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[7853] 〈習作〉リリカル×仮面ライダー(オリ主→リリカル) 
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:2ab3fb06
Date: 2009/09/12 12:55
はじめまして。作者の「Gを見忘れた男」です。題名の通りリリカルなのはと仮面ライダーのクロスオーバーです。以下の条件が受け付けられる寛大な方はお付き合いいただけると幸いです。


・オリ主です。独自設定、独自解釈、ご都合主義になります。主人公の設定自体が、作者が3年前に考えたものです。かなり、恥ずかしいです。
・最強ものに片足を突っ込みます。
・ライダーの設定、能力はすべて週刊仮面ライダーオフィシャルデータファイルに書かれたものを使います。一部、仮面ライダーSPIRITSの設定が混じります。
・作者の浅い知識、貧弱な発想を用いますので、駄文になる可能性が高いです。
・とらハが少し混じりますが、作者は細かいところまで覚えていません。矛盾点がかなり出るかもしれません。
・オリ主にはリリカルなのは及びとらハの知識はありません。
・リリカルなのは本編の再構成です。ライダーに出てきた怪人たちは名前のみの登場です
・設定上、主人公は組織が嫌いです。アンチ管理局になると思います。


それでは、短い付き合いになるかもしれませんが、よろしくお願いします。


5/2 どうせなので各話の題名を仮面ライダー(昭和)風に修正




[7853] プロローグ
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:2ab3fb06
Date: 2009/04/06 00:21
Side ???
少しの肌寒さから目が覚める。
「くっ……ここは?俺は?……誰だ」

おかしい。記憶はある。ただその記憶が複数ある。しかも、その記憶にはどれも共通点がある。それは……

『目が覚めたか。仮面ライダー』
「ッ!!誰だ」

なぞの声が言うように、記憶のすべてが《仮面ライダー》という異形の存在に結びついているのである。正義に、悪に、夢に、欲望に、愛に、復讐に、あらゆる感情によって戦いを強いられた戦士達の記憶である。

『我はキングストーン』
「ということは、俺は南 光太郎、仮面ライダーBlackなのか」
記憶の中からキングストーンに関わることを探り出す。

キングストーン。ゴルゴムに改造された南 光太郎、仮面ライダーBlackおよびシャドームーンのエネルギー源。
体はどう見ても人間なので、人間体のないシャドームーンではないことは分かる

『いや、我はアマダムでもあり、また賢者の石でもある』
「??? なんだそりゃ。それじゃ俺は五代 雄介でもあり、津上 翔一でもあるのか」
『そうだ。お前は《仮面ライダー》という概念の集合体。神があらゆる世界で崇められ、存在するように、《仮面ライダー》という存在を欲する人の思いから、平行世界のひとつに生まれた‘モノ’だ』
「よく解んねえ。簡単に説明してくれ」
『人の思いは時として新たな世界を作り上げる。深く考えてもお前では分かるまい』

解ったことは、俺は誰でもなく‘俺’であること、俺が仮面ライダーであることだけだ。

ため息をつきながら辺りを見回すと、時間は夜、ここは川原のようで少し向こうに街の明かりが見える。川に自分の顔を映すとそこには髪を短く切った青年がいた。大体15歳前後か。服もシンプルなジャージの上下である。
もう一度ため息をつき、川に足をつけ腰掛ける。見上げれば満点の星空があった。

「なあ、キングストーン。俺はこれから何をすればいいんだ」
『世界は平和。復讐する対象も欲する対象もない。……好きにすればいい。我もそれに従おう』《あるいは、呼ばれたのかもしれんな。この世界にこれから起きる悲劇を避けるために》
「そうかぁ―――――とりあえず行くか」

闇夜に紛れ一人の青年と一個の石は動き出す。
これは物語の始まり。
魔法少女が生まれる少し前のことである。




あとがき
プロローグです。主人公の説明以外何も書いていません。リリカルは次の話で出す予定です。
仮面ライダーは真、ZO、J、G、ディケイド以外の主人公クラスはなるべく出す予定です。批判、文章の間違いの提示、評価をしていただけると泣いて喜びます。
主人公の設定は3年前に考えたもので当時はネギまとのクロスとして書きました。今読むと完全に病気ですね。




[7853] 第1話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:2ab3fb06
Date: 2009/05/03 09:05
第一話 ライダー危うし!!強敵 御神の力

Side 仮面ライダー

コトコトと目の前の鍋の中でカレー煮詰まる。店の中にスパイスのかぐわしい香りが広がる。

この世界に生まれ、彼是2週間がたった。あの後、俺は現状を詳しく調べるため町のほうに向かおうとした。向かおうとした一歩目であることに気がつき愕然とした。なんと俺は、服は着ているが靴を履いていなかったのである。はっきり言って、15歳前後の男子が裸足で夜にうろついていたら確実に補導される。

コソコソと隠れながら街に近づくと一軒の喫茶店が目に入った。
(懐かしい。……?これは誰の記憶だ。)

その喫茶店に惹かれていくと、中では一人の男がコーヒーを淹れていた。こちらに背を向けているので顔は分からない。しかし、その後姿にどこか見覚えがあった。上を見て喫茶店の名が目に入ったとき、なぜ、こんなにも引きよせられたのか理解した。






喫茶店《ポレポレ》

仮面ライダークウガで五代 雄介が居候していた喫茶店と同名。そして中にいた男は間違いなく‘おやっさん’だった。五代の先輩冒険家にして、よき理解者でもあり、五代がクウガであることを知らなくても的確なアドバイスをくれる、陽気な喫茶店のマスターである。

その後のことはよく覚えていない。気づいたらポレポレで住み込みのバイトをしていた。どうやら俺は冒険家見習いということになっているらしい。そんな説明をする俺も俺だが、納得するおやっさんもおやっさんである。


ちなみにおやっさんにクウガについて聞いてみたら、
「クウガ?くが よ○こなら知ってるが」
(だれだよ!)
ジェネレーションギャップを感じるだけの徒労に終わった。




落ち着いてから自分に《変身》ができるか試したら、まったく変身できなかった。キングストーン曰く『数多のライダーの要素によって、各変身が阻害されている。何かの切っ掛けか大きなエネルギーが必要』らしい。まぁ、平和だから無理に変身しなくても、と思っている。

キングストーンの意思がここまではっきりしているのも他のライダーの要素が入っているかららしい。結構皮肉屋で口うるさいが、『クライマックスだぜー』と暴れられたり、『キバっていくぜー』とまわりを飛ばれるよりよっぽどましである。キングストーンを名乗ったのは、その要素が一番強いからだそうだ。



「おーい、雄介。出前に行ってきてくれ」
「はい。……じゃあ、行ってきます」
そうそう、今俺は五代 雄介を名乗っている。記憶と感情も良い感じに混ざり合い、人らしくなってきたと思う。
配達先は……月村か。紫色の髪のお嬢さんがいて、‘これ’のファンらしい。こんなイロモノを食う人がいることに驚きだ。とりあえず出発。

……………出前に行くのに、バイクがないからって自転車で行くライダーってすごいシュールだと思う。



****************************************

Side 高町 恭也
その日は休日だったので、忍のところで一緒にお茶を飲んでいた。穏やかで心地よい時間が流れる。

ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ

そんな空気は警報によって切り裂かれた。ノエルさんに連絡すると困惑の声で侵入者の報告がされ、その映像を見させられた。


異形


赤い複眼。緑色の仮面。赤いマフラーに銀の手袋。ノエルさんが困惑する理由が良く分かる、人ならざる姿がそこに映っていた。その異形はゴム弾をものともせず、銃弾を素手で受け止め、鉄球を打ち砕き、恐ろしい速さでこちらに突き進んでいた。

俺は迎撃の準備をし、屋敷の前に出る。来るならこい。忍やすずかちゃんは俺が守る。


Side out



Side 五代 雄介

どんなことでもきっかけと言うのは大切だと思う。どんな難しいこともきっかけ一つで簡単になることもある。だがしかし………………




出前先で死にかけて変身!てのはどうだろう。

自分の目の前に迫ってきていた鉄球(常人なら確実に死ぬ勢い)。死を覚悟し、コブシを突き出したら変身していた。手袋を見ると銀色なので、どうやら新1号らしい。

なぜこうなったというと、
(回想)
サソードの家同等以上の大きさの家が出前先だった。
         ↓
チャイムを押し、用件を言うと若い女性の声で「中まで持ってきてください」と言われ門をくぐる。
         ↓
トラップカードオープン。落とし穴。
         ↓
なんとか、ぎりぎりで回避
         ↓
トラップカードオープン。鎖つきブーメラン(のような鉄球)。
         ↓
回避しきれず、変身。連続で来るトラップを回避および破壊。屋敷に到着寸前。
         ↓
モンスターカード。ゴブリン(ロボット)突撃部隊。召喚。
         ↓
ライダーの攻撃。ロボット突撃部隊に攻撃。撃破
         ↓
         現在
(回想終了)
おかしな電波が混じったが、対応は間違っていないはずだ。しかし、ここはライダーたちのいた世界ではない。俺の常識は通じない。もしかしたら、金持ちの家は須らくこのようなセキュリティーがあるのかもしれない。だとしたら破壊したのはまずかったか。

最後のロボットを壊すと、家の中から剣を持った青年が出てきた。ここは、素直にあやまるべきか。

『気をつけろ、雄介。目の前の男、かなり鍛えてあるぞ。』
「(わかってる。いい鬼になれそうなくらいだ)すいません。手加減できずに壊しちゃいました」

少し軽い感じで話しかけてみる。許してくれるといいんだけど。

「……何が目的だ。」

すごく硬く返された。間違いない。すごく怒ってる。

「いや、だって入ったらいきなり襲い掛かってくるし、(壊したことでの)目的なんてありませんよ」
「とぼけるつもりか。もう問答の必要もないな。高町 恭也 推して参る」

くそ。仕方ない。一度気絶させる。その後、思いっきり謝ろう。

Side out

No Side

信じられない速度で恭也が雄介の間合いに飛び込む。

「はぁっ!!」
気合とともに打ち込まれる鋭い剣戟を避け、
「ライダァーパンチ!!」
ある程度手加減したライダーパンチを雄介は繰り出す。新1号がいくら新2号に比べパワーがないといっても、その筋力は常人の10倍である。人間に全力で打ち込めばトマトジュースができてしまう。しかし…

ガチン!!

そのコブシはもう片方の小太刀で止められる。
「ッ!」
驚き体が硬直する。
そこを狙い刃が迫る。
バックステップで避け距離を取ると、掠められたのか、マフラーが下に落ちる。


雄介は驚愕していた。
(馬鹿な。手加減したといっても、一般人の見える速度じゃないんだぞ。こいつ、ほんとに人か。この世界にも改造人間いるんじゃないだろうな)

恭也は驚愕していた。
(なんだ、今の一撃は。ほとんど見えなかったぞ。しかも確実に急所を狙ってきた。映像のときのように力押しだけではないということか)

そして二人は同時に答えを出す。
((手加減なんてできない。全力でいく))

恭也は駆け出し、雄介はそれを迎え撃つ。






戦況は膠着する。両者ともに決め手に欠けるからである。

元々の肉体的スペックは雄介のほうが圧倒的に上、仮面ライダーの記憶のおかげで戦闘経験豊富である。そのため、恭也の攻撃のほとんどが回避され、貫や徹を使った攻撃も当たらなければ効果がない。かっと言って薙旋を使うには、相手が悪い。先ほど以上の速度で攻撃が来れば、薙旋の発動段階でとめられるからである。

対して、雄介は恭也にまったく隙がないため、攻撃ができない。仮面ライダーの歴史上、二刀流の敵は少なくない。アマゾンのカマキリ獣人、スカイライダーのカマギリジンなどのカマキリ型の改造人間などが典型例である。人間より圧倒的に力が強いため力押しこそが最も有効な戦闘方法だった彼らの攻撃は、ほとんどが大振りだった。そのため彼らは攻撃後、必ず隙ができ、そこを狙って攻撃してきた。しかし、力の弱い人間の作った剣術では、その隙がほとんどない。そのため、雄介はライダーたちの記憶があるからこそ、それによって攻撃できず、回避に徹するしかなかった。


Side 雄介

少し楽しくなってきた。モモタロスの記憶のせいだろうか。
しかし、まずいな。時間がかかりすぎる。アレは冷めると、確実に不味い。遅くなればおやっさんも心配する。よくしてくれているおやっさんに迷惑はかけたくない。
……しかたない。楽しいが終わりにしよう。たぶん死なないだろう。

大きく後ろにとび、距離を開け、構えに入る。少し、挑発も入れるか。

「死なないでくださいね」
「ッ!!」

相手が迎撃の態勢に入るのを見てから、

「トォ!!」

天高く飛び上がり回転しながら急降下する。そう、これは俺の、仮面ライダーの必殺技、

「ライダァァァキィーーーック!!」

このまま武器を破壊する。
相手は右構えから剣を振るう。

「――――薙旋」

高速の抜き打ちとキックがぶつかり合う。
俺の足には相手の刀の折れた感触。
そのままキックは威力を落とし相手の体にめり込む。

勝った!!

しかし、衝撃はその瞬間訪れた。



Side 月村 忍

私は恭也のもとは駆けつけた。

映像では、ほとんど相打ちのように侵入者と吹き飛んでいたが、気絶だけですんだらしい。後で精密検査をうけてもらわなくちゃ。

反対側に侵入者が倒れている。四連撃の初撃で刀を折られ、無意識に放った二撃目で切り飛ばされたらしい。いったい何者なのだろう。

すると、侵入者はムクリと起き上がり、なにか荷物を拾い、こちらにフラフラ近づいてくる。恭也をかばうため、前に出て身構えると、侵入者は荷物を差し出し、

「オリエンタルな味と香りがモットーの喫茶ポレポレです。ご注文のお雑煮カレー二人前お届けにあがりました。820円になりますぅ……」

という言葉とともに倒れて、人間になった。


あれ?






あとがき
第一話です。BGMは常に仮面ライダーのテーマをかけながら書き上げました。
とりあえず、引き分けにしましたが、ライダーキックくらって気絶だけとは恭也どれだけ化け物だよと自分でも思います。まずは1号。あと22人。

おまけ
人物:主人公 五代 雄介(仮)
種族:概念(一応不老、死ぬときは死ぬ)
性格:基本的には温厚。組織という言葉に強い恐怖心をもつ。子供好き(ロリコンではない)
能力:すべてのライダーへの変身 ただし変身に必要なものをそろえないと変身できない
   例 カブトのカブトゼクター、剣のブレイバックル

ミカンさんへ
感想ありがとうございます。ライダーは昭和、平成両方出すつもりです。かなりつめこむことになってしまいますが、一つのライダーに一つ以上の見せ場を作りたいと考えてます。実はプロットでリリカル無印~ASで昭和、STSで平成を予定しています。Jの巨大化はASの闇の書フルボッコ、STSの巨大竜大決戦ぐらいにしか使えず、闇の書のときは空気読めてない、STSでは周りのライダーから浮いてしまい、それ以外で出すと究極のバランスブレイカーになってしまうと考えました。そのため今回は真、ZO、Jの映画三作は設定ののみのライダー無しとしました。(すっかり忘れていましたが、The first、The nextも出ません)。しかし、自分としてはご期待に沿いたいとおもうので、AS本編終了後、外伝としてかけたら書こうと思います。



[7853] 第2話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:2ab3fb06
Date: 2009/05/15 22:51
Side 雄介

さて帰るか

「あれ、五代君。もう帰るの?」
「あっ、桜子さん。今日はバイトがあるから。どう、あの古代文字の翻訳は」

彼女は沢渡 桜子。この城南大学で考古学を専攻する大学院生である。趣味は徹夜というちょっと変わったひとだ。

「う~ん。すこし古代アリッシア文字に近いものがあるから。たぶん、リントって一族の歴史だと思うけど、まだそれ以上は…。そうだ。さっき小沢さんが探してたよ」
「うわっ。早く行かないと、また見つかって手伝わされる」

桜子さんは苦笑し、

「ほら、彼女はG-1システムに命を懸けてるから」
「それでも3日連続徹夜はきついよ。じゃあ、俺はこれで」
「うん。またね」

今日も平和である。

第2話 今明かされる仮面ライダーの秘密

あの真昼の決闘、異種格闘技 二刀流VS仮面ライダーから、さらに一ヶ月たった。今、俺は大学生とポレポレ店員の二束草鞋をはいている。多くのライダーが望んだ平和な時。せめてこの平和が続く限りは、俺は人間としてありたい。

そうして、俺はバイクに乗り、1ヶ月前のことを思い出す



(回想)
Side 雄介

「知らない天井だ」

また変な電波を受信してしまった。しかし本当に知らない天井で、しかも体には包帯が巻かれていた。

…そうだ、あの剣士と相打ちになったんだ。

『油断したな。戦いでは最後まで気を抜いてはいけないとわかっていると思ったが』
「ああ、相手の武器を奪ったからといって気を抜いたのは俺のミスだ。しかし、あの状態から普通、人間が反撃できるものなのか」
『何だ、気づいていないのか。お前は無意識に手加減した。ライダーの記憶が人を傷つけることに抵抗したのだろう。でなければ、あの青年は今頃、肉片になっている』


ライダーの記憶、ありがとう。キングストーンと話していると、メイド服の女の人が入ってきた。

「起きられましたか。当主様がお呼びです。きていただけますか」


かなり警戒されてる。一定の距離以上は近づいてこない。


「そんなに警戒しているなら、拘束しなくていいんですか」
されてたら、のんびりせず逃げてるけど。
「当主が客人としましたので」



メイドさんにつれられ、大きな客間に通される。そこには、気絶する前に会った女の人がいた。


「あなたが当主さんですか」
「はい、私がこの月村家の当主である月村 忍です。とりあえず、そこに掛けて下さい」


ソファーに腰掛けると、先ほどのメイドさんが紅茶を出してくれた。一応、毒かどうか疑うが、そもそもこの体には並の毒では効果がない。飲もう。


…落ち着くなぁ。正面から、思いっきり観察されているのを除けば。さて、そろそろ、


「あの…」
「もう少しお待ちください。先ほど恭也…貴方と戦ったものが目覚めましたので」

少しすると、本当にあの剣士が来た。絶対にこの人、人間じゃない。それに、月村さんの気配、ヤツらに似ている。


「まず最初に謝らなければなりません。正規の方法で当屋敷に入った貴方に対して、防犯装置が作動し、攻撃を加えました。当家のメイドの1人がセキュリティーを切り忘れたためです。本当に申し訳ありません」
「ああ、いえ、こちらこそロボットを大量に壊してしまって…」
「いえそれはかまいません。それよりも…あなたは何者ですか」


やはり、聞かれたか。ライダーの姿、力を見れば当然といえば当然か。
しかし、その前に確認しておくことがある。


「その前に質問していいですか」
「?…どうぞ」
「じゃあ……バダン、BOARD、素晴らしき青空の会。この言葉に聞き覚えはありませんか」

そう、この月村 忍さんからはアンデットやファンガイアなどに近い気配がする。ジョーカーや紅 音也のバイオリン《ブラッディローズ》が反応した気配である。そのため、その二つに関わる組織の名を上げた。一番最初のバダンは10の秘密結社を総括していた組織で、組織力だけで見ると一番厄介なので、あるのなら早めに情報が欲しい。

「……いいえ、聞いたことありません。」
(どう思う。キングストーン)
『嘘はついていないだろう。ただ、間違いなく目の前の女性は人間ではない』
(そうか。なんとか交渉してみるか)

正直、何らかの組織に俺のことを知られるのは避けたい。やつらは人間であってもあんな実験を行ったんだ。概念なんていうものである俺に、あのての組織がどんな実験をするか分かったもんじゃない。

「わかりました。それでは俺について、仮面ライダーとショッカーについて教えます」

虎穴に入らずんば虎児を得ず。
まずは、1号、2号についての話で反応を見る。







Side 恭也

侵入者、五代 雄介から聞かされた話は驚くべきものだった。


暗躍する秘密結社。
それによって生まれた改造人間。
改造人間達によって引き起こされる数々の悲劇。
悲劇を防ごうと動く正義の味方。
しかし、その正義の味方もまた改造人間であり、その仮面の奥には改造人間にされた深い悲しみと憎しみがあった。


まるで夢物語のように感じるが目の前にその物語の主人公が存在するのでは否定できない。

俺の心は怒りと悲しみに満たされている。人を弄ぶ組織に怒りを、組織によって自分よりどう見ても若い青年が過酷な運命を背負わされたことへの悲しみを感じていた。

隣にいた忍も同じ感情だったらしい。目の奥に感情が見え隠れしている。

「…聞いてもいいかしら。さっき出てきたバダンやBOARDなどの単語がでてこなかったのはなぜかしら」

俺もそれがきになっていた。先に聞いた単語がまったく出てこなかったこと。そのため、はじめは作り話かと疑ったが、あまりにリアルだったため途中で疑うのはやめた。

そして、彼の答えはさらに俺の考えの斜め上をいった。








Side 雄介

仮面ライダーの多くは望まずにその力を得ている。改造人間となったものは不老であり、そのため昔の生活、友人からは距離を置くことが多い。しかし、決してライダー達は孤独だったわけではない。その思いと、その生き方と、その魂とともにありたい願い行動を共にするものも少なくない。1号2号の時の滝 和也、V3の時の佐久間 ケン、例を挙げればきりはない。



俺はこの二人の目から、かつて共に戦い生き抜いてきた戦友たちと同じ光を見た。
彼らを信頼する。信頼したい。……仮面ライダーの騙されやすい性質でも混じったか。少し自嘲する。


(キングストーン。彼らにすべてを話そう。)
『なにっ!ばかな。ここまでのことで十分話している。これ以上はこちらのリスクをあげるだけだ。第一、やつらが何らかの組織に属しているかどうかも(大丈夫。彼らなら信頼できる)……それがライダーたちの記憶からの結論なのだな。わかった。なら我は何も言わん』
(ありがとう。キングストーン)


当主さん…月村さんの方が早く冷静になり、俺の質問と告白の矛盾にきづいたようだ。本当は、この矛盾の指摘でこちらの情報の中で『それは知られたくない情報である』と誤認させ、それを教えることによって向こうからの情報を譲歩させるつもりだった。


「まず先に謝らせてください。俺はあなた方を試しました。すべてを話します。見ていてください」


立ち上がり、少し距離をとる。


わかる。体の中にある、もう1つの力が。
新1号に変身したとき、同時にもう1つ扉が開いたようなきがしていた。
今ならわかる。
彼は1号とほぼ同じに作られ、その後の特訓によって差が出た、つまり1号と同一といっても過言ではない存在である。だから、1号に変身できるようになった時、同時に変身できるようになったのだろう。


右に水平に腕をのばす。弧を描くように左へまわし、腕を折りこぶしを握る。




「変身!」





顔には手術痕が現れ、ベルトのシャッターが開きタイフーンが回る。
光が全身を包み、変身が完了する。


「同じ、いえ先程とは細部の色が異なる。その姿は……」
「仮面ライダー新2号です。最初に対峙したときの姿は新1号です」
「待ってください。さっきの貴方の話では、1号と2号は別人であるはずです。なぜ、貴方が1号、2号、両方に変身できるのですか」
「少し長くなります」


俺は語る。
始まりの2人のライダーの、
技と力を受け継ぐライダーと復讐のライダーの、
大海原をいくライダーの、
インカの力を持つ野性のライダーの、
友の敵を討つ超電磁のライダーの、
天を翔けるライダーの、
宇宙を夢見る拳法家のライダーの、
最後の者という名をもつパーフェクトサイボーグのライダーの、
世紀王となるべく生まれたライダーの、
さらに太陽光で進化して生まれたライダーの、
連なる物語を。


次に話すのは単の物語。
殺戮者と戦う古代の戦士。
光を継ぎ闇の力と戦う戦士。
欲望のまま、あるいは目的のため殺しあう戦士たち。
王の守り手でありながら、王を守らず人を守る戦士。
アンデットから人を守るため、アンデットと融合する戦士。
魔化魍と戦う音響戦士。
ゼクターによって選ばれた戦士。
特異点として時の運行を守る戦士。
人とファンガイアをつなげる戦士。



これで全てのライダーについて教えた。途中からキングストーンも話に加わった。何でもつたない説明で申し訳なくなったらしい。声はアンデット、クローバーのカテゴリーKの能力を応用したものらしい。二人とも突然頭に響く声に驚いていた。


そして、俺について。偽名であること。ポレポレでバイトをしていること。仮面ライダーという概念そのものであることを教えた。
俺の質問の内容は、特殊な気配を感じたのでそれに関係する組織の名を聞いたといっておいた。この手の話は非常にデリケートなので、うまく濁さなければならない。もしかしたら、隣の恭也がそのことを知らないかも知れない、





少し時間をくれ、と言って二人が部屋を出て行く。自分は少しだけ臨戦態勢に入る。信頼したといっても最低限の警戒は必要だろう。時計を見ると、話始めてから3時間、出前に着てから5時間経っていた。おやっさんは心配しているだろうか。




しばらくすると、二人が戻ってきて、俺の話を信じてこちらの事も話すといった。この時点で十分お人よしである。


何でも月村家は夜の一族なる吸血鬼一家の家系で、遺産などで命を狙われることが多々あるらしい。また、先程のメイドさんは実はロボットで、こちらも狙われている。歩いてるときの機械音はこのことだったのか。


仮面ライダーの五感は基本的に味覚以外は変身しなくても高い。味覚はたいして変わらないか、下手したらなくなっていることがある。幸い、俺にはちゃんと味覚は存在する。

閑話休題

恭也さんの剣技は実家の剣術らしい。まだ奥義は体得しておらず、その奥義を持つ父親は自分より圧倒的に強いそうだ。とゆうか…


「恭也さん。貴方は夜の一族のような特殊な人じゃないんですか」
「いや、鍛えているが、体は一般人と変わらないと思うぞ」


どう考えても一般人と耐久性が違う気がするが。


「鍛えているからな」


(回想終了)




その後、忍さんと話し合い、互いの有事の際の助力を約束した。また、俺の戸籍を作ってもらった。これはバイクの免許を取るためと大学にいくためである。


エネルギー源が風力である仮面ライダー1号、2号だが、実際は変身そのものに風力エネルギーはいらない。風力エネルギーを用いるのは体の細胞を変質させるためで、これによって一般人の10倍以上の力や10万Vの電圧にも負けない耐久力を得るのである。そのため、変身後に力を出すための風圧はバイクで走っているときに貯めるのが効率的である。なので、バイクの免許は早急に取る必要があった。


大学のほうは、ライダーベルトを作るために研究の場が欲しかったためである。この世界に来てすぐ分かったことだが、改造人間、もしくはそれに類するモノ以外、つまり変身に装着式のベルトが必要なライダーには、そのベルトを用意しなければいけないことがわかった。こちらは早急ではないので、のんびり研究しようと思う。


大学は城南大学。帰国子女ということになっており、入試では好成績によって特待生になっている。知能指数600(どうやって測るんだ)の本郷 猛とデストロンの頭脳 結城 丈二、万能の天才 天道 総司の頭脳を持っているのだから当然である。


近頃はノエルさんと料理で意気投合し、ファリンさんに教え込んでいる。忍さんとは時々ファリンさん強化プランやライダーベルトについて討論し、恭也さんとは模擬戦をしたりしている。


とりあえず今日も平和である。







しかし、いまだに忍さんの妹であるすずか嬢には会っていない。後ろから目線を感じ振り返ってもダンボールしかないし。








あとがき
どうも作者のGを見忘れた男です。2話です。1週間かけて説明しか欠けなくて自分の文才のなさに絶望しています。2号を出しましたが、彼には見せ場をしっかり用意しているので再登場します。


作者は仮面ライダーSPIRITSが大好きです。ZXはこちら基準で行かせていただきます。Black RXに並ぶチート性を持ちます。


q-trueさんへ
Black RX出します。ロボもバイオも少し出します。無双にはならないはずです……たぶん。
青天さんへ
シャドームーン出すの難しいです。なぜなら彼にはJと戦ったときに行った巨大化という、Jをお蔵入りにした禁断の技を持っているからです。少なくとも今現在主人公に変身させる予定はありません。ごめんなさい。


次はすずかルートに入ります。攻略はしません。見た目15歳じゃ犯罪くさいので。書き出しのネタなんにしよう。



[7853] 第3話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:2ab3fb06
Date: 2009/05/15 23:00
午後の昼下がり。ランチタイムも過ぎ、中高生がたむろするより少し早い時間。



カランカラ~ン


軽快なベルを鳴らし、お客さんが入ってくる。

「いらっしゃいませ」
「コーヒー、オリジナルを…」

入ってきたのは小学生くらいの金髪の少女と影のようにつき従う執事さんだった。外には長い車が置いてある。この街には執事やメイドを持った金持ちしかいないのか。

「ただし、私の飲むコーヒーの値段は私が決めるわ!!」

瞬間、空気が凍る。他のお客は誰も居ず、マスターは足りなくなった調味料の買出しに行っている。マスターがいないときに、厄介なお客が来たものである。それにこの台詞、どこかで聞いたことがある気がする。誰の記憶だ?だめだ、思い出せん。

俺はコーヒーを淹れる。ここはコレを出すしかない。

「……お待たせしました。当店オリジナル、玉三郎スペシャルです」
「………………」




静寂が広がる。音は少女がコーヒーを飲む音のみである。



パチンッ!
「……鮫島」

少女がいきなり指を鳴らした。すると、後ろにいた執事さんが前に来て、こちらに1枚の紙を渡した。


小切手。バニングス財団。


「お好きな数字をお書きください」
「……………」
「すばらしいコーヒーだったわ。また寄らせていただくわ」

少女は颯爽と去っていく。それに付き従う執事さん。呆然とする俺。


「……ええっと」

とりあえず……

コーヒー代、360円と、


第3話  恐怖!!人食い巨大犬

Side 雄介

「えっ、まだ、すずかに会ってない?」

会話の合間に忍さんに話したら驚かれた。今日はあるものの開発のアドバイスをもらうために月村家に来た。

「やっぱり、怖がられてるんですかね」
『気配はすれど、姿は見えずだからな』
「う~ん、あの子、結構人見知りするほうだけど、あなたには興味をもったみたいだったわよ。いろいろ聞いてきたし」

お互いに紅茶に口をつける。ノエルさんのいれてくれた紅茶は格別である。ファリンさんの場合、紅茶は美味しいが持ってくるときに50%ぐらいで転ぶ。そういえば、ファリンさんと話している時が一番目線を感じる。

「慣れたら、すずかの護衛として雇おうと思ったけど、まだ先になりそうね」

苦笑され、話は戻った。



「……ということでラボを借ります」
「ええ、広さは十分だから。明日から使っていいわよ」
「ありがとうございます」
『まずは、ライダーマシンから、つぎに他の装備だな。なんとかサイクロンはできたが、他のをそのつど作るのは金と手間の無駄だ』

そう、何とかバイクを改造し外見はサイクロンと同じにできたが、さすがに原子力エンジンは手に入れられなかったので通常のエンジンを強化している。それでも本物の2/3ほどのパワーしかない。できれば、俺の変身に合わせて換わるようにしたいが、これがなかなか難しい。キングストーンと協議の結果、とりあえずAIを作り、変形についてはその後、考えることにした。




Side ???

今、私は〈彼〉の後ろをつけている。ファリンのくれたこのダンボールのおかげでまったく気づかれない。なんでも伝説の傭兵が使っていたものらしい。


〈彼〉は一ヶ月ぐらい前から家を出入りしている。姉さんに聞いた話では、私たち以上に特殊な身の上らしい。もしかしたら、私の悩みの答えを持っているかもしれない。でも話をする機会がない。何よりその話は彼の古傷をえぐるかもしれない。


怖い。


私は嫌われたくない。家族にも、友人にも、これから話すいろいろな人とも……




「ニャァァァ」
ビクッ
考え事をしていたら、昨日拾った子猫がすぐ近くに来ていた。




Side 雄介

んっ?今あのダンボールが動いたような。子猫がそのダンボールに向かってなき続けている。鰹節でも入っているのだろうか。

ちかづいて、持ち上げると……




女の子が入っていた。




はぁ?

すると女の子の顔がみるみる赤くなり、

「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ…」
エコーをかけながら逃げていく、って
「ちょっとまって」
とりあえず追いかけてみた。











30分に及ぶ逃走劇は広大な月村家の庭の木の下で終止符がうたれた。分かってはいたが、ライダーと同じ速度で走る月村家の人々は超人である。

「ハァハァハァ…君が……すずか…ちゃん………かい?」
「ハァハァハァ……ケホッ、はい、その…すいません。突然逃げちゃって」
「いや、俺だってこんなのに追いかけられたら逃げるさ」

俺はいきなり家を襲撃した人物である。正確にはしたくてしたわけではないが、結果的にはそうなので嫌われても当然だし、目に入ったら逃げるだろう。

『はじめまして、すずか嬢。私はキングストーン。我が相棒の無礼を許してほしい』
「あ、いえ、こちらこそはじめまして」

すずかちゃんとキングストーンが離している間、ひたすら反省する。やはり第一印象というのは大切である。

「あの~…。五代さん、ですよね。私、あなたに聞きたいことがあるんです!」



すずかちゃんの話を要約すると、
とても仲の良い友人がいる。
近頃、周りとの運動能力の差が異常である。
そのせいで自分がタダの人間でないことを再確認してしまった。
姉の話ではまだいろいろな違いがある。
こんな化け物が、あんなすばらしい友と一緒にいていいのか?
ましてや友達を名乗っていいのか?
自分では答えが出せないから、いろいろな人に相談したいが、こんな話だから相談できる人も限られる。
五代さんならどうしますか?



……近頃の小学生は難しいことをかんがえるなぁ。


(キングストーン、どうしようか?)
『彼女は真剣に聞いてきている。しっかり返答するんだな。…子供を助けるのもライダーの仕事だろ』
(そうだな……彼の話なら)


「すずかちゃん、ライダーは基本的に後天的に人間ではなくなった人が多い。今から話すのは例外的なライダーの話で少し長くなるよ。説明しなければいけないことも多いから分らないことがあったら質問してくれ」



さて、始めよう。人間とアンデットの物語。仮面ライダー剣の話。

始まりは1万年前。種のトップを決める戦いがあった。各種からアンデットという代表が出てお互いを封印しあう。バトルファイトと呼ばれる生存を賭けた闘いはヒトの祖先、ヒューマンアンデットが勝利をおさめ人類が繁栄することになる。

1万年後、人類基盤史研究所、BOARDの暴走によってアンデットたちは現代によみがえり、バトルファイトが再開される。その中にジョーカーと呼ばれるなんにでもなれる、しかしなんの種族でもないアンデットが存在した。彼は本能のまま他のアンデットを封印し、ついにヒューマンアンデットまでも封印した。

「1万年前はヒューマンアンデットが勝ったのに、ですか?」
『ああ、むしろ彼はわざとジョーカーに封印された様だった』

その後、ヒューマンアンデットの力で人になったジョーカーは相川 始を名乗り、人間社会に溶け込む。ここから彼は変わりだす。ある親子と出会い、本能では他のアンデットを封印していくが、この親子のことを守る行動を取り出した。

そのころBOARDではアンデットを封印するためアンデットの力を利用し、融合する〈ライダーシステム〉が開発され、二人のライダーが生まれる。其の内の一人、仮面ライダー剣(ブレイド)に変身する剣崎 一真。彼は裏表がなく純粋な青年でな。よく騙されて利用されたりしてた。でも不器用で頑固な面もあり、ライダーの戦いは「命を懸ける価値のある仕事」と考えていた。

「フフッ。なんか私の友達に似ています。不器用で、頑固で、でもすごく純粋でやさしくて…」
『彼は仮面ライダーの中でも、トップクラスのお人よしだ。しかし、そのやさしさこそが世界を、そして一人の友を救うことになる』
「友を…救う?」

話を戻そう。ブレイドとジョーカー、当時はマンティスアンデットの姿でカリスを名乗っていた、は時に対立し、時には共闘した。また剣崎、始としても出会い戦い合う。しかし、剣崎は始がある親子を大切にしていることを知り、始は何度も助けられるうちに、互い仲間として認め合う。他のライダーがジョーカーとして封印しようとしても剣崎は助け続けた。始がアンデット、ましてやジョーカーだと知っても。

「?…ジョーカーであることが何か問題あるんですか」
『すずか嬢、よく考えてくれ。種のトップを決めるバトルファイト。何の種族でもないジョーカーが勝ったらどうなる』
「……なにも繁栄しなくなる?」
『そうだ。そしてすでに繁栄している人類は滅亡する』
「ッ!!」

終幕は訪れる。全てのアンデットが封印されジョーカーが勝者となる。神たるモノリスは大量のダークローチを生み出し、人類を殲滅しようとする。ブレイド以外のライダーは行方不明、重症のため戦えない。剣崎は友か人類か選ぶ運命にあった。

しかし、剣崎どちらも捨てず、どちらも選ぶ道をとった。剣崎はもともとアンデットと強く適合できる人間だ。そのため彼はアンデットと融合しすぎると己自身もアンデットになる可能性があった。彼はそれを利用し、自分の封印したすべてのアンデットと融合することで、自らをアンデットに変えた。この世に二人のアンデット。モノリスはバトルファイトの続行を宣言する。剣崎は仲間とともにあることも、いままでの生活も、人であることまでも捨て、戦わないために友の元より去った。

これが仮面ライダー剣の物語。心やさしい青年とその友であるアンデットとの物語




Side すずか

涙が止まらない。悲しかった。五代さんはなぜこんな話をしたのだろう。

「剣崎は友を救えて、決して後悔しなかった。始は友に救われ、その友に恥じないように人間とともに生きつづけた。俺はこの二人こそ真の意味でヒトだったのだとと思う」
「ヒト、ですか」
「月並みかもしれないが、ヒトと化け物を分けるのは本能を抑えられる思いを持てるかどうかだと俺は考えている。この二人は、お互いと周りの人々を思う気持ちでアンデットとしての戦闘本能を抑え込んだ」

後で聞いたことだが、この考えは本能に導かれるままに行動する改造人間たちとの戦闘から思ったことらしい。

「君には思いがあるだろう。友達のことを考えて、こんな相談をしてくるのだから。だから君は化け物じゃない。そして君が人である限り友達とともにあるべきだよ」

私はやはり涙を止められなかった。しかし、さっきとはまるで逆。うれしかった。私は、たぶん、誰かにこういって欲しかったのだと思う。


私は化け物じゃない
友達と一緒にいても良い


不意に頭をなでられる。五代さんの大きな手から温もりが伝わる。ああ、この人もヒトなんだ。



Side 雄介

『すずか嬢、自分で答えを見つけることだ。話を聞いたからといって、その通りにして事が成るとは限らない』
「はい、分かっています。でも、胸のつかえがとれた気分です」

キングストーンの重い言葉で場が閉められた。……これで終わりにしておくべきなのに俺は馬鹿なことを続けてしまった。


「…自分を鍛えてみるのもいいかもな。体も、心も全部鍛えて、己を律する。仮面ライダーの多くも敵に負けないように特訓してたしな。あるいは強くなれば本能なんか余裕で打ち負かせるようになるかもしれないな」


きっとこの時の俺には、うっかり属性の加賀美 新、もしくは一本気でノンストップな轟鬼、一言多いモモタロスでも取り付いていたのではなかろうか。


それ以降、恭也さんとの試合を忍さんと一緒に観戦するようになったり、俺が試しに使っていた赤心少林拳を真似ようとしていたり、ライダーについて聞いてきて、それを熱心にメモしていた。変なスイッチでも入れてしまっただろうか。







そんなことがあってから数日後、


今日は大学を午前中で切り上げた。そもそも気長にやらなければライダーベルトなど作れない。今はバイクにつむAIの熟成とフォトンブラッドについて研究している。

フォトンブラッドとは仮面ライダー555のエネルギー源である。流体エネルギーであるフォトンブラッドは流動経路であるフォトンストリームを作ってやれば、ほぼ100%のエネルギーを全体にくまなくまわしてくれる。しかも出力や安定性、流動量が色で認識できるため、非常に使い勝手のよいエネルギーである。

研究そのものはいつでもできるようになっており、材料さえそろえば早くて半年で555ギアができるかもしれない。といっても555に変身するには人工衛星が必要なので、打ち上げるか、それ以外の方法を考案しなければならない。


今日はおやっさんに頼まれて、お昼に新商品として麻婆豆腐の試作品を作るように言われている。なぜ喫茶店でマーボーか聞くと「オリエンタルっぽいから」とふざけた答えが返ってきた。


さて、パーフェクトハーモニーでいくか、それとも地獄のマーボーでいくか…




「キャァァァァァァ」

悲鳴が聞こえる。ライダーの耳で捕らえた。近い。1キロ先の神社のほうだ。

『何か力を感じる。コレは……イマジンにちかい?でも違う?』
「とにかく行こう。悲鳴が聞こえたのは確実だ」


ハンドルの変形スイッチを入れる。バイクがサイクロン号に変形し、風車ダイナモが回転し、

「変身ッ!」

俺は仮面ライダー1号になる。




サイクロンで石段を駆け上がると、そこには気絶した女性に今にも飛び掛ろうとする馬鹿デカイ犬がいた。

「ッ!うおおお、ライダァァァァークラッシャァァァァァァー」


勢いのまま犬を跳ね飛ばす。
女性のほうは……よかった、気絶しているだけだ。急いで…
グオオオォォォォォォォォン
なに、ライダークラッシャーで倒れない。やはり、原子力エンジンを積んでいないせいでパワー不足か。しかも、当たる瞬間、その手前に衝突した感触があった。バーリアか。

よく見ると、この犬、でかいだけではなく目が4つ、牙がはみ出していたりと生物の進化上ありえない形をしている。獣人の類か。

『改造人間などではない。エネルギーが実体化したものだ。ミラーワールドなどのモンスターやイマジンが一番近いな』
「しかし、物理攻撃が効かないわけではないらしい。力で押し切る」


「変身ッ!!」


2号に姿を変える。


女性をサイクロンに乗せ、誘導装置でコントロールし、安全なところまで運ばせる。どうやら犬(?)は俺を警戒して女性への興味を失ったらしい。


狂気のこもった瞳、ハァッハァッと強い息づかいで隙をうかがう犬。
右に水平に手を伸ばす2号特有の構えで迎え撃つ俺。



ダッ!!

先に動いたのは犬のほう。一足飛びに間合いをつめる。爪による攻撃を袈裟懸けに放つ。

(速い、が恭也さんほどではない)

上体をそらすだけでよけ…

「ライダァァパァーーーーンチ!!」

カウンター気味に拳を放つ。

バリンッ

何かを叩き割る様な音とともに拳が一瞬静止した後、犬に当たる。やはり、バーリアか。
後ろに飛ばされた犬に対し、今度はこちらから飛び掛る。

「トォ!――――ライダァァァァァチョオオップ!」

一瞬止められる。しかも等身が合わないため、当てづらい。今度は向こうがカウンターで首もとを食いちぎろうとしてくる。俺は大きく後ろに跳んでかわす。


厄介だ。バーリアと等身のせいでパンチやチョップは致命傷にならない。ライダーキックなら一撃で倒せるだろうが、弱らせなければ避けられるし、恭也さんみたいな挑発も効かなさそうだ。まだ、時刻は夕方前。のんびり戦っていては誰かを巻き込む可能性もある。弱らせている暇もない。


相手の動きを止め、かつ一撃で決める。
『1号2号にはピッタリの技があるだろう』
ああ、そうか。次で決める。


敵は間断なく攻撃を繰り返す。俺は、爪の攻撃は弾くもしくは逸らし、牙の攻撃は回避しながら、神社の境内の中心、開けた場所に移動する。


ここなら大丈夫か。


右腕を前に動きを止める。

相手は好機と見たのか、最高速で突っ込んでくる。しかし、いい加減その速度には慣れた。『どんな攻撃も恐れなく、見極めれば一寸でかわせる。その間合いが次の反撃を生かす』
キングストーンの言葉どおり、敵の攻撃が当たる瞬間、右手で敵の首もとを締め上げる。

「この距離ならバーリアも関係ない。いくぞ!!――――ライダーーーーきりもみシューート!!」

ギュオオオオオオオオオオオオ

すさまじい回転により竜巻が生まれ、犬は上空高々に舞い上げられる。

ライダーきりもみシュート。本来は、つかんだ敵を上空から回転を付け投げ落とす技である。しかし、今回の犬は進化から逸脱している。もしかしたら猫のように地上に着地してしまうかもしれない。そのため今回は地上からのバリエーションで相手の体勢を崩すために用いた。

「トォ!!」

竜巻の渦に乗る。記憶はあっても試すのは初めてだ。
『流れに逆らうな。渦を自分の力に変えろ』
「ウォォォォォォ」
『そうだ。もっと回転をあげろ』


回転とともに打ち出す2号の必殺技、
「ライダァァァァァ卍キィィィィィーック」

空中に投げ出された犬の腹に直撃する。貫通力を高める回転を加えたのでバーリアなど関係ない。
グォォォォ
叫び声とともに落下していく。

俺は降りていく途中で女性を置いて戻ってきたサイクロンに着地する。


犬は死んではいないようだが、動かない。すると光とともに小さくなっていき、最後には青い宝石と子犬に分かれてしまった。

『どうやら原因はその宝石らしい。力を感じる。回収して、ベルトにあててくれ』

ベルトに当てると、体の中に吸い込まれていく。キングストーンいわく自分の力で封印したらしい。ラボで解析したほうがいいだろう。

竜巻で人が集まる前にさっさと退散しよう。







そういえば、きりもみシュートの際、猫のような声が聞こえたが大丈夫だったろうか。










おまけ

Side なのは

学校からの帰り道。ジュエルシードの反応を感知し、ユーノ君と一緒に現場に向かっていました。

神社の階段の下まで来ると、上ですごい音がしていました。

「なのは、急ごう。上で暴れてるのかもしれない」
「うん!!」

どうやらユーノ君は一緒にジュエルシードを探すことを許してくれたようです。
すこし、うれしくなり向かおうとした瞬間、

ギュオオオオオオオオオオオオ

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「きゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」



竜巻に巻き込まれました。







あとがき

どうも、作者のGを見忘れた男です。少し長くなりました。平成仮面ライダーのように半分導入半分戦闘のようにしたかったので長くなりました。そんなことまで考えてたから書くのもさらに遅くなりました。本当にごめんなさい。

前半では、すずかさんとの会話です。型月の化け物の定義は仮面ライダーには当てはまらないと作者は考えます。どう考えても理性があるようには見えない怪人も、一般人から見たら十分化け物だからです。なので、本文に出ている定義は仮面ライダーを見た作者が作った定義です。

後半、やっとリリカル本編の一部がかけました。犬を劇中より少し強くしてみました。JSを手に入れました。はい、本史からすでに外れだしてます。でもなのはさんはがんばります。

さて、次はVS植物です。そういえば、2号のやるライダーパワーってどんな意味があるのでしょう。週刊仮面ライダーには特に記載されてません。知っている人、教えてください。


くろがねさんの感想から一部を変更しました。サイクロンはまだ週刊仮面ライダーで出てないのでデータ不足でした。それにともない、犬とのバトルも最初の部分を修正。くろがねさん情報提供ありがとうございます。

ちなみに、バイクの違法改造は犯罪です。作者は擁護しません。



[7853] 第4話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/05/15 22:59
「おやっさん、なにやってるんですか」

お客がひとりもいないからか、おやっさんは雑誌を広げ、記事をスクラップしている。

「いやな、雑誌を読んでいたらここら辺の事件を取り上げていてな。めずらしいからスクラップしてたんだよ」

なになに、OREジャーナル「閑静な住宅街にあらわれた謎の破壊痕、その後ろに見え隠れする謎の黒い影の正体とは」とATASIジャーナル「突然の竜巻、地球温暖化による影響か」

ずいぶんゴシップくさい雑誌と真面目な週刊誌だな。
竜巻って俺が起こした奴じゃねぇか。しっかり写真に撮られてる。俺は……よし、写ってないな。


「いや~、ここって平和だから、こういう小さな事件も結構珍しいくてなぁ」

こんな会話が出てくるあたり、今日も海鳴は平和である。



第4話 新たな力と変化

Side 雄介

暗いラボの中心に青い宝石が浮かんでいる。

『どうやらこれは生物からの一定の感情を受け、内部のエネルギーに方向性をもたせ使用するようだ』

キングストーンはこの宝石を内部で封印しながら解析したらしい。今、俺はその解析結果を聞いている。宝石のほうは、ほとんどのエネルギーをキングストーンに吸われ、ほぼ空っぽである。

「感情?そんなものどうやって読み取るんだ」
『おそらく、脳波や電磁波、体温、脈拍などからだろう。続けるぞ。その感情は、よくいえば願い、悪く言えば欲望だ。それを受け実現するためにエネルギーを使う』
「なるほど、ライダーバトルやバトルファイトの勝者が得るものみたいなやつか」

13人のライダーで行われるライダーバトル。この戦いの勝者は願いを叶えることができる。バトルファイトも勝利したアンデットの種族は繁栄し、そのアンデットは全能に近い力を得ることができる。


『そうだ。しかし、その実態はむしろイマジンに近い』
「げっ。つまり、勝手に願いを決め付け、さらに拡大解釈か」
『ああ。しかも対象を求めてさまようとこまで一緒だ』

イマジンは対象の願いを叶えることによって、その対象が最も印象に残っている時に移動し、そこから過去に介入していく。
この宝石とイマジンの違いは最終目的だけ。イマジンは過去に介入することが目的で、願いをかなえるのはおまけである。


『これの原因は、願いを込める方法とそれを発現する際のエネルギーの方向性が拡散的すぎることだ。感情を読み取るのに言葉を用いないのは正しいが、だからといって対外での情報を用いるのでは願いの誤差が大きい。さらに、その願いでエネルギーに方向性を持たせたら読み取りきれず拡散するに決まっている。』
「つまり、願いを込める方法と方向性をしっかり持たせれば願いがかなうと」
『願いにもよるがな。精神的なものならまだしも、即物的なものは叶いづらいだろう』


『雄介、面白いことを思いついた。こいつを2,3日預からせてくれ』
「別にかまわないが、暴走させるなよ」
『ふん。こ奴にはもうほとんど力は残っていない。うまくいけば使えるかも知れん。ククク』

キングストーン、キャラがいろいろ混じりだした。かくいう俺も願いが叶うと聞いて、少し心が揺れた。おそらく、13人の仮面ライダーたちの因子だろうか。まあ、実際全仮面ライダーの1/3を占めているのだから結構、俺の欲望は強いのかもしれない。



****************************************


俺は朝靄の中を走っている。この世界に生まれてから朝のランニングは日課である。ランニングといっても一般人には全力疾走相当の速度で走っている。ちょうど公園に差し掛かったあたりで前から人の気配を感じる。ここでもう一つの訓練を行う。

タッタッタッ
ダッダッダッ

足音は二つ。おそらく片方は女性。目を凝らすと、Cアイから放出された赤外線で相手の身長が大体分かる。男性は俺より少し上、女性は俺と同じくらいか。


仮面ライダー1号の超聴覚は常人の40倍。周囲4Kmの音を聞き分けられる。C(キャット)アイは赤外線を放出することで視界が悪いときも動向がキャッチできる。常人の3倍の視力を誇る。

これらの感覚器は、基本的に人間体のときも使用できる。なので、ランニングの際にこうして情報を正確に読み取る訓練をしている。



ってあれは、


「恭也さん、おはようございます」
「………雄介か?おはよう。ずいぶん早いな」
「?…恭ちゃん。誰?って言うか、よくあんな遠くから分かったね」


前にいたのは恭也さんだった。隣にいた女性…美由希さんと自己紹介し合う。当然だが仮面ライダーについては教えない。秘密を知る人は少ないほうがいい。


二人も訓練のためのランニング中だった。この後、道場に戻り剣術の訓練にうつるそうだ。ライダーの中で風見 志郎は剣道を嗜んでおり、五代 雄介や剣崎 一真は訓練に剣道を取り込んでいた。本場の剣術とはどのようなものなのか、興味があった。見学したいと頼むと、あっさりOKしてくれた。




俺はこのとき、すっかり忘れていた。恭也さんは根っからのバトルマニアだったことを。





20分後。なぜか俺は美由希さんと試合をすることになっていた。
どうやら、恭也さんはこの前試しに使った赤心少林拳を今度は第三者の目線で見たいそうだ。隣にいる恭也さんの父、士郎さんも興味津々といった感じで見ている。できればとめて欲しいものである。


赤心少林拳。それは秩父連山にある赤心寺で玄海老師によって若者たちに教えられている拳法である。その奥義はすさまじく、それを極めた玄海老師とその弟子の弁慶は、ドグマ王国の怪人たちを葬るほどの力を持っていた。仮面ライダーS-1は変身不能になったとき、この赤心寺で修行し変身の極意を習得した。


俺が恭也さんとの試合に使ったのも、これを会得すればS-1になれるのではと考えたからだ。しかし、いまだに変身はできない。当然といえば当然である。S-1、沖 一也でさえ赤心少林拳の達人、玄海老師の元で半年の修行、さらに100人の猛者と戦う地獄稽古の末にやっと変身できるようになったのだ。いくら全てのライダーの因子が入ったこの体でも手本のいない見様見真似では限界がある。


「恭ちゃん、さすがに素手の相手に木刀はちょっと…」
「大丈夫だ。本気で打ち抜け」
それでも変身できない状態で木刀に打ち抜かれるのは嫌だ。





「それでは、始め!!」


基本の構えをとる。右手は握らず前へ、左も握らず腰へ手のひらを上へむける。


試合に入ると、スイッチが入ったのか、美由紀さんの目つきが変わり、一足飛びで間合いに入ってくる。それに合わせ、こちらも前に出る。


「ハッ!!」


気合いとともに右から袈裟掛けに振り抜かれる木刀に対し、さらに前に出て左手で持ち手を払い、右の拳を放つ。相手もすぐに反応し左の木刀でガードする。


「ほう。御神の速さに対応できるのか。見たところ動きは北派少林拳、いや、その亜流か」
「美由希、手加減しているとやられるぞ」
外野はすごい気楽に話している。士郎さん、なぜ一瞬見ただけで流派まで分かるのですか。恭也さん、煽らないでください。だんだん、恭也さんの声がネガタロスに聞こえてきた。


今の攻防でわかったが、美由希さんのスピードは恭也さんとほぼ同等だが、力は恭也さんのほうが上だ。スピードのほうは変身しなくても五感は変わらないので十分対応できるし、力のほうも変身抜きで対応可能な範囲である。


何度か攻防を繰り返すうちに、さらに目つきが険しくなった。

「本気で行くよ。怪我したらごめん」


ビュッ!!


風を切る音が変わり、スピードが少し速くなった。対応はギリギリか。木刀を素手で受けることのなるかも知れないが、先ほどの力なら受け流し切れる。


先ほどのように袈裟掛けに来る剣戟をはじこうとする。
「なっ!!くぅ」
剣戟は、腕をすり抜け、軌道を変えず、そのまま首元めがけて飛んでくる。
無理やり体をねじり回避するが、体勢が崩れ次の攻撃は回避できない。なんとか右手で防御するが、
「ぐっ!!つぅ~」
今度は防御できたが、とんでもない衝撃が体を駆け抜けた。左手で体を支え、蹴り上げ、なんとか距離を作る。



「徹も貫も防ぎきったか。恭也、彼に技を見せたのか」
「いや、技そのものは初めてだろう(今まで使っても避けられてたしな)」
「初めてであそこまで反応できるとは、実戦経験が多いのか」



そうか、これが本来のこの流派の戦い方なのか。しかし、なんて対応しづらい攻撃だろう。受けができない以上、全て避けるしか攻略法がない。どうやら恭也さんには、知らず知らずに最良の行動をしていたらしい。


負けたくないなぁ。ほぼ全てのライダーに共通する性格。負けず嫌いで諦めが悪い。俺も同じく負けるのは嫌いだ。まだ、できるかどうかわからないが、ここで試す。赤心少林拳の極意は気に転ずること。大気を体の隅々にいき通らせ、自らの肉体を大気と化す。




冷気の中でこそ梅の花はきれいに咲く。
その花、命を守るかの様に包み込む形意に、
荒々しい戦いのなかにあってなお花の可憐さをいとおしむ心を乗せる。


赤心少林拳「梅花の型」



両手を開き、付け根を合わせ、前に出す。物にしてみせる。この戦いで。








**************************************


と、まぁ意気込ん見たが、結局勝負はつかなかった。こちらは、まだまだ未熟な梅花の型。頭で分かっていても体がついていかず、防御後の素早いカウンターが打てなかった。向こうも、素手の相手との交戦経験の少なさから攻め切れなかったらしく、その後10分ほど打ち合って時間切れ、あちらの朝ごはんの時間にはいってしまい、引き分けに終わった。


士郎さんに朝食を一緒にどうか、と誘われたが、おやっさんが待っているだろうからと断った。後に恭也さんから聞いた話だが、この街にはポレポレ以外にもいくつかの喫茶店、甘味処が存在し、高町家はそのうちの1つ、翠屋を経営している。しかも士郎氏はうちのおやっさん、もう一軒の女主人の三人でうまいコーヒーを淹れるものとして鎬を削っているそうだ。



高町家の三人がいればデルザー軍団でも出てこない限り、この街は平和だと思った朝の出来事だった。







****************************************


「すいません、追加の注文で……」
「お会計お願いします」
カランカランカラ~ン



そこは戦場だった。お昼時、ポレポレは大盛況。休みとあってか普段の2倍は来ている。クウガの時は桜子さんや奈々ちゃんが手伝ってくれたが、この世界では桜子さんはそこまで親しくないし奈々ちゃんはまだ高校生で実家にいる。救援はない。弾薬(食材)も尽きかけ。こちらレンジャー3、本部、救援を。うんっ、久しぶりの電波だな。



なんとか、なった。はっきり言って恐ろしい人の波だった。時刻は1時一寸過ぎ。

「雄介、今は一人で大丈夫だから、ひとっ走り調味料と油を買ってきてくれ」


よく見ると、カウンター席の砂糖が全て使い切ってある。その横には空になって底に溶け残りの砂糖があるコーヒーカップ。誰だよ、このコーヒー飲んだやつ。コレだけ砂糖をいれたら間違いなくコーヒーの味がしない。きっとこいつはコーヒーが嫌いなやつが無理して飲んだ形跡だろう。


「んっ?なんかデジャブが。まぁいいや。じゃあ、おやっさん、いってきます」
「ありがトーテムポールさん」
おやっさんの訳のわからないギャグに背を押され俺は最寄のスーパーに行った。






Side はやて

その日は特に何のことはない一日だった。
いつも通りの朝。
いつも通りの昼。
いつも通りの午後の買い物。


ここからがいつもと変わりだす。


午後の買い物の時、変わった人と出会った。調味料の棚の前で一人の青年がうなっていた。なんや、おかしな人がいるなぁ、と思って後ろから覗くと、袋詰めの上白糖とスティックシュガーの束を持って考え込んでいる。


声をかけるとものすごく驚かれた。俺の後ろに立つな的な人やったか、といったら、誰が松本だ、と返され、咄嗟にゴ○ゴ違いや、と突っ込んでしまった。私に突っ込ませるとはやるなぁ、この人。にやりと笑うと向こうもにやりと笑ってサムズアップした。


話を聞くと、どうやら、アルバイト先で使う砂糖で迷っていたそうだ。店の雰囲気的には袋詰めを移して使うほうがあっているが、スティックのほうが経済的である。散々迷った挙句、いっそのこと両方買えば、と助言したら本当に両方買ってしまった。


なぜかすごいうかれていて、このお礼は必ずする、と言い残し、サムズアップして去っていった。ほんとに変なひとやったな。あのサムズアップは癖かなぁ。




帰り道。いつも通り、同じ道を帰る。しかし、面白い人にあったせいか心が弾む。そういえば、あんな愉快な会話したの久しぶりやったなぁ。




まだ日常の延長上。ここから大きく変わる。大きく変えられる。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ

足元からの大きな地響きにすくみ上がる。地震!?そう思った瞬間、足元が大きく盛り上がり、地面から植物の根のようなもの突き出してきた。車椅子から投げ出され、頭を打ったのか意識が暗転する。あ、さっき買った卵われてまったか。





どれぐらい気を失っていたのだろう。意識が朦朧とする。頭のなかがかき回されたように一定にならない。倒れた私に対し、植物の根のようなものが振り下ろされる。スローモーションで迫ってくる根。そんな状況を私は第3者のように感じていた。ああ、死んだな。もっと友達がほしかったなぁ。






「ライダァァァァチョオオップ」


目の前に赤いマフラーをつけた、骸骨のような仮面をつけた人が現れた。まるでヒーローみたいやな。


意識はまだはっきりしない。






Side 雄介

俺は今猛烈に感動している。スーパーで買い物をしているとき、後ろからの関西弁の少女に咄嗟に冗談で返せたのだ。


俺はライダーの要素を受け継いでいる。当然、それはプラスの要素だけではなくマイナスの要素も受け継いでいる可能性もある。実はおやっさんのもとで生活している上であるマイナス要素を持っている可能性が浮上したのだ。それは…



空気を読んで冗談がいえない。もしくは冗談が通じない。


一方でとると、真面目であるとも取れるが、ヒトとして生活するにはユーモラスな感性は必要だろう。おやっさんのギャグに反応できず、ギャグを返せないため、このマイナス要素を受け継いだかと思っていたが、どうやらおやっさんのギャグは本当につまらないらしい。




砂糖も買ったのでポレポレに帰ろうとしている途中、


ゴゴゴゴゴゴゴッ


突然の地震とひび割れに見舞われ、咄嗟にサイクロン号のスイッチを入れる。
といってもライダーに変身したわけではない。
サイクロン号はウィングのおかげで安定性が高く、磁気繊維タイヤのおかげで垂直な壁でも上れる。また、姿勢制御三次元ジャイロのおかげでどんな悪路にも対応できる。このような地面からの攻撃に対しては通常のバイクとは比べ物にならないほど適しているのだ。


加えて、
「よっ!はっ!とっ!」
ライダーの大半はオートレースの大会にでれば優勝候補に名を連ねるものばかりである。コレなら問題なく動ける。

と、考えていたら地面から木の根が襲い掛かってきた。
「なっ!?くっ」
何とか避けて離れる。


追ってこない?一定範囲内にはいったもののみを攻撃するのか。しかし、なんて効果範囲なんだ。目の前ほぼ全面が植物によって侵食されている。組織が動いたか。こんなもの、幹部クラスの怪人でもあまりやらないぞ。

そもそも、もし何らかの組織の作戦だとして、この地でこんな大きな作戦をやる意図が見えない。ここは流通の要所でもなければ、主要都市からも離れている。破壊が目的だとしたら、あまりにも効果を広げすぎであり、経済や流通に混乱を与えるにはここでやる意味はない。

組織でないとしたら、何らかのバイオハザードか。魔化魍やギガンデス、ファンガイアのサバトなどならこの範囲もうなずける。



「キャアアアアァァァ…」

考えるのはあとだ。いまは巻き込まれた人を助けるのが先だ。



幸いといっていいか分からないが、この植物自体は対した強度もないので簡単に切り裂ける。

「大丈夫ですか!?早く逃げてください」
「はっ、はい」

今ので13人目。どうも植物は襲い掛かるのに何らかの基準があるらしく、やたら攻撃されている人とそうでない人がいた。



ふと前方を見ると、見覚えのある車椅子が転がっており、先程の買い物で会った少女が倒れている。

「っ!!危ない!!」

その眼前には植物の根。今にも振り下ろされそうになっていた。


「ライダァァァァチョオオオップ」


かばうように前に出て切り払う。


「大丈夫か」
「…ヒー……ロー……?」


どうやら意識がはっきりしていないらしい。これでは自分で逃げるのは不可能か。誘導装置を動かしサイクロンを呼び寄せる。


プッ
ガキッ


後ろから何かが飛んでくる気配がし、振り向きざまに受け止める。

「種?」

握られていたのは植物の種だった。それが、弾丸のように飛んできたのである。よく見ると前方の根から花が咲いており、そこから発射されたらしい。見ている間に次々と花が咲いていく。


花が収束していく。どうやらこの少女は植物的には最重要警戒対象らしい。いままではこんなに攻撃的ではなかった。サイクロンがくるまでもう少しかかる。


意識が朦朧としていても目の前のものが自分を攻撃しようとしていることは分かったらしく、後ろから怖がる気配を感じる。


「心配無用だぜ。仮面ライダーにかかればお花さんの豆鉄砲なんて屁でもないぜ」
「仮面…ライダー……」
「おうよ。正義のヒーローさ」


安心したのか、少女は笑顔で意識を失う。

プップップップップッシュ!!!!!!!
ギギギギギギギギギギギギン!!!!

さらに収束した花から特大の種が来る。

「ライダァァァァーパァンチ!!」

そのまま打ち返す。

「はっ。やっぱり屁でもねぇ」

サイクロンがすぐ後ろに来た。警戒しつつ少女を乗せる。ここでガードしつつ、遠隔操作で範囲外に運ぶ。気絶しているからそんなに速度はだせないな。



一瞬の油断だった。走り出したサイクロンを背中で見送ったとき、足にいきなり蔦が巻きついた。さらに槍のようにとがった根が少女の背中へとんでいった。


まずい!!

足についた蔦は俺用なのか強度が異様に高い。
その根の先の鋭さ、そしてその速度から少女の体を貫くことは容易に想像できる。
サイクロンのスピードを上げれば追いつかれないだろうが、そんなことをすれば少女が振り落とされる。


救えない。一瞬、心が軋む。その瞬間、脳裏にある光景がフラッシュバックする。



腕が鋭くはさみのようにとがった化け物。
体を貫かれ倒れる父さん。
助けようにも力はなく、押さえ込まれる。
目の前で殺される母さんと妹の雪子。
先輩によってなんとか助け出される無力な自分。

「父さん!!!母さん!!!雪子………」
「ライダー、俺を、俺を改造人間にしてくれ」





目の前が元の光景に戻る。

「ウオオオオオオオォォォ!!!V3レッドボーンリング!!」

胸から赤い光が迸り、足を縛る蔦を無理やり引きちぎる。体を縦に回転させ、光がタイヤのように変形、少女を突き刺そうとしていた根を周りの根ごと切り裂いた。

サイクロンが少女を乗せ走り去った


「変わった。V3か」
先程の少女と雪子が重なったのだろう。
「ありがとうV3。俺は守れた。守ることができた」
天に向かって礼をいう。

蔦が簡単に切れたのは、レッドボーンの力を解放したためである。
仮面ライダーV3
デストロンによって家族を殺され、復讐を誓った風見 志郎。彼は瀕死の重傷を負わされたがライダー1号2号によって改造手術を施されこの姿になった。
その身には26の秘密が埋め込まれており、レッドボーンパワーもその内の一つである。


俺は植物に眼をやる。
「植物よ。どうやら俺は風見 志郎の感情まで共有したらしい。よくもあんな場面、俺に見せてくれたな。……今度は俺が見せてやる。俺の戦い方を」

正直、はらわたが煮えくり返っている。これが風見志郎の復讐心か。あまり身を任せてはいけないが今回は特別だ。


「トォ!!」
向かってくる植物に拳を叩き込む。
「ハッ!!!」
後ろから迫る根に蹴りをいれる。

左右から迫る攻撃に対し
「V3サンダー!!」
触覚から雷を出す。

「トォ!!」
飛び上がり、植物の集まったところに、回転しながら落下する。
「V3遠心キィィック!!」
なぎ払う。







どれぐらい戦っていただろうか。上空で桜色のレーザーが木の寄り集まったところにあたり、植物が急に消えた。


俺は変身をとき、サイクロンを呼び戻す。少女を乗せ病院まで行かせたので、向こうで医者に診られるだろう。


戻ってきたサイクロンに乗って走っているとき俺の頭を占めていたことは、植物のことでも、それを消したレーザーのことでもなく、復讐心と怒りに任せ振るった拳のむなしさだけだった。





あとがき
ライダーライダー スーパーライダー 仮面ライダ~ス~パ~ワン。どうも作者のGです。もう名前めんどいので省略します。

さて、前半ではまたも対御神戦です。設定上、志郎氏は生きているため、恭也君は無茶してません。そのため怪我も無く、最終的には原作より強くなる可能性を持っている設定です。美由紀さんも、恭也君が入れ込んでないので、今は原作より弱いです。

後半、V3登場です。正直、植物戦なのでほぼ一方的です。そしてゲストのはやてさん。こちらは関西弁が良く分からん。

さて次回はついにフェイトさんが登場。でもこのSSはライダーが主人公なのでボコボコにするかも。さすがに火柱キック、叩き込んだら死んじゃうかな。


緑人さんへ
はい、ライダーは僕らのヒーローです。JSについてはもうちょっと待っててください。バレバレかもしれませんが、しっかり書きたいと思います

北方の熊さんへ
つまりイン○ックスの上条属性はいらないと。キングストーンがしゃべりすぎ。すいません、仕様です。今回もオープニングで話しまくっていますが、それでもよければ見てください。

Ravenさんへ
はい、すいません、ごめんなさい。説明不足です。つまり、1号からアギトまでの体の内部に変身に必要なものが入っている場合、きっかけのみ。龍騎からキバ(ライダーマンも)などの外から変身に必要なものをつける場合はきっかけとその必要なものをそろえる必要があるということです。




[7853] 第5話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:7b4c5d7c
Date: 2009/05/15 22:52
《謎のヒーロー現る。謎の怪事件から人々を救った英雄》


orz

英雄願望なんてないからこう書かれても、まったくうれしくない。

しっかり写真まで撮られた。遠距離からのがかすれた写真と割と近距離のピンボケ写真。遠距離のほうはしっかり形までは分からないし、バイクで走っているところだが、近距離のほうは完全に全身が写って、しかも戦っているシーンである。


撮影者は白鳥 玲子と栗原 晋。そうか、この世界では晋さんは生きているのか。


また少し、この世界が平和であることを望んだ。





第5話  怪異!雷少女、or  敵か味方か謎の魔法少女

俺はV3の姿で崖の上に立っている。
「トォ!!」
飛び降り、滞空時間を計る。
「V3ビッグスカイパァァンチ!」





そうだ、特訓へ行こう。(京都へ行くノリで)
「おやっさん、すいません。一週間程旅に出ます」
「おう、行って来い」
おやっさん、同じ冒険家とはいえ少しぐらいは店のことを考えてください。


この一週間、俺は山に篭って特訓を行っている。前回の戦いでは怒りに身を任せたとはいえ完全に性能に頼った戦いをしてしまった。あまりぶっつけ本番でV3の強力な技を使いたくは無いが、あんな戦い方では1号から受け継いだ技も2号から受け継いだ力も宝の持ち腐れである。


山の中腹まで来てふときづく。仮面ライダーって一人で特訓してることが少ないな。改造人間である仮面ライダーは強化された体、造られた能力、定められた限界を超えるため、さまざまな特訓をしてきた。その横には常に立花のオヤッさん、先輩ライダーの姿があった。
まぁ、改造人間でない仮面ライダーは基本的に特訓なんてしてないし。




しかし、今回は自分ひとりでしなければならない。なんとしても、この未熟な心を叩き直さなければ。




特訓といっても誰かに負けたわけではない。勝たなければならない相手はいない。
ただ彼らに近づきたい。誇り高い彼らと同じところに立ちたい。
それと、一時でも怒りに身を任せたことを恥じ、ただがむしゃらに体を動かしたい。

特訓の理由はこれだけだ。ようは、憧れと八つ当たりである。

念のために街の方にはホッパーを飛ばしてある。何かあればすぐかけつけられる。







Side すずか

5日間ほど五代さんの行方が分からなくなった。街の中で植物が暴れるといった事件の直後だったので心配していたが、バイト先のマスター曰く、一週間ほど旅に出るといっていたらしい。


恭也さんに聞くと、修行するのではないかという話だ。私は五代さんの話を聞いてから強くなろうと思い、みんなに気付かれないように色々試している。なので、彼の話していたライダーの特訓とはいったいどのようなものなのだろうと思い、見てみたくなった。敵を倒すために行っていた特訓なので、私とは方向性が違うかも知れないが、それでも何らかの参考になるのではないかと。


ファリンとノエルに頼んで探してもらうと、ちょうどいなくなった日から山で大きな音がする、といった地域を発見した。さっそく行ってみるとそこには…








宙吊りになって横回転をする、はじめて見るライダーがいた。


なんの特訓なんだろう。




Side 雄介

特訓に入ってから6日後、すずかちゃんが現れた。


実際、特訓を開始すると、思った以上に一人でやることはたいして苦にならなかった。風見があそこまで苦労した特訓を着実にこなしてしまい、ほとんど精神修行にならない。そっちは恭也さんあたりに聞こうかな。


この体の理不尽っぷりには、ライダー達に申し訳がなくなってくる。26の秘密も全て(火柱キック以外)試したし、今、最後のキックの特訓をしている。逆さ吊りになって横回転に耐えるという特訓だが、これを苦労したのはV3が大怪我をしていたためである。そのため、回転速度を二倍にしてみた。


しばらくやっていると、近づいてくる二つの気配。


「あれ、すずかちゃん、ファリンさん。おひさしぶり」
「こんにちは。五代さん」
「こ、こんにちは」
クルクル回転しながら挨拶すると、すずかちゃんは目を輝かせながら、ファリンさんは若干引きながら返してくれた。


足のロープを切り、下りる。はっきり言ってこの特訓はヌルい。先にやった、迫り来る鉄球を受け止める特訓のほうがよっぽどきつかった。スクリューキックに比べ回転数は多いものの、回転数というのなら、Xの真空地獄車、スカイのスカイフライングソーサー、ナイトサバイブのファイナルベントやカリスのスピニングダンスのほうが圧倒的に多い。そんな経験をもっている俺では簡単と感じても仕方ないだろう。



「それで、今の特訓はどういう意味があるんですか」
なんか、めちゃくちゃ目をキラキラさせてる。だれか思い出すなぁ。誰だっけ。…………
ピーン。ああ、明日夢か。そういえば、彼はこの世界にいるのだろうか。


実際、やってみることにした。卍キックのときのようなぶっつけ本番はできれば避けたい。
二人にはなるべく離れてもらう。あと、ファリンさんその胡散臭そうなものを見る目はやめてください。




「トォ!!」
高く飛び上がると同時に超触角アンテナでハリケーン(偽)を呼ぶ。


超触角アンテナは本来、他のライダーと交信したり、ハリケーンを呼ぶためのものだ。
残念ながら今のバイクを強化するころができず、外装をサイクロンからハリケーンに変えただけ。しかも動力が変わってないので、外装の重さのせいで逆にスピードが落ちたくらいだ。正直、サイクロンに戻そうかとさえ考えている。

閑話休題


ガッ
ギャルウウゥゥゥ
飛び上がったハリケーンの後輪に足をかけ、その回転力を受けとり己の体を横回転させながら、目標となる大木に向かっていく。しかし、これは…

「V3ッ!!マッハ――――キィィィック!!」


蹴りを叩き込んでから数秒後、大木はメキメキと音を立てながら倒れる。


パチパチと拍手をおくるすずかちゃんと呆然としてるファリンさんが印象的だが、


「失敗、ですか?」
「ああ、失敗だね。本来の威力ならあの大木の後ろにある木まで貫通していくぐらいの威力があるはずだから」


原因は分かっている。この技は横回転の運動エネルギーをどこからか受け、それを体の反動で大きくして放つ技だ。対ツバサ大僧正、死人コウモリのV3キラー用に開発された技で死人コウモリに対してはそのV3キラーの反動を利用した。今回はハリケーン(偽)を使ったが、このハリケーンは動力をサイクロン(偽)から変えてないので、本物に比べるとスピード、馬力は半分程しかない。そのせいで十分な反動がつかなかったのである。

といっても、これで粗方の特訓は終了した。むしろ問題として浮上してきたのはライダーマシンの力不足である。早く帰って改造にはいるか。





「そういえば、すずかちゃん。どうしてここにいるの」
「あっ、そうだ。急に何も言わずにいなくなったから心配しました。海鳴であんなことがあったばかりだから…」
「ああ…ごめん。思い立ったが吉日だと思っちゃって」
しまった。そういえば連絡まったくしてなかった。ライダーの特性か。

実際のところ、仮面ライダーはよく連絡せずにいなくなるやつが多い。1号はヨーロッパに行くに当たって、立花のオヤッさんや滝に何も告げないで行ってしまったり、2号はオヤッさんに連絡をいれずよく「まったく隼人のやつは何をしているんだか」と口癖のように言われていた。カブトなど自分の行動を人に教えることのほうが珍しい。


「なんで急に特訓しようなんて考えたのですか」
「実はな------------ってことがあったんだよ。まったく,君に心が大切などと説きながら、怒りで我を忘れるなんて俺も未熟者だよ」


V3の能力はすさまじい。1号2号とのもっとも大きい相違点は広範囲に及ぶ必殺技があることだ。あの時、火柱キックや逆ダブルタイフーンを使わなくて本当に良かった。もしも逃げ遅れた人がいたら、と思うとぞっとする。


「もっと強くならなくちゃな。心も、思いも。全ての人を助けるなんてできないけど、せめて目の前の人を傷つけずに救えるように」
少し、考えるようなそぶりの後、
「……あ、あの。今度、特訓に行くとき、わっ、私も連れて行ってください。私も強くなりたいんです」
「はいっ!?」
「えっ、えぇ~~~。す、すずかちゃん!?ええい、女は度胸だ。五代さん、そのときは私もついていきます」
「はいぃっ!!??」



結局、説得むなしく、ついて来ることを許可することになりました。

ライダー最大の弱点。真摯な子供の頼みを断る事ができない。






一緒に下山している途中、
「そうだ、五代さん。明日、友達とお茶会するから、うちに来ませんか」
「いいの?そういうのは気の知れた友人のみでやったほうが楽しいと思うけど」
「以前話した友達だから会ってもらいたいんです」
「そういうことなら、喜んで」
明日の予定が決まった。





****************************************





Side なのは

今日はすずかちゃんの家でお茶会なのです。
私はアリサちゃん、すずかちゃんとの休日を。お兄ちゃんはすずかちゃんのお姉さんの忍さんに会いにいきます。

バスの外にはきれいな海が広がっています。

この前の戦いでJSは4個。ユーノ君の話ではあと17個。今日は息抜きがてらのんびりしたいと思います。



そうこう考えている間に月村家に到着。
インターフォンを押すと、向こうから扉が開かれました。
あれ……


「恭也さま、ええっと……「妹のなのはだ」…なのはお嬢様、いらっしゃいませ」
出てきたのはいつものノエルさんではなく、執事の格好をした男の人でした。
「どうぞ、こちらでみなさんがおまちです」

「ところで雄介、お前は何をやっているんだ」
「…一日職業体験、執事編です」





Side 雄介


「いらっしゃいませ」


月村家に着き、ノエルさんにテラスまで案内される途中、

「キャアアァァァ」

ファリンさんの悲鳴が聞こえた。ノエルさんを見ると、頭を押さえ「まったく、あの子は」とつぶやいている。悲鳴のほうへ向かってみると、台所、っと言うより大きさ的にはすでに厨房レベルの調理場でクッキーをぶちまけていた。



どうやら、お客さんにだす手作りクッキーを用意しているとき、うっかり焼きたてに触ってしまい、熱くて驚いた拍子にまとめて落としてしまったらしい。

ノエルさんはファリンさんの火傷の治療に行ってしまい、調理場に置いてきぼりを食らう俺。目の前には料理の材料と器機。…よし、やってみるか。




「それで、こんなに作ってしまったと」
「すいません」

ただいまノエルさんにお叱りを受けています。かわいそうだからと、落としてしまった分のクッキーを焼いていたら、楽しくなってしまい、色々なクッキーを焼いてしまった。くっ、自分の料理技能が悔やまれる。おのれ、津上 翔一、天道 総司め。

「でも、お姉さま。これすっごくおいしいですよ」

むこうではファリンさんがホクホク顔でクッキーをつまみ食いしているが、ノエルさんの絶対零度の視線で手を引っ込める。

「とりあえず、使ってしまった材料費分、働いてください」
「…はい…」



こうして俺の一日執事体験が始まったのである。








「でも、全然違和感がないわね」

アリサ嬢が言う。すずかちゃんの友人その一。アリサ バニングス。なんと以前、ポレポレに現れた「コーヒーの値段を決める人」だった。会った瞬間に「あっ、ポレポレの人」といわれた。実際、俺も印象が強すぎて、覚えていた。先程、近頃疲れのたまっているらしいなのは嬢に無言の気遣いを見せていた。以前のことも含めて、かなり男気あふれる、失礼、かっこいい少女だ。

「にゃはははははは」

肯定も否定もせず、なのは嬢が笑っている。高町 なのは。恭也さんのもう一人の妹だ。しかし、全然鍛えている感じがしない。なにせ、あの一家は戦闘民族といっても過言ではない。こんな普通な女の子が生まれるなんて遺伝子の神秘だ。いや、もしかしたら隠してるだけで本当はとんでもない戦闘力があるのだろうか。



互いの自己紹介は済ました。二人とも俺の本職が執事ではないことに逆に驚いていた。

そういえば執事のほうは問題なくこなしている。執事のライダーなどいないのだが。なぜかカブト、電王、イクサから要素が流れ込んできているきがする。


「どう、鮫島と比べても遜色ないんだから、このまま執事にならない」
スカウトされた。







「ハーイ、お待たせしました。イチゴミルクティーとクリームチーズクッキー、バタークッキーです」

ちょうど入ってきたファリンさんの足元に子猫のアインとそれに追いかけられているフェレットがじゃれ付く。それを踏まないようにか、まるでコントのようにファリンさんがクルクル回り、目を回す。俺の作ったクッキーが大量にあるので回転が速い。

「危ない!」
「ファリン!」


すずかちゃんとなのは嬢が同時に支えようと動き出す。まぁ、それより早く俺が支えに動いているが。

後ろに倒れようとするファリンさんの背を左で支え、手放されたお盆を右で支ええつつ、落ちかけているスプーンとソーサーをそのままお盆でキャッチする。


「大丈夫ですか」
「…はい」
顔が赤くなっているけど大丈夫だろうか。




その後、気分を変えてか外でのお茶会に移行した。クッキーも好評で順調に数を減らした。無駄にならなくて良かった。

三人とも子猫とじゃれ付いていたが、なのは嬢がフェレットを追いかけて林のほうに向かった。



10分後、なかなか帰ってこないので、アリサ嬢がソワソワしだした。やはり、あの林のなかでフェレット一匹を見つけるのは、大変なのだろう。


「すずかちゃん、ちょっと手伝いに行ってくるよ」
「あ、お願いします」






さて、どっちにいるだろう。ん、奥から何か違和感が…
『雄介、この先からなにやら壁を感じる。どうも前に手に入れた宝石と同じような力が働いてる』
「また、あの宝石か。次、見つけたら叩き壊してやろうか」
『まて、右30m先に綻びがある。そこから入れ』


中に入るとそこには……






馬鹿デカイ子猫と空飛ぶ少女×2がいた。





ありのまま今起きたことをはなすぜ!
俺が壁を抜けたら少女たちが光線打ち合っていた
なにを言っているのかわからねぇと思うがおれにも理解できねぇ
ビームライフルとかショックガンだとかそんなモンじゃだんじてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ


頭を一発殴る。毎度の電波である。特訓の際は来なかったので油断していた。



しかし、猫のほうは例の宝石だとして、なぜ少女×2は空を飛んで戦っているのだろう。少女のうちの一人はなのは嬢である。やはり牙を隠し持っていたか。

俺は子供が戦う、もとい危険なことをするのは基本的に反対である。ジュニアライダー隊や少年ライダー隊なども存在したが、矢面に立って戦わせることは決してしなかった。子供は守られるべき存在。それがライダーの共通認識だ。



エレクトロアイとマトリクスアイで彼女らの攻撃と彼女ら自身を解析する。あれは………光の弾丸か?着弾している所にダメージらしきものがないことから物理的破壊力なし、衝撃のみを与えるのか。あと両者の服から体全体を覆うようなバーリアのようなものが一瞬見える。



なにか話している?

黒い少女の武器が声を出し、急に鎌の形をとる。と同時になのは嬢に切りかかる。それを飛んでかわすが、今度は鎌の刃の部分がはずれ飛んでいく。何とかバーリアで防いだようだがすぐに接近されている。


あの黒い子、戦いなれてるな。でもなんだこの戦い。なのは嬢はまだしも何で黒いほうまで殺気がないんだ?



「なんで…なんで急にこんな」
「答えても、たぶん意味が無い」


互いに距離をとり、手に持つ武器が形を変える。

《Divine Buster stand by》
《Photon Lancer get set》



猫が身じろぎし、なのは嬢がそちらに目を向ける。馬鹿な、戦闘中に敵から目を離すと…
《Fire》

黒少女の金色の砲撃が放たれる。しまった、殺気が無いからと油断した。さっさと出て行って止めるべきだったか。なのは嬢の体が上に打ち上げられる。気絶しているのか、先程のように空を飛ぼうとはしない。まずい。



「ムウン!!変~…身!!V3ャァァ!!」

「トォ!」





Side ユーノ

「なのは!!」

砲撃を受け、落ちてくるなのはを救うためにフィールドを張ろうとすると、後ろの林から一つの赤い影が飛び出してきた。影はなのはをキャッチし、地面にねかせると黒い魔導師のほうへ、すごい速さで向かっていき、彼女が封印したJSを奪って林の奥に行ってしまった。少女のほうも突然の乱入者に驚いていたが、すぐに後を追いかけて行った。


「まっ、待て」


なのはを置いていく訳にもいかず、ボクは置いてきぼりを食った。




Side 雄介

気絶したなのは嬢から引き離すために、おそらく目的のものであろう件の宝石を掠め取り、林の奥へ抜ける。

開けたところで向かい合う。

「JSをこちらに渡してください」
「こんな危険物、なぜ欲しがる」
「あなたが知っても意味がありません」
「意味ならある。何の理由も無くこんな危険物を欲しがるとしたら、どう考えてもきみは危険人物だ」



黒少女はこちらに武器の先を向ける
《Photon Lancer get set》
話し合いは終わりらしい。もう少し情報がほしかったが。
《Fire》

砲撃が飛んでくる。

「トゥ!!」

飛び上がると同時に鎌の状態で切りかかってくる。しかし、すでにこのコンビネーションは見ている。V3の動体視力と反射神経なら・・・

ガチッン!!

「なっ」

刃の出ていないところをつかめる。このまま、へし折る。武器からものが軋む音とノイズの入った機械音が漏れる。

「バルディッシュ!!くっ、この、はなせ」

当たり前だが、子供の力でライダーの力を振りほどけるわけが無い。それにしても子供とは思えない力だ。

「っくそ!アークセイバー」
《A,,, Ar c Sa be r》

刃の部分が飛んでくる。さすがに避けるのに武器を放してしまう。
大きく離れ対峙する。


「なんで…なんで魔力もほとんど無い。魔導師でもないのに」


魔力。魔導師。二つの単語が彼女の口から漏れる。
この二つの言葉。共通するものは……魔法?



いままで呪術やらなにやらと戦ってきたのだ。いまさら魔法程度ではあまり驚かない。しかし、この世界にそんな技術はない。なぜこの世界の住人であるなのは嬢がそんなものを…



考えすぎ、考えすぎて周りが見えない。仮面ライダーの要素ではなく、純粋に俺自身が持つ欠点。



そのため、後ろから迫ってきた気配に気付くのが遅れた。

「グオオオオォォォォォ」
「っく!?ハッ!!」

迫り来る牙を何とか避けカウンターで拳を叩き込む。
拳は一瞬止められるがフックのように相手の腹に入る。

「ギャン!!クッ、フェイト。JSは取ったよ。転送する」
「なっ」

手の中を見ると宝石がなくなっていた。
くそ、手癖が悪い。

「フォトンランサー、連射」
《Photon Lancer Fullaoutfire》


足元に弾幕が張られ、土煙が上がる。腕をおもいっきりふるい土煙を払うが、そこにはすでに誰もいなかった。





その後、変身をとき、なのは嬢をつれて屋敷に戻った。すずかちゃんもアリサ嬢も大慌てで、呼ばれたファリンさんもさらに焦って、大騒ぎになってしまった。




すずかちゃんとアリサ嬢には当たり障りの無い理由をでっち上げたが、恭也さんと忍さんには事の顛末を話した。まぁ、話さなくてもここのセキュリティーなら映像が残ってる可能性が高いが。

恭也さん、というより高町家の皆さんはどうやらなのは嬢が何かしらしていることを知っていたらしい。止めましょうよ。えっ、負い目がある。でも危険です。えっ、だから影から助けて欲しい。それなら俺がJSとやらを全部回収すれば。えっ、できれば妹の思うようにさせたい。




そのまま、押し通された。結局、俺はできる限りでなのは嬢の手助けをしなければならなくなった。








あとがき
どうも、作者のGです。前回最後で書いた不幸についていろいろな人が意見をくれました。ありがとうございます。

さて今回、前半では、特訓についてです。V3の特訓シーンを全部見直してかきました。正直、マッハキックの特訓は訳が分かりません。そして、すずかちゃん弟子入りの回です。あからさまに書いたとはいえここまで皆さんに先を読まれるとは思いませんでした。オープニングで書いた二人の写真家。女性のほうはまだしも男性のほうが分かるひとなんているのだろうか。

後半は執事と戦いです。執事のほうに力を入れすぎて、戦いのほうがおざなりになっています。先に言っておきますが、作者は決してドジっ子メイド萌ではありません。でもファリンさんが一期で一番好きです。恋愛要素が入ってもライダーの恋愛は成就しないのが仕様です。


そして、あっつい魔法少女VSライダーは次回に持越しです(自らハードルを上げる)


そういえば舞台設定をしっかり書いていませんでした。

舞台設定
基本的にリリカルの世界。ところどころにライダーの登場人物がいる。しかし、基本的にライダーは本作の主人公以外存在せず、その血縁者もいない。(例外で前回出た、電車2号。彼は特異点でなく、野上愛理のいないこの世界ではライダーになる要素が皆無なため)



風見さんへ
昭和は子供に手を上げない。その通りだと思います。でもこの主人公は、《全て》のライダーを宿しています。それがごちゃ混ぜなので手加減はしてもまったく拳を振るわないということはないと考えています。

q-tureさんへ
すいません。ダブルライダーはしばらくしません。上記の設定をもっと早く書くべきでした。

青天さんへ
V3どこまで引っ張ろう。なんか強すぎて見せ場が作りづらいです。

俊さんへ
誤字添削本当にありがとうございます。つたない文章ではありますが、これからもよろしくお願いします。

くろがねさんへ
しまった、みのりを忘れた。というより自分で作った舞台設定を書いていなかったのが問題なだけです。すいません。
先…完全に読まれてますね。やべ、どうしよう。



ところで作者は昭和ではXとアマゾン、平成なら剣とカブトが大好きです。




[7853] 第6話 再修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:7b4c5d7c
Date: 2009/05/13 00:27
「すいません、私はこういう者ですが」

長野県警警備課 刑事 一条薫

「長野の警察の方、ですか」
「はい。今、ある事件を追っていて、出向しています。少し質問、よろしいですか」
「はい、俺が答えられることなら」

どうやら一条さんは、この世界では例の植物事件を追っているらしい。


事件が起こったとき、どこにいましたか?
「割と現場の近くにいました。足元からいきなり根のようなものが出てきました」(事実)
その時、どのような行動を取りましたか?
「バイクで逃げました。オフロードは得意なので」(事実)
その後は?
「怪我をしている人の救助などを手伝っていました」(事実)
何か気付いたことは?
「そうですねぇ……植物からある一定距離をあけると攻撃してこなくなりました」(事実)

嘘はついていません。知っていることを教えてないけど。


一条さんの覆面パトカーに無線が入る。
「一条さん。事件です。強盗事件です。そちらの力を借りたい」
「はい、北条さん。すぐに向かいます」
「長野県警のエースの実力、見せてもらいますよ」


「それでは、ご協力に感謝します」
「いえ、がんばってください」

サイレンを鳴らし、パトカーが去っていく。



この平和は彼らのおかげだと思った。




第6話 逆襲マホウショウジョor魔法少女よどこへ行く?

「で、キングストーン。これはなにかな」
『見て分からんか』

俺の手の上には緑色の鉱石がのっている。よく見ると、内部に前回拾った宝石が入っている。

『霊石アマダムを擬似的に作ってみた』
「ああ、どっからどう見てもアマダムだな。問題はなんで内部にこんな危険物をいれたかだ」



霊石アマダム。九郎ヶ岳より出土した古代の装飾品、戦士クウガのベルト、アークルに埋め込まれた石。クウガの動力源であるとともに、まるで意思を持つかのように働く。



『フム、いくら我とてアマダムを一から再現するなど不可能だ。エネルギー源としてこの宝石を使っている。これの問題は願いをかなえるときの方向性と願いの伝達法にあった。それをアマダムで囲むことによって方向性をアマダムの特性のみに進むようにした。アマダム同士は呼びあうから願いの伝達も可能だろう』
「アマダムの特性?……変化、強化、そして再生か」

実際、クウガは体が変化し、敵の強さに比例するように強化され、死に瀕した時はまさに再生かのごとく復活した。

『雄介。これと開発したAIをバイクに組み込めば、お前の望む変身によって変わるバイクが作れる』
「はぁ?どうやって」
『我の中にはアマダムとしての要素も入っている。お前の願いをそのまま伝えられる。ゴウラムのように周りの金属を吸収するから、足りない部分も補える』




こうして新たなバイク、ライダーマシンミレニアム特別バージョン(俺命名)が完成した。
ちなみに通常時はホ○ダVTRファイアース○トーム、アギトの愛車の形をとらせることにした。













思ったより簡単にバイクの強化ができてしまった日の夕方。



「温泉、ですか」
「はい。今度の連休中ですが、どうですか」


スーパーで偶然会ったファリンさんと一緒に帰っている途中、来週の大型連休の話になった。その連休中に高町家主催の温泉旅行に行くらしい。それに誘われているのだが、


「どういうメンバーで行くんですか」
「え~と、高町家の皆さんと月村家、アリサちゃんとお姉さまと私です」
「俺が行ってもいいものなんでしょうか」
「実はアリサちゃんのご両親が急な仕事でこれなくなってしまって…。予約も空いているのでどうですか」


温泉か。メンバーの中で顔見知りではない人は高町家のご婦人だけ。断る理由はこちらでは特に無い。むしろ問題なのは…


「すいません。バイト先との都合もあるので、後でそちらに電話します」
「そうですか……そういえば携帯電話は持っていないんですか」
「どうも、どれがいいかわからなくて」
「それなら今度一緒に買いに行きませんか。私も機種変更しようと思ってたので」


携帯電話。そういえば持ってないライダーが多いな。




Side ファリン

五代さんはとてもいい人です。

初めの出会いこそ最悪でしたが、その後はすずかちゃんの悩みを取り払ってくれたし、私の失敗を何度もフォローしてくれました。

さらに掃除、洗濯、料理、お茶を淹れる技術も全てお姉さまと同等かそれ以上。私とは比べ物にならな………ううっ、書いてて虚しくなってきました。

そんな彼ですが、彼も私やお姉さまと同じように不老らしいです。私は彼にいずれ必ず来る《別れ》に対する不安を相談してみました。すると彼は、

「別れはヒトが生きていく上で避けられないものだ。俺たちみたいな不老だとそれが多いけど。でも、その別れがいいものになるか、悲しいものになるかは、今の努力しだいだ。だからヒトは今を精一杯生きてるんだと思う」

とても思いのこもった言葉を貰いました。その時の彼の顔はとても■■■■■■■。(黒く塗りつぶしてある)

コホン。とりあえず、彼の言葉を受け、まずは今をがんばって生きていこうと思います。まずは、炊事、洗濯、掃除を完璧に。目指せ、お姉さま。


そういえば、書いてて思い出したけど、彼ってまだ生後2ヶ月ぐらいだったはず。今は頼りっぱなしだけど、いずれ人生の先輩として頼りにされる側になりたいと思います。まずは今度約束した携帯電話の件をしっかりと教えられるように、今日から予習です。
                    4月 ○日  ファリンの日記より一部抜粋





Side 雄介

その後、帰っておやっさんに聞こうとしたら、
「雄介、旅に行ってくる。店は連休中、休みにするから閉めといてくれ」
と書いた手紙が残っていた。


おやっさん、本当にこの店はどうやって保っているんですか。




とりあえず、旅行の時間ができたので、連絡を入れた。忍さんが出て、おやっさんのことを話すと電話の向こうで苦笑していた。

「はい、時間ができたのでよろしくお願いします」
「良かった。すずかとファリンが喜ぶわ。そういえば、あの二人を特訓に連れて行くらしいわね。」
「ええ。……ダメでしたか?」
「いいえ。私とは違う選択をしたすずかがどうなるか楽しみだわ」

忍さん、電話の先での含み笑いはめちゃくちゃ怖いです。


俺は現地にバイクで直接向かうことになった。ちょうどいいのでライダーマシンミレニアム(以下略)の試し乗りも兼ねよう。












旅行当日。ライダーマシン(略)通常モードは快調である。いろいろ実験した結果、周りに鉄さえあれば、イブキの使っていたサイドカーまで再現できることが判明した。しかも取り付けたAIがアマダムで進化し、バトルホッパーのように意志の疎通ができる。俺以外は乗せないなんて事にはならないだろうか。

今のV3では後半のライダーマシンのパワーはとてもじゃないが抑えきれない。なので、いま使えるのはハリケーンまでで、それ以降はキングストーンが封印している。



山道を飛ばしていると、目的の温泉宿が見えてきた。海鳴温泉。まさにそのまんまの名前である。

入口まで行くとちょうど士郎氏と若い女性が外へ散歩に出かけるところだった。

「おお、雄介君。今到着かい」
「はい、この度はお誘いいただきありがとうございます。士郎さん。お隣の女性は?」
「初めまして、妻の桃子です」
「五代 雄介です」
「士郎さんたちから聞いてます。この前、なのはが持ち帰ってきたクッキーを作った方ですよね?」

あのときのクッキーは結局残ってしまい、袋に包んで皆のお土産とした。桃子さんはプロのパティシエである。やはり作った者としてはプロからどのような評価を受けるか気になる所だ。

「味の方は及第点ね。見た目をもう少し整えればすぐにでもお店で出せるレベルよ。」

かなりの高評価。津上翔一、やはり菓子作りの才能は尋常じゃない。今度、ケーキに挑戦しようか。


「お二人はこれからお散歩ですか?」
「ああ。ここら辺は自然も多く、都会の喧騒を忘れられる。後で君も回ってみるといいよ」




旅館は落ち着いた感じの造り。ふむ、良いところだ。のんびり渡り廊下を歩いていると、左前方で姦し3人娘(死語)と女性がにらみ合っている。

「お~い、すずかちゃんたち」
「あっ、五代さん」
「ちっ。あはははは、ごめんごめん、人違いだったかな」

女性はひとしきり笑い、なのは嬢をしばらく見つめた後、去っていった。

「なんだありゃ」
「知らないわよ。向こうから因縁つけて来たんだから。ああ、気分悪い。」

どうやら、相当腹に据えかねたらしい。なんとか二人がなだめようとしてるが効果がない。

「ああもう、雄介。ちょっと付き合いなさい。卓球で勝負よ」
「はいはい、お嬢様」
「はいは一回!あと今は執事でもないんだからお嬢様は禁止」
それではアリサちゃんで。なのは嬢も許可をもらいこれからはちゃん付で呼ばしてもらえるようにした。今まで呼べなかったのはノエルさんの教育のせいである。


その後、卓球をしていると、風呂からあがった美由希さんと忍さんが参戦し、さらに恭也さん、ノエルさん、ファリンさんも加わり、トーナメント戦のような試合になってしまった。恭也さん、美由希さんはリアルに分身するし、すずかちゃんと忍さんの打球はラケットが粉砕されるし、ノエルさんの球は恐ろしいほど回転がかかっていて弾まない。なにこのスーパー卓球。



あまりに楽しすぎて、さっきの女性のことはすっかり忘れてしまった。






****************************************

Side 雄介

周りは静まり返っている。夜の森。静寂の中で目をつぶり獣たちの気配を探る。まわり全体にくまなく、己という存在そのものを広げるイメージ。範囲内に入る全ての生物を認識する。


恭也さんと士郎さんに精神鍛練について質問したら、焦ってもしょうがないと言われた。感情の制御は全ての武道、武術の奥義に位置することが多い。それが完全にできるものが達人となるそうだ。とりあえず、座禅や気配読み、滝に打たれるなどして無心になってみることを勧められた。


今はただひたすら鍛錬に勤しむ。心の修業は難しい。







ドォゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ

しばらく続けていると、後ろから突然、馬鹿でかい音がした。振り向くと、上空でピンク色の光と金色の光がぶつかり合っていた。

まさか、またあの二人が戦っているのか。

ハリケーンに乗って光のぶつかり合っている場所まで直行する。







すぐ上空に二人分の影が見える。なのはちゃんが首元に鎌の刃を突き付けられている。なのはちゃんの杖から宝石が出てくる。あれはやっぱり渡せないよな。


バイクを走らせながら、立ち上がり、左側へ伸ばした両手を右へ水平移動。
「ムゥン……変…身!!V3ャァァ!!!」
同時に黒少女を狙う。
「ハリケェーンジャンプ!!」

「クッ!!」
とっさに身をひるがえしてかわされる。そのままの勢いで空中に浮いた宝石をつかみ、下に降りる。


バイクから降り、目を向けると、黒少女は敵意むき出しの目で睨みつけてくる。

「また、あなたですか」
「ああ」
「前にも言いました。JSを渡してください」
「俺も二度目だ。こんな危険物を欲しがる理由を言え」



《Blitz Action》
一瞬、目の前から黒少女が消える。前回より速いが見えている。後ろか。

シャ!!
ガッシャァァァ!!

前回と違い掴めなかった刃を右に受け流す。
「トォ!」
体制を崩したところにパンチを叩き込む。

ガシャァァ!!

「大丈夫かい?フェイト」
「アルフ!!」
間に前回不意打ちをしてきた犬、おそらく名前はアルフ、が割り込み、バーリアを張られる。




互いに距離をとる。
黒少女が構えながら、
「あなたは一体何者ですか。なぜJSを欲しがるんですか」
「同じ質問に君は答えていない。そちらが答えたなら、こちらも答える」
「フェイトが聞いてるんだ。さっさと答えろ」


どうやら黒少女、フェイトのほうが格上らしい。ショッカーなどは、より人間離れしたほうが格上だったときが多いから調子が狂う。


「俺は別にこんなもの欲しくはない」
「なら…「だが」!!」
「こんな危険物を欲しがる、しかも欲しがる理由を明確にしない奴に渡したら、周りにどんな被害が出るか分かったもんじゃない」


この宝石はアマダムのエネルギー源になった。つまり、エネルギー量だけならアマダムに匹敵するということである。大きなエネルギーは容易に大きな破壊の力に変わる。かつて南原博士が作り上げたRS装置(エネルギー物質変換装置)だってそうだった。


「……無理やりにでも貰っていきます」
「結局、喋らないか」
「うるさいんだよ。なにも知らないくせに」




叫びと同時にアルフの体の回りに光の宝石のようなものが生成、打ち出されてくる。左に飛んで避けると、

《Blitz Action》

すぐ目の前にフェイトが来ている。真一文字に振りぬかれる鎌をしゃがんで避け、アッパー気味なパンチを放つ。

「ハァ!!」
ガツッ!

再度、間に入ったアルフによって受け止められる。腕をつかまれ、

《Arc Saber》

死角からブーメランのように刃が迫ってくる。くっ、こいつら、コンビネーションがかなり高レベルだ。

逆にアルフの腕を掴み、一本背負いの要領で飛んでくる刃に投げつける。と同時に刃が消え、真後ろに気配が生まれる。

《Scythe Slash》

「ハアアアァァァ」
「ウオオォォォォ」

ズシャアアアアァァァ

腕の表面が削られたような感触がする。どうやら鎌の刃に何らかの力を付加したらしい。だが、表面を少し切っただけ。マントを掴み、無理やりアルフのほうへ投げつける。

「トォ!!」

高く飛び上がる。まだ二人とも体勢が不十分。V3キックを放つ。

ガッ

咄嗟にアルフが前に出て、バーリアを張るが甘い。衝撃が貫通し、後ろに飛ばされる。
その反動を利用し、空中で宙返り。再度、キックの体勢に入る

「V3ィィィ…」

今度はフェイトがバーリアを張る。しかし結果は同じ。

「回転…」

三度飛び上がり、最後の一撃の体勢に入る。

「三段キィィィィック!!!」

二人ともガードできる体勢ではない。これで終わり。一応、手加減はしている。死にはしないだろうし、武器を奪った上で話し合いに入れば……

















最後の一撃を叩き込む瞬間、俺の意識は桃色の光に飲まれた。



Side なのは

「なのは、なんで…」

耳元で叫ぶユーノ君の声がやけに遠くに聞こえる。



怖かった。
いきなり、目の前を通り過ぎた影が、
暗闇から浮かび上がった昆虫の様な緑色の目が、
まるで射殺すかのような気配が、
氷を思わせる声が、

なにより、私より強い黒い魔導師の女の子を圧倒する力が、とても怖かった。


ズキッ!!頭に痛みが走る。何かを思い出す。



病院。
寝ているお母さん、お兄ちゃんとお姉ちゃん。
目の前を静かに通る影。
その影の大きな青い瞳が私を一瞬見る。
恐怖で暗転する。




私は気付いたらディバインバスターを放っていた。無意識に非殺傷設定を切って。




私は初めて誰かを殺そうとした。






Side 雄介
一瞬意識が飛び、変身が解けかけたが、なんとか立っている。

ガフッ

吐血し、膝を突く。くそ、意識がはっきりしない。


「アルフ!」
「はいよ。チェーンバインド!!」

がっ、体に鎖が巻きつきギリギリと締め付けられる。目の前ではフェイトが攻撃の態勢に入っている。まずい。


「撃ち抜け、轟雷」
《Thunder Smasher》


発射されると同時に周りがまるでスローモーションのように見える。


この鎖を引きちぎるのに半秒、
体勢を立て直すのに半秒、
攻撃が到達するのは1秒以内、
避けられない。


死ぬのか、俺は。先程食らった威力と同等なら死ぬ可能性もある。

死にたくない。まだ、おやっさんや忍さん、恭也さんに借りをかえしてない。まだ、ノエルさんやファリンさんと料理を作りたい。まだ、すずかちゃんを強くしてあげてない。


もっと、もっと強く。この鎖を切り裂く武器を。迫ってくる攻撃を避けるスピードを。そして、生き抜く力を。

目の前が赤く染まる。

「ウオオオオオオオォォォォォォォ」
ズドオオオオオォォォォォォォォォォ


今度は意識が金色の光に飲まれた。

Side フェイト

目の前に敵を打ち抜いたことによる砂煙が舞う。

なぜかは分からないけど、白い魔導師の女の子に助けられた。おそらく、これは殺傷設定。でも咎めることはできない。彼女がやってくれなければ私たちはやられていた。少しぐらい話を聞いてあげてもいいかな。

彼女に話しかけようとした瞬間、






「ケケエエエエエエエエエ」


獣のような叫び声とともに何かが煙から飛び出してこちらに向かってきた。コンドル?
「クッ、フェイト下がって」
咄嗟のことで反応できない私の代わりにアルフが攻撃するが全て弾かれる。

ラウンドシールドを出しその影を受け止める。が…


「ガアアアアァァァァァ」
「ぐ、ああああああああ」


一瞬でラウンドシールドが切り裂かれる。そんな、ラウンドシールドがこうも簡単に突破されるなんて。追撃がアルフの体を傷つける。

「貴様ァァ、やめろぉぉ」
《Blitz Action》

後ろに回りこむ。はずだった。

「ケケケケー」
「なっ!!」

まるであざ笑うかのように逆に後ろを取られる。ブリッツアクションを体への反動を無視し連続起動するが、まるで歯が立たない。

「ケケ」
ザシュ

後ろから鋭利なヒレでマントを切られる。マントの切れ端がゆっくりと消えていく。だめだ。まったく見えなかった。


殺される。
恐怖が体を支配する。





次の瞬間、目の前に現れる。思わず目をつぶるが、なにも起きない。少しずつ目を開けると、やっと相手の顔が見れた。

緑色の皮膚に血管を思わせる赤いライン。
血のように赤い瞳。
ナイフのように鋭くとがった牙。

初めて見る異形。しかし、その目を見ると不思議と恐怖が薄れた。なぜかその瞳は優しい光を持っていた。



「オレ…アマゾン…」
「アマ…ゾン?……私はフェイト、フェイト テスタロッサ」
しばらく、静寂が流れる。



「フェイト!!ランダム転送」

JSを回収したのか、アルフが転送に入る。

異形は少し白い魔導師を見る。彼女は彼におびえているようだ。そんな必要ないのに。


「ジャングラー」
アマゾンは赤いバイクを呼び寄せ……ここで私は転送された。





あとがき
どうも、作者のGです。歌をやめろとリアルの知り合いに言われたのでとりあえずやめます。作者はDCDを見ると急にやる気が出ます。

さて前半ですが、ついに手に入れたJSを使います。ライダーマシンゲットだぜ。そして、まったく批判がこなかったのでファリンさんをヒロインにしてみようとして失敗しました。安○先生、甘い話が書きたいんです。スーパー卓球にネタ的な意味はありません。この人たちならリアル波○球ぐらいできるだろうと思い書きました。

後半は、前回無駄に上げたハードルを越えられるように頑張ったつもりで、失敗しました。○西先生、熱いバトルが書きたいんです。尻切れトンボのようですが、これ以上書くと説明的になってしまうので切りました。

次回はJS暴走の話か。


風見さんへ
マッハキックの考察ありがとうございます。文献を色々当たっているのですが、いまだに正解が見つかりません。分かったら修正しようと思います。

くろがねさんへ
きづいてくれてありがとうございます。ネタを書いてスルーされるのが一番きついです。
ライダーマシンやっちまいました。病気だから許してください。あととらはイベントはあと一つぐらいしか書けません。ごめんなさい。

俊さんへ
いつも誤字の発見、ありがとうございます。なるべく無いように心がけますのでこれからもよろしくお願いします。




アマゾン出したけどX、ライダーマンを忘れたわけじゃないですよ。あとバリアじゃなくバーリアなのは仕様です。1号~V3までは劇中でバーリアといっているので。


5/13 誤字修正および微妙に弱いと不評だったなのはの恐怖心を表すシーンを一部追加。このフラグはたぶん3部にならないと回収できない(自分の逃げ道をふさぐつもりで追加)



[7853] 第7話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/05/16 10:59
ジュウウゥゥ

肉が焼ける音がする。回りには煙が立ちこめ、辺りには静寂が流れる。

「皆さん、やっと終わりました」

静寂の中、女性の声が木霊す。












「皆さんの協力のおかげで、G1システムが完成しました。本日は感謝の気持ちを表すため、この焼肉屋を貸しきりました。それでは、話が長くなるのもおかしいので…乾杯!!」

「「「「「「乾杯」」」」」」


そう、ここは焼肉屋。本日は小沢澄子主催、G1システム完成記念焼肉パーティーである。経費は大学から落とすらしい。さすが小沢主任。俺たちにはできないことをやってくれるぜ。そこに痺れる、憧れる。また電波が。

実は集まっている博士がすごい。

「おめでとう小沢君、ついに完成したな」
「ありがとうございます、緑川教授。初期から教授に指導していただいた結果です」
向こうで小沢さんと談笑しているのは城南大学の教授で生化学の権威、緑川 弘博士である。人間工学的なアドバイザーになってもらった。

「オウ!!これがニホンのヤキニクですか…」
「はい、こちらのタン塩なんかもうまいですよ」
焼肉に舌鼓を打っているのはヘンリー博士と志度 敬太郎博士。宇宙科学研究所のヘンリー博士はG1の各所耐圧や対衝撃などを手がけた。志度博士は緑川博士のお弟子さんで、AIへの動きのフィードバックを無理なく行えるようにしてもらった。

向うでは、正木博士や南原博士達がG1についてで盛り上がっている。今日来ることができなかった榎田さんなどもプロジェクトの要だった。


今回のG1プロジェクトは小沢さん発案、緑川博士主催の日本最高峰の頭脳でパワードスーツを作る計画である。この全員に声をかけてくれたのは…

「お疲れ、五代君」
「お疲れ様です、谷さん」

この谷 源次郎さんである。時々行くバイクショップの店長なのだが、やたらと人脈が広い。俺自身も思い入れがある人物である。



「大変だったろう。他に比べ作る物がたくさんあったから」
「いえ、楽しくできました」
今プロジェクトで俺は各オプションパーツの開発を行った。ライダーマン、G3、555の前例があったため、さほど苦にはならなかった。


向こうで小沢さんがいつか一人で作ってみせると高々に宣言している。それをまるで、出来の良い娘か孫を見る目で各博士が見ている。実際、プロジェクト最年少参加者の俺(正確には年齢不詳だが)と小沢さんは愛弟子のように扱われた。






各所で笑い声が絶えない。





今日も世界は平和である。








余談だがこの時点でG1は、アギトのG3とほぼ同レベルの完成度である。


第7話 黒少女VS白少女VS仮面ライダー

Side 雄介

「それがV3か。確かに1号や2号より威圧感が増したな」
「はい。そういえば、見せるのは初めてでしたっけ?」
「ああ、その力どれほどのものか。楽しみだ」

久しぶりに恭也さんと試合をしている。やはりこの人はバトルジャンキーである。温泉の時に受けた傷はすでに回復した。どうやらアマゾンに変身できるようになり回復能力が上昇したらしい。







アマゾンになり、フェイトたちが帰った後、俺もジャングラーで宿に戻った。なのはちゃんは完全に俺のアマゾンの姿に怯えてしまっていたので近づくことも出来ず、しょうがないのでおいてきたが、朝には戻ってきていた。が、目線があっちへフラフラ、こっちへフラフラ。アリサちゃんやすずかちゃんが話しかけても上の空、かと思えばいきなりガックリきて暗雲を背負う。かなり情緒不安定になっていた。

どうやら旅行から帰ってきて二日経つが、まだ回復してないらしく、なんでこうなったか恭也さんに聞かれた。あの夜あったことを話すと、しばし呆然とし、土下座せんばかりの勢いで謝ってきた。そんなに気にすること無いのだが。


実際、戦闘において、自分に殺す気が無くても相手が殺す気満々なのはよくあるし、あの時は完全になのはちゃんのことは意識の範疇外で油断していたのもある。かなり強力な一撃ではあったが。






後々知ったことだが、彼女たちの使う魔法には肉体的ダメージを与える殺傷設定と肉体的ダメージを与えない非殺傷設定があるらしい。当時はこのことを知らず、今までの攻撃とは少し違う衝撃だけではない攻撃程度に考えていた。






まるで切腹でもしそうなほどに落ち込んでいる恭也さんとそれを慰めている忍さん。美男、美女でとても絵になるが、そこまで落ち込まれると非常に心苦しい。ノエルさんは後ろで静かに立っているし、すずかちゃんとファリンさんはなのはちゃんをどのようにして元気づけるかを話し合っている。居心地が悪いなぁ。


「そういえば、また新しいライダーになったそうですね?」
ノエルさん、助け舟ありがとうございます。


どうやら、その言葉で戦闘狂の魂に火が灯ったらしく、恭也さんとの試合となった。










試合なので本気で殴り合い、切り合いをするわけも無く、大体30分ちょっとでやめることになった。

「しかし、アマゾンは速すぎるな。まともに目で追えなかった」

仮面ライダーアマゾンは特殊能力なしでの純粋なスピードなら仮面ライダーの中でもトップクラスだ。ついでに言うと、殺傷能力でも上位に位置する。そのせいで前回、手加減し忘れ、アルフの腕を切り裂きかけた。これら二つの能力による一撃離脱が本来アマゾンが最も得意とする戦法である。敵が獣人だとその前にキックやパンチで弱らせないと切っても普通に動き回るが。

「でも途中からついてきてましたよね?」
「あれはまだ未完成の奥義だ」

聞くと、意識を深化させ脳のリミッターを外し、肉体の限界ギリギリまで身体能力を上げるものらしい。まだ習得途中で数秒しか使えず、しかもあまり速くならないが、鍛えれば鍛えるほど長く、速くなるそうだ。やはり、この人は一般人ではない。



「それで、なのはちゃんの事はどうしますか?食らってみてはっきり分りましたが、やはり危険度は高いですよ」
「……」
なぜこの兄は妹のことにこうも及び腰なのだろうか。まぁ、プライベートなことを突くのはマナー違反か。





ところですずかちゃん、敷地内とはいえライダーマシンを乗りまわすのはいかがなものか。ライダーマシンも楽しそうにライトをチカチカさせている。自分で作ったのだが、このAI、変な性格になったなぁ。










次の日、連休が終了しポレポレ再開の日、大盛況である。常連さんがおやっさんの土産話を聞きに来て、おやっさんはそれに付きっ切り。おれは一人でひたすら仕事。おかげで2秒で皿を一枚洗う技術を手に入れた。

~♪~♪

ポケットの中で携帯が鳴る。やべ、マナーモードにし忘れた。周りを見るがこの喧騒のせいで誰も気付いていない。俺の耳だから気付けたようなものか。





ちなみにこの携帯は旅行の次の日にファリンさんと買いに行き、手に入れたものである。最初はファリンさんが色々教えてくれたのだが、最新のものになると分からないらしく、お互いに首をひねっていた。結局、最新の二つ前の奴を買って、ファリンさんは同じ会社から同時期に出た兄弟機種を買った。しかし、どっからどう見ても555フォンとカイザフォンにしか見えない。念のためにコマンドを打ち込んでみても何も起きないし、会社のほうもスマートブレインではなかったが。……これ改造しようかな。

閑話休題




コソコソ携帯を見るとすずかちゃんからだった。おかしい。時間的には昼休みから5時間目ぐらいのはずでは?

なになに、現状報告?なのはちゃん、落ち込み、悪化、アリサちゃん、喧嘩、お願い。そういえば、このぶつ切りメールは授業中にでも送ってきたのか。内容はおそらく「なのはちゃんの落ち込みがさらに悪くなり、そのせいでアリサちゃんと喧嘩してしまいました。対処法を考えてください」もしくは「対処をお願いします」って所だろう。



残念ながら俺にカウンセラーの能力は無い。医者はいるが。一番近いのが北岡やウラタロスなのが情けない。ライダーのことを今教えても逆効果だろうし。


そもそもライダーの中で恐怖に負け敵に攻撃した奴いたか?…だめだ、橘 朔也くらいしか思いつかない。体験談も無理だ。こりゃどうしようもない。






向こうは授業中だろうし返信は控えよう。
そうして俺はまた仕事に没頭していく。おやっさん、早く手伝って。







Side なのは

アリサちゃんと喧嘩しちゃった。

今、私は海岸線の見えるベンチに座っている。

大切な友達と喧嘩したのに、それでも私の頭の中には魔法のこと、魔導師の女の子のこと、異形の戦士のことばかりが渦巻いている。

ユーノ君から受け取った魔法の力。勇気の心と一緒に受け取ったはずの力。でも私は恐怖に負け、その力を使ってしまった。

突然現れ、私と同じ力をふるい、私よりずっと強い女の子。でもその瞳は奇麗で、なぜかシンパシーを感じる。

謎の異形の戦士。ユーノ君の話では以前、赤い戦士の方は私を助けてくれたらしい。それでも、あの圧倒的な力、氷のような声、恐ろしいまでの存在感。そのすべてが怖かった。さらにその後、現れた緑の異形。なぜか闘っていた女の子と仲良くなっていた。







いくら考えてもまとまらない。後悔、希望、疑問、恐怖、一度にいろいろなことを考えすぎて、頭が重くなってきた。


本当にドンドン重く……って重くなりすぎなの。


「おっ、やっと気がついた」
「こんにちは、五代さん。………何をやっているんですか」
「いや、目の前にいるのに気付いてくれないから、頭の上に缶ジュースを一個づつ…」


いまだによくわからない人、五代雄介さんが現れた。







Side 雄介

運が良いのか、悪いのか。話題の中心、なのはちゃんを休憩時間中に発見してしまった。

う~ん、見事に暗雲背負って俯いている。確かに旅行の帰りより落ち込んでいるな。あのまま地獄兄弟にスカウトされそうだ。さて、どうしよう。運よく見つけたが、運悪く、まだ対処法を見つけていない。

「こんにちは、なのはちゃん」
「………」

反応が無い。ただの…
ハッ!またか。

しかし、本当に無反応である。なるほど、友人にこんな反応されればアリサちゃんがキレたのも頷ける。

気づくまで一本づつ缶ジュースを頭の上に乗せていく。何本で気づくかな。








5本目で気づかれた。



今はなのはちゃんの隣に座って、牛乳を飲んでいる。虎太郎の飲んでいた高級牛乳か。確かにうまい。



「なにも聞かないんですか?」
「何を話したいんだい?」



実際、今何を悩んでいるか分らない。だいたい、俺はそこまでなのはちゃんと親しいわけではない。なので、悩みがあるなら向こうから話させるしかない。


しばらく考えてから、少しずつ話しだした。ふむ、たいして親しくないのが功を奏したか?





しばらく聞いていた結論。この子は優しすぎる。戦いをすべき人格を持ってはいない。戦闘の際に回りを気にするのは構わないが、敵のことまで気にするべきではない。そんなことをしていては命がいくつあっても足りないし、していいのは絶対的な強者だけだ。実際、Blackは相手のシャドームーン、というより正体の信彦のことを気遣いすぎ、殺されている。











やばい。アドバイスのしようがない。下手なことを言えばライダーのことがばれかねない。せめて、恭也さんたちのような武を修めているなら、そっち方面の話もできたが。しょうがない。


「それで、君はどうしたいの?君の話では、友達ではない2人がケンカしているところに割り込んで、片方を本気で殴ってしまった。できればもう一方とは友達になりたい、殴ったほうには謝りたい」
「はい。でも怖いんです。もしかしたらまた拒絶されるかもしれない。許してもらえないかもしれない」


基本的にこの子が恐れているのは他者からの拒絶らしい。少し背中を押せば、芯は強そうだから大丈夫か。


「そうだなぁ。…友達になりたい方には話しかけ続けるしかないな。殴ったほうにも、自分が間違っていたと思うなら謝るしかないし」
「でも…」
「怖いのは分かる。誰だって拒絶されるのは怖い。でも、勇気を出さなきゃ。相手に立ち向かうことも勇気だけど、自分の心を開き、自分自身の恐怖心に立ち向かうこともまた勇気だと思うよ。」
「…勇気…」




考え込んでいるなのはちゃんの横で一人自己嫌悪する俺。なんだ、今の説得。謝るのを強要しているみたいだ。









しばらく、時間が過ぎ日も大分暮れだした。
「もうこんな時間か。なのはちゃん。送ってくよ」
「はい」
ん、少し元気になったかな?



割とすぐ高町家に着く。

「なのはちゃん」
「はい」

家に入ろうとするのを呼び止める。

「なのはちゃんには関係ないかもしれないけど。俺や恭也さんのように武術を修めたものは、その力に相応の覚悟と責任を負わなければならない。なぜなら、大きな力はすぐに暴力に変わるかもしれないから。だからこの先、なのはちゃんが恭也さんのように力を持った場合は気をつけて。今回のような突発的に拳を振るわないように」
「?…はい」

難しいよなぁ。俺だって、この前、怒りで拳を振るってしまったし。あるいは、何も気にせず話せたら、力を持つものとしての自覚について話せたが。まぁ、なんにせよ、元気づけられたのだからいいか。






****************************************

Side 雄介

夜。俺はバイクを走らす。なのはちゃんを送り、バイトも終了した後、特に理由も無くバイクを走らせている。

正直、今回のなのはちゃんとの会話は正に黒歴史だ。所詮、俺はライダーたちの記憶が使えないと単なるガキなのだろうか。





『ッ!!! 雄介』
おや、ずいぶん久しぶり。キングストーン。

『ホッパーの映像に繋げ』

なんだ。天気が急に崩れ、雷が……熱っ。ホッパーが破壊された。

『どうやら、またあの宝石、たしかJSだったか、あれが発動したようだ』
「…すぐに戻るぞ。あの二人がまた争ってるかもしれない」







顔の前で腕をクロスさせる。
「ウウウウゥゥゥゥ、アアアアァァァ、マアアアァァァ、ゾォオオオオン」
両目が赤く光り、体がアマゾンになる。

バイクもジャングラーに変身し、闇夜の中を疾走する。









何か嫌な予感がする。







Side なのは

「リリカル、マジカル」
「ジュエルシードシリアルⅩⅨ」
「封―」
「―印」

封印されたJSに私はゆっくりと近づく。


アリサちゃんとすずかちゃんとも初めは友達じゃなかった。話を出来なかったから。分かり合えなかったから。アリサちゃんを怒らせちゃったのも私が思っていることはっきり言えなかったから。目的があるからぶつかり合うのは仕方ないのかもしれない。でも知りたいんだ。


私は拒絶を恐れない。魔法とともに受け取った勇気の心で進む。



目の前の街灯の上にフェイトちゃんが降りてくる。

一歩前へ、
「この前は自己紹介できなかったけど、私、なのは。高町なのは。私立聖祥大付属小学校3年生―」

《Scythe Form》
彼女のデバイスが武器の形態をとる。

こちらも構える。

知りたいんだ。彼女がなんでそんなにさびしい目をしているのか。






Side 雄介

結界?に飛び込むと、すでになのはちゃんとフェイトが凄まじい光の打ち合いをしていた。

「フェイトちゃん!!」
「!!」

なのはちゃんが語りだす。

「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど、でも話さないと言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ。張り合ったり競い合ったりすることになるのは仕方ないのかもしれないけど、それでも何も知らずにぶつかり合うのは私、嫌だ!!」
いいこと言うなぁ。天道に聞かせてやりたい。

「私がJSを集めるのはそれがユーノ君の探し物だから。JSを見つけたのはユーノ君で、ユーノ君はそれを元通りに集め直さないといけないから。私はそのお手伝いで、だけどお手伝いをするようになったのは偶然だったけど、今は自分の意思でJSを集めてる。自分の暮らしてる町や自分の周りの人に危険が降りかかったら嫌だから」


なるほど、そんな理由で彼女はJSを集めていたのか。ユーノ?あのフェレットのことか。そうか、フェレットが人間のように暮らしている世界か。なんて微笑ましい。モグラ獣人やクジラ怪人のように心優しい奴らなら友達になりたい。





「これが私の理由!」
「私は……」
「フェイト!!答えなくていい」

むっ!あの犬め。

「優しくしてくれる人たちの所でヌクヌク甘ったれて暮らしているようなガキンチョになんか何も教えなくていい」

そう言ってアルフが不意打ち気味になのはちゃんに向かって光弾を打ち出す。


ジャングラーから飛び上がり、
「ケケー」
ヒレで全て払い落とす。


「「「「!!!」」」アマゾン!」


「話…邪魔…するな」
「!!…お前は~」

殺気が増していく。欠片も怖くない。これならまだクモ獣人のほうが恐ろしい。

「どいつもこいつもフェイトを惑わすな!!」

真正面から人型になり、突っ込んでくる。
こいつ、学習能力が無いのか。前回の戦闘からスピードはこちらが圧倒的なのは分かっているはずだが。

「はああああぁぁぁぁ―――!!!」

連続で拳を繰り出す。ただし、技もなにもあったもんじゃない。チンピラの繰り出すテレフォンパンチが速くなっただけである。全部よけきる。

「ガアアアアァァァァァ」
「ぐあっ!」
反撃に腹に蹴りを入れる。

アマゾンはあまりパンチやキックを使わない。これは敵である獣人が尋常じゃない再生能力を有しており、致命傷を与えない限り、すぐに復活するからである。しかし、これはアマゾンのパンチやキックが弱いわけではない。むしろ、威力だけなら1号さえ上回っている。


「アルフ!!」
フェイトがすぐ後ろに迫る。

ガチッィィィィン

「アマゾンさん」
どうやら、なのはちゃんが間に入ったらしい。(別に止めなくても避けられたと思うが)。

「先に謝ります。この前、多分あなたの仲間だと思う人に攻撃しました。ごめんなさい」
言葉の端にまだ恐怖が残っている。アマゾンが怖いのは仕方ないと思う。すぐに受け入れられるマサヒコやフェイトが特別なのである。

「…V3……そんなこと…気にしない」
まあ、事実、気にしていない。V3は改造した1号2号が全ての秘密を教えないで消えてしまったため、最初の頃はいつも負けそうになっていた。そのため、ある意味、最も怪我への耐性もできているライダーの一人だ。

ギィィィンン

後ろから金属同士が弾き合う音がする。それとほぼ同時にフェイトがアルフを支え、空に飛び上がる。


「アマゾン、邪魔しないで。私はJSを手に入れないといけないんだ」
「ダメ……あれ、危険…。フェイトも…危ない……」

少しだけフェイトに笑みが浮かぶ。
「ありがとう、アマゾン。心配してくれて。……でも、それでも私は引けない」

こちらに杖を突きつける。
「止める」
「無理だよ、アマゾン。あなたは飛べない。ここで攻撃していれば、いつかは当たる。あなたでは私を止められない。だから……お願い、引いて」



「それでも止める」
「そっか…」

《Photon Lancer》

飛んでくる光弾を俺となのはちゃんが避ける。


「アマゾン…さんでいいですか?」
んっ?どこからともなく声が。足元を見るとフェレットが追走していた。
「今だけでいいんです。少し力を貸してもらえませんか?」
どうやら恐怖心はないらしい。異世界にはアマゾンのような生き物がいっぱい居るのだろうか?

少しだけ頷いて答え、
「ジャングラーー!!」
ジャングラーに飛び乗る。

「バイクに乗っても……」

ギュァァアアアァァァァ



「「「「嘘っ」」」」


ライダーマシンには基本的にある機能が付いている。サイクロンからホッパーまで、あまり使われないが必ず付いている機能。



垂直な壁さえも走破する、走行機能。



これがあるからたとえビルだろうが足場とすることができる。

「ケケエエエエェェェ」
「くそ、壁走りなんてありかよ」

ジャングラーからコンドルジャンプ。そのままモンキーアタックに入る。アルフがバリアを張り、その表面でせめぎ合う。くそ、前回に比べ体制が不十分のため貫けないか。そのバリアを足場に別のビルの壁に飛び移り、爪を突き立てる。


《Photon Lancer Multishot》

すぐに俺に攻撃が飛んでくる

「アマゾンさん!!」
《Protection》
なのはちゃんが間に入りバリアを張る。

「ケケーーーーー」
その頭の上を飛び越え、とびかかる。が、今度は避けられる。

「背中ががら空きだよ」
アルフが殴りかかってくるが、甘い。

「ジャングラー!!」
ジャングラーを呼び寄せ、それを足場に反転。
「なっ!」
「アマゾンキィィック!!」

ガッツゥゥン

フェイトに止められる。また、それを利用してビルに張り付く。

バシュ
ジャングラーからアンカーが射出され、振り子のように二人を襲う。

「うわっ」

避けられたが、ジャングラーにまた飛び乗る。



「すごい」

フェレット君はどうやらなのはちゃんの敵にならなければ程度で共闘を提案したらしい。驚きの声が耳に届く。



戦況は膠着していた。アルフとフェイトは俺の動きで翻弄され攻撃が当たらない。なのはちゃんとフェレット君は専ら俺の援護に回ってくれている。俺は致命傷を与えないように、ヒレや爪、牙を使わず戦っている。持久戦になれば体力の差で俺が勝つ。


「フェイト、私たちの目的はJSの回収だ。こいつらと戦うことじゃない」
その言葉を受け、フェイトがマントを翻しJSへ向かう。まずい、おれの位置からじゃ間に合わない。飛び出すが、アルフが邪魔にはいる。

「おっと、あんたには行かせないよ」
「ウウゥゥウゥウ、…どけ……!」

そうしてる間にフェイトがJSに到着する。しかし、ほぼ同時になのはちゃんもJSの回収に走っていた。



JSを中心に互いの武器がぶつかり合う。







その瞬間、大きな光にあたりが飲み込まれた。










あとがき
どうも、作者のGです。まず、何よりも先に……………。ホントーーーーーーーーにごめんなさい。感想でみんな、なのはの反省に期待していてくれたようなのですが、こんなグダグダになってしまいました。

前半、なのはとの会話です。殺傷設定と非殺傷設定について知らなければこんなもんだろうと思い書きました。みんなの期待に答えられたとは思えません。ひとえに自分の文才不足です。罵ってください。

後半、アマゾン式空中殺法です。実ははじめたときからこの戦法を思い描いていました。やはり文才が足りません。ラストはリリカルのアニメに合わせました。


マジ、今回は難産でした。次はクロノか。さて、どうしよう。



くろがねさんへ
海鳴ってどこにあるんでしょう?長野から出張できる場所なのだろうか。オープニングはほとんど即興で書いているので深く突っ込まれるとボロが出ます。
よかった。あのなのはのシーンてかなり不評でどうしようかと思っていました。

俊さんへ
誤字指摘ありがとうございます。恭也さんには話しました。でも話してもこの家族はどこかなのはに一歩引いてるので(自分設定)説教できません。だからきっとこのあとの事故に結びつく(これも自己設定)と思います。

LG2112/9/3さんへ
はい、なあなあになったか分かりませんが割りと簡単にスルーしてみました。

風見さんへ
はやては怖がらなかったのではなく、単に意識が朦朧としていただけです。ボルケンズが出てきただけで気絶する子にライダーはきついと思います。なのはに正体ばらすか全然考えてません。たぶんばらすとしても3期の本当に最後ぐらいにします。

緑人さんへ
よかった。誰一人として反応してくれないファリンさんの件、どうしようか本気で悩んでいたところです。実はフェイトの件は2期へのフラグです。

Gw-Ainさんへ
まぁ、フェイト第一主義ぽい1期のアルフならこれくらい言うかなと思いまして。カリス混じってますが、実際ある理由でこの主人公あっさり死ねます。ヒントは実は今が一番危ないです。オルフェノクとファンガイア、これはライダーになる人がちょくちょく代わるので個人の要素は薄いということにしてます。

まさミスさんへ
DCDは基本的に出しません。だから彼らの要素は無いです。オトヤンの要素、やばいすごく入れたい。まぁ、彼らの要素は薄いなりに少しずつ出したいとおもいます。



とりあえず一言。俺はオルタナティブとゼロ、V-1システム、ライオトルーパー、京介変身体、ゼクトルーパーはライダーとして認めねぇ。ただG3は最弱呼ばわりされていてもライダーだ。



[7853] 第8話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/05/24 22:17
ドンッ!!!
テーブルを叩く大きな音がする。

「だから、ロケットパンチは男のロマンでしょ」
「異議あり。古い。古いですよ、忍さん。こちらの統計を見てください」

目の前に昨日まとめたレジュメを突き出す。

「こっ、これは!!」
「見て分かるように、ある一定の年代から、男のロマンはロケットパンチからあるものに移行しています」

ドンッ!!!!
テーブルを叩く音が響く。

「今や男のロマンはロケットパンチにあらず。男のロマンは回転衝殻機、つまりドリルに変わったのです」
「な、なんですって!!!!」

まるで雷に打たれたかのように忍さんがよろめく。

「…わ、分かったわ。確かにロケットパンチはすでに男のロマンじゃなくなったようね。でも、遠距離武器としてはまだ…」
「ふふふふ。そう言うと思ってこの設計図を用意してきたのです」
「むっ!こ、これは、まさか」
「そう、このアームパーツならカセットを変えることにより、ロケットパンチもドリルも、はたまたあらゆる装備に変更可能に…」



「なに、人の体の不気味な改造案を提出してるのですか」
「ぐはっ!!!」

ノエルさんのロケットパンチで吹っ飛ばされました。


しかし、仮面ライダーと夜の一族がバシバシ叩いても壊れないとは、恐ろしく丈夫なテーブルである。



割と平和な一幕。



第8話 出た!!時空の管理局

Side 雄介

ゆっくりと意識が覚醒していく。

ここは…?ベッドの上?体中に包帯が巻かれている。横を見ると、

「ファリンさん?」

ファリンさんが椅子の上で座って寝ていた。

「はいっ?えっ、あっ、五代さん、気がつきましたか。よ、良かった~。今、お姉様を呼んできます」

俺の声に反応してファリンさんが飛び起き、そのまま部屋から飛び出していく。



一人で静かな部屋。少しずつ気を失う前の記憶が戻ってくる












「くっ」

衝撃波は収まった。全員がほぼJSから等距離にいる。いまだにJSは断続的に光を発している。なんだ、光るたびに少しづつ地面、いや空気が揺れる。先程の衝撃波のように世界そのものが揺れているように感じる。

『しまった。暴走したか』
(キングストーン、どうなってる)
『JSはエネルギーの結晶体だ。そのエネルギーは彼女たちの放つもの、魔力と同種のものだ。おそらく先程の戦いで放出された魔力に反応して、最後の衝撃で暴走したらしい。溜まったエネルギーを放出しながら周りの魔力に共鳴している。あれでは近づくこともままならんし、決壊したら周りの魔力で粉塵爆発のようになるぞ』


「くうぅうぅぅぁぁ」
「フェイト!!やめて」

フェイトが壊れた武器をしまい、一歩づつJSに近づこうとする。しかし、近づくたびに体に傷が走り、抵抗が強くなっていく。


『無理だ。彼女は戦闘で疲弊している。近づけないし、近づいても封印できない』
(前みたいに俺たちで封印することは?)
『出来ない。あの時は安定しているのを我の力で、無理やり抑え込んだのだ。こんな暴走状態では抑え切れん』
爆発物を体内に入れるようなものか。

なのはちゃんは衝撃波でのダメージが抜けてないのか、立ち上がらない。

「アマゾンさん」
フェレット君が話しかけてくる。
「危険です。なのはを連れて逃げてください」
「お前…どうする」
「あれをこの世界に運んでしまったのは僕です。何とかして見せます」
なにか決意した顔である。命を懸ける者、タックルや斬鬼さん、ライアと同じ顔だ。


(キングストーン、彼で何とかできるか)
『はっきり言おう。確実に無駄死にだ。』

前に出ようとするフェレット君を摘み上げる。
「駄目……命、大切」
「え、でも…」
そのままなのはちゃんの上に投げる。


そうこうしている間に光がどんどん強くなる。
(キングストーン、どうにかならないか!)
『…なんとかできる』
(なら……)
『しかし、危険だ。奴らに目をつけられる可能性もある』


危険?
(キングストーン、目の前に傷つく少女が、後ろには倒れた少女が、そして周りには守るべき世界がある。……守るぞ!!キングストーン)
『……ふ、はは、ははははは。ずいぶん、らしくなったものだ。ああ、守ろう。仮面ライダー』



「あれ……壊す!!」
「エッ!?」
フェレット君の疑問符を無視し、俺は高く飛び上がる。


「ジャングラー」
ボシュ!!
ジャングラーからガガの腕輪が射出される。

(ガガの腕輪よ、ギギの腕輪に力を)
ガガの腕輪をギギの腕輪に接続する。

「スーパー…」

体が発光し、衝撃波をものともせず、突っ込む。

「大・切・断!!!!」

JSが真っ二つになり、エネルギーが一気に放出される。それを無理やり包み込む。




キングストーンの作戦はこうだ。まず、古代インカの力でJSを破壊し、取り込まれているエネルギーを解放する。それをアマゾンの体と力で抑え込み、その間にキングストーンがエネルギーを吸収する。JS内部のエネルギーを取り込むには時間が必要だが、放出されてしまえば割と早く済む。
キングストーンが吸収を終えるまで約5秒。その間、高エネルギーを体で受け止めなければならない。



「ガッ、ッギ、ガガ、グ」
体を突き破るような痛みが響く。
残り4秒。

今までのことが思い浮かぶ。
ええい、走馬灯なんて縁起でもない。
残り3秒。

周りが良く見える。
なのはちゃんが立ち上がり、フェイトとアルフは呆然としている。
残り2秒。

目の前が白くなりだす。
もう…少……し…………
残り1秒。











不意に圧力が無くなる。
ゴフッ
口から血が流れ、体が思うように動かない。インカの力とJSの反動がでかかった。


ドガッ!!
大きな音とともに視界が横に流れる。

倒れてから理解する。
殴られた。
感覚がついてこない。

振り向くと、右手を振りぬいたアルフ。その左手には、
「!!返…せ、ガガの…腕輪!!」
「ふん。行くよ、フェイト」
目の前から消える。

くそ、
「ジャングラー…」
呼び声にすぐに答えてくれたジャングラーに体を預ける。ジャングラーのライトが心配するように点滅する。


「あ、待って」
ジャングラーが走り出す。
ここで意識は途切れている。





奪われたか。ガガの腕輪。

**************************************

Side アルフ

私のせいだ。私があんなもの拾ってきたから。

回廊に何かを叩く音のみが響く。なにかじゃない。間違いなくフェイトが鞭で叩かれている音だ。その音が聞きたくなくて、それでもフェイトの少しでも傍にいたくて、私は座り込んで耳を塞ぐしかなかった。



『あれだけ時間をかけて、たったの2個とは…』
そんなことない。こんな短時間で2つもロストロギアを回収できたんだ。褒められても、怒られる、あまつさえこんな折檻を受けるいわれはない。

『こんなガラクタまで持ってきて…』
そんなはずはない。アマゾンはJSを破壊するとき、これを使い、JSの放つ衝撃波を無効化していた。あんなことが出来るのだから高レベルのロストロギアに違いない。しかし現実には、ほとんど力のない腕輪となってしまっている。



アルフは知らない。アマゾンの持つガガの腕輪は単体ではほとんど効果が無いことを。また、その力はミッドでほとんど否定された呪術などのオカルト的なものだということを。



そうだ、あいつはこれを使うとき自分の左腕についている同じやつにくっつけていた。ならもう一つのほうも奪えば。



アルフは知らない。もう一つ、ギギの腕輪こそがアマゾンの力の源であることを。そして、それを奪うことはアマゾンの命を奪うことと同義であることを。








Side 雄介

どうやら昨晩、ジャングラーは俺を乗せ、月村家に直行してくれたらしい。その夜、かつぎ込まれた俺は全身打撲、各部裂傷、手足の亀裂骨折、特に内臓へのダメージが酷かった。アマゾンで無ければ内部の機械系が破壊され、自己修復できなくなっていただろう。医者に連れて行くわけにも行かないので、ノエルさんが処置してくれたそうだ。


目が覚めたのは午前10時過ぎ。すずかちゃんも忍さんもすでに学校へ行った後だった。すずかちゃんは行くのを相当渋ったらしい。


「しかし、すごいですね。あんな怪我がほとんど1日で完治なんて」
「完治はしてませんよ。内蔵へのダメージを後回しにして、とりあえず戦闘に支障がない程度に回復しただけです」


アマゾンの回復力をもってしても、完治には時間がかかりそうだ。BlackRXやZXなら一瞬で回復できそうだが。


キングストーンもまったく話しかけてこない。どうやら彼も相当疲れたらしい。

「とりあえず今日は絶対安静です。すずかちゃんが帰ってくるまで私がお世話します。あと大学から帰ったら忍お嬢様と恭也様が話があるそうです。」
「ありがとう、ファリンさん。…まだ少し眠いな。もうひと眠りするよ」
「はい。…せめて今だけは戦うことなんか忘れて、ゆっくり…」

ファリンさんが傷に触れないように優しく俺の頭をなでる。

まぶたが重い。ファリンさんの声がよく聞き取れない。でも、その手の暖かさがとても心地よい。




沈む意識の中で、優しく頭をなでられる感触が、存在しない、ライダーたちの記憶の中にのみある、母親を感じさせた。












どれぐらい眠ったのだろう。それはいきなりやってきた。

「ガッ、ぐうぅぅぅ。キ、キングストーン。なんだこの痛みは?」
『ぐ、昨日取り込んだエネルギーが共鳴している。また、彼女たちが戦っている』

まずい。また暴走するかもしれない。
しかし、昨日の戦いからほとんど時間は経っていない。こんな短時間であの少女たちは完全に回復したのだろうか。


「…何をしているんですか?」

部屋を出ると同時にノエルさんに見つかった。

「すいません。俺、行かなくちゃ」
「そんな怪我でどこへ行くというのですか。はっきり言います。あなたの体は表面上は治ったように見えますが、内部はボロボロです。一般人なら全治3か月以上、下手をすれば死んでいるレベルです」
「わかっています。それでも行きます」

ノエルさんを振り切り外に向かう。
歩くたびに体の内側から痛みが走る。いや、立っているだけでかなりきつい。それでも行かなければ。もう一度暴走するかもしれない。子供にあんな危険なことをやらせるわけにはいかない。



外ではすでにライダーマシンが待っていた。

「悪いな。もう少し頑張ってくれるか?」

昨日の戦いで決してノーダメージでいられたわけではない。よく見るとところどころに凹みや傷があり、完全に再生できていない。それでも、うなずくようにライトを上げ下げしてくれた。



さて、
「ファリンさん、どいてもらえませんか」
「今日は絶対安静だって言ったじゃないですか」
バイクの前でファリンさんが通せんぼしている。

「お姉様が連絡してくれました。…どうしても行くんですか?」
「…はい」

できれば、そんな泣きそうな眼で睨みつけないでほしい。

「それは恭也様になのはちゃんのことを頼まれたからですか?」
「それもあります。でも、それだけじゃなくて、俺はここを守りたいんです。俺を受け入れてくれた世界を、受け入れてくれた大切な人たちを。あれをほっとくとそんな大切なものが壊れかねない。だから俺は自分の意思で行きます」
そう。誰かに頼まれたからではなく、自分の意思で守る。

ファリンさんが一つため息をつき、
「もうすぐ忍お嬢様たちも帰ってくるのに…」
「それまでには帰ってきますから」
「…絶対ですよ。…もし傷が増えてたら今度はベッドに縛り付けますから」

やっと道をあけてくれる。縛り付けられるのはいやだな。…そうだ。ついでにこれをやってもらおう。

「じゃあファリンさん。これを」
「火打石ですか」
「ええ。ライダーの中に安全祈願で出発前に打ってもらっているのがあったので。お願いできますか?」
「はい!!」

火打石で火花を起こすことを切り火といい、危険な職業に向かう際、災難よけに行うものである。仮面ライダー響鬼では出発前によく打ってもらっていた。

カチッ!カチッ!

「いってらっしゃい」
「行ってきます」

ちょっとした儀式のようなものだが、ここが帰ってくる場所だと思えた。






場所は、海沿いの公園か。行くぞ。
「アァァァァ…マァァァァァ」
腕を交差させ、勢いよく開く。
「ゾオオオォォォンンンン」


現場に着くと対峙する黒と白。植物を取り込んだのか、まるで人間のような表情を浮かべる大木。

なのはちゃんとフェイトがほぼ同時に射撃体勢に入る。

「打ち抜いて。ディバイィィン…」
《Buster》

先に撃ったのはなのはちゃん。ピンクの光線が大木に直撃、いや、その直前にあったバリアに直撃し阻まれているが、圧力で地面に沈み込んでいる。

「貫け轟雷!!」
《Thunder Smasher》

そのすぐ後に、黄色い魔法陣を貫くように、黄色い雷撃のレーザーがフェイトの元から打ち出される。が、やはりバリアで止められる。

両方の攻撃を受け止めた大木。しかし、そのわずか数秒後、バリアは打ち抜かれ、断末魔の叫びを上げながら光に包まれた。




俺が正確に見れたのはそこまでだった。なぜなら、
「見つけた!」
光とともにアルフに強襲をかけられたからだ。

「危ない!」
俺とアルフの間にフェレット君が割って入り、バリアを張ってくれる。

ガガガ!!

なっ、なんていい子なんだ。本来、野生の動物は何かしらの武器、あるいは特殊な状況下でなくては自分より大きな動物、特に捕食者には立ち向かわない。だというのに、このフェレット君は自分より圧倒的に大きい犬に向かっていった。

ザザーッ

バリアに弾かれ、アルフがすべるように後退する。

「私が用があるのはそっちの奴だ。邪魔するならかみ殺すよ」
「俺…用…?」
「その左腕についている腕輪をよこせ」
「なぜ?」
「うるさい、さっさとよこせ」

なんだ?酷く焦っている印象がある。真正面から犬形態で突撃してくる。完全な状態なら何の問題もないが、

ズキッ

体の内側から痛みが走る。おそらく完全な時の1/2も力が出せない。

「下がれ」
「あの、なんて言うか、がんばって」

フェレット君を下がらせる。本当にいい子だ。


「ガアアアァァァァ」
「ケケヶクェェェェ」

互いに噛み付き合う。
アマゾンの噛み付き技、ジャガーショック。アマゾンの技の中でも大切断を抜き、ダントツの使用頻度を誇る技である。そしてこの技は、

「ぐあああああぁぁぁぁぁ」

3tを誇る強靭な顎の力で敵を食いちぎる技である。
肩の一部を食いちぎられ、たまらずアルフが後ろに逃げる。

「なぜ…ギギの腕輪…狙う?ガガの腕輪、どうした?」
「うるさいって言ってるだろ。フェイトのためだ、よこせ!!」

フェイトのため、か。あの少女のためと言われても、このギギの腕輪は渡せない。ギギの腕輪はコンドラーとともにアマゾンの動力源であると同時に、アマゾンと一体化しているため外せば死につながる。全てのライダーの要素が入っている俺も外せばおそらく死ぬ。試したことはないが。下手をすると、他のライダーのときでも左手を失えば死につながる可能性もある。





「ストップだ」
まったく聞き覚えのない声があたりに響く。

そちらに目線を向けるとなのはちゃんとフェイトの間で、互いの武器を受け止める黒服の少年がいた。

「ここでの戦闘は危険すぎる。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」


時空管理局?何らかの組織か。かかわりたくないな。そう考えていると、フェレット君が俺の肩の上によじ登ってきた。

「アマゾンさん、早く逃げてください。貴方のような、魔導師に対抗できる生物は保護という名目で捕獲されます。そうなればおそらく実験動物にされます」
「…いいのか?」
「本当は駄目だけど、貴方には何度か助けられました。それに悪い人ではなさそうなので」

頭がいいな。こちらの一言を正確に読み取っている。お礼代わりに頭をすこし撫で、ジャングラーに乗ろうとする。


「だめっ!やめて。撃たないで」

なのはちゃんが、フェイトと執務官の間に割って入り、青い光弾にさらされようとしていた。危ない。最速で走ろうとするが、
ズキッ
痛みで思ったよりスピードが出ない。










ガッガッガッ!

「っ!」
「アマゾンさん!?」

射線上に入り、全ての光弾を弾き飛ばす時間が無く、その全てを体を楯にして防ぐ。

その間にフェイトとアルフが飛び去っていった。







「…んっ、エイミィ、なんだ。…わかった。そこのおまえ、言葉が通じるなら、すぐにその肩についているものをこちらに渡せ。わずかだがロストロギアの反応が確認された」

こいつもか。イライラしてきた。どいつもこいつも人の大切なものをよこせだの渡せだの。

「ふん。言葉の通じない生物か。使い魔と互角に戦えるのなら危険だ。ロストロギアの回収と一緒に保護する」

ブチッ

頭の中で何かが盛大に切れる音がした。体内の痛みが消えていく。脳内麻薬という奴だろうか。

「ケケェェェーーーー」
「なっ!!」

現在出せる最速で切りかかる。驚いたような声を上げるが、すぐに対応してくる。こいつ、戦い慣れしている。おそらく経験だけならフェイトより上だ。

《Stinger Ray》

杖から女性の声がすると同時に高速の光の弾丸が飛んでくる。全て回避する。が、

『雄介!!罠だ』
「なにっ!!」

俺の動きを予測したのか、先程の弾丸全てが囮だったのか、ちょうど俺が動いた先に少年の切っ先が向いている。

「くらえ」
《Blaze Cannon》


直撃!?咄嗟にガードを固める。

「「アマゾンさん」」

ドガアアアアァァァ

なのはちゃんとフェレット君の声が聞こえる。その後、とんでもない熱量の衝撃が襲ってきた。

「やったか」

この程度でやられるか。砂埃を利用して奇襲する。

「ガアアアアアウウ」

コンドルジャンプからのモンキーアタック。本来なら敵を八つ裂きに出来るはずが、

《Round Shield》

バリアによって止められる。切れた頭とは別の冷静な部分で考えていた。まずいな。昨日のダメージ、先程のダメージで攻撃のほとんどに力が入らない。しかも相手はかなり強い。倒す方法は……

弾かれる力を利用し海に飛び込む。

「しまった。だがこの程度で逃げられたか」

上で少年が無念そうな声を上げている。誰が逃げるか。すでに準備は出来ている。


なれるはずだ。アマゾンはあるライダーへの進化の道則の一つ。そして彼はその道則でアマゾンより前に存在する。ならなれない理由はどこにもない!!

「セッタップ!!」

腰の両側のレッドアイザーとパーフェクターを抜き取り、変身する。やはりなれた。彼に、仮面ライダーXに。
仮面ライダーX。№5のライダー。万能武器ライドルを持つ、海での戦闘を想定したカイゾーグ。

ダメージのせいか、マーキュリー回路は動かないが奇襲には関係ない!


No side


変身と同時にジャングラーをクルーザーに変え、呼び寄せる。
クルーザー。Xの愛車であるカイゾーグ専用高性能バイク。ジェット推進を持つため水中でも変わらない馬力を持つ。その力を利用した、

「クルーザージャンプ!」
「なにっ!!」

そのままの勢いでクルーザーが突っ込む。水しぶきが飛び、総質量400kgの弾丸が向かってくるのだ。

「クルーザァーアタァァック!!!」

《Round Shield》
ズガガガガガガガガガガガガガ

「くうぅぅぅぅぅ、この…」

クルーザーを弾くが、すでにXは高く飛び上がり、次の攻撃の態勢に入っている。

「ライドルホイップ!!」

ベルトからライドルが引き抜かれ、ベルトの風車が勢いよく回る。そのまま縦に回転しながらライドルを打ち付ける。

「ライドル脳天割り!!」
「くっ、S2U」
《Break Impulse》

ライドルとS2Uがぶつかり合い、高圧電流と高振動がうなりを上げる。

「何者だ、おまえは。公務執行妨害だぞ」
「仮面ライダーX。なにが公務だ。この国に時空管理局などという組織は存在しない。しかも貴様は身分証明すら行っていない。詐欺師のほうがまだまともな対応をする」

組織というものは縄張り意識が強い。それは一地方であっても一国家であっても変わりはない。もしこの時空管理局とやらが外国のものであっても完全に越権行為である。しかも身分を証明せず、捜査令状も出さず、他者の持ち物を徴収することは強盗行為である。

仮に警察であっても、ライダーは戦わないだろうが、すぐに逃げ出していただろう。仮面ライダーにとって警察はあまりいい印象はない。アマゾンの時は捕まったし、クウガやアギトの時は発砲され殺されかけた。協力的だったのはクウガの終幕あたりの時とアギトの一部の人間だけである。


ライドルが削れ、S2Uが融けだす。

「くそっ、この…」

クロノが力で押しのけようとする。当然である。ストレージデバイスであるS2Uは質実剛健にして処理速度に特化したものである。その剛健なはずのS2Uがすこしづつだが融かされている。焦らないわけがない。

「ライドロープ!」
「なに!」

中指のボタンが押され、その瞬間、まるで蛇のようにライドルがしなり、クロノに絡みつく。そのまま海上に放り投げられ、

「ロングポール!!」
「ぐはっ!」

高速で伸びるライドルに腹をえぐられ、海に落ちていく。咄嗟にS2Uでガードしたが、すでに融かされかけたS2Uでは効果が無く、すぐに打ち砕かれた。



Side 雄介

キレたと思ったが、思いのほかしっかり戦えた。これが、すずかちゃんに借りた漫画に載っていた「心(ハート)はHOTに、頭はCOOLに」という奴だろうか。

武器も打ち砕いたし、さっさと帰ろう。…傷が増えてしまった。ファリンさん、怒るかな。

クルーザーに乗るとほぼ同時に、
「ちょっといいかしら?」
目の前にモニターのようなものが現れ、緑色の髪の女性が話しかけてきた。

「何の用だ。こちらはすでに帰るところだ。これ以上そちらに関与するつもりはない」
「まずは自己紹介から。私は時空管理局、時空航行艦アースラ艦長のリンディ・ハラオウンです」

ハラオウン?先程の少年と同じ姓。だとしたら…

「姓で分かったと思いますが、先程のクロノの母です」

…姉かと思ったのだが。まぁ、どうでもいいか。

「今、私たちは次元震を感知し、その調査に赴きました。出来れば話を聞かせてもらえますか?」
「こちらも予定が詰まっている。何よりいきなり攻撃してくる、自称公的組織など信用できるか」

場に沈黙が流れる。画面越しのにらみ合いが続くが、空気が読めないのか、海から上がってくる音と一緒に少年が息も絶え絶えなのに言葉をはさむ。

「ふざける…な、犯罪者……が。…公務執行妨害で、逮捕する」
「…クロノ。すこし黙りなさい」
「しかし艦長…」
「クロノ・ハラオウン執務官!命令です。すこし静かに」
「…了解です」

私と公はしっかり使い分けているらしい。しかし、だからこそ…

「なぜ、協力してもらえないか教えてもらえるかしら?」
「そちらの青年は知らないとはいえアマゾンに対し、死ねやら捕獲するのと同義の言葉を言った」
「?…クロノはロストロギアを渡すことしか言ってないけど」
「アマゾンのギギの腕輪は、アマゾンと完全に一体化している。無理に外せば死ぬ」

その言葉を聞き、二人は驚いているようだ。少しは良心を動かしたか。

「だがそれは正義…」
「正義のためか。ふざけるな!!…信用できる要素はない。帰らせてもらう」

正義。仮面ライダーが常に心に持ち、掲げる言葉。それを殺しの免罪符に使おうとすることにより一層腹が立つ。

クルーザーのエンジンを吹かせる。

「待ってください。クロノの言葉は謝罪します。せめて話だけでも」
「それだけじゃない」
「えっ!」







「俺が一番腹が立つのは、子供が戦場に出て来て!それを送り込んだのが母親で!それがまるで普通のように振舞っていることだ!!」






クルーザーで走りだす。最後に見た二人の顔はまるでなにを言っているのか分からないような顔だった。






あとがき
どうも、作者のGです。ご無沙汰です。リアルが忙しくて書けず、しかも書いてもグダグダ展開で書き直している間にこんなに時間が過ぎてしまいました。前後半ともに補足説明が無ければよく分からないと思います。

前半、JS暴走を止めるところです。本編よりアマゾンの参入でフェイトが疲労し、魔力も充満していたのでこうなりました。自己解釈でこのJSの暴走は決壊寸前のダムのようなものとしました。つまり、決壊寸前の壁(JS)を破壊し、新たな壁(アマゾン)で押しとめてる間に他の貯水池(キングストーン)にながすイメージです。っていうかこの作品のアルフは本当に手癖が悪くなってます。

後半はVSクロノです。奇襲にXを使うことはプロット作成時から考えていました。子供が戦うことはライダーが認めるわけないと自分は思います。そういえば後半、なのはとユーノが完全に空気でした。作者はユーノは結構好きです。

感想も増えてきたので文末に書くのはやめます。あと今回の話はグダグダだったので、こう直したほうがいい、こうすべきだ、という具体的な意見があったらどんどん書いてください。

次は竜巻か。

各文の行間はどれぐらいがいいかわからない。誰かおしえて



[7853] 第9話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/06/07 21:39
「ん?QBの交代か。…沼田か」
「大丈夫なのか?沼田は機動力が低く、ジャンプ力と遠投力だけの一昔前の型のQBだぜ」

アメリカンフットボール、大学対校戦決勝 城南大学VS城北大学。点差は一点。タッチダウン一回でひっくり返る。城南大学はQBとRBを交代させる。

「誰だ?あのRB。アイシールドなんてつけてるぜ」
「なぁに、どうせ新人だろ。あと60ヤードあるんだ。ここでしっかり抑えれば問題ない」

試合が再開される。

ワアアアァァァァ

「おいおい、粘りすぎだぜ、沼田の奴。あれじゃサックされるぞ」
「交代したRBもまったく動かねぇ。ほんとに新人だな」

沼田はRBとアイコンタクトする。(といっても片方はアイシールドでまったく読めないが)。実はこのFBは試合直前に沼田が秘密兵器として急遽つれてきた男である。本当に実力があるのか分からない存在だが、その男気でチームの牽引役である沼田のことを、部員は全員信じ、その沼田が認めた存在を信じた。


「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
叫び声とともに沼田が高く飛び上がる。

「ST RON GERRRRR」
掛け声とともに信じられない飛距離でボールが放たれる。



フィールドにいた誰もが取れないと思った。ただ一人を除いて。



(さすがだぜ、五郎。城 茂、お前の代役、はたしてみせる!)



「なにっ!!」
「ばかな!?さっきまでそこに…」

試合再開からまったく動いていなかったRBがボールの落下点、すぐそばまで走りこんでいた。

「いけぇぇぇぇ、アイシールド!!ストロンガーだ!!」

ガシッ!!

誰一人いない開けたフィールドでボールはキャッチされ、
「タッチダウン!!」
城南大学の優勝が決まる。

ワアアアアァァァァァ!!!!!!

喜びの歓声の中にすでにアイシールドのRBはいなかった。

「沼田さん、彼はいったい…」
「あいつか?あいつはな・・・・・・」




次の日、城南大学の掲示板には大きな校内新聞が張り出されていた。
≪城南優勝。立役者の沼田と謎の仮面のRB。コードネームはSTRONGER≫


平穏なときの話である。



第9話 恐怖!!竜巻が向かってくるよ。

No side

アースラ内部、艦長室。何か間違ったような和室に4人の人間がいる。

一人はこの部屋の主。リンディ・ハラオウン。
「クロノにも困ったものね。正義感が強すぎて、少し視野狭窄に陥りやすくて」
お疲れのご様子。

もう一人はこの艦のオペレーター。エイミィ・リミエッタ。
「でも、今回は仕方ないですよ。だって、ほら、彼らの見た目、かなり強面だし」
いまいちフォローに力がない。

その対面に座る少年。ユーノ・スクライア。
「でもあの対応はちょっと…。あれじゃ、敵でない人とも敵対してしまいます」
割と正論。

その横で少し怒った様子の少女。高町・なのは。
「そうですよ。アマゾンさんは見た目は怖いけど、話せばいい人だって分かったのに…」
かつて自分もV3に対して、話をせずぶっ飛ばしたことは棚に上げている。


すでにお互いの情報交換は済んでいる。今、話は敵対関係になるかも、というより半分はもうなっている仮面ライダーについてである。

艦長が会話している間のスキャンの結果、仮面ライダーXは高度な技術で作られた戦闘機人であることが判明した。アマゾンは体内に金属反応がなかったことからこの二人は別人であると考え、アースラは最大戦力のクロノと互角以上の存在を二人以上相手にしなければならないという現実に直面している。

なのはとユーノの方は、少なくとも敵でなく味方をしてくれた存在が敵になるかも知れないことに戸惑っている。

ちなみにこの問題を大きくした元凶はただいま医務室で治療中である。頑丈なデバイスが砕かれるほどの攻撃を受けたので念のためである。


(しかたがないわよね?)

誰に聞くわけにもいかず、リンディは胸中でつぶやく。

本来、今回の様な次元震がかかわる様な事件に民間人を巻き込むわけにはいかない。しかし、そうも言っていられないのが現状である。

リンディを抜くと最も強力なカードはすでに切られ、しかも破れている。武装局員では仮面ライダーどころかフェイト相手にも役者不足。増援を頼んでも、万年人員不足である管理局。ほぼ送られる可能性はゼロだろう。そんな中で目の前の少女の能力はかなり魅力的である。

「ねぇ、なのはさん…」

良心が痛む。先ほどXに言われたことを思い出す。

公私は仕事中では分けることにしていた。言葉や態度に出しても、それで決定が左右されないように。それでも傍から見れば冷たく見えるのだろうか?

(今は考えてもしかたない。…せめてこの子の親御さんには心配させないようにしないと)



一人の少女は管理局と出会う。物語は加速する。



Side 雄介

起きると手足が縛られ、台の上にはりつけにされていた。

「うおっ!なんだ?」
「はーッはははははは」

白いタキシードを着て黒いマントをつけた忍さんがいた。

「…忍さん、なにやってるんですか?」
「忍ではない!!私の名前は吸血博士。スーパーショッカーの幹部ににして悪の天才科学者である」
「な、なんだってーーーーーー」

右手にドリル、左手にメスを持ちながら少しずつ近づいてくる。

「さあ、仮面ライダーよ。まずはその右腕をノエルのようにロケットパンチに改造してやろう」
「やっ、やめろショッカー。それではアポロガイストやデッドライオンと被るだろうが」
「なに、アポロ?なるほど、月まで届くパンチが打てるようになりたいと」
「アポロ違いだ!!やめろーーーーー」










という夢を見た。

原因は現在、ベッドに縛り付けられているせいである。

あの後、約束通り月村家に帰ったら、待ち構えていた恭也さんにのされた。集中力が尽きて、怪我も悪化していたのでほぼ一瞬で。

そのまま、3日間寝込んでいたらしい。起きたら、恭也さんに謝られ、すずかちゃん達には泣かれた。なるべく無茶はしないようにしよう。

どうやら寝ている間に管理局は高町家と接触したらしい。緑色の髪の女性が事情を説明(といっても魔法の事は濁したらしいが)に来たらしく、なのはちゃんの意思を尊重し、御両親は協力を許可したそうだ。

恭也さんはその日は念のために月村家にいたため(俺のせい)、止められず、帰ったらすでになのはちゃんはいなかったそうである。

あの組織、自己の戦力があるのになのはちゃんまで引き込んだのか。警察より格段に性質が悪い。管理局への印象を話すごとに恭也さんの殺気が高まっていくのが怖かった。


おおよそ、話を総合すると管理局とは、警察(逮捕権と捜査権)+軍隊(提督やら戦艦と言っていた)のようなもので、子供を戦わせるようなふざけた組織であることがわかった。







「はっ!!」
「よっと」

庭に木を打ち合う音が響く。

すずかちゃんの振るう木刀を俺が長い棒でいなす。

怪我そのものは寝込んでいた3日間と次の日でほぼ回復した。ダメージだけで考えたら、バダンによって復活したネオショッカー戦後のスカイライダー並だったのだが。アマゾンのほうがスカイより回復力は上らしい。


その後、リハビリも兼ねてすずかちゃんを鍛えていたのだが、この子、分かってはいたスペックが滅茶苦茶高い。睦月がやっていた動体視力の訓練を教えたら、その日の内に150Km/hの文字まで読み取れるようになった。

体術も教えれば教えるほど、まるでスポンジが水を吸うように、覚えていく。仮面ライダーの記憶の中でも、ここまですごい弟子はあきらぐらいだろう。彼女も天才的だった。なにせあの若さで序の六ノ段までいったのだから。今考えると、あの時、威吹鬼ではなく斬鬼さんなら彼女を導けたのだろうか?それとも誰が師匠でも彼女は鬼を辞めてしまったのだろうか?


「隙あり!!」
「隙なし、っと」

頭を打とうとして振られた木刀を受け流しながら奪い、自分の持った棒ですずかちゃんの頭をコツンと叩く。

「はい、これまで」
「はぁはぁはぁ、ありがとうございました」

さすがに疲れたのか、その場に座り込む。まぁ、打ち合うより受け流したり避けられたりする方が疲れが倍増するからしかたない。

「お疲れ様です。どうですか?」

ファリンさんがタオルを手渡し、すずかちゃんの汗を拭きながら聞いてくる。

「かなり筋はいいですよ。剣もしくは刀が一番あってるかな」
「いえ、そっちもですが、あの、体のほうは?」
「ああ、大丈夫です。もう完全に直りましたから」



汗も引いたので、テラスに移動し、3人でお茶を飲んでいる。ファリンさんはコーヒーは微妙だが、お茶を入れるのはかなりうまい。

「そうだ、二人にこれを渡そうと思ってたんだ」
「これは…音叉とCDですか?」

CDを手に取り、音叉でその縁を軽く叩く。
キィィィィン
ごつい銀色のCDが赤く色を変え、投げると同時に鳥の形に変わる。

「「うわぁぁぁ」」

二人とも目をキラキラさせている。こうして見ると二人とも年相応である。

俺が出したのはディスクアニマル、アカネタカである。ディスクアニマルとは音撃戦士たちの使う式神のことで、昔は石や折り紙などで作っていた。動物の魂が込められており、音叉などで一定の音波を与えることで動く。ものによって違うが、おおよそ20時間連続運転可能、時速200Km/h前後で移動し、録音機能、ステルス機能を持つ。さらに少しなら戦うことも出来る。突貫で作ったのでアカネタカ2枚だけだが。

作ろうとしたとき、鬼の記憶を辿ろうとしたのだが、なぜか朱鬼の記憶を辿るのにかなりの時間を要した。おそらく俺が男であるため、女性である朱鬼の記憶が辿りづらかったのではないかと考えている。

ちなみに音叉のほうは変身音叉・音角ではなくただの音叉である。音角のほうはもっと時間がかかりそうである。

これからは管理局などの組織が出てきたので二人には自衛、もしくは俺が行くまでの時間だけでも逃げられるようにして欲しかった。





この二人への優先順位が他より圧倒的に高いことを確認した日。

***************************************

Side なのは

あれからリンディさん達と協力してJSを集めています。学校に行けないのでアリサちゃんやすずかちゃんに会えないのは寂しいけど、それでもフェイトちゃんとしっかり話がしたいから、アマゾンさんやXさんについて知りたいから頑張ります。


「出てこないわねぇ」
「そうですね」

食堂でユーノ君と一緒に食事をしてると、リンディさんとクロノ君がこちらにやってきました。

「仮面ライダー、だよ。あれ以降まったくといっていいほど現れないじゃないか」

そう、あの管理局と戦ったときから、仮面ライダーは一度も現れていません。どうしたんだろう。

「反応もなし。まぁ、あってもサーチャーじゃ振り切られちゃうのよね。(あのバイク、ロストロギアでも動力にしているのでは)」


以前、Xライダーへのサーチャーはあっさり振り切られた。サーチャーは本来、魔力反応を目標に空戦、陸戦魔導師に対応したものである。どんなに速い魔導師でも陸戦では100Km/h前後、空戦は200Km/h前後である。一応ヘリなどを追うため500Km/hまで対応できるが、まったく魔力反応なしで700Km/hで走るクルーザーが追えるはずがない。

閑話休題。


「どれだけの科学者だったのかしら。あんな高性能な戦闘機人作った人は。あれでISでも使い出したらほんとに手がつけられないわ」
「IS?」
「インヒューレントスキル、先天的な固有能力のことよ。戦闘機人はそれを人工的に持たせることが出来るのよ」
「生命倫理の観点で違法になっている。次に会ったら……ブツブツ」

どうやら前回、愛用のデバイスを破壊されたことを恨んでいるようです。でもたしか、

「クロノ、次に彼が出てきたら攻撃するのは禁止です。私が話をつけます」
「しかし、艦長…」
「クロノ。ここは管理局の法の通じない管理外世界です。郷に入っては郷に従え。こちらから攻撃しなければ彼も話を聞いてくれるでしょ」

そう言ってリンディさんはお茶、たぶんお茶のようなものを飲んでいる。

ビッーー、ビッーー

『エマージェーシー、エマージェーシー。捜査区域の海域にて大型の魔力反応を感知』

事件です。私達は急いでブリッジに向かいます。






Side 雄介

さらに数日。何度かJSの発動を感知したが、向かう前に収縮している。やはり、感知能力の差は埋めようがない。前回の発動の際の痛みもすでになくなってきている。

俺としてはこのまま何もなく管理局が自分の世界に返ってくれるのが一番ありがたいのだが。


そんな願いはあっさり破られる。




「すいません、ファリンさん」
「いいんですよ~。すずかちゃんが帰ってくるまではOK、がんばってきなさい、ってお姉様も言ってたので」

あまりにポレポレが忙しいので、ダメもとでファリンさんに手伝いを頼んだら、なんとOKが出たそうだ。

「お姉様も忍お嬢様もすごい笑顔でサムズアップしながら送り出してくれました」
「…すいません。忍さんは分かるんですが、ノエルさんの笑顔が想像できません」
「そうですか?あれでお姉様は表情豊かで……」

のんびりした時間。お昼時を過ぎ、客足もまばら。しばらくこの時間が続いてほしい。



おやっさん、俺たちをみて、
「新たな冒険へ…」
「店を預けて…」
「この二人なら…」
なんてブツブツ言わないで仕事をしてください。





「ん?風が出てきたか」
おやっさんの言葉で外を見ると、朝に立てておいた幟が吹き飛ばされそうになっていた。あれ?今日の天気は曇りのうち晴れ。降水確率10%。またヨ○ズミが外したのだろうか。

外に出て急いで幟を片付ける。その時、何気なく海のほうを見た。海は大きく荒れ、雷が落ち、黒い少女が波と竜巻と雷に振り回されていた。

ふう、大変な天気だな。さて仕事、仕事。






ってなに!!あの少女、まだあきらめてなかったのか。てっきり敵対勢力と思わしき管理局が出てきたのであきらめたと思っていたが。

まずいな。急がなくては。今回結界のようなものは張られてはいるが、ライダーの目なら中が覗けるほど薄かったし、外にまで影響が来ている。なぜかは知らないが、突いたら割れそうなくらい不安定だ。

何より、フェイトが危ない。さっきからフラフラしているし、いまにも落ちそうである。


「おやっさん、少し出てきます」
「おっ、おお、いってらっしゃい?」
素早くエプロンを外し、バイクに乗る。

カチッカチッ

後ろを振り向くと前回と同じようにファリンさんが切り火をしてくれている。そして、笑顔で、
「いってらっしゃい」
「いってきます」
笑顔で返す。この笑顔だけは守りたい。


海上戦か。アマゾンはギギの腕輪を狙われてるので危険。ならば、
「大・変・身!!」
手を真上に伸ばす。それを一度降ろし、掛け声とともに右手を左上に伸ばす。前回と違いマーキュリー回路が正常に作動している。


荒波を掻き分けクルーザーが進む。クルーザーは超耐圧タイヤのおかげで水上だろうが問題なく進める。荒れてはいるがこの程度なら凪と変わらない


しかし、俺で気付けたのに管理局は動いていない?なぜ?

気付いていない?そんなはずはない。外にまで影響が出ているのだ。これで気付かない様なら、そもそもこの世界にすら来ていないだろう。

不測の事態なので動けない?それもない。彼らの話を聞く限り、このような事件の専門家のようだった。ならこのような事態にも慣れているはずである。

これに影響を受けている?ない。ホッパーで探ったが、この周辺に戦艦らしき影はない。水中もある程度、クルーザーに探らせた。AIを積んでいるクルーザーはとても優秀である。見逃すことはない。ならば、あとはホッパーのさらに上の宇宙か異次元ぐらいしか彼らの居場所はない。この竜巻の効果範囲からいってそこまで影響は出ない。



…待っている?
なにを?
JSがとまるのを?
彼女が封印するのを?





彼女が力尽きるのを?





最も高い可能性の答えに行き着いた瞬間、頭の中が沸騰する。


正義を謳いながら、敵対者とはいえ年端も行かない少女を見殺しにして、自分達は高みの見物だと。


それだけではない。もし彼女が死ねば結界が壊れ、さらに外に影響が出る。下手したら海鳴どころか日本壊滅、ショッカーが大喜びしそうだ。


ふざけんな!!


なにが何でも守ってみせる。


クルーザーのロケットブースターに火が入り、さらに加速していく。





Side フェイト

見通しが甘かったかも。

目の前に迫る大きな竜巻を見ながらそう感じた。

JSが残り7個になり、いくら探しても見つからず、海に目をつけ、強制発動させたまではよかった。

でも発動に想像以上に魔力を使ったこと。ここ数日の捜索での疲れ。…背中の痛みから思うように動けず、ついに雷に捕まった。

どうやら、アルフも後ろで捕まったらしく、唸り声だけが聞こえる。

ああ、もう駄目か。

結局、母さんのお願いを叶えられなかったなぁ。そういえば、アルフが奪っちゃったアマゾンの腕輪、返してなかった。しっかり返して謝りたかったなぁ。

近づく死に対して、遣り残したことばかり頭に思い浮かぶ。

そして、死を覚悟し目を閉じた。






…? 思ったより衝撃がこない。前からではなく横からのちょっとした衝撃だけで体も痛くない。それにこの音。さっきまでは強風と雷の音しかしなかったのに、今はそれに混じったバイクの音がする。

薄っすら目を開けると、赤い大きな目が見えた。

「アマゾン?」

しかし、その顔はアマゾンのような柔らかさは無く、より機械的で銀色に輝いていた。

「違う。俺は仮面ライダーX」



新たな仮面ライダーと遭遇した。




Side 雄介

フゥ。何とか間に合った。フェイトに竜巻が当たる寸前、束縛する雷をライドルで切り、救出した。

ライドルで雷など切ったことは無かったが切れてよかった。

関係ないが背中の傷は何だろう。おそらく鞭かなんかで叩かれた傷だと思うが。

「クルーザージャンプ」

クルーザーを飛ばしてアルフのところまで行き、ライドルで雷を切る。

「何者だい?あんた」
「仮面ライダーXだって、アルフ」
「仮面ライダー?ならこの前のV3やアマゾンの仲間かい。あれはフェイトが見つけたもんだ。手出すんじゃないよ」

後ろでなにかゴチャゴチャ言っているようだが、俺はそれより上空で聞こえた声が気になっていた。今頃来たのか。

光とともになのはちゃんが降りてくる。少し演出過多ではないだろうか。
それに反応し、

「フェイトの邪魔、するなぁぁぁぁぁ!!」

アルフがなのはちゃんに突撃していく。が、民族衣装のような服装の少年が間に入って止める。

「違う!!僕達は君達と戦いに来たんじゃない!」
「ユーノ君!!」

んっ、あの声?ユーノ?……ポクポクポク、チーン。フェレット君か。アルフも人型に変身していた。向こうの動物は皆、人型をとれるのか。

「まずはJSを止めないとまずいことになる」

そう言って、アルフの前から離れ、翡翠色の魔法陣を出す。

「だから今は封印のサポートを」

その魔法陣から同色の鎖が伸びていき、竜巻を縛り上げる。その瞬間に竜巻の合間から青い光が見えた。内部にエネルギーがあるなら、

「ライドロープ!!」

手ごたえ有り。竜巻の一つに巻きついたライドロープが確かにその竜巻の行動を制限している。

「X!!ありがとう」

ライドロープが巻きついた竜巻から鎖がはずれ、その分残りの5つのほうの鎖が大きくなる。


「フェイトちゃん。手伝って。一緒にJSを止めよう」
なのはちゃんの杖からピンク色の光が出て、フェイトの杖につながる。

《Power charge》
言葉とともに消えかけていた刃が戻る。

《Supply complete》
なるほど、魔力の供給か。
「二人できっちり半分個」


「クウッ、ウア」

隣で少年が苦しそうな声を上げる。どうやら一人で5つの竜巻を抑えるのはきついらしい。手伝いたいがライドルは一本しかない。

すると後ろからオレンジ色の鎖が竜巻に巻きつく。

アルフか。何も言わないが、この子達の行動に答えたのか。


「ユーノ君にアルフさん、Xさんが止めてくれている。だから今の内」

「二人でせーので一気に封印」
《Shooting mode》
なのはちゃんの杖が変形し、雷の中を縫うように進んでいく。

《Sealing form setup》
「バルディッシュ?」
手の中で変形した杖を不思議そうに見た後、なのはちゃんとアイコンタクトしている。

「ディバインバスターフルパワー…いけるね?」
《all right my master》

二人の足元に魔法陣が展開され、見る見る大きくなる。

「せーの」

「サンダー」
「ディバイン」

「レイジ!!!」
「バスター!!!」

黄色の閃光が竜巻に直撃し、ピンクのレーザーがそれをさらに薙ぎ払った。





「だめだ、一つ残った!」

少年の言うとおり、竜巻の一つが消えずに残っている。

「フェレット少年!そのまま抑えていろ」
「エッ!?ボクはフェレットじゃ…」

時間が無いのでそのまま海に飛び込む。

海の中は荒れに荒れ、海底の砂が舞い上がり、普通なら1m先も見えない。しかしXの触角、レッドV、Dアイ、人工聴覚を持ってすれば真昼の高原のように澄んで見える。

回転は右巻き。

Xライダーは正直なところV3、アマゾンに比べ大きな攻撃力は持ち合わせていない。しかし、海の中、回転となるとあの二人が持ち合わせていない特殊な技を持っている。

「動け、マーキュリー!!」

胸に入ったマーキュリー回路が唸りを上げ、マーキュリーパワーが満ちてくる。

「真空、地獄、車ァァァァ」

俺の回転に合わせ、周りの流れが変わり、右と左の流れがぶつかり合う。

さらに上向きの流れを加え、海水と共に上空へと上っていく。

数千回転後、竜巻は収まり、JSと俺が浮かんでいた。


真空地獄車。本来なら敵を抱え、縦回転しながら何度も地面に敵の頭を叩きつける技。だが以前、バダンの復活キングダークを倒す際、高速回転によってその体をバラバラにした。

今回はそれを応用した、いわば空の真空地獄車。右巻きの竜巻に左の回転を加えることにより竜巻を止めたのである。



向こうでJSが止まったのを見届けたのか、なのはちゃんがフェイトに話しかけてる。

「友達に…なりたいんだ」

さすがにアルフも邪魔をしようとはしない。
俺は近くに浮いていたフェレット少年に話しかけた。

「なあ、フェレット少年。管理局はなぜ出てくるのが遅れたんだ?」
「ボクはフェレットじゃなくてユーノです。えっと、管理局は、彼女が封印、もしくは力尽きてから回収しようと…、その、見てられなくて命令無視でボクとなのははきて、…」

どうやら予想が当たったらしい。本当に胸糞悪い話である。

「あと、ボクはフェレットじゃなく…」


何かを続けているが、俺はそれどころじゃなかった。なんだこの嫌な予感。

上空を見つめた瞬間、空が紫色に光る。
「か、母さん?」


く、間に合え!

俺は二人の上空に移動し、素早くライドルポールをまわす。
「ライドルバリアー」

次の瞬間、耳を劈く轟音と衝撃が俺を襲った。

「ぐおおおおぉぉぉぉ」

そのまま海まで落下する。しかしこの一撃は…。



素早く海面に顔を出すが、すでに事態は急変している。咄嗟に俺が投げ出したJSはフェレット少年の手に、なのはちゃんとフェイトの間に浮いていたJSは2つがいつの間にか現れた執務官の手に、残りはアルフの手の中に入っていた。

「ううぅぅぅうう、うわああぁぁ」

唸り声とともに海面に光弾が叩き込まれる。
それを隠れ蓑に逃走するのだろう


俺も引くしかないか。管理局が気に食わないといっても、なのはちゃんとフェレット少年、ユーノは納得して手を貸しているようだ。


クルーザーで戦域を離脱。







ポレポレの前まで来る。念のため、遠回りしてきたが、追われてはいないようだ。




「ただいま」
「おかえりなさい」
久しぶりにこの言葉が言えた気がした。
そして、続けて返された言葉に嬉しさがこみ上げてきた。






あとがき
どうも、作者のGです。またもご無沙汰です。この作品の欠点で視点の問題でキャラの感情が書きにくいことに漸く気付きました。今回、なのはの独白をなくすとかすごい短くなる回なのでけっこうたいへんでした。

オープニングはスピリッツの15,6巻を参考にしました。ICはネタです。城北にいるはずの五郎が城南にいるのは使用です。深く突っ込まないでください。

前半です。仮面ライダーの存在でクロノが復帰に時間がかかるため、アースラは初めからなのはに協力を打診。リンディさんも速攻で来ました。作者はすずかとファリンの強化に余念がありません。ディスクアニマルについてはデータベースにまだ出てないので、手に入ったら書き換えるかもしれません。っていうか、魂をこめるってなに?

後半は竜巻です。あの時、管理局がなぜフェイトが力尽きるまで待っていたのか。正直、本編を見ているとき疑問に思いました。JSが6個も暴走したら手がつけられないのでは?あの選択は確実に海鳴がどうなってもかまわないという選択にしか思えません。あと、魔導師の速さについては自己設定です。STSのとき、速いほうである陸戦のスバルがバイクと同じくらいであったこと、フェイトがスポーツカーに乗っているとき直線道路があるのに飛行を選択したことからこのぐらいだろうと考えました。


ディケイド、響鬼編。最高でした。本編で見られなかった明日夢君の鬼。あの最終回に納得いかない作者にはマジ涙ものでした。でも、あきらの変身体、天鬼はなんて読むのでしょう。普通にテンキか、それともあきらなのだからアマギ、アマキなのでしょうか。


次回は決闘です。まぁあまり介入はしないでしょう。



ディスクアニマル欲しい。ライダーのアイテムの中で一番かわいいと思う。皆さんはライダーのアイテムのなかでなにが好きですか



[7853] 第10話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/06/21 00:19

『ライダーッキィィィック!!』
『グッ、グオオオオォォォォォォ!!この、裏切り者がァッァアァァァ』


腹にライダーキックを食らい、怨嗟の叫びを残しながら爆散するイカデビル。

バイクに乗って走り去ろうとする謎の男。

『待ってくれ。お前は一体…』

一瞬振り向くが何も言わずに走り去る。

爆発の余波によって生まれた炎に照らし出される、困惑する五人の戦士。


つづく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



突如現れ、圧倒的な力で強敵イカデビルを倒した仮面の戦士、
彼は一体何者なのか?
その正体は?目的は?
次週、秘密戦隊ゴレンジャー 第13話 敵か?味方か?マスクドライダーにご期待ください』

エンディングが流れ出す。

「う~ん、いい出来ね。子供用番組とは思えないわ」
「ああ、そのために俺と雄介の二人で謎のスタントマンA、Bでイカデビルとライダーをやったんだからな」

以前撮られた写真について忍さんに話すと、怪しまれない様に特撮のスーツに見せかければいいと言われ、その日のうちに計画が各方面に出されて、俺は脚本を書かされた。今、テロップで出されている原作者「章太郎」とは俺のペンネームである。

「そういえば、なんで仮面ライダーを主人公にしなかったの?」
「いや、仮面ライダーを真面目にやったら、人は死にまくるし、敵が怖すぎて子供用じゃなくなりますよ」

といっても、すでにあるプロデューサーから彼、仮面ライダーのスピンオフを作らせてくれ、と打診されている。


雄介は後に仮面ライダーが子供達どころか親御さんにも受け入れられ視聴率30%を突破することをまだ知らない。


「それでゴレンジャー?このネタは?」
「なぜか書いてる時、源は同じ、源は同じ、っていう電波が」
「?」
「すいません。忘れてください」


それとすずかちゃん。テレビを見るときは部屋を明るくして、テレビから離れて見よう。



ひどく平和なとき。



第10話  見た!黒幕の顔

Side 雄介

「だから、この設計だとどう考えても無理なんですよ」
「やってみなくちゃわからないでしょ」


今現在、小沢さんと討論中。久しぶりに大学に来たら、小沢さんが待ち構えていた。何でもGシリーズに俺の研究中のフォトンブラッドが使えないか、ということだった。

フォトンブラッドはこの大学でも一部の人しか知らないが、次世代のエネルギーとして注目されている。

電気信号によって操作ができ、フォトンフレーム上にフォトンストリームを流せば距離に関係なく、ほぼ100%のエネルギー効率。力の大きさも色で判別できる。はっきりいって電気より使い勝手がよい。

外へ放出することでの破壊力への変換は現在の科学力では無理なので安全性も高い。

小沢さんが目をつけるのもうなずけるが、

「だから、すでにある機械にフォトンフレームを作るのは難しいんですよ」

そう、問題はフォトンブラッドの特性より、機体の耐久性である。555ギアに代表されるライダーズギアの変身は、まずフォトンフレームが装着者に合わせ作られ、その後、電送によってアーマーを着込む。

フォトンフレームがアーマーに合わさるのではない。アーマーがフォトンフレームに合わさるのだ。そうすることで555やカイザは強度を持っている。

つまり、物体を電送する技術がないと強度が保てない。高い強度が必要なアーマー系には使い勝手が悪い。

それ以外にも力が強すぎてアーマー系では使い手を選ぶが、これは出力の調整やフォトンストリームの本数で何とかなる。

一応、俺は電送の方法を作れる。ライダーマンのアーマーと同じである。しかし、この技術は完全にオーバーテクノロジー。間の技術を少しずつ作らないと周りには意味が無い。普通にやると、開発まで、あと100年以上かかるが。


「せいぜい装備に使うくらいしか使えませんよ。あっ!でもGシリーズの電力を使わないから節電にはなりますね」

エネルギー源としては使えるのだ。ストリームが無いと100%とはいかないが、それでも効率は段違いである。ドリルやチェーンソーに使え。

「しょうがないわねぇ。…ということで作って」
「はい?」
「今月中でいいから。完成したら持ってきて」

颯爽と去っていく。…仕事が増えた。大学、来るんじゃなかった。




あの海上の戦いから一夜明けた。怪我をせず、戦いが終わったのは久しぶりである。

ライダーマシンに乗ってポレポレへ帰る途中、かすかに非日常の匂いがした。
血の匂いだ。
すぐ近くの公園への道に点々と赤いシミができている。

人間じゃないな。

アマゾンの影響か、匂いでそこまで判別できる。だからと言って動物でも見捨てるつもりはない。血痕を辿っていく。


見えてきたのはオレンジ色の毛並み。

「なに!おい、大丈夫か」

倒れていた犬はアルフだった。







「いやぁ、助かったよ」
「ええ、でもホントに獣医に見せなくても大丈夫そうね」

あの後すぐにアリサちゃんが現れ、アルフをバニングス邸まで運んだ。
アルフの傷の手当は俺が行った。一応、魔法が関与しているので一般の獣医に見せるのもどうかと思ったからだ。アリサちゃんは大丈夫か、こいつ?見たいな目で見ていたが手際のよさで安心してくれたようだ。

実際、俺の中には獣人の毒でさえ一瞬で浄化する薬を作ったアマゾンやスーパードクター、リアルBJな木野薫がいるのだ。今すぐにでも外科、内科医師になれる。医師免許がないので本当にBJになるが。…BJってだれだ?久々の電波である。


「お見事です、五代君。どうです?やはり執事を目指しませんか?あなたならSランク執事も夢ではありません」
「あはははは、遠慮します」

以前会った時から鮫島さんから執事にならないかと誘われている。なる気は無いので何度も断っている。

「そうですか。あなたにはかつてともに切磋琢磨した友人に近い気を感じるのですが。彼は今も神代家に仕えていますが…」

そのまま世間話に突入。鮫島さんから執事の心得を延々と聞かされた。


途中でアリサちゃんに病人(犬)がいるのにうるさいと怒られた。





「それじゃあ、また明日くるから」
「good bye 雄介」
その日は、犬の意識が戻りそうに無いのでアリサちゃんに任せて俺は帰ることにした。

なにがあったのか。あの犬が一人であんな場所に傷だらけでいたのだ。まさか、管理局にやられたのだろうか。しかし、それならあんなところに転がしておく理由が分からない。逃走したにしてもあんな開けた場所ならすぐに見つけられるだろう。管理局で無いとすれば誰だ?
意識が戻ったら話を聞きたかったが。まぁ、意識が戻ってもこの姿では話も出来ないが。


バイクの上で少しずつ事件が変容していくのを感じた。





Side アルフ

気づいたら私は檻の中にいた。目の前には数匹の子犬。そして、

「あっ、目覚めた?」

どこかで見たことのあるちびっ子。

「あんた、頑丈にできてるんだね。あんな大怪我してたのに。命に別状はないってさ。怪我のほうは雄介が診てくれたし、治るまでは家にいていいから」

大型の私を怖がりもせず撫でてくる。暖かい。

あぁ。思い出した。あの子の友達だ。温泉で一度…。

「柔らかくしたドックフードだけど食べる?」

少し口に含む。美味しい。後は夢中で食べていた。

お腹が満たされ、眠くなる。薄れる意識の中で考える。
フェイトを助けなくちゃ。

あの子なら、管理局なら、そして仮面ライダーなら…
今までしたことはしっかり謝ろう。だから、お願い。フェイトを助けて。




****************************************


Side 雄介

すずかちゃんの連絡ではなのはちゃんが学校に来たらしい。なぜ、このタイミングで帰ってきたのだろう?

まぁ、なんにせよ恭也さんがしっかり会話できるチャンスか。たぶん説得は無理だろうが少なくとも納得できるように兄妹同士の会話をしてほしい。

午前中、ポレポレで仕事をし、午後にアルフの怪我の様子見に行くと、ちょうどなのはちゃんとすずかちゃんが遊びに来ていた。三人ともアルフの入った檻をのぞきこんでいる。

「あっ、雄介。昨日、気がついたんだけど、また元気がなくなっちゃったの」
「ああ、後は俺が見とくから、せっかく久しぶりに会ったんだから遊んでおいで」

三人ともこちらを気にしているが、アリサちゃんが率先して二人を引っ張っていく。やはりあの年頃の子供は戦うより遊ぶべきである。


巻いておいた包帯を外し、とってきた雑草を潰して作った薬を塗る。

ん、よく見ると檻の前でフェレット君がこちらを見ている。

『どうやら、なにかテレパシーのようなもので会話しているらしいな』
(とうちょ…ゲフンゲフン。その会話を聞くことはできるか?)
『盗み聴くのに変わりはしないのだから、とりつくわんでもよかろうに…このままでは無理か。取り合えあえず席をはずせ』

見えない位置まで移動する。拳を胸の前でぶつけ合い、

「変身」

ライダーマンになる。といってもヘルメットをつけただけだが。

〈んっ?今、ノイズが入ったような〉
〈気のせいだろ。それより話の続きを…〉

女性と少年の声が聞こえる。少年のほうは執務官だ。

ライダーマンのヘルメットは他のライダーと違い通常の電波を用いることができ、電話とも交信可能だ。彼らの会話はキングストーン曰く、特殊な電波によるものと言っていた。なので、このようにライダーマンヘルメットなら盗聴が可能なのである。






全てを聞き、全てが繋がったような気がした。なぜ彼女があんなに寂しそうだったのか。なぜ彼女があんなに悲しそうだったのか。なぜ彼女があんなに必死だったのか。

しかし、同時に疑問に思う。彼女の母の思惑、願いはなんなのか。違和感がぬぐえない。

〈そういえば、あんた達は仮面ライダーに連絡は取れないのかい〉

考えている間に話が俺に及んでいる。

〈…ねぇ、アルフ。君は、その、アマゾンの腕輪を奪おうとしてたよね〉
〈ああ、そのことについても謝らないと〉
〈あのね、それが、アマゾンの腕輪は奪われるとアマゾン自身の命が奪われるって…〉
〈ッ!!…〉

押し黙ってしまった。なんか空気が重い。

〈それより、僕たちは艦長の命令があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更になる。君達はどうする?〉
〈私は、フェイトちゃんを助けたい。アルフさんの意思と私の意思、フェイトちゃんの悲しい顔を見ると…私もなんだか悲しいんだ。だから助けたいの。それに、友達になりたいって言った。その返事を聞いてないしね〉

やはり、止まらないか。

〈わかった。フェイト・テスタロッサのほうは君たちに任せる〉

?…また、利用しようと考えているのか?お互いに疲れたところを捕まえようとか。…だめだ。こいつらの行動のせいとはいえ疑心暗鬼になってるのか。



その後、まずなのはちゃんが帰って行き、すずかちゃんを送るため一緒にバニングス邸を後にした。

「なのはちゃんと話したら、少し吹っ切れたみたいで。少し安心しました」
「そっか」

吹っ切れたことが良いことなのだろうか。戦士として戦場に迷いを持ち込まず、使命や信念に従って戦うのは当然である。しかし、子供が迷わずに戦うことが、本当に良いことなのだろうか。

「?五代さん?」
「なんでもないよ」

迷いが無ければ人は強くなる。しかし、迷いが無ければ人の心は成長しない。ライダーだって迷いながら道を模索した。だからこそ子供のときは迷いながら成長していくべきなんだ。迷ってもいいはずの子供が迷いを持ってはいけない戦場になんか出てはいけない。




せめて、すずかちゃんだけでも、彼女自身の本当の戦いが始まるまで、迷いながら成長して欲しいと願う。





Side 恭也

夜。道場からなのはと父さんが出てくる。

「父さん、話がある」

俺は父さんに話しかけ、もう一度、道場内に戻ってもらう。

「お兄ちゃん?」
「悪い、なのは。先に戻っていてくれ」




「それで、話はなんだ?」
「父さんなら分かっているだろ。なのはのことだ」

互いに正座で向かい合う。俺の真剣な顔に答えたのか、父さんも真剣な顔になる。

「もう止めるべきだ。なのはがどれだけ危険なことに巻き込まれているか「知ってるよ」…!!」
「知っている。あの子のあんな顔を見れば分からないはずないじゃないか」
「ならなぜ?」

分からない。心配じゃないのか?

「お前もその内、分かるようになる。子供は大人が導くもの。だが親は時に、子供の成長を見守ってやらなければいけないときもある」
「今が、その時だと?」
「ああ。そして私は、あの子の帰ってくるこの家を守る。それが父親である私の務めだ」
「でも、もしものことがあったら…」
「大丈夫。お前の信じた五代君を私も信じるよ」
「なっ!!何でそれを」

雄介との約束で彼のことは両親にも話していない。雄介が父さんと会っていることはほとんどないし、彼が教えたとも思えない。

「ククク、カマをかけただけだ。やっぱり彼か。いずれ礼を言わなければな」
「なぜ、雄介だと?」
「恭也。もっと人を見る目を養え。彼の目は我々と同じ、守るものの目だ。そして、あの武術…それ以外にも、何か秘密がありそうだな。それは、教えてくれないのか?」
「いや、あぁぁ、聞くなら本人に聞いてくれ」

まったく、父さんには敵わない。後で聞いたことだが、なのはが巻き込まれたとき、雄介と現れたとき、怪我のタイミング、その他、色々な要素から考えたことらしい。

「それにな、なのはには御神の、というか俺の血が流れているんだ。心に決めた以上、周りが何を言ったって止まりはしない。まぁ、それでも戦場で生きることを生業にしようとするなら親として全力で反対させてもらうがな」



親の大きな背中を見て、こんな親になりたいと思った。





***************************************

Side 雄介

来た。時刻は…5:40か。

まったく、近頃の小学生は早起きだ。

月村邸前でバイクに火を入れる。

実は、すずかちゃんを送って、そのまま月村家に泊めてもらっていたのである。正確には、すずかちゃんとファリンさんに仮面ライダーの話をしていたら、すずかちゃんが袖を掴んだまま寝てしまい、なし崩しで泊まっただけだが。まぁ、今は関係ないか。


話を聞き、次で決着をつけるのだろうと予測し、待っていたら、本当にホッパーがなのはちゃんの姿を捉えた。

向かってる先は…臨海公園か。


「それじゃ、多分これで最後なんで、行ってきます」
「あの、やっぱり私も行っちゃ駄目ですか?」

すずかちゃんが聞いてくる。昨日の俺の帰りの不機嫌さで不安になってしまったらしい。

「駄目。今回は俺やなのはちゃんの戦いだよ。君が戦うべきときは人生の中で必ずある。まぁ、それが今回の様に力が必要な場合とはかぎらないけど。それまでは俺と一緒に訓練しよう。大丈夫。俺もなのはちゃんも、きっと無事に帰ってくるから」
「うう…約束ですよ」

約束は守る。絶対に無事に帰ってくる。

「はいはい、じゃあ私は…」
「ファリンさん。折角、すずかちゃんが納得してくれたんだから、いつも通り送り出してください」
「…冗談は抜きにして、絶対に帰ってきてください。待ってますから」


カチッカチッ!

いつも通りの火切りの音。


「じゃあ、行ってきます」
「「いってらっしゃい」」

朝靄の中をバイクが駆け抜ける。



「大・変・身」
仮面ライダーⅩになる。




すでに戦闘は始まっていた。上空でピンクの光弾と金色の閃光がぶつかり合っている。

ほぼ互角か。なのはちゃんは強くなった。信じられない速度で。元々、天稟があったのか。それとも魔法に対する適正が高かったのか。どちらにせよ、戦う才能など見つからなければよかったと思う。

「Ⅹライダー」
フェレット君が近寄ってくる。以前の人間形態ではなく、フェレット形態で。やはりこっちが本当の姿なのだろう。

「あの、出来れば手は…」
「分かっている。一騎打ちに手を出す事はしない」

向こうから躊躇しながらアルフが近づいてくる。

「ねぇ、あんたはアマゾンの知り合いなのかい?」
「ああ」
「お願いがあるんだ。アマゾンに謝らせてくれないか?…あれは私の独断でやったことなんだ。私はどうなってもかまわない。だから、フェイトは、フェイトのことは嫌わないでほしいんだ」

悲壮感漂う、お願いである。実は俺はそこまで怒ってなかったりする。アマゾンはゲドンと戦っている時、いつもギギの腕輪を狙われていた。ガランダーは狙ってこなかったが、それでもいつも危険と隣りあわせだった。あの時はキレたが今は割りとどうでもいい。

「…アマゾンは、その特異性から、いつも何かに追われていた。別にそれがいまさら一人増えたところで、そこまで気にしないだろう」
「そうかい?でも、出来れば直接謝りたいんだけど」
「それは無理だな。…どうせ見ているのだろう、管理局」

アルフから目を離し、虚空をにらむ。

〈よくわかったな〉

目の前に画面が現れ、執務官が話しかけてくる。話しかけてくるが興味は無い。途中でこっちが無視しているのに気がつき、ギャアギャア言っているが本当にどうでもいい。


≪Phalanx Shift≫

フェイトの周りに帯電したように電気を発する光弾が生まれる。なのはちゃんが構えようとするが、まるで空中に磔にされた様に金色のリングが手足を縛る。

「まずい。フェイトは本気だ」
「なのは、今サポートを」
2匹が動こうとする。こいつら、人には手出すなといいつつ自分達は出すのか。

「だめーーーーー」

なのはちゃんがそれを制す。

〈全力全開の一騎打ちだから・・・私とフェイトちゃんの勝負だから〉

まぁ、手を出さないのが一騎打ちの礼儀か。決着がつくのなら、そろそろか。上空には暗雲が立ち込めている。


「フォトン・ランサー、ファランクス・シフト」
フェイトが腕を挙げ、
「撃ち砕け!ファイア!!」
振り下ろされた腕とともに金色の光が動けないなのはちゃんに殺到。直撃する。

爆煙に包まれ、標的が見えなくなっても、まだ打ち続けられる。

ようやく、攻撃が終わり、フェイトは肩で息をしている。

煙が少しづつ晴れると、

「・・・撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね。」

バチバチ帯電しているがほとんど無傷のなのはちゃんがそこにいた。

「今度はこっちの…」
≪Divine…≫
「番だよ!!」
≪Buster≫

お返しとばかりにピンクの巨大レーザー光線がフェイトに向かって発射される。フェイトは手に持っていた最後の光弾を放つが、あっさりかき消される。

フェイトはすぐにバリアーを張って受け止めようとするが、破壊力に押され、マントや手袋に裂傷が入っていく。

だが、この攻撃をフェイトは耐え切った。が、

「受けてみて、ディバイン・バスターのバリエーション…」
≪Starlight Breaker≫

なのはちゃんの目の前でピンクの光が収束していく。受けきれないと考えたのか、フェイトが動こうとするが、

「バインド!!」

今度は逆にフェイトが磔にされる。

「これが私の全力全開!!」
掲げた杖を目の前の光に叩きつける。
「スターライト…ブレイカァァァーーーー!!」

先程の攻撃を越える極大レーザーがフェイトを飲み込む。


…あれが人間の出す攻撃か?はっきり言って無茶苦茶だ。フェイトが消し飛んでないか心配である。


攻撃が終わり、なのはちゃんが疲労困憊になっている。フェイトは、少しの間、浮いていたが気を失い、海に落ちる。それを追いかけ、なのはちゃんが救出する。



自分がしっかり見たのはここまで。なぜなら、
〈来た!!〉
ほぼ同時に管理局も気がついたらしい。触角とDアイが光を、キングストーンが力を感知する。

ブルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥ

クルーザーにつくロケットブースター全てに火を入れ、飛ぶ。
最高速でなのはちゃんとフェイトの真上にバイクごと現れる。

ズゴガガアアァァァァァァ!!!!!

以前と同じ紫色の雷が落ちてくる。しかし、それは予測済みだ。

「その力、俺とカブトローがいただくぜ!!」

食らう瞬間にクルーザーをカブトローに変化させ、雷を吸収する。

カブトロー。仮面ライダーストロンガーの愛車。このバイクは空気中の静電気を吸収し無限の航続距離を持つ。そして落雷を受けることにより1010Km/hまで加速する。

飛行能力は無いが、慣性を利用し、奪われていくJSに追いつく。


Side プレシア

く、ゲホッゲフォ…

時空跳躍魔法、物質転送と連続で行ったせいで病がさらに悪化したらしい。しかも物質転送のほうに、あの邪魔者が介入してきた。なんとか途中で排除できたが、間違いなく近くまで来ている。

さらに、管理局もこちらに感づき、先程、局員を転送してきた。

時間が無い。敵も多い。後も無い。

それでも負けるつもりは無い。

もう人形なんていらない。私はアリシアを取り返す。


「プレシア・テスタロッサ。貴方を時空管理局法違反の疑いと時空管理局艦船攻撃の容疑で逮捕します。武装を解除してこちらへ」


さあ、まずは目の前のゴミ掃除から。



Side 雄介

目の前には禍々しい要塞(?)がある。いきなりJSが目の前から消え、直後にこの要塞が現れたのだ。正直、かなり驚いた。

中に入ると、まるで城のようになっていた。雰囲気としてはキャッスルドランが一番近いか。後ろにいきなりファンガイアかアームズモンスターが立ってそうで怖い。

それより、なんだこの嫌な気配は。まるでオロチの前か世紀王を決める寸前のようだ。


ブウウゥゥゥゥン
「!!」

足元が光り、周りに鎧のようなものが現れる

グオオオオォォォッォ
俺に向かって、金色の鎧が斧を振り下ろす。

「ライドルホイップ!!」
カブトローで横をすり抜けながら脇を切る。そこからバチバチと火花が飛び、内部に機械のような配線が見えた。

ロボットか。ならば、

「行け、カブトロー!!」

カブトローから飛び降り、敵に突っ込ませ、自分は反対方向に切り込む。

カブトローが器用に鎧達の間を抜ける。すると、鎧たちは、まるで糸の切られた操り人形の様に一体ずつ倒れていく。

カブトローは先程言った様に空気中の静電気を吸収できる。また逆に吸収した電気をテールランプの辺りに設置されている撹乱磁場発生装置から放つことで、周りにある電子機器を破壊することが出来る。




「真空地獄車ァ!!」

一体に組み付き、最後の一団に叩き込む。

これでおおよその鎧は破壊した。といってもほとんどがカブトローによって鉄屑にされたのだが。褒めろといわんばかりにライトを輝かせている。

〈まったく、マナーがなってないわね〉
「!誰だ?!」

どこからとも無く声が響く。

〈貴方こそ誰かしら?人の家に無断で侵入しないで欲しいわね〉
「…プレシア・テスタロッサか」
〈ええ。来て早々で悪いんだけど、そこらへんのゴミ屑と一緒に埋まりなさい〉

頭上に雷が帯電している。避けようとするが、

ガシッ
「なっ!!」

先程、倒したと思った鎧の一部が俺の足を掴む。まずい。避けきれない。

「ライドルバリアー!!」


ズガガガガガガガァァァアァァァァァァァア


「ぐうううううぅぅぅぅぅぅぅ」

一帯全てを飲み込む雷は足元を砕く。

「しまっ…」


体勢が崩れ、ライドルバリアーの隙間から雷を食らい、衝撃とともに目の前がくらく…………








あとがき

どうも、作者のGです。皆さんの感想のおかげで何とか書き続けています。ところで、ディケイドの新フォーム、コンプリートフォーム。あれ、凄く動きづらそうに見えるのは俺だけでしょうか?まあ、キバだってはじめてみた時は動きづらそうと思ったし、きっと動いている姿を見れば大丈夫でしょう。

さて、オープニングはナーナシーさんの意見を参考に書きました。分かる人にはわかりますが、補足します。ゴレンジャーの原案者は仮面ライダーと同じ、石ノ森章太郎先生です。ただそれだけのネタ。

前半です。フォトンブラッドについては完全に自分設定です。そこまで詳しく書いたものが無かったので。ライダーマンについては後でしっかり書きます。これで終わりになんかしません。
士郎さんの考えに疑問を持った人はたくさんいると思います。ここではライダーは子供を守ることだけを考え、士郎さんは子供の成長を望んでいる様に書きました。仮面ライダーで親になった仮面ライダーはいない(オルタナティブゼロはライダーとは認めねー)ことから、このような親の考えが出来ないようにしました。


それでも違和感が消えない方、出来れば具体的にどのように直せばいいか御教授のほどよろしくお願いします。


後半です。一番苦労したのは時の庭園への突入方法です。バトル分が足りないと思いましたが、次回に回します。



今回は全体的に早足になってしまいました。次はもう少しじっくり…書けたらいいな。あと次はオープニングのネタは入れません。
次はプレシア戦。さあ、改変しよう。皆さん、突っ込みの準備をしてお持ちください

そういえば、神代家について
サソードは剣に擬態したワームなので、剣本人がサソードに変身したという記述がどこにも無いので、神代家はありにしました。





[7853] 第11話 (前編) 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/06/21 00:22
「ぐううううう、おおおおおおぁぁぁぁぁ」

くそ、どれだけ気を失っていた。1秒か、1分か。まさか1時間ってことは無いだろう。

気がついたら、暗闇の中。体の上には例の鎧が数体。何とか持ち上げて出て見ると、周りも完全に鎧で覆われている。錆びついた年代物が混じっていることから、どうやら物置か粗大ごみ置き場らしい。

俺の呼びかけに答え、カブトローが近づいてくる。周りの鎧のパーツを食ったのか、傷らしい傷は無い。こいつ、俺より不死身なんじゃないだろうか。


ガチャ

不意に後ろから金属音がする。

素早くカブトローがそちらに光を当てると、銀色の古ぼけた鎧が立っていた。一緒に落ちてきたものじゃない。襲いかかってくる様子もなく、じっとこちらを見ている。ん?見ているんじゃなく、何か言っているのか?


猫の鳴き声か?しかし、いくら俺でも動物の言葉は…まさかな。分かる訳…でも、試しに、

「アー・マー・ゾーン」

変身。

「お願い、彼女を…」

…わかるよ。聞こえるよ。予想はしていたけど、本当に動物が何を言っているか分かるとは。さすが動物とともに野生で育った戦士、アマゾン。


ライダーの多彩な特技に驚いたとき。


第11話 真実(前編)

Side プレシア

ハァハァハァ

思ったより疲れる。いまだに目的の場所には着かず、中間の大広間である。胸の痛みも鎮まるどころか、どんどん強くなっている。やはり、仮面ライダーへの一撃が後を引いているらしい。しかし、彼の足止めだけはしておかなければならない。

会ってはいけない。

まるで何かに取り付かれたように、頭の中でその言葉が響く。黒い焦燥感が私を覆う。


しかし、その一方で、会いたいと願う欲求がある。

今までにいない、全く権力に依らず、己の信念で戦う戦士は、私をなんと断罪するのだろうか。
彼のあの強さ、そこに込められた信念や想いはどれ程のものなのか。
そして、その強さに自分の信念はどこまで対抗できるか。

魔導師として、科学者として、なにかが会うことを望む。わずかな期待が生まれる。




二つの欲求がぶつかり合いながら、体の中で炎のように燃え上がる。
けれども、期待は焦燥によって塗りつぶされる。
歩を進め、扉に手をかける。



~♫~♪~

「っ!!口笛!?」

まさか…

「そこよっ!!」

いち早く感知魔法で見切り、攻撃を叩き込む。二階のエントランスの辺りに叩き込んだ一撃が爆煙を生む。

「変・身…ストロンガァァァ」

煙の向こうから声が聞こえる。恐怖と焦燥、期待と歓喜が体の中で暴れる。

「天が呼ぶ…地が呼ぶ…人が呼ぶ…悪を倒せと俺を呼ぶ…」

煙から白い手袋をした腕が現れ、煙を真一文字に切り裂き、姿を現す。

「俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー」

赤い角と緑の複眼を持つ戦士がそこに立っていた。




Side 雄介

時間を少し巻き戻そう。

暗闇の中で出会った鎧の中には山猫が入っていた。ひどく衰弱していたので、ライダーマシンに収納しておいた薬草を何個か使った。


余談ではあるが、ライダーマシンの収納スペースはかなり広い。現在、ライダーマンのヘルメット、義手であるカセットアーム、薬草一式、ディスクアニマル数枚が入っているが、それでもまだ余裕がある。


少し元気になった山猫さんは自己紹介を始めた。カブトローで移動しながら話を聞く。

名前はリニス。元・プレシアの使い魔でフェイトの教師役。

使い魔として、プレシアとフェイトと共に穏やかに暮らしていたこと。
急にプレシアに命じられ、フェイトを鍛えていたこと。
フェイトとの日常のこと。
フェイトが全ての課題をクリアし、バルディッシュを渡したこと。
プレシアに真実を教えられたこと。
契約終了で消され、素体がここに捨てられたこと。
フェイトのことがどうしても気になり、ここに時々捨てられる傀儡兵の余った魔力で生きてきたこと。
ある日、傀儡兵に比べ、かなり強力な力を持った腕輪が捨てられてきたこと。
それを利用して少しだけ、傀儡兵を使い動けるようになったこと。
何とか会話できるまで回復したところ俺が降ってきたこと。


……腕輪?もしかして、ガガの腕輪?野郎、人から奪っときながら捨てたのか。

急いで戻り、先ほどの鎧を調べると、確かにガガの腕輪が付いていた。こんな簡単に回収できてしまった。



このままリニスの案内でプレシアのもとに向かう。俺もそうだが、リニスもプレシアの真意を知りたいらしい。

先ほどから微弱な地震が続いている。
リニス曰く、時空震が起きかけているらしい。

道すがらの鎧は片っ端からカブトローの攪乱磁場で鉄くずになっていく。リニスが毛が逆立つと嫌がっているが時間短縮のためなので仕方ない。

「この先です。この先の広間にプレシアがいます。…管理局員は…まだかなり後ろ。数は3人、いや今5人に。…これは!フェイト!?」

どうやら管理局も来ているらしい。フェイトも来たのか。それなら…

「リニス、カブトローで、フェイト、連れてくる」
「えっ!」
「行け!カブトロー」

カブトローを飛び降り、後ろに向かわせる。速度的には5,6分ぐらいだろうか。

「ちょっとぉぉぉぉぉ…」

ドップラー効果を起こしながら、バイクごとリニスが離れていく。ああ、そういえば、リニスって病み上がりだったっけ。自分じゃ飛び降りられないか。…まぁ、いいや。

変身しよう。雷撃は相当受けた。体内に溜まった電気が外に出せと暴れている、これを利用しよう。


扉を開け中に入る。






No side 

時間を現在に戻す。

対峙する紫紺の大魔導師と雷の戦士。まるで凍りついた様に動かない。ただ、互いに睨み合う。
その静寂を破ったのは紫紺の魔導師、プレシアだった

「ストロンガー…正義の戦士、ね。貴方は何しに来たのかしら?」
「…リニスに全てを聞いた。ただ、止めるためにここに来た」
「…止める、止める。…止・め・る、ですって」

プレシアの顔が憤怒から般若の如く歪んでいく。リニスのことは頭に入ってこないらしい。

「私は!!アリシアを!!取り戻し!!あの、幸せだった日々を取り戻す!!!誰にも邪魔はさせない!!」
「それでも止めてみせる!!俺はこの世界を、大切な人たちを守る!!」

ストロンガーが構えると同時に、プレシアの手から雷撃が迸る。

「ウオオオオォォォォォ」

雷撃に拳が叩き込まれ、ストロンガーのアースを伝い、地面に流れる。

「貴方になにが分かる。あの子は私の全てだった」
「分かるさ。俺だって取り戻したい愛する人の記憶がある」


(そう、この人は似ている。彼らに)
ライダー達のバトルロワイアル。そこのいた2人の男に。


俺は/俺は
助けたかった/守りたかった
彼女を/妹を
だから戦った/だから戦わせた
しかし
一人の男によって
迷った/狂った

秋山 蓮、神崎 士郎。

「だからこそ、俺はあんたを断罪するつもりも許すつもりもない。ただ、俺は知りたい。あんたの願いの強さを。知って欲しい、俺の願いの強さを」

突き出された拳を広げ、さらにプレシアに向け伸ばす。

「戦おう、プレシア・テスタロッサ。なのはちゃ…白い魔導師は言葉にしなければ伝わらないこともあると言っていた。だが、俺達の願いは、想いは言葉にしても伝わらない。だから、戦おう。あんたは魔法に、俺は拳に互いの想いと願いを込めて。俺とあんたは戦いあうことでしか理解しあえない」


その言葉を聞き、少しずつプレシアの顔が変化していく。憤怒から驚愕へ、驚愕から歓喜へ。
(そうだ。やっと分かった。私は知って欲しかったんだ。誰かに、私がどれほどアリシアのことを想っているか)
胸のうちの黒いものが明るいものに追いやられていく。

「アハッ、アハハハハハハハ。いいわ、いいわよ、仮面ライダー。分からしてあげる。私のアリシアへの想いを」
「いくぞ、大魔導師プレシア・テスタロッサ」
「来なさい、仮面ライダーストロンガー」

言葉とともにストロンガーが高く飛び上がる。

そのまま、宙返りしながら電気を発し、蹴りの体勢に入る。

「電キィーーーック!!」
「ハッ!」

プレシアが前方にプロテクションを張り、受け止める。蹴りと盾がバチバチと放電しながら鬩ぎあう。プレシアの杖に魔力が集中し、盾とぶつかり静止している、ストロンガーへ向けられ、

「喰らいなさい」

なのはに負けない大きさの砲撃が加えられる。咄嗟に宙返りでよけるが、着地すると同時に周りに現れる光弾。

「貴方にはどうやら雷気はきかないようね。フォトンランサー・ファランクスシフト」
フェイトと違い、ほとんど詠唱なしで放ってくる。

「くっ、磁力扇風機!!」
ストロンガーが手を前に突き出すと、向かってくる光弾があらぬ方向に飛んでいく。


磁力扇風機はストロンガーの防御技の一つである。突き出した腕より、強力な磁力線の渦を発生させることで敵の攻撃を弾く技である。


「次はこっちの番だ。エレクトロファイヤー!」
地面を伝い、高圧電流がプレシアに迫る。
プレシアはそれを舞うように上へ避ける。予測し、同じく飛び上がるストロンガー。

「電パァーーーンチ!!」
「はあああぁぁぁぁ!!」

上空で交錯する拳と杖。部屋全体に互いの攻撃による雷が落ちる。
そのまま杖と拳を交えながら

「どうしたの?仮面ライダー。その程度じゃ私は止まらないわよ」
「そっちこそ、その程度じゃ人を甦らすなんて夢のまた夢だぜ」

空中で言葉をぶつけ合う。二人とも言葉には険が無く、まるで長年の友人とお茶でも飲みながら、会話の間に不意に出てきた皮肉の様である。ストロンガーの繰り出す拳を杖の前に極小のシールドを張りながらプレシアが受け流す。


「ライダー返し!!」
「くっ」
プレシアの服を掴み、下に投げつける。しかし、クルリと空中で回転し着地。

「フォトンバレット!!」
「ぐおお!」

落ちてくるストロンガーに向って圧縮した魔力での爆破攻撃を放つ。咄嗟にガードしたが、爆発の余波によって後ろに飛ばされる。


「どうかしら?私の攻撃は」
「ああ、かなり効くな。人間にここまでダメージをくらわされたのは久しぶりだ」
「そぉ、なら遠慮せずにもっとくらいなさい」

そう言って、プレシアはフォトンバレットを連続で放つ。

「悪いが、これ以上傷つくって帰ると、弟子とメイドさんに怒られるんで、早々当たってやれないな」

空中に飛び上がり体を独楽のように回転させる。何発かフォトンバレットが当たるが無視して突っ込む。

「ウルトラパァーーンチ!!」
「プロテクション!!ぐううう…」

遠心力で加速した電パンチがプレシアの防御とぶつかり、今度はプレシアのほうを後ろに飛ばす。



最初に対した時とは真逆の位置に立つ。
つまり、ストロンガーの後ろにはアリシアが入ったカプセルが浮かんでいる。

「この子がアリシアか?フェイトにそっくりだな」
「かわいいでしょ。私の自慢の娘よ」

完全に娘自慢をする親馬鹿にしか見えない。

「何で彼女を生き返らせようと思った?フェイトと静かに暮らしていたんだろ」
「さぁ、よく思い出せないわ。そんなことより、続きを…」

ズゴォォォォォォォォォ!!!
「母さん!!」
ストロンガーとプレシアの戦いの余波で崩れかけた壁を砕きながら、ライダーマシンとそれに乗ったフェイトとアルフ、リニス、おまけでクロノが突入してくる。クロノはボロボロである。愛用のS2Uではなく量産型のストレージデバイスを使ったためだろう。


プレシアは振り向かない。ずっとこちらを見ている。その眼には狂気はない。

「…何しに来たの。消えなさい。あなたに用はないわ」

フェイトはまっすぐな視線で振り向かない母に語りかける。

「あなたに言いたいことがあって来ました。…私はアリシア・テスタロッサではありません。あなたの作った人形なのかもしれません。だけど、私は…フェイト・テスタロッサはあなたに生み出され、あなたに育てられた、あなたの娘です」

それでも振り向かず、ストロンガーに目を向けている。ストロンガーには、その姿が泣いているように見えた。


「待たせたわね、ストロンガー。続きをしましょうか」
「母さん。…私は」

まだ何か言おうとするフェイトを無視し、ストロンガーとプレシアがぶつかる。発生した雷撃が其処彼処を打ち砕く。

「最後まで聞いてやれよ。泣きそうだからって誤魔化すのはどうかと思うぜ」
「うるさいわね。浮気せず私だけを見ていなさい。そろそろ決めるわよ」

立ち位置が変わり、左右に飛んで離れる。

「見せてあげるわ。これが私の全力よ。…カートリッジロード!!」
力強い言葉と共に杖の一部が動き、薬莢のようなものを排出する。と同時にプレシアが咳き込み、床を血で濡らす。

「母さん!!」
吐血をみて、フェイトが悲鳴じみた声を上げる。
「馬鹿な!カートリッジシステムだと。自殺行為だ」
やっと喋れるだけ回復したのかクロノが叫ぶ。

「いくわよ。…プラズマスマッシャー!!」
雷撃を伴う砲撃がストロンガーに迫る。
「ウオオオオォォォォォ」
最初同様、拳を突き付けるが、
(電気だけじゃない!!純粋なエネルギーの放出による破壊か)

電気は全てアースを伝い逃げてゆく。しかし、放出されたエネルギーは拳一つで受け止められているのだ。

数秒の拮抗。少しずつストロンガーの足もとが削られ、

「グアアアアァァァァァァ」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

砲撃に飲まれる。未だ続く砲撃は後ろの壁を飲み込み、庭園の一部を飲み込み、形そのものを変える。


「ハァハァハァ…どう?ストロンガー。これが私の力よ。これで私はあの頃を取り戻す。」

あまりの大威力に呆けていたがプレシアの言葉で我に返り、後ろからクロノが叫ぶ。

「世界はいつだってこんなはずじゃ無かった事ばかりだよ!昔からいつだって、誰だってそうなんだ!」
「そうね。でも、それでも、それが分かっていても止められないのが人の意志よ、坊や。…あなたはこれさえ否定せず、ただ止めるんでしょ。仮面ライダー」
「えっ?」

煙の中、人影が少しずつ近づいてくる。角が半分折れ、体中傷だらけ。しかし、ストロンガーはしっかりした足取りでこちらに近づいてくる。

「ゲフッ、ゴホッゴホ。…ああ。…あんたの本気は見せてもらった。こっからは俺も本気だ…チャージアップ!!」

飛び上がり、右手が突き上げられると同時に胸のSが回転する。体中が発光し、それが鎮まると、胸に白いラインが入り、銀の角をもった戦士が現れた。

「超電急降下パンチ!!!」
急降下しながら、プレシアに3発のパンチを浴びせる。2発は防がれたが、最後の一発は杖に大きな罅を入れる。

「かっこいいわね。惚れそうよ」
「そりゃどうも。悪いけど1分しか持たないんで次で決めるぞ」
「こっちもカートリッジは残り1発。いくわよ」

静寂。時空が崩壊する音がするはずなのに、この空間だけは静寂に包まれている。

「トウ」
ストロンガーが飛び上がり、空中で大の字で回転する。
「超電…」
稲妻を伴い、蹴りの態勢に入る。この技はストロンガーの最強技、
「稲妻キィーーーーック!!!」

迎え撃つプレシア。カートリッジがロードされる。
杖の周りに幾つもの環状の魔法陣が現れる。
「プラズマァ…」
大きく広がった足元の魔法陣が収縮していき、
「ブレイカァーーーーー!!!」
一気に放出される。



激突。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴッゴゴッゴゴ

圧倒的な2つの力がぶつかり合い、時空震の余震以上の揺れを起こす。2つの力のぶつかり合いは、その余波だけで魔力に換算すればSクラスを優に超えている。ちなみにこの映像を見て、解析を行ったエイミィが目を回して気絶した。

この衝撃は、いくらSクラス魔導師のリンディ・ハラオウンでも止められず、ついに崩壊が始まる。

幸い、プレシアがストロンガーとの戦いに集中しており、暴走も大したことはなかったが、それでも時空の崩壊は始った。

最初は誰も気づかなかった。目の前のあまりにも大きな力のぶつかり合いに目を奪われ、足もとの揺れもその余波によるものだと思っていた。

まず気がついたのはクロノ。ノイズの入ったアースラからの通信で、完全には聞き取れないものの異変が起きていることを察知する。

次に気がついたのはプレシア。元々、彼女が起こそうとしていた時空震である。しかし、それより規模の小さい、しかも突発的なものだと知り、愕然とするがストロンガーへの攻撃は続行する。


異変は進行する。


次に、気がついたのはストロンガーだった。上空から見ると、地面の所々に罅が入っている。これほどの攻撃の打ち合いなのだから当然と言えば当然だが、その罅の向こうは妖しく闇が蠢いていた。魔法関係者なら、それが虚数空間だと理解できたが、残念ながらストロンガーにその知識はない。


そして、ついに…



突然、足もとが陥没、もしくは隆起する。

クロノは事前の通信で何が起きても大丈夫なように体勢を整えていた。そのため、咄嗟にバックステップをし、安全圏に逃れた。

プレシアは他に比べ圧倒的ともいえる経験から、すぐに魔法をキャンセル。途中で戦いが中断されたことに苛立ちを感じながら、何が起きてもいいように構える。

ストロンガーも同様に技をキャンセル。ライダーマシン(カブトロー)に乗り、安全を確保する。


「フェイトォォォォ!!」
アルフの悲痛な叫びに全ての瞳がそちらに向く。

偶然だった。全く警戒していない、フェイトの真下で、陥没でもなく隆起でもない、崩壊が起きたのは。

「あっ」

完全に呆けた顔でフェイトが落ちようとしている。

全員の感覚がスローモーションになる。

クロノは飛行魔法を組もうとするが、本来の自分のデバイスではないせいか、中々発動せず、目の前には大きく虚数空間が口をあけているため飛び出せない。

リニスとアルフは陥没や隆起に足を取られ進めない。

ストロンガーは空中でカブトローだったのが原因で動けない。カブトローはライダーマシンの中では珍しい飛行能力、空中移動能力を完全に持たないタイプのものである。


なので、

このタイミングで、

動けたものは、

唯一人。


「フェイトォォォォ!」

さすがと言うべきか、やはりと言うべきか、フェイト以上の移動速度でフェイトの落ちようとしている虚数空間へ突入。フェイトの手を掴み、外へ放り投げる。しかし、

「ガッ、ゴホッ、グッ」

すでにその体には自分を支える力は無く、

そのまま、闇の中へと落ちてゆく。


「母さん?母さーーーーーーーん!!」

フェイトの悲痛な声が響く。




あとがき
どうも、作者のGです。なんか書いてたら、妙に長くなったので一度、ここで切ります。後編ももう少し続きます。

さて、今回は補足をたくさんしないといけません。

テスタロッサ家の事情
かなり改変しています。具体的に言うとフェイトの過去。リニスの生存。プレシアの性格。フェイトさんは愛されてる様にしました。プレシアさんの豹変の理由は後編で書きます。(もうこう書いた時点で感のいい人はきづいてるのかな)。プレシアの魔法はAs時のフェイトのものを流用しました。

仮面ライダーオーディンについて
一応、オーディンは公式では神崎ではなく代行人ということになっていますが、単なる他人がなぜ神崎の言いなりになるのかが明確ではないので、今作では何らかの方法で神崎の意思を纏わせられた傀儡(人)ということにしています。

プレシアさんの戦闘力
本編で明確に表されていないので自己設定です。STSまでで、彼女と同じ大魔導師が1人も出ていないので、大体SSをオーバーしているぐらいと考えました。書いてて気付いたんですが、彼女、全盛期ならデルザーにも負けないのではと思えるほど強くしてしまいました。
ちなみに自己設定の戦力図
プレシア>リンディ>高町士郎>恭也>>>越えられない壁>>クロノ・・・・・
てのが現在の状態です。士郎さんが合成改造人間とタメ張るぐらいだと思ってください。


寝不足ハイテンションで書き上げたため、おかしな点が多いと思いますが、優しい目でGを見守ってください。後編は少し短くなるかも。







アリシア復活     YES?NO?

実はどちらのプロットも用意してあったりします。後編に復活したときどのようなことが起きるかを書き、プロローグでどうにかしたいと考えています。作者的には復活OK。

どうでもいいけど、クライマックスヒーローズに昭和ライダーは出るのか?それが問題だ。

意見を貰い、少し戦力図を修正。さすがに士郎さんとデルザーはないか。でも斬は鉄を切り裂き(ライダーチョップと同レベル)、神速はたぶんアマゾンより速いのでは?この時点で橘さんや滝も殺せないショッカー初期の改造人間達よりは強いだろうと考えます。



[7853] 第11話(後編)
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/06/26 09:22
Side 雄介

ゾクッ!!

プレシアが落ちていく。目の端でアリシアの入ったカプセルとJSが落ちていくのも見える。こんなとこに落ちれば暴走してようが関係ないだろう。


それより、なんだ、この寒気?落ちていくプレシアを見た。今更、人が落ちていく光景が怖いわけではない。

わからない。俺の中の何かが、まだ終わりじゃないと叫んでいる。この終わりを納得して無い自分とライダー達の記憶が、俺の行動を決定する。


ライダーマシンごと闇の中に突っ込む。

後ろで何か叫び声が聞こえるが関係ない。



第11話(後編)

闇の中、と言っても完全に暗いわけではない。カブトローの光、ストロンガーの瞳で電磁波を見れば人を見つけるのなど訳はない。

カブトローはクルーザーへ変身させ、落ちて行ったアリシアとJSを捜させに行く。

俺はプレシアに並び、落ちていく。互いに真っ逆さまである。

「おい、プレシア。いつまで寝てるんだ。起きろ」
「…あら、ストロンガー。あなたも落ちたの?間抜けね」
「…お前を追って来ただけだ。断じて落ちたわけではない。あのままじゃ納得できなかったんでな」
「…傲慢ね。全てがあなたの納得いくように終わるわけではないわ」

うれしそうにククッと笑う。とても晴れやかな笑顔。周りが闇に包まれているのに、そこだけは輝いているようだ。
先ほどの寒気の原因は…分からない。

「なぁ、プレシア」
「はい?」
「話そうぜ。互いのことを。もう戦うのは面倒だろ」
「そうね。まず、何から話しましょうか」




会話は続く。




「プレシア」
「ん?何かしら?」
「あんたがどうしようもなく親馬鹿なのは理解できた」

はっきり言って話した内容の80%は娘のアリシアとフェイトの自慢である。

「それなのに、どうしてフェイトにあんな仕打ちをしたんだ?」
「…分らないわ。あの日、私はアリシアへの未練を断ち切るため、フェイト達とアリシアのお葬式をしようと思った。そのためフェイトに真実を話そうと。でも、アリシアを見ているうちに…何か黒い感情のようなものがあふれてきて。後は、あなたに会うまで夢現の状態で…」

贖罪のように少しずつ語っていく。先ほどまでの笑顔はなりをひそめ、声には悲しみが、表情には後悔が浮かんでいく。目に溜まる涙は上に流れる。


何かのスイッチが入った気がした。





『ストロンガー、離れろ!!』

突然のキングストーンの言葉に、落ちながら何とか体を移動させる。

その瞬間、プレシアの体から黒い煙のようなものが噴出する。
ゾクッ!!
これだ。俺の感じた寒気の正体は!!

「バカな、何でお前がここにいる!!…







                      大首領!!」

この気配。間違いなく、連なる世界で常に対峙してきたもの。寒気が止まらなくて当然だ。ライダーが生まれた理由。ライダーにされた理由。全てはこいつにあるのだから。

プレシアの体から完全に力が抜け、落ちる速度が加速する。

「ッ!クルーザー!!」

クルーザーが戻ってくる。しっかり後ろにアリシアのカプセルとJSを積んでいる。うまく回り込みプレシアをキャッチするが、

「避けろ!!」

黒い煙、大首領はその一部をクルーザーに向ける。俺の声に応えクルーザーは何とか、その攻撃をかいくぐるが、その反動でJSのいくつかが零れ落ちる。

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!

叫び声とともに零れ落ちたJSに煙が集約されていく。

『来るぞ!!』

キングストーンの声とともに激しい衝撃が体を貫く。否、ただ目の前にそいつが現れただけで、まるで攻撃を食らったかのように感じただけだ。

目の前には黒い影、いや、あの姿は…

「アマテラス…だと…!?…!グハッ!」

一瞬、その姿がぶれ、真横に蹴り飛ばされる。こいつ、ZXと同じフォログラムの能力を。まずい、ストロンガーじゃ空中では対応しきれない。

そのまま空中でいいように蹴られる。蹴り上げられ、横に蹴り飛ばされ、蹴り落とされ。
さっきのフォログラムだけじゃない。こいつ、魔法陣による短距離ワープまでやってやがる。

蹴り落とされた俺をライダーマシン、いつの間に変わったのかサイドバッシャーになっている、(この大きさならプレシアとアリシアも乗せられる)、がキャッチし距離をとる。周りに材料がないのに無理やり変わったせいか、装甲がもろく、俺がぶつかったところに大きな罅が入っている。

「あいつは何?」
『B26暗黒星雲の精神生命体だ。一説には悪霊のエネルギーの塊とも寄生虫とも言われているが。JSのエネルギーを利用し実体化したか』

意識を取り戻したが、すでに命の灯が消えようとしているプレシア。キングストーンが返答しているが、分かってはいないだろう。

『プレシア、お前は操られていたのだ。あの忌々しい生き物に』
「ああ、プレシア。お前は間違いなくアリシアとフェイトの母親だよ。あいつに操られながら、世界征服じゃなくてアリシアの復活に力を注ぎ、失敗したフェイトを殺さなかったのだから」

あの生命体、B26暗黒星雲の奴らは地球侵略を目標としている。理由は分からないが連なる世界では計10回以上奴らは秘密組織を作り世界征服を画策している。しかも、どの組織も冷酷非道で「失敗には死を」なんてことがざらである。

「でも、私はフェイトを殺そうと…」
「あの遠距離からの雷撃のことか?あの攻撃は両方とも高電圧だったが、電流は限りなく低かった。あれでは人は死なない。おそらく、無意識のうちにフェイトへの攻撃を拒否した結果だろう」

実際、あの電撃を受けた俺は大したダメージを受けなかった。それに比べ突入した時に食らった電撃は相当の威力だった。こっちを受けたら普通は死ぬだろう。

俺の言葉を受けても瞳の涙は消えない。その瞳には見覚えがある。秘密組織によって人生を狂わされた者の瞳だ。かつて、ライダー達も同じ瞳をしていたのだろう。

「?…なぜ貴方が泣いてるの?」
「別に泣いてない。プレシア、よく見てな。あいつボコボコにして仇を取ってやるから」
「…」

プレシアからの返答はない。また気を失ったか。

「行くぞ、キングストーン」
『…ああ。ライダーとして奴を生かしておくことはできない。』



そう、プレシアの涙を見た瞬間、1つの扉が開いた。この力で彼女の涙を止める。


右腕を上に、左腕を下にして右側に両手を伸ばす。
「変…」
右腕を下ろしつつ、反時計回りに左手を動かす。
「…身!!」
左手を腰に、右手を左上に伸ばす。

体の中のスイッチが入る。

赤いマスクに緑の複眼、ライダーには珍しい左右非対称のボディー。

「仮面ライダーZXッ!!」



『なるほど、ZXか。プレシアの涙が扉を開いたか』
「キングストーン、残ったJSのエネルギーを吸えるだけ吸え」
『少し時間がかかるぞ。1分以内に何とかしよう』

仮面ライダーZX。その体はバダンの大首領JUDOと素材、質量、精密さから歪みまで全く同じに作られている。実際、違うのはわずかに残した脳と絶対的なエネルギー量の差だけだ。今の段階じゃ全力も数秒しか持たないだろう。しかし、ストロンガーの時に食らった怪我は大半が修復された。


「ハアアアァァァ」

足の裏のジェットエンジンでアマテラスにとびかかる。同時にアマテラスも同時に拳を振るう。

「ZXパァーーーンチ」

ぶつかり合う。わずかな拮抗ののち、アマテラスの腕が弾け飛ぶ。なんだ、こいつ。いくらなんでも脆すぎ…

「何っ!!」

砕いた腕が目の前で、一瞬で再生した。今度は小さな魔法陣が形成され、そこに手が突っ込まれる。

いやな予感が走り、咄嗟に首をひねると、頭のあったところに鋭い爪のついた手が通り過ぎた。

また、短距離ワープか。後ろに回り込まれ蹴り飛ばされる。くそ、ZXの第三の目でもこれじゃ追い切れない。




また、先程のように空中で蹴り続けられる。致命傷になる爪での攻撃は、回避してるが、こちらも山勘が頼りなので確実とはいえない。

何度か蹴り飛ばされてる間にわかったことがある。

「やっと捕まえたぜ、こんちくしょう」

こいつは実体がなく実戦経験がないせいか、攻撃がすごく単調である。短距離ワープによる攻撃も真正面に来ることはなく真横も5回に1回ぐらいで、大半は真後ろからである。

だから、俺もZXの虚像投影装置を利用し、奴に後ろと正面を逆に見せ、真正面から攻撃を受けることで、足を捕まえた。ついでに、

「衝撃集中爆弾だ!食らっとけ」

衝撃集中爆弾はZXの電波によって威力と爆発の方向を自由に変更できる。両膝に付いていて、爆発しても膝へのダメージは無い。

爆発の角度を調節し、腕を消し飛ばす。


『ZX!吸収完了だ』
「ウオオオオオオォォォォォォォォ!!!」

ポーズを取ると同時に全身が赤く発光する。その光を見て、危険を感じ取ったのか、魔法陣を広げ逃げようとするが、

「逃がすかよ。マイクロチェーーーン!!」

両腕から鉤爪のついた鎖が飛び出し、アマテラスに巻きつく。そして、一気にぶん投げる。

逆さまに投げられたアマテラスに向って、十字手裏剣を連続で投げる。手裏剣は狙いを誤らず、両足を切り飛ばす。

さらに、こちらに引っ張り、
「電磁ナイフッ!!」
胴体を袈裟がけに切り飛ばす。


そうしてる間に最初に吹き飛ばした両手が再生してくる。
『ZX。こいつはJSによって実体化した。エネルギーが尽きるまで再生するぞ』
「なら、再生できなくなるまで砕く!!ウオオオオオオオオ!!!」

連続でZXパンチを叩き込む。このZXパンチは単なるパンチである。しかし、パーフェクトサイボーグ仮面ライダーZXが放つとその一撃一撃が必殺の威力となる。なぜなら、ZXは全身のサーボモーターによりパワーは全仮面ライダー中10指の中に入っているのだ。

余談だが単純なパワー最強はクウガのアルティメットフォームである。

そんな一撃を、しかも赤く発光した全力でのものを連続で叩き込まれたのだから、当然、アマテラスは再生したそばから叩き壊され、再生が追い付かなくなっていく。


『ZX、そいつを使ってこの空間を脱出するぞ』
「何?」
『かつて大首領JUDOがアマテラスの体を使って牢獄から脱出したように、その体を破壊してここを脱出する。なに、本物のアマテラスよりエネルギー総量は少ないが我々の脱出するぐらいの穴は開くだろう』
「わかった。ライダーマシン、しっかりついて来てくれよ」

ライトで返事を返すライダーマシン。いい子だ。

アマテラスを牽引しながら少し飛び、ジェットを切り、慣性でアマテラスの背に足をつける。

さらに、ひときわ赤く発光し、
「ZX、キィーーーーーック!!!」

心臓のあたり、おそらくJSがあるところを蹴り壊す。




そして、世界が割れる。





「ぶふぇ、げふぉごふぉ」
飛び出した瞬間、砂に突っ込んだ。変身も解けてる。無理しすぎたか?時刻は夜、辺りは真っ暗。

『…ここは鳥取砂丘か。少々海鳴から離れているな。いや、元の世界に戻れただけマシか』
「くそ、地獄サンダーを思い出したぜ」
『さっきまでの姿から考えるとジゴクロイドのほうが合っていると思うが』

キングストーンの言うとおり、V3が受けたアマテラスの爆発に比べれば、どうと言うことはなかった。V3とZXの防御力の差や、あの時のV3の怪我のせいもあるが。というより…

「思ったより弱かったな。プレシアのほうが数倍強かった」
『ああ、自力で実体化も出来ないような奴だ。単体の実力なんてあんなもんだろ』

しかし、それでも、あれじゃあ特殊能力を抜くとデルザーにも劣るぞ。…くそ。あの程度の奴のせいでプレシアは、

「そうだ!プレシアは…ライダーマシン、どこだ!」

後ろのほうでブンブン音がする。どうやらライダーマシンは頭から砂に突っ込んでしまったらしい。抜け出そうとアクセルを吹かしているが後輪が浮いてるので空回りしている。


投げ出されるようにしてライダーマシンの前方にプレシアは仰向けで横たわっていた。

「おい、プレシア。まだ生きてるか?」
「…仮面ライダーかしら?それが本当の姿?結構美形ね」

雄介はオバサマハンターの称号を手に入れた。

頭を一発殴る。

「?…どうしたの?」
「いや、なんでもない」

とりあえずプレシアの病状を診るが、残念ながら今の段階では手の施しようがないのが分かるだけだった。急いで帰って適切な処置をしなければ。とりあえず、薬草を数個、ライダーマシンから取り出し、飲ませる。

「…すまん」
「えっ?…ああ、いいのよ。貴方のおかげで最後は正気に戻れたんだから」

少しだけ苦しそうな息は静かになる。しかし、これも一時的な効果しかない。

「きゃっ!!ちょっと…」

プレシアを抱き上げ、ライダーマシン(サイドバッシャー)のサイドカーに乗せる。アリシアも同じく乗せ、ライダーマシンを撫でる。

「今回はかなり無理させちまったな」

ライトとエンジン音で答えてくれる。本当にいい子になった。



ライダーマシンを走らせ、夜道を行く。

「どこに向かっているの?」
「俺の仲間のところだ。…なぁ、プレシア。まだアリシアを生き返したいか?」
「…分からないわ。会いたい気持ちはあるけど、頭では無理だと分かっているから」


プレシアと戦っているときから、ずっと考えていた事がある。あとでもう一度考えよう。問題の先送りかもしれないが、今は無心でバイクを走らせる。



答えは出さなければならない。せめてプレシアが生きている間に。




あとがき
どうも、作者のGです。つい先日、古本屋でSAGAを見つけ、大喜びしました。

ラスボスを倒して現れた真ラスボス、でもラスボスより弱いし短いという罠。ZX無双が書きたかった。後悔はしていない。

アマテラスについて
スピリットとTVスペシャル編を混ぜてみました。スピリットで今後戦っても改訂はしません。こいつはオリジナルのアマテラス(偽)です。
自分はリリカル無印本編を見ているとき、プレシアさんから黒い影が出てきたとき、普通にZXのラスボスか、と思いました。そんな妄想を今回、文にしてみましたが、皆さんに叩かれないか非常に不安です。

2つに分けたので短めですが、書きたいことは書けました。後はエピローグのみです。アリシアについてですが、皆さんの意見でも復活OKだったので復活させます。

終わったら、数回の短編、外伝を挟んでAsにいきます。


オマケ
アマテラス(偽)
B26暗黒星雲の生物。不定形。JSを使ってやっと実体化、空間転移が出来るようになる雑魚。実体化した造形はアマテラスの真っ黒バージョン。プレシアより弱いが、プレシアの心の隙を突いて侵入、操るがプレシアの力に負け大切な部分には手が出せなかった。

オリジナルなんてこれで最後にしたい。まぁ、半オリジナルだけど。

短編、平成だしていいですか?出すネタと出さないネタどっちがいいですか?



[7853] エピローグ
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/04 08:53
「結局、あの後ベッドから出ることはなかったな」

雨が傘を打つ。向こうでは3人の人影が墓に両手を合わせている。

プレシアとアリシアを連れ帰ってから五日目。ついに昨日未明にプレシアの命の炎は燃え尽きた。

あの後、細かく診断したところ、プレシアは例の大首領モドキに魔力や生命力を食い荒らされ、肉体的にも精神的にも限界だった。厄介なことに、それで病魔がさらに拍車をかけたらしい。魔法は完全に門外漢である俺には手の出しようが無かった。

何とか薬で命をつなげたが、それも限界を迎えた。

「俺は…彼女を救いたかった…」
「自分一人で全てが救えると考えるのは傲慢だろう。少なくともお前は彼女の心を救ったんだ。それを誇りに思え」


結局、俺に出来たことなんて、彼女と戦って、少しだけ命を延ばして…


「とりあえず、あの子がこっちに来る前に涙を拭いておけ。あの子の悲しみを深めたくないならな」

恭也さんが去っていく。…俺って泣けたんだな。

「厳しいなぁ。なぁ、キングストーン」

俺の呼びかけに答える声は無い。



そのすぐ後に3人の人がこちらに来る。ファリンさんとすずかちゃん、そして…

「ユウスケ」

眼を赤くしたアリシアがいた。


エピローグ

答えを出したのはプレシアを連れてきた次の日。診察し、治せないことが分かった時。

俺は…どうすべきなのだろう。アリシアを生き返らせる。それ自体は決して不可能じゃない。しかし、それは彼女を人外にすることと同意である。

今までライダーを改造してきた博士達はこんなことを感じていたのだろうか?少なくとも1号と2号は自分達を救ってくれた青年を死なせたくなくて改造手術を行っていた。記憶から、それが分かる。気になるのは他の博士達だ。

緑川博士。
神博士。
バゴー。
志度博士。
一条博士。

いずれも望まずライダーを作らされた、もしくは作らざるを得なかった博士だ。バゴーは博士ではなく呪術師だが。

俺の行動は彼女を「救う」ことになるのか。幼い少女を地獄のような運命に引きずり込むだけではないのか。それでは、否定してきた管理局と同類ではないのか。



永遠に続くかと思われた思考のループ。それを打ち切ったのはファリンさんだった。

俺は考えをまとめる為、月村家の庭でナイフを振っていた。ZXの武装、電磁ナイフである。伸縮自在で最高で刀ぐらいの長さにまでなる。本来、手足のように使えるコレが今はまるで生きているかのように手につかない。

カランッ…

3度目に落としたときにファリンさんが声をかけてきた。

「危ないですよ、五代さん。心ここにあらずで刃物を持っちゃ。私もお姉様によく「集中しないで包丁を握るな」って怒られますから。…どうしたんですか?悩みなら聞きますよ」

…俺は、結局のところ、誰かに聞いてもらいたかったのだろう。

今までの事件の全容。
プレシアの病状。
そして、アリシアの蘇生について。

結構長く話していた。ファリンさんは聞き上手である。

「…でも、五代さんは、そのアリシアちゃんを無理矢理戦わせたり、ライダーとして生きる事を強制したりするつもりはないんですよね?」
「あ、ああ。子供を戦わせるなんて最悪だ。それだけは全力で避けたい」

大体、子供に武器を持たせ、戦場に送り込むなんて、やっている事はテロ組織と変わらない。テロを防ぐためにテロ組織と同じことをする。毒を持って毒を制すとでも考えているのだろうか?

「それなら問題は無いです。アリシアちゃんを助けましょう。死んでいるより生きていることのほうがきっと幸せだから。大丈夫です。ここにはすずかちゃんがいて、忍お嬢様と恭也さん、お姉様が、それに私がいます。きっと、みんなで助け合い支えあっていけます。それに、五代さんは助けたら、それでサヨウナラですか?」

…支えるか。そうだな、俺は嫌われるかもしれないが、それでも周りに事情を知ってくれている人が同じような境遇の人がいれば変わるかもしれない。ライダーだって仲間の存在に何度も助けられたんだ。


「…ありがとう、ファリンさん。考えがまとまった」
「どういたしまして」

ファリンさんが綺麗に一礼する。



**************************************

仮面ライダーの歴史で生き返った例は実はそんなに多くない。瀕死や仮死からの復活はかなり多いが。

1人はBlack。彼はシャドームーンによって一度殺されているが、クジラ怪人によって生き返っている。しかし、この方法は使えない。なぜなら、このとき使用した「命の水」はクジラ族の秘薬。この世界にクジラ族がいない以上手に入らない。

余談だが、そのためライドロンについても半分あきらめている。あれも秘薬の力を借りたからだ。一応、設計図は頭の中にあり、部品は作ってあるが。

2人目はJ。瀬川耕治がフォッグの攻撃によって絶命した際、地空人によって仮面ライダーJとして蘇生された。この蘇生術も使えない。だいたいJパワー、精霊の力についてもよくわからない。地空人がいるかどうかもわからないので彼らを頼ることもできない。

3人目、斬鬼。体が死んだ後、彼は生前に行った返魂の法によって復活している。これも却下。復活しても長時間生きられない、下手したら魂が永遠の闇にとらわれるなんて話にならない。

最後。これが最も可能性が高い。これを行うデメリットも大体抑えることができる。




アリシアのカプセルの前に立つ。

「キングストーン、頼む」
『ああ、しばしの別れだ。だが忘れるな、喋れないだけで我はいつでもお前と共にある』

言葉と共に光の一つがアリシアの体に吸い込まれていく。これで下地はできた。

次に、ベルトが現れ、そこから二つの光が飛び出す。二つの光は途中で二人の男の子に姿を変える。

アリシアに滑るように近づいていく。あと1mぐらいになったとき俺にほほ笑みかけ、そしてアリシアの中に入って行った。

与えたのはキングストーンの片方、月の石。そして光の力。

仮面ライダーアギト。その力を発現する光の力。その効果は凄まじく、手を触れず鉄を裂き、水や炎を自在に操り、未来を予見し、枯れた花を蘇らした。ライダーの力の中でも汎用性だけならば他を圧倒する力である。ほぼ同ランクにアマダムやキングストーン、Jパワー、インカの力などが存在する。

特に今回目をつけたのは、風谷 真魚の力である。彼女の力は死亡した仮面ライダーギルス、葦原 涼の復活に用いられている。そのことから鑑みて、光の力は強ければ完全な生命蘇生ができることを意味する。

しかし、まだ俺は完全にアギトの力を発現させてはいない。そのため、まずキングストーン、月の石をアリシアの中に入れた。俺自身がキングストーンと意思疎通ができなくなるが、彼が俺の中に残った太陽の石と反応し、内部から光の力を抜き出しアリシアの中へと導いた。

アリシアには復活の要素を持つギルスと最も強く力が発現したアギトの持っていた光の力を入れた。さすがに3つも光の力を入れるとどうなるか分からないので、アナザーアギトの力は入れないことにした。

そして、キングストーンはしばらくアリシアの中に留まり、アギトの力が暴走しないように抑えるそうだ。


急激に眠くなってきた。体内から3つの大きな力が抜け、その場で眠りそうだ。少しずつ瞼が閉じていく間、僅かにアリシアの体が動くのが見えた。



Side アリシア

何だろう?急に眼がさめた。私は…アリシア・テスタロッサ。大魔導師、プレシア・テスタロッサの娘で、え~と、なんだか大切なことを忘れているような。

まぁいいか。どこだろう?見たこともない場所。お母さんは?

え?なに?こっち?よくわからないけど、なんとなくこっちにお母さんがいる気がする。

アリシアは直感:Bを手に入れた。

あれ?何だろう。変な声が頭の中に。まぁいいか。気にしない気にしない。


しばらく歩いて行くと一つの扉が目に入る。あそこだ。ここまで誰にも会わなくてよかった。裸だったからカーテンを拝借したけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。それにカーテンをこんな風に使ったら怒られちゃう。


部屋に入るとお母さんがベットで寝ていた。お母さん、まだ外は明るいよ~、遊ぼうよ~

「お母さん、起きて~」
「…!!フェイト!!」
「??フェイトって誰?アリシアだよ、寝ぼけないでよ。お母さん」
「!!ア…アリシア?何で?どうして?」

?なんかお母さんが驚いてる。そうかと思ったら、次の瞬間、思いっきり抱きしめられた。




Side 雄介

俺の寝ている間にアリシアがプレシアに会っていた。

言葉に直すとそれだけなんだが、その間、月村家では大騒ぎになっていた。遺体が保存されていた場所で俺が倒れている。あったはずの遺体がない。カーテンは剝ぎ盗られ、ナメクジの這ったような跡が残っている。

はっきり言って完全にホラーである。

その後、しばらくしてプレシアのもとでアリシアが発見されるまで厳戒態勢、フル装備の恭也さんとノエルさんによる見回りが行われたらしい。



俺が覚醒したのは、発見から数時間後。事情を話したら、忍さんの黒いオーラと恭也さんの殺気、ノエルさんの冷たい目線にさらされた。…今度からは大事なことはしっかり話してから行動しよう。ん?前にも同じようなことを考えたような…。

プレシアはアリシアに今までのことをすべて話したらしい。
自分のしたこと。
フェイトのこと。
自分の寿命のこと。

俺がアリシアに会った時は、すでに泣きやんでいたのか、目を赤くしているだけだった。その後、アリシアに生き返らせた方法と事情を話した。泣かれると思ったが、

「えっ!!じゃあレアスキルが使えるようになるの?」

超能力についても人外になったこともアッサリ受け入れていた。あっれ~?
何でも向こうの世界では超能力のようなものをレアスキルと呼ぶらしい。人外についても一種の使い魔みたいなものだろうと言っていた。

俺が悩んでいたのが馬鹿らしいほどあっさり。むしろ、そのせいで落ち込んだ。



****************************************

その後、アリシアとプレシアは月村家に匿われ、静かに過ごしていた。期間として、わずか4日。それでも、この二人の笑顔は輝いていた。


しかし、その笑顔も、今、目の前では曇っている。無理に笑顔を作ろうとしている。

「ありがとう、ユウスケ。お母さんに会わせてくれて」



プレシアの今際の際に言ったセリフにかぶる。最期の時、俺はプレシアにあることを頼まれた。

『ありがとう五代 雄介。アリシアに会わせてくれて。…ねぇ、最後だから頼むけど、アリシアのことお願いね』

俺が頷くのを見てすっきりした顔になるプレシア。

『あと、心残りは…フェイトのことだけね。これを渡してくれるかしら』

一枚の手紙を渡される。これも頷き、俺は部屋を出る。…最期の時はアリシアと共に迎えるそうだ。

その数十分後、部屋から押し殺したような泣き声が静かに響いてきた。…ちょっとだけライダーの耳の良さが恨めしく思った。



時間を戻そう。今は車の中。月村家で簡易的だが葬式をし、海の見える丘にプレシアを埋葬した。何となくタックル、岬 ユリ子と重なって余計悲しい。その帰りの車の中である。

恭也さんの携帯が鳴り、

「…なのはが帰ってきたそうだ」

喜ぶべきか、悲しむべきかわからない報告をしてくれた。

もう1日早ければ…
そう思うのはわがままなのだろうか?

虚数空間でプレシアが言っていたように、ほんとに満足できる終わりなんてなかった。
ならせめて約束を果たそう。


****************************************

さらに数日後、ホッパーが反応した。改造して魔力を感知できるようにして正解だったか。

公園でなのはちゃんとフェイトが会っているらしい。近くには例の執務官と使い魔二人、フェレット君がいる。

「アリシア、多分これが最後のチャンスだ。…どうする?フェイトのもとに行くか?」
「…いい。私だって人体実験のサンプルなんか御免だよ。でも、一目みたいな。ユウスケ、行くなら連れてって」

急いでいるのでライダーマシンをスカイターボに変身させる。スカイライダーの愛車でその最高時速は全ライダーマシン最高クラスの1,200Km/h。さすがにそんな速さを街中で出すわけにはいかないが、それでもかなり早く着く。アリシアにも作っておいたゼクトルーパーのヘルメットをかぶせたのでかなりの速度が出せる。


場所はまたあの公園だった。高台から見下ろす。

「あれがフェイト…」

アリシアはゼクトルーパーヘルメットによる望遠機能で観察しているらしい。本物のゼクトルーパーヘルメットはそんな機能入っていないが、俺が改造して入れてみた。


なのはちゃんとフェイトが互いのリボンを交換している。そろそろ行くか。

「じゃあちょっと行って来るよ」
「は~い、早く帰ってきてね」


右手を握り、左手は開いて前に出す。
右手を腰に引き、
「スカイ…」
左手は円を描くように左上に、
「…変身!!」
スカイライダーになる。

いざというとき、アリシアを逃がすためバイクは置いていくため、スカイライダーに変身した。移動が一番楽なライダーである。


「セイリングジャーーンプ!!トウ!!」

腰の反重力装置を動かし、大きく跳び上がる。この装置を作動させることによってスカイライダーのジャンプ力は300mまで跳ね上がる。

飛ぶまでもなく、ひとっ跳びで目的の地点に着地する。向こうから見たら、いきなり空から降ってきたように見えるだろう。全員、いきなりの登場に驚いている。

「あなたは…?」

一番初めに立ち直ったのはフェイトだった。一番いろいろなライダーに会っているからか。

「スカイライダー…。…プレシアからの手紙だ」
「えっ!?か、母さんから!?」

俺はプレシアの手紙になにが書いてあるか、あらためてはいない。プレシアのことだからアリシアが不幸になることは書いていないだろうし、俺のことが書いてあっても、その可能性を考慮に入れて、なおプレシアに全てを話したんだ。後悔はない

「貴様、仮面ライダーか?何しに来た?」

今更、執務官が動き出す。ああ、めんどくさい。アルフは睨んでいるが動こうとせず、リニスとフェレット君は笑顔で手を振るだけ。

「待ちなさい、クロノ。失礼しました、あなたも仮面ライダーですか?」

さらにめんどくさい艦長さんがスクリーンに顔を出す。今回、フェイト以外と話すつもりはない。完全に無視を決め込む。どうせ帰るやつらだしもう会うことはないだろう。嫌われようと知ったことではない。

「…母さんは…ついこの間まで…生きていたんですか?」
「…ああ。しばらくは生きていたが、先日、亡くなった」
「馬鹿な、虚数空間に落ちたのに…。まさか貴様ら、あそこから…」

本当に外野がうるさい。俺はフェイトに一枚の地図を渡す。

「これは…?」
「プレシアの墓の位置だ。自由になったら行くといい」

そのまま、背を向けて、
「セイリングジャンプ!!」
さっさと飛んで帰る。アリシアとも途中で合流しよう。スカイターボに電波を送る

「!!エイミィ、追跡を」
「はい、ってえぇぇ!!!時速推定800Km/h!!無理無理、無理です…あっ、振り切られました」




「帰ろう、アリシア」
「うん!!」


バイクに乗って走り去る。後ろには確かな温もりを感じる。


亡くしたもの。
手に入れたもの。
教えたこと。
知ったこと。

今回の事件でたくさんのことが起きた。
その終幕が望むものでなくとも俺は歩き続ける。
誰になんと言われようとも、
どんな状況でも、
なにがこれから起きようとも、
俺は何度でもこの道を歩み続ける。
俺自身がそうありたいと願ったから。

この仮面ライダーという道を歩み続ける。







第一部 リリカル×仮面ライダー 改め 魔法少女リリカルなのは Road to KamenRider


あとがき
どうも、作者のGです。とりあえず第一部完です。時間がかかったのは今週ディケイドがやらなかったから…ではなく純粋に時間がなかったからです。

特に今回は言うことありません。ちょっと強引、ご都合主義と笑わば笑え、という勢いで書きました。アリシアのキャラが掴めない。ああああ早くSTSが書きてぇ。それとプレシアの病について一部修正しました。といっても一言付け加えただけですが。最後の締め方に悪戦苦闘。誰かもっといい締め方あったら教えてください。

全体を通して、大体を一人称で書きました。これは練習のためです。2部はもう少し三人称を用いて読みやすくしたいと思います。

巷ではライダーVS大ショッカーのネタバレが起きているらしいです。作者はなるべく見ないようにしています。

なんだかんだで1クールぐらいで書けたのでOK。急いで外伝、短編を書きます。



[7853] おまけ 劇場版予告編
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/05/25 00:29

ちょっとしたオマケ

予告編


「ここは…どのライダーの世界だ?」

現れる世界の破壊者。

「士君、ここでは時空管理局って所に勤めてるんですね」

行動を共にする女性。


「うおおおおぉぉぉぉ!!!」

唯一人、強大な敵に立ち向かうライダー。

「全てのライダーは管理局が管理する。我々にこそ正義がある」

歪んだ正義の組織。


「ふむ、君のファイナルフォームライドはきっと素晴らしいお宝になるよ。どうだい?僕のものになったら、彼女を助ける力をあげるよ?」

欲望のまま、宝を欲するもの。


傷つき倒れる仮面ライダー。周りに続々と現れる局員。


「彼女は人ではない。それでも助けるのか?」
「ああ、そんなこと関係ない。俺は彼女を救う」





「こいつは面白い奴だ。唯愚直なまでに一人を愛し、そのものの住む世界を守るために全てを投げ出すことが出来る。貴様ら管理局に仮面ライダーを名乗る資格はない。仮面ライダーの称号はこいつのような男にこそふさわしい」
「貴様、何者だ?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。変身!!」

《カメンライド ディケイド》

「俺は変わる。誰でもない、おれ自身として!変身!!」





今、全ライダーの力が一つに!
劇場版仮面ライダーディケイドand○○○(ここにはオリジナルの名を入れる)
―ライダーという名の称号―

20XX年公開予定








全部書き終わったら書こうかな?



[7853] 外伝 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/12 21:49
この話はV3からアマゾンになる前、つまり第6話のバイク開発のちょっと前ぐらいです。そのため、まだキングストーンはしゃべるし、すずかは対して鍛えてありません。半分ネタなので突っ込まれたらかなり困ります。


では、開幕。












「ふぅ、やっと完成した」

大きく伸びをする。外を見ると朝日が見える。貫徹してしまった。別に眠くはないが、疲れが抜けていない感じがする。

『思ったより時間がかかったな。…しかし作ったのはいいが使う機会があるのか?』
「…?…、…!!、…あの黒い少女を捕らえるために…」
『変身している間に逃げられるぞ。しかもライダーマシンの近くでないと右手がないだろう』

確かにヘルメットを作って変身したのはいいが、まさか右手がないとは思わなかった。555のアーマーの様に電送できるだろうが、それなら555のほうが強い。


「ま、まぁ、汎用性は高そうだから無駄にはならないだろう…たぶん」



その使用が思ったより早く訪れた話。



外伝  はやてのごとく

午前中、もしかしたら完全に時間の無駄をしたかもしれないことに打ちひしがれ、黙々と仕事をこなした。無駄かもしれないと考えると疲れが倍増するから不思議である。

「雄介、どうした?なんか疲れてるぞ」
「おやっさん。…実は頑張ってたことが無駄かもしれなくて」
「むぅ、雄介。人生において無駄なんてないぞ。どんな無駄なような行為でもいつかは意味を持つもんだ」

すごくいいことを言われた。おやっさんには立花のおやっさんの要素が入っているのか、と驚愕した。んな訳ないか。




体の疲れは精神的なものだったか、しばらくすればすっきり、快調。バリバリ働いてます。

「すいません、お雑煮カレー」
「はい、ただいま」

少し小太りな髪の逆立った人が注文してくる。続けて、次々とお雑煮カレーが注文される。白髪でサングラスを上げてる人、なんか貴族みたいな格好をした人、チャイナドレスを着ている女性、赤いマフラーをしてコインを弾いてる人、真後ろから声をかけたくせに振り向くなという女性、尖った帽子をかぶった白い人、その他大勢。

あっれ~、どっかで見たような?


カラ~ンカラ~ン

ドアについたベルの音で目が覚める。

どうやら疲れは予想以上だったらしい。時刻はもう少しでお昼。忙しくなる前に起きてよかった。



****************************************

しばらく経ち、俺はポレポレを出て、自転車で山のほうに向かっている。サイクロンもしくはハリケーン(偽)でもよかったが、さっき見たいに居眠りしそうなので自転車にした。

とりあえず、作ったものの実験である。むき出しだと、どう考えても怪しいので、バックにつめてある。

しかし、海鳴はとてもいいところだ。自然も多い、山有り、海有り、気候も温暖。…割と日本には多い土地だろうか。住んでる人も…一部を除いて普通でいい人達だ。いや、一部の人達だって悪い人じゃないよ。ただ、普通というところから頭一つ抜きん出ているだけだよ。


誰に言ってるんだ?俺。





たまには何も考えずサイクリングもいいものだ。気分が乗ってきた。すぐそこの海にはイルカが見える。


「イルカがいるぞ、たくさんいるぞ、そっそっそっそっそっ、そそそそそそそそ、蘇我イルカ」

ついつい、響鬼が作った替え歌を歌ってしまった。しかし、いい気分だ。



「五代さん」

ん?前方より高級外車、たぶんリムジンが接近中。車はよくわからん。運転しているのは鮫島さん。っと言うことはバニングス家の車か。

どうやらアリサちゃんとすずかちゃんの送迎らしい。窓からすずかちゃんが手を振っている。そのまま、静かに俺の横に止まる。中にはまるで反動がいかず、これなら紙コップいっぱいの水もこぼれないだろう。鮫島さん、素晴らしい運転テクですね。

「どこか行くんですか?」
「ちょっと、実験と特訓にね」

山のほうを指さしながら言うと、奥のアリサちゃんが反応する。

「特訓?なにかスポーツでもやってるの?」
「え~と、剣道、柔道、空手、合気道、赤心少林拳、ボクシング、キックボクシング、フェンシング、野球、サッカー、アメフト…」
「どこの最強の弟子よ!!?せめて格闘技ぐらい一つに絞りなさいよ!…すずか、あなたは何してるの?」

アリサちゃんと話してる間に後ろにすずかちゃんが乗っていた。はやっ、いつの間に。

「私、ついて行くから。鮫島さん、ありがとうございます。アリサちゃん、また明日ね」

手を振っている。アリサちゃんがふうとため息をつく。

「まったく、近頃なのはといい、すずかといい、よく分らないわねぇ。…まぁいいわ。それじゃあ、すずか。また明日」

鮫島さんが一礼し、車が走り出す。…まぁ、いいか。すずかちゃんなら見られて減るもんじゃないし。


「じゃあ、行こ…」

ドガシャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

真後ろから、とんでもなく大きな音がし振り向くと、砂煙の向こうから、いくつもの金属片が飛んでくるのが見える。ライダーの反射神経による反応。当然、すずかちゃんは反応していない。

「くっ!!」

持っていたバッグを投げ出し、すずかちゃんを抱えて跳ぶ。上からなら状況が見えてくる。

さっきまで一緒にいたベンツが別の車に突っ込まれてひっくり返っている。ぶつかった別の車から数人の男が出てきて、ベンツから金色の何かを引っ張り出している。

それを素早く正確に認識したのは俺ではなく、すずかちゃんだった。

「アリサちゃん!!」
「すず…!!」

男の一人がアリサちゃんの口を抑え、着地した俺達に拳銃を向けてくる。

タンッタンッ!!

サイレンサー付きの静かな銃声がする。すずかちゃんを抱えながら横に回転し、何とか避ける。
その隙に男達はアリサちゃんを車に押し込み、走り出す。

「アリサちゃん!!」
「待って、先に鮫島さんを!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

横転したベンツを無理矢理持ち上げ、すずかちゃんに鮫島さんを出してもらう。診察…中度の打撲、頭を強く打っており脳震盪を起こしている。むしろこの程度で済んでよかった。ベンツ特有の車体剛性のおかげと左ハンドルに対し右から車が突っ込んできたことが幸いした。

「すずかちゃん、俺は車を追いかける。警察と救急車を呼んで」
「私も一緒に…」
「だめだ。鮫島さんを一人にするわけにはいかないし、今の君じゃ足手まといにしかならない。…大丈夫、絶対助け出すから」

俺の言葉に泣き出しそうになっているすずかちゃんの頭を撫でる。ごめん。でも、急がなくちゃ。



サイクロンを呼んでいる暇はない。素早く自転車に乗り、バックからヘルメットを取り出す。

「…変身…」

頭にかぶると同時に体にスーツが現れ、右手が無くなる。バックからカセットアームを取り出し装着。

「ライダーマン」

常人の6倍のパワーでペダルを踏み込む。待ってろよ、誘拐犯ども。



Side アリサ

気付いたら車に乗せられていた。前方で運転席の男と助手席の男が「これで俺達も大金持ちだぜ」と笑い合っている。正直、むかつく。

意識がはっきりしないせいか、些細なことでもかなりむかついてきている。

「うるさいわね」
「お、起きやがったか」

横にもいた。影が薄くて分からなかった。

「悪いが人質になってもらうぜ。お前の両親を脅して身代金をたんまりと…「無理ね」ああっ、なんだと、コラ」
「理由は5つ。1つお前達がバカなこと。2つお前達がすごくバカなこと。3つはお前達が限りなくバカなこと。4つはお前達が宇宙革命的にバカなこと。そして5つ目が…」

つらつらと言い並べていくにつれ男達の顔が紅潮していく。あれ、やばいかな。でも、こんな奴らに弱みを見せたくない。

「てめぇ…いい度胸じゃ…」
「あと空気が汚れるから呼吸をやめてくれないかしら?環境破壊よ。もっと地球を大切にしなさい」
「あんまりなめた口利いてると痛い目見るぜ」
「だから呼吸をするなといっているでしょ、このハゲ」

話しかけてくる助手席のメガネと運転席のハゲを罵倒する。あ~れ~、意識が朦朧としているせいか勝手に言葉が出てくる。

ついに、怒りに身を任せ、助手席のメガネが身を乗り出してくる。その顔に蹴りを叩き込んでやったが、その足をつかまれた。

「それ以上近寄るな、馬鹿者。人を呼ぶわよ」
「バカはお前だ、小娘。こんな車の中で誰が助けに来る」

車内に男達の馬鹿笑いが響く。
冷静に考えればその通りだ。外を見れば、この車がかなりの速度で走っていることが分かる。しかし、私はこいつらに弱みを見せたくない。どうせ結果が変わらないのなら最後まで強がってやろう。

「あら、それはどうかしら?私みたいな美少女が助けを求めればヒーローが助けに来るかもしれないわよ?」
「はっ、だったら呼んでみろよ」

思いっきり叫んでやろう。こいつらの鼓膜が破れるくらい。

「誰かーーーーー、私を助けなさーーーーーーーーい!!!!!!」


言葉の終わりと同時に左窓が爆発。右手が突っ込まれてくる。

…マジ?



Side 雄介

追いついた。見失う心配はホッパーのおかげでなかったが、すでに自転車がガクガクである。やはりママチャリに6倍の力はまずかったか。

追いつくとほぼ同時に中からアリサちゃんの叫び声が聞こえた。

まずい。誘拐だから簡単には手を出さないと思ったが間違いだったか。…さては中の男達は真性のロリコンか!!早く助けなくては。

「はあぁぁぁ!!」

すぐに車と並走し、拳で窓をぶち破る。腰だめから一本のカートリッジを取り出し、右ひじに突っ込む。

「オペレーションアーム」

本来は機械を修復するなどの用途に用いるものだが、それ故に精密動作に適し、指も伸びるので対象をつかみやすい。

アリサちゃんを引っ張り出すと同時にガタガタだった自転車が分解し、投げ出されそうになる。体勢を整え、アリサちゃんを抱えながら足で滑る。

「誰よ?あんた」

まぁ、当然の反応だよな。
…ある意味開発すればだれでも使えるのだから教えてもいいか。

「俺だよ、俺。五代雄介」
「…雄介?なに、その格好は?」
「今大学で開発中のパワードスーツのプロトタイプ。使ったのは秘密でお願いね。今日はこれの実験をする予定だったんだよ」

おおよそ嘘は言ってない。Gシリーズの武装には一部転用してる(主にドリル)し、性能的にはG3のプロトと言ってもいい性能だ。ほかの人に知られたくないし、今日実験しようとしていたのも事実だ。

「へ~、結構すごいもの大学で作ってるのね」

緊張状態が解けたのか世間話をしていると、

「てめぇ何モンだ。そいつをこっちによこしな」

ナイフを持った沸点の低そうな男がこっちに突っ込んでくる。しかしナイフの使い方がなってない。ナイフは突き刺すものではなく、切るものだ。

「フン」
「なっ!くそ、この」

右手の人差し指と中指でナイフを白刃取りする。当然、ライダーマンの力で挟まれたナイフを一般人が動かせるわけない。なんとか奪おうとするがぴくりとも動かせない。

「ふう、ねぇ雄介。助けに来てくれたのなら、ついでにこいつら捕らえてくれない?背後関係を洗いたいんだけど」
「了解。じゃあお休み。このロリコン野郎」

いまだに頑張っている男の腹に蹴りを叩き込む。ライダーマンのキック力は他のライダーより弱いといっても一般人を悶絶、気絶させるぐらいの力はある。というより他のライダーでは一般人に手を出すには加減が難しすぎる。

今回のライダーマンの使用はベストチョイスだった。


一人がやられたのをみて、さらに車から二人の男が降りてくる。二人とも拳銃をこちらに向けている。

「ちょっと、大丈夫?さすがにあれは」
「では、少々お待ちを。お嬢様」

後ろにアリサちゃんを置き、前に進む。

「と、止まれ」

無視してずんずん進んでいくと、後ろのやつが撃ってきた。さっきすずかちゃんと一緒にいたときに発砲した奴である。こいつ、撃ち慣れているなぁ。心臓に向かってくるが避ける必要もない。

カツン!

「なっ!?」

ライダーマンの着ている防弾スーツは三層構造からなる多機能プロテクターである。上から機関銃も防ぐ防弾帯、筋力を増やす倍力帯、身体機能を調節し疲労を軽減させるメタボライザーで構成されている。これを突破するにはキバ一族の牙以上の破壊力が必要である。

「くそっ、おい、引くぞ」
「なに、折角のチャンスが…」
「逃がすと思うか。ネットアーム」

素早くカセットアームを変えていく。カセットアームは金属繊維性の磁力活性筋を備えた電気仕掛けの義手で、用途別にアタッチメントを変えることで攻撃や人命救助に用いることが出来る。弱点として変化に3秒間かかるが、それも相手の動きを読み次の動きを完全に予測する頭脳があればうまく短縮できる。例えるなら攻撃しながらボタンを押すカブトの動き。

「なっ!くそぉ…」

男二人がネットから出ようとするがよけい絡まっている。その間に最後の一人が逃げるため車を走らせようとしている。いい判断だが、相手が悪い。

「ロープアーム!ハッ」

車にカギ爪を引っかけ、牽引する。元々車3台を牽引する力があるロープアーム。車は後輪を空回りさせるだけで一向に進まない。

「くそっ、化け物め!!覚えてやがれ」

車を捨て、三流悪役のような台詞をはき捨て逃げようとする。残念、仮面ライダーからは逃げられない。

「これで終わり。マシンガンアーム」
「ちょっと、それじゃ死んじゃうんじゃ…」

ドキュゥゥゥゥンン!!

銃声と同時にアリサちゃんが目をつぶる。まぁ、子供には怖いかな。弾丸を受けた男は地面にへばりつき動けなくなっている。アリサちゃんがゆっくりと目をあけ、その光景に驚く。

「なに、あれ?」
「俺特性硬化ムース弾。空気に触れると数秒で硬くなって動きを封じる。…ふう、これで最後かな」

窓を破られた車、蹲って気絶している男、絡み合ったネット内でもがく男二人、道路に貼り付けにされた男。う~ん、地獄絵図…か?

キキーーーッ!!

いきなり後ろにいくつもの黒い車が止まり、黒服の男が現れる。M○B?。黒服たちはテキパキと男達を縛り上げ運んでいく。なにこれ?

黒服の男が一人、アリサちゃんに耳打ちしている。その後アリサちゃんの指示で撤収していく。この間わずか5分弱。

「BSS(バニングス・シークレット・サービス)よ」

月村家のロボット軍団並にわけが分からん。金持ちとはこういうものなのか?

「アリサちゃ~ん、五代さ~ん」
向こうから車に乗って、すずかちゃんが手をふりながら向かって来る。運転しているのはノエルさんか。
なんにせよ、一件落着、かな。





次の日の新聞には車の事故のことはあっても誘拐のことは載っていなかった。
その後、アリサちゃんの両親にお礼を言われ、謝礼として大量の研究資金が手に入った。

断っても、なんとしても渡そうとしてくる。数十分に及ぶ押し問答の末、結局受け取ることになった。その上で1つ頼まれごとをされた。


「雄介、ここはどうバイパスをつなげれば…」
「ああ、そこは左右のエネルギー効率から…」

アリサちゃんの家庭教師。なんでも俺の研究に興味を持ったらしい。っていうかこの子も超ハイスペック。なんでこの年で高等数学と物理学をマスターして、それどころかGシリーズの基礎理論に手を出せる?



すごいハイスペックな弟子2号を手に入れた話。そして、バニングス財団の子会社、通称バーニングレスキューが作られる8年前の物語。




あとがき
どうも、作者のGです。まず最初に・・・本当にごめんなさい。平成出すといっておきながら外伝一作目はライダーマンの話です。期待していた人、マジゴメンナサイ。

実は今回の話、骨組みだけは初期で完成していたのです。なぜここまで引っ張ったか…簡単に言うと、先を読まれたからです。読んだ人は分かるように、一部、ハヤテのごとくをパロっています。それを以前に読者の方に読まれてしまったため、そのことを忘れたころに載せようとここまで引っ張りました。外伝だから少し短め。その場のノリで書きました。

さて、W、ついに発表されましたね。広がり続ける仮面ライダーワールド。今度は左右非対称、二人合体変身。キカイダー+バロム2=仮面ライダーですね。分かります。


次こそは平成を…眠い。まずは一眠りしよう。




[7853] 幕間 
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/21 09:31
森の中。静かに立つ。周りの木々のざわめきを聞き、静かに潜む野生動物たちの息吹を感じ、天と地の温かみを受ける。そして、己の中にある力の一部を感じる。

キィィーーーーン…。

右手に持つ変身音叉、音角を左手に当て響かす。そのまま、額に持っていき、

ボワッ!!

額に鬼の紋章、鬼面が現れると同時に、体が紫の炎に包まれる。
その炎を右手で払いのける。

その身はすでに人ではなく、鬼になる。




「ふぅ、成功。吹っ飛ばされなくて良かった」

無事に響鬼に変身できてよかった。この変身は鍛えが足りないと鬼の力に押し負け吹っ飛ばされるからなぁ。

フォトンブラッドの研究の合間に音角を作っていたら、割とあっさりと完成してしまった。実験も済んだし、もう一つ試してみたいことがある。


キィィーーーーン…。

もう一度、音角を鳴らす。感覚はある。体の中のスイッチを切り替えるような感覚が。先程同様、額に持っていくが、今度は紫の炎ではなく、周りに花びらが舞う。

その舞い散る花びらを払う。

「成功。やっぱり、なれるか」

その姿は左右対称でマジョーラカラーだった響鬼から、左角が大きく赤と緑の派手なものに変わる。

「歌舞鬼、か」

あまり彼のことは好きではない。しかし、その心情も理解できるため嫌いになりきれない。だめだ。別のに変わろう。

そのまま、弾鬼、鋭鬼、剛鬼、凍鬼、煌鬼、西鬼、羽撃鬼に姿を変えていく。どれも音角であれば、体内のスイッチの入れ替えで変身できた。

次にバックから変身鬼笛、音笛を取り出し、吹く。

ピィィーーーー…。

風を纏い、それを縦に断ち切ると、今度は威吹鬼になる。勝鬼、戦鬼となり、音笛も正常に作用することを確認した。

しっかし、この変身はかなり消耗する。腹がかなり減ってきた。あとは弦のみだ。さっさと終わりにしよう。


変身鬼弦、音錠を手首にはめる。カバーをスライドさせ、現れた弦を弾く。

ビィィーーーーーン…。

体に雷が落下し、それによる土煙が晴れると轟鬼に変身が完了する。斬鬼、裁鬼、朱鬼に変わっていく。


「…はっ!何者だ!!」

朱鬼に変わった瞬間、後ろに気配を感じる。馬鹿な、この気配は魔化魍だと!?すぐに手元に音撃弦、鬼太樂(きたら)を召喚し構える。最後に朱鬼になっていてよかった。朱鬼は呪術を得意とし、鬼太樂はその呪術によって召喚する武器である。

茂みに対し、すぐに攻撃できる体勢で相手の出方を待つ。静かな緊張感が場を支配する。顔の汗は面によって垂れることはないが、背中を冷汗が伝う。朱鬼になるまで、まるで感じることのできなかった魔化魍の気配。こんな奴、私は知らない。

丸々、10分のにらみ合い。…動いた!!茂みが蠢く。私は弦に指をかけ、

「クゥウ~ン」
「はぁ!??」

一匹の狐が茂みから出てきた。
…念のためにディスクアニマルに茂みの中を探らせるが、すでに何もいない。…気のせいか。

ふぅ、少し気を張りすぎていたのかもしれない。こんな時はさっさと帰ろう。しかし、野生のキツネがいるとは海鳴の自然は素晴らしいな。

怖がらせてしまった狐に心の中で謝りながら、テントの中に入る。鬼へ変身すると体内からのエネルギーの放出によって服がなくなってしまう。着替えは常に用意していなくては。

そういえば、この世界に魔化魍は存在するのだろうか?大量発生のときは何者かの意思を感じるが、基本的に奴らは自然災害のようなものである。発生していてもおかしくはない。帰ったら調べてみるか。

などと考えながら変身を解き、








「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

静かな森に微妙に高い声が響いた。近くにいた狐はその声に驚き、茂みの中に消えていった。


間幕 響く朱い鬼 

Side ユーノ

どうも、ユーノ・スクライアです。ある時はかわいいマスコットのフェレット(?)、ある時は頼れる相棒、しかしてその正体はミッドチルダの魔導師、なユーノです。

只今、絶賛リンチを受けています。

あぁ、なんでこうなったんだろう。



事件が終わってから、10日後くらい。なのははいつも通り学校に行った。

「じゃあ行ってくるね。ユーノ君」
「キュイ」

門の前で手を振り見送った後、家の中に入る。今日はこの海鳴の街を探索してみようと思っている。今までは行動するときはほとんどなのはと一緒だったし、海鳴も来たときに上空から見ただけで、細かなところは全然知らない。それに、せっかく管理外世界にきたのだから固有の文化や遺跡、遺産を見たい。今日の目標は本屋、もしくは図書館を見つけ、文化や遺跡の情報を得よう。


「ユーノ君、ごはんよ」
「キュ~」

桃子さん、なのはのお母さんからお昼ご飯をもらう。だんだん、この食事の仕方、床に置かれたお皿から食べるのに慣れてきた。一般生活に戻れるか不安な今日この頃。

お昼を食べ終え、外に出ていく。さて、どっちに行こう?



とりあえず、適当に進んでみた。フェレット(?)の姿だから誰にも見咎められることもない。どうでもいいが、この姿、獣医さん曰く正確にはフェレットではないらしい。魔法を覚えた頃に適当に創造したものなので仕方がない。ほんとにどうでもいい話だけど。

今日はいい天気だなぁ。ハイキング日和だよぉ。何の気無しに右の路地裏に入ると、

キュピーン!!

どこからか殺気が!!きょろきょろと周りを見回す。いない。なにもいない。いったいどこから…

「にゃぁぁぁぁ!!」
「キュゥゥゥゥ!!」

いきなり上からから猫が襲いかかってくる。や・ば・い!!実は結構、なのはの友人、月村さんの家で猫に追われたことがトラウマになっている。冷汗が止まらない、震えて歯がガチガチ音を立てる。

速やかにまわれ右。全力ダッシュ! って、あらいやだ、追いかけてくるぅぅぅぅ~。


「にゃっ」
「キュウ」

猫の右フック。しゃがんでよける。

「にゃん」
「キュキュウ」

猫の左ジャブ。跳んでよける。


どこかわからない港のようなところまで逃げてきた。そんなとき天啓がひらめく。よく考えたら変身を解けばいいんじゃないか。

少し加速。距離をあけ、素早く印を切る。目の前で獲物が人間に変わった事に驚き、猫が逃げていく。



はぁ~疲れ…

「おい、坊主。てめぇ何モンだ」

チャキ、グリ

後頭部で金属音と何かを押し付けられる気配がする。ゆっくり後ろを振り向くと黒服の男たちがお金の入ったジュラルミンケースと白い粉の入ったジュラルミンケースを交換しようとしている。

あ! ヤのつく職業の皆さんですね。さようなら。

「待ちな、坊主。どうしますか? ボス」
「消せ」
「へい。坊主、運がなかったな」

猫よりやばい。死んだかな。ここまで密着されたらプロテクションも使えない。これならなのはの家でじっとしてればよかった。と死に瀕してるのに、むしろだからこそか冷静な思考になる。

ドンッ!!

銃声が響く。が、衝撃はなく後ろで金属を弾いた音がしたのみ。女性と武装した人たちが突入してくる。

「待ちなさい。香港国際警防隊よ。ギャング団「パッショーネ」、不法入国、麻薬密輸および殺人未遂で逮捕します。神妙にお縄につきなさい」
「やべぇ。ずらかるぞ」

今だ!! 一瞬の隙にもう一度フェレット(?)に変身し、その場を逃げきる。


そのあとも、自転車にひかれそうになるし、溝にはまるし、また猫に追いかけられるし散々だった。
もう帰ろう。
そう思って、家路につく。
人型に戻り、商店街を歩く。疲れてはいるが、肉体的ダメージはない。よかった、なのはに心配をかけなくて済む。

ガーー、ドガッ!!

「チッ!邪魔よ」
「ぐえ」

考え事をしていたのがいけなかったのか、店から飛び出してきた女性に激突された。身長差のせいで膝が胸に入った。その女性の後ろをすり抜けるように男性が駆け抜けていく。

もうヤダ。痛みを感じながら意識を失う。なんで今日はこんなに不幸なんだ?この世界でいう厄日なんだろうか?薄れゆく意識の中で、なんか赤い鬼と青い亀、黄色のクマと紫の龍がサムズアップしている幻覚が見えた。



その後、意識が戻ると書店で寝かせられていた。どうやら女性が飛び出してきたのはこの店らしく、万引き犯だったらしい。店長さんに感謝され、簡単な治療までしてくれた。後でしっかりした医者にかかったほうがいいと言われ、その場を後にした。…医者か。保険ないから高いだろうなぁ。




「見つけたぞ」

家に帰る途中、知らない青年に声をかけられた。だれだっけ?

「すいません。どなたでしたっけ?」
「しらばっくれるんじゃねぇよ」

いきなり殴られた。視界が横になりながら思い出す。そうだ、この人、さっきの万引き犯の後に出て行った男だ。共犯者だったのか。

うまい具合に顎に入り、脳が揺れる。横倒しの視界で、さらに何人かの男が集まってくる。なんか巻き舌でよく理解できないが、どうやら不良グループの自慢らしい。




冒頭に戻る。

リンチされながらも、危ない攻撃にはプロテクションを張っている。いくら管理局が一般人への魔法を禁止していてもこれくらいは許されるはず。それでも痛みでプロテクションの精度が下がってきた。


「貴様ら、なにをしている」

女の人の声が聞こえる。た、大変だ。攻撃の矛先が女性に行ってしまう。

「なんだよ。関係ねえ奴は引っ込んでろ」

男の一人が殴りかかる。危ないと思った次の瞬間、殴りかかった男が宙を舞っていた。他の男達も目を見開き動きが固まる。

「大丈夫か?少年」

男達の間を抜け、助け起こされた。ここでようやく助けてくれた女性の顔が見えた。
なぜか男物の服を着た、すごい美人さんだった。年はたぶん10代後半から20代前半ぐらい。黒い髪をなびかせ、まるでモデルのように体の均整がとれている。きれいな黒い瞳がこちらを覗きこんでくる。そんな美人にまっすぐ見られたのだから、当然、顔が赤くなるのを感じる。顔、近い、近いですから!

「てめぇ」
「危ない!」

後ろから男が殴りかかってくる。しかし、その拳を振りむかずに受ける。

「大の男が、自分より弱いもの、ましてや子供に手を出すとは」

ゆっくりと立ち上がり、そのまま後ろの男に回し蹴りが入る。
その後は一方的な展開。男たちは起きては女性に向かっていき吹っ飛ばされ、起きてはふっ飛ばされの連続。だんだん男たちの動きが緩慢になり、最後には立ち上がるのがやっとになっていた。

「ちくしょう、覚えていやがれ」

テンプレートなやられ役のセリフを吐き、男たちが逃げていく。この女の人、信じられないほど強い。まるで魔法のようにという比喩表現がぴたりと当てはまるような戦い方だった。普通、女性が男性を2m以上投げ飛ばすことができるだろうか。それこそ魔法がひつようなのではないか。僕はそんな光景を目の当たりにして呆然としていた。

「鍛えが足りないな」
「えっ!」
「それじゃあな、少年」

バイクに乗って、敬礼から指を振るようなしぐさをし、女性は走り去って行った。




…かっこいい。

その後、なのはが探しに来てくれるまで、僕はその場で呆けていた。顔の紅潮はまだ引かない。

あっ、そういえば名前を聞き忘れた。




Side 雄介(?)

「それでそんな姿なんだぁ。あははははは」
「そうなんですよぉ。あはははははは」

忍さんと笑いあいながらお茶をしている。傍目から見ると女性二人が優雅にお茶を飲んでいるように見えるそうだ(ノエル談)。

そう、今の私は女性である。朱鬼から変身を解くと、胸があり、大切なものがなくなっていた。その衝撃は一瞬、犯人に撃たれた刑事が憑依したかのごとく。

この変化はおそらく朱鬼に変身したせいだと思う。女性のライダーに変身したことにより体内の女性の因子が外に出てきたのではないかと。…このような体の変化に対する予測はほとんどキングストーンまかせだったので、なんともいえないが。まぁ、男のライダーに変身すれば元に戻るだろう。

ついでに帰ってくるとき、いじめを見たので懲らしめると、いじめられていたのはフェレット君だった。魔法を使えば切り抜けられるだろうに。…安易に異能に頼らないのは評価に値する。

「でも美人ねぇ。嫉妬するわ。化粧まで完璧だし」
「そっちは生業にしている記憶があったんで」

月村家に来ると、さっそくノエルさんに確保された。ライダーマシンで自分が五代 雄介であることを証明したら、そのまま服と化粧道具を用意された。なんでも素材がいいのにもったいないそうだ。服を着るのに別に羞恥心がわかなかったし、化粧も風間の記憶を頼りに完璧にできたと思う。

「それで、アリシアは…」
「お待たせしましたぁ」

メイド姿で髪を短くしたアリシアがクッキーをトレイに乗せ、こちらに運んでくる。

「ありがとう、アリシアちゃん」
「ごめんね、アリシア。もう少ししたら外に出れるようにするから」
「いいよ、え~と、ユウスケ? ここは広くて猫さんもいっぱいいるし、みんな優しいし。このメイドの仕事も楽しいよ」

アリシアも私が女性になっていることに困惑しているらしい。ここしばらく、アリシアは月村家でお世話になっている。時々、私がバイクで連れ出すことがあっても、外で顔をさらすと管理局に見つかりかねないので常にフルフェイスのヘルメットを着けなければならない。アリシアが顔を出せるのは現在、月村家とポレポレのみだ。月村家はセキュリティーが万全だし、ポレポレに来る時は常に私が気を張っている。ある一定の距離には不審物は近づけないし、遠方なら髪型が違えばそう簡単にわかるものではないだろうという考えだ。


実はこの考えは大きく間違っている。管理局の技術力を持ってすれば遠方からでもアリシアだと認識できるし、それは建物内でも関係ない。ならばなぜアリシアは発見されていないのか。それは管理局が現在、魔力計測による探索を行っているからである。雄介自身すっかり忘れているが、ライダーマシンの動力にはJSが用いられている。そのことを管理局は知らないため、あと1つ、この海鳴のどこかにJSがあるのではと考え、その魔力を感知するためにそちらに注力し目視での捜索は行っていないのである。もっともJSはアマダムに取り込まれ、魔力は完全に変換されるため発見される可能性は皆無。アマダムを近距離から透かしてみない限りJSは発見できないだろう。艦長のリンディ・ハラオウンは最後の1つは仮面ライダーによってすでに破壊されたのではないかと考えている。当たらずとも遠からずである。

閑話休題。

「それで今回は?」
「はい、日本各地の行方不明者数とその地の現在の気温と湿度、天気が知りたいんですが」
「そのようなことでしたら、すぐに用意できますが」

相変わらずノエルさんは優秀である。ほんの数十分で情報が集まってきた。

「アリシア、手伝って。近頃、行方不明者が多い…10名以上出たところをピックアップして、そこの気温と湿度、天気を横に書き出していって」
「は~い」

ピックアップされたのは富士山周辺の樹海、東尋坊、東京都新宿、秩父山麓、屋久島。この中で富士樹海と東尋坊は除外。元々、自殺の名所だし、別にいきなり増えたりはしていない。新宿と秩父は…気温も湿度も例年と変わらず、条件は整わない。屋久島、気温15℃、湿度70%。…ツチグモの生育環境にドンピシャである。

「忍さん、この世界で妖怪って言ったらなにを想像しますか?」
「妖怪? そうねぇ、河童とか鬼とか、一反木綿、ぬらりひょん、ネコマタ、マイナーどころでアズキトギ、ツチグモかしら」

魔化魍は伝承の中で妖怪として形を残している場合が多い。ツチグモがいる可能性が俄然高くなった。しかし、ぬらりひょんとアズキトギって会ったことないなぁ。

聞く限り、そんなに多くの名前は出てこない。調べてもらうと、ヌリカベやウブメ、その他多くの魔化魍を思わせる妖怪の話がこの世界に存在しない。響鬼の世界に比べ、魔化魍の出現が少ないのだろうか?

行ってみるか、屋久島に。そこで調べてみよう。ついでに響鬼の武装に必要なものも手に入れたい。




ちなみに帰ってきたすずかちゃんとファリンさんが私の姿を見て唖然とした後、ひどく落ち込んでいた。綺麗すぎるとか、負けた、女の威厳がなどと言っていたがそこら辺は忍さんやノエルさんのようにうまく流してほしかった。落ち込まれると非常に心苦しい。


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No Side

ユーノは今日も街を歩いている。といっても目的は、昨日と大きく異なり、昨日助けてくれた女性の発見である。お礼も言いたいし、何よりもう一度会いたいという感情が強かったためである。昨日のような不幸に見舞われることもなく平穏無事だが、目的の女性を見つけることが出来ない。

(やっぱり、バイクに乗ってたし遠くから来た人なのかな?)

探し始めてから2時間、半ばあきらめかけていると、前方のスーパーから女の子が飛び出してくる。

キキーーーーーーッ!!!

女の子が車道に飛び出すと同時に車の急制動をかける音が響く。ユーノも周りの人たち同様、とっさに動くことができなかった。全員の時間がスローモーションになる。

全員が女の子が轢かれると思った瞬間、一人だけスローモーションの中を動いた。女の子を抱き上げ、車が突っ込む寸前、反対の車道に飛び込む。


時間が通常に流れ出す。


スーパーから母親らしき人が出てきて、しきりに礼を言っている。ユーノにはそのお礼そのものは聞こえなかった。しかし、それに対する男のセリフと仕草ははっきり見て取れた。

「鍛えてますから」

言葉と同時に、敬礼から指を振るしぐさ。それはユーノが探している人物につながるものだった。

(彼なら何か知っているかも)


彼をつけると、バイクに乗り、走り出そうとしている。
フェレットに変身し、大きな荷物に紛れ込んだ。
この人どこかであった?それに隣の女性は…




揺れの質が変わる。船かな?荷物からとび出る。


Side 雄介

やってきました、屋久島に。ライダーマシンで数時間、フェリーでさらに数時間。
なんだかんだ言って、体のほうは別のライダーに変身したら戻った。ということは女性ライダーに変身するたびに、あの姿になるのか。

「さて、まずは北側からだ。いきますか」
「「はい」」

すずかちゃんとファリンさんがついてきた。本当は危険だからついてきて欲しくなかったんだが。突っぱねると、無理にでもついてきそうだったので、それなら目に入るところにいたほうが守れるからなぁ。ちなみにアリシアはお留守番。頬を膨らませ抗議してきたが、こればかりは仕方ない。本人もちゃんと分かっている様だし。ちゃんとお土産を買っていってあげよう。

まずは霊木を手に入れよう。ついでに歩きながらディスクアニマルを放つ。

「霊木って何ですか?」
「ここは霊地だから、はえてる樹は全部霊木になるんだ。響鬼はここの杉が最もなじむって言ってた」

そして、それを手に入れに来て明日夢と会った。運命の出会い…だったんだろう。どんな未来を選んでも出会いは人を成長させる。俺にはここで明日夢のような運命の出会いが待っているのだろうか。


しばらく歩くが、どうもいい枝が見つからない。木を傷つけるのは犯罪だし、霊地に対して失礼である。出来れば土埋木、台風で倒れた木や昔に伐採された木の枝がいいんだが。

すでに鬼石は作ったので霊木を見つければ、すぐにでも音撃棒が作れる。あれがないことには魔化魍に遭遇しても清めの音撃が叩き込めない。ツチグモには朱鬼の鬼太樂じゃ相性が悪すぎるからなぁ。

弦の鬼は基本的に表皮の硬い魔化魍を相手にすることを基本とする。弦の鬼は武装が大きいため、遠距離主体、素早く動くなどの特性や大量に出る夏の魔化魍には相性が悪い。朱鬼の鬼太樂は確かに他に比べ小さいし遠距離攻撃も出来るが、それでも両手を使わなければ使えないので、こちらの動きを糸で封じてくるツチグモとの相性は悪い。




(すずかちゃん。きづいてる?)
(はい、後ろですよね)

さっきから後ろから気配がする。山に入ってから二時間。ずっと追いかけてきたことから偶然ではないだろう。管理局かな?…それはないか。仕方ないなぁ、ディスクアニマルを数体残して振り切るか。

「ファリンさん。ちょっと」
「は~い、何ですか」
「よっと!」
「きゃ!」

目線が一瞬、きれたのを感じ、ファリンさんを抱き上げ、全力で走り出す。変身していないが、それでも一般人より圧倒的に速い。すずかちゃんもしっかりついてきている。鍛えてますから。

きっと追ってきたものには一瞬で消えたように感じるだろう。何者かは知らないが、あまり危険なところまでついてこられたら迷惑だ。





手ごろな枝を数本見繕う。ディスクアニマルも何体か帰ってくるが魔化魍は見つからない。やっぱりいないのか?行方不明者は偶然か?

ピューーーーィィィィィィ

アカネタカの一匹が降りてくる。あれは…さっきの不審者、もとい追跡者につけておいたもの。手元にディスクの形で戻ってくる。…まずい、向こうに出たのか。

ファリンさんをまた抱き上げる。

「急ぐぞ」
「「はい!!」」




アカネタカの誘導で現場に飛び込む。
金髪の子が糸でグルグル巻きにされ、巨大なクモの口へと導かれていく。
放っておいたルリオオカミとリョクオオザルが糸に絡まってもがいている。

「っ! すずか!!」
「はい!いって、アカネタカ」

すずかちゃんが俺の声に答え、すぐさまディスクアニマルを放つ。案内役のアカネタカがすぐさま牽制、すずかちゃんの放ったアカネタカが羽の刃で糸の切断にかかる。

こうなってしまったら、相性がどうのいっている場合ではない。

ファリンさんをおろし、被害者の横に飛び込む。…息はある。…この子、昨日助けた管理局のフェレット少年か。気絶している。少年をファリンさんの方に投げ、

「すずか。二人を守って、さがれ」
「はい」

手首の変身鬼弦を開き弾く。

ビィィィィーーーーーーンン

赤い稲妻が降り注ぐ。
炎に包まれ、その姿が、




仮面ライダー朱鬼へと変わる。





あとがき
どうも、作者のGです。暴走しました。TSやっちゃいました。しかも、いい気になって前後編になってしまいました。いくらでも批判してください。

さて、前半ですが、TSさせました。以前、女性ライダーはどうした?との感想があったのでこうしました。見た目は若い朱鬼とファムを足して二で割った感じで。ユーノに不幸属性を追加。特に意味はありません。出会ったマフィアは幽波紋を使いません。麻薬取引の現場をみる、と考えたときにこの組織しか出てこなかっただけです。

後半。響鬼の第一話がモチーフです。ユーノが明日夢役。今後どうするかは未定。天然記念物の屋久島の杉をとるなと思った方。Wikiでみてください。適当ですが怒られたり、批判が着たら消します。特に物語の大筋には影響しないので。


余談ですが、作者は仮面ライダーで出てくる女性、特に女性ライダーの中でも朱鬼はかなり好きです。だからといって、これ以上、女性版主人公を使う機会はないですが。

髪を短くしたアリシア。イメージはD.C.Ⅱのさ○らさん(cv.魔王)。髪型と化粧を変えるだけで女性って仮面ライダーじゃなくても変身するよね。



とりあえず、これだけは言っておきたい。
スピリッツ復活!!スピリッツ復活!!スピリッツ復活!!!!!!!!!!!



[7853] 幕間 続き 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/21 14:10
Side ユーノ

意識が覚醒する。僕はどうして寝ている?ここは…テントの中か。スクライアの集落で使う大きなものではなく、キャンプなどに使う小さなテントの中。

「痛っ!」

頭と体に包帯が巻かれている。ケガ、いつしたっけ?

すこし、頭がクラクラするが立てない訳ではない。とりあえず、テントから出る。

外は夜明け前の海岸線。後ろには森が広がり、水平線の向こうから空が少しずつ赤くなってくる。

隣には色違いのテントがもうひとつ。中からは寝息が聞こえる。キャンプ用の椅子やたき火の跡。まさにキャンプ中の様相を呈している。

周りを見回しても、誰もいない。さらに遠くへ目を向けると、





そこに、その海岸線の岩場には僕が最も会いたかった人がいた。



幕間 清める音

Side 雄介(女)

夜明け前、目が覚める。隣の少年はまだ寝ているらしい。起こさないように静かにテントを出る。

今のうちに音撃棒を仕上げよう。

工具箱を持ち、岩場のほうに移動する。海からの風が気持ちいい。潮風で髪が傷むことなど私は気にしない。しかし、変身のたびにこの姿か。

きれいに磨き上げた霊木の枝に赤い塗装をしていく。ムラなく、きれいに、しっかりと。

色を塗りながら昨日のことを思い出す。




ツチグモの一撃が襲い掛かってくる。
なんとかその攻撃を避けていくが、攻撃を入れるタイミングがない。

「大きい…」

後ろですずかちゃんがツチグモの大きさに驚いている。私もその大きさに驚いていた。なぜなら、響鬼の世界のツチグモに比べ、かなり小さいのだ。

本来のツチグモは身の丈27尺、約8mである。しかし、目の前のツチグモはおよそ5m前後。大きさだけ見たらまだ未成熟な個体である。なのに、

「くそっ!!」

下に潜り込んでの攻撃を、上に糸でぶら下がることで回避される。そのままスタンピングのように落下してくるのを、前転で避ける。ツチグモの重さは1600貫、約6t。力に秀でているわけではない、むしろ鬼の中では非力な方である朱鬼では受け止められない。

速い。それにうまい。とてもこの速度と技巧は未成熟な固体のものではない。少なくとも、数年、下手をしたら十数年生きた個体である。それに未成熟な固体なら童子や姫が絶対に近くにいるはず。しかし、四方に放ったディスクアニマルは一向にその姿を見つけることが出来ない。いないのか?

体勢を整え、向かい合う。ツチグモはトラのような鳴き声で威嚇してくる。くそっ、ヨロイツチグモより厄介だ。いや、むしろヨロイツチグモだったら弦の鬼の専門。そっちのほうが楽だな。


しかたない。確実に機動力を削ぐ!!

振り下ろされる前足を避け、

「ハァァァ!!!」

その関節にカウンター気味に鬼爪を叩き込む。完全に断ち切ることはできなかったが、叫び声とともにツチグモが下がる。

鬼闘術・鬼爪。鬼闘術は鬼たちの基本戦闘術。さらに、

「はっ!!」

追い打ちで下に潜り込んでの雷撃拳を叩き込む。弦の鬼は撥の鬼に比べ、身体能力で劣る。しかも、朱鬼は遠距離、中距離が必殺の鬼。しかしその身には誰よりも濃密で莫大な戦闘経験があり、戦闘では近距離も難なくこなす。この程度、造作もない。


さらに連続で拳を叩きこむと、ツチグモの動きが鈍りだす。今だ! 一気に決める!狙いは先ほど雷撃拳を叩き込んだ場所。

「音撃奏・震天d…なっ!?」

音撃を叩き込もうとした瞬間、右腕が絡みとられる。腕をよく見ると、クモの糸が上へとつながっている。上を見上げると頭上に大きなクモの巣。その中にいくつか毛玉の様になっているものが見える。

そうか、これがやつの捕獲法か。

こいつは蜘蛛で言うと徘徊性。糸を出しながら樹上を徘徊し樹上には巣をつくり、地上に向け糸を垂らす。獲物が糸に触れたら、糸を引き寄せる。からみついた獲物がもがき、動かなくなったところを樹上の巣に持ち上げ捕食する。そんな方法である。

動き回っている間に糸に触れてしまったか。だが、この程度、

ピュゥゥゥゥゥゥゥゥ

口笛でアカネタカを呼び寄せ、糸を切らせる。その間に、ツチグモが穴を掘り地中に潜ろうとする。こいつ、地中にも適応しているのか!


「逃がすか!音撃奏・震天動地!!」

手にしたハープ型音撃弦・鬼太樂から金色の光がツチグモに向かって放たれる。
潜りきる寸前、その腹へ音撃、清めの音が叩き込まれる。

ズウゴォォォォォォォォォ

あたりに季節外れの落ち葉が舞う。




「終わり、ですか?」
「いや、逃げられた。おそらく、腹の一部を破壊したから、もう糸は出せないと思うけど」

弦の鬼では珍しく朱鬼は遠距離・中距離型。そのため攻撃は傷つけた場所、口などへのピンポイント攻撃でなければ一撃必殺とはならない。とっさに糸の射出口を狙ったが、糸に阻まれ、完全に当てることができず、一部破壊にとどまってしまった。

「一旦、森を出よう。今日はキャンプかな」
「はい」
「それより、五代さん。また声が…」

また、女性化か。
まぁ、かまわないけど。

「地中に潜行されたからアカネタカでは無理、ルリオオカミたちに探らせるけどスピードは手負いとはいえ向こうが上。全体を出して、島全域の森をカバーするよ。…おそらく糸を失って明日の朝までには獲物を求め動き出すはずだから」

テントを張り、少年の手当をする。頭部も軽度の裂傷、体に強く糸で拘束された痕以外大きな怪我はない。


すずかちゃんとファリンさんはもう一つのテントで寝ることになったが、二人が私と少年が同じテントを使うことに強硬な抗議をしてきた。別にそこまで警戒することないと思うんだが。








音撃棒に色を塗り終え、鬼石を取り付けたところで、後ろに気配を感じる。二人の気配じゃない。ということは、

「起きたか、少年」
「あ、その、はい」
「災難だったな。怪我のほうはどうだ?」
「だ、ダイジョブ、です。何からなにまでほんとに…」

あまりのどもりっぷりに笑いがこみ上げる。心なしか顔も紅潮している。

「緊張しすぎだ。私はそんなに怖い顔をしてるか?」
「い、いえ。とてもきれいだと思います」

ほんとに何をそこまで緊張しているのか。…一応、聞いておくか。

「それで、その怪我はどうしたんだい?」
「そうだ。えーと、なんだか馬鹿デカイ蜘蛛に襲われて…」
「でかい蜘蛛?突然変異か?」
「…そんなレベルではなかったと思いますけど…。そういえば、どうして僕はここに?」
「ああ、それは怪我をした君を発見して、治療した。夜の森は危険だからこっちに移動しただけだよ」
「…そう、ですか…。ありがとうございます」

私達のことは完全に見ていなかったらしい。記憶にないならそれに越したことはない。

少し考え込む少年。が、起きぬけ、しかも頭部の裂傷による出欠のため血が足りていないのだろう。フラリと倒れそうになる。まったく危なっかしい。

「おっと!」
「うひゃ!…その、あの、ありがとうございますぅ…」

とっさに体を支えてあげるが、体に力が入っていない。まだ寝ていたほうがいいだろう。テントへと運ぶ。顔も見るからに真っ赤だ。身長差で肩が貸せないので、お姫様抱っこになってしまっているが、まさか、これでプライドが傷つけてしまったか?



「そういえば…」
「ん?」

布団に入れてやり、とりあえず隣に座っていると、何かを思い出したように話しかけてくる。

「このまえ助けてくれたとき「鍛えてないな」って言ってましたよね?」
「ああ、あれか」
「あれは、やっぱり僕に対して言ったんですか?」

ああ、馬鹿にされたと思ったのかな? しっかり言うべきだな。

「あ~、正確には君だけでなくあの不良共にも言ったつもりなんだが。…そうだな、少年。君は「鍛える」とはどんなことだと思う?」
「…筋力をつけるとか、…技術を身につけるとかだと」
「50点。君に対しては当てはまるが、あの不良たちに対しては当てはまらない」

一般的な鍛えるとは今少年が言ったことであっている。しかし、あの時言ったのは鬼としての目線からである。

「少年、覚えておくといい。私達…私や仲間たちにとって「鍛える」とは体を鍛えることだけではない。「鍛える」って事は体だけでなく心も含まなければ意味がない」
「心を…鍛える…」
「そう、心を鍛えなければ、身につけた力は単なる暴力になる。心を鍛えなければ身につけた力は暴走する。暴力はそれ以上の力によって叩き潰され、暴走はそのまま破滅の道を突き進む。心を鍛えないで力を求めるものの末路なんてこんなものさ」
「……」

どうやら、少年はもう半分夢の中らしい。…ちょっとだけイタズラ。

「もし、君が迷い、鍛えたいと願ったなら、鬼…ヒビキの下に来い」

さて、彼は私(俺)までたどり着けるだろうか。

「今は、まだ、寝てなさい」



と、まぁ少年が完全に寝てから声をかける。

「すずかちゃん、いつまで覗いてるのかな?」

気配がテントから離れようとするが甘い。襟首をつまみあげ、目線を合わせる。

「で、どこから聞いてた?」
「え~、鍛えることの意味についてあたりから…」

襟を放すと頬を膨らませながら言う。何で怒っているかわからないが、怒り方が年相応でかわいらしい。

「だって…なんだかこの子のこと、ずいぶん気に入ってるみたいだったし、なんだかそのまま弟子にしそうだったし…」

少年の頬をつつきながらすずかちゃんがブツブツ言う。少年はうなされている。

気に入っている、か。少なくとも魔法関係者の中では一番安全だろう。フェイトは管理局に捕まっている以上、私の正体を知って、隠し通せるとは思えない。アルフなんて、フェイトの罪を軽くするためとかの取引材料に使いかねない。管理局そのものなんて論外。
…なのはちゃんは…下手をすると一番信用ならない。彼女は悪意を知らない。純粋すぎる。仲良くするためとかで平気でばらす気がしてならない。正体を知られたらそんな未来が来ることが容易に想像できる。

消去法的に安全なのはこの少年とリニスだろう。少年はどうやら管理局の裏を少し垣間見ているようだし、リニスはアルフのようにフェイト第一主義で安直な行動を取らないだろう…たぶん。








ワオッワオッワオッ!!

ファリンさんが起きて、朝食の準備中、ルリオオカミが帰還する。すぐさま、音を聞くと、

「見つけた! ファリンさん、後はよろしく。すずかちゃん、行くよ」
「「はい」」

ファリンさんが火打石を取り出し、カチッカチッと鳴らす。私とすずかちゃんはすぐに森に飛び込む。



Side ユーノ

再度、目が覚める。すでに横にあの人はいない。
あっ! また名前を聞き忘れた。

外に出ると女性、確か月村ってお屋敷のお手伝いさん、ファリンさんが朝食の準備をしていた。

「あっ、おはよう少年君」
「おはようございます。…ほかの人は?」
「五代さんとすずかちゃんなら森の中に入っていきましたよ~。うん、いい味」

料理を作りながら返答してくる。この人、まったく振り向かないけど、よく僕が出てきたこと分かったなぁ。

五代さん。…思い出した。温泉旅行に途中参加した人だ。…あれ?

「三人、だけですか?」
「? 今回、一緒に来たのは、五代さん、すずかちゃん、私の三人だけですよ」

…あの女の人は一体? もしかして夢? そうだよ。手がかりを求めてついてきたらその先にその人がいたなんて都合がよすぎるよ。…あ~あ、でも、いい夢だったなぁ。

はっ!! そんなことより、今、森の中へって言っていた。大変だ! あの蜘蛛がまだいるのに、そんなところに一般人が入ったら…。

すぐにバリアジャケットを展開し、森に飛び込む。せめて時間稼ぎくらい出来るはずだ。


「少年君、二人が帰ったら朝食なので…あら?」




No Side

森に入って、ユーノはとんでもない光景に驚愕する。

なぎ倒された樹木(推定樹齢50年以上)。切り裂かれた地面。一体此処でなにがあったのか。


ギュワワワワワワワァァァァァァァ!!!!

後ろを振り向いた瞬間、目の前にツチグモの牙が迫っていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「危ないっ!!」

横からの衝撃がユーノを押し倒す。その結果、ツチグモの牙は横から助けた少女、すずかの髪を数本、切り飛ばしただけに終わる。

「貴方は!! なにをしてるの!? 死にたいの!!?」
「僕は…」
「っ!! こっち、逃げるよ」

ユーノの答えを聞かず、その手を取り走り出す。はっきり言ってすずかとしては一般人、しかも自分と同年代の子供では足手まといである。一瞬、ここで自分が囮になり、逃がそうとも考えたが、すぐに一緒に逃げることを選択した。このツチグモは頭がいい。五代と引き離されて、しばらく戦ったことから感じたことはその一言に尽きる。さらに、時間を稼げば確実に五代が助けに来る。そう確信があったため、ここは相手の手を追撃のみにする逃走を選択した。

(なんだ、この子、めちゃくちゃ、足が、はやい)

手を引かれるユーノはほとんど引きずられる様に走っている。ユーノは発掘を生業とするスクライアの出身。体力は一般人より少しは高いだろうという自信があった。しかし、その自信は目の前を走るすずかによって完全に破壊され、本当に自分は鍛えが足りないのでは、と考えてしまう。

そんな二人の後ろからは、メキメキと木々をなぎ倒しながらツチグモが迫る。



逃げる二人。追うツチグモ。速度はさして変わらない。仮面ライダーによって鍛えられたすずかにとって、この追いかけ続けられる速度、逃げ切らず追いつかれずの速度を保つことは決して難しくなかった。

当然問題になるのはユーノである。魔力による肉体強化をしてもこの速度はギリギリで、さらに後ろから未知の化け物が追いかけてくる緊張感は確実に体力を蝕んでいた。

「「あっ!!」」

つないでいた手が離れ、二人ともバランスを崩す。といっても完全に転んだのはユーノだけで、すずかはすぐに立て直したが。

転んだユーノにツチグモの牙が迫る。咄嗟にすずかが覆いかぶさる様にユーノをかばう。気に入らない相手だろうと関係ない。化け物からヒトを守る。それこそがすずかにとって、ライダーの教えであり、己を鍛える目的であった。


すでにディスクアニマルは品切れ。防ごうにも武器は無く、ただその牙で刈り取られる命を、


「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


仮面ライダーが見捨てるはずは無い。




Side 雄介

崖のほうにツチグモを蹴り落とす。よかった、間に合ったか。


ルリオオカミの誘導で向かった先で、俺はツチグモの罠にかかってしまった。古典的な落とし穴。その中には、こいつが張っておき、それを回収したのであろう糸が大量に入っていた。

もう糸は出せないだろう、と油断していた。残念ながら地中で行動できるディスクアニマルはいない。何とか身をよじって、腰の変身音叉を抜く。

キィィィィィィィンーーーーー…

全身が炎に包まれ、糸が焼き切れる。

「はぁぁぁっ!!」

響鬼に変身し、穴から飛び出る。

すずかちゃんは?…樹が向こう側に倒されている! 向こうか!!

響鬼の足は1町(100m)を約3秒で走り抜ける。仮面ライダーの中でも速いほうである。

追いついたのは、すずかちゃんにツチグモの牙が向かう寸前。ふざけるな。貴様に大切な弟子を傷つけさせるか!!

「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

響鬼のライダーキック。必殺の威力は無いが、10666貫(約40t)の破壊力がある。
ツチグモを小さな岬のほうへ蹴り落とす。

「よくやった。後は任せろ」

すずかちゃんの頭を撫で、自分も岬のほうに降りる。





Side すずか

やっぱり助けに来てくれた。

分かっていたこと。それでもホッとし、目から涙がこぼれ体に震えが走る。

生きてる。怖かった。さまざまな感情が胸の内で暴れる。

これがライダーの世界。これが五代さんの進む道。恐怖も悲しみも怒りも全てその身に受けて、それでも進む道。今、私はやっとその入り口に立った事を実感した。

見なければ。最後まで。この戦いを。

ここからじゃ崖の下は見えない。涙を拭いて、立ち上がる。震える体に喝をいれ、移動する。

「ねぇ、ちょっと」

後ろからあいつが話しかけてくるが無視。助けたけど気に食わないのは変わらない。いきなり現れて私と同じ位置に入ってくるのが気に入らない。

少し上に登り、見下ろす形で仮面ライダーとツチグモの戦いを見る。
といっても、それはほとんど一方的なもの。

すでに腹の一部、足の半分を失ったツチグモは仮面ライダーの放つアッパー気味の拳によってひっくり返る。
その上に飛び乗り、音撃鼓『火炎鼓』をセット。両手に音撃棒『烈火』を持つ。

あれは今朝作っていたもの…。五代さんの言っていた音撃って一体?

次の瞬間、私に、周りに、森全体に、島全体に衝撃が走る。…いや、物理的な衝撃ではない。美しく、それでいて力強く響く音。人が作り、人ではないものが響かせる浄化の音が場を清めていく。これが音撃!これが鬼!

「あれは…」
「あれは鬼よ」

後ろに勝手についてきたあいつに誇らしげに言ってやる。本当は教えては駄目かもしれないけど。

私にも分かる。五代さんが打つ一つ一つの音が場を清めるのが。ツチグモは断末魔すら放てない。音撃により禍々しい気配がどんどん小さくなる。

「すごい」

いつまでも聴いていたいような美しい演奏は最後を迎える。大きく振り上げた両手が同時に打ち下ろされ、巨大な打撃音とともにツチグモが爆発。周りに木の葉を撒き散らしながら消滅する。



どれぐらい余韻に浸っていたのか。気付いたら仮面ライダーの姿は無く、アカネタカが舞い降りてきた。

どうやら五代さんは先に戻ってしまったらしい。そういえば鬼への変身後は服がなくなるって言ってたっけ。

「ねぇ、君。待ってよ」
「…なに?」

まだついてくる。いい加減、帰るか消えてくれればいいのに。

「どこに行くの?」
「帰るの。ファリンが朝食の用意をして待ってるだろうから」
「…さっきの、あれ、は何?」
「さっきから疑問ばかり。少しは自分で考えて。鍛えが足りないよ」

その言葉でそれっきり無言で歩く。少し言いすぎかな。でも謝らない。

森を抜けると、海岸では五代さんとファリンが朝食を用意して待っていた。



Side ユーノ

衝撃の場面から、その後は特に何もなし。彼女、確かすずか、は何か知ってそうだったけど何も話してくれなかった。3人はもう海鳴に帰るらしいので僕も帰りのフェリーに乗った(フェレットの姿で無賃乗船)。

人間の姿で海を見ながらたそがれる。

「ん? どうした、少年」

五代さんだ。

「ちょっと自信がなくなっちゃって。いろんな人に鍛えが足りないって言われて」
「…鍛えが足りないなら、さらに鍛えるだけだ。精進しろよ、少年」
「…僕の名前はユーノです」
「そうか。じゃあな、少年」

…最後まで名前で呼ばれなかった。それにしても、鍛えが足りないなら、さらに鍛えるだけ、か。

海鳴の港が見えてくる。


やってやるさ!!五代さんにも、すずかにも、そしてあの女の人にも認められるように鍛えてみせる!!







少しずつ見えてくる出会いをくれた町に新たな誓いを立て、少年は成長する。これはそんな話。




あとがき

どうも。作者のGです。なんか、もっと短編書きたいけどダラダラいきそうなので、次で短編終了です。さっさとAsに入ろう。

さて、

前半は朱鬼VSツチグモです。相性もあって倒しきれませんでした。まぁ響鬼ではよくあることです。TS主人公再登場。ちなみに主人公に男であるときと女であるときに性格の差はありません。基本的行動理念は子供に優しく。男のときと行動が変わらないため、女のときは大胆に見えるかも。…この話のユーノは淫獣ではなく、ラッキースケベ。

後半は響鬼VSツチグモ。といってもいつまでもダラダラ書くのはおかしいと思い、あっさり勝利させました。響鬼はSTSでもう一度出すのでこんなもんでいいだろうと思いました。

あきら風すずか、にしたかった。反省しても後悔は無い。ツンデレ?…デレたらユーノ(明日夢)とくっつく。もっちーのいない世界ではそうなってもおかしくない?ファンの逆鱗に触れそうで怖い。


設定
ツチグモ
響鬼の第1話に出てきたツチグモの縮小版。本編では触れていなかったが、この世界には童子と姫は存在しない。そのため、獲物を自分で捕らえるために、スピードアップ、パワーアップ、頭脳アップ、サイズダウンしている。基本的にはこの世界には数はいない。せいぜい3年に一匹出るか出ない程度。



[7853] 四方山話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/26 21:58
「さて、それじゃあ始めましょうか」

近未来的な会議室で緑色の髪の女性、リンディは皆が席に着いたことを確認し口を開く。ここはアースラ会議室。メンバーは艦長であるリンディ、執務官のクロノ、実質的副艦長の立場にあるエイミィ、保護または逮捕されたフェイト、アルフとリニス、映像のみでフェレット状態のユーノである。ちなみにこの会議の映像と音声は申請すれば艦内の誰でも視聴できるようになっていて、現在視聴率98%。当直以外はみんな見ており、当直もビデオに撮っている。皆、仮面ライダーについて興味津津である。

「はい。まずは捜索中のJSについてです」

エイミィの声に合わせ、モニターが展開される。そこに映るのは海鳴周辺の地図。いくつかの赤い光点と大きさの違う黄色い光点が映っている。

「赤が現在まで発見されたJSの場所。黄色が現在、魔力を感知した場所です。また黄色は大きさの違いによって魔力の大きさを示しています。御覧の通り、現在感知される魔力で最も大きいのは、なのはちゃんの魔力です」

一番大きな黄色の点にNanoha Takamatiのタグが付いている。

「やっぱり発見できないわね。ここまで発見されないってことは、やはり彼らが確保、もしくは破壊したと考えるべきかしら?」
「彼らの実力、性格から考えると、その可能性が最も高いと思います。ただ、フェイトの話から彼らは魔法文化についてほとんど知らないことが分かっているので、確保した可能性より破壊された可能性の方が高いかと」

『それについて話したいことがあるんですが…』

ユーノが声を上げる。

『以前、JSの反応があり、なのはと一緒に現場に向かった時、竜巻に巻き込まれ、現場に着いたころにはJSの反応が無くなっていたことがあったんです』
「…その時、破壊された可能性が高いわね」


中空に5枚のモニターが現れ、それぞれが話に出てきた彼ら、仮面ライダーV3、アマゾン、X、ストロンガー、スカイの姿が映る。

「現在、確認された謎の存在、通称『仮面ライダー』は5人。我々が接触したアマゾン、X、スカイ。フェイト、アルフが接触したV3。時の庭園でプレシアと闘い、虚数空間に身を投じたストロンガー。どれも高い戦闘力を有しています」

画面内でスカイ以外の4人が動き出す。V3の動きだけが不鮮明なのは、この映像がバルディッシュの映像であり、その時に破壊されかけたものをリニスが復元したためである。

「すごいわねぇ~。特にこのストロンガー。オーバーS確実のプレシア・テスタロッサと互角以上。私でも勝てるか分らないわね」

ストロンガーの映るモニターがピックアップされる。画面上ではプレシアの雷撃とストロンガーの雷撃がぶつかり合い、まるでアクション映画のワンシーンのような状況である。

ちなみにこれを見ているアースラ一般局員には等しく映画の様な感覚しかない。いくら陸よりランクが高い魔導師が多い海でも、オーバーSとさらにそれと互角に闘う者の決闘など、ほとんど見たことがない。

アースラ武装局員はいずれこんな化け物と闘わなければならないかも、と考えると冷や汗が止まらない。

「しかし、艦長。彼は虚数空間に沈みました」
「あら? でも虚数空間に落ちたはずのプレシアの手紙を届けに来たわよ」
「偽物に決まっています」
「それはありません。私が筆跡鑑定した結果、100%プレシア直筆です。フェイトの前で不用意な発言はしないでください」

クロノとリンディの会話にリニスが横やりを入れる。フェイトはクロノの偽物発言に下を向いてしまい、クロノは女性陣から冷たい目線にさらされる。局員の一部から「フェイトちゃんを泣かすな」という声が上がったらしい。


「まぁ、それは置いておきましょう。ほかに何か分かっていることはあるかしら?」
「はい。彼らの乗っているバイクですが、そのほとんどは時速300㎞を超えています」

モニターにバイクの360度の立体図が出る。

「どれもエネルギー源は不明で、唯一、このカブトローと呼ばれる物のみ電気ではないかと考えられます」

画面上でXが叫んでいるのが聞こえる。



「…あの~」

色々な情報が出てきた中、フェイトがおずおずと手を挙げる。

「何かしら?フェイトさん」
「あの、彼は戦闘機人ですか?」

フェイト自身はそのことについて知らないが、アースラメンバーにとって仮面ライダー=戦闘機人で意見が統一されているようだった。

「う~ん。微妙なのよね」
「微妙?」
「アマゾンだけは体内から金属反応が無かったのよ。そのことから仮面ライダーとはこのアマゾンを基にして作られた者たちではないかというのが私たちの見解よ」

アルフと噛みつき合い、血を流していたアマゾンを思い出す。確かにあれを見ると生き物に見える。

「彼らのISについてですが、おそらくストロンガーは電気変換資質というより発電、スカイは高速飛行能力、Xはたぶんこのライドルという武装を自在に扱うことだと思われます。V3については不明としか」

エイミィの意見を受け、リンディは顎に手を当て考え込む。

(確かにストロンガーが電気変換資質らしきものを持っていることは間違いない。でも本当にそれだけなのだろうか?それにスカイについても本当に高速飛行能力なのだろうか?こちらの常識がまるで通じない戦闘機人集団。真正面から戦えば危険度はプレシアの比じゃないわね)



「それで…あの~」
「? どうしたのかしら?」

エイミィが言いづらそうに言葉を紡ぐ。

「地球のTV情報を探ってるときに…」
「エイミィ、また君は艦のコンピューターを勝手に使用して!!」
「ごめんなさい!でも、その時こんなものを見つけて」

エイミィがパネルを操作する。会議室の、いや艦内のほとんどの人員が何が出るか待ち受ける。そして・・・






パパッパーン
「秘密戦隊ゴレンジャー!!」

軽快な音楽とともに色とりどりのヒーローが決めポーズをとり、後ろでその色に合わせた爆煙が上がる。


『「「「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」」」』

全員の目が点になる。




四方山話 それぞれ


「エイミィ。できれば真面目にやってほしいんだが」

クロノが皆の意見を代弁する。リンディとリニスはあらあらといった感じ。フェイトとアルフは食い入るように見ている。相当、娯楽に飢えているようだ。

「いや~クロノ君。私は大いに真面目だよ。ちょっと12話まで飛ばすよ」

早送りされ、画面がキュルキュル動く。映像を機器に写しただけのようである。早送りされフェイトとアルフは不満顔。



そして、問題の12話。最終場面。

強敵イカデビルによって必殺のゴレンジャーストームがはじき返され、ダメージで倒れるゴレンジャー。

まるで弄ぶかのように倒れた戦士に追撃を加えるイカデビル。

遂に飽きたのかアカレンジャーの首にその手がかかる。

倒れた仲間たちが助けようともがくがダメージのために動くことができない。

誰もが絶望したその瞬間、バイクの排気音が響く。

『ば、馬鹿な。この音は』

今まで余裕の態度を崩さなかったイカデビルが狼狽し、振り向くとそこには、



「あ、あれは、仮面ライダー?」

フェイトが驚きの声を上げる。当然、アースラスタッフは一斉に画面を食い入るように見つめる。

アルフからは先ほどまでのウキウキ気分が抜け目を細め、リンディ、リニスの気配も鋭くなる。



画面内ではイカデビルと謎の存在の壮絶な戦いが繰り広げられる。
ゴレンジャーの武装で全く傷が付けられなかった強固なイカデビルの体がみるみる破壊されていく。

『ぐぉぉぉぉ、き、貴様裏切ったのか!?』
『ふん』

よろめいたイカデビルに対し、謎の存在が大きく飛び上がる。


『ライダーッキィィィック!!』
『グッ、グオオオオォォォォォォ!!この、裏切り者がァァアァァァ』


腹にライダーキックを食らい、怨嗟の叫びを残しながら爆散するイカデビル。

バイクに乗って走り去ろうとする謎の存在。

『待ってくれ。お前は一体…』

一瞬振り向くが何も言わずに走り去る。

爆発の余波によって生まれた炎に照らし出される、困惑する五人の戦士。


つづく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



突如現れ、圧倒的な力で強敵イカデビルを倒した仮面の戦士、
彼は一体何者なのか?
その正体は?目的は?
次週、秘密戦隊ゴレンジャー 第13話 敵か?味方か?マスクドライダーにご期待ください』

エンディングが流れ出す。




「それでエイミィ? この映像について何が分かっているの」
「はい。この映像は毎週金曜日に放送されている『秘密戦隊ゴレンジャー』の映像です」

長々とゴレンジャーの説明がつづくがカット。

「それで、このマスクドライダーについては?」
「第12話から第19話に登場した謎の人物です。ターゲットにしていた低年齢層より少し上の世代とオバサマ方に大人気になり、スピンオフで主人公になった作品が現在放送中です。そちらも見ますか?」
「おい、エイミィ…」
「そうね~、ちなみに19話はどうなっているの?」
「ちょ、母さん!」



秘密戦隊ゴレンジャー 第19話 サラバ、マスクドライダー!正義の誓い 最終シーン一部抜粋

合体必殺技にて強敵・黄金狼男を倒したアカレンジャーとライダー。各地で大量発生していた狼男が消え、闘っていたゴレンジャー、警官隊からも安堵の声が漏れる。

部隊としての性質をもつゴレンジャー。
個人で正義を貫くマスクドライダー。

何度もぶつかり合った二つの正義が今、一つになった。

『ありがとう、マスクドライダー。…一体、君は何者なんだ?』
『…すまない。それについてはまだ語ることはできない。俺は俺自身の戦いに戻らなければならない』
『そうか…。ならば誓おう。俺たちはこれからも正義のために戦い続ける』

アカレンジャーが右手を差し出す。その手を握り返すライダー。

『ああ、俺も誓おう。これは正義の誓いだ。いつかまた会おう』

夕陽を背に固く結ばれた正義の誓い。これからも戦いは続く。負けるな、ゴレンジャー。

つづく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次週から新章突入。ゴレンジャーに忍び寄る魔の手。
新たな大幹部、鉄人仮面テムジン将軍とは?
次週「青い脅威!古代から来た飛行船」に御期待ください。

新番組「マスクドライダー」毎週日曜日朝8時より放送開始!!



「仮面ライダーの正体については語られてないのね」
「艦長!これはフィクションって書いてあります。だいたい名前も違うし…」
「顔の意匠はそっくり。名前のほうは訳せば仮面ライダーになるわ。ここまで来れば関連性がないと考えるほうが不自然よ。エイミイ、マスクドライダーのほうも流してちょうだい」



クロノの抗議むなしく放映される「マスクドライダー」第1話 怪奇クモ男。


天才科学者であり、オートレーサーでもある本郷 猛。

その天才的な才能に目をつけた悪の秘密組織「ショッカー」

体の肉を、腱を、骨を、神経を改造され、残るはその心のみ。

脳改造をされる前に恩師・緑川に救出されるが、その恩師もクモ男によって殺される。

現場を見た緑川の娘・るり子に誤解され、自分も人間ではなくなったことに苦悩する本郷。

それでも正義のため、人類の自由のためマスクドライダーとして戦うことを決意する。



思いっきり仮面ライダーの始まりである。名前はマスクドライダーに変えてあるが、雄介は自重をやめたらしい。


「犯罪組織からのたった一人の反逆者、と言ったところかしら?」
「そうですね。敵である『ショッカー』は地球全体に広がる犯罪組織という設定ですから」

そのまま出てきた仮面ライダーの性能についての話に移行する艦長と実質副艦長に頭痛を覚える執務官。

(僕がおかしいのか?)



「この原作者の章太郎氏とコンタクトは取れないかしら?」
「どうも覆面作家らしく、ファンレター送ったら直筆で返事が…」


日頃の御愛聴感謝しております。このたびの心の籠ったお手紙は近頃の熱い日々のよき清涼剤になります。
さて、マスクドライダーについてですが、実はこの作品は私が完全に原案をしているわけではありません。私の先生に当たる人物が口伝で遺した作品をアレンジして世に出しています。自分としてはこの作品は先生にささげるために書き起こしたものでペンネームもそこから由来しています。
プライベートな面もあり、これ以上詳しく書けないことを平に謝りつつ、ここでペンを置きます。
まだ始まったばかりですが、これからも「マスクドライダー」を応援していてください。


最後にかっこよくライダーの絵が書いてあるのがにくい。

「…ファンレターで出したのか?」
「これじゃないとコンタクトなんて取れなかったんだよぉ」

実際、始まったばかりの「マスクドライダー」へのファンレターだから届いたのであって、これがゴレンジャー宛なら大量生産で済まされた可能性が高い。




「思ったより情報が出てきたけど、それ以上に謎が深まったわね。…今日はこれくらいにしときましょうか」
「「はい」」

リンディの言葉で会議は終了になる。席を立つエイミィ。頭を抱え、うんうん唸っているクロノ。

「あの、エイミィ、さん…」
「ん? なにかにゃ、フェイトちゃん?あっ、ついでに私のことはエイミィでいいよ」
「あの、マスクドライダー、もっと見られませんか?」

顔を赤くしながら言う様はとてもAAAランク魔導師には見えない。某鉈少女が見たらお持ち帰りされること間違いなし。

「おお、いいよいいよ。ちょっと、お姉さんの部屋まで来なさい。撮りためておいた全8話一緒に見ようか」
「はい!!」
「こら、エイミィ!!彼女はこれから裁判がある身だぞ。不用意に外に出すのは…」
「あら?いいじゃない。私も行ってもいいかしら?」
「って艦長まで」

そのままクロノを無視して去っていく女性陣。負けるなクロノ。きっと報われる日も…来るだろう。たぶん。

ちなみに、ゴレンジャーとマスクドライダーはアースラによってミッドに届けられ、大ヒットする。ただし途中で管理局が戦闘機人の作成を擁護する作品として規制対象にしたため、最後まで知っている者は限りなく少ない。

閑話休題。



管理局側は仮面ライダーについて少し詳しくなった。

****************************************

所変わって月村邸。

雄介がアリシアの腕に文字を書きながら念を込めている。

「~~~~~~~~~ !」

常人には聞き取れない発音で閉じられた呪文。それと同時にアリシアの体が発光した。

「ふぅ、成功かな」
「「「「「おお~」」」」」

見物していた月村家御一行から感嘆の声が上がる。アリシアのきれいなブロンドの髪は、光沢を放つ艶やかな黒髪に変わり、ゆっくりと開けられた瞳もワインレッドから深い黒色になっている。

使ったのは朱鬼の呪術。年齢を数十歳誤魔化す呪術を使っていた朱鬼。そのレパートリーは豊富で今回のような見た目を変えるのも簡単であった。まぁ、これも朱鬼に変身できる様になって使えるようになったものである。対価は雄介の生命力だが…有り余ってるから問題ないだろう。…さすがにここまで変えればばれないだろう。

向こうの姿見で自分の姿を写したアリシアが黄色い声を上げている

「ちなみに戻るには腕に書いた紋を消せばいい」

うん、まったく聞いてないな。



「ふう…」
「お疲れ様です」

ノエルが全員分のお茶を配る。ちなみにファリンはクッキーを持ってくる途中で盛大にぶちまけ、焼き直しているらしい。久しぶりにドジっ子炸裂である。


「管理局、か…」

アリシアの知識、雄介の印象。二つを合わせながら管理局について話し合う。

端的に言えば裁判所、国会、警察機構、軍隊が合わさった組織らしい。この時点で三権分立はどうした、とか、立法と裁判権もった警察ってどんなチート組織とか言いたいことはたくさんあるが、まぁ置いておこう。

「俺の印象では風呂敷広げすぎて肥大化した正義の味方(笑)みたいな印象でしたけど、それだけ聞くと危険なことこの上ないですね」

つまり管理局は自分達で法律を決めて、その法律で犯人を逮捕して、その犯人を自分達の息のかかったものに裁かせることが出来る。捕まったら最後、無罪はありえないといったところである。しかも、世界の管理者気取りなのでやたら色々なところに現れて、そちらの知らない法律を押し付ける組織。

「…某世界の警察な大国の軍隊みたいね」
「忍お嬢様、あの国もここまでひどくありません」
「組織は海、空、陸に分かれてて、階級は自衛隊みたいな感じですね」
「それで質量兵器、拳銃やらミサイルを否定してるから、魔法の才能に頼った万年人材不足…こいつらは馬鹿か」

忍、ノエル、すずか、恭也が言いたい放題言う。まぁ概ね間違いではない。管理外世界の人間からすればふざけた法律を作り、人材不足を理由に子供を戦場に立たせているようにしか見えない。

「なのはは大丈夫だろうか?」
「う~ん、…俺の印象では魔法に傾倒して他がおろそかになってるような感じがしました。何かあったときのために早めに話し合ったほうがいいと思いますよ。まぁ、でも、事件も終わったことだし、あいつらも帰るんじゃないでしょうか?」


「そういえば、フェイトはいつ頃、管理局から離れられるだろう?出来ればアリシアと会わせたいんだが」
「う~ん、たぶん強制労働5年位かなぁ?」
「「「「「はぁ?」」」」」

全員頭の中で、足に鉄の重りをつけた10才の少女が鞭を打たれながら重い岩を運ぶのを想像する。

「あっ、違うよ。強制労働っていうのは管理局への奉仕活動だよ。たぶんフェイトは魔力が高いから魔導師としてのお手伝いじゃないのかな?」
「…それって戦場に送られるってことじゃ…」
「全部が全部、そうってわけじゃないけど…。そう考えても問題ないと思うよ」

沈黙が場を支配する。

「ちっ、あの組織は。やっぱりフェイトも引っ張ってくるべきだったか」
「駄目だよ、雄介。私やフェイトは元々向こう側。私たちの罪は向こうで裁かれるべきなんだよ。…私も裁かれるべきなのかな?」
「むしろあの状態のアリシアに罪を問うなら本気で潰す。フェイトだって強制されたんだから罪なんてあってないようなものだろ。…そこまで力がほしいのか、あいつらは」

イライラとテーブルを指でたたく。子供を守るのではなく、逆に危険にさらす行為は雄介にとって最高ランクの暴挙である。今にもアースラを撃沈しに行きそうな気配である。
…実際、宇宙にはS-1なら簡単にいける(ジャンプ力無限は伊達ではない)し、たぶん超電稲妻キックや火柱キック、スーパー大切断なら一撃で撃墜できる。

「そもそも少年法はないのか?」
「少年法?」
「一定の年齢以下の子供に刑事処分を与えず、保護更生のための処置を与える法律よ。日本では19歳以下の未成年に適用されるわ」

アリシアが腕を組み考え込む。

「…法律関係はあまり勉強してなかったけど。…たぶんなかったと思う。ほら、ミッドって就職年齢が低いから」
「…就職年齢が低いから大人に思想、理念を不当に埋め込まれかねない。だからこそ子供の権利をより重視すべきだろうが」
「おい、雄介。落ち着け。殺気が漏れすぎだ」

漏れ出た殺気が部屋に広がり、まったく耐性のないアリシアがガクガク震えている。

「お待たせしま…ひっ」

雄介の殺気が充満している室内へファリンが新しいクッキーを持って入ってくる。一瞬そちらに雄介の気が行く。当然のことながらファリンはここまでの殺気を当てられたことはなく、

ガクガクブルブル…

震えが全身に走り、またもクッキーがこぼれそうに…。

「はっ!やば…」

正気に戻った雄介がフォローに走り、受け止める。

「あ~、その、ごめんなさい」
「うぅ…」

殺気から解放され、涙腺が緩んだのか、ファリンの目から涙がこぼれる。

「泣かした」
「泣かしたわね」
「泣かしました」
「泣かしたな」
「泣かしちゃダメだよ、ユウスケ」
「えぇ!!…その、ファリンさん、ごめん」
「ふぇぇぇ~~…」

月村家は今日も平和である。



仮面ライダー(月村家側)と管理局の溝がさらに広がった。




あとがき

どうも、作者のGです。今回は早く書けました。まぁ前回が格段に忙しい時期に重なっただけなんですけど。これからも一週間一話ぐらいのペースで書く…書こう…書きたい…書けたらいいな。

前半です。べ、別にディケイドに影響されたわけじゃないんだからね。勘違いしないでよ。
なんて言ってみる。なるべく昭和風にしてみました。友情出演は黄金狼男ことゾル大佐。クロノは不憫です。これがGクオリティー。真面目キャラが割を食うのは世界の修正力。

後半、管理局について。完全に作者の印象。なんとなくどこにでも出張ってくるところが某コメ国とかぶる。三権分立は小学生でも習う大切なことです。


これで短編は終わりです。次回からAsです。やった、やっと新しいライダーが書けるぞ。






下は作者の叫び  かなり管理局アンチです。お目汚しになりかねないので飛ばしてくれてかまいません。













STSでなのはさんが言っていた「誰かが出動かけてくれないとでられない」・・・あたりまえじゃぁぁぁ!!!あんたらみたいな不思議軍隊の部隊一つ一つが自分の考えをもって好き勝手出動して自由に行動したらドンだけ世界が混沌とすると思ってんだ!!仮にも教導官ならそれぐらい理解せぇや!!
まぁこの時のなのはさんはレリック回収や人命救助のことに限定してるんでしょうけど、それでも好き勝手動くのは危ないと思うんですが。そもそも組織に入ったら自由度は減るのが当たり前。そこを変えたいなら上に行け。とりあえず「踊る大走査線」でも見て勉強しましょう。



[7853] As プロローグ
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/07/26 21:59
少女は目の前の光景が信じられなかった。

空想上のヒーローと絵空事の騎士が剣を交え対峙している。




特に代わり映えの無い一日。入学したてに比べだいぶ学校に慣れた中学2年。12月に入り、肌寒く冬になったなぁと感じていた。

今日は部活で遅くなってしまった。急いで帰るために公園を使ってショートカットする。真っ暗な公園はとても不気味。昨日見たマスクドライダーでもこんな感じの場所でショッカーが実験してたし。

親には女の子らしくないと馬鹿にされるが、私はあの作品が大好きだ。人気のあるゴレンジャーに比べ、少し、いやかなりダークだが、それゆえにそんな中で戦うライダーが格好良く見える。


ここまではいつも通り。このまま帰って、母に叱られ、夕飯を食べ、弟とだべって、お風呂に入って、寝る。そんな退屈でもあるが満たされた日常。




そんな世界が一変する。


「えっ?」

目の前に女性が立っている。後ろで髪を束ねたきれいな女性。こんな女性が真っ暗な公園に一人で立っているのはおかしい。よく見れば服もまるで甲冑の一部を付けたドレスのようである。しかし少女の瞳はそれ以上におかしなものを捕らえていた。




剣。日常生活では見たことのないファンタジーの産物のような無骨な刃物。


「対した魔力ではない。が今は少しでも集めておきたい。悪いがその魔力、貰っていくぞ」

一撃目が避けられたのは偶然。恐怖で腰が抜けてしまい、倒れこんだ拍子に頭の上を剣が通り過ぎた。

「…動くな。なるべく痛めつけたくは無い」

言葉とは裏腹にその切っ先は間違いなく少女に突きつけられている。


それがゆっくりと振り上げられ、
吸い込まれるように、
重力で加速しながら、
自分に近づいてくる。


恐怖で目を閉じることも出来ない少女は、




ギィィィィィィィンンンンン!!!!

その剣を受け止める、銀色の戦士を見た。

マスク・ド・ライ・・ダー・・・

極限の恐怖から開放され少女は意識を失う。
それゆえに彼女は見ることができない。

力と力の、
技と業の、
剣と拳の、
魔法と武術の、
信念と信念の、
そして、騎士と騎士(ナイトとライダー)の闘いを。

彼女は観客になることすら出来ない。




短い休息は終わる。道の先には新たな闘い。それが仮面ライダーの運命なのか?それはまだ誰にも分からない。




プロローグ 邂逅                    
                                  続く






あとがき

どうも、作者のGです。とりあえず、プロローグを即効で書いてみた。

突っ込まれる前に補足。
闘ってる人 シグナム 仮面ライダーX
なぜこの二人? 作者の趣味(レバンティンとライドルの打ち合いをしたかった)
シグナムの行動 そろそろ管理局が来そうなので早く魔力を蒐集したい
仮面ライダーがいた理由 偶然または運命
少女は誰? 民間人、これ以上の登場はない。絶対。魔力はB+ぐらい


プロローグなので特に書き込む要素は無いです。第一話はこいつらに任せます。



[7853] As 第1話 修正
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:9cddaa70
Date: 2009/10/18 00:24
「レヴァンティン!!」
≪ja≫
「ライドルホイップ!!」

繰り出す連続の突きを剣の腹、刀で言う鎬によって流される。流された一つに合わせ、カウンターで切りつけてくる。

ギィン!ギリギリギリギリ…

引き戻したライドルで受け止め、そのまま鍔迫り合いに入る。

「なぜ彼女を狙った?!」
「言うと思うか!知りたければ剣で問え!」
「なら、やってやるよ!!」

両者同時に弾かれたように後ろに飛ぶ。が、降り立つと同時に地を蹴り上げ、Xは袈裟懸けに、シグナムは切り上げで応戦する。そのまま二人とも足を止め、連続で打ち合う。

互いの間には硬いものがぶつかり合う音が響き火花が散り、その火花が散るごとに音の間隔が短くなる。ギアが変わる。


人間の出すことの出来ない高速の剣の舞。観客はいない。ただただ激しくなる。





As 第一話 再開

Side 雄介

寒い。12月に入り、より一層寒さが増したように感じる。そんな中をライダーマシンでポレポレに向かう。


後ろにはアリシアが乗っている。今日はポレポレの手伝いをする日である。おやっさんは俺の妹だと言ったら、あっさり信じた。あの時はまだ金髪だったと思うんだが。しかも黒髪になっても普通に受け入れた。ここまで来ると、懐が広いというより、詐欺に引っかからないか心配になってくる。


あの事件から半年。俺が生まれてから約10ヶ月。仮面ライダーへの変身も10人以上できるようになった。しっかし、これ以上できるようになる必要性を感じないなぁ。というより、ZXにも言える事だが、BLACKとかBLACKRXなんか今の敵には完全にオーバーキルにしかならない。

この数ヶ月でタキオン粒子の理論の雛形は出来た。これはまだ誰にも見せてない。クロックアップシステムはかなり危険性が高い。人類にはまだ早いかもしれないので資料は処分し、今は俺の頭の中だけにある。さらに研究を進めるうちに、おもしろい現象が発見できたのでそちらの研究もしている。

やることはたくさんある。研究しているほうが闘いよりよっぽど楽しい。



カランカラ~ン

「「おはようございます」」
「おう、おはよう、雄介、みのりっち」

とりあえず、アリシアには黒髪バージョンの時はみのりを名乗らせている。…偽名は本名に近いほうが安全なんだけどなぁ。アリッサとかアリスとかシアなどの候補を出したんだけど拒否された。なんかただでさえ金髪キャラでかぶってるのに名前までかぶってどうするとか、それじゃARMSとか、神の娘じゃないとかブツブツ言っていた。彼女も電波を受信しているのか? もしかして…原因はキングストーンなのか?

五代 雄介の本当の妹の名前だと教えたら、すごい喜んでいたし、俺自身本当に妹が出来たみたいで悪い気はしない。

「いらっしゃいませ~」

アリシアも週に何度か手伝いに来ているため看板娘No.3になっている。ちなみにNo.1とNo.2は言うまでもないだろう。



本当に何にもなく平和な日々。ちょっと変わった人たちに囲まれた生活。頭の上にいた、むかつく連中もいなくなったし。こんな日々が続けばいいと思わずにはいられない。





お客も途切れ、二人でのんびりお茶を飲む。おやっさんは休憩中で外に行った。

「なのはちゃんにさあ、フェイトからビデオレターが届いてるんだって」
「いいなぁ、私もフェイトに会いたいな」
「何とかなんないかなぁ」

実際どうにもならないのが現状だけど。



そういえば、なのはちゃんだけど未だに魔法の訓練をしているらしい。朝になると公園の丘のほうで例の結界的なものが出来る。この前こっそりホッパーで覗いたらなのはちゃんが魔法の特訓をしていた。…兵士は戦いが終われば武器を鍬に持ち替えるべきではないだろうか。いや訓練の必要性はわかってはいるが、若いうちにあんな無茶(ちょうど見たのがスターライトブレイカーの発展型スターライトブレイカーEXの開発中に暴発したときのことだった。当然ホッパーは壊れた)していたら、本当に体を壊す。壊れるだけならいいが修復不能までぶっ壊れる可能性もあれじゃ否定できない。

恭也さん、及び腰になっている暇はなさそうです。早く家族会議の時間を。…最悪、俺が出て行ってあのデバイスを破壊するか。ZXならアースラ全員敵に回しても大丈夫だろうし。

「考えてることが駄々漏れになってるよ。それにそんなことしたらデバイスを手に入れるために管理局に入っちゃうかもしれないよ」
「やっぱり? なんであそこまで魔法に傾倒するかなぁ。結局は武器だよ。あんなの携帯できるミサイルかレーザー砲みたいなもんだよ」
「それ以外趣味が無いんじゃない? それにこっちにだってミリタリーマニアって人たちがいるらしいし同じじゃない?」
「…趣味がそれだけって、…そんな寂しい少女だったのか」

俺が多趣味なだけなのか?
他人の人生に口出ししないけど、もうちょっとのんびり生きてもいいんじゃないか?



「アリシア、超能力のほうはどうだ(コソコソ)」
「だいぶ慣れてきた。見てて(コソコソ)」

コップに手を当てると、中の水が少しだけ持ち上がった。サイコキネシスか。そういえばこれの強力な奴で何度も殺されかけたなぁ。

一般的に(と言っていいか分からないが)超能力は2つの種類に分けられる。サイコキネシスなどのように物体に影響を与えるものであるPKとテレパスなどの超感覚的なものであるESP。この2つを合わせ、超能力のことをPSI(サイ)と呼ぶ。

アギトの力は人によってどのように発現するかが違う。例えば、あかつき号に乗っていた榊 亜紀は強力なPK。鉄を折り曲げ、それで人を圧死させていた。対して、同じあかつき号乗客であり、後にアギトになった津上 翔一(本名は沢木 哲也)はアンノーンの位置を感覚で掴むESPだった。また、風谷 真魚は未来予知やサイコメトリーなどのESP、枯れた花に命を与えたりするPKの両方を持っていた。

アリシアに与えたのはESPを持つアギトの力だったが、どうやらPKのほうが出たらしい。

「ユウスケ」
「おぉお!! …とりあえず安定はしているんだな?」
「うん。近頃は急に強くなることも無くなったし」

キングストーンが頑張っているらしい。なんとなく嬉しい。


カランカラ~ン

「「いらっしゃいませ」」

さぁ、俺も頑張ろう。



**************************************


夕方、サイドバッシャーで走っている。サイドカーにはアリシア。向かう先は図書館。そこですずかちゃんを拾って、月村家に送り届けるのが今回の任務だ。…なんだよ、任務って。

走っていると水平線に夕日が沈む。月村家において習い事が無い場合、すずかちゃんの門限は5時。居候させてもらっているアリシアも同じ時刻である。ただいまの時刻は4時ちょっと過ぎ。少し急ぐか。



図書館前の駐車場。ん?向こうの方で誰かが駐車場のど真ん中で突っ立っている。危なくないか?

図書館の入り口に行くと、すずかちゃんが車椅子の子に手を振っている。その車椅子を押しながらブロンドの女性がこちらに向かってきた。軽く会釈をすると、にっこりと笑顔で返される。そのまま駐車場にいたさっきの誰かさんと合流。どうやら、あの人も車椅子の子のお迎えらしい。

去っていく。…すごいな。合流したほうもブロンドの女性も、まるで正中線がずれない。武術家、それも結構強いほうの。まぁ、化け物剣術家と週一ぐらいのペースでやりあってるのでそこまで驚かないが。大体、この街にはそれぐらいできる人はたくさんいる。高町家とか空手道場の師範とか。そんなことより、あの車椅子の子、どっかで会ったか?なんかひっかかりが…

「すずかちゃん。あの人たちは?」
「あっ、今日友達になった八神 はやてちゃんとその家族の人たちです」

八神 はやて…記憶にないなぁ。この町に住んでるならどっかですれ違ったんだろう。そう結論付ける。それよりも、

「やばいぞ、すずかちゃん。門限まであと30分」
「えっ、本当だ。急がなくちゃ」

駆けていくすずかちゃんを追いかける。もうさっきの人たちのことは完全に忘れている。





ここで忘れなければ…事件はもっと未然に、簡単に、きれいに終わったかもしれない。


****************************************

夕飯を月村家でいただき帰る途中、

「なっ!! またかよ!!」

強烈な違和感。以前感じた結界をより強力にしたような違和感が全身を襲う。向こう、ビル街を中心に住宅街を覆っている。

また、管理局か?もう戻ってきたのかよ。

ただ気になるのは結界が以前と違う?なぜか違和感が以前より圧倒的に強い。

正直、関わるのはご免だ。しかし、自分の知らないところで自分の周りの大切なものに害が出るのはもっとご免だ。

ライダーマシンで結界内に飛び込む。



結界内は人っ子一人いない。隔離目的のものか?何が目的で何を基準に相手を振り分ける?

っ!! 殺気?! いや、剣気か!!

戦場に出る殺気ではなく、どちらかというと道場などに満ちた気配。
前方の公園からか!


飛び込むと剣を構える影が今にも少女に切りかかろうとしている。

剣には剣だ!

「大・変・身!!」

「ライドルホイップ!!」
ギィィィンンンン!!!

間に入り、ライドルで受け止める。

「なに!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」

受け止めた剣を力任せに弾く。離れた結果、相手の顔がよく見えるようになった。

? あれ?どっかで見たような。…忘れた。とりあえず知り合いにはいない。しかし、奇抜な格好である。例えるならファンタジーの軽装甲冑に現代のジャケットを合わせたような格好。持っている剣は…片刃の長剣か。ライドルと打ち合える時点で相当の強度があることが分かる。

「何者だ!」
「人に名前を聞くときはまず自分から名乗ったほうがいい」
「…」
「まぁ凶器持って子供に襲い掛かる奴が堂々と名乗るとは思えないが。…大体、犯罪するなら顔ぐらい隠せよ。そんなに自分の顔に自信があるのか?」
「…」

…無表情か。何も探れない。ただ分かることは、邪魔されたことに対し、押さえ込むことの出来ない殺気と怒気、そして剣気が体から出ている。


始まりの合図は無い。ただ、ほぼ同時に動いた。




冒頭に戻る。



No Side

剣戟は少しずつXの優勢に傾きだす。スピードは互角、技量も拮抗、パワーはXのほうが上だがそれによる差ではない。互いの結果を分けたのは武器。

シグナムの持つレヴァンティンは斬る、もしくは叩き斬るためのものである。斬るという動作は体を中心に円の軌道を描く。故に真に威力を出すには後ろに引くなどの溜めの動作が必要である。

対してXのライドルは分類上、細剣、サーベルやレイピアの類である。サーベルの特徴は突くことで真価を発揮すること。突く動作はただ前に突き出すのみ。溜め動作が無くとも威力を発揮し、さらにライドルは電磁波によって勢いが無くとも斬る力も持った電磁剣。突きの中に時に斬撃を織り交ぜながら攻撃できる。

つまりシグナムが攻撃するのに2動作かかるのに対し、Xの攻撃は1動作で済む。しかも、その突きは時に斬撃へと転じる。
最初は打ち合っていたシグナムも、そのうち防戦一方になり、ついにはレヴァンティンの鞘まで出して応戦しなければならなくなる。鞘も確かに高い強度を誇るがライドルのほうが当然上なので少しずつ削られていく。

(くっ!強い。魔力はかけらも感じないのに、なんだ、この力は)

「くそ!!レヴァンティン、カートリッジロード!!」
≪Schlange form≫

攻撃の合間を縫い、距離を開けたシグナムがレヴァンティンに形態変化を命じる。刀身の付け根がスライドし、薬莢が排出される。

純粋な剣技で完全に押され、魔力の無いものに奥の手の一つをさらさざるをえないこの状況。数百年に及ぶ剣の騎士の闘争にとっても前例の無い状況が、その心に喜びと悲しみを生む。

戦士として強いものと闘える喜び。今この場ではなく、純粋に互いを高めあう場で出会えなかったことへの悲しみ。両方を綯い交ぜ、連結刃を振るう。

「ライドロープ!!」

蛇腹剣のようなものと認識し、Xもライドルに新たな形をとらせる。ライドロープ。ライドルとしての切れ味はなくなるが、代わりに決して切れない強靭なロープになる。

「…ずいぶん似通った武器だな」
「ああ」
「…できれば、もっと別の形で闘いたかった」
「…」
「…時間が無い。いくぞ!」
「こい!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

互いの武器が先ほどの点や線のぶつかり合いから、より立体的なぶつかりへと変貌する。刀身を削りあう音は双方の間からだけでなく、後ろ、上空、半径20m以内のいたるところから響く。

この場合、武器の射程はそのまま力になる。レヴァンティンの有効射程は数十m。それに対し、ライドロープは最長で30m。射程に直すと精々20mが限界である。

当然、押され始めるのはX。

ぶつかり合い、陣取り合戦のように相手の範囲を削りあう。そんな中、綻びができ、その合間を縫い、レヴァンティンの切っ先がXに向かってくる。

「くっ!」

ライドルの握りで弾くが、それによる乱れでさらにライドルの合間が広がる。弾き、かわし、受け止めようにも範囲が広すぎて、致命傷にはならないが、少しずつ傷が増えていく。



形勢逆転、



かに見えた。

「とった!!」
「何!!」

ライドルの先がまるで生き物のようにレヴァンティンの先端の部分の刃と刃の間に絡み付いている。本来のライドロープは捕縛用。その役目を果たす。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「くっ!あぁぁぁぁぁっ!! 」

一本釣りのようにシグナムを引っ張り、拳を叩き込む。咄嗟に張られた障壁を打ち砕かれ、わき腹への衝撃で吹っ飛ばされるシグナム。




「ぐうぅぅっ。くっ、次で決める!!」
「はぁはぁはぁ、望むところだ」

素早く立ち上がり剣を鞘に収め、居合いのような構えを取るシグナム。左手を前に出し、手間睨みで独特の構えのX。

空気が張り詰める。



Side 雄介

いきなり、スゥっとシグナムが浮かびあがる。

空中からの攻撃か。

「すまない、急用ができた」





「はっ?」
「やはり名乗ろう。私はヴォルケンリッターの将、剣の騎士、シグナム」
「…仮面ライダー5号、X」
「X、勝負は預けた。この決着はいずれ」

言うだけ言って、飛んで行ってしまった。
呆然とする俺。いや、この女の子助けたらあなたとの決着に興味は無いんだが。大体、騎士ってなんだ?魔導師じゃないのか?



「ふぅ。…いつまで覗いている!ロングポール!!」

藪の中、気配のするところにロングポールを叩き込む。闘っている最中、ずっとこっちを見ていた気配。気配を意識的に消そうとしているので少なくとも一般人ではない。大きさはたぶん50cm前後。一瞬リニスかと思ったが、それなら隠れている理由にはならない。

…手ごたえは…ない。気配も消えたところを見ると逃がしたか。

とりあえず気絶している少女を病院に…

ドォゴオオォォォォォォッ!!

なんだ?! あっちはさっきの騎士、たしかシグナムが向かった方向。ビル街か。まったく次から次へと。

「…ライダーマシン。お前はこの子を病院まで連れていけ。俺は向こうに行ってみる。
スカイ・変身!!」

スカイライダーに変わる。

「セイリングジャンプッ!!」

高く飛び上がり、現場に向かう。
一体何が起こっているんだ。







不安な気持ちを胸に抱きながらスカイライダーは飛んでいく。



あとがき

クロックオーバー。どうも、作者のGです。今までの最短更新。作者的クロックアップ。でも内容は薄いです。本編もこんな感じですよね?Asは騎士たちサイドの話が結構多いので短めになりかねない。オリジナルの戦場が必要か?

前半は近況報告。無印の時は555系の考察だったのでAsではカブト系を考察。ただ情報が限りなく少ない。頑張ります。そういえばシグナムとニアミス。遠めで見ただけなので気付きません。ハヤテのことも忘れてます。あのあと色々あったので。

後半、X VSシグナム。最初ッからマジバトルさせるとやばいと思ったので両者の必殺技は封印。それでも書きたかった蛇腹剣VSライドロープは書けました。



シグナムさんを書いてる時に唐突にOOのハムさんを思い出した。そのうちライダーに対して「私はその性能に心奪われた」とか「これは愛だ」とか勢いで書きそうで怖い。・・・なんかスカさんに言わせて見たいな。

そういえば黒髪バージョンアリシアの見た目はみな○けの南 冬○。声優的な意味と年齢的な意味で。



[7853] As 第2話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/07/31 07:15
「シャマル」
「シグ…! どうしたの!?あなたがそんな怪我を負うなんて!!」
「説明は後でする。すまないが回復を」
「え、ええ。クラールヴィント、静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

シグナムの負傷、Xに受けた傷が無くなっていく。同時に削られた騎士甲冑、レヴァンティンの鞘も修復。続いて、魔力、体力の回復に移行する。

「シグナム? こんな怪我をしたのになんでそんなに嬉しそうなの?」
「ああ、久しぶりに純粋に剣術で負け、魔法でも倒しきれなかった。あんな奴がこの世界にいるとはな。…全てが終わったら何のしがらみも無い状態で闘いたいと思った」

まだ先の、自分たちが望む最高の未来。そこでしたいことが増えるのは、進むことへの原動力の1つになる。

「…完全な回復は時間が足りないわ。鞘も見た目には治ったけど、後で調整しないとガタが出るかも」
「かまわない。それよりヴィータの方は?」
「最初に襲撃した相手は倒したみたい。でも援軍が来て…まずい!捕まった。シグナム、行って!!」
「ああ。…シャマル、新たな乱入者があるかもしれない。旅の鏡を使うなら急げ」




戦場へ飛び込む。これから終生鍛えあうライバルと、そして共に闘う戦友達と出会う運命の戦場へ。


As 第二話 戦場

Side シャマル

シグナムが救援に入り、金髪の子がシグナムと、その使い魔がザフィーラと、回復の結界を張っていた子がヴィータちゃんと対峙している。

シグナム、ザフィーラは押し気味だけど、ヴィータちゃんは攻めあぐねているみたい。どうやら結界の子は回避と防御に専念している。消極的だけどうまい闘い方。自分にできることと相手の実力を正確に理解していないとできない戦法だ。

私に近いタイプの子かしら。

蒐集対象に張っている結界にも、どうやら座標を惑わす効果があるようだ。でも甘い。この程度なら今まで何度も抜いてきた。シグナムに急げと言われたけど、解析にはもう少し必要ね。


シグナム…さっき新たな乱入者って言っていたけど、先程のシグナムが受けた怪我の原因の人物だとしたら、相当の強敵。でも大きな魔力なんて…!!!!

(シグナム!! 魔力反応無し、でも時速約600㎞の飛行物体がそっちに…)


次の瞬間、一陣の風が戦場を駆け抜けた。



Side 雄介(スカイ)

着いた。どうやら、監視者とは思ったより長くにらみ続けていたらしい。

一体、これはどんな状況なんだ?


ビルの上で翠色の結界に入っているなのはちゃん。

鎌と剣をぶつけ合うフェイトとシグナム。

殴り合いをしているアルフと筋骨隆々な男。

ひたすら追いかけっこに興ずるユーノと赤いドレスの少女。


とりあえず分かったことは、また魔法関係だということ。予想通りフェイトは戦場での強制労働中。たぶん管理局VS犯罪集団ってところか。

関わりたくないなぁ。でも向こうもすでにこっちを捕捉してるだろうし。あぁ、やっぱりフェイトが来た。

「久し振り、でいいかな?スカイライダー」
「ああ、約半年振りか。久しぶりだな、フェイト」

アルフとユーノはビルの方、なのはちゃんの近くに移動している。

「手伝って、もらえますか?」
「…闘いも管理局も好きではない」
「…」
「…だが、子どもだけに戦わせていては管理局となんら変わりがなくなる。手伝おう」

俺の最初の言葉で沈んでいた顔が、明るくなる。そういえば、管理局の連中は一人も出てきてないのか…相変わらずか。


「私がシグナム、剣を持った女性と闘います。ユーノとアルフにはこの結界を破壊するために動いてもらいながら赤い服の子と…」
「俺の相手はあの男か」
「よろしくお願いします。…アマゾンは元気ですか?」
「…ああ」

嬉しそうに笑う。この子の笑顔はとてもきれいだ。しかし、それは多くの悲しみを知った先に手に入るもの。本来なら長い人生の中で手に入れる憂いを含んだもの。この世界、地球にそんな顔をする子がいないわけではないが、それでも戦場になど出ないのでかなり少ないだろう。


思わずため息が出る。出来れば知り合いの子供にこんな顔はさせたくないが、俺がこれ以上、彼女に歩み寄るのは多くの人に害を及ぼしかねない。

はがゆいな。



全員、動き出す。



俺も男と対峙する。動物の耳があることから、こいつはアルフと同じ使い魔だと分かる。

「…何も言わないのか?」
「元来に口下手だ。…男なら口ではなく拳で語れ」
「なるほど、道理だ。行くぞ!」

気分が高揚する。かつてプレシアに自分自身が言ったことを髣髴とさせる台詞。

ほぼ同時の始動。

ガッッン!!

拳がぶつかり合う。威力が拮抗している。

「…仮面ライダー第8号。スカイライダー」
「…ヴォルケンリッター、盾の守護獣ザフィーラ、推して参る!」

離れて、方向転換し何度も拳をぶつけ合う。



緑のラインと青色のラインが空に引かれていく。

「スカイドリル!!」
「ウオオオォォォォォォォ!!」

拳を内側に回転させながら打ち込む。いわゆるコークスクリューブローだが、威力は段違い。岩を砕き、鉄さえ貫く。

ギャァァァァァァァァ!!

障壁にぶつかり、まるで削るような音が響き、砕ける。

「はぁっ!!」

カウンターで蹴りが飛んでくるが…

「遅い!!」
「くっ!!」

バックでかわす。

スカイライダーの特徴。全ライダー中トップクラスの飛行性。ジャンプ力こそS-1に敵わないが空中における自由度はスカイライダーのほうが上である。

スピードでもパワーでも大きく敵を上回っている。負ける要素などどこにも無い。


実際のところ、ザフィーラの魔法、鋼の軛が使用できれば戦況は変わっていただろう。しかし、この魔法は空中では使えない。空中でザフィーラが使えるのは障壁と格闘技のみ。今まではそれで構わなかった。盾の守護獣の名は伊達ではなく、ほとんどの攻撃は障壁で防ぐことが出来た。しかし、仮面ライダーはその障壁を紙くずのように引き裂いてくる。魔法なしで。なまじシグナムより防御に対する絶対の誇りを持っている分、ショックが大きい。すでにザフィーラの頭の中に地上で戦うという考えは無い。


「…その程度か?」
「なにっ?」
「その程度かと聞いているんだ。以前俺はある人と己の信念を賭け、拳で語り合った。…あの人は強かった。一撃一撃が俺の心に、信念に、魂に響いてきた」
「俺の攻撃は響かないと?」
「ああ、まったく響かんな。…いつまでも仲間の心配をしながら俺に勝てるとでも思っているのか。なめるな!!」

こいつはさっきからチラチラと仲間の闘いを見ていた。フェイトと闘っているシグナムは負傷中、赤っ子はユーノとアルフの2対1。不利な状況は否めないだろう。しかし、だからといってまったく俺に集中しないで勝てるとでも思っているのか?


おそらくこいつは攻勢的なタイプではない。盾の二つ名が示すとおり守勢でこそ真価を発揮できるタイプだろう。それが前線に出てきているのだ。並みの信念ではないことが分かる。しかし、今のこいつはその信念を拳に乗せ切れていない。



もったいない。これが俺の正直な感想だ。




ザフィーラがしばらく目をつぶる。そして、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

叫び声とともに大きな狼へと姿を変える。

「…すまなかった。戦闘中に他の事にかまけるなど、相手にとって最大級の侮辱であったことを忘れていた」
「別に。さぁ、今度こそ拳で語ろうか」

本当の闘い(かたりあい)が始まる。



Side フェイト

剣とバルディッシュがぶつかり合う。

最初の奇襲の際、叩き斬られたバルディッシュのボディーが軋む。長期戦は無理かな。

「悪くはない。しかし、ベルカの騎士に1対1を挑むには…まだ甘い!!」
「くっ!!」

横薙ぎに鞘で殴り飛ばされる。追撃が…来ない?

「ハァハァハァ…」

脇腹を押さえながら苦しげに息を吐く。よく見ると顔には汗が滲み、先ほど振るった鞘はかなり傷んでいる。私の攻撃の殆どは防がれているし、鞘にダメージを加えた覚えはない。

「あなたは…」
「この程度、ちょうどいいハンデだ」

この人の強さはこの精神力が起因しているのだろう。仮面ライダーとは違った、同じ道の先を行く力。私はこの人に勝ちたい!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

いきなり周囲に遠吠えが響く。スカイライダーと闘っていた男の人が獣形態へと移行していく。

「ほぉ、ザフィーラが本気になったか。あのライダーも相当強いのか?」
「? 他の仮面ライダーを知っているんですか?」
「ああ。ここに来る前にXと闘った」

X。本当に彼らは神出鬼没です。だとしたら彼女の怪我も彼が負わせたのかな。やっぱり彼らは強い。

「…さて、こちらも続きと行こうか。回復するまで待ってくれたことは感謝する」
「いえ…、管理局嘱託魔導師フェイト・テスタロッサとその杖バルディッシュ。民間人襲撃の共謀者の疑いであなたを逮捕します」
「剣の騎士シグナムとその剣レヴァンティン。やれるものならやってみろ!!」

再度、刃を交える。



Side ヴィータ

くそ、くそっ、くそ!!!

目の前の敵にアイゼンで殴りかかる。が、その一撃は舞うようにかわされ空を切る。先程からこれの焼き増しのような光景ばかり。

大振りの一撃はかわされ、小さな攻撃では敵のプロテクションを貫けない上にもう一匹の方に攻撃される。カートリッジを使えば簡単だろうけど、残り一発しかない。しくじったら終わりだ。

ザフィーラが本気で闘っている。それほどの相手なのだろう。あのマスクドライダーっぽい奴は。やっぱり話の中のライダー並みに強いのだろうか?だとしたらザフィーラでも…いやいや、ベルカの騎士が一対一で負けるはずが無い。きっと大丈夫。…とりあえず援軍は期待できない。

シグナムのほうは…あの戦闘狂、すごい笑顔で斬りあいをしてる。…どこか怪我でもしたのか?動きにいつものキレが無い。あの笑顔も苦痛に歪む顔を無理矢理取り繕っているだけか。敵1人を抑えているだけでも精一杯だとしたら、むしろこちらが救援に行かなければ。

どちらにせよ、こいつらを急いで倒したほうがいい。

「てめぇら、ちょこまかしてんじゃねぇ!! アイゼン、カート「ぐおおおお」!!!」

カートリッジロードを命じる瞬間、聞きなれた声が苦痛にまみれて聞こえた。

振り向くと、

「竹とんぼシュートォォォォォォォ!!!」

仲間の一人がビルに叩きつけられていた。





Side 雄介(スカイ)

決してパワーが上がったわけではない。決してスピードが増したわけではない。技術が増えたわけでも、機転がきくようになったわけでもない。

それでも俺とザフィーラのぶつかり合いは拮抗しだした。

それを可能にしたのは集中力。

スポーツをやっているとよくあることだが、極限の集中状態だと物体がスローに見えることがある。これは集中することにより、かつて自分が経験したものからその物体の動きを予測することで起こる。

おそらく奴は俺の動きをそれと同じように経験からの予測を行っている。

「トォォォォ!!」
「ハァァァァ!!」

拳と爪が交錯し、またすれ違う。



闘いながら少しずつ高度が下がる。ビルと同じ高さに来た時、

「うおぉぉぉぉ!! 鋼の軛ィ!!」
「うおっ!!」

ビルの側面が急に隆起、いや巨大な槍と化し迫ってくる。

これは攻撃か…いや、あの槍の大きさでは間に入って避けることもできる。むしろこれは攻性防御、攻性束縛の類か。しかし、側面からなら横に移動するだけで避けきれる。

「もらった!!」

!! 誘導されたか!

ザシュッ!!

「くそ!!」
「惜しかったな。こちらからもいくぞ!九十九の技の一つ!!」

ザフィーラの爪はわずかに俺の頬を薙ぎ首元のFマフラーの一部を切り取った。空中で揚力を生み、安定を確保する翼になるF(フライング)マフラーだが、首筋に延長装置がついているので少しぐらい無くなっても問題ない。そして、その瞬間、すでに技は始動している

首と脚をつかみ、ロ○ンマスクのタワーブリッジのように担ぎあげ全身を旋回させる。
その回転とともに周囲に竜巻が発生する。

「ぐおおおおおおお!!!!!」
「竹トンボォシュートォッ!!!!!」

回転のエネルギーを利用し、そのままビルに叩き込む。…死んでないよな?

「てめぇ!! 」

赤っ子がこちらに突っ込んでくる。あの武器、ドッガハンマーに似てるなぁ。などと考えていると、薬莢が排出されドリル状に変形し回転しながら突っ込んでくる。スカイフライングソーサー?V3マッハキック?

「ラケーテンハンマー!!」
≪Raketen form≫

素早く引いて避けるが、そのまま追いかけてくる。ならば、

「ぐぅっ」
「なん…だと…」

無理やりハンマーの内側に体をねじりこみ回転を止める。ハンマーの柄の部分が当たるが頭の部分に当たるよりましだろう。
ユーノとアルフがこちらに向かってこようとする。

「来なくていい!! そっちはやるべきことに集中しろ!!」
「なっ!? くそ、この、放しやがれ」
「誰が放すか、赤っ子」

ハンマーを捉まれジタバタする赤っ子。すごい力だが、俺のほうが上だ。

「ちくしょう! なんだ、その赤っ子って」
「赤いドレスの子供、縮めて赤っ子。ぴったりじゃないか?」
「子ども扱いすんじゃねぇ!!」

しまった。難しいお年頃か。確かにある一定の年齢の子供は子供扱いされるのをひどく嫌う。第一次反抗期の子供によく見られる、だったか?





そんなことをやっている間に、どうやらなのはちゃんの砲撃で結界を壊すことにしたらしい。まったく、あの怪我でよくやるよ。

ピンクの光が収束されていく。あぁ、あれは痛かったなぁ。

正直、油断はなかった。故に次の瞬間、こちら側全員がその異様な光景に絶句する。



「「しまった、外しちゃった。失敗、失敗」」
「う、ああ、うあ…」

なのはちゃんの胸から人の手が出ていた。言葉にすればそれだけだが、その異様な光景は衝撃的だった。

そして手が一度引っ込み、もう一度出た時、その手には光が握られていた。

「なのは!!」
「…」

フェイトが顔を青くし、なのはちゃんの元に向かおうとするが、シグナムがそれを阻む。

ユーノとアルフは離れすぎている。

「お前は行かなくていいのかよ?」
「…」

赤っ子がニヤニヤして言うが無視する。先ほどの声、俺には二重に聞こえた。それが意味するのは、あの現象を起こした奴は割と近くにいるということ。

「「リンカーコア捕獲。蒐集開始」」

スカイライダーは飛行能力を持つ。その能力の特性上、他のライダーに比べ、かなり感覚器官が鋭敏になっている。さすがに宇宙を行くS-1には勝てないが。

ベルトイヤー。周波数ごとに多数の集音装置が集まっており、同時に20種類の音を明確に聞き分け分析できる。
D(ディメンション)アイ。高度映像分析能力を備え、縮小、拡大はもちろん、赤外線、紫外線、X線を見ることが出来る。人間の30倍の視力。


「そこかぁぁぁ!!!!」
「なに!! うわぁぁぁぁぁ!!!」

掴んでいたハンマーを思いっきりぶん投げて、見つけた目標に飛ぶ。
いた。金髪の女性。目の前の黒い空間に手を突っ込んで…本が書き込まれている?なにやってんだ?まぁいい。とりあえず、俺の知り合いに手を出した報い、受けてもらうぞ!!

空中できりもみ回転から前方宙返り。
「スカイ…」
さらにきりもみ回転を加速しながら放つ、スカイライダーの蹴りの中では最高の威力を持つ技。
「…スクリューーーキィィィック!!!」

ガガガガガガガガッ!!!!!






蹴りが叩き込まれる。錘状の岩に。

「何っ!!」
「鋼の…軛…。間に合ったか」

頭から血を流しながらザフィーラが女性の横に降り立つ。
なんてタフな奴。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「チィ!!」

後ろからの気配を咄嗟に回避。さっきの赤っ子が来たか。


その瞬間、放たれたピンクのレーザーが天井を突き破る。うわぁ、すごい砲撃。ってこんなので結界破壊したらどんだけ外に影響が出るんだよ。もう少し考えて撃ってくれ。「!!結界が破壊された。離れるぞ!!」

なのはちゃんが倒れ、騎士たちが散っていく。追いかけるか?…止めた。無理に追いかけると何が起こるかわからない。何より1対4では本気で、殺す気で闘わなければならない。


なのはちゃんの周りに全員集まっている。…このままじゃ管理局が来るか。結局何も分からなかった。

「セイリングジャンプッ!!」
「あっ! まって…行っちゃった。お礼、言い損なっちゃった」


飛び上がって、ライダーマシンの元へ行く。
いつも通り、ライダーマシンは待っている。ヘルメットをかぶり、走り出す。

奴らは何者なのか?最後に行っていた蒐集とは何なのか?謎は深まるばかり。魔法関係はアリシアに聞いたほうがいいか?





嵐の前触れ。前回と同じ突然のもの。果たしてこの先に待ち受けているものとは…








あとがき

どうも、作者のGです。カラオケに友人と行ったら13曲目まで仮面ライダーをメドレーしてました。アギト、Black、RX、アマゾン、ストロンガー、J、555、X、V3、カブト、ZO、S-1、龍騎です。マニアックすぎる。

さて作品上ですが、まずは補足を

シグナムが苦戦しすぎ・・・・前回のXとの闘いによる怪我のせいです。
シャマルが時間かかりすぎ・・・・ユーノの鍛えた成果です。
ヴィータが苦戦しすぎ・・・・ユーノの鍛えた成果です。
スカイが滑空飛行じゃない・・・・スピリッツで空中に浮いているシーンがある。滑空飛行でその場に浮くのは不可能。このことからS-1の技術流用か何かで完全飛行が出来るようになったと解釈。

…ユーノを強化するだけでだいぶ変わってくるな。
空中戦は書きづらい。地上戦希望。ザフィーラが弱いんじゃない。スカイが強いんじゃ。

さて次は引越しか。


なのはのゲーム・・・格ゲーかよ。クライマックスヒーローで間に合ってます。
ps 遅れましたが感想200越え感謝です。これからも頑張ります。




[7853] As 第3話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/08/14 02:37
ピコッピコピコッピコ

「五代さん、何やってるんですか?」
「いや、忍さんの作ったゲームのデバッグを…げっ、そこで遠距離攻撃?防ぎようがないよ」

画面上で仮面ライダー1号が膝をつきyou loseの文字が浮かぶ。製作者のこだわりかヒー
ローの倒れるシーンは入れないらしい。ちなみに今は恭也さんの手から何か出るエフェク
ト後にいきなりやられた。


「マスクドライダーのゲーム、ですか?って闘っているのがどう見ても恭也さんに見える
んですけど」
「開発中に急に忍さんが暴走したらしく、後にきづいたら入れられていた隠しキャラが
ちらほら」

恭也、っといっても遠目には主人公の武装バージョンにしか見えないように調整してある。
単に珍しい小太刀の二刀流ということを除けば。隠しコマンドを入れるとロケットパンチ
の撃てるメイドさん(某同人からの格ゲーのごとく)が出ることは絶対に言えない。これ
以外にもゴレンジャーが出たりなどの隠し要素も多い。

極め付けには、

「これは…さすがに嫌がらせなんじゃ?」
「う~ん、彼女の考えは恭也さんかノエルさんじゃないと分からないですねぇ」

画面上には杖を持った白服の少女がピンクのレーザーを放っている。




割と近い未来の平和な光景。


As  第3話 変化

Side なのは

目が覚めると知らない天井だった。外にはすごく近未来チックな街が広が…あれビル?なんかすごい形をしているの。

「先生、207番室の患者さんが目覚めました」

どうやら病院のようです。



「さすがに若いな。もうリンカーコアの回復が始まってる。しばらくは魔法がほとんど使えないから気をつけてくれ」
「は、はい。ありがとうございます」

胸に何か機械のようなものをあて診察を受けた。魔法、しばらく使えないんだ…。

扉が開いてクロノ君とフェイトちゃんが入ってくる。

お医者さんはクロノ君と話があるみたいで外に出て行ってしまった。気まずい空気が流れる。せっかくの再会なのにお互いに怪我をしてしまって、

「フェイトちゃん…ごめんね。せっかくの再会がこんなで。怪我大丈夫?」
「あ、うん、こんなの全然…それよりなのはは?」
「わたしも平気。フェイトちゃんたちのおかげだよ」

フェイトちゃんも腕に怪我をしている。ユーノ君やアルフさんは大丈夫かな?

「また仮面ライダーに助けてもらっちゃった」

フェイトちゃんのつぶやきで、もう一人の存在を思い出す。…いらいらしてきた。

「今度会ったらお礼言わなくちゃね」
「…なんで」
「えっ?」
「何でもっと早く助けに来てくれなかったんだろう? あの人たちならきっともっと早く助けに来れるはずなのに!」

声が自然に大きくなる。言葉にするとさらにいらいらが増してきた。そうだ、あの人たちがもっと早く来れば、

「あれだけの力を持ってるのに、どこにでも首を突っ込むくせに、何で今回だけ!!」
「なのは!!」
「!!…私はあの人たちが嫌い。あの人たちは私達を子供とだけ見て、こんなに人を助ける力があるのに認めようとしない! あんな奴らに絶対にお礼なんか言わない!!」

心が荒れる。涙が自然に出てくる。そんな私をフェイトちゃんが優しく抱きしめてくれる。あまり感じたことのない優しいぬくもり。



このぬくもりをくれた力を否定する奴らなんか絶対に認めない!!




Side 八神家

八神家のリビング。家主の八神はやて、その隣でヴィータがTVを見ている。その後ろには大型犬…狼姿のザフィーラが横たわり、ソファーの上ではシグナムが新聞を読んでいる。

「はやてちゃん、お風呂沸きましたよ」
「うん、ありがとう」

シャマルが台所から顔を出し、TVを見ているはやてに声をかける。

「ヴィータちゃんも一緒に入っちゃいなさいね」
「は~い」

TVを消し、はやてがシャマルに抱きかかえられる。十歳の少女とはいえ結構力持ちである。

「シグナムはどうしますか?」
「私は…今夜はやめておこう。明日の朝にするよ」

ヴィータが怪訝そうな顔をする。

「お風呂好きが珍しいじゃん」
「そういう日もある」

リビングから三人が出ていく。この間、狼姿のザフィーラはぴくりとも動かない。

『今日の戦闘か?』

ザフィーラがシグナムに念話で問いかける。

「さといな。その通りだ」

シグナムが上着をずり上げ腹部を見せる。そこには細い裂傷と大きな打撃痕が刻まれていた。

『お前の鎧を打ち抜いたか』
「裂傷のほうは黒い魔導師に、打撃痕は仮面ライダーXにやられた。特にXのほうはシャマルに回復してもらっても消えきらなかった」
『仮面ライダー、か』

ザフィーラが立ち上がろうとするが痛みでほとんど動けない。こちらもスカイライダーにやられた傷は回復しきっていない。

「無理をするな。今回一番の重症はお前なんだ」
『ああ、不覚…と言えるのだろうか。完全に負けた。もう一度やっても完全に勝つのは難しい』
「…ベルカの騎士を1対1でここまで苦しめるとは。Xは自分のことを5号と名乗っていた」
『スカイライダーは8号と言っていたな』
「つまり少なくともあと6人は仮面ライダーがいることになるな。…彼らは管理局側と考えていいのだろうか?」

実際のところ、Xとスカイが完全に仲間と分かっているわけではない。それでも管理局と1人でも繋がりがあるのなら全員あると考えるべきなのかもしれない。将とは常に最悪の状況を想定しなくてはならない。

『…スカイライダーは管理局は嫌いだと言っていた』
「何?」
『しかし、子供だけを戦わせるわけにはいかないと…この考え方は管理世界の者の考え方ではないな』

才能さえあれば子供でも戦力に入れる。そんな管理世界の人間に子供だけで戦わせることを忌避するような言葉は基本的に出てこない。それを考えると管理外世界、それも割と就職年齢の高いこの地球出身の者とも思える。

『なんにせよ、次だ。次に会ったときギリギリまで此方の状況を話す。向こうの話も聞く。うまくいけば手を引かせることもできるかもしれない』
「…そうだな。管理局と仮面ライダー。両者を一度に相手にするのは危険だ。…主はやてのことは…」
『わかっている。…奴らは管理局のような凝り固まった正義ではない、様な気がする』

少しシグナムが驚く。

「珍しいな。お前が根拠のない推測を述べるとは」

基本的にザフィーラは実直で寡黙である。推測は言うがそれは大体に根拠のあるもので、今回のように闘っただけで相手の印象を決めつけるかのような言い方はしない。

『何となく、だがな』
「ああ、しかし私もXから同じような印象を抱いた。…彼らも管理局も強い。それでも私たちは」
『負けるわけにはいかない』
「ああ、そうだ」

互いに笑みを浮かべる。風呂場からの声が聞こえる。この暖かい時を失いたくない。ただそれだけを願いながら騎士たちは動き続ける。






Side クロノ

タイミングを失った。

医療局員との話が終わり、病室に入ったら二人が抱き合っていた。

ふむ、二人はそういう関係だったのか。僕だって時空管理局の執務官である。次元世界の中には同性愛は割とあるのは知っている。きっと地球でもよくあることなんだろう。

しかし、グレアム提督をいつまでも待たせるわけにはいかない。

トントンッ

「「!!」」
「そんなに驚かなくてもいいだろ」

内側からのノックで、二人が飛び退く。っていうか僕がいたことにも気付かなかったのか。



二人を連れ、応接間に連れて行く。

「失礼します」
「クロノか。久しぶりだな」
「ご無沙汰しています」

中にいた初老の紳士、グレアム提督は僕の恩師に当たる。今回フェイトの保護観察官を買って出てくれた。

互いに自己紹介をしている。

フェイトの性格や家庭環境などは母さんや僕の報告書に書いてある。優しい子だと言われフェイトが顔を赤くしている。

フェイトの話からなのはの出身地の話に移行し、提督の故郷の話になる。

提督は50年以上前にイギリスで管理局員を救ったらしい。僕自身もそこまで詳しくは聞いていないが、なのはに似ているということはおそらくロストロギアを追っていた局員だったのだろう。

「約束してほしいことは一つだけだ。友達や自分を信頼してくれている人の事は、決して裏切ってはいけない。それができるなら、私は君の行動についてなにも制限しないことを約束するよ。できるかね?」

最後にフェイトに確認を取り、フェイトがそれにしっかりとうなずき会談は終了になった。


「提督、すでに聞き及んでいるかもしれませんが、先程、自分たちがロストロギア闇の書の捜索、捜査担当に決定しました」
「そうか、君がか…言えた義理ではないが無理はするなよ」

そうだ、提督に奴らのことも伝えなくては。

「…提督。奴ら、仮面ライダーについては」
「…私も聞いている。しかし、上層部はその存在に懐疑的だ。なにより虚数空間からの脱出の可能性という部分がそれを助長している」
「やはり増援は望めませんか?」
「私からも上にかけ合おう。とりあえず、そちらにアリアとロッテを行かせることにする」

あの二人を?一瞬顔が歪んだのだろう。それを提督が指摘する。

「あの二人では不満かね?」
「いえ、あの二人、腕は確かなんですが…」
「…いずれ君も上を目指すなら扱いづらい部下を使い切ってみろ」
「はい!では自分はこれで」

一礼して部屋を出る。

あの二人は…ユーノでも生贄に捧げよう。
戦力はとりあえず揃った。これなら闇の書にも仮面ライダーにも負けない。




管理局も自分たちの正義のために動く。



Side 雄介

月村家。朝食でスクランブルエッグを掻き込む。

「つまり昨日はなのはちゃんが帰ってこなかったと」
「ああ、例のリンディさんだったか?その人から電話はあったが何か知らないか?」

どうやらあの後、管理局に回収されて帰ってこなかったらしい。事情を話すとつかみ上げられた。まぁ胸を貫かれたの無視して帰ったのだから怒るのはわかるが。トーストを食べながら、

「まぁ、落ち着いてください。アリシア、なのはちゃんの胸から出てきた光、何かわかる?」
「う~ん、見てないから詳しくはわからないけど、たぶんリンカーコアだと思う。リンカーコアは魔力の源だし、話から考えるとそこから直接魔力を吸収されたんじゃないかなぁ」

魔法は専門じゃない。自分の見たことない現象による結果なのだから専門家のいる方に任せたほうがいい。医療機器も向こうのほうが進んでいるだろう。それに血のにおいはしなかったのだから直接貫かれたわけじゃないのだろう。そこまで説明してやっと放してくれた。卵かけご飯を食し、

「実際、あの場で不用意に動かすのも避けたかったので。たぶん彼らのほうが移動させるのはうまいだろうし」

スカイライダーで時速800Kmなんかで飛ばしたら、運ぶ相手が凍え死ぬ。ライダーマシンもいなかったし。味噌汁を飲む。

「…すまん。取り乱した」
「いえ、それが普通です。それよりアリシア、魔力を奪われて困ることは?」
「…魔法が使えなくなることぐらいじゃない? 別に魔法で何か補助しているわけじゃないだろうし」

いっそのこと魔法が使えなくなればいいのに。シリアルをぱくつきながら考える。どうやら魔力は回復するらしい。

「今度の相手は騎士、かしら? 魔導師とどう違うの?」
「う~ん、…たいした差はなさそうですけど、何か近距離戦が主体っぽいです」
「あら、なら得意分野じゃない」
「大体魔法抜きなら7割くらいで勝てます」

これは予測じゃなく確信。ZXを使えばさらに勝率は上がる。サラダを食みながらシミュレートしてみる。

はっきり言おう。ZXは手数の多さなら仮面ライダーでも随一である。あそこまで豊富な武装を何の溜めもなしに使用できるのだ。クウガや電王のようにフォームチェンジの必要もなければS-1のようにスイッチを入れる必要もない。はっきり言って反則以外何者でもない。

…使わないに越したことはない。出来れば次は話し合いの機会を設けたい。焼き魚をつまむ。

「目的がこちらに迷惑をかけない、世界に影響を出さない、人を殺さないなら黙認してもいいんですけどね」
「経験上そういうことは…」
「ほとんどないんですよね」

スープを啜りながら苦笑い。ライダーの敵は基本馬鹿デカイ組織か無駄に強い個人達である。話し合いが通用したことなんて皆無に等しい。







「ところで五代、いい加減食べすぎだ」
「すいません。スカイライダーは燃費が悪くて」
「それでも食べすぎです。この家の冷蔵庫を空っぽにするつもりですか?」

何もしないでも100Kcal、スカイキック一発に20Kcalである。燃費が悪いにもほどがある。




いつも通り、すずかちゃんの訓練をする。しかし、今日は一つだけ違う部分がある。

「くっ!!」

後ろから不意に襲い掛かるカラーボールを何とか避けるすずかちゃん。時速120kmは出ている。誰かが投げたわけではない。そのからくりは、

「次は赤」
「はいっ!!」

アリシアによる超能力である。同時に訓練を行う際の方式。まず中心にすずかちゃんを立たせ、周りにカラーボールをばら撒く。アリシアは超能力によってボールを操り、すずかちゃんに当てたら勝ち。全部避けられたら負け。時々俺が投げるボールに当たったら当たった人が負け。簡単なルールだが常に集中しながら周りに気を配らなければいけないので存外に疲れる。

この訓練は1対多を想定したものである。すずかちゃんも1対1での訓練には慣れてきたのでやらせてみたがどうやら相当難しいらしい。

アリシアはアギトにはなれないらしい。これはキングストーンが光の力を抑えているためであり、超能力はそこから漏れ出したものである。護身用としてある程度使えたほうがいいので鍛えている。



ポコポコッ

「あたっ」
「あっ」

二人ともほぼ同時に俺の投げたカラーボールに当たり、地面に大の字になる。…大体20分前後。始めたころはほとんど持たなかったことから考えればだいぶ持つようになった。



「すずかちゃん、なのはちゃんからお電話です」

訓練が終わり、しばらくするとファリンさんが携帯電話を持って走ってきた。物をもってファリンさんが走る。当然、

「あっ!!」

蹴躓いて、予測していた俺とすずかちゃんに救出される。ちなみにアリシアはまだ慣れていないためとっさに動けない。


「もしもし、なのはちゃん…うん、そうなんだ! …それで?うん…うん、わかった。アリサちゃんと一緒に行くね。え?…そう、そっちも了解」
「遊びの誘いかい?」
「お引越しです」
「はい?」




****************************************


「はじめまして、って言うのはなんか変かな」
「ビデオメールで何度もあってるもんね」

少女達の邂逅を微笑ましく…………見れない。今俺の顔は盛大に引きつっているだろう。その原因がこちらを向く前に直さなくては。

場所は移動してマンション。ここに、こ・こ・に!!! 時空管理局の奴らが引っ越してくるらしい。

どうやらなのはちゃんは引越しのお手伝いを頼みたいそうだ。恭也さんに頼めよとも思ったが、どうやらやたらに器用な面を買われたらしい。

来てみたら、フェイトとアルフがいた。それはいい。しかし、なんですぐ後ろに艦の最高責任者であろう、あの緑の艦長がいる? あれか?艦長ってのは艦にいなくてもいいのか?


「フェイトさん、お友達?」
「「こんにちは」」
「こんにちは。アリサさんとすずかさん…そちらの方は?」

こちらに目が向く。顔は誤魔化せているだろうか? …よく考えたら大丈夫だろう。敵を騙して再改造させた男、敵地に乗り込んで改造させた男、口八丁で無罪を勝ち取る弁護士、前科八犯の結婚詐欺師、千の偽りと万の嘘を使う亀の因子が入っていた。まぁ、嘘がつけない正直者の因子も多いが。

「はじめまして、五代 雄介といいます。なのはちゃんに引越しの手伝いで呼ばれました。こっちは妹のみのりです。ほら、いつまでも後ろに隠れてないで」
「は、はじめまして…」

アリシ、みのりを前に押し出す。これは布石。まずこちらが家族であることを認識させれば、それが死人(アリシア)だと向こうはそう簡単に認識できないだろう。


「ご丁寧にどうも。男手が足りなくて困っていたんです」
「いえいえ、困ったときはお互い様とゆうことで」

定例句に定例句で返す。

「はじめまして、フェイト・テスタロッサです」
「!!…はじめまして五代 みのりです」

目に涙が溜まっている。会わせられてよかった。あの顔だけで危険を冒す価値がある。

「みんなでお茶でもしない?」

他の人に気付かれる前にすずかが提案する。

「えっ?でも…」
「いってらっしゃい。後は大人の仕事だから」
「それなら家のお店で」

こっちを見るみのりを送り出す。どうやら翠屋に行く様子。

「出来れば挨拶に私も行きたいのだけれど」
「後は私が見てるんで艦…リンディさんも行っていいですよ」

奥からアホ毛の生えた女性が声をかけてくる。…誰?




みんなが行った後、とりあえず自己紹介しておく

「五代 雄介です」
「エイミィ・リミエッタ。エイミィでいいよ。しかし、女手男手一つづつじゃ終わりそうにないねぇ。クロノ君が来るまで待つしかないかなぁ」

家具はすでに入っている。問題は大量の小物類である。

さすがに引越しに局員を使うことができなかったらしい。

「出来てない引越し業者ですね」
「あはははは、人手不足らしくてね」
「エイミィ、遅くなった。…誰だ?君は」

げぇぇ、執務官!! おっと表情は固定と。

「彼はなのはちゃんに頼まれて手伝いに来てくれた五代さん。五代さん、こちらはさっきのリンディさんの子供のクロノ君」
「…よろしく」
「よろしくお願いします」


とりあえずエイミィは服関係を、俺とクロノは食器関係を整理し始めた。しっかし、このマンション、一室がでかいな。


「「……」」

無言の場が重い。話すことがない。延々と器関係を棚にしまい込む。

「あ~、五代さんは日頃、何をやっているんだ?」

どうやら向こうも気まずかったらしい。

「今は大学で学生兼研究員、かな。他に喫茶店でバイトもしてるけど」
「そうか…」
「「…」」

続けらんねぇ。とりあえず無理矢理つなげてみるか。

「フェイトさんってさ」
「ん?」
「やっぱり、聖祥に、通うのかな?」

大皿を一気に運ぶ。

「ああ、本人には秘密なんだが、もう母さんが手続きしたらしい」
「…うちにも同じ年の妹がいてな」
「うん?」
「今は日本語の読み書きを教えていて、学校には行ってないんだ。本当は3学期になってから通わせようと思っていたんだが、これを機に行かせてもいいかなぁと思って」

みのりを聖祥に通わせることでネックになりそうなことは腕に書く呪文である。これは手首に書き、リストバンドで隠した。…プールとかどうしよう?油性ペンで出来るのだろうか?

「それはいいな。フェイトも知り合いがいれば楽だろう」
「なのはちゃんたちがいるだろう」
「一人より二人、三人より四人さ」

それを皮切りに少し話せたと思う。途中でエイミィも加わった。

話してみて分かったことは、クロノは職務に忠実で、真面目な奴ということ。誰かに似てるな。…一条さん?いやいや彼はもっと頭が柔らかい。氷川 誠?ああ、しっくり来る。彼もあれで頭が固い。つまりこいつも出会いがよければ敵にならなかったのか?

エイミィにからかわれ怒っているところを見ると、敵であることがなんともいえない。



「道具の罪?」

話していると、いきなり変な質問が出てきた。

「たとえ話さ。危険な道具を使って周りに迷惑をかけた場合、その道具には罪があるのかっということだ」

変な話だ。普通に考えれば道具は道具。そんなものに罪が問える訳がない。

「普通に考えて使っている奴が一番悪いだろ」
「ああ。…しかし、もし道具に意思があったら、道具の意思が所有者を離れさらに犯罪を起こしたら、どうなると思う?」
「ちょっと、クロノ君」
「…急に話がファンタジックになったな」

昨日のことに関係しているのか?

「あ~、その場合は道具の意思を一個人として扱うかによるんじゃないか?」
「道具を道具と見るか、人と見るかということ?」
「ああ。意思を認めて人の法で裁くか、意思を認めずただ破棄するか。それぐらいしかないだろうな」

まぁ、この場合、法で裁いても、そうでなくともその道具の末路は変わらない気もするが。

「人としてみた場合に問題になるとしたら、その意思が本当にその行動をしたくてやったのか、ということだ。人としてみれば脅されたとかの理由も入ってくる。道具としての問題は…意思のあるものの意思を黙殺することはかなり酷いことということぐらいか」

ギルスなんて酷いもんだった。いきなり遠距離から包囲して銃撃。っていうか、あの時犯罪らしい犯罪はしていないはずだ。なぜに撃たれたんだ?

「そうか」




「それで何の話だったんだ?」
「…ちょっとした悲劇についてさ」








ただ穏やかな日々。そんな中でも人々の関係は変化する。良くも、悪くも。



あとがき

どうも作者のGです。遅くなりました。理由は・・・分かる人には分かることです。発売日。すいませんでした。

さて、前半ですが。・・・作者は暴走したようです。なにこのなのは? まぁここがなのちゃん(天使)とNanohaさん(冥王)の分岐点ということで。作どうやら自分は何が何でのなのはをすさまじき戦士にしたいらしい。
猫が来ます。特に書くことなし。
朝食風景。特に書くことない。

後半です。特に書くことなし。主人公とクロノが少し仲良くなっただけです。道具の話は持論です。存分に突っ込んでくれ。


原作辿っただけ。突っ込みどころ満載。早くバトルが書きたい。
言いたいことはたくさんあるけど、とりあえず今回はつなぎということで。

さぁ、クライマックスでヒーローしてくるか






[7853] As第4話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/08/30 17:42
なんのことはない昼時。俺はコップを磨いていた。

店には誰もいない。


・・・閑散としすぎている。いくらなんでもおかしい。おやっさんやみのりもいない状況がありえるのだろうか?

それでも違和感なくコップを磨き続ける自分が一番おかしいのかもしれない。


ふいに後ろに気配が生まれる。

振り向くとそこにはチューリップハットを被った丸メガネの中年がいた。

「…いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

とりあえず冷静に対応してみる。

「…ディケイド」
「ディ、ケイド…?何だ、それは?」

尋常じゃない雰囲気に口調が変わる。

「奴は全ての次元の破壊者。気をつけろ。奴はここにも来るかもしれない」
「おい、なにを言っている?ディケイドってのがその破壊者の名前か」
「お前はすでに会っているだろう!!思い出せ。電王の記憶を掘り下げろ!!」

電王の記憶?……!!

「ガッ!ぐぁぁぁぁぁ…」

一瞬、脳裏に電光が走り、強烈な頭痛が起こる、あまりの痛みに床に転がる。

これがディケイド…俺と、同じ…力。

「お前はディケイドに近しく、それでいてまるで別のものだァ!お前なら確実に奴を抹殺できる。いいか、忘れるな。奴こそ全て世界への害となる存在!!奴こそ倒すべき存在!!仮面ライダー……よ!!」

急に立ち上がると、後ろに歪んだ銀の幕が生まれる。俺を指差しながら叫ぶ。
その姿が銀幕に消えていく。

「おい、まて!ディケイドってのはなんだ!それに最後の名前…ってなんのことだ!!」

俺の叫びに答えるものはいない。同時に俺の体も銀幕に飲み込まれる。





「ユースケ、どこに行ってたの?」

目の前が急に明るくなり、気付いたらいつものポレポレにいた。
思い出せない大切なことを聞いたはずなのに。覚えているのはディケイド…電王の記憶にある俺の中にいないライダーのことだけ。




平和なときに見た白昼夢。



第4話 言葉

Side 雄介

道場内の冷たい空気が俺の動きに合わせ動く。

赤心少林拳、梅花の型。

S-1に変身できるようになってから、改めて理解した、この型の極意。冬の身を切る冷気から命を守る梅の花の形意拳。

沖一也の記憶をより鮮明に思い出したためだろう。今では完全に使いこなせる。その結果、

「ハアァァァァァ!!!」
ギギギギギィィィィィン!!

襲い来る御神の剣戟が全てはじける。




「いやぁ、急に強くなりすぎだよ。つい最近まで私と同じくらいだったのにさぁ」
「真面目に修行していた結果だろう。よし、今日からもっと厳しく…」
「ちょっと、恭ちゃん!!」

珍しくポレポレに俺のお客がやってきている。先ほどまで道場で一緒に試合をしていた恭也さんと美由希さんである。おやっさんが妙に喜んでいる。



「ほぉ、つまり二人共、あの翠屋のお子さんか。美由希ちゃんはお店を継ぐのかい?」
「あ、あは、あはははは…未定です…」



なにやら和やかに…美由希さんが冷や汗をたらしながら話している。長女なんだから継いでも…長男である恭也さんへ気を使っているのか?


「それで、なのはちゃんはどうですか?」
こそこそと恭也さんと話す。

「大きな変化は見られないな。そっちはどうだ?」
「あれ以降まったく音沙汰なしですね。こっちで行動を起こしてくれればすぐに判るんですが…別の次元、別の世界で行動を起こされるとお手上げです」

お手上げポーズ。レーダーハンドでも使用するか?しかし、あれ、半径10km四方しかカバーできないものだからなぁ。


「それで今日なんて、試合をしてみたら急に強くなってて」
「ははははは。なんせ雄介は二千の技を持つ男だから」
「でも私だって剣術家の端くれ。次は絶対に勝ちます!」
「いよっ!美由希ちゃん、かっこいい」
「いえいえ、それほどでも」


「向こうの出方待ちか」
「…管理局に直接殴り込めば少しは情報が取れるかも…」

真っ黒い考え。実際のところ管理局側も出方待ちである可能性も高い。

「落ち着け。まだ焦る時間じゃない」

…どっかで見たポーズだな。それはあなたのライバルの台詞でしょ。声的な意味で。…電波受信中。



「そうだ、私だってやれば出来る。料理だって明日から頑張れば、きっと」
「頑張ればきっと何だって出来るさ」



「そういえばフェレット君はまた来たんですか?」
「ああ」
「またペット扱いか。可哀想に」

大きさとは力である。大きいと重いはイコールであり、重いと攻撃力も上がる。小さいものにとって大きなものを相手取るのは、それだけでかなりのプレッシャーになる。ジークに小さくされたタロウズもきつかった。そんなのを毎日やっていたら胃に穴が開く。そんなやわな胃は持っていないが。

「確かにいくら動物でも、しっかりと意思を持ったものをペット扱いするのは心苦しいな」

んっ?う~ん?なんかおかしいな。

「…言っていませんでしたっけ?彼、人間ですよ」

ピシッ!!

コーヒーに口をつけようとしていた恭也さんの動きがピタリと止まり、空気が凍る。そのまま錆付いたロボットの様にゆっくりとコーヒーカップを戻す。

「HAHAHA。ほんとにファンタジックだ。人にも変身できるのか?あのフェレット君は」
「いや、だから、フェレットが人に変身出来るのではなく、人がフェレットに変身しているみたいですよ…」

ピシッ!!

手元のコーヒーカップのもち手がはずれる。空気が一気に真冬に!!恭也さんから一気に殺気が!

おやっさんと美由希さんは・・・気付いてない!!なんて静かな殺気なんだ。こういうところを見ると、まだまだ自分は甘いと思える。殺気のコントロールは難しいからなぁ。

「そうか…つまり、あの…獣は…」
「恭也さん、怖いです。なにをそこまで怒っているんですか?」

こっちに飛び火してきそうだが聞かない訳にはいかんだろ。

「…奴は今なのはの部屋で寝起きをしている」
「はぁ…」
「つまりなのはの着替えや寝顔を覗いている可能性がある!」

へぇ、あの少年はそんなところに住んでいるのか。割と誠実そうに感じたが、

「しかも、なのはに、ときどき美由希や母さんに風呂に入れられている!」

評価を修正すべきか?いやいや待てよ。

「恭也さん、彼はたぶんなのはちゃんたちと同年代ですよ。10歳くらいなら銭湯とかはどちらにも入れるんじゃないですか?」
「…いや、まぁ、俺としてもそっちはあまり大きな理由ではないんだ。孔子も男女15にして席を同じくせずと言っているしな」

あれ?怒っている理由はシスコンではないと。

「俺が怒っているのは、そんな覗きみたいな方法で温泉のとき忍の肌を見たことが許せん!!」
「あ~、なるほど」

そういえば温泉のとき、浴衣姿のなのはちゃんが胸に抱いていたなぁ。当時は気にも留めていなかったけど一緒に入ってきた後だったんだな。





「その時、温泉に一緒に入った人いました?」
「…たしか忍、美由希、ファリン、なのはにすずかちゃんとアリサちゃんだったか」





ごめん少年。すこしむかついた。

「奴とは一度拳で語り合わなければ」
「剣じゃなくて拳ならいいんじゃないですか。俺は止めません」



「いずれは翠屋を全国に!!」
「おぉ、夢は大きく全国チェーン化!!うちも負けていられないな」



「ふぅ、落ち着いてきた」

五代雄介ブレンドを飲み、溜飲を下げる。自分で淹れたなかで最高の出来だ。時計を見ると時間が迫っている。

「すいません。俺、ちょっと病院に行かなくちゃ…」
「ん?怪我、ではないな。病気、ってタマでもなかろうに」
「結構酷いですね。ちょっと知り合いに呼ばれているだけですよ」
と、その前に、



「「…」」



仲間に、じゃなかった。何か言いたそうにこちらを見ている。
「いい加減、構ってあげないとかわいそうですよ」
「なら行く前になんとかしてくれ。まったく、ボケばかりだと収拾がつかんな」







海鳴大学病院。

ロビーに入るとそこには白衣の青年が待っていた。

「お久しぶりです、椿さん」
「ああ、五代。すまんな、忙しい最中に」


彼は椿秀一。クウガの世界でもお世話になった医師である。あっちでは関東医大病院で法医学士をやっていたが、今の彼は海鳴大学病院に勤めている。マッドサイエンティスト的な部分はなくなったが、女好きな性格なのは変わらない。

彼と知り合ったのは、3ヶ月くらい前である。ちょうど緑川教授の研究室にいたときに、彼が入ってきた。なんでも義手や義足などのリハビリについて権威から聞きたいそうだ。緑川教授はその道では最も先を進む、自他共に認める第一人者である。

実はアリシアの体の精密検査も彼に頼んでいる。見せてキングストーンや賢者の石が見えても彼なら大丈夫と踏んだからだ。幸い、レントゲンにはどちらも写らず、まったく問題ない健康体だといわれた。

よくよく思い出すと賢者の石については、日ごろは体中に拡散していてレントゲンには写らないものだった。キングストーンは…まぁ、奇跡でも起こしたんだろう。



そのまま病室に通される。そこには一人の女医がいた。

「椿君、彼は?」
「こいつは緑川教授の一番弟子の五代です。五代、こちらは俺の先輩に当たる石田医師だ」

一番弟子って、そんな大層なものではないんだが。立ち上がり、握手を求める。

「はじめまして。海鳴大学病院神経内科の石田幸恵です」
「緑川教授にお世話になっています、五代雄介です」



「今回お前を呼んだのは…まず、これを見てくれ」

一枚の紙を渡される。これは…カルテ?

「いいんですか?」
「個人情報保護の観点から名前は伏せている。とりあえず読んでくれ」

患者名・・・●●●●●(塗りつぶしてある)
病名・・・不明
症状・・・原因不明の脚部の麻痺、および歩行不能、突発的発作

「これは!!…少しずつ麻痺が広がっている?!」
「そうなの。…その子は私の患者で、数年前から診ているけど…。判らないの、何一つ!なにが原因なのか!なにが悪化の要因になっているか!!」

少しずつ声が大きくなる。己の力不足を嘆いていることが手に取るように分かる。しかし、これだけでは俺もなんとも言えない。

「ごめんなさい、いきなり大きな声を出して…」
「いえ…悪化し始めたのは2ヶ月前、10月くらいからですか?」
「ええ、それまで一人暮らししていた彼女にやっと家族が出来て、すごい幸せそうだったのに」

今は車椅子での自宅療養、か。石田医師は泣き崩れはしないが、必死で涙をこらえている。

「…なにか分かるか?」
「…いえ、聞いたこともない症例です。…それを聞くために俺を呼んだわけではないでしょう?」

医学が専門でないことは向こうも分かっているはずだ。

「相変わらず頭の切れる奴だ。まぁ、緑川教授をおして万能の天才と言わしめたお前ならもしかして、とも思ったんだがな」

机の中から新たな書類が出てくる。

「子供用の人工臓器?」
「そうだ。これを…」
「待って。担当医としてここは私に言わせて。…今の状態を鑑みて、少しでも悪化したら入院に移そうと考えているわ。でも、麻痺の進行から考えて、内臓にも影響が出る可能性も捨てきれない」

拳がギリギリと音を立てそうなほど握りこまれている。苦渋の選択か。人工臓器は工学技術を用いた文字通りの人工臓器、バイオテクノロジーを用いた再生臓器、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた人工臓器の三種類がある。iPS細胞のものはまだ研究段階であり、この場合除外する。工学分野でもバイオ分野でも緑川教授なら可能である。

「そのために緑川教授に、なるべく体に影響の少ない子供用の人工臓器の開発をお願いしたいの」
「緑川教授は多忙な上、さまざまな方面から依頼が来るだろう。正直、横紙破りなんてしたくはないが」

二人とも頭を下げてくる。俺に下げられてもなぁ。

「ところで、何で俺なんですか?直接頼みに行けば…」
「椿君がこの前突入したのが問題になってて…」
「面目ない」
「…わかりました。教授に話してみます」

二人とも安心したようだ。

「ありがとう、五代君。…私も出来うる限りの手を尽くしてみるわ」



病室を出る。廊下のベンチに腰を下ろしていると、急に目の前に缶コーヒーが現れる。椿さんがおごってくれた。

「すまんな。厄介事を押し付けちまって」
「いえ、これぐらいなら。それに」
「それに?」
「教授はこの手の問題に本当に真摯に取り組んでいるから。たぶん子供の命がかかっているなら喜んで作ってくれると思います」

ホットの缶コーヒーを手の中で転がしながら話す。

だからこそ彼は仮面ライダーを作るときに脳改造される前に逃がしたんだ。彼が真に望んだのは人類の発展。改造人間を作ることではなかった。


ロビーまで歩くと、見覚えのある姿を発見した。彼女はたしか、

「はやてちゃん」
「はい?……あっ!すずかちゃんのお迎えの人」

…変な覚え方されてるな。

「ご、五代。知り合い、なのか?」
「あ~、知り合いの知り合いです」

あれ、椿さんの顔が妙に引きつっている。

「あれ?椿先生、お久しぶりです」
「あ、ああ、久しぶり」
「え~と、たしかすずかちゃんに聞いたはず・・・そうや!小野寺ユウスケさん」
「なんか微妙に違う。五代雄介だよ」

どうやら連れが受付に行っているようだ。ポレポレに戻らなければいけないので挨拶だけで立ち去る。なかなかいい子だ。

バイクにまたがって、ヘルメットを被る。

「雄介」
「彼女が、ですか?」
「守秘義務、としか言えない」
「そうですか…では、また」
「そうだ!みのりちゃんの健康診断の結果だが」

ギクリ!…なにか見つかったか?!

「問題なしだ。いつでも学校に通えるぞ」
「そう、ですか。ありがとうございます」

走り出すと後ろで声が聞こえる

「雄介!俺は諦めない事、これさえ出来ればどんな病気でも治せると信じている!!だからそっちはそっちで頼んだ。」


椿さんはあっちでは会う度に体のことで心配をかけた。また未確認生命体の被害者の司法解剖でいつも悲しい顔をしていた。

そんな彼がこっちでは命を救おうと必死に頑張っている。恩返しできるまたとないチャンスである。

ポレポレに向かうつもりだった。でも先に城南に向かおう。

一路、大学へ。




Side なのは

「ねぇ、なのははあの人たちのこと、どう思う?」

今日はフェイトちゃんが転校してきた日。アリサちゃん、すずかちゃんと遊び、二人が帰った後、部屋で唐突に聞かれた。

「あの人たちって、闇の書の?」
「うん。闇の書の守護騎士たちのこと」

細かいことは私よりクロノ君たちのほうが詳しいだろう。たぶん聞いているのは印象などについてだろうけど、

「えっと、私は急に襲い掛かられて倒されちゃったから…よく分からなかったんだけど。フェイトちゃんはあの剣士の人と何か話してたよねぇ?」
「うん、少し不思議な感じだった。うまくいえないけど悪意みたいのは全然感じなかったんだ。アマゾン、とは少し違うかな。彼はもっと純粋だったと思う」

思い出すのは緑の体躯、赤い瞳、鋭いキバと爪。一度だけだが共闘したこともあり、他のライダー、特にX、スカイライダーに比べれば幾らか反感は少ない、と思う。

「そっか。闇の書の完成を目指す目的とか教えてもらえればいいんだけど…話ができそうな雰囲気じゃなかったもんね」
「強い意志で固めちゃうと、周りの言葉って中々入ってこないから…私もそうだったしね」

半年前。私の前に現れたフェイトちゃんもそんな感じだった。

「私は母さんのためだったけど、傷つけられても、間違ってるかもって思っても、疑っても、それでも絶対に間違ってないって信じてた時は、信じようとしてた時は誰の言葉も耳に入ってこなかった。だからぶつかり合った。なのはとユーノ、クロノ、V3、アマゾン」

部屋の中に沈黙が流れる。フェイトちゃんの言葉の中で出てきたV3。他のライダーよりも純粋な力による暴力。今でも思い出すと身震いする。ユーノ君曰く、あの時私は殺傷設定で砲撃していたらしい。…だからなんだっていうのだろう?結局、あの一撃だって、少ししかダメージが通らなかった。彼らの前じゃ非殺傷設定でも殺傷設定でも変わらない。

「でも、言葉をかけるのは、思いを伝えるのは絶対無駄じゃないよ。母さんのためだとか自分のためだとか…あんなに信じようとしてた私もなのはの言葉で何度もゆれたから」

言葉が届いていてくれたのは純粋に嬉しい。当時は何度もぶつかり合った相手とこうして笑いあえることがすっごく嬉しい。

「話を聞いてもらうためにぶつかり合うなら私、頑張れると思うんだ。これを教えてくれたのはなのはの強い心だよ」

そうだ。今、こうしてフェイトちゃんと笑いあえるように、彼女たちとも、きっと笑いあえる。そのためにお話を聞かせてもらおう。




「なのは」
「なに?」

フェイトちゃんは帰る直前、振り返って声をかけてきた。真剣な目がこちらに向く。

「なのははこの前、仮面ライダーのことが嫌いって言ったよね」
「…うん」
「…でも私は……」

それ以降の言葉が出てこない。でも…フェイトちゃんの言いたいことは分かっている。フェイトちゃんはあいつらのことを信じたいんだ。

「…ごめんね、なんでもないんだ。・・・なのは、また明日」

結局、何も言わずに帰っていくフェイトちゃん。…分かってはいたんだ。フェイトちゃんにとってあいつらとの信頼関係はそのまま母親との絆につながるから。


でも、それでも私は…










Side 雄介

さらに数日後。

普段なら歓迎すべき穏やかな日々も、事件の発端に関わってしまっていては、嵐の前の静けさにしか感じられず、苛立ちとともにわずかな焦りが出てきた。

もしかしたら管理局が既に解決した?むしろそれなら構わない。さっさとこの世界から消えてくれれば言うことなしだ。

自分の知らないところで事件は進行している?これではかなり厄介だ。今はライダーホッパーでの探索のみ。それ以外の探索方法も考えなければいけない。さらに、止めようのない状態になっていたら目も当てられない。


アリシア(Ver,みのり)と買い物中にグダグダ考えている。

「なべフェア中。白菜、長葱、舞茸、豆腐が半額。…ユウスケ、今日はすき焼きがいい」


そういえば、アリシアの入学についてだが、今週中に入試をやることになった。それでも結構ギリギリだったらしく、来学期から通うようになるそうだ。やはり年の瀬はどこも忙しいなぁ。

フェイトが今学期から入ったらしいが、管理局よ。どんだけ先方に無理をさせたんだ。もう2学期も終わり。こんな中途半端な時期に入れるのはかなり大変なはずだ。


「ユウ……、…スケ。ねぇったら」
「ああ、ごめん。…すき焼きか。なら肉を買わなければ。行くぞ、みのり」
「うん!!」

左手に買い物カゴ、右手にアリシアの手を握り、半額セールでにぎわう店内を掻き分ける。動きながら白菜、長葱、舞茸、豆腐、シラタキ、牛蒡に春菊をカゴに投入。こっそり春菊を棚に戻そうとするアリシアの手をガードしながら精肉コーナーに差し掛かる。

ん?前方より近頃妙にエンカウント率の高い少女を発見。

「あれ、五代さんやん」
「やあ、こんばんは」

どうやら八神家も今日は鍋らしい。…とりあえず後で豚バラ肉と白身魚を同時に使う鍋のレシピを聞こう。

「はやてちゃん、肉を買うときはもっと台から離れるべきだ」
「?なんでなん?」
「精肉コーナーの明かりは肉の色をよく見せるように特殊な色の光を発している。少し離れたほうが肉の新鮮さが分かりやすい」

と、買い物の豆知識を披露してみる。その間、アリシアは俺の後ろにコソコソ隠れている。

「ん?そっちの子は?」
「ああ、妹のみのりだ」
「みのりちゃんかぁ。はじめまして、八神はやていいます」
「は、はじめまして」

二人が握手する。仲良くなれるといいな。まだ学校に行ってないアリシアは友達少ないからなぁ。

「あの、はやてちゃん…」
「おお、そうやった。五代さん、こっちはシャマル。私の家族や」
「はじめまして、お話はすずかちゃんから聞いてます」
「ご丁寧にどうも。こちらこそ、はじめ…まして?」

相手の顔を見て、何かが引っかかる。あれ?どっかで、しかもつい最近会ってる?

「…すいません。つい最近どこかで会ったことありませんでしたっけ?」
「えっ?え?これって…」
「「おお」」

シャマルさんが酷く狼狽し、はやてちゃんとアリシアが歓声を上げる。

「これってあれですか?すっごいテンプレートな誘い文句、いわゆるナンパですか?キャー、はやてちゃん、どうしましょう?」
「ちょっと五代さん、そういうのは私を通してほしいわ」
「ユウスケ、ファリンさんというものがありながら、そういうのはどうかと思う」

自分の言った言葉を思い返してみる。…ああ、なるほど。ナンパっぽいなぁ。とりあえず誤解は解いておこう。

「違うぞ、みのり。ナンパっていうのはこうやるもんだ」

シャマルさんの手をとり、目線を合わせる。

「美しい…貴方のような美しい女性がこの世に存在するなんて…まさにこれは一つの…一つの…え~と」
アリシアがクイクイと袖を引っ張る。
「奇跡」
「そうそう、それそれ。まさにこれは一つの奇跡だ」

風間語録を引用、アレンジ。ナンパならこれぐらいしなくてはな。化粧道具は持っていないので、アルティメットメイクアップは出来ないが。

「あうあうあ~」
「おお、シャマルが骨抜きや。最後が微妙やったけどやっぱ決まってる人がやるとかっこええなぁ」

シャマルさんが真っ赤になって床に座り込んでしまった。やりすぎたか?それにしてもこの人、美人なのに耐性がないなぁ。




「!!」

ホッパーの映像に一瞬、赤い影と青い影が映った。都市部上空。結構離れているが、管理局はまだいない。チャンスだ!今行けば話が聞ける可能性もある。

ちょうど、今日、八神家にすずかちゃんが訪問する話になっている。

「ちょっと、ごめん」

携帯が鳴ったように見せかけ、話の輪から離れる。少し時間を空け、戻って話を切り出す。

「悪い、みのり。急用だ。先に帰っていてくれるか?夕飯は…ファリンさんに連絡しとくから月村家で食べてくれ」
「え~…すき焼きは?」
「また、明日」
「む~」

むくれてしまった。困ったな。早く行かないと見失う。実際、彼らのことを言えば、聞き分けのいいアリシアなら分かってくれるだろうが、どこに管理局の耳があるか分からない現状、ポレポレや月村家以外で言うのは憚られる。

「あの~…」
「ん?」
「それやったら、家で一緒に食事しませんか?今日はすずかちゃんも来るし」
「…お願いしてもいい?ちなみに、みのりは春菊が大好物だ。たっぷり入れてあげてくれ」
「ちょっ、ユウスケ」
「はい、わかりました」

じゃあ、と手を挙げ、素早く店を出る。既にライダーマシンはエンジンに火を入れ、新たな姿に変わっていた。


Vマシーン。仮面ライダーS-1の愛機であり、小型の太陽ともいえるマイクロソーラーシステムにより単体で2000~3000馬力をたたき出す化け物バイクである。馬力のみならスカイライダーのスカイターボ、BLACKRXのライドロンをも超える可能性を秘めている。しかし、最も大きな特徴はVジェットに変形したときの最高時速である。各ライダーマシン中最速である1340km。超音速。弱点は移動にしか使えず、オフロードに弱いことである。


これなら間に合う。…ただし乗っている俺の体がこのままでは持たない。





変身だ。


両手を目の前で交差させる。

「変身ッ!!」

梅花の型を左から右へ、
左手を上に、花を象り、前へ回転しながら突き出す。

腰に現れたサイクロードのカバーが開き、風車が回転、発光する。

「仮面ライダーS-1(スーパーワン)!!」


Vマシーンのボタンを押す。レーダーが素早く対象の位置を映す。

「西へ20kmか」

別のボタンを押すと、ハイスピードウイングが展開され、後部にコンピューターアイ、ダブルジェットが現れる。
Vジェットに変形完了。



行くぞ!なんとしても管理局より早く接触しなければ。





NoSide

暗い夜空を翔ける二つの影。ヴォルケンリッターのヴィータとザフィーラである。

「早く帰らねぇと、夕飯に間に合わねぇ」
「…そうだな。主に心配をかけるわけにもいかない」

少女と狼は速度を上げ、都市部上空を通過す、

「待っていたぞ」
「!なっ!!誰だ?!」
「仮面ライダーか?」

空中、ヴィータやザフィーラが飛ぶ少し上空にその者は静止していた。

銀のボディー、赤い瞳。またがるは青いバイク。仮面ライダーS-1である。

バイクはVジェットからブルーバージョンへ変化している。Vジェットに比べ、悪路に適し、水陸両用、機動性重視のブルーバージョンは短時間なら空を飛ぶこともできる。


「てめぇ、くら「待て!ヴィータ!!」っとと」

先制の一撃を与えようと鉄球を取り出した瞬間、ザフィーラから制止の声がかかる。

「仮面ライダー、で間違いないか?」
「ああ」
「我々に戦う気はない。できれば話し合いの場を持ちたい。ついてきてもらえないか?」

話し合いの場をもつなら将であるシグナム、ブレインであるシャマルのいる状態で話したい。ザフィーラはそう考えていたが、

「断る」
「なに?」
「話し合い自体に異論はないが、お前たちをそこまで信頼はしていない。向かった先で罠でも仕掛けられていたら洒落にもならないからな」

S-1には4人がかりで襲われても負けない自信がある。しかし、罠にはめられれば、負ける可能性もないとは言い切れない。

「ふざけんな!私たち騎士がそんな卑怯な真似するか!!」
「…この場で長時間話すのは管理局に見つかる可能性があるので避けたいのだが」

S-1はクイッと一つのビルを指差し、さっさとそこに降りる。さっさとついてこいと言わんばかりである。実際はそろそろブルーヴァージョンが空中に浮いていられなくなるところだったからである。

(これでついてこないなら仕方ない。交渉は強気に(By北岡))


「ヴィータ、お前は先に戻っていろ」
「何言ってんだ、ザフィーラ。あいつだって信用できねぇ。管理局とグルかもしんねえじゃねえか!私も行く」

と言ってヴィータが先にビルの屋上に降りる。小さくため息を吐き、ザフィーラも屋上に降り立つ。






・・・


「…つまり主のために魔力を集めている。魔力が目的なので殺す気はない。集め終わったら静かに暮らしたい。そんなところか?」
「そうだ」
「俺としては人を殺さないで、且つこの世界に大きな影響を与えないなら介入する気はない」

互いの立ち位置の確認、及び互いの要望を言う。

「こちらとしては、敵は管理局だけで十分だ。出来れば介入は遠慮願いたい」
「さっき言った事と俺の知り合いや仲間に害を与えなければ介入しないことを誓おう」

基本的な交渉はザフィーラが行っている。本来、このような役目はシャマルのほうがむいているが、なぜか先ほどから念話が通じないのだから仕方ない。シグナムもこちらに向かっている。

「管理局にいるものは…」
「死なない程度なら好きにしてくれ。特に茶髪で白服の少女はどうせなら二度と魔法が使えないぐらい搾り取ってくれ」
「…既に彼女からは一回蒐集しているから無理だ」
「ちっ」

割と本気で言っているS-1。彼女が戦場からいなくなるだけでだいぶ肩の荷が下りるのだから当然である。

「…お前ら、仲間じゃないのかよ」
「仲間じゃないな」

交渉にまったく首を突っ込まなかったヴィータがここで口を挟む。子供の疑問にはしっかり答えを提示してあげるのがいい親の条件らしい。つい最近よんだ育児書でそう学んだS-1。
とりあえず頭を撫でながら、

「いいか、少女。仲間とは同じ道に立っているもののこと。違う道を共に立って行くのが友達だ」
「少女じゃねぇ!餓鬼扱いすんじゃねぇ!!」

振り回されるハンマーをスラスラ避けていく。その光景を見て、ザフィーラがまた一つため息をつく。



「では、交渉成立でいいか?」
「ああ、ん?…まったくこちらが話し合いをしているときに無粋な奴らだ」
「なに?こいつらは…管理局か!!?」

周りに一斉に円状の魔法陣が展開され、そこから十数人の魔導師が現れる。それだけではなく、さらに遠く、半径約1kmで円状にこちらを包囲するものが数十人。

「でもチャラいよ、こいつら。返り討ちだ!!」

意気込む二人を他所にS-1は上を向いている。S-1のヘッドシグナルはスーパー触角、Sアイ、SSSの情報から最も危険なものを正確に導き出していた。

武装局員が一斉に離れる。驚くヴィータ。ザフィーラは冷静に周りを観察、上を見た瞬間、目を剥く。

「上だ!!」

上空。クロノを囲む無数の青い剣弾。

「スティンガー・ブレイド、エクスキューション・シフト!!」

剣が一斉にビルの屋上。正確には騎士たちへと向く。

「行け!!」

S2Uが振り下ろされると同時に騎士たちへと殺到する剣の群れ。


ドガガガガガガッガガガ!!!!

一瞬、ザフィーラが障壁を張ったように見えたが、すぐにそれも煙で見えなくなる。

「少しは、通ったか?」

煙が晴れていく。



と同時に飛び上がる3っつの影。ヴィータ、ザフィーラ、S-1である。しかし、最もクロノを驚愕させたのは、

「馬鹿な!!無傷だと…」

自分の最大の攻撃を完全に無効化されたことに決して小さくない衝撃を受ける。

「お、おい、お前。大丈夫なのか?」
「あの程度なら問題ない」

話の流れから無効化したのはS-1である。自分の最大攻撃をあの程度扱いされたクロノの瞳に怒りが浮き出る。

≪武装局員の配置完了!あと、そっちに力強い援軍を送ったよ≫
「援軍?」

クロノが周りを見るが誰もいない。確認をとろうとした瞬間、

「クゥゥロォォォスケェェェェ!!」
「グェ!!」

急に後ろから抱きつかれ意識が飛びかける。ちなみにきれいに首に入っている。

「会いたかったぞ、クロスケェ。この薄情者め。連絡くらいよこせよ。このこの」
「ぐぉ、ロッテ…首が、しま…」

などと漫才をしている間に武装局員10名が転送される。





そして、


「あいつら!!」

二人の魔法少女が戦場に現れる。新たな武器を携え、

「レイジングハート・エクセリオン」
「バルディッシュ・アサルト」

「「セット・アップ!!!」」



ここに第二ラウンドの幕が開く。




あとがき

どうも、作者のGです。日々の戦場(研究室)と戦場(東京)からやっと帰ってきました。夏休みなんてあってないようなもの。

オープニングは突っ込まないで。それしかいえない。

さて。前半、ユーノ君に死亡フラグを与えてみる。恭也がシスコンって元ネタはなんだろう?自分、SS(サウンドステージ)はSTSしか聞いてないんでよく分からんのです。とりあえず、そこまでシスコンじゃなくしてみました。突っ込んでください。

主人公と騎士たちのニアミス度が異常になってきました。突っ込んでください。

ここで補足。

ライダーマシンで最速はスカイのスカイターボである可能性もあります。しかし、自分はオフィシャルデータファイルを信じることにしました。これではスカイターボは最高時速1200キロになっています。そのため、Vジェットを最速としました。Vジェットの馬力に大きな差があるのは、2000馬力という説と3000馬力であるという説が存在するからです。ちなみに3000馬力だと本編で言ったようにライドロンより上になります。


後半、書くこと特になし。しいて言うなら、猫の登場が早まった。春菊は単に作者が嫌いなだけ。



今回、かなり遅くなったのは、ひとえに自分の力不足ゆえであります。これからも暖かい目で見守ってください。
さあ次はS-1無双だ。







[7853] As第5話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/09/12 11:15
撃ちだされる剣群。

それに対しヴィータを庇いながら障壁を張るザフィーラ。

「くっ!」

防御に特化しているからこそ分かること。この攻撃はこんな即興で作った障壁では防ぎきれない。幸い致命傷になるほどの威力はなさそうだが、ヴィータに怪我をさせては主に申し訳がたたない。

スッ…

などと考えていると、自分達を庇うように目の前に影が現れる。

「おい、」
「赤心少林拳、梅花の型」

両手の付け根をくっつける独特の型を見せ、迫りくる剣群を弾き飛ばしていく。




梅花の型。

かつてS-1が強敵ギョストマに敗れた折、玄海老師から受け継いだ赤心少林拳の型の一つ。


相撲に「変わり」と呼ばれる技法がある。取組の開始時のぶつかり合いを避け、横から押し出す技につなげるものである。これは相手の勢いが強ければ強いほど効果的で、某技のデパートな力士も横綱や大関クラスに行いよく勝っていた。
これは物理学的にも正しい。100の力で向かってくるものを止めるには逆ベクトルの100の力が必要である。しかし、100の力で向かってくるものを真横からたたけば、明後日の方向に飛んでいく。このときの力は約30もあれば十分である。

梅花の型とはこれを利用し、相手の繰り出す拳を受け流しながら懐に入り攻撃するものである。

S-1はさらにこれに改良を加えた。

もし、攻撃が針のように鋭く、体の中心に向かう、または連続するものだった場合、受け流しきれない。

S-1の腕には衝撃を吸収するフリンジと呼ばれる装置(手のヒラヒラしたやつ)が付いている。S-1は腕を回転することによって、フリンジを動かし攻撃の突進力を吸収する。

この回転もまた力になる。たとえば、静止している空き缶はエアガンで簡単に穴があく。しかし、もしも空き缶が高速で回転していると中心に当たらない限りエアガンの弾は弾かれる。


このように梅花の型とはS-1によって受け流し、衝撃吸収、回転による弾きの三つの要素からなる鉄壁の防御力を誇る型となったのである。




ガシッ!!グシャ…

最後の一発を受け止め、握りつぶす。青い弾丸は光になって空中に溶ける。

目線を上に戻す。

(人の話し合いの最中に、しかも不意打ちか…)

S-1のイライラは今、最高潮に達していた。
唯でさえ本来のスタンス、殴り合いの中での対話ではなく、話し合いだけの交渉。慣れないことをやって、うまくいきかけたところでの横槍。腹が立つ。
まぁ、ライダーの記憶のほとんどが殴り合いばかりだということに問題があるのかもしれないが。

「トォ!!」
「おい、ちょっと待て!!」

たちこめる煙の中から飛び出す。それに続く騎士たち。





戦いの始まり





第5話  理由

Side 雄介

「私たちはあなたたちと戦いに来たんじゃない!まずはお話を聞かせて!!」
「闇の書の完成を目指す理由を!!」

などとなのはちゃんとフェイトが言っているが…欠片も説得力がねえ。いきなり攻撃をぶちかましておいて、そのうえ、周りには結界。どう考えても戦う気満々でしょうが。

ハァ

溜息を吐くと、なのはちゃんがすごい勢いで睨みつけてきた。…嫌われたかな?なんか、どんどん彼女は攻撃的になっている気がするんだが。

腕組みしたヴィータが言葉を返す。

「あのさぁ、ベルカにはこんな諺があるんだ。『平和の使者なら槍を持たない』。話し合いをしようって言う奴が武器を持ってくるか馬鹿!!っていう意味だよ、バ~カ」
「それは小話のオチだ」
「うっせぇ!いいんだよ、細かいことは」

ヴィータじゃないがあんな強化した武装を片手に話し合い要求なんて馬鹿げている。これは交渉じゃなく恫喝とか恐喝の類ではないか?

…俺の言えたことじゃないか。俺の武器はこの拳だし。

「クククッ」
「笑うな!!」

別の理由だが勘違いされて怒られた。

話し合いを本当に望むならバックに管理局を擁さずに来るべきだったな、なのはちゃん。


ドガアアァァァァァァァァァ!!

一瞬、空が割れ、紫の雷光がビルの上に落ちる。

「シグナム」

雷の落下点でスッと立ち上がるシグナムを見てフェイトが言う。しかし、派手な登場である。

シグナムは周りを見る。一瞬こちらに目が向くがすぐに目線を眼前のフェイトへと向ける。眼中にないのか、それともザフィーラにすでに聞いているのか。


「クロノ君、ユーノ君、手を出さないで!!私、あの子と1対1だから!」
「マジか?」
「マジだよ」

なのはちゃんがヴィータを見ながら叫ぶ。先ほど睨まれたからこちらに来ると思ったが。

「ああ、私も野郎にちょいと話がある」

なにやらアルフもザフィーラにガンくれている。フェイトもシグナムから目を離さない。


一食触発のこの状況。しかし、俺はまずやっておかなければいけないことがある。

「…この場にいる管理局に組するもの全員に告ぐ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

全員の目が声を出した俺に向く。

「ここにいる騎士たちを、この場では見逃せ!!」
「えっ!?」
「なん…だと…」

管理局側の顔には驚愕、騎士たちには困惑が張り付く。

「ばかな、お前は何を言っているんだ?!!」
「今回、この騎士たちは俺の要求に答え、この場にとどまり、結果、貴様らに捕捉された!俺は誠意をもって答えたものに誠意をもって答える!騎士たちを見逃すなら、今回、貴様らの執務官がやった、こちらを狙った不意打ちについて不問にしよう。認められないのなら今後俺は、俺たちは管理局を敵対組織とみなす!返答やいかに!!!」



場を沈黙が支配する。誰一人答えられない。当然といえば当然である。ここにいる者の内、管理局の指針を決められるものはクロノぐらいである。しかし、クロノは仮面ライダーの実力を知っているため軽はずみな行動に出ることができない。



「ま、待て。僕の行動については謝罪しよう。こちらに仮面ライダーとことを構える気は無い。あれも君を狙ったものではなく騎士たちを狙ったものだ!」
「ふざけるなよ。あの弾幕で狙いもなにもあるか!!そちらが引く以外の道は無い。大体、貴様の言っていることは不意打ちしても謝れば許されるという前例を作ることになる。そんな前例を作る気は無い!」

これはある種の宣戦布告。正直、三つ巴はご免だ。しかし、どちらかにつくのもいやだ。なので、少なくともこの場ではどちらにつくかをはっきりさせておく。今後は・・・知らん。騎士たちが約束を守るのなら出て行かないし、破ったなら全力で潰す。管理局とはどうせ半敵対状態だったんだ。それが今更敵対状態に変わっても大した差は無いだろう。


言い合いは続く。


「クロノ・ハラオウン執務官!!」
「!!」

猫耳黒服が話に割ってはいる。

「騎士たちに加担するならこいつも犯罪者だ。迷う必要は無い。公務執行妨害で逮捕する」

その言葉とともに他の奴らも一斉に武器を構える。


≪Master, please call me “Cartridge Load.”≫
「うん。レイジングハート!カートリッジロード!!」
≪Load Cartridge≫

なのはちゃんの杖から薬莢が排出される。あれは!!プレシアが使っていたものか。馬鹿な!プレシアはあれを使って血を吐いていたんだぞ。あんな危険なものを子供に使わせるのか!!

そういえば、ヴィータも使っていたな。やめさせたいところだ。

「なのは!!」
「フェイトちゃん、勝って、それで話を聞かせてもらう。前と同じ!」

≪Sir≫
「…わかった。バルディッシュ!カートリッジロード!!」
≪Load Cartridge≫

フェイトもか・・・


「…ユーノ、予定変更。君は結界の外を捜索してくれ。君の探索能力なら可能だろう。(武装局員各員は結界内の捜索)、僕とロッテは仮面ライダーを!総員行動開始!!!」

クロノの声とともに全ての者が動き出す。




NoSide

時空管理局武装局員α小隊小隊長、イワン・タワノビッチは冷静に戦場を見ていた。


彼は既に幾度も戦場で戦った歴戦の勇士である。元々、生まれ持った高い魔力資質から将来を嘱望されていた彼はその戦果によって小隊長に任命され、今回が小隊長として初の戦場となる。


そんな彼から見ても、今回の戦場は異常だった。

ニアSランクの魔導師が二人、Aランク以上が一人いる状況下で、執務官がまったく魔力を感じない銀の異形に対して…こういっては何だが、恐れている様に見える。

(あんな者など一瞬で片付くだろうに)


教導官の一喝によって、やっと戦闘が開始される。

武装局員に言い渡されたのは結界内の捜索。

(出来れば、あの偉そうな銀色に正義の鉄槌を喰らわせたかった)

そんな考えが頭をよぎるが、すぐにそれは指揮を執るものの思考ではないと、考え直す。

素早く指示を出し自身も動こうとする。もう一度、戦場を見ようと振り向いた瞬間、

「チェンジ!パワーハンド!!」

すぐ目の前にS-1が迫っていた。


S-1は重力を操る。言葉で書くと簡単だが、その効果は凄まじい。

この瞬間移動のごとき高速移動も、重力操作によるものである。本来、重力操作をしなければ、S-1のジャンプ力は100m。このジャンプ力を真横への移動に変え重力を操った場合、風圧を考えなければ、ほぼ100%推進力に変えることが出来るのである。この速度はスカイライダーほどではないが魔導師を軽く凌駕している。足場にはブルーバージョンを使用している。


(!!馬鹿な!目を離したのは一瞬だぞ!)
「クッ!!」

イワンが咄嗟に障壁を張る。

この障壁。実は自身が最も信頼しているものである。攻撃魔法より防御魔法の方が優れていたため、彼はこちらの研鑽に力を注いでいた。その結果、部隊内で囮役や壁役を務め、今までの戦場ではほとんど無傷で勝利してきた。




そんな自信は障壁と一緒に紙切れのようにぶち破られる。


結界を突き破った赤い手はそのまま突き出されたデバイスを粉々に握りつぶす。

茫然自失しているイワンはそのままS-1の繰り出す回し蹴りを喰らい、ビルの屋上へ叩き込まれ意識を手放す。





「小隊長!!」
「てめぇ!!」

一拍遅れ、S-1に挟撃を仕掛ける小隊員。隊長がやられて激昂しているため、彼我の戦闘力の差を冷静に測れていない。

ガッ!!

「遅い」
「「なっ!!」」

S-1にとって挟撃は意味を成さない。S-1の目、Sアイは蜂の目を模した複眼構造になっており、複数の対象に同時に焦点を合わせることが出来る。

そして、

「うわっ!!」
「うお!!」

ほとんど力を込めず、合気の要領でグルリと一回転させられ、二人はビル上に叩き落される。

パワーハンドを装着すると、S-1の握力は怪人を握りつぶせるまでに一気に増加する。
S-1の手の中に残ったデバイスもまたグシャグシャに圧縮されていく。


「新人!!」
「は、はい!我が乞うは眩き閃光。気高き射手に打ち抜く力を」

最後に残されたα小隊の二人。センターガードと新人のフルバック。
先輩の言葉を受け、新人が急いでブーストデバイスに命令する。
光が杖の先端に集まり、

「くらいやがれ!!」

一気に放出される。

それに対してS-1は、

ポイッ

そんな擬音語がつく様な、手首のスナップだけでデバイス製の鉄球を投げつける。しかし、当然その鉄球は人間の1000倍の力がある人工筋肉を持つS-1が投げたもの。

豪オオオオオオオオオオ!!

「う、嘘だろ!?」

軽く時速300km以上の剛速球が光のレーザーを突き破り、その大元、杖状デバイスを砕く。

自分の自慢の砲撃、愛杖の無残な姿に絶句するが、

「先輩!上ッ!!」
「スーパーライダー…旋風キィーック!!」

上空で独特の型を決め、高速で繰り出すキック。本来、キックするS-1の姿がはっきりと夜空に見えるであろう美しい技だが、それを見る暇もなく、また一人ビルの屋上へと蹴りこまれる。


最後に戦場に残された新人。

「寝ていろ」

その震える体は首筋への一撃により力を失い、先ほど蹴りこんだ局員の上に投げつける。


わずかに意識が残っていた1人の局員。ただ一言だけつぶやく。

「赤、赤い拳の…悪魔…」

意識を失い崩れ落ちる。






管理局、一個小隊壊滅。この間、わずか十数秒。

既に動き始めていたなのは、ユーノ、フェイト、アルフはこの闘いとも呼べない一方的な蹂躙を見ることは無かった。これを見ていたのはクロノとロッテ、画面の向こうのリンディとエイミィである。

ならば、何故クロノ、ロッテ両名は援護に向かわなかったのか?何故、リンディ、エイミィは指示を出さなかったのか?


四人は動かなかったのではない。動けなかったのだ。

S-1の動きに魅せられて。



ミッドチルダには武術が無い。

魔法と組み合わせた、SA(シューティングアーツ)の様な格闘技は存在する。が、何百何千年の研鑽より生まれた術に該当するものは存在しない。

魔法があるため、極限まで体を鍛えた末に生まれる武術が大成しなかったのである。


つまり管理世界の人間にとって武術と関わることはほとんど無いに等しい。


そして、武は舞に通じる。その言葉のごとく、ただ一つに突き詰められた武術には独特の妖艶さがある。剣道における型の稽古、空手における演武はこれを見せるものである。

S-1は自称拳神アスラに打ち勝ち、またそれ以降も常に研鑽をし続けた極位の武道家。その動きに魅せられるものがあるのは当然である。



いち早く立ち直ったのはリンディ。そのとき、既にS-1は次の標的、もう一つの小隊へと向かっていた。すぐにエイミィに連絡をいれ、怪我人の回収、温存していた同中隊、予備戦力10名の投入を指示。

エイミィは急いで転送を行う。それでも、その瞳はS-1から放すことが出来ない。また2人武装局員が墜ちる。

クロノ、ロッテはほぼ同時に我に返り、戦場に向かう。既に武装局員は残り1人。



「やめろ!!」

その言葉と同時に、最後に残った局員の首筋へスーパーライダー諸手頚動脈打ちが決まる。グッタリと墜ちた局員をクロノへと投げつけるS-1。

すぐに局員は転送され、無言のにらみ合い。


「ロッテ、援護を」
「アリアほどうまくないんだけど、フェイク・シルエット!!」

クロノの高速移動と同時にS-1を包囲するようにクロノが現れる。

「へぇ、幻影か」

全てのクロノがデバイスを構え、右から、左から、上から、下から、正面から、背後から、360度全方位から襲い掛かってくる。

それに対し、S-1は胸の前で両手を合わせる。

「赤心少林拳合掌」



「喰らえ!!」
「そこだ!!」


ガシン!!!!

「ぐほっ」

クロノのデバイスはS-1にかすらず、逆にS-1の拳がクロノに直撃していた。
バリアジャケットをパージしつつも、その衝撃で吹き飛ばされるクロノ。

「がっ!」

無言で音も無く背後から攻撃してきたロッテを、後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。


赤心少林拳合掌。両の掌を合わせることにより精神を統一。相手の幻術や己が迷いを振り切る方法である。これはS-1の機能ではなく、沖一也の精神力に由来するものである。

これを行えば幻だろうと不意打ちだろうと受けることはない。



「くそっ!ブレイズキャノン!!」
≪Blaze Cannon≫

その名が表すように熱波を伴う砲撃が撃たれる。

「チェンジ、冷熱ハンド!!超高温火炎!!」

両腕が緑色に変わり、右手から火炎が放出される。

両者の中間で拮抗する。そして、その逆方向から、

「ブレイズキャノン」

ロッテが同じ砲撃を撃つ。そちらに対し左手を突き出し、

「超低温冷凍ガス!」

こちらは拮抗することも無く、冷凍ガスがブレイズキャノンを飲み込んでいく。当然である。冷凍ガスはその気になれば地球への大気圏突入時の摩擦熱さえ抑える。人一人が出す熱量が地球の重力で生じる熱量に勝てるはずが無い。

「あああああああ」
「ロッテ!!うわぁぁぁ!!!」

ロッテが冷凍ガスに飲み込まれ、そちらに気をとられたクロノもまた火炎に飲み込まれる。

ドガアアァァァァァァァァ!!!!

あまりの熱量にクロノのデバイスが爆発する。



両手の放出をやめ、今もガスの残る左上、爆発の煙が消えない右下を見る。そして、いまだ闘う騎士のほうに向かおうとする。

「ま、待て!」

クロノが半分凍りついたロッテに肩を貸しながら、自身もバリアジャケットのほとんどを吹き飛ばされながらそこにいた。

「まだやるのか?もう寝ていろ」
「…それほどの力を持ちながら、何故それを正義のために奮わない?!!」

またくだらない問答が始まりそうになる。が、S-1が振り向き、梅花の型を取る。

ガガガガガガガガガガガ!!!

ピンクの光弾が弾け飛ぶ。しかし、弾かれた弾はまたS-1に向かって飛ぶ。

「ちぃぃ!!」

全てを握りつぶしていく。

S-1の目には、ヴィータが新たに投入された武装局員5人に翻弄されているのが見えた。また、シグナムのほうにも同じように局員が現れ、フェイトもこちらに向かってきている。


ジャキィン!!

なのはの杖がS-1に向く。

「待って、なのは!お願い、私に話をさせて」
「フェイトちゃん…」

杖が下がり、フェイトが一歩前に出る。

「貴方は誰、いえ、貴方の名前は?」
「仮面ライダーS-1(スーパーワン)、9番目の仮面ライダー」
「私の名前は…」
「知っている。フェイト・テスタロッサ、そっちが高町なのは、だろ?」

自己紹介が必要ないので話が早い。

「何故彼らの味方をするんですか?」
「…別に味方をするつもりは無い。こちらとの約束を破れば潰す」
「約束?」
「人を殺さない、この世界に影響を出さない、俺の仲間、知り合いに害をださない」

人を殺さない。これを破るようなら、本気で潰す。
この世界に影響を出さない。集め終わったら静かに暮らすと言っていたのだからこれは問題ない、たぶん。その後暴れるようならZX、いやBLACKRXの使用まで考えている。まずは変身できるようにならなければならないが。
知り合いに害を出さない。アリシアによって周りに魔力を持った人間がいないことは分かっている。これはある種の保険である。

「お前は、自分さえよければいいのか?!!」
「俺はこの世界を守る。他の世界はお前らが守ればいい。それが仕事なんだろ?管理局」

クロノの叫びに嘲りを含めながら返す。

「俺は神じゃない。守れるものは守る。それしか出来ない」

仮面ライダーは酷く受動的な側面を持つ。どのライダーも事件が起きてからしか動けないのだ。下手に動けばそこから大組織の連中はつけこんでくるために。

また、雄介には救いたかったのに救えなかった者、プレシアの死、そしてその言葉から、全てが救えるわけではないことを、「自分自身の経験」として学んでいる。


「それじゃあ、魔法が、魔力がなくなってもいいっていうの?!」
「俺は一向に構わない。むしろこの世界に魔法など必要ない!!」
「なっ?!この…」

S-1の言い分に顔を怒りに染め、杖を向けようとするなのは。しかし、その杖はフェイトによって止められる。

「…S-1、あなた自身の目的は何なの?」
「俺自身の目的…そうだな、戦いが終わり、この力を人類の夢のために使うことだ」
「人類の、夢?」
「ああ、…俺は重力をある程度コントロールできる」

S-1の手が順々に色を変えていく。

「パワーハンド、どんな状況下でも怪力を発揮できる。エレキハンド、どんな場所でも一定の電力を常に発することができる。冷熱ハンド、極寒、極熱の状況に対応。レーダーハンド、あらゆる情報をキャッチ。そして俺自身の体は0~1000気圧まで耐え、無酸素で1ヶ月生きられる。こんな能力が必要な場所はどこだと思う?」
「……宇宙、ですか?」
「そうだ、人はいつか星を超える。そして人は太陽系を超え、いつか外宇宙へ…。俺の拳、力、そして命はそのためにある」

まるで夢のような、まさに「夢」の話をされ呆然とする、管理局一同。

管理局、管理世界の戦艦は確かに宇宙を航行できる。しかし、彼らは外宇宙を目指さなかった。
それは、宇宙より安全に簡単に行ける時空間航行を身に着けたためである。外宇宙とは管理局にとっても未知の領域。管理外世界の人間が謳う夢物語という認識だった。しかし、その夢物語を実現するための、しかも可能な実力を持つ可能性を秘めた存在が目の前にいる。


「俺からも質問させてもらおう」

S-1がなのはを指差す。

「えっ」

突然、示されたため驚くなのは。

「何故、お前は闘っている?今回、お前が闘う理由は何だ?今回は誰に頼まれた?」
「それは……」
「なのは?」

押し黙るなのはにフェイトが怪訝な顔をする。

「フェイト、お前が闘う理由は?」
「私は…よくしてくれたアースラの人たちへの恩返し、それと早く罪を償って母さんのお墓に行くため」
「おい、そっちの執務官。お前の闘う理由は?」
「…管理局、いや自分自身の正義のためだ…」

フェイトとクロノはすぐに言い返す。

「高町なのは。俺は前回、フェイトに対してお前が言った言葉を高く評価していた」
「え?!」
「言葉にしなければ伝わらないこともきっとある。その通りだ。言葉とは自分の意思を伝えるには不完全なツール。しかし、それでも人は言葉で思いを伝えるしかない」

言葉で100%自分の思っていることは伝わらない。それでも力だけで全てを解決するのは悲しすぎる。

「それなのに、今日、お前がヴィータに言った言葉、私が勝ったらお話聞かせて。何故自分から闘う理由を言わない?あの時はまず、フェイトに自分の闘う理由を話したはずだ。それを行わなければ、この言葉は脅し文句にしかならないんだぞ」
「違う!私はそんなつもりで言ったわけじゃ…」
「闘う意味を持たないなら戦場に出てくるな。お前が無理に…」

シグナム、ヴィータ、ザフィーラが飛んできた。どうやら武装局員は全滅したらしい。

「我々は脱出する。外から結界を破壊する」
「…ああ」

次の瞬間、辺りを凄まじい雷撃が襲った。







Side ユーノ

時間は少し戻る。


クロノに言われた通り、外で捜索をしていると、虚空を睨む一人の女性がいた。どう見てもこの世界、この国の一般的な服装とは合致しない特殊なドレス。間違いなく彼女がホシだろう。

問題はどう近づくか。おそらく、戦場に入らないことを見ると、僕と同じ補助型。だとしたら不用意に近づけば気付かれる可能性がある。



…あまりどうかと思うけど、この方法で行こう。

フェレットに変身する。この変身魔法のすごいところは変身にほとんど魔力を使わないところ、変身後の魔力放出が最低限に抑えられること。

相手は向かいのビルの屋上。下に降り、少しずつパイプを伝って上っていく。


うまく相手の後ろに来た。後は少しずつ周りにバインドを…

「ん?」

さっ

「気のせいかしら?」

あ、危なかった。もっと慎重にやらないとバレる。

少しずつ少しずつ…


ん?なんか焦りだした。チャンスだ。

「ストラグルバインド!!」
「えっ?きゃぁ」

よし、うまくいった。

「ええっと、時空管理局のものです。武器を捨て、投降すれば貴方には弁護の機会が設けられます、だったかな?」
「…鼬?」
「イタチじゃありません!それより投降を…!!!ラウンドシールド!!」

いきなり横から気配が現れ、蹴りが飛んでくる。咄嗟にシールドを張るが、

「うわぁぁぁぁぁ」

フェレット状態だったのが災いした。この姿のときは質量まで小さくなるので受けきれず吹っ飛ばされる。

「ほぉ、こちらの気配に気付くとは…なにをしている?早く使え。時間がないのだろ?」
「くっ、撃って、破壊の雷!」

雷が迸り、結界が割られる。女性が転送で消えていく。





意識がなくなりながら思う。まだまだ、鍛えがたりないか…




Side 雄介

結局、凄まじい雷のせいで騎士たちと話す暇も無く別れることとなった。まぁ、向こうの意見も聞けたし、こちらに害が無ければ無視してもいいだろう。

管理局のほうも無視。会わなければ別にいいや。


ジカンノナミヲ

ん、電話だ。

「雄介。終わった?」
「ああ、みのりか。終わったよ。これから迎えに行く」
「今、すずかちゃんの家だから今日はお泊りする」
「あ、そう?そういえば、はやてちゃんは?」
「一緒だよ。今日はみんなでパジャマパーティー」

…よく分からんが楽しんでいるのならいいか。おやすみと挨拶して、バイクを走らせる。

なのはちゃん、戦う理由がないなら戦わなくていいんだ。そう言いたかったが、しっかりいう暇が無かった。間違って捉えなければいいけど。










二度目の戦いが終わる。敵味方が入れ替わる闘い。
仮面ライダー、管理局、騎士のそれぞれの思惑で動く。
そんな中で、なのはに突きつけられた、戦う意味。
彼女はどんな答えを見つけるのだろうか。



あとがき

どうも、作者のGです。ディケイド、なにこれ?なにあのおわり?喧嘩売ってんの?映画の完全な番宣じゃん。きっと彼らなら中途半端にはしないと信じてたのに…

愚痴はともあれ

オープニングの梅花の型は自己解釈です。始めは受け流すだけかなと思っていたのですが、スピリッツでニードルの針がその場に落ちてるんですよ。ということは何らかの方法で突進力を殺いでるということなのでこうしました。突っ込んでください。

前半、まぁ管理局の一般兵なんてこんなもんかなと思い書きました。イワン何たらは、死神博士の本名です。特に意味はありません。
武術については自己設定。ミッドには無いのではと考えました。

後半で、なのはと戦わせようと思ったのですが、フェイトとの話し合いで終わりました。宇宙の話をしたかった。悔いはない。
そういえばクロノが喰らった蹴りをユーノがガードしたのは鍛えているからです。
As本編でなのはがあの戦いに出てるのってなんででしょうか?フェイトと違ってクロノに確認されているわけでもなく、参戦理由がよく分からない。
あっ、ついでに不意打ちかましといてお話したいはないとおもうんですがどうでしょう?


さて次は…騎士たちの過去話?どうしよう、何書こう?





[7853] As第6話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/10/18 00:24
「…ふむぅ…」

ポタッポタッとコーヒーが落ちる音のみ響く。

ここは緑川教授の研究室。そこかしこに研究資料と思われる紙の束がうず高くそびえたつ。地震が来たら大変なことになるだろう。

そんな中で俺の渡した資料を緑川教授が一枚一枚丁寧に吟味している。徹夜明けらしく、ぼさぼさの頭、伸びっ放しの鬚、眠そうな眼を見た瞬間、このタイミングで資料を持ってきたことを後悔した。

「…末端からの麻痺…おそらく神経系の障害だろうが原因は不明、か…」
「はい。自分も神経系だとは思うんですが、内臓に現段階では全く障害がなく、かつ足先から麻痺が上へ広がっていく。こんな症状は聞いたことがありません」
「ふむぅ」

教授が押し黙り、また無言の時が流れる。



「…悪化の速度的には、一気に進まなければ年明けが期限だな。志度と河合君、望月君に声をかけるか」
「! それじゃあ、受けてもらえるんですか?!」
「? 誰が受けないなんて言った?幼い子供の命がかかっているんだ。受けるに決まっているだろう。椿君も知らない仲ではないしな」

肩の荷が下りる。もしも、最悪のタイミングで渡して断られたとしたら、悔やんでも悔やみきれん。

「…しかし、五代。お前はこっちを手伝わんでいいぞ」
「はっ?いえ、でも…」
「お前も自分の研究があるだろう?今は確か、タキオン粒子、だったか?」

大学のほうにはフォトンブラッドの派生という真っ赤な嘘の報告しかしていないが、恩師である緑川教授にだけはタキオン粒子の詳細を伝えてある。
緑川教授もまた、俺と同じ意見でタキオン粒子はまだ発表すべきではないと考えている。

「…あれは危険だ。お前は派生するクロックアップシステムの危険性を言っていたが、むしろ圧縮した時に生じる…」
「物体を原子レベルまで分解する破壊力…」
「下手したら超小型核兵器の出来上がり、だからな」

仮面ライダーカブト。そこでの仮面ライダーは変身ツールとゼクターと呼ばれる昆虫コアを使用し変身する。彼らの必殺技は先ほどから挙がっているタキオン粒子を圧縮、波動に変換し叩きつけるものである。叩きつけられた敵、ワームは原子崩壊し、消滅する。

核兵器とは中性子による原子核の分裂の連鎖反応から出た莫大なエネルギーを利用している。そのため、ウランやプルトニウムを濃縮して使っているが、もしこのタキオン粒子を利用すると、ウランやプルトニウムなしで核兵器ができてしまう。

余談ではあるが、ほぼ同レベルの危険性を持つRS装置はこの世界では開発されていなかった。Xの世界でこれを開発した南原博士、堂本博士、雨宮博士は資源の再利用について研究している。

「あれの危険性が分かっているなら、次はどうすればその危険性が取り除けるかを研究するんだ。科学の生んだ副作用は同じ科学の力で消し去る。研究者の永遠の課題だぞ」
「…はい!!」
「しかし…まったく。お前はなんでこんな、タキオンやフォトンブラッドのような厄介なものばかり見つけるのか…」

そりゃあ、主だった使用用途が戦闘用だから、なんて口が裂けても言えない。




研究室を出ようとすると、同時に入ろうとしていた女性とぶつかりそうになる。

「あら?五代さん、お久しぶりです」
「あ、ああ、ルリ子さん。こんにちは」

教授の娘、緑川ルリ子さんだった。…仮面ライダー1号、本郷猛の記憶に引っ張られそうになる。その記憶から不思議な感情があふれ出し、彼女の顔を直視できない。

何だろう、この感情は?

……恐怖、拒絶への恐怖…羨望、本当の肉体への羨望…感謝、受け入れてくれたことへの感謝…悲しみ、生き別れたことへの悲しみ……愛……愛?

頭を振り、記憶を弾く。記憶があるのはいいが、俺の感情を左右しないで欲しい。

「?どうしたんですか?」
「いえ、なんでも。それじゃあ、自分はこれで」


慣れてからはそんなに起こらなくなっていたが、時々、仮面ライダーの関係者に会うと記憶に引っ張られそうになる。最初に会ったのがおやっさんでよかった。






「あぁ、行っちゃった…また目を合わせてくれなかった…」
「ははは、忙しい奴だからな」
「一回じっくり話を聞きたいんだけどなぁ」
「…やめておけ。最先端を通り越した異端の話を聞いても一般人にはわからん」

椅子を回転させ、窓の外を見る。そこでは今度はもう一人の教え子である小沢に捕まった五代が見えた。緑川教授の口から苦笑が漏れる。数多の教え子の中で格段の才能を見せる二人の子供じみたやり取りが、既に初老に入り始めた者には微笑ましく見える。

「どうしたの?」
「いや。すまないがそこら辺においてある電話帳を取ってくれ」


いつの間にか、外では沢渡やジャン、沼田五郎に広瀬栞や結城卓也なんかも集まりだした。若い力は少しずつ、しかし確実に大きくなっていく。





平和なときの話。


第6話 謎

Side 雄介

カチャカチャ

ライダーマシンを変形させ、一部一部点検していく。キングストーンが分裂したため箍がはずれ、自分で勝手に変形するようになってしまったせいか、少し構造が脆くなっている。さすがに走っている途中で分解、爆散は無いだろうが、理想の出力がいつでも出せるのが望ましい。

「これでよし。…どうだ、調子は?」

ブルルルルルルルッ!!!

アイドリングしている。問題はなさそうだ。

「じゃあ頼むぞ」

ライダーマシンが光に包まれ、屋根のついたバイクに変わる。


ライドシューター。ミラーワールドで戦う仮面ライダーたちが、現実世界とミラーワールドを結んでいるディメンションホールを越えるための次元転送装置。次元エネルギーを取り込み、インフィニティー・パワーユニットの爆発的なパワーによって時速930Kmで走行する。アダプテーションホイールはどんな悪路にも対応し、垂直な壁を登ることも出来る。

次元転送装置。この効果を試そうと思う。基本的にディメンションホールは、ミラーワールド以外もつないでいる、はず。そこを通れば管理局の言う次元世界に行ける、はず。神崎士郎の記憶からの無理矢理な推測だが。

何が起きてもいいようにライダーマシンの整備も完璧にし、自分も

「変…身!!!」

今変身できる中で一番強いZXに変身する。




ライドシューターのマニピュレート・コンソールにスターターカードを挿入する。


アドベントカード。開発者である神崎の記憶があるからこそ完成はしている。が、契約モンスターがいないせいで、いまだにブランク状態から変化していない。ミラーワールド…創るわけにはいかないよなぁ。

同じような理由でラウズカードについても、アンデットがいないためどうしようもない。封印のカード、プロパーブランクとコモンブランクはいくらでも作れるが。…発掘に行くか。もしかしたら、今も氷の中に眠っているかもしれない。




「じゃあ、いってきます」
「気を付けて下さいね」
「雄介。お土産、楽しみにしてるから」

ファリンさんとみのりに見送られ、ライダシューターが光に突っ込む。






「砂漠、か?」

どうやら俺は次元を渡ると砂に縁があるらしい。見事にワープできたようだ。

「ライドシューター。とりあえずここへの道程、って言うのか?…まぁいいや。来る方法を覚えておいてくれ」

ブルルン!

返事代わりにエンジンを鳴らす。さて……どうせだから少し観光がてら走るか。

俺の意思に反応し、ライドシューターがヘルダイバーへと変わる。



最高時速600Kmで走ってみるか。






Side ヴィータ

ザクッザクッ

アイゼンを杖代わりに歩く。
くそっ!歩きづれぇ。

「はやてにもらった騎士甲冑、こんなにズタボロにしやがって」

予想外、いやある意味予想通り手強い生物だった。正式な名称は知らないけど、この世界にいる砂中に生息する龍種は高い魔力を持っている。この手の野生生物は己の身体能力をその魔力で強化している場合が多い。つまり、魔力が高い=強いという公式が成り立つ。

でも、主の、はやての体を考えるとハイリスクでもハイリターンな相手を選ばなければならない。

体中が痛む。

「痛く、ない!痛くない。こんなのちっとも痛くない!昔とは違うんだ!」

それに、もう地球周辺の世界で蒐集はできない。手を出して万が一仮面ライダーの仲間に危害を加えたら、あの化け物どもを相手にしなければならない。

仮面ライダーとこの龍種じゃリスクもリターンも差が激しすぎる。



足の部分の留め金がちぎれる。バランスを崩し、頭から砂に突っ込む。

い、痛くない。泣かない。こういう時は、はやてのことを思い出すんだ。



初めて会った時はショッカーみたいと言われた。その後、マスクドライダーを見せてもらったけど、いくら黒いアンダーシャツだけだからって、その間違え方は酷い。

急にメジャーを取り出して寸法を測り、服を買ってくれた。そういえば、分かっていたこととはいえ、身長はまったく伸びていなかった。もう少し身長があれば子ども扱いされねぇのに。

一緒にお風呂に入って、一緒に食事して、一緒に寝て、
騎士甲冑を作るときはのろいうさぎをプレゼントしてくれた。



はやてのためなら何度だって、

グルグルグル、ガッ!!

「うわっ!」

これはさっきの龍種の触手!まさか!?

振り向くとそこにはさっきの龍より一回り大きい奴がいた。

「ぐ、ああああああ!!!」

触手が締め上げられ肺から空気が強制的に出される。やば、い、意識…が……


最後に聞いたのは龍の鳴き声。解放され、そして、誰かに抱きとめられる感覚だった。









Side 雄介

まずった。

まさか砂の中にこんな危険生物が生息しているとは。後ろから巨大ミミズ(?)が追いかけてきた。どうやらヘルダイバーの走行音で目覚めてしまったらしい。まぁ、全然追いついてこられないから問題なかった。だが、

「ぐ、ああああああ!!!」

振り切ったと思っていた巨大ミミズが別の対象を締め上げている!

ホログラフィアイが締め上げている対象に焦点を合わせる。あれは…騎士の赤い少女か!
こんな人のいない世界で何やってるんだ?

やばい。そんなことを考えている間に巨大ミミズが赤いのを喰おうしている。

「十字ッ手裏剣ッ!!」

両肘にセットされた、半球状のものを取り外し投げつける。投げると同時に刃が展開され、赤いの、ヴィータを束縛していた触手を切り裂き、大きく弧を描きながら手元に戻ってくる。


十字手裏剣。仮面ライダーZXの遠距離用兵装。ダイヤモンドより硬い刃で鋼鉄さえ切り裂く。またZXが使うと1Kmまでならほぼ完璧に命中させることができる。


素早くヘルダイバーを走らせる。ヘルダイバーの強みは安定性である。最高速度はそこまで速いわけではないが、その分、安定性に関してはライダーマシン中随一である。ZXのホログラフィアイ、超高感度アンテナと合わされば雷雲の中を突っ切ることさえ出来る。今回の様な砂漠での急な方向転換でもまるで問題にならない。


ガッ!

抱きとめるが気絶しているようだ。なんか向こうに別の巨大ミミズの死骸らしきものが見えるし、戦った後か?…俺が原因だよなぁ。ここまであのデカブツ引っ張ってきたの俺だし。

グオオオオオオオォォォォォォォォッ!!

死骸を見たミミズが雄たけびを上げる。怒ってる?単なるミミズかと思ったら結構頭があるのか?





さっさと逃げればよかった。どうやら先ほどの雄たけびは仲間を呼ぶものだったらしい。
周りを見渡すと、グルリとこちらを囲む巨大ミミズの集団。総数12匹。ヴィータをヘルダイバーに乗せる。

「…ハァ…。ヘルダイバー、なるべく高く飛んでろ。発砲も許可。ただし、ヴィータを落とさないように」

俺が降りると、ヘルダイバーは飛んで行った。そういえば、空中でも速度が落ちないのも強みだな。銃火器がついているライダーマシンってのも少ないよなぁ。え~と、ヘルダイバー、ロボイザー、オートバジン、サイドバッシャー、ジェットスライガー、マシンデンバード、マシンゼロホーン…

グオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッ!!
「うるさい!」

後ろから食いつこうとしてきたミミズの牙を裏拳で打ち砕く。

まったく、人が考え事をしているときに。まぁ、いい。ZXの性能調査に利用しよう。


向こうでヘルダイバーが華麗にミミズの触手を避けてる。捕まってもウィングでぶった切るだろう。



突撃してくるミミズを真正面から受け止める。全身の軽量人工骨、腹部の衝撃吸収装置が全ての衝撃を緩和する。

「うおおおお!!!」

体内の数万に及ぶサーボモーターが駆動。2号を上回るバカ力で巨大ミミズを振り回す。重いな。持ち上げて飛ぶのは不可能か。

ZXの足にはジェットエンジンが搭載されている。足の甲にあるエアインテイクから空気を吸収、内部のタービンで圧縮・燃焼させ、かかとから噴出する。1tくらいなら抱えながら飛べるが、こいつらはどうにも重い。

後ろの奴に投げつける。3匹駆除。殺してはいないが。弱いものは喰われるのが野生の掟だが別にこんな奴ら食う気も無いので殺す必要も無いだろう。


超高感度アンテナが飛来するモノを捉え、首を捻り避ける。…魔法か?こいつらが使ったにしては一発だけで連射してこないのはおかしい。それに一瞬だが、巨大ミミズの陰に隠れる気配を感じた。この気配は以前公園で感じたものか。姿は…見えなかった。カメレオロイドのように姿を隠す敵。コソコソと不意打ち、もとい暗殺か…

「…イライラすんだよ(ボソッ)」

…少し浅倉が入ったな。駄目だ。冷静になれ。

グワッ!!!

足元が陥没し、そこには大口を開け待ち構える巨大ミミズ。ジェットで飛び上がると同時に襲い掛かる触手と魔法。

電磁ナイフで全てを寸刻みにする。

「そこっ!!」

魔法の来たほうに十字手裏剣を投げる。ミミズの陰に隠れることを予測し、後ろに回りこむように回転をかけたが、

「…手ごたえなし」

避けたか、音も無く受け止められたか。どちらにせよ相当の使い手だと分かる。

後ろから迫るミミズの突撃を避け、首筋に電磁ナイフで傷をつける。その大きさからナイフで致命傷がつけられないのは分かっている。なので、その傷に向け、

「マイクロチェーンッ!!」

鍵爪つき分銅を叩き込み、5万Vの高圧電流を流す。

どんな生き物でも神経伝達には電気を使う。当然、脳を持つ生物は首筋に神経の束があるので、

ズズウウウウゥゥゥゥゥン!!

4匹目ダウン。後7匹+謎の気配か…一気に決めるか。ちなみに後の1匹は向こうでヘルダイバーにやられている。







シュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ……

上腕と大腿の黒い部分から煙幕が噴出される。


レーダー撹乱煙幕。煙幕発射装置から出された煙幕は強い磁気を帯び、電波、音波、赤外線に至るまで全ての情報を遮断する。この煙幕の中では他の仮面ライダーでさえ目標を見失う。しかし、ZXは対象を見失うことが無いという、よく意味の分からない煙幕。


ミミズどもは攻撃してこない。砂の中に住んでいるのだから、おそらく聴力頼みなのだろう。ピット器官がある可能性もあるが。音波と赤外線を妨害する煙幕内では右往左往するだけ。

魔導師のほうも攻撃してこない。というより煙幕の外へ逃れたようだ。おおかた毒かなにかだと考えたんだろう。


見えない間にミミズ全て潰す。




頭に直接ZXパンチをたたきこむ。5匹目。

顔の直前で威力集中爆弾を投げつけ一気に2匹昏倒させる。7匹目。

マイクロチェーンでボンレスハムの如く締め上げる。8匹目。

すぐ真下からZXキックで蹴り上げる。9匹。

1匹を掴み上げ、真空地獄車でもう1匹の頭にたたきつける。これで全匹。


ZXの、というより村雨良の特異な能力としてその高い学習能力が挙げられる。彼は一度喰らった、もしくは見た技を決して忘れず自分の技にしてしまう。仮面ライダー1号のきりもみシュートや赤心少林拳梅花の型などもコピーされている。そして、俺には仮面ライダー全ての技の記憶がある。これを駆使すればZXに使えない技など存在しない。とはいえ、マーキュリー回路を積んでいるわけではないのでXほどの威力はない。


さて、残りは魔導師だけ。そろそろ煙幕も薄くなってきた。姿が見えないのは魔法か?なら、攻撃させて燻りだす!






煙幕から赤い影が飛び出す。

それに対して放たれる青い光弾。しかし、光弾は幻を射抜くかのようにすり抜ける。

そこか!!飛び出したのはホログラフ。実際はまだ煙幕の中にいる。

「十字手裏剣!!」

放たれた2つの手裏剣。1つは止まることもなく突き進む。しかし、もう一方の手裏剣は何もない空間に突き刺さり、鮮やかな鮮血がほとばしる。

が次の瞬間には気配が消える。…逃げたか。引き際がうまい。暗殺、もしくは戦闘のプロだな。手裏剣じゃなくマイクロチェーンでとらえるのが先だったか?



完全に煙幕が晴れ、動けずにピクピクしているミミズが死屍累々。やれやれ。

一番最初に俺を追いかけてきたミミズ(たぶん親玉)に腰掛け、周りを見渡す。全部生きているようだが、ZXの性能調査すらできずに一瞬で片づけてしまった。そのうえ、謎の暗殺者(?)には十字手裏剣の一つを持っていかれるし、全然こっちに儲けがない。まぁ、十字手裏剣はいくらでも作れるし、持っていったところで使えるやつはいないだろうけど。


先にふれたように十字手裏剣は鉄さえ切り裂く。物体を切り裂くには切られる側の硬度、切る側の硬度、切れ味、勢い、そして相応の重量が必要になる。十字手裏剣は鉄を切り裂くために実はとんでもない重量になっている。それこそ仮面ライダーでなければ投げられないし、仮面ライダーの中でもパワーが高いほうでなければ威力を出せないほど重い。あんなもの使えるやつがいたら魔法なんて使わずに素手のほうが強いだろう。



ヘルダイバーが帰ってくるまで一休みだな。





Side ヴィータ

覚醒。その後の驚愕。

目の前に穴だらけで息絶える龍種がいた。そして、自分は見たこともないバイクに乗せられている。

私は締めあげられて気絶したはず。一体何が起きたんだ?


ブルルルルル!!

急にバイクが方向転換し、走り出す。

「ちょ、コラ、待てって、おい!」

そうかと思えばいきなり宙を飛ぶ。まて、バイクは空を飛ぶものではないだろ。なんだこのデタラメは。夢か?夢なのか?



混乱の中バイクに揺られていると、今度は大量の龍種が転がっている。全員ピクピク動いていることから死んでいないのはわかるが、こんなことできるやつなんて…

!! いた! 間違いなくこの惨状の要因になったやつが一番でかいやつの上に腰掛けている。って、

ボフッ!!

いきなり車体が傾き、砂の上に落とされる。そのままバイクはライダーのもとに。

「いてぇだろ!」

振り向きもせず(?)、ライダーの横に行くバイク。撫でられ、エンジンを鳴らしている。犬かよ!?


ある程度魔力も回復し、対面の龍種の上に飛び乗る。

「…これ、お前がやったのか?」
「そうだ」

今までのライダーと同じ様に男性の声。S-1に比べ、少し渋い声に聞こえる。

「何で助けたんだよ?干渉しないんじゃなかったのかよ」
「助けたいから助けただけだ」

即答。しかも簡潔に返され、反論もできない。さっきからチラリともこちらを見ない緑の眼が微妙に腹立たしい。

「お前は?」
「ん?」
「お前の名前は?それで何番目のライダーだよ?」
「ああ。仮面ライダーZX。10号ライダーだ」

頭を抱えたくなる。また、増えた。

「いったいお前ら、何人いるんだよ?!」
「さあな、そんなこと俺が知るか」

ヴォルケンリッター全員と互角だったスカイライダー、管理局武装局員10人と執務官を圧倒したS-1、自分が苦労してやっと倒した龍種と同じやつを10体以上殺さずに無力化したこのZX。自分は会っていないがシグナムと互角だったXも合わせると、管理局なんかよりよっぽど危険な連中じゃねぇか。

あまりの馬鹿馬鹿しさにどっかりと座りこむ。

「…ハァ~。…前々から聞こうと思ってたんだけど」
「質問ばかりだな」
「いいだろ、別に。答えたくなければ答えなくてもいい。…マスクドライダーってのはお前らの知り合いかよ?」

回りくどいのは得意じゃないのでストレートに疑問をぶつける。まさか、ここまで似通った顔をしてるのに関係ないなんてことはないだろう。

「…あれは俺の先輩だ」
「なに!?じゃああれ実話かよ?!」
「…」

ということはショッカーも実在している。しかし、それだと私達のほうに顔を突っ込んでくるのはおかしい。だとしたら、ショッカーは既になくなっているのかも…

「…お前も改造人間なのかよ?」
「…ああ、脳改造も受けた完全なるサイボーグだ」
「脳改造って…」

たしか、マスクドライダーは脳改造をうけなかったからショッカーの一員にならずに済んだはず。じゃあこいつは?


「…さて、俺はそろそろ帰るぞ。まだ聞きたいことがあるなら早くしてくれ」
「あ、ああ・・・なぁ、お前は…その、なんだ、もし自分が罪を犯したら、自分の犯した罪ってどう思う?」

どうにも聞きづらい。でも、どうしても聞きたかった。こいつはもしかしたら私達にすごく近い存在かもしれない。

「…罪、か」
「いや、あの、ごめん、なさい。いいたくないなら…」
「…空っぽの記憶からあふれるほどの人を殺し、償いようがないなどと泣き言をいった俺に、償えないなら戦えばいいといってくれた人がいた。復讐に固執した俺を信じてくれた人がいた。数多の人の犠牲によって生まれたこの体でも、いつか敵になるかもしれないこの体でも、仮面ライダーと呼び、人間のために戦ってもいいと言ってくれた先輩達がいた」

朗々とつむがれる言葉。実感がこもっている。

「だから、俺は闘う。罪が許されるかどうかは関係ない。人間のため、あの世界に生きる人のため」
「…」
「参考になったか?」
「…あ~、うん。こう言うのもなんだけど、その、ありがとうな」
「いや…じゃあな」

バイクで走り去っていくその背中が、すごくでかく見えた。

…伸びてる龍種もそろそろ起きそうだ。…こいつらから蒐集してもいいかな?



いつか、なんの気兼ねもなく会いたい。そう思いながら家路に着く。





仮面ライダー、3人目の騎士との邂逅。







所変わって

Side アースラ

艦長リンディ・ハラオウンは書類片手に、頭痛を抑えようとこめかみを押さえていた。会議室の同じ机にエイミィ・リミエッタが突っ伏している。手には同じ書類。

書類の全文は酷く簡潔である。

死者 0名
重傷者 18名
軽傷者 14名
デバイス破壊 10名
精神的負傷者 10名
即時戦線復帰可能者 4名

結果 1個中隊壊滅

戦力としてまわしてもらった2個中隊のうち第一戦で半分が壊滅。2個中隊だって懇意にしている人事課のレティ・ロウランの口添えで何とか回してもらったのだからこれ以上の増援はまったく期待できないであろう。悪夢以外何物でもない。

「…詳しい内訳にすると」

ノロノロと突っ伏していたエイミィが顔を上げる。いつも立っているアホ毛がまるで枯れたようにヨレヨレになっている。

「重傷者の内8名は最後の砲撃の際、結界を張っていた2個小隊。2名は軽傷で済んでいます。あとの重傷者はいずれも結界内で騎士達との戦闘によって負傷。軽傷者12名は仮面ライダーと戦闘した者たちです」

映像に写される騎士たちとS-1。

今見ても眼を奪われるほどS-1の動きは流麗である。美しい花にはとげがある、といったところか。

「仮面ライダーにやられた2個小隊10名は精神的なダメージを受け、回復には時間がかかると…」

やられた隊員は「銀色が…赤い手が…」などとうわ言を言っているらしい。

「遠目で見るぶんには美しいけど、近くであの動きをされると精神的に殺されると…」
「まぁ、それがなくても1名を除いて、全員デバイスを破壊されてるので復帰には時間がかかるでしょうけど」

愛用のデバイスと量産型のデバイスでは大きく差が開く。そもそも、愛用のデバイスなら込められる魔法も厳選され、使用回数の多い魔法はより早く発動できるようにショートカットが作成される。なにより魔法は精神力に左右される。使い慣れたものであればあるほど他のものに変えることが出来ない。

「クロノとリーゼロッテの容態は?」
「クロノ君は火傷、リーゼロッテは凍傷がありましたが、どちらも軽傷。2、3日で復帰できるそうです。…艦長、これって…」
「ええ、間違いなく手加減されたわね」

S-1の言葉通り、本当に宇宙を目指すためなら火炎にしても冷却にしてもこの程度であるはずがない。それこそ人など一瞬で燃えカスになるぐらい、標的を一瞬で凍らせるぐらいの威力を持っていておかしくない。

S-1の言葉のウラに見える自信や誇り。それを加味すると、必然的にクロノとロッテは手加減され撃墜されたという結論に至る。

「正直、頭が痛いわ。あの場合、仕方がなかったとはいえ仮面ライダーを敵に回したのだから。本来は騎士4人と闇の書の主だけでよかったのに、追加で仮面ライダー少なくとも9人と戦わなくちゃいけないなんて」
「…でも次に会ったときにしっかり話せば…」
「無理ね」

エイミィの楽観的な意見を一刀の元で切り捨てる。リンディのため息が思わず漏れる。

「始めは単なる価値観の違いだったわ」
「子供が闘うことについて、ですよね?」
「そう。こちらに拠点を移してからよく分かったわ。この世界では就職年齢がミッドに比べかなり高い。子供は完全に守る対象になっているわ。この世界の住人である彼らには子供を戦力とする私達管理局は理解の範疇外なのでしょう。もっと早い段階で気付くべきだったわ」
「…」

リンディとしてはなのはを戦力として組み込む前にそのことに気付くべきだったと考えた。

既に今回の事件でなのはをはずすことは不可能になっている。なぜならなのははすでに管理局の民間協力者として登録されているからだ。これが登録される前なら戦力からはずし、別の増援を頼むことも出来ただろう。AAAクラスの魔力保持者をはずせば1個中隊は期待できる。あわよくば、それこそ仮面ライダー本人に協力も要請できたかもしれない。しかし、民間協力者として登録してある以上、管理局本部に戦力からはずすなんて考えはないだろう。

「…提督として管理外世界との価値観の相違にもっと心を配るべきだったわ」
「で、でも、仕方ないですよ。ここまで就職年齢に差があることのほうが稀なんですから」

ミッドチルダでは就職年齢は10~12歳である。9歳のユーノでちょっと早いかな程度。管理世界では平均して12~14歳程度である。地球、特に日本では未だ義務教育期間の年齢。年齢にその性能が寄与しない魔法技術が先行した結果である。

「…後悔はまた今度、事件が終わってからにしましょう。それよりなのはさんたちは?」
「あっ!すいません、負傷者の中にユーノ君が入ってません。彼も軽傷ですぐに復帰できるそうです。フェイトちゃんは少し動揺しているみたいです。今はアルフとリニスがついています。なのはちゃんは…何か考え込んでいるみたいです」


「なのはさんはライダーに言われたこと、戦う理由が原因かしら?」
「だと思います。なのはちゃんは局の学校なんかで教育を受けたわけじゃないから」
「…危険だわ」

リンディも顔がさらに険しくなる。

「彼女は責任感が強い。それにやさしい性格をしているわ」
「はい」
「彼女が戦う理由、それを何の教育もされていない今の段階で決めてしまったら…」

会議室が無音になる。エイミィも次の言葉を待つ。

「…今はまだ大丈夫でしょう。この話はここまで」
「はぁ」


「すいません、遅れました」

扉が開きリーゼアリアが入ってくる。

「あぁ、リーゼアリア、お疲れ…どうしたのその右腕?」
「いえ、少し任務でしくじっただけです」

エイミィの言葉通り、リーゼアリアの右腕には包帯が巻いてある。

「アリア、貴方に頼みがあるの」
「頼み、ですか?」

リンディの言葉とともにモニターが展開される。映っているのは包帯が巻かれたフェレット。


「彼が起きたら、無限書庫の探索に協力して欲しいの」





管理局も新たな動きを見せる。





あとがき

どうも。作者です。今回もかなり遅れました。半分オリジナルの癖にほとんど話しに動きなし。ごめんなさい。

オープニング。小沢さんは天才である。異論は認めない。仮面ライダー史上初めて仮面ライダーと対等に渡り合えるパワードスーツを作った人だし。
主人公の頭に関しては、これくらいじゃないとSTSまでに平成が揃えられないので仕方ないのです。
志度はスカイライダーの博士。河合はV3で人工心臓を作った人。望月はZOの博士。マッド過ぎて望月はやばそう。

前半。仮面ライダー異世界探検編。ZXでミミズと猫をボコスとも考えたが、次の戦闘でボコス予定なので怪我のみ。猫は暗殺に来ました。ZXとヴォルケンズは近いものを感じる。でも、実際のところヴォルケンズってどれくらいの人を殺してるんだろう?ヴィータに対してライダーの数をしるかと言ったのはディケイドのせい。

後半。管理局の苦悩編。1個中隊を30人としました。前回S-1が屠った奴らはアベレージAランクの人たち。6課は高ランクで固めた地上の部隊なので少なかったとします。そういえば、またクロノはデバイス破壊されてますね。



アニメを見ていて思ったんですが、時系列がよく分からない。6話を見ると5話の戦闘後すぐにヴィータがあの世界にいったみたいに見える。なのはとの戦闘後疲れているはずなのに行くか?


W始まりましたね。まさか本当に半分子。というか必殺技のさい割れましたよね。今後どうなるか楽しみではあります。…ただ強いて言うなら敵がダサい



[7853] As第7話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/10/18 00:13

どうもコンニチハ。みんなのアイドル、みのり(本名:アリシア)です。今日は月村家秘密ラボ、地下のユウスケの実験施設に忍び込もうと思います。

「あの、みのりちゃん?誰に話しかけてるの?」
「…ごめん。電波の受信と送信が」
「?…それよりも、無理に忍び込まなくても五代さんなら言えば見せてくれると思うけど」
「まぁ、そうだろうけど。なんかこういうのドキドキしない?」
「…少し」

月村家の二階への階段のウラに隠し通路が存在します。実際、実験施設のほうに入るのはユウスケに忍さん、ファリンさんと時々ノエルさんと恭也さん。すずかちゃんもまだ入ったことはないそうです。

通路、といっても見た目は避難訓練に使う滑り台のようなものです。

「それじゃあ、レッツゴー!」
「あぁ、待って」

部屋に滑り出る。すぐに明るくなる。センサーで人が入ると光がつくようになっているようです。

「…これは?」

周りを埋め尽くす楽器。トランペットにトロンボーン、ハープ、フルート、ギター、バイオリンや果ては鍵盤ハーモニカまであります。どれもメタリックな光沢を放ち、一般的なものではないことが分かります。

ビィィーーン!

試しにギターの弦を弾いてみても音が響くだけ。特に変わった様子は見られません。ユウスケはなんでこんなに楽器を作ってるんだろう?

「いたた。みのりちゃん、それ、たぶん全部音撃用の楽器だよ」
「音撃?」

すずかちゃん曰く、音撃とは鬼が魔渦魍を倒すために用いる清めの音のことらしいです。以前、屋久島で2度ユウスケが使っているのを見たそうです。…いいなぁ。

「こっちはたぶん…」

すずかちゃんが並んでいるCDを音叉で弾くと、CDが変形。まるで生き物のように動き出しました。

「あっ!これなら知ってる。ディスクアニマルでしょ?」
「うん!…蟹と蛇。私も知らないタイプだよ」

黄色のカニさんがはさみをクルクル回しています。ああ、可愛いなぁ。

カニさんばかりを見ていたら、ヘビさんが向こうのほうに這っていってしまいました。すねちゃったのかな?

追いかけると先ほどの部屋より大きな部屋に入っていきました。そこには、

「…車かな?」

真っ赤なボディーに鬣のようなトゲトゲ。生き物の目のようなものがついた車のようなものがあった。車体の横には、

「…?」

グニャとした文字が書いてある。蛇のようにも見えるし、変形したXにも見える。

すごく不思議な車。生き物のように見えるけど生命の息吹は感じられない。ユウスケはライダーマシンのように人工頭脳でもつけようと思っているのかな?


バリバリバリバリ!!

車に触ろうとした瞬間、さっきの部屋から聞こえる耳をつんざく音。戻るとすずかちゃんが床でしびれていました。手には人の骨を思わせる棒状のものが、

「ん?」

足元にメモが一枚。

「え~と。重火器二対、スタンガン、発煙装置に世界時計…ついでにアラーム&スケジュール、スナップショットに自爆機能までついて、とっても便利でお買い得?」

ユウスケ、貴方はいったい何を作っているんですか?

「これは、多分…お姉、ちゃん…の、ガクッ」




ある平和な?一幕。



第7話 変身

Side 雄介

カランカラ~ン!!

「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいました~」
「こら、エイミィ」

珍しいお客。ポレポレに管理局の執務官と局員が来た。同様、失礼…動揺は見せません。対応はいつも通り。

「デートかい?よってくれたのは嬉しいね」
「あははははは、クロノ君が休みになったんで」
「休みじゃない。怪我のための半休だ。何かあったらすぐに向かう」

…一応、手加減したとはいえ、ほぼ全快とは。魔法の回復力は恐ろしいな。

「とりあえず、一見様にはこれを。サービスだよ」

コーヒーを淹れる。玉三郎スペシャルである。いまだにこの味を超えることが出来ない。さすがはおやっさんと言うべきか。


ズズー

コーヒーを飲みながらクロノが話しかけてくる。

「一つ聞きたいことがあるんだが。君は確か、高等教育を受けている…大学に行っているんだよな?」
「ああ」
「今、宇宙開発はどれぐらい進んでいるんだ?」

宇宙開発?…ああ、S-1のことで聞きに来たのか。といっても現行で教えられることは一般常識程度。ヘンリー博士もS-1まで到達していない。そもそもS-1も大首領が行った技術流出と思考誘導があってできたものだし、この世界ではその代わりになりそうなGユニットが出来ているのでS-1が作られる可能性はほとんどないだろう。

「宇宙開発ねぇ。…とりあえず月には行ってるし、そこにベース基地があるな。まぁ常識だけど」
「あ、ああ。そうだな(アースラが発見されないようにしなければ)」
「あと火星や金星への探査ロケットの映像とかも近頃届いたらしい」

ほとんど一般的な当たり障りのない情報。

「しかし、なぜそこまで宇宙にこだわるんだ?」
「…月面基地はまだしっかり開発されたわけじゃないけど、開発が進めば電力、鉱石やあらゆる資源の供給が保障されるし、物理学者の仮説では月の石にはヘリウム3を超える半無限エネルギーの可能性を示唆している。…それにロマンじゃないか?自分の頭の上に無限の世界と無限の可能性があるんだぜ」

沖一也の記憶と五代雄介の記憶が合わさり、ワクワクしてくる。行ってみたい。無限の宇宙を。冒険してみたい。未知の星を。

「…五代君、五代君。ありゃ、完全に少年の目になってるよ」
「…話を戻すが宇宙開発にはロボットを使っているのか?」
「?ロボットぐらい当たり前だろ。船外作業は大体ロボットアームの操作だし」
「いや、自立型のロボットのことだ」

面白い話だが、なぜかこの世界ではロボットが実用化されていない。ここまで最高峰の技術者がそろった世界なのに不思議な話だ。といっても、もう1世紀も経てば変わってくるだろう。…そんな世界になれば俺やファリンさんも普通のヒトとみなされるのだろうか?

「いや、そもそも自立型ロボットの開発は進んでいない。せいぜいAIまでだし、地上で運用できないものが宇宙で通用するわけがない」
「それならそれに類するもの。例えば、特殊なスーツやサイボーグのようなものは?」

探りが直球過ぎるな。…少し脅しとくか?

「どこでそれを聞いた?」
「「!!」」

少し、ほんの少量の殺気を混ぜながら語感を強める。向こうはこちらの変化に驚いてるようだ。

「俺に探りを入れてきたということは既に調べがついているか?」
「ちょっと待てくれ!別に今の質問に深い意味はない!」
「…本当か?」
「本当だよ!なんで五代君がそんなに怒ってるのこっちも分からないよ」

まぁ、S-1のことについて聞きに来たことは分かってるし、単なる脅しはこんなもんで良いだろう。

「そうか。…俺の大学で以前、極限環境適応用の強化スーツを作ったことがある。実際、このことを知っているのは製作に関わった各博士、資金を出した企業と国のトップ、あと俺のような一部のお手伝いだけだ。どっかの企業のスパイかと思った。これ以上聞くなよ。」
「しかし…」
「宇宙開発には関係ない!もうこの話は終わり!!」

ヘンリー博士、手伝ってたんだよなぁ。宇宙に行く機能ついてるのかな?一応、完成時のスペックノートには書いてなかったけど、あの人、小沢澄子なら付けかねないしなぁ。

「はぁ~、怖かった。いきなり眼つきが変わるんだもん」
「ふぅ、そうだな。…なにか格闘技でもやってるのか?」
「ああ、手習い程度にな。しっかし、この程度でビビッてちゃ、この町で生活できないぞ。あれぐらいなら、この町で少なくとも10人以上できるだろ」

高町家全員(多分、桃子さんも)、月村家(ファリンさんの殺気が出たところは見てない)、この前会った空手家とその弟子。恭也さんのとこに時々現れる青髪の子と中国チックな子。これだけで10人超えるな。なんて魔境。

「あと肉体の改造は駄目だろ。倫理的に考えて」
「それはそうだが」

納得してないか。まぁ、現物見てるしな。



取り留めのない世間話をして、二人は帰っていった。

「帰った?」
「帰ったけど、隠れる必要はないだろ。堂々としてればバレないよ」

2階からみのりが降りてくる。どうにもクロノが苦手らしい。



何のことはない昼下がりの出来事だった。







Noside

キン!!カァン!!ギィン!!!!

砂上にて金属がぶつかり合う音が響く。一般人にはほとんど見えない速度での戦闘による打撃音。

「どうした?切っ先に迷いがあるぞ」
「くっ!」

押しているのは烈火の騎士シグナム。繰り出す剣は致命傷には届かないものの確実に相手の体に傷を与えている。

「まだ、まだッ!!」
「さらに速くなるか!おもしろい!!」

押されていたのはフェイト。日常の迷いを戦闘に持ち込んだことに気づき、集中力を高める。しかし、一度ずれた拮抗は中々取り戻せない。

フェイトの迷いとは二人の恩人、仮面ライダーと高町なのはの対立。元々、フェイトは閉鎖された空間で育った。そのため、人間関係に疎く、このような場合に自分がどうすればいいか分からないでいた。友人としてなのはの戦う理由について意見をいうべきなのか、それとも仮面ライダーになのはともっとしっかり話し合うように頼むべきか。そんな考えしか浮かばない。そして、考えるだけで行動に移せない自分。そんな中で生まれた迷いがこの闘いで差になった。


そんな闘いを遠方より眺める影が一つ。







「!!」

ポレポレで手伝いをしていたみのりの脳裏に、胸を貫かれたフェイトの姿が浮かぶ。

(なに、これ?こんなシーン、私は知らない。だれ?だれが私に見せているの?)

これは雄介から渡されたアギトの力の片鱗。未来予知と超高感度な危険察知。津上翔一の危険察知能力は自分達、アギトになる可能性を持つものに襲いかかるアンノーンに限定されていた。

みのりにこのビジョンが見えたのは、アギトへの可能性より深い、遺伝子の塩基配列がまったく同じであるクローンのフェイトに及ぶ危険を自分の危険として察知したからか。

いや、もしかしたらみのりの、アリシアの魂が目覚めのときに近づき、一卵性の双子ともいえるフェイトの危険を敏感に察知したのかもしれない。

そんな仮説を立てるまでもなく、みのりは行動する。

「み、みのりちゃん?」

同じく手伝いに来ていたファリンが鬼気迫る勢いのみのりに圧され声を変えたときには、すでに外でライダーマシンに跨っていた。素早く手首のリストバンドを回し、中の呪文を消す。

「なんでここにライダーマシンが?今日は五代さんと一緒に大学のはずなのに!」
「すいません、ちょっと行ってきます!」
「待って!みのりちゃん!!」

追いすがろうとするファリンをしりめにライダーマシンはライドシューターに変形。ディメンションホールに突入する。




数分後、アリシアの目の前に広がるのは、
膝をつき、頭を垂らすフェイト。
それに剣を向ける騎士。



そして、フェイトの後ろに迫る魔の手。


「やらせない!」

ライダーマシンの収納から取り出したアリシア用のフェイスヘルムを被る。同時にその体を、BDU(バトルドレスユニフォーム)、コンバットブーツ、ボディアーマー、フルフィンガーグローブが包み込む。わざわざライダーマンと同じように転送式になっている。そして、

「お願い、力を貸して!」

義手とカセットを取り出す。


仮面の男。その手がフェイトを貫く瞬間、

「マシンガンアームッ!!」

その身を1秒間1000発の弾丸が襲う。しかも、その集弾率はすさまじく、すぐそばにいるフェイトへは一発も逸れて行かない。が、咄嗟のプロテクションで弾かれてしまう。

「くっ!!」
「えっ!」
「なに!」

仮面の男はいきなりの攻撃に、フェイトはすぐ後ろにいた仮面の男に、シグナムは少し目を話しただけで起きた急速な展開の変化に驚く。

ライダーマンマシンに仮面の男が跳ね飛ばされる。これもガードはされているが、その間に飛び降りたアリシアが体を入れる。

アリシアとフェイトは背中合わせに立つ。

「しっかりしなさい!フェイト・テスタロッサ!」
「あなたは、誰?」
「大丈夫、貴方のことはお姉ちゃんが守るから」
「お姉、ちゃん?」

たった一時の邂逅。しかし、話し込む時間すら今は無い。

「仮面ライダー、ではない?まぁいい。不確定要素は排除する」

仮面の男がアリシアに襲い掛かる。

「!スイングアームッ!」

素早くカセットを入れ替える。マシンガンはロープ付の鉄球へと姿を変え、アリシアはそれを回す。






変わって地球。

ファリンからの電話を受けた雄介には寝耳に水だった。すぐに駐輪場に行くが、ライダーマシンの姿は無い。すぐに対応を考える。しかし、焦る頭はいい考えをはじき出せない。

(不覚!アリシアの性格を考えればフェイトに危険が及べば助けに行ってしまうのは分かっていたはず。アギトの力を得れば危機察知能力が向上することも、ライダーの素養があるからライダーマシンが言うことを聞くのも予期できたはずだ!!)

考えをまとめる以前に後悔しか出てこない。

基本的にライダーマシンは雄介が認めた相手でなければその背に乗せようとしない。乗っても振り落とされるのがオチだ。さらに変形に至っては本体の意思かライダーの命令でなければ行わない。アリシアが望めば断る理由はない。

大学の廊下を走る。すれ違う人たちが、なんだなんだと見てくるが構わずに走っていく。

(落ち着け!…ファリンさんの言葉ではライダーマシンはライドシューターに変形したらしい。だとしたら目的地は次元世界。…危険だがこれを使うしかない。まずは…)

素早く紙上にペンを走らせる。

緑川教授の部屋には誰もいない。見回した後、頭を下げ、電話をかりる。

「もしもし。あっ、ノエルさんですか?すいません、忍さんは…はい、一大事で…今からFAXで送るものを先に作って…はい、自分もすぐに…お願いします」

電話を切り、FAXを送る。あるものの設計図。といっても実物と大きさがかなり違うものにしてある。


屋上に出る。

「スカイ…変身!!セイリングジャンプ!!」
(間に合ってくれ)





Side アリシア

「はぁはぁはぁ…きつ」

戦闘開始から数十分。おかしいな、いつもの訓練なら息も切れない時間帯なのに。

「喰らえ」
「くっ!!」

回し蹴りをしゃがんで避ける。

反撃…出来ない。体が強張る。なんで!?

「…くくく」
「何よ、何がおかしいのよ?」
「どれだけの者が来たかと思えば、戦場を知らない小娘か」

重圧が増す。これは、前にフェイトのことを話したときにユウスケが発してたもの。でも、それよりも体を刺すような感じが、

ザッ、ザッ、

近づいてくる。重圧が、

「来るな!!!」
「なにっ!!」

砂塵を起こす。超能力を全開にする。キングストーンも抑えるのをやめてくれたらしい。同時に両手で持っていたカセットアームが一気に重くなる。やっぱり超能力で支えないと重くて使えない。さっきのマシンガンアームだって反動を超能力で殺してなくちゃよくて脱臼、下手したら両腕骨折しそうだった。

フェイトのほうは未だに立てないのか呆然としている。剣士のほうも趨勢を見守るようだ。


全力で行った砂塵も数分しか持たない。



前に一度、ユウスケに聞いたことがある。

「ユウスケ、闘いで一番大切なことって何?」

訓練を終え、皆でのんびりしているときだった。

「…以前すずかちゃんには話したことがあったな。パワー、スピード、技術、経験。闘いに必要なものは沢山ある。でも、俺が最も大切だと思うのはここだ」

ユウスケが胸を叩く。

「持った力に飲み込まれない強い心。大切なのはそれ」
「…なんで?パワーやスピードがなくちゃいくら心があっても勝てないよ」
「…プレシアと闘ったとき、俺は仮面ライダーストロンガー、しかも超電子ダイナモの力を使った。あの状態のストロンガーの戦闘力は仮面ライダー内でも屈指のものになる」

少し遠い目をするユウスケ。以前、お母さんの生きている間にその闘いを見せてもらったことがある。ストロンガーのライダービデオシグナルという技で、見たものを空中に投影できるそうだ。壮絶な闘いだった。怖くなってお母さんにしがみついた。そのときはあまりにも怖くて、泣きそうになっている私を撫でてくれるお母さんの手の温もりがとても嬉しかった。

「プレシアがストロンガーに対抗できたのは何でだと思う?はっきり言ってあの状態のストロンガーに対抗できる人間なんていない」
「…」
「大切なものを守りたい。何かを手にした。信じる道を進みたい。理由は何でもいいから、自分の心の中に一本の強い芯。これが覚悟だ。プレシアにはその覚悟があった」
「…まだ、よく分からない」

ユウスケが私の頭を撫でる。暖かくて、優しい、大きな手。

「その何かが見つかれば分かるさ」



今なら分かる。多分、これがこの重圧に立ち向かうには覚悟が必要なんだ。そして、この数分で私の覚悟も決まった。妹に守るって宣言したんだ。いつも目標だった優しいお母さんも、常に見守ってくれたユウスケはいないけど、それでもこの誓いは破らない。




砂塵が消えると同時に光弾が複数飛んでくる。パワーアームではじける程度。と思った瞬間、振り下ろされる手刀。避けきれない!!

無様だけど後ろに転がって何とか距離を開ける。

ストン…

やられた!ヘルムが!

「まさか、本当に姉さん!?」

こちらを見た瞬間にフェイトが大声を上げる。でも構ってる暇が無い。



「行って、アカネタカ!!ルリオオカミ!!」

二体を突っ込ませる。いくら撃っても防がれ避けられる。なら狙いは一つ。確実に決める!

「くっ!鬱陶しい!!」

アカネタカとルリオオカミが弾き飛ばされる。狙いは足元。

「ロープアームッ!!」
「なに!!」

足元に引っ掛け、転ばせる。元々踏ん張りにくい砂地。もう少しの隙が出来れば、

「お願い、ライダーマシン!!」

ブルルン!!

ライダーマシンがこちらの意を感じ取りサイドバッシャーへと姿を変える。ビークルモードからバトルモードに変形したサイドバッシャーが左腕の6連装ミサイルと右腕の4連装バルカン、エグザップバスターとフォトンバルカンを一斉掃射する。


「く!なんだ、見掛け倒しか?」

砂煙の中でそんな声が聞こえる。本来の弾薬を積み込んでいないサイドバッシャー。ミサイルは火薬なしの張りぼて、バルカンもほとんどエネルギーなしの空砲同然。でも、この砂煙が欲しかった!!

「がっ!!」
「私の勝ちよ」

直接、相手の体にマシンガンアームを突きつける。動きを完全に超能力で封じ込めつつ。

私の狙いはこれ。マシンガンアームによるゼロ距離射撃。これだけ近ければ超能力で相手の動きを縛り、かつ相手はプロテクションを使う暇も無い。

「くらいなさい」

マシンガンアームの引き金を引く。





少し時間がさかのぼる

Side 雄介

「しっかし、凄いこと考えつくわね!!」
「すいません!!理論については後で教えるんで3番パーツと4番パーツの溶接してください!!片道だけでいいんである程度でいいんで!!」

地下ラボで大声が木霊する。青白い火花が散り、金属が少しずつ合わさっていく。

「でも、よかったの!?ライドロンのパーツを使って!!」
「後で直せば無問題!!それより、まずはアリシアの救出です!!」


「「できた!!」」

目の前にあるのは全長1m前後の巨大なカブトムシ。所々配線がはみ出し、ライドロンのパーツを流用したので蛍光レッドをしているが、どう見てもカブトゼクターである。

「よく即興でこんな設計図かけたわね。角にギター、周りの装甲はライドロン、内部はタキオン粒子の実験セット。…多分動いても一回だけ。空中で爆散するかもしれないわよ」
「でも現状、これ以外の方法で次元世界間を渡ることは出来ませんから。幸い、アリシアがゼクトルーパーのヘルムを使ってくれているんで、その反応を追えば…」

仮面ライダーカブトの変身ツール、ゼクター。こいつらは自身の意思を持ち、有資格者の意思に反応して手元に現れる。俺が注目したのは、その手元に現れる方法である。

ジョウント

こう呼ばれる移動法。これは有資格者がどんなところにいようと時空を寸断して飛び越える方法である。俺の推測が正しければこの方法でも次元世界を跳べるはず。

しかも、ライドシューターと違い、次元世界の間を走るのではなく、寸断して飛び越える。より速く着く可能性も秘めている。


「変!!身ッ!!」

ZXに変身し、巨大ゼクターの背中に乗る。

「忍さん、ありがとうございます。じゃあ、いってきます」
「さすがに疲れたわ。…こんなことしか言えないけど、頑張って」
「お二人に何かあるとすずかお嬢様と妹が悲しみます。何が何でも無事に帰ってきてください」

ブルルルルル!!…ドガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!

脈動したかと思えば、ロケットのように一気に飛び上がり、次元の壁を突き破る。






Noside

「姉さん!!」

フェイトの悲痛な叫びが木霊する。


アリシアは信じられないものを見ていた。

自分の体から生える一本の腕。雄介謹製のBDU、ボディガードを貫き、いや正確にはその2つと体を貫かずに、貫くといった状態になっていた。

「な、なんで?」

その腕の主は、先ほどまでアリシア自身が拘束していた仮面の男。絶対の間合い、絶対的な優位が完全に覆っている。

「撃たれる寸前に拘束が緩んだ。勝ちを焦ったな」

実際は勝ちを焦ったのではなく、体への防御としてマシンガンアームの反動を殺すぶんに超能力のソリースが奪われたために生じた隙だった。しかし、こうなってしまっては、そんな理由は意味をもたない。

「その謎の力、レアスキルか?大元を断たせてもらうぞ」

ゆっくりと開かれる手の中には点滅する一つの石があった。

(力が、抜け…!!!)
「あ、あ!ああああああああああ!!!!!!!」

突然、体を襲う急激な熱さ。あまりの熱さに叫ぶアリシア。その叫びに呼応するかのように石が脈動する。

「くっ!!なんだ、これは!?うわっ!!」

仮面の男は急なエネルギーの放出に驚く。

「なに!?闇の書が!!」

放出されるエネルギーへ向け、シグナムの手から闇の書が飛び出す。そして、

バラバラバラバラ…

ページがすごい勢いで文字が浮かんでいく。

「馬鹿な!蒐集しているというのか!」

蒐集ページが30を超えた辺りで、

「「「あっ!!」」」

闇の書が石そのものを飲み込んでしまった。呆然とする一同。そしてその光景を上空で見ていたものがいた。





Side 雄介

目の前が真っ赤に染まり、頭の中が真っ白になる。記憶のフラッシュバックが起こる。


絞め殺される恩師。
切り裂かれる家族。
貫かれる親父。
毒に犯されたトモダチ。
自爆する愛するもの。
撃たれた母。
焼き殺される同僚達。
実験された姉。

そして、蜘蛛怪人に貫かれ、鉄塔の上から落とされた義父さん。



今まで失った大切な人たち。その顔が次々と浮かび、消えていく。
そして、その全てが重なり、目の前で体を貫かれたアリシアになる。


「あ、ああ、ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

ギリギリギリギリッ!!

無意識に体の右側で両拳を握り締める。まるで硬いものを磨り潰すような音がもれる。
右腕を腰へ。左腕を右上から左上に動かす。

「変…身!!!」

両腕を右上に伸ばす。

キングストーンが俺の意思に反応し、熱、光、電磁波を放出しながらベルトの形で体の表面に浮かび上がる。

変身の第一段階。ベルト中央部の細胞核エナジーリアクターによって増幅されたエネルギーにより体中の特殊冬眠細胞MGBが活性化。バッタ人間へと変貌する。

第二段階。その体表が黒い外骨格である強化皮膚リプラスフォームで覆われ、内部の筋肉が強化筋肉ファルブローンに変化。

最後に胸のゴルゴムのリンゴを食べようとする蛇を象ったシンボルが輝く。



ズガアアアアアアァァァァァァンン!!!!

空中でカブトゼクターが爆発する。よく頑張ってくれた。俺はその爆風に乗り、

「うおおおおおおお!!!!」
「なに!ぐああぁぁぁ」

アリシアの後ろ、貫いた手の主を全力で殴る。が、ガードを張られた。それでも一般人の30倍の筋力で打ち出されるパンチを止められず相手は後ろに吹っ飛んでいく。

「アリシア、しっかりしろ」
「はぁはぁはぁ、ユウ、スケ?」
「ああ、もう大丈夫だ。後は俺が何とかする…バトルホッパー」

サイドバッシャーが光に包まれ、バッタを模したバトルホッパーに変わる。どうやらサイドバッシャーのときに撃ちすぎたらしく、所々緑の装甲がない。

「よくやった。…もうしばらくアリシアを任せる」
ブル、ブルルルルルル!
「よし………うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

離れるバトルホッパーを見送り、天にむかって叫ぶ。眼前にはようやく立ち上がる敵。


俺は生まれて初めて誰かを本気で殺したいと思った。



「お前は仮面ライダー、ぐぁ!」
「…」

仮面をつけた顔面を殴る。問答する気は無い。

「くっ!」
「…」

姿が消える。しかし、その程度で逃がすか。ライダーセンサーとアラートポイントが大気の流れをキャッチ。右からのパンチ。左手で掴み、ライダー投げで地面に叩きつける。ちっ、下が砂地でダメージが薄いか。

「が!く、くそぉぉぉぉ!」

体の周りに光の輪が現れ、縛り上げられる。立ち上がり殴りかかってくるが、この程度。

ブチッ!!!

パワーストライプス。キングストーンの力を全身に行き渡らせる赤と黄の線。ここから直接エネルギーを放出させ、拘束する光を引きちぎる。

繰り出してくる右拳を掴む。さらに殴りかかってくる左拳も掴み、じわじわと握りつぶす。

「ぐ、ぐぐ、ぐぁぁぁあああ…く、喰らえ!」
「キングストーンフラッシュ!!」

放たれそうになる光弾。キングストーンの力を全開にし、リアクターから直接、放出する。このキングストーンフラッシュは直接のダメージ以外にも敵の攻撃を弾き返す効果がある。

後ろに吹き飛び、砂の上を転がる仮面の男。光弾も弾き飛ばされ、あらぬ方向に行く

ベルトの上で拳をあわせる。キングストーンフラッシュのエネルギーを今度は放出せず、拳に込める。右拳が赤く発光する。ジャンプとともに拳をくり出す。

体勢を立て直した奴が何かを掴んで前に出す。何があろうと打ち砕く。

「ライダーパ、!!」

体中の全エネルギーを使い無理矢理、体を止める。拳が奴が突き出したもののわずか1cm足らずのところで止まる。

「動くな。動けばこの娘の命は無い。貴様らがこの娘に並々ならぬ思い入れがあるのは調べがついている。闇の書の騎士、貴様も動くな!!」
「くっ!」

仮面の男がフェイトの首に手をかける。頭にのぼっていた血が一斉に下がる。しまった。周りを見ずに闘っていた。なんという不覚。シグナムのほうもフェイトが捕まった瞬間、動き始めていたが、すぐに牽制され動けなくなる。フェイトも力が入っておらず、自力で動くことは出来ない。

「喰らえ」
「グハッ!」

至近距離から腹部の光弾をぶつけられる。いくら強化皮膚リプラスフォームといっても至近距離からの攻撃を完全に無効化することは出来ない。後ろに跳ね飛ばされる。

すぐに体勢を立て直すが、立て直したからといって、下手に動くことが出来ない。

「くッ!よくも散々嬲ってくれたな」

一斉に周りに光弾が生まれ、襲い掛かってくる。避けられるが…避けるわけにはいかない。

リプラスフォームはゴムの柔らかさと特殊セラミックの硬さを併せ持つ。1tの岩の衝撃にも耐えられるが、

「ぐ、ぐぐぐ…」
「ふん、まだ耐えるか。ならばこれでどうだ!」

仮面の男の足元に陣が展開される。そして手の先に集まった光が怒涛のごとく押し寄せる。そういえば、この手の攻撃喰らうのはなのはちゃん以来か。耐えられる。耐えられるが、

「がっ!」

思わず膝をつく。

フェイトを見捨てれば生き残れる。が、たった一つ。目の前にある命を助けられなくて何の価値がある。どんな顔して仮面ライダーだと名乗れる。諦めるか。仮面ライダーの歴史に敗北の文字はあっても諦めの文字はない!

足に活をいれ立ち上がる。といってもギリギリか。くそ…。

「…闇の書の騎士。そいつを斬れ」
「なに!」
「どうした、早くしろ。うまくすれば、また闇の書が蒐集してくれるかも知れんぞ。くくく、はははははははは」
「やめ、て、シグナム。仮面、ライダー、私は…ぐっ!」
「待て!…分かった」

喋ろうとするフェイトに仮面の男が拳を叩き込む。それを見たシグナムがこちらへと剣先を向ける。




最後まで諦めるか。最後のその一瞬まで。




Side アリシア

ユウスケが怒っていた。

ユウスケが泣いていた。

私のせい。私が勝手に飛び出したから。

フェイトを助けたかった。

フェイトに会いたかった。

フェイトと話がしたかった。

私のせい。私が弱かったから。





力が欲しい。闘う力が。

いつも守ってくれるユウスケを、いつも一生懸命なフェイトを助けられる力が。





目が覚める。戦場より少し離れたところ。


仮面の男。
捕まっているフェイト。
今にも倒れそうな仮面ライダー。
それに剣を向ける騎士。


体が勝手に動く。
戦場に向けて走り出す。
自分の横を誰かが一緒に走っている。
緑の屈強な戦士。
貴方は誰?



そして私はこの言葉を言う。





「変身!!」





魂が目覚めようとしていた。




あとがき

どうも作者のGです。時間かかって、しかも前後編になってしまいました。この文を読んだ方。作者は画面の前で土下座をしています。許してください。


さてOP。ある事件で全面書き直し。した結果、月村家のラボについて。特に書くことがありません。しいて言うなら最後のものは原作ネタです。

前半。宇宙の知識を得るためにクロノ来襲。はっきり言って必要なかったかも。これさえ抜けば後半もかけたかも。でも複線は張っておきます。

後半。アリシア頑張る。でも負け。ライダーぶち切れ。でも人質。アリシア覚醒。
主人公と忍さんのチートコンビによる巨大カブトゼクター。DCDのファイナルフォームライドを想像してください。アリシアが頑張れたのはぬこがなめたからです。っていうか、本当にぬこを外道にしてみました。批判が怖い。BLACK弱くない?と思った貴方。正解です。BLACKのデータを見ると、力は高いが、防御面の話はほとんどありません。そのため自己設定で防御はさほど高くないことにしました。ちなみに弱点は水中です。10分だけで能力20%ダウンって。




次回もぬこの受難は続く。








[7853] As第8話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/10/18 01:24
最初に言っておく。今回のオープニングは作者としては最高傑作に位置付けている。が、一部キャラがか~なり壊れているので不快に思う人も出ると思う。そういう人たちはとりあえず見なかったことにしてくれ。ごめんなさい。












時の権力者の体と心を操り、裏から支配してきた闇料理人に対し、あくまで市井に身を置き、人々の小さな幸せのために貢献してきた光の料理人達がいる。闇料理人の頂点には黒包丁、光の料理人の頂点には白包丁が伝わり、この二つは時代の節目節目で鎬を削ってきた。この話は白包丁を受け継ぐ一人の料理人が家族のため、襲い来る闇料理人に立ち向かう超高級料理格闘物語(スーパーハイレベルクッキングバトルストーリー)である。








「ただいまより闇キッチンルールによる生簀一郎と高町桃子の料理対決を始める。テーマはスイーツ。負けたものは料理人としての地位と名誉を剥奪される。」

ワアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!

馬鹿でかいセットの中心で白い服を着たおやっさんの声と同時にスモークがたかれ、煙の中から和服を着た男とエプロン姿の桃子さんが現れる。

観客席から怒号とも取れる歓声が響く。

「…」
「雄介。実は昨日…」

隣の席に座る恭也さんから説明が入る。どうやら相当呆けた顔をしていたようだ。





落雷と共に店の扉が開かれる。

「噂には聞いている。本場フランスで技を学び、新たな味を作り上げるその腕見せてみろ。勝負だ」

言葉と共に包丁が引き抜かれる。それと同時に動き出そうとする御神の三剣士。しかし、それを制する声。

「待ちなさい!…その包丁、ついに来たわね。受けてたつわ」

同じく包丁を引き抜く桃子さん。

「場所は…」
「ちょっと待ったぁ。ひとーつ、ひいきは絶対せず! ふたーつ、不正は見逃さず! みっつ、見事にジャッジする! アリサ・バニングス、ただいま参上!その勝負、私が預かる」

トンボの杖でも持ってそうな台詞を、その時ちょうど遊びに来ていたアリサが叫ぶ。





「…それでいつの間にかこんな大事に…」
「このセットでしかもTV中継…一体いくらかかってるんだ?」

頭痛がしてきた。




料理が進んでいく。

「ふっ、見せてやろう。我々闇料理人に伝わる黒包丁の真髄を」

和服の男生簀が包丁を抜く。



「何!黒包丁だと!」
「知っているのか、雄介」
「あれは、常に時代の権力者を影から操ってきた闇料理人の頂点に立つ者の証…」



それに対して、桃子さんも包丁を抜く。

「ならば私も見せましょう。この白包丁の真価を…」




カッ!!!!

セットが一瞬光に包まれる。

次に目を開けた瞬間、既におやっさんの前には料理が並んでいた。

「「はっ?」」
「…見えましたか?」
「…まったく」





おやっさんがゆっくりと生簀の料理ののった皿を手に取る。どうやらチョコレートアイスのようだ。


「ちょっと待て。どこら辺に包丁が必要なんだ!?」


俺の突っ込みに答える人はいない。

「おっと、待ちな。仕上げが残ってるぜ」

いきなり生簀がマッチを取り出し、チョコレートアイスに火をつける。なんとアイスが燃え、、火が消えたころには半溶けの状態になっていた。

「ほう、火のついたブランデーを注ぐアイスは聞いたことがあったが、まさかアイス内部のジャムにブランデーを混ぜ、そこに火をつけるとは…ではいただきます」

スプーンがアイスに入り、その一部がおやっさんの口へと運ばれる。それと同時におやっさんの目が大きく開かれる。

「これは…チョコレートを丁寧に溶かし、そこに練りこまれたイチゴのジャム。火をつけることによりアイスなのに香ばしい。さらにわずかばかりだが柑橘系の香り、柚子の皮が混ぜてある。しかし、その香りもチョコレートやイチゴと喧嘩することなくパーフェクトなハーモニーを奏でている。まさに芸術品。…あぁ、この味、天国だ…」




「…なんか、おやっさんの頭の上に天使のわっかみたいのが見えるんですけど」
「…気のせいだ」



おやっさんの言葉を聞き、生簀の顔にいけ好かない笑みができる。うわぁ、なんかあの顔、ぶん殴りたい。

おやっさんが次に桃子さんの作品を手に取る。

「ふっ、何を作るかと思えば単なるバニラアイスだと。しかも何も工夫が見られない。そんなもので俺に勝てると思っているのか」
「…」


人を馬鹿にした台詞に対し、目を瞑り反応しない桃子さん。ごめん、その前にやっぱり突っ込ませてくれ。


「だから、どこら辺に包丁が必要だったんだ!?」


おやっさんがゆっくりと口に運ぶ。そして、食べた瞬間、ピタリと動きが止まる。




「…コメントのしようの無い不味さか?」
「…違う」
「なに!?」
「この味は表現のしようが無い。このアイスの味は…天国をはるかに越えた上に位置している。私に言えることは唯一つ、この味に比べたら、お前のは…豚のえさ~~~~~」
「ぶ、豚のえさ…」

生簀がよろよろと後ろに下がる。


「なぁ、雄介。おやっさんの頭の上に天使の輪が現れ、叫びながら天に昇っていった様に見えたんだが」
「きっと気のせいですよ」


「そ、そんな馬鹿な」

生簀がテーブルに残った桃子さんのアイスを食べる。そしてまた後ろによろめく。俺には天使の輪は見えていない。

「これは!!このわずかに舌先で感じる塩味はなんだ?塩など使っていなかったはずだ!」
「料理のとき、私はこれを使っていたわ」

桃子さんの手に乗るのは所謂手動アイスクリーム製造機。冷蔵庫や電動が現れてからはその姿を消し、今では子供のおもちゃ程度になってしまったものである。っていうか、いつ使った?

「馬鹿な、そんな旧式のおもちゃで」
「この手動は電動のものと違い、密封されていない。そしてここ海鳴はすぐそこに太平洋を臨む土地。この時間、わずか数分だけど風に乗って海の潮を運んできてくれる。この手動アイスクリーム製造機はその空気を吸い、ふんわりとしたアイスを作ることが出来た」
「風を、海そのものを調味料、としたのか」
「貴方は自分の力を過信するあまり周りが見えていなかった。人間一人が世界に勝てるわけないわ。そしてそれが分からず、技術ばかりを妄信する闇料理人に私たち光の料理人が負けるわけないわ。…この勝負、私の勝ちよ」
「み、見事、だ」

ゴーン、ゴーン!!

闇料理人生簀一郎が鐘の音と共に天に召されていく、様に見える気がする。

「桃子!」
「あなた!」

ステージ上で抱き合う夫婦。ちなみにTV中継はまだやっている。

「!黒包丁が!」
「…また新たな主の下へ行ったのね。でも私は負けない。家族のため、世界のため、私は何度でも戦うわ」


わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

すごい盛り上がり。





「ねぇ恭也さん」
「…なんだ?」
「おやっさん、いつ帰ってくるだろう?」
「…知るか」







ある平和(?)な一時。


第8話

Noside

フェイトを捕らえていた仮面の男が吹っ飛ばされる。

全員が絶句する。いきなり現れた異形の戦士に。

誰も動けない最中、戦士、仮面ライダーギルスは辺りを見回し、天を向きデモンズファングクラッシャーを開く。

「!!まずい!」

一人、これから起こることを予測できた仮面ライダーBLACKが素早くフェイトを回収し、距離を開ける。

「耳を塞いで大声を出せ!!」
「は、はい!」

次の瞬間、

「アァァァアァァァァァーーーーー!!!!!!」

異形の戦士が砂の世界に慟哭を響かせる。

「「ぐぁぁぁぁぁ!!!?」」

ギルスホーンと呼ばれる超音波。アンノウンには大した効果はあげられなかったが人間には効果的である。それを至近距離で聞いた仮面の男とシグナムはたまったものではない。両者耳を押さえ蹲る。

ギルスが膝をついたシグナムの顎を蹴り上げる。撥ねあがった体を地面に叩きつけ馬乗りで殴り始める。シグナムの体が障壁を打たれるたびに砂へと沈んでいく。



(!!ワイズマンモノリスがない!)

BLACKは自分の目を疑う。アリシアに渡したギルスの要素にはそれを補助する真島浩二のアギトの力も合わさっていた。本来ならパワーアップ後のエクシードギルスになってもおかしくはない。しかし、現実に目の前にいるのはパワーアップ前のギルス、しかもギルスアントラーからの力の過剰放出やバイオチェスト、ミューテートスキンの侵食を抑えるワイズマンモノリスなしである。あの状態ではライヴアームズやライヴレッグも腕や足に寄生する形でエネルギーを吸い続ける。

BLACKがギルスの肩を掴み、砂上を転がるようにシグナムから引き剥がす。

「アリシア!今すぐ変身を解け。その状態は危険だ!」
「グゥ、ウ、ウオォアァァァァァァァ!!!」
「うわっ!」

BLACKが振り解かれ、投げ飛ばされる。BLACKとギルスを比べるとパワーでは本来BLACKのほうが勝っている。しかし、いくら仮面ライダーの中でも回復力の高いほうであるBLACKでも先ほどの攻撃のダメージが完全には抜け切っていない。

ギルスがまだ倒れているシグナムへスタンピングのように蹴りを放つ。


「くそ!」

仮面の男がシューターを放ち、シグナムに飛び掛るギルスを吹き飛ばす。

「引け、闇の書の騎士。ここは助けてやろう」
「…」

口端からの血を拭い、シグナムが転移していく。


「ガ、アアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!」

ギルスの叫び声とともに傷が再生していく。バイオチェストには自己修復機能がある。が、これは使えば使うほど装甲の成長を早め、侵食速度も上がっていく。

「ちっ、化け物め!」
「シャァァ!!」

ライヴアームズから鋭いカギ爪、ギルスクロウが飛び出る。



BLACKが体勢を立て直す。

(一つの感情が爆発し、それに捕らわれ、周りのことが何一つ見えていない。…あれが、さっきまでの俺の姿か)

冷静に見れば、まるで単なる獣。あれでは本能のまま闘う改造人間達とどう違うというのか?

頭の中に後悔と苦悩があふれてくる。

(なぜ、ことを構えた?アリシアを拾ってさっさと帰ればよかったんだ)

そんな中、頭の一部では冷静に、それでいて混乱した思考が流れていた。

(…俺はなにか大切なことを忘れてる?…そもそも俺は何を思い、どんな仮面ライダーになりたかったんだ?)



「シャッ!シャッ!グァァ!!!!」
「ぐあっ!」

ギルスクロウが確実に仮面の男の体を捉えていく。仮面の男はプロテクションを突き破るギルスクロウを回避しようとした。が、ギルスクロウは伸縮自在。回避しきれず次々と傷を量産していく。

なんとか間合いを取ろうと仮面の男が攻撃を放つが、それをことごとくカウンター気味にギルスが切り返している。その度に体からは血が飛び散る。


仮面の男を蹴り飛ばし、ギルスは右手のギルスクロウが引っ込み、まるで引き抜くようにライヴアームズから触手、ギルスフィーラーを出す。それを鞭のように回しながら間合いを測る。

既に仮面の男はBLACKとの戦闘後。ダメージの蓄積で動きが鈍い。仮面により表情は見えないが、その動きに余裕があるようには見えない。

「アアアアァァァァァ!!」

仮面の男の首に触手が巻きつき拘束する。ギルスが飛び掛り、首筋へとその牙が迫る。咄嗟に右手でガードしたが、その腕に牙が突き刺さる

「ぐっ、ぐっ…ガァ!!」
ブシュュュュ!!!!

仮面の男の腕。その一部が噛み千切られ、砂漠へ鮮血の雨が降る。

その雨を浴び、体を赤く染めたギルスが怒りとも苦しみとも取れる叫びを発し続ける。



(!!一気にとどめを刺す気か)

BLACKの目に、ギルスの踵、ライヴレックスから大きなカギ爪が生えたのが映った。
止めたい。BLACKの心はそれ一色になっていく。こうなってしまったのは自分の力を過信し、怒りに身を任せてしまった自分の責任。早々にアリシアを拾って、帰ってしまえばこうはならなかった。そして、何より誰かを殺すことになれば、暴走しているとはいえ、心優しい彼女は必ず傷つく。

(しかし、どうすればいい?俺の声は届かなかった。どうすれば……!!)

辺りを見回し、たった一つの可能性を見つける。





Side フェイト

私は呆然としていた。

いきなり現れた死んだはずのアリシアお姉ちゃん(?)。
アリシアを攻撃、撃破した仮面の男。
それに対し、今までに感じたことの無い殺気を放つ仮面ライダー。
あっさり人質になってしまった私。
仮面ライダーに攻撃しようとするシグナム。

そして、血みどろの闘いを目の前で演じる新たな仮面ライダー。
先に現れた仮面ライダーの叫びでは、あれはアリシアらしい。

聞こえていた。理解も出来た。しかし、それでも頭が納得することを拒んでいる。

何も考えられず、やはり呆然とするしかなかった。


「フェイト、フェイト・テスタロッサ!!」

横からいきなり声をかけられ、肩をゆすられる。目を向けると先に現れた仮面ライダーがいた。体が強張る。仮面ライダー達のことは信じられる人達だとは思ってはいるが、それでもさっきの闘いを見た後では恐怖が出てしまう。

「頼む、力を貸してくれ!彼女を、アリシアを救いたいんだ!!」
「…やっぱり、あの仮面ライダーはアリシア・テスタロッサなんですか?」

空耳ではなかった。しかし、何故?何故お姉ちゃんは生きているの?母さんの手紙にはそれらしきことは何一つ書いてなかった。もしかしたらそれとなく書いているのかもしれないが、それなら仮面ライダーは何故教えてくれなかったの?そしてあの姿はなに?疑問が次々と生まれ、うまく声に出すことが出来ない。しかし、これだけは言わなければならないと思った。

「貴方は、貴方達はアリシアを改造したんですか?」
「…すまない。後でいくらでも謗りは受ける。でも分かってくれ。あの子は君を助けるためだけにここに来たんだ。あの姿になっても君を害する者だけを狙い続けている。ああなっても君の事を大切に思っているんだ!でもこのままじゃ命が危ない。頼む!力を貸してくれ」

すごい勢いで話す仮面ライダー。今まで見たどのライダーもこんなに焦った姿を見せなかった。それだけ切羽詰まっていることが分かる。

「…どうするんですか?」
「俺が動きを止める。話しかけるだけでいい。…本当に力を貸してくれるのか?」
「…アリシアは、お姉ちゃんは私の家族です」
「…そうか…」

緑の仮面ライダー(よく見るとどことなくアマゾンに似ている)、お姉ちゃんは今も天に向かって叫び続けている。

タイミングを計る。







叫びが止まり、一瞬、体が沈む。

「今っ!!」

仮面ライダーが声と同時に動く。一瞬でお姉ちゃんの前に飛び込み、飛び上がろうとするその肩を押さえる。

「待て、アリシア!声を、聞くんだ」

どうすればいいかわからない。ただ私は思ったように行動する。泣き叫ぶ家族にすること。後ろから抱きしめて、声をかける。変身することで大きくなっている体にはどう頑張っても腰辺りにしがみつくしか出来ないけど。

「アリシア、お姉ちゃん。怖くないよ。私は、私は大丈夫。私はここにいるから。だから、止まって…お話しよ」

もがくように動いていた体が、その動きを止める。そして、その体が少しずつ縮み、元のお姉ちゃんに戻る。

私はその体をただギュッと抱きしめた。





Side 雄介

アリシアが動きを止めた。ワイズマンオーブが消え、変身が解けていく。

フゥ、よかった。

後ろの気配が動く。ったくタフな奴。

「おい、今俺は機嫌が良くて悪いんだ。さっさと失せろ」
「ハァハァハァ、黙れ!不確定要素の犯罪者どもが!!」

犯罪者ども?管理局みたいな言い方だな。

向かってくる拳を真正面から受け止める。そのまま組み付く。

「アリシア、後は好きにしていい。どんな選択をしても俺はそれを許す!トォ!!!」

組み付いたまま大きく跳ぶ。




アリシアとフェイトから大きく離れた場所。

一度大きく距離を取り、対峙する。

「ここなら誰も人質に取れない。誰も利用できない」
「それがどうした!」

言葉と同時に飛んでくる光弾を避けると、避けた先に拳が飛んでくる。怪我した腕で殴るか!頭を下げ攻撃を避け、ボディを叩く。しかし、まるで意にかえさず殴りかかってくる。

「貴様らみたいな不確定要素がいると邪魔なんだよ!!」
「知るか!!だが、どんな理由があろうと幼い子供を人質にとるような外道はこの俺が許さん!!」

左腕を掴み、ライダー投げで投げ飛ばす。今の言葉。南光太郎の模倣でしかない。まだ俺は仮面ライダーとして未熟。でも少しでも近づきたい。それが最初の願い。…そうだった。俺は…。



「…今だ!」

ベルトの上で拳を合わせる。エナジーリアクターからのエネルギーが右腕に集中し、赤く発光する。
飛び上がり、空中で一度体を縮める。大きく伸ばす反動を拳に乗せて、

「ライダーパンチッ!!!!」
「ぐあッ!!」

仮面に当たり、地面を転がる。仮面の一部が零れ落ちる。!!顔が無い!?ッ、関係ない!!
光が足へと移り、飛び上がって反動をつけ、

「ライダーキック!!!!!」
「ぐああぁぁぁぁぁ!!!!!」

ズガアアアアァァァァァァァァンンン!!!!!!!

仮面の男が青白い炎に包まれ、爆散する。

爆散?改造人間でも怪人でもないのに?

…まぁいいや。一瞬何かを感じたが、もう周りに気配はない。帰ろう。





ライダーマシンを呼び、アリシアとフェイトの所に来る。

二人はまだ抱き合っていた。姉妹の邂逅か………!来たか。上空にアルフとリニス、二人の使い魔が来た。

「あれは!?」
「まさか、アリシア!?」

…もう少し時間をあげたかった。

「アリシア、どうする?」
「えっ?」
「家族と、フェイトと一緒に行きたいなら構わない。最初からそうなることも覚悟していた」

覚悟。もしそうなったら俺は今の生活を捨てざるをえないだろう。おやっさんや月村の皆にも迷惑をかけたくない。…それもいいかもしれない。一人旅か…。

誰も何も言わない。ただ、しばらく経ってスッとアリシアがフェイトから離れ、ライダーマシンの後部座席に跨った。

「あっ!」
「…いいのか?」
「いいの…ごめんね、フェイト。でも、ユ、仮面ライダーも私にとって家族なの。大丈夫。またすぐに会える。私たちは何度でも会わなくちゃいけない」

バイクのアクセルを全開にする。

背中に掴まる温もりと先ほどの家族という言葉は涙が出るほど嬉しかった。








****************************************

Side アースラ

重苦しい空気が漂う。

ぼぉっと虚空を見るフェイト。
それを気遣うなのは。
アホ毛と一緒に頭を垂らすエイミィ。
深刻な顔で画面を睨むクロノとリンディ、リーゼアリアの三人。

「なのはちゃんが出てからすぐに駐屯所の管制システムがクラッキングを受けて、あらかたダウンしちゃって、それで指揮や連絡が取れなくって…ごめん、私の責任だ」
「それにしても妙ね…駐屯所の機材は管理局と同じ機材なのに。それを外部からクラッキングできる人間なんているものなのかしら?」

駐屯所に持ち込まれた機材はアースラの機材とほぼ同レベルである。確かに管理局本局に置かれているような最新鋭のものではないが、それでも簡単にクラッキングを許すようなものではない。ちなみに、この管制システムのほうはグレアムを通して融通してもらったものであり、管理外世界にはこれ以上の管制システムを持ち込むことは出来ない。

「組織的、もしくは内部犯の可能性もありますね。…もしかしたら」
「もしかしたら?」
「今回の事件そのものが仮面ライダーの自作自演かもしれません。彼らを作った科学者ならクラッキングぐらい簡単でしょうし」
「いや、それはどうだろう」

アリアの推測をクロノがほぼノータイムで異議を唱える

「ないとは言い切れないが、やる利点がない。必要性なんて彼らの能力から考えればゼロに等しいし、アリシア・テスタロッサの件がある」

フェイトの肩がビクッと動く。アリシアの名が出たためであろう。

「彼らは闇の書の騎士たちに仲間に手を出すなという条件を出していた。このことから、彼らの仲間には力を持たない者がいることと仲間を大切にしていることがわかる。そんな奴らが態々アリシアを前に出してくるか?僕たち、管理局にその存在を知られる可能性があるのに。彼らだって、アリシアがどれだけ僕たちにとって、特殊な存在だか分かっているはずだ」
「アリシア・テスタロッサが偽物の可能性は?」

バンッ!!

部屋の中に力いっぱい机を叩く音が響く。フェイトである。隣のなのはがかなりビビッている。

「アリシアは、姉さんは本物です」

静かに、それでいて有無を言わせぬ迫力を持った声。先ほどまで虚空を眺め呆けていた瞳は細く鋭くなっている。


「まぁ、今ここで結論を出すのは早計ね。こっちの仮面の男の方は…」
「爆発してるし死んじゃったんじゃ…」
「いや、エイミィ。爆発する寸前で映像を止めてくれ」

仮面の男がキックを喰らった後、ヨロヨロと立ち上がるシーンで止まる。よく見ると、体がブレている。

「これ、映像が悪いんじゃない?」
「これは、高ランクの時空犯罪者が良くやる手ですね。やられたと見せかけて、残像を爆破し自分は転移するもの。しかも、少し幻術を混ぜてる」
「ああ。そしてこのことから仮面の男には少なくとももう一人、魔導師の仲間がいる。こんな重症じゃこれだけの偽装は無理だ」

エイミィの疑問にアリアが説明、クロノが補足する。

「そういえばアリア、ロッテはどこだ?」
「…少し別件のほうに呼ばれて…」

アリアの返答に考え込むクロノ。


「予定より少し早いけど、これより司令部をアースラに移します。各員は所定の位置に」

リンディが立ち上がり命令を出す。そしてなのはに念話を送る。

(なのはさん、貴方は一度家に戻らないと)
(え?でも…)
(フェイトさん、動揺していると思うの。頼んでもいいかしら?)
(…はい!)



管理局、被害なし。行動を開始する。



Side 騎士たち

重苦しい空気が漂う。

全員の顔が苦虫を噛み潰した様。八神家リビングの空気が最悪の状態です。確実に、ここにいない家主のはやてには見せられない光景である。

「…で、この場合は仮面ライダーを敵に回したと考えていいんだな?」

質問というより確認のようにザフィーラが言う。現場を見ていないザフィーラたちにはシグナムからの言葉でしか状況を把握できない。そのシグナムも最後まで見ていないのでその後どうなったかわからない。

「…すまん」
「今まで以上に気をつけないといけなくなるわね。彼ら魔力がないから接近してきても分からないし」

頭を下げるしかない将と具体的な対策がまったく思いつかない軍師。

「なぁ、その吸収したものだけでも返すことできねーんかよ」
「それが、闇の書があれからうんともすんとも言わなくなってな」
「…アイゼンでブッ叩くか。確か右斜め45度で…」
「やめろ!」

ヴィータが一番テンパッている。仮面ライダーが敵対するかしないかでこれからの行動に大きく影響が出るので当然といえば当然である。


「あの仮面の男、何が目的かしら?」
「…完成した闇の書を利用しようとしているのかもしれんな」
「ありえねぇ。だって完成した闇の書を奪ったって、マスター以外には使えないじゃん」

仮面ライダーのことを脇に置き、とりあえずもう一つの案件、仮面の男について話し合う。全員がヴィータの台詞に同意する。

「確かに、完成した時点で主は絶対的な力を得る。脅迫や洗脳が効果があるはずもないしな」
「まぁ、家の周りには厳重にセキュリティーが張ってあるし、万が一にもはやてちゃんに危害が及ぶことはないと思うけど」

現在、八神家はシャマルの張った結界によって守られている。この結界は内部への転送妨害、一定以上の物理的衝撃及び魔法攻撃への防御、外部からの急激な環境変化を阻害する効果を持っている。

「念のためにシャマルはなるべく主のそばを離れんほうがいいな」

ザフィーラの言葉に頷くシャマル。


「なぁ、闇の書を完成させてさ、はやてが本当のマスターになったらさ、それではやては幸せになれるんだよな?」

その言葉にシグナムとシャマルは怪訝な顔をする。

「何だいきなり?」
「闇の書の主となった者は、大いなる力を得る。それは闇の書の守護騎士である私たちがよく知っている事でしょ?」

シグナムとシャマルの言葉にヴィータは少し戸惑いながらも言った。

「そうだよ、そうなんだけどさ。私は何か、大事なことを忘れているような気がするんだ。」

ヴィータの言葉にザフィーラが首をかしげる。

「大事なこと?」
「うん、なんだかよくわかんないけど…すごく大事なことを忘れてる気がする。」


ガシャァァァァァン!!!

「「「「!!」」」」

二階から大きな金属音。現在、二階にいるのははやてのみ。全員の脳裏に敵の襲来という言葉がよぎる。

4人が…3人と1匹がはやての寝室に駆け込むと、部屋には横倒しになっている車いすとベッドの横にうずくまるはやての姿があった。

「はやて!はやて!!」

ヴィー他の呼びかけにもはやては胸を押さえうめき声しか返さない。

「病院!救急車!!」

数分後、八神家からでた救急車が海鳴大学付属病院へと急行した。




闇の書の騎士たち。被害なし、八神はやて入院および仮面ライダー敵対の可能性のため蒐集に暗雲立ちこむ。





Side 雄介

月村家の廊下を歩いている。片手に果物の入った籠、もう一方にはお盆に乗った水差しとコップ。まるでお盆の上の水差しやコップが微動だにしないのは、常にお盆が水平である証拠。口で言うより難しいが、執事の経験が役に立っているのだろう。

前回の戦闘から3日経った。

月村家の家先に直接転移するとファリンさんが涙目で待っていた。声をかけようとした瞬間、フッと後ろの気配が消え、アリシアが倒れこんだ。

その後は蜂の巣を突いたような大騒ぎ。結局、ファリンさんを泣かせたということでノエルさんから説教+ロケットパンチ。しかも、進化したもの(ドリルプレッシャーパンチと言うらしい)をもらった。忍さんが強化したらしいが、どう考えても俺のプランが影響している。つまり、

「自業自得です」

ということだ。


アリシアが倒れた理由は俺が復活させた時と同じ。急激な体内のエネルギーバランスの変化である。俺のときは大量にある不思議エネルギーとライダーの要素の中から3個だったが、アリシアの場合、3分の1を取られたため眠りが深かったようで丸2日眠っていた。

幸い昨日の夕方に目を覚ましたが、



「あれ?ファリンさん、どうしたんですか?」
「それが…扉が開かなくて。カギはないはずなんですけど」

アリシアの眠っていた部屋の前でファリンさんが立ち往生していた。確かにドアノブが動かない。というよりこれは、

「お~い、アリシア。開けてくれ」
「…」

無言。まず間違いなく、このドアはアリシアの超能力で開かなくなっている。…締め出した理由は多分、

「…アリシア。多分、ソレの苦しみは世界で2番目に俺が分かってる。治せるから開けてくれ」
「…はい」

…泣いていたのか、小さな涙声の後、ドアの拘束が外れる。アリシアはベッドの中で体を起こして待っていた。掛け布団の中に手を隠している。

果物と水を机の上に置き、ベッドの横の椅子に腰掛ける。


「ファリンさん、ちょっとだけ後ろを向いててもらえますか?」
「?…はい」
「アリシア、手出して」

差し出した手の上に乗るアリシアの手。それは実年齢とは裏腹に潤いなく、角張ったものだった。


仮面ライダーギルス。その身体能力は仮面ライダーアギトすら凌駕している。しかし、それはワイズマンモノリスによる制御がないためであり、その結果、力の使いすぎでぶっ倒れるばかりか、とんでもない反動が戦闘後に襲ってくる。ギルスに変身する葦原涼は変身後、体の老化、頭痛や内臓への浸食などを受けていた。

…ギルスについては謎の多い存在だ。知っているであろう黒服の男や本物の津上翔一が黙したままいなくなってしまったため、その正体は永遠に闇の中である。一説にはアギトの出来損ないともあるが。…仮説の域は出ていないが、俺は、ギルスは光と闇が交じり合った存在ではないかと考えている。葦原涼の父親である葦原和雄もまたアギトになる力を秘めていた。人類は闇の力によって生まれた存在なので、父方の光と母方の闇が交じり合い、それが交通事故と父の死によって覚醒したのではないか。…まぁ、所詮は仮説だが。

どうやら、アリシアの異常もギルスのライヴアームズが原因のようだ。アギトの光の力は…まだ眠っている?どうやら感情でギルスの力のみが覚醒してしまったようである。

そういえばギルスは命の危機で強制的に発動したが、アギトは強制的な発動はなかったな。必要なのは時間か?


手に意識を集中する。俺の中にはアナザーアギト、木野薫のアギトの力がある。それに、仮面ライダーになりかけた沢木雪菜、岡村可奈、国枝広樹の要素もかなり薄いがあるようだ。全部あわせれば、

「…あ!」

やっぱり、治せた。一瞬、体がよろける。…俺も超能力の訓練をすべきかもしれない。



「ごめんな、アリシア。今回の件は完全に俺の予測ミスだし、助けに行くのも遅れた」
「そんな…私が勝手に突っ込んだから。それに、キングストーンも」
「いや、それは…良くはないが、取り返せばいい。でも、今回は予想できる範疇だった。なのに何の対策もしなかったんだから…」
「でも、あの感覚は私たちが特殊だったためだし…ライダーマシンやカセットアームも持ち出しちゃった」
「だから、あれは俺が何かしらのロックを…」
「…!」
「!…!」
「!!…!」


数十分経過・・・


「「ハァハァハァハァ」」
「あの~、そろそろ両方悪かったってことで手打ちにしませんか?」

ファリンさんの仲裁で終わったものの、ふたりとも息があがっています。壮絶な弁論だった。


「…で、アリシアちゃんはキングストーンを取られちゃったんですか?」
「はい。俺もその現場は見ていたので。光の力、というか賢者の石のほうは変身前は基本的に体中に拡散してるので大丈夫だったみたいですけど。まぁ、そっちは俺が何とかします」

キングストーンの話になってアリシアがズ~ンと暗雲を背負っている。たしかに問題だな。あれ一つでその気になればJSなんか目じゃないほどのパワーが出る。だが、あれのパワーが真に発揮されるのは、意思あるものが体に埋め込んで使ったときだ。気づかれる前に回収したいところ。

「アリシア、フェイトとはどれぐらい話せた?」
「…母さんのことを少し。あと、あの姿のことも」

フェイトも怖がっていたし、ギルスのことは聞いてきたか。…やはり、ギルスの姿は恐ろしかったのだろう。まぁ、普通は怖がるだろ。常識的に。

「ワイルドでかっこいいね。ギルスって」
「…は?」

目がテン、いや目が点になる。…そういえば、フェイトもアマゾンに対してあまり恐怖してなかった。怖がっているように見えたのは血みどろの戦闘のほうでギルス自体を怖がっていたわけじゃないのか?…怖いだろ、普通。アマゾンとかギルスって。

「あっ!ギルスのことは超能力のほうって言っちゃったけど合ってるよね?あと、他の仮面ライダーのことは特に言ってないよ」
「そ、そうか…まぁいいや」

逆に考えるんだ。きっと彼女たちの住んでいた次元世界はああいう生物がいっぱい住んでいるんだ。…喋るフェレットに巨大ミミズ、魔法で人が飛び回り、戦艦が飛んで、アマゾンが駆け回る世界。…前にもこんなこと考えたな。

「とりあえず今後しばらく、ギルスへの変身は禁止だ」
「は~い」

割とあっさり受け入れる。手の老化がショックだったのだろう。




しばらくするとアリシアの瞼がトロ~ンと下がってくる。体調が万全じゃない状態で超能力を使ったから疲れたのだろう。

「…眠い…」
「まだ病み上がりなんだ。寝ていいよ。…そうだ。アリシア、起きた時に答えをくれるんでいいから」

すでにベッドの中でまどろみだしているアリシア。聞こえているかどうかはこの際どうでもいいかな。ある種の宣言みたいなものだから。

「俺の弟子にならないか?」










あとがき

どうも、作者のGです。今までで一番更新間隔があいてしまいました。ゴメンナサイ。

OPは始め短編にしようとしていたネタです。やめた理由は仮面ライダーに変身するタイミングがないから。ちなみにその場合は主人公が桃子さんに弟子入り、審判には士郎さんの予定で、ツッコミはひたすら恭也がやる展開でした。

前半。…駄目だ。文章がガタガタ。変身しているときはその名前で書くことにしています。アリシアのときは真の姿、みのりのときは変装バージョンです。一方的にぬこが弄られているけど、正直ぬこの闘い方がわかんね。頑張った結果です。

後半。前半の流れからさらにグダグダ。クロノ君は頑張ってます。本編より早く2人であることにたどり着いたけど、本編以上に視野狭窄気味のなのはと姉登場で脳内ヘブン状態のフェイトじゃ結果は変わらない。闇の書の側に特に変更なし。雄介のたどり着いた答えに関しては次の話へ。


そろそろラストバトル。





[7853] As第9話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/11/16 00:54
ある夏の日。

いつも通り、ポレポレにバイクで来ると、

「よっ」
「アンアンッ!!」

店先に少年と犬がいた。物怖じしない、というかやたら態度がでかい少年である。よく見ると少年は海パン姿。おかしいな?海水浴場からは結構離れているんだけどなぁ。こんな小学校に入るか入らないかの子が一人で歩いてこられるのか?

とりあえず中に入れると、カウンター席に座って堂々とオレンジジュースを注文している。始めは面食らっていたおやっさんも、なぜか意気投合し、つまらないギャグの応酬をしている。俺は犬のほうに虎太郎印のミルクを出す。のどが渇いていたのだろう。すごい勢いで飲んでいる。しかし、あまり騒がない良い子だ。毛並みもワタアメのようにフワフワで気持ちいい。

「おはようございます」
「おお、きれいなおねぇさん。オラと一緒にオレンジジュースでも飲まない?」

ませている上に積極的な少年である。





どうやら本当に海水浴場から歩いてきたらしい。いわゆる迷子だ。

「まったく。父ちゃんも母ちゃんもひまわりもすぐに迷子になるんだから」
「いや、迷子になってるのは間違いなく君だから」
「おっ?」


とりあえず、海水浴場まで送っていくことになった。ファリンさんも手伝ってくれるそうだ。というか子供一人であの広い海水浴場内を捜索なんて不可能だし。

ライダーマシンは既にサイドバッシャーに変形済みである。

「?なんか、さっきと形が違うゾ?」
「「気のせいだ」よ」

子供の感性を甘く見てはいけない…。以後、気をつけよう。





「おお、風が気持ち良いゾ」

少年は一度、秋田のお爺ちゃんの家までお父さんにバイクで連れて行ってもらったことがあるそうだ。そのときもサイドカーに乗ったらしいが、それよりも格段に乗り心地がいいと喜んでいる。

「ねぇねぇ、五代のお兄さん。いつもは何をしてるの?」
「いつもは…大学に行ったり、ポレポレでバイトしたり…たまに冒険に行ったり、かな?」
「冒険?」

少年が年相応に反応する。やはり‘‘冒険’’は男の子にとってロマンである。まぁ、そのロマンを最後まで追い求められる奴はほとんどいないのだが。

「そうなんですよ。五代さん時々、ふらりと冒険に行っちゃうんですよ」

後ろでファリンさんが説明しだす。

「この前なんて、いきなり一週間ぐらい連絡が取れなくなって。そうかと思ったら、いきなり帰ってきて。話を聞いたら青空を見たくなったから行ってきたって言うし」

おやっさんの写真を見ていたら行きたくなった。冒険する理由なんてそれだけあれば十分だ。

「ええっと、確か、ここに…あった。ほら、これ」
「…おぉ!」


少年の手に渡されたのは写真。そこに写っていたのは、澄んだ青空を衝く白い山頂。人呼んでマッターホルン。

アイガー、グランド・ジョラスに並ぶ三大北壁の一つ。霊峰、山岳信仰から神とされる山であり、ここの北壁は難所中の難所である。かつて何人もの登山家が命を賭け…挫折、もしくは命を失う結果になった。そこを無理矢理登ってきた。かなり大変だったが。ちなみにマッターホルンは国境に跨っており、許可なく登るのは犯罪だから絶対に真似しないように。

二枚目は高原。青々と茂る牧草の向こうに数軒の民家と小高い丘。その先に緑とのコントラストから浮き出るように青い空が見える。

場所はスイス高原。標高600m前後の位置にあり、気候も穏やかで風が気持ちよかった。高原そのものはスイス全体の3分の1を占めており、アルプス山脈からの4つの川が流れ込んでいる。

3枚目、4枚目は別のときに撮ったフィリピン辺りの島である。遠くの水平線で同じ青の海と空がくっきりと分かれている。ちなみにここに行った時に買ってきた呪(除け)の御面は貰い手がいなかったので秘密ラボに置いてある。


「オラもねぇ、いろんなところ行ったことあるぞ。パラソルワールドにブリブリ王国、ジャングルとかにも行ったぞ」

パラソルワールド…傘の世界…。なんだ、それ?
ブリブリ王国は確かスリランカ辺りにある立憲君主国家だったか。大きさは四国ぐらい。行ったことは無いなぁ。
ジャングルってこの子、どんな生活送ってるんだ?





「さて、海岸に着いたけど…」
「父ちゃん、母ちゃん、ひまわり!!」
「早っ!!?もう見つかったのか」

犬をおいて走って行ってしまう。やっぱりなんだかんだ言って寂しかったんだろう。涙目で抱きついているのが遠目にも明らかだ。

「アンアン!」
「…邪魔しちゃ悪いから俺たちは帰るな。…そうだ!これを渡しておいてくれるか?」
「アーン!!」

渡したものを咥えて、犬も走って行った。

「じゃ、帰り…少し、ドライブでもしていきますか?」
「はい!」







「アンア~ン!」
「おぉ、シロ。…おっ?シロ、お兄さんとお姉さんは?」
「ア~ン」

振り返ると、そこには誰もいない。シロの口には一枚の写真。澄んだ青空の中を一匹の鳥が飛んでいる姿が写っていた。

「へ~、きれいな写真ね」
「そうだなぁ。誰にもらったんだ?」

裏を見ると、マジックで「コーヒーが飲めるようになったら、また会おう」とだけ書いてある。

「…うん!父ちゃん、母ちゃん!オラをさっき送ってくれた人は……」




ある夏の日の出会い。





第9話  目的

Side 雄介

アリシアが寝てしまい、することがないので林檎の皮を剥いている。以前、桃子さんが高速で皮をむいているところを見たが、未だにその域には到達できない。っていうか速すぎだろ。見ていて干瓢作りを思い出した。

「…どういう心境の変化ですか?」
「はい?」

向かいに座ったファリンさんが話しかけてくる。向こうも手持無沙汰になったのか、林檎の皮むき中。ウサギさんにするらしい。

「アリシアちゃんを弟子にするっていうことです」
「…」

…気付かれてたか。

今まで、俺はアリシアにそれ相応の訓練を課してきた。だが、そのほとんどは超能力の制御についてである。つまり、

「今まで、アリシアちゃんに教えていたのは人間として生きるため、人間から外れた力を抑えるためのものだと思っていました」
「…よくわかりましたね」
「私は第三者目線でしたから」

本人の意思が伴わなければ、いくら鍛えても強くはなれない。自分的にはそこまできつくはしていない、たぶん。楽しんで制御を覚えられるものにした、はず。

林檎を皿の上に並べ、ファリンさんの前に出す。向こうも切り終えたウサギ林檎をこちらに出す。

「…少し皮が残ってます」
「耳の長さが左右非対称になってます」
「「80点」」

二人で同じ評価に笑いあう。



「実際のところ、アリシアを鍛えようと思ったのは、管理局に見られたからなんですよ。俺は変身前の姿は見られていないんで大丈夫ですが、アリシアの場合、完全に見られたでしょうから。変装も完璧ではないし…。いざという時、自分の身を自分で守れるように」

互いの剥いた林檎をシャクシャク食べる。

アリシア用に林檎を塩水と一緒にタッパーに入れておいた。こうすると褐変しない。褐変してもオレンジジュースにつけると元に戻る。

閑話休題。

「今回のことで骨身に染みました。守るって難しいなぁ、って」
「難しい、ですか?ちゃんとアリシアちゃんと一緒に帰ってこれたじゃないですか」
「…俺、心の中で思ってたんですよ。ZXの力まであれば皆を守れる、絶対に負けない、これ以上の力なんて必要ないって。…今考えるとなんて驕り高ぶった考えなんだろうと思いますよ」

本気でぶん殴りたくなってくる。というかZX本人に殺されかねない考えである。

ZXが、村雨良が負けなかったか?全てを守れたか?力の限界なんて見出したか?全部、否。それでも諦めなかった。それでも守り続けた。それでも進化し続けた。

俺はそんなライダーになりたかった。

「ぶっちゃけちまうと、今回わざわざ戦いに出て行かなくても良かったし、管理局を敵に回す理由もなかったんですよね、たぶん」
「…そうなんですか?」
「そうなんですよ」

頬をかく。そういえば、何で管理局敵に回したんだっけ?…あれ?思い出せない…。

「…代さん、五代さん!」
「はい?」
「どうしたんですか?ぼぅっとして」

なんでもないと手を振り答える。



「まぁ、それが1つ目の理由です」
「次があるんですか?」

林檎を食べ終わり、皿と包丁を洗っていたら、ノエルさんに他の洗いものまで押しつけられた。

ガチャガチャと皿を洗いながら続きを話す。

「俺って、やっぱり人を助けるライダーになりたいんですよね」
「そういえば、半年ぐらい前、初めて会った時にそんなこと言ってましたね」

尊敬しているのはやっぱり彼らだろう。いや、もちろん他のライダーたちも(一部を除いて)尊敬してないわけではないが。

「でも…その考えを俺自身の経験と一部の記憶が否定してるんですよね。無理だ、できるわけないって心の中で叫び続けてる」

ライダーの中にはひどくリアリストな奴らもいる。主にサーティーンライダーだが。そいつらの記憶が俺のプレシアを救えなかったことと合わさり、たった一人救えない奴がと言い続けている。

「世界は今もどこかで戦争が起きている。人が飢えている。人が…死んでいる。全部を助けるなんてできない。でも目の前で理不尽な暴力にさらされている人ぐらい助けられたら、とも思うんですよね。まぁ、それさえままならないんですけど」

洗った皿をまとめて乾燥機に入れる。…ポレポレでも乾燥機入れてくれないかなぁ。まぁ、雰囲気を考えたら入れないほうがいいんだろうけど。

「だから、世界を回って弟子をとります。弟子たちにライダーの心を、思いを、魂を伝えて…あ!でも、別に弟子たちに俺と同じ行き方を強制するわけじゃないですよ。ただ、自分が誰かに何かを伝えようと思ったときにそのライダーたちの魂を伝えてくれたらいいなぁって。…まぁ、そんな感じでライダーの魂を広げていきたいんですよ。そうすれば、少しずつでも変わっていく、はず?」

この結論でも、幻想だとか妄想だなどと頭に響いてくる。だが、ライダーたちの模倣ではなく自分で決めた道。どのライダーもやってない世界との関わり方。この方法を試してみるのも悪くないだろう。だって、

「どうせ俺の時間は無限にあるんですから」

今、俺は一番決意に燃えている。体の中からやってやるって燃えている。

「まぁ、少なくともすずかちゃんとアリシアが独り立ちするまでは現状維持で、世界を回るぐらいしかやることないんですけど」
「そうですか。…でも目標が出来たことはいいことだと思います」

ほっとしたように一息つくファリンさん。



皿も全て洗い終わり…

「追加です。ついでに庭木の剪定もお願いします」

…絶望的な量を追加されました。そろそろ給料請求しても許されると思う今日この頃。






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NoSide


時間を少し戻す。



12月13日


「できればそういう時こそ医者を頼ってほしいところなんだが」
「あはは、すいません」

病院の廊下を歩きながら話す雄介と椿医師。

雄介は例の人工臓器開発等の資料を渡しに来た。その時、同時にみのりが倒れたことを話したため、こってり絞られている。椿自身、主治医のような自負もあったため相当キレている。

まぁ、その怒りもある理由からしかたないという感情もあるため、相当程度で済んでいるのだが。

「…前々から聞こうと思っていたのだが…みのりちゃんはHGSか?」

HGS。正式名称、高機能性遺伝子障害。約20年前に発見された新しい病気である変異性遺伝子障害というものがある。治療法が確立されていないこの病気は、20人に1人くらいの割合で超能力を発言する。それがHGSである。

う~んと言いながら頭を掻く雄介。説明がめんどくさい。

「違うのならすまんが、一応この病院には専門の治療棟や専門医もいる。研究所送りになどしないから、なにかあるなら頼ってくれ」
「っていうより、HGSなら体重やらレントゲンで引っかかるでしょ」
「いや、俺、専門家じゃないんでな。だいたい常識が通用するものじゃないだろ」

HGSの一部は何故か体重が通常の4倍になり、さらに体内バランスを補うため機械(平均2Kg前後)を埋め込んでいる。こうなると自重でまともに動けなくなるため、常にサイコキネシスを使っているのだが、体に負担がかかり体調を崩しやすい。

ちなみに、HGSは不当な迫害や社会的な混乱を避けるため、存在が極秘にされている。

椿はこの病院に勤めるフィリス・矢沢医師に、雄介は恩師である緑川教授からその存在を教えられた。まぁ、HGSの存在そのものはある一定以上の学術機関では当然のものとして扱われているので問題はないが。

ちなみにHGSを知った雄介は不可能殺人が起きてないか、忍に頼んで20年分の資料(機密文書)をもらった。幸い、そんな事件は一件もなくアンノウンがいないことに胸をなでおろした。が、資料の中に高町士郎の名が出ている事件が存在し驚く。

閑話休題。


「今回、倒れたのはこっちでの勉強に根を詰めすぎたため、ってことにしておいてください」
「…わかった。細かいことは聞かないが、それでも本当に妹を大事に思っているなら一度は診察に来てほしいところだ」
「…胆に銘じておきます」

ロビーに出ると同時に二人が、というより椿がゴミ箱の陰に隠れ、雄介もそれに倣う。そして頭だけをニュッ、ニュッと出し、ロビーを見る。

「…知っていると思うが、石田医師の隣にいる人が八神はやての親戚の八神シャマルさんだ」
「…はい、知ってますが…どうして隠れるんですか」
「馬鹿野郎。女性二人が目に涙を溜めて話しているところに突っ込んでいけるか。しかし、シャマルさんって美人だよなぁ。こういう時期じゃなければ食事に誘いたいところだ」

二人は知らないが、この少し前に怪しい格好をしたシャマルが目撃されている。まるでストーカーのような二人の存在と合わさって病院内部の警備が強化されることになる。

「…そういえば、シャマルさんに人工臓器のことを話したら、もう少し待ってほしいとのことだ」
「?…八神家はキリスト教徒ですか?」

一部宗教の人が臓器移植や人工臓器の使用を忌避するのは良くあることである。雄介は無神論、というより下手したら神=敵ぐらいざらにあるので、あまり宗教には関わりたくないのが本音である。

「いや…確か違ったはずだ。こちらとしても悪化の一途を辿っている以上、開発は続けて欲しいが…好転するあてでもあるのかもしれん」
「…(あて、か。一般人には無理、と考えるのは俺が仮面ライダーだからか?いや、この病院の規模で正体不明な病気じゃ少なくとも国内でのこれ以上の治療は不可能。あるとすれば国外…あまり外国の医師に知り合いはいないな。話も聞けないか)」
「まぁ、なんにせよ経過を診るしかないのは医者としてつらいものがあるが」


シャマルがいなくなった後、コソコソ二人で石田に近づく。といっても、雄介はともかく椿は気配など隠せるわけもなく、あっさり石田に感づかれた。

「…とりあえず、経過報告です」
「こっちも中間報告です」

互いの資料を交換し、目を通す。

(倒れたのは昨日。原因は胸部の激痛。原因はやはり不明。可能性として内臓機能の低下による一時的な心臓麻痺。…足の麻痺から一気に飛んだ?まずい傾向だ。下手したらいつ体の全機能が麻痺してもおかしくないぞ)

資料に目を通した雄介の顔は苦々しい。逆に石田と椿の顔は少しずつ明るくなる。

「こんなにたくさんの方々が…」
「すごい!!内臓どころか下手したら人間一人造りそうなメンバーだぞ!!」

石田は声が出なくなり、後ろから覗いていた椿は興奮で声を大きくする。実際、このメンバーを揃えるのは一介の医師には予算的にも人脈的にも不可能である。それがほとんど無償で集まってくれたのだから感動しないはずはない。

「…でも、まだ試作品が出来ただけです。これから完成品を開発、製造してくれる人たちとの折衷、完成品での試験などやることは目白押しです。少なく見積もっても…あの教授たちでも1ヶ月以上、下手したら3ヶ月かかります。はやてちゃんのほうがそれまでもつかどうか…(あの教授たちだとすぐに完成させる絵を想像できるのは何故だろう?)」
「大丈夫!半年もかからずここまで開発してくれた方々に報いるため、全力を尽くすわ」
「ああ、それは医者と患者の仕事だからな。シャマルさんの方も説得はしておく」



二人と別れ、病院を出る雄介。次は大学へ経過報告の資料を届ける。完全に夕暮れ時なので急がなければならない。

「五代さ~ん」
「ん?」

走りだそうとする瞬間、後ろから呼び止められる。すずかが駆けてくる。さらに後ろにはなのは、アリサ、フェイトの姿。

「どうしたんですか?」
「ん~、大学の用事、かな?」

指先でクルクルと封筒を回す。

「これから大学に戻って…遠回りになるけど乗ってく?」
「はい、私も大学見たいんで。それじゃあ皆、また明日ね」
「はいはい、また明日」
「あははは、また明日なの」
「えっ、あ、え~と、また明日」

走り出す。その後姿に戸惑いながらフェイトが他の二人に聞く。

「あの人って、この前引越しを手伝ってくれた人だよね?」
「あ~、そういえばフェイトちゃんはしっかり自己紹介されてなかったっけ?」
「五代雄介。大学生兼アルバイター兼(自称)冒険家兼すずかのボディーガード兼執事兼私の家庭教師よ」
「え~と、つまり…」
「ようは、働きすぎの謎の人物よ」
「にゃはははは」

ひどい評価である。ただ実際その評価を聞いたフェイトが考えていたことは、

(やっぱりバイクってかっこいいなぁ。のりたいなぁ)

全然雄介に対するものではなかった。





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?Side

暗い部屋の中。中心に置いてある机の上に奇妙な光源が存在する。薄緑色に光を放つソレの中心には猫とおぼしき影が見える。

「…すまない・・・。私のせいでこんな大きな傷を」
〈なに言ってるの、父様。私は、私たちは父様の使い魔。父様の願いは私たちの願い〉

不意にこぼれた言葉に声無き声が返答する。よく見ると部屋には人影がひとつ。奥にいた影がゆっくりと前に来る。

「しかし、今度こそ、今度こそ闇の書を…」
〈分かってるわ。絶対に闇の書を。そして、この傷を負わせたあの仮面どもを…〉

光源に近づくことで少しずつ影の全貌が見えてくる。白の混じりだした銀髪。威厳に満ちた顎鬚。温和ととれる少し垂れた、それでいて鋭い光を宿した目。



時空管理局提督ギル・グレアム。

薄暗い部屋の中央。静かに闘志を燃やす主従。













道を定めた仮面ライダー。リミット迫る騎士。そして、暗躍する老兵。事態の推移は無く、それども時間は止まらない。魔法少女の知らないところで確実に、着実に…







あとがき

……もういいかな?どうも作者です。そろそろ皆、こんな作品があったことを忘れるころ。書きますよ?批判されようと、忙しかろうと、公務員試験に落ちようとorz。
…結果が返ってきたんです。もうやだ、こんな国。あっ、でも今世界全体でこんな感じか。


まぁ、OP。例も嵐を呼ぶ幼稚園児登場。公式クロス。きっと彼は成長すれば五代雄介のような青空の似合う男になる(戦国Last的な意味で)。作者さんのご冥福をお祈りします。あの作品は自分のバイブルの一つです(主にギャグ方面の)。

前半。主人公に目的を持たせてみた。今まで明確な敵がいない、目標が無い状態で迷走していた主人公を軌道修正してみました。

後半。また臓器移植について。ついでにHGSについて。そのうち例の寮に主人公を突入させたい。でも、もうとらハ2ほとんど覚えてないんだよなぁ。
アギトとHGSって似てない?


本編同様全然進まない今回。でも次はきっと…




どうでもいいけど、この主人公つかって他のクロス書きたい。いけるんじゃない?他の世界に、デンライナーとライドロンで。
戦国ラ○スとか戦国バ○ラとか戦○姫とか。…戦国に偏るのはこの全作品を作者が現在やっている、もしくはやりたいのと、バラッドを見たため(OPはその余波)。バサ○3欲しい。でもPS3がないのでござる。
書いていい?ふざけんな、本編書けと言われると本編の執筆速度が上がる…かも。


修正:HGSの体細胞に珪素ネタは某所のオリジナルっぽいので修正しました。実際のところどうなのか知っている人がいたら教えてください。ソレによって修正します。もう2、本当に思い出せないよ。あんなにやりこんだはずなのに



[7853] As第10話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/12/13 17:10
「で、どうだった、フィリス先生は?」
「なかなか興味深い人でした」

カウンターに座る恭也さんと忍さんにコーヒーを出しながら答える。話に上がったのは昨日会いに行った、海鳴大学付属病院の医師である。

椿さんの勧めをノラリクラリとかわしていたら、なんと予想外な方向から搦め手が来た。

どうやら、件の医師、フィリス・矢沢医師は高町家全員の主治医らしく、恭也さんのほうからの勧めも来たのである。HGSやカウンセリングが専門なのに何故か恭也さんや美由希の怪我まで診ているそうだ。

そんなこんなで結局、昨日会ってきた訳だが、

「興味深い?何を話してきたんだ?」
「まぁ…何でもないですよ」






部屋に通されて、20分。当たり障りのない世間話。平坦な口調。張り付いた仮面。いい加減、疲れてきた。

「…いい加減、腹の探りあいはやめませんか?」
「そう、ですね。…はぁ、慣れないことすると疲れます」

冷めたインスタントコーヒーに口をつける。…まずい。

「っで、実際のところ、貴方や妹さんはHGSなんですか?」
「違いますよ」

ズズゥ。…やっぱりまずい。

「一般人じゃないですけど」
「ああ、高町さんたちと同類ってことですか?」

…あの人たちと同類。少なくとも生身で鉄を切り裂いたり、消えるように移動したりはしないんだが。

「ついでにこんなこともできますよ」
「…十分HGSに分類できるじゃないですか」

目の前で冷めたコーヒーを沸騰させる。掌に電気を走らせる人間電熱線。これぐらいなら、みのりもできる。っというか超能力関係だとみのりのほうがうまい。俺が物を温めるならクウガの力で即席電子レンジのほうが楽だろうが、向こうだとコーヒーが蒸発するからなぁ。

「フィンがでない?」
「だってHGSじゃないし」




「とまぁ、こんな感じです」
「はぁ、世界は広いですねぇ」

どうせ恭也さんの知り合いなんだし、さっさとネタばらし。仮面ライダーのアギトのみを話す。超能力の説明ならこれだけで十分だろう。ついでにいくつか変身も見せた。

「神に喧嘩を売るとはまた壮大な…」
「あはははは…ちょっとした反抗期のようなもんですよ」

闇の力、ダークロードに勝てたのはほとんど偶然でしかない。もしもあいつが星を動かすなんてとんでもないことをしていなかったら、負けていたのはこちらだったろう。

そういえば、なんであいつ蠍座を動かしてたんだろう?同時期に蠍座の人ばかり殺されていったのと関係があるんだろうか?

「創造主、なら親のようなもの…なるほど。確かにさぞ手痛い反抗期だったでしょうね」
「まぁ、親だろうが創造主だろうが、人の自由や命を好きにしようとしたなら、それぐらいのしっぺ返しは覚悟してほしいですね」
「…そうですね」

…何か思うところがあるようだけど。

「…聞きますか?こちらの事情も」

あ~…目線で気づかれたか?この人、勘がよすぎだろ。それが生来のものか、それともそれだけ勘が良くなくちゃ生きられない人生だったか…聞けばわかるか。どうにも好奇心が抑えられない。

「教えてくれるのなら…」






聞いていてあまり気持ちいいものではなかった。自分で淹れたコーヒーを飲みながら昨日のことを回想する。

どんな世界にも闇はある。ことHGSに関してはこの世界の悪意が集約しているのでは、と思うほどである。そんな悪意の余波を被ったのが士郎さんやリスティ医師なのだろう。

『人を殺すために作られた命だからこそ、その能力で人を救うことが製作者、そして運命への仕返しになる』

最後にフィリス医師が語った言葉。…俺は運命という言葉が好きではない。しかし、その言葉を使わなければ表せないこともあり、抗えないこともある。そして、運命や創造主に立ち向かっていく。これもまた仮面ライダーの生き方なのだと思う。そう考えると、

「彼女もまた仮面ライダー、か」
「何か言ったか?」
「いえ、なんでも」






運命に立ち向かう勇気。世界に広げたいと願うライダーの魂。その欠片に触れた平和な時。




第10話 終章~はじまり~

Sideみのり

私は迷っていた。

目の前のテーブルには三つのケーキ。女の子なら諸手を挙げて喜ぶ場面だろう。しかし、この中には孔明の、じゃなくてユウスケの罠が混じっている。

一つはパッと見ショートケーキ。しかし、上にイチゴが乗ってないし、横も念入りにクリームでコーティングされている。

真ん中のはチョコレートケーキっぽいもの。でも、これが一番危ない気がする。においがまったくしないのだ。絶対怪しい。

最後は…なんだろう?少し緑がかったクリームのケーキ。甘い香りはするし、大丈夫…と考えるように仕向けている可能性もある。

向こうでニコニコ見ているユウスケとファリンさんが憎い。何で食べる前に、

「イロモノ混じってるから」

なんて言うのか。ポレポレに勤めるユウスケがイロモノというくらいだ。きっとお雑煮カレー並みのイロモノが混じっているはず。




たっぷり15分後。

「!!!○×▲■…」

自分の直感を無視し、無難な真ん中のチョコケーキもどきに手を出し、苦さでしゃべれなくなった。

コーヒー。こーひー。珈琲。Coffee。口の中でコーヒー豆が自己主張を繰り返し、苦味が広がり、カフェインが舌を刺激する。

「う~ん、ニンジンのショートケーキ…クタクタに煮込んだニンジンをさらに甘いシロップでコーティングしたものをイチゴ代わりに…ちょっと自然な甘みと人工甘味料が合わないですね」
「…キャベツと白菜のケーキ。甘さも自然、が少し弱すぎる、かな?」

二人が残ったケーキを食べている。あっ、交換して、互いに食べさせあってる。

…キャベツにニンジン…なんでこれだけコーヒー?




結論:全てイロモノでした……ガクッ…




Side雄介

みのりが復活した。倒れたときはさすがに焦った。が、まぁ食べ物アレルギーはなかったし、命に別状はないのは分かりきっていたことだが。

ちなみにキャベツと白菜のケーキは俺が作り、ニンジンのケーキはファリンさんが、コーヒーのケーキはおやっさんが作ったものである。このコーヒーのケーキはクリスマスに店を開かないポレポレが10個限定で作り、イブに販売しているものである。

「待って、この犯罪級に苦いケーキ、売り物なの?」

実際、コアなファンが買っていくため、幻のケーキ扱いされている。

「まぁ、いいや。それで、なんで突然ケーキを作り出したの?」
「ああ、ファリンさん、バトンタッチ」

隣のファリンさんに丸投げする。俺も話自体は昨日の就寝前、電話で少し聞いた。が、焦りすぎで要点しか理解できなかった。

「…実は」
「…ゴクリ」

きっと二人の頭の中にはデロデロデロデロとドラムロールが流れているんだろうなぁ。

みのりの皿に残ったコーヒーケーキをつまむ。…苦い。おやっさん、これ、コーヒーケーキじゃなくてほぼコーヒーだよ。津上翔一特製キャベツケーキを改良した俺が言うのもなんだけどイロモノすぎるだろ。

「今日、お姉様の誕生日なんです!」
「な、なんだって~!!……って、そんなに大変なことですか?」

ポケットからV3ホッパーを取り出し、バラす。

なるべく早くキングストーンを返してもらうため、ホッパーとレーダーアイをフル稼働で騎士達を探している。しかし、なにぶん2つしかなく、レーダーアイに至っては周囲10km四方しか効果範囲がないため、なかなか見つからない。しかも無理をさせすぎたためか、どうにも調子がわるいので今日は調整しようと思っていたのである。ちなみにレーダーアイは地下の研究室のマシーンに預けてある。

索敵用に人工衛星が欲しい。そういえばブレードのアンデッドサーチャーだってBORDO所有の人工衛星を介していたはずだ。こう考えると、どれだけ天王寺が金をかけていたか分かるってもんだ。

「…近頃、クリスマスイブになると忍お嬢様が翠屋のお手伝いに行ってしまって…お姉様はお嬢様が大好きだから、やっぱり生まれたその日に祝って欲しいと思っている、はず。でもお姉様は恭也さんも好きだから、きっと涙を呑んで送り出していると思うんです」←注:妄想
「ねぇ、ユウスケ。クリスマスイブってなに?」
「どっかの宗教の救世主が生まれた日の前日のことだよ」

ファリンさんが熱弁をふるいだした。昨日もここら辺からよく分からなくなったんだよなぁ。

ホッパーのパーツを新しいものに交換する。もうちょっと稼動時間を長くしたいな。フォトンブラッドでも搭載しようか。…逆効果、か?

「お姉様はあれで慎み深いから気丈に振舞うかもしれませんが、何もないときっと悲しみで枕を濡らしているに違いありません」
「つまり、要約すると皆でノエルさんの誕生日を祝おうってことですね」

…。

祝わないとノエルさん、不機嫌になるかな?

こう言ってはなんだが、この家でまともにノエルさんの愚痴を聞けるのは俺だけである。メイドの仕事を誇りにしている彼女が、主である忍さんや恭也さんになにか言うはずがない。妹思いな面があるのでファリンさんも無理。すずかちゃんやみのりみたいな子供に話すような思慮が浅い人ではない。他家の皆さんにわざわざ愚痴りに行くような人でもない。結果、俺がはけ口になる。ソレは構わないのだが、まだ経験はないが、度が過ぎると大量の仕事を手伝わされたり、ロケットパンチが飛んできたりするかもしれない。

ノエルさんは大人である。大人は不機嫌を人にぶつけない。だからノエルさんは人に不機嫌をぶつけることはない。たぶん、きっと、…



…結論!不機嫌にしなければいい!!

「よし!最高の誕生パーティーにしましょう!!」
「はい!!」

半分打算、半分本気でファリンさんの提案にのる。


こうして日常の延長、ちょっと忙しいクリスマスイブの日常が始まる










…はずだった。




****************************************

Sideすずか

突然ですが、部屋の空気が最悪です。

はやてちゃんの病室に入って、
プレゼントを渡して、
気づいたら空気が冷え切っていた。
何を言っているか分からないと思うが、以下略

「そんなに睨まないで…」
「睨んでねーです。こういう眼つきなんです」

ヴィータちゃんがなのはちゃんを睨んでいる。どう言おうと睨んでいる。そんなヴィータちゃんの鼻をはやてちゃんが摘み上げる。

「だめや、嘘ついたらあかんよ」
「ん!?う~~~~~」


「お見舞い、してもいいですか?」
「ああ」

なんでそんなに下手に出てるの、フェイトちゃん?シグナムさんももっと話しましょうよ。

(すずか、なんかギスギスしてない?)
(う、うん)

これは、たぶん殺気。シグナムさんやヴィータちゃんからは明確な、なのはちゃん達からは戸惑いの混ざったものが溢れている。怖いから、さっさと引っ込めてくれないかなぁ。アリサちゃんも気づいているみたいだし。

なんでそんなに警戒しているんだろう?

「今日は雪になるらしいわよ」
「ほんまかいな、アリサちゃん」
「ホワイトクリスマスだね、はやてちゃん」





空は厚い雲に覆われ、見るからに気分を落ち込ませる天気。後に降るのは美しい白雪か、それも、さらに陰気にさせる雨か。時は刻々と過ぎていく。





NoSide

寒空の下をテクテク歩くすずかとアリサ。

話題は先ほどのサプライズプレゼント。「やはり事前にシャマルさんに話を通すべきだったのでは?」や「とりあえず渡せただけ良かった」など話題が尽きることはない。

本来、車などでの送り迎えが多い二人が歩いて帰るのは珍しい。だが、今回は病院と二人の屋敷の間は市街地であり、危険は少ないだろうとアリサが歩いて帰ることを主張した。これは少しでも友人であるなのはやフェイトと一緒にいたいためなのだが、当の両名は病院近くで急用があると分かれている。意地っ張り、もとい自分の意見を曲げることを好まないアリサは一度言い出したことを曲げられず、結果、歩くことになったのである。

まぁ、女三人寄れば姦しいとはよく言ったもの。二人になっても暗くなることなく会話に花を咲かす。


「!!」

不意にすずかが振り向き、辺りを見回す。

「どうしたの?」
「…いや、なにか目線のような」

一瞬の違和感。しかし、振り向いたときには既にソレはなく、至って普通の町並み。首を傾げながらも、また歩き出す。警戒は緩めず、右手はコートの内で音叉を取る。


その状況に冷や汗を流す犬、ではなく守護獣が一匹。

(…シャマル、本当に彼女達は一般人なのか?気づかれかけたぞ)
(…魔力反応はないわ。念のためにつけてもらっているけど、管理局と接触しそうになければ、こっちに来て)

無理難題を押し付けられるザフィーラ。一体、管理局と接触しそうかどうかなど、どう見分ければいいのか?

向こうは戦闘中なのだから仕方がないと自分を納得させ、顔を上げると、

「…」
「…」

目線がぶつかる。路地裏に隠れていたザフィーラとその路地裏を覗き込んだアリサの目線が。

「…ちっちっちっ、怖くないよ。こっちおいで」

ポケットからいつも持ち歩いているビーフジャーキーを取り出し、ザフィーラを呼ぶアリサ。完全に犬だと思っている。

余談ではあるが、アリサのビーフジャーキーに対し、すずかはニボシを常備携帯している。

犬扱いに少し落ち込むザフィーラ。この時、まだ彼は犬扱いに耐性が無かった。しかし、疑われるのを避けるため近づいてビーフジャーキーを食べる。

「アリサちゃん、どうしたの、急に走り出して?…え~と、はやてちゃんの飼ってる‘犬’、確か名前は…ザフィーラ、だったかな?」
「へ~、はやてもこんな大型‘犬’、飼ってるんだ」

2連続の犬発言にザフィーラの心に見えない剣が突き刺さる。頭と尻尾をたらすザフィーラを、撫でるアリサ。


不意に頭を跳ね上げるザフィーラ。

(シャマル!どうした!?シャマル!!)
(…)

返答はない。念話の妨害を受けているかのようにノイズしか聞こえない。

シャマルはバックスのエキスパート。他者の念話を妨害しつつ、自分達の念話をつなげることぐらい簡単に行える。

何かがあった。戦闘に関してはシグナムとヴィータが簡単に負けるはずがないことは分かっている。しかし、少なくともシャマルの身に何かがあったことは確かだ。

そう考えたザフィーラの行動は素早かった。

「ウオオオォォォォォォォンン!!!!」

遠吠え。怯んだアリサの手が離れた瞬間、脱兎のごとく走り出す。

通常、狼は時速70Kmで20分、時速30Kmほどなら一晩中走ることが出来る。さらに、そこに魔法で強化したザフィーラは2倍以上の速度で走りぬく。

風のように去り行く姿を見たアリサがポツリ。

「…逃げられた?…嫌われた…」

そのままガクリとうなだれる。すずかが、そんなアリサの肩をたたき慰めようとした瞬間、

「!!」

世界が暗転。周りの人が姿を消す。

そして、反射的にディスクアニマルを放り投げる。

一方は上へ。もう一方は己が師の下へ。







***************************************

Side雄介

目線が切れない。
一瞬でも気を逸らせれば負ける。
全くと言って良いほど無い予備動作を見つけるしかない。
相手の最速を初動で止める。
こちらの最速で出鼻を挫く。
さもなければ、抜かれる。

俺は眼前に天敵を捕らえていた。

相手の体が右に動く。それに合わせ自分も右へ。

「…」
「…」

無言で睨まれる。

左に動くのを回りこむ。

「…掃除がしたいんですが」
「駄目です」

絶対零度の目線で睨み、氷結地獄(コキュートス)から漏れ出た様な口調でユックリとしゃべる天敵、固有名詞ノエル・K・エーアリヒカイト。その右腕が上がる直前を掴んで止める。ロケットパンチ No Thank You。

「俺がやります」
「…何を企んでいるんですか?」

背中を冷汗が伝う。

「…」
「…何も」

目線が睨むものから探るものに変わり、内側まで見透かされているように感じる。目を逸らす訳にもいかないので見つめ合っているように見えるだろうが、甘い空気などない。先ほどまでの凍りつくような空気もなくなったが、代わりにピンッと張り詰めたような空気である。

「…まぁいいでしょう」
「ふぅ」

張り詰めた感じはなくなり、掃除道具一式を渡される。肝が冷えるとはまさにこのことなのだろう。肝なんて半分以上機械だが。

背を向けてノエルさんが去っていく。さて、俺も掃除を、

「そうそう…」
「!!」

すぐ後ろから声がかかる。馬鹿な!目を切ってからわずか数秒。その時、おおよそ8m距離が開いていた。何故すぐ後ろから声が…

「せっかくのクリスマスなんですから、ファリンをどこかへ連れて行ってあげて欲しいんですが…この時間では無理ですね。夜遊びも外泊も認めません。変わりにしっかりとプレゼントを用意してください。用意しなかったら…」

しばらく無言の後、気配が去っていく。膝をつき呼吸を整える。こ、怖かった~。マジでJSをぶった切ったとき以上に身の危険を感じた。やっぱり、あの人は天敵である。



「…大丈夫ですか?」

ドアが薄く開き、ファリンさんが顔だけ出す。

ここでノエルさんの仕事を邪魔したのはパーティー会場を見せないためである。そこまで大掛かりでないものの見られては撤去される可能性が高い。

…あれ?ノエルさんを不機嫌にしないためのパーティーなのに、さっきのやり取りで機嫌を損ねてないか?



掃除も程々に終わらせ、時刻は5時前。そろそろ、すずかちゃん達が帰ってくるころだ。

今日ははやてちゃんの所にサプライズでプレゼントを届けに行ったらしい。この手のサプライズはタイミングが大切である。特に入院中の相手の場合、うまくやらないと着替え中やリハビリ中などに重なる可能性もある。まぁ、抜け目のない子達だから問題ないだろう。

そういえば、はやてちゃんの病気で思い出した。件の人工臓器、なんと既に完成したらしい。開発する教授も教授なら、頼まれて造った業者も業者である。仕事が速すぎるだろ。しかも、こういう場合は結構患者側にも金銭的な負担が大きくなるのだが、その大半を教授達と業者が請け負うそうだ。太っ腹すぎる。

まぁ、そんなこんなでそっちの方は問題ないのだが…石田医師のほうの説得はうまくいっているのだろうか?

「~♪~♩~」

反対側でクリスマスツリーの飾り付けをしているファリンさんの鼻歌が聞こえる。…プレゼント、どうしよう?半端なものを送ったらノエルさんのロケットパンチだろう。…轟鬼のように鰹でも一本釣り、いやあれは失敗だったはず。宝石、あれも失敗だったか。成功したのはうどんだったかな?

そうこうしている間に飾りつけも終わり、最後にツリーの天辺に星を付けようとファリンさんが背伸びしている。俺がやるのになぁ。

苦笑しながら、近づこうとした瞬間、

ガシャッッッァァァァァァ!!

何かが窓を突き破って飛び込んできた。背伸び状態から体勢を崩すファリンさんを抱きかかえながら、入ってきたモノを掴みとる。

「ディスクアニマルか!?」

これは…すずかちゃんに渡したもの。なにかあったのか?!

ポケットからモニターをとりだし、端子を接続する。映像は…くそ、出ない。あせるな、俺。つまみを弄りながら波長を合わせて…よし。ファリンさんも覗き込む。


映るのは薄暗い景色。人のいない町並み。そして、天を切り裂く黒と桃色、黄色の閃光。


見た瞬間に走り出す。

「何事ですか?」
「お姉様!?」

物音でノエルさんが来たらしい。

かまわず窓から飛び出す。(注:二階、良い子は真似しないでね)

空中で体を小さく折りたたみ、一気に伸ばし、

「変ッ身!!」

BLACKに変身し、下に来ていたバトルホッパーに飛び乗る。

「お姉様、ごめんなさい!」
「ちょっと、ファリン!!」

上から飛び、っておいおい。

飛び降りてきたファリンさんをキャッチ。無茶するなぁ。

「一人で逃げないでください」
「いや、逃げるって…」
「それに…」

決意を秘めた瞳が俺に向けられる。

「すずかちゃんが危険なら私も行きます。すずかちゃんを、すずかちゃんの居場所を守るのが私の存在意義です。大丈夫です。すずかちゃんと一緒にすぐに逃げますから。五代さんはしっかりやるべきことをやってください」

ああ、これは止められない。下手に置いていってもついてきそうだ。

今回すべきこと、すずかちゃんの救出、キングストーンの回収、事態の収拾、この三点。事態の収拾はどうせ管理局が何とかするだろう。キングストーンには悪いが優先順位的にはすずかちゃんのほうが上である。でも、もしファリンさんがすずかちゃんを何とかしてくれるなら、俺はキングストーンのほうに集中でき、一気に事が終わる。…正直、これ以上、魔法と関わるのはご免だ。今回で終わりにしたい。

…状況的には連れて行くのが最善、か。だが、心情的には…。いやな予感が拭えない。

アリシアのことがトラウマになっているのか?

「…行きます!しっかりつかまって!!」
「はい!」
「二人とも、待ちなさい!」

バトルホッパーを全速で走らせる。



迷いは晴れず、しかし迷う暇すらない。



****************************************


NoSide

結界内。

闘いは既に次の段階へ移行していた。

突如現れた仮面の男達に拘束されるなのはとフェイト、そして騎士達。

その魔手によりシグナムとシャマルはリンカーコアを蒐集され姿を消す。戦域に飛び込み、奇襲をかけたザフィーラも同様に消される。

屋上に転送され、目の前でヴィータを消されるはやて。

そして、闇の書の発動。


闇の書の管制人格により放たれようとするスターライトブレイカー。その射線軸上の生命反応に向かってなのはとフェイトは飛んでいた。

対象との距離18メートル。

降りて人を探す二人。すると、ビルの間から飛び出す人影があった。

「あの、すみません。危ないですからそこでジッとしていてください」
「なのは?」

振り向く人は互いによく知る人物。なのはとフェイト、アリサとすずか。4人とも呆然とする。

その瞬間、

「…スターライト、ブレイカー…」

遠距離から放たれる桃色の破壊光。なのはとフェイトはプロテクションを張るが、

(なに、これ?)

本来なら蒐集された魔法は、その魔法の威力を闇の書の魔力でさらに強大化させられる。だが、それにしても放たれたスターライトブレイカーはありえないほどの大きさを誇っていた。

(だめ、こんなの受け止めきれない!!)

受ける前から分かるほどの大魔力という壁が迫ってくる。

その時、

ギュギュギュンンンンンンン!!!!!!!

近づいてくるエンジン音。緑のバッタを象ったバイクに乗る黒い影。

「トォオオ!!」

バイクから跳び、射線軸に割り込む仮面ライダーBLACK。バイク、バトルホッパーは光に包まれ、ロードセクターへと姿を変える。

「すずかちゃん、アリサちゃん!!しゃがんで!!!」
「ファリン!!?」

ライダーマシンに乗っていたもう一つの影、ファリンがすずかとアリサを抱きかかえる。ロードセクターは周囲にイオンバリアーを張る。

BLACKはスターライトブレイカーに対して、

「キングストーンフラッシュ!!!」

全エネルギーで迎撃する。が、

(ぐぅぅおおおおおおぉぉぉぉ…お、重い。弾き返せない)

桃色の光と赤い光が拮抗。

数秒後、二つの光が終息した時、地面に膝をつくBLACKのみがその場に残る。

「…これ、借ります!」
「ファリン?!」
「…」

躊躇いなく確認をとるファリンに逆に戸惑うすずか。それに対し、振り向くことなく、ただ手を振るだけで答えるBLACK。

すずか、アリサをのせ、ファリンがロードセクターで走り去る。予定通りの行動。BLACKとファリンがここに着く前に話し合った行動である。

「ふぅ…ハッ!!!」
「あっ、待って」

回復したBLACKがビルの上に跳び上がり、一気に管制人格のほうへ向かう。それを追いかけるなのはとフェイト。







「…」
「…」

BLACKは見上げる形で、管制人格は見下ろす形でにらみ合う。と言っても二人とも無表情なため、にらみ合っているのか見詰め合っているのか判別はつかない。

「はやてちゃん、それに闇の書さん、止まってください!!ヴィータちゃん達を傷つけたの、私たちじゃないんです」
「シグナムと私たちは「我が主は…」」

クロノの連絡通り、投降と説得を試みるなのはとフェイト。その声を遮り、闇の書の管制人格は訥々と喋りだす。

「この世界が、自分の愛するものを奪ったこの世界が悪い夢であって欲しいと願った。我はただソレを叶えるのみ。主には穏やかな夢の内で永久の眠りを」

喋る間も目は一度もBLACKから切れることはない。

「…夢であればいいと願ったから現実を全て破壊する、か。どこのイマジンだよ」
「仮面ライダーBLACK、いや、南光太郎。お前ならこの感情も分かるはずだ」
「…月の石から情報を得たか」
「全てではない。しかし、お前と、そして彼の記録は見た」

はき捨てるように言うBLACKに返す管制人格。BLACK自身には今の状況はいまいち呑み込めていない。しかし、目の前にいる者が闇の書と呼ばれ、且つ南光太郎の名を知ることから少しずつ推測していく。

「そして…」

なのはたちのほうへ手を向ける。

「愛する騎士たちを奪った者達には永久の闇を!」
「闇の書さん!」

一瞬、管制人格の顔に悲しみが広がる。

「お前も、私をその名で呼ぶんだな」
「!」

なのはが怯む。なのはは先の闘いでヴィータに何故本当の名で呼ばないかと聞いた。今、無意識とはいえ本当の名で呼んであげられなかったことを悔いた。そして、それが隙になる。

「うわっ!」
「あっ」
「むっ!くっ」

地面が割れ、以前砂漠の世界で相対した地竜の触手がなのはとフェイトを捕らえる。ビルの上にいたBLACKのほうにも地竜の本体が襲い掛かり、砂煙の中へと姿を消す。

「それでもいい。私は主の願いを叶えるだけだ」
「願いを、叶えるだけ?そんな願いを叶えてはやてちゃんは本当に喜ぶの?!心を閉ざして、何も考えずに、ただ主の願いを叶えるための道具でいて、あなたはソレで言いの?!!」
「我は魔道書。ただの道具だ」

管制人格の瞳から涙が流れる。その時、ビル内部から大きな揺れが起こる。

「ライダァーーーパンチッ!!!!!」

ビルの上から途中でぶった切られた地竜の首が飛び出し、同時になのはたちの拘束が緩む。砂煙の中からBLACKが出てくる。

「涙を流せるくせに心がないか?ずいぶん贅沢な奴だ」

仮面ライダーにとって涙は既に過去に失ったものである。改造によって失ったもの、もう枯れ果てるまでに泣いたもの、他のものを悲しませないために捨てたもの。さまざまな理由で多くのライダーは泣かないし、泣けない。特に改造手術で強制的に無くさざるをえなかったものたちにとって、ソレは人間らしさの発露であり、ソレを持ちながら人間として最も大切な心がないという管制人格の言い分は少々癇に障るものだった。

雄介自身は泣けるが、BLACKになく機能はない。せいぜいレンズの洗浄液くらいである。

「これは、主の涙だ。私は道具だ。悲しみなど…無い!」

言葉と同時にBLACKの周囲に紅いナイフが出現する。

「闇に沈め…ブラッディダガー」
≪Blutiger Dolch≫
「くっ!ハッ!!」

迫り来るナイフを飛び上がって避けるBLACK。そして、そのまま、

「ライダーパンチ!!」

必殺の一撃へのつなぎの一撃を放つ。






が、

「お前にはさらなる闇を見せよう」

バシッッッッ!!!!!

「なに!!?」

目の前、BLACKと管制人格の間、正確にはBLACKの拳と管制人格の顔の間に小さな魔法陣が浮かび、そこから現れた銀色の腕がBLACKの拳を受け止めていた。

少しずつその姿が現れてくる。

「なっ?!ぐあぁぁぁぁぁぁ」

その光景に呆然とするBLACKの体が後ろに弾き飛ばされる。現れた者に回し蹴りを喰らい吹き飛ばされたのである。もちろん、その光景をなのはとフェイト、遅れてきたユーノとアルフも見ている。しかし、反応できない。それほどまでにその者の放った蹴りが早かったのである。

BLACKはその身をアスファルトに削られ、ビルの壁にぶつかって止まる。すぐに立ち上がり、その目を管制人格のほう、そして現れたものへ向ける。

ドガァァァァァァ!!!

重力に従い、現れた者は地面に落ち、辺りは煙に包まれる。





カシャ、カシャ、カシャ…

ゆっくりと規則的な音があたりに響く。まるで機械のように、重い甲冑を着たものが歩くような音である。

砂煙からその銀の腕が、銀の足が、緑に光る複眼が現れる。

「…シャドー、ムーン」

BLACKの声が場に流れる。決して大きな声では無かった。しかし、その名はその場にいた全ての者に届き、そして忘れられない名になった。









あとがき

どうも、Gです。前回の更新から1ヶ月経ちました。本当にゴメンナサイ。大学が卒業できるかどうかの瀬戸際だったんです。
…まぁ、怠けていた自分のせいなんです。マジでゴメンナサイ。


OP。フィリス先生、こんな口調だったっけ?すいません、うろ覚えです。突っ込んでくれる方、即効で直すんでお願いします。

前半。割とタイムリーなクリスマス。コーヒーケーキは昔、Gがマジで作ったもの。あのころは若かった。ノエルの誕生日ってクリスマスイブでしたよね?

後半。BLACKの変身は後期短縮版を思い浮かべてください。そして、ついに影月登場。Wにぼこられる偽者じゃないですよ。RXとタメ張る最強バージョンですよ。あと、時系列を少しいじってあります。まだ、ぬこは捕まっていません。


そういえばMOVE大戦2010始まりましたね。ディケイドの設定とか丸分かりなんですかね?下手したら必死で考えていた特別編、総とっかえかも知れないんですよね。HAHAHA


オマケ

そうそう、主人公の設定を少し考えました。身長と体重ぐらいですけど。

身長181.9cm、体重73.9kgで

昭和ライダー+BLACKの平均でいこうと思います。平成は身長と体重の割合がおかしい奴らがいるので除外、RXは同じBLACKより1cm高くて、一キロ重いだけなので除外。真、ZO、Jは身長も体重も一般男性の平均より結構高いので除外。これを入れると高校時代の恭也より10cm高くなるので違和感がでそう。それでも5cmぐらい高いけど、きっと高校時代に伸びるでしょう。自分は伸びなかったけど

そういえばロボとバイオってRXと身長も体重も変わらないんですね。ロボなんて超重そうに見えるけど。一応、全ライダーの体重、身長の表を書き始めた当初から作ってあるので、見たい人は感想で載せろと書いてください。5人以上いた場合載せます。




[7853] As第11話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2010/01/27 00:35
「来たね」
「うん、来たね」

ビルの屋上。仮面の男が二人。少し離れたところで行われている戦闘を眺めている。

「でも、驚いた。まさか、闇の書からもう一人仮面ライダーが出るなんて…」
「不確定要素を二つ同時に潰せる…そう考えれば問題はないよ」

右の男が持つ宝石が、男たちの無機質な仮面をボゥっと照らす。宝石の周りには幾重にも環状の魔法陣があり、まるでその束縛を振りほどこうとするかのように宝石そのものが点滅している。

「大丈夫?」
「うん、まだ何とかなってる。あとは時を見て、このエネルギーを解放…奴らが脱出してきても以前と同じなら数時間単位でタイムラグが出るはず」

その時、地震が起こったように地面が大きく振動する。戦場では赤い光と緑の光がぶつかり合っており、その光がおさまると同時に揺れのほうも収まる。

「…すごいエネルギーのぶつかり合い。これならうまくすれば、コレを使ったのもばれないかもね」
「そうだね」

淡々とした口調ながら、計画通りに、そして予想外にいい方向へ動いた展開に仮面の下の口角がつり上がる。左の男が手を開くと,まるでマジックのように一枚のカードが現れ、それをクルクルと手の中で弄ぶ。

「最悪、これを二回使う気だったんだから」
「一発ならまだしも二発目となると、ね」

その時、不意に戦場から4つの魔力が離れていく。それに反して、戦場であった地ではビルが崩れ落ちていく。

「…仮面ライダーは、移動してない。一騎討ちね」
「チャンスだ。行こう」





第11話

飛び上がった二つの影が空中で交錯する。片方は拳を突き出し、もう片方は右手の剣を振るう。金属音の後、互いの立ち位置を真逆にし、向き直る。

「…」

剣を振るった方、銀の戦士シャドームーンは無言。その体には爪の先ほどの傷も無く、ただ悠然と立っている。

「くっ…」

対して、拳を放った方、仮面ライダーBLACKの肩からは一筋の煙が上がっている。傷つけられた部分からエネルギーの一部、そしてあまりにも高い威力だったために出た熱が水蒸気として放出されているのだ。

構えを取りつつ肩を押さえるBLACK。よく見れば、その体には無数の傷がある。

「切り裂け、レバンティン…」
「危ない!!」

闇の書の管制人格が左手に持つ闇の書からシグナムの愛剣レバンティンを引き抜き、上空からBLACKを奇襲する。その刃を、フェイトが横からバルディッシュから出した魔力の刃で受け止める。

管制人格は無機質さえ感じさせる赤い瞳で、フェイトを一瞬見やり、すぐにBLACKの動く気配で目線を戻す。

素早く懐に潜り込んだBLACKが管制人格の胸倉を掴み、シャドームーンに向け投げつける。あわよくば、手に持ったレバンティンでシャドームーンに傷がつけばと考えたが、

「…フローターフィールド」

その直前で体が緑色の光に包まれ、勢いが殺される。

「なのは!!」
「うん!アクセルシューター」
≪Accel Shooter≫

フェイトの声に答え、なのはが20のシューターを同時操作、管制人格とシャドームーンのいる場所へ向かって放つ。

なのはは既に今までの攻防において、アクセルシューターがほとんど牽制程度の役にしか立たないことは理解していた。管制人格には広範囲のプロテェクションで、シャドームーンに至っては防御の構えを取ることも無い状態で防がれてしまった。

だからこそ、牽制として100%の効果を発揮するよう操作する。

シューターが二人の周りを回転し、時にかするように、時にぶつかるように動き、注意を逸らす。シューターが半分を切ったとき、全てを一斉に地面に当て、爆発させた。

「いくよ、レイジングハート!ディバイン、バスターーーッ!!!!」
≪Divine BusterExtension≫

間髪いれず、必殺の一撃を叩き込む。

煙の中。薄っすらと見える二つの影にピンクの光線が吸い込まれる瞬間、砂煙を引き裂くように緑の閃光がほとばしる。

「!!少年。引っ張りおろせ!」
「は、はい!チェーンバインド」

BLACKがなのはを指差し、言葉少なにユーノへ指示を出す。ユーノは正確に読み取り、出現させた緑の鎖でなのはを引っ張る。

なのはのいたところを、同じ大きさで、同じ威力で、同じ魔力光の砲撃が通り過ぎた。少しでも遅れていれば直撃である。

さらに、煙の中から巨大なハンマーが伸び上がり、BLACKとフェイトへ振り下ろされる。

「くっ…」
「きゃっ!」

フェイトを抱きかかえ回避するBLACKの背を追尾するようにハンマーが伸び、横に振りぬかれる。

背中を打ち抜かれつつも、ビルの壁面を跳びなんとか距離を離す。


なのは、ユーノ、そしてアルフの近くに着くと同時にBLACKの口から血がこぼれる。衝撃が皮膚を貫き、ストレージラングに達していた。



BLACKの防御力は仮面ライダーの中ではあまり高いほうではない。防御用のプロテクターは存在せず、リプラスフォームも1tの岩の激突程度しか耐えられない。せいぜい強化セラミック程度の強度しかないのだ。

対して、シャドームーンの強化皮膚、突然変異で生まれたシルバーガードはリプラスフォームを遥かに凌ぐ強度と耐性、耐久性を持っている。

先ほどの空中での交錯の際、BLACKの攻撃は確かにシャドームーンを捕らえていた。しかし、その一撃はシルバーガードに完全に阻まれ、逆にカウンター気味に剣を喰らったのである。


「大丈夫ですか?…一旦退いて体勢を立て直したほうが」
「駄目だ。シャドームーンから目を切ると、奇襲された場合、反応できない。それに守勢に回ったら、あの攻撃力だ。一瞬で蹴散らされる」

振り向き、二つの影を目線に入れる。

(まさか、ここまで差があるとは…パワー、スピードはRX時代のもの。剣は一本だけだがサタンサーベルではない。…そして、最も危険なのは奴の中にキングストーンがあるかもしれないこと)

戦闘が開始されてから十数分。シャドームーンがシャドーフラッシュを用いたのはこれで二回目である。一度目のときはBLACK、フェイト、アルフの三方向からの同時攻撃のときに使用された。同時攻撃といってもスピードに差があるため、ダメージを受けたのはBLACKとフェイト。アルフは比較的に軽傷だった。

シャドーフラッシュはBLACKのキングストーンフラッシュの対をなす技。体内のキングストーン月の石の力を体外に一気に放出するものである。体内にキングストーンがなければ何回も使える技ではない。


(能力の差はいかんともしがたい、か。せめてZXになれば…)

仮面ライダーBLACKには弱点といえる部分が二つ存在する。

1つは先に挙げたように防御力に欠けるところ。その防御力は同時期に開発される予定だったシャドームーンに比べ、改造途中で逃げ出したのでかなりの差がある。

もう1つは技が少ないことである。

それはBLACKの元になった南光太郎に起因する。南光太郎は改造当時、東星大学人文科に所属する大学2年生。サッカー部に席をおく、スポーツ万能の熱血漢であった。

彼には格闘技などを学んだ経験がほとんどなかった。そのため、BLACKとなった彼の戦闘スタイルはキックやパンチ、チョップといったものが主であり、他の技もライダー投げやリュウシュートを応用したもの、キングストーンフラッシュだけである。

それだけの技で強敵ゴルゴムに勝てたのはひとえにBLACKそのものの性能の高さ、彼に秘められた格闘センス、そして勝利へのあくなき執念によるものだ。

BLACKは他のゴルゴムの怪人達より1段階進化した存在であり、彼の格闘センスは怪人達との戦闘で磨かれていき、そして勝利への執念がキングストーンに奇跡を起こさせた。

また防御力同様、改造途中で飛び出したことも原因の一つである。そのため、シャドームンのように指先からビームを出すことも、何もない空間からシャドーセイバーを出すことも、ましてや巨大化することも出来ない。

技そのものは他のライダーでまかなえるが、持っている特殊能力まではおさえられない。



今現在の状況でBLACKのままシャドームーンに勝つ確率は限りなく少ない。ならば、なぜ雄介は他のライダーにならないのか?ストロンガーならば、チャージアップすれば1分間だけなら互角に渡り合えるだろう。スカイで空中戦を挑めば勝てなくても負けない戦いが出来る。

他のライダーにならない理由。それはシャドームーンの中にあるキングストーンの存在である。

キングストーンはBLACKとシャドームーンのエネルギー源であり命である。岩を砕く爆発的なパワーも、常人をはるかに超えるスピードも、攻防一体となるキングストーンフラッシュも全てはこのキングストーンから成っている。
しかし、最も大きな特徴は他にある。キングストーンは『奇跡』を起こせるのだ。それがいつ、どのような形で発現するか分からないが確かにキングストーンは『奇跡』を起こす。

そんなものを体内に入れているシャドームーンに対するには同じように奇跡を起こせる可能性をもつBLACKしかありえない。

(せめて、せめて太陽が出てれば…)

暗雲に覆われ、そうでなくとも時刻的には真っ暗な空を見上げるBLACK。



「うわっ!」

またも地面から地竜の触手が飛び出す。反応できたのはスピードのあるフェイトと獣状態で他のものより少しだけ早く地面からの攻撃を察知できたアルフ。防御魔法がいつでも構築できるように集中していたユーノ、砲撃の準備をしていたなのはは反応が遅れ、からめとられる。BLACKも巻きつかれたが、力でひきちぎる。

そして、爆発音ともとれる硬質な音が響き、シャドームーンが突っ込んでくる。

(回避…駄目だ!フリンジ無しで、S-1じゃない状況でどこまでやれる?!)

BLACKがバイタルチャージで赤く発光した拳と赤心少林の構えで迎え撃つ。当然である。回避すれば後ろで拘束されているなのはとユーノが殺されるこの状況。ここで回避する選択肢は存在しない。


飛び上がったシャドームーンの両足が青色に発光する。

次の瞬間、世界を揺るがす力がぶつかり合った。BLACKの手から炎のような赤が、シャドームーンの足から月光を思わす青が緑へと変化しあふれ出す。光は互いを拒むかのように瞬きあう。

傍目には互角。シャドームーンの蹴りをBLACKの腕が防いでいるように見える。だが実際には、

「…」
「がっ、ぐぐ…ぁあ…」

閃光の中を黒い粒子が舞っていた。粒子の元はBLACKの腕。少しずつ腕の表層に傷がついていく。

シャドームーンの放ったシャドーキックは常に超振動しているレッグトリガーによって威力が強化、対象を粉砕する効果がある。

これもS-1ならもっとダメージが少なかった。スーパーハンドのフリンジがあれば接触前にもっと大きく攻撃をそらすことが出来、受け流すのも可能であった。


仮面ライダーは一長一短。最強であってもそれが最良とは限らない。


倒れないのは意地か、それとも見た目ほどのダメージはないのか。閃光がやむまでBLACKとシャドームーンはぶつかり合っていた。しかし、シャドームーンが降り立つと同時に崩れ落ちるようにBLACKが膝をつく。

容赦なくシャドームーンの拳が振り下ろされる。

「ひっ!」

近くにいたなのはとユーノのみが聞いたやわらかいものを潰したような音。咄嗟に出たBLACKの手から響いたソレはその手が砕かれる音である。だが、BLACKは何もなかったかのように立ち上がりシャドームーンに殴りかかる。それに剣を虚空に消し、応戦するシャドームーン。

辺りに凄まじい打撃音が木霊する。BLACKはシャドームーンの攻撃を避けながら壊れた拳まで使い、シャドームーンは攻撃をものともせず反撃していく。わずかにかするシャドームーンの攻撃がBLACKを傷だらけにし、BLACKの壊れた拳がシャドームーンのボディを血染めに変えていく。

そんな二人を上から見下ろしていた管制人格。闇の書を開き、自分の周りに複数のどす黒い短剣を出す。

「させない!」
≪Sonic drive. Ignition≫

その行動に気がついたフェイトが管制人格に切りかかるが、

「お前も我が内で眠るといい」

攻撃は到達する寸前に展開されたシールドで阻まれ、闇の書の新たに開かれたページが発光。同時にフェイトの体も光に包まれる。

「これは!?」

フェイトは自分の体が徐々に黄色の光の粒子に分解されるのを見て目を見開く。意識が薄れ、飛行魔法が維持できなくなる瞬間、その体は完全に消え失せた。

「フェイトちゃん!!」

突然、フェイトが消えた光景に、さきほどようやく触手から逃れたなのはが驚きを露にする。すぐにアースラで状況を確認しているエイミィに問う。

「エイミィさん!」
「現在状況確認中!!」

モニター室でエイミィがキーボードを乱暴に打ち、目の前に3つのモニターが展開される。

「フェイトちゃんのバイタル、正常!闇の書の内部空間に閉じ込められているだけ、救出方法現在検討中!」

エイミィの報告に安堵するなのは。そこのブラディーダガーで吹き飛ばされたBLACKが転がってくる。

「フェイトは?!」
「まだ生きてます!闇の書の内部空間にいるそうです」
「…ビデオンか百目婆ァみたいなものか」

その二人に頭上から管制人格がゆっくりと言った

「我が主も彼女も、覚めることのない眠りの中で永遠の夢を見る。生と死の間の夢、それは永遠だ」
「永遠なんてない!みんな変わっていく、変わらなくちゃいけないんだ!あなたも、私も!」

管制人格の言葉を真っ向から否定するなのは。感情的だが、だからこそその言葉には感情がこもり、相手の耳を打つ。

「…このままじゃジリ貧か…引き離すぞ!」

BLACKが飛び上がり、管制人格に蹴りを放つ。当然のようにその一撃はプロテクションで防がれる。

「変わることを恐れているのか?そんなものは未来を、希望を見失うだけだ」
「私に恐れなどない。私に感情などないのだから。それに、私に未来など…ない」
「だったら、変わることを恐れないで未来を信じる少年少女と語り合ってこい。正直、不本意だがな」
「これは!」

BLACKの右足が赤くなり、その光が管制人格をプロテクションごと包み込んで海に向かって弾き飛ばす。

それを追いかけるようになのはとユーノ、アルフが飛んでいく。



しばらくそちらのほうを見ていたBLACKが、同じく飛んで行ったほうを見ていたシャドームーンに向き直る。

「…」
「…こっちを最優先の標的に定めたのか、それとも飛べないから残っただけか。うれしくないが、好都合か…ごふっ」
(回復が遅い…ごめん、帰れないかも)



一瞬の間。

次の瞬間には互いに向って走り出し、再度拳が交錯する。




****************************************

倒壊するビル。
炎を上げ、切り裂かれたアスファルト。
コンクリートや鉄骨があたりに散乱し、まともに原型を留めていたものはほとんどない。

迫り来るシャドービームを横に転がり避けるBLACK。目標を見失った黄色い光弾がまた一つビルを倒壊させる。

「はっ!ライダァーパンチ!!」

BLACKが飛び上がりパンチを放つが、シャドームーンの腕に阻まれる。

(まただ。当たらない!さっきまで体まで届いていた攻撃が。しかも今のは完全に見切られていた!)



BLACKは気づかなかった。自分の攻撃が酷く単調なものになっていることを。
そもそも、BLACKとシャドームーンでは攻撃の速度からして大きな差がある。なにせ、BLACKが一発のパンチを放つ間に、シャドームーンは16発パンチが打てるのだ。
その差を埋めるためにBLACKは全ての技術を活用し、最短最速の攻撃を放っている。

ソレがあだになっている。
最短の軌道で放たれたパンチには一切の遊びがない。言い換えればフェイントを挟むことさえしていないということである。
本来なら、始動が見切りづらく避けづらいパンチなのだが、シャドームーンはそれを見切る目も、受け止める拳速も持ち合わせている。故に短時間で見切られ、受け止められる結果になったのだ。



そのまま、両者肩をつかみ合い、力での潰しあいになる。当然、BLACKのほうは、この状態に持ち込まれるのを嫌って離れようとしたが、掴まれた肩が振りほどけない。
地面に互いの足が食い込み、周りが陥没していく。

「ぐ、ぐぅおぉぉぉ…」

徐々に力の差が如実に表れだす。
BLACKの頭が下がり、体勢も下へ下へ押しつぶされていく。
ついには膝をつき、何とか支えられるまで押し込まれる。


そして、





青い宝石によって二人の足元の空間が割れた。

「なにっ……うわぁぁぁぁぁぁ…」
「…」

もつれ合うように二つの影が空間へ飲み込まれていく。

「アリア!」
「分かってる!虚数空間、閉鎖!!」

思わず本名を呼んだ仮面の男に対し、咎める事無くもう一方が印を切る。それに合わせ、割れた空間が閉じていく。

「…やった、やった!!アハハハハハハ、ざまあみろ仮面ライダー!」
「前回の虚数空間からの復帰は3時間の開きがあった。これで闇の書の覚醒まで帰ってこれない。私たちの勝ちだ。…あとは」

海に目線を向ける。海上にてピンクの光と黒い光がぶつかり合っていた。狙いの時間まで後数分。
完璧に計画を行うため、要となる武器を展開し整備しておく。ここに来るまでに何度も行っているがどうしてもやめることができない行動であった。



1分。まだ光はぶつかり合っている。

5分。高笑いしていたほうも海に目線を向ける。

そして、10分後、

「よし!もうそろそろだ」

一人は決戦用武器ディランダルをクルリと回し、もう一人は胸の前で拳を叩く。このタイミングで向かえばうまく誤魔化しながら闇の書を凍結封印できる。目前に迫った悲願成就に最初の一歩を踏み出し、







カラン

「「えっ?」」

足元に目を向けると先ほどまで握っていたディランダルが落ちている。大切なものなのだから落とすはずが、と自分の腕を見た瞬間、





その腕もまた、地面を転がった。




「あっ、あぁあぁああぁああぁぁぁぁぁぁ」
「アリア!!」

男の体が光に包まれ、元の姿、リーゼアリアの姿に戻る。本人に切られた感触も痛みもなかった。ただ自分の手が地面を転がる不可思議な光景がアリアを混乱させ、変身魔法を維持することもできないほどの半狂乱状態へと落とし込んだ。

その叫びの中、隣の仮面の男、リーゼロッテの目には信じられない光景が映った。


アリアの後ろ、空中に浮かぶ一筋の赤い軌跡。
そこから生えた銀の指が、まるで扉を開くように空間を左右に割っていく。
ボロボロと崩れる世界の向こう側から緑の無機質な瞳がこちらを見ていた。





****************************************


時間を少し巻き戻す。

場所は月村家の一室。
シャドームーンが現れた時、それを感じ取った人間がもう一人存在していた。
仮面ライダー五代雄介の義妹五代みのりことアリシア・テスタロッサである。
こと危険の察知、力の感知に関して彼女は雄介のソレを上回りかけている。

「!!」

故に自分の、そして義兄の力を上回る存在の出現に気がつかないはずはない。
すぐに駆け出し…その足が止まった。

「どこへ行くつもりですか?」
「…ユウスケのところへ…間に合わないかもしれないけど」

後ろからかけられたノエルの冷静な声に、同じく冷静に聞こえるように返す。

「間に合わない?なら何故足を止めたのですか?」
「それはっ…ノエルさんが話しかけてきたから」
「そうですか?その前から止まっていたように見えましたが」

ノエルの言うとおり、アリシアの足は震え一向に動こうとしない。徐々に震えが体全体へ広がり、呼吸も短く浅いものになっていく。

「怖いのですか?」
「…なに、が?」
「死が、永遠の眠りが。私だって分かっているつもりです。一度経験していますから」

ノエルの瞳に不思議な光が宿る。ソレはかつて闘った同属へ感情と薄れ行く自分の意識の中感じた事を合わせた光。当時の彼女は感情が薄かった。しかし、今の彼女を見れば100人が100人とも彼女を人間だと思うだろう。そんな生の人間らしい光だった。

「でも、行かないと、行かなくちゃ…」
「そんな顔で来られても彼は喜ばないでしょう。逆に悲しむかもしれませんね」
「え?」

アリシアはそこでようやく自分が泣いていることに気がついた。その涙は拭っても拭っても収まらない。

死への恐怖。ソレは生き物が生き物であるがゆえに逆らえないもの。生物の中には多を生かすために個が死ぬことはある。しかしソレも生への執着から来るもの。本来、死ぬために生きる生物など存在せず、いるとしたらソレは酷く歪んだ存在である。

アリシアはかつて死を体験している。故に人一倍、死に敏感になる。もしかしたら、短期間で力の感知に長けたのはここから来ているのかもしれない。

ついには蹲って嗚咽がもれだす。

「…何、で?何で震えが止まらないの?行かなくちゃ、行かなくちゃ皆死んじゃうのに!町の人も、すずかも、ファリンさんも、フェイトも、お兄ちゃんも!!」

アリシアは叫びの中で思わずユウスケのことを兄と呼ぶ。本当はもっと早くからこう呼びたかったが、恥ずかしさで呼べなかった。それが涙とともに出たのは皮肉なことである。

そんなアリシアに対し椅子を持ってきた座らせるノエル。涙にぬれるその顔を丹念にゆっくりと拭いていく。

「…私も、かつて今の貴方のようになったことがありました」
「えっ?」
「お嬢様たちを守るために闘って、でも敵が強くて、相打ちのような形になって、機能停止になって、忍お嬢様にもう一度起動していただいて、ソレに伴って最新型の研究で少しだけ感情が豊かになって…そして、死に恐怖しました」

当時、忍としては善意で行ったのだろう。少しでも感情が豊かになれば、と。しかし結果、ノエルはそれまでのように動けなくなってしまった。今まで、何の気なしに行っていた料理や車の運転に恐怖し、物を持っての階段の上り下りにさえ苦労する始末。

本人が誇りにしていたメイドの仕事も行えず、皆に心配をかける日々が続いた。

「私は少しずつ取り戻していきました。包丁は料理するもので、車は移動用、階段も気をつければ問題なかった。でも…戦うことだけはできませんでした」

ブレードには触れられず、鞭のような細く長いものを見れば体がフリーズ。もう守れない。これでは妹のほうがマシどころか下手をすれば足を引っ張ってしまう。

「そう忍お嬢様に言いました。自分を停止してもらうために…そうしたら」
「そうしたら?」
「泣かれて、そして頬を叩かれました。『一緒にいてくれるだけでいい。家族にそれ以上なんて望まない』って。私はその時にもう一度戦う理由を手に入れました。…あなたは何のために戦いますか?」

といっても例の事件以降、ノエルが戦わなければならない状況に陥ったことはない。雄介が宅配に来たときが唯一の事例だ。でも戦える。そんな確信が胸の奥にあった。

会話の中でノエルは明確に理由をいうことはなかった。なぜなら、それは自分が見つけなければならないものだから。

「…私の闘う理由。私だけの理由」

子供にそれを問うのは酷な話だろう。しかし、ノエルの予想以上にアリシアの精神は強かった。

しばらく、目を瞑っていると思ったら、体の震えや嗚咽は収まり立ち上がる。

「…もう大丈夫」
「早計はいいことじゃありません」
「大丈夫。ちょっと見てきて、それで考えたから。私はお兄ちゃんから力も貰ったけど、それ以外に少しだけ彼らも入ってきたから」
「彼ら?」
「たぶん、仮面ライダーの要素って奴、かな。時々変な夢見るし」

断片的な夢。
暖かい家族。知らないが、それでも愛おしい誰かの笑顔。
うつろな記憶。アリシア・テスタロッサのものではない恐ろしく、酷い瞬間。
苛烈な闘争。向かい来る謎(アンノーン)との闘い。

全部、見たわけではないが、

「私、今ならなれる。彼と同じ望みに至ったから」

踏み出した足はもう止まらない。






「ところで、どうやって行くんですか?」

ピタリと、今度は完全にノエルの言葉の後に足が止まる。錆びついた人形のように顔を向け、

「ラ、ライダーマシンは…」
「乗って行きました」
「送ってもらうことは…」
「…彼の話が確かなら結界のようなもので入れないでしょうね」
「…」
「…」

今度は別の意味でアリシアが沈み、同じく別の意味で声がかけられないノエル。



ポクポクポク、チーン

「そうだ!あれだ!!」

言うが早いか、アリシアが月村家地下の秘密ラボの入口に飛び込む。それを見届けたノエルの口からため息が一つ。

「何故、あの兄弟は何も説明しないで飛び出していくんでしょう?」






地下。

いつか見た赤い車の前にアリシアは立っていた。

「お願い。私の力、少しあげるから、今だけ力をかして!」

光の車が今、ここに再誕する。






あとがき
どうも作者のGです。もう、載せても大丈夫かな?去年はラストのほうが荒れたので。まぁ、今まで音沙汰なかったのは1月1日以外休みがなかったからですが。HAHAHA、まったく大学4年生はZIGOKUだぜ!!

今回は全体通して3人称に挑戦してみました。擬音語も極力押さえています。一部使ってますが、ここは前々から書きたかった表現なので突っ込まれても変えません。3人称は突っ込んでください。


突っ込まれる前に設定。
1、BLACK弱すぎでない?
A、作者の中で昭和ライダーは、
RX>>>ZX>ストロンガー(チャージアップ)>BLACK>S-1>ストロンガー>V3…
ってな感じになってます。ちなみにスピリッツを読む前は、
RX>>>ストロンガー(チャージアップ)>BLACK>S-1…(ZX?なにそれ?おいしいの?)
になってました。

2、管制人格がレバ剣とアイゼン(?)使ってない?
A,使えてもおかしくないだろjk。むしろ本編でなんで使ってなかったんだろ?バルディッシュ受け止めるのに使ったほうがいいだろ。

3、青い宝石ってJSですか?
A,Yes。スカに全部いくなら一つぐらい、いいだろ。

4、あれ?月村家襲撃事件もう終わってる?
A、Yes。基本とらハと同じ展開。ただしノエルの復活はファリンの存在もあって早い。感情などもオリジナルの設定。リリカルのノエルは感情豊か過ぎるだろ。ついでになんかの本で読んだAIに死の概念を教えたらどうなるかという話題をちょっと書いてみた。たしか、そこでは永遠に安全を演算し続け動かないとなっていたと思う。



…プロットが消し飛んだ。手元にある妄想、もとい構想ノート(手書き、大学の授業中に書いたもの)だと次はダブル太陽になっている。

また感想が荒れるかもしれないのでしばらく返信は控えます。パクリ疑惑も読みました。やっばいなぁ、クロノとのファーストコンタクト、直すと強制的にその後数話、パクリ疑惑の中心になった部分も直さないといけないんだよなぁ。



[7853] As第12話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2010/07/17 14:48

片膝をつき頭を垂れるBLACK。左腕は手首から先が存在せず、右のコンパクトアイズは叩き割られ、ベルトのセルシールドには大きなひびが入っている。そもそも体に傷の無い場所を探すことが困難なほどにダメージを負っている。

一歩、また一歩。硬質な音を響かせシャドームーンがBLACKに近づいていく。右手に持つ剣が怪しく瞬く。




シャドームーンが虚数空間に墜ちた時、第一にとった行動はシャドーフラッシュを全方位に放ったことだった。

「ぐわぁっ!!…がっ!な、何?!」

地面に叩きつけられたBLACKが驚きの声をあげる。シャドーフラッシュに驚いたのではない。地面に叩きつけられた。つまり、今ここに地面が存在するということ。そのことに驚いているのだ。

以前プレシアを追って飛び込んだ虚数空間には地面など存在せず、ただただ闇が広がっていた。

しかし、今ここに地面がある。広がる荒野と向こうに見える明らかに人の手が加わった建造物。ただし人の気配はない。建造物も遠目でわかるほど荒廃している。

「まさか、ここがアルハザードか?」

プレシアから聞いた失われた都の話を思い出す。生命どころか運命さえ操ったとも言われ繁栄した都市が今では見る影もない。

以前に落ちた時はいくら落ちても、この地に到達することはなかった。落ちた場所が問題か、はたまた単なる偶然か。どちらにせよ、地面があったことはBLACKにとって不幸であったと言わざるをえない。なぜなら、

「…」

シャドームーンは飛行能力を持たない。唯一の勝機は空中戦にこそあったのだから。
相手が自由なく墜ちているところを、ヒットアンドアウェー。これがベストの戦術である。しかし、相手の体勢が整っていては成功率が格段に落ちる。

無言で降り立つシャドームーン。その身は緑の光に包まれている。

それは、シャドームーンの進化の証。本来、魔力で造られたその身は虚数空間内では数分ともたないだろう。それに対しシャドームーンは自分の体全体をシャドーフラッシュの光で包み込んだ。シャドーフラッシュは物理的であろうが、光線であろうが、はたまた精神攻撃であろうが自分に害をなす全てのものを弾く奇跡の光。当然、体が分解されることもなく、それどころか防御力も格段に上昇していた。




後に続くのは一方的な闘い。
BLACKの拳はことごとくいなされ、シャドームーンの拳が当りだす。

BLACKもなにもしなかったわけではない。覚悟しつつ、すべてのライダーで応戦した。
しかし、
1号の技、
2号の力、
V3の26の秘密、
Xのマーキュリーパワー、
アマゾンのインカの力、
ストロンガーの超電子ダイナモ、
スカイの99の必殺技、
S-1の赤心少林拳、
ZXのそれら全てを超える力、その全てが粉砕されていった。




いつ倒れてもおかしくないBLACKに止めを刺すべくシャドームーンが剣を振り上げる。

「(き、た。これ で最後 だ)うおぉぉぉあああぁぁぁぁ!!」

剣が振り上げられる最高点に達した瞬間、BLACKが起き上がる勢いのままに柄頭をアッパーカット気味に叩く。

ここを叩かれると弱い力でも剣が抜けてしまう。シャドーサーベルのような護拳があれば話は別だが。当然、シャドームーンの剣も宙を舞う。放ったBLACKの右の拳からさらに血しぶきがあがった。

狙いは一点。シャドームーン唯一の弱点であるベルトのキングストーン。今出せる全てのエネルギーが集約された左の手が真っ赤に光る。拳がなくとも関係なしにパンチが振り切られた。




破砕音があたりに響く。

「…ガフッ」

しかし、その音源はシャドームーンからではなく、BLACKのベルトから。

BLACKの渾身のパンチが当たるコンマ数秒前にカウンター気味のシャドームーンのパンチがBLACKのベルトへと吸い込まれていた。罅の入ったセルシールドが完全にたたき割られ、キングストーンのエネルギーが途絶えた拳はパシッと力なく音を立てるのみに終わる。

宙を舞っていた剣が降りてきて、そのままシャドームーンの手に収まる。

そして、一閃。
BLACKが袈裟がけに斬られると同時に背後の大地も切り裂かれる。

いまだ立つBLACKの胴を薙ぐように一閃。
キングストーンに大きな傷が入る。

最後に一回目とは逆からの袈裟がけに一閃。
再度大地が切り裂かれ虚数の彼方へと崩れ去る。

三度の斬撃を受けたBLACKの体はまるで糸が切れた人形のように後ろへ倒れこみ、大地とともに落ちていく。

落下する中、コンパクトアイズの光が静かに消えた。



何の感慨も見受けられない無機質な瞳は倒した敵を見ることはない。すでに次の獲物を見定めていた。

何もない空間を薙ぐ。

数秒の間があき、女性の叫び声と裂け目が現れる。裂け目をこじ開け、シャドームーンは完全に虚数空間から消えた。





その数秒後、虚空を落ちるBLACKの元に赤い車が現れた。




第12話

SIDE 海上

暗い空の下。真っ黒な海の上。それらよりさらに黒い光が瞬く。受ける翡翠の光も、反撃のピンクとオレンジの光もアクセントでしかない。

(…んっ?…リンクが切れた、か)

不意の感触に黒い光が止まり、光源である管制人格が街のほうを見る。からみつく鎖をレヴァンティンで切りながら考え込む。

ユーノのチェーンバインド(全力)は割りと強力なものだが、ベルカ式の使い手から見ればちょっと邪魔なだけで、武器さえあればあっさり切れる程度である。

リンクというのは言うまでもなく、管制人格とシャドームーン、厳密にいえばキングストーンとの魔力的な結合である。これがあるからこそ管制人格はシャドームーンをある程度コントロールできる。これが切れたということはシャドームーンが倒された以外相違ない。

向かってくるピンクの光、なのはのディバインバスター(割と全力)をプロテクションではじく。

(やはり一度破った者に負けるハズはないか…魔力消費を抑えるか?)

プロテクションに介入してくる魔力を逆算、逆流させ爆破する。手を見ると少しずつ光になっていく。

(どちらにせよ持って数十分か。ならあまり関係はないだろう。…しかし、存外に粘るな)

管制人格が目線を目の前の3人に戻す。仮面ライダーにばかり集中していたが、よく見れば、その瞳に強い光が宿っていることが見て取れる。

不意に思い出したのは海上に飛ばされる前に言われた言葉。

(会話か…そういえばしていなかったか)



『リンディさん、エイミィさん。戦闘が海上に移動しました。市街地の火災を』
『ごめんなさい、なのはさん。ライダー同士の戦闘の規模が大きすぎて、とてもじゃないけど災害担当を派遣できる様子じゃないの』
『それに、またジャミングがあって。うまく状況も分からなくなっちゃって』

なのはが臍をかむ。戦闘が海上になったが、あの銀色のライダーがいきなり来ないのだろうか。奇襲されるのを嫌っていたはずなのに何故BLACKはこんな状況に持ち込んだのか。

実際のところ、シャドームーンに飛行能力はなく、ジャンプ力は40m。無呼吸で水中に一時間いられるが、海上で戦っている以上奇襲される可能性はかなり低い。そのことを伝え忘れたのは完全にBLACKのミスである。


「なぜ諦めない。お前達の攻撃では何度やっても私には届かない」
「ハァハァハァ、諦めないよ。この手の魔法は悲しみと涙を撃ちぬく力。きっと、きっと助けてみせる」





SIDE 虚数空間

「そんな、どうしよう?」

赤い車、ライドロンの上でアリシアはうろたえていた。なにせ目の前に横たわるBLACKは現在、呼吸、脈拍、反応なしの医学的見地では完全に死亡が確定した状態である。かろうじてベルトのキングストーンが赤く明滅しているだけ。当然、アリシアにこんな状態をどうにかすることは出来ない。


ライドロンの暴走さえなければ、と悔やむ。

本来、ライドロンはクジラ一族の秘宝、生命のエキスによって命を得て動いていた。しかし、今回、アリシアはそれにギルスの力を無理矢理押し込んだ。雄介が以前のものを忠実に再現したところに以前とはまるで違うものを入れたのだから暴走するのは当然の帰結である。

暴走した挙句に宇宙空間、ディメンションホール、時の分岐点周辺を走り回り、ようやく虚数空間内に突入したことは今は関係ない話だ。


『同士、早く中へ。』

突然響く機械音のような声。驚き辺りを見回しても誰もいない。

『違う。こっちだ』

発したのは足元のライドロンである。一時は暴走したものの、その後はしっかりと己の意思を持つことに成功したのである。ここに来るまでにアリシアとは会話をしていない。ただでさえ薄暗い虚数空間内でいきなり声をかけないでほしい。

「貴方喋れたの?」
『アリシア・テスタロッサ、私はライドロン。お前の同士』



『私には分かる、彼の中のキングストーンの意思が。キングストーンはある場所に連れて行けといっている』



折しも、ほぼ同時に虚数空間にライダーマシンが突入してきた。ファリン、すずか、アリサを乗せ、結界ギリギリ(アリサが出ることを固辞した。一応安全圏)まで運び、戻ってきたのだからかなり速いだろう。

ライダーマシンに乗り、ライドロンを見送る。

「…ふぅ」

一息つくと同時に、自分のすべきことを考え出す。

(外に出て、すべきこと…優先順位、したいこと、しなければならないこと、できないこと、してはいけないこと)

考えをまとめていく。そして、そこにつながる一番初めにすべきこと。



虚数空間。魔法は使えない、発動もままならず、発動していた魔法も入ってしまえば数秒で霧散してしまう空間。
なぜ、魔法が使えないのか。それはこの「虚数空間」という言葉が端的に表している。ここでは実数が虚数であり、虚数が実数なのである。さらに厄介なのはここでは虚数と実数の変換が容易に、しかも高速で行われているのである。数字すべてが虚になることもあれば、実になることもある。
実数とは現在計算に用いられる数字、連続的な数の体系である。対して虚数とは、いわゆるiで表示されるありえない数字のことである。
魔法とは数式を組み魔力を持って発動するもの。ならば虚数と実数が入れ替われば当然発動しなくなる。さらに入れ替わりが起きるのでは、再度数式を組み直すことなどほぼ不可能である。
物理的に影響は出ない。しかし、計算はできない。まさに魔法殺しの空間。



アリシアは魔法の本質を知っている。
故にアリシアは気づいた。この空間の異常性に。そして、それを利用して行える行動に。本来なら脱出不能な空間を脱出することで生まれる可能性。

「行くよ、ライダーマシン。時間をさかのぼる」

そう、ここでは時間さえ虚に代わる。無理に出るならば時間がねじ曲がる。

(あとは願う。まずは、…フェイトのもとへ!)

体を淡い光が包み、さらにライダーマシンも包まれていく。そして次の瞬間、その姿は虚数空間より消えうせた。残ったのは元の暗闇のみ。





Side 夢

暗いくらい場所だった。暗い以外特徴のない、それどころか何もない空間。

何もない空間を歩く。言いえて妙だがそうとしか言いようのない状態。

ただ一箇所、光が見えた。本棚がボゥと輝いていた。


「・・・」

一冊だけとった本の表紙。『仮面ライダー1号』とだけ書かれている。

パラパラ読みすすめる。ぶ厚い本であった。本郷猛の一生ともいえる本であった。そこには彼の幸せも、彼の喜びも、彼の苦しみも、彼の全てが記されていた。

新たな本を開く。

『仮面ライダー1号』。同じ題名の本だった。違うのは途中で本郷猛がニセライダーに殺されること。脳だけになった彼はそれでもショッカーと闘っていた。





「不思議に思わないか?」
「何をだ」

突然、後ろから声をかけられても本を読む男、五代雄介は振り向かない。手を止めることなく本を読み続ける。

「お前のような存在がいるとしても、仮面ライダー1号は一人だけ。なのに本は数冊」

確かに本棚にはもう一冊『仮面ライダー1号』がある。

そこに書かれた本郷猛は水を調べる学生だった。先生だった。そして、やはり闘っていた。

「別に。世界が一つならそうかもしれないが・・・この世界には仮面ライダーがいない。なら、世界は複数あり、その各世界に仮面ライダーがいてもおかしくない。もしかした1号がたくさんいるかもしれない」
「・・・正解。だが面白くない奴だ」


本を戻し、並べられた本をなぞりだす。1号、2号、3号、V3、ライダーマン、X・・・。

「3号?」
「ああ、気にするな」

ひどく薄いが気にしないで先に進んだ。・・・サソード、ガタック、電王、ゼロノス、New電王、キバ、イクサ、サガ・・・。そこで本は終っていた。

「・・・やっぱり無いか」
「・・・今、2冊程途中のものがあるが」
「それは・・・俺の本か?」
「ちがう」

後ろの声の主には雄介の表情を見ることは出来ない。しかし、あからさまにがっかりしていることがわかる。それに対して、面白そうに後ろの声が大きくなる。

「なんだ、何を探しているかと思えば、自分の本か。ハハ、自分探しをする年齢でもあるまいに」
「・・・」


今度は『イクサ』を読み出す。75…読まずに閉じて隣の『キバ』に変える。結婚式の場面、飛び込んできたのは誰? 未来の息子→Aへ キバットの妹→Bへ、と書いてある。

「そこを探してもおまえのはない。こっちだ」

ようやく振り向いた雄介の眼に先ほどまでなかった新しい本棚が映った。黒塗りの本棚で見えなかっただけかもしれないが。

どす黒い瘴気を放つ本棚の前。

なぜ別々の本棚に入れてあるのか、と疑問に思いつつ目の前の一冊『イクサ』を開く。





『チュゥゥゥリヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!ガァァァリクックックックックックッ!!!』
「なっ?!うわっ」

あふれ出した声に驚く雄介に本が覆いかぶさった。マジックのように雄介の体が本の中に飲み込まれる。


完全に体が飲み込まれ支えが無くなり床に広がった本を、闇の中から金に縁取られた腕が拾い上げる。

本の最終ページ。そこでスパイダーファンガイアと雄介が闘っていた。

『ライダー…変身!トゥ』
『ヘンシィィン♪』

雄介が1号に、スパイダーファンガイアがイクサに変身する。

「そうだ、戦え。器が中身を選ぶな。光も闇も、正義も悪も、聖も邪も、全て飲み干し、全て記録し、すべて己が力へ。でなければ太陽の子になれるはずもない」

闇はさらに幾つもの本を開く。

『さぁ、タイムゲームの始まりだ』
『いいよなぁお前は。もっと闇に染まれ。そしておれの弟になれ』
『俺を好きにならない奴は邪魔なんだよ』
『イライラするんだよ、お前を見てると』

開かれた本から一斉に歓喜と怨嗟の声が響く。それは今まで雄介が完全に己の中に取り込んでなかった要素たち。ただ中にあるだけ。故に、時に溢れ出し、時に他の要素が溢れ出す原因になったもの。

本の中ではイクサがライダーキックにより爆散。黒い煙のようなものがライダーに吸い込まれていく。すると、輝いている本棚のほうへ移動する。

本から出てきた雄介は蹲っていた。肩を震わせ、拳で地面を叩き続ける。涙は出ない。

「終わったか」
「うるさい」
「・・・次はこっちだ」

別の本の中へ吸い込まれていく。本の中でデストロンライダーとの戦闘になる。

『変 、身!Vスリャァァァァァ!!』

まるで楽しむかのように闇が、闇よりなお黒い瞳がその戦いを見ていた。





Side 別の夢

「ごめんねアリシア。でも、私は行かなくちゃ」
「そう・・・」

フェイトの瞳から涙がこぼれる、次から次へと。その涙は振り続ける雨のように止まることはない。
対して、アリシアは笑顔だった。差し出したその手にはバルディッシュ。

「ありがとう。ごめんね、アリシア」
「ううん、いいよ。そっちの私によろしくね」

最後のふれあいはなかった。フェイトは伸ばしかけた手を引き、雨の中を駆け出した。その後姿をただただ見送るアリシア。




「もう出てきてもいいよ」

一人残るアリシアは後ろに声をかける。木の反対側、気配が動く。

「こんにちは、今の私」
「・・・こんにちは、昔の私」

同じ人間が向き合っていた。ただし違いはある。例えば、

「・・・思ったより差がついちゃったね」
「そう、だね。半年と、ギルスの力のせいもあるかな」

身長が頭半個分ほど今のアリシアのほうが高い。声も少しだけ今のアリシアのほうが落ち着きがあるし、髪型は昔のほうがツインテールなのに対し、今はショートカットだ。

「フェイト、私が来なくても大丈夫だったね」
「当たり前でしょ。私の自慢の妹なんだから」

まるで自分のことのように胸を張る。しかし、その瞳の端にはわずかに光が見える。

「・・・だから、頼まないよ」
「・・・ごめん」
「もうきっと大丈夫だから。優しい友達がいて、暖かい家族がいて・・・」
「ごめん、ごめんね。私、フェイトと一緒にいられない。一緒にいたらフェイトも危険だから。あの人の、お兄ちゃんの居場所を守ってあげたいから。ごめん、わがままで本当にごめん」

フェイトの前では泣かなかった昔のアリシア。自分の前なら泣くことができた。

彼女は単なるプログラムでは無い。管制人格が限りなくリアルな夢を見せるために用意した魔法生命体。シグナムやヴィータと同じ存在である。故に消えることに恐怖し、分かれることに涙する。フェイトの前で泣かなかったのは意地でしかなかった。

ひとしきり泣いた後、今のアリシアが立ち上がる。瞳には強い力が秘められていた。


「・・・もう行くね」
「そう。・・・ねぇ、貴方の名前は?貴方はどんな姿で闘うの?どう生きるの?」



いつの間にかやんだ雨。木陰を抜け、二人連れ立って歩く。どうしても行きたい場所があった。

そこは思い出の地。かつて母であるプレシアが健在だった折に一緒にピクニックにきた丘。

「やっぱり、ここもあるんだ」
「そうだよ。・・・ここに住んでみる?結構楽しいかもしれないよ」
「・・・アリシアが二人もいたんじゃ、わがまま言いすぎてお母さんが倒れちゃうよ」

アリシアが丘を下る。昔のアリシアは降りない。

「・・・見ててね、私の、最初の変身!!」

左腰に両手首を組み、右腕をあげ胸元に引き戻す。息を吐きながら前方に伸ばしていく。
腰にアギトの変身ベルト、オルタリングが出現。全身にオルタフォースが循環していく。

「変身!!」

掛け声とともにオルタリングの両サイドのボタンを押す。オルタフォースの光に包まれ、その姿が変わる。

金色の角と赤い瞳。上半身は鎧のようになり、その下には黒い皮膚。
人の新たな可能性、1つの進化の先にあるもの。
その名は、仮面ライダーアギト。

(ギルスのほうが格好良い、かな?)
(前のほうが格好良かった、よね?)

アギトの放ったオルタフォースを受けマシントルネイダーへと強化変形したライダーマシンが近くに止まる。

「じゃあね、昔の私。私は、アギトとして生きる」
「じゃあね、仮面ライダーアギト」

アギトが草原を駆け出す。追走するトルネイダーがスライダーモードに変形し、飛び乗るアギトとともに空を突き破っていった。

それを見届けたアリシアの体が光に包まれ消えていく。

「さようなら、私・・・」

最後は笑顔だった。





Side管理局

時間を少しだけ遡る。

管理局本局の一室。提督階位の者のみが使うことを許された執務室。そこで初老の紳士、ギル・グレアムがモニターを見ながら、ゆっくりと何かをタイプしていた。

グレアムは初老ではあるが、決してタイピングが遅いというわけではない。むしろ第一線を退いてからの10年間により事務仕事はかなりのレベルになっている。今、ゆっくりとしているのは一文字一文字に感慨を込めて打っているに他ならない。

つけていた老眼鏡をとり、目頭を押さえる。まったく年をとったものだと嘲笑する。現役時代、前線で闘っていた時はこんなときが来るとは思いもしなかった。このように年を感じることも、このようなものを書くことになることも。

筆を止め、窓の外を見る。思いはせるは自分の、そしてそのときの部下とその家族の運命を狂わせた事件。



不意に扉をノックされる。

(早いな)

想像以上だった。彼なら確実にこちらに来るだろうと思っていたが、まさか事件が完全に終結する前に答えにたどり着くとは思ってもみなかった。彼が優秀に育ってくれたことを喜ぶべきか、書き上げられていないことを後悔すべきか。

「入りたまえ」
「失礼します、グレアム提督」

グレアムの予想通りの人物、クロノが顔をのぞかせる。バリアジャケットを着込み、デバイスも装備状態。いわゆる戦闘態勢である。決して、恩師の執務室に入る格好ではない。

「クロノ、何か用かな?」
「…提督、僕は…」

にこやかに語りかけるグレアム。手は絶えずタイプを続けている。クロノはそんな姿に目前まで言うつもりだった言葉が出てこない。

「次元艦へのクラッキング…」
「!!」
「捜査の妨害、戦闘の妨害…そうだな、これからだが死体遺棄まがいのことも、か」
「それは、自ら認める、という事ですか?」

呻くように絞り出したクロノの言葉に答えることなく、グレアムが一つの記録媒体を差し出す。S2Uに読み取らせると、中には現実を肯定する証拠が入っていた。

クロノが奥歯を噛み締める。右手は爪が食い込むほどに握りしめられ白くなっている。

「リーゼたちは隠蔽するつもりだったのだろうが、私は逃げるつもりはない。罪は償おう」
「なぜ、なぜですか?!どうしてこんな・・・」
「そうだな、なんでだろうな。・・・11年前の闇の書事件。あれが始まりだった。あの事件を機に私は艦隊提督の任を解かれ、無限書庫の管理をしていた。偶然だった。無限書庫にはこれまでの事件すべてのデータが入っていた」

闇の書事件。大規模な次元災害が関わるこの事件に対し、管理局が対策チームなどを作らないのには訳がある。

闇の書の主が死ぬと、闇の書は転生し別の主のもとに流れる。が、すぐに発動するわけでもなく、短くて10年、長いと20数年のタイムラグが出るのだ。

管理局は人材不足。すべてはこの一言に集約される。つまり10年も20年も人材を遊ばせることはできないのだ。ましてや闇の書事件に対処できる人材と言えばAAAクラスのトップエースである。海がこの人材を遊ばせていれば陸から何を言われるかわかったものではない。

故に闇の書に関する資料は未解決にもかかわらず全て無限書庫に埋もれることになる。

「最初は何の気なしに事件を追って行っていたのだ。幸い時間はあった」

無限書庫はすべての情報を内包する。ただし、乱雑かつ無限に。はっきりいって、現在ほとんど使われることもない無限書庫の管理者とは閑職である。グレアム自身の実績と影響力がなければ、発言権などないに等しい。

「そして、気づいた。転生にある一定の法則があり」
「次の転生先が第97管理外世界、地球に住む少女 八神 はやてのもとだと」

クロノが言葉を引き継ぐと、机の上のモニターに闇の書の映像と、はやての写真が映る。

「しかし、闇の書完成前に主と闇の書を抑えても意味がない。だから闇の書の完成まで監視していた。…見つけたんですね。闇の書の封印方法を」

クロノから目線をそらす。

「家族を持たず、足を悪くする彼女を見て、心は痛んだが運命だと思った。せめて永遠の眠りに着く前ぐらい幸せにと思い援助していたが・・・偽善だな。なにせJS事件のときは彼女のことよりも、我々が動く前に闇の書が発見されるのでは、闇の書とジュエルシードが影響しないか、と考えたぐらいだ」
「あの事件のことは見て見ぬふりですか?」
「ああ」

短く答えるグレアム。目線を戻したとき、既にその目に負い目はなく、歴戦の戦士ギル・グレアムの瞳になっていた。

「運が良かった」
「えっ?」
「あの事件によって、早い段階でイレギュラーたちに気づけたのだから」
「イレギュラー・・・仮面ライダー」
「・・・あの力は危険だった。計画が破綻するのには十分すぎるぐらいに」

またもグレアムの瞳の光が変わる。今度はクロノでさえゾッとするほどの暗い影を含んだもの。

「だが同時に対処法も見つかった」
「対処法?」
「ジュエルシードだよ」
「!!」
「君達から引き渡されたジュエルシードを研究する上で生じた大きな矛盾。一つの事件が不確定要素とその対処法を同時にくれた」

S2U内のデータ。最後の項目を見てクロノは愕然とする。

≪ジュエルシードの使用≫

管理局の海において提督とはほぼ最上位の階級である。そしてこの階級には、主に管理世界で戦う者と本局内で事務仕事な行う者の2種類がいる。例えばリンディは前者にあたり、その友人のレティ・ロウランは後者にあたる。

何故そんな区分があるのか?

簡単に言ってしまえば、これもまた管理局の人手不足が起因している。前者の仕事場は戦場になることが多い。次元犯罪者の多くは情勢の不安定な世界に身を隠すためである。故に肉体的、精神的に負傷するもの、年齢によって戦えなくなる者もでる。そういうものの受け皿として用意されているのが本局内での事務仕事である。

そしてもう一つ。
戦場側から事務側に移った提督には変わった仕事がある。それは発見されたロストロギアの研究に同行。及び監視と移動の際の護衛である。

ロストロギアとは言わば、どこに起爆スイッチがあるか分からない爆弾みたいなものである。当然、管理局では保存する前に一定の以上の研究を行う。その研究は危険なものであり、いざというときに封印できるように魔導師が付いているのだ。移った提督は魔力量がいまだ健在のものも多くこのような役目にうってつけである。

そして今回、ハラオウン親子はグレアムにそのことを頼んだ。もちろんその思考の前提に絶対的な信頼があった。しかし、それが裏切られたことをデータが示している。

「グレアム提督!あなたという人は」
「研究所での研究においてジュエルシードが虚数空間を発生させるほどの次元震を起こすには少なくとも7個必要だということがわかった。しかし、実際には5個で次元震が起き、虚数空間が発生した。ならば、それは何が原因だったのか。クロノ、その項目を最後まで読んでみなさい」

クロノはもう一度画面をスクロールさせていく。ある文章が目に入る。

『…だろう。本件において何故虚数空間が発生したかは不明。何らかの外的要因によるものだと推測される』

「外的要因。誰でもあの状況を見れば一番に思いつくだろう。オーバーSのプレシアと仮面ライダーストロンガーのぶつかり合いが原因ではないかと」

クロノの脳裏にあのときの光景がまざまざと甦る。

ぶつかり合う2つの雷。紫電と電光。かたやミッドの歴史に名を残すであろうといわれた大魔導師。かたや規格外の化け物のうち、現在までの中で最強の存在。ジュエルシードではなく彼らが原因で次元震が起きたといわれても納得しそうな光景であった。

「それを確かめるために、一度ロッテを仮面ライダーにぶつけてみた。出来ればストロンガーが良かったが見つからないので、ZXと名乗ったものに。結果は驚くべきものだった。彼らは単体で、たった一人で暴れるだけで次元を揺らしていた。もう少しで虚数空間への穴をあけるほどだったそうだ」
「なっ!?」

ミッドの技術では、個人で虚数空間の穴をあける技術は存在しない。オーバーSともなれば次元震を収束させる、穴を閉じることは可能だが、あけることはない。そもそも虚数空間自体が忌避すべき存在なのだから当然と言えば当然である。

「これを知ったとき、闇の書を仮面ライダーとの戦闘中に虚数空間へたたき落とすことも考えた。が、ストロンガーは敵であったプレシア・テスタロッサも伴って帰ってことから、復帰の際に闇の書も連れてくる可能性がある。これでは意味がない。だから、仮面ライダーは虚数空間に一度退場願い、その後闇の書を凍結封印する。これが今回の計画の全容だ」
「…」

クロノが絶句する。本来クロノがここに来た目的は恩師の犯罪を未然に防ぐためである。次元艦へのクラッキング程度ならまだ犯罪者として裁かれることもなく、今までの功績と打ち消しあうこともできた。

しかし、データが確かならば、もうジュエルシードは持ち出されているのだ。危険度の高いロストロギアと知っていながら持ち出す行為は犯罪であり、それを使用したら重罪である。

「もう遅い。今頃地球ではリーゼ達が仮面ライダーを落とし…!!なん、だと…」

急にグレアムが狼狽する。

「どうしたんですか」
「…リーゼ達の魔力が、まずい!危険領域まで落ち始めた」

部屋をとび出すグレアムとそれを追うクロノ。

アースラ経由で地球に渡った二人が見たのは、

前足を失い倒れ伏す猫と、
ビルにめり込み身じろぎ一つしない血まみれのロッテと、
赤いライダーと刃を交える

銀色の死神だった。







Side 夢の中

夢を見ていた。

真っ暗な中でひたすら戦う闘争の夢。

100ぐらいは数えていたがそれ以降めんどくさくなってやめた。

「さぁ、俺を殺してみろ」
「言われなくてもやってやるよ」

たぶん200ぐらいでライオンファンガイアと闘い、ボロボロになり倒れた。オルフェノク多すぎ…

大量にさまざまな感情をもらった。憎しみも、悲しみのも、恐怖も、愉悦も、嫌悪も、嘲笑も、狂気もいろいろもらってきた。

ああ、嫌な感情だ。気持ち悪い。今まで向けられたことの無い感情だったしな。

そんでもって・・・



目の前に人がいる。暗くて見えない。でも誰だかわかる。

「終わったか…どうだ気分は」
「機嫌はいいが気分が悪い。我慢してたが吐きそうだ」

精神的な余裕も出てきた。忘れてた。アリシアにキングストーンを渡したが、要素そのものは渡してなかった。

「シャドームーン…」
「見えるようになったか。相当闇に染まったか」

見える姿はさっきまで戦っていたシャドームーンそのもの。違いといえば緑に発光していないことか。
そういえばさっきまでは闇の中で姿が見えなかったな。

「さっきな、プレシアに会った」
「…」
「一発おもいっきりブン殴られて、本を渡されて『今度、娘を泣かせたら地獄の底から殺しに来る』だとさ」
「…ここはお前の中だ。仮面ライダーの記憶は在っても、プレシアはいない」
「あっそ。なら、あれは俺の妄想か。…まぁ、あえて嬉しかったのはあるけど、なっ」

無理矢理、体を起こそうとするが、体中が軋んで立てない。

「…馬鹿だな、お前は。そんな体で何をするつもりだ?」
「決まってるだろ。立って、闘う。次はお前か。今なら勝てる気がする」

なんでさっきはあんなに弱気になっていたのか分からないくらい、体中から力があふれてくる。今なら何でも出来る、と思う。

「あー・・・やる気になっているところ悪いが時間切れだ。そろそろ体のほうが進化する」


…じゃあ行かなくちゃな。右手の本を振りながら動く。

「その本は!」
「…お前も驚くことがあるんだな、キングストーン。・・・よし、はやく行こう」
「…ばれてたか。悪いがやることができた。先に行け」

シャドームーンが去っていく。途中、振り向いて一言。

「はやく行け。今頃アリシアが一人で闘っているぞ」
「ちょ、おま、はやくそれを言え」

駆け出す。闇の中に見える確かな道を。
光が闇を照らすなら、闇が光を包み込むことだってある。光でしか見えないものがあって、闇でしか見えないものもある。そんなことも忘れるくらいに光に傾倒していた。
だからもう一度歩き出そう。




「はぁ、行ったか。まったく誰だ。せっかく隠していたものを引っ張り出してきたのは」

あの本。間違えなく自分が見つからないように隠していたものだ。まさか本当にプレシアが?もしくは自力でみつけたのか?
頭を悩ます。

「まぁ、疑問は残るがっ!!」
「グォッォォォォォォ!!!」

後ろの闇を殴りつける。闇から人の2~3倍ありそうな巨体がこぼれおちる。

「ライダーアークか。それに、幽汽、ネガ、コーカサスにオーガ、G4、アルビノジョーカーとバットファンガイア。まだまだいそうだな。悪いがお前らの闇はあいつにはまだ早い。それにお前らの目的はあいつの本だろ。やらせるか」

一斉に飛び掛る者達へと猛然と立ち向かうキングストーン。その後姿は仮面ライダーそのものだった。





Side地上

「ハァッ!」
「・・・」

フレイムフォームとなったアギトとシャドームーンが夜空に赤い軌跡を作る。その軌跡が交わるたびに鋭い金属音と火花が散る。
恐ろしいまでの速度で振りぬかれる剣と剣。
クロノとグレアムの瞳には軌跡としか写らないものだった。

空中での斬り合い。アギトはマシントルネイダーに乗っているため浮遊しているが、飛行能力のないシャドームーンは当然降りてくる。
地面と接したその瞬間、爆発的な切り返しで方向転換。シャドームーンがクロノとグレアムの眼前に迫る。

このとき両者のとった行動は真逆。

クロノは素早く後ろへ飛び上がった。既に幾度も仮面ライダーと交戦した故の行動である。

グレアムは前に飛び込んだ。シャドームーンの真横をすり抜け、そこに転がるディランダルをとるために。

運が良かった。右から振りぬかれるシャドームーンの剣戟。左に立っていたクロノが前に出れば一刀両断されていただろうし、右側のグレアムは前に飛び出るのならば少しカスル程度で済んだ。

転がるように動いたグレアムはディランダルを掴み、振り向きざまに胴を一閃。高振動をかけた魔力刃で切りつける。

「なに!?」

無傷。

グレアムは心のどこかで思っていた。いくら強くても自分なら勝てるのではと。
それはある種の強者が持つ傲慢な考え。油断に繋がる感情。
自分の魔力の低下。リーゼたちの苦戦。規格外の戦闘力。それらの要素があったとしてもいくつもの闘いを潜り抜けた自分なら何とかなるのではないか。
すでにその考えが10年近く闘いから遠のいた者の感覚とも知らず。

シャドームーンの蹴りがグレアムの顎を打ち上げる。咄嗟のプロテクション、バリアジャケットがあっても膝立ちから体を浮き上がらせ、脳を揺さぶるには十分すぎる威力。

「提督!!」

吹っ飛ぶグレアムを見て、クロノが最速でシャドームーンの首筋を打ちつける。が、やはりバリアによって無傷。

最悪だったのはクロノの選択。
グレアムは相手を斬るためにデバイスの先端に魔法刃を展開する切断魔法を選択した。故に刃が折れてもシャドームーンの剣より蹴りのほうが早い距離を保てた。
クロノが選択したのは高速振動によって相手の意識を刈る打撃魔法。そのため、S2Uは止まり、剣の届く範囲に無防備な姿をさらすことになる。

振り向き、クロノを視認。クロノの背筋に氷を落とされたような怖気が走る。

「・・・」
「うわっ!」

自身で避けられるタイミングではなかった。アギトがトルネイダー上から飛び出し、襟首を掴んで攻撃範囲内まで跳んだのである。その際にクロノはS2Uを、アギトは肩のパワーゴールドの一部を叩ききられた。

「くうぅぅ」
「お、女!?アリシア・テスタロッサか」

切断されたパワーゴールドからオルタフォースがもれるのを抑えようと呻くアギトの声を聞き、クロノが戦場に似つかわしくない声を上げる。

アギトの力が与えられたとはいえ、要素まで貰っていないアリシアの声はアギトに変わっても変化はない。当然声はフェイトに近い。

トルネイダーがグレアムと猫2匹を回収してきた。ポイ捨てするように放り出したのは愛嬌としておこう。

「邪魔だから帰ってほしい」
「え、いや、しかし」
「少なくとも怪我人はいても足手まとい」

少し間を空けているところから、アリシアがクロノたちを警戒していることがよく分かる。目を向けない分、シャドームーンへの警戒9割、クロノたちへの警戒1割程度である。

「提督。はやくアリア達を連れて退いてください。手遅れになります」
「クロノ・・・わかった。ディランダルを」
「はい」

ディランダルを渡し、飛び去るグレアム。

「残るなら、集中。こいつの目的は目の前の障害の削除。常にどちらかが攻撃し続ければ集中攻撃されることもない、と思う」
「しかし、僕の攻撃じゃ傷一つ負わせない」
「・・・必要なのは時間だよ。あと少し」

一瞬だけ空を見上げるアギト。そこには見えないはずの、しかし日明かり輝く存在が見えた。

一瞬、一瞬の隙。

狙い謝らず、シャドームーンの発する二人の眼前に迫る。







あとがき

ハハハかかったな。作者は一言もJS一個で虚数空間が空くなんて・・・書いてないよね?

もうきっと見る人もいないだろうと書きたい放題。アリシア二人なんて書いてる本人が一番混乱した。アリシアがワープしまくってるように見えるけど気のせいとしておいて欲しい。

さて、主人公は初期で考えたままの設定で行く。ディケイドの冬との絡みは・・・考えてるけど見てないしな。なんでせめてどちらかに1ヶ月ずれてくれないんだ。ダークライダーいっぱい。なんという最凶ライダー決定戦。デストロンライダーとか3号とか知ってる人いるのか?まぁ二つとも多分公式。平成のベルト必要組が変身してたのは夢の中ってことで。ゼロ大帝アマゾンを書こうと思ったが公式でまだ名称決まってなかった。村枝先生は本当に神。

質問に多かった管理局サイドを細かく設定を書いてみた。正直、事務的提督の役割なんて後乗せサクサク設定。突っ込まれてもこれ以上細かく書くつもりなし。

最後のところは平成ライダー風のひきを脳内補完してください。

JSは導火線程度に考えてください。虚数空間が開く原因はほぼライダー側にあると。まぁ細かくは次回。ぶっちゃけちまえばチート共にリミッターつける意味であって、ぬこいじめはついででしかないが本音。

では次回




[7853] As第13話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2010/07/17 18:07
暗闇をひた走る。途中、落とし穴や地雷があるのを避けながらだが。

(ちょっと待てよ。ここが俺の中ということは、俺の精神は穴ぼこだらけで大量の地雷持ち、ということなのか?)

どうでもいいことを考えながら突っ走る。

「ギイッーーッ」
「うぜぇ!大体喋れるんだからその掛け声で襲い掛かってくるな!!」

いきなり闇から奇襲してきたショッカーライダーの顔を叩き割る。

雄介の生身での戦闘力は、この精神世界の中での闘いにより向上していた。体内の要素が今までのように精神に阻害されることなくスムーズに効果を出している。今ならライフエナジーの吸収からオルフェノクのエネルギー注入までできそうだった。やる機会など永遠に来ないだろうが。

こうやって襲い掛かってきたのは、これが最初というわけではない。ロブスターオルフェノク、ガイとメタルゲラス、オルタナティブとサイコローグ、レンゲル(やたらに洗練された動きから中身は桐生)、にせスカイライダーなども襲ってきた。

その全てを変身せず素手で、(倒したわけではないが)無力化し逃げ切ったのだから、その向上の程が見て取れる。

『・・・聞こえるか』
「!…キングストーンか」

闇を震わせ声が響く。姿は無いが間違いなくその声は今しがた別れたキングストーンの声だった。

『時間がないから手短にすます。もうすぐ意識が覚醒するだろう。そうなれば我の声は聞こえない。・・・いいか。RXで戦闘できるのは精々数10分弱だ』
「…短いな。RXに時間的な制約はなかったはず」

仮面ライダー最強の一角、仮面ライダーBLACKRX。その強さが起因するところは限りなき進化、圧倒的なパワー、そしてなにより大きいのは制約がほとんどないことである。

パワーなら引けをとらないクウガのアルティメットフォーム。ただし、周囲の被害が甚大なものになり、かつ暴走の危険がある。
防御力なら最強のブレイドのキングフォーム。ただし、アンデットになる。
時間さえ操るカブトのハイパーフォーム。ただし、下手に過去を弄ると自分が消える(特異点の要素を含む雄介は消えないが)。
その手に世界のあらゆるものを切り裂くザンバットソードを持つキバのエンペラーフォーム。ただし、強力な魔皇力に耐えられなければ変身直後に絶命。

以上のように仮面ライダーの最上位クラスの戦闘力を持つものは変身前、変身後に大きなリスクを持っている。

対してBLACKRXはというと、精々変身時に光が必要なぐらいで、しかも怪魔界のような特殊な場を除けば深海だろうが洞窟だろうが夜であろうが僅かな光で変身できる。変身後のリスクは皆無。

『・・・どちらかというとお前自身への制約だ。(あぁ、うるさい。燃え上がる情熱だかなんだか知らないが、さっさと大気圏で燃え尽きろ)』
「俺自身(バックがうるさいな。なにやってんだ?)」
『この世界にとって異物でしかない。そんなものが強大なパワーを使えば世界が壊れてしまう。空気を詰め過ぎた風船か電子レンジで暖めた生卵のようなものだ。(こんなところでウルティマブラックホールをだすな!)』

雄介のあずかり知らぬ所で、バトルは続いていた。既に闘いが戦いになり、さながら戦争じみてきている。金のフォトンブラッドが撃ち出されたかと思えば、G4型(中略)ミサイル4発が舞い、いきなり何人か火を噴いて丸焼けになったり、赤い月が現れた直後周辺が爆発したりしている。空ではアークがオニノキリフダとぶつかり合い、14とサガークが絡みあっている。そもそも、どいつもこいつも隙有らば周りを消そうとするので乱闘になるのは自明の理である。





闇が終わる。覚醒のとき。

「先に行くぞ」
『ああ』

前方の光に飛び込む。




ライドロンの上に立っていた。無限に広がる宇宙と無数の星を見上げながら。
真っ赤な目。黒いボディの中心にあるサンバスクは陽光を浴び七色に輝いている。

目線を手元へ。両手に力がみなぎっていた。

「・・・よし!…っと、見てる見てる。目立ちすぎなんじゃないか、ライドロン?」
『目立っているのは同士、お前だ』

なぜか嬉しそうに一方を指差しながら足元のライドロンを叩くRX。返すライドロンの言葉は平坦であり、少しトゲがある。

指の先にあったのは衛星軌道上に浮かぶ次元艦アースラ。彼我の距離はおおよそ1,000㎞。当然、視認可能距離3kmのマクロアイでは見えないが、RXにはどんな微弱な電波や音波でも捉えることが出来るソーラーレーダーと脳波や意思を読み取る第3の目サイコインジケーターを持っている。

真っ黒な宇宙では同じく真っ黒なRXより、真っ赤なライドロンのほうが目立つのは当然だろう。しかし今回ばかりは例外である。

「そんなこと言われてもなぁ」

RXが目の前に浮かぶ地球に手を伸ばす。そのまま愛おしいものを撫でるかのように輪郭をなぞる。

ただそれだけの行為で辺りは揺れるし、アースラ内部では警報が鳴り響いているだろう。

自分の意思とは関係なく起こる現象とはいえ、自分自身が守るべき世界を揺るがしてしまっていると思うとやるせなくなる。そんな感情を誤魔化すように頭をかくRX。

「さて、ライドロン、行けるか?」
『もう少し時間が欲しい。連続の転移でエネルギーが無い』
「そうか・・・なら先に行くぞ。時間が無いからな」

その意を受け、ライドロンがほぼ地球を真上に捉えた状態に転回する。
サンバスクで取り込んでいた光エネルギーとキングストーンのエネルギーが変換されハイブリットエネルギーとなり、全身に循環していく。

「トオゥ!!」

周りを響かせ、RXの体が大気に焼かれ赤く発光しながら、地球に落ちていく。




仮面ライダーBLACKRX。
後に管理局初となるDedOrAlive(生死問わず)の次元犯罪者。
仮面ライダー最強の一角にして奇跡の体現者である彼の伝説が始まりをつげる。



第13話喰らえ!必殺のライダーダブルキック

(まずい!)

迫り来る光弾を前にアギトは咄嗟の選択を強いられた。
先ほどまでは自分ひとりだったためフレイムセイバーで切り払うだけでよかった。
しかし、今は隣にクロノがいる。
クロノの反射神経、彼我の距離、光弾の接近速度。全てを計算すると必然的の防御はデバイスのオートディフェンスになる。
クロノのデバイスは半インテリジェンスのデュランダルに変わっている。当然、オートディフェンスは発動する。

しかし、それがネックになる。

オートディフェンスは不意を突かれたときに発動する全自動防御のことである。通常の防御に比べ魔力の消費は激しいし、対応性も無く、割りと脆い。
何より問題になるのはデバイスのソリースを食われ、不意を突かれたので体勢も不十分なため、確実に次の行動に支障をきたすこと。
そんな隙があればシャドームーンに一刀両断である。

フレイムセイバーでは足りない。

そう判断した後の行動は早い。

アギトがフレイムセイバーを前方に投げつけた。プロ野球投手の速球をはるかに超える速度で回転する剣は二つの光弾を消し、そのままシャドームーンに向かう。この程度の攻撃では当然、シャドームーンに切り払われるが、それにより連射が止まった。

左腰部のスイッチを押す。オルタリングが反応し、ドラゴンアイが光る。賢者の石からストームハルバードが出現。手に取ると同時に体全体へ波紋が広がり、体色が青に変化する。

仮面ライダーアギトのストームフォーム。「超越精神の青」と呼ばれる風を操るフォームである。

ハルバードが展開され、風車のように手の内で回転する。重さを感じさせないその動きは大気を動かし、風を生み、強風を巻き起こす。
アンノウンさえたじろがせ吹き飛ばす突風である。連射性重視の光弾は反れるか、減速し切り払われる結果となった。

「色が・・・」
「集中!!」
「くっ」

アギトの変化に驚きの声を上げるクロノ。それに対しすぐに注意をするアギト。
当然である。なぜなら次の瞬間には二人の前にシャドームーンが来ていたからだ。

凄まじい剣戟が二人を襲う。その圧力に負け、じりじりと後退する。

シャドームーンは剣一本。
アギトとクロノは棒二本。正確には杖とナギナタだが。
手数では負けないはずだった
しかし、アギトは超越感覚の赤から超越精神の青に変わったために感覚がついてこない。
クロノは慣れない武器のために思ったような動きが取れない。そもそもクロノは、オールマイティと言われてはいるが接近戦ではベルカの騎士達には及ばない。

故に押される。

「がっ」
「ぐっ」

二人の得物を打ち払い、その首に手がかかる。シャドームーンの手から投げ出された剣が背後で音を立てるころには、二人の背がビルの残骸に叩きつけられていた。衝撃緩和のためにクロノのバリアジャケットが弾け、上着が光となる。

叩きつけられた残骸は音を立てて崩れ落ちる。もし、アギトでなかったら、またはクロノがバリアジャケットをつけていなかったら、体中の骨がバラバラになっていたことだろう。それほどの衝撃だった。

「くっ、つぅぅ・・・」
「ケホっ、やば、やっぱり守る余裕無いから、自分の身は自分で守ってね」

背中の痛みに悶えるクロノに対し、アギトは一瞥せずに駆け出す。素早く右腰部を叩き、再度フレイムフォームに変わりながら、シャドームーンに斬りかかる。

シャドームーンもすぐさま剣を持ち、応戦の構えを取る。

二人の間で火花が散る。

アギトには接近戦しか選択肢がなかった。
離れれば攻撃対象にクロノが含まれる。そうなれば守るためにはストームフォームしかないだろう。しかし、それでは先ほど同様、感覚がついてこない。
クロノを担いで逃げるというのも無い。速度が最も早いのは同じくストームフォームだが、今のシャドームーンはRXとほぼ同様の速度で走る。その速度はおおよそ時速300Km。ストームフォームは時速約60Km。勝負にならない。背中など見せれば一瞬で斬られるのが落ちである。

口ではああ言ったもののクロノがシャドームーンに対抗できる要素は無い。集中したからどうこうできるレベルの問題ではないのだ。それでも見捨てる選択肢が出ないところが仮面ライダーの薫陶が行き届いている証拠だろうか。



そんな状況に一番歯噛みしているのは当のクロノである。

(くそっ)

やっていることといえば戦況を見つつ、半壊したS2Uから使える魔法のデータをデュランダルに写すだけ。やることが有る間はいい。しかし、これが終わって自分はあの超人同士の決闘に介入できるのか。そんな考えが頭をよぎる。

既に、仮面ライダーの前では自分の力どころか魔法そのものさえも無力であることは、本人としては大変遺憾ながら、理解していた。

それでも一矢報いることを望む。



近年クロノは伸び悩んでいた。

受け継いだ魔力量は母より父に近く、言っては何だがそこまで高いわけではない。
そんな理由から運用効率や技術方面で磨き続けていたが、それも限界を感じていた。

それでも、自分の中の信念と管理局の正義を信じる心を持っていればどんな力にも屈しないと信じていた。それこそが技術などよりも強固に築き上げられたクロノの拠り所だった。

そんな折に会ったのが二人の仮面ライダー、アマゾンとXである。

その出会いは最悪に近いものであったが、今では3割くらいは自分が悪いかもしれないとも考えている。が、今まで自分が築き上げてきたものを粉砕された気分だった。
故に躍起になって彼らを否定し、捕えたいと願った。

次の衝撃は仮面ライダーS-1。(ストロンガー、スカイには歯牙にもかけられなかった印象しかない)

言い分が理不尽であったり、自分どころか自分の師匠までやられたりしたが、それ以上に戦闘技術には違う方向性と美しさを感じ、彼らへの感情が変わりだした。

怨み辛みがなくなったわけではないが(出会うたびに愛機が破壊されるのだから)、事件の調査の合間に、その考えを読み解こうと心理学を学びなおしたし、動きを見るためモニターにかじりついた。

世界が違った。力が違った。立場が違った。道程が、想いが、信念が、あらゆるものが違い、今だ理解には至らない。

調べる中で気づいた恩師の行動でクロノの中の管理局の正義は揺るぎだしている。今、あるのは人々、世界を守りたいという信念のみが拠り所になっていた。


今回の戦闘。リーゼ姉妹を助けた時点でクロノにここに残る理由はなくなった。

何故残ったのか?
それ自体は子供のような意地だったのかもしれない。
ただ、一度でも彼らに背を向ければ、その圧倒的な力に二度と立ち向かえない。
何もかも違う、力の差がありすぎる存在に信念を折っては二度と向き合えない。
そう感じたからだった。

だからこそ、せめて何かないか探していた。



クロノの思考の最中、戦況は動く。

鍔迫り合いになり、それを受け流さすようにアギトとシャドームーンが横に動く。
当然、受け流しているのは力で劣るアギト。故に少し斜め後ろに押し込まれながら下がる形になる。

「「!?」」

その動きが硬質な音と共に止まる。
少し離れたところにいたクロノのみが何故止まったのかを明確に把握する。

「結界か」

クロノ自身既に何が起きても驚かないつもりだったが、やはりそれもまた驚くべき光景だった。

シャドームーンの剣が結界の一部に突き刺さっているのだ。

この結界は封鎖結界。封鎖結界とは、外から入るものは拒まず、絶対に外に出さないものである。その性質ゆえ、外部より内部からの圧力に対して強い。
そのうえ闇の書が作り上げた結界である。多くの蒐集対象から最上級のものを、膨大な魔力で行ったもので相違ないだろう。アースラでさえ外部からの破壊は無理としているのだ。
そんなものをあっさりと、しかも意図せずにやられたのだ。

(チャンス!)

まさしく千載一遇。アギトのセイバーは角度の関係から刺さらなかった。

身をかがめつつクルリと回転させ、裏拳ならぬ裏剣でシャドームーンの腰部を一閃する。
が、やはりその体には傷一つつかない。

逆に剣を手放したシャドームーンの左拳のフックが直撃し、道路を右から左へ弾き飛ばされる。

アギトがビルに激突するのを見届けた後、シャドームーンが煩わしげに剣を抜き、その場に拳をたたきつける。

ピシッ

そんなに大きな音ではなかった。実際に聞いたクロノはそんな八つ当たりのような行動で結界がどうこうなるとは思っていない。
封鎖結界にはもう一つの特性があるからだ。それは核を破壊しなければ何度でも再生すること。核というのはその魔法の起点である。結界破壊の特性が付与された魔法があれば話は別だが。

この時、もしクロノがシャドームーンが虚数空間から出てくる光景を見ていればまったく違う考えに基づき次の行動が取れただろう。しかし、

「なっ!?」

今度こそクロノが驚愕の声をあげる。亀裂が連鎖的に結界全体に広がり始めたのだ。

さらに真一文字に一閃。耳を劈くような音とともに結界が消え、黒い光の粒子になる。同時に、破壊されていたビルなども元の時間軸のあるべき姿、破壊前の形に戻る。

このとき、一つの幸運と二つの不幸があった。
幸運なことは、既に深夜に近いかったため広い道路でも車の通りはなく、人もほとんどいないこと。
不幸なことは、人がゼロでなかったこと。大学生ぐらいの青年と女性がいた。
その上に最後の結界を叩ききった一閃の余波で崩れてきたビルの残骸が降り注ごうとしていたところ。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「くそっ!!」

迫る残骸に恐怖の声があがる。
咄嗟にクロノが反応。すぐさま移動し、まだダウンロード途中のデュランダルで落ちてくる瓦礫を弾く。本来ならデバイスを通して行う肉体強化の魔法を自力で限界まで使用。恐ろしく燃費が悪いうえに無理な強化で腕の筋肉が悲鳴を上げる。いつもの高速移動魔法ではなく強化で移動したため、両足も震えている。

さらに追い討ちをかけるように、今までで一番巨大なものが落下してくる。その大きさから重さは数十tに迫ろうとするもの。
無理。いくら魔法で強化していてもこれは弾けない。クロノの中で冷静な部分が告げる絶望的な回答。
避けることも考えたが、決してガタイが良いといえないクロノでは自分より大きな人間2人を運ぶ時間はない。何より足にキテいて動けない。
ならせめて、と青年と女性の襟首を掴み、全員を包むプロテクションを発動。ユーノだったら全員守れたか、などと考える。デバイスなしならユーノはアースラ内で最速、最硬である。

瓦礫が目前に迫った時、新たな影が間に入る。
アギトだ。両脇のスイッチを押し、超越肉体の金グランドフォームへと変わり、落ちてくる瓦礫を受け止める。

「・・・お、も、い…早、く、その人達を・・・」
「わかっ、!!後ろ!!」

首だけで振り向いたアギトの目に、投擲のように剣を構えるシャドームーンが映る。
避けられない。重い残骸が有るうえ、クロノと一般人がいる。

「やば」

シャドームーンから剣が放たれる。剣は空気を切り裂き、雷光を生みながら、赤い軌跡を残す。そして、






瓦礫が崩れ落ちた。








シャドームーンは目をきり、反対側の道路上に移す。そこにはまるで青い光が生き物のように集まっていた。その光が段々と凝縮、形を成していく。

シャドームーンの目には映っていた。己の投げた剣が目標に突き刺さる瞬間、あの青い光がそこにいる全ての命を取り込んでいく様子を。つまり、

「げほっ、ごほっ!!」

光が急に咳き込みだし、そこにクロノが現れる。続いてアギト、一般人2人、最後に青、からすぐに黒く変わった戦士が現れる。

感情を持たないはずのシャドームーンの中で何かが揺れた。まるで待ちわびたかのようにその戦士を見つめる。

「ひっ」
「逃げろ」
「へっ?あ、はい!」

一般人を逃がし、今度は膝をついたアギトのほうに顔を向ける。

「ごめん。待たせた」
「遅すぎるよ。危なく、勝っちゃうところだったんだから」
「・・・ヒーローは遅れてくるもんだろ。後は何とかするから退いてろ。さっさと終わらせて皆でパーティーだ」

RXが両手を打ち合わせ、シャドームーンに向き直る。その横にすぐさま立ち上がったアギトが並んで構える。

「あ?いや、だから、退いていいって」
「私はまだ、闘える。決めたから、仮面ライダーとして生きるって」

行動に面を食らうRXに対し、アギトがしっかりとした口調で告げる。

「覚悟を決めろって前に言ってたよね。私は仮面ライダーとして生きて、誰かの居場所を守るために闘う!・・・今は、貴方の居場所を守りたい。守らせてください・・・」

聞き終わってから、RXが頭をかきながらため息一つ。

「・・・・・・ハァ。俺が子供が闘うこと、嫌いなの知ってるよな」
「うん」
「そんでもって、情にせよ、策にせよ子供を闘わせる大人はもっと嫌いなのも知ってるよな」
「うん。でも、覚悟を持って、戦場に立ったら戦士だから」

暗に子供をなめるな、と言っているのだろう。もう一度ため息を吐きながらRXが後ろを指差す。ちょうどそこに宇宙から帰還したライドロンが着地する。

「まずは少し休んでろ。・・・ライドロンの中にまだ太陽の力が残っている。もしかしたら奇跡が起こる、かも」
「うん!」

アギトがライドロンに乗り込む。


車内には光が充満していた。それはBLACKが進化した時に取り込んだ光、そして、

「これは、キングストーンの欠片…」

光と破片がアギトに集まって行く。


そして今度こそRXがシャドームーンに飛びかかった。
飛び上がったRXから振り下ろされる拳と打ち上げるようなシャドームーンの拳がぶつかり合う。瞬間8発を打ち出すRXと16発のシャドームーンの拳。パワーはRXのほうが上なので拮抗する。
衝撃波が発生し、周りの建物の窓が一斉に割れていく。

右拳のぶつかり合い。すぐさまRXが左フックを放つがそれも左で受け止められる。
ガラ空きのRXのわき腹をシャドームーンが剣で凪ごうとするが、強引に前に出たRXの体で受け止められ、右腕をからめとられる。

「ぐっ…! おい、馬鹿!」

RXの目にシャドームーンの後ろに回り込み、一閃しようとするクロノの姿が映る。どうやら魔法のダウンロードは終わったようだ。
デュランダルから伸びた魔法刃による一閃。が、それも甲高い音とともにシャドームーンの左手で阻まれる。

違和感。
クロノが感じた強烈な違和感。何故この敵は自分の攻撃を腕を使ってガードしているのか?
さっきは攻撃しても見向きもされることなく止められた。その時とはデバイスが変わってはいるが威力がそこまで上がったわけではない。
何より目前に対する仮面ライダーが自由になった右でパンチを放っている。この仮面ライダーの実力は分からないし、相手の右腕を抱えながらの体勢でのパンチ。とはいえ、経験上、自分の攻撃より弱いなどとは考えづらい。

(なにかある!それを見極めれば勝機はある!)

ちなみに、いくらRXでもクロノの考えが正確に読めるわけでは無い。当然、

「おい、管理局の!邪魔だ、さっさと退け!」

などと一方から見ると暴言、もう一方から見ると正直な意見を吐く。RXから見るとライダー以外が虚数空間を空けまくる自分の近くで闘っているのは邪魔なのだ。いつ墜ちるか気が気ではない。

「うるさい、こっちにだって意地があるんだ!大体、子供は戦わせないんじゃなかったのか!?あと、僕の名はクロノ・ハラオウンだ!」
「ああ、そうだ!だから当面の目標はアリシアが復帰する前にコイツを倒す!!ということで執務官。結界張っとけよっと!!」

クロノを殴ろうとしていたシャドームーンをRXが横に押し、両者頭からビルに突っ込んでいく。そのまま立て続けに響く破砕音。

「ああもう、今まで同様無茶苦茶だ!封鎖結界!」

クロノの指先から放射状に結界が展開される。街全体、とまではいかないが、それでもかなりの範囲と展開速度である。

「やるもんだな、デュランダル」
≪Yes、Boss≫

クロノの感嘆の声にデュランダルの硬い声が返す。
クロノはストレージデバイスであるS2Uに比べ、若干の自己判断能力を持ち対闇の書用に作られたデュランダルでは、処理速度が低下すると考えていた。
しかし、使ってみればS2Uをはるかに超える処理速度。

それもそのはず。実はこのデュランダル、対闇の書用凍結魔法特化デバイスではなく、グレアムとリーゼ姉妹が現時点での最新の技術と機能をつぎ込んだ切り札であり、現存するロストロギア級のデバイスをのぞけば、最高最速のデバイスである。その処理速度は、データの呼び出す時間を考慮しなければならない闇の書を越える。

クロノが目を上げた瞬間、壁を突き破って黒い影と緑を纏った銀が転がり出てくる。
RXとシャドームーンである。
素早く体勢を立て直した両者は、今度は足を止めず、空中に軌跡を残しながらぶつかり合う。クロノの目でどうにか追える程度の速度である。

(これならいけるか?)

今、一歩を踏み出そうとしたクロノ。
しかし、それを自重させるとんでもない光景が目に入る。

それは二人の開けた穴の向こう。
本来ならビルの内部。その向こうに内部が見えるはずだった。
しかし、何もなかった。見渡す限りの更地となっていた。見事に壁だけ残っているのは偶然か、それともRXがコントロールしたのか。

(ッ!訂正、今まで以上に無茶苦茶だ)

驚くべきはコレ自体がクロノの眼が離れたホンの数秒の間に行われたこと。

不用意に近づくのは危険。そのクロノの判断は正しい。
シャドームーンの進化前のときでさえ、人里は慣れた場所でしか闘っていなかったのだ。この二人の闘いに介入するのは命がけになる。

そして、その結果、クロノはしっかりと闘いの変化が見て取れた。
押しているのはシャドームーン。RXの拳はことごとく阻まれ、シャドームーンは的確に反撃する。
読まれている。そんな印象をクロノは受けた。

実際、BLACKのときのような純粋な性能差ではない。
シャドームーンは知っているのだ。RXの全てを。
シャドームーンの記憶の中には、かつての観察によってRXの全てが蓄積されている。


線となっていた影と音が点になる。
両者の戦闘がスピード重視からパワー重視へと変化したのだ。
拳のぶつかる衝撃波がクロノを後ずらせる。


音が止まる。

「…ぐっ、おおおおおおお!!」

RXが防がれた拳を無理矢理押し込み、シャドームーンを遠くに押しやる。
当然ダメージの無いシャドームーンは体勢を崩すことなく数十mさきにガシャと音で降りる。

RXの口から長い息が吐き出される。
回復が遅い。
日の光どころか月光さえ届かない。街灯や不自然な結界内の光だけでは回復速度は上がらない。

「おい、攻撃が読まれてるように見えるんだが・・・」
「ああ、前のデータが残ってるんだろ。時間がないのになぁ」
「こう、なんて言うか、そう必殺技!今までのライダーみたいな必殺技はないのか?!」
「無いこともないが、あまり使いたくない・・・しょうがない、試してみるか」

近くに来たクロノに静かに返すRX。

先ほど同様RXが長い息をつく。ただし、完全に下を向き、まるで体内の何か黒いものを吐き出すかの様に。
あまりのおぞましさに隣で見ていたクロノの背に怖気が走る。今までの仮面ライダーとは比べ物にならない、生粋の犯罪者の香り。それも世界を壊しかねないレベルで犯罪を行う、絶望と地獄を見たものが発するものがRXの体から流れ始めたのだ。

「お、おい」
「・・・(ボソ、ボソ)・・・いいよな、影の王子、シャドームーンとか、かっこいいよなぁ・・・」

呼び止めるクロノを無視して、なにやらボソボソつぶやきながらRXがシャドームーンに近づいていく。今までのように飛び掛るわけではない。本当にただ下を見たまま歩いていく。

眼前に来た瞬間、シャドームーンが一閃。
RXはすばやく腰を折り避けながら、がら空きの脇腹へ蹴りを叩き込む。
よろけるシャドームーンに続けざまにRXの蹴りが3発入る。
後ずさるシャドームーンが、すぐに反撃の一閃を放つ。が、今度はRXがクルリと回転。後ろ回し蹴りがシャドームーンを吹き飛ばす。

(なんだ?!戦闘スタイルがガラッと変わった?)

RXがベルトの前、何も無いところでまるで何かレバーを弾くように手を動かす。

「・・・ライダー、ジャンプ」

RXの最高60mのジャンプ力で飛び上がり、ビルの壁面にくっつく。
さらにもう一度、ベルトの前で手を動かす。

「ライダー、キック・・・」

ビル側面にくっきりと足跡を残し、黒い弾丸と化したRXの蹴りがシャドームーンに入る。そのまま反動で上に跳ね上がり、何度も蹴りを放っていく。
その間、シャドームーンはガードすることさえ出来ない。


戦闘には個々のパターンが存在する。それは癖のようなもので、例えば、最初にパンチを放つ者、蹴りから入る者、パンチ後に蹴りに繋げる者やパンチのコンビネーションに移項する者など個々人によってさまざまである。
コレは戦闘において、特に格闘においては攻撃力に直接繋がる体重移動やタイミングなどの要因が、日々の鍛錬の延長に存在し、その鍛錬の癖がそのまま出るためである。
シャドームーンがRXに対し優位に立っていたのは、以前の闘いにおいてRXの戦闘パターンを解析していたからである。
パターンがあれば読まれやすい。当然である。逆に言えば、さまざまな攻撃展開を持つものがいわゆる達人であり、それを作るだけの鍛錬を重ねたからこそ達人であるといえる。

これはクロノのあずかり知らぬことだが、現在RXの中には達人とは行かなくとも戦闘巧者といえる存在が40人近く存在している。つまり、戦闘のパターンだけなら達人をはるかに超えるものになっているのだ。

しいて弱点といえば、

「うわっ!!ととっ・・同じ飛蝗だから何とかなるかと思ったんだがな」

いま使った要素、キックホッパーの力とRXの力の差を考えていないことである。
まだ正確に使うには互いの要素の混ぜ合わせがうまくいっていない。その結果、RXはバランスを崩し転がり落ちた。

「!!まずい!」

RXに対し、シャドームーンが光弾を放つ体勢に入っている。
避けられる。が、射線上にクロノとライドロンが存在する。
クロノはすぐさま横に跳び、回避。がライドロンは動かない。ライドロンは大型の上にパワーがすさまじい。急発進する範囲もなければ、転移のエネルギーも今はない。

「はあぁぁぁ」

RXが目の前で手を交差させ気合を入れる。


爆発。

そのすさまじい爆風に横に跳んだクロノは吹き飛ばされ、ゴロゴロ転がった末に壁に激突する。逆さまの視界。そんな中でクロノの眼に映ったのは爆炎の中途切れ途切れに見える、

(黄色?)

黄色い人影。

しかし、そのことを深く考える間も無く、事態は動く。


爆炎をかき分け、上空に高々と飛び上がる赤と銀の人影。大上段に振り上げられた二本の剣がシャドームーンに迫る。
シャドームーンは剣を横にして受けようとする。

「ボルテックシューター!!」

煙の中から鋭い言葉とともにレーザーの様な光線が飛び出す。
上からの攻撃に備えていたシャドームーンはその光線をくらい、火花を散らしながら吹き飛ばされる。
追いかけるように人影が切りつけるが、バリアで止まる。そこにさらに煙から出てきたRXが剣の背に蹴りを叩き込むシャドームーンを後ろに追いやる。

二人の仮面ライダーが並び立つ。

「これは…」
「早かったな。アリシア、いや仮面ライダーアギト。それこそ太陽の力を借りたアギト最強の力、シャイニングフォームだ」

己の変化に戸惑う人影、アギトにRXが言う。
RXにはアギトが進化する確信はなかったが、可能性を感じていた。
こんな言葉が存在する。
『仮面ライダーは皆兄弟。』
仮面ライダーの誕生、成長、そして進化は他の仮面ライダーに多大な影響をもたらす。自分の進化がどのような形であれ、すでにライダーになっていたアリシアに影響を与えるハズ。そんな予感はしていた。
さすがにトリニティやバーニングを飛び越えシャイニングになったのは予想外だったが。


(同時攻撃…別方向から、効いた…同じ方向から、押しのけたのみ……まさか?!しかし、それなら今までの矛盾も説明できる!!)

ここまで観察に徹していたクロノが遂にある結論を導く。すぐさま二人のライダーに話しかける。

「そこの二人、協力を要請したい」
「「何だ、まだいたの」か」

ほぼ同じ言葉を言われたクロノがずるっとこける。




「なるほど」
「それなら・・・直前まで闘ったBLACKの・・・」
「だから…ここを…こうして…こうすれば…」

クロノの説明が終わる前にシャドームーンの攻撃が飛んでくる。三人が三方に跳び退る。

「正直、執務官の必要性が感じないが…まぁいい。それならまずは俺からだ!!リボルケイン!!」

RXのベルトの左の風車からまばゆい光を放つ剣のようなものが引き抜かれる。
リボルケインとシャドームーンの剣が打ち合い、すさまじい音を放つ。

「「げっ」」
「あっ、やっぱり。だから使いたくなかったんだ」

リボルケインの刀身から光とともにジリジリと虚数空間が広がっていく。どうやら、リボルケインの力が強すぎるようだ。当然である。なにせこの剣、正確には杖だが、は全知全能たるクライシス皇帝すら一撃で倒す力を持っているのだ。RX最強の技もこの剣を持って行う。

「ちっ!さっさと決めるぞ」

リボルケインが押される力を受け流すように手の中で回転。逆手で持ったRXが手が先に来る斬撃、かつて仮面ライダーカイザが得意とした振り方で切りつける。
攻撃そのものはバリアを抜けない。だが動きの止まったシャドームーンの脇を抜け、後ろから右手をからめ捕り、わきの下からリボルゲインを押し上げる。
シャドームーンもすぐさま外そうと動くが、

「次は私だよ」

今度はアギトが動く。
左手に持ち替えられた剣をシャイニングカリバーで受け止める。そしてRX同様右手をからめ捕り、脇からシャイニングカリバーを切り上げる。

「いくぞ、アリシア」
「はいっ、はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

両方向から同時にシャドームーンの体を締め上げる。剣からも光が迸る。
仮面ライダー二人がかりの締め上げ。本来なら、いくらシャドームーンといえども両腕がもがれてもおかしくは無い。が、もげないどころか折れもしない。それどころか徐々に腕が元に戻りだす。

「グッ、ぐぐっ・・・割と、きつい」
(チッ、これ以上力を込めたらリボルクラッシュが発動するか・・・癪だが執務官に任せるしかないか)

当の執務官、クロノはシャドームーンの前方でデュランダルを構え集中していた。デュランダルの先には氷で作られたジョイント、さらに先にアギトのシャイニングカリバーが付いている。

クロノが気づいたシャドームーンの特性。それは、

『流動性を持った防御結界?』
『そうだ。そう考えれば全てに説明がつく。1対1ではほぼ抜けない。1対多でも一点に集中した攻撃ではダメージが通らない。逆に分散すれば通った。分散して通るということは自分の意志で一箇所に集中できる、他の場所の力は弱まるということだ』
『なるほど。直前まで闘っていたBLACKのバイタルチャージを模したのか。ということは、あの攻撃力の上昇もそれが関与してるな』

だからこそのこの作戦。
両サイドから仮面ライダー二人で締め上げる。そうすれば力をそちらに振り分けるしかない。
そこをアギトから借りたシャイニングカリバーで打ち抜く。デュランダルの先についているのはあまりのエネルギーで、最初に受け取ったときにクロノの右手が火傷したためである。今も氷で作ったジョイントがジュウジュウ音をたてている。

「一点、集中っ!!」

腰を落とし、砲撃の準備に入る。
使うのは最も慣れ親しんだ炎熱系。
所持していないスキル、収束を無理矢理加える。

「ブレイズキャノン!!」

杖の先から放たれた砲撃。が、そこにはシャイニングカリバーとのジョイントがある。
ただでさえ、溶けかけていたジョイント部分にひびが入り、ついには吹き飛ぶ。
同時についていたシャイニングカリバーは弾丸と化し、シャドームーンに突き刺さ、





らなかった

シャイニングカリバーが直前の緑の結界で止まっている。

「まだだ、ブレイクインパルス!」

今度はデュランダルを高速振動させ、それをシャイニングカリバーの柄に叩き込む。
鋭い振動がデュランダルからシャイニングカリバーに伝わり、徐々に結界内へ押し込まれる。が、

クロノの体が消えた。
否。シャドームーンの蹴りによって横のビルに突っ込んでいった。両腕をつかまれていて全力ではないが、それでもクロノの目にとまらない速度で蹴ることぐらいはできる。

そのままシャドームーンは回転するように2人の仮面ライダーを振り回し前方に放り投げる。

「うわっ、だが、狙い通り!!」
「ハッ!!」

二人同時に飛ばされながら手に持った得物を投げつける。狙い誤らず、今だ振動を続けるシャイニングカリバーの元へ。

一瞬の間。

硬質な音とともに緑のバリアが弾け、火花を散らしながらシャドームーンが吹き飛ばされる。

「アリシア、決めるぞ」
「はい!ハアァァァァァァァァァ・・・」

アギトが手を広げ、腰を落としながら左腰のほうへ運ぶ。同時に足元に青白いアギトの紋章が発現する。

「トウゥ!!」

RXは一度地面を左手で叩き、60mの高さまで飛び上がる。両足にハイブリットエネルギーが集中。そのまま螺旋回転をしながら蹴りの体勢に入る。

「てぇりゃあぁぁぁぁ!!」

アギトが飛び上がると同時に紋章が前方に移動。その紋章を突き破り、さらに加速をつけアギトも必殺の蹴りに入る。

己に迫る圧倒的な脅威。それを感じ取ったシャドームーンが避けようとする。が、動けない。
足元を見ると地面に氷で縛り付けられていた。

「アイシクル、バインド・・・」

ビルの中から、わき腹を押さえ頭から血を流し、それでも闘志のこもる目がのぞく。クロノのバインドが発動していた。

もちろんシャドームーンにとってクロノのバインドなど問題にはならない。一瞬あれば抜けられる。しかし、今はその一瞬が命取りだった。

「よくやった執務官!コレで決まりだ!!」




「ライダァー・・・」
「ダブル・・・」
「キィィィィィック!!!!!!!!!!」










三人の仮面ライダーが等間隔に存在する。

1人はRX。シャドームーンに向き合う形で、最初に飛び上がったときのように右手を地面に置き、腰を落としている。
2人目はアギト。半身だけをシャドームーンに向け、RX同様飛び上がる直前のポーズをとっている。足元は引きずったように火のラインが出来ている。
最後はシャドームーン。2人にはさまれるような形で立っている。その胸はねじれた様にへこみ、腰の辺りは何かに貫通されたように左半分が失われていた。


RXがゆっくりと立ち上がり、シャドームーンに背を向ける。
アギトがゆっくりと上半身を回し、完全に背を向ける。



そして、立ち続けるのが不思議なくらいだったシャドームーンの体が、
今、ようやく、倒れ付し、






爆発。









まだ終わらない。
爆発の中、光が飛び去る。
魔力を感じ、クロノは怪我をおして追跡する。

行くのは海上。最終決戦の地。


RXもすぐさま追おうとするが倒れこむアギトの姿で急停止。すぐさま駆け寄る。アギトの変身がとけ、アリシアに戻る。

「アリシア!」
「だ、大丈夫。ちょっと疲れただけ。それより、これ」
「ん・・・げっ」

アリシアが右手に持っていたもの。緑の石。紛れもなくキングストーン月の石、



の半分。

「ごめんなさい」
「いや、うん、たぶん、きっと大丈夫、なはず」

すぐさまベルトにあて、体内に入れる。同時にRXの変身をとき、BLACKに変わる。まだ時間までは少し有るが変身しっぱなしよりはマシであろうと考えたからだ。

「アリシア、待ってろ。すぐに終わりにしてくるから」
「待って、そっちじゃない」

駆け出そうとするRXを止め、アリシアが一方を指差す。

「お兄ちゃんが行くべきは」

指差すほう。そこの先にあるのは・・・






あとがき

どうも、リアルクラスチェンジでまったく書けなかった作者のGです。
もう以前の投降から4ヶ月か。ながいな。もう見てくれる人はいないんだろうなぁ。

さて、今回言うことがほとんどないです。しいて言うなら、Asラストで初代リインフォースを助けるか否か。

次回、RXで無双する。
その次、エピローグやってAs終わり。長かった

追記:言われて即修正(おおGよ、リボルケインの名を間違えるとは情けない)




[7853] As第14話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2010/08/15 10:36

「全力全開、スターライト」
「雷光一閃、プラズマザンバー」
「響け終焉の笛、ラグナロク」

「ブレイカァーーーー!!」

同時に振り下ろされる杖。そこから発せられた魔法は3方向から闇の書の防衛プログラムに迫り、
爆発。
プログラムは断末魔すらあげることを許されず光に包まれる。

「すげぇ・・・」

ヴィータの呟きがその凄まじさを物語る。

あまりに強大な一撃。
本来なら物語の幕引き。
後は核を転送、アルカンシェルの一撃を加えるのみで終わるはずだった。

露出した核を転送すべく、ユーノとアルフ、リニス、シャマルが魔法陣を構築する。
明滅する核。
まるで虫を呼び寄せる誘蛾灯のようである。

そこにとてつもない速度で接近する光とそれを追う一人の魔導師。

光はキングストーンを伴った闇の書の魔力。シャドームーンの殻を脱ぎ去った力の塊は、本来ならありえない、身をもたぬものの強みともいえる軌道を描き接近する。

魔導師は管理局執務官。クロノハラオウン。肋骨を折られ、頭部の裂傷をおして、己の最速の速度で追跡する。が、放つ魔弾は全て避けられ、曲線軌道をとる相手と一直線に飛んでいるはずの自分の距離を縮めることが出来ない。


ついに光は闇の書のコア直前まで接近する。

最初に気づいたのはシグナムとヴィータ。

「そいつをコアに近づけるな!!」

クロノの声に反応し、それぞれの得物で斬り、または殴りかかる。がやはり止まらない。
全てを回避し、コアに融合。

「転送、するしかない!」

融合の結果、一気に魔力が膨張した。それを感じ取ったユーノの叫び。残り三人が一斉に転送の魔法陣へ魔力を送り込む。魔法陣が翡翠、緑、オレンジ、黄色に光り輝き、

「転送、開始!!」

コアを天高く跳ばす。
こうなってしまえばもうここにいる者は何も出来ない。
クロノが目の前にモニターを展開し、全員が集まってくる。

「クロノ、その怪我は」
「問題ない!それよりも」
「問題ないわけないです。頭の傷は直しづらいんですからね」

フェイトの心配に対し、額から流れる血を拭うだけで答えるクロノ。その反応にシャマルが強制的に回復魔法をかけていく。

シャマルの言うとおり頭部への回復魔法は難しい。なぜなら頭には神経の中枢たる脳が存在するためである。故に回復の際、少しのミスで脳を圧迫、障害を残す等の失敗が絶えない。



衛星軌道上。

アースラ艦内は異様な緊張感に包まれている。
本来、無かった筈のイレギュラー。既にクロノからの連絡によりコアに何らかの変化があったことはわかっている。
しかし、つい先程まで戦っていた子供たちの姿を見ていたのだ。命を賭け、全力で、限界まで戦った子供たちの姿を。
ここまで彼女らはほぼ作戦を成功させている。自分達がそれを崩すわけにはいけない。

アルカンシェルのバレルが展開される。

「ファイアリングロックシステム、オープン」

バレルに環状魔法陣が展開され、魔力が収束。
艦長であるリンディの言葉とともに、箱状のトリガーが目の前に来る。
持っていた始動キー。それを箱状トリガーに差し込む。


そして、ついに闇の書のコアが射線上に現れる。
驚くべきことに再生はほとんど進んでいない。不気味な緑の光で明滅しているだけだった。


リンディは一度目を瞑り、心を落ち着かせ目を見開く。

「アルカンシェル、発射!!」

引かれるトリガー。
撃ち出される弾は環状魔法陣で加速。
コアに迫る。

わずか数秒。

コアに弾が当たる瞬間、コアがより一層の光を放つ。

『『避けてぇーーーーーー!!!!!』』

言葉を発したのは通信先のなのはとフェイト。
その言葉を聞いた瞬間、アースラ乗組員全員の背が粟立つ。

同じ速度ではない。
だが、アルカンシェルの弾がこちらに迫る。
跳ね返された。
脳が理解するより早くリンディの指示が飛ぶ。

「回避!面舵!!」
「間に合いません!!」


次元艦アースラが衝撃に包まれた。




最終話 As

海上

誰も言葉を出すことが出来ない。ただ目の前で砂嵐になった画面を見ている。
終わった。
最悪の結末。
そこに達した瞬間をその目で見てしまったのだ。

アースラ乗組員の命、それだけでなく闇の書の侵食によって世界そのものが終わる。
すでに宇宙に存在するコアに攻撃する方法は無い。
ただ何もせず死を待つのみ。

といってもそれを明確に今考えられるのは闇の書の所持者、八神家の人間のみ。
アースラ組は衝撃を心が受け止め切れていない。


故に頭上でカットバックドロップターンをして突っ込んでくるトルネイダーに誰一人気付かなかった。
全員の集まっているところをまったく他者に触れず、且つフェイトのみを掻っ攫っていく。
まさに神業である。

「・・・フェイトちゃ「く・る・な」ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

飛び出すなのはが空中でコケる。正確には右足を中心に立て回転しながら逆方向に飛んでいく。

「なんだてめぇ、えええええぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やっぱり見えてるもののほうが止めやすいなぁ」

今度はグラーフアイゼンを担ぎ上げ突っ込んでくるヴィータが、アイゼンを中心に回転。同じく後ろにふっとんで行く。

「・・・アリシア・テスタロッサか」

この状況でフェイトを除き、冷静に相手の正体を言い当てることが出来たのは、つい先ほどまで一緒に闘っていたクロノだけだった。と言っても、

「う~ん、フェイト久しぶり」
「ちょ、アリシア、恥ずかしいよ」
「うん、やっぱり、お姉ちゃんって呼んで欲しいな」

目の前で恥ずかしがる妹に頬ずりしているのが、先ほどまで死闘を繰り広げていた者と同一人物であるとは当事者のクロノですら信じられなかった。

「で、そこのひと」
「クロノ・ハラオウンだ」
「そっちの作戦は終わった?」

場が凍りつく。
全員が場の急激な変化で目を逸らしていた現実を突きつけられる。

「・・・それは」
「もう遅いかもしれないけど、さっさとやらないとお兄ちゃんが全部終わらせちゃうよ?もう戦艦に突撃しちゃったし」
「はっ?」

クロノが間抜けな声を上げると同時に、砂嵐状態だった画面が回復しだす。そこには今だ健在なアースラブリッジが映っていた。


『くっ、エイミィ、状況を』
『状況、確認します。ッ!右舷損傷、密閉フィールドが作動!全局員へ、すぐに自分の周りの人を確認してください。誰か放り出された人が『いねぇよ』・・・!!。通信、いやハッキング。仮面ライダーからのハッキングです!方向は・・・12時』

ブリッジの硝子越しに赤い車が見える。
その間凄まじい速度で報告が挙がっていく。

1つ。点呼を終え、ライダーの言うとおり誰も艦外に放り出されていないこと。
1つ。右舷はまるで何かが貫通したような痕があること。
1つ。艦は衝撃によってバレルロール気味に回転。アルカンシェルを回避したこと。
1つ。右舷の損傷痕はちょうど乗用車程度のものということ。

リンディの頬をいやな汗が伝う。
報告が正しいならば、現状から見るならば、艦を突き破ったのは仮面ライダーの赤い車だと考えられる。
それがどれほど非常識なことか。
アースラは次元航行艦である。それ故、その外壁はかなりの強度をほこる。さらにアルカンシェル発射の際は、衝撃に備え防御フィールドも張られる。それを貫いたということは赤い車のほうが強度が勝っていたことを意味する。
ここは宇宙。無重力地帯だが、アルカンシェルを撃つために姿勢制御で艦の位置を固定していた。それがバレルロールのように吹き飛ばされたのだ。艦の出力以上の衝撃を生む動力を積んでいることになる。
もう立派な兵器のレベルである。

『地球の近くでうんなもんぶっ放すなよ』
『そんなことより、そのくる『そんなこと・・・クロノ・ハラオウン。借りは返したぞ』ちょっと』
『ハッキング途絶えました』


海上では全員の目線がクロノに向く。

「・・・借り?」
「借り・・・?」

クロノ自身も首をひねる。悩んだ挙句、目線は未だフェイトとじゃれあうアリシアに向く。

「・・・正直ね、私とお兄ちゃんは同じ意見だったと思う。さっきの闘いで、邪魔だな、って思ってた。でも頑張ってたし、何かそこからお兄ちゃんは昔を思い出したみたいだし」
「昔?」
「そりゃあ何十年も闘ってれば生身の戦友もいたんじゃない?詳しくはきいてないけど。滝とグレゴリオ爺さんって言ってたかな。50mぐらいの化け物に生身で闘いを挑んだ人たち」

RXがこの二人とクロノを重ねたのは、使った戦法が似通っていたためであるが、そんなことを知らない一同はクロノを見ながら唖然とする。
コイツはそんな超人たちと同一視されるようなことをやったのか。
一番驚いているのはクロノ自身だが。

「なんだかんだいって人が好きなんだよ。無茶して、頑張って、勇気を振りしぼる人間が。すこしぐらい認められたんじゃない?」
「・・・そうか」
「まあ、それは置いといて・・・」

アリシアがピッと空の一点を指差す。煌々と闇夜を照らす優しい光。空にぽっかり浮かぶ金色を。


ほぼ同時刻。
ライドロンが急発進し、闇の書の核に突撃。一気に運んでいく。

「『決戦の地は』」




「『月だ』」







月に降り立つと同時にライドロンが急制動。闇の書の核が慣性で放り出される。
そのライドロンから降りてきたのは、

「BLACKだ」
「・・・違う」

仮面ライダーBLACK。フェイトは答え、クロノはつぶやく。
BLACKが何か言っているようだが、残念ながら宇宙ゆえ、音声までは拾えない。

「エイミィ、声は拾えないか?」
『ごめん、ちょっと待って。艦の復旧が』


BLACKが高々と右手を天空に伸ばす。その先にあるのは太陽。まるでその光を受け、目の前の敵を切るかのように手を下ろしていく。素早く右手を腰元、左手を右横に出し、今度は横に切る。
その瞬間、BLACKの全身をハイブリットエネルギーが包み込む。ベルトのエナジーリアクターがぶれ、サンライザーに変化する。
サンバスクが七色の光を放った。
その身は新たな姿へ変わる。

「「「変わった!!?」」」
『音声、拾えます』

『俺は太陽の子』

胸の前でXを描き、力強く構える。

『仮面ライダー、BLACKッ、RXッ!!』




核から腕が伸びる。機械的な、本来なら銀の腕が真っ黒に変色している。
大地を掻き毟るように蠢いた手が2本に。
胴体が現れ、ベルトが形成される。
胴体の首がつく部分が盛り上がり、闇を突き破るかのように頭がでてくる。

本来ないはずの器官、口から、やはりないはずの空気を切り裂く大音量。

『ああアアアああアァァァぁぁぁぁぁァァァァァぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!』

『・・・やはり、シャドームーンか。しかし、あの姿で女性の声を出されると凄い違和感が・・・そうは思わないか、キングストーン』

コンコンと、ベルトを指で弾く。返答は無い。

完成に近づくシャドームーン。
それにあわせRXの顔が徐々に上を向く。

『お、おお、おおお、おおおぉぉぉぉ・・・』






『「「「「「「「「「「でっかぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」」」」』

全長50m強。たしかにシャドームーンである。闇の書の闇の上部にくっついているが。

なのは達が驚いたのはその大きさ。先ほどまで闘っていた闇の書の闇をはるかに越えている。

シャドームーンの右腕から緑の雷撃が、地面を貫く触手からレーザーが降り注ぐ。

『ライドロン!、ぐおっ』

腕力で無理矢理ライドロンを攻撃範囲外まで放り投げるRX。自分も何とか回避しようと跳ぶが、避けきれず爆風を背に宙を舞う。

すぐさま体勢を立て直し、跳びあがるRX。
60m級のジャンプそのままシャドームーンを殴りつける。
シャドームーンがわずかにぶれるが、まるで虫を叩き落すかのように触手がRXを叩く。

全身を打ち抜く衝撃が、RXを月の大地に叩きつけた。
そしてRXが立ち上がる前に、数十本の触手が絡み合い形成された一本の巨大な触手がそこを踏み潰す。

「あっ」
「潰された」
「こ、コレで終わり・・・」

画面の向こうでの戦闘を見て、なのは達がつぶやく。が、まったく考えが違うものがいた。

「・・・まだだ」
「え?」


クロノの言葉とともに、画面の向こうで粉塵に包まれ見えなかった触手が徐々に持ち上げられていく。
そこから表れたのは黒ではなく黄色の戦士。
RX以上に力強く、より機械のような動き。
その体は傷一つついていない。



「やはり、あれはさっきの・・・」
「アレは炎の王子、」

アリシアのつぶやきにあわせるように、シャドームーンの触手を押しのけ、名乗りを上げる。


『RX!ロボライダー!!・・・ボルティックシューター』

右手を右足の辺りへもっていく。すると、光が凝縮され銃が現れる。
RXのリボルケインが変形した、百発百中の光の銃ボルティックシューターである。
シャドームーンにむかい、ボルティックシューターから青白い光が連射される。
あまり大きくは無い光。だがその一発一発がとんでもない威力を秘めているのは巨大なシャドームーンを吹き飛ばしたことから見て取れる。

再度、シャドームーンが踏み潰すように触手を上げる。が、それをロボライダーは前転で回避。最も遠心力が乗った重い部分を避け、かた膝の状態で触手を受け止める。
ギリギリギリと触手の中へ指がめり込むほどのパワーで握る。

『う、う、う・・・』
「まさか・・・」

ブチッブチ・・・

シャドームーンの体が動くとともに、地面を貫いていた触手が切れ始める。

『うおりゃああああああぁぁぁぁぁぁ!』

ロボのパワーはRXの1.2倍。そのパワーで持ってシャドームーンの巨体が宙を舞う。
墜ちたところをさらにボルティックシューターのハードショットで追い討ちをかける。


「やったか!?」
「ちょ、シグナム、それフラグや」

フラグが成立したかどうかはともかく、爆炎の中から通常サイズになった黒いシャドームーンが飛び出し、大上段からロボに斬りかかる。
対して、ロボはすぐさまRXに戻り、変形したリボルケインで受け止める。
そのまま鍔迫り合いへ。

「!!また・・・」

リボルケインを中心にすこしずつ虚数空間が発生する。それを見たクロノが叫ぶが、それをアリシアが制す。

「大丈夫。何のために月を戦場にしたと思う?ハイ、そこの筋骨隆々な犬耳さん」

アリシアがピッとザフィーラをさす。ザフィーラは少し考えて、

「・・・地面があったほうが闘いやすいからか」

空を飛ばないものなら最も欲しいもの、地面だと解釈するのは間違いではない。ただしこの場合、相手にも当てはまるので、

「50点。闘いやすいのは事実だけど、出来れば地球と比べて。ハイ次、そこの未来で某機動戦士なあだ名で呼ばれそうな白い子」
「ふぇ・・・え~と、周りに巻き込むものがないから?」

これもある意味正しい。月は月面基地が存在するため完全とはいかないが、ほぼ無人であり、建物なども少ない。
ここでなら、クウガのライジング系が全力で暴れようが、問題にはならないだろう。

「80点。さぁ、最後にクロノ執務官。さっき闘っていたときとの決定的な違いは?」
「・・・周りを気にしない、結界の必要がない、押し広げられる虚数空間・・・封時結界か。外に影響を出さない・・・だめだ。結論的にはなのはと一緒になる」
「ヒント。虚数空間では虚と実が入れ替わるんだとよ」
「何だと!!・・・だとすれば、本質の逆転、そうか!!下手をすると通常空間内に虚数空間の穴が固定される」
「100点満点!!・・・まぁ、お兄ちゃんはそこまで考えてなかっただろうけど、漠然と危険性は分かってたみたいだし。幸い、ちょっとの穴なら気合で塞がるからね」
「き、気合って・・・」

封時結界内部ではどれほど物が破壊されても、結界が解ければ元に戻る。それは結界内部の空間が元々、転写されただけの別物であり、実物ではないことに起因する。
実物でない=消える。ただそれだけのこと。
しかし、そんな中で虚数空間が発生したらどうなるか?
1、結界を解いても壊れたものが直らない。これは虚と実の入れ替わりにより、転写元と転写物の関係が入れ替わり、ようはデータの上書きのような現象が起こるためである。
2、虚数空間が消えない。仮に1のようにならなくても、元に戻るとき虚数空間は認識されない。つまりそこには何も無い空間=虚数空間が残るのだ。
1と2が合わせると周りの魔法がその空間をそうあるものと認識し、虚数空間が固定される可能性がある。

ちなみに気合というのは冗談抜きで、先ほどリボルケインでわずかに出来た虚数空間をRXが物理的(?)に握りつぶしたことを言っている。

「まぁそれより、そろそろ事態が進展しそう」

言葉通り、画面の向こうで動きがあった。



高速で打ち合わされていた剣と杖。
その一方、光の杖が白い帯を引きながら回転をあげていく。打ち合う赤き剣は次第に防戦一方になっていく。
そしてついに、

『はっ!』

リボルケインがシャドームーンの左肘から先を斬り飛ばす。
飛ばされた腕は溶けるように月の大地にしみこみ、シャドームーンは血のような闇をその腕から滴らせる。

『その姿、やはりシルバーガードが精製できなくなっているためか』

シルバーガード。それはシャドームーンの身を守る鉄壁の鎧。その硬度はすさまじく、健在であればRXのリボルクラッシュであっても貫くことが出来ない代物である。

BLACKとシャドームーンはともに秘密結社ゴルゴムの改造人間である。が、他の怪人達とは一線を画す存在だ。
ゴルゴムの怪人を仮に第一形態とする。するとBLACKは1.5形態、シャドームーンは第二形態にあたる。両者の第一形態はバッタ怪人である。

シャドームーンとBLACKを明確に分けるものが各種武装、キングストーンのパワーとこのシルバーガードである。
つまり、キングストーンを半分とこのシルバーガードを失ったシャドームーンは、BLACKと同じ1.5形態。武装は存在するのでいわば1.7形態程度まで戦闘力がダウンしているのだ。

『AAAAAaaaaaaaAAAaaAああAAAあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『なにっ!しまっ!!』

地面から急に突き出した闇、おそらく先ほど染み込んだ腕、と腕から滴り落ちていた闇がまるで生き物のようにRXにまきつき拘束し、しかもエネルギーを電気に変換し流してくる。

動きが鈍った瞬間、シャドームーンの刃が迫る。

が、RXの体が青白い光に包まれ、シャドームーンの剣がその場を通過。
まるで手ごたえの無いことにたたらを踏むシャドームーンに青白い光、液体がぶつかり吹き飛ばす。
そして倒れるシャドームーンを背に液体が凝集。青い戦士へと姿を変える。

「また変わった!」
『・・・クロノ君、あれ、脊椎動物?ッていうか生き物?』
「?エイミィか。何を言っている?」
「解析結果が、あそこにあるのは100%水分だって。あは、ははは」

乾いた笑いが響いてくる。

地球の海月や管理世界のスライムなどほとんど体成分が水分である生物はいないわけではない。
それでもこの青い戦士は常軌を逸している。まるで水が意思を持っているようなものなのだから。

青い戦士が両手を開き腰を落とした構えを取る。

『RX!バイオライダー!!』

バイオライダー。RXをバッタ型改造人間、ロボをロボット型改造人間とするなら、バイオは体細胞組織変換型改造人間である。

『バイオアタック!』

それを象徴するのがこの液化攻撃である。空中でバイオライダーの肉体が青白い液体に変わり、シャドームーンを翻弄するかのように空中を駆け、体当たり。その体を吹き飛ばす。

先ほどのシャドームーンの攻撃を避けたのもこの液化によるものである。この液化は攻撃だけではなく、敵の攻撃の回避、拘束からの脱却、敵から物を奪ったり追跡することまで多種多様な局面に用いることが出来る。

すぐさま体勢を立て直したシャドームーンが雷撃を放つ。以前バイオは液化からの戻り際をコレによって攻撃されダメージを負っている。
が、今回はタイミングもパワーも足りない。
既に液化を解除したバイオライダー。その手にもつバイオブレードが雷撃を吸収、弾き返す。

それが直撃したシャドームーン。まるで外装がはがれるように表面が割れ、中から闇が零れる。

コレをチャンスと見たか、バイオがRXに戻り、必殺の構え、右手に持ったリボルケインの切っ先を相手に向け左手をそれに添える構えを取る。

『ハッ!!』

高々と飛び上がり、空中で3度構えを変えながら、着地と同時にシャドームーンを突き刺す。




『ア、ああぁ、ァぁ、ああああァあぁあぁあ嗚呼!!!』
『ぐっ、』

が、シャドームーンが動き、RXの肩に剣を突き立てる。
致命傷になりかねないほど突き刺さる剣。

ズンッ

それでもRXは倒れず、一歩を踏み出す。

『光輝く太陽と守るべき地球がある限り、俺は何度でも立ち上がる。・・・決着をつけるぞ、シャドームーン!!うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!』

さらに深く突き刺すようにシャドームーンごと前方に移動。
その勢いのままリボルケインがシャドームーンを貫く。

RXの手からリボルケインに高密度のハイブリットエネルギーが送り込まれ、リボルクラッシュの体勢に入る。
負けじとシャドームーンも剣にエネルギーを注入。
両者の傷より火花が散る。注ぎ込まれたエネルギーが体内で暴れまわっているのだ。
貫いたリボルケインの先から空間に一気に罅が入っていく。





今度こそ完全に両者の動きが止まった。

先に動いたのはシャドームーン。
剣を握っていた右手が離れ、ダラリと落ちる。

RXも動く。
リボルケインを引き抜き、振り向きざまに頭上で大きく一回転。右脇に振り下ろす。

振り下ろされるとほぼ同時にシャドームーンの体が崩れ落ち、辺りを爆風で包む。

「「「やったぁ!」」」

魔法少女三人が声を上げる。騎士達やアースラ乗組員も安どの表情に包まれる中、艦長のリンディ、執務官のクロノのみ苦い顔をしている。あるいはこの映像を見ているであろうグレアムやリーゼ姉妹も同じ顔をしているだろうか。

BLACKの三段変身。世界に罅を入れるほど力。それがどれほど危険か。
今は当面の危機が去った。危機があったからそこにその力が向かった。
ならばこの力はこれから自分達に向くことはないのか?
そう考えてしまう。

クロノはすぐさま首を振る。
先ほどともに闘い、彼自身自分の力の危険性を感じていた。むしろ忌避していたといってもいい態度を示した。
ならば、こちらから攻撃しなければ問題ないだろう。
そう結論付け、喜びを表現する仲間の輪に加わる。

が、そう考えられたクロノは異端だった。
残り4人はそう考えることは出来ず、深い疑心暗鬼に取り付かれる。




爆風の最中。
振り返ったRXの目の前に、二つの光がある。

片方はキングストーンの半分。
RXが掴み取りベルトの前にかざすと、消えるように吸い込まれる。

「キングストーン、起きろ。・・・駄目か」

コンコンとベルトを弾くが反応は無い。

そして、もう一方、闇の書の闇に目を向ける。
不気味に明滅しているが再生する気配は無い。

「・・・」

消滅させるには指で少し弾くだけでいい。
ただそれだけで後方に発生した世界の罅に入り、虚数空間に落ちていくだろう。
なんだかんだ言っても、作られる体は魔法によるもの。キングストーンの加護がなければ消滅する。

RXが手を出しかけ、止まる。

(闇、か・・・)

闇ならば消さなければいけないのか?
悪ならば消滅させられてもしかたがないのか?
力があってはいけないのか?

頭をガリガリ掻く。
そして、キングストーン同様闇の書の核をつかみ上げ、ベルトの前に掲げる。

「ああ、くそ。お前も来い!今更闇が一つぐらい問題ねぇだろ」

核もベルトの中に消えていく。
ただ一滴の闇を涙のように流しながら。

RXがライドロンに乗るとすぐさま転移し姿をくらます。




「じゃあね、フェイト。年始が終わったら、お母さんのお墓参りするから運がよかったらまた会えるよ」
「え?きゃっ!!」

トルネイダーがヒョイっとフェイトのみを放り出し、アリシアを乗せ飛び去る。

「待っ」
「はやて!!」

追いかけようとするフェイトの足を悲鳴が止める。
振り向けば騎士たちに支えられ、気をうしなったはやての姿。





物語の終幕。
闘いが終わり、戦士の休息。
その前に起こるのは悲劇か、あるいは・・・






あとがき
どうも、作者です。

あぁ、今回ツッコミが多そうだなぁ。なにせ前半はともかく、後半はニセシャドームーンをRXでフルボッコにする話だったから。
「俺のシャドームーンはこんなに弱くない!」とか感想が来るんだろうなぁ。
ちなみにBLACKからのRXへの変身は作者が本編で一度くらいやって欲しかったシチュエーションです。

まぁ、それ以前にRXは宇宙で戦闘できるのか?という疑問が出るだろうけど。OPの2番の歌詞で「宇宙に~」って歌ってるからいいかなと思ったのだが。

実際のところ、プロット時から最終決戦は月でと考えていました。シャドームーンは闇の書の闇につけるか、普通に巨大化するか、はたまたアナザーシャドームーンや白いRXにするか最後まで悩みましたが、キングストーン半分で強化されるのはおかしいだろうと思いこうなりました。

Asも残すところ後1話は。エピローグでまた会いましょう。


初代リィンはどうしたらいいですか?



[7853] As最終話
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:0cac10ea
Date: 2010/10/14 23:17

道路を歩いていた。
今日未明から降り始めた雪は既に積もり始め、後ろに足跡が残っていく。
子供なら喜ぶであろう新雪の踏み心地も気にかけず、雄介は手にもつ白い本に目線を注ぐ。

「・・・オルタレインショックバースト・・・重なり合う世界・・・門矢士・・・大ショッカー・・・鳴滝・・・結城丈二・・・平行世界の王・・・トリックスター・・・そしてディケイドとディエンド。なるほど、大体わかった」

バンッと勢いよく本を閉め、同時に本が消える。

何故雄介はこんなまだ薄暗い早朝にしかも雪の中を散歩しているのか?
何のことは無い。高町恭也に連行され、朝の訓練に付き合う名目で、昨日の件の報告させられたためである。

昨日はクリスマスイブ。恭也は本来なら、彼女である月村忍と過ごし、次の日には彼氏のいない妹に「昨晩はお楽しみでしたね」とからかわれ、制裁もとい訓練でいつもの数倍の密度で叩きのめ、ではなくシゴクことから始まる一日を迎えるはずだった。

が、月村家からの緊急の連絡で雄介とファリンが窓から飛び出していったことが伝えられたのだ。
あるいは、この二人だけなら、ノエルのプレッシャーに負け、愛の逃避行(笑)という冗談で済ましていたかもしれない。
が、机の上にはディスクアニマルとご丁寧に投影用の機械が・・・。

以上のことから恭也は妹と義妹(予定)が心配で、別の意味で眠れぬ夜をすごしたのである。よって、ほとんど不眠不休で闘い続けた雄介にもう少し無理をさせても許されるはず・・・たぶん。



「ん?」

顔をあげた雄介の目に異常なものが見える。八神はやてが車椅子で移動中なのだが、朝早すぎることや、雪の日に車椅子が危ないということより、

「どんな筋力なら雪上で車椅子があんな速度になる?・・・ああ、魔力強化か。あっ、こけた」

考えている間に転んで顔から雪に突っ込んでいく。
そのまま、泣きながら何か叫んでいる。
リインという人に対する叫びらしいが雄介はその対象を知らない。

雄介が電柱を背に隠れながら考える。

(はてさて、厄介ごとは全部片付けたつもりだったが、まだ残ってたのかねぇ)

少女が泣いていた。ならば選択肢は存在せず。

そこには既に雄介の姿はなく、赤い車に乗った黒き太陽の姿があった。



「・・・乗るか?」
「・・・はい!」



エピローグ


街全体を見下ろせる高台。
既に儀式は開始されようとしていた。
闇の書、いや夜天の書の管制人格リインフォースを中央に、ベルカ式魔法陣の三方になのは、フェイト、ヴォルケンリッターを配置。

「短い間だったが、お前たちにも世話になった」
〈Don''t worry.〉
〈Take a good journey.〉

別れの言葉も済み、あとはなのは、フェイト両名が魔力をこめれば闇の書は破壊され、この事件は終わる。一人の少女に涙を残して。



そういうことに納得できない異端が横やりを入れる。

鋭い音とともに、地面に光が突き刺さり魔法陣をかき消す。
全員が音源をみると、赤い車から銃口のみが外にでていた。
そして、その車から一人の少女が飛び出してくる。

「まってリインフォース。わぷっ」

赤い車、ライドロンは決して大きなワゴンではない。車いすは折りたたまれ後部座席。
勢いよく飛び出せば下半身の動かない少女、八神はやては雪の中に突っ込むことになる。
まぁ、あのどう考えても出づらいライドロンから飛び出したのだからかなりの腕力ではあるが。

「「はやて」ちゃん」

二人の魔法少女が駆けよる。
リインフォースも止めはしない。足元の魔法陣は特殊なもの。破壊されてしまっては張るのにまた十数分かかってしまう。

本当はその時間するいらなかった。もし、今主と話せば自分の決意が揺らいでしまうかもしれなかったから。

その原因を作った本人は車からでず、手を引っ込めて生き物の眼の様なドア(?)を閉めた。

リインフォース自身もその行動には苦笑するしかない。恨まれる理由もあり、自覚もある。むしろ攻撃されないことが不思議である。



(…リインフォースって管制人格のことだったのか)

シートを倒し、足を投げ出しているRX。
考えているのはこの状況について。
外の言い合いを聞いていると、どうやら、あの管制人格は死ぬ気らしい。

頭に浮かぶのは一つの物語。

(フィリップ・・・)

同じように命を持ったデータだからだろうか?
つい先ほど入ってきた4冊の経験。WとA。SとE。

(・・・助けるか。っていってもどうやって?)

フィリップのときは園崎若菜式のガイアインパクトによって、若菜本人のデータをフィリップに変換、己を犠牲にすることで人一人を完成させた。

しかし、今回その方法はとれない。

あれは若菜が地球の巫女、地球の本棚に接続でき、かつフィリップ自身も接続できたからだ。
闇の書の管制人格と接続できないので無理だ。内部の闇の書の闇もすでに接続が切れている。そちらから接続するのも無理。

(しっかし、見事なもんだな、若菜姫(姉さん)。仮面ライダー全員の歴史を見ても、まともに人間一人を作るなんて無茶した者はほとんどいない。・・・ん?人間一人を作る?)

RXが体を起こす。何かが引っ掛かった。つい最近ほぼ同じ言葉を誰かの口から聞いた、はず。

今まであった人を思い出していく。かなり意外な人物だった気がする。

(おやっさん恭也忍すずかノエルファリン緑川小沢…違う。プレシア、は違う。もっと意外な人物でもっと最近だ…)

『すごい!!内臓どころか下手したら人間一人造りそうなメンバーだぞ!!』

(あっ)

脳内で再生された声が正解を導く。



その間、車外ではリンフォースと八神はやての言い合いが続いていた。

「ご理解ください。次に暴走すれば、主でも止められず取りこまれてしまうでしょう。そうなれば私は悔やんでも悔やみきれない…おそらく、管理局も仮面ライダーも今度は容赦しません」
「でも、でも…そうや仮面ライダーなら」

振り向くはやての目の前で赤い車が光に包まれ消える。

「えっ?」

驚く全員をしり目に、リインフォースだけは納得していた。

「彼らが、特に彼、BLACKRXが私を助けることはないでしょう。それだけのことをした、自覚があります」
「したこと?銀色のライダーを生み出したくらいじゃ」
「あれは、彼の記憶から生み出した親友のなれの果て。一緒に生まれ、一緒に育ち、不幸にも一緒に改造された兄弟の様なもの。そして最後には…無理やり闘わされ、自らの手で命を奪った存在」
「っ!!」

リインフォースの言葉を完全に受け止められたものはこの中にはいない。なのはとフェイト、はやては当然親しい人を手に掛けたことはない。ヴォルケンリッターも記憶がないので解らない。その重さなど想像しかできなかった。
唯一リインフォースだけが歴代の主を手に掛けてきたことから、それがどれほど重いことか解る。

「それともう一度闘わせたような奴をわざわざ助けるでしょうか?そんなはずはない」

沈黙が広がる。

そのままリインフォースは新たな陣を張り始める。



一方そのころ。

RXはバイオライダーに変身し、ある場所に潜入していた。水分に自在に変身でき、且つ物体に融合できるバイオライダーに潜入できない場所などない。サイボーグ忍者の異名をとるZXよりよっぽど忍者である。

ここは緑川研究所。その名の通り、緑川博士の研究施設である。

「あった」

目の前には実験ファイルと分厚い指図書。それを速読よりなお速い速度でRXがめくっていく。ものの数秒で全ての本が読みきられた。

「現物があればよかったが、さすがに・・・ん?」

RXの目が右にそれる。その先には不気味な緑の光を放つカプセルが一つ。
それを見た瞬間、RXの呼吸が止まる。雄介の姿であれば目を見開いていただろう。もし気を抜けば悲鳴を上げていたかもしれない。

ネオ生命体。その細胞と思われるものがカプセル内に浮いていた。

「おいおいおいおい、何でコレがここに、いや、そういえば麻生博士も呼ばれていた。だからといって・・・頼みますよ。暴走だけは勘弁してください」

思いっきり頭を抱える。が、すぐにあることに気づく。

「反応が無い?コレはもしや・・・」

近くにあった実験ノートをめくる。今度は1ページずつ丹念に。

どうやらコレは単体では成長せず、ネオ生命体にはならないらしい。特殊な環境条件下で生育することで臓器などに分化するようだ。

(・・・使える。コレなら。そうだ、たしかここにも)

机の下を探るとそこには銀色に光る義足と義手。数年前作られた緑川博士の作品である。当時であれば傑作といっていいできだったらしい。以前雄介が見せてもらったときに、わずか数年で骨董品だと技術の進歩に苦笑していた。

「・・・頂いていきます。埋め合わせは後日必ず」

頭を下げ、またゲル化で外に出る。
RXが止めてあるライドロンに持ってきたものを詰め込んでいく。

最後に指でピンッとあるものを上へ弾く。
研究所に入ってすぐに作り上げた代物。本来の設備なし、さらに時間なしで造ったために性能が保障できない。実験する暇すらない。

「賭け、かな?」

空中でクルクルと回る大きなフラッシュメモリー。
それを掴むと同時にライドロンが光に包まれRXごと消え去った。




「さぁ、闇の書の終焉だ。主はやて、守護騎士達、そして小さな勇者達、ありがとう。そして・・・さようなら」

リインフォースの体が、陣の中心で浮き上がり光に分解されていく。
しかしそれより速く、RXが上空に出現。

「間に合えっ!!」
「うっ」

ライドロンからネオ生命体の細胞、義手と義足が放り出され、キングストーンの光に包まれる。
そのあまりの光量になのはたち全員の目が眩む。







リインフォースが目を開ける。
そのことに最も驚いたのはリインフォース自身であった。
既に自己破壊の魔法は発動し、データの屑となって消えるはずの自分にまだ意識がある。いくら仮面ライダーでもあそこから持ち直すのは不可能だろう。

「何だ、この本棚は?」

自身を囲む真っ白な世界と無数の本棚。音に聞く無限書庫にでも収められたのだろうか。
本に触れようとする、が手ごたえがなく、まるでそこに何もないかのように体がすり抜けてしまう。

「・・・私は、もう消滅できたのか?地獄にしては随分と変な場所だな」
「・・・はずれだ。といってももう数分もすれば現実になるがな」

目を上げると、その先には一人の男がいた。本棚に寄りかかり、顔を目深に被った帽子で隠すスーツの男。

ああ、また仮面ライダーの一人か、と納得しリインフォースが疲れたように腰を下ろす。

「・・・諦めたか?」
「・・・ああ。」
「…お前の人生において・・・本生か?まぁどちらでもいい。一度でも諦めた先に光はあったか?」

帽子の男は屈んで、顔の高さをリインフォースにあわせる。が、やはり顔は帽子で見えない。
そういえば、さっきまでなら見上げれば顔が見えたな、とどうでもいいことを考えながら、リインフォースの脳内で過去の記憶が明滅する。

いい主ばかりではなかった。力に魅せられ堕ちていった主もいた。
しかし、全てが全てそうだったわけではない。
はやてのように家族のように接してくれた主がいた。
不器用なりに優しくしてくれた主がいた。
騎士達を引っ張りまわす陽気な主がいた。

そんな主たちに自分は何をしてきた?
最後には静かに眠りにつけさせるしかなかった。しなかった。
しかし、今回のように、主はやてのように強い意志がなくても、必死に呼びかければ自分の声に答えてくれたかもしれない。
いつからか、いつからか諦めてしまい、そこからズルズルと諦め続けてしまった。そうして絶望を絶望で塗り固めてしまった。

結局、首を横に振ることでしか答えられないリインフォース。

「お前にどんな過去があるかは俺は知らない。だが、諦めの先を知っているのなら、もう一度ここから始めてみろ。自分の意思で諦めの心を乗り越えろ。そしてその先で、お前の罪を数えろ」
「私の罪・・・」

呟くリインフォースの前に掌大のフラッシュメモリーが差し出される。
中心には光り輝く風を思わせるRの文字。

「そこにはお前の全てが入っている。後は、意志を込めるだけだ」

一瞬の躊躇。リインフォースがメモリーを握り締める。
ほぼ同時にリインフォースの体が光の粒子に変わり消えた。
ふぅと一息ついた男、雄介が顔を上げた瞬間、

「あたっ」

本が一冊、顔に直撃。
床に落ちた本は『何でやねん』という文字をでかでかと書かれたページを上にする。
プルプルと怒りに震えながら本の題名を確認。予想通りの題名に本を上に投げ返す。

「あきこぉぉぉぉぉ!!…しかし、何で本が急に、まぁいいや。さっさと行、ぎゃぁぁぁぁぁ!」

大量の何でやねん本に押しつぶされた瞬間、本棚から雄介が消えた。


ほぼ同時刻。雄介頭上。

「も~、なんだよ、ここ。本ばっかりで何にもないし、つまんない」
「…」
「…我としたことがつまらぬ本を取ってしまった」

鮮やかな青髪の少女が一人駄々をこねる。白銀の髪を持つ少女は持っていた本をポイ捨てし、その先にいたショートカットの少女は本から目を離さず避ける。

「ちっ」
「今、舌打ちしましたね。面白くなかったからって八つ当たりしないでください」
「ちょっと、無視する、いたっ!」

青髪が何か言おうとした瞬間、下から先ほどの本がぶつかってきた。

「…やったなぁ~」
「まて、それは我のせいでは、へぶっ。ええい、やめんか!」
「まったく。巻き込まないでください」

本の投げ合いを始めた二人を横目に本を読みつづけるショートカットの少女。ふいに下で叫び声が聞こえた。

「?…誰かいたんですか?」

結局、それ以降何も聞こえず、気のせいかと処理する。
こうして、謎の三人は本棚に居座る。

閑話休題。




なのは達に視力が戻る。が、目の前の光景はほとんど変化していない。
リインフォースは消え、はやての前には銀十字が降りてくる。

「なんだ、何なんだよ!結局何も変わってないじゃんか」

ヴィータが叫ぶ。
先ほどまでリインフォースのいたところにはRXが立っている。その体からは力がなく、肩で息をしている。
RXがライドロンから人の形をしたモノを引っ張り出す。

「ひっ、し、死体・・・」
「なわけない。体は麻生博士、四肢は緑川博士。それを無理矢理急速成長させ、」
≪Reinforce≫

ガイアウィスパーが響く。
持っていたメモリーをその体に突き刺す。
メモリーは吸い込まれるように消え、同時に体が変化しだす。
銀の髪が生え、四肢が伸び、5歳ほどの体が10代半ばまで成長していく。

「うまくいった、か」

突き刺したメモリーの正式名称はガイアメモリー。その内に地球のあらゆる現象をおさめたメモリーである。これを人体に直接さすとドーパントという怪人になる。

直挿しのドーパントは本人の意思に関係なく暴走する。それは本人の心が、所謂ガイア理論でいう地球の意思という毒素によって押しつぶされるからである。なら、意思のないものにさせば(無機物には無理)暴走の心配もなく、

「人間一人の出来上がり」

懸念があるとすれば人の人格をデータとして入れられるのか、ということだった。
これについて雄介は知らないが、人の人格の入ったメモリーは存在する。
死神博士メモリーである。
ついでに言うと、この手のメモリーは衝撃に弱い。一般人が死ぬ衝撃で簡単にメモリーブレイクされる。
はっきり言って、本来のフラッシュメモリーの役目である記録以外に使うことはお勧めできないメモリーである。

このままでは寒かろうとライドロンから出した毛布で包む。
そのまま、雪の上に座り込むはやての前まで移動。目線を合わせる。

「これがリインフォースだ・・・と言っても信じられないなら俺が連れ帰って面倒をみる。どうする?」

すぐさまひったくる様にはやてがリインフォースを抱きしめる。
本棚での会話のことをおくびにも出さず、RXが背を向けライドロンに向かう。が、

「・・・!?」

RXの膝が折れ、体が沈む。何とか膝をつかずにいるが、体が光に包まれ、BLACKに戻ってしまう。
しかも、それすら維持できず、レプリスフォームが薄れ、バッタ怪人の体が表面に現れる。

(ぐっ、まさかここまで消耗するのか。細胞と人工四肢がなかったらどうなっていたか)

RXは人一人をつくるため本来ならありえない3つの奇跡を起こしたのだ。
1つは細胞にキングストーンのエネルギーを照射。細胞を急速成長させたこと。
2つめは四肢の機械と体を完全に融合させたこと。仮面ライダー同様、自分の体のように動かせるように神経につないだ。
3つ目は、それらの影響を近くにいるなのはたちに与えないようにすること。
その全てが、特に3つ目が極度のエネルギー不足に陥った原因である。


絶好のチャンスだった。おそらく最初で最後の。
後の広域指名手配次元犯罪者、仮面ライダーBLACKRXを生きて捕える機会。
咄嗟に動こうとしたなのはを。打算的に、捕えれば主の罪も軽くできる交渉材料になるのではと考えた騎士達を攻めることはできないだろう。

「あがっ、また、これ・・・」

動こうとした全員が空気に縛り付けられた。
いつの間にか上空に金髪の少女の姿。
RXのパワーで飛び起きたアリシアである。

ほんの一瞬だったがその中でバッタ怪人はライドロンにたどり着く。
そして、乗り込む瞬間、

「感謝する、仮面ライダー」
「!・・・は、はは、十分だ、納得した」

リインフォースの言葉に、それだけ残し車内に倒れこむように消えるバッタ怪人。
ライドロンが発光。その姿を完全に消す。







「そう、そんなことが・・・」

雪の降る中、迎えに来たユーノにことの経緯をなのはが話す。
あごに手を当てながら興味深く聞いていたユーノだが、結局なのはの求める答えは出ない。
現場にいない状況で、しかもなのはの視点だけで伝えられた情報だけで、ライダーのやったことを推測するなど、いくら博識なユーノでも不可能だ。答えられたのは緑川博士についてだけである。

「何で知ってるの?」
「何で知らないの?」
「・・・」

そう返され、黙るなのは。高名とはいえ現役科学者を知っている小学生のほうが珍しいといえば珍しいが。

「ユーノ君はこの後どうするの?」
「…局の人から無限書庫で司書をしないかって誘われてるんだ」
「フェイトちゃんは執務管。私は執務管は無理だけど、ちゃんと使いたいんだ。自分の魔法を」
「ねぇ、なのは。君は…」
「?」
「…なんでもない。また今度きくよ」

結局、ユーノの疑問は一年後に聞かれることになる。
その時、何の気なしに返されたなのはの答えがユーノの道を大きく変えることのなるが、それはまだ先の話。



月村邸。
どう見ても昨日雄介とファリンが用意していたクリスマスツリーの数倍の大きさのツリーがエントランスに飾られていた。
これをノエルが一人で用意したのだから、帰ってきた二人のショックは計り知れない。

それはそれとして、そんなツリーを二階から見下ろす二人の少女。
すずかとアリサである。
昨晩、助けられた二人は月村邸で一晩過ごし、今朝になってメールを受けた。

「なのはとフェイト、はやてと一緒にもうすぐ到着だって。三人で打ち明けたいことがあるってさ」
「うん」
「昨夜のあれ、もしかしてはやても一緒だったのかな?」

そんな疑問への答えはもうすぐ。

それよりアリサには気になっていたことが一つ。

「…なんであいつはあんなところで寝てるの?」
「さ、さぁ」

ツリー横で雄介が寝ていた。
別にここで寝たくて寝ているわけではない。たんにここで力尽きただけである。
その顔にはどこか満足げな表情が見える。

「だいたい、ファリンじゃなくて私が誘拐されかけたときみたいに、あいつが助けにくればよかったじゃない」
「…アリサちゃんなら」
「うん?」
「ううん、そのうち話すね」
「なに~、すずかも秘密ってわけ?まぁいいよ。話したくなるまでいつまでも待ってあげる」



外ではライダーマシンをみのりが磨いていた。
昨日一日で何度も変形、戦闘を行ったそのボディには目に見えて歪みが現れている。
修復にあたって汚れを巻き込まないように清掃しているのだ。

「昨日はありがと」
「ド・ウ・イ・タ・シ・マ・シ・テ」
「!!」

みのりの声に返答するライダーマシン。一瞬驚くが、すぐに気がつく。
そうか、この子も成長したんだ。

自分同様にRXの進化に引っ張られた結果。
昨日の戦闘は一緒に闘えはしたものの、最後は完全にまかせっきりになってしまった。

「守るって決めたなら、最後まで。…それにはまず強くなろう。また力を貸してね」
ブルルルルルルル

今度はエンジン音で返す。




本来は物語から離れる4人の子供。
しかし、生まれるのは新たな英雄(ヒーロー)。新たな伝説(レジェンズ)
変えたのはひとつの単語。
『仮面ライダー』

その体現者は、今はただただ夢の中。

「今度は助けたぞ。プレシア」


此度の事件はこれにて閉幕。
次なる変動は10年後。

今は魔導師、騎士、戦士にしばしの休息を






あとがき
どうも、作者のGです。本当に久しぶりです。遅れた理由?日本の労働基準法がいつの間にか改正されたのか、一週間で50時間以上働いていたせいです。久し振りの休暇で書いています。

さて、まず疑問点を問われる前に書いちゃいます。
1、ガイアメモリーって作れるんですか?
一応、設定上ミュージアムそのものと言われている泉(フィリップが落ちたもの)がないと作れないことになっていますが、本編で園崎ママがアクセル、ボム(コレはガジェットと同じか?)を持っていたこと、財団Xがメモリーを作っていたこと。園崎姉の新しいメモリーという発言。以上から一回知識を出したものがであれば作成可能と判断し、本編でフィリップが新しいメモリーを作らなかったのは施設がなかったためと考えました。
そのため、知識と施設があればOKじゃないかと考えました。

2、リインフォースはユニゾン出来るのですか?
無理です。肉体は人間、リンカーコアなしと設定し、今後は魔道知識豊富な八神家のブレーン役みたいな感じです。
ちなみにSTSででてくるリインフォースⅡについてですが、初代はフルネーム、リインといったらⅡのほうとします。なにか名前でいい案があったら感想でお願いします。

3、なんで義手義足を使ったの?細胞だけで何とかなんじゃね?
自分もしっかりした知識を持っているわけではないですが、胎児において確か四肢、特に指先の形成はとても難しく、障害が出やすいと何かの本で読んだと思ったので。

4、時間の経過がわかりずれぇ
本編を見てください。何度みても自分は時間の経過がわかりませんでした。詳しい矛盾についてはNanohawikiをみてください。


えらく時間かかったのにたいした展開じゃなくてすいません。
素材三人娘は単なる遊びです。特に話しに大きく関わらせるつもりは無い。
とりあえず次は、アルバムと称してAsからSTSまでのダイジェストを書きます。
それぞれ今考えている短編で、感想などで反響があったものだけロング版を書こうと思います。

では、また次回。

p.s.最後のうまい閉め方がわからない。だれか今回こうしたほうがいい締めだった、と思う文があったら感想に書いてください。参考にします。



[7853] STSプレストーリー
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:4e697b95
Date: 2009/10/26 08:05
STSプレストーリー 機人として生きる道、人として生きる道





「ハァハァハァ…」

薄暗い通路。足もとに広がる血だまりの中、銀髪の少女が呼吸を荒げている。銀といっても、その髪はすでに判別できないほどに血で汚れ、その顔、右目には裂傷が走り、瞼が固く閉じられている。

少女の目の前には男が立っている。が、体についた裂傷、火傷、打撲痕、あまたの傷がそのものの死を物語る。手には未だ大振りの青龍刀が握られ、それを杖のようにして立ったまま死んでいる。また、少し離れたところには死体がそこかしこに転がっている。皆、傷は一様に裂傷と焼けどである。





ブルルルッッッ!!!

「!!」

少女の後ろからライトが照らされる。一瞬、怯んだ後、少女はそのライトとエンジン音めがけ、手中に現れた手投げナイフを放つ。

(…手ごたえがない!気配は動かず、よけた様子もない。ということは受け止めたのか!?)

逆光の中、影がバイクから降り、無人のバイクはどこかへ走って行ってしまう。

再び周囲に薄暗さが戻るが、少女の瞳は残った影の姿を明確にとらえる。

金の角。赤いボディ。それ覆うような文字の縁取り。そして、ボディ以上に赤く輝く大きな複眼。

少女、チンクは知っていた。この存在が何者なのか。正確にはこの存在とよく似た意匠の者たちを。かつて自分の親ともいえるドクターがその強さに惚れ込み、何度となく挑み、未だ完成できない最強の戦闘機人集団。ドクターはその存在に謎という意味を込め、こう呼んでいる。

「…タイプX…その姿、ナンバー13か!?」
「タイプX?ナンバー13?なにをいっているか知らないが、俺は仮面ライダー。仮面ライダークウガだ」

右手の指で挟んでいたナイフを足元に捨てる。

(クッ…ランブルデトネイターが発動しない。あの魔導師に使いすぎたか)


本来チンクのIS、ランブルデトネイターは金属に魔力を注ぎ込み爆発させるものである。一度注ぎ込めば遠距離からの爆破も可能だが、その距離と爆発の破壊力は注ぎ込んだ魔力の量に比例する。つまり、近距離であれば少ない魔力で大きな爆発を起こすことができるが、遠距離では多くの魔力を使わなければ爆発力が得られないことを意味する。当然、込められた魔力が少なければ遠距離で爆発を操作することもできず不発に終わる。


先ほどまで闘っていた魔導師は少なく見積もってもオーバーSランクの近代ベルカ式の騎士。消耗が大きすぎた。


「…何しに来た?ここにお前たちが現れる理由などないはずだ」
「近くを通った時に妨害電波とそれに邪魔されている救難信号が出ていたからな。潜り込んでみたら、どこかで見たような機械どもが襲ってきた。…親玉に会わせろ。何のために仮面ライダーの模造品を作るか聞きたい」
「…」

この施設に入って見たものは人の体を貫いた銀色の機械人形。その形はどことなく仮面ライダーに似た意匠であるが、仮面ライダーとは違い機械的な動きをしていた。クウガ自身、闘った感想は吐き気をもよおすほどの醜悪で出来の悪い木偶人形といった程度のものだったが、それでもこんなものを作った奴が許せなかった。

チンクが答えず、両手にナイフを出す。クウガがため息をこぼす。

「まぁ、そうだろうな。やましいことがなければこんなところでコソコソする必要はないか」
「くらえ!!」
「うおっ!あぶな!!」

手に持ったナイフはそのまま、クウガの周りを取り囲むようにナイフが配置され、一斉に襲い掛かってくる。咄嗟にジャンプで避けるが、そこに今度は手のナイフが投げつけられる。先ほどのように指で挟んで止めるが、

「ランブルデトネイター!!」
「ぐぉっ」

手の中でナイフが爆発する。爆煙とともに降り立つ。手をプルプル振りながら、

「あ~、びっくりした」
(やはり、この程度ではダメージにもならないか…狙うのは至近距離からの爆破。それしかないか)


再度ナイフが展開。今度は前転で避け、

「超変身!」
「!!変わった?!」

クウガの眼とボディが青く変わる。そのまま地面に落ちていた死体のものであろう杖を取り、ぐるぐる回す。すると杖が一回りごとに青と金をベースにした棒ドラゴンロッドへと姿を変える。

向かい来るナイフが全て棒に弾かれていく。その動きはまさに流水。肩まわりのアイデンティティワードに記された言葉「邪悪なものあらばその技を無に帰し流水の如く邪悪なぎ払う戦士あり」。その言葉通りの闘い方で一本もナイフがその身を傷つけることは無い。


「ならば、これで!!」

クウガの足元にナイフを叩きつけ、爆破する。煙で視界が遮られる。



(考えたな。ペガサス…いや、防御が薄すぎるし制限時間がきついな。なら)
「超変身!!」


キンッキンッキンッ

数発の金属音。その直後、チンクは煙に紛れクウガに飛び掛る。狙いは至近距離からの刺突、その後の内側からの爆破。硬い装甲を持っているということは内部からのダメージを外に逃がせないことを意味する。チンクは確かに小柄だが、伊達に戦闘機人ではない。その力は一般人を大きく超え、その気になれば魔導師を殴り殺すことも可能である。

時間がなかった。魔力もなかった。故にチンクはこの戦法を選び、そして成功させる自信があった。



しかし、焦りは拙策を生み、自信は過信へと繋がる。そして、結果、

カンッ!!バキッ!!

チンクの体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。正確に鳩尾に叩き込まれた拳はチンクの芯を揺らし、意識を削った。朦朧とする意識の中、その瞳は敵の姿を見る。

紫に縁取られた銀の鎧を纏い、右手に大振りの剣を携え、その身には傷一つついていない戦士を。

仮面ライダークウガのタイタンフォーム。クウガのフォームの中でトップクラスの防御力を誇る。故にチンクの渾身の一撃は、ダイナマイトの爆撃すら無効化するタイタンブロッカーで完全に防がれたのである。

その紫の複眼が壁にもたれるチンクを捉える。そして一歩一歩、近づいていく。


「ク、くそっ!来るな!」

まだかろうじて動く右手でナイフを投げる。ぶつかる瞬間にISで爆破。命中。


しかし、それをまるでそよ風を受けるかのごとく、クウガは進む。その歩みは確実にチンクへと向かう。

人は明確な死より、その明確な死へと向かう過程を恐怖する。それは戦闘機人でも同じこと。


一瞬で間を詰めず、ただ歩む。しかし、その歩みを止めることが出来ない。こんな対象を恐怖するなというほうが無茶な話である。


そして、チンクの目の前に、振れば確実に切り裂く間合いにクウガが立つ。その瞳からは感情が見えず、たた無反応に見下ろす。

(…これが死神か。本当に居たんだな。…ドクターの頼みとはいえ多くの人間を殺したんだ。こんな死に方も悪くない、か…)



諦め、目を瞑るチンク。しかし、しばらく経っても一向に痛みも衝撃も来ない。

ゆっくりと眼を開けると、そこには背を向け歩いていくクウガの姿。

「…ま、待てっ!!なぜ、とどめをささない?!」
「んぁ?ああ、別に。ただライダーマシンから要救助者確保って知らせがきたから、そっちに向かうだけ。人命救助が優先だろ」

一瞬チンクのほうを見て、手をプラプラさせながら歩いていく。


チンクは追おうと立ち上がり…また、座り込む。今度はダメージのためではない。完全に腰が抜けているためである。

「…ああ、そうだ」




「人を殺すことを泣くほど後悔して、今みたいに死ぬ覚悟が出来るのなら、創造主に反逆したらどうだ?」




チンクに衝撃が走る。

「ふ、ふざけるな!私は、私たちはドクターに作られた戦闘機人だ!ドクターの願いを叶えることこそ私たちの存在意義だ!貴様も戦闘機人なら…」
「俺は御免だね。誰かに命令されて人殺しをするなんて」
「この…半端な出来損ない(ミスクリエーション)が!!」

ピタリとクウガの歩みが止まり、またチンクのそばに戻ってくる。また、目を瞑るが、やはり今回も衝撃は無い。目を開くと、クウガは静かに手を差し伸べていた。

「…一緒に来るか?…こんな薄暗い場所ではなく、色々な光のある世界に。何も知らないうちに自分の存在意義を決め付けないほうがいい。きっと色々なものが見られる」

互いに無言の時が流れる。

そして、チンクは、その手を…











払いのけた。

「…」
「…そうか。しかし、覚えておくといい。今、お前がその体に刻んでいるのは最悪の記憶だ。闇に溺れるな。闇と向き合え…少なくとも30分以内にここを破壊する。それまでに逃げろよ」

その言葉を最後にクウガはもう振り返ることなく、その場を去っていく。

その場に残ったチンクはただ上を見上げる。

チンクがクウガの手を振り払ったのは、ただ怖かったのだ。自分の想像もつかない強さを持ち、自分とはまるで違う考えで動き、自分とは違う世界に生きる仮面ライダーが。そして、その先に見えた優しさは触れたことのないもので…ただただ、変わることを恐れた。恐れてしまった。

切られた瞳から一滴の涙がこぼれる。スカリエッティ製戦闘機人には涙を流す機能は無い。カメラの洗浄用に液体が流れることがあってもそれが涙のようにこぼれることは無い。ならば、この液体は何だったのだろうか?血か、オイルか、それとも洗浄液の過剰分泌か、はたまた本当に涙だったのか。薄暗い通路ではそれを確かめる術は何も無い



*****************************************







ガガガガガガガガガガガア!!!!!!!!!!!

通路がマシンガンで削られる。そこにいた楕円状の機械ガジェットは奇怪なオブジェに変わる。

「よし、進路クリア。よくやったオートバジン。行くぞ」

クウガが声をかけると同時にオートバジンがビークルモードに変形、さらにビートチェイサーに姿を変える。

「わ、わた、しは…」
「しゃべるな。傷は浅くは無い」

背中に背負った女性に声をかけ、バイクで一気に外に出る。

ライダーマシンと合流したとき、その背には傷だらけで片足を失った女性が乗っていた。応急処置はしたが、予断は許されない状態である。


施設から約5キロ離れた地点の小高い丘の上で止まる。振りきったのか、もしくは防衛が主眼なのか、敵は追ってこない。

施設のほうに動きは無い。この距離ならクウガの眼コンパウンドアイズで何の問題もなく見られる。

後ろで気配が動く。

「動くな。それ以上動けば出血多量で死ぬぞ」
「…わた、しは、なかまを、助け、に」
「無駄だ。あそこで生き残っているものは居ない。ライダーマシンが確認済みだ」
「!!」

ライダーマシンが褒めろといわんばかりに纏わりついてくる。

「でも!まだ隊長たちが…」
「超変身!!」
「!!」

ペガサスフォームに変わる。体と目が緑に変わり、用意していた555フォンがペガサスボウガンに変わる。木々のざわめき、雪の降る音まで聞こえる。その感覚を施設のほうへ向ける。

「別働隊なら全滅を確認済みだ。…もう、あの施設内に生体反応は無い」
「そんな…隊長、メガーヌ、皆…」

しばらく、落ち込んでいたようだが、また施設に向かうように地面を這う。

「おい、本当に死ぬ気か?」
「私は、私は皆の敵を討ちに行く。邪魔しないで!!」
「ふん!」

襟首を掴みあげ、ライダーマシンに乗せなおす。闘志を湛えた目、しかしその奥には深い悲しみ、絶望、恐怖が入り混じっている。

「邪魔、しないで…うっ、うう」
「そんな体で行っても自殺するのと変わらない。…仲間のためを思うなら、仲間を自殺の理由にしてやるな。仲間の、その最後を、仲間の大切な人たちに伝えてやれよ」
「う、うう、うわあああぁぁぁぁぁぁ……」

丘の上に慟哭が響く。

「!!」

施設内で少しずつエネルギーの上昇を感じる。爆破する気か?

「…せめて死者の魂が安らかでありますように」

クウガの言葉とともに体に電撃が走る。アークルに金のバックルがつき、体にも金の縁取りがされていく。手には疾風を表す文字が現れる。ペガサスボウガンもライジングペガサスボウガンへと変わる。

「はっ!!」

クウガが飛び上がり、施設に向け、ライジングブラストペガサスを連射する。

ライジングブラストペガサス。連射性のなかったペガサスボウガンに比べ、進化したライジングペガサスボウガンは高い連射性を持つ。そして、その攻撃であるライジングブラストペガサスはライジングマイティキックと同様に凄まじい破壊力で周囲に被害を及ぼす恐れがある。


施設に撃ち込まれ、大爆発が起こる。咄嗟にライジングタイタンに変わり、女性を庇う。

(やはり、威力のコントロールが難しいな。都市部では使いづらいか)


「行くか」
「でも、私は…」
「行くんだ。そして、生きるんだ。死んだ仲間の分まで、生きて、生きて、生き抜いて。しっかり生きてくれ」

ライダーマシンを走らせる。背中の女性に衝撃が行かないように細心の注意をしながら。

「貴方は…」
「ん?」
「貴方は誰?」

意識が途切れかけているらしい。こういうときはなるべく話しかけていたほうがいい。ここまで重症だと意識を失い、そのまま死ぬ可能性もある。

「俺は仮面ライダー。仮面ライダークウガだ。貴方は、貴方の名前は?」
「…私は、クイント。クイント・ナカジマ…」
「ほら、しっかり。帰ったら何がしたい?」
「帰ったら、夫に、料理を作ってあげて、娘達と遊、んで。…そうだ、ギンガに、シューティングアーツを…」






バイクが疾走する雪の中。話し声が雪に溶け込み消える。





あとがき
どうも、作者のGです。今週と来週が忙しいので本編が書けず換わりにプレストーリーを書いてみました。

ぶっちゃけちまうとSTSのつなぎです。もしかしたら、微妙に本編と矛盾が出る可能性もあります。

クイントさん生存。どうやら自分は本当に髪が青、もしくは紫のキャラが好きなようです。まぁ、本文でかいた様に片足になってしまったため、武装局員からは外れるでしょう。ぶっちゃけるとスバルとギンガの強化フラグ。きっと母からしっかりシューティングアーツを学ぶでしょう。



本編はもうちょっと待ってください。



[7853] プロローグ
Name: Gを見忘れた男◆8f6bcd46 ID:b4881416
Date: 2010/11/14 10:03

プロローグ

「ということで、優秀な事務要員がほしい」
「帰れ」

クロノが手元のコンソールを操作。目の前のモニターを消す。
静かになった艦長室でコーヒーを啜る。
十年来の友人に貰った豆を自分で挽いて淹れたコーヒー。悪くは無い。

再度モニターが展開され、通信士が連絡をいれてきた。

「すいません、艦長。八神はやて二等陸佐から通信が来ています」
「つなげてくれ」

画面が移り、先程消す前よりむくれた顔になったはやてが現れる。

「いきなり消すんは、ひどいやろ」
「あまりに馬鹿馬鹿しい要求だったのでついつい。だいたい優秀な事務員ならこちらが欲しいくらいだ」

指差す先には書類の山。といってもクロノにとっては十分今日中に終わらせられる量である。

XV級艦船「クラウディア」艦長。
その役職に就いたクロノの仕事は多忙を極める。

「うっ・・・だってこっちは事務得意な子がすくないんやもん」
「戦闘要員と新人ばかり集めるからそうなる。自業自得だ。諦めろ」

今話しているのはついこの間発足されたはやてが課長及び部隊長を勤める古代遺物管理部機動六課、略称六課についてである。
この六課。とある目的から本局の肝いりで地上に設けられた部隊であり、本局と地上の仲が険悪なこともあいまみあって、ほとんどの部隊員が本局側である海や空の出身である。
部署が変われば仕事も変わる。
さらにいうならこの部隊の平均年齢はかなり低い。主に人を集める際に自分達の知り合いに声をかけたのが原因である。

「あとリミッターのほうもなんとかならへん?せめて、もうワンランク上まで」
「?、無理に決まっているだろ。陸の決まりに、そこまで本局は関われない。だいたい、そんなことは解っているだろ?」
「そう、やったね。ごめんなぁ、ちょっといやな予感がしてなぁ」

クロノがあごに手を当て、考えをめぐらす。

はやての勘は良くあたる。特に悪いほうにかけては、特別捜査官という役職のためか、かなりの高確率である。

なにか手があるならうっておきたい。
それがクロノの偽りなき考えである。が、現状で打てる手は、

「・・・だめもとで頼んでみるか」
「えっ?」
「・・・優秀な事務要員が欲しいんだよな?」
「うん」
「あと戦力も」
「うん、そうやけど・・・」
「根回しはこちらでしておく。とりあえず、しばらく待ってくれ」
「えっ?ちょ」

モニターが消される。
はやてがもう一度つなげるより先に、隊長室の扉が開き、大量の書類の山が持ち込まれる。

「部隊長、追加です・・・」

持ってきたグリフィス・ロウラン准陸尉もそれだけ言ってフラフラ出て行く。
部隊長補佐であり、事務仕事の得意な彼もまた大量の書類に辟易していた。

「もう、なんやのぉ・・・」

その声も書類の山に呑まれ、誰にも届くことはなかった。










「ということで、力を貸してくれ」
「寝言は寝て言え」

次の日。すぐさま友人に会いに風都に訪れたクロノの話を、その友人は真正面からぶった斬った。
手の内のスプーンを磨きながら。

いつもはそれなりに客の入るカフェ『マル・ダムール』。今日はほぼ貸切である。

クロノがドバっと大量の書類をテーブルの上に出す。片手は柄の途中が一回転した奇妙な形のスプーンを離さずに。

「まぁ、コレを見てくれ」

書類をパラパラ漫画を読むかのごとく開いていき、ある一箇所でぴたりと止まる。
そのページを横目で見た瞬間、眉がピクリと動く。

「へぇ、だから俺達、か?」
「・・・彼女達も相応の対策を講じている、はずだが3年前の戦場を知らないからな」
「その3年前なんて俺も知らんがな」

そうこう話していると、メイド服の女性が料理を運んでくる。

「はい、チャーハンお待ちどう様・・・いい加減、その食べ方やめたら?」
「何を言う。コレは大切かつ神聖な勝負だ」

ほぼ二人が同時にテーブル上のスプーンを叩き、空中でキャッチする。

「さぁ、イレイン。ゴングを」
「はぁ~、はいはい」

イレインと呼ばれた金髪メイドがけだるそうに近くの呼び鈴を叩いた。

カァ~ン

ゴングとともに第28回チャーハンバトルが始まるのだった。





「すまんな」
「いいさ、別に」

男二人連れ立って夕日の土手を歩いている。道の端には風車が回り、いかにも風の街、風都であることを物語る風景である。

海鳴に帰るクロノを見送りに店を出たのだが、出る際にイレインに「店長なら仕事しろッ!」と皿を投げつけられる一幕があったのだ。ちなみに二人とも高速で飛んでくる皿を一枚も割ることなくキャッチしている。

「根回しはこっちでしておく。悪いが・・・」
「G3なら構わない、がX、G4、G5は駄目だ。ライオとゼクトも改修以前のものだけだ」
「わかっているさ。そのためにお前は名前まで捨てたのだから」
「…もう昔のこと、でもねぇか。まだ4年前だし」
「システムは全部持っていって構わない」

二人の横を子供たちと風が走り去る。互いにそれを目で追う。

「平和だな。一昨年が嘘みたいだ」
「嘘じゃない。今でも、一灯流は半壊から復帰できてない。日本地図から富士山も消えちまったしな」

二人の脳裏には最終決戦が思い出される。
富士のすそ野を埋め尽くす魔禍魍と富士山に巻きつく巨大な龍の様な魔禍魍。


「毎年毎年、飽きもせず厄介事ばかり起こる」
「…すまん」
「何度も言わせんな。いいさ、別に」

背を向け去っていく。
その背に向け、もう一言だけクロノが言葉をかける。

「感謝するよ」

振り向かずにグッと親指を立て去っていく。

やはり似ている。
本人は知らないと言っていたが3年前に会った仮面ライダーに。

違法研究所。
最大級の人員投入。
が、突入以前に倒れ伏す管理局員たち。
迫りくる銀色の機械。
突然現れ、それを粉砕していく黒と金の仮面ライダー。


その後ろ姿が重なる。

「ま、いっか。優秀なのは事実だし」

結局、その言葉は夕焼けに溶け込み、クロノは家族の待つ家に帰っていった。







その数週間後。
事件が起こる。
ガジェットと呼ばれる機械群に列車が襲われた。
捜査の結果、列車内に六課が捜索しているレリックがあることが判明。

ファーストアラート。
新人たちの初仕事である。

隊長2人、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンは航空戦力の破壊。
新人4人、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエは車内戦力の破壊およびレリックの確保。
ちなみに副隊長2人は別件である。

最初は問題なかった。

隊長陣は言うに及ばず、新人たちもよく動いていた。
バックアップであるロングアーチの面々も落ち着いている。

これなら大丈夫か、と人心地つくはやて。
そう思った瞬間、報告が入る。

「接近する機影!数5、速ッ、接敵!」
『なっ、コレ』
「映像でます!」

なのはの叫び声と同時に映像が映し出される。
なのはの愛杖レイジングハートとぶつかり合う爪。
銀色のボディと漆黒の複眼、背には半透明の羽。
虫を思わせるその姿を見た瞬間、はやての顔から血の気が引いた。

「両隊長のリミッター解除、予備戦力投入!シグナム、ヴィータを呼び戻し!私も出る、グリフィス君、指揮とクロノ君に連絡を!!」
「了解!」

すぐさま返事を返したグリフィスに対し、他のメンバーの反応が鈍い。
当然である。彼らはコレの名は知っているが、実物を見たことはない。映像や写真等の視覚資料は秘匿レベルが高い。
が、それもはやての次の言葉を聞くまでだった。

「ライダー型や」

一瞬にしてロングアーチが静寂に包まれる。

ライダー型。
3年前の事件において、本局の3つの次元艦を壊滅させた最強最悪の人型兵器。
1体がAA+以上の戦闘力を保持し、数千体存在した。
当時、そこに介入した仮面ライダーの手によって全てが破壊されたと思われていた悪夢。
あまりにショッキングな事件だったためその名前以外、多くの情報が闇に葬られた。
それが今、また目の前に現れたのだ。

「・・・っ!なのは隊長、フェイトさんに2体ずつ、1体は列車内部へ!」
「さらに3つの機影。まだ距離がありすぎて、映像は出せません!」
「え、通信?こんなときに・・・」

復帰したモニター係から矢継ぎ早に情報があがる。

「ちッ!リイン、スバルとティアナと連携。私もすぐ行くから、なるべく時間を稼ぐんや」
『は、はいぃ』

ちっちゃい空曹のおびえきった声が帰ってくる。
無理も無い。
彼女は経験不足もいいところ。格上の存在と戦ったことは皆無である。

「部隊長。クロノ提督から通信です」
「ナイスタイミングや!」

モニターにクロノが映る。若干、目の下にクマができており、机の上にオロ○ミンCが置いてある。

「・・・なんや、妙に疲れとるなぁ」
『・・・地上、めんどくせー』
「はぁ?」
『なんでもない。こっちの用件は・・・』
「チョイ待ち。こっちを先に」

会話を始めた二人に最悪の情報が飛び込む。


ライトニング3,4が列車から落下。

それだけなら問題ない。
いくら飛行能力の無い二人でも、この程度の高さなら高性能のデバイスが守ってくれる。
むしろ、はやてとしてはちょっとぐらいピンチになれば、いまいち覚悟の出来ていないキャロが覚醒するのではと密かに企んでいたぐらいだ。そんなこと保護者であるフェイトには絶対にいえないが。

しかし、状況はそんなことが許されないほど切迫していた。

『グッ!あっ』

なんとかライダー型2体を抑えていたなのは。
が、初手で接近を許し、自分の距離で戦えない彼女の横を、その内の1体がすり抜ける。
すり抜けた1体はそのまま落下する2人の方へ。
なのはは残りの1体が、フェイトも2体掛かりで動きを止められている。

ライダー型の爪が一際鋭く、禍々しく煌き、










爆発。


「あっ」

立っていたはやての腰がストンと椅子に落ちる。
ロングアーチにはフェイトの悲痛な叫び声が聞こえていた。

『ん~、はやて?』

声のほうを見ると、画面の向こうでクロノがペラペラ資料をめくっている。
その姿に若干以上の怒りを感じるはやて。
クロノから見れば、あの二人は甥っ子や姪っ子に当たるはず。
なぜこうも冷静にいられるのか、と。

「・・・なんや?」
『あの二人ってさぁ、お、あったあった。フェイトの保護児童で、確か年齢は10歳ぐらいだっけ?』
「それがどうしたんや!!?何でそうも冷静に・・・」
「えっ?ライトニング3、ライトニング4、反応確認!場所は・・・列車の上!?」

オペレーターの驚きの声とともに列車上部の映像が映し出される。
そこにいたのはライトニングの二人だけではなかった。

『いや、なに』

二人を小脇に抱えたソレはゆっくりとバイク、と呼ぶにはあまりにもおかしな形をしたものから降りる。

『あいつは』

ソレは赤い鎧を身に纏い、
カブト虫のような大きな角を持ち、
その大きな青い複眼で、呆然とするなのはを無視し飛来するライダー型を見据えていた。

『目の前の子供を助け損なったことないんだ』




プロローグ
―再開―









あとがき
アルバムより先に本編、書きあがった。どうも、さくしゃのGです。
プロローグです。本編と人間関係がかなり変化しています。
それについては次回に書きます。
スカ博士のFへの対応なんかも違います。
なんかもう説明のほとんどは次回に回します。

ちょっと次回予告をば、
BGMにNextStageでもかけながら




『あなたは誰?』
『俺は天の道を行き、全てを司る男・・・』

男の指が高々と太陽を衝く


『はははははは、待っていたよ。仮面ライダー』

科学者は一人、闇の中、嗤う。


『全部説明してもらうで。あんたのこと、Rs計画のこと』





こんな感じです。
たぶん、映像を脳内再生すれば、次回予告の10~15秒ぐらいになるはず。





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