「今回はシリアス成分多目じゃ」
「シリアスが苦手な方は、回れ右、です」
「僕はボラギノォォオオオルゥゥゥウウウウ!!!!!!」
『15話・混沌』
「おお、死んでしまうとは情けない!!」
気がつくと、目の前に禿げ上がった御老人がいた。
そして、いきなり電波な事を云って来た。
この人は何処ぞの王様だろうか?
「いきなり何だ!! 失礼な爺めっ!!」
「お主、儂が誰だか分かっているのか?」
「頭が色んな意味で可哀相な死に損ない」
「天罰!!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」
爺の怒声と同時、上空から僕に雷が降り注いだ。びりびり。
雷で身体が透けて骨が見えるという表現がある。僕の場合、雷が落ちて身体は透けた。確かに透けた。まさか漫画でしか見たことのない光景を体感するとは思わなかった。
しかし、身体が透けて見えたのは、その、神経とか筋肉とかだった。理科室に置いてある人体標本のような感じ。
はっきり云ってグロイです。グロテスクです。
どうしてコミカル表現じゃないんだ。映像化してしまえば、幼い子供達にトラウマを植えかねない。生々しい表現は避けようぜ。自分で自分の中身をクリティカルに見て吐き気がしたよ。
そんなことを、プスプスと煙を上げながら、真っ黒に焦げた状態で思う。
何故これで死んでいないのか不思議だ。僕はいつから不死身の身体になったのか。別に鋼鉄の機械兵団とは闘わないよ、僕は。
「無礼者め!」
「違いますぅ! 無作法なだけですぅ!」
「生意気じゃ。天罰パート2!!!」
「にょおおおおおおおお!!!!」
再び僕を雷が襲う。びりびり。
どうせなら、超電磁砲な科学万歳的な都市に住むお嬢様中学生の雷を浴びたいものだ。
プスプスと焦げた臭いをさせながら思う。
「良いか、儂は神じゃ!」
「痴呆症は病院に行け」
「天罰パート3!!!」
「ほあああああああ!!!」
三度、僕を強襲する雷。肩凝りくらい直してくれ。凝ってないけど。
いい感じに電気ウナギ化するかも知れないと思わせるほどに、今の僕には電気が溜まっている気がする。
このままいけば、雷帝になれるかもしれない。新宿の裏通りでカリスマになろうかしら。
「儂はボケとらんし、至極真面目じゃ。茶化すんじゃない」
「真面目に危険域だ。脳の病院で脳味噌を赤味噌にしてもらえ」
「天罰パート4!!!」
「甘いわ!!」
その場から横にジャンプする。雷がジャンプ直前の場所に落ちる。
ふっ、人間は成長するのだよ。4回も喰らうと思うなよ!
落とし穴に落ちた。
「バカなっ!?」
「バカめっ!! 予想通りの行動じゃわ!!」
「この僕の行動を先読みしただと……っ!!」
くっ……!! 中々やるじゃないかっ!!
落とし穴に落ちながら、しかし僕は慌てない。こんなこと、悪の組織に居た時は日常茶飯事だったからして。
「太陽拳3倍だああああ!!!」
僕は片腕を伸ばし、片腕を腰に当てた状態で思いっきり叫んだ。ジュワッ!
舐めるなよ。僕には舞空術がある。成功したこと無いけど、今回は成功すればいいなぁ!!
そして、僕は落とし穴を逆走する。飛んだのである。なんか飛べた。舞空術成功である。
「なんですって!?」
びっくり。
まさか成功するとは思っていなかったので、驚きは一入である。
「ふはははは!! 勝てる! 勝てるぞぉ!!」
突然の出来事だが、しかし僕は決して慌てない。むしろ、喜ばしい感情で胸一杯だ。あと、おっぱい触りたい。
落とし穴から勢いよく飛び出る。
「そう簡単には行かんよ」
タライが降って来て直撃した。
僕は再び落とし穴に真っ逆さまである。ぴゅ~。
しかし、この程度で諦める僕では、ないっ!!
「不死鳥の如くぅううううう!!!」
華麗に優雅に典雅に優美に、僕は舞い上がる。
「次行ってみよ~」
そして、タライの嵐。
タライ、タライ、タライ、タライ、タライ、タライ、タライ!!
僕はその落ちてくるタライを全て、この身に受けた。
落とし穴に再び落ちる僕。
「僕は、必ず、再び、舞い戻るぞぉぉぉおおお!!!」
落とし穴を落下しながら、僕は叫ぶ。
しかしこの落とし穴深いです。お仕置き用の落とし穴でもここまでないんじゃないかな?
以下、これを10回繰り返した。
何十個というタライをこの身に受けた。頭頂部にもクリティカルヒットが多数。
僕は10回も落とし穴に真っ逆さまであった。
流石に、この痛みは、あれだ。
駄目だこりゃ。
*****
「良いか、儂は神じゃ。神様じゃ」
「髪がないのに?」
「そぉい!!」
「ぎゃー!? 僕の髪が毟られたぁ!?」
「この不届き者がぁ!!」
「この禿げ散らかした爺がぁ!!」
落とし穴から這い出た僕は、その後、自称神様とリアルファイトを開始した。
結果は僕の惨敗である。何よこの爺、超強いじゃないっ。
流石は自称神である。魔封波を使わなくても強かった。
「まったく、落ち着いたか?」
「僕は最初から落ち着いていたい……」
「願望止まりじゃないか。実行しなさい」
身体を滅多打ち……いや、滅多撃ちにされたので、身体を動かすのが億劫だ。まさか指銃まで使えるとは……。
「まぁ、良い。兎に角、儂は神じゃ」
「その神様が僕に何の用だ」
「ふむ。先ずは周りを見てみよ」
そう云われたので、顔だけ動かして周囲を確認する。
周囲の風景は実に奇妙な物だった。
果てのない地平。一面真っ白の光景。地面もなく、空もない。よく分からない空間。それが今、僕の存在する場所だった。
「何処だココア!?」
「その質問が真っ先に出ると思っておったのに、まさかこの儂に喧嘩を吹っ掛けるとはな。調子が狂ったわい」
僕が噛んだ事はスルーされた。
その気遣いは嬉しいのだが、僅かに寂寥感を感じる。
兎の様に可愛らしい僕は、構って貰えないと寂しくて死んじゃうのだ。
「首でも切り落とすのか、首切り兎めっ」
「のんのん。首は切りません。騙すんです」
兎詐欺というじゃないか。
「それで、僕はどうしてこんなところに?」
「うむ、実は手違いでお主を殺してしまったんじゃ」
「なんですとー!?」
「いやー、済まんかった」
はっはっはっ、と笑う自称神様。
ウゼェ。
「えっと、死因は?」
「トラックに轢かれたんじゃ」
あの世界でトラックに轢かれた覚えもなければ、トラック自体を見た覚えもないのだが、僕はどうやら知らない間に存在するかどうかも怪しいトラックに轢かれていたらしい。
自称神様が云ってるのだから間違いないだろう。
「因みに、お主を轢いた瞬間の運転手は、実に楽しそうじゃった」
「悪意満々!?」
文字通り車で楽しく轢きましたってか。
巫山戯るな。僕を轢き殺していいのは露出狂のお姉様だけだ。それなら本望だ。むしろ、ありがとうと云いに行く。枕元に立ってでも。露出中でも憑いて行ってありがとうと云ってやる。ありがとうの意味合いが変わってきそうだが。
「まぁ、そんな訳で、あれじゃ。あれ」
「どれ?」
「ほれ、そこの、それじゃよ」
「んん? もしかして、これ?」
「それじゃないそれじゃない。その向こうのあれじゃよ」
「何にもねーじゃねーか!?」
「お主が振って来たんじゃろうが!? 最後までやれよ!!」
随分とフランクフルトな神様だ。間違えた。フレンドリーな神様だ。
「それで、結局なに?」
「うむ。やっと本題か。長かった……」
「途切れが悪いなら泌尿器科にでも行けよ」
「流石に恥ずかしくって……」
「バカ野郎! 先生が若い女医さんだと仮定して、自分の分身があれやそれやともう興奮じゃない!!」
「実は、お主に詫びをしようと思ってな」
「うわぉ。無視されたー」
真顔でスルーされるのって、結構傷つくんだぜ?
「特別に、お主を違う世界に転生させてやろうと思ってな」
「とある学園都市のフラグ乱立男か、猫耳宇宙人が遊びに来ちゃった世界の貧弱眼鏡ボーイか、幻想に包まれた桃源郷のガラクタ店の店主か、歌こそ力なりな世界で永遠の16歳が住む天高く聳える塔の騎士なフラグ男か、人形の螺子を巻いちゃった引き篭もり眼鏡ボーイか、物の死を見ちゃう退魔家系の不思議魅力を遺憾なく発揮する殺人貴か、銭湯を経営してたらUFOが突っ込んできて魂を共有しちゃう経営者か、すべてを戯言で片付ける最弱な無為式か、熱血で鉄血で冷血な吸血鬼に血を吸われちゃった劣等生か、発明化な宇宙人と同棲して告白されちゃってる毎日幸福少年か、女子寮の管理人になっていつの間にか人間的魅力が鰻昇っちゃった三浪な不死身眼鏡男か、小学生なのに女子中学校の教師をやっちゃう純情無垢な眼鏡少年か、お隣さんを400年も影に日向に守り続けている忍者か、おちこぼれだけど遺伝子的に超凄い魔法使いか、いきなり人生燃え上がっちゃって人間辞めた高校生か、目玉から熱光線を発射する絶対遵守な国崩しを狙う学生か、1億5千万の借金背負った万能執事か、三十三間もある元女子学園に通うパワフル男子学生か、瀬戸内で溺れたら可愛いお嫁さん貰ったエロ少年か、封印指定な正義の味方を目指す少年か、スクールがヘブンな桃色な台風生活の学園理事長の孫か、最終的には機械の神様で邪神を打倒しちゃったロリコン宣言者か、代理先生と教育実習生の二人と同棲しちゃう苦労学生か、思春期な妹を持っちゃったお兄ちゃんか、大学生の家庭教師に愛を教えてもらう教え子か、元女子高に通う一年生で生徒会役員に登り詰めた副会長か、ゲームに関してはズバ抜けた実力を持つ神と崇められる眼鏡少年か、原始の心臓と綺麗なお義姉さんを持つ大きな河の少年か、etc、etc……で、お願いします!!!」
「三言で」
「ハーレム! オリ主!! 僕TUEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」
「うん。それ無理」
「何云っちょっとね!? 神様なら出来るやろ!!」
「儂ってば、お主達が勝手に神だ何だと祭り上げているだけだしのぉ。儂は確かに万能じゃ。万能故に、大願を聞き届け、万の願いを成就させることは出来ても、億の欲望を実現し、兆の悲願を成し遂げさせてやることは出来んのじゃもん」
「"もん"じゃなかろうもん!! ならどうすっとや!?」
「儂が適当に送ったるわい」
「甚だ不安で堪りませんわ!?」
不安どころじゃない。心の中は危機感で一杯一杯だ。
この爺、本当に神様か?
「ミラクル☆マジカル☆るーるるるー♪」
「やめろ! 変なポーズでクルクル回るな!! 目が腐る!!!」
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」
「魔法の擬音!?」
思いっきり振りかぶった神様が、いつの間に取り出したのか釘付きのバットで僕をぶっ叩いた。
「ぬべるわぁ!?」
とんでもない衝撃が僕の身体を駆け抜ける。
ファーストでセカンドでラストな一撃が光り輝いて僕を打ち貫く。
思うんだ。貫くのは流石にどうよ。
「覚えてろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「ごめん。儂ってば痴呆じゃから、覚えれんわ」
「畜生!!」
結局、呆け老人じゃないかっ。
そして、僕は新たな世界で転生した。
*****
───僕は心に傷を負った男子高生。ガチムチスリムで恋愛体質の愛されボーイ♪
僕がつるんでる友達は援助交際をやってるタクロウ(30歳、独身、雄)、学校にナイショでゲイバーで働いてるユウヤ(25歳、既婚、雄)。訳あって不良グループのパシリになってるタミゴロウ(76歳、独身貴族、性別不明)。
友達がいてもやっぱり学校はタイクツ。今日もタクロウとちょっとしたことで口喧嘩になった。
男のコ同士だとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆ そんな時、僕は一人でハッテン場を歩くことにしている。
がんばった自分へのご褒美ってやつ? 自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」
そんなことをつぶやきながらしつこいキャッチを軽くあしらう。
「カレシー、ちょっとケツ出してくれない?」
どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
キャッチの男はマッチョだけどなんか薄っぺらくてキライだ。もっと等身大の僕を見て欲しい。
「やらないか?」
……またか、とセレブな僕は思った。シカトするつもりだったけど、チラっとキャッチの男の顔を見た。
「……!!」
……チガウ……今までの男とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚が僕のカラダを駆け巡った……。ウホッ! いい男。
(カッコイイ……!! ……これって運命……?)
男はツナギのよく似合う男だった。公園の便所に連れていかれてズボンを脱がされた。
「ところで、こいつを見てくれ。こいつをどう思う?」
すごく……大きいです……。
ガシッ! ズブッ!
僕は掘られた。アッーーー!!!
僕は息を荒々しく吐きながら、身体を駆け巡る悪寒に必死に耐えていた。本来、出口である場所に異物が入っているのは、とてつもない違和感を僕に訴える。
ふぅふぅ、と息を落ち着ける。
そして思う。なんで僕はこんな事になっているんだろうね? というか、そもそもこの状況は伝えたらいけない気がする。ある種、ロレックスの金の腕時計だ。つまり、18金。
でも大丈夫、直接的な描写はひとつもないので、きっと大丈夫だろう。安心安全な、ほのぼのハートフルストーリーだ。
「いいこと思いついた」
ツナギのよく似合う男が、おもむろに云った。
「俺、お前の桃の中に聖水を掛けるぜ」
「ええ!?」
とんでもないことを云って来た。
流石の僕も戸惑いの声を上げる。流れで身を任せてとんでもない事態に進行してしまったが、これ以上は流石に不味い。
開けてはいけない扉を全開にしてしまう。
「いくぜ」
「待っ───!!」
僕の静止の声よりも早く、彼はそのゴールドな水を僕の桃の中に解き放った。
貴様は僕の桃を仙果にでもする気かっ。
「ふぅ、すっきりしたぜ」
「う、ううっ……」
男のオンバシラが僕のミジャグジにエクスパンデッドした。
おいおい、マジかよ……。
僕は悲しみに包まれる。ついに攻め込まれたことのないお城を破られてしまった……。
「よし、次は俺の番だな」
そう云って、体勢を変えようとする男。
待ってくれ。そこまでいくと、もう僕は取り返しがつかなくなってしまう。
しかし、僕の心の声は虚しく胸の裡に響くのみである。
僕が諦観の体で尚も流れる空気の濁流に身を任せようとした時であった。
「そこまでだ」
そこには寺生まれで霊感の強いTさんの姿が!
人の入ってる個室を開けるなよ! 助かったけど!
「破ァーーーー!!!」
気合一閃。
Tさんの手から光弾が弾け飛ぶ。弾けたら意味がないと思うけど!
「ぐわあああああ!!!」
ツナギのよく似合う男は吹き飛んだ。跡形もない。
……これは殺人事件じゃなかろうか?
とりあえず、Tさんが現れた時から感じていた疑問を訊いてみる。
「どうしてここに?」
「なに、いい男の匂いがしてな」
お前もかよ。
「駄目だぜ、ホイホイついてきちゃ。ここらのハッテン場の奴等は、ノンケでも構わず喰っちまう男ばかりだぜ」
去り際にTさんはニヒルに笑いながら僕に云った。
寺生まれってスゴイ! ……僕はそう思った。
思った時である。一人の少年が帰ろうとしているTさんの目の前に躍り出た。
「ねぇ、Tさんの弱点って何?」
「一番怖いのは生きている人間かもな……」
そう云って、今度こそ去って行くTさん。
その姿はとても格好良い。僕はズボンを穿きながらそう思った。
「……決めた」
Tさんに弱点を訊いた少年がポツリと言葉を零した。
なんだろうと少年を見る。
「ボクがTさんの弱点になる!!」
少年は決意を秘めた目で闘志を燃やしていた。
僕は思わず延髄切りをぶちかましてしまった。
「はやまるなぁあああああ!!!!」
「モルスァ!?」
少年が物凄い勢いで飛んで行った。
「わお」
僕は少年が飛んで行った方向には目もくれず、便所から出る。
どうでもいいが、便所がボロボロだ。
そんな事を感じながら、外に出た。
モヒカン頭の有り得ない体格の奴等に絡まれた。
「おい貴様、俺の名前を云ってみろ!!」
なんだか意味の分からないヘルメットを被った奴がそう云って来た。
「世界で一番お姫様!」
僕は自分でも意味の分からないことを云ってみた。
「あ、ああ。うん。そうだね」
そう云い残し、去って行く新喜劇な格好の集団。
なんというグダグダっぷり。
もう僕も意味が分からない。
ブオンブオンという音を口で云いながら遠ざかって行く集団を見詰める。
「邪魔だ! どけ! 雑種ども!!」
そんな声が、集団の方向から響いた。
なんだ、という疑問の元に集団を凝視していたら、集団の一部が吹き飛んだ。
集団がモーセの十戒の大海の如く割れる。
その先に、光輝く姿。
黄金の鎧。滲み出る、揺るぎ無い絶対の自信を漲らせる覇気。
「王である我の前を塞ぐな! 虫けらがぁ!!」
何者をも寄せ付けぬ、圧倒的な暴力。
それが、新喜劇な集団を吹き飛ばす。
最も古き英雄の王が、威風堂々と、そこに居た。
「てめぇ! 俺の名前を云ってみろぉ!!」
「名前? ふん、どうして我が雑種如きの名前を把握していると思っているのか。その図々しい思い上がり、恥と知れ!!」
瞬間的に広がる、絶対的な暴力が顕現しようとしている気配。何とも云えない畏れが、胸の奥より湧き起る。
周囲に無機質な気配が蔓延する。同時に湧き上がる喜劇軍団のざわめき。
空間が歪み、裂け、何かが這い出してくる。
ずるぅりぃ。
息を呑む音が、どこからともなく聴こえた。
そして、全貌を現す───
───コッペパンの、群れ。
「我は、コッペパンを要求する!!」
その一言と共に、膨大な数のコッペパンが空間を埋め尽くす。
これが、伝説の───
───ゲート・オブ・コッペパン。
大量のコッペパンが、世界を蹂躙する。
高速で発射されるコッペパンは、その摩擦熱で美味しそうな匂いを撒き散らしながらも、標的の周囲を丸ごと飲み込んで砕いていく。
土煙が舞い上がり、僕の視界は塞がれた。
それでも、断続的に響く恐ろしい音。
ぷにゅん。ぷにゅん。ぽにゅん。
なんという恐ろしい音だ。聴くだけで魂が震えあがる。
数分後、その恐ろしい音も止み、土煙も晴れた。
その向こうの光景に、僕は絶句した。
地面に突き立つコッペパンの数々。そして、集団の口元に押し込められたコッペパン。全ての人間が、その顔を恍惚に彩っている。
「ふん。今日はこの程度で許してやろう。我もそろそろ急がなければ、師匠達に物理的に地獄に落とされるのでな」
そう云って、颯爽と立ち去って行く慢心王。
すげぇ、かっきぃ。
僕は、ぼーっと見惚れていた。なんて、気高い、高貴な、王。
あれこそが、最古の王の姿か。
梁山泊で無事で居られるのは貴方だけです。
「やっほー☆ 元気ぃ?」
その僕の余韻を粉々に砕いて、その砕かれた破片を踏み躙った行為に及んだのは、頭が綺麗に太陽な禿げ老人であった。
「楽しんどるかぁ~?」
「楽しめるかっ!!」
意味が分からないよ。なんだよ、この世界。
僕の至極当然の訴えを、不思議そうな顔で聴く爺。
「楽しいじゃろう?」
「楽しくないよ!? なんで僕がこんな変態道に身を落とさなきゃならんのじゃい!!」
「変態なのは元からじゃん」
「失敬な!」
「こりゃ失敬」
うぜぇ。
「生きているのなら、神様だって殺せるんだよぉお!!!」
僕はポケットに忍ばせておいた、一際頑丈そうなナイフを抜きだした。それを油断なく構える。
「僕は貴様を犯したい」
「……ごめんなさい。こういう時、どういう顔をすればいいのか分からないの……」
「死ねば良いと思うよ」
笑ったらその瞬間にバラバラに解体してやるっ。
天才人形師に、自分の人形を作って貰え。そうすれば、3人目でも問題ない。
「死ねぇぇぇえええ!!!」
一閃。
二閃。
白銀が煌めくが、それを禿げ爺は躱す。
その、してやったりの顔が非常にムカツク。
僕は目に力を込める。眼力、集中。
喰らえっ!!
「目玉焼き!!」
僕の眼から一筋の光線が爺に向けて直進する。
しかし、死に損なった爺はそれを躱す。躱しやがったっ……!!
「凶れぇぇぇええええええ!!!」
僕は叫んでその光線を曲げる。
光線はクルクルと渦巻きながら爺を追尾する。
「ふむ。良いじゃろう」
光線の追尾を振り切った爺は、おもむろに振り返ると、体中から様々な文房具を取り出した。
「戦争を、しようじゃないか」
面白い。この僕の、あるかどうかも分からない、回転の力をお披露目しよう。
クルクル、くるくる、狂々と、回って廻って舞わるがいい。回転王の力に怯えて震えろ。
僕と爺の死闘が、再度、開戦した。
「さぁ、こい!! 儂は一回刺されるだけで死ぬぞぉおおおお!!!」
「僕は立派な女王騎士になるんだぁあああああ!!!」
いつの間にか、手の中に出現していた剣が、僕のマナを吸って刃を具現化させる。気付いたら出現していたので、剣へのツッコミとか出来ないっ。
色々と思うところもあるけれど、取り敢えず、リアルソードマスターはもっと続いて欲しかったっ!!
「いくぞぉおおおおお!!!!」
僕は神爺に吶喊した。
いっそのこと、御神籤で勝敗を決めようかしら。何処ぞの教育施設の如く。
兎にも角にもっ。
僕の勇気が世界を救うと信じてっ!!
唐突に、僕の意識が、覚醒した。
*****
「──と、いう夢を見たのさ」
HAHAHA! と哄笑する。
まさかの夢オチである。
ぶっちゃけ、収拾が付けられません。
そう考えると便利だよね、夢って。なんでもかんでも許されるんだから。蝶便利。
「はぁ……」
「言葉が返せん……」
何とも云えない表情のメアとジジ。
今日も可愛いよメア。今日も三色の毛が見事だよジジ。
「ふっ」
僕は髪をおもむろに掻き上げて、窓から天空を見遣る。
雲一つない晴天の青空が目に眩しいぜ。
「そう云えば」
「ん?」
メアが何かを思い出したように声を上げた。何だろうか。
「夢と云うのは、記憶の整理を頭が行っている時に見ると聞きます」
「うん。それが?」
「その記憶整理中は、自分の願望が顕著に現れると云います。過去の記憶から、自分の望む未来を構成するのだとか……」
そう云って、気まずそうに僕を見るメア。
………………。
「……何が云いたいのかな?」
「つまり、その夢はお主の願望じゃということじゃな」
ジジがズバリと僕の心を切り裂く。
僕の硝子のハートが粉々だよ?
「ははははは何を云っているのかよく分からないなぁジジは面白い事を云うよねはははははは」
「きゃー!? 窓から離れてー! 駄目です! 身を投げないでー!!」
「落ち着け。ここは2階じゃから確実には死ねんぞ」
「ジジ!」
「離せぇええ!! 死んでやるぅううう!!! そしてジジの夢の中に現れて口では云えないことをしてやるぅぅううう!!!!」
「それは止めい!!」
「その後メアの枕元に立ってメリーさんの羊をヒップホップ調で熱唱してやるぅうううう!!! それに怖がるメアの表情が美味しいおかずだぁぁああああああ!!!」
「私が巻き添えにぃ!?」
まぁ、今日も平和な一日です。
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亞妬蛾忌
じゃぎゃああああああん!!!ずぎゅんずぎゅん!!どっかーん!ばりばりばりぃ!?どどどんだっだっだぁぁああああああ!?!?かんがんぎゃあああああ!!まんみゃあああああどどぅぅぅうううう!!!??くりえいてぃぶ!くりえいてぃぶ!おう!くりえんちゃ~!!!はびゃおうん!!あんみゃんがーどーいっとー?!どーいっと?!あはん❤はん❤ははん❤あん❤うひょんびゃああああ!!でっどひーと!It's mine oh, happy?NO!NONONO!アイムグリーン!ははははははははは!!!!!もうちゃらんぎゅうううううう!!!!へんじゃじゃん!!……ふぅううん♂はんびゃらぼっちぃい♀おう、しっと!!はろーだでぃ!ダディ?ダディイイイイイイイイイ!?エンジャアアアアアアア!!!!
(※まことに勝手ながら、今回のあとがきは通訳無しでお送りしました。ご了承下さい)
▼最近感想見るのが楽しみですよ!作者感激!
>なんという紳士。
>こんなのがチラ裏にあったなんて、これだらやめられない。
>ぬこ耳やぬこ娘じゃなくてぬこそのものもターゲット可とは凄まじい紳士を見た気がする。
お褒め頂きありがとうござます。
猫に欲情する性癖は、猫が大好きな友人をモデルにしております。このことを友人に話したら、
「俺はここまで酷くない!ただの変態じゃないか!」
という言葉を頂戴しました。
>ダメだ、腹がww
盲腸ですか!?
誰か、誰か医者を!読者様の中にお医者様はおられませんか!!居たら握手してください!!!
>悔しい…! でも笑っちゃうッ…! ビクッビクッ(腹筋痙攣的な意味で)
存分に笑えば良いと思います。ビクッビクッ(特に意味は無い的な意味で)
>>彼の元居た世界では、彼は標準的な存在なのだろうか。
>そんな世界、あったら怖いって。
>すごく面白かったです。つづき期待してます。
主人公みたいなのが溢れた世界。はたして女性はどうなるのか?
紳士淑女が溢れる素晴らしい世界になることでしょう。おお、怖い怖い。
作者はモチベーションが下がって来たので続きは期待しない方がいいかも知れません。このままシリアス方面に突っ走る可能性大です。
>マリエルって誰ですか?
未だに登場していないキャラクターです。登場するかは不明。
蛇足ですが、マリエルは【妾っ娘】です。
>作品を見るときは、最下部のアマゾンを見れば、中身がわかるんだよね。
そんな裏ワザが……。作者の知らないことで溢れる世界に万歳。
>うん、さすがに、これは・・・
>触手死神以来の久々に楽しめるすばらしい変態紳士です。
あの作品は作者も好きです。早く再開しないかしら。
>ご馳走様でした。
>おかわりまだー?
一昨日おかわりしたばかりでしょ。
>こ れ は 酷 い
とうとう作者の拙い文章にツッコミがっ!?精進するから許してや~。
>良いぞ、もっとやれwww
何をやればいいのか分からないので、取り敢えず、雨乞いの舞でも踊ってみます。
P.S.
ついに15話迄来てしまいました。次回更新はオリジナル板に投稿しようと思います。はたして、作者は本板でどこまで通用するのか!叩かれて消える予感が満々よ!