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[7357] デビルサマナー外典 ソウルガーディアン (第3期 オリジナルメガテン世界)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/16 14:43
 現代社会。
 科学によって夜でも光に照らされている。
 だが……人の立ち入る事の出来ない闇はある。
 その闇は悪魔……誰かが言っていた『人間は神を作り出したが、その逆は証明されていない』と。
 まあ、人間の願いが生み出した偶像なのかどうなのかは知らないが、少なくとも……『悪魔』と呼ばれる存在がいるってことだけは確かだ。

 何、信じられない?
 まあ、俺もそうだった。
 だが……実際に閻魔の裁判を受け、輪廻転生したこの身では否定できない。
 ま……俺の素性は今はどうでもいいことだ。
 どこか見た事のある悪魔を相手にするのが俺の家業ってわけだ。


『せっきー、何しているの?』

「退屈な仕事をやるために心をもりあげたいわけだ」

『ほー』

「そこで、日記代わりのメモをつけている所だ。
 で、『せっきー』て何だ?」

『石動(いするぎ)だからせっきー』

「……ふん。
 まったく適当にうろついて……」


 この能天気な相棒は頼りになるが……正直、疲れる。
 パソコンの電源を落としながら出発の仕度をする。
 

『せっきーの長年の相棒にたいしてつれないなあ。
 それより……どうする?』

「『巫女』……男だから降巫か?
 ソイツは他の奴が確保することになった。
 で、俺は首謀者の確保・または殺害……最低でも祭器の破壊だな」

『面倒だから仲魔にやらせるつもりか、オイ?』

「性質が悪い事に悪魔召還が使って色々準備していたらしいからな。
 手持ちの奴じゃ無理だな」

『せっきーはサマナーとしては大成しにくいからなー』

「ま……直接俺がやれば良いだけだ」

『俺ががいれば楽勝よー!』

「ま、当てにしてやる。
 スモークチーズはいるか?」

『さんきゅ。
 で、俺達はどこに行きゃいい?』

「ん……K県H大学。
 そこのサークル『ガイア』は、オカルト研究を行っている。
 部長の氷川って女がターゲットだ」



 そう言ってから資料を机の上に出す。
 ロングヘアーに紺色のスーツを着ている美女。
 体の凹凸はしっかり出ており、細い足が魅力的に写っていおり、陰気だが思慮深い印象がする。
 手首には数珠を巻いているが、あれは立派な呪術具で売るところで売れば300万はくだらない。 



『ん……いい女じぇねえか!』

「陰気すぎて、興味が湧かんがな。
 実家が政治家の名家らしく、蔵書から魔術書を見つけてトンデモなシロモノを呼び出したのさ」

『へ~ソイツは一体?』

「実物を見たわけではないが……『世界』を変える物とでも言っておこうか?」

「ま、どうでも良いな」

 
 相棒は男だからな、美女と闘いにしか興味がないそうだ。
 調子の良い奴だが商売道具でもあるコイツの機嫌を伺わんとな。
 冷めたコーヒーを飲み干し、裏の店で買ったトカレフと儀式・護身用に買ったアセイミーナイフをホルダーに差し込む。
 後は電子手帳型のCOMPを胸元にしまう。
 コイツは俺の仕事で必要不可欠だからな。
 ……さっさと終わらせて手近な店で空腹を満たすとしよう。 
 
















 
 深夜のキャンパスに大きな叫び声を上げる。
 警備員は必死に警棒を振るうが、青黒い小さな子鬼が爪を振るうと壁に血の華を咲かせた。
 それを興味なさそうに見つめる女性がいた。
 椅子に座り、彼女の背の高さと同じくらいの金属の筒を見つめる。
 三つの脚で支えられた凡字で書かれている筒。
 彼女が押すと回転し始める……ラマ僧が用いるマニの如く。
 金属筒を見つめる彼女は満足げに言葉を漏らす。



「もうすぐよ……静かな世界の終焉が。
 そして世界の創造が」

「そいつは困るな、氷川さんよ」

「!?」


 
 灰色のスーツに黒いネクタイの20代半ばの青年が壁に寄りかかっている。
 氷川と呼ばれた女性は腕を振るうと子鬼が青年に襲い掛かる。
 男は拳銃を取り出し、無造作に発砲する。
 破裂した風船の如く飛び散る頭……そこから緑色の光が漏れ出す。
 悪魔がこの世に現界するために必要なエネルギー、マグネタイトだ。
 青年がコンビニで煙草を頼むような気軽な口調で話す。


「『ヤタガラス』からの依頼でね。
 悪いけど……計画を止めさせてもらおうか」

「……断る。
 ガキがやられましたが……オセ!!」


 手首に巻いた数珠に祈祷したら黒い稲妻が氷川の前に奔った。
 豹頭の大男が現れ、二本の剣を振り回して威嚇する。
 青年はナイフを取り出す……圧倒的な殺意を前にしても暢気そうに見つめている。
 豹頭の男……オセと呼ばれた存在は青年に剣を振り下ろした。
 だが、惨劇は起こらなかった。
 オセの剣は青年の腕に当たっているが、傷がつかなかった。

『何……!!』

「お生憎さん。
 俺はちぃっとばかり丈夫でね」

『貴様……!!』

『おいおい、いくら俺様がいるからって無防備過ぎだぜ?』


 青年の背後に鎧をきた戦士の幻影が現れる。
 戦士は長い茶髪を伸ばした荒々しい印象を持たせる美男子だった。
 だが、それだけではない。
 全身に傷があり、体に幾つもの槍や矢が刺さったままにしている。
 氷川が青年に訝しげな視線を送った。


「悪魔……なの?」

「さあね?
 ……チョイとワケありのフリーサマナーってね。
 俺の日々の糧の為に死んでくれや、堕天使・オセ」


 そういって腕で受け止めていた剣を押し返す。
 ニヤリと青年が笑った。








「さあ、自慢の剣技見せて見ろ!」

『(で、実際の所、どうよ?)』

「(今、手持ちの憑き物は手前しかいないからな)」

『(俺が憑いていると魔法が弱くなるからな)』


 西洋の落人、邪鬼・ラームジェルグ。
 スコットランドの幽霊であり、血まみれの軍服で現れ、男ならば戦いに挑んでくる。
 性質の悪いことに戦った男は近いうちに死ぬという。
 彼は物理攻撃に滅法強くなる代わりに魔法に対しての防御力が薄くなる性質がある。
 物理攻撃を得意にしているオセには合性がいい……だが、


「(だが……合体で強化しているかもしれん。
  それに氷川が増援をよこすか術唱えたら不味い)」

『マハラギオン!』

『やっぱりー!』

「クソッ!」



 転がりながら銃弾をばら撒く。
 氷川に当たりそうになった銃弾をオセの剣で叩き落す。
 全身に冷や汗を流す青年。
 あの膨大な炎に巻き込まれたら死にはしなくても重傷になることは確実だ。



「こうなったら……」

『さあ、どうするどうするぅ!?』

「……いいから黙っていろ。
 今度マトモな奴と長期契約結んだらリストラしてやる」

『ふん……守護霊(ガーディアン)使いか』

「守護霊?」


 オセの呟きに氷川が反応した。
 オセは主に説明した。


『守護霊……死に瀕した者が稀に悪魔を自身に降臨させて悪魔の力を行使することが出来る存在。
 まさかこの世界にも存在するとは』

「そうですか……オセよ」

『承知しております』


 剣を構えながら術を唱えるオセ。
 青年はたまらず部屋から飛び出す。
 青年は、逃げ足の速い上に学園の調査をお陰なのか、換気口に入り込んでオセを一時的に巻いた。
 

『どうした、我を殺すのではないのか!!』

「糞ッ……侮りやがって!」

『それよりさ、仕事をなんとかしないとさ!』

「わかってる!『地霊召還』」

 
 小さい茶色の小人を呼び出す。


「ほえほえ……」

「ノッカーの爺さん、頼みたいことがあるんだが……」

「人使いが荒いのう」

「MAGは弾む」

「ほえほえ」


 オセに見つからない内に命令をして別れた。
 青年は頭を抑える。


『邪気眼か、ボウヤ?』

「手前、解っていていっているだろう!?」


 青年は、ストレスが溜まると片頭痛にさいなまれる。
 だから、通常の処方より二倍多めに頭痛薬を飲み込む。
 無論、医学的に正しいわけではない……ただ、そうすると痛みが和らぐからそうしているだけだ。
 今回も飲もうかと思ったが、思考が鈍るかもしれないと思うと我慢するしかなかった。


「さて……続きをするか……プール辺りでやるか、消火栓の近くでやるか……。
 『祭器』のあった近くであるのは……プールか」


 青年は頭痛の種を消すべく行動に移る。
















『ふん!
 我を振り切って主の下へいくつもりか、甘いぞ!』

「だが……お前以外の手駒がガキしかいない所をみると人材不足か?」


 プールサイドで対峙する二人。
 互いに剣を構える。
 しばらく睨みあうこと数分、オセが仕掛ける。


「アギラオ!」

「ぐ……!」


 火球を飛ばす。
 一発でも当たれば不利になる……。
 青年は避けながら魔法を唱える。


「ザンマ!」


 衝撃波を受けたオセは体勢が崩れる。
 一気に追い討ちを駆けようとしたが、立ち止まる。


『どうした、相棒?』

「危なかった」

「用心深いやつめ」


 オセの前に透明な壁が出来ていた。


『テトラカーン……物理反射魔法かよ』

「(くそ……ラームジェルグはザンマ以上の威力の技は皆物理攻撃だからな)」

『貴様、名を名乗れ』



 青年は無言で押し通す。


『戦士の名を聞こうと思ったが……』

「名乗って呪われる間抜けじゃねえよ」

 
 
 そのとき、近くで爆発音がした。
 『祭器』のあった部屋でだ。



『な……!!』

「時間切れだ。
 仲間が降巫を捕獲してついでに祭器を破壊したようだな」

『囮か……!!
 ならば…気配が』

「『ヤタガラス』にも優秀な人間はいるものだ。
 このまま蛸殴りにされるか、俺の手足になるか……さあ、どうする?」

『ここは退く……!
 貴様の顔、覚えたぞ!!』
 


 怒りの形相のままオセは去っていった。
 青年は一息ついた。



「ふう……いなくなったか」

『ノッカーがやってくれたな』

「時限爆弾を置くくらいはできるからな。
 弱い悪魔だからかえって感知しにくいしな」

『三流サモナーでよかったね』

「くそ……俺みたいな守護霊使いはサマナーの腕が落ちるのはしかたねえよ」



 悪魔を宿すために他の悪魔を使役する難易度が跳ね上がるためだ。
 もっとも、彼に才能がないというのもあるが。
 青年は、祭器のところに向かった。










『ひでえ、ミンチよりひでえ』

「だまってろ」


 金属筒は傷がついてものの、壊れていない。
 だが、金属筒の前に爆発に巻き込まれて焼き焦げた氷川の死体があった。
 優秀な術者であっても爆弾を投げ込まれて咄嗟に脱出するなり、魔法で凍らせる事は難しい。
 青年は筒に手をかざした。
 滝のような汗を流し、しばらくたった後に手を戻す。



『終わったのか?』

「術式を解除した。
 あとは連絡して回収してもらうだけだ」


 ラームジェルグがしばらくしてから聞いてきた。


『氷川って奴はなにしようとしたんだ?』

「変わり者の闇医者から聞いた話だから正確に説明できないが。
 一言で言えばK県全てを生贄にして新しい世界を作るつもりだったようだ」

『世界?』

「ああ、生き残った人間の中で『コトワリ』って新たな世界のあり方や考え方を表した意志を示す必要があるそうだ。
 そして大量のエネルギー……マグネタイトだろうか?
 ま、それを集めて『神様』呼んで加護を受けて世界を作れるとかそんな感じだそうだ。
 驚く事にこういうことがしばしば行われているそうだ」

『なんだって、知らないぜ!!?
 そんなにあるなら皆知って……』

「お前が見ているだろ……SF映画とかである…そうパラレルワールドってやつか?
 無数の世界が存在しているそうだ」

『世界は広いってね。
 しかしそれを知っているってアイツは何者なんだ?』

「さあな……霊症に悩まされた金持ちの治療の時に偶々繋がったがね。
 まあ……医者なのに治療が嫌いなのはアレだが、腕は確かだからな。
 しかし……堕天使オセを逃がしたが」



 青年はため息をつく。
 頭痛薬を取り出し、一気に飲み干す。 



『まあ、主が死んだから大丈夫じゃね?』

「別に主を見つけてやってくるかもしれん」

『ま、ガンバ』

「……飯食いにいく。
 手前は少し黙っていろ」

『へいへい』



 青年は、連絡したヤタガラスのエージェントが来た事を確認してから大学を去っていった。


























 オリジナルのメガテン世界です。
 独自設定がありますが、ご了承を。




[7357] 第2話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/19 06:52
「となり、いいですか?」


 地味な背広と、黒縁のメガネをした男が声をかけてきた。
 残業を終えたような感じだが、コイツもフリーのサマナーだ。
 たく、ファミレスでステーキを食うというのに。


「好きにすればいい」

「ではでは……。
 それにしても派手にやりましたね?」

「もう聞いていたのか」

「ええ……まったくどうしたんですか、部屋が恐ろしい状態でしたし」

「ノッカーに時限爆弾持たせて突っ込ませた」

「そ、それは……」


 呆れているようだ。
 無理も無い。


「儀式をされたり、援軍がきたら面倒だからな」

「……」

「安心しろ、ちゃんと離脱した……が、髭が焦げたそうだ」

「ま、それはともかく。
 最近事件が多いですね~。
 大規模な事件がないだけ救いですがね」

「まあ……な」


 ある意味世界の危機だったが……未遂に終わったがな。
 ヤタガラスから聞いた事を思い出してコイツに聞いてみるか。


「今の世の中、どう思う?」

「なんですか、突然?
 そうですね~、色々荒んではいますが、この国は教育も行き届いていますし、伝染病の心配がないから良い国だとおもいますよ?」

「世の中を変えたいほどの不満はないのか?」

「そりゃ、多少の不満はあってもそこまではないですね」

「……くだらん事を聞いた。
 ところで奥さんとは変わりないか?」

「聞いてくださいよ、とうとう……できたんです。
 3ヵ月です」

「めでたい限りだ」


 まあ……コイツみたいなのばかりなら楽なんだがな。
 ……氷川の望む世界……か。
 一言でいえば、「変化の無い完全世界」
 静寂に包まれた世界であり、決められた役目だけすればいいわけだが……
 まあ、社会に絶望すればわからないことも無いか。
 俺のそういうのに走りかねんが……今の生活が気に入っているからな。


「君は、その……」

「結婚は考えていない」


 人間の汚泥のような人間関係を見ているとな……結婚に希望は持てない。
 悪魔と結婚するほうがまだわかる……外見がよければな。
 時々思う……自分が人間なのか、悪魔なのか……。
 今のご時世では無駄な考えだろうがな。


「ま、人それぞれですから言いませんがね。
 おせっかいですが、口調を気をつけたほうが良いですよ。
 この商売は信用第一ですし、普段から気をつけないとボロがでますし」

「……耳が痛いな。
 前向きに考えるとするさ」

「今日は石動君が一仕事しましたし、私が奢りましょう!」

「感謝するよ、九鬼さん。
 次回は飲み屋で奢りますんで」


 しばらく取りとめの無い話を続けた。





















『今日も一日がんばりましたっと!』

「……はああ」

『オセ退治に助っ人が欲しいけどな~。
 あ、婆さんとアンちゃんが今日も走っている』


 
 青年……石動の車の横を首の無いライダーがバイクをフルスロットルにして走り、その後に着物をきた老婆が走り去っていく。
 石動は興味がないようで、ラジオの音量を上げた。



『次は何する?』

「こっくりさんやエンジェルさん絡みの怪異はある……。
 食料庫から食材の消失に、深夜の病院から遺体がひとりでに歩くって噂もある」

『表の探偵・マンサーチャーはともかく、サマナーの仕事は一杯だな』

「そうだな……あ、UFO。
 ……そっち絡みの依頼は面倒なんだがな。
 さてと……帰ったら積んでいる本でも読むか」

『ニュクスの姉御ん所には?』

「あー遠いから今日は行かない。
 MAGはあんまり使っていないから補充もいらないから生体エナジー協会にもいかなくていいな」

『でも銃弾は使いすぎたからな、買わないとな』

「ああ……ついでに炸裂弾や冷凍弾も買うか」


 世界には悪魔が住み着いている。
 ただ、表に現れないだけで。
 だからこそデビルサマナーという職業が成り立つのだ。
  










 翌日、石動は銃弾の補充へ行く。
 看板には『太平堂』と書かれている薬局へ入った。
 店主は阿片を吸っている中国服を着た老人だ。
 長い髭に禿げ上がった頭、そして糸のように細長い目……一見好々爺にみえるが、得体が知れない。
 阿片を、毎日吸っているにも関わらず、応対がまともな事から悪魔だろうと言われているが。



「坊主、いらっしゃい」

「邪魔をする。
 コイツのサイズにあった弾をくれ。
 通常弾を50、炸裂・冷凍弾を25ずつだ」

「あいよ。
 坊主、剣の強化には興味ないか?」

「ん?」

「仲魔と神秘を内包した武器を合わせて更に強力な武器をつくれるよ」

「……俺のサマナーの腕を忘れたのか?」

「あいや、忘れてたよ」


 禿げ上がった頭を自分で叩く。
 店主は、考えた後に店の奥へ行く。
 しばらくしてから戻ってきた



「坊主にあったシロモノね」


 四角い箱を渡された。
 素材が何で出来ているかは解らないが玉の手触りに似ている。
 石動は訝しげに見る。


「コイツを持っていると悪魔の力を剣に宿す事が出来る呪具ね。
 ただ……問題は」

「……問題は?」

「発動条件がさっぱりじゃて」

「おい」

「だから調べて欲しいね、報酬を出すね。
 あ、コイツはあげるね。
 それと前金代わりね」


 店主はお香を渡してきた。
 少し眺めてその正体が解った。


「……運の香か」

「坊主は幸が薄そうだからね。
 憑いているのが不運そのものね」

「……ありがとよ。
 じゃ、仕事に行ってくる」

「気をつけるね」


 石動は用を済ませて店から出た。



[7357] 第3話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/19 06:53
 サマナーには3種類いる。

 ヤタガラスなどの国家機関に所属する者。
 フリーのサマナー。
 そしてダークサマナー。

 国家機関にいるものは後ろ盾が大きく、装備が充実しやすいが、しがらみが多い。
 ダークサマナーは自分の欲求に従いすぎて犯罪者・外道の類になるわけだ。
 フリーのサマナーは中間でフリーのサマナー同士で互助会・チームを作っている。
 大小さまざま入り乱れており、互助会の数はちょっとしたカクテルバーの店舗数と同じくらいだろうか?
 ちなみに石動の場合はダークサマナーの依頼を受けることもあるが専ら魔法の品の納品、召還して暴走した悪魔の処理等を受けるが、抗争の類は受けない。
 フリーのサマナーでは普通の選択である(ダーク、もしくは国家機関への道を歩みたいと修行中の者がフリーのサマナーを名乗る事も多いが)。
 なお、立場が違っても絶対に戦ってはいけない緩衝地帯も存在している。
 神秘に関わるサマナー達もまた人間……危険度は違えどもやる事は表と同じであった。






 





 G県、鏑木美術館の応接間に石動がいた。
 上品そうな老紳士が依頼主のようである。


「はじめまして、石動と申します」

『(何時ボロがでるのかな~)』

「鏑木美術館のオーナーの鏑木です。
 実は、毎晩展示品が動きだすという噂が流れておりまして。
 ……実際に警備員を怪我したのです。」

「なるほど……どの展示品が?」

「後から襲われて逃げるの夢中になったらしく」

「解りました、今夜から張り込んでましょう」


 依頼を受ける事を聞き、喜ぶ鏑木。
 目の下に黒いクマが出来るほどに悩んでいた顔に喜びの色が出た。


「報酬は……」

「成功報酬で150万、毎晩の手当てを5万ですか…」

「なにぶんこの景気ですからね」

「良いでしょう……ただ此方の怪我した場合の治療費と展示品の破損に関しては……」

「此方で持ちます。
 保険もありますし」

「それは良かった……サマナーの仕事だと保険が下りなくて」

「それは大変ですね……しかしお若いのにこういう危険な仕事をなさるとは」

「若いからこそ……というのもありますがね」


 商談が成立し、握手で締めくくられた。





















 その日の深夜……。



『うわー不気味だ』

「手前が言うな」


 西洋の落ち武者モドキが言う台詞ではないだろう。
 展示品を見回っていた……無料で鑑賞できて役得であったと二人は考えた。
 しばらく歩き回るうちに、世界の色が変わった。


『おいでなすったか……異界化するとは』

「襲った人間からマグネタイトを奪ったのだろう。
 ……来たぞ!!」


 背後の空気の流れを感じ、横に飛ぶ石動。
 巨大な棺のような箱が頭から突っ込んできた。
 避けられたから体制を縦にもどし、自身を開閉させている。
 箱の内は無数の棘があり、内部に大量の血痕があった。


「アイアンメイデン……鋼鉄の処女か」

『バージンを……』

「いらん。
 九十九神化したのか……厄介な!!」


 普通のケースでは、物体を動かす悪霊・ポルターガイストが下手人である事が多い。
 この場合ならば武装した学生程度でも撃退できるが……。
 石動はアセイミーナイフを取り出す。


「厄介だが……」

『相性は抜群だね』


 死の抱擁をせんと接近するアイアンメイデン。
 それにあえて乗り、アイアンメイデンの内部に飛び込む石動。
 抱擁を行うが、ラームジェルグの力のお陰で出血には至らない……だが、更に力が入れば唯ではすまない。
 内部の『核』に当たりをつけてナイフで突く。
 空中に浮かんでいたアイアンメイデンが糸の切れた操り人形の如く落下した。
 アイアンメイデンから脱出した石動。
 スーツは穴だらけだが、大きな怪我はない。
 

『乙』

「……こんなもんか?
 展示品にも傷なしで終わらせたし……床とスーツが重傷だがな」

『ん……これは!?』



 ラームジェルグが叫んだ時、腰につけていた『箱』が輝く。
 石動は驚いて手が動いてナイフの柄が『箱』に当たった。
 すると禍々しいオーラがナイフを包み込む。
 オーラが消えるとナイフの刀身が銀色からどす黒いモノへと変わった。


「……これは?」


 力を込めるとナイフから日本刀へと変化した。
 魔性の輝きを放っている。


『コイツは妖刀ニヒルだな』

「……商売道具が……」 

『俺が憑いているときには呪いの心配はない』

「お前が呪いみたいなモンだからな」

『ひでえ……だが、ソイツを振るう時は普通の人間は恐怖するだろうが』

「……唯でさえ目つきが悪く印象が悪いのに……クソッ」


 三白眼の石動に好んで近づくものは少ないだろう。
 フリーのサマナーなのにダークサマナーに間違われない事を祈りたい石動だった。















 


 1~3話のあとがき


 世界観は……

・葛葉・ヤタガラスは存在している。

・今のところ世界の危機はない?

・時は21世紀。

・互助会・チームは……阿佐ヶ谷Zippyのような感じです。



 石動は……

・死んだ事があるらしい?

・ガーディアン使い(ペルソナの如く付け替えはできなくもないが……スカウトが困難)。
 イタコの真似事もできるっぽい

・呪いの武器を使用可能(威力は多少落ちる事と、一般人に更に怖がられるというデメリットがあるが)

・ラームジェルグはソウルハッカーズ仕様。




 九鬼は……今のところは

・忍者らしい。

・普段は保険会社のサラリーマン。

・妻は美人。



 『創世』の情報提供者は真3マニアクスクロニクルでのアマラ深界の闇医者。
 高額の医療費で治療してくれる……治療は不自然な行為だから嫌いらしい。





 オセは……

・石動殺す。

・外見と主な能力は真・女神転生3仕様。

・でもアギ系も嗜んでいる(コミック版でマハラギオン使っていたような)。



 アイアンメイデンは、真女神転生2で出てきた雑魚から出展。



 
  



[7357] 第4話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/15 00:10
 石動の表家業・探偵業。
 今日の依頼は簡単に完了した。
 探し人について3~4時間で居場所をつきとめ、大いに感謝をされた。


『しかし、アンタはサマナーは三流でも探偵なら一流じゃね?』

「(思念体や悪魔、精霊の類に聞けるからな)」



 ガーディアン使いの噂はまず聞かない。
 当代の葛葉キョウジの相棒等に似たような力を持っているそうだが……。

 閑話休題。

 石動は、他のサマナーよりも悪魔の感知能力が高い……普通のサマナーが市販のトランシーバーならば石動は軍事用だ。
 だから事件の犯人や、探し人の目撃情報が入りやすい。
 

『……今回の依頼は?』

「九鬼の旦那からの頼みだ。
 社長令嬢がオカルトに嵌っていて……」

『美人か!?』

「……親父に似ないで良かったといっておこう。
 で、『エンジェルさま』やっていて……」

『憑かれたんだな』


 ラームジェルグに必ず依頼を話す。
 別に必要ないのだが、情報の整理や気分を紛らわせるのに効果があるようだ。
 煙草を吸わず、コンビニのハーブを吸うパイプを咥える。
 煙草に憧れるも、肺が弱いために断念し、代わりがコレであった。
 どうもしまらない……そう石動は思いつつもパイプを吸うのを辞めない。


「……ま、面倒だが九鬼の旦那もいるからな」






















「貿易会社『金王屋』の社長の家にしては小さいな」

「ですが、家族で住むには丁度良い大きさですし、会社からも近いから優良物件だと思いますよ、石動君」


 九鬼と合流し、依頼主へ会いに行く二人。
 応接間に案内され、依頼を聞く。
 奥さんが依頼をしたようだ。


「娘が……『こっくりさん』いえ、今は『エンジェルさま』でしたか?
 友達とそういう遊びをしていたのです。
 ですが、最近おかしくなって、生肉を夜な夜な食べるようになって……今は二階で眠っていますが」

「……」

「では早速調べましょうか」

「お願いします……あの、報酬は……その主人が財布を握っていて高額な金額は……」

「その辺は勉強しますので……代わりにご友人にオカルト絡みの悩みがあった時には紹介していただければ結構です」

「……私は探偵業を兼任しているので、御用がありましたら連絡ください」


 石動は、九鬼の話の後に付け加えて名刺をだした。
 奥さんが石動の顔を見ながら言った。


「まだお若いのに」

「24,5の若造ですが、信頼に応えられる程度にはあると自負しています」

「そうですか……娘を、娘をよろしくお願いします」


 石動達は二階へ案内された。













「遅かったな」

『遅かった……』

「具現化していますね」


 三人は同時に漏らした。
 娘さんは起きており、背後に翼が生えた男性が現れた、半裸で。
 後光を流して厳かな声で話す。


『我はエンジェル……。
 神の使わされしうぎゃあああああああ!』


 エンジェルを名乗る男の右目にクナイが突き刺さる。
 九鬼の目にも止まらぬ早業であった。
 煙が立ちこめ、エンジェルの姿が変わる。
 不細工な小太りの中年が現れた。
 体が所々壊死しており、生者のものではない。
 中年が苦しんでいる間に石動と九鬼が娘を引き離す。
 

『本物じゃなくて『語り』のゾンビか』

「煩悩に溢れているな、少女趣味だろうか」

『きさまああああ!!』

「今なら見逃しますが……」

『黙れ!!』


 部屋が異界に変わり、広大な荒野に変わった。
 中年の周りに無数のゾンビの学生や主婦が現れる。
 九鬼と石動は、彼らから娘を守るために仲魔を召還した。


「地霊召還」

「出番ですよ、義経」


 同時に現れる悪魔。
 子鬼と、中肉中背の若武者が現れる。
 若武者は細身であるが、猫を思わせるしなやかさと、虎のような獰猛さを兼ね備えている。


『ほえほえ』

『なんの用だ、九鬼?』

「すみませんが、彼女を守っていてくれませんか?
 貴方に守っていただければ安心ですので」

『いいだろう……石動よ、精々脚を引っ張るな』

「へいへい、ノッカーも一応守っておけ、それとなにか異常に気がつけば教えろ」

『ほえほえ』


 石動はナイフを取り出し、力を込めて妖刀ニヒルに変形させた。
 九鬼を隠し持っていた脇差を抜いた。
 一斉に2人に襲い掛かった。


『じね゛ええええええええええええ!!』

「あら……よっと!」

 
 ニヒルを横に一振りするごとに2、3匹両断されていく。
 恐るべき切れ味に満足気に見つめる石動。
 九鬼は手裏剣を投げながら脇差で近づく敵の首を刎ねる。
 二人を無視して娘を襲う者がいたが……。
 義経……かつて牛若丸とも呼ばれた源氏の武者の太刀によって両断されていく。


『……弱い、なんと弱い事か!!』

『ほっほっほ、娘さんが無事なら良いことじゃて』

『む……確かに』


 年長(?)らしいノッカーの一言に頷く義経。
 無数のゾンビ達を元の死体に戻されていく。
 だが、中年は諦めない。


『そのおんな……よこせえええええええ!』

「貴方のような獣の毒牙にかけさせるわけにもいきませんので」

 
 九鬼がそういって独鈷を取り出して中年の顔面に叩きつける。
 肉が焼けるな悪臭が伴う。
 中年は辛くも致命傷にならず、後に後退したが……既に背後に石動が待ち構えていた。


「死んでくれや……ベノンザッパー!」


 刀身が毒々しい紫色に変わる。
 毒の刃が中年の胴体を真一文字に切り裂いた。
 断末魔をあげることなく、そのまま倒れ、灰になった。





















「いやいや、お疲れ様でした」

「二人係の上に雑魚ばかりだったからな」

『俺達だけだったら彼女を守りきれないだろうしね』

「ああ、全くだ」


 依頼を終えて行き着けのバーに行く。
 店主は夜魔・ニュクスで、悪魔もサマナーも遊びに来る。
 上品なドレスを着た彼女が注ぐ酒も普通なら手に入りにくい一級品ばかりだ。
 ニュクスが話を聞きつけて質問する。


「結局、なんだったの?」

「少女趣味な学校教員だったが心臓発作でなくなった奴だったらしい。
 彼女の通っていた……な」

「彼女に対しての愛欲が未練になったのでしょう」

「……とんだ災難ね」

 
 ニュクスは同じ女性として同情したようだ。
 石動は首をすくめて言った。


「最近のゾンビも変り種が増えていてね」

「それはそれは……一体どんなのですか石動君?」

「自分を拘束具で縛り付けた挙句に首と足首にもロープで括りつける緊縛趣味な変態。
 全身に穴空けて錠前と繋ぐ鍵フェチ。
 はっきり言って女装趣味や死刑囚のゾンビが普通に見えるくらいだ。
 あ、そういえばグレイのゾンビもいたな~」

「グレイ?」

「知りませんか、ニュクスさん?
 宇宙人ですよ」

「まあ……」

「世の中も変わったって事じゃないの?
 だんだんアクマと人間の境が消えているようにも思えるがね」


 そういって二人は食事を注文した。
 

 


「せっきー!」


 食事中の抱きついてきたのは美少女だった。
 長い黒髪だが、途中から翼になっており、モンゴル風の衣装と鳥の目を模した帽子が印象的だ。


「モー・ショポーか、なんの用だ?」

「ツマが来たのにツレナイのね!」

『モテモテですね』

「うるせぇ、外見が射程外だ」


 少女が愛を知らぬままに死んで妖怪と化した存在……モンゴル出身の妖怪である。
 誘惑して相手の脳を吸い取るらしいが……。
 石動の右足にまたがるモー・ショポー。
 更に、石動の胸に体を預ける。
 幼いが、意外にある胸のふくらみの感触がした。


「血染めのレアものだよ?」

「なにがだ」

「しょ……」

「出直して来い」

「ぶー」


 上目遣いで甘えてくるモー・ショポー。
 何時の間にか石動の右手を胸に導いていた……緩やかに円も描くように揉ませる。
 瞳に魔性の輝きを放つ……石動の棒が硬くなり、少女の太ももに当たる。
 

「クスクス……」


 鈴のなるような声で幻惑し、石動の顔に息を吹きかける。
 美しい形の唇からかぐわしい香りが立ち込め、薄い灰色の唇を石動のものに重ねようとしたが…。


「やめんか、ばか者!」

『がっかりだよ』

「痛い!」


 必死に精神を安定させ、少女に拳骨を叩き込む。
 痛そうにする姿も愛嬌があった。
 石動は問いただす。


「おい」

「はひ……」

「誰かこんな入れ知恵をした?」

「シルキーさん」

「あいつかよ……」

『GJ』


 シルキーはニュクスの店の店員の一人で美人だが、ラームジェルグと友人であるためなのか、何処か常識がずれている。
 かつて住んでいた古い屋敷に住み着く幽霊で夜だけ活動しているといわれている。
 九鬼さんは面倒ごとになると予感したのかモー・ショポーを放置してニュクスと世間話をしていた。
 モー・ショポーは性的なアプローチは諦めたが、甘えるように石動に抱きついている。
 父親・兄代わりのつもりなのかもしれない。


「えへへへ」

「それよりも、石動君。
 いつものナイフとは違うね」

「ああ?
 ああ……太平堂からコイツをもらってな」


 落ち着いたのを見計らって九鬼が話しを切り出した。
 石動が説明した。
 一通り聞いた後九鬼が仮説を出した。


「悪魔の邪気を吸い取って剣を変質させているのでしょう。
 しかも、憎しみ、怒り、恨み辛みなど負の心を」

「だろうな……普通の人間が使ったら不味い欠陥品だな。
 ま、俺にとっては掘り出し物だが」

「どーして?」


 モーシュポーが無邪気に聞く。



「ラームジェルグが憑いている間は呪いは関係なく振るえる。
 だが……コイツが憑いてないときように武器でも買うか」

「そうでしょうね。
 石動君は他のガーディアンをスカウトしたがっていますしね」

『まあ、魔法に弱いからな、俺は』



 そういって酒を飲みなおす。
 互いにウイスキーをロックで飲み干した。
 
 




[7357] 第5話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/15 00:11

 太平堂にやってきた。
 相変わらず阿片を吸っている。
 運の香を使ったのに少女?(幼女)に絡まれた、不幸だ。


「坊主、いらっしゃい」

「爺さん、コイツの効果、おぼろげながら解ったぜ」


 説明をしたら良く頷いてから言葉を漏らした。


「アイヤ、そりゃ不味い。
 でも坊主には巧く作用したから不幸中の幸いか?」

「まあな……更に詳しいことは使い続けてみてから報告してやる。
 ついでに予備の武器をくれ」

「構わんよ……武器を奢るね」


 そういってしばらく奥に引っ込んで倉庫から武器を持ち出した。
 柄だけだが、強い力を感じる。


「錬気の剣……使い手の気を増幅させて刃にするね。
 あと、お駄賃ね」


 そう言って封筒を渡してきた。
 二十万くらいか?気前が良い。
 俺は一応頼みをしてみる。


「魔石が安くなったら知らせてくれ。
 それと誘惑対策の護符があったら頼む」

「よかろうて。
 だが……友好的な悪魔からの誘惑は至福を味わえるが?」

「もっと歳食ってないと無理だ」

「未知への挑戦も時には……」

「いらん」


 次の約束をしてから店から出て行く。
























 
 太平堂の帰りにバイクに乗った女性が石動の横に止まる。
 黒いライダースーツから体の凹凸が目立つ。
 ヘルメットを脱いだ時に強い意思の篭った大きな青い瞳と金色の髪が印象的だ。


「元気だった?」

「ま、それなりにね」


 石動も知っている女性のようだ。
 女性は異常に分厚く、頑丈そうなブーツをコツコツと鳴らす。  
 面倒臭げに石動が話しかける。
  

「で、なんの用だ?
 ジェシカ?」

「助っ人を探しているんだけど……」

「どんな相手だ?」

「解らないのよ、それが」

「おいおい……それじゃ困るだろ?」

「国道■■号線に死を呼ぶライダーがいるそうなのよ」

「首なしライダーじゃないのか?」


 首を横にふるジェシカ。
 

「いいえ、首なしライダーも抜き去ったそうよ。
 その後殺されたみたいだけど……ターボばあちゃんのトメさんから聞いたけど」

「そうか……正体不明か」

「報酬は弾むわ」

「……ま、暇だからな」

「ありがとう……で、追跡用の車ある?」

「今使っているのは中古だし、そもそも車にあまり興味が……」


 突然話を止める石動。
 ジェシカが首を傾げる。


「どうしたの?」

「仲間じゃないが当てはある」


 COMPを取り出し、連絡をとりだした。
 端末に打ち込むスピードは機関銃の如く速かった。


『おい生きているか?』

『ん……久しぶり!』

『スピードには自信があったな?』

『勿論よ!』

『力を貸してくれ。
 相手は極上のスピード狂でな』

『えー』

『MAGは勿論最高級オイルもつけてやる』

『じゃあ、いいわよ。
 その速い奴ってのにも興味が出たし』



 連絡をそこで打ち切った。
 ジェシカが口笛を吹いた。


「誰?」

「まあ、イカスボディな美女だ。
 こういう時には当てにはなるだろよ」

「ならいいわ」

「だが、お前もバイクじゃ心もとないだろ?」

「そうね……私も仲魔を呼ぶわ」 


 そういってジェシカはタップダンスを始める。
 軽快なリズムを路地裏で鳴り響かせる。
 なり終えた時にブーツから低い男性の声が聞こえる。


『雷電属召還』

『世界をぉ救う時が来たぁー!』


 黒いクラシカルなデザインの車が現れた。
 だが、所々凹みや傷が目立っている……クルクルと回転するが、運転席には誰もいない。
 オボログルマと呼ばれる悪魔だ。
 

「にしても渋い悪魔使っているな」

「まあね……ってあれは!?」


 赤い外車風の車が横についた。
 馬力が溢れるエンジン音を響かせる。
 この車もまた、無人だ。


「これって?」

「外道『クリス・ザ・カー』だ」

「……まあ嘘は言わなかったわね、嘘は」

「さて、行きますかね?」





[7357] 第6話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/23 23:15
「感じるぜ……感じるぜ。
 俺を求める奴が。
 俺を殺そうとする奴がな!!」

『マジかよ……!!』

「これって……!!」


 ジェシカとラームジェルグはその存在に驚く。
 『バイクに乗った悪魔』がさらに語りかける。


「オマエか、オマエなのか!?」

「く……追うぞ!」


 高速道路で張り込みをしてかかった『バイクに乗った悪魔』は……途轍もなく速かった。
 走った後にはタイヤの跡とともに火柱を上げるほどに。
 しかし、2台の車は何とか追いついた。
 仲魔たちは、報酬に目に眩み、餌をぶら下げたロバのように必死に加速した。
 最後に悪魔がジャンプして空き地に着地した。
 当然、石動たちも跳んだ。
 ライダーは値踏みするように石動たちをにらみつけた。


「まさか俺の走りに追いつくとはな」

「何よ……見たことが無い!!」

「まさか、魔人か!?」

『なんですって……どうするの!?
 魔人に喧嘩売るなんて洒落になんないわよ!』

「魔人……もしかして、あの魔人!?」

「知っている奴がいてくれて嬉しいぜ。
 俺はヘルズエンジェル!!」


 魔人……悪魔の中で特に強力な存在であり、その特異性は他の悪魔と一線を隔す。
 そして狙われたらまず生き残れないと言われている。
 目の前にいる骨のライダーは悠々とエンジンを吹かせている。
 その存在感・殺意は圧倒的であり、堕天使オセの実力を上回る事だろう。
 マフラーをなびかせながら宣戦布告を行った。


「連れて行ってやるぜ……スピードの向こう側に!!」

「生憎、俺は安全運転だ!」


 ジェシカが更に仲間を呼ぶ……アイルランドの『妖精の恋人』と呼ばれるリャナンシー、風の精霊シルフを呼び出す。
 石動の仲魔ではすぐに殺されるから出さなかったようだ。
 

『タル・カジャ!』

『ラクンダ!』

「ギロチンカットだ!!」


 リャナンシーが腕力の強化を、シルフが魔人の防御力を削る。
 すかさず石動が妖刀ニヒルで技の通りにギロチンの如く縦に振り下ろす。
 咄嗟にウィリーしながら体勢を変えて直撃を防いだが、ライダースーツに大きな傷跡を残した。
 だが、まだまだ魔人は余裕を見せている。
 

「ぐぐ……中々良い攻撃じゃないか?」

「言ってなさい!!」

『うぉれもいくぞおおおおおお!!』

『こうなりゃ自棄よ!』


 ジェシカが背中からソードオフショットガン(銃身を短く切ったショットガン)を取り出し、乱射する。
 同時にオボログルマとクリス・ザ・カーが側面から轢こうとした。
 魔人は、ショットガンの散弾を顔面に直撃しないように腕でガードし、オボログルマを巧みなハンドルさばきで轢かれるどころか、オボログルマの上に乗っかる。


「な……!」

『あ、熱いぞおおおおおお!』


 エンジンを吹かし、ジェット機のバーナーの如く炎を噴出す。
 皆が巻き込まれた。
 さらに……衝撃波をバイクの周りから飛ばした。
 魔法防御の薄い石動には大きな痛手になった……さらに不利になる事が起こった。 

 
「…力が湧かない!?」

「強化をうちけしたの!?」

『ともかく、治療します、メディ・ラマ!』

『アイツ、風を支配している……私の魔法じゃ傷がつけられないなら……スクカジャ!』


 敏捷度を上げて、回避・命中を良くする方向に変えたようだ。
 ヘルズエンジェルはオボログルマから降り、間合いを離す。
 そして一気にスロットルを上げトップスピードで石動たちを襲う。
 ジェシカやリャナンシーは大きく跳ね飛ばされる。
 だが、石動が轢かれながらも脚に備えていた錬気の剣に気を込めた。


「な……!?」

「ざまぁ……!!」


 倒れながらも魔人のバイクと脚に向かって石動の脚を振るう。
 切り裂かれ、運転に多少の支障が出るだろうか?
 さらにオボログルマが自分の車のバッテリーを暴走させて放電し、ヘルズエンジェルに撃ち当てる。
 それでも転倒せずに離れる魔人のテクニックと執念は恐るべきものであった。
 ジェシカが立ち上がり、皆に声をかける。


「皆……生きている!?」

「ああ、なんとかな」

『アタイは補助しかできないけど……ジェシカを死なせないよ!』

『回復は任せてください……隙があれば補助も入れます』

『さまなぁー!うぉれだー!』

『もう、肌が荒れちゃう!!』


 シルフは補助に、リャナンシーは回復を中心に動く。
 クリス、オボログルマ、石動が接近し、ジェシカが射撃で援護する。
 だが、敵は魔人。
 デクンダで弱体化を解き、バーナーで焼き晴らい、衝撃波を飛ばしながら強化を解除する。
 バイクの機動力を活かしながら石動達を轢く。
 それでも、ジェシカと石動は諦めない。
 相手の方が圧倒的に実力が高いが、チーム一丸となって相手の力を削ぎ、自分達の力を高めつつも攻撃する。
 徐々に押されていくヘルズエンジェル。
 だが、石動たちも回復が追いつかず、徐々にダメージが増えていき、動けるのは石動のみになった……。
 更にエンジンを吹かす魔人……そして脚の錬気の剣を左手に、妖刀ニヒルを右手に持って構える。 
  

「俺の走りにここまでついて来るとはな。
 だが……ここまでだ!」

「……俺の剣とオマエのバイク、どちらが速いか?」

「付け焼刃の二刀では俺を殺せんぞ!」


 加速するヘルズエンジェルルに向けて錬気の剣を投擲するが、回避された。
 その隙を狙ってヘルズエンジェルが加速した!
 魔人は、石動が右手の刀を下からすくい上げるように斬ろうとしているのを見て、カウンターでジャックナイフターンで止めを刺そうとする。
 だが、実際に罠にかかったのは……


「かかったな、本命はこっちだ!」

「な……」


 空いた左手でヘルズエンジェルルの顔面を握る。
 逃げようとする魔人だが、右の刀で片腕を切り落とした
 ニヒルの妖気を吸収し、自身の生命力を手に注ぎ込み、最後の一撃を放った。


「アイアンクロウ!!」

「がは……!!」


 魔人は吹き飛び、瓦礫の中に突っ込んだ。
 石動は、残る力を使い果たして膝をつく……。
 
 
「やったか……?
 な…!?」


 瓦礫からゆっくりとバイクを起こす魔人。
 石動は二度目の死を覚悟したが……
 ヘルズエンジェルは東の空に目を向けた。
 追跡開始が夜中だったが、すっかり夜明けになっていた。
 

「ち……手間取りすぎた。
 他のサマナーが来たら面倒だ……次こそ、スピードの彼方へ招待してやる。
 首を洗って待っていろ」


 そう言い残し、魔人は去っていた。
 ジェシカは仲魔を返し、石動は魔石を渡し、後で報酬を渡す事を約束して一旦クリスと別れた。
 宝玉で傷を塞ぎ、しばらく空き地で二人が倒れこんでいた。
 おもむろに口を開いたのは石動だった。


「また……狙われた。
 豹にライダーに幼女……不幸だ」

「あははは……でも魔人相手に生き延びただけ幸運じゃない?
 それにしても……魔人が来たということは世の中が荒れてきたのかな?」

「さあな……世紀末が過ぎたっていうのにな。
 あんとき世界が滅ぶとかどうのこうのいっていたが乗り切ったし……。
 そういえばこんな噂を知っているか、当時のアメリカ大使のトールマンは実は悪魔で雷神トールだった!
 そして核ミサイルを日本に叩き込もうと計画していた!!!
 な~んて都市伝説」

「ありえないって……仮にも神がそんな安直な偽名使わないって」

「まったくだ……」

 
 一通り笑い、動けるようになった二人はヘルズエンジェルの腕を回収した。
 交戦記録をCOMPに記録しているが、戦ったという重要な証拠になるからだ。


「ヤタガラスに引き渡すか……」

「やっぱりヤタガラスの依頼か」

「それもあるけど、他にも依頼があってね報酬の二重取りよ」

「喰えないね、アンタ」

「お互いさまよ」



 200Ⅹ年 8月22日。
 ヤタガラスから魔人警報が発表された。





 4~6話のあとがき 

 金王屋はライドウ(というかデビルサマナーでも)でおなじみのあのお店、決して■玉屋ではない。
 平崎市の金王屋と株式会社『金王屋』は元祖と分家みたいな関係。



 ラームジェルグ(ガーディアン)の能力を改めて説明。

・物理半減・魔法に弱い。

・使える技(ザンマ、マハ・ザン、ギロチンカット、べノンザッパー、アイアンクロウが今の所が確認されている)

・呪いの武器を扱えるようになる(好感度ダウン)。 



 変態・宇宙人のゾンビの元ネタはソウルハッカーズのオリジナル悪魔(神話・伝記・噂上の存在ではないです)から。


 モー・ショポーちゃん……ヒロイン?エロイン?
 今のところ脈はありませんがね。


 ラク・ンダとかスクカジャとかなっていますが、発音が違うだけですので(参考にしてる作品での呼びかたを使っていたり)


 クリス・ザ・カーは真・女神転生2の外道。


 ジェシカは、ブーツ型のCOMPで銃がメインのフリーのサマナー。
 美人で、いつかは石動も口説きたいと考えているが、組む時に限って難儀な事件で口説く余裕が無かったり。
 シルフ(ザン系、ラクンダ、スクカジャ等)、リャナンシー(メディ・ラマ、タル・カジャ等)、オボログルマ(放電、猛突進等)が確認されている。
 オボログルマ以外(もしかした女なのかもしれないが……イッポンダタラのメイドとか…?)は女性の悪魔で固めている。
 
 ちなみに九鬼は義経を筆頭に和風の悪魔が中心で、鞍馬天狗になろうとしている鴉天狗が偵察役である。 
 

 魔人・ヘルズエンジェルはマニアクス(マニクロ)で出てくる三番手の魔人。
 MAP上にでる唯一の魔人であるが……マタドールは序盤ではそれなりに使え(弱点なし)、大僧正は高性能(補助・回復に特化させていました)だったが……今ひとつ使えない、後半は4騎士が強いからそっちにいくし……。
 敵で戦うときはスロットル全開にして手数を増やしたり、全体攻撃(打撃・炎・衝撃&デカジャ)、デクンダを使う隙がない感じです。
 

 魔人……世界が乱れた時に現れます。
 この作品内では地脈が乱れる、災害、人々が不安になる、町の運気が下がった時に現れるという設定。
 魔人警報は、サマナーに取っての台風情報みたいなもの(ヤタガラスの提供でお送りします)。
 この情報を聞いて魔人退治にいく、もしくは仕事を休むタイプに別れる。





[7357] 第7話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/15 15:42
 魔人警報発令から2日後、九鬼と石動がニュクスの店で夕食をとっている。
 

「魔人警報……でましたね」

「俺が戦ったが、負けた……サマナー二人でかかって……情けない!」

「それは……実は私も襲われまして、クイズを出してくるオバQモドキでしたが。
 幸いクイズに正解して相手が上機嫌だったのですぐに退いてくれましたが」

「こっちはヘルズエンジェルと名乗る骨々ライダーだったよ……ジェシカの助っ人でな。
 倒せなかったがクリスにも世話になったし」


 ため息をつき、ウイスキーを飲む石動。
 苦笑しながら九鬼は続けた。


「ダークサマナーのチャックが惨殺されました。
 死体はヤタガラスが回収したようです……COMPの記録を解析したらマタドールのような格好をした魔人が下手人らしいですよ」

「一度に三体か……。
 これで打ち止めにしてほしいよ、全く」


 オセに引き続き厄介な悪魔に狙われて憂鬱になっている石動であった。










 帰りに怪しい気配がしたので、石動は確認しに行った。
 代々木公園で高校生の二人組みが黒い牛頭の魔術師に詰め寄っている。
 ガリガリに痩せた長身と、ふとっちょでチビという凸凹コンビだった。
 魔術師……バフォメットがいさめている。
 石動は近くの物陰に隠れた。


「はやくはやく!」

「そうです!私達をいじめる奴に仕返しできる『偉大な方』をだして!!」


 二人とも全身を痙攣させるように震えている。
 悪魔相手でも物怖じしないのがある意味大したものだが……。
 バフォメットが必死に警告を続ける。


「待て、今この地は霊的に荒れている。
 今召還の儀式をしたら……」

「うるさいうるさい!」

「やってやる、やってやるぞ!」

「ちょ」


 バフォメットの静止を聞かないで呪文を唱え踊り始める凸凹。
 はじまってしまった以上、途中で止めたら帰って危険なことになるためにバフォメットは儀式のサポートを行う。


『(何呼ぶんだ?)』

「(さあな……)」


 石動とラームジェルグはCOMPでヤタガラスに通報する用意だけはしておく。
 万一、手に負えない悪魔が出た場合に備えるためだ。
 石動達に気がつかず、儀式を続ける。


「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん!」

「いえ いえ しゅぶ・にぐらす 千匹の仔を孕みし森の黒山羊よ!
 いあーる むなーる うが なぐる となろろ よらならーく しらーりー!
 いむろくなるのいくろむ! のいくろむ らじゃにー! いえ いえ しゅぶ・にぐらす!
 となるろ よらなるか! 山羊よ! 森の山羊よ! 我が生け贄を受取り給え! 」


 更に呪文を唱える二人。
 バフォメットの額に冷や汗がでているのは気のせいではないだろう。
 旧支配者『クトゥグア』、外なる神『黒い仔山羊』、さらにクトゥルフ神話の神々を手当たり次第に呼ぼうとしている。
 最後に大きな閃光を発し、魔方陣に子犬サイズの悪魔『外道・オールドワン』が現れた。
 植物と海洋生物の融合したような奇怪な姿で、見るものを狂気に導く存在である。
 凸凹は大喜びだった。


「おお!!」

「成功したぞ!!
 でも小さい?」

「(まさか成功するとは……あれ?)」



 バフォメットが首をかしげた瞬間に『オールドワン』は形が崩れ、緑色の液状生物に変わった。
 石動はほっと息をついて連絡を取りやめた。
 気配はMAGが足りない、もしくは悪魔合体の失敗で自身を形成できなくなった悪魔……いわゆる『スライム』になった。
 『てけりり』と奇怪な声で鳴くが、普通のスライムと変わらない。
 石動は時間を無駄にしたと思いつつ去っていった。


「よし、復習だ!」

「皿祭りにあげてやる!」

「(だめだ……こいつら、なんとかしないと)」

『てけりり』





















 




 翌日、連絡が入った……石動の知り合いで警視庁のキャリアだ。
 一度に三体の魔人が確認されたのを期に警視庁は、対悪魔犯罪の組織を立ち上げるようだ。
 ちなみに、自衛隊は、旧帝国軍の時からサマナーが対応しているので悪魔に対するノウハウは確立されている。
 石動の友人であり、警視庁キャリアでも風間が相談にやって来た。
 代々警官をしていたそうで、先祖は『あの』14代目葛葉雷堂とも面識があったそうだ。
 探偵と警官(キャリア)という普段なら一緒にいるはずのない組み合わせが石動の事務所に出来上がった。
 石動の外見は、二重瞼で大きな瞳に大きな鼻、髪をオールバックにし、黒い背広をきっちりきめている。
 一見荒々しい印象があり、初対面の人間は彼を警官、ましてやキャリアだとは夢にも思わない。
 石動がコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、サンドイッチトースターから焼きあがったサンドイッチを出す。
 香ばしく焼きあがり、チーズとベーコン、トマトソースがパンの中に詰まっており、カリカリに焼けたパンの食感と熱い中身と合わさり、なんともいえない幸福感が二人を包む。
 サンドイッチを平らげ、コーヒーを飲みながら本題を切り出した。


「魔人にあったんだって?」

「……負けたがな、恥ずかしながら」

「おいおいおい……生き延びただけでもたいしたもんだ」


 大げさに話す風間。
 石動も年上の友人である風間の前では大人しい。
 ラームジェルグもチャチをいれていない。


「で……ようやく対悪魔の組織を立ち上げるわけだが。
 訓練をどうするかだよ」

「昔と比べて楽にはなっただけマシさ」


 石動の発言に嘘はない。
 昔は管を用いて悪魔を使役していたが、制御が困難であり、普通のサマナーならば1体が限界であった。
 だが、20世紀末から『悪魔召還プログラム』というものが出回りだした。
 魔法陣、術式をコンピューターの中にインストールし、機械のサポートを受けて悪魔を制御する手法だ。
 誰が作ったのは解っていない……これには複数の説があり『中島』と呼ばれる天才高校生プログラマーがおこなったとも、「STEVEN」、「レッドマン」と呼ばれる存在が作ったとも言われる。
 このプログラムのお陰で悪魔召還の難易度が下がり、一度に複数の悪魔を使役する事が出来る。
 欠点は、手を出しやすくなったために悪魔召還を行い、失敗して悪魔に喰われる事件が増えたり、ダークサマナーの増加といった問題がある。
 閑話休題。

 
「で、俺にどうしろって言うんですか、風間さん?」

「むろん、ヤタガラスや自衛隊の組織からも教えを請うがよ、在野のサマナーの声を聞きたいわけだよ。
 悪魔っていう奇想天外な存在に対決するんだ、立っている者なら親でも使うさ」

「そりゃあ、そうだ」

「なにかアドバイスがあれば言ってくれ」


 真摯に頼み込む風間。
 それを聞き、しばらく考えて頭に浮かんだ案を出す。


「訓練する、知識を得るのは大前提だが……。
 カウンセラーを用意したほうがいいな、悪魔と相手にするってのは予想以上に疲れる。
 相手のほうが基本的に強いくらいに思っていた方が良い。
 それに実力が上回っても呪殺呪文を喰らってあの世へ行くことも多いから護符や回復薬といった装備を充実させることだな」

「カウンセラーか……なまじ悪魔に対抗する装備ばかり考えていたからな」

「それと……隊員に一度死体を切らせてみることだ。
 そう……死刑囚とか身元不明の死体とかな」

「死体か……」

「死体と斬る事で童貞(人殺しをしたことがない事)の抵抗感・恐怖感をなくすのに役立つ。
 初陣でゾンビにたかられて死亡という無様な結果にならない為にな……こういう訓練なしでいきなり悪魔と対峙する人が多いからな。
 それと、眉一つ動かさずに斬るような輩は矯正するなり外した方がいいな。
 悪魔と接するうちに悪魔を取り込んで魔人になる奴も出てくるからな」

「魔人化か……そうなれば不祥事どころではすまないな」


 メモを取り、さらに風間自身の考察も入れている。
 しばらく話し合い、近いうちに石動が他のサマナーにも声をかけて講義を行うことに決まった。



[7357] 第8話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/26 11:29


「で、私達を呼んだのね、傷をふさいでも本調子じゃないからいいけどね」
  
「私も会社が休みですからかまいませんよ」 


 石動は、九鬼とジェシカに頼み込み、素人である警官達に教導を行うことにした。
 風間の提案を受けたヤタガラスも在野のサマナーの経験談は大いに参考になると判断し、石動達に正式に依頼をした。
 警視庁で合同捜査会議を行うホールを貸切にして対悪魔対策班、後の『公安零課』の組織作りがはじまった。
 集まったのはサマナーの適正がある者が集められ、20~30代の男女が集められている。
 その数は50人。
 伝説のサマナー14代目『葛葉雷堂』はたった一人で帝都を守ったと言われているが、近年のサマナーの増加で一人でできる事に限界がある。
 だから数を集めて育てていく事になった。
 サマナーの一番の年長者である九鬼が挨拶をする。
 腰の低いサラリーマンにしか見えないが、単独で魔人に接触したにも関わらず生還した彼の手腕は間違いなく優秀であろう。
 穏やかな口調で話し始める九鬼……命がかかっているだけに、皆真剣に話を聞く。


「皆さん始めまして。
 本日講師を勤めさせていただく九鬼英輔と申します。
 悪魔という存在を信じられないかもしれませんが実際に存在し、社会の中で生活しています。
 悪魔の定義ですが、マグネタイト……生体エネルギーで体を実体化させている存在で、一般に言われる悪魔、妖精、妖怪、天使に神々もこの範疇に入ります」


 九鬼の悪魔の定義を聞き驚く警官達。
 石動達は九鬼の話し振りを良く見て感心している。


「悪魔は基本的に人間より上回ります。
 ですが、決して勝ち目が無いわけではないのです、分析をして弱点を突き、冷静に行動し、チームワークで当たれば負けません。
 ただ、悪魔は必ずしも害を与えるわけではありません。
 人々に知恵や恩恵を与える事もあります……ですから行き過ぎた悪魔の退治は害悪になることを頭にいれてください。
 戸籍をもっている悪魔、悪魔を血筋を受けついた普通の人間がいるのですから」


 そういって、壇上にある水差しからコップに水を注ぐ。
 一口飲んだ後にさらに続ける。
 

「次に仲魔についてです。
 友好的な悪魔は協力してもらえれば心強い戦力になります。
 彼らは、空からの偵察、現場検証、読心術等の普通の人間ではできない事ができます。
 それと特筆すべき点は合体することで能力を変化させるのです」

「合体とはどういうことでしょうか?」


 新人らしい警官が質問をする。
 九鬼はその質問に答えた。


「基本的に邪教の館と呼ばれる悪魔を崇める者達が合体をしてもらえます。
 また、錬金術師も悪魔の研究をしていますし、特別にプログラミングされたCOMPに合体機能を付加されたものもあります。
 合体には法則があり、それを考えながら合体することができれば一流のサマナーになれ、過酷な戦場に生き残れることでしょう。
 合体法則や、特別な合体については資料の35ページから書かれていますので。
 言い忘れていましたが、悪魔は月に関係がとても深いです。
 満月になれば気分が高ぶり交渉する事が困難になります……逆に新月が一番穏やかになります。
 悪魔によって力が発揮できる時期が違うので、それも見切れれば有利な展開を導く事もできます。
 合体にも月の満ち欠けは関係しますので月の状態は常にCOMPで確認してください」


 九鬼は、保険のサラリーマンをしているだけに説明が立て板に水を流すかの如くスムーズであった。
 石動やジェシカではここまで巧く話せないだろうと風間は思った。
 みっちり2時間、悪魔と対峙するときの心構えについて話した。
 その後は、風間も加わり4つの班でサマナーとして知るべき施設を顔見せも兼ねて見学ツアーをする事になった。



[7357] 第9話 (15日、22時27分に追加・修正)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/18 02:55
 生体MAG研究所、邪教の館、太平堂等の武具魔具を売る店、RAGの店(宝石店)等行くべき場所を一通り回った。
 最後にまたホールに戻り、新しい資料を見せる。
 正確に言うと資料ではない。
 メモ帳型のCOMPである。
 タイトルは『偽・悪魔全書』と書かれている。


「これはなんでしょうか?」


 警官の一人が聞いてきた。
 九鬼が答えた。


「君たちに渡ったのは銃よりも、そして警官の手帳よりも大事なものです。
 悪魔を使役する為に作られた機械、COMPです。
 魔法召還の他に悪魔・アイテム・スキルの検索機能、オートマッピング、月齢の確認機能がついています。
 データは出来る限り乗せました。
 また、官給品で拡張・追加機能をつけることができませんが、特殊な機能があります。
 データを共有でき、最新の情報を共有できます。
 ある錬金術師とコンピューターに長けたデビルサマナーに依頼して製作された新機能『シンクロ召還』があります。
 これは、個人では出来ません、二人以上でしか行えません。
 複数のサマナーのMAGを出し合って召還したり、大人数でプログラムを組んで国家鎮守の悪魔を召還することも理論的に可能になります。
 つまり、自分達以上の力量を持つ悪魔を召還することが可能なのです」


 周りから驚きの声を上げた。
 プロのサマナー達にとってはこんな驚きでは済まないほどの衝撃であり、初めて聞いたときは九鬼達は目を丸くしている。
 九鬼が説明を続ける。


「自分の力量以上の悪魔を使うという事は多大なリスクがあります。
 本当に、本当に後が無く、多くの人々を守るときにしか使用してはいけません。
 また、用が終わったら深い感謝と報酬を用意しておいたほうが良いでしょう」


 量産モデルとはいえ破格の性能であるといえる。
 ただ、フリーで動くなら自分でカスタムするべきである。
 たとえば、ダークサイドの悪魔と円滑な会話を望むならダークマンというソフトが必要である(なお、ラームジェルグ憑依の石動はダークサイドとも普通に話せる)。
 また特殊な言語を使うタイプの悪魔の話を解読するジャイブトーキン、女性悪魔と円滑に交渉できるレディ・キラーなどもある。
 他にもMAGの消費を抑えたり、悪魔合体ソフト、言語翻訳ソフト、悪魔の遭遇確立を変換するソフト等多彩であり、その組み合わせは奥が深い。 
 重要なCOMPの説明を終え、最近の要注意の悪魔の説明に移る。
 やはり特に注意すべき存在は魔人が挙げられている。
 闘牛士・マタドールの多彩な剣技とスピード、地獄のライダーヘルズエンジェルのバイクを生かした殺法、トリッキーな攻撃をする貪欲なる魔人ゴーストQが現在確認されている魔人である。
 現在確認されている上位存在の悪魔はオセがいる。
 もし、召還が成功されていたらオールドワンも入ることだろう。
 また、マンイーター等の人間に巧く化ける悪魔や呪殺魔法の使う悪魔について特に注意を呼びかける。
 闘いで行った失敗(ギリメカラに物理攻撃をして反射されてしまった事等)を話しつつ、格サマナーの闘い方をそれぞれが語る。
 一通り話を終え、九鬼が最後の言葉で締めくくる。


「最後に……悪魔の圧倒的な力の差に絶望を感じるかもしれません。
 ですが、最後まで諦めないでください。
 自分の守りたい家族や信念を抱いてください。
 人間は確かに弱いです……ですが、歴史の中で数々の人類の危機が起こり、それを乗り越えてきています。
 皆さんもこれからはそのような世界の影から支える立場になったのです。
 ……これで私の話を終わります」


 大きな拍手とともに講習が終わった。














 風間の誘いでニュクスの店で打ち上げを行うことになった。


「わざわざ手間をかけさせてすまなかった」

「いえ、困った時はお互い様ですから」

「魔人が出た以上はしばらくサマナー活動を自粛して鍛えたり、武器を調達することを考えていたから丁度良かったわ」

「そうだな……俺なんかオセまでついているんだぜ?」

『自業自得だぜ』


 風間が三人に礼をいった。
 九鬼は穏やかな笑みで答え、ジェシカと石動も言葉を返した。
 ラームジェルグもリラックスしている。


「良い勉強になった。
 だが……さらに鍛えないと弾除けにすらならないな」

「おっしゃる通りです」

「そうね……重火器で押すのも手だけど、街中では中々撃てないし」

「銃や無効化・反射する奴もいるからな」

「そうか……」


 風間が暗い顔になったのを石動が付け加えた。


「銃弾しだいで何とかなるがな。
 炸裂弾や冷凍弾、暴威弾とかな」

「なるほど……弾薬の調達も考えなければ、ん?」


 風間の携帯電話がなり、急いで応答する。


「私だ……何ィ!?
 解った、すぐに対処しよう」

 
 電話を切った風間の顔には心なしか血の気が引いている。
 ただならぬ様子から九鬼が質問した。


「いかがなさったのですか?」

「警視庁特殊装備研究チームの一人が何を血迷ったのか立てこもっている。
 他の逃げ出した研究員によると、研究所試作された防犯用ロボが徘徊して危険な状態らしい。
 幸い、他の研究員は全員退避できたが……最悪なことに研究所に悪魔が現れた」

「あらま……なんとも言えないわね」

「……今なら格安で引き受けるが?」

「 毒食わば皿まで ……お供しますよ」


 三人のサマナーの言葉を聞き、頭を下げる風間。
 勘定を済ませながら一言言った。


「すまない、力を借りる。
 それに……部下達に見せるいい教材になりそうだ」

「……まったくだ」

 
 風間の最後の一言に苦笑する石動だった。












 現場の研究所に到着した。
 車から降りた風間達の前に警官が走り、敬礼を行った。
 関係者以外は来られないよう封鎖も行っている。


「全員集合しました!」

「よし……では現状を改めて説明する。
 研究所の職員の一人『大槻』が今回の公安零課の発足に不満を抱き、立てこもっている。
 以前より、開発したマシーンが完成すれば悪魔など恐るるに足らずと言っていたそうだ」

「公安0課?」

 
 ジェシカが首を傾げる。
 大人である彼女だが、可愛げがあり似合っている。
 それにも動じずに風間が答える。


「つい先ほどチームの正式名称が決まってな。
 話を戻すがさらに悪魔が中に出てくるようになったそうだ。
 豹の頭をした男の目撃情報が来ている」

「オセか……こんな時に!!」

『おいおい、落ち着けって』

「石動君、以前オセのマスターを殺害して野良になったみたいですからMAG調達が以前より困難になるでしょう。
 だから手駒を探しているのかもしれません」


 怒りをにじませる石動に諌めるラームジェルグ。
 九鬼は石動の話と今回の事件の関連を推理する。
 風間が作戦を説明する。


「今回は大事件であり、本格的な実戦に立っていない君たちを立たせるわけに行かない。
 だから皆は突入班のサポートを行い、研究所から出てくる悪魔を集団で掃討することが主な役割だ。
 内部の悪魔と、此方にやってくる悪魔ではやってくる方が弱いからな」


 パワーポイントで説明する中で研究所から出てきた悪魔の画像が出た。
 ガキやポルターガイスト、ゾンビが主に出てきている。
 ゾンビは古く、ボロボロな衣服から身元不明の浮浪者をゾンビ化されたのだろうと石動は推理した。
 

「突入は先ほど君達に講習してくれたサマナーにやってもらう事にした。
 カメラを仕込んでおくから後で参考にするように。
 なお、今回はシンクロ召還を行って邪鬼・グレムリンを召還して後方支援をさせる!」

『グレムリンってよわっちいのをよくデータバンクに入れていたな』

「なるほど……そういうことか」

「どういうこと?」


 守護霊と会話し、一人で納得した石動に疑問をぶつけるジェシカ。

 
「グレムリンは機械弄りが大好きで、機械を壊す習性がある。
 だからこういうコンピューターで管理された要塞を突き崩すのに便利なわけだ」

「なるほど、突入にも使えますし、逆に攻められた時の研究の為に捕まえているのですね」

「考えたものね」


 石動の説明に頷く二人であった。
 説明を終えた風間が三人に声をかけた。


「すまないな、身内の不祥事に巻き込んで」

「いえいえ」

「面白そうだし、良いわよ」

「それに、悪魔に対抗できるマシンという奴に興味がある」


 三者三様の答えをだす。
 石動にとってサマナーの腕が上がりにくい存在にとって科学で対抗できるのならば使いたいとまで考えている。
 逆に古くからの手法を頑なに受け継いでいるタイプのサマナーでは嘲笑するだけであるが。
 全員が配置につき、突入作戦が開始される。
 風間が作戦開始の号令を発する。




「ではコレより作戦を開始する。
 シンクロ召還、スタンバイ!」

「了解、シンクロ召還開始!!」



 今回は三人一組でグレムリンを一匹召還する。


「わーい、機械だぁー!」


 13体のグレムリンが現れ、研究所の警備網にイタズラをし始めた。
 風間は、グレムリンの活動を確認してからさらに号令をする。


「突入班、突入開始!」







 7~9話のあとがき。

 代々木公園は、メガテンでよく使われる所である。
 関係ありませんが、もしこの世界で受胎成功していたら東京ではなくK受胎になっていますね。

 凸凹コンビとバフォメットは真3の渋谷のマネカタ二人とバフォメットの会話がモデル。
 真3ではご立派な魔王ことマーラ様を召還しましたが失敗しています。
 オールドワンは真2からの出展(クトゥルフ神話から)。
 ちなみに、ペルソナで這いよる混沌やハスターとかもでています。

 風間……大正時代の風間刑事の子孫。
     風間刑事とライドウさんが写っている写真もあるらしい。
     先祖と違ってキャリア組。

 ライドウでは軍にサマナーが出ていますからその後継である自衛隊でも対悪魔の組織はあることにしました。
 警察は様々な面倒な事がある上にヤタガラスやフリーのサマナーが今まで対応していたので漸くできたという設定。

 カウンセラーは必要だろうと思い言及しました。
 思えばメガテンの主人公はタフです。
 恋人(ヒロイン)を死なせたり、友人を亡くしたり敵対したり世界の崩壊の危機……でも戦い抜いている主人公は偉い!
 死体を斬るというのも人に似た存在を倒すという抵抗感を減らすための訓練でもあります。

 公安零課……霊(オカルト)だけに。
 攻殻機動隊(9課)は大好きです。
 
 人間ではできない事はライドウシリーズでやってくれています。
 こういう便利な事を生活に使えたらいいなーと思います、産業スパイとかカンニングとか……色々。

 シンクロ召還は独自設定。
 ゲームでは複数のサマナーと戦闘で共同で戦う事がないです。
 ですが、警官達は弱いですから(名無しキャラ補正的に)、数人係で戦うには?と考えたため。
 国家鎮守の悪魔は大日如来(アスラ王にはならず、分霊)、アタバク等がいます。

 ゴーストQは真2の魔人である……ぶっちゃけオ(ぴー)Q。

 研究員の反乱は……真1での彼です。
 たぶん、某プラズマ教師と同類。

 シンクロ召還の第一号はグレムリン。
 戦闘力はともかくリアルでいたら困る悪魔だとおもう 



[7357] 第10話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/16 17:10
 ジェシカは、自律兵器にショットガンを撃ちこむ。
 3,4発連続で発射された散弾で動きが止まった。


「ホントに硬いわね」

「ああ、全く」

『雑魚相手なら十二分だがよ、魔人相手じゃ弾除けになるかどうか……だな』


 石動とラームジェルグはそう判断した。
 九鬼は装甲の隙間に細長い刃を差し込んで無力化し、石動は妖刀ニヒルで一刀両断する。
 セキュリティーはグレムリンのお陰で手薄になっている。
 途中で現れたのは都市伝説でガスを撒き散らす怪人・マッドガッサーやゾンビの憲兵や幽鬼・ヤカーといった悪魔が現れる。
 魔人が現れて運気が下がった影響なのか凶暴性が高い。
 それを確実に撃破するサマナー達。
 大人数で動くと目立ちすぎるために仲間は召還していない。
 もっとも石動の使役する仲魔では足手まといなのだが。
 奥に進み、白衣を着た老人がいる。
 おそらく『大槻』であろう……ボサボサになった白髪は手入れを入れておらず、狂気を孕んだ瞳で睨みつける。


「サマナーか!
 貴様らなどこのマシーンの前には無力!
 科学の……プラズマの力の前には!!」

『あちゃー、アレか?』

「アレだな」


 ラームジェルグが米神のところに手を運び蚊取り線香のような軌跡を描く。
 石動も同様のしぐさをした。
 九鬼が一応話し合いをすることにした。


「大槻さん、貴方のやっている事は犯罪行為です。
 今なら内々で処理できます!」

「黙れ!
 貴様らなぞスクラップにしてやる!
 オセ!!オマエも出ろ!!」

『……承知した』


 大槻の声に呼ばれて豹頭の堕天使、オセが現れる。
 大槻の周りに警備ロボットが現れ、更に巨大な搭乗型のロボが現れた。


『魔道(ぴー)マー!?
 むしろEGG?』

「またマイナーなネタを……トヨハシやホンジョウ(自動車メーカーの名)もって行けば莫大な特許が取れそうね」


 ロボットは、胴体が卵型でできており、大きな四肢が取り付けられている格好であった。
 ラームジェルグがテレビやゲームで知っているロボに似た形を突っ込み、ジェシカはその高性能なロボの技術に驚く。 
 大槻は乗り込み、腕を振り下ろす。
 皆跳んで避け、九鬼は反撃にナイフを脚部の装甲が脆そうな部分を狙って何度も斬る。
 無論、大した傷にはならない。


『ヴァカァめえええ!!』

「義経見参……!!」

『承知!!』


 九鬼は、大槻の反撃をバックダッシュで避けながら手甲型のCOMPから義経を召還した。
 主が打ち込んだ傷跡をそのまま狙い何度も斬る義経。
 ジェシカもシルフとリャナンシーを召還した。
 義経は心なしか嬉しげだ。


『見目麗しい女性と戦えるのは光栄の至り』

「はいはい……石動、オセは任せていい?」

「相性が悪いから断ると言いたいところだが……」


 主な武器が物理攻撃でしかない大槻ならば石動の方がいい。
 だが……。


「因縁の相手であるし、不利な状況での戦い方を見せるのも悪くない」

「でも援護だけはさせるわ」

「九鬼の旦那にもな」

「もちろん!
 死なないでね」


 互いの拳を突きあわせる。
 石動がオセに、ジェシカと九鬼と義経が大槻に、シルフとリャナンシーが皆の援護・回復役と分担が決まった。
 援護を受けられるために石動はダメージをある程度覚悟しながら戦える。
 オセの火弾を避けながら接近する。
 近づけさせまいとプロペラの如く双剣を旋回させるが相打ち覚悟で切りかかる!
 豹のような敏捷さで避けるオセに対して石動は対策を練っていた。
 このときの為に広範囲を巻き込む剣の奥義を持っていた。


「虚空斬波!!」


 妖刀ニヒルの刀身が更にどす黒く変色しながらオセに襲い掛かる。
 辛くも避けるが、左肩から先を切り落とされた。


『貴様ぁあああ!!』

「おあいにくさん、こっちだって伊達に死線をこえちゃいないよ」

『(油断するな、気力を込めた必殺剣は自身の体力を削る両刃の刃だからな!)』


 ヘルズエンジェルとの死闘でまた一つ成長し、武器も進化した。
 さらには味方の援護もついている。
 前回に比べ格段に有利になっていた。
 更に……オセは主を失い間違いなく弱体化をしている。
 怒りに狂いながらも退散していくオセ。
 石動は追いかけようとしたが、オセは無数のマッドガッサーを召還して壁とした。
 

「くそ……!!」

『まて、どうせこのまま堕ちて行くだけだ』

「いや、意地でも汚点を俺の血で雪ぐつもりだ。
 ……下手すれば奴を倒す最後の機会だったかもしれん」

『……せっきーの感に間違いはあんまりないからな。
 精々鍛えるとするか。
 このまま悪魔を切れば、またこの刀が変化するな』

「ああ、サマナーとしてはあまり強く慣れんかもしれんが……ガーディアン使いとしてそろそろ新戦力が欲しいし。
 それとせっきー言うな」

「回復しますね、ディアラマ!」


 消耗した石動を見て回復魔法を唱えるリャナンシー。
 因縁を断ち切れなかった石動……頭痛の種は残ったようだ。
 そんあ様子の彼に相棒は励ます。


『おいおい、辛気臭い顔するなよ』

「……頭痛ぇ」

『ここで飲むなよ?
 体が働かなくなるからな』

「それくらいわかっている」



 石動達は、暢気に話しているが、けっして油断せずにマッドガッサー達に切りかかる。
 悪魔と対峙するものに油断は許されない。
 油断をして突然命を落とすのは良くあることであるからだ。


「うぉれはあああああ!!
 まっどがっさああああああああああ!」」

「とっとと死にさらせええええ!!」

『タマとったらあああああ!』


 石動達の台詞にどこか余裕があるのは優秀な証なのかもしれない。 








「貴様らぁ!しねえええ!!」


 両肩からガトリング砲が現れ、乱射する大槻。
 ジェシカは横っ飛びしながらベレッタで撃つが、装甲に阻まれる。
 リャナンシーに石動の援護を任せて、残りは石動から引き離すように後退した。
 それを悠然と追いかける大槻。
 たどり着いたのは武器庫であった。
 九鬼とジェシカは物相談をする……万一弾薬・火薬に流れ弾が当たったら最後、大惨事になるだろう。 


「で、どうするの?」

「手持ちの切り札で打ち抜けない事もないですがね……いかんせん、耐久力がわかりませんし」

「悪魔なら解るけどね……」


 ジェシカの視線の先にはガトリング砲を発見した。
 チェシャ猫のような笑みを浮かべるジェシカに名案が浮かんだようだった。
 作戦を聞き、九鬼の動きも決まった。
 まずジェシカが大槻の正面に立ち、ガトリング砲を構える。
 大槻は生贄が出たとコックピットの中でほくそえむ。


「死ねエエエ!!」

「畳返し!」


 ガトリングを一斉正射する大槻。
 銃弾が降り注ぐ前に、義経がジェシカの横に現れた。
 源氏の猛将が地面に左手を突っ込み、地面をひっくり返した。
 板状の壁に当たった銃弾は如何なる原理か大槻に向かって跳ね返る!
 戦車すら穴を空ける銃弾がそのまま襲い掛かり装甲にダメージを与える。
 シルフがジェシカの肩に乗り力を込める!!


「いくわよ、ジェシカ!」

「ええ…私達のコンビネーション、見せてあげるわ!!
 大雷電忠義弾!!!」


 信頼関係を築き上げた仲間の力をかりて普段の攻撃より何倍も高め、属性を付加させる技がある。
 彼女達は心を合わせ、重火器に力を込めて発射する。
 稲妻を発しながら発射される銃弾がスコールのように降り注がれ、装甲が穴だらけになった。
 大槻のロボットの電気系統に異常が生じ、大槻自身の体も焼き焦げる。
 それでも狂気が止まらない。
 止めを刺すべく義経が大槻の周りの跳び回る。


「この義経の八艘跳び……冥土の駄賃がわりに受け取りな!!」

「貴様だけでも……この悪魔めえええ!!」


 大槻は、義経に向けてアームを振るおうとした。
 だが、それが振るわれる事はなかった。


「終わりです」

「が……」


 義経に気を取られ、隙ができた大槻に九鬼は足元に潜り込む。
 九鬼は、石動から借りた錬気の剣で構えて下から貫き通した。
 忍として急所を貫く技術に長けた九鬼だからできた芸当であった。
 九鬼が剣を引き抜くと大槻のロボットはゆっくりと前に倒れた。


「見事だ、九鬼」

「いや、義経の働きがなければこうは行きませんでした。
 それに、ジェシカさんの技も見事でした」


 主従で褒め称え、仲間の技量も賞賛した九鬼。
 ジェシカは連絡を受けた。


「石動も撃退したみたい。
 オセはまんまと逃げられたみたいだけど」

「しかたありませんね」


 九鬼は頭をかきながら、この一件が終わってほっとしていた。
 ジェシカは最後の大槻の言葉にひっかかっていた。


「大槻って奴は……」

『それについては私が話す』

「あら、隊長さん」

 
 風間が通信してきた。
 傍受しており、一段落した所を見計らったのだろう。


「大槻の家族は悪魔に殺されていたそうだ。
 それ以来、悪魔を超えるマシーンの研究に従事し、悪魔をこの世から駆逐する事を夢見たらしい」

「……」

「だから悪魔を使って対抗する零課を認めたくなかったわけね」

「……今日はご苦労だった。
 良かったら後で飲みなおそう。
 俺の取っておきを出す……石動にも伝えてくれ」





[7357] 第11話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/16 21:26
 魔人警報が発令し、サマナーの危険度が高くなった。
 石動は装備の充実を考えていた。
 サマナーが増えてしまい、科学的な武具はともかく呪的に優れた道具が行き渡り難くなっている。
 ならばどうするか……方法はいくつかある。
 一つ目は、金を物を言わせて相場以上の値段で買う。
 二つ目は、悪魔を倒し悪魔の使っていた武具を使う……人間が扱えない呪いの武具が混ざる事もあるが。
 三つ目は、鍛冶や呪いに長けた悪魔に頼み込むことだ。
 最後は忠義に厚い悪魔をアイテムに変換する『魔晶変化』だ。 
 魔晶変化は邪教の館ではできない……高度な錬金術の知識が必要になるためだ。
 『業魔殿』と呼ばれる場所に住む錬金術師ヴィクトルが有名であるが、彼は転々と住居を変える。
 石動の知る錬金術師はウーリという禁断の人体練成を行った男がいる。
 彼のところでも悪魔合体が行えるために訪れるサマナーは少なくない。
 ただ、石動の腕では扱える悪魔が少ないのだが。
 太平堂でも魔反鏡・物反鏡といった反射させるアイテムが品薄で相場が高くなり8~15倍にまではね上がる。
 幸い呪殺防止の護符は2~3倍(半年で効果が失効)は何があっても売り切れのないように供給するようにしているらしい。
 

「安心を金で買えれば安いものだが」

『なかなか良いものが出回らないな』


 石動達はよく愚痴をこぼしている。
 話を変えるが、『死』についてだ。
 人間である以上死が避けられない。
 だが安倍晴明は泰山府君の力を借りて蘇った、西行法師が反魂の術を用いたという記述がある。
 死に関係する悪魔の力を借りれば蘇ることも可能だろう。
 ただ、魂魄を完全に破壊されたら復活できないし、肉体の損壊が激しければ難易度が上がるだろう。
 『サマリカーム』といった蘇生魔法は昏睡、心臓停止した者に効果的である。
 脳に深刻なダメージを受ければ蘇生が施せないのだ。
 石動も一度死に、そして蘇った。
 その話は筆が進む時に……閑話休題。


『今日はどうするんだ?』

「ダークサマナーの依頼だ。
 悪魔の召還に失敗して暴走した悪魔の始末が今日の仕事だ」

『ドジなやつ』

「港の冷凍庫に立てこもり、食料を食い荒らしているだけらしいがな」


 ダークサマナーからの依頼も勿論存在する。
 組織の行く末に関わる事件でなければ他の依頼と変わりない。
 むろん、依頼が終わって始末しようとする輩がいるが、そうなるとヤタガラス等が本格的にダークサマナー駆逐に乗り出す。
 そんな愚かな選択を選ぶ存在はダークサマナー内で殺される事だろう。
 ダークサマナーの依頼で失態を隠す為の依頼が意外に多い。
 ヤタガラスが出張って解決された日にはダークサマナーの間で恥が広がる勢いである。
 石動が受けた依頼はそういう類の氷山の一角である。
 築地の競りに出てくるような漁師のいでたちをした角刈りにした大男。
 彼がダークサマナーにして今回の依頼主だ。
 このように、兼業でサマナーを行うものは多い。
 世間の目を誤魔化したり、力量が低いためにサマナーだけでは暮らせないという理由が主だ。
 
 
「アンタが俺ん依頼受けた『さもなー』だべか?」

「ああ、そうだ」

「よがっだべさ、さっそく来てくんろ!」

『凄い訛りか?どこの人間だよ』


 港の倉庫まで案内された。
 依頼の詳細を聞いた。


「悪魔しょうがん(召還)したんがいいんじゃが、出したいんよりでっかくなって手がつけらんとよ。
 アレ、貴重品やったからエエ悪魔でるんと思うたが……。
 すまんが、なんちょかしてくれんかね」

「やってみましょう。
 悪魔は一体だけですか?」

「ああ、一体じゃげん」

「では引き受けましょう」


 石動の目ではこの男は精々、餓鬼や魍魎程度が扱えるレベルだと見切った。
 最悪を想定しても自分で処理できる範疇だと判断した。
 ダークサマナーに頼んで倉庫を開けてもらった。
 石動は門が閉まる前に一言述べた。


「では、いってきます」

















『ひあ~、こいつぁ酷い』

「ああ、高級食材がもったいない」


 冷凍庫は幾つもの部屋があり、様々な種類の食材が置かれていた。
 だが、全て食い尽くされていた……一体どれ位の損害だろうかと石動は思いを巡らせる。
 一番奥までたどり着く信じられない光景があった。


『で、でけえ……』

「ありえない……これは一体!?」

「マ……ガツ……ヒぃ……」


 青い肌に細い四肢にふっくらと突き出た腹。
 食い荒らした犯人は餓鬼だ。
 ただ、その大きさが6,7メートルという規格外のサイズでにじみ出る圧力は普通に出てくる餓鬼とは別物であった。
 悪魔も生体マグネタイトや魔力で成長する……だが、種によって限界があり、更なる成長が合体であり、香による成長であり、特定の悪魔が起こる変異である。
 このような餓鬼のまま体も力量も規格外に成長することは『この世界』ではありえないことなのだ。
 この餓鬼……仮に餓鬼王と名をつけよう。
 餓鬼王は石動を見つけた。


「マガツヒよこせえええ!!」

「知らんわ!!」

「気をつけろ!
 パワーが段違いだ!!」


 巨大な腕を振るう餓鬼王。
 石動は後に飛びながら炸裂弾を撒き散らす。


「があああああああ!!
 よぉこぉせえええええ!!」


 マトモに受けて大いに苦しむ餓鬼王。
 どうやら弱点も餓鬼のままのようだ。
 餓鬼王とは接近戦を避け、急所を狙って発砲した。
 徐々に動きが緩慢になった所を見計らって妖刀ニヒルを横から殴りつけるように一閃した。
 手に骨と肉を切る感触がかかりながら餓鬼王の首を刎ねた。
 首を刎ねられ死亡した餓鬼からどす黒い物体が妖刀に吸収された。
 刀から黒い稲妻が奔り、変化の兆候を見せる……。
 黒い物体がなくなった時には餓鬼王の死体はなく、人形のような肉の塊が横たわっている。


『楽に依頼が終わってなによりだ』

「そうだな……コイツはなんなのか持っていって聞いてみるか」


 人形を回収して依頼主の所に戻った。
 依頼主は大いに感謝をして報酬を振り込むことにした。
 石動が、依頼主に人形について話したら説明を始めた。
 人形は錬金術師が生み出した物で悪魔に関わるものであるらしい。
 依頼主は、使い方を知らず、実体化・召還するときの寄り代と判断して使ったようだ。
 他にも喜怒哀楽と示す人形や無数の呪具を同時に用いたそうだ。
 二人は呆れた。
 正しく儀式を行わなければ失敗するに決まっている。
 それだけではなく、術者本人に命の危険が降りかかることになるからだ。
 石動は儀式で悪魔を召還できるプロ(代々木公園にいたバフォメット)の存在を教えたら依頼主は大いに感謝し、儀式に使った呪具と人形を追加報酬として渡した。
 知り合いの錬金術師・ウーリに鑑定してもらおうと石動は思い、早速向かう事になった。













 10・11話のあとがき

 真・女神転生で出てきたマッドさんが登場。
 崩壊が起こらなかったためにまた違った運命をたどったわけです。

 九鬼無双。
 ライドウのヨシツネ見参のまんまだったり、貫通っぽいスキルを持っていたり。
 銀の力をもったヒーローと『風』と呼ばれるサラリーマンっぽい感じが。

 ヨシツネのはっそう跳び、畳返しはソウルハッカーズでの固有技。

 ジェシカの相棒のシルフは忠義技(アパドン王で登場)を使用しました。
 電撃弾という銃のスキルはいまいちだったのでオリジナルなネーミングで(忠義系の技を参考に)。

 虚空斬波はソウルハッカーズ出展、上級の全体物理攻撃。

 オセは益々弱体化したが、逃走。
 強化フラグが立つ。

 ダークサマナー、武具の品揃え、蘇生手段についての捕捉を行いました。
 
 餓鬼王は真3のTRPGででてくる餓鬼の親玉から。
 マジックアイテムの乱用で儀式が変質してしまい、餓鬼王の魂をボルテクス界から召還。
 普通なら失敗してスライム化するところですが、肉人形(次回で正体が判明……バレバレでしょうが)のおかげで現界してしまいました。
 
 ライドウでは悪魔の素のパラメーター(香を使えば別だが)の2倍までしか成長できません。
 ですが、真3の悪魔は天井知らずです(オール40になれば止まりますが)。
 だから悪魔が限界以上に成長できるボルテクス界で生き残った人修羅は異常な強さを誇っているわけです。

  



[7357] 第12話 (追加・修正をしました)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/23 23:17
 朝日を浴びてのんびりとコーヒーを飲む石動。
 

「ふう……」

『いいね~、そういえば最近見ないがアイツ元気に……』

「奴の話をするな、やってきたらどうする!!?」

『いいじゃん、せっきーなら害にならないし』

「存在自体が鬱陶しいんだよ」


 二人は、そう言いながらのんびり構えていた。
 だが、平穏な時は終わりを迎える。
 足音が聞こえてくる。
 焦りを含んだ気配が漂う……依頼人が来たようだ。
 ドアが開くと、堅気ではない和風の服装をした壮年がやってきた。
 石動は敬意を込めて頭を下げた。


「これはこれは佐竹の旦那」

「朝早くからすまん。
 だが、わし達のシノギに関わる事が起こった。
 無礼を承知の上だが……」

「かまいませんよ」

「ありがたい!
 それにしても風格が出てきましたな。
 言葉遣いも変わってきましたし」

「面倒ごとにぶち当たって色々思うところがあってね。
 それより、旦那……どっちがらみだ?」

「両方だ」


 佐竹が説明を開始した。
 要点は次のようになっていた。
 
 佐竹の所属する関東羽黒組の賭博場に流れてきた男がいた。
 男の名前は如月。
 賭博で異常に勝ち続け、不信に思った佐竹は探りを入れた。
 探りを入れさせた女性は、飲んだくれた如月が『俺は幸運の神様がついている』と豪語していた事を佐竹に報告した。
 また、勝ち続けたのに嫉妬したチンピラが如月に改造モデルガンを発砲したら暴発して指を失ったらしい。
 とにかく、やる事なす事幸運に恵まれているのだ。
 また、佐竹の祖父から以前聞いた話で辰巳という男も同様に勝ち続けて周りで神隠しが起こったり、怪異が発生した事を聞いており、佐竹はデビルサマナーである石動に調査を依頼したのだ。
 (後に判明したことだが、佐竹の祖父がいった事件はヤタガラスの中の一級資料の中にある『アパドン王』事件のことであったらしい)
 石動は、依頼を受け、如月を調査することにした。



 



『コイツが如月か?
 なんかひ弱っぽいな』


 石動は、賭博場で如月を発見して様子を見ている。
 如月はモヒカンヘッドで髪を茶色に染め、耳にピアスを幾つもしている。
 細い体に蛇のような目の持ち主であり、強そうには見えない。
 だが、石動は如月を警戒している。


「……」

『(どうした?)』

「(いやな、俺に似ているとようなそれでいて違う空気が漂っているんだよ)」

『(そりゃ他人だからな)』

「(そうじゃない、イタコやシャーマンの類のようで違う感じがすると言っているんだ。
  特殊な力を持っているのかもしれない)」


 賭博は如月が勝ち続け、下卑な笑みを浮かべている。
 賭博場から出て行き、酒場や周りに奢り、やりたい放題であった。
 其れが終わり、路地裏に進んでいく。
 そうすると思わぬ顔を見た。


「(おいおい……)」

『(嬢ちゃん、なんでここにいるんだよ)』


 いつも石動にべったりくっつこうとするモー・ショポーが遊んでいた。
 如月は、舐めるように彼女の体を眺め、彼女に顔に薬を吹き付ける。
 力が抜けて、倒れる彼女を抱える如月。
 モー・ショポーの服を脱がしていく。
 悪魔と人間が恋をすることは歴史上よくある。
 だが、この状況は不味いと石動が介入した。


「おい、そこで何している?」

「何って……ナニさ」

「ぺドフェリアでもかまわんが無理やりするな」

「いいんだよ、俺は特別だからな」



 如月の頭上につぎはぎの人形のように縫い目があるウサギが現れた。
 石動は驚きを顔に出さずに問いただす。


「なんだい、ソレ?」

「知り合いが言っていた話じゃ『ペルソナ』とか言っていたな。
 なんでも人間の心の奥底に存在する『もう一人の自分』、 別人格が具現化した特殊能力とか言っていたな。
 このイナバシロウサギの力で俺は無敵なんだよ」


 石動のガーディアンは『悪魔』という外部の存在を取り込んで能力を発揮し、ペルソナは人間の内部に眠る力を引き出した力である。
 似て非なる能力であるが、脅威であることには変わりはない。
 石動は、如月を無力化しようと突っ込む。
 だが、頭上からゴミが落下してきて石動は如月の側面に回りこもうとした。
 


「ぐ!」

「ああ、わりぃ」


 如月にとって『幸運』にも伸ばした腕が移動していた石動の顔面に当たる。
 続けて石動が殴ろうとするが、如月は、脚を取られてバランスを崩して必殺の突きを避けた。
 一旦、距離をとった石動は、如月の能力に気がついた。
 如月のペルソナは幸運を異常に強化しているのだと。
 たとえ腕力、体力、魔力が欠けていても絶対に負けない幸運がある……今まで会ったことのないタイプの強敵であると認識した。
 石動は一つ名案をひらめき、ラームジェルグに指令を出す。
 如月はガーディアンの存在に驚くが、自分の能力に絶対の自信を持っており、動じなかった。


「おい」

『なにか手があるのか?』

「『全力』を出せ……俺に対する負担も気にするな」

『おいおい!!
 体はともかく災厄が降りかかるぞ!』

「かまわん、むしろ今は『それ』が必要だ!」

『ええい、ままよ!』


 ラームジェルグは、全ての力を出し切る。
 今までの闘いで彼もまた強くなっている。
 そのため、以前より凶悪な気配を漂わせ、石動の魂を蝕む。
 それを見て嘲る如月。


「無駄だぁ!」


 石動が殴りかかろうとした時、周りの気配が変わった。
 

『さぶぅぃ……』

「どわ!!なんじゃこりゃ!!」

「ぐ……まさかコイツまで来たとは」


 二人は頭上から大きな腕で抱きしめられた。
 その腕の主は空中で雲を浮かべ、ぶら下がっていた。
 不健康そうな体つきで、不幸そうなオーラを漂わせる男性だった。


「はなせぇ!」


 何も武道の心得のない如月は振りほどけず、石動のほうはなんとか抜け出せた。
 男性に嫌々ながら話しかけた。


「あー元気だったか、ビンボウガミ」

「だぁありん~!
 我が輩は元気ぞよ~!」

「いや、衆道の趣味はないから」

『あ~あ、来ちまった』


 以前、石動が遭遇した魔人で撃退できたものの、時々付き纏っていた存在だ。
 如月のペルソナが苦しみ、徐々に溶けていく。
 イナバシロウサギの幸運を上回る不運が襲い掛かった。


「さぶぅぃぃ…ツキの無いもの同士あっためあおうよぉぉ」

「はなせえええ!!
 俺は、俺はラッキーガイだあああ!!」

「あー、今日からコイツがオマエのダーリンだ。
 末永く付き合え」

「あぁりがとぉおおお!」

「うわああああ!!!」


 石動のラームジェルグの能力を解放し、石動ごと災厄に巻き込む作戦が成功した。
 自分に付き纏っていた頭痛の種から開放され穏やかな表情になった。
 モー・ショポーを抱きかかえ帰ろうとする石動。


『いいのかよ?』

「もう幸運は通じないし、真相を佐竹の旦那に報告すればこの一件は終わりだ」


 後方にいる二人を無視して帰る三人。
 その後、如月の姿は見たものがいない。
 ヤクザに捕まって殺されたとも、ビンボウガミから開放してくれる呪術師を探しに世界を巡ったとも言われるが、真相は不明である。
 ただ、ビンボウガミは石動の前に二度と現れなかったことだけは確かだ。









 
 如月の一件を報告を終えて、先日手に入れた人形の鑑定結果を聞きにいった。
 人気の少ない場所に鑑定を頼んだ錬金術師ウーリが住んでいる。
 部屋の中は細かく整理され、本や研究サンプルを細かく並べてある。
 また無数の悪魔が培養液の中に浮かんでおり、不気味さを際立たせている。
 ウーリは細い体にとがった耳を持っている……一般にエルフと呼ばれる存在だ。
 不健康そうな体つきと真理の探求に血道を開く狂気に支配された瞳ガ目立つ。
 石動に鑑定品の感想を言った。


「喜怒哀楽の人形……これは悪魔召還で用いる呪具の中で最高の性能がある。
 独鈷も神々が使った一級品だし護符も本物の魔女が作り出した代物だ。
 そして極めつけは……これだ」


 そういって餓鬼王の寄り代になった人形をだした。
 石動もただの人形ではないと感じていたがその価値を知らない。


「ドリーカドモン。
 人工的に作られた悪魔……すなわち造魔を作るための素体だ」

「人工的な悪魔?
 普通の悪魔とどう違うのだ?」

「サマナーに絶対の忠誠をし、実体があるためにMAGを消費しないでもいいという利点がある。
 もちろん、欠点もある。
 新月の時には性能が半減するし、新月の時に合体させると素体に戻る…それに感情が乏しい」

「だが、俺では使いこなせ……」


 石動が諦めの結論を言う前にウーリが制した。
 

「待て、結論が早い。
 造魔ならばお前のような体質でも使いこなせる、なにせ魂が乏しいからな。
 普通なら悪魔を合体させるしかないが……」


 石動の腰の箱を指差した。


「コレを使えば死した悪魔の体を吸収できるだろう?
 剣でなく、ドリーカドモンに注げば強化が出来る。
 通常の合体と異なるからが、私が友人に頼んでプログラムを組んでお前専用の造魔強化プログラムを作ってやる」

「いいのか?」

「かまわんよ。
 なにせ通常とは違う造魔の育成ができるのだ、むしろ報酬を払ってでも協力したいところだ」

 
 楽しげに笑うウーリ。
 石動は、戦場に立てる仲魔を漸く作れそうになった事実を知り、全身に歓喜が湧き、どんな相棒が出来るのかと想像をめぐらせ始める石動だった。




[7357] 第13話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/16 21:56
 朝になった。
 石動か股間に小波のように連続する刺激を感じた。
 ぼんやりした瞳で見たらモー・ショポーが小さな手で石動のズボンを脱がし、そそり立つご立派なモノをしごいている。
 止めようとしたら、もう一つの手で袋を転がす。
 石動は、急激な快感に体が痺れた。
 その様子を嬉しそうに眺めながらモノに顔を近づけ、優しく息を吹きかけるモー・ショポー。
 更なる快感に声をあげてしまう。
 そして少女は、ゆっくりと潤いのある灰色の唇を石動の下の口と口づけを交わそうとした。
 本能的にそれをやられたら自身の女性の価値観が変わりかねないと判断し、快感に耐えながら拳骨を振り下ろす。
 モー・ショポーは頬を膨らませた……昨日の変質者(如月)から毒牙から救った事に対して感謝のつもりのようだ。
 石動は、別に礼はいらないと言ったが益々懐かれてしまった石動であった。 


 朝食をとった後、路地裏を歩いていると悪魔に襲われた。
 襲ってきた妖獣・チンを返り討ちにして、止めを刺そうとした時に命乞いをされた。
 石動はそれを許すが、造魔の素材にした。
 その後、ウーリが箱と造魔を繋ぎ、調整する。
 箱に入った悪魔の記憶から技や術を受け継がせ、能力を増強させる仕組みのようだ。
 無論、全ての技を受け継ぐとは限らないし、能力の増強はかなり能率が悪い。
 それでも石動は喜んでいる。
 サマナーとして自身より数段劣る仲魔しか連れて行けない現状だったのだ。
 それが改善できるのならば安いものだと考えた。
 そして完成した造魔・フリーダー……ウーリと相談して命名した。
 最初はチンをベースにしたために獣型だったが、箱の中に眠る悪魔の記憶を流したら人間型に変わった。
 何が出来るか試したら口から霧を噴出して相手の視界を阻むフォッグブレスと、相手を威嚇し力を封じる雄叫び、攻撃魔法のアギラオとマハブフ、そしてディアラマを覚えていた。
 ウーリは多く敵を倒し記憶を集めていけばスキルを編集できるかもしれないと言った。
 最終的にスキルの一つ一つをスロット化し、場合によってスキルを使い分けられる可能性が出てきた。
 一見、他のサマナーも喜びそうだが、フリーダーのパワーアップは他の悪魔よりはるかに能率が悪く、普通に悪魔合成を行って数を揃えたほうが時間もコストも安上がりにすむ。
 石動は造魔の可能性を知り、早く仕事に行きたくなった。
 それを見ていたモー・ショポーとウーリは石動のことを遠足前の少年のように見えたことだろう。
 それからの石動は、風間からの依頼で零課の職員の訓練と仲魔の調達の為の異界や悪魔の溜まり場の案内を頻繁に受けるようになった……造魔の育成にも繋がるため熱心に仕事をした。
 なお、普通の作成と違うせいか、フリーダーは感情が出来始めている……このことで何が起こるかはまだ解らない。
 だが、ウーリの好奇心を満たしていくことだけは確かだ。


 造魔の育成と同時に行ったことは守護霊探しである。
 ラームジェルグの能力も高いが魔法に弱いという欠点がある。
 その欠点を補える守護霊をスカウトを目指すのだが……。
 交霊の相性もある上に、戦力になる霊を簡単にはスカウトできない。
 以前、石動は、酒飲みの呪術師に取って置きのソーマを奢り、心霊治療が出来る霊を紹介してもらった。
 しかし、今は呪術師は適当に旅立っていき、石動の当てが外れた。
 今しばらくはラームジェルグに頼るしかないだろう。
 フリーダーがいてくれるお陰で焦る必要もない……焦った末に手に負えない存在に手出しして自滅するよりはマシだからだ。








 フリーダーが加わり、いつもの習慣も若干変わった。
 ラームジェルグへの依頼の説明にフリーダーも仲間に加えたのだ。
 会話を交わすことで情緒面の発達を促すことが狙いだ。
 また、MAGを使わない為、家事や経理の類の一部をフリーダーが担当するようになった。
 ジェシカはその事聞いて造魔の素体を探すようになったが、ドリーカドモンは貴重なものであり、簡単には見つからないだろう。
 

『それで、今回の依頼は?』

「小学生のサマナー見習い、我印君(十歳)からの依頼です。
 {最近夜な夜な学校の人体模型が動いているそうです。
  皆が不安になっているから調査をお願いします。
  べ、別に夜の学校がこわいんじゃないからな!
  門限があってばーちゃんがうるさいんだ!}
 とのことです」

「件の学園長とも懇意にしているからな。
 俺がいっちょ調べてみる……学園長も噂を気にし始めたから報酬の心配もないし」

『まあ小学生だと金額は多く出せないからな』

「報酬は仲魔が拾ってきた呪具だそうです。
 悪魔が興味をもつようなモノならば期待できるかもしれません」

「そういうことだ。
 明日から教育実習生として聖ナンディ学園に潜入する事に決まった。
 フリーダー、すまないが明日に備えて美味いモノを頼む」

「了解しました」


 石動の命令に従って食事の支度を始めた。
 石動は、教師として潜入するのは初めてであり、失敗のないように書類や教科書を読み始めた。






 12・13話のあとがき。


 ビンボウガミ参上、でも即退場。

 佐竹・関東黒羽組はライドウから出展。
 佐竹(祖父)はライドウの時代では若頭で皆に慕われる兄貴。
 なにげに素手でヨミクグツをKOするという猛者である。
 
 如月の名前はデビルサマナーのごーつく占い士の如月から取りました。
 ダークサマナーならぬダークペルソナ使い?
 イナバシロウサギの使い手であり、異常な幸運の持ち主。
 アパドン王の辰巳よりはマシな処遇であるが。
 
 喜怒哀楽の人形は真2で出てきた人形を思い出してください。

 ウーリはアトラスのBUSIN0の錬金術師ウーリ・エルンストから。

 造魔フリーダーもBUSIN0のオートマタから。
 人工物でなおかつアトラスがらみで……と考えた末の選択。

 モー・ショポーフラグが立った?
 成功したらロリコンの称号がつくのだろうか?

 我印君……ガインくん。

 



[7357] 第14話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/17 19:57

「今日から二週間お世話になる石動です。
 担当は数学です。
 皆さん、よろしくお願いします」


 黒のスーツを着こなし、丁寧な挨拶をした石動。
 聖ナンディ学園は小学校から高校までエスカレーター式で進むマンモス校である。
 石動が入り込んだのは小等部の隣の高等部だ。
 依頼主の我印にはノッカーが連絡をした。
 三白眼で強面である石動にたいして興味半分、怖さ半分といった様子であった。
 昼休みになり食堂へ行こうとしたらクラスの女子に声をかけられた。


「石動先生!!」

「ん……君は、えーと…」

「早乙女です、早乙女 さくらです」


 活発そうな女子高校生でリボンで髪をまとめてポニーテールにしている。
 資料によると、剣道4段で実家は古武術の道場をしている。
 家族構成は祖父母に両親、姉と妹が一人ずつ。
 成績は中の上で生徒会に書記を務める。
 活動的で男女ともに人気がある美少女だ。
 

「いや、済まない早乙女。
 まだ名前を覚え切れなかった」

「これからお食事ですか?」

「ああ、そうだが?」

「よかったらご一緒しませんか?
 広いとはいっても同席しないと座りにくいですし」

「ああ、ならお言葉に甘えよう」

「よかった。
 みんな~石動先生と一緒にご飯食べられるよ!」


 クラスの娘達も一緒のようであった。
 石動は食堂で日替わり定食を頼んだ。
 早乙女たちは石動のことや、進路について色々聞いてきた。
 それを石動は、一つ一つ丁寧に答えた。
 早乙女が質問を終えて石動に言った。


「石動先生って隙がないですね」

「ん、そうかな?」

「そうですよ、毅然としているというか。
 他の男子に比べて動じないというか」

「年長だからな」


 石動ははぐらかした。
 その後とりとめのない話をして昼休みが終わった。












「マスター、これより調査を開始します」

「フリーダー、頼りにしているぞ」

『警備のほうは学園長のほうから誤魔化しているからいいがな』


 夜の初等部の校舎にたどり着く三人。
 妖しい気配が漂っている……。
 その気配を追っていくと……。


「無数の悪魔を確認……カテゴリーは『怪異』だと推測」

『寄り合いになっているのか?』

「満月じゃないから話し合いはできるな」


 人体模型に、おかっぱの少女、紫色の鏡に、両足のない少女の霊等……都市伝説・怪談で語られる悪魔たちが集まっていた。
 

「なんのようですか!
 わたしはこれでもいそがしいのできみたちとはなしあうひまなどないのです……すわっ!」


 人体模型はいきなり話を打ち切ろうとした。
 それを引き止めたのはおかっぱの少女……トイレの花子さんだった。


「まってよ、そんなことしたら追い出されちゃうよ!
 お兄さん、サマナーだよね?」

「ああ」

「よかったー。
 ここは居心地が良くて……迷惑にならないから居ても良い?」

「あー、学園長に会わせるからそこで交渉してくれ。
 うまくいかないなら適当な滞在場所を探してやる」


 石動は戦闘にならずにすぐに依頼が達成できそうなので安心した。
 だが……。


「え!?
 何……って石動先生!!」


 石動は声の主を探した。
 声の主は、早乙女だった……石動はとりあえず尋ねた。


「あーなんで初等部に?」

「生徒会室で仕事をしたまま眠ってしまって……そしたら大きな音がしたのでつい……」

「そうだな……このことは見なかったことにしておけ。
 この面倒事はもうすぐ終わるし、どちらにしても害にならんように取り計らう」

「それはいいのですが……この人?たちは?」

「トイレの花子さんと愉快な仲間達だ。
 怪談で出てくるだろ?
 そういう存在だ」


 サマナーの仕事をしていてオカルトに関わらない人間が現場にやってくる事は稀にある。
 ダークサマナーであれば殺害をも辞さない。
 だが、普通ならば2通りに分かれる。
 暗示や魔法で記憶を消すか、事情を説明するか……である。
 悪魔の存在は、警察ではキャリアなら出世すれば必ず解るし、気の利くものならノンキャリアでも存在を知ることができる。
 自衛隊では適正のある者を集めて訓練生から教え、鍛えることになる。
 また悪魔用の装備を整える場所が数多く存在しており、何かの弾みでこの道に入る事がある。
 悪魔がらみの事件に巻き込まれる人間は大抵成す術なく悪魔に喰われる。
 だが、稀に稀有な才覚を発揮する者もいる、まるで運命か、神に選ばれたのかの如く。
 今回は普通に口止めすれば問題ないと石動は判断したようだが。
 学園長と話し合い、羽目を外さないでいて時々学校の清掃をするのならば滞在許可を与えられることに決まりこの事件は集結した。
 学園長から礼金を貰い、依頼主の我印から報酬の呪具・ヒランヤを貰いうけた。
 教育実習も問題なく終了し、石動はいつもの仕事に戻った。
 時々、早乙女が事務所に訪れるようになり、モー・ショボーが膨れっ面になっている。
 早乙女がこの道を踏み込むのか、退くのか……それはまだ解らない。



[7357] 第15話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/18 02:57
「はあはあ……」


 少年は逃げる、圧倒的な恐怖から……本能的に敵わない存在から。
 無数の死体が横たわっている。
 無数の矢に貫かれた者や、炎で焼き払われたもの。
 皆、少年が知る者たちばかりだ。


「なんで……!!」


 必死に走っていた少年は脚に灼熱感を感じながら倒れる。
 大腿部に矢が突き刺さっており、もう走ることが出来ない。


 馬のいななきとともにこの惨劇を齎した存在が現れる。
 その存在は人間ではなかった。
 白い白馬にの乗った白骨の死神。
 黒いローブに白金の兜をかぶり、白い弓矢を構えている。
 地の底からの響くような低い声で少年に語りかける。


「新月ニ魔人ト出会ウ不運、イヤ幸運カ……」


 死神は弓を引き絞り、光り輝く矢を放った。
 真っ直ぐに飛び、少年の心臓を貫き……
















「……先生………石動先生!!」

「…早乙女か」

「うなされてましたよ?」

「少し……な」


 石動の全身に汗が噴出していた。
 『石動』になる前の記憶……未だ癒される事のない傷。
 だが、早乙女に再び話しかけるときにはそれを心の奥底にしまう。


「俺はもう先生じゃない」

「そんな~!
 探偵のノウハウを教えてくれるって約束したじゃないですか!!」

「そうだったな」
 
 
 早乙女が石動の家にやってくるようになったのはそのためだった。
 サマナーにならないにしても探偵になれば悪魔絡みの依頼が運ばれる危険もある。
 フリーダーが来て余裕が出始めた石動はきまぐれで探偵のノウハウを教える事にしたのだ。
 話をしている二人に割ってはいる存在がいた。


「せっきー!」

「……つっこまない、つっこまないぞ」

「モーちゃん、その格好は?」


 モー・ショボーがいつものモンゴル風の衣装ではなく、メイド服を着ていた。
 似合ってはいるが、子供(外見が)がメイドの格好をするのは想像がついていない早乙女は驚いている。


「ヴィクトルから貰った~」

「……どんな趣味しているのよ」

「そういえば錬金術師でいたような…」

「これでせっきーの正妻の座を不動のものにするの!
 それにしてもヴィクトル……今落ち着いていたけど……あの時のヴィクトルは、『若さゆえの過ち』って奴ね!!」


 可愛らしいが、彼女の正体は誘惑した男の脳を吸い取る悪魔である。
 そのつもりはないらしいが。
 早乙女は一応問いただす。


「えーとこの国は重婚できないから」

「さくらとフリーダーは内縁の妻!」

「先生とはそういうのじゃないから!」


 昔はラームジェルグしか居なかったが今ではすっかり姦しい。
 良いことか悪い事なのか……。
 少なくとも退屈はしないと石動は思った。











 その日の夜、ニュクスの店で九鬼と飲む石動。
 

「そうですか……石動君も漸く実力に見合う仲魔に出会いましたか」

「ああ……それより九鬼の旦那も少し見ない間に変わったのか?」

「実は四鬼の一角を味方に出来ました」

「四鬼だと!?
 あの……藤原千方の四鬼(ふじわらのちかたのよんき)」

「金鬼を打ち倒し、召還できるようになりました」


 藤原千方の四鬼。
 平安の世、時の豪族「藤原千方」は、四人の鬼を従えていた。
 どんな武器も弾き返してしまう堅い体を持つ金鬼(きんき)、強風を繰り出して敵を吹き飛ばす風鬼(ふうき)、如何なる場所でも洪水を起こして敵を溺れさせる水鬼(すいき)、そして気配を消して敵に奇襲をかける隠形鬼。
 藤原千方は、四鬼を使い朝廷に反乱を起こした。
 しかし藤原千方を討伐しに来た紀朝雄(きのともお)の和歌により、四鬼は退散させられ、藤原千方は滅ぼされた。
 歴史に残る鬼の一角を使役できる技量の持ち主は類稀なる資質の持ち主である。
 石動が驚くのも無理もない。

 
「私にとって大先輩を顎で使うのは恐縮ですが」


 四鬼は忍者の原型である。
 伊賀忍者である九鬼にとって大先輩であるのだ。


「石動君のお陰ですよ」

「いや、四鬼の眠る場所を知っている奴を教えただけだ。
 アイツに酒でも送れば良い」

「もちろん、彼にも感謝しています。
 そういえば彼は……」

「今頃適当に流れているだろうさ。
 ソーマでも……だが飲み飽きているからバーボンやウォッカとか外国の酒でも飲ませれば良いんじゃないか?」

「そうですね。
 では仕事の話をしますかね、ニュクスさん」

「助っ人が必要と聞いていたがニュクスが依頼主か?」


 今までなかったことに驚く石動。
 ニュクスが依頼の説明を行う。


「ここのお得意さんにちょいと波に乗っている実業家がいてね。
 所有物件の中にあるW県のウォーターパーク『Una abeja de la reina』(女王蜂)で厄介事があったみたいなのよ」

「なぜスペイン語なのだろうか?」

「それは解らないけど。
 報酬に加えて施設を利用できるらしいから貴方達に依頼を回したのよ」

「妻がそろそろ6ヶ月になりますから……運動には丁度良いので依頼を受けます。
 石動君ところの新しいお弟子さんやモー・ショボーさんも連れて行ったらどうですか?」

「……フリーダーの教育の足しになるから付き合うさ」

「素直じゃないのね、フフフ」


 ニュクスが石動の返事を微笑ましく見ている。
 こうして、新幹線に乗ってW県まで遠出する事になった。







 14、15話のあとがき


フリーダーは人型(女性)造魔です。

ムラサキカガミ・カシマレイコ・花子さん等の都市伝説の妖怪がでました……が戦闘にならず。

早乙女 さくらは、RONDEの登場人物『早乙女 桜子』から取りました。

サマナーがばれた時の対処っ書かれる事が少ないと思います。
メガテン主人公は関わったらいつの間にか第一線クラスの実力者になるし。
ファントムソサエティのサマナーの場合なら口封じに殺すでしょうがね。



石動の過去の一部が明らかに。
デビルサマナーの主人公葛葉キョウジ(新)と同じように死んで生き返ったタイプです。
襲った悪魔は……バレバレですね。

藤原千方の四鬼は真3の中ボス達で最強クラスの妖鬼でした。
オンギョウキは敵だと面倒ですが味方だと弱い分際でレベル81くらいにならないと使えないというトホホな悪魔。

酒飲みの『彼』もメガテンファンならすぐにピンとくるでしょうね。

『Una abeja de la reina』(女王蜂)。
蜂のボス、ボス……首領。
蜂の首領……蜂首領。
蜂首領蜂首領蜂首領……首領蜂(どんぱち)。
……お粗末でした。



[7357] 第16話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/19 21:58
 
 W県のウォーターパーク『Una abeja de la reina』。
 夜の人工海岸の砂浜に金髪の美女が二人。
 一人はドレスを着て、もう一人はジーパンに長袖のシャツを着た女性でアタッシュケースを持っている。
 どちらも場違いな格好だ。
 二人の美女に引かれてくる男が数十人。
 だが……寄ってきたのは人間ではない。
 正確に言えば『人間だった存在』である。
 アロハシャツを着たゾンビが美女に声をかける。


『へい、彼女!
 俺をお茶しない!?』

「お断りします」

「口説き文句が陳腐、13点」


 冷たくあしらわれる。
 何度もアタックするが撃沈する男ども。
 男たちは泣きながら助けを呼んだ。


『『『『『『ドザエもーん!』』』』』』


 水面が揺れ、一人の水死体……ドザエモンが現れた。
 読者の中で水死体を見たことがないものがいるかもしれないので説明する。
 長い間水中にある死体は水分を吸収し、体積が増大する。
 まるで相撲取りのように。
 ドザエモンとは相撲取りの名前らしい……。


『ボク、ドザエもん』

『ドザエもーん!』

『ドザエもーん、お姉ちゃんを口説けないよー!』

『たく、しょうがないなあ。
 浮気者の露~!!』


 ドザエモンは腹のポケットからガラスの瓶を取り出した。
 なぜか閃光と珍妙な効果音が出てきた。
 透明な液体には魔力が篭っている。


『これを振り掛ければ最初に見たものに好意を…』

「強引な手段は感心しませんね」


 落ち着いた男性の声がした瞬間、瓶は手裏剣で砕かれてしまう。
 それをみたゾンビたちは悲鳴をあげた。
 その隙に大理石のように滑らかで美しい肌を持つ人形のような女性……フリーダーが手首からブレードを展開する。
 ゾンビの群れをすり抜けドザエモンの胴体を切り裂く。


「攻撃が命中。
 敵、沈黙に至らず」

『ぐぎゃああああ!!』

「マスター、止めを」


 そう言ってフリーダーは高く跳躍する。
 動きやすい黒い戦闘服を着た造魔の主……石動がナイフを抜く。
 漆黒の刀身を展開し、一振りするとスプーン状の巨大な斧に変化した。
 周りに居るゾンビごとドザエモンに横殴りで振りぬく。
 断末魔を挙げる暇もなくドザエモンと巻き込まれたゾンビは砕かれ、消滅した。


『『『『『ド、ドザエもーん!!』』』』』

「正直、お前達のコントにあきれ果てたが」

「ま、同感ね」

「ジェシカ、この汚らしい存在に我慢が出来ません。
 消毒をお願いします、タル・カジャ!」


 石動はゾンビどもにあきれ果てていた。
 ドレスの女性……リャナンシーは皆の攻撃力を強化させた。
 リャナンシーの主、ジェシカはアタッシュケースから銃器を取り出した。


「さあ、汚物は消毒よ!!」


 逃げようとするゾンビは尽く手裏剣が突き刺さり、皆射殺(既に死亡しているが)された。












 ゾンビたちを倒した翌日。
 施設のメンテナンスと霊的なアフターケアのために一般の人間が入れない状態になった。
 つまり、石動達にとっては貸しきり状態になった。


「ああ、貸切って最高!!」
   
「わーい」

「静かで良いですわ」

 
 ジェシカは大胆なビキニで着ており、大きく背伸びをした。
 シルフは南国風味のウォーターパークを飛び回り、リャナンシーは静かに紅茶を飲んでいる。
 九鬼は、パレオを着たショートカットの奥さんと一緒に泳いでいる。
 眼鏡をかけて知的さと可愛らしさを備えた美女で美しいボディラインで大きな双丘が目立つ。
 妊娠していなければ人妻とは思えないほどに。
 ちなみに、学生結婚で、まだ妊娠したので休学中だそうだ。


「どうですか、トモコさん?」

「うん、楽しい……ありがとう英輔さん!
 お兄ちゃんも来れたらいいのに」

「義兄さんは、瞳さんと旅行中ですからね」

「英輔さんの知り合いって……変わっている人ばかりね」

「ええ、まあ」


 残念そうにしていたが、すぐに泳ぎに没頭する。
 一方、石動達は、流れるプールで泳いでいた。
 早乙女は競泳用の水着を着ている。
 彼女の凛々しく、美しい顔に加えて、恵まれたボディラインは……まるでモデルのようであった。
 早乙女が石動に聞いてきた。


「トモコさんって、九鬼さんがサマナーって知っているんだ」

「ああ……大学に進学した時にダークサマナーの事件に巻き込まれたのが出会ったきっかけだそうだ。
 それと、トモコさんの兄もサマナーだそうな」

「ええ!?」

「なんでも学生時代の時に大きな事件に巻き込まれたらしくて……ああ、今ではプログラマー兼サマナーをしているそうだが。
 トモコさんはなんの心得もないけど」
 
「色々あるんですね」


 フリーダーは初めてのプールに恐る恐る水を触っていた。
 今は慣れ始めて流れに逆らって泳いでいた。
 モー・ショボーはシルキーのアドバイスでスクール水着を着ていた。
 ラームジェルグは大笑いしていたが、石動はシルキーには帰ったらアイアンクロウをかける事を決意したそうだ。
 モー・ショボーが石動に抱きつくが、中の良い兄妹にしか見えないだろう。
 そういわれたら膨れっ面になるから石動は口には出さないが。


「ねーねー泳ごうよ!」

「鳥でも泳げるのか?」

『モンゴルって内陸だよね?』


 二人の心配は杞憂に終わる……一応泳げるようだ。
 石動とラームジェルグは、モー・ショボー達とのひと時を楽しんだ。











 その日の夜……テーマパークの高級ホテル(依頼主の所有物件)での事。
 一人石動が唸っていた。


「うーん」

『どうした?』

「いやな、下で聞いたんだが……最近この辺一体で正体不明の食い逃げ犯がいるらしい。
 そして、深夜の暴走族が酷いらしい」


 ちなみに部屋割りは九鬼夫婦、ジェシカ&フリーダー、モー・ショボー&早乙女。
 ジェシカはフリーダーを気に入っており、モー・ショボーは早乙女をライバルと認定しているが、仲は良い。
 閑話休題。
 ラームジェルグが石動の心配している様子を気にする。


『気にしすぎるとはげるぞ』

「それがシルクハットをした口だけのお化けっぽい奴が目撃情報なんだよ、食い逃げ犯の」

『!?』

「それに、暴走族の方も他の暴走族を叩き殺しながら暴走しているらしいからな」

『まさか……!?』

「前者はほぼ間違いなく、後者はそうでないかもしれない……そうであってほしいが……。
 おい……」

『ああ、コレは不味いぜ』


 ホテルの空気が変わった……落ち着ける場所から怪物の胃袋の中に変わったかのような印象に。
 濃密な悪魔の気配はただの悪魔が来たわけではないことの証明だ。
 当然、他のサマナーも気がつくだろう。
 石動は急いで武装し、携帯で早乙女とモー・ショボーには部屋から出ないように厳命しておいた。


『昨日のようにいくと思うな、しっかりやりな』

「ああ……魔人がやってきたんだからな」



[7357] 第17話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/18 23:58


 トモコと早乙女とモー・ショボーを一部屋にまとめ封魔の鈴とテトラジャの石、それに無数の護符を使い結界を張った。 
 九鬼は、手甲型COMPを起動させて召還した。
 金色の鬼と、若き侍こと義経と、修験者の格好をした鴉人間が現れた。
 石動は初めて見る鬼が誰か見当をつけた。


「噂の四鬼の一角、金鬼だな?」

「おおよ!
 お前が石動か?
 御頭がお前のことを気に入っているらしいから、お前もダチだ!」

「こら、金鬼!
 殿と大殿の前でみっともない真似をするな!
 石動殿、すいませぬ!!」

「いや、いいよ」


 大げさに金鬼を叱る鴉人間。
 彼は、鴉天狗。
 九鬼がサマナーとして一人立ちしたときからの付き合いで、修行を積み、木っ端天狗から鴉天狗になった悪魔である。
 義経を殿、九鬼を大殿と呼び、忠誠を誓っている。
 フリーダーは、彼らの事に関心を示していない。
 金鬼が声をかける。


「ん……式神、いや南蛮渡来の『ほむんくるす』か?」

「金鬼さま、私はフリーダー。
 造物主ウーリから生み出された造魔です。
 マスターのご友人、九鬼様の仲魔である貴方とは長い付き合いになると推測されます」


 一見、無表情だが、優雅な動作で挨拶をするフリーダー。
 彼女の挨拶を見て金鬼は大いに気に入ったようだ。


「おお、無愛想かと思ったが良く身見りゃ美人だな。
 よろしく頼むぜ」

「金鬼、女性に対して…」

「九鬼よ、この只ならぬ気配は……魔人か?」


 説教をする鴉天狗を放置して義経が尋ねた。
 九鬼は頷く。
 手甲から出たレーダーを覗きながら続けた。
 

「ええ……恐らく。
 二階ロビーと、地下の食料庫に出てきているようです。
 ジェシカは地下の方へ行ったようです」

「ならば戦力をどう差し向ける?」

 
 義経の質問に答えたのは石動だった。


「俺とフリーダーは二階のほうだ……恐らく奴だからな。
 借りを返す……できれば鴉天狗を貸してくれ」

「金鬼と鴉天狗、石動君の力になってくれ」

「おうとも!」

「ははっ!!」

「大丈夫なのか?」

「ジェシカさんの所には義経と私が行けば事足りるでしょうし」


 方針を決め、二手に別れた。






















「きゅきゅきゅきゅ」

「お前のせいでルームサービスのデラックスパフェが食べられなかったじゃない!!」


 派手なスーツを着た口だけのお化けが笑いながら最高級神戸牛を平らげた。
 食料庫を襲った魔人は、現在警報に出ていた魔人・ゴーストQだ。
 シルフとリャナンシー、オボログルマはジェシカの只ならぬ怒気に彼女に傍から離れていた。
 背中からショットガンを取り出し、乱射する。
 食べるのに夢中になった魔人に当然当たった。


「ぎゅ!?」

「ブチマケロ!」

「(ぶちまけたら大惨事じゃないかな……?)」


 スラッグ弾を直撃した魔人。
 だが、怒りの逆襲をしようと口を大きく開ける。
 ジェシカの体が大きな虚脱感で倒れそうになった。


「コバラスキマロ~!!!」


 恐らく、MAGを吸い取ろうとしているのだろう。
 COMPに貯蔵された分と、ジャシカ自身のMAGを。
 だが、本格的に吸う前にクナイが突き刺さる。


「きゅ!?」

「ザンダイン!!」


 それを見たシルフが魔法を飛ばす。
 風が吹き荒れ、ゴーストQにめり込む。
 止めとばかりにショットガンを乱射するジェシカ。
 魔人は、一斉攻撃を受けてあっけなく砕け散った。
 ジェシカはクナイの飛んだ場所に視線を向けて、声をかけた。


「ありがとう、九鬼さん」

「油断しないでください!」


 ジェシカに警告を呼ぶ九鬼。
 食料庫の奥からゴーストQが現れた。
 ジェシカは驚きの声を上げた。


「今倒したのは分身……そして分身がさらに分身を呼べるのです」

「本体は?」

「この世からは手が出せません。
 ですから分身を皆倒しに行くしかありません。
 幸い100も200も出るわけではありません。
 精々のこり5,6体程度でしょうか」

「言ってくれるわね」


 そう言って銃を構えるジェシカ。
 九鬼も脇差を抜いた。
 魔人は大きな叫び声を挙げながら消化液を飛ばし始めた。































 一方、ロビーの方では。
 十二人の首なしライダーが手当たり次第に破壊行為をしている。
 奥には地獄のライダー、ヘルズエンジェルが控えていた。
 石動達がやってきたのを見て魔人は哂う。


「来たか……約束どおり連れて行ってやるぜ」

「断る」

「ほう、魔人か」


 金鬼は魔人の存在を知っているようだ。
 石動はナイフを刀に展開した。
 フリーダーも刃を出した。
 それを見た首なしライダーが鉄パイプを構える。


「前菜代わりだ!!」

「な!?」


 石動の妖刀が突然歯車状の2枚の戦輪に変化し、2枚とも投げつけた。
 思わぬ攻撃に数体のライダーの胸部を切り裂く。
 避けた敵だが、体勢が大きく崩れている。
 そこにフリーダーのブレードでバイクごと切り裂き、鴉天狗が真言を唱えた!

 『ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!』
  
 帝釈天の真言を唱え『破魔の雷光』で打ち倒し、また六角棍で打ちのめす。
 生き残った首なしライダーが金鬼に向かって鉄パイプで殴りつけるが、金鬼はどんな武器も弾き返してしまう堅い体の持ち主。
 ただの武器では傷一つつくこともない。
 つまらなそうに首なしライダーの残りを棍棒でなぎ払った。
 それを拍手で讃えるヘルズエンジェル。


「以前より出来るようになったな。
 前にいた女はどうした?」

「地下の鼠を退治にな。
 次は勝たせてもらう!!」


 石動も以前より強くなった……だが、ヘルズエンジェルも力を増している。
 悪魔を殺し、MAGを奪い取ったお陰だろう。
 ヘルズエンジェルはアクセルを吹かせて衝撃波を飛ばす。
 それに対して鴉天狗が石動達の前に仁王立ちし、印を結ぶ。
 風の壁が現れ、衝撃波を吸収した。


「我こそは鴉天狗。
 大殿の命により、石動殿に助太刀いたす!!」

「ふん、大げさすぎる奴め」


 憎まれ口を叩きながらも鴉天狗の実力を認めた金鬼だった。

















 おまけ


 昼のプールでの事。
 モー・ショボーが自慢げに早乙女にいった。


「私はぱわーあっぷしたの!!」

「どういうこと?」

「アダルトな私に変身して、せっきーをメロメロにするの!」


 そういって閃光を発すると……確かに大きくなったのだ。








 胸だけ。










「……」

「……えーと」


 望む成長でなかった為、沈黙が包み込んだ。
 しばらくして、一筋の涙がモー・ショボーからこぼれた。
 フリーダーがフォローのつもりか、こういった。


「胸だけはマスターの好みになっています。
 少女に対して倒錯的な性癖になるように誘導すればよいと思います」

「うえええええええん!!!!」

「あー……フリーダー、それは言っちゃダメ」


 結局、早乙女が必死に慰める事になった。
 



[7357] 第18話 (文章追加)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/19 19:04
 3体のゴーストQの残骸が転がっている。
 だが、まだ4体のゴーストQが九鬼達を喰らわんと襲い掛かる
 魔人のおぞましき気配に当てられてリャナンシーやシルフは恐怖感を感じ、ジェシカも嫌悪感を隠さない。
 だが、九鬼と義経は果敢に攻める。
 義経は軽快に跳びまわって魔人達を翻弄する。



「きゅきゅ!?」

「きゅ~!!!」


 漆黒のブレスを吐こうとする魔人の口を塞ぐように義経の脚がめり込む。
 魔人を踏み台に次の魔人へと飛び移る義経の八艘跳びは見事なものであった。
 九鬼は追い討ちをかけるように脇差で切り裂く。
 それでも分身とはいえ、魔人。
 恐るべき生命力で反撃に移ろうとする!!


「きゅきゅう!!」

「そんなに腹ペコならタップリ喰わせてやるわよ、鉛弾をね!!」

「ぎゅ!!!!!????」


 ジェシカは、魔人の口の中にマシンガンを突っ込み、弾切れになるまで撃ち続けた。
 頭が石榴のように弾け、動く事はない。
 ジェシカはリロードして次の相手にお見舞いしようとするが……。


「ジェシカさん、終わりました」

「ふん……現世での奴の分身ならばこの程度か」


 九鬼達が止めをさしていた。
 ジェシカはほっと一息いれた後、九鬼に聞いてきた。


「石動くんは?」

「上ですよ。
 金鬼と鴉天狗とフリーダーがついています。
 ですが……相手も強いかもしれませんから援護に行きましょう」

「そうね……」




















 霧の中、物が砕ける音がする。 
 ヘルズエンジェルがアクセルと吹かせるたびに首無しライダーが召還される。
 さらに、炎を噴出して攻撃を行う。


「ぐ…」

「あちぃ!」

「皆さん、回復をします!!
 メディア!」


 鴉天狗が回復魔法でダメージを癒す。
 石動は反撃で召還された悪魔ごとなぎ払う。


「虚空斬波!!」

「うぎゃあああ!!」

「ぐ……やってくれる!!」

「マスター、回復します。
 ディアラマ」


 生命力を力に変換した一撃で首無しライダーを粉砕し、ヘルズエンジェルに手傷を負わせる。
 すかさず回復魔法をかけるフリーダー。
 さらに追い討ちをかけようとする金鬼。
 だが、ヘルズエンジェルが回転をはじめてフリーダーが生み出した霧を吹き飛ばす。
 さらにその勢いを利用して金鬼に燃え盛る車輪を顔面に叩き込む。
 

「ぐ……、手前ぇ!!」

「が……!!」


 顔面に一撃を喰らいながら反撃の拳を魔人の車体に叩き込む。
 鴉天狗が援護を続ける。


「ラクンダ!」


 魔人の纏うオーラが薄くなり、防御力が弱体化した。
 すかさず、フリーダーと石動が同時に攻撃にかかる。
 互いに信頼したもの同士の連携した一撃は真空の刃となり、魔人を切り裂く。


「が……!!
 いいぜぇ……このまま突っ走るぜ…!!」

「逝くのはお前だけだ!!」


 一旦離れ、加速をつけて突撃するヘルズエンジェル。
 その一撃はスピードを愛する彼自身の魂を込めた一撃であった。
 

「な……」

「ワリィが手前の攻撃は石動の読みどおりだったぜ!」


 金鬼が吼える。
 金鬼と鴉天狗、フリーダーが密集し、一つの壁となって攻撃を受け止めていた。
 ヘルズエンジェルは驚愕の声をあげていた。


「その一撃を止めれば大きな隙が出来る!!」

「マスター、今です」


 鴉天狗とフリーダーの声を受けて金鬼の肩を足場に高々と跳躍し、刀から斧へと変形させた。
 渾身の力を込めてヘルズエンジェルに斧を叩き込んだ。
 交通事故にあったかのようにバイクごと吹き飛んだ。
 バイクは大破し、魔人自身も全身に亀裂が走っていた。
 自嘲気味な笑いをするヘルズエンジェル。
 石動はそれを見下ろしている。


「……俺の勝ちだ」

「……その……ようだな。
 たどりついたぜぇ……スピードの彼方へ……」


 そういって魔人の体内に篭ったマグネタイトが噴出し、ヘルズエンジェルが粉々になった。
 鴉天狗は我が事のように喜びの声をあげる。


「石動殿、お見事でござった!!
 石動どのの采配はまことに見事で、大殿に勝るとも劣らず!!
 まっことに……」

「お前さん、やるな!
 まあ相手の手の内を知っているからってのもあるが、差し引いてもたいしたもんだ!!」

 
 二体から賞賛を受けた石動。
 フリーダーも一瞬微笑んでいるように見えたが……。
 同時期、関東でマタドールが撃破されて魔人警報は解除された。
 また、通常の生活が始まるのだろう。








 旅行から石動とフリーダーが事務所に帰ると薄汚い衣をきた髭を生やした中年がいた。


「侵入者……」

「フリーダー、良い。
 客だ……久しぶりだ役小角」

「かってにやらせてもらっているぞ」

 
 そういって石動が冷蔵庫に入れているアルコール類を飲んでいる男。
 役小角。
 飛鳥時代から奈良時代の呪術者で修験道の開祖である。
 彼に関する記述はとても多い。
 続日本紀では、小角が鬼神を使役して水を汲み薪を採らせていると噂した。
 命令に従わないときには呪で鬼神を縛る程の力量を持っていたが、弟子の韓国連広足が小角が人々を言葉で惑わしていると讒言したため、小角は遠流になった。
 また、 日本霊異記では、仏法を厚くうやまった優婆塞(僧ではない在家の信者)とされている。
 若くして雲に乗って仙人と遊び、孔雀王呪経の呪法を修め、鬼神を自在に操った。
 ある日、鬼神に命じて大和国の金剛山と葛木山の間に橋をかけようとした。
 その時、葛木山の神である一言主が人に乗り移って文武天皇に役優婆塞の謀反を讒言した。
 小角は天皇の使いには捕らえられなかったが、母を人質にとられるとおとなしく捕らえられた。
 その結果伊豆島に流されたが、昼だけ伊豆におり、夜には富士山に行って修行した。
 大宝元年(701年)正月、罪を赦されて帰り、仙人になった。
 前鬼、後鬼という鬼を用いる事で有名である。
 石動はこの偉大な呪術師と顔を良くあわせる……石動の数奇な運命、そして守護者使いの能力に小角が興味を示したのだろう。


「で、わざわざ来るとは、用があって来たのだろう?
 九鬼の旦那が礼を言いたいのに姿を消したままとぼやいていたぞ」

「まあな。
 それよりも、魔人を倒したそうだな、たいしたものだ。
 造魔を手に入れた祝いに進呈したいものがある。
 おい、ヒランヤを貸せ」


 黙って渡す石動。
 指を噛み、血で凡字を書き込む。


「これで少しは守りが強くなろう。
 それと……」


 小角は、懐から人型の符を取り出して息を吹きかけた。
 すると、小角そっくりの人間に変わった。
 だが、希薄で、透けて見える。


「これは?」

「ワシの分身だ。
 コイツを守護霊に使え……補助術や細々とした回復術を仕込んでおいた」

『そういうことだ……だが、知恵は貸さんぞ。
 お前とて読みかけの物語の素筋を横から語られては迷惑であろう?』

「……好意半分、コイツから俗世を覗く寸法か?」

「……ばれたか」


 イタズラのばれた少年のような笑みを浮かべる小角。
 石動は、斬り合いには使えないが、戦闘以外では使い道が広がりそうだと判断して受け取ることにした。
 その日は二人は飲みあい、石動は翌日二日酔いになっていた。
 もちろん、小角は姿を消していたが。





 二日酔いに苦しみながらウーリの研究所についた。
 ユーリはニヤリと笑いながら歓迎する。


「ふむ、フリーダーの調子も順調のようだな」

「ああ、おかげさんでな」


 実際、フリーダーの働きはたいしたものである。
 魔人・ヘルズエンジェル戦での連携もよく、サマナーとしての喜びを感じている。
 ウーリが『箱』から記憶を集め、フリーダーに転送している。
 石動のアセイミーナイフもまた大きな変化をした。
 妖刀ニヒル、首狩りスプーン、呪いの歯車に状況によって使い分けられるようになった武器。
 更なる変化が起こるのかもしれないと石動は感じている。
 ウーリがフリーダーの更新を終えると、石動に声をかけた。


「そろそろデータが集まりだしたからスキルスロットの開発ができるぞ」

「詳しい説明を頼む」

「仲魔が主に八つのスキルを使っている。
 それ以上はサマナーの負担になるからな。
 フリーダーも普通の悪魔・造魔と同じだったが……」


 そういって机の上に何かを置く。
 一見蟲のような、それでいて機械のパーツのような奇怪なものであった。
 それには強烈なMAGと存在感がある。


「これは?」

「これがフリーダーのスキルスロットだ。
 スロットは四種類で、尖蟲(ハンドスロット)、石蟲(ボディスロット)、翼蟲(レッグスロット)、毛蟲(ブレインスロット)に分化した。
 スロット一つに二つのスキルが搭載することができ、戦闘中以外ならいつでもスロットの付け替えが可能だ」

「それは凄い」


 実質戦闘ではフリーダーしか使えない石動にとってはありがたい話である。
 ウーリが続ける。


「基本的に対応した部位にあったスキルを付けるほうが効果があがるし、負担も減る。
 たとえばハンドスキルならばショートジャブ、ボディスロットは猛突進などだな。
 ブレインは魔力を使うスキルをセットしたほうが良いだろう。
 全て魔法スキルにしてあらゆる敵の弱点を突くというセッティングも良いだろう」

「その辺はサマナーの匙加減だな」

「そうだ……まったく骨が折れたよ。
 効率の悪い育成だったが、面白いことになった。
 ヴィクトルに自慢ができそうで楽しみだよ。
 あと言い忘れたが、スロットに入れるスキルの編集はここでしかできない。
 いつかは、COMPでできるようにソフトを組むが……できたとしても容量を凄く喰うことになるだろうな」


 不健康そうな目を輝かせているウーリ。
 フリーダーは、造物主と主をじっと見つめていた。
 こうして石動にまた一つあらたな力を得ることになった。









 16~18話のあとがき


 ナンパするゾンビは発作的に思いついた。
 でも、出てきそうな感じがしますよ、パドロックよりはありふれた感じだし。
 ドザエモンはなぜか浮気者の露をもっていました。
 真2、アパドン王で悪用されていました。

 トモコさんは理想の妹です。
 周りが長い髪の女性が多いのでショートカットの女性を探して……彼女が九鬼の奥さんに。
 兄貴は学生時代ではかっこいいカツオっぽい人、今もカツオカットなのかは不明。

 モー・ショボーは一時的にロリ巨乳……もといアダルト(自称)モードになれます。
 でも、普段着だと石動から『詰め物して嬉しいか?』と言われて絶望することに。

 ゴーストQは元ネタだけに食いしん坊です。
 MAG奪う技もっていたり、仲間よんだりやりたいほうだいです。
 分身は独自設定です……本体は金剛神界でウロウロ。

 設定だけで言及した鴉天狗が登場。
 義経(牛若丸)が鞍馬天狗に武芸を習った繋がりのせいか、武芸の技術の差のせいか、義経を殿と呼んでいます。

 連携攻撃(真空の刃……もといソニックソード)や密集陣形(フロントガード)がBUSIN0のアレイドっぽいのは造魔フリーダーの仕業なのか?
 まあ、同じ会社だからOK.

 
 フリーダーの現在のスロットの状況。

 毛蟲(フォッグブレス・ディアラマ)
 石蟲(アギラオ・マハブフ)
 翼蟲(リフトマ・トラフーリ))
 尖蟲(ショートジャブ)


 簡単に言えばメモリーカードは一杯持ち歩けるが、中のデータはウーリの所でしか編集できないわけです。
 この世界では悪魔も経験値を手に入れてレベルアップしますが、フリーダーはウーリの所でのみ強化可能です。
 
 

 ガーディアン2号は、魔人・エンノオズノ(式神による分身)
 真・女神転生IFで特殊ガーディアンであったり、レア悪魔として戦闘できたりする。 
 その時のステータスは下の通り。
 LV 48 力20 知恵14 魔力15 体力12 速さ14 運11
(シバブー、ハマオン、マカラカーン、サマリカーム、トラフーリ、サバトマ)

 この作品では回復魔法(ステータス・蘇生も含む)・補助魔法を使う方向。
 破魔・呪殺・精神・魔力を防御し、魔法に若干耐性あり。
 オズノを使う場合は魔剣を振るえないので後方で銃撃するか、魔法で援護するしかない。






 次回は、二通り考えています。

・『一方そのころ、公安零課の魔人マタドール退治』

・『真からのお約束、魔人アリス騒動(ぽろり……ではなく特別ゲストもあるよ)』

 どちらから出すか…… 


   



[7357] 第19話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/26 09:19

 石動達がW県で魔人たちと戦闘をしていたちょうどそのころ……。
 風間は突然の連絡をうけた。
 魔人・マタドールが新宿歌舞伎町にあるメシア教団の支部を襲撃しているのだ。
 メシア教団。
 世紀末に大破壊が起こり、救世主がその混乱を収め、千年王国を築くと説いていた。
 だが、実際には何も起こらず、単なるカルト教団と認識された。
 現在も規模が縮小しつつも未だに精力的に活動を続けている。
 メシア教団は武闘派が多いからマタドールも目をつけたのだろう。
 風間は公安零課を出動させた。
 現在近くで動員できるのが彼らだけだからだ。


「ふははは!!
 弱い、なんとも弱い!!」


 メシア教団の幹部が剣を振るうが、マタドールの赤い布……カポーテで翻弄され、レイピアで急所を突かれて絶命した。
 まさに闘牛のような最期を遂げてしまった。
 そこに踏み入れる公安零課の面々。
 風間は目の前の惨劇にも動じない。


「ふむ、警察組織が来たか。
 だが貴公らではこの私を倒せんぞ」

「貴様こそ人間を舐めるな!
 シンクロ召還、用意!!」


 今回のような魔人という強敵に相対するには、少数精鋭でかかる必要がある。
 動揺し、パニックを起こす味方は敵より厄介であるからだ。
 そこで、現在動員できる人間全ての力をあわせて一体の悪魔を召還した。


『毘沙門天召還』


 青い稲妻とともに鉾と宝塔を持った鬼神が現れた。
 毘沙門天、梵名をヴァイシュラヴァナと言う。
 仏教における天部の仏。持国天、増長天、広目天と共に四天王の一尊に数えられ、上杉謙信も信仰していた武神として有名である。
 帝釈天の配下として、仏の住む世界を支える須弥山の北方、水精?の天敬城に住むと言われる。
 夜叉や羅刹といった鬼神を配下として行動する。
 また、多くの派生的な姿を持ち、その一つに托塔李天王がある。
 李天王には金咤、恵岸行者、那咤三太子という三人の息子がいる。
 特に那咤三太子は西遊記や封神演義で登場する蓮根と蓮の糸と蓮の葉で造った人造人間に近い存在で有名である。
 毘沙門天に関して多くの記述があるが、語りきれないので次に進む事にしよう。
 関東を震撼させた魔人・マタドールに対して怒気を放つ毘沙門天。
 睨みつけられるマタドールは強敵と対峙できる喜びを隠し切れない。
 

「ほほう……!!」

「関八州を踏みにじる魔人よ!
 最早、進む事も退く事も敵わぬ事と知れ!!」


 そう言って早速毘沙門天は、矛を振り回す。
 あたかも矛が分身したかのような神速の突きがマタドールに襲い掛かる。
 それを華麗に避け、鬼神の首筋を狙ってレイピアを振るう。
 それを武器で受け止め、押し返した。
 一進一退の攻防を繰り返す。
 悪魔の格としてはどちらが上かといえば毘沙門天である。
 善でも悪でもない特異な存在である魔人ではあるが、人々の信仰を集めた存在である毘沙門天には敵わない。
 魔人は多くの人間を襲ってMAGを確保して強化されているが、公安零課の面々が祈り奉り召還した毘沙門天もまた彼らの願いによって強化されている。
 だが……風間は焦る。


「(不味いな……サマナーの力量がまだ低いせいか、安定しにくい!!)」


 安定しない毘沙門天の長期の稼動は危険であると風間は判断し、作戦を練る。
 マタドールが一旦間合いを外したのを見計らい、風間が指示した。


「射撃部隊一斉射撃!!」

「な……!!」


 悪魔召還に参加させなかった者は元SATから引き抜いた腕利きばかりで組織した射撃班であった。
 たった一人の射撃であればマタドールは避けられただろう。
 しかし、腕利き15名のアサルトライフルによる銃撃は避ける隙間もない。
 それでも、腐っても魔人、比較的薄い箇所を見切り、そこに走り込む。
 ダメージを最小限に抑え、司令塔である風間を狙い、一気に接近する。 
 風間を殺害し、士気を崩して弱体化した毘沙門天を討ち取るつもりだ。
 マタドールは心臓目掛けて鋭い突きを放つ。
 風間が腕で受けようとするが、魔人の腕力では貫通し、胸元にレイピアが突き刺さる。


「ふははは!!
 なかなか歯ごたえがあったが……な!!」


 心臓に刺さったはずの風間が腕の筋肉を引き締め、レイピアを固定している。
 だが、それだけで致命傷は避けることはできない。
 野性的な笑みを浮かべた風間刑事。
 マタドールは草食獣のリーダーを狙ったつもりだったがそれは大きな検討違いだった。
 狙った男は、強靭な意志を持つハンターだった。


「石動のコートの見立てに、更に急所を金属板でカバーするよう忠告してくれた事に感謝だな……」
 
「ば……馬鹿な!!」
 
「言ったはずだ……人間を舐めるな!!」


 残った腕で渾身の力を込めたパンチを叩き込む。
 それもただのパンチではなかった。
 拳にナックルブラスタ……拳に装着する散弾銃を装備しており、さらに暴威弾が詰められていた。
 雷のような轟音とともに炸裂した。
 致命的な隙を晒したマタドールに直撃し、剣を風間に刺したまま吹き飛ばされた。
 すかさず、射撃隊、サマナー部隊が一斉に銃撃を行う。
 容赦なく降り注ぎ、マタドールの重量の数倍の弾薬が撃ちこまれる。
 止めに毘沙門天が宝塔を空中へ高々と投げた。
 マタドールの頭上に来た瞬間無数の火弾が降り注ぐ。
 苛烈な攻撃によって魔人・マタドールを消滅させた。
 魔人の殲滅を確認し、風間は毘沙門天に召還に応じた事に礼を述べた。


「ご協力、感謝します」

「これも我の役目にすぎん」


 鬼神は風間達の敬礼を腕で制する。
 そして今回奮戦した全員を労った。
 風間のナックルブラスタを使用した腕の方は衝撃で肩が脱臼している。
 だが、公安零課からは死傷者は出なかったのが幸いだった。


「関八州を震撼させた魔人をよくぞ討ち取った。
 鋼のような統率、流れるような連携、そして指揮官の不屈の闘志によって勝ち取った勝利であった!」

「もったいないお言葉です」

「これからも精進し、国を守っていくが良い」


 そう言って毘沙門天は帰還していった。
 公安零課の本格的な実戦は魔人を討ち取るという大金星で締めくくられた。
 







あとがき


この世界のメシア教団は不遇です。
世界全体ではニュートラルな状態であり、カオスの勢力はメシア教団より強めです。
ですが、行き過ぎた活動をすれば御用になりますが。
大破壊は未然に防がれてしまい、勢力拡大も失敗していますので。
正反対の思想であるガイア教団の方が力が上かも?という現状。

ナックルブラスタは、デビルサマナー登場のショットガン扱いの銃。
名前の通り、拳に装着するナックルダスター型と推測される(仮面ライダーSPIRITSの滝さんの武器を連想してしまったり).
打撃を相手に叩き込むと、同時に仕込まれた銃弾が撃ち込んでダメージを与える仕様。
拳への衝撃をどう逃がすかといった問題があるが、浪漫溢れる武器。
元ネタは漫画「ブラスナックル」の主人公の武器、ブラスターナックル。

今回シンクロ召還した悪魔は毘沙門天。
国家鎮守の悪魔に相応しく、魔人と戦えそうな相手でうってつけだったと思います。
将門公だと恐れ多いので……。
もし失敗してスライムみたいな将門公を召還してしまった事を想像してください。
……後が怖いです。






[7357] 第20話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/30 18:37
 いつの間にか、石動は白い空間にいた。
 入り組んだ道があるが、気配もない……巨大な空白な世界だった。
 当ても無く歩き続けていると人影が見えた。
 気になった石動は追いかけた。
 追いついた時、人影は振り向いた。


「『石動 巧』の名を背負う者よ……」

「!?」


 老年に差し掛かった男だった。
 だが、針金の束のような筋肉はいささかの衰えを見せず、鷹のような鋭い目で値踏みするかのように石動を見ている。
 側頭部は剃り、岩のような巨大な体躯は見るものを圧倒する。
 黒い皮のジャケットを着ており、胸元がカットされているが包帯で胸元を隠してある。
 一見、野性的な印象である。
 だが、その佇まいは知性的ですらある。
 この謎の男は石動の全てを知っているのではと思わせる何かがあった。
 実際、石動を知る人間ではあれば『石動 巧よ……』で済む。
 だが、彼の言った台詞は彼が何者であるかを確信している節があった。
 警戒して下がる石動。
 謎の男は、それを気にせず強い威圧感を発しながら話を続ける。


「お前の周囲で魔人たちが現れ始めた。
 これはお前の人生の転機の『きっかけ』だ」

「な……!!」

「正確には『アマラ転輪鼓』の出会いが『きっかけ』と言えるのだが……」

「お前は……何者だ!!
 俺を……俺を知っているのか?」


 未知なる恐怖に思わず威圧的に接する石動。
 謎の男は声の調子が多少穏やかなものに変わる。


「私はお前の敵ではない。
 私はお前の世界から離れたところにいる」

「手も口も出す気はないと……」

「そういうことだ。
 心せよ……更なる死の嵐が巻き起こる。
 お前はそれを超えるか、それとも死して冥府へ再び堕ちるかはお前次第だ……」


 男はそう言って徐々に存在が薄れていった。
 石動は、男に尋ねようと手を伸ばすが……


















「……なんだ……今のは……?」


 石動の意識が覚醒した。
 夢にしては生々しい記憶であった。
 しばらく悩むが、なるようにしかならないと思い、一旦棚上げする。
 時計を見たら、午前9時40分。
 朝食を取ろうと支度を始めたとき、電話が鳴り響く。
 支度を中断してすぐに受話器を取る石動。 


「はい、此方石動探偵事務所でございます」

『デビルサマナーの石動様ですか?』

「いきなりだな」

『呪術的な守りをしているので盗聴の心配がありませんので。
 はじめまして、私は黒男爵と申します』


 本題をいきなり切り出す存在に思わず警戒し、戦闘時の心構えになっていた。
 声は紳士的だが、石動は直感的に並の存在でないと悟った。
 恐らく、高位の悪魔が依頼を行ってきたのだと。
 サマナーとして頼む依頼も難解なものになることも。


「……偽名?
 いや、通り名か」

『そんなところです。
 実は……一人の少女を探して欲しいのです。
 私達の大事な家族なのです!!』


 その声に必死があり、嘘ではないと石動は思った。
 また、相手は警戒感がだした石動を咎めず、むしろ電話でサマナー絡みの話をして申し訳なさそうにしている。
 石動は考えた末に依頼を受けることにした。
 写真があるかどうか聞いたらメールが届き、画像が出た。
 ロングヘアーの金髪の美少女。
 無垢な印象があるが、どこか危うい雰囲気を出している。


「……名前と心当たりは?」

『アリスといいます。
 彼女は友人を餓えていますから……学校等の人が多い場所にいると思います。
 東京、神奈川、埼玉のいずれかにいると絞り込めたのですが……』

「解った、そこから先は俺の腕の見せ所だ」

『ではよろし……なんだと!?』


 相手のほうで何かあったようだ。
 電話越しで黒男爵の怒鳴り声が響く。
 石動は問いただす。


「どうした?」

『実は……同僚が丁度今、他の探偵に依頼を申し込んでいるらしく……』

「質問だが…」

『なんでしょうか?』

「その探偵と組んで依頼を受けるのアリか?」

『え……』


 普通ならまず出さない選択肢である。
 だが、あえて石動は出した。


「俺の感がな……直ぐに解決しないと多くの血が流れそうな予感がしてな。
 面倒ごとになる前に抑えたい。
 そっちの同僚さんが選んだサマナーも一流所だろうから組んでもいいと思ってな」


 そう言ったらしばらくしてから返事が来た。


『相手のサマナーの方も納得していただきました。
 今夜八時に、新宿の懐石料理屋『鬼女郎』で合流して方針を話し合いたいと』

「了解した、それで俺の命を預けるサマナーは?」


 そのサマナーの名前を聞き、思わず声に出しそうになったほどの驚きだった。
 石動は、報酬の相談を終えて電話を切った。
 ラームジェルグが声をかける。


『いや、凄いな!
 あの有名なサマナーとお近づきになれるとはな!!』

「で、本音は?」

『従者が凄く美人で……ハッ!?」

「そんなことだ思ったがな。
 それよりだ……アリスか。
 得体の知れない感じがするんだが」

『まあ……それは俺も感じている。
 だが、年下キラーのせっきーなら……なんとかしてくれる!!』

「今日は小角でいくか」

『ひでえよ、せっきー!』


 そういいながら早速新宿へ行く用意をする石動。
 ラームジェルグが聞いてきた。


『おいおい、早すぎるぜ?』

「東京で適当に買い物でもして時間を潰すさ。
 それに、待ち合わせに遅れるのは嫌だからな。
 幸い予定が空いているからな、仕事前にリラックスしたい」

『まったく、待たされるのは我慢できるのに、待たせるの嫌いってのはな』







 
 池袋駅・池フクロウ像前。
 早乙女は待ちあわせをしていた。
 相手は、中学まで友人だった同級生でメールでやり取りをしていた。
 親の仕事の都合で転校したが、未だに友人関係は続いている。
 その文面が切羽詰った様子だったから相談に乗るために待ち合わせをしていた。
 
  
「もうそろそろかな?」

「さくら!!」


 おさげの文学少女風の美少女が駆け寄ってきた。
 長身でスレンダーな体系で、意外に運動神経はよさそうだ。
 彼女の声に恐怖で震えており、顔色も悪い。
 早乙女は、疲れ果てた友人に声をかける。


「弓枝、どうしたの?」

「うん、ちょっと相談に乗って欲しいの……」

「それって……ちょっと信じられないことだけど」

「言ってみなければ解らないわ。
 疲れているみたいだから近くで休みましょう」


 近くのファーストフード店に行き、そこで話をする事にした。
 おそらく、弓枝は何も食べていなかったのだろう、あっという間に食べきってしまった。
 弓枝は、一息つけて青ざめた顔も幾分かよくなった。
 弓枝が落ち着いたのを確認して早乙女は事情を聞いてみた。
 

「一体どうしたの?」

「うん、実は……」


 事の始まりは、弓枝の学校の旧校舎に幽霊が出る噂がでたことだ。
 弓枝の友人・珠美と弓絵と珠美の思い人の啓がそれを聞いた。
 彼女達は仲がよく、三人で遊ぶ事が多かった。
 啓が幽霊の噂を聞いてある提案をした。


「なあ、夜忍び込んで旧校舎を探険しないか?」

「え!?」

「危ないよ」


 弓枝は当然止めた。
 だが、啓は行うことを主張した、そして……


「旧校舎内に昔の演劇部の台本があったらしいからそれを取りに行って帰る。
 ちゃんと取って戻れたら勝ちってことにしてね。
 勝った人は負けた人に言う事聞かせるというのはどうだ?」

「面白そう……それに演劇部の台本か先輩がどんな芝居を書いたか興味があるわ」


 演劇部の珠美も興味を示して、結局弓枝も行く事になった。
 勝った人間の特権に弓枝と珠美が惹かれたのは間違いないだろう。
 順序は啓、珠美、弓枝の順に二十分ずつ時をずらして出発する事になった。
 順々に出発し弓枝の番になった。
 いまだに帰ってこないのに不安を覚えながらも弓枝は出発した。
 深夜の旧校舎は暗く、ペンライトで照らしても視界が悪い。
 進むうちに演劇部の部屋にたどりつく。
 台本を回収したが、啓たちが来た様子がないのに不審に思った時、後から声をかけられた。


「おねえちゃん、ひとり?」


 振り向くと金髪の美少女が立っていた。
 黒い上品なデザインの服を着ており、長い髪に白いカチューシャをつけている。
 声は楽しげなのが深夜の旧校舎では場違いな印象を与える。
 弓枝は、深夜なのに学校に忍び込んでいる少女を不審に思いながら一人だと答えた。


「私、アリスっていうの。
 私は、お友達が欲しいの。
 おねえちゃんも友達になってくれる?」

「べ、別にいいけど」

「よかったー。
 断られると思ったんだもん。
 じゃあ、お願いがあるんだけど……」


 ほっと一息ついた彼女が一言言った。


「じゃあ、お姉ちゃん……
 死 ん で く れ る ?」

「え!?」


 弓枝は驚いて後に後ずさりをした。
 そのとき、足がもつれて後に転倒したのが幸いだった。
 さっきまで立っていたところに無数の槍が突き刺さっていた。
 倒れなかったら弓枝は、即死したことだろう。。
 アリスは頬を膨らませる。


「なんで避けるのよー!」

「それは私が言いたいわ!
 なんでこんな危ない事するの!!?」

「ずっといてくれる友達が欲しいんだもん。
 だから殺してからずっと一緒にいれるようにするの、お兄ちゃんたちみたいに」


 アリスがそう言った時、彼女の後から人影が二つでた。
 心臓に空洞ができた啓と珠美が虚ろな瞳で現れた。


『ゆ゛み゛え゛』

『い゛っじょにな゛ろ゛う゛』

「い、いやああああああああああ!!」


 それからのことは弓枝は覚えていない。
 ただ、必死になって校舎を飛び出し、自転車に乗ってひたすら駆けていく。
 自宅も不味いと思い、ちょうど駅から東京行きの深夜バスがあったから飛び乗った。
 バスの中でメールを送って現在に至った。


「あまりに荒唐無稽だから……」

「信じるわ」

 
 早乙女の目から見て、必死な彼女に嘘はないと判断した。
 それだけではなく、弓枝の首に黒い霧のようなものに包まれている。
 恐らく、呪いのようなものだと早乙女は思った。
 弓枝は驚くが、そのまま話す早乙女。


「世の中には信じられない事があるのは知っているわ。
 そうだ……先生なら!!」

「先生?」

「そう……探偵になろうと思っていて今先生に習っているの。
 こういう時に頼りになる人だから!!」

「さくらがいうなら……な!!?」


 突然、周りの空気が変わり、周りの色が自然では在り得ない色に変わる。
 濃密な殺気が支配し、周りにいた人々がいなくなっていた。
 いや、いなくなったのは周りではなく、早乙女達だ。
 異界に引き込まれたのだ。


「まさか!!?」

「追いついてきたの!?」

「やっと見つけた」


 金髪の少女……アリスが目の前に現れた。
 そして数体のゾンビが現れた。
 比較的新しい二体は弓枝の言っていた啓と珠美だろう。
 それ以外は腐敗の進んだゾンビでいずれも学生だった。
 多くの人間がアリスの『友達』になったのであろうか。


「見て、私のお友達!!」

「ふざけないで!!」


 気丈にも怒りのあらわにする早乙女。
 この異様な光景でも自身を見失わない精神力特筆すべきことであろう。
 だが、アリスは彼女に怒りを理解できなかった。
 

「なんで怒るの?
 私はずっといてくれる友達が欲しいだけ」

「命を弄ぶことは友達がすることじゃないわ!!」

「もういいもん。
 殺してお友達にするから」


 アリスが腕を振るおうとそのとき、早乙女が腕を振るう。
 空を切る音の後に肉が切り裂かれる音が響く。
 

「きゃああ!」


 アリスの腕が宙を舞う。
 早乙女の腕に肉と骨を立つ手ごたえを感じ、不快感を示した。
 アリスの腕を断ち切った早乙女の手には猫の腕のような爪つき手甲が装備されていた。
 先日の旅行の時にモー・ショボーがプレゼントした『ニャン2クロー』である。
 護身用に渡された武器であり、ネコマタが魔晶変化してできる武器で並みの武器より強力であり、不意を突いたとはいえ、アリスに手傷を負わせるほどの威力だ。
 爪という珍しい武器で不慣れではあったが、武道の心得のあった早乙女は何とか扱えているようだ。
 ネコマタのように爪を振るう早乙女の前に。、ゾンビ達はなす術も無く倒される。
 囲みを破った早乙女は、弓枝と一緒に逃げていく事に成功した。
 アリスは、腕を回収し、修復しながらゾンビ達に命令した。


「追いかけて!!」
















 一方、東京にきて買い物をしていた石動は……


『いやあ、楽しかった。
 帰ってから新作のゲームが楽しみだ』

「俺も楽しみだ……新作の本を注文したからな」


 互いに欲しいものを注文し、3,4日後に届くようにした。
 それでも約束の時間まであるから適当に見回ろうとしたとき、石動の脳裏に声が響く。
 頭上を見上げると思念体が声の主のようだった。
 怪訝に思っている石動にさらに声をかける思念体。


『急いで……!!
 アリスが貴方の大切な人に手をかけようとしています!!』

「……!?」

『どうした?』


 その声は誠実そうな若者の声で、憂いを秘めていた。
 捜索中のアリスの名と自分の関係者の事を言及した事に不思議に思ったが、自信の嫌な予感が当たったと思い、その声の誘導に従った。
 守護霊使いである石動の前では思念体は嘘をつけない……だからその警告を直ぐに受け止めて行動した。


「アリスが俺の知り合いに手を出そうとしているらしい」

『なんだって!!
 急ぐぞ!!』


 ラームジェルグと石動は都会を疾走していく……。













「はあはあ……もう、だめ…」

「弓枝、諦めちゃダメ!!」


 早乙女達は異界を走り続けた。
 出口がないかと走り続ける。
 途中でゾンビに襲われるが早乙女の爪で引き裂く。
 だが、彼女たちの体力は無限ではない。
 徐々に移動速度が遅くなり、追いつかれつつあるのだ。
 そしてとうとう無数のゾンビ達に囲まれてしまった。


「私……死ぬの?」

「馬鹿……諦めたら……生きられるときでも死ぬわ!!
 私は最後まで諦めない!!
 人の命を弄ぶ悪魔になんか負けない!!」


 そういって必死に抵抗を続ける早乙女。
 しかし、背中に鉄パイプで打たれ、倒れた。
 弓枝もゾンビに突き飛ばされ、気絶してしまった。
 ゾンビの女学生が止めを刺そうを高々と鉄パイプを上げる。
 早乙女は死を覚悟して目をつぶる。
 だが……鉄パイプが振り下ろされることはなかった。
 恐る恐る目を開けると、見知らぬ青年がゾンビを剣でなぎ払っていた。
 早乙女の目はしっかり捕らえていなくて輪郭しか見えていなかった。
 

「石動先生?」

「石動?
 いや、君とは初対面なんだがな、これがね」


 絶望的な状況でも明るい声で励ます青年。
 視界がはっきりした時、髪を逆立て、ガルチェの背広を着こなしている青年がいた。
 身長は石動より少し低く、右手には剣が、左手には銃型のCOMPが握られていた。
 銃型にCOMP……GUMPが機動して青龍刀と鎧で武装している髭を生やした猛将が倒れている早乙女達を守るようにして立っていた。
 その存在感は頼もしく、早乙女の死への恐怖が和らいだ。
 安心した早乙女は、サマナーに質問した。


「あの……サマナー……なんですか?」

「そういう君は関係者なのか?
 そういえば今日会うサマナーが石動とか言っていたが」

「私は石動先生の弟子なんです、探偵の。
 でも、まだサマナーとかそういう道には踏み込む覚悟がないのですけど……」

「そっか……俺が来たから安心してくれ。
 お友達も君も俺が守る」

「ありがとうございます……あの、貴方は?」

「俺かい?
 俺は葛葉キョウジ。
 探偵兼サマナーさ」 


 軽く笑う彼からは歴戦の勇者の持つ風格が漂っていた。








「キョウジ殿、他の仲魔を呼び出さぬのですか?」

「いやさ、ダークサマナーを返り討ちにしたばかりで、MAG不足のまま異界に飲み込まれてさ」

「むう……では仕方ありませぬな。
 我が偃月青龍刀でもって立ちふさがる敵を粉砕しましょう!」

「頼むぜ関聖帝君。
 これだけ雑魚がいれば倒すうちにMAGが確保できるだろうからな!
 他の造魔はヴィクトルに貸しているからな……慎重にやるさ」


 そう言ってキョウジが剣を振るう。
 我流だが、闘いの中で鍛え上げられた技の数々でゾンビを圧倒する。
 早乙女達を狙う敵は関聖帝君の青龍刀の一振りで纏めて両断された。
 その圧倒的武力に早乙女は驚き、キョウジが仲魔の呼んだ名を思い出し、更に驚愕した。


「関聖帝君……まさか!?」


 早乙女が驚くのは無理も無い。
 関聖帝君……中国・蜀の猛将である関雲長のことである。
 『美髯公』と呼ばれる髭の持ち主であり、死後に神号の追贈がされるほどの信仰を集めた存在である。
 これほどの存在を扱えるキョウジの実力を推して知るべきだろう。
 ゾンビ自体はキョウジにとって脅威にあまり感じない。
 だが、恐ろしい数で迫られ、回収したMAGを使っての悪魔召還ができない。
 更に……、


「し゛な゛ばも゛ろ゛ども゛!!」


 ゾンビ達は、完全な致命傷を与えなければ自爆する。
 油断すれば大ダメージを受けることになる。
 この攻撃に、さすがのキョウジも辟易した。
 追い討ちに、アリスが追いついてきた。
 デビルサマナーであるキョウジを見ても物怖じしない。


「おじちゃんもお友達にしてあげる!」

「アンタを連れ戻すように『赤伯爵』に頼まれた。
 人形遊びをやめてくれないか?」

「おじさんに……!!
 でもいやよ!
 私は友達をいっぱい作るの!!」


 キョウジの依頼主を言及しても闘いを辞めるつもりがないようだ。
 アリスがゾンビ達をけしかけようとした時、空から二人降ってきて、ゾンビの頭上に着地した。
 その衝撃をゾンビが肩代わりし、顔面が盛大に歪み、砕ける。
 その二人は早乙女が知っている二人……石動とフリーダーであった。


「ギャア!」

「異界に転移しました。
 ターゲットおよび早乙女さんの存在を確認」

「間に合ったようだな……ん!?」

「アンタは誰だい?」

「石動先生!!」



 フリーダーと石動の姿を見て思わず叫ぶ早乙女。
 キョウジが閉鎖された異界に乱入した石動に素性を尋ねる。
 石動は声の主が誰か知っていた。


「貴方が葛葉キョウジですね。
 俺は石動……黒男爵の依頼でアリスの捜索を依頼された者だ。
 つまり、今回の一件で組む予定だったサマナーな訳なんだが……探し人は見つかったようだな」

「アンタが今回組むサマナーだったな。
 ……しかし、よくこの閉鎖された異界に入り込めたな」

「空間の綻びに関しては情報提供者がいたお陰さ。
 それを広げたのは俺の……というより、守護者のお陰だ」

「レイと同じで神降ろしの使い手か
 アマテラスとかイシュタルとかそういうのを宿しているんだな?」


 キョウジの問いに残念そうに首を横にふる石動。
 守護霊使いは、ため息をつきながら答える。


「残念ながらラインナップは落ち武者と飲んだ暮れ(分身)だ。
 それより悪魔が少ないが……MAGが足らないのか?」

「MAG不足で召還できず、溜まった時には数で押されてしまったぜ。
 まったくついてない」

「俺とフリーダーで時間を稼ぐ。
 その間に手勢を揃えてもらいたい」

「アンタの方は?」

「守護霊使いの弊害でな、フリーダー以外は戦闘では足手まといなレベルしか使役できないのさ。
 だが……二人で6人分働けば済む事だ!!」

「マスター、お供します」


 守護霊をラームジェルグに交代し、手当たり次第に妖刀ニヒルで切り捨てる。
 フリーダーも手近な敵をブレードで切り捨て、マハブフで広範囲の敵を氷結させた。
 すかさず石動が必殺技を放つ。


「虚空斬波!!」


 魔性の刃で空間を切り裂き、広範囲に空間の歪曲を発生させる。
 その歪曲が元に戻る際に恐ろしいほどの破壊の力を振り撒く。
 ゾンビ達が在る者は消滅し、また在る者は全身を切り裂かれ、押しつぶされる。
 その隙にキョウジがGUMPで悪魔召還を行った。
 神々しい雰囲気をかもし出した4本の腕に武具を持った魔神・ヴィシュヌ、禍々しいほどの赤い肌と6本の腕にもった曲刀が巧みに操る地母神・カーリーを召還した。


「召還士キョウジに勝利を捧げん!」

「汚らわしい汚物ばかりだな、キョウジよ」

「済まないな。
 いつものように蹴散らしてくれ」


 ヴィシュヌは恭しくキョウジに礼を示し、カーリーはゾンビに対して不快感を示しながら闘いに参加する。
 カーリーは、憤怒の表情で纏めてゾンビをなぎ払う。
 ヴィシュヌは、手から巨大な光球を放つ。


「死に囚われるがいい……デスバウンド!」

「メギドラ!」



 剣閃が舞い、巨大な魔力球が戦場を包み込む。
 ゾンビ達は大半を打ち倒す。 
 石動の加入と悪魔の召還によって形勢は一気に逆転した。
 アリスへの道が切り開かれ、キョウジと石動は同時にアリスに切りかかる。
 

「きゃああ!!」

「おい、お遊びはそこまでだ。
 抵抗をやめ、終わりにしてくれ」

「いやよ……私の友達を奪うやつなんか……みんな、みんな死んじゃえええ!!」


 ゾンビ達を皆自爆させようとするアリス。 
 キョウジ達を致命傷を負わせられないだろう……だが、早乙女や弓枝を死に至らせることは確実だ。
 キョウジが止めをさしても間に合わない……。
 だが、石動の脳裏に声が響く……。


『私の力を貸します……!!
 たとえ神に捧げられた生贄だったとはいえ、彼女たちを救う事はできる!!』


 ラームジェルグを外に出し、声の主を石動の内に招きいれた。
 清浄な力が四肢を巡る。
 石動は迷える魂を全て解き放つ魔法を唱える。


「マハンマオン……!!」


 ゾンビ達が全て浄化され、成仏した。
 キョウジはその光景に驚く。


「おいおい、確かに破魔の魔法がよ、その出力と範囲は人間業じゃねえな!!
 まるで神か大天使並の力だぜ……!!」

『……守りきれた』

「危なかった……助かったぜ。
 アンタの名前を聞いてなかったが」

『過去の名前を捨て、今は亡霊のような存在です。
 ですが……復活し、二度目の死まで名乗った名前は……『ロウヒーロー』です』

「ありがとよ、ロウヒーロー」

「……今の力はこの場所を教えた奴のか?」

「どうもそうらしい」


 二人は話ながらもアリスに剣を突きつけたままだ。
 もし、アリスが何かした瞬間に依頼破棄を覚悟に切り捨てるつもりだ。
 たとえ見た目が可憐な少女でも人間を凌駕する存在であるからだ。
 アリスが何か言い返しそうになった時、二人の紳士が現れた。
 赤い紳士服をきた恰幅のよい老人と、黒い紳士服を着た壮年であった。


「アリス!!」

「よかった、やっと見つけたわい!!」


 声から依頼した電話の声の主だと判断した石動。
 キョウジ達は剣をアリスから引いた。
 アリスは二人に声をかけた。


「おじさん!!」

「「おお……アリスやっと会えた」」


 赤伯爵が杖を掲げるとアリスは吸い込まれた。
 疑問に思ったサマナー達に事情を伝える赤伯爵と黒男爵。 
 二人は正体を現した。
 赤伯爵は赤き龍のような鱗と翼を持ち、巨大な三又槍を掲げる悪魔……魔王ベリアルであった。
 ベリアルは地獄を治める諸侯の一人であり、元力天使であった。
 秀麗な容姿を持ち、優雅な仕草と卓越した話術を身につけた法律の権威であったらしい。
 黒男爵は死神のようなローブと死体のような顔つき、右手に操り人形をもった悪魔……堕天使ネビロスであった。
 地獄の将軍を束ねる元帥であり、優れた死霊術師でもある。
 鉱物、動物、植物学等に造詣が深く、予言者としても名高い存在であった。
 彼らがアリスについて話し始めた。 
 2人の紳士の話では、アリスは元々人間だったが、この二人が屍鬼として復活させ、静かに暮らしていたそうだ。
 だが、ある事件がきっかけでアリスの魂は無数の世界に分散してしまい、彼らはその回収・復活を行っているらしい。
 こうして依頼は達成できた……しかし、問題が残っていた。
 アリスの処遇である。
 彼女は少なくとも二人以上殺害している。
 それに無数の死体をゾンビにしている。
 世を乱す存在を討つクズノハとしてはそのまま放置するわけにもいかない。
 だが、分霊ではないオリジナルの力を持つ赤伯爵ことベリアルと黒男爵ネビロス、そして彼らの力が注がれた魔人アリスの三体を同時に相手をするリスクがある。
 キョウジと石動は相談し、処遇を決め、石動がこう言い放つ。


「アリスの討伐は諦める。
 その代わり、アリスをこの世界に呼び出し、永住する事は禁止させてもらう。
 もし、約を違えれば……」


 石動のアセイミーナイフを妖刀ニヒルに変形させてから言う。
 2人のサマナーの目に闘志が灯っている。


「この剣でその杖を破壊する。
 俺は悪魔を吸収・分解して強化することができる。
 そうなればアリスは二度と復活できないからな」

「現世で殺戮を行った以上、仕方がない処置じゃな。
 この世界は、様々な神々や悪魔、力在る者達が介入を失敗した『居心地の良い世界』じゃったが……。
 残念ながら、我らの安住の地は別に構えるしかあるまいて」

「寛大な処置に感謝します、若きサマナー達よ。
 報酬は振り込んでおきます。
 さらにお詫びの品を送りますので……それでは皆さん、失礼します」


 そういって二人の悪魔は消え去った……再び安住の地を求めて彷徨う事だろう。
 石動は心の中でロウヒーローに語りかける。
 守護霊として彼の力を使用したとき、彼の記憶の一部が流れ込んでいた。
 ロウヒーローの悲痛な記憶が……。


「(俺の処置があんなもので済まない)」

『(いえ……確かにアリスは私の幼馴染を屍鬼に変えました。
  それに、黒男爵が私の最初の命を奪った存在です。
  ですが、彼らもまた神に翻弄された存在です。
  それに……彼女たちを巻き込んで命が失われるよりはずっとマシです。
  ここでは、違いますから……)』


 ロウヒーローは、この世界の住人ではない。
 限りなく近く、遠い世界……分岐した世界の住人だ。
 20世紀の末に大破壊が起こり、悪魔が人間を支配する荒涼たる世界になったのだ。
 だが、この世界ではそれが無く、この世界のロウヒーローは音楽家として幼馴染と幸せに暮らしているようだ。
 そのことだけで彼は満足だったようだ。


『死後か……俺は生前どうしたっけな……』

「お前の生前の記憶について聞いた事が無かったな」


 石動とラームジェルグの付き合いは長い。
 『石動』になってからずっと歩み続けた存在だったが……。
 ラームジェルグが肩をすくめて言った。


『すまない、忘れちまった』

「そうか……」


 記憶を失った悲しみを察した石動はそれ以上聞くのをやめた。
 希薄だった存在がはっきりしてきた。
 全裸の幽霊から白い法衣をきた僧侶のような姿だったが……さらに輝き、赤いジャケットと青いズボンを履いた長い髪の好青年に変化した。
 ロウヒーローが何かを決意して話しかけてきた。
 

『私も永く未練を残したまま存在し続けました。
 もう疲れてしまった……』

「俺が成仏させればいいのか?」

「ええ……私の残された力を置いていきます」

「解った供養料がわりに受け取ろう……」


 石動は、ロウヒーローの力を受け取った。
 小角を憑依させ、秘術の限りを尽くしてロウヒーローを成仏させた。
 しばらく沈黙が続き、キョウジが切り出すまでそのままだった。 


「話が終わったようだな」

「ああ……今日の夜に打ち合わせだったが、終わったからな、依頼が」

「いやいやいや、ここは打ち合わせと打ち上げに変更すりゃいい」

「その発想はなかったな」

「この子達も連れて行くか?」

「いや……早乙女の友人は友達を失ったみたいだからな。
 早乙女がついていたほうが良い」

「レイにも頼んでフォローしてもらうか」

「感謝する」


 石動が小角の力で異界から脱出し、細々とした後処理をキョウジ(正確にはバックのクズノハに)が行った。
 夜はキョウジと石動は心行くまで飲み騒いだ。
 互いに共感できる部分があり、すっかり打ち解けてしまい、酔いつぶれた姿はまるで十年来の友のように見えたそうだ。






 あとがき。

アリスは真・女神転生以降たびたび出てくる存在である。保護者は黒男爵ことネビロス、赤伯爵ことベリアルという高位の悪魔。
肝試しをした啓君たちはゾンビに。
悪魔がごろごろする世界で肝試しをすることは危険であるわけです。

さらにゲストとしてデビルサマナー主人公、葛葉キョウジ(新)。
シド・デイビスというダークサマナーに殺害された一般人だが葛葉キョウジの体に乗り移った男。
ソウルハッカーズ(PS)では裏ボスとして登場。
石動が同じような黄泉帰りした者同士と判明して親友になったことでしょう。
 
ゲストその2のローヒーローさん。
真・女神転生で主人公と最初行動をともにしていますが、ロウルート以外では敵対することに。
アリスと因縁のある存在でもあります。
彼は平行世界からやってきたようで、ここの世界の彼は大破壊が起こらず、普通に暮らしています。


冒頭の謎の男……なんとなく誰かか予想出来る人がいるかもしれない。
まあ言いたいことは『石動、アンタに死亡フラグが立っている』という事を大人の言葉(遠まわしともいう)で語っただけですが。






[7357] 第21話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/23 23:21
 ソファーに寝転ぶ石動……今にも寝入りそうな様子だ。
 昼食を食べ、仕事が入っていないから昼寝をしようとした石動だったが、来客がきてその目論見はくずれさった。
 髪を短く刈り込んだ厳つい青年が直立不動で立っていた。
 その男に石動は見覚えのあるようで、名前を呼ぶ。


「……ああ、木暮か」

「石動の兄貴……こんな事を頼むのは筋違いかもしれねえとは重々承知しておりやす。
 ですが、力を、力を貸してくだせえ!」

「なにか一大事のようだ。
 話を聞かせろ」

「へい、実は……」


 木暮は、関東羽黒組の組員である。
 最近、歌舞伎町で中国マフィアとロシアマフィアの抗争が激しくなっている。
 それだけならば問題がなかったのだが……。
 関東羽黒組の傘下にも被害を受け、何の関係のない一般人にまで被害が出ているそうだ。
 そして何より問題なのはどちらも悪魔を使役していることであった。


「スジ者同士でやり合うのが筋ですが……佐竹の兄貴でもヤバイ!!
 だから……石動の旦那に悪魔退治を頼みに来たんです!」

「……マフィアとの抗争に担ぎ出されるのは御免だ」

「え……」


 木暮は、石動の一言に落胆した。
 石動は後で付け加えるようにいった。


「だが、悪魔を退治するのは引き受けよう」

「じゃあ……!!」

「ああ、その前に伝言があった。
 佐竹の旦那が『今日からお前は組の仕事を出るのを禁じる』だそうだ」

「ええ!?」

「慌てるな。
 お前は休みの最中に悪魔退治を依頼したわけだ。
 そこに俺が偶々歌舞伎町を荒らす悪魔を退治しにいくわけだ」

「つまり……」

「木暮、お前の考えは佐竹の旦那はお見通しってことだ。
 俺がヤクザの抗争とは無関係であると言い訳が立つように計らったわけだ」

「さすが佐竹の兄貴……」

「悪魔退治のために装備を整えるか。
 それとそろそろフリーダーに記憶を食わせてやるか」



 
 


 東京千寿区を本拠にする関東黒羽組は歴史が深い。
 古くから帝都・東京を震撼させる事件が幾度も発生したが関東羽黒組は人々の混乱を抑えるように積極的に動いていた。
 そのお陰で事件がおきたときでも一定の秩序ができていた。
 当時の警察機構も裏の情報を収集したり、大掛かりな事件を解決するために関東黒羽組と連携することすらあった。
 大正時代、佐竹の先祖であった当時若頭であった佐竹健三の力量は凄まじく、皆から一目置かれ、悪魔すら倒す鉄拳の持ち主とすら言われていた。
 現在も関東黒羽組の関東での影響力は高い。
 もし、マフィアとの抗争で関東黒羽組が壊滅させられたら裏社会の一定の秩序が崩れることになる。
 そうでなくとも悪魔によって犯罪が起きている以上、ヤタガラスや公安零課の介入もあるだろう。
 石動も佐竹とは懇意にしている為、一肌脱ぐつもりでいる。
 
 閑話休題。

 マフィア等がオカルトに傾倒する例は割りと多い。
 例えば、オザワというチンピラが悪魔召還プログラムを手に入れて裏社会を支配しようとしたこともあった。 
 だが、失敗して国外に逃走する羽目になった。
 また、平崎市の天堂組組長、天堂天山は吸血鬼になり不老不死を目指した事もある。
 ダークサマナーが雇われてどこぞの反乱した幹部を暗殺・粛清するという事はよくあることである。
 だが、基本的にマフィアがオカルトを戦力にして抗争に使うことは無かった。
 専門的な技術・知識も必要であることも大きな理由だが、もっとも大きな理由はそれを行えば国家機関などが本格的に動き出す。
 下手をすれば世界の危機につながりかねないものが在る為、場合によっては一族郎党皆殺しすらありうる。
 一般的なマフィア・極道はオカルトを使った戦争・抗争を厳重に禁じている。
 裏社会とはいえ、ルールがある……それを守れなければ容赦なく駆逐されていくだろう。










 ウーリの研究所に行き、フリーダーを強化している。
 情報の蓄積でまた形態が変り、人間に近い造詣になりつつある。
 仲魔の成長に喜びを感じる石動。
 そして自信の傑作の成長を喜ぶウーリであった。
 

「ふむ……このまま行けば人間に近い造魔になることだろう。
 従来とは違うアプローチのためかな?」

「使い物になるのなら問題ない」


 ウーリはフリーダーの調整を完了した。
 フリーダーは四肢の調整がうまくいっているか調べるようにゆっくりと体を動かしている。
 さらに話を続ける錬金術師……石動のような聞き役がいるからであろうか?


「そういえばマフィアどもがこっちの領域に手を出しているやつがいるようだな。
 ロシアマフィアは機械化された悪魔を、中華マフィアどもは人間と悪魔の合成を行っているらしい」

「知っているのか?」

「勿論だ。
 しかし、悪魔を飼いならす為にチップを埋め込むなどと……無粋な限りだ。
 あれでは悪魔本来のポテンシャルが引き出せない上に、悪魔を敵にまわす行為だ。
 だからソ連崩壊前、2,3年しか続けられなかった失敗計画だったはずだが……」

「その辺を洗い出せば技術者は見つかるだろうな。
 悪魔の合成のほうは?」

「うむ、それは昔から行われていることだ。
 人間に悪魔を憑依させて人間の心を持ったまま悪魔の力を振るおうとする試みだ。
 だが、大抵悪魔に自我を飲み込まれるのが関の山だがな」

「人間のほうが時に悪魔より悪辣だと思うがな」


 自嘲気味に言う石動にウーリが同意する。


「全くだ。
 機械化悪魔のほうは知らんが、悪魔を乗り移らせるのならば人間の数を揃えれば戦力の増強は楽だ。
 恐らく、機械化のほうが手間がかかり、マフィアに手を貸すのは雑魚の呪術士だからさほど高位の悪魔を使役できまい。」

「使役できていれば、もっと早く俺達の耳に入るだろうからな」


 そう言って外にでる準備を行う石動。
 石動は、さらに情報収集を行うつもりだ。
 場合によっては風間に情報を流すべきだと判断した。
 ウーリが出る前に一言いった。


「気をつけて行け。
 今の研究ではお前の存在は必要不可欠だからな」

「精々気をつけるさ」

「造物主・ウーリ、マスターは私が守ります」

「ああ、フリーダーも気をつけろよ。
 言い忘れたが、未確認だがロシアンマフィアは悪魔の数が足りないから死体を兵隊にしているそうだ。
 重々気をつける事だ」


















 佐竹が傘下の組を見回った帰り……道に立ちふさがる男がいた。
 警笛を鳴らしても立ち退く様子は無かった。
 不審に思った佐竹は車を止めて出てきて相手を確認した。
 赤い鎧のような軍服を着た軍人風の男で仮面をしていて素顔が見ることができない。


「関東黒羽組・若頭『佐竹健十朗』ト確認」

「……俺になんの用だ?」

「潜在的敵対組織ノ幹部ト確認。
 排除スル」


 そういって男はサーベルを抜き、切りかかる。
 佐竹もむざむざやられるわけがなく、剣を避けながら鉄拳で顔面を打つ。
 仮面が砕け、素顔を露わにする……その素顔は腐った死骸で、一部白骨が見える。
 


「死体が動く……だと?
 なるほど、石動が相手にするような悪魔ってやつか?」

「被害軽微、攻撃続行」


 今度は背中から機関銃を取り出し、発砲する。
 反射的に物陰に飛び込んで銃弾を避けた佐竹。
 もともと銃を好まない佐竹は今持っているのは特殊警棒のみ。
 弾切れまで逃げ続けるしかない現状だ。
 しかし、男の取った作戦は卑劣なものであった。
 運悪く通りがかったOLが銃撃に驚き、腰を抜かしていた。
 男は彼女を捕まえ、サーベルを首筋に当てた。


「佐竹健十郎、コノ女ノ命ガ惜シクバ、姿ヲ現セ」

「チィ……!!」


 堅気を巻き込むのを良しとしない佐竹は逃げるということはできない。
 男の前に出てきた。
 佐竹が出てきた事を確認して女を突き飛ばす。


「愚カナ……『ジャパニーズマフィア』ノ分際デ女一人ノ為ノ命ヲ落トストハ、理解不能ダ」

「俺達はな……跳ね返り者、極道者だ。
 だがな、道を極める者と書いて極道……決して道を外した外道じゃねえ!!」

「排除、開始!!」


 佐竹は近くのバス停を握り、思い切り投げつける。
 バス停の重量と投げ込まれたスピードによって銃身が歪み、暴発した。
 銃を持った腕は吹き飛んだが、活動停止には至らない。


「被害、甚大……自爆スル……」

「不味い……このままだと!!」


 爆発を起こした場合、佐竹はともかく、突き飛ばされたOLは気絶しており、逃げ切れない。
 佐竹はOLを庇うように覆いかぶさった。
 男がカウントダウンと開始し、残り3秒前になった時、銃声とともに頭部が吹き飛ばされた。
 自爆装置は頭部で制御していたためか、爆発が起こらず、そのまま前方に倒れた。
 佐竹は周りを見ると、金髪女性が前方にいた。


「まったく、見た事のないソルジャータイプのゾンビ?
 動きも滑らかで、話も流暢だし……」

「貴方のお陰で助かりました、この佐竹、この恩を必ず返します」


 佐竹は、最上の礼を行う。
 金髪の女性は微笑んだ。


「あら、それは楽しみね。
 悪魔に圧倒するタフさと女性を守ろうとする紳士的な所は見所があるわ。
 私はジェシカ」

「もしかしてサマナーって奴ですか?」

「あら、裏社会の住人だと知っている人も多いか」

「最近外国の奴らが悪魔で戦争しているって聞いたが、堅気にまで手を出すとは……!!
 石動の奴に頼んで正解だったか」


 石動の名前を聞いてジェシカ綺麗な眉の形が変った。
 ヤクザの若頭が知り合いの名前を言ったためだ。


「石動を知っている?
 あの目つきの悪いムッツリを」

「石動の知り合いか」

「まあね」

「しかし、ムッツリ……」

「幼女と女子高生と女性型造魔を囲って鎮痛な顔をしている時点でムッツリよ!
 ……この私に対してモーションかけない鉄面皮だし」

「……ともかく、コイツの始末を考えないと」


 最後のジェシカの一言を聞かなかったことにして周りを見た。
 銃弾の雨が降り注いだ道路や気絶しているOLなど後処理が大変面倒なものばかりだ。
 それらを見ながら石動は難儀な知り合いばかりいるな……と佐竹は思わずにいられなかった。


















 歌舞伎町の裏路地でマフィア同士の武力衝突が始まっていた。
 石動と木暮、そしてフレーダーはビルの上から観測していた。
 肉眼では捕らえ切れにくいため、人間である2人はスコープを用意していた。
 石動が言葉をこぼす。
 

「機械化してコントロール化に置いた悪魔か……それに悪魔を宿した三下どもか」

「あの……石動の兄貴も悪魔を宿しているんじゃ……」


 木暮の質問に一瞬眉を上げるが、石動は説明する。


「俺や葛葉キョウジの付き人みたいな奴は悪魔や神といった存在にコンタクトを取り、それらを宿して能力を行使する。
 だがな、あっちがやっているのは悪魔を呼んで無理やり宿らせたんだ……そうだな、松の木に桜の枝を接木して咲かせるくらい無茶な話だ。
 たとえ強い意志があって制御しても、最早人間の枠を外れ……悪魔になってしまうわけだ」

「そいつは……」

「人の数だけは腐るほど、溝に棄てるほどあるんだ……有効な手段といえばそうだ。
 ロシアの方も機械化しているからリミッター外した攻撃も行え、最後は特攻させている」

「機械化悪魔のこの行動は敵の予測に入っていない模様。
 被害甚大です」


 フリーダーが淡々と事実を述べていく……四肢がばらばらになった死体が転がっていく。
 その惨劇に木暮は、嘔吐した。
 修羅場を多く潜り抜けていてもそれ以上におぞましい光景であった。


「ひでえな……人間の業の深さって奴を思い知った思いですぜ」

「ああ、悪魔以上に悪辣な行為……地獄って奴はああいう奴らの為にしつらえたモノだと思うがな。
 実際、酷いもんだった」

「え!?」

「戯言だ、忘れろ」


 今回の衝突で勝利したのはロシアンマフィアのほうだった。
 無数の機械の残骸、悪魔の死骸が転がっていた。
 本来ならば消滅する悪魔だが、人間の体に憑依し、実体化の影響で死体が現世に留まっている。
 木暮達は、帰還していくロシアンマフィアを追っていく……。
 郊外の経営悪化して廃棄されたボーリング場までたどり着く。
 ここがロシアンマフィアが拠点にしているアジトだろう。
 周りを確認して入ろうとした時、声がかかった。


「あら、石動。
 奇遇ね」

「……アンタか。
 それに佐竹の旦那も一緒とは変った取り合わせで」


 ジェシカと佐竹もまた襲撃した悪魔の手がかりを追ううちにここまでたどり着いたようだ。
 佐竹は木暮の肩を叩き、なにやら話し込んでいる。
 ジェシカと石動も情報交換し終わった時、入り口からスキンヘッドの長身のロシア人が現れた。
 なぜか地球儀を持っている。
  

「へへへ、デビルサマナーか?
 俺様であって運が悪いな、そりゃ!」


 地球儀を回すと、周りの空気が変る。
 男が自慢げに言う。


「ドクターの自慢の結界だ!
 これでCOMPから悪魔を呼べまい!!」


 さらに地球儀を回して悪魔を呼ぶ。
 餓鬼、全身を縛った変態ゾンビことフェイスバインド、全身に穴をあけて南京錠をかけているゾンビ・パドロックが召還された。
 お世辞にも強い悪魔とは言い難い。
 石動は『機械化悪魔を頼るわけだ』と内心ため息をつく。


「ふははは、俺にであった不幸を……」

「サバトマ」


 石動は小角の憑依させ、その力を行使してジェシカの悪魔を呼び出した。
 妖精のように小さいシルフ、ドレスをきた女性……リャンナンシーを呼んだ。


「あれ、石動だ~おっひさ!」

「また貴方ですか……つくづく縁がありますね」

「ななな!!」

「お前は寝とけや!」

「ぐべ!」


 驚く隙に佐竹が飛び込み、パンチ一発でKOされる男。
 佐竹の睨みつけに怯え、薄情にも退散していく悪魔。
 COMPを奪い、初期化して回収する石動。
 ジェシカが石動の魔法に驚く。


「凄いわね……COMPの助けなしで呼べるの?」

「まあな……戦闘ではフリーダーを呼ぶしかないから使い道はあまり無いがな」

「ふうん……」

「話によると、死した仲魔を召還して戦わせる秘術があるそうだが……。
 人間には使いこなせないらしい。
 『死』という特性を色濃くもつ悪魔が使えるらしいが……」

「しばらく見ないうちに……成長したのね」

「ラームジェルグだけだと肉弾戦は強くなるがな。
 いまは役小角の助力も得たから術の研究もしている」


 そう言いながら武器防具を奪い、拘束する石動。
 折りたたみ式のナイフに槍、トカレフ1丁にマガジンが3ケース、ケプラーベストに鉄板を埋め込んだブーツが彼の武具だ。
 石動はノッカーを呼び、COMPはウーリの所に残りは事務所の倉庫にしまうように指示した。  
 石動は木暮と佐竹を外に残し、1時間しても出てこなければ風間に連絡するよう頼んだ。
 警察組織に連絡することは佐竹にとって気が進まない事でも、サマナー二人で手に負えない事態になればそれどころではない。
 佐竹は納得し、彼らの帰りを待つ事にした。












 奥では白衣を着た銀髪の老人が研究をしているようだった。
 貧相な体つきで異常に立派な鷲鼻とカイゼル髭がバランスを大きく崩しているようにも見える。
 石動達を見て驚く。


「な、何だ貴様らは!!」

「通りすがりのデビルサマナーよ、覚えておきなさい!」

『ディケイド乙』


 ジェシカが何処かで聞いた事のある台詞をいい、ラームジェルグが合いの手を入れる。
 フリーダーが研究者の名前を明かす。


「検索完了。
 彼は通称ドクターRと称される旧ソ連の研究者です。
 悪魔の軍事転用研究を行っていましたが、ソ連崩壊後はその技術を様々な組織に売り込むも成功していないとデータにありました」

「それをロシアマフィアが目をつけたわけか」

「私の研究を理解できん人間が多かった。
 だが、コレが成功すれば……だから邪魔をするな!
 ヨミクグツ!!」

「あれは、佐竹の親分さんを襲った奴ね」


 赤い鎧のような軍服をきた死人の兵隊。
 石動が思い出した。


「大正時代に陸軍かどっかが作った奴って聞いたな。
 ……どこから聞き出して作った?」

「我が同士、ラスプーチンが集めたデータから私が作った!!
 さらに……!!」


 機械が埋め込まれた悪魔が無数に現れる。
 石動は焦らずに喋る。


「機械化悪魔か……ジェシカ、奴らは考えがない分単調だが、リミッターを解除して限界以上に攻撃する。
 さらに躊躇なく自爆する!
 そういえば大正の葛葉狂死が同じような戦法をしているな……結構古風な技術なのか?」

「だまれ!!
 侵入者を殺せ!!」


 無数の敵が襲いかかろうとした瞬間、フリーダーが口から霧を吐き出す。
 敵の視界を阻害した所にジェシカが銃撃を放つ。
 さらにリャナンシーが魔法を唱える。


「タル・カジャ!
 今です、石動」

『石動、いくぜ!』

「ああ……虚空斬波!」


 空間が歪み、復元する力で敵をダメージを与える技は弱い機械化悪魔を打ち砕く。
 だが、敵の数は多い。
 自爆しようにも視界が悪く、味方のみにダメージを与えかねない状況だ。
 ヨミクグツは銃撃をばら撒く。
 さすがのジェシカたちも物陰に隠れ、盾にする。


「数だけは多いわね」

「機械化悪魔は自爆されると面倒だ。
 さらに、ヨミクグツは14代目・葛葉ライドウも苦戦するほどの存在だからな」

「相手はフォッグブレスを打ち破る手段が無い模様」

 
 フリーダーの言ったとおり、しばらく隠れているにも関わらず、霧を打ち消されていないところから間違いないようだ。
 単純な攻撃力ばかり偏重し、補助魔法を使える悪魔がいないようだ。
 ジェシカは戦法を決めた。


「じゃあ、フリーダーはもう一回吐いて更に視界を悪くして。
 私の仲魔も魔法で補助するわ」


 そういってシルフとリャナンシーは補助を限界まで強化を繰り返す。
 敵の防御力・命中率・回避率を弱体化させ、自分達の攻撃力を強化する。
 石動とジェシカは強化が終わるまで物陰から銃撃を繰り返す。
 

「単に能力を上げ、命令を聞くだけの人形だと悪魔には勝てんからな」

「そうね……強化・回復の手段がないのは大きなマイナスね」


 ジェシカ達はそういいながら敵を撃ち殺す。
 時々、決死の突撃や自爆を行うが、機械化悪魔の行動は無駄に終わる。
 だが、ヨミクグツ達が銃撃を掻い潜り接近した。


「排除スル……」

「格闘モードに移行します」


 フリーダーがストレートを小刻みに打つ。
 力を入れずに素早くふり抜き、目標に当たる瞬間拳を握る。
 的確な打撃を受けたヨミクグツの体が崩れる。
 そこにシルフが追撃をかける。


「ザンダイン!!」

「援護感謝します」


 ヨミクグツはシルフの魔法で吹き飛ぶ。
 そこにフリーダーは止めにブレードを手首から出し、鎧の隙間から刺し貫く。
 糸の切れた操り人形の如く、停止するヨミクグツ。
 ジェシカは雑魚から奪った折りたたみの槍をで突きかかる。
 古来、槍は武器の王様と呼ばれる。
 間合いが長ければ攻撃されずに倒せるからだ。
 しかし、ヨミクグツの装甲は硬く、相打ち覚悟で突撃する。
 ヨミクグツは、ジェシカの槍の一撃を受けながらサーベルで切りかかる。


「まず……」

「させるかよ!」


 石動はアセイミーナイフから斧形態『首狩りスプーン』に変え、ヨミクグツを打ち込む。
 弾丸のように吹き飛ばし、後続のヨミクグツにも衝突した。
 強烈な一撃で鎧にヒビが入る。
 ジェシカはフォローした石動に感謝を述べる。


「ありがとう」

「仲間だろ。
 しかし……あれでも殺しきれないか。
 元々死人だけにしぶとい!」

「そうね、一気に勝負をつけますか!
 シルフ!」

「はいな!」

「「大雷電忠義弾!!!」」

 
 シルフと力を併せて必殺の銃撃を発射する。
 電撃弾で打ち抜かれ、感電を起こしたヨミクグツ達。
 この隙を逃さず、再び石動は必殺技を放つ。


「虚空斬波!!」


 空間の歪みに飲み込まれ、圧殺されたヨミクグツ。
 フリーダーが周囲を確認し、敵部隊の制圧を確認した。
 だが、この隙にドクターRは逃走していた……だが、ひとまずロシアンマフィアの支部に壊滅的ダメージを与えたことは確かだ。
 残されたデータからヤタガラスも本格的にマークをするだろうから、勢力を拡大する事はなくなるだろう。
 


 だが……この事件は新たな波乱の始まりでしかなかった。
 石動達がロシアンマフィアを追跡していたころ、同時に中国マフィアのアジトに何者かが襲撃していた。
 120人近い悪魔を憑依させていた人間がいたが皆殺しにされていた。
 監視カメラでは巨大な爆発とともに映像が途切れていて詳細がわからない。
 検死の結果、天使系の憑依悪魔は灰になるまで焼き殺され、その他の悪魔は皆心臓に矢で打ち抜かれて死亡していた。
 だがそれでも中国マフィアは流入を続け、悪魔憑依を行っている。
 それに対抗するようにロシアマフィアも悪魔の改造を続ける。
 政府は、公安零課の装備の増強を行い、ヤタガラスもマフィア達の排除に乗り出す事になった。
 一方の石動達は、佐竹から報酬を手に入れた。
 木暮も佐竹から褒美を貰い、組の仲間の評価もあがったようだ。
 関東黒羽組も本格的な用心を行うようになった。



 

  








 おまけ


 DDS-NETのあるチャットのログ。


Yop>ピクシーたん可愛いよね。
    小さくて愛らしいところが。

落ち武者>ピクシーは小生意気可愛いww

メディナイト>彼女のディアに癒されました。

Yop>でも中々会えないんだよね。
    COMPにデビルアナライズで全ての記録を目指しているんだけど。
    不思議と悪魔がよってこないんだよね。
   
落ち武者>そりゃ、難儀だ。
     でもさ、エストマいらずでいいな……。
     俺なんかさ、むさ苦しい悪魔が絡んでうぜーうぜー!

Yop>邪鬼・オークの着ぐるみをしたら不思議と悪魔と認識されるみたいで。
    お陰で戦闘が苦手な僕でも探索できるわけだけど。
    でもピクシーたんに会えない……。

地獄の看護婦>私は、時々ロシアンルーレットでピクシー出す奴を見たことがあるね。

落ち武者>ひでえ!!

Yop>ぴ、ぴくしーたんを……に、にんげんじゃないよ!!
    そんな外道がいるなんて……。

地獄の看護婦>アタシも悪魔を酷使するけど、あんな可愛いのをいじめる趣味はないわ。

パック>そんな悲しい話よりピクシーたんのいいところを話そうぜ!

メディナイト>そうですね。

パック>ピクシーたんをいっぱい呼んで苛められたい!
    『私たちにやられるなんてなんて弱いの、クスクス』って!

落ち武者>俺は……全裸にされてイタズラされたい!
     オニンニンを柱がわりにピクシーたんにポールダンスをやってもらって……ピクシーたんにこすり付けられると思うと……!!

Yop>僕はとにかく会いたい、お話したい!

メディナイト>ディアをかけられたいです。
       お礼にディアラマハンをかけたい。

落ち武者>最後はオニンニンの先をピクシーたんの脚で電気アンマしてもらう!
   
パック>尿道を塞いで射精できないようにしてもらうんですね、わかります。

地獄の看護婦>皆変態だね。
       まあ、愛でたいのは解るけど。
       そういえば『ピクシーを愛でる会』の会長がまだ来ないねえ。


 Kyoが入室しました。


メディナイト>噂をすれば来ましたね、会長。

Kyo>どうした?

Yop>ピクシーたんの良い所を語っているんです。
    愛らしさと儚さがいいんです!

落ち武者>か弱い彼女たちからエロいイタズラをされたい!!!

Kyo>ピクシーはな……メギドラオンをつけさせないとな。
    火力満点でないとダメだな。
   
地獄の看護婦>その発想はなかった!

Kyo>くそ……また依頼が来た。
    緊急だからもう落ちるぜ、あばよっ。


 Kyoが退出しました。


メディナイト>さすが会長。
       我々より遥かな高みにいらっしゃる。

落ち武者>ピクシー道は奥が深い……!!





 Yop以外は元ネタわかるかな?
 Yopはモデルはアトラスのゲームの中にはいますが、普通の(?)オリキャラサマナーです。













 あとがき


メガテンといえばヤクザ。
というわけでマフィア編です……禍根も残ったままですのでこれからもでることもあるでしょうが。
再生(?)ヨミクグツも出ています……あのダークサマナーは今でも生きているのか、それとも死んだのかは不明です(生きていてもおかしくないおっさんだし)。
ドクターR……オリキャラですがドクタースリルと同郷。
むしろスリルをライバル視しているわけです。
佐竹さん強いって?
ご先祖はもっと強いから。




[7357] 第22話 (追加修正)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/01 08:02
 都内の廃ビルの地下……。
 そこには巨大な魔方陣が描かれ、祭壇が作られていた。
 そこに二つの死体があった。
 一つは、僧の木乃伊……いわゆる即身仏と呼ばれるものであった。
 もう一つは、死蝋化したもので、生前の姿がそのままの遺体だ。
 ローブを着た老人で、背中に二つの傷があった……まるで翼をもがれた天使のような……。
 この空間に生者は一人……豹頭の大男、オセのみであった。
 オセは2個の妖しい輝きを秘めた石を死体の口に入れる。
 怪しげな呪術を用い、彼が集めた生体MAGと、地脈からの力が遺体に注がれる。


「死をおびき寄せる魔石よ……!
 善でも悪でもあらざる存在を現世に招きたまえ……!
 乱れる現世の気によって招かれたまえ!!!」


 オセの長時間の儀式は続く。
 人の死骸の脂肪から作り出した蝋燭の炎がゆれる。
 呪殺して死んだ家畜の『汚れた血』を遺体に注ぐ。
 契約してその対価に奪い取った六人の人間の魂を生贄に捧げる。
 オセが今までデビルサマナー達に見つからぬよう必死に潜伏しながら稼いだ物をすべてこの儀式に注ぎ込む。
 
 
「おお……!!
 ついに……ついに魔人が現れる!!」


 三体の魔人が現れ、この世界は大いに乱れた。
 三体とも討たれたとはいえ、その残滓は残っており、オセの儀式によって新たな魔人を呼び出すことが可能であろう。
 オセの心のうちにあるのは一人のサマナーに対しての大きな憎しみのみ。
 それを晴らすためならば如何なる手段を用いる。
 そして、その成果は実った。
 黒い稲妻が奔り、漆黒の煙が部屋に充満した。
 その煙が晴れたとき、即身仏は目覚め、死蝋の遺体は新たな生を得た。
 即身仏は肉を全て失い、骨と衣のみになった。
 鈴を鳴らし、『死』という名の救済を齎さんとする。
 老人は目を開け、背中から黒い翼が生えた。
 砂時計を持ち、強大な魔力が老人の全身を包み込む。
 オセは歓喜の声をあげた。


「ふはははは……!!」


 もはや、狂気のみが支配される空間となった。
 そしてこの新たな脅威が生まれた事はオセ以外の誰も知る由もなかった。



















 石動の事務所に九鬼がやってきた。
 目的は石動に助っ人をしてもらうことのようだ。
 一通りの説明を終える九鬼。


「と、いうわけなんだ」

『代々政治家だった『成田 太一』氏の娘『静美』ちゃんの原因不明の昏睡をなんとかできないかということか』

「そういえば上司は知っていたんのか、そっちの道。
 そっちのほうが休むときの説得が楽だし」

「課長は元そちら側に関係していたので……。
 それはともかく、どこからか、聞きつけて依頼したようですね。
 石動君も術師として修行しているし、顔も広いから助力を依頼したいのですが」

「九鬼の旦那の頼みならいいですよ、今体開けていますから。
 太一氏には恨まれる事は多いかもな、政治家は恨まれる筋が多いからな」


 石動の事務所で九鬼からの説明を受け、依頼を引き受ける石動がいた。
 昔から呪いを飛ばされるケースが多い。
 先祖の恨み、本人が知らずに祠などを壊した恨みを受ける、逆恨みを受ける。
 そして本人の悪行の性で恨まれ呪術師や悪魔に呪われる事も多いのだ。
 対処方は呪いをそのまま跳ね返すのが主流だが、呪いをサマナーに移し変えて、サマナーが逆探知して追跡して正体を調べることもある。
 どのように行うかは流派によって違う。
 ちなみに、葛葉ライドウ(雷堂)は神道系、葛葉キョウジ(旧)は陰陽道(今のキョウジは修行していっぱしの術師になりつつあるが、まだまだ修行不足らしい)。
 九鬼の場合は忍者であるためか修験道の方が専門だ。
 石動は元々こだわりがないので様々な分野に手を出している……だが、役小角を憑依できるようになってからは呪禁道、修験道、道教、密教系の練習を増やし、戦力になっているのが現状だ。
 


「小角の知恵は借りられんが、知識のほうならば当てになる。
 それでなんとかできればいいのだが」


 まずは太平堂で装備を整える事にした。





「おやおや、坊主と九鬼先生とは珍しい組み合わせね」

「仕事ではちょくちょく組んでいるよな、最近」

「ですが、ここに来る時は一緒ではないですからねえ」

 
 太平堂の店主は相変わらず阿片を吸い込んでいる。 
 石動はよくも頭が馬鹿にならないもんだと思いながら注文した。


「杖を買いたい……威力はできればあればいいが、それ以上に魔力があったり防御力のある代物がほしい」

「坊主、宗旨変えか?」

「いや、術を使うときもあるからな。
 そっちの時は練習不足だから道具で補っておきたい」


 小角を憑依させた時は呪いの武器を使うのは危険だ。
 石動は、これを機会に杖を使おうと思い至った。
 店主は石動の前腕ほどの長さの霊木で削った棒を渡す。


「コイツなら魔力を集中させる効果もあるし、ルーンで彫っていて強度も万全よ」

「ありがたい、九鬼の旦那は?」

「手裏剣の補充をしておきたいですね」

「毎度あり」


 直ぐに欲しいものを手に入れた二人。
 掘り出し物を探したが、他に欲しいと思う代物はなかった。
 店主が石動の呪いの武器の調子を尋ねる。


「使い心地はどうね?」

「ああ、刀、斧、投具の三種類に変形できる。
 自分の意思で変形するから戦闘には使いやすい」

「それは凄いね。
 今度変形するところを見せて欲しいね。
 新商品の参考になるかもしれないね」


 戦局に応じて自在に変形できる武器があれば確かに便利ではある。
 だが、使いこなすのは難しい。
 サマナーならば武器の扱うセンスがある人間が多いから心配はないだろうが。
 フリーダーのスロットを入れ替えた後に店を出た。
 2人は依頼人の下へ向かった。











 依頼主の太一氏に面会を取り、静美の状態を見に行く二人。
 太一氏は中年にも関わらず細い体型を維持している。
 それも鍛え上げられた筋肉でできている。
 彼の黒く染めた髪と、知的な瞳を銀縁眼鏡で際立たせている。
 太一氏の顔色が悪い……もう何日も寝ていないようだ。
 静美のほうは美しい顔で眠ったままだ。
 点滴で栄養補給をしているが、このまま続くと問題である。


『(女子高生かあ……せっきーならフラグを立てて……)』

「これは……」

「ああ、小角の知識なしでも解るな。
 精神が肉体の奥に閉じ込められた状態か」


 静美の精神が悪魔が掌握しているようだ。
 静美の体内から人であらざる気配を感じた。
 石動は話を続ける。


「さて、これは厄介だ」

「義兄さんは、人間の精神を奪った悪魔が電脳空間に潜伏していた事件を解決したことがあるそうですが……」

「そっちのほうが難儀そうだがな。
 こっちは普通に彼女の精神の中にいるみたいだ。
 今の俺の技量じゃ精神に潜り込むことも、引きずり出すのもままならないからな。
 小角本人クラスの技量でなければな」

「となると……悪魔の助力ですか」

「そうだな……サイコダイバーもいないことも無いだろうが、どっちを探すほうが楽になるだろうか?」


 ロウヒーローの記憶で仲間が精神を囚われるという事件に見舞われた。
 それを救ったのは精神に入り込む事ができる能力者・サイコダイバーのお陰だった。
 平行世界であるここにも探せば見つかるかもしれないが……


「石動君、私は精神に介入する悪魔を探す……。
 君はどうする?」

「この世界にも人間の精神に入り込む異能力者『サイコダイバー』はいるはずだ。
 探せば見つかるだろうさ」

「では、二手に分かれましょう。
 精神世界に入り込める手段が見つかったら連絡をください」

「お互い気をつけよう……人生何があるかわからないからな」


 そう言って二人のサマナーは事件の解決の糸口を探すために二手に別れた。










 どちらのルートへいくかアンケートです。


・サイコダイバーを探す(石動ルート)

・悪魔の助力を頼む。(九鬼ルート)


 感想とともに投票していただければ幸いです。






















 現在のフリーダーの状態。


 毛蟲(フォッグブレス・ディアラマ)
 石蟲(アギラオ・マハブフーラ)
 翼蟲(リフトマ・トラフーリ)
 尖蟲(忠義の銃撃・電撃裏拳)


 前より強力な技が増えつつあります。
 また、衝撃以外(ラームジェルグがザンマを持つ)の属性技と銃撃攻撃・回復魔法・フォッグブレスとバランスが取れ、強力になっている。
 形態も女性型の人形になりつつあり、肌の色は陶器のような白色、髪の色は亜麻色、青い瞳を持つ。
 最近は、モー・ショボーやジェシカが着せ替え人形にして楽しんでいる。 
 感情らしきものが生まれつつあるが……。











 普段の九鬼のインストールソフト

・スキャニングセロ(ダークマップでも構造が理解できる)

・ギボ・アイズ(攻撃の対象が反射・無効化・吸収するかどうかを教える)

・ネオ・クリア(マッパー・見晴らしの玉と同じ効果で周りを認識できる……スロット二つ分)

・ハニー・ビー(オートマップで全階層を見ることができる)

 
 
 普段の石動のインストールソフト

・ガリバーマジック(移動する度に本人だけ回復する)

・Mrサプライズ(先制攻撃の可能性アップ)

・百太郎(バックアタックの防止)

・エネミーソナー(自分と周囲にいる敵のレベル差を認識できる)

・ムーンアダルト(満月の交渉時の成功率が上がる)



 普段のジェシカのインストールソフト

・ヒロえもんVer.2,86(アイテムゲット率アップ、また歩いている時にアイテムを見つけ、拾えるようになる)

・ダブルバリュー(交渉時のMAGの価値が増大)

・レディキラーズ(女性悪魔の交渉成功率が上がる)

・ムーンアダルト

・ダークマン(ダーク系悪魔と会話できる)



 基本的に普通の容量だとCOMPに5スロット分インストールソフトが入ります。
 石動は、単独(最近はフリーダーもいますが)行動が多いため戦闘を有利に進められるように念頭においている。
 小角の魔法はマッパーやライトマ(明かりをつける)等の細々としたものがそろっているために経費削減ができる模様。
 また、ラームジェルグ憑依時はダーク系の悪魔ともコミュニケーションが取れる。

 九鬼の場合は忍者のためなのか、基本的に探索系のソフトが中心です。
 隠密行動・索敵能力が長けているからそちらの系統のソフトは使わない。

 ジェシカは交渉中心のソフト。
 なおヒロえもんVer.2,86はライドウの思い出スキルとソウルハッカーズのヒロえもんを足した今作オリジナルのソフト。
 ヒロえもんでアイテムを稼ごうとするのがジェシカらしい。
 ただ、銃器で戦うのが中心であるジェシカは費用がかかりすぎるわけなのだが……。
 このようにインストールされているソフトは人それぞれである。
 ちなみに公安零課の『偽・悪魔全書』は、シンクロ召還用ソフト(スロット三つ分)、デビダス(未確認の悪魔でもアナライズ可能)、百太郎が搭載されています。








 ついでにCOMPの形をおさらい。

 石動は携帯端末型COMP(超小型パソコン)。
 音声でも操作可能である。

 九鬼は手甲型COMP。
 某救世主が持つようなアームガード型COMPよりも和装であり、防具の能力も高く、中に爪が仕込んである。

 ジェシカはブーツ型COMP。
 音声でも操作可能ではあるが、メインはステップ・タップを踏んで操作する。
 防具でもあり、武器としても使える一品。

 キョウジ(と九鬼の義兄)は銃型COMP.
 長き時を生きる錬金術師ヴィクトルが作り出した一品で、キーボードはルーン文字になっている。

 偽・悪魔全書は以前書いたとおり。

 雑魚が出した地球儀型は鈍器としても使えるし、地球儀としても使える。
 回した速度や触る箇所・力によって召還できる悪魔が違う……らしい。











 サマナー達のスタイルについても言及。


 石動は自身の特性上下級悪魔しか使用できない以上、サマナーの腕はあまり期待できない。
 フリーダーがついて改善したが、その育成は普通より手間がかかる上に悪魔合体とかはほぼ期待できない。
 戦闘においては数ではなく、質で補わなければならないが、フリーダーは新月時に弱体化するため注意が必要だ。
 MAGは交渉かノッカー等の弱小悪魔を使い走りにする程度にしか使わないため、生体MAGで換金するか、急ぎのサマナーに高く売りつける事が多い。
 葛葉キョウジは強力な悪魔を使役するためMAGの量に不安を覚える事もあり、時々、石動のところでMAGを買う事もある。
 石動は、ペルソナ使い・『IF』での仲間のガーディアン使いの立ち位置に近い。
 実際、戦力の足りないときの助っ人になることもある。


 九鬼はサマナーの技量は高度である。
 それ以上に忍者としての実力が高い……。
 四鬼の一角である金鬼、鞍馬天狗を目指す鴉天狗、猛将として名高い源義経といった強力な仲魔を使役できるのが強み。
 忍者だけに和風な仲魔で構成されている。
 総合的な実力では3人のうちではトップ。

 
 ジェシカは女性系悪魔を好んで使用する(例外はオボログルマくらい)。
 銃器を好んで戦い、仲魔との連携に長けている。
 悪魔を使役する技量では三人の中では一番だが、三人の中で女性であるし、それ以上に普通のサマナーである。
 つまり単体の戦闘力は低い(人間やめかけた忍者と守護霊使いを比べる時点で間違っているが)。


 ちなみに……ヴィクトルの住処である業魔殿は幾つもあり、平崎市にはホテル、天海市には豪華客船がある。
 今作品では無数の業魔殿を転移装置で飛び回っている設定(転移装置は大正時代に開発された)。





[7357] 小ネタ(アンケート待ちの状態での時間稼ぎともいう)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/26 23:16

 没ネタ(俺TUEEE)

 太平堂店主が見つけ出した一品が届いた。

「坊主!!
 約束の品だ!!」

「それは……?」

「将門の装備一式だ」


 この日本各地に将門公が用いたという強力な武具が遺跡や神社等に眠っている。
 それもたった一つではない、無数にあるのだ。
 ここで疑問に思う人間がいるだろう?
 なぜ無数にあるのだ……と。
 理由は幾つもある。
 本物の将門公の武具は幾つもある。
 これはありえない話ではない。
 闘いに明け暮れる以上、予備を必ず必要だからだ。
 もう一つの理由は将門公には影武者がいた……それも腕利きが複数。
 その鎧もまた彼らが死した後、将門公の加護を受け強い力をもったのである。
 最後の理由は、たとえ本物でなくとも、高性能の鎧で将門公を奉る神社に奉納された武具は信仰の力を注がれ、将門の武具に相応しいものに昇華されたのだと。
 ここに届けられたのはいずれかは不明だが、将門の力を持った武具であるのは確かである。


「これで……いける!!」

「どういうこと?」


 ジェシカが石動に問いかける。


「関八州の危機……そして将門公の武具。
 これで条件はそろった……将門公の力を借りることを!!!」



 

 ……なんてことを一瞬考えました。
 将門シリーズが色んな場所で見つかるので、その考察を兼ねて。
 でも、シンクロ召還なり、大掛かりな儀式で将門公呼べそうだし(関東の危機のときは)。
 そうでなくても某14代目とか某カツオカットの人は将門公の力を借りれたし。
 だから石動がやる意味はあんまり……それにこういう展開はちょっと……と思ったので没。













 『氷川は二度死ぬ?』(それを言ったらキョウジ&石動は……)


 石動は裏路地を歩いていたとき、戦慄した。
 顔をあわせるはずの無い存在をみた。
 ロングヘアーに紺色のスーツを着ている美女。
 体の凹凸はしっかり出ており、細い足が魅力的に写っていおり、手首には数珠を巻いている。


「(氷川……だと!?)」


 氷川……かつて悪魔を予備、受胎を起こし、新たな世界を創世しようと目論んだ女。
 だが、氷川は石動の手で葬っている。
 他人の空似では片付けられないほどそのままだ。
 だが……印象が異なっていた。
 かつての彼女は、無機質で機械のような印象であった。
 だが、目の前の女は野性的な中に知性を感じさせ、全身から覇気が出ている。
 石動は目の前から通り過ぎようとする女に声をかけた。



「氷川……なのか?」

「……この身体のことを知っているのか?」


 氷川?が立ち止まり、逆に問いただす。
 美しい女性から荒々しい男性的な口調でアンバランスな印象をかもし出す。
 石動は彼女は氷川であって氷川でないと確信した。
 そして彼女の中に誰がいるのか……その心当りが見つかった。


「俺が殺した」

「ほう……」

「……久しぶりだな、氷川。
 いや、はじめまして葛葉キョウジ」

「……」


 氷川……いや、葛葉キョウジの目の色が変わった。
 葛葉キョウジ……だが、アリス事件の時のキョウジではない。
 彼がかつて葛葉キョウジだった慣れの果てだ。
 ダークサマナーに殺され、彷徨い、自身の身体に帰れなくなったために手頃な肉体を見つけ、転々とする存在だ。
 キョウジと話すうちにその事を聞いていた石動は、彼女の正体を見抜くことができた。


「お前と敵対するつもりはない。
 あっちのキョウジと似たような境遇でな。
 それで話に出てな……」

「お前もか……だが、奴は口が軽すぎる。
 まったく……」


 キョウジ……氷川の肉体を扱っている方を便宜的に氷川と呼ばせてもらう。
 氷川はキョウジの名を聞き、殺気をひとまず収めた。 
 理想の身体を求めつつ、ダークサマナーと戦う日々のようだ。
 彼の活動はクズノハが把握しており、彼の助けになっているようだ。
 死したといえど、現代の指折りのサマナーであり、葛葉四天王と遜色の無い活躍をしている彼を戦力になる。
 だから、葛葉は氷川への情報提供や戸籍の操作を行っている。
 氷川は理想の肉体が見つからず、複数の肉体を使い分けているらしい。
 能力、その人間がもっていた権力・社会的地位などで使い分ける。

 
「今は、依頼の帰りでな……」

「そうだったか。
 俺としては氷川が生きていないのなら安心だ」

「俺はそろそろ帰らせてもらうぜ、あばよっ」


 そう言って氷川は去っていった。
 



 出せそうでなかなか出せる機会がないのでここで小ネタでだします。



[7357] 第23話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/27 21:06

 石動が電話を行っていた。
 葛葉キョウジに頼んでクズノハのネットワークで聞いてもらったり、ダークサマナーよりの情報屋から情報を仕入れるなどしたが……結果は虚しく終わった。
 少し疲れ、代々木公園で休憩を取る事にした。


『……うまくいかないもんだな』

「まあな……悪魔探しよりは楽かと思ったがな。
 人口も多いし、隠れる場所も多いわ」

『夢に潜り込む悪魔や精神を干渉する悪魔は探せば割といるがな』


 石動とラームジェルグはため息をつく。
 その時、背後から気配を感じた。
 注意深く感じなければ気のせいと切り捨てるほどか細い気配。
 だが、その気配は今まで石動が歩んだ人生の中で一番異質に感じたものだった。


『どうした……?』

「後に……誰かいる」

「よく気がついたな」


 老成した男性の声が響く。
 石動は、振り返った時、一人の老人が座っていた。
 真っ白な髪と髭を長く伸ばし、俗世間とは超越した雰囲気をかもし出していた。
 石動は服装を見て彼の服が道教の道服であったことに気がついた。


「……何のようで?」

「探し物があるのだろう?」

「まあな…」

「探し人がいる場所を教えよう。
 その代わり、わしの依頼を受けてもらう……なに、今すぐ受けろとは言わん。
 依頼は後でおって伝える」

『おいおい……怪しいぜ?
 只者じゃないし、厄介ごとふっかけるぜ』

「見つけられたら引き受けよう」

『おい!』


 石動は老人の条件を飲んだ。
 気まぐれなのか、深い意図があったのか……?


「それは助かる……吉祥寺の廃病院がある。
 そこで細々とサイコダイバーの能力を使って小金を稼いでいるはずじゃ」

「裏家業をやるならそういう場所で過ごすのが妥当か……。
 わかった行ってみる。
 だが、依頼を受けるときは……」

「適当な時を見計らって連絡する、若きサマナーよ」


 連絡先を教えた覚えはないが、どうやら石動の連絡は心配がないようだ。
 石動は吉祥寺に向かった……。








 廃病院前に到着し、フリーダーを呼び出す。
 更にCOMPから病院の情報を引き出す。


『おいおい……唯の廃病院にいるのか?』

「……どうやら唯の病院じゃないらしい」

『なんだって?』

「1990年代、堕天使アリオスが院長に成りすまし、人間を攫っていたそうだ。
 もっとも、当代の葛葉ライドウに討ち取られたそうだ。
 おそらく、吉祥寺に出没した陰陽法師・道満と関連があると考えられるが……」

『曰くつきの物件によく住み着くな』

 
 ラームジェルグは、廃棄され、汚れた病院を眺めながら言う。
 そこにフリーダーが口を挟む。


「一度、事件が起こって周りの注意も甘くなることを見越しての事だと考えられます。
 マスター……」

「……わかっている」


 病院が異界化し始めた。
 サイコダイバーが本当にいるかどうかわからないが、内部に何かあることだけは確かだ。
 石動達は異界化した病院に踏み込んだ。







 早いですが(文章も短いですが)、アンケートを締め切らせてもらいます(マイナーだから多くあつまらないだろうし)。
 というわけでサイコダイバー編で。
 



[7357] 第24話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/23 23:18
 廃病院の院長室に男と女がいた。
 男のほうは、白衣を着た小柄な男性で目が悪いのかサングラスをしていた。
 どこか東洋人離れした彫りの深い顔立ちで、もう少し身長が高ければ完璧だったかもしれない。
 もう一人はまるで西部劇の貴婦人のようなダークグリーンのドレスと帽子をかぶっている。
 どれもイタリア製の高級品で、黒い髪の女性で恐らくスラブ系の血が混ざっているのだろう。
 奇妙な文様で描かれた傘を突きつける女性。



「貴方は、人の頭の中を弄くれるらしいわね……。
 (データ通りなら『組織』にとって危険人物ね)」

「お、俺の力は人の治療のために……」


「(…野放しにしてると組織の邪魔になるわね。
  でも、組織の力にすれば功績になる)
 わが社の為に協力していただけないでしょうか?」

「俺に何をさせるかしらんが……俺の意にそぐわないことしかやらせないらしいからな」

「大した事を頼まないわ。
 おまえは人の頭の中に入り込めるのでしょう?
 だったら人々の気分を良くさせてもらおうかしら?」

「?」

「そうね……夢ね。
 夢の中に入って気持ちいい夢を見させるの」


 今、思いついたかのように言う女性。
 その動きは演劇のような作り物めいた動きだ。
 その言葉に困惑するサイコダイバー。


「な・・・それは・・・」

「出来ないの?」

「そうじゃない……夢を弄るのは非情に大変なんだ。
 …疲労もすごいし……」

「出来るならいいの、やりなさい。
 人々のためにもなるし……」

「…判ったよ、言うことを聞くよ……とでも言うと思うのか?
 あんた、ファントムソサエティの一員だろ?」


 この直後、女性の目の色が変わる。
 さらに、周りの風景が変わり、異界化した。


「あら……知っていたのね。
 それで返事は?」

「………断る……ッぐぅ!」


 そういった白衣の男を殴り倒す女性。
 サングラスが遠くに飛んでいく。
 見た目より筋力はあるようだ。
 男は抵抗しようとするが、闘いに慣れていないのか思うように身体を動かせない。
 さらに女性が倒れた男性の髪の毛を鷲掴みにして脅しつける。 
 その時の彼女の目は虫けらを見るような酷薄なものであった。


「ここで処刑してもいいのよ?
 ……さてどうするの?
 従属か死……」

「……」

「断るなんて……まあいいわ。
 逆らうなら死になさい」

『そいつは困るぜ』


 人ならざる者の声を聞き、反射的に男を突き飛ばし、後へ下がる。
 女性の頭があった空間に歯車状の戦輪が飛来した。
 余裕の表情が歪み、睨みつける女性。
 戦輪の主は勿論石動であり、彼の背後に死した西洋騎士が傍らに立っている。
 横にフリーダーが控えていた。


「サイコダイバーの……そう、そこのアンタだ。
 精神を犯された人間がいる。
 アンタの助けが必要だ……手を貸してくれ」

「ああ……君は一体?」

「フリーのサマナーだ」


 女性をまるでいなかったかのように振舞う石動に激怒した。


「貴方……私を舐めているわね」

「……まだいたのか?」

『もうちょっと若い女の子だったら……』

「いいわ、蠅は纏めて始末してあげる」


 そう言って傘を広げ回転すると彼女の前に悪魔が現れた。
 炎の鼠である『火鼠』が二体、紫色の鏡の怪異『ムラサキカガミ』、死霊の塊である幽鬼『レギオン』。
 さらに地獄の業火で永遠に肉体を焼かれ続けた「地獄」を意味する名を持つ悪霊『インフェルノ』。
 最後に巨大な骸骨……『がしゃどくろ』が現れた。


「ダークサマナーにしては……だな」

「マスター、戦闘員は我々だけです。
 気をつけていきましょう」


 
 荷物の一部をサイコダイバーに投げ渡す。
 サイコダイバーはその意図を理解し、後方に下がった。


「私はマヨーネ」

「それ以上は結構だ、ファントムサマナーの下っ端。
 どうせ直ぐに忘れる」

「……死ぬ直前になってもそれが言えるかしらね!!」


 そういってマヨーネが言った直後に、サイコダイバーが行動に出た。
 石動が投げ捨てた荷物の中の無数の米袋をレギオンに投げつけた。
 三角、四角の木綿袋に入った米に当り、レギオンは苦しみながら消え去った。
 無論、唯の米ではなく、『施餓鬼米』であった。
 『施餓鬼米』とは、亡くなった人間が、女性ならば三角、男性ならば四角の木綿の袋にいれたものである
 『施餓鬼米』はお盆で使われる(曹洞宗では用いられないらしい)。


「な……!!」

 マヨーネは不意をつかれ動揺した。
 施餓鬼(せがき)とは、仏教における法会の名称である。
 六道輪廻の世界にある内、死後に餓鬼道に堕ちた衆生のために食べ物を布施し、その霊を供養する儀礼を指す。
 サマナー達が使っている『施餓鬼米』は特に功徳を積んだ僧の法力が込められ、彷徨う悪鬼悪霊の類を祓う力を持っている。
 扱い方さえしれば無力な人間でも扱える道具であり、サイコダイバーでも無論扱えるのだ。
 石動にとって物理反射魔法を扱うレギオンは厄介であるため、どうにか排除したかった。
 その意図を読み、サイコダイバーは悪霊を倒す事に成功した。
 さらにその隙に乗じて石動とフリーダーが攻撃する。
 アセイミーナイフを妖刀ニヒルに変形させ、豪快に一閃する。


「虚空斬波!」


 空間が歪み纏めてなぎ払われた。
 特に魔法を反射できるが、物理攻撃は苦手であるムラサキカガミは空間の復元の際の膨大な圧力に耐え切れず、圧壊した。
 さらにフリーダーが魔法を唱えた。


「火炎タイプの悪魔を確認。
 広域範囲魔法で攻撃します。
 マハブフーラ」


 以前より強化された氷結魔法と石動の一撃で蓄積したで火鼠やインフェルノはひとたまりもなく、そのまま消滅した。
 残った『がしゃどくろ』とマヨーネは氷結魔法の影響で身体が思うように動かせない。
 それでも身体を動かし、マヨーネは魔法を唱える。


「ムドラ!!」


 呪いの言葉が大技を放った石動に飛ぶ。
 だが、氷結された状態ですぐには放てなかったのが石動にとって幸いだった。
 石動は無造作に手で振り払うと呪いが消滅した。


「な……呪具なしで防ぐなんて……貴方はそれでも人間!!?」

「うん?
 お前の呪術が未熟だったのさ」


 実際は憑依を解除し、小角を憑依させて呪いを防いだ。
 分身とはいえ、日本最古の呪術師は伊達ではない。
 呪殺魔法を完全に防ぎきり、マヨーネに更ならる動揺を与える。
 フリーダーが『がしゃどくろ』に接近し零距離から魔法を放つ。


「アギラオ」

「があああ!!」


 炎が燃え移り、転げまわる『がしゃどくろ』に非情の追撃をかけるフリーダー。
 腕を変形させて銃弾を発射する。
 なす術もなく『がしゃどくろ』が射殺された。
 一分足らずで手勢を全滅させられたマヨーネは後に下がる。


「こ、こんなことって……ガキのサマナーにやられてから……こんなことばかり!!」

『そんなもんさ』

「復讐の為に家族を人質に取ろうとしたら変なサラリーマンに不覚をとって……」

「どこか聞いたことのある話だな」

「力をつけたのに……こんな若造に!!」

「逃げてもいいぞ。
 用事を優先させたいからな」


 石動は追跡の構えを解いた。
 無論、それでも襲い掛かるなら容赦なく殺しにいく心構えだが。
 異界化が解けた……マヨーネが歯軋りしながら窓に手をかけた。


「貴方の顔は覚えたわ……必ず復讐してあげる!!」


 そういって窓から飛び降りて逃走した。
 周りの危険がなくなったのを確認して石動はサイコダイバーに話しかける。


「援護を感謝する」

「いや、助けられたのはこっちのほうさ」


 そういいながらサングラスを回収し、装着するサイコダイバー。
 石動はその様子を見て言った。


「それで『見えなくしている』のか?」

「解っているみたいだな……サイコダイバーは精神に干渉できる。
 もぐる時の進入路を探す能力を持つと人間の表層思考を勝手に読み取ってしまう……それは日常生活では大変不便なんだ。
 でも、コイツでそれを抑制しているんだ」

「なるほど、納得できた。
 改めて依頼するが……ある令嬢が昏睡状態が続いている。
 おそらく、悪魔が精神を掌握しているのではないかと推測される」

「解ったよ……君は命の恩人だからね。
 ロハで引き受けるよ」

「いや、ここは高く吹っかけてもいいのだがな。
 払うのは俺じゃないからな」

「ならいいけどね。
 やっかいな奴に取り付かれていなければ良いけどね」



 石動達は九鬼に連絡をし、サイコダイバーの協力を取り付けたこと教える。
 九鬼のほうではまだ悪魔の捜索中だったようだが、成功していないようだ。
 成田邸で合流するように伝え、電話を切った。
 翌日の正午にサイコダイバーの力で静美の精神に突入する事になった。




[7357] 第25話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/28 15:30
「さあ、ついたよ」


 サイコダイバーはついてきた九鬼達に声をかけた。
 気がついたら白い空間が広がり、複雑に入り組んだ迷宮にたどり着く。
 九鬼と石動は周りを見渡す。


「ここが静美さんの精神世界……」

「私も長く生きてきましたが、精神に入るのは初めてです」

「俺もだ……生憎、肉体専門でな」

「ふん……面妖な」

「周囲に敵の存在は確認できません」


 金鬼と鴉天狗は驚きを隠さないで周りを触り、義経は注意深く周囲を警戒する。
 フリーダーも索敵しているが、敵は近くにはいないようだ。 
 サイコダイバーは慣れたもので、周りをキョロキョロと見渡すことをせず、帰り道を確保するように細々と準備をしている。


「精神世界は現実世界とは法則が違う。
 いわば精神の主が創造主だからね、天地創造も思いのままさ。
 酒池肉林も永遠の繁栄の精神の中ではできる……だから俺の仕事が依頼を受けて様々な注文がつけられるのさ。
 それに精神疾患の治療も外からやるよりは手間はかからない。
 もっとも、危険も大きいけどね」
 
 
 サイコダイバーは準備をしながら精神世界の説明をしていく。
 そんな中、石動は警戒しながら思考の海に潜っていた。


「(まるで夢の中で見たのと似ていたな。
  あれは俺の精神に語りかけたものか?)」

『ぐずり の ややこ を 泣きやませ……』

「なんだ、コイツは?」

「わらべ歌か?」


 金鬼と鴉天狗はどこからとも無く聞こえる歌を聴いた。
 どこか悲しげな調子で歌われる歌に耳を傾ける。


『地べた に 盛られた まるい月……』

「耳障りな……」

「どこから聞こえる……?」

「うーん、患者の声とは違うね」


 サイコダイバーは注意深く歌を聞きつける。
 不快感を表す義経と声の出所を探る石動。
 歌はそのまま続いている。


『喰わせて ややこ を 泣きやませ……』

「声はあちらから聞こえます。
 そこから邪悪な気配が感じます。
 進んでみましょう」

「僕はよしておくよ。
 こんな大人数で精神世界に踏み込んだことが無いからね。
 何が起こるか怖くて仕方ない。
 しっかり帰り道を確保しているから行って来て。
 それに、悪魔退治はあんた達の仕事だからねえ」


 サイコダイバーは、そう言って皆を見送った。
 九鬼の言ったとおり、進むことにした。
 進むごとに悪魔が現れる。
 周りの風景が洞窟の中に変わる
 邪悪な思念から作られた悪魔の偽者いわば『悪魔もどき』である。
 襲ってくる敵は、巨大なバッタのような蟲で、前足の爪は硬く、時々顔面を仮面のように覆って守ることがあった。
 また、編み笠を被った異形の人型が投げ針や匕首で襲い掛かる。
 義経が亜人を踏み台にして八艘跳びで巨大蟲を翻弄する。
 フリーダーが電撃を纏った裏拳を叩き込む。
 電撃は周囲の敵に拡散し、感電したところを石動が止めをさす。


『お空の かか様 見ておるぞ……』 

 わらべうたは歌われ続ける。
 周りの景色が変化した。
 金色の壁に囲まれ、金の胞子らしきものが飛び交う、生き物の体内に入ったかのような錯覚を覚える。
 歌の聞こえる場所へ向かい続けるとまた悪魔もどきが襲い掛かる。
 巨大な蜘蛛の胴体と美女の上半身が合わさった女郎蜘蛛、芋虫と女性が合わさったオキクムシ。
 蜘蛛のように巣を張り、四肢が刃物になっているアルケニーが襲い掛かる。
 いずれも昆虫、またはそれに近い悪魔が襲い掛かる。
 フリーダーの腕が変形し、機関砲に変わった。
 彼女は悪魔たちを容赦なく撃ち抜く。
 スコールのような銃弾の雨でオキクムシと女郎蜘蛛は蜂の巣になったが、アルケニーは銃に耐性があるらしく、果敢にも向かってくる。
 だが、金鬼が剛力をいかした一撃を脳天に見舞い、頭部を柘榴のように飛び散らす。

『お空 が えぐれりゃ かか様の……』
 
 石動達は仲魔達と連携しながら敵を蹴散らし、奥に進んでいく。








 最深部にたどりつくと、全裸の女性……静美が水晶の中に閉じ込められている。
 周りは金色に輝いているが、また変化している。
 巨大な円盤の上にいて、周りの壁はいつの間にかなくなり、広大な空間になっていた。
 その周りを必死で削ろうとする存在がいた。
 邪悪な笑みを浮かべる道士服の男、全身を黒い毛で覆われた犬に似た獣が噛み付き、牛の頭からそのまま人の足を生やした怪物が黒い液体を吐き出していた。
 異形の怪物は歌を歌い続ける……彼らが歌を歌っていたようだ。


『やわこい お乳 で 眠れるぞ……』

「これは……」

『たたたっくん!オルフェノクがッ!!』

「お前は少し黙っていろ」


 深夜の特撮に出てきそうなグロテスクな怪物にたいして戯言を言うラームジェルグを石動は無視して観察を続ける。
 そして、酷似した怪物の名を呼ぶ。


「三尸だ……!!
 大きさこそ違うが似ている」

「確か、道教に由来するとされる人間の体内にいる虫でしたか?」


 九鬼の言葉に頷く石動。
 小角を宿して以来、その方面にも詳しくなった石動は補足する。


「以前、心霊治療の事件で見たことがある。
 三虫ともいって、大きさは二寸といっていたが……どれも2メートル近くあるな。
 人間が生れ落ちるときから体内にいるとされ、庚申の時に体内から抜け出し天帝にその人間の罪悪を告げ、命を縮めると言われている」

「ですが……」

『ややこ 泣かすな かか様に……』

「ああ、毛色が違う。
 アレは静美嬢の精神を喰らおうとしている」


 静美は、水晶の中に閉じ込められてのではなく、立てこもっていると状態といっていいのかもしれない。
 三尸が静美を喰らおうとするが堅牢な水晶はそれを阻んでいる。
 だが、徐々に削られている以上、安心はできない。
 石動は、三尸を霊視してさらに分析する。


「恐らく、虫だな」

『見たままかよ!』


 ラームジェルグは石動がボケたのかと突っ込むが、石動の意図は別にあるようだった。
 石動達に気がつかず、虫達のわらべうたは、続いている。 


「そうじゃない。
 虫……それに準ずる存在の思念を加工したものだ。
 恐らく蟲毒法をアレンジした手法か?
 だが……それをやってのける存在は一体……」

『はらわた 刺されて おっちぬぞ……』

「石動君、奴らを倒せば彼女を解放できるのですね」

「ああ、昏睡状態になったのは奴らから身を守るためのようだ。
 原因を排除すれば閉じこもる理由がなくなる」

『結局セオリー通り元凶を倒せばいいんだな』


 ラームジェルグは結論を言い、腕を振り回す。
 九鬼を武器を出す。
 精神世界であるため何でも出せるが、自身が使い慣れた物のほうがイメージしやすい。
 正体が呪の類だが、外見を似せているため便宜上、三尸……道士を上尸、獣を中尸、牛脚を下尸と呼称する。


『はらわた 斬られて おっちぬぞ……』


 わらべうたが止まった。
 三尸達は石動達の殺気に気がつき、石動達を迎え撃つつもりのようだ。
 金鬼が棍棒を下尸に振り下ろす。
 不気味な悲鳴を上げながら吹き飛ぶ。
 中尸が吼えると、追撃しようとした金鬼が急に停止した。


「な、なんじゃこりゃ!!」

「麻痺効果のある魔法でもつかったのか?
 俺が治す……パララディ」


 小角を憑依させた石動が回復魔法で治療する。
 フリーダーが同時にフォッグブレスを吐き出す。
 視界が悪化して戸惑う三尸たち。


「虫けらを踏み潰すのはな……楽とはいえ、気が進まん」

「よぉおおおおくも……わぁを上から……見下すのかぁ!!
 わぁは神なのに……」


 嫌悪感を出しながら八艘跳びを行う義経。
 奇怪な声をあげながら攻撃しようとするがなす術も無く踏みつけられた。
 三尸達を踏み台にして飛び回り、最後に下尸に蹴りつけて石動達のところに戻った。
 ダメージを与えたが、中尸にはそれほど効いていない……物理攻撃に体性があるようだ。
 鴉天狗が羽を豪快に羽ばたいて衝撃波を飛ばし、九鬼が脇差で上尸を斬りつける。
 

「旦那、中尸モドキは後回しだ!
 物理攻撃が効きやすいほうから始末してくれ!!」

「解りました、石動君!
 フリーダー、援護を!!」

「了解」


 フリーダーは腕を変形させて銃弾をばら撒く。
 九鬼は上尸は道士に似ており、魔法を使う可能性があると思い、九鬼の連撃を上尸に見舞う。
 案の定、上尸は九鬼達に呪いを飛ばす。
 無数の蠅が集り、呪いの毒で全身を腐らせようとしていたが……


「なぁいとぉけええええ!!」

「それは予測済みだ……テトラジャ!!」


 石動が呪殺対策に結界を張り、蠅の呪いを防いだ。
 そのことに狼狽する上尸に六角棒を振り下ろす鴉天狗。


「山降し!!」

「わぁたじにぃ逆ら……うがあああ!!」


 泰山がそのまま落下したかの如く勢いよく振り下ろされた一撃で上尸の頭部を打ち砕かれた。
 その直後の隙を狙って中尸の口が開き、噛み砕かんとするが、金鬼がそれを阻む。
 左手を突き出し、腕を中尸に噛み付かせた


「隙だらけだぜ、若いの」

「う……不覚!!」

「まあ、コレはこの四つ足のカンがいいからな。
 コイツは俺が遊んでおいてやる。
 もう一匹を始末しな」


 金鬼は筋肉を収縮させ、中尸の牙が抜けないようにした。
 さらに棍棒を持った利き腕のほうを棍棒を手放し、中尸を押さえつけた。
 必死に振りほどこうとするが、鬼である金鬼の剛力から逃れられない。
 義経がしなやかな身体のバネを活かし、一気に接近し、何度も下尸を斬りつける。
 傷つきながらも必死に逃れようとし、後方に下がっていた石動まで誰もおらず、逃げ道になると下尸は判断した。
 前の連中は圧倒的な武力を持っているが、後の奴は術師で、弱いに違いない。
 人質にするべく飛び掛るが……


「生憎、武器でのやり取りのほうが専門だ……!!
 避けられるなら避けてみろ!!」


 石動が一見無造作に杖を突く。
 だが、本来の間合いより4,5センチほど離れているにも関わらず、大砲の撃たれたかのように吹き飛ぶ。
 これは如何なる技法なのか?
 棒術に『焔消し』という技法がある。
 棒を突いた衝撃で、松明の明かりを触れることなく消滅させる奥義で、真の達人が行えば棒の先から三間(一間=約1.81mなので約5.43m)離れた蝋燭を消すという。
 石動が行ったのは正にそれであろうか?
 予想外の一撃を受け、身体が後に下がる下尸。


「止めです!」


 九鬼が脇差を一閃し、足と牛頭を切り離す。
 さらに、義経が牛頭を蹴り飛ばす。
 金鬼が押さえつけた中尸を力任せに下尸に投げつけた。
 中尸の重量と勢いで下尸の頭部が潰された。
 石動はラームジェルグを憑依させ、最後の締めくくりをする。


『よっしゃ、いくぜ!!』

「これで終わりだ……ザンマ!!」

「鴉天狗お願いします!」

「承知しました、大殿!!
 真空の刃よ!!」

「わぁは……わぁは……」

 二つの衝撃波が中尸を巻き込み宙を舞う。
 全身が傷だらけで満身創痍の下尸。
 止めにフリーダーが電撃を纏った拳を叩きつけ、少女を苦しめる悪鬼はMAGを撒き散らし、消滅した。
 九鬼はほっと一息ついた。


「終わりましたか……」

「中々骨だったぜ」

「弱かったがな」



 九鬼と金鬼と義経は口々に感想を述べた。
 鴉天狗は力を消費しすぎて肩で息をしており、声が出せない。


「フリーダー、周りの残存勢力がないか確認してくれ」

「了解しました」


 フリーダーに周りの敵の脅威がないか確認した後、石動達はサイコダイバーの元へもどり、現実世界に帰還した。
 帰還後、すぐに静美は目が覚め、大いに喜んだ太一。
 悪魔によるものであり、もう心配が無い事を告げ、報酬を後で振り込むことを確認した後、九鬼達は成田邸を後にした。























 その日の深夜……
 武蔵野晴明神社の奥で一人酒を注いで飲み干す人間がいた。
 服装は僧の着るような質素な法衣……だが、洗っておらず、垢や泥がところどころについている。
 髪も伸び放題で、髭も生やしているが、その瞳は強い意志が込められ、唯の乞食坊主ではない。
 明かりは手元の行灯のみ……2人の人影を見て、老人は嬉しそうに言い放つ。


「……ほう、ここを探り出したか」

「さて、なぜこの事件を起こしたか説明願いますか、黒幕?」

「私も聞きたいですし。
 さて……名前を教えてもらえませんか?
 『黒幕』や『お前』では呼びにくいですから」


 小汚い老人は顎に指に当てながら薄ら笑いをする。
 気まぐれか快く名前を名乗った。

「ふむ……ワシは道摩法師といえばわかるじゃろ?」

「道摩法師……まさか蘆屋道満!?」


 九鬼は驚く。
 平安時代の陰陽法師がこの現代に存在するからだ。
 語りにしては壮大すぎる上に、優れた呪法はまさしく道摩法師の名に相応しい。
 だが、石動は動じないで次の質問を行った。


「だが……聞いた話だと、当代の葛葉ライドウのデビュー戦で華々しく散ったと聞いたが?
 叔母が怯えていたからな、よく覚えている。」


 吉祥寺で悪魔を召還し、多数の犠牲を出たが、ライドウの手で悪魔化した道満を打ち倒した。
 道満……ここでは倒された方と区別するために道摩法師と呼ぶ。
 道摩法師は、苦笑いしながら言った。


「アレはな、特別性の式神だ」

「確かにな、皆本物と認識したほどだ」

「それだけじゃない……」


 その笑みは大きな悪戯に成功した悪童のようであった。
 石動は、無言で続きを促した。


「ワシに似せ、能力もそれなりにして偽の記憶を埋め込んだ」

「偽の記憶?」


 道摩法師は酒に満ちた酒盃に呪を唱えると、水面に過去と思われる光景を映し出した。
 平安貴族と道満が口論が行われていた。





「なぜ失敗したのじゃ?」


「……」

「礼はお主の言うとおりはずんだはずじゃ」

「もちろん、わしは手はず通りに事を進めた…」

「おお! ではなぜ失敗した?
 お主が引き受けてくれたのだ、もう兼家の命は無いも同じだったはず!!」

「……晴明のヤツだ」

「なに!」

「わしは術を行い、式を飛ばした。
 しかし、誰かが邪魔したのだ!
 わしの式神を落とせる者……晴明以外には考えられぬ!!」

「……」

「兼道殿、この話は無かったことに!」

「な、なんと!
 そ、それでは……」

「金は返す!
 …それとも晴明相手に戦うおつもりか?」

「い、いや…そ、それは!
 お主が勝てぬというのであれば、今の世に…」

「式の飛ばし合いとなれば、それこそ命がけになる。
 金よりも命惜しければ、今回は引くしかあるまい。
 憎っくきは安倍晴明、いつかきっと…!」





 さらに時が流れ、周りの部屋の様子から現代と推測された。
 現代に蘇る道満が笑う。


「くっくっくっくっく…ようやくだ…。
 一千年か…時代が移れば別の陰陽道が出てくると予見し、我が別心を封じておいたが…ついに叶った。
 この身が真に蘇るとは素晴らしきことよ!
 悪魔召喚プログラム…我が世の呪にまさるとも劣らぬ術よのう。
 さて、怨めしきは晴明であるがはたしてきゃつは転生しておるのか…?
 判らぬ事が多すぎる。
 まずはじっくりと力を付け…この世界を乗っ取ってやらぬとな。
 地獄絵図はそれからだ……
 くっくっくっくっく…」





 そこまでで映像が途切れる。
 九鬼が質問する。


「どういうことですか?」

「つまりだ……ワシの才覚を転写し、晴明に対して劣等感を持つように仕組んだ。
 むろん、奴が作り物だと知らせずにな」

「な、何故そのようなことを!?」

「退屈しのぎさ」


 本当に楽しげに笑う陰陽法師。
 空虚な印象であったが、このときだけは目の色が違っていた。


「金?そんなものは興味はない……望めばいつでも作れる。
 ワシは見たいのだよ!
 人がどのような情念を持つのか!!
 その情念がどんな呪となり、形を成すのか!!
 ワシの式神は面白い事を考えたがあっけなくやられたがのう。
 じゃが、面白いものが見れた」

「面白いもの?」

 
 道摩法師の言葉に絶句する九鬼に代わり、石動がたずねる。
 それを面白そうに笑いながら答える陰陽法師。


「ワシの千年前での先見では……本来ならば既にこの地は滅んでいるはずじゃった」

「!?」

「ほう…」

「『唯一神』の策謀か、『千の仮面を持つ者』の策謀か……はたまた『人間自身の手』で滅びるか……。
 ところが、どうだ!
 全て失敗しておるではないか!
 ワシはそれが愉快でならない!」


 石動は、その破滅になる事態について心当たりがあった…。
 道摩法師はさらに言った。


「救世主になるはずだったの男は野に埋もれたままよ」

 陰陽法師は大いに笑う。

「お主も中々面白い存在じゃ……。
 千年寝た甲斐があったものじゃ!
 役行者も入れ込んでおるようじゃしな」

「……とんだ厄介者に目をつけられたものだ」


 石動はため息をつく。
 九鬼は道摩法師に本来の質問をした。


「では、今回の一件について教えてください。
 三尸に似た存在は何者ですか?」

「あれか……アレは稀人の魂よ」

「稀人?」

「ふむ……まずそこから話すか。
 長い話になるでな、酒でも飲んでゆるりと聞くがいい」


 道摩法師は式を命令し、酒と魚や肉の干物を持ってこさせてから説明を始めた。 
 成田の家は……元は山陰地方の槻賀多村の『槻賀多』氏の遠縁に当たる。
 『槻賀多』は蟲毒を操り、その技量の高さから超国家機関ヤタガラスの傘下『第8巫蟲衆』として国家のために働いていた。
 『蟲術』はとても特殊なものでそれを作り出しているのが、稀人である『天斗様』……である。

 『天斗様』……彼らは蟲のような身体の亜人であり、周りからの迫害が強く、世界を転々としていた。
 彼らは、数百年前の槻賀多村に到達した。
 里の拝み屋であった槻賀多は彼らと取引を行った。
 特別な蟲を提供する代わりに『槻賀多』の家から嫁を出す事になった。
 『天斗様』には雌は存在せず、人間の女性に産んで貰うしかないらしい。
 だが、嫁になった女性は地獄の日々であり、生贄も同然であった。
 それ以来、槻賀多村にとってなくてはならない存在になった『天斗様』は神として振舞った。
 『天斗様』の支配は大正時代まで続き、ある事件で終止符を打たれた……。
 
 
「それが『アパドン王』事件か」

「ほう、知っているのか?」

「知ることができる範囲は広くないが。
 俺はサマナーとしては腕が悪いからな、知識や技を多く取り入れなければ食っていけない」

「ふふふ……言ってくれるわ。
 その時に死んだ蟲人がちらほらいてな。
 そいつらが怨霊になったのじゃよ。
 『天斗』……いや蟲どもは、その一件以来新天地へ旅立ったからな。
 そのお陰か、供養したにも関わらず怨霊になったのじゃよ」

「だから、あのような形に変えたのですか?」

「いかにも……じゃが勘違いするなよ?
 趣味でもあるが実益にもなっておる。
 このお陰で被害を最小限になっておるからな」


 九鬼の問いに意外な答えを出す道摩法師。
 九鬼はしばし考え、その答えに至る。


「つまり、際限なく周囲を無差別に害をなさないように形を整え、誰かに集中させた……と?」

「そうじゃ……」


 大正時代、政治家として成功した成田太介(槻賀多と名乗ると不都合があったため母方の性を名乗ったらしい)には『麻樹子』という愛しあった女性がいた。
 だが、槻賀多の掟の為に麻樹子を嫁に出された。
 太介は当時、探偵でもあった十四代目葛葉雷堂に依頼し、苦しむ『麻樹子』を安楽死させる為に毒薬を運ぶよう依頼したそうだ。
 悲恋に終わったわけだが……麻樹子に瓜二つのシズという芸者がいた。
 太介は彼女に入れ込んでいたが……生涯独身を宣言していた太助は彼女をよく援助した。
 そしてシズとその内縁の夫が亡くなり、残された息子、娘達を養子として引き取った。
 

「つまり……」

「形を整えた蟲どもが『静美』を『槻賀多麻樹子』と勘違いし、己が欲のままに食い散らかそうとしたわけだ」

「お前が祓っていれば……」

「見てみたかった……といったはずじゃが?」


 石動はその一言でため息をついた。
 だが、石動の次の一言で道摩法師は顔色を変える。


「だが、娘を殺したくなかったと見える」

「………!!」

「呪術的な守りは余りにも見事だった。
 サマナーが来るまで持たせるつもりだった……違うか?」


 古の陰陽法師は黙って苦笑いをした。
 黙って酒を勧めるのがその答えのようだった。
 九鬼達も疑問を一通り理解し、陰陽法師の酒を受けた。





 
 あとがき。


 真1ルートはヤタガラス・クズノハでなんとかしたようです。
 ペルソナ2罰世界に移行せず、罪の段階で致命的破綻をした模様。
 たぶん、轟さんの中の人ががんばったりしたのでしょう、大穴でダークサマナーLが今も健在で大いに引っ掻き回したのかもしれません。
 明るい雑誌記者のストーカーとして。
 真3ルートは準備段階の時点で石動の介入で失敗……石動がいなくても当代の雷堂が大事になる前に鎮圧できる程度。
 
 真1ドウマンは復活したてでヘタレ過ぎに涙。
 ここでは独自設定に……行き過ぎた力を持ったために名誉や金、世界の支配等に興味なく愉悦のためにしか働かない変人。

 石動を導いた代々木公園の謎の老人。
 だれかは予想がつくでしょう。
 なぜ代々木公園にいたかは……まだ秘密。

 成田でピンと来た人はライドウファン。
 ライドウの事件の関係者に……悪魔も三尸モドキの怨霊に、蟲だけに。
 オリジナル悪魔は妖虫・三尸(上・中・下)。
 上は火炎吸収、中は物理・氷結ダメージ半減、下は稲妻吸収の耐性。
 外見がイメージが湧き難いなら三尸の絵を探してみてください。
 アレをさらに気色悪くして金子分を足した感じです。
 

 ダークサマナー、マヨーネ登場。
 冷酷に計算すると30代は確実。
 彼女は某カツオカットの人に恨みを持っており、妹を誘拐しようとしたらしい。
 だが、通りすがりのサラリーマンに一蹴されたらしい。


 サイコダイバーは真1では不審人物な格好ですが、ここでは精神科医っぽい感じ。でも裏社会の住人ではある。
 真1よりはマトモになってしまった……。


 石動のフルネームは『石動 巧』。
 ながながと上の名前だけで呼ばれ続けてもうなくていいかな?と一瞬思ったのは秘密。
 巧だけにあのネタを出してしまったが後悔はない。



[7357] 第26話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/23 23:23

 ラームジェルグはネットで遊ぶ。
 石動の助力があれば物体に干渉でき、備えられた食べ物を味わう事もできるため、現代社会の快適な暮らしにどっぷりつかっている。
 フリーダーは石動の事務所の経理をまとめている……石動の仕事を多く覚え、ますます人間らしさを身に着けている。
 石動は先日の一件に考え込んでいた。


「(あの時の夢に……代々木公園の老人に、腐れ陰陽坊主……。
  今差し迫った問題は代々木公園の老人の依頼だな。
  それがいつやってくるのか)」


 考え込んでいると、事務所のドアが開く。
 モンゴル風の衣装を着た少女が空を飛んでいた。
 モー・ショボーが石動に近づく。
 いつもと何処か違う様子で話し始める。


「石動……依頼したいことがあるの」

「……」

「私のお友達……人間なんだけど、大変な事になっているの!!
 報酬なら私ができること、なんでもするから!!」


 モー・ショボーが『石動』呼ぶほど真剣であり、深刻な問題であろうと察した。
 石動は重い口を開いた。


「良いだろう」

「ありがとう……」


 石動に甘えるように抱きつくモー・ショボー。
 普通の人間がオカルトがらみの問題に巻き込まれることは多い。
 だが、それに対処する方法を知っているものは少ない。
 普通の探偵・警察機構に話して信じてもらえないことも多い。
 信じてもらっても対応できる手段がないもが実情だ。
 だが、サマナー人口の増加に加えて公安零課といった悪魔絡みのトラブルを解決できる人間が増えた。
 裏を知っている者は、餅は餅屋とばかりに仕事をまわすようになる。
 ただ、サマナーや霊能力者と偽って金を騙し取る悪辣な犯罪者も増える事になるのだが……。
 閑話休題。
 モー・ショボーの友人にあった実際の事を確かめる事になった。
 ラームジェルグはパソコンを切り、フリーダーもちょうど一仕事終わり、依頼人に会いに行くとこになった。




都内高級マンションの最上階に依頼人の住居があった。
モー・ショボーの友人は20代後半くらいの女性で、ショートカットで儚げな印象を持っている。
均整の取れた肉体と憂いをもった瞳は男性達を虜にすることだろう。
彼女は、石動の訪問に驚くが、モー・ショボーの紹介もあって信頼してもらえた。


「モモちゃんの……」

「夫です」

「……探偵だ」


 モー・ショボーは人間の振りをしている時の名前は『モモ』らしい。
 彼女の名前は久遠寺ちずるといい、ピアニストだ。
 石動は彼女の顔を知っている……ピアニストで海外で修行し、日本でCDを出すほどだ……知る人ぞしる程度の知名度だが、石動は彼女のCDを買い、評価していた。
 モー・ショボーが抱きつくのをしょうがないとばかりにされるがままにされる石動はどこか、滑稽であり、ちずるの警戒を解くことになっている。


「変わった厄介事も引き受けるのが経営方針でね」

「……実は、姉の子供が行方不明になっているんです」


 双子の姉が出産したばかりで公園であやしていたらしい。
 だが、意識が朦朧となり、いつのまにか娘が攫われてしまったらしい。
 周りの人間もなぜか気がつかなかったらしく、警察に捜索願をだしているが見つからない。


「普通なら警察の仕事……なわけだが」

「ええ……」

「引き受けよう」

「え?」

「前金で10万。
 残りは成功報酬で……このくらいだ」


 探偵を雇うのに格安で引き受けた。
 捜索は本来面倒であり、費用もかかる。
 だが、石動にとっては思念体や精霊・悪魔の類から幅広く聞くことができるのが強みだ。
 モー・ショボーの友人であるし、早めに事件を終わらせるつもりだからこその料金にした。


「いいのですか?
 報酬なら出せない事もないですし」

「あまり吹っかけて末に結果が出せなかったなんて真似をしたら恥ずかしくて外を歩けないんでね。
 それに」


 石動は、モー・ショボーの頭をなでる。


「こいつが、今まで頼んだ事のない頼みごとだ。
 聞いてやらないといかんだろう」

「優しいんですね」


 ちずるは二人を微笑ましく見ている。
 モー・ショボーは幸福感に包まれ、石動はばつの悪い顔になっている。


「それと……だ。
 無事に子供が見つかったら、貴方のピアノを聞かせてもらってもいいだろうか?
 俺は貴方の曲が気に入っている」

「ええ……」


 石動達は、失踪した現場に行き、調査をすることにした。
 



[7357] 第27話(修正)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/16 11:59
 石動は現場に直接出向き、調査した。
 ノッカーを召還し、小角の術とノッカーの現場検証を行った。
 ブツブツ喋りながらノッカーが周りを調べる。
 

「ほえほえ……大福が食べたいのう」


 ノッカーがそう言って石動に手渡したのは一本の羽。
 小角の知識を検索して何かがわかった。
 モー・ショボーが興味津々で聞いてくる。


「せっきー……これは?」

「産女……ではなくて姑獲鳥だな」

『なるほどな、下手人がわかったが、厄介だな。
 だが、ハリティーじゃないだけましか』


 石動とラームジェルグが忌々しげに語った。
 姑獲鳥。
 人間の少女を攫って育てるとされる中国の怪鳥であり攫われた少女は姑獲鳥になる。
 羽毛を脱ぐことで天帝少女と呼ばれる人間の女性になり、羽毛を着ることで元の姿に戻る。
 天の羽衣伝説のように、衣を隠されたために人間の男の妻となったという話も残されているが……子供を攫い、仲間を作るつもりのようだ。
 ハリティーは、訶梨帝母(かりていも)ともいい、後に鬼子母神……仏教を守護するとされる女神の一尊になった存在である。
 千人の子の母でありながら、常に他人の子を捕えて食べてしまう。
 それも知った釈迦はハリティーの末子を攫った。
 釈迦によって子を失う母親の苦しみを悟らせ、仏教に帰依させた存在である。
 話は脇にそれるが、悪魔の話をしておこう。
 悪魔には前身が神であったり、のちに神になる存在がある。
 たとえば、大日如来……密教で宇宙そのものと一体と考えられる汎神論的な如来の一尊であるが、アフラ・マズダーの側面もある。
 さらに阿修羅……古代インドでは悪として見られている側面もある。
 また、イシュタルはメソポタミアの女神だったがアスタロトという高位の悪魔とされてしまった。
 悪魔にも無数の側面があるわけで必ずしも悪とは限らないのだ。
 

「せっきー何しているの?」

「ああ……風間の旦那に確認しているところだ」


 電話で風間になにやら頼んでいたようだ。
 COMPに多くのデータが届いた。
 届いたデータを覗いた時、石動は頷く……。
 それは石動の予想通りの結果であった。
 関東内で原因不明の赤子・幼児の誘拐が多発しており、その時のほとんどの親が朦朧とし、いつの間にか攫われてしまう……目撃者もいないままに。
 

『しかし、いいのかねえ。
 警察が捜査記録を民間人に流したけど』

「本来なら厳罰どころじゃないがな。
 ばれなければ問題ない。
 今まで積み重ねた信頼の賜物だ」

『今まで誠実に仕事をしたお陰ね。
 いままで突っ張っていたあのコが…。
 お母さんは感激しているわ!』

「石を詰め込むぞ。
 まったく、最近中国系マフィアの憑依悪魔が急増して旦那が難儀しているのにわざわざ届……」

「せっきー?」


 石動は、そこで喋るのを止めてある仮定を行った。
 モー・ショボーはその妨げにならないように沈黙する。


「風間の旦那に連絡だな……」

『なんでまた……そうか!!
 だったら不味いな、手遅れにならないうちに行動するしかない』


 ラームジェルグにCOMPの返信機能を作動させる。
 石動は車に飛び乗り、公安零課まで顔を出すつもりだ。
 モー・ショボーもそれについていく。


「石動……」

「なんだ?」

「私ね、赤ちゃんに一度あったんだ……。
 おかあさんとちずるお姉ちゃんが微笑んでいて……いいなあって思ったの」


 モー・ショボーは親の愛を知らずに死んだ幼い娘が変化した姿だ。
 それだけに親の愛情がまぶしく思うのだろう。
 石動はその話を聞き続ける。


「私の指を握って笑った顔が……忘れられないの。
 だから……その……。
 大丈夫だよね……助かるよね?」

「保障はできん……」

「……」

「だが、終わったとは限らん。
 信じることだ。
 俺も……力を貸してやる」

「ありがとう、石動」


 不安に駆られるモー・ショボーを励ます石動。
 だが、子供の誘拐と中国系マフィアの活発化の時期の一致が石動の脳内で警鐘を鳴らしていた。








 石動は公安零課課長室にたどり着く。
 風間が書類から視線を離した。
 モー・ショボーが後から石動の手首を握っている。
 まるで親子のように…。


「中国系マフィアについて聞きたいそうだな」

「奴ら……俺の推測が正しければ厄介な事をしてくれる」

「どういうことだ」

「奴らの急激な戦力の増えるのは当然だ。
 関東の幼児を攫って悪魔にしているからな」

「な……!!」

「最近、子供の誘拐・失踪が多いのは知っているよな。
 俺も子供の捜索に乗り出した口だ。
 その時現場に残されたのはこれだ」


 そう言って姑獲鳥の羽を取り出した。
 風間は偽・悪魔全書を開き、デビルアナライズをした。


「なるほど……姑獲鳥に攫わせて戦力増強か……胸糞が悪くなる」

「同感だ……事実をしったら中国人排斥が起こるだろうな。
 むしろ起こってくれれば助かるな」


 中国マフィアは子供を攫う事を姑獲鳥に依頼し、その対価として姑獲鳥に好条件を与えたのだろうと推測できる。
 おそらく、何も知らない子供を悪魔化して戦力にしているのだろう。
 意志が確立しない子供では意志が悪魔に飲み込まれることだろう……。
 二人の顔は青ざめている。
 その時、課長室の電話が鳴り、急いで取る風間。


「私だ……何!?
 そうか……解った。
 我々がすぐに急行する」

「……」

「中国マフィアのアジトが発見した。
 お前の推測通りのようだ……子供が十人ほど捕らえられていた。
 ……警視総監とヤタガラスに連絡することにしよう『今後』の対策も含めてな。
 それと……」

「解っている、助っ人を引き受けるとしよう。
 時間がないだろうからな、悪魔にされないうちに押し入るとしよう」

「情報を知るものは殺すなよ。
 それ以外は殺してもかまわん」

「了解した」

「石動……私も行くからね」

「……好きにしろ。
 足手まといにだけはなるな」

『おお、お優しい。
 そこの鬼課長とは大違いだね』

「法で裁ききれない部分もある上に危険度が高い為の判断だ」


 風間達は中国マフィアのアジトへ突入の準備をし始めた。





[7357] 第28話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/30 00:32
 名義は華僑系企業になっていたY県の山中にある廃工場(再開発予定)が中華マフィアのアジトであった。
 公安零課の面々が取り囲む。
 さらにシンクロ召還で無数の悪魔が召還された。
 仮面を被った小柄な天狗である木っ端天狗。
 古代の鎧と槍が装備していた兵隊は、武に生きる式神の一族モムノフ。
 真っ赤な身体と二本の角を生やした鬼。
 彼らは、三体一組で行動し、逃げようとする敵を容赦なく殺すよう厳命されている。
 風間は、突入前に激励を飛ばす。 


「皆に告げる。
 警視庁は犯罪者を逮捕し、書類送検し、裁判官が裁くのが通常だ。
 だが……今回のようなオカルト犯罪では通常の法では裁ききれない。
 人が人を裁くことは……警察官としての職務から外れている。
 だが、我々はこの社会での法の番人でもあり、闇の住人だ。
 人を殺す事でのみでしか守れない事があることはもう自覚しているはずだ。
 我らは修羅に入る!
 仏に会えば仏を殺せ、祖にあえば祖を殺せ!
 だが、忘れるな!
 ただ社会の秩序を守るだけの歯車にはなるな!
 力持たぬ国民の為の防人である事を忘れるな!
 そして、この糞ったれなことをしやがった屑どもに目に物見せろ!!」


 
 風間は、最後まで冷静さを保てぬほど激怒していた。
 他国の犯罪組織に自国民の子供を弄んだ行為に。
 今後、このような事態を再発する事の無いよう、苛烈な処置を行うことに決め、ヤタガラス・警視庁・内閣から許可を得ていた。
 魔人戦を乗り越えた彼らは、自覚していた。
 悪魔使役によって悪用する外道に対して時には捕り物をするのではなく、戦争をするつもりで行かなければならない事を。
 石動も腹を据えかねているのか、沈黙を守っている。


「全員配備につけ!
 これより作戦を開始する!!」


 末端の構成員が一服するために外に出たところを鬼がマフィアの胸元に金棒を叩き込んだ。
 無様な呻き声をあげ、肺に刺さったのか口から血を吐き出し、笛がなるような呼吸音がする……もっともすぐさま止めの一撃が叩き込まれる。
 木端天狗が二階から突入し、マフィアの頭を蹴り砕き、衝撃波で胴体が千切れ飛ぶ。
 モノノフが隊列を組み突入する。
 異能を持たないマフィアは銃器で応戦するが、頑強な肉体をもつモムノフ達は物ともせず一歩一歩前進し、槍で胴体を貫く。
 昆虫標本のように痙攣したところに脳髄を貫いて止めを刺す徹底振りだ。
 たとえ運良くモムノフを射殺しても屍を乗り越え数で蹂躙され、命乞いを聞く間もなく殺される。
 無知は罪である。
 裏社会ですら禁忌とした行為を行い、八百万神が生きる国家を怒らせたのだ。
 





「ひい……」

「「「確保ぉー!!」」」


 押し倒され、無数のレーザーポインターに照らされる呪術師。
 そのまま呪術師は零課の警官達に捕獲され、組織の情報も入手した。
 さらに容赦のない攻撃が続く。
 さながら悪魔の謝肉祭というべき光景を石動とフリーダー、モー・ショボーは見向きもせずに奥へと進む。
 地下には無数のベッドがならび、幼児達が眠っている。
 ベッドで眠っている子供たちは『処置前』のようが大半であった。
 だが、一部は悪魔に憑依されかかっている子供もおり、さらに奥にはガラスの柱の中に培養液に浸っている子供がいた。
 悪魔を複数合成されて肉体のバランスが崩壊し、ただの肉塊と化した者。
 無数の乳房が胴体についており、顔面に目の部分から腕が生え、掌の部分から目がある少女。
 合体に失敗し、顔面のみ人間の面影のあるスライム。
 無数のサンプルになっていた。
 モー・ショボーの探していた子供は悪魔化されずに眠っていたのだけは不幸中の幸いだった。
 早乙女がついてきていなくて良かったと心から思う石動であった。
 さらに奥の部屋があった……おそらく、姑獲鳥が自身の子供を育てているのだろうと石動は判断した。
 奥に進むと予想通り、姑獲鳥達が自分の乳で育てていた。
 さらに、アジトのボスらしき存在がいた。
 黒い革ジャンと革ズボン、モヒカンカットの大柄の中国人。
 腰のホルダーにはソードオフされたショットガンがあった。
 右手に持っている大型の斧はCOMPであり、ダークサマナーであることは間違いない。


「な、なんだテメエ!?」

「何の用よ!?
 私の子供を奪う気?」

「貴方が、子供を、攫った……違いますか?」


 広東語で居直る犯人たち。
 フリーダーが幼児に話すかのようにはっきり指摘した。
 石動は彼らの言葉を黙殺して話す……広東語で。


「誰でも良いだろう?
 風間の旦那……いや、警視庁の総意を伝えに来た。
 『命令する、死ね』だそうだ。」

「ふん……私達がやっていることは種族して当たり前の事をしているの!
 それに……あんた、なんで良い子ぶっているの!!
 アンタは男の脳みそ啜るんでしょうが!!」

 
 開き直る姑獲鳥。
 モー・ショボーは確かに普通の悪魔より凶悪なダークサイドのカテゴリーに入るだろう。
 だが、モー・ショボーは真っ直ぐに見返し、言い放つ。


「私は……愛を知らないまま死んで悪魔になった。
 だから……家族の愛がまぶしいの。
 ちずるお姉ちゃんたちの赤ちゃんをお家に帰したい。
 それに……今の石動のような悲しい顔は見たくないの……石動には笑っていて欲しい。
 普通の悪魔じゃない?
 そんなの私にとってどうでもいいわ」


 モー・ショボーの言葉に一瞬だけ、穏やかな視線になった石動。
 だが、すぐに元に戻る。
 ちょうどその時、後から黒いコートと背広を着た強面の男がやって来た。
 風間が直接出向いてきたのだ。
 本来なら後方で指揮をするだけでいいのだが、まだ部隊の経験が足りておらず、魔人と渡り合った男が前線で指揮をする方が都合が良いため出てきていた。
 もっとも今回ばかりは別の理由があってのことだが。
 風間は先ほどの話を聞いていたらしく、銃を構えながら言った。


「お前はやりすぎた。
 やるのならば葛の山のように子供を作り続ける隣の国で行うべきだったな」

「この国は快適よ……食料も、地脈も、住居も」

「うるせえぞ!
 こいつ等殺して海外に飛べば……!!」


 石動達を殺してでも逃げる算段のようだ。
 基本的に日本の裏社会のほとんど人間は『海外に逃げるくらいなら日本で懲役喰らった方がマシ』な口である。
 それに日本に住む以上、国家に逆らってまで抵抗する気力の持ち主は少ない。
 だから警官を殺してまで抵抗するものが少ない。
 だが、帰る故郷のある外国人は大犯罪を犯しても故郷まで逃げおおせれば稼いだ金で錦をかざることができる。
 だから死ぬ気で抵抗し、警官殺しも辞さない。
 決して外国人は凶暴で野蛮だというわけでなく、自分の国で犯罪を行う者と他国で犯罪を行う者では立場が違うだけである。
 『旅の恥は掻き捨て』とはまさにこのことであろうか?
 風間は冷たく笑う。
 悪魔召還という常人以上の脅威を持つ存在であり、さらに無数の悪魔がいる。
 だが、魔人という天災に等しい災厄を乗り越えた二人にとっては、怯えるほどではない。


「フリーダー、急がなくて良い。
 だが、絶対に逃がすな。
 俺はサマナーを相手にする。
 モー・ショボーは二人の援護を」

「了解しました。
 風間様、援護をお願いします」

「うん、解った」


 フリーダー達は悪魔を、石動はマフィアのボスと分担するつもりだ。
 ボスが邪悪な笑みを浮かべる。
 石動は無造作に歩いて接近する。
 だが、見るものが見ればただ歩いているのではない。
 ラームジェルグを憑依し、悪魔の力を全て発揮して殺しにかかっている。
 だが、そのことに目の前の敵は気がつくことは無かった。


「俺は悪魔を操れる!!
 お前たち出ろ!!」  

「へへへぎぎゅああああああああ!!」

「があああああああああ!!」

「ひいいいい!!」

「うぎゃあああああ!」

「ひぎいい!!」


 一斉に召還されたが召還直後の隙を突き、石動は一閃する。
 真一文字に切り裂かれ、弱い悪魔はそのまま消滅する。
 辛うじて生き延びた悪魔は地面に倒れ付したまま痙攣している。
 毒に蝕まれそのまますぐに消滅するものもいれば毒に耐性があるものは石動が頭を踏みつけ、脳髄に銃弾を数発叩き込む。
 ボスが怯えながら再召喚しようとした時、石動が渾身の一撃で斧を叩き落す。
 衝撃で両腕が痺れ、しばらくは使い物にならない。


「ひ……!!」

「待ってやる……武器を取れ」


 ボスは石動の言った事に理解できなかった。
 だが、夢中で斧を拾う。


「さあ……戦え!!」

「ひいいい!!」


 むちゃくちゃに斧を振るうが、それに対して洗練された剣術で手首を両断する石動。
 妖刀ニヒル……漢字でかくと似蛭とかき、生けるものの血を啜る事でさらなる妖しい輝きを放つ。
 恥も外聞も捨てボスは壁に走る。
 壁に隠しスイッチがあり、押すと壁が回転した。
 脱出口は確保しているようだが、石動は『あえて』追わずに姑獲鳥を倒すべく風間と合流した。
 フリーダー達は銃撃と電撃でけん制しつつ、部屋の隅に追いやっていた。
 ボスを放置した石動に対してモー・ショボーが文句を言った。


「なんで殺さなかったの?」

「アイツはもう終わりだ」

「手首切り落としただけじゃないの?」

「俺に抜かりは無い」


 悪魔の少女にとって初めて見る守護霊使いの凄惨な笑みに思わず沈黙した。
 石動はまるで地獄から来た魔人のような鬼気迫る邪気を発していた。
 だが、ラームジェルグの憑依を解除し、小角を憑依した時には邪気は消えていた。
 風間が銃を撃ちながら軽口を叩く。


「遅いぞ、危うく摘み食いをするところだった」

「それはすまなかった。
 ならばメインディッシュといこうか。
 『シャッフラー』……!!」


 悪魔達の背後から巨大なカードが出現した。
 皆、反応できずに飲み込まれカードに飲み込まれ、空中に無数のカードが浮かぶ。
 カードに封印された姑獲鳥が抜け出そうとするが決して抜け出せない。
 石動は行く途中で見つけた燃料用の灯油をカードにかける。
 彼がやろうとする事が解り、恐怖する悪魔達。
 命乞いなど耳に入れない風間が細長い葉巻を取り出す。


「復讐という料理は冷めてからが美味だそうだが……その葉巻、ダヴィドフか?」

「ああ……他に金の使い道がないんでな。
 それと、後でお前に『繋ぎ』をやってもらいたい、頼めるな?」

 
 石動は無言で頷く。
 風間はマッチを摺り、煙草に火をつけてからカードに投げ込む。
 火はあっという間に燃え移り、カードに燃え広がる。
 怨嗟の叫びが響き渡るがすぐに静寂が戻った。
 二人はしばし、無言で燃え続ける炎を見ていた。
 フリーダーは静かに眺めていたがモー・ショボーは、風間が葉巻を吸い終えた事に石動に問いただす。


「アレ、逃がしていいの?」

「問題ない、奴のたどり着く未来はなく、ただ行き止まりが待っている。
 なぜなら……」













「ひい……あのやろぉ……ぶっ殺してやる!
 日本人め!!」


 口々にわめきながら、他の支部へいこうと歩くが……頭上から『運悪く』鉄骨が落下した。
 死ぬことは免れたが、身動きがとれない上に骨が内臓に刺さり、このままでは危険な状態になるだろう。
 だが、人目を避けて工事中の現場を通った為に助けを呼べない。
 さらに……


「うわ……なにをする!
 やめろ……」


 死臭を感じたのか、鴉が集まりだした。
 むろん、新鮮な人肉を喰らうためだ。
 無数の鴉がボスの肉を啄ばむ。
 生きながら鳥葬にあう憂き目にあうボス。
 石動とともに歩む半身の名はラームジェルグ。
 戦った者は近く死が訪れるという不幸が起こるといわれる幽霊。
 彼はまさにその犠牲者となったのだ。















『まったく骨が折れたぜ」

「ああ……久しぶりの睡眠になった」


 突入から3日後、漸く後始末を終えて一眠りできた。
 フリーダーは奥で掃除をしている。
 朝刊には『N国の不審船沈没』『C国の密入国船で全滅・仲間割れか?』などの記事が書かれてあった。
 ちずるの家族は無事に家に帰された。
 悪魔化されていない子供たちはすぐに家族に引き取る事ができたが、憑依化しかけた子供は大変だった。
 石動が呪札で進行をおさえ、ヤタガラスに頼み、専門の術師を呼んで治療して漸く悪魔を引き離せた。
 しばらくは病院で入院する必要があるだろう。
 だが、すでに手遅れでサンプルになった子供は……真実を話すわけもいかず、無縁仏としてヤタガラスの息がかかった寺院で葬られた。
 彼らは行方不明として片付けられた。
 

『しかし……その後が大変だったな』

「ああ……アイツを召還するのは難儀だった」


 石動は、応急処置を終えた後に零課の地下室で悪魔召還の儀式を行った。
 以前の『アリス事件』で関わった堕天使ネビロスを呼び出したのだ。
 彼と面識があり、小角の力をもった石動だからできたことであった。
 風間は取引を持ちかけた。
 アリスの『友達』として今回殺害した犯人を提供したのだ。
 その代わり、彼らを使って外国の密入国船や密漁船を襲わせるように指示した。
 それで殺された人間をまた『友達』にするのだ。


『エグイねえ。
 悪魔の俺ちゃんでも引くよ』

「下らん一人称はやめておけ、似合わん。
 俺も気に食わんが、毒をもってなんとやら……だ」

『見せしめが必要だからねえ。
 で、ばれそうになったらネビロスを退かせればいいからな』

「国家とのやり取りは奇麗事では済まんということか」


 重い話をしていた時にモー・ショボーがやってきた。
 空気が幾分か和らいだ。 
 モー・ショボーが抱きついてくるが、無碍に引き離す事はしなかった。


「石動……ありがとう」

「貸しにしておく」

「うん……」


 モー・ショボーは石動の胸元に顔をうずめる。
 そして上目遣いでお願いをした。
 頬を赤らめ、瞳は潤んでいる。


「石動……あの……今日は一緒に……寝て良いかな?」

「……無断で寝床に入る奴が今更だな。
 好きにすれば良い」

「うん」


 そういってまた身体を預ける悪魔の少女。


「(石動は私の事を悪魔とか人間とか関係なく優しくしてくれている。
  私に……愛をくれているんだよ?)」


 そう思うと身体が熱くなるモー・ショボー。


「(大きくなったら……女の子として好きになってくれるかな?
  アクマでも愛してくれる?)」


 その答えを問う時が来るのだろうか?
 そして、石動はどのように答えるのか?
 彼女には解らない……ただ、今の幸せを大事にしたいと思った。






 26,27、28話あとがき。

 メガテンは何気にハードな展開が多い。
 今回は重い話になりました。
 犯罪組織とオカルトをどうするか……というのがテーマでした。
 中華マフィア外道……。
 モー・ショボー⇒愛を知らぬままに死んだ子供の変化
 子供⇒産女⇒姑獲鳥⇒子供攫い。
 なんて連想ゲーム。

 メガテン世界では裁ききれない部分があるので報復・予防は苛烈にする部分があると思うのです。
 初代キョウジとか掃除屋といわれる存在がいるくらいなので。

 シャッフラーなどのカード化、鏡化、爆弾化とか面白いですけど味方が使う事は少ないですね。
 一撃で倒す方がリスクが少ないですし、ゲーム的に。




 次回のアンケートです。


・代々木公園の老人の依頼編。
 楽しい発掘作業!?
 ポロリもあるよ?

・悪魔ホイホイ?
 早乙女の受難。
 寺院訪問編



 どちらから書きましょうか?



[7357] 第29話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/30 13:52
『次のニュース………一家殺人事件の容疑者………に無期懲役の判決が下りました…』


 朝のラジオのニュースを聞きながら本を読む石動。
 ラームジェルグは最新のゲームを遣りこんでいる最中であった。
 フリーダーがドアを開けた。
 

「マスター、お客様です」

「邪魔をするぞ。
 石動よ、報酬の取立てにきた……まさか依頼を断る気はないじゃろうな?」

「そろそろだと思っていた」


 道服を着ている老人……代々木公園にいた男がやってきたのだ。
 以前、石動に後に依頼を受けることを条件にサイコダイバーの潜伏先を教えた。
 今日はそのことできたのだろう。
 ちなみに、サイコダイバーは大型トレーラーを改造して移動式治療所を作った。
 九鬼の義兄の上司が以前大型トレーラーをアジトにしたハッキングチームを作っていたらしく、その時の経験をサイコダイバーに教えているらしい。
 精神治療が専門だが、ボディガードとして召還した神農とアスクレピオスから医療を学び、サマナー達の怪我の治療も行い始めた。
 サイコダイバーとしての能力と運用方法を対価に無力な彼を守るように契約することができたのだ(石動や九鬼の協力が大きかった)。
 アスクレピオスはギリシャ神話で神の子であり、死者すら蘇らせるほどの技量の持ち主で、冥界を閑古鳥にしかけたために殺された存在である。
 神農は古代中国の伝説に登場する皇帝で百草を嘗めて効能を確かめ、諸人に医療と農耕の術を教えたという存在であり、人身牛頭であった。
 サマナー達からの治療を行いだして徐々に軌道に乗り始めたそうだ。
 閑話休題。
 老人が依頼を説明に入る。


「代々木公園にある宝が眠っている」

「……」

「それは大変強い力があってな。
 石動よ、探し出して封印してほしい」

「貴方の方が力は強いのでは?」

「……立場があってな、易々と力を振るうわけにはいかんのじゃよ」

『あ、ここで緊急ニュースです、容疑者が収容された留置場で容疑者の……』


 ラジオからニュースが流れるが、彼らには依頼の話が続く。
 石動はこの老人が誰なのか段々検討がついてきた。
 道服をきている以上仙道であることは確実であり、高位の存在であると。
 ただ、『三人』のうちの誰なのか……そこまでは絞りきれないが。
 石動はその依頼を引き受けた。


「わかった。
 依頼の品の特徴は?」

「三角錐型をした祭器で強大な力が貯蔵されている。
 だが、真の力は……『神』を呼ぶ能力……コレが問題なのじゃ」

「厄介事が引き起こしそうな代物だ。
 で、名前はなんていうんだ?」

「ヤヒロノヒモロギという……石動よ頼むぞ」
 
『容疑者と他の収容者は全員死亡し、警官隊は多数の重傷者を……』















 時を遡り、深夜……代々木公園で一人の中年がベンチに座っていた。
 彼の胸中は絶望に包まれていた。
 彼は真面目に働き、人々から慕われていた。
 社会のルールを守り、人々の規範にならんと生きていた。
 家族もおり、豊かな生活。
 だが……一人の少年によってそれらを破壊されてしまった。
 彼の一家は少年に惨殺された。
 金品目当ての犯行と言われているが詳細は不明だ。
 いや、もしかしたら理由などないのかもしれない。
 少年法により、彼は死刑は免れ、無期懲役になった……だが、いずれは出て行くのだろう。
 彼はそれが悔しくてならない。
 家族の無念が浮かばれない。
 家族を殺した少年が許せない。
 そして、何より……その復讐を果たせない自分の理性や社会規範を内心嫌悪していた。
 彼はまさしく絶望の底にいた。
 復讐の為に生きたいと思いつつも何もできない自分に対して絶望して死にたい思い。
 矛盾する思いが衝突している。
 

「………」


 彼はその苦しみから解放されたいと願った。
 そして願いは叶えられてしまった……。
 地の底から泥のような赤黒い光が彼を包み込む。
 この世の全ての絶望、怒り、悲しみ……全ての負の感情が降り注ぐかのように。
 彼の内に眠る黒い衝動が目を覚ます。
 全身に力が漲ってきた……悩んできた今までの自分が嘘のように感じた。
 内から漲る力で全身がはじけ飛ぶのではないかと感じ、全身から痒みを感じた。
 無我夢中でかきむしる。
 指に力が入りすぎて、皮膚に傷ができるほどに………


「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 
 自身を縛る鎖から開放されんとばかりに叫ぶ男。
 彼が引っかいてできた傷がどんどん広がり、亀裂が走った。
 全身にいきわたった時、彼の体表が限界を超えて膨れ上がった風船のように飛び散った。
 彼は、生まれ変わった。
 老いた背広姿の中年は消え去り、以前より若々しくなった。
 左頭髪部は禿げ上がり、髪が逆立つ。
 善良な目でなくなり、破壊衝動に満ちた邪悪な瞳にかわる。
 良心は消え去り、漆黒の殺意が満たされた。


「くっくっく……!!!」


 以前の自分にない記憶がある。
 自分の住処だった東京が滅んで、異界となった。
 その世界で自分は、泥で作られた人形を殺し続け、皮を剥いで自身の衣にしていた。
 異形の怪物、悪魔を殺し、使役し、全てを支配しようとした。
 無力な泥人形にしては強い奴がいた……その存在は偽善ぶった偉そうな奴で百回殺しても殺したりないほど憎く感じた。
 殺戮の旅の途中で黒い帽子に黒いマント、黒い学ランという戦前の学生のような奇妙な人間に出会っていた。
 腰には刀とコルトライトニングカスタム、胸には金属筒が無数に装着されており、足元に黒猫がいた。
 今の世界ではいないはずの人間……それはまさしく異常な人間だった。
 涼しげな瞳で見下ろしたのが気に食わなく襲ったら返り討ちにあった……。
 洗練された剣術、正確な射撃……そして悪魔を自分の手足のように操っていた。
 急ぎの旅だったのか、殺す価値もないといわんばかりに見逃された。
 屈辱だった…。
 さらに力をつけて秘宝を手に入れた。
 世界を征しようとした悪魔を返り討ちにして力を奪い取った。
 それを横取りしようとした人間小娘がいたから腕を引きちぎる。
 屈服しないその目が気に入らず、その娘を犯した。
 美しい肢体を自分の精液で汚す事で黒い喜びを満たした。
 だが……人のような悪魔のような胡乱な存在に手駒の悪魔を討たれ、自分の頭部を鋼の爪で握りつぶされたのが記憶の最後だった。


「あーはっはっは!!!」


 自分は死んだのか?
 自分はなにものなのか?
 二つの記憶が混ざり合い、矛盾を抱えながらも確立した。
 彼は混乱していたが、唯一つだけ確かな事があった。
 自分は餓えている……満たされぬ思いがある。
 それを満たすため、破壊の限りを尽くすと。
 たまたま通りがかったホームレスがいた。
 かつての自分がよく世話をしていた男だった。


「なにしているんだい、■■?
 なんか若くなって顔つきが随分違うね……。
 なんか荒れているけど……」


 なれなれしく話してくるホームレス。
 そして今の現状を思い出す。
 今の自分はボロボロになった背広だった布切れだけ。
 そして自殺しようと思って持っていたナイフだけだった。
 彼は、ニヤリと笑い、ナイフを無造作に横殴りに振った。


「え……」


 それがホームレスの最後の言葉だった。
 彼は、首筋だけ斬って苦しませて殺すつもりが勢い余って首を刎ねてしまった。
 望みどおりの事が行えず、怒りを覚えたが予想以上の力を持っていることがわかり、機嫌を直す。
 男はホームレスの遺体から衣服を奪う。
 そしてふと思い出して首から皮を剥ぐ。
 顔面のみを切り取り、丁寧に剥ぎ取り、服の型に貼り付ける。
 ナイフに今の自身の姿が見える。
 血糊で見えにくいが、以前の自分よりはマシになってきたと思えた。
 死体をどうするか考え、そういえば近所で自動車好きで広い車庫がもっている奴がいたのを思い出す。
 自動車がうるさく煩わしく思っていたから丁度良い。
 この遺体を投げんでやろう。
 驚いたところで皮を剥いでやろう……。












「ほえほえ……」

「そこか、フリーダー!」

「了解」


 代々木公園にて……ノッカーが指差す方向に空間の歪みを見つける。
 石動は小角を憑依させ、術を唱えて空間を安定させる。
 フリーダーが腕を伸ばし、中の物を回収した。
 緑色の三角錐の物体……大きな力はあるが、驚くほどではない。


「エネルギー量は多いですが……」

「つまり、使われたか、漏れ出したわけか」

「恐らく……」

「ほえほえ、サマナー、濡れ煎餅が食べたいのう」

「ああ、俺も食いたいから食いにいくか……近くで良い店があるからな……」

「マスター?」


 フリーダーは首を傾げる……そのしぐさはどことなく愛嬌がある。
 最近、誰に吹き込まれたか、色々と世話を焼こうとしている。
 最後には背中を流すと風呂場に入ってきた時は流石の石動も驚いたが(むろん、丁重に断った)。
 石動は答えた。


「ああ、目的の物は運よく楽に回収した。
 だが、中に詰まっていたエネルギーがここまで少ないのが気になってな。
 もともと無いのなら問題ないが……」


 そういって懐から紙を取り出し、アセイミーナイフで切って鳥形にし、息を吹きかける。
 白い鳩に変わり、空中を飛びまわる。
 石動が食事に行く間に問題があれば直ぐに戻れるように準備をした。
 式神を代々木公園周囲に飛びまわらせて異変を探すようにした。


「よし、いくか」

「はい、マスター」


 フリーダーと石動は休憩をとることにした。
 その一方で……。


「ヒーホー……」


 代々木公園で石動のいた所からちょうど正反対のところに一人……いや、一体の悪魔がベンチに腰掛けている。
 黒い学帽、黒い学ラン、小柄な身体に、白い顔。
 顔面は雪だるまのような可愛い顔つきで女性の大半はそれを可愛いというだろう。
 ジャックフロストという雪の妖精がいるが、それに似ている。
 いや、正確に言うとジャックフロストが学ランを着ているといっても良いだろう。
 そして、異常に尖ったもみ上げが印象的だった。
 だが、彼が発する魔力はジャックフロストの放つそれよりも遥かに高い。
 彼はため息をついていた……彼の手には大学芋があった。
 それをゆっくりと食べてながら涙を流すが、彼の冷気によって直ぐに雪の結晶に変わる。


「大学芋を食べると思い出すホー。
 十四代目……最後まで倒せなかったホー」

 
 彼の脳裏に一人のデビルサマナーの姿を思い出した。
 大正時代、帝都東京を何度も救ったデビルサマナー。
 葛葉四天王の一角で誉れ高い存在。
 彼は、その存在に成り代わりたいと欲した。
 辛い修行をし、力をつけた。
 だが、目標は常に上をいかれ、最後まで勝てなかった。
 彼はそれでも修行した……だが、今はもう目標がない。
 十五代目になるといったが、彼の本当の目標は……『十四代目を超えて十五代目になること』だった。
 もう、永遠に果たせない目標。
 彼はため息をついた。


「もう一度……十四代目に会いたいホー」
 
 



[7357] 第30話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/31 16:07
 石動は駐車場に止まっているトレーラーを見つける。
 まだ、マークを決めていないのか、銀色一色のボディであった。
 石動達は開いているドアから入った。
 中にいるのはサイコダイバーだ。
 相変わらず能力を抑制するサングラスとかけて白衣をだらしなく着ている。
 部屋は整理されており、治療用のベッドが一台おいてあり、奥には本棚とパソコン、TVにゲーム機が置いてあった。
 更に奥はシャワー室や洗濯機が置いてあるのだろう。
 サイコダイバーは石動を見た時、微笑み、歓迎する。


「久しぶり」

「そう時は経っていない。
 土産だ」


 そういって濡れ煎餅を渡す。
 煎餅は普通焼き上がり、食感は硬く、歯ごたえのあるものだ。
 だが、濡れ煎餅は、生地を焼いた直後にまだ熱いうちに醤油に漬けることで、しっとりとした歯ざわりと濃厚な醤油味となる。
 石動とノッカーはこの煎餅を好み、機会があれば必ず買っている。
 濡れ煎餅は、元々千葉県の特産品であった。
 現在では広がり、他の県でも販売されており、石動が見つけた店はその一つである。
 サイコダイバーは一枚受け取り、食べ始める。


「うん、美味いな」

「そうだろ?
 風間の旦那やジェシカは苦手なんだがな……同士が増えて嬉しい限りだ」

「ああ、お茶をいれるね。
 仕事かい?」

「一応目的は済んだついでに来た……が、後が心配だからアフターケアだけはしっかり行っておきたい」

「そうか……もし怪我をしたら来ればいいよ。
 格安で治療するから」

「精々死なないようにするさ……ん?」


 石動は表情を変える。
 式神の知らせを受けた石動は荷物をまとめる。
 サイコダイバーは石動の様子から察し、心配そうに問う。


「大丈夫?」

「わからん……この商売は一瞬先は闇だからな」


 ニヤリと笑う石動には恐れは無い。
 石動とフリーダーはトレーラーから去っていった。













 変貌した彼は代々木公園にもどる。
 彼の服に無数の人間の顔面の皮が張り付いている。
 殺しを楽しんだが、もっと力を欲した。
 代々木公園で生まれ変わったのだから、手がかりがあるのかもしれないと。
 しばらくうろつくが、なぜか人がいない。
 さらに進むと、大学芋を食べている学ランを着た雪だるまがいた。
 変だとおもいつつも殺してマガツヒ……もう一人の自分の記憶の中で泥の人形や人間が多く持っている黒いモノが取れるだろうと思った。
 悪魔はそれを吸収して強くなり、そしてその悪魔より強い悪魔が殺してマガツヒを得るらしい。
 彼はそう思い、雪だるまにナイフで切りかかる。
 

「ヒホ!?」


 雪だるまは咄嗟に大学芋が入った器を彼に投げつけてできた隙に後退していた。
 突然襲われた事に激怒する雪だるま


「ヒーホー!
 僕がデビルサマナー初代葛葉ライホーとしっての狼藉かホ?
 ひょっとして移植版『迷路でヒーホー』の主役のオファーだホ?」

「くずのは……?」


 頭痛がした……彼にとって不快な響きだった。
 彼は吐き棄てた。


「手前を殺してマガツヒを啜らせてもらうぜ?」

「マガツヒ……マグネタイトのことかホ?
 それより、アンタは誰だホ?
 見たことの無い悪魔だホ」


 雪だるま……ライホー君は、小柄な身体で自分の腕を風車のように回している。
 彼は自分の名前が思い出せなかった……だが、社会で慕われていた男はもう既に存在しない。
 ならば元の名前は相応しくないから思い出さなくても良いだろうと考えた。
 記憶の中で泥人形を殺すときに自分を呼ぶ名前を思い出した。


「俺か……俺はサカハギ、悪魔を支配するものだ!!」

「サマナーには見えないホ……」

「従うか、死ぬか……さあ、選べ!」

「どちらもお断りホ!
 悪魔召還ホ!!」

 
 だが、呼ばれなかった……。
 サカハギはかまわず切りかかる。
 ライホー君は思い出した。


「しまったホ!
 マハカーラは久々に宝船に行っていたホ!
 それにドゥンも迷子になっていたホ!」


 マハカーラは、破壊神シヴァの別名であり、仏教にも取り込まれて大黒天と呼ばれる存在はライホー君の最強の仲魔だった。
 また、頼りになるドゥンも不運に見舞われてはぐれた。
 他の仲魔もいないこともないが、サカハギ相手では壁にもならないと判断した。
 ライホー君は全力を尽くして自分の最強魔法を唱える。


「冬将軍ホー!!」


 冷気を凝縮させ、武者のコスプレをしたジャックフロストを模した誘導弾を生み出す。
 たかが、ジャックフロストと油断したサカハギは直撃した。


「やったホ?」

「ぐおおおおおお!!
 マハラギダイン!!!」


 だが、サカハギは耐え切り、腕を振り、破壊の炎が吹き荒れる。
 直撃こそ免れたが、手痛いダメージを受けるライホー君。
 それを見て意外そうな顔をするサカハギ。


「雪だるまの癖に……やるじゃねえか!!」

「舐めるなホ!
 修行して炎にも耐性がついているホ!!」


 炎を克服していなければ致命的なダメージを負っていたかもしれないと、冷や汗をかくライホー君。
 互いの隙を伺っている時に異変が起きた。
 目の前の空間が歪んでいた。
 そして閃光が奔った。


「な……」

「ま、まさかホ!?」


 閃光が消えたとき、一人の青年が立っていた。
 腰には刀とコルトライトニングカスタム、胸には金属筒が無数に装着され奇妙な装備。
 黒い帽子に黒いマント、黒い学ランという戦前の学生のような人間。
 顔立ちも美しく、まるで役者のようであった……顔に走る一筋の傷がなければ。
 青年は閃光で目が眩んでいたようで顔を2,3度降った。


「おのれ……ルイ・サイファーめ!!
 それより、ここはどこだ?」

「ライドウかホ?
 顔に傷ができているけど大丈夫かホ?
 僕だホ、十五代目葛葉ライドウ予定のライホー君だホ!!」


 誇らしげに名乗りを上げるライホー君。
 だが、ライドウと呼ばれた青年は首をかしげた。


「む……済まんが覚えが無い。
 しかしジャックフロストがサマナー?
 だが、力はあるようだ……」

「そ、そんな……忘れたのかホ?
 昨年老衰でポックリ逝ったライドウだから化けて出てもボケているのかホ?」

「失敬な、我はまだ二十も生きておらぬ……待てよ、ここは『向こう側』か!!」


 青年は一人納得したが、ライホー君は納得していない。
 それを察した青年は問いただす。


「おい、お前が以前合った我は顔に傷はなかったのか?」

「なかったホ~」

「ふむ……お前に理解できるか解らんが説明しよう。
 世界は無数の分岐しており、我はここの世界の我ではない。
 別の世界の十四代目葛葉雷堂だ」


 区別の為に、今やってきた青年を雷堂、昨年亡くなった方をライドウと呼称しよう。
 ライホー君は理解できたようだ。


「なるほど、パラレルワールドかホ?
 漫画で見たことあるホ。
 なら僕を知らないのは当然ホ」

「思ったよりも賢いな。
 しかし……察するに向こう側とはいえ未来につくとは……」



 二人は話しているが、サカハギのほうはただ立っていたわけではない。
 彼の記憶で完膚なきまでに打ち倒した人間と瓜二つの男が現れた。
 その時、黒い猫が青年の事を『ライドウ』と呼んでいた気がした。
 今、目の前にいる存在も『ライドウ』……怨敵が現れた事に黒い喜びがサカハギを満たしていた。
 サカハギは腕をふって叫んだ。


「オラ、来いよ!!」

「な……」

「悪魔か!!?」



 サカハギの周りに無数の悪魔が出現した。
 彼に殺された無数の人間が悪霊となった幽鬼レギオン。
 サカハギ移動していた最中に襲われた生物を殺したのがゾンビ化したコスモゾンビ。
 彼の破壊活動に轢かれて下僕になったテロリストが悪魔化したアーバンテラー。
 人間だった彼の抑圧された精神から生まれた存在である仮面の集まりのような悪魔であるシャドウ。
 謎の毒ガスを撒く怪人・マッドガッサー。
 50体を超える悪魔が現れる。
 たった一晩でここまで支配下におさめるサカハギの能力は恐るべきものであった。
 サカハギはナイフを構えながら言った。


「お前には借りがある……顔に傷がついたのは気に食わんが殺して皮をはいでやる!!」

「雷堂……」

「もう一人の我も厄介な奴の恨みを買ったものだ。
 だが、我も雷堂だ。
 アラカナ回廊で鍛えた成果を見せるとしよう!!」

「黙れ!数で押しつぶしてやる!!」

「纏めてぶっ飛ばすホ!!」

 
 そう言い放ち、冬将軍を放つが、仮面の悪魔……シャドウに阻まれ、反射してきた。
 氷の妖精であるライホーには無論効かないが……


「魔法を反射しているホ!?」

「厄介な……纏めて魔法で倒そうとすると奴に返されるとは。
 さらにそれを物理攻撃が強いレギオンに守らせているとは!!」


 雷堂の指摘の通り、シャドウとレギオンがコンビを組んで阻み、アーバンテラーが銃器を乱射し、マッドガッサーは毒ガスを撒く。
 宇宙人のゾンビであるコスモゾンビは電撃を飛ばし、サカハギも衝撃魔法を飛ばす。
 雷堂の手持ちの仲魔に無論なんとかできる者がいるが……呼び出す隙もない。
 そう思ったときに彼らの別方向から声が響く。
 やってきたのは石動とフリーダーだった。


「全く、用心していた通りだった……フリーダー!!」

「了解。
 悪魔と戦闘しているサマナーに援護します」

 
 そう言ってフリーダーは口から霧を出し、敵の視界を阻害する。
 雷堂は援護した見知らぬサマナーに感謝しつつも悪魔を呼ぶ。
 同時に厄介そうな悪魔を封じる為に石動が魔法を唱える。
 

「ハ・キョウ……!!」


 シャドウを阻むレギオン達を狙い纏めて魔法をかける。
 霧の中から魔法を受けなす術も無く鏡に閉じ込められた。
 石動はサマナーに叫んだ。


「そこのサマナー!
 壁は封じた!!
 壁ごとシャドウ……仮面の悪魔を倒してくれ!」

「承知した……フツヌシ、ラクシャーサ!!」


 無数の剣を空中に浮かべて操るフツヌシこと経津主神と、真っ赤な身体と双刀を操るラクシャーサが現れた。
 フツヌシはイザナギがヒノカグツチを斬り殺した際に滴り落ちた血から生まれた剣の神である。
 ラクシャーサはインド出身でヤクシャとともに水を守るものとしてブラフマーに創造された鬼の一族であった。
 ヤクシャとは異なり完全な悪であり、日本では羅刹とも呼ばれる存在であった。
 ラクシャーサは魔法を唱え、フツヌシは雷堂とともに連携して切りかかる。


「タル・カジャ!
 そこのハイカラなアンちゃんの援護を無駄にするなよ!」

「無論だ……!!
 合わせろフツヌシ!」

「応!!」

「「震天大雷!!」」


 二人同時に縦横無尽に敵を切り裂いた一撃は正に天を振るわせる雷の如く激しいもので、レギオンとシャドウの群れを纏めて粉砕した。
 鏡に閉じ込められた悪霊はダイヤモンドダストのように鏡の欠片を舞いながら消滅し、魔法攻撃を反射できても物理攻撃に弱いシャドウは霊刀・霊剣の前には紙のようなものであった。
 タケミカヅチとともに葦原中国を平定した神の実力は伊達ではない。
 手駒を討たれたサカハギは舌打ちしながら言い放つ。


「糞が……!!
 殺すぞ、人間!!」

「マスターは人間で、私は造魔です。
 糞尿は生物の肛門からでるものです」

「このアマぁ……!!」

『(天然だよなあ、フリーダー……)』


 妙な方向に丁寧に応対するフリーダーに苦笑いするラームジェルグ。
 石動もフリーダーも変わったものだと思いながら妖刀ニヒルを構えた。
 石動は、雷堂をフォローするように隊列を組み、話しかけた。


「見たことの無い悪魔だが……厄介なことには変わらん。
 纏めて始末するとしよう。
 そこのサマナー事後承諾だが共闘を提案する」

「かまわぬ」

「しょうがないホー。
 この初代葛葉ライホーが手伝ってやるホー」

「うーん、キョウジから聞いた事無いんだがな、ライホー……」

『クズノハも時代の波に押されたのか?』


 得意気に話すライホーと考え込む二人。
 強敵を前にしても暢気に考える二人と一体であった。
 雷堂は、石動の言葉に反応した。


「『狂死』だと……あとで聞かせてもらおう。
 我は十四代目葛葉雷堂……とは言ってもこの世界とは別のところから来た存在だ」

「……お互い、後で話し合うとしよう。
 まずは目の前の敵を討つぞ!!」





[7357] 第31話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/31 17:14
「雷堂よ、数が多いのう。
 ワシはワクワクしてきたわ」

「アン?
 とにかくよぉーぶっ殺せばいんだな?」

 
 好々爺のような口調で物騒なことをいうフツヌシと、身体の色の通りに血気盛んなラクサーシャ。
 雷堂はそれに無言で頷く。
 大正育ちの青年が知らないであろう悪魔がいるので、石動が情報を開示した。


「アーバンテラー……あの銃器を持った奴は物理攻撃を反射するから気をつけろ!」

「なら、僕が力を貸すホ!」


 ライホー君は、バク宙をしてから魔力を放射すると、雷堂と石動の日本刀が白銀色の光が宿り、冷気を噴出している。
 『銀氷真剣』と呼ばれる技で剣を氷結属性を付加する技である。
 雷堂がライホー君に礼を言った。


「感謝する。
 フツヌシ、ラクシャーサよ……あの銃をもった輩は我らが蹴散らす。
 貴様らはその他を優先して討ち取れ」

「よかろうて」

「ヒャッハー!消毒だ!!」


 フツヌシは楽しげに、ラクシャーサはどこかならず者のような喋りをしながら悪魔に突撃する。
 石動はラームジェルグを憑依させ、フリーダーに指示を飛ばす。


「フリーダーは、フォッグブレスで更にかく乱した後に火炎魔法で確実に宇宙人を焼き払え。
 俺達がアーバンテラーを殲滅したら銃撃と氷結魔法で広域攻撃に切り替えろ」

「了解しました」

『そうだな、新たな成長のために語尾に『ニャン』とか…』

「フリーダー、コイツのいう事は信じるな」


 悪魔の数は多い……だが、所詮は烏合の衆であった。
 霧が濃密になり、攻撃は当たらず、逆に喰らうようになった。
 ラクシャーサが双刀を振るうたびにマッドガッサーが倒れる。
 更に回転を始め周囲の敵を纏めてなぎ払う。
 フツヌシの剣が生き物のように飛びまわり、コスモゾンビを切り裂く。
 運良く生き延びてもフリーダーのアギラオで焼却される。
 雷堂と石動が刀を振るい、アーバンテラーを両断する。
 二人は殺気に反応してホルダーから銃を取り出し、発砲する。
 コルトライトニングカスタムとトカレフが火を噴く。
 

「ぐぁ……てめぇ!!」

「弱い犬ほどよく吼えると言ったものだ」


 サカハギが乱闘中に不意打ちしようとしたのだろう。
 だが、濃密な殺意を封じきることは不可能で二人は察知して銃撃を与えていた。
 肩と大腿部を討ち抜かれ、膝をつくサカハギに冷たく言い放ち見下ろす雷堂。
 かつての屈辱が蘇っていた……サカハギは怒り狂う。


「俺を……見下ろすなあああ!!」
 

 邪気に満ちた雄叫びが二人を包む。
 それでも氷結の刃を振り下ろす雷堂。
 それをナイフで受け止め、力任せに押し返す。
 体勢が崩れる雷堂に追撃をかけようとするサカハギだが……


「があああ!!」

「無用心だな……!!」


 サカハギの肩口の銃創を抉るように切り裂かれていた。
 石動が妖刀ニヒルから呪いの歯車に変形させ、隙を見せたサカハギに攻撃したのだ。
 体勢を立て直した雷堂が無数の斬撃を嵐のように叩きつける。
 サカハギは切り裂かれた箇所から氷結し、更なる苦しみを得た。


「俺は……全てを……悪魔……支配……」

「生憎だったな」


 石動は、武器を斧形態・首狩りスプーンに変形させて叩き込む。
 止めに雷堂が眉間から縦に真一文字に両断した。


「何故……こんな…ヤツに…」

 
 雷堂は刀を一振りして血糊を飛ばして納刀し、サカハギに背中を向けた。
 サカハギから、無数のマガツヒが爆発するように噴出し、消滅した。
 仲魔たちが取り巻きを丁度打ち倒していた。
 安心したその時、石動の心臓部に激痛が走った。


「が……」

「う……!
 塞がったはずのマーラとの傷が……」


 雷堂を腹部に激痛が走っていた。
 同時にサカハギよりも恐ろしい気配が漂った……それは石動に覚えのある気配だった。


「魔人……か!!」


 上空に目をやると、翼の生えた砂時計を持った老人が飛んでいた。
 ヘルズエンジェルよりも強い存在感を漂わせていた。
 二人のサマナーの隙を狙った一撃……それも何が起こったか解らない一撃だった。


「……不味いな」


 不利を悟ったが逃げられそうにない……だが、清浄な空気が背後から漂ってきた。
 空に浮かぶ魔人はそれを察知した時、逃げるように去っていった。
 背後を見たら案の定、依頼主の老人だった。
 石動は礼を述べた。


「すまない、助かった。
 危うく不覚をとるところだった」

「いや、仕方あるまい。
 魔人の中でも上の存在じゃからな。
 それよりも……回収したようだな」


 老人の言葉に頷き、回収したヤヒロノヒモロギを渡した。
 それを見て頷く老人は瓢箪を取り出した。


「それは?」

「治療用の仙丹じゃ」


 そう言い、水に溶かした後、二人の傷跡に塗りつけた。
 痛みは止まり、じきに傷が塞がりそうだ。
 雷堂も老人に礼を言う。


「感謝する」

「うむ……異なる世界のサマナーよ。
 すぐに元の世界に戻るといい。
 時期に時空が乱れ、戻るのに手間取ってしまうからな。
 石動よ、感謝する。
 後で礼の品を届けるとしよう」


 そう言った後老人が消え去った。
 ライホー君が疑問を言った。


「一体あの爺さんは何者ホー?」

「うむ……只者ではないな」

 
 雷堂も老人の実力を見て取っていた。
 石動が疑問に答える。


「恐らく仙人……道教のトップクラスだな。
 地上に出そうな存在となると更に絞られるな」

「まさか……だが」

「まあ、いいホー。
 それよりどうやって雷堂は帰るホー?」


 二人で正体を確信していたが、ライホー君の言葉で我に返る。
 雷堂が今までの経験から答えを言った。


「志乃田の忘れられた神社を知っているか?
 ヤタガラスの使者が何とかするだろう」

「知っているホー。
 案内するホー」

「ならば俺はお別れだな」

 
 ライホーが案内する事になり、石動と別れることになった。
 一戦だけであったが、共に闘い、意気投合しした二人だった。
 雷堂は石動に語った。


「短い間だったが、世話になった未来のサマナーよ。
 貴様の剣術は玄妙であり、そして悪魔を身に宿して戦う闘法は見事だった。
 我も修行を積んだがまだまだもう一人の我ほどではないと痛感した」

「こちらこそ、世話になった、伝説のサマナー。
 世界は違えど、見事な悪魔召還だった。
 そちらに帰っても達者にやってくれ。
 もし、また来ることがあれば歓迎する」

「その時は大学芋を所望する」

「いいだろう。
 また会う時があるかもしれない。
 だからさらばとは言わん。
 また会おう」


 ライホーに連れられて雷堂は去っていった。
 ラームジェルグはしばらくしてから喋った。


『いやあ、世の中面白いことがあるもんだ。
 しかし……あの魔人はなんだ?」

「奴は……『時の翁』」

「!?」


 石動の背後から声がかかった。
 振り返ると石動が夢で見た黒い皮のジャケットを着た老年に差し掛かった男だ。
 存在が心なしか希薄のような気がする。
 石動は尋ねる。


「知っているのか?」

「ああ。
 魔人の中で強い力を持つ存在だ。
 その正体は謎とされており、一説では時間神クロノスと考えられている。
 ゼウス神の父クロノスとは別の存在だったのだが、名前が酷似していた事から混同・同一視される事が多かったがな」

『じゃああの時の攻撃は……まさか!!』

「そうだ……。
 時を操りお前が傷を受けたときに巻き戻したのだ」


 時の翁の恐るべき能力を聞き、戦慄する二人。
 ラームジェルグが目の前の存在が只者でない存在であることを察知した。


『……石動、コイツは何者だ?」

「さあな……名前を聞いていなかったな。
 聞いてもかまわないな?」


 男はしばし考えて言った。


「『鈴木』と呼んでくれ」

『ダウト!』

「あからさまな偽名だな」


 日本人離れした彼が名乗るには余りにも無理があった。
 ラームジェルグが突っ込むのも無理も無い。
 男はしばし目を瞑り言った。


「『ザイン』だ……かつて名乗っていた名前だ。
 今の状態の私なら名乗るに相応しいかもしれない。
 『石動 巧』の名を背負う者よ……時の翁のほかにも魔人が現れている。
 いずれ、お前の命を奪うべく襲い掛かるだろう」

「まったく……なんでまた俺に?」

「魔人ヘルズエンジェルは偶然襲い掛かったものだ……だが、時の翁はお前を恨みを持つ堕天使が招きよせた」


 それを聞き、顔を歪める石動。
 倒しきれなかったツケが来たことを実感したからだ。


「オセか……」

「そう、お前の人生の転機の『きっかけ』だ。
 たとえやつらをやり過ごしても本命が待っている」

「なんだと……?」

「『過去』が……お前に向かって追いかけてくる。
 そして無間地獄から抜け出したお前に審判が下る。
 この先、生きるべきか……それとも死ぬべきか」

「……!!」

「後悔のないように生きることだ『石動 巧』の名を背負う者よ……」


 男は消え去った。
 事件は解決した……だが、石動の心に大きな不安が残る事になった。


 この事件に後日談がある。
 案内していたライホー君が電車に乗っていて暖房で溶けてしまい、雷堂は慌てて外にでて冷やした。
 そのせいか解らないが、ヤタガラスの女から『しばらく時空が安定するまで生霊送りは危険ですので、しばらく滞在していてください』と宣告された。
 平行世界の雷同は約半年ほど足止めを受けることになった(戻るときは出て行った時間帯の直後に戻せるらしいので雷堂の使命の妨げにならなかったのが救いである)。



あとがき。

ポロリ編です……首とか皮とか。
夢の男の正体は鈴木社長です。

代々木公園で爺さんがうろついていたのはヤヒロノヒモロギ回収のため。
でも、某社会の成功をおさめた人の憤怒を受けて呼び出されたのがサカハギです。
ヤヒロノヒモロギに貯蔵されたエネルギーではコトワリを導く神は呼べませんがそれなりに強い神を呼び出せます。
ただの社会人になぜサカハギを呼べたかは想像にお任せ……。

今回のスペシャルなゲストであるライホー君。
ライホー君の思いか時空を超えて呼び出しました『彼』を。
越えるべき壁であり、信仰していたようなものでしたし。

問題の『彼』は……平行世界の彼。
超力・アパドン王でも登場している傷がついている雷堂。



次回はホイホイ編です。



[7357] 第32話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/03/31 22:47
 ウーリの研究所は相変わらず静かだ。
 同じ錬金術師であるヴィクトルはメイドのメアリと剣合体の弟子のような代三十三代目村正がいるが、ウーリはただ一人研究に励んでいる。
 彼を最近一番訪ねてくるのは……


「邪魔をする」

「失礼します、造物主ウーリ」

「来たかね」


 石動とフリーダーであった。
 多くの悪魔を屠り、彼の武器は禍々しい方向に強化されている。
 フリーダーも更なる成長が期待できるだろう。
 早速データを収集し、フリーダーのボディの強化とスロットの作成にかかった。
 フリーダーと『箱』を機械に繋ぎ、調整を開始した。
 その間、石動はこれまでの事を話した。


「時を操る魔人に、平行世界の人間、そして神すら呼べるヤヒロノヒモロギか……面白い」

「厄介事が増えて頭が痛いがな」

「だからここに来たのであろう?」

「まあな、力をつけておいて損はない」


 この世界で足止めになった雷堂も良い機会だという事で修行を続けている。
 COMPを使った悪魔召還に驚きを隠せない。
 なにせ大した使い手でなくとも悪魔を複数同時に使役できるのだから。
 だが、雷堂のやっていることは無駄ではない。
 古来からの神道の術式を生かした悪魔使役は通常の悪魔使役よりも悪魔の力が発揮出る。
 ただ、今の雷堂では戦闘中に二体までしか使役できないが。
 彼はコンプレックスを抱いているようだ。
 この世界の雷堂は出来がよく、彼が苦戦した魔王マーラを難なく撃破したらしい。
 自分と同一人物ではあり、少なくともそこまでいける可能性はあるが、先を行かれているという焦りがある。
 ライホーと共に修行をし、時々他のサマナーの助っ人になっているようだ。
 もっとも、今一番苦戦しているのはこの世界の生活様式に慣れる事だが……。
 ウーリと話すうちにフリーダーの強化が終わった。
 フリーダーは石動のところに戻り、ウーリはスロットの作成にかかった。


「さて……また多くの悪魔を倒したもんだ。
 ほう……これは!!」


 ウーリは歓声をあげているがフリーダーと話している石動。
 フリーダーも段々情緒面の発達をしている。
 また、最近は緑茶など飲み物を愛飲するようになった。
 造魔も一応酒を飲むことが出来る。
 性格を変える必要があるときがあるし、酒を飲めば効力が発揮できるスキルがあるからだ。
 石動は烏龍茶、フリーダーは緑茶を飲んでいる。


「楽しいか、最近は」

「よく解りません……ですが。
 マスターが無事であり、周りの皆様が健やかであって欲しいと思っています」

「そうか…」


 ウーリがチップを完成させた。
 新たに覚えたスキルは次のものだった。
 補助を打ち消す『デカジャ』、『デクンダ』。
 電撃スキル『ショックウェーブ』。
 補助スキル『逃走加速』『電撃高揚』
 特殊スキル『ルナトラップ』(逃走防止)
 
 これらが手に入った。
 石動はいままでのスキルも考慮してフリーダーのスキルが決まった。


 毛蟲(フォッグブレス・ディアラマ)
 石蟲(アギラオ・マハブフーラ)
 翼蟲(デクンダ・電撃高揚)
 尖蟲(忠義の銃撃・ショックウェーブ)

 となった。
 デカジャは石動がデカジャの石を購入すれば済むため、スロットにはセットしなかった。
 ウーリが自慢気に言った。


「私の最高傑作だよ」

「良い仕事だ……俺も精進しなければな」


 石動はそう言って烏龍茶を飲み干す。
 ラームジェルグが口を挟んだ。


『そういえば、さ~くらちゃんは?』

 
 某三代目の怪盗が言いそうなイントネーションを黙殺しながら言う石動。


「オカルト好きの友達が最近出土した即身仏に興味があってつき合わされたらしい」

『へえ……』

「……まあ、大丈夫だろう」

『そうだな、この前死にそうな目にあったけど。
 そんなことにホイホイ巻きこまれるわけがないよな、あははは』


 だが、彼らは失念していた。
 二度あることは三度ある、再三再四という事もあると。









 おまけ


『フリーダー』

「なんでしょうか、ラームジェルグ様」

『何も言わずにこの虎縞の水着と角をつけて……』

「おい、何を考えている。
 フリーダー、気にするな」

「了解」

『チィ。
 ところで、俺もパワーが必要だと思うんだよ』

「ほほう、マトモな事を言うじゃないか」

『ここで姿・スタイルを大胆にチェンジしたいわけだよ。
 雷系の魔法が唱えられれば幅が広がるわけだ』

「ほうほう」

『最近活躍していないからここでキャラの発展を目指して…
 ダーリンの浮気者だっちゃー!』

「死ねば良いのに」


 相棒に対して冷たい?
 だが、想像してみてくれ。
 目の前で落ち武者が無理やり霊体の上から虎縞の水着(女物)を着て角をつけている。
 高@先生のファンでなくとも怒るだろ?





[7357] 第33話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/01 13:18





「ああ、面倒だな。
 こんなものが見つかった為に」


 修行僧は愚痴をこぼす。
 ここ、原横寺で即身仏が発見された。
 山の洞窟の奥に石の棺で眠っていた。
 金秀という僧侶が即身仏となり、人々の救済を願いながら死んだと棺に書かれていた。
 だが、不思議なことに寺の文献には一切書かれていない。
 偶々地震で洞窟の岩が崩れて発見したのだ。
 発見してから住職は交代で掃除を命じた。


「まったく面倒だよな……誰かがこっそり入ったとかいっていたし。
 でも盗むものはないのに……しいて言えばミイラだけだけど。
 それも盗まれていないし」


 一人、暗い道を行く為、不安を隠すために独り言をこぼした。
 実際、誰か進入した形跡らしきものが発見されたが、何もないため気のせいだと結論をつけた。
 だが……。


「皆、ミイラが一人でに動いたって噂して……まさか、このスペースシャトルが飛ぶ時代に」


 そう言ったとき、鈴がなった。
 修行僧は驚く……だが、気のせいと断じて奥へ向かう。
 奥は変わった様子がない、安心した時背後から声がかかった。


「人間は生き、そして滅ぶ」


 修行僧は慌てて振り返るが、誰もいない。
 だが、振り返った後、その後から声がかかる。


「だが、人は死に抗う」


 振り返ると、即身仏がいた。
 肉は風化したのか骨のみになり、大僧正の証である袈裟を纏っていた。
 右手には鈴を持ち、結跏趺坐のままで空中を浮遊するという異様な光景だった。


「迷いたもうた人間達よ……
 汝らの死の抗いは迷いに過ぎぬ」

「あ……ああ」


 非現実的光景に腰を抜かす修行僧。
 無理もない。
 即身仏から圧迫感を感じ、ろくに呼吸ができない。


「いくら功徳を積もうとも汝らの暗黒は晴れはせぬ」


 朗々と修行僧に教えを説く即身仏。
 それをなぜか聞き入ってしまう。


「一切衆生の迷いを解くが我が務め。
 汝の身、我に任せるが良い」


 修行僧は、その言葉を聞き得れなかった。
 彼の本能がどうするか悟っていたからだ。
 だが、如何なる手段か、動けなくなっていた。
 そして、即身仏は言い放つ。


「受け取られい、我が死の救いを!」


 鈴が鳴り、洞窟に修行僧の悲鳴が響き渡る。



















「で、どうよ、さくら?」

「どう……って?
 佐奈、それだけじゃわからないよ」


 原横寺の途中、喫茶店で話し込んでいた。
 オカルト好きである菊池佐奈とそれに付き合わされた早乙女はケーキを食べながら話をしているが……。
 菊池はセミロングで大きな瞳で活発な印象を持った少女だ。
 標準以上の美貌を持つ二人の少女が話す所は絵になる。



「知っているわよ。
 教育実習生の石動先生は、実は探偵で生徒内部の問題を調べていたって。
 さくらが石動先生の所に入り浸っているのもね」

「よく調べたわね。
 でも、私は探偵業をやりたいからそのノウハウを学んでいるだけよ。
 そういう話にはならないわ」

「わっかんないわよー。
 男は狼だし」

「まあ、あの人が何考えているか解らないけど」


 三白眼の男が何を思って探偵のノウハウを教えているのだろう?
 それ以前にラームジェルグのほうがもっと何考えているかわからないが。
 菊池が更に続ける。


「それに、さくらが前と違うから色々邪推したくなるじゃない?」

「ああ……」


 早乙女は納得した。
 普通の高校生よりもはやく進路を決め、学び始めている。
 また、世界の裏を知った事も大きな影響を与えている。
 そしてもっとも大きい理由は『実戦』を経験した事だ。
 剣術は人一人斬って一人前と言う。
 ゾンビとはいえ十体以上屠った彼女は、以前の彼女とは大きく差が出る。
 もともと剣道の有段者だったが、さらに腕を上げた。
 現在では石動が頼み、風間の紹介で機動隊の稽古に混じって剣道・柔道・逮捕術の稽古に混じっている。


「剣道部の顧問が全国大会で活躍できるのは間違いないって言っているよ」

「うーん、以前よりは強くなったとは思うけど……」


 早乙女の頭には巨大な重火器を軽々と操るジェシカが思い浮かび、そこまで逞しくないかなと思っている。
 なお、ジェシカの名誉の為に言うがモデル体型ではあるが、ボディビルダーやらコマンダーな体型ではない。
 早乙女の脳裏に不意に浮かんだ疑問があった。


「(石動先生ってどれくらい強いのかな?)」


 実は、彼の闘いを見る機会は少なかった。
 早乙女が初めて悪魔に出会った時は話し合いで終わり、ホテルでは部屋にいたままであった。
 普段の仕事でも悪魔がらみはほとんどなく、あっても交渉かフリーダーが出てきて終わる程度だ。
 先日の『アリス事件』でその一端が見れたが、極度の疲労があった上に短期間で終わりよく解らなかったが凄く強い程度にしかわからなかった。
 石動が守護霊なしの純粋な人間としての強さがいかほどなのか?
 早乙女は調べられるものなら調べたいと思った。
 二人は会計を済ませ、原横寺に向かった。















「コンニチワー……ってなんか人気が少なくない?」

「そうね……」


 菊池達が長い階段を上り、寺の門の前にいた。
 だが、人気がなく、どことなく重い雰囲気だ。
 早乙女は以前の経験から最悪の状況を想定した。


「佐奈」

「何?」

「戻るわよ」

「え、ちょ…ちょっと!!」


 早乙女は強引に引っ張っていく。
 同時に、携帯で石動のCOMPにメールを送る。
 菊池が早乙女の行動に疑問を抱く。


「なんで……ええ!?」

「……やっぱり!!」


 早乙女達が降りる途中で周りの景色が歪む。
 寺院が異界化し、早乙女達の先には壁で寺院を囲っており、出られそうにない。
 階段を降りる途中で横から人影が飛び出した。


「すいませ……ェ…」

「ううううう……」


 干からびた僧侶……正確には僧侶の死体が両腕を上げて近づいてきた。
 お世辞にも友好的な存在とは言えなかった。
 早乙女は腰に刺していた刀の柄を取り出し、念じる。
 柄から刃が伸びる……石動が『珍妙な猫の爪よりは扱いなれた武器のほうがいいだろう』と譲り受けた錬気の剣だ。
 早乙女は躊躇無く袈裟斬りを行う。
 技の名前通りに斬られる僧侶だが、倒しきれず爪を振るう。
 デビルサマナー・デビルバスターを目指す上で最初の強敵はゾンビである。
 たしか、常識を超えた力などなく、ただ五体のみが武器であり、一見雑魚に見えるだろう。
 だが……


「ひいい!!
 な、なんなの!?」

「私だって言いたいわ……なんでまた巻き込まれるのよ!!
 鋭!!」

「ぐがあああああ」


 悲鳴を上げる菊池。
 階段で戦った事が無い為、早乙女の打ち込みは威力が半減しているが、2度目の斬撃でゾンビが倒れ活動を停止した。
 ゾンビが厄介な点は幾つもある。
 まず、頑丈である。
 低級悪魔ならば急所に打ち込めば動きを倒せるだろうが、ゾンビは耐久力が高く、四肢を切り落としても這いずって襲い掛かる。
 それに、痛覚がゾンビによって異なるが、基本的に普通の悪魔に比べて痛みを感じにくいため怯むことはあまり無い。
 二つ目は、実体があることだ。
 MAGが無ければ実体化の維持が困難であるが、死体という実体が在る為、低級悪魔よりは長く戦えるし、活動範囲が広くなる。
 三つ目は、毒を持っている。
 ゾンビになったための異能力なのか、死体となって腐って体組織に細菌が沸いたのか……治療のための魔法か薬が無ければ致命的な事態に陥ってしまう。
 そして最後は……


「ちょっと……」

「不味いわね……!!」

 
 ゾンビが十体現れ、包囲された。
 ゾンビは集団で出る傾向があることだ。
 基本的に話し合いは不可能であるため殲滅するか、逃げるかしかない。
 それに外見が人間の成れの果てであり、昔ならばともかく、サマナー人口の増加によって質が玉石混交した現在では人を殺す事に抵抗を感じる者もいる。
 その迷いで命を落とす愚かな未熟者がいるのだ……酷な言い方であるが、迷うくらいならば踏み込むべきではない道なのだ。
 このように、ゾンビとはいわゆる『初心者殺し』なのだ。
 そして菊池という足手まといを抱えながら戦う事は困難である。
 早乙女は、どうやってき切り抜けるべきか迷ったが、剣を振り上げ高々と構える。
 ゾンビから少しでも注意を惹きつける為に。


「佐奈、コイツは惹きつけるから離れていて!!」

「で、でも……」

「ううううううう」

「佐奈を守りながら戦えるほど強くないから……早く!!」

「妥当な判断ね」


 聞いたことのない女性の声を聞いた早乙女。
 その声とともに無数の火弾がゾンビに降り注ぎ、あっけなく灰になった。
 その光景にあっけに取られる二人。
 声の主が姿を現した。
 髪を短く切った東洋系の美女で意志の強い瞳と美しい眉の持ち主だ。
 白いスーツに赤いネクタイ、底の低いブーツを履いた活動的な服装だった。
 三節根を左手に持っていて、さながらハリウッドに進出した美人カンフーアクションスターといったところだろうか?
 女性が早乙女に声をかけた。
 

「こんな時にやってくるなんて運が悪かったわね」

「ありがとうございます。
 あの……貴方は?」

「レイ・レイホゥよ、可愛いお侍さん」


 彼女の二人を安心させようと微笑む姿はとても美しかった。




[7357] 第34話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/02 22:23

 レイ達は安全圏の確保の為、ゾンビ達が寄り付かない場所を探し、更にレイが結界を張った。
 森林で隠れる場所が多い場所を選んだ。
 結界を張り終えた事には夜になり、菊池は疲労が溜まっていた為に眠ってしまった。
 起きている者二人になった。

 
「あの……レイさんもサマナーなんですか?」

「いいえ、違うわ……サマナーのパートナーをしているの。
 こう見えてもそこらの悪魔に負けないわ。
 貴方はその剣どこで手に入れたの?」

「護身用に貰ったんです。
 先生……探偵の先生がサマナーで。
 私がサマナーにならなくても護身用の武器は必要だからって」

「そう…。
 それにしてもまったくキョウジはクズノハからの指令で来れそうにないし」

「キョウジさん……葛葉キョウジさんのことですか?」

「あら、知っているの?」

「先日助けていただいたんです」

「そういえば変わった依頼を受けたって言っていたわね」


 唇に手を当てながら思い出しているレイ。
 ちなみに、キョウジは時を越えてやってきた葛葉のサマナーにこの世界の知識を叩き込むために召集されている。
 早乙女はレイに再び質問した。


「あの……一体この寺院に何が起こっているんですか?」

「ちょっとこの辺の気が乱れて不吉な感じがしているから調査をすることになったの。
 実際、変な噂もあったし」


 と噂の内容を話すレイ。
 葛葉の機密部分でないのならある程度話しても問題ないと判断したのだろう。
 早乙女は心なしかうんざりした様子だった。
 

「私、悪魔を呼び寄せる体質でもあるのかな、フフフ……」

「早乙女さん?」

「どうせ、バーローな探偵よろしく行く先々で死体と悪魔に出会うのよ!
 “不運”(ハードラック)と“踊”(ダンス)っちゃうのよ!!」

「……元気だして」


 レイが慰めるがどれほどの効果が上がるだろうか?
 魔人に命を狙われ、記憶が薄れないうちにゾンビに襲われる一般人はまずいない。
 ラームジェルグならば『さようなら一般人、こんにちわ逸般人』ということだろう。
 方針は今日は休み、早乙女が事前に連絡しているサマナー……つまり石動かレイのスケジュールを知っているキョウジのどちらかがこの異界に入り込むまで待ちをする事になった。
 幸い、この異界は『来るもの拒まず、去るもの許さず』な状態で簡単に入れる。
 菊池という戦えない人間がいる以上、その方針が妥当だろうと判断し、寝る時は交代で番をすることにした。












 

 満月が西に沈みだした頃、異界化した寺院の門の上空から落下してきた人影が一つ……。
 

『死の匂いがプンプンするぜ』

「お前もな……だが、此方の方が悪逆だな」


 やってきたのは石動であった。
 早乙女の連絡を受け、装備を整えてやってきた。
 万が一を想定し、九鬼達に連絡を入れておく。
 普段ならば絶対にしないことだが、依頼を受けて赴くのでなく、早乙女が巻き込まれるという突発的な事態であるからだ。
 

『それに……』

「ああ、魔人だな、この気配は」


 魔人の大半は独自の結界を張り、荒野の世界で決闘……殺し合いをするそうだが。
 今回はそれを行わず、寺院を異界化しただけだった。
 石動は、愚痴をこぼす。


「最近、魔人の遭遇率高くないか?
 普通のサマナーじゃありえないレベルで」

『そういえばそうだな~。
 鈴木社長……もといザインも不吉な事を言い出しているし』

「なんで社長だ?」

『いや、なんとなく……それよりも早乙女ちゃんを探さなきゃな。
 無事だと良いんだけど』

「どうやら生きているようだ」

『愛のテレパシー?』

「連絡用の機材に式神を仕込んでいる。
 異界に入り込んで現状がわかっただけだ……といっても生きている事と何処にいるかという程度しか解らんがな」


 話しこむ二人に無数のゾンビが現れる。
 石動はアセイミーナイフを妖刀ニヒルに変形させた。


『急いでいかないと不味いかもな』

「そうだな……蹴散らしながら進むとするか」


















「まったく、キリが無い!」

「少なくとも寺院にいる人間以上の数の気がするけど……メギド!」


 休息が多少取れた後にゾンビ達の襲撃が来た。
 結界を張っているが、数で押されたら破壊されかねない。
 だから水際でレイと早乙女が迎え撃つ羽目になった。
 早乙女は不味いと判断したら結界に逃げ込みながら攻撃する。
 レイは三節根と魔法を駆使しながら戦う。
 ゾンビの数は少なくなり、僧侶以外が混じりだした。
 おそらく、山にいた登山者か自殺者の死体だろうか。
 レイは何かを感じ、早乙女を抱えて下がった。


「え……?」

「マハムドオン」


 先ほどまでレイたちの居た場所が死の呪いに包まれた。
 レイたちの前に袈裟を着た即身仏が現れた。
 死を招く恐ろしい気配がする……。


「アンデッドではない……魔人?」

「我は魔人・大僧正。
 汝らに救いを与えんとする者なり」


 鈴を鳴り響かせる魔人。
 レイはプレッシャーに抗う。


「それが何故このような事をする!?」

「豹頭の悪魔の誘いに我が乗じたまでの事。
 ……我が即身成仏した後もこの世を見続けることになった。
 だが、人々は欲のままに惑い、世が乱れる。
 我は悟った。
 皆に死を与え、救いをもたらさんと!!」

「全く、厄介ね!!」


 歯軋りをするレイ。
 数が消耗した上に普通の悪魔ではなく魔人に襲われているからだ。
 だが、持ち前の負けん気を出し、対峙する。


「(休憩したとはいえ、疲労の蓄積が酷いわ。
  それに……魔人にこの数の屍鬼は……少々荷が重いかしら……?)」

「さて……参るぞ」

『ちょいとまちな~』

「!?」


 大僧正の後方から黒い円盤が飛びまわり、ゾンビを切り裂く。
 さらに無数の雷が敵を貫く。
 大僧正は防御をし、ダメージを軽減させていた。
 黒い背広にコート、そして三白眼の青年……石動と、そのお供のフリーダーの仕業だ。
 円盤が石動の手元に戻って直ぐに妖刀ニヒルに変形し、フリーダーの腕が電極から普通の腕に戻す。
 早乙女が石動の姿を見て歓声をあげる。


「先生!!」

「すまない、遅くなった……」

『そこの綺麗なお嬢さん、俺と……』

「この人はレイ・レイホゥさん。
 キョウジさんの助手だそうです」

「知っている」

「あら、私は有名かしら?」

「相棒が有名だからな……それに俺と同じような能力をもっている人間に興味があるからな」

「……なるほどね」


 レイは、石動の後に憑いているラームジェルグを見て答えに行き着く。
 『こんな変なラームジェルグは初めて見たけど……』と内心を隠すレイ。
 フリーダーが警告する。


「マスター」

「ああ……解っている」


 大僧正が鈴を鳴らし、石動達を死へと誘おうとしている。
 石動は、レイに援護の要請をした。


「前衛は俺がする……後は頼む。
 早乙女は限界だろうから結界内で休んでいろ」

「良いけど……他に仲魔は?」

「生憎、フリーダー以外は強い奴は呼べない。
 今夜が新月じゃなくて幸いだった」

「……大丈夫なの?」


 石動のサマナーとしての欠陥を明らかにされ、多少不安をだすレイ。
 だが、石動はニヤリを笑う。


「サマナーの腕はお世辞にも良いとは言えんが……」


 無数のゾンビ達が石動に殺到する。
 だが、危なげなく捌き、尽く両断する。


「剣客としては大抵の奴には負ける気がしないな」

『見たところ術師タイプだ、キバッていけよ!』


 フリーダーが口から霧を吐き出す。
 視界を見えなくなった隙を石動が突く。


「べノンザッバー!」


 複数のゾンビを切り裂く。
 レイも援護を続ける。


「マハラギオン!!
 ……凄いわね、関帝聖君みたい」 

 
 キョウジの忠実な仲魔を彷彿させる武力を発揮する石動にたいして賞賛するレイ。
 だが、大僧正が印を結び、異界に波動を発した。
 石動はいち早く異変に察した。


「これは……守護霊の力を封じられたか?
 ……早乙女、刀を貸してくれ!」

『くそ……シンクロしない!
 やられたぜ!』

「中々の武力だが……所詮は人間。
 能力を封じればか弱き者よ」

 
 石動は妖怪ニヒルを仕舞い、早乙女が錬気の剣を投げ渡した。
 鈴を鳴らし、腐食が激しいゾンビを6体召還した。
 着物の下には帷子を着ており、辛うじて残っている毛髪の形から浪人であると推測した。
 意外に素早く刀を抜き、石動を取り囲む。
 大僧正が余裕を持って告げる。


「汝を7人目としよう……」

「なんて能力……」

「レイさま、引き続き彼ら以外の攻撃を続けてください。
 早く戦力をそぎ落としてマスターの援護をするために」

「何を言って……」


 焦りの声をあげるレイ。
 レイの指摘は最もである。
 人間は悪魔より弱い……だが、突出した才能で対抗する事ができる。
 その才能が封じられれば容易に打ち倒される。
 ファントムサマナーで強者として名高かったフィネガンも魔法を封じる悪魔によって殺害されてしまった例もある。
 だが、フリーダーは迷いが無かった。
 決して過小評価も過大評価もせず、戦力を分析した結果を言っているのだ。


「じね゛ぇええ!」

「甘い……」


 後からの打ち込みをまるで見えているかのように避けながら下から掬い上げるように腕を斬る。
 高々を跳ね上がる腕……他の浪人も高速の突きで討ち取ろうとした。
 石動は最小限の動きで避け、腕を押して軌道を変えて両腕を切り落とした敵を突くように誘導した。


「ぎえ゛ええええ!!!」

「な゛に゛!?」


 突きの威力は高く、浪人を標本のように縫いとめるほどであった。
 突きかかった敵は、石動が神速の一撃で両足を切り落とした。
 更に動けなくなったところにコートの内から英語で書かれた金属筒を投げ込む。
 巨大な火柱を挙がり、ゾンビを焼き尽くす……軍で使う焼夷手榴弾のようだ。
 レイは鮮やかな手並みに関心しながら、石動が引き受けていない敵を始末を続けた。
 有段者である早乙女は、レイ以上に驚いていた。


「悪魔退治をしている先生を数えるほどしか見ていないけど……。
 あの人は凄い剣客だ!!」


 石動は、ガーディアンの力が使えないため、一撃で粉砕することは不可能であると判断し、四肢を絶ち、動けなくなったところを焼夷手榴弾で焼き払うつもりだ。
 施餓鬼米で倒そうと考えたら大僧正がテトラジャを唱え、倒せなくなっていたからだ。
 

「四肢を切って無力化した技は無外流剣術……それだけじゃない、雲弘流、四天流に新陰流……さっきの一撃は南条一刀流!?
 どれほどの流派を使っているの?」

 
 剣術について深い知識を持っていた早乙女は驚く。
 一斉に切りかかる浪人衆だが、一人を足場にして跳躍し、大僧正に斬りかかる。 
 流れるような連続攻撃に確実にダメージを蓄積させていく。
 大僧正は魔力を込めた拳で反撃するが、刀を宙に放り投げ、後退して避ける。
 バランスを崩した大僧正の腕を左手で取りながら懐に飛び込み腰を沈める、右手は魔人の腰に伸ばし、衣を掴む。
 両膝を曲げて腰を落としながら、相手の体を体を密着させながら自分の腰に乗せ、そのまま体を捻って投げ込む。
 倒れたままの大僧正につま先で蹴りつけ、空中にあった刀を受け取る。 
 

「見事な大腰……!!
 それに、南条一刀流……疾風迅雷、天下無双とも電光石火、変幻自在と称され、数ある一刀流で優れた剣術の一派……。
 でも、それは財閥である南条家に伝わる剣術。
 それを知っているという事は、南条家に連なるものか、南条一刀流の剣士と戦った事があるという事?
 先生は一体……?」


 早乙女の困惑を余所に戦いは続く。
 大僧正が叫ぶと地面に呪印が浮かび上がる。
 完全に完成したら石動は呪いによって殺される事になるだろう。
 囲みを振り切られた浪人衆は再び包囲しようとする。
 だが、いち早く察知していた石動は再び、浪人を踏み台にして宙を舞い、呪殺魔法の範囲外へ退避する。


『お返しだ!』

「布施だ……受け取れ!!」


 空中を舞いながらトカレフを取り出し、発砲する。
 空中で大僧正達に向きを変えながらの銃撃にも関わらず正確に命中し、浪人たちを打ち抜く。


「メギド!!」

「ショックウェーブ」


 雑魚を掃討した二人が援護にかかった。
 全てを消滅させんと魔力球が大僧正と浪人たちを巻き込む。
 電撃高揚のスキルがセットされたフリーダーの魔法の威力は大幅に高まり大僧正を貫く。


「ぐ……煩悩即菩提!!」


 石動達の精神を乱さんと鈴を鳴らし、術を飛ばす。
 石動がレイを庇うように直撃したが……石動何事も無かったかのようにとも接近してきた。


「な……!?」

「感謝するぜ……小角ぉ!!」


 胸元に光る六芒星が輝いていた。
 以前、報酬で受け取り、さらに小角の渡されたヒランヤが石動を守ったのだ……。
 もっとも、輝きを無くなったあと、灰になったが。
 レイが再び魔法を放つ。


「メギドラ!!」

「ぐああああ!!」

『大・往・生!
 もしくはトドメ・ファイナル!!』

「覚悟ぉ!」

「……未だ……世は混乱に満ち……」


 必殺の攻撃が破られた隙に乗じて錬気の剣を振りぬき、大僧正の首が高々と舞う。
 大僧正は未練がましく呪詛を吐きながらMAGを飛び散らせながら消滅した。


『DAISETUZAN………SEIBAI!』 












「弟子が世話になった」

「困った時はお互い様よ。
 貴方にしか出来ない事もあったし」


 石動は頭を下げた。
 クズノハに連絡し、あとの処理を頼むレイ。
 石動は、サイコダイバーに連絡し、菊池と早乙女の精神の治療を頼む。


「キョウジに伝えてくれ。
 遊びに来いとな……」

「いいけど……あまり羽目を外させないようにね。
 それじゃ、機会があればまた会いましょう」 


 レイは去っていった。
 ラームジェルグが声をかけた。


『ああいうのが好みか?』

「まあ、成熟した女性はいいものだがな。
 だが……」

『だが?』

「今は仕事が面白いからな。
 女と遊ぶのは後回しだ」

『たく……』


 石動は、体を伸ばし、事務所に帰ることにした。
 戻ったら泥のように眠ろうと決めたようだ。










 あとがき

 マニクロで優秀な魔人(レベル・スキルの調整・体性)の一人の大僧正。
 救済しようと殺しまくりで寺院を全滅させました。
 
 今回のゲストはライ・ライホ……じゃなくてレイ・レイホゥ。
 キョウジの相方……恋愛関係ではない、ビジネスの付き合いという貴重な関係。
 年齢は推測しないように、微妙なお年頃なんだからね。

 早乙女はまたまた魔人に襲われました。
 おっ■り捜査のみず■ちゃんか、名探偵コナ■の■ばりの遭遇振り。
 おめでとう、キャラが立ったぞ。

 メガテンSSが増えて嬉しい今日この頃。



[7357] 第35話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/13 02:29
 料亭『鬼女郎』の奥座敷にて……黒縁眼鏡のサラリーマンこと九鬼と老紳士が話を行っていた。 
 老紳士はとある大手旅行会社の社長であった。
 恰幅の良い体型と立派なな髭、そして威厳に満ちた瞳は只者でない雰囲気をかもし出す。
 

「タイ……ですか?」

「そうだ……。
 タイで殺人事件が起きている……おもに外国人を狙ったな。
 それも悪魔絡みのようでな」

「なるほど……」

「君の会社もあながち無関係ではあるまい?
 先日、無くなったのは君のところの保険を取っていたらしいではないか」

「そういえばそうですねえ」


 わざと惚けてみせる九鬼。
 老紳士は笑いながら続ける。


「フフフ……君の上司には話を通しておいて出張という扱いになるだろう。
 早く片付けたら骨休めをするといい」

「妻が待っていますので……」

「君ほどの男を繋ぎとめる女性とは……まあいい。
 君の働きに期待する」














 
 九鬼はファーストクラスに乗ってタイへ飛んだ。
 何事も無く首都『クルンテープ・マハーナコーン・ポーウォーン・ラタナコーシン・マヒンタラーユタヤー・マハーディロクポップ・ノッパラッタナ・ラーチャターニー・プリーロム・ウドム・ラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカティッティヤ・ウィサヌカム・プラシット』にたどり着く。
 通称バンコク……現地人は最初の『クルンテープ』と呼ぶ。
 そこで見知った顔に出会う。



「おや、旦那」

『ありゃりゃ、これはもしや……不倫!?』

「お前は黙っていろ」


 石動とラームジェルグだった。
 九鬼は丁寧に挨拶をする。


「こんにちは……なんでまた?」

「タイ料理サワムラの店長の依頼でここの異界でしか取れない薬草を探しに来ている」

「ああ、あそこですか……義兄さんがお世話になっているらしいですが」


 タイ料理店サワムラは天海市で経営しているレストラン。
 薬膳で有名であり、その道の者には有名である。
 味も良い上にたちどころに元気になり、多少の傷やダメージを癒す為、サマナー達がしばしば立ち寄る。
 店長はもとキックボクサーらしく、故障して引退した自分を治すために薬膳を研究した事に高じて現在に至っているらしい。
 石動は彼の依頼を受けてタイにやってきたらしい。


「早乙女君はどうしたのですか?」

『ああ、学校にきまっているじゃない』

「それにまた悪魔に襲われたからな……少しは休ませないと持たないだろうしな」

「それは……また大変でしたな」


 九鬼の妻・トモコも悪魔絡みの事件に巻き込まれた事があり、トモコの兄が苦労したらしい。
 その為、九鬼は同情している。
 

「それじゃ、旦那。
 日本で会いましょう」

『しーゆー』

「では……」


 九鬼は現地で情報収集を始めた。
 依頼された会社や警察の情報を纏めると……


・白い人型のような悪魔に襲われた。
 遠すぎた上に、素早くてよく見えなかったようだ。

・ゴミを棄てたり、一般的に悪い行いをした人間が殺されるらしい。

・遠くで殺人現場を目撃した元米軍のスミス氏曰く……。
 『仏様を大事にしない奴は死ぬべきなんだ!』
 と大音響で叫び刀で切り殺したらしい。

・仏像を盗んだ現地人が殺された。


 と、大まかな情報が入った。
 九鬼は更に情報を得ようと裏路地を歩いていると悲鳴が聞こえた。
 確かめに行くと、背の低い日本人と石化したタイ人と軍用犬がいた。
 タイ人は全て石化しているのではなく、首から上だけは石化されていなかった。
 背の低い日本人は紺色の背広とダークグリーンのネクタイをおり、髪を短く切り、きっちり整えている。
 眉が太く、鷹のような目をしており、右手には黒い棒を持っていた。


「ひいい……」

「奴の情報をよこすと『契約』したのに破った挙句に強盗をするとはな……。
 今度からは契約を守ることだ。
 それと犯罪は止すと良い……次見たときにも懲りないなら……」 


 そう言って軍用犬を指でつく。
 さして力を篭めなかったが、粉々に粉砕された。
 タイ人は恐怖で歪む。
 男が優しげに言った。


「反省のためにしばらく固まっていると良い」
 

 そういってタイ人から離れる。
 男の持っていた棒は消え、カードになった。
 カードには絵が描かれており、蛇に巻きつかれた真っ赤な体と翼、それに獅子の様な頭を持った魔神が描かれていた。
 魔神には棒を持っていたがそれは、さきほど男が持っていた棒と瓜二つだった。
 男は九鬼にむかって声をかけた。


「どうも」

「……」

「警戒しないでください。
 私は仕事に来ていまして。
 先ほども言ったとおり、ある悪魔と『交渉』するように頼まれまして。
 彼は『契約』したにも関わらず騙したためああなったのです。
 しばらくすれば元に戻りますがね」

「わかりました……貴方に非はないようですし」

「そういっていただけると助かります、九鬼英輔さん?」

「いやあ、私を知っていましたか?」

「私は肉体労働は、不得手でしてね。
 交渉や後方で細々するのほうが得意でして。
 公安零課の発足時に指導していますからね……知る人ぞ知る有名人でしょうね。
 言っておきますが、私はデビルサマナーでもダークサマナーではありません」

「では……?」

「助っ人もしますが……本業は交渉人ですね。
 悪魔も人間も交渉します。
 このカードが僕の生命線ですよ」


 男は敵意がなく、九鬼を信用しているという証に自分の能力を明かすようだ。
 九鬼は漸く、この男に対しての警戒を下げた。
 それを察した男は安心したような口調で言った。


「ああ、申し送れました。
 この『魔神ミトラ』の力ードの力と口先三寸で交渉するデビルネゴシエイター・原野秀幸です、よろしく」


 これが九鬼と気妙な交渉人の出会いであった。











 あとがき

 謎の悪魔の正体はいかに!?
 皆はさっぱりわからないかな?
 それ以上に解りにくいのは今回のネタ。

 『真・女神転生CG戦記 ダンテの門』から取った設定。
 真・女神転生トレーディングカードを題材にした漫画。
 ファミ通ブロスなんて超マイナー雑誌……それも打ち切りっぽいし。
 まあここでわかっていれば良い設定は悪魔の力をカードに宿っている(その人にあった悪魔……ペルソナに近い)。
 カードに描かれた悪魔と同じ姿になる融合派と悪魔の力を武器(手甲や本など)にする反融合派に分かれて云々……って感じです。
 新キャラ『原野秀幸』は魔神ミトラのカードを持ったオリキャラです。
 真3で猛威を振るった魔神ミトラの交渉スキル(死の契約……高確率で成功、決裂して逃げなかったら石化させるスキル)持ち。
 ここではカリスマ(交渉成功率アップ)の強化版+契約を違えたら問答無用で石化にランクダウン。
 ミトラは強力ですが、原野自身は魔力・知力・運にステータスを極振りしている為、殴り合いは無理……魔法の撃ち合いも燃費が悪いタイプ。





[7357] 第36話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/16 12:22
 原野はその後、一端路地裏に戻り、石化した強盗を治療し、『契約』を行った。
 翌日の深夜にある指令を実行してもらうことにした。
 だから今夜は仕事を切り上げ、ホテルのレストランで食事を行うことになった。
 九鬼と原野はタイ料理を楽しむ。
 タイ料理の人気ぶりは以前より高まっており、日本人旅行者が増え、レストランの席の半分が埋まるくらいやってくる。
 タイ料理は辛いだけの料理ではなく、甘・辛・酸味の絶妙なバランス、ハーブの香りで嗅覚を楽しませ、食欲を掻き立てる。
 本来は、中国の食文化とインドのスパイスの影響を受け、発展してきた洗練された料理なのである。
 出された料理は複数あり、悪魔と対峙するという過酷な仕事を乗り切るために大量の食料を食べていく。
 驚異的な運動を行うことはしばしばあり、三日三晩液体のみで過ごさなければならないこともある。
 食べられる時には食べていくのがこの業界の常識なのである。
 彼らが食べたのは、主に次の料理だった。

・空芯菜唐辛子炒め(パクブン・ファイデーン)
 中華料理でも使われる空芯菜を唐辛子と味噌(トウジヤオ)で炒める。
 ファイデーンとは赤い火という意味で、唐辛子の辛さと強火で炒めるという意味の両方の説がある。
 
・赤アリの唐辛子和え(クワ・モッデーン)……日本ではまず出されない代物であろう。 
 クワとは汁のない料理をさし、赤蟻の巣から取った蛹や卵に唐辛子、野菜などを加え、ナムプラーで和えたものである。
 赤蟻は、スズメバチのように木の上に球形の巣を作る習性がある。
 料理に使われるのはこの巣をつついてでてきた卵や蛹である。
 ちなみに、赤蟻は人に噛み付くと、傷に蟻酸をかけ、刺激痛が発生させる。 
 忍者である九鬼は抵抗無く食べ、その味を美味いと感じたが、原野はお気に召さなかったようだ。

・海鮮サラダ(ヤム・タレー)
 ヤム味で味付けされたサラダである。
 (ヤム味とは酸っぱく、唐辛子の効いた味)

・お粥(カオトム)
 少量の唐辛子、ナムプラー、そして胡椒で自分好みの味付けをして食べるお粥。

・ナマズの唐辛子炒め(プラードゥック・パッ・ペッ)
 生胡椒,カパウ,フォラパー,マックルー,カピ、タカイ、唐辛子。
 このようにタイ料理のエッセンスが勢ぞろいの料理で通好みの料理であろう。
 日本で考えるような鯰料理とは大きく違うものである。


 他にもガイヤーンという鳥の丸焼きを原野は気に入ったようであっという間に平らげ、追加するほどだった。
 食べながら二人は会話する。

 

「いやあ、美味しいですね。
 でも共食いかな?」

「それはどういうことで?」

「僕は腰抜けなんですよ、あははは」

「それはそれは」

「このカード……この世に無いものなんですよ。
 それがどういうわけか流れ着き、解析して成功作ができました」


 打ち解けたのか、最初の頃より口調が柔らかだ。
 原野の突然の話題に黙って聞く九鬼。
 心なしか彼の目には濁った汚泥のような光が宿っていた。


「僕はとある国に拉致されて無理やり実験されたんですよ。
 苦しくて苦しくて……周りはどんどん死んでいって……。
 相手は、一年で返すと口約束しましたが……それがあっさり破られて」

「……」

 
 段々喋りに感情が篭っていた。
 九鬼はそれが心を開いた証なのか、策略なのか区別がつかなかった。
 唯一つ確かなのは……彼の受けた仕打ちと屈辱の感情だけは本当であろうと。


「悔しくて悔しくて……そんな時にこの力が目覚めたんです。
 そして苦しめた奴らを石にしてしまいました。
 僕らは脱走して散り散りになって……僕は今の職業について幸せですけどね。
 人間万事塞翁が馬ですね」


 目の光が元に戻った。
 そして楽しげに語る。


「明日が楽しみですね」

「帰るときに何か仕込んだんですか?」

「そうですね。
 おびき寄せる手段が解りましたから。
 彼に償いを兼ねて協力していただくことに」

「あまり感心しない手口ですがね」

「僕もそう思います。
 ですが……犯人の言葉じゃないですが『約束を大切にしろ!約束を大切にしないやつは死ぬべきなんだ!』って言いたいですね。
 だから殺さずに生かすチャンスを与えただけマシです。
 むろん、助ける努力はしますよ?」

「私も日陰者ですから強くは言いませんがね。
 ではまた明日……会計を」

「ここは僕が奢りますよ。
 明日、交渉が失敗したら主に命を張るのは貴方ですから。
 よろしくお願いしますね、その時は」

「私の仕事だから文句はありませんが……魔神ミトラの力は強力なのでは?」

「僕自身、体が弱いですからね。
 戦闘になったら、後方で魔法を飛ばすことしか出来ませんよ。
 剣も体術もダメ。
 銃の方も30センチ先の的すら当てられないですし」

「解りましたよ……では失礼します。
 今夜はご馳走様でした」


 そう言って九鬼は自分の部屋に戻っていった。














 深夜の昨日と同じ裏通り。
 二人は囮が犯人を吊り上げるまで待っていた。
 九鬼が改めて質問した。


「何を頼んだんですか?
 大体予想はつきますが」

「あの人に仏像を盗む事を引き換えに治療することを『契約』しました」


 魔神ミトラは契約神である。
 故に、契約にたいして厳しく、契約を破棄されないような力をもった。
 実力も去ることながら、契約を違えた者を石化させる『死の契約』と呼ばれる能力。
 これが原野をデビルネゴシエイターとして成り立たせる能力である。
 九鬼はため息をつくが、悪行をした人間を付けねらう犯人をおびき寄せるには良い手段と理解していた。
 直ぐに大きな悲鳴を上がり、九鬼達は現場に向かう。
















「ひいいいいい!!」

「俺は幻魔ハヌマ-ン!!
 盗人ナク・ランチュ!
 大切な仏像を盗む事などこの俺が許さん!」

「スイマセンスイマセン……」

「生かしてはおけぬ!」

「お、お助けぇー!!」

「ほーら逃げろ逃げろ。」


 その言葉を聞き必死に逃げる昨日の強盗ことナク。
 追い駆ける白い鎧に真っ赤な顔をした猿面の戦士。
 背中には大きな刀を背負った悪魔であった。
 ハヌマーンは西遊記の孫悟空のモデルとも言われる。
 風神ヴァーユの化身であり、ヴァーユと猿王ケーシャーリーの妻アンジャナーとの間の子とされている。
 『ラーマーヤナ』では後にヴィシュヌ神の化身であるラーマ王子を助けた。
 猿族の中でも最も優れた戦士、弁舌家とされ、ヒマラヤの峰々を持ち上げるほどの怪力の持ち主と言われる。
 一般人であるナクでは当然逃げ切れない。
 仏像を置いて逃げてもそんなに速く走れない。


「逃げられると思っているのか?
 お前を殺してやる!」

「ひいいい!!!」

「うらぁー!」


 ナクはたちまち捕まり、片手で投げ飛ばされ、ゴミの山に突っ込んだ。
 ゆっくりと近づき、刀を抜く猿神。

 
「仏様を大切にしろ!
 大切にしないやつは死ぬべきなんだ!」

「ひいい!!」

「まず手足を潰してやろう、ブチュッとな。
 仕上げは俺のの聖なる光で裁いてやる!
 それでお前は完全に骨にだけになる!!」

「ああああああ…」

 
 怒りに燃える猿神。
 すっかり震え上がり、動けないナク。
 だが、それだけでは終わらない。


「さらにお前は地獄の裁きが待っている。
 死んだ後に首を刎ねられ、永遠の苦しみを…」

「はいはい、ストップ」

「なんだ!?」


 エスカレートする猿神を止めたのは漸くやってきた原野である。
 哀れにも、失禁して気絶したナク。
 九鬼が事前に仲魔を召還していた。
 義経、鴉天狗、そして金鬼が武器を構えている。
 だが、まず原野が交渉することからはじまった。


「ハヌマーンさん、なんでこの世界に来ているのですか?」

「この世界が乱れている!
 だから世直しをする!
 仏様を大事にしない奴は死ぬべきなんだ!!」

「……ダメだ、コイツ、なんとかしないと」


 満月ではないのにも関わらず、満月の状態より酷い興奮状態であった。
 武器を振り回し、今にも大暴れしそうであった。
 原野も交渉は無駄に終わりそうであると考えた。。
 悪魔交渉人は、無駄と解りつつ話しかける。


「貴方がここに存在し続けると、皆に迷惑なので魔界に帰ってください」

「ダメだ!
 世の中は乱れている。
 それを阻む者は、この俺が許さん!」

「どうやら戦うしかないみたいです。
 先生お願いします!」

「ど~れ」


 九鬼に援軍を要請する原野。
 金鬼が時代劇の用心棒のような受け答えをする。
 九鬼は、ノリノリの金鬼に呆れながらも前にでる。


「どうやら、世界の乱れに当てられてハヌマーンが暴走しているようだ」

「ならば九鬼よ、打ち負かして頭を冷やすとしようか。
 お前にも期待しているぞ」

「と、殿ぉ…!!!
 解り申した!!
 大殿と殿の期待に応えて御覧に見せましょう!」 


 義経は鴉天狗を叱咤激励し、鴉天狗は気を高ぶらせた。
 世直しを妨害する九鬼達をハヌマーンは敵と認定したようだ。
 自分の毛を抜き、息を吹きかける猿神。
 そうすると、無数のハヌマーンが現れる。
 本体より小さいが強い力を持っているようだ。
 一斉に襲い掛かる猿神。


「がんばってください~」

「手前は何もしないのかよ!」


 後に下がり、応援をしている原野。
 そんな原野に対して文句を言う金鬼。
 恐ろしい金鬼の剣幕にも恐れず返す原野。


「ハヌマーンは呪殺と破魔を反射します。
 僕がよく使う魔法と合致します。
 残念ながら腕っ節も銃の腕もありません」


 朗らかな中にも自重気味に話す原野の様子を見て毒気を抜かれる金鬼。
 金鬼は舌うちした。


「……ちっ、悪かったな。
 俺達がぶっ殺してやれば済む話だからよぉー!」

「まあ、何もしないのは心苦しいので……」


 そういって原野は、カードを取りだし、棒に変えた。
 いつの間にか、周りが霧だらけになっていた。
 ハヌマーンは突然の状況に戸惑った。
 

「フォッグブレスです!
 これで多少は有利になったと思いますよ!」

「ありがてえ!」


 金鬼は棍棒で小猿と殴り飛ばす。
 義経も太刀で切り裂き、九鬼が脇差で切り裂く。
 鴉天狗は六角棒を本体に叩き込むが、大して効いていない。


「これは……大殿ぉ!
 奴の体は硬く、物理攻撃が効きにくいようです!!」

「笑止ぃ!!」

「ぐあああ!」


 ハヌマーンに殴り飛ばされる鴉天狗。
 だが、猿神の分身は全て倒れ伏している。


「ふむ……未熟だな。
 だが、相手を探った事は褒めてやろう」

「これであと一人!」


 義経は鴉天狗に声をかけ、九鬼はハヌマーンに攻撃をかけようとする。
 だが……分身の死体が転がっているその脇で、奇妙な踊りを踊った後、謎の怪光線を発するハヌマーン。
 真っ赤な光線に包まれると復活する分身達。
 九鬼は驚くが、金鬼が原野に話す。


「なあ、若いの」

「なんですか?」

「別に態々復活させなくても髪の毛の分身を作れば済むんじゃないのか?」

「……狂っている状態ですからね。
 普通の理屈が通じなさそうです。
 僕の魔法は燃費が悪いんですがね……ランダマイザ!!」


 光球がハヌマーンに降り注いだ。
 ランダマイザ……全ての能力を低下させる魔法で強敵相手に絶大な効力を発揮する。
 息切れしながら原野が叫ぶ。


「九鬼さん!
 相手の力を削いでいきます!
 雑魚を倒しながらハヌマーンにもダメージを与えてください!」

「了解した……義経、鴉天狗!」

「ふん……見せてやろう!
 これが俺の奥義・八艘跳びだ!!」

「竜巻に飲み込まれろ!!」

「ぐああああ!!」


 全ての能力を低下させられ、義経の空中殺法に翻弄される。
 さらに、竜巻に巻き込まれ、分身が倒される。
 九鬼が急所目掛けて差し込むように刺突を行う。
 防御力が低下し、さらに動きも悪くなった猿神は攻撃を受ける。
 苛烈な反撃を行うが、九鬼は紙一重で避け、さらに斬りつける。
 再び距離をとって分身を作り出すハヌマーンであったが、既に時は既に遅し。
 呼吸を整えた原野が集中し、必殺の魔法を解き放つ。


「メギドラ!!」

「ぐああああああ!!!」


 大火力の魔法を受けて壁まで吹き飛ぶ猿神。
 更に追撃をかけようとする金鬼を腕で制止する原野。
 しばらくしてから起き上がるハヌマーン。
 彼の目から狂気が消えていた。


「こ、ここは……俺は一体?」

「やっと正気に戻りましたか」


 ハヌマーンに状況を説明する。
 自分が暴走したことに不覚落ち込む猿神。
 

「現世の乱れた邪気に当てられ、俺は召還された。
 まったくなんてことをしたものだ」

「どうしますか?
 ここに残るのか、帰るのか?」

「魔界に戻るとしよう。
 迷惑をかけたし、あっちでも仕事があるからな」

「わかりました。
 後の処理は此方でやりますので」

「すまない……この恩は忘れない。
 では、さらばだ!
 仏様を大事にしろよ!」


 そう言ってハヌマーンは帰っていった。
 彼の前には大小二つのつづらがあった。
 お礼の品のようだった。
 九鬼が小さい方を、原野が大きい方を取る事にした。
 九鬼は大きなルビーとサファイアを、原野は美味い烏龍茶が無限にでる瓢箪を手に入れた。
 原野は、しばらくタイでリゾートを楽しんでから帰るといって別れた……後始末もするためでもあるだろうが。
 仕事を終えた九鬼は直ぐに帰り、宝石を奥方のトモコにプレゼントし、大いに機嫌がよくなった。
 ナク・ランチュは2度も死にそうな目にお陰で改心した。
 その後真面目に働き、日本へ出稼ぎにきて偶々売れないお笑いコンビに誘われてトリオ『ポセイドン』を結成。
 彼のツッコミ役がさえてブレイクし、日本人女性と結婚し、日本人国籍を手に入れたのはまた別の話である。




 
 

 

 あとがき

 仏罰モノな話でした。
 実際みたら噴出しました……ハヌマーン。
 微妙にRXが入っていますね、刑罰とか復活のダンス&怪光線は映画でありました。
 バンコクの正式名称の長さは異常でした……タイ料理を調べて書きましたよ、ええ。
 観光地へ行かないから……海外らしさが出なかった分を料理の描写で補え……ねえよ。

 原野の名前のモデルはアトラスの社長と常務の名前の二身合体。
 マニクロでのミトラのスキルはランダマイザ メギドラ マハムドオン 死の契約 天罰 フォッグブレス マハンマオン 三分の魔脈
 交渉にしか使えないラインナップですね、後ランダマイザ継承するような合体くらい。
 



[7357] 第37話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/04 22:48

 彼女は夢を見ていた。
 最愛の人は戦っていた。
 並みの敵には負けないはずの彼が押されていた。
 空を翔る白馬に乗った死の騎士……無数の火球を放つ。
 それを避けながら銃で反撃する。
 だが……段々不利になり、最期は光り輝く矢を心臓に撃ち抜かれてしまった……。
 そこで夢は終わった。
 自分の家の布団の中だった。
 モーショボーは涙を流していた。
 唯の夢とは片付けられないほどリアルな光景で嫌な予感がしていた。
 彼女は最悪の未来かもしれない映像を忘れようと最愛の男の胸元に抱きついて眠った。


「死なないで……石動」










『今日の依頼は……?』

「メシア教の強引な勧誘に悩む奥様方の依頼だ。
 集団で出し合っているかそれなりに報酬は期待できる。
 正確にはその依頼を受けた人間を護衛だな……」


 言い終わった石動はラームジェルグを凝視した。
 長い付き合いだった彼だが、最初は『あれ』ではなかった。
  



(なんだ……お前は?
 死んでいるのに忙しい奴だ)


 無限地獄の中を彷徨い、出会った時は鎖で繋がれ、瞳には虚無感に満ちていた。
 敗れ去った男の顔であり、抜け殻のようだった。
 だが、邪鬼に眠る力と気性は荒々しいものであった……。





『ん、どうしたの?
 最近、香水変えたのに気がついた?』

「……変な事をするな。
 尾行の時に匂いで気がつかれたら面倒だ。
 小遣いをカットしようか?」

『ゲゲ!?
 ってジョークよ、ジョーク!
 酒を飲みすぎて匂うかな~って…』


 自分の小遣いを心配し、ゲームに熱中し、酒を楽しむ今の彼と昔の彼は別人のようであった。
 石動はニヤリと笑って死刑宣告をした。


「今月の小遣いは一割天引きだ」


















「どうも、今回助力を頼んだ原野です。
 テロリスト、犯罪者から悪魔まで交渉を請け負うのデビルネゴシエイターです。
 九鬼さんから貴方の手並みを聞いていますよ」

「……耳聡いな」

「ええ、腕っ節がない分、他で補わないと死にますからね、あははは。
 僕ができるのは交渉と魔法が少々くらいです」


 互いの能力の確認を行い、本題に入った。
 原野曰く……。
 最近、メシア教団が勝手に頼んでも居ないのに霊症を治した報酬を高額で請求したり、メシア教団に勧誘するなどの問題が生じてる。
 メシア教団は、実のところ、勢いは薄らいでいる。
 キリスト教系列の小さな一派として古くから活動が始まっており、1970年代後半から徐々に力をつけ、90年代ではちょっとした一大勢力だった。
 だが……『世紀末に大きな破壊が起こり、神の統治する時が来る』と予言したが、その時は訪れず、勢力が大きく削がれた。
 それでも、勢力的に活動を行っており、公安(零課だけではなく、表の方でも)からマークを受けている。
 噂では銃器、化学兵器を集めているという噂もあり、警戒しておくべき存在だ。
 霊感商法というものがある。
 基本的に世に出回るのは偽者であるが、自分達の目を欺かせるために放置されている。
 だが、本当にオカルトを使うものもいるが、世に目立たない程度である。
 今回のメシア教団が行ったレベルは許容範囲を超えている。
 原野は、教団に活動を自重し、被害にあった人間に示談金を渡すように交渉するようだ。


「できる自信はあるのか?」

「うーん、難しいところですね。
 宗教がらみは困難ですからね。
 実力行使して排除に乗り出してきますよ。
 そこを返り討ちにしてからが本番ですよ」

『なるほどねえ~』



 原野はカードを虚空から呼び出し、弄ぶ。
 カードに描かれた魔神ミトラの強大な魔力が漂う……。
 公証人は、楽しげに笑って言い放つ。


「大仕事になりそうですね……よろしくお願いしますよ」

















 メシア教団本部……その一室で密談がされている。
 怒鳴り散らされるのは声太った禿げ上がった男で一見聖職者のように見えるが欲深い目は見るものが見れば、見抜けるだろう。
 怒鳴り散らす男は青年だが、十代の少女と見間違うばかりに美しい男だった。
 長く整った髪が揺れる男……メシア教団幹部は苛立つように問題を行った支部長に言い放つ。


「まったく、面倒なことに巻き込んでくれたな!
 『計画』の前だというのに」


 活動の為に資金調達、教団へ勧誘を行っていたが……。
 それを訴え出るものが出たのが予想外だった……術・暴力などで抑えつけたつもりだったが失敗したらしい。
 今日やってきた交渉人は強かだった。
 法に精通し違法な部分を指摘し、さらにどこから見つけたのか、犯罪の証拠を探し出していた。
 さらに教義について語り倒し、支部長は論破されてしまったほどであった。


「申し訳ありません、申し訳ありません……小林様」

「そういえば……君は金の一部着服を行ったり、少年の信者と戯れていたそうだが……。
 まあ、いい。
 計画も近いからな……面倒ごとになる前に始末するか」


 幹部……小林は机の上の『石』と『設計図』を眺める。
 入手経路は異なるが、いずれも彼の計画には欠かせないものである。
 『石』は豹頭の天使が齎したものだ……本来なら『妖しい輝きを放つ魔性の石』だが、今はその輝きを失っている。
 天使曰く、正しく用いれば『神の使者』を呼ぶことができる石だと。
 小林は、正しく目的であった者を呼び出せた。
 だが、それは計画の始まりに過ぎない。
 真の計画は『設計図』にある。
 これは誰が作ったのかは解らない……あまりの技術の高さでこの世の者とは思えないほどであり、さらに魔術との融合が果たされていた。
 何が目的で作られたかは解らないが、小林は作り出せれたものを利用して大望を果たそうと決心した。
 その障害になるものは尽く始末すると……。
 小林は優しげな微笑で言い放つ。


「使途達にドブネズミどもを始末させましょう……あと、君の謝罪は受け入れよう」


 そう言って掌から衝撃波が飛び、支部長の頭を吹き飛ばした。










 夜の路地裏を二人……いや、三人が歩いている。
 石動と原野、そしてラームジェルグだ。


「いやあ~、盛大に怒らせましたよ」

『新月か……フリーダーの力を発揮できないから不味いんだけど。
 暗いから襲撃にはもってこいだし』

「……」


 石動の顔色がどこか悪い。
 長らく悩んでいなかった偏頭痛が再発するほどに……一錠の頭痛薬を飲み干す。
 原野は心配気に声をかけた。


「大丈夫ですか……」

「問題はない」


 力は篭っていないが眼光は衰えていない。
 一応なんとかなるかと思い、原野の事務所に行く事にした……
 石動の脳裏に過去の傷跡が疼く。  


「(俺が死んだのも新月のこんな夜だった……)]


 無意識に胸を押さえる石動……。
 その時、彼らの前に一人の少年が箱を持って立っていた。
 普通の子供服に野球帽……魔力も霊力もないただの子供だった。


「おにいちゃん……お願いがあるんだ」


 原野は話しかけようとしたが、石動は少年の箱からの鳴る音から何が入っているか悟った。
 石動は原野の体を抱きかかえて跳んで物陰に隠れた。
 二人が飛んだ瞬間に大きな爆発音と火炎が広がっていた。
 肉の焼けた匂いがたちこめ、千切れとんだ四肢が二人の目の前に転がっていた。
 原野は怒りに満ちた顔に変わる。


「……まさか……ここまで!!」

「キリスト教の初期は秘密結社じみた所はあったし、中東の一部のイスラム教徒がこういう殉教者めいた事をするがな……。
 どうやらこれが前菜のようだ……」


 気がつくと二十人くらいに集団に取り囲まれていた。




[7357] 第38話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/05 21:30
 囲んでいるのは多くのメシア教信者たちであった。
 どれも狂気に満ちている。
 最初に数人殴りかかるが、石動はあっさりと投げ飛ばし、、原野は魔神の力で力押しで撃退する。


「……話し合いはできそうか?」

「ダメですね。
 あれは……薬物・呪術で洗脳しているみたいですし。
 後の方々は、更に厄介な狂信者ですし」


 仮面を被り、チェンソーで切り刻むエクゼクター。
 メシア教団で主力となる戦士、テンプルナイト。
 魔術に長けたメイガス。
 彼らが石動達に死の宣告を行う。


「貴様らは神に仇名す悪魔だ!」

「神の名の下に抹殺する!」

「もうすぐ主は現れる!
 その生贄となれ!!」


 石動達は、恐れる様子もない。
 それどどころか、彼らの話から情報を得ていた。


「最近メシア教徒が活発だったが…」

「なんらかの切り札があるようですね」

「言葉どおりに受け取るならば……語ることが憚れるアレがくるのか?」

「ありえません。
 降りてくるにはもっと大規模な準備が必要なはず……。
 拷問しても吐いてくれそうにないから一人を除いて始末しちゃいましょう、マハムドオン!!」

「がああああ!!」


 不意打ち気味に魔法を発動させた原野。
 メイガス全員とテンプルナイトの半数が倒れた。
 石動がアセイミーナイフを呪いの歯車に変形して投擲した。
 鈍重な動きであるエクゼクターの首筋を切り裂く。
 頚動脈を断ち切られ、倒れ付すメシアン達。
 石動は手頃な女性テンプルナイトを当身で昏倒させた後、彼女を抱えて後方に逃げる。
 それを追おうとするメシアン達だが、原野が阻んだ。
 

「にがさ……」

「奇遇ですね、僕も君たちを逃がしませんよ、メギドラ!!」


 輝く光球が放たれた後、立っているのは昏倒したメシアンを抱えた石動と原野だけであった。
 石動が一息つこうとした時、後方に跳んだ。
 石動がさっきまで居た空間に無数の矢が突き刺さっていた。
 原野が駆け寄ってくる。
 周りから死の気配が漂い始めている。


「石動さん、これは…」

『不味いな……魔人かよ!!
 フリーダーは新月では戦力にならねえし!』

「……原野」

 
 昏倒させたテンプルナイトを原野に押し付け、歯車から妖刀ニヒルに変形させた。
 今まで見せた事の無いほど青ざめた表情の中に、恐怖が入り混じっていた。
 原野はカードを出そうとするが、止められた。


「お前は、コイツを運んで逃げろ……零課の風間に引き渡せ。
 俺は足止めをする……!!
 くそ……ザインの不吉な言葉が当ったか!!」

「……解りました。
 死なないでください、僕から言えるのはそれだけです」


 原野はテンプルナイトを抱えて逃げる。
 それを狙う矢が飛来するが、尽く刀で弾き落とす石動。
 ラームジェルグが言った…。
 

『『過去』に関係するのか……巧』

「ああ……奴が俺の過去の傷だ」


 そういった瞬間、石動は地面が突然黒い孔が開き、石動を引き込んだ。









『ここは……なんだ?』


 周りは紅い大地であり、生き物の息吹を感じさせない死の荒野であった。
 石動は周りを警戒していた時、上空に馬のいななきが響き渡る。
 体に無数の目を生やした白馬に乗り、王冠のようなものを被り、黒いローブを着た男が浮かんでいる。
 肉はなく骨のみだが、溢れる殺気と左手に持つ弓の魔力が恐ろしいものであった。
 石動はその存在を知っている……魔人もまた石動を知っているようで、小さく感嘆の声をあげた。


「……姿ハ変ワレド、マタ会ッタナ」

「俺は会いたくなかった……いやそうでもないか?」


 石動は殺意を押し出す。
 だが、それをそよ風程度にしか受け止めていない魔人。
 さらに魔人は語りだす。


「我ハ呼ビ出サレ、貴様ハ主ノ敵トナッタ。
 ナント数奇ナ運命ヨ……。
 我ヲ倒セレバソレデ良シ。
 倒セナケレバ……コノ神矢デ再ビ倒レルマデ!!」

「くっ!」

『まさか……前世の巧を殺した相手がよりにもよってヨハネの四騎士・ホワイトライダーかよ!!』


 ヨハネの四騎士。
 『ヨハネの黙示録』に記される四人の騎士であり、小羊(キリスト)が解く七つの封印の内、始めの四つの封印が解かれた時に現れる。
 四騎士はそれぞれが、地上の四分の一の支配、そして剣と飢饉と死・獣により、地上の人間を殺す権威を与えられているとされる。

 第一の騎士『ホワイトライダー』。
 『ヨハネの黙示録』第六章第二節に記された第一の封印が解かれた時に現れる騎士。
 白馬に乗り、手には弓を、また頭に冠を被っていると書かれている。
 勝利の上の勝利(支配)を得る役目を担っているとされる。

 第二の騎士『レッドライダー』。
 『ヨハネの黙示録』第六章第四節に記された第二の封印が解かれた時に現れる騎士。
 赤い馬に乗り、手に大きな剣を握る。
 地上の人間に戦争を起こさせる役目を担っているとされている。

 第三の騎士『ブラックライダー』。
 『ヨハネの黙示録』第6章第6節に記された第三の封印が解かれた時に現れる騎士。
 黒馬に乗り、手には食料を制限するための天秤を持っている。
 地上に飢饉をもたらす役目を担っているとされている。

 第四の騎士『ペイルライダー』。
 『ヨハネの黙示録』第6章第8節に記された第四の封印が解かれた時に現れる騎士。
 蒼ざめた馬に乗った「死」で、側に黄泉(ハデス)を連れている。
 疫病や野獣をもちいて、地上の人間を死に至らしめる役目を担っているとされ、タロットの死神のモデルとされている。
 
 石動が対峙しているのはその一角であるホワイトライダー。
 その力は計り知れず、今まで戦った魔人より格が高い上に、他の魔人より力が充実している。
 恐らく多くの教義の敵や、殉教者を生贄にして力を高めたのだろう。
 今の石動ではまず勝ち目が無い。
 石動の中では今まで眠っていた悪夢が蘇っていた。
 自分の剣術が一切通じず、村は無残に焼かれ、村人が尽く殺され、そして……自分の心臓が射抜かれた痛みが蘇る。


「ドウシタ……?
 怖カロウ、恐ロシカロウ……。
 イカニ衣ヲ纏オウトモ、弱サマデハ隠シ切レマイ」

「ああ、正直恐ろしい。
 だがな!」


 剣閃が飛ぶ。
 跳んで避けたつもりだったが白馬の左前足が切り落とされた。
 石動の目には恐怖があった……だが、それ以上の勇気を持って立ち向かう意思があった。


「お前を倒す事以上に……自分を乗り越える。
 自分の弱さを知り、それでも自分を殺した敵に立ち向かい、勝つ。
 それができなければ生き返った意味がない!!」

「ホウ……前ヨリモデキルヨウニナッタナ!」

『……せめて新月でなければ!!』

「最初に戻ったと思えば良い!!」


 無数の矢が降り注ぐが、それを避けながら前身する石動。
 そこに宙を舞う白騎士が全速力の突進を行う。
 自分が誘導されたと気がつき、舌打しながら後に跳ぶ。
 それでも威力を殺しきれずに、直撃し、肋骨が砕ける感触がした。
 だが……、


「コレハ……」

『遅せぇ!』

「喰らえ……!!」


 白騎士の目の前にスプレー缶が宙を舞い、それを石動のトカレフが撃ちぬく。
 中には液体窒素が詰まっており、白騎士に容赦なく降り注ぐ。
 弱点だったのか、もがき苦しむ魔人。


『今のうちに治しておけよ……』

「ああ……魔石でなんとかなる」


 傷を癒し、更に攻撃する石動。
 連続した斬撃を繰り返す。
 騎兵と戦った事が無い石動だが果敢な攻撃でダメージを与える。
 だが白騎士は、至近距離で巨大な火球を生み出し、爆発させた。
 とっさに小角に交代してダメージを減らしたが、直撃を受け、大きな痛手を負った。


『く……強すぎる!!』

「交代の訓練を怠っていたら即死だった」

「フハハハハ……。
 急グノダ……。
 『支配者』ガ降リ立トウトシテイルゾ……!!」

「抜かせ!!」


 死闘は続く。
 石動はよく戦った。
 今の魔人には本調子でないフリーダーを含め、召還したら壁にすらならない。
 たとえ本調子でも勝機は一割有るか、無いか……。
 その絶望的な状況ですら、戦う石動。
 彼を支えているのは剣客としての意地だけであった。
 そして魔人の中でどこか侮り・油断があった……それが今までの彼を救っていた。
 火球の中を掻い潜り、相打ち覚悟で打ち込んだ一撃は魔人への大打撃となり、この空間の維持に綻びが生じた。
 その隙を逃す石動ではない。


「グッ……」

『今だ!!』


 小角を憑依させた石動が印を結び、空間に干渉した。
 ガラスが割れるように空間に亀裂が生じる。
 すかさず、飛び込む石動は、現世に戻ることに成功した。
 魔人もすかさず追いかける。


『逃げるぜ、巧……今の俺達じゃ、勝てない!!
 逃げる機会があっただけマシだ!』

「ああ、絶望的な状況をひっくり返しただけでも良しと……う!?」


 石動の背中に灼熱感が生じる。
 殺したはずのテンプルナイトが短刀で突き刺していた。


「神の敵め……地獄に堕ちよ!!」


 メギドラに飲み込まれ、下半身と右胸部が消滅しているにも関わらず石動に攻撃し、逃げようとする石動に摑まっている。
 石動は、直ぐにラームジェルグを憑依させ頭部を握り潰した後、身体をふりはらった。
 だが、それが致命的な遅れになった。
 現世に戻った白騎士が矢を射る。
 それを刀で叩き落したが……、


「がっ……」

「見事デアッタガ……オ前ハ此処ガ終着ダ……」


 魔人は二本の矢を放っていた。
 最初の矢は『囮』であり、本命は力を込めた『神の矢』であった。
 神の矢で前世でも心臓を貫かれた石動は、全身から力が抜け暗転した。
 心臓を貫いた白騎士は満足し、その場から消えた。
 直ぐに原野が呼んだ零課の面々がやってきて、石動を警察病院に運び、必死の治療を行ったが……。
 午後二十三時二十三分、警察病院の集中治療室にて石動巧の死亡が確認された。

















 あとがき。

 打ち切り気味ですが最終回です。
 次回作にご期待ください。









































 なわけではありません。
 石動の過去が追いついてきた………怨敵であるホワイトライダーによって再び殺されてしまいました。
 ホワイトライダーはマニクロでは使い勝手がよかった。
 ゴッドアローでハマ耐性なければ確実に殺せますし。
 ですが、物語は続く……。
 小林の計画とは何なのか?
 死した石動はどうなるのか?

 メシア教団がテロ教団っぽいですが……体制派になれなかったらあんなもんです。
 でも真2でも似たようなことをしているような。




[7357] 第39話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/20 23:07
 モー・ショボーが石動の遺体に縋って泣いていた。
 早乙女も突然の訃報で涙した。


「先生……」

「石動ぃ……起きて……起きてよぉ!
 一人に……一人にしないで!!」


 風間は唇をかみ締めていた。
 九鬼が空を仰ぎ、悔しげに拳を握る。 
 原野は、呆然としていた。 


「あまりにも…あっけなさ……すぎる」


 眠っているような死に顔だ……。
 風間は、原野の胸元を掴みあげる。


「石動の死を無駄にするな!
 俺達は……俺達ですべきことがある!!」

「……そうですね……最早、交渉で済む問題ではないのでしょうね」

「ああ……さきほど生け捕った奴から情報を引き出した。
 奴らの目的は、『唯一神』を現世に招く事だ」

「馬鹿な……そんなことはできるはずがない!!」


 原野は、オカルトの知識に造詣が深いが故に知っていた。
 風間も言い返す。


「ああ……だが現実問題、関東の地脈が荒れ始めている。
 それに、奴の記憶からまんざら出鱈目ではないようだ。
 奴らは何処から見つけてきたのか、神の器を作り、そこに神を降臨させるつもりのようだ」

「それは……今の科学でも錬金術でも、魔術でも到達できないはず」


 九鬼は、驚くが……器さえあれば神を下ろす事が可能であると判断した。
 彼らも、これを計画した小林も知らない事ではあるが、『器』の設計を行ったのは人間ではない。
 これは、遥か未来……いや、もう行き着くことのない平行世界の未来の事だ。
 大天使達は人々を管理していた。
 その体勢を強化するために『神』を模した存在を作り上げた。
 自分達が現世を支配するために。
 だが、一人の救世主がそれを阻び、偽りの神は滅んだ。

 話は少し遡る。
 彼らが偽りの神を作り出した頃、テンプルナイトにして第四十代目の葛葉雷堂が世界の改変の為に自身の影を過去に飛ばした。
 その際にあらゆる記憶・記録を持ち出そうとした。
 その中にその『神』の設計図があった。
 如何なる目的で持ち出したのか……神に成り代わる為か、未来の敵を討ち果たす『きっかけ』にする為か……。
 それがこの世界に流れ着き、『神』の器として利用するとは皮肉な物であった。
 閑話休題……。
 風間は九鬼と原野に協力を要請した。
 

「恐らく、時間がない。
 我々は、教団のアジトへ突入する。
 あの魔人を相手にしなければならない。
 最悪、『神』を相手にしなければならない……。
 ヤタガラスのサマナー達も招集をかけているが……集まるまで時間がかかる。
 だから、頼む……力を貸してくれ」

「その依頼を受けましょう。
 石動君の死を無駄にはしない」

「ええ……これは僕の失態でもあります」


 原野と九鬼の言葉を受け、無言で頭を下げる風間。
 彼らは、突入の準備を行い、早乙女とモー・ショボーはニュクスの店に預けられた。
 誰一人居なくなった霊安室だったがやってくる者がいた。
 髪を伸ばした汚れた僧侶……道摩法師が現れた。
 石動の遺体をしばらく眺め、楽しげに哂った。


「ほほう……コイツの魂とこの肉体の『つながり』は完全に切れておらんな。
 面白い……」


 石動は、光の矢を無効化しようと小角と交代しようとした。
 だが、間に合わず命を落とした。
 それでも、入れ替わろうとした為に威力が抑えられた。
 そのため、石動の魂の消滅を防ぎ、現世のつながりを保った。
 道摩法師は腕を伸ばそうとするが、大きな腕で止められた。
 視線を巡らせると青い巨大な鬼が腕の主のようだ。


「悪いが主の命だ」

「前鬼か……ならば来ているのか、小角よ!」

「お前が生きているとはな、道満」


 白い衣に長い髭を生やした男……役小角が現れた。
 小角は、瓢箪の蓋を開け、中身を石動の口から流し込んだ。
 道摩法師はニヤリと笑った。


「随分入れ込んでおるの」

「数少ない酒蔵だからな。
 それに……覗いていて退屈しないからな。
 だが……これで蘇るかは解らん」


 そう言って二人と一体は煙のように消えてしまった。



























 『彼』の始まりは古い。
 『彼』が物心をついた時は太平洋戦争が終わった時だった。
 山奥の人口の少ない、戦火にあまり見舞われない所だったのだろう。
 父親は戦争でなくなり、母親は病で亡くなっていた。
 『彼』を育てたのは祖父であり、先祖代々、剣術を行っていた。
 先祖代々様々な流派と闘い、その流派の秘伝の数々を記録した。
 技を知っていれば打ち破る術が見つかるからだ。
 また、優れた技ならば流派に取り入れる事もできる。
 周りは時代錯誤と言っていたが、『彼』は剣術というモノに没頭した。
 祖父がそうしむけたのか、『彼』が本能的・遺伝的にその道を選んだのかは解らない。
 ただ、『彼』には天稟があったのだろう。
 水瓶から水瓶へ水を移すかのように祖父の技を吸収していった。
 厳しく、常人では耐えられない修練をモノにしていく。
 そのせいか、『彼』には友人はいなかった。
 『生き方』というより、『有り方』が違うと言うべきか……最早『彼』は『人間』というより、『剣客』という生き物になったといって良いかもしれない。
 『彼』は普通とはどこか違っていた。
 古流の哲学的な教えも理解を示しながら近代的な学問も取り入れた。
 いかに効率よく動くか、いかに身体を鍛えるべきか?
 自然や人体の仕組みを理解し、それを戦力にせんと必死に学んだ。
 また、彼は普通の人間に見えないモノが見えた……気、魔力、そして悪魔の類が。
 もし、彼に何事もなければ警察官などの職業に就き武芸を生かすか、サマナーに出会い一角のサマナーになっていただろう。
 だが……、ある日の事、薪を調達していた彼が戻ってくると、村は地獄絵図に変わっていた。
 人々は射殺され、強かった祖父ですら炎で焼き殺されていた。
 『彼』はキリスト教徒でないため、白騎士が何者かは知らない。
 だが……アレが死神なのだと確信した。
 白騎士が彼に狙いを定めた時、生き延びるために抵抗をした。
 だが、彼はあっけなく殺された。
 普通ならば、そこで全てが終わるはずだった……。












『オデはしんじまったか~♪』

「……ここは?
 それになんだその歌は?」


 石動は目が覚めた。
 ラームジェルグは相変わらず陽気だった。
 周りを見渡すと見たことのある風景。
 この世にはないその光景は……。


「無間地獄にまた来たのか……」

『みたいだな……懐かしいな、コンチクショー!!』


 石動は、前世で死に閻魔の裁きを受け、地獄行きになった。
 なんでもカオスでないからだそうだが。
 なにやら色々立て込んでいたらしく、石動は隙をみて抜け出し、歩き回っていた。
 そのとき牢獄のような場所にいたのがラームジェルグであった。
 彼は絶望と憤怒に満ちていた。
 彼がなぜ、ここにいるのかは本人も記憶が風化していたようだ。
 石動の事など虫けらを見るような目で見ていた。
 だが、石動は情報を収集し、地獄から抜け出す為には地獄の住人を倒す力が必要であると知った。
 その力を得るためにラームジェルグに接触を始めた。
 何度も石動を殺すつもりで痛めつけたが、根負けしたのか、気まぐれなのか、はたまたマグレなのか、彼を打ち倒し協力を取り付けた。
 


『そして、石動巧という交通事故で魂が抜けた体に取り付いて新たな人生が始まった……か』

「そして、俺が死んでから四半世紀以上時間が経っていたのは予想外だった……」



 見渡すとかつてラームジェルグが幽閉された部屋だったようだ。
 ラームジェルグが目つきを変え、無気力そうに言い放つ。


『なんだ……貴様は』

「俺は……アンタの力を借りたい。
 そして地獄から抜け出したい!!」

『帰れ……お前風情に従う義理などない』

「なら解らせてやる……力ずくでな!!」

『……ふっふっふ。
 懐かしいな』


 かつてのやり取りを再現する二人。
 互いに考えている事は同じであった。


『行くか』

「ああ……二度もやられっぱなしは我慢できんからな」

『なごみんが俺を待っているからな!
 Kたんも!』

「……昔のお前は尖っていたのにな。
 何を間違えたのか……」


 18禁ゲームのキャラの名前を叫ぶ相棒に呆れながら、再び無間地獄から脱出しようとする二人を呼び止めるものがいた。


「『石動巧』の名を背負う者よ……」

『お前は……』

「なんの用だ、ザイン
 物見遊山に無間地獄に来た訳ではあるまい?」


 彼らの前に黒い皮のジャケットを着た壮年……ザインが立っていた。
 生者が来れないこの地に現れた彼は、何者か?
 二人は計り知れないものを感じた。


「死の嵐がお前を襲い、死して冥府へ再び堕ちた。
 それなのに何故足掻く?」

「……それしか知らないからだ。
 俺の魂はまだ戦える……」

「三度死ぬとしてもか?
 お前はなぜ抗う?
 たとえ倒してもその後にはより強大な敵がいる」


 ザインは石動の行く末を純粋に案じているようだ。
 それでも、石動は歩みを止めないだろう。
 ザインは更に続ける。


「お前は奴と戦えば惨めな死が訪れる、そういう運命だ。
 恐れはないのか?」

「あるさ……だがな、俺の内にあるものが『逃げるな』と囁く。
 だから行くさ」

「ならば……運命を変えるモノを与えよう」



 ザインが手を広げると二つの台が現れた。
 左の台には小さな蟲が痙攣を起こしている。
 右の台には陶器の杯に透明な液体で満たされている。


「どちらもお前を強くするものだ。
 左の蟲を飲み込めばお前は悪魔となり、魔人すら屠り、百邪を統べるほど存在になることもできるだろう。
 右の聖杯に満たされた聖水を飲めば洗礼を受け、お前も救世主となれるだろう。
 どちらの道を選んでも良い……ただ、できれば洗礼を受け私と共に歩んで欲しい」

「……」

『如何する……巧』


 石動は迷わず行動した。
 右の聖杯を取り、飲むと見せかけて左の蟲にかけた。
 蟲はおぞましい断末魔とともに消滅した。
 石動は右腕を挙げながら出口へと歩みさりながら言った。


「猫の手はいらない」

『さすが、せっきー!
 皆がやらない事をやっちまう、そこにしびれる、あこがれるぅ!』

「なぜだ……このままでは死ぬぞ?
 お前は運命を変えられると信じているのか?」


 ザインの呼びかけに背を向けたまま立ち止まり、その質問に答える石動。


「……思わんな。
 運命というものがもし存在するのならば……それは努力や根性程度で覆せるものではないだろうな」

「ならば……」

「俺はな、嫌う事がある。
 普段信じもしないのに正月だから信仰していない初詣にいったり、苦しい時の神頼みってやつをな」


 突然の話題に沈黙するザイン。
 石動は続ける。


「俺が信じるのは『剣』だ……。
 剣客として生き、剣客として死ぬ……俺の腕一本で生き死にを決める。
 だから悪魔にも神の使徒にもならん……人として戦う、それだけだ」

「……」

「運命が存在するのか、それが変えられるのかも解らない。
 ならば運命を抗うとかそういう事をしても無駄だ。
 俺は、自分にとって『正しい心』を棄てない事が大事なんだと考えている。
 その心の中にこそ自身の幸福があるのだと信じている……。
 神や悪魔に縋って手に入るものではない」

「……たとえ神や悪魔を敵に回して言えるのか?」

「ああ……貫くさ、死んでもな。
 俺の信念に殉じるつもりだ」
 

 その言葉を聞き、石動の目の前に現れるザイン。
 だが、その後には巨大な悪魔の幻影が現れる。
 竜のように長く大きい体躯、巨大な翼……そして4本の腕があった。
 魔性と神性を併せ持つ強大な存在であった。


「これが私の真の姿だ。
 ラームジェルグよ……彼は神も悪魔にも組しない。
 もし憑いていけばお前はその時から両陣営の敵になることになるだろう。
 お前にはその義理も義務もない……それに沈み行く船にのり、共に沈むつもりか?
 今からでも遅くない……ここに残れ。
 そうすれば失われたモノを与えよう」


 強大な存在で、本気になれば恐らくあっけなく石動を消滅させる力がある存在。
 普通の悪魔ならばその命令に従うだろう。
 だが、石動と共にあった彼は臆せずに答える。


『ああ、そうだな。
 コイツがやろうとしているのは自殺に等しい事だぜ。
 もう『安息の地』はないだろうな。
 死した後ですら……な。
 そもそも、俺が憑いていったのは気まぐれだからな……』


 そう言ってザインに歩み寄る。
 だが、その後に続く言葉は強い意志が込められていた。


『だがな……俺は元々よぉ、行く所や居場所も目的なんざありはしない男だ。
 なんでこうなったか忘れたが、無間地獄で燻っていてオレが落ち着ける場所は……』


 踵を返し、石動の背中まで歩み、身体にもたれかかってから言った。


『巧……お前と一緒の時だけだった。
 だからよ、骨は拾ってやるぜ。
 それに……コイツと組めば退屈はしない。
 面白い……これは人生で大事な事だからな』


 そういって快活な笑みを浮かべる。
 ラームジェルグはその時、自分の中のものが割れた音が聞こえたような気がした。
 ザインは微笑む……幻影はすっかりなくなっていた。
 圧迫感が消滅した。


「お前達が行く道は困難だ……危険も多いだろう。
 道を違えたが、お前達がお前達自身の道を歩みきる事を祈る」

「……なあ、なぜお節介を焼く?」

『そうだな……無理やりするなり放置するなりするだろう?』

「かつての友であり、兄弟のような存在であった人間がいた。
 共に歩みきった事がある結末もあれば、敵対し私を打ち破る結末もあった……。
 彼とは全然異なるが、彼と似たモノを見出した……それだけのことだ」

「そうか……」

「また会おう、『石動巧』」

「ああ……」


 ザインの言葉に腕を挙げて応える二人。
 石動達は歩む……再び生を掴むために。










 あとがき。

鈴木……もといザイン参上。
誰かはわかっているだろうけど。
石動の前世が明らかに……何気に古い人だったり。
彼はサマナー(ヘッポコだが)とガーディアン以外の能力は基本的に持たない。
だからマガタマも飲まないし、洗礼を受けない。
なんだかんだいって良いコンビなんですよ、2人は。
何かのフラグが立ってきました。
ちなみに、小角が飲ませたのは加藤…げふんげふん、果糖水ではありません、ソーマです。



[7357] 第40話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/10 04:38


「召還!」


 風間の号令で無数の悪魔が召還された。
 戦闘で要になるのは毘沙門天である。
 モムノフ、木端天狗等は雑魚の掃討である。
 また、万一に備えて『策』を用いた。
 唯一神の降臨は日本社会の秩序の崩壊につながる。
 したがって断固とした対応をとるつもりだ。
 実際、銃器で武装した『ターミネーター』等武装集団が襲い掛かっている。
 また、無力な信者は爆薬を持って自爆を行っている。
 原野は容赦なく呪い殺している。
 風間が声をかける。


「いいのか?
 もはや交渉屋の仕事ではあるまい?

「ええ…ですが、さすがの僕も黙っていられません。
 話し合おうとしない上に短期間だったとはいえ仕事仲間を殺した恨みは晴らせて貰わないと!!」


 そういって借りたニューナンブを撃ち込む。
 だが尽く外れ、跳弾して爆薬の詰まった箱に当り爆発した。
 幸い敵だけを巻き込むだけで済んだ。
 一歩間違えれば大惨事だった。
 二人に重い沈黙が発生し、しばらくしてから風間は言った。


「お前には二度と銃を貸すまい」









 教団に突入し、抵抗するものを容赦なく打ち倒す。
 女子供ですら自爆、だまし討ちを行うため、降伏しなければ問答無用で殺した。
 モムノフが容赦なく臓腑を抉る。
 木端天狗が風の刃で切り裂く。
 鬼が片っ端から棍棒で殴り殺す。
 地獄絵図の中を走り抜けれる九鬼達。
 最深部に突入するのは、九鬼とその仲魔である鴉天狗、金鬼、義経。
 更に原野、そして毘沙門天であった。
 奥で一人の美青年が祈りを捧げていた。


「くっくっく……来たか!!
 だがもう遅い……主は来ませり!!」


 小林の頭上に巨大な人間の顔が浮かんでいる。
 それから発するプレッシャーは恐ろしいものがあった。
 九鬼はあれがなんなのか察した。
 アレは『超越』した存在だと。


「あれが……神ですか」

『愚かな人間よ……裁きの時は来た!!』


 更に輝き、空中に空を翔る白馬の騎士が現れた。
 原野が知っている存在だ。


「アレです!
 あれが……石動さんを襲った魔人です」

「石動君を殺した…魔人ですか」

「奴は四騎士だ……」


 毘沙門天が魔人の正体を言い当てる。
 原野はその正体を驚き、鴉天狗は怒りの声をあげる。


「よくも石動殿を…!!」

「落ち着け、奴さんは一筋縄じゃあいかねえ」

「金鬼の言うとおりだ。
 魔人にかりそめの身体を持った唯一神、それに大天使が相手だ」


 金鬼と義経がなだめる。
 義経の発言に鴉天狗が驚く。


「あの人間が……?
 殿、誠ですか!?」

「おそらく、何らかの事情で転生したのだろう……人間に」

「お前達に神の罰が下るだろう!
 だが、その前に私が死を与えてやる!
 マハザンマ!!」


 小林が魔法を唱え衝撃波を飛ばす。
 皆散開した。
 原野が提案する。


「私があのインチキ坊主を相手にします。
 九鬼さんと毘沙門天が魔人に、他はあのガラクタを!!
 ランダマイザ!!」

「承知した……九鬼、参るぞ!!」

「ええ……!!」

「まったく、デカイ喧嘩相手だ。
 兄弟達がいりゃあよぉ~」

「ふん……無い者強請りをしても仕方あるまい!」

「殿、私が援護します!
 タルカジャ!」


 鴉天狗が魔法を唱えて打撃力の強化と、原野が敵の弱体化を図る。
 毘沙門天の豪腕が唸り、九鬼がその隙をカバーするように援護する。


「グゥ……ヤルナ。
 ダガ!!」


 火球を発生させるが、毘沙門天はその尽く反射した。
 さらに九鬼が攻撃を繰り返す。
 小林が原野が接近戦に弱いと解り、ナイフで刺そうとするが…、逆に腕を斬りさかれた。
 原野の手にはレイピアが握られていた。


「さすが魔人マタドールのレイピア。
 風間さんから借りてよかったなあ」

「き、貴様ぁ!」

「生憎手加減できませんので、あしからず」


 そういって出鱈目に振るう原野。
 もし、多少の心得があったのならば小林を両断できた。
 名剣を持ちながら生かせない原野の稚拙さを攻めるべきか、稚拙な技術を補うマタドールの剣を褒めるべきか……。
 一方、『神』は雷を発した。
 それを避けながら棍棒を叩き込む金鬼。
 だが、一撃では大したダメージになっていない。


「身体は偽者でも中身が本物か……魔力で強度をあげているのか」

「ならば何度で打ち据えるのみ!」

「風の刃よ!!」


 義経が八艘跳びを行い、鴉天狗が真空波で攻撃を行う。
 『神』は怯む所か、反撃を行う。
 神の声によって金鬼の動きを止める。
 

「な……」

『悔い改めよ!!』

「がああ!!」


 不可視の一撃が無防備になった金鬼を襲う。
 物理的な力ではなく、純粋な魔力による一撃だったのだろう。
 刃を阻む屈強な身体を易々と貫き、多くの血とMAGを流した。
 九鬼の心の中で焦りが生じた。


「(いかんせん、敵の数が多い。
  せめて二人……いや後一人戦力がいれば……)」


 だが、無数の信者を迎え撃つために戦力を割かねばならず、今の戦力が精一杯であった。
 毘沙門天が叱咤する。


「九鬼よ、惑うな!
 真の敵は己が心の内にあると知れぇい!」

「ククク……支配者ガ降リ立ッタ。
 汝ラニ明日ハ無イ!」


 魔人の矢が無数に降り注ぐ。
 光の矢は毘沙門天は当っても無効化するため唯の矢のみ打ち落とす。
 『神』が金鬼に止めを刺さんと絶対零度の氷弾を放とうとする。


「ぐ……避けられるか!?」

『しょせん、お前らなど私の所有物にすぎん。
 逆らう者は消去するのみ……。
 覚悟するが良い、矮小なる人間に使えし者よ!!』

『そいつはどうかな?』


 『神』の声を真っ向から否定する声が聞こえた。
 だが、その時、出入り口から濃密な霧が吹き込んできた。
 更に霧の中から風を斬る音とともに円盤が飛来し、『神』の顔面を切り裂く。
 狙いは大きく逸れていき、金鬼は回避することができた。
 九鬼はその攻撃を行ったのは誰かわかった……ここに来るはずが無い人間がやってきたことを。


『何者だ……!!』

「人は強い意志によって変わること、そして変える事ができる……。
 良くも悪くもな。
 決して侮って良いものではない」

「まさか……!!」

『だまれ……!
 私の前では無に等しい!!』

「そうだな……人間は暴虐な力で蹂躙され、散っていく。
 それでも、皆必死に戦っている、今までもこれからも……そして受け継がれる遺志がある。
 誠の心は決して滅びはしない……。
 お前の行動が真に強き意志で現れた超越した存在なのか、それとも上っ面な力だけの存在なのか?
 それが解る……はたしてあんたは人間に破られずにいられるのか?」

「石動君……!!」

「マスター、新月を過ぎたことによって通常通りの性能が発揮できます」


 黒いスーツと三白眼、そして妖刀ニヒルを操るのは間違いなく石動巧であった。
 彼の横にはフリーダーが控えていた。
 如何なる手段か黄泉帰り、再び魔人と対峙する。
 魔人は楽しげに哂う。


「再ビ死ニ来タカ?」

「いや、借りを返しに……利子つきでな」

「ハハハハ……人間如キガ言ッテクレル」


 ひとしきり哂った後に魔人は言い放った。


「フフフ……。
 褒メテヤロウ、貴様ノ復活ヲ。
 ソシテ、悲シンデヤロウ、貴様ノ最期ヲ!!」

『今度は前のように行かないぜ!』

「逝くのはお前達だ……!!」

「フハハハ……今ヨリ貴様ラハ恐レ慄クダロウ!!
 見ヨ!!」


 そう言った瞬間、白騎士は三体に分身した。
 ラームジェルグは驚く。


『な、なんだ!?』

「実体を持った分身か……だが、本物ほどではないな」


 石動は白騎士の分身を見切っていた。
 不利になった事には変わりが無い。
 だが、もう石動には二度も命を奪った白騎士への恐怖はない。


「いくぞ……」

『おうとも!』

「「「死ネ!!!」」」


 魔人の雨のような矢が降り注ぐ。
 尽く弾き返すが、本体が放つ全力の『神の矢』が石動を狙う。
 以前より強化され、今度こそ石動の魂を浄化せんと迫り来る。
 だが、石動は片手で弾き飛ばす。


「バ、馬鹿ナァ!!」


 そう、生身では決して弾けない一撃を弾いたのだ。
 魔人が動揺するのは無理も無い。
 石動の後方に存在しているラームジェルグの身体に異変が起きる。
 彼の身体がひび割れ始めた。


「な、なんですか!?」

 
 原野はその異様な光景に驚きを隠せない。
 魔人はそれでも攻撃を仕掛けるが……


「セイッ!!」


 石動は落ちていた矢を投げ放つ。
 クロスボウで撃ったかのごとく高速で飛んでいく矢。
 それだけならば魔人はたやすく避けられただろう。
 だが……


「ガァ……!!
 何ガ……起コッタ!?」


 軌道が稲妻のように奔り、魔人の腕に無数の茨に貫かれたがような傷が生まれた。
 ラームジェルグは内から弾け、膨大なMAGが噴出した。
 石動のCOMPの貯蔵されたMAGが見る見るうちに枯渇していくが、その時、誰も知る由もなかった。
 それが終わった時、ラームジェルグは抜け殻になり、地面に落ちていた。


「な、なんですか!?
 ラームジェルグ殿が死んだああ!?
 う、うわあああああ!!!」

「落ち着け、見てみろ」

「……な、なんとぉおおおお!!」


 義経に窘められた鴉天狗は驚いた。
 石動の後方に人影があった。
 長い髪を紐で纏め、動きやすいように急所の部分だけ金属を埋め込んだ皮鎧を纏い、長い槍を持った青年がいた。
 荒々しい中に知性を感じさせたもので、よく見ると石動のラームジェルグの面影がある。
 長身で鍛え上げられた筋肉が歴戦の戦士を思わせる。
 恐らく、ラームジェルグの生前の姿なのだろう。
 石動の刀が妖刀ではない……月光のような輝きと人々を魅入らせる美しさのある名刀に変化していた……その刀身を見て見る者が見れば何なのか解っただろう。
 その刀の名前は『夢想正宗』……。

  
「貴様……何者ダ!?」


 魔人の問いかけにラームジェルグらしき男が応える。


『『闘鬼』クー・フーリン……覚えておきな!』


 その受け答えは紛れもなく、石動とともにある者の言葉であった。



 








 あとがき

 石動巧復活ッ!
 石動巧復活ッ!石動巧復活ッ!
 石動巧復活ッ!石動巧復活ッ!石動巧復活ッ!

 というわけです。
 ここの『唯一神』のボディは真2の偽神のボディの複製。
 

 風間の『策』はなんなのか?
 魔人と再戦する石動に勝機があるのか?
 次回をお楽しみアレ。


 『幻魔』クーフーリンではないです、『闘鬼』クーフーリンだよ。
 漫画版ペルソナの如く覚醒してしまったわけですが……ラームジェルグの生前が強化フォームと決めていたり。
 スコットランド=紀元前8世紀、多数のケルト人とその文化がスコットランドに流入した。
 ケルト人で荒ぶる戦士といえば……クーフーリン。
 でも、メガテンのクーフーリンは高貴だったりしますが……次回にチョロチョロと言及しますので。

 でも幾ら強くなっても石動の欠点(戦闘の手駒はフリーダーだけ)は変わらないし……。

 



[7357] 第41話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/10 04:40
 クー・フーリン。
 太陽神ルーの子であり、クランの猛犬と仇名されるほどの戦士であった。
 美しい容貌であったが、一度戦いが始まると激しく痙攣し、あごが頭くらいの大きさになり、逆立つ髪から血が滴たたるほどの恐ろしい形相に変貌する。
 影の国を訪れ女王スカアハの下で修行を行い、数々の武勇伝を生み出したが、最期は罠にかけられ無残な最期を遂げた。
 デビルサマナー達の間では高貴で優れた技法で戦う幻魔として一度はともに闘いたいと願うほどの存在だ。

 
「石動さん!
 どうやって蘇ったんですか!!?」

「話せば長くなるが……一言で言えば、地獄を歩いて抜け出しただけだが」


 原野が荒事になったのに首を突っ込んでいたのに驚き、勢いのある問いかけに思わずたじろいだ。
 石動の答えで納得しきれないのか絶叫が続く。


「ええ、短!!?
 それに、背後霊変わっているし!
 クーフーリンにしては……その……なんというかワイルドですね」

『お前が思っていたことはよく解った……お前を締める!
 ま、そう思うのは当然だわな』



 頭を無造作にかきあげる闘鬼。
 困惑する原野の話に応える石動とラームジェルグ……いや、クー・フーリン。
 原野の驚きは最もである。
 クー・フーリンは一般的に幻魔に分類され、俗世に現れる機会は少ない。
 だが、ここのクー・フーリンは闘鬼と名乗った。

 ここで悪魔について言及しておきたい。
 以前語ったように、神だったものが駆逐されて悪魔に落とされたり、外国では別の姿になることがあると言った。
 実際クー・フーリンと彼の幼年期であるセタンタとは別の存在になっている。
 また、アスラ王とヴィローシャナは本来同一存在であるし、ラーマはヴィシュヌの化身であったりするのが良い例だ。
 では、ここの守護霊はどうなのか?
 クー・フーリンは紛れもなく神話の英雄である。
 『幻魔』クー・フーリンは英雄的要素の集まり……いわば『陽』の存在といっていいだろう。
 だが、生前の彼は『幻魔』のように高貴かつ上品な戦士だったわけではない。
 気性が荒く、暴力的で、血塗られた過去があった。
 幼少の彼は戦士と認められなかった為に武具を壊し、戦車を踏み壊して自身の力を見せつける。
 親友や息子を自分の手で殺める事になった……。
 このような『陰』の部分が死して分化し、無間地獄で幽閉されていたのだ。

 何時しか自分が何者かも忘れ、死した戦士の幽霊の成れの果て……ラームジェルグと化したのだ。
 二つの姿を持つ例として魔王ルシファーがあげられる。
 魔王ルシファーは敵に対しては恐ろしい魔王の姿になり、信頼を寄せる者の前ではかつての大天使の姿で接するが、ルシファーは両方の要素を操る存在であるのだ。
 では何故、ラームジェルグは元に戻ったのか?
 ラームジェルグの精神的な成長、戦ってもほとんど使われる事の無い莫大なMAG、そして石動の成長という要素が重なって復活を遂げたのだ。
 石動の成長……今までの闘いの経験もあるが、死を再び乗り越えた事が原因だ。
 本来ならば消滅するダメージを紙一重で軽減できた石動。
 その消耗した魂を癒すために小角がソーマを施した……破損した魂魄を更に強靭に、3度目の敗北を許さんとばかりに強化・再生されていく。
 さらに、ザインとの問いかけも『きっかけ』であろう。
 悪魔にもならず、神の加護を断った石動は、『一見』急激な強化が無い。
 だが……目の前の困難を前に自身の意思を貫く『覚悟』が成長を促し、死からの復活が魂を強くした。
 それは守護霊使いとして更なる高みを押し上げ、ラームジェルグの楔を解き放ったのだ!!



『まあ、あれだ……凄み?』

「考察は後回しだ!!
 旦那達は『ガラクタ』の方を頼む!
 代わりに義経を寄越してくれ。
 フリーダーは原野の方に行ってくれ、奴は能力はあっても技術がないからな」

「了解しました、マスター」

「ええ……でも心配させたんですから、埋め合わせをお願いしますよ。
 彼女達を泣かせたんですし」

「わかっているさ……。
 いくぞ……!!」

 
 MAGが吹き荒れ、石動の能力が跳ね上がる。
 今まで眠っていた二人の魂が火がつくかのような勢いで魔人にプレッシャーを与える。
 一斉発射する無数の矢の数々。
 それを見切り、安全地帯を一気に駆け抜け、さらに反撃する。


「遅い!!」

「グ……」

「ガ……」

「ナニィ!?」

『これぞ、夢想円月流・三日月の太刀ィ!!』


 月齢が八分の一~三の時期にのみ威力が発揮される独特の刀術であり、三日月の軌跡を描き、切り裂かれた。
 MAGが噴出し、分身の存在が希薄になる。
 さらに義経が八艘飛びで追撃をかけて分身を撃破する。
 

「石動……腕を上げたようだな。
 いずれ稽古の相手をしてもらおうか?」

「俺自身が強くなったわけではないがな」

「……ふはははは。
 面白い」

「?」

「わからなくて良いぞ、石動はそのままでいい」

「オノレェエエ!!」


 白騎士は無数の火球を発射する。
 義経は回避するが、なんと石動はかまわず突撃する。
 以前ならば魔法防御に不安があったが、今ならば問題ないと確信している。
 予想外の行動に魔人は戸惑い、石動の一太刀を浴びる。
 夢想正宗の切れ味は予想以上で、易々と切り裂かれ、苦悶の叫びを上げる白騎士。


「ウガアアァ!!!
 マダダァ!!」
 

 再び白騎士は分身する。
 だが、地面に刺さった矢を引き抜き、集中する石動。
 三体が近づく瞬間に投げ放った。


『ゲイボルグ!!』

「ナニィ……!!」


 矢は稲妻の軌跡を描き、回避しようにも如何動くべきか解らず、隙ができた。
 その隙が致命的であった。
 途中で無数の茨に変わり、白騎士達を纏めて貫く。
 『ゲイ・ボルグ』はスカアハが授けた槍で投げると無数の矢尻が飛び出すといわれる。
 だが、一説には『ゲイ・ボルグ』は槍のことではなく、槍の投法の事を指すといわれている。
 『幻魔』クーフーリンが操るのは魔槍ゲイ・ボルグであるが、『闘鬼』クーフーリンは魔槍を持たない。
 その代わり、無数の敵を穿つ必殺の殺法を持っていたわけであった。


『早くもこの技を使いこなすとはな!
 それより、今がチャンスだ、巧!!」

「ああ…!!」


 石動は刀を一旦鞘に納める。
 石動の中に記憶が蘇る。
 前世、現世、無数の霊を憑依して覗き見た経験、更に最期に受け取ったロウヒーローの記憶が真の意味に一つとなる。
 無数の矢が降り注ぐにも関わらず汗一つかかず、最小限の動きで避ける。
 

「ほう……!!」


 誇り高い義経の普段は絶対に行わない他人への賛辞の呟きであった。
 流れるように接近し、魔人達の中心に跳びこむ。
 接近時の勢いと腰溜めに構えた夢想正宗を抜刀し、腰の捻りを合わせた一太刀。
 回転して周囲をすべてを両断する一刀は、石動が剣に捧げた人生の集大成であった。
 その技は人でも悪魔でも無い最強の存在が用いた業に似ていた。
 その業は『死亡遊戯』。
 生命に微塵の価値もない乾いた世界で猛威を振るった奥義の一つ。
 石動が刀を一振りし、鞘に収めた。
 魔人達の上半身と下半身が分かれた。
 魔人の知覚外の速度であり、何が起こったか解らなかったようだ。
 

「魔人ヲ……退ケル……トハ」

「借りを返した……」


 白騎士の最期の言葉にそっけなく応対する石動。
 MAGの爆発とともに魔人は消滅した。
 一瞬、感慨深い物がこみ上げる石動。
 だが、それも一瞬のことであった。


『まだ残っているぜ、巧』

「そうだな……まだ終わっていない。
 ……が、俺の出番までくるかどうか……だな」

 
 石動は変化した相棒と変化のない会話を行う。
 石動の目には仲間への信頼が込められていた。
 























 おまけ

 これは、後日の話の事。


 石動が暇つぶしに本を読んでいると、相棒が奇怪な喋りを始めた


『とぉるるるるる』

「……何をしている?」

『巧……私の巧……』


 どこかで聞いたことのあるような台詞だったが、石動は無視した。
 そのとき、携帯がなった。


『とぉるるるるる』

「……この奇怪な着信音は原野か?
 勝手に変な音を入れおって……俺だ」

「巧……私のた」


 即座に電話を切る石動。
 ため息をつきながら言った。


「……流行っているのか?」




[7357] 第42話(第1期終了)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/10 02:27


「うーん、フリーダーって強いな~。
 でもサマナーって便利そうだけど交渉時に警戒されるから持たないけどね」

「お褒めに預かり光栄です」


 原野はランダマイザでさらに弱体化させながら戦う。
 フリーダーの闘いぶりを始めて見る原野は感心している。


「(造魔にしては柔軟な対応だ。
  それに……戦局に応じてスキルを換装できるというのは凄い!!)」


 この特異な仲魔をもてる石動を羨ましく思う原野であった。
 実際の所は育てる労力が多いのに加え、使えるの彼女だけだあるため、普通のサマナーより総合的戦力がどうしても低くなる。
 基本的に闘いは数を揃えたほうが優位になるのだから。
 フリーダーは、原野の思いを余所に電撃を放出し、小林に大ダメージを与える。
 小林が怒り狂い、背中から羽が生える。
 そして無数の鎧と槍と盾で武装した天使パワーを数体召還する。


「神に仇名す不心得者め!!」

「自然ならざる者よ……土に還れ!!」

「おっとさせませんよ、マハムドオン!!」


 呪詛が天使を蝕み、数体呪い殺す。
 更に、フリーダーが接近した。
 普段、冷静な彼女らしからぬ熱い叫びを叩きつける。


「マスターは、常々仰っていました。
 神に縋る前に、神々の裁きを得る前に人として力を出し切ると。
 人自身の可能性を信じると!!」

「矮小な人間如きが……」

「その『ごとき』が魔人を打倒しましたよ?」


 嘲る天使に原野は、たった今撃破した石動のことを言及した時、大きな隙ができた。
 フリーダーの腕から剣が飛び出し、残ったパワーの首を刎ね、その勢いで小林に切りかかる。
 辛うじて致命傷を避けたが顔に大きな傷をつけ、肩まで刃が食い込んだ。


「お、おのれ!!」


 原野達の形勢は一気に傾いた。










 



「石動殿に続けぇ!!」

「張り切りやがって……ま、大したもんだがな!」

「そうですね……私も更に鍛えなければ!!」


 興奮する鴉天狗が六角棒で『神』の顔面を打ち付け、金鬼がそれに続く。
 九鬼の手裏剣が眉間に突き刺さるが、いまだに勢いの衰えない『唯一神』。
 神が吼え、動きを封じようとした瞬間、口に毘沙門天は自身の塔を投げ込む。
 塔は巨大化し、口を塞ぐ。
 さらに……


「疾!!」

『がああああ!!!』


 塔から無数の炎と雷が吹き荒れる。
 攻撃を封じながら手痛い一撃を与える四天王の長。
 『唯一神』は困惑した。


『なぜだ……救世主でもない、矮小な人間如きが…!!』

「貴様は遥か高みにいるだろう。
 だが、それゆえに見えぬモノがあった……」

「結果がすべてです、受け入れてください」


 人を守り続けた毘沙門天だからこそ解る事を語り、九鬼は冷たい現実を突きつける。
 だが、傲慢なる『神』は諦めない。


『わが僕達よ!!!
 わが呼びかけに応えよ!!』


 だが、その呼びかけには誰も応じなかったのか、大天使や天使が来る様子がない。
 『唯一神』は意識を飛ばした。
 無数の霊的な拠点から門を開こうとしていたが、未然に止められていた。
 無数の天使の死体が積み上げられていたり、予め結界が強化されて現世への進入を阻んでいた。
 各地の声が聞こえてきた。






「まったく、数だけは多かったがこれで孔は塞いだ……あばよっ」





「アキラ……お前の行きたかった景色を守ってやるさ、お前の分も!!」





「おい、レイ……終わったか?」

「ええ……もう少しスマートにこなしなさい。
 何年やっているの!」

「厳しいな、トホホ」






「むう……いつぞやの依頼であった光と闇の対決とまではなりそうもないな。
 な、なにをするライドウ!?
 お前というやつは……祖父の錠平に似て……う、本能に逆らえん!!」








 尽く、人間の手で自分の力を封じられている。
 『神』は決断した。
 もういい。
 今回は手を引くが……お前らはだけはこの偽りの身体とともに道連れにすると。


『神の光で浄化してくれる!!!』


 だが、決断した瞬間力が抜けていく。
 『神』は混乱した。


『な、なぜだあああ!!』

『それは貴様の傲慢ゆえだ』


 『神』の声に応えたのはアジト内のスピーカーから響いてきた。
 九鬼は声の主に気がついた。


「これは……風間さん?」

『いかに強い力を持とうとも、所詮はかりそめの身。
 それも慣れない体だ……闘いながら此方に力を割く事が出来なかったようだな』

『キキキ、機械機械♪』


 放送の中で悪魔の歓喜の声が聞こえてきた。
 邪鬼・グレムリンが楽しげに作業をしているのだ。
 風間が、突入時に四天王をすべて召還せず、無数の普通の悪魔と毘沙門天だけしか召還しなかったのは訳があった。
 毘沙門天と九鬼達を囮にして、本命は別にあったのだ。
 無数のグレムリンを召還して、機械である『唯一神』の身に干渉したのだ。
 さらに、グレムリンに頼んで警視庁が誇る対サイバーネット犯罪対策チームがハッキングできるように回線を接続させたのだ。
 普段ならば気がついただろうが、この混戦で大きな隙が生じたために成功した。
 さらに、もともとの設計ではハッキングに意外に脆かった。
 機械の仕組みじたいは未来の技術で発達していた。
 だが……偽りの『神』の身体には、このようなハッキングが仕掛けられるとは想定されていなかった。
 未来の時代ではメシア教団に力が一極集中し、反乱の力が小さいためだ。
 だが、ここの世界では人々が繁栄を謳歌する一方、人間の技術が発達している。
 とくに電子分野の発達は凄く、ハッカーと警察のイタチごっこで電脳戦はこちらのほうが錬度が高い。
 最期の足掻きすらできず、エネルギーのチャージが時間がかかっている。
 それを見逃す九鬼達ではない。
 さらに魔人を倒した石動と義経が参戦する。
 一斉に攻撃を開始した。


「義経!!」

「承知!!」


 九鬼の神速の連撃を与える。
 さらに、義経が高々と跳躍し、必殺の太刀を振り下ろす。
 続けて金鬼と鴉天狗が攻撃する。


「いくぜいくぜいくぜいくぜ!!!」

「きえええ!!」


 豪快な金鬼の攻撃の合間に鴉天狗の連続攻撃が襲い掛かる。
 二人の悪魔のコンビネーションでさらにダメージを与える。


『巧!!』

「ああ……!!」

「関八州を害する悪鬼よ、去れぇ!!」


 毘沙門天の必殺の突きが衝撃波となり、『唯一神』を壁にたたきつける。
 そこを石動の虚空斬波で吹き飛ばす。
 顔面が崩れ、無数の機械のパーツが露になり、火花を飛び散る。


『お……の…れ!!
 た……とえ、倒して……も再び……帰って……こよう…ぞ!!』

『何度でも来るがいい!
 我々は神の無法には屈しない!
 人間を舐めるな!!』


 風間の一喝とともに『唯一神』の身体が爆散した。
 ハッキングで『唯一神』の力を逆流させて爆発させたのだった。
 九鬼が原野の様子を見たが、原野はすまなそうな顔をした。


「すみません、信者達が現れて小林を取り逃がして……」

「仕方ありません。
 我々が生き残り、企みを失敗させただけでも良しとしましょう。
 それに……石動君が蘇ったのですから」

「そうですね」


 九鬼が微笑む。
 石動はすまなそうに苦笑した。


「スマンな、原野。
 迷惑をかけた」

「とんでもないですよ!
 今回で懲りないで、また仕事を手伝ってくださいよ」

『そうだそうだ、これからは俺様の時代が……』


 有頂天になっている相棒に向かって石動が話しかける。
 

「おい」

『なんだ?』

「元に戻っているぞ」

『……マジで!?』


 クー・フーリンから元のラームジェルグに戻っていた。
 石動が分析した。


「どうやら一時的に戻っただけのようだな。
 COMPのMAGが大量に消費していたが……おそらく、MAGを消費して変化しているのだろう。
 これからは変化用にMAGを貯蔵しないといけないか。
 まあ……俺が守護霊使いの技量が上がれば永続的にあのままになる『かも』な」

『……うう、俺の時代がぁあああ!!』

「……お前が凄い事は俺が理解している」

『こ、心の友よぉ~!
 これがツンデレぇ~!!』

「……やれやれ」


 相変わらずな相棒にため息をしつつも安堵している石動。
 九鬼が話しかける。


「あの魔人は……?」

「俺の過去の傷だ…」

「ならばもう怖いものはないでしょうね……今の君なら」

「いや、怖いものならあるさ……思い出ってやつがな」

「ならば、長生きして精々増やすとしましょう、お互いに」

「ああ……」


















「私は怒っているんですからね」

『機嫌なおせよ』

「ぷんぷん」


 ニュクスの店で一仕事を終えた祝い(というよりも石動の全快祝いだが)に皆が集まった。
 早乙女は『よかった、先生!!』と嬉し涙だったが。
 モー・ショボーが怒っていた。
 無理をした事や、悲しませた事に対して凄く悲しんでいただけに。
 今、石動の膝の上に座っているが機嫌が治らない。
 謝って離れようとすると抱きついて離れないため、石動は扱いに困っていた。
 原野が事件の事を言及した。


「小林は全国指名手配になったみたいです。
 それに……国会でメシア教団に対して破防法の適応をするかどうか話し合いを始めたみたいですし」


 裏の事を公開できないが、無数の銃器、BC兵器が発見・押収された。
 少なくとも社会的な制裁は始まった。
 議会でメシア教団の影響を受けた者や、人権擁護云々語る勢力が存在するため、適応されるかは不明だが。


「おい……」

「なによ」

「すまなかった」

「う……ミボウジンにさせないように気をつけることね!!」



 なんとか機嫌が戻ったようだ。
 今の石動の重大な問題が解決できてほっと一息つくことができた。
 ラームジェルグが気がかりを口にする。 
 

『あとから聞いたけどよ……』

「オセか……奇妙な因縁が出来上がったな」

「ですが、石動君。
 我々、人間は棄てたもんじゃありませんよ。
 日々の努力が君を救う事になるでしょう。
 それに……周りだってきっと助けになりますよ。
 君は一人ではないのですから」

「……そうだな、旦那」


 九鬼と石動は改めて酒を注ぎ乾杯をした。


「人類の可能性に」

「馬鹿な守護霊に」

『無愛想な相棒に』

「「『乾杯』」」 

















 あとがき。

 勝った!第一部完。
 でもすぐに第2部に(更新速度は落ちるでしょうが)。
 小林はしぶとく生き残り、テロ活動をするでしょう……今回台詞だけとはいえ、豪華なゲストが(誰かは想像してみてください)。

 闘鬼・クーフーリンのステータスを簡単に

 物理・火炎・電撃半減。
 破魔・銃撃無効。
 呪殺弱点。

 変化(MAG消費と引き換えにラームジェルグから『闘鬼』クー・フーリンに変身)
 MAG消費(自分だけだがステータスアップ・MAGを激しく消費する。)
 ゲイ・ボルグ(万能物理属性。単体+拡散)
 残りはラームジェルグを同じ技。


 メシア教団ってえげつない事ばかりしています。
 天下を取らなかったら悪質なテロ組織になっていますがね!
 『唯一神』を皆の力で倒しました……風間が何気に奴への精神的ダメージを与えていますがね。

 とりあえず第一部は終わりましたが、海外ドラマのシーズン1が終わっただけ。
 まだまだ続きます。
 ぶっちゃけ、ゲゲゲの鬼太郎のごとく悪魔のネタがある限りできそうで楽しみのような怖いような。
 シーズン2もコンゴトモヨロシク。




[7357] 第2期 第一話(2期突入したので板を移動)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/09 23:57

 石動が荷物をあけた。
 小型の携帯電話が入っており、石動がいじり始める。
 ラームジェルグが腑に落ちないのか、質問する。


『どうしたんだ?
 携帯電話型のCOMPなんか買ったりして。
 あれは悪魔の契約できる数もソフトのインストール数も少ないだろ?』

「いやな……早乙女に渡そうと思ってな」

『ああ……ああ、なるほど』


 石動に出会ってから悪魔の遭遇回数が増えている早乙女である。
 アリス事件、ホテルの魔人襲撃、仏閣での大惨事。
 それ以外にも悪魔に絡まれることがたびたびで、何とかするのに一苦労している。
 あまりの災難ぶりに呪われているんじゃないか?と態々調べたほどだ。
 結局呪いなどなく、単純に不運なだけと結論がついたが。


「サマナーとして活動するかどうかはともかく、自衛手段を持っていたほうが良いからな」

『まあ……そうだな。
 それと、依頼はなにか面白いものはないのか?』

「そうだな……」


 石動が依頼を調べて、ある依頼を受けた。















「で、私を呼んだわけ」

「そうだ」


 ジェシカが不満気に言った。
 彼女に助けを頼んだが、サマナーとして頼んだわけではなかった。



「先生……良いんですか?
 珠美や佐奈を連れて行って」

「ああ、嫌な事件を忘れ去れるには丁度良いからな。
 保護者を用意したからな」


 以前の悪魔絡みの事件で巻き込まれた早乙女の友人達も一緒に中国・上海に飛んだ。
 ジェシカは、保護者として白羽の矢が立った。
 石動は中国の貿易商の依頼を受け、早乙女に悪魔召還などノウハウを教える為についてこさせた。
 戦士としては幾つも修羅場を潜り抜け、下手なサマナーよりは単独の戦闘力は期待できる位だ。
 もっとも、こういうときに戦力にする石動ではないが。
 早乙女が不安げに言った。


「先生、大丈夫なんですか?」

「心配するな。
 お前用に初心者向けCOMPを用意している。
 危険だと判断したら逃がしてやれる」

「そっちは……いいんです。
 でも……モーちゃんが怒るんじゃないかと……」

「拗ねるだろうな、子供だから。
 まあ、お土産を必ず用意するつもりだが……」

『(だめだ……こいつ、なんとかしないと)』


 ラームジェルグがため息をつく。
 ジェシカが一応石動に念押しする。


「ねえ……大怪我が治ったばかりって聞いたけど、大丈夫?」

「ああ、支障はない」

『(大怪我どころか、死亡確認したんだがな)』


 黄泉還りという並みのサマナーではできない事をやってのけた事に乾いた笑いをするラームジェルグ。
 古くは安倍晴明、現在では葛葉キョウジが成し遂げたことであるが、並大抵のサマナーでは出来なかったことである。
 

『では、ヨロシク頼むぜ』

「はいはい……飛行機代くらいは奢りなさいよ」

「解っている」


 そう言って二手に別れた。
 石動と早乙女は依頼主の屋敷にたどり着いた。
 太平堂とも親交があるらしい。
 依頼主は老人であり、英国製のスーツを纏っていた。
 石動は勧められた紅茶を飲む。


「早速だが依頼を言おう。
 最近、私の周囲で怪異が発生している。
 傘下の会社が嵐が起こったような惨状になっていたり、機材を叩き壊されたりしている。
 何故起こったか原因を突き止めて、出来れば元凶の排除を頼みたい」

「……報酬は?」


 依頼主が掲示したのは相場よりやや高めだ。
 詳細な条件を話し合い、依頼を引き受ける事になった。
 早乙女は本格的な場にでるのが初めてで圧倒されていた。


「うう……緊張した」

「今のうちに慣れておけ」

『そうそう。
 依頼の詳細を煮詰めたり、交渉することも大事だからな。
 なあ、屋台で食べてからホテルに戻ろうじゃないか?』

「そうだな……夕食までは早いが小腹が空いたからな。」


 そういって手近な屋台に立ち寄った。
 注文をした後、声をかける。


「フリーダー、どうだった?」

「え!?」


 早乙女は驚いた。
 いつのまにか、背後にフリーダーが立っていた。
 フリーダーに単独捜査をさせ、事件が起こった場所の原因・共通点を既に調べさせていた。
 フリーダーが淡々と語る。



「原因は工事現場からだと思われます。
 もっとも古い時期のことであり、また神を祭っていましたが、工事で壊したようです」

「でも、普通は他に移したりするもんじゃないですか?」


 早乙女がそういったが、石動が首を横に振った。


「日本でもやらない不心得者がいて事件を起こしている」

「マスター、更に悪い事に工事現場の人間がギャンブルに勝つように願ったが負けたために腹いせに壊したそうです」

『馬鹿だ……やっちまったか』

「まあ、中国人は神を偉いとは考えないからな」

「ええ!?
 そうなんですか?」


 中国における神は確かに人間にない力をもっている。
 だが、極論すれば人間は仙人になれる可能性がある。
 仙人のほうが神より偉いのだ(とはいえ、仙人を神に祭るという矛盾した行いをする事もあるが)。
 日本では神を崇め奉るが、中国では少し違うものだと考えていてほしい。


「……厄介だな」

『話合いではすまなそうだな……。
 それはともかく、とりあえず、食うぞ。
 明日、壊された祭壇を見に行く事にしよう』

「そうだな……面倒事にならなければいいんだがな」










 あとがき。

第2期突入したので板を移動。
短めですがね……。

早乙女用のCOMPは携帯電話型。
5体まで呼び出せ、ソフトのスロットは2つ。
普通に携帯電話としても使用できる。
だが、COMPとしての機能は多くなく、初心者用位の位置づけである。
携帯しやすいが、戦力を考えれば多少不便でも大きいCOMPを使ったほうが良いというのが大多数のサマナーの見解である。


第2期モヨロシク。



[7357] 第2期 第2話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/01 11:53
  

「で、石動さんってどんな人なんですか?」

「うーんと、仕事中毒・剣術馬鹿ね」


 佐奈の質問に答えるジェシカ。
 やはり、うら若い乙女が20代の青年の元に行っているだけに色々勘ぐるのであろう。
 珠美は初恋の人がゾンビになったせいか、自身の新しい出会いなど未だ考えられないようだが、早乙女の様子が気になるようだ。
 ジェシカが続ける。


「幼女にクールな助手、弟子志望の女子高生……手が広いわね!」

「石動さんの好みって……」

「それが謎なのよねー」


 珠美の質問に返すジェシカ。
 結局、石動達が帰ってくるまで恋愛談義が花咲く事になった。













 翌日、神を祭った祭壇へ向かおうとした。
 案の定、妖気が漂い、石動と早乙女を異界に引き込んだ。
 石動はやれやれとため息をつく。
 何度も悪魔と対面している早乙女も慣れ始めていた……むしろ諦観かもしれないが。


「さて……俺が教えられるのは基本だけだが。
 悪魔には種類がある」


 悪魔には様々な種族に分かれている。
 他にも大きな分け方がある。
 ロウ、ニュートラル、カオスというスタンスの違いで分ける。
 ロウは秩序を重んじ、カオスが混沌を尊び、清濁併せ持つのがニュートラルといったところで、この世界は中道であるニュートラルが主流である。
 他の分け方は、ライト・ニュートラル・ダークというわけ方がある。
 簡単に言えばダークは人間とは相容れない邪悪な存在、ライトは魔神や女神などの現世に現れにくい存在、その間がニュートラルである。
 話し合いが通じるかどうかの大まかな指針になるので石動は詳しく話す。


「お前のCOMPにはデビダス……悪魔のデータが入力されている。
 それで調べれば自分で太刀打ちできるのか、話し合いが出来るのか調べる事ができる」

「敵を知り、己を知らば百戦危うからずですね」

「そうだ……あと一つスロットがあるが不意打ち防止の百太郎をインストールしている。
 他のソフトも渡すから如何使い分けるか考えておくと良い」

「あの……高くなかったんですか?」

「気にするほどではない。
 太平堂からモニターも兼ねて譲り受けたCOMPだ。
 ソフトも九鬼の旦那が頼んだから安く、種類も多く取り揃えた」

『そうそう。
 それに最近難儀な事件ばっかりだったから報酬が多くもらえたし』


「あ、ありがとうございます!
 そういえば、その刀……前と違いますね」


 ラームジェルグと石動の言葉を聞き、安心するとともに、感謝の言葉を送る。
 同時に石動の刀を気にかける。
 石動がそれを聞いて直ぐに答えた。


「ああ、また強化した。
 『妙法村正』だ」


 『夢想正宗』から変化した『妙法村正』。
 ラームジェルグに戻った時に名刀は強力な呪いを秘めた妖刀に変化した。
 おそらく、ラームジェルグが変化すれば再び『夢想正宗』に戻るのだろうが……妖刀ニヒルより遥かに強力なのは変わりが無いので困りはしない。
 石動は元凶と対峙する前に異界にうろつく悪魔と早乙女と闘わせることにした。
 フリーダーと石動がいれば最悪の事にならないと判断したからだ。
 さっそく、早乙女は悪魔と接触するべく歩き出すが、死体の群れに襲われる。
 道服を着ており、早乙女がデビルアナライズをしたところキョンシーとでた。

 
「キョンシー(殭屍)……風水的に正しく埋葬されなかった遺体が、人間にある三魂七魄のうち魂がなくなり魄のみもつキョンシーとなる。
 また、道士の符呪や儀式により、キョンシーを使役することもある」

「基本的に殺されなければキョンシーにはならないが……」

『面倒だな』

「排除します」


 一行は、多少の危険が在る為、排除に乗り出そうとした時、一体の悪魔が飛び出してきた。
 蜂の尾の形状をした頭部と蜂の羽を持ち、桃色の腕と顔、そして緑色の瞳を持った悪魔だ。
 どこかユーモラスな外見であり、友好的な若者口調で話しかけてきた。


「そこのねーちゃん、こんなところに何しに来たんだ?」

「へ、私?」

「ああ、そうそう」

「探偵の仕事についてきて……」

「探偵?
 今、ここで放送されている『でぃてくてぃぶすとーりー』の主役っぽいな、アンタのツレは」


 若い女性である早乙女に話しかけられ、上機嫌である。
 早乙女のデビルアナライズには次のように表示されていた。
 妖精『ベナンガル』。
 蜂の守護精でマレーシア出身。
 泥棒から蜂の巣を守り、夜中に悪臭を撒き散らして飛びまわり、夜中にあった人間は吐き気に見舞われる。
 (氷結吸収・火炎弱点 ハマ ブフ パトラ)


「そうだ!
 よかったら俺を連れて行かないか?
 今なら34MAGで憑いていくぜ!」

「あの、いいんですか?」

「おおよ!
 若い女の子に使われたいところだったからよ!」

「うーんと、MAGが入っていますね。
 大丈夫ですね……私は、早乙女さくらです。
 よろしくお願いします」

「よっしゃ!
 俺は妖精『ベナンガル』、コンゴトモヨロシクぅ!
 あー、其処のお前ら、散った散った!!」


 ベナンガルが手で追い散らすしぐさをすると去っていくキョンシー。
 悪魔のよしみが通じたのだろうか?
 それを見た石動は頷く。


「初めてにしては上出来だ」

「先生のお陰ですよ!」

『うんうん、素直で美人っていいよね』

「アンタ達、最近此処で暴れている奴に用があるのか、もしかして」

「ああ……そのつもりだが」

「切れているからヤバイが……。
 しょうがねえ、俺が案内してやるぜ!」


 ベナンガルが案内し始めた。
 彼の案内のお陰で敵との遭遇する機会が少なく、楽に進めた。
 彼はすぐに早乙女を『お嬢』、石動を『お武家さん』と呼ぶようになり、馴染んでいた。
 進んだ先には壊された祭壇があり、石動が調べ、何が祭っているか解った時、空を仰いだ。



「最悪だな……よりにもよってナタ太子か」

『不味いな』


 ナタ太子、日本ではナタクとも呼ばれることもある道教の存在であり、孫悟空、二郎神と並ぶ中国の人気キャラである。
 一度死し、復活の際に蓮の葉や根で肉体を造られ、無数の武具を操り、風火二輪という乗り物で空を翔る。
 封神演技ではいざこざを起こしたナタクがその場を治める為に自害し、かりそめの死を迎えた。
 母が墓を作ってくれたが、父親が壊した為、復活した時に復讐するために何処までも追いかけた。
 一説には古代中国の暴風神の一種であったと考えられている。
 案の定、稲妻とともに鋼鉄の身体を持ち、蓮の形をした首飾りをした少年が現れた。
 炎の輪に乗り、銅の腕環を身につけ、角のような髪型をしていた。
 石動は警告した。


「ナタ太子だ……気をつけろ!
 怒ると手当たり次第に暴れるぞ」

「は、はい!」

「貴様らはサマナーか!?
 消えろ……今は制裁の最中だ!!
 祭っておいて勝手に願いをした挙句、叩き壊す屑を叩き殺す!!」
 
「まったく大人げねえな、変な頭しているから気が短くなるんだ」


 ベナンガルの小声の陰口に、怒り狂っているナタ太子が聞きつけた。
 さらに顔を真っ赤にして怒り、体中から蒸気を発した。


「誰が俺の頭がサザエさんだって!?」

『むしろアストロボーイだが』


 ラームジェルグのツッコミすら聞かず暴れだした。
 蒸気が吹き荒れ、稲妻が奔り閃光を発した。
 ナタ太子の姿が変わった。
 米神にボルトを埋め込み、稲妻が走っている。
 腕には長い柄の鈍器を持ち、殺意を発している。
 『すわっ!』といいながら鈍器をたたきつけ、最早話し合いになりそうにない。
 早乙女が睨みつける。


「なんてことしたのよ」

「お嬢、面目ねえ」

「どちらにしろ叩き伏せたほうが良い」

『と、いうわけでいくぜいくぜいくぜぇ!』

「戦闘開始」


 石動が切りかかろうとした瞬間、嫌な予感がし、横に飛んだ。
 驚異的な魔法詠唱の早さで発動し、真空の刃は飛んできた。
 ベナンガルは、それを見て自身の失言に後悔しながら叫ぶ。
 

「な、なんだ!?
 早すぎるぜ!!」

「さすが……というべきか。
 フリーダー!!」

「了解」


 フリーダーが雄叫びを発した。
 この技によってナタ太子いや、ナタクを萎縮させて攻撃力を半減させる。
 それでもナタクは、鈍器を振りまわす力は強烈だった。
 石動は、巧に裁く。
 反撃とばかりに石動は、近づこうとすると、腕を構え、防御を行う悪魔。
 ナタクの腕につけた腕輪が回転しながら石動の顔面目掛けて飛来する。
 

『巧!』

「遅い!!」


 威力はありそうだが、以前対峙した魔人の神矢よりは遅いため、石動は斧に変形させて側面から叩き落す。
 だが、その隙にナタクが早乙女に近づく。
 慌ててベナンガルが氷結魔法・ブフを唱える。
 弱点なのか、簡単に凍りつくが、火力不足か、悪魔の歩みを止めきれない。
 早乙女は殺気に反応してガードの構えをした。
 だが、石動は気がついた。


「不味い……!!」


 狂っていてもナタクは武芸の達人。
 恐ろしい怪力を込めて奥義を叩き込もうとする。
 石動は、その技が『奥義・マモリヤブリ』と呼ばれる技で、ガードを打ち破り、更なるダメージを与える技だと知っていた。
 石動は、ラームジェルグに視線を送る……ラームジェルグは頷き、獣のように吼え始める。
 守護霊使いのCOMP内のMAGが急激に減少していく……緑色の閃光とともに石動もまた閃光と化した。



「ガアア!!」

「先生?
 それに……ラムさんですか!?」


 ナタクの肩に鉄パイプが食い込んでいた。
 さらに無数の棘に刺さったかのような傷跡ができていた。
 ラームジェルグの姿が荒々しい皮鎧を着た若き戦士と化していた。
 『邪鬼』ラームジェルグは、『闘鬼』クー・フーリンに変わった。
 そして、前に落ちていた鉄パイプを必殺の槍技でナタクを撃ち抜き、攻撃を妨害した。 


『間に合ったぜ』

「だが……出費が嵩むな」

『そのツケを纏めて叩き込んでやるぜ!!』

「くそ、よくもお嬢を!!
 ブフ!!」

「弱点は氷結と判断。
 マハブフーラ!」


 フリーダーとベナンガルが同時に攻撃する。
 氷結したところを石動が高々と飛び、必殺の蹴りを叩き込む。
 ナタクは派手に吹き飛び、瓦礫に突っ込んだ。
 しばらくして瓦礫が吹き飛ぶ。
 ナタクは最初の頃の姿に戻っていた。


「ここはどこだ!?」

「正気に戻ったみたいね」


 早乙女はほっと一息ついた。
 石動が状況を説明するとすぐにナタ太子は把握した。


「最近、東で地脈が派手に動いたせいか気が高ぶっていた。
 さらに人間が無礼な真似をして抑えていた理性が吹き飛んでしまった。
 悪かった」

「いや、怒る気持ちも解るからな。
 依頼主には警告しておくから、今回は仙界なり天界なりに帰ってくれないか?」

「……いいだろう。
 しかし、お前は強いな!
 また闘いたいものだ!」

「頻繁にくると困るから程ほどにな」

「はっはっは……ではさらばだ!!」


 ナタ太子は消えていった。
 早乙女は自分がやられかかったのに落ち込んでいた。


「なんとか生き延びたけど……」

「いや、初めてしては上出来だ。
 生きて帰れれば次に生かせる。
 死んだら……普通、取り返しが付かないからな」

「???」

 
 石動の最後の言い回しに疑問に持ちつつも、今回の依頼は完了した。
 年々近代化の為か、神や自然への敬意が無くなりつつある。
 今回の事件はその為に起こったとも言える。
 依頼主に警告をしたが、どこまで効果があったかわからない。
 その証拠に……後に、依頼主は、別口の祟りを受けて大変難儀な目にあったそうな。
 警告とケアをしたにも関わらずトラブルで死ぬ依頼主が多い。
 今回の事件は幕となるが、読了後のお休みの間、悪魔に肉体を乗っ取られないようにお気をつけて……















「なんだ、キョウジ?」

「いやさ、仲魔が出かけて帰ってこなくてさ、探すの手伝ってくれない?
 真面目な関帝聖君が無断で外出しちゃって……」
























 あとがき。

 シーズン2に突入。
 早乙女がサマナーになる……かはさておき、COMPゲット。
 携帯電話という便利なツールです。
 ますます悪魔絡みの事件に巻き込まれるでしょう。
 初の仲魔はベナンガル……ソウルハッカーズで出てきましたね~。
 今回の敵はナタ太子……ソウルハッカーズ仕様⇒アパドン王な外見に。
 ハヌマーン並にはっちゃけられなくて残念。
 
 第2期もがんばっていきますので。




[7357] 第2期 第3話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/18 10:31
「ああ……だりぃな。
 原野、寝て良いか?」

「ああ、香我美さん、サボらないでください!
 まったく、取り逃がしたじゃないですか!!」


 スーツを着た小柄な男性……原野と、原野より低い身長で、紺色のジーパンに黒い長袖のシャツを無造作に着た男が立っている
 香我美と呼ばれた男は、見た目は、30代前半で恰幅がよく、面倒臭げに見渡している。
 服装も申し訳程度にアイロンを当てた背広にシャツ……ネクタイだけはそれなりに上手く締めていた。
 おびただしい血痕が路地裏に流れている。
 普通の生物ならば致命的な出血量だ。
 『普通』ならば。
 路地裏の壁は無数の傷や焼き焦げた跡がある。
 更に、道には矢や金タライやトラバサミの残骸が転がっている。
 香我美と呼ばれた男がさらに言い返す。


「お前だって面倒だろう?
 まったく、アレだけ受ければ死ぬだろうに。」

『まったくだ……めんどくせぇ』

「悪魔はしぶといんですってば!
 その台詞は僕が言いたいです。
 最近、話を聞かない悪魔が多いですし。
 まったく……石動さんとは全然違うな…」


 原野は『二人』に厳重に注意するが、何処吹く風といった按配だ。 


「んあ?
 当然だろう?
 で、アレって厄介なのか?」

「そうですね……僕や香我美さんにとっては大したことはないんですけど。
 話し合いに応じないから人を襲うでしょうね。
 アレは普通のサマナーにとって荷が重いですし。
 助っ人を頼もうかなあ」

「あっそ……で、アレはなんて名前だっけ?」


 香我美はコンビニで買ったスパイスチキンをぼんやりとした顔で平らげる。
 その様子を見た原野はため息をついて追跡している悪魔の名を言った。


























 放課後、帰り道に後から声をかけられた。
 声は自分の聞き覚えのある者であった。


「大変大変!!」

「佐奈……どうしたの?」

「『また』倒れた子が出たのよ!
 これで8件目よ!!
 さくらも気をつけなさいよ」


 早乙女は、オカルト好きの佐奈から事件を聞いた。
 原因不明の昏倒が早乙女の学校の周りで相次いでいる。
 たとえ、目が覚めても自分が何者かわからず、幼児のような退行現象を起こし、一人では食事すらままならない状況だったらしい。
 佐奈が注意するように言ったのは悪魔絡みである可能性があるからだろう。

  
「ただでさえ悪魔が寄って来るんだから、この悪魔ホイホイ」

「なによ、その仇名」


 早乙女は笑っているが、前例があるだけに冗談では片付けられない。
 石動からも危険になったら逃げろと言われている。
 早乙女は現在、携帯性に優れたニャン2クローや錬気の剣を荷物に入れており、更に魔法が込められた石を複数所持している。
 そして携帯電話型のCOMPをある。
 慎重に行動すれば危険を避けられるだろうと早乙女は思っていた。
 その時、奥から叫び声が聞こえてきた。
 案の定、周りの景色が変わった。
 早乙女はげんなりし、佐奈は乾いた笑いを発した。


「なぜよぉ……」

「運命ね……はははは……」



 移動しようとしたら二人の前にチンパンジーに似た生き物が現れた。
 首に『47』と書かれたタグを身につけている。
 佐奈が声をあげようとする前に声をかける。



「そうだよ、俺だよ。
 オリバー君だよ!!」

「え!?
 私の考えた事を……」

「そうだよ!
 俺様はロシア人に改造されて新たなる力を得た!
 俺は、心を読むことができる
 これで人類を支配できる!」


 オリバー君(オリバーくん)。
 1976年に「チンパンジーと人間の中間にあたる未知の生物」「ヒューマンジー」という触れ込みで来日したチンパンジー。
 オリバーは、直立二足歩行をすること、頭髪が薄い外見を持っている。
 更に、人間の女性に発情し、ビールを飲み、煙草を吸うことなどで高い知能を持っていたようだ。
 特に染色体の数が人間が46、チンパンジーが48なのに対して、オリバーは47であることが未知の生物である根拠強調された。
 佐奈の考えた事を先回りして答える。


「そうだよ!
 異界化したのは俺の力だ!
 俺を殺さないとでられないよ~だ!」

「な……」

「なんでっかって?
 俺様の遺伝子を注ぎ込んで息子達を作り、王国をつくるのだ!
 お前達は雌豚のように腰を振るのが仕事のお妃さまってわけだ!」

「ふざけないで!」

「でもよ、お前のツレは俺のと・り・こ」


 佐奈は、虚ろな目でオリバーの横に近づく。
 オリバーは服を脱がせ、乳房を吸う。
 それを嬉しそうに微笑む佐奈。
 その異様な光景に動揺する早乙女。


「な……!!?
 佐奈を離しなさい!!」


 早乙女は、錬気の剣を取り出してオリバーに打ち込む。
 だが、その攻撃を見切り、避けた後にオリバーは臀部を叩く。
 俗にいう『お尻ペンペン』というポーズを行った。
 オリバーは勝ち誇るように言った。 


「言ったはずだぜぇ!!
 俺はサトリ……心を読む悪魔の力を得た!!
 この無敵の力で全てを支配してやる!
 心を読まれ続ければ心を食うことができるからな!」


 早乙女は恐怖した。
 敗北すれば畜生とのおぞましい行為を行う未来が待っている事。
 そして相手は心を読むという能力を持った強敵である事に。
 それでも早乙女は剣を振るう。
 嘲りながら避けるオリバー。



「無駄だ無駄!
 スピードで押して考える間もなく斬るつもりだろうけど。
 俺は悪魔なんだぜ!!」

「く……!!
 まだまだぁ!」

「ふははは!
 人間にしては強い魂持っているな!!
 このままじゃ吸収できないな。
 でも、俺の『正宗』で貫いたら天国逝きってか!!」


 オリバーの打撃を何とかガードするが、吹き飛ばされる早乙女。
 早乙女が持っていた荷物の一部が零れ落ちる。
 早乙女はそれでも諦めず、携帯を開く。


「来て、ベナンガル!」

「あいよぉ!」


 蜂の妖精・ベナンガルが現れた。
 オリバーはニヤリと哂った。


「サマナーだったのか?
 でも俺様は無敵無敵ぃ!!」

「二人係ならどうだ!!」

「セイッ!!」


 ベナンガルが魔法を飛ばし、早乙女が切りかかる。
 それでも易々と避け、早乙女の鳩尾に拳を打ち込む。
 早乙女の意識が朦朧となった。


「お嬢!!」

「(……私は探偵になるって夢がある……
  それがこんなところで終わるっていうの……)」

「中々良い女だ。
 可愛がって……」  



 早乙女は、実家が古武術の道場を行っている。
 彼女は、それを学び、いずれは継ぐのだろうか?と考えながら生きていた。
 だが、ある事件で将来を見据えることになった。
 ある日、早乙女の飼っていた犬がいなくなった。
 必死に探すが見つからなかった。
 早乙女は必死に探して夜になった。
 そんな時、一人の中年が後から早乙女を羽交い絞めにした。
 恐怖のあまり、何も出来なかったその時、中年を投げ飛ばした男がいた。
 中年を撃退し、早乙女の話を聞くと、早乙女を自宅に帰した。
 その翌日、男が早乙女の犬を連れてきた。
 その男は自分は探偵だから見つけられたといった。
 早乙女はその後、男と会うことはなかったが、探偵という職業に憧れを抱いたのだった。
 早乙女は今までのことが脳裏に浮かぶ。


「うおおおおお!!」

「うぎゃ!!」


 早乙女の無心になって振りぬいた一撃がオリバーの肩を掠めた。
 慌てて避けたためにバランスを崩すオリバー。
 ……その時、珍獣は足元に早乙女が落とした魔法石を踏み砕いた。
 魔法が発動し、稲妻を受けるオリバーだった。


「ウギャアア!!」

「お嬢……当ったぜ!!」


 オリバーは間違いなく大ダメージを受けた。
 心を読むサトリの力を持つ敵に、なす術がなかった早乙女。
 しかし、彼女の意地、そして夢に向かって努力する意志がこの一撃を呼び込むことが出来たといっていいだろう。
 早乙女は言い放つ。


「どうよ……ダメージを与えたわ!
 私達を解放するんでしょ?」

「う……うるさい!
 そんな約束は知るかぁ!
 犯してそんな事をわすれ……」


 そういってオリバーは、早乙女に一撃与えようとした。
 だが、空間がガラスが割れるようにひび割れた。
 さらに無数の茨がオリバーを撃ち抜く。


「うぎゃああああ!!!」

『お待たせェ!』

「すまん、中に入るのに手間取った。
 だが、よく持ちこたえた」

「せ、先生!!」

「お武家さん!」


 
 オリバーの身体には投げナイフが刺さっていた。
 ただ刺さるだけでなく、茨に絡まれたような傷跡が全身に刻まれている。
 三白眼の黒スーツの男……石動と、その守護霊のクー・フーリンがやってきた。
 オリバーを冷ややかに睨む石動。
 だが、オリバーは未だ勝ち誇っている。


「無駄だよ!
 俺の能力は最強……」


 オリバーは顔色が変わる。
 想定外といった表情はやがて恐怖に変わる。
 クー・フーリンは自分の顔が影や腕で隠れるようなポーズをしながら言い放つ。


『貴様……見ているな!?(ドドドドド)』

「ひいいいい!!!
 こ、心が読めないだと!?」

「真っ当なサマナーなら基礎の基礎だ。
 井の中の蛙、大海を知らず……とはこのことだな」


 悪魔には人間に出来ない特殊能力を持っている。
 読心術もその一つで、サマナーは探索でしばしば使う。
 逆に言えば、使われることも想定しているわけである。
 サマナー……いや、術者ならば当然心を閉ざす事が出来る。
 サマナーの力を失った者ですらできる事から魔法や超能力ではなく、純粋な技術だと推察される。
 だが……近年のサマナーの増加のせいか質が低下し、読心術対策がなっていない者が多い。
 石動は、オリバーの右腕を斬り飛ばした。


「ぎゃああああ!!
 わ、悪かった!
 ゆ、許してくれ!!」

「……」


 オリバーは腹を見せて降伏の意思を示した。
 だが、二人は冷ややかな視線を送る。


『恐怖を示した動物は降伏のしるしとして自分の腹をみせるそうだが……。
 許してくれってことか?
 しかし、てめーは既に動物としてのルールの領域を踏み外した……だめだね』

「ひいいい!!!」


 オリバーは慌てて後ろに下がり、佐奈を人質にしようとする。
 石動は、ある気配を察知し、あえて動かなかった。


「やっと見つけた。
 ……さっさとやってしまおう、ベルフェゴール」

『ああ……面倒だからな、一発ですませてやる』

「真空波」

「ギャアア!!」


 遠くから声が聞こえ、衝撃波が吹き荒れ、オリバーが吹き飛ばされる。
 吹き飛ばされた先で、にこやかに微笑む青年がいた。


「約束を破りましたね?
 そんな屑は消してしまいたいのは山々ですが……生け捕りを依頼されましたので。
 石ころにするだけにしておくよ」


 青年……原野がカードを取り出した。
 原野が呪いを行ってオリバーを石化させ、青銅で出来た箱の中に封じた。
 その後に巨大草食獣のようなゆったりとした歩みで香我美『達』が現れた。
 香我美の横には紫色の身体に、牛の尾、ねじれた二本の角リッパな角と顎鬚をもった悪魔が現れた。
 怠惰そうに車輪付きの洋式便器に座っており、強力な悪魔であることが推察される。
 石動は原野に話しかけた。


「依頼か?
 俺は異界が発生した事を察知し、早乙女のCOMPの反応が消えたから来たのだが」

「ええっとですね、ロシアンマフィアの研究実験体が様々なデータをかき集めて逃げ出して……。
 僕達は交渉して譲り受け、保護しようと思ったんですがね。
 情報引き出してから処刑で終わりでしょうがね」

「そうか……奴は?」

「彼は『香我美 丈』。
 ものぐさですが、魔法の力に長けています。
 そして……貴方と同じ守護霊使いです」

「ほう……」

『で、アイツが守護霊のベルフェゴールか』



 石動が原野の言葉に反応し、クー・フーリンが守護霊の正体を言い当てる。
 ベルフェゴールとは七つの大罪に比肩する悪魔の一柱であり、「怠惰」「好色」を司る悪魔とされる。
 ベルフェゴールはまた人間界の結婚生活などを覗き見る悪魔とされ、女性の心に性的で不道徳な心を芽生えさせる力を持つ。
 そのため、女性に対して非常な不信感を持っていたとされる。
 香我美の波長があったのか、彼を下ろした影響なのか、香我美も怠惰そうに見ている。

 
「ん……終わった?」

「ええ、お疲れ様でした」 

「……じゃ、かえる。
 おやすみ」

『ネトゲするか』


 原野の返事を待たず去っていく香我美。
 それを見て無言で肩を竦める石動。
 原野が申し訳ないように話しかける。


「すいません、無作法な奴で」

「警察か?」

「ええ……サイバー犯罪担当なんです。
 あれでも腕利きのプログラマーであり、何処から習ったのかトラップの達人なんです。
 ものぐさで体力無しなのが欠点ですけど。
 今回は零課の助っ人らしいですが」

「そうか……中々面白いやつだな」

『それより……『さくらちゃんの様子を見なきゃ』」

「……声色を変えるな、気持ち悪い」

「しかも声優そっくりだし」


 原野と石動はため息を付きながら早乙女達の元へ向かう。
 早乙女は安心したのか、意識を手放した。
 ベナンガルは慌てて支えた。


「よくやったぜ、お嬢。
 ……俺も強くなりたいな、畜生め」

「お前はよくやったほうだ。
 それに、アイツもよくやった」


 石動は、本心から称賛した。
 その後、すぐに蜂の妖精と探偵見習いを運ぶ事にした。
 石動は、フリーダーにはサイコダイバーに連絡するように命じた。
 異界化したときの巻き込まれた人達のケアを行うためだ。
 その後、最初に悲鳴をあげた女性は、その日のうちに懐妊、出産した。
 その時に生まれた子供は………人でも悪魔でもない、不気味で胡乱な存在だったという。
 










 あとがき。

 早乙女受難編。
 また炉思案魔腑威唖の仕業なのか~というわけで強化型オリバー君です。
 サトリの能力もって調子に乗っています(ストレングスのスタンド使いっぽいぞ)。
 で、新キャラ登場です……グウタラっぽいですね。
 早乙女は呪われているかの如く巻き込まれています……何処の主人公かよ!って位に。
 早乙女の活躍にご期待ください。







[7357] 第2期 第4話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/15 14:43

 警視庁・電脳犯罪対策課。
 ここではコンピューター犯罪を中心に扱う課である。
 また、押収されたPCのデータの洗い出し・復元なども行う。
 この課長室に呼ばれる恰幅の良い男……香我美が面倒臭げに現れた。


「たりぃ」

『ネトゲしてぇ』

「うぐぐぐ……」


 老年に差し掛かった課長が怒りの声をあげる。
 精神構造は一般人のようで、奇人である香我美を持て余しているようだ。
 その隣に公安零課の風間がいた。
 風間が口を開く。


「香我美、またお前に頼む事がある」

『おいおい、もうすぐクラスチェンジするんだ!
 そんな仕事は後にしろ!』

「電脳犯罪が本分なんですけどねぇ」

「悪魔絡みでもあり、お前の領分でもある。
 だからお前に白羽の矢を立てた」


 仏頂面の風間がそう言い放つ。
 香我美の守護霊ベルフェゴールは嫌々な顔をする。
 香我美も面倒そうな顔をしつつも一応仕事を引き受ける体勢になったようだ。


「それで……。
 どんな仕事なんですか?」

「ある男性へのストーカー行為が酷くてな。
 無数の電子メールが届き、知らない人間からの電話がかかる。
 更に、彼に近づく女性編集者に不審な事故が起こった。
 追い討ちにその女性のパソコンにコンピューターウィルス散布、データ改ざん等行われた。
 さらに犯人の贈り物には呪(まじな)いがされていた。」

『まったく、女なんてろくでもないな』

「同感だ……結婚なんてしたくないな。
 いがみ合いながら操縦の効かない子供を育てるなんてゾッとする。
 結婚が素晴らしいなんて幻想だな」


 ベルフェゴールは、今まで様々な人間の結婚生活を観察した。
 その結果、幸福な結婚など無いと言う結論を出した。
 それゆえ女性不信であり、香我美も似た考えを持っているようだ……。
 香我美は、家族という有り方、夫婦という有り方に疑問・不信を持っているといって良いかもしれない。
 閑話休題。
 風間は、犯人のターゲットになる男の名前を言った。


「狙われているのは黒瓜勉だ」

『ほう!
 オカルトアクション『デビルバスター』シリーズの原作者か!!』

「ヒロインの桐島英理子とその手下役の上杉英彦がはまり役だった……」

「ともかく、頼んだぞ。
 護衛を用意してある」

「へえ……わざわざ。
 こんな小さな事件に出張るデビルサマナーがいるなんてねえ。
 嫌な奴じゃなければいいや」

 










「いやいや、ありがとうございます。
 ヒヒヒ、僕が黒瓜です」

「警視庁の香我美です」

「石動です」

「……」

「……」 

 香我美の護衛役は石動であった。
 後には早乙女、そしてフリーダーが無言で控えていた。
 香我美の能力は強力である……だが、魔法はともかく、肉弾戦は絶望的である。
 石動の弟子の早乙女の経験を積ませるに手頃な事件として協力の依頼を受けたのだった。
 黒瓜は一言でいうならば幽鬼のような顔つきだ。
 眼鏡をかけ、魔法陣が書かれたバンダナを身につけ、黒いスーツに着こなす。
 腕には数珠が巻かれ、周りの部屋には魔術書や、オカルトグッズが所狭しと並べられている。
 香我美は仕事だから一応普通に事情を聞く。


「ヒヒヒ。
 最近、呪いの波動がビンビン来ていてね。
 心当たりは無いことも無いけど」

「それは?」

「僕は元々オカルト好きだった訳だけど、こういう道に進むとは考えていなかったんだけどね、ヒヒヒ。
 叔父の上司が小説を書くのが趣味でね。
 それを読んでいるうちに、自分も気分転換に書いたのが始まりなんだね。
 オカルトものの小説が当って、自分でも吃驚だよ。
 それに同じ学校の人が出演して、世間は狭いな~って思ったよ。
 ああ……話がそれたね、ヒヒヒ。
 僕の小説の主人公の友人が決別して魔王パズスと行動を共にして、最後はバエルに挑んで死んでしまったわけなんだ。
 でも、一部のファンが気に入らなくてね。
 ネットでも猛抗議しているんだよ。
 でもね、それを聞き入れてストーリーを曲げるのは納得がいかないんだね。
 その証拠にホラ」


 脅迫状らしきものに主人公の友人を復活させるか、話を変えろといった事が書かれている。 
 早乙女は、文面を読んであきれ果てた。
 私の■■きゅんを返して!
 あーん■■さま死んじゃった!
 等の読むだけで知能指数が下がりそうな文面だと石動が思うほどだ。
 ベルフェゴールとラームジェルグは、黒瓜から見えない事を良いことに携帯ゲーム機の人気ソフトの『デビルサバイバル』の通信機能で仲魔の交換を行っている。
 そうと知らない黒瓜は話を進める。


「それを逆恨みしたんだろうね。
 とにかく、頼むよ」

「ええ、悪質な電子犯罪が私の領分ですからね」


 そう言って、香我美は黒瓜のパソコンに自分のPCを繋いで逆探知の準備を始めた。



















 おまけ


「私は地精・カハク。
 ヨロシクね!!」

「うん!」

「お嬢、やったな!」


 早乙女の仲魔への勧誘の成功を自分のことのように喜ぶベナンガル。
 カハクは、ベナンガルに向かって言い放つ。


「ちょっと、寒そうな身体を近づけないで!
 さくら、コイツとはぜぅぅえええったいに合体させないで!」

「はん!
 こちらこそお断りだ!」


 悪魔合体するとどうなるのか?
 様々なケースがある。
 互いの記憶を混ざり合う場合、全く記憶が持っていない場合等様々である。
 まあ、生理的に嫌いな悪魔と合体は断りたいと言う悪魔が多いが、大抵のサマナーは能率優先をする事が多いが。
 自身の力を限界を感じ始めるベナンガルは合体を選ぶのか、それとも……。
 







 おまけ2


 九鬼と金鬼が未熟なルーキーの御守りをしていたときの話だ。
 伊賀の里からの依頼で、断れないものであったが、筋がいい女性サマナーであった。


「よくがんばりましたね」

「ありがとうございます。
 私は夢があります……その実現の為にがんばるだけです!」

「ほう、それはどんな夢なんだ?」


 金鬼が聞くと女性サマナーは握りこぶしを作って言った。


「クー・フーリン様を仲魔にすることです!」

「(ぶは!)」

「なるほど、優秀な悪魔ですからね」

「それだけではありません!
 高貴で洗練された立ち振る舞い。
 ナイトのような美しい闘いぶり。
 女性を大事にする紳士で……それは素晴らしい悪魔です!!」

「………」


 金鬼は転がっている。
 彼が知る『クー・フーリン』の普段の生活を思い出す。




 『よっしゃー!
  レアアイテムゲットー!
  次行くぞ、ベルやん!!』

 『タマとったらぁー!』

 『よし、次はこのエロゲーを……』

 『なあなあセッキー、トムヤンクン食べたい』


 金鬼は、あまりにかけ離れた現実に腹筋が引きつり、笑い死にする寸前であった。


「あ~ん、クーフーリン様に会いたい~」





[7357] 第2期 第5話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/27 04:20
『めんどくせえな~。
 だが、ネットで覗き見できるのがいいよなあ』

『ああ、こんな素晴らしい物を作った人間は素晴らしい。
 それを叩き壊そうとする、神や悪魔は死ねば良い』

『まったくだ』


 凄まじき力を持つ悪魔だが、すっかり文明に毒されている。
 そんな話し合いをしている横で、香我美が追跡を行っている。
 無数のウィンドウにHPが幾つも出てくる。


「ファンサイトに、勝手に作った公式風HP、作者のプライベート……酷いもんだ」

「僕も驚いたよ、ヒヒヒ」

「おい、香我美……」


 石動が指差したのはチャットのログ。
 黒瓜の名を語って色々語っている。
 さらに、その聞いている連中のハンドルネームが振るっている。
 『ラグエル』『ミカエル』『サタン』『ルシファー』など、天使・悪魔の名前を名乗っている。
 それだけならまだいい。
 さらに、自分達は前世では地球を守る光の戦士で、黒瓜はサンダルフォンだそうだ……冗談ではなく、本気の文面で。
 早乙女は頭を抱えるが、フリーダーはその様子がいまいち理解できていない。
 香我美はそのデータを集め、警視庁に送信。
 自身もそのデータのバックアップを取る。


「これでよし……」

「だが、文面からすると黒瓜先生を『覚醒』させるとか書いてあるな」

「直接襲うかもしれないね」


 香我美と石動はそう結論した。
 その時、玄関のチャイムが鳴り響く。
 石動達は気配が複数あることを察知していた。 
 その時、石動と香我美だけは気配が違和感を感じた。


「なんだ……こりゃ?」

「心当たりは一つある。
 ペルソナ使いだ」


 以前、『イナバシロウサギ』というペルソナの使い手と戦ったことのあった石動だから気がついたことであった。
 香我美もペルソナ使いという言葉に反応した。


「聞いた事があるけど……『俺達』とどう違う?」

「俺達は悪魔や神々を下ろして力を行使する。
 だが、ペルソナ使いは人間の心の奥底にある力を悪魔の形として発現しているわけだ。
 だから似て非なる能力だな」

「そ、そんなのがあるなんて……」


 早乙女が未知の能力者の存在を聞き、緊張している。
 早乙女が戦ったのは悪魔だけである。
 彼女は、対人戦闘が初めてであるため、此処まで動揺するのは仕方が無いことである。
 オカルトに詳しい黒瓜はすぐに順応しているようだ。


「悪魔は招いた事はあるけどね。
 ……そういう力があるのは初めて聞いたね。
 ヒヒヒ、なら『あの時』の事が説明が付くかな。
 それより、どうするの?」

「石動ぃ、任せた」


 香我美は面倒だったので、石動に丸投げした。
 それを嫌な顔せずに答える石動。


「多少乱雑に扱ってもかまわんということだ。
 襲ってくるなら返り討ちだ」

『罠しかけたり、家臣を呼べないのが残念だ』

『モンスター設置もだ……だりぃ敵を任せられないのがな』

「うわ!
 ヒヒヒ……その姿、ベルフェゴール!!
 すごい、本物だ!」


 戦闘態勢になり、黒瓜に見える状態になった。
 驚くが、ベルフェゴールを見て興奮し、今の状況を忘れるほどだった。
 早乙女と石動が悪魔召還を行う。


「来い、ノッカー」

「ベナンガル、カハク……お願い!」


 小柄なノッカー、真っ赤で小さい身体と羽の持ち主のカハク、蜂の妖精ベナンガルが現れる。


「ほえほえ」

「なになにぃ?
 お仕事かな」

「お嬢、敵だな!!」


 皆張り切っている。
 石動はノッカーに有る事を命じ、ノッカーに単独行動をさせる。
 カハクとベナンガルは早乙女のサポートおよび黒瓜の警護を担当する。
 石動・フリーダーが前衛、香我美が後衛、早乙女は相手次第ということになった。
 石動がドアまで近づく。
 無論、迂闊に覗き穴から覗き込む真似はしない。
 案の定、覗き穴からアイスピックが貫かれた。
 それを見た石動は、黒瓜に前もって言った。


「悪い、壊すぞ」

「ぎゃああ!!」

「ぐええ!」


 ドアの外からペルソナの発動を感じた石動はアセイミーナイフを斧に変形させて叩き込む。
 ドアは吹き飛び、ドアの前にいるであろう人間を下敷きにする。
 他にも襲撃犯はおり、皆十代後半の女性だろう。
 その衣装は皆ゴシックロリータと呼ばれるファッションで統一されている。
 だが、極端に細長い女性や、太った女性でお世辞にも美人……いや、はっきり言って標準に満たない美しさというべきか。
 皆、スタンガンや火災用の斧、かなてこを装備していた。


「よくもラグエルを……!!」

「先生、待っていてね。
 今、貴方を惑わす悪魔を倒しますから!」

「『儀式』に取り掛かるわよ。
 先生に『前世』を思い出してもらうわよ」

「……時々共感するんだよね。
 民族浄化をする馬鹿どもに」

「気持ちは解るが、公務員が吐く台詞じゃないな」


 香我美がげんなりし、石動がなだめる。
 その様子を見た『光の戦士』たちは、不意打ち気味にスタンガンを石動に押し付けようとする。


「うざい」

「うん、うざ……」

『暴力はいかんよ』


 ラームジェルグがからかう様に喋っていた。
 すでに石動による神速の斬りこみでスタンガンを両断していた。
 同時に、石動は気配を追っている。
 ペルソナ使いが誰なのかを……。
 一見複数いるような気配がするが、普通のペルソナと違うものを感じていた。
 石動は、一番後ろに居たリーダー格っぽい鏡餅のような体型の女性を本物のペルソナ使いだと判断した。
 その時、ドアの下敷きになっていた女性に異変が生じた。


「来て、業(カルマ)!」

「なんだ?」

『むう、あれは…』

『知っているのか、ベルフェゴール!!?』

『あれは、噂に聞く脳内彼氏!!』


 下敷きになった一人から出てくる銀髪、金銀のオッドアイで、細身の左右対称の美少年が現れた。
 ペルソナに似ているが、実体をもっているようだ。
 ガーディアン二人が好き勝手言っているが、あながち間違いではないかもしれない。
 その証拠に呼び出した少女が言った。


「私の婚約者の『闇薙 業』(やみなぎ かるま)。
 聖金獅子騎士団団長の十五才!」

『僕の大切な姫をよくも傷つけてくれたな!?
 それに、無責任に少女を巻き込み、自分の戦力にしながら恩を着せるその偽善に満ちた悪の化身を断罪する!』

「……俺の事を言っているのか?」


 普段、鉄面皮である石動が大いに困惑の表情に変わった。
 確かに、早乙女をサマナーや悪魔の『いろは』を教えているわけだから、闇薙某の言葉は、事実を言っている部分があった。
 ラームジェルグは、生暖かい視線を『光の戦士達』に向けてながら石動に説明した。


『あー……目つき悪い上に俺がいるとどう見ても悪の枢軸です、ありがとうございましたって奴だな』

「なぜ、礼を言う?」


 一方的に業から宣戦布告を受ける石動。
 だが、一向に動じる気配がない。
 ますますヒートアップする業。
 そして勝手にヒロイックな妄想に浸る召還主。


「受けろ、必殺セイクリッド……」


 言っている間に妙法村正で両断する石動。
 何処かの騎士団長は、断末魔をあげることなく消滅する。
 それを見た他の光の戦士達も同様に何者かを実体化させる。


「審判者……」

「メギド」

「聖騎士……」

「ええい!!!」

「光の戦士達の守護者」

「絶対零度」

「断罪者」
「白銀の堕天使」
「地獄の」

「ベノンザッパー」


 石動達は問答無用で排除している。
 大仰な名前の割には弱いものだと石動は思いながら刀を振るう。
 サマナー見習い(?)の早乙女ですら易々と切り伏せている所から見てもたいしたことが無い。
 ペルソナに似た性質があるのならば、生み出した存在は本人の精神力で実力が変わるだろう。
 つまり、脆弱な精神の持ち主の力はまさしく蟷螂の斧。
 逃げる『光の天使達』をノッカーが上空からネットを降らせて身動きを封じる。
 ベナンガルとカハクがそれに追い討ちをかける。


「ほえほえ、たこ焼きが食べたいのう」

「みてみて、さくらぁ!
 すごいでしょ?」

「ま、こんなもんだよな」


 三体の悪魔が仕事をこなし、逃げないように縛り上げる。
 それで残ったのはリーダー格の一人だ。
 石動が刀を構えながら言葉を漏らす。


「残りはお前だけだ」

「多分、サタンとか名乗った奴じゃない?
 文面からして仕切っていた奴」


 香我美は面倒そうにビーフジャーキーを戦闘中にも関わらず噛り付きながらしゃべっている。
 リーダー格……便宜上『サタン』と呼ぶ。
 サタンは仲間が倒されても余裕を見せる。


「ふふふ……この私……サタンには真の力がある!
 この力で皆を覚醒させた!
 先生も『儀式』で覚醒させる……!!」

「せ、先生……こういう人はどうすればいいのでしょうか?」

「殺したほうがいいかもしれんがそうは言ってられないな」

「うむぐっ。
 美味い……。
 つまりだ……ほとんど似た気配を感じたのはサタンの力を分け与えたからということかな、多分」


 困惑する早乙女に本音をうっかりこぼしながらも逮捕する方針である石動。
 香我美は、食べながら状況の分析を進めている。
 サタンが高々に叫ぶ。


「メアリー・スー!!」

「あれがペルソナ?」

「そうだ……だが、普通のペルソナとは違う、おぞましさがあるな」

「アレは酷いな……不健全な気配がするな」


 香我美も自分の事を棚に上げて言う。
 『人型のした何か』がサタンの背後に立っている。
 金色の霧がペルソナ『メアリー・スー』の姿をおぼろげにしている。  


「きええ!!」

「あ……」


 早乙女の下半身が石化し、身動きが取れなくなった。
 サタンが勝ち誇った笑いをする。


「これが私の力!
 神様からもらった自分の力よ!」

「矛盾しているな、頭に蛆でも湧いたのか?」


 香我美が醜悪な『サタン』を見て嫌悪感がでている。
 サタンはさらに続ける。


「先生、わかっています。
 あんな展開にしたのは敵が傍に居たから覚醒できなかったんだよね。
 でも大丈夫、私達が覚醒させて、敵を何とかするから。
 大丈夫、『サンダルフォン』。
 これからは作品のすべてを私達の言う通りに書けば良いんだ。
 そうだ、私達の事を書けば良いんだ!」

「うぜぇ……殺すか」

『ああん?
 面倒だ……それに見ろ』


 身勝手な子供の発言で殺意を抱く香我美。
 だが、ベルフェゴールがそれを止めた。
 黒瓜がその発言を返すからだ。


「ヒヒヒ……熱心に僕の作品に入れ込んでくれるのは嬉しいよ。
 でもね……これは僕の作品、いわば領地・聖域なんだよね。
 作品を書いてお金を貰っているわけで……。
 何が言いたいかって?
 自分の納得する作品を書いているってことだよ。
 あの展開で友人が死ななかったら作品が死んでいってしまうように感じたんだ。
 人気の為に筋を変えさせられる場合もあるだろうけどね……この作品は新しい僕の夢なんだよね。
 だから妥協すべきで無い部分は絶対に受け付けない。
 それでファンが減るのは仕方が無い……でも、自分のすべき仕事をすればきっと支持される。
 そう信じて日夜オカルトの研究をしているんだね。
 研究は、趣味と実益を兼ねているわけだけどね、ヒヒヒ」


 黒瓜の見た目から想像できないような断固とした意思を示した。
 だが、それを認めないサタンは力づくで変えさせようとする。


「もういいわ!
 洗脳されているのね!?
 私が助け出して……」

「いい加減にしろ。
 お前と黒瓜氏の住む世界は違うようだ」

「だぁまぁれぇ!!」


 
 ペルソナ『メアリー・スー』を発動させ、石動の胸に矢が刺さる。
 サタンは息を荒げながら言い放つ。


「はぁはぁ……私に逆らう人間を浄化してやったわ!」

「なるほど、やはりそういうことか」

『ダチャーナザン!?』


 心臓に刺さったにも関わらず、平気な顔をする石動。
 いつの間にか憑依が解除されていたラームジェルグが突っ込む。
 石動は妖刀ではなく、棒で強かにサタンを打ち据えて取り押さえる。


「神妙に……な?」

「げほ……」


 サタンは何が起こったか解っていないようだ。
 神速の打ち込みでペルソナを粉砕し、更に死なない程度に手加減した一撃をサタンに見舞ったのだ。
 早乙女は、内心で『流石……!!』と、剣術家として高みにある石動を賞賛した。
 サタンに悔し紛れにののしる。


「おまえは聖なる力を撥ね退けた……悪魔め!」

「俺は人間だ。
 それより、これは幻術だな……強烈な」

「幻術?」

 
 早乙女がそう認識した時、石化が解除されていた。
 石動の後には役小角の分霊が立っていた。
 更に、石動が続ける。


「そのペルソナ『メアリー・スー』は、物理的に干渉する能力が低いようだ。
 だが、強烈な幻術を操る能力があるようだ…おそらく、幻術で身体を維持しているのだろうな。
 確かに強力だが、一度偽者とわかれば御終いだな」


 その騙す力で『光の戦士達』の本来持っているペルソナを変質させ、歪んだ理想像を作り出していたのだろう。
 サタンは信じられない様子で疑問を口にする。


「な、なぜ…死ななかった?」

『(巧は、死んだ事あるから死ぬという事を知っているからな。
  そこから幻術の綻びを見つけたんだろうな。
  ピザデブは、死んだことがないだろうからな。
  と、いうより普通、死の感覚なんぞ解る訳無いぞ)』
 
『それにしてもおもしろいな。
 まるでアラディアだな、そのペルソナ』

「ん?
 なぁにそぉれぇ?」


 香我美が欠伸しながら聞いてくる。
 ベルフェゴールがその質問に答える。


「アラディアって奴はな、魔女を救う神だ。
 魔女たちを抑圧者から救うため、原初の神ディアナがアラディアを地上に遣わした。
 アラディアは被抑圧者たちに魔術によって対抗する事を教えた。
 だがな、アラディアは自由の神ではあるがな、夢想にて創り出された存在でな奴自身は直接的に救う力なんざ無いのさ。
 アラディアはただ魔女どもに希望を与えるだけの虚構の神でしかない。
 あのペルソナも幻想によって作られた存在って意味では似ているな……空気がどことなく奴と似ているな」


 ベルフェゴールの説明を聞き、考え込む香我美。
 石動はサタンを押さえつけて尋問を開始した。
 

「さて、答えろ。
 どうやってこの力を得た?」

『それは私が答えてやる』

「!?」


 サタンの身体から黒い気が噴出し、人の形を取った。
 長身で、鬼気迫る野性味溢れる青年が着流しで現れた。
 他の人間は見たことが無いが、石動とラームジェルグだけがその姿を知っている。


「誰かは知らんが得体がしれない化け物を吊り上げたな」

『てめえ……何者だ!
 なぜ、その姿をしている!!?』

『始めましてといっておこうかな?
 私はニャルラトホテプ……もっとも姿がないから君の馴染みの深い姿を借りたがね』

「……」


 石動達の警戒は更に跳ね上がる。
 青年の姿は、石動の前世の時の姿と瓜二つだからだ。
 ニャルラトホテプ。
 クトゥルフ神話においては旧支配者の一柱であり、アザトースを筆頭とする旧支配者に使役される外なる神のメッセンジャーでありながら、旧支配者の最強のものと同等の力を有する土の精であり、人間はもとより他の旧支配者達をも冷笑し続けている。
 無貌なるがゆえ、さまざまな姿をとるトリックスター的な存在である。
 狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍し彼が与える様々な魔術や秘法、機械などを受け取った人間は大概自滅することになる。



「……本物かどうかは知らんが……少なくと名前負けはしていないようだな」

『お褒めに預かり恐悦至極。
 でも、今まで失敗ばかりしていたからね。
 それでも諦めていないという決意表明といったところかね。
 よかったら、君をゲームの相手に……』


 その言葉を彼が最後まで言う事はなかった。
 石動が夢想正宗によってニャルラトホテプを両断していた。
 ラームジェルグは、クー・フーリンに変化をしていた。
 両断されながらニャルラトホテプは、驚いたように話しかける。


『驚いたよ。
 私を切ったらそこの早乙女さくらにダメージが行くようにしたつもりだったが……』

「……お前の妖術を破る事など不可能ではないということだ」

『怖い怖い……今回は引くとしよう。
 それに、色んな世界を覗けばもっと遊びやすい相手が見つかるだろうしね』


 捨て台詞を吐いた後、斬られたニャルラトホテプは消滅した。
 ベルフェゴールが面倒臭げにいった。


『面倒なことになったな』

「だりぃな…報告書面倒だから黙っていていい?」

「そうは言っておれまい。
 俺が手伝ってやる。
 面倒事になるかもしれないからな」


 そういって石動は肩を竦めながら壊れたドアは経費に入るだろうか?と考えていた。







 あとがき

 オリジナルペルソナだしました。
 でも金子デザインでいつか出そうなメアリー・スー。
 ニャルさまお手製のペルソナです。
 オリジナル悪魔でだしそうじゃない……まあまずでないだろうけど。
 ニャル様参上……石動の敵になるかは未定。
 まあ、盛大な失敗をしたので現世への干渉力は半減しているでしょうね。
 ペルソナ2の彼は出せそうですねえ……予想がつく人がいるでしょうが。
 では次回もお楽しみに。 
 急いで投稿したので訂正は後日。







 NG集というおまけ


『サタンだ……と!!』

 石動の脳裏に聞き覚えのある声が聞こえた。
 幾度も石動に警告を促したザインの声であった。
 石動になにか巨大な存在が入ったような気がした。


『イレイズするべき……』

「(ちょっと待て!)」

『ふふふ……ルシファーを名乗っておいてその醜態を見せるとはね。
 これは私を激怒させる『きっかけ』なんだろうね』

「(あ、アンタは誰だぁ!?)」


 更に何か巨大な存在が入った。
 脳裏に金髪の背広を着た恐ろしいまでのカリスマを発する美青年のビジョンが浮かぶ。


『久しぶりだな、ルイ・サイファー』

『久しぶりだね、ザイン。
 君とは袂を別れたが、今回だけはともに戦わないか?』

『いいだろう。
 今回だけは共通の敵が出来たからな』

『そうだね、今日は私と君でハルマゲドンだね』

「(おい、勝手に人の身体を……)」

『オワタ』

『光の戦士オワタ』


 石動の声は無視され、巨大な力が流れ込む。
 ラームジェルグとベルフェゴールは光の戦士達の冥福を祈った。




[7357] 第2期 第6話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/01 04:05


 ニュクスの店。
 原野、香我美、石動の三人という組み合わせで集まって飲んでいる。
 ラームジェルグとベルフェゴールは店員のシルキーに酌をさせて飲んでいる。
 香我美は酒の肴のカレーサンドを頬張る。
 カレーサンドは、手作りの食パンと手作りのチキンカレーで作られている。
 カレールーがこぼれないよう、焼き固められるように焼いたパンはカリカリの食感が病み付きにさせる。
 更に、中の熱いカレーが食欲をそそらせる。
 原野はチーズを啄ばみ、石動はウィスキーをロックで飲む。
 しばらくしてから本題に入った。
 原野は小口径の弾丸が入ったカートリッジを一本テーブルに置く。
 香我美はディスクを一枚渡した。


「……例のヤツが出来ましたよ。
 後は石動さんが仕上げるだけです」

「……情報はそろった。
 嵯峨に渡しておいてやれ。
 それと言っておけ、『面倒な事をやらせるな、弱小チームファンめ』と」

「ああ……」


 石動は鞄に渡された物をしまう。
 それから再び、飲みなおす。
 話題は仕事の事が多い。


「魔人『時の翁』の情報はどうだ?」

「ん……ない、全然無い。
 手間かけたのによぉ」


 石動の問いに答える香我美は拗ねたような口調ではなす。
 徒労に終わった事が嫌なようだ。
 石動は、今度は原野に聞いてみた。


「そういえば九鬼の旦那は?」

「四鬼の一角を仲魔にするために出ていますね。
 僕が取り寄せた水鬼か隠形鬼の情報を参考にしているでしょうね。
 そういえばジェシカさんの方は知っていますか?
 綺麗な人だからお近づきになりたいけどなあ」

「なんでも強い仲魔を探しにヨーロッパに足を伸ばしたそうだ」

「そっかあ。
 あの人の仲間は女性がほとんどだからまた華やかになるんだろうなあ」

 
 原野は鼻の下を伸ばす。
 ニュクスは『目の前の美人にそんな話題するもんかねえ……』と小声で語っていたのは男衆の耳に届く事はなかった。
 










 
 早乙女が事務所で宿題をやっていると一組の男女が現れた。
 30代半ば位で、黄色いスーツにロングヘアーにサングラスをした男と緑色の蜘蛛の巣をイメージしたデザインをした服に赤い髪をした女性だ。
 男は斜に構え、自虐的な影を纏わせており、女性のほうはエネルギッシュな印象を与えている。
 早乙女が話しかける前に男が話しかける。


「バイトか?
 それより、石動はいるか?」

「先生は出かけていますけど……依頼でしょうか?」

「いや……奴に呼び出されてな。
 まったく……」


 早乙女は、彼らの背後に人影が見えた。
 男のほうは、鎧のようなローブを纏ったような人影を見た。
 早乙女は先日のことを思い出して言った。


「あの、先生とは……」

「以前、2,3回ばかり組んだことがあるが……」

「もしかしてペルソナ使いですか?」

「……まあな」


 肯定する男だったが、どこか、自身のペルソナに対して嫌悪感を示しているようだ。
 その時、隣の女性が声をかける。


「まったく暗すぎるわよ、パオ。
 ゴメンね、こんな無愛想な奴で。
 私は芹沢うらら、こっちはパオフゥ。
 私もペルソナ使いって奴だよ」

「私は、早乙女さくらです。
 探偵見習いです」

「うーん、たまきちゃんといい……探偵って女の子で流行っているのかしら?」

「流行りが解らなくなったのは歳喰った証拠だ」

「なによ!」

 
 パオフゥの腹にショートジャブを打ち込む芹沢。
 早乙女は、そのやり取りに驚いたが、それがいつものやり取りなのだろうと判断した。
 どんな関係なんだろうか?と早乙女が思っていると、芹沢が表情を読んで先に答えた。


「会社の帰りに結婚さ……私が恨みがある奴を見つけたの。
 で、追いかけると、変な女を見つけて粉かけていてね。
 それの正体が悪魔でそいつはたちまち食い殺されて、私が危うくデザートになりそうだったわ。
 その時、コイツに助けられたの」

「昔の話だ……」


 パオフゥは煙草を火をつけ、背を向けた。
 案外、照れているのかもしれないと早乙女は思った。


「私も偶々悪魔を見てしまって以来、探偵の仕事を習おうとしたんです。
 でも、不思議と悪魔絡みの事件に巻き込まれて……」

 
 早乙女の話を聞いた芹沢は、何かを閃いたのか、耳元で小声で囁いてきた。


「で、ここの所長とはどうなの?
 私はあったこと無いから知らないけど……パオが認めていた位だから悪い男じゃないのは確かね。
 お姉さんに聞かせて」

「うーんと……。
 あまり恋愛とかそういうのじゃないですね。
 師匠と弟子という関係ですし。
 探偵だけじゃなく、サマナーとしても、剣の道でも」

「でも、そこから始まる事もあるし。
 で、客観的に見てどんな人なの、石動さんって」

「ストイックな剣客でしょうか……。
 相棒のラムさんがいると余計にそう思えて」

「ラムさん?」


 女性同士の会話が花咲くが、ドアが開き、石動が帰ってきた為に終了することになった。
 パオフゥと石動がにらみ合う。
 しばらくして口を開く。


「相変わらずだな」

「鈍ってはいないのか?
 もう歳だろうに」

「……終わらせるまでは鈍らせるつもりはねえよ」

「その話だが、手がかりが見つかった」

「!?」

 
 パオフゥの表情が変わった。
 自虐的な笑みを湛えていたのが憎しみ、怒り……そして歓喜が混ざり合った笑みに変わる。
 パオフゥは、はやる気持ちを抑えながら聞き返す。


「奴は何処にいるんだ?」

「云豹(ユンパオ)は関東内を荒らす中国マフィアの幹部としてこの日本に派遣された。
 こちら側の事に踏み込んできている……俺も出張ることになる」

「そうか……だが」

「解っている。
 邪魔はしない……俺のほうも復讐を成し遂げたい気持ちは解る。
 俺は……首尾よくいったが」


 パオフゥは石動の言葉に、大きく眉を跳ね上げる。
 二人のやり取りに、芹沢と早乙女は口を出さない。


「……なあ、終わった時、どう感じた?」

「そうだな……、その時は立て込んでいて他にやることがあったから達成感は一瞬しかなかった。
 だがな、終わってからは……長年貯まっていた汚泥が洗い流された気分だった」


 石動の前世で住んでいた村の人々と、石動自身を惨殺した魔人ホワイトライダー。
 だが、傷つきながらも最後には打ち倒すことが出来た。
 パオフゥは、心なしか弱弱しく聞く。


「終わったらお前みたいになれるのか?」

「……わからない。
 お前は俺ではないからな……だが、終わらせなければ先には進めまい」

「……そうだな。
 くだらねえ事を聞いちまった」


 石動はフリーダーを呼び出し、もてなしの準備を始めた。
 これからのことを話し合うために。





[7357] 第2期 第7話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/01 04:18
 コーヒーとフリーダー手製のチキンサンドがテーブルに置かれている。
 芹沢が最初に口を開いた。


「云豹って誰なの?」

「……元台湾マフィア天道連の凶手(殺し屋)だ。
 天道連が潰れてから消息がわからなかったが……!!」


 パオフゥは拳を握り締めながら話す。
 普段の彼の様子からはありえない光景だった。
 石動が説明の補足を行う。


「約八年前……天道連は、悪魔を抗争に使おうとしていた。
 それを知った台湾政府は、とあるフリーのエージェントに依頼をした。
 そのエージェントは……当時、木端天狗を引き連れて戦っていた現代の忍者だ。
 エージェントは、一発の銃弾も使わずに会議を行っていた天道連の連中を半殺しにして台湾政府に引き渡した。
 ……もっとも、唯の殺し屋だった云豹は雲隠れしたがな」

「ちょっと!
 それって普通ありえないわよ?
 武装しているマフィア相手にありえないわよ」

「芹沢さんがそう思うのは無理もない。
 旦那……おっと、そのエージェントはサマナーとしても戦士としてもその時から高みにあった。
 正直、俺も一目置いている……」

 
 驚いていた芹沢だった。
 その人外な働きぶりに芹沢は、石動の説明でも信じられないようだった。
 パオフゥは、その説明を聞き、思わず口笛を吹いていた。
 石動が説明を続ける。


「云豹はしばらく重慶に潜伏していたらしい。
 何もなければそのまま潜伏していたままだっただろうが……。
 ある日、路地裏で死体が発見された……身元は云豹の弟だった。
 その殺しの手口からロシアンマフィアと判明した。
 そして、云豹は重慶から姿を消した。
 恐らく、復讐の為に対立している中国マフィアに身を寄せて現在に至る……というわけだろう」

「……ケッ」

 
 パオフゥは、様々な感情を篭った悪態をつく。
 いままで黙っていた早乙女が石動に聞いてきた。


「先生、質問なんですが」

「なんだ、早乙女?」

「ロシアンマフィアや中国マフィアって言っていますけど、正式な名称ってあるんですか?」

「ロシアンマフィアは謎が多い。
 だが、構成員は赤い帽子を被った小人のエンブレムを持っていることから警察機関では『レッドキャップス』と呼称されている。
 秘密組織ファントムソサエティの傘下とも、敵対組織とも言われているが、詳細は不明だ。
 中国マフィアの組織名は『忘八』だ」

「忘八?」


 芹沢が首を傾げる。
 それをパオフゥが疑問に答える。


「『忘八』ってのは、日本の言葉で遊郭の主人のことだ。
 八つの徳を忘れた大馬鹿者の事を言って「仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌」が欠けている奴のことだ」

「よく知っているわね」

「教養だ、教養」

 
 芹沢が感心するが、それに冷たく答えるパオフゥ。
 その応対に目を吊り上げる芹沢。
 芹沢の怒りを逸らそうと石動が更に説明を加える。


「パオフゥが言ったの八徳は、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』における重要なキーワードだ。
 本来、中国の八徳は「礼・義・廉・恥・孝・悌・忠・信」だがな。
 此処からは俺の推測だが……忘八の首領は日本人だろうと推測できる。
 こんな名前をつけるのは日本の教養を持った人間しかいない。
 西洋人ならともかく、日本人なんて自分の子飼いの猿程度にしか考えん中国人ではありえないだろう。
 ところで、ちょうどこの組織が生まれだす前にある男が出所している。
 五島一等陸佐……表向きは銃刀法違反で逮捕されたが、真実は違う。
 クーデターを起こそうとしたが未然に防がれた。
 事件は闇に葬られて、五島は懲役を受けた。
 だが、出所して直ぐに消息が途絶える。
 中国行きの密航船に乗ったという証言があるがはっきりしないが……俺は五島が組織の首領じゃないかと推測している」


 話がそれてしまったな……と石動は説明を締めくくる。
 翌日、C県の倉庫である暴力団と中国マフィアとの会合があり、云豹が現れる事を石動が話した。
 今日は一旦解散するという事になり、石動とパオフゥは二人で飲みに行くことにした。
 石動は早乙女に話しかけた。


「早乙女は明日はどうする?
 その気があれば裏の社会科見学に招待するが」

「……もう危険にはなれましたよ。
 それに……先日、奴が消える前に私を見て微笑んだ気がしたので。
 まるで新しい玩具を見つけたみたいに。
 だから力をつけておこうと思います」


 早乙女は乾いた笑いをしながら答えた。
 不憫に思ったのか、石動は数枚の一万円紙幣を取り出して早乙女に渡した。
 困惑する早乙女に石動はこう言った。


「小遣い餞だ。
 帰りに何か美味いものでも食べに行くと良い。
 芹沢さんならばそういう店に詳しいだろうからな。
 お願いしてもいいですか?」

「え、ええ。
 いいわよ」

「ありがとうございます」

「おい、石動ぃ!
 置いていくぞ」

「では……早乙女、しっかりな」
 

 そう言って石動達と別れた。
 芹沢の案内で穴場のイタリアンレストランで食べることにした。
 早乙女は、芹沢の様子が可笑しいと感じた。 


「もう、美味しいわ!
 一度行きたいと思っていたけど来た甲斐があったわ!」


 パオフゥとのなにかあったのだろうかと早乙女は感じた。
 しばらくして芹沢の快活な雰囲気が奥に潜める。
 芹沢がぽつぽつ話し始めた。


「私ね……結婚詐欺にあったの。
 色々焦っていたから引っかかったんだろうけどね。
 習い事や資格とったりとかショッピングとか色々するけど、本当の自分はこうではないって焦って……。
 本当にやりたいことも、自分の居場所も見つけられなかった
 そんなどん底の時にアイツに会ったの。
 無愛想でやさぐれているけど……アイツの事は嫌いじゃないわ。
 自分はしっかりしているって顔しているけど、どこか危なっかしいからアイツを支えたいって思ったの」


 芹沢はその後、激怒するようにホークをチキンに刺して大声で怒鳴る。


「それなのにアイツときたら!
 偉そうにして!!
 何でもかんでも秘密にして!!
 いつまでも人を見下しているんじゃないわよ!!
 どうせ私には関係ないわよ!!」


 そう言ってチキンを口の中に放り込み、ワインを一気に喉に流した。
 あっけに取られた早乙女だったが、一言芹沢に言った。


「好き……なんですね」

「……わかんない。
 そうかもしれない。
 ……何年も一緒にやっているのにアイツの事が解らない。
 さっきも言ったけど、アイツって盗聴バスターとマンサーチャーの仕事をしているけど一体なんでやっているのか、そもそもアイツの過去もわからない」


 芹沢は、微笑むが……それは今にも泣きそうな顔だった。
 早乙女は、話を続けた。 


「……云豹という人はパオフゥさんに因縁のある人なのでしょうね」

「ええ……ゴメンね、愚痴に付き合わせて」

「いえ……芹沢さんは優しくて素敵だと思います」

「お世辞でも嬉しいわ……あと、私のことはうららって呼んでね、さくらちゃん」

「はい、うららさん!」


 早乙女は、パオフゥの過去にも疑問に思っていたが後二つ疑問があった。
 パオフゥは何故、ペルソナ能力に対して嫌悪の感情を示すのか?
 そして、早乙女が一瞬見えたペルソナ像……これが最大の疑問だった。
 パオフゥにペルソナの姿を言ったらそういうペルソナは使ったことも見たこともないらしい。
 そのことが早乙女には気になって仕方がなかった。






















 パオフゥの運転でC県に向かい、近くの倉庫に隠れていた。
 飲みに行くというのは口実で、実際は二人で踏み込むことにしたのだ。
 パオフゥは煙草に火をつけた。
 石動は煙草をしない……身体能力を減少させかねないモノには手を出さない主義らしい。
 いままで黙っていたラームジェルグが口を開く。


『おい、良いのか?
 嫁さん置いていって』

「……この先は血を見ることになる。
 女子供にゃ見せられねえ。
 それと、アイツは仕事仲間だ」

「……後が怖いぞ、あの手合いはな」

「かもな……」


 復讐(パオフゥ)を名乗る男は肺腑に紫煙を染み込ませる。
 石動は知っていた。
 このやさぐれた男の真実を………。
 本名『嵯峨 薫』……。
 元珠閒瑠地検特別刑事部の特捜検事は十年前、天道連が当時の法務大臣への裏金疑惑があり、その調査をしに台湾へ飛んだ。
 しかし、天道連からの暗殺者・云豹に暗殺された。
 パオフゥは、その時にペルソナ能力が発現し、九死に一生を得た。
 同僚の浅井美樹は亡くなった……超人的な能力を発揮するペルソナ能力でも救えぬ命があったという事だ。
 当時は、二人を事故死として処理された。
 その後、台湾で廃人同様に放浪した嵯峨は自分の無力さに嘆いた。
 浅井を失って初めて相棒を異性として意識していたことに気がついた。
 事件から2年後、手がかりを掴んで珠閒瑠市へ戻ったが、ちょうどその時に天道連が壊滅。
 法務大臣は逮捕され、獄中で自殺した。
 手がかりを失った嵯峨は再び死人に戻り始めた時に芹沢に出会った。
 その後、彼女が仕事を手伝う事を申し出たのを拒まなかった。
 気まぐれなのか、手がかりのない復讐相手の捜索に疲れたためなのかはわからない。


「(だが、彼女は……パオフゥにとって救いだったのだろう)」

「……無様だな」


 自嘲気味に呟くパオフゥ。
 到着して六時間が経過した。
 ノッカーが帰ってきて石動に報告した。


「ほえほえ」

「……そうか。
 パオフゥ、時間だ」

「いよいよか……」


 感慨深げに煙草を吸う復讐鬼。
 この男は斜に構えたやさぐれた男を演じる事で人間への不信感と自己の無力感を感じていた。
 復讐は、彼にとって自己の再生を賭けた闘いに他ならず、石動と手を組むのも自己の無力を恐れたからだ。
 ペルソナへの嫌悪は、相棒を助けなかった為であり、その憎悪はそのまま自分自身への憎悪であった。
 石動はフリーダーを召還した。
 フリーダーは石動を見つめている。


「マスター……」

「解っている。
 用心していく事にしよう」


 石動達は裏口から入った。
 パオフゥは硬貨を取り出す。
 進入に気がつかない見張りの喉に目掛けて指弾を放つ。
 声を上げられず、フリーダーと石動の当身を喰らい、昏倒する。
 途中に出会う敵を昏倒させ、ノッカーが縛り上げる。
 奥に進むと、白い中国風の衣装を着た蛇のような印象を思わせる顔に傷を負った男と、幽鬼のように痩せた男が取引を行っていた。
 取り巻きは十五,六人。
 石動は彼らを逃がすつもりはない。
 本来なら公安零課で押えなければならない事件だ。
 そこを曲げてもらい、パオフゥに本懐を遂げさせる以上、証拠や犯人を逃がすことはしないようにするつもりだ。
 ノッカーに合図を送る。
 その瞬間、電灯が消える。


「な!?」

「天草さん、まさか裏切ったじゃないかね?」

「云豹!
 そんなわけないだろうが!!」

「ぎゃああ!!」


 中国風の男が云豹で、痩せた男……天草と呼ばれた男が怒鳴り散らす。
 護衛の一人の腕が斬り飛ばされ、悲鳴を上げて転がった。
 石動の背後に傷だらけの西洋の騎士が浮かぶ……だが、暗闇の中では石動の姿がはっきり見えない。
 それに対して、パオフゥや石動、そしてフリーダーは問題なく動いている。
 

「生憎、闇試合は得意でな……」

「避けてみな」

「攻撃を開始します」


 石動が刀を振るう度に刀剣や銃器を両断する。
 さらに四肢を切り裂き、戦闘能力を奪う。
 パオフゥは復讐のために中国武術……特に指弾を極めた。
 硬貨が急所を撃ち抜く……達人ともなれば小口径拳銃並の威力を誇る上に、ペルソナの力を上乗せされている。
 打ち所が悪かったのか、倒れ付した後、痙攣を起こしていたが、すぐに動かなくなった。
 フリーダーの拳が打ち込まれ、壁にめり込む……死に至るほどではないが、戦列復帰は難しいだろう。
 形勢の不利を悟った痩せた男……天草が自分の髪の毛を抜き、脱落者に投げる。
 突き刺さると、奇怪な悲鳴を上げながら筋肉が膨張した。
 それに驚く手下に天草が噛み付く。
 あっという間に干からびていく死体……天草の身体が灰色の肌になり、犬歯が異常に伸びる。
 パオフゥがその外道の所業に怒りの形相を見せる。


「手前……!!」

「不味いな。
 血を吸うなら美女に限る、くっくっく……」

『チッ……。
 巧、アイツは……クドラクを憑かせていたやがる!!』


 ラームジェルグがその正体を見破る。
 クドラク……スロベニアの悪の吸血鬼である。
 光のクルースニク(吸血鬼と人間とのハーフ)に倒される存在で、悪疫・凶作の原因とされる。
 凄まじい生命力を持ち、真の恐ろしさはその死後に発揮される。
 その死後は、セイヨウサンザシの杭で串刺しにするか、埋葬の際に膝から下を切断しなければ復活する特性があるとされている。
 厄介なのはそれだけではない。
 云豹はパオフゥに向かって切りかかる。
 鍛え上げられた人間でも困難な速度で斬りかかる。


「ひさしぶりね。
 お前、手下を二十人殺した。
 私、悲しい。
 痛み分けにしないか?」

「ぬかせぇ!
 ペルソナぁ!!」


 パオフゥは、暗殺者を蹴り飛ばす。
 さらに赤いローブと帽子を纏った骸骨の幻影が出てくる。
 フランス(ブルターニュ地方)に伝わる死神・アンクウがペルソナとして現れ、鎌で切り裂く。
 だが、すぐに云豹はナイフで斬りつける。
 云豹の背後に狼の毛皮を被った戦士の幻影が浮かんだ。
 死をも恐れぬオーディンの狂戦士・ベルセルクだ。
 感覚がペルソナ使いの共鳴ではなかった……。
 そこからパオフゥは、導き出された答えを叫ぶ。


「手前……守護霊使いになったのか!!」

「弟の無念、血で注ぐね。
 その為に目覚めた力ね」


 守護霊使いの暗殺者は、そう言い放ち、パオフゥに切りかかる。
 一方、石動の方は、無数の吸血鬼を切り捨てる。
 妙法村正の妖力で再生を防ぐようで、切り殺された雑魚は復活ができないようだ。
 それでも、まだまだ数の理は敵にあった。
 だが……それも次の展開で覆される。
 倉庫の壁が砕け散った。
 外から紅いスポーツカーが高速で突っ込んできた為だ。
 車の中から芹沢と早乙女が飛び出す。
 驚く敵に上空から冷気魔法が飛び、氷結する。
 それを芹沢が華麗なコンビネーションブローで打ち据える。
 魔法の主……蜂の妖精ベナンガルが早乙女のところまで跳んでくる。


「お嬢!」

「ご苦労様、ベナンガル」

「い、石動ぃ!
 手前ぇ……」


 パオフゥは、形容しがたい表情だった。
 芹沢は、そんな彼に怒鳴った。


「馬鹿……!
 私だってアンタの仲間よ!
 アンタの隙だらけの背中を守れるのは私だけよ!!」

「……しょうがねえ奴だ」

「アンタだってそうでしょうが!!」


 泣きそうな芹沢の叫びが響き渡る。
 それを聞いたパオフゥはほろ苦い笑みを浮かべる。
 やれやれ……と石動がため息をついた。


『師弟の阿吽の呼吸の勝利だな』


 ラームジェルグが楽しげに語る。
 さらに車がパッシングしながら話しかけてくる。


『まったく、人使い荒いわよ、石動』

「すまんな、クリス。
 それと……後が怖いからな。
 まあ……成仏しろ、パオフゥ」

「ええい……!!
 いでよ、亡霊ども!!」


 天草の叫びにガシャドクロが召還された。
 石動の視線で、言わんとすることを察し、ベナンガルに追跡させていた。
 居場所が解り、ベナンガルに実況させた。
 早乙女は、外道・クリス・ザ・カーと連絡を取って協力を取り付け、現場に向かい、現在に至ったのだった。
 クリスが何度も吸血鬼を引き倒し、早乙女が止めを刺す。
 うららが湖の騎士ランスロットを育てた妖精ヴィヴィアンをペルソナとして発現し、冷気を撃ち出し、ガシャドクロに直撃する。
 石動とフリーダーは、雑魚は早乙女達に任せ、天草と対峙する。


「手前……何者だ!!」

「唯の探偵さ……ただ、ちょいとばかり腕に覚えがあるがな」

「マスター、パオフゥ様の援護に向かうため、早期の排除を」


 フリーダーの態度に吸血鬼は怒気を発するが、石動は気にしない。
 石動の命を受け妙法村正に炎を宿す『紅蓮真剣』を発動させる。
 刀を振るたびに火柱を上げる。
 クドラクの弱点である炎に怯む天草だが、斬られまいと魔法を唱える。


「死ねええ!
 マハ・ブフーラ!!」

「遅い!」

「ぐあああああ!!」
 

 たやすく回避され、袈裟斬りを受ける。
 大きくよろめく吸血鬼に追い討ちとばかりにフリーダーが接近する。
 鉄槌のようなフリーダーの拳を受け、頭部を粉砕される。
 駄目押しに石動が心臓に刀を貫き、天草の全身が焼き尽くされた。
 フリーダーが視線を他に向けたとき、悲鳴のような声を上げる。


「マスター!!」

「あれは……!?」













「ぐ……!」

「が……!!」



 パオフゥがナイフで切り裂かれ、云豹もまた手痛い一撃を受けた。
 互いに消耗し、一進一退の攻防が繰り広げられた。
 だが、ダメージが蓄積した上に、周りが倒されている。
 もはや形勢が不利だと悟る云豹は、パオフゥとの間合いを離し、出口まで下がった。


「く……ここが潮時ね?」

「逃がすか!!」

「馬鹿ッ!」


 背後から芹沢が攻撃を仕掛けるが、それを云豹は避けて蹴りを叩き込む。 
 止めとばかりに芹沢の脳天にナイフを振り下ろそうとした。
 運が悪い事に石動達から遠すぎてフォローする暇がなかった。
 守護霊が憑いた云豹は痛覚が鈍く、多少の攻撃を受けても芹沢への一撃を止められない。
 だが、今のパオフゥでは大打撃を与えられない。
 パオフゥの感覚は通常より遥かに加速する。
 ゆっくりと振り下ろされるナイフ……芹沢は目をつぶり最期を覚悟している。
 パオフゥの脳裏に……過去の記憶が浮かぶ。
 彼の相棒……その最期の言葉を思い出す。


『ごめん……嵯峨……君』


 パオフゥは歯軋りした。
 ペルソナを発現したが、守れたのは自分の命のみ。
 再び同じことを繰り返すことになるのか……?  
 パオフゥは吼える。
 無心に自分の心の奥にあるものに語りかける。


「くそ……手前も俺だろうが!
 動けぇ!
 動きやがれぇ!!
 俺はぁ……もう死なせねえ!!」


 その叫びが巨大な雷を発し、云豹を吹き飛ばす。
 パオフゥの感覚が元に戻り、云豹は勢いよく壁に激突した。
 その光景を見た芹沢があっけに取られた顔をする。


「パオ……」

「気をつけろ……」

「ごめん……」

「だがこれは……?」


 パオフゥの背後に現れたのはアンクウではなかった。
 ローブのような鎧みたいなデザインをしたペルソナが現れた。
 パオフゥの知らないペルソナであった。
 ペルソナは、厳かな声で語りかけてくる。


『我ハ汝…汝ハ我…。
 我ハ汝ノ心ノ海ヨリ出デシ者……「プロメテウス」ナリ』


 ギリシア神話に登場する神で「先見の明を持つ者」「熟慮する者」の意の名を持っている。
 人類に多くの英知を授け、大神ゼウスにと知恵比べを行った存在であった。
 パオフゥは、自分のペルソナに向かって語りかけた。


「俺のペルソナ……なのか?」

『然リ……。
 喩エコノ身ガ忌マワシキ縛鎖ノ虜トナロウトモ、汝ラヲ愛シ知恵与エルノガ我ガ役目……。
 我ガ授ケシ炎トハ 力ニ媚ビヌ不屈ノ魂ト心得ヨ』


 プロメテウスは、そういい残して消える。
 パオフゥは、起き上がった云豹まで近づく。
 その距離は……約3メートル。
 パオフゥは銃弾を指弾として用意し、云豹は袖から銃を取り出す。
 指弾と銃弾が交差する。
 終わった時、沈黙が空間を支配した。
 しばらくしてパオフゥの左腕から血が流れる。
 一方、云豹の膝が崩れ落ち、銃を地面に落とした。
 パオフゥの指弾が云豹の両肩を撃ち抜いた。
 ペルソナの力も込めて指弾として撃ち込んだ銃弾の威力は凄まじく、云豹は多量の出血をした。
 云豹の怪我は、たとえ魔法で癒しても最早、殺し屋として生きていけないと解るほどに酷かった。
 パオフゥは拳銃を拾い上げ、云豹に構える。
 殺し屋は、静かに問う。


「……あれから……何年だ?」

「十年だ……長かった……。
 それでも胸の傷は癒えやしねえ……あばよ」

「やめてぇー!!」


 パオフゥは引き金を引く。
 芹沢は叫んだ。
 彼が殺してしまったら、自分の手の届かない所へ行ってしまいそうな気がしたから。
 銃砲が鳴った……パオフゥの拳銃は、天井を打ち抜いていた。
 云豹は、吼えるように叫ぶ。


「こ、殺すね!!」

「手前は殺さねえ……。
 これから一生後悔して生きろ」

「パオ?」


 芹沢は、泣きそうな声で語りかけた。
 云豹に背を向けてからパオフゥは言った。


「その傷じゃあ殺し屋は廃業だ。
 弟の復讐なんざ夢のまた夢……。
 それだけじゃねえ……手前に恨み持つ奴らは、喜び勇んで殺しにかかってくるだろうよ。
 手前は、生涯追われ続けろ」

「……ぐぅううう!」


 云豹は自決しようと尖ったパイプに突っ込もうとしたが、なぜか脚が止まった。
 パオフゥは残虐な笑みを浮かべる。


「どうだ……死ねねえだろう?
 石動と原野の特性呪術弾だ……。
 自決することを禁じた」

「这个東西!!」


 云豹は、そのまま跪き、パオフゥを罵った。
 戦闘能力を失った暗殺者の地獄の始まりである。
 殺し屋に嬲り殺しに遭う恐怖と戦いながら生きなければならない。
 それこそが死んだ浅井美樹への供養になるだろうと石動は思った。
 パオフゥは小さく呟いた。
 その表情は、この十年で見せることのなかったもの……安らぎに満ちたものだった。


「美樹……終わったぜ」

「パオ……聞かせて貴方の過去を」

「……ああ」



 復讐を終えた男と、それを支えた女は歩み寄り、家路についた。
 長い暗闇の時は終わった……。
 フリーダーが問いかけた。


「マスター、これからパオフゥ様はどうなるのでしょうか?」

「大丈夫だよ。
 だって……あの人には帰る場所があるから」

 
 石動の代わりに早乙女は答えた。
 それを無言で肯定する石動であった。






 あとがき

 固ゆで卵な展開でした。
 パオさん&うららさんの登場です。
 復讐ですが、罰よりも潜伏期間が長かった……仇討ちに十年というのは長いものです。
 云豹も所属組織が変わっていますし。

 あとロシア&中国マフィアの組織名を公開。

 アンケートです。
 次の舞台は、日本とアメリカどっちがいいですか?





[7357] 第2期 第8話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/17 12:09

 アメリカ・ニューヨーク。
 小柄な一人の日本人青年がトランクをもってバス亭まで歩いている。
 20代半ば位で幼さの残す顔立ちをしており、デニムのシャツとパンツ、ニット帽に、アクセサリーを纏っており、アメリカの土地に馴染んでいる様子だった。
 急いで歩いていたためか、角で黒いスーツの男にぶつかりそうになった。


「やべぇ!!」


 青年は叫んだが、男は素早い体捌きで衝突を防いだ。
 連れらしい一人の少女が怒っていた。
 ミニスカートにロングヘアー、鳥を模した帽子を被った少女で、灰色の唇は潤いに満ちている。


「もう、気をつけてよね!」

「す、スイマセン」

「いや……此方も不注意だった」


 男は黒のサングラスをかけており、強面だったが、礼儀正しかった。
 少女はまだ怒っていたが、男の一言で何も言わなくなった。
 もう一人、女子高校生くらいのポニーテールの女性が青年の顔を見て声をかけた。


「あの……もしかして、稲葉正男さんですか?
 ペインティングアーティストの」

「ああ、そうだけど。
 オレって有名になったもんだなぁ」

「誰だ?」

「もう先生ったら。
 ニューヨークに渡米して有名になったじゃないですか!」


 先生と呼ばれた男は首を傾げる。
 アートのほうには興味がないようだ。
 小さい少女のほうはピンときたようだったが。
 男はバス亭のほうに視線を向けていった。


「あの長距離バスに乗るんですか?」

「ああ……最近アートのアイディアが煮詰まってさぁ。
 だからアレでいけるネイティブアメリカンの集落へ行こうと思って。
 あそこの装飾とか壁画を見れば何か浮かぶかも……って思ってさ」

「貴方もですか。
 此方は仕事で用があるんです」

「へえぇ。
 あの女の子に先生って呼ばれているけど……」

「探偵って言う名の何でも屋みたいな事をしています。
 本拠は日本ですがね」

「へぇ~。
 これからバスに乗ったら長いから話をしてもいいっすか?
 長く日本へ帰っていないんで……」

「ええ、かまいませんよ」

「じゃあ改めて自己紹介を。
 オレは稲葉正男。
 ダチからはマークって呼ばれている」

「俺は石動巧だ」

「早乙女さくらです。
 聖ナンディ学園高等部で2年生です。
 今、高校入試で学校が長期休校だったのでついて来たんです」

「モモよ。
 セッキーのツマよ!」

「つ、妻ぁ?」


 モモの発言に、間抜けな声を上げる稲葉。
 それを聞いたモモは、目を三角にして怒った。
 石動がため息を付きながら言った。


「保護者だ、保護者」

「た、大変っすね」

「まあな……だが、退屈はしない」


 口元に薄い笑みを零す石動。
 それを見た稲葉は、強面の探偵に良い印象を持った様だった。
 バスがやってきたので四人はすぐに乗った。
 乗る人間は少なく、座席に余裕が出来ていた。
 目的地は奥地の為、そこまで乗る人間も少なくなるだろう……。
 話題は日本の状況の話題や、早乙女の近況が多かった。
 石動と稲葉が同年代とわかり、口調が砕けたものになった。
 稲葉が一番気になる事件を話題にした。


「しっかしよぉ~。
 メシア教団って奴らがテロ起こそうとしたってホントなのかよ?」

「事実だ……被害は大きくならない内に治めた。
 だが、破防法適用になるかは解らない」

「む~」

「あれ?
 モモちゃん大丈夫かい?」


 石動は肯定し、モモはその話題になったら機嫌が悪くなった。
 早乙女は話題を変えた。


「私って実家が古武術やっていて、剣道部に入っているんです。
 それに先生の所で修行して……可愛げがない女の子になっているんじゃないかって……思うときがあるんです」

「大丈夫だって!
 オレのダチはオカルトマニアとか、当時の女子高生まんまな奴とか一昔前のスケ番みたいな同年代なのに姉御って言いたくなる人に比べればマシってもんだぜ」

「そ、それは……」

『なんとも濃いラインナップだな』

「アレ?
 なにか声が聞こえなかったか?」


 稲葉は、驚いて辺りを見回す。
 早乙女とモモの目が泳いでいるが、稲葉は気がつくことが無かった。
 石動がごまかすように言った。


「気のせいだろう」

「そ、そっか……疲れているんだな、ハハハ。
 それより石動さんはどんな仕事で来たんだ?」

「なんでも観光客が怪我人……噂ではしまいには死人が出たらしい。
 さらに聖地が荒らされていてな。
 それで俺が呼ばれたんだ」

「え?
 ふつうポリの仕事じゃねえのかよ?」

「……俺の方が適任だった。
 それだけのことだ」














 ネイティブアメリカンの集落についた時、赤銅色の2メートルを超える巨体の男が立っていた。
 厳つい顔つきで、針金の束のような筋肉を誇っている。
 見かけによらない穏やかな声で石動達を歓迎する。

 
「ようこそ……長老がお待ちかねです」

「石動、俺もついていって良いか?
 聖地とか色々見て回りたいから許可が欲しいなぁ~って。
 邪魔はしないからさぁ、頼むよ」

「……いいだろう」

「サンキュ!」


 石動達は奥に進む。 
 巨大な男が長老の家まで案内している時に注意をした。


「長老は、もう168歳だ」

「嘘だろ!
 人間は普通そこまで生きられないって!」


 稲葉はギネスを遥かに超えて生きる長老の存在を半信半疑でいた。
 巨漢は冷静に言い放つ。 


「事実だ……だが、長く生きすぎているから会話するのも大変だ。
 そこを弁えてくれ」

「承知した」

 
 奥に進むと、毛皮や装飾品などに囲まれて座っている小柄な老人がいた。
 一見90歳位に見えるが、目つきや動きはしっかりしている。


「ようこそ、西から来た客人。
 私が長老の『レッドホーク』。
 部族の名は……すまん、忘れたわ」

「長老!!」

「冗談じゃよ。
 まあ、無駄に言いにくい名前じゃからレッドホークでかまわんよ、客人」


 意外に気さくな長老であっけに取られる早乙女。
 稲葉が恐る恐る声をかける。


「あの長老さん、俺はネイティブアメリカンの文化に興味があるんだ。
 装飾とか、壁画とか……アートを見たいんだ。
 ネイティブアメリカンのソウルに触れて、俺のソウルに火をつけたいんだ!」

「ほっほっほ。
 若いのに異国の文化に敬意を払うとは感心じゃな。
 聖地の方は問題があるからまだ見せられないが、道具や壁画くらいならかまわんよ。
 ベン、案内しなさい」


 ベン……巨漢が無言で頷くと稲葉を案内し始める。
 稲葉が見えなくなってからレッドホークが石動に声をかける。


「元気な青年じゃったな……強い精霊を魂に抱いていて眩しいくらいだ。
 ニホンのサマナーか……懐かしい匂いがする。
 それに遥か強い精霊が見えるよ」

『マークにもか?
 ……ま、いっか』


 ラームジェルグは長老の言葉に引っかかりを感じたが、無視した。
 石動は過去に来た日本人のサマナーについて興味を抱く。


「会った事があるんですか?」

「ああ、大昔に一人な。
 無名のサマナーで武者修行をしていたんだそうな」

「それで……その人は?」


 早乙女が聞くと長老は首を横に振った。
 残念そうに口調でレッドホークが話す。


「解らん……別れる時に『ゲイリン』の名を継いでみせると言ったのが彼の最後の言葉じゃった」

「ゲイリン?」

「ま、まさか……」

「先生?」

「せっきー?」

「葛葉ゲイリン……葛葉四天王の一角。
 おそらく、長老が言ったのは第17代のゲイリンだろう。
 名を告ぐ前にアメリカに武者修行したのは有名な話だった」

「あの先生、葛葉四天王って、キョウジさんもですか?」

「いや、違う。
 キョウジは新しい名前でな、大正時代に初代が現れた。
 掃除屋……裏の裏の仕事で常軌を逸した存在だったそうだ」

「外の情報が入らなかったからな……ありがとう。
 古き友のことが聞けたよ。
 そうか……夢を叶えたか」


 レッドホークは感慨深げに呟いた。
 しばらくして本題に戻った。


「すまなかったね……。
 本題を話そうか。
 余所者が入ってきて聖地を荒らしている。
 さらに、ここへ訪ねてくる旅人に仇名し、さらに悪魔を率いているそうだ。
 生憎、いまのここには戦士がいない。
 不幸中の幸いか、外へ飛び出し、成功した者がここの援助をしてくれている。
 その者がデビルサマナーを呼んでくれたのはありがたいことじゃて」

「……悪魔について他には?」

「聖地を守るために戦う精霊のリーダーが聖地にいる。
 実際にはなしてみるといい。
 この印を持っていくと良い……私からの使いといえば信じてくれよう」


 文様の入った石を渡された。
 石動は頭を下げた。


「早乙女、ついてきてくれ」

「はい!」

「せっきー、私も!」

「モー・ショボーはここで待っていてくれ」

「むー!!!」

 
 置いてきぼりが嫌なのか、ダダをこねる。
 石動が優しく諭す。


「もし、この集落でなにか有った時には連絡してくれ。
 それに、なにか有ったときにお前は戦えるからな、頼りにしている」

「ホント!?」

「ああ……だが、無理はするなよ?」

「ウン。
 ねえ、せっきー」

「なんだ?」

「だいすき」


 石動はモモ……モー・ショボーの頭をなでた。








 






 おまけ 没ネタ

 俺の名は金鬼。
 かの有名な四鬼の一人だ。
 体が堅く、雨のような矢を受けても平気だ。
 今、悩みがある。
 仕事上の付き合いの問題だ。

 誤解しないで欲しい。
 上司や同僚は皆良い奴らだ。

 俺を屈服させて従わせた九鬼の親分は、大した奴だ。
 技もすげえわ、すばしっこいわ、強い悪魔を操るわ!
 人柄も穏やかで冷静、だが、本気になれば青白い炎のように激しく、恐ろしい闘気を発する。
 まさに親分って感じだ。

 最古参の鞍馬天狗。
 昔は木っ端天狗だったらしいが鴉天狗、そして現在に至っている。
 お袋かって言うくらい口うるさいが、術者としては大したもんだ。
 回復魔法の奥義をこの間極めやがった……その研鑽ぶりと援護能力はたいしたもんだ。
 責任感があって真面目な奴は結構好きだ。
 ……恥ずかしいからアイツには言うなよ?

 鞍馬天狗の殿(親分は大殿らしいが)、義経。
 コイツも九鬼に負けず劣らずすばしっこい。
 珍妙な技を使っていく……俺とは方向性が正反対だが不思議と嫌いになれない。
 互いに憎まれ口を叩きあい、酒を飲み比べる……そういう関係だ。

 問題は……新しく入った奴なんだよ。
 そいつは知っている……というか、前つるんでいた時の頭はっていた奴で隠形鬼って奴だ。
 コイツは……その、悪い奴じゃないし、無能でもない。
 気配りもするし、頭領としての度量はあった。
 頭も良いし、実力もある上に努力家で、分身の術を編み出したほどだった。
 ただな……思い込みが激しいというか騙されやすい奴なんだ。
 具体的な例を挙げるとだ……


「こ、これは……!!」

「どうした、隠形鬼?」

「甲賀デスシャドー流忍術……!!
 この世には拙者に知らぬ忍術があるとは!!」

「(おいおい、どうみても怪しい三流通販じゃねえか!!?)」

「他にもロボッ■ニンジャ」

「(それは糞映画!!)」

「ラセンガン!」

「(それ漫画!)」

「武神流を学びたい」

「(ハガー市長ぉおお!!)」

「お会いしたかった……マスター・スズキ」

「(それはスーパーウルトラセクシィヒーロー!?)」



 こんな感じだ。
 TVや漫画、アニメなどすべて真に受ける天然だ。
 ラセンガンとかいうのを再現するという才能の無駄遣いぶりに嘆いてしまう。
 くそ……昔だったら三人がかりで操縦できたが……。
 俺だけじゃ無理だ……!
 ……頼むぜ、親分……!!
 残る二人を探し出してくれ!!!




 天然すぎて作者も操作不能になりそうなので、もっとマトモな性格ですので、あしからず。
 まあ、他の鬼が先でしょうね。




[7357] 第2期 第9話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/19 01:34
 長老の友であるコヨーテが聖地へ案内する。
 早乙女はベナンガルとカハクを召還し、石動はフリーダーを召還した。
 悪魔でもなんでもない唯の獣であるが、普通の獣より遥かに賢く、人語を理解しているようだ。
 コヨーテの先導で聖地へ向かう。
 途中、異界化した空間へたどり着くが、コヨーテの案内で何事もなかった。
 奥には雷を発する巨大な鳥が天空を飛翔している。
 石動達を発見して、巨鳥は降り立った。
 その大きさはロック鳥に並ぶのではと思われるほど大きいものであった。


『この聖地に人間が何の用だ!?』

「お前の友・レッドホークの使いだ!
 聖地を荒らす者を討ち果たす為にやって来た!」

『……すまなかった。
 我も気が高ぶっていた……我は霊鳥・サンダーバード。
 この聖地を守るものなり。
 汝の救援に感謝する、精霊を宿す者よ』


 長老から渡された印を見て敵意をとく大雷鳥。
 石動は改めて現状を聞く。


「敵が来ているらしいが……」

『忌まわしき『外なる者』の眷属の走狗どもが現れた……!!
 マニトゥに代わるモノを探しに此処に来たらしいが……此処にはそんなものはありはしない』

「マニトゥ?」

『この世に有らざる次元より来たれし生命だ……。
 ファントムソサエティの上位幹部達とも違う存在だ……。
 両者とも、人間のソウルを求める。
 もっとも、マニトゥはすでに滅んだ』

「……異なる次元か……。
 それにしてもファントムソサエティ……まさかな……」


 一人、サンダーバードの言葉に考え込む石動。
 置いてけぼりな早乙女をベナンガルが声をかける。
 

「先生?」

「お武家さんよぉ~、今は仕事だろ!」

「……すまない。
 ああ、知らないことをしったからつい考え込んだ」

「……お前の国では、ヤタガラスや一部のサマナーは知っているが普通のサマナーは知るまい。
 考え込むのは無理もあるまい。
 本題に戻ろう。
 我々が襲撃者の正体を知ったのは…ウェンディゴを引きつれ、拍子が鉄の装丁で黒く分厚い魔術書を持った魔術師……いや、サマナーが襲ってきたからだ」


 ウェンディゴとは……人跡まれな土地に住むとされる、北米先住民アルゴンキンに伝わる精霊の呼び名である。
 非常に抜け目が無く、人に姿を見せない術を心得ている。
 一人きりの旅人の背後に忍び寄り、気配だけを悟らせるが、どれだけすばやく振り向いてもその姿を見ることはできない。
 それが何日か続いた後にウェンディゴはかすかな、はっきりとは聞こえない声で話し掛けてくるようになる。
 やがて、旅人がその不気味さに耐え切れなくなるまでそれは続くことになる。
 陰湿ないやがらせだが、実際に危害を加えてくることはない。
 だが、このウェンディゴと同じ名を持つが、性質の異なる存在があり、その存在は恐ろしく、前述の存在より苛烈な行いをする。
 そのウェンディゴには別の名がある。
 イタクァ……「風に乗りて歩むもの」と呼ばれる旧支配者と呼ばれる存在である。
 これには諸説あり、イタクァはウェンディゴの一固体とも言われるがその正解は解らない。
 イタクァが人間の前に現れる時、星空を背景にそそり立つ人形の黒雲のように見え、目に相当する部分には二つの星がぎらぎらと輝いている。
 しかし実体は存在するらしく、雪の上に巨大な水掻きのある足跡を残す。
 だが、それを追いかけることはお勧めしない。
 彼を目撃した者には例外なく死が訪れるからだ。
 彼はゴミを漁り、通り掛かりの人間を捕まえ、 禁断の土地土地を連れまわり、最後には地上に投げ捨てる。
 連れて行かれた者は失踪後何週間か何ヶ月かしてから発見されるが、 ものすごい高さから落下したように半分土に埋まった状態で、激しい苦痛の表情を浮かべたまま凍り付いて死んでいるという。
 生きていたとしても、イタクァと共にいた間に体が寒さに順応してしまっており、長くは持ちこたえられない。
 また、イタクァは小型の生物を変化させる能力があり、人間の場合だと足の形が完全に崩壊して極寒の温度にも平気で耐えられるようになり、常に人肉を食べたいという欲望にさいなまれて発狂する事になる。
 ちなみに、北アメリカのオブジワ族やアルゴンキアン族などごく限定された部族にのみ見られる精神疾患の一つとして存在している。
 科学が進んだ世界では悪魔は現れにくくなり、悪魔になりきれず、精神のみ病んでしまったのが疾患の正体であるとサイコダイバーは語っている。
 閑話休題。
 では……サンダーバードが語るのは、どちらなのか?
 能力を分析し、前者のほうであると判断したようだ。
 石動はその話を聞き、その答えを導き出すと同時に顔色を変えた。



「なるほどな……『妖蛆の秘密』か。
 くそ……嫌な偶然、いや必然なのか?」

『……忌々しい限りだ』


 巨大雷鳥と石動だけで納得するが、早乙女とカハクはさっぱり理解していないようだった。


「なんですか?」

「そーだ、そーだ!」

「けっ……これだからお子様悪魔は困るぜ」

「なによ!」


 カハクが怒るが、ベナンガルは無視して説明した。
 『妖蛆の秘密』……1542年、ルートウィヒ・プリンがケルンで出版したラテン語の魔導書の事である。
 プリンは、フランドル出身の錬金術師にして降霊術師、そして魔術師でもあった。
 彼は、十字軍参加時に、捕虜として拘留されていたシリアで魔術を学んだ。
 後に異端審問によりブリュッセルで焚刑に処せられる直前に、獄中で本書を執筆したのがこの本である。
 古代エジプトにおける秘密の伝説・伝承をはじめとした多くの秘術が書かれている。
 サラセン人に伝わる占術・儀式・呪文、蛇の髪持つバイアティスなどの蛇神たちについて記されている魔術書であり、カリフォルニア州ハンティトン図書館やミスカトニック大学付属図書館、大英博物館などに15冊ほどが現存している。
 『妖蛆の秘密』によると、古代エジプトにおいて「暗黒のファラオ」ネフレン=カがニャルラトホテプの為に忌まわしい祭祀を行った。
 その為、その名を『死者の書』から抹消され、歴史から抹殺された。
 ちなみに、イタクァは、『旧支配者』(地球に飛来し、実体を持つ存在)。
 ニャルラトホテプは、『外なる神』(実体を持たない宇宙誕生から存在する者)
 『旧支配者』と『外なる神』は同一視されることもあるが、かならずしも協調関係はとるとは限らない。


「……は、ハハハハ……」

「さ、さくらぁ~!!」

 
 魂が抜けたように笑い出す早乙女にそれを必死にはげますカハクだった。
 それを見たサンダーバードが問いかける。


『奴に魅入られたか?』

「先日、地道な活動を邪魔したせいでな……『本物』かはしらんがな」

『……どちらにせよ、難儀な事だ。
 娘よ、気をしっかり持て』


 早乙女は突然会話を振られて戸惑った。
 サンダーバードは続けて言う。


『お前の持つ剣を出すがいい』

「これで……え、えええ~!?」


 早乙女は錬気の剣を出したとき、サンダーバードが雷を剣に放った。
 閃光を発した後、早乙女の錬気の剣は変化していた。
 サンダーバードの姿を模された柄に変化していた。
 早乙女が力を込めると嘴の部分からエネルギーの力場が発生し、剣のような形になった。
 驚く少女に霊鳥が言った。


「我に汝の未来には大きな苦難が横たわっているのが見えた。
 我らの聖地の危機を救うお前に我の加護を与えた。
 その『雷神剣』がお前の力になってくれよう……」

「あ、ありがとうございます!」

「やったね!」


 カハクが喜び、早乙女も感謝する。
 ベナンガルは何かを決心したようで、サンダーバードに頭を下げた。


「サンダーバードよ!
 俺はお嬢を守りたい!
 だがよぉ……俺は弱い。
 俺に……お嬢を守る力をくれ!」

「ベナンガル……」

「厚かましいのはわかっている!
 だがよ……こういっちゃなんだが、お嬢は不運だ!
 又聞きしていても冷や汗もんだ!
 だからよ……お嬢を守れる力が得られるならなんだってする!」


 サンダーバードは無言で真摯な蜂の妖精の頼みを聞く。
 石動も沈黙していたが口を開く。


「……可愛い弟子が死ぬようなのは見たくないんでな。
 俺からも頼んで良いか?」

『お前は力はいらないのか?』

「間に合っている……。
 か弱い奴に生き残れる力を持たせるほうが良いだろう?」


 石動は口元に笑みを浮かべ、ベナンガルに譲る意を示した。
 サンダーバードを高らかに鳴いた。


『遠き地の蜂の精霊よ。
 お前の願いを叶えてやる……』

「あ、ありがてぇ!」

『だが……我が出来るのは無数の名もなき精霊を促し、汝の糧とする事のみ。
 今の姿を失い、何者になるのか我もわからぬ。
 また、一歩違えれば汝の精神は滅び、新たな固体になる。
 最悪、存在が消滅することになる……それでもやるのか?』

「……ああ」


 蜂の妖精の決意は固かった。
 早乙女は、不安げに見つめ、喧嘩仲魔のカハクは涙目だった。


「ベナンガル」

「あんた……馬鹿よ。
 仲魔集めて合体すればいいじゃない……」

「この次でお嬢が死ぬかもしれない。
 俺達が生きる世界はそうだろうが」


 カハクの言葉にベナンガルが返す。
 サンダーバードは翼を広げ天空を雷で切り裂く。
 無数の光の玉が飛び交う。
 実体化しない精霊・悪魔達が飛び交っている。
 雷鳥のいななきでその中のいくつかがベナンガルに飛び込む。
 雑霊とはいえ……数が数である。
 何百万、何千万の一部……つまり数千の雑霊が降り注いでいるの。
 

「ぐあああああああ!!!」


 雑霊が入るたびにベナンガルは苦悶の叫びを上げ、形が溶けていく。
 精神が侵されていく、体が食い破られる。
 それでもベナンガルは精神を保った。
 ひとえに、早乙女の最古参の仲魔であるが故の意地と忠義の心のなせる業であった。
 閃光を発し、早乙女達の視界を奪う。
 サンダーバードが、その結果を告げる。


『新たな悪魔の誕生だ……』


 その姿はサンダーバードの知らない悪魔だった。
 人の姿であり、猿顔の小柄な男性であった……髪を短く切り、子供かと勘違いしかねないほど小さいが、鍛えられた体と面構えがそれを否定する。
 宙に浮いた卍型の金属板……刃物であるようだ。
 それに乗り、黒い装束と、ダークレッドのマフラーを靡かせ、背中には刃物を背負っている。
 見る物が見れば卍型の板は巨大な手裏剣であり、背中の刃物は忍者刀とわかるだろう。
 その悪魔は高々と名前を名乗る。


「俺は、幻魔『猿飛佐助』!
 またヨロシクな、お嬢」

「ベナンガル……!!」

「おおっと!
 もう俺は姿も変わったから佐助と呼んでくれよ!」

「ふ……ふん!
 ちょっとくらい大きくなったって、アンタはグズでさくらを任せていられないからね!」


 早乙女は喜び、カハクも憎まれ口を叩きながらもベナンガル……いや、佐助の無事に安堵している。
 サンダーバードが石動に話しかける。


『戦士を精霊を宿すものよ……急げ!
 集落の童が集落が飛び出して敵に向かっていっている』

「……そうか、急がねばならないか」

「もう一人、見慣れぬ精霊を宿した男が連れ戻しに追いかけているようだ」

「稲葉さんね!」


 横で聞いていた早乙女が驚きながら言う。
 石動は頷く。
 サンダーバードは言いはなつ。


『入り口まで送る。
 我も敵の一団を引き受けよう』











 おまけ


 ジェシカは飛行機に乗っていた。
 彼女の目的・仲魔探しが上手くいった。
 予想外の成果があり、造魔素体ドリー・カドモンを手に入れた。
 それにある悪魔を宿し、新たな力としたのだ。


「いよいよね~」

「日本か……無数の神がいると聞く。
 噂のオカルト大国はどんなものか楽しみだ」


 スカートではなく、動きやすいパンツとジャケットを着た女性がジェシカに話しかける。
 ロングヘアーに長身、女神のようなという形容が似合うボディライン。
 瞳には強い意志よ知性が込められ、高くくっきりした鼻に艶かしい唇。
 女王、王者に相応しい風格をもった美女であった。
 ジェシカは楽しげに言った。


「ええ、厄介ごとに満ちた国で愉快な人も多いわ」

「……それは楽しみだな。
 会わねばならぬ奴がいるしな」

「それって恋人?」

「まさか……馬鹿弟子よ。
 そう、出来の悪い……ね」


 ジェシカはその言葉を聞いて興味を持ったが、女性は学術書を開きだしたので、問いかけることをやめた。





[7357] 第2期 第10話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/01 12:07
 少年は怒っている。
 父親が悪魔に襲われ、大怪我をしたからだ。
 少年は勝ち目があるなしなど考えずに手斧を持って飛び出した。
 長老は外に出るなと言ったが、そんな意気地なしなことは出来ない。
 それは無謀といって良い行為だった。
 勇んで飛び出し、青白い毛並の獣人に遭遇した。
 斧を振るうが傷一つつかない。
 獣人に片腕で吹き飛ばされる。


「ひっぃ!!」


 殴られる直前に後から気配を感じた。


「オラァ!」

「GAAAAA!!!」


 黄色い肌の青年……稲葉が猛然と獣人……ウェンディゴを蹴り飛ばす。
 少年が落としていた斧を拾い、思いっきり振り下ろす。
 腕を切り飛ばされ、怯むウェンディゴ。
 その隙の逃さず、追撃をかける


「ペルソナァ!」

 
 槍を持った緑の髪を生やした戦士が現れる。 
 幻影が体当たりを行い、弾き飛ばす。


「続けていくぜぇ!
 怒涛の連打だぁ、オグン!!」


 オグン……赤が聖なる色とするブゥードゥーの戦士。
 本来はアルジェリアの鉄の神である。
 オグンと呼ばれたペルソナは連続攻撃を行う。
 弱りかけたウェンディゴではひとたまりもなく打ち倒された。
 周りに敵がいない事を確認して少年を助け起こす。


「大丈夫か、坊主?」

「ひぐ……ぐすっ」

「怖かったろ、でももう泣くなよ。
 男だろ?」

「うん……」

「しっかし……悪魔と戦ってきたが、なーんか雰囲気が違うんだよなあ。
 気のせいか?」


 稲葉は首を傾げる。
 彼の感覚は正しい。
 彼が戦った悪魔と一般の悪魔は違う。
 彼が戦いに身を投じたセベク・スキャンダルと呼ばれた一件で現れた悪魔は、人間の中に眠る無意識の一部なのである。
 普通の悪魔とは成り立ちが違う……人間にとって脅威である事には変わりないが。
 悪魔の成り立ちについては諸説ある。
 人間の精神に加え天地自然の力が混ざったものとも、そもそも自然から超越した次元からの来訪者とも言われるが……真実は不明である。
 閑話休題。
 稲葉が少年を集落まで送ろうとしたとき、空気が変わる。
 景色の色が変わり、異界化した。


「こ、怖いよ…!!」

「くそ……あん時みたいだな、クソッ!」


 不可視の壁が出来て、通り抜けが出来そうにない。
 稲葉は殴ってみるが、壊せそうにないと理解した。  
 無数のウェンディゴを引き連れたラテン系の黒髪の男がいた。
 黒い皮製の衣服で固め、俗に言う『ハードゲイ』のようなファッションスタイルで、黒い皮帽子にはドクロのエンブレムがついている。
 筋肉隆々で、豊かな口髭が威圧感を出している。


「あらぁん……可愛いボウヤたち!」

「ひぃ!」

「てめぇ……バケモノ引き連れて何しやがる!?」


 怯える少年を庇うように稲葉が立ち、男に問いかける。
 男はしなを作り、媚を売るように話しかける。


「組織のためにソウル回収する為の力を探していてねェん。
 その時、コイツを手に入れたの」


 鉄の装丁で黒く分厚い魔術書……『妖蛆の秘密』を取り出す。
 男は、それを撫で回しながら言った。

  
「凄い力……もう、組織のいう事に従うのが馬鹿らしいくらい。
 だから、好き勝手できるように更なる力を探しているの!」

「あーあ、勝手にすりゃいいぜぇ。
 だがな、他人を巻き込むんじゃねえ!」

「い☆や。
 それに、ボウヤって強そうね……可愛がってあ・げ・る。
 そして私の片腕にすることに決めたわ!」


 男が指を鳴らすとウェンディゴが稲葉を取り囲む。
 稲葉は、逃げられないと悟り、戦う事にした。
 ペルソナで頑強になり、攻撃を受けながらも更に強烈な一撃を返して倒す。
 男は、嬉しそうに語りだす。


「イイ!
 イイわぁ!!
 こんなに戦いなれているなんて!!
 でも……見たところプランクが空いていて思うように動けないって所ね!」

「クッ……言ってろ!!
 (マジィ……このままじゃ数で押しつぶされちまう!
  だが、戦いながらペルソナを鍛え、敵をやっつけるしかねえ!)」


 
 だが稲葉にとって、少年を庇いながら戦うという慣れない行為を行って精神的な消耗も激しい。
 稲葉は、その隙を突かれ、ウェンディゴの一体に弾き飛ばされる。


「う…」

「GUOOOOO!!」

「ひいいい!」


 ウェンディゴは、少年の首を掴み上げる。
 稲葉が起き上がろうとするが、他の一体に踏まれ、すぐに起き上がれる状態ではない。
 男は勝利の高笑いをあげる。


「ほーっほっほほ!」

「て、テメエ!!」

「動かない事ね!
 動いたら、小さいボウヤの首が千切れるわよ、ポトリと」

「可愛がるんじゃねえのかよ?」

「可愛いボウヤの死体を弄るのも乙なものよ」


 男の狂気に満ちた瞳は冗談でないことを示している。
 稲葉は、歯軋りする。


「私についていけば、小さいボウヤの命を助けても良いわよ?」

「本当だろうな……」


 稲葉はなす術がないと判断したその時、声が響く。


「やめとけ、稲葉。
 その手の手合いは取引を破るからな……ザンマ!!」

「エンゲージ……攻撃開始」

「GYAAAAAA!!」

「GUAAAAAAA!!」

「稲葉様、拘束は解かれ、人質を奪還しました」


 少年を掴んでいたウェンディゴの頭部が風の弾丸で粉砕された。
 同時に、作り物めいた女性が手首からブレードを出して稲葉を拘束した方の首を刎ねた。
 少年はいつの間にか、いなくなっていた。
 女性……フリーダーに助け起こされた稲葉は声を上げる。


「その声は……石動か!?」

「ええい!
 何者よ!!」

「唯の探偵さ……落ちこぼれのデビルサマナーでもあるがな。
 そういうお前は、ファントムサマナー崩れだったか」


 素性を言い当てられ、表情が変わる男。
 稲葉は声の方に視線を向けると、石動が妙法村正を抜き放っていた。
 となりにはサンダーバードの加護を得た雷神剣をもった早乙女が立っている。
 早乙女の後ろには猿飛佐助が抱えていた少年を下ろしていた。
 佐助を労う早乙女……その様子は姫と忠義を尽くす隠密のような図であった。


「ご苦労様、佐助」

「いいってことさ、お嬢。
 これくらいお茶の子さいさいってか!」


 一瞬にして、ウェンディゴの群れの中を走り、落下した人質をキャッチし、自陣に戻るという離れ業を行っていたのだ。
 ノッカーと、カハク、そして燃え盛るスプーンを持った子鬼のような悪魔が少年を守るように立っている。


「ほえほえ」

「大丈夫?」

「……久しぶりに呼んだな、石動ぃ。
 まさか、忘れていたんじゃないだろうな」

「さあな、ウコバク。
 お前らは子供を守っておけ!
 やばくなるから出来るだけ離れていろ」 


 石動の支持を受け、少年を避難させる仲間達。
 稲葉とフリーダーは囲みを破って石動を合流する。
 石動の背後にラームジェルグが現れ、陽気に声をかける。


『マークだったか?
 俺はラームジェルグだ、ヨロシクな』

「石動もペルソナ使いなのか?」

『ノンノン。
 コイツは守護霊使い。
 心の中に眠る力じゃなくて、本物の悪魔の力を使うのさ』

「それと一応悪魔を使役するデビルサマナーでもあるがな」

「……よく解らないが、アンタが仲間で強いって事だけわかれば十分だぜ!」


 石動を見て、涎をたらす男。
 嬉しそうに喋りだす。


「あらぁん、良い男」

『ウホ……良い男。
 だってよ』

「……そんな物騒なモノを持ってくるとはな。
 豚に真珠とはこのことか」

「アラつれないのね。
 でも、強情な子って好きよ、調教のし甲斐があって。
 憑いているのは不気味だけど」

『ほっとけ』


 そう言って無数のウェンディゴを差し向ける。
 石動達は、直ちにそれを迎え撃つ。
 早乙女の雷神剣がウェンディゴを切り裂く。
 あまりの威力に余波が近くの敵にダメージを与える。


「す、凄い!」

「オラオラオラ!」


 佐助は、ウェンディゴを俊足で翻弄し、目玉目掛けて針を飛ばす。
 甲賀忍者の一撃が直撃し、苦しげに暴れまわる悪魔に止めとばかりに佐助は、首筋に針を飛ばす。
 一瞬痙攣してから倒れ、二度と動く事はなかった。
 また、少年に近づこうとするとカハクとウコバクが弱点である炎魔法を飛ばし、追い散らす。
 その追撃とばかりに稲葉は、ペルソナを発動させる。


「うおおお!」

「GAAAAAAA!!」


 重力場を発生させ、一気に悪魔を押しつぶす。
 さらにフリーダーが無数の雷撃『ショックウェーブ』を乱射し、残敵を掃討する。
 一方、石動はダークサマナーと一騎討ちになっている。
 流れるような連撃、そして変幻自在な一撃で腕を跳ね飛ばす。


「いぎいいいいい!」

「耳障りな奴め」


 石動の剣技の冴えに驚く稲葉。
 同時に、デジャヴュを感じた。


「(な~んか見たことがあるような……)
 おおっと、ペルソナァ!」


 稲葉は疑問に思いながらもウェンディゴを討つ。
 ダークサマナーは書の力を借りて呪詛を飛ばすが、守護霊を小角に交代してトカレフを発砲する。
 乾いた銃声で両足を撃ち抜く。
 地面に無様に転がる……だが、サマナーは書の力を借りて大掛かりな魔術を行使した。
 消滅しかかっているウェンディゴの死骸が集まり、混ざり、溶け合い、巨大な異形に変化した。
 その気配はあまりに異質で、常人である少年は瘴気に当てられ気絶する。
 稲葉がその力を感じて吼える。


「おいおい……マジかよ!!」

「く…たばり…なさい」

 
 力を使い果たしたダークサマナーは気絶し、制御が離れて異形が暴走を開始した。
 手当たり次第に触手を振り回し、冷気魔法を乱射する。
 石動は、当たり前の事のように冷静に対処する。


「フリーダー!」

「了解・コマンド『紅蓮真剣』」


 石動の剣に炎が宿る。
 元々がウェンディゴであるから炎が弱点と判断した。
 佐助が心得たもので援護を行う。
 稲葉もそれに続く。


「お武家さん、援護するぜ……土遁の術!!」

「オレもいくぜ、マハグライ!!」

「GYAAAA!!」


 大地が隆起し、異形の身動きを封じる。
 同時にやってきた重力波も手伝って完全に封じたかに見えた。
 異形は巨大な氷結魔法を石動目掛けて発射した。
 稲葉が叫ぶが、避ける暇がないだろう。
 だが、佐助や早乙女は信じている。
 

「いくぞ……」

『おうよ!
 変・身!!』


 石動から膨大なMAGが吹き荒れる。
 その影響で砂煙が発生し、視界が遮られた。
 稲葉が砂嵐が終わった時に衝撃の光景を目撃する。


「……マジかよ!!」

「槍技・ゲイボルグ……」


 石動は、静かに呟く。
 冷気が通った跡が残ったが、石動達の周りだけ、何かに切り裂かれたように無事であった。
 さらに、異形に巨大な砲弾を喰らったかのような無数の傷跡が出来ていた。
 稲葉には何が起こったか解らなかったが、石動が防ぐどころか、手痛い一撃を加えたのだろうと判断した。
 さらに石動の背後に、西洋の死した騎士の姿はなく、代わりに槍を持った勇壮な戦士の姿があった。
 稲葉は思わず言葉を零す。


「お、おまえ……」

『どうだ!
 これが俺本来のハンサム顔だッ!』


 クーフーリンとなったラームジェルグが自慢げに言うが、石動は無視して、止めの一撃を異形に打ち込む。
 紅蓮の一刀によって邪悪な悪魔は浄化された。













「いやあ、助かったぜ」

「まさかペルソナ使いとはな」

「知っているのか?」

「蛇の道は……というわけだ」


 石動と稲葉は一息ついた。
 ダークサマナーを尋問しようとした時、突然痙攣を始める男。
 ばね仕掛けのように跳ね起きる。
 ダークサマナーの後に異形の幻影が現れる。


「な、なんだぁ!?」

『いやあ、凄い凄い。
 また会ったね、石動巧。
 それに……前に見た顔もあるね』

「で、でたあああぁ!!」

「か、神取のペルソナぁ!?
 どういうことだ!!」


 マークは困惑し、早乙女にいたっては涙目であった。
 男とも女ともつかない、人を喰ったような嘲り声が聞こえてきた。
 石動はその存在を忘れた事はなかった。


「なんのようだ、ニャルラトホテプ」

『ふふふ……別に。
 ただ、あちら側の方の私の信者が見えたから丁度良いから潜り込んだまでのことだよ』

「ぺ、ペルソナのほうが人間を操っているのか?
 暴走か!?」


 稲葉は、斧を構えながら質問する。
 ニャルラトホテプは哂いながら答える。


『ふふふ……まあその認識でもいいよ』

「お前は所謂『外なる神々』としての奴じゃないな。
 それにペルソナに近い有り方だ」

『そう……そういう意味では偽者といえるだろう。
 だが、役割は同じだがね……。
 私は『人間のネガティブな破壊の意志の原型(アーキタイプ)』。
 人間を揺さぶり、破滅をさせるのが私だ』

「……もう一度斬られたいか?」

『怖い怖い……。
 今日のところは還らせてもらうよ。
 ただ……』


 ダークサマナーが手にした『妖蛆の秘密』が虚空に浮かび消えた。


『また他の誰かが手にして貰った方が都合が良いからね。
 それじゃ、お邪魔様』


 最後まで嘲るように喋り、ニャルラトホテプは消えていった。
















 石動達はバス亭の前にいる。
 稲葉と石動は握手をして別れを惜しむ。
 少年も見送りに来たようだ。
 ダークサマナーはICPOに引き取られた。
 情報を引き出し、各国の機関に送られることとなるだろう。


「俺達は帰る。
 仕事が終わったからな」

「そうか……オレはここで色々見て回るさ。
 そうしたら久しぶりに日本に戻ってみようかな?
 アンタ達を見ていてちょっと懐かしくなったからな」

「あのさ…助けてくれてありがとう!」


 少年は目を輝かせていた。
 石動と稲葉は、手を離す。
 モモ……モー・ショポーが石動にしがみつく。


「せっきー、帰る前にブロードウェイかハリウッド行こう!」

「先生、まだ時間もありますから……」

『俺もゆっくり帰りたい。
 なんか嫌な予感がする…避けられない災厄がくるような……』

「マスター、いかがしますか?」

『お武家さん、どうする?』


 皆の言葉を聞き、ため息をつきながら石動は言った。
 

「そうだな……社員旅行代わりと思えば良いか」

「やった~!!」


 モー・ショボーは大喜びであった。
 バスがやってきて、石動達は乗り、去っていった。
 しばらく眺めていて、稲葉は不意に思い出した。


「そうだ!
 アイツの動き、所々南条と似ているからか!!」

 
 稲葉は納得した後、集落に戻るべく振り返った。
 雄大な大地……日本では見られない光景にため息をついた。
 しばらくして、少年が稲葉の手を引っ張る。


「お兄ちゃん、行こうぜ!」

「ああ、待たせて悪かったな」

「いいって!
 お兄ちゃん、かっこ良かったよ!

「そうか?」


 稲葉と少年は手を繋ぎ、集落に戻っていった。





















 あとがき。

 アメリカ編、いかがでしたか?
 ニャルさまは二人(2種類)いると言う設定です。
 マーク参上・&ゲイリン先生の足跡が見れました。
 マークは戦闘に出ていないので錆び付いてオグンのみでした。
 自分でも第二期で見せたいなと思っていました……。
 サンダーバードの助力で早乙女の剣の強化、そしてベナンガルは猿飛佐助に。
 ペルソナ版と違い、佐助は青年ですね…ちびだけど。
  
 クゥトルフネタに走ったけど、アメリカ…そしてウェンディゴだよ?
 つながりを考えずにはいられない。
 ご当地ネタは楽しいもんです。

 次回は、九鬼さんの華麗な活躍に期待してください。
 ペルソナ組がゲストに登場。




[7357] 第2期 第11話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/21 19:45
 小ネタ その1
 『この人が言っちゃいけない!!』

・キョウジ・石動編(自殺者に対して言う台詞)

『死んだら御仕舞いなんだぞ!』


 お前が言うな、特に石動!



・石動編(名乗り)

『唯の平凡なサマナーだ』

 
 いや、水準満たしていないし!
 守護霊なしで大僧正を切り倒したり、ほぼ単騎で白騎士を屠っている時点で凡人じゃない。
 類義語は『私は唯の保険会社のサラリーマンです』(九鬼)。





 小ネタ その2
 『人間とは順応する生き物です。』

 これは酒飲みな三人と一体が集まった時の話。
  

「ねえパオ」

「……なんだ芹沢?」

「台湾に住んでいたんでしょ?」

「まあな…」

「海外に住むって大変じゃなかった?
 ほら、文化とか違うし」

「まあな……飯も全然違うからな。
 だが、慣れるもんさ」


 石動は無言で同意の頷きを行った。
 ラームジェルグ以外は知らないが、石動は戦中生まれで物心がついた頃には終戦……物がない時代だ。
 さらに死ぬまで山で修行漬け……。
 止めは死後はずっと闘い詰めだった。
 食事も睡眠も取る必要がないので(精神的疲労がたまれば休みたくなるが)、ほぼ丸々闘争の日々だった。
 蘇った彼にとって貧弱な幼年の身体を鍛える事よりも浦島太郎状態である状態から脱却するほうが苦行だった。
 


『(ぶっちゃけ俺のほうが順応早かったんだよなー)』

「(洗濯機とか掃除機とかカラーテレビとか当たり前に行き当たっていたのに吃驚だった。
  新幹線とかジャンボジェットとか凄い乗り物が出来た事は実のところ最初は楽しみにしていた。
  それに……経済がここまで発達するとはな)」


 本人は気がつかなかったが良い年した男が幼稚園や小学生のお遊戯に混ざるというのは……苦行だったが、鋼の精神力でポーカーフェイスを維持した。
 それに当時より恵まれた環境と判っているので噛締めるように学習を重ねた。
 当時でも一般人とはかけ離れていたが、現代になるとさらにジェネレーションギャップがついていた。
 はっきり言って浮いていた。
 具体的に言うと某侍口調のファーストフードの店員よりも遥かに高く。
 ……ラームジェルグですらその時の事をからかわない位だったのだから推して知るべき。




 と馬鹿なネタをした後に本編のはじまりはじまり。













「……魔術書は、彼に渡した。
 『彼』の遊び相手として相応しくなるだろう」



 その部屋には一人の男性しかいない。
 だが、その男性に語りかける声が聞こえる。
 男のような女のような……誰とも取れる声であるが、その声には怪物性と万物への嘲りが篭っていた。
 サングラスをかけた黒い背広の男は、それを黙って聞いている。


「おや……?
 やはり人形に魂を込めるなんてマネはするべきではなかったか? 
 君を舞台に引き上げたせいか、余計な者が出てきたよ。
 ……別に計画の支障になるわけでもないから放置するか。
 邪魔になるのならそれはそれで一興」

「………」

「今回のゲームは、特別なゲストを招くつもりだよ。
 楽しみだと思わないか?
 そう、君にも関係のある人間だよ。
 嬉しいだろう?」





















 某関東内のホテル・スイートルーム。
 普通の人間は泊まれない最高級にして最上階の部屋であり、見晴らしは抜群だ。
 眼鏡をかけ、髪をオールバックにして英国製のスーツで固めた知的な青年とその部下らしき壮年が話し合っていた。
 朝日を浴びながらモーニングコーヒーを味わう青年……彼のネクタイには拘りがあるのか『1』と刺繍されている。
 壮年は屈強な体躯を誇り、見る者が見れば、歴戦の戦士であると容易に察する事が出来るほどだ。
 恭しく壮年が青年に用件を切り出す。
 

「圭様、今日の案件ですが」

「言ってみろ、松岡」

「傘下の会社の損害保険の見積もりにやってきます。
 その後は、夜は帝国ホテルにて立食パーティーを行う予定です」

「……パーティーまでは時間があるな」

「圭様、貴方は最近は休憩時間が少なかった。
 根を詰めすぎると、後々に響きます」

「……解った、昼間は休むとしよう」


 青年は降参したような口調で休憩を認めることにした。
 デスクの上には鼈甲の老眼鏡と、青年の高校生の時期らしき写真が置かれてあった。
 青年はぽつりとつぶやいた。


「あれから……7年か」










 




「始めまして、安登羅保険の九鬼です」

「南条圭です、よろしく」


 九鬼は、南条と名乗る眼鏡の青年と握手をする。
 南条圭。
 南条コーポレイトの次期総帥であり、既に幾つかの傘下の会社を任されている。
 聖エルミン学園を卒業後、オックスフォード大学に入学。
 勉学に励みながら身分を隠し、下請け会社で営業職の二足の草鞋を履いていた。
 それにも関わらず主席で大学を卒業し、複数の子会社の経営を任され、結果を出し続けている。
 マスコミでは『日本一の日本男児』と持て囃される存在になっていた。
 九鬼は、目の前人物は噂以上の実力を持ち、修羅場を潜り抜けていると理解できた。
 とはいえ、南条は敵ではなく、商売相手である。
 円満に契約を結ぶ事になった。


「それにしてもお若いのに大したものです」

「いえ……まだまだ精進が足らないと痛感しています」


 九鬼にはその言葉は謙遜でなく、本心で言っているのであろうと推測できた。
 若き日本男児は、隙がなく、一時も無駄にすまいと計算して動いている。
 しかし、冷静ではあるが、冷徹ではなく、血の通った温かみのある人間だと九鬼は感じた。
 九鬼は、これからも良い取引が出来そうだと確信しながら、南条と会話をし、退席した。
 取引相手が去っていった後、松岡が南条に話しかけた。


「お疲れ様でした」

「松岡……あの男、只者ではないな。
 無力な羊のように見えるが、その芯には冷たい刃を抱くような……」

「その考察はまさしく正解です。
 あの男は、唯のサラリーマンではありません」


 松岡は淡々と述べている。
 だが、言葉の下に畏怖を孕んでいた。
 南条は、松岡の言葉に興味を抱く。
 松岡はさらに続ける。


「サラリーマンよりもむしろ、私側の存在です。
 裏社会……特に少なくともアジア圏内では彼の二つ名を知らぬものはモグリと言ってよいでしょう」

「そこまでの実力があるのか?」

「正直、敵に回るならば、警護の者全て刺し違える覚悟をしても止められるかどうか……。
 ですが、基本的に敵に回ることはないでしょう。
 彼は暗殺者ではないのですから」

「そうか……」



















 九鬼は、契約を結んだ事を上司に連絡すると、帝国ホテルのパーティーに出席するように命じられた。
 普段ではありえないことであったが、九鬼はその命令を受け取った。
 なお、時間が有るので、その間は好きにして良いとの通達だった。
 そこで、九鬼はウーリの研究所へ向かった。


『………』

「ああ、旦那」

「お前が此処に来るとは珍しいな」


 丁度、石動がやってきていた。
 ラームジェルグがまるで魂が抜けたかのように、地べたに倒れている。
 石動とウーリはそれを無視してフリーダーの強化を図っている。
 無数の計器と呪術具につながれているフリーダーは眠っているかのように目を瞑っている。
 その様子を見た九鬼はあえて問い詰める事はしなかった。
 九鬼は互いの近況を語り合う。


「どうですか、最近は?」

「早乙女は……順調にサマナーの腕が上がっている。
 中国でベナンガルを仲魔にしたんだが、アメリカで色々あって幻魔『猿飛佐助』に変わった。
 さらに武器も雷神剣に進化した……思わぬ収穫だった」

「それは……良いことですね」

「逆に言えば成長せざるを得ないほど不運が身に降りかかっているわけだが。
 ……旦那も興味あるんじゃないのか?」


 猿飛佐助は甲賀の伝説的な忍びとして名高い存在である。
 九鬼は伊賀忍だが、そのことは変わりない。
 石動がそう問いかけるのも無理もない。
 九鬼は頷きながら答える。


「ええ、伊賀と甲賀……流派は違えど偉大な先達ですからねえ」

「旦那だって立派な名前が……」

「まだまだ名前負けしていますよ」


 照れ隠しなのか、視線を下に向ける九鬼。
 石動は更に続ける。


「そういえば四鬼を探しに行ったそうだが……」

「ええ、水鬼を従えられました。
 召還……!」


 九鬼の横に三つの稲妻が走る。
 九鬼配下の仲魔が現れた。
 金鬼の隣に、負けず劣らず大きな体の紫色の鬼が立っていた。
 さらにその横に山伏のような長身の天狗が現れた。


「よう、石動!」

「石動殿、私です!
 この度、修行の甲斐あって鞍馬天狗になった鴉天狗だったものです!」

「……」


 鞍馬天狗と金鬼は親しげに話しかけてくるが、紫の鬼……水鬼は、石動をじっと見ている。
 石動はそれを気にせず見つめている。
 しばらくして水鬼は、石動に声をかけた。
 大げさに手招きをしながら。


「俺は水鬼。
 へっへっへ、何もしないからよぉ、こっちに来いよ」

「解った」


 石動は、あえて水鬼の誘いに乗った。
 神速の歩法で水鬼の懐に飛び込んでいた。
 侮っていた水鬼では認識出来なく、首筋に妙法村正を突きつけられていた。
 少し力を入れただけで血がほとばしる事だろう。
 あっけに取られた水鬼だったが、大笑いした。
 石動は刀を納めた。


「はっはっは!
 親分と同じく、つかみ所のない奴だな!
 おまけに度胸もある……気に入ったぜ!!」

「だぁからいっただろう?
 只者じゃねえって」


 金鬼は、それ見たことかと言わんばかりに水鬼の背中を強く叩く。
 どうやら石動の実力を測っていたようだった。
 気に入ったようで、石動の背中を叩く水鬼。
 やれやれと石動はため息をつき、フリーダーの強化を続ける。
 しばらくしてウーリが語りかけた。


「ふむ………新たなスキルができた。
 『ディアラハン』『メディラマ』『アギダイン』『火炎高揚』『絶対零度』『氷結半減』だ。
 以前の『紅蓮真剣』『銀氷真剣』『サマリカーム』『吸血』と随分スキルが増えたな」

「アンタのお陰だ」

「短期間でよくぞ此処まで強くなったものだ」


 ウーリが手放しで褒め称えた。
 通常の育成より遥かに遠回りにも関わらず、順調に強くなっていたからだ。
 だが、石動は首を横に振った。


「……それでも二対多数となると骨が折れる」

「フリーダー君も成長しました。
 石動君もまた一段と伸びてきていますし」


 九鬼の言葉を聞き、フリーダーが答える。


「私がどれくらい強化されたのか……あまり実感していません。
 マスター、次に備えて、スキルの調整をお願いします」

「ああ、解った……旦那すまないが……」

「ああ、かまわないよ……そろそろ、私もそろそろホテルに向かわないといけないからね。
 では、私はこれで」

「九鬼様、ごきげんよう」


 そうして、九鬼はウーリの研究所を去っていった。
 石動は再び、フリーダーの調整の為に作業に没頭した。
 次なる闘いのために。












 帝国ホテルのパーティーが開催された。
 南条コンツェルン主催ではないが、南条や九鬼も参加していた。
 南条は、南条コンツェルン次期総帥らしく堂々とした立ち振る舞いを行っている。
 周りには人だかりが出来ており、それらに丁寧に応対していた。
 一方、九鬼は慣れない場所に呼び出され、疲労して会場の隅に休んでいた。


「こういう場所は慣れませんね……。
 三日三晩走り続けるほうが楽ですね。
 それにしても……私が行くようにといったからには何かが起こるのでしょうかね?」


 上司の言葉を考えながら水を飲む九鬼。
 酒は飲まない……緊急事態に対応できなくなる可能性があるからだ。
 気の休まらない時が続いていた。
 そうしてしばらく時間が経過した時、張り詰めた空気を感じた。
 突然、銃器を持った三十名ほどの人間が入り込んだ。
 黒い動きやすい戦闘服にさまざまな種類の銃器が装備され、人相を隠す為かガスマスクが装着されていた。
 銃声が響き、来客の大半はパニックで逃げまとう。
 そうして乱入犯以外に残ったのは南条、松岡と九鬼、そして逃げ遅れた数名の女性だけであった。
 松岡は襲撃した人間が雇われ者の流れの傭兵だと判断した。
 九鬼は南条に犯人達を刺激しないよう、直接話さずにモールス信号で会話を行う。


『貴方も残っていたのですか?』

『……他の人々を逃がしているうちに逃げそびれましたよ。
 それに……俺の感覚が何か引っかかるモノを感じたので、都合がいいのですがね』


 その会話に松岡が入る。
 危機的状況にも関わらずこの忠実な部下の表情は変化していない。 


『わざわざ危険な所に身を投じるとは……
 仮にも南条家の未来の当主にあるまじき事ですな』

『まあ、私のほうは上司はコレを見越して寄越したのかもしれませんので。
 此処は一つ、協力しましょう』

『それは心強い。
 圭様をお守りしていただきたい』

『俺よりも逃げ送れた者の安全をお願いしたい。
 よろしいですか?』

『ええ……』


 しばらくして、護衛を二人連れた女性が現れる。
 おそらく、この犯行のリーダーなのだろう。
 リーダーらしき女性は派手なドレスを纏っているが、美人ではない。
 さらに、高慢そうな態度が醜さを助長している。


「オホホホホホ。ごきけんようみなさま!!」

『奴は……』

『知っているのですか、南条さん?』

「無様ですわね、南条圭!
 この松平美知恵に与えた屈辱は忘れませんわよ!!」

「経営の何たるか解らぬ痴れ者である事を言ったのが悪いのか?」


 あえて尊大に語る南条。
 後に彼は九鬼に彼女について次のように語っていた。
 松平美知恵……旧華族の名家であったが、経営が困難になり、美知恵を嫁にする条件で南条家に融資を申し出たが断られたのだった。
 南条は松平家の経営能力のなさから断ったが、それを逆恨みしていたそうで、一家離散し、消息が不明であった。
 (もっとも、女性としても南条にとって琴線にふれることはなかったそうだ)
 融資や資金援助の件は日常茶飯事であり、記憶力のある南条ですらすべて記憶する事はできないほどだ。
 しかし、南条は松平美知恵の印象をよく覚えていた。
 なぜなら松平美知恵の姉・美智子を知っているからだ。
 エルミン学園に通っていた松平美智子(美知恵は別の学校に進学した)……かつて聖エルミン演劇部伝統の『雪の女王』という演目の主役を演じた。
 「雪の女王」は、仮面をつけて演じる習わしだが、「雪の女王」役の生徒が次々と変死しており、彼女も例外ではなかった。
 そして『雪の女王』に取り込まれ、当時、 「セベク・スキャンダル」事件に巻き込まれていた南条は、学園を凍らせた『雪の女王』とも戦った。
 その時、美智子は『雪の女王』のしもべとして敵対し、南条はそれを撃破したのだった。
 閑話休題。
 美知恵は蔑むような視線を南条に送る。


「オホホホホホ。
 今となってはアナタは子犬も同然!!
 ワタクシに殺されるより、ワタクシのペットになりませんコト? 」


 高慢極まる美知恵の発言であった。
 それに対して、松岡は呆れるかのように首を横に振っていた。
 南条は冷然として口調で返した。


「断る……この南条圭、人後に立つ真似はしない。
 ましてや、社員を抱えながらも無責任な経営をするような愚物の愛玩動物には断じてならん!」

「な……キイイ!
 こ、この美知恵がせっかく、せっかく、な、情けをかけてやったというのに!
 フ、フン!
 下々の者に、このワタクシの偉大さを理解しろというのがムリな相談だったわけね。
 …いいですわ、南条圭。
 一匹残らずワタクシの手で壊してさしあげますことよ…。
 おい、アナタ達!
 まずはこのうだつの上がらない底辺な男と南条の部下から殺しなさい!!」


 そう美知恵が言ったとき、一人の目つきの悪い、不健康そうな傭兵が懐から札束を取り出して、美知恵に渡す。
 傭兵は、背中に忍者刀を背負い、身軽な装備をしている。
 美知恵は不機嫌そうに聞いた。


「どういうことですの、テュルゴーさん?」

「仕事と聞いたがよ……こんなくだらない事をする為に雇われたんじゃない。
 ましては唯のサラリーマンを殺せだの……だから辞める。
 コレが違約金だ」

「……後悔しないことね!」

「おい、帰るぞ!!」


 彼の部下らしき人間が五,六人おり、彼らもそれに習い、違約金を出して部屋から出た。











 傭兵達は、ホテルの地下から脱出して大型車に乗り込む。
 全員がガスマスクを外し、大きく新鮮な空気を吸った。
 テュルゴーの顔は真っ青になっている。
 手もしばらく痙攣していた……それは疲労ではなく、恐れによって生じたものであった。
 しばらくしてから不思議に思った部下が声をかけてきた。


「兄貴らしくないぜ?
 気が進まない仕事でも確実な仕事なら進んでやるのに」

「馬鹿……!
 ……アイツはダメだ!」

「兄貴のカンって奴ですかい?」


 このテュルゴーは優秀な傭兵にしてサマナーであるが、特に優秀なのは危機察知のセンスがあることだ。
 普通の人間が絶対察知できない危機に対して吐き気を感じるくらいである。
 部下達はその神がかり的なカンが正しい事を知っており、実際幾度も彼らを救っていた。
 その彼が顔色を悪くして語っている……。


「あのサラリーマン……『ミスト』だ」

「!?
 う、嘘だろ、兄貴!?
 あんな平凡そうな……!!」


 皆、動揺が走った。
 特殊部隊を相手にする時に匹敵するほどの衝撃が走っていた。
 テュルゴーは話を続けた。


「アフリカで小国を分捕ったテロ組織があっただろ?
 俺も仕事になると思ってやってきたが……既に壊滅させられていたんだよ、アイツ一人で。
 その時、俺はアイツの顔を見たんだ」

「ま、マジかよ!
 幾ら烏合の衆でもアレを制圧するには特殊部隊を30名必要って言われてたんじゃ……」

「それを一人でやったんだ……解るだろ?
 噂じゃ台湾の『天道連』、南米の『鍵十字団』、アメリカの『愛の使節団』……」


 テュルゴーの語る団体を聞き、顔色を変える。


「武闘派マフィアやカルト教団じゃないか!」

「そう……それをたった一人で潰す化け物だ。
 改めてみて、思ったぜ。
 アレに喧嘩を売るのは狂気の沙汰だ!」

「あ、兄貴がいうから本当なんだろうけど……人は見かけによらないんだなあ」









 
  








 傭兵は、アサルトライフルを九鬼につきつける。
 目の前の人物が羊の皮を被った狼とは知らずに。


「へっへっへ、悪いな、おっさん」

「一つ言っておきます」

「はぁ?」

「私は28ですよ」


 九鬼はそう言うと傭兵の視界から消える。
 その異様な事態に左右に視線を向けた。


「ど、どこだ!?
 うぐっ!!」


 九鬼に背後に回られ、手刀を落とされ、昏倒する。
 松岡はすぐに銃を拾う。
 南条に特殊警棒を渡し、松岡はアサルトライフルを発砲した。
 たちまち数人の肩を撃ち抜く。
 慌てて反撃に移る傭兵達。
 九鬼は隠していた手甲型COMPを起動させながら移動していた。


「油断大敵です。
 召還!!」


 人質を守るように四体の悪魔が召還される。
 鎧武者の義経、修験者のような鞍馬天狗、そして四鬼である、金鬼と水鬼。
 一騎当千の精鋭たちであった。


「義経と金鬼は人質の護衛を」

「よかろう」

「ま、俺様の力を頼るなら当然か」


 義経は簡潔に、金鬼は自慢げに答える。
 さらに指示を飛ばす九鬼。


「水鬼と鞍馬天狗は敵の打倒を」

「ハッハッハ、いいぜぇ。
 合法的に弱いもの虐めできるのは楽しみだぜ」

「承知しました、大殿!!」


 舌なめずりするように棍棒を構える水鬼に、忠義を尽くさんとする鞍馬天狗。
 それを見た南条は驚いた。


「こ、これは……」

「圭様、彼は現代に生きる忍びにしてデビルサマナーです。
 デビルサマナーとしての方はともかく、私にとって忍びのほうである彼の方ならよく知っています。
 彼は四代目『霧隠』服部才蔵……伊賀の上忍です」


 松岡は淡々と説明した。
 戦国末期、伊賀の忍びは徳川家に仕えていた。
 だが、ただ一人、豊臣……いや真田幸村に仕えた伊賀忍がいた。
 それが初代『霧隠』。
 徳川方の大名達を翻弄した稀代の忍であり、『真田十勇士』として名高い存在であった。
 しかし、彼の活躍を持ってしても末期的だった豊臣家を救うことは不可能であり、結局は幸村と豊臣家は滅んだ。
 『霧隠』は、真田幸村が討ち死にした後も生き残り、伊賀の里に戻り天寿を全うした。
 その卓越した能力は、伊賀随一と言われており、それゆえ名を継ぐ事は難しい。
 初代が没して300年間で二人しか継ぐ事が出来ず、4代目が生まれるまで百年以上空位であったことからも困難であった事が伺える。
 同じく、甲賀で随一の忍び『猿飛佐助』、歴代の風魔の頭領に冠する名である『風魔小太郎』よりも名を継ぐのが困難であった。
 なお、佐助の方が優秀でないという意味ではない。
 『霧隠』の性格が捻くれており、その試練がより困難であっただけである。  
 南条も驚きながら警棒を構える。


「デビルサマナーか……噂に聞いていたが実際に見たのは初めてだ」

「圭様、くれぐれも不覚など取らぬように」

「解っている、松岡。
 いくぞ……ペルソナ!」


 青い身体の人型の幻影が南条から現れ、神速の拳が傭兵の一人に打ち込まれる。
 その強烈な一撃を受けた傭兵は、胃液を吐きながら昏倒した。
 降り注ぐ銃弾から人質を守る金鬼が呟く。


「やるな……!
 それにありゃあ、愛染明王だな」


 愛染明王。
 密教特有の尊格である明王の1つであり、キューピッドと同じ原型を持っているといわれている。
 『煩悩と愛欲は人間の本能である。
  これを断ずることは出来ない……むしろこの本能そのものを向上心に変換して仏道を歩ませる』
 とする功徳を愛染明王は持っている。 
 本来は、一面六臂で他の明王と同じく忿怒相であり、頭にはどのような苦難にも挫折しない強さを象徴する獅子の冠をかぶり、叡知を収めた宝瓶の上に咲いた蓮の華の上に結跏趺坐で座るという、大変特徴ある姿をしている。
 また、天に向かって弓を引く容姿で描かれた姿や、双頭など異形の容姿で描かれる事もある。
 「恋愛・縁結び・家庭円満」などを主につかさどる。
 南条がペルソナ能力者であることに驚く九鬼だが、すぐに他の敵へ攻撃を開始する。
 松岡は、九鬼や南条の援護射撃を行う。
 水鬼は冷気を撃ち出し、鞍馬天狗は風の弾丸を発射する。


「オラオラ!」

「成敗ッ!!」

「うああ!!」


 敵は、銃弾を発射するが、九鬼は尽く避け、金鬼は平気な顔で受ける。
 その奇怪な光景に驚き、更なる動揺が生まれる。
 そこに付込まない九鬼たちではなかった。
 義経は地面に手をつくと壁が生まれ、銃弾を撃った本人にそのまま撃ち返す。
 


「ぎゃああ!!」

「凡愚が」


 反射した銃弾をまともに受け、戦闘不能になる傭兵。
 それに対して、冷たく嘲るように義経は言い放つ。
 一部の傭兵はサマナーだったらしく、彼らは悪魔召還を行い、悪魔に人質を取るように命じた。
 だが、そこに金鬼の豪快な一撃で纏めて打ち倒す。


「弱いぞ!!」

「ギャア!」


 壁に叩きつけられ、気絶をするサマナー。
 もはや大勢は決した。 
 形勢が逆転され、残った傭兵達は逃走を図ろうとしたが、美知恵がカードを取り出した。


「『ネメシス様』…ワタクシを守る鎧となり!
 『ネメシス様』…アイツらを滅ぼす剣となれ!
 来れ!『ネメシス』!!
 ワタクシの元に!
 『ネメシスパワー ビルドォアァップ!』」


 カードが輝き、美知恵を包み込む。
 カードに描かれた美しい女神の姿に変化した。
 金髪の髪に槍と盾をもった姿は美知恵とは異なっている。
 美知恵は電撃を飛ばし、逃げようとした傭兵達を感電死させた。
 南条の目が細くなる。
 美知恵は高慢な口調で言い放つ。


「敵前逃亡は、死あるのみですわ!!」

「外道め……!」

「オーホホホホホホッ!
 神条様から頂いた力!!
 こーれがワタクシの本当の姿よ!
 ビューゥチィホォーッ!
 アァーンドォエェレェガァーントォッ!!」

「自分の醜さに目をそむけるとはな。
 『姉』と同じく……な」

「おだまりっ!!」


 南条の一言に怒鳴り散らす。
 何条は、無駄に命を散らせる美知恵のやり口に怒りをもったようだ。
 九鬼も同様だったらしく、やんわりと言い放つ。


「部下に見捨てられるのは自業自得ではないでしょうか?
 それに部下に対する仕打ち……感心できませんねえ」


 その言葉の内に冷たい怒りが篭っていた。
 同時に美知恵の力は、原野の能力と同質のものであると分析した。
 原野はその力を道具として発現しているが、美知恵はギリシア神話の中で復讐の女神『ネメシス』と融合しているようだ。
 愚鈍な美知恵は、九鬼の怒りに気がつくことなく言った。


「オーホホホホホホッ!
 愚鈍な民衆はワタクシに従えばよろしいのです!」

「……貴様は部下を無駄死にさせている。
 部下を殺すならもっと上手に殺しなさい」


 松岡は、冷たく言い放つ。
 金鬼は面倒臭げに言い放つ。
 彼女に対して良い評価を下すものは誰もいない。


「俺はこんなブスが生まれたら間引きするな。
 もっとジェシカみたいないい女と仕事するほうがいいなぁ!
 あと、同じ小娘でも早乙女のお嬢ちゃんのほうが面白いぜ!!」


「キイイイイッ!
 うるさいッ!うるさいッ!!うるさいですわッ!お黙り!!
 つまり何?
 アンタ達は世界一美しいワタクシが劣っているというの??
 この美しいワタクシが??
 なんてこと??
 おォ!!おおォッ!!
 やはりアンタ達のような犬コロ風情に、ワタクシのたてた素晴らしい美貌はハイブラウすぎましたのね!
 おォォお!おゥッ!!
 やはりこの部屋に入った時点で皆殺しにしておくべきでしたわ、おおおおゥッ!! 」


 温厚な九鬼ですら、呆れ果てる戯言を言い放つ美知恵。
 南条はそれを一喝する。


「戯けが!!
 貴様のような外道、どうあっても許せん!」

「キイイイイイ!!
 おダマり!おダマり!おダマり!
 アンタ達の、そのこまっしゃくれた顔ォッ、そぎ落としてくれましてよッ!」


 美知恵が腕を掲げると、死体達が起き上がる。
 悪魔の力の性であろうか?
 少なくとも、美知恵には呪術を修められるほどの技量があるか問えば疑問である。
 そのおぞましい光景を眺め、瘴気に当てられ気絶する人質達。
 こうして戦闘が再会された。


「痴れ者が!そこを退け!
 ペルソナ!!」


 愛染明王は、破魔の光を降り注がせた。
 ゾンビ達は怯む。
 屍鬼達は、例外なく破魔の力に弱い。
 更に水鬼が凍らせ、そこから二度と動かぬように金鬼の一撃で粉砕する。
 鞍馬天狗も南条と同様に聖なる光を放つ。
 九鬼と義経は、美知恵に連続して攻撃を打ち込む。


「ぎゃああ!
 よくも……!
 こうなったら!!」


 美知恵は、南条に向かって光を放つ。


「……ペルソナが出ない!?」

「オーホホホホホホッ!
 そのペルソナは封じましたわよ!
 それさえなければ無力な子犬ぅ!!」


 たしかに、南条の現在使えるペルソナは一体だけだ。
 さらに美知恵は言う。


「この神条さまから頂いた力は、脆弱な人間を操る能力がありますの!
 南条コンツェルン次期後継者という孤独で嫌われる貴方では耐えられなくって?
 オーホホホホホホッ!」

「それは違う」

「ひょ?」


 ペルソナを封じられても南条の精神は揺らがない。
 圧倒的な精神力は美知恵を黙らせる。


「確かに昔の俺ならば結果は違うものだったかもしれん。
 日本一の意味が解らず、煩悶していただろう。
 ……確かに、俺の行く道は奇麗事では済まん」

 
 南条の脳裏には、自分を支え、忠義を尽くして逝った者や共に大きな困難に立ち向かった友がいた。
 友との友情は、たとえ距離や時間があっても色あせる事のないものであった。
 南条は、上段に刀を構えた。
 その美しさ、威厳は美知恵では到底持ち得ないものであった。
 無意識に美知恵は後退していた。
 南条は更に言った。
 
 
「だが、今は違う。
 どこまでも、正しいと思うことを貫き通す。
 南条圭のまま、な……」


 その言葉に信じられぬ表情をする美知恵。
 中身のない、空虚な彼女には理解できない事であった。


「認めない!
 ワタクシに従わない存在はみとめなぁい!!!」

「圭様!!」


 松岡が思わず叫ぶほどの美知恵の鋭い突きが放たれた。
 だがそれは、身体能力が上がろうとも所詮素人の技。
 南条はそれを容易く受け流し、美知恵の肩に一撃を打ち込む。


「ぎゅああああ!!」

「電光石火、変幻自在の南条一刀流……しかと見よ!」


 それは、日本一の男児になるべく鍛え続けた剣。
 力に溺れた者は、力を磨き続けた者には決して勝てないという真理を示している。
 南条のペルソナを拘束していた力が消えた。
 だが、往生際が悪い彼女は、零距離から魔法を放とうとする。


「しねえええええ!!」


 だが、南条に恐怖はない。
 松岡が無数の銃弾を撃ち出す。
 軍隊経験があるのか、正確に標的を撃ち抜く。
 大きく吹き飛ばされる美知恵。
 さらに九鬼が追い討ちの連撃をかけ、止めとばかりに義経が太刀を振り下ろす。
 ダメ押しとばかりに南条は、愛染明王の鉄拳を美知恵の顔面に叩き込んだ。


「ぎゃああああ!!」


 美知恵は壁に激突した。
 その現実を彼女は認めなかった。
 駄々っ子のように、地面を叩く。


「わ、ワタクシが、ま、負けるなんて!
 そんな!…そんなことが!!
  それも!よりによってこんな人間風情に…おぉ!?
 どうしてなんですの?おぉ!!
 おおォおゥ!! 」

「見苦しい……」


 寡黙な松岡が思わず言葉を漏らす。
 同時に変身が解け、醜い顔が露になった。
 更に南条も言い放つ。


「やかましい女だ。
 貴様が負け、俺達が勝ったのは曲げようのない現実。
 貴様の見苦しい顔をさらに醜くして騒いだところで、この現実は変わらんのだ。
 敗者は敗者らしく、さっさと俺達の目の前から消えるがいい…。
 いや消えてくれ。頼むから」

「待ってください。
 その前に聞くことがありますので。
 その力を与えたのは誰ですか?」


 南条の言葉に待ったをかけたのは九鬼であった。
 本当に疲れた顔をした南条だが、その意見はもっともだと納得した。
 ダメで元々と思って質問したが、思わぬ言葉が返ってきた。



「キイイイイイイ!キイイイイイイイイイイ!!
 なんて!なんて!!なぁんて!!!
 自分勝手でヒドイ人間どもなの!!アンタ達は??
 7人がかりでよってたかって、何もしていないワタクシをいぢめて勝ち誇るなんて!!
 そう!人間なんていつもそうなんですわ!
 アンタ達も! ワタクシの部屋の壁にその醜い顔をさらしている、昔、理由もなくワタクシをいぢめたヤツらもね!
 アンタ達に理解できる?
 ありあまるお金にモノをいわせてサークルの部長の座を手に入れたり!
 あこがれの先輩の横で、彼女ヅラしてるヤな女を退学にしてやったり!
 教授を買収してワタクシの成績に少々イロをつけてもらったりしただけなのよワタクシは!!
 なのにクラスの馬鹿どもは、か弱いワタクシを罵りカゲ口をたたきツマはじきにしたわ…。
 そんなワタクシにやさしく手を差し伸べてくれたのは「豹頭の天使」と神条様だけでしたわ!
 ワタクシの悲しみを!
 不幸をわかってくれたのは、あの人達だけだったんでしたのよ!
 ねぇ?何の権利があって人間達は、このかわいそうなワタクシをいぢめるの??
 美知恵…まったく理解できませんわ!」

「……」

「なんじゃこりゃ?」

「それはひょっとしてギャグを言っているのか?」


 美知恵のあまりの珍言に頭を抱える義経。
 水鬼は信じられない生物を見た顔になり、金鬼も処置なしと肩をすくめる。
 九鬼はその中の言葉に大きな引っ掛かりを得たが、松岡もまたポツリと『世も末か』と呟いた。
 鞍馬天狗や南条に到っては激昂していた。


「この戯けが!!
 親の顔が見てみたいわ!!
 まったくおかしいぞ!!」

「それは…全面的に貴様が悪いんだろうが!!
 姉も同じ戯けた事を吐いておったが…。
 貴様…本当にそれが理由での悪魔の力を得て、このような犯行に及んだのか?
 あきれて物も言えん!!」

「キイイイイッ!!!
 この涙なしでは語れない、このワタクシの悲しい過去を聞いても、まだワタクシをバカにできるの?
 美知恵信じられませんわ!
 もうよろしくってよ!!
 しょせんアンタ達のような心の貧しい者に、ハイソなワタクシの悲しみを理解しろというほうが無理な相談だったようですわね!
 フン!もういいですわ!!今回だけは、アンタ達の勝ちと言うことにしておいてあげましてよ!!」


 そう言って腰につけた宝石を握ると、魔法陣が現れる。
 勝ち誇るように笑う美知恵。
 その様子に南条は叫ぶ。


「まさか……逃走するつもりか!?」

「ただ覚悟しておくことですわ…。
 ワタクシの心に渦巻くアンタ達への復讐の念が、今再び時をへて満ちた時!
 ワタクシはアンタ達に、また地獄を見せてさし上げますことよ!!
 おぉーぼえてらっしゃい!!
 ワタクシは何度でも何度でもアンタ達の前に現れましてよ!
 その時を楽しみにしておくことね!!
 ではごきげんよう!
 オーホホホホホッ!オォーホホホホホホホホホッ!」

「大殿、南条殿、離れて!!」


 術理に精通した鞍馬天狗はその異変にいち早く察し、警告した。
 その言葉に皆が飛びのいた。
 石から幻影……禍々しいペルソナが飛び出してきた。
 同時に石が爆発した。
 美知恵の四肢が飛び散り、首がテーブルの上に落ちた。
 松岡は、その様子を見て呟いた。


「どうやら、相手はこのような無能を飼うつもりはなかったというわけか」

「そのようですね……豹頭の天使ですか。
 石動君、君の敵はまた何か企んでいるようですよ……」


 南条は険しい表情をしていた。
 信じられぬものを見たかのように。


「あのペルソナ……まさか。
 いや……そんなはずはない。
 奴は、確かにあの時倒した……」


 事件は解決したが、また新たな災厄が生まれる予感が漂っていた。









 あとがき。 

 オセはまだまだ健在だ!!
 というわけで、今回のゲストは『なんじょうくん』にその部下『松岡』。
 松平美知恵はオリキャラです……といってもペルソナ1の美智子の妹という設定で性格も姉と同様、アレです。
 ぶっちゃけ、台詞も同じような部分も。
 そして神条さん登場!!
 謎の敵ですね~(わざとらしい)
 第2期の敵は最初は存在せず、小話ばかりだったはずなのに~。
 第1期が終わるころにはプロット組み立てているうちに大きく変わった……第一期のラスボスがアレだし、丁度良いのかもしれない。
 ニャル様登場した為に中ボスが現れた!
 お陰でオセが陰謀専門にならずに済み、蠅本の主に(ある意味相応しいと思う)。

 九鬼さんの過去が現れました。
 ……どこのサラリーマン忍者だよ!
 ともかく、部下の鴉天狗はとうとう鞍馬天狗に。
 そして四鬼の一角、水鬼が仲間に。
 後一体、隠形鬼が仲間になる予定です。
 風鬼?
 鞍馬天狗と属性が被るので、早乙女あたりが引き取るでしょう……遠い未来に。


 解説役のテュルゴーは、BUSIN0の忍者テュルゴーから。
 どうしようもない危機を感じると吐くという危機察知の才能を持っている人です。
 

 次回は長らく放置していた魔人の追討編です。


 



[7357] 第2期 第12話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/27 03:31

 ニュクスの店で酒を飲む石動。
 いつもと同じく、サマナーや悪魔が集まる憩いの場であった。
 モー・ショポーは店員のシルキーと遊んでいた。
 ここまでは平和だった……そう、ここまでは。
 始まりはある客の来店だった。


「石動いる~?」

「ジェシカか?」


 仲魔探しの旅に出ていたジェシカが帰ってきたのだ。
 満足そうな顔からして目的を果たしたのだろう。
 彼女の隣に黒髪で長身の美女がいた。
 赤い唇に、美しい肢体、そして誰もがうらやむ美貌がそこにはあった。
 ただ美しいのではない……知性と威厳に満ちた女性がそこにあり、男性達は注目していた。
 女としてジェシカは少し悔しいという気持ちが滲んでいたが。
 石動は、美女の発する気に反応した。


「……」

「流石ね」


 石動以外には気がつかないほどの微かな殺気だった。
 それを見た美女は満足げに頷き、親愛の微笑みをしながら石動に近づいてくる。
 

「ダメー!!」


 それを見ていたモー・ショポーが飛び出した。
 ちょうど女性の胸元に飛び込み、少女は、豊かな胸の中で溺れてしまう。
 しばらくして、漸くモー・ショボーは、抜け出した。
 危うく窒息するところだったようだ。
 モー・ショポーが女性の美しい顔と豊かな双丘を交互に凝視する。
 そして……


「ま、負けないモン!!」


 敗者となったモー・ショポーは逃げるように去っていった。
 何に負けたかは、不明だが。
 女性と石動は、不思議そうな顔をした。
 しばらくして女性は、石動に視線を戻す。


「うむ、類稀なる剣の腕をもっていそうだな。
 『馬鹿弟子』と違って求道者で、真面目そうだ」

「少しばかり腕に自信がある程度だ」

「これ以上の謙遜は嫌味になる。
 ……そこッ!」


 微笑む女性だったが、突然表情を変える。
 女性は腕を一閃した。
 店の奥にあったダンボール箱に槍が突き刺さる。
 厳しい声が店の中に響く。
 

「出て来い、そこにいるのは判っている」

『……何しやがる糞婆ァ!!』


 いつの間にか、ダンボールの中に隠れていたラームジェルグが飛び出す。
 それを女性の容赦のない鉄拳が見舞う。


『ぐべっ!』

「お前は!
 相変わらず!!
 不真面目な!!!
 奴だな!!!!!!」

 
 美しい美女から想像もつかない拳の雨が降り注いだ。
 彼女は、ラームジェルグに岩をも砕かんばかりの連撃を与え、その惨劇を見た周りの客がひそひそと話し始めた。
 最初は、声をかけようとする男達だったが、今はそれを行う勇者はいないようだった。
 粛清劇でテーブルや椅子が破壊されていく……店主であるニュクスは頭を抱えた。
 そこに、ジェシカが恐る恐る仲裁に入った。


「まあまあ……。
 コレが弟子?」

「そうだ……おい、馬鹿弟子よ。
 戻れるか?」

『きゅ~』

「ああ、戻せる」


 石動はMAGを注ぎ込み、ラームジェルグはクー・フーリンに変化した。
 それをみた女性……女神『スカアハ』は満足げに微笑んだ。


 ケルトの女神『スカアハ』。
 若き英雄たちに試練を与える影の国の女王にして戦いの女神。
 彼女はたくさんの弟子がいたが、彼女に弟子入りするだけでも様々な試練を乗り越える必要があった。
 影の国は荒れ果てた平野を横切り大森林を抜け荒海を渡り谷に掛かる「弟子の橋」を飛び越えてようやく島にたどりつく事が出来る。
 最後に頑固な七つの城壁と門に待ちかまえる蛇や魔物の群れを突破して漸くスカアハの元にたどり着くことが出来る。
 クー・フーリンが数々の難所を潜り抜けながら影の国に来たことに賛嘆した彼女は、クー・フーリンの師となった。
 彼に奥義の数々を伝授した……それも他の弟子にすら伝授しなかった事まで。
 彼にゲイボルクを与えたのは彼女だ。
 ジェシカは、ラームジェルグの正体に驚きながらワインを飲み干した。


「まさか、このゲームオタがクーフーリンとはね~」

「分離した方には頻繁にあっているが……。
 あれは上品すぎる。
 思わず『この偽者が!!』と口が滑りそうになるくらいにな。
 まあ……この馬鹿に改めて会うとあっちのほうがマシだったと感じるわ」


 スカアハは、容赦なく気絶したクー・フーリンを踏みつける。
 彼女は、闘鬼の方のクー・フーリンの存在を察知し、現世に舞い降りようとした。
 その時、彼女は、偶然ドリー・カドモンを発見した。
 彼女は丁度良いとばかりにドリー・カドモンに乗り移って現界した。
 その後すぐに、ジェシカに出会い、意気投合して仲魔になったらしい。


「お前も弟子にしてやろう」

「生憎、俺は流派を持っている。
 だから教えを受けて取り入れる事はあっても受け継ぐことにはならないが……」

「……ならば弟子にならなくてもかまわん。
 手取り足取り伝授しよう。
 その代わり、この国の武術を教えてくれ」

「交換条件か……いいだろう。
 ではよろしく頼む」


 その威厳の中に極上の色気を感じた石動。
 彼女は綺麗な手を差し出した。
 若干の戸惑いを感じたが、顔には出さずに握手に応じた。
 それに気がついているクー・フーリンは呟いた。


『化石婆のどこがいいんだ…?』

「聞こえているぞ!」

『あででででで!!』

 
 スカアハは、再会した弟子を正座させて説教を開始した。
 それを微笑ましく見ていたジェシカだった。
 石動は思い出したかのようにいった。


「そういえば……近々、零課で魔人退治を行うそうだ。
 俺は手伝うつもりだが……お前も来るか?」

「そうね~。
 危険だけど報酬も多そうだからやろうかしら?」

「そうか。
 敵は、魔人『時の翁』。
 時間を操る能力を持っている……」


 収拾した情報によると、魔人の中で上級の実力があり、強力な魔法を操る。
 以前、石動と平行世界のライドウは、戦闘後に現れた魔人から攻撃を受けて危機に陥った事もあった。
 魔法以上に時間を操る能力が厄介である。
 時を止めて移動することができ(停止中には相手にダメージを与えられない)、時間を歪ませる事によって、過去に戻す事ができる。
 過去の死に掛けた時の状態になった時は一気に危機に陥ることだろう。
 ジェシカはそれを聞いて考えた。


「時間停止のほうなら何とかなりそうね」

「そいつは何より。
 俺もフリーダーの強化に専念するとしよう。
 おい、行くぞ!」

『きゅ~』











「ん?」

 
 石動がウーリの研究所に来た時、研究所から出てきた青年……いや少年がいた。
 十七、八歳位だろうか?
 端正な顔立ちの青年がいまどきのファッションで身を固めていた。
 研究所で今まで見なかった顔だったが、石動はその青年が印象に残った。


「まるでこの世にあらざる存在……か?
 どこか不安定な印象だが…」


 気絶しているラームジェルグを引き連れて研究所にやってきた。
 ウーリがいつも通りに出迎える。


「来たかね」

「ああ。
 さっきの奴は何者だ?」

「ああ……ドリー・カドモンを取り寄せて今までにない造魔を呼ぼうとしたんだがね。
 来たのがアレだったのさ。
 本来ならこの世に存在しないはずのペルソナ使いだそうだ」

「ほう……」

「目的がないらしいから、衣食住に娯楽・給料も提供する代わりに雑用・護衛をやらせている。
 意外に強いペルソナを持っているからな、重宝している」

「……少年のことについて、今度詳しく聞かせてもらう。
 本人にな」

「小生意気な小僧だから取り扱いには気をつけろ」



 石動は、そう言ってフリーダーの強化を開始した。
 その後、九鬼が現れ、九鬼の新しい仲魔を披露したが、結局最後までラームジェルグは目覚めなかった。




[7357] 第2期 第13話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/27 09:55
 その日、公安零課は、多くのフリーのサマナー、もしくはヤタガラス所属のサマナーを集めた。
 超国家機関・ヤタガラスも魔人を野放しにするつもりはないようだった。
 作戦はシンプル。
 魔人は一定の法則に従って移動している。
 それを逆手にとって、予め網を張って襲撃する……それだけである。
 もちろん、倒せるとは限らないし、逃げられる可能性が高い……しかし、数段構えの布陣で臨めば済むことだと公安零課・課長の風間は判断した。
 石動は、配置場所で待機している。
 建設中の高速道路が彼らの配置場所だ。
 石動の他には、フリーダー、リャナンシー、シルフ、そしてスカアハがいた。
 ジェシカは、配置場所から離れたところに待機している。
 早乙女は、学期末テストを受けており、今回は参加しない。
 スカアハは、石動に話しかけた。


「問題はないのか?」

「そうだな……わざと囲みを薄くして退路を作っているからな……大丈夫だろう。
 俺の前は……確か、キョウジや雷堂(平行世界の十四代目)とかいるからな。
 運が良けりゃあ、俺達の出番無しで終わるかもな」

「ならば良いがな」

「まあ……オセからの刺客らしいからな。
 倒されて欲しいもんだ」


 石動は、そう心から願っていた。
 その言葉に疑問をもったスカアハが話しかけてきた。


「どういう意味だ?」

「堕天使オセとは因縁があってな。
 今回の魔人は奴が呼んだらしい。
 それにメシア教団に魔人を呼ばせて俺を殺そうとした。
 いや、実際、魔人ホワイトライダーに殺されたんだがな」

「!?」


 スカアハは、目を丸くした。
 彼女でも現代において死んだ後、すぐに生き返るという離れ業が出来る者はいないものだと考えていたのだろう。
 フリーダーは、あの時の話題を口にされて拳を握った。
 自分がまともに動けなかった新月時に襲撃され、守れなかったからだ。
 フリーダーの顔に悔しさらしきものが浮かんだ。
 石動は、笑いながら話を続けた。


「だがな……死んで、地獄を踏み越えた時、俺はまた一段と高みに登ることが出来た……。 
 その時、ある奴に聞いたんだが……俺の道は、『ロウ』も『カオス』にも組しないことが判った。
 そして……両陣営を敵に回す事になりかねないと」

「恐ろしくないのか?」


 スカアハは問いかける。
 石動は、肩をすくめながら答えた。


「まあ、難儀だな。
 だが、恐ろしさ以上に闘志が湧いている……。
 俺の剣を試すに相応しいからな。
 結局、俺は、人として、剣客として生きるだけさ」


 スカアハは、石動の言葉を微笑ましげに見ている。
 自分の弟子に似た部分があったが、その部分はスカアハが気に入っている部分だ。
 雑談するうちに空間の歪みを感じた。
 予兆は一切なかった。
 まさに突然現れたのだ。


「どうやら……」

「敵が来た様だ。
 行くぞ……」

『おうとも!
 いっくぜ~変・身!!』



 スカアハは、人間形態のままで戦うようだ(戦闘力が落ちないし問題ないそうだ)。
 石動は、ラームジェルグを憑依させ、闘鬼・クーフーリンに変化させた。
 リャナンシーとシルフは補助魔法で強化し、フリーダーはフォッグブレスを吐き出した。
 同時に、魔人『時の翁』が現れた。
 砂時計を持った翼を生やした老人の身体には無数の火傷に凍傷、刀傷等が見えた。
 石動より前の魔人討伐部隊は6つ……それらを無傷で逃れることはできはしなかった。
 ダメージの箇所を分析し、石動は声に出した。

 
「前の部隊が与えたダメージはキッチリ残っているな」

『んじゃ、ここで始末しないとな!』

「うむ……!」



 クー・フーリンとスカアハも準備が完了したようだった。
 魔人は、石動達に気がついた。
 オセから刷り込まれた為だろうか、石動に対して一段と激しい殺気を放つ。
 寄声を発しながら、無数の属性魔法を放つ。
 皆、魔法の雨を難なく避ける。


「小手調べ……といったところか。
 馬鹿弟子!」

『わかってますってば!』

「斬る!!」


 石動は、勢いよく夢想正宗を振り下ろす。
 時の翁は、砂時計で受け止めようとする。
 だが……石動は、その防御ごと切り捨てる。
 済んだ音と共に砂時計は両断された。


「!?」

「これで……くっ!!」


 腐っても魔人。
 自分の身体を切り裂かれる前に時間停止で難を逃れたようだ。
 スカアハがそこで追撃をかける。


「下郎が!!」

「……!!」


 女神の一喝とともに魔人は、槍で肩口を貫かれた。
 その時の魔人は、声無き雄叫びを発した……無論苦痛を受けたときに自然に生じるものとは異なる。
 その叫びに応えるかのごとく時空の歪みが生じた。
 魔人の意思によって、時空の流れを捻じ曲げたのだ。
 空間の歪みが消えた後に異変が生じた。
 突然、スカアハは脱力感を感じた。
 石動も同様に右肩から出血をしていた。
 スカアハは限界直後の消耗した状態まで、石動の方は、これまでの闘いで負傷した状態まで逆行したようだ。
 幸い、リャナンシーとシルフ、そしてフリーダーにはダメージはなかったようだ。
 


「回復します!
 メディラマ!!」

「いっくぞ~!!
 真空波!!」

「ショックウェーブ!!」


 リャナンシーがダメージの回復を、シルフとフリーダーは広範囲に及ぼす魔法で攻撃する。
 一方、大ダメージを受けていたスカアハだったが、彼女の槍を突き刺す力は決して落とさなかった。
 それに加えて彼女は、奥義を叩き込もうとしていたからだ。
 自身に降りかかる危機を察知した魔人は、自分が逃れる手段を検索し、導き出した。
 石動とスカアハは、同時に奥義を放とうとしていた。
 しかし、辛くも魔人は、時間の停止を行うことが出来た。
 限られた時間の中で魔人は、槍を抜き、安全地帯に逃げ込んだ。
 深く貫かれたお陰で脱出に手間がかかり、安全地帯へ逃げ込んだ瞬間に時間停止が終わった。
 反撃に出ようとした魔人は、突然、頭部に大きな衝撃を受けた。
 気がつくと、脳髄から血液が噴出していた。
 

「!!!!?」


 魔人は、何が起こったか理解していなかった。
 種明かしをすれば簡単なことだった。
 ジェシカが遥か遠くから狙撃をしたのだ。
 無論、普通ならば時間停止直後の魔人を捕捉し、すぐに狙撃する事は至難の業……いや不可能だ。
 だが……予め罠を張り、追い込んだ場合となれば話は違う。
 更に必死に包囲網を抜け出した直後となれば隙ができないはずも無い。
 さらに6つの討伐班の追撃を受けている為に心身ともにダメージが蓄積している。
 魔人は、既に死んでいたも同然だったのだ。


「止め!!」

「私の槍術を見よ!!」


 スカアハは心臓に目掛けて槍を突き、石動は首を両断した。
 飛ばされた首もフリーダーが拳を叩きつけて粉砕した。
 最強の魔人といえど、圧倒的物量の前には成す術も無く敗北するしかなかった。


 


 







 クーフーリンが合流したジェシカを労う。
 

『ジェシカ、乙』

「作戦成功ね。
 でも、あれだけサマナー動員したら……分け前減るわよね?」


 喜びの顔が一転して、苦虫を噛み潰した顔になるジェシカ。
 石動がその問いに答えた。


「そうだな……確実に。
 ただ、零課の面々はその報酬を受け取らないが、ボーナスが別に付く。
 一応公務員だからな」

「それでも民間とかクズノハ子飼いのサマナーがいっぱいいるし」



 ジェシカは、報酬が少ないことを嘆いた。
 石動の方はというと、圧倒的優位を築くのは兵法のうちと割り切っていた。
 しかし、実のところは魔人を切った事によってフリーダーの成長の糧になっている。
 つまり、大幅な得になっている。
 内心、かなり余裕を持っている現代の剣客であった。
 そんなジェシカたちの横で師弟が雑談を行っていた。


「ふむ……最初はこんなものか」

『今までが準備不足とか突発的な事態とかそういうのが多かったからな~。
 まあ、コレで安心だな』

「ふん、物事は常に最悪を想定しておけ、馬鹿弟子」

『へいへい……』


 スカアハの懸念は当っていた。
 だが、それは予想以上の事であったことは、誰もしらない。






あとがき

師匠が来た!
コレに尽きます。
魔人系の上物なのにあっさり殺された時の翁。
まあ、相手が悪かった……。
余裕があれば優秀なサマナー達を招集して袋叩きに出来るわけです。



アンケートです。

オカルトと手品……趣味にするならどっち?





[7357] 第2期 第14話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/04/29 13:54

「はい、お疲れ!!」


 監督の声で収録を締めくくった。
 TVアトラスの人気番組『ソウルの泉』の収録をこのスタジオで行っていた。。
 この番組は、女性占い士であるワンロン千鶴とオカルトマニアで有名なモデルの桐嶋英理子の二人が司会を行っており、毎回ゲストを迎えて占いやトークで盛り上がる番組であった。
 ワンロン千鶴は、30代の美女だが、未だ若々しく、20代半ばで通じるほどである。
 モデルの桐嶋と一緒に並ぶと絵になり、とても華やかな番組である。
 むろん、両者とも豊富な知識で裏打ちされているので、オカルトファンも納得の出来らしい。
 彼女達は、プライベートでも付き合いが深く、『エリー』『Chizuru』と呼び合うほどの中だ。
 周りでは、両者ともに浮いた話がないので一時期レズビアンじゃないかと囁かれていたが、両者ともはっきり否定している。


「ふう……」

「どうしたの、エリー?」


 物憂げな表情を見せていた桐嶋に優しく接する千鶴。
 桐嶋が青ざめた表情で語りはじめた。
 彼女は、人気モデルである。
 当然、大勢のファンがいるわけだ。
 だが……その中に行き過ぎたファンもおり、桐嶋を追い掛ける者……ストーカーがいた。
 ストーカーは、小柄で陰気な男性であった……もっとも、恐怖に駆られた桐嶋は滅多打ちにして追い散らしたそうだが。
 桐嶋は、その一件で心にトラウマを負ったが、最近なんとか立ち直れたと思っていたが……


「また追いかけてきたの?」

「ええ……あの時Stalkerがまた……!!!
 それに以前ほどPersonaが効かなくて……」


 陰陽道に精通していた千鶴は、ある一件で桐嶋が異能力者……ペルソナ使いだと知った。
 それ以来、様々な話を互いに行っていた。


「手加減したのではなくて?」

「いいえ……全力でNikeの一撃を入れててもすぐに立ち上がってきて……それに……」

「それに?」

「Demonのような気配がしましたの」


 直接見ていない千鶴は、桐嶋の証言だけでは断定はできない。
 一通り考えてから桐嶋に話しかけた。


「とにかく、身辺には気をつけなさい。
 いざとなったら私も駆けつけるから。
 私は、まだ仕事があるけど……エリー、これからどうするの?」

「これからYukinoと待ち合わせていますの。
 それに……」

「それに?」

「Mark……昔のFriendの紹介で相談に応じてくれる方を紹介してくれるそうですが」

「マーク……ああ、前に言った高校生の時の友人の一人ね」


 桐嶋が思い出すようにして更に続ける。


「ええ……なんでも知り合いのDetectiveだそうで、今回のような問題でも対応できるそうです。
 今回の待ち合わせは、その方に相談してもらう事になっているのですわ。
 確か、Isurugiという名前だったのですが……」

「石動……?
 まさか……あの子なの……。
 貴方と同じ年代の?」

「え、ええ……そうらしいのですが」

「そう……」


 千鶴は、最初に多いに驚いていた。
 だが、今は寂しさに満ちていた。
 桐嶋の遠慮がちな視線に気がついた千鶴は、語り始める。


「巧……彼の名前だけどね。
 巧は、私の幼馴染で弟分だったの。
 でも、彼が五才の時に両親と一緒に事故に巻き込まれて……彼だけが生き残ったの」

「まあ……」

「でもね、心に傷を負ったのか、以前のような無邪気な子じゃなくなっていたの。
 私を……いえ、皆を避けるようになっていたの。
 今思うと、彼は……何か負い目を背負った雰囲気だったけどね。
 その後、祖父に引き取られたけどすぐに亡くなられて……結局、巧は施設に入っていったわ。
 施設から出て行った後の事は……探偵をしているって事しか判らなかったの」

「……」

「彼の連絡先がわかったら教えて。
 いつか、会いに行きたいから……姉……いえ、姉なんてもう言えないけど」

「ええ……」


 千鶴は、桐嶋の手を握る。
 その手は、とても温かみのあるものであった。














「久しぶりだね、英理子」

「Yukino!!」


 桐嶋は、ある公園を待ち合わせ場所にし、そこにやって来た。
 公園で待っていた長身の女性。
 待ち合わせた女性は、意志の強い目を持ち、頼れる雰囲気を持っていた。
 彼女は、動きやすいパンツとジャケットを着ており、肩にはカメラケースをかけていた……見たところ、カメラマンのようだ。
 彼女の名は、黛ゆきの……桐嶋の友人であり、『元』ペルソナ使いだ。


「同窓会以来だね……」

「ええ……」


 再会を喜び合っていると、一人の少女がやって来た。
 見たところ女子高生くらいの年齢だろうか?


「あの……依頼人の桐嶋さんですよね?
 私は、先生……じゃなかった所長の代理、早乙女さくらです」

「代理?」

「実は、飛び込みの仕事があって……今日中には片付けるそうなので。
 それで私が話を聞く事になったのですが……何か問題でもありますか?」


 不安げに見る早乙女を優しく微笑む桐嶋。


「No Problem.
 Markの紹介だから問題はないでしょうし」

「稲葉さんとはアメリカで出会ったんですよ。
 その時も、先生……所長と一緒にアメリカまで依頼を受けにいっていて」

「弟子ねえ……若いのにもう自分の道を決めているんだねえ」


 黛は、遠くを眺める。
 彼女は、カメラマンの道を志していた
 そしてカメラの師匠であり、恋人である男性の事を思い浮かべる。 
 黛は、高校生なのに探偵の弟子入りをした早乙女と境遇を重ねているのだろうか?


「目標もって励むのは良い事だよ。
 がんばりな……。
 私は、黛ゆきの……桐嶋の友達さ。
 『ゆきの』でいいよ」

「もしかしてペルソナ使いなんですか?」

「「!?」」


 早乙女の出した言葉に驚く。
 だが2人は、稲葉が薦めたわけだからその手の事情にも精通しているのだろうと判断して、平静な状態にもどった。


「桐嶋さんから稲葉さんと同じようなモノを感じて……ゆきのさんの方は弱い感じですが」

「それは……」

「ああ、そうだよ。
 でも私は、ある事情で能力を渡して能力は使えないけどね」

「そうなんですか……『そちら側』について立ち話するのはいけませんよね。
 それに、桐嶋さんは有名人ですし」


 そう言って早乙女は、周りをちらりと見渡した。
 黛は、少し考えてから発言した。


「そうだね……『ベルベットルーム』で話すことにするか?」

「ベルベットルーム?」


 黛の提案を聞くが、訳がわからず首を傾げる早乙女。
 

「ペルソナ使いが世話になるところさ……町のあちこちから通じているからね」

「でも、私はペルソナ使いじゃないですよ。
 でも、そういえば……なんか、異界っぽい青いドアがあって誰も気がつかなかったから……そこでしょうか?」

「Sakuraも見えますの……」

「なあ、早乙女さん。
 『ペルソナ様』って遊びをしたことがあるかい?」

「そういえば……昔、噂をきいて珠美……友達とやったことがありましたけど……」

「「それだ(ですわ)!!」」

「??」

「とにかく、見えるってことは入れるってことさ」



 そう言って、黛達はベルベットルームへ向かうことになった。

















 青い部屋の中に大きなピアノがあった。
 目隠しをしたままピアノを弾く男、耳を潰して歌う女性、黒づくめのサングラスをした絵師……そして鼻が長く尖ったタキシードの男が中央で椅子に腰掛けている。
 ここはベルベットルーム……ペルソナ使いのみが立ち寄れる場所であり、新たなペルソナを得ようとする者は必ず立ち寄る場所だ。
 その部屋の隅を借り(部屋の主……イゴールという長鼻の男に許可をとった)、三人は話し合いを始めた。


「つまり、全力のペルソナの一撃を喰らってもすぐに立ち上がり、悪魔のような気配を出したわけですね。
 考えられるのは幾つかありますね。
 一つ目は気のせい……これは除外できるでしょうね。
 桐嶋さんによるペルソナの一撃を受けて立ち上がっていますし。
 二つ目はペルソナ使いかそれに匹敵する能力者になった……これはどうですか?」

「その時は、気が動転してそこまで……ですがPersona使いならば共鳴現象を感じますし……」

「他の能力って奴だと判らないかもしれないからね、保留でいいだろう。
 早乙女さん、他にもあるのかい?」


 黛の言葉に頷く早乙女。


「最後は……悪魔に取り付かれた、もしくは悪魔に殺されて成り代わったという可能性もあるでしょう。
 実際に調べないと判りませんが……嫌な予感がします。
 明日には先生が来られますが、最悪、今日やってくるかもしれません」


 早乙女は、予感を語る。
 最近は、悲しい事に早乙女の嫌な予感は外れたことはない。
 それどころか、予想以上の状況に発展している事が多い。
 内心、早乙女は、その事実に涙しているのだが……。


「私は、Perusonaがありますが……」


 桐嶋は、黛に視線を送る。
 5年前にある事件で、黛はある少年に能力を譲り、それ以来回復していない。
 早乙女は、遠慮がちに提案をした。


「あの……私もペルソナ使いの能力があるんですよね?」

「ここが見える以上、そうだろうね。
 もっとも、覚醒していないみたいだけど」

「なら……私の能力を黛さんに渡せませんか?」

「それは……」

「可能ですよ」


 早乙女の意見に驚いた桐嶋だった……。
 早乙女の質問に答えたのは、この部屋の主、イゴールだった。
 不気味な鼻を早乙女に向けながら話す。


「フィレモン様が以前なさった事です。
 私も能力の譲渡はできますが……」

「では、お願いしていいですか?」

「Sakuraは、大丈夫ですの?」

「戦う手段なら持ち合わせいますし。
 それに……」

「それに?」


 エリーはその言葉の先を待った。
 早乙女は、続ける。


「ペルソナ使いでなくても理不尽に強い人もいますし……。
 その人達ほどは強くはないですが、私には心強い味方がいます」


 早乙女の脳裏には、師匠の友人で驚異的な悪魔の使役を行えるデビルサマナー、能力なしで魔人を圧倒する師匠、そしてその師匠が『化物』と褒め称える現代の忍者の姿を思い浮かべていた。
 『能力無しでも、ヤクザの銃弾くらいなら避けられるな』
 『そうですねえ……マフィアは、意外に銃の腕は悪いですからマシンガンくらいならなんとかなりますね。
  装甲車は少し骨でしたが』
 『まあ、素人が動かす程度なら鉄の塊と変わらん。
  この刀なら普通に斬鉄ができるからな』
 『装甲の隙間をこじ開けて爆薬を……』
 という人間離れした会話が以前、行っていたが……早乙女は、自分の精神の安定の為に忘れることにした。


「……いいんだね?」

「ええ、黛さんは、ペルソナ使いで戦い慣れていそうですし。
 使える戦力は、多い方が良いでしょう。
 えーと……お願いできますか?」

「私はイゴールと申します。
 よろしいでしょう……貴方の能力を黛さんに移しましょう」


 早乙女の胸から黄金の光が出てきて、黛のほうに移った。
 イゴールは、恭しく礼を行う。
 黛のほうにイゴールが近づき、質問をした。


「フィレモン様が行ったことですが、改めて……貴方のお名前を聞かせていただきたい」

「ゆきの……『黛ゆきの』だ」


 彼女は、拳を握り締めて名前を名乗った。
 黛の左指には婚約指輪が輝いていた……。











 はい、オカルトルートこと、エリールートです。
 ですが、ゆきの姐さんと千鶴さんに喰われているのは気のせい?
 ここでも千鶴さんは、ワンロン占いをしていますが、普通に暮らしています。
 今回のアンケートは、早乙女の派遣先についてでした。
 石動?反対ルートですね。
 それにしてもエリー語再現が難しい……最難関はゲイリン語だが。



[7357] 第2期 第15話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/09 23:36
 夜の通り道……桐嶋が一人歩いている。
 夜中でもいつもは人がいるはずなのが、今日に限って誰もいない。
 彼女が通る道の真ん中に男が一人たっていた。
 男は、小柄で頭頂部が禿げ上がっていて、包帯が巻かれていた。
 その男は、彼女を追いかけているストーカーだ。


「うひへぇ~やっと見つけたよぉ、エリーちゃぁ~ん
 か、髪をのばしたんだね……」

「ヒッ……!」


 桐嶋は、悲鳴を上げた。
 以前の彼女はショートカットだった。
 彼女は、5年前の『大事件』を契機に高校時代の髪型であるポニーテールに戻した。
 ストーカーは、『大事件』より以前に撃退したが、ストーカーの姿はそれほど変わっていなかった。
 ストーカーは、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「愛情表現だったんだよね~?
 痛いほどわかったよ、でへへぇ~。
 今日はね、お返しをしようと思ってね~、ボクもこれをもってきたんだ~」


 ストーカーは、そう言うと男の掌から鋸が飛び出した。
 肌が裂け、血しぶきを上げたが、男は苦痛を感じていない。
 それどころか……恍惚とした表情をするストーカー。
 恐怖におののく桐嶋は、後に跳び下がる。


「No Way!
 近寄らないで!!」

「でへへぇ~」


 桐嶋は全力で逃げる。
 ストーカーは、脚を引きずりながら走るが、驚異的なスピードを出していた。
 鋸を地面を擦りながら走っている為に火花が出ている。


「い、嫌ぁ……」


 だが、桐嶋の脚は早く、ストーカーとの距離を大きく引き離す。
 裏路地のほうに桐嶋は曲がり、ストーカーを撒いたと思われた。


「ふう……」


 建物の壁に寄りかかる桐嶋。
 だが、コンクリートで出来た壁から刃が飛び出す。
 無数の突起が出来ている刃……鋸の刃が回転をはじめて壁を切り始めた。


「ひっ……」

「アイ ラァビュウウウウ!!」
 
  
 鋸の刃は、人一人通れる穴を作り出した。
 寄声の主は、やはりストーカーだった。
 桐嶋は、悲鳴を上げて逃げる。
 ストーカーは、近くに放置されていた古い自転車を鋸に引っ掛けた。
 それを桐嶋目掛けて投げつける。
 辛くもそれを避ける桐嶋……自転車はバラバラになるほどの威力であり、人体に当った場合は悲惨な事になっただろう。
 桐嶋は、恐怖で青ざめている。


「ぐふひ~!
 避けちゃだめじゃないかぁああああAAAAAAA!」

「こ、来ないで!
 Don’t move!!」

 
 桐嶋は、壊れた自転車のベルをストーカーの眉間目掛けて投げつける。
 投石器で投げつけたかのようなスピードで相手の眉間にめり込んだ。


「Motto~Motto~おおおお」


 だが、ストーカーには、怯むどころか、快感になっているようであった。


「No……No……NoNoNo!」


 更に怯えて逃げる桐嶋。
 桐嶋は、走り続けて、工事中のビル……その地下駐車場までやってきた。


「I’m fed up!!
 一方的な好意は、迷惑なだけですわ!!」

「こんなに好きなのにかい……?
 

「フフフ……フハハハ……!!」

「へへ……!?」


 突然、桐嶋の恐怖の表情が消え、彼女は不敵な笑いをした。
 驚くストーカーにいきなり語り始める。


「女を泣かせる奴ぁ豆腐の角にぶつけて死んじまえってんだ!」

「GYAAAAA!!」


 
 桐嶋は、走叫んだ後、『九十九針』をストーカーの肩へ投げ放つ。
 彼女の姿が陽炎のように揺らめき、忍装束を着た猿顔の小男に変わった。


「だ、騙したなぁAAAAAA!!」

「へへ~んだ!
 嫁入り前のお嬢さんをテメエの前にぶらさげてたまるかってんだ!」


 早乙女の仲魔、猿飛佐助はタンカをきる。
 佐助は、卓越した甲賀流忍術を持って霧島に化けていたのだ。
 早乙女達は武装しており、ストーカーを取り囲む。
 ……ついでにカハクも召還されていた。
 カハクは、佐助に文句を言った。


「もう……せっかく背後から名乗り口上しようと思ったのにぃ!
 練習したんだよ!
 『森の声を聞け、風の声を聞け!貴様らの悪しき心を嘲笑っているぞ!
  ……人、それを魍魎という』
 って!」

「……お前、アニメの見すぎだ」


 カハクの能天気ぶりに頭を抱える佐助。
 黛は、怒り心頭のようだ。


「よくも英理子を怖がらせたね、この女の敵!
 ヤキいれるだけじゃすまさないよ!!」

「Yukino……彼は、やはり以前とは違っています!」


 桐嶋は、異形を化したストーカーに恐れておののいている。


「風間さんに問い合わせてみました。
 桑原 真……3年前から行方不明で捜索願が出されていました。
 そして……やはり」

「憑かれたようだったな……!
 それに『限界』のようだ」

「どういうことだい、佐助!?」


 早乙女と佐助がストーカーを分析しているようで、黛が問いかける。


「悪魔ってのはな、MAGで実体化しているわけだ。
 そのとき、なにかの弾みで実体化に失敗してしまう時がある。
 儀式の失敗とかもあるが、悪魔や憑依した人間に問題があれば……ああなる」


 佐助が指差したストーカーはスライム状の異形にかわった。
 顔面だけは人間だった名残を残しているが、のこりはスライムとなり、触手の先が鋸と化している。
 黛は、桐嶋を叱咤激励する。


「英理子……キツイかもしれない。
 でも、ここで乗り越えられないと先には進めない!」

「Yukino……」

「あたしや早乙女さんがついている。
 それに……」

「そう、そうですわね…」


 二人の脳裏には二度の異変で共に立ち向かった仲間達を思い浮かべていた。
 離れていても、心のつながりを感じ取れる絆が二人にはあった。


「皆さん、気をつけてください!」

「そうよ、なんて卑猥な……!」

「お嬢、俺が守ってやるさ!」


 早乙女も柄のみである『武器』を握ると、雷鳥を模した剣に変形した。
 カハクと佐助が早乙女を守るようにして立っている。
 桐嶋と黛を武器を構える。


「KISYAAAAA!!」


 ストーカーだった異形が触手を振り回す。
 皆、散開して避けた。
 早乙女は、触手を雷神剣で切り落とす。
 黛は、腕を高々と上げる。


「久々だけど……いけるわね、ペルソナ!!」


 黛の背後に浮かび上がる真紅の女神……ヴェスタ。
 ローマのかまどの女神であり、結婚の守り神とも言われている。
 黛は、能力を長く失っていたが、すぐに感覚を取り戻しているようだった。
 カハクが黛の帽子の上に乗っかる。


「ねえねえ、ゆきのぉ。
 一緒にやらない!?」

「まあ、いいけどさ……そんなにあたしの頭がいいのかねえ…」


 黛は、ぼやきながらカハクの火炎魔法と自分の火炎魔法を合成させる。


「あたしらをなめんな!」

「いっけ~!」


 合体魔法『灼熱獄炎』が異形を包み込む。
 異形は、不快な異臭を発しながら焼き焦げる。


「GYAAAAA!!
 YOOOOOKKUUUUMOOOOO!」


 異形は、不可視の魔弾を放つ。
 それを横ッ跳びで回避する黛。


「魔法を使うのか!?」

「……Sasuke!!」


 桐嶋の目を見て察する佐助。
 佐助と桐嶋が同時に行動を起こす。
 佐助は、無数の針を飛ばす。
 桐嶋は、精神を集中してペルソナを呼ぶ。
 彼女の頭上に現れたのは、飛行機のようなロボのような半身……天使ニケだ。
 ティーターン族の血族パラースとステュクス(冥界の河)の子であり、女神でもある。
 一般には有翼の女性の姿で表される。


「Come here……!!」

「よっしゃあああ!
 いくぜえ、お嬢さん」

「行きますわよ!
 all to get her now!!」


 魔法封じの魔法と投具技を組み合わせた『マズルシュート』が異形を撃ち抜く。
 手痛い一撃で醜く蠢く異形。
 異形は、憎しみを込めて魔法を撃とうとしたが、発動しない……ダメージを与えながら魔法を封じることに成功したようだ。
 だが……


「再生している!!?」

「お嬢、やばいぜ……あんな異常な再生能力とは予想外だ!」


 再生しながら桐嶋を取り込まんと触手を振るう。
 黛が早乙女に作戦を提案する。


「……すまないが、時間稼ぎをしてくれないか?
 そっちは、力を温存していて!
 ペルソナ!」

「それはいいですけど……」

「Yukino……OK!
 了解しましたわ!
 Persona!」
 
  
 そういって黛と桐嶋はペルソナを放ち続ける。
 無論、再生に追いつくほどの破壊はできない。
 だが、彼女達の狙いは別にある。


「ペルソナってな、使えば使うほど鍛えられる」

「じゃあ、戦闘中に成長させているの、佐助?」

「そうさ、お嬢。
 それがペルソナ使いの恐ろしい所さ!」


 佐助が早乙女に解説を行う。
 カハクはそれを面白くない様子でいる……大好きな主を取られたように感じるからだ。
 しばらくペルソナの攻撃を続けていたが、黛は合図をする。
 それを見た早乙女達が動く。
 まず、早乙女と佐助が動いた。
 佐助が印を結び、念じる。


「マハマグナス!!」


 地面が隆起し、異形を貫き、動きを封じた。
 更に印を変える佐助。
 それにあわせて、早乙女が雷神剣を構える。
 刃に疾風の力が宿る。


「今だ、お嬢!!」

「このぉおお!」


 無数の剣閃が異形を襲う。
 大忠義疾風斬……佐助と早乙女が行える最強の技だ。
 続けてカハク、黛、そして桐嶋が同時に魔法を撃つ。


「アギラオ!」

「フレイ!」

「マハガルーラ!!」


 それぞれが撃ち出せる最強魔法が容赦なく放たれた。
 動けぬ異形は成すすべなく喰らう。


「GYAAAA!!」


 異形は、再生以上のダメージで溶けて消えた。
 後に残ったのは、ぼろぼろのノートが一冊だけであった。
 タイトルは『The Golden Bough』と書かれていた。
 黛はそれを取ろうとしたが、早乙女に止められた。


「嫌な気配がします。
 触らないで焼きましょう」

「そうかい?
 じゃあ……アギ!」

 
 黛は、躊躇無くノートを燃やし、灰になった。
 桐嶋は、しばらく眺めていたが、少し残念そうだった。
 佐助は、不思議に思って聞いてみた。


「どうしたんだ、お嬢さん?」

「Sasuke……あの本は、『The Golden Bough』……『金枝篇』という魔術書のようでした。
 本物の魔術書だから……これはTutomuももっていないようでしたので、少し残念だったと思いましたの」

「あ、あのね……」


 桐嶋のオカルトマニアぶりに呆れている佐助。
 オカルトマニアの黒瓜勉や桐嶋が持っていないのは無理もない。
 『金枝篇』……金枝とはヤドリギ。
 イタリアのネミにおける宿り木信仰、「祭司殺し」の謎に発していることから採られた。
 著者は、イギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザー。
 未開社会の神話・呪術・信仰に関する集成的研究書である。
 これは、魔術書ではなく、日本語版も出版されている。
 そして、ジェームズ・フレイザーは、1941年5月7日にケンブリッジで老衰により死去とされている。
 だが……オカルトマニアの間では、真実は違うと言われている。
 晩年の彼は、狂気に犯され、血涙を毎晩流し、苦しみながら『金枝篇』の改定版を作り、寿命を縮めたと噂していた。
 その改定版は、魔術書であり、恐れた遺族が処分しようとしたが火にかけても燃えず、刃物で切り裂いても元の状態に修復されたらしい。
 結局、鉛の箱に入れて海に沈めたと言われている。
 それが巡りめぐって一人の男に渡ったという事だろう。
 早乙女のカンは正しかった。


「え……!!」


 灰になった書物が元に戻り、早乙女目掛けて飛んできた。
 佐助が針を飛ばすが、勢いは止まらない。
 黛達は、力を使い果たしていた。
 早乙女が夢中で雷神剣を振るい、なんとか斬り飛ばした。


「しつこい……!!」


 再び早乙女を取り込もうとする魔術書だったが……それは別の人間が妨害した。


「チャ~オ!」

「1回死んできな!」



 魔術書は氷つき、魔弾が魔術書を貫く。
 強烈な一撃を受けた魔術書は、今度こそ消滅した。
 救いの主の声に早乙女は聞き覚えがあった。


「うららさん!
 パオフゥさん!」

「さくらちゃん、おひさぁ」

「フゥ~やれやれだな…」


 黄色……いや、ゴールドのスーツにサングラス、そして長髪の男性と、赤い髪で緑の生地に蜘蛛の巣がデザインされた服を着た女性がやってきていた。
 パオフゥと芹沢うらら……以前、早乙女が出会ったペルソナ使い達であった。
 芹沢はウインクして笑顔で駆け寄り、パオフゥは煙草に火をつけて一服した。
 黛と桐嶋もかけよる。


「ありがとうございました。
 芹沢さんもお久しぶりです。
 パオフゥってあの噂サイトの……」

「俺のサイトを覗いているのか?」


 パオフゥは、情報収拾の一環として噂サイトを開いている。
 黛は、『ある事件』でよく利用していたおり、その名前を覚えていた。
 また、黛と芹沢は、共通の友人(ペルソナ使いでもある)がいて、その関係で面識はあるようだ。
 桐嶋は、二人に礼をいった。


「Thank you、Ms.Urara。
 そして……」

「別に良い……石動への借りを返しにきただけだ」


 パオフゥは、桐嶋の礼をさえぎった。
 石動の連絡を受けて助っ人に来たようだった。
 早乙女の師は、早乙女だけを代理派遣するのは荷が重いと判断したのだろう。
 佐助が芹沢へ駆け寄る。


「しっかし、姐さん達が来るとはな~」

「アンタ誰?」

「ベナンガルっすよ!
 ああ、今は猿飛佐助だけどな!!」

「ええ!?」

 
 以前あった悪魔の姿が大幅に変わって驚く芹沢だった。
 今日一日は、大変であり、多くの出来事があった。
 それを何とかこなした早乙女は、大きく背伸びをした。


「なんとか、仕事ができました」










 あとがき。
 EDパートは、石動の方が終わってから改めて。
 ストーカー、異形に変体。
 エリー&ゆきのさん登場の巻でした……合体魔法も出せて何より。
 今回出たのは……『金枝篇』。
 これはリアルで出ているし、魔術書ではないです。
 魔術書だという設定はオリジナルです…。
 こちらのうららさんは、結婚詐欺士は死んでいるので『ユッキー&マーヤ』以外の罪の面々とは顔合わせせず。
 



[7357] 第2期 第16話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/03 03:15
 あるマンションの一室にて……。
 ドアが開き、一人の男が出てきた。


「行って来る」

「いってらっしゃい」


 強面のサラリーマンが美女に見送られている。
 男には、額に大きな傷があるが、前髪で隠しており、暗紫色のスーツを着ている。
 何も知らない者は、彼を格闘家かスジ者の侠客と思うかもしれない。
 女性の方は、穏やかな印象があり、さながら春の日差しのような暖かさがあった。


「お父さん、気をつけて」

「……いってらっしゃい」

「パパ、いってらっしゃい!」


 女性の後ろには三人の幼児がいた。
 父親に似て鋭い目つきをしている男の子と、活発な黒い幼児服と着た女の子、そして白い服を着た女の子だ。
 三人は、彼らの子供なのだろう。
 男の子のほうは、利発そうな印象を与えており、女の子達は同じ顔立ちであることから双子だろう。
 黒い服を着た女の子は、父親の脚に抱きついてきており、白い服を着た女の子は茶色のクマを両手で抱えて遠慮がちに父親を見ている。
 男は、そんな家族達に微笑みかけて出発した。
 彼の行き先は、会社だ。
 朝の朝礼を行った後、すぐに彼は会社から出て行く。
 彼……城戸玲司は、セールスマンである。
 恐ろしい顔とあふれ出るオーラは、他人を威圧しており、この職業は不向きだと誰もが思う。
 だが、子供が生まれて以来、以前より穏やかな表情もできるようになり、以前のような壊滅的な成績ではなくなった……もっとも、ようやく人並みより毛一筋だけマシなくらいになっただけだが。



 城戸は、苦労してセールスを行ったその帰りの事。
 珠閒瑠市の七夕川の北に位置する蓮華台……そこにある七姉妹高校の生徒同士の話を聞いた。
 


「おいおい、知ってるか?」

「なになに?」

「港南区の廃工場……一昔前に悪魔が出るだの噂があったじゃない」

「うん」

「また出てきたって噂だぜ」

「まったー」

「……まあ関係ないよね、どうせ立ち寄らないし。
 それよりギガマッチョいってガスチェンバーの新曲買いに行こうぜ!!」

「言いだしっぺなのにね」


 城戸は、他愛もない噂だが、一応見に行く事に決めた。
 なぜなら、噂通り悪魔が出た……いや、『噂をしたから悪魔が出た』のだからだ。
 詳しい事は、省略するが、以前大きな大事件が起こったとき、噂が現実化するという怪現象が起きていた。
 それは、ある人々が解決し、その現象が無くなっていたのだが……。
 城戸は、以前、悪魔が出た場所だったので見に行く事にした。
 何もなければそれでよし。
 十体くらいなら自分でケリをつければよし。
 万一、雲霞の如く湧き出てきた場合は……、


「南条か黛あたりに相談すればいいか……」


 城戸は、鞄に入れてあったグローブを装着し、廃工場へ向かった。
 憂さ晴らしに相手がいることを願って。
 自動車(十年ローンで買った国産車)に乗って城戸は、港南区にやってきた。
 先客がいるのか、オフロードバイクが一台おいてあった。
 城戸は、不信に思いながら工場の中に入る。
 案の定、中に黒スーツの男が一人立っていた。
 その男は、三白眼で短く髪を切っており、城戸ほどではないが強面だった。
 城戸は、男に話しかける。


「ここに何の用で来た?」

「……人探しだ。
 ここに潜伏していると情報を手に入れてな」

「……そうか」


 城戸の直感が警報を発していた。
 自分の目の前の男は、底知れない実力を持っていることが判った。
 男が逆に質問を投げかけた。


「そういうそっちは……何故ここに来た?
 見たところセールスマンのようだが」

「!?」


 初対面の人間に城戸の職業を見破ったのは、彼が初めてであった。
 城戸は、質問をする。


「……悪魔が出るって変な噂を聞いて気になっただけだ。
 それより、何故俺の事がわかった?」

「磨り減った靴底、清潔感を出すようにした背広、そしてその背広の皺だな。
 その皺は、ずっと車を乗り回して出来るものだ。
 そこから導き出されるのがセールスマンだ」

「……大した名探偵ぶりだな」

「しがない探偵ではあるのは確かだがな」


 沈黙が訪れる。
 だが、それを破ったのは別の存在だった。


「がああああ!!」


 体高3メートルに及ぶ赤いウシ型の悪魔が現れた。
 城戸と男がそちらに視線を向ける。


「やはり当りのようだな……」

「テメエ……どういうことだ!?」

「菅……追っている奴の持ち出した『成果』の一部だ。
 それより、使うか?」


 男は、懐からCZ75……チェコ製の自動式拳銃を取り出した。
 だが城戸は、それを断った。
 拳を構えてから言い放つ。


「『こっち』のほうが性に合う」

「そうか……」


 男は、拳銃をしまうと、黒い刀身のナイフを抜いた。
 城戸は、聞き返す。


「そっちこそ、いいのか?」

「銃も使えるが……此方が専門でな」


 そういって一振りすると、赤黒い日本刀に変化した。
 その言葉を聞いた城戸は、視線を悪魔に向けた。
 城戸の殺気に反応して悪魔牛(?)が突進した。
 それを軽快なフットワークで回避したあと右ストレートを打ち込む。


「オラァ!」

「グアア!!」

 
 ダメージを受けたが、痛みの為か更に暴れだす悪魔牛。
 それを見て苛立った城戸は、獣のような咆哮とともに力を解放した。


「ペルソナ!!」

「……!!」


 黒い騎士のような幻影が城戸の背後に現れる。
 男は、その様子に一瞬、眉を上げた。


「ツインスラッシュ!!」

「ギャアア!!」


 幻影が高速の二段切りを行い、悪魔牛の首を両断した。
 気息を正そうとした城戸は、男の背後から悪魔牛がもう一体現れて、突進しようとしていたのを見た。
 思わず、城戸は叫ぶ。


「危ねえ!」

「いや、問題ない」


 男は、回転移動しながら抜刀し、自分の回転と相手の突進の力をあわせるように、刀で悪魔牛を横一文字に両断した。
 悪魔牛は突進を続けていたが、自分が斬られた事に気がつかず、7メートルばかり走ったあとに身体が分断され、綺麗な断面を見せていた。
 城戸は、その技量に驚くとともに拳を構える。
 男は、それに待ったをかけるように


「生憎、ペルソナ使いであるアンタとは……やり合うつもりはない」

「……」

「時間がないからな……護衛の依頼を引き受けた矢先に、外せない飛び込みの依頼が舞い込んできてな。
 今日中に終わらせるつもりでいる」

「……」


 城戸は、拳を下げた。
 口数の少ない男であったが、城戸には男から悪意を感じなかったからだ。
 だが城戸は、事情を知らないままでいるのは癪に障るので事情を聞こうと決めていた。


「何が起こっている?
 以前、ここには悪魔が出ていた……だが、もう出なくなったはずだ。
 知っているなら話せ。
 この街には知り合いがいるからな……他人事ではすまない」

 
 城戸の言葉を聞き、男は一瞬考え込んだ。
 そして男は、口を開く。


「良いだろう。
 少し、作業しながら話すが……」

「いいぜ、好きにしな」


 城戸は、男に話を促した。
 男は、悪魔の死体の一部を切り取り、回収しながら口を開く。


「まずはコレは何かというところから話すか。
 コイツは……家畜だ」

「オイ……冗談言うなよ!
 どこの世界にこんな奴がいるってんだ!?」


 城戸は、信じがたい男の発言にくってかかる。
 男は、疑うのは無理もないとばかりに頷きながら話を続ける。


「『まだ』出来ていない……試作品だがな。
 コイツは、『デミナンディ』。
 過酷な環境でも育成できるように作られたデモノイドだ。
 デモノイドは、悪魔の因子を持った人工生命体のことだ。
 デミナンディは、大量の食用肉を得る事ができるようにヒンドゥの聖獣ナンディの因子と和牛の因子を組み込んだ存在だ」

「なぜそんな事をする?」

「現在、世界では急激な人口増加、環境問題に悩まされている。
 さらにこの国では高齢化社会から高齢社会に移行し、少子化問題になっている。
 そこでこの国と一部の企業が協力して過酷な環境に耐えられる肉体労働力や手軽に育つ生物を作るべく研究をしている」

「……俺に話しても良いのか?」


 城戸は、今まで自分が遭遇した事件などを考慮して、男の発言に嘘はないのだろうと判断した。
 それゆえに、衝撃の事実を惜しげもなく晒すことに疑問を持った。
 男は、口元に軽く笑みを浮かべて答えた。


「その道の人間なら知っている程度の問題だ。
 それに暴露しようにも普通の人間は信じられまい。
 では、話を元に戻すぞ。
 研究部門により作り出された人工生命体デモノイドのデータを盗み、更に他の機密を盗んだ奴がここにいるのさ。
 そいつは、菅原って元自衛隊の師団長なんだが……色々と血迷っているようだ。
 盗んだものを取り返して、菅原を公安に突き出すのが俺の仕事だ」

「……そうか。
 二つ聞いて良いか?
 悪魔は、この先現れるのか?
 そして……現れたとき、助っ人はいらないか?」


 城戸の質問に男は、指を顎に当てて思案した後、答えを出した。


「まあ、十中八九出るだろうな。
 頼れる仲間はいたほうが楽で良いが」


 その言葉を聞き、城戸は少し考え、提案を持ちかけた。


「俺を連れて行け。
 憂さ晴らしに来たからな……アンタの邪魔はしねえ」


 男は、一瞬驚いたが、すぐにニヤリと笑い、城戸の提案を受け入れた。


「良いだろう……俺は石動。
 石動巧だ」

「城戸玲司だ……アンタもペルソナ使いなのか?」

『ノンノン。
 せっきーはデビルサマナー兼守護霊使いさ』

「な!?」


 突然、石動の背後に傷ついた西洋騎士の亡霊が現れた。
 陰気な気を発しているのに、本人はいたって陽気なのが城戸には腹立たしく感じた。
 石動は、ため息をついた。


「コイツが俺の相棒だ。
 ペルソナは、自分の心の奥にあるものだが、コイツは『本物』の悪魔だ。
 悪魔や神を自分の身に降ろして力を振るうのが守護霊使い。
 そして悪魔を使役するのがデビルサマナーだ……もっとも、俺はサマナーとしては出来が悪いがな」

『というわけでヨロシクゥ!!』

「あ、ああ……」


 サムズアップをする西洋落武者のテンションにいささか呆れ気味な城戸であった。
 石動は、慣れているのか、落ち武者……ラームジェルグの言葉を無視して城戸に話しかける。


「気をつけてくれ。
 この先には、最先端技術の産物が待ち構えている。
 それに……『あの巻物』が奴の手にあるとするならば……最悪なんだがな」


 城戸は、石動の言葉に頷き、後をついて行った。







[7357] 第2期 第17話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/08 12:59
「オラァ!」

「ぎゃあ!」


 城戸は、陸上自衛隊のユニフォームを来た男を城戸が殴り飛ばす。
 同時に相手の銃身を握りつぶした。
 ペルソナ能力者だから容易にできたことだった。
 この者たちは、菅原についていった人間達だろう。
 石動は、次々に相手の四肢を浅く切って無力化した。


「ひいいい!!」

「寝ろ」

「マスター、敵勢力征圧、完了しました」


 怯える最後の敵を石動の蹴りで昏倒させた。
 フリーダーも受け持った敵を征圧しており、傷一つ負わなかった。
 安全になったことを確認して城戸が質問を投げかけた。


「おい……奴らはなんだ?」

「菅原に……いや、菅原も手下に過ぎんか……。
 ある人物の煽動によって自衛隊内でクーデターを起こそうとした連中の集まりがあった。
 名前は『新世塾』……実態は、メシア教団のシンパだな」

「メシア教団……破防法を適用するか揉めていたな。
 テロ集団だってな」

「そうだ……まあ、メシア教団のつながりがわかったのは最近だったがな」


 その時、奥から機械音が鳴り響き、巨大な金属塊……人型が一体やってきた。
 四肢があり、右腕には『MURAMASA』と書かれた巨大な剣を持っていた。
 更に、左腕には機関砲が装備されている。
 それは、TVアニメにあるような機動兵器のように見える。
 城戸は、驚きの声を上げる。


「……なんだこれは?
 それにあの剣から嫌な感じがするぜ」

「まさか完成していたとはな。
 X-1……対悪魔用に計画されていた機動兵器。
 そして噂じゃペルソナ能力を封じるオプションがあると聞いていたが……」

「まるで今までなかったみたいな言い方じゃねえか?」

『それはな、伝達系に問題があったから現段階では不可能だからさ。
 最初は、人間の神経を使う予定だったが倫理的に不味いから却下されたからな』


 ラームジェルグは、城戸の疑問に答えた。


「とりあえず斬ってみれば中身が判る。
 何を使っているかはな」


 そういって剣を構える石動。
 心なしか、楽しげな様子の石動に城戸は、戸惑い気味だった。
 その思いを押し殺し、城戸は先制攻撃とばかりにペルソナを呼ぶ。


「ペルソナ……ブレス!」


 黒い騎士が現れ、再び剣を振るう。
 ブレスは、ダナーンの女神エリーとフォモールの王の一人エラハの子だ。
 ダナーンの王アガートラームが戦によって不具になると、諸人に推戴されて王になった。
 だがブレスは、重税を課した上に、それをフォモールへの貢物としたために人心を失い、腕を取り戻したアガートラームによって王位を追われる事になった存在だ。
 黒騎士は、剣でX-1を切り払う。
 だが、頑強な装甲の為か、致命傷には至らない。
 それを受けてX-1は、剣を城戸に向ける。
 

「ぐ……ペルソナが……出ねぇ!!」

「フハハハ!
 これぞ、X-1の誇る対ペルソナ使い用兵器『ムラマサコピー』!」

「ならば、妙法村正とその粗悪品と比べてみるとしよう」


 そういって、神速の踏み込みと同時に抜刀する。
 甲高い金属音がなったかと思うとX-1のムラマサコピーは両断され、先端が壁に突き刺さる。
 石動の斬撃は凄まじく、ムラマサどころか、X-1の片足も両断していた。


「やはり既製品は脆いな」

「ば、化物め!!
 く、くそう、動け、動け!!」


 石動は、冷たく笑う。
 X-1は、最早、思うように動けない。
 バランスが崩れるX-1にフリーダーが追撃をかける。


「マハブフーラ!
 城戸様、今です」

「ペルソナが使えなくても……喰らえ!」


 城戸は、ペルソナで強化された身体能力を生かして氷結した兵器にコンビネーションブローを打ち込む。
 その衝撃で、機械音が止み、動きが停止する。
 中で『出してくれ~』という声がするが、三人は無視する。
 石動は、自分で斬った機械の断面を見て、納得した様子だった。
 フリーダーが石動の様子を見て疑問に思い、聞いてみた。


「マスター……?」

「人口筋肉にそれを動かすように作られた伝達系から判断して……どうやら、民間企業の技術を盗んだようだ」

「どういうことだ?」


 城戸も同じく疑問に思ったようだった。


「南条グループの傘下である物を開発していた。
 悪魔制圧を目的として製作された少女型戦闘用ロボット………『プロジェクト・イージス』。
 人間サイズに戦車並の装甲と攻撃力を備えたものを目指していたらしい。
 さらに……擬似的な精神を作り上げ、ペルソナ能力を使えるようにすることが目的だったが……失敗だった」

「……マジかよ……それに南条グループだと……!!
 それに、失敗って暴走でもしたのかよ?」

「出来かかってはいたらしい。
 だが……兵器というより芸術品のようにデリケートに扱わないといけない上に高価すぎて商品にならなかった。
 結局、コストの問題で凍結された。
 そこで育った技術は、義手や工業用ロボットなどに応用されたようだがな。
 どうやら奴さんは、その技術をどうやったのかは知らんが……そいつを盗み出して自衛隊の新兵器に組み込んだみたいだ」
 

 以前、警視庁でも対悪魔犯罪用にロボを製作したが、結局採用されず、公安零課が発足された事は覚えているだろうか?(第八~十話参照)
 機械ではコストもかかる上に、柔軟な対応ができないからだ。
 自衛隊でも対悪魔用の研究がされたが、結局画期的な新兵器はできなかった。
 自衛隊内のサマナーが解決するか、対悪魔用に作られた銃弾およびライフルで戦うほうが効率が良いからだ。
 城戸は、持っていた疑問をぶつける。


「石動……オマエが危惧しているのはなんだ?
 この木偶だけじゃないってことだけは確かだが」

「……今までペラペラ喋っているからな。
 良いだろう、教える。
 俺が危惧しているのは、忍術書だ」

「忍術書って忍者のか?
 たかが本だろ」

「そう思うのは無理もない。
 普通の忍術書は精々秘伝が書かれているとか、忍者になるための教本だ。
 だが、甲賀三郎の忍術書を菅原が持っていたら問題なんだ」

「甲賀……三郎?」


 城戸の知らない名前だった。
 甲賀三郎……正確には、甲賀三郎兼家といって甲賀流忍者の祭る神だと言われている。
 その昔、近江(滋賀)の甲賀の里に鹿などを狩猟して生計を立てている甲賀太郎、次郎、三郎という兄弟がいたが、ある日の事、3人は山の神が変じた大蛇と出会った。
 太郎と次郎は逃げてしまうが、三郎は逃げることなく大蛇を殺した。
 2人の兄はこの所業が狩りの妨げになることを怖れて、三郎を深い穴へ突き落した。
 だが、死に瀕した彼は、兄達への怨念を糧に自分の身を蛇に変じ、地上へ抜け出たといわれる(殺した山神の祟りで変化したとも考えられる)。
 三郎は故郷へ戻り、妻子が三郎の供養のために建てた観音堂の縁の下に籠もった。
 そこで三郎が念仏を唱えると、身体は元に戻ることができた。
 兄2人は、三郎の復讐を怖れて自害し、三郎は所領を安堵され、その後諏訪の神になったという。
 その子孫である望月三郎兼家は、平将門の乱で軍功があった為、甲賀郡司に任命された。
 彼やそこの土着の侍達が後に甲賀流忍術の使い手となった。
 その中心が甲賀五十三家であり、望月三郎直系の子孫には、代々伝わる秘伝の書があった。


「それが奴が手に入れた忍術書だ。
 奴が本物らしき物を得た情報を得たから今回の依頼を引き受けたんだがな。
 もし。し、本物ならば……『不死』になる術が書かれている」

「ば、馬鹿な!!」

「『ありえない』ということが『ありえない』のがこの世界の常識と思っていてくれ。
 菅原元陸将は、悪性腫瘍に蝕まれていた。
 だから新世塾にはいり、オカルト方面から治癒したいと欲したのだろう」


 石動がそう言い終わったとき、奥からこの世のものとは思えない雄叫びが聞こえてきた。
 城戸は、拳を握り締めながら言った。


「どうやら、オマエの予想は当っているようだ」

「ああ……そのようだ」

「敵が近づいてきます」


 フリーダーがそう言った直後、壁が砕けちる。
 奥から巨大な肉塊が現れた。
 下半身は、自衛隊の制服であった。
 だが、上半身は、真っ赤な水疱に巨大な瘤に覆われ、外なる神々の奉仕種族のように不気味な存在だった。
 腕だったものは鱗の生えた触手となり、顔であったと思われる場所から二つの孔があった……目であった場所と思われる。
 口だった場所から真っ赤な植物の蔓のような管が痙攣させていた。
 病に犯された菅原は、永遠の命……すなわち不老不死を望んだ。
 病に負けない体を望んだ……。
 だから菅原は、古の甲賀三郎に倣って忍術書に書かれた秘術を行った。
 確かに、不死の身体を生み出したかもしれない。
 そう、決して死なない不死身の怪物と化したのだ。


「GYAAAAAA!!」

「な、なんだ!!」

「構成データ確認。
 人間のものと判明しました」


 城戸が驚く中、フリーダーが淡々と告げる。
 城戸は、信じがたいのか、眉が上がる。
 だが、石動はそれを事実と受け止め、刀を構えた。


「遅かったか……哀れなものだ」

「とにかく倒すぞ!
 ペルソナァ!」

「GYAAAAAA!!
 IIIIITAAAAAAAAAAIIIIII!!
 SHINJOOOOOOOOOOOOO!!!」


 ブレスのツインスラッシュが決まる。
 だが、菅原……いや『菅原だったもの』は、すぐに再生が完了し、城戸に向かって名前を呼ぶ……『神条』と。
 『菅原だったもの』は触手を力任せに振るう。
 鈍重な動きの為、石動達に掠りもしなかったが、金属製の壁を容易に打ち壊す。
 もし直撃すれば、ペルソナ使いや守護霊使いでも無事ではすまない。
 石動は、以前に聞き覚えのある名前と思いつつも、『菅原だったもの』の能力確認を行う為に妙法村正で斬りつける。。
 妖刀は、たやすく触手を跳ね飛ばすが、すぐに再生し、飛び散った肉片は蛇に変わり、フリーダーを襲う。
 もっとも、冷静に避けた後にカウンターの拳を打ち、蛇を叩き殺した。
 石動達は攻撃を与え続けるが、再生に追いつかず、蛇を作り出している。
 触手の一撃は遅い為、全て避ける事ができたが、自身に省みない一撃は強力であった。
 自分自身を砕き、再生しながら蛇を生み出す。
 蛇に対処しながら戦う為、城戸達の精神的疲労が大きくなっている。


「驚異的な再生能力です」

「くそ……これじゃキリがねえぞ!」


 フリーダーは、淡々と事実を言いながら
 一方の城戸も、このままでは倒せない事に苛立ちを感じていた。
 ラームジェルグはのんびりと声を出す。


『おいおい、大丈夫かよ~巧』

「……一つ手段を思いついた。
 効くか判らんが……城戸、フリーダー……時間を稼いでくれ」

「……クッ、やれるんだろうな?」

「了解しました」


 二人は、『菅原だったもの』を石動に近づけさせないように攻撃する。
 苛立つ城戸に対して、石動達は冷静だった。
 フリーダーは造魔であり、感情の揺れ幅が少ないために、焦りはない。
 石動とラームジェルグは、無間地獄にて闘争の日々を送っており、身体の疲れが無いので10日ほど戦い続けていた事もあった。
 流石に肉体を持った現在では不可能であるが、今回のような事態だったら焦る事なく対応できる。
 そんな石動は、ラームジェルグでなく、役小角を憑依させる。


「密教や陰陽道は、専門じゃないんだがな……。
 まったく俺が奴の力を借りる事になるとはな……!!
 『慎み敬って真言教主大日如来両部界会諸尊聖衆、殊に別ては本尊聖者泰山府君諸眷属等に白して言さく……」


 石動は、術を使うべく泰山府君の名前を唱えた。
 泰山府君は、中国五岳の筆頭・東岳・泰山の神であり、陰陽道と深い関りのある神だ。
 人の命は、魂とともに、泰山府君が司るといわれており、地獄の裁判官の一人として「人が死ぬと裁く」という役割を担い、信仰の対象となった。
 俗に言う閻魔(ヤマラージャ)である。
 閻魔……ヤマは、本来インド・イラン共通時代にまで遡る古い神格であり、アヴェスターの聖王イマと同起源である。
 『リグ・ヴェーダ』によると、人間の祖ともされている。
 ヤマとその妹ヤミーとの間に最初の人類が生まれ、人間で最初の死者となったゆえに死者の国の王となったという。
 石動は、膨大な生命力によって再生される異形を倒すべく、泰山府君の力によって再生の力を削ごうとした。
 この考えは、以前とある場所で大正時代に起こった大事件『アパドン王』事件においてダメージを受けても瞬時に再生する敵に遭遇した第十四代目ライドウが、対抗するべく死の力を持った宿魂石を手に入れ、魔性の力を持った妖刀を使ったということを事実を知ったから考えられた事であった。
 その目論見は、上手くいった。
 再生能力は高いが瞬時に再生するほどではない為に、術を防がれる事態にはならなかった。
 再生能力は目に見えて落ちてきている。


「俺は、この術を維持しておく……補助するから術が効いているうちに決めろ。
 マカカジャ……!!」


 城戸とフリーダーに魔力が漲る。
 二人は同時に行動した。


「喰らいやがれ……東衝波ァ!!」

「ショックウェーブ!」

「GYAAAAAAA!!」



 同時に魔法攻撃を受けて転がりまわる『菅原だったもの』。
 だが、死に掛けているが、後一押しが足りなかった。
 二人が再び魔法を撃とうとしても間に合わないと思ったその時……


「悪魔は酔狂ォおおお!
 アギラオォ!!」

「ほえほえ……サイじゃあ!」


 いつの間にか召還されていた石動の仲魔であるウコバクとノッカーが魔法攻撃を放つ。
 魔力を強化され、相手が死に掛けであったことに加え、『菅原だったもの』の魔法抵抗力が高くなかったことが幸いした。
 二体の魔法が止めとなり、『菅原だったもの』は痙攣を起こした後、倒れ伏し、そのまま溶けていった。


「ほえほえ……ビックマックが食べたいのう」

「ヒハハハ!
 俺を崇めろぉ、石動」

「後で、礼の品を渡そう」


 石動は、そう言って、二人を帰した。
 城戸が頭を掻きながら礼を言った。


「世話になったな」

「俺のほうだな、言うべきは」

「だが……俺に似ている神条……ってなんだ」

「おそらく……神条鷹久。
 最近、存在が確認された新世塾のリーダーと思われる人物だ。
 経歴は、一切見つかっていない謎の存在だそうだ……顔は、見たことはないがな」 

「………神条鷹久」


 城戸は、深く考え込んでいた。
 石動も一呼吸置いた。


「さて……早乙女のほうは、大丈夫か?
 念のためにパオフゥに頼んで見てもらっているが……」

『なんとかなるさぁ~』

「……南条に聞いてみるか」


 二人とも、心配事を持ちながら廃工場を後にしたのだった。
 大暴れをしたためか、皆晴れ晴れした表情であった。






 あとがき
甲賀三郎伝説は色々あります……竜になったり、蛇になったり、地底の民に歓迎されるなど。
あと、この作品の世界では、架空の人物であるとされる猿飛佐助・霧隠才蔵などは実際にいるものとしています。
クトゥルフもラブクラフトの創作ではなく、実際の神話としています。
今回は城戸さん大暴れ……南条ともどもこの先出番が期待できるでしょうね。
真2のデモノイド等もでましたね……あとX-1も。







馬鹿おまけ

『史上最強の女』

私は、早乙女さくら。
地上最強よ。
どんな相手でも0.2秒であの世へ送れるわ!
ペルソナは持たない、特技は剣術と悪魔召還よ!
しかし、強すぎる事って辛すぎるわ。
私が強すぎる為に世界中から狙われているの。
あんな事になってしまって……もうここにはにいられないわ。
誰もいない所に逃げ出すしかないわ。


『神の名の下に、この大天使ウリエル浄化します!』

『ファントムソサエティの為、オマエのソウル、頂く!』

『やあ、早乙女さくら。
 たとえペルソナ能力を手放しても私の遊び相手を務めてもらうよ』

「さくらたん、はぁはぁ」



憎い!この私の力が!!
この私の恐ろしい力が!!









「はっ!」

「せっきー……えへへ……むにゃむにゃ」


 気がつくと先生の事務所だった。
 嫌な夢だった、嫌過ぎる。
 モーちゃんは、先生の夢を見ているようで幸せそうだ。


「……私ってこのまま不幸な出会いをし続けるのかしら?」


 その時、脳裏に厳かな声が聞こえた。


『まーね』


「……本当に……嫌過ぎる」



[7357] 第2期 18話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/08 13:01
 黒髪の美女が石動の事務所のドアを叩いた。
 その女性は、冷たく、知的な印象をもつが、どこか温かみがあった。
 石動は、ドアをあけると驚いた。


「巧君……」

「千鶴姉さん……」


 石動の事務所にやって来た客はワンロン千鶴こと石神千鶴だった。
 お茶を出す石動であったが、その後、両者ともに沈黙を守っていた。


「……」

「……」


 『石動巧』と石神千鶴は幼馴染であり、『巧』は千鶴を姉のようにしたっていた。
 だが、事故によって両親が亡くなり、『巧』も変質した。
 魂の消えかけた存在になり、その時偶々、地獄帰りの魂が潜り込み、現在の巧となった。
 魂の一部と『巧』の記憶を受け継いでいるが、別人と言って良いだろう。
 手遅れだったとはいえ、『巧』の人生を奪った石動には、千鶴に対して負い目があった。
 だから以前の接し方ができず、現在では連絡を取ることを選ぶ事が出来なかった。


「エリー……桐嶋さんから聞いたわ」

「……そうか。
 俺は……」

「先を言わなくて良いわ。
 私も解っていた」


 石動が真実を告げる前に千鶴は止めた。
 当時では未熟だったとはいえ、陰陽師の家系である千鶴は、石動に対して違和感を持っていた。
 だが、それを直接問う事は……千鶴はしなかった。
 答えを聞くことが恐ろしかったからだ。


「……すまない。
 お前が知っている昔の石動は……俺の一部分でしかない」

「解っている……」

「……憎いか?」


 表情を変えずに石動は聞いた。
 それに静かに首を横に振る千鶴。


「いいえ……あの『巧君』はもう居ないことが確信して悲しいだけ」

「……」

「……」


 沈黙が続く。
 だが、それを破ったのは千鶴だった。


「でもね……私は知っているの。
 私が力を使いこなせないで寄って来る悪魔から密かに守ってくれてたのが巧君だって」

「さあ……知らないな」


 そっけなく言う石動であったが、長年付き合いのあった千鶴には、その言葉が真実でないと知っている。
 薄く微笑む千鶴であったが、真剣な表情に戻す。


「そういう事にしておくわ。
 ところで、石動君……。
 今の世界の空気が解っているかしら?」

「ああ……メシア教の一件で大いに乱れた。
 俺は、解決したから元に戻るだろうと思ったが……」

「元に戻る速度が遅すぎるわ。
 誰かがその流れを利用しているとしか思えないわ」


 仕事の話に変わった為、千鶴は、石動への口調が変わる。
 石動の脳裏に無数の火種が浮かんだ。
 一つは、メシア教団の指導者だった小林。
 一つは、今まで石動の関わった幾つかの事件できっかけを生み出した堕天使オセ。
 一つは、『人間の負の感情……破壊の意志の原型(アーキタイプ)』であるニャルラトホテプ。
 メシア教団に関しては、影で動きを見せており、自衛隊での『新世塾』といったメシア教団を支持する団体が幾つも出来ている。
 ニャルラトホテプも密かに何かしていても可笑しくない。


「このままじゃ、地脈が大いに乱れ……」

「関東大震災並の災害に発達するか……」

「『その先』までありえるわね」


 重い情報に千鶴は、鎮痛な表情になる。
 だが石動は、いつも通りに話を続ける。


「さて……本題はなんだ?」

「巧君」

「なんだ?」

「貴方は、どうも思わないの?」

「思いはしている。
 だが、深刻な顔をしていれば解決できるわけではないからな。
 ならば、必要以上に萎縮するべきではない」


 そう言いながら冷めてしまったお茶を飲み干す。
 石動のその言葉に千鶴は、呆気に取られた。
 だが、すぐに千鶴は、微笑んだ。


「本当に、変わっているわよね。
 まあいいわ。
 本題は、『東京の要石』の点検よ」


 出された依頼もまた大掛かりなものであった。
 石動は、一瞬考えて、一つ質問した。


「……助っ人を呼んでも構わないな?」

「信頼できる人ならば」


 石動は、厄介ごとの予感がしたがすぐに面白いと感じ、依頼を受ける決心をした。
 千鶴は、詳細を話し始めた。


「東京の旧石神町の石神稲荷神社……そこは地脈を押える要石があるの。
 今回の一件で外れかかっているかもしれないから点検をするように、石神稲荷の使いに頼まれたの。
 私が行ければいいのだけれど……」

「今や、売れっ子占い師だからな。
 解った、その仕事を引き受けよう」

「ありがとう……でも大丈夫?」

「俺にはコイツがいる」


 そういって、石動は、小角の分霊を呼び出す。


「役小角の分霊……呪術的な知識はコイツに詰まっているからな。
 なんとなるだろう」

「いつか時間があるときに色々尋ねていいかしら?
 術の事も、そして今までの貴方の事を」

「ああ……かまわん」




















『あーあ……出るに出られねえな』


 一方……ラームジェルグは、奥の部屋でインターネットを行っていた。
 石動と千鶴との話し合いに口を挟むわけに行かないと考え、奥にひっこんでいたのだ。
 その時、メールを受け取った。



『風間の旦那からか……。
 高尾祐二が脱獄?
 えーと……ああ、アイツか』


 石動がアマラ天輪機を奪取していた時(第一話)、丁度囚われた降巫であった。
 サークル『ガイア』に勧誘され、世界を崩壊させる陰謀に加担していた。
 だが、その目論見をあっけなく潰されていたが……ちなみに石動達は、高尾と面識はない。


『巧に後で知らせておくか。
 パオフゥの噂サイトは……と。
 うーん、なんか変だな。
 『死体が動き出す噂』と『死んだはずの人間』の目撃が多くなっている……』


 ラームジェルグは、厄介事になるかもと思いつつも焦っていない。
 それよりも自分の師匠の存在が恐ろしいと感じているが。


『さて、今日のエロ画像は……っと、特に更新は無しか。
 それと投稿動画『ハンニャ先生の情熱!ヤング伝説』最新キター!』


 説明しよう。
 投稿動画『ハンニャ先生の情熱!ヤング伝説』とは、ハンニャ先生のファンが製作したものである。
 七姉妹学園の校長・反谷先生……通称ハンニャ先生はペルソナ使いである。
 彼が朝礼等で行う良い話と、ハンニャ先生の勇姿(仮面党・ナチス・悪魔などと戦った時)の映像とJAM系の音楽をあわせた情熱的なMAD動画。
 一部でカルト的な人気が出ている。


「うひょ~おもしれぇ~」


 今日も彼はフリーダムだった。










 




 おまけ


「遅い!」


 黒髪の美女……スカアハが槍を突くと守りをすり抜け、心臓に突き刺さる。
 牛頭の悪魔はそのまま事切れた。
 金髪の美女がそれを労う。


「お疲れ~」

「うむ、ジェシカ。
 お前の援護が的確だったお陰だ」

 
 ジェシカの仲魔であるリャナンシーとシルフも疲れた様子であった。


「仕事は多いけどね~」

「……未だ元の空気には戻っておらぬのう」


 スカアハは、空を眺めながらぽつりと言った。








 あとがき

 ペルソナ系のキャラのラッシュから通常に戻ったので…うむ、調子がまだまだだね。
 



[7357] 第2期 第19話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/09 23:36
 旧石神町の小さな稲荷神社。
 石神町は、合併されて無くなった。
 だが、空襲や建設ラッシュがあったにも関わらず、この小さな神社は取り壊されなかった。
 それは、この神社が東京の地脈を制御する要石があったからだ。
 アメリカも、太平洋戦争の時ですら要石の破壊工作を行わなかった。
 もし、行えば……超国家機関『ヤタガラス』が戦争参加に踏み切る為だ。
 そうなれば、最終的にオカルト機関同士の戦争に発展し、第二次世界大戦が人類最後の戦争となり、人類の歴史は幕を閉じる事になったかもしれない……それほどの力を持っている。
 古来より、デビルサマナー達が戦争に介入することはない。
 あくまで人間の歴史の影で働くのみであった……例外は、織田信長の『本能寺の変』が有名だが。


 (彼は、第六天魔王を名乗っていたが、本当の魔王であった。
  だが、本能寺の変が起こるまでは静観していた。
  延暦寺の焼き討ちも『魔王でも信長は、為政者として正しい判断であり、僧侶達にも問題があった』とし、介入しなかったほど)


 現代でもヤタガラスの力は、健在である。
 ちなみに……バチカンは、信仰心が年々失われつつあり、先日の『メシア教団事件』で神の勢力が減じた。
 アメリカ合衆国は、ネイティブアメリカンの迫害によって、土地の精霊から見放されており、その失態のリカバリーは未だ出来ていない。
 中国は、『文化大革命』で多くの霊的拠点を潰し、地脈が乱れた為に大きく減弱した
 その上、工業開発で益々首を絞めている。
 更に不幸な事に……中国は、オカルトの組織が玉石混交している上に、ヤタガラスのような機関がないのが致命的であった。
 このように文明が発達しながらも霊的拠点を死守している日本という国は、悪魔達にとって『黄金の地』と言っても過言ではないだろう。
 もっとも、ラームジェルグやベルフェゴール並に文明に毒されるのは少数派……であろう。
 







「ここが石神稲荷神社ですか~」

「たく……何故俺が……」

「飯を奢るし、俺の取っておきを出す」


 石動は、小柄な美男子と素材は良いのだが、太りすぎて台無しな黒眼鏡をかけた男に話しかけた。
 悪魔交渉人である原野と、非番だったのを見越して引っ張り込んだ香我美の二人だ。
 今回は、彼らを助っ人に頼んだ。
 美味い物好き・酒好きである二人には、石動の報酬を餌に仕事を手伝わせている。


「嵯峨はどうしている?」

「……目的を果たしたよ。
 まあ、伸び伸びとやっているが」

「昨日は、嫁売ジャイアンズに大負けしたからな、あの弱小チームは」


 クックと笑う香我美。
 彼の贔屓である横島イースターズが勝ったからこその余裕だが。
 香我美曰く、『今年の優勝は貰ったね』と。
 フリーダーは、我関せずとばかりに石動に傍にいる。
 ベルフェゴールは、ラームジェルグと話し込んでいる。


『ひゃっはー!
 いいね、いいね~報酬が楽しみだぜ。
 面倒なのは、石動にまかせりゃいいからな!
 ところで、ラムフーリンや』

『なんだいベルやん』

『死人がウロウロするって噂……どう思うよ?』

『俺の真下の奴が良い例じゃねえのか?』


 ラームジェルグが茶化すと、ベルフェゴールは大笑いした。
 確かに、死んだはずの石動が歩いているわけだから。


『はっはっは。
 まあそうだがな……だが、件数が異常だわ』

『……巧がそういう例を調べ上げたがな』

『ほほう!
 なかなか勤勉な奴だ。
 そういう奴がいるから俺がサボれるってもんよ!』

『巧は、サマナーとして欠陥持ちだ。
 それに……守護霊使いとしてもサマナータイプと魔術師タイプでもないから、どうしても特化組に負けやすいからな……パラメーター的に。
 まあ、こちら側が強すぎると研鑽を積む甲斐がないと巧が言い切るから良いがな。
 そういうわけだから知識面も割りと強いな』


 そう言って調査結果を話す。
 以前も話したように、死人が蘇る事は、ない事もない……表ではありえない話であるが。
 安倍晴明や石動巧等は、条件がそろっていたから復活できたわけだが…。


『スマルって所じゃ独逸の鍵十字団体の元締めが復活して襲撃したって話もあったしな。
 それにイスラエルじゃ大工の息子が蘇るし、アメリカじゃ鼠の人気者を作った人は今でも冷凍保存されて医療が発達した時に黄泉還る予定だし。
 それにプレ■リーも蘇っているだろう?』

『違う、プレス■ーは今でも生きているんだって』


 互いに軽口を叩きあう。
 もっとも、冷凍保存の人もプ■スリー生存説も都市伝説の範疇だが。


『で……だ。
 大正時代でもあったらしいぜ『超力兵団』事件の前にな』


 『超力兵団』事件……帝国陸軍によって作り上げた特殊な軍団によって起こった騒動であったが、時の第十四代目葛葉ライドウの手で見事解決した事件であった。
 (正確に言うと、国津神も一枚噛んでおり、複雑な事情があったのだが……)
 だが、それより少し前に帝都病院で病死した人間が起き上がり消えていったり、死んだ人の霊が見え出す事件があった。
 石動には、その事件の詳細を調べる事が出来なかったが、『超力兵団』事件と関連があったと見ていた。
 ちなみに、その事を『向こう側』の雷堂に聞いても知らない事であり、がっかりした石動であったが、


「『こちら側』のゴウトに聞いてみてはどうだ?
 まあ、奴が話すかどうかは知らんが……当事者だからな」


 と、雷堂は語っていた。
 閑話休題。
 石動達は、祭ってある稲荷像の前にやって来た。



『よくぞいらっしゃいました。
 私は、石神稲荷の使いです。
 貴方が……おや久しぶりに見る顔ですね。
 石動巧』

「……此処に来たのは初めてだがな」

『私が以前、所用があって外出した時に助けられたことがあったのです。
 貴方は覚えていないでしょうが……。
 それに千鶴から、よく貴方の事を聞いています』

「そういえばここは『石神稲荷神社』だったな……」

『そう……彼女も傍系ではありますが、ここの祭る家系なのです』


 石動は、それで千鶴が依頼を受けたのかと納得した。
 原野が使いに話しかける。


「で、僕達はどうすればいいのですか?」

『この地下……私どもは『石神内毛細洞』と呼んでおりますが、その最深部に要石があります。
 本来なら私がいくべきなのですが……』

「解りました。
 下には悪魔がいて近づけないと……」

『ええ……情けない限りです。
 人間の姿ではか弱き子供にしか成れぬゆえに……』


 そう使いが申し訳なさそうに言うと、地面が輝く。
 ワープゾーンになっており、そこからいけるようだ。
 彼らは、そこに飛び込んだ。
 ワープゾーンを過ぎると円盤状の拾い足場に、幻想的な青い空(?)が広がる異空間であった。


「……毛細血管?」

『そう考えりゃ、毛細洞ってのは当っているな』


 香我美とベルフェゴールはそう話していた。
 使いが何処からとも無く声をかける。


『ここは悪魔達が根城にしています。
 それに……不穏な空気がただよっています。
 くれぐれも気をつけて』

「わかりました、では成果を期待して待っていてください」


 朗らかに返事をする原野。
 石動は先へ進む通路を探し始める。
 その後は、悪魔に襲われることが多々あった。
 だが、原野の口舌三寸で丸め込み、香我美の恫喝で大抵なんとかなった。
 もし話し合いに応じない場合は……石動の剣術に仲間達の魔法攻撃の十字砲火で無理やり鎮圧することで切り抜ける。
 彼らは、階層を上下しながら最下層への道を探る。
 だが、途中でワープゾーンが見つからない……その時、フリーダーは、地面が脆い場所を見つけた。
 落とし穴から落ちることによって最下層に行くことになるのでないかと皆で推測してそこから飛び降りた。
 着地するたびに、地面が抜けて落ちていく一行。
 そうしてたどり着いたときには……、


「熱!」

「こ、これは……石動さん!
 どうにかできませんか!!?」


 灼熱地獄だった。
 周りの空気が燃えるように熱く、立っているだけでも負担になった。
 石動は、COMPから召還を行う。


「来い……アズミ」

「はいはい……おお、セッキーやないか。
 なんや、熱うてたまらんな、ホレ」


 暢気そうに現れた魚人型の悪魔が腕を一振りすると、皆に冷気を纏わせた。
 一行は漸く一息つけた。
 おばちゃん口調のこの悪魔は『アズミ』である。
 アズミは安曇と書いて、イソラを主神として崇める南方系の漁労民族、安曇族の水神である。
 水を自在に操る力を持ち、水運と製鉄技術に優れた安曇族は鉱物資源を求めて日本各地に散っていった。
 彼らの移住した地は、各地で安曇野、熱海、朝霞、安積と地名に名残りを留めている。
 2度目の死を乗り越えた石動がようやく仲魔に出来た存在であった。
 もっとも……下位から数えたほうが早い位の弱小悪魔の『妖鬼』であり、石動レベルの戦士と共に戦うには足手まといではあるが。
 そんな彼女に期待しているのは『冷却』能力である。
 熱い場所や水場を冷やす事で、切り抜けられる事態があるからだ。
 親戚のオバサンのような口調でアズミは石動に対して接している。


「もうな~セッキーは、ちゃんご飯食べとる?
 まあ、見たところ血色は良いし、シャツにはアイロンかけとるなあ。
 それと女の子は泣かしたらアカンからな。
 怖い顔やけど、女を優しい言葉かければコロリと逝くからな、セッキーなら」

「……」

『フヒヒ、サーセン』

『なんで、お前が言うんだよ?』


 石動にとって、苦手な手合いであった。
 ラームジェルグが勝手に返事をするわ、ベルフェゴールが呆れているわ……。
 気を取り直して奥に進む。
 最深部にたどり着き、要石がずれかかっているので元に戻した。
 さらに、石動が呪札を貼り付けて補強を行った。


「コレでよし……と」

「まったく簡単な仕事に呼び出しやがって」

「まあまあ……三人がかりだからここまで楽できたわけですし」


 不平不満を言う香我美をなだめる原野。
 しかし、もし本当に不満であればはじめから来ないから……コレはじゃれあいの内なのだろう。


「……皆様、何かが来ます……これは……ありえない」

「もう、どないしたの?
 オバちゃんに解る様に話しときぃ」


 突然、冷静なはずのフリーダーが戦慄していた。
 アズミは、混乱しているフリーダーをあやす様に話しかけた。
 何かを感じた石動は、妙法村正を構えて待ち構えた。
 フリーダーが感知した者がやってきたが、原野達も驚いた。


「くっくっく……」

「なるほど……魔人・影法師か?」

『いいや、違う。
 ドッペルゲンガーでもない……強いて言うなら』

「ペルソナに近い……か
 ならば奴か」


 ラームジェルグと石動は、動じることなく、目の前の敵を分析する。
 他の面々が驚くのは無理もない。
 サングラスをかけた黒い背広に、漆黒の日本刀……石動を瓜二つなのだ。
 違いは日本刀に、目つきが偽者のほうが吊り目気味になっている所と、邪悪な気配が漂っている。
 そして偽者の背後にはラームジェルグが立っている。
 陰気で、粗暴……まさに邪悪な悪鬼悪霊の類に見える。


「……あちらの方がまともだな」

『オイオイ……明るく、フランクで親しみのある俺のほうが普通だぜ?』

「……そうか?」

『そうだぜ?
 エリーちゃんも笑ってサインしてくれたし!』


 あれは苦笑だったよな……とその光景を思い出していた石動だった。
 オカルトマニアの桐嶋には、想像とは異なるラームジェルグにあって困惑していたが……。
 偽者の石動が声をかける。


「俺は、お前の影だ……。
 『奴』は、お前の隙を中々見出せなかったようだが……有ったじゃねえか。
 お前には、一人の人生を奪い取った『罪悪感』って奴がな!」

『………』

「……」

「自分の生きたい、復讐したいという欲求を持って生き延びたお前は浅ましい限りだ。
 お前は復讐を終えた……だから罪を償うために死ぬべきだ。
 俺の中には……お前の殺した奴とともにいるぜぇ……クロウ・クルーワッハ!!」


 そういった偽者……いや、シャドウ石動からペルソナが飛び出す。
 黒い体に巨大な体躯の竜が現れた……獰猛かつ邪悪な雰囲気がでていた。
 クロウ・クルーワッハ……フォモール神族の王・バロールによって召喚された嵐と闇をまとう死の龍だ。
 ダナーンの王アガートラームと彼の妃であるバイブ・カハ三女神の内マッハとネヴァンを殺すと、クロウ・クルーワッハは自分の住む異界へと帰っていったという話があ

った。
 守護霊であるシャドウ・ラームジェルグは、沈黙を続けている。
 石動は、自身とラームジェルグ以外にも強い存在感を感じた。
 おそらく、シャドウ石動がいったのように『以前の石動巧』が完全な状態ではいっているのだろう……と石動は、推測した。
 シャドウ石動は、ニヤニヤしながら言った。


「どうだ……今なら楽に殺してやるぜ?」

「その口程度には、腕が立てば楽しめそうだがな」

「な……!!」


 シャドウ石動の存在に対して恐れや罪悪感を示すどころか、余裕すら感じている石動。
 刀を構えた石動の姿は、大地に聳え立つ大樹のようであった。
 その様子にたじろぐシャドウ石動。
 そして、石動が一喝した。


「いいか、小僧?
 俺は、確かに『石動巧』という朽ちかけた魂を取り込み、身体を奪った……それがどうした!!」

「な……テメエ……!!」

「俺は、剣術家だ……!
 死体の山を築き、血の河を生み出すのが俺の因果。
 恨みを作る俺の生き方に対して言い訳は、行わん。
 真に滅ぶ時がくれば、必ず滅びる……世界の理とはそういうものだ」

「(うーん、石動さんって……)」

「(原野、ここでは口を挟むなよ?)」

「(マスター……)」

「(セッキー、どっしりしてるわぁ。
  オバちゃんが……後十歳若ければね~)」

『(盛り上がって参りました)』

『まあ巧らしいな』


 周りの面々もあえて口を挟まない。
 石動は続けた。


「お前は……罪だのなんだの言うがな……人間生きる為に悪行を行うことだってある。
 単に何でも断罪するのは簡単だがな……お前みたいにな」

「き、貴様ぁ!」


 ペルソナ能力と守護霊能力をあわせて突進するシャドウ石動だった。
 だが石動は、その一撃を受け止めるどころか刀を跳ね飛ばす。
 妙法村正をしまう石動……殺す価値も無いとばかりに。


「な、なぜだ!
 お前の能力に、『石動巧』の能力もあったはずだ!
 なのに……なぜ負けた!!」

『ボウヤだからさ……』


 ラームジェルグがそう言い放った時、石動以外が吹きだしそうになった。
 石動は、相棒の戯言を無視して言い放つ。


「それが解らん時点で俺には勝てん……『奴』に伝えておけ。
 『悪戯は大概にしておけ』とな」

「クソッ……痛ってええ……!!
 頭が痛ってえええ!!」


 そういってシャドウ石動は、自分の影に潜り込んで消え去った。
 ラームジェルグは、『ああ、やっぱり厄介事が起こった』と顔に出ていた。
 それに対して石動は、何もなかったかのように言った。


「……頭痛持ちとは、やはり俺だな。
 お前の方は、無口すぎだがな、ラームジェルグ」

『俺の方が明るい2枚目だぜ?
 気さくで2枚目は無敵ィ!』


 馬鹿な事をいう事が多いが、この陽気な相棒に救われている部分があると石動は、思っている。
 ……それを本人に言う事はないであろうが。


「うーん、魔人ホワイトライダーといい、メシア教団といい、厄介な敵が出てきましたね。
 ところで……さっきの話どういう意味ですか?」


 原野の問いに便乗する者が当然出た。

『そうだ、そうだ~!』

「言いたくなけりゃ言わなくて良いがな」


 香我美の無愛想だが、気遣う姿勢に苦笑いしながら石動は、自分の真の生い立ちを話した。
 当然、驚く四人。
 フリーダーは、何を思ったか抱きついてきた。


「マスター……」

「ん?」

「死なないでください」

「今は健康だが?」

「………」


 主が死んだということに不安感を感じた為だろうか?
 また、主を失うことを想像して、今までほとんど沸かなかったフリーダーの感情が堰を切ったようにあふれ出た為だろう。
 石動は、泣いた子供をあやすようにフリーダーを慰めていたが、フリーダーの混乱は中々治まらなかった。
 その光景に嬉しそうに騒ぎながらデジカメで撮影するアズミであったが、皆それどころではないので気がつかなかった。
 それを余所に原野が話す。


「水臭いな~と思いますがね、石動さん。
 でも、仕方ないといえばそこまでですが」

「もし石動が真顔で『俺に前世がある』とか言い出したら病院に隔離したな」

『メアリー・スーのペルソナ使いになったんじゃねえかってな、ケッケッケ』

 
 香我美は、真面目に語り、ベルフェゴールがそれに便乗してジョークを飛ばす。
 ラームジェルグが『あっさり倒したのが惜しい位の愉快な連中だったよな~光の戦士』とか思っていたが、それは決して口には出さなかった。  
 石動も、やれやれと苦笑いしながら、全くだと同意したのだった。





 あとがき。
やはり、長編活劇物には偽者は基本ですね。
というわけでシャドウ石動参上、本物(旧のほう)のタクミンパワー付きです。
久々に原野達はでましたが……戦闘らしい戦闘はほとんど行わなかったり。
まあ、時代小説だって斬り合いが一切ない回もあるし。
ああ、アズミの写真は、モー・ショポーにいきわたりましたが何か?




 
  




[7357] 第2期 第20話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/13 09:47
 ホテル・プレアデス。
 珠間瑠市・鳴海区に聳え立つ高級ホテルだ。
 鳴海区は、臨海開発区であり、プレアデスの中には高級レストラン『クレール・ド・リャンヌ』、高級ジュエリー『パパラチャ』、そして高級バーラウンジ『エボニー』がある。
 今回の話は、プレアデスの屋上のペントハウスが舞台だ。
 日本人には馴染み深いものではないが……ペントハウスとは、建築面積の1/8以下の床面積である最上階の部分のことであり、機械室、階段室等に利用されることが普通だ。
 プレアデスでは、ホテルの一室として使われており、見晴しが良くて開放的な瀟洒な雰囲気で、誰もが憧れる空間となっていた。
 映画で『プリティーウーマン』でジュリアロバーツが宿泊している場所といえば解るだろうか?
 このような、豪華な空間を作る所が多いわけだ。 
 その部屋に二人の男性が立っていた。


「うむ……調度品に設備、広さも一級品だ。
 そしてなにより『一番』高い場所というのがいい」

「左様でございますか」


 背中に『To The Nunber 1』とプリントされた黒いライダースーツ、『1』と書かれたマフラーを身に着けた眼鏡の青年がいた。
 彼は、オールバックに髪型をきめており、屈強な体躯を誇る背広を着た壮年が彼の傍にしたがっていた。
 南条コンツェルン次期総帥の南条圭と、その部下である松岡であった。
 今回、彼らがこの部屋を長期契約を行って借りたのは訳がある。
 関東でビジネスを行う拠点であり、同時に私事においてもこの場所が丁度良いからだ。
 南条が以前、とある事件でともに戦った仲間が近くに住んでいるというのも大きな理由だ。
 他のところでも良かったが、新しい開発地帯である為、南条が来ていても怪しまれないという点が大きい。
 でも、実際のところは……市内で一番『高い』場所に位置しているというのが一番の理由だが。
 しばらくしてドアが開く。


「うわ……以前招待された場所よりスゲエ!!」

「……此処に呼んだのは用があるからか?
 俺もお前に頼みたい用があった」


 アーティストの風格を漂わせながらカジュアルなイメージをかもし出したジャケットとジーンズを着た青年と、暗紫色の背広を着た強面の青年がやって来た。
 新進気鋭のポップアーティストである稲葉正男と、サラリーマンの城戸玲司だ。
 そして遅れてやってきたのは、ショートカットの女性で優しげな印象を見せるスーツを身にまとう美女がやって来た。


「稲葉君久しぶり!
 それに城戸君と南条君もね」

「よう、園村!
 仕事は、上手くいっているのか?」

「うん!
 柊先生からもう少しすれば一人前になれるってお墨付きを貰ったよ!」

「その様子からすると、元気そうだな」


 明るく振舞う女性に、稲葉は嬉しそうに、そして城戸はそっけない態度であったが、仲間との再会に喜びを見せている。
 園村麻希……南条たちの仲間であり、珠間瑠市の柊サイコセラピーの見習いである。
 ある事件で救われた彼女は、犯した罪の記憶に苛まれ、その償いをするべく、また自分と同じように心の苦しみを持った人を救いたいと考えている。
 南条が普段見せない微笑みを浮かべた……仲間との再会が嬉しいためであろう。
 だが、すぐに表情を引き締めた。


「園村、城戸、そして稲葉。
 再会の所悪いが……厄介なことになった。
 お前達の力を借りたい」

「奇遇だな。
 俺も同じ事を頼むところだった」


 南条と城戸は、それぞれの事情を話す。
 南条は、この間、パーティーで起こった騒動のことを……。
 城戸は、廃工場での出来事を簡単に話した。
 

「松平の姉が持った異能力に神取のペルソナ……、城戸が言った南条グループの機密の漏洩。
 そして、自衛隊内の秘密組織『新世塾』とそれを先導する神条……それも城戸に似た男という……」

「神取は死んだはずだ。
 俺のこの手で……倒した」


 南条が考え込み、城戸は、自身の拳を見つめていた。
 重すぎる空気に園村と稲葉が話す。


「神取さん……か」

「園村も色々思うところがあるよなぁ。
 ゆきのさんとか、アヤセとかブラウン……それに桐嶋と藤堂は?」

「ゆきのさんは、婚約者の藤井さんと一緒に取材で遠くに出ているわ。
 アヤセは、三人目が出来たって。
 エリーは、ワンロン千鶴さんと一緒に仕事だってさ。
 上杉君もエリーと同じ番組の仕事。
 藤堂君は……、最後に聞いた情報だと北極に行ったみたい。
 『クマさんに歌を捧げに』とか」

「はあ!?
 前から変わっていると思ったが……ますます変になっていないか!?」

「う、うーん……否定できない」


 稲葉が呆れている。
 園村も否定できずに苦笑いしている。
 稲葉は、園村と話せて嬉しさがある一方、彼女の心は、変わり者の方に向いていることを再確認して寂しさを感じていた。
 城戸が、南条に再び話しかける。


「で、どうするんだ?」

「まだ情報が少ない。
 今日のところは警戒するようにすることと、顔あわせだな」

「顔合わせ?」


 園村がそれを聞き、首をかしげた。
 南条は、軽く頷き答えた。


「皆が常に身動きできるとは限らん。
 だから、頼りになる戦力を呼んでおいた」

「それってペルソナ使い?」

「いや、Mr.九鬼……彼は、ペルソナ使いではないが、それにも負けない能力を持っている。
 今回は、来れないが……。
 共同戦線をよく張る同業者も協力することになっている。
 彼も知り合いを頼んでさらに人員が増えるそうだが。
 石動という『デビルサマナー』……『悪魔』を使役する者だが」

「「石動だと!!」」


 稲葉と城戸が同時に大声を出したとき、ドアが開く。
 黒いスーツに黒いサングラスをした強面で稲葉達と同年代の青年と機械じみた印象を与える美女が現れた。
 その後に、ゴールドのスーツを着た長髪のやさぐれた男、そして、緑の蜘蛛の巣をイメージする服を着た赤毛の女性がやって来た。
 石動とフリーダー、ペルソナ使いのパオフゥと芹沢である。


「へえ~。
 今までマーヤとバーで飲んだ事はあったけどね。
 屋上がこんな部屋になっているなんてね~。
 正直予想以上」

「ケッ。
 俺は、こんなお上品すぎた部屋に住んだら生きた心地がしねえな」

「マスター……稲葉様と城戸様です」

「九鬼の旦那から頼まれたと思ったら……見知った顔があるな」

『よう!
 マークに城戸っち!』


 思わぬ再会に驚く三人。
 園村は、その『濃い』面々に若干引き気味だった。
 とくに、明るい西洋落ち武者のハイテンションとか。
 改めて情報の交換・整理を行った。
 パオフゥは、多くのペルソナ使いがいる事を聞き、若干呆れ気味であった。
 

「たく……ペルソナ使いがこんなにワラワラ出るとはな。
 正直、昔は……特別な人間が成るもんだとばかり思っていたがな。
 それはそうと……情報を纏めろ、石動。
 お前が一番『その道』の事情に詳しいはずだ」

「……良かろう。
 神取鷹久=神条鷹久であり、自衛隊の『新世塾』を煽動しているという可能性か」

「しかし、奴は……確かに倒した」


 南条の反論を聞き、頷く石動。


「だが……死んだ奴が生き返ることは、この世界では『極めて稀』であるが……決してありえない話ではない。
 それにしても……堕天使オセか」

「なんだ……その……オセってのは?」 

「俺を恨みに思っている悪魔さ。
 話を統合すると、神取のペルソナだった『ニャルラトホテプ』……奴が後で糸を引いているな」


 石動は、そのように断じた。
 ペルソナが人間を操ると聞いて驚く者がいた。


「ペルソナが黒幕……」

「想像できないわね」

「芹沢にそこのお嬢ちゃんが驚く事があるが……。
 ペルソナは、両刃の剣だ。
 強力だが、使いこなせなけりゃあ……自滅するもんだ」


 パオフゥは、芹沢と園村の言葉に答えた。
 石動が、更に続ける。


「奴は、何度も俺の前に現れた。
 アレは『人間の負の感情』そのものだ。
 奴は、人間の破滅を望んでいるらしいが……過去に大きな失敗をしているらしい」

「もしかすると……黛が以前関わった事件かもしれんな」

「それって空からナチスが攻めてきたアレ?」


 南条が言及した事件を芹沢が反応した。
 珠間瑠市で起こった怪事件があった。
 人々の存在が消えそうになった事件から始まり、最後にはナチス軍が現れたらしい。
 黛と芹沢の友人がその事件に関わっていたらしいが、南条たちは、詳しい事情を聞いていなかった。
 ちなみに園村も、襲い掛かるナチスを撃退して人々を守っていたが、事件に深く関わっていなかったし、城戸も廃工場で暴れただけであった。
 そして、短期間で解決した為、人々の記憶から風化しつつあるのだ。


「過去のことは、後でまた当事者に聞けば良いでしょう。
 問題は……敵が何を行うかが問題だと思います」


 長く沈黙を保っていた松岡が控えめに意見を述べた。
 石動が、それに頷く。


「全くだ。
 大きな事件を起こすつもりなのは確かだな。
 新世塾……コレを利用する算段だろうな。
 メシア教団は、地下に潜った厄介な手合いがいる。
 それに死人に出会ったり、歩き出す噂も関係しているかもしれんな」

「……ああ、アレは奇妙だな」


 噂サイトを開くパオフゥも同意した。
 パオフゥは、異常に集まる数が多くなっていることを言及する。
 石動は、彼らに言わなかったが、高尾祐二が脱獄した事も不安要素であると考えている。
 オセとは知己であろうから、オセが彼を利用する可能性が高いと考えた。
 

「何があってもいいように、鍛えておく事だ。
 場合によっては、即座に『上』に情報を流すが……」

「『信用』できますか?」

「『信用』でき、『信頼』できると言っておこう」


 南条達は、以前に関わった事件から警察が助けにならなかったが故に聞いたことであった。
 だが、大規模な事件になる可能性があり、オセやメシア教団絡みなら公安零課も出てくる上に、ヤタガラスも出張ると考えていた。
 彼らの組織力は、並々ならぬものである事を石動は、承知している。
 だから、情報を流す事も視野に入れている。
 南条は、石動の言葉を聞き、納得した。


「プロがそう判断するのなら、その方針でいいでしょう」

「あと気をつけることは……新世塾……いや、メシア教団は、洗脳した信者をけしかけるし『自爆』を行う。
 身辺には気をつけることだ。
 あと奴……、ニャルラトホテプは、嫌がらせが好きだからな。
 この前は、俺の偽者をけしかけた」

「偽者?」

「自分の心の影から作り出したものだ。
 能力は、自分と同じと思うことだ。
 プランクのある状態で戦う事になったらまず勝てん」

「影か……」


 パオフゥは、グラスの水を飲み干しながら考え込む。
 芹沢も、『自分の偽者かあ~』と考えているが、今ひとつ想像がつかないらしい。
 彼らは知らないが、南条の仲間である黛は、ニャルラトホテプの事件で自分の影と対峙した事がある。
 後に語る所によると、その時ともに行動した仲間の影も現れ、どれも苦戦したそうだ。


「繰り返して言うが、自分達の常識の裏を掻く行いをすると思って用心することだ」


 そう石動は、締めくくった。









 あとがき
情報交換の回……でも大した事していない。
むしろ『成り行き任せ大作戦』?
登場人物の数が多くなると会話が…。
それにしても第2期がもう20話か。


さて、アンケート。


・ジェシカさんの宝石探し。

・九鬼さんの海賊退治。


 どっちが見たい?







 おまけ   むーでれ。


「むー」


 モー・ショポーは唸っていた。
 フリーダーが石動に迷子の子供のように抱きつく写真を見ていた。
 石動の新しい仲魔・アズミが取ったものだ。
 最近、石動を狙う(注 あくまでも彼女の視点ではです)女性が増えたところに思わぬ伏兵が現れた。
 信頼をし、一番行動を共にしているという所が侮れない。
 そう思っていたとき、後から声をかけてくる者がいた。


「どうした?
 心配したんだぞ」

「……」


 声と外見は、彼女が恋している相手そのものだった。
 だが彼女には、違和感を感じていた。
 それに……


「俺は、お前の事を大事に思って……」

「むー!!!」

 
 そういった石動に向かってモー・ショボーは、真空波を飛ばす。
 不意打ち気味に喰らって、大ダメージを受ける石動。


「な、に…」

「この偽者め!!」

「な、なぜ……」

「せっきーはね……鋭いけど、優しい気配がするの。
 でも、アンタからは…、どす黒い気配しかしないもん!
 それに……」

「それに……?」

「せっきーは一度も、そんな優しい台詞なんて言った事なんかないもん! 
 それを……よくも…セッキーの姿でた、たぶらかして……ふ、ふえええええん!!!」

「うっわああああ!!」

 
 モー・ショボーは、感情を爆発させた。
 真空波が、ショックウェーブが、ファイアーブレスが、そして絶対零度……ビームのような魔法を立て続けに石動……いや、シャドウ石動にぶち当たる。
 シャドウ石動は、なす術なく退却した。


「ひっぐ……ぐすん」


 モー・ショボーは、暗い気持ちになって石動の事務所に戻った。




 朝起きると、ベッドには一人だった。
 いつも先に石動が起きている。
 だが、今日は、若干様子がちがう。
 テーブルに置かれた物は、モー・ショボーが好きな食べ物ばかりだった。
 彼女は、石動に聞いてみた。


「ねえ……」

「なんだ?」

「これって……」

「適当に有り合せで作っただけだ」


 だが、食材を買ってきたばかりだったはずだったと彼女は記憶していた。
 だから、そんなはずではないのだ。
 石動は、モー・ショボーが落ち込んでいた事を察したのだろう。
 だから、今日のような料理になったのだろう。


「せっきー……」

「ん?」

「大好き」


 上辺でなく、行動でさりげない優しさを出す石動に、モー・ショポーは、惚れ直したそうな。 






『せっきー……恐ろしい子!!』


 ついでに、柱の影でラームジェルグは戦慄していた。 






[7357] 第2期 第21話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/13 10:14
「この一週間、財布を十個拾ったよ」

「ツイてるね~。
 逆に言うと運が無い奴が十人いるけどね」





「昇進したのに、交通事故にあったよ。
 この脚が治るのに3ヵ月はかかるそうだ」

「お気の毒に……そういえば、鉄骨が頭上から落ちてきても怪我一つなかった人もいるみたいだし……」




「ムー大陸で初めてスロット回したらさ~、全部☆そろってコイン5万枚ゲットしたぜ!」

「そりゃすげえ!
 なに、その豪運ぶり?」










 街の中で様々な話が行われいる。
 そんな中……、



「うふふ…」

「たかが宝石に……」


 金髪と黒髪の美女達が街を歩いている。
 肉感的な金髪美女と神秘的な黒髪美女は、注目を集めるのは無理もない。
 ジェシカとその仲魔・スカアハである。
 宝石を好むジェシカに対して、どうでもよいという態度のスカアハ……。
 悪魔にとって宝石は割りと簡単に手に入るのだ……主に魔界等で。
 だが……あまりに高濃度の魔力・呪力等が篭っている為に加工も難儀な上に、魔を呼び込んでしまう。
 だからサマナー達は、宝石店に売却できない。
 ジェシカは、宝石……というより、自分の琴線に触れるデザインのアクセサリーを探していたのだ。
 2人は、東京のとあるジュエリーショップに立ち寄った。
 ジェシカは、商品の中で木をイメージしたブローチを見つけた。
 ルビーを木の実に見立てており、 『Lham』と裏にサインが刻まれていた。
 派手すぎないデザインがジェシカには気に入ったようだ。
 それを頼もうと店員に声をかけた。


「ねえ、これお幾ら?」

「これを買いたいんだ!!」


 だが、同時に商品を狙った者がいたようだ。
 黒髪で、短く切った20代半ば位の青年だが、眼鏡をかけた貧弱そうな体つきだった。
 女物を注文するところから、彼女への贈り物だろう……と、ジェシカは判断した。
 
 
「……これって他にないの?」

「申し訳ありませんが……。
 デザイン・加工は、個人の職人が行っておりまして。
 同じ物を二度作る事は極めて稀で……これは一品限りでございます」


 宝石店の店主から他に無い一品と聞き、二人の顔色が変わる。


「……」

「……」

「(譲ればよいのではないのか?)」


 スカアハの考えを余所に、青年とジェシカは、どちらが取るか決めるのを揉めていた。
 だが……、


「キャアアア!!」

「な、なんだ!?」

「……ジェシカよ、招かれざる客のようだな」

「ええ……」



 無数の悪魔が現れた。
 どれも、機械のボルトやチューブを埋め込んでいる。
 リーダー格らしき悪魔は、キノコのような頭を持ち、黒いローブに胸部に赤い太陽を模したマークがあり、両手持ちの剣を軽々ともっている。
 顔面にはサングラスをかけ、足元にはキノコらしきものが生えている……当然、人間ではない。
 その上、機械化処置を受けているようだ。


「あれはチェルノボグ……だが、あの機械はなんだ?」

「機械化悪魔……ロシアンマフィア『レッドキャップス』の連中ね!!」


 チェルノボグ……「白い神」ベロボーグと対をなす「黒い神」。
 夜と闇を支配するスラブの悪神とされているが、神話体系が完成する前にキリスト教との勢力争いに敗れた。
 また宗教を否定する共産党支配の中で歴史の中に埋もれていった神でもある。
 機械化された悪魔を使うのは、ジェシカの知る限り、『レッドキャップス』のみである。
 ジェシカも応戦したいのは山々だったが、人間が大勢いる中で本来のスタイル(銃撃戦)を行えば、間違いなく、巻き添えになる者が続出する。
 だから、まず人々の避難を優先する二人だった。
 男も呆気に取られていたが、悪魔に殴り倒され、持っていたブローチを強奪された。
 幸い怪我人はいなかった……だが、宝石は盗まれてしまった。


「まさか……悪魔がやってくるとは」

「……公安零課に連絡しなさい」


 宝石店の店主は、悪魔の存在を知っているようであったので、小声で告げるジェシカ。
 ブーツ型COMPでシルフをこっそり召還し、後を追跡させていた。
 ジェシカは、追いかけて宝石を取り返すつもりのようだ(そして、目的の品を取り返して値引きして手に入れるつもりのようだ)。
 冴えない男も、ジェシカの様子に気がついてついていくつもりのようだ。


「あの宝石は、ずっと前から目をつけていたんだ。
 アンタが美人でも譲るつもりは無いね!」

「……それよりいいの?
 アンタじゃ荷が重い事件よ?」

「大丈夫!
 俺は、こう見えてもハードボイルドな探偵さ!」


 ジェシカは、警告する。
 だが男は、自信満々のようだった。
 スカアハは、訝しげに見ている。


「(石動と同年台……まあ、石動が本当に20代かは疑問だが。
  なのに、弱そう……いや、はっきり言ってゼリーマンすら倒せるか疑問だが。
  そもそも……アレがハードボイルドなら、石動は……オリハルコンやヒヒイロカネ並に筋金入りの堅物になるがな)」


 ゼリーマンとは、赤紫色の汚泥のような悪魔で……実体化を失敗した悪魔である。
 魔界でも見ることが極めて稀である弱小悪魔だ。
 守護霊に憑かれた日には、落ち込むしかあるまい。
 つまり、目の前の男は、頼りにならないだろう。
 ジェシカは、ため息をつきながら言った。


「……まあ、死んでも骨は、拾わないからね。
 ヤバイと思ったら、すぐに逃げなさい」

「ふふふ、この名刀ボンクラを再び使う日が来るとは……」


 いつの間にか、背中から日本刀を取り出す青年。
 だが、スカアハだけでなく、ジェシカですら解った。


「「(あれって駄剣だ)」」

「まあ、大船に乗ったつもりでいたまえ」

「いいけどね……。
 ところで、貴方の名前は?」

「里見忠志さ!」





















『よーし、できた……と』

「……お前にもそういう才能があるとはな」


 ラームジェルグは、地下の部屋で仕上げの作業をしていた。
 そう……ラームジェルグは、クーフーリンになれるようになって以来、自分の小遣いが足りない分を自分で稼いでいるのであった。
 『Lham』……ラームジェルグは、アクセサリーを作る才能があったようだ。
 宮本武蔵が仏像を作るように、彼は装飾品を作るのだ(動機が天と地ほど差があるが)。


『よし……!!
 新しいPCを買うぞ~待っていろ、はわわ軍師!!』

「……まあ、家計に悪影響を与えなければいいか」

『よし、次はHPのCGを……。
 タケルちゃんとWミコトがUNKNOWN level4に感染して乱交するCGを……』


 今日は、石動とラームジェルグは、平和な一日を送っているようだ。





[7357] 第2期 第22話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/17 05:10
「さて……追えているかしら?」


 シルフがしばらくして戻ってきた。
 だが……、下水道まで追跡できたが、撒かれてしまったようだった。
 里見は、ジェシカが悪魔を召還・使役しても驚いていない(悪魔が見えているようだ)。
 ジェシカが問い詰めたら……、


「たまき……オレの彼女がデビルサマナーって奴をしている」

「へえ……もしかして内田たまき?」

「知っているのかよ!?」

「まあね、新進気鋭のサマナーで有名だから……。
 (でも、石動も負けない働きをしているような気がするのに無名なのよね~)」


 ジェシカは、その事に疑問を抱いていた……。
 内田たまき……葛葉探偵事務所で探偵見習いをしている(一応正社員にはなったが、まだまだ修行が必要とのこと)。
 彼女は、軽子坂高校出身だったが……1990年代に『軽子坂高校消失事件』に巻き込まれた。
 多くの生徒・教師が帰らぬ人になった原因不明の事件……だが、裏では悪魔召還プログラムを悪用して起こった事件として有名であった。
 当然、たまきが解決した事が裏では知れ渡っていた。
 そんな彼女は転校して、聖エルミン学園にやってきたが……『セベクスキャンダル』が発生した。
 その時は、大した働きをしなかったが……葛葉が彼女の才能を目をつけた。
 そして、交渉の末に葛葉事務所に迎え入れられた(しかし彼女は、自分が有名であることは自覚していないし、サマナーとしてスカウトされているとは知らない)。
 彼女をスカウトできたのは、ハードボイルドな探偵に憧れる里見を探偵見習いに誘った事だ。
 そうすれば、里見と交際しているたまきもついて行くと見越した所長の轟の手腕だ。
 そして……轟の正体は、かつて葛葉キョウジだった男で、現在も幾つも肉体を使い分けている存在である。
 ちなみに、同年代の軽子坂高校出身である男性サマナー……ノブと呼ばれた男の場合は、事件関係者は皆、彼が何処で何をしていたか知らなかったし、本人もほとんど語らないからだ。
 彼の実力がわからなかった為に、スカウトが遅れ、いつの間にか勝手にサマナー業界に入っていたようだ。


 では……石動が何故注目されないのか?
 それは、彼の『下級悪魔しか使役できない』という欠陥の為だ。
 その欠点を知れば……見向きをしない人間が多いのだ。
 『無能だろう』、『安い仕事しかできない三流サマナー』『大掛かりな仕事をすれば死ぬだろう』と皆考える。
 更に、石動自身は実力をアピールする事がなく、大掛かりな事件の時に限って裏でも詳細が公表されない事件(警視庁ロボ事件、メシア教事件等)ばかり関わっている。
 その結果、石動と親交のある人間以外で彼の実力を知るのはヤタガラスと、『石動の敵』のみであるのだ。
 閑話休題。
 ジェシカと里見は、下水道の入り口までやって来た。
 入ろうとした時、中から一人の青年がやって来た。
 小柄だが、美形で愛嬌のある童顔の青年で、高級なスーツを身に纏っていた。
 ジェシカの知っている顔であった。


「あれ?
 こんにちは、ジェシカさん」

「こんな所に何故来たのかしら、原野さん?」

「しっかり食べているのか?
 相も変わらず華奢な奴よ」


 スカアハが男を見てそう言い切った。
 そう……悪魔交渉人である原野である。
 石動という共通の友人を通じて知り合った二人であり、幾度も仕事で一緒になる機会があった。
 原野は、得意の交渉でジェシカとの中を深めようとするが、撃墜されている(まんざらでもないらしいが)。
 朗らかな声でそれに答える原野。


「いやあ、実は……サラームって石油富豪の依頼で……」

「はあ!?」

「金が腐るほどあるらしくって……だから変わった場所の地図を収拾するのが趣味なんだそうです。
 それで僕は、この下水道を歩いて地図を完成させたんですよ。
 ここは、悪魔や犯罪者が隠れるにはうってつけですからね」

「まあ……なんとも珍妙な趣味な」


 スカアハは、金持ちの道楽に呆れていた。
 一方の原野は、依頼者からの報酬が旨みがあるのか、ホクホク顔になっている。
 それを聞いてジェシカは、名案がうかんだ。


「……じゃあ、その機械に記憶されているデータを写させてもらって良いかしら?
 今からちょっと用事があるから」

「ええ~。
 苦労したのをそんな簡単に……」

「お・ね・が・い」

「喜んでお姉さま」


 長身モデル体型のジェシカの胸に埋まってしまう原野。
 あっけなく原野は、陥落した……それでもデートの約束を首尾よく取り付けていたが。
 そういう所は流石と言うべきだろうか?
 原野は、嬉しそうに帰っていった。


「あの馬鹿弟子と違う系統だが……根は同じだな」

「変な奴だなあ」


 そう零すスカアハと里見であった。
 ジェシカは、COMPに地図を記憶し、早速閲覧した。
 ロシアンマフィアを追いかけるべく、奥にすすむ。
 地図は、詳細な内容が書き込まれてあり、ロシアンマフィアのアジトへ迷わずついた。
 当然、ジェシカは『戦闘用』の装備を持ち込んでいる。
 スカアハは、里見に言った。


「あいにく、ジェシカの戦い方は荒っぽい。
 巻き添えにならないように下がっていろ」

「で、でもよ~」

「無謀と勇気を履き違えるな!」


 スカアハは、一喝した。
 すぐに武芸の達人は、里見へアドバイスを送る。


「闘いでは、私達のほうが専門だ。
 地図によると、出入り口は一つだ。
 まあ、抜け道があるかもしれんが……。
 お前は、入り口で待っていろ。
 敵わぬと悟ったらすぐに逃げよ」

「もし……逃げる事もできなかったら?」

「諦めろ……といいたい所だが……。
 一つだけ伝授してやろう。
 『一日で達人並の事ができる』ように……な」

 
 スカアハの笑みは美しかったが、里見が生唾を飲むは、美しさからではないようだ。
 里見は、スカアハの教えをしっかり聞いていた。
 自分の命に関わることなので真剣だ。
 ジェシカも一応フォローするつもりなのか、COMPを起動させながら言った。


「シルフを置いていくわ。
 今回の敵はそう強くなさそうだし」

「この弱いのを守ればいいの?」

「そうよ」


 シルフは、ジェシカの命令を聞き、里見の頭上で待機する。
 同時に、リャナンシーとオボログルマが現れる。
 4人がかりで突入するつもりのようだ。


「準備だけはしておきましょう、タル・カジャ!」

「世界を救う時が来たァアア!!」


 オボログルマが高速でスピンしながら突入する。
 雑多な雑魚悪魔を撥ね飛ばす。
 壁に吹き飛んで倒れた所にご丁寧に、止めとばかりに轢いていき、血のカーペットを作り出す。
 リャナンシーは、補助魔法で更に強化を行う。
 ジェシカは、銃器を取り出す……M4A1カービンと呼ばれる銃器を発砲する。


「受け取りなさい!!」

 
 退魔用の特注弾丸が撃ち込まれ続け、西瓜が爆ぜるように悪魔の頭部を粉砕する。 
 M4カービン……コルト社が開発製造した軍用ライフルで主にアメリカ合衆国の軍隊で使用されており、M4A1カービンは特殊部隊用にM4カービンを改良したもので、M4には無いフルオートマチックモードを備えているほか、多数の装備がされている。
 カービンとは、本来は通常の小銃より銃身が短い騎兵銃で、現在では市街戦や密林など取り回しの良さを求める特殊部隊用や将校や軍用車両の乗員の自衛用である。
 M16アサルトライフルに準じ、M4カービンおよびM4A1カービンは、暗視装置、レーザーポインター、光学照準スコープ、バイポッド、M203グレネードランチャーおよびXM26LSSアンダーマウントショットガンのような多くのアクセサリーがある。
 今回は、宝石奪還が目的であるので、グレネードランチャーだと、目標物を壊す可能性があるので、マウントしておらず、暗視装置、レーザーポインター、そしてイザという時に広範囲に攻撃する為にショットガンをマウントしている。
 今回は、機械化された悪魔を撃つ為の特注のアーマーピアシング弾で打ち抜くことを重点においている。 


「次!」


 有無を言わさぬ速射で次々と撃ち抜き続ける。
 だが、さらに苛烈なのは、スカアハの槍での一撃である。


「……下郎が!!」


 カタパルトから発射されるかのごとく神速の突きで心臓、頭部、頸部等を貫く。
 無論、戦闘用である彼らは、高速で移動して回避を試みている。
 だが、それすら織り込み済みで吸い込まれるように貫かれ、次々と命を奪い去る。
 次々と屍を築き、奥に進んでいく。
 段々狭くなっていったので、オボログルマをCOMPに返した……名残惜しそうに彼は叫んでいるが、狭すぎる場所では役に立たないからだ。
 一番奥には、宝石を強奪していったチェルノボグと、蛇の下半身と青年の上半身を持った青い身体の悪魔……ナーガが数体の存在があった。
 盾と槍を構えており、屈強な印象を持たせる。
 チェルノボグの背中には、宝石の入った袋があった。
 恐らく、組織に献上するつもりなのだろうか?


「……」

「だんまりね」

「改造されているからなのか?」


 スカアハの疑問は正しいようだ。
 無言で襲い掛かる。
 リャナンシーは更に補助魔法を唱える。


「タル・カジャ!」

「くたばりなさい!!」


 ジェシカは、フルオートで発射する。
 ナーガ達の大半は、撃ちぬかれる。
 中には、盾でガードしようとするが、盾ごと粉砕されていった。
 スカアハは、チェルノボーグと一対一の状況に持ち込んだ。
 彼女は、隙の無い構えでいた。
 チェルノボグは、動きの妨げになると考えたのか、宝石を入れた袋を下ろした。
 互いに攻撃を打ち出すことがなかったが、横からナーガが突きかかってきた。
 それをスカアハは、難なく避け、槍で眉間を貫いた。
 だが、それを好機と見たチェルノボグは背後から切りかかる。


「スカアハ!!」


 ジェシカは思わず叫ぶが……。


「遅いわ」


 チェルノボグは、額から血を流しながら倒れた。
 スカアハは、気配を察知して槍を引き抜く勢いを利用して、石突きの部分をチェルノボグの脳天に叩き付けていた。
 倒れた死神の心臓を貫き、止めを刺した。
 こうしてジェシカたちは、勝利の凱歌を上げる事になった。


「流石ね!!」

「……宝石袋がないな」

「え!?」

「急ぐぞ!!」


 スカアハは、驚くリャナンシーに何かをいう事なく、入り口に向かって走り出す。
 ジェシカとリャナンシーもそれに続く。
 スカアハは、走りながら説明する。


「おそらく、素早しっこい悪魔に、運ばせたのだろう。
 突入前に術で確認したが……抜け道はないから、逃げ道は一つだ!」
 
「……って不味いじゃない!!」

「シルフだけならば問題は無いのですが……」


 そう思っていると、入り口の方で断末魔が響き渡る。
 たどり着いた時には、宝石袋をもった悪魔の死骸と驚くシルフ、そして……血塗られた駄剣を持ったまま腰を抜かした里見がいた。














 里見は、宝石袋を持って歩いている。


「宝石は取り返したけど……」

「……いいわ、今日のところは譲ってあげる。
 彼女へのプレゼントでしょ?
 素人にしてはがんばったから……ね」


 ジェシカの一言で、里見が喜び勇んで宝石店に戻しに行った。
 貧弱な身体だからふらつきながら走っているが……。
 彼の姿が見えなくなってからスカアハは、ジェシカに話しかける。


「いいのか?」

「奪還料はキッチリ頂くからそれで良しとするわ。
 それより……あの子に何を教えたの?
 あんな素人でも悪魔を切り倒せたのだから……凄い教えなんでしょうね」

「ふむ……」


 少しおいてからスカアハは質問に答えた。


「石動から聞いた話を話したまでだがな……。
 千葉周作という日本の剣豪が実際に教えた『夢想剣』の極意だが……。
 命を狙われた剣の素人である茶坊主に一日で達人並の行いが出来るようになった話だ」


 茶坊主は、辻斬りに命を狙われたが、用事を果たすまでは死ぬわけにいかない……と命乞いをした。
 その時は命を拾ったが、死ににいかなければならない。
 そこで、周作に死を恐れて逃げるわけにいかないので醜くない死に方を伝授して欲しいと頼んだそうだ。
 まず、大上段の構えを取らせ、呼吸法、姿勢、丹田の力の入れ方を教えた。
 その後に周作は、茶坊主の目をつぶらせた。
 そして、身体に冷えた感覚がするからその方向に向かってただ振り下ろせばいい……と教えた。
 その結果は、既に冥土にいると思った心持も合わさって辻斬りは、隙がないと感じて逃げ去ったそうだ。


「剣の極意の一つは……相打ちにあるとな。
 生き延びるつもりがないからこそ並の剣豪が生涯かけてたどり着く所を一晩でたどり着いたわけだ」

「でも……あの子じゃそんなタマじゃないでしょう?」

「そうだ、『死んだつもりになれ』といっても恐れる事だろう。
 だから何も考えるなと。
 いった事を必死に聞く素直さが功を奏したのだろうな」

「呆れた……彼女の為と思った根性が助けになったからいいのでしょうけど。
 失敗していたら……」

「私に抜かりはない。
 そんな時には、奴のポケットに忍ばせたルーンを刻んだ石が守る。
 あの程度の悪魔なら一撃を凌ぐくらい容易い事」


 そう言ったスカアハは、極上の微笑みが浮かんでいた。





 

 あとがき。
 ボンクラ息子編の終了です。
 スカアハの罠だ!!
 といったところです。
 では、アンケート!!


・パオフゥ結婚!?(罰のゲストがくるかもよ?)
    
・三つ巴大決戦!!(石動パワーアップルート?)

・九鬼さんの海賊退治。(目つきの悪い人再登場)





[7357] アンケートまでの時間稼ぎその2(2009/05/16 追加)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/16 23:53
ラームジェルグの日常。

『姦■シリーズをクロスした作品ないかな~?
 ■染はエロイからな~』


 そう言いながら投稿SSサイト『桃源郷』を覗いていた。
 しばらく唸ってから閃いた。


『逆に考えろ?
 無いのなら作ってしまえば良いのさ?
 そうか!
 ありがとうジョースタ■卿!
 『逆に考える』その言葉、心で無く、魂で理解した!』


 同郷(正確に言うと全然違うような気がするが細かいことは良いんだよ!Byラームジェルグ)の偉人の言葉を受信して情熱に火がついた。


『クフフフ……せっきーが様々な霊の力を借り受けて大きな事を成し遂げてきた。
 今なら、お前の偉大さが解るような気がするぜ』


 この状況を無愛想な剣術家が知ったら、問答無用で夢想正宗を打ち込む気がする。
 それはともかく、書きつづける。


『クロスオーバー……それはありえないものの合成……ウーリの錬金術を極めようとする気持ちがわかるぜ』


 そんな戯言を聞いた日には、メギドラオンが飛んで来ることだろう。
 今日もネットに没頭するラームジェルグだった。










交渉。


「悪魔とは戦うばかりでは芸が無い。
 時には交渉することも必要だ」


 石動が、公安零課とそれ以外(何らかの事情で悪魔の存在を認識した警官)に講義を行っている石動。
 悪魔と交渉する技術はあったほうが良いだろう。
 情報収集、アイテムの物々交換、そして悪魔を仲魔に誘ったり、命乞いをすることが在る為だ。
 何が気に入るか、どういう受け答えが良いか……それはケース・バイ・ケースだ。
 だが、自信を持って接した方が上手くいく傾向にあると石動は知っている。
 そこで、訓練場を石動が異界化させた。
 役小角の能力を使いこなしたお陰だが、石動自身が術の訓練を怠っていない事も大きい。
 ちょっとした呪術なら石動でも出来るようになっている……戦闘に使う物は、使えないが。
 異界に悪魔を放った……というより、ニュクスに頼み込んで交渉の練習台として悪魔を呼んでもらったのだ。


「いいか!
 訓練とはいえ、真面目にやることだ。
 しくじったら当然、攻撃を飛ばすことになっている。
 成功した場合は、アイテムを手に入れられるし、見込みがあれば仲魔になるかもしれんぞ?
 だからしっかりやれ!!」


 そう言って、訓練を開始した。
 ビンタや引っかき傷に噛み傷の跡を残す者もいれば、アイテムを手に入れたものもいた。
 中には、生気を搾り取られながら満たされた表情をした男性警官がいたが、ご愛嬌と言っておこう(美男子だったために……)。
 


「せっきー……」

「ふふふ、愛い奴よ」

「……なんでここに来ている?」


 石動は、美少女(十五才のモンゴル美少女)と妙齢な黒髪の美女に挟まれていた。
 表情を変えていないが呆れている石動だった。
 

「交渉してゲットできるんじゃないの?」

「……今度の稽古の予定を聞きに来たのだが?」

「……交渉の訓練であって、見合いの席じゃない。
 それと……稽古は、明日にしろ」

「ぶー」

「ふふふ……、相変わらず無愛想だな」



 知らない人が見れば、一番の交渉上手は、石動に見えただろう(本人は交渉していないが)。
 ともかく……皆さんも交渉は計画的に。













できない事だってあるさ。


「Chizuruは、何でもできて羨ましいですわ」

「そんなこと無いわ」


 ワンロン……石神千鶴と桐嶋英理子がプライベートで会って話している。
 話題の喫茶店のメニューを頼みながら楽しんでいる。


「私も一人暮らしですから……それなりに心得はありますけど。
 貴方の本格的な和食料理は、普通の店でも真似できませんことよ」

「……趣味だから」

「美人ですし、占いは超一流ですし、鍛冶裁縫もできてテニスでも勝てませんでした。
 Perfectですわ!」

「でも……できない事だってある」


 千鶴が暗い顔になった。
 桐嶋は、聞くに聞けない状況だったが、本人が言った。


「スキップが……できないの」

「Rearlly?」


 無言で頷いていた。
 後に見た桐嶋は……『ゾンビの行軍』と語っていた事から察して欲しい。
 それなのに千鶴は、反閇はできるらしい。
 陰陽道で使われる特殊な歩行方法であり、神事で「場を清める」意味で使われることが多い。
 これは、道教がルーツとされており、禹歩という特殊な歩行方法がそうである。
 夏王朝を打建てた禹が治水事業に奔走したため足が不自由になり、その不自由な歩行の仕方が後に呪法になったのである。
 正直……なんでスキップが出来ないのか理解が出来ない人が多いだろう。 
 

「それだけじゃないの……く、口笛もできないの……」

「……」


 桐嶋は、なんともいえない表情になっていた。
 さらに千鶴は、続ける。


「巧君……この前言った弟分と仲直りして良いお店紹介しようとしたんだけど……何にも無いところで転んで……。
 巧君は、私をダメな大人だと思っているかも……」


 桐嶋は、『可愛いですわよ』といいたくなったが、そう言ったらもっと落ち込みそうだから敢て口には出さなかった。
 







普通の女子高生(?)


「佐奈~」

「さくら、テストどうだった?」


 早乙女とその友人である佐奈がテストが終わって話し合っていた。


「うん、まあまあ……かな?
 大体85番」

「石動さん所にころがりこんでいるのに……理不尽な」

「佐奈は10番じゃない!!」

「アンタの方が凄いって」


 そういって呆れる佐奈。
 佐奈の方は、普通に勉強しているらしいが、早乙女は、要領の良さもあるのだろう。
 さらに話を続ける二人。


「最近、運が悪いから厄避けしたいわ」

「まあ……ね」


 佐奈も同意した。
 早乙女は、悪魔絡みの事件に巻き込まれることが多いのだ(石動が傍にいないときに限って)。
 よくいままで生き残ったものだ。


「昔は、暴走トラックに轢かれそうになったりしたけど」

「それは……でも今ほどじゃ……」

「引ったくりに襲われたり、痴漢に会いそうになったり、通り魔に襲われそうになった友達助けたり……」

「さくら……」

「何?」

「昔っから運が無いのね」

「そうかな?」

「……(この子もどこかずれているのね)」













 問題。

問)貴方は、怪異『クチサケ』に襲われました。

「ふふふ……そのキレイな顔を切り裂いてあげる!!」

 さて、どのように答えますか?



 回答例。

石動の場合。

「生憎、斬り合いが俺の家業だ。
 負けはしない」

『(地獄の鬼と斬り合いをし続けたリアル三国無双やった男だからな~』



原野の場合。

「包丁もった女なら、マンションで待ち構えているのは日常茶飯事ですので怖くないです」

 うわっ、サイッテー。


早乙女の場合。

「週に2,3度、下校中にゾンビDJやジャックリッパーとかに襲われたりするのが日課だから……」

「お嬢……」






[7357] 第2期 第23話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/19 12:45
「そこのお嬢さん、石動探偵事務所はどこか知っておるか?」

「へ?」


 早乙女に声をかけてきたのは、高級イタリア製スーツを着こなした陽気な60過ぎの老人だった。
 モノクルを付け、髪型をオールバックにした黒髪は一本の白髪もない。
 陽気そうな伊達男といったところか。
 早乙女は、丁寧に答えた。


「先生に御用ですか?
 なら………」

「なるほど、わざわざ親切にすまんのう。
 どうじゃ?
 ワシと一夜の契りを……」

「まぁた冗談が上手いんですね」


 それを聞き、大いに笑う老人であった。
 だが、早乙女は……老人の目が半分本気だった事を知らないが。
 早乙女は、聞き返す。


「先生に御用という事は……依頼ですか?」

「いやな、曾孫に会いにな。
 それじゃあのう」


 そう言って老人は去っていった。
 同時に、携帯型COMPが機動し、三体の悪魔が現れた。


「うさんくさいオッサンね!!」

「なんだ?
 煩悩に塗れた視線をお嬢に向けやがって。
 だが……」

「あの気配……只者じゃないわね」


 赤い身体と羽を生やした小さな妖精みたいなカハク、小柄な忍びである猿飛佐助、そして……青い身体で長い尻尾を持った狐、クダ(管狐)である。
 クダは、聖ナンディ学園でコックリさんをやっていた女生徒に取り憑いていた。
 早乙女は、不運にも巻き込まれたが、石動が以前、昏倒した女性を救った事件(第一期・第22話~第25話参照)で出会ったサイコダイバーの力を借りてクダを引き離した。
 その後、早乙女達三人と、サイコダイバーの助手兼医療面の師匠である神農とアスクレピオスの二人もあわせて包囲した。
 勝ち目が無いと悟ったクダは、早乙女の軍門に下ったのだ。
 クダは、精神的に早乙女より年上の女性であるようで、早乙女のファッションのアドバイスをしたり、アクセサリーやブティックを見回るのが趣味のようだ。
 閑話休題。
 佐助とクダは、先ほどの男性が只者でないと感じていた。
 だが……彼が騒動の元になるとは佐助達は、想像もつかなかった。


「曾孫?
 先生の曾御祖父さんにしては…」












「失礼、石動探偵事務所へ行きたいのだが……」

「あん?」

 
 ガルチェの服を着こなした軽妙な印象を与える髪を逆立てた男……葛葉キョウジに向かって話しかける30代後半の男性がいた。
 英国製の高級スーツをキッチリ着こなした隙の無い印象を与えている。
 また、知性的な青い瞳の中に強い意志が篭っており、整えた金髪も合わさって、あたかも輝く太陽のような輝きを放っているかのようにキョウジは思えた。


「ああ、アイツの所なら………」

「なるほど、ご丁寧に感謝します。
 流石、葛葉キョウジ」

「知っているのか?」

 
 キョウジは、目の前の男に警戒を示し、GUMPを起動させる。
 だが、それを男は手で制した。
 敵意は無いようだ。


「誤解しないで頂きたい。
 貴方は、葛葉の屈指の使い手であるのは常識として『我々』も知っていること。
 決して、貴方に害するつもりは無い」

「……ならいいがな」


 キョウジは構えを解いた。
 男は、一礼した。


「それでは、私は……『息子』に会いに行きますので。
 我々はともかく、人間の時間は有限。
 一時たりとも無駄にはできないのですから。
 それでは……道を教えていただいて感謝します」


 そう言ってキョウジの元から男は去って行った。
 しばらくしてからキョウジが口に出した。


「息子……?
 まあいいや、それにしてもあんな大物がこの世界にやってくるとはな~」


 キョウジは、肩をすくめながら言った。





















 そして……石動探偵事務所では………。


『こんどは、マリモちゃんとU子先生との3PCGだ!!
 それが終わったらヴァルケンズが感染した挿絵つきSSを……。
 いっそ魔法螺の3-A全員とか……』

「………」

「マスター、経理終了しました」


 ラームジェルグは、HP用の18禁なネタを作っている。
 石動は、倒立しながら片手腕立てを行っている。
 剣客である彼は、日々の鍛錬を怠らない。
 フリーダーは、仕事を終えて本を読み始める。
 フリーダーの精神が徐々に育ち、完全な自我が芽生えた。
 だがフリーダーは、膨大な知識に対して幼い少女の精神しか持ち合わせていない。
 だから、スカアハやジェシカと交流させたり、文学本を読ませるようにしている。
 フリーダーは、不安定な自身の精神に不安を感じている。
 だが石動達は、微笑ましいと考えていた。
 こうして平穏な一日を過ごしていくと思われたのだが……。
 事務所のドアが開く。


「失礼、石動探偵事務所ですか。
 ……何をしている、息子よ?」

「……息子?」


 高級な英国紳士(?)がラームジェルグに対して呆れたような一言を零し、その一言が石動の鍛錬を中断させた。
 ラームジェルグは、苦虫を噛み潰したような一言を吐き出しながらクー・フーリンに変身した。


『ゲッ……!!
 お、親父ぃ!?』

「ラームジェルグ……いえ、クー・フーリン様の父親は、太陽神ルーグでしたか」


 フリーダーは、目の前の紳士の正体を看破した。
 ケルトの太陽神ルーグ。
 ダナーンの王族にして医術の神ディアン・ケトの息子キアンと、フォモール族の王“邪眼の”バロールの娘エフネの間に生まれた“輝ける者”の名を持つ全知全能の神である。
 成人すると、マナナンから白馬アンヴァルと魔剣フラガラッハを始めとする魔法の品を授かり、バロールを討ち取りダナーンに勝利をもたらし、ダナーン王となった。
 知恵に優れ、戦いにも強く魔法の剣や槍を目にも止まらぬ速さで扱うので「長腕のルー」と言われている。


「まったく……失われた半身を漸く発見したかと思えば……俗世に染まるにも程がある!!」

「全くだ」

『オイオイ、そこはフォローするもんだろ?』

「クー・フーリン様、それは不可能かと」


 あまりの堕落ぶりに一喝するルーグ。
 クーフーリンの救いの主はおらず、追い討ちをかける者しかいない。
 石動は、普段の行いを知っているだけにフォローの仕様が無いと諦めている。
 さらに、混乱を招く一石が投じられた。


「やっほーい!
 どこだどこだ、曾孫は何処じゃ!?」

『誰だっけ?』

「貴様……バロール!?」

「ななな、おにょれ馬鹿孫めが!!」


 ルーグは、モノクルをつけた老人に敵意を放つ。
 老人……いや、魔王バロールは、ルーグに対して敵意を放ちだす。
 バロール……ケルト神話に登場するフォモール族の王であり、ルーグの祖父である。
 バロールの片方の目は、見たものを誰でも殺すことができる邪眼であり堅く閉ざされており、瞼を上げるには4人がかりであける必要があった。
 子供のときに父のドルイドたちが毒の魔法を準備しているときに窓から外を見ていて、煙が目に入ってしまい、この力を得た。
 また魔力で風や炎を操り、神々を惨殺することになるクロウ・クルワッハを生み出した。
 ダナーンの王アガートラームを殺したが、最期は、自分の孫に殺されるという予言どおりルーグの手で討たれた。
 そんな彼は、激怒していたが……クー・フーリンの顔を見て破顔した。


「おほほ……うむ!
 エフネに口元がよう似ておる!!
 それに、ワシに似て男前じゃ!」

『はっはっは、俺は良い男なのは大宇宙の摂理だぜ』


 バロールは、曾孫をべた褒めし、胸を張るクー・フーリン。
 ルーグは、ますます激怒する。
 だが、バロールは次の一言を放つ。


「さて、魔界に帰るぞ!!
 お前さんの好みの美女系の悪魔を取り揃えているぞ?」

『オオォ……ブラボー、オオ、ブラァボォ~!!
 ってちょっと待て!!』


 一瞬、煩悩に負けて拍手してしまったが、すぐに正気に戻るクー・フーリン。
 それを受けて舌打ちするバロールだった。


「な……き、貴様ぁ!
 馬鹿息子め!!
 そこになおれ!!
 糞爺とともに矯正してくれるわ!!」

『親父も待ちやがれ!
 勝手に人の生活に割り込むなぁ!!』


 ルーグは、顔を真っ赤にし、その息子も怒鳴り散らす。
 ちょっとしたラグナロクが石動探偵事務所内で勃発した。


「……面倒事になりそうだな」

「いつものことです、マスター」

「事実だけに……救われないな」


 フリーダーと石動は、背中が煤けているのは気のせいではあるまい。





















 石動探偵事務所の地下……そこは、訓練場となっている。
 石動は、結界を張り、建物に影響がでないように異界化させようとしていた。
 その時、ちょうど早乙女がやって来た。


「先生……」

「どうやら家庭の事情に巻き込まれたらしい」

『だってよ~。
 俺は、お前の守護霊だぜ?
 一心同体って奴だ』


 早乙女が同情の視線を石動に向けた。
 面倒事は慣れているとばかりの石動の態度であったが、哀愁が漂っている。
 いつのまにか、三つ巴で勝った者がクー・フーリンの未来を決めることになっていた。
 

「祈れ、駄目神ども!!」

「くっくっく、先祖の威厳を思い知らせてくれる!!」

『……過去の因縁、再びだな。
 俺は余計だが』


 三者三様の思いが交差しつつある。
 早乙女とその仲魔達は、観戦にまわった様だ。


「お武家さんも大変だなあ」

「がんばれ~」


 カハクは、暢気そうに喋る。
 佐助は、同情の視線を石動に向けた。
 それに対してクダは、冷静に見つめている。


「私は、新参者だからよく知らないけど……強いの、あの人間?
 魔人・魔王の類に普通の人間は、敵わないわよ」

「先生は、強い方だと思います。
 それに、顔には出していませんけど……負けるつもりはないようですし」


 石動は、普段通りの様子で夢想正宗を抜刀して勝負の時を待っていた。
 だが、その前に一つ質問を石動が行った。


「俺は、人間でサマナーだ。
 仲魔を使っても良いか?」

「だが……これは決闘……」

「ほっほっほ、良かろうて」


 渋るルーグに対して、バロールは、快く承諾した。


「な!?」

「人間相手じゃて、仕方あるまい。
 じゃが……一体だけじゃ」

「……仕方あるまい。
 始める前に準備をしていいか?」

「いいでしょう。
 どちらにしても私が勝つのですから!!」


 石動は、フリーダーを召還して、調整を始める。
 自身の装備を整えた石動は、準備ができたと言った。


「ならば……このコインが落ちたと同時に勝負の開始としましょう」


 ルーグがコインを高々を投げ放ち、地面にコインが落ちる。
 バロールが、まず石動目掛けて睨みつける。


「我が邪眼を見よ!!」

「ぐ……!!」

「……腕部小破」



 呪殺封じのラウリンの腕環で一撃昏倒を防ぐが、それでも膨大な魔力によるダメージを受ける石動とフリーダー。
 ルーグもまた邪眼を受けるが、ダメージを受けるものの、一撃で昏倒させられることはなかった。
 さらにルーグが魔法を唱える。


「マハガルダイン!!
 マハラギダイン!!」

「ぎょええ!」

「流石に避けさせてもらう」

「回避成功」


 魔眼を放った隙を突いて連続魔法でダメージを受けるバロール。
 石動達へは当れば幸いとばかりに範囲魔法を唱えた為か、易々と避けた。
 早乙女は、バロールとルーグの実力に圧倒されている。


「恐ろしく強い……!!」

「やはり人間には『オリジナル』には負けるか……」

「おりじなる?」


 クダが、石動を負けると決め付けていた。
 その発言に反応するカハク。
 それを説明し始める佐助であった。


「悪魔ってのは……分霊とか分身とか存在しているわけだ。
 大抵人間に仲魔になるのは分霊や分身なわけだ。
 オリジナルは、普通の悪魔と比べて遥かに強い傾向にある。
 育成の末にオリジナル並、もしくは超える存在が出てくる事もあるがな」


 だから三体のティターニアが現れたりするという現象がありえるわけだ。
 ちなみに……平将門公を仲魔にした人間がいるが、その将門公は、影武者であることは有名である。
 そう考えると、石動の守護霊であるクー・フーリンは、半身とはいえ本物という規格外の存在であるわけだ。
 オリジナルというのは、正式な名称ではなく、一部の悪魔が使っている言葉で正式な名称はない。
 聖地を守る大サンダーバード、九鬼の配下である義経・水鬼・金鬼、ジェシカの仲魔のスカアハ等もオリジナルである。
 佐助の解説で理解したカハクであった。


「すごく強いわけだ。
 じゃあ、石動はまけちゃうの?」

「まあ見てなって。
 お武家さんも洒落にならんくらい強いからな、カハク」


 佐助は、そう言い切った。
 攻撃を回避した二人は、すぐには攻撃には転じなかった。
 フリーダーは、二人に新たに手に入れた魔法を放つ。


「ランダマイザ!!
 ルーグ・バロールには、デクンダは無いことは確認済みです。
 ですが、ルーグにはデカジャを持っています。
 その点は注意してください、マスター」

「ああ、解っている」


 フリーダーの忠告を受けながら、自分も行動に移った。
 石動は、MAGを消費して自身の強化を図る。



『イグニッション……てか!?』

「……余裕あるな」

『互いにな』 


 だが、石動は、CZ-85による銃撃をけん制程度に撃つのみだ。
 相手にダメージを与えながら情報収集に励む程度であった。
 銃弾は、バロールとルーグの身体を掠める程度で、二人はまず怨敵を一番警戒しているようだ。


「(いつもの先生とは戦法が違う。
  三つ巴だからか慎重に行っているみたいだし)」

「(下準備をしてから逆襲に乗り出すつもりか)」


 早乙女と佐助は、石動の消極的な動きをそのように考えていた。


「跪け!!!」

「断る!
 ワシは、ムチムチな姉ちゃんにしか跪かん!!」


 互いに殴り合う内に、二人の姿が変化していく。
 バロールは、青白い筋肉質な身体を持つ単眼の巨人に変化した。
 前腕と下半身に雪男のような毛皮が生え、鳥かごのような兜で自身の顔を守っているようだ。
 それに対するルーグは、全身が金色に輝く鎧を装備した魔神に変わった。
 側頭部から後に向かって角が伸び、銀色の手甲と盾を装備し、赤と緑の装束を纏っている。
 利き腕には輝く長い槍……ブリューナクを握っていた。


「まったく、恐ろしいわね」


 クダは、そう言い放った。
 異界化させなかったら生き埋めになるほどの激しい攻防であった。
 フリーダーはランダマイザを再び放ち、石動も銃を撃つ。
 石動の銃弾は、2人に当るが、大した威力になっていない。
 対人用の拳銃では、強靭な身体を持つ悪魔に大ダメージを与える事が難しい。
 銃使いのジェシカも大物に当る時は、大口径の重火器か、特別な処置がされた銃器しか使わない。
 だが、石動の持つ銃は、品質こそいいものの、なんの処置もされていないオートマチック拳銃だ。
 それ故に、石動の存在より、目の前で切り結び、魔法を撃ち合う宿敵の方に意識が向かっていくようになっていた。
 だが、四度目のランダマイザを撃たれ、2人の能力が半減していった。


「し、しもうた!!」

「ならば……まず一番傷ついていない彼らから倒すべきでしょう!!」

「うむ、一時休戦じゃ」


 そうなって初めて面倒になったのか、2人は石動を先に潰すことに決めたようだ。
 クー・フーリンは、石動の頭上で突進する二人を眺める。


『来るぜ……巧ィ!!』

「マスター!!」

「……大体解った。
 フリーダー、準備をしておけ」

「了解しましたが……」

「心配するな。
 二人係になれば厄介になるとは限らん。
 それに……俺にとって楽な状況が見えてきた」


 石動は、軽く笑みを浮かべた。
 それを見て、フリーダーは、自身の主を信じる事にして後方に下がった。
 二人でかかれば楽に倒せると踏んでいたが、石動は、柳のように相手の攻撃を受け流す。
 バロールとルーグは、予想外の事態であった。


「な……!?」

「し、しぶとい!!」

「魔法で撃てばよかったものを……だが、出来ないだろうがな」


 遠距離から魔法を撃ち合うなら石動は容易く避けていくだろう。
 バロールの邪眼は、威力と追加効果は恐ろしいが、隙が生じる上に体力的な消耗も激しい。
 そうすると今度は、ルーグが、一時休戦をやめて襲い掛かることだろう。
 だからこそ、二人で同時に接近して闘いを持ち込むのだ。
 

『(一人だけ寄って来ると、遠くの奴が二人もろともぶっ飛ばすだろうし。
  まあ、油断をした事と、怨敵ばかりに目が行くからだが)』

「ぐ……」

「……こ奴め!!」


 ルーグへ夢想正宗を打ち込む石動。
 バロールが攻撃しようとするが上手くいかない。
 石動は、巧に二対一ではなく、一対一に持ち込むように相手を誘導している。
 バロールが、二人もろとも攻撃しようとしたが、ルーグが盾になるように石動が動き、それを防ぐ。
 その上、呪いの歯車(といっても今の武器の状態では呪いは無いのだが)を投擲し、バロールの目玉に襲い掛かる。
 あわててそれを避けるバロール。
 ルーグは、武器を手放したこの時をチャンスとばかりに突きかかるが、さらに間合いを詰める。
 だが、それを察知したルーグは、石突で突き飛ばして間合いを離そうとした。


 たとえ実力者であり、血族であっても、不倶戴天の敵であった二人が簡単に手を取り合って戦うことなどできない。
 その上、石動は、無間地獄にて長年地獄の住人達と戦い抜いた実績がある。
 一対多数は当たり前であり、武器を酷使して壊す事は度々あった。
 だから石動は、効率よく立ち回って武器を傷めぬように戦うと同時に、武器を奪い、使いこなさなければならなかった。
 そんな石動だからこそ、変形する武器を易々と使いこなすことができるわけだ。


 当然、素手での戦いも心得ている。
 石突を避け、貫き手でルーグの喉笛に目掛けて突く。
 毒蛇のように伸びた手を辛うじて避けたルーグ。
 体勢を立て直すが、既に歯車が戻ってきて石動の手の中で夢想正宗に変わった。
 バロールが焦りの声を出す。


「ムムム」

『ふははは、どうだ、俺の実力をぉ!』

「それは、貴様の相棒の実力だろうが!!」


 クー・フーリンは威張り散らすが、ルーグがたしなめる。
 だが、石動が言い放つ。


「だが、身体があればできなくも無いだろうな」

『くぅ、心の友はわかってらっしゃる!!』

「さて、少し休ませて貰おうか……!!」


 そう言って石動が夢想正宗を首狩りスプーン(呪い無し)を地面に叩き付ける。
 地面が隆起し、二人を蹂躙せんと襲い掛かった。
 だが、腐っても鯛、二人は防御して最小限のダメージに止めた。
 石動は、一気に後退して間合いを引き離す。
 

「しもうた!!
 今度こそ……邪眼で!!」

「く……こうなればブリューナクの力を……」


 ブリューナク……穂が5本に分かれており、5つの切っ先から放たれた光は一度に5人の敵を倒したとも、投げると稲妻となって敵を死に至らしめる灼熱の槍とも言われた槍だ。
 だが……、二人の行動は遅かった。
 二人は、今まで石動達が消極的にしか動かなかった為、フリーダーが補助専門と考えていたようだった……
 だが、彼女は、状況によってスキルを使い分けられる稀有な存在であった。
 しばらく沈黙を守っていたフリーダーが遂に動く。
 彼女の両腕がその身体に不似合いな程に巨大化した。
 エネルギーをチャージ(気合貯め)し、弱体化した彼らに向かって忠義の銃弾で粉砕せんと発射した。


「いきます……最大出力!!」

「ぐ……!!」

「が……!」


 隙を付込まれ、銃弾をまともに受けてしまった二人。
 さらに……。


『ゲイ・ボルグ!!』

「うおおおお!!」


 石動が、今まで使っている霊木の棒を槍代わりに槍術の奥義を放つ。
 無数の茨となり、二人を貫く。
 続けて石動は、二人に接近する。


「無念じゃ……!!」

「侮りすぎた……!!」

「強かったが……付け入る隙が大きかったな」


 そう言った石動は、神速の抜刀術『死亡遊戯』を持って三つ巴の終幕とした。


















「痛い!!」

「そ~れマキマキ~」

『マキマキ~勝利の高笑い~』


 カハクがバロールの傷を手当てを行う。
 バロールは、ミイラ男のように包帯が巻かれていっている。
 ちなみに、ルーグとバロールは、人間の姿に戻っている。
 クー・フーリンは、曾祖父の痛がる姿を笑って(?)いる。
 無論、スキルを入れ替えたフリーダーの回復魔法も行ったが、深い傷を残しているからだ。
 それほどまでに激しい一撃であった。
 ルーグも早乙女に治療してもらっている。


「近頃の人間って凄いのね」

「益々強くなっているような気がするな、お武家さんは」


 クダは、驚いていたが、佐助には予想通りの結果だったのだろう。
 ルーグは、しばし考え、石動に声をかける。


「石動殿」

「なんだ?」

「よくぞ我らを打ち倒した……。
 その働き、愚息にも負けずとも劣らぬ」

「運を味方にしただけさ。
 一対一で当っていたら結果が違ったものになっただろうさ」


 石動が手を振って否定した。
 だが、ルーグは微笑む。


「……貴方が勝つかもしれませんよ?
 ともかく、今回は諦めました。
 ですが、貴方がいるならば安心です。
 息子を頼みます」

「……ああ」

「分離した息子は……陰の部分です。
 ですが……今の息子は、生前の溌剌とした所があって安心しています。
 それは、貴方のお陰だと思います」

「……少々羽目を外しすぎだがな」


 石動は、相棒の日ごろの行いを省みながらそう断言した。
 ルーグは、右手を輝かせて夢想正宗に触れる。
 夢想正宗の輝きが更に増し、月光のような輝きに加え、神秘的な雰囲気をかもし出した。


「これは?」

「私の力を与えました……更に強くなることでしょう。
 さらに……」


 ルーグが夢想正宗を握ると、槍に変化した。
 それは、ブリューナクと瓜二つであった。


「ブリューナクにも変化できるようになったようです。
 これで、ゲイボルグの真の威力が発揮できるでしょう。
 ……ですが、これで放つ時は、恐ろしいまでに生命力を消耗させるでしょう。
 しくじると後が無いことを肝に命じてください」

「了解した。
 御厚意、感謝する」


 石動は、相棒の父親に頭を下げた。
 一方のバロールは、考えていた。


「(い、いかん!!
  せっきーにそんなプレゼントを贈るとは……ルーグめ!!
  ワシも負けてられん!!)
 そうじゃ!!
 早乙女君とかいったかの、石動殿の弟子じゃったか?」

「え、ええ」

「見た所、災難に見舞われる相が出ておる。
 じゃからこれをやろう」


 バロールは、掌から小人を生み出した。
 青白い体に、眼球の顔で……バロールの気配が漂っている。
 カハクは、不気味そうに後退した。
 早乙女が、小人について聞いてみた。


「これは?」

「ワシの分身じゃ。
 普段は小さくできるが、元のサイズにもなる。
 ワシほどじゃないが、結構強いぞ?
 完全に使いこなすにはもう少し強くならんといかんが……大丈夫、すぐに強くなるわ。
 あっはっは」

「あ、ありがとうございます」

「オイ、さくら」


 小型バロールは、甲高い声で早乙女に声をかけた。
 早乙女は、喜ぶべきかどうか迷っている様子だったが。


「(目玉親父かよ)」


 一段と不安になった早乙女だった。
 そして佐助は、心の中にその言葉を止めておく事にした。
 こうして、今回の事件は終わった。
 ちなみに……石動の事務所に、しばしばやってくる金髪の壮年と陽気な老人の姿が見えるようになったそうな。










 あとがき

三つ巴編でした。
3世帯で戦う事って無かったと思う……うん。
ソルガディのもう一人の主人公であるラムフーリンの家族は……親父は厳格、曽祖父はファンキーに。
まあ、石動(ついでに早乙女)のパワーアップです。
剣に関してはかなり強化されたので、いままで武器に回していた部分がフリーダーに行渡るのでフリーダーの成長も早まる事でしょう。



[7357] 第2期 第24話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/21 17:24


孤児院の糞親父よ、元気にしているか?
相変わらずシャイな顔に似合わない極悪人の顔で苦労しているのか?
俺は……一応、元気だ。
アンタに教えてもらったサマナーの技術は役立っている。
アンタは……ブリテンの女王に仕えていたそうだが、俺はフリーの根無し草さ。
そういえば、ピーちゃん……アンタが拾ったバジリスクの雛は生きているのか?
大事に育てていれば今頃は……ちょっとした小屋並の大きさだったような気がするが……糞親父のことだから、溺愛していることだろうよ。
でも、アンタは可愛がっているつもりだろうけど、アイツ……アンタを恐怖の対象にしか見えないからな。
ところで……俺は、絶賛お困り中だ。


「ハッハッハ、飯食わねえと動けねえぞ!!」

「こら、金鬼!!
 人の食べ物を取らない!!」

「ケッケッ……」

「ふん……」

「いやあ、スイマセンねえ。
 テュルゴー君にご迷惑かけて」


以前、敵対する前に逃げた化物と再び遭遇して、一緒に仕事をすることになりました。
……正直、不安です。 















「南米の海賊……ですか?」

「ああ。
 既に複数の会社から被害が報告されている」


 広い保険会社の会議室に二人……一見、うだつの上がらない眼鏡をかけた係長風の男と、威厳のある風格を持った上司との会話であった。
 だが、その正体は、デビルサマナーにして現代の忍である九鬼英輔とその上司……唯の世間話ではない。
 上司は、話を続ける。


「軍隊・水上警察を出動させたらしいが、巧く追跡を避けている。
 さらに……悪魔を使役するという情報があった」

「……ダークサマナーの可能性が高いでしょうね」

「そうだ」


 海賊という犯罪行為を行うのがダークサマナーとは限らない。
 国の機関から派遣されるサマナーが国防・諜報・破壊活動などを行うことがあるからだ。
 もっとも破壊活動を行うのは、オカルト絡みの施設の破壊しか行わないが。


「わが社としても、これ以上看過できん。
 海賊風情に保険金を出す羽目になるのは屈辱の極みだ。
 そこで……囮を使い、逆に海賊を捕まえ、根こそぎ討つ事にした」

「解りました……が、一人では流石に」

「天道連に蚩尤門、中近東の傭兵団『シムーン』を打ち倒したお前にしては気弱だな」

「最近、益々悪魔が活発に活動しています。
 慎重に事を運ぶ方が上策かと」


 九鬼の言葉を聞き、ニヤリと笑う上司。
 上司は解っていて聞いているようであった。


「そういうと思って小規模だが、フリーの傭兵グループを雇った。
 頭目は、サマナーだそうだから思うようにこき使えば良い。
 名前をテュルゴー。
 フランス外人部隊に在籍したことのある男だ」

「了解しました。
 謹んでこの仕事を引き受けさせてもらいます」

「早めに仕事を終わらせる事だ。
 そろそろ奥方が出産する次期だろうからな」

「ええ……では」


 そう言って九鬼は会議室から出た。
 会議室から出た瞬間から九鬼は、普通のサラリーマンの仮面を被りなおした。













 そうして、九鬼の上司と懇意にしている者に協力を要請し、例の海賊が出る海路を通る予定である貨物船を囮にすることになった。
 船員も度胸があり、秘密を漏らさぬ者ばかりで選抜したそうだ。
 もっとも、戦闘要員は、九鬼とテュルゴーのみだが。 



「……死ぬような嫌な予感がしなかったが、変な悪寒がしたのは……このせいなのか」


 がっくりときているテュルゴーであった。
 当然、九鬼は以前、一瞬だけだが出会った(第2期 第11話参照)為に気配で察知したようだった。
 テュルゴーは、敵対する前に姿を消したのに加えて、基本的に温厚である九鬼なので九鬼は、普通に接している。
 ……だが考えて見て欲しい。
 彼一人でマフィアやテロリストを成敗する生きた伝説……それを前にして普通でいられるだろうか?
 テュルゴーは、胃に灼熱感を感じ始めるのも無理も無い話であった。


「本題に入るぜミスト……」

「その呼び名は……まあいいでしょう。
 とにかく、今回の件をおさらいしましょう」


 九鬼は、テュルゴーからの呼び名に引っ掛かりを覚えたが、黙認することにした。
 テュルゴーの部下と二人の仲魔は、船内の見回りに加えて、鞍馬天狗が、上空から不審船がいないか監視をしている。


「証言が幾つか取れているが……イマイチ要領がつかめねえ。
 調べに行った専門家は死体一つ残さずに消えたしな。
 だが、襲った人間は……ピエロのような派手な仮装をしているらしい。
 逆らって殺された人間は、頭から液体窒素を振りかけられたそうだ」

「むごい事をしたものです……」


 突然、テュルゴーの顔色が悪くなる……何かの持病では無いかと疑うほどに。
 重々しくテュルゴーの口が開く。


「……なんかヤバイ空気がするぜ
 そろそろ準備したほうがいい」

「まだ私や仲魔からは報告はないですがね」

「俺は……危険を察知することだけは自慢できる。
 これまで幾度もこのカンで生き延びた。
 だが……ツイてねえ。
 最近、高額な仕事のほとんどをヤバイと思って断ったからな~」

 
 そういって頭を抱える小悪党顔の傭兵。
 確かに、あの一件は手を引いて正解であった。
 そうしなければ、間違いなくお縄にかかっていたからだ。


「メシア教団からの依頼は断って正解だったな……テロ組織に協力すると後々の活動に影響を与えるしな。
 中国マフィアの忘八って組織の云豹って奴の護衛の依頼とか高かったんだがな~代理人の前で吐いた上に発作が起きたくらいヤバイ感じだったからな。
 他には、自衛隊の菅原とかいう奴の護衛任務なんかは、聞くだけで物凄い吐き気が来て倒れてしまったからな……けっきょくそれでお流れになったし。
 レッドキャップスの依頼もヤバイと思って避けたから良いけどな」

「そ、それは……」

 
 九鬼が知らない事件もあるが、どれも危険で割に合わない仕事であろうと推測されるものばかりであった。
 それを尽く避ける彼のカンは馬鹿にできないだろうと九鬼が考えた。
 その時、上空から高速で接近する影があった。


「大殿ぉおおおおお!!!」

「どうしましたか?」


 鞍馬天狗が、目の前まで急降下してきた。
 慌てた様子で答えた。


「不審な船を発見しました!!」

「うわ……やっぱり。
 覚悟する時間もないや」


 テュルゴーが頭を抱えた。
 鞍馬天狗は、九鬼に報告を続けた。


「それも……なんというか……お菓子の船のような『ふぁんしー』な感じで。
 船員も『ヒーホー』と奇怪な掛け声をあげていて……皆、雪達磨のような扮装をしていました」

「ご苦労様でした。
 皆にも伝えて戦いの支度をしてください」

「ハハッ!」


 鞍馬天狗は畏まり、皆に戦闘の支度をするように伝えにいった。







 

 おまけ 前編

 
 関東のとある神社にて…。
 石動と老年の夫婦が対峙している。
 見た目は40代前半で、白い髪の毛が目立ち始めているが、穏やかな印象を与える男。
 もう一人は、30代半ばくらいで整った顔立ちと長い黒髪は、見る者を魅了することだろう。
 だが……彼らの実年齢は、もうすぐ60にさしかかろうとする年齢なのだ。
 石動は、出された茶を飲み干し、丁寧に挨拶をした。


「ご無沙汰しています。
 夏彦さん、美幸さん」

「石動くんも、ラームジェルグくんも元気そうでなにより。
 ラムくん、栗羊羹はいるかね?」

『頂きます!』


 ラームジェルグは、男……夏彦から出された羊羹を頬張る。
 とても美味いのか、ご満悦の表情であった。
 女性……美幸が石動に話しかける。


「千鶴には会ったの?」

「はい……、千鶴姉さんは解っていたようでした」

「私の娘ですもの」


 彼女……石神美幸は、胸を張って答えた。
 ラームジェルグと石動の存在をいち早く理解したのは、石神夫婦が最初であった。
 彼らは、陰陽師にして神主であった。
 陰陽術を持って悪魔を調伏するのが役割であった。
 だが、夫婦が受けた依頼で出てきた悪魔は強力で、瀕死の状態に追い込んだのは良かったが……彼らも満身創痍の状態であった。
 その時、横槍を入れたのが当時少年であった石動であった。
 不意打ちに衝撃魔法を受けてあっけなく倒された。
 その事を思い出して美幸は、微笑みながら礼を述べる。


「あの時は、助かったわね。
 ありがとう、巧君」

「余計な手出しだったでしょうが」

「いいえ……多分、刺し違えていたか、良くて引退だった思うよ」


 石動の言葉をやんわりと否定する夏彦であった。
 今まで礼を言われていたのに、頭を掻く石動……照れがあるのだろう。
 当時蘇ったばかりの石動は、何も知らない振りをして死んだ『石動巧』に成り代わった事を誰にも言わないつもりであった。
 だが、『巧』の幼馴染の両親が危機に陥った時、その考えを棄てて助けた。
 そして石動とラームジェルグは、全てを話し……彼らは、彼らを受け入れたのだ。


「ですが……俺には、返しきれない恩があります。
 俺を受け入れ、俺が探偵業をしながらサマナーをする事を支持してくれた。
 『裏』のイロハを教えてくださったし、石神家の資料を閲覧させていただいた。
 それに……「すとっぷ」」


 石動の言葉を美幸がさえぎる。
 夏彦が微笑みながら言った。


「私達は、『巧君』と同じように、貴方達を大切に思っている。
 元気な息子が二人できたみたいで嬉しかったんだ」

「だから、迷惑をかけた風に思わないで、ね?」

「……」

『ありがとう……』


 石動は無言で頭を下げ、ラームジェルグは神妙な顔で礼を述べた。
 石動の胸の中で更なる感謝の念が沸き起こる。
 もともと彼は、両親に触れ合った事がなく、いたのは剣の鬼である祖父のみであった。
 石神夫妻の温かい愛情は、石動をただの復讐鬼や修羅に陥る事を防いだのであった。
 思わず目頭が熱くなった石動であった……


























「でも巧君は、『なっちゃん』とくれないのが……」

「千鶴も呼んでくれないのよね、『みーちゃん』って」

「……」

『まあせっきーだからね」

「おお!
 なんと可愛らしい呼び名だ!」

「ええ、流行らせましょう」

「……」






[7357] 第2期 第25話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/09 23:50
 目の前にはショートケーキを模したお菓子の船。
 そしてその船員は、皆雪だるまをモデルにしたようなファンシーなデザインの服を着ていた。


「あれは……ジャックフロストのコスチュームでしょうかね?」

「多分な……雑魚っぽいが、親玉は……近くにいるが、まだ船内から出てきていなさそうだ。
 とりあえず仲魔を呼ぶか。
 アンズー!
 ゲーデ!
 トナティウ!」


 テュルゴーは、大声で叫んで散っていた仲魔を召集した。

 バビロニアの神話に登場するライオンの頭部を持った凶鳥アンズー。
 嵐を呼ぶ力を持つ鳥で、万物を支配する力を持つ「天命の石板」を大気の神エンリルの下から盗み出した。
 だが、狩猟の神ニンギルスに敗れて「天命の石板」を奪い返されてしまった存在である。

 黒い山高帽と燕尾服をまとったカリブの死神ゲーデ。
 死者の魂が神々の住まいへと向かう途中の“永遠の交差点”と呼ばれる辻に立っていると言われている。
 生きてきたすべての人間について知っているため、彼は非常に賢明であるとされ、生と死の間の仲介者とも言われる。
 バロン・サムディ(土曜男爵)、バロン・クロア(十字架男爵)、バロン・シミテール(墓地男爵)などの別名をもっている。

 トナティウは、アステカ神話における太陽神でこの世に5番目に誕生した太陽と言われている。
 アステカの神話では天国は3種類あるとされ、トナティウの支配するトナティウヒカンは、最も高位のものとされていた。
 また、好戦的な戦神の側面も併せ持っており、当時のアステカの民は、捕虜をしばしばこの神への生け贄として捧げていた。

 いずれも中々の能力を持った悪魔であった。
 九鬼も、鞍馬天狗、源義経、金鬼、水鬼を呼ぶ。


「これが伝説の男の仲魔か……」


「テュルゴー君の仲魔も凄いと思いますがね。
 ですが、数は足りますか?」

「経費を考えれば一番強い奴三体使うのが精一杯なんだ……」


 懐事情の厳しいテュルゴーの発言は、涙を誘うものであった。 
 悪魔を使役するには、MAGが必要だ(フリーダー等の造魔には必要ないが)。
 それゆえに、『MAGの一滴は、血の一滴よりも濃い』という言葉があるほどで、当然MAGの取引は頻繁に行われている。
 生体エナジー研究所という場所が各地に存在しており、レートが1MAG=90円台~140円台の間で取引がされる。
 サマナーの平均MAG消費量は、定かではないが……一般的に強い悪魔ほど活動するには、多量のMAGが必要なのは確かである。
 また、悪魔の交渉の材料の一つでもあるため、MAGが重大な役割を担っているのは確かな事である
 だからMAGの保有量は、多ければ多いほど良いわけで20000~40000MAG位あれば長期のミッションでも万全な状態で取り組む事が出来る。
 ここの流れを知れば、サマナー界の流れが解るといっても過言でなく、急激に上昇するときは、皆がMAGを必要とする事態……つまり、大事件の予兆を感じ取る事が出来るだろう。
 また、魔界の住人やMAGを余らせたサマナーがMAGを売る事もあり、その場合、近場にMAGを取引する場所が無いため、相場より高く吹っかけられることだろう。
 ちなみに、しばらく前まで余らせていたMAGを売りまくって財を築いている男……石動がいた。
 だから無愛想な探偵でもきちんと暮らしながら装備を充実させたり、相棒は、給料を得てPC・ゲーム機を買い込むことができるのだろう。
 (ラームジェルグも社員扱いで給料を貰っている。
  一般に悪魔へ給料を払う者は少なくない。
  税金対策になるためでもあるし、契約を渡すという行いがサマナーと仲魔の絆を深める側面があるからだ)


「いいか、お前達!!
 油断してパトるんじゃないぞ!!」

「「「ウィース!!」」」


 更にテュルゴーは、自分の部下に向かって激を飛ばした。

 パトる……これはサマナー間の隠語で『天に召される』……つまり『死ぬ』という意味である。
 元々は、仲魔が天使系の悪魔からハマ系の術を受けて死亡した場合に使った。
 浄化される様子や死ぬときに見た光景(復活した仲魔が語った様子だが)があたかも、名作アニメの主人公とその愛犬の最期のようであったことからだ。
 それがいつしかサマナー本人に使われ始めて現在に到っている。
 突然死や大ダメージで特急であの世に行った時に使われることが多い。
 死亡したことをDDS-NET等で報告する者が【パトラー】と呼ばれ、死亡することに快感を感じる者を【パトリスト】、そして死へ誘う強敵の悪魔を【パトラッシャー】と呼称されている。
 また、悪魔の攻撃が狂ったようにシビアになる時を【パト・ラッシュ】、テトラカーンを唱えた相手(又は物理反射の敵)にデスバウンドを放って死亡することを【デスバカーン】という。
 他にも、反撃する暇もなくラッシュを食らい続けて沈む【○○劇場】(○○にはその悪魔名が入る)、二種類以上の敵悪魔が集団で出現し、補助魔法(マカカジャ等)を連発した後にとどめに大技を使用する極悪コンボ攻撃による突然死……それは片方の悪魔によるカジャ系の合唱が行われた後、もう片方の悪魔が攻撃魔法を放つその様子から 『シンフォニー』(合唱団)という名が付けられた散り様がある。
 傍から見ると喜劇だが、当の本人にとっては悲劇以外に何物でも無い。
 
 閑話休題。
 金鬼は、九鬼から指示を受けて豪腕を振るい、接近中のお菓子の船に目掛けて爆弾を投げ込んでいる。
 対悪魔用に使われる絶大な火力を誇るニュークリアボムを投げ込む。
 さらに、液体窒素ボンベ、ナパーム弾、ライアットボムなどを投石器のように発射していく。
 それらが、遠方にあるお菓子の船の甲板に投下されていく。
 爆撃や雷撃、そして氷結の一撃が阿鼻叫喚の惨状を生み出していく。
   
 
「ヒーホー!!!」

「うぎゃあ!!」

「急げ!!
 火を消すんだ!!」

「御頭が切れるまえに!!」


 と、いった具合に敵が浮き足だっている。
 九鬼達は、お菓子の船が接近する前に、逆に突撃するつもりだ。
 当然、船の守りをする者が必要であった。


「鞍馬天狗、金鬼……留守を任せていいですか?」

「まあ、しょうがねえわ。
 しっかりやんな、親分」

「お任せください、大殿!!」


 金鬼は、水鬼に活躍を譲ってやるという様子であった。
 鞍馬天狗の方は、喜んで命令を受けているが。
 テュルゴーの方は、上空から対応できるようにアンズーを留守役にするつもりであった。
 船員達も護身用の武器を取り出している。
 こうして九鬼達は、お菓子の船に突入することになった。


 


「ヒーホー!」

「うぎゃあ!」


 テュルゴーの忍者刀が容赦なく二人の敵の四肢を切り裂き、行動不能にした。
 『霧隠』に恐れおののく男であったが、並の差マナーよりも体術に秀でており、海賊を容易く打ち倒している。
 ゲーデは、全てを滅するメギドの炎で海賊が召還した悪魔を消し飛ばし、トナティウは、汚れなき威光で魔を滅する。
 協力して戦う光景は、凡百のサマナーでは成し得ない優れた技量を示している。
 一方、九鬼のほうはというと……。


「いけませんね…」

「な、なんでマシンガンの銃弾や手榴弾の爆風をすり抜けていくんだ!?」

「こ、ころさないで!!」

「おかあちゃああん!!」

 
 霧のように実体を掴ませることなく海賊を叩きのめし、海に投げ込んでいく九鬼。
 海賊達は、悪魔的な強さを持った九鬼を相手にしてパニック状態になっていた。
 海に叩き込まれて溺れそうになっている者がいたが、水鬼が海面を凍らせて拘束しながら救助していた。


「けっけっけ……泣け!喚け!!
 弱いものを嬲るのが大好きでな!!!」

「つ、つめたい……」


 水鬼は、至福の笑みを浮かべていた。
 その様子をため息をつきながら海賊を叩きのめしているのが義経であった。
 テュルゴーの仲魔達も順調に敵を倒している。
 九鬼達の船には、鞍馬天狗達が空から強襲してきた敵を迎え撃っている。


「水鬼め……下らぬ事に気を取られおって。
 だが、九鬼が手綱を取っていれば問題あるまい」


 敵を駆逐しながら海賊団の首領を探した。
 奥に進むたびに肌寒くなってきた。
 船内では過剰な冷房が効いており、最深部は……まるで冷凍庫のようであった。
 

「ヒーホー!!」

「……で、でけえ!!」

「ジャックフロストにしちゃ、デカすぎるな」


 目の前には巨大な雪だるま……いや、王冠と杖……そしてマントを装備した巨大なジャックフロストがいた。
 王様らしく長い金髪のかつらをつけ、足元には無数のジャックフロストが湧き出ている。
 見た目とは裏腹に凶悪な気を感じて怖気づくテュルゴー、そして冷静に見ているのが水鬼であった。


「ヒーホー!!
 オイラは魔王キングフロストだホー!!」

「キングフロスト……!!」

「九鬼よ、知っているのか?」

「やはり、オイラは有名だホー!!」


 九鬼は、呻くように言葉を吐き出したのを見て義経が問いただす。
 ゆっくりと呻くように九鬼は言った。


「義兄が戦った事がありますが……恐ろしい強敵であったと聞いています」

「ほう……それは面白い戦になろうぞ」


 九鬼の義理の兄(年齢は年下だが)は、優れたサマナーである。
 『霧隠』の目から見て贔屓目なしで、葛葉キョウジに勝るとも劣らぬ優秀なサマナーである義兄が苦戦した悪魔と知って、九鬼は魔王に鋭く睨みつけていた。
 テュルゴーは、その様子を見て受けるんじゃなかったと後悔し始めていた。
 

「前は、銀髪娘とカツオカットのサマナーにやられたけど、リベンジするために蘇ったホー!!
 その為に軍資金がいるホー!!」

「迷惑なので、やめてください」

「逆らう奴は氷付けホー!!」


 九鬼が、やんわりと言ったが、キングフロストは杖を振るうと冷気が九鬼達を襲い掛かる。
 水鬼とトナティウは、それを避けなかった。
 水鬼は氷結属性を無効化し、トナティウは反射して防ぐことができるからだ。
 それ以外の面々は軽々と避ける。


「うわ……!!」


 避けた先を見ると、壁が凍りつきながら粉砕していた。
 まともに受けた場合を考えたテュルゴーは、さらに青黒く顔色を変えていた。
 九鬼は、表情を変えずに愛用の脇差を抜き、切りかかる。


「い、痛いホー!!
 し、死ねホー!!!」

「遅い!!」

 
 ジャックフロストの王は、九鬼を殺そうと魔法を飛ばしたり、杖で殴りかかるが、尽く回避されていった。
 キングフロストの強力で広範囲な攻撃でも、九鬼にとっては避けやすい大振りの攻撃に過ぎず、カウンターで手裏剣を飛ばしたり、脇差で腕を切り裂いていく。
 トナティウのベノンザッパーで肩口を切り裂かれ、水鬼と義経が連携して打ち込む。
 三人の攻撃で体勢を崩したところにゲーデが電撃魔法を放った。


「ヒホー!!?
 ……どうしてだホー!?
 完全復活したのに、負けているホー!!」


 業を煮やしたキングフロストは、大きく息を吸って巨大な身体をさらに膨張させて九鬼達を押しつぶそうとした。
 九鬼達のほとんどは回避するが、水鬼だけ逃げ遅れた。


「げ……!!!」

「ヒーホー!!!!」

「どわわわわ!!!」


 反射的に水鬼は、キングフロストの身体を受け止めてしまった。
 素直に押しつぶされた方がダメージが少なくて済むのだが……。
 だが、四鬼の一角は腹を括った。


「親分よぉ!
 俺がコイツを持っている隙に滅多打ちにしてやれ!!」

「そうはさせ……」

「ウォオオオラァアアアアアアアア!!!!!!!」


 振りほどこうとしたキングフロストを逃がすまいと水鬼は、壁に魔王を叩きつける。
 キングフロストは壁にめり込み、水鬼はさらに押し込んでいった。


「今です、皆さん!!」

「少しは褒めてやるぞ、水鬼……受けよ、八艘跳び!!」

「こんちくしょおおおおおお!!!
 八つ当たりだああああ!!」

「ベノンザッパー……!!」

「受けなさい、マハジオダイン!!」


 タイミングを見計らい、水鬼は離脱した。
 その直後に怒涛の連続攻撃を受ける魔王・キングフロスト。
 九鬼達は、確かな手ごたえを感じた……だが、それでも魔王は立っていた。  


「今年の冬は寒いよ……」

「……やばい。
 ミストぉ!!
 デカイのが来る!!」


 テュルゴーは、キングフロストの呟きを聞いた。
 それと同時に、力の高まりを感じ、不吉な気配を察知した。
 臆病な傭兵は、九鬼に助けを求めた。


「義経、畳返し!!」

「解った……!!」


 テュルゴーの言葉を聞いて九鬼は、血相を変えて義経に指示を飛ばす。
 地面がめくれ、堅牢な城塞と化した。
 その直後、閃光とともに、爆音が響き渡る。
 キングフロストが、自爆したのだ。
 閃光が晴れた後には、天井部分が吹き飛んで青空が見えていた。
 壁が所々ひび割れ、沈没しないのが奇跡的な状況であった。


「……た、助かった」

「ありがとうございます、テュルゴー君。
 君のお陰で皆が無事に生き残れた」

「いやあ、ヤバかったぜ」

「……その勘働き、褒めてやる」


 九鬼達は、テュルゴーの驚異的な勘を褒め称えた。
 それを無言で腕を振って制するテュルゴー……恐怖を改めて感じて吐き気と戦っているせいだが。
 九鬼は、頼もしげにテュルゴーに言った。


「また一緒にお仕事がしたいものです」

「……あの、遠慮したい……」


 青ざめたテュルゴーの言葉は、天は聞き入れるのか?
 それは、誰もわからない。










 おまけ


 美幸は、席を外した。
 石動達に酒と肴を用意する為だ。


「で、せっきー」

「石動でいいです」


 夏彦は、微笑みながら石動の愛称を呼ぶ。
 どうやら気に入ったようだ。
 夏彦が、茶封筒に入った資料を石動に渡す。


「君が頼んでいた資料だ。
 珠閒瑠市で起こった事件についてだ」

「……やはりな」


 『報告者・轟』と書かれた資料を、素早く読んでいく石動。
 資料を目を通した石動は、今まで読んだ資料の情報を統合してある推論が出てきた。
 夏彦は、その様子を察して聞いてみた。


「役にたったかね?」

「ええ……今まで得た情報をあわせてこれから起こりえる最悪の状況の絵が見えてきた」


 石動は、その推論を夏彦とラームジェルグに語った。
 

「……まさか、だが……」

『巧ぃ……またヤバいヤマになりそうだな』


 二人の顔色が変わっていた……妄言と切り捨てる事が出来なかった。
 情報を集めれば集めるほど、石動の考えが当っていると二人の勘が告げていた。


「また無間地獄に行かないようにしないとな」

『……そんな暢気な事を言うのは俺の役目だろうに』


 だが、石動の言葉に緊張が取れていくラームジェルグ。
 夏彦もため息をついた。


「風間さんから聞いていましたが……あの時の君の事件もこれからの事件と負けず劣らず厄介な事件だったと思いますよ?」

「正直、『奴』より『神』のほうが厄介な手合いだとおもうがな」


 夏彦の言葉を返す石動であった。
 その後、すぐに美幸がやってきた。


「巧君、あなた~とっておきよ~」

「……夏彦さん、ヤタガラスに警戒するように打診できますか?
 杞憂に終わるに越した事はないですが」

「そうですね……私の方から報告しておきましょう」


 それでその話題は終わり、四人は酒盛りを始めた。
 しばらくして、美幸が話しかけてきた。


「石動君、そのナイフ……」

「ええ、貴方に貰ったものです」


 石動が愛用しているアセイミーナイフ……魔女の儀式に用いるナイフは、美幸の餞別であった。
 その刀身は、今までは赤黒いものであったのが、太陽のような白金の輝きになっていた。
 そのナイフで幾度も命を救われ、今ではラームジェルグとともに、石動の半身と化していた。
 夏彦と美幸は、ナイフからの波動を感じていた。


「これは……まるで神器だ」

「……多くの悪魔の血を吸い、妖刀と化していました」


 そう言って石動は、アセイミーナイフから妙法村正に変化させ、呪いの歯車や首狩りスプーンに変化させた。
 二人は、ナイフの変化に驚くが、今までのような呪いの波動は消えていた。
 さらに石動は、MAGを篭めると光り輝く長槍に変化した。
 夏彦は、その武器の正体に気がついた。


「ブリューナク……!!」

『そうだぜ、糞親父の自慢の長腕だぜ』

「おとうさん?」


 美幸が、可愛らしく首を傾げた。
 ラームジェルグは、笑ってMAGを消費して、クー・フーリンに変化した。


「あらあら、色男になったわね」

「ど~だ!」


 胸をはるクー・フーリン……とても英雄に見えない子供っぽい態度に思わず噴出す美幸。
 そのせいで少しばかり、落ち込んでしまったクランの猛犬であったが。
 石動は、ブリューナクを握って夢想正宗に変化させた。


「ほう……正宗ですか」

「円月殺法で数々の剣豪を冥府へ送った剣士の愛刀・夢想正宗。
 多くの血を吸わせても輝きを失わない名刀にして妖刀……屍山血河を築き上げた俺そのものです」

「ですが、心までは修羅に堕ちたわけでないでしょう。
 あまり卑下するものではないですよ」

「……はい」

「いつでも戻ってきなさい。
 君も私達の家族なのだから」









































「ねえねえ、巧君。
 娘の千鶴が結婚相手いないから貰ってくれる?」

『みーちゃん、奴はエロゲー主人公並にフラグを立てるのに容赦なく地母の晩餐しやがるんだよ。
 ロリから乙女に変身できる鳥っ子に、素直クールな造魔っ子、素直な女弟子に……』
  
「あらあら」



 こうして二人は、女よりも剣と対話するほうが楽しいと感じる男を射止める者は誰かを当てる賭けをし始めた。 
 
 



[7357] 第2期 第26話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/24 20:14
 某結婚式場の控え室で、三人の男がいた。
 小太りの男が、髪を伸ばしてサングラスをかけたやさぐれ男を大笑いしていた。
 長髪の男は、結婚式の新郎がきる白のタキシードを着ていたが……余りにも違和感がありすぎて、小太りの男が自然に噴出していた。


「くっくっく……イイ様だな、嵯峨」

「黙りやがれ、香我美!!
 元はといえばテメェのせいだからな、石動!!」

「……お前達が適任だと思ってな。
 恨むなら引き受けた芹沢さんを恨んでくれ」


 長髪の男……盗聴バスターにしてマンサーチャーであるペルソナ使い・パオフゥ(本名・嵯峨 薫)は石動を怒鳴り散らしていた。
 香我美とパオフゥは、法学部の同期であった。
 偏屈な香我美にとって、パオフゥは数少ない友人であった。
 香我美を知る者が、今の光景を見たら信じられない事であろう。
 人間嫌いで偏屈な香我美が、普通の人のように笑う時があるという事が……。
 今回の始まりは、数日前、資料を得る為に石神家に行ったときの事であった……。
 






「せっきー、お願いがあるの」

「美幸さん……」


 石動の嘆きを黙殺して、美幸は、石動に話す。


「知り合いが珠閒瑠市で結婚式場を経営しているんだけど……今、そこで異常が起きているの。
 すぐに離婚したり、交通事故や病気になったりして……噂が立ちかかっているの。
 どうやら悪魔絡みなんだけど……お願い、引き受けて!!」

「引き受けるのは……やぶさかじゃないですがね。
 で、何をすればいいので?」

「囮よ!!」

『囮……つまり、新郎新婦をサマナーで固めて何か異常が起こそうとする悪魔見つけ出して倒せってことだな』

「そうよ。
 千鶴と巧君でやれば楽勝よ!
 ……婚姻届も用意しているし
 いざとなったら、私と夏彦さんが……」 


 美幸の後半の言葉は、幸いにも石動には聞こえていなかったが。
 だが、石動が言った言葉は、美幸の予想外のものであった。


「そういえば……適任がいるな」










『てな感じで、パオフゥとうららの結婚式を挙げることになったとさ』

『ラムフーリンの説明はわかり易いぜ。
 結婚願望のある芹沢がノリノリになるわけだ』


 香我美の守護霊・ベルフェゴールが気だるげに語る。
 パオフゥが断る前に芹沢が二つ返事で引き受けたのである……報酬も高かったお陰でもあるが。
 一方、芹沢のほうは、フリーダーと早乙女がいた。
 ウェディングドレスを幸せそうにきている芹沢に早乙女が声をかけた。


「綺麗ですよ、うららさん」

「ありがとう。
 パオの奴は、戸籍上死人だけど……まあ、いいわ」

「敵の正体は不明です……くれぐれも気をつけて」


 フリーダーは、結婚という概念を理解しきれていないが、フリーダーなりに心配しているようであった。
 その時、ドアが突然開いた。


「チャーオ!!」

「侵入者……」

「マ、マーヤ!!?
 なんでここに!!!」


 セミロングで、健康的な色気をかもし出している美女が芹沢へウィンクしていた。
 胸にハートをプリントした服を着ており、他者への慈しみを忘れない優しげな印象を与えている。
 フリーダーは、芹沢の友人であることと判断して、すぐに攻撃を仕掛ける事はしなかった。
 早乙女は、芹沢に突然現れた女性の事を尋ねた。


「あの……この人は?」

「私は、天野舞耶。
 クーレストの記者で、うららの親友よ」

「はじめまして、早乙女さくらです。
 でも、なんでこの場所を?」

「このまえ、嬉しそうに結婚式場のパンフレットを持っていたのを見てね。
 その時、良い潰した時にパンフレットに日付と会場の所にマルをつけていたし。
 でも……結婚するなら私にも言うはずだから、怪しいと思ってつけちゃったの」


 その言葉を聞いてガックリと肩を落とす芹沢だったが、自分を心配してくれたのだと思い、気を取り直した。
 天野に事情を説明しはじめた。


「ここで結婚した人が離婚したり、災難にあっているみたいで……。
 だから、私達が調査と囮を兼ねて結婚式を挙げるってわけなのよ」

「そういえば、トクさんが噂していたわね。
 悪魔が幸せな新婚さんの仲を引き裂くって……。
 私達も協力しちゃうわ!!」


 天野は、拳を握り締めて協力することを告げた。
 部外者の乱入でどうするべきか……フリーダーは、石動に指示を仰いだ。
 早乙女も、芹沢にどう言いくるめさせるか考えたが…、


「うららさん……」

「さくらちゃん、マーヤもペルソナ使いだから」

「ええ!?」


 早乙女は、驚いた。
 その様子に、天野が喰い付いた。


「あら、もしかして早乙女さんも?」

「知り合いに能力を譲りましたけどね」


 小声で、『ユッキーと同じ事をするなんて』と天野が呟いたが、早乙女の耳に入る事はなかった。
 さらに、芹沢が先ほどの言葉を思い出した。


「ね、ねえ……マーヤ。
 さっき『私達』って……」

「ええ。
 てっきりまた誰かに騙されたのかもって……そう思って克哉さんについて来てもらったの」


 その言葉を聞いて、再び脱力する芹沢であった。
 (以前、芹沢が結婚詐欺の被害を受けた)
  

「克哉さんって、マーヤの婚約者で……2,3度しか会った事がないけど」

「克哉さんは、警部補で……もうすぐ昇進試験をうけるそうだけど。
 彼もペルソナ使いだから心配しないで」


 芹沢と早乙女は、これも結婚式場の呪いなのだろうかと一瞬考えてしまった。
 
















おまけ


「小腹がすいたな~」


 小柄な美男子……原野は、名店でデザートを食べる事にした。
 だが、その店は小さく……座席が少なかった。


「すいません。
 ちょっと時間がかかりますが……」

「ええ、いいですよ」


 原野は、しばらく待っていた。
 その時、店のドアが開いた。
 黒髪の美女で、神秘的な雰囲気をかもし出し、ダークレッドのスーツと赤い唇も加わって、美しさを引き立たせていた。
 だが原野は、彼女には唯の女性でないと見抜いていた。
 腕には、ハジチ……沖縄でかつて行われていた女性の手に施されていた入れ墨がなされていた。
 なにより原野は、彼女自身と荷物から微かに気配を感じていた。
 原野は、あえてその女性に声をかけた。


「お一人ですか?」

「え、ええ」

「席が少ないから時間がかかるそうですよ」


 それを聞いてお預けを言われた子犬のように悲しげな顔を知る女性であった。
 最初の印象とは全く違った印象を受けて、とても新鮮な気持ちに原野は包まれた。


「よかった同席しますか?
 もうすぐなんで」

「では、お言葉に甘えますわ……貴方は……?」

「原野です。
 交渉人の原野秀幸」

「ナオミです。
 交渉人……それは珍しい仕事ですね」


 美女との同席が出来て幸せ一杯であった原野。
 そんな原野は、気に入っていたチキンサンドとモンブラン、アイスコーヒーを注文した。
 それに対してナオミは、マンゴープリンに杏仁豆腐、ジャイアントパフェ、アップルパイにレモンティを注文した……見た目とは裏腹に健啖家のようであった。
 原野は、注文の品が来るまでに巧みな話術でナオミの職業をデビルサマナーだと見破り、原野も悪魔とも交渉を行う『デビルネゴシエイター』だと明かした。
 注文がやってきて、それらを食べながら談笑しはじめた。


「もし何か困ったらナオミさんに頼もうかな?」

「そうね……予定がなかったら格安で引き受けてあげるわ」

「まあ、それにしても……お互い難儀な職ですねえ。
 僕は巻き込まれてこの世界で生きる事にはなったけど……昔、描いていた将来の夢は、あんまり変わらなかったですけど。
 ……ナオミさん?」

 
 原野の『将来の夢』という言葉を聞き、ナオミの表情が曇る。
 ナオミが少しずつ語りだした。


「昔ね、幼馴染がいたの。
 レイ……彼女の流派と私の流派が対立して……老師が死に、私だけが生き残った。
 だから……彼女を殺すわ」

「……復讐ですか」

「やめろって言うの?」


 ナオミの瞳に、青白い憎悪の炎が燃えていた。
 原野は、無言で首を横に振った。
 能力を持った時、原野が最初に行ったのが、自分を攫った組織への復讐だったからだ。
 また、原野の友人である石動、ペルソナ使いのパオフゥもまた復讐を誓い、成就している。
 そんな彼が復讐を無下に否定する事はなかった。
 だが原野は、一言聞いた。


「その後は?」

「……わからない。
 でも……『あの時』のある店でいいマンゴープリンがあったからまずはそれを食べようかしら?
 そして……サマナーから足を洗って中華料理店でもしたい……。
 そうしたら……忘れられるかしら……」


 ナオミの瞳の炎は消え、弱弱しいものになった。
 自分の道を見失った者の瞳であった。
 気がついたナオミは、慌てて表情を引き締めた。


「ごめんなさい、こんな愚痴を聞かせて」

「いいえ。
 迷える美女を救うのは、何よりの善行ですからね」


 ナオミを明るくさせようと、微笑む原野。
 原野の気遣いをナオミは、嬉しく思えた。
 食べ終わり、店から出た二人は、互いの連絡先を聞いた。
 そしてまた会う事を約束をして別れた。










 おまけ2


 ソウルガーディアンの主人公の座を狙い、五人の戦士が立ち上がった。
 赤き戦士……、


「いちごフロスト!!
 ……だホー」


 青の戦士と黄の戦士……、


「ブルーハワイフロスト!!
 ……だホー」

「レモンフロストだホー!!」


 そして、緑と白の戦士。


「メロンフロスト!!……ホー」

「ミルきんフロスト、ホー!」



「「「「「五人そろって戦士・フロストファイブ(ホー)!!!」」」」」


「てい」


 無造作に石動が小石を投げた。
 それでボーリングのピンの如くあっけなく倒された戦士・フロストファイブ。
 悔しげにいちごフロストが床をたたきながら言った。


「な、なぜだホー!!
 石動巧とラームジェルグは、衝撃魔法以外は物理攻撃しか出来なかったはずだホー!!」

『あー、それ第一期の中盤の情報しかなかったのか?』


 あっけなく倒されたフロスト戦士達だが、彼らの名誉の為に言っておくと、決して雑魚ではない。
 悪魔の格としては、普通の分霊の魔王・バロールや狂神・オグンよりも高い。
 また、ほとんど全ての攻撃を反射し、強力な氷結魔法を使い、回復魔法ディアラマ、防御力を上げる補助魔法のラク・カジャ、破魔魔法ハマオンを使いこなす。
 だが、弱点がある。
 炎……ではない。
 万能魔法(メギド等)が唯一の弱点であることもだが、耐久力が致命的に低い。
 原作(ソウルハッカーズ)でレベル55であるにも関わらず、HPが55。
 原作を知らない人は、ピンと来ないかもしれないの説明しよう。
 一般にレベル55のHPは……威霊ブラックマリア(HP533)、聖獣スレイニブル(HP502)、妖鳥タイホウ(HP422)等である。
 HP55位の体力は、珍獣オリバー君(レベル5、55)、地霊ノッカー(レベル3、49)、妖獣グレムリン(レベル5、56)等の序盤クラスの悪魔のレベルと同等なのだ。
 今の石動は、万能物理攻撃の『ゲイボルグ』があるので容赦なく貫通してしまうのだ。
 フロストファイブは、何とか立ち上がって言った。
 ミルきんフロスト(一番強い為か、一番早く立ち直った)が悔しげに言った。


「今日の所は、見逃してやるホー!!
 次こそは、お前を倒してソウルガーディアンの主役の座を貰うホー!!」

 
 フロストファイブは、去っていった。
 石動は、呟いた。


「ソウルガーディアンの主役……?」

『巧は知らなくていい話だ』



 メタな事を行っていいのは、ギャグキャラだけだからだ。




[7357] 第2期 第27話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/25 15:14


 パオフゥの目の前には、高級ブランドのスーツを着た男がいた。
 特徴的なモミアゲと端正な顔立ちにサングラスをかけていた。
 一見、彼の姿はモデルのように見えるだろうか?
 だが彼の職業は、外見からは予想できないものであった。


「……」

「……甘ちゃんが」


 控え室に緊張が走る。
 天野と芹沢は、どうしたらいいのかわからず黙って見守っていた。
 パオフゥと対峙する美男子……天野の婚約者である周防克哉は、警察官である。
 だが生真面目すぎる彼と、社会の裏を見ていたパオフゥでは愛称が悪いのか、すぐに今の状況になった。


「……まあ、アイツにも喧嘩仲間が出来たようだな」


 付き合いの長い香我美は、今の克哉の姿は、理想に燃えていたパオフゥ……いや、嵯峨薫に似ていた事を知っていた。
 だからパオフゥは克哉に対して辛く当るのだろうと考えた。
 生真面目な克哉なら裏の住人であるパオフゥを受け入れるとは考えにくい。
 ちなみに、警察全員が克哉のような対応を取るかというと一概にはそうだと断定できない。
 むしろ、裏とも相手にする警察官にとって裏の住人のほうが仕事の事を一切話せない家族よりも話が会う事が多いし、組織の形も似たような形が多い為に共感できる部分もあるのだ。
 石動と公安零課の課長である風間の場合は、石動はフリーのサマナーなのだが……。
 石神家と関係が深い上に、今まで幾度もヤタガラスの依頼も受けてきた為に信頼されている部分が大きいのだろう。
 閑話休題。
 結局、香我美は止めるつもりは無いようだ。
 偏屈な香我美にとっては、喧嘩の仲裁より神の身体へハッキングをかける方が遥かに楽な仕事であるからだ。
 その時、石動が横から声をかけた。


「ご両人、今日は結婚式という晴れの舞台だ。
 あまり険悪な空気を出されても困る」

「……ケッ」


 パオフゥは、一応同意したのか、克哉と絡む事はやめたようだ。
 石動は、克哉の方に声をかける。


「アイツも悪い奴じゃないからあまり厳しくみないで頂きたい。
 周防刑事」

「貴方は?」

「石動巧、探偵さ。
 そしてデビルサマナーでもある……警部補殿の戦友ノブがそうであるようにな」


 石動の一言で、克哉の表情が変わった。 


「……!?
 何故、そのことを」

「蛇の道は蛇……といった所だ。
 『あの事件』は、こちら側では大きい事件の一つだからな。
 少し調べれば解る事が多い……珠閒瑠市に集まるペルソナ使いが多い事もな」

「それってどういうことですか?」


 記者である天野が石動に問いかけた。
 石動は、しばし考え、裏の世界での最低限の常識程度なら教えても問題ないと判断して話すことにした。
 超国家機関ヤタガラス、デビルサマナー、対悪魔犯罪対策として発足した公安零課等を簡潔に話した。
 天野と克哉は、小説以上に信じられない事実を聞き、驚きを隠せなかった。
 香我美が、横から口を出した。


「世の中は思った以上に危険と神秘に満ちているってわけだ。
 嵯峨……パオフゥや石動みたいな存在は、無くちゃ困るってわけだ」

「貴方は?」

「香我美 丈……警視庁の電脳犯罪対策課に席を置いている」

『真面目にやってりゃ今頃は課長の椅子に座っているくらいのキャリアって奴だ。
 対ハッカーのエースといったところか?』


 克哉は、香我美の頭上に現れた悪魔……ベルフェゴールの存在に驚いた。


「ペルソナ!?」
  
『ペルソナは、人間の力であって本物の悪魔じゃない。
 俺は、本物の悪魔でコイツが俺の大家だ』

「今日は私人として来ているから階級は気にしなくてもいい。
 それよりも……もうすぐ式の時間だ、そろそろ会場に行って準備しておくべきだ」


 そう香我美は締めくくった。











 


 会場には50名ほどの客が詰め掛けていた。
 石動達以外は、公安零課の職員だったり、石動の知り合いの悪魔だったりする。
 悪魔はただ飯目当て、零課のほうは武術面の指導をしている石動の召集で非番の者が集合している……悪魔絡みの事件を実際に見て研究するという側面もあるからだ。
 あと、呼んでいないのにバロール(本体)がやって来て、天野を口説き始めたので石動が後頭部にアセイミーナイフを突きつけて自重させていた。
 ラームジェルグも、身内の不祥事の為か、珍しく克哉と天野に平謝りする貴重な光景が見られた。
 そして、パオフゥと芹沢が式場に現れ、神父(これだけは結婚式場で契約している本物)が二人に語りかけようとしたとき、石動がいち早く異変を察知した。


「……どうやら現れ始めたようだ。
 周防刑事、天野さん」

「え……!?」

「僕にはまだ何も感じないが……」

『巧は、感知能力が高いからな……』


 石動の目には、無数の花嫁・花婿衣装を着た霊が集まっていた。
 それを無視してパオフゥ達は、誓いの言葉を言っている。
 芹沢は、真剣な顔で言っており、その顔を見たパオフゥも同じように誓いを立てた。
 怨霊達の恨めしそうに見ているところからすると、結婚し損ねた霊達であろうと判断した。
 バロールも、気がついたようで、石動に話しかける。


「せっきー……」

「ああ、まさかこんな式場であんな大物が……」

「ほほう、解っておるようじゃな。
 ところで、この国で6月に結婚してものう~。
 あんまりいい気持ちがしないと思うが、どうかね?」


 幸い、この時期は、4月上旬で爽やかな状態だから問題はない。
 一般に6月に結婚するといいのは、ギリシャ神話で結婚の神の守り月が6月である為だ。
 また地中海性気候では、6月には雨が降らず、爽やかな日が続くので結婚には丁度いいのだが、日本では梅雨時であってお世辞にも良い気候とは言えまい。
 石動も同感であったが、あえてそれを言及せず、石動の第六感が獲物を捕らえられると確信した時、式場の結界を作動させて異界化させた。


『オォオオ怨!!』

『恨めしいぃいいい!!』

『結婚したかったのにぃいいいい!!』


 怨霊達が実体化し、恨みの言葉を吐き散らす。
 パオフゥは、気持ちを切り替えて戦闘態勢に入ったが、芹沢の戦意が無い。


「おい、芹沢!!」

「ご、ごめんパオ……他人事とは思えなくて……」


 結婚詐欺にあった芹沢は、哀れな霊達にすっかり同情していた。
 涙を流して同情していた芹沢の姿に、パオフゥは毒気を抜かれた。
 流石のパオフゥも無理やり戦わせようとは思わずに、心の中で舌打ちするだけに留めて、ペルソナを発動させた。


「ペルソナ!!」


 プロメテウスが現れ、雷撃で怨霊の一角を打ち砕く。
 零課の面々は、鬼やモムノフを召還して自分達を襲う敵を撃退し始める。
 石動は、自衛の武器としてトカレフと、CZ(セスカ・ゾブロジョブカ)75を天野と克哉に手渡した。
 克哉は、『銃刀法違反……』と言いかけたが、香我美がそれを止めた。
 かつては、交番の巡査でもヤタガラスの存在を知っており、その活動を助けるのが当たり前であった。
 現在では一般の巡査まで裏の事が浸透しているわけではない。
 しかし、裏を理解する警察上層部は一般のサマナーが銃を持つことを黙認している(犯罪に使ったりすれば当然取り締まるが)。
 その事を香我美が説明したら、一応納得してCZ-75を受け取った。
 天野は、もう一丁欲しがったが、石動が無いことを告げた時は、残念そうであった。
 どうやら、天野は二丁拳銃で戦うスタイルのようであった。


「お前ら、全員現逮だ!」


 克哉が、怨霊達に向かって言い放つが……当然、怨霊が怯む事は無い。
 天野と克哉は、ペルソナ能力を発言させた。


「ペルソナ!」

「行きたまえ…」


 天野の頭上に、天使の輪のような物を持った着物のようなデザインの服を着た人型が現れ、怨霊を浄化する。
 克哉の方は、黒猫人間というべき可愛らしい人型が銃弾を放ち、敵を撃ち倒す。
 天野が出したペルソナは、天空を支える巨人アトラスの娘マイア……ゼウスと交わりヘルメスを生んだ存在であった。
 克哉のペルソナは、マイアの子ヘルメス……神々の伝令役にして、旅人と霊魂の案内者で、商業の守護神である存在だ。
 また窃盗の神でもあり、生まれたその日に揺り篭から抜け出してアポロの飼っていた牝牛を五十頭盗み出す所業を行った者である。
 パオフゥは、予想以上に戦いなれている様子から二人の評価を上げていった。


「天野、周防……お前達は実戦から離れてブランクが長いだろ?
 戦いなれているが、パワーが弱すぎる。
 あまり出しゃばらずに二人以上で敵を叩き潰しな」

「ええ、わかったわ」

「悔しいが事実のようだ……」

 
 パオフゥの忠告を聞き、周りの援護をすることにした二人は、息の合った連携で怨霊を倒していく。
 バロールは、荒事は分身に任せて闘いの中でも酒を飲んでいる。
 早乙女は、仲魔達を全て呼んで戦っていた。
 カハクとクダが二人係で確実に敵を倒していき、佐助は縦横無尽に戦場を移動しながら戦っている。
 バロールの分身は、『このロリコンどもめ!』と言いながら目から怪光線(邪眼では味方を巻き込みかねないので普通の魔法で)を放っている。
 早乙女に対しては敵が来る事がなかった……敵の大半が『幸が薄そう……』という言葉のナイフで抉っていたが。
 嫉妬に狂った怨霊にすら同情される早乙女の不運とは……、涙を誘う事は請け合いだろう。


「しかし、数が多いな」

『まあ、そんなもんだろ』


 香我美は、容赦なく魔法で雑魚を打ち倒す。
 ベルフェゴールも、面倒臭げに便器に腰掛けたまま話している。
 石動とラームジェルグも一振りで数体の怨霊を切り裂いていたし、フリーダーの蹴りで打ち砕かれる数も30を超えていた。
 しばらくして、石動は無造作に夢想正宗をブリューナクに変化させて誰もいない空間へ投げ込んだ。
 壁に刺さった時、男の絶叫がした。


「ガアアアアア!!」

「へ、ななななんなの!?」


 芹沢が我にかえって声の主の方へ視線を向けた。
 厳かな顔と雰囲気がする悪魔であったが……眉間にブリューナクが刺さっていた。
 顔面だけが浮かび、まわりに稲妻を迸っている。


「ほほう、大神ゼウスの分霊じゃな。
 この関東に蔓延る荒れ狂う邪気に当てられたか」

 
 と、バロールが言ったとき、ゼウスは槍をどうにか引き抜いたようだ。
 更にゼウスの横にゼウスと同じような女性の顔面部だけの悪魔が現れた。
 ベルフェゴールが思わず言葉に出した。

『カミさんもかよ!!』

「あれって、嫉妬深いからな。
 多分、ゼウスが仲を引き裂いているのが離婚の原因か。
 そして、男に不幸を与えているのがゼウスで、ゼウスが口説こうとした女性に不幸を与えているのが女神ヘーラか」


 香我美は、不愉快そうに言った。

 ゼウスは、天候、特に雷を司る天空神であり、オリュンポス十二神をはじめとする神々の王であった。
 彼は、2つの異なる面を持っており、弱者の守護神、正義と慈悲の神、悪者を罰する神である。
 しかし同時に、次々と女性に手をだしては子孫を増やし、不貞を妻に知られまいとあらゆる手段を講じる神でもある。

 ヘーラはギリシア神話に登場する女神で結婚と母性、貞節を司る存在だ。
 だが、浮気をするゼウスに嫉妬するが、その怒りを彼の愛人やその間に生まれた子供に復讐する残酷な女神であり、それによって数々のドラマが生まれた。
 12の試練を受けるヘラクレスがその代表例と言えよう。 


「お、おんなぁあああああああああ!!
 世界の女は我のものぉおおお!!
 ハーレムじょおおおおとおおおおお!!
 ニコポ・ナデポ・SEKKYOポまんせええええええ!!
 3P、4Pあたりまえええええええ!!!!」

「どうやら錯乱しているようだな」


 石動は、そのように断じた。
 ラームジェルグは……


『ブラボー!
 なんて素晴らしい教えなんだ!!』

「『下半身がフリーダムな奴だ……』」


 香我美とベルフェゴールは、愚神に同調するラームジェルグに呆れ気味であった。
 バロールも同様かと思われたが……。


「ふん、お手つきの女とその子供に不幸を与える屑が。
 手をつけるなら巧くやれ!
 手を切るなら一生遊んで暮らせる富と幸運を与えてやるべきじゃないか、ええ!?」


 逆にゼウスを口汚く罵っていた。
 ゼウスは、ティーターン神族のクロノスとレアーの末の子(長男という説もある)で、父親を追い落として主神の座についた男神だ。
 孫のルーグに倒されたバロールは、親倒しの神ゼウスであるから嫌っている面もあるのだろう。
 一方、香我美とベルフェゴールは、妻のへーラの嫉妬深さを蛇蝎のように嫌っていた。


「あんな女神は嫌いだな。
 あんなのばかりいるから結婚とかする気も失せるだろうがな」

『ま、世界の災厄の半分は女が齎しているからな』

「残りは?」

『男と性別無しと玉無しが分け合っている』


 このような毒舌を吐き散らしていた。
 ゼウスは、芹沢を目標に接近したが、天野と顔を見比べてから天野の方を目標にした。


「厚化粧きらぁああああいい!!
 胸なしぃいいいいい!!
 CD女ァああああきらいいいいいいい!!」


 後にパオフゥが語った、『部屋の温度が10℃ばかり下がったんじゃねえか?』と。
 芹沢のペルソナがヴィヴィアン(ランスロットを導いた女性)から見たことの無い女性型のペルソナに変わった。


『私は、星辰を体現する者アステリア…。
 星宿は人の宿運映す鏡なれど、見方によりて変わるもの…。
 道は両の眼で見定めるものと心得よ』

「……新たなペルソナの覚醒か?
 俺は、もう少しマシな理由で目覚めるもんだと思っていたがよ」


 一番ベテランであったペルソナ使いのパオフゥは、芹沢の覚醒を呆れ気味に言った。
 自分のペルソナの覚醒が劇的であっただけに、そのようなイメージを持ってしまったのだろう。

 アステリアは、ギリシャ神話に伝わる女神の一人でティタン神族のコイオスとポイベーの娘だ。
 アステリアはゼウスに気に入られてしまい、彼から逃れようとした。
 だが、大神ゼウスから逃げ切れないと悟った時、アステリアは鶉に変えて海に身を投げたのだった。
 
 そんな覚醒だったが、芹沢は怒りの性か、その事を認識していない。
 パオフゥは、気持ちを切り替えようと青ざめている天野に声をかけた。


「なあ、天野。
 CD女ってなんだ?」

「キャッシュディスペンサー女。
 都合のいい時に金を引き出してくれる女性の事なんだけど……」

「……」

「……」

『おのれ……あの破廉恥な愚神めえええ!!!』


 芹沢の怒りに連動したのか、アステリアが暴走し始めた。
 克哉とパオフゥは、あまりに酷い悪口だと知り沈黙した。
 更にゼウスは、空気を読まずに爆弾を投下する。


「むすめぇええええええ!
 愛人になれぇええええ!!
 雌豚のように腰をふれええええ!!
 このうしちちぃいいいい!
 お前の服センスは、俺を誘っているだろお、JK」

「……貴様ぁああああああああ!!」

「……チョメチョメターイム!!」


 克哉は、激高して正確な銃撃でゼウスに撃ちこんでいた。
 天野も明るい声で腕を上げながら言っていたが、目が笑っていない。
 一人だけ冷静なパオフゥが、石動にむけて言った。


「此処は俺と香我美でなんとかする」

「……まあ、しょうがないわ。
 石動、あっちのヒス女を殺ってくれ。
 こっちは……やり過ぎないか心配だがな」

「アステリア!!
 打つべし打つべし!
 ハッハッ!
 ワン・ツー!ワン・ツー!」

 芹沢は、ペルソナによって嵐を引き起こしてゼウスを切り裂き、流れるようなコンビネーションブローをゼウスに叩き込んでいる。
 激怒した天野と克哉も同様であった。
 感情に身を任せた時には思わぬ危機を招くかもしれない。
 だからパオフゥと香我美がフォローに回るようであった。
 石動は、ため息をついてヘーラに近づく。


「なによ……!!」

「嫉妬するのは構わんが、浮気相手と罪も無い子供にばかり災厄を振りまくのは感心しないな」

「なによ!
 人間なんて…ぎゃあああ!」


 石動の手にはいつの間にかブリューナクを握っており、ヘーラを貫いていた。
 ルーグの加護を得た石動の武器は、石動の意志で召還可能な状態にまで進化していた。
 人間風情と侮った女神は苦痛の表情になっていたが、石動は容赦なく抉る。
 ラームジェルグが質問した。


『で、どうする?』

「禍根を断っておく。
 どうせ分霊だ……殺しても支障はない」


 そう言って、石動はブリューナクから首狩りスプーンに変えてヘーラの首を刎ねた。
 ちょうどその時に、ゼウスは滅多打ちに合っており、フリーダーが止めを刺していた……彼女自身で倒して力を奪う為に。





















「たく……ひでぇ目にあった」

「そうね……なんであんな男ばっかが寄って来るのかしらね……」


 パオフゥは、疲れが隠し切れない様子であった。
 芹沢の方は、黄昏れていた。
 収入(さらに芹沢自身の強化)は良かったが、それ以上に精神的ダメージが大きかった……。
 あと、神父から『本当の式を上げる時は言ってください、無料で行いますので』と言ったが……パオフゥが首を縦に振ることが無いので意味は無いだろう。
 そんな時、芹沢を後から抱きついてきた存在がいた。


「う~らら♪」

「あ……マーヤ」

「元気だして……レッツポジティブ・シンキングよ!!」

「久しぶりに聞いたわ、マーヤの口癖」


 芹沢と天野は高校からの腐れ縁で、学生時代にペルソナ様遊びをしたくらい親密であった。
 社会人になってもルームメイトとして同居していたが、芹沢がパオフゥと知り合い、務めていた下着メーカーを退職してパオフゥの手伝いをはじめた時に同居生活は解消していた。
 それでも、2人の友情は変わらなかった……(芹沢は、天野にパオフゥの事を今まではっきり話さなかったが)。
 天野の後ろには、克哉がついて来ていた。
 

「ねえ、皆で飲みましょうよ」

「いいわね!!」

「明日は、早朝出勤だから飲みすぎはしないようなら……」

「美味い酒が飲めるならいいぜ」


 天野の提案に、芹沢が承諾した。
 男達二人は、パートナー達の様子から付き合うしかないと判断したようだった。


「精々、鈍ったペルソナを磨きなおしておけ」

「君に言われるまでもない」


 まだまだ互いの仲は険悪であったが……。










 おまけ

 周防克哉さんの疑問。


「悪魔に刑法は適用できるのか……?」


 答えとしては、戸籍を持っているタイプならイエス(とはいっても大規模な悪行をしたら問答無用で処分の対象だが)。
 無い場合は……対峙したサマナー次第と言っておく。
 金髪の閣下は、しばしば某貧乏旗本の三男坊の如く人間界に出没している。
 元同僚は、ほとんど出張らないのに。

 







 

 あとがき

 罰の大人4人組の初顔合わせ。
 結婚式の妨害した連中は涙目。
 うららの専用ペルソナ覚醒イベントがなんでこんなことに……(笑)。
 そして……結婚式を邪魔しそうな悪魔のチョイス……なんだが、ヘーラは旧約にも出ていない(涙)。
 前回のおまけは、何気に伏線です……ソウルハッカーズファンなら解る話ですが。
 



[7357] 第2期 第28話 (アンケート有り)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/25 16:10
 ウーリの研究所。
 昔は、ウーリ一人で研究を勤しんでいたが……。


「和也、業魔殿にお使いに行って貰う」

「……めんどくせえ」

「君を再誕させ、衣食住の面倒を見ているのは私だよ?」


 丹精な顔立ちだが、どこか悪戯小僧めいた雰囲気がする20前の人間の少年がエルフの魔術士に食って掛かる。
 だが、恩義を盾にされて、居心地の悪い顔になった。
 彼の名前は、藤堂和也。
 ウーリがドリー・カドモンで行った実験で生まれた存在であった。
 ウーリが聞き出した所によると、彼は非常に特殊な存在であった。
 彼には、双子の弟『尚也』がいた。
 だが、和也は小学生の頃に事故で亡くなった。
 尚也は、和也が亡くなった事に罪悪感を抱いており(尚也には責任のないことであったが……)、それが深層心理で形作られたのが『和也』であった。
 それが、セベクスキャンダルの時に掘り起こされ、実体化した。
 一時は、尚也に成り代わろうとしたが失敗して、和也は尚也に取り込まれた……はずだった。
 だが、得体の知れない奴(ともに行動していた神取という男のペルソナに似た気配を感じたらしい)によって深層心理の海から引き上げられた。
 その時、嫌悪感を感じて抵抗した後、意識が飛んだ。
 和也が目覚めた時には、ドリーカドモンに宿ったそうだ。
 さらに予想外の事態が起きた……。
 本物の『和也』の魂と融合してしまったのだ。
 純粋な子供の魂は、自分自身の死を認識できずに存在し続けていた。
 普通なら劣化し続けて消滅するところが、『和也』が生まれ出そうになって引き込まれたせいだろうとウーリは言っていた。
 悪魔合体で悪魔を構成する要素を世界から得ている部分があるという説があったが和也の存在が裏づけになるのかもしれないと、錬金術師は語る。
 閑話休題。
 なおも、抵抗を試みる和也であった。


「……ほら、石動って奴のしごきがきつくってさ。
 ペルソナ……じゃなかった守護霊なしでもボッコボコにされて脇腹の痛みが……」

「そろそろとれた頃だな」

「本人以上に傷の具合を知っている治療者は嫌いだ」

「禁断の人体練成を行った私だからな。
 人体を壊すも治すも思いのままだ。
 ……休みたいのなら、壊すが……」

「行けばいいんだろ、畜生め」


 和也の抵抗虚しく、業魔殿のお使いへ行く事に決まった。
 業魔殿の主・ヴィクトルとウーリは、錬金術師同士の交流が深く、ライバル意識を持っていた。
 ウーリは、全く新しい造魔(フリーダー)の製法および育成の途中経過についてのレポートを手渡すように和也に命じたのである。
 

「1、2日位の寄り道は構わんが、確実に渡せよ」

「わかってるよ」


 和也は、今の現実社会の様子はとても新鮮に感じていた。
 今まで生きていた場所とは異なる世界に、和也は心が弾んでいた。
 ゲームセンターに立ちより、遊び始めた。
 ガンダ■のアクションものでネットワーク対戦で全国にいる猛者を相手に戦う代物である。
 和也は、緑色の機体を選んだ……コストはそれなりだが性能が高い代物であった。
 

「ここはガンブラスターでいくかだな……相手は、BelとLhamにSixか……」


 Belは火力があるが鈍重で小回りが聞きにくいグランドマスターガンダム。
 Lhamは機動性が高いが射撃武器は一切無いガンダムエピオン。
 そしてSixは、渋くリック・ディアス(赤)で射撃戦で戦うようだ。


「このゲームは、家でやりこんでいるんだ。
 簡単に……なにぃ!!?」

 
 ビームキャノンを高速で接近しながらガンブラスターで切り込むガンダムエピオン。
 鈍重な動きを相手の動きを先読みして最大火力を叩き込むグランドマスターガンダム。
 だが、自分も歴戦の戦士。


「簡単に負けるわけにはいかない!!」


 だが、圧倒的な技量を持ち、戦いなれていそうな相手には分が悪い。
 そこで弱気になる和也だったが、持ち前の負けん気に火がついた。

 
「俺は変わりたい……!
 自分を諦めたくないんだ!!」


 紙一重でグランドマスターガンダムの稲妻を避ける。
 そして反撃を開始した。


「俺は逃げない……自分から目を逸らさない!!」



 ……結果は、目立たぬように動きながら相手を同士討ちにさせながら、こっそりと攻撃を加え続けたSixが漁夫の利を得た。
 白熱した闘いであった。


「……次こそは!!」


 そこでゲームをやめて目的地へ向かうことになった。


















「やっと見つけたわ……レイ!!」
  
「ナ、ナオミ……?」


 和也が、裏道を通っていた時に、違和感を感じて確かめに行った。
 その先では、ショートカットの白いスーツを着た美女と、ロングヘアーでダークレッドのスーツを着た美女が対峙していた。
 ダークレッドの女性……ナオミは、白いスーツの女性に憎悪の炎を燃やしていた。
 白いスーツの女性のレイは、困惑を隠せず、闘志が見られなかった。


「わが一門の仇、とらせてもらうわ!!」

「……今までどこにいたの?
 数年前に姿を消して以来、なんの情報もなかった。
 そして数年前と姿が変わっていないのは……」

「死んだはずだった……。
 でも生きている……だから貴方を殺す!!
 そして全てを忘れて……」

「忘れて……どうするんだ?」


 和也は、ナオミに声をかけた。
 違和感の正体を掴めた和也は、興味本位で二人の戦闘に首を突っ込んだ。
 ナオミは、不愉快そうに言った。


「何者……?」

「誰だっていいだろ?
 それより……生きたいのか?」


 和也の質問に、ナオミは戸惑う。
 レイは、和也の登場に困惑していた。


「え……?」

「その様子じゃ『奴』の事を知らないっぽいな。
 その命は仮初のものだ」

「ど、どういう意味!」

「そのままの意味さ。
 『奴』の遊戯が済めば切り捨てられる。
 だから、やりたい事がないなら……今すぐ自殺したっていいんじゃない?」


 復活する前の接触で、自分を復活させた相手の事を大体理解していた。
 だからこそ、忠告のような罵倒をしているのだろう。


「復讐する、しないは別として……長生きしたいならそこのお姉さんを相手にする前に、延命手段を探すことだね」

「戯言を!!」


 ナオミは、持っていた金属管に気を込めた。
 倶梨伽羅の黒龍を召還した。
 倶梨伽羅とは、不動明王が持っている剣に絡み付いている竜王であり、和也を焼き尽くさんとした。


「ペルソナ……チェンジ、リリム」


 だが、その炎を和也は吸収した。
 さらに、次の攻撃をしようナオミは管を取り出そうとした所を手首を捻り上げた。
 石動との地獄の特訓による成果のお陰であろうか?


「……殺せば」

「お断りだ。
 アンタの指図を受ける義理はないからな。
 俺の忠告を素直に受け止めて帰りな」


 そう言って和也は、手首を離した。
 そこで食い下がるのは、ナオミのプライドに関わる。


「今日の所は退くわ……。
 でもレイ……次こそは殺す!!」


 だから、ナオミは、一旦退くことにしたようだ。
 レイは、ナオミに何も言えなかった。
 仲が良かった幼馴染だった筈だったのが……今では殺し殺されの関係になっているのだから無理も無いだろう。
 レイは、横槍を入れた和也に感謝していた。
 だが、和也の背中しか見えない為に何を考えているかレイには、理解できなかった。


「(何を考えているのかしら?)」

「(それにしても美人だったなあ……。
  そういう機会はいままでなかったから余計にそう見える。
  そういえば桐嶋と……)」


 本当の命を持った和也は、年頃の少年と変わらない。
 昔、桐嶋英理子の状態異常を治す為に口移しでアイテムを飲ませた事を思い出して赤面した。
 その時は、尚也に成り代わる事しか考えていなかったが、改めて美しい顔を思い出して赤面する和也であった。
 遅れてきた思春期と言うべきか?


「どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 年上の美女に、自分が美女への煩悩に塗れていたことがばれるのは恥ずかしいの為、和也はどうにか取り繕った。
 レイは、助けてもらったお礼を和也に言った。


「助けてもらってありがとう」

「暇だったからな……それにあながち無関係じゃないかもしれないからな。
 蘇った者同士だし」

「え?」

 
 キョトンとしたレイが可愛いと思いながらも、顔に出さずに和也はレイに話しかける。


「戯言だ。
 それより、業魔殿ってホテルを探しているんだが……」

「ヴィクトルに用なの?」

「お使いを頼まれた。
 衣食住を握られているから逆らえなかった」

「……」

「笑いたきゃ笑え」


 和也の不貞腐れる様子は、レイには歳相応の可愛げがあると感じていた。
 レイは、場所を知っているらしく案内を受けた。
 機械じみたメイドの案内を受け、ホテルの主に会った。


「業魔殿にようこそ……」

「ウーリの使いだ。
 お前に見せびらかせたい物があるそうだ」


 和也は、暗い所で立っていた錬金術師・ヴィクトルにディスクを渡した。
 ヴィクトルは、資料を閲覧した後に返事を渡すつもりなので、和也は足止めを受けることになった。
 携帯でウーリに連絡し、しばらく帰りが遅くなることを告げた。
 滞在中の和也は、レストランのシェフである第33代目村正の渾身の料理を味わう事になったのだ……。




 おまけ

「……そういえば、桐嶋と園村は、尚也にゾッコンだったな……」


 桐嶋が和也に微笑む光景を想像したら、怒りがこみ上げてきた。


「尚也に会ったら……いや、会って一発殴ろう」














 おまけ 2(生甲斐)

「ねえ……」


 蛇を持った裸体の美女が石動を誘惑する。


「……リリスの分霊を取り込んだか」

「来てぇ……」


 リリスは生まれたての姿を披露し、傾国の美女が持つ魔性の誘惑の力が石動を襲う。
 石動は黙って近づく。


「……楽しい事をしましょう。
 戦う事をやめて」

「それは困る」


 石動は哂う。
 だが、それは色欲に満ちた者ではなかった。
 リリスは、驚いたその一瞬が命取りだった。


「がっ……」

「剣を振るうことが何よりの楽しみでな……。
 俺から剣を奪わんでくれ」

『刺した後にいうか、巧ぃ』

「……まさか、煩悩を……消…し去って……いるとで…」


 石動は、容赦なくリリスに止めを刺した。






 翌日、石動は予定を入れずに家で稽古をしていた。
 そんな時に、稽古をしにやって来たのがスカアハであった。
 稽古が終わり、石動は、先日片付けた事件について話していた。

 
「ほほう……やるではないか。
 小角の助力無しで……」

「使っていたら警戒されて近づいてこないからな……忘八の『元』構成員は。
 まあ、気を張っていたから巧くいったわけだがな」


 リリスを憑依した中国人女性は、力に溺れ、歌舞伎町の支配を目論んだのだ……組織を裏切って。
 忘八も、警察もその行く先をつかめず、被害が増える一方であった……そこで石動は依頼を受けたわけだ。


『俺ならホイホイついて行ってた所だ』

「威張るな、戯け」


 スカアハは、胸を張る弟子に鉄拳制裁を加える。 


『しかし、何で裏切るのかねえ?』

「日本人は『寄らば大樹の陰』な思考だが、中国人は『鶏口となるも牛後となるなかれ』な思考だ。
 独立独歩したいという気概があるのだろう」

「振って湧いた力を使うと頼りだし、隙が生じる」


 スカアハが突然言い出した。
 弟子とその相棒は、興味深げに見つめた。
 そして続けて言った。


「最後に頼れるのは地道に培った力だ……それに気がつかぬから下らぬ最期を遂げる事になる」

「まったくだ」

『最近の漫画は才能とルックスがあれば矛盾しようが、不愉快な発言をしようが、世界を滅茶苦茶にしても許されるからな』

「なんだ、それは……狂ったか、馬鹿弟子?」


 ラームジェルグの発言に、訝しげに見つめるスカアハ。
 だが、弟子の言葉は悲しげであった。


『いや、悲しいですけど事実っす』

「酷い話だ……が、なんでそんな話に飛ぶのやら」


 その時、フリーダーが入ってきた。
 スカアハは、フリーダーの姿を見て絶句した。


「む……」

「いかがされましたか、スカアハさま」

「いやな……に、似合っているぞ」


 ジェシカにつきあわせれて、着せ替え人形にされる事が多いフリーダー。
 当然、何着も衣服を買ってもらっている(実は、早乙女やモー・ショポーも買ってもらったことがある)。
 フリーダーが気に入った寝巻きが……ひよこの着ぐるみ型であった。
 そのアンバランスさに一瞬眩暈を感じたスカアハだったが、あえて言わないのが大人なせいか?


「まあ、それでこそ石動だな」

「それにしても、剣を持たぬ俺か……想像できんな。
 そして棄てる事もだ」

「少なくとも言えるのは……、剣を持たず女に現を抜かすお前には興味がないがな。
 剣客のお前だからこそ、価値がある」

「マスターが思うままに生きればいいのだと思います。
 ただ……今のマスターのままでいて欲しい、そんな気がします」

「そうか……」

『巧は、変わるつもりがないだろうに……』








 NG


 緑色の巨大な男根のような形をした『ご立派な存在』があった。
 石動は、それに闘い、そして勝った。


「まさか……煩悩を断ち切るとは……もしや……不感症、いや不能か……」

「死ね」


 石動は、駄目押しにブリューナクによるゲイボルグを放った。
 投擲された槍は、輝く五つの光に分裂し、五つの光が『ご立派な存在』を撃ちぬく。
 そして一つになった時には一本の槍に戻った。
 さらに、恐ろしいことに……貫いた槍の穂先から光の茨と化して周囲へ拡散した。
 起伏の激しい岩場だったはずの戦場は……綺麗な更地と化していた。


『……流石に不能扱いと言われて怒ったのか?』


 クー・フーリンは、その事を石動に問い詰める事はなかった。






 あとがき。
 いままで伏線に出していたウーリの助手は和也でした。
 まあ、お見通しの人もいたでしょうがね。
 あと、おまけはムシャクシャしてやった。
 今では反省している。
 だが私は謝らない、ライダーシステムに不備は無い。
 デビット伊藤の響鬼がはまり役なのに驚いた。 

 

 アンケート

問)諸君、私は……、


 1、外人が嫌いだ。

 2、炎が嫌いだ。



 この先に続く言葉を選んでください。




[7357] 第2期 第29話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/26 01:43


「……こちら石動探偵所。
 周防刑事?」


 石動は、電話から周防克哉から依頼の電話があった。
 だが克哉の話を聞くうちに難色を示しだす石動だった。


「……あいにく此方も火急の依頼があってな。
 俺は行けない。
 だが……、そちらも余裕の無い事も事実だ。
 そうだな……まずは、パオフゥに連絡する事だ。
 近場に住んでいる上に優れたペルソナ使いだ」


 克哉は、苦手とする人間の名前を言われて、困惑した。
 さらに石動は続ける。


「早乙女も寄越す。
 そうだな……あと一人ほどペルソナ使いに当てがある」


 2,3話した後、電話を切った。
 ラームジェルグに、早乙女に連絡のメールを入れるように指示した。


『カッちゃんも大変だねえ。
 だが……こっちは、もっとピンチだけどね』

「まったくだ……なにせ、キョウジから助っ人の依頼だ。
 それも……だからな」

『そりゃ、不味いわな……。
 俺、この事件を切り抜けたら、Sixにリベンジするんだ……』


 そういいながら、ラームジェルグはメールを送った。
 そして石動は、ある所に電話をかけ始めた。
























「で、俺が呼ばれたわけかよ……バイト代に釣られた俺も俺だがよ」

「がんばりましょうね、藤堂さん!」


 交通機関を乗り継いで、パオフゥのアジトへ向かうのは、早乙女とペルソナ使い藤堂和也であった。
 和也は、最初拒んでいたが、石動の高額のバイト代と『自称和也の姉』であるフリーダー(肉体を作ったのは、フリーダーの造物主であるウーリだから嘘ではないが)のが頼まれたからのもあるし、石動に鍛えられた自身の力を試したいという子供っぽい欲求もあるからだ。
 大型2輪を購入するという野望を和也は、抱いているようだ。
 パオフゥのアジトは、珠閒瑠市の鳴海区にある。
 二人が訪れた時には、パオフゥと克哉とそして柳顔の美男子がいた。
 美男子は歳は23,4くらいで女性っぽい繊細な顔立ちをしており、胸元には花を刺していた。
 スラックスにシャツという普通の服装なのに、華やかな印象を与えていた。


「早乙女君か!?
 それに、もう一人の君も高校生か。
 あまりこのような事態に巻き込みたくないのだが……」

「ケッ、甘ちゃんが。
 早乙女のお嬢ちゃんは、覚悟もしているし修羅場を切り抜けてきている。
 それに……そこの坊主、お前さんも共振を巧く隠しているが、強いペルソナ使いって事は解るぜ」

「へえ、解るんだ」


 克哉は、生真面目な事を言いはなち、パオフゥがそれに呆れつつも和也の力量を見抜いていた。
 和也も、やさぐれた中年から洗練されたペルソナの技術を感じており、自分より数段上ではないかと考えていた。


「あの、うららさんは?
 それと、先生からは詳しい事はパオフゥさん達から聞けって……」

「ん、ああ……芹沢は、法事に出ていて帰ってくるのが明後日以降だ。
 たく、石動の奴め、ものぐさにも程があるが……」

「この一件については、僕が話そう……
 この子を……黒須淳君を守って欲しいんだ」


 克哉が事情を話し始めた。





「黒須先生、さようなら」

「さようなら、気をつけて帰るんだよ」


 女性生徒が手を振って帰っていった。
 彼……黒須淳は、私立七姉妹学園の新任の音楽教師であった。
 黒須は、理想を持ち、人々を導ける職業に就こうと考えて教師という道を選んだ。
 彼は、とある理由で高校を途中まで通っていなかったが、持ち前の優秀さと熱意で遅れを取り戻した。
 大学の教育学部を合格・進学し、現在に到っている。
 ルックスもさることながら、真摯に生徒に接する所が理解され、早くも人気教師となりつつあった。


「……夢のようだ……」


 黒須は呟いた……その言葉の重みはとても重いものであった。
 一体、彼はどれほどの過去を乗り越えたのだろうか?
 生徒たちがいなくなり、仕事を終えて帰ろうとした時、掲示されていた報道部の新聞を見たとき、黒須の表情が凍りついた。
 『JOKER様による殺人代理!?』と書かれた表題を読み始めた黒須。
 新聞の内容は、自分自身を携帯の電話番号をかけると、JOKER様が恨んでいる相手を殺してくれるという噂が流れ始めており、実際に死亡者が出たらしい。
 ちなみに、数年前に『JOKER様』が流行っていたが、その内容は、『JOKER様が理想の自分に変えてくれる』という噂であったが、以前と違うのが不思議であると最期の文章を締めくくっていた。


「そんな……もう『JOKER』はいない。
 そのはずなのに……」


 黒須は、以前感じた事のあったペルソナの共振を感じた。
 荒々しく、狂気に満ちた波動で、既に存在しないはずの気配であった。 


「ヒャーハッハ!!
 電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波ぁああああああ!!!」

「……キ、キングレオ!?
 だが……その姿は……」

「おうおう、覚えてくれていたのかよぉ……感激だぜぇ」


 キングレオと呼ばれた男は、下手な落書きをされた紙袋をかぶり、右手には血塗られた刀を、左手にはフジバカマの花が握られていた。
 ダークグリーンのコートは、どす黒い返り血で汚れていた。
 キングレオは、フジバカマの花を黒須に投げ渡す。 
 

「フジバカマ……『あの日を思い出せ』?」

「戻ってきてくれよ。
 『JOKER』は俺じゃねえ、貴方のほうが相応しいんだ!!
 仮面党を纏めるのは貴方しかいないんだ!!」

「その紙袋は、『JOKER』を模したつもりだったのか……。
 だが断る……僕は騙され、過ちを犯した。
 それを繰り返すつもりは……ない」


 黒須は、毅然とした態度でその願いを断った。
 その言葉に衝撃を受けるキングレオ。
 深い悲しみと、そしてそれ以上の怒りを燃やし始めた。


「そうか……あの糞餓鬼と、魔女の性か……!!
 そうか、そうなんだな……!!
 なら……殺さなきゃなぁ……殺して本当の貴方を取り戻してみせる!!」

「達也とお姉ちゃんには……指一本触れさせない!!
 ペルソ……ぐぅ!!」


 黒須がペルソナを発動する前に、キングレオは間合いを詰めて片手で首を絞めて持ち上げた。
 キングレオが弾丸のような速度で接近し、万力のように締め上げられた状態では黒須はどうにもならない。


「いくら貴方でも偽りの平穏に浸かって昔ほどの力は出せないようだな!!
 それに……勘が鈍っているぜぇ。
 貴方が解ってくれないなら、嫌でもついてきてもらうぜ。
 そして、奴らの死体を見せれば……」

「く……」

「無駄だぜ……助けなんか来やしねえよ!!」


 キングレオは、そう勝ち誇るように言った。
 だが……、


「情熱・ヤング伝説!!!」

「ぐぁあああああああああ!!」


 キングレオの背後から破壊の力の篭った魔力球が襲い掛かった。
 油断した彼は直撃し、黒須を取り落とした。
 キングレオは、振り返って怒号を飛ばした。


「なにしやがる!?
 誰だ……誰がやりやがった!!」


「あ、貴方は……!!」


 黒須は、『尊敬する人物』が自身の危機に駆けつけたのだと理解した。
 キングレオの視線の先には、ダークグレイのスーツにダークグリーンのネクタイをした長髪にしている老年の男がいた。
 細身の身体からは、活力に満ち溢れており、黒須には慈愛の視線を送り、キングレオには敵意の視線を向けた。
 男は、頭上に巨大なドリルに似た黄金の巨人……強大な力が秘められたペルソナを呼び出し、キングレオに宣戦布告を行った。


「この七姉妹学園校長、反谷孝志の目の黒い内は、わが学園の先生には指一本触れさせはせん!!」
 

 七姉妹学園の名物校長、通称ハンニャ先生が、新任教師を守る為に降臨した。
  














おまけ 原野の冒険 その1


「こんにちわ~」


 深夜の巨大ビルの一部を借りて作られた小さなコンピューター会社。
 原野は、ある目的を持ってやって来た。
 勿論、プログラミングを頼むわけじゃない。
 ドアを開けると、ヨレヨレの背広を着て、マルボロを加えてPCのディスプレイを見ながら操作する男がいた。
 短い髪型と、飄々としながらも知的な雰囲気を見せている30代位の男性が仕事をしているようだ。
 見たところ、社員は帰り、一人残業をしているようだ。


「こんばんは」

「ん……君は?」

「九鬼英輔さんの紹介を受けた原野です。」


 原野は、にこやかに質問した。
 一見、邪気の無い天使の微笑みのように見えるが、それに騙された人間・悪魔は多数存在する。
 だが、今回は、心からの笑みのようであった。


「ああ、英輔君の知り合いだったね。
 英輔君から連絡を受けている。
 彼は、元気にしているかい?」

「はい、相変わらず『元気に』仕事しています。
 あの、櫻井さんと呼べばいいですか、それともスプーキーと?」

「どちらでも構わない。
 その仇名を呼ぶって事は、『あの事件』に絡む事を聞きたいのかな?」

「ええ、僕は……『元』モデル都市の天海市・二上門にあった地下遺跡に行きたいんです」

 
 早くも原野は、用件を切り出した。









 あとがき。

伝説の教師が現れた、コマンド?

炎が嫌いなルートです。
キングレオといえば……火事ですね(火炎属性持ちでもあるし)

外人ルートは、もうわかるよね、言わないけど。






[7357] 第2期 第30話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/27 06:00

「畜生……!!
 だが、貴方だけでも……グァ!!」


 思わぬ強敵の遭遇に焦り、淳だけでも確保しようとした。
 だが、腕に激痛が走った。
 銃弾に撃ちぬかれたような傷跡が出来た。


「糞餓鬼がぁあああああああああ!!
 またしてもおおおおお!!」

「克哉さん!!」


 黒須の視線の先には、警察官にしてペルソナ使いである周防克哉の姿があった。
 キングレオを傷つけたのは、克哉のペルソナによる一撃である。


「久しぶりだね、淳君。
 連続殺人犯を追って巡回していたが……本星か。
 だが、初対面の人間に恨みを持った覚えはないが……」


 克哉を見たキングレオは、今まで以上の憎悪に燃えていた。
 淳にとって克哉との関係は、親友の兄であり、数年前の事件からの付き合いであった。
 淳は言った。


「彼は……キングレオです」

「……そうか、達也と勘違いしたのか……。
 広域強行犯501号!!
 銃刀法違反およびに、誘拐未遂の現行犯で逮捕する!!
 貴様には弁護士を呼ぶ権利がある……たとえ死亡したはずだったお前でもな」


 克哉は、警察手帳を出して警告を放つ。
 だが、それを素直に聞き入れる存在ではないだろう。


「こ、殺して……!!」

「退き時だ、キングレオ」

「「「!?」」」


 攻撃しようとしたキングレオを止めたのは、低い男の声であった。
 キングレオは、頭上を見上げて叫んだ。


「俺に指図するな、オセェエエエ!」


 キングレオの頭上に、悪魔が現れていた。
 三人のペルソナ使いに一切関知されずに忽然と現れた実力は、只者ではないだろう。
 その姿は、漆黒の豹頭の獣人で、背中には白い翼を生やしており、紅色の刀を左右に一本ずつ装備していた。
 オセの右手には、古い書物が握られていた。
 キングレオは、不服そうな様子であったが、オセと呼ばれた獣人が睨みつけるとしぶしぶ従っていた。
 オセの殺気を感じて、反谷がペルソナで攻撃した。


「ペルソナ!!」

「その判断と魔法の威力、人間にしては中々やる。
 だが、その程度では今の俺は……殺せん」


 反谷の凄まじい攻撃を右の掌で受け止めていた。
 多少焼き焦げていたが、しっかりと防御されていた。
 このことから、克哉は、あのキングレオを従えていたのは、圧倒的な実力があったからであろうと推測できた。
 オセは、少し考えた後に呟いた。


「足止めが必要か……」


 オセは、掌を握り締め、血を流した。
 大地に落ちた時にすぐに巨大化し、人の形をとった。


「これは……」

「私か……?」

「だが、少し違う……髪型が」


 形作られたのは反谷であった。
 だが、克哉の言った通り、毛髪が薄く、額の部分が禿げ上がり、髪が短い。
 それだけでなく、傲慢で邪悪な気配を放っていた。
 キングレオは舌打ちしながらオセが放った鎖に掴まる。


「次はこそは貴方を取り戻す。
 これは置き土産だぁ!!」


 キングレオは、黒い服と仮面を被り、紅い帽子と靴を履いた不気味なペルソナを召還して光を放つ。
 だが、ダメージは無く、何が起こったかは、克哉達には解らなかった。


「君は、此処で倒す……ペルソナ!!」


 淳は、ペルソナを発動した。
 だが、現れたのはキングレオのペルソナであった。
 そして、反谷と克哉に攻撃を始めた。


「ぬ……」

「これは……!!
 そうか、一時的にペルソナを乗っ取る技か……」


 克哉は、何が起こったか分析した。
 初見の技とはいえ、失策を犯した淳は、自己嫌悪にさいなまれた。
 だが、反谷がやさしく諭した。


「黒須先生、まだ取り返しのつくミスだ。
 人間は過ちを犯す。
 だが、正す事はできる……今まで、君が行ったようにね」

「……はい」

「(こんな時でも、優しく諭すとは……素晴らしい教師のようだ)」


 克哉は、反谷の教師としての姿勢に敬意を抱いた。
 反谷は、優しい眼差しから真剣なものに変えた。


「それより、私の偽者を倒さなければならないでしょう」



 反谷の偽者……便宜上『シャドウハンニャ』と呼ぶ事にする。
 シャドウハンニャは、暗い笑みを浮かべながら言った。


「ジョーカー様、お戻りになってください。
 そして、我らを導いてください」

「断ると言ったはずだ」

「そうだ、悪の道に誘う事はやめたまえ!!
 私の偽者よ!」


 反谷の言葉にシャドウハンニャは嘲笑した。


「ふふふ……私は、貴方の影です。
 それに……偽者は貴方ではないですかな?」

「何!?」

「貴方は本来、傲慢で、自分こそが正しく、絶対の存在と考えていた。
 そして、厳しく不良を取り締まっていた!!」

「そうだったかもしれない、だが……」

「お前は、そこにおわす御方に理想の自分を願ったではないか!!
 そして皆に好かれる教師になった。
 生徒や先生を操ってな!!」

「わ、たしは……」


 シャドウハンニャの言葉を聞き、崩れ落ちた反谷。
 さらに続ける。


「認めろ。
 お前は、ちっぽけで! 矮小で!! 醜い存在だ!!!
 生きる価値がない、借り物の力でいい気になっている存在だと」

「……そうなのかもしれない……」

「そんな言葉で惑わすな!!」

「ふふふ、本人が認めているのが何よりの証拠じゃないですかな?」


 克哉が、そう言い放つが、余裕の笑みで否定するシャドウハンニャ。
 反谷、悔恨の涙を流し、絶望に満ちた顔になっていた。
 だが、黒須が強い意志を篭めて否定した。


「それは違う!!」

「なんですと……」

「淳君……」

「確かに、はじめはそうだったかもしれない。
 だが、達也に倒されて、真の教師に目覚めて仮面党やナチスから生徒を守った。
 もし、偽りのままだったら、あの事件が終わった時に全ては元に戻ったはずだ!!」


 シャドウハンニャは、黒須の声にたじろぐ。
 更に黒須は言った。


「僕が、教師になろうと決意した時、反谷先生は……教材を探したり、自分の経験を話してくれた。
 そして……罪を犯した僕でも罪を償い、やり直せることを教えてくれた!!
 あの人のお陰で夢を叶えることが出来た!!」

「……」

「立ってください、反谷先生!!
 貴方は間違いなく、理想の教師だと僕は信じています!!
 そして……貴方を待っている教え子たちがいます!!」


 黒須の熱い言葉を聞き、目の焦点が戻った。
 そして反谷は、黙想して呟いた。


「『教育とは信じる事』……大石校長、貴方の言葉が今、理解できたような気がします。
 淳君……いや、黒須先生のお陰で思い出せました」

「なにを……!!」


 反谷は、シャドウハンニャの声を聞いて目を開いた。
 そして強い意志を篭めて言った。


「私は、立派な教師になろう……人々を導ける教師になろう、そんな夢に燃えていた。
 だが、現実に打ちのめされ、何時しか本当の夢を忘れていた。 
 黒須先生、ありがとう……。
 もう、私は迷わない。
 私を信じる生徒がいる限り!!」


 反谷は立ち上がり、ペルソナを召還した。
 七姉妹高校の名物教師は、2人に言った。


「すまないが、これは私自身でケリをつけなければなりません。
 だから……」

「解りました、反谷校長」

「……市民の保護は義務ですが、仕方ありません」


 シャドウハンニャと、反谷が対峙した。
 邪悪な影は、自信満々に言い放つ。


「ふははは!
 私にはあの御方から力を得ている!!
 日常にいる貴様では勝ち目はない!!
 倒れされ、私がお前に成り代わる!!!
 死ね……暗黒ヤング伝説!!」


 強大な魔力が反谷を襲い掛かる。
 だが、もう反谷の心は折れない。
 魂の叫びが響き渡る。


「教えてやろう!
 人の命を奪う事より、人を導く事のほうが遥かに難しい闘いだ!!
 成り代わったお前は、必ず生徒に害を成す。
 ならば私は、貴様に勝ち抜く義務がある!!
 喰らえ、情熱・ヤング伝説!!」


 キングレオに放った以上のエネルギーでシャドウハンニャの攻撃を迎え撃つ。
 相殺するどころか、シャドウハンニャの攻撃を打ち砕き、シャドウハンニャにダメージを与える。


「ば、ばかな……」


 本物以上の力を持ったはずなのに、競り負けてしまったショックが隙になった。
 反谷は、全ての力を拳に込めた。


「鉄拳制裁!!」

「が……そ、そんな……私が……きえ……」


 反谷の正拳逆突きが、自身の影を貫いた。
 信じられぬ表情のままシャドウハンニャは消滅した。
 全ての力を使い果たした反谷は、そのまま倒れ臥した……その寝顔はやり遂げた男の顔であった。
























「反谷先生は、そのまま入院しました。
 幸い大怪我はないですが、キングレオの襲撃には間に合わないでしょう」


 克哉は、そう締めくくった。 
 パオフゥは、黒須に向かって問いただす。


「なあ……お前さんが何故狙われた?
 察するに、ソイツと因縁があるようだが。
 そして、襲った奴を知っているな」

「はい……」

「淳君!?」

「克哉さん……彼らは、僕のために危険に身を晒す人達です。
 僕は、全てを話す義務がある」


 黒須は、全てを話す決意をした。
 その話は、次の通りであった。

 黒須と他に三人の幼馴染がいた。
 ある時、一番の年長者が親の都合で引っ越すことになったが、それを不服に思った黒須達が、神社に閉じ込めた。
 だが、それに火をつけたのがキングレオ……須藤竜也であった。
 黒須の親友である周防達也……克哉の弟がペルソナを発動して撃退し、幼馴染であった天野舞耶……後の克哉の婚約者は生き延びたが、達也達はそれを知らずに罪悪感を

持った。
 達也達は、罪悪感で忘却したが、黒須だけは忘れなかった。
 そして黒須は、舞耶を閉じ込めた達也達に復讐を決意した。

 数年前、達也達が高校生になった時、仮面党を率いてある陰謀を企てた。
 


「陰謀?」

「そう……父さんが残した『イン・ラケチ』という人類の誕生から滅亡まで書かれた本。
 これが大きな事件の軸になり、僕は父さんの命令で動いていた。
 でも……父さんは、本当の父でなく……人類滅亡を企てた真の黒幕だった」

 
 早乙女の質問に黒須が答え、話を続けた。

 黒須に偽の記憶を植え付け、背後から操った存在……それが本当の敵であった。
 真の黒幕の目的は、ある予言を成就する事であった。
 珠閒瑠市の地下に、人類に文明を与えた宇宙人の船『シバルバー』が眠っており、グランドクロスが起こった時に人類の精神エネルギー『イデアルエナジー』を使って浮

上し、珠閒瑠市の人間だけが生き残り、イデリアンに進化する。
 そして地球は、天変地異で滅び去る……チャネラーを通して伝えられた宇宙人のメッセージ『マイヤの託宣』……それが人類の進化を促す運命であると。



「まったく胡散臭いな」

「『奴』の力は強大でした。
 珠閒瑠市は、『噂が現実化する』異界に変わってしまった。
 荒唐無稽な事でも人々が信じさえすれば現実に変わる」

「……似たような事に心当たりがあるだけに否定できないな」

「……とてつもなく、嫌な、予感が、するんだけど……」


 和也は、遠い過去に思いを馳せるような表情に変わっていた。
 早乙女のほうは、青ざめていた……自身に降りかかる不幸を感知したのだろうか?
 黒須は、話を続けた。 
 
 黒須は、キングレオなど多くの人々を配下にし、野望の成就を目指していた。
 だが、周防達也と天野舞耶とその仲間達の活躍でなんとか防ぐ事ができた。
 克哉は、達也の行動を不審に思い、調査しはじめてあるデビルサマナーと出会い、行動を共にした。
 

「実際、凄かったよ。
 噂でナチスが復活して攻めて来たし……僕は、その闘いの中で、達也のお陰で自分を取り戻す事が出来た。
 でも……母さんは僕を庇って……」

「……」

「キングレオは……達也に倒された。
 何故、今頃になってやってきたのかはわからない」

「まあ、死んでも蘇るってのはないこともないからな。

「そうですね……」


 黒須の疑問を、和也と早乙女はそう言い切った。
 その様子に不思議に思いながら、黒須は話し続ける。


「ナチスや仮面党は、浮上に失敗したシバルバーを浮上させようと画策していた。
 それらと闘いながら、最後の決戦になった……。
 本当の父さんは、既に亡くなっていた。
 操っていた『父さん』は……人間の心の進化を見定める存在……人類の負の心、破壊の心の雛形『ニャルラトホテプ』だった」

「いやああああああああ!!!
 先生……たすけてええええええええええ!」

「な、なんだ!?」


 早乙女は、その名前を聞いて、パニックを起こした。
 和也は、冷静であった早乙女の狂乱に驚いた。


「落ち着け、早乙女!!」

「そうだ……鎮静剤だ!」


 薬局・サトミタダシで売られている薬を飲んでようやく早乙女が落ち着いた。
 黒須は、早乙女に聞いた。


「まさか……知っているのか?」

「数ヶ月前から会っています。
 先生や私に嫌がらせとばかりに事件に絡んできて……先生は、『簡単に切り捨てられるから問題ない』っていうけど。
 たしかに、問答無用でやっつけましたけど……私には先生みたいにそう言い切れません」

「そ、それは……す、凄いんだね、君の先生は」


 自分を苦しめていた存在を大した事の無いように言った早乙女の師匠の存在に驚いていた。
 人々の心の隙に忍び込む存在を征する事ができるという事は、精神に隙がなく、頑強な精神を持っているのだろうと、黒須は推測した。


「恐ろしい敵だった。
 最終決戦でも、一歩間違えれば世界の破滅だった」


 克哉は、自分の掌を眺めながら言った。
 彼の手には大きな傷跡があった。
 まるで聖者についた聖痕のようであった。
 和也は、克哉の傷について興味を抱いた


「それは?」

「決戦の時にできた名誉の負傷だ。
 聖槍ロンギヌス……『イエス・キリストを傷つけ、傷が塞がらない槍』という噂で作られた槍によるものでね。
 お陰で傷が塞ぐのに苦労した……今でも月に一度、傷口から血が流れる」

「心臓に突き刺さったらと思うとゾッとするな」


 和也は、そう言った。
 こうして、黒須の話は終わった。
 パオフゥの心の内で様々な思いが交錯していた。
 『自身とかつての相棒の仇』の息子の悪行に対しての怒り……そして、世間が以外に狭い事を感じた。
 仇である須藤竜蔵は、数年前に失脚して獄中で死亡し、実行犯であった云豹には、パオフゥ自身で制裁して復讐は終わっていた。
 パオフゥは、見た目以上に逞しい青年に言葉を投げかけた。


「そうか……なあ黒須、男には二種類の男がいるって知っているか?
 ただの男と…本物だ。
 本物の漢は、悲しみの殺し方を知っている……お前は、本物だ」


 黒須は、パオフゥの言葉に驚いた。
 パオフゥから罵倒がくるのではないか……と、黒須は思っていたのかもしれない。
 いままで沈黙を守っていた和也が口を開く。


「あんまり気にしすぎると老けるぜ。
 無理も無いかもしれないがな。
 ……とにかく、嫌がるような事を無理やりする奴を倒せばメデタシ、メデタシってわけだ」


 和也、同じように罪を抱えながらも前に進む少女を知っていた。
 だからこそ、黒須を責めるつもりもなく、助けになろうと考えていた。
 早乙女は、黒須にかける言葉が浮かばず、現実的な対応を考えることにした。


「そうです。
 今は、現状の打開が最重要の課題です……。
 周防刑事、どう対応するつもりですか?」

「時間が長引くほど我々が不利になる。
 だから……葛葉探偵事務所で噂を流すつもりだ。
 『廃工場に花を好む青年が潜伏中と』」



















 おまけ 原野の冒険2


「……目的は?」

「とあるサマナーの遺品……出来れば遺体を発見したいんです。
 二上門に、古代神が眠っていて、あるサマナーが交戦した事は調査済みです。
 古代バビロニア神話の夫婦神『アプスー』と『ティアマトー』の内、ティアマトーを討った事までは知っています」


 ティアマトーは、『苦い水(塩水)』を意味し、伴侶である神アプスーは『甘い水(淡水』の意である。
 アプスーとティアマトは多くの神々を生みだした……しかし、彼らとの生活が煩わしかったアプスーは、ティアマトに彼らを殺すよう持ちかけた。
 だが、母なるティアマトはそれを拒み、逆に息子達へアプスーの企みを教えて、警告した。
 その結果、アプスーは殺され、ティアマトは太母として敬われた。
 やがて……権威を欲したティアマトーの子達は、ティアマトに神々の主の座を降りてくれるように願った。
 この要求はティアマトを激怒させ、使いの神を吊るし上げて辱めた上で、返した。
 結局、マルドゥークという勇猛な神に殺され、彼女の体を二つに引き裂き、一方を天に、一方を地に変えた。
 母なる神ティアマトは、世界の基となったのだ……とされている。

 その存在が、二上門にあった……二上門は、『二神門』であり、神が封印された地であったのだ。
 なぜ東の果てに彼らが眠るのか?
 それは、キリスト教のような異教を駆逐する世界でなく、全てを受け入れる地であったからだ。
 八百万の神々がおわすこの地が、落ち延びた夫婦神の安住の地になったのかもしれない。


「よく調べたね」

「ええ……(まさか死んだ本人から聞きました~って言えませんしね)。
 その仕事を請けたのが……」

「ナオミ……だろ?」


 原野の言葉を先回りしたのは、いつのまにかやって来た青年であった。
 腰には銃を模したCOMPがあり、短く切った髪と意志の篭った瞳がトム・ソーヤのような活発さを印象付けていた。
 櫻井は、青年に声をかけた。


「お帰り、啓自」

「リーダー……じゃなかった社長、彼が?」

「ああ、英輔からの紹介だ」

「あの……彼は?」

「峰岸啓自……英輔君の義理の兄だ」

「年下なんだけどな」


 人懐っこい笑みを原野に向ける峰岸。
 原野は、しげしげと見つめる。
 櫻井は、疑問に思って聞いた。


「ん……どうかしたのかい?」

「この人が、『あの』九鬼さんが一目置いている超凄腕サマナーなのか……と思いましてね」

「まだまだ修行中だ。
 それに、本業はハッカーなんだが……リ……社長にまだまだ及ばなくってね」

「一応、ハッカーに関しては先輩で、お前のリーダーだからな。
 これだけはまだまだ抜かれないよ」


 櫻井は、そういって微笑んだ。
 峰岸は、原野に質問した。


「なぜ、亡くなった彼女の遺体を?」

「……そうですね~。
 九鬼さんの義兄で、信頼できそうですから言いますけど……。
 依頼人は、ナオミさん本人からなんですよ……って言ったら信じますか?」

「……その人は、何を望んで生きていた?」

 
 真剣な峰岸の目を見て、原野も正直に答えた。


「……ある人の復讐を。
 でも、それ以上に、サマナーという生き方に疲れている……僕はそう感じますがね」

「……信じよう」

「なぜ、そう言い切れんですか?」

「……彼女を知っている。
 正確に言えば『彼女の最期』を体験したからだ」


 峰岸の発言も常人には信じられない話であった。





 あとがき
 
 機動教師ハンニャム……破壊力満点だったと感想読んでて感じました。
 ニャル様は鍛え上げられた精神の持ち主とは相性が悪いと考えています。
 たとえば、葛葉のような自分の精神をコントロールできるサマナーみたいな存在とか。
 



[7357] 第2期 第31話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/05/29 08:34


 もう誰も立ち入らない港南区の廃工場。
 だが、複数の男女がそこにいた。
 黒須と、克哉にパオフゥ、そして早乙女とその仲魔たちが集まっていた。
 
 
「署に近いから騒ぎに駆けつけてくるかもしれんな」

「その前に叩いてしまって逃げりゃあいい。
 精々脚を引っ張るなよ、周防」


 廃工場がある地区には警察署がある。
 克哉はそれを危惧したが、パオフゥはあまり心配しておらず、周防に憎まれ口を叩きながら、スーツの裏から銃を取り出す。
 ベレッタM92のコピー品であった。


「仕事でシメたチンピラから巻き上げた奴だ。
 上等な品じゃないが、ニューナンブ使って服務規程違反になるよりはマシだろ?
 お前さんのことだから持っていないだろうがな」

「……使わせてもらおう」


 周防は、一瞬躊躇したが、弟やその友人たちの危機だと言い聞かせて銃を受け取った。
 カハクは、黒須の型の上に座っていて、絵になる組み合わせであった。


「ペルソナ使うの?
 強いの?」

「僕は、長く戦っていないから力は衰えているよ。
 だから、援護が中心にするつもりだよ」

 
 カハクの質問にそう答えた黒須。
 クダもその考えに同調した。


「そうね。
 ボウヤが敵の狙いだから前に出ちゃ駄目だから……いい判断だと思うわ。
 具体的には?」

「ここに行く前にベルベッドルームで玄奘のカードを作ってきたよ。
 相性は良好な相性だから問題ないよ」


 そう言って黒須は、掌にカードが生まれる。
 玄奘三蔵……西遊記でお馴染みの僧で、孫悟空の師として有名である。
 前世は、釈迦の二番弟子だったが、お釈迦様の教えに背いたため、罰として人間に転生させられた人物だ。
 克哉が自主訓練している内に貯まったタロットカード(ペルソナを作るのに必要なカード)を譲り受けてベルベットルームの主・イゴールに作成したのである。
 克哉も、勤務の合間を見て鍛えており、今のペルソナは、キングレオが炎系を得意としている事から戦神マルスにしている。
 マルスは、ローマ神話における戦と農耕の神で、天体の火星とも同一視されている。
 パオフゥの方は、以前の闘いで目覚めたプロメテウスを完全に使いこなせるようになっていた。
 一方、残りの面々はというと……、


「まあ、奴の使ったアレが来たら俺達で叩けばいいな、お嬢」

「そうだね……私達にはペルソナ能力は無いから。
 でも、永続的に効いていたら……」


 佐助が軽く言っていたが、早乙女は、不安げであった。
 そこで、バロールが、早乙女に説明した。


「大丈夫じゃ、さくら。
 おそらく、奴のペルソナを相手の心に潜り込ませて発現させる技じゃて。
 対象は誰かは断定できるかわからんが……、潜り込めるのは一人だけじゃ。
 そして、その間にワシらが攻撃すれば……」

「自衛の為にペルソナを使う事になる……ということですか」

「そうじゃ!
 まあ、最善の策は出す前に倒す事じゃな!!」

 
 小さいバロールは、自信満々に断言した。
 佐助は、普段は怪しい爺でも、百戦錬磨の魔王の実力と洞察力は本物だと感心していた。
 しばらく待ち、夜も更けてきた時……。


「ヒャーハッハッハ!!
 電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波電波ぁー!!!
 電波からは逃れられないんだよ!!」



 窓ガラスが砕け、黒い影が現れた。
 キングレオ……須藤竜也であった。


「テメエが、竜蔵のドラ息子か」

「親父の事などどうでもいい!!
 今の世界は間違っているんだよ!!
 あの時、人間は滅びるはずだったんだよ!!」


 パオフゥの言葉に激高しながら両腕を振り回して語った。
 克哉は静かに語った。


「あの闘いは……達也が勝ち、シバルバーが浮上する事も、世界が滅びる事も無かった。
 それがすべてだ」

「……だが、俺は蘇った!!
 お前達が嫌う奴の力でな!!
 シバルバーはもう浮かばない……だが、世界の破滅の切欠はいくらでも転がっているぜぇえええ!!」

「……そんな事はさせない。
 そして僕や僕が傷つけて人々のような思いはさせない」


 黒須の言葉を聞き、悲しげに肩を落とすキングレオ。
 

「貴方がそういう事を言うとは……。
 まずは、周りの連中を皆殺しだ!」


 キングレオがそういった時には、12体の牛頭の獣人と、8体の黒い鳥頭の悪魔が現れた。


「ミノタウロス、シャックス!!
 殺せ殺せ殺せ殺せぇえええ!!
 だが、あの方に傷一つつけてみろ……そん時はテメエらから皆殺しだ!!」


 悪魔達は一斉に吼えた。
 闘いが始まる前に、解説を行うことにする。
 今回、前置きしたのは、少し長めの話になるからだ。

  
 ミノタウロスは、ギリシア神話に登場する牛頭人身の怪物で、クレータ島のミーノース王の妻パーシパエーの子であった。
 ミノタウロスは成長するにしたがい乱暴になり、手におえなくなったミーノース王はダイダロスに命じて迷宮・ラビュリントスを建造し、彼を閉じ込めた。
 アテナイから生贄を得ていたが、生贄の中に混じったアテナイの英雄テセウスが混ざり、ラビュリントスに侵入しミノタウロスを倒した。
 テセウスは、ミノス王の娘アリアドネーからもらった糸玉によって脱出することができた。

 この話は続きがある。
 まずは、アリアドネーについて語るが、これには諸説ある。
 脱出後、ナクソス島に向かったが……そこに住む神ディオニュソスがアリアドネーに恋し、奪ってレムノス島へと連れて行きそこでアリアドネーと交わり子をなしたとする。
 一説によると、アリアドネーは、ナクソス島に至り、ひどい悪阻であったため、あるいは彼女が眠っているあいだにテーセウスに置き去りにされたともされる。この後、ディオニューソスが彼女を妃としたともされる。
 ホメロスの『オデュッセイア』の場合だと、テセウス一行がディアー島に至った時にディオニュソスの了承のもと、アリアドネーはアルテミスに射られて死んだとされている。
 
 もう一人語りたい……ミノタウロスを閉じ込める迷宮を作った男、ダイダロスだ。
 彼は、伝説的な大工、工匠、職人、発明家であり、斧、錘、水準器、神像などを発明したとされる。
 アテナイで人気を集めていたダイダロスが、ペルディクスの息子で弟子のタロースが鋸を発明した時に、タロースを殺してしまった。
 ダイダロスは、アテナイを追放され、クレタ島に逃げてミーノース王の保護下に置かれ、その後に迷宮を作った。
 だが……彼は、アリアドネーに迷宮脱出の入れ知恵をした為に、ミーノース王の怒りを買い、息子イカロスと共に塔に幽閉されてしまった。
 ダイダロスとイーカロスは人工の翼をつくり逃亡する事に成功した。
 だが、その途中でイカロスは、ダイダロスの忠告を無視して太陽に接近しすぎてしまった。
 そして、イカロスの翼の蝋が溶けて墜落死した。
 その後、ダイダロスは、シチリア王の元に身を寄せた。
 ……これが有名なイカロスの翼の話である。



 シャックスは、ソロモン72柱の魔神の1柱で、30の悪魔軍団を率いる序列44番の地獄の大侯爵(一説には公爵とも)である。
 しゃがれ声で話すコウノトリの姿をしており、魔法陣へ入れば美しい声に変わると言われている。
 視覚、聴覚、味覚を異常にしたり、金や他のものを盗んでくることができ、宝のありかを教えることもある。
 召喚者に使い魔を与える事もあるがその使い魔はよく召喚者を騙す為、便利とは言い難い。
 シャックス自身は、忠実で従順であると考えられている……魔法陣の中にいない限り嘘をつく。
 その辺は、やはり悪魔であると言えよう。
 
 ソロモン72柱は、イスラエル王国の第三代の王であるソロモン王が封じたとされる72柱の悪魔の事だが……実は、旧約聖書には書かれていない。
 ソロモン王は、その強大な魔術を駆使して悪魔たちを使役し、エルサレム神殿を建立した。
 だが、ソロモンは彼らの尊大さを危険視し、真鍮の壷に封じこめて「バビロンの穴」と呼ばれるバビロニアの深い湖に沈めた。
 後に、バビロニアの人々がこの壷を発見し、財宝が入っている事を期待して封印を解いた。
 悪魔達のうち71柱は逃げ出してもともといた地獄の領地に戻ったが、ただ大悪魔ベリアルだけが残って偶像の中に入り込んで神託を行うようになった。
 72柱の「72」は、十二宮の一つの宮をさらに6区画に分割して得られる数字で、象徴的な全方角の支配者を定めるための図から得られたものらしい。

 ちなみに……ソロモン王の晩年は、臣民に重税を課し、享楽に耽ったため財政が悪化した。
 そして、ソロモンの死後、イスラエルは分裂、衰退していくことになった。


 閑話休題。
 パオフゥが指示を飛ばす。


「藤堂は、鳥どもを蹴散らせ!
 早乙女のお嬢ちゃんは、仲魔と連携してミノタウロスを叩け!!」

「ま……助っ人だからな。
 さっさと終わらせて、紙袋野郎をボコるか」


 和也は、ニヤリと笑いシャックスの群れに突撃した。 


「はい!!
 カハクとクダは、黒須さんの護衛!!
 バロール、佐助、いくわよ」
 
「あいよ~」

「お嬢は俺が守るぜ!!」


 早乙女の刀の柄が雷鳥を模した霊剣・雷神剣に変化し、近くにいたミノタウロスの腕を斬りとばした。
 さらに……、


「「「ガアアアア!!!」」」


 雷神剣の特性は、近くにいる敵にも衝撃が拡散し、時に感電状態になる。
 バロールが巨大化し、掌に火の玉を作り出し、風車のような回転……ソフトボールの投法の一種・ウィンドミルをし始めた。


「アイヤ~ホッ!!」


 バロールの奇怪な掛け声とともに火弾が投げ込まれ、更に分裂してミノタウロスの一段に直撃した。
 盛大に燃え、美味しそうな匂いが漂う。
 だが、ミノタウロスに大ダメージを受けているのは確かだが、死に至っていない。
 おそらく、何らかの強化がされているのだろう。


「ほほう……歯ごたえのある牛さんじゃのう。
 こんど曾孫と一緒に神戸牛を…」

「ガアア!!!」

「そおおおおおおおい!」


 反撃しようとする牛頭の悪魔にバロールが、プロペラの如く回転しながら蹴りを放った。
 魔王の一撃は、頚椎を叩き折り、他のミノタウルスを巻き込んで壁まで吹き飛ばした。
 一方の佐助は、早乙女と連携して感電した敵に止めを刺して次の敵を相手にしていた。


「防御力が強化されているのか……?
 厄介だな……っと!!」

「ガ……」


 ミノタウルスの大降りのパンチを避けて急所に投げ針を打ち込む。
 秘孔を打ち込まれ、痙攣を起こしながら倒れた。
 鮮やかに敵の命を奪う技術は、伝説の忍者の面目躍如といったところか。
 一方、シャックスが和也目掛けて一斉に攻撃を行った。
 

「「ブフーラ!」」

「「ムドオン……」」

「「ジオンガ」」
 
「「死ネ……我ガ羽バタキで!!」」


 一斉攻撃の余波で視界が見えづらくなっていたが、シャックス達は、愚かな人間を一匹始末したと確信していた。
 だが、煙の中から雷撃が飛び、シャックスの一体に直撃し、運の悪いシャックスは、感電死してしまった。
 煙が晴れた時には、傷一つない和也が立っており、頭上に青い龍が浮かんでいた。


「残念。
 MOONのリリムにチェンジしていたんだ。
 アイツに魔法は効かない」


 攻撃の種類と数を判断し、リリムを降魔させた。
 もちろん、リリムの弱点である物理攻撃もあったが、和也は軽々と避け、攻撃が終わった瞬間にペルソナを攻撃力がある青龍に交代したのだ。


「……悔しいが、石動の野郎に感謝するぜ。
 前の俺なら攻撃に当っていただろうからな。
 避けられても反撃まで出来なかっただろうな」


 和也は……素質は抜群であったが、残念ながら実戦経験が乏しかった。
 弟の尚也と戦った時も、相手の動揺に付込んだ上に相手の情報を知っていたという好条件があったから優位に立てたのだった。
 だが、石動との訓練で持ち前の才能を開花させ始めたのだった。
 和也は、動揺したシャックス達の魔法攻撃を避けながら剣を振るう。


「ガアア!!」

「どうだい?
 コイツはWORLDだ……力は強いぜ」


 和也は、力を込めてシャックスを両断した。
 今の和也ならば、残る敵も問題なく倒せるようであった。
 早乙女達が楽に倒せるのは、黒須達の援護のお陰であった。
 攻撃があたりそうになったら、カハクが火炎魔法を飛ばして攻撃の妨害を行い、当っても黒須が回復魔法をかける。
 呪殺魔法を飛ばしてきてもクダが闇の壁を張って防ぎ、更にクダが喉笛に噛み付いた。
 黒須が、後方から状況に応じて、魔法封じの魔法を飛ばしたり、破魔の光を飛ばしていた。
 黒須の豊富な経験を生かして絶妙な援護で戦力を高めていた。







 そして……キングレオとは、克哉とパオフゥが対峙していた。
 紙袋を被った怪人は、憎悪の炎に燃えていた。 


「テメエのせいで……」

「達也の事か……だが、それはお前の逆恨みだ!
 弟や天野さん達を傷つけるお前を野放しには出来ない!!」

「やめとけ、周防……親父に似てロクデナシだ。
 さっさと殺っちまったほうが早い」

「親父と一緒にするなぁあああああ!!!」


 キングレオは、火炎魔法を飛ばす。
 パオフゥは、指弾を飛ばしながら克哉を盾にして攻撃を凌いだ。
 今の克哉は、炎に耐性があり、ダメージはほとんどなかった。
 

「ぎぃいいいいやああああ!」

「パオフゥ……」

「適所適材って奴だ……」


 パオフゥは、恨みがましい克哉の視線を涼しい顔で受け止めていた。
 だが、すぐに表情を引き締めた。


「一気に畳み掛けるぞ、ペルソナ!!」

「…解った。
 ペルソナ……!!」


 金色の戦士・マルスが神速の剣技で切りつけ、プロメテウスがパオフゥと同じく強烈な指弾をキングレオに目掛けて撃ち出した。
 2人の連続攻撃を受けて後に下がるが、さらに逆上したキングレオは克哉に目掛けて切りかかる。
 だが、逮捕術や柔道の要領で巧に攻撃を捌き、腕を捻り上げた後に近くの機材に叩きつけた。
 骨の砕ける音が聞こえ、キングレオは、絶叫した。


「ギィヤアアアアアア!!」


 だが、狂乱したキングレオの腕力が凄まじく、克哉を片腕で投げ飛ばした。
 克哉は、なんとか受身を取れたが、衝撃で、一瞬視界が揺らいだ。


「周防!!」

「大丈夫だ……それより……」


 キングレオは、獣のような唸り声を上げながら突進してきた。
 解りやすい直線的な攻撃であったが、その速度は凄まじかった。
 だが、歴戦の戦士である克哉とパオフゥは、反射的に避けながら反撃を行った。
 突進を終えたキングレオの胸元に無数の穴が開いていた……致命傷であった。
 胸元を押えるキングレオにパオフゥが言った。


「終わりだな……」

「いいや、始まりだ!!」

「「!?」」


 キングレオの全身が燃え始めていた。
 ペルソナ能力の暴走で全身が燃え始めたのだ。
 燃えながらキングレオの狂気の笑い声が響き渡る。


「いいか……これで勝ったと思うなよぉ……!!
 恐怖が!
 不幸が!!
 災厄が!!!
 この世にばら撒かれたぁ!!
 JOKERは……死なねえぞぉ!!!!」


 キングレオは、更に燃焼し、炎の嵐を巻き起こした。
 炎の中で親指で首筋を掻き切る動作をしながら言った。


「御終いだぁ……!
 世界は滅びる!!
 全てがぁ!
 奈落の底に沈む……ヒャハハハハハハハハ!!!」

 
 そういって蘇ったキングレオ……須藤竜也は燃え盛る炎の中に消えていった。
 克哉が呟いた。


「終わり……なのか?」

「……始まりかもな、奴の言った通りのな」


 パオフゥが煙草に火をつけながら言った。
 その様子を訝しげに克哉が見つめた。


「パオフゥ……何を知っている?」

「俺は特に知らねぇ。
 だがな……知っている奴なら心当たりがあるがな」


 パオフゥは、そう言って紫煙を吐き出した。
















 おまけ 原野の冒険 その3


 天海市……かつて情報環境モデル都市に指定された、未来のネットワーク都市だった。
 だが……ある事件によって、それが立ち消えとなった。
 原野は、天海市を見渡しながら言った。


「現在は、学園都市として再開発されている最中だけど……、二上門の地域だけは封鎖されていますね。
 表向きは、バイオハザードが起きた為とされていますが……。
 例の事件が起きた事と大神アプスーが眠っている事が理由ですね」

「ああ、そうだ……だから、偽造IDで関係者と偽って進入する」

「社長のハッキングなら問題なく通れるわけだ」


 本来ならば、峰岸と原野だけで行くところであったが、櫻井が同行したいと申し出た。
 『知人の墓参り』と櫻井は言っていたが、原野は、深い事情を察してそれ以上は聞かなかった。
 検問を超え、二上門の地の底の遺跡へ進んだ。


「まったく……おっかないな。
 素人の僕でも感じてしまう位に」

「あの時ほど危険ではなくなっても、悪魔がいます。
 絶対にはぐれないように」

 
 櫻井は、遺跡から発する気配に驚き、峰岸は、注意を促した。
 原野は、歩きながら切り出した。


「……他人の人生を追体験するビジョンクエストですか。
 それでナオミさんの事を知っているわけだ。
 そして、数人分の人生を体験してサマナーとして磨かれていくわけですね」

「まあな。
 レッドマン……俺をあの事件に導いた奴のお陰だ。
 もし、出会わなければ……悲惨な結末になっていただろうからな」


 峰岸を遠くを見つめた。
 ビジョンクエスト……ネイティブアメリカンの行った儀式の事である。
 だが、峰岸が受けたのは……三人のサマナーの最期を追体験したのだ。
 死の苦痛、そしてサマナー達の思いを受けた時、常人の精神は引き裂かれ、自己を確立することができないだろう。
 だが峰岸は、自分を強く持ち、多くの死線を越えていったのだった。
 峰岸は、この事件に関わる内に『葛葉』と接触を持った。
 事件が終わり、峰岸は、天海市から引っ越したが……サマナーとしての才能に開花した彼は、サマナーの道とプログラマーの道を歩むことにした。

 櫻井は、天海市の事件の根幹に関わったアルゴンソフト社に務めていながらアルゴンソフトを調べていたハッカーで『スプーキーズ』というチームを創設した。
 トレーラーを改造し、移動できるアジトを作るほどの本格的なものであった。
 櫻井は、アルゴンソフト社で働きながらハッカーを行うという二重生活を行っていたた
 スプーキーズの一員であった峰岸とともに櫻井は、天海市の陰謀に巻き込まれた。
 ダークサマナーの組織・ファントムソサエティと戦い、櫻井は、組織の幹部の悪魔に取り憑かれた。
 幸い、峰岸の活躍で九死に一生を得て、櫻井は生き延びる事ができたが、一歩間違えれば死んでいた事だろう。
 事件が終わった時、スプーキーズは解散し、仲間達はそれぞれの道へ進んだ。
 櫻井は、峰岸のバックアップをする為にスプーキーズを解散後も峰岸と行動をした。
 そして、コンピューター会社を設立して現在に到っている。


 原野達は、悪魔を撃退(交渉で済むこともあれば、荒事になったこともある)し、『二度』潜った峰岸の案内で迷わず最深部に進むことができた。
 最深部は、広大な空間が広がっていた。
 洞窟の所々が砕け、圧倒的な火力で硝子化した壁もあることから、ここで行われた戦いの凄まじさが解る。
 櫻井は、煙草に火をつけ、天井を見つめた。


「ここが……門倉の眠る地か」

「……アルゴンソフト社の社長ですね」

「ああ……。
 奴は、マニトゥと呼ばれる存在に取り込まれ、人々の精神……ソウルを収集し始めた。
 その時にファントムソサエティと接触したようだが……、天海市の都市開発は、全てはソウルを収集するためのものだった」


 原野の言葉に答える櫻井。
 櫻井の様々な感情が込められた言葉は、原野は立ち入れない事だと感じた。
 門倉と櫻井との間に深い因縁が櫻井をこの地へ誘ったのだろう。
 煙草を吸いながら虚空を眺める櫻井の姿は、厳粛で、祈りに似た雰囲気が漂っていた。
 櫻井が煙草を吸い終わり、原野に視線を向けた時には、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。。
 

「原野君、僕の用事は済んだ。
 君の目的に付き合うつもりだが……」

「ありがとうございます。
 それと……峰岸さんの仲魔にも手伝ってもらいましょう」

「仲魔を?」

「ええ、悪魔の超感覚はこういうときに役立つんです」


 今まで闘いにしか使わなかった峰岸は、盲点だったとばかりに、額に手をあてた。
 そしてすぐに、峰岸の仲魔を呼び出した。
 最初に現れたのは、巨大な猛犬型の悪魔であったが、どこか人工的な雰囲気を漂わせていた。


「造魔ジード……啓自ノ言ウ事聞ク」

「造魔ですか……僕の知っている女の子の造魔とちがうな~」

「そうなのか……って女の子?」


 悪魔について深い知識のあるヴィクトルの助けで造魔を得た峰岸だったが、女性型の造魔は作れなかった。
 ジードの素体になったドリーカドモンを強奪した時に出会った研究者が作ったのは一応女性型ではあったが。


「ええ……業魔殿のメイドさんと系統が似ているかな?
 ご主人様にべったりといった感じだし。
 街中で買い物中の彼女に会う事もありますがね」

「造魔なのにそこまで人間に近いのか……。
 ちょっと会ってみたいな、そのサマナーと造魔に」


 峰岸は、珍しい話を聞き、楽しそうであった。
 更に、仲間を呼び出した。


「「「「「戦士フロストファイブだホー!」」」」」

「……これは?」


 次に出てきたのは、5色の雪だるま……ジャックフロストがポージングを決めていた。
 思わず、原野は質問した。


「ああ、どこかのサマナーから譲り受けたそうだ。
 そして五人が合体して、五体一組の悪魔になったそうだ」

「スプーキー、啓自、仕事かホ?」

「デスマーチは勘弁ホ」

「「「暗いホ~」」」


 櫻井が峰岸の代わりに説明し、峰岸は、フロストファイブにナオミの遺品、できれば遺体を探すように命じた。
 渋っていたが、スプーキーがボーナスを支給すると言ったら皆やる気を出して取り組みだした。
 峰岸はため息をつきながら、更に三体の悪魔を召還した。


 威霊・八幡(八幡神、八幡大菩薩)。
 雲に乗り、砂漠の太陽のような威圧的な後光を放っている人型の悪魔だ。
 起源となった神ははっきりしないが、応神天皇とする説が有力で、弓矢の神であり、源氏の氏神として尊崇を受けていた。
 源氏が政権を握った鎌倉時代以降、武家全体の尊崇を受けた。
 かつては『ヤハタ』と読んでいたが、神仏習合して仏者の読み「ハチマン」、音読に転化したと考えられる『ハチマン』と読むようになっている。
 「ハタ」とは「神」の寄りつく「ヨリシロ」としての「旗」を意味する言葉のようである。

 地母神・西王母。
 姓は楊、名は回。
 中国の遥かに死の果て、崑崙山に住んでいるとされ、天の災いと五つの刑罰を司る。
 人間の非業の死を司る死神であった西王母であったが、「死を司る存在を崇め祭れば、非業の死を免れられる」という、恐れから発生する信仰によって、徐々に「不老不死の力を与える神女」というイメージに変化していった。
 その為に、始めは恐ろしい化け物の姿をしていたが、後世では美しい女性の姿で描かれるようになった。
 不老不死の仙薬である仙桃の持ち主であることが有名である。
 崑崙とは、中国古代の伝説上の山岳であり、封神演義では仙人達の住まう地でもある。

 鬼神・摩利支天。
 陽炎の神格化された神で額に第三の目を持ち、三頭で、6あるいは8本の腕には弓矢、金剛杵、宝剣などを持っているとされ、阿修羅の軍隊を調伏する役割を担う存在である。
 陽炎は実体がないので捉えられず、焼けず、濡らせず、傷付かない。隠形の身で、つねに日天の前に疾行し、自在の通力を有すとされ、武士や忍の信仰の対象になっている。
 摩利支天は元来女神であるが、男神像としても造られるようになっている。 
          

 いずれも屈強な仲魔であった。
 峰岸の命令で一斉に動き出し、原野と櫻井もそれに続いた。


 








 あとがき。

 キングレオ、轟沈!!
 相手が悪かったとしか言いようがない。
 罰の時と同じですね。
 チートな助っ人がいたわけです……。
 さて、第2期の敵が本格的に動き出した……のかな?
 ついに第1期からの宿敵オセが現れた!!!


 ……なんだが、ハンニャ先生に全て持っていかれたのは気のせいかな?
 石動チームの敵は、もう予想がつくだろうけどね。
 ニャル様の狙いも勘がいい人が検討がつくでしょうがね(いわないでね~多分当っているだろうから~)。
 おまけの原野の冒険はもう少し続きます。





[7357] 第2期 第32話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/01 09:58
 早乙女達が、キングレオと一戦交えていたその時の石動は……、


『今回の敵はヤバイのか?』

「ああ、そうらしい」


 石動は、そういいながらも無意識に笑みを浮かべていた。
 その存在に石動は、興味を抱いていた。
 昔までの自分ならば、苦い顔になっていただろうなと、不意に石動は考えた。


「(変わっていくのも……悪くはあるまい)」


 そんな様子を見ていたラームジェルグは、今回の敵について気になったようで問いかけた。


『どんな奴なんだ?』

「葛葉キョウジを呪い殺した」

『!?』


 ラームジェルグが絶句した。
 葛葉四天王に並ぶほどの技量の持ち主で、サマナーの中でトップクラスの存在だ。
 それを葬ることが出来る存在は、それ以上の怪物であるといっていいだろう。


「それを今のキョウジが数年前に倒したはずだったそうだが……。
 これも『死人が蘇った』のか?」

「……そりゃ、本物の化物だな。
 で、名前は?」

「シド・デイビス。
 ファントムソサエティのダークサマナーだ」


















 平崎市の葛葉探偵事務所……そこに二人、いや三人の男達がいた。
 石動とラームジェルグ、そして探偵事務所の主である葛葉キョウジだ。


「悪ぃ、石動……わざわざ来てもらってよ」

「お前と……そして『キョウジ』を殺した奴というのに興味を持ったからな。
 それに、電話からでも切羽詰っていたのが解ったからな」

「ありがとな」


 キョウジの顔にいつもの精悍さが欠けていた。
 恐怖ではない、別の感情……怒りと焦燥感が漂っていた。


『レイちゃんは?』

「レイは、運が悪い事に一門の墓参りで遠出してな……呼び戻しても間に合わない。
 だから……石動に頼んだ」

「信頼されていると受け止めておこう。
 それで……何があった?」


 石動のその一言に固まったが、すぐに正気に戻って話した。
 キョウジは、一通の手紙を出した。
 それには、こう書かれていた。


『旧天堂邸ニテ待ツ シド・デイビス』


 さらに、一人の女性が、椅子に縛り付けられ、目隠しをされていた。
 女性は、目隠しされていたが、それでも顔立ちが整っており、美人であることが推測される。
 その横に、黒人の神父が横に立っていた……ご丁寧に、昨日の夕刊の日付を見せながら。
 服の上からでも身体が鍛え上げられているのが解る。
 神父は、眼鏡をかけ、額に紅い星の痣があるのが特徴的で、毒蛇のような残忍さが瞳から発していた。
 

「この人は?」

「秦野久美子……俺が『死ぬ前』からの付き合いの……恋人だ。
 シド・デイビスとの事件にも巻き込まれたがな……。
 それにしても……シドは、確かにあの時に死んだはずだ」


 キョウジは、拳を握り締め、机に叩きつけた。
 死んだはずの男が再び攫うとは……流石のキョウジも考えない事だ。
 わざわざ手紙を出したという事は、シドからの挑戦状であるのは間違いない。
 石動は、熱くなっているキョウジを冷静にさせるべく言葉を出した。


「落ち着け。
 復讐に燃えたダークサマナーは、罠を仕掛けている可能性が高い。
 今のままだと、思う壺だ」

「ああ……すまない」

『指定されている時間まであと少しだ。
 今のうちにやれる事だけはやらないとな』

「まずは、奴の手口を教えろ。
 知っているだけ言ってみてくれ」



















 おまけ 原野の冒険 その4



「結局見つかったのは……ナオミの管だけだったか」


 峰岸は、捜索の結果を言った。
 ティアマトーが死に絶えた時、同時に大地が、空気が……周りのあるもの全てが死に絶えた。
 神を殺したナオミも例外でなく、神殺しの代償として命を失った。
 それでも悪魔召還に使った管だけは残っていた。
 術で強化された管は、大きく歪み、汚れながらもその形を留めていた。


「骨折り損……なのか?」


 櫻井は、遺跡を見渡しながら言った。
 だが、原野は首を振った。


「いいえ……コレがあれば十分です。
 管の内部には術式が書かれています……ナオミさんの血で」

「だが、肉体は……一欠片も無い」


 櫻井はそう言ったが、原野には問題がなかった。


「材料は揃いました。
 これでナオミさんの身体を作れます……正確に言うと『作れる人を知ってる』だけで、僕が作るわけじゃないですがね」

「どういう事なんだい……まさか」


 櫻井は、原野の言葉から何を行うのか推測が出来たようだ。


「ええ、反魂の術を行います」


 原野は、ナオミの管をジェラルミンケースに収納しながら話をはじめた。


「『撰集抄』によると、西行法師が『反魂法』という秘術を行なった話が載っています。
 全国を放浪し山野に起臥していたため孤独であった西行法師。
 でも彼は、孤独に耐えられなくなり、反魂法を用いて友人を作ろうと思い立った。
 反魂の術って……手順が大変面倒なんです、コレが。
 まず、野晒しの人骨を拾い集め、骨を人の形に並べます
 次に、砒霜石(砒素を含む鉱物)から作った薬を骨に塗り、イチゴとハコベの葉を揉み合わせて骨にのせます。
 その後は、フジの若葉から糸を作り、骨を繋ぎ合わせ、水で数回洗います。
 更に、サイカチとムクゲの葉を焼いた灰を頭部に擦りつけ、土の上にゴザを敷いて骨をうつ伏せにして、風が入らないように全体をゴザで包みます。
 そのように行った骨を14日間放置し、沈香を焚き、反魂の真言を唱えて……はじめて術が完成します」


 そこで原野は、一拍おいて、話を続けた。


「ですが……西行法師が作り上げたのは、『人の姿に似侍りしかども。色あしくすべて心もなく侍りき。聲は有れども。絃管聲のごとし』と書かれています。
 つまり、腐っていないゾンビみたいなものです」

「じゃあ、無理なんじゃないのか?」


 峰岸の言葉を原野は、否定する。


「いいえ、西行法師は間違えていたんです。
 野ざらしの汚れた死体を使った上に、死体のパーツは、他の人のが混ざっていました。
 さらに、死んだ魂を無理やり入れるわけです……失敗するわけです。
 中国の道教では魂と魄(はく)という二つの異なる存在があると考えられています」

「僕も聞いたことがあるな。
 魂は精神を支える気、魄は肉体を支える気を指して、合わせて魂魄といった……そうだったかな?」


 櫻井の言葉に微笑みながら頷いた。


「そうですね。
 殭屍(キョンシー)とかは、魂が天に帰り魄のみで動いていますが……あれは、動く屍なだけですがね。
 つまり、復活には、腐っていない肉体と三魂七魄がないと意味がありません。
 そして、それらが劣化しないように護る場所も必要です。
 条件を揃えて正しい儀式をすれば蘇る事は不可能じゃありません。
 安倍晴明がいい例です」


 石動やキョウジ達もまた魂を完膚なきまでに破壊されなかった為に復活できたのだ。
 

「錬金術師ウーリ……禁断の人体練成を行ってバチカンから賞金がかけられた異端者が関東に隠棲しています。
 その人の力を借りれば肉体ができます。
 ナオミさんの魂は、今の状態なら完全になっていますから、この管の血液から作り上げた肉体に移せば……」

「この世に蘇るというわけだな?」
 
「ええ。
 普通に血液から培養して作っても肉体を作れますが……。
 真に肉体を宿す事が出来ません。
 科学以外にも呪術的なアプローチも必要で、ウーリなら両方とも長けていますし」

 
 櫻井の問いに答えた原野に、峰岸が問い詰めた。


「復活した後は……、レイさんを殺しに行くんじゃないのか?」


 ナオミの死を体験した峰岸は、当然、レイとの確執も知っていた。
 それに対して原野は答えた。


「大丈夫でしょう」

「……根拠は?」

「僕のカンです」


 あっけらかんと答える原野に呆気にとられた峰岸。
 原野は更に続けた。


「あの人を知っているなら……殺伐としたこの仕事にうんざりしていますからね。
 仮に……殺す気があっても僕が言いくるめます」

「はい!?」

「クヨクヨしてもはじまりません。
 じゃあ、戻りましょう」


 そう言って原野は出口の方へ歩き始めた。
 櫻井は、峰岸に言った。


「なあ」

「なんですか、リーダー?」

「サマナーとか『そちら側』って……皆、変人ばかりなのか?」

「俺があった限りは、ほぼ大半……って俺も含めているんじゃないですか!?」

「スマンスマン。
 まあ、悲観的になってもはじまらないさ。
 彼が言うように、案外、簡単になんとかなるのかもしれないからな」




[7357] 第2期 第33話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/01 10:13
 旧天堂邸。
 平崎市にあった天堂組組長・天堂天山の住んでいた屋敷だったが、表向きには数年前に突然、天堂の消息が消え、誰も住まぬ屋敷になった。
 しかし今夜は、明かりが灯されていた。
 電気ではなく、罪人の死体の脂肪から作った蝋燭によって照らされ、広大な天堂邸が不気味な雰囲気に包まれていた。
 この屋敷は、キョウジ……そしてシド・デイビスと深い関係があった。
 だからこそ、シドは、キョウジに此処に来るように指示した。
 午前零時、葛葉キョウジがたった一人で屋敷に現れる。
 オーダーメイドのスーツを着て、腰には銃型COMP……GUNPをホルダーに収納し、背中には宝剣・七星剣を背負っていた。
 GUNPは、業魔殿の主・ヴィクトル謹製のものだ。
 七星剣とは、道教の思想に基づき北斗七星が意匠された刀剣の呼称である。
 道教の思想に基づき破邪や鎮護の力が宿るとされ、道教の儀式に用いられることもあるものであり、曹操はこれを使って董卓を暗殺しようした事があった。
 また、西遊記においては、金角と銀角が太上老君から盗み出した宝の一つで、本来は太上老君が妖魔を従わせるための品であったとされている。
 他にも、古くは『呉越春秋』に、伍子胥が先の楚王から授かった百金の価値ある剣として、七星剣の記述がある。
 日本においても、丙子椒林剣とともに聖徳太子の佩刀と伝えられている。
 キョウジにとって、闘いの中で手に入れた武器で信頼を置いた愛剣であった。
 

「これハ、葛葉キョウジ……いヤ……」

「俺は、葛葉キョウジだ……アンタを倒して以来ずっとな」


 邪悪な神父服を纏ったダークサマナー・シドは、毒蛇のような邪気を発しながら微笑む。
 そして、シドが指を鳴らすとライトアップされ、椅子に縛られた秦野が現れた。


「私ハ、貴方との再戦の為に貴方のガール・フレンド、秦野久美子さンを攫いましタ。
 彼女の役目は終わりましタ。
 ですかラ、彼女には帰ってもらって結構でス」


 シドは、秦野の傍から離れた。
 キョウジは、縄を切って秦野を起こした。


「久美子、久美子……しっかりしろ!!」

「……ごめんなさい」


 意識が覚醒した秦野は、キョウジを抱きしめた。
 キョウジは、恋人を安心させるべく優しく言った。


「何も言うな……死んだはずの奴が襲うなんて思わないからな。
 それにお前は、サマナーでもない普通の女なんだからな」

「そうじゃないの」


 久美子の口元が邪悪な形になった。
 そして万力のように締め上げた。


「久……美子」

「貴方を裏切ってごめんなさい。
 シドさまの敵は、私の敵だから」

「!?
 シド……てめえ!!」


 秦野の首元には二つの穴が開いていた。
 まるで吸血鬼に吸われたかのごとく。
 シドは、勝ち誇った笑みを浮かべる。


「おやおや、せっかく自由にしてあげたのですがネ。
 彼女は自分の意志デ、行ってしまいましタ。
 私ハ、約束を果たしたのですガ。
 フッフッフッフッフ」

「ぬけぬけと……!!」


 秦野の瞳は紅色で、まるで血のように赤く、肌も真っ白であった。
 そして、犬歯が異常に発達していた。
 ダークサマナーであるシドは、秦野を操ってキョウジを罠に嵌めたのだ。
 吸血鬼の腕力ではキョウジは、脱出する事ができず、大きな隙をシドの前で晒した。
 シドは、魔術書を開き、呪いを唱えはじめた。
 

「葛葉キョウジ……いヤ、「■■■■」の魂ヨ!
 その肉体を離レ、闇の彼方へトただよい去レ!
 我が偉大なる魔王の御名の元に命ずル!」


 シドの掌から光が発し、キョウジの身体に直撃した。
 『葛葉キョウジ』を葬った呪術は、間違いなく発動した。
 だが……


「なんだト……!!」


 キョウジは、不敵な笑みを浮かべていた。
 シドにとって必殺の呪術を防がれたのだから。


「やはりな……」


 軽妙な口調から、刃のような鋭い口調へとキョウジは変わり、表情も野性味が溢れていた。
 今とも違い、そして『以前』とは似て非なる顔であった。
 キョウジは、吸血鬼の怪力を巧みに外し、地面に組み伏して呪符を秦野の額に貼り付けた。


「きゃ……」

「ギャアアアアアアア!!!」


 秦野が悲鳴をあげて動きを止めたと同時に、部屋の奥で断末魔が響き渡った。
 シドは、今までの余裕の表情が凍りついた。


「レイ・レイホゥはいないはズ……
 まさか……!!」


 シドが呪殺魔法をキョウジにかけたが、片手で払い落とされた。
 シドは、驚愕したが……更に驚愕させる事態が起こった。


「待たせた!!」

「何……キョウジが二人だト……!!」


 目つきの鋭くなったキョウジへ、乱入したキョウジが声をかけた。
 乱入した方には、生首を抱えてた……おそらく、断末魔の主であろう。


「連絡の通り、久美子を吸った吸血鬼の首を持ってきたぜ!!」

「倒せば元に戻るはずだが、万一の事態でもそれがあれば治療が可能だったが……。
 どうやらその手間が省けたようだ」


 秦野の顔色が元に戻り、牙が抜け落ちていた。
 シドの形相が怒りと憎悪に満ちていた。


「キョウジ……謀ったナ!!」

『そういうことだ!!』


 最初にいた方のキョウジの頭上にラームジェルグが現れた。
 なんと、キョウジの姿が黒いスーツ、黒サングラスをかけた三白眼の男に変化した。
 そう……最初に現れたキョウジは、石動巧が小角の術によってに化けたものであった。
 石動がただ守護霊を憑かせていただけでは出来なかったであろう。
 だが石動は、石神神社で幼少の頃から千鶴には内密にして夏彦から術を学び、小角を得てから精進していたからこそできたことであった。


「キョウジは、見切っていたぞ……お前の手口をな。
 人質を操るまでは読んでいたが、流石に吸血鬼化させると予想するまでは無理だったがな」

「式神で通信しながら状況を知って先に吸血鬼を倒したのさ!
 見事に騙されたな!!」


 キョウジは、説明しながら仲魔の一体を秦野の護衛につけて脱出させた。
 鋼の身体を持った天使……、「契約の天使」「天の書記」「神の代理人」「小YHWH」等76の異名を持つ大天使メタトロンが彼女を護っていた。
 流石のシドも再び人質にする事が出来なかった。
 

『まあ、暗い闇だったという事もあったし、アレとは親友でもない短い付き合いだったからボロが出なかったわけだが。
 それにしても……カンヌの男優賞ものだったぜ、くっくっく』

「友人の危機だったからな……この程度の事はいくらでもしよう」


 ラームジェルグは、先ほどの光景を思い出し、大いに笑っていたが、石動は何処吹く風であった。
 怒りと憎しみが絶頂になったシドは、能面のように無表情になった。
 見事に騙しおおせた石動を睨みつける。


「貴方ハ……何者ですカ?
 クズノハにはいなかった筈ダ!!」

「唯の探偵だ……ちょいとばかり剣の腕に自信がある、な」


 指を少しばかり隙間を作って少しという表現していた石動であった。
 だが、すぐに腰のアセイミーナイフを妙法村正へと変化させた。


「レイ・レイホゥの代理だ……精々援護する事とするか。
 来い、フリーダー」

「お呼びですか、マスター」


 石動に召還され、恭しく石動へ礼をするフリーダー。
 キョウジも仲魔を召還した。
 青龍刀を振り回す関帝聖君、血のように紅い体のカーリー、神々しいヴィシュヌ……そして金髪の騎士甲冑を纏った美少女が現れた。


「何者だ、関羽?」

「コヤツは、英雄・ジェンヌダルクよ。
 治癒の術に優れておる」


 ジャンヌ・ダルク。
 フランスの英雄であった「オルレアンの乙女」と呼ばれた聖人だ。
 百年戦争の際にオルレアン解放に貢献し、シャルル7世をランスで戴冠させ、フランスの勝利に寄与したとされていたが、コンピエーニュの戦いで捕虜となった。
 そして、宗教裁判で異端者と断罪され、ルーアンで火刑になった。
 炎の中、ジャンヌが高温と煙で窒息死し、その服が燃えた時点で一旦火は遠ざけた。
 群衆に向けてその裸体、性器を晒し、ジャンヌが聖女でも魔女でもなく、ただの女に過ぎないと示すために。
 更に、ジャンヌは死んだ後も性器を晒されるという女としての屈辱も受けた。
 その後、約4時間をかけて燃やされたジャンヌの亡骸の灰は、セーヌ川に流された。
 決して土に返さないと言わんばかりの遺体の取り扱いは、当時としては最も苛烈なものだった。
 

「頼りにさせてもらおう……と言いたい所だが、今回はサポートに徹する」

「私も援護にいきます」


 石動とフリーダーは、キョウジ達に言った。
 シドも、仲魔を呼び出した。
 なんと、メタトロン、関帝聖君、カーリー、ヴィシュヌが現れた。
 それだけでなく、四本の腕と全ての物を焼き尽くす第三の眼を持った青い肌の破壊神・シヴァに、黄色い服を着て牛の角を象徴として頭部にあしらわれた女神アナトが現れた。

 ヒンドゥー教の三大主神の1柱で、想像と破壊の神であるシヴァ。
 基本的に修行以外には関心がなく、修行のために愛妻パールバティーも無視し、世界の危機にも耳を貸さない。
 果てには、修行が邪魔されれば親交のある神も怒り狂って殺す程の気性の荒さがある。

 シヴァから生まれた神のほとんどは、修行を行いたいが為に代理派遣用に作られる事が多い……カーリーなどがいい例である。
 アナトは、バールの妻にして妹である豊穣の女神。
 バールがモトに殺害されると、アナトは自ら冥界に赴き、モトを打ち倒し、それによって、アナトは誕生と死を司る神となった。
 極めて強力な呪力を持った女神で、父である天界の神エルでさえも彼女の力を恐れるほどである。

 キョウジは、歯軋りしながら言い放つ。


「ク……やっぱり俺のCOMPとそのまんまな仲魔を召還しやがった!!」

「キョウジから聞いているが、敵ながら見事な技だ」

『おいおい、悠長に言っている場合かよ!?』


 石動は、冷静に観察していた。
 シド・デイビスは、いかなる能力か、キョウジの配下の仲魔をそのまま召還した。
 シドは、殺気を放ちながら叫んだ。  


「決着とつけましょウ、葛葉キョウジ、石動巧ヨ!」

「ああ……もう一度倒すぜ、シド!!」


 キョウジは、そう言って七星剣を構えた。
 フリーダーは、口から霧を吐き出した。
 同時に石動は、役小角の能力を用いる。


「スクカジャ……!!」


 フリーダーは、ランダマイザを持っているが、まずはフォッグブレスを用いた。
 キョウジの仲魔と同じ能力をもった悪魔を召還したシド。
 いずれも強力な攻撃を行う。
 だから、一気に命中・回避率を下げる技を用いた。
 その判断は正しく、敵方の悪魔の大出力の魔法を皆、容易く避けることができた。
 キョウジが叫んだ。


「回復役のアナトを潰す!!」

「承知!」


 関帝聖君は、青竜刀を旋回させて豪快に振るう。
 すると、空間が歪み、シドたちを襲う……虚空斬波である。
 全員にダメージを与えるが、アナトは、物理攻撃に強い為にダメージが少なかった。
 関帝聖君は、無念そうに言った。


「む……奴の能力を失念しておったか!」

「ならば我がやる……メギドラ!!」


 ヴィシュヌが魔法を放つ。
 強力な魔力球が敵陣の頭上に現れ、破裂した。
 敵に大ダメージを与え、アナトは虫の息になっている。 
 キョウジは、懐から一個の石を取り出し投擲した。


「取って置きだ!!」


 石は爆ぜて、ヴィシュヌほどではないが、巨大な魔力球が現れ、爆発した。
 メギドストーン……一回だけだがメギドが発動する魔法石だ。
 それが致命傷になってアナトは倒れた。
 だが、同時に敵のほうのカーリーが稲妻のような突きでジャンヌ・ダルク目掛けて襲い掛かる。


「ぐ……」

「考える事は同じか……!!」


 味方側のカーリーはそれを察して、刀で受け止めていた。
 そして、遂にシドが動きを見せた。


「全てを凍りつケ!!
 絶対零度!!!」 
 
 
 シドの強大な魔法は、天堂邸を凍りつかせ、あまりの広範囲の魔法でキョウジ達は避け切れなかった。


「……ぐ」

『『今』の俺が憑いていたら大ダメージだったぜ』


 石動も小さく苦悶の声をあげた。
 キョウジもまた、身体を凍らせながらも指示を飛ばす。


「……以前より凶悪になってやがる!!
 ジャンヌ!!」

「ええ、解っております、わが主。
 メ・ディアラマ!」


 そのダメージを即座にジャンヌダルクが治療した。
 ダメージを即座に癒したジャンヌの能力に感心する石動であった。


「流石、キョウジ……というべきか。
 今、力を上げる……タルカジャ!!」

「ランダマイザ!
 皆様、弱体化させました。
 一気に攻勢に出てください!」


 フリーダーが申し出た。
 カーリーが反撃とばかりに刀を振るう。
 関帝聖君も同時に振るう……標的は、敵のカーリーだ。


「死ね!!」

「ぬううん!」

「がは……!」


 同時攻撃を受け、両断されるカーリー。
 さらにキョウジが敵のヴィシュヌ目掛けて剣を振るう。
   

「うらぁ!」

「む……!!」


 駄目押しにキョウジ側のヴィシュヌが再びメギドラを唱えた。
 なす術なく倒されていく敵側のヴィシュヌ。
 だが、突然キョウジの身体に稲妻が貫かれた。


「ぐ……!!」

「ぬう!?」

「う……」

「これは……シヴァの『天罰』!!」

「味方も巻き込んだか」

「背部損傷、軽微。
 攻撃を続行します」


 ヴィシュヌが即座に襲った技の正体を見抜いた。
 『天罰』……アライメントの異なる敵にダメージを与える技だ。
 シヴァはカオスサイドであり、シドとカーリーのみはダメージを受けなかった。
 味方が少なくなった今では効果が高いが、シド側のメタトロンもダメージを受けている。
 さらにシドが魔法を唱える。


「死になさイ!
 メギドラオン!!」

 
 ヴィシュヌ以上の魔力球を生み出し爆発させた。
 キョウジと石動は辛くも避けるが、他は皆ダメージを受けた。


「大丈夫か!!」


 キョウジの声に皆がこたえた。
 死人は出ていないが、ダメージが大きい。
 ジャンヌが即座に回復魔法を使うが、ダメージを癒しきれなかった。
 石動は、慎重に行使する魔法を選んだ。


「ここは、防御力を上げるか。
 ラクカジャ!」

「ランダマイザ……。
 更に弱体化……敵命中・回避能力は最も下降しています」


 フリーダーもさらに弱体化魔法を唱えた。
 敵であるメタトロンが、追撃とばかりにメギドラオンを唱えるが、皆、辛くも回避する事が出来た。
 キョウジは、メタトロン目掛けて剣を振るう。
 さらにカーリーが複数の腕による連続攻撃でメタトロンを貫き、消滅させた。
 関帝聖君は、残り少なくなった状態で一気に勝負に出ようと、シド目掛けて斬撃を打ち込む。
 伝説の英雄は、討ち取れると確信した……だが。


「な……!」

「流石でス、キョウジさン」


 シドは、シヴァの首を掴み、盾にして攻撃を防いだ。
 余りにも非道なダークサマナーに対してキョウジが言った。


「そこまでやるか……」

「えエ。
 貴方達を倒すにハ、手段を選びませン」


 シドをそういった瞬間、シドの上着が爆ぜた。
 異常なまでにパンプアップされた肉体が露になった。
 ダークサマナーの身体の所々に魔方陣が書かれている。
 ペンタグラムや無数の文字で悪魔に対する護符になっている。
 弾丸のような速度で拳を振るいだすシド。
 音速かと錯覚するほどの拳の雨がキョウジ達を襲う。


「うわっと!」

「術だけではないか……!」

「回避成功」


 キョウジ達は回避できたが、隙が出来た。
 シドはすかさず、攻撃を仕掛けた。


「死こそ汝らの福音でス!」

「キョウジさ、ま」


 シドの腕から相手を圧倒する邪悪な教義……ネクロ・ドグマが放たれ、ジャンヌ・ダルクに直撃した。
 一撃でジャンヌダルクを倒し、COMPに送還してしまった。
 さらに、キョウジ目掛けて攻撃を放つ。


「召還など行わせン!」


 矢継ぎ早に打撃の雨をキョウジに注ぐ。
 キョウジの仲魔が救援せんと攻撃を放つが……、


「邪魔をするナ!!
 メギドラ!
 マハラギダイン!!」
 

 このようにしてシドは、連続で魔法を放ち、その行為を妨害する。
 関帝聖君は、全身が焼き焦げてしまい、ヴィシュヌに到っては、シドの腕力によって腕を一本捥がれていた。
 一人で数人分の動きを行うシド……その彼は、自身の復活は仮初のものであると気がついていた。
 だからこそ、自身の全て……命すら燃焼させて生前以上の力を行使していた。
 たとえ刺し違えてもキョウジを地獄に叩き落すつもりであると……。
 シド・デイビスの執念は、凄まじく、魔人といってもいいくらいであろう。
 だが……此処で石動が動いた。


「フリーダー!!」

「了解しました。
 サマリカーム!!」


 フリーダーが魔法を唱えると、キョウジのCOMPが輝く。
 さらに石動が魔法を唱えた。


「サバトマ……!
 来い、ジャンヌダルク!!」

 
 ジャンヌダルクが再び召還された。
 フリーダーがジャンヌを蘇生し、シドによって足止めされているキョウジの代わりに石動が召還したのだ。 
 同時に、回復魔法でキョウジ達を回復させる聖女・ジャンヌダルク。
 形勢は一気にキョウジ側に傾いた。
 シドは、憤怒の感情を露にした。


「貴様ァ!!」


 シドは、闘いの内に出来た瓦礫を手にした。
 そして重戦車の如く暴れ周り、キョウジと石動の脳天に目掛けて力任せに振るう。
 石動は、反射的に小角からラームジェルグに交代し、同時に石動の周囲がMAGで吹き荒れた。
 キョウジもそれに反応して同時に動いた。
 三人が交錯し、時が一瞬止まった。


「何ィ…!!」

「言ったはずだ、『ちょいとばかり剣の腕に自信がある』、とな。
 サマナーとしては三流でも、これだけは……俺を負かせる奴は、あまりいないと自負している」

『そういうことだ』


 石動は、不敵な笑みを浮かべていた。
 一瞬のうちに石動自身とキョウジ目掛けて打とうとした瓦礫を妙法村正から変化した夢想正宗で両断したのだ。
 そして、石動の背後にいたラームジェルグは、クー・フーリンに変化していた。


「『アイツ』の分も言っておくぜ。
 あばよっ、シド・デイビス」


 石動が攻撃を凌いでいた間にキョウジは、石動を信じてシドへ突貫していた。  無防備になったシドの胸元は、キョウジの七星剣で貫かれていた。
 シドは、最期の力を振り絞り、キョウジの首を締め上げようと腕を上げたが……途中で力が抜け、腕が上がりきることは無かった。
 悔しげにシドが言葉を漏らす。


「……さ、さすがハ、い、今まで……生き延びただけのことはあル……強くなったナ……■■■■、いヤ、葛葉キョウジ……。
 ……だガ、その強さも無駄になっる事でしょウ……。
 今ニ……今に解る事でしょウ……」


 そう言って、シドの身体が輝きながら消滅した。
 しばし沈黙したキョウジが言い放つ。


「前も似たような事を言ったな。
 だが、俺は生き延びた。
 それは今回も変わらないぜ、シド」


 神妙な顔をしてそう言葉を漏らしたキョウジだったが、すぐに普段の表情に戻った。


「今回は助かったぜ。
 俺一人だったら危ない所だった」

「超一流のサマナーの手並みを拝見できたんだ。
 お互い様ということにしておくさ」


 石動とキョウジは、互いにそういった後、微笑んだ。
 シドとの戦いで壊された壁から外を見ると、夜が明けつつあった……。













 あとがき。

 ごめん、シド戦書いてて力尽きたのでおまけは今回休み。
 次回はちゃんとかくよ。
 書いててシドの化物っぷりが……正直、キングレオより怖いっす。



[7357] アンケート
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/03 02:57

 次回についてです。

・オリキャラ祭り?
 (ある意味で)夢の共演が実現!?

・真のリーダーに会いに行こう。




 そして、前回書けなかったおまけをどーぞ。






 原野の冒険 ムスビ。


「私の管……」

「ええ。
 なんとか見つけ出せました」


 ナオミは感慨深げに管を手に取った。
 原野とナオミは、今はウーリの研究所にいた。
 和也は、外から帰ってきてからすぐにベッドに入っていたので会う事がなかった。
 『電波電波うるさかった、イヤなら鉛の壁を囲って寝ておけ』と零した和也だった。
 ウーリがやってきて機材の設定を調整し始めた。


「では、はじめる」

「成功率は?」

「並の術師ならば……成功率は5分だが……。
 俺に言わせれば、完璧に練成した人体と、破損がない魂。
 これで失敗するほうがどうかしていると言いたいね」


 自信満々というより淡々と話すウーリ。
 そのことから成功できると原野は感じた。
 その時、フリーダーに顔立ちが似たオートマータがナオミとそっくりな女性の入った培養フラスコを運び込んできた。
 ウーリが、原野が回収した管の血液から作り上げた新しいナオミの肉体である。


「私だ……」

「そうだ、肌の張りも完璧に仕上げた健康体だ。
 大事に使え。
 では、そこの空のフラスコの中に入れ」

「わかったわ」


 ナオミがフラスコに入った後にウーリがボタンを押すと、液がフラスコ内に満たされていった。


「まずは、その仮初の体ごと溶かし、魂のみにする。
 溶けた体は、魂の活力に変換する……無駄なく使うべきだからな。
 そしてその魂を空の器に移して術式は完了する。
 お前が魂を定着させて目覚めるのは、計算では14時間後だ」

「……生き返ったら、何をしますか?」

「……そうね、きっとお腹が空くだろうから、デザートが欲しいわ」

「近場にいい店がありますから、眠っている間に買って来ます」


 原野の問いに、ナオミは微笑みながら答えた。
 そして、ナオミの意識は暗転した。














 3週間後、ウーリの研究所の近所……。
 新しい料理店が出来た。
 原野は、花束を持ってやって来た。
 店主は……、


「開店おめでとうございます」

「ありがとう」


 店の主……ナオミは嬉しそうに花束を受け取った。
 蘇生後にナオミは、原野から『成功したけど、力が若干落ちることになった』と告げられた。
 それを聞き、しばし目を瞑り、考えた末にレイの復讐を断念した。
 

「しかし、よく決断しましたね」

「レイと私は5分だった……だけどレイは経験を積んだの対して、私は弱体化したから」

「それでもです」


 実は……弱体化云々は、原野の嘘であった。
 だが原野は、たとえ真実を伝えても復讐に走らないだろうと考えていた。
 本当に殺害するならば、あらゆる手段を使うはずだからである。
 ナオミの口座は、死んだ後でも健在であり、それを資金にレストランを開いたのだ。
 ウーリにも高額の報酬を出すつもりだったが、面白い術式が試せたと喜び、ほぼ実費のみを受け取っただけであった。

 原野は、料理を注文し、全て平らげた。
 ナオミには、才能があるらしく、これなら軌道に乗れば繁盛すると原野は考えた。
 デザート代わりの月餅を〆にした。
 上品な甘みが口の中に広がり、原野は幸福感を感じた。
 原野は、代金を支払った。


「行くの?」

「ええ、依頼が待っていますから」

「……気をつけてね」

「ありがとうございます……また来ます」



 ナオミの見送りを受けながら店を後にした。
 悪魔交渉人は、街の雑踏を歩みながら呟いた。


「振られたかな……」


 ナオミは、殺し殺される日々に飽きて、足を洗った。
 だが原野は、危険に身を投じ続けており、死ぬまで続けるつもりでいる。
 そんな二人が恋人になったとして……最期まで付き合いきれるのかわからない。


「進むべきか、退くべきか……それが問題ですね」


 結論は、今は出ない。
 だが原野は、魅力的なメニューの為に顔を出し続ける事にしようと考えた。
 





[7357] 第2期 第34話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/05 21:32


「や……やべえ……」


 トイレの中で嘔吐する目つきの悪い男……死相が出ているかのように青ざめていた。
 男……テュルゴーは、ある依頼を受けていた。
 だが、しばらく立って激しく悪寒がした……自身に降りかかる危機を神がかり的に察知できる彼のカンに狂いはない。
 仕事を断ろうにも既に契約後であり、違約金を払う余裕がない……孤児院の仕送りや部下達を食わせる為に必要だからである。
 

「……どうする、逃げるか……駄目だ、逃げたら……食えなくなる。
 こうなったら藁をも縋るか……」


 テュルゴーは、電話をかけ始めた。
 生き残るために。
















「ニューヨーク……稲葉さんと出会った所ですよね」

「そうだったな。
 だが……アイツは、日本に一時帰国したからな。
 とは言ってもインスピレーションを得る為に東南アジアやインドに足を伸ばす予定らしいが」

『GTAシリーズを買いたいから必ずゲームショップに寄ってくれ!!
 モータルコンバットシリーズもだ!!』

「ラームジェルグ様、落ち着いてください」


 早乙女と石動とフリーダー、そしてラームジェルグはニューヨークにいた。
 石動は、いつものオーダーメイドのスーツとサングラス、フリーダーの方も女性物のスーツを着ている。
 早乙女は、動きやすいジーンズとジャケットを着ていた。
 九鬼から依頼を受け、ここにやって来たのだ。
 早乙女は、周りを見渡しながら石動に問いかけた。


「オークションの警備の助っ人が今回の仕事ですよね」

「そうだ。
 九鬼の旦那が知り合った傭兵兼サマナーである男から救援を頼まれたらしい」

『……たしかグレッグ……』

「違います、テュルゴーという名前でした」


 ラームジェルグの言葉をフリーダーが訂正した。
 石動が更に続ける。


「なんでも異常に勘が冴えた男らしいから何らかのトラブルが待っているだろうと旦那は言っていた。
 旦那がそこまで断定する訳だから相当のものだろうな。
 オークションには古今東西の美術品を扱っているらしいから、呪具があるのかもしれん」

『まあ、報酬をもらえればいいからな。
 ……不意に思ったんだが、最近、探偵の範疇を超えている仕事が多いよな』

「そうだな」

「今、気がついた……生き延びる事しか考えていなかったから」


 早乙女が遠い目になったが、石動はなんとも言えなかった。
 ……下手な慰めは、更に早乙女の心を傷つける為だ。
 オークション会場の高層ビルにたどり着いた。
 目つきの悪い男が、奇妙な帽子を被っている……その男が石動を見つけると近づいてきた。
 その男の歩き方を見た石動は、ほう……と感心していた。 


「アンタが、『ミスト』からの助っ人のサマナーか?」

「そうだ……『霧隠』の代理だ。
 もっとも、サマナーとしては旦那のほうが遥か高みにいるがな
 見たところ、唯の凡百のサマナーではないようだが……余程の相手という事か?」


 石動の言葉を聞いて、テュルゴーの悪い人相がさらに暗いものになった。


「心臓の辺りが……冷えすぎて逆に焼け付くような感じがするんだ。
 昔から、ヤバイものが来る時には吐き気や異常な動悸がしたりするんだ……。
 信じられんかもしれんが」

「とりあえず信じていてはいる。
 旦那が当てに出来るといった時点で出鱈目ではない事は解るからな」

「クライアントには話は通している……。
 案内するからついてきてくれ」


 そう言ったテュルゴーは、ビルに入っていった。
 早乙女はテュルゴーを見つめていた。
 それを見ていたラームジェルグが、早乙女に話しかけた。


『どしたの?』

「ちょっと動きを見ましたけど……隙がないです。
 体つきも細いですけど、よく鍛え上げられています」

『惚れた?』

「それはちょっと……でも」


 早乙女は、一旦そこで言葉をとめた後、遠い目をしてから言った。


「なんか……他人には思えなくて」

『幸薄そうだったからな。
 さくらちゃんとテュルゴー……竜虎相打つ?
 むしろ夢の共演だな』

「なんですか、その表現」

 
 早乙女は、ラームジェルグの可笑しな言い回しにため息をついた。









 おまけ 『アンケートの夢の共演の意味』


 時間が出来たときに早乙女とテュルゴーは雑談をしていた。


「なんか……最近、私……運がめぐっていない気がするんです」

「俺もだ……」

「登下校時に悪魔に襲われたり、旅行先でほぼ必ず悪魔絡みの事件に巻き込まれるんです」

「儲けが少ない割に難儀な仕事ばかり受けて……、それ以外の仕事を受けようとしたら、ヤバイ予感がしたから受けられねえし。
 しかも後々聞いたら……アンタの師匠とかミストとか……化物と敵対する羽目になる仕事だったり、すぐに崩壊するヤバイ組織の仕事ばっかりだし」


 もし、石動と敵対していたら、容赦なく攻撃することだろう。
 良くて手足の1,2本が切り飛ばされる程度……最悪は首を刎ねられてしまう事だろうから。
 九鬼の場合は間違いなく生け捕りにされて終わりだろうが……。


「最近、佐奈言われて気がついたんです。
 悪魔絡みの事件が起こる前から時々暴走トラックに轢かれそうになったり、通り魔や引ったくりにに襲われたりする事があったんですけど。
 もしかして……私って不幸なんでしょうか?」

「不幸としか言いようがねえな。
 俺も上官が無能で逃げるべきと言ったのに一切信じないで突っ込んで部隊が俺以外では一人しか生き残らなかった事があったし。
 手紙を出せば郵便事故が起こるわ、仕事明けでリゾートで休もうと手下達連れてきたら……雨が降ったり」

「「……不幸だ」」







 おまけ2 お酒!!


 ソルガディの面々に酒についてどういう反応をするか聞いてみました。



 石動の場合。

「酒か?嫌いじゃないな……煙草のような身体能力が落とす代物じゃないからな。
 だが、切っ先が乱れない程度にしか飲みたくないな」
(初めて同類のキョウジに会ったときは、嬉しかったのか酔いつぶれるほど飲んではいたが……基本的に強めですが、あまり飲まない。
 昔は洋酒は手に入りにくかった為か、西洋系の酒を飲む事が多い……でも焼酎が一番)



 九鬼の場合。

「私ですか?
 いやあ、付き合いの為に飲まなければなりませんからねえ~。
 サラリーマンは、付き合い酒はつき物ですから」
(そういいながら飲んだ振りしかしない。
 忍者である為、思考を乱す酒を飲む事は……ほとんど無いと言っていい。
 本当に信頼できる人間としか飲まないタイプ。
 石動とは、ニュクスの店で飲む事がある……あそこは誰も暴れる事が出来ないから安全地帯なので)



 香我美の場合。

「嵯峨の奴がうわばみだからな。
 付き合わされて飲むうちに強くはなった」
(ビールは嫌いだがそれ以外なら飲む。
 酒の肴は必ず頼む)



 ジェシカの場合。

「日本の酒って珍しいから好きよ」
(イギリスの酒が一番!!
 スカアハのほうも静かに飲むが、量はたくさん)




 モー・ショポーの場合。
 注)悪魔は、酒を飲ませて性格を変えることができます。

 純米秘蔵まさむねを飲んだとき。(獰猛編)

「むー……なんで私がこんなに誘惑しているのに、何でえっちな事をしないの!!」
(と言いながら石動の胸元をポカポカ叩く)



 本醸造百二十六代を飲んだとき(狡猾編)
「せっきー、私の事、嫌い?」

「上目遣いしても駄目だ」
(上目遣いで泣き落としにかかる)



 大吟醸9段仕込みを飲んだ場合(友愛編)
「せっきー大好き~」

「……」

「えへへへ~(石動に抱きついている)」



 越ノ氷輪山を飲んだ場合(冷静編)

「……せっきーは……寂しくないの?」

「……今は退屈していない」

「私は、何があっても一緒にいるから……石動の事は一番大切だから」
(シリアスだな)


 結論……あんまり変わらないだろうな(おい)。





 おまけ その3  『月並みだけど平行世界ネタ』


「せっきー、それは?」

「……資産家の鈴木社長からのもらい物だ。
 兄弟が面白半分に渡してきた呪具だ」


 手のひらサイズの手鏡がそこにあった。
 装飾は華美でなく、素朴な作りであったが、魔力は強大であることから本物であろうと考えられた。
 モー・ショポーが覗き込むとある光景が見えた。





「セッキー!!」

「モー・ショポーご苦労様」


 石動(?)がペルソナを使って悪魔を倒し、モー・ショポーが抱きついてきた。
 それを頭を優しくなで、言葉をかける。


「あまり無理するなよ。
 僕は君の事が一番大事なんだから」

「セッキー……」


 そして、二人の影が重なり……
 




「セッキーと両思いなのはいいけど……なんか違う」

「(平行世界を映し出す鏡だそうだが……)」

『(あれだな、おそらく、本来の『巧』が健在だった世界なんじゃねえ?)』




 コレを色んな人が見てみました。



・黒須淳の場合


「そんな……こんな事って……酷すぎる……!!」

「平行世界では人類滅亡か」

『平行世界を作り出すのも凄い話だが』

 (罪・罰の本来の結末を見て涙する淳)



・エリーの場合

「……Chizuruには見せられませんわ」

「ああ……姉が不幸になる所はみたくないからな」




・早乙女・テュルゴーの場合

「……なぜなの!!」

「荒唐無稽なファンタジー世界の俺って……」

「どうしたんだ?」

『幸福な自分を閲覧しようとしたんだが……なかったんだ』


 



[7357] 第2期 第35話 6月8日追加・修正。
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/08 05:02
 
「オークションの目録は……」

『どうした、巧?』


 目録を目を通そうとした石動が止まった。
 気になったラームジェルグは、石動の視線の先を見た。
 髪を短く切った神経質そうだが、顔が整った20代半ばの女性がいた。
 動きやすいイタリア製の服を着こなした女性だが、ラームジェルグの目には鍛えられた女性であるとわかった。


『知り合いか?』

「有名人だ……バチカンの『必中の』イーリスだ。
 バチカンお抱えのデビルバスターだな」


 バチカンは長い歴史を持っている国であり、カトリックの総本山である。
 当然、デビルサマナーやデビルバスターの類を集めた部隊……『騎士団』が裏で存在している。
 石動は、小声で話し続ける。


「拳法の使い手で、その攻撃の正確さは必ず当ると言わしめるほどだ。
 また、回復魔法と衝撃魔法、破魔魔法の使い手でもある」

『ん~敵になりそうか?
 生憎、狙われる心当たりがあるんだが……具体的にいうと親玉斬ったし』


 嫌な心当たり(第一期 37話~42話参照)があるラームジェルグがそう呟いた。
 美女に迫られるのは嬉しいが、命を狙われるのはごめんのようだった。
 だが、石動は顔色一つ変えずに言った。


「さあな……だが、アレの教えと今のカトリックの教えを比べれば変質している。
 WW2でのナチスを匿った失態もあったりするが……『あの事件』の後、日本政府から裏の公式発表を聞いて、原理主義者達を粛清したからな。
 ローマ法王も行き過ぎた行いをした神と宗教で唱える神とは別だと見解を話すほどだ」

『マジで!?』

「ああ……当代の法王は、頭が柔らかい上に切れ者だからな。
 どう動けば良いか心得ているようだからな」


 バチカンの騎士団が召還するのは主に天使・大天使である。
 だが、天使達も一枚岩ではなく、法王に協力し続ける天使達も当然いる。
 平行世界では、神をでっち上げて世界の支配者を目論む大天使がいたほどであるからだ。
 そもそも、一枚岩ならば最初から堕天する天使が存在しないわけだが。
 石動達が話すうちに、イーリスが近づいてきた。


「失礼だが……オークションの目録をいただけるか?」

「バチカンの騎士がなんの御用で?」

「……!?」

『おいおい、女性に対して無愛想だぜ、巧ぃ?』


 普通の職員と思って話しかけたつもりだったが、石動の言葉に一瞬強張った。
 だが……ラームジェルグがイーリスに見えるように出てきた瞬間に、イーリスの姿が消えた。


『アレ?』

「……おいおい、お化けを怖がる歳ではあるまい……」

「……恥ずかしい話だが……私は、アンデッドは苦手なんだ」


 イーリスは、涙目になりながら近くの柱に隠れていた。
 確かにラームジェルグは、邪鬼ではあるが……死んだ騎士の幽霊であることは確かである。
 震えている様子から本当ではあるのだろうが……バチカンの騎士という立場からは考えられない様子であった。


『俺達は、オークション主催者側から雇われたデビルサマナーだ』

「そ、そうか……私はイーリス・イェーガー。
 バチカンの騎士だ」

「しかし、荒れ狂うベルセルク1ダースを徒手空拳で撲殺した『必中の』イーリスとは思えない反応だが……」


 イーリスは、目の前のサマナーは敵対勢力ではないと判断したのか、石動に対しての敵意を解いた……ラームジェルグがいるから必要以上に近づかないが。
 恥ずかしげに話し出した。


「なんというか……醜悪で、殴ると嫌な感触がするし、邪悪な気配が生理的に合わないんだ。
 私が法王であれば……あのアンデッドどもをヨーロッパから根こそぎ除去してやりたいものだが」

「……まあ可愛らしい事だが。
 で、何が目当てだ?」


 石動は、ため息をつきながら質問した。
 一瞬、イーリスは秘匿すべきではないかと考えたが……。


『ねえねえ、遊ぼうよ~』


 ヨガっぽい不気味な動き(異常に体が柔らかいようだが)をするラームジェルグを見て三歩ほど下がった。
 しばし考えて観念した様子で話し始めた騎士であった。















「げ……マジか!?」
 
「本当ですよ……世界って狭いんですね」


 テュルゴーと早乙女は仲良くなっていた。
 ……不思議と他人の気がしないらしく、互いに自身に降りかかる不運を嘆き、慰めていた。
 最近、テュルゴーが断ったほとんどの大掛かりな仕事は、早乙女が知る限りでは……石動や九鬼等の優秀なデビルサマナーが介入して破滅したという真相を知って、顔を青ざめていた。
 自身の勘は正しかったと安堵しながらも、綱渡りであったと知って恐怖に震えるテュルゴーであった。
 テュルゴー達が移動している最中に、角で人にぶつかった。


「あ、スイマセン」

「此方こそ、私の不注意であった」


 早乙女に当った男は、英国製の高級スーツを身に纏った長身の紳士であった。
 30代後半で、金髪を綺麗にオールバックにしており、早乙女の目から優れた戦士であると直感させていた。


「……なんでアンタがここにいるんだ、ベルグラーノ卿!?」


 テュルゴーは、驚愕の表情をしていた。
 早乙女は、ベルグラーノと呼ばれた金髪の紳士が名のある人なのだろうと推測した。


「うむ……私を知っているという事は……主催者から派遣されたデビルサマナーの警備員であったか。
 だが、君はともかく……そこの女性は若いのではないかな?」

「私はお手伝いみたいなものです。
 先生とテュルゴーさんが警備についているのですが……」

「そうであったのか。
 うむ……」


 早乙女とテュルゴーを一瞥してから微笑んだ。


「なるほど、そこの忍スタイルのサマナーは修練されている。
 警戒を素早く、間違いなく優秀であることだろう。
 そして……日本人の君からは、侍の息吹を感じるな。
 剣をさぞかし使えることだろう……、新兵なら間違いなく叩きのめせるほどに」

「先生に比べたら未熟ですが……」


 早乙女は、ベルグラーノに対して普通に接しているが、テュルゴーは借りてきた猫のように大人しくなっていた。
 疑問に思った早乙女は、テュルゴーに聞いてみた。


「どうしたんですか?」

「……まさか知らないのか!?」

「あの、数ヶ月前まで普通の剣道少女だったんですが?」

「……そうだったよな、ワリィ」


 テュルゴーは、頭を掻いて謝った。
 そして説明し始めた。


「ブリテンの女王様にはな、対悪魔用の切り札があるんだ。
 MI6でも対悪魔用の諜報部員もいるんだが……『ミスト』と並ぶ『ゼル』、ありゃ死神かって思ったくらいだぜ。
 それとは別に最強の切り札があるんだ……女王陛下の盾、通称『クイーンガード』。
 まあ、言ってみれば、英国のクズノハみたいなもんだ。
 その中のトップである騎士団長のベルグラーノ・F・ビューレンが……本来、英国から離れる事が無い人物がニューヨークにやって来ている。
 俺でなくても大事が起こるんじゃないかってビビルってもんだぜ」

「そうか……私も配慮が足らなかったな」


 ベルグラーノは、顎に指を当てながら話し始める。


「私がここに来たのは休暇が取った、いや取らされたからなのだ……大学の卒業生達の集まりがあったから、皆に薦められてな。
 実は、跳ね返り者だった私は、代々下級貴族であった親と喧嘩してね。
 それでアメリカに留学していたんだ。
 そこで事件に巻き込まれて……デビルサマナーになったのだ」 


 少し、過去を振り返るように遠くを見つめるベルグラーノであった。
 そしてすぐに表情を引き締めて話し始めた。


「私を休ませる事も兼ねていてね。
 集まりまでまだ日数がある。
 だから、ニューヨークで開かれていオークションに顔を出す事にしたのだ。
 良い懐中時計があるかもしれんし、掘り出し物の護符が見つかれば、部下たちに与えることができる。
 部下には生き延びて欲しいからね」

「そうなんですか……」

「まあ、それならいいけどな」


 早乙女と、テュルゴーは安心した。
 だが、ベルグラーノの真剣な表情は崩れない。


「だが……こんな噂を聞いている。
 『本物のストラディバリウス』がこのオークションに出展される……とな」


 テュルゴーの顔が青ざめた。
 理解できない早乙女は、質問した。


「あの…ストラディバリウスって高級な楽器という事しか知らないんですけど……」


 17世紀にアントニオ・ストラディバリが生み出したヴァイオリンの事である。。
 ストラディバリが製作したヴァイオリンは、約1200梃あるといわれ、そのうち約600梃の存在が確認されている。
 またヴィオラやチェロを約50梃製作しており、いずれも弦楽器の代表的な名器として知られる。
 ヴァイオリニストや収集家の羨望の的であるストラディバリウスは、誰もが買い求める……。
 現存する真作で最も評価の高い18世紀初頭の作品は、オークションで約4億円で競り落とされている。
 アントニオ・ストラディバリには後継者がおらず、その製法は歴史の彼方に消えてしまい、誰もその音色を再現する楽器を作り出せていない。


「うむ、それで正しい……表向きはね。
 楽器としても素晴らしいが……我々の間のストラディバリウスとは、『魔を砕く』魔性の楽器なのだよ。
 アントニオ・ストラディバリは、この世界の真実を知ってしまった。
 人々が崇め奉る神とは、傲慢で、人々に害しか成さぬ存在であったことが……そして、人々は対抗するには余りに……儚く、脆い存在であった事を。
 だから、彼は作ったのだ。
 『蒼ざめた馬に乗りし死』の鳴らす天使のラッパをも打ち消すほどの……神々を打ち倒せるほどの魔具を」

「本物は……一弾きで屈強な悪魔すら打倒できる。
 だが……本物は、簡単には見つからない。
 もし此処に、本物があると知ったら皆、目の色変えて争奪戦を始めるぜ……糞、ヤバイってもんじゃねえぞ!?
 割にあわねぇ……」


 テュルゴーは、補足するように説明し、恐怖におののいていた。
 テュルゴーを襲う死の影が明確に認識できた為か、更に悪寒が増強している。
 さらにベルグラーノは付け加えた。


「往々にして偽者であろうから気にしては始まるまい。
 そういえば……それとは別に『黄衣の王』の初版本が出展されているとか」

「………」


 早乙女の嫌な予感がしたのか、体中が脱力し、はいつくばっていた。
 テュルゴーが弱弱しく話しかけた。


「知っているんだな……『黄衣の王』。
 ここは格式高いからバッタモノは8割駆逐される。
 残りの1割9分9厘は掻い潜った偽者だが……稀に本物が出るからな」

「ええ……嫌な事にそっちの方面に縁があって……」


 早乙女とテュルゴーは、奈落の底に落ちたかのような雰囲気になっていた。
 表紙に黄色のシンボルが記されており、蛇の皮で想定されている『黄衣の王』。
 古代都市カルコサを舞台にした戯曲集であった。 
 魔道書ではないが……その内容を知ったものは狂気に陥り、破滅の道を辿ることになる。
 『黄色の王は、私から取り上げられてしまった。
  夢の行く方を定める力も、夢から逃れる力も……』
 といった、不可解な言葉がちりばめられ、筋書きも明らかではない。
 黄衣の王が話の中心になっているが……その姿は不気味であり、邪神ハスターではないかと推測されている。

 「名状しがたきもの」「名づけられざりしもの」、「星間宇宙を渡るもの」、「邪悪の皇太子」などがある邪神ハスター。
 旧支配者の一柱とされており、四大のうち「風」を象徴するとされる。
 「水」を象徴する神性クトゥルフと対立する存在とされ、シュブ=ニグラスの夫であり、クトゥルフの兄弟であるといわれる存在である。

 パリでこの戯曲が出版された時には、この劇の上演が禁じられる程の危険な本である。
 ちなみに黄色い印は、ハスターの力が集められており、見たものにハスターの眠るハリ湖やカルコサの幻影を見る事になる。


「「嫌な予感がする……」」


 その時、ビルが爆音とともに大きく震えた。
 早乙女達は、何事かと思った瞬間に、背後から声がした。


「ベルグラーノ叔父様、大変……ってさくらちゃん!?」

「むう……石動の弟子ではないか」


 背後から声をかけたのは……見知った金髪の美女と、その仲魔……ジェシカとスカアハであった。
 早乙女が驚いたが、ベルグラーノも驚いており、ジェシカに聞いてきた。


「知り合いか?」

「ええ……、日本でよく仕事を組んでいる相手のお弟子さんで……」

「出来たサマナー見習いだ……。
 彼女の師匠の石動は、侍……いや剣客というべきか、強き意志と剣技を持った男だ。
 それより、ジェシカ」


 スカアハに促されて現状の説明を始めた。


「悪魔が襲撃してきたわ……オークションの品を強奪しようとしているみたい」

















「ぬうぅん!」


 ベルグラーノが長剣を振るい、虎に似た悪魔を両断した。
 カタパルトで撃ち出されたかのような打ち込みは悪魔は避けることすら出来ない。


「やはり現場に出ていないから鈍っているな。
 呪殺魔法が来た時には冷や汗をかいたよ」

「……十分現役だと思うがな」


 テュルゴーは呆れ気味に呟いた。
 ベルグラーノの周りには悪魔の死体の山ができている。
 悪魔の体はMAGで実体化している者がほとんどで、しばらく立てば消滅する。
 だが、消滅するペースより早くベルグラーノは敵を打倒している……。
 ジェシカもソードオフしたショットガンで悪魔を射殺している。
 ジェシカの配下の悪魔は、早乙女のカハクやクダと共にオークションの客の避難をさせている。
 遠くでも爆音が響き渡っている……恐らく、複数の経路から進入してきているのだろう。
 

「二手に別れるべきか」

「そうね……、叔父様と私、目つきの悪いのとさくらちゃんで」

「テュルゴーだ」


 二手に分かれて進入した悪魔を排除することになった。
 一方、石動の方は……、石動とイーリスは、悪魔を排除しながら、不穏な気配を感じた場所に進んでいった。
 フリーダーは、石動達の背後を護るようにして走っている。
 石動達は、感覚を信じて進んでいき、オークションで出展される本が集められてる部屋にたどり着いた。
 蛇の皮で想定され、表紙に黄色のシンボルが記された本から邪気が漏れ出ている。


「なるほど、本物のようだな」

「……『黄衣の王』目当てでやってきたのだろうか?」


 気配の主は、『黄衣の王』自身が発していた邪気であった。
 石動は、呪符を張り付けてもれ出る邪気を隠し、早乙女達と合流するべく動き回った。 


「しかし……数が多いな」

「アンデッドがいないのが救いだ……な!」


 イーリスの肘打ちが馬面の悪魔の顔面にめり込む。
 血反吐を吐きながら倒れ付す悪魔に、ラームジェルグが歓声を上げる。


『やるぅ』

「……」


 陽気なラームジェルグの声を無視するイーリス。
 石動は、そんな様子にため息をついた。


「やれやれ……」


 走り続けている石動が立ち止まる。
 イーリスとラームジェルグもそれを見て立ち止まった。
 その瞬間、石動の心臓目掛けて長剣が飛んでくる。
 それを石動は、危なげなく弾き飛ばし、剣の主に向かって声をかけた。


「遂に仕掛けてきたか……オセ!!」

「貴様が持つ『黄衣の王』を奪いに来た。
 貴様の命とともにな!」


 彫像の影から現れた豹頭の悪魔。
 だが、以前遭遇した時と大きく変わっていた。
 普通の豹の毛色から、黒い毛並みに変わっている。
 使っている剣も紅く染まっている……なにより、以前よりプレッシャーが重くなっている。


「以前とは違うわけか……」

「なんだ……ただの堕天使の持つ力ではないな……」


 イーリスもオセから感じる異様な気配に警戒している。
 オセが腕を振るうと、虚空に黒い穴が開き、白い星型の悪魔と白い鴉頭の鳥人の悪魔が現れた。


『シャックスに……デカラビアか!?
 だが……なんか変だぜ』

「堕天使の発する魔力ではありません……天使本来の波動を発しています」


 ラームジェルグが不審に感じた事は、フリーダーの分析によって更に明確になった。
 シャックスは、以前説明した通り、ソロモン72柱の悪魔である。
 デカラビアもまたソロモンの72柱の魔神の一人で五芒星の姿で現れる。
 植物や宝石に隠された力について詳しいとされるが……シャックスもデカラビアも体が白くなり、神々しい光を放っている。



「貴様を殺す為に誇りも棄てた!!
 今の俺は……オセ・アバター!!
 此処がお前の墓場になる!!
 シャックス・ハレル、デカラビア・ハレル!
 奴らを逃がさないように囲め!!」


 オセの号令を受けて、シャックス・ハレルとデカラビア・ハレルが石動達を取り囲んだ。


「……堕天使ではなく、本来の天使としての姿と力を取り戻した……熾天使として召還したのか
 だが、呼び出したオセは……邪悪な気配が漂うのは……」


 イーリスは、驚愕していた。
 ハレル(hallel)は、ヘブライ語で「賞賛」や「祝福」の意味であり、発する気が堕天使のものではない。
 だが、オセ自身からはどす黒い邪悪な気しか発していない。
 性質の反対であるにも関わらず、使役できているオセ……これは、オセの力が熾天使の2体を超えるということである。


「……確かオセは、北欧神話のフレイヤの夫であるオズが原形であると推定されているが……」

『オズはオーディンと同一視されている……ってことは、オーディンでもあるのか!?
 だが……異質すぎる!』


 ラームジェルグがそう語る中、石動は、オセの発する魔力を感じ取った。


「『妖蛆の秘密』か……!!」

「そうだ……『奴』と俺にとって、貴様は共通の敵だ。
 禁断の書の力を取り込んだのが今の俺だ」

「馬鹿な……!!
 たとえ悪魔でもそれを取り込んだら……!!」


 イーリスは、顔を青ざめながら言った。
 オセは言い放つ。


「長くは持つまい……。
 いずれは、この身体は崩壊するだろう。
 だが……、貴様を殺すには十分だ!!」


 石動は、自身を省みない程に執念を燃やすオセに恐れと敬意を抱いた。
 それらを顔に出すことなく石動は、妙法村正を構えた。


「……コレを使いたいのはお前ではなく奴のようだな。
 ならば渡すのも癪だ」

『あの目つきの悪い奴の勘は確かに当ったみたいだぜ』


 そういいながら石動達は、オセ達との戦闘を始めた。   
 


















 

「うう……行く先々で事件が起こっている……」

「なんて割に合わない仕事なんだ!!」


 やや、気分が下向きな早乙女とテュルゴーであるが、剣を振るって悪魔を確実に撃破している。


「お嬢……」

「……どう元気付けたらいいかのう~」


 佐助とバロールは、手近な敵を倒しながら思案に暮れていた。
 だが、早乙女達の近くの壁が吹き飛んだ。
 幸い、早乙女達に被害は無かったが、佐助の顔は煤だらけになっていた。


「な、なんだ!?」

「や、やべえ……!!
 途轍もなく、危険な奴がいる……」


 壁の向こうには、紅い帽子に紅い道化服を纏った骸骨がバイオリンを狂おしく鳴らしている。
 周りにいた黒尽くめの人間が苦しみ悶えながら消滅している。


「あれは……!?」

「魔人・デイビット……ストラディバリウスを操る魔人だ。
 畜生、主催者の奴ら……、魔人ごと楽器を封印してやがったのかよ!!
 とんだ厄介者じゃねえか!!」


 神をも滅ぼせるとすら言われる武器が……自分達に向けられる事態にテュルゴーが恐怖に引きつっていた。
 そうと知らないダークサマナーの盗人がストラディバリウスの封印を解いて、今の状況になったのだろう。
 だが、今の状況で彼らは、そのことを考える余裕は無い…。
 詳しい事を知らない早乙女でも、大きい不幸が降りかかろうとしていることだけは理解できたようだが……。




[7357] 第2期 第36話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/05 11:04


「どわ!!」


 テュルゴーは攻撃魔法を避けた。
 魔人デイビットは攻撃魔法を雨のように放ったり、バイオリンの音撃で近づく敵を粉砕せんと活動をしている。
 テュルゴーと早乙女は、魔人を倒さんとするが……、


「先生がヘルズエンジェルやホワイトライダー、大僧正を倒したっていうけど……。
 よく打ち倒せましたね……」

「はぁ!?
 どんだけ化けモンだよ……敵対しないでよかった……」


 テュルゴーは、青ざめた表情でいる。
 魔人という存在は、普通の悪魔と一線を隔した存在である。
 それを打倒できる人間は、そう多くは無い……テュルゴーが恐れるのは当然の事であった。
 デイビットは、一定の距離に近づいた存在を殲滅する傾向があるようで、離れている早乙女達には仕掛ける様子が無い。


「それより、お嬢……どうする?
 此方の戦力が減っているぜ」
 
「そうじゃのう……第三者がやってきて引っ掻き回されても厄介じゃて」


 佐助の鎖帷子が所々砕かれている……行動に支障が無い程度ではあるが、消耗していることは確かである。
 バロールもどうするか悩んだ様子で、目を閉じて考え込んでいる。
 テュルゴーの仲魔も、数体討ち取られてCOMPに帰還している。
 残っている仲魔の中で当てに出来るのは死神ゲーデのみであった……。
 またテュルゴーの部下達は、他の場所で悪魔を掃討しており、援軍として期待できない状況だ。


「壊しましょう、バイオリンを……」

「それしかねえな……命あってのモノダネだからな。
 魔人は、アレを寄り代にしているからな」


 魔人デイビットの正体は不明である……だが、ストラディバリウスに取り憑いている事だけは確かなのである。
 そして……楽器を破壊することなく魔人を倒した者だけが神滅の力を持った魔具を得る事が出来るのだ。
 テュルゴーの中で何処か遠慮があった……だが、早乙女の言葉で少し覚悟を決めたようであった。


「お嬢ちゃんはそこで待ってな。
 流石に攻撃の雨を掻い潜るのは難しいからな。
 ここは男衆だけでやる」

「ウホ、いい男」

「ナニ言っているんだよ、爺さん」


 場を和らげるつもりなのか、奇怪な事を言い出すバロールに対して佐助が突っ込んだ。
 早乙女も、銃器が巧く扱えない為に遠距離攻撃手段がない。
 見守るしかないと考えていたが、早乙女の雷鳴剣が鳴きはじめた。
 霊鳥・大サンダーバードの鳴き声であった。


「へ……?」

『娘よ……、雷鳴剣には精霊の加護がある』


 雷鳥を模した剣の鍔が伸び、刀身と握りの部分が逆に縮んだ。
 鍔が緩やかな曲線を描き、鍔の先と先同士に糸が伸びて弓の形状に変化した。


「これは……」

『嘗ての私の盟友・ジェロニモが使った弓を模したものだ。
 死線を潜り抜けたお前なら、この力を使いこなせるだろう』


 早乙女は、変形した雷鳴剣を力を込めて握ると、矢が現れた。
 テュルゴーは、変わった武器だと感心した。
 

「まあ……それなら援護ができるな。
 じゃあ、頼むぜ」

「ほっほっほ、逝って来る」

「お嬢も範囲外だからって油断するなよ」


 そう言って(ゲーデのみは無言であったが)テュルゴー達は突撃した。
 不可視の音撃がやってくる。
 悪魔ならば本能で、あるいは知覚して避けることが出来る……無論、避けられる力量を持っていることは前提だが。
 普通の人間ならば、膨大な魔力があるものだけが『視る』事ができる一撃を認識することなく粉々になっていることだろう。
 だが……、


「死んで堪るかよぉおおおお!!」


 テュルゴーの危機を察知する能力は、不可視の一撃を紙一重で避けて高速で接近する。
 デイビットは、迎撃せんと魔法を放とうとする。
 そこにバロールとゲーデが魔法を放つ。


「アギダインじゃああ!!」

「跪きなさい、メギド!!」


 同時攻撃を咄嗟に反応したデイビットは、攻撃を中断して自身の周囲に球状のバリアーを張って防いだ。
 バリアーに波紋を生じさせながらも2人の魔法が防御されたが、佐助が追撃した。
 

「一点集中だ!!」


 佐助は、魔法攻撃を防御した箇所に数本の針を撃ち込む。
 ライフル弾のような速度で放たれた一撃ですら届かなかったが、バリアーの表面に亀裂が出来た。
 早乙女は、範囲外から集中を続けていた。


「……今だ!!」


 早乙女は、佐助が攻撃した瞬間に矢を放った。
 電光のように矢が駆け抜け、佐助が障壁につけた亀裂が出来た箇所にそのまま当った。
 矢尻がめり込み、障壁内部まで侵入した。
 だが、デイビット自身に届く事がなかった。


「弁償なんてしないぞ、今畜生が!!」


 テュルゴーが接近して拳で矢を釘のようにたたきつけた。
 途中で止まっていた矢が更に突き進み、バイオリンに刺さった。


「ガアアアアアア!!」


 バイオリンに矢が刺さったのを見た魔人は、狂ったように叫んだ。
 そして大きな光を発し、終わった時には、何も無かった。
 閃光を発した時に、皆視界に影響を与えていた。


「とっさに目を閉じたからいいがよ……大丈夫か、爺さん」

「あ~がぁ~!!
 あ~あ~目がぁ~目がぁ~!!
 あ~あ~目がぁ~あ~あ~!」


 佐助は咄嗟に目を閉じたようだが、バロールはうっかりまともに受けた様子であった。
 早乙女も、視界が回復した後に周りを見て呟いた。


「やっつけたのかな?」

「いや……逃げられた。
 だけどよ、俺達は生き延びた、それだけでも儲け物だ」


 テュルゴーは冷静に語った。
 だが、その時に無数の黒い覆面を来た武装集団が現れた。
 テュルゴーは舌打ち気味に言った。


「くそ……こんな時に!!」

「ほっほほ。
 そこのお兄ちゃんや、せっきー……石動どんを呼んでくれないかの?
 ワシが足止めするじゃて」

「今の消耗した状態じゃ仕方ないか……ゲーデを置いて…」

「今まで消耗しすぎたからの。
 さくらを護ってくれるほうがちょうどいいわい。
 なあに、ワシ一人なら何とか持たせられるわ」


 テュルゴーの申し出でやんわりと断ったバロール。
 佐助は、そのバロールの様子を見てただ一人悟って何も口出しをしなかった。
 テュルゴー達は、退避し始めた。
 早乙女が去る前に言った。


「あまり無茶はしないで……先生をすぐに連れてくるから」

「早く頼むぞ~」


 追跡しようとする一団を仁王立ちしたバロールが引き止めた。
 低い男の声が聞こえてきた。


「ストラディバリウスは何処だ」

「ほっほっほ、逃げられたわ。
 ちと、待ってくれぬかの?」


 それを聞いて去ろうとした一団を引き止めるバロール。
 一団の一人が面倒だとばかりに発砲しようとしたが……。


「が……」

「な、何が起こった!?」


 撃とうとした男は、突然絶命した。
 倒れ付した体が、MAGに分解され、消滅した。
 驚く一団に向かってバロールは暢気そうに語りかける。


「まったく、おぬし等のお陰でとんだ災難じゃったわ。
 血の匂いがする所から察するに、無用な殺生を行っておるようじゃから丁度いい。
 お嬢の前では自重しておったが、禍根を残すのも問題じゃからの。
 憂さ晴らしを兼ねて死んでもらおうかの」


 好々爺のような口調で死刑宣告をするバロール。
 必死の抵抗を示す一団であったが、数分後には皆MAGに分解され、死に絶える事になった。
 普段の言動で霞んでしまうが、彼は魔眼の魔王。
 敵対する勢力には一切の情けをかけることなく殺戮し尽くした。





















「く……異常に堅いぞ!!」

 
 イーリスがデカラビア・ハレルに拳を撃ち込むが、星型の天使は、怯むことなく体当たりをする。
 それを受け止めるのはなく、その勢いを利用して更に加速させながら近くの壁に衝突させるように受け流した。
 轟音とともに壁が砕けた……だが、デカラビア・ハレルはすぐに起き上がり、高速で移動しながら魔法を放ってきた。
 さらにシャックス・ハレルが援軍に加わり、高速移動しながら呪詛を飛ばしてきた。
 バラバラのタイミングで攻撃が仕掛けられてくるが、高速移動しながらの強襲は、並みの人間の心をへし折る勢いであろう。


「……厄介な。
 だが、連携になっていないだけマシだ!!
 そこだ……ザンダイン!!」


 だが対峙した相手は、並の人間ではなかった。
 攻撃を避けながらイーリスは、高速移動するシャックスの移動地点を予測して魔法を放つ。
 イーリスは、『必中』の2つ名通り、シャックスに撃ち当てた。 
 さらにデカラビアに蹴りを当てて、動きを止めて更に追い討ちをかけた。


「……しぶといな。
 だが……此方はまだラクな方か」





 無数の金属音が鳴り響き、衝撃が走った。
 石動達の闘いの舞台は、巨大なホールへと移っていた。
 到る所に無数の破壊痕が出来上がっていた……石動とオセには無数のかすり傷が出来ていた。


「まだ死なぬか……」

「それはお互いさまだがな」


 石動は動きまわる……敵はオセ一人だけではないからだ。
 オセは、更にシャドウ石動、無数の天使達を召還してきたのだ。
 石動の背後から、シャドウ石動が切りかかって来る。


「死ねぇええ!」

「筋はいいが……脇が甘い」


 避けながら夢想正宗からブリューナクに変形させ、石突の部分でシャドウ石動を打ち据えた。
 崩れ落ちるシャドウ石動を無視してブリューナクの穂先を戦装束を纏い、槍を持った天使・パワーの眉間に突き刺した。
 無数のエンジェル・アークエンジェルが、石動を殺戮せんと魔法を飛ばしてきた。
 ラームジェルグからクー・フーリンに変化した相棒が声をかける。
 

『いけるか?』

「オセ以外ならばラクに料理できそうだ」







 一方のフリーダーは、白い巨人を相手にしていた。
 巨人には、首がなかった……代わりに胴体に豹の顔面が張り付いていた。
 白い巨人は腕を振るい、フリーダーはそれを難なく避けた。
 避けた先は巨大な爪で引き裂かれた痕が残った。
 フリーダーは、反撃とばかりに顔面に魔法をたたきつけた。


「ショックウェーブ!」


 広範囲に撒き散らした一撃は、白い巨人とその取り巻きの天使・エンジェルたちを焼き焦がす。
 だが、生き延びたエンジェルの内の一体が祈りを捧げると、エンジェルは消滅した。
 その代わりに、白い巨人の深い傷が再生していった。


『無駄だ……神に逆らいし、愚か者に死を!!』

「マスターは、負けません……。
 救援を阻止する貴方も排除します!!」


 白い巨人……ソロモンの72柱の魔神の一人にして地獄の侯爵であるフラロウス、いやフラロウス・ハレルが襲い掛かる。
 召喚者に敵対する者を焼き尽くす力を持つと言われるその能力を遺憾なく発揮しはじめ、炎の嵐がフリーダーに襲い掛かる。
 フリーダーは対抗するべく、絶対零度を解き放つ。
 二つの魔法が衝突し、爆発した。
 フラロウスの視界はしばらく遮られていたが、晴れた時には、無数の天使の死体が出来上がっていた。
 死体の山の頂にフリーダーが両手を鮮血で染めながら立っていた。


『貴様……』

「回復役の排除に成功。
 次は、貴方です」






「くそ……何故だぁ!?」


 シャドウ石動は、憤怒の炎に燃えていた。
 オセは、天使達を召還し続けていた……消耗した石動の隙を狙うつもりのようだった。
 だが、石動は隙を見せるどころか、次々を天使を屠り、シャドウ石動の打ち倒し、時にはオセに向かって銃弾を放っていた。
 天使の一部が、シャドウ石動を回収した為に止めは刺されることはなかったが、それがシャドウ石動のプライドを傷つけていた。 
 無数の数が襲い掛かるが、連携も出来ていない上に人間如きと慢心しきった天使では石動を倒す所か、据え物程度でしかなかった。
 

「神に逆らう愚かギャアア!!」

「それにやられるお前は更に阿呆ということだ」

『それにしてもオセにぶっぱなした水銀弾は効き目があったみたいだな』


 石動とクー・フーリンは暢気そうに語った。
 銃弾が柔らかければ衝撃を伝え、破壊力が増す。
 水銀のような液体であれば尚更であるが……一般に水銀弾は、使われない。
 水銀は危険で、保存が効き難く、鉛と水銀が直に接触すると弾頭が腐食されて溶けてしまう。
 石動の使った銃弾は、錬金術師ウーリが錬金術を用い、その危険性を押えた対悪魔用に生成された特注品であった。
 錬金術師が戯れに作った一品をテストする名目で貰っていたのだ。
 水銀弾の一撃だけではない、召還し続けるオセに負担がかかり始めていた。
 石動は隙を決して見せない上に、逆に攻撃してくる事がある為にオセへの精神的な負担が大きくなっている。
 対する石動のほうは、多人数の戦いに慣れている為か、精神的余裕があるが、肉体的な疲労に関しては、やや分が悪い。
 つまり、総合的に互角であった。


「くそ……、俺は奴と同じはず!
 そしてペルソナ能力を持った俺なら上を行くはず!!?
 それなのに……なぜ勝てない!?」

「解らないか?」


 石動は、シャドウ石動が血が滲むまで握り締めながら言った言葉を冷たく言い捨てた。
 語る気の無い石動は、そのまま天使達に切りかかる。
 さらに……


「ゲイ・ボルグ」

「ガアアアア!?」

「スカアハ……それにジェシカか」


 遠くと見ると、スカアハとジェシカの姿があった。
 ジェシカは、若干不満気味であった。


「その言い方はまるで私がついでじゃない!!」

「戯けがぁ!」


 そういっている間にもベルグラーノが石動の周りの敵に切りかかっていた。
 ベルグラーノの隣には騎士甲冑を身に着けた美男子がエンジェルに切りかかっていた。
 さらに、背中に紅い十字架を背負った白い衣を纏った戦士が右腕の剣でドミニオンを刺殺し、空いた左手はアークエンジェルの首を掴み、そのまま縊り殺した。
 他にも鳥形の悪魔が数体が空翔る天使達を蹂躙した。


「ガラハド、貴様は空の仲魔の指揮を行え。
 クルースニクは、私と共に地上勢力の制圧を行う!」

「「御意!!」」


 ガラハドは、アーサー王で有名な円卓の騎士の一人だ。
 聖杯を見つけた三人の騎士のうちの一人で、湖の騎士・ランスロットとペレス王の娘エレインの子供であった。
 アーサー王から「世界で最も偉大な騎士」と称され、、マーリンは「彼は父であるランスロット卿を凌ぐ武勇を身につけ、聖杯を発見する。」と予言していた。
 ガラハドは、聖杯を発見した……だが、最も穢れの無い騎士として神々のもとに召されることになった。

 クルースニクは、スロベニアやイストリアに住むスラブ人の間に伝わる吸血鬼ハンターでクドラクの天敵である。
 クルースニクは、同じ吸血鬼ハンターのダンピールと違って人間の子供であるが、白い羊膜に包まれて生まれてくる。
 そして、赤い羊膜に包まれて生まれてくる吸血鬼クドラクとの戦いを宿命になっている。
 クルースニクもクドラクと同じく馬、豚、牛、猪などに変身することができるが、クドラクと違い、白い獣に変身する。
 なお、セルビアにおいて吸血鬼と人間の間の子供は、骨や歯がない奇形児になるが、吸血鬼を見つけ、倒す能力があるとされている。

 ベルグラーノとその仲間達の一気呵成の猛攻で天使達は総崩れになった。
 女王の盾である騎士は、日出づる国の侍へ声をかけた。


「お主が石動か。
 姪が世話になっているようだな。
 私の名はベルグラーノ」

「アイツが言っていた叔父だったな。
 いつもジェシカには世話になっている」


 不確定要素が加わったと判断したオセは、召還をやめた。
 石動を射殺さんばかりに睨みつけて言い放った。


「石動……一旦勝負を預ける」


 そういってオセは消えた。
 天使達やシャドウ石動の姿も消えていた。
 安全を確認した痕に石動は、夢想正宗をしまった。


「なんだったのだ?
 堕天使オセのようだったが……今まで見たオセとは違うな。
 それに……」

「俺を殺す為に執念を燃やしながら新しい力を得たらしい。
 フリーダーも無事にやって来た上に、騒ぎも収まってきた。
 詳しい話は、後で話そう。
 流石の俺も久々に骨が折れた」

『そうだな~。
 巧、いい店知っているから、行ってみようぜ』


 困惑しているベルグラーノを余所に、マイペースに話を運ぶ石動とラームジェルグ。
 イーリスは、それを見ながら呟いた。


「あれだけの死闘であったのに、豪胆なものだ。
 それにしても……あれは、クー・フーリン……なのか?
 いずれにしても敵にしたくないものだな」






 あとがき。

 オリキャラ祭りでした。
 人数多すぎた。
 オセリターン!! 前のようにはいかないぜ。
 シャドウ石動リターン!!でもあっさりフルボッコ。
 



[7357] 第2期 第37話 修正・追加(6月11日)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/12 03:50
 石動の事務所の電話が鳴り響く。
 すぐに石動は、電話を取った。


「俺だ」

『元気そうだな』

「風間の旦那か」


 電話の主は、警視庁の対悪魔犯罪部署である公安零課課長の風間であった。


「最近の治安はどうだ?」

『残念ながら……悪くなっている。
 JOKERの代理殺人が続いている……』

「JOKERは死なない……か」


 石動が直接聞いたわけではないが、JOKERのペルソナを持った男は早乙女達の前で死亡したのは確かだ。
 だが……事件は続いている。


『更に流言蜚語が飛び交っている。
 数年前に流行ったノストラダムスの予言の焼き直しだがな。
 さらに、メシア教団も暗躍している。
 自衛隊内……いや、それだけじゃない、警察の一部にも新世塾の構成員がいる』


 風間は、淡々と語っているが、事態は思った以上に悪くなっている。
 石動も最近の噂を話し出した。


「最近、ついている・ついていないと皆が騒いでいる……。
 そう、幸運・不運が極端に分かれ出している」


 運の『ついている』と言うのは、『憑いている』……狐などの憑き物が憑いている…というのが語源のようだ。
 

「山積みした野菜が崩れて運悪くいた老人の頭に当って首の骨が折れた事件が起こったり……」

「大昔に、海外で通り魔的に野菜を投げつける事件があってかぶが腹部に当って肋骨が折れて肺に突き刺さって死んだ事件があったがな……。
 だが、それは単なる不運ではないのか?」

「ボールを追いかけて道路に飛び出した幼児が車に轢かれた。
 幸運にもスピードが大した事が無い上に、ボールが盾になって擦り傷程度に済んだがな。
 例を上げればきりがないが……妙な流れになっていることだけは確かだ。
 そして死人が蘇る……もしくは歩き出す事件は現実に起きている。
 死んだはずの人間が再び現れ、その大半が世を乱している」


 風間はしばらく沈黙を続けていた。
 そして重々しく切り出した。


「俺より上が動くことになりそうだ」

「……当然だろうな」

「俺も動く……力を借りる事になりそうだ」

「……一応、フリーのサマナーだがな」


 石動は、口では渋々とした様子であるが、力を貸すつもりであった。
 厄介事であるが、石動の刀を振るう良い機会であり、それ以上に因縁があるからだ。


「……今更だな」

「全くだ」




















 オセ・アヴァターは、己が力と感情を持て余していた。
 自身の漲る力をコントロールしきっていない。
 そのお陰で石動巧の命を奪えなかった。
 だが、だんだん使いこなし、思いのままに力を振るう事ができるようになっていた。
 鉛を飲み込んだような不快感がするが、魔術書を取り込んだ代償であり、以前より強くなった事を思えば安い物だと考えていた。
 それでも、心がささくれ立つ。


「世界は……沈むべきだった。
 世界は混沌に沈むべきだったのだ」


 そして……目の前の男が更に、オセの苛立ちを増幅させる。
 高尾祐二……、かつてオセの主であった氷川が取り込んだ降巫。
 オセ自身には、もはや興味はなかったが、『同盟相手』が計画に必要であると欲したので脱獄させ、手元に置いている。
 顔立ちは良いほうで、性格は穏やかな部類で学校でも人気があったらしい。
 

「今のまま老いた世界を生き永らえさせても、いずれ力を失ってしまう……。
 世界は、また生まれるために死ななければならないのだ……」


 この男は、憂いている振りをしているだけだ。
 一足飛びで、K県全ての人間を生贄に新世界を作り出す計画に協力した。
 だが、オセは思った……。
 不満があれば暴力・財力・権力を得て上にのし上がればいい。
 悪魔と契約すれば数年で可能になる。
 だが、この男はそんな事すら行わなかった。
 明確な目的なく氷川に協力しただけであった。
 少なくとも氷川は『完全なる静寂な世界』の構築という目的があった。
 氷川のような自分をひれ伏させる凄みを目の前の男から感じる事は無かった。


「それなのに……世界を思い通りに動かすどころか、自分のことさえままならない。
 世界が……作れなかった。
 人が生きる力と理想を取り戻した世界は……」


 オセは、目の前の汚物を忘れ、宿敵を思い出した。
 石動巧。
 最初は、剣の腕はオセの上であったが、オセの脅威にはなりえなかった。
 だが、出し抜かれ、主を失った。
 2度目にあった時には、格段に強くなり、敗北した……。
 幾度も石動を殺す為に策謀を巡らすが、全て打ち砕き、強大になっていた。


「(奴は、化物だ。
  『人の体を持ち、人の心を持った化物』だ)」


 オセには、石動が弱音を吐く所が想像できない。
 全てを剣で切り開き、たとえ魔王や魔人相手でも大胆不敵に挑みかねないふてぶてしさを持っていた。
 無数の天使に囲まれた時にも石動には、絶望や恐怖の色がなかった。
 むしろ物見遊山に来たような心持ちになっていたのではないかとオセは考えていた。
 主を殺した事は憎らしいが、少なくとも目の前の愚物よりは遥かにマシであり、むしろ親近感が湧いている。
 だが……互いに存在する事は許されないと考えている。
 そう、どちらかがこの世から消え去るまで戦いは終わらないだろうと確信していた。


「オセもそう思うだろう?」

「ああ……」


 オセは口では同調していたが……嘘である。
 正直、どうでも良かった。
 だが、高尾は、語った。
 彼は、この世界が好きではなかった。
 彼の目には、皆安らぎばかり求め、無責任な振る舞いしかしてないようにしか見えなかった。
 高尾は、『人々は幸福ではなく、怠惰になっている』と断じた。
 今の社会は、競い合うとか強くなる事を人々が求めなくなり、必要がなくなったとも思っている。
 

「だが……今度こそ……」


 オセは、高尾の戯言を聞き流した。
 石動を惨殺する瞬間を想像し、その時湧き上がるであろう歓喜と恍惚の瞬間を……堕天使は夢見ていた。
























「ごめんね、巧君」

「まあ、いい経験になるさ」

「よろしくお願いします、石神様……いえ、師匠」

「ヨロシクオネガイシマス」


 氷のような雰囲気を漂わす美女……石神千鶴は、柔らかい雰囲気に変わった。
 石動は頷き、人形のように恐ろしく整った美女……フリーダーは一礼した。
 それを見た小柄な12,3歳の美少女……モー・ショポーが不機嫌そうに片言で挨拶をした。
 風間の電話の後に、依頼の電話がかかってきたのだ。
 相手は、石神の事務所の社長だった。
 石神のマネージャーが病気で倒れ、特番前の石神のマネージャーとして潜り込んで護衛するように頼まれた。
 特番で一緒になる相手で自称霊能タレントがいるのだが……女癖が悪く、黒い噂が漂っていた。
 心配した社長は、石動に護衛するように依頼したのだ……以前、石神が頼りになる弟分と自慢していた為に信用しているようだった。
 早乙女は、剣道部の試合が在る為に来られなかったが、フリーダーがいれば問題と判断した。
 だが、丁度その時、モー・ショボーが聞きつけてきた。
 モー・ショボーは、姉貴分である美女の護衛と聞き、石動に憑いていくと駄々をこねた。
 石動は、渋々同行を認めた……フリーダーとモー・ショボーがついて来てもいいように石神の弟子という設定で。

 
「オカルト好きの桐嶋と一緒にならないのは珍しいな」

「旅行番組でマチュピチュに行っているの。
 一応、彼女から特番の出演者で味方になってくれる人がいるって言っていたけど」


 石動の質問に、石神は答えた。
 フリーダーが更に質問した。


「協力者ということでしょうか?」

「ええ、上杉秀彦っていう男の子。
 通称ブラウン……エリーの同級生でペルソナ使いだそうよ」


 石神が話していたその時、楽屋のドアが開いた。
 ニット帽を被り、額にゴーグルをつけ、ベストを着た明るそうな男が部屋に入ってきた。
 黙っていればギリギリ二枚目だが、周りを盛り上げようと明るく振舞っているためか、2枚目半から3枚目位に落ちている。
 

「こんちゃ~す!
 アレ、姐さん……マネージャーさんは?
 それに、知らない人がいるんだけど……」

「こんにちは、上杉君。
 美鈴ちゃんは、ちょっと寝込んでいて……彼は、代わりのマネージャーの石動巧君」

「よろしく……」

「それと、新弟子のフリーダーとモモちゃん」

「フリーダーちゃん可愛いね~。
 クールな感じがまたグッドだね!
 それとお嬢ちゃんも可愛いね」


 フランクな口調で話す上杉。


「よろしくお願いします、上杉様」

「子ども扱いしないで!!」


 やや事務的なフリーダーと、少し頬を膨らませるモー・ショボーであった。
 石動は、石神に視線で問いかけ、彼女は石動に了承を送った。


「マネージャーが倒れ、代理なのは本当だが、実際はボディーガードだ。
 ところで南条達とは最近会っているのか?
 ペルソナ使い同士の親交を深いだろうがな」

「いや~、最近忙しくって……ってなんで!?」

「南条から連絡を受けただろう?
 神取が生き返った事で」

「あー、メールで来たっすね~。
 って、協力してくれる味方っすね!!
 まあ、真のリーダーであるおれ様がいれば余裕だけどな!」


 高笑いするお調子者の上杉を微笑ましげに思う石動であった。
 口元に微笑を出しながら名刺を上杉に渡した。


「当てにさせてもらうか。
 それと……何か調べ物か厄介事があれば遠慮なく連絡してくれ、格安で引き受ける。
 コレが探偵事務所の連絡先だ」

「ちゃっかりしているっすね~旦那~」

「一応言っておくが同年代だ、敬語も遠慮も無用だ」


 その言葉を聞いて上杉が大いに驚いた。
 石動の発する雰囲気から30代位と予想していたようだ。


「ビックリっすよ!
 ビシビシッと決めているからてっきり……。
 たまきちゃんとかまだ見習いなのに、その歳で一国一城の主なんてなかなかないって~」

「その辺は……いろいろあった訳だが。
 それよりも、霊能タレントと言う奴の詳細が知りたい」

「ああ、芦屋祐市って奴で、自称芦屋流の使い手とか言っているけど……ありゃ胡散臭いのなんの。
 石神の姉さんとかホンモノっぽいオーラがでているんだけど、アイツは偽者臭い。
 というか、番組もヤラセっぽいし。
 まあ視聴者受けがイイっぽいから出ていられるんだろうけど」


 上杉の言葉にテレビっ子なモー・ショポーが同意していた。


「インチキっぽい。
 でも……人間の中で勘がいい人は悪魔が見える人がいるし」

「会った事がないから解らないけど……芦屋って偶々同性だっただけじゃないかな」


 石神は、会った事が無い為に断定はしなかったが、眉唾ものだと感じているようだ。
 上杉の説明によると……特番の内容は、コーナーの収録で一代で成上がった社長宅に訪問して霊障に悩んでいるらしい。
 家族は両親と妹二人いたらしいが……両親は、事業に失敗し、無理心中を図った。
 息子の社長だけ妹を助ける余裕がなく一人だけ逃げ延び。
 その後、養子として引き取られ、勉学に励みながらバイトをして事業のノウハウを学び、見事成功したらしい。
 だが、家族の夢をよく見ており、体調をよく崩したり、事故になりそうな事が多々あったそうだ。


「ディレクターが霊能対決とかいってこのコーナー作ったみたいっすよ」

「私は、除霊を行った事は無いわ……仕事は占いだけしかしないから」


 石神はうんざりした様子で呟いた。
 場の雰囲気を変えようと上杉は、フリーダーに質問した。


「フリーダーちゃんは可愛いけど……姐さんの弟子って本当かい?」

「いいえ、あくまで同行する為の名目です。
 私は、マスター……石動巧様の仲魔で、人工の悪魔『造魔』です」

「ええ!?
 どう見ても人間っぽいのにな~。
 じゃあ、モモちゃんもタクミンの仲魔?」

「ツマよ!」


 ブラウンの笑顔が凍りついた。
 油の切れたカラクリ人形のように石動へ顔を向けた。


「あの~、ロリコンなのでしょうか、旦那様?」

「保護者だ、保護者」

「む~」


 犯罪の予感がした上杉だったが、石動の言葉に安心したようだった。
 だが、それを聞いて怒ったモー・ショポーは変身した。
 15,6歳位の美少女に成長し、豊かな双丘を弾ませながら石動の腕にしがみついた。


「子供扱いしないで~!」

「そういうところが子供だろうに」


 大きくなっても扱いを変えない石動に不満を感じるモー・ショポーであった。
 最初に驚いた上杉であったが、モー・ショボーの正体を知ってすぐに順応してしまった。
 柔軟なのか、考えなしなのか……恐らく前者であろうが。


「もてもてっすね~タクミン」

『全くだね』

「どわ!?」


 ラームジェルグが姿を現した。
 ラームジェルグは自身の事を説明した後、雑談を始めたら2,3分で意気投合していた。
 賑やかしを行う役回り同士通じるモノがあったかもしれない。
 ラームジェルグのHPに上杉はよくアクセスしていたらしく、『貴方が神か』とラームジェルグを崇めだしたが、石動は見なかったことにした。
 石神は、石動とモー・ショポーの様子を微笑ましげに見ていた。


「(まるで親子ね)」


 そういうとモー・ショボーが怒り出すのであえて言わないが。


 







 おまけ 年少を導けるようになったのは歳を取った証拠?


「南条は、最近どうしてっかな~」

「名家である橘家の一人息子を滅多打ちにしていたが」

「どういうこと?」


 石動と南条は意外に連絡を取っていた。
 定期的に裏の事情を報告しているからである。
 城戸とは馬が合うのか、たまに石動の事務所の地下で試合形式でトレーニングを行っていた。


「なんでも、昔の自分や神取に似ていたとか言っていたな」

「うわ~、それって嫌な奴ってことだよな?」


 上杉は、想像してげっそりとした様子であった。


「一言でいえば弱肉強食が信条のようだ。
 優秀でない人間は死ねとばかりに見下していた。
 なまじ優秀だった為に誰も手がつけられなかったらしいな。
 だが……、

 『優秀な者が上に立つべきだと俺も考えている。
  だが、今のお前では誰もついては行かないだろう』

 ってな」

「それでそれで?」

「論戦を挑んだが、あっという間に論破された。
 スポーツでも勝負を挑んでも敗北した。
 日本一の男児を目指す以上当然なのだろうがな。
 ムキになって時々南条に勝負を挑もうとしているがな」

「そういえばウチの事務所で新田勇美(イサミ)って新人の女の子を思い出したな~。
 昔のおれ様を思い出す感じで……色々壁に悩んでいたみたいだったけど。
 でも真のリーダーであるおれ様が優しく導いて元気になったけどな!
 ……最近、玩具がわりにおれ様をからかうけど」

「懐かれているのだろう?
 先輩冥利に尽きるというものだ」

「そっすね……でカズリン元気っすか?」

「筋がいいからな。
 鍛え甲斐がある」


 藤堂和也の存在を黒須から聞き出した黛が桐嶋を連れて石動に問い詰めた。
 現状を伝え、危険度が無い事を知った為に桐嶋は落ち着いたみたいだったが。
 その後、南条が和也の弟である尚也に連絡をしたらしく、会いに来るだろうと話した。
 もっとも、放浪を続ける尚也を捕まえるのは難儀なのでまだまだ先の話だが……。 
 後でラームジェルグが大声を上げた。


『『情熱・ヤング伝説』キター!!!
 蘇る教育魂!!
 暗黒影法師を打ち倒せ編……どんな内容だ~!!』


 その後の上杉の驚愕振りときたら……。











 あとがき。
 真のリーダー=ブラウン……なわけです。
 高尾さん一応登場、でもオセしかと。
 風間の旦那もちょっとだけ。
 気がついたら80投稿突破だし、感想も四捨五入で300だし。
 思えば遠くに来たもんだ(登場人物が相当多くなったし)。

 サブタイトルはつけたほうがいいのかな?(いまさらかよ)



[7357] 第2期 第38話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/13 17:41
 石動達は出演者とスタッフとともに、ロケバスに乗って問題の社長邸宅に向かっている。
 上杉はフリーダーと石神と談笑し、石動はモー・ショボーを膝枕しながらCOMPのデーターを眺めていた。


「………」


 現在の社会状況は悪化しつつあると石動は考えている。
 『メシア教団事件』から大分経ったにも関わらず、関東の地脈は乱れている。
 近いうちにヤタガラスは、厄払いの為の儀式を行うとも聞いている。
 だが、それだけでこの事態が好調になるとは思えない。
 そう考えていると、軽薄な男が石動達の前に近づいてきた。


「おい、にーちゃん。
 そこどいてくれないか?」

「………」

「聞いているのか!!?」


 石動は、軽く顔を見上げた。
 成金趣味でお世辞にもセンスは良くない服装で、顔はそれなりに整っているが、石動には興味が湧くような面構えではなかった。
 しばし、考えて目の前の男が石神の事務所の社長が警戒していた『芦屋祐市』だと思い出した。


「席はいくらでも空いているだろう」

「俺は、ここに座りたいんだ」


 そういいながらフリーダーと石神に粘っこい視線を送る。
 察するに、美女と同席して手を出したいのだと察した。


「……」

「退け!」

「面倒だ……断る。
 膝の上に寝ているコイツもいるからな」」


 そういいながら『石動のツマ(自称)』を指差す石動。
 その言葉を聞いた瞬間に青筋を立てて怒る祐市。
 

「俺が誰だかわかっているのか!?
 芦屋流の陰陽師・芦屋祐市だぞ!!
 てめえなんかチンケなジャーマネなんぞ……」

「呪い殺す……か?」


 普通の口調で話す石動……だが、芦屋には圧迫感を感じた。
 祐市は、舌打ちして元の席に戻っていった。
 上杉が、何時の間に取り出したのか、日の丸の扇を広げながらいった。


「さっすが、旦那ぁ~!
 ボディーガードの役割果たしているっすね!!」

「……アレは、多少は勘が働くみたいだな。
 『視る』くらいはできるだろうが。
 それより……姉さん」

「なに?」

 
 弟分にたいしてTVで見せない微笑をする石神。
 ため息をつきながら石動は口を開いた。


「夏彦さん達が……婿はまだか?といっている」

「恋の一つや二つはしても……そこまでの相手は出来なかったわね。
 焦ってもしかたないわよ」


 陰陽道を修めた石神は、怪異を呼び込みやすい事だろう。
 それに付き合える男性は中々いないことだろう。
 

「終いには……俺を婿にとって本当に息子にしようなんぞ言っているぞ」

「あら、いいわよ?」


 悪戯っぽく微笑みながら石神は答えた。
 上杉は、からかい半分で口笛を吹いたが……。


「む~!!」


 モー・ショボーが怒り心頭になって起き上がりかけた。
 だが、すぐに石動が押えて膝枕を続ける。


「冗談はほどほどに頼む」

「巧君がよければいいわよ?
 仕事に理解を示しそうだし」

「刀を振っていれば満足できる人格破綻者なんぞ碌な者じゃねえよ」


 そう言ってその話を打ち切った。
 モー・ショボーの機嫌が戻ったのがロケ地についてからの事であった。














「陰陽師『芦屋祐市』VS占い師『ワンロン千鶴』!!
 というわけで、夢の企画が始まりましたあ!」


 上杉が盛り上げるようにカメラの前で喋っている。
 今は、社長宅の大きな庭で収録を行っていた。
 その広さは、門から玄関までかなりの距離があるのでかなり広い。
 途中で伝家の宝刀・親父ギャグを放ったりして盛り上げている。


「(姉さんは……いままで仕事は占いとか相談しかしていないのにな)」

「(せっきー、お腹すいた~)」

『(ファリス・レナ・ククルをゾンビ化させてエロ奴隷にする挿絵つきSSでも書こうかな)』

「(なにをすればいいのでしょうか?)」


 石動達は邪魔にならないようにカメラの後ろで待機していた。
 それぞれは好き勝手に考えているようだが……。
 頭頂部が薄くなってはいるが、理知的なスーツの男性が喋っていた。
 彼が成上がった社長なのだろう。


「では、二階堂さんに霊視してもらいます!!」


 祐市がまず最初に始めた。
 石神は、霊視までは行うが、除霊を行うつもりはない。
 陰陽道の奥義をTVの前で使う事が憚れるからだ。


「むむ……見える!
 長い髪の女性と、細い中年男性。
 そして、十歳くらいのロングヘアーと三つ編みで眼鏡をかけた少女がいる!!」

「(見えているのかな?
  でも身辺調べて言っているだけかもしれないし)」


 モー・ショボーは懐疑的であった。
 確かに、目の前には祐市が言ったとおりの霊がいる。
 霊達は、社長……二階堂を案ずるかのように見つめている。
 更に、祐市は言い放つ。


「取り付いている霊は、貴方を恨んで害を成すことでしょう!
 急いで除霊しなければ!!」


 祐市は、懐から呪符や魔法石を取り出して二階堂の妹の霊に向かって投げつけた。
 石神は、困惑した表情で祐市を睨む。


「……」

「その様子じゃ霊を見れなかったようですね。
 俺が芦屋流の奥義で華麗に除霊してさし上げよう!」


 祐市は、そう言って攻撃を繰り返す。


「(馬鹿が……!!)」


 石動は、祐市の愚かな行いに歯軋りした。
 霊達は、見守り、守護していた……それを祐市は、害を成すと断じて排除に乗り出したのだ。
 呪符は自作か買ったのかは不明だが、少なくとも魔法石はどこからか仕入れてきたものであろう。
 石神が困ったのは、口で言って止められそうにない上に手遅れであったからだ。
  

「IAAAAAAAAAAAA!!」

「ほうら、姿をはっきりさせてきた!!」


 傷つけられ、悲しみ、怒り……そして憎しみが生まれた。
 妹の霊は、悪霊化してしまい、普通の人間でも視認できるまでになった。
 肉親を傷つけられた上に、邪気に当てられた二階堂の家族もまた悪霊化した。
 確かにこのような事をして悪霊化させて排除してから報酬を貰うデビルバスター・サマナーがいる。
 だが、それはデビルサマナー失格の行いである。
 デビルサマナーは、邪悪な敵と対峙する事も大事な役割であるが、霊や神々を鎮める事もまた重大な役割である。
 芦屋祐市は、そのような事も知らない霊が見えるだけの素人である。
 そして、無差別に霊を排除して今まで活動しているのだ……。
 二階堂は、悪霊を目の当りにして青ざめていた。
 石動は、石神の前へ躍り出た。
 石神を護るように石動はナイフを構える。


「ちょっと!
 勝手に……!!」

「緊急事態だ!
 そこの粗忽者の性で人死にを出す事は本位ではないだろうが!!」


 フリーダーが二階堂を後に退避させた。
 上杉は、スタッフたちを下がるように追い立てる。
 怨霊達が衝撃波を飛ばし、祐市を吹き飛ばした。
 石神は、悲壮な表情になっていた。


「間に合うの……いいえ、間に合わせる!!」

「ああ、間に合うさ……フリーダー!!
 癒せ!」

「承知しました……メディラマ!!」


 フリーダーの魔法が祐市を……そして悪霊化した二階堂の家族を治した。
 石動は、役小角を宿し、魔法を唱える。


「メ・パトラ」


 石動の魔法で怒れる霊の怒りが和らいだ。
 石神が、その隙に反閇を行いながら結界を張って、周囲の邪気と結びつかないように処置を行った。
 素人でも空気が清浄なものに変わったのを認識し、スタッフ達は歓声を上げた。
 今まで見守ってきていたような穏やかな霊であった事と、早いうちに処置をした為に手遅れにならなかった。
 石神の表情が元に戻った。
 あまりの展開に腰を抜かした二階堂を霊の前に立たせた。


「だ、大丈夫なのか…?
 悪霊だって……。
 俺を……恨んでいるんだろう。
 見捨てちまったから」

「いいえ、死しても貴方の事が心配で見守り続けていたの。
 そして……災いから護っていたの、ずっとね。
 災いが満ちて、護りきれなかったから貴方に影響が出たの」


 石神は首を横に振りながら言った。
 その言葉を聞き涙を流した。


「傷つけられ、悪と断じられたから怒っただけ。
 貴方が家族を忘れないで……感謝の念を持ち続ければいいの。
 罪悪感を持ち続ける必要なんてないの」

「そう……なのか」


 二階堂が呟いた時、家族達は微笑んだ。
 

「無かった事にしようとして悪かった……。
 そして、見守ってくれてありがとう。
 もう大丈夫だから……無理しないでいいから」


 二階堂の言葉を聞き、霊は見えなくなった。
 安心して成仏したようだった。
 二階堂は、石神に深々と頭を下げた。
 上杉は、頭を掻きながら言った。


「こりゃあ、オンエアできないな……。
 でも、どう視ても姐さんの勝ちっすね!」


 そう上杉は断じた。
 だが……倒れていた祐市は認めなかった。


「なぜだ……!!
 俺が除霊していたのに……」

「お前は、闇雲に傷つけていただけだ。
 害のないものまで傷つけ、必要以上に二階堂氏を脅かし、霊を悪霊にした。
 霊感を売り物にするのは勝手だが……生兵法は怪我の元だ。
 除霊は二度とするな、はっきり言って迷惑になる」

「……認めない!!
 みどめ゛な゛い゛!!」


 祐市は、泣き叫んだ。
 それと同時に、石動達は圧力を感じた。
 とくに上杉は、驚いた。


「ぺ、ペルソナの感じがする!!」
 
「お゛前ざえ゛い゛な゛げれ゛ばぁ゛!!」


 祐市は、ペルソナを生み出した。
 黒い人型のペルソナであった……それは石動のCOMPにデータとして記録されていたものに似ていた。
 早乙女が交戦したキングレオのペルソナ・JOKERに……だが、目の前のペルソナは肥大化していた……。
 

「じね゛え゛!!!」


 
 JOKERが呪詛を石神に飛ばす。
 濃密な呪いは周りの雑霊を巻き込み、更に強大な弾丸となって襲い掛かる。
 

「鬼魔駆逐 急々如律令!!」


 石神が唱えた言葉の意味は、『速やかに悪鬼、悪霊を駆逐せよ』であった。
 彼女の手元の札が飛び、呪詛を相殺した。


「芦屋さん……貴方……!!」

「お゛での゛じゃ゛ま゛ずる゛や゛づばじね゛!!」


 祐市の軽薄であったが、多少は整っていたマスクは見る影が無かった。
 顔面は石膏を塗ったかのように真っ白で、紅い唇以外はなにもない面相に変わってた。
 上杉は、それをみて大声をあげた


「な、なんじゃこりゃー!!」

「JOKER……という奴らしい」

「代理殺人をおこなったりするアレ!?」


 石動は頷く。
 現代の剣客の足元に携帯電話があった。
 拾ってみた所、祐市のものであった。


「ああ……本体は死亡したんだが、コイツだけが一人歩きしているようだ。
 ……なるほど、着信履歴に自分自身……、そういうことか」

「どういうこった?」

「このペルソナは『感染』すると言うべきか、JOKERに殺害依頼をした者へJOKERのペルソナを持たせ、暴走させると言ったところだろう。
 誰を殺そうとしたのか解らんがな……いや、もう殺ったのかもしれん。
 とにかく姉さんは、他に類が及ばないように避難させてくれ。
 ここは俺が引き受ける」

「解った……怪我しないでね。
 お父さん達も貴方の事を心配しているから」


 そういって石神はスタッフと二階堂を避難させはじめた。
 JOKERに取り込まれた祐市……JOKER祐市は、石神を狙ってペルソナを発動させようとする。


「JOKER!!」


 JOKERの巨体が体当たりで石神に襲い掛かる。
 上杉が、飛び出して庇う。


「あぶねえ、姐さん!!
 ……って、あれ?」

「GYAAAAA!!」


 上杉には傷ひとつなく、逆に体当たりしたJOKER祐市がダメージを受けて苦しんでいた。
 上杉は、不思議そうに自身の体を撫でていた。


「物反鏡で反射させた」

「あらら、俺って意味無かった?」

「姉を身を挺して救おうとした事実は変わらんよ。
 礼を言う」


 そういってから石動は、上杉に、以前から使っている霊木の棒を渡した。


「護身用だ」

「サンキュー!
 じゃあ久々に真のリーダーの実力を見せてやるぜ!
 ペルソナァ!!」

『あれは……マッハ、いやネヴァン!!』
 

 ラームジェルグは、上杉が出したペルソナをみて心当たりがあった。
 鳥の仮面と鎧が一体化しているようなものを纏った翼の生えた女性が現れた。
 ネヴァン……「名前は「毒のある女」の意味であり、「戦の狂乱の女王」とも呼ばれる。
 戦場において、戦士たちの頭を混乱させ、同士討ちを引き起こすとされる。
 三位一体の女神……バイブ・カハは、モーリアン、ネヴァン、マッハの3人で、3人とも神々の王アガートラームの妃である。

 ちなみにマッハは「赤毛のマッハ」とも呼ばれている。
 赤い髪に赤いまつげに真紅の服を身にまとっており、赤毛の馬に乗って戦場を駆け巡る。
 何度も転生して現れ、豊穣の女神としても崇められている。

 モーリアンは、灰色の長髪に、同じ色のマントをまとった美女である。
 他の二人がアガートラームとともにクロウ・クルーワッハに殺されたが、ただ一人モーリアンだけが生き残った。
 その後、クー・フーリンに恋をするが拒絶されてしまい、彼に呪いをかけた。
 また、アーサー王伝説に登場する魔女モルガン・ル・フェイもモーリアンが原型となっているといわれている。
 そのつながりで上杉のペルソナに気がつくことが出来た。


「超ウルトラスーパー必殺~……ザン」

『ショボ!!』


 それでも、弱点だったのが派手に吹き飛んだ。
 上杉は頭を掻きながら言った。


「久しぶりに出したから最初の時のネヴァンしか出なかったわ~」

「忠告しておく、これから厄介事に巻き込まれていくだろう。
 鍛えておけ」

「りょ~かい。
 ってか神取が生き返ったっていうのが驚きなんすけどね。
 鷹司君(『神取の異母弟である城戸』の息子)が異常に似ていててっきり生まれ変わりかと思っていたっすけどね」


 話すうちにJOKER祐市が起き上がった。
 手当たり次第に破壊しようとペルソナを発動させようとしたが、フリーダーが接近し、飛び回し蹴りを放った。
 見事な手並みに上杉は口笛を吹いた。


「ひゅ~、やっる~!!」


 JOKER祐市は、すぐに起き上がって叫ぶと、石動達の体が重く感じた。


「これは……」

「マスター、ランダマイザと推定」


 弱体化させているようであった。
 追撃をかけようとペルソナで氷結魔法を放つJOKER祐市。
 だが、放たれる直前に体が軽くなり、皆回避できた。


「オットを助けるのがツマの役目だもん!」


 モー・ショボーが上空に浮かんでいた。
 能力低下させる魔法を解除したのは彼女のようだ。
 石動かポツリと言った。


「礼を言う……」

「えへへ~」

「じゃま゛ずる゛や゛づ……gyaaaa!!!」


 JOKER祐市が、モー・ショボーを目障りに感じて攻撃しようとした。
 だがJOKER祐市は、両腕に鋭い痛みが走って集中が途切れた。
 石動の両手に血塗られた歯車状の刃を持っている。
 JOKER祐市は、指先から血が流れている腕を押えながら石動へ殺意を漲らせた。


「後始末が面倒だからな。
 そろそろ終わらせる!!」

「了解しました。
 ランダマイザ!」


 まず、フリーダーが弱体化魔法をかけた。


「むー!!!」

「天の旋風!!」


 動きが鈍ったところにモー・ショボーの真空波と上杉のペルソナによる真空魔法が襲い掛かる。
 JOKER祐市は巻き込まれ空に高々と上がった。
 石動は、JOKER祐市より高く跳躍し、呪いの歯車から首狩りスプーンへと変形させていた。


「終わりだ」


 渾身の力を込めて叩き込んだ一撃で再び地面に叩きつけられたJOKER祐市。
 むうん……と唸ってから動きを止め、気絶した。
 白塗りの顔ではなくなったが、石動が診た所によると、精神が安定していないように思えた。


「さて、どうするべきか……奴の所に連れて行くか」

「あの~」

「なんだ、上杉」

「あれってペルソナっしょ?
 ならイゴールのオッサンなら何とかできると思うぜ!
 ちょうど木陰にベルベッドルームの入り口があったし」

「……なら頼もうか。
 俺はペルソナ使いの素養はないからな。
 イゴールに色々聞いてみてくれ」

「アイアイサー!」


 上杉は、祐市を引き摺って近くの木陰まで運んでいった。
 騒動を鎮圧できたが、石動の表情は重かった。


「……拡散していったら不味いな。
 だが、JOKERに願う人間は不特定多数だ」


 モー・ショボーは、暗い顔で考え込む石動に近づけなかった。
 ラームジェルグは、わざと茶化して空気を変えようとした。



       、--‐冖''⌒ ̄ ̄`ー-、
      /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡''rffッ、ィ彡''ノ从iノ彡
  >'';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 ''>了   なに、せっきー? 危険なJOKERの拡散を防げない?
 _く彡川f゙ノ''ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: ''〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)  せっきー それは無理矢理防ごうととするからだよ
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ''无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/'' ; |丶ニ  ノノ    逆に考えるんだ
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}  /ノ   「拡散させてもいいさ」と
    ヽ !  `''゙!       ,.,,.`三''゙、,_  /´
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-~、 ) |       考えるんだ
  ,r{   \ ミ  \   `'' ''≡≡'' " ノ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `''ー-、__
            \  `''ー-、  // /:.:.}       `''ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
              ′ / ! ヽ                                           』
                  



「………」

『悪ふざけだったな、スマン』

「いや、それでいい。
 幾分頭が冷えた」


 石動は、何時もの表情に戻った。
 だが、開き直りでなく、何かを考え付いた様子であった。










 
 あとがき
 ブラウン登場!!
 さらにジョーカーがワラワラ。
 どう打開していくかは……お楽しみ。



[7357] 第2期 第39話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/15 02:00
 石動は、事務所で紙の束を速読し、机の上に放り投げた。


「……JOKERの被害がちらほら見えるな」

『性質が悪ぃな……』


 石動は、公安零課に先日の事件を報告し、更に警察で得た情報を受け取った。
 香我美によって書かれた途中報告書はかなり要点がうまく書かれていた。
 それ故に、事態の深刻さを余計に実感していた。
 だが石動は、表情を変えなかった。


「南条にも言っておいたが……潜在的にJOKERに殺人依頼した数は、多い事は間違いない。
 あのメンツを総動員しても何とかなるとは思えん位にな」

『弱っちいけど、数が多いからな』

「いや、それだけでは終わるまい。
 確かにペルソナ使い自身が強くなければ、唯の的だ。
 だが……早乙女の交戦記録と比べて肥大化していた。
 人間の心を糧に更に強くなると推測できる」

『おいおい……マジかよ』


 ふざけて言った事が罰が当ったのかな~と言いながら頭を抱えるラームジェルグ。
 だが石動は、焦る様子はない。


『何時もならもっと怖い顔して深刻そうな雰囲気を出すけど……どうにかできる当てがあるのか?』

「『逆に考える』……だ」

『へ?』


 狐に抓まれたような表情になったラームジェルグを尻目に石動は言った。
 電話の受話器を上げ、電話帳で通話番号を確認してからかけ始めた。


「答えはそれでいいはずだ……。
 協力者が必要だが、関東に憑いたJOKERは……落とせる」

『巧がそういうなら期待しておくがよ。
 で、JOKERは……奴の仕業だろうがな。
 それが終わっても次の嫌がらせが来るだろうが』

「まあ、そうだな……。
 だが、JOKERを落とせば恐らく、奴の行動を大いに抑制できる。
 報告書にあった事件と比べて急ごしらえの計画だからな……前回の手痛い敗退もあるから、更に一当てすれば黙りこむだろう……しばらくはな」


 ラームジェルグは、そこまで聞いたあとに自分のPCの部屋に戻っていった。
 後で『剣客でも世渡りや謀をしなきゃならんとは……難儀な時代だ』というぼやきをしながら、誰かと通話し始めた石動であった。





















 ラームジェルグがパソコンを起動させて3時間後、事務所のドアが開いた。
 石動は、珍しく驚いた表情をしていた。


「まさか、こんな島国にバチカンの騎士が足を伸ばすとは思わなかったぞ」

「ああ、私もそう思っているところだ」


 しなやかで鍛え上げた身体も持った美女……イーリスも同意した。
 どんよりと曇った表情をしていてもその美しさは目立っていた。
 ショートカットの髪を櫛で整え、石動の机の前に移動してから用件を切り出した。


「先日、ストラディバリウスをの確保に失敗した挙句に破壊もできなかったわけだが……その節は助かった。
 枢機卿からまた任務を申し渡されたのだ」

「大抵の悪魔を屠れるお前でもしり込みする敵か……」

『どんな奴だ?』

「……!!!?」


 ラームジェルグが背後から声をかけてきた為に大いに驚いて下がった。
 アンデッド(幽霊)嫌いは、相変わらずのようであった。


「日本でアルカードを発見した」

「ほう……」


 石動は、その名前を聞いて興味が湧いてきたようであった。


『な、なんだって~!?
 せっきー、やめとけ~アンデルセン神父でも負けるほどの化物ぶりだぜ!!
 もしくはラスボスを5秒で殺せる最強の盾を持っているかもしれないぜ!!』

「その神父は名のあるデビルバスターなのか?」


 イーリスは首を傾げるが、石動はラームジェルグの戯言を無視して話を進めた。
 
 アルカード。
 それは、ドラキュラ公または串刺し公と呼ばれたヴラド3世が召還した吸血鬼である。
 不死身であり、数々のデビルサマナーが戦ってきたが、それでも討ちとったという報告がなかった。
 それほどの大物が出てきたのだから、石動が興味を示すのは当然であった。


「バチカンでも抹殺対象にしているのだが、討ち取れなかった。
 それを討てと私に命令したのだよ。
 不死身であるから、それを破る方法を調べてもらいたい、そして逃がさないように協力してくれないか?」

「それは、教会の意思か?」

「いいや、私の独断だが……だが、バチカンと他の機関やサマナーと協力することは多いから問題はない。
 教会からでないが、報酬は弾むつもりだ」


 イーリスは、自腹を切るつもりである様子であった。
 それを見たラームジェルグは、問い詰める。


『で、実際のところは?』
 
「さっき言ったとおりだ。
 頼む、力を貸してくれ」

『実際の一番の理由は?』


 ラームジェルグは、じりじりとイーリスに近づいていった。


「……間違いなくアンデッドを手駒にするだろうから、護ってくれ」

『そうならそうと、早く言ってくれ。
 でも……並みの敵なら瞬殺できるだろうに』


 絶大な力をもった天使相手に大立ち回りした戦いぶりを見ていたラームジェルグは呆れながら言った。
 石動は承知の旨を伝えようとした瞬間に、入り口のドアに視線を向けた。


「こんばんは、石動巧」

『誰?』


 和服を着て、頭巾で目元を隠した女性が現れた。
 石動達に入り口にくるまで察知させなかったところから只者ではないようだ。
 唇は、口紅が塗られ、艶かしい色気を感じさせている。
 石動は、考えられる答えを言ってみた。


「ヤタガラスの使い……か?」

「そうです、貴方と顔をあわせるのは初めてですね。
 石動巧、その依頼を受けるつもりですか?」

「そのつもりだが……問題があるのか?」

「いいえ、ありません。
 ただ……アルカードは、帝都に害を成す儀式を行っているようです。
 ですので、帝都を護るデビルサマナーを同伴させていただきたいのです」

「俺は構わないが……」


 ヤタガラスの使いの言葉を受け、石動はイーリスに視線を向けた。
 イーリスは、縦に首を振った。


「ああ、構わない。
 強い味方は多い方がいい」

「ご了承していただきありがとうございます、異国のデビルバスター。
 アルカードは、恐ろしい敵です。
 あの十三代目、十四代目葛葉ライドウでも討ち取れなかったほどの……くれぐれも注意してください」

「なに……あの孤陋の妖闘人や、悪魔召喚皇ですら取り逃がすとは……」


 葛葉ライドウ……それは、葛葉四天王とよばれる腕利きのデビルサマナーの一角である。
 孤陋の妖闘人とは、十三代目の通り名であり、誰ともほとんど接触することなく、一人で数多くの悪魔を屠ったとされるサマナーである。
 そして、悪魔召喚皇とは十四代目葛葉ライドウにつけられた通り名で、数々の帝都の危機から守り抜いた彼に相応しいものであった。
 石動は、面白い事になりそうだと心の中で思い始めた。
 

「で、同伴する者はやはり……」

「ええ、当代の葛葉ライドウとそのお目付け役である業斗童子……彼らと共に帝都に巣食うアルカードを討伐してもらいます」


 ヤタガラスの使いがそういったとき、彼女の背後から人影が現れた。
 黒いジャケットとスラックスを着た美男子が肩に黒い鷹を乗せていた。
 男がやって来たのを確認してからヤタガラスの使いは去って行った。
 男は、20代前半にも、30前にも見える奇妙な印象を与えており、モミアゲが異常に尖っていた。
 美しい顔立ちで涼しい目元で一見冷たい人間のように思えるが、それだけではないと石動は感じていた。
 そして、頭には部屋の中にも関わらず、大正時代の学生帽を被っている事が一番目立っていた。
 その顔は、石動が知っているものであった。


「錠平……十四代目に似ているな」


 黒い鷹が翼を広げて飛び立ち、、石動の机の上に置いてあるスタンドに乗った。
 

「貴様が石動巧か?
 向こう側の錠平から話を聞いている。
 我は業斗童子……そこにいる17代目葛葉ライドウのお目付け役だ」


 鷹が冷静な声で話し始めた。
 なんでも、デビルサマナー(それに類する能力をもつ者)なら聞こえる声らしい。
 17代目ライドウは、ポツリと言った。


「よろしく」

「噂に名高い十四代目の孫……だったか。
 情報屋にアルカードの潜伏先を探させ、俺も式を飛ばすとしよう。
 その間に、互いのできる事の確認をするとしよう」


 そう言って石動は、部屋の奥に引っ込んだ。
 その間に、ラームジェルグが応対に当っている。


『大学芋でいいのかな?
 あと宇治茶をだすけど……』

「ありがとう」

「日本の菓子か……頂こう」


 イーリスとライドウは、ラームジェルグが出した物を受け取った。
 特にライドウは、表情はそのままであったが、嬉しそうに食べていた。
 十四代目の大好物は、彼の好物でもあったようだ。


「まったく、大学芋ごときで……。
 ま、またか……!!
 ほ、本能に逆らえん!!?」


 ライドウが宝石を取り出し、ゴウトの前で動かす。
 本能的に誘われてしまったゴウトは、ライドウに翻弄されている。
 石動が戻ってくるまでの十分間、ゴウトは遊ばれ続け、終わった時には凄く疲れた様子であった。











 おまけ


『なあ、イーリスちゃん』

「な、なんだ?」

『バチカンって異教徒は皆殺しとか、密かに十字軍を編成していたりとかするの』

「まさか……そんな事をしてみろ。
 イギリスと日本が手を組んで戦争を仕掛けてくる」

『……漫画のようにはいかないな』









[7357] 第2期 第40話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/15 13:51
「異界送りお願いします」

「解りました、帝都に仇名すアルカードを見事討ち果たしてください、十七代目葛葉ライドウ、石動巧」


 首塚がある大手町……の異界にアルカードが潜伏している。
 だから異界に送る志乃田の名も無き神社に来たのだ。
 ヤタガラスの使いによる異界送りによって異界に行くためだ。


「ふむ、昼時の今なら奴も出歩く事も出来ず、逃げられる可能性も減るわけだ」


 ゴウトは、そう言った。
 ちなみに、石動のラームジェルグに対してゴウトは、『非常識な……』と評価している。
 自我がここまで確立しており、物理的な干渉がある程度できる守護霊は規格外であるらしい。
 (PCでエロサイトを運営していると知ったら頭痛がすることだろう)。
 ライドウの方は、別に気にしていないようだ……大学芋をくれる霊ならいい霊だと判断しているようだ。


「では、参ります」


 光に包まれた石動一行。
 気がつくと、空の色が異様な東京の町並みにいた。
 イーリスは、呟いた。


「ついた……」

『そうだね、プロテインだね』

「何を言っておるのか……本当に邪鬼・ラームジェルグなのか?
 伝聞とは違うが……」


 脈絡のないラームジェルグの言葉に呆れて果てていた。
 石動は、サングラスをかけており、表情は読めないが……心苦しそうに否定した。


「……アレを標準にしないでくれ。
 キョウジやライホーとは懇意にしているのだが、葛葉一門の情報は鉄壁だからな。
 是非、業斗童子から色々と聞きたいものだと思っていた。
 デビルサマナー界の長い歴史の中にいる生き証人だからな」

「ふむ……お主が石神家の秘蔵っ子なのは噂に聞いている。
 我の目に適うならば、指南の一つでもしてやろう……話せる範囲の中でな」


 ゴウトも、石動の存在について多少の噂を聞いているようだ。
 石動の申し出を無下に断らなかった所からすると評価しているのだろう。


『わ、私のせっきーをとらないで、むー!!』

「……何のマネだ?」

『ツマのマネ……鳥さんの人気に嫉妬した。
 今では反省している』

   
 ラームジェルグがモー・ショボーの声色を真似て茶々を入れる所が子憎たらしい……と石動は感じていた。
 その様子を見たイーリスは、アンデッドを怖がる自分が馬鹿みたいだと毒気を抜かれていた。


「(……なるほど、緊張を解す為に行っているのだな)」


 ライドウは、密かにラームジェルグの評価を引き上げた。
 ……それが正しい見方か、勘違いかは不明だが。
 石動は、COMPを機動させた。


『マスター、御用ですか?』

「ああ、すまないが……仕事だ。
 早乙女の剣道の試合を観戦している所に悪いが」

『いいえ、丁度終わりました。
 早乙女さまは、関東大会・個人の部で優勝しました』

「まあ、今の技量なら当然だがな。
 では、呼びもどすぞ」


 石動は、ラームジェルグから役小角に守護霊を交代し、魔法を唱えた。
 目の前には、人形のように美しい顔立ちの美女……フリーダーが現れた。
 

「マスター、お待たせしました」

「ああ、頼むぞ。
 彼らは、今回の依頼で共に戦う仲間だ」

「はじめまして、私は、造魔フリーダーと申します」


 恭しく礼をするフリーダーにゴウトは感心した。


「ほう……造魔というのは、もう少し感情の乏しい者だと思ったが」

「ヴィクトルではなく、ウーリが造った造魔……俺を支える仲魔だからな。
 どうも俺の体質だとコイツ以外、俺に釣り合う実力を持った仲魔を使役できないからな……」

「……」

「……」


 ライドウとフリーダーは、無言で見つめあい、握手をした。
 何か通じるものがあったのだろう。
 続いてライドウが悪魔召喚を行った。
 

「人数が多いからな……使役方法は古式でいく」


 腰のリボルバータイプの拳銃……いや、GUMPを取り出した。
 金属筒……小型の悪魔召喚用の管を弾丸代わりに篭め、祝詞を唱えながら発射した。
 すると、銃口の先にCOMPの画面のホログラムが浮かび、『妖獣召喚』『禍津召喚』と表記されていた。
 銃口から二つの光が生まれ、悪魔が実体化した。

 現在では、COMPによる召喚が主流である。
 手軽な上に、複数の悪魔を使役できるからだ。
 だが昔は、金属管に悪魔を入れて使役していた。
 普通のサマナーならば一体が限度であり、熟練すれば2、3体なら何とかできる……その程度であった。
 だが、昔の使役術の利点もある。
 COMPで普通に使役するより能力が割り増しされるのだ……使役の為の修行が恐ろしく大変であり、素質が無ければ使えないが。
 また、悪魔を2,3体使役して戦う場合と5体以上使役して戦う場合では後者の方が数に押しつぶされるわけだが。
 十七代目は、現代の技術と、古来からの技術を使い分ける異色のサマナーなのだ。


「……手短ニ 頼ムゾ」

「敬礼!」


 白銀の巨大な狼が大儀そうに吼えた。
 機嫌が悪ければ何でも喰らうとばかりに睨みつけている。
 真紅の軍人が帝国陸軍式の敬礼を行ってライドウに挨拶した。
 巨大な機銃を両手に持ち、腰にはサーベルをしており、顔面部は仮面に覆われていた。
 イーリスは、狼を見つめながら感心していた。

「フェンリルか……流石、葛葉というべきか。
 もう一人は……」



 フェンリルは北欧神話の出身で、ロキと巨人族の女アングルボザの間に生まれた巨大な狼である。
 始めは神々の下で育てられていたが、やがては太陽さえも飲み込んでしまうだろうと予言された。
 それを恐れた神々は、ドヴェルガーに作らせた魔法の紐グレイプニルでフェンリルを戒めた。
 この時、グレイプニルから抜け出せないことに気が付いたフェンリルは、テュールの右腕を食いちぎった。
 だがラグナロクが訪れ、戒めから開放されたフェンリルは、ロキの所に馳せ参じ、オーディンを飲み込んだ。
 その後、オーディンの息子ヴィーザルによって顎を引き裂かれ、心臓に剣を突き立てられて殺されてしまった。 

 紅い軍人は色気のある敬礼を行って自分の素性を述べた。


「小官は、旧帝国陸軍の南野一輝曹長であります!」

「曹長は……黄泉傀儡という死人の兵隊だ。
 並の人間なら理性や感情を消失しているところだが、彼だけは例外だった。
 こうして御国の為に働く事を続けている」 


 イーリスは、その言葉を聞いて後ずさりをした。
 黄泉傀儡……いや南野の仮面のうちから困惑した気配が漂い始めた。
 

「しょ、小官に何か粗相でも!?」

「……すまない、死人が苦手なだけなんだ」

「失礼しました!!」


 そう言って南野は、イーリスから離れた距離に立った。
 イーリスは、実直な軍人に気を使わせてしまった罪悪感を感じていた。
 ライドウも、イーリスが苦手であるアンデッド(正確には少し違うが)を召喚してしまった事を詫びた。


「すまない」

「だが……南野の能力は高いのだ。
 勘弁してやってくれ」

「わかった……」


 ゴウトの口ぞえもあり、イーリスは、南野の同行を認めた。
 石動は、準備を整えた事を確認してから懐から瓶を取り出し、イーリス達に振りかけた。


「悪魔避けの退魔の水だ。
 野良悪魔を相手にせずに手っ取り早くアルカードを仕留めるぞ」


 石動はそう言って出発した。
 悪魔との戦闘はあまりなく、途中で喧嘩を売ってきた悪魔がいたが、あっけなく倒された。


「……時間の無駄とまではいかないが面倒だったな」

『でもさ、互いの肩慣らしと簡単な連携を取る練習にはなったよな』


 石動とラームジェルグは、消えていく悪魔の死体を眺めながら言った。
 しばらく進むうちに、目的地の首塚についた。
 漆黒の外套を身に纏い、毒蛾か蝙蝠のように舞っている。
 邪悪な呪詛を吐きながら一心不乱に祈っていた。
 その邪気が将門の首塚を侵食していた。
 ライドウは、静かに言葉を発した。


「そこまでだ」

「な……き、貴様はぁ!!」


 男……おそらくアルカードに間違いない。
 アルカードは、ライドウの顔を見て驚愕と、それ以上に憎悪と殺意を漲らせていた。
 

「く、葛葉ライドウ!!」

「ほう、錠平……十四代目が生きていたと思っていたのか?」


 ゴウトは挑戦的な挑発をした。
 石動は、十四代目(といっても平行世界のだが)を知っている。
 彼の孫である十七代目と十四代目は生き写しであり、アルカードが驚くのも無理もあるまいと思った。


「貴様のせいで……屈辱的な死を遂げたではないかああああ!!」

「死?」


 アルカードは、狂気を秘めた怒気を撒き散らす。
 十七代目は首をかしげた。
 ……彼、いや、アルカード以外は知らない。
 多くのデビルサマナーですら殺せなかった彼は、サマナーでない普通の人間に滅ぼされたという極めて間抜けな最期を遂げたのだ。
 その間接的要因は間違いなく、十四代目のお陰であるのだが……。
 石動は、わざとらしく言い放った。


「ほう、間抜けな死に様をしたわけだ。
 そして滅ぼされて蘇る……か」

『(巧は2回蘇っているから大きな事は言えないんだがな~。
  まあ、魔人と戦って討ち死にだから間抜けではないけど)』

「……き、貴様~ぁ!!
 この俺を侮辱するかぁ!!」


 アルカードが叫ぶと、地面から無数の屍が出てきた。
 警察官、学生、自衛隊、主婦、DJ……様々な職種のゾンビが数十体……いや、100体を軽く超えるほどであった。
 なかには、オークやコボルト、犬、カラスに極めつけあグレイ型宇宙人が現れた。
 バチカン騎士であるイーリスの顔を青ざめさせるには十分なほどであった。


「どうだ!
 今なら……」

『だが断る』


 何かを告げる前にラームジェルグが拒絶した。
 おそらく、手駒が少ない為に『降参すれば吸血して下僕にしてやる程度で許してやる』等の内容だろう。
 どちらにせよ、断られる事は確実である。


「な!?」

『このラームジェルグの最も好きな事は、自分で強いと思っているやつに対してNOといってやる事だ!!
 NOと言える合衆国日本人になろう!』

「自重しろ、ケルト人」


 流石の石動も自重を促すように嗜めた。
 アルカードは、殺されかけた事は多々あるが、ここまでおちょくられた事はなかったようだ。
 完全に怒り狂い、正体を現した。
 両腕が巨大な飛膜じみた翼に変化し、西洋兜のスカルキャップを彷彿とさせる頭部、落ち窪んだ眼窩、そして大きく広げられた口内には犬歯だけが乱立されている。


「殺す!
 殺してやる!!」

「ふむ……ここまで我を失えば逃げる可能性も低いか」


 ゴウトは、冷静にアルカードの様子を観察した。
 イーリスとライドウは、木の杭を確認し、隙があらば止めをさせるように用意した。


「露払いはフリーダーと、俺が引き受ける」

「フェンリルは遊撃、曹長は石動の援護を」

「面倒ナ」

「了解!!」


 フェンリルが火炎のブレスを吐き、南野が機銃掃射を行った。
 灼熱のブレスが通った後には雑魚のゾンビは灰になり、機銃に当ったゾンビは、花火のように肉塊を飛び散らせた。
 ライドウとイーリスは一気にアルカードに接近した。
 ゾンビ達を再び壁にしようとしたが……、


「ランダマイザ!!」


 フリーダーが弱体化魔法をかけ、ライドウ達の突破を援護した。
 ライドウが腰からコルトライトニング……祖父の愛用した同じ型の銃を取り出し、走りながら発砲した。
 イーリスも投げナイフを投擲し、ゾンビの頭部を粉砕した。
 石動は、手近な悪魔から斬り捨てていた。


「百鬼夜行とはいかないな、歯ごたえがない」

『まあ、そういいなさんな』

「抜刀!」


 接近してきたゾンビをサーベルで斬り捨て、また機銃掃射を開始した。
 数は多く、アルカードの妖術で強化されているが、それでも石動達の敵ではなかった。
 フリーダーも指先が変形し、大砲のような形に変わった。


「火炎魔法・プロミネンス、発射します」


 巨大な火球を生み出し、敵を飲み込んでいった。
 背後から憲兵のゾンビがフリーダーに切りかかったが、カウンターの回し蹴りで頭部を砕いた。
 石動は、MAGを消費してラームジェルグをクー・フーリンに変化させた。
 西洋の幽霊騎士から荒々しい戦神へと姿を変えた。
 妙法村正から夢想正宗に変え、渾身の一振りで、空間を歪め、十数体を纏めて切り裂き……いや、空間を切り裂いた後に戻る力でゾンビ達を『壊した』。

 
「ほう、やりおる……。
 だが、ラームジェルグといっておったが、何者だ?」


 ゴウトは、素直に石動とフリーダーの戦いぶりを賞賛した。
 フェンリルは、ライドウ達の後に続いて突撃し、敵を前脚で蹴散らし、炎のブレスで灰にしていった。


「死ねえぇ!!」


 アルカードは音波を飛ばすが、しっかりとライドウに防がれた。
 反撃とばかりにライドウがコルトライトニングで銃撃した。
 それを辛くも回避したアルカードであったが、左眼窩にスローイングダガーが突き刺さり、無様な悲鳴を上げた。


「ぎゃあああ!!」

「不死身であるが……恐ろしく強いほどではないな」


 イーリスは、回避行動を予測し、先読みして攻撃していた。
 さらにイーリスは、徒手空拳による連撃を打ち込む。
 アルカードも力任せに弾き飛ばそうとするが、巧みに流し、カウンターで掌打を顎に打ち込まれた。


「ぐぐぐ……こうばれば!!
 出て来い!!」


 アルカードが叫んだ時に、天空に魔法陣が現れ、巨大な竜を呼び出した。
 その姿は腐ってきった死体で、蛆が湧いていた。
 錬金術によって生み出された竜のゾンビであった。
 だが、出てきた直後に爆発が2発起こった。
 爆発の主は、遠くからのフリーダーの火炎魔法と南野のグレネード弾によるものであった。


「南野さま、見事です」

「上官、敵を掃討し終えました!!」

「な、なにぃ!?」


 アルカードは、早すぎる敵の全滅を知り、動揺した。
 その隙にフェンリルが竜の死骸を猛突進して止めを刺した。
 周りは既に残骸になったゾンビしかいなかった。
 ゴウトが告げた。
 

「貴様の殺し方は心得ておる。
 観念しろ」

「ぐ……将門公を怨霊化する計画が!!
 覚えていろ!!」


 伝説の吸血鬼は、そう言って宙に浮かび、飛び去ろうとした。
 アルカードは、高度を上げた時に高速で飛来する物体を知覚した。
 反射的にあるカードは、掌で防ごうとした……悪魔の身体であれば防御できると考えていた。


「ぐ……!!!」


 刺さったのは、木の棒であった。
 如何なる投法か、大口径のライフルの狙撃を受けたような衝撃が吸血鬼に走った。
 心臓をガードできて安堵したアルカードだったが……、


『知っているか?
 俺のゲイボルグはな……投げた槍から無数の茨が飛び出すってな!!』


 闘鬼クー・フーリンの殺法である『ゲイボルグ』。
 石動は、遥か後方から投擲した一撃……。
 傷口である掌から無数の茨が体内を……心臓目掛けて走り巡りはじめた。


「ぐ……がアア!!」


 危機を察知したアルカードは、反対側の手刀で肩口から切り落として難を逃れた。
 ライドウ達は、それをただ黙って見ていたわけではなかった。
 フェンリルを踏み台にライドウが跳躍した。
 さらに、イーリスがライドウの背中を踏み台にして駆け上がった。


「な……」

「逃がさない」


 ライドウはコルトライトニングで特注の銀の銃弾でアルカードの胴体を撃ち抜いた。
 吸血鬼は、耐え難い痛みが全身に焼け付くように駆け巡った。
 その隙が命取りだった。


「灰は灰に……塵は塵に還れ!!」

「がああああああああ!!
 ば、ばかなあああ!!!」


 イーリスは、アルカードの心臓に木の杭を打ち込んだ。
 伝説の吸血鬼は、心臓を貫かれ、身体が崩れ去った。
 フェンリルがライドウを、フリーダーがイーリスをキャッチした。


「アウォーン!!」


 フェンリルは高らかに勝利の凱歌を上げた。
 ゴウトは、皆に労いの言葉をかけた。


「よくぞやった。
 十三,十四代目すら仕留められなかった大物をよくぞ倒した」

『それにしても、『また』黄泉還りか』

「……自然に蘇ったのか、『奴』の仕業か?
 まあ、どちらでも良いがな。
 俺としてはアレを上手く始末した奴が誰か気になるな。
 さぞかし有能なデビルバスターだろう」


 石動は、想像を巡らせた。
 イーリスは、ほっと一息ついた。


「礼を言う。
 私だけではとても上手くいかなかっただろう。
 報酬とは別に食事でも奢るとしよう。
 ……一度、食べてみたい店があったのだ」


 ライドウと石動、その言葉を聞き、軽く笑った。
 ゴウトは、石動に近づいてきた。


「バチカンの騎士も噂どおりの手並みであったが…。
 それ以上に驚いたのはお前だ、石動。
 恐るべき戦士を守護霊にし、無数の悪魔相手に圧倒した技量。
 石神家が期待するだけある」

「サマナーとして欠陥持ちだがな」

「(だが……ゲイボルグと言ったところから判断して……、あれはケルトの英雄。
  そう、クー・フーリンを使いこなすとは。
  今まで見た形ではない事から判断して、我々が忘れ去った英雄の一面をもった存在ということか)」


 ゴウトは、無愛想な剣客に対して高い評価を持ったようだった。










 おまけ アルカードの死因。


 金粉を撒き散らす十四代目。

 ↓

 蝙蝠型アルカードに付着する。

 ↓

 日光に似た電灯照射

 ↓

 アルカード、金粉が光を乱反射して逃げ場がなく照射された。
 死に掛けるも、ライドウは更に優先させる事態があったので無視した。

 ↓

 小さい蝙蝠になったアルカード。
 その時、運悪くライドウの上司である駄目探偵に捕まえられた。

 ↓

 金粉を剥がそうと駄目探偵は爪楊枝を使う。
 その時、うっかり心臓に突き刺す。

 ↓

 ご臨終。


 ……間抜けですね、すっごく、間抜けです。
 




[7357] 第2期 第41話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/16 01:28


 一組の男女が気絶した男を縛り上げ、バンの中に放り込んだ。
 ゴールドのスーツを着た長髪男……ペルソナ使いパオフゥは、運び込んだ後に煙草を一服して休憩している。
 緑色の服を着た赤毛の女性……芹沢うららは、気絶している男を眺めている。


「あーあ、怖いな~。
 振られた腹いせにJOKERに依頼するなんて。
 でも……」

「なんだ、芹沢?」

「私も……昔の自分だったら、マーヤに嫉妬して冗談半分で依頼していたかも……」


 自嘲気味にいう芹沢にむかってパオフゥは言った。


「昔は、昔だ……今のテメエならそんなくだらない遊びなんざするかよ。
 いい歳しているんだからよ」

「そうね……って、私が歳取ったみたいじゃない!!
 まだまだ若いわよ!」


 そういって、軽めのボディをパオフゥに見舞う。
 これが彼らのコミュニケーションである。
 パオフゥは面倒臭げに言った。


「香我美の指定した所に引き渡せばいいな……まったくめんどくせえ」  

「そんな事いっていると酒代が減るわよ。
 香我美さんからのノルマはまだまだあるからいくわよ」














 高級スーツを着た若い青年……南条は、部下の松岡の報告を受けた。


「なるほど、JOKERか……」

「はい、多くの事件になっているようです」

「倒しても倒してもJOKERが次々に現れる……か」


 ビジネスでは決して見せない苦い表情を見せる南条。
 だが、松岡は悪い知らせを続けた。


「桐嶋様からの情報によりますと、ペルソナ使いの資質を持った者がなると恐ろしく強くなるそうです。
 さらに……JOKER自体も強化されていっているようです。
 まるで、人間の心を糧にするかのように……」

「JOKER候補はいくらでもいるからな……キリがない」


 松岡は、南条に一束の書類を渡した。
 すぐに目を通してみると顔色が変わった。


「これは……JOKER候補者だと?」

「はい、石動様からの情報提供です。
 『JOKERは自分自身の携帯に通話して行うから、伝手さえあれば断定できる』と」

「南条グループでも、他人の通話記録を得る事はできないがな……。
 如何なる手腕で手に入れたか知らないが、コレがあれば前もって防げるな」


 南条も幾分か顔色が良くなった。
 そして背後にある剣の入った袋を持った。


「圭様……行くのですか?」

「ああ、神取の存在がある以上、俺は奴に会わなければならない。
 今のうちにブランクを埋めなければ負けるのは俺だからな」


 松岡は、渋い顔をしていた。
 南条コンツェルンの次期総帥にあるまじき行動に。
 だが、諦めたかのようなため息をついた。


「いいでしょう、たまには『息抜き』が必要でしょうから。
 ですが……」

「わかっている……一人では行動はせん。
 稲葉か城戸あたりに助力を頼むさ」


 南条はそういって、着替え始めた。














「ふう、これで今日で7人目です。
 零課の皆さん、お願いしますね」


 小柄な美男子が、そう言った時、トレーラーが出発した。
 美男子……原野は、手近な自販機でサイダーを購入して飲み干す。


「コツを掴めばJOKER候補者を保護するのは簡単ですね」


 戦って捕まえる事の多いパオフゥや南条達が聞けば驚く事だろう。
 原野の行う事は簡単だ。
 JOKER候補者の家に訪問を行う。
 そして原野が『伝染病(もしくは新型インフルエンザ)の疑いがあります、急いで検査をさせてください』と切り出すのだ。
 原野の交渉能力で何時の間にか乗せられてしまい、JOKER候補者が保護されていくのである。
 周りの職場には連絡済みという手際のよさ……悪魔交渉人は伊達ではない。


「有無を言わさぬ呼吸が大事ですね……。
 それにしても、他も動いていますか」


 原野が言っているのは、パオフゥや南条達ではない。
 JOKERの恐ろしい力を注目する者がいるのだ。
 

「アメリカに、西の糞虫ども……それにマフィアですか」

 
 西のある国々に対して特に憎悪を燃やす原野であった。
 だが、すぐに何時もの表情に戻った。


「さらに……警察内で裏切り者ですか。
 新世塾でしたっけ?」


 思案を更に巡らせている。
 原野が得た情報によると、神条……いや神取鷹久が操っているらしいと聞いていた。


「ですが……可哀相ですね」


 原野は、心からの言葉を送った。


「風間さんと石動さんが地獄の鬼のような表情になっていましたから。
 あの二人を本気にさせた時点でお終いみたいなものですから」
















「大殿……」

「九鬼よ……」

「……」



 大柄の天狗……鞍馬天狗と黒髪の絶世の美女……スカアハが背中を向けている九鬼に声をかけた。
 金髪の美女……ジェシカは、九鬼の悲しみと怒りを感じ、かける言葉がなかった。
 九鬼の視線の先には、子供の死骸があった。


「……子供の死は見たくないものです」

「……主よ、悲しむ暇はない。
 やれねば成らぬ事があるのではないのか?」


 黒い鬼……姿はあれど陽炎のように実態を掴ませない得体の知れない鬼が九鬼を叱咤する。
 子供が噂を聞き、喧嘩した友達を殺すとJOKERに依頼した。
 勿論、心から殺したいわけではない。
 だが……JOKERとなった子供がその友達を殺害し、正気に戻った時……子供は絶望して失踪した。
 それを知らない子供の両親が捜索を依頼したのだ。
 そして九鬼はデビルサマナーとして依頼を受けた。


「そうですね、隠形鬼。
 子供が出来たばかりで、感情移入してしまいました」


 九鬼は、諫言を受け入れ、心を入れ替えた。
 隠形鬼……藤原千方の四鬼の筆頭であり、恐ろしい技の持ち主である。
 気配を消して敵に奇襲をかける事を得意としており、分身の術をもって敵を討つ。
 九鬼は、並の……いや、かなりの腕を持ったサマナーですら実体を掴ませない分身攻撃を見切って打ち破り、隠形鬼を従えることに成功していた。
 隠形鬼の読心術によって衰弱していた子供から失踪理由を知ることが出来た。
 だが、罪悪感に囚われていた子供は自分で自分の心を殺し、命を絶ったのだ……。
 隠形鬼が読心術で読んだのはその残滓にすぎなかったのだ。


「殿……」

「JOKER……ですか」

「ええ、関東を中心に起きている現象よ。
 倒しても倒しても現れる……」


 ジェシカも苦い顔をしていた。
 魔人ですら倒せばひとまず事態を収拾できる……だが、今回はそうはならず、更に強化されたJOKERが現れるのだ。
 スカアハは、神妙な顔で思案に耽る。


「(……あまりに悪質な手口だ。
  倒しても戦闘経験が他のJOKERに渡っている。
  いつかは……サマナーの手に負えなくなる。
  コレを考えた黒幕は何が目的でJOKERを放ったのだ?)」











 石動探偵事務所では……石動達が部屋で話しこんでいた。



『さくらちゃんは、関東大会の後……フリーダーが出て行った直後にJOKERに襲われたって』

「死ぬかと思いました……」

「そうか」

『なんでも優勝できると思っていた優勝候補の一角が、さくらちゃんに当って2回戦負けして腹いせにJOKER占いして速攻で覚醒して襲い掛かったらしいぞ』

「……何時もの事じゃないか」

「……しくしく」


 真実ではあるが、残酷な言葉を早乙女に送った石動であった。
 悲しい事にフリーダーとラームジェルグからフォローの言葉は無い。
 もはや、彼女が行く先々に事件が起こるという某名探偵並の遭遇率であった。
 フリーダーは、石動に質問した。


「マスター、何を考えているのです」

「内なる敵、外なる敵……そして真の敵についてだな」

『内は新世塾、外はこの情勢に尻馬にのる馬鹿、そして最後は『奴』だな?」


 ラームジェルグの言葉に石動が頷いた。


「そうだ。
 JOKERを落とし、奴に一太刀浴びせなければ事は終わらんからな」

「ですが、無限に湧く事は防げません。
 無数のJOKER候補者がいます」

「細工は流々仕上げを御覧じろ……といったところだ。
 早乙女、稽古の時間だ」

「は、はい!」


 石動は、そう言った後に地下の訓練場へ向かっていった。
 早乙女は、慌ててついていった。
 フリーダーは、頭を傾げていた。


「マスター……どうお考えなのでしょう?」

『さあな。
 だが、巧はできない事を軽々しく出来るとは言わんよ。
 信じろ……アイツをな』

「そうですね、ラームジェルグさま」

『さて、俺は……っと』


 ラームジェルグは、PCゲームをやり始めた。
 フリーダーは、小説を読み始めた。
 主の考えを理解するために、情操教育の為に。
 だが、ラインナップが『魔界転生』『駿河城御前試合』等の剣呑なものばかりなのは如何なるものか。
 バロールが『スクールデイズ』『勇者オルステッドの冒険』『バハムートラグーン』『DRAG-ON DRAGOON 』を恋愛小説と偽って読ませようとしたときは、流石のラームジェルグも止めたが。




あとがき
今回は閑話的な話。
ソルガディ第2部を完結させたら、俺は……ディケイドのリ・イマジネーションしたSSに挑戦してみるべきか?
とか思ったり思わなかったり。



[7357] 第2期 第42話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/17 22:21



 背広を着た2人の男と、一人の美女が地下通路を歩いている。


「へえ、まさか皇居の地下にこんなところがあるなんてな」

「キョウジ、キョロキョロしない。
 暗いから気をつけて峰岸君」

「はい、レイさん」


 江戸城。
 武蔵国豊嶋郡江戸にあった城で千代田城とも呼ばれる。
 江戸の地に最初に根拠地を置いた武家は江戸重継であり、江戸氏の居館が江戸本丸・二の丸辺りの台地上に置かれていたとされている。
 徳川幕府の公文書である徳川実紀では、江戸氏が没落した後、太田道灌が長禄元年(1457年))に江戸城を築城したのが江戸城のはじめとされている。
 更に後に、秀吉に後北条氏旧領の関東六州(武蔵・相模・伊豆・上野・下総・上総)を与えられ、駿府から転居した権大納言である徳川家康が入城した。
 その時には、太田道灌が築城した時のままの質素な城であったが増築を続け、現在の形に成った。
 徳川の世が終わった後には、皇居として用いられている。
 
 閑話休題。
 話が変わるが、峰岸とキョウジの出会いは奇妙であった。
 峰岸とレイでは、峰岸がある事件でサマナーになった時にレイと出会い、レイから助力を受けていた。
 その後、キョウジと会ったのだが……、

「……」

「……」

 
 超一流サマナーであるキョウジと峰岸は見詰め合っている。
 キョウジのパートナーであるレイ・レイホゥは不思議に思った。


「(なんか……初めて会った気がしないんだよな)」

「(初対面って気がしないな)」


 気妙な感覚があったらしい。
 その後、先輩・後輩のような間柄になった。
 お互い巻き込まれてサマナーになったという共感があったせいだろう。
 では、話を現代に戻そう。
 キョウジ達は、ある神社の地下から江戸城への地下通路を歩んでいた。
 葛葉……そしてヤタガラスに日本国での大事な会合があるためだ。
 このような事を行った最後のときは、二十世紀末にあった……その時は、日本の滅ぶ瀬戸際であった。
 キョウジ達は、地下通路を抜けた。
 抜けた先は、広大な江戸城の地下神殿で、3体の巨大な神像が置かれている。
 3体の神像は、三貴子(みはしらのうずのみこ)で、太陽神の天照大御神、夜を統べる月神・月讀命、後に高天原を追放された建速須佐之男命(素戔男尊……スサノオノミコト)であるらしい。
 すでに数人の男女が集まっていた。
 いずれも名のあるサマナーであり、葛葉やヤタガラスに所属するものばかりである。
 当代の葛葉ライドウとゴウトもいた。
 レイが静かに言った。


「ここまで揃えるなんて、余程の大事のようね。
 ……私達が最後のようね」

「残念ながら、あと一人大物が残っている」


 レイの言葉を否定したのは、一匹の黒い鷹であった。


「……貴方は、業斗童子。
 どういうことかしら?」


 キョウジのパートナーは、ライドウの相棒である鴉にむかって問いかけた。


「……『ヤタガラス』が残っている」

「集めたのはヤタガラスや日本政府じゃ……まさか!?」

「おいおい、どういうことだよ?」


 キョウジは、思わず聞いてしまった。


「我も長き生の中で幾度か顔をあわせたことがある。
 指示を受けたことはないがな…」


 『一度敵対した事はあるがな』という言葉をゴウトは飲み込んで、説明した。
 ライドウが、驚きながら言った。


「まさか」

「そうだ、ヤタガラスの家紋を持つ数少ない者の一人だ。
 つまり、ヤタガラスの分身…あるいは息子かもしれんが、正統なる分家であるサイガが来る」

「サイガ?
 織田信長と戦った戦国大名でそんな名前があったな」


 峰岸の言った言葉に頷くゴウトであった。
 目を細めて説明した。


「そう、そのサイガだ。
 雑賀魔護壱(サイガ マゴイチ)……そこの御主が言った大名……初代サイガは、ヤタガラスの意見に逆らって信長と戦った。
 奴は真の魔王であったからな。
 ヤタガラスは、坊主どもが重税を課していることと、当時の為政者が信長であったためにしばらく動かず、動いた結果が……あの本能寺の変であるわけだ。
 もちろん、今宵来るのはその子孫だがな」

「マジかよ……織田信長って悪魔だったのかよ」

「キョウジ、勉強不足」


 レイは、キョウジに厳しい言葉をかけた。
 ゴウトは、首を別の方向に向けていった。


「噂をすればなんとやら……だな」

「え?」


 ゴウトの視線の先に、白いタキシードを着た浅黒い肌の壮年が立っていた。
 白い顎鬚を生やし、威厳に満ちていた。
 そして、発する気は並々ならぬものであった。
 彼が当代のサイガなのであろう。
 威圧感のせいで誰も話しかけない。
 しばらくして、和服の美女……ヤタガラスの使いが現れた。


「今宵の会合は、関東を中心に起こっている怪異・JOKERについてです。
 また、この地の地脈や気は大いに乱れ、死人が起き上がり歩き出す事や、死んだダークサマナーや滅びた悪魔が復活して害を成すことも……事態を軽く見ることはできなくなっています」

「……サイガの仕業ではないのか!」


 誰かがそう言った。
 サイガは、それを物ともせずに言った。


「確かに、先代が行っている以上、疑われて当然です。
 ですが……、それは帝都を憂いての事。
 決してみだりに乱すわけではなかった。
 まあ、このままであれば俺も先代と同じ手段をとるがな」


 その言葉に殺気立つサマナーがいた。
 その中で冷静にゴウトが質問した。


「見えたのか?」

「そうだ……帝都が奈落に沈む未来をな。
 それを防ぐ為に、東京の八角護門を巨大な結界にせねばなるまい?
 生きるもの、死したものを全て集めて臨界点を突破すれば……あらゆる災いから護る事ができよう」

「馬鹿な!
 先代も行うとして失敗した。
 そして奴の懸念は十四代目が防いだではないか!!」


 ゴウトが思わず吼える。
 だが、サイガは言い返す。


「今回もそうなるとは限らん」

「テメエ、人間を駒か燃料みたいに考えてねえか?」

「……誰かが言ったな。
 『人の命は地球より重い』と。
 だが、人の命ほど値引きが聞くものはあるまい。
 誰もが言うに違いない『大勢の命を護るには少数の犠牲が付き物だ』と」


 峰岸もその言い回しに不快感を覚えた。
 ヤタガラスの使いは、口を閉ざしている。


「未だ敵の姿は見えず、敵の策も狙いもわからない。
 ならば、未然に防ぐ手段を作る必要が」

「それすらも『黒幕』の策の中にあるとしたら?」

「……!!
 誰だ!!!」


 言葉を遮られ、思わず怒号を飛ばす。
 並みのサマナーならば恐れおののき、戦意を失うほどのものであった。
 だが声の主は、何処吹く風とばかりに気配を強めていた。
 声の主を知っているキョウジは声を張り上げた。


「来ていたのかよ、遅えぞ!
 石動!!」

「少し、野暮用があってな」

「俺に付き合ってもらったのだ」

「ほう、今をときめく公安零課の課長・風間ではないか。
 先祖に似ず切れ者だと聞いている」


 石動は、珍しく、和装で現れていた。
 陰陽師の衣装に似せてはいるが、動きやすいように作り変えてあった。
 夢想正宗を差した石動は、さながら天下御免の素浪人といった所であった。
 石動は、黒い背広を着た風間の横に控えていた。
 どちらも、圧倒的な存在感を示していた。


「何者だ?」

「公安零課の風間だ。
 そして横にいるのは、石動巧……今日はフリーのサマナーとしてではなく、陰陽師の石神家の代表としてやってきている」


 そう、普通のサマナーではこの会合にはこれない(峰岸は葛葉の傘下という形で来ている)。
 石動は、陰陽師としてきているのだ……。
 もっとも、陰陽道は手習いで、専門は大いに異なるのだが。


「確かに、大きな力になる。
 だが、犠牲が大きい」

「防げるならば安いものだ」

「だが、それが無駄に……いや、火に油を注ぐ事になるとすれば?」


 石動は、サイガの言葉を一刀両断した。
 

「『奴』は負の感情を糧にする。
 人身御供で死んだ人間の無念、残された家族の無念が最後の起爆剤になる」

「死んだ者は……」

「奴なら自我があいまいになった生贄に現実を認識させて怨霊にさせる事すら可能であろう。
 条件さえ整えれば『無から有を作り出す』事も、『歴史を捻じ曲げる』事もできる。
 人々の認識を変えるくらいならばもっと簡単にできる」


 サイガは、目の前の男を見つめている。
 疎ましいのか、感心しているのか、憎いのか……なにも掴ませない不気味な視線であった。
 レイが問いかけた。


「敵が誰か知っているの?」

「そうだ。
 さて……何から話せばいいのやら」


 石動は、顎に指を当てて考えこむ。
 『剣振りだけしておきたい性分なんだがな』とぼやきながら考えている。
 風間が言った。


「ならば敵の素性、目的、そして対策の順に話せ」

「そうだな……風間の旦那の指示に従おう。
 敵は『ニャルラトホテプ』。
 『本物』ではなく、『人間のネガティブな破壊の意志の原型(アーキタイプ)』だ。
 つまり人間の負の感情そのものといっていい。
 最終目的は、『人類抹殺』といったところだ」


 破壊する心の塊みたいなものだからなと付け加える石動であった。
 皆が静まり返る。
 ヤタガラスの使いも、サイガも口を挟まない。


「で、今回の目的は大掛かりではあるが、急ごしらえのものだ。
 散々周到に仕掛けた前回の計画が数年前に潰されているからな。
 本来なら数百年は見に徹したかもしれん。
 だが、メシア教事件で『神』が曲りなりにも降りた……その影響は大きかった。
 その尻馬に乗れば大いに遊べると奴は踏んだのだろう。
 成功すれば大穴の配当だからな」

「なぜそれを知っている」


 サイガの言葉に石動は答えた。


「運悪く奴と出くわしただけだ。
 そして俺は、多くの過去の情報を知っている。
 それらと今回の事件の要素を照らし合わせれば……」

「奴の狙いがわかるというものだ。
 前回ならば、正体も不明であり、計画もわからず後手に回った。
 だが、今回は対策はできている……。
 この結界内では奴が直接覗く事は出来ない。
 全ての力を用いれば可能ではあるが、遊び好きな奴が全力を出す事は絶対にしない。
 そのように石動は、確信している。」


 風間は石動の言葉を引き継いだ。
 共にやって来たという事は、その対策にあたっていたと峰岸は考えた。
 石動は、続けた。


「計画の一環が死人を蘇らせた事だ。
 ダークサマナーや邪悪な悪魔等を蘇らせて世を乱すのも目的ではあるが……『奴』にとって最良の手駒を呼んだ。
 神取鷹久……セベクスキャンダルを起こし、奴をペルソナとして呼び出した男だ。
 もっとも……操る者は操られてしまったようだがな。
 奴の優秀な能力なら細々した事をさせても安心だろうからな」

「じゃあ、新世塾の神条は……」


 キョウジの言葉に石動は反応した。


「そう、同一人物だ。
 政府内に獅子身中の蟲を作り出す事が目的だろう。
 それも計画促進の要素だ」

「石動よ、大きな目標もわかっているのか?」


 十七代目ライドウは、言葉を少なめに問いかけた。


「……巷で極端に幸運な者や不運な者が現れ始めた。
 さらに関東の気・地脈が大いに乱れ始めた。
 ………似ていると思わないか、業斗童子?」

「……!?
 まさか……そういうことか、石動!!」

「そう……十四代目がかつて立ち向かった強大な災厄『シナド』。
 『奴』はそいつを再び呼ぶことが目的だ」


 石動の言葉にざわめくサマナー達。
 ヤタガラスの使いは、石動に命じた。


「石動巧、貴方がこの件で一番真相に近い立場にあるようです。
 引き続き説明をお願いできますか?」

「承知した。
 業斗童子の調査書や他の資料を合わせて理解はできているからな。
 もし、説明に誤りや不足があればご教授願いたい」

「……よかろう」


 石動の願いをゴウトは聞き届けた。
 今まで話し続けているが、疲れの色を見せずに説明を続けはじめた。
 石動は、お面を一つ取り出した。
 憂いているような奇怪な面であった……模様が縦じまで丸みがあるお陰で西瓜を連想させている。
 それを見せたあと、180度回転させると、怒りの表情に変わった。
 そう、このお面は騙し絵になっている。


「知らない人間もいるから一から説明する。
 元々は山陰・槻賀多地方の土着の風神のシナド。
 槻賀多というのは……かつて要人暗殺を受け持った第8巫蟲衆の一族だ。
 その蟲には秘密があった……蟲を提供した稀人がいた」


 石動は、その成れの果てに出会ったことがあった(第一期 第22話~第25話参照)。
 稀人は『天斗様』と呼ばれた蟲人であった。
 迫害された彼らが定住したが、地の底に住み続ける羽目になった。
 『天斗様』には雌は存在せず、人間の女性に産んで貰うしかない……そこである取引をした。
 槻賀多に蟲を提供する代わりに、『嫁』と言う名の生贄を要求した。
 それが長く続いたが……大正の世になり、それに反抗した者がいた。
 禁断の運喰い蟲を用い、帝都中の人間の運を奪った。
 運が無くなった者は絶望する。。
 絶望的な未来に……前向きに生きれるほど強い人間は多くないからだ。
 そして……その絶望が扉を開く。

 『深淵世界』の。

 反抗した男はその時に現れる蟲を操って『天斗様』を屈服させようとした。
 だが……それは人が操れるモノではなかった。
 『深淵世界』は人々の深い絶望に満ちる不運の象徴と言うべき存在。
 シナドは人々の絶望そのものであった。
 門が開かれ、シナドはこの世を絶望に満たそうとした。
 だが、それを防いだのは伝説のデビルサマナー・葛葉ライドウだった……。

「シナドは、たびたび十四代目に警告を鳴らしていた。
 ライドウや周りの人々の姿を借り、憂いの仮面をかぶっていたらしい。
 だが……極端な運勢悪化や終末に現れると言われるアポリオン出現に伴う大衆の将来への絶望の念を受けてしまった。
 その時にシナドは、人々に将来への希望を捨てさせ緩やかな絶望を受け入れる世界へ導こうと「怒り」の面を以って動き出した」


 ゴウトは、口を出さない。
 今のところ説明不足も誤りもないらしい。


「十四代目が打ち破り、シナドを現世から追い散らした。
 彼はシナドだけではない、人々の絶望の念とも戦い、将来への希望を示した。
 だが、人が絶望し続ければ再びシナドは……現れる。
 シナドは、『奴』とよく似た存在だ」
 
「俺が……先代と同じ事をすれば」

「今度はアンタが『絶望を撒き散らす役』になっただろう。
 『希望を与えるつもり』が裏目にでる……まさにあの時をなぞる事になる」


 サイガは、己が過ちに気がついた。
 だが……キョウジがいった。


「じゃあ、JOKERもその一環なんだろ」

「そうだ……あれも人の負の感情でできたペルソナだ」

「……でもよ、際限なく広がりかねない。
 どうやって倒すんだ?
 拡散なんて防げないぜ、どう考えても。
 それに……戦うたびに成長する。
 その辺はどう考えている?」


 キョウジの不安を石動は言い返す。


「候補者は簡単に特定できる。
 香我美がやってくれた。
 奴が自分の携帯にかけた者を特定して身元を照会させた。
 自分の携帯番号がJOKERへの連絡先だからな」


 サイガがもう一度確認した。


「お前にはあるのだな、拡散を防ぐ術が」

「そんな術などあるはずがない」

「!?」

「……拡散を防げずに困るのならば、拡散させればいい。
 それが最速の鎮圧方法だ」


 石動は、説明を開始した……。





 あとがき。
 ニャル様の目的公開。
 でも『せっきーの逆に考える思考法』はもう少し引っ張ります。
 ラームジェルグ、シリアスすぎて会話に参加できず涙目。



[7357] 第2期 第43話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/20 14:29
 東京タワー……今は工事中になっているとされており、一般人は立ち入り禁止になっている。
 その場所でパオフゥは、黙って煙草を吸っている。
 今、ペルソナ使い達が集まっていた。
 『対JOKER用の抑制の為の電波塔』が完成して、もうしばらくしたら装置が此方に届くらしい。
 だが、パオフゥはその存在に疑問を抱いている。


「(あれは……ペルソナだ。
  物体でない奴を解析する事は不可能だと思ったんだが)」


 更にJOKERを倒しても拡散を防げるのかも解らない。
 だから、JOKERを発現できないようにJOKERの嫌う電波を加工して関東中に発信するのだ。


「(倒してもJOKERになった人間の障害がある。
  そして……発現できなくても負担が来るんじゃないのか?)」


 パオフゥが知る限り、ベルベットルームのイゴールしか治療できない。
 そして……治しても心の闇が晴れるわけでもなく、回復に個人差が出る。
 精神の弱い人間は衰弱することもあるのだ。
 パオフゥ達だけで全ての人間をベルベットルームへ連れて行くことは難しいだろう。
 

「(俺達ができる事は、JOKER使いが暴走する前に未然に抑えるしかないのか?
  だが、その程度なら香我美の奴が仕事をやらねえ……奴が動いていたという事は、根本的な解決があったからだろう)」


 香我美という男は、ものぐさだが、面白いものには興味を示し、楽しむ為の労を惜しまない。
 ますますパオフゥは、思考の迷路に迷い込んでいった。


「Mr.パオフゥ」

「ん……南条か?」


 南条は、仲間達と離れていたパオフゥに話しかけた。
 南条やパオフゥ以外にも……城戸達もJOKERになった人間を戦っていた。
 今回の手で解決できると聞いて、今回も協力をしているのだ。


「どうも腑に落ちないのです。
 『信用できない内なる敵がいる。
  だから裏を掻く為にダミーの塔を同時に幾つか設置させる。
  お前達には本命の警護を頼む』
 と、石動が言っていたのです」

「まあ……俺も据わりが悪いと思っちゃいるがな」


 他の仲間には告げていない事であった。
 他の仲間達は、コレで一段落つけると考えているからだ。

 連日、皆、関東中を駆け回っていたのだ。
 依頼を受けて行動しているパオフゥや時間的余裕のある稲葉ならともかく、芸能人である上杉や桐嶋、コンツェルンの次期総帥である南条、妻子を抱えた城戸、カウンセラーの為に更に勉強中の園村は時間を作るのに苦労している。
 疲労が蓄積してそろそろ限界になっていたのだ。


「……きっと妨害がくることでしょう」

「そうだな……」

「……そして何故、石動が此処に来ないのか……。
 それが最大の疑問ですがね」























 葛葉一門のサマナーは、苦虫を噛み潰した顔になっていた。
 僧の姿をした男が、パンクファッションの男に話しかけた。


「ファントムサマナーのような非道をせねばならぬとは……」

「だが、それしかあるまい」


 先日、石動という男が敵の狙いを判明させた。
 だが、それを防ぐ手段が非道なものであった。


『都内を停電させると同時にJOKERを発現を促す音波を流し、覚醒させる。
 そして全てを倒して終わらせる』


 その為の対JOKER用の弾丸が彼らが護っている研究所から出荷されるのだ。
 自衛隊や警官などに支給して人海戦術で当るのだ。
 対JOKER用の弾丸は、捕獲したJOKER候補者のJOKERを打ち倒す事に成功していた。
 精神の力を増幅させるように加工したオリハルコン製の弾丸でコストは非常に高いが、関東の平和の為にはしかたない。
 全て目覚めさせ、倒したら、JOKERの逃げ先は無くなり、消滅すると言った。
 ヤタガラスも石動の作戦を止めずに実行するようにいった所から勝算が十分あるのだと判断しているのだろう。
 彼らの視線の先に、葛葉ライドウが、目を瞑って立っていた。
 精神を集中させているのだろう。


「くそ……護るべき人間を傷つけなければならぬとは」

「……だが、本当に上手くいくのか?
 敵対勢力だっているだろうからな」


 彼らの不安が高まる一方であった。






















 JOKER候補者を収容していた隔離施設の扉が爆発した。


「神の国の実現の為に!!」


 白いローブを着た大人数の武装集団が如何なる手段で調査したのか、公にされていない筈の場所を特定して襲撃しているのだ。
 目的は、JOKER候補者達なのだろう。
 マシンガンの銃撃に恐れて逃げまとう職員達。
 彼らを無視して、JOKER候補者達が眠る場所へ行った。


「確保しろ!!」


 運び出そうとした時、候補者の身体の感触が異様だった。
 気がついた時には、候補者達は……紙の人型になっていた。
 人型の正体は、邪鬼・式王子……陰陽師の召喚する鬼である。
 術者の命令によって様々な姿をとり、主として他人を呪って病気にさせることに使われている。
 元々は、陰陽道で占いに使う式盤を守護する神将の事を指していた。
 公安零課がよく召喚する悪魔の一種であった。
 全ての候補者は偽者であり、式王子達が次々と侵入者を殴り倒していた。


「ど、どういうことだ!?」

「アンタ達の考えはお見通しってことだよ」


 髪を短く切った青年……峰岸が、GUMPを機動させながら言った。
 出口には、白いスーツの男……キョウジが先回りして逃走を防いでいた。
 遠くから悲鳴が聞こえたが、キョウジの仲魔が侵入者を無力化しているところだろう。

 
「新世塾かメシア教団……と思ったが多分、偽装だろうな。
 奴は、アメリカか、中国か……もしくは犯罪組織のどれかがやってくると予想したらしいがな。
 まあ、本当に確保しても無駄だがな。
 JOKERは、今日で最期だからな」

「な……!」

「じゃあ、死なない程度にボコってキリキリ背後関係を吐いてもらうとするか」


 超一流のサマナーの仲魔達が敵を包囲した。
 もはや、逃げ場は……ない。
















「JOKER候補者を全て覚醒させて、根絶やしにするとは頭が悪いが確実な手段をとったな!!」

「な……!!」

「ほ~お。
 聞いていなかったようだな!!」


 爬虫類を連想させるような中年の男がニヤリと笑った。
 南条は、焦りの表情になっていた。
 背後には50人のJOKERがいた。
 それだけではなく、SATらしき者や武装した私服警官もいた。
 その様子からしてこの男の仲間のようだ。
 この数、相手では仲間だけでは倒しきれない上に逃げ切れない。
 パオフゥは、目の前の男が誰か知っていた。


「テメエ……!!
 島津だったな……嫌みったらしいキャリア野郎だったな!!
 無能だったから出世に乗り遅れたらしいがな」

「私を知っている者がいるとはな」

「香我美の奴が言ったとおりだったぜ。
 まさか警察内の裏切り者がテメエだったとはな」

「私を認めない屑ばかりのこの国に見切りをつけただけです。
 あんな愚物のほうを評価するなど……価値の湧かない奴らめ!!
 だから、こんな浅はかな手しか打たなかったのですから!!」
 

 勝ち誇る島津だったが、冷徹な声がそれを打ち砕いた。


「浅はかなのは貴様だ」

「……か、風間ぁ!」


 風間は静かに歩いてきた。
 無数のJOKER達が殺気立つが、顔色一つ変えていなかった。


「予想通り、裏切り者は貴様だったか」

「ふん!
 もう遅いわ!!
 ここで貴様を殺して裏切り者の罪を着せて……」

「生憎、全て予想済みだ」


 風間は、手に金属筒を持っていた。
 それは……昔のサマナーが使っていた召還筒であった。
 風間が力を込めると蓋が開き、光の塊を発現したJOKERに向かって放った。。
 それは、まるで火の玉か花火のように飛んでいき、JOKERに直撃した。


「GYAAAAAAAAA!!!」

「な……!!」

「終わりだ」


 島津は、呆気に取られた。
 中に入っていたモノ(悪魔か何かだったのだろうが)が崩壊しながら、そして燃えながら飛んでいき、神風特攻したのだから。
 JOKERが苦しみながら消滅し、候補者は元に戻って気絶した。


「ふん!
 まだJOKERはいる!!」

「言ったはずだ……終わりだと」

「「な……」」


 パオフゥと南条は驚いた。
 他のJOKERも同時に悲鳴を上げながら消滅し、元に戻っていったのだから。
 その光景に動揺した島津だった……気がついた時には風間に接近され、手錠で顔面を思いっきり殴り飛ばされて壁に激突した。
 島津は、朦朧としたところを警視庁の鬼課長によって手錠をかけられた。
 いつの間にか無数の式王子やモムノフ、鬼達によって裏切り者の警官達は無力化された。


「島津……内乱罪で逮捕する」

「ば、馬鹿な……JOKERが……なぜ」

「全ては奴の計略通りだった」


 『電波塔』も、『対JOKER用の弾丸』も『JOKER覚醒音波』を全て内にいる裏切り者の燻し出しを兼ねた囮であった。
 弾丸は本物だが、量産は嘘である……また、電波塔や音波は出鱈目であり、そんな代物は開発できなかった。
 つまり、JOKER退治の切り札は、別にあったのだ。
 公安零課の職員が現れ、裏切り者を護送車に押し込み、JOKERに囚われた人々は警察病院に運ぶ手筈のようだ。


「すまないが説明願えるか?」


 南条がペルソナ使いを代表して質問した。
 風間は、咳払いして言った。


「そうだな……協力者であるお前達には聞く権利がある。
 囮に利用されていたからな」


 まず、風間は、南条達が囮である事を明かした。
 そして、今回の『JOKER駆逐作戦』は、石動の主導であった事も明かした。
 ペルソナ使いやヤタガラスに集まったサマナー達に本当の事を教えなかったのには訳がある。
 裏切り者がいることも勿論だが、彼らが動けばニャルラトホテプの陣営も察知して、妨害すると考えられるからだ。
 だから『優秀』かつ『影で動いてくれる』者を選んで石動は、動いたのだ。

 JOKER退治の切り札は……『かつて葛葉キョウジだった者』である。
 便宜上、今回は、彼がこの時に使っている体の名前……『ロクスケ』の名前で呼ばせてもらう。
 ロクスケは、死んでいるためにマークが薄かった上に、身体を幾つも使い分けているので敵に捕捉されることなく行動できた。
 ロクスケは、優秀なサマナーであり……大先輩ともいえる『初代』葛葉キョウジの使った術式も知っていた。
 初代は、陰陽術を用い、悪魔を暴走させて『今生の暇乞い』や『断末魔の力戦』すら力にして特攻させる『一度で使い切る召喚術』を用いていた。
 その召喚術は、ソドム火炎系の悪魔ばかりを封印しており、ソドムの火を纏わせていたのだ。
 ロクスケは、その秘術を応用して、候補者から切り離したJOKERを術式で縛って崩壊させたのだ。
 風間が放ったのもロクスケが縛ったJOKER達の内の一体である
 無論、彼だけではJOKERと候補者を切り離せないのだが……石動には手段があった。

 サイコダイバー……以前、ある事件で知り合った特殊な能力者の協力で候補者の精神の奥底にいる直接出向いた。
 そしてJOKERを引きずり出し、分離させた。
 崩壊したJOKERは他のJOKERに情報を受け渡すが……戦闘経験だけでなく、滅ぼした術式も受け渡してしまったのだ。
 分離した候補者は、異常な躁の状態で異常な精神状態になったが、JOKERを崩壊させたと同時に正気に戻っていった。
 石動は、香我美には警官やパオフゥ達、原野に渡したデータとは別にJOKER候補者を選抜させていた。
 九鬼に依頼して保護してもらったのだ。
 子供が死んだ事に怒りを感じていた九鬼は、石動の想像を上回る速度で保護を終え、ロクスケに渡していった。
 JOKER候補者に使った浄化の術式が一つでなく、様々であった。

 愛欲によって道を踏み外した者には愛染明王の力で愛欲を悟りに変えることで浄化した。
 子供を害する者を殺す為に願った母親には、鬼子母神が救いを与えた。
 迷いに陥った者には、一切の無知を破るヴィシュヌの法輪・スダルサナによって断ち切った。
 ただ邪悪なる者には、ソドムの炎の神罰を与えた。
 心の闇に囚われた者には、大日如来の真理の光が注がれたり、鍾馗によって心に巣食う病を追い散らされた。
 ……このように、人々の心に応じて最適の術式を仕掛けた。
 
 風間が開放した瞬間に、ロクスケが仕上げたJOKER達が同時に崩壊・浄化されていった。
 JOKERは人間の負の心……いわば『穢れ』である。
 ロクスケの仕掛けた術式は、JOKERにとって無数の種類の毒薬を一気に飲まされたようなものであった。
 連鎖的に広がった『浄化』と言う名の毒によって……JOKERは滅んだのだ。


「じゃあ、石動は……」

「全ての仕掛けを上手くいくように裏で動き続けていたわけだ。
 お陰で剣が振るえんと不満を漏らしながらな」


 パソコン好きなキョウジやハッカーであった峰岸は、石動の真の作戦を推測し、それを確認しに行った。
 JOKERの最大の特徴は、無数にあり情報を共有化している点にある。
 JOKERを無数のネットワーク化されたPCだと見立て、それを壊す為にどうするか考えれば答えは自然に見えてきたからだ。
 その為に石動は、裏切り者やこの期に乗じる第3勢力の敵の掃討を担当させたのだった。
 ライドウやゴウトも気がついた節もあり、裏切り者がでそうな場所の配置につけるように申し出ていたが……。
 パオフゥは、若干やさぐれの度合いを増やしながら言った。


「結局、良い様に使われちまったようだな」

「……敵を騙すにはまず味方から。
 それを忠実に実行したと言えるが……」


 南条も納得はしたが、多少思うところがあるようだ。
 その気持ちを神取にぶつけよう……そう、南条は考えた。


「JOKERを一気に殲滅した。
 これで『ニャルラトホテプ』の出鼻が挫いた。
 今のうちに世の乱れた部分を立て直せば奴を引きずり出せる。
 そうなればお前達の出番もあろう」


 風間の言葉に南条は驚く。


「警察が民間人に任せるつもりですか?」

「日本の治安を護るためだ。
 裏では手段をあまり選べんからな。
 それに……因縁があるのだろう、神条……いや、神取と」

「ご存知でしたか」

「それも仕事の内だからな」


 そう言った後に、風間はパオフゥ達に敬礼をした。


「協力に感謝する。
 JOKER対策に奔走していた君達も枕を高くして眠れるというものだろう」

「まあな……奴の性でジャガーズの試合が見れずに徹夜しちまったからな」

「俺も嫁売の試合を見れずに睡眠時間を削ってしまったからな」


 パオフゥと南条の言葉に風間も最後に言った。


「実のところ対策で眠れなかったからな……これで3日連続の徹夜だったよ」





 










 あとがき。
 まあ、皆予想通りだと思いますが、JOKER退治の手口はこれしかないかな?と。
 どう実行するかを工夫するしかなかったわけですが、どうだったでしょう?

 感想でもありましたが、ペルソナの面々は……高校生とか民間人とかが世界規模の陰謀に挑むので無理ゲーすぎです。
 ソルガディのせっきーの場合だと……人脈が異常杉。
 そして、今回は台詞一つ無い主人公達であった、まる。





 交霊、いや恒例のアンケート。
 石動探偵事務所の二人が別行動……その時の台詞。


・「軽く前哨戦といくか」

・「助けてぇええええええ、先生!!」 




[7357] アンケートまでの時間稼ぎその3
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/19 22:57

 『デビルアナライズは信用できない?』

モー・ショボー。
愛を知らずに死んだ少女の魂がモー・ショボーになる。
長い髪と赤い唇の美少女の姿で現れて、旅人を誘惑する。
そして旅人は、脳味噌を吸い尽くすといわれる。


「……でも唇って灰色だし」


クダは、目の前にいる実物と、早乙女の携帯型COMPのデビルアナライズを見比べる。


「むー」


鏡の前で、石動を魅了する為に様々なポージングをしている。
15,6歳の美少女に変わり、さらに研究を続ける。


「……恋する乙女ね。
 誘惑するどころか誘惑されているけど……あんな無愛想な男のどこがいいのやら」


モー・ショボーの意中の人は、リリスの誘惑すら撃墜するほどの鉄壁ぶりで、一部の女性悪魔が誘惑して仲間内で自慢の種にしようとしている。
だが、未だに成功者はいない。
……ちなみ、T・U嬢の仲魔であるネコマタがノコノコとやって来たところに鳥型の反谷……じゃなかった般若に襲われてトラウマになったとかならなかったとか。








 『ベストカップル?いいえ、戦友です』

探偵見習いでいつのまにかデビルサマナー見習いになっている早乙女。
彼女の不幸ぶりは伝説になっている。

・悪魔の遭遇率は、3回中5回遭遇は当たり前、3回中8回遭遇も

・一日の最初の戦闘で魔人エンカウントを頻発

・休日で家に篭っていても2回悪魔と遭遇

・ため息をついただけで退魔の水の効果が消える

・集魔の水を使ったら月齢6週するまで効果が持続

・行く先々で悪魔と遭遇するため、囮捜査の達人としてヤタガラスも一目置いている。

・無限奈落アパドンでは、魔人と戦闘する前に早乙女の許可が必要

・ドラクエ3をしていた時にアリアハンでドラゴンと遭遇することがあった。

・200×年の10大事件 第一位「早乙女の平穏な一日」

・エルニーニョの原因は、早乙女がくしゃみをしたせい

・早乙女の涙が国際条約で『封印指定錬金素材』に指定されているのはあまりにも有名

・K県受胎が成就しなかったのは、成功していた方がマシなくらいな困難が待っているから

・ 街で早乙女が歩くだけでMAGの価格が上がるらしいよ


 これほどの伝説を後に残したとか残さなかったとか。
 無数の死亡フラグを力技で突破していく為に超一流のサマナーへの道へ落下していく……(歩むのは引き返す事ができる事なので)。
 彼女の心の友がいる。
 傭兵のテュルゴー氏であった。
 幸が薄い男だが、神がかり的な危機察知能力で死亡フラグをすり抜けていく。  それでも、不幸は降りかかるのだが。
 早乙女とテュルゴー……とても仲が良かったが、恋愛関係になることはなかった。


「「(不幸が移りそうだから)」」


 もう遅いともいえるし、この二人から生まれた子供がいたとしたら生まれる前から戒名を考えた方がいいかもしれないのでそれでいいのだろう、うん。











ムシャクシャしてやった、いまでは反省している。



[7357] 第2期 第44話 (6月21日 追加修正)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/21 07:42
 不幸な少女がいた。
 だが、初めからそうだったわけではない……むしろ恵まれていた。
 美少女であり、才色兼備で剣道部の主将を務めるほどであり、家柄も高い。
 欠点は、自分の能力に鼻にかける点や贔屓目に見ても良い性格とはいえない点によって、一部の生徒から嫌われる程度であった。


「私が頂点、女王なのよ」


 自分を嫌う存在など羽虫程度。
 敵など存在せず、剣道部の関東大会は勝ったも同然と思われていたが……。


「面!!」

「一本!!」

『なんと番狂わせ!
 去年の準優勝だった強豪を下したのは今年初めて参加した聖ナンディ学園3年・早乙女さくらだぁ!』


 衝撃的な勝利だった。
 一瞬にして間合いを詰めて面を奪っていた。
 自分も強いが、去年下した雑魚だったが、此処まで鮮やかには勝てない。
 その後も、軽々と勝ち抜いていき、私の対抗馬とか今大会の台風の目と称され始めた。
 日程の関係で剣道の試合は一日で終わらず、決勝で相手にする事になった……。
 恐らく、明日の準決勝も軽々と勝つだろう。
 さらに……、女性記者が早乙女という選手にインタビューを行っていた。


「早乙女選手、準決勝進出おめでとう!」

「ありがとうございます」

「凄かったわね~、なにか秘訣でも?」

「……遥かに強い相手と戦い続ける事でしょうか?」


 目の焦点が定まらなくなったのは気のせいだろう。
 さらにインタビューが続いた。


「明日の優勝への自信は?」

「ただ、自分の剣を出していくだけです」

「ありがとうございました!!」


 少女は、思った。
 自分よりも、快活で美しい相手……それも自分を上回る剣の使い手。
 だが、全国大会ならともかく、関東大会で負ける事は許されない。
 女王の座は、暢気そうな女に奪われてしまう……。


「おお、カッコいいし、胸もあるし」

「こんな 美少女がノーマークだったとは!!」


 母校の連中すら早乙女という女に目が向いていた。
 だから、勝つために必死になった。
 こっそり相手の防具を壊したり、画鋲を仕込んだり。
 相手に接触して、威圧したり。
 自分の思いのままになる男どもに襲わせて怪我……そして犯せとすら命じた。


 だが、早乙女は屈しなかった。
 壊れても、画鋲が仕込まれても顔色一つ変えずに取り替えていった。
 接触した時には、人当たりが良い上に威圧などどこ吹く風であった。
 襲わせた男達は、関東を荒らす暴走族であったが、返り討ちにあった。
 更に不運な事に、その日の内に暴走族の本拠地に何者かが襲撃し、全員昏倒させられ、仲間内で所持していたトルエンやシンナー、麻薬の類を山積みにされた状態にされ

た。
 暴走族は、警察の手入れに合い、壊滅してしまったのだ。


 試合は、結局……早乙女が勝った。
 瞬殺ではなかったが、終始優位で隙を見せたところを片手突きで勝利を収めた。
 憎しみに燃えた彼女は……、ある光景を見たのだった。




「いい汗かいたぁ」

「(お嬢って不運なのにどこか暢気だよな~)」


 暴走族を襲撃したのは佐助だった。
 流石におかしいと思ったうえに、後々の報復が面倒だった為に追跡し、壊滅させたのだった。
 様々な嫌がらせも、日ごろの事件に巻き込まれて感覚が麻痺したのか、怒ることなく防具を取り替えていった。


「……ん?」


 早乙女は、不吉な気配を感じた。
 以前感じた気配……いや、正確に言うとペルソナの感覚が。


「これは……!!」

『おおおお怨!!!!!!』


 顔面が真っ白で、唇以外ない不気味な女性が現れた。
 制服を着ていることから判断すると、同年代なのだろう。
 隠れていた佐助が現れ、戦いの用意をする。


『憎い……憎いぃぃいいいいいいいいいいい!!』

「お嬢……!!」

「な、何で普通に終われないのおおおおお!!!!???」


































「(なんて事があったわね)」

「(ホッホッホ、トラブルメーカーじゃのう)」


 学校の午後の自習時間……早乙女は、仲魔のバロールと通信している。
 携帯型COMPの試作中の新機能『仲魔と通信できる機能』を使っている……。
 召喚されていない仲魔と対話できる機能なのだが、役に立つかどうかは不明だ。
 早乙女は、太平堂の店主から新機能のテストを依頼されたのだ。


「(もう驚いたわよ)」

「(それでも、石動なら……
  石動なら、きっとなんとかしてくれる……)」

「(先生が解決したじゃない、何言っているの?)」


 往年のネタを早乙女は、わからないようだ。
 バロールは、気を取り直して返信した。


「(じゃが、『敵を討つ事』『裏切り者のあぶり出し』『被害者のケア』の三つ同時に行うとは……。
  さすが曾孫が認めた男じゃて!)」

「(剣が振るえなかったって不満だったみたいだけど)」
 

 石動から言わせれば、解決の手段を持っていたから作戦が浮かんだだけであり、手段さえあれば他の人間でも浮かぶ程度と。
 だが、間違いなく関東を巣食う邪気を払う切欠になったことだけは確かである。
 現在、関東中のサマナー達が総動員して動いている。
 特にライドウは、『追儺の儀』によって、乱れた関東の気に誘われた魔人・疫病神を倒し、邪気を払った。

 『追儺』とは、「鬼遣らい」「儺やらい」とも呼ばれ、大晦日(旧暦)の宮中の年中行事であり、平安時代の初期から行われている鬼払いの儀式で、もとは中国にルーツがあり、 秦の時代には皇帝自ら追儺の式を行っていた。
 後に、節分の元になっていく行事である。
 節分行事と追儺式とは似ているが、違っており、室町時代あたりから節分が庶民の間に広まっていった。
 方相氏と呼ばれる鬼を払う役目を負った大舎人と、方相氏の脇に仕える侲子が二十人が、大内裏の中を掛け声をかけつつ回っていた。
 方相氏は、熊の皮をかぶり、四つ目の黄金の目の面をつけ、黒衣に朱の裳を身に纏い、手に矛と盾をもって疫鬼を追い出していたのだ……だが、9世紀になった頃は逆に方相氏が鬼として追われる立場になった。
 鬼が嫌うのは桃だとかであり、追儺式の際は、桃の弓で葦の矢を放ち、桃の枝で地を打ち鳴らし鬼を追い払うことになってる。
 イザナミの分身とも言える八柱の雷神や大勢の黄泉軍に追われたイザナギが、黄泉比良坂本に生えていた桃の木から「実を三つ」取って黄泉軍達に投げつけ、悉く退散させた事から、桃には特別な力がある……だから追儺で用いられるのである。
 平安神宮の追儺式では、方相氏に従い童子が四門をめぐって鬼を祓い、次に四方に向かって矢が放たれ、鬼を退散させる。
 大昔、初代ライドウも『追儺の儀』を行ったが、それは見事なものであったそうだ。


「(この調子ならなんとかなりそうよね…)」

「(それは、厄介事がやってくるフラグを立てる台詞じゃて)」


 早乙女が帰りに、靴箱を見ると、封筒が入っていた。
 嫌な予感がした早乙女は、バロールを召喚して開けさせた。


「酷い……!!」

「佐助にやらせるのは忍びないし、魔王だし、一番強いから大丈夫かな?って」


 バロールが封筒を開くと、黒い煙……いや禍々しい呪詛がバロールに襲い掛かる。
 魔王である彼にはそんな呪詛は通じず、片手で弾き飛ばす。


『憎い……早乙女……しねえええ!!』

「バロールビィーム!!」


 目から怪光線を放ち、呪詛を砕いた。
 だが呪詛は最期に言い残した。


「何度でも…現れるぞ!!
 お前を呪い殺すまで!!」


 そういって呪詛は消滅した。
 バロールは、何時もの調子で言った。


「ふむ……力は間違いなく本物じゃのう。
 早くも呪ってくる敵ができるとは……サマナーとして一人前じゃな、やったのう!」

「い、いやあああああああ!!!」


 早乙女は、石動の事務所まで疾走した。
 国民的ネコ型ロボットに頼る少年のような涙目になりながら早乙女は訴えた。  
 

「助けてぇええええええ、先生!!」 


 今まで直接的な危険ばかりが降りかかってきた。
 魔人や魔王、魔人にダークサマナーと様々な種類の面倒事にあってきたが、このような陰湿な呪いを受けたのは初めてであった。
 だから余計に恐怖を感じているのだが……石動の言葉は非常に非情であった。


「すまん、無理だ」

「ええええ!?」


 早乙女は、涙目になりながら叫んだ。
 

「ななななんで?」

「挑戦を受けてな。
 俺としては最早興味はなかったのだが……」

『『ニャルラトホテプ』絡みだし、オセとの戦いの前の前哨戦というか肩慣らしを兼ねて戦いに行くのさ』


 石動の背後からラームジェルグが現れて説明した。


「つまり……」

「手が空いていない。
 だが……安心しろ、護衛には心当たりがある」


 そう言って携帯電話のメールを打ち始めた。
 バロール(人間体)が懐にある物を机の上に出した。


『人型?』

「うむ、コレに呪詛を篭めて敵が襲い掛かったのじゃが……早乙女のお嬢ちゃんに。
 いやあ、こんな敵が現れるとは、お嬢ちゃんも成長したものだ、いやあ、めでたい」

「めでたくありません!!」


 バロールの言葉を力いっぱい否定する早乙女。
 石動も思わず語った。


「この稼業は、嫌でも敵を作るからな……」

『呪ったり命を狙う敵ってどれくらいいたっけな?』

「手近な所はオセだが、それ以外に……アイツと、……魔人ホワイトライダーは斬り捨てたからな…」


 石動が指折りながら数えていた……早乙女はそれが20を超えていたような気がするが、精神的な安定の為に忘れ去った。
 自分も、同じような事になり始めた事を嫌でも思い知らされるからだ。


「話を戻すが、東洋系だな。
 その呪い(まじない)は……だが、早乙女を狙われるようなプロの呪術師は、まだいないだろうからな」

『一目ぼれして振ったなら……』

「だが、人型の呪いが素人くさい」


 サマナーとしての才は壊滅的に悪くとも、呪いに関しては、造詣が深い事に定評のある石動が断じた。
 バロールが、そこに口を挟む。


「そこじゃて。
 素人さんにしては、力のある呪いじゃて……名のあるマジックアイテムでも使ったのかのう?」

「おそらく……大聖歓喜天の力を用いたのだろう」

「カンギテン?」


 早乙女は、聞き慣れない言葉を聞いて首をかしげた。
 それを見たラームジェルグが説明をはじめた。


『歓喜天ってのはな、シヴァとパールヴァティの間に生まれた象頭の神ガネーシャが仏教に取り込まれた姿……秘仏だな。
 悪魔の種族でいうなら秘神ってカテゴリーで、威霊、魔神、狂神、女神といった神族を作り出す悪魔合体を行う際に新月時、合体事故が起きた時に出来る種族だ。
 他の神仏では到底きいて貰えないような無茶な願い事もかなえる存在だ』

「凄いけど……なんか裏がありそう」


 早乙女の指摘は正しい。
 石動が説明を補足する。


「賞罰は極端で、ご利益が強力な代わりに祟りも厳しい。
 約束を守らない者には、容赦ない罰を与える。
 『仏を奉ると、7代後の子孫の福徳をいっきに集め、大金持ちになることも夢ではない』とすら言われるが…………生半可な気持ちでは奉らぬ方が身のためだ。
 その姿は、象の頭を持った者どうしが抱き合っているとも、象の頭を持った男と人間の女が抱き合っているとも言われる。
 秘神は珍しい種族だから、俺も歓喜天を実物を拝んだ事もないがな」


 しばしば、「天部の神様は怖い」と言われ、この大聖歓喜天は、その代表とでも言うべきものだろう。
 今でもお寺の住職が、大聖歓喜天が祭られているお堂の側を通る時、この秘仏の像を直視せず、顔をそむけて通っているほどだ。
 この聖天を奉る作法には、水歓喜天法、華水法、浴酒法、浴油法等、様々である。
 
 例えば浴油法では、次のようにして行う。
 歓喜天の像を用意し、月齢が満月に近づいている期間に、清潔な室内に牛糞を用いて円壇を用意する。
 次に、一升のゴマ油を清浄な銅の器に入れ、真言でもって油を呪すること108回、その油を暖めて像を浸し、祭壇に安置する。
 供え物は、大根、歓喜団子、酒などを捧げる。
 次に清潔な銅のひしゃくでもって、その油を汲み上げ、像の頭に注ぐこと108回……これを午前中に4回、午後に3回、合計1日に7回行う。
 この作法を7日続ければ、願いは成就するとされている。

 写本によって、バリエーションが異なる上に、プログラムも写本によって違っている。
 中には、願いがかなわない時は、像を逆さまにして煮えたぎった油に入れるように……という手法を行えと書かれている写本もある。

 歓喜天の由来は幾つもあり、それが混乱を招いているので全てを語れないので一例のみ紹介する。
 昔ある国に一人の大臣がいたが、その大臣は王妃と不倫関係を結んでいた。
 王は大臣と王妃のの不倫関係知ってしまい、大いに激怒し、毒である象の肉を大臣に食わせてしまう。
 慌てた大臣に、王妃はケイラ山の大根を食べると毒を消せると教えられ大臣は、命を救われた。
 殺されかけた大臣は、王を深く恨み、大魔神ビナヤカと化して、国に災厄をもらたらした。
 王と国の民達は、観世音菩薩に助けを求めると、観音様は美しい女に化身してビナヤカの前に現れた。
 その美女に夢中になったビナヤカは、抱かせてくれと要求する。
 観音は、仏法を守護する善神になると誓い、祟りを行う事をやめたのなら、抱かれると答えた。
 かくしてビナヤカは、観音の化身の美女を抱き、善神となった……。

 このように歓喜天は、大根と縁が深く、双身像に当てはめ、二股大根が象徴として用いられることもある。
 歓喜天は、男女和合を司る神であり、性的なパワーに関わる神であるが……、読者の仲には、男女交合の境地を即身成仏の境地と見なし、男女交合の姿を曼荼羅として図現した教義・真言立川流を連想する者がいるかもしれない。
 だが歓喜天の修法者は、真言立川流と同一視される事を非常に嫌っている。


「……素人でも、歓喜天に手を出せば呪術の真似事でも本物同様に機能する」

『失敗すれば十中八九死ぬだろうがな……。
 おっと、さくらちゃんは気を病む事はないぜ。
 命を狙ってきたわけだし、こういう事は自己責任だからな』

「……和也を呼んだ。
 いざとなれば盾にしてもかまわん。
 で、どうする?」


 早乙女に問いかける石動。
 早乙女は、しばし考え答えを出した。


「そうですね、悪戯の範疇を超えていますが……。
 手遅れにならない内に止めたいですね。
 目覚めが悪いですし」

「呪いを返してお終いにしたほうが楽だが、それもよかろう。
 ならば、自分で呪った主を探す事だ」

「え?」

「おいおい、探偵の卵だろ?
 悪趣味だが、模擬実習代わりにやってみることだ。
 呪術対策の御符や回復用の薬品は出しておく」


 こうして、早乙女の『はじめてのたんてい』が始まった。







 あとがき。
 イチロー伝説ならぬ早乙女伝説にまた新たな一ページ。
 読者が納得する不幸ってどんだけー?
 JOKERになった娘は、2回戦で敗退した人ですが……、文章から解るように別口です(異常なエンカウント率だな)。
 というか、JOKER編の石動の策略の印象が吹き飛んでいるし。
 まあ、無理なのは……丁度厄介事に巻き込まれているからです。
 ……和也君、またもこき使われる。



[7357] 第2期 第45話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/21 06:26
 ファミリーレストランに三人の男女がいた。
 凛々しい美少女で長い髪をポニーテールに纏め、女性にしては長身である。
 猿顔の小柄な男性は、談笑しているが、少女を護るべく密かに周囲を警戒している。
 モノクルをかけた老人は、ドリンクバーのコーラを一気飲みしている。
 ……そう、早乙女と、猿飛佐助、バロール(人間体)である。
 端正な青年に差し掛かりつつある少年が愚痴を零しながら早乙女達にに近づいてきた。


「あ、すいません、和也さん」

「いいぜ、どうせ暇だし、バイト代は高いから。
 じゃあ、飯にしようぜ」


 早乙女達は、注文をし、食事を取りながら話を行った。
 無論、石動が捜査費用を兼ねて渡した小遣いか出している。
 和也が、同情の視線を送った。


「普通に暮らしていてそこまで厄介事に巻き込まれるってどうよ?」

「言わないで……」


 早乙女の顔が情けなくなっている。
 無理もないが。
 だが、本人の自覚はないが、早乙女の戦力は高い。
 武器は、最初は錬気の剣であったが、サンダーバードの加護を得て雷神剣・ジェロニモの弓へと変化するようになった。
 仲魔は、地霊カハク、珍獣クダ、魔王バロール、そして幻魔猿飛佐助。
 20~30代の三流サマナーでは持てない位の戦力の充実ぶりである。
 特に、佐助はなかなか見れない民霊タイプの悪魔であり、バロールに到ってはオリジナルのバロールから進呈された分身体である。
 当然、普通の悪魔より強い。
 それでも早乙女が天狗にならないのは、本人の謙虚さもあるが、並外れた人間ばかりが周囲にいる事も一役買っているだろう。
 閑話休題。
 バロールが和風ハンバーグステーキを食べながら聞いてみた。


「ほっほっほ、さくらや、心当たりはないのかの?」

「恨まれるような事は……剣道の大会前に暴走族に襲われたのを返り討ちにしたくらいかな?」

「……あー、なんだ?
 刺激的な生活だな」


 和也が思わずそう零した。
 佐助がすかさず言った。


「じゃあ、奴らを締め上げてくる。
 いまなら留置場にいるだろうから」

「なんで知っているの?」

「報復に備えて調べていたんだよ。
 そういえば、TVで麻薬かなんかで逮捕されている所を見たがな」


 勝手に動いた事を指摘されたが、鋼の精神で誤魔化した。
 かってに襲撃したと知ったらいい顔はしないと佐助は判断し、その事実を伏せた。
 早乙女は、唸った。


「うーん、仲魔に頼るって探偵としていいのかなあ?」

「使えるものは何でも使ったほうがいいぜ?」

「お武家さんもそう言うと思う」


 和也は、こだわりが無いからそう言い切った。
 有名なところでは、十四代目葛葉ライドウは、探偵の調査においても仲魔を活用していたと記録されている。
 石動も仲魔を使用するし、霊感の強さを利用して、サマナーでも感知できない残留思念や幽霊から情報を聞き出すことが多々ある。
 能力は有った方が捜査に役立つ事は確かである。


「本格的な捜査は、明日になるだろうな。
 悪ぃけど泊まらせて貰うぜ、ああ屋根裏に忍び込むから心配するな」

「好きにして……」


 多少ヤケクソ気味に言った早乙女であった。
 








 

 早乙女は、最初に容疑者は、JOKER化した剣道選手ではないかと考えた。
 だがJOKERに憑依された時の負担が大きく、呪術を行使できるほどの気力が無い為に除外した。
 佐助が締め上げた所(忍者であるために潜入はお手の物のようだ)、決勝戦であたった『宇美野しずく』である事が判明した。
 早乙女は、宇美野の高校の周囲で聞き込みを行った。
 才色兼備で家柄も高く、剣道も全国大会で優勝候補でもあった少女らしいが……。
 休日でも学生達がいたのでその評判を聞いた。

 男子生徒からは美少女として人気があるが、女子生徒は褒め称えるが、一部の女子生徒が彼女の本性について漏らした。
 『自分が一番でなければ気がすまい上に、相手を蹴落とす事に躊躇がない』
 『自分を崇めない人間に対しては、厳しく応対する』
 『彼女に注意した女子生徒を冤罪をかけて、転校に追い込んだこともある』
 と、多くの生徒がそれを知らないようだが、苛烈な人間である事がわかった。
 バロールが、笑いながら言った。 


「今回は、割と犯人の特定がラクかもしれんのう」

「だが、証拠がない」


 和也の指摘に佐助が頷く。


「お嬢の家の周りに人型を埋め込んだりはしていないからな……。
 家の周りを調べたし、昨日も警戒していたけどな」

「それが問題よね……。
 それに、時間をかけていたら手遅れになりそうだし」


 早乙女は、考え込む。
 佐助は言い放つ。


「もうさ……問い詰めればいいんじゃない?」

「え?」

「アレが呪ったかどうかはともかく、屑どもを襲わせたのは確定だし」


 バロールが横から口をだす。


「クダの読心術で呪ったかどうかもわかるしのう」

「ええ!?
 使えるの?」

「まあのう」

「そう、なんだ……」


 早乙女の脳裏には、読心術を使った猿モドキ(第2期 第3話参照)を思い出した。
 本人ならぬ本猿(?)は特別な能力と思っていたようだが、出来る悪魔は多い。
 『覚』なみの感度で戦闘で用いる存在はそうはいないが。
 早乙女にはいい思い出はないが、早期解決の為と言い聞かせて宇美野の家へ向かった。








 


「ビンゴじゃないか?」


 宇美野の屋敷の前についた時、和也が言い切った。
 家の周りが邪悪な気配に満ちており、以前感じた呪詛の気配にそっくりそのままであった。
 読心術を使うまでも無かったようだ。
 佐助が塀を飛び越えて警備システムが止まっている事を確認してからロープを下ろした。


「入るぞ」

「いやあ、ワクワクするなあ」

「ワシが若い頃には……」

 
 和也とバロールは喜び勇んで進入し始める。
 早乙女は、ため息をついてから最後尾で追いかけていった。
 しばらく進むと、紙細工の長い体を持つ蛇状の悪魔が現れた。


「式王子……だな」

「マハラギオン~♪」


 紙細工でできた式王子は、あっけなく焼き払われた。
 続いて黒い霧状の悪魔が現れた。
 その数は15体。


「なんだ、あれ?」

「あれは魍魎だ」


 佐助が和也の疑問に答えた。
 魑魅魍魎の魍魎である。
 魑魅魍魎であれば妖怪変化の総称であるが、魑魅が山の木や石などの妖怪とされるのに対し、魍魎は水の妖怪とされることが多い。
 魍魎とは……山や川、木や石などの精や、墓などに住む物等諸説様々で、はっきりしない胡乱な存在である。
 中国の自然界の精鬼で、『淮南子』には、「罔両は状は三歳の小児の如し、色は赤黒し、目は赤く耳は長く、美しい髪をもつ」と書かれている。
 また、『本草綱目』では、「罔両は好んで亡者の肝を食べる。それで『周礼』に、戈を執って壙に入り、方良を駆逐する、とあるのである。本性、罔両は虎と柏とを怖れす。また、弗述というのがいて、地下にあり死人の脳を食べるが、その首に柏を挿すと死ぬという。つまりこれは罔両である」とも書かれている。
 魍魎は死者の亡骸を奪う妖怪・火車と同一視されているが、これは魍魎が亡者の肝を食べるという点から連想されたためであろう。
 和也はニヤリと笑って精神を集中させる。


「ま、よく解らんが倒せばいいだろう?
 ペルソナ・セイリュウ……ジオダイン!」


 青い龍が現れ、雷撃を魍魎の一体に襲い掛かる。
 強烈な稲妻であっけなく消滅する魍魎。
 さらに、佐助が内縛して二頭指を立て合わせ、二大指をもって二中指の甲を押して印(不動根本印)を結ぶ。


「マハマグナス!」


 地面が隆起して魍魎を次々を貫く。
 早乙女はさらに召喚を行った。


「カハク、クダ……来て!!」

「わ~い!」

「面倒ね……」


 クダは面倒臭げに、カハクははしゃぎながら現れる。
 早乙女は指示をしながら武器を構える。
 一丸となった早乙女達の前に魍魎はすぐに倒された。
 奥に進む早乙女達に散発的に悪魔が襲い掛かるが、難なく退ける。
 邪気が強く感じる場所へ向かっていく。
 広い屋敷であったが、奇妙なことに人気がなかった。
 悪魔の遭遇率が増える……それらを打ち倒していきながら進む。
 気配のある場所は、地下の図書室のようであった。
 バロールが、異国の文字で書かれている本を無造作に掴む。


「おそらく父親か、先祖かなにかが集めた本から『本物』を引き当てたようじゃな」

「桐嶋が見たら大喜びするかもな、このオカルト本」


 和也は、本を眺めながら想像している。
 早乙女は、奥のほうへ視線を向けていった。


「歓喜天が彼女に災いを振りまく前に行きたいわね」


 更に奥に進むと……無数の死体の山があった。
 メイド服の女性や、高価そうな服を着た男性や女性が恐怖で歪んだ顔のままで死んでいる。
 ……恐らく、この屋敷の者であろう。
 和也が、死体を眺めながら言った。


「酷いもんだ……。
 そういえばウーリが言っていたぜ。
 恐怖や無念に満ちた死体や、それに湧く蛆は錬金術の良い素材になるってな」

「!?」


 早乙女は、幾度も死体を見たが、慣れる事は無かった。
 和也のほうは、表情が見えない位置へ移動している為に何を考えているか解らない。
 居候先であるウーリは超一流の錬金術師であり、和也も門前の小僧が経を覚えているのと同じように錬金術の知識について多少の理解があるようだ。


「……騎士やデビルサマナーのような優れた肉体と魂を持った者ほど強い怨念が生まれる。
 だが、もう一つ良質の怨念を生み出す方法がある。
 ……肉親や親しいものを生贄に捧げる事だ。
 殺されるはずの無い者から殺される事で無念が一層湧くらしい」


 早乙女は、青ざめる。
 バロールが静かに言った。


「手遅れじゃろうな、おそらく」

「お嬢……」

「奥へ行きましょう。
 どちらにしても放っておく訳にはいかない」


 最深部に進んでいくと……、髪の長い女性が全裸のままで真言を唱え続けている。
 返り血で染められた肢体は、蝋燭の光によって淫蕩さが際立っている。
 美しい顔だが、陰惨さがあった。
 奥には紅い雌象と青い雄像が抱き合っている像がある。
 いや、像ではない……、冷ややかな気配が漂っている。


「やはり、歓喜天か」

「ふふふふふ……だぁれ?」


 女性は振り返る。
 豊かな双丘にある淡い蕾は長い髪で隠されている。
 秘所を惜しげもなく晒しており、異様な雰囲気に包まれている。
 対戦した早乙女は覚えている……彼女が宇美野しずくだと。
 和也は、顔色一つ変えずに言った。


「アンタが、この幸の薄い奴に呪いのかけたのか?」

「ええ、そうよ」


 宇美野は肯定する。
 そのしぐさの一つ一つが妖艶であった。


「私の事を見下すわけね……そんな特別な能力をもっているわけだから」

「機械があれば誰でもできる事に優越感なんて持たないわ」


 宇美野は、早乙女の言葉を無視して話し続ける。


「白塗りの化物を倒せるなんていいわよね、特別な力があるって。
 私に無いモノを全て持っていた、そして私の女王の地位を奪った!!」


 『堕ちた女王』からは、妖艶さが消え、狂乱な表情が浮き彫りになった。
 佐助達は警戒を強める。


「だから、私は探した……そして見つけたの!!
 私は特別な力をもった!!」

「その力は……諸刃の剣よ。
 失敗すれば自滅するしかないわ」


 早乙女は、警告した。
 だが、それを否定したのは奥にいた歓喜天であった。


『最早、遅い。
 この娘の業は深く、親すら生贄に捧げた。
 そして……お前への呪いは失敗している。
 その報いを受けてもらうつもりだったが……』


 宇美野の背中から羽が生え、頭から一本の角が生えた。
 爪が伸び、目の色が金色に変わった。


『我が下す前に人であることを辞めた。
 その始末、お前達がつけるが良い』


 そう言って歓喜天は光を放って消えた。
 宇美野は、最早狂気しかなかった。


「いいわ……貴方を殺して、肉を喰らい、脳髄を啜って貴方の全てを貰うわ!!」

「……何が貴方を掻き立てたか解らない。
 でも……貴方は私が倒します!」

「死ねぇ!」


 宇美野は、呪詛を飛ばす。
 バロールは、突然和也を掴み、宇美野目掛けて投げ飛ばした。


「そおぉい!!」

「お、お、おおおおお!?」


 呪詛に当るが、今の和也のペルソナは、MOONのペルソナ・サキュバス。
 サキュバスは、魔法を無効化させる能力がある為、和也にダメージは無い。
 投げ飛ばされた勢いを利用して和也は、宇美野の胸元を斬る。


「痛いわぁ」

「……たく、何しやがる、糞爺!!」

「そおぉい!と叫びたくなった(さくらが暗い人間の闇を見たからその空気を壊したかった)」

「……本音と建前が逆になっているのか?」

 
 奇妙な思考回路の持ち主であるバロール。
 どちらが本音なのか佐助でも判断がつかなかった。
 宇美野は和也にしなだれかかった。


「ねえ……あの女を」

「うるせえよ」


 誘惑の魔法を篭めていたが、今の和也には効果はなく、そのまま和也は宇美野を蹴り飛ばした。
 憎悪に燃える宇美野が口から針を飛ばすが、和也は難なく避けた。
 

「宇美野さん」

「!?」

「さようなら」


 何時の間にか、早乙女が宇美野の背後にいた。
 別れの言葉を告げ、雷神剣で宇美野の心臓を貫いた。
 宇美野は、狂気の笑いを続けながら消滅した。
 佐助は、早乙女に近づいた。


「お嬢……」

「特別な力なんて……持たないほうがいいわよ」


 早乙女の言葉は、とても重いものであった。
 そのまま立ち尽くす早乙女を見守る仲魔達。
 和也は、部屋から出て後始末の為、公安零課に連絡を行い始めた。






 あとがき。
あっさり解決してしまいました。
歓喜天は黒幕でもなんでもなく、ただ力を貸しただけですので。
バロールは、空気を読みません、曾孫ですらこんな時は空気を読みます、困ったものです。
石動編は戦闘です……相手は誰か予想できますよね?



[7357] 第2期 第46話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/22 10:29

 夕方の私立七姉妹高校の教室に二人の男がいた。
 一人は石動である。


「関東に巣食うJOKERは……落とした」

「ありがとうございます」


 石動は、柳顔の同年代の美男子に告げた。
 話しかけられたのは黒須淳……かつてJOKERだった男だ。
 関東を乱していたJOKERとは別人ではあるが、まったくの無関係ではない(第2期 第29話~第31話参照)。
 黒須は、JOKERの存在に心痛めていた。


「……アレはいずれ出てくるだろう。
 前回も失策をしたまま退かず、最後のゲームを行っていた。
 今回も同じ流れになる」


 ニャルラトホテプは、シバルバーを浮かばせる計画を失敗した後も、シバルバーを今まで得た力で浮かばせた後、上空からシバルバーを落下させる算段だったと石動の読んだ資料には書かれていた。
 溜め込んだ力とシバルバーを暴走させれば浮き上がらせる程度の事はできたらしい。
 世界を滅ぼすほどではないが、都市を丸ごと浮かばせる宇宙船の質量は相当なもので、大惨事になるところであった。
 今回も、同じように最後の悪あがきを行うと石動は判断した。


「なら……」

「あいにく、アイツを殴りたい連中は門前市ができるほどだ、間に合っている。
 お前には他にするべきことがあるだろう」


 黒須の言葉を先回りして、石動は、黒須の参戦を止めた。
 黒須は質問した。


「貴方も行くのかい?」

「ああ……奴には興味はないが、奴の出し物には興味がある。
 それにオセ……奴が必ずいるだろうからな」


 石動は、思ったことを答えた。
 ニャルラトホテプは、石動にとっては煩わしい障害であって、敵と値する存在ではなかった。
 目の前の空間が突然歪む。


「これは……」

「ほう……」


 石動と瓜二つの存在が現れた。
 だが、その空気は邪気に満ちている。
 そう……シャドウ石動である。


「久しぶりだな」

「用件はなんだ?」

「決着を……つける。
 俺はもう前の俺じゃない!
 ペルソナを鍛え、お前の技術も研究した!!」

 
 石動は、シャドウ石動の語りに何の感慨も沸いていなかった。
 静かに、石動が告げた。


「余裕だな」

「……?」

「二対一だが?」

「!?」


 シャドウ石動の一瞬の動揺を突いた。
 石動は妙法村正を抜刀し、腕を切り落とした。


「がああああ!!」

「……脇が甘いといっただろう」

「く……それでも……」

「周りにある要素を利用して戦うのは初歩の初歩だ。
 あの程度の言葉で心を乱すお前も問題だ」


 黒須を参戦させるつもりもなく、させるほど苦戦する事もないと石動は見切っていた。
 シャドウ石動は、見切られている事を納得するはずもない。


「……お前が以前襲撃した旧メシア教団の支部で待っている。
 今度こそ殺す!!」

「すぐ出向いてやる、今日中に傷を癒していろ……」


 そう言い残してシャドウ石動は姿を消した。
 シャドウ石動は、石動の言葉を聞き、恐怖した。
 黒須は、石動に向けて言った。


「一人で行くつもりかい?」

「そうだな……知り合いは忙しいからな。
 あの程度なら一人で十分だ」

「……解りました。
 くれぐれも気をつけて」


 黒須は、何の気負いもない石動にむけて言葉を送った。
















 石動が、事務所で装備を整えている時、突然ドアが開いた。


「助けてぇええええええ、先生!!」 


 早乙女が涙目になったままやって来た。
 なんでも、早乙女に向かって呪術を飛ばしてきた者がいたらしい。
 

「すまん、無理だ」

「ええええ!?」


 シャドウ石動を討ちに行く為に、早乙女に割く時間はなかった。
 だが、警護役を呼ぶ事はできる。
 石動は、ウーリの研究所の電話番号を携帯にうちこんだ。
 ウーリ本人ではなく、ウーリの所に居候している和也に依頼をした。
 最初は面倒臭げであったが、報酬に目が眩んであっさり了承した。
 早乙女が出て行った後に腕を大きく伸ばしてから立ち上がった。


『で、もう行くのか?』

「そうだな……、あの近くのホテルに良い店がある」

『すぐ行かないのか?』

「精々慌ててもらってもらおう……昼過ぎにいけばいいさ」


 石動の言葉を聞き、ラームジェルグはニヤリと笑う。


『御主も悪よのゥ』

「武蔵を気取らせてもらおうかな」


 石動は、そう言ってから事務所を後にした。













 旧メシア教団支部。
 午後の昼下がり……フリーダーと石動は、入り口の前にいる。
 小林というここの指導者が神の身体を造り、神を降ろし、千年王国を築こうと試みた(第一期 第37話~第42話参照)。
 その時、石動は原野の護衛で教団と関わる事になった。
 傷つきながらも、公安零課の協力もあって見事その企みを防いだ。
 シャドウ石動は、ここを果し合いの場所に指定したのには訳があるのだろう。
 未だ立ち入り禁止の場所であったが、石動達が扉に近づくと……


『ありゃ?』

「内部を異界化させているようだ。
 まあ、奥に行けばわかる事だ」


 異界化した内部に引き込まれたようだった。
 おそらく、シャドウ石動は、最深部に待っている。
 そう石動は、予想している。
 退魔の水をふりかけ、目立たぬように移動する。
 途中悪魔が徘徊しているが、油断している所を石動は、背後から斬り捨てる。


「お見事です、マスター」

「なあに、烏合の衆だからな」


 最深部に進むと、奥の台座に行儀悪く座っているもう一人の石動……シャドウ石動がいた。
 台座は、神の肉体が安置されていた場所であった……。
 待ちくたびれた様子で、精神的に消耗しているようであった。


「貴様……」

「急いで治せと言ったことを素直に実践したようだな」

「逃げたかと思ったぞ」


 石動が間髪いれずにやってくると思ったシャドウ石動は、転移した後にすぐに治療を行わせた。
 治療したのは、造物主ニャルラトホテプの同盟者であるオセの配下の天使である。
 そして、迎え撃とうと警戒し続け、今に到っている。
 シャドウ石動は、敵を迎え撃つ体制を取り続け、精神的疲労が貯まりだしているようだった。
 宮本武蔵は、佐々木小次郎との果し合いで刻限より大幅に遅れて対戦相手の精神力を削った事は有名である。
 『武蔵を気取る』という言葉は、武蔵の行った作戦をそのまま行っていた事を指している。
 

「俺は、ニャルラトホテプ様から更なる……」

「能書きはいい。
 後の敵がいるからな、さっさと終わらせたい」

「貴様……!!」


 シャドウ石動は、石動と戦い、尽く敗北している。
 スペック上では、明らかに石動を上回っているにも関わらず。
 身体能力は互角……いや、ニャルラトホテプの支援もあるだけに耐久力は高いだろう。
 守護霊のダークラームジェルグは、寡黙であるが、邪悪さはあちらの方が上である。
 石動の方では、役小角がいる上に、ラームジェルグは『闘鬼』クー・フーリンに変化する。
 ダークラームジェルグとクー・フーリンでほぼ互角であるが……技の多彩さではゲイ・ボルグを持つクー・フーリンの方が上ではある。
 肉弾戦となれば小角の能力は用いることはあまりない上に、小細工をしている間に攻撃を受け続けてしまう為に使うことはないであろう。
 だが、シャドウ石動にはペルソナ能力があった。
 本来の『石動巧』はペルソナ能力の資質があった……シャドウ石動は、その特性も持っている。
 シャドウ石動のペルソナ『クロウ・クルーワッハ』はケルトの邪龍で、ラームジェルグとも縁がないわけでもない。
 普通ならば石動が敗北すると見るであろう……能力だけ見れば。
 

「幾ら力を持っていても、お前が俺の上に行く事はない」

「それはコレを見ても吐けるか!!」


 空中に漆黒の闇が生まれ、肥大化する。
 そして闇が爆ぜた時、金色の死神達が現れた……その数は3体。
 身体からは、金属的な輝きを放ち、金色の馬に乗った弓を持った死神であった。
 その姿は、石動が忘れる事が出来ないものであった。


「魔人・ホワイトライダーか?」

「どうだ!
 貴様を殺した奴だ!!
 貴様の奥底の負の感情を合わせて作り出した最強の刺客だ!!」

「マスター……」


 フリーダーは、辛そうな表情で石動を見る。
 彼女が力が発揮できない新月時にホワイトライダーから襲われ、石動が敗北した。
 フリーダーは、主を守りきれなかった事を思い出してしまった。
 だが石動は、不敵に笑う。


「面白い」

『面白いって事は大事だな』

 
 永き時を共に駆け抜けた相棒もまた笑った。
 二人とも開き直りでもない、勝利を信じている目であった。
 シャドウ石動は、信じられない表情になった。


「なぜだ!?
 何故恐怖を感じない!!?」

「正確には恐怖は感じているさ、多少はな」


 石動は、心のうちを明かす。
 だが、それは弱さではなかった……自分の弱さを受け入れ、自分を信じぬく戦士の心であった。


『だが、コイツは恐怖を乗り越え、立ち向かう力がある。
 それは……ペルソナ使いだからでも、守護霊使いだからでも、デビルサマナーだからでもない。
 コイツが石動巧だからだ。
 不屈の魂を持ち、困難から逃げた事のない男だ!!』


 ラームジェルグは、心の底から吼えた。
 石動とシャドウ石動の決定的な差は『精神』にある。
 二度も魔人に殺されても、諦めず立ち上がり、最後は討ち取った。
 神に委ねず、力の為に悪魔になる事を善しとせず、ただ己が剣で全てを切り開く……それこそが人の身体を持ち、人の心を持ちながらも高みに立たせている。
 それに対して、シャドウ石動は……石動の戦闘技能を受け継ぎ、さらに異能力を持つが、石動が石動たらしめる根本は持っていなかった。
 更に本来の石動の精神を持つために、精神のバランスが悪く、シャドウ石動の実力を十全に発揮できないのに一役買っている。
 石動は言った。


「奴もお前も……俺の敵に値しない。
 サマナーに限らず、真の武術家は……己が心を征する事が当たり前の事だ。
 己が陽の部分と陰の部分……どちらも否定せず、二つ合わせて生きる人間と陰のみの存在……。
 幾ら力が強くても、陰のみの……制御されない力などに人間は負けんよ」


 ニャルラトホテプが弄んだ存在は、強い精神を持つが、脆い部分があった者ばかりであった。
 心の傷や弱点を突いて弄ぶ……だが、石動のようなサマナーや真の武術家を相手に戦った事はなかったのだ。
 だが、それを認めることは出来ない。
 認めたとき、シャドウ石動は、石動に絶対に勝てない事を認めることになるのだから。


「……ホワイトライダー!
 こいつを殺すぞ!!」


 金色の死神が空から石動達を取り囲む。
 シャドウ石動も刀を抜いた。


「マスター!!」

「ああ、フリーダー。
 お前の力を借りる」

「マスター。
 私の全ては、貴方に捧げています。
 ご随意に」


 淑やかな仕草を石動に行うフリーダー。
 ラームジェルグが話しかける。


『行くぜ、巧ぃ!
 変ッ身!!!』


 ラームジェルグは、痛々しい傷ついた西洋の死した騎士ではなく、荒々しき戦神へと姿を変える。
 長い髪を無造作にまとめ、急所を防ぐ金属部分を組み合わせた皮鎧、そして、全てを貫かんとする槍を持った姿であった。
 石動は、MAGを篭め、妙法村正から夢想正宗へと変形させた。


「軽く前哨戦といくか」


 皆、一斉に動き出した。
 フリーダーがフォッグブレスで視界を阻む。
 その間に石動が、MAGを使って自信の能力を強化する。
 金色のホワイトライダー……メタルホワイトライダー達が無数の矢を放ち、さらに巨大な炎の渦を生み出す。
 さらに、シャドウ石動はペルソナを発動させ、爪で石動を引き裂こうとする。
 石動は、霧で視界が悪化した事を利用して矢を難なく避け、邪龍の爪を受け流す。
 フリーダーは、炎をなんなく避けたが、石動はシャドウ石動の足止めで炎を避けられない。
 炎に飲まれる石動。


「死ねぇ!シネェ死ンダァ……何ィ!?」

「生憎だったな……鍛えているお陰だ」


 クー・フーリンは、ラームジェルグと違い、魔法全般が弱点というわけではない。
 様々な攻撃に耐性がある……。
 石動は、射撃を行うメタルホワイトライダーへ向けて夢想正宗を呪いの歯車に変形して投擲する。
 歯車が金色の魔人に命中し、かん高い金属音と火花を飛び散らせて石動の手元へ戻っていった。


『ありゃあ堅いな』

「承知の上だ」

「マスター、援護します……ランダマイザ!!」


 敵を弱体化させる。
 すかさず石動は、駆ける。
 無数の矢も、シャドウ石動の魔法も尽く避ける。
 台座を踏み台にして高々と跳躍する。
 空中に踏み場があるかのように駆け抜ける石動。
 呪いの歯車を夢想正宗に再び戻し、抜刀する。
 メタルホワイトライダーの内の一体の横を駆け抜ける。
 その勢いのまま壁に着地し、壁を走行して残る2体へ接近する。
 

「な……!?」

「ハアアアァ………セイィッ!!」


 一気に残る2体の横を駆け抜け、夢想正宗を納刀する。
 かちり……という音が鳴った瞬間に3体の金色の魔人の身体が上下に別れ、そのまま崩れ落ち、金属の液体に戻った。


『さて、次の出し物はあるかい?』

「ぐ……復活しろおおお!!」


 シャドウ石動が、手をかざす。
 掌からどす黒い汚泥が溢れ、汚泥が魔人の残骸に触れると復元されていった。
 だが、シャドウ石動の全身から大量の汗が吹き出ていた。
 見たところ、手駒を復活させる為にシャドウ石動は、力を消耗させているようだった。
 石動が、再び斬ろうとした時に、どこからともなく声が聞こえた。


『所詮、雑魚か……』

「オセ!?」


 シャドウ石動が大声を張り上げた。
 失望に満ちた声でオセは告げた。


『まあいい、この空間を破壊する。
 本物と共に最期を迎えるがいい』


 オセの言葉が終わった瞬間に、空間が歪みはじめた。
 異界化した教団内部が崩れ落ち始める。
 柱が倒れ、地面が割れる……。


「マスター!
 このままでは……」

「慌てるな……(奴も俺が此処で死ぬとは思ってはいまい……決着は、奴を舞台に引き摺り上げてからか)」

『一休み一休み……とはいかないようだ、ホラ」



 クーフーリンが指さすと、絶望に満ちたシャドウ石動がいた。
 頭を抱え、声ならぬ声を上げている。


「………!!!」


 シャドウ石動は、肥大化・変質化した。
 ペルソナ使いは、脆弱な精神で行使した時、ペルソナに飲まれ……悪魔化する。
 シャドウ石動は、クロウ・クルーワッハとなり、操っていたメタルホワイトライダー達を喰い散らし、自身の力へ変えた。
 その巨体は、広大な部屋であった為に入りった位の大きさであり、暴れだせば壁や天井を確実に破壊していくことだろう。
 クー・フーリンは、石動へ問う。


『どれくらいこの空間が持つ?』

「そうだな、俺の見立てでは、持って7,8分といった所だ」

『壊して脱出できそうか?』

「当てはなくもないが……敵を破壊されたときのエネルギーを用いれば……」


 矢継ぎ早に質疑応答を繰り返す二人。
 そしてフリーダーに命じた。


「フリーダー……二分だ。
 俺に奴を一切近づけさせるな」

「了解しました、マスター」


 フリーダーは、何時もの用に命令を受ける。
 だが、その言葉には、全幅の信頼を寄せている事がクー・フーリンには理解できた。
 フリーダーは、クロウ・クルーワッハを惹きつけるべく、接近を開始した。
 石動は、まずダメージの回復を行う為にソーマの雫をとりだし、飲み干した。
 心身ともに軽いダメージを受けていた石動は、完全に調子を取り戻した。
 続けて石動は、MAGの放出して自身を強化しはじめる。


「GURAAAAAAAAAA!!!」

「私はここです!!」


 連続で蹴りをいれ、さらにランダマイザで弱体化させるフリーダー。
 攻撃され、ダメージを受けるがあっという間に再生してしまう。
 邪龍は、それでも傷つけた者への憎悪を止めない。
 爪を、牙を、尾を、暗黒のブレス……それらが一斉に女性型造魔に襲い掛かる。
 彼女は、それらを避けて反撃を繰り返す……主の命を死守するために。
 主の影の成れの果てが攻撃を行う度に壁や天井が砕かれ、漆黒の空間が広がる。
 その空間に落ちれば……もう2度とは戻れない。
 段々、フリーダーが避けるための空間が無くなりつつあった……。
 それでもフリーダーは、軽快に回避を続ける。


「GAAAAAAAAAAAAA!!!」

「ぐ……しまった……」


 だが、シャドウ石動も石動の才能を受け継いでいる。
 フリーダーの動きを本能的に先読みし、尾の一撃が彼女の両足を打ち砕いた。
 痛みを与え続けられた屈辱を怒りと憎しみに変えて、フリーダーを噛み砕かんとした。


「マスター……申し訳ありません……」

「いや、よくやった……お前の勝ちだ、フリーダー」


 声の主は、フリーダーの最も敬愛する存在の一人。
 石動は、最強の一撃を与えるための支度を整えた。
 夢想正宗は、輝くばかりの長槍へと変わった。
 クー・フーリンの父親である魔人ルーグの加護を受けてブリューナクへと変化できるようになっている。


『ゲイ……ボルグ!!』


 そして、ブリューナクを用いたクー・フーリン必殺の槍技『ゲイ・ボルグ』を放つ。
 ルーグの長腕・ブリューナクは五つの光に分裂……これはブリューナクの特性である。
 五つの星が邪龍の四肢や尾を砕く。
 必死にもがくが、撃ち落そうとすれば身体を砕かれ、逃げようにも流れ星のように駆け抜ける五つの光からは逃げる事もできない。
 五つの光は、一つになり……邪龍の心臓目掛けて飛んでいく。
 心臓を貫かれ、その勢いのまま砕きかけの壁に磔になった。


「GYAAAAAAAAAAA!!!」

「俺に成り代わる事はついにできなかったな………」


 石動の言葉が引き金になったか、ブリューナクから無数の光の棘が広がる。
 シャドウ石動の残骸が爆発し、空間の歪みが生まれた……。
 歪みの先には、異界化されていない空間が見えていた。
 石動が腕を一振りすると、ブリューナクが手元に現れ、アセイミーナイフに変化した。
 短剣を仕舞った石動は、フリーダーは、抱き上げる。


「マスター……」

「さあ、帰るぞ」

『ひゅーひゅー』


 クーフーリンの野次を無視してフリーダーを抱える。
 崩れ落ちる異界を駆け抜け、見事脱出を果たした。
 空間の向こう側は、教団の入り口前であった。
 石動は、宝玉を使い、フリーダーの損失した足を再生させた。
 それでも、ダメージが大きく、バランスを崩しかけるフリーダーであった。


「あ……」

「大丈夫か?」

「はい……」


 石動に支えられフリーダーは、親に助けてもらった娘のような顔つきだった。
 石動は、問いかけた。


「COMPで休むか?」

「……いいえ、マスターと一緒に歩いていたい。
 駄目でしょうか?」

「いいさ……お前には何時も助けられているからな」

『………(フラグがたった!フラグがたった!)』


 フリーダーは、石動に支えられながら帰り始める。
 石動は、脳裏に様々な思いに馳せた。


「(……オセ、どうやら互いのどちらかが消えるまで遣り合う事になりそうだ)」


 石動とオセ……互いの存在をかけた死闘が起こることは避けられない。
 その行方は……誰もわからない。






















 あとがき
 石動が、ジェリド……じゃなかったシャドウ石動を倒しに行く、それだけの話。
 軽いバトルでしたね。




[7357] 第2期 第47話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/01 03:12
 夜中に石動を訪ねてきた黒スーツの男……鋭い目つきで、切れ者である事が用意に想像できる。


「石動、いるか?」

「ああ……風間の旦那か?」


 石動の事務所に直接出向いた風間……普段では電話で済ませる事が多いはずであるが。
 つまり、重大な案件である事が推測される。
 風間は、手紙を取り出し、石動に手渡す。


「石神内毛細洞で最後のゲームを行う……か」

「差出人の名前とこの言葉だけだが……」

「本物だ」


 石動が間髪いれずに断言した。


「……その理由は?」

「『奴』が現在とっている姿の名前で差し出している。
 そう……俺の前世の名を使って出しているからだ」

「……」


 ラームジェルグが酒瓶とグラスを持ってきた。
 石動は、前世で行った事、そして無間地獄を越えて再び生を得た事、そしてニャルラトホテプやシャドウ石動との事を全て話した。


「……そうか」


 風間は、石動の話を聞き、静かに酒を飲む。
 一見、荒唐無稽である話だが、風間はそれを受け入れたようだった。
 石動と風間……ついでにラームジェルグは酒を飲み続ける。
 ちなみに、フリーダーは、隣の部屋で眠っている。


「道理で仲がいいわけだな」

『もはや一心同体だな』

「……話を進めよう。
 奴の指定場所から判断して、挑戦を受けない場合……もしくは、しくじったら関東の地脈に関わる場所だ。
 二度目の関東大震災が起こることは確実だな」


 石動の言葉で周りの空気が張り詰めた。


「……だろうな。
 零課の面々で突入したい所だが」

「盛大に罠を仕掛けてまっているだろうな。
 ……後々の事を考えれば零課は出ないほうがいい。
 ここはヤタガラスや葛葉の面々で始末をつけるべきだな」


 石動達は、話をそこで打ち切った。
 数日後、石神神社の使いがヤタガラスの元へやって来た。
 石神内毛細洞・最深部に空間の歪みが現れた事を知らせに……。











「俺が……?」

「はい、今回のJOKERの一件を鎮めた貴方に人選を一任します。
 フリーのデビルサマナーではなく、石神家からの使いとして」

「……承知した」


 ヤタガラスの使いが、やってきて石動にこの一件を任せる事を告げた。
 如何なる思惑があって石動に任せるのかは解らない。
 だが、石動にとっても渡りに船であった。
 ヤタガラスの使いが去ってからラームジェルグと相談する。


『どうする?』

「奴がらみだからな……実力がない奴を連れても意味がない」

『さくらちゃんは?』

「生憎、最近御霊を購入して強化させた佐助や元々強いバロールのお陰で戦闘力だけは駆け出しのサマナーのレベルを逸脱しているからな」


 ラームジェルグは、合掌して早乙女の不幸に同情した。
 後に石動が早乙女に召集の電話をした時、泣きそうな顔だった……。


『キョウジは?』

「当てにさせてもらう。
 ライドウに、九鬼の旦那、それに旦那の義兄の峰岸……」

『此処まで戦力を集めるたぁ~剛毅だな。
 ペルソナ使いの面々はどうする?』

「南条に知らせるさ。
 だが、どこまで集められるのか……」


 南条自身は、部下の松岡に調整させればある程度は自由が利くだろう(松岡が出撃を止めるかもしれないが)。
 稲葉は、アーティストで比較的自由に動ける。
 だが……、黛、城戸、園村、桐嶋、上杉は、仕事の休みは取り辛い。
 他に綾瀬という仲間もいるが、出産間近らしいので参戦は不可能らしい。
 南条達が遭遇したセベク・スキャンダルに置いて中心となって解決に導いた藤堂尚也は、連絡がまだついていない。
 

『……足りない場合に備えて助っ人がいるかな?』

「……念には念を押すか」


 石動は、電話を取った。
 こうして、ニャルラトホテプ討伐隊(仮名)が結成される事になった。





おまけ

「お父さん、お母さん、先立つ不幸を……」

「ほっほっほ、一代スペクタルに巻き込まれるのはサマナーの華じゃて」

「……平穏に暮らしたいです」


 早乙女は、石動の無常なる召集に応じる事になった。
 佐助は、ニャルラトホテプを打ち倒す事によってトラウマを克服させるつもりなのだろうと予測していた。
 戦力を集めたのは、短期的に事態を収める事によって事件の混乱を最小限に食い止める事もあるが、早乙女が駄目であった場合には九鬼あたりが早乙女を地上に戻す時の護衛にするつもりなのだろうと判断した。


「(どちらにせよ、お嬢は苦労する事は変わりが無いけど)」


 佐助は、心の中で助けになれないことを詫びた。






あとがき。
最終決戦前のインターミッション的ななにか。
早乙女は不幸なので、当然関わります。
大所帯です……メガテンは基本的には少人数がデフォだなのに。
というか、デビルサマナー系統のSSなのに合体シーンがベナンガルが佐助に変わるシーンだけって……(正規の合体じゃないし)。








おまけ 怖い人。

 珍しく三人で集まって飲んでいたときの話……。


「石動さんって物騒ですねえ~」

「まあ、全自動辻斬りマシーンというのはいなめない」


 原野と香我美は、石動に向けて言い放つ。
 ラームジェルグも笑いながら言った。


『フラグを立てては打ち砕くのは、すごく……恐ろしいです』

「なに言っているんだ?
 俺にも節度って奴がある」


 だが、皆が疑わしげに見ている。


「俺は比較的温厚なつもりだが。
 感情で斬る事はまあ、ない」

『「「(感情なしで斬ることは多いんじゃ……」」』

「九鬼の旦那のほうがよっぽど怖い」

「え?」


 原野は、首を傾げる。
 『霧隠才蔵』の名を受け継ぐ稀代の忍びにしてデビルサマナーである九鬼英輔。
 石動も一目置くほどの男だ。
 だが、原野が見た限り、気性は穏やかであり、人当たりもいい。
 さらに美人妻と可愛い子供もいる。
 石動は、ニヤリと笑って香我美に言った。


「香我美は知っているよな?
 バチカンの司祭の惨殺事件」

「あれか……?
 あの凄惨なやり口だったが……まさか?」

「旦那の仕業だ」


 香我美の顔色が変わった。
 原野は、聞き返す。


「CNNニュースで取沙汰されていましたけど……僕は、『詳しい事』は解っていません。
 教えてもらえますか?」

「ニュースでは明らかになっていないが……アレはとんでもない奴でな。
 カトリックの司祭の分際で内縁の妻を持っているし、妊娠中の妻を放って置いて女遊びをしていた」

「でも、ありきたりですね?」


 カトリックの聖職者は、基本的に結婚できない。
 だが、裏で普通の人間より羽目を外す人間もいる。
 ローマ法王の14世レオやアレクサンデル6世は、梅毒患者だった事や性的虐待を行った神父が実刑を受けている事から解る事であるが。


「そいつは、口ではえらそうな事を言っていたが、弟子を暴行を加えても脅して他人に明かさないように脅迫したり、その弟子が去った後にも権力を利用して仕事に就けないようにしたり……」

「腐っていますね~」

「まあ、弟子のほうも対人恐怖症だったらしく問題を抱えていたがそれでもやりすぎだったな。
 傑作なのは、『貴様みたいな奴が、カトリックの面汚しだ。私の全てをかけて聖職者になる事は許さん』とか、『貴様は愚図だ、何も出来んのに、汚職した政治家を批判するな。あっちは家族を支える為に働いているが、貴様は何も出来ていないだろうが!』とかな。
 笑えるな」

「なにも出来なくても犯罪者よりはマシだと思いますがね」

「国を裏切る時点で駄目だろうに。
 役人なら普通に暮らすだけの金は貰えるからな。
 とにかく、愉快な糞坊主なのはわかった」


 香我美もそこまで酷い人物とは想定していなかったようだ。
 石動が続ける。


「で……ソイツは、天使使いであり、魔法使いでもあった。
 それで悪行を積みすぎてバチカンも看過できなくなったし、それ以外にも恨みを持った人間も出た。
 九鬼は、その中から『生死問わず』で捕らえる依頼を受けた訳だ。
 俺も別口で依頼を受けていたが」

「九鬼さんだったら、半殺しにして手渡すでしょうね。
 後で正式な手続きで処分したほうが楽でしょうし」


 九鬼と何度も行動を共にしている原野は、そう判断した。


「だが、ソイツは想像以上に馬鹿だった……旦那の怒りの火付け役になった。
 旦那が激怒させる事をしたって事だが、その辺はよく知らんがな。
 で、旦那の連絡を受けて奴の家に行ったら死体があった」

「普通だな」


 香我美の言葉に対して石動は、首を横に振った。


「哀れだったな。
 護衛の男数人がバラバラにされていた。
 斬られてからも生きていたんじゃないかな?
 逃げようとしたり、応戦しようとした瞬間に身体がバラバラになった見たいで信じられないといった表情のまま死んでいた。
 それは、俺でも簡単にできる……問題はその後だ」


 一旦、そこで止めて酒を飲む石動。
 二人も興味深げに聞いている。


「死体の状況からありありと光景が浮かぶほどだ。
 まず旦那は、護衛を斬り捨てたように神速の早業で馬鹿を斬った……。
 だが、それは薄皮一枚だがな。
 まあ、馬鹿には解る事ではないが……自分も同じ末路になると思ったんだろうな。
 
 『動かない事です、動けば他の皆さんの仲間入りになります』

 とか言ったんだろうな。
 もしかしたら、最後に残った護衛の一人にもそう言って、護衛が死ぬところを見せたかも知れんな……死亡推定時刻のずれもあった所から判断して。
 それで馬鹿は、その言葉を真に受けて必死に動きを止めたんだろうな。
 髪を真っ白にして、糞尿を垂れ流しにしたまま、心臓麻痺で逝っちまった……目を開け、立ったままな」


 想像するだけでも恐ろしい事だと二人は思った。
 死が目の前に迫り続けたまま死ぬ羽目になったのだから。


「斬る事なら俺でもできるが……、あんな追い詰め方は俺にはできないな。
 技術も去ることながら、相手を飲み込むテクニックは剣術とは別の領域だからな……。
 松山主水が産み出した二階堂平法「心の一方」は瞬間催眠の一種だが……ここまで凄惨な業ではないからな。
 伊賀忍者独特の幻術の応用なのだろうが……」


 凄惨な話をしても、そのように考察する石動も大概であると、ラームジェルグは思った。
 だが……そのことを突っ込む者は誰もいなかった。




おまけ2 デビルバスターとは?


「先生」

「なんだ?」


 早乙女は、色々と質問をする。
 それに対して石動が丁寧に答えていく……このようにして裏の知識面を鍛えていくのだが……。


「今まで聞くのを忘れていたんですが、デビルサマナーとデビルバスターの違いって……」

「まあ、デビルバスターという言葉は数えるほどしか使っていなかったからな。
 デビルバスターは、広義では『悪魔に対抗できる手段を持つ人間』の事で、狭義では『デビルサマナーでない戦士』だな……人によって魔法使いを入れる者や、単なる戦士の事を指したりすることもあるが」

「今まで普通の戦士ってあまり見たことないですが」

「まあな……悪魔召喚プログラムの普及のお陰だな。
 MAGとCOMPがあれば猿でもできる」

「そんな、普通出来ませんよ!
 猿じゃ流石に……」

『できるかもしれないじゃん?』

「無理でしょう?」

『賭けない?
 負けたほうがミニスカメイドのコスプレで』


 身体に剣や槍や矢が突き刺さった筋肉質な男のメイドのコスプレは……正直想像できないだろうが、嬉しい光景ではないだろう。


「下らん事をいってないで先に進めるぞ。
 それでも戦士はいるがな。
 アイテムや最新式の重火器などで戦うわけだ……集団でな」

『昔は、せっきーは限りなくデビルバスターに近かったわけだが』

「デビルバスターとデビルサマナーが共同戦線を張る事はあるんですか?」

「ある。
 後衛系の仲魔しかいないサマナーの護衛をする時とかな。
 だが……仲魔より面倒だから組む事が少ないだろうな」

『(すまん、オチはないんだ)』



[7357] 第2期 第48話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/01 03:14

 石神内毛細洞・最深部。
 要石があるここに十数名の男女が集まっている。



「なんで俺まで……」

「稼ぎ時なんだからグダグダ言わない!!」


 ゴールドのスーツの男と、緑の蜘蛛の巣が刺繍された服を着た女性が口論している。


『パオの家計はちびしいのであります』

「嵯峨は、戸籍上死人だからな……ならば、蓄えは普通より多く必要だな」


 便器に座った悪魔と恰幅の良い男……ベルフェゴールと香我美が事実を言った。
 パオフゥは、愚痴りながらも参加するようだった。
 この集まりは、JOKERを放つなど行ったニャルラトホテプを討ち取りに行く軍勢である。
 ここで紹介しておく。

 まず、突入しないサポートを行う者から始めよう。
 前述の香我美とベルフェゴール、原野、そしてキョウジのパートナーであるレイ・レイホゥだ。
 戦力になりえるレイが残ったのは、『連絡アイテム』兼『記録アイテム』である魔法の鏡をヤラガラスから提供されたからだ。
 それを一番扱えるのが、レイと石動であり、万一……石動達が失敗した時に直ちにヤタガラスに報告する役目がレイに与えられた。
 原野は、様々な場所を奔走して貴重な回復アイテムや魔法石などを調達していた……お陰で、皆に一つソーマが行き渡り、生玉を1つ手に入れることが出来た。
 香我美は、機材を持ち込み、空間の歪みを観測したり、この事件を記録する役割を担っている。

 ペルソナ使いの面々だ。
 南条コンツェルン次期総帥・南条圭……松岡にスケジュールを調整してもらって参戦したようだ。
 稲葉正男……仕事で来れなかった園村達の分まで戦うと、やる気は十分のようだ。
 城戸玲司……本来なら仕事でこれないはずだったが、原野がやってきて社長と話し合ったらいつの間にか出張扱いになっていた。
 催眠術だとか恐喝だかでもない、もっと恐ろしいものの片鱗を城戸は味わったようだった。
 最後は、パオフゥと芹沢うららである。

 続いてデビルサマナーの方を紹介しよう。
 第十七代目葛葉ライドウとゴウトが、何時も通りの振る舞いでいる。
 葛葉キョウジは、ゴウトのような喋る鳥が珍しいのか話し込んでいる。
 九鬼英輔とその義兄の峰岸啓自が互いの近況を話し込むという長閑な光景を作り出している。
 いつの間にか大事に巻き込まれ涙する早乙女……慰めようがない為芹沢とレイしか話しかけられなかったようだ。
 そして……石動巧とラームジェルグにフリーダー。
 このような大所帯で挑む事になった。
 石動が出発前に皆に話しかける。


「改めて紹介する……俺が今回の集まりの代表になった石動だ。
 やる事は一つ、馬鹿を制裁しにいくだけだ。
 こんな下らん事件で命を失う事ほど間抜けな事はないから、絶対に死ぬな。
 冷静に対処すれば、歴史上の災厄に比べれば楽なものだ。
 以上だ」

『みじけぇ』

「長くなれば成功率が上がるなら皆が倒れるまで話すがな」


 ラームジェルグのつっこみをこのように流した。
 皆が話している間に原野が石動に話しかけてきた。


「……勝算は?」

「十分にある……が、勝負に絶対はないからな」

「気をつけて……僕も『精一杯』のサポートをしますので」


 短いながらも石動を激励した。
 石動達は、空間の歪みに接触して先に進んだ。










 目の前には、空が漆黒の雲に覆われ、不毛な大地が広がっている。
 無限の荒野に聳え立つ遺跡を発見する早乙女であった。
 その顔には驚きに満ちていた。


「あれは……『デビルバスター』シリーズのダイダロスの塔?
 挿絵にそっくり……」

「ピラミッドとかアステカの遺跡のようにも見えるがな……そういうものか?」


 何も知らない石動が突っ込む。
 石動がかつて護衛した黒瓜努が書いたデビルバスターシリーズにある場所らしい。
 黒瓜は、稲葉達の同級生らしいが……。 


「おい、アレ見ろよ!!」

「……亡者の群れか?」


 稲葉が指差す方向には、無数の黒い人影があった。
 皆苦悶に満ちた表情をしており、邪悪な気配が漂う。
 南条が指摘するのも最もである。
 更に……人影は、薄汚い浮浪者を追いかけていた。
 浮浪者は、運悪く異界に迷い込んだ人間であろう……失踪や蒸発の一部は、異界に迷い込んだり、悪魔に喰われる事が原因になっている事が意外に多いのだ。
 遠すぎて助ける間もなく食われ、一部が死霊になった。
 死霊になったモノには目をくれず、生者を求めて動いているようだ。
 城戸が拳を掌に打ち付けて言った。


「アレを蹴散らしながらあの建物へ行くか?」

「ふむ……あの塔の中に入る事は賛成だが、無駄に戦うのは賛成できんな。
 ニャルラトホテプにはまだまだ多くの手駒がいるだろうからな」


 城戸にやんわりと言い聞かせたのはゴウトであった。
 ライドウの肩に乗りながら黒い軍勢を眺めながら分析した。


「どうやら、生者を探して殺し続ける習性があるようだ」

「ゴウト」


 ライドウが、言葉少なめに申し出た。


「お爺様が言っていたアレ、できるだろうか?」

「アレ?」

「ヨシオという少年がやっていた、悪魔避けの……」

「ほう……アレか!!
 奴らも知性も低そうだから、上手くいくかもしれんな」


 ゴウトが、首を動かしながらライドウの言葉に賛成した。
 多くのものが何を言わんとするのか理解できなかったが、石動だけは理解できたようだ。


「サイガとやりあった時の話だな?」

「ほう……!
 我の報告書を読んでおったか。
 シナドの事といい、よく調べておったから当然であろうが……大したものだ」


 気難しげなゴウトが石動の知識の深さを賞賛した。
 自分が苦労して書いた調査書を読んでもらった事が嬉しい事もあるのだろうが(当時猫であった彼は苦労して書いたらしい……今は音声入力できるパソコンで大分楽にな

ったらしいが)。


「あいにく、サマナーとしては欠陥持ちでな。
 別に補う必要があった……知識や、剣技でな」

『というか〝創めに剣ありき”じゃないのか?』


 石動とラームジェルグは、相変わらずのマイペースぶりを発揮している。
 皆が疑問に思っている間に石動が呪符を取り出した。









「……ついたな」

『上手くいったようですね」


 石動の呟きと同時に原野が話しかけてきた。
 結果は成功というべきであろう。
 影の群れは気がつくことなく通過して塔の中に入れたのだから。
 石動達の身体の輪郭にぼんやりした光が出ている。


「この歳になってお化けの真似事かよ」

「いいじゃねえかよ、城戸。
 楽できるに越した事はないぜ!」


 ぼやく城戸に反論する稲葉であった。
 南条も目を瞑ってから言った。


「『子曰く、故きを温ねて新しきを知らば、 以 て師と為すべし』とあるが……」

「うむ、相手の知恵の無さに助けられたな」


 ゴウトは頷いた。
 大正の時代に、ある事件に巻き込まれた少年の話だ。
 生きた人間を悪魔が片っ端から殺す事態に巻き込まれた少年。
 その時、霊には襲わなかった事を見た少年は、蜜やバターを服の輪郭線に塗った後にサッカリンを振りかけて霊の振りをして難を逃れたそうだ。
 今回もその手を使ったのだ。
 石動が呪符で霊の発する光を再現し、皆が気配やペルソナの力を抑え、遠回りして塔まで歩いていったのだ。
 

「しかし……これは、変ですねぇ」

「そうだな……ビルの中のようだ」


 九鬼と峰岸は、塔の内部を見渡した。
 ビルの中のような場所で、天井には空調や電灯がある。
 南条達は顔色を変えた。


「これは……セベクビル!!」

「何のつもりだ……神取……」


 南条と城戸は、壁を調べながら言った。
 その時、芹沢が奥から人影が見えたのに気がついた。


「あれって……ガードマン?
 MIBっぽいけど」

「ご丁寧に銃を持ってやがる。
 それに……皆同じ顔か」


 パオフゥが掌に指弾用の硬貨を用意する。
 石動達も準備した。
 稲葉が男達の格好に心当たりがあったようだ。


「セベクビルにいた黒服か!?
 なんでこんなところに……」

「歓迎の挨拶なんだろうな」

「銃弾の挨拶なんぞあってたまるか、石動!!」

 
 こうして、進入後の初戦闘が始まった。










おまけ 夢。


「はっ!?」

「どうした?」


 うなされている原野が飛び起きたのを見た石動が問う。
 原野は、朗らかに笑いながら答えた。


「いやあ、男女の縺れで刺された夢でした。
 男だから中には誰もいないのに」

「意味がわからんが、大変苦痛を伴うのようだな」

『ひでえ夢だ』


 だが、笑顔のままで原野が言い返す。


「悪い夢…いや、いい夢だった……」

「コイツは……」

『死んでも治らないな、その性根』




[7357] 第2期 第49話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/26 00:01

『エージェントスミスかよ!』

「お前がビデオで見たアレか?」


 石動は、ラームジェルグと話しながらブリューナクを地面に突き刺し、柱代わりにして回転蹴りで纏めて打ち倒した。
 デビルサマナー達は、峰岸と石動の造魔以外は召喚しなかった。
 それほど強くない敵でMAGを消耗したくない為でもあるが、大人数で行動しているからだ。
 峰岸とキョウジは、長年の相棒の如く連携している。
 七星剣を黒服の一人に叩き込み、数人が固まった場所に吹き飛ばす。
 味方を飛ばされ、動きが取れなくなったところに峰岸が七つの又が出ている剣…七支刀を振るう。


「うぉりぁ!!」

「凄いな!!」


 キョウジが思わず歓声を上げるのも無理も無い。
 数人纏めて切り裂いたのだ……並の名刀では出来ない。
 峰岸が持つのは秘剣ヒノカグチ……ヒノカグチの炎そのものである神剣ヒノカグチとは違うが、神の名を背負うに相応しい力を秘めている。
 ライドウは、コルトライトニングで正確に敵を撃ちぬいて動きを止める。
 その隙を峰岸の犬型造魔・ジーグと石動の女性人間型造魔フリーダーが止めを刺している。
 ペルソナ使いの面々も負けず劣らずの活躍を続けている。


「打つべし、打つべし!!」

「指弾だ!!」


 芹沢は、ペルソナの能力を乗せたコンビネーションブローで黒服達は、壁にめり込むまで殴り飛ばされる。
 パオフゥは、眉間目掛けて指弾を飛ばす……その弾速は拳銃に匹敵する速度であり、敵の頭部が柘榴が割れたような惨状を晒した。


「牛頭天王……メギドだぁ!」
 
「城戸……任せる。
 命中率を上げた」

「おう……!
 ペルソナ!!」


 稲葉がインドの祇園精舎の守護神・牛頭天王を呼び出し、数体纏めて吹き飛ばす。
 南条が愛染明王の補助魔法スクカジャで命中率を上げたところで、ブレスの剣で黒服を両断した。
 城戸達は、最小限の労力で敵を打ち倒しているようで、まだまだ全力ではない。
 石動が一振りすれば避けたはずなのに唐竹割りにしていく……相手の動きを見切り、軌道を変えているのだった。
 南条は、石動の剣術の巧みさを褒めた。


「ほう……見事なものだ」

「南条、悪いものでも喰ったのか?」

「稲葉、俺は相手の技量を認めないほど狭量じゃない」


 石動は、普通に行っているように見えるが……南条が同じように出来るかというと、否と答えるだろう。
 目前の侍が繰り出する剣術は、間違いなく今の南条の上を行く。
 南条は、稽古の量を増やさねばな……と小声で呟き、発奮されたようだった。
 だが、その石動は……、


「やはり……旦那には敵わんな」

『せっきーのチートを上回るチートぶりに泣けた』


 いつの間にか倒れ付す無数の黒服達……石動よりはるか多い人数であった。
 よく見れば首や手首にうっすらと刀傷がある。
 それらは、すべて九鬼の仕業で、猛毒の刃で敵の命を奪ったわけだが……。
 九鬼が接近した事も、そして斬っていった事を一切認識させずに殺されているのだ。
 石動が見えたときには瞬きする間に十人の命を奪っている時があった。


「毒が効く相手で助かりましたよ」

「……敵に回したくないな、旦那は」

「ほう……初代に勝るとも劣らぬ活躍だ」


 九鬼は、普通のサラリーマンのような口調で言い放ち、石動とゴウトが九鬼の技量を賞賛した。
 霧の如く実体を掴ませない……九鬼は、まさに『霧隠』の名に恥じない働きであった。
 敵を打ち倒しながら進み、大きな部屋にたどり着いた。
 豪奢な部屋で、屏風には織田信長が愛した敦盛の一説『人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり』が書かれていた。
 まるで社長室のような感じと言っていいかもしれない。
 その部屋に知的かる玲瓏とした印象を与える男がいた……黒い高級スーツを身に纏い、サングラスをかけている男で、手には日本刀が握られていた。
 南条がその男の名を呼ぶ。


「神取……」

「これはこれは……立派になったものだ、南条君。
 だが、些事の為に出向くとは……、少々失望したよ」


 神取鷹久……セベクスキャンダルを起こした張本人であり、神条と名乗り、新世塾を作り上げた男でもある。
 死んだはずの男がここで立ちはだかり、南条に対してつかみ所のない笑みを浮かべている。
 城戸は、拳を握り締めている……石動が、城戸も南条と同じく神取に対して大きな因縁があるのだと察した。


「そして、お前もいたか。
 お友達もつれているようだが……」

「テメエには関係ねえ」

「そうか……」


 神取の城戸への視線が様々なモノが入り混じったものであった。
 そして、石動に向けて話しかける。


「君が石動巧か……随分気に入られたようだな」

「俺個人としては……奴には用が無い。
 別の『奴ら』に用がある」

「中々興味深い男だ……。
 先に言っておく。
 今まで私が身を粉にして働いた計画は失敗に終わった。
 だが……収集した力は、関東の地脈を乱し、関東大震災以上の災いを起こす程度はできそうだ。
 奥で奴が君達を待ち受けている」


 石動と神取は、表情を変えずに話を続ける。
 見えない刃で斬りあうような雰囲気であった。


「では通っていいのか?」

「かまわんよ……後でお相手する事になるだろうがな」

「暇だったら遊んでやる」

「君とは親睦が深められそうだ」


 堪りかねた南条が横から口を挟む。


「神取……お前は昔の戦いで己の弱さを認めたはずだ」

「………」


 南条は、神取を見据えた……。
 神取のサングラスで隠された瞳は、何を見つめているのか……そして、何を思うのか……南条達には読み取ることは出来なかった。


「狂言回しの真似事などやめろ。
 そんな落ちぶれた姿は、見たくない……」


 神取は、その言葉に答えないまま虚空に消えた。
 そして、神取の立っていた場所が輝き、光の柱が生まれた。


『ワープゾーンのようだな』

「あーあ、めんどくせぇ。
 だが、帰るわけにはいかんか」

「なんか、凄く大きな事になっていない?」


 パオフゥと芹沢は、互いに言い合っていた。
 石動達は、その光の柱の中に向かっていった。
 そして……不可思議な世界へ移った。
 この世のものとは思えぬ光景であったが、キョウジが驚きの声を上げた。
 


「ここは……まさか!?」

「コレも趣向のうちか」

『……無間地獄か』


 キョウジと石動、そしてラームジェルグにとってはよく知る場所……死した者が集う無間地獄の光景と瓜二つであった。





[7357] 第2期 第50話 (27日追加修正)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/27 12:18
 石動が持っていた鏡から原野の声が聞こえる。


『石動さん、大丈夫ですか?』

「問題はない……原野。
 いや……奴が来る!!」


 石動は、いち早く気配を察知した。
 無間地獄を模した空間に一人の青年が現れた。
 着流しを着た長身の男……野生的で、動きの一つ一つが鋭い。
 石動が男に向かって挑戦的な言葉を吐く。
 

「……来てやったぞ、ニャルラトホテプ」

「招待状に気がついてくれて何よりだ、石動巧」


 大人数を前にしても不敵な笑みを浮かべる青年……ニャルラトホテプの存在は異質であった。
 早乙女は、既にフリーダーの影に隠れている。
 南条がいち早く問いただす。


「何故、神取を蘇らせた!?」

「そうだね……強いて言うならアレが一番使いやすく、強力な駒だったからだな」

「それだけで死人を蘇らせたというのか!」

「ふふふ……駒を作ったついでに無念を持ったまま散った者たちを蘇らせて、シナドを呼ぶ為に……世を乱す為に呼んだのだがね。
 だが、私の目の前に死んでいるはずの人間が二人ほどいるのだがねえ……石動巧?」


 『這い寄る混沌』は、陰湿な視線を石動に向けた。
 キョウジも、言われた石動を見る。
 だが、石動はそれを受け流す。


「魂の状態が良かったからこそ蘇る事ができた……それだけのことだ」

「くっくっく……それにしても、『昔の君の身体』はなかなか使い心地がいいものだ」

「!?」


 一部の人間は、二人の言葉の意味を考え、その意味に到った。


「俺から言えることは……今まで会った敵の中で一番の男前だろうな」

『せっきー?』

「冗談だ」


 ラームジェルグは、表情を変えずに言う石動の冗談に対して悪趣味だと小声で言った。
 ニャルラトホテプは、笑いながら言った。


「最深部で待っている……私のもてなしを楽しんでいき給え」


 そう言ってニャルラトホテプは消えた。
 パオフゥが問いかけた。


「おい、石動……奴の言った事は事実なんだな」

「ああ……そうだ。
 見た目より中身は生きている……それだけだがな」

『石動さん……』


 鏡ごしから原野が声をかける。
 ラームジェルグが言った。


『俺は無間地獄で燻っていた……数十年前に巧に出会った。
 そんで自分や集落にいた人間達を殺した魔人を討ち取る為に黄泉還りをする為に俺の助力を求めた……。
 まあ、魔人はめでたく討ち取れたがな』

「先生……知りませんでした」


 早乙女の言葉に頷く石動。


「まあ……前世云々語っても信じられないだろうからな。
 石神家に原野や香我美、そしてキョウジくらいだな、この事を知るのはな」

「お、おじいちゃんなのね」


 芹沢の言葉を聞いて苦笑する石動。


「生き返った後は死んで数十年。
 浦島太郎の気分を味わったよ」


 話をそこで取りやめて、先に進む事にした。
 敵の姿は少なくスムーズに進んでいった……。
 そして目の前に広大な河に巨大な橋がかかってあった。
 城戸が、河を見つめて言った。
 

「三途の川か?」

「そうだな……だが、ここは本物の無間地獄ではないが」

「先生、嫌な予感が……」

『不幸センサーが感知しました』

『酷い!!』


 早乙女の予感は正しかった。
 橋を渡る途中に無数の鬼や餓鬼、屍鬼達の群れが襲ってきたのだ。


「……ざっと千体といったところか」

「石動君、先に行っていてもらえませんか?」


 九鬼がCOMPを起動させて鞍馬天狗、隠形鬼、金鬼、水鬼、源義経を召喚した。
 更にライドウがリボルバー型のCOMPを用いてフェンリル、黄泉傀儡の南野、紅い龍、角の生えた可愛らしい羊のような獣、三本の角を持った金色の龍が現れた。
 黒い鷹が空を駆けながら言った。


「我らも加勢しよう」

「先に行ってくれ……フェンリル、曹長、ヴリトラ、饕餮(トウテツ)、黄龍。
 力を借りさせてもらう」


 ヴリトラは、『リグ・ヴェーダ』などで伝えられる巨大な蛇だ(『マハーバーラタ』では人型の神)。
 巨大な体で天から流れる川の水を塞き止めて地上の7つの川を占領し、太陽を暗黒に包んで地上を飢饉にして地上の人間達を苦しめた。
 だが、インドラとの戦いに敗れて撃退され、宇宙の塞がれていた穴が開いて、地に大雨が降った。
 毎年ヴリトラが生き返り、インドラと戦い続けている……(夏の象徴がヴリトラであり、雷・雷雨の象徴がインドラであると言われる)。

 饕餮は、その外見からは予想もつかないほどの凶悪な存在だ。
 中国の四方の辺境に住まう四凶の一角で西方に住んでいる。
 羊の体に人間の胴体を持ち、その性格は、貪欲で略奪を好み、旺盛な食欲を持つとされる。
 葛葉ゲイリンは、饕餮を用いた秘術があり、十四代目ライドウは、その秘術を用いて帝都に降りかかった災いを打ち破ったといわれている。

 黄龍は、四神の長である。
 五行に当てはめると黄色であり、土行……中心に位置する。
 大黄龍は、帝都に住んでおり、大正の時代において空を駆けて邪悪な敵と戦ったと言われ、学生を乗せて空を飛んだ所を多くの人々から目撃されている。

 九鬼とライドウが悪魔の群れを足止めするようだ。
 石動は、静かに言った。


「行くぞ……」

「お、おい、石動!!」


 稲葉が、声を張り上げたが、ラームジェルグが言い聞かせる。


『大丈夫だって。
 あの程度の規模で橋の上で戦う分には問題ないって……』

「……Mr.九鬼、Mr.ライドウ、先に行っています」


 南条は、ラームジェルグの言葉を聞いてそう決断した。







 ニャルラトホテプが招待した世界は、様々な土地から切り貼りしたようなものであった。
 ダイダロスの塔の周囲、セベクビル、無間地獄……更に無数の迷宮を石動達は乗り越えた。
 空に浮かぶことなく地の底にある宇宙船の内部に迷い込み、レーザーや火炎地獄に悩まされる。
 絵の中へ入る事ができる不思議な美術館を抜けたら、不気味なホラーハウスへ続いていた。
 休憩できそうな安全な村についたが、蠅の頭を持った蠅人間ばかりで、レストランも蠅好みのものが多かった……幸い人間が食べられるメニューはあったが、蠅人間内では不評だった。
 水没した東京を尻目に歩き続けた時には無数の悪魔がやって来た……ニャルラトホテプは、このような世界を望んでいるのだろうか?
 闘技場のような場所、氷結した学園、人間の血管を模したような世界、そして魔界……石動達が知ってる所もあれば、知らない世界もあった。
 時には、知恵を振り絞って探索せねばならなかったが、皆で力をあわせて進んでいった。


「……この気配は」

『近いな、巧』


 巨大な扉を前にして石動がニャルラトホテプの気配を察知した。
 南条が皆に確認するように言った。


「ペルソナ達が怯えている……。
 奴が待っているならば、万全の状態にしてから行くべきだろう」


 魔石で傷を癒し、チャクラポットで魔力を補充し、チューインソウルで気力を充実させる。
 皆、覚悟して扉を開けると、光が石動達を包み込んだ。
 石動達の周囲が、舞台の上のような場所に変わっていた。


「どうだね、楽しんでもらえたかな?」


 石動の前世の姿を借りたニャルラトホテプが両腕を上げて歓迎の意を示す。
 傍らには神取が控えていた。


「……俺の方の用件から切り出すか。
 シナドは何処だ?」

「……早速かね。
 まあ、良いだろう。
 本来なら、明らかにシナドを降ろすには絶望が足りなかったが……高尾祐二がやってくれましたよ」

「そういうことか……オセを使って攫ったわけだ」

『高尾の能力を使って神を降ろす程度はできるわな……』


 石動とラームジェルグが、ニャルラトホテプの一言で大体の事を察した。
 ニャルラトホテプが指を鳴らすと、虚空から扉が産まれる。


「高尾とシナドは、この先だ……石動巧」

「貴様の相手は俺ではない。
 この早乙女だ」

「ええ!?」


 突然の指名に狼狽する早乙女。
 涙目のまま、石動を見た。


「神取に会いに来た南条達もいる。
 キョウジと峰岸と俺は……高尾の方を抑える。
 ……オセの殺気が扉越しから伝わっているからな」

「先生……」

「パオフゥ、芹沢さん。
 早乙女達を頼みます」

「良いわよ、大人の役目だしね」

「厄介事を押し付けやがって……」


 パオフゥ達は、南条や早乙女達を援護する為に残る事になった。
 石動達は、ニャルラトホテプの脇を通った。
 邪魔した瞬間に斬るつもりだったが、邪魔をするつもりは無いようだ。
 扉を潜り抜けると、円盤状の台の上にいた。
 周りを見渡すと金色の世界が広がっていた。
 ラームジェルグが、静かに語った。


『無限奈落アパドン……決戦の地としては相応しいがな』

「来てやったぞ、オセ……!!」


 石動の声が響き渡り、羽ばたきの音が上空から聞こえる。
 漆黒の豹頭の天使が空から降りてきた。
 空間が歪んでいると錯覚させるほどの殺意がオセの身体から発している。
 魔力も危険なほどに膨らみ、更に力を増していると感じさせる。
 着地したオセの横に、空間が歪み、青年が現れた。
 銀縁メガネをかけ、女性もうらやむほどの端整な顔立ちの男性がいる。
 知性的だが、石動の目には弱弱しく見えた……。
 石動達……とくにライドウはよく知っている。


「高尾祐二」

「お前は……あの時、私を捕まえたデビルサマナー」


 高尾祐二……新世界を作ろうと画策した男。
 彼を捕らえたのは、ライドウのようだった。
 そして、彼を使って世界を変えようとした女性は、石動が殺害した。
 石動の第2の人生の流れが変わり始めた『切欠』であった。
 オセは、憎しみと歓喜の交ざった声で叫ぶ。


「漸くだ……漸く貴様と決着がつく」

「ああ……時間にしたら短いが、数々の事件にお前の影がちらついていた」

『フランスとイギリスみたいなもんだ。
 徹底的にぶっ潰すまで互いが納まらない……そんな関係だな』

「今すぐやりあっても良い。
 だが、その前に横にいる奴に聞いておきたい事がある」











 おまけ



 ここはペルーの空港である。


「急げ、尚也!!」

「解っているって」


 ピアスの青年が和也に引っ張られている。
 青年は、和也とそっくりだが、和也より年上のように見える。
 彼の名は藤堂尚也。
 セベクスキャンダルで解決に導いた男である。
 原野の依頼で、戦力になる尚也を連れてくるように依頼された。
 双子の兄であり、尚也の精神を受け継いだ和也だから見つけ出す事ができた。
 (北極やアフリカなど世界各地を移動しているため南条コンツェルンでも捕捉が困難であったらしい)

 和也に驚くが、彼の現状を聞き喜びを露にしていた尚也であった。
 南条達も戦っている事を知った尚也は、参加することになったのだが……。
 飛行機に乗ったまでは順調だった。


「ふははは!
 ファントムソサエティの大いなる目的の為に死んでもらおう!!」


 飛行中にダークサマナーが乗客を皆殺しにしようと企んだ。
 それを隙を見て和也と尚也がダークサマナーを蛸殴りにしたのはいいのだが……。
 ダークサマナーが燃料タンクに穴を空けていて、近くの空港に着陸することになった。
 おそらく、事件の後処理もあって長々と足止めを喰らう事になりそうだった。
 和也は、気絶したダークサマナーを叩き起こしては気絶させる事を繰り返した。


「テメエのせいで間に合わなかったらどうするんだ!!」

「和也……」

「ギャレンキングフォーム!
 ぎゃれんきんぐふぉーむぅうううううう!!!」


 成功報酬につぎ込む予定の商品名を叫びながら制裁を加え続けている和也。
 それ以外にも新作ゲームソフトを買う資金にするつもりであったらしい。
 和也の願いも虚しく、二人が日本に来た時には全てが終わっていたそうな……。










 あとがき
次は、決戦かな……。
和也は、子供っぽいところが残っている事とゲーム仲間の影響を受け始めたようです(ラームジェルグとかベルフェゴールとか)。



[7357] 第2期 第51話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/27 20:44

 仮面の青年がニャルラトホテプの横に現れた。
 南条達が思わず叫んだ。


「フィレモン!?」

「久しぶりだ……」

「確かに良い観測結果になった」


 南条達にペルソナを与えた存在……それがフィレモンであった。
 ニャルラトホテプは、フィレモンに対して親しげに話す。
 稲葉が問い詰める。


「どういうことだよ!!?」

「我々は、人々の心の源……普遍的無意識の化身であり、表裏一体の存在なのだ。
 ……我々は、強き心を持つ者を導き、這い寄る混沌は、弱き者を奈落へ引きずり込むために。
 全ては、矛盾を抱える人の心が完全な者へと進化する事ができるのか、その結果を見極める為だ」


 フィレモンが一人一人に言った。


「諸君は、可能性を示した。
 君たちのような存在が増えれば、何時しか人は、己の存在意義を知る、完全な存在になるだろう」

「……つまり、テメエらが全て仕組んだわけかよ!!
 死んだ神取をわざわざ叩き起こしてまで!!」

 
 城戸が怒気に満ちた声を二人に叩きつける。
 それを見たニャルラトホテプは、嘲笑した。


「『貴方』と言って欲しいものだな。
 こいつは、精々見ているだけが関の山だ。
 だが、私は違う。
 楽しみながら……積極的に関わっていく」

「そして無様に失敗する……わけね」

「「「「!!?」」」」


 早乙女が俯きながら携帯型COMPを機動させ、佐助とバロールを召喚した。
 早乙女は、そのまま語り始める。


「先生ならこう言うでしょうね、『お前らなど必要ない』って。
 私は、精一杯生きるだけ……進化?完全な存在意義?
 知った事じゃないわ!!」


 早乙女は、恐怖の振るえが消え、心の叫びをぶつける。
 バロールは、微笑ましげに見守り、佐助はなにかあったら容赦なく攻撃する構えでいる。
 さらに続けていった。


「逆に聞くわ。
 アンタ達は、花に問いかける?」

「花?」

「風に、大地に……全てに問いかける?」

「………」


 早乙女の問いに、フィレモンも、ニャルラトホテプも沈黙する。


「花に何故咲くか、風に何故吹くか……それを問いかけるつもり?」

「ほっほっほ……」


 バロールが楽しげに笑っている。
 

「花は、そこにあるだけでいい……それだけで満ち足りている」

「ならば、お前は花か?」


 這い寄る混沌の問いに、早乙女は答える。


「人間よ……人間である事を全うする為に此処にいるわ。
 自分の足で立って進む……間違えたっていい、迷ってもいい。
 完全である必要なんて……無いわ」

「はーっはっは!!
 さすが、曾孫が認める男の弟子よ!!
 よう吼える!!」


 バロールは、手を叩き喜ぶ。
 南条が静かに言った。


「生憎、俺の進むべき道は既に決まっている。
 お前達が言わずとも……な」


 稲葉も、城戸も言葉を発する。


「そんな難しく考える必要なんてねえよ……もっと大事な物があるって!」

「俺達はテメエらのオモチャじゃねえ!!」


 フィレモンは、その言葉を聞いた後、姿を消した。
 ニャルラトホテプは、哂い続ける。
 

「運命には逆らえんぞ!!」

「ああ……うるせぇ……」 


 沈黙を守り続けたパオフゥが口を開いた。
 

「運命やら進化やら……御大層な事しか言えねえのか?」


 うららが拳を握り締めていった。


「生憎、そんな事より今月の家計のほうがよっぽど大事だわ!!」

「貧しさに負けたわけだ」


 パオフゥがシニカルな笑みを浮かべる。
 神取が城戸の前まで来た。
 城戸が静かに言った……言葉の響きには憎しみを感じさせなかった。


「逆らえねえのか?」

「まさか、君に同情されるとはな……。
 光には光の……闇には闇の役割がある……」

「なら全力で潰してやる!!
 南条!!」

「ああ……再び地に這わせるまでだ!!」


 南条と城戸は、神取との決着をつけるべくペルソナを発動させる。
 ニャルラトホテプは、哂いながら最期の決戦へ赴く。
  










「世界は……沈むべきだった。
 世界は混沌に沈むべきだったのだ」


 高尾は、一人語り続ける。


「今のまま老いた世界を生き永らえさせても、いずれ力を失ってしまう……。
 世界は、また生まれるために死ななければならないのだ……」


 石動達は沈黙を続けている。


「それなのに……世界を思い通りに動かすどころか、自分のことさえままならない。
 世界が……作れなかった。
 人が生きる力と理想を取り戻した世界は……」


 キョウジが高尾に言い放つ。


「それであんな事を起こしたのか?
 ふざけるな!!」

「人が多く死んだ、くだらない事でな」

「くだらない……だと!!」


 峰岸の言葉に反応して怒りを露にする高尾。
 だが、石動が言い放つ。


「ああ……下らない。
 人間が類人猿から分かれて猿人が誕生したのが、500万年前。
 そして、地球が出来たのが約45億年前。
 ……そんなたったそれだけで見切りをつけるほど長く生きているわけじゃない」

「な……!!」

「半世紀も生きていないボウヤがしたり顔で語るな。
 人間は……お前が思っているほど浅い存在じゃない」


 石動の鋭い眼光が、高尾に突き刺さる。 
 ラームジェルグが小声で零す。


『九鬼の旦那とか見ると人類の可能性はまだまだあるって感じるよね』


 ラームジェルグの語る人物は、ただ只管鍛え続けて、守護霊使いやペルソナ使い、悪魔すら打ち倒せるほどの存在であった。
 さらにキョウジや峰岸が語る。


「事務所にやってくるような人間は、皆、切羽詰っている。
 そういうのを解決していると……人間は碌な奴もいるってな。
 だが……マシな奴もいるし、マシになろうと足掻く奴だっている」

「今生きている奴らを皆殺しにしてまで行う価値があるのか?」

「そうしなければ……」


 高尾の言葉を征するように石動は、口を挟む。


「人間は駄目になる……か?
 その時がくれば共に滅びればいい。
 お前の独りよがりな救いなど要らない。
 お前は、全てを断罪しようとしているが……人間は弱い。
 それを断じるだけでなく、許す事も必要だ」

「そうして人間は堕落していく!!」

「たとえ悪魔になろうと、神仏になろうと、仙人になろうとしても……人は人だ。
 人であることからは逃れなれない……。
 己が人である事を知る……まず、そこからスタートするべきだ。
 完璧であろうとしたり、無駄を省けばどうなる?
 何も無い……後も先もない停まった世界になるしかない」

「私は自由な……」

「お前が考えているのは、向上することしか言っていない。
 人は向上する自由があるように、堕落する自由だってある。
 どれを選ぶかは……自分次第、それが今の世界であり、そのままでいい。
 お前は、自由という言葉に縛られているように思えるがな」


 石動は、最後に高尾に問いかけた。
 高尾は、その問いには答えず、苛立ちながら言った。


「話は平行線だな。
 もういい……!!
 私は、シナドと一体化して、皆に絶望を与えよう!!
 そして、その後に真に自由な世界を創る!!」

「見失っているようだな……自分を」

 
 峰岸は、そう言った。
 だが高尾は、その言葉に耳を傾けず、宙に浮いた。
 黒い霧のような物が高尾の周囲に集まる……。
 

「深遠世界にシナドよ!!
 現世に現れ、愚かな人類に絶望を与えよ!!」


 高尾の身体が膨らみ、変質していく。
 巨大な黒い球体に変化し、巨大な眼球のようなものに変わった。
 巨大な瞳があり、さらに上部には巨大な高尾の半身が現れている。
 その大きさは、石油タンクよりも巨大であり、石動達がちっぽけに見える。
 巫子である高尾は、シナドの力を取り込んで制御しているようだ。
 高尾が腕を振るうと、台座が砕けた。
 石動達は、宙に放り出された。

 落下しつづけている……いや、浮遊しているのだろうか?
 更に、周りの風景は目まぐるしく変わっている。
 世界の光景が所々に浮かび続けている。
 飢餓で苦しむ人々、殺し殺される戦場……何れも不幸を連想させる光景ばかりだ。

 下方には地面など見えず、無数の足場が浮いており、石動達は、足場に着地した。
 オセが剣を振るうと無数の天使達が現れる。
 更に、天使の力を取り戻した堕天使達も現れた。
 キョウジと峰岸は悪魔を召喚した。

 キョウジからは、メタトロン、関帝聖君、カーリー、ヴィシュヌ、シヴァが召喚された。
 峰岸からは、ジード、八幡、西王母、摩利支天、そして宙に浮いた文様の描かれた四面の石柱が現れた。
 威霊アリラト……イスラム教が布教する前から存在した古代神だが、ムハンマドは存在を否定した。
 信仰の対象として石が崇拝されており、イスラムではその名残りとして黒石がカーバにおいて崇拝されている。

 剣を構えた石動が静かに申し出た。


「オセのほうは引き受けた」

「頼むぜ、石動……終わったら手伝えよ。
 あんなデカイのを壊すのは一苦労だからな!」

「頼みます……あんなヤバイ奴が街中に現れたら、光の国の巨人を呼ぶしかなくなる!」


 キョウジは、石動へ激励を飛ばす。
 峰岸の言葉を聞き、ニヤリと笑った。


「違いない……」

『黄金騎士に変身したい所だが……いくぜぇ、変ッ身!!』


 死した騎士の怨霊は、MAGを噴出させて戦場の王へと変身させた。
 石動達は、散開した。
 高尾が吼えると、シナドの瞳から広範囲に稲妻を放射する。
 キョウジと峰岸は避けながら銃撃をする。


「あのサイズじゃこっちのは、豆鉄砲かよ」

「ある程度接近して斬った方がいいかもしれないですね、キョウジさん」


 メタトロンが空を駆け、巨大な魔力球を高尾の頸部に叩き込んでいる。
 後からの攻撃が直撃するたびに大きな叫びを発した。
 メタトロンの攻撃を妨害せんと無数の天使が襲撃を加える。


「……下郎に尻尾を振りおって!!」


 メタトロンの鋼の拳が容赦なくエンジェルの脳天を打ち砕く。
 八幡がシナドが無数の瓦礫を念動力で飛ばしてきたのを障壁で跳ね返し、シナドに降り注ぐ。
 ヴィシュヌは、戦輪スダルサナを飛ばし、次々とパワーやアークエンジェルを切り裂く。
 関帝聖君は、一振りで数体の天使を切り裂き、その勢いで跳躍してシナドの側部から切り込んだ。


「ぬぅうううううん!!!!」


 気合の声と共に縦に大きな傷跡が生まれるが、高尾が関帝聖君を殴り飛ばす。
 シナドが全方位に衝撃波を飛ばす。
 天使も巻き込まれ、何体も墜落するが、キョウジ達も巻き込まれた。
 すかさず、西王母が回復魔法で回復させる。
 ジードと魔利支天は、高速で接近し、天使を踏み台にして高尾の喉笛目掛けて攻撃を行う。


「アヲォオオオオオオン!!」

「覚悟ぉ!」


 苦しみ、もがき続ける高尾が腕を振るうが、全て攻撃は回避された。
 シナドの目が光り、高尾が託宣を下す。


「全ての攻撃は半減され、ニンゲンの攻撃は絶不調……」


 その瞬間、高尾や天使達の周りに薄い膜が出来た。
 キョウジが七星剣でソロネを両断した時に気がついた。


「くそ……斬りにくくなってやがる!!」


 防御力が増した上に、命中率が下がったように感じた。
 攻撃しようとした時に、戦いの余波で飛んだ瓦礫がキョウジに当り、攻撃が外れる不運にも見舞われた。
 峰岸も同様のようだった。


「なら援護に回れば済むぜ!!
 カーリー、シヴァ……滅多切りにしてやれ!!」


 シヴァが三又の矛……ピナーカを振るうと空間が歪み、天使やシナドたちを纏めて虚空斬波でなぎ払う。 
 さらに、カーリーが足場を飛びまわり無数の腕を振るい片っ端から切り裂き、最後は高尾とシナドが融合している付け根に突っ込む。



「がああああああ!!
 ……仲魔の一体が即死……する!!」

「が……は……」


 カーリーの身体が振るえ、空中に投げ出されながら消えた。
 峰岸がすかさず反魂香を使い、蘇生させ、キョウジが再召喚を行う。
 峰岸は、シナドの能力を脅威に感じた。


「奴の託宣は……厄介だ」


 だが峰岸は、負けるとは考えない。
 敵も強大だが、仲間達も心強い者ばかりなのだから。


 








「石動ぃ!!」

「オセェ!!」


 オセの双剣と石動のブリューナクが空中で激突し、石動は足場に着地した。
 フリーダーは、回し蹴りでデカラビア・ハレルを攻撃しようとしたフラロウス・ハレルの所まで吹き飛ばす。
 互いの身体に薄く傷跡が出来ている……戦況は今のところ互角であった。


「最大出力!!」


 フリーダーの両腕が変形し、巨大な端子に変わる。
 広範囲に電撃攻撃を行うショックウェーブで天使達を撃ち抜く。
 オセは、クー・フーリンの能力に舌を巻いた。
 身体能力が向上したのに加え、魔法全般が弱点だったのが無くなり、全体的に強くなったと感じた。
 だが、付け入る隙はあった。


「喰らえ!!」

「ぐ……」


 石動は、攻撃を避けたが、呪殺対策で使っているラウリンの腕環を砕かれた。
 オセは、広範囲に呪殺魔法を飛ばす。
 防御して防いでもその隙にオセは連続攻撃を仕掛け、更に追い込まれる。
 石動は、小角へ守護霊を交代させた。


「勝機!!」


 オセは、全速力で飛翔した。
 小角は魔法攻撃に強いが、物理攻撃は普通と変わらない。
 さらに、クー・フーリン時より、身体能力が落ちることも知っていた。
 だが、オセの連撃は、石動の夢想正宗に受け流されて左腕を逆に切り落とされてしまった。


「ぐぅ……」

「焦ったな……。
 馬鹿が乗っていなければ唯の人間と侮ったのが失策だ」


 確かに、力と力でぶつかれば石動は、敗北しただろう。
 だが……石動は、幾星霜も剣と向き合った男。
 石動は、再び自分の肉体を得た時に、自身の体を鍛えると共に、剣技の研究を怠らなかった。
 前世では、異常に発達した身体能力があったが、石動巧の身体は普通であった。
 その為、技で補う必要があった……最小の力で最大の効果を上げ、自身を上回る力に対して受け流し、反撃できるように。
 その研究は、基本的に能力を上回る悪魔相手に生かされるようになり、そして今の石動を救う事になった。


「お前もな……」

「!?」


 石動は、オセの言葉が発する前に、反射的に横っ飛びをした。
 石動の肩口は切り裂かれていた。
 背後から何かがやって来たのだ。
 ……その正体は、切り落とされたオセの右腕であった。
 オセは、呻き声をあげると腕が生え、切り落とされた腕は、ゲル状の悪魔に変化し、更に変形し、シャックス・ハレルへと変わった。
 フリーダーも無数の悪魔を倒すが、数に押し切られ、一旦石動の所まで後退した。



「マスター、ご無事ですか」

「ああ、問題ない」

 
 気息を整えながらMAGを放出して能力を引き上げる石動。
 フリーダーに視線を送る。
 無数の天使達がオセの前に集う。


『気張れぇ、巧ぃ』

「ああ……ケリをつける!!」


 石動は、サングラスを棄て、刀を納める。
 オセも剣を構える。
 フリーダーが、腕部を変形させて、銃撃を始める。


「いきます……」

 
 天使達の一部が当って消滅するが、全てを倒したわけではない。
 だが、オセへの道は出来た……。
 石動は一気に跳躍する。
 無数の足場を跳び、迫り来る天使を尽く踏みつけ頭を砕きながら跳んでいく。
 デカラビア・ハレルとシャックス・ハレル、フラロウス・ハレルが行く手を阻むが……。


「遅い……!!」


 石動は、抜刀した。
 石動が駆け抜けた後に、三体の天使が動きを止める。
 身体を真一文字に両断され、迎え撃とうと準備していた魔法が制御がはずれ、暴発して三体を巻き込む爆発になった。


「そこだ!!」


 爆煙の中、オセの剣が振るわれた。
 石動の気配を察知し、脳天を砕かんとしたが、跳躍したオセの頭上の足場へ飛び移った。
 天井に張り付く蜘蛛のように止まる石動は、静かに言った。


「取った……!!」


 石動が跳躍した。
 それを予測したオセは、刀を振るうが……。


「何……!?」


 石動の機動がオセではなく、別の足場に跳んだ。
 その隙にフリーダーが接近していた。


「お覚悟を」

「甘いわぁ!!」


 フリーダーの攻撃を避けながら両腕を切り落とす。
 フリーダーの表情が苦痛で歪む。
 その体勢が崩れた所を石動が見逃さなかった。
 フリーダーは自分の身体を身を投げて退避した。


「これで……最期だ!!」

「ぐうぁあああああ!!」


 石動の一刀がオセの首を刎ねた。
 返す刀で心臓を目掛け切り裂いた。
 

「まだだあああ!!」


 オセの首が、そのまま石動の肩に噛み付き、オセの体が石動を拘束する。
 オセの体の魔力が暴走し始める。


「貴様も道連れだ!!」

「マスター!!」

「来るな!!」


 石動が駆け寄ろうとするフリーダーを制した。
 クー・フーリンが諭すようにいった。


『お前のご主人様を信じろ!!』

 
 万力のように締め付けるオセ……。
 そして全身が燃え始めている……『妖蠅の秘密』で強化した体が耐え切れなくなったのだ。
 常人ならば諦めてしまうこの状況でも石動は、諦めない。
 石動は、オセの拘束を外して背負い投げの要領で投げ飛ばし、オセの首は右手で引き剥がす。
 左肩が食いちぎられ、出血しているが、石動の命に関わるほどではなかった。
 左手掌を広げると、燃え尽きようとしているオセの体に刺さったままの夢想正宗が飛んでくる。
 それを難なく掴む石動……夢想正宗は、業火の中でも溶かされること無くその輝きを保っている。
 

「……無念だ」

「じゃあな…」


 石動は、力を込めてオセの頭部を握りつぶした。
 どす黒いMAGが噴出したが、虚空へ消えた。
 頭部も消滅し、残ったのは燃え盛るオセの体のみだった。


『やったな……、巧』

「ああ……だが、まだ終わっていない。
 傷を癒してすぐに救援に向かうとしよう」

「はい、マスター」

『ホント、タフだねえ』


 宿敵を倒しても、感傷に流されずに戦いに戻れる精神力。
 それこそが石動の強さだとクー・フーリンは感じたのだった。












おまけ


「デビルサマナー外典 ソウルガーディアン 第3期!!
 題名も『美男子戦騎 ソウルガーディアン』と改名して、この原野が…」

『はい、ダウトぉお!!』

「何言っているんだ」


 ベルフェゴールがハリセンで原野にひっぱたく。


「な、何するんです!?」

「いや、そのタイトルだと失笑ものだし」

『アレを連想するから……』

「あれ?」

『ググレカス』


 第三期も普通に連載するので…。
 あと、次回で第2期最終話です、はい。

 



[7357] 第2期 第52話(第2期 最終回)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/28 12:25


「神取ぃ!!」

「覚悟!!」


 城戸と南条の直接攻撃が神取に命中する。
 神取は確かに強かった……。
 だが、強さは以前と同じであり、更に成長した二人ならば届く強さであった。


「見事だ……」


 神取は、攻撃を受け、これ以上たって戦える様子は無かった。
 手で追いやる仕草をする神取。


「行きたまえ……奴を倒すには彼らだけでは足らないだろうからな」

「後でもう一発殴る……首を洗って待っていろ!」


 城戸は、神取に指差しながら言った。
 そして、早乙女達のところに走り寄っていった。
 南条も、神取に何か言おうと思ったが、首を横に振り、早乙女達の所に向かった。
 早乙女達は、今のところ有利に戦っていた。
 パオフゥのプロメテウスによる魔弾・ワイズマンスナップがニャルラトホテプの肩に命中する。
 さらに早乙女が雷神剣で剣を弾き飛ばし、芹沢のコンビネーションブローが叩き込まれた。
 早乙女は、訝しげな視線を送った。


「……手を抜いていますね?」

「ふふふ……彼に振られたからね、いささかやる気も削げるというものだ。
 あちらは楽しそうなのにな……」


 如何なる手段か、ニャルラトホテプは、戦いながら石動達の様子を観戦していたのだ。
 だが、早乙女は怒ることはしない……むしろ有利になるのならば精々遊んで居ればいいとすら考えている。
 城戸と南条が神取を無力化して合流してきたのをニャルラトホテプには見えた。


「さて……少しは本気を出すか」


 ニャルラトホテプの体が変貌を遂げていく。
 人の姿を棄て、異形の姿へと……。


「私の姿は、幾らでもあるが……この姿のほうが力を振るい易い」

「いよいよ本番って所か」

「家計の為とはいえ……気持ち悪いのと戦わないといけないなんて」


 パオフゥと芹沢は、そういいながらもペルソナを発動させる。
 早乙女の仲魔である佐助とバロールも動く。


「倒れろよ!」

「バロールの恐ろしさを味あわせてやる……バロールビィームゥ!!!」

「鋭ィ!」


 佐助が、無数の手裏剣を飛ばす。
 バロールが魔眼の力を解放する。
 さらに早乙女が雷神剣をジェロニモの弓に変形させて射抜く。
 ニャルラトホテプはダメージを受けながら反撃を始める。
 暗黒の塊や、巨大な魔力球を幾つも生み出し、早乙女達に攻撃を仕掛ける……。




























「きっついぜ」

「助けがいるようだな」


 キョウジが、疲労の色を見せ始めた時に石動がやって来た。
 フリーダーは、石動の怪我の治療を終えた時にダメージの蓄積が見えた。
 高尾との戦いまでに両腕の欠損や全身のダメージの蓄積が癒しきれないと判断した石動は、COMPに戻した。
 不安そうな顔をしていたが、石動の説得でも大人しく戻って行った。
 峰岸が石動に心配そうに駆け寄る


「石動さん!」

「オセは倒した。
 天使の増援は、もうない。
 俺の方はまだ戦える」


 無数の瓦礫が浮かんだ中、シナドと融合した高尾が虚空に聳え立っている。
 無数の傷跡がある……凍傷・刀傷・電撃痕……それでも高尾は、力を振るえるようだった。


「運喰い虫がいないと難儀な敵だろうな……」


 業斗童子の報告書によると……。
 シナドは、敵対する相手を不運にさせる能力がある。
 攻撃が当らなくなったり、特定のカテゴリーの仲魔を召喚不能にしたり……。
 それを打ち消すには運喰い虫と呼ばれる蟲が必要だが、石動達には調達できない。
 高尾の託宣がキョウジ達の流れをせき止めているのだ。


『それでも3人がかりなら何とかなるだろうな』

「ああ……そうだな」


 石動が剣を構える。
 高尾に召喚を封じられたり、即死させられたりして残った仲魔は、少ない。
 残るキョウジの仲間は、ヴィシュヌと関帝聖君のみ……予備役である仲魔も召喚不能にされたか、討ち取られた。
 峰岸の方はというと、造魔ジードとアリラト、そして八幡のみであった。
 いずれも多大なダメージを負っており、キョウジや峰岸もダメージが大きい。
 八幡が残る魔力を振り絞って回復魔法でキョウジ達を全快させた。


「何かされる前に張り倒す!!」

「……それしかあるまい」


 キョウジの言葉を受けて石動がMAGを消費して能力を増強させる。
 そして一斉に散開した。


「自由……」

「遅い!」


 石動は、高尾の胸元まで一気に駆け上がり一瞬で幾度も切り裂く。
 現代の剣客は、手で叩き落される前に高尾の胸元を蹴り、近くの足場まで飛び移る。
 さらに疾風のような切込みを繰り返し、高尾の注意をひきつける。
 八幡は、拳をシナドの後部に叩きつける。
 峰岸が、体勢が崩れた高尾の目に目掛け秘剣ヒノカグチを叩き込む。
 苦しみもがき続ける高尾が託宣を繰り出そうとした。


「だれ……ゴフッ!!」

「させるかぁ!!」

「アヲォオオオオン!!」


 関帝聖君が青龍刀を繰り出し、ジードは牙を剥いて高尾の喉笛を攻撃する。
 鮮血が空に舞う……苦しみで託宣を出す暇も無い。
 アリラトが、全ての魔力を注ぎ込んだ魔法を注ぎ込む。


「めみドはオん(メギドラオン)!」


 シナドの瞳に直撃し、怒り来るったシナドが怪光線を発する。
 この反撃の為を行うためになかなかシナドの瞳への攻撃が出来ない。
 だが……その怪光線を潜り抜ける者がいた。


『見える……私にも見えるぞ!』

「零距離……取ったぞ!!」


 夢想正宗は、ブリューナクへ変化した。
 石動の耳元に怪光線が通り抜けていく……だが石動は、顔色一つ変えない所かさらに加速している。
 全ての力を注ぎ込んで必殺の槍法を繰り出す。


『ゲイ・ボルグ!!』


 瞳に向けて放たれたブリューナクは五つの彗星となってシナドの瞳を貫く。
 巨大なシナドの体内を彗星が蹂躙し、最後は全身を貫く茨となる。
 全身から閃光が生み出され、石動の手元にブリューナクが帰還した。
 それでもシナドは光線を発し、高尾が呪いの言葉を発する。


「クッ!」

『しぶとい奴だ!』


 今まで仕掛けなかったヴィシュヌ……それは全ての力を集中させていたからだ。
 戦輪・スダルサナに全ての力を注いでいるからだ。


「万象を断ち切れ、我が戦輪よ!!」


 ヴィシュヌの投げたスダルサナは、巨大な光輪となってシナドと高尾を断ち切る。


「馬鹿ナアアアア!!」


 キョウジは、関帝聖君の力を借り、高々と跳躍する。
 峰岸は、ジードの背に乗り一気に戦場を駆け抜ける。
 

「「止めだ!!」」


 キョウジの七星剣が高尾の眉間に深々と突き刺さる。
 ジードがシナドを噛み砕き、止めとばかりに峰岸が秘剣でなぎ払う。
 シナドの全身からはMAGが噴出し、高尾の体は、全身にヒビが入り砕け始めた。


「な……ぜ……」

「お前は読み違えたのさ……人間の力って奴のな」


 キョウジがそう言い放った時、シナドと高尾から閃光が発し、全てを飲み込んだ。






























「このおおお!!」

「グ……」


 早乙女の一撃が異形となったニャルラトホテプを貫く。
 今まで激しく攻撃していたニャルラトホテプの動きが止まった。


「終わりのようだ……このゲーム、お前達の勝ちのようだな……」


 その言葉とともにニャルラトホテプの姿が徐々に希薄になり、消滅した。
 だが、異形が消えた瞬間に、地面が崩れていった。
 バロールが叫ぶ。


「急いだ方がいいぞい!」

「お嬢!」

「ええ……先生達なら大丈夫!!
 皆さん、早く退避を!」


 早乙女達は、もと来た道を戻り始めた。
 パオフゥと芹沢は、ぼやいている。


「……また来た道を戻らないといかんのか……」

「ダイエットになる……と思わないとやってられないわ」


 城戸と南条、そして稲葉が一番遅れている。
 座っている神取は、割れた地面に飲み込まれようとした所を城戸が神取の腕を取った。


「来い!!」
 
「これ以上……生き恥を晒させてくれるな……」


 そういって城戸の腕に刀を刺した。
 城戸は神取の腕を放してしまい、神取は奈落の底へ落ちていった。
 城戸は、地面を殴りつける。
 南条は、沈黙している……。
 稲葉が二人に話しかける。


「行くぜ……もう此処は持たない!!」 
 
「ああ……」

「チィッ!!」


 三人は脱出を始めた。






























 
 原野の目の前に、複数の人間が転移してきた。
 九鬼達が合流して帰還してきた。


「皆さん!!」

「なんとか戻れましたが……石動君とキョウジさん、そして義兄さんがまだ帰ってきていません」

 
 九鬼がそう言った時、レイが不安気な表情になった。
 だが、ゴウトとライドウが励ます。


「キョウジと凄腕のサマナー。
 案ずる事は無い」

「……大丈夫」


 その時、空間が歪んだ。
 同時に石動達が落下してきた。
 三人とも華麗に着地を決めた。


「先生!!」

「……その様子では上手くやったようだな」

『難儀な目に会うよな~』


 早乙女は涙目になっていた。
 レイがキョウジに駆け寄る。


「……心配かけないで」

「悪ぃ。
 だが……キッチリ仕事はしてきたぜ」


 悪戯小僧のような笑みを浮かべながらキョウジは言った。
 九鬼と峰岸が互いに無事である事を祝う。


「相変わらず凄いよな」

「義兄さんこそ……」


 南条が皆に向かっていった。


「皆さんのお陰で目的を果たす事が出来ました。
 南条コンツェルンの総帥としてではなく、南条圭としてお礼を言いたい。
 ありがとう」

「……なーに言ってるの!
 仲間だろうが、南条!」

「気にするな」


 稲葉と城戸が横から口を出した。
 さらに南条が言った。


「これから後に……ささやかながら食事を用意しています。
 皆さんも良かったら来ませんか?」

「俺達は、ヤタガラスに……」


 そう言おうとした時に後から声がかかる。
 振り返るとヤタガラスの使いが立っていた。


「石動巧、そして葛葉キョウジ。
 ご苦労様でした。
 報告は、後日で構いません。
 今日はよくやってくれました」


 ヤタガラスの使いがそう言った後に、魔法を唱えた。
 キョウジ達の仲魔は全快した。


「では……」


 そう言ってヤタガラスの使いは去って行った。
 早乙女が話しかける。


「これで終わったんですよね」

「ひとまずな」

『まあ、ニャルラトホテプは……人間がいる限り存在するし。
 メシア教団も小林が逃走中だし。
 このゴタゴタが終わったら忘八やレッドキャップス、ファントムソサエティも動き出すだろうな』

「え゛!?」


 早乙女は、泣き掛けだった。
 世の中は……まだまだ火種はある。
 

『だが、なるようになるか』

「食いっぱぐれる心配は無いからな、この家業は」


 
 







 あとがき。

 というわけで、第2期完結。
 シナド相手には力押しで倒しました。
 運食い虫なしだとキョウジ達でも苦戦はするわけです。
 でも猛攻して陥落。



[7357] 第2期がもうすぐ終わるのでアンケート。(おまけ追加)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/06/28 23:55
だらだらとやってきましたが、もうすぐ終わる第2期。
第3期は……今のところはだらだらとやれなくもないので続けるつもりです。
第2期終わるまで第3期の一話をどうするかを聞きます。


・美味そうな……(久々に海外の事件、若干残酷な事が起きたり)


・爆死!?(珍しく彼が真面目に働きます)










おまけ COMP


「早乙女、新しいCOMPはいるか?」

「へ?」


 早乙女は驚く。
 石動が大き目のダンボール箱を出した。
 様々な種類のCOMPがみつしりをつまってゐた。


「太平堂の店主が試作品を用意した。
 適当に見てくれ」


 石動は、ラームジェルグに任せて部屋に引っ込んだ。


『これはどうだ!!
 ブーツ型』

「ジェシカさんみたいにステップは覚えられないし」

『ギター型』

「持ち運びがしにくい」

『ブラジャー型』

「な、なんなの!?」

『様々なセクシーポーズの仕方で召喚するパターンが異なるけど。
 隠密性バッチリ!!』

「却下です!!」


 扇形も携帯性は良いが、普通のCOMPより脆い為に却下。
 腰みの型をラームジェルグが出した時には反射的にグーで殴る早乙女だった。
 その後、様々なタイプを見たが、早乙女が満足するものが見つからなかった。
 結局、携帯型の後継機にする事になり、悪魔が8体召喚できるようになり、ソフトのスロットは3つになった。
 



[7357] 第3期 第1話 (修正・追加)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/05 03:13
「……大仕事終えた直後に仕事を入れるからだ」

「なに、鍛え方が違うからな」


 ゴールドスーツを着た男……パオフゥは、体の彼方此方に軽傷を負った黒服の男……石動に向かって毒づくが、石動が涼しい顔をして流した。


「あの『大仕事』が終わった2日後に仕事をするってのは……非常識だぜ」

「支障はない。
 あったら死んでいた……九鬼の旦那もペースで働けるだろうしな」


 関東を荒らした黒幕『ニャルラトホテプ』を打ち倒した2日後に石動は、仕事を始めた。
 警視庁の依頼で連続爆破魔を捕らえる事の協力を要請され、それを受けた石動。
 ニャルラトホテプの一件に関係あるかもしれないと念のために引き受けたのだが……数ヶ月前から爆破されており、その場所は、様々な宗教の教団本拠地を襲っていた。
 石動は、襲撃がある可能性のある場所へ向かったのだが……。


『巧!!』

「ああ……遅かった」


 人の気配が一切なく、悪魔の気配だけがしていた。
 石動は、フリーダーを召喚して、気配のある場所へ向かった。
 気配のある場所は、教団の演説を行うホールで、そこには数十体の死体があった。
 全て生気を抜き取られ、ミイラのように干からびている。
 様々な機材が置かれいる演説台に黄色い幽霊のような悪魔が呻いていた。


「マガ……ツヒィ!!」

「マスター、我々に気がついたようです!!」

「……なるほど、奴の出目は解った」

『ゴウトちん様々だねぇ』


 ゴウトは歴代ライドウと共に様々な場所へ赴いた。
 石動は、その話を聞いており、敵が何処から来たのか察した。
 人々から殺して奪っているMAGを『マガツヒ』と呼ぶ悪魔。
 『マガツヒ』という言葉は、受胎を起こってしまった並行世界で使われたらしい。
 十四代目ライドウとともに、受胎が起こった東京を探索したらしい(結局依頼は失敗したらしいが)。
 その話を聞いており、奇怪な悪魔の素性を理解する事が出来た。


「ヲォマエ!マガツヒヲ、ヨコドリシニキタカ!!」

「違うな……貴様を殺しに来た」


 石動が妙法村正で悪魔を一閃した。
 容易く倒した石動を褒めるラームジェルグ。


『やったな。
 だが……』

「まだ気配がする」

「……!?
 マスター!!」


 ホールの巨大プロジェクターに先ほどの悪魔が写った。


「……殺し損ねた、いや……あれは本体じゃなかったか」

『ヲォレハ……スペクター!!
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ』

「……退却だ、フリーダー!!」

「……!!
 了解しました」


 妙法村正をブリューナクに変形させ、MAGを放出しながら扉へ突撃し、さらに奥の窓ガラスも突きぬけた。
 石動の判断は正しかった。
 突撃してホールを出た瞬間、ホールの機材が爆発し、教団本拠地のホールがあった階全てが吹き飛んだ。
 多少炎に巻き込まれたり、破片が飛んだりした為に多少のダメージを受けたが、難を逃れた石動だった。
 話を現代に戻そう。
 パオフゥと話していた時に三人の来客がやってきた。
 小柄な美男子と、貫禄のある体格を持った壮年、そして20代後半位の化粧美人……原野、香我美、そして芹沢だった。


「いやあ、びっくりしましたよ。
 でも、石動さんなら大丈夫だとおもっていましたがね」

「パオ、お見舞いの品持ってきたよ!」


 原野は、朗らかに声をかけてきた。
 芹沢の方は、パオフゥと付き合いのある人間である石動の為に果物を差し入れに来たようだった。


「……まったく、馬鹿な真似しやがって。
 そんなに死にたければとっととくたばれってんだ」


 憎まれ口を叩く香我美に対して、軽く笑う石動だった。
 香我美が続けて聞いた。


「で、敵の特徴は?」

「名前はスペクターと名乗っていた。
 レギオンのような群体型だ。
 多少は知恵が回る様で、ネットを移動手段にしている。
 目的は、MAGで、特に魔道士や特殊能力者から吸い上げる事だ。
 交戦データはCOMPから転送する」


 石動のCOMPから香我美の端末へ記録が写された。
 香我美は、それを受け取ってすぐに踵を返す。


「ありがとよ……。
 すぐに燻し出しに入る」

『悪いねぇ、せっきー。
 ラムやんも今度もネトゲで遊ぼうぜ!』


 そう言って香我美たちは去った。
 芹沢は、不満げに言った。


「なによ、情報とったらハイ、サヨナラって!!
 冷血非常のエリート様って奴!!?」

「いえいえ……香我美さんは偏屈ですが熱い心を持っていますから」

「どういうことよ?」


 原野が芹沢の言葉をやんわりと否定する。
 パオフゥが煙草に火をつけながら言った。


「アイツは、群れたがらないが……仲間と認めた奴の為なら幾らでも骨を折る奴だ。
 顔に出ちゃいないが、石動を殺しかけた奴を意地でも燻し出すつもりだぜ。
 ああなったアイツは怖いぜぇ」

「風間の旦那から聞いたんだが……『嵯峨薫』が殺された時には、香我美の様子は正に怒髪天を突くといったもんだったそうだ。
 真相を探る為に電脳方面から奴は攻めた……。
 他の面々も努力もあったが、須藤竜蔵を追い詰め、更に天道連を破滅させるお膳立てをしたのは香我美だ」

「お節介な奴だぜ、無愛想な癖にな……」


 香我美の意外な一面を知った芹沢は、驚きを隠せなかった。
 石動が立ち上がろうとした時、フリーダーに押さえつけられた。


「どうした?」

「駄目です」

「?」

「怪我人は休まなくてはなりません」


 石動に向かって進言するフリーダー。
 しばらく沈黙が続く。


「いや、これくらい」

「駄目です、マスターは働きすぎです」

「……」

「……」

「解ったよ、今日は大人しくしておくさ」


 フリーダーに根負けした石動。
 その光景を珍しそうに見つめる原野だった。
















 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ

 自分ガ何者カハ、ワカラナイ。
 タダ、恐ロシイ者ニ殺サレタ記憶ダケガ、ウッスラト、残ッテイル。
 ソシテ、狂オシイ飢餓感ダケガ……

 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ

 『ネット』トイウ海ノ中ニ潜リ込ミ、情報ヲ探シテイル。
 マガツヒヲ獲ル為ニ……前モ同ジヨウナ事ヲシテイタ気ガスル。

 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ
 マガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒマガツヒ

 獲物ノ情報ヲ聞イタ。
 マガツヒノ匂イガスル。



『コレハ……』

「ようこそ、そしてさようならだ。
 シンクロ召喚!!」


 警官ガ手帳ヲ取リ出シ、構エル。
 巨大ナ悪魔ガ現ワレタ。
 更ニ、鬼ガ何体モ出テキタ。


『寄越セ……マガツヒィ!!』

「攻撃開始!!」


 敵ハ強イ。
 殺セナイ。
 ダカラ、分裂シテ、本体ダケ逃シテ、残リハ自爆サセル。


『死ネ……』

「させるか!!
 毘沙門天を舐めるな!!」


 悪魔ガ矛ヲ振リ回シ、分身達ガ砕ケ散ッタ。


『ヲノレ……』


 逃ゲタ。
 シバラク、身ヲ潜メタ。
 襲ッテ、失敗シタリ、成功シタリ……失敗ノ時ハ、警察ガイタ。
 忌々シイ。


『アレハ……』

「……!!!」


 『外』ノ世界ノ海ニイル犬ニ似タ存在。
 ぷろぐらむ……トイウ奴ダ。
 今マデ見タコトガナイ。


「KISYAAAA!!!」

『何ヲォスルゥウウウ!!』


 犬ガ噛ミ付イテキタ。
 痛ァイ。
 顎ガ凄ィ。
 腹ガタッタ。
 ダカラ、壊シタ。


「GYYAAAA!!」

『ザマァミロ……ナァニ!?』

「KISYAAAA!!」


 鮫ガ何処カラカヤッテキタ。
 それだけじゃない。


「GOYOUDA!」


 警察官ニ似タ『プログラム』ガ襲ッテキタ。
 犬ヨリ強クテ、鉄砲ガ痛イ。


「死ネ獲得獲得!!」

「MUNEN……」


 最期ノ言葉ガ信号ニナッテイルノカ、敵ガヨッテキソウダ。
 ダカラ、下ニ潜タ。
 『あんぐら』トイウ場所ダソウダ。
 ココハ、汚イ、デモ居心地イイ。
 安心シテヤスメル。


「KUMOMOMOMO……!!!」

『ヲォマエハ……?』


 蜘蛛ノ形ヲォシタァ、『うぃるぅす』トイウ奴。
 今マデデテキタ事、ナイ。
 デモ、ヲォレヲ、襲ウ。


「KUMOMO!!」

『死ネ!!』


 殺シタ。
 デデデモ、サササ刺サッタ、キキ牙。
 七那拿ナンンンカカカッ、屁屁変ンン駄駄ダダダd。
 どどど、毒?
 ヒヒヒ紐ノ野野、『うぃるゥすぅぅ』、ササササ才禁(細菌)ノノノ『ヴぃるゥすぅ』、キキイ、キタ。
 ヲォレノノノ、分身、狩たててびヴ。
 乾グ・・・・まgふぁづひ……ぼびい゛。
 ……ヴザふび……。


『マガ厨秘ィイイイイ!!』


 ヲレノ……ヲォレノマガ…/・/・つ・・・ひ























『おっそろしいもんだ』


 ラームジェルグが、同情の視線を送っていた。
 香我美が去って数日後、風間から呼び出しを受けた石動達だった。 
 旧メシア教団支部(第一期参照)で待ち構える算段になっていた。
 スペクターがやってきた時には半死半生で、石動が妙法村正で藁のように両断して終わった。
 香我美が面倒臭げに石動の元にやってきた……その姿は、髭を伸ばし、スーツを着ていなければ浮浪者と勘違いするほどであった。 
 見たところ、数日間徹夜で仕事をしているように見えた。
 石動が言った。


「流石だな」

「面倒をかけさせるな、馬鹿」


 そっぽを向いて話す香我美……、スペクターを追い込んだのは彼であった。
 石動や、風間がスペクターと交戦した時に得たデータを参考にして対スペクター用CPワクチン、およびウィルスを作り、追い込んでいったのだ。
 無論、協力者がいたらしい。


「九鬼の奴にも礼を言えよ。
 桜井って奴は俺ほどじゃないがいい筋していたし、あのアルファ&ベータがいたお陰だからな。
 噂通り、俺と五分に渡り合えそうな技術を持ってやがる」

「ああ、伝えておく」

「じゃあな……」

『じゃあな、ラムやん』


 香我美とベルフェゴールは眠そうにしながら去っていった。
 石動は、無言で頭を下げた。



あとがき
石動が爆死……するかとおもったがそうでもなかったぜ。
香我美の作ったプログラム?
真2のワクチン・ウィルス……といえば解っていただけるでしょうか?




[7357] 第3期 第2話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/03 06:55

 ……欲しい。
 忘れたれない……。
 あの夜、『深い深い森の奥』で見つけた……アレの味が忘れられない。
 あれは、夢だと思いたい……そうでなければ……。
 でも……忘れる事が出来ない。
 あの香……、あの味!!!
 アレを食べてから……身体が漲ってきた。
 衰えると思っていた体が!!
 
 ああ、欲しい……。

 
 だから私は探しに、食べに出かれる。
 ……私は狂って仕舞った!!!

 
 

















 石動の事務所に来客が来ていた。
 金髪の美女が怨念に満ちた視線を石動に送っていた。


「なーんで私は仲間外れだったのかしら?」

「外国人……、そしてベルグラーノ卿の姪なのが不味かったな」

『まあ、御国の一大事だったからね~』


 ラームジェルグは、そのように断じた。
 彼らが話していたのは、『JOKER』事件、そしてその黒幕を討伐しにいった『ニャルラトホテプ討伐』の事を指していた。
 国の一大事であり、自国の事は、自国で治めるべきだと日本……そしてヤタガラスは考えている。
 強い力を持ったオカルト大国なら尚更の事である。
 ジェシカは、残念そうな顔をしていた。


「あーあ」

「差障りが無い程度には話してやる。
 本題は?」


 その言葉を聞いて、膨れっ面のジェシカの表情が元に戻った。
 

「叔父様の友人が経営しているホテルがあるの。
 でも……最近厄介な事件が起こって」

「手を貸したいの山々だが……」

『あいにく、別件があってね~。
 サイコダイバーの依頼で断れんのよ』

「さいこだいばぁ?」


 石動達は、その依頼の方を優先したいと考えている。
 『JOKER事件』を解決し、ニャルラトホテプの出鼻を挫いた裏には、サイコダイバーの協力があった(第2期 第43話参照)。
 その彼からの依頼とあっては、協力しないわけにはいかない。


『正確には、サイコダイバーの『護衛』兼『助手』の神農氏なんだがね、依頼は。
 ちょいと海外に出なきゃいかん訳で』

「そう……ドイツの■■■の方まで足を伸ばすわけには」

「………■■■だって?」

「ええ」


 石動は、しばし考えた後に言った。


「俺も行こう」

「まさか……目的地はそこ?」

「ああ……だが、俺は依頼の方を優先させてもらうがな。
 代わりというわけではないが……」

『さくらちゃ~んを助手につけてあげよう』


 ラームジェルグは、気妙なイントネーションで石動の弟子の名を呼んだが、二人は無視した。
 ジェシカがため息をつきながら石動達の同行を認めた。
 むさ苦しいラームジェルグが無視されたことを泣き真似しながらも挫けずに質問した。


『ババァ……ゲフンゲフン、師匠は?』

「美術館。
 見たい展覧会が今日までだからって……」

『(芸術を愛でるより、暴力振るう方が様になるがな)』


 ラームジェルグが、もし本人に聞かれたら無間地獄に叩き落される事を考えているが……幸い誰も察知していない。
 ジェシカが、今度は石動に質問した。


「で、石動は……何を探すの?」

「……大した仕事にはならないだろうが、ある物を探す事になった。
 正確には『ある物が消えた事』を確認するというべきか」


 石動の奇妙な言い回しにジェシカは首を傾げる。


「どういうこと?」

「火に焼かれれば焦げ、地に落ちれば土に還り、水の中に落ちれば溶ける程度のものだが……」

「???」


 その後、石動に聞くが、はぐらかされてしまった。













 ドイツ連邦共和国。
 北はバルト海と北海に面し、周囲に9つの国と国境を面する国である。
 ドイツ語で「黒い森」を意味するシュヴァルツヴァルトの標高1000mを超える広大な森林がある。
 森の多くは植林されたモミの木で、密集して生えるモミの木によって、暗く見えることがシュヴァルツヴァルトと呼ばれている。
 低地では、オークやブナも生育しているのだが……近年、酸性雨によって多くの木々が枯死している。
 そのことを重く見たドイツの都市では環境保護に取り組み、また『緑の党』という環境政治団体まで発足されている。
 石動達は、その森林が色濃く残ったと場所に面したホテルに向かっている最中なのだ。
 列車の中で早乙女は、食事代わりにフランクフルトを食べながら石動に話しかけてきた。



「先生、いいんですか、一緒に来ましたけど」

「まあ、あの事件の後は疲れただろう?
 気晴らしになるだろうしな」

『でも、ジェシカの依頼をまだ聞いていない罠』


 石動が、探し物についてはぐらかした性か、ジェシカは用件を今まで話さなかった。
 ジェシカがついに依頼の詳細を明かすのだが……、


「最近、赤ん坊の誘拐事件が起こっていているの。
 もう10件以上……」

「先生……気晴らしになりそうもありません」

「………がんばれ」

「それだけ!?」


 ラームジェルグは、早乙女には安らぎの時は来ないのだと涙した。





















 おまけ 『のむ・うつ・かう』


 石動が地下の訓練場で訓練している最中……。
 ラームジェルグは、早乙女と芹沢とパオフゥと雑談していた。
 芹沢と早乙女がショッピングに繰り出し楽しんだようだ。
 ……そして、パオフゥは荷物持ちだったようで、くたびれた様子であった。
 芹沢がラームジェルグに質問した。


「ねえ、石動さんってお爺ちゃんなんだよね」

『まあ、戦中生まれの山猿だし』

「言われて見れば昔の人っぽいですよね、先生って」

『(むしろ戦国の人じゃねえ?って思うときがあるけどな)』


 パオフゥは、面倒そうに煙草を吸う。
 芹沢が俄然興味を持ったようだ。


「女性関係って……」

『まあ、色恋の一つくらいはあったけどね。
 語らないけど』

「奴は、木石かと思ったがな」

『正直、肉体年齢一桁の餓鬼が専門書読みながら肉体改造しているのは一種のホラーだったがな』


 パオフゥは、嫌そうな顔をしていた。
 前世に比べれば格段に落ちる性能だった為、石動は戦える肉体を作り出すため文字通り『肉体改造』と言っていい所業を行っていた。
 (同時に省エネ効率化した技術の研究もしていた)
 早乙女は、石動の事を感心していた。

 
「……恐ろしい位、ストイックというか修行僧ですね」

「……『男は飲む・打つ・買う』っていうけど、実際のところはどうなの?」

『飲むに関しては……強いんだが、切っ先が鈍るから酔いつぶれるまで飲んだのは後にも先にも一回だけだな。
 それ以外では適当に切り上げるし。
 打つは……以前マカオのカジノに潜入した時にはブラックジャックだけしていた。
 異常に見切りがよくてそれなりに勝っていたけど……進んでいくタイプじゃないな』

「まあ、アイツを見りゃ予想がつくな。
 買うは……ありえないだろ」


 パオフゥは、石動に対してそのように断定した。
 だが……、


『タイで一回買ったな(第一期 第35~36話にタイに行った事が……))』

「「ええ!?」」

 
 早乙女と芹沢は驚く。


『それも、十歳くらいの……幼女。
 終わった時には幼女は汗だくで……』

「まさか鬼畜だったなんて!!」


 芹沢が思わず拳を握り締めた。
 だが、パオフゥが口を挟む。


「芹沢、早とちりじゃねえか?
 どうせ……そんな事をやらせずに肩を揉ませたんだろ?」

『ありゃま、バレたか。
 終わったら、たっぷりお駄賃を渡してさようならだった』


 ラームジェルグの言葉にホッとした芹沢だった。


「お爺ちゃんみたいですね」

「まあ、生きた化石だわな……日本の主な武術を修めている時点で」


 

 



[7357] 第3期 第3話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/03 06:56


 欲しい……欲しい……あの味が、あの味が。
 忘れられない。
 あの芳しい香!
 あの食感!!!
 駄目だ……もう私は……!!
 狂わしいまでに……人間の持つ、根源的な……欲に抗えない。


 ワタシハ、アカゴヲ、タベタイ。


















「……流石、黒き森。
 異界との境界が薄い」

『いやあ、神社と暗い森の中じゃ大声が出せねえや』

「よく言うもんだ」

「マスター、警戒していきましょう」


 石動達は、『黒き森』に踏み込み、異界へ渡った。
 現代の剣客の手には、中華風の羅針盤を持っている……神農に渡された探し物を探す為の道具である。
 様々な悪魔が異界の中を満喫している。
 石動達に襲い掛かる度胸のある者はいなかった。
 これは、ラームジェルグ……いやクー・フーリンと馴染みのある妖精達が歓迎し、便宜を図っているからだ。
 ある地点になって、羅針盤が止まった。


「……ここか」

『……大地の上でも湖や川でもないな』

「ああ……大地ではない。
 巨大な木の年輪……そして周りには枯葉が集まりすぎている。
 『木行』の地形だ」

「……」

『……』

「……更に詳しく調べる必要があるな」

『面倒な限りだ』


 石動達は、聞き込みを開始した。














「石動が出たけど、協力お願いね」

「はい……」

「我がついている、安心しろ」


 スカアハが慰めるように早乙女に声をかけた。
 ジェシカ達は、警察署へ向かった。
 金髪を短く刈り上げた老年の警官が声をかけてきた。


「あんたが、デビルサマナーか?」

「ええ、そうよ」

「若いな……東洋人もいるのか?」

「ええ、日本人。
 でも、腕っ節は貴方より強いわね」


 早乙女を珍しそうに見つめる警官。
 東洋人は若く見られる傾向にある……恐らく、早乙女をほんの子供としか思っていないのかもしれない。
 その様子を見たジェシカがニヤリと笑っていったのだ。


「ほう!
 日本人といえば、腰抜けのイタリア野郎に比べてタフで、義理堅い奴だからな!
 お嬢ちゃんは、もしかしてサムライとかニンジャなのか?」

「うむ……皆、日本人といえばサムライとかニンジャとかスシとかいうのかのう……」


 黒髪の絶世の美女……女神スカアハは、嘆くが……、古流剣術を修めた早乙女だからサムライ娘といっても嘘ではない。
 師匠のほうが海外で妄想される『東洋の神秘の力を持ったサムライ』と勘違いされても可笑しくないし、その男ですら一目置く『実体を掴ませない神秘のNINJA』も実在しているのだから……。
 早乙女は、その様子にたじろいでいる。
 ジェシカが横からストップをかけた。


「はいはい……状況を教えて、ね?」

「解った解った。
 じゃあ、友人自慢のコーヒーと『Schwarzwälder Kirschtorte』(黒い森のサクランボケーキ)をご馳走しながら話すとしよう」


 老人が語りはじめた。
 事の始まりは、1年半前。
 町の肉屋の生まれたばかりの子供がいなくなった。
 警察でも捜すが……結局見つからなかった。
 しばらくして、同じ事件が起こり……、昨日で22件目であった。
 この町だけでなく、周囲の町からもチラホラ出ているが……一番被害が多いのはこの町であった。


「叔父様から聞いた以上に被害は深刻ね」

「手がかりはないんですか?」


 早乙女の言葉を聞いて老人が答えた。
 あるとき、森林にハイキングを行っていた女性が、コースから外れた時……、


「見たんだよ、骨を」

「骨って……」

「調べたら……当りだった。
 ……赤ん坊の骨だよ。
 まったく生まれたばかりでロクに骨が出来上がっていない位に短い人生になっちまった。
 惨いぜ……」


 早乙女は、居た堪れない気持ちになったが、疑問が浮かんだ。
 ジェシカにそれをぶつけてみた。


「ジェシカさん……でも、これは警察の仕事にしか見えません。
 悪魔絡みとは限らないんじゃ……」

「そうだけど……ベルタンのおじさまがベルグラーノ叔父様に頼んだらしいの」

「ベルタン?」


 早乙女の疑問に、横から説明を加えるスカアハ。


「『鉄人』ベルタン。
 ベルグラーノの師匠と組んでいたフリーのデビルバスターでな。
 その身体は頑強で鋼鉄無双の働きで未だ現役だそうだ」


 ベルグラーノの師匠格と同期……六十代に突入していているのだ。
 十七代目葛葉ゲイリンも生涯現役を貫いたが……。


「ベルタンおじさまは、小柄でビール樽みたいな体型だけど、凄く逞しい筋肉の持ち主で、素手で戦車をひっくり返す位の怪力なの。
 まるで、ドワーフやオーガね」

「(……お父さん、お母さん、世界は……広いです)」


 早乙女は、人外な存在ばかりが身の回りにいる事を知って遠い目になっていた。
 ジェシカは、早乙女を揺さぶって正気に戻ってから説明した。


「おじさまが……、
 『ありゃ、不味いな。
  どす黒い気がはびこってやがる。
  多分、この事件に関係あるんじゃないのか?
  ないにしても、早く解決した方がいいな、サマナーとかに頼んで』
 って言ったの」


 歴戦のデビルバスターの勘であるため、無視できるほどではなかった。
 不幸なことに、ベルタンは別に用事があった……また、サマナーでないので、特殊な捜査が出来るわけではない。
 そこでホテルのオーナーは、ベルグラーノに頼んだのだった。
 老人が頼み込むように言った。
 
  
「まあ、頼むよ。
 こんな物騒だとオチオチ森へ散策できないし、このような外道は許されないからな!!」

「結構深いんじゃないですか、この森って」


 心配そうに早乙女が言うが、豪快に笑う老人警官。


「なんの、なんの。
 1年前に少しばかり迷ってしまって難儀したが、まだまだ現役!」

「まあ、まかせて。
 すぐに事件を解決してみせるわ!
 叔父様の名にかけて!!」

 
 ジェシカが拳を握り締めて力説した。






























 石動が、異界の森の中である存在を見つけた。
 フリーダーが、石動に声をかけた。


「マスター?」

「これは……」

『赤子の死霊だな。
 こりゃひでえ……洗礼を受けていない子供もいやがる』


 ダンテ『神曲』において、地獄の世界は次のようになっている。
 初めにたどり着いたアケロンの川……ここは正式には地獄ですらない。
 第一の圏谷は川の向こうにあるリンボ(辺獄)であってこの場所には罪人はいない。
 だが、幸福もなく、苦痛もない……嘆きと溜息の中にいる。
 キリスト降誕以前に生涯を送った善良な人たちや洗礼を受けずに死んだ嬰児たちの魂、そして有徳なる異教徒が迎えられている場と。
 地獄の形は様々であるが、ヨーロッパの敬虔なキリスト教の文化に根付いたこの地域では、洗礼を受けずに死んだキリスト教徒の子はそのままでは救われない。
 救われないという呪いを受けたのだから。
 

「祐天上人の真似事でもするしかあるまいか……」

『悪魔が巣食うこの場所ならいつかは餌にされるだろうし、生き延びてもレギオンとかの仲間入りになるよりはな』 


 祐天上人は、日本における怨霊調伏、水子供養の草分けで、鬼怒川の羽生村、累の怨霊を祓い鎮めたとされている。
 本来、仏道には輪廻転生があり、霊として彷徨う暇はない。
 つまり、悪霊退治を行う事など仏門に入った僧侶は本来行わない事である。
 だが……現実に悪魔は存在しており、怨霊・ゾンビといった屍鬼も当然いるし、地獄もある。
 修行を行い、常人よりも高みにあることが多い僧侶が悪魔を戦う事も必ずある……人々を救う為に。
 祐天上人もその一人であり、哀れな赤子を救済する事から石動は、祐天上人の名を口にしたのだ。。


「まず、何故死んだかを聞かなければなるまい」

『ああ……』



































 




 早乙女達は、捜査に乗り出した。
 仲魔による偵察、現場検証、読心術、相手の心を熱したり、冷ましたり……様々な手段を用いた。
 浮かび上がったのは……ここにある私立病院。
 製薬会社が出資して作られた病院だが……、黒い噂が多い。



「医療事故?」

「ああ……、赤ん坊が結構インフルエンザにかかったとか、出産に耐え切れなかったとか色々あったらしいが。
 でも、死んだ数が少しばかり多いんじゃないかってね。
 だからそんな噂が立つわけだが」


 ビール職人の中年が町の噂をジェシカに喋っている。
 ジェシカも更に聞き込む。


「他には?」

「そうだねえ……出資先のロシアの製薬会社なんだけど。
 マフィアがマネーロンダリングに使っている会社とか、色々言われているな。
 まあ、あの国は右手と左手がどう動いているかなんてことがわからないイカレた国だからな」

「まあね、否定できないわね」 


 ジェシカが順調に情報収集を行っていたその時……、悲鳴が響き渡った。


「キャアアアア!!」

「これは!?」


 早乙女がビール職人に問うとすぐに答えが返ってきた。
 その声は慌てている様子だが、しっかりとした口調で答えた。


「これは……隣の家だ!!
 あっちは子供が生まれたばかりなんだ!!」

「それは……!!」

「遅かったか……!!」


 ジェシカは絶句した。
 スカアハの言葉は……正しかった。
 ジェシカたちの前に、狼と猿が入り混じった獣人が四つん這いに着地した。
 ビール職人は、あることに気がつき、腰を抜かした。


「ヒイイイイ!!
 あ、あくまが……喰ってやがる!」


 獣の悪魔は、咀嚼を繰り返している……。
 悪魔の口元には、赤子の足先が出ている……。 
 そして……悪魔は赤子を残らず食べた。


「GAAAAAAA!!」


 だが……どこか満ち足りない様子であった。
 それが更なる飢餓を呼んでいる……そんな風に早乙女が感じていた。
 ジェシカが、怒りで目を吊り上げる。
 だが接近戦は、スカアハほど得意ではないので、下がった。
 静かにスカアハが槍を構える。


「下郎が……!!」

「GAAAA!!」



















 おまけ  ソルガディの面々で戦隊物。


「ソルガディレッド……石動巧」(バーン!)

「同じくソルガディブルー、九鬼英輔」(バーン!)

「同じくソルガディピンク、スカアハ」(婆ァーン!!)















「何か申し開きがあるか?」


 脳天に槍が突き刺さっている効果音担当(ラームジェルグ)。
 逆切れする効果音担当。


『うるせぇ!
 ピンクってキャラかよ!?
 むしろ悪の幹部ミギャー!!』







[7357] 第3期 第4話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/03 12:35


 違ウ、何カ違ウ。
 ……アノ味ト違ウ。
 何ガ足ラナイ……。
 アノ味デナケレバ……!!
 ……ソウデナケレバ私ハ、私ハ……!!!
 私、私……ワタシ?
 

 ……ワタシハ……ダレダ?




















「佐助!バロール!!」

「お嬢!!」

「ほほい!!」


 早乙女が仲魔を召喚した。
 忍装束を着た小柄な男性と、単眼の魔王……早乙女にとっての切り札である。
 2体は、早乙女を護るように位置取りをした。


「シルフ!」

「ジェシカ、呼んだ?」


 ジェシカもシルフを召喚した。
 スカアハがその間に槍をしごき、獣の悪魔に向かって突きを入れる。
 悪魔の動きは早い。
 だが……九鬼に比べれば遥かに遅く、単純な動きでスカアハが対応出来る程度でしかなかった。
 スカアハの槍は喉笛を貫いた。


「やった!!」

「ジェシカ、まだだ!!」


 異変に気がついたスカアハは、槍を振り回して悪魔を引き剥がし、そして壁に叩きつけた。
 派手な音と共にレンガの壁が崩れた……。
 だが、悪魔はすぐに起き上がった。
 ジェシカは、悪魔の様子に気がついた。


「……傷がない!?」

「いや、正確に言えば傷はできた……が、再生している。
 ……我の槍を受けてこれほどとはな」


 悪魔がジェシカに飛びかかろうとしたが、佐助とバロール、そして早乙女が一斉攻撃を行う。
 佐助の飛針が魔獣の眉間、脊椎に刺さる。
 バロールの死の魔眼が悪魔を射抜く。 
 早乙女は、剣をジェロニモの弓に変形させ、矢で射抜いた。
 しかし、悪魔の身体から矢や針が抜け落ちている……内側から押されて落ちたようだ。


「やばいぜ、お嬢。
 再生して矢や針を押し返している!!」

「じゃが……ワシの死の魔眼は効いておるのぉ」


 バロールの指摘どおり、バロールの死の魔眼による攻撃で右腕(あるいは右前脚か)が吹き飛んでいるが、再生のスピードは明らかに遅い。
 バロールの魔眼を撃ち続ければ倒せるだろう……。
 しかし、それは出来ない。
 真剣な声でジェシカがバロールに問う。


「バロール、再生が追いつく前に放ち続けることは?」

「本体なら楽勝じゃが……。
 この身体となると、今のさくらじゃあ、そこまでの力は引き出せなんだ」


 バロールは、残念そうに言った。
 幸い、負け戦になる事はなかった。
 悪魔が、バロールの攻撃に警戒して、一吼えしてから後退し、そのまま去って行ったからだ。
 腰を抜かした男が言った。


「……追わないのか?」

「手持ちの武器じゃ殺しきれないわ。
 ちょっと準備しないと……警察を呼ぶわね、ひとまず」


 ジェシカは、男を安心させる為にそう言ってから警察へ連絡した。
 バロールは、人間の姿に擬態し、佐助も目立たないように衣服を洋服へと変えた。
 早乙女はどうするべきか悩んでいると、取り替えたばかりの新式の携帯電話型COMPが鳴った。


「はい……」

『俺だ』

「先生、先生ですか!?」


 電話をしてきたのは、早乙女の師匠……そう、石動であった。
 不安になっていた早乙女の心が幾分和らいだ。


『こちらでの調査がある程度目処が立ったが、少々飛び込みの依頼があってな。
 すぐに合流する事はできそうにない』

「そうですか……。
 先生!!
 今、大変な事が……!!」


 早乙女は、事情を説明した。
 赤子が攫われる事件、黒い噂がある病院、そして……異常な速度で再生してバロールの攻撃以外は無効化する敵について早乙女は説明した。
 探偵見習いとして修行を積んできたお陰か、解りやすく、要点を得た物であった………依頼人へ報告する技能は、探偵には必須である為、早乙女は訓練を積み続けている。
 石動は、早乙女の話に口を挟まず、終わってからもしばし沈黙を守っていた。


「……先生?」

『……ああ、把握した。
 まず病院から当ることだ。
 そうすれば、『片方』はケリがつく』


 早乙女は、石動の言い回しに気になったが、さらに石動は続ける。


『……俺がその悪魔に対しての『切り札』を持ってこさせる。
 それまでは、奴にあっても無理に倒しにいこうとせずに撃退に専念しろ』

「はい……って倒せる方法があるんですか!?」

『まあな……俺が持って無くても、持っている奴には心当たりがある。
 俺は、これから異界に入る……。
 早乙女、くれぐれも無理はするな』


 石動の電話が切れた。
 早乙女は、石動の最後の呟きが聞こえた。

 『発見なんてされなければ良かった』

 石動の声は、地獄の釜を開けたような声であった。
























 

 はい……ああ、石動さん?
 ええ、今暇だから中華レストランで食べている所ですけど。
 緊急の仕事?あの人から借りて来い?

 人死にが出ているようですし、急がないといけませんね。
 解りました。
 借り受けたら超特急で持ってきます。
 コネがありますから……じゃあ。



 ……あーあ。
 でも、お世話になっていますから、仕方ありません。
 ナオミさん、お会計お願いします。




























 警察に連絡したジェシカ達に早乙女が石動の助言について話した。


「石動がそんな事を……」

「石動が受けていた依頼に関係することは確かであろうが……。
 今は詮索しても意味はあるまい。
 病院について調べよう」

「佐助……そちらは、任せていい?」

「ああ、いいぜ」


 佐助は、快く引き受けた。
 早乙女が指示したのは、黒い部分について調べる為に潜入して調べる事だ。
 早乙女達は、その間病院についての情報を周りから聞き込みを行う事にした。
 病院ついては様々な事が解った。
 ロシアのある会社の資本で設立された事、医師の腕は確かであり、海外からもやってくるほどである事は、噂通りのようだ。
 だが……出資会社は、ロシアのマフィア『レッドキャップス』と関わりがあると噂されているとジェシカは記憶していた。
 佐助が夜中にホテルへ帰ってきた。


「お嬢、今帰った」

「お帰り。
 なにか解った?」

「ああ、色々わかったぜ。
 やっぱり、黒い噂は本当だった」


 佐助の言葉を効いてスカアハが言葉少なめに言った。


「話せ、佐助」

「医療事故は……無かった。
 もっと最悪な事だった。
 赤子や胎児から多く採取される物質目当てに医療事故に見せかけて殺している。
 医療用の薬の研究の為にな」

「「!!」」


 ジェシカと早乙女は絶句した。
 アメリカカブトガニの血液の成分が大腸菌などのばい菌を短時間でゼラチン状に固めてしまう事から医療の研究にカブトガニの血液を収集されている。
 だが、人間の胎児や赤子を殺してまで行うとなれば話が変わってしまう。  


「……はて、この国は赤子のシチューを作らにゃならんほど貧しいのかのう?」

「金になれば目も眩む奴もいるって事だろうな。
 それと、出資先なら貧しいからやりかねないだろうがな」


 バロールは、涼しい顔でブラックジョークを飛ばすが、佐助がそれに答えている。



 
 少々……わき道に逸れさせて貰う。
 『赤子のシチュー』というのは、ガリバー旅行記の作者ジョナサン・スウィフトが書いた有名な文章『貧困児処理法捷径』で書かれた事だ。
 当時、アイルランドは厳しい状況にあった。
 一言で言えば………『英国に搾取され、貧困のどん底にあり、独立する事が唯一の希望としてアイルランド人の胸の中にマグマのように渦巻いていた』と言えばいいだろうか?
 アイルランド人は、泥棒か、それに類する事をしなければ生きていけない境遇であったと指摘しているほどだった。
 イギリスは、それに対しての解決方法を生み出せないままであった。
 ここでスウィフトが画期的な解決法として提案したのは次のような事であった。

 
 『ロンドンで知り合いになった博識のメリケン野郎から聞いた所によるとだ、良く育った1歳位の餓鬼は大変美味いってな。
  12万匹の内2万匹は子孫繁殖用にして、残りは貴族や富豪に売りつければいい。
  牛や豚より効率がいいし、地主さん方は適当な食物で、親達の膏血を既に搾り取った奴らだから子供を食う資格が一番先にあるだろうな。
  シチューにしたり、焼いたりあぶったり茹でたりするのもいいし、フリカシーやラグーにしてもナイスだね!!
  母親には一ヶ月前には忠告して丸々太らせる為に乳をタップリ飲ませるこった……友人を招待するなら赤子一匹で二品の料理もできるしな!!
  この方法なら無駄に増えて国の害になるカトリックどもを減らせるし、貧乏な小作人にも所有物ができて生活の張りになる上に地主へ払う土地代になる!!
  その上、青少年を育成する費用の削減になって非常によろしいし、母親も一年以後からの可愛くない子供の育成をする手間も省ける。
  更に、新しい料理の誕生で酒場の客が増えて、コックも仕事が増える……そして、結婚の奨励になるし、金の卵を産む女房に対して亭主は優しく接する事ができる。
  これ以外にアイルランドを救う手段はないし、地主に苦しめられる人生を送るしかない運命にある者を費用をかけて育てる必要があるのか?
  感情で否定するのは結構だが、否定するなら代替案でも示せよ?』


 と言った内容を大人の言葉で切々と語られているわけだ。
 当時、これを読んだ夏目漱石は『これを真面目とするならば純然たる狂人である』と評した。
 スウィフト本人は、大真面目に当時の状況を皮肉って書いたのであろう。
 スウィフトはアイルランド生まれだが、愛国心はさほどなく、イギリスの政界に進出しようと足掻いたが失敗した僻みあったのだろうが……。

 バロールは、赤子を利用した事に対して連想してそのような言葉をひねり出したのだろう。
 早乙女は、石動が『片方』と言った意味が解った。


「(あの悪魔と病院が起こした事件は別……なのでしょう。
  悪魔は『赤子を食べる事』が目的だけど、病院のほうは『赤子から薬品の材料を取り出す』のが目的だから。
  でも……病院の近くにも現われたという事は……)」

「病院でも、赤子を喰う悪魔について話されていたぜ。
 あっちが作り出したって感じじゃないし、むしろ材料をとられちゃ堪らんって様子だった」

「……どうするジェシカ?」


 佐助の言葉を聞いたスカアハは、ジェシカに問う。
 ジェシカは、迷わず言った。


「まずは、病院の方からかしら?
 確かに、誘拐のほうは関係ないわね……医療事故に見せかけるなり、堕胎した胎児を他の病院から回収するなりして手に入れればいいから。
 でも……、全くの無関係とは思えないし、敵も当然あっちにやってくるでしょうし」


 一旦ジェシカは、そこで言葉を止め、再び口を開く。


「病院を調べながらこっちも準備しないとね、アイツを殺しきる手段を手に入れないと」


































 おまけ TV


『おお、ゴウトちん!』

「……む、なにをしている?」


 ゴウトが、石動の探偵事務所へ遊びに来た……窓から。
 石動は、地下の訓練場に篭り、ラームジェルグはPCの動画を楽しんでいる。


「貴様という奴は……」


 ゴウトは、だらけきったラームジェルグを見て、かつて十四代目の上司だった駄目探偵を連想させていた。
 動画を見て、ゴウトが反応した。


『かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……』


 それは、国民的人気アニメの主人公の必殺技を放つシーンであった。
 真っ白な閃光が敵を飲み込む光景……。
 ゴウトの様子を見たラームジェルグは聞いてみた。


『どしたの?』

「いや……知人で似たような技を使っていたのを思い出してな。
 あれは、炎属性の熱閃だったが」

『マジで!?』


 男の浪漫の体現した存在を知ったラームジェルグは、見知らぬ人物へ尊敬の念を示す。


「他にもエネルギーを蹴りだしたり……」

『こんなん?』

「うむ……そんな感じだ」


 伊達にあの世を見ていない霊界探偵の先代が放った必殺技の動画を見せられ頷くゴウト。


「角というか顔面から撃ち出す最強の必殺技……」

『これか?』

『ジュワッ!!』


 平成の世に降臨した光の巨人シリーズ第二段で主役を取られた悲劇の主人公と同姓同名の人が放つ頭から放つ光線技を見せるラームジェルグ。


「うむ……まさしくコレだな。
 ただ、人間サイズで怪獣サイズの敵を撃沈していたが……」

『ゴウトさんの知人ってどんだけー』




 ……強いて言うなら……出てきたらこの連載が終了する位のツワモノ。





[7357] 第3期 第5話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/12 16:58



 クイタイ。
 アカゴクイタイ。
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 ナニ、クウ?






 


 な、なんだ、頭痛がする。
 最近ぼんやりしている事が多い。
 年のせいか……、昔はこんな事はなかったはずだったが……。
 
 それにしても、赤子を攫うとは酷い事件だな。
 はやくこんな事件が終わればいい。












































 翌日も、佐助が病院に潜入した。
 誰にも察知されずに潜入に成功し、手当たり次第に調べる。
 普通ならば見つかるリスクもあったが……、早乙女が交戦した悪魔が病院にやってきたのだ。
 あまりの早業で子供が喰われ、その後処理のお陰で警備の注意が別のところに向いたからだ。
 佐助は、子供に同情したが、佐助だけで止められない事を理解している。
 その為、この機会に乗じて更に奥へ侵入したのだった。
 佐助は、院長の日記を発見し、それを読んで解った事があった。

 この病院……というより、その裏にいるレッドキャップスの構成員が赤子を攫った事があったらしい。
 実行に移した粗忽者は、手っ取り早く資金にしたいと考えて行ったみたいだが、病院の院長は、激怒した。
 院長は、馬脚が出る事を恐れて二度としないように厳命した(実行した粗忽者は処分されたようだった)。
 
 その後から彼らの手によるものでない赤子攫いが起こり出したようだ。

 

「(しっかし、解らん。
  赤子を攫われた復讐じゃあないだろうし、模倣犯というわけでもない。
  ……お武家さんは、お嬢の話からある程度見通しているのだろうな。
  敵の倒し方を考えている上に、事件が二つ有ると断じたわけだし)」


 佐助は、病院の悪行の証拠になるデータをコピー、あるいは小型カメラで撮影してから帰還した。
 早乙女は、石動へデータを送信したが、返事が返ってこなかった。
























 ラームジェルグは、COMPから電子音が響くのを聞こえた。


『ん……さくらちゃんからだな』

「異界でも届くとはな。
 流石、太平堂……というべきか?」


 石動は、結界を張って安全地帯を作ってからデータを閲覧した。
 フリーダーが石動に向かって遠慮がちに聞いてきた。


「どういう事なのでしょうか、今回の一件は?」

「……『犯人は誰か?』と聞かれれば答えられない。
 だが、『何が起こったか』なら大体解ったがな」


 石動は、ガスコンロで温めたコーヒーを皆に渡した後、自分も飲みはじめる。
 ラームジェルグも石動ととも行動しているので他の人間より早く真相にはたどり着いている。
 だが、説明となると、ものぐさになってしまい、石動に任せたい様子であった。


『犯人……そうだな、『ヤマモモ』と呼ぶべきかな』


 ラームジェルグは、犯人の記号を『ヤマモモ』とした。
 これは、イタリアの映画監督、ルッジェロ・デオダートによるホラー映画『食人族』に出てくる部族の名前である。
 人喰い悪魔に対しての記号として趣向を効かせたつもりなのだろうか?



 また、脱線するが……カニバリズム(食人)について語ろうと思う。
 カニバリズム(食人または人肉嗜食)の語源は、謝肉祭を表すカーニバル(carnival) と思った人が多い……が、別の言葉である。
 スペイン語の“Canibal”(Canib-……カリブ族を意味する)を語源とし、16世紀のスペイン人は、西インド諸島の人々が食人を行うと思っていたようだ。
 カニバリズムは、分類として単純な食事としての食人と社会的行為としての食人に分類できる。


 社会的行為としての意味では、カンボジアのとある部族の戦士が行う事が良い例だろう。
 彼らは、捕食の為に食べるわけではなく、戦った敵の肝を抉り出して生で食べる事によって敵の力が自身に宿ると信じて行っており、この行為は儀式的なものであるといえよう。
 他には復讐的に敵対勢力を喰う習慣も世界には存在しており、逆に仲間が亡くなり、その死者への愛着から魂を受け継ぐ為に食人を行う習慣がある場所もある。
 この日本でも、戦前ごろまでは、故人と一体化したいという思いから遺骨を食べたり齧ったりする「骨噛み」の習慣があった。
 そのような意味でも食人という行いは不自然と断じるわけにはいかないだろう。


 純粋な人肉嗜好ではどうか?
 1846年、アメリカ合衆国での開拓者ドナー隊のトラッキー湖畔のおける遭難事故……ここでも食人が行われていた。
 遭難の発覚がされた時には、隊の中で死亡者を食べるという事態が起こっていた。
 他にも世界では、、1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故などの様に、遭難して食料が無くなり、死体を食べて生き延びたという話が幾つもある……。
 食人について、生きのびる為の食事という意味ではなく、性的な幻想をもって受け止められ、またそのようなフェティシズムを持って行うカニバリズムもある。
 まあ……人間は、人それぞれといった所だろう。


 世界各地で食人は行われている。

 お隣の中国は、飢饉や孝行、薬用、儀礼などでカニバリズムが行われていると歴史書でも書かれている。
 『韓非子』の中で、将軍の息子が敵に捕まってスープにされて送られてきたのをその将軍が飲み干してから攻め滅ぼした事が書かれていた事からも、伺える。
 『漢』を興した劉邦の妻『呂皇后』は、劉邦の死後に恐怖政治を行った。
 その際に、漢帝国樹立に功があった功臣を殺し、その肉をハムにして、自らも食べて臣下に贈ったと歴史書に書かれている。
 『史記』では互いの子を交換して絞め殺してから食人を行って飢饉を乗り越えるという事があったと書かれている。
 そして近代においても、文化大革命の時、粛清の名目で食人が行われていたと報告があった。

 キリスト教では人肉食は強い禁忌とされていたといわれている……。
 だが、スペイン北部のアタプエルカ遺跡で発掘された「最初のヨーロッパ人」の遺骨から、この先史人類たちが人肉を食べていた。
 しかも、とりわけ子どもの肉を好んでいたのだった。
 キリスト教が布教されてから食人が行われなくなったかというと答えは否である。
 イスラム教徒側の記録によると、第1回十字軍がシリアのマアッラで人肉食を行ったらしい。
 当時の十字軍の食料状況は、劣悪であった。
 そこで十字軍は、現地調達の略奪の一環として現地住民を殺戮し、その肉を食べたとされる。

 
 南米でも食人の風習のある地域があるし、 オセアニアでは、1600年頃から1700年頃にかけて環境破壊を行って動物の数が減って食人を行いだしたという話もある。

 人間というのは、住む場所が異なっても考える事は結構似通うものなのだろう。
 
 ちなみに……クトゥルフ神話ででてくる『屍食教典儀』は、1702年頃、フランス王党派貴族であるポール・アンリ・ダレット伯爵が書いたものである。
 人肉嗜食や屍姦行為などを行う邪教について詳細に記述されており、ミスカトニック大学に1部、それ以外に13部が現存するという。
 『屍食教典儀』の内容は極めてインモラルあるが、著者であるダレット伯爵は邪悪な人間ではなく、むしろ善良な部類であるという説があるが、真相は不明である。

 

 さて……余計な話が長引いてしまった。
 そろそろ本題に入るとしよう。
 ラームジェルグの提案を受け入れ、犯人を『ヤマモモ』と仮称することに石動は決めた。


「『ヤマモモ』についてだが……さっきも言ったとおりその背景は全くわからない。
 だが、周りの証言からでも解る事がある。
 『ヤマモモ』は、『黒い森』に入り、そしてなにかの弾みで異界の方の『黒い森』に迷い込んでしまった。
 そこで普通は、悪魔の餌になるか、餓死するかで終わる。
 だが……『不幸にも』どちらにもならなかった」

「……」


 フリーダーは、敬愛するマスターの話を聞いている。
 さらに石動が続けた。


「彷徨い続けた『ヤマモモ』……恐らく、餓死寸前だったのだろう。
 この異界に『あるはずがない物』を見つけ、食べた位にな」」

「それは……マスターがサイコダイバーの方からの依頼で探した物ですか?」

『その通りだ、フリーダー』


 フリーダーは、ラームジェルグの言葉を聞いてしばし考え、質問した。


「それは……邪悪なものなのでしょうか?」

『いいや、本来なら邪悪などころか、ありがたぁ~いシロモノなんだな、これが』

「……俺達が探していたのは『人参果』だ」


 石動が重々しく口に出した。


「にんじんか?」

『人参果は南アメリカ・アンデス山の北部原産の果物でぇ、高たんぱく、低糖、低脂肪である他、ビタミンC、カルシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、セレン等の多種類のミネラルを含んでおり、細胞の活性化、活力増強、癌予防、心血管系疾患の抑制等の作用を持っていまぁす。
 高血圧と糖尿病にばっちりでぇ、年齢の高い方では、動脈硬化を予防し、中年、若年の方では体質改善に効果的ぃ!!』

「……なるほど、素晴らしい果物ですね」

『……素直すぎて罪悪感が……』


 素直に頷くフリーダーの瞳を見て、一人、罪悪感で転げまわるラームジェルグ。
 石動が、ため息をついて説明した。


「まあ……アイツが言ったのは、普通にある果物であって、神農氏が探したいものではない。
 万寿山にある五荘観……そこの主・鎮元子が所有する世にも奇妙な木からなる果物だ」

『その木は3000年に一度だけ花が咲き、3000年に一度だけ30個の実をつけ、その実は3000年かかって熟し、さらに食べごろになるまで1万年も待たなければならない不思議な実なワケ。
 その形は……赤子に瓜二つ!!』

「赤子……ですか?」


 フリーダーは、早乙女達の関わる赤子誘拐事件を覚えている為に思わず聞き返してしまった。
 石動は、淡々と語り続ける。


「匂いを嗅ぐだけで360年、一つ食べれば4万7000年も長生きできるそうだ。
 人参果は五行を忌む性質がある。
 金に遇えば落ち、水に遭えば溶け、火に遭えば焦げ、土に遭えば土に消えまる……つまり、地面に落ちたものは消えてしまうわけだ。
 食べたいなら石や金属、プラスチックのような器でなく、紙か葉で作った器でなければならない。
 もっとも……今の現世では手に入らない代物がな。
 仙界で人参果を食そうとしたのだが……運んでいた小僧が、太上老君が現世を行き来するのに使うゲートへ人参果を一個落としてしまった。
 それで現世にいる神農氏の分霊……それから俺に回収を頼まれた。
 まあ……普通なら大地に消え去っているか、悪魔が食い散らしているかで終わっていると思っていたんだが……」

『悪魔が喰ったら諦めている。
 もし人参果が大地に消えていたなら、神農から渡されたソーマ神の加護を得た符を使って大地から呼び戻して仙界へ送る手はずであったんだが……』
 

 石動は語る。
 この実直な男が淡々と語ると、あたかもその現場を見てきたかのような臨場感をフリーダーに感じさせた。


「『ヤマモモ』は、餓死寸前だった。
 たどり着いたのは、異界化している『黒い森』の中でもっとも清浄な場所だ……いや、清浄な場所だった。
 地面には無数の葉が堆積しており、地面は隠れている。
 葉っぱの山の頂に芳しい香を漂わせた人参果があった。
 『ヤマモモ』は、おそらく敬虔なキリスト教徒であり、人間を喰らう事に対して忌避感があっただろう。
 だが匂いを嗅ぐだけで360年も寿命が延びるといわれるその香に耐えられなかっただろう。
 夢中に食べた……食べれば4万7000年も長生きできる人参果の味はとても美味く、欲を消そうと躍起になる仙道ですら欲するほどだ。
 至福の時であっただろう。
 だが……正気に返った時には『ヤマモモ』は後悔しただろう。
 人を喰らい、そしてとても美味いと感じてしまったのだからな」


 石動の語った事を聞いたフリーダーは、思いに馳せていた。
 人間でないフリーダーには完全に理解しきることはないと彼女自身が決め付けていたが、それでも、『ヤマモモ』が苦悩するだろうとは理解できた。


「そして、どうにか異界から抜けた『ヤマモモ』。
 その幻想的な体験を受け、一時は幻覚とか夢と片付けたのかもしれない」

『悪魔に喰われるか、そのまま忘れちまっていれば良かったんだろうな……』

「そうかもしれんな……。
 『ヤマモモ』は再び確認しに行ったのだろう。
 夢であればいいと……だが見てしまった。
 子供の死体を」

「……まさか」

「そうだ、病院が廃棄した赤子や胎児の残骸を見てしまって『ヤマモモ』は、そのショックであの時の体験の記憶が鮮明に蘇った。
 そして自分自身が赤子を美味そうに喰う悪鬼だと思い込んでしまった」


 沈黙が生まれる。
 フリーダーは、声を振り絞る。


「でも、なにも赤子を食べなくても……」

『極限の飢餓というスパイスがかかった仙界の珍宝の味のお陰で狂っちまったんだろうな……。
 本来なら目出度い食い物だったはずが……人の在り方を歪めちまった』

「それが……敵の正体」

「そう……元々『素質』があったのだろうな、憑き物に囚われやすい『素質』が。
 そして、人参果を喰い、歪な心を持った人間は悪鬼に変わり、赤子を喰う。
 だが、満足しないだろう。
 人間の赤子は……人参果ほどは美味くはない。
 だからヤマモモは、赤子を喰い続ける。
 そして『黒い森』の中でまた落ちていないかと探し回る。
 そうする内に悪魔をなにかの弾みで喰らい、『ヤマモモ』の異形化が進む。
 黒い森の空気も淀む」

『それで、ありえない程の再生能力を持っちまった。
 だが、勝機は有る。
 爺の目玉が効く事から、『死』という属性に弱いはずだ』

「そして……今頃は、『切り札』が早乙女達の手に渡っているだろうな」


 一通り話し尽くした石動は、携帯食であるビスケットとサラミを食べる。
 石動は、強靭な咬筋で咀嚼し、コーヒーで胃へと流し込む。
 そして荷物を纏める。


「さて……この淀んだ気を晴らさなければなるまい」

『立つ鳥、跡を濁さず……だな』

「ラームジェルグ様、汚したのは私達ではありません」

『違いない』


 石動達は、動く。
 事を終えてから、早乙女達と合流して『ヤマモモ』と対決するつもりであった。



















 
























「GAAAA!!」

「く……前より強靭になっているわね!!」


 ジェシカがダムダム弾のショットガンを先日交戦した悪魔……『ヤマモモ』へ発射した。
 大きく体を吹き飛ばすが、ダメージは無い。
 『ヤマモモ』は、バロールの魔眼を警戒しているのか、バロールへ集中攻撃を仕掛けている。
 早乙女と佐助が近づけさせまいとするが、弾き飛ばされ、今はスカアハが食い止めている。


「……不味い流れだ」


 スカアハがそう零した時、遠くから声が聞こえた。


「さくらさん!!」

「え……原野さん!?」


 高級スーツで決めている小柄な美男子が早乙女達の背後から声をかけてきた。
 原野の右手には日本刀が握られていた。
 早乙女の目には、刀が妖しい雰囲気に包まれている事に気がついた。
 その気配は、冷たく、本能的な恐怖を与えている。


「石動さんに頼まれてライドウさんから借りてきた『斬蝗陽滅刀』です!!
 受け取ってください!!」


 早乙女は、雷神剣をしまってから斬蝗陽滅刀を受け取る。
 斬蝗陽滅刀とは……第十四代目ライドウがアポリオンと呼ばれる巨大な蟲を倒すために鍛え上げた刀である。
 アポリオン……アポリオンはギリシア語であり、ヘブライ語ではアバドンである。
 その姿は黒い王冠を被っているサソリの尾を持つ蝗の怪物であり、驚異的な再生能力によって攻撃を無効化することが特徴である。
 「黙示録」によると、アポリオンは、地獄の底無しの淵の天使であるらしい。
 そして終末には、アポリオンはサタンを鎖で縛って、底無しの淵に落とし、千年の間幽閉するとされる。
 ライドウは、その再生能力を止める武器を作り出す為に印形の儀を行い、何体もの強大な力を持つ悪魔と戦って力を示してクリアーした。
 そして、修験地獄に封印されているアマツミカボシの持つ宿魂石を手に入れるべく戦いを開始した。
 アマツミカボシは恐ろしい存在であった。
 かの初代葛葉ライドウですら、禁術を用いて相打ちの形で封印しただけに過ぎない。
 だが、十四代目は見事打倒して、その力を従える事に成功し、宿魂石を手に入れ、斬蝗陽滅刀を作り上げたのだ。
 早乙女は、斬蝗陽滅刀を抜き放つ。
 『ヤマモモ』は、刀の気に当てられ、悲鳴を上げる。


「ガアアアアアア!!」

「……弱まった!?」

「今です、ランダマイザ!!」


 スカアハの呟きを聞いた原野が補助魔法をかける。
 佐助が飛針を飛ばして『ヤマモモ』の動きを止める。
 斬蝗陽滅刀の力で『ヤマモモ』の能力が封じられ、ダメージが与えられるようになった。
 その間にバロールが高々と跳躍する。


「スーパァーバロォール……月面キック!!」


 日輪(名前は月面なのに)を背にしたキックによって『ヤマモモ』は吹き飛ばされる。
 逃げようとする『ヤマモモ』だったが、ジェシカがショットガンを乱射して動きを止めさせた。
 さらに早乙女が『ヤマモモ』の腕を切り落とす。
 最後に、スカアハの槍が『ヤマモモ』の心臓を貫いた。


「ギャアアアアアアアアアア!!!」


 『ヤマモモ』は口から血を吐き出す。
 臓腑からの出血が喉まで流れ込んできたのだろう。
 大きく痙攣させると、『ヤマモモ』が光を放ち、姿を変えた。


「……警察のおじいさん?」


 『ヤマモモ』の正体は、早乙女達が警察署であった老警官であった。
 早乙女の声に反応して『ヤマモモ』……いや、老人が答える。


「……私は……罪を犯した。
 それなのに……無理やりなかった事にした……。
 そう信じてしまった」

「おじいさん!!」


 ジェシカに視線を向けるが、首を横に振る。
 心臓を貫かれ、既に致命傷であった。
 老人は、神に許しを請うように祈り……そして事切れた。
















































 石動は、帰ってきた時にその顛末を聞き、その後石動が得た真相に近い推論を話した。
 ジェシカは、叔父のベルグラーノに連絡し、その後の始末を頼んだ。
 後に、病院は強制捜査のメスが入り、閉鎖された……だが、レッドキャップスへと続く情報はなく、更なる奥にいる存在を引きずり出すには到らなかった。


 その後、ホテルの屋上に石動はいた。
 部屋から氷をグラスを持ち出し、旅の途中で買った取って置きのウィスキーだ。
 ウィスキーはイギリスが本場であるが、ドイツではスコッチ原酒を国内で熟成・ブレンド・瓶詰めしたレベルの高いウイスキーを生産している。
 (ちなみに日本でも作られているし、実は……タイやインドでもウィスキーが作られている)


「……」


 石動は、一人飲んでいた……ラームジェルグも気を使ったのか部屋でフリーダーや早乙女達と遊んでいる。
 そんな時、石動の背後から声がかかる。


「良い夜だ」


 声の主は……美しい黒髪の女性・スカアハである。
 夜空は澄んでおり、屋上からは『黒い森』を一望できる……。
 酒を飲むにはいい場所であろうか。
 だが、石動の表情は『黒い森』より暗いものであった。


「……納得できなかったか」

「……ああ」


 あらゆる強敵を前にしても動じない石動であった。
 だが、今の石動は、違う物が漂っていた。
 それが、災厄を引き起こした人参果への怒りなのか、被害者への悲しみなのか、それとも……。
 それを知る者は誰もいない……もしかしたら、石動本人ですら把握しきれていないのかもしれない。
 スカアハは、石動の横に移動した。


「……今日は特別だ。
 私にできる事は何でも叶えてやる」

「そうだな……」


 石動は、若干の戸惑いを見せたが、すぐに願いを申し出た。


「酌をしてもらうか」

「……欲のない奴」


 そう言いながらスカアハは酒を注ぐ。
 その時の表情は、慈愛に満ちたものであった。
 石動は、飲み干した後に気がついた。


「もう一つグラスを……」

「これでいい」


 スカアハは、そう言って石動のグラスを奪い、酒を注いでから飲み始める。
 石動の表情も、普段に戻っていた。
 こうして……酒が無くなるまで二人は飲み明かした。

















あとがき。

何時もよりダークでした!!
薀蓄・脱線もした性で何時もの2倍疲れた感じでした。
多分、読者は更に疲れているに違いない。

 



[7357] アンケート+おまけ
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/05 01:41
ライドウの漫画は神がかっているのでみなぎってきた。

第3期初のアンケート

・早乙女にはやはり不幸になってもらわないと(正に外道!!)

・そろそろ石動さんのチャンバラが見たいお。

・九鬼さんと当代のライドウさんの活躍が見たいよ!!

















 おまけ 石動の流派。


 無間地獄。
 死した者が堕ちる地獄の一つ。
 そんな中、2人の男が地獄から抜け出さんとしていた。


『……よくやったもんだ』

「俺の魂の損傷が少ないからな……奴と戦う為なら泥水啜っても戦う」


 野性的な青年であった……巨漢で、腕を一振りすれば木をへし折るのではないかというほどの迫力であった。
 その横にいる亡霊は、顔立ちは悪くないが、陰気な雰囲気と全身に刺さった槍や剣や矢によって不気味さを際立たせている。


『……貴様に負けた以上、何処へでも付き合ってやるがな』

「……あの世に出るだけでも苦労したもんだ」


 無間地獄に詳しく、協力を得れば抜け出せる程の力を持つ悪魔の存在を聞いた青年は、邪鬼『ラームジェルグ』に挑んだ。
 戦えば死ぬといわれるほどの邪鬼に初めは、あっけなく倒されていた。
 青年は、生涯を武に捧げていたが、相手もまた武に捧げていた存在だったのだろう(本人は記憶がないらしい)。
 だが、青年の執念は強かった。
 青年は、倒されても倒されても……その魂が淀むことなく、むしろ頑強さが増していき、最後には勝利をもぎ取った。
 だが、その後も大変であった。
 2人が無間地獄から抜け出そうとした事が発覚し、悪魔達の襲撃が劇的に増えた。

 唯の鬼や餓鬼だけではない……牛頭鬼、馬頭鬼……様々な黄泉の国の住人である悪魔が襲い掛かった。
 百を超える軍勢が現われる事も多かった……だが、青年はラームジェルグの力を有効に活用して撃退したり、逃走したりを繰り返した。
 休まる時はあまりなかった……眠る必要がないというのが唯一の救いだったが。
 そして……今、現世へ帰還しようとしている。


『面倒な……』

「勝った以上は従って貰おう。
 それに……娑婆には娯楽が幾らでもある。
 その中で気に入る物があるだろう」

『……だといいがな』



 青年達は歩き続ける。
 青年がラームジェルグに問う。


「そういえば……お前の流派はなんだ?」

『記憶が磨耗しきっていてわからん。
 だが……師と呼べる奴の扱きは苦行だったような気がする。
 貴様はどうだ?』

「……強くなるなら苦行ではなかった。
 流派の名はない。
 いや、在ったのだろうが……祖父は名があることが気に入らなかったから棄てたらしいがな」

『ふん……』


 青年は、しばし考えて言った。


「無間流……」

『ん?』

「国にあった主な流派を取り入れ、無間地獄で培って花開いた技術……ならば無間流と名づけるのも一興だと思ってな」

『くだらん……おい、そろそろ出口だ』

「ほう……次はどうしたらいい?」

『適当な抜け殻を探して入り込めばいい』


 2人は、光に包まれていった………。



















『(なんてことがあったよな~)』


 ラームジェルグ……いや、クー・フーリンは昔を思い出していた。
 青年……今は『石動巧』の体に乗り移った男は、天使達を切り捨てている。


「おのれ……神敵め!!」

「あいにく、テメエらの親玉は破防法が適応されたからな!」


 石動は、次々と斬り捨てていく。


『(無間流か……あの時は無理だと思っていたが、道理すら斬り捨てるとはな~。
  それと、刺激的な娯楽が多いし、出て行って良かったな~。
  帰ったら人妻モノのエロゲーしよっと)』


 そう考える内に全ての天使は斬り捨てられていた。
 石動は、今日も剣を振るう……それは無間地獄にいるときから変わらずに。






[7357] 第3期 第6話 7月7日更新・追加
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/07 02:34
「一本!!」


 審判の旗が左側の選手へ上がった。
 剣道場から割れるような歓声が上がった。


『全国大会優勝は、聖ナンディ学園の早乙女!!』





















 剣道着を着た美少女が鎧を脱ぎ始めている……。
 そこに近づく少女も美少女であるのだが……


「やったね!!」

「ありがとう、佐奈」

「なんか……嬉しいというより、かって当り前な雰囲気が出ているけど?」

「……色々あったのよ」


 早乙女は遠い目をする。
 早乙女の実家は古流武術の道場である……が、彼女の実力を底上げしているのは別にある。
 彼女のアルバイト先である。
 佐奈は察してそれについて突っ込む。


「石動先生のお陰?
 うーん、愛って奴?」

「……正直、あんな愛はないと思う」


 どんよりと曇る早乙女。
 さて……彼女の訓点の様子について語るとしよう。
 もともと素養があったが、石動と関わってから悪魔絡みのトラブルにしばしば巻き込まれている。
 その為、急いで強くなる必要があった。



「……来い」

「鋭ィッ!!」



 石動へ向かって竹刀の打ち合いを始める……石動の自宅兼事務所の地下には広大な訓練場があり、そこで訓練が行われる。
 防具をつけない代わりに戦闘で持つ程度の荷物と同じ重量の重りを装備して行う。
 早乙女には殴り殺すつもりで来いと言わせており、逆に石動は寸止めで行っている。
 それでも、石動に掠らせることなく、負け続けている。
 負けた後に欠点や、その場面で使うといい技の伝授を行っている……武術に造詣が深い石動だからできる事である。



「命がけで凌げ」

「は、はい!!」



 次に行うのも組み手であるが……違いがあるとすれば刃引きされた武器の山々が置かれている所であった。
 様々な武器の中から無造作に早乙女に渡す。
 これらは、太平堂の中の売れ残りを加工して安く買い叩いたモノだ。
 武器としては普通に使えるのだが、悪魔と対峙するには力不足な物で、訓練用には丁度良い。
 石動はここでも寸止めを行うが、百回の打ち込みの内一回は、身体に当てるつもりで行っており、訓練中に2,3回は殺すつもり(全力でやったら死ぬので限界ギリギリを見切って行うが)で打ち込む。

 この訓練の狙いは、命がけの修練を行う事もあるが、様々な武器を使いこなす事ができるようになる事も含まれる。
 自分の武器が常に使えるとは限らないし、壊れる時もあるかもしれないからだ。
 石動は武器の使い方が非常に巧い。
 早乙女が30~40使い潰してようやく石動が2,3個を壊すといったくらいだ。
 なお、使い潰した武器はウーリに引き渡される。
 戦いで酷使して壊れた武器は、錬金術の素材になるらしい……。
 ちなみに、錬金術素材は、鉱石・植物以外にも悪魔の死骸(MAGに還元されるのでなかなか取れないが)から剥ぎ取ったパーツの多くが錬金術の素材になるので石動は余裕があれば行うこともある。
 ワイバーンの瞳やらデュラハンの首、巨大化したカエルの舌など……効率よく解体するにはセンスがいるが、錬金術師にとっては大金を払っても欲しいものである。
 余談だが、若くして探偵としてひとり立ちした石動は、依頼などほとんど来ない時は、錬金術の素材を収集して石神家へ借金を返していた(律儀な石動は金を貰うのではなく、借りて事務所を設立していた)。
 
 
 早乙女にとっては……何時、手痛い一撃が来るか油断が出来ないので常に必死に凌がなければならない。
 実戦を幾度も経験した早乙女は、サマナーとしての経験は少なくとも、戦士としては恐ろしい速度で成長している。



「知は力なり……だ」

『アナライズする手間が省ければ、その分攻撃に回せるから』

「うう……」



 最後は座学。
 石動にとって、戦闘で本当に頼りになるのはフリーダーだけである。
 (そろそろ下級聖獣が使えるかも……とは言ったが、やはり戦闘では当てにできない)
 それ故に、知識や術について必死に研鑽を積んでいる石動……最早、並のサマナーや陰陽師を凌駕するものである。
 早乙女は、命綱になる知識であるから必死で覚えた(ついでに探偵のイロハも)。

 こういってはなんだが……ハッキリ言って早乙女は、運が悪い。
 言った先で事件に巻き込まれたり、魔人に幾度も会ったり、『ニャルラトホテプ』と戦う羽目になったり、JOKERに襲われたり……アクション映画シリーズの主役以上の波乱万丈ぶりである。
 幾ら鍛錬を積んでも足らない位である。
 それを幸運(トラブルに連続で会う分、他の運が高まっているのかもしれない)と才覚で潜り抜ける……それが早乙女さくらである。










「フフフ……」

「さ、さくらぁ~!?」


 早乙女の意識が涅槃へたどり着こうとしている。
 そして、それに気がついた佐奈は、必死で元に戻さんと早乙女の身体を揺さぶるのであった。
 その後、早乙女は何事もなく帰宅でき、大いに喜んだ。
 一般人にとって当たり前であるのだが……関東大会が終わった直後にJOKERに襲われていただけに警戒していたのだ。
 だが、翌日……全国大会で4位、3位が何者かに惨殺され、準優勝者も重傷を負わされた事を早乙女は知ることになった。















「……早乙女君」

「風間課長!!」


 剣道部の道場を掃除していた早乙女に声をかける男性……公安零課の風間であった。
 石動とは懇意にしているが、早乙女はあまり話しかける機会はなかったが……。


「新聞を見たかね?」

「ええ……まさか!!?」

「そう……悪魔絡みだ。
 零課を動員しているが……捕捉が難しい。
 準優勝者は重傷で済んだのだが……『姿が見えない存在に切り裂かれた』と言っていた」

「……風間さん」


 早乙女は……自身の不幸を嘆く事は日常茶飯事だ。
 だが……、それに常に立ち向かう胆力を持っている女傑であった。
 その決心を秘めた顔を見た風間は言った。


「……囮になるつもりか?
 危険だ、やめたまえ」

「いえ……おそらく、次の標的は私ですし。
 ですから……迎え撃とうを思います」

「やれやれ……石動に似て鋼の心臓を持っているようだ」


 止められないと解った風間は、全力でサポートする事に決めた。
 だが……不幸な事に、石動は依頼を受けており、早乙女を護る者はいない。
 そこで……


「俺かよ!!」

「すまん、お嬢の為だ」

「そうよそうよ!!
 さっさと盾になりなさい!」

「悪いわね、ボウヤ」

「長門は俺の嫁。
 ちゅるやさんは一家に一台」

 
 早乙女の仲魔達がニート……ではなく、家事手伝い(?)の藤堂和也を呼ぶことに決めた。
 文句を言ったが、前回、早乙女の助けにならなかった負い目がある為に引き受けた。
 和也は、仲魔たちに言った。


「そこの目玉……いや、いいや。
 言っても無駄だろうから」

「褒めるなよ」


 駄目な目玉については諦め、女性型悪魔に視線を向けた。
 お転婆そうな口調の女性は、黒い肌に白い髪をマガタマに似た大きな髪留めで留め、紅い服を着ている。
 大人の口調の女性は、美女ではあるが……下半身が蛇であった。


「何時の間に……」

「さくらは凄いのよ!!」

「まあ、私を従えるくらいだから」


 彼女達は……元カハクの『菊理媛神(キクリヒメ)』と元クダの『ラミア』である。
 早乙女が少し前に石動と異界の植物収集を行い、その際に悪魔数体を仲魔としてスカウトした。
 その悪魔を使って二人を強化したのだった。

 『日本書紀』にのみ記述が見られる菊理媛神……彼女は人と人との縁を結ぶ女神である。
 神産みでイザナミに逢いに黄泉を訪問したイザナギは、イザナミの変わり果てた姿を見て逃げ出してしまう。
 その際に、イザナミと口論になったの治めたのが彼女で、縁結びの神とされるようになった。
 合体を繰り返して出来たのが彼女だ。
 カハクとしての彼女の性格がベースとなっているお陰か、回復魔法のパトラ・ディアラマ・リカーム以外に覚えているのが攻撃魔法になっている。

 スペイン語で「泣く女」と言う意味の名前の妖怪ラ・リョローナ。
 美しい女性の肉体を持っているが、顔はない存在だ。
 
 ギリシア神話のリビアの女王ラミア。
 ゼウスが彼女に恋をしたために、ゼウスの妻ヘラの怒りを買って呪いをかけられた。
 その呪いは恐ろしく、ラミアは生まれてきた我が子を次々と食い殺してしまった。
 我に帰ったラミアは己を呪い、下半身を蛇の姿に変えて洞窟に隠れ住んだ。
 その後も子ども達を攫ってきては食い殺したとされている。
 ラミアの方は少々経緯が違う。
 植物採集を終えてウーリの研究所で報酬を貰った石動達。
 貴重なマジックアイテムを貰ったが、魔術書を一冊貰った。
 それは……悪魔合体魔法『コンバック』が書かれた魔術書である。
 ウーリは、石動に渡して使える機会があったら使ってみるように言われた。
 石動は合体できる悪魔がいないが、好奇心旺盛なクダが試してみたいと申し出た。
 野外で行った儀式自体は上手くいったのだが……蛇が魔方陣の上に落ちてきて合体事故を起こしてラミアになった…。
 本来は、もっと獰猛な獣系の悪魔になりたいと希望していたが、その希望が叶えられなかったようだ。

 
「まあ、いいがよ。
 正直、目に見えない敵って奴はな~」

「その辺は考えているわ」


 早乙女の言葉に和也が褒めた。


「度胸があるな」

「……先生との特訓に比べれば。
 知っている?
 見えているのに避けられない攻撃って……地獄の痛みなのよ?
 最後なんて……ふふうふふ」

「さ、さくらぁ~!?」

 
 遠い目になった早乙女を必死に現世へと引き戻すキクリヒメ。
 だが、もう一人もスイッチが入った……。


「連続攻撃って気絶して倒れたいの位痛ぇのに倒れさせてくれないんだぜ……」

「うわ!?
 そういや、コイツもお武家さんに扱かれているからな……お嬢とは稽古時間が違うから顔をあわせないけど」

「ほっほっほ」

「前途多難ね」


 バロールは笑い、ラミアはあきれ果てている。
 それでも立ち直り、囮作戦が決行された。

  













 さて……古来、透明になって現われる悪魔というのは恐ろしいものである。
 かの有名な十四代目も透明化できるマンティコアと呼ばれる悪魔と戦い、苦戦した。
 ではこの不幸な探偵見習いはどう立ち回るのか……


「俺とお前の二人きりでタラタラ裏通りを歩くって……無計画に程があるぜ」

「来るわよすぐに……もう慣れたわ」

「(慣れたくないわな……そんなもん)」


 早乙女の言葉どおり、周りの空気が変わる。
 遠くで包囲している警官達は警戒を強めたが……、早乙女と和也の周りだけ輝き、姿を消した。
 風間が声を張り上げる。


「急げ!
 追跡マーカーがあるから異界までの突入は容易なはずだ!!」

「課長、突入まで161.6秒!!」

「く……それまで持ちこたえろよ!!」


 だが、想定外の事態が起こっている。
 和也は、腕から血を流しながら目の前の空間を握っているような状態で立っている。
 正確に言えば透明な存在を捕まえているのだ……心臓へ狙って殺気を感じた和也はセイリュウを降ろして対応していた。
 一方の早乙女は……、


「うそ!!」

「ひいひひひひ……!!」


 空気を切り裂く音がするが姿が見えない敵。
 それを避ける早乙女であった。
 ……計画では、和也が足止めして早乙女が悪魔を呼び出して袋叩きにする予定であった。
 だが……実行犯が二人いたのだった。
 当初の予定が崩れ、早乙女は避けながら反撃の機会を伺う。
 素早い敵の前にCOMPを機動する時間がない。
 空気の切り裂く音を気がついて雷神剣を横に振るうが手ごたえがない。
 早乙女は、咄嗟に跳んだ……立っていれば首筋が切り裂かれる所だったが、肩口を切り裂くだけにとどまった。
 それだけではない。


「ギャ!」

 
 倒れながら左手で壁に立てかけていた金属パイプを握り気配のある方に振りぬいていたのだった。
 たしかな手ごたえを感じたが、打倒するには至らなかった。
 それで警戒した敵は早乙女に対して慎重に攻撃を繰り返す……早乙女の身体にかすり傷が増えていく。
 早乙女が避ける……あるいは攻撃をするたびに血が舞っていく。
 和也も援護に行きたいが、目の前の敵が頑強で、倒すのに時間がかかっている。


「倒れろ!!!」

「が……」

 
 和也や、頭突きを行うが、一瞬怯んでいた所にペルソナを発動させる。
 頑強さや、腕力の強さが人間離れしているところから、和也は悪魔かペルソナ使いではないかと推測していた。
 その為、遠慮という文字を和也の脳内から消えていた。


「ジオダイン!!」

「があああ!!」


 焼き焦げる匂いが漂い、目の前の敵が痙攣をくりかえしている。
 姿を現した時には黒こげだったが、死に至っていない。
 一方の早乙女は……、まだ倒しきっていない。
 だが、勝利の道筋を作りつつある。
 周りの血が飛び散り、徐々に、透明だった体に血痕がつきはじめたその矢先…、


「(と思っているようだがよぉ~)」


 血痕が消え、元の透明な状態に戻った。


「(ひひひひひひ……馬鹿め。
  魔利支天の組織を培養して異色したワタシには意味がない。
  陽炎のように実体をつかませない、それが魔利支天。
  絶望して死ぬね、日本人!!」


 早乙女の右側から切り裂こうとした時、その存在は驚いた。
 待ち構えていたかのように、左手のパイプが投げ放たれ、自分の眉間に当ったのだから。
 目が眩んだのは一瞬だが、敗北への片道切符は一瞬だった。
 

「っがあああああ!!」

「成敗……です」


 早乙女は、敵の両手両足を切り落とし、完全に無力化に成功した。













「悪いのぅ」

「く……お嬢の影から護れば」

「いいのよ、警戒される可能性があったし」


 バロールと佐助に向かって慰める早乙女であった。
 キクリヒメが、和也と早乙女を回復魔法で傷の治療を行っている。
 犯人達は、トレーラーに収納された。
 悪魔絡みの犯罪は正式な司法で裁けないものが多い。
 だが……非道な行いをした事を後悔するだろう。
 今回の犯人は、人権を剥奪され、情報を得た後は人体実験……いや、魔体実験に回されるのだから。
 その間にラミアが風間に質問した。


「結局、犯人は?」

「忘八の下っ端だな。
 読心術で達磨になったほうを読んだら、女子高生を強姦しようとした時、通りがかり剣道部の女子に張り倒されたのを恨みを抱いたのが犯行の動機のようだ」

「逆恨みってわけね……。
 世も末ね……」

「悪魔の力を持って調子に乗って犯行を企てたわけだ。
 それにしても見事だった」


 早乙女に視線を向けた。 
 ラミアがさらに疑問に抱いた。


「姿を隠していたのはわかるし、お嬢さんが血で目印にしようとして失敗したところまでは解るわ。
 でも……どうやって見つけたの?」

「……石動や九鬼くらいになると気配を察知して両断できるわけだが」

「本当に人間なの?」

「もちろんだ」


 風間が断言するが、ラミアは信じられない表情でいた。
 それに気がつかない風間がさらに続けた。


「早乙女君は、目印が消された場合も考えていたよ。
 位置取りを気をつけながら攻撃しやすい場所を作って誘っていた上に、目印を消して油断しきった馬鹿は気配を濃くなっていた。
 その状態ならば早乙女君でも狙って斬る事も可能だったというわけだ」

「……出鱈目ね」


 ラミアは、早乙女にたいしてそのように断じ、ため息をついた。













 おまけ アイツがそのままでいたら……


『もし、転生憑依とかするとして……エロゲーの悪役は嫌だなあ。
 善人ぶると始末されそうだし、主人公が勝つルートだと殺されるし。
 まあ、凌辱ルートなら幸運だけど』

「……変態!」


 モー・ショポーは、相変わらず自由な振る舞いをするラームジェルグの妄言を一喝した。







「む~」

『……起きろ』


 乱雑に寝床から放り出されたモー・ショポー。
 ラームジェルグに叩き起こされたようだ。


「な、なにするのよ~」

『……貴様が弛んでいるせいだ』

「む~!(感じ悪い!!)」


 モー・ショポーは違和感を感じていた。
 今までの彼とは違うのだから。
 戦術書を読んだり、黙々と訓練を繰り返す。
 石動と行動を共にすると、空気が格段に重くなった。
 ……通りがかりの子供が泣き出すし、ラームジェルグの戦闘での咆哮がモー・ショボーの恐怖を引き出す。
 心なしか、石動も怖くなっているようであった。
 敵に一切の情けをかけない……必要とあらば、眉一つ動かさずに女子供すら討つ。







「……ムゥ!?」


 モー・ショボーが飛び起きた。
 夜中であった……喉が渇いてきたようだ。
 モー・ショボーが台所に行く途中で、ラームジェルグの部屋を見た。
 DDSーNETで『やらない夫が邪教の館に就職しました』を閲覧中だった。
 ラームジェルグがモー・ショボーに声をかける。


「おねしょか?」

「……アンタは、そのままで、いいわ……」


 妙に疲れた風に言うモー・ショボーであった。


 ちなみに……昔のラームジェルグの事を語ると信じる人が少ない(九鬼などは、真実を見抜いているようだが)。
 稲葉に到っては『中二病』にでもかかっていたのだろうと思っているほどだ。
 石動は、今の相棒の堕落振り(?)を嘆きながらも、改めさせる事はないのだが。








 あとがき。
 続きます~。
 ライドウのコミックは最高です。
 やる夫のデビルサマナーやペルソナ(オリジナルストーリー)も面白かった……意欲が湧く。
 錬金術素材について……これはメガテンじゃなくてBUSINがモデル。
 これはソルガディの設定であって、メガテンの設定ではないので……あしからず。

 あと、早乙女編の次について引き続き聞きたいと思います。




・そろそろ石動さんのチャンバラが見たいお。
 (新オリキャラ登場予定)

・九鬼さんと当代のライドウさんの活躍が見たいよ!!
 (九鬼とライドウ危機一髪)



 ついでに言っておく……フリーダーの寝巻きは雛の着ぐるみパジャマ(本当にどうでもいい)。



[7357] 第3期 第7話 追加修正
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/10 11:39
おまけ1 つっこみ。

『大きいのよりちっぱいをもむ方が興奮すると思わんか?』

「……」


 石動は沈黙している。


『双子の姉妹人形に性的な悪戯を受けたい!!
 「すこやかに~のびやかに~」と言いながら手コキを!!
 男装っぽい娘には機械的にさきっちょを……」

「マスター?」

「……たまには突っ込まずに最後まで聞いてやる。
 フリーダーは耳を塞いでいろ」

「……」

「……」


 ラームジェルグは観念した。


『……今夜の酒は?』

「……適当に取り出せ」






おまけ2 ソルガディのヒロイン認定(認定委員はラームジェルグ)


モーショボー……甘えるように抱きつき、『むー』と鳴きながらキス。
        幼妻・合法ロリ……さらに大きくなると大変あざとい。

スカアハ……


  /\___/\
/ /    ヽ ::: \
| (●), 、(●) 、|
|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |
|   ,;‐=‐ヽ   .:::::|
\  `ニニ´  .:::/      NO THANK YOU (By ラム) 
/`ー‐--‐‐―´´\
       .n:n    nn
      nf|||    | | |^!n
      f|.| | ∩  ∩|..| |.|
      |: ::  !} {! ::: :|
      ヽ  ,イ  ヽ  :イ
         / ̄\
        |   |
         \_/
          |





(生々しい打撃音)


 ラム
  ↓
(-@-)<妖艶な笑みで誘惑して石動の心ゲットーというかぁ。
      スカアハ様の笑顔は人民の太陽ニダ。
      スカアハ様はとてもお優しい方、もう最高ハムニダ。
      マンセー(以下略)。        





石神千鶴……弟を甘やかすように抱きしめる。
      そして恥ずかしげにキスを……。 

フリーダー……全てを捧げるつもりで、上目づかい。
       そして奉仕するように……。




早乙女……

   ラムさん⇒    ____
           /      \
          / ─    ─ \
        /   (●)  (●)  \
        |      (__人__)    |  
         \     ` ⌒´    ,/   ないない。
 r、     r、/          ヘ    早乙女が幸せになるなんて
 ヽヾ 三 |:l1             ヽ   唯一神の完全打倒よりありえない。
  \>ヽ/ |` }            | |
   ヘ lノ `'ソ             | |
    /´  /             |. |
    \. ィ                |  |
        |                |  |







 それはさておき、本編をはじめる。














 東京行きフェリーに乗っている一人のサラリーマン。
 紺色のスーツに黒ぶちの眼鏡をかけている。
 この一見、平凡そうな男は、忍者にしてデビルサマナーである九鬼英輔である。


「いや~大仕事でしたなあ」


 甲板上で、思わず独り言を呟く九鬼。
 彼が行ったのは表側の方の仕事で、企業向けの保険の見直しについてであった。
 現在の保険業界では新規の顧客を得ることは非常に難しい。
 また、リストラ・ボーナスカット等で契約金を払えないために解約するか、大幅見直しするケースが多い。
 九鬼は、その仕事を纏めた帰りであった。
 

「うん……あれは?」


 黒いジーンズとジャケットを着た青年……帽子は古い型の帽子を被っている。
 青年の肩には、黒い鷹が止まっていた。
 九鬼は、その青年に見覚えがある。


「こんにちは、ライドウ君」

「ほう……霧隠か」

「こんにちは」


 青年は、言葉少なめに話し、『鷹』が珍しげな視線を送りながら話しかける。
 第十七代目葛葉ライドウと、そのお目付け役の業斗童子であった。
 九鬼は、驚いている。
 

「東京の護りを担う貴方方がどうしてまた」

「少しばかり依頼を受けていてな。
 その解決に少々遠出していた」


 無口なライドウに代わって、ゴウトが事情を説明した。
 ライドウは、しばし沈黙していたが、口を開く。


「……石動に先日頼まれた」

「石動君が?
 なにを」

「お爺様が鍛えた妖刀を借りたいと」

 
 石動が先日遭遇した人喰いの事件を解決した事を話しているようだ。
 ライドウは、短めに話す。


「……大きな事件があったらまた力を借りたい。
 石動や貴方に」

「そうですね……貴方方が頼るほどの案件は大概他人事では済みませんしね。
 まあ、そのような事にならない事を祈りたいですよ、ハハハ」


 和やかに話していると、船が揺れ始めた。


「……これは……」

「早速、協力する機会が来たようです、九鬼さん」


 日本の海域では、現在ネビロスが死者を操作して幽霊船を造り、密入国・領海進入する船を沈めている。
 近年の外国人犯罪者が増えた事を憂慮した日本政府は、苛烈な対応を取っている。
 だが、ネビロスが誤って標的にしたわけではない。  
 ……船上で異界化が開始され、九鬼とライドウ、そしてゴウトしか周りにいなくなった。
 さらに悪魔化したテロリストである外道・アーバンテラーや武装したゾンビ(恐らく海賊の成れの果て)達が集団で現われた。
 

「グズグズしていると……」

「この船が海の藻屑になりそうですね」


 ゴウトと、九鬼は口々に言った。
 迫り来るゾンビをライドウは、刀で斬り捨てる。
 さらに、腰のリボルバー型GUMPに召喚用の金属筒をセットした。


「九鬼さんがいるなら少数精鋭で突破したほうがいいな……召喚!」

「援護をお願いします!!」


 九鬼の姿が揺らめく。
 一瞬で5体のゾンビの首が刎ねられていた。
 ライドウは、フェンリルと黄泉傀儡の南野曹長を召喚する。
 フェンリルが吼えながら前脚でゾンビを殴り飛ばし、南野の火炎弾による銃撃でアーバンテラーを射殺する。


「標的撃破確認!!
 警戒態勢に以降します!!」

「南野、ありがとう」

 
 ライドウは、南野に礼を述べた。
 九鬼は、倒した後に召喚を行う。
 隠形鬼・水鬼・金鬼・鞍馬天狗、そして義経が呼び出された。


「鞍馬天狗、隠形鬼、偵察をお願いします」

「御意!!」

「……良かろう」


 鞍馬天狗は空から、隠形鬼は隠れて地上から偵察を開始した。
 2~3分して戻ってきた。


「大殿!
 甲板上には敵はいません。
 更に、海のほうも異常はありません」

「……船の構造が変化している。
 先に進む時は、精々気をつける事だ。
 それと……異様な気配が本来なら船長室があったはずの場所あたりに感じる。
 敵の数はそれほど多くはない上に組織だった編成ではない。
 今のところ主な悪魔は屍鬼が主体だと考えられる」

「そうですか……ご苦労様です。
 では戦闘でも力を貸してもらいましょう」


 九鬼は、鞍馬天狗と隠形鬼の報告をおえてから準備を開始した。














「アヲォオオオン!!!」

「南野曹長、突貫します!!」

「頼む」

「ふむ……数は多いが所詮は雑兵、そのまま押し切れ、ライドウ!!」


 ゴウトは、ライドウの頭上で助言をした。
 南野が銃撃を終えた後にサーベルを抜刀して近くのゾンビに切りかかった……剣の腕もなかなかのようであった。
 フェンリルが炎のブレスが真っ直ぐ放射され、終わった後には、灰のみが残っていた。
 ライドウは、コルトライトニングカスタムを撃ち終ると、ローダーで弾薬を装填し、再び銃撃する。
 それを掻い潜った悪魔は、十四代目ライドウが残した数多くの名刀の一つ・陰陽葛葉で両断する。


「うおおおおおお!!」

「ひゃひゃひゃ!!
 雑魚をプチプチ潰すのは最高だぜ!」

「……無駄口を叩くな、水鬼。
 気が抜けていき、思わぬ不覚を取る羽目になる」


 3鬼はコンビネーションで攻撃を行う。
 金鬼が豪快に振るい、水鬼がその隙を補うように隙のない攻撃をする。
 そして隠形鬼は、水鬼を窘めながら、2鬼の範囲外の敵を背後から攻撃する。


「さて……困ったものです。
 一掃しても次から次へと……」


 そういいながら九鬼が通り過ぎると尽く動きが停止するゾンビ達。
 ある者は全身を細切れにされ、ある者は、一突きで動きを止めた。


「……これは……そこだ!!」

「ギャアアア……な、なぜ」

「気配が漏れていましたよ」


 九鬼が腕を一振りして手裏剣を飛ばすと、全てのゾンビ達が停止した。
 死体の山の中に術者が隠れていたようだが、九鬼に始末された。


「…流石」

「これで当面の敵はいないと思っていいだろう。
 だが……このままだと不味いな。
 異世界のここで魔力の高まりを感じる。
 このままでは崩壊し、現世の船にも影響を与えるだろうな」


 ライドウは、九鬼の手並みを賞賛した。
 ゴウトは、冷静に現状を観察している。
 九鬼達は無言で頷き、先に進む。
 途中で、水攻めのトラップに見舞われたが、水鬼が凍らせて難を逃れた。
 バリケードが張られても金鬼の豪腕で撤去する。
 このように様々な障害を仲魔の力で突破することができた。
 そして…、


「この扉の向こう側に異界に招いた悪魔がいるのでしょうね」

「そうだろうな……、ライドウ、ぬかるなよ」

「解っている」


 2人と一匹は、そのように言って扉を開ける。
 紅い装束を纏った紅い肌の女性型の悪魔がいた。
 舌を出し、浮き上がったあばら骨に萎びて垂れた乳房を持つ老婆で、長い爪で手当たりしだいに切り裂いている。


「ランダ……ですね」

「ヒンズー教の悪神か」


 バリ島に伝わるバロンの宿敵である魔女。
 バロンは、『森の王』と呼ばれる白く長い毛に覆われた獣である。
 邪な心に身を染めてしまった魔女が魔物と化した存在であるランダは、強力な魔術を操る悪の権化である。
 宿敵のバロンと永遠に終わることのない戦いを繰り返すとされている。
 また、シヴァの妻であり、シヴァの破壊的な面を表わすドゥルガーの化身でもある。


「くけけけけ……!!
 市ね、氏ね、死ね!!」


 そう言い放ちながら機関部を破壊している。
 このままでは現世のほうに悪影響を及ぼすだろう。
 ゴウトがランダへ言い放つ。


「邪気に当てられ乱心したようだな。
 ライドウ、ここは討つしかあるまい!!」

「そうだな」


 ランダは、敵意に気がついたのか、船底へ向かって魔力弾を放つ。
 急激に浸水し始めている……さらに、ランダは、吼えると、天井が急激に九鬼達に迫ってくる。


「危ねえ!!
 水鬼!!!!」

「オウ!!」


 金鬼が迫り来る天井を一人で支え、水鬼が船底に空いた穴を冷気で海水を凍らせて防ぐ。
 水鬼はそのまま冷却を維持するつもりのようだ。
 九鬼がそのまま指示を出す。


「2人はそのままがんばってください!!」

「まあ、俺様なら大丈夫だ。
 お頭もしくじるなよ!」

「まあ……食い散らしたからな、コレぐらいはひきうけてやる」


 義経が切りかかろうとするランダの攻撃を捌く。
 だが、反撃は行わない……ランダは 物理攻撃を反射する特性があるからだ。
 鞍馬天狗が印を結ぶと、ライドウと九鬼の刀に旋風が纏った。


「大殿!ライドウ殿!!
 術を施しました!!
 これで大丈夫なはずです!!」


 ランダが形勢の不利を悟って逃走しようとしたが、隠形鬼『達』に阻まれた。


「ギョ!?」

「目に映るモノばかりが真実ではない……」


 なんと、隠形鬼が4体に分身してランダを包囲したのだ。
 ライドウと九鬼は同時に切りかかる。
 さらに、義経がスクカジャで命中率を上げた。


「終わりです!!」

「覚悟!」

「ギャアアアアア!」


 一瞬にして九鬼がランダの四肢を切り落とし、魔女の脳天にはライドウの長刀が突き刺さっていた。
 MAGを噴出しながらランダが消滅した。
 異界化が解け、現世に戻る九鬼達。


「……現世への影響は!?」


 九鬼達が調べたところによると、動力室の機能が停止しており、更に船体が傷つき、応急処置が必要だと発覚した。
 南野が報告をした。


「隊長!
 機械の応急処置については私にお任せください!
 つきましては、雷電属系統の悪魔が必要ですが……」

「解った……補佐につける。
 南野曹長、頼む」


 南野は、ライドウに向かって敬礼を行う。
 一方九鬼のほうは……、


「金鬼、水鬼…」

「おう!
 力仕事なら任せろ!!」

「氷で補強すりゃ陸までは持つだろう」


 金鬼・水鬼の処置もあって、船体の応急処置も完了し、どうにか陸にたどり着く事が出来たのだった。
  



 



 あとがき。
チート忍者と伝説の遺伝子を受け継ぐサマナー(でも葛葉は世襲ではありませんがね)の競演……生半可な相手だと一蹴されてしまうといういい礼だった。
それはさておき、やる夫系に嵌ってしまった。




[7357] 第3期 第8話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/10 23:00



「お前が石動か?」


 事務所に来た小柄なゲルマン人の老人がいきなり切り出した。
 すべてが白髪になり、小柄だが、全身の筋肉が発達しており、未だ現役の戦士である事がありありと感じさせる。
 頑固そうな様子である。


「ああ……貴方は?」

「おう、ベルタンって言うんだ!
 ベルグラーノの坊主が見所のある日本人がいるって聞いてな!!
 なるほど、なかなかできそうじゃねえか、ハハハハ」

「なるほど、あの『鉄人』」

『衣笠!!』

「黙っていろ」


 ラームジェルグが茶化すが、ベルタンはラームジェルグを咎めず、むしろ興味をもったようであった。
 イギリスのクイーンガードの団長であるベルグラーノより古い世代のデビルバスターであり、鉄人と呼ばれるほどの頑強な体の持ち主で裏の世界では有名であった。
 石動は、フリーダーに紅茶を酌ませるつもりだったが、ベルタンが手で制した。


「話をするなら……コイツのほうがいいだろ?」

「そうですね」


 ベルタンは、ウィスキーのボトルを持ってきた。
 酒を注ぎながらベルタンが本題に入った。


「サンゴートって知っているか?」

「それを知らないならモグリだと言ってもいいだろうな……。
 アメリカのドゥーリエ財閥が作り上げた退魔組織・サンゴート。
 その精強さは小国の国家退魔機関を超えるだろうな」

「まあ歴史は浅いがな……初代の『黒騎士』とは命の取り合いをした事があったな。
 そんときゃアイツは爺で、俺が洟垂れだったがな」


 ベルタンは、そういって豪快にウィスキーを飲み干す。
 ラームジェルグは、一人呟く。


『初代『黒騎士』っていやぁ~呪いの武具を自在に操る魔法騎士だったな。
 まあ、なんとも貴重な存在だわな』

 
 呪いの武器は強力なものが多いが、様々な欠点がある。
 歩くたびに魂を消耗するものや、時々味方を斬り捨てる妖刀など……使い道がないように思われる。
 だが、儀式で用いるものがあるし、悪魔の所有物だったりするものであるから、人間用の武具として想定されていないのだ。
 リスク覚悟で使う人も割りと多い……妖刀ニヒルは、歩くたびに消耗するので強敵との決戦時にだけ装備して使うデビルバスターも多い。
 サンゴートのリーダーは代々黒騎士を名乗るが、呪いの武器を操れる能力を持っているのは、初代だけであった。


『(能力だけなら巧が現代の黒騎士の再来ってか?
  まあ、厨二チックな仇名になりそうだな……まあ、本人にはどうでもいいことだろうが)』


 また話を脱線する。
 魔術師など異能持ちの存在についてだ。

 魔術師は、魔女等の血統がある者が才覚が高い傾向にある……だが、時に突然変異的に強力な素質を持つ者がいる。
 魂か、血か……魔術師を魔術師たらしめるの要素がどちらなのか、未だ結論がつかない。
 悪魔と契約する事(ガイア教・メシア教に入信するのもこの一種)が一から入る方法であり、先達から聞くか魔術書を読んで研究するなどやり方は様々だ。

 ペルソナ能力は、様々な説があるが、ほぼ大半がペルソナさま遊びと呼ばれる行為を行う事が多い。
 その際、意識を失い、仮面の男に名を問われる……その時、自分の名を名乗れる存在がペルソナ使いとして覚醒するのだ。

 戦士のなかで超人的な技を使うものがいる。
 それは……対人間用の武術が昇華し、対悪魔の技として使える存在がいる。
 身体能力が上げて、強引な酷使を行って必殺の一撃にするものもいる。
 石動の場合は、前者の方で、守護霊憑きになると大技を使った反動が通常より抑えられる結果になる。
 ただゲイ・ボルグは必殺の槍法だが、魔術も混合しており、クー・フーリンのサポート無しでは決して発動できない……スカアハに教えを請い続けて極めればあるいはで

きるかもしれないのだが……。
 
 閑話休題。
 石動が再び問う。


「サンゴートの面々と接触する事ですか?」

「そうさ。
 俺としてはどうでもいいんだがよ、ちょいと義理がある奴らに泣き疲れてよ。
 それでどうしたもんかと思ったわけよ」


 そういいながらベルタンが説明した。
 サンゴートの秘宝が盗まれてしまったらしい。
 小さい小箱に入ったものだが、初代『黒騎士』ですら扱えなかった呪いの品だった。
 賊の足取りはロシアのモスクワまで追えたが途切れた。
 そこで、当代の『黒騎士』が追跡をかけるつもりでいる。


「護衛もいるだろうがな、如何せん血気盛んな若造……しかも女子だ。
 脇が甘くなるわ。
 そこでだ……お前さんがついてもらいたい」

「……報酬は?」

「報酬の金額は……コレぐらいだ。
 あと、ドリーカドモンとかいう奴をくれてやる」


 報酬は高額であった……更に貴重な造魔の素体を提供すると言ったのだ。
 石動は、造魔素体が欲しいとウーリが言っていた事を思い出した。
 さらに石動が問う。


「条件は?」

「極力サポートに徹してくれ。
 プライドが高いから他のサマナーからの助力を受け入れにくい」

「悪魔召喚なしで……小角の能力一本で行けば問題ないか。
 剣も極力使わず、銃でいくか……」

『面倒臭いなあ』

「まあ、報酬が報酬だ。
 多少の面倒は目を瞑ろう」



























 成田空港で石動は、待ち合わせをしている。


「ほう、貴様がこの国の陰陽師か?」

「……石動だ」


 筋肉質だが、美しい女性が大勢の屈強な男達を引き連れていた。
 女性が、石動を見つけて声をかけてきた。
 今回、石動は……『サマナー』でなく、陰陽師として接している。
 サンゴートの面々は、プライドが高く、他のサマナーの力を借りる事を嫌う。
 サポート中心である陰陽師であればまだ受け入れの余地がある為に石動は身分を偽った。
 もっとも、『サマナー・石動巧』よりも『JOKER退治を行った陰陽師』のほうが有名であるのだが……。


「今回の協力することになったが……」

「ああ、戦闘なら我々に任せてもらおう!
 申し送れた、ワタシはヴァイル・ドゥーリエ」


 覇気に満ちた女性であった。
 名前から判断してドゥーリエ財閥直系の者であろう。


『財閥の一族なのに物騒な事をするもんだ』

「これは……守護霊?」

「そうだ。
 失礼をするかもしれんが勘弁してやってくれ」


 石動の言葉を聞いても気にしないで答えるヴァイル。
 その態度は王者の風格がある。


「かまわん。
 先ほどの質問だが……初代『黒騎士』はドゥーリエ財閥の長が行っていたからな。
 私は、まだ初代ほどの実績を築き上げていないが、必ず超えて見せよう」

『そりゃ、頼もしい限りで。
 俺はラームジェルグだ』

「レッドキャップスの勢力下にあるからな……此方としてもあの組織の情報を得るにはいい機会だ。
 ところで……俺が聞いたところによるとある物が盗まれたと聞いたが?」


 石動……というよりベルタンに泣き付いたのは、ドゥーリエ一族の者達であった。
 一族の血を引く者に万一のことがあってはならないという配慮であった。
 

「ああ……初代『黒騎士』ですら扱う事を断念して封印した品だそうだ。
 小箱が4つ……全て封印されていて、中身を見たことはないがな」

「初代『黒騎士』ですら扱えぬ難物か。
 さぞかし危険だろうがな」

「さっそくだが、石動。
 既にモスクワ行の便のチケットは手配している。
 早速出発しよう」


 ヴァイルの号令で皆が一斉に行動を始める。
 石動は、その様子を見てから悠々と後を追った。





「私って冴えてる!
 ……サンゴートの『黒騎士』が態々ロシアに行くなんて予想外だったけど。
 スクープの予感がするわ!!」


 栗色の長い髪と、緑のスカーフ、そして動きやすいようにあつらえたコートを着た美女がヴァイルたちを見つめている。
 そして、彼女達を追いかけ始めた。



[7357] 第3期 第9話 追加修正
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/14 08:11
 おまけ 早乙女の訓練……精神編。


「次いくぞ……テンタラフー!!」

「う……」


 早乙女の目の焦点がぼやける。
 その瞬間にラームジェルグが愛刀で一閃する。


『はい、ダウトォー!!』

「はうう!?」


 ハリセンで頭を強打された早乙女は涙目になった。
 石動が精神に作用させる術を唱え、早乙女が抵抗するという訓練だ。
 戦闘では一瞬の隙が命取りになる事が多い…。
 早乙女には術の抵抗の練習をさせている。
 無論、護符などで護るという手もあるが、壊された場合や防御できない属性でやってくることも考えればこの訓練が必要である。
 早乙女は、ただ抵抗するのでなく、竹刀で石動に打ち込む事が最終目標である。
 だが、小角を憑依させ、術を使った後の隙があるとはいえ、易々と打ち込まれない。
 更にラームジェルグが早乙女の集中を妨げたり、反撃しようとした早乙女にスーパーボールを投げつけたりする。

 ・例1 早乙女の集中を妨げる為に官能小説を音読するラームジェルグ


     / ̄ ̄ ヽ,
    /        ',
    .l  {0} /¨`ヽ}0},  <うふん、あはん……おくさん……ええやろ、ええやろ?
   .l     ヽ._.ノ  ',  いやいや言っているようだが、体は素直のようだな
   リ    `ー'′/ ̄/ ̄/
  (     二二つ / と)
   |       /  /  /
    |        ̄ ̄| ̄





 
 ・例2 早乙女の攻撃失敗時
\               ¦         /
  \             ¦        /
   ラム⇒     / ̄ ̄ ヽ,            
           /        ',       /    _/\/\/\/|_  
    \    ノ//, {0}  /¨`ヽ {0} ,ミヽ    /     \          /
     \ / く l   ヽ._.ノ   ', ゝ \       <  バーカ!  >
     / /⌒ リ   `ー'′   ' ⌒\ \    /          \
     (   ̄ ̄⌒          ⌒ ̄ _)    ̄|/\/\/\/ ̄
      ` ̄ ̄`ヽ           /´ ̄
           |            |


 このように誠にうっとうしい。
 早乙女は最初は、石動の魔法にかかってばかりだが、最近は抵抗して、なんとか一回は掠らせる程度には成長している。
 ラームジェルグに向かって早乙女は質問した。


「先生は、役小角の力を持っているんですよね。
 それ以外に訓練は?」

『特にしちゃいないな……色々修羅場を潜り抜けて揺らがない精神を持ったのが大きいな。
 まあ……そのお陰か……』


 ラームジェルグが指差す。
 モー・ショボーが必死に誘惑していた。
 セクシーアイや魅了噛みつき、魅了引っ掻き……大人モードになって続けるが、最後まであしらわれてしまった。


「む~……昔は、少しはクラってきたのに~」

『(案外、このアプローチをあしらう内に鍛えられたのかな?
  不能?まあ……違うが)』


 とラームジェルグが思っていた。

 と、いうわけで本編へ。
























 栗色の髪の美女がモスクワに到着して背伸びを行っていた。
 そのしなやかな体は猫のようで、20代半ば位の肉体は、男性にとっては魅力的に写るだろう。
 だが、彼女はいつの間にか首筋に木の棒が突きつけられていた。


「何の為に俺達を追う?」

「さあ、何のことかしら?」


 平然と惚ける美女だが、背後にいる男は冷ややかであった。
 

「そんな事より、私と遊ばない」

「さて、首を折るか」

『流石、せっきー!
 美女のフラグを折るどころか、首までへし折る!!
 そこに痺れる……けど憧れない』


 美女の目の前に西洋騎士の幽霊が陽気そうに語っていた。
 驚く美女の一瞬の隙を突いて手荷物を奪って身元を確認した。
 美女は、その隙に逃げようかと考えたが、男……石動とラームジェルグの隙の無さに観念した。
 もっとも……美女は、交渉次第で自分の思惑通りになると考えていた事もあるのだが……。


「リディ・ヴァレンシュタインか……。
 ジャーナリストでもあり、デビルサマナーでもあり、情報屋でもある女か」

『知っているのか、せっきー!!』

「あらら……名前だけでそこまで解るの?」

「知は力なり……といった所だ」
 

 美女……リディは驚いていた。
 名前だけでそこまで素性を言い当てる石動の情報の精通ぶり……そして並外れた技能を持っている事を。
 

「見事な身のこなしと隠密行動だった……」

「あっさり捕まえられたのに……嫌味?」

『まあ……更に上のチート忍者に対抗しようとすると自然と技能が上がるんだよね』


 リディは、意外に話せる日本人と陽気な守護霊のコンビに興味を持ちはじめていた。
 素直に自分の目的を話し始める。
 

「素直に白状するけど……ヴァイル・ドゥーリエがモスクワへ行くって事は何かの騒動っぽいから調べようかな~と思ったのよ。
 それに、ロシアの現状を見るのも面白そうだし。
 ……ちなみに貴方は?」

「俺は……陰陽師だな。
 あいつらの手伝いだ」

『貴方の恋……なんでもないです』


 リディは、すぐに返答する。


「もしかしてJOKER退治をした陰陽師?」

「何故そう思う?」

「情報を集めた限りだと、恐ろしく打倒が困難な存在をあっさり封じた存在……名前は出なかったけど、只者じゃなさそうな存在だったわ。
 貴方みたいに……名前が出なかったのは実績がほとんど無い若手の陰陽師がそうかもって思ったんだけど、違うかしら?」

「想像に任せる」

 
 淡々と石動が返答する。
 リディは、最後に提案した。


「良かったら同行していいかしら?
 邪魔はするつもりは無いし……これでもサマナーだから足手まといになるつもりはないわ」

「役立たずは……」


 石動は、リディの小型端末型COMPを見たときに言葉が止まった。
 面白そうな物を見つけた顔になっていた。


「その『プログラム』を使うとはな……酔狂もいいところだ」

「そんな事まで知っているの!?」

「まあな……まあいい。
 俺の護衛とでも紹介してやる。
 ただし……俺と日本政府に害を成さないという事をこの契約書に誓ってもらおう」


 石動が、羊皮紙をリディに手渡す。
 恐ろしい魔力が篭った契約書であった。
 

『魔神・ミトラの力が篭った『死の契約書』だ。
 契約を守らなかった者を石化・粉砕する効果がある』

「うわぁ、そんな物まで持っているなんて。
 いいわよ……早速面白い取材対象に会えたし」

「やれやれ……」


 石動は、ため息をつきながら、用を足すと偽って別れたヴァイル達と合流するべく歩き出した。
 ヴァイルは、いい顔をしなかった。
 だが、石動は、リディ個人的な付き合いもある護衛であり、偶々時間が空いた彼女が協力をしたいと申し出たと伝えた。
 ロシアにもある程度精通してる彼女の存在は、戦力になるという点が決め手になってリディの同行が決まった。
 ホテルに着いた時には夜で、本格的な活動は翌日ということになった。
 リディは早速石動の元へやってきた。


「国籍は……アメリカか?」

「そうよ……曽祖父がドイツ系移民でね。
 ひょんな事からこの世界に首を突っ込む事になったけどね」

 
 互いに適当に話し始める二人。


「悪魔に小説を書かせるとはな」

「まあ、違う感性の持ち主だから新鮮で面白いと思ってね。
 決行評判なのよ」


 裏の世界の情報交換が終わり、リディは現在行っている仕事を話している。
 この時、ラームジェルグは思った。


『(……巧はこのシチュエーションを活かさないだろうな、絶対に。
  男としてそれはどうよ?
  まあ……相手が信用できるか見ているようだけど)』


 案の定、男女二人きり(ラームジェルグが憑いているが)なのに、会話だけで終わった。
 


 





 民主化されたロシア……。
 安定しないこの国を歩くには注意が必要だ。
 ジプシー(ツィガン)にからまれたりスリにあったりする事がある。
 地元の住人も面倒事は御免であるので助けにくることはまず無い。
 子供であってもなめてはいけない……驚くほど力が強いし、周りを囲まれると身動きがとれなくなる。
 スキンヘッド(外国人排斥主義者のグループ)は外国人を手当たり次第襲う……特に東洋人は舐められている為、暴力の被害者になる事が多い。
 街中で黒づくめの服装・迷彩服に革ジャン・ハゲ頭の若者を見かけたら、とにかく逃げることをお勧めする。
 また、ホテルで不用意に開けてはならない。
 美人局や強盗がカモの外国人から金を毟り取ろうとするのだから。




  
 リディとヴァイル、そして石動と護衛が二人ついて情報収集に当った。
 他の護衛も四人一組で情報収集に当っている。


「ロシアか……一度いったきりだからな。
 原野当りなら知っているだろうが……」

『無いモノねだりしてもしかないさ』

「ここは私にお任せぇ!」


 そう言いながらリディが裏路地へ進んでいく。
 情報屋として飛びまわっているらしく、モスクワにも仕事で何度も来ている為、地元の情報屋へ渡りをつけた。
 家具・雑貨の類が無秩序に置かれた店で、ストーブで温まっていた。


「いらっしゃい……おお、久しぶりだねえ」

「おじいさん、こんにちは」


 長い白髭を生やした老人が、リディを見て目を細めて歓迎する。
 歳を経ても女性への愛欲は断ち切りがたいもののようだ。
 リディは、そんな視線を気にせずに話し続ける。


「最近景気はどうよ?」

「まあ……相変わらず酷いもんさ。
 民主化して潤ったのは一部だけで……昔どおりなだけ俺はマシなクチだがね。
 ……共産主義の時は少なくともパンやスープが皆に行き渡っていたが、今はそれすらできねえ。
 まったく……」


 ヴァイルは、壁にもたれかかっており、護衛はその横に控えている。
 石動は、商品を手に取っているが……周りの気配を探って警戒している。


「学費や生活費欲しさに売春している女が多くてな。
 ……おおう、そこの日本人!
 お前さんも興味はないかい?
 安くしとくよ」

「生憎、縁が無いから遠慮しておく」

「アンタみたいな奴が女をいい具合に泣かせそうだけどねえ、いろんな意味で」


 調子よく喋る情報屋の老人をあしらう石動。
 リディは、本題を切り出した。


「最近、流れてきた連中で目ぼしいのはいる?」

「流れる奴ぁ掃いて棄てるほどいらぁ……この国は糞で作った塔みたいなもんさ。
 まあ……ワシもその糞の一部だがな」

「……」

「……」


 アメリカ出身であるリディとヴァイルは、ロシア人の言葉に色々思うところがあるようだ。
 老人は頭を掻く。


「話がそれたな……歳をとると無駄な事ばかり言っちまう」

「マジックアイテムを収集する窃盗団、もしくは強力なアイテムを使用して戦力を挙げようとする存在は知らないか?
 アメリカから逃げてきた奴……ここまでの条件である程度絞れないか?」


 ヴァイルが尋ねた時、しばし老人は考え、紙の束を渡す。
 ロシア語でびっしり書かれている……。


「……目ぼしいのはこいつ等だ」

「感謝する」

「ありがとうおじいちゃん!」


 リディの言葉に嬉しそうに目を細める。
 石動も口を開く。


「感謝する……。
 次に用があるときはここにやってくるとしよう」

「いいよ、アンタは義理堅そうだからね。
 お勧めの売春宿を紹介するよ」

「……それは遠慮しておこう」






















 情報を得た一行は一旦ホテルに戻る事にした。
 部屋にはリディと石動、ラームジェルグがくつろいでいる。


『なあ、お嬢ちゃん』

「何、ラム?」


 ラームジェルグと、リディはすっかり打ち解けている。
 切欠は、リディがラームジェルグが小遣い稼ぎで作っているアクセサリーを身につけているのにラームジェルグが気がついた事である。
 社交的なラームジェルグの性格もあって友人関係になっていた。


『ヴァイルのお嬢ちゃんは、かっなりギスギスしているよね~。
 他のサマナーと組もうとしないし』


 一人のサマナーでできる事は意外に大きい。
 やり方次第では二十体近くの悪魔を使役できる……。
 戦闘だけでなく、偵察や操作や治療等の役割を持たせる事が出来る。
 だから身軽に動く為に他のサマナーと組まないで行動する者が多い。
 石動のような欠陥持ちか、『アパドン王事件』のようなのっぴきならぬ事態になれば話は別だが。
 事情通のリディが説明する。


「アメリカだから……かな」


 アメリカは物質的には豊かだ。
 日本に比べて広い国土、豊富な資源、軍事力……多くの部分で上回っている。
 だが……オカルトの分野ではあまり高い評価を受けていない。
 ネイティブアメリカンの文明を破壊し、大地を破壊している……それに対してのフォローがない。
 その為、アメリカ土着の悪魔は非協力的である。
 最近、アメリカ政府が態度を改めているが、悪魔が歩み寄るのは遠い未来であろう。
 ちなみに、中国の方では仙人系は異界に引っ込み、普通の妖怪も異界に行くか、他国へ移住していく。
 そのためにダークサマナーの台頭を許してしまっている。


『ああ……そういうことね』

「日本に対抗意識を持っているようなの。
 歴代の『黒騎士』でもアメリカで武者修行していた日本人サマナーの前で大失敗してしまった上に、修行中のサマナーに助けられリ……。
 最近でもネイティブアメリカンの聖地に異様な空気を感じて急いで準備したのはいいけど、ネイティブアメリカンが雇ったフリーの日本人サマナーがあっという間に解決したらしいし」

『ほお~(巧ィ、知らない間に因縁が出来ているし)』


 そんな事を顔に出さずに石動は言った。


「さて……撒き餌はばら撒いた」

「……日本の陰陽師は案外荒っぽいのね」

『(陰陽道には、格闘術は存在しない…そんな風に考えていた時期が私にもありました)』

「俺だけさ。
 ヴァイルはその辺を考えているのだろうが……」


 その時、突然ドアが開いた。
 ヴァイルが怒りを露にしていた。


「どうした?」

「……第二分隊から二人死傷者が出た」

 
 ヴァイルの拳は握り締めた指から血が流れる。


「……見たことの無い人型の悪魔に襲われた!!
 この屈辱は、血で購って貰う!!」

「遺体の様子を見ていいか?」

「……ああ、ついて来い」


 病院で司法解剖に回されている所を金を握らせて立ち合わせてもらった。
 遺体は、鉄の爪で強烈な力で引き裂かれた者と、全身を氷漬けにされた者の二人だ。
 何れも無念と恐怖に満ちた顔で死んでいる。
 石動とラームジェルグは密かに対話している。


『(巧……)』

「(ああ、解っている……。
  まさか『アレ』がこの世界にあるとはな。
  現物を見ているから気がついたがな)」

『(『もしアレ』がサンゴートで封印された宝なら納得だ。
   人間では使いこなせないわな……)」


 石動は、死体の状況を見終わった後にホテルへ戻った。
 



[7357] 第3期 第10話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/13 09:35





 その日の夜、電話が鳴った。


「……早乙女か?」

『先生!!
 実は……』


 早乙女は、緊急の用があって連絡した。
 石動は、その話を聞き終わると、武器庫の武具を持ち出しの許可を与えた。
 場合によってはウーリや九鬼に助けを求めるように言い含めた。


『……流石さくらちゃん。
 伝説に新たな一ページ。
 そのう『ガッツポーズをしたら事件が発生』とか『事件を解決して護送中にさらに事件に巻き込まれて解決した』とかなりそうな勢い……』


 ラームジェルグは密かに合掌して早乙女の不幸に同情した。
 リディは、その間にCOMPを機動させた。


「来て、ピクシー!」

「きゃは!」


 薄い昆虫形の羽をして、レオタードを着た栗色の髪の妖精・ピクシーが現われた。
 ラームジェルグは、ガッツポーズをした。


『ピクシー来たアアアアア!』

「え……貴方って……」

「知り合い?」


 興奮したラームジェルグにドン引きするピクシーに、ピクシーがラームジェルグを知っている事に軽く驚くリディ。
 ラームジェルグが、目配せして『正体』を言わないように口止めした。


「うん……一応」

「それはいいけどね。
 ピクシー、ちょっと出て行って噂を集めてきて。
 最近、ここいらにいる人型の悪魔で強い奴を調べたいから」

「いいわよ!」


 ピクシーは、早速偵察に出かけた。
























 翌日、全員が集まった。
 ヴァイルが方針を決めた。


「情報から得た目ぼしい場所へ分散して調査を行う。
 各自戦闘が予想されるからくれぐれも注意しろ!」

「……一つ忠告しておく」


 石動が珍しく横から口を挟む。


「昨日、分隊の連中が二人殺された。
 人型の悪魔だそうだが……。
 恐らく魔人だ」


 石動の言葉を聞き、ヴァイル達に緊張が走る。
 ヴァイルの部下の一人が口を挟む。


「知っているのか?」

「『本人』を知っているわけではないが……な。
 だが、痕跡から検討がついている。
 何処までの強さか知らんが……最悪な場合は撤退を視野に入れなければならないかもしれん」

「ふん!
 我らサンゴートの底力を見せてやる!
 我々は魔人に打ち勝てる」


 リディは、石動の見解に興味津々であったが、サンゴートの面々は反発心があった。
 ヴァイルが石動に言った。


「それほどにまで強いのか?」

「あくまでも『最悪』ならな。
 『成り立て』なら楽に屠れるだろうが……。
 あくまで痕跡から判断しただけであって、断定はしないがな」

『蓋を開けてからのお楽しみってわけだ』


 分隊の生き残りは、不意打ちを喰らって気絶してしまい、敵の正体がハッキリと解らなかった。
 それだけに不気味であった。
 方針が決まり、早速調査に当った。
 石動達は、一番遠くの場所へ行く事になっていた。
 一行が、車を調達しに店を探していると声をかけられた。
 

「失礼だが……ヴァイル・ドーリエ様の一行ですかな?」


 黒髪で長身の壮年がモノクルをつけている。
 見たところ日本人のように見える。
 防寒具を着込んだ壮年は、知的で威厳を見せていた。


「貴方は?」

「私は、河豚州 琉貴と申します。
 貿易商を行う傍らにサマナーに仕事を斡旋するのが仕事です」


 丁寧な口調で話す河豚州。
 ヴァイルは、警戒しながら話している。
 

「何の用だ?」

「ドゥーリエ家の当代の『黒騎士』にお近づきになるのが商売の足しになるのでは……と思いましてね」

「はっきり言ってくれる」

「腹芸を好まぬ人となりと聞いていますので」


 石動とラームジェルグは、河豚州という男の不気味さを本能的に感じていた。
 リディの方は、ヴァイルと河豚州のやり取りを注意深く見ていた。


「しかし……この国の闇は深いですねえ。
 マフィアに牛耳られた屋台骨の腐った国、そう思いませんか?」

「何が言いたい?」

「いえ、別に。
 ファントムソサエティにレッドキャップス……その他の無数の組織が喰らいあっていますので注意が必要です。
 必要とあらば私の方で取り扱っているマジックアイテムを販売いたしますがね」

「用意なら既に行っている」

「……それは残念です」


 ヴァイルは、河豚州の売り込みを冷たく断る。
 河豚州は、肩をすくめた。


「仕方ありませんね。
 では、今回は失礼させてもらいましょう」


 そういって河豚州は歩き始めて途中で止まる。
 河豚州は、振り返って付け加えた。


「ああ、そうそう……。
 風の噂だと、最近『天使』達が活発だそうですよ。
 新しい手駒が『二人』できたそうです」

「!?」

「くれぐれも気をつけてください……では」


 そういって河豚州は去って行った。
 石動は、最後まで河豚州の存在を読みきれなかった。
 ヴァイルは、気を取り直して、すぐに調査場所に向かった。
 だが……、


「酷いな」


 マフィアのアジトは、破壊されている。
 アジトにいる全てのマフィアは、氷漬けにされている……。
 皆恐怖に凍りついたままで……。
 その時、窓からピクシーがやってきた。


「リディ!」

「ピクシー、どうだった?」

「うん、天使達が凄い悪魔を味方にしたって噂。
 最新情報ってヤツ!」


 河豚州の言葉は、本当のようだった。
 だが、それだけに、河豚州の存在が余計に不気味であった。
 悪魔の最新情報を既に知っている河豚州の耳や目はかなり広い範囲にあるという事である。
 その時、石動が声をかけた。


「……来るぞ!!」

「え?」


 濃密な殺意がアジト内に包まれ、石動達の足元が漆黒の空間となった。
 石動達は落下した。
 石動達が着地すると、真っ赤な荒野が広がっていた。
 ヴァイルが周りを見渡した。
 同時に部下たちが互いの四角を補う配置につく。


「これは……」

「魔人が生み出した空間だ。
 基本的には倒すしか出られない。
 ……空間の綻びが見つかれば、そこを叩けば出られるがな」


 石動は、空間を見渡し、綻びや魔人を探している。
 リディは、興味と恐怖が半々の様子である。


「魔人に会うのは初めてなのよね。
 情報とか証言とか見るとおっかないことは確かなんだろうけど」

『弱いヤツなら腕のいいサマナーなら集団で袋叩きで終わらせられるがな」

「こうなったら……力を借りるわよ、ピクシー!!」


 リディは、COMPを操作した後、ピクシーの背中を触る。
 COMPが合成された無機質な男性の声を発する。


「ちょっと痛いけど、我慢してね」

『Metamorphosis』

「え、えええ?
 いきなりそんなイタイタタタタタ!!!」


 ピクシーの体が見る見るうちに変形してナイフへ変わる。
 一方のヴァイルは、剣を出し、ガントレット型のCOMPを起動させながら言った。


「な、なんだ!?」

「一時的に忠義の厚い仲魔を武具へと魔晶変化させるプログラム『カフカ』。
 ソフトのスロットを大幅に使う上に、通常召喚の際に使うMAG消費量が増えるという欠点がある代物だがな。
 こんな変り種のソフトを使う奴を始めてみたがな」

「石動……詳しいな」
 
「商売だからな……来るぞ!!」


 地平の果てからゆっくりと歩いてくる人影が見えた。
 頭を剃った修行僧のような巨大な体躯の男で、前頭部に角のような隆起が二つあった。
 全身に刺青があり、青白い光りを放っている。
 人間のようで人間でない……まさしく魔人であった。


「我らの事をかぎまわっているようだが……。
 主に代わって神罰を下さん!!」






 あとがき。
早乙女編の伏線を張りながら……新キャララッシュ(えーと、あの人については正体を直接言及しないのがエチケット)。

サンゴートの危険物の正体はもう解った事でしょう……アレです。

ついでにリディの使っているソフト『カフカ』はオリジナルソフトです。
間違ってもファイナルフォームライドと言わないように。



[7357] 第3期 第11話 7月16日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/16 22:39
 魔人が氷のブレスを吐くが、全員散開して難を逃れた。


「戦闘用意!!」


 全員が戦闘準備を行う。
 ヴァイルの護衛の一人が叫ぶ。


「アギラオ!」


 炎が魔人に直撃するが、魔人は怯まずにブレスを吐く。


「「ああああ!」」


 護衛の二人が凍りつく。
 石動は、炎属性が効かなかった事から液体窒素ボンベを宙に投げ、銃で打ち抜く。


「ガアアアア!!」

「畳み掛ける!」

「いくわよ!」


 魔人は、氷の属性を使うはずなのに異常にダメージを受け、氷結していた。
 どうやら、石動の直感が正しかったようだ。
 ヴァイルとリディがすかさず追撃を与え、ダメージを蓄積させた。


「……なぜ……解った!?」

「盗まれた『サンゴート』の封印された宝……いや、マガタマは4つだ。
 炎属性以外のマガタマがあると考えるのが自然だろう?
 氷結系の技を使ったのは弱点を炎と思わせるブラフ……と言った所だろう。
 お前が四つ全てを使っているか……2個ずつに分けて使っている……恐らく後者だろうがな」

「……クッ!!」

『(おいおい、カマかけにひっかかるなよ。
  まあ……これで魔人は二人か)』


 魔人は悔しげに拳を握る。


「……次は殺す!」


 魔人は、そう言い残して地面に潜った。
 閃光を発した後には、石動達は、マフィアのアジトに戻っていた。
 リディは、首を振って嘆く。


「戦力を見破られて出鼻を挫かれたらさっさと戻るところは引き際は良いわね。
 それより……なんで知っているの?
 サンゴートの秘宝の正体を?」

「そうだ……あれは厳重に封印されていた。
 その正体は私ですら知っていない……」

「別の場所で一度見たからな……現物を。
 その時は、良くわからなかったが……後でそれを知っている『年寄り』から聞いて解ったがな」


 石動は、マガタマを一度見たことがあった。
 だが、その強力な力を受け入れる事を良しとせず、自分の力で切り開いていたが(第一期 第39話参照)。
 後に、ライドウのお目付け役である業斗童子からある世界について聞いた。
 東京を舞台に新たな世界を生み出す戦い……もしかしたらこの世界でも起こったかもしれない事であった。
 石動は、その話を業斗童子が知る全てを聞いた……その世界の陰惨さ、そしてその世界を征した一人の男を……。


「……貴方って凄い人?」

「唯のた……陰陽師だ」

『(……普通の定義を調べよう、な?)』

「……世界は広いものだ。
 ならば弱点はわかるのか?」


 石動は首を振る。


「マガタマには様々な種類がある。
 当然引き出す能力も違う。
 まさか『マサカドゥス』はあるまい……そして短期間で引き出せる力量を持った人間もな。
 ギボ・アイズでもインストールをしておくべきか?」

『だがよ~、敵さんもその辺想定していそうだがな。
 COMPを動かせない場所で戦うとか……手勢を率いて弱点防御するスキルを使わせればいいしな』

「……でも、やらないよりはマシね」


 リディはそう結論した。
 部下の治療を終えたヴァイルが石動に礼を言った。


「この場はお前のお陰で助かった、礼を言う。
 この件が終わったら引き抜きたい位だ!」

「褒め言葉と受け取っておこう」

「でも……他の人たちは無事かしら?
 石動の引き出した情報だと魔人はもう一人いるわけだし」

『最悪、天使達も襲撃してくるだろうしな』


 リディとラームジェルグは、そのように言った。
 今、この場に手がかりになる事はなかった。
 一旦、ホテルに戻ることにした。







 ホテルに戻ると、負傷者は出ていたものの、死人を出すことなく分隊が戻っていた。
 だが、目ぼしい情報はなかった。
 石動の部屋に、コールガールがベルを鳴らしてきたり、盗人がルームサービスと偽って侵入しようとしたりしたが、全てあしらった。


『ひでえもんだ……』

「まあ……末期的な国だからな」


 リディは悪魔を召喚した。
 魔人との交戦で得た魔人の血の匂いを覚えさせて偵察に出した。


「いってらっさい~」

『情報得られなくても相手方への挑発になるだろうな』

「今度こそ関係者を捕まえればいい」










 翌日も、情報収集を行うことになった。
 その途中で石動が突然、通行人を殴りつける。
 ヴァイルは、咎めようとした。


「なにを……これは!?」


 だが、すぐに絶句した。
 殴りつけた男の服を破ると、プラスチック爆弾が巻かれていた。
 石動が、昏倒した男から爆弾を剥がしながら言った。


「メシア教団のようだな……」

「良くわかったわね」

「慣れだ」

『コイツから情報を吐かせればいいか』


 リディの言葉に簡潔に答える石動は、男の口を開いた時に奥歯に起爆装置を確認した。
 自決用に頭部に爆薬を仕掛ける事がメシア教団ではあるからだ。
 石動は、口の中に詰め物をして自決を防いだ。
 ホテルに連れ帰り、ヴァイルの仲魔による読心術(ガードされないように男を昏倒させてから行った)で情報を得た。


「教会か……」

「広さといい、何かを隠すのにも丁度いいか」

『問題は……マガタマ盗んでまで何をしたいかだな』


 ラームジェルグがそう指摘した。
 結局、メシア教徒からは、その情報を引き出せなかったが。
 しかし、その日の夜にリディの仲魔の偵察が終わり、悪魔内での噂が聞くことが出来た。
 ヴァイルとリディと石動(とラームジェルグ)は、情報の整理を行う事になった。


「仲魔から聞いたところによると、天使達が大きい事をするって噂よ……天国の門を開くとか」

「日本でロウ……というよりは天使側の株を大きく下げる事態になったからな。
 異界の門を作り出して、現世に現われようという算段だろう」

「……我らの宝は、何故盗まれた?」


 ヴァイルの疑問に石動が答える。


「ハッキリとした事は解らない。
 だが、アレを使いこなし、全てのマガタマを得た時は……」

『手のつけられない魔人が出来るぜ。
 ヤタガラスの全戦力を投下しないといかんくらいにな』


 石動達の言葉に絶句する二人。
 だが、石動がフォローを入れる。


「だが……この世界にマガタマが全てそろう事はない。
 そもそもあれは、天使のモノではなく、対立勢力の切り札だろうしな」

『それでも、厄介な敵だからな。
 その辺は頭に入れて戦うこった』

「わかった……。
 では、明日の深夜にこのポイントを襲撃する。
 お前達も今日は英気を養う事だ」


 そういって、ヴァイルは部屋から出た。








あとがき。

追加修正してもあんまり増えなかった。
サンゴートの秘宝は、マガタマでした。
コレを使うということは人間をやめるしかない……だから初代『黒騎士』は使うことを断念しました。
TRPGの真3ではマガタマ飲んだキャラが何人もでているので……。
でも混沌王とよばれたりする、ライドウの愉快な仲魔なあの人ほどの力は期待できませんがね。


さて、ヴァイル・リディ編が終わった後の次のエピソードに関係するアンケート。


問い) 鳥と犬どっちがすき?
    フィーリングで答えてください。




[7357] 第3期 第12話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/19 12:54

 キリスト教史の歴史は2000年を超える。
 その中でロシア正教はカトリックともプロテスタントとも異なる独自の発展を遂げ、ロシアを始めスラブ圏の人々が篤く信仰している。
 ちなみに……ギリシャ正教会、ルーマニア正教会、ブルガリア正教会、日本正教会など一国に一つの正教会があるが、各国ごとの正教会が異なる教義を信奉している訳ではない。
 ロシア正教会の出発点をどこに設定するかでまず論争が存在するので申し訳ないが、ロシア正教の歴史については割愛させてもらう。
 
 正教会は、ギリシャ正教もしくは東方正教会とも呼ばれる。
 (正教の成立期において、東地中海地方を主な基盤としており、東ローマ帝国の国教として発展したことから「東方正教会」の名がある)
 東方正教会もバチカンのローマカトリックも互いに自らを正統であると自認し、他方と起源を同じくすることを認めている。
 カトリックの方では他国へ精力的に布教しているのに対して、正教のほうでは不遇な時代があった。
 正教会が盛んな地域である東欧に成立した共産主義政権の弾圧を受けて大きな人的・物的・精神的被害を受けたのだ。
 しかし、共産主義政権の崩壊後に各地の正教会は復興しつつある。
 
 教会はイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)を頂点としており、聖神の導きのもとも機密……西方教会でいう『サクラメント』(神の見えない恩寵を具体的に見える形で表すことに与ること)を生活の中心とし、ハリストスの体である教会全体が歩んでゆくものである。
 
 新約聖書では、十字架にかけられたイエス・キリスト自身がその最たるもの「原サクラメント」として捉えており、ローマで伝わった時には、本来ラテン語において誠実さや忠実さを示すための誓い(忠誠の宣誓)という意味があったサクラメントゥム(Sacramentum)という言葉をもって訳されてキリスト教の用語として定着した。
 だが、初期においてはラテン語における原義との混合が起こり、「隠された現実」「奥義」一般を広く指す事になった。
 サクラメントとは何かについては長い間諸説があり、30個もあるとするものがいたが、ペトルス・ロンバルドゥスの『神学命題集』が示した7つが、聖書における「7」が持つ特別な意味合いも重なってスコラ学派を中心に強く支持を受け、1247年の第2リヨン公会議において7つのサクラメントが定められた。
 これに対してプロテスタントは、宗教改革を行い、儀式の儀礼化が進んで信仰が失われ、儀式を受ければ自動的に神の恩寵が受けられるとの誤った認識が各種の魔術や迷信、聖物売買などの現世利益利用や物象化を招いていると批判し、洗礼と聖餐の2つの「礼典」のみとしてサクラメントとしての他の儀式を廃止した。


 では……正教ではどうなのか?
 カトリックの影響を受けて7つの機密がある。
 啓蒙者(洗礼志願の未信徒)ががまとめて享ける機密は、洗礼機密と傅膏機密である……簡単に言えば、洗礼や聖洗と呼ばれる奉神礼の一部である。
 水の中に三度沈み、三度起きあがるという行為(簡易式では頭に三回水を注ぐという形)を洗礼機密で、その直後に「聖膏」と呼ばれる特別な油をつける事が傅膏機密である。
 

 信徒が受ける機密は、聖体機密、痛悔機密、婚配機密、聖傅機密、神品機密である。

 聖体機密は、イイスス・ハリストスが行った機密制定の晩餐(最後の晩餐)から始まり、正教会は一番重視している。
 (キリストの体と血となったパンとワインを受ける機密)

 聖体機密を含む奉神礼である聖体礼儀は、カトリックでいうミサに相当する。

 痛悔機密は、カトリックでいう告解である。
 洗礼は生涯に一度しか行えず、洗礼後に信徒が弱さによって再び神と離れてしまった時に、自分の罪を悔い改めようとする気持ちを言葉で表し、罪のゆるしを得る痛悔機密を受ける事によって、再び神に近づく……いわば、『第二の洗礼』である。

 婚配機密は、いわゆる結婚式……結婚とは、単に男女が生活を共にするということではなく、神の恵みによって一つになるという機密である。
 『三位一体』(父と子と聖霊が一体であるとする教理)に似せて造られた人間は、人と人とは区別されながら、愛のうちに一致することができるというわけである。

 神品機密とは、「主教」「司祭」「輔祭」という教会の三つの役職に任命するための機密で、『神品』とは、三つの聖職のことである。
 
 聖傅機密とは、病に伏している人のために行われる機密で、その人に油を塗り、癒しと罪の許しを祈るものである。
 基本的には、七人の司祭が交代で聖書を読み、祈り、七回油を塗る(簡易的に一人の司祭が行う事も)。 


 
 正教の特徴は、独特の建築様式をもった教会もあるが……一番の特色は『イコン』である。
 イコンとは、キリスト教において神や天使や聖人を記念し象徴として模られた絵や像で、敬拝(崇敬)の対象とされるものである。

 初期キリスト教ではイエス・キリストや使徒たちの人物像を直接描くことは行わなかった。
 描いた物は、ユダヤ教美術や古代ローマ美術に共通する植物モティーフ、燭台などのユダヤ教由来のモティーフ、イエス・キリストと象徴的に結び付けられた羊・ぶどう・XPの組み合わせ文字などがもっぱら用いられていた。
 キリスト教信仰が解禁され、教会が公の施設として建てられるようになると、その内部装飾のための宗教美術は著しい発展を見せた。

 旧約聖書では神を描写することが禁止された(形像拒否)が、イスラム教やユダヤ教ほどは厳しくないようである。
 旧約聖書での形像禁止は、精確には「偶像を崇拝すること」であって、聖像の使用は像そのものの崇拝ではなく、像が表わすものの想起のためであると神学者は考えた。
 その為、像そのものは敬意をもって扱われるべきものではあっても、あくまでも崇拝の対象ではないという解釈がなされた。

 東方教会では平面の板に描かれたものや浮き彫りのものを用いる事が多く、立像も稀に用いられる。
 正教会では、イコンを描くことは神に近づく道のひとつであり、祈祷のかたちのひとつであるばかりでなく、イコンを見る他の信者を神に導く道と考えている。
 その為に、教会や家庭などで用いるイコン、及びイコンを描く画家については厳格な規定があり、正教徒以外の者が聖像を描くことは認められていない(イコン画家は教役者の一種であるとされる)。
 正教会信徒(多くの場合、修道士か修道女)が教会の祝福の下で作成し、それを司祭が成聖したものだけがイコンとされるのだ。








『(でも……そんなの今回の本筋とは関係ねえ~。
  さっさと終わらせて日本でゲロゲゲルを再開してぇ~)』


 ノアの箱舟を象っていたビザンティン式の教会を眺めるラームジェルグであった。


「さっさと行くぞ」

『はいはい、せっきー』

「突入!!」


 ヴァイルの号令で一斉に突入した。
 中では案の定、メシア教徒と天使達が待ち受けていた。
 それらをヴァイルの統率された軍勢で圧倒していった。
 途中の別れ道を分隊ごとに分かれて探索を続ける。
 『サンゴート』の軍勢は、サマナーやペルソナ使い、そして魔術師など様々な構成で、石動から見て及第点がつけられるものであった。
 ヴァイル率いる本隊(石動やリディが含まれる)が突き進んでいった。
 

『問題なく進んでいるがよぉ~……』

「魔人は出てきていないわね」


 リディとラームジェルグは懸念を話す。
 ヴァイルは、最深部で『天国の門を開く』儀式を行っており、警護の戦力はそこに集中していると推測している。
 護衛の二人が最深部の扉を蹴破り、ヴァイルが獣の皮を被った戦士を3体、紅い軍馬に乗った女性の戦士、頭髪が鋼の鎖になっている巨人、そして鎧と盾と兜で護られた槍を持った女神が現われた。


『ベルセルク三体に、軍神ヴァルキリー、邪鬼グレンデル、そして女神パラスアテナか』

「自信満々だけあるわね」


 ラームジェルグとリディは、素直にヴァイルの力量を褒め称える。
 オーディンの戦士で、死を恐れぬ狂戦士ベルセルクに、オーディンに仕える戦いの女神にしてヴァルハラへの導き手であるヴァルキリー。
 英雄ベーオウルフに倒された人喰い鬼グレンデル……、人の使う武器が一切効かないデンマーク出身の怪物である。
 そして、古代ギリシャのアテナイの守護者にして戦いの女神パラスアテナは、雷神ゼウスの額から武装したまま生まれ、知恵と武芸に優れた存在であった。
 いずれも並みのサマナーでは使いこなせない協力な仲魔である。
 最深部は、巨大な地下空洞になっており、奥では、巨大な空間の歪みが発生していた。
 無数の天使達や、メシア教徒の司教が儀式を一心不乱に行っていた。
 その中心に、金属質な身体をした巨大な天使がいた……緑の法衣を纏い、白金の翼を持った大天使は、石動が以前見たキョウジの仲魔である大天使メタトロンに似ていたが、巨大な体躯を誇り、恐らくは……、


「本体が直接派遣した分霊といったところか、大天使サンダルフォン?」

「ほう……愚かな人間にしては博学だな」


 大天使サンダルフォンは、石動の指摘に頷いた。
 サンダルフォンは、メタトロンの双子の弟である。
 メタトロンは、神秘思想カバラの成立とともに重視された天使で、旧約聖書儀典『エノク書』には、メタトロンの現身とされるエノクの伝承が纏められている。
 サンダルフォンは、預言者エリヤと同一視されており、旧約聖書『列王記(上)』で登場する預言者である。
 エリヤは、分裂した北イスラエル王国でバアル教が席巻された時にバアルの予言者と雨乞いの勝負で戦い、それに勝ったという。


「よくもドゥーリエ家に宝を…」

「使いこなせぬ代物を後生大事にしまうよりは有意義な使い道と思わぬか?」

「貴様らを倒し、あの魔人の死体から宝を抉り出す!!」

「ほう……人間風情にできるか?」


 腕を一振りすると、以前あった魔人があらわれた。
 更に、金髪髪を短く切った女性型の魔人が現われた……青い瞳と、一流の彫刻家が作り上げたような美しい容姿であった。
 だが、あふれ出る殺気は悪魔のそれであった。
 さらに、メシア教徒の一人が、奥にある巨大な機械装置を動かした。
 青い光が発し、地下の全てを包み込んだ。


「何を……?」


 ヴァイル達は光を浴びたが、異常はなかった。
 しかし……、


「仲魔達が……!!」


 ヴァイルの仲魔達が石化していった。
 サンダルフォンが勝ち誇るように言った。


「見たか!!
 神に逆らう悪魔のMAGに反応させて石化させる新兵器の威力を!!」

「……そこの二人、下がれ!!」

「「っがあ!?」」


 女性型の魔人が腕を上げた瞬間に殺気を感じて指示を飛ばす石動であったが、ヴァイルの護衛の二人は、真空波に巻き込まれ、全身を切り刻まれて挽肉と化した。
 同時に男性型魔人がヴァイルに接近しようとし、他の天使達も殺到した。


「よ……よくも!!」

「剣も使えるが……所詮魔人に人間は勝てない!!」


 攻撃を凌いでいたが、天使達が一斉に火炎魔法を放つ。
 魔人も巻き込むが、効果がない属性を使っているのだろう。


「マカラカーン!」

「何!?」

「ナイス、石動!!
 私も……それそれそれぇ!」


 石動が、魔法反射魔法を唱えて反射した。
 さらに、リディが魔法石を数個投擲し、雷撃が天使達を包み込み、天使達を黒焦げにした。
 魔人が石動の補助を脅威に感じ、天使達に指示する。


「斬れ!
 所詮人間の魔術師だ!!」

「「「「「承知!!」」」」」

『巧ィ!
 溶岩の中に引きこもる馬鹿の部下なんか蹴散らしてしまえ!』

「そんな奴だったのか?
 死ぬ奴には関係ないがな!」


 石動が、両手にCZ-75を装備して発砲した。
 チェコ製の自動拳銃は火を噴き、天使の心臓……あるいは眉間を撃ち抜き、32体の天使がMAGを噴出して消滅した。
  
 
「流石ウーリ……いい仕事している。
 下級天使ばかりだということもあるが…」

「死ね!!」


 ヴァイルの攻撃を潜り抜け、石動に接近する男性型魔人。
 ヴァイルとリディにも天使達がやってきて救援に行く時間がない。


「しまった!!」

「石動!!」

「かかったな、阿呆め!!
 神に仇名す者よ、地獄に堕ちろぉおおおお!!」


 鋼の爪を振るい、石動を引き裂かんとする。
 さらに、運良く避けても後詰の天使達が包囲していた。
 石動は、リディ達に見せなかった獰猛な笑みを浮かべる。


「かかったのはお前の方だ」


 魔人の視界が天地が逆転し、背中から大地に叩きつけられた。
 石動は、敵の突進の力をそのまま利用して攻撃を避けながらカウンターの投げを放ったのだ。
 魔人は、怒りの形相を露わにした。


「おのれぇええ!!」

『ズシルブバ』


 石動は、魔人を無視して前方に走り出す。
 ラームジェルグ……いや、クー・フーリンが奇怪な言葉を喋るが、魔人は気にせずに振り向いて石動を追おうとしたが、魔人は転んで地面に激突した。


「な……」


 正確に言えば……魔人の身体が右の側腹部から左の肩にかけて真っ直ぐに両断されていた。
 魔人が地面に叩きつけられ、バウンドして身体が浮いた瞬間にアセイミーナイフ……いや、夢想正宗で斬り捨てられたのだ。


「凄い!
 魔人を一瞬にして倒すなんて!」

「違う……」


 傷だらけの西洋騎士から、荒ぶる戦神に変わった事に驚くリディであったが、ヴァイルが否定した。
 驚きの表情をリディは、ヴァイルに向けた。
 ヴァイルの顔は青ざめていた……控えめでいた陰陽師の恐るべき技量を理解したためだ。


「魔人だけじゃない……周りの天使もだ」

「え?」


 その瞬間に、天使達も上半身と下半身が切り離されて消滅した。
 石動の『死亡遊戯』は、魔人だけでなく天使も両断していた。
 更に石動がCOMPを起動させる。


「出番だ、フリーダー」


 COMPが起動させて、フリーダーが召喚された。
 ヴァイルの仲魔達が石化したのに対してフリーダーには効果がなく、天使達にショックウェーブを放つ。
 リディが指差して石動に叫んだ。


「嘘ついていたのね!!」

「陰陽術も使うさ……本業は三流サマナー兼探偵だが」

「……まあ、騙された私も悪いけどさ。
 で、どうして敵の罠が効かないの?」

『敵は、刻印かなにかで効果を受けないようにしているけど、フリーダーは造魔なわけだ。
 『実体』がある存在には効かない罠だと巧は見破ったみたいだけど」


 クー・フーリンは、リディの質問に素直に答えた。
 リディは、クー・フーリンの変身については聞く事は諦めて天使達へ攻撃を仕掛けた。
 天使ソロネ、ケルプ、パワーの群れがリディに殺到したからだ。


「キッツイわね……実体があるなら無効化できるなら!!」


 リディは、COMPを起動させた。
 合成音声が高らかに響き渡る。


『Final Metamorphosis!!』


 リディの防具が輝いて閃光を発した。
 その後には、炎の鳥、青い龍、白い虎、亀の身体から龍が出た幻獣が現れ、包囲していた天使達に襲い掛かった。
 流石の石動も驚きを隠せなかった。


「驚いたな……」 

「『カフカ』のもう一つの機能。
 完全に魔昌化・もしくは物品に悪魔を憑依させた武具に干渉して一時的に悪魔へ戻すことが出来るの!
 でも……これはただでさえMAGを喰うのに更に4倍使うのよ!!
 さらに重装備した防具が消えて軽装備になる欠点もあるし!!
 サンゴートにタップリ礼金を取らないと赤字よ!赤字!!」

 
 リディは、怒りの叫びをしながら天使に攻撃を仕掛けている。
 リディの防具に中国の『四神』である朱雀・青龍・白虎・玄武を憑依させていたのだろう。
 リディは、仲魔が全滅した時に一斉に召喚して戦力を整える為にカフカを使っていた。
 防具という実体がある四神は、敵の罠の影響を受けずに攻撃を行った。
 

『巧ィ!』

「ああ……一気に風穴を開ける!!」

『ゲイ・ボルグ!!』


 石動が夢想正宗からブリューナクへと変形させ、投擲を行う。
 五つの光に分かれ、女性型魔人を貫き、更に悪魔を石化させた装置を破壊した。
 ヴァイルは、アイテムを使って仲魔の石化を解除した。


「仲間達の仇をとる!!」

 
 戦況は逆転した。
 天使達やメシア教団は、次々と倒されていった。
 さらに、優位な理由は、大天使サンダルフォンが石動達に攻撃を『仕掛けられなかった』からであった。
 リディが、首をかしげた。


「あれ?
 そういえばサンダルフォンが攻撃を仕掛けてこないわね?」

『道理で『アイツ』が出張ったわけだ……』

「見ろ」


 クー・フーリンと石動が指差した先には、驚くべき光景があった。
 巨大な体躯を誇る大天使が、石動より身長が低い金髪の男性を前にして動きを止めていた。


「なぜ貴様が!!」

「ロシア人が不味いマクドナルドを食べる事をステータスにしているって愉快な話を聞いて物見遊山に来ていたのさ」


 サンダルフォンの目には憎悪と……それ以上に恐怖が宿っていた。
 石動とクー・フーリンは、高級スーツを着た金髪の青年が何者か悟ったようだった。
 ヴァイルとその仲魔達は、天使やメシア教団の駆逐にかかっていた。


「君達も大掛かりな遊びをしているようだけど……」

「天国の門を開き、貴様らの勢力をひっくり返してくれる!!」

「それは面白い話を聞いた」

「!!!!?
 あ、貴方様は……!!!」


 サンダルフォンは、戦慄した。
 黒いジャケットを着た屈強な男が虚空から現われ、会話に参加したのだから。
 巨大な大天使は、人間サイズの男に圧倒されていた。


「貴様がいるとはな……」

「ここではルイ・サイファーと呼んでほしいな」


 ルイ・サイファーを名乗る青年は、乱入者に対して親しげに話す。
 言葉の上では友好的であったが、互いにプレッシャーをぶつけ合っていた。


「ザインまで来たのか……」

『グランド・ゼロだな』


 石動の呟きにリディが反応した。


「……知り合い?」
 
「知人だ」

『スカウトされたことがありますた』

「マスター?」


 石動が、重々しく答える。
 フリーダーは、置いてきぼりにされたような表情であった。
 それを余所にサンダルフォンが、黒い男……ザインに対して話しかける。


「サタン殿!
 ここは我と貴方が……」

「勘違いするな」


 ザインは、鋭い瞳でサンダルフォンを睨みつける。
 ルイは楽しげに、そしてサンダルフォンは驚きに満ちた顔であった。


「ロウであるから一応の協力は行い、カオスサイドと敵対している。
 だが俺は、貴様……ましてや『奴』の部下ではない」

「あの方へ無礼な口を!!」


 サンダルフォンは激高した。
 だが、冷ややかな刃のような鋭さでザインは言い捨てる。


「『奴』も裁かれなければならない」

「!?」

「ふふふ……そういう意味では私も同意見だね」


 ザインの言葉にルイが同調した。
 サンダルフォンが後退する。
 ザインは、最後通牒を突きつけた。


「手を退け、サンダルフォン。
 さもなくば……」

「私と君が手を組む事を考慮に入れる……そういうことかい?」

「それもいいだろう……。
 裁く順番が変わるだけの事だ」


 サンダルフォンは、怒りと恐怖に満ちていた。
 

「このことは、『あの方』に伝えます!!」

「かまわん……それで敵対するなら俺にも考えがある」


 ヒステリックに叫びながらサンダルフォンは去っていった。
 ヴァイルは、敵を掃討して戻ってきた。
 同時にザインとルイが、石動のところにやってきた。


「久しいな、石動。
 お前の活躍は聞いている」

「ザイン……」

「君がザインのお気に入りかい?
 なるほど……」


 ルイは、石動を見つめながら頷く。
 ラームジェルグがルイに話しかける。


『悪趣味なネーミングだ。
 部下もそれに習い始めているし……『宰相』さんがな』

「君もなかなか興味深いが……、部下が連れ戻しに来た以上は仕方ないな。
 後は任せるよ、ザイン」


 ルイは、手をかざすと2体の死骸から四つの蟲……マガタマが出てきて、虚空に浮かんでいる。
 ヴァイルが、思わず叫ぶ。


「それはわが一族の宝だ!!」

「これは元々私が作ったんだ。
 君達には、埋め合わせをするつもりでいる……ここは我慢してもらうよ」


 ルイの穏やかではあるが、重厚なプレッシャーを受け、渋々承知したヴァイルであった。
 マガタマを回収したルイは、そのまま去っていった。
 ザインが石動に言った。


「門は俺がイレースする。
 すぐに退去した方がいい」

「なぜ、介入を?」

「此方にも事情がある……といっておこう。
 なにより……俺もルイも『奴』の存在を許してはおけないからな」


 石動は、その言葉を聞くともと来た道に戻り始めた。
 リディとヴァイル……そしてフリーダーもそれに続いた。
 ヴァイルが静かに言った。


「サマナーだったんだな」

「まともに戦えるのはフリーダーだけだがな」

「私は、マスターとともにあります」

「……借りになった」


 自分の実力不足で部下を死なせた事を感じつつも、石動の助力を感謝するヴァイルであった。
 リディは、石動に問いかける。


「石動……あの人達って……」

「……大物だな」

『悪魔内では解っているけど言わないのが通なので言わないよ~』

「アンタ達って一体……」


 石動への疑問を飲み込んでしまったリディであった。














 あとがき。

 魔人登場……でも即座に退場。
 サンダルフォンもメガテンシリーズの強豪を前に撤退。
 相手が悪かったね。 
 



[7357] 第3期 第13話 7月21日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/21 21:40
 全力で走り続け、肺腑の中の酸素を使い果たしたように息苦しい。
 猛烈な飢餓感・喉の渇きが自分自身を襲っていた。
 だが、水飲み場で水を飲んでも吐き出してしまった。
 身体が全身を焼けつく。
 苦しみ、もがき……近くの柱にもたれかかる。
 腕に力を入れていないのに新しい金属製の柱が折れてしまった。


「な……なんなんだ……!!」


 俺自身に異変が起こっている事だけは確かだ。
 だが……何故なのかは解らない。
 視界がぼやけ、自身の手がハッキリ見えない。
 一瞬、腕が全身鎧の腕部に似たモノに変わったように見えた。
 背後から濃密な殺気を感じる……自分を追いかけてきた『怪物』だ。


「クソッ!」


 悪態をついても事態が改善されないが、それでも吐き棄てずにはいられなかった。
 両肩に灼熱感を感じた。
 無数の針が肩に刺さっている。
 叫び、転げまわりたいのを我慢して走り出そうとするが、全身が痺れて動けなくなった。
 怪物に対して恐怖を感じている。
 だが、それ以上に……理不尽な状況に晒されている怒りと、怪物への殺意が大きくなっている。
 そして……自分自身が、俺が……何かおかしいと理性で感じていた。
 巨大な蜘蛛の胴体……そして人間女性の上半身が合わさった怪物が近づき、蜘蛛の足で俺を弾き飛ばす。


「ぐ……」


 痛みでうめき声を上げるが、誰もいない、何も無い。
 自身の死という悲惨な事実を突きつけられつつあった。
 だが……、身体が焼け、狂おしいばかりの乾き……、拘束具で縛り付けられている鬱陶しさでその恐怖が消えていった。
 それは怪物によって引き起こされた全身の痛みより耐え難い事であった。
 俺は、それから解放されたいと願った。


 その瞬間、全身が脈打つ感覚を感じた。
 背中が引き裂かれる痛いを感じた……だが、不思議と不快感はない。


「!?」


 怪物は、驚いた表情になっていた。
 俺の視界が、いつの間にか、怪物を見下ろすものになっていた。
 自分の身体を見ると、全身を甲冑を纏ったようなものになっており、マントを纏い、それが翼のように見えた。
 俺は、そのことに疑問を感じないで、痛めつけられた事への怒りが蘇った。
 急降下して両腕を振り下ろすと、蜘蛛女の両腕が千切れ跳ぶ。
 

「ギャアアア!!」


 更に痛めつけようと思った瞬間に、自分の周囲が風で包まれ、竜巻となった。
 蜘蛛女が全身を引き裂かれ、緑色の光を噴出す。
 その光が綺麗だと感じると同時に……


「美味そうだ……」


 その輝きが、この渇きを満たすのだろうと本能的に感じた。
















































 時を少し遡る。
 午後の昼休み……。
 聖ナンディ学園の校舎の屋上で、女子高生の周りに学校関係者でない男女が集まっていた。
 スポーティな服相をした猿顔の小柄な男性、スパッツとシャツを着た黒い肌で白い髪の少女、モノクルをつけた老紳士、そして……高級ブランドで固めた長い黒髪の美女

と街中でも目立つ存在であった。
 見習い探偵(兼見習いサマナー)の早乙女さくらとその仲魔たちである。


「あーあ、退屈だよぉ~さくらぁ」

「平和が一番よ、平和が」


 黒肌のキクリヒメが、暇な事を不満を漏らす。
 悪魔は基本的に長寿な者が多い。
 その為、退屈が一番の敵のようである。
 だが、波乱万丈な人生より静かに暮らしたい早乙女(実現不可能な夢だが)にとって、つかの間の安息は貴重なものであった。
 そのようなやりとりをしている中、猿顔の男……猿飛佐助がぼんやりと考え事をしていた。


「どうしたの、佐助?」

「……最近、昔の事をぼんやりと思い出してな」

「昔……ねえ」

「船に乗って新天地に旅立つ……そんな夢を見る。
 ……それが俺の過去らしい」


 黒髪の美女であるラミアが、ぼんやりとしていた佐助とやり取りをしていた。
 昔は、ベナンガルだったらしいが……ラミアは、唯の妖精が船にのって旅立つ事が珍しいと感じていた。


「(人間が死んで悪魔になったとか……まさかね)」

「……ふう」


 ラミアが、一瞬考えをちらつかせたが、すぐに思考の海へ沈めた。
 学校の昼休みの間、モノクルの老紳士の姿をしたバロールが、ノートパソコンを広げているが、誰も関わらない。
 そんな時、キクリヒメが声を出した。


「おお、ふりょーだ、ふりょー!」


 指差した方向は、遠くの庭であった。
 可愛い女の子……下級生らしき少女が、ガラの悪い生徒四,五人に取り囲まれていた。
 ナンディ学園にも性質が悪い人間がいる……。
 早乙女の記憶の中では、彼らが政治家の息子とその取り巻きで、学校の中でも有名だと知っていた。
 そんな彼らに目をつけられた女子生徒は、涙目になっていた。
 最初は、言葉で誘っていた様子だが、だんだん男達の態度が乱暴になり、ついには女子生徒の腕を乱暴に捻りあげた。
 運の悪い事に、人気の無い場所らしく、誰も助けに来ない……もしかしたらいるのかもしれないが、厄介事が御免で女子生徒を見捨てるつもりなのかもしれない。
 

「佐助」

「……解った。
 だが、俺の助けはいらないかもな」


 早乙女は、佐助に指示を飛ばす。
 佐助は、一言言ってから校舎から飛び降りた。
 早乙女が首をかしげていると、一人の男子生徒がやってきた。
 180程度の鋭い猛禽のような瞳をした男で、刺々しい印象を与えている。
 早乙女は、その男が同じクラスの人間だったと記憶していた。
 キクリヒメが興味津々な様子で話しかけた。
 

「誰、誰?」

「……『桃井 崇』だったわね。
 クラスで目立っていないけど……何か『できる』わね」

「……カッコいいとかより、強い弱いで考える時点で乙女の思考じゃないわね」


 早乙女の言葉にため息をついたラミア。
 桃井が男達に声をかけるが、それに気に喰わないのか、取り巻きの一人が殴りかかる。
 不良ではあるが、殴り方はなっていない隙があるものだった。
 桃井は、その攻撃を避けながら掌をフック気味に叩き込む。
 取り巻きの一人は、近くの木に激突してそのまま倒れこむ。
 仲間がやられて怒りの形相で不良たちは、襲い掛かる。
 桃井は、後退して木々が生えて狭い場所に移動する……囲まれにくい場所に誘い込む為だ。
 

「ほほぅ」


 バロールは、PCを見ながら感嘆の声をあげる。
 桃井は攻撃を捌きながらカウンターの直突きを相手の肩に叩き込む。
 痛みで動けなくなった不良に前蹴りで蹴り飛ばし、突っ込もうとした相手を巻き込む。
 巻き込まれた不良の顎に掌で殴りつけ、脳震盪を起こして気絶させ、返す刀で前蹴りを打ち込んだ相手へ肘打ちを打ち込む。


「うっわ~」

「あれは痛みで動けない上に気絶できないわね」


 キクリヒメとラミアは楽しげに戦いを見ていた。
 それを見て動揺した最後の取り巻きは、リーダー格の不良や仲間を見捨てて逃げていった。
 形勢の不利を悟ったリーダー格の不良は、捕まえていた女子生徒にナイフを突きつけ、人質にしようとしたが、不良の死角から石を投げつけられ、腕をしたたかに打たれ

た。
 その間に女子生徒は逃げていった。
 桃井は、冷ややかに不良を見つめていた。
 まるで害虫を見るような……憎悪に満ちた視線であった。
 リーダー格の不良は、ナイフを拾って振り回すが、桃井は隙を見て手刀で手首を強打してナイフを叩き落とし、足を大きく振り上げる。
 膝は、胸について踵は不良の遥か頭上まで上がり、すぐさま振り下ろされた。
 リーダー格の不良の肩に叩き込まれ、激しく転げまわる。
 恐らく、鎖骨か肩甲骨にヒビが入ったことだろう。
 桃井は、石が投げられた方向に軽く礼をした。


「(……まあ、気がつくか。
  それにしても……筋がいいな)」


 その方向には、佐助が隠れていた。
 桃井は、その場から立ち去ろうとしたが、女子生徒が呼んだらしく、数人の教師がやってきた。
 淡々と説明する桃井……相手が札付きの不良で、数人係で刃物を使った上に、先に手を出した事から桃井は、厳重注意されるだけで済んだようだった。


「あの……」


 昼休みに襲われていた女子高生が恐る恐る桃井に話しかける。
 桃井は、それを無言で征する。
 低い声が響く。


「別に気にするな。
 ……俺は気に入らないだけだ(女を襲う奴……はな)」

「あ……」


 そう言い棄てて桃井は去った。
 女性を襲う所を目撃した桃井は、怒りに満ちていた。
 不良達を叩きのめして怒りが幾分静まったらしいが……。
  
 



























「酷いもんですね」


 高級スーツを来た小柄な美男子がそう呟いた。
 片膝ついて周りの状況を調べていた。
 目の前には、衣服だけが残されていた状態であった。


「MAGを根こそぎ奪われ殺されたようですね……痕跡だけ残っている。
 ……これが関東で何件も起こっている。
 アルバイトでこんな厄介な事件に遇うなんて。
 石動さんに任せましょうか……って、まだ帰ってきていないし!」


 男は立ち上がり、膝についた汚れを払った。
 大きく背伸びをして思案にふける。


「(『大物』の依頼とはいえ……面倒そうですね。
   見たことのない『変わった悪魔』の目撃情報が多数……。
   まあ、それは驚きですが……。
   一番の驚きは、香我美さんの憑いているアレが力を封印してやってきた『本体』だっていうことですがね)」


 男は、その場所から急いで去っていった。
 依頼主へ報告を行う為に。
 



 あとがき。
またまたオリキャラ登場。
アンケートの意味は……おいおいわかることでしょう。
文章は少ない……けど区切りがいいので今回はこれくらいで。



[7357] 第3期 第14話 追加修正
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/25 20:21

「……」

「なにしているの?」


 ラミアが佐助に話しかける。
 佐助は、自販機に硬貨を入れ、ペットボトルのミネラルウォーターを2本購入し、そのうち一本をラミアに投げ渡す。
 ラミアは、キャップを空けて飲み始める。


「桃井……とかいう奴を調べていた」

「へえ……」

「成績は中の上から上の下ってところで、部活動は入っていないでバイトをしているらしいが……徒手による武術を修めているのはさっきの喧嘩でわかっている。
 騒動に巻き込まれる事が多いが、基本的にやってきた者を叩きのめすみたいだ」

「でも……今回は積極的に介入していたわね」


 ラミアの指摘を受けて、佐助が頷く。
 今、この場所には佐助とラミアの二人だけ。
 一見、逢引の光景に見えるが……互いに笑って否定することだろう。
 佐助は、その答えを出す。


「女性を襲うような場面になると積極的に介入するな。
 確実に半殺しにしている」

「あのボウヤは、いい格好をしたい……というわけでもなさそうね」

「女性を襲う人間を憎悪している……殺せるもんなら殺したいってくらいにな。
 ……俺の勘だが、家庭環境によるもんじゃないか?
 家族がいるにもかかわらず、家から出てこの街で生活しているらしいからな」

「それは興味深いわ……でも、それ以上に……」

「なんだ?」

「仕事熱心ね、貴方」
 

 佐助を値踏みするように見つめるラミア……。
 その視線を受けて佐助は、肩をすくめながら言った。


「まあ、あの坊主が気になるってのもあるがな……。
 それ以上に……仕事をしていたい」

「……」

「昔を……ベナンガルだった頃……より前の記憶がおぼろげに出るんだ。
 上手く言えないがな」

「そう……」


 ラミアは、佐助の苦悩を感じ取っていた。
 狂おしいばかりの過去への渇望を……それを押し殺す為に何かせずにいられないと。
 だが、佐助へかけられる言葉はラミアには無い。














 桃井は、一人家路についた。
 ささくれた心を抱いたままだったが、相手を叩きのめして幾分か憂さが晴れた。


『……戦え……』

「!?」


 脳裏に響く声がした。
 男性とも女性とも取れない声で、桃井には不快感を感じる声であった。
 それが幾度も聞こえた。
 幻聴と思い、洗面所で顔を洗おうとした時、鏡に映っていたのは、鳥をイメージされた甲冑のようなものに覆われた異形であった。


「!?」

『戦え……全ての喰人を……喰らえ……願いをかなえるために……』


 桃井は、拳を鏡に叩きつけた。
 あっけなく鏡が割れ、手に幾つもの傷が生まれた。
 割れた鏡に映る姿は、何時もの自分の姿に戻っていた。
 そして意外に深い筈の傷が既に消えていた。
   


















「くそ……あの野朗……ぶっ殺してやる!!」


 桃井から受けた怪我の処置を終えた不良達が溜まり場へ向かおうとしていた。
 自身の行いを反省せずに、怒りの矛先を桃井に向けている。
 彼らは、仲間を集めて報復せんとしていた。
 溜まり場には、他校からの連中もいる。
 そう思って溜まり場の廃工場へやってきたが……。


「ヒッ!?」


 廃工場の中は繭がいたるところに存在している。
 丸い大きな塊が幾つもあった。
 不良の一人が転んだ時に繭に引っかかった。
 繭を引きちぎる為にナイフで切ろうとしても上手く切れなかった。
 更に、繭の塊の中でうめき声が聞こえてきた。
 その声は、不良が知っている人間の声だった。


「梅沢!?」

「う……」


 この奇怪な事態に呆気に取られていたが……、五人の不良達の四肢に白い糸が絡み付いてきた。
 引きちぎる事が出来ず、そのまま巻きつかれていった。
 

「フフ……」

「ひ……!!」


 和服を着た長い黒髪の女性が立っていた。
 美しいが、狂気を孕んだ視線を不良たちに送っていた。
 女性は、錠剤を数錠飲むと、狂ったように笑い出した。
 服の内から脚が生え、おぞましい音と共に女性は変貌した。
 上半身は裸で、下半身は蜘蛛の胴体……不良たちにとって悪夢の光景であった。
 だが、全身を締め付けられる痛みが、現実だと突きつけていた。


「うふふふふ」


 不良たちの内の一人を無造作に引き寄せる。
 女性だが、凄まじい力をで引き寄せられ、抵抗する事が出来ない。
 脚を使って不良の身体を締め付ける。
 骨を砕かれる音は、生々しく、他の不良達の恐怖を増幅させる。
 蜘蛛女は、痛みで叫ぶ不良の喉を白い手で握りつぶした。
 不良は、血の泡を吹いて絶命した。
 その死体を女性が噛り付き、何度も咀嚼した後に飲み込む。
 不良達は、泣き叫ぶ……だが、何時の間にか、周りの空気が変わり異界化した廃工場にやってくる者はいない……。
 まさに悪魔の謝肉祭というべきか?

 数日後、無数の血痕と衣服だけが廃工場に残されているのが警察に発見された。












 裏路地に8人分の衣服が放置されていた。
 2人の刑事が状況を分析した。



「……外国人か」

「……だがやり口が違うな」

「別口かもしれん」

「まさか!?」

「そう考えるのが自然だ。
 不可解な殺しをする悪魔らしき存在が複数……俺達、零課の仕事も増える事だろう」


 もう一人の刑事が青ざめた顔になった。
 そして恐る恐る言った。


「情報収集に遣った悪魔が聞いたが……見慣れない悪魔が出たそうだ」

「この日本じゃ珍しいことじゃあるまい」

「『人間』が悪魔になったらしい……それも悪魔から見ても奇妙な形態だったそうだ。
 悪魔の力を持った悪魔とかけ離れた存在がいるってことだ」

「……引っかかるな」


 互いに最悪の展開を想像していた。
 関東に無数の魔人らしき存在がいるという事だ。
 ここで魔人について語るとしよう。
 2通りの魔人が存在している……『悪魔を憑依しただけの存在』と『真の魔人』。
 悪魔が憑依……もしくは合体させた者の事である。
 大半は、悪魔に自我を喰われるだけで終わるが稀に悪魔を上回り、悪魔の力を持った人間が出てくる。
 人間の身体を持っている為に他の悪魔と違ってMAGを自給自足できる存在になった悪魔といえばいいだろう。
 だがその力は、もともとの悪魔の力と変わりは無い(人間の理性・知性を持って総合的に強くなる事はあるのだが)。
 更に稀な事に悪魔と合身して合体した悪魔を上回る力をもち、元の存在とも違う存在になった者は『真の魔人』と言うべき存在になる。

 『真の魔人』……マタドール、ヘルズエンジェル、大僧正、ヨハネの四騎士、時の翁、ゴーストQ、アリス……これらの存在は他の悪魔と一線を隔した存在である。
 成り立ち・能力……並の悪魔と異なる存在であり、強力な力を持っている。
 前述した悪魔と合身して更なる変異を行った『真の魔人』は、元々の悪魔と異なる。
 もし、その人間に『大いなる力』を持ち、力への渇望を持ちながら合体したのならば?
 もし、無念の死を得た精神力の強い人間が死しても蘇り、更なる力を得る世界に幽閉され、魔神・魔王の類と合身したならば?
 それらのような特殊な場合にこそ『真の魔人』が生まれ出る……。
 だが、『真の魔人』になって幸福になりえるのか?
 それは、誰にもわからない……。



















 工事現場で桃井は、土嚢を積み上げた。
 その屈強な身体を生かして他の人より多く働いていた。


「よし……!」

「おおう、おつかれ!!
 何時も助かっているよ」


 工事現場の監督が桃井を労う。
 桃井は、現場の仲間達に挨拶をしてから仕事を終える。
 学校では無愛想な桃井だが、この現場の仲間達とは幾分か打ち解けていた。
 実直な人柄が多いためであろう。
 桃井は、生活費を貰っているが、アルバイトも行っている。
 工事現場の仲間が桃井に話しかけてきた。
 

「しかし……家族は良く許したな」
  
「いえ、許可は貰っていません。
 勝手に決められたくないので」

「そうかい……だけど社長が認めているなら問題ないからいいか。
 俺より多くの荷物を運べるしな!」

「ありがとうございます」


 桃井は、家族の事を触れるとささくれ立った対応になってしまった。
 だが、仲間はそのことにいからず、むしろ桃井に気を使っている事を感じ取り、桃井は礼を述べた。
 社長は、無言で頷いた。


「(……『あの事件』以来、桃井は家族を見捨てている。
  そして、アイツにとっての家族は、亡くなった姉だけなのだろう。
  だがな……、お前は一人じゃない。
  仲間もいる……学校でも友人ができればいいんだがな)」


 社長の祈りに似た思いを桃井に送った。
 桃井は、現場から立ち去った。
 帰る途中、小腹が空いたので移動式のたこ焼き屋でたこ焼きを買い食いした。
 その為、普段より回り道をする事になった。 
 中がとろけており、適度な弾力のある蛸、そして濃厚なソースの味が桃井に満足感を与えた。
 桃井は、遠回りになったため、早く帰宅する為に裏路地を使うことにした。

 
「キシャアアア!!」

「キャアアアア!!」


 桃井は、奇怪な声と恐怖に満ちた悲鳴を聞いてしまった。
 用心深く接近していった桃井が見たのは、桃井と同年代くらいの女性と十歳くらいの少年、そして彼らを襲う蜘蛛の下半身と女性の上半身をもった存在だった。
 少年は、恐怖のお陰で気絶しているようだった。
 女性は、少年を必死に庇い、近くのゴミバケツを投げつける抵抗を行っていたが、怪物は怯むことはない。
 桃井は、怪物の背後から接近して飛び蹴りを首に叩きつける。
 全力で放った一撃は、脚に不快な感触を与えた。
 涙ぐみながら抵抗していた女性は、一瞬何が起こったか解らなかった。


「逃げろ!!」

「あ……はい!!」


 女性は、少年を抱えて逃げていった。
 桃井は、すぐに怪物の方へと視線を向けた。
 怪物は、痙攣をしていたが両手で首を弄り、真っ直ぐ立てると、すぐに再生を始めていた。
 桃井は、ゴミ箱の蓋をフリスビーの要領で投げたが、怪物の前脚で弾かれた。
 不意打ちでの一撃ですら仕留めきれない耐久力と再生能力を持った怪物。
 桃井には勝ち目は……ない。
 だが、すぐに逃げて再び女性と少年が狙われるわけにはいかない。
 桃井は、あの男女に感情移入をしていた……あの男女は恐らく姉と弟という関係なのだろう。
 この男が失ったモノを彼らが持っているのだろうと。
 だから桃井は、救おうと動いた。


「こっちだ……!!」

「キシャアアアア!!」


 桃井は、怪物を挑発して惹きつけた。
 ……それは絶望的な戦いの始まりだった。
 それは怪物との戦いだけではなく、桃井自身に降りかかる呪われた身体との戦いの始まりであった。







 おまけ 出番が当分無いこのトリオ(マガタマ事件の後)。


「マスター」

「ん?」

「……帰りはどうするのですか?」

「早乙女が厄介事に巻き込まれているからな」

『……ついて行っても行かなくてもトラブルに巻き込まれていないか?』

「……」

「……」

『(出番が、欲しい……現行のエピソードじゃ出番ないから)』




おまけ2 石動とラームジェルグの無駄会話


『俺にも出会いを!フラグを!!』

「……」

『くそ……美少女で性格もいい僕ッ子はいない……何故だ!!
 もはやファンタジーの存在でしかないのか?』

「……黙れファンタジー」


 こんなラームジェルグだけど、子供だって作ったわけだが……。








あとがき
アンケートの答えは……桃井の変異した姿についてでした。
ちなみに犬だったらオルトロスにするつもりでした。
鳥は……まだ言いませんがね。



[7357] 第3期 第15話 追加修正
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/30 11:52


 桃井の脳裏に過去の光景が浮かぶ。
 優しかった姉……色々な事を教えてくれた。
 だが……彼女は自分自身で命を絶った。
 味方は誰もおらず、桃井だけでは彼女を支えられなかったからだ。
 そして……家族、いや『血の繋がった他人』との縁を切った。
 無力な自分を払拭するべく武術を習った。
 だが……、


『桃井、お前の拳には凶性が宿っている』


 桃井の師は、彼に宿る陰りを見抜き、基礎までしか教えなかった。
 だが桃井は、その基礎を積み重ね、技は他の人間を行っている所を盗み見て覚えた。
 結局、女性を乱暴しようとしていた男を重傷を負わせた事から破門された。
 幼少は中世的な雰囲気であったが、精悍になった桃井は異性からの視線を集めていた。
 だが……桃井には、内罰的な部分もある上に強さへの渇望が異性へ近づく事を妨げた。
 彼は、孤立していた……姉が亡くなったその日から。




















 桃井の意識が覚醒し、知らない天井が視界に飛び込んだ。
 調度品は無く、実用性のみを重視された部屋であった。
 本棚に刀剣、応急処置キット等……桃井にはどのような意味で集められたものか解らなかった。


「……」

「気がついた?」


 扉を開けてやってきたのはポニーテールの同年代の少女であった。
 太い眉に意志の強い瞳で、美しかったが、どことなく冴えない……いや、幸の薄い人相であった。
 桃井はその女性の顔を知っていた。


「早乙女……。
 お前の家か?」

「ここは、石動先生の事務所兼自宅よ」

「……去年、教育実習生で来た石動先生?」

「そうよ……実は教師じゃなくて探偵が本業なの。
 去年は調査の為にやって来たわけで……」

「探偵志望だったな、お前は。
 弟子入りしたのか」


 クラスメートの話を聞いて納得した桃井であった。
 石動は、どことなく普通の教師とは一線を隔した存在だと桃井には感じていた。
 武術を行っている事を巧妙に隔していたが、その名残を桃井は見抜いていた。
 桃井は、気を取られていたが、意識を失う前の状況を思い出した。
 追い詰められ、死線に立った時に自分が鳥を模した異形に変わり、蜘蛛型の怪物を殺し……それを喰らい尽くしたことを。

 
「……なあ」

「見たわ。
 貴方が逃げてきた所から悪魔を倒したところまで。
 そして……その後すぐに気を失ったけど」

「……俺が怪物になった所もか?」

「ええ」


 人間を上回る怪物……それを更に上を行く化物になったにも関わらず、早乙女は桃井への対応が変わらない。
 その自然さが桃井にとってはありがたかった。


「怖くないのか?」

「確かに強いと思う……でも桃井君は悪い人間じゃないって解るわ。
 先日も不良に絡まれた女子生徒を助けたのを屋上から目撃したし」

「目がいいんだな」

「探偵には必須ですから」


 胸を張る早乙女の姿を見て、自身が化物になっても受け入れているのだと桃井には解った。
 早乙女は、真剣な表情になっていった。


「そういうのに縁があるから。
 貴方の力よりおっかない人を見ているし」

「!?」

「……桃井君、悪魔って信じる?」

「……信じざるえないだろう」

「悪魔は実在するし、それを使役する人もいるの……」


 桃井は、今までの日常では存在していないと思っていたモノが実在したということを受け入れた。
 早乙女の真摯な対応が桃井の理解に一役買っていた。
 そして桃井は、早乙女……そして石動も悪魔を知り、それに対応する存在なのだろうと推測した。
 

「おお、起きたか?
 まったく、見た目より着やせしているな」

「逞しいボウヤね」


 猿顔の男と、黒髪の美女が部屋に入ってきた。
 早乙女が桃井に紹介した。


「私の『仲魔』の猿飛佐助とラミアよ。
 バロールとキクリヒメは買出しに行っているわ。
 この時間帯だとコンビニしか開いてないし」

「……猿飛佐助?
 忍者の?」

「そうだよ、坊主」

「悪魔の事を説明する必要がありそうね」


 ラミアはため息をついた後、世界の本当の姿を説明し始めた。

 その間、早乙女は席を外し、ロシアにいる石動に連絡した。
 石動は、異国でも通じるように特注の電話を使っている……(流石に異界までは通じないが)。


『……早乙女か?』

「先生!!
 実は……」


 早乙女が桃井の現状を話した。
 石動もこれまで多くのトラブルに見舞われた早乙女であったが、魔人化してしまった人間を保護するとは想定していなかった。
 だが、早乙女のCOMPの映像およびデータを得て、様々な推測を立てた。
 COMPのデータをウーリに送信し、協力を要請した。


『地下の武器庫から護身用に武器を持っていけ』

「は、はい」

『桃井という男には直接会った事がないから解らんが……早乙女の話によると徒手空拳の方が得意ならば、確かダマスカス鋼のバグナウがあったはずだ。
 そして予備の武器として特殊警棒でも持っていけば良いだろう。
 流石に慣れないうちに拳銃は危険だから持って行くわけにいかんがな』


 16世紀頃のインドで生まれた特殊な武器・バグナウ。
 手のひらに収まる程度の小さな金属の棒に、3~4本程度の鋭い爪を取り付けた隠し武器である。
 格闘を行う桃井なら使いこなせるだろうと見越して石動は助言を与えた。

 ダマスカス鋼……。 
 木目状の模様を持つ鋼素材であり、強靭な刀剣の素材として知られるが、製法がはっきり分かっているわけではないとされている。
 伝説的あるいは神秘的なものと思われているが、こちら側の世界では比較的手に入りやすい素材である(ヒヒイロカネ、オリハルコン、ミスリル等……もっと入手困難なものに比べればだが……一般人の経済感覚からすれば恐ろしく高い)。
 インドのウーツで初めに作られたあるが、シリアのダマスカスで刀剣等に加工されたのが有名になってダマスカス鋼の名が広まった。

 世間一般では、ダマスカス鋼を再現しようとしてウーツ鋼とも呼ばれる高炭素鋼材を作り出した。
 ダマスカス鋼からカーボンナノチューブ構造が発見され、ウーツ鋼とダマスカスは、別物であった事が判明した。
 現代のダマスカス鋼の再現は、まだ完全でない……。
 
 閑話休題。

 早乙女は、銃は得意ではない……まあ剣術が巧みであるのに比べればだが。
 動かない的を当てる分には普通に当てることはできるが、高速で動く悪魔に当てるのは難しいようだ。
 もっとも、遠くの敵を当てるときは、ジェロニモの弓を使う早乙女なのでそれほど深刻な問題ではない。


『ウーリには話を通しておいた。
 当面は帰って来れない俺に代わって助けになるだろう』

「解りました。
 先生も気をつけて!」

「ああ……」


 早乙女は、電話を切ると、地下の武器庫へ向かった。
 トラブルに立ち向かうにはそれなりの準備が必要なのだから。

















おまけ 魔法


『念願のマリンかリンを習得したぞー!!(小角が)』

「……自分で使う分には使い勝手が悪いがな」

『……』

「……」

『モー・ショボーが実験台になるってさ!!』



「せっきー」

「まあ……いいか、マリンカン」

「えへへへ……大好き~」

『よし、成功だ!!』

「何時もと変わらん……(というか……)」



「まあ、もう一度練習に。
 マ……」

「えへへ……」

「ントヒヒ」

『……』

「……」

「……」
















あとがき

短くてサーセン。
いいおまけが浮かばない……うう。




[7357] 第3期 第16話 7月31日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/07/31 00:59


 郊外の広い屋敷へ向かう早乙女一行。
 その広い屋敷をみて圧倒されている桃井だった。


「ここが……」

「うん、ウーリ先生っていう凄い錬金術師がイルの……って何しているのバロール?」


 モノクルをした老紳士が一心不乱にジャポニカ学習帳になにやら書き込んでいた。
 さらに、小声で喋りながら書いているので怪しい事この上ない。


「全身スーツ型スタンド『ファイアークラッカー』。
 半径25メートル以内に自由に爆発させる(コンクリートなどのみっしり詰まった無機物の中にはできない)。
 純粋な威力は爆竹一本分だが、衝撃はボクサーのストレート並にできる……と」

「……何しているんだよ、本当に」

「佐助よ……男の浪漫『俺の考えたカッコいいスタンド』を一日一体書くという修行をしているのだ!
 このスタンドは、純粋な威力はショボイが生物の体内を爆発させる能力があって……」

「いいから行くぞ」


 佐助は、バロールの戯言を無視して屋敷まで引っ張っていった。
 バロールはそれでも設定を語っていた。


「スーツ型だから純粋なパワーは本体に依存するしかないが、波紋持ちか鉄球使いなら無限の可能性が……」


 中では、連絡を受けていたウーリが待ち受けていた。
 陰気そうな男性のエルフであるウーリは、助手である藤堂和也に雑用を命じていた。
 早乙女の顔を見ても表情を変えずに言葉をかけた。


「お前さん、面白い奴を拾ってきたらしいな」

「え、ええ……、彼が」
 
「ほう……」


 ウーリは、冷徹に桃井を観察していた。
 しばらくはそのまま捨て置いた桃井だったが、一行に話が進まない為に業を煮やして話を切り出す。


「俺は……俺の身体は……何が起こった!?」

「そうだな……その前に、コイツをやる」


 腕時計型のCOMPを桃井は渡された。
 その横で藤堂は様々な機材を汗水たらして移動させていた。
 早乙女の仲魔達は、それを見物していた。
 不思議そうにしていた桃井にウーリは説明を開始した。


「これはCOMP。
 本来なら悪魔召喚に使う代物だが……お前さんにはサマナーの適性が無い。
 まあ『裏』へのパスポート代わりにはなるがな。
 後ソフトは適当にインストールしている上に、MAGをサービスで入れておいた」

「ウーリ先生、それってどういう意味ですか?」


 早乙女が思わず横から口を挟んだ。
 その様子に淡々と自分のペースで返答する孤高のエルフだった。
 桃井の目には、目の前の亜人は研究肌な男であり、自分自身に自信を持っている人間だと推察した。
 おまけに、その動きは多くの修羅場を潜り抜けてきた事を容易に察する事が出来た。
 悪意はないようなので、桃井は大人しくしていた。 


「これから厄介事に会いそうな若者に老婆心ならぬ老翁心を出しただけさ。
 とりあえず腕に巻いておけ」


 桃井は、言われたとおりに腕時計型COMPを巻いた。
 その時、COMPは腕の中に沈んでいき、COMPを取り込んだ。
 早乙女と桃井は思わず声をあげて驚いた。
 和也は、その様子を見ていなかった為に思わず聞いてきた。


「どうした?」

「COMPを取り込むとは……お前さんの中に居るのは相当な奴なようだな」


 ウーリは、和也の問いに答えず、ただ楽しげにその様子を見つめた。
 桃井は、不安げにCOMPがどうなったのかと思ったとき、腕に一体化・変質したCOMPが現われた。


「これは……!?」

「まあ……そいつの使い方は、後でマニュアルを渡してやる。
 とりあえず『変身』してみろ」

「変身……」


 桃井は、薄らいでいた記憶から自身が変質した事を思い出した。
 だが、どのように出すべきか解らないようだった。
 早乙女は、どうすればいいかわからず、オロオロしていた。
 ウーリはため息をついて和也に命じた。


「そうだな……和也!
 参考代わりにお前のペルソナを出してみろ」

「へいへい……ペルソナ!!」


 和也が力を篭めて叫ぶと、和也の頭上に女性型の悪魔が現われた。


「自分の奥底にある『モノ』を引き出す感じだな。
 出した事を覚えているようだからすぐにできるだろう」

「……!!!」


 桃井は、腕と交差して武術の型のように構え気息を整え、奥底から力を引き出すイメージを行った。
 桃井の全身は、何かが駆け巡る感触ととも閃光を発した。
 終わった時には、鳥のような仮面と全身を甲冑を纏ったようなものになっており、翼のようなマントを纏っていた。
 異形と化した桃井の目の前には鏡があった。
 錬金術師の助手である和也が運んできたものであろう。
 桃井は、鏡を見たが、あの時ほどの嫌悪感は無かった……むしろ、整ったデザインで想像していたような醜い存在というものでない事に安堵していた。
 和也が口笛を吹いた。


「ペルソナっぽいな」

「お前もそう思ったか……なら恐らく……」

「どういうことだ?
 それに……あのときのような渇きもない」

「最初の問いは長くなる。
 後の方は、生体マグネタイト……悪魔が実体化するのに必要な生命力を腕のCOMPに詰まっているからいきなり餓えるような事は無いだろう」


 ウーリは、異形化した桃井の問いに答えながら魔人の身体を触っていた。
 小声で考察をまとめていたようで、終わった後に満足げに頷いていた。


「おっと……お前が察しているように、お前は人間ではなく魔人……お前がどこからか聞いた声は『喰人』と呼んでいたようだがな。
 まあ、難儀な人生を歩む事になったわけだ。
 まずはそれを受け入れろ」

「……そうだな」

「その様子ならすぐに受け入れられそうだから続けるぞ。
 お前さんは並の魔人では無いようだ。
 和也、強い魔人になる条件を言ってみろ」

「本人が強い能力を持っている……だったな」


 和也は咄嗟にウーリの問いに答えた。
 ウーリは、少し不満気であったが、話を続ける。


「まあ、それが一番解りやすい例だな。
 桃井とかいったな……お前は少しばかり特殊だ。
 強い魔人を作るなら強い悪魔を憑依させればいい……それも本人に適した悪魔をな。
 術者は考えているようだ。
 まず、お前の精神にある潜在的な能力・精神を無理やり引き出して異形化させる」

「……まさか、ペルソナ能力……なら!!」


 和也は、ウーリの言葉を聞いて錬金術師の言わんとする意図に気がついた。
 その様子にウーリは、多少は機嫌が良くなったようで、心なしか強い口調になっていた。


「ペルソナとは限らんがそれに似た能力かもしれん……まあ、コイツがどのような素養があったか知らんがな。
 とにかく人間には可能性が色々あるわけだ。
 そう、お前が察した通り、無理やり発現させて悪魔化させたのだろう」


 ペルソナ能力は強力だが、精神のバランスを取れないと暴走する。
 以前、石動が交戦したペルソナ使いは、精神のバランスを崩し、悪魔化してしまった(第2期 第46話参照)。
 また、和也の記憶(というより弟の尚也の記憶)では、知人が暴走して悪魔になりかかっていた。
 

「それで普通に悪魔と合体した魔人と違う格好になったわけだ。
 それだけじゃない……そうして出来た魔人モドキに更に合成したのさ『本物の悪魔』をな。
 内面から引き出された悪魔と同じ悪魔を憑依させれば相乗効果で恐ろしく強くなることだろうよ。
 良く考えたもんだ……だが、勘違いするなよ?
 俺は、術式を見て思っただけこんな酔狂な真似をするつもりも推奨するつもりも無いがな」

「……制御できるのか?」

「お前次第さ……。
 まあ身近にお前程度のチンケな力をあやせる連中は探せば見つかる。
 ……まあ『スパルナ』の力は使いこなせば強力だ」


 スパルナ……インド神話に登場する神鳥ガルーダの異名の一つで『美しい翼』を意味している。
 ヴィシュヌのヴァーハナ(神の乗り物)であるガルーダ一族は、インド神話において人々に恐れられる蛇・竜(ナーガ族)と敵対関係にあり、聖獣として崇められており、仏教に入り、八部衆、後には二十八部衆の迦楼羅(金翅鳥)になったといわれており、日本の天狗の誕生にも関わっているとも言われている。
 その疾風の力は、強力であり、並みの悪魔なら容易に吹き飛ばす事ができるだろう。


「……霊鳥か」

「訓練すれば空も飛ぶこともできるだろう。
 あと、MAGは生体エナジー研究所で購入するか悪魔を殺して備蓄しておけ。
 枯渇して暴走すると面倒だからな。
 さて……おまえ自身に関してはひとまずこれくらいだな。
 次に……お前が巻き込まれている事態について言わんといかんな」


 












おまけ これは少し未来での光景。


『桃の字』

「……なんですか?」

『暇』

「……HP更新してください」

『光の速さで更新オワタから』


 口数は少ないが比較的まともな桃井と、エキセントリックなラームジェルグ。
 桃井は、石動に代わって相手することが多い。


「そういえば怪談というか都市伝説があったな」

『ほほう』

「なんでも『一日は実は、24時間ではなくて25時間』とか、『マヨナカテレビ』とか、『殺人メール』とか『JOKER』とか……」

『……』

「まあ、眉唾ものだが」

『……殺人メールとマヨナカテレビはデマだったけど、最初と最後はクリティカルだったよ』

「まさか!?」

『……『JOKER』はさくらちゃんも襲われた……情報操作されてなかったようにされているがな。
 巧が先手を打たなかったらアウトだった』

「……なんでもできるんですね、石動さんは」


 桃井は、驚きと共に早乙女の師匠である石動に敬意を抱いた。
 災難が降りかかった桃井に救いの手を差し伸べたのは早乙女だった。
 悪魔召喚と巧みな剣術は桃井の助けになっていた。
 だが、早乙女の上を行く力を持つ(悪魔召喚だけは欠陥持ちだが)石動……桃井も一目置くのは無理も無かった。
 ラームジェルグは首を横に振った。


『アイツはな……サマナーとしては欠陥持ちだった。
 フリーダーがいない時は苦労したし、焦ったり感情を乱す事もあったさ。
 でも頼れる仲魔が一人できただけで大きく成長できた……まあ、『あの過去』を乗り越えた事が一番だが』

「……過去、ですか」

『……大きな傷だったと言っておく』


 ラームジェルグの真剣な表情を見た桃井は深い詮索は行わなかった。
 その様子に満足したラームジェルグが続けた。


『総合的な強さではかるならば……巧は弱い。
 だから得意な剣術を更に鍛えていったし、術や知識についても学んだ……COMPで調べれば済む事もキチンと暗記するほどにな。
 一瞬の判断でその知識を使えるだけでも一歩先に行けるケースが多いからな。
 そうやって積み上げた強さは無駄じゃないし、仕事をこなして出来た人脈はちょっとしたサマナーでも持てないほどだ』


 培った知識で、ニャルラトホテプの計画を見抜き、先んじて封じる事ができた。
 だが、その為の手段を行える人間に接触できた事も大きい。
 敵の計画の粗さにも助けられたが、間違いなく石動の事件解決の為の『スキルと武器』は、並々ならぬものである。


『(最初の奴は、南条コンツェルンが回収した神取のペルソナや悪魔の研究を得て、それが『奴』に渡ってしまったのが始まりだった。
  だが……ヤタガラス、そして日本政府が知ったから『掃除屋』が送り込まれたからな』


 『掃除屋』とは、ヤタガラスが持つ戦力で『厄介事』を終わらせる人間のことである。
 大正時代で活躍した『初代葛葉狂死』が有名な掃除屋で、あの『サイガ』相手に渡り合った化物である。
 

『まあ、最初の事件は聞くな~。
 怖いオジサンかオバサンかそれ以外がくるから』

「…世の中って広いようで狭いな」

『(……エロスが足りない)』







 あとがき

まずおまけだけ。
更新分は、ウーリ先生の解説が始まる……。



[7357] 第3期 第17話 8月7日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/07 18:50


「話と情報を統合した結論を言うとだ……喰人は複数いるようだ」

「え……!!」

「戦えという声を聞いたが……やはり」


 ウーリの言葉を聞いてそれぞれの反応を示す面々。
 和也は、ただ一人、草臥れた様子で奥の冷蔵庫からグレープフルーツジュースと氷が入ったグラスを持ってきて皆にジュースを振舞った後に一気飲みをした。
 ウーリは、和也の様子を一瞬だけ見た後に、顔を正面に戻して話を続けた。


「犯罪者のくだらない娯楽場が更地にしたり、一家惨殺したり……普通じゃない事件が起きている。
 異常な手口ではあるが、痕跡が大いに異なっている所から別人物と鑑定されたが……何れも遺体のMAGがごっそり抜かれている。
 それだけじゃない……。
 同時期に新型のドラッグが流れている……成分は悪魔の体液から作られている。
 使いすぎると悪魔化するという愉快な副作用つきでな」

「まさか……」

「そうだ、早乙女。
 そこの青二才が喰った悪魔モドキは……人間の成れの果てだ」


 ウーリの言葉を聞き、早乙女は青ざめ、周りも絶句した。
 桃井は、喉にこみ上げるモノを押さえつけてウーリを睨む。
 現代に生きる錬金術師は、桃井の様子を見て不敵に微笑む。


「ほう……よく吐かずにいるもんだ。
 気に入った。
 お前を悪魔にした『敵』が存在している上に他の喰人が襲わないとも限らない。
 だから……手を貸してやろう。
 そこの和也は、それなりに優秀な上に使い減りのしない肉の盾だ、存分に使っていい」

「……感謝しておく」

「(……俺の意思は?
  まあ、バイト代が出りゃ文句は言わないけどな)」


 桃井は、ウーリに頭を下げた。
 自分の置かれた状況ではウーリの協力が不可欠であると承知しているからである。
 早乙女も、同級生が過酷な状況に居る以上、自分も協力するつもりでいる。
 
 
「……とりあえずその力は使いこなしておけ。
 この世界は力はあるに越した事が無い。
 さて……桃井崇。
 戦いに誘われているが、お前はどうしたい?
 叶えたい願いはあるのか?」

「……真実を。
 そして降りかかる災いから護る力を」

「……無欲だな」

「賭け事は、胴元が特になるように出来ている。
 命がけの賭け事に突っ込んで損するつもりもない」

「ライダーバトルとか聖杯戦争とかも典型例じゃな~。
 胴元が勝つように仕組んでいるし、勝ち残っても思うとおりに叶えられるわけじゃなし」


 バロールが横から口を挟むが、皆黙殺した。
 ウーリが満足げに頷く。


「それでいい。
 人間に戻りたいと願っても適う保障もないしな。
 下手に流される事はなさそうだな」

「俺の身体を弄った奴に心当たりは?」

「大きな候補は4つ。
 『メシア教団』『ファントムソサエティ』『レッドキャップス』『忘八』だ。
 メシア教団も可能性がそれなりに高いが、現在勢力が大幅に減退しているからここで派手な動きをすれば本当に世界を敵に回すことになるから可能性が低いな。
 ファントムソサエティは、組織の目的を考えるとほかの事に力を注ぐから候補から外していいだろう。
 レッドキャップスは、外付けの改造・強化が中心だから可能性が低いが、新しい術者を組織に入れたなら話が別だが。
 最後の忘八が一番可能性が高い。
 手口が一番近いからな」

「聞いたことがないが大きい組織なのか?」

「そうだな……。
 少しばかり厄介な毒を持った大蛇を相手にするようなもんだ。
 その辺はおいおい調べるしかないな」

















『戦え……全ての喰人を倒せ……!!』






「……何故、お前達は……」


 巖のような巨体をした強面の男性が涙していた。
 目の前は焦土と化していた……ここは『マフィアのアジトだった場所』であった。
 死体も瓦礫すらなくなってしまっている。










「くっくっく……この力は選ばれた者だけが持つ特権……!
 そして僕はこの世界の支配者になる!!」


 中肉中背の青年が邪悪な笑みを浮かべている。









「………」

「ギャ!?」


 黒い服を来た男が機械的な動きで超え太った男に接近して腕を大蛇のように巻きつけ、一瞬にして頚椎を破壊した。
 何の感情を込めずに死体……いや死につつある男を一瞥し、口を大きく開けた。


「……」


 生体MAGを取り込んだ男は、街中に消えていった。









「ネメシスパワー ビルドォアァップ!
 この力で全てのものをひれ伏せさせますわ!!」


 お世辞にも美人といえない女性が変身し、高笑いをあげた。
 女性は、勝利を確信した高笑いをしながら無差別に人間のMAGを得るべく徘徊しだした。










 後に出された公安零課の報告書によると、確認された喰人の数は56名。
 そして……確認されていない喰人の数、そしてこの事件で悪魔化した被害者の数を入れると更に十数倍の数に膨れ上がると推測されている。













おまけ ラームジェルグの一言。


「出番は……」

「ない。
 俺もな……実はテュルゴーから救援要請が来た」

「……MAJIDE?」

「ああ。
 悪名高いマクベインとその傭兵団の討伐だ」
(注 描写されることはない)

「せっきー……出番が……欲しいです」

「我慢しろ」




 あとがき
 量が少ないので後で追加する予定。
 リアルで忙しくなりつつあるから書くのが……。
 石動達に出番が少ないのは仕様です、しかたないのです。 



[7357] 小ネタ
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/10 20:54


これはありえそうな、ありえなさそうな……。




 これは、石動とともにエジプトに出ていた時……。
 自由時間を一人散策していた早乙女…。


「ううん、エジプトって始めてだけど……あれ?」


 早乙女は、アームガード型のCOMPらしきものを発見した。
 だが、悪魔召喚プログラムやデビルバスター用のプログラムもない。
 後から腕をつかまれた。


「ああ、やっと見つけた!!」

「へ?」

「次のミッションです」

「あの……」

「『レリック・ドーン』から狙われる事になって大変でしょうが……」


 狼狽する早乙女を半ば拉致されるように連行され、誤解が解けたのは日本国内に戻ってからであった。
 だが……、


「丁度いい機会です、石動巧の助手である早乙女さん、私立天香学園に潜入してください」

「あの……どういうことですか?」


 ヤタガラスの使者がやってきて事情を説明した。
 コンピューターは、ロゼッタ協会というトレジャーハンターの集まりで使っていた物らしく、持ち主は依頼人を護り斬ったのはいいが、脱水症状で入院しているらしい。
 ロゼッタ協会は、古代の秘宝を解き明かす事を使命としており、時にバチカンの一機関と対立することもある。
 ヤタガラスは、日本国に害を成す場合は敵対するが、必ずしも対立せず柔軟な対応を見せているとの事らしい。


「今回の場所は、政府に食い込んでいる阿門家の土地内部の事。
 ヤタガラスが強権を発動させるつもりでしたが、貴方がいるのならば調査を行ってから正式に介入していく事にしました」

「あの~、学校なんですけど」

「それは私達が何とかします。
 バックアップも報酬も全力を尽くします」


 こうして、早乙女の潜入捜査(?)がはじまった。






 デビルサマナー外典ソウルガーディアン・スピンオフ

『早乙女妖魔学園記』

 はじまりません。(嘘予告ですから)









『二週目は、巧が潜入だから』

「……25,6の俺がか?」

『……ほら、日本人って若く見られるから』

「……」

『だ、大丈夫!
 二年ダブりも居るし……悪魔の力や巧の術で変身すれば……』

「……」

『ご、ごめんよ。
 だって、オラ、普通の女子高生がみたいから』

「……早乙女は?」






[7357] 第3期 第18話 8月16日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/16 03:32
 河川敷に一体の死体が発見された。
 長身で整った高校生くらいの男性で、愉悦に満たされたままの表情で死んでいたのをホームレスが見つけたそうだ。
 外傷はないが、耳から血液が流れていた。
 県警が死体を司法解剖に回してわかった結果は、耳からなんらかのものを通して脳内を傷つけ、ミキサーをかけたような状態にされていたらしい。
 捜査に回されていた刑事二人が、両手を合わせて黙祷していた。
 30前の長身の刑事と40過ぎの小柄で草臥れた小太りの刑事が、近くのバーで話し合っていた。
 行きつけのバーには丁度客もおらず、気を利かせたマスターが席を外した。
 マスターが置いていったウィスキーを飲みながら小太りの刑事が言った。 


「……酷いもんだ」

「ああ……だがな、解せん」

「なにがだ?」

「解っているだろう?
 この殺し方、そしてなにより、公安が噛んで来たことさ」


 公安という部署は極めて特殊で……警視庁及び道府県警察本部にある警備公安部門の内、公安部分の総称のことであり、独立した組織ではない。
 (ちなみに、公安委員会の方は、警察を監督する行政機関であり、全く別の機能である)
 主に国の治安・国家体制を脅かす、若しくはそういった事態につながる可能性がある事件に公安が対応する。
 公安警察の始まりは、GHQの指令により解体された特別高等警察の代わりに創設された。
 対外的な活動は、国際テロリズム情報の収集と対策、武力攻撃・対日有害活動への対処を行い、対内的な活動は日本共産党、市民活動(反戦運動、労働運動など)、右翼団体、極左団体、暴力団など団体別・領域別に運動を監視し、必要とあらば公権力を発動する。
 また、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こされて以来、宗教団体への内偵を進めるようにもなった。
 普通の警察は『起こってしまった事件』に対してアクションを起こすが、公安は『これから起きる事件』について対応している。
 そして、公安は他の部署よりも優遇されている部分が大きい。
 公安捜査……扱う事件の特殊性と情報保持の観点から情報を制限している。
 公安部門に属する警察官はたとえ同じ警察官であっても、それが公安以外の所属であるならば情報交換は行われず、 更に他部門が同じ事件を扱っていたとしても、共同捜査を行うことは無く、やはり情報交換はされない閉鎖的な側面が目立つ。

 それ故に『公安は真空掃除機』と言われるくらいに情報を得るだけ得て、他に情報を流さない。
 そのことは、刑事二人は、わかっていた。
 だが、それでも大きな疑問点がある。


「なんで殺人事件に公安が出張る?」

「殺し方は奇妙だが……ガイシャ(被害者)は普通の学生さんだからな。
 思想的にも一般人で、特定の団体に近づいている形跡も無い」

「……そういうこった。
 俺らじゃ解らんことをあいつ等が知っているのか……?」































 ウーリの研究所に2人の訪問者が現われた。
 助手の和也は、買出しに出ていて今はウーリ一人だったようである。
 早乙女と桃井である。


「こんにちは!」

「お邪魔します」

「来たな。
 何か聞きたいことでもあるのか?
 その様子だと石動は帰ってきていないようだな」


 昨日、ウーリから事情を受けて説明を受けた早乙女達である。 
 衝撃的な内容で、受け入れる為に時間が必要だと判断したウーリは、一旦二人を帰した。
 だが、ウーリの想像以上に柔軟か強靭な精神を桃井は持っていたようだった。
 桃井は、丁寧に頭を下げてからウーリに質問した。


「俺の身柄についてです」

「好きにすればいいさ、責任が取れる範囲でな」

「周りはどう思っているかが問題です」


 ウーリは、桃井の言葉を聞いた後にコーヒーをゆっくりと飲み干してから返事を行った。


「国の対応としては、『日本』にいて戸籍がある以上は日本人……ってことだ。
 国で捕まえて人体実験とかいう真似はせんよ。
 だが、その力を隠したまま一般人として生きるか、その力を生かして『こちら側』で生きるかは選ぶことになるだろうがな。
 こちら側で生きる分には健康診断はやり易いだろうな、理解者がいるわけだからな」

「では、他の喰人達も…」

「犯罪を犯さん限りは保護するさ。
 お前さんは、強いと思っているだろうが、上には上がいる……幾らでもな。
 貴重な存在かもしれんが、国家で総動員して捕まえて研究するほどじゃない……俺の観点からすると、それなりに出来る術師ではあるとは思うがな、喰人の製造法はな」


 ウーリは、研究者らしく喰人について大いに興味を抱いている様子であった。
 桃井は、今のところは生活を大幅に変えるほどではないようだと解り、ひとまずは安心したようだ。
 だが、ウーリは最後に忠告を付け加えた。


「まあ、他の喰人がお前さんのような奴ばかりじゃないだろうからな。
 人格に問題を持った奴がなった可能性もあるし、力を持って歪んでしまうかもしれんからな。
 それに、悪魔の中でも気が荒い奴もいる。
 その辺を頭に入れておけば問題ない……人間も悪魔も付き合い方は変わらんよ。
 まあ、最悪命のやり取りをする羽目になるだろうが、そこにいる不運そうな娘ほどは深刻にならんでいい」

「早乙女が?」

「なんというか……行く先々で悪魔に襲われるんだがな。
 どうやったらそこまで襲われるのか……」

「なにか特殊な力でも?」

「潜在的に『ペルソナ』という異能力を持っていたが、今はもうないから異能力はないな。
 悪魔召喚はできるが、訓練すれば扱える程度だ……(例外もいるがな)」


 早乙女は、不運と言われて反論しようとしていたが、今までを振り返って一切の反論も出来ない事実に絶望し、発言する事をやめていた。
 桃井は、ウーリの研究所にしばらく通い続けることになった。
 早乙女のほうはというと、石動達は日本へ帰国していない。
 飛び込みの仕事をおこなうことになったようだ。
 お陰で『石動のツマ(自称)』は不満気のようだったが……ちなみに、桃井もあったようだが、幼い少女を妻にするという石動の存在に少し不安を感じていた(早乙女もあえて訂正を行わなかった為に……)。
 桃井の能力の確認・開発の手伝いは、ウーリの助手である和也が中心になって行っていた。
 桃井の内面のペルソナと外部から憑依させた悪魔を掛け合わせた『喰人』の能力は未知数であったが、和也のペルソナ使いからの視点で力を引き出す助言を行った。
 桃井も徐々にその力に慣れ、受け入れるようになっていった。
 桃井自身が持つ格闘技のセンスと経験も合わさって大きく力を伸ばしていった。
 稽古の際も和也も冷や汗をかかせるほどであったが、(異能力者・悪魔に対しての)戦闘経験の差が大きい為、和也は桃井をあしらう事はできたようだ。


「よし、これで買出しは終わった。
 付き合ってもらって悪ぃな、桃井」

「構わない。
 世話になっているからな」


 この日、和也は訓練を行わずにウーリの為に買出しに出た。
 桃井は、和也に付き合っているが、嫌な様子ではないようだ。
 桃井は、学校で孤立しており、友人らしい友人はいない。
 そして、和也もその存在の特殊性もあり、交流関係は養ってくれているウーリや先頭面の師匠である石動くらいしかいない。
 弟である尚也とは和解できたが、両親には生きている事は伝える事はできない。
 そして尚也は行き先不明の旅に出るため、連絡も稀であった……。
 そのような二人にとって互いに貴重な友人になりつつあるようであるのが現状であった。
 そんな二人は、路地裏で揉め事を目撃した。
 190センチを超えた厳つい顔つきの男性が、ガラの悪い青少年の群れに囲まれていた。
 厳つい男性は、髪を短く切っており、両腕に雷のような大きな傷痕があった。
 筋肉も鍛えられており、本気になれば不良の群れを粉砕する事は容易であると和也達には理解できていた。
 だが、厳つい男は一切手を出さず、その事で調子に乗った不良達が袋叩きにしているようだった。
 現状では男には大きなダメージにはなっていない様子だったが、業を煮やした不良の一人がナイフを取り出した。
 和也は、荷物の中にあった鯖の缶詰を取り出し、大きく振りかぶって投げた。
 不良の後頭部に直撃し、前のめりに倒れた。
 桃井はため息をつきながら動揺する不良達に蹴りを打ち込んでいく。
 一気呵成の猛攻で和也達は勝利の凱歌を挙げるになった。
 

「……すまない」

「暇つぶしになったから気にするなよ」


 男が礼を述べたが、和也は、腕を振ってそれを止めた。
 桃井が男を観察したが、恐らく同年代か、やや上くらいの年齢だと推測した。
 和也が自分達がもった疑問をぶつけた。


「で……アンタは、なんでやられたままでいたんだ?
 その気になれば瞬殺できるだろう?」

「戦う事は……傷つけることだ。
 この程度ならば俺が軽く傷つくだけで終わると思っていた。
 だから手を出さなかった」

「そうか……」


 桃井は、厳つい男が過剰なまでに誰かを傷つける事への恐怖感を持っている事に疑問を抱いたし、その考えに共感できなかった。
 それでも、男には男なりの考えを持っている事だけでは理解できた。


「君達のお陰で助かった……礼を言う。
 俺は……梁衣雷蔵。
 今年からH大に通っている」

「H大!?
 あそこは入り辛いのにな……」


 和也が驚くほどの有名大学の名前が出たのに驚きを感じていた。
 早乙女や桃井の通う高校でも入学できるのはそういない位のレベルであった。
 桃井は、更に質問をした。


「梁衣さんは、何故このような場所まで……」

「別に呼び捨てでも構わない。
 そうだな……助けてもらったわけだから話さないわけにもいかないか。
 立ち話もなんだから近くのレストランで話すことにしよう」


 梁衣は、近くのファミリーレストランを指差しながら提案した。
 和也達はその提案を受け入れた。






おまけ 


『なあ、せっきー』

「ん?」

『香我美ってツンデレだよな』

「??」

『いやさ、人間嫌いだけど信頼した奴にはトコトン尽くすし。
 だが……最強のツンデレは、俺だな』

「???」

『ほら、最初の頃と今を比べれば……うん、デレデレ。
 いまでこそ廃れつつあるツンデレだが……俺はツンデレ時代全盛時代から遥かに先駆けて……ってちょ、どこにいくんだよ、巧ぃ~!!』








あとがき。
ちょい更新。
新キャラ登場。
もはや登場人物の数は多すぎて……。

それはさておき。
九龍魔人学園記のクロスもいいかもしれんと一瞬思ってしまった。
まあ、遠い先の話ですがね……誰が行けば一番面白い事態になるだろうか(やはり不運の帝王・早乙女か?)。
一応アンケートをとっておきたいですね。



[7357] 第3期 第19話 8月19日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/26 00:16



 ファミリーレストランに桃井達は入り、料理が出たところで本題に入った。
 梁衣が重々しい口調で切り出す。


「友人の妹から兄を探すように頼まれてな……アイツは悪い奴ではないのだが、欲を出して厄介事に巻き込まれるわけで…」

「ろくでもないな」


 和也が容赦なく断言したが、梁衣は助けるつもりのようだ。
 桃井は、無言で話の続きを促した。


「古い付き合いだからな……見捨てるわけにもいくまい。
 それに、嫌な噂を聞いてな。
 『美男子を殺す脳喰いの怪物』がいる……その噂を聞いたからな」

「初耳だな」

「どんな噂だ?(まさか……悪魔か喰人か?)」 

「外傷はなく、脳だけが傷つけて殺すようだ。
 ……性交渉の痕跡があり、おそらく暴行を受けたのだろう」

「……詳しい情報をしっているようだが、どうやって情報を入手した?」


 桃井は、そのような情報は知らなかったが、普通の一般人でもしらないレベルを梁衣が入手している事は予想できた。
 それ故に桃井は、疑念が湧いた為に思わず問い詰めてしまった。
 梁衣は、その剣幕に恐れる事もせず、桃井の疑念を晴らすべく正直に事情を明かした。


「叔父の元部下の警察官に頼んだ。
 叔父が配置換えになってもその人とは馬があってな、だから情報を得ることが出来た。
 警察官は守秘義務があるが、そこは曲げて貰った」

「あー、それってヤバくない?」

「……叔父にばれたら俺もあの人も釜茹でにされかねんが。
 だが、友人の命には代えられまい」


 和也の問いに若干青ざめた表情で梁衣は答えた。
 誠実に答え、桃井を咎める事もしない梁衣に信頼感を抱きつつある事を桃井は感じていた。
 だが桃井は、同時になぜ簡単に信じてしまえるのか疑問に感じたが、その疑問を一旦棚にあげた。
 和也は、多少斜に構えた様子だったが、乗り気なようだ。


「面白そうだな」

「信じるのか?
 怪物のような殺し方をする存在がいるということを……」

「ま、こっちにも似たような厄介事に巻き込まれた事があるからな。
 桃井も手伝えよ、な?」

「いいだろう、だが……」

「だが?」

「先に荷物をウーリさん届けるのが先だ」


 買い物の途中だったことを思い出した和也は頭を抱えた。










 警視庁の地下に存在する公安零課。
 その取調室に鋭い目をした壮年がモンゴル風の衣装を纏った少女に話しかけている。


「今回呼び出したのは……」

「私が犯人だと思うの?」

「いいや、石動が居ない間ニュクスの店に入り浸っているのが目撃されているから、お前が犯人でないのは明らかだ、モー・ショボー」


 モー・ショボーは、男を誘惑して男の脳髄を吸い取る悪魔だ。
 だが……、


「そんな事したらせっきーに嫌われるもん。
 それに……食べるよりせっきーに食べられたいし」


 頬を赤らめながらモー・ショボーは妄想の世界に旅立とうとしていた。
 表情を変えずに目の前の男……公安零課課長である風間が声をかける。


「同族……もしくは、犯行を企てる悪魔について心当たりは?」

「うーんとね……ないよ。
 『配給』があるからイッパンジンを襲う子はいないよ」


 『配給』……日本国内に密入国する犯罪者および諜報員、そして公に出来ない悪行を犯した者を捕らえられた時の処置として悪魔の餌にされる事は珍しくない。
 現在も戦争で行われる人体実験もこのような人種を影で使われている。
 人道的ではない……だが、このような事を行われる者はほぼ全て通常の刑務所・留置所では拘束ができない故に行われている。
 モー・ショボーの言葉を聞いても風間には落胆の色はなかった。
 予想されていた事であり、確認の為にモー・ショボーに事情聴取を行っているからだ。
 モー・ショボーは、首を傾げて部屋の隅を指差す。
 そこには、両腕は手錠を嵌められており、目隠しと猿轡をされた男性が正座している。


「あれは?」

「……口の悪い元部下を指導している」


 部署を違えていた部下のようであり、公安零課の存在を明かすつもりが無い為に目隠しをしているようだ。
 決して、恐怖を倍化させる処置ではない。


「(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」

「(しかし……なにをするつもりだ、甥よ?)」































 黄昏時……、桃井達は港の倉庫の中の一角にいた。
 不況で倒産した貿易会社の倉庫で、人影はいない。、


「あっという間にアジト近くに」

「和也……」


 梁衣は、咎めるような視線を送りながら和也をたしなめる。
 ここまでやって来るまで柄の悪い不良にわざと絡ませては返り討ち(という名の過剰防衛)を行っては情報を得ていた。
 人を傷つけることを極端に嫌う梁衣は、当然いい顔をしない。
 梁衣の見た目は、威圧感を与える厳つい外見に反して、穏やかな内面を持った人間であった。
 桃井にしてみれば、襲ってくる以上怪我の一つや二つは覚悟するべきだと考えている為、和也をそこまで咎めることはしなかった。
 和也は涼しい顔で梁衣の視線を受け流していた。
 

「さ~て、ご開帳!」


 和也は、ペルソナ・セイリュウを降ろした状態で全力で突き蹴りを放つ。
 金属扉を大きく歪みながら吹き飛んでいった。
 

「……!!」

「これは……!!」


 数人の青少年が一人の女性……いや、『女性だったもの』を取り囲んでいた。
 服は破かれ、全身の暴行の痕が見られているだけではない。
 頭部に無数の杭が打ち込まれており、女性の身体は……痙攣を繰り返していた。
 女性は、快楽と苦痛が交ざった表情のまま白眼を剥いたまま倒れている。
 口元から血が流れていた。
 股間からは白濁した液体と血液が入り交ざったものが流れている……もはや、息はしていない。
 四肢は切り取られているのにも関わらず、出血せず……切り口がそのまま見えている。
 人間業でない異様な状態であった。
 青少年達は、薬物を用いているのか、異様に痩せており、口から見える歯がぼろぼろになっており、目も黄色く濁っていた。
 人間の残骸を犯し続けるヒトガタノケモノ。
 彼らの口で、咀嚼を繰り返してはガムのように吐き出している。
 女性の四肢の肉や舌の残骸が、地面を汚す……彼らは、美味そうに、楽しそうに頬張っていた物である。


「へへへ……お客さんか?」

「女がいねえか……」

「まあ、いいや。
 『おこぼれ』を貰っている俺達が愚痴ってもしょうがねえ」


 女性の残骸を棄てて、桃井達のほうに視線を向ける青少年達。
 桃井は、怒りに燃えながら構える。
 上腕を力強く握られて我に返った。


「……雷蔵」

「……周りの様子がおかしい」


 雷蔵の指摘どおり、周りの空間の色彩が異様になり、空気も淀んでいった。
 和也は、この倉庫が異界化した事に気がついた。
 さらに、青少年達の身体の内側から突き破り、異形へ変化した。
 巨大な脳髄に触手を生やした異形、紅い身体に翼を生やして股間にペニスケースのような角のような突起を生やした小悪魔、ゲル状になったモノ、人骨が埋まった老木、

巨大な頭蓋骨等……どう見ても人間でなくなっていた。
 そう……『悪魔』と呼ばれる存在へと変貌を遂げたのであった。。


「くひはははははは」

「逃がさない」

「なるほど……なら遠慮は無用ってワケだ」


 和也は力を込めてペルソナを発動させようとしたが、巨大な腕で制された。
 腕の主……梁衣に和也は視線を送る。
 梁衣は、静かだが重い決意に満ちた声で言った。


「ここは俺に任せて先に行け」

「この期に及んで話し合うつもりか?」

「……そのつもりは無い」


 威圧感が膨らみ、桃井達のいるこの場所を満たすようになっていた。
 桃井は、梁衣の申し出を却下しようとしていた。


「ここは全員で戦うべきだろう」

「『俺一人』のほうが都合がいい。
 桃井、藤堂……頼んだ俺が残るのは筋違いだというのは解っている。
 だが、任せて欲しい」

「だが……!!」

「先にも同じような存在がいるのだろうが……藤堂はおそらく対抗手段をもっているのだろう?
 そして桃井……」


 梁衣は、藤堂の力を洞察と直感で見抜いているようであった。
 そして、その先の言葉は桃井を驚愕させるものであった。


「おそらく……『お前は俺と同じだろう』」

「!!!?」

「お前が力を出そうとしたから漸く確信を得ることができた。
 俺も……誰かの手で俺の身体を弄られていた」

「……梁衣」

「誰かの為に行動できるお前だから信じられる。
 この後を任せられる。
 アイツが……誠が生きていたら、頼む」

「解った……藤堂、行くぞ」

「へいへい……まったくドイツもコイツも」


 桃井と和也は、梁衣を置いて先に奥へと向かった。
 走りながら和也は、簡単に信じる二人を呆れ半分で見ていた。
 だが同時に、『喰人』同士で通じ合うものがあるのだろうとも考えていた。
 悪魔と成り果てた者は、梁衣を取り囲む。
 梁衣は、静かに最後通牒を突きつけた。


「最期に聞いておく。
 警察へ自供するつもりはないか?」

「けけっけ……」

「仲良くあの世におくってやるよ」

「そうか……」


 梁衣は、静かに目を瞑る。
 悪魔達は、一斉に攻撃を開始した。
 衝撃、雷撃……無数の攻撃魔法が飛び交う。
 並の人間なら死ぬことは確実なほど過剰な攻撃が続いていた。


「やったな」

「やったね」

「ひひひひ」


 視界がハッキリしたとき、一体の人影が立っていた。
 赤銅色の金属光沢を放つ巨人がいた……その背格好は梁衣と同じサイズであった。
 肘・膝には刃が生えており、頭部は西洋騎士の兜のような円柱状になっており、稲妻のような亀裂が走っていた。
 胸部も厚い装甲で、心臓部に稲妻を模したマークがあった。
 そして……前腕部が犬を模した手甲になっており、腕を振るうと、その軌跡にそって炎を生み出していた。
 関節部分だけ動けるように薄くなっているが、それでも重厚で銃弾では傷がつかないのではないかと思わせる凄みを出していた。


『……私は、戦う事が……傷つける事は嫌いだ。
 だが……』


 巨人から梁衣の声が響き渡る。
 紅い小悪魔……インキュバスが接近して巨人に爪を振るうが傷一つ負わせられない。
 犬の頭部を模した両腕がインキュバスを掴む。
 インキュバスは必死にもがくが、巨人は決して逃がさない。
 さらに、両腕から閃光を発した……魔犬が怒り狂った炎のブレスを吐いたように悪魔達は見えただろう。
 紅い光が一瞬にしてインキュバスを消滅させ、異界化した倉庫の壁を貫く。
 閃光が通った場所は全て溶けていた……恐ろしいまでの威力を出す熱線であった。
 悪魔達は、巨人の一撃を恐れをなして攻撃を繰り返す。
 その攻撃を受けながらも前進する巨人……攻撃を受けても怯むどころかそのまま歩き続けていた。


『お前達は……許されない』


 倉庫の中央まで進み出た巨人は、雄叫びをあげた。
 全身が変形し、体内から小型のミサイルが現われた。
 更に手甲部分を悪魔が集中している箇所へ向けた。
 悪魔達は、恐怖に満ち溢れていた。
 巨人の両腕が再び光を発し始め、全身からミサイルが発射された。
 

























































「……なぜ、罪を重ねるんだ?」


 梁衣は、一人涙を流していた。
 異界化した工場であったが……爆撃を受けた痕のようになっていた。
 和也達が向かった箇所だけ辛うじて壁が残っていたが、吹けば倒れる程度にしか残っていない。
 ドアの向こうは、淡い光を発していてワープゾーンのようになっているようであった。


「う……」


 梁衣は、全身の灼熱感と苦痛で倒れそうになった。
 だが、膝をつかずゆっくりと奥へ進んだ。


「待っていろ誠……」


















おまけ ある財務大臣の日記。


@月@日
忌々しい怨敵の気配が現世で感じたと思ったが、そんな事は無かった。
あの方は妙に機嫌が良くなって秘蔵の一本を取り出して飲んでいたが。
それにしても……無間地獄で脱獄があったとは、弛んでいる。
思えば十数年前に長きに渡って抵抗をしていた死者が無間地獄に脱獄して以来、脱獄が時々起こっていた。
最近はなくなったかと思えば……まったく。
何者か知らないが、長い間抵抗している間に無間地獄の番兵代わりの悪魔達が大勢故障者を出してしまったのが痛い。
それにしても人間が作り出した胃薬の飲み心地はいいな。



@月@日
関東で邪悪な空気が立ち込めていたがいつの間にか晴れていた。
おそらくクズノハかヤタガラスが何とかしたのだろう。
人間ながら大したものだ。
昔感じた気配を感じたが、出てきていないところからすると気のせいだろう。
あの方が現世にしばしば抜け出しているから疲れてきた証拠だろう。



@月@日
ロシアにあの方が潜伏している事がわかり、私が行くことにした。
部下に仕事を任せて心苦しいが、サボり癖のついた主を確実に連れ戻せるのは私しかいないからしかたがない。
そしてあの方を見つけただけでなく、ドゥーリエ家に流れ着いたマガタマがこの地にある事をしった。
ドゥーリエ家の者がロシアに来ていたから丁度良い。
精々利用することにしよう。





企みは上手くいったが、主から後始末を申し付けられた。
大魔王二人分の力を振るったお陰で後々の処理が……。
主がすっきりした顔でいるのが余計に腹が立つ。



『ああ、ルキフグス。
 ちょっと交際費でコレを落として』



ああ、胃が……。








 あとがき
 梁衣さん無双。
 彼もまた喰人でした……正体は『オルトロス』です。
 アンケートで犬選ばなかった為にお蔵入りしたオルトロスを魔改造したものです、ええ。
 犬選んだ場合は、犬はウルフオルフェノクっぽい桃井になっており、梁衣さんは出ていませんでした。
 両腕からファイアブレス(アパドン王)を発射、核熱な劣化ニュークリアミサイルを発射するという火力重視の男です。
 両腕のレーザービーム(アポドン王を知っている人はわかるでしょう)と全身のミサイルの同時攻撃は……まさに殲滅艦隊。




[7357] 第3期 第20話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/01 02:21
 桃井達が奥に進むと、豪奢な部屋があった。
 虎革の敷物、ゴッホの絵、金箔の屏風……アンバランスかつ派手すぎで悪趣味な内装であった。
 そこには五人の美男子の死体と行儀悪くソファーに座った女性が居た。
 金髪に染めた日本人女性だが、お世辞にも美人と言えず、態度は大きめな代わりに品性や知性は控えめな様子であった。
 桃井には肌の合わない女性であった。
 藤堂は、その女性に見覚えがあるようだった。


「松平……美智子?」

「あーら、死んだ従兄弟の知り合い?
 ワタクシは、松平弥知恵。
 美智子の従兄弟ですの、おーほっほっほ!!」


 藤堂和也自身には面識はないが、弟の尚也から受け継いだ記憶では敵として現われた美智子の従兄弟のようであった。
 美智子と気持ち悪い位に瓜二つ……性格・外面の両方で。
 和也は汚物を見るような視線を送った。
 桃井は、周りの様子を見てから弥知恵に確認した。


「こいつらを殺したのは……お前か?」

「あーら、有効利用と言って?
 美しい殿方に、ワタクシという美女との最高のひと時を送ると言う栄誉を与えたのよ?
 その代わり、生命力を奪って私の糧になるのよ。
 まあ、殿方とのひと時を邪魔する売女や殿方の家族を嬲り殺しにして差し上げたりしましたが。
 無理やり殿方をモノにするのも乙よね。
 ワタクシに殺されるより、ワタクシのペットになりませんコト?」

「あー……率直に言ってそんな事するくらいなら死んだ方がマシだな」


 弥知恵の嫌に甲高い声が響き渡った。
 それに対して、心底嫌そうな表情で和也は拒否した。
 それを残念そうにしていた弥知恵は……視界が真っ黒になった。
 同時に弥知恵の顔面に衝撃と痛みが走った。
 桃井が一瞬のうちに数メートルの空間を駆け抜け、ハイキックを弥知恵の顔面に叩きつけたからだ。
 和也ですら目にも止まらぬ速度であった。


「な……、なにをヴぁあああ!!」

「……」


 和也には、桃井の全身からどす黒い怒りと憎しみが噴出したのかと錯覚するほどの凄みを感じていた。
 常人なら頭蓋を蹴り砕かれる程の一撃だったが、弥知恵は立ち上がった。
 桃井は、静かに言った。


「お前は同じだ……『奴等』と。
 身勝手なエゴしかない屑と……!!
 こんな奴等がいるから姉さんは……」

「キイイ!!
 せっかく、な、情けをかけてやったというのに!
 貴方のようなドブネズミに言っても解らないようね!!
 ドブネズミの姉だからさぞかし下品な売女に違いありませんわ!
 男に平気で股を開く淫乱な……」


 そこで弥知恵の声が止まった。
 自然体でいる桃井であったが、殺意が周囲の空間全てを埋め尽くすような感覚を弥知恵は感じた。
 一歩でも動いた瞬間に再び蹴りを受けることになるだろう。
 弥知恵は、右腕を高々と上げた。


「ネメシスパワー ビルドォアァップ!!」


 閃光とともに、弥知恵の姿が変わった。
 鎧のようなモノに全身が変化し、顔面部は女性の仮面のようなモノになっていた。
 頭髪はケーブルのようなモノに変化し、美男子の死体を貫き、脈打った。
 美男子の死体は干からびていった……、以前発見された男性の死体が外傷がなかったのは、ケーブル状の髪が耳から入り、脳髄へ進入したからだろうと和也は推測すると同時に、弥知恵を哀れんだ。


「(馬鹿だな……。
  桃井の過去に何があったか知らないが……あのクソアマ、地雷を踏んだな。
  踏んじゃいけない地雷をな)」

「オーホホホホホホッ!
 こーれがワタクシの本当の姿よ!
 ビューゥチィホォーッ!
 アァーンドォエェレェガァーントォッ!!」
 

 勝ち誇る弥知恵を無視して桃井は呼吸を整え、両腕を交差させた。
 精神を集中させた桃井の周囲から緑色の光……MAGが噴出した。
 光が消えた時、桃井の姿が翼のようなマントを纏った鳥仮面の戦士……スパルナへと変貌を遂げた。


「貴方も喰人!?
 ついていますわ!!
 勝ち抜いて永遠の命と美貌を……」

「貴様はここで終わる……!!」


 桃井の関節部から蒸気が噴出し、怒気に孕んだ声が弥知恵に降り注ぐ。
 弥知恵が頭髪で攻撃を仕掛けるが、一瞬にして視界から消えた。


「上!?
 でも空中なら唯の的ですわ!!」


 上空から桃井が襲い掛かるのを察知した弥知恵は勝利を確信した。
 だが、知るがいい。
 目の前の男は神鳥の化身。
 空中であるにも関わらず、地面があるかのように自在に疾走して攻撃を回避して一気に弥知恵へ接近した。


「速い!?」

「遅い」


 弥知恵の胸元へ桃井の肘がめり込む。
 胸部の装甲が砕け散りながら弥知恵は、奥へ吹き飛ばされた。 
 和也は、本格的な戦闘が初めてにも関わらず力を使いこなす桃井の才能に驚く。


「(助けがいるかと思ったが……いらないようだな)」

「おーっほっほっほ!!」

  
 桃井の一撃を受けて変身が解除されるまで追い込まれた弥知恵の顔は青ざめていた。
 だが、気絶している十歳くらいの美少年の首に鉤爪を突きつけていた。
 人質という陳腐な手段をとることは明白であった。


「この子の命が惜しかったら……」

「断る。
 それに……お前では殺せん」

「ハッタリじゃ……」


 弥知恵が腕を振り上げようとした時、両腕が地面に落下した。
 両腕は綺麗な切り口を見せており、弥知恵の両肩からおびただしい血が噴出した。
 桃井は肘を打ち込んだ直後に真空波で両腕を切断していたのを和也は目撃していた。


「出鱈目な速さだ」

「……こんな身体でもマシな事に使える様だ」


 桃井は、ぽつりと言葉を漏らす。
 弥知恵は、絶望的な状況に追い込まれても逃走しはじめた。


「今日の所は勝ちを譲ってあげて!
 覚えていなさい!!」


 だが、次の機会は永遠に訪れなかった。
 和也達の後方から閃光が走り、弥知恵の顔面を貫いた。
 弥知恵の頭部は消滅し、首から焼き焦げた匂いが立ち込めた。
 

「……誠は、手遅れだったか」

「梁衣」


 桃井は、声の主の名を言った。
 両腕が赤銅色の犬を模した手甲に変化した梁衣が立っていた。
 和也が梁衣に話しかけた。


「来た時には……」

「そうか……」


 梁衣は、変化を解除して拳を握り締めた。
 桃井は、しばらくしてから話しかけた。


「その力は……」

「解らない……いつの間にかこの力を得ていた。
 だが、俺はあの呼び声を従うつもりはない」

「そうか……その事も含めて話したい事がある」

「解った……だが、この始末はどうする?」


 梁衣は、周りの死体を見渡した。
 和也が肩をすくめながら行った。


「警察でも『そっち』専門の部署があるからな。
 俺が連絡しておくから安心しろよ。
 それにしても……お前らは厄介な力を持ったもんだな」


 和也は、目覚めたてである桃井の力でも強力だった事に不安を感じた。
 桃井や梁衣のような比較的まともな部類なら問題はない。
 だが、弥知恵のような人格破綻者が強力な力を持っていた場合の事を考えていた。
 

「(まあ……苦労するのは俺じゃないからな)」










おまけ 石動の得た報酬の使い道。


「……ドリー・カドモンか」

『ベルタンのおっさんが送ってきたな』


 造魔素体であるドリー・カドモン。
 貴重であり、非売品である。
 実体を持つため、MAGを消費しない造魔(新月時には弱体化するという欠点はあるが)や、英霊・猛将という特殊な悪魔を降ろす道具である為、手放すサマナーはまず存在しない。
 オークションに出た日には相当な高値でやり取りされ、下手をすれば刀傷沙汰に発展することもある。
 そんな貴重品を2回も得る石動は幸運と言えよう。


『で、フリーダーの妹か?弟か?』

「弟のようだな。
 今回はウーリ・ヴィクトルの合作らしいが……」

『ライバル同士だからな~。
 まあ楽しみっちゃ~楽しみなんだが』

「設計は出来ているらしい。
 ロンドンの業魔殿で行えばいい」

『(あーあ、何が悲しゅうて加齢臭漂うババアげふんげふん、師匠と一緒に仕事しなけりゃならんおよ~)
 それで、どんなタイプなんだ?』

「新しいタイプに挑戦するらしい。
 俺のような欠陥サマナーでも扱えるような……な」

『ほほう』

「そして……俺の刀にアレを組み込む」

 
 石動は、腰につけている『箱』を指差した。
 石動のアセイミーナイフを進化させ、フリーダーを強化させる為に使っている『箱』である。
 倒した悪魔から吸収した力を武器や造魔へ注ぐ事ができるアイテムは石動の生命線といえるものである。
 それを石動の愛刀『妙法村正(夢想正宗)』に完全に組み込むのだ。
 武器としての強化は無いが、吸収効率は高まることだろう。


『あの箱のなんなんだ?』

「仮説はある。
 悪魔を研究していた錬金術師『マクベイン』が作り出したものかもしれない」

『不老不死を目指した傭兵にして術師でもある悪名高い奴だな』

「ただの悪魔じゃない。
 『無限に成長できる世界の悪魔』の器官を模しているようだ。
 今の世界じゃ決して出来ない代物だが……」

『マガタマが流れて来た位だから……そういう悪魔が間違って流れることがあってもおかしくないか。
 怖い怖い』

「俺の役に立つのならばなんだってかまわんがな」











おまけ2 ほかのキャラたちの現状。


「お、俺はカナリヤじゃねええ!!」


 危険な遺跡にもぐって魔術書を奪還する羽目になったテュルゴー。




「がんばってください~」


 テュルゴーに厄介な依頼を振る原野。
 天罰が下ることでしょう、近いうちに……因果相応的に考えて。





「ありがとうございました!」

 
 契約をとる事に成功している九鬼(忘れている人がいるかもしれないが、九鬼の表の仕事は保険のサラリーマン)。
 彼が時速4キロ以上の速度で行動するとGPSの座標が狂う……のかどうかはわからない。







あとがき
喰人編の第一話が終わりました。
梁衣の火力は異常っぽいのが・・・・。



[7357] 第3期 第21話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/26 00:25
おまけ
『掛け声』


ラームジェルグが桃井に提案を持ちかけた。

『なあ、桃の字』

「なんだ?」

『悪魔化するときに『変身!』とか言おうぜ!』

「……なんでそんなことを」

『変身は男の浪漫!!
 反論は認めない。
 あと、ちっぱいは正義』

「……」

『……』

「……」

『そ、それにしてもハリー(梁衣)の能力はチートだね!
 氷結属性が弱点だけど(1,5倍)、バッドステータス無効でそれ以外にも耐性がついているし!(ダメージ25パーセントカット)
 あの火力は痺れる、憧れるー!!』


 最期の余計な一言で気まずい空気になったので強引に話題を変えるラームジェルグであった。





『出番が……』


「なんで出番がないのよー!!」

「ドイツの仕事以来、石動と行動を共にする事がないからな」


 涙目になっているジェシカ……。
 それに対して冷静なスカアハである。
 

「日本では中々本領発揮できないし、銃刀法の問題上」

「……多少の誤魔化しは効くが、ジェシカの重火器になると……」

「こうなったらラーメンかカレーか塩焼きかプリンとゴム風船を……」

「会社が同じで近いうちにクロスさせるが自重してくれ……一応、私の主だから」













 ウーリの研究所で桃井と梁衣が痩身の錬金術師から話を受けていた。


「雷蔵だったな……。
 お前も桃井と同じように機械を取り込んだか」


 桃井と同様にMAG保存用のCOMP(悪魔召喚機能をオミットしている)を渡したが、桃井と同様に取り込まれた。
 梁衣は申し訳なさそうにしていたが、ウーリがそれを制した。
 その後、桃井と梁衣の能力を試験を行った。
 梁衣のスピードは驚異的であり、それを生かした体術のキレはウーリも賞賛した。
 梁衣の方は、流石に生体ミサイルを発射させる事はさせず、両腕の砲撃のみを分析したが、金属壁をあっけなく溶解させるほどの威力を見せていた。
 梁衣は、その威力に驚き、使用を戸惑うほどであった。
 だが、同時にトラブルに対処する力を必要だと梁衣は承知している。
 そこで、武器や銃器を用いる訓練を始めた。


「銃器より恐ろしい力か……」

 
 梁衣は、桃井のように武術を知っているわけではない。
 だが、もともと身体能力が高い上に、銃器を用いる才覚があるようだった。
 梁衣が訓練を終えた時、ウーリに呼び出された。
 和也もおらず、ウーリは一対一で話すつもりでいるようだ。


「まあ、コレでも飲め。
 菜園で取れたハーブティーだ」

「いただきます」


 梁衣は、ウーリから出された茶を飲む。
 爽やかな香りと、すっきりとした味わいが広がった。
 一杯目を飲み終えた後にウーリが用件を切り出した。


「桃井のことだ」

「桃井ですか……?」

「ああ、アイツは……少し危うい。
 まあ、お前さんのような甘い男も問題だがな」

「……」

「ある『人種』に対して過剰な攻撃性を示す。
 まあ、それはいい。
 支える家族とかいう奴があれば人間というのはなんとかなるらしいからな。
 だが……」


 ウーリは言葉を濁した。
 梁衣は、無言で続きを待った。
 ウーリは、淡々と続きを話す。


「家族構成は、両親は健在、姉が一人……そして亡くなった次女がいたらしいがな。
 だが……桃井は家族に会うことなく一人暮らしだそうだ。
 もっと突っ込めば解るだろうが……学校でわかる事を調べた人間娘は、仲間のプライベートを調べるつもりはないようだがな」

「早乙女さんが調べたのですか」


 梁衣は、先日顔合わせをした明るく可憐な少女(幸は薄そうだったと梁衣は感じたが)の顔を思い浮かべた。
 同時に、張り詰めた桃井のことを考えた。


「一番身近な早乙女さんが支えになればいいのですが……俺もできる限りやれる事をしますが」

「人間の事は人間に任せるのが一番だからな」


 桃井の問題は根が深い。
 後に梁衣は、早乙女から聞いた。
 家族の事を聞かれた桃井は次のように答えた。


 『血の繋がった他人しかいない』と。














 あとがき
少しだけ更新。
桃井の情報は小出しに。
人間戦艦・梁衣さんはいい人。




[7357] 第3期 第22話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/27 10:45

・とある交渉人が……


「はい、もしもし」


 小柄な美男子……悪魔交渉人の原野は、とある人物から連絡を受けた。
 

「ええ……、いいですけど。
 ……え゛!
 ……そうですけど……。
 うう、わかりました」


 携帯を切る動作には力が篭っていない。
 原野は、恨みがましい声で呻く…。


「恨みます……恨みますよ……。
 ああ、それよりも……」


 台所から包丁を取り出し、ベッドの枕元においてある拳銃と一緒に工具箱に入れた。


「今日も、包丁と拳銃を隠す作業をはじめるよ……」


 工具箱を天井裏に運び込んだ。
 女性へ別れ話を切り出す時、感情のもつれで相手が暴力を振るう事が多い。
 手元に武器になるようなものがあれば更に危険度が増す。
 ……つまり、原野は……。















「叔父がまさかこんな仕事をしているとは……」

「俺も驚いたが、早乙女も知り合いらしい。
 ……それにしても早乙女、お前の『先生』はどこまで人脈が広いんだ?」

「先生の人脈の輪は広すぎます……」


 桃井と梁衣と早乙女は、『早乙女の先生』の事務所に集まっていた。
 (注 まだ彼らは帰ってきていません)
 和也が公安零課に連絡して事情を説明した。
 その時に風間が梁衣を見て驚いた。
 実は……風間は梁衣の叔父であった。
 そして自分の甥が喰人になった事をどうしようもないやるせなさを感じていた。
 この世界に入るだけでも洒落にならない……それに加えて人でなくなってしまう事の重みを梁衣が背負う事になったからだ。
 ちなみに部屋の隅で風間の元部下が石を抱いたまま正座させられていた(梁衣に情報を漏らした罰で)。
 

「まだ帰ってこないのか?」

「そうなの、桃井君。
 飛び込みの仕事が入って……先生がいれば色々安心できるんだけど。
 困った時には風間さんかウーリさんに連絡すればいいと思う。
 それにしても……『喰人』が関東に何人もいるのが問題ね」


 風間が知る限り既に十人以上の喰人が確認されている。
 そのうち、保護されたのは桃井達を入れて四人のみらしい。
 残りは、悪魔に殺されるか犯罪を犯して人間に排除されるか逃亡中である。
 さらに性質の悪い事に、関東で『悪魔化する麻薬』が出回っている。
 忘八が流しているという可能性が濃厚で、喰人も忘八が絡んでいるのかもしれないというのが公安零課の見解であった。
 ちなみに……先日、桃井達が倒した松平弥知恵の取り巻きも麻薬による悪魔化であることが判明した。
 梁衣がその事を言及した。


「しかし……物騒だな。
 簡単に人間でなくなる麻薬とは……」

「『覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか』という標語があったが……。
 冗談ではすまないな。
 だが……どうして」

「仮説だけど……」


 桃井も疑問を口にした後に、遠慮がちに早乙女が意見を出そうとしていた。
 梁衣と桃井は、その意見を聞くことにした。


「喰人は、生命維持に大量のMAGが必要になっています。
 だから……その餌を作り出す為に麻薬を流したのではないでしょうか?」

「なるほどな……」

「ところで、桃井。
 お前達はこれからどうする?」


 梁衣が話題を転換した。
 桃井と早乙女は頭を抱えた。


「先生が帰らないと……仕事がないの」

「やるとこがないからお手上げだな」

「俺もだ……何かが起こるまではウーリさんの所で鍛えるしかないか」

























『おーい、せっきー。
 資料が来たぜ~』

「ああ……」


 欧州のホテルで本を読んでいた三白眼の男……石動巧が、相棒であるラームジェルグの声を聞いて視線を向けた。
 石動のもっとも頼りにする仲魔のフリーダーは、石動達の為に紅茶を注いでいた。
 石動が『喰人についての考察』と書かれた公安零課の資料に目を通す。
 ラームジェルグは、読み終えたのを見計らって声をかけた。


『どう思う?』

「喰人の餌というのもあるが、喰人同士が殺しあうゲームの要素というのが大きいな」

『と、いうと?』

「殺し合いの手駒、戦う資質の無い喰人の振るい落としというのもあるが……」

「マスター、他にもあるのですか?」


 フリーダーが、石動達に紅茶を配りながら質問した。
 石動が、虚空を見上げてからその問いを返した。


「おそらく、これは蟲毒だな……。
 悪魔化した人間や無数の喰人を殺し合わせる。
 最後に生き残った喰人は、強靭な魔人になるだろうな。
 ……その先の目的はわからんがな」

『なあ、巧。
 黒幕が忘八なら……』

「もし忘八……そして忘八の頭目が『あの』五島なら……。
 悪魔と人間のあるべき理想の存在を作り出す……というのが目的なのかもしれんな」


 五島がガイア教の思想に近い事を石動は把握していた。
 ガイア教とは、秩序や階級に囚われず、自然と一体化することを重視しており、悪魔との共存を唱えている。
 差別も区別もなく、管理を否定し全てのものと共存しようとしており、現実的かつ実利的で、力のない者に価値を見出さず、救いの手を差し伸べない……いわば弱肉強食かつ混沌としたした世界が理想なのである。
 そのため、秩序を重んじるメシア教徒とは犬猿の仲である。
 最近は、メシア教が失策を繰り返し、相対的にガイア教が勢力を増している。
 だが、ガイア教徒は一枚岩ではない為、メシア教徒ほど社会に害していていない……むしろ内向きに力が働いており、内部での権力闘争が激しい。

 石動は、更に続ける。


「だが……現状では情報が少ないな。
 結論を出すのはまだ先の話だ。
 ……それにしても」

『さくらちゃんは……厄介事を抱え込むな~』

「早乙女様の運の悪さは異常です」


 石動達は、早乙女の不運を嘆いた。







[7357] 第3期 第23話 8月31日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/08/31 22:17
「ふふふ……君たちは『選ばれし者』にしては弱いな」

「ば、馬鹿な……何時の間に!!?」


 紺色のスーツを着た青年の周りには死体の山が築かれていた。
 対峙していた男が驚くのも無理も無い。
 なぜなら一瞬にして五体の喰人が出来ていた。
 催眠術や高速移動では説明がつかない程の早業だった。
 更にその前から手勢の悪魔をけしかけていたが消耗した様子も無い。
 自分達より目の前の一体の敵が上回っているのだ。


「くそ……」

「それが最期の言葉かい?
 振るっていないね」


 スーツの青年の手には目の前の男の首が握られていた。
 首を切られた事に男は気がつかなかった。
 首を斬られても極短時間だけ意識があるらしい。
 男は、信じられない表情になったまま死んだ。


「ふふふ……全ての喰人を倒し、世界を統べる者に僕はなる。
 (だが、奴が邪魔だな……。
  『時を止める』力を持ってしても奴を殺しきる自信がない。
  今は同盟しているが……最後に勝つのは僕だ!!)
 なぜなら……僕はヨグ=ソトースの化身だからだ!!」


 ヨグ=ソトース。
 無定形の神で、過去・現在・未来……あらゆる次元に存在する次元の狭間の『門』の守護者である。
 『ネクロノミコン』によると、この存在について次のように書かれている。

『ヨグ=ソトースは門を知れり。
 ヨグ=ソトース門なれば。
 ヨグ=ソトース門の鑰(かぎ)にして守護者なり。
 過去、現在、未来はなべてヨグ=ソトースの内に一なり。
 〈旧支配者〉のかつて突破せし所、再び突破せんとする所、ヨグ=ソトースこれを知る。
 〈旧支配者〉かつて大地を踏みにじりし所、今なお踏みにじりたる所は云うに及ばず、かかる〈旧支配者〉の見えざることわりをもヨグ=ソトースこれを知れり。
 ヨグ=ソトースは星辰の出会いし門の鑰なり』

 つまり、時空を超えあらゆる次元に存在するのである。
 だが、人間の目に映る事はない。

 「門にして鍵」「全にして一、一にして全なる者」「外なる神」
 「混沌の媒介」「原初の言葉の外的表れ」「虚空の門」「漆黒の闇に永遠に幽閉されるものの外的な知性」

 ヨグ=ソトースはこのように呼ばれているようにスケールの大きい存在である。
 人間が扱うには過ぎた力であるが……極限まで劣化した分霊ならば可能性はある……そしてペルソナと一致すれば喰人『ヨグ=ソトース』になる事もあるいは可能であるだろう。
 そういう意味では『選ばれた存在』と言っていいのかもしれないが、喰人として純粋な戦闘力は……実は最弱である。
 だが、ヨグ=ソトースの『あらゆる次元に存在する』という特性が喰人である彼に『2つ』の絶大な能力を身につけさせた。
 そのうちの一つは、『時間停止能力』である。
 ヨグ=ソトースは、あらゆる次元に存在するが、人間が時空を自在に行き来する事を許していない。
 その為、もし人間が時空を行き来するならば、科学がその境地にいつかたどり着くのを待つか、他の時を司る悪魔の助力が必要であるだろう。
 だが、この男は力こそ弱いがヨグ=ソトースの力を持った喰人であり、いわば分身である。
 最小の力で時を止められる上に、時空を止めてもヨグ・ソトースに認識されない……つまり制約がないのである。
 そしてもう一つの特性も……この最弱の喰人が勝ち残れるという自負を持たせる能力がある。
 その事は、別の場面で話す事にする。
  

「ふっふっふ……あーはっはっは!!!」


 喰人同士で殺しあい……。
 必ずしも桃井や梁衣のような人間ばかりではない。
 このゲームに積極的に参加する者がいる。
 そして……近いうちに桃井達の前に現われる事だろう。











 あとがき
……書いてて凄く小物臭え!と思いました。
すごい能力があるのに、駄目駄目な臭いが。
あと、祝……一ヶ月ほぼ本編にほとんど出ていない石動&ラム(+フリーダー)。
次は2ヶ月だ(おい)。



[7357] 第3期 第24話 9月3日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/03 22:34

「邪魔するぞ、藤堂」

「いいけどよ……いつの間にか溜まり場になっているな」


 梁衣がウーリの研究所に入ってきた。
 和也は文句を言いながら冷蔵庫から烏龍茶のペットボトルを取り出した。
 死人(厳密に言うと若干違うが)である和也は、交流関係は広くない。
 つまり、梁衣や桃井が初めての友人といって良いかもしれない。
 (石動は師匠にして超えるべき壁で、ウーリは父親代わりというべきか)
 しばらくしてから学校帰りの桃井がやってきた。


「入るぞ、藤堂」

「ほらよ」


 桃井にも烏龍茶を渡す和也。
 自分達の能力を知り、これから生きる世界の知識を得るにはウーリの研究所がうってつけである。
 短時間でこのように集まるのが当たり前になっていた。
 梁衣が桃井に対して話しかけてきた。


「桃井……これからどうなると思う?」

「……黒幕が解らないが、『願いがなんでも叶う』という言葉に釣られてやる気になる奴が出てくるだろうな。
 なまじ強力な力を持ってしまうと狂う者が出てもおかしくない。
 それに……」

「それに……なんだ?」

「『ゲーム』が滞った場合……十中八九、黒幕がテコ入れをするだろうな。
 そのテコ入れが2つほど考えられる。
 一つは強力な敵を放つ……やる気の無い人間を間引きできる。
 あと一つは……なんらかの手段で俺達を戦うしかない状況に追い込む事だ。
 人質か……もしくは喰人を何処かへ隔離するか……」

「ありうるかもしれん」


 梁衣と桃井は、裏の事情を知るにつれて……そこまで行いかねないと危惧していた。
 だが……相手の事はほとんど知らない以上、後手に回るしかない。
 不安が募っている時、入り口のドアが開いた。
 快活だが、幸の薄い美少女……早乙女がやってきた。


「み、みんな、力を貸して~」


 早乙女は、涙目であった。









おまけ

『……ゲッ!
 俺が女だと……』

 遊(ピー)王のとあるカードを見て絶望するラームジェルグであった。



おまけ2 『乱心』

『俺は太陽の子……』

「なにやっている?」

『いや~、いいよね仮面ライ(ぴー)。
 てつを最高。
 ホラ、俺は太陽の子だから(光神ルーグの息子)』

「……」

『ブリューナクがあるからリボルゲインできるし……。
 考えれば光太郎はブラックで一度死んで、RX第一話で宇宙空間に投げ出されているのと、せっきーが二度心臓を撃ち抜かれているのって似ていない?』

「……暇か?」

『割と……(本編で出番がないから)』





あとがき
短いので後で継ぎ足しました。
小物(仮名)のお陰で色々やる気が出てきた。



[7357] 第3期 第25話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/04 11:21

 早乙女が涙目になりながら語った内容は次のようだ。
 風間から依頼されたようで、行方不明になった女子高生の探索であった。
 渡された女子高生の写真は、小柄で長い髪で気弱で儚げな印象を与えていた。
 その少女の名前は『鳩村 カナ』で女子高に通っていたそうだ。
 普通ならば、単なる行方不明者で済んだのだが、昨日になって状況が変わった。
 彼女と交流がある女子グループが尋常でない殺され方をしていたのだ。
 早乙女は、殺人現場の写真を桃井達に見せた。


「……人間業とは思えないな」

「悪魔か……喰人の犯行だろうか?」


 女子高生たちの首から下が異常なまでに圧縮されて、周りはおびただしい血の海を作っていた。
 まるで、巨大な腕に人形のように握り締められ、そのまま握りつぶされたような状態であった。
 死体はすべて恐怖に歪んだまま醜い表情で死んでいた。


「いなかったその……鳩村という女性だったのか?
 それで犯人と決めるのは……」

「そうなんだけどね、軽く調べたら……殺された女子グループは、鳩村さんを虐めていたみたいなの。
 学校は見てみぬ振りをしていて……」

「……」

「……」


 梁衣と桃井は、早乙女の調べた事を聞き、沈痛な表情になった。
 閉鎖的な環境は、陰湿な事が生じやすい土壌になるのであろうか……。
 早乙女は更に続けた。


「公安零課で死んだ人間を調べて残留思念が残した言葉は、鳩村さんの名前だったの。
 彼女が犯人でなくても重要な手がかりになるし、犯人じゃない場合も姿を隠しているから何か訳があるかもしれない……。
 だから調べる事になった。
 でも……零課は、他の事件で割ける人員がないから……」

「叔父よ……民間人にやらせることじゃないぞ」


 梁衣が頭を抱えた。
 早乙女は、悲しげな表情になって言った。


「普通ならそうだけど……悪魔絡みなら戦力は幾らあっても足りないし、信頼できるなら民間協力者でもためらわずに使うの、この業界は。
 先生とかフリーのサマナー探偵なのにたびたび協力しているし」


 悪魔、天使……果ては某『唯一神』といった存在が引き起こす事件は、人類が滅亡するような事態になってもおかしくない。
 それ故に風間達は、形振り構わずに事に当るのだ。
 桃井が早乙女に一つ疑問をぶつけた。


「警察に頼られる石動先生は……何者なんだ?」

「うーんと……頼りになる怖い人かな?」

「(守護霊能力をつかわずに)全力でかかっているの手玉に取られるからな……。
 どんなバケモノかって。
 拳銃の弾を弾いたり……」


 早乙女は、控えめに答えたが……和也は普段やられている事を愚痴を零した。
 段々人間離れした所業を語りだし、桃井と梁衣は話半分に聞く事にした。
 『アパッチを竹槍で撃墜した』『マフィアを一人で潰した』という時点で眉唾モノだと感じたからだ。










 おまけ

 フリーダーは、眠っている石動を見ていた。


「……」


 不意に、自宅兼事務所に入り浸る鳥の悪魔を思い出した。
 『自称石動の妻』が石動の寝床に潜り込んで幸せそうな顔をしていた…。
 フリーダーは、しばし考えてから石動の寝床に潜りこんだ。
 女性型造魔は、主の近くにいる安心感を感じた。


「……」


 無愛想な主は、面倒だと思いつつもそのままフリーダーを寝かせた。
 そしてその相棒は……。


『……せっきー、恐ろしい子!!』


 驚愕しながらビデオ撮影を行っていた。







あとがき。
サマナーは……大天使や魔王を戦っても、生身でアパッチ等の兵器と戦う無茶なんてしません。
何、変形する戦艦に生身で戦ったサマナーがいるって?
こまけぇこたぁいいんだよ!



[7357] 第3期 第26話 9月6日更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/06 23:24


 暗闇の中で涙を流す少女が一人……。
 儚げで陰気な雰囲気を漂わせている。
 もし、早乙女達が見れば、写真で見た『鳩村 カナ』その人であると気がつくだろう。
 

「いや……殺したく……ない」

「我侭を言わないでくれたまえ」


 スーツを来た青年が暗闇から現われ、鳩村の頬を撫でる。
 鳩村は怯え、青年の手を振り払った。
 スーツの青年は、肩をすくめてポケットからサングラスを取り出して顔にかけた。
 蛇のような陰湿な瞳を隠す為に……。


「もう君は戻れない……。
 人を殺した!
 まあ……優秀な君を虐げた愚民の命など塵芥だけどね。
 それに……お前は醜い蜘蛛、喰人『アルケニー』なのだからな!」


 青年に重い事実を突きつけた。
 鳩村は、虐められ、追い詰められていた……。
 片親だけであり、弱気な彼女は……学校では格好の獲物でしかなかった。
 彼女は、教科書を盗まれたり、切り刻まれたり……校舎の影で殴られるのは毎日だった。
 だが、学校は問題事を避けようと見て見ぬ振りを行っていた。
 最後に到っては、万引きや売春を協力するように強要されていた。
 流石の彼女もそれを拒絶した。
 その後は、リンチを受け使われなくなった体育倉庫に押し込められた。
 丸三日間……誰にも発見されなかった。
 彼女は、餓えと渇きに満ち溢れた……そして、絶望で押しつぶされそうになった時……彼女は声を聞こえた。


『闘え……喰らえ……!!』


 彼女は、その衝動に耐え切れなかった。
 気がついた時には体育館の床は血まみれになっていた。
 鳩村の姿は異形に変わった。
 腰から4本の脚が生え、肘と踵には刃が飛び出ていた。
 全身は鎧のようになっており、身体の色は濁った赤色であった。
 顔は蜘蛛を模した仮面を被り、口元は白い彫像のようになった人間の唇が露になっている。

 アルケニー……ギリシャの悪魔で、ギリシャ読みではアラクネという。
 元々はアラクネという美しい少女で織物を得意としていた。
 だが……アラクネは、自分の腕前がアテナよりも上であると公言したためにアテナの不興を買い、アテナと勝負することになった。
 優れた織物を作ったアラクネだったが、ゼウスの奔放な恋愛を織り込んだ絵柄であったため、アテナは激怒して作品を引き裂き、アラクネを打ち据えた。
 アラクネは、悲しみのあまりに自害したが悲劇はそれだけで終わらなかった。
 アテナは……自害したアラクネの遺体に呪いをかけたのだ。
 アラクネは
 
 話は脇にそれる……ギリシャ神話で狩人の青年が狩りをしている時、運悪く女神アルテミスが水浴びしている所を目撃して怒りを買ってしまい、動物に変えられてしまった。
 更に運の悪い事に……彼は狩猟用の犬を連れていた。
 自分の主人を獲物と思い、猟犬は主を食い殺してしまった。
 神々の怒りを買い、動物に帰られた悲劇は神話を紐解けば多く存在しているのだ。

 閑話休題。
 その後、彼女を発見したのがこの青年であった。
 彼女を保護し、現在に到っている。
 だが……親切で保護したわけではなく、協力を要請されているのであった。


「君は、人間には受け入れられない。
 でも安心したまえ。
 我々は受け入れよう。
 そして君のような喰人が生きられる世界を作ろう!!
 だから……君も協力したまえ」

「私は……殺したくない……。
 殺したくなかった!!」

「時間はたっぷりある。
 君を救えるのは僕達以外に存在するかどうか……良く考える事だ」


 青年は、そう言い残して闇の中に消えた。
 涙を流す鳩村……だが、誰もその声に応える者はいない。
 










 おまけ 『じはーど』


 『魔王バロール』と『闘鬼クー・フーリン』が珍しく激論を交わしていた。



『ちっぱいちっぱい!』

「なぁにを言うか!
 永き年月でも色あせぬ黄金の価値……それがおっぱいじゃ!!」

『ぶっちゃけ、生前で飽きろ程喰った!
 だからちっぱいにはこの日本で培った『ワビ・サビ・モエ』に通じるモノがある!』

「ケルト人がそんな事を言っても説得力はないワイ!」

『来るか巨乳派(アークエネミー)!』

「やるか貧乳派(邪教徒)!」



 石動は、無言でルーグ当てに伝言を飛ばしてから部屋に帰っていった。







おまけ 『敵に回したらいけない!!』


 これは少し未来の話……。
 九鬼と石動、そして梁衣と桃井がニュクスの店で飲んでいた。
 桃井の卒業祝いである。


「怖い二人がお揃いね」

「私は物騒な事はしたくないんですがね」

「俺より恐ろしい奴がいるだろうに」


 ニュクスの言葉をやんわりと否定する九鬼。
 桃井は、石動の言葉に疑問を持った。


「石動先生より怖い存在ですか……」

「九鬼だって同じように思っているはずだがな」

「それは……?」

 
 梁衣も興味を持ったようだ。
 疑問の答えを九鬼と石動は同時に答えた。


「「原野(君)と香我美だ(さんですね)」」

「悪魔交渉人に、警視庁の電子犯罪のエキスパートですね」

「九鬼の旦那は恐ろしいが……それとは別次元だ」

「銀行口座を凍結したり、何時の間に指名手配になったり……。
 社会で生きる上で必要な部分に攻撃できますからね」

『(トーキョーN@VAで社会戦・電脳戦を仕掛けられた時に怖さが解るよ…)』


 落ち?ないよ。





あとがき
もっとえげつない表現を!
自分で書いててヒく位に!!と逝けないのが残念。
ライトな書き方しかできないな~。



[7357] 第3期 第27話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/06 23:13

「助かったわ……、私じゃ出入りしにくい場所だったから」

「情報収集の為とはいえ……」

「面倒だった……」


 梁衣と桃井は、草臥れたのは無理も無かった。
 男性向けの店(桃井の年齢なら本来入ってはいけない場所)に情報に当っていたからだ。
 慣れない場所であったが、二人とも表情に出さずに情報収集に当ったのだ。
 もちろん、喧嘩を吹っかけてくる者や口説きに来た者(同性もいたが)がいて、その対応で精神をすり減らしたのであった。
 その甲斐があったらしく、桃井が情報を漏らした。


「不況で倒産した会社のビルへ入っていった男女がいたようだ。
 そのうちの一人が鳩村だったようだ。
 なんでも、制服が血まみれだったようだが……」

「ん……スマン、叔父からだ。
 電話に出てくる」


 桃井の話の途中で携帯電話が鳴り響き、梁衣が電話の応対をした。
 しばらく言葉を交わしていくうちに、鎮痛な表情になった。
 

「解った、出来るだけの事はします……」

「梁衣……」

「女子生徒の遺体から記憶を引きずり出す事に成功したらしい。
 悪魔の読心術を応用した新技術らしいが……今の技術では引き出せるのは死に際の断片的な記憶だけらしいが犯人を捉える事はできたようだ。
 犯人は鳩村カナ……『喰人』になったようだ」


 その言葉を聞き、桃井と早乙女は沈黙した。
 深刻な問題であるからだ。
 喰人は……肉体は悪魔でも精神は人間である。
 鳩村は、暴走して虐げた女子生徒を惨殺してしまった。
 そして、その事件は社会に明るみになってしまった……。
 早乙女は、梁衣に問う。
 

「ねえ、梁衣さん。
 やりきれないわね……」

「そうだな。
 殺人、いや過失致死を犯したわけだが……あの殺し方では事件を普通に裁判するわけにもいかない。
 それが……気の毒だ」


 梁衣は、腕を組みながら目を瞑る。
 言葉をそれ以上ださず、深い呼吸を繰り返していた。


「それって……」

「早乙女……、裁かれない方が苦しい場合がある。
 罪の意識を自分だけで向かい合う事は、重い事だ。
 ……もちろん、罪悪感を持たず逃れようとする奴がいる。
 俺は、そんな奴は許したくない」

「桃井君……」


 桃井の最後の言葉には強い意志が篭められていた。
 深い悲しみ……そして静かな怒りを身体からこぼれない様にしているかのように、桃井は強く拳を握り締めていた。
 早乙女は、そんな桃井を見つめていた。


「警察か……法学部志望か?」

「そう思っていた……。
 だが、この身体になってその事を考えるのを忘れていた」

「現状を打破する為に必死になるのもいいが、未来を見据える事を忘れてはならない。
 もし望むなら叔父に話を通すから聞いてみるといいだろう」

「すまない……」


 梁衣が桃井に対して将来の手助けになる紹介と……そして思いつめた心を解そうとする気遣いをしている事を桃井には理解していた。
 桃井は、その姿勢から『偽者ではない、本当の人間の優しさ・思いやり』という物を感じた。
 

「さて、話を脇にそらしてすまない。
 では早速その場所へ赴く事にしよう」

「そうだね、桃井君!」

「ああ……。
 荒事にならなければいいがな」









 おまけ 『フリーダーの思い』


 映画を見ていたフリーダー……その内容は『母を失った父と娘の家庭劇』であった。
 父親が娘に愛情を注ぎ、素直に育っていく……。


「おとうさん………か」


 石動に頭を撫でられたり、抱えられたりする事を想像するフリーダー。
 本来、造魔の心は虚ろな物である。
 だが……通常とは違うアプローチで製作されたフリーダーには心が生まれているようだ。
 そして……主である石動へ父性を求めているようだ。


「(父の日というのがあるそうだ……。
  こんどマスターに……)」


 石動の事を思い、微笑むフリーダー。
 その姿はまさしく、父を思う娘の姿であった。






あとがき
仮面ライダーWの出来はいい一話目だったので期待。
主人公がハードボイルドのなりそこないで……どう立ち回るか楽しみ。
みなぎってきた。




[7357] 第3期 第28話 
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/09 00:54


 情報を得た場所に行くと案の定、空気が淀んでいた。
 異界化する寸前であり、桃井と梁衣も建物の中に喰人の気配を感じており、情報は間違いなさそうである。
 早乙女が襲ってくる男に竹刀で逆胴を叩き込む。


「胴ッ!!」

「が……!!」

「お嬢、見事!」


 崩れ落ちる男と早乙女……。
 小柄な猿顔の男……佐助も早乙女を褒めながら次々と相手に手刀を撃ち込む。
 梁衣や桃井、そして早乙女の仲魔であるバロール、キクリヒメ、ラミアも闘っている(ちなみに和也はウーリから雑用を命令されているので欠席)
 順調に奥に進んでいると……黒いゲル状のなにかに顔面のついた悪魔が現われた。
 その大きさは広い通路を大きく阻むほどでワゴンの自動車クラスの大きさであった。
 石動に知識を叩き込まれた早乙女が目の前の悪魔の正体に思い至った。


「えーとブラックウーズだっけ?
 たしか合体にしっぱいしたら出てくるんだけど」

「どちらにせよ悪魔が出だした時点で本番のようだな、桃井」

「ああ……油断せずにいこう」


 早乙女の指摘は、まさしく正しく……ブラックウーズ(黒い軟泥と言う意)は、その名の通り黒色のスライム状の悪魔で、合体を失敗した時に現れる事もある。
 ここにいるのは、巨大な悪魔を作り出すために失敗したのだろうか?
 桃井はバグ・ナクを装備し、梁衣は背中のリュックから儀式済みのメイスを取り出す。
 そして早乙女は竹刀を棄てて剣の柄を取り出し気を込めて装備を雷神剣に変えた。
 喰人になるとMAGの消耗が激しい……だから桃井達は消費を抑えるべく武装している。
 それに対するブラックウーズは物理に強い傾向にある。
 だが……。


「たまにはロリコンもいいよね!!」

「今よ、一斉攻撃!!」


 バロールがニッコリ笑って目から火炎魔法を飛ばした。
 命中したブラックウーズが大いに怯んだ。
 怯んだ隙に叩き込む打撃は普段よりダメージを倍化させる。
 さらに三方向から叩き込む為、さらに威力が上がる。
 その結果、短時間でブラックウーズを沈黙させる事に成功した。 
 奥から腐敗臭が漂う女性たちが現れた。
 肌の色はどす黒く濁っていたり、土気色になっていたりと……何れも健康そうな肌色でなく、生気のない黄色い眼球で口から涎をたらしていた。


「……梁衣、次が来た!!」

「ゾンビという奴か!?
 ……酷い事を」


 どのような経緯で亡くなったかは不明だが、屍鬼となって彷徨う魂は倒さない限り救いはないだろう。
 早乙女達が切りかかろうとした時、佐助が腕で制止した。
 佐助が彼女達の周り四方に針を投げた。
 そして、精神を統一させて真言を唱える。
 手を座禅を組む時のように母指の先同士を当て、そのほかの指は互いの指の間に隙間を埋めるように行っている……。
 手の印は、法界定印(申……つまり猿)……胎蔵界大日如来を表すもので仏と人が一体の世界を表している。



「オン アビラウンケンソワカ 
 オン バザラ ダドバン……」 


 女性のゾンビ達は光に包まれ、浄化された。
 ラミアとキクリヒメは呆気に取られた。


「そんな技を隠していたとはね」

「(元)ベナンガルの癖に生意気ね!」

「なにいってんだよ……これは元々……」

「佐助?」


 佐助が語ろうとしたが、止まってしまった。
 心配になった早乙女は、思わず声をかけた。
 その声に気がついて佐助は首を振った。


「なんでもない……。
 (なんだ……なんでこんな技を知っていた!?
  幻魔『猿飛佐助』にも妖精『ベナンガル』でもこんな技はもっていない!
  俺は……どうなっているんだ!?
  何者なんだ……俺は……)」














 おまけ 『先輩』

「いい、自信を持って!
 ダイジョウブ、今なら男なんてノウサツよ!」

 
 先輩がそんな風に励ましてくれた。
 悪魔の同族である『先輩』は凄いんです。
 普通の同属より修行したりお香を使って凄く強いし、優しい。
 それに……美人で、面倒見がいいから『先輩』を尊敬しているんです。
 彼女以上の同属は……十四代目『葛葉ライドウ』って人の仲魔になった大先輩くらいしかいないのです。
 そんな『先輩』に教えを受けるなんて私は幸せモノです!!

 そして問題なく『初仕事』を終えました。
 『ろりこん』という人種で、私の姿を見て鼻息を荒くしていました。
 無理やり押し倒そうとしているけど、悪魔の私にとっては簡単に振り払えるけど、最期の楽しみだから途中まで好きなようにさせました。
 でも最後の一線を越える前に、豚さんの耳から私の舌を入れました。
 凄く気持ちがいいみたいで……すっごく大きくなったの。
 そして美味しく脳みそを食べました。

 この嬉しさを先輩に伝えたいと思いました。
 そして普段住んでいる場所をニュクスさんから聞いてやってきました。
 そうしたら……



「むー!!」


 !?


「えへへへ……せっきー」



 『男なんて簡単にメロメロよ!』と言っていた先輩が……。
 男の人にメロメロにされていました。
 





 おまけ 石動語録

もし敵が『俺は地獄を見た……』と言って吼えたとき(はいはい、苦労自慢乙)。


「地獄……?
 そんな住み心地のいい場所にいた事を言ってもな……!!」

『ま……確かに巧や俺には生ぬるいがな!』

(そりゃあ……ねえ?
 でも普通の人間には地獄はキツイはず)


 
おまけ2 『ラームジェルグが仮面ライダーWを見たようです』

『……俺達は、時代を先取りしていた!!』

「……」

『ほら、2人で一人だし!
 はーどぼいるど探偵だし!!
 社会の裏の敵と戦っているし!!!
 せっきーは、悪魔に相乗りする勇気ある人だから!』

「……」

『せっきー、本編の出番が欲しいです』

「諦めたら試合終了でございます、ラームジェルグ様」
 
「フリーダー、甘やかしたら駄目だ」



[7357] 第3期 第29話 
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/11 10:06

 桃井達が奥に進むと、泣き崩れている鳩村がいた。
 憔悴しきっており、絶望に満ちていた。
 早乙女が努めて優しく語りかけた。
 数々の事件に遭遇した彼女は、この手の相手へ対応の仕方も理解しているようだ。


「鳩村カナさん……でいいわよね」

「何の用なのよ……もう、放っておいて」


 佐助が横でペットボトルのミネラルウォーターを飲み始めた。
 わざと飲み干す音を立てたり、満足げな声を出す。
 その様子に思わず佐助へ視線を向けた鳩村。
 長く泣いていたためか、喉が渇いた様子であった。
 早乙女は、鞄から冷えたミネラルウォーターを取り出し、鳩村に差し出した。


「……まずはこれを飲んで。
 大丈夫、今……外の悪魔はやっつけたから、余裕はあるわ」

「はい……」

「飲み終えて落ち着いたら何があったか話してみて、力に慣れると思うわ」


 そう、これは早乙女の策であった。
 早乙女は、鳩村が長く閉じこもった状態で、何も飲んでいない状態であると容易に推測できた。
 そこで佐助に水を美味そうに飲んで見せて、水分を不足した状態の鳩村に水を飲ませたいという欲求を持たせる。
 物欲しげな視線を見せたのを見計らって早乙女は水を差し出す。
 鳩村が水分を補給して欲求を解消させる事で彼女の精神安定に成功したのであった。
 鳩村は、ぽつりぽつりと事情を説明し始めた。
 早乙女達の想像通り、虐待を受けた鳩村は、喰人の覚醒で暴走したらしい。
 そして、その弱みを突いた男も喰人らしい(喰人状態の姿は見せていない)。
 鳩村は、自分は罪を犯しており、人間でない自分は受け入れられないと語った。
 語るうちに涙を流し、感情を爆発させていた鳩村は、周りに当り散らした。


「……」

「あ……」


 早乙女は、それでも優しく鳩村の手を握った。
 桃井が、鳩村へ語った。


「確かに……人を殺めたのかもしれない。
 だが、それは過失だ……。
 明確な意思を持って殺している俺と違ってな」

「桃井君!!」

「……」


 思わず早乙女が叫んだが、梁衣が無言で制した。
 桃井は、正当防衛とはいえ……人間でなくなった特別な麻薬の中毒者や喰人を殺している。
 だが……、


「完全で人間で無くなった奴等は、もはや法の範囲で処理できなくなって、俺は裁判は受けることはないらしい。
 鳩村も……裁判を受けることはないだろう、仮にあっても過失致死で無罪の判決になる事だろう。
 だが……遺族や周りにとっては、事件に蹴りがつくことはない。
 闇に葬られていく……」


 桃井の言葉を噛締めるように受け止めている鳩村。
 さらに桃井は続けた。


「鳩村……お前も罪を持ったまま生きる事になる。
 だが、お前にも力がある……。
 お前と同じように表の世界で済まされない事態に巻き込まれた人達に手を差し伸べる事が出来る筈だ」

「私が……」

「そうだ……力、血、そして狂気に飲まれなかったお前なら出来る、お前だから出来る事だ」

「桃井君……」



 皆、厳しい言葉桃井が自分自身に突きつけているように見えていた。
 そして早乙女には、桃井の祈りに似た思いを感じていた。
 厳しさの中に優しさを秘めた桃井の手が鳩村に差し伸べられた。


「身体が人でなくなっても、心は人だ……。
 俺や梁衣も……お前と同じ喰人だ。
 この世界の真実は、この国の上は知っている。
 だから……俺達のような人間を受け入れる用意もしている」

「……生きて……いいの?」

「ああ」


 鳩村が問いかけた時、一度も目をそむけずに手を差し伸べ続けた桃井。
 その行動が鳩村の心を溶かした。
 そして彼女は、桃井の手を取ろうとしていたその時……


「!?
 危ない!!」


 突然桃井の横から気配が生じた。
 早乙女達が知覚できず、『突然現われたように』感じた。
 眼鏡をかけた青年が桃井に銃弾を浴びせようとしていた。
 突然過ぎて、桃井ですら反応できなかった。
 だが……鳩村は、丁度見える位置にいた。
 鳩村は、全速で動くべく全身に力を込めた。
 彼女の姿が変わり、桃井を庇った。
 銃声が鳴り響く。


「鳩村……鳩村!!
 しっかりしろ!!!」

 
 桃井は、鳩村を抱え起こした。
 心臓や肺に数発撃たれた鳩村は、力ない声で答えた。
 

「……見て……私……私……醜くない……。
 醜…い蜘蛛じゃ……なくな……た」


 鳩村は……致命傷を負っていた。
 だが……悲しみも痛みも感じていなかった。
 全身が昆虫の殻のようなモノを纏った蜘蛛でなく、美しい衣を纏った女神のような姿に鳩村は変化していた。
 醜い喰人『アルケニー』でなく……美しき機織娘の化身である『アラクネ』となっていた。
 

「ももいさん……」

「気をしっかり持て!!」

「あ……り…が……」


 最期の言葉を言い切ることなく鳩村は力尽きた。
 














 おまけ その頃の石動。


 ホテル 業魔殿・海外支店にて……。


「完成した……私とウーリの合作の造魔だ、受け取るがいい」

「ああ……感謝する」


 船長のような服相をし、杖を突いた男が石動に語りかけた。
 石動は、表面上は冷静だが、新たな仲魔を得た事に対する高揚感を感じている。


『よっしゃー!』

「弟……」


 ラームジェルグも自分のことのように喜び、家族愛に目覚めた(?)フリーダーも嬉しそうであった。
 ベルタンから依頼を受けて手に入れた造魔素体から新しい悪魔が生まれた……。
 ヴィクトルが新式造魔の説明を行っている。


「これはフリーダーと同じく、お前でも使えるように調整してある。
 だが、フリーダーと違い機械式だ」

「ほう……」

「ナチス……いや、『ナチスと噂された軍勢』の使っていた兵器や『自衛隊で試作された機動兵器』、そして『警視庁に採用されなかった警備ロボ』等を参考にした。
 変形機能つきで火力・機動性は自信を持って薦められる」

「それは……面白い」


 石動は、新しい造魔へ視線を向ける。
 悪魔と造魔素体と高性能CPUおよび重火器を纏めて合体させ、周りの視界は霧が張っており、視界がはっきりしない。
 だが、石動より大きい体躯をした人型がうっすらと見えている。


「名前は?」

「決まっていない……石動巧、お前が決めろ」

『待った!
 ここは俺が決める!!』


 ラームジェルグは、途中で口を挟んだ。
 石動がため息をついて言った。


「以前言ったアレなら却下だ。
 考えてつけろよ」

『ありがとよぉ~!!
 名前は……』


 こうして、新たな仲魔を得た石動であった。





[7357] 第3期 第30話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/12 10:58



「三文芝居は終わったかい?」


 眼鏡をかけた青年が桃井達に語りかけてきた。
 梁衣が静かに問う。


「何者だ……?」

「人間の頃の名前に価値はないから棄てた。
 僕は、『ヨグ=ソトース』の化身さ……。
 この喰人の戦いを征する者さ」


 青年は、両手を高々と上げた。
 早乙女が不意打ち気味にスローイングダガーを取り出し、『ヨグ=ソトース』へ投擲した。
 青年は気がついた時には、ナイフが眉間の前だった……。
 早乙女も先手が取れたと確信していたが……。


「怖いな……でも僕には通じない」


 いつの間にか、ナイフがヨグ=ソトースの手に握られていた。
 神の化身を名乗る者は、ナイフを一通り弄ぶと地面にナイフを棄て、指を鳴らす。
 四十体近くの悪魔が現れた。
 首なしの騎士『デュラハン』、腐敗している食人鬼『グール』、黒い象の顔を持つ邪鬼『ギリメカラ』……潜入してから交戦した悪魔より強い存在であった。
 
 デュラハンは「首なし騎士」とも呼ばれており、文字通り首の無い騎士で、首無し馬に跨った不浄にして不死なる存在である。
 「死を予言する者」、または死神のように、人間の魂を刈り取る存在であり、倒した時に普通は消滅する首は、錬金術の素材として高級品である。
 本来は……デュラハンとは、アイルランドに伝わる女の姿をした首の無い妖精であった。
 コシュタ・バワーという首無し馬が引く馬車に乗っており、片手で手綱を持ち、もう一方の手には自分の首をぶら下げている。
 バンシーのように「死を予言する存在」であり、近いうちに死人の出る家の付近に現れると言われている。
 そして戸口の前にとまり、家の人が戸を開けるとタライにいっぱいの血を顔に浴びせかける。
 だが、この本来のデュラハンを現世で見かけることはなく、前者が一般で認知されている。
 前者は日本の『首なしライダー』と同種の悪魔であり、後者と似た部分が在る為、混同されてしまい現在に到っていると研究者の間で推測されているが、真相はまだ明ら

かにされていない。

 グールは、砂漠に住むとされるアラビアの食人鬼でジンの一種とも考えられている。
 唯一神アラーの名を唱えると退散すると伝えられている。
 ヨーロッパに伝来して、人間の屍を喰らう食屍鬼とされている。
 これにも色々な種類がある……アンデッドである種族はわりと有名である。
 現世と夢の世界(ドリームランド)の両方に存在するグールは極めて不気味な存在である。
 このタイプは死体が主食であるが……生きた人間を襲うとも言われている。
 知能が低く、社会を形成していないと言われていたが、グールの主神であるモルディギアンを信仰する『伝統派』、ニャルラトホテプを信仰している『背教派』があって

、生きた人間を襲うのは後者であると解明されている。
 また、人間が人間の死体を食べ続けるとグールへ変貌を遂げてしまうケースもあり、人間語を操ったり人間へ変身人間とグールは種族的に近い者があるのかもしれない。
 その証拠に、人間の子とグールの子が入れ替えて育てられている事件が多く発生している事がその証拠である。
 この仮説を証明するにはまだ多くの時間が費やされる必要があるだろうが。

 ギリメカラ……、仏敵マーラの乗り物である黒い象の姿をした悪鬼である。
 ヒンズー教の聖獣アイラーヴァタが、インドと宗教的対立のあるスリランカで邪悪な魔物とされたものである。
 その特徴は、物理攻撃を反射することが有名であり、デビルバスターにとっては鬼門であると言えよう。
 弱点は、物理以外の攻撃であり、魔法を使うとよいとされている。

 青年は、笑みを浮かべながら去っていった。
 

「ふふふ……僕は荒事向きじゃないからね、ここで失礼させてもらおう」

「く……」


 去っていくヨグ=ソトースを阻むように悪魔達が立ちはだかる。
 早乙女が、静かに言った。


「二人とも先に行って」

「しかし……」

「解った」


 梁衣が難色を示したが、桃井が早乙女の意見を受け入れた。
 早乙女の様子が自信のあるものであったからこそ、桃井は受け入れた。
 早乙女は、二人の助言を与えた。


「ヨグ=ソトースを名乗ったアイツは……多分、時間を加速……最悪の場合は停止することが出来るんだと思う。
 だから……」

「任せろ……」


 桃井は、頷いた。
 彼の中で怒りが渦巻いていたが……それ以上に思考が冷えていた。
 梁衣は、その様子を見て、桃井に付き合うことに決めた。


「まず……道は俺が作る。
 俺が通れるように整えてくれ」


 梁衣が両腕だけ喰人化し、砲撃した。
 眩い閃光が悪魔の一部を飲み込んだ。
 更にその後に桃井が駆け抜け、大ダメージを受けたが行く手を阻もうとするグールやデュラハンにバグナクで切り裂いた。
 桃井の下腿部のみが喰人化しており、人間状態では出せない速度で桃井は疾走していた。
 早乙女も仲魔を召喚して援護し、桃井と梁衣が包囲を突破した。


「これでよし……」


 一息ついた早乙女の背後に近づく存在がいた。
 数体いるギリメカラの内の一体であった。
 彼の思考では、駆け出しのデビルサマナーと思われる人間の娘は格好のカモだと思っていた。
 物理攻撃のみで、弱い女……美味い餌と思っていた。
 喜びを隠しながら蛮刀を早乙女目掛けて振り下ろした。
 だが……


「!?」

「不意打ちにしては、お粗末ね」


 早乙女は、解っていたように振り返ることなく横にステップを踏んで避けた。
 さらに……


「キクリヒメ!」

「はいな!
 疾風真剣!!」


 早乙女の雷神剣が風を纏った。
 神速の連撃が早乙女を襲ったギリメカラを襲う。
 さらに……雷神剣の一撃は拡散する。
 一息で苛烈な連撃を浴び続けギリメカラとそのとりまきのグール達は絶命した。
 さらに……下半身が蛇の美女であるラミアの尾撃が纏めて吹き飛ばした後に、単眼の魔王が老紳士から悪魔の姿に変わり火炎魔法で焼き払う。
 ギリメカラは、首筋に針を撃ち込まれて信じられぬ表情で絶命した……物理攻撃を完全に封じる能力すら打ち破る甲賀の忍び……猿飛佐助の技量は恐るべきものであった。



 生き残った悪魔は漸く気がついた。
 早乙女は、足止めをしてから撤退するわけでも……ましてや死ぬつもりがないことを。
 彼らは……子羊を相手にしたつもりだったが、彼女はそんな可愛げのある存在ではなかった。

 『石動巧の愛弟子』

 そう、どんな敵にも心折れることなく剣で立ち向かう男と同じく、早乙女も困難に立ち向かう存在なのだから。









 おまけ 今日のラームジェルグ。

「……おお、ドロワーズ!」

「ドアマースです!!」



 モノクロのモミアゲ書生のプロマイドを凝視してため息をついていた悪魔に声をかけていた。
 犬型の獣人で、綺麗な毛並みの女性型悪魔だ。
 ラームジェルグと同郷の悪魔でケルト神話では死の国を守る犬であるらしいが……。





[7357] 第3期 第31話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/14 09:06


 ヨグ=ソトースは、楽に逃走できると考えていた。
 あの人数では並みの喰人では2体がかりで倒すのが精一杯であると考えていた。
 あれらを一人で倒せるのは『同盟者』である『奴』のみだと。
 追ってきたとしても弱い自分に当てる為に『か弱い人間』が来るだろうと……。
 だが……


「追いついたぞ……ヨグ=ソトース」

「……」

「くっくっく……君たちは賢いなぁ。
 人間を犠牲にして僕に会いに来るなんてな」


 やってきたのは喰人である二人だった……。
 予想外だ……。
 大柄でないほうの男が挑戦的に言い放つ。


「あの程度の雑魚は自分一人だけで十分だそうだ。
 ……次々と動いている存在が少なくなっているみたいだな、このペースならすぐだな。
 お前を野放しにするつもりは……ない」


 ……まあいい。
 二人纏めて始末してしまえばいい話だ。
 邪神の化身には未だ『二つ』の切り札があるのだから。


















「ふふふ……君たちは僕には勝てないよ。
 僕は邪神ヨグ=ソトースの化身だからね!
 格が違うよ、格が!!」

「お前自身はどうなんだ?」


 桃井は、鋭い視線で相手を観察しながら言った。
 必殺の一撃を叩き込むまでは、怒りを心の奥に封じ込め、冷静であろうとしている。
 ヨグ=ソトースは、言わんとすることが理解できていなかった。


「なんだと?」

「お前が憑いている存在は解った。
 だが……お前自身であってお前自身の力でないものだ。
 お前自身の資質はどうだ?」

「……!!」

「お前が本当に強いのならば徒党を組まずに暗殺を繰り返すだろう。
 実際行っていないのは、正面きって戦うのに向いていないタイプの喰人だから……違うか?」


 真実を見抜かれたヨグ=ソトースの表情が歪む。
 更に梁衣が言った。
 彼もまた、相手の弱みに付入った上に役に立たないと判断したら始末するやり口に怒りを覚えていた。


「喰人は、分霊と自身の心にある力をあわせた存在……。
 力が小さいという事は、それだけ大した力が無いのだろう。
 逃げたければ逃げればいい」


 プライドの高そうなヨグ=ソトースを挑発して逃げ道を断った。
 『時間停止』。
 たとえ純粋な力が低くてもあまりあるアドヴァンテージが相手にはある。
 だが、梁衣と桃井は策を練り上げていた。













 ヨグ=ソトースは、喰人に変身した。
 その姿は、全身が『ガス状の何か』に包まれた人型であった。
 姿がはっきりしない胡乱な存在で……子供の落書きにも見える。
 だが……ヨグ=ソトースは、狂気と邪気に満ちていた。


「くっくっく時よ……なっ!!!?」


 ヨグ=ソトースの時間停止には欠陥がある。
 地力が低い為に極々短時間しか使えないことと、そして……発動に集中がいる上にタイムラグが存在することである。
 時を止めようとした時、梁衣が喰人『オルトロス』へ変身して、両腕の砲門と全身に搭載されている生体ミサイルを一斉発射した。
 梁衣の移動速度は喰人の中でも早い部類ではないが、攻撃の隙はなく、一瞬にして空間を弾幕で埋めていく。


「ぐ……!!」


 ヨグ=ソトースは、慌てて避ける。
 知力は高い方で、弾道予測はある程度できるが、どうしても避けられないものがある。
 それを一瞬だけの時間停止で切り抜けたりするが……そのお陰で梁衣達へ反撃できない。
 ヨグ=ソトースが避け続ければすぐに息切れするとタカをくくっていたが……。


「うおおおおおおお!!!!!」

「(なん……だと……!?)」


 息切れどころか、更に梁衣の弾幕の濃度が増していく。
 一発一発の威力も高く、掠るだけでヨグ=ソトースのダメージが蓄積される。
 驚異的な力を持つ梁衣にヨグ=ソトースは脅威を持った。
 

「(単純な打撃力なら『奴』が上だが……。
  広範囲かつ強大な攻撃力をもっているという点ではこっちのほうが厄介だ!!
  こちら側に引き込めないのが痛いな……)」


 だが、更なる驚愕がヨグ=ソトースに襲う。
 肩に灼熱感を感じたヨグ=ソトース。
 悲鳴を上げたくなるのを堪えると、視線の先に桃井が喰人『スパルナ』となって梁衣の弾幕を潜り抜けながら接近していたのだ。
 空間認識力の高さと驚異的な敏捷性……なにより、弾幕を潜り抜けるための勇気が無ければ出来ないことだ。
 もしパターンを決めれば安全だろうが……ヨグ=ソトースに見切られることだろう。
 それ故に、梁衣は全力で殺しにかかっている。
 美しき翼の化身であるが……今のヨグ=ソトースには死神でしかない。


「(馬鹿な……!!
  こいつ等、イカれている!!?)」

「ようやく捉えた……!!」 


 怒りを奥に封じ込めた桃井の声は重い。
 桃井は目まぐるしく動いており、ヨグ=ソトースは反撃するが容易に避けられた。
 ヨグ=ソトースは反撃の機会を待っていた。
 どちらかが瓦解すれば逃走……あるいは殲滅のチャンスが来ると確信しているからだ。
 そして、その機会が来た。

 ……一瞬だけ弾幕に隙間が出来た。
 桃井は間違いなく接近して必殺の一撃を見舞うだろう。


「今だ……時よ!!」

「(今こそ!!)」


 

















 時は止まった。
 あの弾幕の中でここまで完璧に止めたヨグ=ソトースは、間違いなく並みの喰人ではないであろう。
 膨大な弾幕の中で生き延びた勝利への執念……。
 ヨグ=ソトースは、勝利への喜びを感じた。


「まず貴……様……」


 弾幕の隙間の先にいたはずの桃井がいない。
 ヨグ=ソトースは、最初に考えたのは、桃井が時止めを読んだ事である。
 接近を避けて安全地帯に一旦退避して、時止めで消費した自分を倒しにくるのだと。

 だが、周りを見渡しても……桃井の姿はなかった。
 その時、ヨグ=ソトースの全身から脱力感を感じた。
 直後に、腹部から激痛が奔った。


「が……。
 こ……れは……」


 痛みで集中が解けて、時間停止が解除された。
 ヨグ=ソトースは、何が起こったか解らなかった。
 そして、背後から声が聞こえた。


「貴様は人を弄んだ!!
 覚悟しろ……今の俺達が血を見ずに済むと思うな!!」


 ようやく、邪神の化身は理解した。
 時を止める一瞬のタイムラグの間に、10メートルの間合いを一気に詰めた。
 それだけではない……。
 ヨグ=ソトースの腹部に風穴を開け、背後に回りこんでいたのだ。
 人間以上の感覚があるはずの喰人が知覚できない速度で。


「ば……」


 桃井の真空波がヨグ=ソトースに直撃した。
 邪神の化身は……全身を細切れにされながら彼方へと吹き飛ばされた。


「終わったか……」

「ああ……」


 ヨグ=ソトースを撃破した後の二人は、壁にもたれかかっていた。
 互いに限界まで能力を酷使した為だ。
 梁衣が桃井に疑問を投げかけた。
 

「……喰人がああいう奴ばかりだろうか?」

「さあな……だが、これだけは言える。
 どんなに姿を変えようと、どんなに力を得ようと……。
 行き着く果ても『ヒト』だ」

「……そうだろうな……」


 遠くから早乙女達の声が聞こえてきた。
 桃井達は、漸く一息つけることだろう。


































 数日後……。


「……」


 『ヨグ=ソトース』は目覚めた。
 全身を細切れにされた体は元通りに修復されている。
 

「ここまで派手に殺されるとは……『奴』以来だよ、まったく」


 邪気に満ちた笑いをするヨグ=ソトース。
 彼がもう一つの特性は『不死』。
 ヨグ=ソトースそのものは過去・現在・未来の全てに存在している。
 喰人『ヨグ=ソトース』は大ダメージを受けた時、本体から組織を補填して再生する。
 弱い分霊を宿しているからこそできる業であった……強大な分霊を持っていた場合は、異変に察知したヨグ=ソトース本体が何らかのアクションを起こす可能性があるからだ。


「……だが、次はない。
 この戦いの勝者はこの僕だからね!!」


 ヨグ=ソトースは邪悪な笑みを浮かべた。






[7357] 第3期 第32話 
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/17 13:44

「せ、先生!!?
 ふえ~ん!!」

 
 石動探偵事務所にやってきた早乙女の目に、三白眼の探偵とその仲魔である女性型造魔……そして石動の相棒である守護霊がいた。
 女性造魔であるフリーダーの外見は……整えられており、ラームジェルグがこういうほどであった。
 
 
『うん、可愛い。
 女神様って言っていい……もっこす様じゃなくて良かった」

 
 まあ、高評価なのだ。
 早乙女は久しぶりに会った師に涙目になってすがり付いていた。
 だが……、


「スマンが仕事だ。
 中国へ忘八についての調査に行って来る」

『まさか風間の旦那だけじゃなく公安長官からお願いされたらね~』

「喰人の関係が解るかもしれませんので」


 三人が突きつけた現実は非常に非情であった。
 早乙女の目から涙が止まらなかった。











「まったく無理をしたもんだな」

 
 ウーリが梁衣と桃井に薬を渡す。
 二人とも、先日の事件で限界まで能力を酷使したからだ。
 公安零課のほうでも、保護されてきた喰人が現れ始めている。
 

「……返す言葉がない」

「……」


 梁衣は、申し訳なさそうにしており、桃井も無言でウーリの言葉を甘んじて受けた。
 流し込んだ薬の味はとても苦いものであった。
 ウーリ曰く『無茶をする馬鹿には不味い薬がお似合いだ』との事。
 ウーリがさらに言った。


「今回は勝てたから良いが……不測の事態も考えておけ。
 限界も見えたから鍛える方向性も見えるだろうしな。
 それとだ……。
 確かに内包していた能力もあるだろうが、所詮『喰人』の能力は、振って沸いたようなもんだ。
 人間本来の能力も伸ばさないと……間抜けな最期を遂げるからな」


 ウーリは、口が悪い。
 だが、和也の面倒を見ているように、悪いエルフではない。
 桃井達は、その助言を受け止めて次に生かすと決心した。








おまけ ラームジェルグの一言。


『ヨッシャー、帰国!!
 ……中国?調査?
 い、いやあああああ!
 俺の……俺の準主役ポジションがああああ!!』



[7357] 第3期 第33話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/09/18 21:48

 中華人民共和国・某所。
 一組の男女が山奥の荒れ果てた屋敷に踏み入っていた。
 男は、三白眼でサングラスをかけた黒スーツの男。
 女性は、黒い女性物の高級スーツを着ている。
 男は、厳しい雰囲気を漂わせているが、女性は微笑ましく男を見ていた。


「ここか……」

「そうよ、巧君。
 中国の腕利きの道士……だった人の屋敷よ」


 女性が一瞥した先には道士の死体があった。
 見たところによると、病で死んでいたようだ。
 蛆が沸いており、男が死体を触ったとき、容易に皮膚が破れて無数の蛆が外に出てきていた。
 女性の方も、慣れているのか、悲鳴をあげるような事はしない。


「姉さん……日記がある」


 この男女……石動巧と石神千鶴は、『喰人』の謎を探るべく、中国へ渡っていた。
 『忘八』が悪魔憑依を構成員に用いていることから、喰人も関連があるのではないかと推測した石動は中国に渡った。
 丁度その時、仕事で中国へ渡る予定だった石神が、石動に同行したいと申し出た。
 そして、石動はそれを許可した。
 今生で姉代わりである彼女には流石の石動も弱いようであった。
 石神が日記を読み始めた。


「……流石ね、この理論なら確かに人の能力を大幅に超えた力を持てるわ。
 でも人を棄ててまでなる価値はあるのかしら?」


 石動は、応えなかった。
 彼には、彼なりの考えはあるが……それを語ることはなかった。


「忘八の依頼があったみたいだけど……でも組織の命令を無視して暴走していったみたい」


 石動は、周りの資料を調べながら千鶴に話しかけた。


「ペルソナ使いの素質と悪魔憑きの素質……両方備えている者は少ないからな。
 さらに問題がある」

「問題?」

「……俺達より先に資料を読み、資料が回収した者がいるようだ」

「……不味いわね」

「ああ……ご丁寧にも悪魔の召喚陣付きだ。
 解除したがな。
 資料の追跡にかかるとするか……」


 石動達の調査はまだまだ続くようだ……。







[7357] 第3期 第34話(閑話的)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/04 11:24


 自分が人でなくなってどれくらい経っただろうか?
 長いようにも短いようにも思えた。
 その姿は漆黒の人型。
 虚無感が漂うのはまさしく自分自身であると感じていた。
 そして……自分の体には特殊な特性があった。
 一つ目は……自分は自在に姿を変えることができる。
 これは『食事』の時に重宝する。  
 もう一つは……普段は、物理攻撃を反射してそれ以外の攻撃は弱点であるが、意識すれば逆に『魔法』なる攻撃を反射することができる……もっとも、その時は物理攻撃が弱くなるが。
 持ち前の技量が合わさって大抵の事ができる。
 そのとき、子供の落書きのような存在(なんでも自分と同じように人間でなくなた存在らしい)が擦り寄ってきた。
 別にどうでもいいので好きにさせていた。
 

「ひいいい!」


 それにしても……。
 この体は燃費が悪い。
 人間の生体エネルギーが一番効率がいいのだが…。
 だからといって乱獲をすれば人間社会に睨まれる。
 ならば『いなくてもいい存在』か『いてもいないでも変わらない存在』が望ましい。
 目の前にいる存在もそのような存在だ。
 自分が軽く喉を握るだけで死ぬ。
 命とは存外軽いものだ。




[7357] 第3期 第35話 更新
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/08 01:53
 黒い人型が『食事』を終えた。
 生体MAGを吸収し、肉体が消滅して服のみが残された。
 そして、それを目撃したものが……


「……」

「何をしている……?」


 美しい鳥を模した魔人……いや喰人が漆黒の喰人と対峙した。
 そう……桃井崇だ。
 犯罪者であろうと可能な限り公正に罰せられるべきと考える男だ。
 『迷惑にならないだろう』という理由で人を狩る喰人の存在を聞いた桃井が公安零課に協力を申し出たのだ。


「……食事だ。
 迷惑にならないように選んで食したつもりだったが」

「生体エナジー協会を知らないのか? 
 MAGはそれで事足りる」

「知らなかったな……今度探すとしよう」


 そう言って去ろうとする漆黒の人型。
 当然桃井は阻む。


「……」

「……自供しておけ」

「……断る。
 私には優先するべきことがある。
 そもそも……人でなくなった我々が法に縛られる謂れはない。
 お前は……法がなければ生きられないと考えているのか?」


 漆黒の男は、機械仕掛けの人形のような無機質に語る。
 それにたいして桃井は、鮫のような獰猛さを表しながら言葉を吐く。


「確かに法は守られるべきだ。
 だがな……!!
 それは人の為に法があればこそだ!
 法のための人があるんじゃない!」


 桃井は警察官志望だ。
 そして……警察官は犯罪者に屈するべきでないと考えている。
 自衛隊を除いて日本という国で合法的に拳銃を携帯できる唯一の職業だ。
 たとえ凶悪犯であっても屈してしまったら……。
 それこそ拳銃を禁止する意味はなくなり、合衆国のように武器を取らなければならなくなる。
 だからこそ、犯罪者に対しては屈するべきでないと考えている。


「……お前の言いたいことは解った。
 だが……狩猟し得た獲物の味は忘れられん。
 邪魔をするならば糧にする。
 ……そもそも喰人は喰らい合うものらしいからな」


 漆黒の人型は構える。
 己が欲求を満たすために。








おまけ 石動の苦手なもの。


石動巧は……規格外だ。
魔人相手にたった一人で切りあえるほどに成長した。
悪魔召還は格下しか制御できないが、フリーダーや新たな造魔のお陰で戦術の幅が広がった。
余技である陰陽術・呪禁道・仙道は、専門職と遜色がない。

精神面も隙がない。
分霊とはいえ、リリスの誘惑すら退け、油断は一切なく、戦いにおいて容赦はない。

……そんな彼にも苦手なものがある。






「ほーら、おねえちゃんだぞぉ」

「千鶴姉さん……酔ってますね」

「よってないわよぉ」


 石動の姉代わりである石神千鶴である。
 『石動巧』の体を得たこの男は、彼女に負い目があった。
 それは解消されたが……それでも、苦手であった。
 石動に対して愛情を注ぐ彼女……。
 だが、甘えるという事を知らない上に、適当にあしらうほど非情でもない石動にとって、扱いに困るのが現状であった。
 フリーダーは、羨ましそうに彼女を見ていた。


「どうしたの?」

「あの……」

「そっかぁ。
 たくみくんを取られるとおもったんだ」

「え、え……その」

「だいじょうぶ。
 フリーダーも、私の妹なんだから」


 そう言って胸を張る『石動の姉』。
 酔って、箍が外れたのかもしれない。


「巧君が大事にしているんだから。
 私も大事にしたいわ」

「あ、ありがとうございます」

「(どうしたものか……)」


 益々扱いに困った石動であった。






 あとがき
 ちなみに桃井は、ロウよりのライトニュートラル。
 石動は、ど真ん中なニュートラル。
 早乙女は……ライトニュートラル。
 香我美や原野あたりはカオスよりのニュートラルといったところ。
 



[7357] 第3期 第36話(旧37話と統合)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/29 11:53
 桃井は、高速接近しながら風の刃を飛ばす。
 だが、それを避けない黒い異形。
 風の刃は全て反射した。
 桃井にとって風の衝撃波はダメージにならない。
 臆せず突撃した。
 その時、黒い異形の形が変わった。
 最初は人を模した仮面だったが、殴られる直前にその仮面はなくなった。
 桃井は、拳を寸前に止め、後退した。
 桃井が直前までいた空間に蹴りが叩き込まれていた。


「避けたか……」

「……」


 桃井は自分の直感を信じて攻撃を停止した。
 黒い異形は淡々と語った。


「……そうだ。
 お前が察した通り、俺は性質を変えられる。
 物理攻撃を反射するタイプとそれ以外を反射するタイプに。
 俺は……ドッペルゲンガーとシャドウ。
 2つの顔を持つ喰人らしい」


 自分の性質を惜しげもなく明かす。
 だが、桃井の警戒心は上昇した。
 彼の言った事に偽りはないのだろう。
 だが……。
 性質を明かしてもなお勝てる自信に満ちていた。
 相手の蹴りだけで桃井は自分と同格の技量を持っていると察した。
 そして……相手は殺人の経験があった。

 人を切れば一人前。
 剣でそう言われる様に、格闘技でも同じことが言える。
 桃井は幾度か実戦を行ったが……。
 相手はそれ以上に戦いに明け暮れていた。

 あのヨグ=ソトースが勝てないと判断した存在。
 それが……この男なのだ。


「厄介な能力だ。
 だが、それでおめおめと引き下がれるか!!」


 今まで遭遇した敵とは違って、一筋縄ではいかない強敵である。
 それでも桃井は、疾走する。
 かく乱させようと……。
 だが……黒い人型は、鉄の城のごとく、堅牢な構えを崩さない。
 風の魔弾『テンペスト』、真空波、そして拳技……全て対応され、反撃される。
 桃井は、決定的な一撃は受けていないが、ダメージは蓄積されていく。
 そして……相手にはかすり傷一つない。


「諦めろ」

「……ぐ」


 相手の拳が掠るだけで、桃井の体の芯まで響くようにダメージが行渡る。
 だが、桃井の目は死んでいない。
 さらにスピードを上げた。
 風を纏い、拳を打ち出すスピードを速めているのだ。


「無駄な……」

「どうかな!!?」

「が……」


 ドッペルゲンガーとなった男の腹に、桃井の肘撃ちが入った。
 スピードも合わさった一撃は、本来なら反射して桃井の肘が砕け散る筈……であった。
 だが……肘には疾風が纏っていた。


「疾風真剣ならぬ……疾風真肘といったところか」

「不覚だ……だが!!」


 疾風の一撃……間違いなく敵の弱点、そして隙を突いた。
 だが敵もまた恐るべき存在であった。
 拳の速度が落ちることなく、桃井に打ち出す。
 桃井はさらに避けながら超接近戦に挑む。
 風の拳が雨のように降り注ぐ。
 疾風・衝撃属性はスパルナの化身である桃井には効かないからこそできる作戦であった。
 相手が油断した瞬間に術を解き、風で加速した拳を打ち込む。
 最初の一撃のようにまともに喰らうことは無かったが、確実に黒い人型のダメージは蓄積していった。
 この戦いは無限に続くかと思われたが……。


「……人が来たようだ。
 俺は退かせて貰う」


 黒い人型は、桃井の疲労で生じた隙を見計らい、間合いをはずした。
 桃井は、追撃しようとしたが、疲労が限界まで溜まっていたらしく、膝をついた。
 黒い人型は、そのまま去っていった。
 桃井は、悔しげに拳を地面に突く。
 喰人の拳は、易々とアスファルトを砕いた。








「……世界は広いな」


 黒い人型は、変身を解いた。
 黒ぶち眼鏡をかけた灰色のスーツを着た壮年であった。
 神経質のような……いや、鋭い刃のような印象を与える風貌だ。
 いや……桃井が与えたダメージで解かされたと言っていいだろう。
 壁や道路標識を支えにして辛うじて歩みを止めなかった。
 今まで戦った相手は……此処まで追い込んだ存在はいなかった。
 これまでの『彼』にとって、この世の全てが獲物に過ぎなかった……。
 だが……。


「……油断大敵か」







[7357] 第3期 第37話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/29 11:54
 梁衣は、一体の喰人を追い詰めた。
 もはや逃げ場はない……。
 足が一本で左腕が鎚……そして単眼の喰人である。
 『一本ダタラ』。
 タタラ師(鍛冶屋)と関係が深い悪魔である。
 (一説によると、鎚を振るい続け、タタラを踏み、燃え盛る火を見続けていくうちに障害を持ったタタラ師そのものであるという意見もある)。
 一本ダタラが火炎魔法を梁衣にぶつけるが……。


「無駄だ、諦めろ」


 火炎魔法を吸収するオルトロスには無意味だ。
 だが……ダタラに秘策があるらしく、諦めていない。
 梁衣は、相手の様子を伺っていると……ダタラが懐からなにかを取り出す。
 よく見ると……骨である。


「ほーら、ワンちゃん、餌ですよー!」


 当然、梁衣が反応する分けない。
 ……重い沈黙に包まれる。
 それどころか……梁衣から怒気が噴出した。
 ゆっくりと梁衣はダタラに近づいた。


「あの……いただだだだだっだだだだ!!」


 喰人化が解けても万力のような梁衣のアイアンクローは食い込み続ける。
 ……自業自得(窃盗および破壊行為)とはいえ、哀れであった。
 公安零課の事情聴取は病院で行われることになったのだ。











「喰人になると犯罪が増えるのか?」

「なまじ力を得ると、砲の縛りなど無意味と考えるのだろう」


 不機嫌そうな桃井の呟きに答える梁衣。
 梁衣は、善意で桃井の家庭教師を行っている。
 梁衣は、H大の薬学部で成績も優秀だ。
 だから桃井に色々と教えているようだ(理系科目を)


「それにしても……犬扱いか。
 まあ犬だけど」

「……言うな」

 
 梁衣も流石にあの扱いは嫌だったらしい。
 桃井が遭遇した黒い喰人とはその後遭遇していない。
 公安零課にも知らせたが、潜伏が巧妙で尻尾を出さない。
 他の喰人が発見されるが……半数以上が犯罪へ走るものが多い。
 梁衣や桃井は、それを取り押さえるために零課へ協力することが多くなった。
 そのお陰でバイト代が多く出る。
 悪魔絡みは危険が多いが……報酬も多い。

 ちなみに……。
 並みのデビルバスターは30代で引退するものが多い。
 体力の低下で不安を感じて今まで稼いだ金で店を開くというのが一般的だ。
 悪魔召還士でも体力の低下を不安に思って早めに引退するものが多いが、悪魔のサポートもあるので引退する年代が30代後半~40代前半にずれ込む(悪魔任せにするか、術士タイプならさらに肉体的負担が小さい)。
 生涯現役で行えるデビルサマナーというのは……本当に勇気がいることである。
 (そういう意味で17代目葛葉ゲイリンはまさしく名人であったといえよう)

 








 おまけ スカアハの場合。



 PCを起動してメールを見ながらいう黒髪の美女。

 
「ふむ……石動はまだ帰れそうにないか」


 中国へ向かった石動からのメールを受け取る女神・スカアハ。
 今日もジェシカと仕事に従事している。


「そろそろ弟子でも取るか……」


 逸材を見つけるのが簡単ではないが。
 石動の場合は……同じ武人(つまり対等)で互いに学びあう関係なのであって、弟子ではない。
 某女神の弟子曰く『ババァ……げふんげふん、師匠の修行は地獄だ』と。
 今時、ついていける人間がいるのか……?
 それは誰にもわからない。


 あとがき
 まあ短くてもエターナルにならないように定期的に書かなきゃ……。



[7357] 第3期 第38話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/30 01:17
 こんにちは、早乙女さくらです。
 先生が仕事に出てからだいぶ経ちました。
 最初は平穏な日々が来ると信じていました(桃井君と会うまで悪魔の遭遇とかなかったし)。
 ……悲しくなってきました。
 でも、先生の地獄の特訓(先生にとっては普通らしいのですが……)がないだけマシだと思えば。
 ……あれ、電話?


『早乙女か?
 俺だ……石動だ』

「先生?
 どうかしましたか?」

『お前が鈍るといかんから、ジェシカに渡りをつけてもらった』

「え゛!?」

『桃井と梁衣だったか?
 あいつらを鍛える事も兼ねている。
 先達として手本を見せろ』

「………はい」


 ……誰か私を助けてください。










 石動探偵事務所に集まる早乙女、桃井、そして梁衣。


「特別講師?」

「はい、先生の相棒の師匠で……」


 梁衣の言葉に答える早乙女。
 だが、魂が抜けたように力がない。
 桃井は、そんな早乙女にペットボトルを渡す。


「ありがとう……ああ、お茶がおいしい」

「……力不足を感じていたからちょうどいい。
 早乙女の師匠の……石動だったか?
 その人が任せてもいいというのだから問題あるまい」


 早乙女の技量を知る桃井は、彼女を育てた師匠の眼力も確かだろうと推測していた。
 梁衣は、静かにオレンジジュース飲み干してから言った。
 

「そういえば一度も顔をあわせたことがないな……ここの主に」

「ちょうど仕事があったのよ……桃井君に会う前に。
 そして、喰人関連を調べる為に中国に行ったらしいの」


 早乙女は、普段は自宅の道場で鍛錬している。
 佐助たちと訓練する場合は、石動の事務所の地下で行っている。


「訓練の日程は?」

「今すぐだ」


 桃井の問いに答えたのは、黒髪の美女であった。
 武術に長けた美女……女神・スカアハが、三人に察知されること無く彼らの死角に立っていたのだ。
 これより、三人は地獄の特訓を……訂正しよう、『二人』は地獄の特訓を、誰かさんは『比較的楽な』訓練を行うことになった。





 あとがき
 短い箇所を統合したり……それでも短いな。
 ……スランプなんだろうなぁ。




おまけ


「俺だけ仲魔はずれ……」


 いやいや、残念だけど属性的に妖怪キャラかぶりなんですよ、風鬼さん。
 (譜代の鞍馬天狗がいるし……)



[7357] 第3期 第39話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/11/11 04:16
 スカアハの前で倒れ付す三人。
 だが、すぐに呼吸を整えて起き上がった。
 スカアハは少し驚いたらしく、綺麗な眉が動いた。


「驚いたな。
 思った以上に筋がいい」

「え、そうなの?」


 と、差し入れに来たスカアハの召喚士であるジェシカが声をかけた。
 スカアハは頷いた。


「ただ力を得ただけのボウヤではないようね。
 梁衣は一番武道の経験値は低いみたいが……。
 色々と思考を巡らせ、死角を突こうとしていた。
 桃井は……昔から武道の修練をしていたようだな。
 (……この時勢でここまで練り上げるのは珍しいが……)
 早乙女に関しては、もともと古武術をやっていたのも大きいが、それ以上に石動の薫陶が行き届いているな」

「……先生相手だと時々殺されかけたりしますし。
 (今回は吐くほどじゃないし)」


 早乙女の目がどこか彼方を見ていたが皆、それを無視した。
 触れてはならない事だと思ったからだ。


「だが、桃井は武器や魔法への対処法が確立していないな。
 梁衣は、基礎を叩き込むとしよう」

「やる気満々ね」


 ジェシカは、張り切っているスカアハを見たのは初めてだった。
 素養がある者は基礎を固めれば大きく伸びる。
 それでも、芽吹くのは時間がかかるだろうが。


「ま、地道に訓練ね」

「日々是精進。
 石動が暇つぶしに書いた言葉だが……まさしくその通りだな」

「ま、何の苦労も無く強くなる三流漫画みたいにはいかないわよね」


 スカアハは、この先の鍛錬のメニューを組み立て始めた。


















 文章が少ないのでおまけ。
『ソウルガーディアンの登場人物の能力について』


 注 ・技能にかんして5段階評価で。
   ・武力(単体で)、魔力、悪魔召還については0~100で点数を付ける。
   ・レベルに関しては今回は除外。
   ・特殊なスキルについても説明をつける。

 ちなみに各数値の基準
・5段階技能
 0(素人) 1(免許取立て) 2(一人前) 3(優秀) 4(ものすごく優秀) 5(人間国宝)

・0~100評価
 武力に関しては、
 1~10(喧嘩自慢)
 15~30(ファントムサマナーの下っ端程度)
 31~50(幹部クラス)
 51~70(大幹部・ふんどしゴトウさん並)
 71~85(峰岸とか主役クラス)
 86~99(14代目ライドウ、現代のダブルキョウジ、アレフ)
 100(初代狂死…人間がたどり着ける限界)
 
 
 魔力
 70台後半(真2のベス、ヒロコ)
 80~90(レイ、ナオミ)
 100(覚醒した真1ヒロイン、旧約2ヒロイン)
 それ以上(白鷺弓子等の大神の生まれ変わり、ネミッサ)


 悪魔召還
 95(峰岸)
 99(キョウジ・当代のライドウ)
 100(ゴーストのほうのキョウジ)
 100以上(全盛期の14代目ライドウ、ザ・ヒーロー、中島朱実、2のヒーロー、アレフ)


 まあ、大まかなだけど独断と偏見に満ちているけど。
 数値が絶対ではないので……戦いに関してはね。
 でも60以上あれば間違いなく大きな顔ができる。





 『石動巧』
 武力 無双権現(人間業じゃないレベル)  魔力 75    悪魔召還 7
 剣術 5       陰陽道 4   呪禁道 5
 悪魔・呪術知識 5  銃 4     ルーン 3
 徒手空拳 5     神道 3    交霊術 5
 修験道 4      忍術3等(多数なので省略)。

 特殊スキル
 ・鋼の魂(貫通・ダメージ1,5倍・精神系バッドステータス無効・HP現象パーセントだけ威力が底上げ、猛反撃)
 ・武器センス(あらゆる武器を扱える)
 ・防具センス(防具の性能を限界まで使いこなせる)
 ・ガーディアン能力
 
 注 最初の人生では武器&防具センス・鋼の魂はもっていない。
   そのかわり鋼の肉体(肉体自身が高価な防具を装備した位の防御力をもっている)、怪力(素手でも中盤の武器を装備した位の攻撃力を叩きだせる)を持っていた。

 総評……悪魔召還術はショボイが、単体でみれば人類の上位に立っている。
     まあ、前世と現世の違いは『前世は肉体的に異常に恵まれていた』のに対して『(前世に比べて)弱い肉体を補う技術・経験を持つ』といった感じ。
     転生後に得た技能の数・質が異常(幼少のころから人体改造・勉学にはげんでいた)。
     まさに努力と執念の人。
     忍術は九鬼に勝ちたいために研究した結果。




 『九鬼英輔』
 武力 チートです(おかしいレベル)  魔力 55    悪魔召還 83
 伊賀忍術 5     修験道 5   営業セールス 3
 悪魔・呪術知識 3  剣術 3

 特殊スキル
 四代目『霧隠才蔵』(貫通・ダメージ1,5倍・会心、クリティカル時に即死効果・即死にならない場合クリティカルダメージ10パーセント増加、回避率15パーセント+、反撃)
 見切り(回避にボーナス)
 命中センス(命中にボーナス)
 痛打センス(クリティカルにボーナス)
 マンイーター(人間に大してダメージ1,5倍)
 異常浄化(バッドステータスに耐性、さらに回復も早い)

 総評 NINJAというべきチート性能。
    悪魔召還技能もかなり高い部類……欠点らしい欠点がない。
    出てくる世界が微妙に違うのでは?というような技能(クリティカル)があるが仕様です。
    なお、裸になれば最強になる事はありません。
    剣術は石動を意識して研究したために上達しました。



[7357] 第3期 第40話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/11/16 06:30
「いたぞ!神敵『石動巧』の弟子だ!!!」

「いやあああ!!!
 あの悪夢が現実にぃいいいい!!」

 
 世界が変わる……早乙女たちは、異界へと引き込まれた。
 早乙女達三人は走る。
 背後からは、翼を生やした美しい顔立ちの人……いや天使達が飛翔していた。
 早乙女は涙目になりながら走っていた。


「……どういうことだ?
 天使に恨まれるようなことでもしたのか?」

「うう……桃井君。
 心当たりが有りすぎて……」


 実際、早乙女も天使を行きがけ(登下校中で遭遇する)に切り捨てる事は日常であった。
 それ以上に石動の行いが大きい。
 なにせ……


・天使達の主(名前を呼ぶことが憚れる『あの存在』)が、機械の体を使って現世に現れた時に一太刀浴びせた……当然、数多くの信者(メシアン)を斬った。

・大天使サンダルフォンの活動を邪魔した


 恨まれるには十分だ。
 さて……この世界を覗いている皆様は当然承知でしょうが、『あの存在』はお世辞にも良い存在と断言しにくい。
 ユダヤ人の神である『あの存在』は……嫉妬深い。
 信じる事を疑う者には加護を与えない……いや、信じていても不幸を注ぐことだってある。
 その例である『ヨブ記』について語ろう。

 ウツの地の住民の中でも特に高潔であったヨブ。
 子孫を多く産み、財産もある……欠点などなく、神を信じる男であった。
 だがサタンが、ヨブの信仰心の動機を疑った。
 ヨブの信仰は利益を期待してのものであって、財産を失えば神に面と向かって呪うだろうと指摘する。
 そして……『あの存在』は、ヨブの命を奪う事を禁じたが……それ以外を全てを奪うことは認めた。
 それでもヨブは罪を犯さなかったが……サタンはヨブの身体に病をかけた。
 それでもヨブは屈しなかった為、『あの存在』はヨブの体を癒し、財産を再びえるようにした。

 ……神を試す事は許されず、人を試すことは行う……それが『あの存在』である。
 また十字軍という行いは多くの無駄な犠牲を生み出した。
 少年十字軍は実際は奴隷として売り飛ばされたり、略奪を繰り返す十字軍は食料がない為に敵の遺体を喰らうことすらあった。
 後にイエズス会を作ったときも布教にかこつけて侵略活動を行っていた。
 そして多くの神々を『悪魔』へと貶めた。
 近年ではメシア教の勢力がICBMを日本へ撃ちこもうとした(未遂に終わったが)。
 そして、今ではありえない未来では……天使が人間を管理する世界になっており、それは……ありていに言えば悪い統治であった。

 行き過ぎた『あの存在』が掲げる『ロウ』の思想は良くない。
 ただ、勘違いしてならないのは、だからといって対極の『カオス』思想が正しいというわけではない。
 どちらも行き過ぎれば害悪なのだ。
 

 閑話休題。
 梁衣は、冷や汗をかきながら言った。


「……君の先生は……破天荒なんだね」

「否定できない……。
 でも天使といっても人を救うことはしないから、先生がやったことに間違いはないと思うわ」

「天使も『悪魔』だったな……。
 だが、異常に数が多いな」 


 早乙女の言葉を聞いて改めて考える桃井。
 桃井の言葉を聞いて考えを言う早乙女。
 遠くから魔法が飛んでくるが、狙いが定まらない為、早乙女たちに当らない。
 それでも、会話ができる三人の胆力はたいしたものだが。


「様子から判断すると……私達を狙ったわけじゃなさそうね。
 多分、見つけたから殺そうって感じかな?」

「いい迷惑だな」

 
 梁衣は、沈痛な表情だ。
 早乙女もまったくだと言わんばかりに苦笑がでる。
 その疑問の答えはすぐにわかった。
 曲がり角を曲がると、西洋風の甲冑を纏ったアークエンジェル達が漆黒の鎧を纏った男性の天使達と闘っていた。
 男性の天使は、頭髪はなく、邪悪な気配を感じさせていた。
 早乙女のCOMPや知識の中にそのような天使・堕天使の姿は無かった。
 堕天使ではあるのだが……毛色が大きく異なるものだと早乙女は感じた。
 同数であったが、漆黒の天使達があっという間にアークエンジェル達を殲滅した。
 さらに……早乙女たちを追っていた天使達を包囲・殲滅した。
 その闘い方は独特だった。
 漆黒の天使達は2体1組で連携して攻撃する。
 同時に切りかかり威力を高めたり、2人がかりで術を唱えて術の威力を高めた。
 それだけではなく、魔法を唱えられないような空間を作ったり、魔法の詠唱を分担して魔法をいち早く発射する事を行っていた。
 能力もさることながら、恐ろしい連携であった……。


 そして彼らは……早乙女達の味方とは限らない。


「人間か……殺しておこう」

「やっぱりぃいいいい!!」

「落ち着け早乙女」

「(早乙女にとっては日常……)いつのもことだろう」


 
 濃密な殺気を飛ばす堕天使に対して涙目になっている早乙女にフォローをする梁衣と桃井。
 戦闘が避けられないと判断した桃井と梁衣は喰人へ姿を変える。
 生憎、飛行できるのは『スパルナ』の化身である桃井だけである。
 だが……。


「速い!!」

「……数が多いのが厄介だ!」


 堕天使を圧倒的に上回る速度で接近する桃井であった。
 さらに正確に打撃を与えたり、疾風魔法を飛ばす。
 空中という武道で想定されない場所での打撃にも関わらず、桃井の拳や脚が命中した堕天使は、頭部を果実のように容易に砕かれた。
 だが……何者かに魂を売った恩恵なのか、魔法のダメージが少なく、即座に反撃を行う。
 そして……桃井を包囲しようとした。
 組織的な反撃で桃井もそれらを全て回避することはできずにダメージを蓄積していった。
 美しい騎士甲冑のような桃井の体に大きな傷ができていた。
 低い声で天使が死刑宣告を告げる。


「終わりだ」


 だが、桃井からは焦りも恐怖も感じられない。
 逆に桃井は吼える。


「お前がな……喰らえ!!」


 巨大な真空の刃を展開し、堕天使を一網打尽にせんと振りぬいた。
 桃井が集中して作った風の刃に巻き込まれた堕天使は、四肢や翼が捥がれて地上に落下した。
 だが……その一撃ですら回避する者達も多かった。
 大技で隙を見せた桃井へ反撃をしようとしたその時……。



「羽坊主……殺し間へようこそ、だ。
 働き者へ休暇をくれてやる」



 堕天使達の真下には、梁衣が待ち構えていた。
 赤銅の体から無数の生体ミサイルが生えていた。
 魔獣の静かな雄たけびが両腕から鳴っていた。

 『殺し間』とは……最も火力が集中する場所へ相手を誘い込んで、足止めして殲滅する戦法のことである。

 火力の塊であるオルトロス(梁衣)の存在を察知されないように桃井が注意を引きつけたからできたことである。
 梁衣による一斉発射によって堕天使達は、容赦なく蹂躙されていった。
 運良く何を逃れた者がいたが、早乙女のジェロニモの弓によって容赦なく射殺された。
 戦闘が終わってから皆、一息ついた。
 異界化が解け、通常の町並みに戻った。


「……すまんな桃井」

「適所適材だ……気にするな」


 梁衣と桃井は、自販機で飲料水を購入して飲み干す。
 早乙女も缶コーヒーを飲みながらCOMPを弄る。

 
「うーん……デビダスでも乗っていないなぁ。
 新種の悪魔ってことかな?
 誰か詳しい事を聞かないといけないかも……」


 早乙女は、後に錬金術師ウーリに聞いたところによると……。
 あの堕天使はアークエンジェルだったそうだ。
 だが……魔界の魔王ルシファーについた堕天使ではないらしい。
 『唯一神』とは関係の無い『外の存在』へ魂を売った存在らしい。
 そして、命令を受けて天使や人間の魂を狩っていて、早乙女達は……運悪く巻き込まれたというわけだ。 
 普通の天使アークエンジェルや堕天したアークエンジェルより格段に強い存在になった上に連携もできる厄介な存在だそうな……。















 おまけ 新たな仲魔

 モンゴルの平原に轟音が鳴り響く。


『ジャーン!ジャーン!!ジャーン!!!
 げぇ、せっきー!!』

「下らんことを言うな」


 一人の男と一体の守護霊……石動とラームジェルグは平原をバイクで疾走している。
 乗っているバイクは有機的なデザインであるが……それはただのバイクではない。
 排気ガスの変わりにMAGの残滓を排出していた。
 感の鋭い者は気がつくかもしれない……そのバイクから悪魔の気配がすることを。


「……追いついてきたな。
 モンゴルの平原でに首なし騎士(デュラハン)と交戦とはな。
 可笑しな事だ」

『悪魔も国際化の影響を受けているからな。
 さすがマッハ、これくらいなんともないぜ!』


 ラームジェルグの声を聞いてバイクから奇怪な音が鳴る。
 ベルタンの依頼で手に入れたドリーカドモン……それから作られた新型造魔であった。
 ヴィクトル・ウーリの合作で作られた『マッハ』……正式名称『メタルマッハ』は機械が組み込まれたマシン型造魔で、フリーダーの弟にあたる。
 
 
『追いついたぜ……さて、久々に……変ッ身!!』

「マッハ、スライドモードへ移行」


 デュラハンが戦車(機械仕掛けではなく、馬と馬車のやつ)に乗って疾走しているを視界に捕らえた二人は戦闘準備に入った。
 クー・フーリンへと変身を遂げたラームジェルグと、アセイミーナイフをブリューナクへと変形させた石動は、跳躍した。
 それにあわせてマッハの車輪が地面から離れ、車輪が90度回転してバイクが空中へ浮遊した。
 さらにマッハから銃口が出てきてデュラハン目掛けて発砲を開始した。
 馬の胴体へ命中してスピードを減速した隙を石動は見逃さない。
 ブリューナクが投擲され、一本の槍が5つの閃光へと姿を変えて首なし騎士を貫く。
 石動は、目標を倒した事を確認してからマッハから飛び降りた。
 主がいなくなったマッハは、更に上昇してバイクから人型へと変形した。
 翻訳不能な言語を石動へと話しかけるマッハ。


「……よくやった」

『変形ロボは浪漫。
 浪漫は正義。
 つまり、変形ロボは正義だ!』

「さすがウーリ。
 いい仕事だ」


 石動は、新たな仲魔を得た喜びを噛み締めていた。

 



[7357] 第3期 第41話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/11/20 02:06

『知っているか?
 アラビアじゃ40っていうのは意味を持つって事を。
 「たくさん」を意味するのさ……アリババと『40』人の盗賊とかね。
 中国だと1000かな?
 某武将の赤い馬は一日『千』里走ったり……まあそんなかんじ。
 数字って奴にゃ魔力がある。
 『四』天王、『七』福神、『十二』神将とかな。
 あと水滸伝は天地で36+72=108の星だな。
 煩悩の数は108だったり、孫悟空が習った術は七十二通りだったり。
 まあ、色々と意味がありげな感じだろ?
 ……だが、本編とい~っさい関係ない無駄知識だ、ふははははは!
 ……なんかロシアでも言っていたな、こんな事。』














『しっかし……結局本筋への手がかりはないか』


 中国やモンゴルで手がかりがなく、千鶴と別れた石動とラームジェルグ(千鶴は仕事があるので……)。
 そして次は印度へ渡っている最中なのだ。
 石動は静かに言った。


「だが……喰人の術はたいしたものだ。
 かなりの質の高い魔人を多く作り出すノウハウとしてはな」


 『最強の魔人』『混沌王』『人修羅』と呼ばれる存在に及ぶ可能性は低いが……。
 それでも現代社会では脅威ではある喰人。
 石動も多くの術を修めているが……仮に南条コンツェルンの協力を得ても自分が喰人のような存在を作り出せるかといえば『否』である。
 この術を作り出したのは間違いなく天才……いや『鬼才』である。
 その非道かつ玄妙な術を作り出せるのは……数えるほどいないだろう。


『で……あの日記には手がかりがないわな。
 ただ、師匠のへの賛美が冒頭に書かれていたが』

「……小角は態々教えるほどの酔狂さもないし、そこまで非道ではない。
 道満……いや、呪殺はしないこともないが……おそらく『白』だな」


 石動は、自身の考えをラームジェルグに語る。
 ラームジェルグは、道満はかなり怪しいと考えていただけに石動への考えに興味があった。


『カンか?』

「ああ……。
 俺の中で結び付けられない。
 奴は……人の心を奴は追い求めている……。
 そんな奴が悪魔に態々するとは……。
 悩んだ挙句に鬼や魔人になることは見届ける。
 だが……喰人のような『継ぎ接ぎ』は好みじゃないだろうな」

『……』


 石動が、そこまで語った後に口を閉ざす。
 まだ、真実へのピースは足らない。
 それがどこにあるかは……。




 










 韓国 ソウル。
 ここのホールでイリュージョンショーが行われていた。
 幽鬼のような青白い肌でやせこけた東洋系の壮年。
 タキシードでなく、演義で出てくる道服を着れば左道邪術を操る妖仙のように見えるだろう。
 

「皆様、この果心居士の秘術……とくと御覧あれ」


 『果心居士』……別名『七宝行者』とも呼ばれ、室町時代末期に登場した幻術師である。
 織田信長、豊臣秀吉、明智光秀、松永久秀といった時の権力者の前で幻術を披露したと記録されている。
 様々な説があり、はっきりとした素性は定かではない。

 愚軒による雑話集『義残後覚』によると、筑後の生まれで、大和の興福寺に僧籍を置きながら、外法による幻術に長じたために興福寺を破門されたと書かれている。
 また、江戸時代の柏崎永以の随筆『古老茶話』では、慶長17年(1612年)に、因心居士が駿府で徳川家康の御前に出たという。家康とは既知の間柄らしく、「いくつになるぞ」と尋ねたところ、果心居士は88歳と答えたらしい。
 また、一説によると印度からやってきたとも、印度のバラモンから術を学んだとも、ペルシア人であったとも言われる。
 さらに、根来流の忍者に術を指南したともいわれている……。
 
 ちなみに……果心居士が使った術は次のようなものがある。
 ・池の水面に笹の葉を放り投げたら、笹の葉が魚に変化し、泳ぎ出した。
 ・松永久秀に死んだ妻の幻影を見せた。
 ・松永と上泉伊勢守の命数を予言した(それも的中した)。
 ・豊臣秀吉の過去を暴き、命を狙われたが、鼠に姿を変えて逃げ去った(一説には切り殺されたとも)。
 
 真実は明らかではないが、果心居士という存在は、一流のトリックスターであろう。
 閑話休題。
 果心居士を名乗る男は、まず大きな競走馬が入った檻を運ばせた。

 
「皆様には悪いのですが……。
 生憎食事を食べ損ねてしまいまして……。
 ここで食べようと思います。
 私(ワタクシ)……馬の踊り食いが大好きでして……」


 そう言ってゆっくりと近づく魔術師……。
 観客はその言葉通りに行うか、凝視した。
 観客達は歓声を上げた。
 競走馬をあっという間に一呑みしたのだ。
 果心居士は、ゆっくりと嚥下しようとしたが……、味が気に入らないのか、しばらく口に含んでいたが、吐き出した。
 馬は、つぶらな瞳で観客達を見ていた。


「動物保護団体に文句を言われそうなので……。
 人前で食べるのは控えていたのを忘れていましたよ」


 観客は、摩訶不思議のイリュージョンに興奮している。
 この種は非常に単純である。
 観客全員に暗示をかけたのだ……『馬を一呑みで食べる』という宣言がきっかけで、人々の期待する心を利用した暗示で、全ての観客を騙せる技術は凄まじいものであった。
 そして実際には、果心居士は馬の尻に抱きついただけなのである。
 果心居士は、様々なイリュージョンを行った。
 世界的マジシャンでもできるかどうか……という高度な技術を惜しげもなく使った。
 最後に……大きな術をかけると魔術師は、宣言した。



「読心術……超能力の出し物でありますね。
 では皆様の心を読んで差し上げる?
 いえいえ……そんな陳腐な事はしませんよ。
 『皆様』が読心術を使えるようにして差し上げようと……」


 
 その一言で観客は大いに沸いた。
 果心居士は、なにやら呟くと……観客達がざわめいた。
 突然、家族連れらしい客が立ち上がった。
 夫婦で首の絞めあいが始まった。


「金目当てだと……このアマ!」

「お前みたいな不細工に誰がほれるか!
 なにが『漆黒の獅子』よ!!
 ただのネット弁慶じゃない!!
 おまけに給料の三分の一をRMTに使って!!」


 続いて若いカップルが殴りあう。


「二股かけやがって!!この短小!!」

「……お前みたいな売り娘は使い捨てで十分なんだよ!」


 互いに目が血走り、殴り合い、首の絞めあいを行っている。
 誰もが正気を失い、熱狂の中にあった。
 互いの知ってはならない本音が解り、自制がなくなった状態が続く。


「悪かったな、息がくさくて!」

「誰がキモオタだ!」

「初対面の人間なのにマナーができてないぞ!」

「ガムをくちゃくちゃ食うな!」


 とうとう手持ちの鞄で殴ったり、ポケットからナイフを取り出すものまで現れた。
 その熱狂は20分くらいで続いた。
 そして生き残った人間は……誰もいなかった。
 いや、子供が一人、端っこで震えていた。
 怪我は幸い無かったが……目から光を失っていた。
 人々が殺し合い、そして他者の心の深遠を覗き込んだ子供は……心が壊れてしまっていた。


「……皆様、楽しんでいただいたようですね」


 果心居士は、ステージの上から死者達に語りかけた。
 首が曲がったOL,頭から血を流している学生、ナイフが首に刺さったサラリーマン、口から泡が出て失禁して絶命した主婦……。
 そんな中、拍手が鳴り響く。
 魔術師は、声をもらす。


「ほう……」

「さすが、果心居士」


 日本語で語りかけてくる青年がいた。
 自分というものに絶対の自信を持った様子であった。


「はじめまして……私は『ヨグ=ソトース』」

「ほほう、それはそれは」

「貴方の『弟子』が生んだ『喰人』です。
 貴方に助力を頼みたい。
 貴方の趣味にも合っていることです」

「……私を探しだしたその技量からして……まあ上出来ですね。
 いいでしょう、話を聞かせてもらいましょう」


 両者とも邪悪な笑みを浮かべている。
 二人は悠々とホールから去っていった。





[7357] 第3期 第42話
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/12/12 01:30
 今日も主がいない石動探偵事務所。
 そこを掃除するのは、我らが玩具(ヒロインではない……)・早乙女さくら。
 掃除をして、資料を読むのが早乙女の日課になっている。
 稽古も地下で行えたり、テスト勉強をしたりするため、早乙女はつい入り浸ってしまう。


「ああ……平和だ……」


 つかの間の平和を甘受する早乙女。
 先日の堕天使について公安零課に報告して以来、事件らしい事件がまだおきていない。
 だが……、ヤタガラスはその報告を重く見ていた。
 早乙女が遭遇した堕天使は1990年代……最も危険な時期にのみ(それもほんの数例だけ)に現れた特殊な存在であった。
 異界の存在と契約した堕天使は非常に特殊で、その時には手に入らなかった。
 早乙女たちが戦闘して手に入れた堕天使の羽をサンプルとして提出された時、研究者は大いに興味を持ったのだ。
 ちなみにウーリもその羽を早乙女から貰っており、ヤタガラス・ウーリから(学生にとっては)多額の礼金が支払われた。
 普段から倹約している早乙女(開業用資金に貯めている)も、帰りに喫茶店で菓子を食べる余裕ができたほどだ。

 
「(あのジャンボパフェは美味しかった……)」


 だが、その平和も一人の訪問者によって終わりを告げる。
 小柄だが、美しい顔立ちの青年がベルを鳴らさずに入ってきた。
 高級なオーダーメイドのスーツがボロボロで、ところどころかすり傷を負っていた。


「石動さんはいるかな?」

「あ、原野さん?
 生憎、先生は海外に……」

「あー……。
 困ったな……九鬼さんには頼みづらいからなぁ」


 と、困っているはずなのに暢気そうに言う原野。
 一見、虫も殺せないような青年に見えるが……この原野という男は、裏では『悪魔交渉人』として有名で、石動や九鬼が『敵に回したくない』と断言するほどの曲者である。
 ピンチでも暢気そうに原野が喋るのは、修羅場を潜り抜けた数が多い為か、性格の為か……。
 早乙女は、とりあえず救急箱を取り出して手当てを行う。
 原野は、見事な早乙女の手当てを褒め称えた。
 互いが落ち着いてから、早乙女が原野に質問した。


「その……一体どうしたんですか?」

「いやぁ、実は『喰人』に狙われているんですよ。
 早乙女さんも知っているでしょ、喰人?」

「え、ええ……。
 でもどうして……?」

「彼女にとって……僕は親を殺した極悪人ですからね~」


 さりげなく重大な事実をあっけらかんと言い放つ原野。
 早乙女は、また厄介事に巻き込まれたと感じ始めていた……。
 だが、その予感は珍しく外れた。


「この件は自分で解決しますので。
 ………血なまぐさい事件に対して未成年に助けを求める真似はできませんからね」


 とカラカラと笑う原野。
 早乙女は、朗らかな様子の原野から恐ろしい何かを感じ取っていた。
 後に石動から話を聞いた時、『原野は敵に回したらいけない相手』と断言するほどの曲者である(九鬼も同意見)。
 原野の契約を破り、実力行使を行った者が過去にいた。
 しかし、原野の『死の契約』は凄まじい。
 小国丸ごと石像に変えた事すらあった……時には契約を破った相手の前に現れ、相手の家族を石に変えた後、粉々に砕くという残虐な所行を行ったこともある。
 恨みや恐怖の対象になることは容易に想像がつくであろう。
 原野は申し訳なさそうに早乙女に言った。


「実は……石動さんに頼まれて早乙女さん達の助けになってくれと言われたんですがね。
 でも、この状況では無理です……。
 本当に不味い時は、九鬼さんかジェシカさんに助力を頼んでください。
 しかし……石動さんは今どうしているのでしょうねぇ。」

「先生も調査が難航しているみたいですし……」


 
 石動は、どうしているのか?
 ちょうどその時、厄介な案件に関わっていた。
 だが、それは石動の更なる成長の『きっかけ』になるのだが……。
 この話は次回に。





あとがき
PCがご臨終。
なので更新がかーなーり困難になります。
マイPCを手に入れたらちゃんと更新します。



[7357] 第3期 第43話 (おまけついか)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:d177a5e7
Date: 2009/12/22 00:47
おまけ 無間流の奥義(失敗作)

 香港のホテルにて・・・。


「・・・」

『どしたの?』


 石動がため息をついていた所をみて思わず問いただすラームジェルグ。
 疲れた様子で現代の剣客は話し始めた。


「祖父がこの国の武術を統合し、それを受け継ぎ、無間地獄で磨き無間流と名乗った。
 だが、その先が見えていない」

『・・・長い歴史を持った国の全ての武術を統合しただけで凄いと思うぞ?
 まあ、更なる研鑽を積もうとするのは解るがな、武人的に』

「魔剣を編み出そうと思い、小角を宿した」

『あ、だから俺を呼ばなかったのね』


 数日間ネットで遊び倒していたケルトの英雄(の二分の一)・・・。
 食事を取らなくても死なない為、つい時間の経過を忘れてしまっていたのだ。
 石動は、それを咎めることなく話を続ける。



「氷銀真剣のように、魔法の力を宿す技法を考えていた」

『まあ、物理攻撃以外の属性を宿そうとするのは悪くない』

「精神に作用する魔法を込めようとしたが、失敗した。
 術式が困難で効力が一瞬だけだった。
 それに、俺が相手にしたい手合いは大抵この手の技が効かないからな」

『ありゃりゃ・・・』

「致命的な欠点が……まあ、丁度いい試し切りの的がきた」


 石動がそういった瞬間、窓ガラスが割れた。
 天使パワーの群れが声を荒げながら突進してきた。
 天使達にとって、唯一神を斬り、大天使サンダルフォンの顔に泥を塗った石動は不倶戴天の敵と認識されている。
 石動は、手元が霞んだ………天使達は何が起こったか解らなかったが、剣客の相棒たる守護霊はしっかりと見ていた。


「効果が一瞬しか出せないなら一瞬で斬ればいい。
 そういう意味では失敗ではないのだが………」

「なぁにを………、あれ……な、なんか………ん゛気持ぢがい゛い゛い゛!!」


 話している石動を斬ろうとした天使達が奇声を上げている。
 いずれも恍惚とした表情になっている。
 守護霊は、右指での右こめかみを掻きながら何ともいえない表情になっていた。


『あー、なんか………言いたいことが予想できるわ』

「追加効果だけで威力が出ない技など意味がない。
 そう思って威力を上げようと研鑽したら………。
 効果がかかる確率が減った。
 両方を上げようとさらに工夫した結果が………」

『これか……』

「ちにゃ………!!」


 奇声を上げ、恍惚とした表情のまま絶命する天使達。
 

『………で、絶命する時だけパピルマやテンタラフーのような精神効果が成功すると……。
 あー……まあ、属性が変わっているからギリメカラとかにはいいんじゃないか?
 (テレッテー♪と音楽がかかりそうな技になったな……)
 うん、ある意味成功じゃない、うん、成功だね』

「……微妙だ」


 余談だが、後にこれを見たパオフゥは、石動にこの技を習おうとしたりしたわけだが……(ある世代の男性の琴線に触れているらしい)。

 













 雑多な建物が並んだ町並み。
 だが、そこを歩く人間はただ一人。


『この地に現れた異形を退治してくれ』


 香港へ足を運び調査をしていた石動だったが、傷ついた地元のデビルサマナーから依頼を受けた。
 異界となった九龍城を闊歩する石動とラームジェルグ。


『しっかし……どんな相手だ?』

「さあな……交戦した人間に聞いても今ひとつ要領を得られん。
 実際に目にしなければ解るまい」


 九龍は、香港の新九龍に位置する地域で九龍城区の一部である。
 名称は領域内にある九龍寨城に由来している。
 この九龍寨城は、非常に多くの複雑な歴史的背景が絡み、中国の近代や現代史にも密接に関係している。
 その始まりは、宋の時代からで……当時の海賊に対する備えとして現在の九龍城地区に軍事要塞が作られた。
 阿片戦争の後に、香港は租借地になったが、直ぐに九龍寨城の地区は除外・飛び地化された(なお、そこで祭りが行われ爆竹が鳴らされて、当時の軍には大いに迷惑だったらしい)。
 文化大革命が起こり、香港に無数の難民が入り込み、この地区の人口が急増し、スラム化した。
 1960年代後半から1970年代にかけては鉄筋コンクリートのペンシルビルに建て変わったが……無計画な建設のために九龍城砦の街路は迷路と化した。
 その為に、「九龍城には一回入ると出てこられない」とすら言われ、行政が入り込めないほどで……売春や薬物売買、賭博、その他違法行為が行われた。
 そしてこの地域は……「三不管」(無法地帯)の地域と呼ばれるようになった。
 それでも1970年代後半から1990年代にかけて、住民達が一丸となり自警団を組織し治安の改善を図ったという記録が残っている。
 1987年、香港政庁が九龍城砦を排斥して、周囲のアパートや郊外のベッドタウンの住民を政庁が建設した高層アパートへ住民を移住させる方針を発表した。
 しかし補償などの問題で住民はこれに異を唱えた。
 その解決のために何十年もの間九龍城へ立ち入ることはなかった行政が、共同声明の後に漸く香港警察の警官が定期的に巡回を行わせるようになった。
 そして……1993年から1994年にかけて取り壊し工事が行われた。
 住民の反対は熾烈極まりなかったが、再開発を行うことができた。
 公園や資料館を作られ、九龍城の歴史は幕を閉じた……。
 
 だが……それは表向きの話である。
 九龍城のような魔窟は、デビルサマナーにとっても絶好の潜伏先にして悪魔召還が行いやすい魔の地として重宝されている。
 また九龍城砦は、風水学的に香港の陰気を吸収し街の発展を促進させるといった役割を担っていた。
 文化大革命によって仙人達は、ますます俗世から離れ、悪魔も日本や東南アジアなどへ移民するほどである現状で、このような土地を無くす事を良しとしない者達が、昔の九龍城をそのまま作り出した異界へ移したのだ。
 現代の侍の半身は、両腕を頭に乗せながら暢気そうに声にだす。
 

『しっかし……喰人を作った本人は死んでいて、その資料も無くなっている。
 空振りか……』

「だが、忘八の連中のコントロールから離れている………つまり、術士の独断・暴走である事が解っただけでも儲けモノだ」

『で、この術士の賛美している師匠って奴は……』

「心当たりはある………お前も知っている顔のはずだ」

『美少女・美幼女ならしっかり………』


 石動は、相棒の戯言を聞き流し、懐から写真を取り出す。
 画像ははっきりしていないが、唯一映像に残された『ターゲット』の画像である。
 猿に似た大型の猿人であった……。


『野菜人ではないな』

「……恐らく、工業開発の影響で突然変異した猿が更に霊的な影響を受けて魔人化ならぬ魔猿化したものだろうな……」


 しばらく歩いて散策した。
 異界化した街中であったが……石動へ襲いかかる者はいなかった。
 本能的に勝てないと悟ったからか、異質な者を様子見するつもりなのか………。
 そうするうちに、遠くから雄叫びが聞こえた。
 並の者ならば、魂を砕かんばかりの威圧感を与えるほど大気を揺らし、ビルディングのガラスが割れていった。
 石動は、写真を仕舞い、COMPを機動させた。
 青い雷とともに巨大な人型の異形が現れた。
 金属質の体で、無数の機械部品を露わにしており、関節部から蒸気を噴き出す。
 機械仕掛けの造魔『マッハ』を召還した。
 石動は、腰から銃を取り出す。
 獰猛な鬼気を身体の中に抑え付ける。


「さあ、一仕事だ」










 
後書き
九龍城の設定はソウルガーディアン独自のものです。




[7357] 第参部 の これから予告
Name: レッドマン◆3bb3f270 ID:9393ae96
Date: 2010/02/25 23:16

「ヒハハハハ!!!」

「殺す‥‥!!
 貴様だけは!!」

「桃井、罠だ!!」



 桃井は『過去』と向き合う………



「ぐ……!!」

「所詮人間の振りをするお前じゃ俺には勝てねぇ!!
 お前は何もできない!!
 あの時と同じように!!!!」




 桃井は、強大な力を持つ喰人に敗れてしまった・・・。







「GAAAAAAAAAAA!!!」

「馬鹿な………まさかこんな………!!」



 吠える梁衣………。
 あと、ついで早乙女は珍しくヒロインっぽく。
 「ひ、酷い!」
 まあ、気のせいですが。
 「泣いて………泣いて良いよね?」






「これで一気に勝負に出る………!
 そして新世紀の悪魔王に僕はなる………!」



 矮小なる外なる神の化身が陰謀を張り巡らせる。




「異界化………!?」




 関東に住む多くの喰人が殺戮衝動に狂う!!
 非力を嘆く桃井の前に………





「お前は一体………?」

「天狗だよ。
 お前を鍛えてやる、な。
 もっとも、今のお前では生きてやり遂げる事は万に一つもないだろうがな」





 桃井は、迷いを零す。




「この世界の裏側を知って……何が正しいのか解らなくなった………。
 奴を倒すには心まで悪魔にならなければならないのか?
 俺は………無力だ…………!!」


「乗り越えないならばここで死んだ方がマシだろうな………。
 せめてもの情け………一太刀で終わらせる」







 果たして、桃井の運命は?








「………俺は………死ぬのか………?」





『デビルサマナー外典ソウルガーディアン』





『「犯罪者を取り締まり、治安を………なにより市民を守る………!!
  それが俺が目指す俺の正義だ!!」』







 翼は………再び蘇る!!!







[7357] 第3期 第44話 (おまけを先行投下/追加)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:5562e7de
Date: 2010/02/25 23:52
歴史考察


 眼鏡をかけた冴えないサラリーマンの男性が現れ、一礼する。


「こんばんは、九鬼です。
 今回は、日本の歴史について早足で説明したいと思います」


 後ろで鞍馬天狗がPCを操作してスライドに映す。
 他の悪魔はこのような裏方に向かないのだろう。


「この国で主流派の神は天津神です。
 ヘブライ系の悪魔の援護を受けて国津神の勢力を追い落とす事に成功しました。
 ですが……他の国と違う所があります。
 多くの他の国々は、互いに戦力を消耗して弱体化する……そしてヘブライ系……いえ口に出すことすら憚れる『あの存在』の勢力が飲み込んでしまうのが普通です。
 ですが………国津神のトップである『大国主』が国譲りを行い速やかに権力を渡しました。
 下手に争って『あの存在』の介入を受けるより、降伏したほうがマシと判断したのでしょうね。
 もっとも……あまり国津神の扱いはよくなかったです」


 国を立てる為には、敵を作る必要がある……その役割を国津神に背負わせたのだ。
 大国主は常世へ渡ったからよいが……他の多くの国津神は悪役とされ、ヤタガラスの手で幽閉されてしまった。
 アマツミカボシと戦った初代葛葉雷堂はその命と引き替えにして封印したことは有名な話であろう。
 大正時代に起こった『超力兵団事件』で国津神はその恨みを晴らすべく陰謀を巡らせていたし、この世界では起こりえぬ未来でも天津神を倒すために機会をうかがっていたりしていた。
 関八州の守り神となった平将門と国津神との関係についても説明しておきたい。
 人であった将門に助力した勢力が国津神であった……神から妖怪や悪魔へと追い落とされた者達の救世主として将門を見ていたと言っていいだろう。
 死後も国津神達は、将門への敬意は薄れることはなかった。
 ここで繋がらない世界の話だが……20世紀末に転生した平将門の転生体である相馬小次郎(奇妙なことに、将門の名乗った名前そのままであった・・・)へ国津神の一派が助力を行っており、その一派であるツチグモが命がけで忠義を尽くしていた事から見て、将門の影響力は計り知れないといっていいだろう。
 

「天津神は、この国が海に囲まれている上に、アジア系の悪魔との交流がある事を生かしてヘブライ系の影響を最小限に留めさせました。
 江戸時代の鎖国もヘブライ系の影響を受けない政策として効果的に作用しました。
 歴史的に見ると、ヘブライの力を体よく利用し、それが終わったら巧みにヘブライ系の影響を排除した………いわば、天津神の一人勝ちと言っていいでしょう。
 八百万の神々を崇め奉るこの国は霊的な地形としては理想的で、非常に霊格の高い人間が生まれやすい。
 だから将門公のような存在が出てくるのでしょうね」


 西洋のように全てを排除する方向でなく、神として扱う事にするという作法は………新たな戦力を生み出すにはうってつけであった。
 菅原道真や平将門のような人間から『悪魔』へ昇格した存在は非常に強力である。
 関八州限定で考えれば将門公の影響力は計り知れない。
 関東が丸ごと魔界に飲み込まれるなどの事態にならない限り、将門公とまともに戦う事ができるのは数えるほどしかいないだろう。


「国津神にとっては腹立たしいでしょうが………。
 天津神の働きは、日本という国をうまく操縦したと言っていいでしょうね。
 この国の裏について語るには………『ヤタガラス』について語らなければなりませんが………あいにく、私は宮仕えしているわけではないですから語れません。
 いやぁ申し訳ない」











たとえばこんなクロスオーバー(嘘予告)


鋼鉄の箱船に平行世界の剣客が現れた。


「パラレルワールドか・・・で、そっちは悪魔と仲良しこよしか?」

「………国際社会の延長だ。
 利益があれば手を組むし、隙があれば攻め込む。
 ヒメネスには向いているんじゃないか?」


アラカナ回廊で未知の平行世界を観測したヤタガラスと日本政府は調査員として石動巧を派遣。
異世界の技術を採取することが目的であった。
また、カオス陣営もなんらかの思惑をもっているらしく、協力を申し出ていた。
(ルイ・サイファー曰く『どんな形でもいい、そこで起こる事件に最後までかかわってほしい』と)
その世界は南極に謎の空間が現れ、世界を浸食していた!
その調査隊の一隻に石動は舞い降りたのだ。
だが、安全性の考慮の結果拘束されたのだが・・・・。


「ゴア隊長が亡くなり、戦力が不足しています。
 このような事態に対してのノウハウを持つタクミ・イスルギへの協力を要請する事を提案します」

『さすが、スーパーなAI,はなしがわっかるー』


異世界の探偵の協力は皆に受けれられていた。
傭兵上がりの男性は、その世界に興味を持ち、無口だが非凡な機動隊員は大きな信頼を寄せた。
だが、ある女性隊員は頑なであった。


「天使と悪魔が一緒ですって!
 そんなデタラメは信じられない!」

「そんな、汚らわしい人形に心があるなんて冗談はやめて!」

「貴方達の世界は間違っているわ!」

「マンセマットは正しいわ!」

「悪魔と合体したら人間じゃない、悪魔よ!!」



彼は、どんな暴言にも怒ることなく淡々と意見を述べていた。
むしろ剽軽な彼の半身が怒っていた………半身とその仲間達への暴言を。



「オイラは『偽人』デモニホだホー」

『デモニカスーツの残骸と、廃棄処分するはずのドリーカドモンとフロスト君でこんなものができるとはなー、どうしてこうなった』


 新たな仲魔ととも世界の謎に挑む!


「神に逆らう汚れた魂よ・・・」

「ゼレーニン、あんたに何を言っても無駄だろうが・・・・」




ソウルガーディアン外伝
『石動は未開の地へ旅立つようです』




「俺はただの探偵だ………ちょいと剣の腕に自信がある、な」

『ダウト(お前のような探偵がただの探偵なわけがない』






どうでもいい話だが・・・謎の装置(訓練用の機械)は石動が持ち帰って地下の訓練場で利用しているそうな・・・。












「うわーん、桃井くぅーーーーーん!!!!!!」
 なんで私の余命はマイナスなのよー!」

「………よしよし」

「(お前は既に死んでいるという扱いか・・・・)」


 
同時上映
「早乙女達は平行世界で封鎖に立ち向かうようです」












………嘘予告です。
短い本編をどぞ。












 目の前には、ボロボロの胴着を着た木乃伊が立っていた。
 直剣を上段に構えていた。
 石動は軽く感嘆の声を上げた。
 並の剣士では上段に構える事はない……逆に言えばこの木乃伊の剣士はそれだけの自信と技量を備えているのだ。
 石動は、妙法村正を青眼に構え攻撃を迎え撃つ。
 電光のような一撃を石動へ襲いかかる。
 受け流したにも関わらず、石動の両腕へ大きな衝撃が走る。
 

「久方ぶりだ………ここまで練り上げた剣士は!」


 石動は、そう言った後に、気迫を込めた叫びとともに刃を横一文字に一閃した。
 だが………


『まるで霧や霞でも相手にしたみたいに擦り抜けた!?』

「俺にとっては、な。
 だが………」


 石動の肩口からうっすらと血が流れていた。
 剣客の後ろにいる守護霊から見ていて、普通なら石動の一刀で切り裂かれて終わっていたはずだった。
 だが、その一撃はすり抜け、逆に木乃伊剣士が石動の攻撃後の隙をついて攻撃したのだ。
 もし、凡百の剣士ならば何が起こったか解らぬまま絶命していただろう………。
 だが、実際には石動は………斬った時の違和感を感じて咄嗟に後方へ飛び退いていたのだ。
 木乃伊と化した剣士は表情が読めず、希薄な気配であるため、どのような意図があるのか、日本の剣客とその守護霊には読めなかった。
 石動は、確認するために右手には銃を握られ、左の掌からは真空の刃を生み出す。
 木乃伊に魔法と銃撃を叩き込む石動。
 だが………


『………無効化している………』

「ああ………だが、何か違和感がある………」


 石動の攻撃は無効化された。
 だが、遠くで時計の鐘が鳴らされた時………木乃伊剣士は、石動を無視して跳躍した。
 ラームジェルグが声に出す前に木乃伊剣士は連続で跳躍して石動達から遠ざかった。
 周りに危険がなくなった事を確認して二人は一息ついた。


『久しぶりに厄介な奴に出くわしたな。
 なんにも喋らない不気味な奴だったな………』


 ラームジェルグは、珍しく冗談を吐かずに真剣に考え込む。
 石動も相棒の言葉に同意しながら頷く。
 同時に久しぶりに真面目になっているなという失礼な事を考えていたが。
 (もっとも、いつもフリーダムな態度をとる相棒に問題があるのだが)


「なるほど………周りで言っていただけの事はあるな。
 あの護りは呪術の類だろうか………?
 あれだけの技量………何者だ?」


 石動の知識でもすぐに浮かばない辺り、珍しいものなのかもしれない。
 時代劇の浪人のように顎を撫でながら考える石動の疑問を答える存在が現れる。


「それについては私が答えよう」


 声の方向へ視線を向けると灰色の羊がいた。
 禍々しい角と人面をもつ奇っ怪な羊………だが、そこから発する邪気は並の悪魔では出せないものであった。
 石動は、その悪魔が何者であるかを一瞬で理解した。





[7357] 第3期 第45話 
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:2e129abc
Date: 2010/03/09 22:06
 その日、雲一つ無い快晴だった。
 全てが吸い込まれるほどの青空が広がっていた。
 人々が集まり、一人の老人に注目していた。
 一際高い丘に貼り付けられているが、老人は暢気そうに空を眺めていた。
 『自分も登った事もある』から解るが………遠くまで見えて、当時の自分は、世界の果てまで見えるとすら錯覚していた。


 その男は、■■■■。
 この国の領主とその敵国の領主を手玉に取った存在だ。
 役人が罪状を述べていた。
 何十にも鎖で縛られいて痛々しく周りは思うだろうが………あのアレ相手では拷問で弱り切った今だからこそようやく縛り付けられる位と自分では思う。


「お楽しみの所悪いが………。
 そろそろ牢屋暮らしも飽きたし、刑死なんざ名折れだからお暇するぞ」


 あの男は、散歩へ出かけるような気楽さで遠くまで響く声を発した。
 周りが騒ぎ出すが、この厳重な警備では不可能だと決めつけた。
 確かに………あそこまで弱り切った状態なら無理である。


「そうら………あの遠くに鳶が見えだろう?
 あれが迎えじゃ………空から堂々と帰らせてもらおうか」


 どこからか、驚きに満ちた男の叫びを上げた。


「ああ!でっかいぞ!
 ありゃ、大男でも運べるぞ!」

「でかいぞ!」

「人を食うんじゃないのかい!?」


 最初の声が引き金で民衆が騒ぎ出す。
 武士達も思わず空に魅入っていた。
 この世のモノと思えない奇っ怪な鳴き声が響き渡る。
 その声を聞いて思うように動くことができず、腰を抜かす者や中には失禁してしまうものもいた………。
 その内に周囲に霧のようなモノが漂い始めた。
 処刑を担当していた者が大声を上げた。


「ああ!?」

「良い退屈凌ぎであった………さらばだ!」


 そして、その処刑人は語った。
 いつの間にか鎖を外した老人が高笑いしながら巨大な鳶に掴まって空から逃げ去ったと。
 それを聞いた領主は、怒気を孕みながらその事件を闇に葬った………もっとも、後の世に真実の一端が伝わったが。









 遠く離れた山奥の庵にて………。


「………はっはっは」

「……全く、身体を労れ、師匠」


 何を思ってこのような事態を起こしたかは理解できない。
 だが………俺の協力を得て脱出できたのは確かだ。
 これは、一種の集団催眠だ。
 皆が注目した状態であった為に導入は楽であった………この術の難関は皆が術者に意識を向けなければまず失敗する。
 意識を向けていない人間が異常に気がつくからだ。
 さらに俺が、師匠の言葉を煽るように驚きの叫びを上げて演出した。

 これは、大道芸人が『呑馬術』と呼ぶ『馬をのみ込む技術』で俺達はしばしば小遣い銭稼ぎにやっていた。

 止めに予め幻覚作用のある煙幕を仕込んでおいた。
 ここまでいけば鎖を外す作業が堂々と行えるわけだ。
 師匠は作り置きしてあった酒を飲み干す。


「おい」

「………なんだよ」

「儂ぁ歳を喰ってしまった。
 だから無様に捕まった」


 俺は否定できなかった。
 確かに今でもこの男は一日中山を駆け回ったり、天井に張り付けるだろう。
 だが………


「忍びが討ち死にじゃ末代の恥………そんな無様になる前に辞める。
 そして、お前が名を継げ」

「は?」


 俺は思わず変な返事をしてしまった。
 俺にとって右に出る者がいないほどの『忍び』が買い物してこいというような調子で重大な案件を言い出したのだから。


「お前は俺から技術をすべて盗んだ。
 巧く騙した手並み見りゃあ文句はない」

「師匠………」

「今日からお前が■■■■だ」


 そう言った師匠は………俺に酒を注いだ。
 翌日には、師匠は荷物を纏めて去っていった。


「そうだな………商人でもなるかな?」

 
 それが、師匠から聞いた最後の言葉だ。
 俺は………その後の師匠の事は知らない。
 忍びとして生きられないから野垂れ死にするつもりなのかもしれないし、本当に商人になったのかもしれない。
 ………最後まで俺の判断を惑わせる所が師匠らしい、そう思う。
















「………佐助!」

「ん………?」


 浅黒い肌の女性が自分の身体を揺さぶる。
 どうやら自分は寝ていたようだ。


「まったく、弛んでいるわよ!」

「矢玉が飛んでくりゃ。身体が勝手に動くから問題ない」


 目の前の仲間………キクリヒメにそう言い放つ。
 遠い昔の夢を見たような気がした………。
 自分が悪魔になるその前の………


「(まさか、な………俺が人だったのか………)」









『………桃井………崇』


 誰だ?


(まったく、まだわからないのか?)

『………』


 だから、お前達は、一体………?


『私はお前だ………だが「まだお前ではない」』


 どういう意味だ?


(まったく………まだわっかんねーかなー?
 まあ、俺はお前だ………どんな格好悪くても無様でもな)


 ???


(アイツは今のお前を認めないだろうが………。
 俺はお前だからな。
 最期まで付き合うしかねえけどな!)

『お前は答えを出さなければならない』


 待て……!!
 お前達は何処へ………!!


(俺は)

『私は』

『(お前とともにある)』









「………ゆ、夢………?」

 
 桃井は、意識を取り戻した。
 夢の内容が妙に記憶に残っていた。
 そしてすぐにその内容を忘れてしまった。
 だが、それは………新たな局面へと誘うきっかけだったのかもしれない。













 石動は、マッハへバイクモードへ変形させた後、悪魔の気配が薄い場所へ移動した。
 一行が移動を終えてから、石動は人面羊の名をつぶやく。


「四凶の一角『饕餮(トウテツ)』……」

「よく知っているね」

『ゴウトちんから聞いているYO!』


 感心するトウテツに鬱陶しい口調で答えるラームジェルグ。



 饕餮(トウテツ)………「饕」は財産を貪る事、「餮」は食物を貪る事を表す。
 体は牛か羊で、曲がった角、虎の牙、人の爪、人の顔などを持つ中国の怪物で、『神異経』をひけば「饕餮、獣名、身如牛、人面、目在腋下、食人」と書かれている。
 
 ちなみに四凶とは、中国の4つの邪悪な種族で、他に大きな犬の姿をした「渾沌(こんとん)」、人面虎足で猪の牙を持つ「檮杌(とうこつ)」、翼の生えた虎「窮奇(きゅうき)」という存在がある。
 
 四凶は、古代の聖なる帝王の不肖の子孫たちで、常人を凌ぐ高い知能と戦闘能力によって暴虐の限りを尽くした。
 饕餮は、「炎帝」の子孫の「縉雲氏(しんうんし)」の子孫であり、大変欲張りで財貨をためこみ、消費せず、老弱な者から財産を奪い、大勢のものは避けて、単独で味方のない者を襲うとされている。
 饕餮の貪欲さは並々ならぬものであり、饕餮の姿が殷・周代の青銅器器に刻みつけられ、戒めとしたものが数多く発見されている。
 (宋代の金石学者は、殷・周代の青銅器に彫られた紋様を、饕餮文字と命名している)
 饕餮は、かつて神だったものだが………魔とされてしまった。
 しかし、魔除けの魔として尊重されている。
 そして………かつて初代葛葉ゲイリンが大いなる魔に対抗する手段として饕餮の力を借りたという(そして一四代目葛葉雷堂もまた同じように力を借りていた)。



 閑話休題。
 トウテツは、頷きながら答える………その動きがどこかユーモラスで、友好的な雰囲気が出ている。
 

「色々と調べているとは………勤勉だね。
 ちなみに君達の事は、私もよく知っているよ………『アレ』に刀を叩き込んだりしたり、白騎士に勝ったりと武勇伝が事欠かないからね」

「………用件を聞こうか」


 石動は、静かに話を切り出す。
 その姿勢は、自然体で隙だらけのように見える………だが清流のように穏やかな気配は、もしトウテツが害を成そうとした瞬間に濁流のようなものへと一変することだろう。
 可愛らしい邪神は『噂に違わぬ面白い存在』と更に評価を上げつつ話す。

「アレを始末して欲しい………あの存在は私にとっても邪魔な存在だ。
 引き受けてくれるならば、前金代わりに葛葉ゲイリンが用いた秘術を。
 事を成したら………君が欲しい情報を与えるよ」

「元々他でも引き受けている依頼だ………その存在は現世でも被害を与えているからな」


 石動の言葉を聞いて、邪神は明るい声を発した。


「感謝するよ………。
 私は、『一仕事』を終えた後、久々に大陸へ戻って今はここを住処にしている。
 それで色々と耳にしたり、面白い事に首を突っ込むこともある。
 君達に襲った亡霊剣士………あれは一種の魔人だよ」

「ほう………」

『つくづく厄介な存在に縁があるな、巧』

「話を続けるよ。
 詳しく話すと日が暮れるから要点だけ言おう。
 アレは、仙術と剣術を組みあわせた仙道崩れでね………。
 戦いの才能はあったんだが、生憎『仙骨』が無かったから仙人にはなれなかった。
 だが………飽くなき『武』への渇望と、恐ろしいまでの生命力がアレを魔人へと変貌させたのさ」

『じゃあ、さっき斬りつけて効かなかったのは………』


 陽気な守護霊の言葉を聞いて頷くトウテツ。
 二本脚は苦手なのか、フラフラしながら話すその光景は微笑ましいが、話す内容は深刻であった。


「アレの周りに一種の結界があるのさ。
 敵意をもってやって来た存在を素通りさせる………ね。
 剣だろうと、術だろうと、矢玉だろうとね。
 まったく左道邪術の類ながら大したものだよ」


 トウテツの話を無言で頷くラームジェルグ。
 戦士として戦う以上、相手へ敵意や殺気の類を当然持つ。
 戦えばまず負けると言って良いだろう。
 仮に各国で研究されているような意志なき無人兵器(ドローン等)をけしかけても積み上げた経験と技量、そして魔人の身体能力の前では玩具でしかない。
 石動は、トウテツの話を聞いても微動だにしなかったが、聞き終わった後に問いかける。
 

「策でもあるのか?」

「私の力を利用した秘術を使えばね………石動、君の刀を貸してくれ」


 石動は言われるままに妙法村正をトウテツの目の前に出す。
 トウテツの前脚が刀に振れると淡い紫の光が妙法村正に包まれた。


「私の力の一部をこの刀に渡した………。
 君のサマナーの能力では私を扱えないだろうが、君の刀に力を宿したから問題ないはずだよ。
 君は方士としても有能らしいからね」

『………せっきーのフラグは羊にまで……!!
 獣姦は犯罪じゃないから心の赴くままに………!!!』

「ゲイリンが用いた秘術か………それで事を上手く運べるか?」


 石動は、ラームジェルグの戯言を無視して作戦を練り始めた。







「…………」


 亡霊剣士は、無言で異界の町中を闊歩する。
 理性はなく、本能のままに剣を振るい続けている。
 人間だけでなく、悪魔ですら獲物でしかないようだ。
 仙道は殺人を犯す事を禁忌とする事が多い。
 この亡霊剣士もそうであった。
 武術と仙術を極める事によって自分自身の身体で宇宙を体現せんと欲した。
 だが………仙人にはなれなかった。
 技を競い合う存在もなく、師を亡くした後はひたすら独学であった。
 そして、役人として立身出世するには汚さや狡猾さが無かった。
 さらにこの男が生きていた時代は、戦乱の中にあったが………剣術に長けていても戦場での槍働きとはまた別物であり、この男にはその才能がなかった。(日本の剣豪は多く存在しているが、戦場で活躍できた話はほとんど無い)
 この男の才能の使い道は無く、夢破れ………道を踏み外したのだった。

 その切っ掛けは些細なものであった。
 苦悩に満ちていた男が日々の糧として山菜を採りに行った時、野犬の群れに襲われた。
 この男は今まで襲われることはなかったが………病んだ精神が引き寄せたのだろう。
 咄嗟に剣を抜き、一閃。
 宙に血の華を咲かせた………。
 そこから何かが崩れたのだろうか? 血の味を覚えたのか?
 それはもはや誰も解らない。
 それ以来狂気を噴出させ、人間として死した後でも続いているのだ。

 
「!?」


 亡霊剣士は、腰の辺りに違和感を感じた。
 その瞬間、爆風に包まれた。
 その現象を引き起こしたのは数百メートル先のビルディングの屋上であった。
 屋上には二人と一体………トウテツが声を上げた。


「やったか?」

『(それはフラグ………)
 さあねぇ。
 それにしても遠距離から巧のブリューナクで空間を抉って対悪魔用の手榴弾を奴の結界内へ転移させるなんざぁ………』

「本来なら山河を越えた遙か先にある『モノ』を引き寄せる秘術だからなぁ」

『テレッテッテー。せっきーはザ・・・』


 トウテツとラームジェルグの会話を阻んだのは、石動であった。
 その声は静かだが、威圧感に満ちたものであった。


「奇策は通じなかったようだ」

『(やっぱり………)』


 爆発が収まった後には何もなかった。
 いや、正確に言えば違う。
 道の真ん中に居たはずの亡霊騎士は、爆発のあった道の近くに建てられていた民家から飛び出した。
 亡霊剣士の服は焼き焦げているが、ダメージは軽微のようだ。
 トウテツにとって予想外の事であり、無念に満ちていた。


「まさか………異変に察知して避難したというのか………!!
 ………何処へ行く?」


 トウテツは、ビルのドアへ向かおうとする石動に気がつき慌てて声を掛けた。
 日出ずる国からやってきた剣客の歩みは悠然としていた。
 トウテツの質問を聞いた石動は、足を止め、振り返って一言漏らした。
 


「………果たし合いだ」










 石動が、やってくると解っていたのか、亡霊剣士はその場を離れる事はなかった。
 数分後、路上の真ん中で剣士達が対峙する。


「………カァアアア………!!」

「………」


 両者ともに武器を下段に構えていた。
 亡霊剣士は、石動を亡者の仲間入りにせんと奇声を発しているのに対して、石動は声を上げない。
 

「………良いのか、助太刀は………」

『大丈夫、大丈夫。
 あれは勝機は十分にある顔さぁ』


 石動と剣士から離れた場所で一人と一体は観戦していた。
 ラームジェルグは、仕舞っていたフランクフルトを美味そうに食べるほど暢気であった。
 だが、トウテツはそこまで楽観していなかった。
 トウテツを用いた秘術は、本来は召喚師のMAGを吸収してそれを代償に空間を喰らうものである。
 ライドウは、山陰地方の上空に帝都上空にあった『モノ』を引き寄せた際に多くのMAGを消耗し、意識を失うほどであった。
 石動はそれをトウテツの力を宿した武器で行っているが、同じように石動のMAGで行っている………短い距離とは言え、石動もまた大きく消耗している。

 
「(………消耗は激しい………だが………!!)」


 石動は、本当に疲労困憊であった。
 だが………石動もまた長きに渡って戦いの中に居続けた存在。
 このような事態はないこともないのだ。
 剣士と対峙するだけでも体力・気力を消耗する………だが、石動はそんな素振りを見せなかった。

 亡霊剣士は、本能的に打ち込めなかった。
 目の前の剣士は恐るべき存在と感じたからだ。
 技量は相手の方が上回っていると………。
 最初の一戦でそれを思い知らされた。
 だが………自身が培った結界術ならば効かないはずだ。
 斬り合いで殺意・敵意なく振るう事などないからだ。
 亡霊剣士の理性が壊れていても………その程度の判断はできている。
 二人の距離が徐々に縮み………互いの間合いの中に入った。

 一瞬にして二人は交差した。

 

「が………」

「………終わりだ」

「ば………か………な………」


 
 立っていたのは石動であった。
 石動の刀は、無敵であるはずの結界をすり抜け、亡霊剣士の両腕と剣、そして胴体ごと両断していた。
 トウテツは、何が起こったのかすぐには理解できなかった。


『巧が言っていた………剣客の目指すべき目標をな』

「目標?」


 北辰一刀流開祖・千葉周作は、有名になる前にある話を聞いた。
 飛騨や美濃(現在の岐阜県)の山奥に心を読む妖怪『覚り』が住んでいた。
 一人の木こりが山の中で道に迷ってしまった覚りに遭遇してしまった。
 木こりの考えている事を尽く読まれてしまい、覚りを不気味に感じつつも無視して仕事を続けた。
 木こりは、力んでいたのか、叩きつけた時に斧が折れ………斧の頭が覚りのもとへ飛んでいき、覚りの身体に命中した。
 覚りは心に思わぬ事をした木こりに怯え、去っていった。


『で………その話を聞いた歴史に残る大剣客様はこう言ったのさ。
 「剣士には段階が有る。
  最低なのは心を読まれる木こり。
  人の心を読む覚り………それが今の俺だ。
  だが、目指すべきは(斧の頭)』
 ………てな』

「………つまり、無心で斬ったと?」

『Exactry(その通りでございます)』


 単に無心に撃っても敵意や殺気は消えることはない。
 例え、その条件がクリアーできても稚拙な攻撃ならば返り討ちにあう。
 石動が行ったことは………トウテツにとって狂気に満ちた魔法のように感じた。


「私達悪魔には理解しがたいものだな………」

『ま………ここまで技を磨くのは人間ならではだな』



 ラームジェルグの結論を言えば『(大半の悪魔にとって)攻撃なんざ適当でいい』のである。


 結論だけでは理解しがたいだろうから少々の説明を行う。

 『人間の武術家は精密な攻撃を行う………だが、精密にしすぎる』のに対して『悪魔の攻撃というのは一部を除いて大雑把な傾向にある』。
 それは何故か?
 
 基本的に悪魔と人間では………悪魔の方が強い。
 腕力・魔力・生命力………普通の生物では得られないモノを持つのが悪魔である。
 戦闘方法が稚拙な攻撃でも悪魔にとって問題はない。
 攻撃を掠らせるだけでも大ダメージに繋がりやすい。
 人間が刹那以下の時間を競い、超正確に、絶妙のタイミングと力加減で撃とうとしても………悪魔の一撃で全てを覆しかねないのだ。
 逆に人間が適当に攻撃しても生半可な攻撃は通じない。
 悪魔と人間の間には大きな差があるのだ。


『それでも………悪魔に勝とうとするなら人間は技を磨く、術を磨く、技術を高めて強力の武器を作る、悪魔を使役する………。
 あの魔人に勝つのに巧は剣術を使っただけのことさ』

「……なるほどな」

『で、巧………なんでフリーダー達を呼ばなかったんだ?』

「極限まで追いつめられた時こそ人間は気力を振り絞る。
 仲魔がいると心の中で油断ができる………それだけだ」


 ラームジェルグは、ニヤリを笑ってさらに問いかけた。


『………子供達に心配を掛けたくないからじゃないの、パ~パ?』

「俺は、所帯を持てるような人間じゃない………さてトウテツ、早速報酬を貰おう。
 今回は流石に骨が折れた………さっさと休みを取りたい」




[7357] ソウルガーディアンの世界観について(ネタバレあり・10月にて追加情報)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/22 12:10
メモ帳に走り書きしていた設定の一部を後悔……じゃなかった公開。
そのまんまコピペです。
次回の戦闘シーンを考えていると中々……時間を操る難敵というのは難しい。
大雑把すぎな内容で申し訳ない(次回までの時間稼ぎともいう)






ソウルガーディアンの世界観について(ネタバレな情報もあり)



・旧約1・2
人間は登場せず。
ただ、初期の悪魔召還プログラムの製作者は中島だという説があった。
黒瓜の小説は2っぽい?
そういえば鈴木社長って……。





・真1
ヒーロー……救世主ではありません。
      幼馴染は音楽家と結婚……。
      でも彼は、同姓同名の女性と結婚したそうな。
      プログラマーとして仕事をこなし、愛犬パスカルと毎朝散歩するのが日課。
      ちなみに、お母さんは、結婚式で涙を流して喜んだし、今でも一緒に住んでいる。

ロウヒーロー……音楽家として大成。
        恋愛結婚をして幸せな毎日。

カオスヒーロー……オザワに復讐しようとしたが、オザワは国外逃亡。
         失意の中で生活の為に商売を始めたがそれが当った。
         いまや大手ディスカウントストアの社長。
         オザワを殺そうと一時考えたが、調査で負け犬生活をしていると知って殺す事はやめた。
         最上の復讐は、自分が幸福に生きることだと思ったからだ。

五島……出所してからは消息不明。
    一説によると中国マフィア『忘八』を作り上げたと考えられている。

トールマン……心臓麻痺で死亡とあるが……?

役小角……石動のところで酒を飲んだりしている。

道満……90年代で倒されたのは偽者だった!
    適当に酒を飲みながら厄介ごとを起こしたり、首をつっこんだり。





・真2
ザイン……石動のストーカー(嘘)。
     このザインは真2ED後の要素が強い。
     (全てのルートの彼と統合)

唯一神……出てくるも倒された(第一期)。
     実は、この影響で、別次元の彼に影響を与え、敗北する『きっかけ』になっていた。
     (DDS2,真2等)





・真3
ここだけ大きく異なる。
氷川が女だったり、先生が野郎だったり。
氷川は死亡したが、ガワはキョウジボディその1に。
先生は裁判中だが……。
サカハギは、絶望した中年が平行世界の自分を憑依してしまって誕生。
(サカハギは、本来なら彼が呼べないほどの強力な悪魔であった)
『フリーダーのドリー・カドモン』を得た時の巨大餓鬼はTRPG版の真3の餓鬼の親玉。
新田は虚栄心が強い今時の女の子……ブラウンの事務所と同じでブラウンに面倒を見てもらっている。
千晶は、南条圭につっかかる(南条曰く『山岡に出会わなかった俺か神取』と)。
だから南条は打ち負かし続けて更生させるつもりだけど……。
人修羅(にならなかった)は、そんな千晶に付き合う(友人としてだが)変わり者。




・IF
内田たまき……レイコルート(他の2ルートも混ざっている)準拠。
       サトミ家のボンクラ坊主と恋仲。
       葛葉探偵事務所に勤務。
       最近、氷川という女性が副所長に就任したそうな。    

チャーリー……別の高校、そして大学に進学。
       普通にサラリーマンに。

レイコ……姉御肌な彼女は、大学でもまとめ役だった。
     現在は大学院に進学。

男主人公(ノブ)……たまきが大活躍!
          その裏で彼は、アキラルートを進む。
          アキラの夢を知り、高校卒業後、彼の夢を代わりに行った。
          (バイクでエジプトからモロッコ、北アフリカ、そして地中海まで走り抜ける)
          その旅の途中で藤堂尚哉に出会った。
          旅を終えた後は、表向きはフリーのルポライター、裏では、デビルサマナーとして生きている。
          神剣ヒノカグツチで今日も戦っていることだろう。





・葛葉ライドウ
ゴウト……当代のライドウに力を貸す(今回は黒い鷹らしい)。
      今回のライドウは、錠平(十四代目)の孫。
      ちなみに錠平の息子は才能がなく、サポーターとして生きている。

雷堂……平行世界の十四代目。
    帰還までもう少しかかる。
    アラカナ回廊でまた会えそうだ。

ライホー君……初代葛葉ライホー(ヤタガラスは認めず)。
       見た目に反してサマナーとして優秀であり、悪魔でなければライホーの名前を公式に認められるほど。

成田家……アパドン王の設定から想像しました。
     
天斗様……アパドン王の時に無くなった奴らが悪霊に。

シナド……眠っている状態を無理やり叩き起こされた挙句レイプ(というわけでないが無理やり同化)。
     でも3大ヒーローの袋叩きにあう。




・デビルサマナー
キョウジ……未だに成長を続ける現在最強のサマナー。
      復活仲間の石動とはソウルブラザー。
      ちなみに装備は七星剣。
      初代も七星剣を装備していた……めぐり合わせというべきか。

キョウジ(元祖)……身体を捜し、既に幾つか確保。
          でも満足できないので探し続ける。

レイ……キョウジを厳しく育てる?
    よきパートナー。





・ソウルハッカーズ
峰岸啓自……プレイヤーからカツオの愛称で慕われているカツオカットの人。
      コンピューター会社に就職(桜井が設立)。
      サマナーも兼業している。
      最近、義理の弟ができた。
      キョウジに見覚えがある……デジャヴュの人?
      (エクストラダンジョンで戦ったため)

瞳……相変わらず元気。
   峰岸とは幼馴染以上、恋人未満。
   周りが結婚して焦りだす。

桜井……PS版二週目準拠なので生存。
    何を血迷ったのか、会社設立。
    なんとか黒字にできて一安心。

ランチ……記者として活動中。

シックス……実家の店を継ぐ。

ユーイチ……アルファ&ベータにしごかれ、ハッカーとして一人前になりつつあった。
      でもしょせんユーイチ(酷)。

トモコ……マヨーネに攫われそうになったところをサラ忍マンに助けられ、その後結婚。

マヨーネ……峰岸に負けて以来下り坂っぽい。
      人質作戦は、チートサラ忍マンによって阻止。
      石動に負けるわ……アレ、涙が出てきた。

キャロルJ……インディーズで人気が出ている。
       幽霊部員ならぬ、幽霊ファントムサマナー(名前だけ在籍)。
       ブラウンのラジオでゲストに出た事も。

ヴィクトル&メアリ&ムラマサ……業魔殿で日々を送る。
                ヴィクトルは転移装置で転々としている。






・ペルソナ1
藤堂尚也……漫画版と進み方が違う。
      『雪の女王』編が終わってから『セベク』編に突入。
      それでも神取達は強かった。
      双子の兄・和也というのがいたらしいが……。
      大学卒業後は、冒険の旅に出た。
      今でも旅に出ており、旅行の記録を書いたら本になった。
      一部で売れて人気になっている。

藤堂和也……ウーリの実験とニャルラトホテプの力の影響で再び生を得た。
      尚也の罪悪感と本物の魂が融合したために真の自我を確立してしまった。
      ウーリのすねかじり兼石動のサンドバック……ゲフンゲフン、恵子相手に。

マーク……海外で名が売れている。
     でも未だに初恋に吹っ切れていない様子。
     意外にモテるが本人は決して気がつかない。      
     ペルソナ2と違い、ソウルガーディアンでは出番を期待していいのかも。

城戸玲司……美人の奥さんと3児のパパ。
      昔は怖すぎて営業が上手くいかなかったが、いまでは真ん中くらいに。
      長男は鷹司、妹達は双子でマイにアキ。
      神取との決着をつけた。

南条圭……海外を飛びまわっている。
     時には雑誌で特集が組まれるほどの日本男児。
     松岡も立派な主人に仕えて幸せである。
     鼈甲の老眼鏡は、お守りであり、ある男の形見。

エリー……モデルとしても活躍しているが、黒瓜原作のデビルサマナーシリーズの映画化に伴いヒロインに抜擢。
     女優としても才能が開花したようだ。
  
ブラウン……何気に人気がある。
      深夜ラジオ番組で人気になっていたり。
      映画に出て益々人気が出ている。
      エリーと映画で共演したとき、嫉妬スレが立ったそうな。

アヤセ……なぜだろう?
     なんで出番がないんだろう?
     まあ、円満な家庭生活だからよし。

マキ……サイコセラピーとして漸く一人前。
    まだまだ修行中。

黒瓜……オカルトマニア。
    小説を書いて大ブレイク。
    エリーとはオカルト仲間として交流がある。

反谷……機動教師ハンニャム、以上。





・ペルソナ2 罪
『罪』の段階で大幅にシナリオが変わり、ニャル様の陰謀はしくじった。
具体的に言うと……


・元祖・葛葉キョウジは本気を出しました。
 たまきちゃんのフ元クラスメートがやってきました。
 ついでに丁度、冒険野郎なサマナーも滞在していた。

・克哉兄さん、ペルソナ覚醒!!
 実は、罰同様、親父さんは嵌められていた。
 弟のことが気になり、追跡するうちにノブと出会い、ペルソナ覚醒。

・デビルサマナー・第十六代目葛葉ライドウ参上!
 噂が噂を呼び(颯爽とあらわれ、難事件を解決する鋭いモミアゲ男の噂)、それがライドウの助けになっていた。
 噂が実現化するという異常事態がライドウの力を底上げさせていた。
 ニャル様涙目。

・結婚詐欺師は達也と戦う前に死亡(悪魔に襲われた)。
 仮面党の仲間になっているかすら不明。
 さり気にうらら・ペルソナ覚醒。

・藤井さんは、偵察中だったメギドラオンピクシー(某ピクシーの友の会・会長の使役した仲魔と思われる)のお陰で助かった。
 ゆきのん小躍り。

・カス高のパンツ番長の舎弟達も助かった。
 そういえばチャーリー、がんばったね。

・シバルバー浮上せず。
 様々な介入で失敗。
 でも悪あがきで日本沈没のピンチ。
 
・マイヤの託宣を成就しようとしたイデアル先生、失敗。
 克哉兄さん、コマンド庇うを選択。
 『刃物は柄を持てと教えたはずだ』と言われそうな事をした。
 最後の作戦失敗でニャル様涙目。
 メデタシ、メデタシ。
 多少強引かつ説明すっ飛ばしだけどこんな感じ。






・ペルソナ2 罰
周防克哉……現在、警部補。
      真面目に仕事を行っている。
      現在、交際中の女性(女性記者だそうな)がいるが、なかなか進展しない(正直、弟のほうがよっぽど進展しているぞ、どうする?)。
      ゲーム版とちがい、ペルソナ覚醒をはたし、大活躍だった(実は世界の救世主なのだが、本人は気がついていない)。
      当時、彼女を庇い、ある槍を握ってしまった為に掌に傷が残っている(さまざま手段でどうにか傷を塞いだ)。
      その傷は、月に一度、血を流すが、気にしていない。
      弟とは仲が悪かったが、当時の大事件後は、少しだけ距離が縮まり現在も修復中。
        
芹沢うらら……騙される人。
       でも白馬の王子に出会った(王子ってガラかよ?)。
       悪魔に襲われてペルソナに目覚める。
       パオの仕事を手伝う。       

パオフゥ……罰と同じ背景。
      違うのは芹沢を助け、事件中も動いていた事くらい。
      現在、プロメテウスをメインに使っている。
      ここではキッチリ復讐を成し遂げている。
      仕事は、盗聴バスター兼マンサーチャー(実質探偵と変わらず)。
      噂サイトは惰性で残している。
      須藤パパ?
      天道連が丁度『NINJA』に襲われたのがきっかけで落ち目になり、破滅しています。
      
云豹……原作と違い、守護霊使いに(ベルセルク)。
    実は、弟と一緒に襲われ、本来だったら死んでいたという設定。
    だが、パオフゥに破れ、暗殺者として壊されてしまう。
    最早、復讐はできず、逆に恨まれている連中の標的となる。
    身内を大事にする彼にとって復讐が出来ないという屈辱、暗殺者に追われる恐怖、そして自殺できない苦しみが彼を襲う。
    『罰』世界の彼より酷い目にあっている。
        
ワンロン姉ちゃん……須藤パパの愛人にはならず。
          普通に人生を送っている。
          TVの占いコーナーで占っており、占い本も出している。
          現在、恋人募集中。
          (あれ、幸せなのか?)

ニャル様……予想外の展開に涙目。
      地道に活動した矢先に石動に邪魔されたり。
      第2期の敵はコイツが中心かもしれない……でもラスボスにならず、石動からスルーされた。
      涙目。


島津……ここでも敵だった。
    エリートではあるが、風間や香我美と比べたら……という感じ。
    だから造反したわけだが、全ては孔明……じゃなかったせっきーの罠だった!


・ペルソナ3・4
平行世界では大活躍ですが、ここでは普通に暮らしている。
クマさん?
みなの心の中にいるさ……。
アイギスは……プロジェクトイージスで作られたが凍結され、今も眠ったままである。






・オリジナル
石動巧……主人公。
     流派は無間流(と生き返る前に名づけたが実際は日本の主な武術のハイブリット)。
     第一話ではレベル30前後だったが、今は60越え。
     数十年地獄の鬼(というか色々な悪魔)と組み手(というか真剣試合?)をしていた。
     地獄の鬼、涙目。
     そのお陰でダブルキョウジは楽に復活できたのは秘密。
     実は守護霊使いとしての石動は、パラメーターの上がる度合いは、ペルソナ使いや、普通のガーディアン使いより低い。
     石動は、サマナー型でも魔法使い型にもならなかった為、パワーアップの度合いが低く(常人よりは凄いが)、サマナーとしても使役できる悪魔が限られてしま

った。
     欠陥はあるが、それでも強いのは間違いない。

ラームジェルグ……『ダメだ……コイツ、なんとかしないと』。
         そんな悪魔……でもやる時はやってくれる。
         (でも、普段はギャグ担当)

バロール&ルーグ……ラームジェルグのご家族。
          バロールは、ラームジェルグ以上に自重しない馬鹿。
          ルーグは、そんな馬鹿を反面教師にしている。

モー・ショボー……この作品のマスコット。
         現在アダルトモードは十五才バージョンが1時間持続(ロリ巨乳モードならずっと)可能。
         石動のハートを射止められるのか?

ニュクス……台詞が少ないが、彼女の店は作者にとって便利ですので重宝しています。
      ダークサマナーすらここでは揉め事を起こさない。
      そう考えると偉大な女性である。

ノッカー&ウコバク……石動の仲魔。
           戦闘ではあまり出せないが、細々とした活動で活躍。
           弱いから返ってマークが薄くなる事が多い。
           他にも何体かいる。

アズミ……おばちゃん、石動の面倒を見たいと思っていても出番が少なくて涙目。

フリーダー……BUSIN0のオートマタから名前を拝借。
       今では完全な人間モードになれる(表情が乏しいかも)。
       石動の成長は、彼女のお陰である。
       スキルを自在に組み替えられるのが強み。
       ぶっちゃけ、こういう造魔で遊んでみたい。

ウーリ……BUSIN0のウーリから(アトラスだけどWIZの外伝という作品で作者お気に入りのゲームで大好きな錬金術師)
     石動の助けになってくれる存在。
     ヴィクトルとは研究者としてライバルらしい。
     生命力はヴィクトルに劣るが戦闘能力では大幅に上回る。
     和也をメギドラオン乱舞で制裁できるほどの能力者。

太平堂店主……阿片中毒者。
       そもそも人間なのか?
 
早乙女さくら……最初はロンド(巷では糞ゲーの烙印を押された魔神転生の系統)のヒロイン『早乙女桜子』から一字取ってひらがなにしただけ。
     でも今じゃニャル様と作者の陰謀に巻き込まれている子羊。
     まだ完全な方向性は決まっていない為、進路が一杯。
     (普通のサマナー、守護霊使い、ペルソナ使い、果ては人修羅2号等。でも『普通の女の子』という進路は消えました!)

カハク……ライバルに差をつけられた。
     でも成長の余地はあるさ~。
     早乙女大好きっ子。
     いまはキクリヒメに。
 
クダ……ちょっと気取った女性タイプ。
    でもそんなに強くはない。
    ラミアになりました。

猿飛佐助(ベナンガル)……微妙な仲魔でした(青年口調で弱い仲魔の条件にぴったりだった)。
             義理堅い正確なのか、早乙女をしばしば助ける。
             自分の弱さに痛感し、力を欲していたが、ある事件で猿飛佐助に変化した(通常ではありえない仲魔である)。
             自身の過去を思い出しつつあり、困惑している。

九鬼英輔……妻、トモコとは美人です。
      ガーディアンでも魔法使いでも、魔人でもないのに強い……NINJA(WIZ風)じゃないのか?ってくらい。
      普段は、穏やかで弱そうな草食系……もはや擬態とか詐欺の領域(いや、内面は良い人ですよ、うん)。

鞍馬天狗……時代劇の部下キャラ。
      真面目すぎるのが玉に瑕。
      でも、術師として優秀であり、九鬼の駆け出し時代からの仲魔。

義経……九鬼と木端天狗(当時の鞍馬天狗)が闘い、彼に勝利した。
    それ以降、九鬼に仕えている。

金鬼・水鬼……真3と同じ外見だが、性格は此方の方が良い。
       九鬼に打ち負かされて仲魔に。
       石動に対して一目置いている。

隠形鬼……4鬼のリーダー。
     無口で陰気。

ジェシカ……イギリス出身。
      国のご飯は美味しくないよ。
      銃大好き、でも接近戦は……数段落ちる。
      女の子なパーティーを組むのが特徴。
      実は家柄はかなり良い。
      
シルフ・リャナンシー……御霊や香等で強化されているので侮ってはいけない。

スカアハ……実体持ち。
      ソウルハッカーズ仕様より遥かに強い。
      ラームジェルグの天敵であり、武術ジャンキー。
      石動と意気投合しているようだ。

クリス・ザ・カー……野良悪魔だが、石動に協力してくれる。
          その分、MAGや金、オイルにカーステレオなど貢ぐ必要があるが。

原野……ダンテの門はマイナーです。
    交渉特化(あと魔法も)の美男子……マダムキラーです。
    ロシアや中国の連中を嫌悪している。
    これは、拉致していったのはそのどちらか(あるいは両方が手を組んで)だったため。
    
香我美&ベルフェゴール……怠惰です。
             ぶっちゃけ日本人版ヘルシングの少佐っぽい外見。
             パオフゥとは法学部の同期で親友だった(つまりキャリアっていうことでいいのか?)。
             人間の大半が嫌い。
             でも、侮りもしないし、ムスビのコトワリを聞いたら一笑するタイプ。

風間……ご先祖以上にかっこいいぞ!?
    先祖と瓜二つという設定だけど、清潔感があり、背広を着こなしているので数段男前になっている。
    唯一神に一喝するという勇者でもある。
    日本警察万歳!

毘沙門天……シンクロ召還で出てくる主な悪魔。
      頼りになるナイスガイ。
      モムノフ・木端天狗・鬼が物量で押す場合に活躍。
      ハイテク担当はグレムリン……予想も出来ない活躍をするので侮れない。

佐竹……現代を生きる侠客。
    彼が通ると、町の人は敬意を表する位。
    先祖譲りの鉄拳は悪魔もKO。

オセ……真の外見・能力が基本。
    でもマハラギオンは使えます。
    いつの間にか、力関係が逆転してしまい、感想でも『瞬殺されんじゃないの?』って空気が漂っていましたが!
    もう陰謀オンリーではない!(たぶん)
    魔術書もってパワーアップ!(メガテンファンなら彼の持つ魔術書のチョイスは納得できるかな?ごういんな繋がりだけど)

小林……漫画版でもこっちも迷惑をかける存在。

ハヌマーン……仏様を大切にしない奴は死ぬべきなんだ!!

サンダーバード……正確には大サンダーバード。
         アメリカのある聖地を守護している。

オリバー君……畜生。
       サトリの能力で凶悪に……でもそれはデビルサマナーが既に通過した問題だった。

魔人ホワイトライダー……石動の村を皆殺し。
            当時の葛葉(ゲイリンかライドウか?)が討伐した。
            現代になってメシア教団が再び呼び出した(記憶は継承)。
            その時、メシア教団ともめていた中国マフィアの連中を皆殺しにした。
            第一期であった忘八の連中を皆殺しにした犯人はコイツ……天使は焼き殺し、その他はゴッドアローで射殺した。
            石動を2度目の死を与えたが、復活した石動に圧倒され、敗れ去った。

光の戦士たち……アレな人間に超能力与えたらヤバイって思いました。

如月……イナバシロウサギ(幸運は最強クラス)をペルソナ化。
    設定上はデビルサマナーの如月(強欲占い師)の親戚。
    でも貧乏神に憑かれたのが運のつき。

メアリー・スー……自分でも書くときにダメージを受けながら書きました。
         厨くさいネーミングを探すのが……もう、なんていうか……面白いんだけどね!
         婦女子の幻想の体現なので幻想っぽい能力と考えて幻術能力に。
         石動だからあっさり破った……でも、あの手の婦女子は浅はかなのですぐにボロが出て、最終結果は同じだったとおもいます。
         ところで、だれか……メアリー・スーテストを満点になるようなSS書きませんか?
         (自分でも無理な難題ふるな!)

テュルゴー……コイツもウーリ、フリーダーと同じくBUSIN0のキャラがモデル。
       目つきが悪いが、異常な危機感知能力アリ(これも元ネタのキャラの特性……使っていましたよ、このキャラは)。
       まあ、不運キャラです……不運を選べるだけ早乙女よりマシですが。      

ベルグラーノ……BUSIN0出向(元ネタではチートクラスである聖騎士)。
        ジェシカの叔父であり、クイーンガード(英国版クズノハのようなもの)の騎士団長。
        若い頃は猪突猛進していました。

ベルタン……第3期の5話の時点では名前のみの登場。
      鋼鉄の身体を持つデビルバスター(BUSIN出向)。
      オッサンだけど強い。

イーリス…… BUSIN0のキャラがモデル。
      原作でも法王庁のモンク僧で、アンデッド嫌いの腰抜けです。
      バチカンがメガテン世界にあったら……と妄想したら二通り浮かんできました。
      神に熱狂的に妄信する馬鹿組織バージョンと、神やキリストが現れたた抹殺するタイプ。
      現実世界でキリストが復活したら恐らくこの世に出る前に暗殺するんじゃないのか?と思って後者を採用。
      メシア教団は旧教から分離した分派と考えています。
      老獪な組織だな、バチカン……と思ったり。
 
十七代目葛葉ライドウ……十四代目の孫。
            祖父の生き写しというくらい似ているし、素質も抜群。
            GUMP装備……リボルバー拳銃の型のままであり、ディスプレイはホログラム形式で超最新型。
            古式と新式の召喚術を使い分けており、GUMPに特注の召喚管を用いて古式召喚術を使うときも。
            ちなみに、先代のライドウは13代目ライドウに近いタイプ。
            ゴウトは傍にいるが、ヤタガラスの使者とは直接会わず、通信越しでしか連絡しなかった。
            極力外出せず、悪魔を派遣させている傾向にあるが、悪魔の使役技術は歴代でトップ(外出したくない為に高まったのか、高いから外出しないのか……)。

            
南野一輝……ヨミクグツでありながら理性・判断力がある異色の存在。
      超力兵団事件の時に改造・脱走してアパドン王事件後のライドウに保護された。
      その時に恩義を感じ、十四代、十七代目ライドウに仕えている。
      陸軍曹長で、銃も剣も使いこなせており、幼少の十七代目を鍛えたのは彼だったり。
      まあ、時代劇のジイヤみたいな感じか?
      魔神転生の南一輝(ゾウチョウテン)が名前のモデルではあるが、キャラ的にはステレオタイプな軍人っぽい感じで。
      でも周りの個性が強い性か、誰も気にしない。

サイガ……当代の雑賀魔護壱。
     詳細は不明だが、ヤタガラスの分身か分家かなにか。
     並みのサマナー、いや一流のサマナーでも太刀打ちできない程の力を持っている。
     でも、この物語では影が薄い。

河豚州 琉貴……謎の人(なに、財務大臣?これ以上言うとテトラカーンかマカラカーン使うぞ)。
        上司に恵まれないようす。

ヴァイル……BUSIN0のキャラから。
      あっちでは部下全滅していますが、ここではそこまでやられていません。
      
リディ……特殊なソフト『カフカ』を用いる情報屋(表向きにはジャーナリスト)。
     力量は一応ある。

桃井崇……第3期の主役……になれればいいけど。
     設定はおいおいに。
     喰人態はスパルナ。
     普通に暗い過去持ち……でも早乙女のほうが哀れに見えるのはなぜ?
     
梁衣雷蔵……オルトロスの化身。
      見た目がものごっついけど、知的。
      元ネタは……漫画版スクライドの火力満点なあの人(人間戦艦な意味で)。
      火力があるせいで、桃井の影が薄くなったと突っ込まれたり……。

松平シリーズ……サトミタダシの一族と同じように一杯いるんじゃないかと思ったら……思わず作った。
        まあ、いい雑魚要因かな。

ヨグ=ソトース……名前だけは最上級なレベル。
         でも最弱クラスの分霊なので安心だね!
         不死身・時間停止能力というチート能力があるのに凄みがないキャラ。

黒い喰人……ドッペルゲンガーとシャドウという特性が正反対の能力を使い分ける存在。
      一般的な常識については理屈では理解できるが、心では納得していない存在。
      今の桃井や梁衣より格上の存在である。                   最大の武器は、命の危機でも動揺の出ない異常な精神と、体術。





なお、参考記録として感想掲示板で語ったことも転載+α。
石動達の強さ(第2期 第7話終了時点)

早乙女は14~16,7。
そろそろ聖獣か女神の一番弱い奴なら扱えそうな感じ。
武術を嗜んでいるからこそのスピードで普通のサマナーよりは戦士としての成長は早いですが……悪魔召還士としては未熟も未熟。


石動は63,4くらい。
パラメーター的には相当強い範疇。
ゲーム的にはラスダンに挑めますよ~ってイメージ。
仲魔がフリーダーしか使い物にならない為、苦労している。
個人ならば最強クラスに踏み込めるが、サマナーとしては……限界しかない。
それでもサマナーをやっているわけですがね。
悪魔の特殊能力は、重宝するからですが。


九鬼は67,8位で石動より高みにあると考えています。
守護霊なしでは剣術の試合なら十割で石動が勝ちます。
でも、闘いになり九鬼のフィールドに引き込まれたら勝率が1割切ります。
守護霊有りでも勝率が上がりますが、それでも九鬼に勝ち目は二,三割ある。
悪魔有りなら数で押しつぶされてしまい、ほぼ確実に石動は負けてしまいます。
ブリューナクゲットして、フリーダーも強くなりましたが、二対六ではあまりにも分が悪いです。
九鬼はサマナーとしては凡庸ですが、忍者としては鬼才。
マフィアを一網打尽できた時点で只者じゃないというか何処の静かなる狼?


ジェシカは50前後。
サマナーとしての運用の巧さは三人のなかで随一。
ただ……前二人と比べれて普通の人(前二人がおかしいだけ?)。
女性悪魔を中心に組む癖があるので偏りが出来やすいか?


原野はレベル70くらい。
ですが、戦闘の才能が無いので過信は一切できない。
レベルが高いだけで実際の戦闘力は偏りが大きい。

香我美も70くらい。
これも直接戦闘が期待できないのでフォローが必要。
レベル(ry


風間はレベル42くらい。
とはいっても指揮とか組織運営のほうが中心ですので。

佐竹の親分は……ヨミクグツをKOできるくらい強い(先祖と同じ?)。


キョウジ・レイ・峰岸は本編クリアーのレベル。
パオはプロメテウス扱える程度、うららはパオより二回り実力が下(ヴィヴィアンは扱える)といった感じ。
マーヤ達に克哉兄さん達は日常に戻ったので鈍っています10~18程度。
ペルソナ1……南条たちはレベル10~18程度(鈍っています)、ただし藤堂だけは冒険しているためにあまり鈍らず42,3程度。
たまきは、ネコマタが扱える程度のレベルで、ノブは本編クリアー時より若干落とす程度。









 日本国について

 オカルト大国であり、悪魔にとってはまさしく『黄金の地』と呼ぶに相応しい場所です。
 公安零課のような徹底した集団戦を行うサマナーというスタイルは、世界でも稀です(優れた人間が単騎で何とかするのが普通)。
 また、自衛隊では対悪魔用の武器の開発が中心であり、所属するサマナーが特殊任務で出陣するのですが、数はそれほど多くない(とはいえ、他の軍隊のサマナー含有率より高い)。
 超国家機関ヤタガラスの戦力は計り知れない。
 戦国時代においてその気になればいつでも第六天魔王・織田信長(本物の魔王)の首を取れるほど。
 だが、歴史上において動く事は極めて稀(本能寺の変が有名な例)であり、太平洋戦争でも動く事がなかった。
 もし、動いていたら……米軍に多大な損害を与える変わりに世界中のオカルト機関が刺し違える覚悟で動き出し、人類の歴史は……終わりを迎えたであろうと、専門家は分析している。


 それほどの力を持った存在が、太平洋戦争ですら動かなかった。(後一個原爆を落としていたら踏み切ることを当時の天皇に向けて書状を出していたのが宮内庁で保管されている)
 だが、大々的に動いた時があった。


 事の始まりは、GHQが平将門公の首塚を壊すように指示した事だ。
 平将門公は、関八州を守る神にして祟り神でもある。
 彼の力は……魔王・大天使をも凌ぎ、勝てる者は……神々・悪魔の陣営のトップしかいないと考えられている。
 だが、無知なるGHQは、それを指示した結果、将門公は激怒した。
 工事現場の人間を祟り、怨霊の部分の彼が暴走を行う寸前であった。
 さらに戦争によって生み出された死霊によって日本国の地脈が乱れた時に、それを命令したため、大変な事態に引き起こした。。
 間が悪い事に国津神も再び怒り狂い、魔人・『疫病神』『貧乏神』が活発化するなど重なって一時は、アパドン王事件の再来とまで恐れられた。
 怒れる将門公の怒りを静めた、一連の乱れた世を正したのは、葛葉四天王でした
(十四代目ライドウは、歳を食ってもまだまだ健在でした)。
 葛葉四天王が集結して解決に当たるという異常事態であることから、事の深刻性がわかるだろう。

 
 そのこともあって、とうとうヤタガラスは牙を剥いた。
 表向きには報復は行われなかったが……アメリカ国内の暴動の煽動(術で精神を高揚させ、更に攻撃性を増幅させた)、大災害が起こる予兆を感じたが、一切報じなかった等の報復が行われ、アメリカ政府では、GHQの命令は『アメリカ建国以来の失策』として密かに語られている。









 日本にある組織。

メシア教団……魔人・ホワイトライダーを呼び出し、唯一神を降臨させた為に『国家の敵』に認定されています。
       また、自衛隊に『新世塾』という組織を作るなど、各界に勢力が伸びている。
       
忘八……頭目の正体は不明の中国マフィア組織。
    一説によると、元陸上自衛隊の『五島』であると考えられている。
    組織の特徴は、武闘派に悪魔を憑依させて戦力化を行う点。
    中国の豊富な人口を生かしてどんどん憑依させて使い捨てにしているのが現状。
    だが、日本人を拉致し、悪魔化させた事件が起こり、日本政府は、断固とした対応を取った。
    忘八の内情を知る幹部を除いて裁判すら行わず、処刑した。
    その後に、堕天使ネビロスに指示してゾンビ化させ、密入国を行う中国人の抹殺・ゾンビ化を薦めている。


レッドキャップス……ロシアンマフィア。
          悪魔を機械化させ、制御しやすく、強力な戦力化を測る。
          悪魔を特攻させる戦法は、初代・葛葉狂死を髣髴とさせる。
          ファントムソサエティの傘下とも敵対組織とも言われているが正体は不明である(レッドキャップスも組織名でなく、警察組織からの呼称である)。



南条財閥……対悪魔用の研究を行っている(セベクのデータの影響も大きい)。
      少女型の機械兵『プロジェクト・イージス』人型サイズで戦車並みの装甲と火力を目指したが、コスト上の都合で凍結。
      だが、試作品は完成しているが、擬似的な精神を作り出し、ペルソナ能力も付与されていることから、封印されている。
      この技術は、工業用ロボや義手・義足・人工臓器の発展に役立っている。






ソルガディのことについて。(裏話的な何か……)

石動は、1・2のペルソナ使いの如く複数の守護霊を使い分けるチンピラタイプでした……最初の予定では。
でも、剣に拘る求道者的な部分が強まったわけです(初めと比べると格段に成長しました)。
今のスタイルの方が魅力的だと思えるので正解だったと思えたり。
サマナーとしては欠陥持ちなのは当初の予定からありました……フリーダーのような完全女性型にしたのは、BUSIM0に嵌ったが故に(お陰でここまで合体シーンは一度だけになったけど)。
早乙女は当初から弟子ポジションでしたが……ここまで不幸になったのは……ほんとどうしてだろう?まいいや、早乙女だから。
ラームジェルグは、パワーアップする予定でした……で武人系に使用と思いましたが、しっくりきたのがなかったのどけど……するならクー・フーリンと天啓が。

第一期のラスボス(白騎士&唯一神)は決めていました……メガテンのボスといえばコイツだと。偽者ボディは機械仕掛けで、そこから弱点を突くという展開を思いつけたのが楽しかった(雑魚悪魔のグレムリンはリアルでは性質が悪いね!)。
思えば第一期は、世界観の構築が肝だったかな(もし悪魔やヤタガラスのような超国家機関があったら社会がどうなるかという…)。

第二期はダラダラやるつもりが……ニャル様が現われたのがアイディアが生まれて今の形に。JOKERは原作ではどうにも出来ないで最終的にニャル様を力技で下すしかなかったから、下せるか?という思考実験を行ったわけです。
石動が凄かったお陰で解決したわけじゃない……解決できる手段を持った立場にいただけです。
ニャル様が一度失敗したお陰で、手口や傾向がバレているのが痛手。

石動とオセは……コブラとクリスタルボーイみたいな関係ですね。
絶対に倒さないといけない宿敵同士という関係。
最初はオセの方が強かったけど逆転してしまった……けど全てを借金のカタにして戦いに望むオセは自分でも気に入った敵役でした。
まあ、ホワイトライダーの台詞回しも好きだけど。

うららの結婚編は自分でもびっくりだった……アステリアとゼウスの関係は気がついた時には吹いていました。
あと隠語(パトる)は個人的にツボでした……真3の用語が一番面白かったので。


まあ、第3期も石動達が怪奇事件に挑み続けます。
色々調べて物語を構築するのは面白い……と感じます。
あと、悪魔を出せばネタが転がり出す時が多いわけで……。
とダラダラと語りましたが、〆の言葉を。

私は■■■(好きな種族を入れましょう)レッドマン。
コンゴトモヨロシク……。



[7357] ソウルガーディアン外伝『守護霊から見た人間の感想ってやつ』
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/10/29 11:57
 おっす。
 ただいま出番なしなラームジェルグことクー・フーリンだ。
 意地でも出番を作ろうと……げふんげふん。
 気が向いたから、今日は……俺の相棒の話をしてみようと思う。


 石動巧……まあ俺の話を態々聞きに来るんだから、当然知っているよな?
 腕っぷしは、武神な俺がお勧めできるくらいだ。
 婆ァ……もとい師匠も認めるほどだから間違いない。
 だが……長年無間地獄にいた事や、本来正式な『守護霊』じゃない俺が憑いた性か体質か……悪魔召還が上手くいかない。
 技術だけなら葛葉の名前を背負える位なんだが……。
 まあ、ああいう無愛想でソツもスキもないアイツにも欠点があったほうが愛嬌があっていいんだが……お前さん達もそう思わないか?
 まあ、お陰で他の悪魔召還士から嘗められる。
 昔はそうでもなかったんだが……葛葉四天王の一角であるキョウジと親交を持ってからその傾向が一気に高まった。さらに当代のライドウとも友好関係があるんだからこの男の友好関係は馬鹿にできない(まあ、最近は某財務大臣の愚痴にも付き合ったりしているからもはや、人脈の広さはどこまで広がっているのやら)。


 その辺の話も面白いのだが……今回の話は、それは無しで巧の武勇伝について話すぜ。
 人間ってのは普通は弱いもんだ(俺の周りには例外が多すぎるから説得力がないが)。
 でも、情念ってのは恐ろしい。
 昔、ある所で人斬りしまくった挙句に与力達数人から押し包んで切られた馬鹿がいた。
 だが、その欲求は死しても健在だったらしく、数百年も魂が現世に留まり続け、最近のゴタゴタで活性化して実体化しちまった。
 それで被害が出始めて、相棒が悪霊退治の依頼を受けたんだ。
 後で聞いたんだが……悪魔召還士が何人か返り討ちにあったらしい。
 みぃ~んな、固まってしまって巻き藁のように斬られたらしい。
 巧が言っていたんだが……『二階堂兵法・心の一方』別名『すくみの術』という瞬間催眠の一種らしい。
 催眠ってのは……『かかるまい』と思うほど術中に嵌ってしまう。
 手口を知っている巧は……、出会い頭に吼えた。
 狼を彷彿とさせる雄たけびで、逆に気組みで負かした訳だ。
 気勢を削がれた奴さんは、巧に一刀両断された。
 まあ……仮に、何も知らずに戦っても巧は勝っていただろうな。

 なにせ……アイツは自分自身の心を自在に操っている。
 無心に剣に委ねる心構えって奴がある。
 
 ま……倒したわけだが、巧は倒した悪霊のいた空間をじっと眺めていた。
 何を考えていたのかは……おぼろげに理解できる。
 『自分もその悪霊と同類じゃないか』ってな。
 だが……俺から言わせれば、ただ斬りたい欲求しかないアレとは違う。
 自分を無心に高めたいって心境を巧は持っている。
 だから、そんな顔はして欲しくないな。
 まあ……そういう相棒の顔が見ることができるのが守護霊の特権なのかもしれないがな。

 
 









 次に俺の近くにいる人間といえば……早乙女さくら。
 まあ、美人なんだが……骨格的に、人相学的に、雰囲気的に幸が薄い。
 通学・帰宅時に悪魔に襲われるのが普通になっている時点でおかしい。
 まあ……巧が弟子に取るくらいだから筋はいいな、古武術道場の継承者らしいし、剣道では全国大会優勝だからな(でも、そこでもJOKERに襲われたり、逆恨みされて呪いを飛ばされてきたとかどんだけー?)。
 平穏無事に過ごすための運は絶望的だが……それ以外の運は異常に強いことは確かだ。
 悪魔に絡まれるようになり始めた時には巧の弟子になれたし……武器もアメリカに行ったときに雷神剣を得たし。

 おっと、武器について言及しておくか。
 悪魔には実体化しにくいのが普通なんだが……。
 廃車にオボログルマが憑依したり、マネキン人形に悪霊が憑依したりと実体を持った悪魔だって珍しくない。
 だから……普通の日本刀とか武器にしたら一回の実戦で使い物にならなくなることが多い。ゾンビとか切れば脂が刀にまとわり憑くからな。
 日本刀は3センチで一万円だったかな、研ぎ料は……だから高いこと高いこと。
 だから駆け出しのデビルバスターは聖水をかけた鈍器とか使うことが多い。
 戦いの途中で武器の性能が落ちるのは、大きなマイナスだからな。
 武器の扱いが巧な巧(駄洒落じゃないぞ!)は、本当に凄いわけだ。
 まあ……今の獲物はMAGを注ぐか生き血を垂らせば、新品同様になるからチートだがな(さくらちゃんのはMAGを注げばいい)。
 俺の無駄話を聞いている奴の中でデビルサマナーやデビルバスターになりたい奴がいるのなら……武器について指南しておくか。
 

1、使いやすい物を選ぶ。
  まあ、当たり前の話だが……威力重視で分不相応なモノを選ぶ奴が多いからな。モノによっては能力を満たさないと扱えない奴もあるから気を付けろ。
  あと、ゲームとかで鎌を武器にする奴がいるが……。
  アレは農具で草を刈るには便利だが、人間や悪魔を狩るには向いていない。
  (魔人ペイルライダーのような大鎌使いは、理屈を越えているから参考にするなよ)
  攻撃の軌道が限定されているからそれだけ見切られやすい。
  一番理想なのは片手で振るうのが一番見切られにくい。
  ……片手で両手並みのパワーがあるという前提の話だが。
 
2、知らない武器は鑑定してもらう。
  拾ったり、誰から譲ってもらった場合……呪いの武器ってことがある。
  威力と呪いの効果を考えてそれでも使う場合があるが……初心者は呪いの武器は使わないで売る事を進める。
  店で呪いの武器を引き取らないんじゃないかって?
  呪いの武具を儀式に使うモノもあるし、錬金術の素材で使うこともある。
  俺と巧のコンビのように呪いが効かない体質の人間だっているかもしれんし、悪魔にとっては使える代物であったりするかもしれない。
  それに、コレクションにする奇特な奴もいるわけだから心配するな。

3、武器の特性を知っておく。
  武器には色々な特徴がある奴が多い。
  命中しやすい、一呼吸で二回三回と攻撃できるくらい軽い……といった感じでな。威力だけに拘るより、攻撃範囲や追加攻撃にも目を向けるといい。
  剣は使い減りしにくいが……銃の扱いを心得ているなら銃を使うことを進める。
  悪魔と人間なら悪魔のほうが強いからな。
  巧や九鬼の旦那とかは?
  『アレは例外だ』。
  剣が効きにくくても銃が効く奴もいるからな……鳥の大半は銃でいいだろう(例外は凶鳥・カマソッソだが)。
  冷凍・電撃・炸裂弾などの特殊弾頭が使える銃がお勧めだ。
  剣や通常弾が効かない敵への切り札になるからな(値段は割高だが)。
  まあ、ショトガンのような範囲攻撃っても複数を相手にするにはお勧めだ。
  ……銃刀法違反でつかまらなければだが。


 まあ、こんな感じだ。
 さくらちゃんの話をするつもりだったのに話がそれてしまった。
 まあ、さくらちゃんだからいいか、不幸だし。
 さくらちゃんの話は次でいいかな。


<補足説明>
 剣は権力の象徴であったり、祭器であったりする。
 ま、霊的な力を持った代物が多いわけさ。
 また……槍より優れているのは攻撃できる部分が広い所にある。
 まあ、戦争には向いていない傾向にはあるのは否めないがな。
 『弘法筆を選ばず』というような戦士もいるが……。
 昔の騎士用の剣のように切れ味が落ちても重さで叩き切る代物もあるし、斬馬刀のような馬上で扱うような代物もある。
 まあ、その辺の細かいことを調べるのも一興だな。
 



[7357] 外伝 『石動巧、陰陽道の講師になるの巻』
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:1a751df1
Date: 2009/11/08 02:17

 石動の事務所に珍しい客人がやってきていた。
 和装で頭部を頭巾で隠した女性が一人……美しい唇とくっきりとした鼻しか見えないが……おそらく美人であろう。
 彼女は『ヤタガラス』の使者。
 この国の根幹にかかわる超国家機関『ヤタガラス』からの使者であり、ゴウト曰く、『見た目以上の長生き』らしい。
 石動は、彼女からの依頼の内容を聞き、思わず鸚鵡返しに問う。


「……講師ですか?」

「ええ。
 石神流陰陽道を修め、役小角からも学んだ貴方だからできると判断しました」

「小角自身から学んだわけではないですが……。
 まあ、いいでしょう。
 報酬は金でなくて結構ですが……」

「ヤタガラスに伝わる術や悪魔の資料の閲覧をある程度は許可しましょう」

「ならば謹んで引き受けるとしよう」













『(……と、いった感じでヤタガラスの依頼を受けて葛葉のヒヨコ達に芸を仕込みに来たわけだが)』

 
 ラームジェルグはため息をついた。
 ヤタガラスの数ある養成所の中の一つに石動とラームジェルグはやってきた。
 無論、大っぴらに訓練できるわけではないので必然的に人気のない場所(今回は富士の樹海の奥)へ行くため、娯楽がないのは当然であった。
 石動はともかく、ラームジェルグにとっては耐えることが困難であった……文明に毒された悪魔はそんなものである。
 陰陽道の講師として、ヤタガラスの訓練生に教えていく。
 だが……あまり人気がない。
 なぜなら……悪魔召還に関しては、陰陽道より神道のほうが主流であり、そちらの方が優れているからだ。
 だから、悪魔召還士を目指す訓練生にとっては人気がないわけだ。


「確かに陰陽道は神道に比べて劣る部分もある。
 だが……シキオウジや護法童子など陰陽道で使役されていた式神や、鬼などに対して使役するときには陰陽道のほうが便利な場合もある。
 また、陰陽道はもともと大陸の道教の流れを汲んでいるから道術を学ぶとっかかりになるわけだ」

『(いやあ、さくらちゃんとか教えるようになったから教え方がうまいな。
  無愛想で力が伸びずに苛立っていたせっきーがこんな立派に……お父さんはうれしい!!)』


 相棒の成長を感じ、喜びに満ちているラームジェルグ(石動以外には見えないが)。
 それを無視して淡々と授業を進める石動。


「初代『葛葉狂死』のように悪魔を神風特攻させるという事ができるのは陰陽道の応用性の高さのお陰だ。
 多彩な術があるのも陰陽道の強みだ。
 だからこそ、一時は陰陽師達が国の中枢に食い込んだわけだが……」


 石動の授業はわかりやすい上に、実戦での使用法についても詳しく言及するため、興味がなかった訓練生たちも熱意を持って授業に取り組んでいた。
 だが……授業を聞かない生徒も当然いる。


「そんなくだらない話より、悪魔召還についてご教授願いませんか?」

「今は陰陽道の授業だ。
 葛葉の仕事は悪魔召還だけじゃない。
 基礎を取り組めないなら悪いことは言わん、実行部隊でなく連絡員になれ」


 それどころか、石動に食って掛かる輩もいる。
 その輩は……一応名門の家系の一人娘らしく、石動の素性を知っているようだ。
 石神家の血筋でないこと、そして悪魔召還士としては『落ちこぼれ』であることを当然知っているようだ。
 だから自分が格上と錯覚しているのだ。
 いくら、能力があろうとも、装備がよかろうとも……石動にとって修羅場を潜り抜けていない雛鳥でしかない。


「へ……悪魔召還がロクにできない落ちこぼれ風情ですものね!」

『(どんなに強くても死ぬときはあっさり死ぬのがこの業界なんだが。
  ……慢心するなら美人薄命決定だね。
  それにしてもおちょくる相手がいないと寂しい。
  ああ!さくらちゃん並の弄り要員はいないのか!!?)』

「否定はせんがな。
 だが、基本を疎かにするような奴はヤタガラスでは戦力にならない」

「正当な血統がTV占いタレントをして、『出がらし』が講師をする程度の石神家よりはマシですわ」


 そう言って、女性サマナーがCOMPから悪魔を召喚した。
 黒いコック服を着た赤い顔の堕天使が現れた。
 ニスロク……かつてプリンシパリティであり、元はエデンの園に成った禁断の実の番人であった存在だ。
 ベルゼブブ配下の地獄の料理長で、エデンの園に植えられた禁断の実を使った料理を得意とする。
 駆け出しの時点で呼び出せたなら大きな口を叩くだけの実力はある。
 ニスロクは石動の目の前に飛び回り、威嚇する。
 他の生徒達はざわめいた。
 様子からすると他の訓練生より抜きん出た実力のようだ。


「さて……前述の初代狂死の術についてだが……」


 ニスロクの動きが止まる。
 そして……ニスロクは、自身のMAGを燃焼させ始める。
 部屋の温度が一気に上がる。
 女性サマナーの顔色が変わる。


「そ、そんな……コントロールが!!」


 石動は、淡々と語る。


「COMPによる召喚術が主流になっているが……古式の召喚術も学ぶことを推奨しておく。
 COMPが使えない状況もある上に……対策をしていないとこのような羽目にあう」

 
 石動の背後には、いつの間にか小さい子鬼……グレムリンが召喚されていた。
 相手ののCOMPの対策が甘いを察知してCOMPのクラッキングをグレムリンに行わせた。
 そして……石動は、強い悪魔を使役できない体質ではあるが、技術に関しては高い。
 だから未熟な使役術を使っている相手の仲魔のコントロールを奪うことは可能だ……仲魔として扱えないが……狂死のように悪魔を神風特攻させる程度ならできる。
 狂死のやったことを実際に見せているわけだ。


「この世界は……危険に満ちている。
 臆病であるほうが向いているといっていいだろう。
 用心に用心を重ね、基本から研鑽を積むことが長生きの秘訣だ。
 時間だな……本日はここまで」


 石動は、そう言った瞬間、燃え盛るニスロクの頭部が砕け散ってCOMPに戻った。
 狂死の秘術で消滅するまえに、石動が気(MAG)をこめたアイアンクローで頭部を砕いたのだ。
 その早業は、訓練生は誰も理解できなかった。
 だが……目の前の陰陽師は只者でないことだけは理解できた。
 こうして、その後の授業ではスムーズに進めることができた。
 

「石動巧……貴方のお陰で実戦の空気を理解させながら良い講義を学ばせられました」

「……そこまで読んでいたか」


 石動は、そこまで考えて依頼したヤタガラスの使いの読みに脱帽したようであった。



 



[7357] 外伝 「探偵ってなにさ?」 
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:446d1bd6
Date: 2009/12/22 01:03
「探偵について聞きたい?」

「ヒヒヒ…。
 だめかな?」


 石動の事務所にやってきたのは、幽鬼のように青ざめた肌をした細身の青年だ。
 分厚い眼鏡をかけており、瞳が見えないほどだ。
 以前、石動の力を借りてトラブルを解決してもらった黒瓜。
 それ以来、彼は石動に様々なオカルト分野の事を尋ねるようになっていた。


「……俺の仕事の事は語れん。
 だが、一般的な事ならいいだろう」

「ヒヒ……すまないね。
 今度、本を送るよ。
 あの守護霊君が大好きだったよね」

「まあな……」


 石動は、引きこもっている相棒がいる部屋へ一瞬視線を向けてから話し始めた。











 探偵………日本では資格はないから名乗るだけで済む。
 それに対して、アメリカでは州法で定められており、許可されていないとできない。
 犯罪歴があればまず駄目だってくらいだ……その分、権限も大きく、警察以上に活躍することもある。
 アメリカでは誘拐を扱う探偵すらいる。
 日本と違って探偵の地位は信頼されていると考えていいだろう。
 言っておくが、日本の探偵が盆暗というわけではない……殺された被害者の遺族から依頼を受けて調査をして殺人事件の犯人を挙げている探偵もいる……まあ、優れた探偵というのは探せばいるということだ。
 
 もし……この国で探偵になるなら専門学校へいくことを勧める。
 探偵に弟子入りという手もあるが……雑用にこき使われて技術が学べない事が多い。
 弟子を育てる奇特な奴は、そういない。
 ……黒瓜、笑うな、自覚はしている。

 でも酷い学校だと法律関係等の座学だけで終わる学校はやめておけ。
 実践するような学校を探さなければならない。
 素人を尾行できるようにするには時間がかかるからな。
 早乙女にも時々宿題で命じているよ……1週間に10人尾行してその同行をレポートに纏めさせている。
 下手な尾行をすると気づかれて逃げられるか、最悪殴ってくる輩もいる……早乙女は筋がいいからそういうヘマはしないがな(悪魔に襲われたり、事件に巻き込まれる場合は不可抗力だから除外するが)。
 15~200メートルくらいの距離で信号にも気をつける必要もあるし、簡単な変装もできればいい。
 TVではサングラスにコートの襟を立てて……なんて事をするが、実際では目立つからしない。
 カツラや眼鏡、上着……それに髪型を変えればいい。
 まあ俺たちサマナーなら「擬態」も選択肢の一つになるな……。

 尾行で気をつける事は目立たない事だ……例えば、喫茶店に入った時には煙草を吸うべきではない。
 灰皿に無数の吸い殻が積んで『私、長時間待っています』というのが解ってしまうからな……喫煙したければ自前の灰皿を用意することだな。
 
 さて……一般的な『探偵業務』の内訳を語るとしよう。
 創作物であるような殺人事件に巻き込まれというのは……まずない。
 そんな事が何度も遭遇するのは早乙女だけだ。
 『浮気調査』はよくある……まあ俺には色恋はどうでもいいがな。
 『結婚調査』は昔は少なかったが今では多くなっている……昔は見合いが多く、事前に手に入る情報は多かったからな。
 婚前に手に入る『身上書』という奴が昔はあったんだが、今はないからな……親御さんも心配になるわけさ。
 基本的に情報の裏付けを取るのが仕事だ……詐欺師が稀にぶち当たる事があったな……他にも二股三股する輩だったこともあった。
 似たような業務に『雇用調査』がある。
 面接や履歴書で得た情報の裏付けをするわけだ。
 家出した家族を捜す『家出調査』、初恋の人を探す『居所調査』という奴もある……これは『雇用調査』と偽って昔からいる教師などから進学先や就職先を聞き出す仕事だ。
 いずれも忍耐がいるな。

 さて……。
 探偵事務所を開くなら、2つの道がある。
 『独立独歩路線』か『フランチャイズ路線』だ。
 前者は言わずもがな、後者の場合は全国展開している探偵会社の傘下に入って代理支社になる路線だ。
 親会社のネームバリューで宣伝が楽な上に、ノウハウを得やすい。
 どちらの路線にとるにせよ、軌道に乗れば収入は多くなる。
 ある会社では尾行一日15万円として一週間で百万円以上得ている……まあ、料金は探偵会社で違うがな。
 忙しいときには休みがほとんどない上に一日中外に立ちん坊というのが当たり前……。
 まあ、普通の職種の人間と休日がずれるから旅行の混雑など無縁になるし、正月にはかなり長い休みが取れるな。
 
 俺はデビルサマナーの仕事をしているし、それ以外にも護衛の真似事をするがな……。
 護衛は探偵とは違う苦労があるが……。
 その話は別の機会にしておこう。







 PC壊れているので更新がしにくい……。




[7357] ちょっと思いついたネタ
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:5562e7de
Date: 2010/02/18 11:55
・こんぴーたー

日本のコンピューターは世界一である。
表向きには他の国に追い抜かれているのだが・・・・
だが、日本は世界で随一のモノがある。

『オカルト』である。

近年現れた新種の悪魔『電霊』という種族がいる。
ネットワークに対応した悪魔で、ある都市で発見されて以来研究が続いており、造魔研究や南条家で作られたAIロボの研究の成果が合わさって日本で電霊を作り出す事に成功した。
電霊は並のコンピューターより優れている。
そして……電霊を生かすのがデビルサマナーと陰陽師の役目である。
悪魔の能力を引き上げるにはデビルサマナーの協力が不可欠であり、陰陽師が電霊にとって最適な空間を作り上げる(無論、香我美のような天才的プログラマーが必要であるが)。
皇居の地下でコンピューターの前で坊主や陰陽師が呪いとするという端から見ると未開人の所行に見える異様な光景が見られるようになった………だが、効果はあるのだから仕方ない。
オカルトとコンピューターに強い技術者を『プログラ魔』とか呼ぶようになったとかならないとか………。
コンピューターの前で聖句を唱える牧師やらブードゥーダンスをやり出すことはそう遠くないかもしれない。


ちなみに………高度な未来予測ができる『ラプラスコンピューター』の開発の目途が立っても、フロッピー一枚に悪魔召喚プログラムを纏めることは不可能だった。
恐るべし………中島………だが、現在でもそのプログラマーを発見することはできなかったという。










・英雄の肖像

ソロモン王。
旧約聖書の『列王記』に登場するイスラエル王国の第3代目の王で父はゴリアテと戦った事で有名なダビデである。
エジプトに臣下の礼をとり、ファラオの娘を降下されることで安全保障を確立し、イスラエルの最盛期を築いた。

神が枕元に立ち、『望むもの』を聞かれたとき、ソロモンが欲したのは富も名声も武力でもなく、知恵を求めた。
その為か………動物とも会話が可能であり、神から知恵(指輪)を授かったともユダヤ教の秘儀カバラが記された『ラジエルの書』を託されたとも言われている。
多くの天使や悪魔(72柱の悪魔)を使役したとされる。

彼の立ち位置は『名を唱える事を憚れる存在』に選ばれた王である。
その『存在』は逆らう者には容赦しない事は読者も理解しているだろう。
だが、ソロモン王はその神の意向通りに動いたかというとそうではない。
ソロモン72柱………悪魔たちを使役し、エルサレム神殿を建立し、終わった後は真鍮の壷に封じこめて「バビロンの穴」と呼ばれるバビロニアの深い湖に沈めた。
『神』に対しては敵対する『悪魔』に罰を与えたといい、『悪魔』には再起のチャンスを与える形にしたのだ(実際、ソロモンの死後にバビロニア人たこの壷を発見、財宝が入っていると思って封印を解いた)。
エジプトに臣下の礼を取ったり、国内の宗教に寛容であったり(異教徒の側室をもっいたりする)、晩年はバアル神にも祈りを捧げていたりする辺り、柔軟な思考を持っていたのだろう。
神秘学に通じ、建築学にも長けており、谷に吹き込む風を利用して炉を作ったりと多才を誇るソロモン王………この姿勢は見習うべき点があるだろう。

ただし………ソロモン王は、経済感覚が少々狂っていて財政が大いに傾いてイスラエル王国に大きな負債を残したのだが。



「イーリス、予算おろしてー」

「機関の20年分の予算なぞ使えるか、却下だ!!」

「え~」


バチカンに新戦力として『英雄・ソロモン』を降臨させたはいいが………。
こういう面倒な事を起こす学問馬鹿であった。
(唯一神至上主義のテロ天使達に比べれば遙かにマシなわけだが・・・)



「正直………現世へ行ってくれてほっとしました。
 なまじ能力やコネがあるから性質が悪かった………」


某国の財務大臣のストレスにもなっていたようだ・・・・。






後書き
ソロモン王の人格設定は妄想です。
メガテン公式ではないのであしからず。
でも………やったことを考慮するとロウ側にいるけどニュートラルのような働きだったかも?と思えたり思えなかったり。
  



[7357] 外伝 小ネタ詰め合わせしたり。(3月22日 追加あり)
Name: レッドマン◆a7537ed6 ID:2e129abc
Date: 2010/03/22 14:25
・早乙女の憂鬱。

 さくらです。
 登下校に天使に襲われます。
 
 さくらです。
 たまにペルソナ使い(某這い寄る混沌の仕業)の襲撃を受けます、就寝前に。

 

 そんなこんなで生きている私、早乙女さくら……。
 最近一番死を身近に感じるのは………。


 『訓練』です。


 え? 所詮模擬戦だから死なないって?
 ………先生曰く『お前は基本はできあがっているから実戦に近い形のほうが力になる』って。
 だから偶に先生が本気に殺しにかかります。
 私がギリギリ凌げる程度を見切ってはいるけど………逆に言うと油断していると死にます。
 一応乙女だから大きな傷にはならないようにがんばっています。
 私が、


「せ、先生!!
 殺す気ですか!!?」

 
 と、聞いたら………



「お前に降りかかるレベルの驚異を逆算すればこの程度凌げないと遠からず死ぬ。
 悪魔に蹂躙されて死ぬよりは、ここで死ぬほうが幸せかもしれんな」


 って………。
 ………泣きくなるけど、正しいから更に辛くて涙も出ないです。
 最近、どこからか拾ってきた機械で模擬戦をさせられます。
 その時の対戦相手が……とんでもなく強いです。
 だ、誰か助けて………


『自分を救うのは最終的に自分自身だからな………。
 簡単に言えば………


 あ き ら め て ね !!』


 う、うわーーーーーん!!!!!!!









・九龍な早乙女


「………ふぅ、天国だわ」


 早乙女は幸せそうにしている。
 トレジャーハンターと誤解された早乙女は、秘宝を入手すべく天香学園へ潜入した。
 この学園の地下に広大な遺跡が広がっているのだ。
 石動と出会って以来、高校生活の中で(比較的)平穏な毎日を過ごせたからだ。

 無論、秘宝を狙う者を迎え撃つ番人がいるし、遺跡には罠や『化人』と呼ばれる生物兵器がいる。
 だが……。


「大したものね」

「さっすがぁ、佐助!!」

「ま………、皇居へ忍び込むよか楽だろうに。
 それと今はもう『猿飛佐助じゃない』から」


 と、罠はその道のプロが仲魔にいるわけで。
 さらに化人はバロールが撃退する。


『このロリコンが!』


 …………。
 そして………異能を持った番人達も早乙女にとっては比較的楽だった。
 異能持ちとはいえ、元は一般人(例外もいるが)相手……早乙女は悪魔召喚なしで純粋に剣術でどうにかしている。
 身近には人外レベル(石動とか霧隠れとか………最もおかしいレベルはなんの異能もない忍者というのが………)がいるせいか、冷静に対応できた。
 原子の緩みを見極め、すべての物を斬り裂く「原子刀」の『力』を持つ剣士などもいたが………早乙女曰く『異常に切れ味のある刀を持っている剣士というだけ』と言って一蹴してしまい、その剣士は大いに自信を失ったとか………それを立ち直らせたのは図書委員の女子というのは蛇足だが。
 そこで出来た友人達は、命を狙われても平常心を保つ早乙女の剛胆さに驚いていた。



「………山手線一週間サバイバルとか、先生の扱きに比べれば………天国よ!!
 日常で死の危険があるよりはマシよ、うん・・・」


 
 早乙女の発言を聞いた友人の誰もが早乙女に少し優しく接するようになったとか………。
 事件解決後、元の学校へ戻るときの早乙女の姿は、死地を歩む軍人のようだったと皆が語り継いでいった………。













・ラームジェルグのいつもの戯れ言。


『せっきー、不死鳥の聖衣作らない?
 ウーリに頼んでさ』


 守護霊・ラームジェルグの発言に首をかしげる石動。


『死んでも蘇ったり、ゴーイングマイウェイな所とか、精神追加攻撃を覚えたせっきーは正に幻魔拳の使い手だし!』

「…………」

『なあ、リアル触手ものって新しいビジネスに・・・』

「………最近、愛刀をホワイトライダーの弓へと変形させる事に成功したんだが………」

『経理の仕事に戻りますから、勘弁してください』










スカアハの考察。(日誌より抜粋)


 石動が留守の間に早乙女の稽古を見ている。
 そして……久しぶりに弟子を取った。
 あの馬鹿弟子と違って内面は真っ当で良かった。
 それにしても………
 
 桃井は長年、徒手空拳(唐手だったか?)の修練を欠かさなかっただけあって大した物だ。
 だが………その心に澱みがあった。
 あの馬鹿弟子とは別方向に難物だ………本人は自覚していないだけに面倒だ。
 今のままでは、道を踏み外すかもしれないな。

 梁衣は、武道の経験は浅い。
 だが、恵まれた身体を持っている上に思慮深い。
 素直に私の教えを聞き入れるので上達は早い。
 強いて不満を述べるなら………心の中で遠慮がある。
 ブレーキが無意識にかけていると言い換えて良いだろう。
 自身に施している枷を外しつつも巧くコントロールできれば大きく化けるだろうな。

 早乙女は………石動が目をつけただけある。
 口では弱音を吐いても、心の奥底には諦めがない。
 刀を振るうべき時を弁えているし、戦いとなった時に無駄な情けを掛けることはない。
 古流武術を受け継ぐ麒麟児………と言うべきであろうか。
 石動は、これから先も生かさず殺さずで育てるつもりだろうな………哀れだが、あの幸のない相からすればそうしなければ生き残れないから仕方有るまい。
 既に『早乙女流』として確立されている………それは素晴らしい事だが石動の後継者にはなりえない。
 

 石動は、早乙女に教えて良しとするのか………それとも新たな弟子を取るのか?
 いずれにしても目は離せないな。







あとがき

 第3期 第45話 で久々に石動の剣術戦闘シーン書いた………長時間の戦闘というのは書けないなぁ~。
 作者の力量もあるけど、一対一の剣術でチャンチャンバラバラを長々するというのはないというのもあるけど。
 無駄に消耗すると隙ができるわけで………剣豪小説では互いの隙が滲み出るまで余り動かない事が多いし。
 あとストレンジジャーニーのゴア隊長とアーサーは好感が持てるなぁ。
 いつかストジャニを題材にしたモノを書きたいなぁ………まあ今は無理だけど。

 ああ………働きたいでござる。



[7357] 生存報告 + ほんのすこしの小ネタ
Name: レッドマン◆3bb3f270 ID:0ce7c446
Date: 2010/08/29 14:24


『かくれんぼに参加したなら・・』(コメント ラームジェルグ)


九鬼の場合
「一応、忍ですからねぇ…上手く隠れますよ」
『三日間水中に隠れたりできるからなぁ……』


石動の場合
「異界へ逃げ込む」
『……大人げないというか、斜め上の所業するなぁ』
「ヤタガラスの使いの助力なしでもできなくもないからな」


原野の場合
「買収します、むしろ主催者側にいそうですね」
『……ちくしょう、俺がツッコミになるしかないとは!』










社会人になり、更新する余裕が余りない今日この頃。
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ですが、完結はするつもりです。(エターする場合は、最終回までの素筋だけ晒すことになりそうだけど)
この作品を終わらせたら仮面ライダーSSをかくんだぁ……(Wは良い最終回だった。000に期待)。
女神転生やペルソナでいい二次創作が多くてうれしいものです(正直自分はまけているなぁ・・・と)。




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