラガ

再三の近衛隊についての返答しろの手紙。
どうやら、マザリーニを味方につけたアンリエッタが強気になったらしい。

「もう、受けたら? その後、誰かに放りなげればいいのよ」

手紙の山を見てルイズが言う。
俺たちが魔法学院に帰ってきた日から僅か、三日目で手紙は山のようになっていた。
一日百通くらい催促が来てた気がする。
アンリエッタはヤンデレ属性までついてるのか?
あの時の笑顔の理由はこれだったのか。

「はあ、明日いってくるわ」
「そうしなさい」

ルイズとは部屋の中ではイチャイチャしてる。
今も俺の膝にルイズは頭を乗せている。
逆膝枕状態。
帰ってきてから紳士淑女条約の元、部屋の外ではいつも通り。部屋の中や、二人きりの時は恋人みたいにイチャイチャするようになった。

「今日も一緒に寝て」
「わかったよ。ルイズ」

最近はずっと一緒に寝ている。
しかし、キスと軽いお触り以外許可が降りない。
俺を生殺しにしたいらしい。ハリー、ハリーと急かしたのがまずかったか。

翌日の早朝、朝日が昇る頃にアンリエッタを叩き起させて近衛騎士隊副隊長に就任することを告げた。
するとアンリエッタ寝ぼけた様子を取っ払い、騎士隊を新たに作ると言い出し、その日のうちに実行した。
隊長はギーシュにした。俺は副隊長。
だって、平民上がりだと周りの貴族がうるさいし、正直、隊長メンドクセーし。それに、責任問題がでたらすべてギーシュの所為にするつもりだ。

「じゃ」

面倒事も嫌なので伝えることだけ伝えて走って帰った。


SIDE:ギーシュ

朝もやの中、ヴェストリの広場に僕たちは集まっていた。
僕らは緊張した面持ちで、自分たちの目の前に立った一人を見つめた。
黒いマントに身を包んだサイトである。

今日は水精霊騎士隊《オンディーヌ》設立日。
聞こえはいい。
なにせ、過去に存在した栄光を纏いし、伝説の近衛隊だ。
トリステイン王家と緑の深い水の精霊の名前が冠されたその騎士隊が創設されたのは千年以上前にさかのぼる。
しかし、数百年前の政紛の際に廃止されて、現在に至っていたのだが……、姫様がその名前を拾い上げたのだ。

そして、その隊長である僕を差し置いてサイトが一人だけ整列した貴族を前に立っている。

「号令」

サイトの威圧感は戦場を体験した僕たちには十分伝わった。

「おはようございます。サイト副隊長!」
「これから訓練を始める。その前に言っておく。俺のことはサイト軍曹と呼べ」
「サイト軍曹〜?」

マリコルヌがフザケた口調で言った。
バッチーンと乾いた音が響く。

「いいか、豚野郎。今からは俺が貴様の上官だ。覚えておけ」
「りょ、了解しましたッ!」

姿勢を正して返事をするマリコルヌ。
そういえば空軍で随分もまれたと言っていた。
それにしても、ビンタの動きが見えなかったぞ。

「俺は貴様ら、貴族が大嫌いだ。だが、喜べ。じっくりかわいがってやる! 泣いたり笑ったり出来なくしてやるからな!」

それを聞いて全員がビクリとなる。

「加えて貴様らに隊規を教える。復唱せよ」
「サー、イエス、サー」

全員が返事をする。
そう、僕たちは勘違いしていたのだ。これはタダの学生の集まりではなく、れっきとした軍隊になるのだ。

「死力を尽くして任務にあたれ!」
「「「死力を尽くして任務にあたれ!」」」

「生ある限り最善を尽くせ!」
「「「生ある限り最善を尽くせ!」」」

「決して犬死にするな!」
「「「決して犬死にするな!」」」


SIDE:サイト・ヒラガ


すまん。やりたかったんだこれ。
ギーシュに作らせた砂時計をとりだす。

「この砂が全て下にたまるまでに、学院を五周走ってこい」
「サー、イエス、サー」

全員が走り出す。うん。軍に志願して帰ってきただけある。
それなりに統率が取れてるな。
初日だから本来のメニューの半分にしている当たり俺ってなんて優しいんだろう。
待ってる間は俺自身のメニューをこなす。

「二人、遅れた。喜べ貴様ら! もう二周追加だ! 行ってこい!」
「サー、イエス、サー」

マリコルヌなんて泣いて喜んでる。
遅れる人数分だけ追加したら結局十周になった。
その後、各種筋トレを五十回。
ストレッチを一時間。
魔法を倒れるまで使用させたら皆倒れた。
水を全員にぶちまける。

「貴様ら! 今日は初日だ。以上を持って本日の訓練は終了とする!」
「サー、イエス、サー」
「追加報告だ! 一人辞めるごとに訓練内容を倍に増やしていく! 諸君の健闘を祈る!」
「サー、イエス、サー」

SIDE:ルイズ

汚い言葉が飛ぶ。サイトの激だ。

「じじいのファックの方がまだ気合いが入ってるぞ!」
「糞貴族ども! クビ切り落としてクソ流し込むぞ!」

一週間の間に全員が、サイトに泣かされていた。
私とモンモランシーは早起きして訓練の様子を見ていた。

「酷い罵倒ね」
「でもサイトは軍関係の本を一生懸命読んでたわ」

訓練が始まってからサイトは軍関係の本を読んでいるのを知っている。
全部、あいつらのためなのだ。

「へぇ、やっぱり、しっかりしてるわね」
「というか、なんでモンモランシーがいるのよ?」

さもここにいて当然のようにベンチで見守っているモンモランシーに聞いた。

「え、えーと、そう。怪我した時に治療するためよ」

嘘っぽかった。
でも、納得できる。
実戦形式の訓練ではお互いに魔法をぶつけ合ってるので水精霊騎士隊の生徒達は生傷が絶えない。
サイトも多数相手に戦ってる。あ、ギーシュがまた倒された。

「でも、よくみんな辞めないわね」
「やめたら訓練がキツクなるらしいわ」

私はサイトから聞いていたことを伝えた。
訓練が始まってからあまり私に構ってくれないのが不満だったが、訓練を見ると楽しそうだったので、何も言えなかった。

二週間が立つ頃。
訓練は朝は基礎体力。夜は魔法と実戦に変わったようだ。
そして、その日の夜。

「全員集合!」

サイトの号令に素早く全員がキレイに整列した。
見事なものだと思う。

「本日をもって貴様らはウジ虫を卒業する!
  本日から貴様らは水精霊騎士隊員である !
  兄弟の絆に結ばれる !
  貴様らのくたばるその日まで 、
  どこにいようと水精霊騎士隊員は貴様らの兄弟だ!
  時として戦場に向かう !
  ある者は二度と戻らない !
  だが肝に銘じておけ !
  隊員は死ぬ !
  死ぬために我々は存在する!
  だが隊員は永遠である !
  つまり———貴様らも永遠である!!」

全員が涙を流していた。何これ?

「サー、イエス、サー」

「これにて訓練課程を終了する! みんなよく耐えた!」

おおーッ! と歓声が沸いた。
それぞれ、うれし泣きをしたり、抱擁していた。

「サイト! 鍛えてくれてありがとう!」

全員がサイトにお礼を言っている。
貴族が平民に頭を下げている、もはや見慣れた光景だった。
サイトが全員と話を終えて私に近づいてくる。

「すまん。二週間ほど、奴らに構ってきりだった。夜は部屋で二人でゆっくりしよう」
「わ、わかってるじゃない」

キチンと私のことを考えてくれていたのが嬉しかった。


SIDE:マルトー

 「俺は俺だ!」

俺は貴族が嫌いだ。せっかくサイトが貴族になった。祝いたかったが、つい嫌味を言ってしまった。だが、サイトは変わらなかった。

「すまねぇ。ほんとのこと言うとな、俺はお前に嫉妬してたんだ……、平民から貴族になるなんて、こりゃ、人間が神さまになるぐれえ難しいことだからな! でも、今のお前の言葉を聞いて安心した。お前はお前だ。そうだな? 我らの剣!」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる!」

心の曇りを晴らすような言葉だった。
シエスタが大騒ぎで厨房に入ってきた。

「わたし! 異動になりました!」
「異動?」

なんのことだ? 聞いてないぞ。

「サイトさん……、わたし、わたし……」

どうやらサイトに関係あることらしい。
サイトが貴族になったと聞いた時のシエスタの落ち込みようはひどかったな。
なんというか、生きた屍だった。

「シエスタ、どうした? 落ち込んだのは治ったみたいだが」
「はい。ちょっと落ち込んでました。だってサイトさん、貴族になっちゃうんですもの。もう私のことなんて忘れちゃうよねって、どんよりしてました」
「忘れるかよ」

サイトはイイヤツだ。

「でも、もういいんです」
「だからいったい、何があったんだ?」

俺に尋ねられ、シエスタはぺこりと頭を下げた。

「今まで大変お世話になりました」
「はぁ?」

俺にシエスタは手に持った紙を見せた。

「こりゃ、女王様の署名じゃねえか!」

内容を読んで驚いた。

「なになに。サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ氏に、学院内より選びし使用人を一人つけること。なんじゃこりゃ」
「今朝方、王宮よりオスマンさまの元に、この一通が届いたんですって。したがってメイド長に、誰か選ぶようご命令なさったそうです。でもってメイド長はわたしを選んだんです。身の回りの世話をするなら、一番仲がいいわたしがいいだろうって」

ああ、そうゆうわけか。こりゃ、本格的に貴族の仲間入りだな。
でも、サイトなら大丈夫だろう。

「そんなわけで、よろしくお願いします!」

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分かる人にはどうしても分かってしまうようです。
執筆環境が変わったので少しばかり作品に影響しているみたいです。
仕事が絶賛繁忙期中なのも影響してます。
なるべくクオリティを向上できるように気をつけていきます。
ああ、げろしゃぶ、もといシェフィールドさんについてはハーレムに入れるか検討中です。

原作の最新刊でましたね。まだ読んでません。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 67>
Name: castake◆d6014dec ID:39f22571
Date: 2010/07/27 23:59
<ゼロのひどい使い魔 67>

SIDE:サイト・ヒラガ

何か大切なことを忘れてる気がする。そろそろ、タバサとガチで戦うのはわかってる。
エルフとも戦うのもわかってる。テファに関わることだったような。
駄目だ、思い出せん。なんだ、この喉に詰まった感じは。そこまで出てきてるのに何かが邪魔して思い出せない。
それに、俺は、アルビオンの復興とウェールズの即位で忙しいのだ。
トリステインとの戦争が終わって俺がテファのとこに引き篭っている間もアルビオンは復興活動してた。学院に戻ってからは水精霊騎士隊の訓練以外は王宮と学院を往復する日々。
俺を貴族にしたことをいいことに、何かと骨と姫様が俺を呼びつけるのだ。
そんな奴らは、ウェールズの即位と本格的なアルビオン復興で王宮を忙殺させることにした。

俺がやったことはウェールズを公の場に引きずり出したことと、アルビオンの復興計画を出したことだけ。後は放り投げた。

ルイズとシエスタの甘い日々を過ごしたっていいじゃない。だって男の子なんだもん。

「そんなわけで三人で寝てるわけです」

俺の右側にルイズ、左側にシエスタが寝ている。
女の子に挟まれて寝る。
これはいいものだ。
誰よりも早く起きて心地のいい感触と、目覚めたばかりの微睡んだ感覚を楽しむ。
シエスタの乳を揉んでもこの娘の眠りは深くて起きないのだ。(^ω^)

シエスタにいたずらしていると、ルイズがモゾモゾと動き出した。
なるほど、今日はルイズか。
シエスタが俺専属メイドになった日から二人は俺を取り合っているようだ。
目覚めのキス。
今日はルイズの勝ち。

「起きてる?」
「ああ」

俺の目覚めが早い事は知っているので、起きていることをわかった上でキスしてくるのだ。

「今日も、訓練?」
「サボるわけにはいかんのだよ。国のためと思って我慢してくれ」

国のため、姫様のためというのが殺し文句だ。
水精霊騎士隊の訓練は初めよりは緩くなっているが、十分キツイ内容でやっている。
ただ、単に隊員が慣れてきただけだ。
訓練風景が恒例となってきた頃、一つの問題が浮き彫りになった。

「あ、あの……、これ、読んでいただけますか?」

茶色のマントを羽織っている一年生、茶色の長い髪のケティと数十名の一年生。
初日から女子生徒の見学者が増え続け、数人だったはずの見学者があっという間に数十人になっていた。
英雄、鬼軍曹、ドS。俺の呼び方は様々。
俺への一年生女子の評判は良好らしい。
憧れの眼差し、なんだかイジメてオーラを放つ目線も混じって俺に向いていた。
水精霊騎士女子援護団とか勝手に作って差し入れをくれるのだが、その多くが俺に対するものだった。
隊長のギーシュはいつも通りのバカをやって引かれたので矛先が大分俺に向いた結果だと思う。

水精霊騎士隊にいるだけで、モテる。そう考えられている時期もありました。
一時期その噂に踊らされて多くの入隊希望があったが、厳しい訓練についてこれずに結局、創立メンバーから人数は増えなかった。

「ケティも熱心だな。俺は平民なのよ?」
「平民だなんて! サイトさまは英雄ですわ!」

女の子たちは、顔を見合わせて頷きあう。
五万の軍勢相手と訓練の様子がどうも俺の事を助長させているらしい。
それに、アンリエッタの平民でも優秀なら貴族になれる制度。
このことが以前モンモランシーが言っていた俺が出世するからモテるぞ! という予測を見事に当てることになってしまったのだ。
モンモランシーには押さえとけと言ったがどうやら無駄に終わった。
女子援護団設立に支援という名の手紙や差し入れ。
さすがに、女子で入隊希望の猛者はいなかった。
ただし、キュルケを除く。
ゲルマニア人なので丁重にお断りしておいた。だって問題になったらめんどうだもん。

「サポートはいいが、こういった個人的な手紙はよろしくないねって何度も言ってるだろ?」
「また、そう言ってお逃げになるの?」

詩とかラブレターに近い内容の手紙をケティ並び、一年生女子は渡してくるのだ。
二年生女子もちらほらいるが、モンモランシーとルイズが睨みを効かせているので人目のつく所での受け渡しはない。

「好意は嬉しいが、君たちは俺の手柄やありもしない将来を見据えての行動に見えるね」
「違いますわ! 私たちは純粋に応援したいのです!」

何度目かの同じようなやりとりに俺はうんざりしてた。
ある日を堺に断っても無意味だと気づいたので、考えるのをやめたのだ。

「はいはい、公衆の面前で渡されると主に俺の立場が悪くなるので止めろよな」
「わかりました! じゃあ、隠れて渡しますね!」

嬉しそうな顔をするのはいいが、それを言ったら意味ねーよ。

「サイトは随分と冷たいね」
「うっせー、ギーシュがヘマしなけりゃ今頃モテモテだったのにな」

君が一番だと何人に言ったか知らんが、短期間で一線を引かれるなんてある意味すごい。
もともと黙ってりゃ顔はいいのでそこそこモテてるみたいだが、性格が破綻してるな。

「ふっ、こう見えても影ではモテてるんだ。いや、隊長やってよかった」
「よし、じゃあ、俺は退役して副隊長はレイナールに任せよう」
「だめだよ。君、サイトがいないと女の子が来ないじゃないか!」

クソッ、だめだこいつ、早く何とかしないと。
訓練も形になっているし、俺がいなくてもいいはず。
副隊長をやめて、ルイズとセクロス、じゃなかったイチャイチャしたい。
なので、副隊長候補は既にレイナールに決めてある。

「はあ、副隊長はそればかりだな。僕には無理だよ」
「諦めんなよ……。諦めんなよ、お前!! もう少し頑張ってみろよ!!」

熱苦しくレイナールに言い寄ったが、コレも、もはや通じなかった。

「ああ、サイトさま×レイナールさま」

なんか、恐ろしいつぶやきが見学者女子の中から聞こえた気がした。
きっと、気のせいだ。うん、気のせい。大切な事なので二度言いました。


「王様、ウェールズ王じゃないの!」
「いや、サイトくん。普通に呼び捨てにしてくれたまえ」

トリステインに援助されているアルビオン王、アンリエッタの紐、ウェールズだ。
アンリエッタはあっという間に同盟を結んだ。
アンリエッタは婚姻したかったみたいだが、ウェールズがアルビオンを復興して落ち着くまでは駄目だと断ったらしい。
アルビオンはトリステインに戦で負けた。
その責任はオリヴァー・クロムウェルの処刑で償われた。
戦が終わって暇になった軍人を中心にレコンキスタ残党狩りに動いていた。
レコンキスタの残党狩りは速かったが「アンドバリの指輪」は回収されなかった。
アルビオンの戦力はほぼ、トリステインの所有物となった。というか、トリステインと戦いたくないのでトリステイン軍になっちゃえみたいな雰囲気だった気がした。
よって、暇なトリステイン軍の多くはアルビオン内政に協力させて現在アルビオン復興中。
日本の自衛隊みたいに軍が自国の安全を保つためとか復興作業やるとか珍しかったらしい。

ともあれ、アンリエッタとウェールズの婚姻はしばらく無理ね。
俺がアンリエッタをいただいてしまうぞ?

しかし、同盟を結んだおかげでウェールズはアンリエッタと普通に会っている。
とはいっても、やはり、二人とも忙しいので月イチペースでしか会えない。

「ウェールズ、久しぶりだな」
「二日前にあったのは私の記憶違いかな?」

復興プランを骨に出した俺は何故かアルビオン復興を手伝っていた。
ダルイので、ウェールズがトリステインに来た時だけしか手伝ってないけどな。

「そうだっけ? ウェールズはトリステインに用あり過ぎだぞ。来る度に俺も呼ばれるんだからなっ! わかってんの?」
「そう言われてもマザリーニ枢機卿から呼ばれれば来ない訳にはいかない。なにせ同盟国だからね」

治安維持、税の問題が解決され始めているので、それほど重要な用はないはずである。
なんだこいつ、俺に惚れてるのか?
いや、女装したウェールズは……orz
なんでもない。うん、ナンデモナイヨ。

「あー、次はアレのお披露目だなぁ。たぶんそれを見せるためだけにお前を呼んだな」
「最近噂の学生のみで構成されている水精霊騎士隊かい? なんでも、模擬戦をやるとか」

明日行われるゲルマニア皇帝との昼食会からの帰りの護衛、その後、現役部隊との模擬戦。
この予定は一般には護衛のみしか知られていない。
模擬戦は軍関係者のみにお披露目なのだ。

「まあな。俺は指揮官だから戦闘には参加しねーけど」
「確かサイトは副隊長じゃなかったか? 指揮官とは隊長がやるものじゃないのか?」

その通りだが、平民でも能力があれば指揮官もできるというパフォーマンス的な意味もあって俺が指揮官なのだ。戦うのが面倒だから指揮官になったわけじゃないぞ?

「隊長命令で俺が指揮官になった。あと、政治的パフォーマンスで平民が指揮を取れる所を見せたいらしい」
「そうかね。なるほど、最近ではトリステインも平民でも貴族になれる用になったからね。もちろんアルビオンも平民でも貴族になれる。というか、優秀な人物が欲しいからそうせざるを得ない」

人材不足ですからね。
ウェールズと色々世間話をしたら骨が入ってきて仕事させられた。


「超メンドクサイしー」

ゲルマニア皇帝との昼食会から帰ってきた女王の警護を務めていた。
警護といっても、要は新設なった騎士隊のお披露目だ。
トリスタニアの入り口で、俺たちはかねてからの計画通りアンリエッタの隊列に合流した。
王宮での序列に従い、その隊列は女王一行の最後尾だ。

「最後尾だからと言って気を抜いてないかい?」

先頭にいる隊長のギーシュが注意してくる。
道の両側に並ぶ市民たちの目を気にしているのだろう。
特にやることもなく、タダ、列に並んで馬で歩いているだけである。
ぶっちゃけ、暇なのだ。

「なんだあいつ。剣を背負ってるじゃねえか。平民か?」
「ただの平民が、どうして騎士隊に交じってるんだ?」

市民の声が聞こえる。
その中に目立オカマを発見してしまった。

「何言ってるの! みんな! あの子がサイトくんじゃないの! 彼が五万の敵をたった一人でやっつけたから、トリステインは勝ったのよ!」

スカロンであった。彼はかっぽかっぽと行進する俺に向かって手を振った。
みると、隣にはジェシカや、『魅惑の妖精』亭の女の子たちまで並んでいた。
スカロンのその言葉で、観衆の間にどよめきが走った。

ラ・ヴァリエール公爵家が流した噂は知れ渡っている。
しかし、市民から見れば俺はタダの少年にしか見えない。
噂の真相がわからない市民はどうやら信じていなかったようだ。

「まさか! どう考えたってただの少年の平民が、そんな大それたことできるわけがねえだろ!」
「こないだ銃士隊の隊長になられたアニエスさまだって、元は平民の出じゃねえか!」

市民同士の議論はアンリエッタが決着をつけた。わざわざ俺を呼びつけて、偉そうに白馬車の窓から手が差し出されたのだ。
さすがに今ふざけると殺されるので、仕方無しに手にキスした。

「シュヴァリエ・サイト万歳!」

居並ぶ市民たちの歓呼の声がうるさい。
余計なことしやがって。


SIDE:アンリエッタ

睨まれました。良かれと思って手を許したのですが、どうやらサイトさんは迷惑だったようです。馬車の中にいるマザリーニはニコニコ顔、最近は笑うことが多くなったと思う。

王宮に到着すると、護衛の騎士隊は当直の一部を除き、解散となった。
つい、目で水精霊騎士隊を探してしまう。
私が新設した近衛隊は、王宮の隅で談笑していた。
お披露目を終えた彼らは、これから模擬戦を行うのだ。
相手はヒポグリフ隊。
宮廷貴族から「学生の騎士ごっこ」と揶揄されている。
だから、模擬戦をして実力を見せるとサイトさんは言った。

相手をたかが、学生と侮った、ヒポグリフ隊は惨敗した。
それも、トリステインの盾と名高いサイトさんは指揮官。
采配も見事だったが、学生の動きと思えない統率された動きだった。
何よりも、賛美歌詠唱に近い合体魔法を見せたのだ。

隊長のギーシュを筆頭に土系統の術者が花びらを作り、それを風系統の術者が舞わす。
それを油に錬金。その後、火の系統の術者が火をつけてさらに風で炎を大きくする。
巨大な炎の竜巻がヒポグリフ隊を襲ったのだ。

「お見事です」

マザリーニが感嘆するように水精霊騎士隊に言葉をかけた。
宮廷貴族達は「学生の騎士ごっこ」の認識を改めた。
私も期待していなかったわけではないが、ここまでの成果をあげるとは思っていなかった。

「初手で倒せるとは思わなかったぜ。後二つ程見せたいモノがあったのに」

その場にいた水精霊騎士隊以外の全員が驚いた顔をしていた。
悪魔の笑顔を見た私はサイトさんの言葉に恐怖した。この人は敵に回してはいけない。
直感的にそう思った。

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ケティ登場しましたね。
この娘の扱いをどうすべきか。
お悩み中です。
さて、女の子が多く登場してきました。
どこかで、ガッツリと女の子達とのからみを書こうと思っています。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 68>
Name: castake◆ba36d0d3 ID:39f22571
Date: 2010/08/13 01:27

SIDE:サイト・ヒラガ


合体魔法は上手くいった。コツさえ掴めばドットの集まりでもできるんじゃね?
というか科学を知ってる俺がいるから科学と魔法の融合した合体魔法ともいえる。
水精霊騎士隊の隊員は訓練の結果、全員ラインまでレベルアップしてる。
ギーシュに関してはもう少しでトライアングルに届くとか言ってた。
水精霊騎士隊が使える合体魔法は炎の竜巻、氷の竜巻、土の竜巻である。
一番魔法消費が少なくて効果がでかいのが炎の竜巻だ。
単に炎をでかくすればいいだけなので、最低三人でできる。
とはいえ、合体魔法を三回使うと後は精神力切れで何もできなくなる。
そのへんが今後の課題だなぁ。
お披露目の戦いは相手が油断してくれていたから俺がいなくても大丈夫だったが、本来は俺が時間稼ぎとして戦うわけだ。
合体魔法は早い段階で取り掛かっていた。
というのも、全員個人戦が弱かったのでしょうがなく団体向きの戦いを考えて調べたら丁度いい合体魔法にたどり着いただけだ。
まあ、結果として現役の軍人部隊に勝てたのでよしとする。

「スレイプニィルの舞踏会?」

鏡で変身する舞踏会だっけ?
ということは、タバサとガチ勝負は間もない。
あと、げろしゃぶのシェフィールドが来る。
ルイズの隣で俺は食事している。
正面には水精霊騎士隊の連中がかたまって食事している。
テーブルマナーにはあまり興味がなかったがルイズがうるさいので一通り覚えた。
俺はルイズや女の子がするようなおとなしめな食べ方をしていた。
水精霊騎士隊の連中はがちゃがちゃと派手な音を立てて食べていた。
こりゃ、将来困るなあいつら。

「そうだよ、今度、新学期が始まるだろ? まあきみは知らんかもしれないが」

ギーシュがバカにしたような言い方だったのでムカついた。

「恐らく、歓迎会か、それに、一応お前ら貴族だったな。ということは社交界の予行練習も兼ねた歓迎会って所だろ?」
「その通りよ。でも、ただの舞踏会じゃないわ」

俺の右隣にはルイズ、左隣にはモンモランシーが座っている。
そのモンモランシーが答えた。

「仮装するのよ」

付け加えるようにルイズが続けた。

「魔法で仮装でもすんのか?」

知らないフリをして聞いた。

「〝真実の鏡〟を使ってね。その人が一番憧れているもの……、なってみたいものに化けることができるのよ」

ルイズが答えてくれた。
後ろで怪鳥の話をしていたが、俺は知ってるので聞き耳を立てるだけにしておいた。

「ほぉ~、面白そうだな」
「まあね」
「私は誰になるのかしら。ちょっと楽しみだわ」

モンモランシーは楽しみにしているようだ。
俺は仮装するつもりはないのであまり楽しみではない。

「なあきみたち。舞踏会もいいが、もっと騎士隊のことも考えてくれよ」

真面目なレイナール。合体魔法だけでは物足りないらしい。
俺も個人技が必要だと思っている。

「もっと陣容を強力にしたい。今のところ、シュヴァリエはサイトだけじゃないか」
「ド低脳な貴族め!」
「といっても、シュヴァリエなんてなかなかもらえる称号じゃないよ。サイト」

ギーシュがああ言えばレイナールはこう言う。

「一人知ってるぜ」


図書館の端っこにタバサはいた。いつの間に帰ってきた?
コルベールはある開発の為にキュルケの元にいるはずだ。
それについていったタバサが戻ってきているということは、完成間近、もしくは指令が来たということか。

「タバサを仲間に?」
「そうだ、確か彼女は〝シュヴァリエ〟だぜ。水精霊騎士隊の入隊条件は〝魔法学院の生徒に限る〟それだけだ」
「俺は生徒じゃねーし。そうか、じゃあ俺はもう辞めていいよね?」
「だめだ。だったら〝魔法学院で暮らすもの〟と変える。今決めた。そう決めた。ぼくが決めた」

レイナール、そこまで、副隊長イヤか?
事あるごとに俺は辞めて副隊長をレイナールにしようとしたが、実力不足を理由に断り続けられている。

「よし、その条件は飲もう。だが、タバサの勧誘は俺がする。そして、断られたらすぐ諦めろ。いいな?」
「ああ、わかったよ」

タバサは入隊しない。

「よお、キュルケはまだ、あっちにいるのか?」
 
タバサは頷いた。

「そうか、いつになったら帰ってくるんだ?」
「わからない」

つまり、完成間近ということで帰ってきたわけではなさそうだ。
こりゃ、指令だな。

「そんなことより、きみに頼みがあるんだ」

ギーシュが会話に割ってはいる。

「是非とも、ぼくたちの騎士隊に入ってくれないかね?」
「わたしはガリア人」
「いやぁ、残念だったな。じゃ」

俺はそれで、納得した。
トリステインの部隊にガリアの人間が入ってどうする。

「ガリア人だって問題あるもんか。なんなら客員騎士という身分だってかまわない」

いつの間にか後ろに立っていたレイナールが、そう言った。

「バカか、今は学生だが、卒業したらどうする? ガリアでシュヴァリエ貰ってるんだからこっちの騎士になるには無理があるだろ」
「む、確かに、しかし、客員騎士という身分ならかまわないはずだ」
「くどいぞ。レイナール。お前がトリステインでシュヴァリエを持ってるとしてゲルマニアの軍に入るか?」

苦渋の顔を浮かべるレイナール。そこまで嫌か。
納得したレイナールは図書館を出て行った。それに続いて俺とギーシュもタバサの元を去った。


SIDE:タバサ

退治して欲しい相手の名前と似顔絵を見て私は内心驚いた。
初めからおかしなことがあった。。
任務をガリアではなく、トリステインで授けること。
成功させたら母の心を取り戻せる薬が報酬なこと。
この女は彼の強さを知っている?
そうでなければ報酬が納得できない。
相手は強敵。
だが、母の病気を治せるなら少ない勝率でも挑もう。
私は心を凍らすように暗示をかけた。


SIDE:サイト・ヒラガ

本日はスレイプニィルの舞踏会である。
昼に駄目メイドの三文芝居にルイズを巻き込み、昼ドラのような愛憎劇に作り替えて仲良く遊んだ。

「この泥棒猫!」
「奥様がこの人をほうっておくのが悪いんですわ!」

鬼気迫る演技だった。脚本と夫は俺、妻、ルイズ、愛人、シエスタのお芝居でそれなりに楽しめた。

「なかなか、楽しめたわ。前に見たお芝居よりはましね!」
「サイトさんはお芝居も作れるんですね。すごいです」

二人はそれぞれ、感想を述べた。

「そりゃどうも。そろそろ舞踏会の時間だ」

昼過ぎから始めたお芝居に夢中になっている内に夕方になっていた。

ウォ●リーをさがせ。じゃなかった。ルイズをさがせ。
舞踏会に参加せずにげろしゃぶ、シェフィールドを退治しようと目論んでいたが、ルイズが絶対に私を探しだせと脅してきたので、参加するはめに。
オスマンがアンリエッタもこの舞踏会に参加してると言っていた。
そうか、やっぱりそうなるのね。
こんなもんに参加する意味はないんじゃね?
ウェールズは生きてるし、俺に惚れてるわけでもないはずだ。
会場を見渡す。
うん、アンリエッタが数人いるな。
げ、ルイズが二人いる?!
片方はアンリエッタだろうが、もう片方は誰だ?
お、本物のルイズ発見。

「よお、ルイズ」
「なんで、わかるのよ?」

カトレアさんの格好をしたルイズが聞いてきた。

「いや、カトレアさんの姿知ってるの俺とルイズくらいだろ」
「あ、そっか」

納得したみたいだ。香水の臭いでルイズだと確信できたのだが、内緒にしておこう。

「それより、お前になってる奴が二人もいるぜ?」
「誰かしら? 私が理想なんてなかなかわかってるわね」

拳を握り嬉しそうな顔をしていた。
とりあえず、近くにいるルイズ一号に近づく。
クンカクンカ。

「ちょ、なに臭い嗅いでいるのよ?!」
「少し位良いだろ。モンモランシー」

ルイズ一号、正体はモンモランシーだった。
アレ?
なにしてんのこの娘?

「どうしてわかったの? ああ、臭いね? 香水変えておけばよかったかしら」

モンモランシーは勝手に納得してしまった。
そして、モンモランシーはルイズとおしゃべりを始めたので、俺は壁際で佇むルイズに化けている人物の元へ向かう。

「あなたは?」

ルイズ二号、改アンリエッタは誰かが俺に変装している誰かと思っているらしい。

「俺は俺だ。ルイズに変装してるなんて変わった奴だな。お前」

ほんのり香る香水はアンリエッタのモノだ。
しかし、俺は知らない振りをする。
アンリエッタはもじもじとして聞いてきた。

「サイトさん?」


SIDE:アンリエッタ

 
私はサイトさんの姿をしている人物に聞いた。
サイトさんの姿をしている人が数人いるのでたぶん生徒の誰かだろうと思った。

「お嬢さん、誰かは知らんが、俺はサイトだ。剣までは仮装に含まれないだろ?」

そう言われて気付く。背中と腰に剣を身につけていた。
男性でも女性に仮装できることを知らないあたり、たぶん本物のサイトさんなのだろう。

「そうですね。どうやら本物のサイトさんみたいですね」
「なんで確信したかは知らんが、一曲どうだ?」

サイトさんは私の手をとり踊ろうと示してきた。
多少強引だと思うが断る理由もなかった。

「あら、私でよろしくて?」
「俺と一曲踊ってくださいませか? レディ」

手をとったままの一礼。こんなこともできるのだ、と私は関心してしまう。
私とサイトさんは踊りだす。

「あら、御上手だこと」

優雅にステップを踏む。
私はダンスが得意だったのだが、平然とそれに合わせられるサイトさんはすごいと思う。

「なに、あなたが上手だからそれに合わせているだけだよ」

私は興味がわく。サイトさんは異世界から召喚されたと知っている。
異世界でもダンスはあったのだろうか?
考え事をしてダンスをしていて周りに気づかなかった。
私が気がつくと、視線が私たちに集まっていた。
優雅に踊る私たちに注目が集まっていたようだ。

「ずいぶんと見られてたな。少しここを離れようか」

一曲踊りきった所でサイトさんは手を握り、強引に私を引き連れてベランダへ連れて行ってくれた。

「気持ちイイわね」

少し火照った身体を風が撫でる。

「そろそろ、君の正体を知りたいのだが?」

私はそれを聞いてどうしようかと思った。
いつも私に意地悪してくるサイトさんに私が意地悪してもいいはずだ。

「当ててくださいまし」

それを聞いたサイトさんは少し笑みを浮かべて答えた。

「アンだろ?」

ドキリとした。なんですぐにわかったの?
それに、この前の任務の時の呼び方。やっぱり、サイトさんなのだ。

「どうしてそう思うの?」
「なんとなく」

絶対に嘘だ。この人は確信して私の正体を知っている。


――――――――――――――――――――――

忙しさとパソコンの整備やらで更新が遅れました。
明日からお盆だヒャッハー。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 69>
Name: castake◆ba36d0d3 ID:59be1b63
Date: 2010/08/20 01:10

SIDE:アンリエッタ

「嘘、サイトさんは何か隠してますわ」
「はぁ、参ったね」

肩をすくめるサイトさんは何かを決意したような顔だ。

「アンの事を考えると、理想の相手は友達のルイズか、愛するウェールズか、俺くらいだと思った。で、男に仮装すると正体がバレたときに問題が生じる。よって、ルイズに仮装する。そう考えただけだ」

私は素直に関心した。
そして、心が揺らいだ。
私の事を考えてくれている。
サイトさんを見つめる。
口は悪いが優秀で頼りになる人。
私の恩人で、ウェールズ様の恩人でもある。
私はサイトさんに恩を報いてない気がしてきた。
彼に与えているのはお金だけである。

「なるほど、当てたご褒美として、私からプレゼントがありますわ」

私はサイトさんの頬にキスをした。

「気持ちは嬉しいが、今度は本来の姿でして欲しいね」

サイトさんは少し困ったように頭を掻いて答えた。

「それは、いずれ……」

そこまで言ってところでサイトさんに唇を奪われた。

「んっ、な、なにを?!」
「目覚めのキスさ」

サイトさんが言うと、同時にホールから、生徒たちが騒ぐ声が聞こえてきた。

「うわ! 魔法が解けた!」
「まだ舞踏会は終わってないぞ!」

私は理解した。もう、私の仮装は解けている。
目覚めのキスとはこのことだろうか?

「ルイズもそろそろ、こちらに気付く頃です。姫様はルイズのところへ」
「はぁ」

気のない返事をしてしまった。

「ルイズの見張りをお願いしますよ姫様。あと、会場からでないように」

そこで、気付く。私の呼び方が元に戻っていた。

「あなたは何をする気です?」
「説明する暇も時間もない」

それだけ言い残してベランダから去っていった。
全く、勝手な人だ。私は言われた通りルイズの元に駆け寄った。
一方的とは言え初めて彼からの頼みごとを聞いたのだ。
そして、キスをされたことにさほど抵抗感がなく、むしろ幸福感があったのは内緒だ。


SIDE:サイト・ヒラガ

ほっぺにチューされたからお返しに唇にキスした。今も後悔していない。
さて、今度はタバサだ。
本塔を出て夜の学院の中庭を歩く。
確か、ヴェストリの広場近くのベンチにいるはず。

「よお、一人か?」

タバサ発見。
こんな夜中に舞踏会にも出席せず、人の来ないベンチで本を読んでいる。
悲しい奴だな。

「舞踏会に出席しないのか?」

じっと本を見つめたまま、答えない。
聞こえているのに無視してるのだ。

「俺のことお兄ちゃんって呼んでもいいぞ?」
「ガーゴイル」

返答はイミフだ。
タバサが指差す空を見た。うん、月を背にガーゴイルが飛んでますね。
おい、杖を動かしてるの見えてるぞ。

「タバサ……、何をって。あぶねぇ」

氷の矢が俺めがけて飛んでくる。
ガッ!
ガガッ!
ガガガガガッ!
ガガガガガガガガガッ!
連続して飛んできた氷の矢《ウィンディ・アイシクル》を、俺は横に転がって避けた。
ちょ、量が多いって!
あぶねぇ、マジでやる気だよこの子。
デルフを引き抜く。

「なんのつもりだ? お兄ちゃんって呼ぶのがそんなにイヤか!」

返事は魔法だった。
タバサは氷の矢を四方八方に散らし、包み込むようにして放ってくる。
バシュシュシュシュシュッ!
デルフに魔法を吸い込ませたが量が多い。
吸い込みきれなかった分は日本刀でたたき落とした。

「嫌われたねぇ。お兄ちゃんって呼ぶのはナシでいいや。それより、攻撃してきた理由を教えてくれると助かるね」

タバサは杖を構えている。
タバサの表情は無表情を固めた仮面を着けているかのようにピクリともしない。
あの某SOS団所属の宇宙人にそっくりだ。

「命令だから」
「ならその命令を俺が上書きする。やめてくれ」

やはり、返事は魔法だった。
なんだと、某宇宙人はこれでよかったはずなのに。
一気に距離をつめてタバサの杖を狙う。
以前、戦った時にやった手を使ったのだが、対策を取られた。
タバサは魔法で跳ねてかわした。
ケガをさせないように手加減して振り回すが、ピョンピョンと躱される。

「ちっ」

蝶のように舞い、蜂のように刺す。
やられると鬱陶しい。
多少、攻撃魔法を食らうが、軽い。
しかし、タバサの動きは速い。
だが、決定打がない。
それは俺にも言える。
ガンダールヴの力をほとんど使っていない。
意識的に使わないようにしているのだ。
タバサを怪我させるわけにはいかないだろ。将来の嫁的に考えて。

「あいつはあれだ。暗殺者の動きだね」

デルフリンガーが感想を漏らした。

「だろうね。手数とスピードはたいしたもんだよ」
「相棒、なんで、心が震えてねぇ?」

ルーンの力(煩悩)を使えば勝てるだろう。だが、使わない。

「女の子相手に本気だせるか!」

俺は防戦一方に追い詰められていた。
俺が杖を狙って攻撃しているのがタバサにバレバレだった。
何度かの攻防が続き……。
俺はタバサと、十五メートルの距離を挟んで対峙した。
げろしゃぶまだ来ないか。
その時……。

〝何をてこずっているの?〟

頭の中に響くような声が、上空から聞こえてきた。

「げろしゃぶ!」

〝誰がげろしゃぶだって? 私はシェフィールドだよ!〟

やっときた。よし、また乳を見せてもらう。
ガーゴイルに駆け寄ろうとしたが、その前にタバサが立ちふさがる。

「タバサ、どいてくれないか? アイツを裸にしないと気がすまん」

タバサは、いつもの感情の窺えない目で俺を睨む。

〝どくわけないじゃない。この子は、北花壇騎士。わたしたちの忠実なる番犬だもの〟

「番犬だと?」

子犬の方が似合ってるぜ。

〝見ものだねえ。シュヴァリエ対シュヴァリエ。わたしの主人が小躍りして喜びそうな組み合わせだよ〟

タバサは中腰になって杖を構えた。
どうやら本気中の本気になったらしい。

周りの空気が、急に重くなった。魔力がオーラとなって、タバサの周りに陽炎のように漂う。
タバサの力が、具現化したような青いオーラが見える。
本気と書いてマジ。100%中の100%だ。

「タバサ。こっちも本気だすぜぇ」
「…………」
「無視かよ! 寂しいなぁ」

タバサは呪文を唱え始めた。

〝ねえ、ガンダールヴ。本気を出さなきゃ、あんたがやられるよ。わかってるのかい?"

「うるせぇ、げろしゃぶ。お前は乳をさらす準備でもしてろ」

"誰が、さらすか!"

「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」

同時にタバサは、詠唱に合わせて杖を回転させた。
氷の大蛇が杖に導かれて槍になり回転する。

「〝ジャベリン〟だ。威力は十分だな。食らうなよ相棒」
「俺を誰だと思ってやがる!」

瞬時に跳躍した。同時に、タバサも杖を振り下ろす。
剣と、氷の槍が交差する。

(タバサと兄妹プレイィイイイ)

〝ジャベリン〟が粉々に砕け散る。

「一本目は囮か!」

タバサがもう一本を発射すべく杖を振りかざすのが見えた。

(シルフィードも含めて3Pじゃあああ)

一瞬で駆け寄り、タバサを突き飛ばした。
その小さな身体に馬乗りになって、剣を振りかぶる。
やべ、タバサ可愛い。
少し表情が崩れ、泣きそうな顔をしていた。
それに見とれてしまったのだ。
タバサの表情は一瞬で戻り、杖を振った。

「ちぃ!」

馬乗りのまま氷の槍を砕く。
顔に破片が当たるが、タバサを守るように覆いかぶさった。
俺の顔からポタポタと赤い血が落ちてタバサの頬に当たる。

「……どうして?」
「俺たちを何度も助けてくれた。タバサを殺せるわけがねえよ」
「…………」
「余計なことなんか考えねぇで、自分がこうと思ったことをしてみろよ。気持ちがいいもんだぜ」

ドリルのアニキの言葉を思わず言ってしまった。
タバサの目が大きく見開かれた。
何故か涙を流された。
泣き顔萌~。
と思ってると。

〝どうしたの? 泣いたりなんかして。お前の任務は終わってないわ。早くとどめを刺しなさい〟

空気を読まないシェフィールドが言った。
俺は跳ね上がる。恥ずかしいことを言ったと今更ながら思ったのでそれをブツける相手をガーゴイルに定める。
跳躍、ガーゴイルのいる場所まで飛び上がり剣を叩きつけた。

「トドメ!」

飛び立とうともがくガーゴイルに剣を突き立てる。

〝ちっ、やっぱり北花壇騎士程度じゃ叶わなかったか〟

そう言った瞬間……。
上空から巨大な影が降ってきた。
羽の差し渡しは三十メートルはある……、巨大なガーゴイルだ。

「モン●ターハンターのモンスターか!?」

俺が叫ぶと、タバサがいつの間にか俺の横で杖を構えていた。

〝おや……、北花壇騎士殿。飼い犬が主人にはむかおうというの?〟

「……勘違いしないで。あなたたちに忠誠を誓ったことなど一度もない」

〝あなたの裏切りは報告するわ。〟

巨大なガーゴイルが羽ばたいた。
わざわざ俺たちの近くで羽ばたくとか嫌がらせかよ。
俺とタバサは吹き飛び、地面に叩きつけられる。
タバサのパンツを見ていたら、巨大なガーゴイルは俺たちを残して飛び去っていった。

「追うぞ!」

それを聞いてすぐに、起き上がったタバサは口笛を吹いた。
シルフィードが唸りをあげて飛んできて、タバサの前に着地する。
ひらりと跨り、タバサは俺を促した。

「乗って」
「おう!」
「追って」

短くタバサが命令すると、シルフィードは「きゅい!」と一声鳴いて飛び上がる。

―――――――――――――――――――――――――
ストックの残りが少なくなってきた。
最近忙しくてSS書く時間がねーよ。
さて、ありのままに起こったことを話すぜ……
PCを新調したら一週間立たないうちにHDDが壊れた。
超スピードとか初期不良だとかちゃちなモノじゃねー
もっと恐ろしい片鱗を味わったぜ。
―――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 70外伝モンモランシー編>
Name: castake◆d6014dec ID:59be1b63
Date: 2010/09/01 00:06

時間は少し戻り、惚れ薬の事件後の話

SIDE:モンモランシー

「はぁ」

私は一人部屋でため息をつく。
学院では私とサイトが付き合っているともっぱらの噂だ。
あの事件以来、サイトとは微妙な距離感が生まれている。
私がサイトを好きだとバレてしまっているので、私の方がサイトを敬遠しているというのが正しい。

『あなたは後悔する』

タバサが私に言ってきた言葉が今でも心に刺さっている。
確かに後悔している。どうすればいいのかわからない。

『困ったときは仲間に相談するといいって百年囚われた魔女は言いました』

サイトの話を思い出す。一人で行き詰まったら仲間に相談しろ、か。
私は仲間と呼べる人物を頭に浮かべる。
ルイズ、サイト、ギーシュ、キュルケ、タバサ、ミス・ロングビル。
この手の悩みを話すなら同性がいい。

ルイズは、駄目だ。サイトにバレる。
キュルケが一番恋多い女だ。
タバサ、私は苦手だ。
ミス・ロングビルは一番年上、サイトの秘書でもあるが色々な相談に乗ってくれる。
うん、まずはミス・ロングビルに相談してみよう。
彼女の部屋を尋ねた。

「それで、相談とは?」
「え、えーと、好きな男の子と仲良くなるにはどうすればいいのか聞きたくて」

ミス・ロングビルはニヤリと笑った。

「ミスタ・サイトと付き合ってると噂ですが?」
「それは誤解よ! つ、付き合ってなんかないわ」
「ミス・モンモランシ。素直に今の気持ちを伝えるといいかと思いますわ」

今の気持ち、か。
サイトの事が好き。
って、言えないわよ!
き、貴族だし、女の子だし。
できれば、相手から告白されたいと思うのは都合が良すぎる。
そもそも、付き合うとか以前に前みたいに気軽に話できる関係に戻りたい。
ま、まあ、告白して恋人同士になれれば、一番いい。

「はぁ」
「恋の悩み、ですわね。なら当人同士で語り合うのがいいと思いますわ。ミス・モンモランシ」
「ミス・ロングビルならどうしますか?」

大人の女性の考えを参考にしようと思い、聞いてみる。

「本当に好きな相手ならさっさと既成事実を作って責任を取らせますわ」

アレ?
知的で聡明なハズの秘書がおかしなことを言う。
ロングビルの言っていることを理解した私は顔が熱くなった。

「おや、まだミス・モンモランシには早い話でしたね。女の手の一つとして覚えておくといいですわ。まあ、ミス・モンモランシの相手がどのような殿方か知りませんが、相手の行動をよく観察して見ることですわ。それこそ、朝から晩までずっと観察すると今まで知らなかった相手の事を知ることができますわ」

前半の話はともかく、後半の話を参考にしよう。
私はサイトを観察することにした。

サイトの朝は早い。
日が昇るかどうかの時間帯に私は使い魔のロビンに起こされたのだ。

「なによ、こんな朝早くに……、ふぁああ」

ああ、そういえばサイトの観察だっけ。
急いで着替えてサイトの元へ赴く。

「なに、アレ?」

私がサイトの元に着いた頃にはサイトは汗だくで丸太と鉄の重りをつけて走っていた。
私は異常だと思った。
サイトのトレーニング?は必要以上に厳しいものだと思う。
誰も知らないサイトの一面を見た。
なんだ。影で物凄い努力していたんだ。
トレーニングを終えたサイトが私を見る。

「あん? なんでこんな時間にモンモランシーが起きてんの?」

上半身をタオルで拭きながら私に聞いてきた。
以前見たサイトの鍛えられた身体。
なるほど、こんなトレーニングしてればそうなる。

「べ、別に私がいつ起きていようが関係ないでしょ!」

サイトの問いに恥ずかしくなって叫んでしまった。

「あ~、女の子の日か。鉄分を含むモノを食うといいぞ」

何を言うか。
そう思ったが、冷静に考えるとなぜ男のサイトにアノ日の事がわかる?
ああ、そういえば、サイトは平民の賢者だ。
言ってることはイヤらしいが、気遣ってくれている。
ミス・ロングビルの言う観察は意外にも的を得ていると思う。

私は授業をサボってサイトを付け回す。
朝は誰よりも早く起きて鍛えている。
その後、ルイズの洗濯物をして、ルイズを起こす。
教室までルイズを送った後、生徒の使い魔と遊んでいた。

「なんで、モンモランシーがいる? 授業はどうした?」
「ち、調子が悪いのよ」
「重いのか? 女の子の日は大変だな」

くだらないサイトの言葉は無視して観察を続ける。
タバサのシルフィードと力比べしたり、キュルケのフレイムと綱引して泥だらけになったり、ギーシュのモグラと追いかけっこしていたが、よく見ると、コレは使い魔相手の戦闘練習だと思える。

「さて、昼飯なわけだが、モンモランシーも一緒に食うとか言いますか、貴族用の飯があるだろ?」
「今日はこっちでいいわ。それに、美味しそうだし」

どうやら、サイトの賄いはサイト自信が料理長のマルトーさんに教えた料理の試食も兼ねているらしい。
見たことも無い料理が並んでいたがサイトの料理の腕は知っているので私も一緒に食べた。

「美味しい。こんないいものをいつも食べてるの?」
「モンモランシーが付きまとってくるから今日は特別だ」

どうやら気を使わせてしまったらしい。
サイトはよく気付くなぁと関心してしまった。

午後、サイトと私は図書館にいた。
改めて気づいたが、サイトはいつの間にか文字を学んで読み書きができているのだ。

「そういえば、誰に読み書きを習ったの?」
「主にタバサ。後は独学、あ、これどうゆう意味?」

私は驚く。意外にタバサと仲がいいらしい。
そしてサイトが聞いてきた文章はかなり高度な論文の一説だった。

「うむ、モンモランシーはちゃんと授業受けてるのね。なかなか利口じゃないの」
「あ、当たり前よ」

ルイズには負けるが、筆記でも成績は良い方だ。
その私でも難しいと思う論文を読んでいるサイトは何がしたいのだろう?
サイトに筆記試験を受けさせたらたぶん上位に食い込むだろうな。

図書館を出て使い魔たちのいる広場にきた。

「お昼寝ですがなにか?」
「べ、別に?」

私にどうするか聞いてきたのだろう。
シルフィードの足元でサイトは寝転がり昼寝を始めた。
私もその隣で寝ることにした。
早起きもあってすぐに私は寝てしまった。

「イタッ」
「あ、起きた。起きる時間だぞ? いつまで寝てる?」

デコを叩かれた。
起こしてくれたのはありがたいが、もっと、こう、優しく起こして欲しい。
時刻はおやつの時間くらいだろうか。
授業も終わったらしく生徒たちが当たりに見える。

学院のテラスでサイトはミス・ロングビルと事業の話をしていた。

「清掃事業と食器、それに平民向けの風呂場、銭湯でしたね。後は医療系として水のメイジ達による格安の治癒のポーション開発ですか。それに、平民向けの学校ですか。はぁ、サイトさんは政治家ですか?」
「はっ。何をいまさら。タダの平民です。またヴァリエール経由で王宮に申請しといて」

本当にサイトは平民が好きなようだ。
事業の殆どは平民向けか平民のための事業だ。
平民がいないと貴族は成り立たない。
今では理解できるが、サイトは本当に同い年なのだろうか?

ミス・ロングビルとの話が終わりサイトは席を立つ。私も続いてサイトの後を追う。

「ミス・モンモランシはミスタ・サイトが好きなのですね。ならさっさと既成事実を作ることをおすすめしますわ」

私の耳元でロングビルがささやいて去っていった。

「あら? ミス・モンモランシ?」

クラスメイト数人の女子生徒がサイトを囲む。
なんだこれは?
女子寮は男子禁制だが、サイトはルイズの使い魔なので普通に出入している。しかし、クラスメイトの部屋に訪れていることを初めて知った。

「なによこれ?」
「サイトの悩み相談室イン女子寮」

サイトが答えた。
詳細はクラスメイトの女子が付け加えて答えた。
なんでも時たまこうして集まってサイトに悩みを聞いてもらっている。
そして、この集まりは参加者のみの秘密で参加者からの招待がなければ集まりに入れない極秘の会員制のシステムらしい。
もちろんこのシステムを考えたのはサイトだ。
私はサイトの招待ということで強制参加させられた。

会話の内容は勉強から恋の悩み、身体的な悩み、家庭の悩みなど。
クラスメイトの女の子達は全て包み隠さずサイトに話していた。
際どい話もあったが、相談している女の子は真剣な表情。
それにサイトは黙って聞いて真面目に答えていた。

「そうゆうことならまず……」
「なるほどぉ、そうよね」

サイトの答えに満足そうにクラスメイトの女子たちが頷く。
私もその答えに関心した。
随分と信頼されているようだ。

「で、ミス・モンモランシの悩みは?」

一人のクラスメイトが来てくる。
どうやら私の番らしい。
全員の話を聞いていて私だけ言わないという雰囲気ではなかった。
しぶしぶ答える。

「え、えーと、す、好きな異性と微妙な距離感なんだけど、これをなんとかしたいんだけど……」
「「ああぁ」」

女子たちが私をサイトを見る。どうやらバレバレのようだ。

「ん? なぜ俺を見る?」

肝心のサイトはわかってない様子。

「ミス・モンモランシはサイトとの距離感に不満があるようですわ」

一人のクラスメイトが確信をつく。

「あ~。だから今日はつきまとってきたのかぁ」

私はサイトに見つめられて顔が熱くなる。

「ミス・モンモランシの道は既に私たち全員が通った道ですわ」

は?
どうゆうことだ?

「ここにいる全員、サイトさんに告白してるのよ」

なんですって?

「どうゆうこと?」
「ま、みんなサイトが好きだってことね。彼ったら自分に対する好意には鈍感なのよ。直球で言わないとわかってくれないもの」

あっけらかんとクラスメイトは言う。

「その話はすいませんでした。まー、答えは決まってる。モンモランシー。お友達から始めましょう」

女子たちが微笑む。
はぁ、サイト攻略には高い壁があるようだ。

「そ、そうゆうことならお友達になってあげるわ」
「じゃ、これからもよろしく。モンモランシー」

サイトと握手する。
少しだけ嬉しかった。なんだ、私の悩みは多くの女子達が通っていたのか、そう思うと気が楽になった。


『あなたは後悔する』

タバサの心に刺さっていた言葉がキレイに抜けた気がした。

――――――――――――

外伝モンモランシーから始まりました。
しばらく各キャラの外伝が続きます。
というかこの話投稿したっけ状態。
かぶってたらすいません。
――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 71外伝アニエス>
Name: castake◆d6014dec ID:59be1b63
Date: 2010/09/19 18:02

某日

アニエスはとある人物について調査をしていた。

証言 平民A

「信じられない光景でした。何故って……。そりゃ、平民が貴族様相手に勝ってしまうんだもの。衝撃的でしたよ。ほんと。彼、あの少年がトリステインの英雄、サイトさんだって知ったときは、納得しましたね」

証言 貴族A

「私は幸運だった。ただ友人は……。ええ、彼に喧嘩を売ったのは私の友人でした。相手は平民ですから。こちらは貴族二人。なんら問題のないはずでした。ええ、単に私の友人は丁度彼女と喧嘩別れしたばかりで気が立っていたんです。その憂さ晴らしに街に出てたまたま彼とぶつかって喧嘩になってしまったんです」

証言 貴族B

「続きは私が話そう。喧嘩、アレが喧嘩といえるものか。私がいなければケガを負った貴族はどうなっていたものか。ああ、喧嘩の詳細だったか。そうだな。決着は一瞬だったよ。私が助けた貴族が杖を抜いて少年相手に『私を貴族と知っての行動か』と言い放ったのが間違いだったな。初めから問答無用で魔法を使ってしまえばよかったのだ」

証言 王宮貴族A

「彼には困ったものだ。最近平民の間で彼を支持する者が増えていると聞く。うん?ああ、平民が団結して貴族に歯向かう危険因子だと心配しているのかね。"それはない"なぜなら"彼が規格外だと全人類が認識"しているからな。君も感じただろ?動物的本能というか細胞が反応するあの感覚を」

証言 スクエアクラス貴族A

「……」
「喋ってもらわねばこちらが困る」
「……」
「はあ、タバサ殿。サイト殿をどう見ますか?」
「強くなっている。私たち貴族がクラスを上げるように彼もまた、強さが上がっている」
「実に興味深いお話になりそうです。失礼続きを」
「……、成長している。初めてルイズに呼び出された時よりもずっと強くなっている。そして、その成長は続いている。もし、もし彼がその気になれば一国の王を正面から堂々と攻めこんで殺害できるだろう」
「ちょ、ちょっとそれは言い過ぎかと」
「だけど、貴族は平民相手に油断している。成功する可能性は高い」
「つまり……」
「つまり、彼は、サイトは人間一人が振るう武力で国家を脅かせる程の力を持ちつつある」


サイト・ヒラガを調査する日々。
「平民の賢者」「トリステインの英雄」などの数々の称号を持つ。
軍隊の一つや二つを単身で壊滅する戦闘能力を持つ平民。
最も幸運なことは、我が国トリステインが彼を保有しているという事実。
そして、私の……

「あっるぇ~。アニエスさんじゃないっすか?」
「サイト殿。ここは王室ですが何故ここに?」

サイトに関わる資料をまとめ女王陛下に報告を。と思っていた矢先。
最も資料を見られたくない相手に出会ってしまった。

「何故ここにって、貴族を街で小突いたのを怒られちった。テヘ☆」

テヘ☆ではない。
小突いたというレベルじゃない。
死なないギリギリまで痛めつけておいてよく言う。

「貴族相手に相変わらずなようですな」
「基本貴族嫌いなんで。特に威張り散らしている男の貴族とかな~」

タバサ殿の言っていたこと。
それが私に、サイトの印象を変える。
隙だらけのようで隙がない。
気がする。
例えば、今私がサイトに斬りかかってもあっさりと私が殺される。
ゾクリと背筋に悪寒が走る。

「なぁに考えてるんすか~?アニエスさん?」

まるでこちらの考えを見透かしたかのような言葉。
心でも読めるかのような言動。

「い、いや、何も」

頬に生暖かい感触。

「な、何をする!」
「こいつぁ、嘘をついている味だ!」

頬を舐められた。
それは、いい。いや、良くないが。
いつの間に私に近づいたかわからなかった。
嘘を付いている味?
わけがわからない。

「な~んてね。いや、一度やってみたかっただけですよ。じゃ俺は学院に帰ります」
「……」

呆然と立ち尽くす私をおいてサイトは去っていった。
サイトに舐められた頬にそっと手を添える。

「サイトのバカ……」

サイトの行動はよくわからなかったが、ただやりたいことをやられたということだけわかった。
私は頬を触った手を唇に、そして、サイトの唾液がついた手を舐め取る。

「チュ、チュパ、しょっぱいな」

こ、これでは私が変態みたいではないか。
う、嘘の味がどうゆうものか知りたかっただけだ。

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最近バキを読み返しました。
短めです。すいません。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 72外伝フーケ編>
Name: castake◆d6014dec ID:59be1b63
Date: 2010/09/20 02:34

※15禁だと思ってます。


SIDE:フーケ

年齢23歳にして、男性経験なし。
いや、キスやデートくらいはあるが、その先はなかった。
マチルダ・オブ・サウスゴータと名乗っていた頃は女性としてまだ未発達だったし、
その後の盗賊生活に入ってからは己を鍛えるので時間を費やしていた。
恋愛をする暇もなく、盗みを続ける日々。
貴族に対する復讐のため。
そして、ティファニアのためにも……。

そんな私にも転機が訪れた。
学院に忍び込み破壊の杖は盗めなかった。
たかが平民にしてやられたのだ。
私の歩んできた人生、これから先歩んでいく人生でも二度とないと思える最も衝撃的な出来事だった。

私は盗みが本業だった。
そう、私はもう盗みをしていない。
なぜなら、私より盗みのうまい奴がいるからだ。
それに、世間的には私は死んでいるから盗賊業を再開すると色々とまずい。
それよりもサイトの手伝いが儲けがいいから再開することなど二度とない。

それよりも、重大なことがある。
私の心を盗んだ奴。私よりも盗みのうまい奴。
まあ、サイトの事だ。
気づいたときには恋に落ちていた。
まさか、年下の坊やに惚れるとは、私もどうにかしている。
いや、実際見た目よりも中身だ。
サイトはしっかりしている。
というより、全てが規格外。
考えることも、腕っ節も。
この学院の生徒たちのような精神的な幼さはない……とおもう。
貴族の老獪な爺ども相手にもスクエアクラスのメイジにも負けない才覚と実力がある。

その行動を恐らく一番近くで見てきた私だからわかる。
サイトはこの先大物になる。
女生徒、いや、女はそれを感じ取っている。
だからサイトはモテる。
私のところにもサイトに手紙を渡してくれという女生徒と取引先の貴族婦人、おおっぴらに出来ないが名門貴族の方からもお声が掛かることがある。

『ぜひあの平民の賢者様を婿に、いや、この際嫁にやってもいい』

と言われた時は決まって

『そう申されましても、サイトさんはヴァリエール家のモノですので』

これを言えばトリステイン貴族達は沈黙するしかない。
最もサイト自身はこの事をしらない。
うん、私って優秀な秘書ね。
良からぬ悪い虫は早めに駆除しておくに限る。

「はあ、いったい本命は誰なんだろうね。今のうちに奪っちまおうか?」

口にだして思い出す盗賊の本能。
サイトはある意味お宝だ。
なら奪って自分のモノにすればいい。

「はは、すっかり骨抜きになってたよ」

私は決意を固める。
淑女とは程遠い考えを思いつき私は笑った。

フーケこと、マチルダ・オブ・サウスゴータは今宵サイトを頂くことにした。

サイトが無防備な時を襲う。
サイトの一日の行動は把握済みだ。
ああ見えてサイトは強い。特に武器を持たすと敵わない。
そのサイトが唯一武器を手放す時がある。
それが……。

「坊や」
「ん?なんだ。ロングビルさんじゃないか、学院内ではロングビルさんと呼んでますがなにか?」
「誰に話してるんだい?」
「いや、何でもないっす……」

広場の隅にあるサイト専用の風呂場。
そう、サイトが最も無防備になるのが入浴時だ。

「相棒、なんだか様子が変だぞ」
「おだまり」

私は杖を抜いてインテリジェンスソードを土に埋めた。

「どうした?俺裸。無抵抗な人間に何する気だ~?」

杖を振りサイトを拘束。

ディテクトマジック…サイトが偽物でないことを確認。周囲に魔法感知なし。
サイレント…対象物の沈黙完了。
レビテーション…対象物を移動。
全てが一瞬の出来事。
過去どんな盗みよりも上手くいった。

自室に入り、扉にロック。
入念にディテクトマジックとサイレントをかける。
泣いても叫んでもこれで周りにはわからない。

「なんだ~?乱心か?!」
「正常だよ。ま、本来の職業に少しばかり戻ったけどね」
「俺、裸なんですけど?」
「構いやしないよ。手間が省けた」

サイトをベッドの上に拘束している。
魔法をかけた特製のロープ。
生身の人間ではまず引きちぎれないシロモノだ。

「目的はなんだ~?ご、拷問には屈しないぞ?」
「拷問?もっと良い事だよ」

するりと私は服を脱ぐ。
ドクンドクンと、心臓の音が聞こえる。
く、これほど、裸を異性に見せるのが恥ずかしいとは。
だけど、この先やることに比べれば!

「ちょ、何で脱いでんの?」
「なんでってサイトを襲う(逆レイプする)ためだよ」

私はパンツ一枚になりサイトの上に覆いかぶさる。
有無を言わせず唇を奪い舌を入れた。

「チュ、クチュクチュ、チュパ」

今までにない感覚。
自分がものすごく興奮しているのがわかる。

「ぷっはぁ」
「ハアハア、いきなりなにすんの?」

サイトが頬を赤らめて聞いてきた。
やばい。可愛い。
年下って思っていた以上に良い!

「何言っても説得力ないよ。こんなにしてさ」

私の下腹部に当たっている固いもの。
男を象徴するものが大きくなっていた。
嬉しい。
もっとしたい。
私は女としての喜びを感じていた。

「ぐぬぬ」
「だから無駄だって。そのロープ特製さ」
「くそっ。ハメられた。いや、ハメられるのか?」
「なにいってんだい?ま、関係ないね」

すっとサイトの大きくなったものを握る。

「いや、やめて~。犯さないで~」
「生娘じゃないんだ。大人しくヤラれな!」

私は湿ったパンツを脱いだ。
その時、窓ガラスが割れて何者かが侵入してきた。

「……」
「おや、ミス・タバサ。人の情事を覗きなんて悪趣味だねぇ」
「た、助けて。犯される~」

青い髪。
無表情が、その瞳は私を射抜くように見ていた。
やれやれ。

「はっ。アンタも同じ口かい?」

サイトに惚れているモノ同士分かり合える直感的な敵意。

「興が醒めたよ。このまま続けようにも私が殺されかねないね」

タバサは無表情のままサイトの拘束を魔法で解いた。

「……。無防備」
「いや、まさか身内に襲われるとは……」
「さっさといきな。サイトも"これから"気をつけるんだね」

サイトはタバサの使い魔に乗って私の部屋を去っていった。
さっきまでの事を思い返す。
ボッと顔が赤くなり私はベッドの上で悶絶した。

「~~~っなんて事を」

恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。
でも、気持よかった。

私は人生初、自慰をしてしまった。

――――――――――――――――――――――――

ギリギリだ。
18禁じゃない。きっとギリセーフなはず。
久しぶりのフーケ登場はお色気担当でした。

――――――――――――――――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 73外伝キュルケ編>
Name: castake◆d6014dec ID:59be1b63
Date: 2010/09/23 14:11

SIDE:キュルケ

私は思い上がっていた。
私の容姿に振り向かない男はいない。
今までがそうだった。
宿敵ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔。
サイト・ヒラガが現れてから私の価値観は変わりつつある。
露出は今まで通り。
でも、色気はサイトだけに向ける。

手に入らないものほど欲しくなる。
宿敵のモノほど欲しくなる。
今は私だけのモノとして欲しい。

サイト攻略の為に私は考える。
最善の状況は二人きり。
これをどう作り出すか。

ダメね。
ええ、全然ダメよ。女は度胸!
そう思った矢先。目的の人物を見つけた。

「というわけでサイト。デートするわよ」
「は?」
「いいから。いいから」

丁度考えながら歩いていた所にサイトが一人で現れたのが悪いのだ。

「唐突だな。まあ、悪い気はしないが」
「まあ、ね」

サイトと二人きりになれた。
私らしくもない。まるで初恋のように気持ちが高ぶっている。
ラグドリアン湖の縁で二人で座って湖を眺めている。

「キュルケがこんな乙女らしいとはね」
「べ、別にいいじゃない」

静かな空間で慎ましく食事をとり、湖で少し遊んで休憩。
自分でも笑ってしまえるほどの甘酸っぱいデートだ。

サイトは湖を眺めていた。
その目には何が見えているのだろう?
黒い髪、黒い瞳。
私は気がつくとサイトを凝視していた。

「ん?キュルケ、そんなに見つめてどうした?」
「な、なんでもないわ」

恋に恋してる?
いやいや、そうゆうのはとっくに体験済みだ。
でも、サイトを見つめるだけでドキドキする。
私にも乙女心があるみたいだ。
サイトと私の手が触れ合う。
私がサイトの手を握る。
そして、指を絡めて恋人同士がするような握り方にした。

「ほんと、どうしたんだ?」
「少し、こうしていたいのよ……」

手を繋ぐ。
それだけで幸せ。
どうしたんだろ。私。
サイトは年上のお兄さんのように、父親のように優しく手を繋いでくれている。
お互いに手を繋いだまま、湖を眺めている。

精霊の前でかわされた誓いは決して破られない。

『私が愛してるって言ったらどうする?』
『驚くね。嬉しいと思う』
『愛してるわ。サイト』
『うれしいよ。キュルケ』
二人は唇を合わせて永遠の愛を誓いました。

って、妄想している場合じゃないわ!

「サイト。何かお話して」
「さっきからおかしなキュルケだな、偽物か?いや、でも、おっぱいの感触は本物……」

サイトは何かブツブツと言った後、私のリクエストに答えてくれた。

「俺の世界では……」

相変わらずサイトの世界の話は面白い。
ガンダム?とかいう乗り物で戦う?話は結構面白かった。

「でだ。結局キュルケは何がしたいんだ?」
「デート?」
「質問を質問で返すなぁ」

うん。
もう無理。

「ちゅ」

唐突の私からのキス。
サイトが欲しい。

「キスの真意は?」
「強いて言えばしたくなったからしたのね。ダメ?」

触れ合う視線。
見つめ合う時間は一瞬だったのかそれとも一時間だったのか。

「私、恋してるわ」
「俺にか?」

私はコクリと頷く。
もう一度キス。
今度は軽く舌を入れた。
気持ちイイ。

「大胆な奴……」
「こんな風になったのはサイトが初めてよ?」

サイトは私の事を見ている。
特に胸の谷間を。

「触りたい?」
「あ、いや、そこに視線が行くのは男の性ってやつで」

私はサイトの手を握り私の胸に導いた。

「ちょおまw」
「なぁに?触りたくなかったの?」
「すごく……、大きいです……」

胸にある手は触れたままで動かない。
やっぱりサイトの心には誰かが住み着いているようだ。
可能性として、一番はルイズ。
それ以外にも候補が多い。
私はサイトの心を盗みたいのではない。
奪いたいのだ。

「サイト、私はサイトを手に入れるわ。これから覚悟しといてね」



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連続で甘い話を掻き過ぎました。
今回は短め。
本編書き溜め中です。
19巻読まないと。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 74>
Name: castake◆d6014dec ID:025b4777
Date: 2010/11/20 23:43
SIDE:サイト・ヒラガ

巨大ガーゴイルにはなんなく追いつくことができたが、その向こうに百メートル級の怪鳥がいた。そこにシェフィールドがいたのだ。
わざわざおびき寄せて俺たちを始末するつもりだろう。
だから、ガーゴイルの群れが現れた。

「持っててよかったギーシュ玉」

飛び道具の有効性と実用性を考えた結果。
ガンダールヴの力を引き出して繰り出す擬似エア・ハンマーだけでは対応できない戦闘もあるはずだ。
もしもの時のために、ギーシュに青銅で出来たテニスボールくらいの大きさの飛び道具を作らせておいた。
ベルトを改造して玉をはめ込める用にしてあるので、激しく動いても落ちないようになっている。
しかし、持ち玉は五発。
威力と飛距離は申し分ないのだが、ガーゴイルの数は数十匹はいる。
ビュッとガーゴイルに向かってギーシュ玉を投げつける。
ガンッ!
頭に当たったガーゴイルは墜落していく。

「それは?」
「後で話す!」

まさに、焼け石に水。ギーシュ玉を使いきってしまった。
タバサも応戦したが、一度魔法を使った切り、精神力は打ち止めになってしまったらしい。
遠距離武器が欲しいです……。
シルフィードに敵に接近してもらうよう指示した。
擬似エア・ハンマーの領域に入ったガーゴイルを、日本刀の餌食に。

(タバサのパンツ丸見えなんだよぉおおお)

バッサリと胴体が切られた数匹のガーゴイルが落ちる。
しかし、二匹生きてた。
俺は迷うことなく二匹に向かって跳躍して切り落とす。

「お~ち~る。タバサ~、助けて~」

降下する俺をシルフィードが急降下して拾ってくれた。
信じてたぜ。タバサ。

「無茶苦茶」


SIDE:タバサ


笑っているサイトを見て、私はこの人はどうかしていると思った。
この高さから落ちれば大怪我ではすまない。
それなのに、躊躇なく飛んだ。
私が助けると信頼しているのだ。
私はサイトに助けられた。
先程のサイトとの戦い。
サイトは手加減していたのだ。
私の知らない武器、技があるのに使わなかったのが良い証拠だ。
本当に敵わない。

「すまん。助かった。毎度のことだが、タバサには助けられてるよ」

それは違うと反論した。

「私はあなたに助けられた。この命は、あなたに捧げる」

本来なら殺されているはずだ。なのに、生かしてくれた。
コレくらいの対価は当然だろう。

「そりゃ、嬉しいね。尚更死ぬわけにはいかないよな」

ガーゴイル十匹以上に囲まれている。
この状況を打破する魔力は私にはない。
サイトの顔を見る。
全くと言っていいほど諦めた顔をしていない。

「どうして?」

そんな顔ができるの?
ガーゴイルは徐々に私たちを囲むように接近してきている。
さっき見せたエア・ハンマーのような技を出す素振りもしない。

「ほら」

サイトは私の遙か上の空に指を指す。
私は空を見上げる。
超巨大な黒い影から、炎が伸びた。
荒れ狂う炎だった。
うねる蛇のように伸びて、私たちに襲いかからんとするガーゴイルに絡みつき……、焼き尽くした。

「味方……?」
「〝あなたたち、何をしているの? 随分と楽しそうじゃない。いつのまにガーゴイルのお友達ができたわけ?〟」

聞き覚えのある声が響いた。


SIDE:サイト・ヒラガ

タバサフラグが立った。タバサフラグが立ったぞ~。

ハゲ無双。〝空飛ぶヘビくん〟という誘導弾でガーゴイルを蹂躙した。
あっという間に追い詰められたシェフィールドは慌てて逃げ出そうとしたが、俺がタバサの操るシルフィードで接近して、擬似エアハンマーを放ってやった。
再びシェフィールドは俺におっぱいを晒されて、泣いて逃げていった。
神の頭脳は心が弱いらしい。
学院に戻ったらルイズに怒られました。何故かアンリエッタも怒っていた。

翌朝……。
魔法学院から離れた草原に停泊している『オストラント』号を、集まった魔法学院の生徒や教師たちが、遠巻きにして見つめていた。
俺がキュルケに頼んでハゲの望みを叶えた形になった。
ハゲは狂喜乱舞といった感じで喜び学院の仕事をほっぽり出す始末。
まあ、俺の知ったこっちゃない。
それで、出来上がったのが『オストラント』号だ。
東方に行くために作ったと。
いや、キュルケと何もなくてよかった。

しかしながら、ハゲは天才である。
フネのデカさは百五十メートルくらいで巨大なプロペラが三つある。
動力が蒸気機関ってのが驚きだ。
いずれ蒸気機関車作ってしまうんじゃね。
こりゃ、コルベール研究機関を作って発明に没頭させた方が遥かにいいように思える。
だが、問題として、船籍がゲルマニアに所属してることだ。
俺の所持金だけじゃ無理だからキュルケに頼んだ。
よって俺にはキュルケに借金が出来ただけで、フネの所有権はゲルマニアにあるのだ。

「サイト、逢いたかったわぁ」

ボヨォンと胸を押し付けて抱きついてきた。

「胸を押し付けるな、息を吹きかけるなよ」
「もう! いいじゃない! あと、お金は結婚してくれたらチャラでいいわよ」

会えなかった分、激しくスキンシップしてくるキュルケ。

「んっ」

いや、隙だらけだったのは認めよう。
だからといって、ルイズ、ギーシュ、モンモランシーとその他生徒の見守る中でキスするとはね。
お決まりのコース。
ルイズが俺に愛の鞭という名の暴力を振るってくる。
それに協力する形でモンモランシーが参加してるんじゃねーよ!
こっちはタバサとシェフィールドの戦いで疲れてんのよ?!

SIDE:ルイズ


自分の部屋で、姫様と向き合う。
部屋の隅でサイトがボロボロになった姿で寝ているが気にしないでおこう。

「姫様」
「ルイズ」

私と姫様がお互いを呼び合う。
話しあうことは決まっている。
サイトの事だ。

「一体誰が好きなのでしょうね?」

姫様がポツリと漏らした。
相談相手に姫様を選んだのはウェールズ様という恋人がいるから参考にしようと思ったからである。

「それが、サッパリ分かりません」

私だと言いたかったが、キス以上の行為はほとんど許していない。
こ、こ告白したわけじゃないから恋人同士ではないのは確かだと思う。

「サイトさんは随分といろいろな女性に好かれてますね」

メイド、キュルケ、モンモランシー、一年の女の子達、胸お化け、それにたぶんタバサ。
で、でも、キスしたのは私とキュルケだけだもん。←アンリエッタの事を忘れてます。

「戦で活躍してから一層、サイトを想う女の子が増えてます」
「平民の間でも大相な人気がありますよ? 私の元にまで噂は届いてますわ」

私はガクリと力が抜けた。

「まあルイズ、しっかりしなさい。そうです。サイトさんと既成事実を作ってしまえばいいのですわ。意外とサイトさんは責任感が強いですから!」

興奮した様子で姫様は言う。
駄目だ、この人。私はなぜこの人に相談したんだろう。

――――――――――

忙しくて気づいたらあっという間に月日が流れてました
書き溜めをしたので月一くらいで更新できるはず
久々に本編を書いたので何か不具合があれば感想に書いてくれると助かります

――――――――――



[18630] <ゼロのひどい使い魔 75>
Name: castake◆d6014dec ID:025b4777
Date: 2011/06/25 22:50

気がついた時には遅かった。
キュルケの誘惑やハゲの相手をしていたせいでタバサを少しの間だけ放置してしまった。
そして、タバサの部屋に行ったときには部屋は抜け殻だった。
困った時のゲルマニア人。
俺はキュルケ部屋で事情を話した。
ミョズニトニルンと名乗る謎の露出狂の女に襲われたこと。
タバサが俺を襲ってきたこと。
キュルケ考え込む仕草を見せた後答えた。

「まったく……。あの子ったら、何にも言わないんだから。ほんとに水臭いわね」
「タバサにはタバサの事情があるんだろ。それより、助けにいかないとなぁ」

キュルケは真剣な顔つきになる。

「サイトは、タバサがただの貴族じゃないってことに気づいてる?」
「ガリア人ってのは知ってるな」
「あの子はそのガリアの王族なの」
「な、なんだってー(棒読み)」

キュルケはタバサの事を説明してくれた。
現国王の弟であったタバサの父親のオルレアン公が、現国王派に殺されたこと。
タバサの母親は、タバサをかばって毒をあおぎ、心を病んでしまったこと。
そして、厄介払いでトリステインに留学させられたこと。

「そんな仕打ちをしておきながら、面倒な事件が起こると、あの子に押しつけるのよ」

火のような怒りが浮かぶ。
キュルケは怒らせたら笑顔で人を刺すタイプだなぁ。
気をつけよう。

「ということは、ラグドリアン湖のも今回の事も命令ってわけね」

キュルケが頷く。
さて、どうやって助けだすかな。
ハゲのフネはゲルマニアのモノだからアレで動くとガリア VS ゲルマニアの大戦争になるな。却下。
ゼロ戦で行くとしても乗れるのが二人。ルイズと俺で行くとして、タバサの母親をさらった軍隊がたしか三百人くらいいたはず。それプラス、エルフとの対決。二人じゃ無理だね。却下。
やはり、姫様にシュヴァリエを叩き返して逃亡するのがいいだろう。嫌がらせにもなるし。
もともとシュヴァリエなんて称号なくても困らない。
考え事を見抜かれたのかキュルケが話しかけてきた。

「そのうち連絡がくると思う。動かないほうがいいわ。今は信じて待ちましょう」

キュルケは、窓の外を見つめて言った。心底、信じきっているといった声で。
だが、今回は放っておいたら帰ってこない。エルフ特製の薬を飲まされるからな。
アンリエッタ嫌がらせのための計画を立てるか、少し待っててくれタバサ。

「ルイズに話していいか?」

エルフの対策としてルイズの虚無が必要だ。

「話したほうがいいでしょ。あの子も、巻き込まれてるんでしょ? 参っちゃうわよねえ、伝説の担い手なんかになっちゃうと……。あのヴァリエールには荷が重すぎるわ。〝虚無〟なんてねぇ。まったくねぇ」
「なんで知ってる?」

キュルケがルイズの虚無を知るはずない。
ウェールズイベントなかったし、ルイズが虚無を使ったところを見せたわけでもない。

「コルベール先生がサイトが伝説のガンダールヴだって口を滑らせたわ。そこで調べたら"虚無"に突き当たったわけ。それに、ルイズの四系統じゃない爆発する魔法。〝虚無〟じゃないかって……。サイトの態度を見るに、当たりだったみたいね」

ハゲェエエエ。
キュルケはにやっと笑っていた。


SIDE:アンリエッタ

不気味だった。ルイズの部屋で昼食をとると言ったのだが、そしたら、サイトさんが料理を振舞ってくれるというではないか。
部屋には大きなテーブルが用意され、そこにルイズ、ギーシュが座っている。
給仕役はシエスタ。
私は不気味に思う。
料理は食べたことないものが多かったがそれ以上に美味しかった。
わざわざ、私の為にサイトさんが作ったのだ。
ギーシュさんの話に耳を傾けながらも私は考える。
なぜサイトさんが料理を振舞ってくれたのか。
タダの料理自慢だろうか。
すると、扉が開いて、神妙な顔のサイトさんが入ってきた。

「お口に合いましたか? 最後はルイズの好物です」

不気味に感じる原因の一つとして丁寧な言葉づかい。
さらに執事のような態度。
ルイズもギーシュさんもメイドも気にする様子がなく普通にデザートのクックベリーパイを食べている。
私も一口食べた、王宮のデザートより美味しかった。

「アンリエッタ女王陛下」
「なんでしょう?」

美味しいものを食べて、つい、気が緩んでしまった。

「俺を襲った連中の正体がわかりました」

話を聞くと、ガリア王国の仕業だという。
タバサという子は命令でサイトさんを襲った。
なるほど、さっきからの態度は私にガリアに行くことを了承させるための行為か。

「サイトさんはガリアに行きたいと?」
「まあな」

ギーシュさんが驚いた声をあげた。

「ガリアに乗り込むだって! おいおい、戦争になるぞ!」
「なに、隠密に行動するから大丈夫。アルビオンの時もなんとかなったろーが。だからお前はヘタレなのだ!」

ギーシュさんがビクリとなった。
彼を連れて行く気だろう。しかし、今では彼らはトリステインの騎士。
国際問題になる。なにかと行動が目立つサイトさんもきっと大問題を起こすに違いない。

「とりあえず、わたくしにお任せください。何か証拠になるものはあったかしら……」
「ガーゴイルの破片がある」

ドンッとテーブルの上に破片がおかれた。

「それがガリアで作られたものだと証拠を得たら、大使を呼んで厳重に抗議いたします」
「じゃあ、頼みます」

意外にも食い下がらなかった。一抹の不安を抱え私は王宮に戻ることにした。

SIDE:サイト・ヒラガ


その夜……。
俺はギーシュたちと、水精霊騎士隊のたまり場で会議をしていた。
たまり場というのは、コルベール先生の研究室の隣にしつらえられた、ゼロ戦格納用の小屋である。余ったスペースに机を置いて、周りに古くなって使われなくなった椅子を並べると、そこは会議室に変身するのだ。主に居酒屋みたいに酒を飲んでいるらしいが、たまに俺が会議と称して議題を叩きつけるのだ。
偉そうに会議だの議題だのいうが基本はエロい話と誰が誰を好きかとかの馬鹿話が多い。
だが、今日は違う。

「今日は真面目な話だ」

全員が俺に注目している。今後起こす予定を話す。
水精霊騎士隊として、タバサを助けに行くための許可を姫様にもらいに行く。
だが、それは断られる。
よって、一芝居打つ。

「その協力者がキュルケだっていうのかい?」
「キュルケには話は通してある」
「さすがサイト、仕事が速い。そこにシビれる。憧れるぅ~」

マリコルヌがいい感じに育ってるな。
痩せればモテるのに。
その時、格納庫の扉がばたん! と開いた。
腕組みをしたルイズとモンモランシーを筆頭とする、女子生徒たちである。

「いつまで話してるのよ。門限八時でしょー!」
「事業のことで話があるといったのはサイトでしょ? 待たせないでよ!」

ルイズが怒る。モンモランシーも怒ってる。他の女の子も騒ぎ始めた。

次の瞬間、がぼッ! と板を張っただけの格納庫の天井が抜けて、俺の上に何かが落ちてきた。
素っ裸の女だ。誰よりも早く俺は見た。
そして、受け止めてやる。
青い長い髪の綺麗な女性であった。
年の頃は二十歳ぐらいだろうか? 
騎士のやつらは、目をまん丸に見開いて凝視した。
白い、雪のような白い肌を惜しげもなくさらしている。
こいつが、シルフィードね。すげぇ、かわいいじゃねーか。
現物はやっぱり、いい。

「きゅい……」

萌えた。
これ以上裸を放っておくと俺が死ぬのでマントを羽織らせた。

「会えてよかった~~~! きゅいきゅいきゅい!」
「おわっぷ」

生チチが顔に当たってますがな。抱きつかれたのはいいが、迫り来る死の気配に感づいたので突き離すことにした。

「大変なのね! 大変なのね! 大変なのね!」
「お前の頭の方が大変だな」
「いったいなにが大変なのよ。というかあんた誰よ?」

ルイズが怒って問いただす。

「お姉さまを助けてなのね!」
「わかった」
「ちょっと待ちなさいよ! 全く話がわからないわ! それに怪我してるじゃない!?」

モンモランシーが怒りながら治癒を始める。器用な奴だ。

「まあ落ち着けよ。こいつはたぶんタバサの関係者だろ」
「なんであんたは落ち着いてるのよ! は、裸見た癖に!」
「そ、そうなのね。わたしはイルククゥ。お姉さまの妹なのね。あ、お姉さまってのはここでいうタバサその人なのね」
「タバサの妹だって?」

ギーシュが疑問に思っているみたいだが放っておこう。

「とりあえず、事情を話せよ」

俺がそういうと、イルククゥはたどたどしい言葉で説明を始めた。
タバサが裏切った結果、ガリア王政府はタバサのシュヴァリエの地位を剥奪し、その母親を拘束する旨、伝えてきたこと。
タバサは母親を救い出すために、単身ガリアに向かったこと。
しかし、そこで圧倒的な魔力を誇るエルフに捕まってしまったこと。

「それで、俺に助けて欲しいってことだろ?」

きゅい、とイルククゥは頷いた。
擬人化最高。

「……この女性は、きみを襲ったガリアの手の者なんじゃないかね?」

俺が襲われたことを聞いたギーシュが、疑問の表情を浮かべた。

「タバサが囚われになって、それを助けてくれって言い分もなんだか怪しいわ。もしかしてワナなんじゃないの?」

モンモランシーも疑いの眼差しをイルククゥに投げつける。

「ふん、少しはモノを考えるようになったな。イルククゥ、なにか証拠を見せてやれ」
「なによ、偉そうに」

モンモランシーは文句を言ったが何故か顔を赤らめていた。


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生存報告

とりあえず生きてます。
富樫並の更新度ですが完結までは持って行きたいと思ってます。

報告のあった誤字修正

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 76>
Name: castake◆d6014dec ID:025b4777
Date: 2011/07/30 18:58
SIDE:サイト・ヒラガ

イルククゥ、シルフィードの行動に誰も疑問を抱かなかったのか。
結局、「この風竜が頷くなら、信じざるを得ないな」、「使い魔だもんね」という理由でイルククゥの話は信じられた。
露骨に入れ替わっていたのに誰も気づかないのか?
なんなの?
馬鹿なの?
死ぬの?

さて、一人でガリアに向かったタバサ。
どうずるべきか?
という俺の問いかけかけに、ギーシュや騎士たちは、うむむ、と眉間にしわを寄せ、考えこんでいた。
ガリア王国はハルケギニア一の大国で魔法先進国だ。
だが、これからの予定を教えてあるのだ。
目と目があった。
勘のいいレイナールが発言する。

「……、おほん。ぼくたちは、女王陛下の騎士なんだぜ? 好き勝手に動けるわけない」

その発言に俺が答える。

「いや、騎士として、見過ごすわけにはいかないなー」

水精霊騎士隊の生徒たちは、真っ二つに意見が分かれる。
クラスメイトを助けに行かないで、何が騎士だ、という俺を筆頭とする一派。
相手は外国である。ぼくたちが首を突っ込むわけにはいかない、というレイナールを筆頭とする一派。
それを見守る。女性陣。
そう、これはギーシュモテモテ作戦の一つ。

「よお、隊長。どうする?」

決められたセリフ。
ギーシュは格好をつけて答える。

「こうゆうことには、きちんと筋は通さなきゃダメだな」
「筋?」←俺
「そうだ。きちんと姫さまに報告して、援助なり協力を仰いだ上で、ガリアに乗り込む。盗賊団やそんじょそこらの怪物を相手にするわけじゃないからね。相手はガリア王国だ」

意見の分かれた隊をまとめる所を女性陣に見せて隊長の人気を高める。
ギーシュがモテたいとうるさかったので予定に入れてやった。
ルイズ、モンモランシーは怪しげな顔でギーシュと俺を見ていたが他の女の子はうっとりとギーシュを見ていた。
ギーシュは全員を引率する形でコルベールの所へ向かう。

俺はキュルケに知らせるために別行動をとる。
なぜか、ルイズとモンモランシーが引っ付いてきた。

「どこ行くの?」
「ちょっと、さっきのアレは何よ?」

モンモランシー、ルイズの順で聞いてきた。

「歩きながら話す」

ギーシュモテモテ作戦のことを掻い摘んで説明した。
二人とも呆れた様子だった。
キュルケの部屋に入る。

「なによー、こんな夜更けに……」
「寝ぼけ姫。タバサがガリア王国に拘束された。プラン発動だ」
「なんですってぇ?」

キュルケにはかもしれない。という曖昧な表現でタバサが拘束されることを教えておいた。
そうなった時、アンリエッタに強烈なお芝居を見せることも教えてある。

「それで、今から姫様の所へ向かうっていうの?」
「いや、明日の早朝だ。明日までに身支度しておけ」
「了解《ヤー》」

俺とキュルケのやりとりに付属品の二人は呆然としていた。

翌朝……。
ハゲの指示の下『オストラント』号は出航した。
トリスタニアの上空まで一時間で着いた。
俺の考えた作戦にで部隊を二つに分けた。

タバサ救出隊のメンバーは、俺、ルイズ、キュルケ、ハゲ、ギーシュ、マリコルヌ、モンモランシーの計七人。
逃走準備及び囮部隊は水精霊騎士隊の残りでレイナールを中心とするメンバーだ。
イルククゥは怪我をしているために、学院で治療のため残ることになった。

作戦概要は単純。
アンリエッタにタバサを助けると伝える。
どうせ断られるので主要メンバーを残し、残りを準備の為に帰すフリをする。
その後、俺が合図を出したら行動開始。
移動時間中に作戦概要を説明をした。
ルイズはしぶしぶといった感じで納得していたが、タバサに何回も助けられているので作戦に合意してくれた。そして、ルイズのいなくなった隙に計画書を数人に手渡す。
その後、アンリエッタの部屋に向かった。

「あなたたちが直接向かうことは許可できません」
「ですよねー」

SIDE:アンリエッタ

サイトさんの話を聞いた私は許可はできないと言った。それに対してサイトさんは予測していたように返事をしたのだ。

「向こうの大使を呼びつけて、詳しく事情を聞くことにいたします」
「行くのは俺たちです。トリステイン政府の密使や軍じゃない」

気持ちはわかるが、それでは敵対行為になってしまう。サイトさんの説得は無理でも周りが反対すればきっとわかってくれる。

「あなたたちは、今ではわたくしの近衛隊なのですよ。意図がどうであろうと、〝トリステイン王国〟の行動と受け取られます。向こうで犯罪人とされている人物を救出などしたら、重大な敵対行為ととられてしまいます」

サイトさんが事の重大さに気付いてないはずはない。

「戦争になるかもしれません。あなたがたはそれでも行くと言われるの?」
「女王陛下のおっしゃるとおりだよ」
「戦争になったら大変だ」

水精霊騎士隊の生徒たちは、口々にサイトさんを説得にかかった。

「はいはい、わかった、わかった」

サイトさんは言ってくれた。よかった。やはり、責任感は強いらしい。副隊長として意見を聞き入れてくれた。

「お前たちは先に学院に戻れ」

水精霊騎土隊の面々は、執務室を出て行く。あっさり過ぎると思い私は警戒を強める。
部屋に残っているのは、ルイズ、ギーシュ、キュルケ、アニエス、そしてサイトだけだ。

「諦めてくださいましたか?」

なにか企んでいると思い、私はアニエスを残した。

「アニエスさ~ん、久しぶりですねぇ」

私を無視してアニエスに話しかけるサイトさん。アニエスは驚いた顔で返事をしていた。
ルイズ達も驚いていた。

「サイト殿、まだ陛下の話は終わっていません」
「姫様への返事は、こいつだぁ」


SIDE:サイト・ヒラガ


アニエスの視界を遮るようにマントをアニエスに投げつける。
そして、アンリエッタに一瞬で詰め寄る。

「ヒャッハー、スカート破りじゃ~」

ビリビリ~、とスカートをやぶいた。
なるほど、ガーターベルトに白ね。
美尻を目に焼き付けておこう。

「きゃあああ、何をするのです!」

スカートを押さえるアンリエッタを無視して部屋の窓と壁をぶち壊す。
大きな音を立てて崩れる壁。これが作戦開始の合図。
そして、デルフをキュルケの首筋に当てて、人質にして叫ぶ。

「わははは、アンリエッタァア、俺は貴族をやめるぞぉおおお!」
「キャー、助けてー、犯されるー」

キュルケはノリノリで人質を演じる。
そのまま、窓から飛び降りた。

「誰か! あの者達を捕らえなさい!」

アンリエッタが叫んでいたがもう遅い。


SIDE:アニエス

視界が広がると、惨事だった。女王陛下は破れたスカートを押さえ、窓があった壁が壊れている。
サイトは人質をとり、壊した壁穴から逃げたのだ。
声から推測できたが、なぜこんなことを?

「陛下! やつは、陛下に無礼を働いた反逆者であります! このギーシュ・ド・グラモン、あの不届き者を水精霊騎士隊、隊長として、奴を地の果てまで追い詰め、見事ひっとらえてやりましょう!」

ギーシュは早口で言うと、執務室を出て行いった。

「姫様、あのバカは私の使い魔。私が責任もって処分いたします!」

そう言ってルイズも出て行った。

嵌められた。これは恐らくサイトに仕組まれた茶番だ。

「陛下、いかがなさいますか?」
「はぁ、気を付けていたのですが、やられましたわ。すぐに追ってください」

私はすぐに執務室を出た。ラ・ヴァリエールが部屋を出て数秒だ。すぐに捕まるだろう。
しかし、廊下に出てすぐに窓の外から閃光と大音量が響いた。

「な!」

それを見て私は驚く。
巨大なフネが、低空飛行で何かをばら撒いている。

「な、なんだあれは……」

魔法で拡大した声が響く。

「トリスタニアの皆さまに申し上げます。トリスタニアの皆さまに申し上げます。ゲルマニアのフォン・ツェルプストー家が、最新式水蒸気船『オストラント』号のお披露目にやってまいりました。街を歩く皆さまも、お城にお勤めの皆さまも、どうか近づいてご覧になってくださいまし」

しばし、巨大なフネに目を奪われた。
私は目的を思い出し、その場を動こうとする。

「やあ」
「ウェールズ様!?」

いきなり目の前に現れたのはウェールズ王であった。その姿の後ろには何人もの衛兵が倒れていた。

「城の警護隊の質を高めるための非公式の奇襲だよ。恨むならサイトくんを恨んでくれ」
「な、に?」

気づいた時には眠りの雲に巻かれていた。意識が遠のくなか、サイトの策略にハマった事を悔しく思った。

SIDE:サイト・ヒラガ

城を抜け出した俺とキュルケは、レイナールの先導で馬と旅装が用意されている『魅惑の妖精』亭に向かった。
フネでの陽動、レイナール部隊の援助、ウェールズの奇襲。
この三つが主な作戦。

「準備がいいわね」

関心したようにキュルケが言った。
人質役を楽しそうにやっていたが、キュルケが知っているのは城を抜け出してタバサを救うという大まかな説明だけだ。

「俺たちは陸路でガリアへ向かう。フネはゲルマニアへ向かわせて宮廷の連中に、俺たちがゲルマニアからガリアへ侵入すると思わせる。レイナール達はここでギーシュ達を待って俺たちを追ってこい」
「なるほど」

いつの間にかコルベールが参加していた。ハゲは頷きながら俺の説明不足を補うように語った。

「詳しく説明しよう、あんな大きなフネで国境を越えたら、すぐにガリア軍に見つかる。しかも、ガリアで降りたあとはどうする? 上空に待機させておくか? ガリアの竜騎士隊に見つかって、あっという間に撃沈されるな。フネは危険なことに使いたくないことも考えて陽動か、馬で国境を越え、ミス・ツェルプストーが知っているという、ラグドリアン湖畔の旧オルレアン公の屋敷へと向かう。そこがミス・タバサの実家だったな。何か手がかりになるものがあるかもしれない。とりあえずの計画は以上かね?」
「さすがですね。その通りです。コルベール先生は俺たちと行きましょう」

レイナールがハゲに尋ねた。

「一ついいですか?」
「なんだね」
「どうして、そこまでしてくれるんですか? 先生には先生っていう立場があるでしょう?」
「ミス・タバサはわたしの生徒だ。教師が生徒を助ける。まったくもって当然じゃないか」

金●先生並のよい教育者だ。

学院で静養していたシルフィードを拾い、国境に向かう。
結局、シルフィードの怪我が癒えなかったので、擬人化イルククゥに変身してもらい馬で国境を超える。

学院に寄り道したり、馬での移動で思った以上に時間がかかり、俺たちが旧オルレアン公邸に到着したのは日が落ちて暗くなった頃だった。
俺たちは屋敷の様子を伺う。敵がいる気配がない。
そういや、反対側のアーハンブラ城にいるんだっけ?
だが、万が一ということがあるので調べることにした。

「人が複数いる気配は感じられないな」

コルベールが門から屋敷を見て言う。
そりゃそうだ。確か、一人の執事がいるだけである。
念のため、俺は周囲に気を配りながら玄関へ移動する。
問題なさそうなので全員を呼ぶ。

「ちょ、サイト?!」

俺が勝手に玄関の大きな扉を開けた。
しん、と冷えた静けさが、ホールに漂う。

「誰もいないみたいね」

驚いたモンモランシーとは違い、キュルケは落ち着いたものだ。
ホールを歩くと、床には壊れたガーゴイルが転がっていた。
タバサはスクエアクラスに昇格したらしい。
魔法は感情によって威力が多少上下すると解説された。
コルベールの解説ではタバサが戦った時の精神状態は最高にハイッてやつになっていたらしい。
破壊されたゴミを辿ると、奥にある部屋に着いた。
タバサ大暴れの巻。
部屋の中は滅茶苦茶だった。
室内で竜巻状の魔法を唱えるのは危険だからヤメよう。お兄さんとの約束だ。
さて、壁に開いた穴から顔を出しているシルフィードにそろそろ事情を説明してもらおう。

「その穴はお前が空けたのか?」

きゅい、とシルフィードが頷く。

「タバサの相手はどんな相手だったの?」

モンモランシーの問いにシルフィードはボディランゲージで、伝えようとしている。
なんか、動物の必死さに萌えたので、俺が答えてやる。

「エルフか?」

シルフィードは頷いた。キュルケとモンモランシーは驚愕した顔。
コルベールは考え込んでしまった。

「やい、剣。スクエアクラスでもエルフ相手に勝てないのか?」
「おうよ、エルフはヤバイな。ぶっちゃけスクウェア・メイジでも分が悪い。人間のメイジが使う系統魔法は個人の意思の力で大なり小なり、『理』を変えることで効果を発揮するが、エルフの使う先住魔法ってのはその『理』に沿うんだ。要は何処にでもある自然の力を利用するんだな。人の意思なんぞ、自然の力の前では弱い存在だからな」

最近話ていないデルフは嬉しそうに語った。
さてと、シルフィードの正体を明かす時が来た。

「さて、そのエルフはどれだけ強いのでしょう? 答えるのは君だ!」

ビシッとシルフィードに指をさす。

「きゅい?」
「何時までとぼけてんだ? 韻竜!」

俺の言葉にコルベールが気がついた。

「この風竜は、絶滅したとされる韻竜だったのか!?」
「そこにいるんだから絶滅なんかしてねぇんだろうさ」

ハゲの問いにデルフが答えた。
俺はシルフィードを指さしたまま続ける。

「伝説の古代の竜。知能が高く、言語能力に優れ、先住魔法を操る強力な幻獣。そういう訳だから喋れるだろ? なあ、シルフィード? それともイルククゥか?」
「簡単に喋るとかばらさないで欲しいのね! きゅいきゅい!」
「「本当にしゃべったわ!」」

キュルケとモンモランシーが驚いていた。

「しゃべったら悪いの? ああもう! お姉さまがしゃべるなって言うから我慢してたのに! きゅいきゅい!」

よく喋る韻竜だ。

「ああ! お姉さまとの約束やぶっちゃった! 絶対しゃべっちゃダメって約束してたのに! きゅ~~い! きゅ~~~い!」
「なあ韻竜。先住魔法のすごさを、軽くこいつらに見せてやれよ」

デルフリンガーがいたずらっぽい声で、シルフィードに告げる。

「〝先住〟なんて言い方はしないのね。精霊の力と言って欲しいのね。わたしたちはそれをちょっと借りてるだけなのね」
「じゃあその精霊の力とやらを、軽く見せてやりな」

デルフリンガーがそう言うと、シルフィードは観念したように呪文を唱え始めた。

「我を纏う風よ。我の姿を変えよ」

シルフィードは青い風の渦に巻きつかれて、光り輝いた。
光が消えると、その場にあった風竜の姿はなく、代わりに二十歳ほどの若い女性が現れた。
長い青い髪の麗人である。
まあ、イルククゥなわけで。服までは変化できないわけで。
俺の鑑賞を遮るようにモンモランシーが羽織ったコートを、シルフィードに放った。

「これ着てなさい」
「え~~~、ごわごわするからやだ。きゅい」
「きゅいじゃないのよ。着るの!」

鬼の形相をしたモンモランシーにシルフィードはしぶしぶコートを身に着けた。
エルフとタバサの対決をシルフィードの解説を俺が再解説する形でお送りする。

エルフと対峙したタバサはとてつもない風の魔法を唱えた。
しかし、エルフはその魔法を余裕の表情で避けもしようとしなかった。
タバサの魔法がエルフを包みそうになった瞬間、魔法が反転してタバサに襲いかかった。
避けられなかったタバサは倒れた。
シルフィードも怒って襲い掛かったけどあっさりやられた。

「なのね」

シルフィードは、どうだと言わんばかりに胸をそらす。
シルフィードの解説は身振り手振りの効果音つきで、ちゅどーん、ドカーン、オワタという感じだった。


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ゼロの使い魔の原作者であるヤマグチノボル氏が
がん治療というニュースをネットでしりました。
8月に手術だそうで、無事健康になって頂きたいと思います。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 77>
Name: castake◆d6014dec ID:025b4777
Date: 2011/09/06 15:21

SIDE:サイト・ヒラガ

「ペルスラン、一体ここで何があったの?答えて」

さて、手がかりを探そうという時にこの老執事が現れたのだ。
キュルケと顔見知りらしく、泣きながら語り始めた。

たくさん兵隊がきたから、隠れた。
王軍が引き上げた後もしばらく隠れてたのはエルフがいたからである。
タバサの母親は眠らされて連れていかれた。
その翌日にタバサが現れてエルフと対決して敗れて連れていかれた。
タバサの母親を連れて行く兵隊が『アーハンブラ城まで運ぶのか。まったく、反対側じゃねえか』と話していた。
うむ、この老執事、中々役立つ。
情報は武器になるのだ。

「戦うだけが手柄じゃない。というわけで、ペルスランさんは大手柄だ」
「ですが……、シャルロットさまの居所までは……」
「アーハンブラ城って言ったら、昔、幾度となくエルフとやりあった土地じゃないの……」

何を勘違いしたのか、モンモランシーはエルフと戦うと思っているらしい。

「別に俺たちがエルフと対峙するわけと決まったわけじゃないぞ」

嘘をついた。いや、実際戦うのは俺だけだから嘘じゃないな。

「その可能性は限りなく高い。教師としてはお勧めはできんね」

ハゲは一言多い。

「まー、ここまでやって引き返すとか俺はしないんで。怖いならここでお別れだ。じゃあなモンモランシー」
「べ、別に怖くないわよ! 絶対ついていくからね」

玄関から出ようとした俺は人の気配に気付く。
少しだけ玄関を開けて外の様子を覗いてみた。
あ~。

「どうしたの?」

モンモランシー、キュルケ、ハゲの順で外の様子を見させた。

「やれやれ」

困った様子でコルベールが首を振る。
玄関の先、アニエス率いる銃士隊が門を封鎖して取り囲んでいる。
ルイズとギーシュもいた。
どうせヘマしたか、鉢合わせになったのだろう。

「貴様達は完全に包囲されている。おとなしく人質を開放して投降しろ!」

立てこもりの犯人に警察がやるようにアニエスが叫んだ。

「サイト! 隊長のギーシュだよ! 君を捕まえにきた。おとなしく投降しろー!」

ギーシュはバカだった。まあ、やってることは正しい。

「サイト! さっさと私に捕まりなさい!」

ルイズも叫んでいた。手柄を取りたいように聞こえるが気のせいだろう。

「どうするかね? サイトくん」

ハゲが聞いてきた。既に手は考えている。
ロープを取り出してハゲを縛る。
人質役をキュルケからハゲにチェンジ。

「じゃ、後は任しました。行くぞイルククゥ」
「きゅい」

玄関を開けてハゲを蹴飛ばす。
同時にモンモランシーが水の壁を作りそれにキュルケが炎を当てる。
水蒸気が溢れ出し、周りを包む。
イルククゥがシルフィードに代わりそれに全員が飛び乗り空中に移動。

「わはははは。人質は返したぞ! 諸君、さらばだ!」
「何だこいつは! 人違いだ!」

アニエスが興奮した様子で、叫んでいた。

「えーい、撃て! 撃ち落とせ!」

銃士隊の人たちが一斉に引き金を引く。
しかし、シルフィードは範囲外まで飛んでいた。
調子に乗りすぎたから撃たれたんですね。わかります。


SIDE:タバサ

今まで様々な敵と渡り合ってきた私にも、立ち会いたくない相手はいる。
一つは竜。理由は単純に人の身で成熟した竜と戦えないから。
二つ目は目の前にいるエルフだった。
強力な先住魔法を使い、戦士としても優秀。人間の何倍もの歴史と、文明を誇る長命の種族。
そして最近三つ目が現れた。

二つ目と三つ目に戦って負けた。
ビダーシャルと名乗るエルフは私に水の精霊の力で、心を失ってもらうと言った。
窓の外から見える風景には武装した兵士が見える。
杖がなく、母を守りながらアーハンブラ城を抜け出すのは不可能。
だが、一つの可能性がある。
私の使い魔がエルフから逃れた。
きっと、サイトや、キュルケに知らせただろう。
私を助けに来る?
ありえない。「平民の賢者」と言われるサイトが気づかないわけがない。
私を助けることは一国に喧嘩を仕掛けると同等である。
ましてや、サイトはトリステインの近衛騎士だ。
それに、誰が助けに来ても無駄だろう。

私はエルフの薬で心を失くす。エルフの先住魔法は、人の手ではどうにもならない。
私は妙に冷静だった。そんな私にビダーシャルが言った。

「退屈なら、本を読め。いくつか持ってきた」

ビダーシャルの指差す先には、オルレアンの屋敷から持ってきたらしい本が数冊並んでいる。

「この『イーヴァルディの勇者』は実に興味深いな」

『イーヴァルディの勇者』。
ハルケギニアで一番ポピュラーな英雄譚だ。
勇者イーヴァルディは始祖ブリミルの加護を受け、〝剣〟と〝槍〟を用いて竜や悪魔、亜人に怪物、様々な敵を打ち倒す。これといった原典が存在しないため、筋書きや登場人物のみならず、伝承、口伝、詩吟、芝居、人形劇……、数限りないバリエーションに分かれている。メイジ《貴族》が主人公ではないため、主に平民に人気がある作品群だ。

「我らエルフの伝承は、似たような英雄を持っている。聖者〝アヌビス〟だ。彼は〝大災厄〟の危機にあった我らの土地を救ったとされる。この本によると、光る左手を勇者イーヴァルディは持っているな。我らの〝アヌビス〟は、やはり聖なる左手を持っていた。エルフと人間の違いはあれど、興味深い共通点だ」

ビダーシャルは私に『イーヴァルディの勇者』を手渡した。
私はおとなしく本を受け取り、母が眠るベッドに腰掛けた。
ビダーシャルは頷くと、部屋を出て行く。

私はゆっくりとページをめくり始めた。
本のページをめくる音が、静かな小部屋に響く。
ページをめくるうちに、私は声を出していた。
いつかの母のように。

SIDE:サイト・ヒラガ

もともとアーハンブラ城は、砂漠の小高い丘の上に、エルフが建築した城砦である。
それを多大なる犠牲を払って、ハルケギニアの聖地回復連合軍が奪取したのは、今を遡ること千年近く昔のこと。
聖地回復連合軍は、その先に国境線を制定。

「こっからここまで俺らの土地だから」
「いやいや、知らんがな」

かつて砂漠に暮らすエルフに〝国境〟という概念はなかった。

「勝手に攻めこんで随分やってくれるじゃん」
「はあ? 国境をしらんのかね?」

人間という生き物が、〝国境〟を決めねばどこまでも貪欲に土地を切り取り我がものにすることを知ったエルフは、その人間たちが引いた線を、〝国境〟としてしぶしぶ認めることにしたのである。

「よし、そっちがその気なら、こっちも嫌がらせするからな!」
「ちょ、おま、エルフさん穏便に行きましょうよ」

その城砦は、幾度となくエルフの土地に侵攻するための拠点となったため、何度もエルフの攻撃を受けた。そのたびに取ったり取られたりを繰り返し……、数百年前の戦いで、聖地回復連合軍がその主となり、現在に至る。

「どう? サイト?」

アーハンブラ城上空、およそ千メートルにシルフィードに乗った俺たちはいた。

「兵隊が三百人、貴族らしき将校が十人ちょいってところかな」

酒場や商人から情報を仕入れてタバサ親子がアーハンブラ城にいることは確認済みである。
途中何度か出会った警邏の騎士には眠ってもらった。俺は既に犯罪者なので今更罪を重ねることに躊躇しなかった。

「たいしたもんねぇ」

モンモランシーが賛嘆の声をあげる。ガンダールヴの力は視力すら上昇させる。
あらゆる武器を扱うことのできるガンダールヴの力の応用である。
まあ、原作サイトこの使い方を知らなかったのか思いつかなかったのか……。
武器を持っただけで何十メートルも飛躍できたり、ありえないスピードで走ったりできるのだから視力を上げるくらい簡単なことだった。
それを使って俺は上空から敵を把握していた。

「で、どうやってタバサをあの城から救い出すつもり?」

モンモランシーが聞いてくる。

「兵隊全員に魔法をかけて眠ってもらう」
「そうね。ドンパチやったらすぐにどこからか援軍が飛んでくるし、タバサに危害が及ぶかもしれない。タバサが別の場所に連れていかれちゃう可能性もあるわね」
「でもどうやって?」

モンモランシーが嫌な顔をしている。いや、アレだけ眠り薬を調合させられてればわかるだろうに。
一旦地上に降りて大量の眠り薬をキュルケ、モンモランシーがレビテーションをかけて上空に運ぶ。

「ふ、眠りの雨だ。やっておしまいなさい」

大量の眠り薬を雨のように降らす。
それを媒体にスリープ・クラウドを発生させると、あら不思議。
アーハンブラ城を包むほどの広範囲魔法になった。

「すごい……」

モンモランシーが感動していた。マジックアイテムと魔法の組み合わせなんてゲームじゃよく使うだろ。

「さすがサイト。私たちにできないことを平然とやってのけるわね」
「褒めるな、褒めるな。さて、重要なお知らせです」

キュルケとモンモランシーは俺の言いたいことがわかったのだろう。真顔になった。

「エルフを見たら逃げろ。絶対に戦おうなんて思うな。忘れちゃいけないのは、俺たちは決して戦いに来たんじゃないってことだ。エルフはもちろん、ガリア軍ともな。俺たちは慎重かつ大胆にアーハンブラ城に忍び込み、タバサとタバサの母ちゃんを救い出す。そう、〝おともだちを救い〟に来ただけだ。俺たちが傷つくようなことになったら、本末転倒だ。だからエルフに限らず、危険を感じたら逃げろ。それは臆病ではない」

二人はわかった、というように頷いた。

「あたしの親友を救い出すことに協力してくれてありがとう。サイト」

キュルケが丁寧に一礼した。
モンモランシーは改めて、真剣な顔つきになった。

「期待してるわよ。サイト。コルベール先生が言ってたわ。サイトくんは、この世界を変えることができる人間だって。あたしもそれを信じてる。だからタバサの運命も、変えてあげて」

モンモランシーの真摯な顔は美しかった。

「任せとけ」
「ありがとうなのね」

シルフィードはいたく感動した様子でお礼を言ってきた。
ちょうど、兵隊が全員眠ったようだ。


SIDE:タバサ

私が目覚めると……、母のベッドの上だった。
本を片手に突っ伏したかたちで、自分はベッドの上に横たわっている。
隣では母が安らかに寝息を立てている。
どうやら自分は、『イーヴァルディの勇者』を朗読しているうちに、眠くなって寝てしまったらしい。
母の目が、小さく開いた。
暴れるかと思ったが……、母はじっと自分を見つめたまま動かない。もしかして正気を取り戻したのだろうか? との喜びが胸に広がり、私は母に呼びかけた。

「母さま」

しかし、母はなんの反応も見せない。
ただ、自分をじっと見つめるのみだった。でも、それで十分だった。
私は鏡台に置かれた人形を見つめたあと、小さく微笑んだ。

「シャルロットが、今日もご本を読んでさしあげますわ」

本のページをめくる。私は朗読を開始した。

イーヴァルディは竜の住む洞窟までやってきました。従者や仲間たちは、入り口で怯え始めました。猟師の一人が、イーヴァルディに言いました。

「引き返そう。竜を起こしたら、おれたちみんな死んでしまうぞ。お前は竜の怖さを知らないのだ」

イーヴァルディは言いました。

「ぼくだって怖いさ」
「だったら正直になればいい」
「でも、怖さに負けたら、ぼくはぼくじゃなくなる。そのほうが、竜に噛み殺される何倍も怖いのさ」

居室にビダーシャルが入ってきたときも、私は本から顔をあげなかった。母はエルフが入ってきても怯えない。
この十日間ほどの間、ずっと毎日、私は母に『イーヴァルディの勇者』を読んでいた。
他の本では、昔のように取り乱すのである。
だから私は、何度も同じ本を読み返していた。
何度も声に出して読んだので、ほぼ暗記してしまったぐらいであった。
ビダーシャルは、本を読むタバサを見ると、わずかに微笑を浮かべた。

「その本がいたく気に入ったようだな」

私は答えない。
今では、ビダーシャルが入ってきても、特に用事のない限り朗読をやめないようになっていた。
ビダーシャルは僅かに硬い声になり、私に告げた。

「何者かが、襲撃してきた」

私は顔をあげる。

「この部屋を出るな」

ビダーシャルはそれだけ言って、部屋を出ていった。
私は『イーヴァルディの勇者』に目を落とす。
作中の竜に囚われた少女のように勇者が助けに来てくれた?
私は心の中で苦笑した。
今現在、自分は囚われの身になっている。
本と違うのは、自分には助けに来てくれる勇者など存在しないということだ。
でも……、この『イーヴァルディの勇者』を読んでいると、想像してしまうのだ。
自分を救い出してくれる、勇者を。

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久々の更新。
原作者であるヤマグチノボル氏の手術も無事終わり、現在は療養中だそうです。

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[18630] <ゼロのひどい使い魔 78>
Name: castake◆d6014dec ID:f24ad8e7
Date: 2011/12/17 19:10

アーハンブラ城は廃城であり、ところどころ崩れている。
危険な場所にはロープが張って立ち入れないようになっている。内部は正に迷路であった。
侵入する前に兵隊の武器や杖を回収したせいで時間を食ってしまった。

「ってキュルケがいねー」
「サイトが兵隊にいたずらしてる時に先に行っちゃったわよ」

モンモランシーが答える。
いや、止めろよ。もちろんいたずら書きしてた俺じゃなくて、キュルケの方をね。
キュルケを追うべく天守のエントランスに通じる階段を駆け上っていたとき、天守の壁の一角がいきなり爆発した。

「ちっ」

壁の破片といっしょに、キュルケが落ちているのが見えたので急いで落下地点へ走ってキュルケを受け止める。

「ひどい怪我!」

モンモランシーは慌てて水魔法を唱え始める。
シルフィードも変身を解くと、いっしょになって回復の魔法をかけ始めた。

「エルフ……、気をつけて……」
「逃げろって言っただろ!」
「ごめん。サイト……」

そう言うなり、キュルケはがっくりと気絶した。

「モンモランシー、イルククゥ。キュルケを頼む」
「ちょっと、待って! 待ってよ!」

モンモランシーが怒鳴る。

「なんだよ」
「相手はエルフなのよ! 慎重にいかないと……」
「知ってる。なんとかなるさ~」

SIDE:モンモランシー

私は呆然としてサイトを見つめた。
私は、サイトの勇気が怖いと思った。
五万の敵に突っ込んでいったり、エルフをも怖がらない勇気が怖い。
使い魔の契約は、主人の従順な僕になるような効果がある。
それが人間になるとこうも感情をこうも操作してしまうものなのだろうか?

「サイトが危険じゃない!」
「やけに絡むなぁ」

いつものようにヘラっとした顔で答える。

「す、好きなんだからしょうがないじゃない! お願いだから無茶しないで!」
「告白は嬉しいが、モンモランシーにはやってもらうことがある」

どこまでいっても調子を崩さないサイト。
私はサイトの先に見えた人影にドキリとした。
二階に通じる階段の上に、スラリとした細身、エルフの特徴である長い耳。

「エ、エルフ!」
「お前たちも、さっきの女の仲間か?」

サイトが背中の大剣を構える。

「エルフか……、どうしようもねえな。ここは引いたほうが無難だぜ」

サイトの持つ剣がせつなげな声で言った。
私もそう思う。

「引いたらタバサを助けられん」

エルフは一歩ずつ、階段を下りてきた。

「わたしはエルフのビダーシャル。お前たちに告ぐ」

穏やかな声の中に無限の迫力があった。

「なんだ? 聞いてやる」
「去れ。我は戦いを好まぬ」
「おう! モンモランシーとイルククゥはキュルケと一緒に逃げろ」

私に近づき、耳元で「ルイズを連れてきてくれ」とサイトは言った。
私たちは足手まといだ。直感的にそう感じた。
サイト一人ならきっと逃げ切れる。
エルフの恐怖心から逃げるように私たちはその場を去った。

SIDE:サイト・ヒラガ

助けてルイズさん!
とりあえず、モンモランシー達を逃がしたので一安心。
さっさとルイズを連れてこい。
虚無がなきゃ勝てんのだよ。
しかし、自分がどれだけ強くなっているか手加減なしで戦えるいい機会だ。
不思議とエルフを目の前にしても妙に心は落ち着いていた。

「貴様は逃げないのか? 我は戦いを望まぬ」
「ふっ。ここで逃げたら俺が俺でなくなるのさ。それにタバサを助けられない」
「タバサ? ああ、あの母の子か。それは無理だ。我はその母の子を〝ここで守る〟という約束をしてしまった。渡すわけにはいかぬ」

じゃあしょうがないよね。先手必勝。
落ちていた壁の破片を素早く拾って投げつける。
ビダーシャルの手前の空気がゆがんだ。
破片が弾き飛ばされた。
わかってはいたが実際問題かなり厄介な相手である。
幻想殺しがあればっ!!
まあない物ねだりをしてもしょうがない。

「立ち去れ。蛮人の戦士よ。お前では、決して我に勝てぬ」
「しるか! 投石を跳ね返すとかどんな魔法だよ!」
「ありゃあ〝反射《カウンター》〟だ。戦いが嫌いなんてぬかすエルフらしい、厄介でいやらしい魔法だぜ……」
「便利だね。解説よろ」
「あらゆる攻撃、魔法を跳ね返す、えげつねえ先住魔法さ。あのエルフ、この城中の〝精霊の力〟と契約しやがったな。なんてえエルフだ。とんでもねえ〝行使手〟だぜ、あいつはよ……。覚えとけ相棒。あれが〝先住魔法〟だ。今までの相手はいわば仲間内の模擬試合みてえなもんさ。ブリミルがついぞ勝てなかったエルフの先住魔法。本番はこれからだけど、さあて、どうしたもんかね」

うん。なにその反則。知っていたが、どうするか。
しかもこの場面。某運命のエロゲーでバーサーカーとアーチャーが戦った場面そっくり。
ならば言うしかあるまい。

「貴様が挑むの剣戟の極地! 恐れずしてかかってこい!!」

日本刀を抜き、二刀流で飛びかかる。
ビターシャルの頭上から一刀両断。
ガキィンとビターシャルの頭上の空間が歪み二刀の剣が弾かれた。
その代わり地面にビターシャルの足が少し埋まった。
やはりな。思惑通り。
弾かれたのは攻撃。
だがその威力そのものも弾かれるわけではなくちゃんと通じた。
つまり、攻撃や魔法は反射するが、発生する力、エネルギーは通じる。ただ、生半可な攻撃力ではまるで意味なく反射されてしまうようだ。はじめの投石は簡単に弾かれたし。
反射自体は厄介だが、倒せなくもない……気がする。

「なに?」

俺の思考とは裏腹に、ビターシャルは驚いていたらしい。
まあ、攻撃は反射したが威力が反射できていないことに驚いているみたいだった。
ビターシャルは知らないだろうが、アニメだったか、原作だったか忘れたが戦車の大砲の弾で壊れていたような記憶がある。
恐らく、反射のできる攻撃許容量がある。
なら、やることは決まっている。

なぎ払いでカウンターごとビターシャルを吹き飛ばす。
ピンポン玉のように壁から壁へ跳ねる。
中にいるビターシャルもその振動は伝わっているらしい。

(タバサ姉妹と3ピーィイイイ)

地面に落ちてきたビターシャルを打ち上げる。
今度は天井と床の間で跳ねる。

「ぐっ」

ありゃ吐くな。上下左右に跳ね飛ばされて目を回しているビターシャル。
カウンターは自動化されてるっぽい。
次々に攻撃をしかけるが、カウンターは機能している。

「蛮人よ。無駄な抵抗はやめろ」
「そういう割に、顔色悪じゃねーの」

ビダーシャルは首を振ると、両手を振り上げる。壁の石がめくれあがり、巨大な拳に変化した。

「なにそれ? 怖いんですけど?」

SIDE:タバサ

居室で本を読み上げる私の耳に、巨大な衝撃音が聞こえてきた。
そのあと、しばらく衝撃音が続いたが……、今度は何かがぶつかって破壊されたような音が響いた。
母が怯えたように布団にうずくまる。
私はそんな母をやさしく抱きしめた。いったい何が起こっているのだろう?
大丈夫ですから、と母につぶやき、ベッドから下り、ドアに近づき扉を確かめる。
だが……、〝ロック〟の呪文で扉は固く閉じられていた。
こうなっては杖を取り上げられた自分になすすべはない。
北花壇騎士として恐れられた、シュヴァリエ・タバサはもうどこにもいない。
ここにいるのはどこまでも無力な、囚われのシャルロット・エレーヌ・オルレアンであった。外で何が起こっているのか確かめたくても、確かめることすらできない。
私はベッドへと戻った。

 怯える母は、じっと『イーヴァルディの勇者』を見つめている。
 私は本を取り上げると、幾度となく繰り返した朗読を始めた。
 本を読み上げながらタバサは思う。
 もしかしたら……、誰かが自分を助けに来てくれたのだろうか?
 シルフィードの顔が浮かぶ。
 キュルケの顔が浮かぶ。
 違って欲しい、と私は思った。
 おそらく、誰もあのエルフには敵わない。
 最後に、サイトの顔が浮かんだ。
 伝説の使い魔、との触れ込みの少年。
 自分を負かした、剣の使い手。
シュヴァリエの自分を剣で負かしたあのサイトなら……、もしかしたらここから私たちを救い出せるかもしれない。

SIDE:サイト・ヒラガ

俺は、目の前に迫り来る石の拳はまるで壁だった。

「ちっ」

これはまずい。
素早く回避行動に移り目の前の石の拳を避ける。が、速さと大きさと威力を持ち備えた石の拳を避けきれるはずもなく。
石の拳で中庭の中ほどまで吹き飛ばされた。
右腕骨折、肋骨も何本か持っていかれた。
デルフの言うとおり、本番はこれからなのだ。

「超痛い」

その割に、俺は相変わらず冷静だった。
仰向けに倒れたまま空を眺める。
ビターシャルは追撃とばかりに石礫を放ってくる。
なんとか立ち上がり、デルフを持つ左腕だけで飛んでくる石礫を落とす。
ドスッ、ガスッ。
何個か身体に当たった。

「もう一度言う。立ち去れ蛮族。無駄なのだ」
「タバサを返せ。アクセラ……じゃなかった。このクソエルフ野郎」
「分からぬな。あの娘はお前にとって何なのだ? 恋人か?」
「今は違うね」

今はね。
さて、どうしたものか。
右腕は完全に折れてる。
肋も痛む。
打撲、擦過傷、切り傷、内臓にもダメージがあるね。
満身創痍。

「では、お前はなんの為に命を無駄にするというのか?」
「やられると決まったわけじゃない。何のためにだと?」

そんなもの決まっている。
ハーレムハッピーエンドのためだ!

「サイト!」

シルフィードが急降下してきた。
そこにはルイズ、モンモランシー、絶賛気絶中のキュルケ、なぜかギーシュがいた。

「余計な奴は逃げろよな。俺がなんとかするっつーの!」
「いいから、黙ってろ」

ギーシュは俺の姿とエルフを見て察したらしい。ギーシュが土の壁を魔法で作る、俺たちの前に大きな壁を作り上げた。
ぶらんとした俺の右腕に、モンモランシーが治癒の呪文を唱え始める。

「ひどい怪我」
「十秒でなんとかしろ」
「無理よ!」
「ちょっと、サイト! エルフじゃない!」

ルイズは状況を把握していないらしい。

「娘っ子! 大仕事をやってもらうぜ! 今すぐ俺に『解除』をかけろ!」
「へ?」
「タバサを助けるんはアイツを倒す必要がある。そのためにルイズの『解除』が必要。詳しくは後で話す」

元々ルイズは頭がいい。
簡潔な説明ですぐに虚無の詠唱に入った。

「さあ、第二ラウンドだ!」
「まだ治ってないわよ!」

モンモランシーの怒鳴り声を無視して前に進む。

「ギーシュ、なかなか役立ったぞ。盾役だけどな!」
「そうかい! もう限界だ!」

エルフの強力な魔法を数十秒耐えただけだが、稀に見ないギーシュの健闘であった。

ウル・スリサーズ・アンスール・ケン……。

ルイズの詠唱で力が湧いてくる。
そして、俺は知った―――。
地面も、城の壁も、使い方次第では武器になりうるのだ。
疾走する。
これまでにないスピードで。

ビターシャルの魔法が襲いかかってくるが、それを右に避けて城の側面を駆ける。
更に天井に飛び、そこから天井の壁を蹴り勢いをつけて落下。
真上からビターシャルに斬りかかる。
ガキン!
ビターシャルの反射でデルフリンガーが弾かれるが体を捻り地面ごと、ビターシャルを真上に叩き上げる。
デルフリンガーが怒鳴る。

「俺にその『解除』をかけろ!」

〝虚無魔法〟がデルフリンガーにまとわりつき、刀身が鈍い光を放った。

「相棒! 今だ!」

吹き飛んだビターシャルに追い打ちをかける。
見えないガラス玉を割るようにカウンターはバリンと壊れる。
そのまま、ビターシャルを斬りつける。
苦痛に顔を歪めるビダーシャル。

「シャイターン……。これが世界を汚した悪魔の力か!」
「シャイたん萌えって、おぅい!」

ビターシャルは左手を右手で握り締めたと思った瞬間
ビダーシャルは糸で引かれた人形のように、宙に飛び上がった。

「悪魔の末裔よ! 警告する! 決してシャイターンの門へ近づくな! そのときこそ、我らはお前たちを打ち滅ぼすだろう!」
「誰が悪魔だ! むしろ天使だ!? あっ、エルフのカワイイ子紹介してよー!」

聞こえなかったのかビターシャルは空へと消えていった。
どさりとルイズは地面に倒れて寝息を立て始めた。
たぶん、俺の追走で疲れていたところに虚無を使ったもんだから疲労で寝たんだろう。

「信じられないけど、エルフを追い払った?」

ギーシュはマヌケ面で言った。

「別にあんたが追い払ったわけじゃないでしょ!」

モンモランシーが言った。まあまあ、落ち着け。まだタバサを見つけてない。


SIDE:タバサ

「もう大丈夫だよ」

イーヴァルディはルーに手を差し伸べました。

「竜はやっつけた。きみは自由だ」

そこまで読み終え、母に視線を落とす。
安らかに寝息を立てている。
先ほどまで響いていた恐ろしい音は、いつの間にか鳴り止んでいた。
扉の向こうに、足音が響いた。
エルフのものでも、兵隊のそれとも違う。
なぜか、私の胸は高鳴った。
期待が胸に膨らんでいく。
私はそれを否定しようとした。
だって、そんなことはありえない。
ありえないのだ。
こんな、ガリアとエルフの国境の地までやってきて、私を救い出してくれることなどありえない。でも、私の耳は、風系統の担い手として鍛えられた耳は、その足音に覚えがあることを教えてくれる。

ガン! と音がして扉は両断された。
学院を飛び出してきたときに見た、黒髪が目に入った瞬間……、私の顔は崩れた。
懐かしい感情が、忘れていた気持ちが心の中に広がっていく。
ルイズを背負ったサイトが近づいてきて、自分に手を差し伸べた。

「シャルロット、君を、助けにきた!」

頬に温かい何かが伝うのを、私は感じた。

私は子供の頃のように泣いた。
忘れていた、安堵の涙を流した。
涙を流しながら私は思う。
もしかしたら自分は探していたのかもしれない。
誰にも頼れぬ孤独な戦いの中で、己で凍てつかせた心の中で、ずっと、探していたのかもしれない。
囚われの場所から。
冷えた心の中から。
救い出してくれるイーヴァルディを。





[18630] <ゼロのひどい使い魔 79>
Name: castake◆d6014dec ID:f24ad8e7
Date: 2011/12/17 19:47


全てを終わらせる時……!

「うぉおおお」

サイトが咆哮する。

「くらえ!」

ガンダールヴの超スピードの剣撃がジョセフを襲う。

「さあ来い! サイトォオオ! このジョセフは唯では死なんぞぉ!」

ジョセフは唯両手を空に仰ぐようにしているだけである。
そこにサイトが進撃してくるのだが、

「ぐふっ! じょ、ジョセフ様、私は――」

シェフィールドが主を守る盾となる。

「シェフィールドを倒したわ!」

虚無の担い手であるルイズが叫んだ。
そして、キュルケが追うように叫ぶ。

「後はジョセフだけよ!」

共戦をはっていたタバサもサイトに向かって叫ぶのだ。

「私を救って!」

そして、サイトの腕に戦場を駆け抜けた相棒が咆哮する。

「行くぜ相棒!」

デルフリンガーを構え、眼前に迫るジョセフに向かって全てをぶつける。
咆哮。
叫び。
そして――

「ウォオオ! いくぞォオオ!」
「さあ来い! ガンダールヴ!」

サイトの勇気が世界を救う……!

ご愛読ありがとうございました。

歴史に刻まれる名はソードマスターサイトであった。

(終)



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