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[7837] セカンドライフ (現実→異世界、転生) (誤字脱字修正等のみです)
Name: カフェイン多め◆4b159315 ID:4070b9f6
Date: 2009/07/14 09:45
*7/14 誤字脱字その他修正、感想返し

初夏の候、ますますご繁栄の事とお喜び申し上げます。
皆様いかがお過ごしでしょうか?

リアルでやや忙しく、しばらく放置しておりました。
楽しみにして下さった方、お待たせして申し訳ございません。
今回は誤字脱字その他の修正と感想への返信のみですが、
近いうちに続きを載せますので、またよろしくお願い致します。


さて、今更ですが、作品コンセプトなどを。

「既に誰かが書いてる展開マネして何か面白い?」
「二次創作と原作コピペは別物」
「ケーキが無いならビスケットを作ればいいじゃない」
「『○○賞応募作品』はそういうのを書きたい人が書けばいい」
等々。

現状はやや資料に振り回されている感が否めず、また、主人公のアクの強さゆえに
拒否反応が顕著に感想に見られるのはご存知の通りでございます。
主人公視点での展開のみになっている点についても賛否はありそうですが、
「リアルタイムの臨場感」が必要になる(と思われる)パートも今後ありますし
そういったシーンにおいて序盤と同じような語り口調という事はありません。

それはそれとして、見直して気が付く誤字脱字の多さ。
投稿前に再々チェック必要ですねorz

今後も精進します。




…関係ない話ですが、メイン掲示板削除依頼板に出しておいた申請は
未だに放置されているようで思わず失笑w
管理人様も忙しいのでしょうきっとたぶんw




以上です。




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*5/30 投稿、誤字修正、その他

青葉若葉のみぎり、皆様にはますますご健勝のほどお喜び申し上げます。

さて、一話あたりの容量にかなり差が出てきたので、見直しをかねてまとめてみました。

私の更新は各エピソード単位ですが。

今後の計画(という程の物でもないですが)には、特に大きな変化はありません。

以上です。




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*5/24 投稿、誤字修正*

若葉の緑も次第に色濃さを増しつつあるこの頃ですが、皆様どうお過ごしでしょうか。

間が空きすぎて、もはや何のお話だったかさっぱり…
というわけでも無いですが。 
相変わらず忘れた頃にこっそり更新しております。
ご感想を頂いておりましたのに、返信遅くなって申し訳ない所存です。

さて、いわゆる「物語」未満の文字列を延々アップしておりましたが、
ようやく発車時刻が近づいてきたかな、と言った所です。
もう少しこっちに時間を割かないと、と思ってはいるのですがw

とりあえずちょっとだけ追加投稿しました。

以上です。




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*5/6 PCが復帰! 投稿、誤字修正*

桜去り、新緑萌ゆる季節となりましたが、皆様どうお過ごしでしょうか。

PC全壊とリアルの急な仕事で放置しておりました。
楽しみにして頂いた方(いるのか不明ですがw)、お待たせしました。


さて、感想掲示板に色々とご意見頂きまして(一部の意図の理解し難いモノは生暖かくスルーしましたが)、「ああ、準備不足だったなぁ」と感じておりました。

元々、構想の中で、「プロローグ」としていた部分が、先日までに公開していた部分を含めた「0話~11話」でした。
これらをまとめて投稿したほうが良かったなぁ、と後悔しております。

また、あくまで本編を読んで頂く為の「予備知識」を記載しようとしたわけですが、やや詰め込みすぎ感があった事や、構成その他に関して、色々とご指摘を頂きました。
「1ページ辺りの分量が短いのはダメ! 1話の中に起承転結が入ってないとダメ!」という方には見苦しい物であったかとは思います。

「1話の長さ」に関しては、人によって意見は違うと思いますし内容によってもそれは同様であると考えますが…私の場合、今回こちらに投稿している物に関して補足しますと、基本的に「1シーン」で一話扱いを目指しております。
「あの一話は短い!」と思われた方は、『一部=一話』、と考えて頂いた方がいいかもしれません。(『部』については後述)

作調というか、主人公視点の流れ・展開・解説等に関してもご指摘を頂きましたが、「主人公はこういうキャラ」である、という印象を抱いて頂けたのであれば「成功」だったな、と考えております。
「読み手」と一口に言っても色んな方がおられるわけで。「100人中100人に褒めて頂く」というのは相当ハードルが高く、私にはかなり厳しいかと存じますw

である以上、私としては(まずは)その半分、100人中50人には、「続きが出たら、また読んでみてもいいかな…」と思って頂けるような作品に仕上げて行きたいと考えております。




さて、「0話~11話」までが

「プロローグ(幼年編):基礎知識編(産業基盤)」

という事でしたが、ここから先、

「第一部(少年編1):内政編(領土開発計画)」 12話~

「第二部(少年編2):諜報/外交編(1)(全方位外交)」 19話~(予定)

「第三部(少年編3):諜報/外交編(2)(情勢変化)」 25話~(予定)

「第四部(青年編1):軍備編(波乱の前兆)」 32話~(予定)

「第五部(青年編2):戦争編(1)(暗殺計画)」 38話~(予定)

「第六部(青年編3):戦争編(2)(内乱勃発)」 43話~(予定)

……

と続いていく予定です。

構想通りに最後まで書ききれるかはわかりませんが、
完結目指して頑張ります。

以上です。




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*前書き*

作品内容に関する厳しい意見やご指摘は(賛成するかは別として)大歓迎です。
誤字脱字表現等の誤りなど見つけられましたら、突っ込んで頂ければ非常に助かります。

作品に関する意見・感想は歓迎ですし意見やご指摘には原則全て返信を書かせていただきますが、「荒らし」・「中傷」・「その他基本的に閲覧する人を不愉快にさせる目的で書き込みをされる方」は、放置もしくは削除依頼で対応します。

作品に関係のない書き込みはやめてください。

「気に入らなかったら削除します」と付けた上で、雑談掲示板等他の掲示板に書き込むべき内容を感想掲示板に書き込むのもやめてください。
単なる嫌がらせと全く変わりません。

私は『議論』をする為にこのサイトに来ているわけではありません。
また投稿掲示板と感想掲示板は議論をする為の掲示板ではないと認識しております。

この前書きを読んで不快に思われるのでしたら、どうか、このスレッドは無視してください。(これは「感想拒否」ではありません)




最後にもう一度。

作品に関係のない書き込みはやめてください。
大事なことなので二度(ry



[7837] 幼年期:(プロローグ、前編)
Name: カフェイン多め◆4b159315 ID:4070b9f6
Date: 2009/07/14 09:47
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<エピソード0> : 「嫌な始まりかただなぁ」
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昨夜の夢見は悪かったんですよ。 いやほんと。

アニメや漫画のキャラが夢に出てきてる時点でまぁなんというかアレだけど。

過去の記憶だか願望だか知らないけど、正直勘弁して欲しいorz


某アメリカの西部の切り立った岩山の上。

人質をとって立て篭もってる武装した山賊と、人質になってる裸の美少女。

どう見てもハルヒです本当にありがとうございました。

でもって救出にきたのがジャングルの王者夫妻ってどういうことなのさ兄さん。

その後ろを普通に着いて歩いてた自分が影の薄い事。

発言何にも無しだったぜおい。

よく分からないが急に崖の上に乗り込んだところで目が覚めた。 


6時27分。 まだ起きるには早いじゃないか、くそぅ。 貴重な睡眠時間が…

そんな事を思ってましたよ。

どーして今思い出してるのかわからないけど。








…走馬灯?


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うん。 なんかね、色々省略するんだが。

「あ、やばい」って最後に思った事は覚えてるんだ。

某半島の北側の国がさ、ミサイル撃ってくるってニュースになってたじゃない?

まぁ、自分にはかんけーねいや、と思ってた時期が私にもありました。

いや、普通に仕事だったわけですよ、その日も。 土曜なのに。


夕方頃だったかな。 外回り中だったけど某電気街を通ったわけです。

したらさ、なんか臨時ニュースが流れてるの。

うは、発射したのねー、馬鹿だなぁ、とか思ってたわけですよ。

で、大通りにですね、なんとも素敵な一団がいたのですよ。

「迎撃ミサイル発射を許すなー」「憲法9条を守れー」とかやっててね。

思わず吹いてしまった俺を誰が責められようか(藁

うん、好きなだけ抵抗せず撃たれればいいじゃん、とか思っててね。

はいはい乙乙半島に帰りな、そこ邪魔だ道開けろや、とか思いつつ横を通り過ぎようと…

…した時にさ、なんか音がするんですよ。 変な…音…



やだ…なにこれ…、と思って上見たら遅かったね。 うん。

火の玉が飛んでくるんですよ。

おいこらwミサイル本体は着弾するまで引火しないってことはこれ切り離した燃料ブースター?w

ミサイル迎撃班弾幕薄いよ何やってんの!wうわまてなにをするやめry


…結構余裕あったのなw俺w

てか、撃たれて死んで本望の連中よw巻き込むんじゃねぇw

こっちは普通の日本人なんだよw

んで最後の瞬間に「あ、やばいw」と思った所までは覚えてるわけです。 はい。










で。

ここどこよ?










どこよっつーか、なんか視界が霞んでるんですが。

体の感覚が鈍いというか、違和感満載なんですが。

まわりで、誰かが喋ってるような感じがするんですが、聞き取れません。

てか、息、息! 苦し…




















ォギャー




















なぜか赤ん坊でした本当にありがとうございました(何

泣くぞ! いや泣くことくらいしかできないけど。


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色々ぶっ飛ばして今日で3歳になりました。

異論は認める、ってかむしろもう好きにしてorz

ぶっちゃけね、特にできる事がないので本ばっかり読んでましたよ。 字を覚えてからは。

裕福な家のようで、広い書斎…倉庫(?)に文献が山ほど。

いやまぁただの「裕福な家」どころじゃなかったんだけどね。


でだ。 生まれてから(?)今までに色々見たわけだが…

周りの人の服装、建物設備や食べる物で判断すると、どう見ても一つの結論に至る。

…ここ、現代じゃないんですがwwww

そんな事に気がついたのが1歳になる前。


おやっさんが「魔法」とやらを使ってらっしゃるのを目撃してしまったのも1歳になる前。

おやっさんが「伯爵」と呼ばれてる事にびびったのも1歳になる前。

仕方ないので絵本っぽい物を参考にして勉強始めたのも1歳になる前。

それを見つけたおかんがびっくりしてたのも(以下略


長いんでまとめると、生まれてこのかた癇癪を起こすこともぐずる事も無く使用人も両親も驚いてはいたがすくすくと育っていた子供が、書物に興味をもったようなので乳母さんが絵を見せながら読み聞かせていたら、生後半年になる頃には書かれてる文字を朗読してました。 意味も理解してました。 で、皆びっくり仰天。

もう文字が読めるの?! 言葉をしゃべれるの?! コイツ何物?! Etc…、という事らしい。 

いやまぁ舌がなかなか回らなくて疲れるんですが、中身は大人だしねぇ。


ちなみに、おむつはマジで泣きそうになりました。

このプレイはさすがに(ry

何も知らない子供だからイインダヨw

中身大人でこれをやってたら、そのうち絶対目覚めてしまう気がしてならないんですよ。

うぼふぉ!


まぁなんだかんだで1歳になって、2歳になって。

自分で色々動けるようになってからは、暇な時はずっと文献ばっかり漁ってたわけですよ。

魔法の練習? めんどいし、金の無駄ですよ。 精神力だけではなんともかんとも。

家庭教師を頼もうかみたいな話が聞こえてきた気がするがそんなの関係ねぇ(ry


神童? 天才? なにそれおいしいの?

んなものハタチ過ぎればただの人ですよ。

いやまぁこの家の跡取りなので嬉しいってのはわかるんですが。

あと、いくら盛り上がっても寝てる子供の横で夫婦の営みは止めて下さい。


さて、そこそこ…どころじゃないが、広いこの家に、両親と自分、あと使用人が10数人。

多いわぁ。 メイドさん万歳。

家というか、城…まではいかないか、館と言う方が適切かもしれない。

設備はいわゆる中世の地方領主の館ですよ。

現代っ子にとっては新鮮だけど不便です。 色々と。


まぁそんな贅沢言ってもあれなんだけど。 いやほんと、暮らしは贅沢なのですよ。

正直、地球でいう中世の知識と比較しても、かなりの贅沢されてますよこの一家。

食べ物は特に良い材料つかってますね、ダンナ。

お乳⇒離乳食⇒普通の食事ヤッター! …と思った頃もありました。

うんなんというか野菜は美味しいんですよ。 完全無農薬有機栽培だからねぇ。

ただ、味付け雑だなぁ。 調理法も、よく言えばシンプル。 悪く言えば、芸が無い。

そればっかりじゃなぁ…とは思うものの、この辺は現代に比べれば仕方ないか。

調味料も料理法も中世だしねぇ。


ただね、そんな事よりも大きな問題(?)はあるわけで…




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<エピソード1> : 「あれこれちょっとまずくね?」
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うん。 前述のとおり、3歳になったわけですが。

問題点(?)を調べてる間にね、ちょっとした事件が起こったのですよ。












両親事故死。

ちょwwwwwwおまwwwwwwww


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うんなんというか、事故というか、十中八九殺されたっぽいんだけどね。

「雨の日に、王都に向かって山道を馬車で移動中、崖崩れに巻き込まれて死亡」

というのが一応の公式見解のようなのですよ。


それを伝えに来たのが、自称「親戚」のおっさん。 おやっさんの弟らしい。

「ふん、こいつが兄貴の子か」

なんて言ってますね。 初対面にしてはあまり礼儀がなってないようで。

うっせぇよこの腐れデブ。 キモい面晒してんじゃねぇ。

つーか今までこの館に来たこともなかったのに突然来たってことは、財産目当てか?

てか兄弟仲が普通なら絶対今までに見た事あるはずってことは、こいつ犯人じゃね?


「お初にお目にかかります、伯父上」

「フン」


死んどく? ねぇ死んどく?

なめてんのかこのXXXX。 そのXXXXをXXXXしてXXXXXすんぞコラ。

だいたいXXXXXXXXがXXXXXXXX(以下略


まぁこのおっさんの言ってる事を簡単にまとめると、

『伯爵(うちのおやっさん)が死んだので、地位と財産はこのおっさんの物になるゲヘヘヘ。 お前は(俺は)追い出してもいいんだが養子にして面倒みてやる。 ありがたく思え』

って事らしいね。


馬鹿だねぇ。 こいつ。 いやマジでもぅなんともつける薬が。

3歳のガキなんぞどうにでもなると思ってるんだろうけどな。

ぶっちゃけこっちはこの国の法律に関する本もとっくに読んでるわけで。

相続権の上位にあるのは、直系の息子…つまりまぁ俺だ、って事はばれてるわけですよ。

で、もし他の貴族にそれ突っ込まれたらこいつは言い訳に困る。

ということは、「自分より上位の相続権を持ってるガキ(俺)」をこっそり始末しようとしてるのはバレバレというw


まぁなんというか、このバカなおっさんには呆れるものの、多少まずい現状なのは理解してしまったわけですよ。

3歳で人生卒業はちっと早いしねぇ。

というか、のんびりはしてられない。 

両親の葬儀には他の貴族の弔問客が集まるわけで。


その時点で俺が生きていたらこのおっさんにとってはあまりよろしくない…のか?

いやまて、このおっさんとしては、どちらでもいいのか。


1.俺を相続者として発表し、自分は「(俺が成人するまでの)後見人」として公表し、隙を見て俺を暗殺。

2.他の弔問客が集まる前に俺をこっそり殺し、これまた事故死に見せかける。相続順位はおっさんが一番上にくるので、おっさんが財産と地位をゲット。


どちらかというと2のほうがリスクは高いが、1と断定するには情報が足りない。

まぁどっちにしろバッドエンドなので、回避措置を取る事が俺の脳内会議で決定されたわけd(ry


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という事で、調べて見ました。

いや一緒に着いて来てた人や使用人に聞いた内容がほとんどだけど。


おやっさんの弟(おっさん)23歳独身。 先日13度目のお見合いに失敗。

臭い。 趣味悪い。 最近平民の商売女に入れ込んでる。

おやっさんが先代から相続した時に、伯爵領の一部(片隅)を与えられている。

政務にはあまりご熱心でない。 王都の高利貸しに借金がある(らしい?)


どう見ても有罪です本当にありがとうございました(ry

まぁこの時点で方針は決まったわけで。




「な、なんでしょうか坊ちゃま」

うん。こっそり呼び出して悪かったね執事さん。 名前は…何だっけ。 まぁいいか。

「様子はどうだ?」

「はっ。申しつけられました通り、別室にご案内後、例のお酒をお持ちしまして…」

「もう効果は出ているか?」

「はい。つい今しがたお休みになられました」


ふむ。念の為と思って指示しておいたが、上手くいってるようで安心。

ちょいちょい、と手で合図してみる。 執事さんが耳を近づける。

その耳に、一言囁く。

目を見開く執事。


「そ、それは…」

「いいか、情報によれば『P-------(調べてきた内容を多少脚色済)』という事だ。 
間違いない。 我が父母を無きものにしたのは、残念ながらわが叔父なのだ」

「な! なんと…」

「いいか、これは決して許されることではない。 そして、私には父上の仇をとる義務があるのだ」

「で、ですが…」

「頼む。 今まで当家の禄を食んできた者の中でも、最も信用しているおまえにしか頼む事のできない事なのだ」


土下座してみる。


「ぼ、坊ちゃま、おやめ下され! …わかりました。私めが」


ふっ。 勝ったな。 甘いぜじいさん。

もちろんニヤリ顔は見せませんよ?


「ありがとう。 本来ならば私自ら手を下したいのだが…」


悔しそうに自分の体を見る演技演技。

まぁ3歳児じゃな。


**************************************************


おっさんに着いてきた連中からは離れた個室に案内させた。

ちょっと眠りが深くなるお薬を混ぜたお酒(母の使用していた睡眠薬…化学合成されたものじゃなく、何かの植物を乾燥させて粉末状にしたものっぽい)をたっぷりと運ばせておいて、準備完了。

もし俺が成人していたらおっさんも警戒したかもしれないが、所詮3歳児と見ていたからだろうか。 

しっかりと飲んでくれたらしい。


執事のじーさんを焚きつけてやらせようとしたことは、温めのお湯で濡らした布を奴の顔に押し付けて始末する事。

ただの睡眠なら起きてしまうが、アルコールと薬両方併用で酩酊してる状態ならいけるはず。


無論、俺も着いていく。

万が一裏切って向こうに取り入られたら終わりだし、仏心を出されても困る。

廊下に誰もいないことを確認して、素早くおっさんを隔離してある部屋に侵入する。 

向こうのお付きの連中は、この部屋から離れた広間に集めて酒をふるまっている。 

執事のじーさん以外のこの館の連中には、このおっさんの機嫌が悪いので部屋に近寄らないように、と伝えてある。


おっさんベッドで高いびき。 見苦しい。

とっとと始末始末。

さー、準備万端はいどうぞ、となって、このじーさんやっぱりなかなかあと一歩が踏み出せないようだ。 

ちっ、使えない奴。


「…もういい。こうなれば、私自ら…」


そう言って、隠してた短剣を取り出し、両手で握り、ゆっくり近寄っていく。

さぁこい。 ほら、早く。 子供に人殺しさせるのか?


「お、お待ち下され、坊ちゃま、そんな事をしたら、坊ちゃまも罪に問われ…」

「だが、他に方法はない。 今しか機会は無いのだ。 私も罪に問われることは覚悟の上。 
できれば一族の名誉のためにも伯父上の病死として公表したかったが、やむをえまい」


振りかぶる。 ほら、はっやっく! はっやっく!


「ぼ、坊ちゃま…お待ちを。 私が…私めが致します。 少々お下がりくだされ」


やっと覚悟決めてくれたかよ、おせーよ。


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まぁその後は完全に呼吸も心臓も止まったのを確認してから、こっそり脱出。 

翌朝、メイドに見に行かせて、死亡してるおっさんを発見させた。

「お酒を飲んで寝ている間に、急な発作を起こしそのまま死亡」と公表。

うちの両親の葬儀とまとめて行った。 ちょうど弔問客の手配はおっさんがやってたしね。


しかし、この後大変だなーと思っていたら、最初にきた弔問客が、別の親戚なのですよ。 

こちらは俺も会ったことのあるじーちゃん。

渡りに船とばかりに(編集した内容の)事情を説明し、俺の後見人になってもらい、葬儀全般を仕切ってもらった。 

なんたるラッキー。 これはやはり日ごろの行いが(ry


このじーちゃんは以前うちに来た事がある。

その時本読んでた俺に驚いていたが、色々話をしているうちに気に入ってもらったような感じでねw

たまーに珍しいお菓子だの本だのを送ってきてくれるという、素晴らしいじーちゃんなのですよ。


幸いうちの領土と隣接してることもあって、しばらくこっちにいて面倒を見てくれるそうだ。 

なんともありがたい話である。

というかこれはいい機会だと思って、前々から調べていた「問題」についての対処を手伝ってもらう事にした。 


…たぶん手伝ってくれるさ。 手伝ってくれるよね?w




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<エピソード2> : 「ウホッ! いい畑!」
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さて、問題っていうかね、まぁ亡きおやっさんの見てた書類なんかみたら…

うあわぁ…やだ…なにこれ…と思った例の件だけども。




いつ反乱おこされても文句言えません本当にありがとうございまし(ry




いや、領内の村々からの税金ですよ。

すべての農作物の収穫の半分。

農民の所有している畑での仕事とは別に、領主の所有している畑での労働。

領主が所有している森に立ち入る場合に支払う税金。
(薪・山菜・動物の持ち出しについても別途税金)

人頭税。(住民税みたいなもんか)

新頭税。(子供が生まれると納めなければならない…おいおい)

領内で商売をする場合の、売り上げの一部。(消費税みたいなものではある)

この地方の特産品を一定の数量収める。(物納もあるのか)


それ以外にもあるわあるわ。

領主の命令による工事全般にも駆り出されるし、戦争があれば兵役として駆り出される。

家族が死んだら、遺族はそれに対して税金(死亡税)を払わなければいけないし。

うちの領土じゃ無いみたいだが、「初夜税」(結婚時、花嫁のバージンを破る権利にかかる税金。 ちなみに払えない場合、強制的に領主が美味しく頂く)なんかも一般的なんだよなぁ近隣でも。

そのあたり地球の中世とたいしてかわらないのねww 改めてすごい時代だなぁと思う。


現代でこんな事やれるの北朝鮮の『 将 軍 様 』くらいしか思いつかないww


まぁあれです。

ぶっちゃけ、中世では普通だったといえばそれまでなわけですが、俺が被支配民だったらマジで反乱起こすね、いやほんとw 

幸いここ数年はそこそこ豊作だったからいい物の、俺が生まれる数年前にはうちの近隣でも反乱おきてるじゃないですか。 そりゃなぁ…。


男も女もフル動員で何でもこなして仕事をしないと生活が立ち行かない農村で。

学校制度もなく、子供も7才になれば「小さな大人」として大人と混じって単純労働を行なう社会で。

老若男女すべて働かせて、その蜜だけを吸う「貴族」は、美味しい商売ですよ。

いや本当に。


当然、恨みは買います。 当たり前。

やりすぎると、当然反乱が起きるわけですが、そもそもの「やりすぎ」の基準が現代とは比較にならないという… 

搾取される方にとってはまぁたまったもんじゃないのですよ。

死活問題なんだから、当然の話。 

飢え死にするよりは手に武器を持って徒党を組んで集団交渉(ストライキじゃなく暴動、酷くなると反乱w)へと走っちゃうわけだが。

反乱起こした時点で反乱の首謀者は死刑が確定するわけだから、死に物狂いでこっちを殺しに来るわけですよ。


まぁともかく、まだ死にたくはないわけで。 その為には、改革しなきゃならない。

このままだと絶対、遠からず反乱おきるんですよ。

魔法があるんだから(無くても、兵を差し向けて)鎮圧すればいいとか考えてるやつは馬鹿。

国力低下は避けたいのですよ。 一応領主ですから。

この領地の富を生み出す源泉は、この領地の領民なのです。


国が栄えるという事は国民が栄えるという事。

ボスだけ肥え太って領民はガリガリになって飢え死にするまで搾取しても、「問題ない(キリッ」と言い切れる現代共産主義とは違うのですよ。

(*マルクスの提唱した「共産主義」(成熟した資本主義社会の次のステップとしてあるべき社会)とは、そもそも「成熟した資本主義社会の次の段階」として提唱された物であった。 
これに対し、独裁者の権力強化を目的に造られたソ連型以降の共産主義においては、そもそも「社会主義」の基盤となるべき資本主義が存在する前の段階の社会において、階級の分化と搾取を目的に(一部の特権階級が富と権力を独占し、民衆を支配する目的)造られた考え方である。 
旧ソ連・中国共産党・北朝鮮などはその典型例であるが、その目的上「個人崇拝」を掲げており、本来の共産主義(完全民主主義)とは似ても似つかない別物である)

まぁ地球の歴史にもれず、この世界でも(「市民革命」までは、まだまだ遠い道のりだが)被支配民の暴動・反乱や農奴の逃亡は深刻なようで。

んでもってそういった元農民が盗賊なんかに変わってるもんだから、治安はお世辞にもよろしくない。

早急にやらなきゃならん事があるわけです。


幸い、この世界では今から春。

まずは今年の収穫を安定させる方策を取りつつ、かつ農民の不平不満をうまーくコントロールしなきゃいけないわけですよ。 これ重要。


すべては、俺が幸せに長生きするために!(何


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まずは、領土の現状を確認するところから始めたわけだが。

うちの伯爵領は、大きく分けると5か所。


北部:
面積の7割が森。 2割が耕作地。 村の数は4つ。 人口は約500人。
他領との国境は森林。 人口はやや少なめ。 農作物の収入も大きくはない。
山がちな分、大規模な開墾はやや難しい。 
小麦(少)、野菜(中)、その他雑穀(多) 治安(並) やや貧しい地域といえる。

東部:
面積の2割が森。 3割が耕作地。 村の数は5つ。 人口は約600人。 
他領との国境は川。 人口はやや少なめ。 農作物の収入も大きくはない。 平野で未開拓地がそれなりにあるが、西側の地域は耕作地域なのに対し、東側の湖沼や河川周辺域に未開拓区域が集中している。
小麦(中)、野菜(中)、その他雑穀(中) 治安(やや悪) やや貧しい地域と言える。

西部:
面積の3割が森。3割が耕作地。村の数は5つ。人口は約550人。
他領との国境は山。 人口はやや少なめ。 農作物の収入も大きくはない。
小麦(小)、野菜(中)、その他雑穀(多) 治安(やや悪) やや貧しい地域と言える。

南部:
面積の2割が森。 2割が耕作地。 村の数は4つ。 人口は約650人。
他領との国境は海。 人口はやや少なめ。 農作物の収入は少ない。 海産物による収入(小)。
小麦(小)、野菜(中)、その他雑穀(多) 治安(並) やや貧しい地域と言える。
特記事項:小さいが漁業以外に使える港がある。

中央部:
面積の2割が森。 4割が耕作地。 村の数は6つ。人口は約800人。
他領との国境無し。 平野部が多いが、北側を中心に山がちな地域に未開拓地が多い。 人口はやや多め。 農作物の収入やや多め。
小麦(多)、野菜(中)、その他雑穀(少) 治安(やや良) やや豊かな地域と言える。
特記事項:領主の館がある。


うはwwwww

分かってたことだけど、基本的に貧乏ジャンw

でもいままで贅沢してたってことはその分領民の負担はあったわけで…

おkwwwwwまだ死にたくないので改善します!www

しますとも!民主党とは違うんです!口だけじゃないんです!www

あsdfghjkl




まずは現状を把握しつつ、とりあえずは対症療法ですかねwwwww




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<エピソード3> : 「中世ド田舎$ミリオネア」
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おやっさんwwwww

なんですかこの備蓄資金や物資の少なさはwwwww










もうやだorz


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まずね、農業。

やっぱりこの世界の主力作物は小麦なわけですよ。

一般的に(*一定以上の水準の所得のある民衆の)主食とされるパン用ね。

とはいえ、現代で栽培されてるものみたく品種改良なんてされてないわけで…

耕地面積当たりの収穫量確認して、うはおkwwwwwwとか叫んじゃったわけですよ。

(同じ量の種籾から収穫できる小麦の量は、1000年前の品種と現代の品種では数倍の差がある)


正直、ハンパ無く少ない。

ってかやや豊作の年でこれですかアンタ達なんというかすごい時代だなw

よくこの課税で社会が成り立ってるもんだと感心するわけですよ、本当に。

まぁ領主が裁判権持ってて、無理やりにでも徴収できるっちゃできるんだろうけどねぇ。

逆らうと即死刑な社会だし。


だからまぁよっぽど追い詰めない限りは爆発はしないんだが…

さすがに、天候やもろもろの理由で飢饉になると、一発ですよ。 

飢え死にするくらいなら…って誰でも考る事は同じ。

いい時に生まれたな俺。 うちの領は今のところ大丈夫だわw


しっかし、平民に生まれなくてよかったは…

すべての民がパンを食べる? んなわきゃない。

貧乏人の口には小麦は入らないのですよ。


しかしなぁ、この地域の気候的に農業生産高を伸ばすには、このままじゃ無理なのですよ。

いわゆる「三圃農法」に切り替えるのが一番手っ取り早くかつ現実的とは分かってるんだけど。 

だけど!

あれってば1年目から収入が大きく伸びるかというとそうでもないわけで。

むしろ(極めて短期的には)減るんですよ、税収。

でもって、かかる費用もそれなりに必要だしなにより資金の備蓄が無けりゃ無理無理なのですよ。

つか、税率そのままでやろうとしたらまず反乱おきるね。 反乱。 これ絶対。



* 三圃農法(民明書房「世界の農業」より)

耕地を冬作・夏作・休閑(放牧地)の三つに分け、一年ごとにローテーションを組んで使う耕法。
この農業制度によって、播種量に対する収穫量の割合(収穫率)は大きく引き上げられた。
(中世では収穫した穀物から来年の種籾分をとっておかねばならない割合が高いので、土地の生産性が上がるにつれて養える人口は大幅に増えた。収穫量の2分の1を蓄えておく必要があるとしたら、収穫量が1.5倍に伸た場合、養う事が出来る人口は計算上2倍に増える。
注:収穫率が2、つまり収穫量が播種量の2倍の場合。 実際の収穫率は、気候などにより変動したが、概ね3前後だった)



しかしまぁあれだ、いずれにせよ税率は下げなきゃいけないわけだけどさ。

蓄えさえありゃ悩まないのよ、無い袖は振れないorz

支出を抑えるのは当然にしても、限度があるのですよ先生。


だいたいあれだ、こーゆーお話は大抵、現代人の知識を生かしてさw

画期的な商品を売りさばいて大儲け、ってなるのが筋でしょうよw 

元手もない、技術もない、街道だの港湾だの交通ルートやインフラも整備されてない。

(港は一応あるが、大型船はとても利用できるような代物ではない。
ほとんど漁村に毛が生えた程度の代物)

というかそもそも領主の館周辺ですら畑ですよw 

商業の恩恵に預かれてないよこの田舎はw


まぁ、抱えてる人口が約3000の田舎の領地じゃこんなもんなのかも知れないがな…

主要なこの国の交通ルートからも外れてる上に、周囲に大きな領地を抱えてる貴族は無くて。

小さい地元勢力ばかりだから、交易商人なんてほとんど寄り付かないわけですよ兄貴!

うははははh


泣くぞ!


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てか、抱えてる人口3000のうち就労人口が2800…多いな意外と。

ああ、学校なんてないからな。 一定年齢以上の子供は労働力扱いだからか。

平均寿命も低いしねぇ、つか就労人口の9割以上が農民なのね。

製造業? サービス業? 何それ? って感じなのですよw

いわゆる城下町(日本的発想だなおいw ヨーロッパで言うなら城塞都市)が無いからねぇ。

商人も職人もいませんよorz


まぁもっとも、中世といってもわりと前期のレベルのようで。

銃とかまだ存在しないのですよこの世界。

ってことは、この世界の農業工業の技術力もだいたい予想がつくわけですよ。

現代人ならだれもが知ってる品物を作ろうにも、その為の基礎的な技術力すらないこの世界じゃ~ぽいずんっ!(違

つまり、大がかりな事をやろうとすれば、お金がかかるわけですよ先生。

でも、今現在資金の貯えがほとんどないわけですよ先生。

orz


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んーむ、そもそもいわゆる「都市」がまだほとんど無いわけですよこの世界。

地球のヨーロッパだと、11世紀~13世紀だったかな?

農業生産の増大が経済力の上昇に繋がって人口が増加して、多くの都市が成立する背景になるわけですが…

まだこの世界はその時期に入ってないわけですよばっかやろぅorz

ちなみにこの国の人口は約80万人。 王都はなんと人口二万人の大都市(笑)

それ以外の人口5000人を超える都市がなんと20もあるのだ!

…8~9世紀の北フランスかよorz


とりあえず、じーちゃんに相談だ(ry




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<エピソード4> : 「目的は手段を正当化する(笑)」
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うん、忘れていた。 すまない。

おっさん(w)の持ってた土地も俺が相続するから多少増えるのか。

南西部だねぇ。 たいした土地じゃないが…


編入領(南西部):
面積の3割が森。 3割が耕作地。 村の数は3つ。 人口は約350人。
他領との国境は草原。 人口は少なめ。 農作物の収入も少ない。
小麦(小)、野菜(中)、その他雑穀(多) 治安(悪) 貧しい地域と言える。


お荷物じゃねぇかorz


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カモがいたんですよ。 カモが。

後でじーちゃんに色々と相談しなきゃならんわけですが、これを頂かない手は無いのさ!




という事で。

会ってみましたよ商人に。 高利貸しに。

おっさん(w)の借金の件についてさ!wwwwwうぇwwwwwww


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ちなみに、この国の貨幣の単位は…

銅貨100枚は銀貨1枚、銀貨100枚は金貨1枚。 金貨一枚は銅貨10000枚。

この国の平民の年収(平均)がだいたい銀貨20枚、銅貨で2000程度。

うちの領の平民の平均だと銀貨15枚、銅貨で1500程度。

地方は厳しいのですよ。

(*ちなみに、貨幣の鋳造権は王家が有しており、他の諸侯は造ることができない。 
金銀等の希少鉱物資源の相場の変動によってこの貨幣体系が崩れる事を警戒し、金銀に関しては国内で産出する全量を王家が管理している)


まぁこれはあくまで今の相場で単純計算した場合さぁ。

基本は農作物の物納なのですよ地方領主には。

それが収穫の半分で、残りを売った中からそれ以外の税を納めなきゃならない。

残りませんよ農民の手には。

農民相手に商売やってる連中もずる賢いというかあくどいというか…


現金で納めなきゃならない税金があるから、農民は自分の手取りの作物を売らなきゃならない。

それがわかってるから買い叩くわけですよ。 もう足元見まくりです。

それで足らない分は身内に体を売らせるなり…

それこそ娘だの息子だのはたまた嫁だのを奴隷として売らなきゃいけないと。

それでも、領主に反抗したら死刑だからね。 

ほんと身分制度のある国っつーか時代はきついですよ先生。


そもそも、金額に換算できない税も多いわけですよ。

うちの領地の場合、最終的には農民の収入の80%程度が税金として納められる。 
(労働税その他もお金に換算した場合の実質税率)

そして大半の農民の手元に残るのは借金の証文ばかり。

そうして身内の身売りだけでなく、自らも「奴隷階級」に落ちていく平民…農民も後を絶たないと。


もう農民泣きまくり。 そんな世の中です。 

貴族に生まれてよかったwwww

ちなみに、(うちの領の場合)計算上は金貨換算で350枚程度、銀貨換算で35000枚程度が収入になる…かと思いきや、なかなかそんなに甘くない。

そのうち半分近くは王家に上納ですよ。



元締めが吸う汁は限りなく甘いのが世の中です。

いつの時代も変わりません。



しかし残りの予算も相当あるはず…と思ったら…

おやっさん何やってんですかこれwwww 

贅沢な生活する分以外の資金を、貯蓄にほとんど回さずに購入してたわけさ。

絵画に彫刻…一つが金貨数枚~数十枚の代物が多数…




おやっさん。

アホですか…


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さて、アッホーなおっさんが作った借金。

金貨換算で20枚。 銀貨だと2000枚。 銅貨換算なら20万枚…

もう馬鹿かと。 死ぬの? いや殺したけど。

よその地域の商売女に貢いだとかアホすぐる。


でもって、アホのおっさんの領地を相続したのが貴族とは言えガキって事で、なかなかにニヤけた顔をしてらっしゃるようですよ。 この高利貸し殿。 こちらを丸めこむ気満々のようで。

伝聞系なのは、まだ俺は姿を見せてないから。

うちのメイドさんに相手をしてもらってるのですよ。

しかしまぁどうやら使い道をわかっていて貸したというか、これはもしや…?と思ったわけで。 

まぁなんというか、ピンときた。


「今日は忙しく会えない。 明日の朝に会見の場を設ける。 宿舎はこちらで用意する」


旨を伝えて、例の個室に入れておいた。

そしてメイドを一人呼び、食事を用意してやった後俺の所に来るように伝える。


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「さて…お前、父上と床を共にしていたな?」


いきなりぶつけてみました。 おー、メイドさんうろたえてる。

無論、正妻には内緒にさせておやっさんが遊び相手にしてた。

っつか命令にしろ誘いにしろこのメイドには断ることなんかできなかったわけですが。

まぁそんな裏事情は置いておいて。


うろたえながらも必死で、そ、そのような事は…と言っていたメイドだが、俺が聞いていたおやっさんとの会話の一部を口に出してみると、泣きそうな顔をして謝りだした。

うん。 悪いのは100%うちのおやっさんだったとしても、貴族のしかも既婚者と平民が密通していたというのは、その貴族の一族にとってはかなりの恥になるわけで。

しかも、死んだ領主との情事で、それを知って問い詰めてるのがその息子で次期領主だからねぇ。

そもそも裁判権があるのはこっち(俺)だから、ぶっちゃけ死刑にされても文句は言えないわけですよ。

まぁ、文句言った時点で「反抗した」事を理由にもっとむごい事を押し付ける貴族様も多いわけですが、ねww


真っ蒼な顔をして、泣きながら頭を地面にこすりつけて必死に謝罪というか命乞いをしてる、まだ若いメイドさん。

鬼畜ゲーならこの後の展開一直線なわけですが、あいにく当方は当年とって3歳。

んなことぁできない。 物理的に。 ちょっと興味はあるが(マテ

それに、そんな事に使う為に呼んだわけじゃないのですよ。


しばらく「貴族とは」というまぁこの時代の常套句を使って責めた後、前を向かせ、命令する。

「………」


それを聞いて目を見開くメイド。

「えっ!? そ、そんな…」


いやなら死刑でもいいんじゃよ?(意訳)と遠まわしに言ってみる。

無論このメイドに選択の余地は無いのですよ。


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夜も更けて、今夜は寝るか…と思っていた矢先。

酒を持って入ってきたメイド。

それを見て驚いている商人の男。


む、胸元が?!
なんだと…酌をする?い、いやなにを仰られる。 あ、いえ魅力が無いわけではなく…
い、いえ、そのような事を言われましても、い、いやその、胸が、当たって、あの、いや人は来ないといわれても、いやあのそうでは無く、え、ちょ、ああああの、そ、そのような事は、その………
こ、こらっ、そんなうわまてなにおすr














アッー!


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<エピソード5> : 「先手必勝ってどっかの偉い人が言ってた(ry」
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バタンッ!

深夜、突然扉が荒々しく開かれ、衛兵が部屋になだれ込んだわけです。

ベッドには(裸で)眠っていた商人と、この屋敷のメイド。

音に目を覚まし、一瞬してから真っ蒼な顔になる男。 慌てふためく女。


うん。

聞いた話から判断するに、意外と演技ウマイわこの娘。

ちなみにもし断られてたら、ニセ強姦事件でっち上げて「現行犯逮捕!」で逮捕・抑留して保釈金代わりに財産根こそぎ頂くつもりだったから(何

まぁ成功でも失敗でもどちらでも良かったんだけどねww






さぁ、予定通り借金踏み倒すか(ぉ


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問答無用で引っ立てて、牢屋にぶち込んだ後、報告が来ましたよ。 執事のじーさんに。

まぁ領主とはいえ幼児にそんな報告しに来ても困るけどなw


執事のじーさんブチ切れ。

まぁそりゃそうだ、うん、でもさ、処刑するわけじゃないんですよ。 

…いやいやまーまー落ち着いて。 こんな輩殺しても全く金にならないから。

それに、「あの商人の男と寝ろ」って命令出したのは俺だしね。 言わないけどw

メイドごと処刑するわけにもいかないし、さ。 アレはアレで今後も使うつもりなのでw


とりあえず朝まで牢に入れたまま放置。

もちろん男と女と別々ですよ? 下手に会話させないようにしないとw

妙な事を吹き込まれても口走られても、後々面倒だしね。

途中、一度牢の前にいる衛兵の所に執事のじーさんを行かせてね。

さりげなく「死刑に…」という言葉を聞かせてやったわけですよ。


男の反応は想像通りっぽい。

無論男が叫んでても無視、いや衛兵が静かにさせてるかw

まぁいずれにせよ現行犯で抑えた以上、こっちの思うがままですよ。

あの男が助かる道はほぼ無いってことはあの男にもわかっているはずで。

喪に服している貴族の館で、そこの使用人に手を出してちゃぁね。

(まぁ完全にこっちから仕掛けたとはいえ)発覚したら一巻の終わりさぁ。

あのメイドも、「失敗したら死刑ね」と重ねて言っておいただけあって、完璧に役目をこなしてくれたわけで。

うん、ナイス演技。 女こえぇwwwwめっさこえぇwwww


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な、なぜだっ! 何故こんな事にっ!!!
ぐぅぅぅ…まずい、まずいぞっ! 
だ、大体あの女がおかしかったのだっ! 突然あんな…あんな、乳を、いや、誘惑を……あああああ! 畜生!あの女! いいケツを…違うそんな事はどうでもいい!
問題はこの後だ! このままでは…ん?
衛兵が…誰だ?誰と話している? この館の執事か?


「…喪に服しているこの時に…」「…言語道断…」

「…伯爵家に対する侮辱…」「…二人とも死刑…」


ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっ!!
まずいまずいまずいぃぃぃぃ! 
なんとか…何かないか何か…!
衛兵を買収するか…?いやしかしこの館から抜け出せても周りは…ぬぬ…


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普通に考えれば貸し手の商人の方が立場が上なんだけどねぇ。

ただ治外法権というか領事裁判権というかw こっちが一方的に裁けるんだよねぇ。

自分が上の立場なら止まらない~な現代の共産党政権みたいなものですよ。

この時代なら違和感無いなww独裁政権ww周りも全部独裁政権だからwwwww


しかし実際の話、この高利貸しの男処刑すると色々とまずい事になるかもなわけで。

地元の商人ならともかく王都の大店の商人だと、政治的にも色々と繋がりがある場合も多いしねぇ。

金貸しは特に。

こっちの押さえている流通網が無いのが、こちらのウィークポイント。

今後商人がこの地域に立ち寄らなくなると長期的には損害が大きいわけさぁ。

ただ「こっちに本当は殺す気が無い」事を気づかれちゃまずいわけですよ。




さて。 朝になったという事で。

一芝居打ちますか。


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もう夜が明けてから数刻。
やっと牢の前に複数の人影が現れたと思ったら、子供…………!?
いかん、頭が鈍っとる! あれはここの新しい領主様だ、領主様!
しっかりしろ!ここでなんとか説得できなければ、ワシの命は…


「言い残す事はあるか?」

「!!!!」


な、んあ、なんて、なんて目つきしてやがるこのガキ!
こいつ本当にワシを殺す気か…!


「りょ、領主様! これには 「言い訳はよい! 領内全ての民が我が父母の喪に服している事を知らぬはずは無かろう!」 ぅ……!!」


まずいまずいまずいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!
な、何かないか何か! くぅぅぅぅっ!
あ、いや、まって、待って! 行くな、ちょっっっっっ!!


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後ろから、頭のてっぺんから飛び出したような声が聞こえるわけですがwもちつけw

まぁこんな感じでいいんでない?余計な情報は与えず、とな。

後は、執事のじーさんに汚れ役を演じてもらって一件落着なのさぁ。

保釈金名目で例のおっさんの借金分にサインさせて。

後は亡き領主の墓前に自主的に寄付金を納めさせればいい感じw 


無論あの女は別方向から領外に出させるわけですよ。

この領内に置いとくわけにはいかないが、消すわけにもいかないからねぇ。

周辺各領の情報を集めさせる役目と思えば一石二鳥という事で。

スパイの集める情報の9割は、市井から集めるものなのさぁ。

常識だけど。 経済目的の場合特にね。




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<エピソード6> : 「富国強兵って(使い勝手が)いい言葉だね」
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なぜこうなってしまったのか、と男は考えた。

そう、そもそも自分は借金の取り立てにこんなど田舎まで来たはずなのだ。



今まで何人の男達をこのやり方でハメてきたか、もはや覚えていない。

カモ…頭の弱そうな下級貴族を、うまいこと乗せて色街に…あらかじめ手を回してある店に連れ込む。

その店でまず自分が大金を湯水のように使う(実際は後から回収するが)。

女達に囲まれてサービスを受けてしまうのだ。 無論演技だが。


頭の弱い、女に縁のない、しかし金はある男を、そこからうまく誘導して金を使わる。

その度に女達を順にその男の周りに行かせる。

嫉妬心と劣等感、そして貴族様のプライドとやらを巧妙に組み合わせればいい。

あとは放っておいても金を湯水のように垂れ流す馬鹿な男が出来上がる。

当然、金が切れそうになると、証文にサインさせて貸し出すのだ。 それが本業なのだ。


そして、馬鹿な男の領地に直接回収に行く。

年貢(領民からの物納品)を差し押さえ、買い叩けば、利益は数倍に跳ね上がるのだ。

無論、貴族連中は商人を殺したりはできない。

こちらに落ち度がないのであれば、借金取りを殺すなど貴族としての名声に大きな傷がつく行為なのだ。


そう。 こちらに落ち度が、なけれ…ば…………



(ああああああああっ!!!! 畜生畜生畜生っ!!!)



男とて馬鹿ではない。

膨大な保釈金のサインと引き換えに釈放され、死の恐怖が遠ざかってから冷静に考えてみると…

当然、気がついた。

自分は、はめられたのだ。 

今まで自分がはめてきた多くの馬鹿な貴族達のように!! 女を使った罠にっ!!



(畜生っ!! 大赤字…だ…)



金貨で180枚。

それが、男の命の対価だった。


今回のターゲット…いつも通りの馬鹿な貴族…に抱え込ませていた借金、銀貨で2000枚分(金貨で20枚分)を差し引いても、裏商売で貯め込んだ今までの資金が無ければ首を括るしかない金額である。

もっとも、貯め込んだ金をすべて吐き出して、なんとか手元に次の仕事の元手が残る程度にしかならないが。



「…畜生っっっ!!!!」














足元の石を、思い切り蹴飛ばしてみた。

涙が止まらなかった。


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予想以上にふんだくれたわけでwwwwwwwwww

ざまぁwwwwwwwwww


腹抱えて笑っていたら、執事のじーさんに生温い視線を頂きました。

サーセンwwwwうぇwwww



まぁともかく一時的にとはいえ資金ができたわけですよ。

さすがに一括の支払いというわけではないけどなw

この領地の丸々1年分の収入(王都に上納する分を除く)に匹敵する巨大な収入なのですよ兄さん。


なんだかんだ言って、条件は揃ったわけですよ。

資金・絶対命令権・動かせる人間。

あとは時間との戦いですさ。

春の植え付けまでにねぇ。


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さて、まずは(後見人になってくれている)親戚のじーちゃんへの説明からですよ。

なにしろ、「三圃農法」の概念すらないわけで。

説明しましたよ懇切丁寧に1から10までねぇw



* 親戚のおじーさんでもよくわかる解説(民明書房『楽しい農業』より)

村ごとに耕地を3等分し、3種類の耕地…すなわち、【耕地A】・【耕地B】・【耕地C】とします。
この「3種類」というのは1年に1種類で、ローテーションで3年で1周します。
3種類の名称は、「冬耕地」・「夏耕地」・「休耕地」とします。

1.冬耕地では、休耕した年の10月頃に犂耕・播種する。
  翌年の7月下旬~8月上旬に収穫。その後家畜を放牧する。
  次の年その畑は夏耕地となる。

2.夏耕地では、3月に犂耕・播種する。
  8月下旬に収穫し、その後家畜を放牧する。
  その後は休耕地として翌年の10月まで放置される。

3.放牧の終った夏耕地は、
  休耕地として放置される。
  (ただし、除草のため数回耕す)

つまり、
1年目:
耕地Aを冬耕地として、小麦・ライ麦を収穫。 
耕地Bを夏耕地として、大麦・燕麦・豆類を収穫。 
耕地Cは休耕地。

2年目:
耕地Bを冬耕地として、小麦・ライ麦を収穫。 
耕地Cを夏耕地として、大麦・燕麦・豆類を収穫。 
耕地Aは休耕地。

3年目:
耕地Cを冬耕地として、小麦・ライ麦を収穫。 
耕地Aを夏耕地として、大麦・燕麦・豆類を収穫。 
耕地Bは休耕地。

上記の3年周期の二毛作を繰り返すことになります。いわゆる「三年輪作」です。
良い子も悪い子もみんなわかったかなっ?



手間はかかるわけですよ。 最低3年は続けて指示を出さなけりゃいけない。

でもって、成果が農業生産高に跳ね返るのは数年後の事なわけで。

他の税制とも絡めながら農政改革しなきゃならんわけですよ。

第一、 農法の改革だけじゃ不十分 まず、家畜の絶対数が不足してる。

ってーか何故に肉にして食ってたんだおやっさんorz


開墾にしろ犂耕にしろ、馬や牛がもっと必要なんだよぉぉぉlol 

足りてねぇ全然足りてねぇ。

開墾前の面積辺りで考えても、今領内にいる家畜だけだと1年目で全部使いつぶす事になっちまうわけで。

うん、元も子もないなw確実に反乱おきるべwwww

できれば牛よりも労働効率の良い馬のほうがいい、なんていう以前の問題じゃんorz 

人力で開墾だの犂耕だのマジぱねぇっすよwwww


加えて、農具だ農具。

最低でも鉄製の有輪犂くらいあれば作業効率がぜんぜん違ってくる…と思いきや。

そもそも鉄製農具は高価でうちみたいな田舎じゃ普及してないというorz

なめてんのかwwww


うんなんつーか、木製なわけですよ今使われている犂(スキ)。

最低でも金属製にしなきゃ改革もクソもないわけですよ。

車輪の2つある重い鉄製の犂刃を持つ重量有輪犂は、土を掘り返し通気や水はけをよくするための畝を作るのに必要なんですよってばよ!wwww


それに…水車と風車だねぇ。

現在、脱穀から製粉から井戸の水汲みから何から何まで全部人力。

こんな事やってるうちは産業なんぞ育つ余力が無いのですよ、労働力的に。

ただでさえ人口に余裕が無い領地だからねぇ。

ってかこれ、水路の整備だのなんだのあるけども、あれだ、設計図がねぇじゃんorz そこからですかwwww


あと蹄鉄ですよ蹄鉄。

馬や牛の蹄につけるアレ。 意外と馬鹿に出来んのですよ。 長い目で見た効率が。

そもそも野生で生きてる馬と家畜化してる馬じゃ環境がちがいすぎるわけで。

(*野生環境で主にエサになっている草・雑草・低木、はベータカロチン等の高い栄養価を持っており、野生の馬はその時の体調によって食べるエサを変えることで健康を調節してる。 家畜化した馬のエサは基本的には耕作で育てられた草だからどうしても栄養が偏ってしまう。 この栄養状態の影響を非常に強く受けるのが、全体重を支える足の先の蹄である)


元々野生の馬ってのは乾燥したステップ気候の地域に住んでた生き物なのですよ。

ただ、ここの気候は湿気が多く粘土質の地面という、地球でいう北欧から中欧あたりに近いわけで。

ここで生活しているだけで元々の気候で暮らしている個体に比べると蹄が弱くなる事は容易に推測できるのですよ。

まだ品種改良のそんなに進んでない時代だからねぇ。 現代の馬ならともかく。


しかもあれだ。 人間や積み荷を乗せた荷車や貨車、あるいは耕作に使われる馬。

そういった馬体に与える重量と負荷ってのは、野生の状態とは比べ物にならないわけで。

特に蹄の摩耗は本来より激しくなるわけですよ。

ちなみに、家畜化することによって、馬の足は本来よりも過度に大きく長く、そして脆弱かつ柔軟に進化してきたわけですが、それはあくまで足の話。

むしろ、余計に岩や小石や凹凸の激しい地表から蹄を保護する必要性は高まったのですよ。


だが…これも技術職なんだわなorz

蹄鉄の形状・重量・厚みは馬の足取りに著しい影響を与えるわけでね? 

日本でも明治維新以降、蹄鉄工は国家資格(技能)になるような技術だったわけで。

準近代までは必須の技能職人だったわけさぁ。

(*日清・日露の戦争で蹄鉄工の不足に苦しんだ日本陸軍は、第二次世界大戦では蹄鉄工を重視して蹄鉄技能を持つ人間に優先的に召集令状を出して掻き集めたのは有名な話)

うん。 つまりね…なんだ…王都やもっと領土の大きい大貴族なら抱えてるかもさ! 

でもさ、いないんですよこんなど田舎にはwwww




で、だ。

領民とウチの現金収入を増やすって点ではいわゆる「特産品」がてっとり早いんだが…がwwww



領内の特産品(物納されている税):

木材、小麦、大麦、燕麦、大豆、その他野菜

以上。




うはwwwwwwwwwおkwwwwwwwwww

完全になめてますね本当にありがとうございましたwwwwww


もうね、交易云々の問題じゃないんですよってばよ。

普通の税で修めてる農作物とほぼ同じじゃねぇかww

農業以外の産業が壊滅的なまでに存在してないという。

なんという罠。


いや、わかってますとも。

就労人口の9割以上が農業の時点で、ある程度覚悟はしてたが…が…!

これはひどいwwwwww



基本的には「自給自足」で足る…というか、それがギリギリ。

領内の繊維産業にしても、領内の人口に必要な量をかろうじて賄える程度の人数。

衣類以外の生活雑貨も、木製農具等の製造も、保存食も、何もかも。

技術畑に人が欲しくても、現在の労働人口構成じゃ始めることすらできないorz

総人口が今の数倍ならともかく、だ。




誰ですかさっき「条件はそろった(キリッ」とか言ったのはwwwwww

泣くよ?





[7837] 幼年期:(プロローグ、後編)
Name: カフェイン多め◆4b159315 ID:4070b9f6
Date: 2009/07/14 09:48
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<エピソード7> : 「人はそれをトカゲのしっぽと呼ぶ(ぉ」
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なんとか納得して頂きましたよ、じーちゃんに。

甘えたりすねてみたり甘えたりかっこつけてみたり甘えたり、あと甘えたり…

うん、なかなかの死闘(ですまっち)でねぇ、マジで泣きそうになりました。

というか後で1人になってから目から汗がこぼれちまったわけですorz


でも立ち上がったさ涙を拭いて。

泣くな俺、これは報酬の前払い、そう、じーちゃんへの孫(じゃないけど)からの報酬!

そういう事にする。 異論は認めない。


まぁもっとも、じーちゃんにしてもこの話はちゃんと旨味がある。

これポイント。 テストにでますよぉ。

突然ね、「この方法で収穫量どどーんとアップ間違い無し!これで勝つる!」なんぞ言われても。

そうそう肯けないわけですよ。 てか肯かれても困る。


だから、うちの領地を「実験場」にしてもらうのですよ。

うちで試して、上手くいけばじーちゃんも自分の領地に導入すればいい。

失敗したら、その失敗を被るのはこの領地だけ。


これが効いたね、間違いなく。

今後三年、年間の半分近くはうちの領地で過ごしてくれる約束ゲットですよ。

これが、第一歩。 先は限りなく長いのです。

そして果てしなく続く男坂よりも険しいのですよ。




だが…全ては俺の安楽な将来の為にっ!今は…雌伏の時っ…!

ざわ……ざわ……(AA略


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いや、必要不可欠なわけですよ、改革自体は。

ただ俺が旗振り役にはなれないわけですよ。

この館の外にでれば、基本的には「領主だけどただのガキ」なわけで。

命令すれば領民は動くさぁ、従わないとどんな刑罰が下されるか分からないからね。

ただ、領民にすればたまったもんじゃないわけで。

子供のワガママ、と思われたら後々に響くのですよ。


だから、今後当分の間は全ての命令はじーちゃんの口から出してもらうわけですよ。 うん。 

政策担当は俺。 ただし、実行する為に必要な命令はすべてじーちゃん。

このやりかたにはデメリットも大きいものの、今の俺にとってはメリットのほうが大きいわけですよ。


ぶっちゃけた話、(本人には一切伝えてないが)改革が失敗した場合に落ちるのはじーちゃんの名声。

俺の名声じゃない。 ここ重要。

もしそれで反乱が起きた場合でも、責任者(と思われてる)代表者を生贄の羊に差し出せばいいだけの話。

いやもちろんリアルに差し出すわけじゃないですぜ? 

名前だけ出して、本人には無論脱出してもらうさぁ。 まだ利用価値はあるし。

ただ、じーちゃんに批判の的になってもらって、ね。

俺は「実権を奪われていた、かわいそうな本来の領主」として適当に減税を打ち出して乗り切るわけですよ。


一番かわいいのは自分です。

逃げ道の確保は重要な課題ですよ。


違法な裏金は決して自分で触らず、秘書に全部触らせるのは当然の話なのですよ。

無論、果実(おいしいところ)だけつまむ。 それが常識。 発覚して秘書が逮捕されても「私は何も知らなかった」で押し通すのさぁ。

現代なら大抵の人が白い目で見る言い訳でも、ここなら問題ナッシング。 領主が法なのですよ。

うんマジで平民や農民…つか農奴に生まれなくて良かったと心底思うわけで。

三権分立? は? 司法権も立法権も行政権も握ってるのが領主ですが何か?ww

領主様が白と言えばカラスも白。 平民がもし異議があったら、命が対価になるわけですよ。


つまり…やばくなったら切り捨てる、切り捨てれる。 あら不思議。

そんな存在ですよじーちゃん。

あらやだ、これってば使い勝手がいいじゃないのよwwww



どう見てもスケープゴートです本当にありがとうございましt(ry


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さて。 新しい政策発表を…

じーちゃんが「しばらくワシが領主を代行する」旨の宣言をうちの領地に出さんといかんので
す。

なるべく早くに。

ただ、伝令走らせるだけでも(そんなに広くない領内とはいえ)コストも日数もかかるわけで。 

そうそう何度もやるわけにゃいかない。 いぁ、やってできなくは無いが、無駄なので。 

やるなら一度に。 節約は大事ですよ? 1円の節約は1円の儲けなのです。




そして現在、公示内容ををまとめ中なのですよ。

とりあえず減税とセットで打ち出すのですよ。 農業改革。

セット販売は相手に都合の悪い物を押し付ける時の常識。 

証券化したサブプライムローンを複数組み合わせてリスクを隠すってのはなかなか上手い手ですよ。


まぁ減税と言っても色々あるわけですが。

「結果的に減税になる複雑な仕組み」を公表しても通用しないんですよ。

なぜなら「教育」を受けてる領民なんていないから。

つまり、パッと聞いて直ぐ分かるもの…単純明快で分かりやすいものが必要なのですよ。

誰かさんたちが叫んでる「消費税増税反対!」みたいな分かりやすいスローガンがさぁ。

それがもたらす結果について一般民衆が理解できる現代では普通は苦笑するしかないような物でも、時代と場所が変われば通用するというわけですよ。


全然関係ないけど、織田信長ってすごいよねww

うん。 考えてみたんですよ、「楽市・楽座」。

ただねぇ、現時点でやっても効果が薄いわけで。 つかほぼ無い。

何故なら、この領は信長の時代の岐阜と違って、交通網は無い(街道が未整備)、商業基盤が無い(そもそも『座』に該当する商業組合が存在しない、『市』はほとんどが物々交換の領内の自給自足用)、交通の要所でもない(ど田舎。 王都を含めたいわゆる『都市』が近隣に存在しない)、従って現時点で人の行き来がほとんど無い、そもそも商業に割り当てる人員が(ry

ちきしょうめwwwwwそのうち経済特区作ってやるwwwww




でだ。

肝心要の農業改革にしても、全耕地を一度に、なんてどだい無理なわけですよ。

人員的にも時間的にも。

資金的に…は今は一時的には大丈夫なわけだが、安定した財源があるわけじゃない。

振って湧いた資金なわけで、使い切ったらそれでおしまい。

つまり使い切るまでに軌道に乗せなきゃいけないわけですよ。

何が言いたいかっていうと、資金効率悪い上に労働力足らんわけですよ、全耕作地で一度にやろうとしたら。 

これにばっかり資金をつぎ込むわけにもいかないしねぇ。


選択と集中こそが中小企業の生き残る道なのですよ。

大企業と同じ土俵じゃ無理無理。


だから今回の「第一次事業計画」、ぶっちゃけ区画整理も再編成もしやすい「大規模優良農地」だけ選んでやるわけですよ、村ごとに。

無論、全村参加させますよ? 経験値積ませなきゃいけんわけですよ。

割合的には、中央部で耕地面積の6割程度、各東西南北地域の村々で耕地面積の3~5割程度、南西部は今回は見送り(ただし、一部人員を他地域に派遣)。

改革耕地は村々で共同管理させ、利益は配分させるのさぁ。

ぶら下げるニンジンは「改革耕地」に関する減税その他。

無論、各村の代表者は今後取り込んでいかないといかんわけですが。




さし当たって(俺のごり押しで)今後の方策として決まったのが、

-農業政策-(第一次)
1. 耕地改革→新農法の導入と耕地の新しい管理方式

-税制に関して-(第一次)
1. 新しく領民が生まれた時に両親にかかる税→廃止
2. 領民が死んだ時に遺族にかかる税→廃止
3.「改革耕地」での収穫に対してかかる物納税→減額

-その他の政策-(第一次)
1. 領内全域の戸籍調査
2. 肉食の抑制についての布告
3. 出産に関する補助
4.穀物の自由取引→穀物取引の規制




農業に関しては前述の通り。

一気に全耕地を改革するには足りない物が多すぎる。

いや実際この割合の改革…比較的やり易い所だけを選んだ第一次事業ですら、ね。

労働力的には限界ギリギリというか。 

ニンジンをぶら下げる事で辛うじて不満を押さえめるわけですよ。


だから、ニンジンこと税制改革は必須なわけで。

通常の耕作地にかかる税金…収穫の50%物納…を、25%に下げたわけですよ。

ちなみにこれは、農業改革が完全に成功してもトントンになるのは数年後。

…下手すりゃ10年かかるわけですが、必要経費と割り切りますよ、ええ。

その差額は領民に入るわけで、領地全体としてプラスになる事は間違いないわけですよ。


領民の不満を散らす事はかなりの急務。

被支配階級のガス抜きは、政権を維持する上でとてもとても重要なのですよ。

朝鮮半島や共産中国みたいに、「反日教育」ってな方法で、わざと『敵』を作って政権に対する不満をそっちにすり替えるのもある意味上手い手ですよ。 内容が100%模造でも相手からの文句は国民に伝えなければいいだけ(もしくは、悪意を持って改組して伝えればいいだけ)なわけで。
(情報統制は基本です。 支配階級は、自分に不利な情報を被支配階級に知られてはいかんのですよ。 インターネットみたいな個人が参加できる情報網が登場すればまた話は変わっていくわけですが)

ついでに言えば、周辺の各領での税率なんて改正前のうちと同じかそれ以上なのが普通の時代、(基本的に農民は、土地とセットで売り買いされる農奴的扱いではあるが)他領から移転(逃亡)してくる連中をうちの領の住民に組み入れる事ができれば、短期的な人口増加には一番手っ取り早いという目算はあるわけで。

まぁ色々と政治的な問題に発展しそうな気はするけどナーw




出産時にかかる税金(新頭税)…うんなんとゆーか、今の目的にそぐわないわけさぁ。

食料の生産量以上に人口が増えると、食糧不足になり、結果的に口減らしの結果的に口減らしの為の「間引き」が必要になってしまう。
江戸時代の日本なんかでもあったわけだが…

ただ、今の俺の目的からすれば人口が増えた方が有利なわけで。


だもんで、「出産祝い」として大麦を2月分(平均的な大人の消費量換算)支給する事にしたわけですよ。 

異例と言うか何というかこの時代にはまず無い制度だろうねぇ。

(ただし、「領内の結婚している夫婦で」と但し書きをつけた。 地球の例に当てはめたこの時代の農民にモラルなんて期待できるわけは無くてね。 支給目当ての親兄弟によるレイプが蔓延したら笑えないわけで)


まぁ色々と新しい取り組みだけに穴もあるわけですよ。 そりゃしかたない。

それを少しでも埋めるためにとりあえず「死亡時にかかる税金(死亡税)」を廃止。

戸籍作るのにね、邪魔になるわけですよ。


過去の記録を見たら、領民の死亡時期が不自然に偏ってるのですよ。

具体的に言うと収穫期の後に。

あれだね、収穫期の収入が入ってからでないと税金払えないとか。

収入の中には人数で頭割りの物もあったりするから、自分の家の取り分が少しでも有利になるように…とかそんな感じなんだろうけども。

収入の中には頭割りの物もあったりするから少しでも有利になるようにとか、そんな感じなんだろうけども。

やめれwwww正確な数字や日付が必要なんですよwwww


あと、家畜ってか牛や馬食うなwwww豚と鳥にしろwwww

ぶっちゃけ潰して食う余裕無いんだよwwww

唯でさえ、今の頭数じゃ改革に使うだけでも過労死しかねないのですよ。

うん、なんというか…優しさが足りないねぇ。

まぁそれでも優しくこき使うんだが(藁




んで、穀物取引。

領外の商人への直接の穀物の売却を一切禁止しますた。

そもそも穀物の値段なんてのは、実る時期には値が下がり、不足する時期には値は上がる。 

これ常識。 需要と供給ですよ。 経済の常識。 その利ざやで大儲けできるわけですよ。

逆に言うと、農民は、安い時期に売らされる(収穫後に税金を払う)ために、基本的には買い叩かれる運命なわけで。

領主によっては商人と組んでやってるという。 まぁ所詮弱い者はエサ扱いなのですよ。


で、今回の布告の中身は、「今まで領外商人に売っていた穀物は、すべてうちで買い取る。 値段は連中の提示する値段の2割り増し。 村ごとにまとめて持ってくるように」と言ったもの。

こっちが損を被るのかというと、実はそうでもないわけで。

流通も生産も輸送もさらには貯蔵すらも安定していない時代。

穀物価格なんて季節によって数倍変動するのは普通なのですよ。

つまり、まとめて抱えておいて高くなったら売る(販売先の開拓は必須だが)。 

そこで買い叩かれても、元々領民が買い叩かれていた価格よりは遥かに高いわけで、十分利益は確保できるのですよ。


つかおやっさん、なんで今までこの程度の事してなかったんだと小一時間(ry 

絵画や彫刻なんぞ食えねえよwwwwwww穀物で備蓄しとけよwwwwwwwwwww




そんな公布の準備がやっとこさひと段落ついた頃に、なんか突然来たわけですよ。

【魔法】の家庭教師さんが。




魔法? 先生?

女子中学生一クラス分と世界樹はどこですか?(何




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<エピソード8> : 「Yes We Can! そう思ってた時期が私にも(ry」
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『錬金』の魔法で、泥水が石油に、砂利が鉄鉱石に、砂が石炭粉に、木材が鉄鋼に、ワラが穀物に、雑草が野菜に、葉っぱが金銀に。

土壌をサクサク改善し、農具は全て鉄に変化させ、日照も降雨も魔法で調節し、ゴミを変化させた最先端の化学肥料を使用して、約束された大豊作を演出して。

建築材料や道具をどんどん錬金しつつ、魔法で小型の製鉄炉を建造し、コンクリートを作り、発電所を建設し、工場をどんどん作り、インフラを整備し、火薬を製造し、近代火器の廉価版を製造し、鉄鋼張りの船を量産して。

攻撃魔法を一言唱えれば、手から火の玉が出て、氷の雨を降らせて、嵐をおこして、害獣や盗賊を一網打尽に。敵軍や反乱軍の兵士の群れに向かってどでかい攻撃魔法をぶっ放して一気に壊滅させて「うはwwwww俺強すぎwwwwww修正されるねwwwww」と言ってみて。

魔法で印刷機械をポンとつくって、紙をどんどん錬金して、異世界の(未来の)知識の詰まった本を量産して、学制を定めて識字率を一気に高めて知識をぶわっと広めて、神か悪魔かとと称えられ恐れられ崇められて。

無敵で大金持ちで国一番の権力者になっった自分の周囲の美女美少女にはすべてフラグが立ち、一夫多妻のハーレムエンドで。 部下のツンデレな女騎士も、どこかあか抜けない従順なメイドも、なぜか関西弁のイキのいい商人の娘も、美人系おっとり系の隣国の貴族の娘も、癒し系のちびっこい平民の娘も、ネコミミの獣っぽい娘にドジっ娘ロリエルフに幼女吸血鬼にその他大勢の女が俺に惚れてうははははwwwwwマジ体持ちませんwwwwwwうぇっうぇwwwwwとかなんとかかんとか。







そんな夢を見ていた頃が私にもありました(ry


まぁそんなチートあったら苦労しないわな(ぉ

ぶっちゃけ無理です。 無理無理です。 不可能です。 妄想乙です。

もう一度言います。 無理です。 大事な(ry

まぁ寝言は寝てから言えという事ですよ。


魔法で上記の問題点が何とかなるなら、誰しもとっくにやってるわけで。

…いや、正確に言うと、上記の「一部」は何とかならなくはないわけだが。 

実際には産業支援の為に魔法を使ってるなんて話は聞いたことがない。

まぁ、そんな感じなのですよ。


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さて。

今、うち(の両親)を訪ねて来た、『魔法』の家庭教師殿を別室に待たせてるわけですよ。

対応に悩んどります。 『魔法』が全く役に立たないわけじゃないんだけどねぇ。

今はいらないというかなんというか。


その『魔法』だが、一言で説明するのは非常に難しい。

あえて言うなら、「まだまだ未知の領域のある新しい技術」という位置付けが一番近いんじゃないかと思うわけで。


まず、『魔法』を大雑把に分類すると、「学問系」と「実技系」に分かれる。

前者は、主に儀式・研究・開発、後者は主に実践。



前者の研究には、前述の『錬金』もあるにはある。

ただ、前述のような内容の実用化には程遠いレベルと聞いている。

そもそも、この国では、基本的に『魔法』に関しては、王家が独占している。

というか、元々「魔法技術の独占に成功した一勢力」がここら一体を統一し、現在の王家が成立したと言うべきか。

そーいった成り立ちもあって、他の貴族や地方領主が研究を行うことは許されていない。

言い換えるなら、他の貴族や地方領主が研究を行うことは許されていない。
(まぁその理由はおいおい説明するとして)

なので、基本的には漏れ聞く話…噂話程度しか耳に入ることはないわけで。


そーいった極めて限られた情報源から広がった噂によると、『魔除け』だの『結界』だの『呪い』だのといった、一般民衆には限りなく関係の無い内容が大半。

まぁ情報操作は基本ですよね。 インターネットを監視して、都合の悪い意見は即削除する国の如く。

いや、効果はそれなりにあるようだが。

それ以外では、『力或る言葉』の研究、『凶暴な獣を意のままに操る技法』の研究、etc…

色々と行われてはいるらしいが、詳しい情報はもちろん漏れてこない。



俺や他の一般貴族に関係のあるのは、後者。

とはいえ、某RPGばりの『攻撃魔法』なんて物は無い。

正確に言うと、もしあってもこっちまで情報が降りてはこない。

基本的に『魔法』に関しては、王家が独占し(ry

まぁそれはともかく、「各貴族が王家から賜った魔法」があるわけですよ。


「灯りをともす魔法」「土地の悪霊を鎮める魔法」「刃物の切れ味を増す魔法」
「獣を遠くに追いやる魔法」「体の熱を冷ます魔法」「眠りに誘う魔法」
「声を大きく響かせる魔法」「解毒の魔法」「とりついた悪魔を追い払う魔法」
Etcetc…

うん、なんぞこれ。

役に立つのかたたないのか微妙だが、治癒っぽい魔法なんていいんじゃね?

なんて、思ってた時期が私にも(ry


いや、確かに効果はあるわけですよ。

俺が1年前熱出して寝込んでた時に、おやっさんがこの魔法で治してくれたからさ、効果はわかってる。効くことは効くんだわ。

「これはすばらしい!」と言いかけたわけですよ。






子ども一人の「解熱」と「解毒」やるのに、大人2人で4時間かかってややこしい魔法陣描いた上に、使った秘薬の値段が金貨2枚分以上でなければな!!!!!!(爆)






平民相手に使えるわけねぇじゃねぇかwwwwwwwww

どんだけ高価なんだよ秘薬wwwwwwwww


ぶっちゃけ、触媒(秘薬)と儀式(魔法陣)の両方で準備しなけりゃ使えないとかね。

もうなんというか。

無論、秘薬の製造販売は王家の専売制です本当にありがとうございました。


そもそも『魔法』がいつどこで誰に発見され、どのように発展した技術なのかがいまいちはっきりしないという。

「古代国家の遺産では?」なんて噂まであるくらいの謎に満ちた…

…もとい、情報操作された、あんたっちゃぶるな技術なわけですよ。

ひょっとしたら、王家やその関係者はそこら辺について何か知ってるかもしれない。

もっとも、そこらへんを探ろうとするほど馬鹿じゃない。 俺はまだ命は惜しいです。


まぁつまり一言で言ってしまうと、だ。

(今やろうとしている政策に)使える魔法はほとんど無い(もしくは俺は知らない)。

その上で、使える可能性のあるものも費用対効果て全く釣り合わない、という致命的な欠点があるのですよ。

用途が産業支援の場合。


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別に魔法がなくたって、各村々に寺子屋作って手っ取り早く教育水準引き上げればいいじゃん!

そーすれば近代産業興せるぜ!これで勝つる!

そう思ってた時期が私にも(以下略



義務教育はまだ無理無理。 ぶっちゃけ教える側が足らなすぐるwwww

そもそも領民で文字の読み書きができるのなんて、この館に詰めてる人間のうち半分程度(把握してるのは)なわけでorz

まずは文字を教える人間の養成から始める必要があるという罠wwwwうはもkwwwwwwwww



じゃぁ紙作ろうよ紙。 魔法なんてなくたって作れるじゃん。

ライバルのいない製紙産業で独占販売で大儲けでバンザイですよ!

活版印刷技術さくっと導入して本を大量生産したらもうバカ売れ濡れ手に粟のウハウハですよ奥さん! やめらんないね!

そう思っていた時期が(以下略



いやまぁ『紙』として使われてる物自体はすでに存在するわけですよ。

具体的に言うと、いわゆるパピルス紙(のようなもの)や羊皮紙なわけですが。

「紙はとてもとても希少で貴重で、需要は高いが供給は少ない!」と思ってる方は半分正解。

需要は高い。 基本的に貴族間の手紙のやりとりも、王都への報告も、歴史や何かの記録を残すのも全て紙を使うからねぇ。


ちなみに、うちの書庫は(実はこれがあるのは貴族でも珍しい事が後に分かった)意外と大きくやたらといろんな文献が山積みになってたわけだが、その大半の内容は、この国や地方の歴史・過去の納税記録・税収と歳出の帳簿…たまに様々な農作物や狩猟や採集で採れる獲物の絵の描いてある(これを絵本がわりにして最初は読んでいた)などがあったり。

(とある中小貴族の館にある量にしては随分と多いと思っていたら、うちの家系はもともとはこの地域一帯の豪族をまとめていた勢力の分家で、現在の王国に併合される際に本家がちりじりになってしまったが、うちのひいじいさんは本家の文献や書物関連をごっそりもらいうけた(現在の王家に没収される前に隠して持ってきていた)らしい。 激しくグッジョブ!おやっさんとはえらく違うじゃねぇのwwwwww)


話を戻すと、問題は供給。

まぁ一言で言うと、『紙』は王家が専売権を持ってる。

つまり、勝手に作って売ったら、反逆とみなされるわけで。

そりゃ儲かるってわかってたらその権利独占するわなorz

勝手に作ってるのがバレただけでも、最悪攻め込んできますよ。



地方領主ってのは基本的には「独立勢力」なのですよ。
(まぁ独立を認めてもらうために王家に毎年(馬鹿高い)上納金を納めてるわけだが)。

そして、王権というのは強力な軍事力と経済力を基盤にした強制力…

つまり、王家というのは「ここら一帯の豪族の中で最大の勢力の一家」と考えれば分かりやすいねぇ。

「騎士道」なんて言葉はまだ無いし、領主に忠誠を誓う部下はいても、王家に忠誠を誓う貴族(地方領主)は少ない。

潜在的には敵勢力なのですよ。


まぁそれが前述の「魔法」関連の知識と技術を王家が独占してる理由でもあるわけですよ。

敵になった場合に使われたらたまったもんじゃない、ということ。

そんな相手に口実を与えるわけにはいかないわけで。

うちの領内での「製紙産業バンザイ計画 ~その時歴史が動(ry ~」は、計画の時点で中止となったのは言うまでも無いw








……絶対いつか潰してやる(ぉ

まぁ魔法先生にはしばらく滞在してもらうかな。

聞きたい事も無いわけじゃないし。




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<エピソード9> : 「ご主人様の…ちっちゃいって事は…」
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よくよく考えてみたら、(今は亡き)おやっさんは何を考えて「魔法」の家庭教師なんぞ呼び寄せる気になったのかと。

あれだな、やっぱり中途半端に「頭が良い」と思わせちまったのが原因かねぇ。


確かに魔法についての知識はあるに越したことはないわけだが…

基本的に、使う機会なんぞそうそうあるわけでもなくてねぇ。 特にこんなど田舎では。

せいぜい祭儀で使う儀礼の魔法に毛の生えた程度のもので十分なのですよ。

収穫を祝う祭りで魔法で火を灯し、「貴族の力」を領民にアピールできればそれで十分なわけで。


盗賊? 山賊? オオカミ?

そんなものの為に魔法を準備してたらたちまち破産ですy


領民が病気?

そんなものの為に魔法を準備してたら(以下略)


大雨? 洪水? 日照り? 干ばつ? 疫病?

そんなもの、魔法でどうこうできるわけ無いのは確定的に明らかな(ry


ぶっちゃけ盗賊とかでたら、傭兵を雇って差し向けるか自分の手勢を出しますよ。

まぁ現時点では差し向ける手勢の余裕無いけどさ。

「対費用効果」 これ大事。 とても大事。

これを無視したら、効率的な運用も政策も作戦も何もできません。

どんぶり勘定しかできない輩に会計を任せると、組織の財政は破綻するのですよ。



確かに「魔法」の効果はすごい。

例えば治癒魔法の場合、「効果」で見るならば、民間療法を含め一般に使われている薬(とはいえ薬効成分のある食材、といったレベルだが)よりも遥かに効果はある。

ただ、「コスト」を考えると、これが一般化されていない理由ははっきりする。

使えないんですよ。 採算を度外視して効果だけを求める事のできる地位にいる人間でなけりゃ。

つまり、「金持ち」専用なわけですよ。


というのが一般常識。

つまりこの世界で言う『魔法』を簡潔にまとめると、

「特権階級」のみが(財政的負担に耐えられる者のみが)使える、『とくべつなぎじゅつ』

の一言に集約されるわけですよ。


無論、領主(貴族)である以上、儀式や祭りその他で「使わなければならない」場面はあるわけだが。

ぶっちゃけできるだけ使いたくない。

つーか、特にうちのような中小貴族の場合、金銭的な負担がでかすぎるのですよ。

確かに効果はあるし、今のこの国の通常の技術じゃ不可能な事も多いので、必要な時には仕方が無いが。



前置きが長くなったが、『魔法』というのは「無から有を生み出す」神の技の類の物というわけではないらしい。

一つのアクションを起こすに際して、消費するエネルギー(媒介となる秘薬)が必要であり、それを扱う術者は「理論」を理解したうえで『精神力』とやらを消費する必要があるらしい。


…らしい、っつーのは、俺はまだ詳しくは知らないからというw

普通、10歳前後から理論について学ぶ…というかそれくらいにならないと理解できないそうだ。

件の「魔法教師」殿が言うにはw


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訝しげな表情でこちらを見る、目の前に座ってるオッサン。

正直挙動不審を通り越して、こっちを警戒してるのがはっきり分かります。

まぁ力抜けよ、センセイw



理由は俺でも分かる。

おやっさんがこの魔法先生殿に当てた連絡では、「3歳になる息子が~~」と書いてあったのだろう。

なのに今目の前に座ってる、おやっさんの息子の「この領地の領主」は…

外見年齢は少なくともその倍…6歳程度には見えるのだから、戸惑うのも無理は無いさね。

うちの屋敷の連中はとっくに慣れたもんだけどなww




さて、この「外見年齢が本当の年齢の倍に見える」カラクリは、俺の右手の指にはまっている『指輪』。

個人的には、これこそがこの世界で一番驚愕の事実だった代物。

極少数、世界に存在する珍品の一つ。




通称、『マジックアイテム』(魔法の力が秘められた道具)




見た目には、何の変哲も無い指輪(珍しい文様をあしらい、不思議な色の宝石が埋め込まれてはいるが)。

なのに、いったい何をエネルギーにしてどう作用させているのか。

「魔法」の効果が自動的に作用する。 俺には全く理解できんわけですよ。

どんな原理で『魔法』が自動的に作動してるのやら。

というか、それこそ王家直属の研究機関でもなければ解析も研究も進まないだろうと思われるわけで。

少なくともこの国では。


無論、その出自も不明なのですよ。

そもそも、王家直属の研究機関などで開発・製造できる物なのかも不明。 

この世界の歴史上にぽつぽつとその存在が見受けられるが、いつ頃から存在したのか、誰も知らない。 

誰が作ったのかも当然不明のまま。


まぁ、ぶっちゃけめっさ高価ですよ、ええ。

具体的に言うと、比較的価値の低い『マジックアイテム』ですら、売れば軽く金貨で数百枚以上にはなる位に希少なのですよ

(まぁもっとも(この国の中では)それこそ大貴族か王家か国内屈指の豪商あたりしか買う事は不可能だろうが)

これが歴史書や物語に出てくる『伝説級』のアイテムになれば(ほとんどの場合王家の宝物庫あたりで眠っている)その数十倍、いや、数百倍だしても買えないという。


…ちなみに、うちの場合、「親の遺産」には違いないのだが、代々受け継がれている由緒正しい物などではない。

おやっさんが趣味で買い集めてた、骨董品。

丁度1年ほど前ね、アレ見てて、めっさムカついた事があったのですよ。



てめぇこのクソ親父また変なモン買ってきやがって何無駄な金つかってんだ馬鹿かっそもそも他に使わなけりゃいけねぇ事はいくらでもあるだろうがっおい昼真っからガキの前で乳繰り合ってんじゃねぇこの万年色ボケ夫婦聞いてんのかよっあーくそ体が思うように動かねぇちっくしょーーーーーー!



とか思いつつ、人気の無いのを見計らって、とある彫刻の乗ってる台に蹴り入れたら、上に乗ってた陶器の像が落っこちてきちまったわけですよ。

いやー、びびったびびった。

変な顔した人物の像がぱっくり割れたのにもびびったが、その割れた像の中になんかちっさな「箱」が入ってたのですよ。

なんだこりゃ、と思っていたら音を聞いて駆けつけた使用人に見つかって大騒ぎになってねぇ。


まぁおやっさんは俺に怪我が無いのを見て安心したのか、全くお咎めは無かったが。

それでいいのか?!とこっちが思ったよ。

甘やかしてどーすんだ、いややったの俺だけどさ。

後でその像の値段が金貨10枚以上って聞いて更にびびったけどさ。

笑って済ましていいのかよ、とおやっさんにツッコミ入れたくなったのは言うまでもない(ぉ


でだ。 

見つかったこの小箱。

おやっさんも、中にこんな物が入っているとは知らずに買ったらしい。

特にカギはかかっていなかったのか、すんなりと開いた。

その中には、指輪がひとつ。

…まぁ、それがコレなわけだw



おやっさんが笑いながら俺の指にそれを付けてみて、俺を含め全員が目を見開いたね。

無論、幼児の指のサイズにぴったりとはまるわけは無いはず…なのに、淡い光を放ったと思った瞬間、ぴったりと吸い付くかのように俺の指にはまっていたわけですよ。

どう見ても一瞬前よりサイズが一回り小さい。

見繕ったかのように俺の指にジャストフィットしてるという不思議!

と思った瞬間、今度は俺の体全体が一瞬淡い光に包まれた。

思わず目を瞑ってしまったおやっさんが、再び目を開いた時、目の前にいたのは…

…一瞬前までの2歳の息子ではなく、4歳頃にまで成長した息子だったという。


いやこっちも急に視点が高くなってびびったわけですが。

周囲のあまりのパニックぶりに置いてけぼりだったさwwww

取り残されると、人間冷静になるよね、うん。



まぁそれからしばらくは混乱があったものの、周囲の混乱も徐々に落ち着きを取り戻して。

1年が経つ頃には(まぁつまり最近になってだが)「実年齢の倍の年齢の姿になるが、特に害はなさそうな『マジックアイテム』」である事が分かったわけだ。


正直かなり助かったw 幼児の体じゃ何をするにも一苦労なのですよ。


まぁ今でもやっと小学生入学くらいなわけだが、そこは時代の違いというべきか。

地球の歴史でも、昔の「元服」の年齢と、現代の成人式を比べりゃね。

どっちの方が精神的に大人(である事を社会に求められたか)かは比べるまでも無いわけで。

大変重宝しておりますとも。


まぁ、館の敷地の外に出ると、今でも「あれ?確か今3歳くらいじゃなかった?」みたいな顔をしてる領民もいるわけだが、それは仕方ないw

館の中に関しては、「これが『マジックアイテム』であるという事を決して外で触れ回らぬように」とおやっさんが申し伝えてくれていた。

最初のうちこそ皆違和感もあったようだが、今じゃ極普通に6歳前後の子供だと思って接してくれてるわけですよ。








……うん、あのね? 気がついた人もいるかもしれないわけだが……








指から抜けません大将!wwwwwwww

どーなってんのコレwwwwwwww

指から抜けなきゃ…売れじゃねぇかっwwww


まぁなんというか、おやっさんが残してくれた、ある意味やっかいな「遺産」なのですよ。

いや、今のうちは良いんだよ。 ぶっちゃけメリットの方が大きい。

ただ、将来的にはちと困る。


限りある青春を存分に謳歌できないじゃないかっ(何


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そういうわけで、外見年齢は6歳。 

指輪が外れたら、実年齢3歳に戻る(予定)わけですよ。

まぁあと4~5年はいいんだけどね。 むしろ外れない方が色々有利なわけで。

ただそれ以上になるとちょっと考えてしまうのですよ。 換金してぇぇぇぇぇぇぇと。


しかしまぁ…なんというか…w

おやっさんあんたどんだけ運良いんだよとwwww

サマージャンボ一等当てるようなもんだぞwwww




…………という内容を、誠心誠意(?)説明したわけですよww

訝しげな表情でこちらを見る、目の前に座ってるオッサンに、言葉を選びつつ内容を一部省略しつつww

そして、「家宝の『呪いの指輪』」として見せてみたわけですよ。

無論、絶対に口外しないようにと念を押した上で、ね。


理由は、いわずもがな。

無益な争いは避けたいのですよ、っていうか「献上」を要求されたら、拒めないからねぇ。

最悪俺の指切り落とさなきゃいかんわけで。

おやっさんやおふくろさんやじーさんみたいに、喜び全快で猫かわいがりされまくるのもアレだがなwwww




まぁともあれ、この魔法教師殿を当分引き止める事には成功したっぽい。

ぶっちゃけ「魔法」以外の事の方が聞きたい事は多いけどねw


知識は大事です。




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<エピソード10> : 「ひっこぬかーれてー 食べらーれてー」
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まぁあれですよ。 

俺の学生時代の専攻は、歴史は歴史でも産業史だったわけで。

農業全般についてはともかく、個別の作物について知ってる物なんぞ少ないわけですよ。

せいぜい主要な穀物と他に数種類、豆類とか芋類とか大航海時代の伝播とか。

その他歴史と産業にめっさ影響してた作物程度なのですよ。

一般庶民が食べてた野菜? んなもんシラネ。

まぁ現代の日本で使われてる食材なら少しは何とかなるかな? てな感じだったわけですよ。




だが、そんな俺でも分かる! 分かった!

これは紛れも無く大発見ですよ兄さん!

野菜の中に紛れ込んでいやがったわけですよw

さすがに地球の現代の物とは色々違うわけですが。

まぁあれだ、品種改良が加えられる前のような感じだろう。

根中糖分の比率は現代地球の品種(約20%)とは比べ物にならないだろうけどなw


でも、そんなのは些細な事。


現代世界でも、世界の製糖原料の3割以上を占める作物。

現代日本でも、製造される砂糖の1/4は、こいつが原料なのですよ。



しかしなんというか貴重な発見ですよこれは。

いやまぁ一般的な野菜(兼飼料)として普通に栽培されて消費されてるとは思いもよらなかったがwwww

畑見てびっくりしたよw まさか、コレがあるとはねぇ。












「テンサイ」が。


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かつては同じ重量の金と交換されたという記録も残っている、黒胡椒。 通称「金の粒」。

原産地がヨーロッパではなく、交易によってしか手に入れることができなかったからねぇ。

まぁそれが時代を経て西洋人が外洋へ乗り出す契機の一つになったわけだがさ。


それはそれとして、胡椒ほどではないにせよ非常に高価だった品。

通称「白銀の粉」、あるいは「白いダイヤ」。

それが「砂糖」なのですよ。



いやなんというか正直「この世界」をまだ完全に把握してるわけじゃないんだけどね。

地方の小領主とはいえ、一応(下っ端)貴族である俺も、未だ見ていないわけですよ。

「砂糖」を。


地球の歴史に当てはめて考えるなら、十字軍の遠征時代にサトウキビの製造法なんぞが持ち帰られた。

それまではというと、交易品として中東圏から馬鹿高い金額で購入してたわけで。

まぁサトウキビからの製造方法が伝わった後も、その後数百年は砂糖は超貴重品のまま。

大貴族や大富豪が自前の晩餐会に「ステータス」として砂糖を置いておくような品だったのですよ。


ちなみに、一般庶民的には「薬」ってな感覚の品物。

(室町時代後期~安土桃山時代~江戸時代初期の日本でも、重病人に対する「薬」として珍重されていた事もあった)

無論、高価すぎて想像もつかないというか、まず庶民がお目にかかれるものじゃなかったわけですが。

当時の教会からの足枷が無かったので、地中海沿岸を中心に栽培は徐々に広まっていったという。
(ちなみに、甘いヨーロッパ菓子が登場するのは、もっとずっと近代になってアジアアフリカを侵略して植民地をガンガン増やしてからの話ですy)


ともあれ、この時代の文化レベルから考えるに、どうみても初期中世レベル。

そして、(辺境とはいえ)特権階級ですら口にしたことが無い。

つまり…わかるな?




まぁ、それで、だ。

そんな砂糖を製造できるかもしれないわけですよ。 この「テンサイ」があれば。

さすがに糖分含有量や製造効率ではサトウキビなんかに比べれば勝ち目は無いが…

そもそもアレはこの気候じゃ育たないわけで。 

つか、アレはまだこの国や周辺国に伝播すらしていない可能性は非常に高いので。

まぁ考えなくても大丈夫だろ、と思ってみる。


今のこの世界の文化や技術レベルでは、テンサイからの製糖法は開発されていないはず。 

実際口にした事無いし、ね。

地球の歴史だと、ナポレオン戦争の時代だったか? 

大陸封鎖されて砂糖の自給ができなくなったフランスが懸賞金をかけて新しい砂糖の製造方法探してたら、どこぞの研究者がテンサイから砂糖を抽出しちゃったという、ねw



…あれ?












…………作り方シラネwwwwwwwwwwwwwwwww



うんむw 食品製造なんぞ、俺の専門じゃないわけですよwwww

まぁ、「できる」事が分かってるんだから、研究してみるさせてみるw


まぁあんまり大々的に売りさばく事ができるかは未知数だがなw
(そもそも量産まで行くのに何年かかるやら、だがw)

しかしまぁ成功すれば、この財源は素晴らしいわけですよ。

無論、売り方には気をつけないと危ない危ない危ない危ない、なわけですが…

所詮こっちは地方の中小貴族。 圧力がかかれば吹き飛ぶわけで。

製法の秘匿も必須だし、販売ルートの開拓も必須…直売じゃなく、うちの領地が産出地だとばれない方法で、迂回して売り出す必要がある。



まぁすべては製造のメドがついてからの話だがw


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さて。

このテンサイ、普通に野菜として一般に食べられてるわけだが…

作付面積で言うと基本的にはそんなに多くない。 まぁ当然といえば当然だ。

基本的に周囲からしてみれば「野菜」や「飼料」という認識しかないわけで。

コレばっかり作るわけにもいかない。


そもそも、「単一品目を大量生産し、その後交易によって他の品を手に入れる」、という方法…

一番生産効率を上げる方法が、成立していないわけですよ。

つまり、領内で日々消費されている食料は、基本的に自給自足。


つまりだ、ここに一つ問題がある。


もしこの研究開発用のテンサイを新たに栽培したいと思ったら、それを耕作する畑は「新規開墾する」か「既存の田畑を転作させる」しかないわけだが、ぶっちゃけ今『農地農法大改革事業(仮)』が始まったばかりなわけで。

既存の田畑は基本的にそっちに組み込まれてる。 

てか、主力の麦類豆類が一時的に生産が落ち込む以上、田畑を転作させる余裕なんぞ無いわけですよ。


つまり…開墾祭りキタコレ!

【人手】【どこですか?】orz


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そして、「製糖」という切り札はさておき。

もう一つ進めなければいけない事がある。



前述したが、領内で日々消費されている食料は基本は基本自給自足。

小麦・大麦・ライ麦・燕麦等々主食の(一般の農民にとっては主食というわけでもないが)麦類、そして副食として一般的な豆類、野菜ではキャベツやタマネギ、ホウレンソウやカブなんかが(若干日本で食べてた物と種類は違うが)主に耕作されてて、うちの食卓にも並ぶわけですよ。
(俺の場合、離乳食後まだ2年ちょっとだがw)

そして、肉だな。 (まぁこれは俺のいる領主の館はともかく、一般の領内の農村では非常に稀のようだが)

気候次第では野イチゴやサクランボも作れるらしい。 あと、あんずとかハーブ類とか。

以前おやっさんがどこぞの商人から買った物を食わせてくれたが、まぁなんというか…w

甘くないのもありますよ? ってレベルじゃねぇw 酸っぱさ全快ですたwwww

ビタミン分補給という目的には合致してるんだろうけどなwww

あれだ、品種改良を続けていけば、いつかは現代の日本のスーパーに並ぶような品になるのかねぇと考えたりw

まぁつまり言いたい事は、畑から取れる食料以外の食べ物を調達するのは、「森」なのですよ。


当然ながら、うちの領内にも「森」は多々存在する。
(むしろ、村や畑は基本的に森や草原の中に点在している。 都市と都市の境目が無くなって久しい現代日本とはかなり違うという)

各村で生産できない物は、基本的に「森」から手に入れることになる。
(一部、「海」という例外はあるが)

これがまた庶民の生活に絶対に必要であり、「森」を利用しないと農村での生活は成り立たないのだ。


だから、というべきか。 ここはきっちりと領主が所有権を持ち、税金がかけられてるわけですよ。
(*うちの領内の場合。 他領では例外もある)

ここに関しては税金(森への立ち入り&持ち出しにかかる税金)を無くす訳にはいかなかったというw 

減収も問題だが、「資源」の管理も大事なわけですよ。

まぁ、各村々で管理させてるものの、厳密に守られてるとは思わないけどなwww



で、この「森」にはそりゃ色々とあるわけで。

主に動物の肉や野生の植物なんかが課税の対象となってるわけだが…

実は、「森」にはもっと重大なモノがあるのですよ。






砂糖が一般に普及する以前の歴史に登場する、唯一の天然の甘味料。
それが「蜂蜜」。 






古代から「天のしずく」として珍重されてるのは伊達じゃありません。

甘味料としてもさることながら、その栄養価から薬としても使用されてるわけですよ。

無論、高値がつきます。 

ついでにハチの巣も食べれるし、ハチの子も食べれるしw



ぶっちゃけ、食料生産ってのは一番確実。

必ず日々消費されるからね。

人間食わなきゃ生きていけないわけですよ。

需要がある。 これ一番大事。


とはいっても、「塩」のような必需品は当然王家の承認を受けた貴族や商人が独占していて付け込む隙は無い。 

利益が大きいという事は、利権も大きいのですよ。

うちなんかじゃ、とてもじゃないがその利権を頂く為の上納金を工面できないわけでw


他に調味料、といっても、醤油や味噌なんかの発酵食品があるわけでもなく。

香辛料なんぞ論外。

食生活は豊かかというと、かなり微妙ではあるわけで。

そんな中、天然の甘味料としてあちこちの森で採取できる蜂蜜は、なかなかの優等生なのですよ。




ここまでいえばもうわかるな?

養蜂ですよ養蜂。


テンサイを原料にした製糖はおいおい研究開発していくとして、それとは別に収入源が必要なのですよ。

正直、製品化までに何年かかるかわかったもんじゃねぇわけでw


ちなみに、この世界の蜂蜜の採取を、一度見る機会があったわけだが…

ハチの巣を木から剥ぎ取って、煙で燻してハチを殺して…

…待ておいw 殺してどーすんだwwww とね、もうw

まぁ日本でも人工の「巣箱」を使って継続的に蜜を採取する仕組みが広まったのは確か江戸時代だからなぁ。

無理も無いといえば無理も無いわけだが…。


いあ、なんというかね、巣ごと採取する方が短期的な利幅は大きいわけですよ。

食用としての蜂蜜以外にも、蜂の巣から蜜蝋とれるしね(ロウソクが作れる)。

ただねぇ、蜂蜜を採取する度にハチの巣を壊してたんじゃ、効率悪いわけで。

あと採取の度にハチ殺すのも論外。

移動式の巣箱と、(取っ手をくっ付けた簡易型の木製の)遠心分離機。

これをさっさと開発製造して、効率よく黄金の蜜だけ頂いちまおうという発想なわけですよ。


え? 防護服? んなもの作る余裕は無いかと。 資材的な意味で。

ゴーグルとか論外。 ガラス玉1個の価格聞いたら目が飛び出ますた。

駄菓子屋のビー玉やおはじき大量に持ち込んだら、一日で大富豪になれる時代ですよ。



まぁ厚着させた上で作業に当たってもらうさ。

うちの使用人と、領内の平民にな!wwww




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<エピソード11> : 「ファーストKill から始まる~ 俺のヒステリ~orz」
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日本の中世の戦争の主役が「武士」であったなら、ヨーロッパの中世の戦争の主役は「騎士」である(と一般に思われている)事はご存知のとーり。

とはいえ、ゲームや漫画や映画の中に出てくるような「騎士様」像を想像していると、正直かなり戸惑う。

まぁ「時代が違う」というのも大きいわけですが。


博物館や現存する欧州の古城にあるような「全身を覆う鎧」なんて、それなりに財政に余裕のある貴族しか手の出ない代物ですよ。

それも、基本的には機能重視のやたらと重くて大きくてごつい物。 

まぁそんな物でも持ってるだけで権威の象徴という事で。


財政に余裕のある大貴族なんかは、鉄の使用量の多い武具を着けてるのですぐ分かる。 

色を見れば鉄の使用率は明らかなのですよ。

ちなみに、普及してる(と言うほど多くも無いが)ほとんどの「金属鎧」は多少の鉄と大部分の他の金属の混ぜ物で作られているという。


基本的に量産は不可能で全品オーダーメイド。

しかも材料の金属材自体が高価な上に、加工技術がまだまだ極少数の職人(とそれを保護する貴族階級)に独占されている時代なわけで。

装飾等の施された鋼(に近い材質)の鎧、なんて王家のご用達レベルですよ。


つまり材料というのも相当に大きな要素ではあるけども、それ以上に「技術」がすごく問題。

必然的に、一般の兵士は「鎧」なんて着てませんよ、ええ。

着ていないというか、着れない。

着れる奴は「一般の兵士」じゃねぇ事は確定的に明らかという。



ちなみに一般の兵士というと、「傭兵」と「臨時徴用された農民」。 これが主戦力。

傭兵というのも色々あるわけですが、一般的には「別の職業につきながら生活し、戦争があると兵士として雇われる」タイプがほとんど。


ただ、基本的に傭兵は常時雇う事はありえないわけで。

財政的な負担も大きいし、何より「一般民衆に嫌われている」というのが大きい。

なので、戦争が終わると別の地方へ行くか、もしくはそのまま盗賊・山賊に早変わりする事も珍しくない。

ちなみに、嫌われる理由として一番大きいのが、戦時の村や町からの「食料・財産・女の略奪」。

占領地の婦女子が辛酸の苦しみを味わうのは、いつの時代も変わらないのですよ。


(*国が指定した業者に兵士の売春を管理させていた旧日本軍や、占領国政府に慰安所を用意させていたアメリカは、当時ですら世界的にも珍しい例。 有史以来、軍の管理する慰安所・慰安婦の無い軍隊を探す方が難しい事は、今更言うまでもなく歴史の真実である。
古代から、占領地の女性をこれに充てる事も当然のように行われてきた。
有名な例を挙げるなら、占領地での略奪・婦女暴行を公認していた旧ソ連軍の雪崩れ込んだベルリンでは、男性の比率が前年の数割に激減し(当然殺された)翌年には親の分からない子供が数万人生まれた(ゲルマン民族の国だが、スラブ系の外見の子供達だったという)。 ちなみにベルリン市民の女性の自殺もその年だけで数万人に及んだ(旧ソ連兵に集団レイプされ、殺されたり自殺したりした市民で溢れた当時のベルリンは、「世界で最も地獄に近い場所」と呼ばれた)。 満州で民間人を虐殺・婦女暴行した旧ソ連軍、ベトナムで民間人を虐殺・婦女暴行した韓国軍等々、現代史においてもその例は数え切れない。 まして近代以前においては~((この先長くなり原稿用紙換算1000枚は軽いので省略))~といえる)


話を戻すと、「徴兵制」は現時点では仕方ない話なのですよ。

「兵農分離」なんてまだまだ先の事です。

まぁその弱点を克服した「モンゴル帝国」(「農地」に縛られない・国民皆兵・国自体が移動できる)が大躍進を遂げた理由の一つに、この「兵農分離」という概念が不要だった事があるわけだけれども。

これも、鉄砲や大砲等の「火器」が軍の装備として普及する等々、常備軍制度が整う要件が満たされる中世後期~準近代になればまた変わってくるわけですが…


ちなみに、この世界では「魔法」があるにしても、軍の主力を担えるほどの「魔法戦力」というのはかなり例外中の例外なのですよ。
(予め魔方陣等の準備がされている城砦等の防衛線ではありうるが、野戦ではこの世界の「魔法」の性質上、極めて難しい)

まぁ拠点防衛戦に限っては「魔法」はある程度有効のようですよ? 

最も、明確に「攻撃用」としての魔法なんて王家が独占してるわけで、入ってくる情報なんて微々たる物。 

王都や城の防衛体制が国家機密扱いで、余計な詮索は禁じられているのは、いつの時代も変わりません(ry 



まぁそんなわけで。 

手に武器を取って徒党を組んで敵集団にぶつかる歩兵戦力が主力なのは、この世界でも変わらないわけですよ。 時代的に。

そんでもってその歩兵戦力の中心はというと、言わずと知れたる傭兵と農民。

そして、歩兵の集団を指揮する、支配階級。

(この辺は日本の歴史でも近い物はあるわけで。 戦国時代後期に「常備軍」という発想が打ち出されるまでは、「戦争」=「領内の農民兵の徴用」だったという。 
古代ギリシャとかローマの時代は(地域は)ある意味違った体制だったわけですが、あのあたりはかなりの例外)


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さて、その支配階級のお話ですよ。 まぁ俺なんかも含まれるわけですが。

一般には、「騎士階級」≦『貴族階級」。

ごく一部個人の名声やら何やらで例外はあるがそれはさておいて、大抵の「騎士」ってのは領地を持ってる領主。 

地域の「騎士」の取りまとめ役(政治的実力者や、最大版図を有する一族)が貴族だったりする場合もあれば、うちみたいに「騎士であり貴族である」場合…まぁいわゆる中小領主ですよ、というケースもある。
(もっとも、うちの場合抱えてる領民人口は約3000という、やや中規模寄りの貴族ではある。 支配地が一つの村の1/2とか、あるいは自分の館周辺のみといった零細「騎士」も当然ながら多数存在する)


で、うちの場合の問題点は、領内に土地持ちの部下(騎士)がいないのですよ。

無論メリットも大きいわけですが。

今回の改革なんかでも、「利害の調整」っていう一番厄介な所を無視して「領主(代行)の命令」で強行できるわけで。

ただ、デメリットも大きいという。

具体的に言うと、戦争になって諸侯への動員命令が発令された場合、(現時点だと)俺自身が行かざるを得ないという罠ww

加えて、通常領内の警備云々に回す雑用係(と言うと聞こえが悪いが)を兼ねた直属の部下、あるいは戦闘部隊がいないという事は、問題が起きるとその対応は全部こっちに回ってくる事になるという…



こんな状態なのは、まぁ言ってみればうちの成り立ちが原因。

うちの家系はもともとはこの地域一帯の豪族をまとめていた勢力の分家。

現在の王国に併合される際に本家がちりじりになってしまったわけだけれど…

その際にうちの直径のひい爺さんは、立場的には非常に微妙だったそうで(分家で末っ子だし、他の兄弟親戚も多かった)。

んで、前述した大量の書物その他を(一部はひっそりと)引き取って辺境(現在のうちの領地)に引っ込む代わりにという事で、元々本家・分家に仕えてた連中はほぼ全て他の親戚筋の所に取られちゃったのね。


当時この地域は元々の一族の領土の一番端の辺境。

村の数も人口も今より少なかった上にろくな特産品の産出も無いという事で、着いて来たがる配下もほとんどいなかったって事もあるわけだが。

まぁその後、ひい爺さんは各村の代表者を通じて命令を出し、税金を徴収し、代わりにその「村の代表者」にその村中での一定の権限を与えるという体制を作って治める事にしたのですよ。

手持ちの文官クラスが無かった以上やむを得ずってのもあるわけだが…これがある意味今に尾を引く問題になっているわけで。

一定の徴税額を納めさえすれば、あとは(特に指示が無ければ)村ごとのルールやなんやらで勝手にさせるという…まぁ、当時は各村に担当者を派遣する人的余裕が無かったという事情は大いに理解できるのだけども…


ひい爺さんがまだ生きてれば、また話は違ったんだろうけども。

ちなみにひい爺さんっつっても、生きていれば60になるかどうかという年齢。

爺さんが死んでおやっさんが後を継いでいたのは、俺が生まれる数年前なのですよ。

いくら平均寿命は現代とは比べ物にならないほど短い時代とはいえ、この領地の統治が始まって40年弱で俺4代目ってねwwww

なんか祟られてるんじゃないかこの領地、って時々思うww



で、なんとゆーかね。 

これ下手すりゃ支配構造自体がゆがみかねないというかw
いくら人手不足とはいえ、今まで放置してきたのは非常にまずいわけで…w


まぁさすがに行政権裁判権その他に関して名目上は当然抑えてはあるし、仮に一言命令すれば領民全部こちらの指示通りに動かせる事は確かなんだが…。
(それが無けりゃ現在の改革すらままならない)

問題は「間接的な統治」になってしまっている事。

「二重利権構造」とはよく言ったものですy(ぇ

「各村の代表者」=「(実質的な)代理統治者」とみなされて、それぞれの家が世襲してるわけですよ。 


つまり、領主が実質的に管理してるのが「村からの税をまとめて代表者に払わせる事」だけになっていて(まぁ労働で納める税とかもあるが)、各村々で「実際に徴集されてる金額」と「領主に税金として上がってくる金額」が同じ金額なのかどうかを確認できていないのですよ。

いや、むしろ、「どれくらい差額があるかを確認できていない」と言い換えた方がいいレベルだと俺は見ている。

村ぐるみでごまかしてる場合もあるだろうし、村の代表者の所で止まっている場合もあるはず。 

ううんむしろ後者のが多いだろうさ。


更に悪い事に、いまいち政治に…というか統治に興味の無かった祖父や父の代(いやまておまいらそれでいいのかコラと小一時間説教かましたくなるが)も、基本的にそのまま来たという。

今や「村の代表」がそれぞれの村で持つ影響力は(世襲という事もあり)、無視して改革を進めるにはちょっと「危険」と思われるレベルだと俺は判断したわけですよ。


つまり、各村の「特権階級」を刺激すると「反乱」の危険性が一気に上昇し、一度「反乱」になったらやばすぎるという。

常に手足となって動ける戦力が無い以上(館の警備兵程度しかいない)、反乱が起きた村以外の村から兵を徴集して、反乱軍を押さえなきゃならんわけで…。

もうまさに「これなんて罰ゲーム?」と聞きたくなる状況に陥ってしまうわけですよ。


無論、そうやって徴集した兵の戦意なんぞ推して知るべし。

普通の軍なら「反乱を警戒しなきゃいけないレベル」なわけですよ。統制も何もあったもんじゃねぇww

今回改革させるにあたって、相当こちらの収入が落ち込むのを覚悟の上で、全体的な領民の負担を押し下げる事に奔走した理由はそこにあるわけですよ。

減税とか減税とかでとりあえず一時的にでも不満をそらしつつ、領内の改革を進めなきゃいけないという…

涙ぐましい日々orz


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まぁぶっちゃけ言うと、兵力さえあればさくっと各村に順番に派遣して、検地と財産調査を徹底的にやるけどねww

ウチに入るはずの税金をこの既得権益層(各村の代表者一族)がピンハネしてる事なんて、戸籍と合わせて俺が作成した税収に関する「統計資料」見りゃ簡単に推測できますともww

つーか、衣服や住居だけ見ても分かるわけですよ。 

他の一般の村人との間に横たわる純然たる貧富の差がww


分かりやすくたとえると、(細かい所は違うが、概ね)「地主と小作人」と言った関係に近い。

って事は…わかるな?

連中(特権階級・地主)も、下(一般の農民を含む貧農・小作人)からの突き上げを食らうわけだ。

そのままだと自分達が私腹を肥やしている事が露呈し、袋叩きにあう。

だから連中は、その疑惑を「ごまかし」、矛先を「すり替える」戦術を取るわけだ。

それが、「政権(権力者)批判」。


無論、この時代では「特定のマスコミを買収して、都合よく改組した情報を意図的に流したり自分達に不利な情報は全部カットさせたりする戦術」は使えない。

だが、普通の市民が情報を得る手段が無い時代だからこそ、有力者の「口コミ」の威力は大きい。

連中は自分達の既得権益を守る為に、地主(自分達)ではなく「お上」(領主)が悪いんだ! という風に持って行くのですよ。

そうすれば、自分達は(連中は)いつまでも安全に美味しいという事ですww


てかね、この既得権益層が「騎士階級」としての義務を持ってるなら問題ないのさぁ。

領内の治安維持その他を押し付け、かつ有事の戦力として期待できるなら、多少上前はねてる位許しちゃう(むしろ今の稼ぎ以上の給料出すw)わけだがww

現状、こいつら納税に関する取りまとめ以外何の「義務」も無く(*他の領内の平民と比較して)、甘い汁だけ吸ってるというww


かといって、この連中を「騎士階級」にしてしまえばいいじゃないか! というわけにもいかない。

色々と理由はあるが、最大の問題は「認可が下りない」事。

うんまぁあれだ、「騎士階級」を増やす事は、その領国の軍事力の増強に直接繋がるわけで。

この国では「叙任式」(新たに騎士を任命する儀式)は全て許可制とされてしまってるわけですよww 

上手い手考えやがって…(何

まぁ一族の者とかならよほどの事がない限り許可は下るわけだが。

平民からの登用なんかは、逆によっぽどの功績が無ければ許可が下りないという。



つまり、何とかして比較的速やかにこの領内の体勢自体を見直さなきゃいかんのは明らかなわけですが。

短期的に…というか今すぐに管理階級を増やそうと思っても、いかんともしがたいという。


だからといって放置しておくわけにはいかないわけで。

今後領内政をどう持って行くにしろ、この既得権益層が確実に邪魔なわけで。


でも、現状でこれに手を出したら、間違いなく…反乱が…

んでもって、それに対して動かせる…戦力…は…


つまり…やだ、なにこれ…










ぷぎょぉぉぉぉぉぉぉぉぉwwwwwwwwwwwwww

正直切りてぇぇぇwwww連中wwwwwww

代官派遣して直接統治してぇぇぇぇぇぇwwwwww

なんで連中のご機嫌取り優先に考えなきゃいけねーんだよコラwwwwww


とにかく、人! 人! 人!wwwwww

これがもう何よりも足らねぇのですよwwwwwww

駒が無い状態で何ができるのさ、って感じですよwwww


てかおやっさんwwwwあとじーさんもwwww

あんた達が受け継いだ領土だろうがwwwwなんで今まで手足作ってこなかったのさwwwwww

時間あったんだから領民から選抜して衛兵登用するなり外部から適当な人材招いて取り立てるなりして、最低でも地域ごとの行政担当官くらい準備しとけやぁぁぁぁぁぅぁぅぁぁぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁwwwwwwww




もうねwwww

いっその事、いま滞在してもらってる親戚のじーちゃんに治安維持軍の派遣まで頼んだ上で、各村の検地と財産調査(と不正に蓄財してた連中の処罰)を強行しちまおうかと本気で考えてみたわけですが…ww 一か八かの賭けになっちまうわけで…orz

少しずつ…少しずつ行くしかないというww つーかそれ強行して失敗したら、農業改革どころじゃなくなるしなww


だいたい、改革の(表向きの)主役のじーちゃんだって、そんなに人を連れてきてるわけじゃないし。
(まぁ追加で呼んだり交代したりはしてるが)

現状では各村の代表者層を通じて農業改革(と、新産業開発計画)を進めるしかないわけですよ。


中間管理職は偉大です。

社長とヒラだけでは組織が上手く回りません!




給料上げろや(違





[7837] 間章(1)
Name: カフェイン多め◆4b159315 ID:4070b9f6
Date: 2009/07/14 09:48

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<間章> : 幼年期の終わり
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コンビニなど無いこの世界。

いやまぁコンビニどころか、街灯の一つも無い世界。

さらにド田舎。

夕闇が辺りを覆うと、辺りに残るは月明かりばかりなり、なのです。


まぁ、月、青いけどね(何

餅つきしてるウサギの姿も見えないのです。


…地球、というわけではないのか、と。

いやまぁ予想は付いていたわけですが、ね。


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昔…というほど前でもない。 体感時間にしてほんの3年前まで、全く別の人生を歩んでいた。

あの頃の俺は、僅か数年でここまで人生大きく変わるとは予想だにしなかった。

まぁ予想できる奴がいたらエスパー間違い無しではある。 

むしろ黄色い救急車が飛んでくるかもしれない。


「住めば都」とはよく言ったもので。

なんだかんだ言って、こっちの文化というか、生活様式…むしろ「生活レベル」と言ったほうが適切な気もするが…に慣れはした。 ある程度は。


とはいえ、「勝手が違う」というレベルどころじゃないお話も多いわけで…

まぁ色々と問題はあるのですよ。

ある意味死活問題と言い切っても過言ではない物が大量に…

根本的な所で、現代人との意識の「ズレ」があるわけです。


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さて、俺の最終目的は「楽しく暮らす」だが、その為に必要不可欠なことが3つある。

風呂とトイレと食事だ。

これらも上記の例に漏れない…というかむしろ、これらこそがその代表例なのですよ。




例えば、風呂。


え? 欧米だからシャワー?

何言ってるのやら。 

そんな物どこにあると。 いや、そもそもお風呂なんて無いしね。

金持ち貴族なら、香水を大量に使って体臭とか色々ごまかせってお話なのですよ。


いやなんというか、体を洗う場合、時間は当然朝一番なわけですが。

体を洗う場所は近くの川や湖ですよ。

農村だけだろうって? いえいえ、んなこたぁない。

都市でも同じようなものですよ。


あ、ちなみに、川の水は飲料水でもあるというのが恐ろしい所ですよ。

もちろん、好んで飲まれるわけではなくて、ね。

硬水で飲みにくいという事もあるし…。 

で、何が問題かというと、衛生面。 例えば『病原菌』とかのリスクなわけですよ。

(例:パリ市のセーヌ川等。 パリ市区の飲料水はの供給源は、幾つかの井戸(十五世紀で6箇所、十六世紀でも20箇所以下)とセーヌ川からの汲み水だった)


ちょっと何かあると集団病気感染が一気に広がるわけで。 まぁ当然ではあるんだけどね。

もぅ新型インフルエンザなんぞ目じゃありません。 

伝染病で町一つ壊滅とか珍しくも無いという。

「都市だから・農村だから」って言うよりは、「上流だから・下流だから」って分けた方がいい感じなレベルですよ。

無論、汚水はそのまま川に流すので…


飲料用の水のは、井戸で掘られた水や雨水をろ過した物だってありますよ?

ただまぁ井戸水はともかく、雨水をろ過した水(衛生面では比較的マシ)を飲めるのは貴族に限られたりとかそういった事も何ら珍しくも無くて。

更に、その井戸水も限られていたり、地区によっては有ったり無かったり。  まぁ地層の問題なのですが。

比較的裕福な層やいい場所に住んでる人以外は、その恩恵にあずかれるわけではないというのがミソなのですよ。


ちなみに、地球の中世ヨーロッパの歴史において、あらかじめ(消毒を兼ねて)アルコール飲料にして水分を補給するのが代表的な水分補給の方法になったわけですが…

最大の理由は、この衛生問題なのですよ。 生水飲んで死ぬ事なんてザラなわけで。 

ちなみにこれ、農村より都市の方が深刻というかなんというか。


現代人の感覚だと、気が狂う事間違い無しなのですよ。 

胃腸の弱い人は確実に死にますよ、ええもぉそりゃぁ。

それでまぁ結果として、一般人は安い酸っぱいワインやビールに蜂蜜やらいろいろ入れて子供でも平気に飲んだわけです。 昼間から。

ただ、そんな物すら飲めない人口も相当数存在したわけで。 貧民層/貧民街の衛生状態はお世辞にも良好とはいえなかったわけですよ。

(その辺り、「水はタダで当然!」という発想の日本(時代と地方によって例外はあるが、概ね)からはなかなか想像できないが、実は歴史上「水」を巡る争い…場合によっては国家間の戦争などは珍しくもなんとも無いし、現代でもその事例は枚挙に暇が無い)


いわゆる中世の(時代によって大きく異なるが)平均的な都市の例で、5歳以下の子供の死亡率は25~40%といえば、都市の衛生状態がわかろうというもんですよ。

農村だと都市と条件は色々変わりますが、トータルだと同じく5歳以下の子供の死亡率25~40%あたりに落ち着くわけで。

内容的にはどっちがえげつないかは一言では語れませんが…詳しい解説は食が進まなくなるので割愛。 うんそれがいい。



ついでに言うと、食事は手掴みなのです。 これはこの世界も同じ。

…いや、ほんと、ジョークでもなくて。

フォーク? ナイフ? スプーン?

そんな物この世界(時代)にはまだ存在しませんy(ry


地球の16世紀頃相当になれば貴族階級で使用され始めるかもしれないけどね。

それでも一般の市民(平民)がそんな物使えるようになるのは「準近代」になってからのお話。

地球のヨーロッパ史で言うところの18世紀とか19世紀ですよ。


それまでは、手で掴んで召し上がります。

肉料理も野菜料理もスープの中の具も。

だから、汚れた手を洗う水を入れたボールが、テーブルの上にあったというお話(おぉ

フィンガーボール、ですっけ? あの後付けマナーというやつですよ。

お箸文化の日本に伝わった時、当時の人々が理解不可能だったのは当然のお話です。

まぁ文化の違いといえばそれまでですが。

存外に浅い物ですよ、西洋のテーブルマナーの歴史なんて。



でもって、最悪なのがトイレですよ。

最悪というか何というか…

そもそも、城館なんかのごく一部の例を除いて、『トイレなんて存在しない』というわけでorz

この辺は地球の歴史に近い物があるという…

「魔法」なんて物が存在するファンタジーな世界といえど、こればっかりはどこも同じなのですよ。 

文明レベル的に。


いや例えばね? 

さっき例に挙げた、地球のフランスのパリ市なんかの場合なんか、いい例なんですが。

1861年(ナポレオン時代)にセースの水を飲むことが禁止されるまでの間、水洗トイレなんて無かったわけですよ。 

トイレの歴史ってのは貴重な水を如何に確保するかとの戦いでもあったわけで…

近代になってやっと、ルールク運河を筆頭とする幾つもの水源開発でパリの飲料水が確保され、同時に下水道の整備が進み、次第に水洗トイレが普及し始めたわけですよ。


ちなみに、それまではというと…


都市の場合、一般市民の家に「トイレ」なんて物は無いわけで。 

ぶっちゃけると「おまる」なのですよ。

でもって、家々のおまるが一杯になると、中身を捨てに行くわけです。

ただ有料だったり場所の指定があったり等々の理由から、ゴミなんかと一緒に家の窓から下の道路に捨ててたわけですよ。 汚水や汚物を。

ちなみに、男性が女性をエスコートする時には男性が建物側を歩くのが常識だったという、あまりにも笑えないお話もあるのですよ。

(エドワード3世の時代(1371年)のロンドン市区で、「汚物を窓から捨てるところを官吏に見つかると罰金」という法律が成立したという)


近代になるまでの都市の道路はというと、これがまた…

どの町も道路の真ん中に大きな溝があって、そこにゴミや汚物を集めていたわけですが。 

まぁなんというか、道路全体が恐ろしく不潔だったわけで。 匂いも景観も。

ちなみに、「ハイヒール」が登場した理由は汚物のぬかるみでドレスの裾を汚さない為だし、「マント」が登場した理由は上から降ってくる汚物をよける為という、なんとも中世のイメージぶち壊しなお話なのですよ。

意外と知られていないが、女性のドレスの裾が広がっているのも元々は立ったまま小用を足す為で。

ちょっとセレブな家の場合、付き人が桶を持っていてそれを両足で挟んで立ったまま用を足し、事が終われば窓からポイ捨てという。


当然、庭や道路などは市民全員が撒き散らす糞尿だらけだったわけで。

人の糞尿を放し飼いにしているブタに食べさせて処理し、そのブタを人が食うというすごいリサイクルが成立していたりするわけですよ。

17世紀のルイ14世も、パリのルーヴル宮殿が汚物まみれになり、また市街からの匂いに耐えかねてヴェルサイユ宮殿に引っ越してきたという説もあるという…もうね、なんとも…。


まぁこういった衛生環境だった都市部…しかも城砦に囲まれていたから、更に状況は酷かったわけですよ。

1348年~1353年に黒死病(ペスト)がヨーロッパで爆発的に流行した理由の一つに、各都市の衛生状況があるわけですよ。 その結果パリ市だけで8万人以上が死亡とかね。

(都市の人口増加に設備が追いつかなくなると、都市の廃棄物を増加、飲み水の汚染、悪臭、ハエやノミやネズミの大発生等々の問題が生じるわけで。 古代ローマの地下水路システムや水道が、歴史学者から絶賛される理由もよく分かるというものです。 いやほんとに)

現代の日本の感覚なんてこれっぽちも通用しない、すごい世界だったわけですよorz



でだ。 地球の歴史はさておき、今の俺がいるこの世界のお話に戻るわけだが。

幸いにして、というべきか。 ここは人口密度の低い農村で。

人糞なんかは肥料として土に還せばいいという、そっち方面では心配のあまり無い場所だったな、と思っていたのですよ。


川に普通に汚物流してる住民見て思いっきり引いたけどさ!wwww

即刻禁止にしましたよwwww んでもって、屋根付き壁付きの公衆トイレを各村に作らせましたよwwww 

こえだめってやつとセットねwwww 畑にまけ畑にww 伝染病なんかで死にたくねぇwwwwww

あと井戸に触る前に手洗えwwww 近くに水を酌み貯めておいてさwwww



頼むよ君ら、いやほんとに…orz

寄生虫や病原菌に負けるってそれなんてバッドエンドなのさww






なんて言ってる間に、月日は流れていったわけですよ。


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<おまけ>

*「騎士」の成り立ちと発展(民明書房『西洋のサムライ』より)

「封建社会」という名称の『封』とはすなわち「土地」である。
AD1000年以降には知行(ちこう)として土地財産を譲渡するローマ的習慣(恩貸地制度、おんたいちせいど)が一般化し、さらに義務を果たす限りという条件付きで、土地財産の世襲化が広まっていく事に(以下略)

領主同士の関係としては、「名目的服従や同意を結んでは、何か起こると実力行使(フェーデ)」という解決が一般的であった。
領主がもう一方の領主に服従する場合でも、フェーデの克服策として名目的に結ばれる場合もあった。 例えば、イギリス国王は百年戦争までフランス国王の封建家臣でもあるという立場が続いたが、フランス国王の家来として振る舞ったわけではなく(以下略)

家臣との主従関係も一種の契約関係であり、複数の主君に使える事も可能だった。
その後時が経つに連れ、最終的には一人前の領主として砦を築いて村落を押さえられた者が封建領主に到達し、逆にそのような領主層に服従する騎士達と明確な違いとなり、封建領主制が確立され(以下略)

ローマ帝国の片割れを衰退させ滅亡させたかの「ゲルマン人」が欧州各地に彼らの国を作ったが、彼らに端を発する「領主と配下の騎士達との関係」は、一般に「臣従礼」というもので結びついていた。
『手を包んで(手礼)身を託す儀礼「託身(托身儀礼ホマージュ)」』、『福音書や聖遺物に手を置いて誓いを立てるキリスト教的な「誠実宣誓(せいじつせんせい)」の儀礼』、の2つが主に見られた。 これに後年『キリスト教的意識から倫理的精神(騎士道)』も加わって、一種の社会通念を(以下略)

元々は国王など中央組織と関係のあった公・候・伯などによる在地大領主が支配を握っていた。 11世紀になると農民の集住に合わせて公権力がさらに直接支配する城主層ごとに分割され「バン領主(罰令権を持つ領主)」の時代となるのだが、この領主の分化は地域によって差が(以下略)

例えば、イングランドでは王室支配の傾向が続き、王権支配の基盤としての封建制が機能していた。 ドイツでは諸侯勢力ごとにまとまって一定地域が支配される傾向が続いた。 典型的な封建制が展開した北フランスに対して、性質の大きく異なる南では始め領主の封土とならない自立した自有地が広く残った。 イタリアでは漲(みなぎ)る都市勢力によって封建制は抑止されていた。 典型的な北フランスでは、1160年代まで公的権威のほとんどない独立城主時代が続き、その後1240年頃までの間に城主から公国、そしてその後、百年戦争を得て君主制へ足を進め(以下略)




* 参考までに

このお話の舞台設定としては、地球の中世ヨーロッパを主に参考にしていますが、「魔法」という『宗教・儀礼・戦争・価値観・考え方』に影響を与えるファクターが存在し、またそれが公式に認められている事により、地球の歴史とはかなり昔に分岐していると考えています。 ただし「魔法」は、『簡単に万能の効果をもたらす手段』では無いという設定になっています。 その為(以下長くなるので省略)

ここまで、あえて地名・人名を出さないようにしてきましたが、時話以降色々と出てきます。主に地球の歴史に実在した家名・町名・地域名・国名を参考にしています。 ただし、あくまでこのお話はフィクションであり、実在する人物・家その他を評価する物ではありません。

 主人公の生家のある地方は、北フランスのブルターニュ地方、半島南西部(西端ではない)をイメージしております。 現在のブレストとナントの中間あたりの、特に目立った産業の無い田舎地帯、というイメージです。

ちなみに、このお話に出てくる「王家」の勢力は、北フランスを中心に現在のフランス共和国の4割程度の国土を実効支配(臣従させている)しています。 王都は現在のパリ地区をイメージしております。 この地域を含めた周辺全域をかつて統一していた巨大帝国(古ローマ帝国のようなイメージ)崩壊後、各小地域を実効支配する諸勢力の乱立していたこの地域において、周辺各勢力を服従させ自らを王家とし、王家を中心とする諸侯の連合体としての国家を成立させたのが、本作に主人公が転生する約60年前。 

この連合国家の周辺には他の勢力が色々と存在し、その規模も大小さまざまです。 無論、友好的な勢力ばかりではなく、また連合国家としても自らの勢力を拡大する為に周辺諸国と対立する事も珍しくありません。 その中で、主人公の生まれた地域は、敵対勢力と隣接している事も無く、また、周辺に存在する諸侯は親類や一族に連なる者も多く(かつてこの地方に存在した勢力の一門)、大きな脅威が存在し無い事等様々な理由から、物語開始時点で「軍備」はほぼゼロです。 それにも色々な理由があるのですが、本編でなるべく上手く解説を折り込んでいきたいと考えています。



[7837] 少年期:(第一部、前編)
Name: カフェイン多め◆4b159315 ID:4070b9f6
Date: 2009/07/14 09:49
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<エピソード12> : 「少年ですが、大志を抱くだけでは腹は満たされません!」
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時とは流れる物なのですよ。

いやなんというか、早い早い。 今日、俺、6歳になりました。

外見年齢では12歳という。

なんというか成人の儀式を控えてるっぽく見られてますが何か。



さて、この3年間、毎年半分近くの期間うちの領地に滞在してくれたじーちゃんこと「シモン・ラ・グロワール伯」が、いよいよ本格的に帰国するのです。

今までは、またこっち来るからって事で荷物なんかを置いていたりもしたんだが、今度はほぼ完全に引き上げなので結構大掛かりなのですよ。


まぁおおむね期待していた成果は出ているのですよ。 それなりに。

農業生産に関してはまだ現時点では飛躍的に向上しているわけではないけども(このシステムを継続する事で今後そこそこ大幅な上昇が見込める)、この3年の間に領内全域で新しい農法に切替が完了したわけですよ。

正直、当初予定してた区域だけじゃなく、(面積の小さい等々の理由でこの農法に組み入れる事ができなかった)一部の区域を除いて、各村々の農地の大半は新しい農法システムに組み込めたわけですよ! じーちゃんとこのスタッフ有能で…すごく…うらやましいです。 

じーちゃんや側近や護衛や文官連中はじーちゃんの領地に帰国するわけだが(半分でいいから置いていってほしいw)、見届け役…というかつまり観察と監視、それに連絡を兼ねた役目の部下数名はこっちに常駐させるらしい。

今後数年経過を見た上で良さそうならじーちゃんも自領に導入するって事だろう。


加えて、当初の計画の大幅目標超過達成だけでも十分だったのに、それ以外にも予想外の副産物もあった。

まず、じーちゃんが連れてきていた兵と文官が各村々に派遣されていた事で各地の治安が大幅に改善された事。

同様に(するつもりは無かったのだが)土地その他の調査を勝手にやってくれたおかげで、思いがけず領内の検地が終了しちゃた事。

収穫の時期に面積辺りの収穫量を計算したりしてたもんだから、各村々は「税金のごまかし」が行えず、その分ウチの収入に跳ね返った事。

ぶっちゃけ、今まで人手不足でどうしよかな悩んでたのが、この3年で一気に解決されてしまったという…w

てか正直ここまでの数の人員を送り込んでくれるとは全くの予想外ww 計画が一気に階段飛ばしで進みましたよ。

(逆に色々と問題も出てきたりしたが。 予算とか予算とか…ww それは後ほど述べるとしてw)


まぁその分しっかりデータは取られたわけですよ。

ウチの領内の地形、面積、道、川、人口、村の位置、各村々の耕地面積と収穫高、etc… っと、全部情報はもって行かれましたよ。

各村の人口構成なんかも調べられてるので(同じデータをこっちにも報告させてる。 ひょっとしたら一部は隠匿されてるかもしれないが)、有事の動員力や必要日数なんかも読まれてるだろうね。


今後も仲良くしよう。 うん。 でないと色々とヤバイww

じーちゃんの所はともかく、他のところにこの情報流されたら、(もし戦争になったら)一気に落とされますよ。

しかし、土地の調査とかこっちがやりたくても断念した事をあっさりやってくれるとは。

そこにシビレる憧れ(ry

てかよく押し通せたなw そこは素直に感心するわw ありがたいけどw


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さて、今後の事。

実際の話、この3年間なにかにつけて領内の村を(じーちゃんの役人や兵にまぎれて)順に視察していったわけだが。

今後は各村を全部俺が見る事は、事実上不可能になるわけですよ。

なので、3年の間に一つ手を打っておいた。


「各村から1人、一番よく働いた成年男子(奴隷階級を除く)を報告せよ」


と、派遣人員に伝えておいてもらったわけですよ。 じーちゃんに。

その報告が毎年上がってきていたわけだが…

名前が挙がった者の中から「村の監督役」「監督役の補佐」をこっちで指定する事にした。

というか、じーちゃんと一団が帰国する前に俺とじーちゃんの連名で任命する事にした。

3日後の朝、この領主の館に集まるように、各村に派遣されてる一団を通じて連絡。

…今後は連絡網とか自前で整備しなきゃならんのね。


まぁともかく。

こいつらを、「直接の部下」として雇用して、新しく各村を監視させる役目につけるつもりなのですよ。

…まぁ、各村の旧利権階級、長老連中、あと今回任命する監視役と仲の悪い連中なんかが結託して反抗するだろう事は目に見えてるわけで、すんなりいくとはさすがに予想してない。

特に、今回の一連の農法改革が始まる3年前までは税金ごまかせる立場にあった連中…不正に蓄財してた旧特権階級…は確実に反抗するだろう事は、目に見えてるわけですよ。

まぁこの3年で正確な収穫量とかの情報がこっちに上がって来ちゃったので、来年以降こっそり上納する年貢減らしても確実にばれるぞ、ってな話をこっそりと連中の耳に入るように流させたりしたが。
それだけじゃ抑止力としては期待できないので、もう一つ命令した。


それが、「限定選挙制」。


…いや、これ、正直ある意味で諸刃の剣だから、あんまり切りたくなかったカードなんだけどね。

ただ、じーちゃんとこの一団が引き上げた後各村々を管理し続ける為には、(俺が全部の村を常に見回るのが限りなく不可能に近い以上)手足となって動く人材を増やすのが絶対条件なのですよ。

そこで、色々と弊害もありそうではあるが、制限をつけたうえで各村の代表を村ごとに選ばせる事にした。


・ その村に生まれた人間で、現在も村内に住んでいる、成人した全ての男性・女性が参加(除く奴隷階級)する。

・ 上記の条件を満たす人間の中で、希望者が立候補。 必ず全員が集まって、立候補者の中から多数決で代表・副代表を選ぶ。

・ 代表・副代表の任期は2年。 同じ人間が2回代表・副代表になる事はできない。

・ 代表・副代表に選ばれた人間の親・兄弟・子供・孫は、次の年の代表・副代表になる事はできない。

・ 各村の住民が犯罪を起こした場合、代表も連帯責任を負う。

・ 各村の代表の役目は、村内の住民の税金(物納含む)を収集・管理し、領主の館まで届ける事。(監視役同伴)

・ 各村々での問題事は、国法・領令に反しない限り、代表の判断にて解決する事。(ただし大きな問題は、全て領主へ届ける事)

・ 各村の代表には領主から報奨金が支払われる。 ただし税金ゴマカしやがったらブッ殺スぞゴルァ(ぉ

・ ついでに「監視役」は領主の直属なので、その行動は一切妨げてはならないってかお前らが不正してないかチェックさせてんだから邪魔すんなってか監視役買収しようとしたら両方死刑でs


男女同権云々といった話をするつもりはないんだけども、男手は戦で一気に減る可能性があるからね。 

ちなみに、人口の少ない小規模な村の場合(住民数80人以下)は、隣の村と合わせて1つの選挙区とした。 この場合、一方の村から代表を、もう一方の村から副代表を出させる形にしたのですよ。

あと、特定の村で選挙操作されにくいように、村外生まれは権利の対象外にしたし、世襲はきっちりと制限。

そして、報奨金を出す代わりに揉め事の責任は取らせるし、税金はちゃんとこっちまで持ってこさせる。

収穫時・輸送時には、必ず監視役が同伴しなければならない事にした(普通は兵士を派遣したりして税を徴集するのだが、この3年間を除いてうちの領では人手不足を理由に各村ごとに持ってこさせていた。 それが不正を容易にしていた理由の一つでもあるのだが)。


この監視役に各畑からの収穫を村の代表に報告したり代表と一緒に見て回ったりさせるのですよ。

ちなみに、地位的には監視役は直接領主から雇用されて監視の命令を受けてる立場なので、名目上の立場は代表より上。

まぁだから報告にあった「働き者」ばっかりを選んだわけだ。

全住民と面接して採用者を決めるなんてあまりにも非現実的なので、不正を働く確率が低いと期待される人間を選んでみたわけで。


監視役の任期も2年。 2年経ったら監視役補佐が昇格する仕組みにした。

でもって、監視役には毎年一回「その村で最も良く働いた者」を報告させ、その中から次の監視役補佐を選ぶという仕組みにしたのですよ。

あとこの監視役には、定期的に村の近況報告をさせる役目もある。 

具体的に言うと、年に4回直接領主の館までやってきて、各村の状況を報告させるのですよ。

代表からの連絡は通常なにか解決できない問題があった場合なので、今まではそれ以外の情報が領主に伝わらない仕組みだったからねぇ。



あと、もう一つ大事なのが、「軍務」。

いやなんというか、有事の際には領内の各村から男連中を呼び寄せて兵士にするわけですが。

今までは、選抜するのが(世襲の)村の代表だったりわけで、遅い上に悪質…まぁ要は「気に入らない奴だけ」を選んでたり、特定の家から選ばれないようにする代わりに裏金を云々…だったわけだ。


というわけで、有事の際には各村の「監視役」が派遣する人間を数名選んで、「副監視役」を「臨時小隊長」としてまとめて派遣させる事にした。

一つの村からだいたい4~5人。 地域ごとにだいたい20人ちょっと。 全部集まって110~120人程度。

多いか少ないか、と考え始めると微妙だが、領内の人口が約3000人と考えると、それなりにバランスの取れた数じゃないかと考えてはいる。


先代や先々代の時は、有事(国から出兵を求められた時)になるとこの数倍かき集めたらしいが、無駄だよそんなもんw

戦場において数的有利は大きいが、敵以上に怖いのは足引っ張る味方なのですよ。 

騎士階級や傭兵はともかく、農民兵だからねぇ。 押せ押せの戦ならともかく、奇襲とか喰らうと混乱の度合いは図り知れないし、戦況が悪くなると士気を保つのは非常に難しいわけで。

兵数が増えれば増えるだけ統率は難しくなるし、消費する食料物資も増える。 旗色が悪いと逃亡も深刻になるし、武装も食料もその他必要なものは全部領主持ちだしね。 


まぁ「名将」と言われる歴史上の人物は、そういう農民兵をきっちり纏め上げて上手に活用してたわけですが。 俺に同じ事ができるとは思えんwwww

なら、できるだけ被害抑える方向で行ったほうがいいじゃない?

領民死ぬと、税収減に直結するんだからww


というわけで。

有事を想定した「徴集訓練」を、年に数回行うことにしたのですよ。

無論、農繁期は避けます。 

ちなみに、副監視役以外の参加メンバーは毎回変えろ、と指示出しておきましたよ。

領主の館に全部集めた後、地方ごとに分かれて行軍訓練、野営訓練。 

各副代表が交代で「臨時中隊長」として、各小隊をまとめる仕組みにした。

村同士の親睦を深める目的も兼ねてるわけで。 仲良き事は有益かな。

本当は、「戦闘訓練」も行いたいんだけどね…軽くでもいいから。 教鞭取れる人が…orz



まぁどんな制度も、時が経てば綻びが現れるものですが。

当面はこれで大丈夫だろう。 領土広がればともかく、現状じゃなぁ。 兵を増やす意味が…


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さて。 さくさくと月日は流れまして。

じーちゃん…シモン・ラ・グロワール伯とその一団の帰国がいよいよ明日に迫ってきた今日この頃。

「選挙代表制」「監視役制度」の導入にあたり、当初予定された混乱が予想に違わぬ規模で各村々を覆っていたわけですが、ここにきてやっと平穏を取り戻しつつある感じですよ。


まぁつまり、「(条件を満たしていれば)誰でも立候補できる!」という点を浸透させるのが一番大変だったわけで。

いやほんと識字率低いのがここまで足を引っ張るとは思わなかった。

なんとか一団の帰国前(各村からの総引き揚げ前)に各村で住民集めて説明させ、半ば強引に第一回選挙までもっていったものの、大半の住民が文字を読めない事を悪用して言葉巧みに騙す連中がどの村にもいたという。 

まぁほとんどは予想通り今まで特権階級だった旧代表一族なわけだが…。



まぁあれだ。 

なんだかんだ言って、この3年間に構築できた(最後駆け込みだったが)システムは大きいのですよ。

どちらかというと、今まで領内の統治がほとんど機能してなかった事の方が色んな意味で驚愕だが(ぉ

皮肉にも、というか。 農業改革の成果以外の部分で(不正の取り締りシステム構築)で、領内の収入が増えたというのが、なんともやるせないというか…w

まぁ例の税制改革で収穫にかかる税金半分にしたのと農法改革実践のおかげで、トータルで見た収入は現時点では下がってるわけですが。 これは今後収穫高が上がればその分利益も増えるし、何より今でも(そんなに大きくは無いが)十分黒字ではあるので、問題とは思っていない。


ちなみに、各村の監視役システムを使った連絡網もなんとか運用開始。

→領主の館から(各方面の)近隣の村に情報を伝達(地区割りではなく、方向割り)
→その村の監視役が村の代表に伝え、副代表が次の村に伝える
→繰り返し(リレー)
→最後の(各方面の端の)村に伝わる
→最後の(各方面の端の)村は「伝わった」旨の連絡の為、逆方向に折り返し副代表を走らせる
→繰り返し(リレー)
→最後に領主の館に「各方面に伝わった」旨の連絡が到着する。

8方向に分けて順番を決めて、次の村に次の村に伝わるように練習させましたよ。


電話連絡網なら楽なんだけどなw かといって、駅伝制度わざわざ整備するほどの広い領地でもないし、そもそもそんな費用は無いので、監視役を流用することに決定。

うん、手駒が使えると楽です。 雑用(とはいえ必要なことではあるが)は全部押し付けれます。

監視役と代表に支払う給金全部合わせても、不正撲滅分の収入増で十分補えて(多少ながら)おつりが来てるわけですよ。 そして今後収穫が増えていけば、その分は丸ごとこっちに入るという…。

まぁこれで、有事の際の(軍務の)準備と合わせて、最低限の備えはできたかな、という所。



この3年で、「税制の改革」・「農法の改革」・「収穫高向上」・「治安の改善」までは一応到達。

そして、駆け込みで「選挙制(地域行政改革)」・「域内監視(監視役)」・「情報伝達」・「有事対応」を何とか到達。

各村に派遣されていた文官・兵士の一団が去ってしまうのは、本当に痛いが仕方ない。

最大の問題は、彼らが去った後も「領主」がしっかりと領内を把握・統治できるシステムの構築が必須だった事ですよ。


まぁ案の定混乱も起きたし、見当違いの「陳情」(旧既得権益層)はいっぱい来ましたよ、直接。

全部首飛ばしてやりてぇぇぇぇと思いながら聞いてたのは秘密ww

戸籍の管理や、(3年前に定めた)出産に関する補助金とか、そういった情報も監視役に移したので、この3年間厳しく土地や収穫高をチェックされて税金をごまかせなくなった旧代表一族の不満は高まってたわけで。

じーちゃんの一団が各村にいる間に新体制の整備が終わらなければもうアウトだったという。
 
なんというか、最後まで美味しくうまい事利用する事ができました。 (高かったけども)出費に見合った成果はあったわけですよ。


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まぁ、何もかも上手くいく訳ではないのが、世の中の常。

何かを得るには、その代償が必要不可欠なのですよ。
(とはいえ、今回は相当運が良かった事は否めないが)


じーちゃんにもボランティアで文官や兵士動員してもらうわけには行かなかったからねぇ。

具体的に言うと、3年前の臨時収入はとっくに全部消えましたよww 

この一団の滞在費でww 

加えて、この3年間の(上納金や必要経費を除いた)うちの領内の全収入のほとんどが、この一団の滞在費・活動費として消えたわけですよww


無論、人間だけじゃない。 

今回の改革に必要だった家畜(労働力)の不足分は、じーちゃんのつてで購入したのですよ。
(ちなみに、その費用は全額借金として、じーちゃん宛に証文を書いた)

鉄製農具なんかも少しでも購入したかったんだが、さすがにこれ以上じーちゃんから借り入れるのは不可能だったww

まぁ仕方ないといえば仕方ないし、それに見合う効果はあったわけだが…w

(ちなみに、この改革で馬、牛、ロバ等を大量にじーちゃん領(経由で)商人から購入したわけだが、そのエサの自給に関しては今回の農法改革で大幅に改善され、3年目にしてなんとか維持できる水準まで達した)


向こうもそんな贅沢とか好き勝手やるつもりは全く無く、(こちらからは言いにくいが)できるだけ節約に協力してくれてたりするわけだが、仮にも貴族とその取り巻きを滞在させるわけで、ケチる事ができない点も多々あるのです。

まぁ一団の文官と兵士を領内の全村に派遣してたわけで。

人数が事前の予想を大幅に上回る数居た事が、予想の数倍に達する出費(経費)の最大の理由なのは言うまでもない。

正直、こっちの予想をはるかに超える人数(全村に派遣する兵と文官)をじーちゃんが寄越してくれるとは予想だにしなかったのですよww


そんなわけで、一団の帰国を控えた現在のウチの金庫。

貨幣類全部ひっくるめて、金貨換算でだいたい10枚前後。
(穀物等、食料の在庫は相当量備蓄が進んではいるが)

無論、一般の平民からしたら目の玉の飛び出る金額ではあるが、領主の備蓄としてはあまりにも…

え…? やだ…なにこれ…なのですよ(ぇ

(ちなみに、生活費(館の維持費)や各村々に給料として払う分は、間違って使い込んで支払いが滞ると一気に信用が無くなる為、別枠として除いてある)


ちなみに、3年前までのうちの全領内からの年間収入は、金貨換算で350枚程度。

そのうち上納金として王家に献上してたのが、金貨で150枚前後。

実質手元に残っていたのは半分ちょっとですよ。

(王家への献上金は最低額が人口規模ごとに決まっていて減らすわけにはいかないので、この3年間は貯蓄もままならないという…)


もっとも、俺が領土を受け継いだ時点では、(収穫前という事もあったが)金庫はほぼからっぽ。

ちゃぶ台ひっくり返したくなるような水準だったわけで。

「臨時収入」を使ってじーちゃんとお付の一団にうちに滞留してもらって改革をやっていったものの、もろもろの経費と上納金、そして生活費を差し引けば、ほとんど手元に残るお金は無かったというorz

ちなみに、じーちゃん側としてはまだあと1年くらい(とはいっても1年の半分は自国に帰っているが)こっちに滞在してもいいみたいな事を言ってたが、ぶっちゃけこっちの経済状況的に無理だったのですよ。



そして現在。 

うちの全領内からの年間収入は、やっと3年前の水準に戻りつつある状況で。

今年の収入見込みが、金貨換算で330枚程度。

王家への献上金はここ数年変わらず金貨換算で150枚(ちなみに、これは領内人口で義務付けられた最低額。 ご機嫌取りするにはもっと増額して収めねばならない)、各村の代表や監視役システム経費(人件費含む)・館の維持費(使用人の人件費含む)・生活費・その他領内の統治に必要な経費もろもろ合わせると金貨換算で約25枚(*実際の給金支払いは銅貨や銀貨の為)前後。

差し引きで、金貨換算155枚程度は余裕ができる見込みなのですよ。


まぁこれはあくまで、「現時点での1年分の見込み額」なわけで。

新農法のシステム上、収穫は年に数回に分けて行われるし、穀物は収穫期ではなく市場に流通してる量が少なくなった時期を見計らって売れば収入大幅増が見込める上に、農業生産に関しては今後も伸びが期待できるのも好材料。 

年を追うごとに(一定の水準までは)収入は伸びる見込みなのです。

ちなみに、収穫物以外の税金のうち、「森への立ち入り・持ち出し権等々」もこの収入見込み含まれている。 毎月1回各村から監視役に届けさせる事にしたのですよ(これも、以前は年に1回だったうえに、利用の実態を反映できていなかった)。



この「森」の利用に関しても、規制と税金のバランスが難しかったわけですよ。

そもそも、各村に兵が駐留していても、村の周囲の森全部を始終見張るなんて不可能なのは自明の理。

かといって、人口ごとに定額を支払わせて後は持ち出し自由にしてしまうと、木材・野草・木の実や野生の果実やきのこ類などの可食物は、地域によっては根こそぎ持ち去られる危険があったりするわけで。(その場合、一時的に潤っても翌年以降の同じ区域での収穫が困難になる)

それよりなにより、「森」というのは「危険」なのだという事。(現代の日本に住んでいると意味がなかなか理解できないが)

「取り放題」の一番怖い点は、単独で行こうとする人間が増えて、野生の獣等による事故が増え、犠牲者が増える事。 

通常森に入るときは普通は集団で行動するのですよ。


童話にある森の中に1人で住んでいるおばあさん? そりゃいわゆる「姥捨て」ですよ。

村で養う余力が無いので、危険地帯の「森」に追放されて一人で住んでいるおばあさんですよ。

狼がおばあさんを食べた? そりゃ食べられますよ。 銃が発明された後の時代でも危険なのに。

そんなおばあさんの所に行くために女の子が1人で森に入っていったりしたらそりゃ村中大騒ぎしますよ。 森に入ってしまった村の子供を野生の獣に食われてしまった他の村民は、当然怒ってその人食い狼なりなんなりを捕まえますよ。

当然、毛皮はひん剥いてなめして利用、身は切って焼いたり煮たりして食べます。


「じゃぁ森に近づかなければいいじゃない」とはいかなかったのが、食糧事情と生活事情。

「森」のもたらす資源と食料は必要不可欠なのです。 肉食べたければ森に行くしかないのですよ。

兎、狐、猪、ヒバリ、カルガモ、アヒル、全部食料ですよ。 狼や熊だって、上手く仕留める事ができれば当然食べます。 ご馳走です。 毛皮もゲットできて一石二鳥なのです。

村や町で消費する薪は、森から取ってきます。 危険な森から取ってくるから、町に持っていくと薪が売れるのですよ。

まだ猪に近いような黒い毛のふさふさはえた豚なんかは、うまく落とし穴に落として生きたまま捕獲できればグッジョブです。 秋に豊富な木の実を食わせて太らせて、冬になる前に殺して塩漬けにして保存食にするのですよ。

(ちなみに、翌年のお産に使う若いメスの豚と一部のオスの豚を残して、村で飼ってる豚を全部殺して保存食にするのも、冬に入る前。 冬の間家畜を養っておく余裕は、貧しい農村には存在しないのです)


労働力として使役する牛やロバや馬、あるいは犬(用途は多数、ただし飢饉になると当然殺して食料にした)に食わせるエサも馬鹿にならないのです。

森の木々の下草を刈って食わせてるうちはいいのですが、貴重な畑を牧草栽培に使ってまで家畜を飼う余裕は、一般の貧しい村には無いのですよ。(これは、うちの領内に限っていえば、今回の農法改革により大幅に改善され、家畜のエサとして利用できる草類の絶対量が大幅に増加した)

まぁともあれ、木々の伐採制限なんかも含めてね? 森林の保護は必要だったわけですよ。


で、結論から言えば、その監督は「監視役」に押し付けましt(ぇ

具体的にいうと、監視役もしくは副監視役が同伴でなければ、森への立ち入りは許可できない、と布告したわけですよ。

森に入る際は、入る人間が共同で「権利」を購入し、監視役が同伴する。

木材の伐採は制限つき。 野生の果実なんかは半分は残す(来期の為)。

危険な所には極力近寄らない。 野生動物も取り過ぎない。 Etc…


まぁなんというか、基本的には「制限」したのですよ。

改革前の時点でこれごり押ししようとしたら確実に猛反対が予想されたわけですが。

農作物に関する税率を半分にした効果は伊達じゃありません。

「じゃ、前の方がいいか?」と聞けば一発です。

まぁ完全に守られるとは思ってないが、一定の効果は期待できるだろうと期待age(何



それ以外にもなんだかんだと「税」という名目で色々させてるわけですが…。

現状を再確認してみると、

・ 農業生産の25%(物納)
・ 住民税(現金)
・ 「森」への立ち入り権利(現金)
・ 領主所有の畑での労働
・ 兵役、その他の雑役

って所なのですよ。 

これと別枠で、「代表」「監視役」に課した役目がある。
(こっちは給金を払うので別枠)

ちなみに、農作物の上納、領主の畑の管理、その他領主の命令による雑役を監督するのは、「代表」。

現金で納める税金の管理と上納、森の管理・連絡網・兵役管理・代表の監視その他定められた仕事をするのが、「監視役」。


改革前に比べると、領民の負担は(トータルでは)大幅に減ったわけですよ。

近隣の貴族領に比べると、領民の負担は相当軽い部類に入るのは間違いないとゆー所です。

実は、反乱をふせぐだけなら「反乱を起こす余力も無いくらいまで搾取する」って選択肢もあったわけだけど、ね。

その前提条件になる「強制力」…ぶっちゃけ「兵力」がうちに無かった以上(改革開始当初)、宥和政策しかなかったわけですよ。


まぁ領民に嫌われようが好かれようがかまわんのですよ。 俺が楽しく暮らせる分には。

ただまぁ現状の(この世界の)情勢を見る感じでは、ボーっとしてるだけでは色々と危ないわけで。


あー、面倒…とか思ったりなwwww


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さて、じーちゃんの帰国を目前にして、一つわりと深刻な問題があるのですよ。

3年前の税制改革時の付帯条件の一つとして、「領内の農作物はすべて領主(もしくは領主の委託を受けた業者)に販売しなければならない」と定めていたわけだが。

領外の商人に安く買い叩かれるのを防ぐ為に始めたこの制度は、領民の所得向上と生活の安定に対してそれなりに効果があったわけですよ。 


ただ、問題となっている点が一つ。 それはこっち(領主)側。

時期をずらして市場に出す事でより多くの利益を上げる、は今のところ成功している。

じーちゃんがこっちに来てることで、グロワール伯領を訪れていた商人がこっちまで足を運んでくれるようになったのですよ! いやもぅ最大の懸念だった「販路」がなんとかなったという、ね。

じーちゃん様様ですよ。


で、だ。

こっち側の何が問題なのかというと、じーちゃんの一団の滞在費があまりにも負担になった為に、今現在のうちの金庫の残高は前述の通りorz

収穫した時期にそのまま他所に即売りではなく時期をずらして売ると言う事は、その間はこっちで抱えていなきゃいけない。

(仮に収穫シーズン後にまとめて叩き売るにしても、領民が個別に小口で取引する場合よりは若干マシな買い取り価格で引き取らせれるが、いずれにせよ買い付け時点での資金が必要になるのは同じ)。

つまり、「買い付けに多額の費用が必要」なのに「売り上げの回収」が達成できるのはもっと先のことになる、というわけで…。

まぁそもそもこの政策に関しては、領民が農作物を買い叩かれるのを防ぐ事も目的だが、安値(それでも領外商人に売るよりは高い値段)で領民から買い集め、市中の相場が上がった時期に領外商人に転売し、差額をうちの利益として確保する為でもあったわけだが。


うん。 ぶっちゃけ、手元の資金がもっと必要なのですよ。

そもそも現時点で資金備蓄が危機的水準を割ってるわけで、これ以上減ると有事の対応すら不可能になるという水準。

前述の通り、じーちゃんには既に今回の改革に使った大量の家畜の購入費で証文書いて借金してるわけで、あれもこれもというわけにもいかない。

てか、じーちゃんだけなら口説き落とせるかもしれんが、周囲のスタッフは確実に反対するだろうし、ね。

(前回の借金でもかなり不満を持っていた。 そもそも、上司が確実に返ってくる保証の無い金を貸そうとするのを止めるのはある意味当然なので、文句を言うわけにもいかない)



さてさて…ほんとにどうしたものやら。

いつの世も、お金の悩みは尽きません。




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<エピソード13> : 「金策、金策、また金策」
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まぁ結論から言うと、別口で借金したんだけどね(ぇ














や、最初はね? じーちゃんに頼もうとしたのですよ。 高く引き取ってくれそうな金持ちの紹介をw

ところが、「じーちゃんに買い取らせようとしている」と勘違いしたじーちゃんの部下連中が、あの手この手でさりげなく話題を変えたりこれ以上資金は出せないような事を匂わせたり…

いやまぁ「じーちゃん引き取ってくれないかな~」と思ってたのも事実だからねw ドキッとしてる間に押し負けましたよw

で、目をつけたのが、貴族以外で大量の資金を動かせる、領外商人。


いやほら、じーちゃんの領地経由でうちにも来てる商人が、たまたま今滞在してたのですよ。

んでもって、こっちにはおやっさんが溜め込んでたツボだの彫刻だの絵画だの、一応高価なんだけど正直イラネって品物はいっぱいあったわけですよ。

そんなもんいくらあっても領民の腹も俺の腹も膨れないしww

むしろそのうち傷つけちゃいそうでってか前科あるので(*指輪の件参照)ジャマなのさwwww

ってなわけで、そーいった品々を(ツボ一つだけ除いて)一切合財まとめて担保にして、可能な限り借り入れたわけですよ!ww まぁ質入れというか何というかww

…無論、返済するつもりはないけどなwwww 質流れおっけー! 問題ありませんとも!wwww むしろ早く流せ(ぉ


まぁ相手がそれなりにそっち方面にも精通してる商人だった事が幸運でしたよ、ええ。

「価値が分かるので、多く出してくれる」的な意味でw

ちなみに、既に清掃して梱包して、安全な地下室に保管してあるのですよ(ぉぃ

手放す気満々ですwwww 相手には秘密だけどなwwww


時間さえ余裕があれば、この商人経由で(手数料払って)もっと高く買い取ってくれそうなところを当たる方法もあったんだけども、ねw

まぁ、仕方ないと諦めてみる。

処分できて現金になるだけで十分。

(さすがに大金になるので、今すぐ用意はできなかったようだ)


次回の収穫までに現金の到着が間に合うなら、それで十分なのですよ。

ちなみに、「まとめて買い取ってくれ」なんて言ったら怪しまれるかと考えて、あえて「借金」って形にしたわけだ。 

貴族が、自家の抱えてる財産を投売りするなんて聞いたら、俺でも「戦争の準備か?」って勘ぐってしまうわけで。 

周囲に無用な警戒をさせる必要もないし、下手に注目を浴びる必要も無い。


あくまで、「他の貴族を招いて滞在させていた結果資金に余裕の無くなった子供貴族が、親の財産を担保にして商人に借金を申し込んだ」で押し通す予定ですとも。

その結果、「期日までに支払う事ができなくて、数々の品物は差し押さえられてしまう」予定だとしても。 それをわざわざこっちから吹聴したりはしませんよ?

こちらを低く見て油断してくれるなら、それはそれでおk。

うちに対する王家や周囲の諸侯の警戒心を下げる事ができるなら、うちとしても軍備を手抜きできてその分他に予算を回す事ができるのですよ。


ただ深夜にククク…とこっそり笑うwwww


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ところで、今回の改革を通じて領民の栄養状態は大幅に改善されつつある。


当然、一口に領民(農民)といっても、貧富の格差は当然存在するのですよ。

分かりやすい例が、改革前の「世襲だった『代表』の一族」のようなプチ特権階級。

小麦を使った柔らかいパンを口にすることができるのは、領主や裕福な領民だけ。

一般の農民が口にできるのは堅いパンですよ。

(*地球の歴史で、カール大帝の時代フランクフルトでは、小麦:ライ麦:大麦:燕麦、の市場価格の比較が、4:3:2:1、だったという説もある)



* 参考 *
- 各麦の特徴 -

『小麦』
柔らかくふっくらと焼けるパンは小麦粉でしか作れなかった(他の穀物に比べてグルテンを多く含んでいるため)事から「麦の王様」とも呼ばれ、当然市場価格は一番高かった。
同じ小麦粉で作られるパンの中でも、一度挽いた小麦をふるいにかけて落とした真っ白な小麦粉で作った白パンは最高級のパンで、このようなパンを食べられるのは貴族や裕福な商人などに限られていた。 ふるいに残ったふすま入りの目の粗い粉からは二等級のパンが作られ、一般の平民層の糧となった。
しかしながら、白パンは栄養的な観点からは十分な物とは言えず、ふすまを除いてしまったことによりビタミン・ミネラルが大きく欠けていた。 白パンと全粉パンと比べると、例えば鉄分は2分の1、ビタミンB1は3分の1程度であり、白パン単体の栄養価で見ればそれほど優秀な食べ物というわけではなかった。
しかしながら、白パンを食べる事のできる層にとって白パンは食卓に並ぶ品々の一種であり、それ以外の肉や野菜から十分な栄養分を摂取する事ができるのが常であった。

『ライ麦』
小麦より耐寒性に優れていたので、ヨーロッパの中でも比較的寒い北欧・ロシア・ドイツなど多くの地域を中心に栽培されていた。 ライ麦単体でもパンを作ることが可能だが、ライ麦で作るパンは黒パンで、白パンに比べると固くて重いものだった。
しかし黒パンは白パンに比べて二倍以上のビタミンを含んでいたので、貴族のように様々な食事から栄養を獲ることの出来なかった一般庶民に必須の食事だった。

『燕麦』
カラス麦ないしオート麦とも呼ばれる。 ライ麦よりさらに厳しい条件下でも育つことが可能なため、アルプスなどの山岳地帯などでも栽培されていた。
燕麦単体ではパンが出来ず、いくらかの小麦を混ぜることで平べったく黒っぽいパンを作ることができた。 燕麦は他の麦に比べてたんぱく質や脂質などが多く含まれており、食物の少ない寒冷地や山岳部の庶民にとっては大切な栄養源だった。

『大麦』
ライ麦や燕麦同様に小麦が栽培できないような寒い地方でも栽培されたが、大麦はパンにされるよりもむしろビール醸造に多く用いられた。(大麦や燕麦を発芽させ、その麦芽を乾燥させて発芽を止めてから細かく砕き、水に入れて発酵させて作った)
ちなみに、ビールの香り付けにはスパイスやハーブが用いられた。
代表的な香り付けの原料に「ホップ」がある。(香り付けの他にビールの日持ちを良くする効果があった)

燕麦や大麦に小麦を加える理由
小麦の胚乳には粘展性を持つタンパク質と弾力性を持つタンパク質とがあり、グルテンはこれらを捏ねることで生まれる。 このグルテン入り小麦に、酵母菌(イースト)から発せられる炭酸ガスが加わることで、パンはふっくらと焼きあがるのである。
小麦に次いでパンに向いていたライ麦は粘展性を持つタンパク質のみを持っていたので、単体でパンを焼くことはできても、そのパンは重く、噛むのに苦労する黒パンになる。
そして燕麦・大麦・その他の雑穀は、小麦を加えないことにはパンにすらならなかったのである。

(参考文献:「ア○プスの少女ハ○ジ」、ク○ラの実家の食卓より)



まぁ脱線はさておき、食べていけるのであればまだいいのです。

一応でも暮らしていけるのなら、反乱の心配なんぞ必要ないのですよ。


問題は、「一般」以下の階層の領民。

高い税率にあえぎ、日々の糧を得るために自前の農地を手放し、「小作人」状態に陥っていた領民。

同じ領内の裕福な(特権階級の一族)や領外の商人に借金をしたり、それでも立ち行かなくなると娘や息子、あるいは妻を「奴隷」としてその方面の商人に売ったり、自らが奴隷階級に落ちたり。

捨て子、爺捨て、姥捨て、なんて物語の中だけの話じゃないわけですよ。

当然、十分な食事などとれるわけが無く、慢性的な栄養失調に喘いでいたわけで。

飢えて動けなくなるか、身内を売ってでも生き延びるか、そして、村や家族を捨て「盗賊・山賊」として生きるか…


それが少数のうちはまだいい。

彼らにとってはこの世は地獄でも、領主は太平の世を謳歌できる。

ただ、この層の数が増えてくると、今度は徒党を組んで不満を表明し始める。

つまり、「暴動」であり、「反乱」である。

はっきりいうと、よほど生活が追い詰められない限りそういった事態にはならない。

が、逆に言えば、多数の人間が徹底的に追い詰められると、「このまま死ぬよりは」と考えて「行動」にでるのは、古今東西変わらないのである。(日本の中世の農民の『一揆』に相当するものは、世界のほぼ全ての地域で発生した)



さて、うちの領内の話だが、農法改革によって夏畑で大麦や燕麦を栽培するようになった事で、(主に貧しい領民の主食だった)黒パンの生産量は一気に増えた。

無論、主力商品である小麦・ライ麦の収穫高も向上。

そして、それまでわずかだった各種豆類などを大量に生産する事が可能になったのも大きく、農民の慢性的な栄養失調を和らげる事に成功。

加えて、家畜数を大幅に増やしたにもかかわらず、エサ用の飼料もおおむね自給が可能になった。(足りない分は、森から調達)


飼育できるブタの数も増え、野菜や雑穀も食卓に並ぶようになった。

パンも、以前より手に入りやすくなった。 肉を食べる頻度も以前よりは増えた。

(牛その他農耕で使える家畜は、自然死した場合や使い物にならなくなった場合を除いて、殺して食べる事を原則禁止した)

そして、栄養状態に加えて領内の衛生状態も改善に向けて色々指示を出した。



これで、領内で伝染病等が蔓延するリスクは多少なりとも減ったはずなのさぁ。

俺が安全に楽しく長生きする為にも、これは非常に重要。

抵抗力の低い幼少期に病死は勘弁して欲しい。 いやほんとマジで。



そういえば、領内の食糧事情が大幅に好転した理由の半分は農法改革だが、もう半分は改革と同時に布告された「領外商人への農作物の直接売買禁止」令だったりする。

領主が一端全て買い上げるシステムを構築した事で、領内の食料在庫量を調整しながら、「余剰分だけを」領外へ売る事が可能になったのですよ。

まっとうな領主としての判断ができるなら、領内で飢えてる人間(貧困層・奴隷階級)がいるのに領外の商人に安値で買い叩かれるなんぞ見逃すわけには行かないのですよ。

例えるなら、ミサイル発射や核開発する資金があるなら、飢えている領内の子供に十分な飯を食わせる方が先だというお話。

民草を飢え死にさせてまでかき集めた金で「権威」を買おうとしても、人類の歴史上、長続きした例は存在しないのです。

領民にとっても、これまで商人の言い値で買い叩かれていたのが、それより高く引き取ってもらえるので万々歳。

しかも農作物の収穫にかかる税が半分になったうえに農業生産高は増加したので、ほぼ全ての領民が改革前よりも生活が楽になったわけですよ。
(例外は、税金のごまかしができなくなった一部の層など)


ちなみに、領外の商人に売る事は禁止したものの、領内の村相手に取引をする事は認めているので、(まだ『商業』というほどの物ではないが)、自分の村で取れた麦や野菜の余剰分を別の村に持っていって、肉だったり炭だったり衣服だったりと交換するような動きも一部で見られるようだ。

このペースでいけば、領内の食料品の物価は(今後人口の大幅な増加がおこらない限り)ゆるやかに下落していく事が予想される。 特に、嗜好品や希少品ではない穀物・野菜でその動きは顕著に見られるだろう。

そうなれば、領内から(今よりも)安く仕入れて領外に販売し、その内外の価格差で利益を上げるという『貿易』の仕組みが生かせるわけだ。



ところで、農業改革後も「生産流通管理方式」を採用して「楽市楽座方式」に切り替えなかった。

それだと失敗すると俺は見ているからですよ。


まず第一に、交通の要所から離れすぎている。

地球の歴史で言う古代ローマの「街道」に近い物は、この世界にも存在する。(かなり別物だが)

ただ、いずれにせようちの領地からは非常に遠いわけで、全くその恩恵を受けれる位置に無い。

ってか、近かったらそもそも別アプローチでの領土財政再建を目指してたわけで(ry

商品の供給地としてはともかく、交易地にはどうあがいても生り得ないのですよ。


第二に、規模が小さすぎる事。

信長の政策が成功した背景には、尾張・美濃・伊勢という当時の優良商業地帯と領内にある商業都市を傘下に入れており、かつ食料生産量が全国有数の肥沃な濃尾平野をしっかりと抑えてあった事が大きいわけで。

元々織田家領内の「商業力」は周囲の戦国大名とは比較にならないほど高かったうえに、大量の商品を自給できる体制にあった事が、新しい商業都市「岐阜」の成立の背景にあったわけですよ。



まぁ商業談義はさておき。

今回の改革で飼料の生産も予想以上に伸びたおかげで、将来的には軍馬を養う下地ができたのですよ。

改革前の状態だと(ry

将来的に馬の生産が軌道に乗れば(時間のかかる商売ではあるが)これを輸出することもできるし、何より領内の連絡網を徒歩から馬に切り替えることができるのは大きい。

まぁ維持費も跳ね上がるうえに、馬も人も訓練する必要があるが…


もっとも現時点では、捕ってもいない狸の皮を数えてるだけだが(ぉ


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さて。 

当座の資金の目処は立ったものの、じーちゃんとこの借金もいつまでも借りっぱなしにするわけにもいかないわけで。

内政というか金策というか、まぁ何かしら考えないといけないわけですよ。


とはいえ、手っ取り早く領内のブタを集めて出荷したりしたらまた領民の不満が上がるのは目に見えているし、臨時で領民から税金を徴収するわけにもいかない。(んなことしたら、改革の意味が無くなるので、当然実行する気は無いが)

「売れる」品物を生産する必要があるわけですよ。


でだ。

改革にほとんどの時間を費やしていたこの3年間なわけだが、他に何もしてなかったわけでもない。

色々とね、考えては見たのですよ。

農業政策(改革)は年中やってるわけじゃないし、それ以外の時間を使ってね。




『北部』


まず、木材資源豊富な各村々に、余った時間を使って木製のナイフ・スプーン・ハシを作らせてみた。 使用するのは間伐材や落木、あとは木材として利用した後の半端材。

調理用スプーン(のようなもの)などは現時点でも調理用の大型の物は既に存在するが、食事に使うテーブルサイズのスプーン等は一般には流通していない。

じゃ流行らせちゃえばいいじゃない、というわけですよ。


ただ、一見簡単そうに思えたが、これがなかなか上手くいかない。

そもそも、作る側の領民が実物を見た事が無いわけで。

最初に「できました」って報告と共に持ってきた物体を見てね、意思の疎通って難しいのね…と痛感しましたよ。

その後、改良を重ねて作らせた結果、なんとか形はそれっぽくなったわけだが…

残念ながらというべきか、完成品の大きさ・形状・重さ・色といったものが統一されていない。

つまり「規格」の統一がなされておらず、ハンドメイド品としてバラバラに出すならともかく、大口でまとめて卸すには向いていないわけだ。


まぁ全品手作りで人によって完成品の大きさが異なるというのもあるわけだが、その最大の理由はズバリ「技術力」。

機械生産などできるはずはないので完全に手作りなわけだが、まずその道具が問題。

一言で言えば、鉄製のナイフ等の「加工する為の道具」が十分ではないのである。

必然的に、硬度の低い金属あるいは石で削り、ボロ布や草の繊維分で徹底的に磨き上げるという工程になるのですよ。


つまり…手間がものすごい(人的コスト/時間コスト)、大量生産不可能、品質は安定していない、という3拍子揃った商品になってしまうわけで。

テーブルだのイスだのというった家具なんかのライン生産も考えてはいたが、とてもじゃないが品質が安定しそうに無いので中止orz

道具の偉大さを思い知りましたよ。


それなら素直に薪集めたり炭焼きやったりしてそれを「特産品」として納めさせた方がいくらかマシなんじゃね? という事で方針転換したのが現状。

まぁそれでも農作物だけよりはマシかなぁと思ってはいる。

しかしこれも、領内で消費するならともかく他所に持っていって売るほどの物じゃない。

運送費だけで確実に足が出るのですよorz

とりあえず領主の館(別館:倉庫として建てた)にて備蓄を進めつつ、あまりを(領内の)それらが不足気味な村(主に南部)にパッと安値で卸して小銭にしてますよ。


木工品?

とりあえず、領内の一般庶民向けの品としてはいいかもなので、「領内向きに作って売れ」と命令。

他の村に卸して別の物資を購入(あるいは物々交換)する動きは徐々に広がりつつあるようで。

まぁ今はそれでいい。 作り続けていれば、技術は蓄積される。

将来的に設備(道具)が揃った時に工業を興すための土台になれば、それでいい。




『南部』


さて、もうね、これは一つしかない。 

ずばり『海産物』。

日本人の血が(流れてないけど)、舌の記憶が、海産物を欲しがるのですよww

とはいえ、フランスの魚ってなんじゃろなと思いつつ、とりあえず視察に行ったわけですよが…

(まぁ領内の特産物という事で、食卓に上がった事はあったし、全く予備知識が無いわけではなかったが)


その時の俺の様子を一言で表すと、「狂喜乱舞」だったそうな(by護衛


いやほら、フランス料理って言えば生ガキとかオマールエビとかパッと思い浮かぶじゃない。

まさかカキの産地が丁度ここだとは思いませんでしたy

それ以降合間を見つけてはちょくちょく顔を出したわけだが…なんというか、もうね。


ウニ、ホタテ、ハマグリ(?)、ムール貝、大小エビ、カニっぽいヤツ、
アナゴっぽいヤツ、サバ、ヒラメ、ホウボウ(だったと思う)、イワシ、海草、etc…

もぅ最高! 海万歳!(ぉ


いや、なんというか、ね。 もう、予想以上でしたよ。

ただ、惜しむらくは、冷凍技術なんてこの時代には存在しない事。

ここでしか食べる事ができない以上、特産品として売りに出すのは難しいか…と考悩んでたら、浜辺の岩の上に打ち上げられてカラカラに干からびてる海草を見て、ふと思いついた。


乾物にすればいいじゃん!


特に、ホタテとかの貝類。 

天日に当てて乾物にすることで、旨味成分はいっそう増すのですよ。

水で戻せばスープでも何でも使えるし、栄養面においても優等生。

しかも保存性抜群。(真空パックなど無い時代だから、保存期間に限りはあるし保存中に味は落ちる事は予測されるが、それを差し引いても「保存食」の価値は大きい)


カキなんかも同様。

天日干しにしてもいいし、あるいは燻製にしてオリーブオイルに漬け込むという手もある。

もし養殖に成功したら、将来的には一大産業に成長できるかもしれん…うーむ。

まぁオイルうちの領内じゃ生産してないし、流通ルートと同時に供給ルートの整備も必要か。

イワシなんかの小魚も、オリーブオイルに漬け込めば普通にオイルサーディンとして保存食にできるな…


いや、いっそ調理法をもっと研究させて、コテージやレストラン作って観光地として開発するか?

木工細工の工芸品なんかも(北部で作らせて)土産物として売りに出す手もあるな。

目立たないように娼館も併設して、景色と料理と女を味わえる高級観光地に…

そうなると、温泉も欲しいが、さすがにこれは無理か。 入浴の習慣が無いしなぁ。

まぁ常時湯を沸かした大き目の風呂を作って観光客に開放したら、そのうち広まるかもしれんが…


その場合、当面のターゲット層は王都の富裕層…貴族や商人の保養地として開発するのが現実的か。

一般民衆の旅行客なんぞ、まだほとんど存在しないからなぁ…

富裕層の2世3世のボンボンをうまく引っ張り込んで、長期滞在して金を落としてもらうのが一番美味しい感じではある。

いっその事適当な奴隷商人も経営側に引き入れて、「☆複数の全裸美少女がお風呂でご主人様に同時全身マッサージでご奉仕♪」あたりを売り物にしてみ(ry


ふむ。 となると、麦から作った地酒だけじゃなんともならんな。 

そもそも、生産量自体が少ないし。

清酒は残念ながら無理として、ワインを輸入する必要はあるな。 うちじゃ作ってないし。

ブランデーあたり材料さえあれば製造できなくもない気はするが、すぐには無理か。

酒造るには穀物(果実)が大量に必要だからなぁ。 

自家消費用ならともかく、商業ベースまで持っていくのは厳しいか…?

(*イスラム教等が「お酒を禁止」にしている理由も、もともとあの地域では穀物が十分に供給できなかったので、一部の富裕層の為に貴重な穀物を酒にするのは禁止! といった意味合いから始まり、その後宗教的な戒律として広がった)



…なんて色々考えてたわけですが。

3年間、予算が無いので放置してましt(ぉぃ



えーw とりあえず、天日干にした貝類、魚、海草を「特産品」として納めさせる事には成功。

そう度々南部に行けるわけでも無いからなぁ。 個人的には毎日でも行きたい所だが。

冷蔵技術も冷凍技術も無い時代、食品の保存も輸送も一苦労なのですよ。 

捕りたてを食するのが無理なら、保存食仕様にするしかないのです。


ちなみに、特産品として納めさせた海産物は、じーちゃんとお付の一団への接待用として使ったり、栄養バランス的な面から領内での消費拡大に向けて宣伝用に使ったりした。 後は新料理・調理法の研究用にも。

じーちゃんの領国は海に接していないからね。 帰国後、じーちゃん領に向けてこの海産物(保存食)を輸出すれば売れるはず!

なんせ、その為に大盤振る舞いで一団の連中に食わせたからな(何

じーちゃんも含め、味を覚えてくれたはずさw いわゆるスーパーの試食戦法(ぇ

将来の市場獲得の為の先行投資と思ってつぎ込みましたよ。 おかげで今の財政は(ry

(*干した海産物は、人類の歴史上非常に有効な外貨獲得手段の一つだった。
昔から、干したアワビやホタテは『干貨』(干した貨幣)と呼ばれ、特に海の無い地方では非常に高値で取引される事もあった。
ちなみに、江戸時代の日本の主要輸出品目は、ポルトガル向けは日本銀だったが、清国向けには干しアワビや干しナマコがあった。 明治時代になってもカニ・アワビ・ホタテ・ナマコなどの海産物を缶詰や乾物にして大量に輸出して、その外貨で(無論、生糸など他にも色々とあったが)明治政府は近代化を果たしたのである)


まぁ、生産が限られてる以上、現時点では販売を急拡大するのは不可能なわけで。

ここらへんは森林資源と同じ。

一気に取りすぎると、翌年の漁獲高に多大な影響が出るのですよ。

将来的には、とりあえず貝類なんかは養殖方法の確立を急ぎつつ、魚用に網を改良したい所ではある。

観光地計画は領内の道路の整備と合わせてやらなきゃいかんからな…。 とりあえず後回しか。




『東部』・『中央部』・『西部』


とりあえず農業生産高を向上させる事に全力を(ry

無理して変わった事やろうとするよりむしろ(ry

特産品? 麦と野菜と飼料で十分と(ry


これらの地方、まぁなんというか…

北部みたいな山地でもなく、南部みたいに近海でもなく、小さいとはいえ十分な数の川があるんだから、農業用水には困らない。 しかもほとんど平野。

この条件で一番手っ取り早いのは農業ですよw


ぶっちゃけ、領主の(俺の)保有している畑が多いのは、このあたりの地域なわけで。

当然だが、領主所有の畑からの収穫は、全部俺の懐に入る。 

ちなみに、その畑での労働は完全に領民に(近隣の村の住民に)任せてある状態である。

いわゆる「労働税」として働かせている為、こっちは何もせずとも、勝手に耕し、勝手に種まきし、勝手に手入れをし、勝手に収穫し、でもって勝手にウチの館まで持ってくるわけですよ。

必要なのは、せいぜい見回りくらい。 まさに金持ち働かず(違


まぁつまり、何が言いたいかというと。

うちの領地の奥の手…「製糖」プロジェクトの為にも、この辺りのエリアは普通に農業基盤を拡充させていてくれればそれでいいのですよ。

ぶっちゃけ、テンサイを大量に栽培しようとするなら、パッと使えるのは「領主所有の畑」しかない。

将来的には領内の未開発地を開拓してテンサイ畑に変える手もあるが…むしろ計画はしているが、それはまだまだ先の話。

現実的な選択肢としては、領民の生活を圧迫せず、かつこちらの命令次第でいつでも転作が可能な畑を使用するのは極々当たり前の話なのですよ。

何度も言うが、費用対効果が(ry


ちなみに、当然ながらテンサイからの製糖事業はまだ始まってない。

まだまだ秘密裏に試行錯誤の段階なのですよ。

まぁ仮に試行が成功してたとしても、じーちゃんの一団が滞在してる間に進めるのは危険なわけで。

今回の一団の引き上げ後、ようやく研究のペースがあがるかな、といった所。




『南西部』


ぶっちゃけお荷物なわけだが(何

そもそも、当初の予定では、今回の改革(第一次)では手を入れるつもりは無かったわけですよ。

人口は少ない、人口密度も低い、治安もいまいち宜しくない、元々の生産高が(領内の他の村々の平均よりも)かなり低い。

まぁ、前の領主…さくっと退場してもらったアッホーなおっさん…叔父が、無能だっただけだが。


しかし、今回じーちゃんの一団が予想を大幅に上回る大人数だった事も幸いし、この地方の村も(いつの間にか)派遣対象になってたのですよ。

ちなみに俺は事後承諾だっt(ry

やや距離が離れてる事もあって、正直気は進まなかったんだが…

しかし、その後色々と進めて行ってくれてたので、今にして思えば感謝感激ですよww

連絡網にしろ新しい代表制(選挙制)にしろ軍務にしろ、一部地域だけ外れてたんじゃ後々面倒な事になったのは間違いないわけで。


ちなみに、特に目立った産出品も無く、普通の貧しい農村(と未開発地)だったのでとりたてて期待はしていなかったわけだが…

一つ、予想外の面白いイベント(?)があったのですよ。 この地方に視察に赴いた際に。


この時の出会いが後々まで関わってくるとは、この時は思っても見なかったのですよ…



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