石動達は出演者とスタッフとともに、ロケバスに乗って問題の社長邸宅に向かっている。
上杉はフリーダーと石神と談笑し、石動はモー・ショボーを膝枕しながらCOMPのデーターを眺めていた。
「………」
現在の社会状況は悪化しつつあると石動は考えている。
『メシア教団事件』から大分経ったにも関わらず、関東の地脈は乱れている。
近いうちにヤタガラスは、厄払いの為の儀式を行うとも聞いている。
だが、それだけでこの事態が好調になるとは思えない。
そう考えていると、軽薄な男が石動達の前に近づいてきた。
「おい、にーちゃん。
そこどいてくれないか?」
「………」
「聞いているのか!!?」
石動は、軽く顔を見上げた。
成金趣味でお世辞にもセンスは良くない服装で、顔はそれなりに整っているが、石動には興味が湧くような面構えではなかった。
しばし、考えて目の前の男が石神の事務所の社長が警戒していた『芦屋祐市』だと思い出した。
「席はいくらでも空いているだろう」
「俺は、ここに座りたいんだ」
そういいながらフリーダーと石神に粘っこい視線を送る。
察するに、美女と同席して手を出したいのだと察した。
「……」
「退け!」
「面倒だ……断る。
膝の上に寝ているコイツもいるからな」」
そういいながら『石動のツマ(自称)』を指差す石動。
その言葉を聞いた瞬間に青筋を立てて怒る祐市。
「俺が誰だかわかっているのか!?
芦屋流の陰陽師・芦屋祐市だぞ!!
てめえなんかチンケなジャーマネなんぞ……」
「呪い殺す……か?」
普通の口調で話す石動……だが、芦屋には圧迫感を感じた。
祐市は、舌打ちして元の席に戻っていった。
上杉が、何時の間に取り出したのか、日の丸の扇を広げながらいった。
「さっすが、旦那ぁ~!
ボディーガードの役割果たしているっすね!!」
「……アレは、多少は勘が働くみたいだな。
『視る』くらいはできるだろうが。
それより……姉さん」
「なに?」
弟分にたいしてTVで見せない微笑をする石神。
ため息をつきながら石動は口を開いた。
「夏彦さん達が……婿はまだか?といっている」
「恋の一つや二つはしても……そこまでの相手は出来なかったわね。
焦ってもしかたないわよ」
陰陽道を修めた石神は、怪異を呼び込みやすい事だろう。
それに付き合える男性は中々いないことだろう。
「終いには……俺を婿にとって本当に息子にしようなんぞ言っているぞ」
「あら、いいわよ?」
悪戯っぽく微笑みながら石神は答えた。
上杉は、からかい半分で口笛を吹いたが……。
「む~!!」
モー・ショボーが怒り心頭になって起き上がりかけた。
だが、すぐに石動が押えて膝枕を続ける。
「冗談はほどほどに頼む」
「巧君がよければいいわよ?
仕事に理解を示しそうだし」
「刀を振っていれば満足できる人格破綻者なんぞ碌な者じゃねえよ」
そう言ってその話を打ち切った。
モー・ショボーの機嫌が戻ったのがロケ地についてからの事であった。
「陰陽師『芦屋祐市』VS占い師『ワンロン千鶴』!!
というわけで、夢の企画が始まりましたあ!」
上杉が盛り上げるようにカメラの前で喋っている。
今は、社長宅の大きな庭で収録を行っていた。
その広さは、門から玄関までかなりの距離があるのでかなり広い。
途中で伝家の宝刀・親父ギャグを放ったりして盛り上げている。
「(姉さんは……いままで仕事は占いとか相談しかしていないのにな)」
「(せっきー、お腹すいた~)」
『(ファリス・レナ・ククルをゾンビ化させてエロ奴隷にする挿絵つきSSでも書こうかな)』
「(なにをすればいいのでしょうか?)」
石動達は邪魔にならないようにカメラの後ろで待機していた。
それぞれは好き勝手に考えているようだが……。
頭頂部が薄くなってはいるが、理知的なスーツの男性が喋っていた。
彼が成上がった社長なのだろう。
「では、二階堂さんに霊視してもらいます!!」
祐市がまず最初に始めた。
石神は、霊視までは行うが、除霊を行うつもりはない。
陰陽道の奥義をTVの前で使う事が憚れるからだ。
「むむ……見える!
長い髪の女性と、細い中年男性。
そして、十歳くらいのロングヘアーと三つ編みで眼鏡をかけた少女がいる!!」
「(見えているのかな?
でも身辺調べて言っているだけかもしれないし)」
モー・ショボーは懐疑的であった。
確かに、目の前には祐市が言ったとおりの霊がいる。
霊達は、社長……二階堂を案ずるかのように見つめている。
更に、祐市は言い放つ。
「取り付いている霊は、貴方を恨んで害を成すことでしょう!
急いで除霊しなければ!!」
祐市は、懐から呪符や魔法石を取り出して二階堂の妹の霊に向かって投げつけた。
石神は、困惑した表情で祐市を睨む。
「……」
「その様子じゃ霊を見れなかったようですね。
俺が芦屋流の奥義で華麗に除霊してさし上げよう!」
祐市は、そう言って攻撃を繰り返す。
「(馬鹿が……!!)」
石動は、祐市の愚かな行いに歯軋りした。
霊達は、見守り、守護していた……それを祐市は、害を成すと断じて排除に乗り出したのだ。
呪符は自作か買ったのかは不明だが、少なくとも魔法石はどこからか仕入れてきたものであろう。
石神が困ったのは、口で言って止められそうにない上に手遅れであったからだ。
「IAAAAAAAAAAAA!!」
「ほうら、姿をはっきりさせてきた!!」
傷つけられ、悲しみ、怒り……そして憎しみが生まれた。
妹の霊は、悪霊化してしまい、普通の人間でも視認できるまでになった。
肉親を傷つけられた上に、邪気に当てられた二階堂の家族もまた悪霊化した。
確かにこのような事をして悪霊化させて排除してから報酬を貰うデビルバスター・サマナーがいる。
だが、それはデビルサマナー失格の行いである。
デビルサマナーは、邪悪な敵と対峙する事も大事な役割であるが、霊や神々を鎮める事もまた重大な役割である。
芦屋祐市は、そのような事も知らない霊が見えるだけの素人である。
そして、無差別に霊を排除して今まで活動しているのだ……。
二階堂は、悪霊を目の当りにして青ざめていた。
石動は、石神の前へ躍り出た。
石神を護るように石動はナイフを構える。
「ちょっと!
勝手に……!!」
「緊急事態だ!
そこの粗忽者の性で人死にを出す事は本位ではないだろうが!!」
フリーダーが二階堂を後に退避させた。
上杉は、スタッフたちを下がるように追い立てる。
怨霊達が衝撃波を飛ばし、祐市を吹き飛ばした。
石神は、悲壮な表情になっていた。
「間に合うの……いいえ、間に合わせる!!」
「ああ、間に合うさ……フリーダー!!
癒せ!」
「承知しました……メディラマ!!」
フリーダーの魔法が祐市を……そして悪霊化した二階堂の家族を治した。
石動は、役小角を宿し、魔法を唱える。
「メ・パトラ」
石動の魔法で怒れる霊の怒りが和らいだ。
石神が、その隙に反閇を行いながら結界を張って、周囲の邪気と結びつかないように処置を行った。
素人でも空気が清浄なものに変わったのを認識し、スタッフ達は歓声を上げた。
今まで見守ってきていたような穏やかな霊であった事と、早いうちに処置をした為に手遅れにならなかった。
石神の表情が元に戻った。
あまりの展開に腰を抜かした二階堂を霊の前に立たせた。
「だ、大丈夫なのか…?
悪霊だって……。
俺を……恨んでいるんだろう。
見捨てちまったから」
「いいえ、死しても貴方の事が心配で見守り続けていたの。
そして……災いから護っていたの、ずっとね。
災いが満ちて、護りきれなかったから貴方に影響が出たの」
石神は首を横に振りながら言った。
その言葉を聞き涙を流した。
「傷つけられ、悪と断じられたから怒っただけ。
貴方が家族を忘れないで……感謝の念を持ち続ければいいの。
罪悪感を持ち続ける必要なんてないの」
「そう……なのか」
二階堂が呟いた時、家族達は微笑んだ。
「無かった事にしようとして悪かった……。
そして、見守ってくれてありがとう。
もう大丈夫だから……無理しないでいいから」
二階堂の言葉を聞き、霊は見えなくなった。
安心して成仏したようだった。
二階堂は、石神に深々と頭を下げた。
上杉は、頭を掻きながら言った。
「こりゃあ、オンエアできないな……。
でも、どう視ても姐さんの勝ちっすね!」
そう上杉は断じた。
だが……倒れていた祐市は認めなかった。
「なぜだ……!!
俺が除霊していたのに……」
「お前は、闇雲に傷つけていただけだ。
害のないものまで傷つけ、必要以上に二階堂氏を脅かし、霊を悪霊にした。
霊感を売り物にするのは勝手だが……生兵法は怪我の元だ。
除霊は二度とするな、はっきり言って迷惑になる」
「……認めない!!
みどめ゛な゛い゛!!」
祐市は、泣き叫んだ。
それと同時に、石動達は圧力を感じた。
とくに上杉は、驚いた。
「ぺ、ペルソナの感じがする!!」
「お゛前ざえ゛い゛な゛げれ゛ばぁ゛!!」
祐市は、ペルソナを生み出した。
黒い人型のペルソナであった……それは石動のCOMPにデータとして記録されていたものに似ていた。
早乙女が交戦したキングレオのペルソナ・JOKERに……だが、目の前のペルソナは肥大化していた……。
「じね゛え゛!!!」
JOKERが呪詛を石神に飛ばす。
濃密な呪いは周りの雑霊を巻き込み、更に強大な弾丸となって襲い掛かる。
「鬼魔駆逐 急々如律令!!」
石神が唱えた言葉の意味は、『速やかに悪鬼、悪霊を駆逐せよ』であった。
彼女の手元の札が飛び、呪詛を相殺した。
「芦屋さん……貴方……!!」
「お゛での゛じゃ゛ま゛ずる゛や゛づばじね゛!!」
祐市の軽薄であったが、多少は整っていたマスクは見る影が無かった。
顔面は石膏を塗ったかのように真っ白で、紅い唇以外はなにもない面相に変わってた。
上杉は、それをみて大声をあげた
「な、なんじゃこりゃー!!」
「JOKER……という奴らしい」
「代理殺人をおこなったりするアレ!?」
石動は頷く。
現代の剣客の足元に携帯電話があった。
拾ってみた所、祐市のものであった。
「ああ……本体は死亡したんだが、コイツだけが一人歩きしているようだ。
……なるほど、着信履歴に自分自身……、そういうことか」
「どういうこった?」
「このペルソナは『感染』すると言うべきか、JOKERに殺害依頼をした者へJOKERのペルソナを持たせ、暴走させると言ったところだろう。
誰を殺そうとしたのか解らんがな……いや、もう殺ったのかもしれん。
とにかく姉さんは、他に類が及ばないように避難させてくれ。
ここは俺が引き受ける」
「解った……怪我しないでね。
お父さん達も貴方の事を心配しているから」
そういって石神はスタッフと二階堂を避難させはじめた。
JOKERに取り込まれた祐市……JOKER祐市は、石神を狙ってペルソナを発動させようとする。
「JOKER!!」
JOKERの巨体が体当たりで石神に襲い掛かる。
上杉が、飛び出して庇う。
「あぶねえ、姐さん!!
……って、あれ?」
「GYAAAAA!!」
上杉には傷ひとつなく、逆に体当たりしたJOKER祐市がダメージを受けて苦しんでいた。
上杉は、不思議そうに自身の体を撫でていた。
「物反鏡で反射させた」
「あらら、俺って意味無かった?」
「姉を身を挺して救おうとした事実は変わらんよ。
礼を言う」
そういってから石動は、上杉に、以前から使っている霊木の棒を渡した。
「護身用だ」
「サンキュー!
じゃあ久々に真のリーダーの実力を見せてやるぜ!
ペルソナァ!!」
『あれは……マッハ、いやネヴァン!!』
ラームジェルグは、上杉が出したペルソナをみて心当たりがあった。
鳥の仮面と鎧が一体化しているようなものを纏った翼の生えた女性が現れた。
ネヴァン……「名前は「毒のある女」の意味であり、「戦の狂乱の女王」とも呼ばれる。
戦場において、戦士たちの頭を混乱させ、同士討ちを引き起こすとされる。
三位一体の女神……バイブ・カハは、モーリアン、ネヴァン、マッハの3人で、3人とも神々の王アガートラームの妃である。
ちなみにマッハは「赤毛のマッハ」とも呼ばれている。
赤い髪に赤いまつげに真紅の服を身にまとっており、赤毛の馬に乗って戦場を駆け巡る。
何度も転生して現れ、豊穣の女神としても崇められている。
モーリアンは、灰色の長髪に、同じ色のマントをまとった美女である。
他の二人がアガートラームとともにクロウ・クルーワッハに殺されたが、ただ一人モーリアンだけが生き残った。
その後、クー・フーリンに恋をするが拒絶されてしまい、彼に呪いをかけた。
また、アーサー王伝説に登場する魔女モルガン・ル・フェイもモーリアンが原型となっているといわれている。
そのつながりで上杉のペルソナに気がつくことが出来た。
「超ウルトラスーパー必殺~……ザン」
『ショボ!!』
それでも、弱点だったのが派手に吹き飛んだ。
上杉は頭を掻きながら言った。
「久しぶりに出したから最初の時のネヴァンしか出なかったわ~」
「忠告しておく、これから厄介事に巻き込まれていくだろう。
鍛えておけ」
「りょ~かい。
ってか神取が生き返ったっていうのが驚きなんすけどね。
鷹司君(『神取の異母弟である城戸』の息子)が異常に似ていててっきり生まれ変わりかと思っていたっすけどね」
話すうちにJOKER祐市が起き上がった。
手当たり次第に破壊しようとペルソナを発動させようとしたが、フリーダーが接近し、飛び回し蹴りを放った。
見事な手並みに上杉は口笛を吹いた。
「ひゅ~、やっる~!!」
JOKER祐市は、すぐに起き上がって叫ぶと、石動達の体が重く感じた。
「これは……」
「マスター、ランダマイザと推定」
弱体化させているようであった。
追撃をかけようとペルソナで氷結魔法を放つJOKER祐市。
だが、放たれる直前に体が軽くなり、皆回避できた。
「オットを助けるのがツマの役目だもん!」
モー・ショボーが上空に浮かんでいた。
能力低下させる魔法を解除したのは彼女のようだ。
石動かポツリと言った。
「礼を言う……」
「えへへ~」
「じゃま゛ずる゛や゛づ……gyaaaa!!!」
JOKER祐市が、モー・ショボーを目障りに感じて攻撃しようとした。
だがJOKER祐市は、両腕に鋭い痛みが走って集中が途切れた。
石動の両手に血塗られた歯車状の刃を持っている。
JOKER祐市は、指先から血が流れている腕を押えながら石動へ殺意を漲らせた。
「後始末が面倒だからな。
そろそろ終わらせる!!」
「了解しました。
ランダマイザ!」
まず、フリーダーが弱体化魔法をかけた。
「むー!!!」
「天の旋風!!」
動きが鈍ったところにモー・ショボーの真空波と上杉のペルソナによる真空魔法が襲い掛かる。
JOKER祐市は巻き込まれ空に高々と上がった。
石動は、JOKER祐市より高く跳躍し、呪いの歯車から首狩りスプーンへと変形させていた。
「終わりだ」
渾身の力を込めて叩き込んだ一撃で再び地面に叩きつけられたJOKER祐市。
むうん……と唸ってから動きを止め、気絶した。
白塗りの顔ではなくなったが、石動が診た所によると、精神が安定していないように思えた。
「さて、どうするべきか……奴の所に連れて行くか」
「あの~」
「なんだ、上杉」
「あれってペルソナっしょ?
ならイゴールのオッサンなら何とかできると思うぜ!
ちょうど木陰にベルベッドルームの入り口があったし」
「……なら頼もうか。
俺はペルソナ使いの素養はないからな。
イゴールに色々聞いてみてくれ」
「アイアイサー!」
上杉は、祐市を引き摺って近くの木陰まで運んでいった。
騒動を鎮圧できたが、石動の表情は重かった。
「……拡散していったら不味いな。
だが、JOKERに願う人間は不特定多数だ」
モー・ショボーは、暗い顔で考え込む石動に近づけなかった。
ラームジェルグは、わざと茶化して空気を変えようとした。
『
、--‐冖''⌒ ̄ ̄`ー-、
/⌒` 三ミヽー-ヘ,_
__,{ ;;,, ミミ i ´Z,
ゝ ''''〃//,,, ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
_) 〃///, ,;彡''rffッ、ィ彡''ノ从iノ彡
>'';;,, ノ丿川j !川|; :.`7ラ公 ''>了 なに、せっきー? 危険なJOKERの拡散を防げない?
_く彡川f゙ノ''ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: ''〈八ミ、、;.)
ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;) せっきー それは無理矢理防ごうととするからだよ
く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ ぇ''无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
):.:.:.:.:|.Y }: :! `二´/'' ; |丶ニ ノノ 逆に考えるんだ
) :.: ト、リ: :!ヾ:、 丶 ; | ゙ イ:}
{ .:.: l {: : } ` ,.__(__,} /ノ 「拡散させてもいいさ」と
ヽ ! `''゙! ,.,,.`三''゙、,_ /´
,/´{ ミ l /゙,:-…-~、 ) | 考えるんだ
,r{ \ ミ \ `'' ''≡≡'' " ノ
__ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_
\ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、
\ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `''ー-、__
\ `''ー-、 // /:.:.} `''ー、_
`、\ /⌒ヽ /!:.:.|
`、 \ /ヽLf___ハ/ {
′ / ! ヽ 』
「………」
『悪ふざけだったな、スマン』
「いや、それでいい。
幾分頭が冷えた」
石動は、何時もの表情に戻った。
だが、開き直りでなく、何かを考え付いた様子であった。
あとがき
ブラウン登場!!
さらにジョーカーがワラワラ。
どう打開していくかは……お楽しみ。