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[6955] ††恋姫無双演義††短編集【*最新話を2つ追加しました】
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2013/09/14 17:23
以前より「短編 水滸伝と恋姫の小ネタ」の表題で、投稿させていただいてきた短編集に、
今回、新たな短編を追加するとともに、表題を短編集らしきものに改題させていただきました。

この短編集は、基本的には、この掲示板で投稿させていただいて完結した、
††恋姫無双演義††の後日談という設定になっています。


・2009/06/25 改題
・同日 「関平こと紗羅のMelancholy」追加

・2010/02/23 「小ネタ2題」を「黄叙の成人」に改題
        後半部(「1ヶ月後」)を「2月14日?」の続きに移動

・2010/02/24 「オムニバス・超短編の寄せ鍋」に1話追加しました。

・2010/05/08 「小ネタの拾い話」に2話追加しました。

・2010/06/18 オリジナルキャラクターの1覧を追加しました。

・2013/09/14 最新話を2つ追加しました。



[6955] 短編 水滸伝と恋姫の小ネタ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/06/25 20:54
この作品は、単発ネタです。
決して、長編ではありません。

水滸伝のある登場人物と「三国志演義」との関連設定を拝借して、
少しだけ「恋姫」ネタを絡めて見ました。

念のためですが、性転換キャラではありません。どこに「恋姫」があるかは、本文をお読みください。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

大宋帝国の帝都、開封は繁栄していた。
漢や唐の帝都が極言すれば、皇帝があるがゆえの「政治都市」としての繁栄だったとすれば、
宋代の開封は、庶民の繁栄の1面を色濃く見せていた。
昼は「芝居」や「講釈」の「寄席」が、夜は妓楼や酒楼がにぎわう。

そんな帝都の人々の中にあって、若き武官「大刀」の関勝は少しばかり、憂鬱(ゆううつ)だった。

後年「水滸伝」の名で伝えられる、1連の騒動はまだ始まっていない。
だから、開封の繁栄には、いまだ乱世の兆(きざ)しは表れていない。
自分が、妖魔108星の第5星「天勇星」の生まれ変わり、という自覚も無い。
そんな事とは、無関係な、ある意味他愛も無い理由で憂鬱だった。

問題は「彼」の尊敬する“ご先祖”にある。
逞(たくま)しい胸に垂れる美髭も「大刀」の2つ名の由来となった、得意の得物も、乗っている赤馬も、
みな“ご先祖”にゆかりのものだ。

だが“ご先祖”がこの開封でも「芝居」にも「講釈」にも取り上げられるほど、有名になった事が、
心境としては微妙なのである。

「講釈」はまだいい、なんで「芝居」だと、後年いうところの“少女歌劇団”の類(たぐい)が得意演目にするのか。
いや、美人の花形女優が“ご先祖”を演じてくれるのは、むしろ誇らしい、だが……

しかし悩んでも、当時の関勝もまだまだ若い。
結局、その晩は妓楼に泊まる事にした。

さて、関勝の美髯やら、用心棒にあずけた「大刀」やら、厩(うまや)番にあずけた赤馬やらを見て、
妓楼の側は当然“ご先祖”の名前を出して、一応、客に対する言葉使いながら「この方」にあこがれての事かと訊(たず)ねた。
客の「好み」に関係するかとでも思ったか。

それに対し、基本的には隠すつもりも無い関勝の方は“ご先祖”だと、むしろ堂々と告げる。

なる程、と相手は納得したようだったが、
その次に言われた科白(せりふ)に思わず、突っ込みたくなった。
これが最近の関勝にとって、憂鬱の原因なのだ。

「では、相方は何人にいたしますか」
「おい?何人だと。俺は種馬じゃない」
「ですが、あの「天の御遣い」様のお種なのでしょう」

その通り、「大刀」関勝は、関羽こと真名愛紗と「天の御遣い」こと北郷一刀との子孫なのである。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

原典「水滸伝」でも「大刀」関勝は、関羽の子孫という設定で、
ほぼ「演義」の関羽通りのキャラとして登場します。
108星での順位の割には、余り活躍する方でないのですが、
あえて私見を申しますと、関羽をゲスト出演させている感じとも見えます。



[6955] 短編 水滸伝と恋姫の小ネタ(その2)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/03/14 12:53
西京河南府。後漢をはじめ、いくつかの王朝が帝都とした洛陽は、北宋時代は、こう呼ばれていた。
この時代の帝都である、東京開封府に次ぐ、地方の有力都市の1つであり、
この時代の交通事情と、開封からの距離からすれば、かっこうの「観光地」でもあった。

それは、帝都開封の「東西南北」に反乱軍の、戦火があがったこの時ですら、
この地を訪れる「観光客」が減(へ)りこそすれ、完全には絶(た)えない事にも現れていた。
理由の1つは、この当時から「講釈」や「芝居」で、開封の庶民にも親しまれた、ある「演目」にゆかりの地である事もある。

その「観光客」の中の1人である「大刀」の関勝にとって、ここを訪れた理由は、単なる「観光」だけではない。
近く下る「予定」の官命を前に、自分の中にあるものに向かって、何かを問い直したかったのである。

…  …  …  …  …  

河南府の近郊、ここは、後漢をはじめ、歴代王朝の陵墓の地。
その中の1つだけ、なぜか、陵墓の前面の「祠(ほこら)」に参拝者が群がり、それを見込んだ「みやげ物」まで売られている。

――― ――― ――― 

後年、日本からの観光客が訪れるようになると、一目見て「前方後円墳」だなどと言う。
実際、後年の日本の考古学者の中には、倭国からの使者が、この陵墓を見てお手本にした、と言う説を唱えたりする者もいる。

――― ――― ――― 

しかし、この時代も(後年も大部分の)「観光客」のお目当ては、陵墓の前面に並んだ、数十ほどの「祠」だった。
1つの祠には、1つずつの「像」がまつられている。
ある像は、文官風の衣装に身を包み、いかにも知略に長けた軍師らしい“ポーズ”をとっている。
また、別のある像は、凛々しくも武装を着こなし、得意の武器を構えて、いかにも「無双」の武将といった“ポーズ”をとっている。

そうした中の1体が、今回の関勝の「お目当て」だった。
力強く「青龍偃月刀」を振りかざし、千里を行く「汗血」の名馬を駆り、黒髪をなびかせたその姿。

その凛々しい“ご先祖”の姿を前にして、今、関勝は自分に問い直したかった。
官命の通り、山東の「賊」宋江を討つべきか、いなか。

しかし、その関勝の感傷を、追い付いてきた部下が、だいなしにしてしまった。
「しかし、美人ばっかりですな~」
「貴様、ほめているつもりか」
「いえいえ、尊敬しておりますよ。なにせ、あの乱世をたった数年でおさめてしまった英雄にして、天下太平の名君ですからな。この御陵の主は」
「だが「天の種馬」だとも言いたいんだろう」
(……この「ひがみ」さえなければ、理想の上官なんですがね)

部下の方は、上官から逃げるように「観光客」にまぎれて「祠」が並んでいる中の奥のほうへ行ってしまった。
一番奥、陵墓の「前方部」の直前に並ぶ、3つの「祠」。
劉備玄徳。曹操孟徳。孫策伯符。
「三国」の英雄であり、当時の「芝居」「講釈」の人気「演目」“恋姫無双”のヒロインたちである。



[6955] 短編 銀英伝と恋姫の小ネタ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/03/04 14:15
この作品は、あくまで短編小ネタです。
例えば、ラインハルトが華琳になっているといった、大それた作品では、
決してありません。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

ハインリッヒ・フォン・キュンメル男爵は、1度の人生で多方面に業績を上げた人々にあこがれた。
それは、レオナルド・ダ・ヴィンチであり、ラザール・カルノーであり、トゥグリル・ベクであり、同時代人ではエルネスト・メックリンガーであった。

そして、女性としては、古代中華帝国の曹操であった。
彼女はまず、実行の人としては、戦争と政治の天才であり、
理論家としても「孫子の兵法」を復刻し、後世に残した。
また、詩人としても、その時代を代表する文学者であり、
さらには、酒造においても、後世に“マニュアル”を残した。

ハインリッヒが、この歴史上の人物について、自分以外の他者の関心を引こうとした事があった。

ある日、ヒルデガルト・フォン・マリーンドルフは、ハインリッヒの寝室に運び込まれた、TVホンの画面に、
中佐待遇の軍服に身を包んだ姿を現した。
数日の内には、ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥に従軍して、宇宙に飛び立つ。
このためすでに、常に所在を明らかにしておかなければならなかったため、身を運んで男爵邸を訪問する事もできなかったが、
しかし、この「弟」を見舞わずして、出立するつもりにもなれなかったのだ。

「ヒルダ姉さん」
あれだけ、いくつのも業績を残した曹操ですら、あの「天の御遣い」などと自称した、種馬みたいなやつの後宮に入れられてしまった。
ヒルダ姉さんは、たとえ、どんな事になっても、ヒルダ姉さんであって欲しい。
たとえ、皇帝の後宮に入れられる事になっても。

「ハインリッヒ……」
ヒルダには「弟」がいう“皇帝”が誰を意味するかが、理解できた。
理解できたからこそ、ラインハルトはちがうと言いたかった。だが、

「そうだよね」
曹操だって、後宮に入れられても曹操だったよ。
戦争と政治以外の、彼女の業績は、後宮に入れられてからのものでもあったし。
むしろ、女性として後宮の人となる前にも、そして、後にもあれだけの業績を残した。そこが偉大だったんだ。
それなのに……
僕は、男なのに、死ぬまでに何が出来るのだろう。後、どれだけ時間が残っているんだろう。この体が、どれだけ動いてくれるんだろう……

「……」
ヒルダは画面の中の「弟」の手を握っていてやりたかった。彼が眠りにつくまで。
彼女がこの時、感じた不吉が現実化するのは、尚、数ヶ月が経過した時である。



[6955] 20年後
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/03/26 21:40
「ここはどこ?私は誰」
いや、待て。落ち着け、俺。
うん。落ち着いた。
俺は俺だ。自分の名前も覚えている。
『聖フランチェスカ学園』の学生だった事も覚えている。

それでは「ここはどこ?」
どうみても、フランチェスカではありえない。いや、そもそも日本なのか怪しい。
はるか地平線まで続く、黄色い大平原。そのど真ん中で、昔の人が言った「泰山悠然」とばかりに、デンと居座った山の上の、
その洞窟の中で俺は意識を取り戻した。その洞窟の出口から、黄砂の舞う地平線を見渡して、俺は途方にくれていた。
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
ところが、俺が途方にくれている間に、誰かがやって来たらしい。

やって来たのは、結構、可愛らしい女の子。こんな状況でなければ、いや、わが悪友ならこの状況下でも、ナンパしたくなるくらいの美少女だが、
何とも、コスプレっ娘だった。「何とか無双」とか何かの武将の。

その武将コスプレ美少女は、いつの間にか、ふもとに用意していた「お神輿」に俺を押し込むと、別のどこかへ連行して行った。
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
連れて行かされたのは「紫禁城?映画のセット?テーマパーク?コスプレ会場にしては豪華だな」
そう、その「紫禁城?」は、昔の中国風のコスプレ(?)であふれ返っていた。
しかも、あちらこちらに、武将や軍師らしきコスプレ美少女がチラホラしていた。

そして「お神輿」から降ろされた俺は、玉座に鎮座する、皇帝の面前まで連れて行かれた。
「ようこそ、わが後輩。それとも、新しい犠牲者かな」
はっきりと、日本語で語りかけられ、思わず俺は、反論しそこなった。その間に、“皇帝”は語り続けた。

「北郷一刀。この名前に聞き覚えは無いかな」
ある。名高い「お嬢さま学園」だったフランチェスカが、最初に受け入れた男子学生の1人。
何も無ければ、俺たちの入学と入れ替わりに卒業していただろうが、ある夜、寮を抜け出したまま、失踪した。
手がかりといえば、同じ夜、校内の歴史資料館が荒らされ、展示品が無くなっていた事。
立派に強盗拉致事件だから、当局も動いたが、迷宮入りになった。

「その北郷先輩がここで何をしているんです。そもそもここはいったい……」
「ここは「三国志」の世界だよ。」
「??」
「この言い方で通じないか。今、というか、君の居た時代では、中国の後漢王朝末期の歴史はどうなっていた?」

「ええと?」
この先輩(?)は何を言いたいんだ…
…後漢末期。現代日本でも「水滸伝」や「西遊記」と並んで、有名な時代だ。
動乱の時代。無双の英雄たちが活躍し、俺たちでも格闘ゲームのキャラとかで知っているぐらいの時代。
ただ、特徴的なのは、その英雄たち、無双の武将や、知略の軍師の多くが、伝説の美少女でもある時代。
てっ?俺は、周りのコスプレっ娘たちを、見回した。

「どうやら、自分がどこに居るか、思い付いたようだな」
「しかし、先輩。だとしたら、先輩はいったい…」
そもそも、俺より2つかせいぜい3つ年上のはずなのに、俺の倍ぐらいに見えている。
「この時代のオチはどうついたことになっている?」

確か…ある時、光り輝く、誰も見た事もないような「天の衣」を着た「天の御遣い」が流星とともに落ちて来て、
そして、時代の英雄でもある美少女たちを、片っ端から、自分の後宮に入れてしまったんだっけ。
しかし、結果として、戦乱は数年で収まって…

「じゃあ、先輩は」
「その「天の御遣い」の役目のため、この世界に召喚されたんだよ。向こうでは失踪になっているかも知れんが」
失踪になっているも、その資料館で肝試しでもやろうと、誰かアホな男子寮仲間が、言い出したんだ。
で、あの事件の時の、銅鏡のカケラらしきものを、植え込みの中で見つけて……

「それは災難だったな。まあ、君も女難の運命と思って、あきらめてくれ。2代目」
「今、最後になんて言いました」
「この帝国は、成立した時の事情が事情だからな。「天の御遣い」を必要としているんだよ。安心しろ。俺の娘たちは、母親似だぞ」



[6955] 関平こと紗羅のMelancholy
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/09 22:38
「俺は紗羅(さら)の相談に乗っていただけです」

曹仲徳が、息子に対して「悩み事があるなら言ってみろ」とたずねた時の答えは、こうだった。

「ほう、いつの間にか、そんなに中が良くなっていたか?」
「父上…紗羅は、周りに姉妹が多すぎるから、とにかく、男で真面目に話を聞いてくれそうな相手を探しただけです」
「それで、お前か」
「日頃の父上の役目がら、そう思われた処もあるでしょう」

仲徳の現在の立場は、皇帝の個人的な話し相手であり、
公的な場では、あえて、そういう立場からの助言を行う、というものである。
「天の国」の同性という、特異な「属性」によるものだった。

この場合、息子も、同世代から相談相手に適当と見なされる原因にも成りえたらしい。

「そもそも、父上は、どうして俺自身のそういう問題に持って行きたがるのです」
「近頃のお前を見てるとな、お前の母上の事で悩んでいた時の俺も傍目には、あんなふうに見えた、という感じだったんだがな」
「そうでしょう。今だに“ばかっぷる”ですからな。「天の国」の言い方で言う。おおいに悩まれたでしょう」

恋愛結婚が普通の「天の国」から生まれ変わって来た曹仲徳らしい、いかにも「普通」な結婚生活を送って来たものである。
それを見て育っている息子だけに、今回の紗羅の「悩み」はこの時代の青年にしては、深刻に受け止めてしまった。
それが、いかにも自分の事で悩んでいるように、父親には見えてしまった訳だった。

「それで、関平もとい紗羅は、恋愛問題で悩んでいるのか。まあ、真面目な娘ほど、いざ、その時には悩むだろうが」
「確かに、真面目だから悩んでいるみたいです。つまり、阿斗さまの選んだ相手を自分も好きに成らなければならないかとか」
「おい…それは…」
流石に仲徳は、単純な恋愛問題ではない事に気付いた。

現在の帝国の体制、そして「漢末三国」の乱世を収束させた手段からいって、紗羅の悩みは的外れとも言い切れない。
いずれにせよ仲徳は「公人」としても、紗羅に合って見る必要があると考えた。

………。

……。

…さて、紗羅を探していた仲徳だが、姉妹の中で1番中が良いはずの鈴音に聞いたところでは、玉琳と月蓮に連れて行かれたと言う。
「よりによって「この」問題で悩んでいる時に「問題」の2人か」

もしも、次世代でも現在の体制を維持するために、
「天の御遣い」と「無双」の乙女たちの、その娘たちが、親たちのような「後宮」をつくるとしたら、
最低でも、阿斗と玉琳と月連の3人が「必要人員」のはずだった。

しかも、玉琳はどうやら母親以上に「クール」に、この件に関しては「政略」で割り切っている節がある。
月蓮にいたっては…
「どこかで楽しんでいるんじゃないかと、疑えそうなんだよな。やれやれ」

阿斗はといえば、案の定というか「普通」過ぎる。少なくとも、事態の主導権を握って振り回す側ではなさそうだ。

いずれにせよ放置も出来ずに、鈴音に教えられた方向へ仲徳が向ってみると、紗羅が自分で戻って来た、なぜか憤慨しながら。

仲徳が憤慨した事情をたずねてみると、こうだった。

………。

……。

…紗羅が連れて行かれた先では、玉琳と月蓮が「ご主人様」の候補者をすでに何人か見繕っていて、
ああの、こうのと検討していた。

「なぜ?阿斗さまではなく、私を連れて来た」
「可愛くないわね。母上もてこずった訳だわ。簡単な話よ。貴女が認めなければ、阿斗姉さまにも近付けないでしょう」
「あの方を姉と呼べるのは……」

彼女たち「姉妹」の家族関係からすると、こういった問題は言い出したら切りがない。

で、この問題は1時だけ棚上げにして、ああだ、こうだと検討していたが、
「紗羅ったら、貴女の“ご主人様”を探しているみたいじゃない」
月蓮の1言は、頭にタライでも落ちて来たようだった。
それで、ついにキレてしまったという訳だった。

一応、同父異母の姉妹とはいえ(孝行を問題にする社会だから「姉」に対する礼儀はあるが)
魏と呉の、それぞれ次期女王でもある相手に対する礼儀を何とか保って、その場から退散して来た処で、
さて、曹仲徳に出くわした。

………。

……。

…「それはそれは、一応、叔父としては謝っておくが」
謝りながらでは無礼かも知れないが、仲徳としても、微笑と苦笑と溜息を同時には我慢できなかった。
「しかし、その1言のどこに、そこまで憤慨されたのかな?」
「それは……」

「あえてこう呼ぶがな。俺は、こうした問題での北郷の気持ちが理解できるつもりだ」
少し、次の言葉はためらう。
「残酷に聞こえたら謝るが、それと、さっきの続きでこう呼ぶけど、おそらく「桃香さんと阿斗ちゃん」だけの「家族」で、アイツは本来、満足できた」
「承知しております。“天の国”ではむしろ、仲徳殿のような家族が当たり前なのでしょう」
「ああ、だからといって、紗羅たちにも悪い父親じゃないだろう」
「とんでもない。だから、悩むのです」
「「・・・沈黙・・・」」

少しして、仲徳から沈黙を破った。
「俺の姉さんなんかと、君の母上たちとは、また微妙に事情が変わっている」
玉琳や月蓮の母親たちには、王だから後宮に入れた、
その手段に訴えたから、極小の犠牲で太平を手に入れられた、という側面が確かにある。

「そういう政略的な言を言い出したら、君の母上たちは元々「妹」だったよな」

そういう発想が無かったとは言えない後宮入りだった。
こうした処で、発想が異なっている。恋愛結婚以外は、むしろ不純と解釈されかれない「天の国」とは。
その「天の国」の発想が抜け切れない父親が後宮の主であるため、紗羅のような真面目な娘ほど、
いわば「ダブルスタンダート」に悩む結果になったわけだ。

仲徳が結局、指摘したのはそこだった。
「どっちの基準を選ぶのも、結局は紗羅なんだ。自分で選んで、自分で後悔するしかない」
「その通りですが…」
「だから、紗羅は自分で、自分の心に忠実な答えを出すしかないんだ。特に、こういう問題はな」
「…は・い…」
「君の母上たちも、多分、そうしたと思うぞ。自分がどうしたいかを、先ず自分に確かめるんだな」

真摯(しんし)に考え出した紗羅を見て、ひとまず「この」問題は片付いたと思った曹仲徳だったが、
この後は、帝国の将来と太平に関わる問題が待っている。
(…真面目にやっていると、切りが無い問題だな。帝国を統治する、という問題は。やれやれ…)



[6955] オリキャラ(転生系)VS外伝ヒロイン
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/07/11 16:30
黄権(真名霧花)は勅使を迎えていた。
「益州刺史の印綬を授ける」

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「正史」の黄権は、意外と「魏」でも厚遇されており、それなりに優秀な人材だった様である。
その割には“有名”な「イメージ」が薄いのは、それだけ「魏」の人材が厚い事と「演義」では「蜀」が注目されがちだからだろう。

特に、実戦指揮官となれば「泣いて馬謖を斬る」などという事態を招いていた人材不足からすれば、
「蜀」から「魏」に奪われた事が惜しい程の貴重な実績とすら言えた。

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その「経験値」をそっくり「この『外史』」に持ち込んでいる霧花は、実のところ貴重な人材だった。
「天の御遣い」だけが「正体」を知っているのが、もったいない位。

逆に、その霧花が「蜀」の拠点を守っているから、安心して遠征する事が出来たとも言える。

実際、主君たちである“カップル”、そして「五虎竜鳳」という「トップ」集団が、決して成都に落ち着かずに遠征続きの上、
その後では、なまじ天下を獲ってしまったために、帝都に行ってしまったのだから。

そして、天下を獲っても、その天下の西南に位置する益州は、西と南に「国境」を持っている。
「益州刺史」とは、天下が平穏だった時代から「その」国境を守る「遊撃軍団」を預かる任務でもあった。
「百戦錬磨」でもあれば「益州」は守るべき「故郷」でもある「黄権」には適任だった。

………。

……。

…勅使として、やって来たのは曹仲徳である。

「貴方も「天の国」の御方だった、とは」
「赤壁」までは、仲徳本人と姉の華琳、そして「天の国」同士の北郷一刀と華佗しか知らなかった事だ。
一刀は、霧花を「寵愛」しようとしていると感ちがいされないために、桃香にすら霧花の「正体」をうち明けていなかった。

それだけに霧花、いや黄権については、久し振りに何も隠さず話す事の出来る相手だった。
実際、愛くるしい「霧花」の見た目を裏切る「爺くさい」口調に戻っていた。

仲徳も三国志ファンだから「黄権」については語れる。
というか「この」世界で「ある」意味初めて、自分が知っている通りの「三国志」の人物「本人」と話せたとも言える。

………。

……。

…すっかり、話し込んでいた仲徳と霧花だったが、

「仲徳殿。私の「見た目」を忘れてしまったようですじゃ。お互いに」
そうだった。一刀も、その意味で「誤解」を避けてきた筈だった。
「特に、仲徳殿は未だ1人身だった筈」

「ああ。俺は「その」意味では慎重に、そして俺自身に忠実に生きたいんだ」
「ご主人様が、おっしゃられていた“ふらぐ”とやらですかのう」
「それとも少し外れているな。公衡殿も「この」時代の「男」だから」
「つまりは「天の国」の流儀ですかのう」
「そうだ。“ここ”でいう「天の国」では、本来は恋愛結婚以外むしろ不純とされているし、実は「後宮」という制度は無い」
「ほう」皇帝でなくても古代中国は、少なくとも地主階級以上は多妻だ。

「『天の国』の男は、1人の女だけに恋愛をして、それを貫くのが理想なんだよ。少なくとも、女の方が「それ」を要求できる」
「ほう、意外と窮屈なのですな」
「だけどね。それでも本望なほど愛する事の出来る女に出会う事が、一生の幸福と考えられているんだ」
「話に聞けば、面白くはありますのう」
「もしかしたら「天の国」でも、これは綺麗事かも知れないけれど。だけどな…」
「…俺や北郷は、その綺麗事が信じられるような若造の間に「天の国」から落ちて来たんだ」

「ご無礼!」
中身が「黄権」だと知っていれば「黄権」が笑っていると分かる様な、大人の男の爆笑だった。
「しかし、真にそれが、ご主人様の真情だと致(いた)すと…」
「ああ、アイツが「桃香さん」以外に手を出したのは「阿斗ちゃん」が生まれてからだったろう」
「その様な御方が、あの様な…」
「種馬に成るとはな(苦笑)「天の国」に居た頃のアイツ本人にいっても、下手な冗句としか聞こえなかっただろうな」

「…それでは、仲徳殿は、ご主人様の分まで…」
「そんな言い方をしたら、俺の姉さんを始め、大勢に失礼だよ。しかし、俺は「天の国」の「普通の恋愛」をしたいな」

「では、やはり「霧花」と誤解されても御迷惑でしょう。「黄権」だと御存知でしょうから尚更」
もう1度、大人の男笑いをする「見た目」は霧花だった。

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ところで、曹仲徳氏は、いったい誰と「普通の恋愛」をしたのでしょう。
一応「恋姫」公式キャラは除外として「あの」時代の誰かでしょうか。
皆様は「誰」を思い浮かべて、おいでですか。



[6955] 普通の恋愛
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/07/17 22:37
俺の「現世」での人生における驚愕は、2才の時に使い切ってしまったものと思っていた。

そうだろう。
21世紀の日本で大学生をしていた筈が、2才児に転生していて、おまけに姉(!)が「あの」曹操と来ていたのだから。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

「十常侍」事件。正確には、麗羽さんによる(華琳姉さんも史実通り共犯)十常侍虐殺事件の後、
俺は、姉さんの拠点である予州潁川郡の許昌から、帝都に呼び出されていた。

「今頃、援軍を呼んでも遅い筈じゃないかな。それとも、華琳姉さんには余程の兵法でもあるの?」
「十常侍だけなら、私と麗羽が連れて来ていた兵で充分だったでしょう」
「結果的に、その通りだったね」
「菫卓が予想外だったのよ」
「確かに「天の御遣い」でも無ければ、想像の斜め上だったろうさ。いくら「乱世の姦雄」曹操でもね」

「そして、菫卓(正確には軍師賈駆)は、元から連れて来ていた兵まで汜水関の向こう側に引き上げろ、なんて言い出したわ」
「それは、また露骨な」
「仲徳に来てもらったのは、表向き、その兵の引率だけど……」

……華琳姉さん、春蘭さん、秋蘭さんといった「チート」武将たちが、何かの気配を嗅ぎ付けた。でも、
「殺気では無いわね」

で、俺は庭先に忍び込んでいた“猫の子”の首っ玉を引っつかんで、まではしなかったが、
本当の「猫の子」よろしく、両脇に手を入れて部屋の中に抱え込み、俺の膝に乗せて話を続ける事にした。

「玉羽じゃないの?」麗羽、美羽姉妹の末の妹の8才児である。名前の由来は「月のうさぎ」とかじゃなかったかな。
大人しくしていれば「お人形」の様な容姿を裏切るような、大胆ないしは活発な冒険をやってのける8才児だとは思っていたが。

「まあ、いいわ。麗羽も美羽も太守職をあてがわれて出て行った後に取り残されていた子だし。連れ出して置いた方が、後で恩を売れるかもね」

…と言う事は、やる気だな。華琳姉さん。「正史」通りに。
連れ出すつもりで無ければ例え8才でも、このまま聞かせられないような事を。

「それで、さっきの続きだけど。仲徳は、今、帝都に居る曹軍の兵を引率して汜水関を出てちょうだい。ただし、許昌まで戻る必要は無いわ」
「だったら?何処へ」「敖倉(ごうそう)」

成程、どのみち「反董卓連合軍」は、敖倉に集結して、洛水沿いに進軍する事になる。真面目に戦略を考えたらそうなる。
だからこそ、汜水関や虎牢関が決戦場に成る理由がある。

「それで?姉さんは」
「私自身の目的は、この帝都を遁走して、許昌まで逃げ帰る事よ。兵はそんなにいらないわ。むしろ、身軽な方がいいのよ」
「了解した。でも気を付けてよな」

……      ……      ……      ……      ……

華琳姉さんと袁家当主との話がどう着いたか、俺は鞍の前に玉羽を抱えて帝都を出立し、敖倉の付近で来るべきものを待つ事になった。

……      ……      ……      ……      ……

さて、行軍も汜水関を通り過ぎ「現在」も敖倉に当然ながら居る守備兵を、どう誤魔化すか、などと考えていた時だった。

「君。日本語で話しているの」
へ?
確かに、他人に聞かれたくない事、例えば「前世知識」に関係する事とかを口走ってしまう場合とかを意識した時には、
独り言でも、日本語でしゃべるクセが出る場合があったりする。

この時も「正史」の「連合軍」はどうの、こうの等と考えていたから、口には“日本語”が出ていたかも。
何時もなら、意識しなければ「翻訳コXXャク」効果らしきものが作用しているのだが。
だから、訳の分からない独り言を誤魔化して、正常だと思ってもらう「スキル」は身についていた筈だった。

だが、しかし。
この「お子様」は、今何と?
「お兄ちゃん。変な事をしゃべっている」なら、俺も予想はしていたが。
その予想の斜め上を飛び去るような事を言わなかったか?

「どうしたのよ。返事をしなさいよ」
いや、口調からして、むしろ俺より年上みたいな口の聞き方。8才のしゃべり方じゃない。
それに、耳をすませば「懐かしい」日本語だ。確かに。

あの「天の御遣い」の出現で「翻訳コXXャク」効果らしきものと、リアル日本語の聞き分けが出来るようになっていた。

「君は、いや、もしかして貴女は誰だ?」

………。

……。

…俺は日本に居た頃、近い関係だった。
年齢は(禁則事項)バリバリの「ビジネスウーマン」だった。
そういう女性が「草食系」を「飼う」のが流行だったせいか、どうか。
俺は、その人の「フラット」にまで「三国無双なんとか」といったゲームを持ち込んでプレイしていた。

まるで「その人」のような口調の“日本語”でしゃべる8才児を抱えて、
俺は未だ、自分に驚愕という感情が残っていた事にも驚いていた。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

豪族「袁」家の本拠地と言って良かった予州汝南郡は、実の処「黄巾の乱」での最大の被害地域でもあった。

それで、袁家でも「討伐」に行かなかった(年齢から当然に論外だろう)玉羽たちは、帝都に疎開していたのだが、
8才児、それも「お屋敷」の「奥」から出たのは、これが「現世」8年目にして始めての「箱入り娘」には「PTSD」ものの体験だったらしい。
それで「壊れた」らしい「現世」玉羽の「自我」の代替のように「前世記憶」が覚醒したのだ……

……      ……      ……      ……      ……

まるで、21世紀日本の社会人が営業での対話をしているが如くに、これだけの説明をしてのけた「見た目」8才児に俺は驚愕していた。

しかし、同時に歓喜も自覚していた。
「俺もです。俺も「前世」は日本人ですよ。曹操の弟に生まれて2才の時に覚醒しました」

8才に敬語を使う高校生相当というのは、身分社会の「この」時代なら在り得る。
しかし、この時の俺としては
「タメ口を聞いて良いかどうか。先ずは確かめさせてもらえませんかね。レディには失礼かもしれませんが」
「年齢は禁則事項という事にしておいてよ。君の年を聞いたら、こっちで判断するから」

幸いにして、行軍中というのは、報告を受けるにしろ指示を出すにしろ、大声が必要なくらいに騒がしい。
その中で、玉羽は俺が抱えている。密談には丁度よかった。
その状態で、互いの情報を交換する間に、思い当たる事が次々に出てきた。

まさか?そんなベタな?都合が良すぎるぞ。いや、そもそも、俺たちの「この」転生だけでも「ファンタジー」もいい処か。

「誤解しないでよね。私は、君が事故にあった後も、何年も仕事に打ち込んだりしていたのよ」
「はい。それで何の誤解ですか」
「だから「私が」死んだのは、君の後追い、なんかじゃないって事」
「そうですね。今の俺たちの年齢差に「それ」が反映しているとしたら」
そんな会話も懐かしかった。

「それより、今後の事なんだけど」あらためて真剣そうな態度になった。
「私は、君ほど「三国志」マニアじゃ無かったら良く覚えていないけれど。袁家という事は、これから殺されるんじゃない。貴方のお姉さんに」
「その事ですか」
「麗羽お姉さまや美羽お姉さまには、妹として可愛がってもらったから、心が痛まない訳じゃ無いけれど。これは究極の選択だわ」
「なまじっか知っていると重いですね」
「お姉さまたちが袁紹や袁術に成れる様な「異世界」だから、女というだけなら「ハンデ」には成らないけれど」
「流石に8才では。せめて美羽ちゃんの年齢だったら」
「そうなると、君が「前世」で教えてくれた「真田一族の陰謀」くらいしか、手段が残っていないじゃない」

「しかしですね。いくら華琳姉さんでも、8才は犯罪ですよ」
「だったら君は男でしょ。君の方が余っ程、犯罪よ」

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

数年後、想像の斜め上を飛び去る手段で、天下太平を実現した「天の御遣い」だった。

そして「天の御遣い」の相談相手という「ポジション」に収まる事になった曹仲徳が、ある時、反撃を受けた事があった。
「先輩は俺の趣味がどうの、こうのと言いますけどね」
「言ったかもな」
「『愛紗さんと鈴々ちゃんとか、朱里ちゃんと雛里ちゃんとか、麗羽さんと美羽ちゃんとか』」
「良く覚えているな」
「そう言う先輩はどうなんです。玉羽ちゃんの事。俺だって流石に璃々ちゃんは汚していないですよ」
「だから「彼女」の中身は(禁則事項)だぞ。俺は絶対に、北郷とは別だ」
「玉羽ちゃん1筋ですしね。本当に「連れ込んだ」んじゃないんですか?」
「“貂蝉”にでも聞いてくれよ」

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今回のヒロインは、ひな様の『なんちゃってシンデレラ』(「オリジナルSS投稿掲示板」)からのインスパイアがあります。
当然ですが、盗作のつもりなど無いつもりです。
また、ひな様には、この場を借りまして「エール」を送らせていただきます。



[6955] ゼロ魔との小ネタ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/07/24 22:54
この短編は『ゼロの使い魔』とのクロスオーバー作品ですが、あくまで短編読み切りです。

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西暦1642年。イングランド内戦勃発。オリバー・クロムウェル指導の革命軍とステュアート朝王国軍との国内戦争である。

西暦1644年。中華帝国「明」王朝滅亡。そして「清」王朝が、中華の皇帝となった。

西暦1649年。内戦は、国王処刑をもって革命軍の勝利に終わり、王国からクロムウェル独裁のイングランド共和国となった。

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「ロバ・アル・カリイエか……」
ハルケギニアから見て、『聖地』よりも更に東方にある地域。
エルフに道をさえぎられて、往来は不可能とされている地域。
そして、何故か1部には、平賀才人の故郷と誤解されている地域。

才人自身も、東方の地には、元の世界に帰るための手がかりがある可能性を捨て切れていなかった。


そんな、ある時の事。
親しい何人かで夕食にしていた時、ふと、その話題が出た。
「この緑茶とか、東方からの輸入だよな」
才人の「国」でも緑茶は生産している。
それだけに、往来の絶えている筈の「東方」から、どうやって輸入されたかが、ふと気になった。

「ロバ・アル・カリイエよりも、更に東方に“シルク”と呼ばれる国があり、緑茶はシルクから輸入されたとされる」
「本当かい?タバサ」
「私たちには判らない。ただ、数年前までは、ロバ・アル・カリイエからの商人がハルケギニアを訪れた事があった」
「エルフとの戦争の前だよな」
「彼らはシルクで緑茶を入手した、と伝えたらしい」
「今でも東方との交易は、完全にはエルフにさえぎられている訳でも無い。だが、シルクの国は、数年前に内乱が起きたらしい」
「アルビオンみたいに?」
「どっちかというと、そっちの影響が大きいのよ」ここで、キュルケが話を引き取った。
「ゲルマニアには、東方との交易で成り上がった貴族もいるけど、内乱で1番魅力のある交易品を生産している筈のシルクが大混乱しているみたい」
「じゃあ、エルフが怖いだけじゃなくって」
「エルフの危険を冒してまで入手しに行く商品が手に入らないから、行ってもしょうがなくなったの」

………。

……。

…この時は、この程度の雑談だった。ところが、間も無く王宮から呼び出しがあったのである。

「実はシルクの新しい皇帝の使者を名乗る者たちが現れたのです」
「そんな東の果てから?」
「彼らは、何故かエルフに通過を許されたロバ・アル・カリイエのものらしいのですが」成程、それなら判るが、
「シルクの皇帝から、世界各国への親書を預かっていると主張しています」

「それで、姫様。私たちを呼ばれた理由は何でしょう?」ルイズが女王直属だとしても、直ぐに役に立つ話でもなさそうだ。

「シルクの言葉で書かれた文章を読む事ができる者がいないのです」
「俺は、東方の出身と誤解されていますけど、読めるとも限りませんよ」
「とにかく、1度、目を通していただくだけでも良ろしいのです」
「しょうがないなあ…。…これって?まさか…漢文?」
「サイト。読めるの」
「いい、いや。これは俺の国ではなくて、隣の国の文章なんだ。スラスラ読めるわけじゃない」
「それでも、何とか意味は読み取れませんか?」

日本の高校に通っていた時の、平賀才人の漢文や世界史の成績がどの程度のLVだったか?
それでも、何とか、かんとか漢文(らしきもの)を読み取って見ると、使者自体は本物らしかった。

滅亡した前王朝に代わって、新しい王朝によって秩序が回復されたから、国交を(あくまで中華的な意味で)再開したいらしい。
そこで、前王朝までは国交が無かった西方世界にまで、親書を送ってみたらしかった。

………。

……。

…女王と宰相から感謝と栄誉を受けて、さて、学院に戻って来ると、タバサとコルベールが、何やら興奮しながら1冊の本を付きつけて来た。

「これは、以前にミス・タバサが図書館で発見したが、シルクの本らしいという事が判るだけで、誰も読めなかったんだ」

正直、ウンザリしながら手に取って最初のページを開いてみると、漢字(?)で「サブタイトル」らしきものが印刷されていた。
『桃園起義』
(…あれ?もしかして三国志…)
もう1度見直すと、各ページの上の部分に挿絵が描かれていて、
1ページ目の挿絵では、確かに花も満開の果樹園の中に3人の人物が描かれている。

あらかじめ、知っている話なら何とか意味が取れるかも、と思って読み始めたが、
「何だよ、これ。三国志みたいなトンデモ本じゃないか。まあ、ハルケギニアもヨーロッパじゃなかったけどな」

劉備とか曹操とか関羽とか、才人でも「三国無双なんとか」といったゲームやマンガで知っていたキャラが、何故か女の子ばかりになっていて、
しかも「天の御遣い」などと名乗る、怪しさ大爆発なヒーローが登場していた。

いよいよ、ここが異世界である事を実感する才人だった。

………。

……。

…四苦八苦の末、何とかその本に書いてあった事の、さわりだけ読み取った才人だったが、
「それでは、この本は1300年ほど前の、シルクの歴史書なんだね」
コルベールの言う事は、真っ赤な間ちがいでも無い。だが、

いよいよ、自分が異世界に居る事を痛感する才人だった。
『恋姫無双』と背表紙と表紙に記された「歴史書」の第2ページの挿絵には、桃園の樹々の間から現れる、光り輝く「天の御遣い」が描かれていた。

「しかし、シルクの“コウキュウ”と言う制度は、驚くものだな。3つに分裂した国家を統一するために、3人の女王と1人の皇帝を結婚させるとは」

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「恋姫」シリーズには“月が双つ”などという設定などない事は承知で、それでも妄想のままに書いてしまいました。

(蛇足)
これは完全に蛇足ですが††恋姫無双演義††でのオリキャラ『華佗』のインスパイア元となった作品が、実写化決定しました。
演じるのは、大沢たかお氏だそうです。
したがいまして、もしも今後『華佗』の登場する派生作品を投稿するとしたら、大沢氏のイメージで書くかも知れません。



[6955] これは孔明の発明だ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2009/09/22 14:40
「三国」時代に於(お)ける「発明王」は誰か?
諸葛亮、字は孔明である。

「正史」は以下の様に記述する。
『木牛流馬』と名付けた運搬車を発明し、山また山脈を踏み越えての「北伐」に於ける補給問題を、部分的にしろ解決した。
『連弩(連発式ボーガン)』を高性能化し、その活躍で兵力不足を補った。
大量生産の鉄剣を『刃金の剣』に改良する製法を発明した。出来た剣は、鉄の玉を詰めた竹筒を切断した。

これが「伝説」と成ると『饅頭』も孔明の発明だとされる。

さらには「演義」とも成れば、
南蛮軍が、生きた猛獣を使用して攻撃してきた時、火を吐く「ロボット」猛獣で対抗した。
「7度とらえて7度はなつ」の内の1回は「これ」で勝った、という事に成ってしまった。

繰り返すが『木牛流馬』『連弩』『刃金の剣』は「正史」である。

……      ……      ……      ……      ……

尚「道術」と「科学」の境界が曖昧(あいまい)だった時代の「講釈」ファンにとっての孔明は、
霊験あらたかな道士であり「祈れば風が吹く」までにしてしまったためか、
「発明王」だったのは妻の黄月英だった、という「演義の『外伝』」まで創作されたりした。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

それでは「この」外史の諸葛亮は?

……      ……      ……      ……      ……

「益州侵掠」に来た筈の劉備軍は、益州の中心である成都を先送りにして、他の侵略者である南蛮王、孟獲を追い払うべく雲南へと転進した。

四川盆地を離れ、山また山脈を乗り越えて、南へと転進して行く。
しかし、朱里発明の「木牛流馬」の威力で、補給は比較的には困難で無かった。

補給担当の文官である簡雍や法正(真名狭霧)たちは「木牛流馬」の台数で計算出来るため、安心して算盤を弾いていた。
ちなみに、算盤の発明者は関羽だという「伝説」がある。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

すでに1度ならず劉備軍、いや、もはや蜀軍と言うべきだろう、に破れた孟獲は、南蛮軍らしい戦法で戦おうと考えた。

「いしょいで、南蛮の本国から、猛じゅ―どもを連れて来るのにゃ」

かくて、虎・豹・象はともかく獅子や犀(さい)までが、何処の大サーカスかと言わないばかりに連れて来られた。ところが……

……この情報を入手した蜀軍側では、朱里の目が☆きらりん☆と光っていた。

………。

……。

…あおおおお―んん!!!
「この」時代には在り得ない筈の「コントラバス」を思い切り大音量にしたか如き大咆哮が響き渡る。

いくら「人工」つまりは作り物の“ろぼっと”猛獣(?)でも、1応は「三国志」の筈なのに、どうして“ごじら”まがいが登場するのか?
何処ぞの「天の御遣い」にでも「お告げ」を伺(うかが)って見るしか無いだろう。

いずれにせよ、猛獣を通り越した怪獣(?)が火を吐きながら前進して来ると、
本物の猛獣たちは、それこそ“さーかす”の如く見事にUターンして、遁走してしまった。

かくして「7度はなつ」は、また1カウントを加えたのである。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

同じ頃、曹魏陣営の拠点、予州許昌。

李典(真名真桜)が真剣に何かを製作していた。
帝都の巡察・警備を司る「執金吾」としては直属の上官に当る曹仲徳は、役目上も問い質してみたのだが。

「諸葛亮の『木牛流馬』に負けへん運搬車を工夫してみたいんですわ」
“黄巾”を討伐する際、荊州南陽で初見した劉備軍は、もう『木牛流馬』で物資を運んでいた。
その時から、この前「益州侵掠」の途上で許昌を通過した時まで、目撃する機会なら何度も有っただろう。

「そうか?あの「木牛流馬」に対抗するつもりなのか」上官としては、真桜を認めているが、仲徳は「正史」を知っている。
「頑張れよ。しかし、無理はするな」

………。

……。

…この「歴史」では『赤壁』以降、朱里と真桜は、同じ勢力に身を置く事になる。
その時「発明」はどうなったのか?『後世の歴史家』は、どう記述したのだろう?



[6955] 裏設定・今更ながらネタばらし(修正UP・クロス元『涼宮ハルヒ』)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/10 10:22
今更ながらですが††恋姫無双演義††には、裏の世界設定というか作品世界の解釈とかについて、
某ラノベとのクロス設定が在りました。
今回、思うところが有りまして、これまで思わせ振りをしてきました「この」クロス設定を明らかにしたいと思います。

………………………………………………………………………………………………………………………………………

普通科高校2年のカリキュラムに置いては、いくつかの科目が選択となる。
高校によっては、この選択科目別にクラス編成をする場合もあるが、
わが県立北高の場合、ホームルームクラスは1年の時とクラス替えをせず、
選択科目の授業の場合だけ、教室を移動しての合同授業とする方針の様である。

そんな訳で『世界史』の授業の時間、2年5組の教室に、1年先輩を除いた『SOS団』が集結する事になったのだが………。
……。
…何なんだ?この違和感は?

今は昼休みだ。
そして、あの団長様を除いた団員4名が、密かに集合中である。
「俺は、古泉や長門ほど、世界史の成績が良くは無いが…」
「それでも貴方は、何か違和感を感じられたと」
「ああ、何か別の歴史を知っているような、そんな感じがするんだ。常識的には有り得えないだろうが」

「貴方の違和感は改変以前の世界の記憶によるもの」ずばり断言された。
「ただし、改変は地球時間にして約1800年前の時間平面に限定された」
「この時間平面における改変の影響は、貴方の様に『以前』の記憶を持っている場合の違和感。そして」
「この時間平面に存在する有機生命体のうち、存在しない者が存在する場合は村1つ分程度。また」
「存在する者が存在しない場合は1人」
1人?そりゃまた、ずいぶん限定的だな。
「正確には、改変の行われた時間平面に存在が移動している。問題の教科書には『天の御遣い』と記録されている」

「その程度の影響であるため、思念体は介入のメリットよりもデメリットが大きいと判断した」
まあ、宇宙の情報生命の考えは、惑星上の有機生命体なんかには及ばないさ。
「じ、実は~」
はい、はい。マイエンジェル。
貴女の責任ではありませんよ。

「実は、未来からの命令も同じなんですう」
ホワット?!
「以前に言ったかも知れませんが、この時間平面から4年前に時空断層があって…」
アイツの仕業でしたね、それも。
「その断層から、こちら側の時間平面は改変されていない。さっき長門さんが言ったぐらいの影響しか残って無いからって」

宇宙人と未来人が不介入か。超能力者は元からイエスマンだし、普通人には万策尽きたね。
だからって、どういうつもりなんだ。
「改変の動機は、以前に歴史資料館を見学に行った時にある」

……こんな時代は、さっさと終わるべきだったのよ……

たったそれだけで?!良い加減にしてくれよ。歴史の授業を受ける意欲が余計に急降下しそうだ。

「彼女は本来は常識人です。『こんなこと』は実際には起こらないと内心では考えている筈です」
「今回は不幸な偶然」
「思念体とは別の存在。こうした歴史への改変に対する介入では『急進派』というべき存在が偶々(たまたま)介入した」
「しかし彼女の力に接触したため、かえって反作用を受けてしまった。彼らとしても、おそらく不本意」
「おそらく、彼女が再び、今回の様な改変を行う可能性は低い」
やれやれだ。

………。
……。
…未来。未来人も会議は行う。

「今回の歴史改変に対する対処を確認する」
「『凉宮ハルヒ』に対する直接介入は行わない。滞在する工作員に対する説明も以上の通りとする」
「肝腎の改変された時間平面に対してだが」
「敵対する可能性もある、情報生命体のインターフェイスが存在している。対抗できるだけのベテランを送るべきだろうな」
「思念体あたりのインターフェイスとでも誤解してくれる様な実力者をだな」
「やはり『彼女』だろう。この件に関しては専門家だ。それに『凉宮』に直接接触していた頃に比べたら、ずいぶん成長した」
「確かに、思念体のインターフェイスに直接シゴかれて成長したのは『彼女』くらいだ。適任だろう」

そして、送り込まれる工作員に命令が下された。
「了解しました」
「それから、改変されていても『三国志』の時間平面だ。仮名としても、それらしく名乗った方が良いだろう」
「了解しました。それでは『貂蝉』はいかがでしょう」
「面白そうだな」

………。
……。
…現代。またまた世界史の授業後、2年5組の教室から、お客さんが移動中である。

「(…やれやれ…)」
「何をたそがれているのよ。ジジイくさい」
「………。………。…いや、この前の授業でやった、この時代の事をちょっと考えてな」
「?」
「『天の御遣い』とか何とか、それこそ不思議いっぱいかも知れんが、もしかしからトンデモない目茶苦茶な時代だったかもな」
それで、もしも、もしもだ。
実は、この『天の御遣い』とやらは、誰か神様まがいのトンデモ存在に元の世界から飛ばされた奴で、
そんなトンデモパワーのせいで、この時代が目茶苦茶になっているとしたら……。
「だからって、もっと悲惨な時代に成っていたかも分からないじゃない」
ああ、そうだな。
ただ、巻き込まれたコイツには、1語「すまん」とでも言ってやりたいな。
「何よ?アンタが歴史を変えた訳でも無いのに」
そうだな。

実のところ、こんな会話から、冒険に出かけるキッカケになるとも考えやしなかった。
言動や行動は暴走していても、芯は常識人。自分が世界を改変しているなんて本心じゃ信じていない筈の女だったのだから。

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※ 今更ながらですが、††恋姫無双演義††講釈の21、および講釈の54には、
  投稿名『たつ』様の『恋姫†遊記 ~ドキッ☆美少女だらけの西遊記!?~』(「その他SS投稿掲示板」)
  からのインスパイアが在ります。

  今更ながら、たつ様には、心より感謝させて頂きますと共に、
  『恋姫†遊記』への支援のエールを送らせて頂きます。



[6955] オムニバス・超短編の寄せ鍋(追加有り)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/24 21:04
短編にすら成らない、小ネタ未満の欠片を寄せ集めて、全体の長さだけは短編1つ分にしたつもりです。

(注意)R15ネタも混在しています。

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とある酒宴の席で、孫権は戯(たわむ)れに筆を取った。
そして「諸葛子瑜」と、ロバの顔に書いた。諸葛子瑜は、かなり面長の顔だった様である。
偶々(たまたま)陪席していた子瑜の息子が、その続きに「…のロバ」と書き加えた。
この頓智(とんち)で、父親の「面子」は守られ、事は酒宴の冗談で終わった。
6歳にして、流石は孔明の甥である。

「天の御遣い」と曹仲徳は「飲茶」の雑談に、何気無く「この」話題を載せた。
ウカツだったのは、政務の合間だったため、文官として朱里が居合わせた。

「はわわ…雪蓮さまの処へ行って来ましゅ。蓮華さまには断酒して頂かないと」

「…止める間も無かったですね…」
「だけど、あの「姉」から「妹」に言って、説得力が有ると思うか?「この」件に関する限り」
「シャオにまで悪い癖が遺伝していないと良いですけれど」

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††恋姫無双演義††の裏設定として『貂蝉』の「正体」は、某未来人(大)にしてしまいました。
そうしたら、何と「中の人」が雛里に成ってしまいました。
実は『後藤』違いで、桃香かと、1度は早合点しました。

… … … … … … … … … … … … … … … … …

「あらん?ご主人さま~ん」
何故かゾクゾクとして、後ろを振り返ったが、
そこに在ったのは「魔女の帽子」だけだった。
「あぅ…何でしょうか?」

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「三国志演義」に於ける『許緒』登場シーンのお約束。
黄巾賊から故郷の村を守っていた頃、ある時、牛を取り返してきた。
けっこう大き目の牛の尻尾を捕まえて、後ろ向きに引き摺って帰って来たとか。

ある時、季衣と流琉が「天の御遣い」の寵愛を受ける順番になった。
「まさかなあ、いくら『許緒』でも」
「そうだよ。牛がかわいそうだよ」
「そうだよな。おまけに両手で2頭なんて大げさだよな」
「だからちゃんと、肩に担いできたよ。2頭とも両方の肩で」

「(…悪いけど…抱き締めてもらうのに勇気が必要だ…)」

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外伝~普通の恋愛~のヒロインについての辻褄合わせ、です

… … … … … … … … … … … … … … … … …

袁家譜代の忠臣である田豊は、主君である(真名)揚羽から相談を受けていた。
その主君は現在、身重である。女児だったら3番目と成る。

「元皓。この子が女の子だった時の真名なんだけど」
揚羽本人や、既に生んでいる2人の娘、麗羽と美羽の真名には胡蝶の意味がある。
「でも、何故か、この子は『胡蝶之夢』と関係のある名前、それも真名で呼んではいけない気分がするの」
「お恐れながら『羽』の1字を欠く訳となれば、もっとはっきりとした理由でありませぬと」
「そうね。だから『羽』はつける。『胡蝶』とは別の意味を持たせたいの…そうね」

望月(中国でいう満月)を窓から見上げて、何かを思いついた様だった。

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美羽ちゃんの「中の人」は、某「アイドル育成ゲーム」のメインヒロインだそうです。
成程、アニメ最終回の落ちは、そういうネタでしたか。

… … … … … … … … … … … … … … … … …

「何故、雛人形の5人囃子は、1人だけ楽器を持っていないの。古泉君か有希は知っている?」
「それは、今日の言い方で言うボーカルですよ」
「1説によると、邪馬台国の卑弥呼の時代に由来するとされる」
「ふうん。面白そうね」
「さらに1説によると、当時の中国の乱世で没落した名家が流浪して、卑弥呼の『5人囃子』をしていたという伝説がある」

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魏の曹操の軍師にして「王佐の才」と呼ばれた荀文若には、同じく曹操に仕えた“甥”と、袁紹に使えた“弟”がいた。
ところが「この」甥は、“叔父”より6歳年長だったと記録されている。

「と…言う事は…孫より年下の子供を最小でも2人、おそらく若い後妻とかの間につくった父親がいたって事だよな?」
ある時「天の御遣い」は、思い当たった事があった。
「“昔”の中国なら、有り得た事だろうけれど…もしかして、桂花の男性観の原因って?」

偶々(たまたま)地方官として「現在」の皇帝に仕えていた、桂花の“妹”と“姪”が皇宮へと報告に来た時、
「天の御遣い」は、雑談に誘ってみた。

実は、その晩の「寵愛」の順番は、華琳と桂花だった。
「御遣い」の方は、だから事前に、疑問を解決した方が良いつもりだったかも知れなかったが、
結果は、何時もよりもニギヤカだった。
皇帝の方は「もう後宮は満員」のつもりでも、どうやら誤解された様である。
まあ、誤解もされただろう。例えば、前夜の順番が、麗羽と美羽姉妹だった。


ちなみに、何時の間にか「この」順番の時は、後宮の他の部屋で耳覆(おお)いを準備して就寝する習慣が出来ていた。

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張飛の実家は幽州涿(たく)郡の市場で、肉屋(あるいは居酒屋兼業)をしていた、とも伝えられています。
鈴々ちゃんが豚に乗っているのは、そういうネタでしょうか。

さて、劉備の故郷は涿郡の行政管轄だった楼桑村で、
「筵(むしろ)を織り、履(くつ)を売っていた」と言われる若き日の劉備は、
張家肉店の在る近くの市場には、行商とかに来ていたでしょう。
その頃からの知り合いだった、と言うより子供時代からの弟分だった、と言う可能性はあります。

… … … … … … … … … … … … … … … … …

「ここか?『天の御遣い』様のおっしゃっていた楼桑村は」
楼閣の様な桑の根元と桃園の間の、見た目にも「没落した元お屋敷」を関羽(愛紗)と張飛(鈴々)は見付けていた。

「うにゃ?桃香お姉ちゃんなのだ」
その少女は、作りかけの筵らしきものを膝に乗せていた。
「知り合いか?そう言えば、お主の故郷に近かったな」
「とーっても優しいお姉ちゃんなのだ。少し天然だけど、放っとけ無くなるのだ」

「あら、鈴々ちゃん?何処に行っていたの?お肉屋さんのみんなが心配していたよ」
「うにゃにゃー」(テレ)

「そつじながら、お聞きしたい。この御屋敷に、漢王朝の御血筋を引く劉玄徳殿とおっしゃる御方はおいでか?」
「私が劉備ですが?」
「こ…これは御無礼を!」
急いで愛紗は、その場に片膝をつき、大刀を側に伏せ、両手を握り合わせた礼の姿勢を取った。
鈴々も叱り付けて、同じ姿勢にさせる。
「そう言えば、そんな名前だったのだ。昔から「桃香お姉ちゃん」だったから忘れていたのだ」
呆れながらも気を取り直して、愛紗は語り始めた……

…そして桃香は宝剣を手に取った。
「中山靖王伝家のこの宝剣を抜く時が来たのでしょう。分かりました。私もあなたたちの姉妹に加えてください」
「おお!お願い申す」
「もう1つ、お願いがあるのだ」
「こら。鈴々」
「字は主君になる人に付けて貰う事に決めていたのだ」
「…いいけれど(おつむに指先を当てて)う~ん……私が玄徳だから…益徳、はどうかな?」
かくて、桃園に3人の姉妹が揃(そろ)う時が来た。

…その時…
「劉備玄徳」桃花の薄紅とモザイクになった蒼天を「靖王伝家」の宝剣が指す。
「関羽雲長」左右から「青龍偃月刀」が、
「張飛益徳」そして「蛇矛」が合わせられる。
「「「我ら誓う」」」



[6955] 2月14日?(続き)1ヶ月後
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/23 23:24
『雑談版』にて、バレンタインについてのスレッドを見つけました。思い付きました。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

後漢王朝からの禅譲を受けた「天の御遣い」は、吉日を選んで、皇帝に即位する儀式を挙行した。

その年も暮れて、翌年の1月も末の頃。

皇帝と、相談役でもある友人は、政務の合間に『飲茶』で雑談していた。

「そろそろ2月か」
「2月ですね。先輩」皇帝に成っても、この言い方を変えないのが「天の御遣い」らしいといえばらしい。
「そういえば…先輩は、この季節に成ったらワクワクしませんでしたか?」
「もう忘れたよ。俺は転生してから何年も経っているし、だいたい、同じ2月でも暦が変わっているし」
「でも(何故かニッコリ)玉羽ちゃんが居るでしょう」
「…。…まあ…「向こう側」に居た頃は、俺の方が「ペット」みたいなもんだったしな。おねだりぐらいしたさ」
「『こちら側』では?」
「フン」

この時は、この話はそれまでだった。
ただ、曹仲徳は「こんな『笑い話』はありましたよ」位のミヤゲ話は、帰宅後にした。

「それで?チョコレートが欲しいの?」
「まさか(笑)カカオ豆があるかどうかもアヤしい時代なのに」

仲徳や玉羽も、終わった話のつもりだったが、………。

……。

…何日も経たない日、玉羽が後宮に招待された。

「許婚」の姉や実姉たちが後宮に居る、それも后妃たちの内での順位は高い方であり、
しかも玉羽自身は女で、まだ「真名」しか名乗っていない年齢となれば、後宮への出入りにも余り五月蝿(うるさ)い事は言われない。
元々、余り五月蝿い事を言わない皇帝だったが。

「あの…華琳お姉さま?何のお話でしょうか?」
華琳だけではない、美羽や麗羽まで揃(そろ)って、何故か微妙なホホエミを浮かべている。

「玉羽。「天の国」の2月には何か風習があるの?女に向って男が「おねだり」が出来る様な」
「(…バレているわね。やれやれ…)」

「『天の国』の暦での、2月14日は、女から男に贈り物をしても良い日という言い伝えがありました」
「それだけ?」
「『天の国』に居た頃の「御遣い」様の様な、若い男の子には重大事だったでしょう。
 つまりは、贈り物を貰えるような恋人が居る、居ないが。
 そんなこんなで騒いだりしたな、その程度の思い出話だった、はずです」

「ふぅん…それだけ?」
「それだけでしょう」
「それで、玉羽はどうだったの?」
「『天の国』に居た頃の彼には、ねだられた事もありましたが。今更」
「それは薄情ではありませんの?」上の姉が、急に割り込んできた。
「そうじゃ、そうじゃ」中の姉までが尻馬に乗る。
「でも「ここ」にはカカオもありませんし」

「なに?それ」華琳は、聴き慣れない単語の方に興味を持った様だ。
「『天の国』しかない豆の1種です。それを原料にした御菓子が、贈り物として普及していました」
「この国には無いの?」
「南蛮でも、おそらくは無理でしょう」
「そう…残念ね」ところが、華琳の眼力は玉羽の態度から、まだ何かあると見抜いた。流石は曹操。
「玉羽。貴女は、それ程、残念そうでもないわね」

相手は「乱世の奸雄」曹操だ。身近で見せ付けられて来た玉羽としては、無駄な抵抗はやめた。
「先程のチョコレートというお菓子は、むしろ恋人を求める女性が、意中の男性に告白する場合に贈ります」
「女から男へ?」華琳たちでも、儒教時代の女性の建前ぐらいは知っている。実行するかどうかは別だが。

「すでに相思相愛と成った恋人同士ならば、例えば、マフラーと言う物の方が喜ばれます」
「まふらあ?何じゃ?それは」?を頭に載せているのは、美羽だけではない。
「毛糸で編んだ、頚に巻く防寒具です。2月なら「天の国」の暦では、まだまだ寒いですから」
「そんな物で良いんですの?何処にでも有りそうですわよ」麗羽の感覚ならば、同然の疑問かも知れなかったが。
「『手編み』と言う処に、贈る側の心が籠(こ)められるのです」

何故か、それから数日の間の後宮では、編み物が流行した。

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2月14日の1ヶ月後は、3月14日である。

皇宮に相応しい厨房の片隅で、「天の御遣い」と、相談役の曹仲徳は2人だけで奮闘中だった。

こういう場合には、当てに成る援軍も「恋姫」たちの内にはいないことも無いが、今回だけは本末転倒だった。
現在、3月前半。

太陰暦2月半ばとなれば、そろそろ暖かい。
そんな時節に、何十本もの「マフラー」に埋まる羽目になった上に、今度は粉まみれに成って、クッキーに挑戦である。

太陰暦3月の陽気で、竈(かまど)を前にしての攻防戦は、料理人を尊敬したくなるものだった。

………。

……。

…。

…ポリポリ…
「どうやら、クッキーらしく成ったな」

カカオ豆の様な特殊な材料は必要としない。せいぜい砂糖の代わりに蜂蜜を使用するくらいだった。

「未だ「今の」“彼女”1人分なら、この分量程度だろうな」
挑戦、また挑戦の間に、思春期未満の1人分くらいは確保している。
玉羽1人分で良い曹仲徳としては、ここで撤退しても目的は果たした事に成るのだが、
「これも友情かな。やれやれ」

「天の御遣い」の方は、これから本格的なクッキーの大量生産が残っていた。



[6955] 胡蝶の夢
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/18 22:14
及川佑は、その晩、けっこう酔っ払って自室に戻って来た。
とは言え、すでに学園内の寮暮らしの高校生でもない。
受験勉強、就職活動を経過して、結婚活動の真っ最中である。
したがって、法律的にも収入的にも住環境からも、飲酒に問題は無い。

むしろ問題なのは?飲酒の理由だろうか。
元「お嬢様学校」の数少ない男子生徒仲間、その中で真っ先に結婚した裏切り者を罵りながら、傷をなめ合う席だった。
別名、結婚式の3次会。

現在、親元を離れて1人暮らしの自室に戻ると、酔い覚ましに冷蔵庫から取り出したPETをガブ飲みする。
ゲップと共に、体内の緊張が出て行く感覚がして、ふとセンチメンタルな感傷が戻って来る。

本来なら同席していた筈の1人の友人。
本日の花婿が、花嫁と成る少女と行動を共にするように成ってからの数ヶ月、仲間たちの中心に居た剣術青年。
しかし、謎の資料館荒らしと共に行方不明と成って……
「かずピー…一緒に、あの裏切り者を罵り倒したかったで…」

就職してからの数年、住み慣れた自室が、何故か急に遠く成って………。

……。

…ヒョロロロ~~

地平線までも続く黄色い平原のド真ん中に立ちつくしていた。黄砂交じりの風が吹き付けて来る。
「あかん。飲み過ぎた」すでに酔いも覚め果てていた。
頭を叩くまでも、ホッペをつまむまでも無い。風に混じって吹き付ける黄砂の感触だけでもリアル過ぎた。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

「…て」何時の間にか、朝の自室。
結婚式に立ち会った黒スーツに白ネクタイのまま、及川はひっくり返っていた。
「そうやろ。夢やろ」

ところが、リアルに自分の身体の上に乗っかっている代物に気が付いた。
「…竹簡…」

そして、夢(?)の記憶が戻ってきた。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

…リアル過ぎる黄砂の感触。
唖然としている背後から、突然に声がかけられた。
「うふ~ん」ゾクゾクとする声にはちがいない。
「だ…だれだ」
「このまんまTPDDで連れて帰ってあげるのは難しいとも限らないけどねん」
「……」
「ホームシックが治らないと、また同じ事が起きるかも知れないのよ。困ったご主人様」
「…だ…誰だ?…」
「アタシの事は、今は良いわん。規定事項の時には連れて帰ってあげる。それより、ほらん、お迎えよん」

黄砂を巻き上げて、馬に乗った何人かが近付いて来た。

「黄叙」そう名乗ったのは、中華の武将らしきコスプレ(?)をした紫色のロングストレートの少女。
有無を言わさず、騎馬隊の中央に用意して来た籠(かご)付きの車に及川を押し込んで連れて行かされた先は、
「紫禁城?」としか見えない。

そして『皇帝陛下』の御成りを待たされて………。

……。

…内容的には夢としか思えない。まして、非常識を信じないという意味でも、成人に成りかけている。
それに酔っていた。酔う前にアイツのことも考えた。
しかし、目の前に物証が有る。

「そうやった。かずピーから手紙を預かったんや」
その預かり物を前に、しばし考え込む。
「まあ、筆跡で分かる人たち宛ばっかりやな。心無い悪戯かどうかは」
誤解されて恨まれる位の危険は冒しても悪く無い気分だった。
その程度には友人だった。そして、何もしてやれなかったのだから。



[6955] 黄叙の成人
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/23 23:25
五虎大将軍の1人、黄忠の子である黄叙に付いての「正史」の記述は簡単である。

「若くして黄忠より先立ち、他の子も無かったため、家系は断絶した」

……      ……      ……      ……      ……

この”史実”の知識がある「天の御遣い」は、璃々に何かある度に、華佗とかを呼びつけたものだったが……

「良い加減にした方が良いんじゃ無いのか」とうとう、そんな事を言われだした。

「そもそも「正史」通りだったら、とっくに死んでいる筈の誰とか、かれとかがピンピンしているじゃないか」
「でも先生…それは、乱世のためで、言わば“殺された”人物たちです」
「そうかもな」
「俺が「天の御遣い」として、その歴史を改変したから生きていると言う事も。俺の思い上がりかも知れませんが」
「黄叙が夭折したのも、その乱世の中だろう。中国全土の戸籍人口が5000万から500万になる様な」
「それはそうですが」
「その4500万の1人だったんじゃないか。黄叙も。別に病死したとも「正史」には書いて無かったんだろう」
「全く不明です」
「あの子は健康だよ。むしろ、これ以上に過保護に育てたら、それこそ、ひ弱に育ちかねない」

………。

……。

…後年、といっても明治以前の日本でなら「元服」と言われただろう儀式が行われている。

真名、つまりは幼い日の間は1つだけだった名は璃々、今日よりは黄叙。「正史」には不詳だった字もしっかり名付けられた。

名付けたのは「天の御遣い」
生母の後宮入りに伴って、皇帝の義子と成っており、また主君でもある。他の「名付け」など存在しないだろう。

しっかりと健康に成長した「黄叙」は、帝都警備の武官職に、意気揚々と就任した。



[6955] Re:黄叙の成人~『雑談板』からインスパイアを受けさせて頂きました~
Name: きらら◆729e20ad ID:f9298a57
Date: 2010/12/03 21:26
Arcadiaメイン掲示板『雑談板[4712]【恋姫†無双シリーズ】璃々ちゃんの立場について』にて、楽しい議論に参加させて頂いている間に、
以前この短編集にて投稿させて頂きました「黄叙の成人」の続きを書いてみたく成ってしまいました。

勝手ながら、同スレッドのスレ主様ならびに投稿された皆様へ、厚く御礼を申し上げさせて頂きます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

黄忠(真名)紫苑の最初の子である黄叙(真名)璃々は成人を迎えた。
年齢的には丁度、年頃だったろう。
張飛(真名)鈴々とか袁術(真名)美羽とかが、益徳とかの字を名乗り始めた年頃からしても。

その途端、妙な言い方だが、縁談が来放題に成った。
まあ、求婚してくる側が何を計算しているか、が読み取れなくも無い。
義妹たちが幼過ぎるのだ。

皇帝に成った「天の御遣い」の実子の内、皇后でもある蜀王との長女、阿斗ですら、
ようやっと、黄叙の実母である紫苑が初めて現在の主君に仕えた、その当時の璃々ぐらいの幼女。
他の妹たちに至っては更に幼いか、下手をすれば赤子だ。
縁談など論外である。
少なくとも、父親である皇帝が「天の国」の恋愛認識を引きずっている限りでは。

一方で、阿斗をはじめとする、皇帝が実父で三国の王や黄忠よりも位の高い妃を生母にしている義妹たちと、
全く分け隔てなく「天の御遣い」の正式な養女も同然に育てられている。
実際、成人した黄叙に与えられた官職は「執金吾」だった。

後に後漢王朝の初代皇帝になる青年が、まだ無名の末端王族だった頃、こう公言して憧(あこが)れていたと伝えられる。
「仕官するなら執金吾。妻をめとらば(彼の初恋の人で後の第2代皇帝の母)」
この「執金吾」とはそれほど華やかな官職でもあり、大げさに言えば王朝の威信を示す官職でもあった。
帝都の巡察・警備を司る官であり、その「パトロール」はそのまま、帝国の威信を示す「パレード」でもあった。
その執金吾の「パトロール」が都の大路を「パレード」して行く、その執金吾が黄叙であること自体、
彼女が、皇帝でもある「天の御遣い」を父親として育てられた「娘」である事を、そのまま見せていた………。

……。

…ある日「天の御遣い」は、友人でもある相談相手の曹仲徳に、ハッキリ言って愚痴をこぼした。
「十常時の類は、何時の時代でも居るものですね」
皇帝と言う絶対権力者の心の弱点に付け込もうとする「小物」は、どんな名君の下でも後を絶たない。
そうした小物の1人が、さぞ手柄顔に密告して来たのである。
「黄叙将軍に縁談を持ち込んだ事がある者どもの間に、恐れ多い流言が流れております」
「流言?」
「はっ。恐れ多くも、陛下が御返答に消極的であられるのは、何れ黄叙将軍を後宮に御入れに成られる御積りだと」
皇帝は、怒るよりも呆れてしまった。

「それで?北郷はどういうつもりなんだ」
「先輩には聞かれたくないですね。ようやっと、玉羽ちゃんが袁望月を名乗る年頃に成ったばかりでしょう?」
「これとそれの話は別だぞ。彼女の中身は」
「(禁則事項)ですか。だけど、璃々ちゃんには中身も見かけも無いでしょう。俺は、あの子が7つの時から「父親」をして来たんです」
「あの娘本人は、どう想っているかな?まあ「天の国」にだって『源氏物語』もあるしな」
「光源氏は先輩と玉羽ちゃんの方でしょう」
結局、この時は、愚痴を聞いて貰っただけの結果に終わった。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

実の処、この時点での「天の御遣い」は、実母の紫苑には璃々目当ての縁談の大半に付いて話してもいない。
もっぱら、紫苑の旧友でもある厳顔(真名)桔梗を相談相手にしていた。
そういう態度も、またトンデモない流言飛語の発生源に成ってしまったのかも知れない。

曹仲徳には愚痴を聞いて貰っただけに終わった(それでも「天の国」の言葉で話せるだけでも貴重だった)結果、
今度は「天の御遣い」は、桔梗に相談を持ちかけた。
「ほう」
今までとは異なって、というのも、自分の産んだ小桔梗が未だ幼女(年の差母娘?失礼)のせいか、
今1つ璃々の縁談に対しては真剣味が少な目に見えていたのだが、今回は奇妙に真剣そうだった。

「お館様こそ、真面目に考えた事があるのか?幼くても女は女」
「桔梗にも覚えがあるの?」
「自分も娘を産んでみれば、あの頃の璃々の気持ちも紫苑の気持ちも分かったわい」

恋人の曹仲徳から聞いたのか、袁望月(真名)玉羽が、やっと役に立ちそうな(?)助言をしてくれた。
見た目は黄叙と大差の無い新進文官に見えても、中身は「天の国」での社会人経験まである(禁則事項)である。
「結局は、璃々ちゃん本人次第でしょう?彼女の幸せが大切なんじゃないの」

確かにその通りだった。



[6955] 荊州侵掠
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/23 23:25
後漢帝国の天下の南半分とも言える長江流域の内、中流に位置する「荊州」9郡。
その内で、更に南半分である長江より南の荊州南部4郡への劉備軍の侵掠は、
あくまで『演義』に於ける主人公陣営の視点からすれば、”痛快”ですらあった。

先ずは、4郡の中央に位置する零陵郡を総攻撃。
次いで、桂陽郡へ趙雲、武陵郡へ張飛、長沙郡へは関羽を派遣。
この内、多少とも手間取ったのは『五虎大将軍』の“4人目”に成る黄忠が抵抗した、長沙郡くらいだった。

そして『演義』は、いかにも、それぞれの武将らしい「エピソード」を、それぞれの攻略戦で描写している。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

零陵郡で待機する北郷一刀と桃香の処へ、桂陽郡へ派遣した星と雛里、武陵郡へ派遣した鈴々と朱里から、
相次いで勝利の報告があった。

これで残るは、“黄忠”が出て来る筈の長沙郡だけ。こちら側は戦力を集中できる。

一刀と桃香は、零陵に待機していた蜀軍の本隊を率いて、長沙攻略の援軍に出発。
桂陽と武陵へ派遣した部隊にも、長沙への再進撃を命令した。
ところが来て見ると、魏延こと焔耶の「返り忠義」もあって、長沙城は落ちていた。

………。

……。

…戦争の後は、戦後処理である。

生け捕りに成った4郡の太守たちが、桃香と「天の御遣い」に対面する事に成ったが、
その前に、一刀は「ある」事に気付いた。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

『原典』三国志演義。

桂陽郡太守の趙範は、趙雲が軽く1戦して軽く勝利してしまうと、もう戦意を消失した。
そして、桂陽城内に趙雲を招待して、せいぜい接待したのだが……

その席に美貌の未亡人で、自分の元兄嫁を同席させて、趙雲との縁談を申し入れた。
その余りにも媚び媚びの態度に、かえって趙雲の不快を買ってしまった。

結果は戦闘再開。無論だが趙雲に軽く撃破されて、縄目の恥を受けてしまった。

劉備の前に引き出された趙範は、
「自分は、玄徳様に抵抗する意思などありません。それどころか、趙将軍の関心を買おうとしたのに、逆に攻撃されたのです」
と訴えたものである。

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

変に気に成ってしまった「天の御遣い」は、星と一緒に桂陽から合流した雛里に、それと無く確かめてみようとしたのだが……

隣に桃香が居て聞きそびれている間に、星自身が趙範を引き出して来た。

「主殿。まったく、こやつは何を思っていたのやら。何処ぞの美少年らしきものを、それがしの閨に忍び込ませようと」
一刀の隣では、桃香が桃色に成っていた。
「この身も心も、捧げ尽くした御主君が在るものを」
「いえ、いいえ!私は、存じませんでした」趙範も、どう聞いたのやら。
「よもや「天の御遣い」様の御手付きであられたとは!」

「?俺には桃香が居るんだけれど?」
後の「種馬」からは信じ難いかも知れないが
「この」時点での一刀は、劉備こと桃香を「ただ1人の恋人」と認識していた。

「天の御遣い」こと北郷一刀は現代日本人である。
「恋愛結婚」が普通で「一夫一妻」が常識の世界から落ちて来た、大した恋愛経験も無い若者に過ぎなかった。
少なくとも「この」時点では。



[6955] 10年ループ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/02/27 08:52
予州潁川(えいせん)郡
「治世の能臣 乱世の姦雄」曹操が初陣を飾った土地でもある。

「黄巾の乱」当時、潁川郡で賊将波才の黄巾軍に苦戦していた、朱儁将軍の官軍を救援したのが曹操の初手柄だった。
それから10年……

「乱」以降、官僚に戻っていた曹操は「魔王」董卓が出現した時、実質的な軍を指揮していない朝廷の護衛武官だった。
したがって董卓を討つためには、先ず朝廷での官位を捨てて故郷に逃亡するしか無く、
すでに軍閥に成りかけていた「名門」袁紹を総帥に担ぎ出すしか無かった。

その上、故郷の曹夏侯1族の後援で旗上げした、なけなしの軍勢を返り討ちにされ、落ち延びた地方で出直す事になる。
やっと再起して拠点と勢力を確保した矢先、
「徐州大虐殺」の報いか、留守の拠点を預けていた旧友の信頼まで失い
「猛獣」呂布に荒らし回られて、またまた落ち延びる羽目に成った。

落ち延びた先が、10年近く前に初陣を飾った予州潁川郡。
その1帯に居座っていた黄巾の残党、実は西の青州から流れて来ていた難民が暴徒化していた問題の解決を、
潁川郡近辺の名士「グループ」から依頼されたのだ。

曹操は今度こそ拠点を確保した。
降参させた青州兵を屯田で自活させて兵力を確保、
潁川「名士グループ」荀彧・郭嘉・程昱らを軍師に、
周辺の村々を守っていた、許緒や典韋といった豪傑たちを武将に「スカウト」して、
潁川の郡城、許昌に拠点を確保した。

この時が、曹操の「魏」王国にとって真の“スタート”だった。
同じ潁川郡に初陣を飾ってから10年間の“ループ”が「乱世の姦雄」曹操にとっても『助走』だったのである。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

「…その10年のループを、もしかしたら、俺のせいでスルーしてしまったかも知れません」
曹仲徳は、膝の上の玉羽に語っていた。

「この」世界での姉である曹操(華琳)は、仲徳が「知っていた」歴史通りに、潁川郡での初陣に勝利すると、
そのまま郡太守に成ってしまった。

“姉”が潁川太守に成ってからの「驚愕」を共有できる相手に、ようやっと「再会」出来ていた。
「君には「歴史」をしゃべってしまった覚えがあるの?」
「具体的に「あの時」とまで確信出来ません。それでも、ループをスルーした事だけは分かってしまうんです」
玉羽にしか語れない、内心の疑惑だった………。

……。

…やがて、仲徳は自分が「天の御遣い」である事を姉に明かした。

「華琳姉さん。どうしても1度、聞いてみたかったんだ」
ある時、そう切り出してみた。
「俺は、この「空白の10年」といった事を姉さんにしゃべった事があった?」
「覚えてないわ。大体、あの頃の私は、自分の弟の「正体」すら知らなかったじゃない」
「そうだよな。じゃあ……」
「ただ…何故か桂花や稟と言うよりも、荀彧や郭嘉みたいな「潁川の名士」と仲良くすると喜んでいたわね」



[6955] クロス短編『ゼロの使い魔』続かない
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/04/22 22:08
アニメ『真・恋姫†無双』の前回のOP(歌:片霧烈火)を聴いていると『演義』の「関羽千里行」を連想しました。
その後で、こんな妄想を思い付いてしまいました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

『―クロス短編『ゼロの使い魔』続かない―』

「誰なの?あんた“たち”」
彼女「ゼロのルイズ」の目前に出現しているのは、
見慣れない服装と見慣れない武器(長い柄の付いた片刃の剣)と見慣れない黒い髪の美少女、
そして、その少女の足元で目を回してヒックリ返っている、これも見慣れない青い服装と黒髪の少年の「2人」

周囲を取り囲んだ同級生たちも、余りに非常識な(2人という)結果に、何時もの揶揄(やゆ)すら忘れた様だった。
その中で最初に起動したのは、流石に元軍人であり、教師としても又ちゃんとした責任感の持ち主だった、と言うべきか。
「ミス・ヴァリエール!コントラクト・サーヴァントを」
「でも!どちらと?」

その時、黒髪の少女の方が、1歩進み出た。
「これは貴公らの仕業か?」
このセリフに「貴族とは、かくあるべし」という建前に自尊を賭けているルイズは反発したが、
「炎蛇」の方は、経験が教えてくれた。「この」相手は危険だ。

「お待ちなさい、ミス。(黒髪の少女に向き直って)貴女は軍人、それも百戦錬磨の強者(つわもの)でしょう」
「ほう、分かるか」かすかに機嫌を直した様だが、
ここまでのやり取りを聞いていたルイズが有頂天(うちょうてん)に成ってしまった。

「すばらしいわ!こんな使い魔を引き当てるなんて!最初は『どうして平民?』なんて思ったのに!」
「使い魔?」
聞き咎(とが)める相手に気付かず、有頂天のままに「使い魔と言うものは……」などと並べ立て始めたが、
「ふざけるな!」最後まで言わせ無かった。

動態視力を超えた速度に、かえって1瞬、何をされたのか気が付かなかったが、
気が付けば、大刀の切っ先を眉間に突き付けられていた。
流石に、その瞬間には絶句、硬直したが、
元々、気を突っ張らせて来た彼女だ。しかも、相手は“平民で使い魔”だと思い込んでいる。

「何よ!ご主人様に無礼な」
「無礼なのはどちらだ!この関雲長!!この命を!この武を!そして、わが真名を捧げる御主君はすでにある!!!」
「!?!」
「私が「ご主人様」などと呼ぶのは、主君たる「天の御遣い」様のみ!」
「だ…誰って?」
「今、御1人、主君たる御方はあるが、それは「同年同月同日に死せん」との誓いを分かち合った姉上だ」
未だ、大刀を付き付けたまま、
「もし、もしもだ!姉上でも無く「天の御遣い」様でも無い何者であろうとも、私と御主君を引き裂こうとするならば…」
元軍人の「炎蛇」で無くとも感じられる程の明確な殺気を感じさせ、
「わが主君の敵だ!わが前に立ち塞がるな!!私が御主君の下に帰ろうとする道を邪魔するならば…」
風メイジかと疑わせんばかりの旋風と共に振りかぶり、
「斬る!!!」

始めて、野次馬(やじうま)どもが騒ぎ始めていた。
「何て物騒なのを召還したんだよ」「迷惑過ぎるぞ。いつもの爆発の方がマシじゃないか」

迷惑どころか「炎蛇」が観察する限り、これは「メイジ殺し」だ。
ドットやせいぜいラインメイジが数を頼んでかかっても、何人かは死ぬ。
それこそ、必死になって対策を考えていたが、状況を見渡して気付いた。

「ミス・ヴァリエール!もう1度、サモン・サーヴァントを」
「は…はい?…宇宙のどこかに……」

空中に鏡の様な魔方陣が出現した。その位置は、
未だ、目を回していた少年を間に挟んで、黒髪の「メイジ殺し」の反対側。
「そ…そうでしたか」何故かホッとする「炎蛇」

「どうやら、ミス・ヴァリエールが召還したのは、あちらの少年の方でしょう。こちらの軍人は、何かの事故に巻き込まれた様です」
「そう…なんですか」
「兎に角(とにかく)!コントラクト・サーヴァントを」

未だ、目を回したままの少年だったが、左手に「使い魔のルーン」が刻まれるショックで覚醒した。
「ここ…どこ?あんた…誰?」
平賀才人は、先ずは目の前のルイズに赤面し、それから周囲を見渡して、
「やっぱりアキバ?どこのコスプレ会場なんだ…」とかブツブツ言っていたが、
やがて関羽を見付けた。

「やっぱコスプレかコミケの会場だな。いやあ、それにしても似合っている。だからって、いくら似合っていても…」
誤解と言うものが、命に関わる場合が有るとは「平和ボケ」した現代日本の高校生は経験していない。
「他の作品の会場に入っちゃマズいだろ。ここは「ハリポタ」の会場じゃないの?「恋姫」じゃ無くってさ」
「今度は何だ。また訳の分からぬ事を」
「いや、そっくりだよ。愛紗ちゃん…わっひゃああ!?!」

主人公補正、恐るべきと言うべきか。さも無かったら、ルイズは召還のやり直しが出来ていたかも知れない………。

……。

…紆余曲折(うよきょくせつ)が在って、現在、関羽は宝物庫の前に居た。

兎に角、前代未聞の事態ではある。
1同が学園長の前に出頭して話し合った結果、ルイズと契約してしまった才人は兎も角、
関羽に対しては「送り返す方法を探してみる」と約束はした。
当然、才人は「自分も返せ」と主張したが、年の功で言い包(くる)められてしまった。
ルイズは、と言うと、
流石に、あんな危険物よりはマシで、この上に逃げられては堪(たま)らないとでも思ったか、
関羽に言いかけた内容よりは、少しばかりはマシな待遇をする事にした様だった。

さて、関羽雲長という武人は、敵や強い相手には容赦しないが、
弱者や「礼」や「義」をもって約束する相手には、自分もまた「礼」も「義」も守る。
そこで、警備の手伝いを申し出た。
正し、こういう相手はダマして利用したら、バレた時が余計に恐ろしい。
オスマン老人ほどの大ムジナが、その程度の経験値も無い筈も、無い筈だか?

「土くれのフーケ」にしてみれば、方針転換を検討する羽目に成っていた。
ただでさえ、てこずっていた宝物庫に「メイジ殺し」の番人まで、とは。
そこで立てた新方針とは、
「アンタはダマされている」と関羽に吹き込んで協力させる、と言うものだったが。
根っからの武人であっても『伏竜鳳雛』と『乱世の姦雄』のダマし合いを見続けていれば、学習位する。
結果は、大立ち回りだった。

「メイジ殺し」と見抜いた「炎蛇」は正解だった。
関羽の大刀は、怪盗の巨大ゴーレム相手に、負けを見せない。
おまけに、騒ぎに成れば当然だが、野次馬が駆け付けて来る。
その野次馬の中に「神の左手」と未覚製ながら「虚無の爆発」が混じっていた。
これだけ誤算の上に誤算が重なっては、もはや“チェックメイト”だった………。

……。

…とりあえずフーケを監禁しておいて、さて事後処理のため、1同は学園長室に集合していた。

「ところで、あのコソ泥は、何を狙ったんだ?」話の合間に、そんな疑問を提出した誰かが居た。
「『破壊の杖』と『世界扉の銅鏡』らしいの」
「?銅鏡?」関羽が何故か反応した。
「どうかしたかの」
「もしや…以前、ご主人様から、うかがった…老師、その鏡を見せて欲しい」

ここで関羽を怒らせては、流石に恐ろしいオスマン老人は、鏡を持って来させた。
実のところ『恋姫』というゲームのある「世界」から来た才人にも、何と無く見覚えがある様な鏡。

その鏡を手中で捏(こ)ね繰り回していた関羽だったが、
何かの拍子に、窓から差し込む双月が、鏡面に写った。
突然、鏡の中の虚像の双月が、天空の実像を無視する如く動き出し、
互いに接近した瞬間、鏡が眩(まぶ)しい白光を発し始めた。

「な…何だよ、この光」
「おお!これは」関羽は白光の中に何かを見付けていた。
「ご主人様…姉上…鈴々…みんな。私の…私の帰るべきところが…」

1瞬、白光に視界が眩(くら)んで、次の瞬間には関羽の姿は無く、
そして、2つに割れた鏡だけが残っていた。

「そんな。・・・コンチキショー!」
割れた鏡の片割れを拾い上げた才人は、
事態を悟ると、がっくりと膝を付き、恥も外聞も無く泣き始めた。

消える直前の関羽の歓喜。そして、いま失望の中で泣き続ける才人。
その姿に、ルイズですら、
「貴族とは平民に対して、あるいはメイジは使い魔に対して、かくあるべし」と思い込んでいた彼女にすら、
どれ程、才人に対して残酷な事をしてしまったか、という事実を付き付けていた。

そして、少しだけ気付いていたかも知れない。
そんな建前よりも、目の前の少年の方が大切だと。

関羽が消えてから後、少しだけルイズは、才人に優しく成った………。

……。

…数年後、ふと関羽の事を、ルイズは回想していた。
すっかり重くなった身体を才人に預(あず)けて甘えながら。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

この短編は、これから後は続きません。
正し、才人とルイズは、少しだけ仲良く成っているかも知れません。



[6955] 阿斗ちゃんは天の落とし子
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/04/02 23:40
アニメ新シリーズ〜乙女大乱〜第一席を見て、今さら思い付きました。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

『髀肉之嘆』
流浪の傭兵隊長のまま、しばしの平穏の中に居た劉備は、
ある時、馬に跨(またが)って戦場に居れば、付かない筈の場所に贅(ぜい)肉が付いている事に気が付いてしまった。
この故事から「野心や志を遂げる好機を見失った嘆き」を意味する成語が出来た。
「三顧の礼」からは少し以前の頃である。


††恋姫無双演義††講釈の38『成都爛漫(せいとらんまん)』~阿斗ちゃんは天の落とし子~
の頃の事………

……。

…ぷにぷに…

「どうかしましたか?ご主人様」
すっかり大きくなった桃香の「お腹」を撫(な)でていた筈の北郷一刀は、つい気が付いた別な場所に触ってしまった。

「脾肉って、この辺りじゃなかったかな」
「え?」

「いや、馬に乗って戦っていれば、付かない筈の肉だよな」
「そうですけれど?」少し考えこんで…
「そう言えば…ご主人様に乗馬をお教えするのも、しばらくしていないですね。…的盧(てきろ)の事とかは、今は好い思い出ですけれど…」
「いや、今の桃香の体だったら、馬なんか論外だよ。それに…」
「それに…」
「今の蜀が平和だって意味なんだよな」

今1つ一刀の言っている意味が理解できない桃香だったが、
「阿斗ちゃんが生まれたら、また乗馬の練習をするのも好いでしょうね。ご主人様。今度は3人で」
それこそ「天の国」なら“天使”とでも呼ばれそうな笑顔。
「そうだな」つられて微笑んでしまう「天の御遣い」だった。
「阿斗ちゃんにも教えてあげましょうね」

「(…そういえば…)」今度は桃香に気付かれない様に、密かに一刀は考えた。
「(…“正史”の「髀肉之嘆」も、阿斗が生まれた頃だったな。だけど…)」
こんなふうにも考える。
「(…“この”桃香は、このまま脾肉を付けたままでもいいんじゃないか。 今更、曹操や孫呉と争わなくても…)」


*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

(没ネタ)

††恋姫無双演義††講釈の7『黄巾は滅ぶも蒼天すでに死す 皇宮は迷走して帝都は乱れる』

……以下自粛……

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*


直接には、お互いに無関係な話ですが、もう1つ今回の放送で思い付いてしまいました。
「お猫様モフモフ」は、もう孫呉に仕官しているでしょうか?
そうは言っても、彼女は比較的良識派の筈ですから、取り越し苦労だと好いのですが。



[6955] オムニバス・超短編の寄せ鍋(その2)支離滅裂
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/04/07 21:37
「天の落とし子」達の中でも、北郷一刀と桃香の最初の子である阿斗は、妹たちより数年の年長だった。
その理由は「天の御遣い」が、“後宮”などと言う制度の無い「天の国」から落ちて来た、普通の若者だったから。

その結果、阿斗が人格形成期を迎える頃に、次々と妹が生まれる事に成った。
そのため、良くも悪くも「長女属性」というべき成長をした阿斗だった。
義理の姉である璃々は居たが、阿斗の人格形成に関係する限り、年長の従姉か若い叔母の様な影響だった様である。

ある時、SD桃香の様な阿斗が、泣きながら両親を探して来た事があった。
「またか」
実の処「この」原因で阿斗が泣く事は、少ない事も無かった。
では何の原因かと言うと、妹同士のケンカ、
正し、大勢の姉妹が同居して居れば、普通の家庭で何時でも起きる様な他愛も無い姉妹ゲンカに過ぎない。
その度に、妹たちを止めようとして、自分が泣いてしまう阿斗だった。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

「正史」『三国志』の筆者は、劉備の後継者である劉禅(幼名阿斗)に仕官したことがある。
その旧主に対する評価は、
「白い糸。ただ染まるだけ」名君となるも愚王となるも臣下次第。まったく普通の素直な人。
あるいは、太平の治世には、相応しい君主だったかも知れない。

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今朝もまた帝都の皇宮に、出勤をうながす太鼓が鳴りわたる。
「天の御遣い」と恋姫たちも、ゾロゾロと出勤して行った。
何時もの日常である。

後漢王朝以来の帝都である洛陽の城内には、“官邸”であり“公邸”である「南宮」と“後宮”である「北宮」が、
隣り合う事も無く並存していた。
無論だが、政務を執(と)るためには「北宮」から「南宮」へと出勤する事に成る。
そのため、皇帝専用の復道(上下2段式道路または上段の高架式通路)が
2つの宮殿が最も近付く隅の城壁同士を連絡していた。
当然、下段の公道を往来する下々に皇帝の姿を見られない様、両側の壁と屋根をそなえた「屋内回廊」に成っている。

そして「今上」の治世の特徴は「北宮」の后妃たちが、文官武将の高官でもある事。
それで天下太平なのが、この時代の特徴だった。
そんな訳で「天の御遣い」と恋姫たちは「北宮」から復道を通って「南宮」へと、ゾロゾロ通勤する日々だった。

『玉座の間』本来、帝国で只1ヶ所、帝都の皇宮にだけ存在が許される場所。
その室内の御前から、階段の下の広場まで、それぞれの官位の上下に従って官吏が整列した。早い話が「朝礼」である。
「朝廷」とか「王朝」とかに“朝”の漢字が入っている所以(ゆえん)だ。
“にわ”を意味する字が入っているのは、大部分の下級官吏は広場に整列するから。

当然ながら『玉座の間』に上がるのは、皇帝に直属する高官たちである。
その高官の大半が「北宮」から皇帝と出勤して来るというのは、やはり特徴のある時代だった………。

……。

…その日も落ち始めて、退出を合図する銅鑼(どら)が鳴らされた。
当直とか残業とかの理由がある者だけを残して、官吏たちも市内の自宅へと戻って行く。
「天の御遣い」と恋姫たちも、復道を帰り始めた。

とはいえ、たまには市内に出て、寄り道しながら帰りたいとも思ってしまう。
「せめて、復道の出入口辺りにコンビニとかファーストフードとかないかな」
周囲の恋姫たちが、急に出てきた「天の国」の言葉に(?)を浮かべていた。

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『演義』では主人公である劉備の母は、当然の様に「賢母」として語られる。
では史実はどうか?などとは「外史」ではヤボだろうか。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

蜀に拠点を確保した劉備陣営は、益州以外の故郷から家族を呼び寄せたりした。
桃香の母にしてみれば、住み慣れた幽州を離れて、それも天下の東北の端から反対の西南の端まで引っ越す事に成るのだが、
それでも「靖王伝家」の使命に恥じ無かった娘をほめてくれた………。

……。

…実のところ、現在は居てくれて頼母(たのも)しい。
主君である桃香が身重なのだ。おまけに同志たちの中でも、経験があるのは紫苑くらい。
桃香本人を生んだ人の存在は、それこそ「天(?)の助け」の様なものだった。

おまけに天下のほぼ中央にある許昌から蜀の成都まで、この時代としては大旅行を、
ちょうど悪阻(つわり)の時期の直前にする羽目に成ったのだから。
名医華佗の訪問ともまた別に、桃香本人を生んだ人が成都に居てくれた事は、大切な事だった。

…北郷一刀の知る「正史」では、劉備の母は、孫にあたる阿斗に対面していない。
しかし「この」外史では異なっていた…

桃香が陣痛を訴えた時、傍に居たのが当然だった一刀を筆頭に、成都城中がパニックに成りかけたが、
その“ぱにっく”を収拾したのは、紫苑と「天の落とし子」の祖母だった。

こうして「天の落とし子」は、北斗の空から成都の地上に遣って来た。両親と仲間たちと祖母に祝福されて。

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現代の動物愛護からは批難されるだろうが、古代より中国人は狗(いぬ)を食べてきた。
と言うより、漢王朝の時代に豚の品種改良が行われるまでは牛・羊・狗の順で、豚や鶏より格上の食肉とされていた。
余談だが、正式の『宴会』とも成れば、牛を儀式で捧げ物にした後「スープ」にする。
そんなわけで、犬の野生種である狼を狩猟対象にする意味も、例えば羊を守るとかだけでも無かっただろう。

「漢末三国」の時代は、豚肉が改良されて狗を抜いた頃だった。
「筵(むしろ)を織り履(くつ)を売っていた」没落王族だった劉備が、行商の帰りに「張家肉店」(張飛の実家)とかで買っていた肉としては、
案外と狗とかが手頃だったりしたかも知れない。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

「桃香お姉ちゃん、筵や草鞋(わらじ)が無くなっているのだ」
「うん。今日は久し振りに、いいお肉が買えそうなんだ」
「だったら、すごく美味しい赤犬の肉があるのだ」

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孫呉陣営の1人呂蒙は、若き日には「脳まで筋肉」タイプの武将だったが、
出陣や任地での統治の間に勉学を重ねて、
ついには、かつての「脳筋」を馬鹿にしていた同僚を感嘆させた。
「もはや昔の「呉下阿蒙(無理やり訳すると「呉のお馬鹿ちゃん」)」では無くなった」などと言わせたのだ。

「士は三日会わずば刮目して(目を見開いて)見よ」とは、この時の呂蒙の言である。

この故事から、逆に進歩の無い例えに「呉下阿蒙」
そして、努力して成果を出した人を「士は三日会わずば刮目して見よ」と讃える成語が出来た。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

さて、この「外史」の亞莎もまた、お勉強家である。

「…三日会わずば…」の故事成語を「天の御遣い」が思い出したのは、
例によって桂花に「脳筋」と言われてキレた春蘭を秋蘭と押さえている時だった。

「そうか。亞莎(すでにそう呼び合う間柄(あいだがら)強引にしても)と三日の間、勉強すれば好いのだな」
今度は引き止める暇も無かった。
「三日も持つかしら」むしろ桂花も今は心配そうだ。
現在「北宮」で共に生活し(桂花としては不本意?)「南宮」に文官同士として出仕しているのだから、
どれだけ亞莎が勉強家なのかは、桂花も認めている。

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帝都のある洛中盆地は真夏を迎えていた。
その季節をわざわざ選択して、南からの客人が帝都を訪問していた。
南蛮王孟獲の1行である。
正式の用件としては、南蛮王の「金印紫綬」を、あらためて皇帝の手から受ける事だった。

役儀上からも案内してきたのは、益州刺史の黄権である。

黄権(霧花)は、孟獲(美以)たちを宿舎に落ち着かせると、城内の某所に足を向けた。
霧花には「前世記憶」がある。その「記憶」の最後の場所だった………。

……。

…吉日を選択し、皇宮『玉座の間』では、皇帝と南蛮王の対面が行われた。

「これがしゅくにゅうにゃのにゃー」
『演義』では孟獲夫人の祝融(しゅくゆう)は、どうやら「この」外史では娘らしい。
今回の対面には、祝融を南蛮の次期王として認めてもらうための「お披露目」の意味も有った。

問題は、いくら「この」世界の「チート」女性たちでも母親だけでは娘は生めない、と言う事である。

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皇帝とは、帝国の政治に関する限り、全ての権力を1人で持っている。
それだけに、臣下に任せるべき仕事は任せないと、
「天秤に竹簡を乗せて、その日の仕事分を計量する」などと言う笑い話を後世に残したりする。

「天の御遣い」は優秀な部下を信頼する主君であり、時と場合によっては「丸投げ」でもするのだが、
本来の性質として真面目である事もあって「天秤に竹簡」の危険は日常的に存在した。

そんな某日、所管の官吏から提出された1通の人事案に、とある「正史」を連想させられた。
「兗(えん)州陳留郡の太守である張孟卓に対して、現職と兼任のまま、朝廷における名誉職を併せあたえる」

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

北郷一刀の知る「正史」における張孟卓は、曹操や袁紹が「花嫁泥棒」なんかをしでかした頃からの親友だった。
その縁もあったか、袁紹や曹操が「反董卓連合」を起こした時、治めていた陳留を連合軍の集結地としている。
更に、董卓軍に返り討ちにされた曹操が出直すための勢力圏としたのが、張孟卓の居る陳留が在る兗州だった。

これだけの縁があったからだろう、曹操が父親の復讐のために徐州へと出陣する時には、残して行く家族に対して
「自分に“もしも”の事があった場合は孟卓を頼れ」と言い残した。

だが、徐州大虐殺の報いか、曹操は留守の拠点を預けていた旧友の信頼を失ってしまった。
張孟卓と軍師陳宮は、涼州軍の残党を率いて落ち延びて来ていた、猛獣呂布を引き込んで挙兵したのだ。

勢力圏を失った曹操を迎え入れたのが、10年近く前に初陣を飾った予州潁川郡の名士、荀文若たちだった。
潁川郡の許昌に今度こそ拠点を確保した曹操は、旧友たちに反撃を開始。
呂布と陳宮は、劉備が譲(ゆず)られて治めていた徐州へと追い払われた。

そして、曹操と張孟卓の友情は、最悪のDeadEndを迎えた。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

しかし、この「外史」の華琳には「天の国」から転生した弟がいた。
同じ潁川郡での初陣から、許昌に拠点を確保するまでの「10年ループ」はスルーされ「徐州大虐殺」も止められた。

したがって、張孟卓は兗州陳留郡の太守のままだった………。

……。

…竹簡を見付けた「天の御遣い」は、担当の官吏に確認した。当人は帝都に出頭して来ている。
「それから、華琳と麗羽は休憩する余裕があるかな?」

広い皇宮の庭の隅にある亭。
そこにささやかな飲茶の席が設けられ、華琳と麗羽に「天の御遣い」そして、張孟卓が同席していた。

「それで、例の『花嫁泥棒』の時は、孟卓はどうしていたの?」
「私の役目は証言でした。問題の刻限には両名と共に酒席に居たと」
「成程「アリバイ」か」



[6955] 超短編の寄せ鍋(その3)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/04/24 22:21
「原作」『真・恋姫†無双』シリーズ(新作)のオフィシャルサイトにて、原作者がおっしゃるには、
「腹黒くない女の子なんてこの世にいません!まぁ一番女の子らしい女の子ですよ、桃香は」
だそうです。

『-お揃(そろ)い-』

「頼む!これを着てくれ」
北郷一刀に「それ」を突き付けられた時、桃香は阿斗の育児中だった。
「あの、ご主人様?これは何でしょうか」
「『聖フランチェスカ学園』の制服なんだ。レプリカだけど」
「“れぷりか”?それに“ふらんちぇすか”って」

兎に角(とにかく)土下座せんばかりの一刀に聖母の如く微笑んで、受け取った服に着替えた桃香を、
一刀は自分の隣、姿身の前に引っ張って行って、何やら感動しつつ、泣いたり笑ったり忙しい。

「やっぱり、桃香が1番似合うよ。うん、うん。1番桃香が女の子らしんだ」
女として、悪く聞こえる言い方でも無い。少なくとも「現在」みたいな仲の男から言われれば。

「そ、そうだ。このままデート行かないか。」
「え?」
それでも阿斗を乳母に預けて、街中に出ようとしたが、
誘った一刀の方が、何やら細かい注文を出しながら悩み始めた。
「すまん。誘っておいて悪いけれど「ダブルデート」じゃ悪いか?」
「“だぶるでーと”?」可愛く首をかしげた。
「先輩と玉羽ちゃんを誘っても好いか?どうやら、その方がムードが出そうなんだ」

一刀の言い分を、どこまで理解していた桃香だったかは知らないが、
それでも、しっかり楽しんだ様には見えた。
少なくとも「ご主人様」を楽しませる事で自分も楽しむ事は、しっかり出来ていたらしい。

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今更ですが、アニメ~乙女大乱~第二席からの小ネタです。

『-白羽扇-』

「原典」『三国志演義』での諸葛孔明の「お約束」スタイルと言えば「4輪車」に「白羽扇」である。

荊州襄陽城内。水鏡女学院。
門内と玄関の間の前庭で、師弟は別れを惜しんでいた。
「三顧の礼」に応(こた)えて「伏竜鳳雛」は今、師母の手元から飛び立とうとしていた。

「さあ、もう、お行(ゆ)きなさい。貴女たちの選んだ御主君が待っていますよ」
愛弟子を抱き締めていた腕を解くと、朱里と雛里は大きく頭を振って1礼し、門外へと歩き出した。
門前に「4輪車」を用意して、桃香たちが待っていた。その車に乗り込む。
車の側に歩み寄った水鏡先生は、手に持っていた白羽の羽毛扇を1つずつ手渡した。
「持ってお行きなさい。「これ」を使う意味を、決して忘れない貴女たちだから」
白羽扇を抱き締めて「伏竜鳳雛」ほどの秀才が何の言葉も作り出せ無かった………。

……。

…襄陽と双子都市の間を流れる漢水を渡渉した「連絡船」を降りて、今1度、対岸を振り返る。
流石に長江本流には及ばない。対岸が見えた。未だ、名残惜しげに手を振る師母と姉妹弟子たちも。

今1度、白羽扇を大きく振り返して4輪車に乗り込む。
「「水鏡先生―。行って来ま―す」」
4輪は回転し始めた。歴史と共に。同志たちと進む道へと。

やっぱり「三顧の礼」は、「原典」『三国志演義』での名場面です。
未熟者が何度書いても書き足りません。

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『-初恋回想-』

北郷一刀が通っていた『聖フランチェスカ学園』について「恋姫」たちは、
「天の国」にある「水鏡女学院」の様なものと理解していた。
問題は「当時」の一刀の状況が「現状」と大して変わって無い様に伝わっている、かも知れない事だった。
特に、男女比とかで。

「俺は剣道ばかりしていたよ」
時々、それでは納得してくれないが、
「だけど、俺自身の記憶だと、桃香より前に恋愛した記憶なんか無いんだけどな」
何故か遠くを見るような顔をした。
「我ながら情け無いよな。あの状況で、あんなにモテ無かったんだから」
「(…笑えないよな、及川とかも。結局、モテていたのは章仁くらいか…)」

「「それでは、本当にご主人様の初恋は桃香様なのですか?」」
どうしてか?本人以上に「そこ」に拘(こだわ)る何人か。
本人は、と言うと、桃色に成って意味不明な身悶(みもだ)えをしている。
いや、何とか聞き取れる科白は口から出ているのだが、
「…初恋同士…」やっぱり意味が分からない。
そんな両親を見つめる阿斗は、思いっ切り無邪気そうだった。

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『-先祖がえり?-』

劉備玄徳と言う歴史人物について『三国志演義』の描く様な“偽善者(?)”とは別の「正体」とかを論ずると、
何故か、祖先であると劉備本人が主張していた劉邦、漢帝国の初代皇帝の人物像に近付いてしまう。

その劉邦の若き日、田舎のケチな侠客だった頃。
行きつけの居酒屋などでは、無銭飲食の常習だった。
しかし、劉邦がホラを吹いていると「劉兄貴」の弟分とかが集まってきて、何時の間にか満員御礼に成っている。
結局の処は劉邦1人分の無銭飲食より、余っ程、儲かってしまうのだった。

「流石は桃香お姉ちゃんの御先祖さまなのだ」

張飛の実家は、劉備と同郷の肉屋(居酒屋兼業)だった。

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『-安車蒲輪(あんしゃほりん)-』

始皇帝陵から出土した銅馬車に見られる様な皇帝専用車は「安車」とも呼ばれ、
蒲(かば)の穂で作られた「タイヤ」が付けられていた。
このことから、帝王が賢者や老人を「礼」をもって迎える例えの1つに「安車蒲輪」も使われた。

孫呉の魯粛と、主君である孫権は「安車蒲輪で迎えよう(孫権が帝王に成った時は)」と約束したと伝えられる。

ある時「天の御遣い」は、蓮華との睦言(むつごと)に交えて「安車蒲輪」の件を持ち出してみた。
「貴方の車には、子敬は乗らないわよ。自分で筋を立てて、筋を通す性質(たち)なんだから」

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以下の小ネタに関しましては、投稿名RrrrRrr様の『江東に揺れる稲穂の海』の中の
華琳父娘のエピソードに、微妙に引っかかるかも知れません。
幸いにして『★3次創作について』等、ご寛容な表明をされております。
勝手ながらRrrrRrr様の寛容な御方針に甘えさせて頂くと共に、
『江東に揺れる稲穂の海』に支援のエールを送らせて頂きます。

『-大長秋-』

後漢王朝、4代の皇帝と後宮の后妃たちに仕えた曹騰は、ついに「後宮長官」とも言うべき「大長秋」にまで昇進した。
その曹騰が仕えた歴代の皇后の中には「贈り物は紙と墨に限る」と公言して、賢夫人と讃えられた人も居た。
やはり宦官で、皇宮内の「備品工場」の監督職だった蔡倫が、紙を発明したと伝えられる頃である。

さて、帝都「北宮」が「天の御遣い」の後宮として実質を伴う様になると、当然ながら、
大長秋以下の仕える側の組織や、その組織のための人材も必要になる。
とは言え、十常時とかの記憶も新しい「天の御遣い」たちは、それなりに頭を悩ました。

先ず「天の国」には居なかったから、と言う理由で宦官は無用とされた。
更に、曹騰(この「外史」では、華彬の祖母で真名華恋)の1時的ながら、大長秋への復帰が要請された。

そんな、ひと頃のある時、ふとした雑談のついでに「天の御遣い」は華恋に訊(たず)ねてみた。
蔡倫についての思い出話である。

「ああ。それからだけど。もう1つ、お願い出来ないかな。朱里や真桜も、この話を喜ぶと思うよ」
当然(?)蔡倫が就(つ)いていた職の現職は、真桜だった。

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『-?が来る来る-』

「三国」の内の魏と呉の戦いは、少なくとも「正史」では、『赤壁』で呉が勝利して終わら無かった。
その後も、何度も勝ったり敗れたりを繰り返した。
特に、魏の張遼が活躍した「合肥の戦い」では、見事に「赤壁」の仇を討ったと言って好い。

呉王の孫権すら殺されかけ、以後、張遼を恐れた。
呉では母親が「遼来々」と子供を叱る、と言う伝説まで出来た、と伝えられる。

「…だからと言って、“今”の蓮華は霞を怖がらないよな?」
「?」
「(…「この外史」は『赤壁』で決着がついたんだから…)」
「『天の国』の話がどうかは分から無いけれど、子布のじいやの方が、余っ程、恐ろしいわよ」

張昭こそ、孫策そして孫権を補佐した孫呉の老臣の筆頭だろう。
「赤壁」の前に降伏を進言してしまったため『演義』でこそ、孔明に論じ伏せられる役を振られてはいるが、
孫策が突然に倒れた後、未だ涙する孫権を叱咤して、主君を継承させたのは張昭だ。

その後も、決して完璧な主君とも言い切れない孫権が迷走する度に、張昭に叱られて自分を取り戻していた。

「そうだったな、じゃあ…蓮華が酔っ払ったら「張昭来々」の呪文が効くかな」

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改めまして、投稿名たつ様の『恋姫†遊記 ~ドキッ☆美少女だらけの西遊記!?~』に
支援のエールを送らせて頂きます

『-誰のための強さ-』

天下13州の内、北西に当たる涼州出身者たちとの雑談の中で「天の御遣い」は、
その涼州の更に西北の境に位置する「両界五行山」の魔王についで言及した。
正し「この」時代、中国に仏教は伝わっていない。
そのため、蒲公英たちは三蔵法師の事を、道士か何かとでも誤解した可能性があったが…

「面白いわね」偶々(たまたま)居合わせた華琳が興味を持った。
何処に興味を持ったのか? 愛紗と桃香に、代わる代わる視線を向けていた。
「美しく無いわね。「両界山」の魔王とやらは。誤解しないで…」
華琳は続けた。
「“今”の封印されている魔王は美しくないの。何のため以前に、誰のための強さか意味の無い力の持ち主」
ここで華琳は、恐ろしく魅力的な微笑をした。
「(…確か…あの笑顔…)」
北郷一刀は「英雄ただ2人」のエピソードを連想した。

「でも、ご主人様の予言した『西遊記』とやらの孫悟空は美しいわ。三蔵とやらが本当に正しいかじゃ無いの」
ふさふさと金髪を振って、
「力に意味があるのが美しいの」

「うーん…関係が有るか、分からないけれど…」あえて一刀は口を挟んだ。
「俺が「向こう側」で剣道をやっていた時に聞いた話なんだが。『神の手』と言われた武道家が弟子に言った言葉らしい」

『力無き正義も虚しい。正義無き力も虚しい』
「その通りよ」
大きく頷(いて)いて華琳は、愛紗と桃香を振り返った。
「私が“関羽”を欲しがる程、愛紗が美しかったのは、自分のためだけの強さじゃ無かったから」
恐ろしく可愛らしい笑顔で続ける。
「私は危うく、美しく無くしてしまうところだったわ」

確かに、関羽雲長が最も美しかったのは「千里行」の時だったろう。

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アニメ版~乙女大乱~第三席は「士は三日会わずば刮目して見よ」のエピソードでした。

『-三日会わずば-』

「天の御遣い」が興味を持っても、彼の優しさから聞こうとしない過去の1つが、
「呉下阿蒙」時代の亞莎の事だった。

ところが、ある時、亞莎の方から蓮華に学問を勧められた頃の話を始めてしまった。
一刀のつもりとしては、眼鏡が似合っている事を褒(ほ)めただけの筈だったのだが。

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『-大長秋(その2)-』

後宮の運営で不可欠な事項の1つが、寵愛の当番を割り振る事だ。真面目な話で。
まして「天の御遣い」の後宮は、毎晩の寵愛が2人組とか3人組に成るのが普通だった。

そうなると「後宮長官」とも言うべき大長秋が、皇后に次ぐNo.2の貴妃や、他に複数の孫娘を後宮入りさせている祖母、
というのは、十常時時代の悪夢に繋(つな)がる危険が在った。本人たちの悪意、善意に関係無く。

そのため華恋は、後宮運営のKnowHow伝授に専念し、
「当番」の方は、后妃たち当人の話し合いに任せる事に成ったのだが。

古代中国の官吏は「洗沐(沐浴して髪を洗う)」と言う名目で、5日交代の休日を取る。
何時の間にか「髪を洗う」順番の官吏が異常に少なくなる日が、月に1度か2度、発生する様に成った。
と言うのも、官吏たちの自衛策である。
何せ「この日」は、上官たちが「最重要会議」だったから。

後世で言う処の「休日シフト」を偏在させてまで「会議中」の上官の分まで、仕事を片付けていたのだ。
曹仲徳とか司馬仲達とかの「やれやれ」が聞こえそうである。



[6955] その時代の家族
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/05/04 16:32
最近、1つずつでは短編にも成ら無い小ネタを寄せ集めた投稿に片寄っております。
ひたすら、作者の妄想力の不足に他なりません。
そうした不足を自覚しつつも、時には長編や中編の様に何話か続くものには届かずとも、
せめて短編として1話分には成っているものを書きたいとは想いました。

今回の短編に登場するオリジナルキャラは「天の御遣い」でも「転生者」でもありません。
完全に††恋姫無双演義††の「世界」に生まれ育った人です。
『銀河英雄伝説』曰く、
「時は移り、所は変われど、人類の営みには何ら変わることはない」
です。

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後漢帝国の地方制度は、州>郡>県>郷>里の順だったが、
郡の太守が皇帝に直属していて、州ごとに任命された刺史は元々は監察官だった。
管轄の州に置かれた郡の太守たちについて、皇帝に報告するのが本来の任務だったのだ。

ところが「三国」の英雄たちは、州牧という地位に就任している。
行政実務と治安維持で郡太守たちの上官。天下13州の1つに実効支配を公認しかねない。
中央政府が地方までの安全を保証出来なく成った結果であり「軍閥」に名分を与えるもの、と言うのが実情だった。

当然ながら、天下太平を回復してしまえば、州牧への「丸投げ」から刺史による監察制度に戻るのが原則でもあるが、
新たな帝国を建設中の王朝初期の間はCase-by-Caseも、また在り得たりした。

例えば、長江下流周辺の揚州6郡の刺史は「呉王国相」と兼任だった。
皇帝から正式に封建された藩王国の名目と引き換えに、呉王の当人は、
皇后・貴妃に次ぐ“淑妃”として帝都皇宮に行ってしまった。それも、呉王を継承する姉妹ともども。
その留守を預(あず)かる形式で、同時に揚州刺史の職を兼ねていた。

その職を預かるのは、孫呉の老臣筆頭にして江東の名士を代表する張昭、で異論は無用だった。

その張昭だが、刺史として揚州6郡の監察報告を作成していた。
次の仕事としては、使者の人選である。張昭は軍師の魯粛と相談した。
何せ、周瑜・呂蒙・陸遜といった軍師たちが、呉王姉妹ともども後宮入りしてしまったのだ。
こうなると「留守」を預かる張昭にとっては、魯粛が軍師として貴重だった。
結論から言うと、使者には諸葛瑾、字は子瑜が選ばれた………。

……。

…上京した諸葛子瑜は先ず「公私の公」の用件を済ませようとした。
そのため「南宮」へと参上して、刺史から預かった監察報告を済ませた。
それから「北宮」へと通る許可を待った。建前として後宮である。

后妃たちの中に居る旧知に対して、ご機嫌を伺(うかが)う予定だったのだが。
旧知と言うのは、孫呉関係者の他、実妹に水鏡門下の兄妹弟子である。
「はわわわ~それは兄さんでは無くってロバでしゅ~」
「この酒が美味し過ぎるのよう…流石は『九蒕春酒法』ねえ」
淑妃(呉王)が貴妃(魏王)に、自分の妹の罪をなすりつけるな。

内心で思う。
「(…お変わりに成られ無いな。こと“酒”が絡(から)むと、何時もの雪蓮さまと蓮華さまが逆に御成りだ…)」
無論、外に出して不敬罪に問われる程、考え無しでも無かった………。

……。

…やっと「公私の私」つまり兄妹だけの歓談に成っていた。
正し「ここ」は後宮で、妹も后妃の1人だから、見張りの女官が目立たぬ様に控えていたが。後漢時代であれば宦官だった。

「実は兄さん」しばらく雑談した後で、妹が切り出した。
「朱花から手紙が来ているんでしゅ」
諸葛瑾、諸葛亮、諸葛均は3人兄妹である。
「兄さん?お嫁さんはやっぱり江東で探すんですか」
「そのつもりだった…いや、俺の子供の代まで「呉」に仕える覚悟で、孫家に仕えて来たんだが」

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

諸葛兄妹が生まれたのは、徐州琅邪郡である。
下の妹の朱花が生まれた後、両親が亡くなり、叔母の諸葛玄に引き取られた。
諸葛玄が荊州の劉表に仕官したため、劉表が拠点としていた荊州襄陽城で育った。

その後、成長した朱里と朱花は、襄陽の名士である水鏡先生に入門する。
兄の子瑜は、と言うと「女学院」だから妹たちの様に住み込むまでは出来ず、
叔母の屋敷から通って、師母に学んだ。

やがて世は乱れて行く。
郡太守を勤めていた叔母の諸葛玄が戦死したため、子瑜も仕官先を探していたのだが、
丁度その頃「天の御遣い」の予言を聞いた朱里たちが、女学院からの出奔未遂を起こして、兄と師母に説得されたりした………。

……。

…間も無く、子瑜は孫呉に仕官する。
長江流域の名士同士のつながりから孫呉陣営を支える江東の名士に師母の推薦を受けたのだった。

江東へ向かう時、1度は朱花を連れて行った子瑜だった。
朱里より幼い下の妹の面倒を自分で見るつもりだったが「黄巾の乱」以後、益々世は乱れていく。
更に『三顧の礼』の件を師母たちから伝えられて、朱花をもう1度「女学院」に預ける決断をした。

乱世、非常の世には、非常の愛情も在り得た。
兄妹の誰かが生き残るためには、あえてバラバラに生きる事も。
まして、中の妹が選択した人生は、兄としては危険極まる様に見えた。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

幸いにして、兄妹3人が欠ける事も無く、天下は太平と成った。
「その意味では『天の御遣い』様には感謝するしか無いが、兄妹の感情だけは、どうしようも無いな」

結果としては、諸葛子瑜の苦悩や決断は、家族の問題に関係する限りは空振りに終わった。
今更、孫呉に「根を下ろす」ために、江東の名士からの縁談を受ける必要も小さい。
妹たちと別れて暮らす意味も、帝都や江東以外の土地への赴任を避ける理由も、強くは無くなった。

未だ、朱花は水鏡女学院に学んでいるが、江東や帝都に引き取って危険も無い。
子瑜の官職が、公式にも未だ「旧」呉の地方官と言うのも、惰性といえば惰性だ。
張昭や、その「相棒」と言って好かった張紘の様な江東の名士とは、また立場も地縁も異なる。
「その」地縁欲しさに結婚するまでも無い。
それでも“地元”で「縁」が出来て家庭を持つなら、それも好いだろう、
位の感じだった。

そうは言っても、今更、師母や末妹の紹介で恋愛するのも、また今更な感じもする。
「まあ、そのうち結婚はするさ。何のかんのと言っても、妹に先を越されたのは確かだからな」

かすかに顔を朱に染めた妹の身体が、何となく丸みを帯びて来た、
そんな気がしたのは気のせいだっただろうか。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

荊州襄陽城内、水鏡女学院。
水鏡先生の様な「この」時代の名士たちの情報力は、なまじっかITとかの在る後世の人間には
かえって想像以上だったりする。

それだけに、朱花にとって兄姉、とくに姉の活躍についての情報は、精神的に複合体を発生する可能性が在った。

そんな朱花も、朱花の人生を歩もうとしていた。また師母も歩ませようとしていた。
例え平凡でも、太平の治世に相応しい。そして朱花らしい人生を。



[6955] 小ネタの拾い話(追加有)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/05/08 23:45
あいも変わらず、小ネタばかりを思い付いて居りますが、
サブタイトルだけでも気分を変えてみました。

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「天の御遣い」は皇帝としての後宮生活に、物心ついた頃から慣れている訳でも無い。
その事も有って、普段は経験豊富な“大長秋”を信頼していたのだが、
ある時、問い合わせてみた。

「華恋さん。「北宮」の人手は大丈夫なの?」
「何とか成っては居りまする」
「だったら…税金を無駄に使うのは論外だけど、仕事が有って、不足している人手の補充なら認めるよ」
そつなく1礼して退出すると、さて、皇帝の意志を実務化した。つもりだったのだが………。

……。

…伝手をたどって募集してみれば、
「何を感ちがいしたのやら」
人から世話された経験しか無さそうな名家の箱入り娘とか、
祟(たた)っている邪教の神への貢ぎ物みたいにガタガタ震えて居たりとか。

「主上の御困りに成られた笑い顔は、恐れ多くも可愛かったな」
後宮を取り仕切る“大長秋”の1人言としては、不敬なのか貫禄なのか微妙な発言だった。
大長秋としての華恋にしてみれば、実は大真面目な話なのだが。
「まあ、この程度の不測の事態なんぞ、昔も何とかしたわ」

今度こそ、誤解も十戒(?)も無い様に募集したつもりだったが。
そうして遣って来たメイドたち、あくまで純粋な意味でのメイドだが、
彼女たちが見分したり関係したりした「後宮の小ばなし」は、また別の講釈である。

※ 設定と致しましては『真・恋姫†無双』公式キャラは後宮入りさせて、他では無体な事はしていない、と言う設定のつもりです。

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以下の話は「原典」『三国志演義』に存在しながら、軽率にも没ネタにしてしまったエピソードです。

「離せ―えぇなのだ―!!」ジタバタ、バタジタ。
「こんなヤワな牢屋なんか、ぶっ壊してやるのだ。お姉ちゃんの先生が大変なのだ―」
とは言え、鈴々の首根っ子をブラ下げている愛紗の方も、もう片手の大刀がブルブル震えている。
かくも桃園の姉妹たちを、何が激怒させたかと言えば……

後漢王朝に仕える正統の官僚と自他ともに認める盧植だったが、朝廷に巣食う宦官どもに逆らって失脚した。
故郷の幽州涿(たく)郡に戻って私塾を開いていたが「黄巾の乱」が起こると、将軍として呼び戻された。

こうして、黄巾「賊」を追跡しながら戦っていた処へ、とある義勇軍が駆け付けて来た。
「先生!お久し振りです」「桃香か。いや劉玄徳と呼ぶべきかな」ところが………。

……。

…視察に遣って来た宦官の「謎々(なぞなぞ)」を黙殺した。確信犯的に。
結果、盧植は檻付の馬車に乗せられて帝都に呼び戻され、鈴々はジタバタしている。
「伏竜鳳雛」ですら、何の知恵も出ない。

ポロポロと涙を落す桃香に、北郷一刀は言葉を向けた。
「大丈夫だよ。桃香。こんな見え透いた罪には、いくら何でも落せないよ」
「天の御遣い」だけが言える言葉だった………。

……。

…無実の罪は、帝都に戻って晴れた。
それでも、将軍に戻すには、宦官たちも面子があった?
結局、帝都で文官として復帰した盧植は、自分の代わりに弟子の1人で地方軍閥の公孫賛を推薦した。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

その頃、劉備の義勇軍は…。
「交代の将軍は、并州刺史の董卓らしいでしゅ」
「伏竜鳳雛」の軍師力は、水鏡先生から繋(つな)がる「名士ネットワーク」の情報力にもある。

朱里と雛里の報告を聞いて「天の御遣い」は
「やっぱりな」と思った。
当然ながら「盧植事件」の次のエピソードも思い出していた。
「この戦場からは転進した方が好いだろうな」後で思い出して後悔したりする。
かくて、義勇軍は流浪した。

転戦する間に、新しい情報を入手した。
「盧植将軍は、弟子の公孫賛太守を推薦しました」
「白蓮ちゃん?」
「それは真名ですか?そうか…姉上の姉妹弟子に当りますな」
「白蓮ちゃんが盧植先生の仇を討つんだったら、お手伝いに行きたいな。だけど、みんなは?」
反対意見は出なかった。
「あの?ご主人様は、どうでしょうか」「公孫賛で無難だろうな」
かくて、義勇軍は、公孫軍に合流する。

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政治家としての曹操は、実父よりも、その父親を養子にした血の繋(つな)がらない祖父からの「遺伝」が指摘される。
科学的には「ホモ・サピエンス」という種属は、DNAよりもケタちがいの情報を、神経回路に書き込める様に進化している。
曹氏の家族で論じるような、人の資質・個性・才能・性格・内面と言ったものは遺伝ではなく、学習するものなのだ。
幼少の曹操の脳と心が創り上げられた時、育てる責任者は祖父だった。

「大ムジナ」祖母の華恋に対する、曹仲徳の評価は1言に尽(つ)きる。
もっとも、中世以前の中国での孝行教育ならば受けている。
恋人の玉羽と「天の御遣い」
要は「天の国」の価値観を共有している相手にしか、明かしては無い。

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(注)最低R15ネタです。年齢的に微妙です。

「父親が居なければ、娘は生めない」
そういう訳で、時には好奇心を持ったりする。そんな、ある時の雑談。
「祭は孫堅の代からの、呉の将だったよな」「如何にも」
「雪蓮や蓮華、シャオの『お父さん』を知っているよね」

「あれは、水蓮様と海賊退治をしておった頃の事じゃったな…」少しだけ遠い目をした。
「さる江東の名士の息子が誘拐されての。救出を請け負ったのじゃが」

「ありそうな話だね」

「いやあ、斬りまくったぞ」
とにかく海賊どもを斬りまくって、太湖(長江下流に近い湖)の蝦(えび)と仲良くさせてやったわい。
斬りまくって、生き残った海賊どもが降参して。
さて、真っ赤に成った甲板で、人質だった御坊ちゃまは目を回しておった。
それを助け起こした水蓮様だったが、流石に斬り過ぎたかの、虎が得物を前に尻尾を振る様な笑顔をされての。
「まあ、いい男だったのは確かじゃったが」

「…何となく…想像出来そうだな」
「そしての、雪連どのが生まれたわ」

※ 雪蓮(大)で想像しました。

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宦官が存在する意味は、後宮は皇帝以外は男子禁制が建前だから。
それが何処まで厳密(げんみつ)か、について細かい事を議論したら切りが無いが、
そうした建前のため、後漢時代は「北宮」の警備まで宦官だった。
宦官でありながら武器を持ち、兵士としての訓練を受けたりしたりした。

新しい皇帝は「宦官は無用」とした。
そして「半分は外なんだから、門番の兵士まで宦官か女性兵士にする必要も無いだろう」
という理由で「南宮」と同様の男性兵士を「北宮」の各門に配置した。
もっとも「当時」の後宮に対して警備を必要にする様な、命知らずも居なかったかも知れないが。

1度だけ、曹仲徳が「やれやれ」と言って来た事が有った。
「俺が執金吾を務めていた頃の『3人娘』が、警備の仕事を取り上げられた、と抗議して来たんだ」

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(注)度々ですが、最低R15ネタです。年齢的に微妙です。

華恋は、大長秋としての職務を、テキパキと勤めていた。
と、そこへ何故かヨレヨレに成った部下が報告に来た。
「最重要会議」の書記役をさせていた女官だった。

「貴妃様が娣々様を御誘いに成られまして…」

「天の御遣い」の後宮は、毎晩の寵愛が2人組とか3人組に成るのが普通だった。
とは言え「こういう事」でもあるから、大体の「組」は何時の間にか固定されていた。
只「会議」の度に、異なる相手に誘いをかけるのが居て、それが皇后に告ぐ貴妃だ、
と言うのが、時々「会議」を長引かせた。

とは言え、華恋“お祖母さま”が「この」問題に介入したら「外戚」だ。
「それで娣々様は?」

古代より中国の上の方の階級は多妻だった。また家同士の縁を重視したりする。
そのため、第1夫人が嫁ぐ時、第2夫人や第3夫人を連れて来る場合を意味する漢字とか、
それが同じ家の妹や姪だったりした場合を意味する漢字とかが、それぞれ存在したりした。
この女官も、第1夫人である皇后が「お姉ちゃん」とか「姉上」とか呼ばせている女性が、后妃の内に居た場合の呼び方をした。

「黒髪を逆立てられまして、まるで将軍としての場合の御様子で」
そこへ、もう1人、書記役をさせていた女官が報告に来た。
「皇后様が貴妃様を御説得なされました。淑妃様も御加勢なされまして」
「それでは「会議」は進行し始めたのか」
「はい」

説得の詳細までは問わなかった。
「ならば、早く『当番表』を仕上げて来い。早速(さっそく)今宵(こよい)の準備が間に合わんぞ」

同時刻「南宮」では、
皇帝が、天秤に竹簡を乗せていた。

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『三国志演義』での役柄は、軍師孔明の陰に消えるモブ文官の扱いだが、
簡雍(かんよう)字は憲和は、劉備の最も古い幼友達だった。
張飛も同郷だが未だ生まれていない、まして関羽以下は巡り会っていない劉備の子供時代を、簡雍だけが知っていた。
桃園の3兄弟が4兄弟であっても不思議でも無い。
それどころか「桃園」当時の劉備たちは「名士」簡雍の伝手で用心棒家業をしていた様なものだった。

劉備が蜀の帝王と成っても、簡雍だけは、幼友達の付き合い方を変えなかった。
まして、孔明以下の「その後」に参加した「新参」たちには、気安い態度に終始した。
それでも、誰にも憎まれ無かった、と「正史」に書かれる愛嬌の持ち主だった。その意味では、如何にも劉備の古い友達らしい。

古代中国の官吏は「洗沐(沐浴して髪を洗う)」と言う名目で、5日交代の休日を取っていた。
その「洗沐」が明けて、さて簡雍が出仕すると、皇帝から何気無しに聞かれたことが有った。
「桃香の子供の頃の事なんだけれど」
「『天の御遣い』様でも御存知無い事が御有りですか」

「いくらでも有るよ。例えば、白蓮と学友に成る前の本当に子供時代とか、そんな事は簡雍しか知らないだろう」
「他愛も無い普通の女の子でしか有りませんでした。この『雍ちゃん』の知る桃香は」

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「華恋どの。貴女の様な老大に「娣々様」などと呼ばれると…」
黒髪の先端がゾワゾワする感触が、中々抜け切れ無い愛紗である。

もっとも相手は、4代の皇帝に仕えて、何の問題もなかった「大ムジナ」である。ソツが無い。
「今の貴女様に対しては、こちらは仕える立場でございます。それに、お呼びの仕方には、皇后様との御関係もございます」

“娣”とは、後宮が在る時代の中国で王族ともなれば、同じ家の姉妹での輿入れも有り得た。その場合に使う漢字だ。
実の処「現在」の後宮では、姉妹同士の后妃たちは他にもいるし、愛紗当人よりも順序の高い姉妹も居る。
流石に「元」国主を、天下太平と引き換えに後宮入りさせた、と成れば。
それでも「元」国主とかを除けは、愛紗の順序は高い方なのだが。
結局の処、愛紗の「娣々様」には(義理姉妹にしろ)皇后を長姉とする3姉妹の次妹と言う立場が表れていた。

「その様な、言っていたら切りの無い事よりも、いか用か?」
「おトボケに成りなさいますな。貴女様は只の将軍では、もはや無く、そして「ここ」は後宮にございます」
「な(汗)」
「恐れ多くも、主上の御目を楽しまなされるのも后妃様方の御役目。我々の御奉公」
「な、何を着せるつもりか知らないが、わたしなんぞに似合う筈が無かろう!他に何人でも似合う誰かが…」
「その様な、本当に勿体(もったい)無い事をおっしゃる御方に、ご自分の美しさに目覚めて戴(いただ)くのも御奉公に、ございます」

“こすぷれ”を覚悟しながら、やっぱり「大ムジナ」が華琳(大)に見えた。



[6955] 恋姫の世界よ、ようこそ!
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/08 21:11
最近、様々の作者が書かれたSSの中で、
『三国志』に限らず『真・恋姫†無双』と言う「美少女ゲーム」が存在している「現実」世界からトリップして来たり、転生したりした、
と言う設定の作品に良作が目立つように成って来ました。
無謀な妄想ながら、そうした様々の良作からインスパイアを受けた何かを書きたい、
とは想ってみました。

そんな時に発見したのが、ファミ通文庫(『恋姫』小説版と同じ文庫)から刊行されている
『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』と言うライトノベルです。
「あなたの世界を変えてみませんか?」等と言うアヤしいメールに応答すると、
現実世界が、ギャルゲーの設定通りに改変されてしまう、
と言うトンデモ無いシステムを前提にした、ちょっと切ないLoveStoryでした。

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誰かが起こしには来なかった。そうだろう。
しょせん、起こしに来てくれる幼馴染も、潜り込んで来る妹も居ない。筈だった。
(…こんな事を考えるのもアレのせいだな…)
前夜、寝る直前に発見した、スパムとしか考えられないフザケたメール。
「あなたの世界を変えてみませんか?」

何の釣りか、それとも詐欺かと思いながら、
適当なギャルゲーの適当な2次創作を指定して適当に設定して送信した。
ついでに「バーロー」とでも付け加えてやるか、と思って流石に大人気無いと思った。
その程度のつもりだった。前夜は。
それでも何とか、自力で目を覚ましてみると「お約束」通り(?)知らない天井だった………。

……。

…内側から見ても、如何にも急ごしらえのプレハブ造りの1室。しかし、内装は普通の男子高校生の自室に見える。
しばらく、寝起きのポケッとした気分でいたが、しかし夢から醒(さ)めて来る気配もしない。
やっと起動した脳の何処かで、ケイタイの事を思い出して、登録してあるアドレスの1つを呼び出した。

「もしもし…叔母さん?朝早くからゴメン」
「どうしたの?」
「ゴメン。寝ボケているらしくて、記憶がハッキリしないんだ」
「ちょっと!もしかして風邪?熱は無いの?身体は痛くない?」
「そんなんじゃないと思う。ただ、頭がボケているだけなんだけど。それで、確認したいんだけど、俺の両親は仕事で外国に行っているよね?」
電話の向こう側では、まだ心配そうだ。

「そして、俺は今、日本で1人暮らしをしている?」
「その通りよ」
「それでなんだけど…」ここで少し躊躇(ためら)った。
「俺は前の家に、1人だけ残った、と言う事は無いよね?」
「何を言っているのよ?やっぱり…」

「(少しばかりアワてて)大丈夫だよ。熱なんか無いから。ええと、叔母さんは「自分」の所で1緒に暮らしても好い、と言ってくれたんだよね?」
「そうよ。やっぱり、そうした方が好かったんじゃ無いの?」
「だから、大丈夫だよ。それで、結局はどういう結論に成ったの?」

「前の家は売り払ったわ。どうせ、ローンが残っている訳でも無いし、何年も向こうにいる事に成るし」
「それで」
「帰ってから、分譲マンションとか買える位は向こうで稼いでくるつもりだったみたいだし、でも、あなたは高校進学の直前だったから」
「そうだったね。それで、俺は日本に残って高校に通う事にしたんだ」
「そうよ。幸い全寮制の高校に受かったから」
「もしかして、その学校って?」ここで前夜に選択したギャルゲー、その「原作」に思い当たった。
「聖フランチェスカ学園」

「そうよ。本当に大丈夫?やっぱり…」
「だから大丈夫だよ。やっと目も覚めて来たから。朝っパラから本当にゴメン」

実のところ、登校時間が迫っていた。
急いで制服「恋姫」世界で言う処の「天の衣」に着替え、まだ片付けていなかった寮の食堂で朝食を詰め込んだ。

寮の外に飛び出したところで、道順に自信が無い事に気付く。しかし、前方には、まだ何人も自分と同じ学生服姿が居た。
その1人に追いついた時、デジャヴが在った。「原作」では「お約束」で、顔が隠れがちだったが。
「北郷一刀?」相手が同学年か、先輩かすら覚えていない。
「どうした」向こうは、こちらの名前を正確に呼び返して来た。
「まだ、目が覚め切らないか?急ごうぜ」

北郷と1緒に成って走りながら、果たして前夜は、どう設定したかを思い出そうとした。
やっぱり、かなり適当に設定した様だ。しかし、どうも「主人公」と言う設定はした記憶は無いか。
(…だったらモブキャラはモブらしく、巻き込まれ無い様に大人しくして…)
そう思えたのも、校舎に近付いて、その側の女子寮にも近付くまでだった。
女子寮の前で、明らかに北郷を待っている1団の女子生徒を見て、思わずSpeedDownしていた。

「北郷、ちょっと好いか?」自然に声が低くなる。
「何だ?もう余り時間が無いぞ」
「もしかしなくても、あれは桃香ちゃんに華琳ちゃんと雪蓮ちゃんだよな」
「お前?何時そんなに親しくなった(周囲を見回して)春蘭とか愛紗とかが聞いていたら面倒だったぞ」
「す…すまん。ともかく、おジャマ虫は先に行くわ」返事も待たずにSpeedUpしていた。

(…ど、どうせ、北郷とは別クラスだよな?男子は1クラス1人の設定の筈…)もう必死に考える。
(…せ…せめて我がクラスとかだけは、何事も有りません様に…それと、剣道部なんかは、死んでも入らんぞ!)



[6955] 目指せ?ワールドカップ??
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/27 12:57
FIFAワールドカップの時事ネタと、
「チラシの裏SS投稿掲示板」に投稿されていました、投稿名: 男玉様の『【ネタ】超甲子園【野球漫画多重クロス】』より
インスパイアを受けました。

勝手ながら、男玉様には支援のエールを遅らせて頂きます。

同時に、遅ればせながら、日本代表を応援いたします。

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俺は高校サッカー部員だ。

夢は、あくまで夢だが、FIFAワールドカップだ。

夢だとは分っている。
それでも、何年か前のワールドカップに感動して少年サッカーチームに入団して以来、中学・高校とサッカーをやって来た。
とりあえずの目標は、高校全国大会。チームメイトと1丸と成って、燃えていた。


そんな俺たちの、次の対戦相手は
「聞いた事の無い学校だな」
「なんでも、つい最近まで「お嬢様学校」だったらしい」
「つまり、やっと男子が11人集まったってのか?」
それとも話が別だった。

何故か、今期の地方予選から、全国高等学校体育連盟と日本サッカー協会の規約が変更された。
性別での差別が無くなったのだ。
したがって、ルール上に限れば、男子部員が11人いない高校でも公式戦に出場可能と成った。
だからって、サッカーみたいな激しいスポーツ。それも、高校生にまで成れば男女の差は大きい。
そんな無理をしてまで、出場してくる高校が有るとは、思っても居無かった。
ところが…

「聖フランチェスカ学園」
近年まで、それこそ「お嬢様学校」として有名だった。
今だって、男子生徒は1クラスに1名くらいしか居無いらしい。
「それ何のギャルゲー?」
実際、サッカー部にしても何と男子部員はわずか1名。それも剣道部と掛け持ちらしい。
そんなチームが、とても初出場とは思えない快進撃、いや爆走している?
んなアホな。


試合は始まろうとしている。
スタンドを埋める、如何にも「お嬢様学校」らしい、お淑(しと)やかな制服姿。
これまた、如何にも「そういう学校」らしい、華やか極まるチアリーダー。
そして、整列した相手チーム。
本当に女の子ばかり。
それも、試合前に交換したメンバー表だと、
何故か『三国志』からパクった、としか思えない名前が、
いっそ気の毒な位、可愛い娘ばかり。

だが、油断するな。
これまでの試合結果からすると、本当に「名前通り」のメンバーを、
タイムマシンか何かで連れて来た様な爆走ぶりだった?
実の処、目の前の可愛い娘たちと、その結果が結び付か無かった。
だが、それもキックオフまでだった。

「ケガだけは注意して下さい」
相手チーム唯1の男子部員。ゴールキーパーでもある相手主将が言ったセリフ。
その時は、カチンと来ただけだった。だが……

攻撃的ミッドフィールダー関羽のキックオフ、フォワード張飛が走り出して、
結果はオフサイドに成っていた。
中間を省略したわけでは無い。
こちら側の10人が反応する余裕も、走り込むヒマも無しに、
この2人だけで、ゴールキーパーの目前まで突破されて居たのだ。

シュート出来無かった事を本気で悔しがって居る張飛を、関羽が宥(なだ)めて居た。
「次はガンバレー」なんて、天然ぶりながら応援して居る、桃色の正統的に可愛いチアリーダー。
向こう側のゴールで苦笑いして居る、北郷とか本条とか言った相手主将の言った意味が理解出来た。

……ワールドカップの夢舞台が、急に遠く感じられた。



[6955] 乙女大乱
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/05/22 14:44
アニメ版~乙女大乱~を見直したりしている間に、思い付いたり思い出したりした小ネタを拾い集めてみました。

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~乙女大乱~第八席より

南蛮は暑い。
「この世に寒いところが在るなんて事、忘れちゃいそうだね」
高い山の上は寒い。
「実は私たち、遭難し“そうなん”です」
中国は広い。南蛮もまた、少なくとも中国と国境を接している。

「うーん。どちらから食べようかな?」
「天の御遣い」は悩んでいた。
目の前には、南蛮から蜀を経由して届けられた「トロピカルフルーツ」と、長城沿いの遊牧地帯から届いた乳製品が並んでいた。

こういう、贅沢な悩みで悩めるのも「天下太平」だからと、言わば言えたが、
献上品を受け取る皇帝としては、極言すれば外交問題(?)でもあった。

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~乙女大乱~第五席より

※ 麗羽「姉さま」の膝に美羽ちゃんが乗っていると、やっぱり「姉妹」にしか見えません。お似合いです。

黄河を南北に挟(はさ)んで対峙する、曹操軍と袁紹軍。
出陣した軍を見送った後、袁紹勢力の拠点では盟主の前で軍議が続いていた。

仲国皇帝の夢破れて亡命して来て以来、麗羽は美羽を手元から離さない。純粋に妹が可愛いのだろうが、
斗詩とか、軍師の誰それとかにしてみれば、未だ油断は出来ない七乃辺りへの人質を意識していたのか。
どちらにせよ、今日の軍議でも、上座では妹を膝に乗せていた。

そこへ、前線から急報が届いた。
「白馬津にて両軍衝突」
当然、軍議の場が色めき立つ。だが、何故か伝令は、続きを躊躇(ためら)った。

催促されて、伝令は続ける。
「曹魏軍の中から、蜀の関羽が、呂布の乗っていた馬に乗って現れました」
「有り得るだろうな。曹魏と蜀の連合軍が呂布軍を破ったのは、この前だ」軍議の座の誰かが納得する様に言う。
「そして…あの関羽が、あれだけの名馬に乗れば、あれほど恐るべき者とは…」
「苦戦でもしたと言うんですの。斗詩さんと猪々子さんが揃っていて」
「それが、関羽が強過ぎ、その上、乗っている馬が速過ぎました」

遠まわしな言い方に少しばかり、いら立ち初めて
「はっきりと、おっしゃいまし」
「は!何とか、関羽めに討ち取られ無い様に持ち堪(こた)えていたのですが、そこへ張遼めの騎兵が追い付き…周囲を取り囲まれて…」
「はっきり!おっしゃい」
「捕虜に成られました」
「そんな?そんな―!(思わずギューッ)」「ね?姉さま、苦し―い!」

……何時もは黙殺されている軍議の場に、急に呼び出されてみれば
「七乃。そなたに何か有ったらと思うと、姉さまの気持ちも分る。何か策は無いかの?」
「何か在りませんの?この際、綺麗(きれい)汚いは問いませんわ」

「捕えたのは関羽ですね」「それがどうした」袁紹派閥の誰かが茶々を入れた。
「関羽の主君は、あくまでも劉備です。そして、劉備に対してならば、有効な人質が居た筈です」
数瞬の間、七乃の言った意味を考えた末、誰かが反論した。
「馬鹿な事を。公孫賛1人で、顔良・文醜の2人と交換だと。関羽は兎も角、曹操だぞ」
「私でしたら、交渉してみますが」「貴様は本初様の臣下では無いだろうが!」
「私の御主君は、姉君様の御膝の上、裏切る心配は無用です」

…数瞬の間、沈黙…
「そ、そうですわ。公孫賛さんを連れてらっしゃい!」

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~乙女大乱~第七席より

大長秋に就任した華恋は、当然ながら「北宮」内の物品を把握しようとした。
そうなると、どうしても、恋姫たちが持ち込んだ「私物」についても1応は確認する事に成る。

その中に、孫呉の黄蓋(真名祭)が持ち込んだ、年代物の酒が有った。
「それでは、これは淑妃様が御誕生に成られた時に、記念に仕込まれたものでございますか」
「そうじゃ。儂(わし)にも、水蓮様みたいに子が授かった時に開けようと思ってな」
「それでは、もうしばらく保管する必要がございますね」
「それは、儂では、もう遅いという意味かの」

「トンデモございません」大ムジナの微笑。
「しばらくと申し上げました。妊娠・授乳の時期には、嗜(たしな)む程度以上は、自粛して頂くべきですから」
「そう言えば、水蓮様もそうじゃったな」
「ですから、それだけ先のお楽しみ、と言う事に成りまする」
出産経験の有る年長者に、子供のためと言われては、反論の仕様が無かった………。

……。

…数年後、解禁の時が来て、
「「「乾杯!」」」
祭本人の他に、雪蓮や「天の御遣い」たちが揃って、乾杯で祝った。

その時、娘の少祭の方は、異母姉妹たちと並んで大人しく眠っていた。

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~乙女大乱~第六席より

南蛮王孟獲は、すでに数回、孔明の罠に落ちていた。
それでも、1発挽回を願って、兀突骨の率いる南蛮の同盟部族を呼び寄せた。

兀突骨の軍の特長は、その甲にある。蜀の刃金の武器に耐え、しかも水に浮く。
この特長と、川の流れる戦場を選択した地理を活かして、蜀軍を悩ました。
だが「水に強いものは火に弱い」と見破った孔明の火責めに、あえなく全滅。
余りの惨状に、孔明も後悔すらした、とも伝えられる。

「…と言っても」北郷一刀は「天の御遣い」としての予言をしたものの、
「朱里みたいに優しい娘に、そんな後悔はさせたくないな」
「だ、大丈夫でしゅ。ご主人様」

「川を使って奇襲して来ると分っていれば、その川をせき止めて置けば好いんでしゅ」
「それに、水に浮くという事は、せきを切った時に流されやすいという事でしゅ」
「水に浮く甲なら、溺れる危険は少ないです。だから、火攻めよりは助かる兵士も多く成るでしょう」

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~乙女大乱~第四席より

※ 競馬シーンで何故かモンゴル風でした。そこから思い付きました。

イギリスや日本でこそ競馬はギャンブルだが、草原の騎馬の民の国モンゴルでは、子供の成長を願う伝統競技だった。
現代に例えれば、むしろ野球のリトルリーグやサッカーのユースの様なものだろうか。
それは、祖先からの伝統であり、おそらく「三国」の頃でも「草原の騎馬の民」
例えば涼州などは同様な文化を維持していた可能性が少なくは無かった。
その場合『三国志』の登場人物でも涼州出身者、例えば馬超・馬岱・董卓・呂布・張遼…とかは、
そうした文化の中で育っていた可能性が有った。

何時の間にか、帝都の郊外に造られていた「競馬場」
スタートを待つ、草原風の乗馬スタイルの「子供」たち。
一方、見守る母親たちも、それぞれに個性的だった。

落馬でもしないかと、娘よりも自分の方がハラハラしている月。
側で見ている詠にしてみれば、となりに座らせている自分の娘と2人分の面倒を見ている気分だった。

同様(?)なのが、恋の側の音々音母娘。
恋本人はと言えば、分る人には分かる位、無言のまま何時に増してモグモグが激しい。

某「虎」球団の“フーリガン”よりは、いくら何でも上品(?)な霞。

負けず劣らず熱狂している翠。

突っ込むよりは、流石に娘に集中している蒲公英。

そして白蓮。長城の向こう側の騎馬の民相手に「白馬長史」の名も高かった。当然、この場合も引け無かった。

“スターター”役の桔梗が、スタート用の牙門旗を振り上げる。
そして、“ゴール”を指し示す様に、振り下ろした。

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~乙女大乱~第八席より2つ目

虎すらニラミ返して追い払う。
流石は、見た目は鈴々でも、中身は張飛。
もしかして『長坂』でも「こんな」顔だった?

「顔が戻らなく成ったのだ」
少しばかり困惑する鈴々。
「怖い顔のまんまだったら、阿斗ちゃんを泣かせそうなのだ」
ようやっと曹魏軍を振り切って、漢水を下る船団の上である。
「そんなこと無いよ。鈴々ちゃん」

星から返還された我が娘を、母性あふれた胸に抱き取って「お姉ちゃん」は微笑(ほほえ)みを向けて来た。
「星ちゃんだけじゃ無くって、鈴々ちゃんにも守ってもらったって、絶対この娘だって分かっているもの」
その1言に、思わず「ニパーッ」としてしまった。

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~乙女大乱~第八席(次回予告)より~蛇足~

次回(第九席)予告の、何進大将軍ならぬ「何進ちゃん?」を見て「解毒よりも固定化」とか思ってしまった人は、やっぱり居そうでしょうね。



[6955] 小ネタの拾い話+乙女大乱ネタ
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/08 22:46
蜀の成都。今日も昨日と変わらない、だが、変わらないこそ大切な1日が更(ふ)けて行く。
「益州州牧」の執務室では、どうやら今日の予定分は終わった様だった。

「「ご苦労さん」」主君“たち”が退出する部下たちを労(ねぎら)って、さて、
北郷一刀は私室へ下がるべく、桃香を補助して立ち上がらせた。
「「ヨイショ」」などと、掛け声を合わせて、重く成った身体を奥へと運んで行く。
どこの名も無い「夫婦」でもありそうな、微笑(ほほえ)ましい光景。
そうして私室に近付いた時、ふと桃香は気が付いた。
「ご主人様。それは「天の国」の歌でしょうか?」

『数え役萬☆しすたぁず』が居る位だから「この」世界での「歌」は、北郷一刀の認識に近いだろう。
だからと言う事でも無いが、最近の一刀は、ふと気付いた時に口ずさんでいる歌があった。

「ああ…これは(隠す必要も無いな)」
完全に母性的に成った身体の桃香を労(いた)わる様な姿勢に落ち着かせると、今度は歌詞が聞き取れる様に歌い始めた。

『こんにちは赤ちゃん』だった。
何故か「パパ」「ママ」に当る単語は、中国語でも似た様な発音をする。
「そうですね。ご主人様は、阿斗ちゃんの爸爸(パーパ)なんですね」


今更ですが~乙女大乱~の「世界」に「天の御遣い」が落ちて来ていたら、
少なくとも、翠ちゃんが第一席で懸けられた、無実の疑いだけは無かったでしょう。

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††恋姫無双演義††~黄権伝~ 第6席を、ヒロイン視点からSideOutしてみました。

現在、劉備玄徳と「天の御遣い」の下に結集していた「義軍」は、進軍中だった。
袁紹と曹操が呼び掛けた「反董卓連合」に参加するため、公孫賛軍とともに進軍する途上で、宿営の準備をしていた。

そんな頃合、北郷一刀と桃香、愛紗、鈴々、朱里と雛里たち1同が集まっていた天幕に、公孫賛(白蓮)の側近の兵士の1人が遣って来た。
その兵士は、白蓮に命じられた事だけを告げると、1人の少女を置いて行った。

見た目は可愛らしい、しかし例によって武将姿の少女。
年齢的には、鈴々や朱里、雛里たち位にも見える。
例えるなら『太正』帝都の“世界”で「宝塚」と「RPG」を融合したシリーズに登場した巴里の海賊公爵を、
今の見た目ぐらいに逆行させて中華風コスプレをさせたら、丁度こんな感じだろうか。
成長途上ながら将来有望な「玉の肌」を、むしろ強調しそうなデザインの甲冑の外側に、サラサラのロングストレートが流れていた。

ところが、しゃべり方だけが、それこそ「お爺さん」だ。声自体は見た目そのママだが。
「私は荊州襄陽城にて「三顧の礼」を目撃いたし、わが「真名」を捧げる御方は只1人と定めました」

「ほう、嬉しい事を言ってくれるではないか」愛紗らしい反応だ。鈴々は何時も通りの「マイペース」
愛紗と鈴々の向かい側にいた朱里と雛里も「はわあわ」言いながら、「水鏡女学院」に出入りしていた事を確認する発言をした。

さて、正面に桃香と並んで座っていた一刀は、少しばかり驚愕する事に成る。
膝を付き拳を握り合わせた「礼」の姿勢を崩さないままの少女が、あらためて名乗りを上げたのだ。
「わが姓は黄、名は権、字は公衡。そして、真名は霧花と申します。この真名を只1人の御主君に捧げます」
「黄権だって?!」
『三国志』ファンの一刀ならば、少しばかりの驚愕の理由も在った。

黄権、字は公衡
関羽や孔明に比較すれば、人気的にはマイナーかも知れないが、劉備とは深く信頼し合っていた。
正(まさ)しく断末魔の劉備にすら「裏切ったのは黄権ではない。黄権が主君に裏切られたのだ」と言わせ、
黄権の側も、魏の捕虜として余生を送りながら「旧主」劉備への信頼と信義を保持し続けた。
逆に、魏の帝王2代すら、その姿勢を信頼させたと言う。
だが、ついに「関羽千里行」の様には帰還出来ず、魏で天命を終えた………。

……。

…桃香の声で、一刀は自分の思考から呼び返された。
「ご主人様?」「いや、桃香には、話す時にはちゃんと話すから」
「わかりました。ご主人様を信じます」

(…微妙に生暖かいホホエミだな。年の割にはマセた?…)
そう黄権を観察しながらも、たった今までの自分の思考には正直に弁護していた。
「これだけは言えるよ。「黄権」なら多分は信頼出来る」

一刀の断言に笑顔で返した桃香は、まだ何か言いたそうな愛紗を片手を上げて押し止めると、
その手で黄権を立ち上がらせた。
「私は桃香よ。よろしくね。霧花ちゃん」
ポロポロと涙を流す霧花を見て、愛紗たちは苦笑したり微笑したりしていた。
北郷一刀はと言えば、『正史』の「黄権」の悲劇を知っているだけに、違和感は無かったが。
「天の御遣い」に違和感が無い、と言う事には、実は大きな違和感が有る筈だったという「真相」までは、未だ知らない。

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中国は広い。そして人口も多い。したがって食文化も様々だ。
極めて大雑把に2分すれば、北の「黄土地帯」と南の「長江流域」に分かれる。

大雑把な話を続ければ「黄土地帯」では、小麦粉を加工して主食にし、家畜をタンパク源にする。
1方の「長江流域」例えば「蜀」や「呉」その中間の荊州とかでは、米を主食に魚をタンパク源にする。
そして、この「長江」から「弥生式土器」を作り始めた頃の島国に、食文化が伝わったと考えられている。

後漢13州の1つ、荊州の主城、襄陽。そして、長江に合流する漢水を挟んで、襄陽とは双子都市の樊城。
その樊城の郊外に、現在の劉備軍は駐屯していた。「益州侵掠」の準備中である。

そんなある日。
「玄徳。ちょっと好いか?」
文官として劉備軍に同行していた、桃香の幼馴染でもある簡雍が彼女を呼び出した。何時もの幼馴染らしい気安さで。

「実は、兵士たちに少しずつ不満が出来始めている」
「でも、朱里ちゃんや雛里ちゃんは何も言わないけれど」
「あの娘たちは、それこそ「ここ」の出身だからな。それこそ、喰い慣れた好物を喰っているだろうな」

桃香も何を言われているかに気付いた。桃香や鈴々、簡雍は幽州涿(たく)郡の出身だ。そして、最初に義勇軍を募集したのも。
「そうなんだ。確かに、お米を炊いたのと、お魚ばかりだったな」
少し考えて、相談するように隣を振り向いたが、
「ゴメン、桃香」「ご主人様?」
「実は俺の国の食文化は、どちらかと言えば、幽州や洛陽よりも荊州とか、多分、蜀とかの方に近いんだ。俺も全然、気が付か無かった」

結局、愛紗や星、更には「今は只の“めいど”なんだけど」と言う詠にまで相談した結果、
どうしても故郷の「味」が忘れられない兵士には、この際、帰ってもらう事に成ってしまった。
それでも「蜀」まで付いて来る者が少なく無いのだから、桃香もとい劉備の魅力が恐ろしい処である。

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~乙女大乱~第十席より

とりあえず1ケ所だけ突っ込んでみたくなりました。
愛紗ちゃんに江東丸をあげた時、「ネコミミ」の事は聞いていた筈です。「趣味」というセリフは出ないのでは無いでしょうか?
そんな訳で、以下の様な小ネタを思いついてみました。


「ちょっ、何それ?反則よ」義勇軍の仲間たちを除く、軍議の場の1同が客人には失礼な態度に成ってしまった。

「…関羽どのから話だけは聞いていたが…実際…この目で見てしまうと…」
と言うか、孫家に伝わる江東丸が効かなった?という疑問は出なかったのだろうか?

「稟ちゃん…ちょっと、笑い過ぎなのです」
「…けど…いくら何でもネコミミなんて…いったい、どういう神経…あ」
どよーん
「ちがうわよ。貴女の場合は、猫を被っているのでしょう」
「稟ちゃん…それはトドメなのです」

…ようやっと話が進行し始めて…

「もう1つ、お聞きしても、よろしいでしょうか?」「うむ、なんじゃ」
「出立前の餞別として、その御耳モフモフさせてもらう訳には参りせんか?」

桃花村の仲間たち、特に江東で身近に「お猫様モフモフ」を目撃してしまった愛紗は、真剣に思った。
(…解毒剤を飲ませる前の、猫化が進んだ状態を見られて無くて、本当に好かった…)

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草原の遊牧民族たちは、衣食住の大きな部分に家畜を利用する。
飲酒に限っても、農耕民の様には、穀物や果物から酒を造る機会に恵まれ無い。

21世紀のモンゴル民族にとっても、酒といえば馬乳酒である。
騎馬で移動する間、鞍から下げた皮袋を揺らして醗酵(はっこう)させておいた馬乳酒を、天幕の中で開封する。
それが、草原の騎馬の民の生活だった。祖先から。

後漢13州の1つ涼州は、後漢王朝の建前からは長城の南、玉門関の東であっても、やはり騎馬の民たちの暮らす草原だった。
その涼州の出身者たちは、幼少から(アルコール度の小さい)馬乳酒で育った者が多い。
そして、その涼州出身者が「天の御遣い」の後宮に入れられた「恋姫」たちの中にも何人か居た。

大長秋である華恋は、日々の職務をテキバキと遂行していた。
その中には、后妃たち、それぞれの好物を提供する事も含まれる。
国家を傾ける程の贅沢は論外だが、後宮に入れられる以前には日常的に飲食していた、本当の意味の好物ならば当然の職務だった。

1方で「後宮長官」である大長秋が、本来ここまで細かく目を配る必要が有るかどうかも、別の問題としてなら在るが。

「?」
そうした嗜好(しこう)品の中で、ある1品目だけが、消費量を最近に成って伸ばしていた。
「馬乳酒か」
実のところ后妃たちの中で、馬乳酒などと言った草原の飲食物を好む涼州出身者は数人であり、
更には、その数人の中で「酒飲み」と呼ばれる様な者は、更に少数だった。食事量全体の多大なる者はいたが。
「控えて頂くかどうか」

実のところ馬乳酒は、例えば華恋自慢の孫が発明した酒ほどには、酒としては強く無い。
草原の民にとっては、酒よりもむしろ食事の1部分に近い。
その点に思い至った華恋は、もう1度、品目としての馬乳酒全体の消費量では無く、個別の摂取量を確かめた。

「栄養を欲しがっておいでか」
そこまで確認した上で、華恋は后妃の1人を呼び出した。
現在は後宮の1員であると共に文官としても仕えている。
そして、馬乳酒を欲しがっている、より高位の后妃は彼女の「旧主」だった。
「御2人分の栄養を必要としておいでの御様子です」

詠の引き起こしたPanicには、流石の華恋も、少しばかり驚愕した。
建前として、彼女のような立場で皇帝に向かって言うべきでも無い言葉を発して、備品の幾つかを破壊してしまった。
「あんた、月に何て事を」

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後漢帝国の帝都である洛陽の直近を流れる洛水が黄河に合流する、
その少しばかり(あくまで中国的スケールでの)下流で黄河に合流する「官渡水」とも呼ばれる運河は、
最終的には長江まで連絡している。
その官渡水と黄河の合流点に設営された「食糧備蓄基地」敖倉(ごうそう)。
帝国の各地で徴収された年貢米を集積しては、順次、帝都へと送り出して「百万都市」を養って来た。

当然、田舎の県城などよりはずっと立派な城壁に守られた、その内側には巨大な「半地下式タンク」が立ち並ぶ。
1つの「タンク」を壊(こわ)せば、10万人の兵士に3日分の給料を支給できる計算に成る。
その「タンク」が、ひたすら立ち並ぶ。城壁の中1杯に。「中華帝国」の権力を、視覚的に理解させる光景だ。

「三国志」において、曹操VS袁紹の「天下分け目」と名高い「官渡の戦い」は、
その官渡水を堀として防御陣地を固める曹操軍と、攻撃する袁紹軍との攻防戦だった。
そして、曹操が勝負を賭けたのは、袁紹軍の「食糧基地」烏巣への奇襲だった。
10万余りの大軍だからこそ、烏巣の食糧を失えば、袁紹軍は1撃で飢える。
それだけに、袁紹軍の別働隊とかに、敖倉を占領されたら…
そのため、袁紹の大軍相手には貴重な兵力と信頼する勇将、夏侯惇を烏巣へと配置していた。

「うう、うむ(罵詈雑言(ばりぞうごん)のため自主規制)」
春蘭には忍耐力を試される試練だった。
目前で黄河と合流する官渡水。この同じ運河を挟んで、文字通りに華琳が死闘を続けている。

その袁紹軍の大軍に突入したい1心を必死に押さえ込んでいた。
華琳だって、春蘭を攻撃に使いたいだろう。しかし、敖倉を占領されるだけで負ける事が分かり過ぎていた。
そのため、いささか卑怯な命令の仕方をしていた。

「関羽だったら、孔明辺りの作戦と分かっていて、劉備の命令には逆らわないわよ」
いわゆる「千里行」の記憶は、まだ生々しい。
「その命令が「敖倉を守れ」だったら、死んでも動かないでしょうね」

こんな命令の仕方が、ある意味で春蘭の心を弄(もてあそ)ぶ事など、華琳に理解出来ない筈も無い。
それでも「目的のためにこそ手段を選ぶ」
そこまで、この覇王も追い込まれたのが、今回の決戦だったのだ。

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~乙女大乱~第九席より

袁紹(麗羽)の人望の無さから、諸侯の軍が集まらない。結局「恋姫」たちだけが参戦。
いくら「外史」でも、これはあんまりな気がしました。

『正史』の「反董卓連合軍」は、名門袁家の名声が頼りで、曹操も「それ」を当てにして挙兵しました。
『演義』に至っては、太守・刺史クラスだけでも17軍も集まった設定に成っています。
あらためまして††恋姫無双演義††は『演義』に習わせて頂きました。


例によって、前任の太守が黄巾に追い出された後に派遣された新任の兗(えん)州陳留(ちんりゅう)郡太守、張孟卓は、
兎も角も任地の安全を保証して「黄巾の乱」を乗り切っていた。
しかし、天下の太平は既(すで)に消失している。袁紹や曹操による「反董卓連合軍」が呼び掛けられた。

これに対して、陳留郡太守の張孟卓は、自分の部下で地元の「名士」でもある衛茲に兵を率いて参加するよう要請した。
彼女自身は、と言うと、陳留よりも東から参加する諸侯の軍を迎え入れ、送り出す“後方支援”を請け負った事から拠点を守っていた。

袁紹や曹操と張孟卓は、帝都で学生をしていた頃からの親友だった。
例えば、曹操と袁紹が、何と花嫁泥棒なんぞをしでかした時「アリバイ証言」をしたとか。
それだけの関係が有るから、今回の連合軍に対しても、部隊を参加させるだけで無く後方支援まで請け負っている。

尚、曹操の「現職」は予州潁川(えいせん)郡太守であり、陳留よりも更に帝都洛陽寄りに位置していた。
したがって、張孟卓の派遣した衛茲の部隊の方が、潁川の拠点である許昌で曹操軍に合流した。

その張孟卓の陳留郡を、次々に通過して行く諸侯軍の中でも、比較的に大軍が遣って来た。
淮河以南を拠点とする袁術軍だった。
黄河以北から来るため陳留を通過しない袁紹軍を除けば、兵力は最大だったろう。更には、江東から孫呉軍を同道させていた。

数量的にも、後方支援の負担は今回が最大だったが、張孟卓個人の送り出した後の感想は、
「麗羽とは昔からの友だちで好かった。あの姉妹に慣れていて」だった………。

……。

…袁術軍と孫呉軍も到着し、連合軍の集結地では軍議が開かれていた。
当然の様に、麗羽は上座を占めて、更には美羽を膝に乗せている。
その前面左右に、華琳たちが席を占めて、さて先ずは到着した各軍の確認と紹介から始められていた。ここまでは順当だろう。

「後、来る予定の軍は?」華彬の質問も、また順当だ。
「斗詩さん」「幽州から来る公孫賛軍が残っています」
「ホホ。あの地味な軍ですわね」
「そう」華彬はチラリと1人分下座の弟に視線を移した。
「例の「義軍」たちは、未だ1緒かしら(あの美しい関羽も)」
途中から姉の声が小さく成った後は、聞こえ無かった事にした。



[6955] 乙女大乱ネタ(その2)
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/15 21:33
~乙女大乱~第十一席に、とりあえずは突っ込みを3ケ所ほど。

「大王しゃま。そろそろ交代しゅるにゃ~」
「順番」以前に“それ”は璃々ちゃんの、だと思うんだけれども。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

「いやあ。袁紹からの檄が届いて直ぐに巴郡を出たのだが、どうも、ちょっと遅かった様だな」
確かに「蜀」から来るのなら、時間が掛かるだろうけれど。

その桔梗は、どこかで見た様な少女を見付けた。
「お主。確か、巴郡の「あの」店で働いていなかったか?今でも店主が覚えているぞ」
『大盛』の完食記録についてである。
「そのあげく、路銀が尽きたから働かせてくれなどと言いおって。そう言えば「あの」時のケンカ仲間はどうして居る?」
間が好いのか悪いのか、少女は幼馴染と同行していた。
「それって、どんな料理だったんですか?」

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

陳琳
袁紹配下の文章家として「正史」に名を残す。
特に、袁紹VS曹操の決戦を前にして書いた『檄文』と、曹操との後日談が有名。

「あのねえ。“檄文”なんだから、私の事を悪く言うのは理解できるんだけれど」
華琳ちゃんが、捕虜に成った陳琳に対して、笑って見せている処を想像。
「お祖母さまの事まで書くのは、あんまりなんじゃないの」
「あの~弓を引き絞ったら、矢は飛んで行くしか無いンスけれど」
「まあ、麗羽が「書け」と言ったんでしょうけれどね」

『恋姫』設定だと高確率で、春秋姉妹の「お祖母さま」でもある訳で
「姉者、落ち着け!華琳様が笑っていらっしゃるでは無いか」
と言う展開に成る危険性が。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

~乙女大乱~第九席&第十席より

猫化何進の等身は、美以ちゃんたちと並んでいる場面から見ても璃々ちゃん並、下手をすれば、もっと小さい可能性も。
確かに、ここまで「悪化」した後だったら、とりあえず「第1席」まで現状復帰しただけでも事態好転かも。

以下はAnotherStoryです。

「お待たせしました」「おう。解毒剤が出来たかにゃ」
ここでニオイがどうのこうの、といった遣り取りが在って。
「そうだ。何進どの。例の」
急に愛紗が何が言い出した。
「実は、姉上たちが戻る少し前に、華佗どのからの手紙が届いたのだ」

その手紙に曰く、
俺は、俺の使命のため探索を続けていたが、その過程で思い当たる事が有った。
こんな予想は当って欲しくは無いが、もしも最悪の予想が当っていた場合、何進どのが飲まされた薬は危険だ。

元々「猫子丹」は、わが五斗米道ですら、伝説化した秘薬。
大して医薬に通じていそうも無い宦官が、どうやって入手出来たのか。
少なくとも「猫子丹」を調合出来そうな医者が、この件に加担した痕跡は確認出来無かった。

「でも、現に何進さんは…」「姉上。手紙には、まだ続きがある」

もう1つ考えられる最悪の可能性は、妖術によって秘薬が創り出された場合だ。
俺が追っている「太平要術」等の存在から考えて、有り得ぬ可能性では無い。有っては欲しくは無いが。
その場合(手紙を読む愛紗までがゴクリとした)解毒剤は、まともには効かないかも知れない。
効果が有っても、現状の悪化を抑止するまでかも知れない。
出来れば、こんな最悪の予想だけは当って欲しくは無いが。

以下「第十席」

「貴女は…何進。・・・・・ちょっ、何それ?反則よ」
可愛い過ぎた………。

……。

…明命のお目々に「お星様」が宿った。
「出立前の餞別として、モフモフさせてもらう訳には参りせんか?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

~乙女大乱~第一席より

今更ですが、時系列的には、前期と~乙女大乱~の中間にでも「天の御遣い」が落ちて来ていたら?

たんぽぽ「それって、もしかして妊娠?」
「「「ええーっ?!」」」って、
「どうして、みんな(璃々を除)で俺の方を見るんだよ?」………。

……。

…流石に紫苑だけは璃々を生んだ経験が有った。
「後、早くお医者さんを!」「わかったのだ!」「お湯だな」「布、布」「頼む」
みんなに続いて走り出そうとすると「はわわわ~」が何かに気付いた。
「ご主人様は、側に残って下さい!」
「そうですね。手を握って、励ましてあげて」



[6955] 乙女大乱・祝!終劇
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/22 22:03
~乙女大乱~第十二席より

正しく『恋姫総進撃』状態で、南蛮大王に声が掛からなかったのは、
「中原の事は、中原で片を付ける」と言う事?

「どうして、美以たちは戦わないのにゃ?」
実戦の指揮経験が無い、名目だけの大将軍なら兎も角(ともかく)それ位は、美以の頭脳でも疑問だろう。
対して、軍師孔明の説明はこうである。
「貴女たち1行は、4人だけしか御いでで無いでしょう。戦い方のまるで異なる中原の兵士を、行き成り指揮して頂くのも問題ですし」
この事を、繰り返し易しく説明して理解させようとしたが、

「たくしゃんにゃなら、よいにゃ?…しょれなら、こうしゅるにゃ!」
何をする?
「うにゃうにゃうにゃにゃ~~ベッカンコー!」
わらわら、わらわら量産される南蛮兵。
「これで、たくしゃんに、にゃったにゃ」

1瞬だけ唖然。しかし、見た目は「はわわ」中身は孔明である。
「それでは、作戦を修正します」
すなわち、劉備軍の突入と同時に、反対側から南蛮軍が突入して援護する事に成った。

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~乙女大乱~第十一席より

「まだ全ては片付いた訳じゃ無いわ。ゆがんだ政治(まつりごと)の見直しを始め、やる事は山積みよ」
「そうした後始末は、名門の私には相応しくありませんわね…貴女にお任せしますわ」
「好いわ。貴女が、そう言うなら、私が引き受けるわ」

最初から「これ」が目的だったのでは?
少なくとも、後ろで微笑んで居る軍師は、自分の主君の意志を承知していそうだった。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

~乙女大乱~第十二席より

ED後

宴も果てて………。

……。

…桃香は荒野に立っていた。
そう、荒野。帝都洛陽の郊外でありながら、荒れ果てた平野。
「世の中こんなに荒れちゃって…曹操さんじゃ無いけれど、やる事は山積みね」
左右に立つ妹たちに、そして自分自身に問い掛ける様に言う。
「あのウワサ、もしも本当だったらなあ…」

昨日の祝勝会。
何時の間にか、出席者の間に、不思議なウワサが広まっていた。
誰が最初に言い振らしたのか、そんな事すら不明な。
普通なら“流言飛語”の類として切り捨てられるだろう、
まして、内容が内容だった。

「貴女は信じているの?あんな与太話」華琳ならば言いそうだ。
「信じたい。でしょうか」そう答える顔は、日頃の「天然」ぶりよりも「純粋」と表現したかった。
「こんな世の中は、誰かが変え無くっちゃいけないんです。力の無い人たちがいじめられる事の無い、みんなが笑って暮らせる世の中に」
「その「誰か」に自分が成ろう、とは貴女は思わないの?」挑発すらしそうな問い方。
「分りません。でも「誰か」が「それ」をしなければいけないんです。そして、多分、私も何かをしなければ」
「それで」
「だから、信じたいのかも知れません。「天の御遣い」のウワサを」

「厄介ね」華琳は、心底、厄介そうだ。
「貴女みたいな人が、そう言うくらいだもの。民衆の間に「天の御遣い」を求める声は大きく広まっているでしょうね」
「だったら、大いに利用できそうね」何時の間にか雪連が来ていた。
「それが厄介なのよ。仮に「天の御遣い」と民衆に信じられそうな「誰か」が出現したら、少なくとも貴女には渡したくないわね」
「同感だわ」無論、雪蓮としては、完全に華琳とは逆の意味で、だろう。

「でも、私は来て欲しい。この世の中を変えられる人に。その人と1緒に私は、苦しんでいる人たちを助けたい」
「だったら…私の邪魔をしないで」華琳もまた、何時も桃香をからかう様子よりは真剣だ。
「あら、私たちのところに「天」が来るかもしれないのに」茶々を入れる雪蓮。

「貴女も言うわね…あれは?」
桃香、華琳、雪蓮は同時に見た。
「青天白日」の明るい空なのに、明らかに光り輝く流星。しかも、
「近付いて来る?そんな」困惑の上から取って代って、得物を見付けた顔に成って行く華琳。
「これは面白く成りそうね」本当に楽しそうな雪蓮。
「本当に、本当に来てくれるのですか?この世の中を…変える事が出来るんですか?」純粋きわまる感動の桃香。

そして、光り輝く流星は、乙女たちの目前に落下して………。

……。

…純白の(この「時代」では)見慣れない服装の少年が、ヒックリ返っていた。
「ここは何処?私は誰?いや、俺は北郷一刀だ。しかし、ここは『聖フランチェスカ学園』なのか?」


※ あらためまして、『真・恋姫†無双』~乙女大乱~全十二席の「終劇」おめでとう御座います。



[6955] 銀英伝と恋姫の小ネタ(その2)
Name: きらら◆729e20ad ID:f9298a57
Date: 2013/09/14 17:10
以前、この短編集にて『銀英伝と恋姫の小ネタ』という短編を投稿させて頂きました。
その時の繰り返しに成りますが、あくまで短編小ネタです。
例えば、ラインハルトが華琳になっているといった大それた作品では、決して有り得ません。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

ローエングラム王朝の初代皇帝、ラインハルト・フォン・ローエングラムは、確かに自ら皇帝と成った。
そして、その玉座は一子であるアレクサンドル・ジークフリードに継承された。

だが、皇帝ラインハルトの言動には、同時代の臣下と後世の歴史家の疑惑を招く要素が存在した。
所詮、ローエングラム王朝は一代限りと見切っていたかも知れず、
心底では、権力の世襲や、その目的のための手段とされる後宮制度などを憎悪すらしていたのでは無いかと………。

……。

…結局の処、ゴールデンバウム王朝に於ける帝国軍幼年学校の役割とは、貴族が平民を支配する道具の1つだった。

幼年学校の卒業生は、本人の志願を建前として、卒業と同時に下級士官として任官出来る。
士官学校への入学年令と、ほぼ同じ年令で。
つまりは、下級貴族や平民出身の士官学校卒業生よりも、貴族の息子たちを先に昇進させるシステムとして役立っていたのだ。

そうした目的の反映なのか、たとえば一般教養としての歴史の授業でも、
地球時代のいくつかの帝国で、名君と呼ばれた皇帝たちについて教えるのに熱心だったりした。

その日も、ほぼ1時限分を消費して、1人の皇帝についての歴史が講義された。
古代チャイナ帝国に於いて「天の御遣い」と呼ばれた皇帝についてである。
授業自体は、生徒たちも神妙に聴いていた。
金髪と赤髪が目立つ、学年首席と次席の生徒もである。
だが、その翌朝・・・・・

「済まなかった。キルヒアイス」姉と友人だけに見せる素直さで謝っていた。
「同室が私で好かったですね。ラインハルト様」癒される様な笑顔だった。
その遣り取りの間も、2人部屋の後片付けが進行していた………。

……。

…皇帝と皇妃がベッドの中で会話しているのは、別に不思議な事でも無い。

「余は、あの時“も”キルヒアイスに迷惑をかけてしまった。実際、他の同室者が居たら、余の首席などは同日に終わっていただろう」
「陛下」
「だが、キルヒアイスに迷惑をかけた事は後悔出来ても、あの夜、余が荒れた事は別な話だ」

遥か過去の人物であっても、そしてゴールデンバウム王朝ならば晴眼皇帝など数人しか居なかった程の名君であっても、
どうしても、ラインハルトには認められなかった。

戦争と新時代の建設を含めたラインハルトの価値観は、
あの時代の英雄たちの中では、おそらく魏の曹操が近いだろう。
その曹操を含めた、いくつもの野望と可能性を「天の御遣い」は封じ込めてしまった。
それも、ラインハルトとしては最も認めたくない方法で。
旧王朝の制度の中でも、最もラインハルトが憎悪した制度である筈の「後宮」という方法で、だ。
「天の御遣い」を認めてしまっては、
ラインハルトには否定と克服の対象でしかなかった旧王朝を認めてしまう事につながるのでは無いか、
幼いラインハルトは、その可能性に恐怖すらしたのだ。

「皇妃。あの時の余が幼かった事は、現在では理解しているつもりだ」
「天の御遣い」が曹操たちの野望を後宮に閉じ込めなかった場合のシミュレーションは、すでに何度も行われている。
古代チャイナ帝国の安定期には人口5千数百万を数えながら、
あの時代の戦乱と分断は、最悪の場合には戸籍人口500万前後まで激減させただろう。
だが「天の御遣い」は、その5千数百万の過半を救う結果を残した。

「その結果が、あの男を正当化したのだと、オーベルシュタインなどは言うだろうな」
「陛下。おそらくは、ヤン・ウェンリーも」
そういえば、ヤンの直系祖先は、古代チャイナ系統の筈だった。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

ユリアン・ミンツが編纂したヤン・ウェンリー=メモリアルの『原典』が、
どういった媒体に、何時、どの様な経緯でヤン本人が記録したものなのか、
と言った事は、ユリアンよりも後世の歴史家の興味を時々は引いた。

最もユリアン当人は、隠すつもりも無かった。
『原典』は、ユリアン自身を含めたヤンゆかりの人々の回想であり、その中でのヤンとの対話だった。
それゆえの正確度について、重箱の隅をつつく批評家もいない訳でも無い様である。

そんなユリアンとヤンとの対話集の中の1節である。

「私は『最悪の民主共和政治でも最良の専制政治よりはマシ』という信念を持っている」
「提督でも信念と言う言葉を使うんですね」
「だからといって、個別の政治指導者の評価は結果責任だ、と言う事も知っている。矛盾しているかな」

ユリアンは少し考えて
「提督の信念では、政治体制というものは道具だという事でしたね」
「そうだよ。道具という事は、目的のために選択する手段だという事だ。民主政治の良点は、その選択の幅が広い事にある」
「だから、手段ではなく、目的で評価するんですね」
「流石は優等生だよ。ユリアン」

「だから、皇帝であっても、例えば銀河帝国の晴眼皇帝の評価は、ゴールデンバウム王朝の体制自体の悪とは別だと」
「その通りだよ。特に、民主政治の経験が少ない国民には『宝の持ち腐れ』になる可能性がある。いや」
ユリアンを含めた数人だけが知っている、賢者を思わせる表情をした。
「われわれは、直近に民主政治の自殺例を知っている。経験なら豊かだった筈なのにね」
それが遠い歴史でない事を、ユリアンたちの前では隠しもしないヤンだった。

それから、ヤンは歴史上の何人かの皇帝、特にヤン自身の直系の祖先が被支配民だったろう、
古代チャイナ帝国の皇帝について、評価した。

「この「天の御遣い」と呼ばれた皇帝の評価も分かれますね」
「そうだね。特に、自分が女性であるという理由だけで非難する場合も多い」
イタズラ小僧の様にクスクスと笑った。
「危ない。危ない。男2人だけの話で無かったら、性差別主義者と誤解されたかな」
「でも、皇帝としての評価ならば、手段に対しての非難なのですね」
「その通りだよ。ただ…」まるで真面目すぎるのが不真面目みたいに見えた。
「どういう目的のためであれ、こんな手段を取った事自体、許せない女性は居るだろう」
「そうですね」対話の相方も、微笑しか出来ない。
「皇帝というだけで許さないのが民主主義だ、というみたいにね」

しかし「天の御遣い」が、“女性として許せない手段”を選択した、その目的については、
後世の歴史家のシミュレーションは、ほぼ定説化している。
人口5千数百万の、その過半数を救った、のだと。

「シェーンコップ中将やポプラン少佐の評価も聞いてみたいですね」
「友だちは選べよ。そう言えば…」
「ポプランとコーネフみたいな友だちが「天の御遣い」にも居たかな?」

…後年、後世の歴史家たち、と言う意味での後世ではなく、ユリアン・ミンツとしての後年の事。

ヤンゆかりの人々の回想からの「メモリアル」の収集と蓄積をほぼ達成したユリアンは、
蓄積したメモリアルの編纂に仕事の比重を移した。

その段階での、一番の協力者が人生の伴走者でもあったが、
流石に彼女に手伝わせる訳にもいかないメモリアルも存在したかも知れない。



[6955] 夢は?を駆け巡る
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/22 22:10
「かずピー。ダブルデート行かへんか?」
あのな、及川。俺はお前を映画に誘ったつもりなんだがな。

「男2人で映画なんて、何オモロいんや?お互いカノ持ちやんか」
それはそうなんだがな…女の子連れで見に行く様な映画じゃない場合もあるだろう。

「あ~あ、この「三国志」オタが~。ええやろ、この映画で妥協してやるわ。ただし、お前が責任持てよ」
おい、何の責任だ。
「俺の彼女までキッチリ楽しませる責任や」
何で俺が。いや、そもそも俺は「この」映画を見に行こうと言ったんじゃない。人の話を聞け。

「ええわ。ええわ。やっと出来た彼女に、自分の趣味を理解して欲しいんやろ」
だから、俺は「レッド・クリフ」なんかに及川を誘っているんじゃない。
大体、俺自身、気持ちの整理が付いていないんだ。こんな映画は生々し過ぎる。

「何が生々しいって。まあ、ハリウッドらしい超大作やしなあ」
だから、勝手に納得するな!

………。

……。

…そして、当日。
案の定だ。上映が始まっていくらも経たないうちに、俺の隣では涙ぐみ始めている。コイツは刺激が強過ぎる。

今は、劉備軍の退却戦の場面だ。
「スクリーン」の中では、“趙雲子竜”が大立ち回りだ。
背に赤子を負って、曹操軍の敵中を突破して行く。
ついに、再会した主君“劉備”に、守ってきた幼君“阿斗”を差し出す場面まで来ると、俺に抱きついて大号泣だ。
BGMにすら匹敵する程の大号泣を、劇場内に響かせてしまった。

「ぐす…ごめんなさい…ふえん」
まだ泣き止まない「俺の彼女」を、何とか映画館から連れ出し「聖フランチェスカ学園」直営のカフェレストラン「黎明館」まで連れ戻していた。

「いや、桃香にあんな映画を見せた俺たちがいけないんだ。すまない」

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

「よせ。やめろ何が起こるのか分からんぞ。俺たちにも「正史」にも分からん。何をしようとしているか、貴様には分かっているのか」

「俺は信じる。この「世界」は、この世界で生きている桃香たちのものなんだ。それを取り戻す」
もう1度。桃香とうなずき合う。
「1、2のチェスト――!!!」
北郷一刀と桃香がほとんど同時に振り下ろした、雌雄一対の名剣に打たれ4つに割れた銅鏡が跳ね飛んだ。

白い光が爆発して、すべてを包み込んでいった。

………。

……。

…白光が消えた時、そこは『聖フランチェスカ学園』だった。

……      ……      ……      ……      ……

何の、かんのと言っても「この」世界は平和で豊かで便利だ。
「三国」時代の戦乱の世の中から見れば、それこそ「天の国」に他ならない。
帰って来て実感出来た。“それ”がどんなに貴重かを。

そんな幸福な世界で、1番大切な桃香と生きている。
俺自身のエゴから言えば、これ以上無い幸福の筈なのに……

……俺は、どうしたいんだ。

「貴方はどうしたいの?一刀ちゃん」

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

「ご主人様…ご主人様?お目を覚まして下さい」
その声に目を開き、突っ伏していた顔を上げた。どうやら、うたた寝していたみたいだ。

目の前に居る桃香は『フランチェスカ』の制服姿ではない。いや「天の国」のどの服装でも無い。そして、胸には阿斗を抱いていた。

桃香と阿斗だけでは無い。愛紗や鈴々、朱里、雛里たちも、華琳や雪蓮たちも居る。

(…そうだ。俺はあの時…)

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

白光がすべてを包み込んだ時、北郷一刀の脳内に“謎の美女”の呼び掛けが響いていた。

(…貴方はどうしたいの?一刀ちゃん…)
(…どうしたいだって?俺は桃香たちを守りたいんだ…)
(…それで好いのね…)

まるで走馬灯の様に、桃香と暮らす『聖フランチェスカ学園』での一刀の生活が、脳内を駆け巡った。
(…一刀ちゃん本人の幸せor不幸せなら、こっちの方が幸せかもよん。それに少なくとも1番大切な桃香ちゃんだけは幸せに出来るわよん…)
(…桃香が本当に幸せだと思うか?劉備としての使命を放棄させて。妹たちや仲間たちや多くの人々を、阿斗まで見捨てさせて…)
(…貴方は、そう思うのねん…)
(…俺は「この」世界で劉備として、一生懸命生きている桃香を幸せにしたいんだ…)
(…それで好いのねん…)

………。

……。

…何も起こっていないかの様だった。白光が1瞬、爆発した後は1見して。

北郷一刀と桃香は、雌雄一対の名剣を構えたまま「間抜け面」とすらいいたい顔を見合わせていた。

「貴様。後悔していないな」
「何を後悔するんだ。この「世界」を、桃香たちの世界を守れたんだろう。何も起こっていないみたいに見えるって事は」
「しかし、貴方からすれば『聖フランチェスカ学園』のあった、あの「世界」を消したのも同然ですよ」
「まさか、本当にフランチェスカが無くなったのか」かすかに動揺する一刀だったが。
「向こう側の「世界」は世界で存在しているでしょうねん」ニコニコし続ける貂蝉。
「もしかしたら「この」世界の“後世”にも『聖フランチェスカ学園』が設立されるかもねん」

……少しだけ迷って、しかし北郷一刀は言い切った。
「それならいいさ」
「あら、向こう側では、一刀ちゃんは失踪したまま戻って来れないのよ」
「俺には戻れるところがある。桃香たちと一緒に戻れる。それでいい」

―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―   ―

うたた寝から「現実」に戻って来た処へ語りかけて来た。
「疲れてるのかな?流石に準備が大変だったか」曹仲徳は恋人の手を引いていた。
「いや、これからは先輩ぶった口もきけないですな。皇帝陛下」
「そんな。これからも宜しく頼みますよ、先輩」

そう、ここは帝都「北宮」
いよいよ数日以内には「天の御遣い」が皇帝に即位する。

(…これからも宜しくな。桃香…)
蜀王にして「新」皇帝の第1妃でもある劉備玄徳。
そして、北郷一刀にとっては、いつまでも最愛の恋人である桃香。
その桃香が劉備として生きる「この」世界で、一刀は共に生きて行く。



[6955] 巡り回る人の諸行 受け継がれる歴史
Name: きらら◆729e20ad ID:f9298a57
Date: 2010/10/11 18:53
まるで天上世界から人の世界を見下ろそうとの欲望でも抱いたか、大気圏の外からの人工衛星による偵察技術が発明された頃の事だった。

中国南部の、どちらかと言えば都市から離れた場所の衛星写真に、分析官たちが驚愕した事があった。
集合住宅(?)とかなら数十家族が生活出来そうな大きさの、円環形状の人工物。
まさか地下に配備された弾道ミサイルの発射口か、と疑惑を持ったのだ。

真相が判明してみれば、本当に「数十家族が生活する住宅」だった。
そして、その歴史と伝統文化によって『世界遺産』に登録された。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

中国も南部、発射口と錯覚された『世界遺産』が存在する辺りは4000年前からの「中国」だったか、とすれば微妙である。
例えば「三国時代」の頃、三国の1つ「呉」の拠点である江東と同様に中国化していたか、どうかは中華の「正史」だけが主張している。

そして、その反対側。中国の北には明確な国境が存在していた。
『万里の長城』

その向こう側からは、何度も天下太平を破壊する略奪者が襲って来た。
中国の歴代王朝は自らの腐敗で倒れなければ、長城を越えてくる略奪者によって倒れた。
その結果、中国大陸が南北に分断されるか、あるいは最初は異民族の略奪者だったのが中国化して新しい王朝が生まれたりした。

そうして、北から「乱世」が襲って来る度に、故郷を消失した人々の中から新しい故郷を求める人々が南を目指した。
そうして何度かの時代に別れて、黄河を越え長江を越えて北から南を目指した人々を、より以前から「南」にいた人々は「移民」の意味で呼んだ。
『客家』と

元々が難民だった『客家』の人々は、非常の時には砦と成る様な独自の住宅で、寄り添う様にして生活してきた。
まさか、ミサイル基地と誤解される、などとは思いもしなかっただろう。
そうした『客家』の中には、中国の北の方での古い家系を後世に伝えている例が存在していても、不思議では無い。

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

皇帝に成って仕舞った「天の御遣い」は、自分が初代と成った後漢王朝の次の王朝を、どうやって太平にするかを考えていた。
その場合「天の御遣い」だけが知っていた。正確には、彼と「天の国」の記憶を共有する数人だけが。
ある時、皇帝は「天の国」の知識で相談の出来る貴重な側近でもある、転生者の夫婦と「密談」していた。



『五胡十六国時代』
「正史」では「三国時代」の終わりが太平の始まりには成らなかった。
「長城の向こう側」を故郷とする筈の「騎馬の民」によって、中国の北半分が幾(いく)つもの小国に分裂した「三国」以上の乱世。
「三国」の勝者だった筈の統一帝国は、結局は「1人の名も無き人が天命を全うする」程度の太平しか持続出来なかった。
後漢王朝以来の永続する統一と太平を回復させたのは、『西遊記』の元ネタの1人とも成った唐帝国の太宗皇帝、李世民だった………。

……。

…中国の歴史上、何度もあった北から南への苦難の旅。
後世『客家』と呼ばれる人々の祖先を押し出した、何度かの「時代」の1つが、この「五胡十六国時代」だった。



<それ>が「天の御遣い」の“知っていた”歴史だった。
しかし「今」皇帝の目の前にある「時代」は異なっている。
「三国」の乱世は「正史」よりも早く、より少ない犠牲で収束していた。

この太平を永遠とまでは、不可能だとは分かっている。
それでも、1人でも多くの名も無き人が天命を全うするまで、あるいは1年1日でも長い太平を。
そのために、今日出来る事をしようとしていた。
そのための協力者ならば、何人でも存在していたのだから。
現実問題としては「長城のメンテナンスを真面目に地道に」が皇帝と、そして曹仲徳と袁望月の結論だった。

時は流れ、人の諸行は歴史と成って行く………。

……。

…祖先が難民だったから、そして辿(たど)り着いた場所で生きて行かなければならなかったから、
だからこそ『客家』の人々は社会に人材を送り出し続けて来た。

そのために、教育にも熱心だったりする。
彼らが寄り添いながら生活して来た「トリデ」から、更に留学生を送り出しても来た。
そんな『客家』伝統の集合住宅『土楼』の1つから、今年も1人の留学生が旅立った。

この辺り、いくつかの『土楼』に寄り添う『客家』の人々。
中国の歴史上、何度目かの動乱を生き延びて、ここに定住した祖先を持つ人々は「その時」の乱世以前からの古い家系を伝えていた。
中国の歴史に何度もあった動乱と、そして英雄の時代の1つ。
その時代の人々の諸行が歴史と成ってからは『恋姫無双』の伝説で語られた時代。
その時代に伝説を残し、そして少なくとも数世代の天下太平をもたらした「天の御遣い」と『恋姫』たちの子孫が、
1800年後の「現代」も寄り添い、その家系を伝え続けて来た。

英雄の時代を駆け抜けた『無双の乙女たち』
彼女たちが「天の御遣い」の後宮で『恋姫』と成って、天下太平の後半生を全うした。
そして「天の御遣い」との間に残した子孫たち。
その子孫たちは、その後の1800年の「歴史」を、ついに生き抜いた。
遠い南の土地で『客家』と呼ばれながらも、祖先たちの伝説と家系を伝え続けて来たのだ。

そんな『客家』の村から東の国へ、
「その」東の島国こそ「天の御遣い」が遣って来た「天の国」だ、とも知っていたか(?)曹月華は旅立とうとしていた。



[6955] 今更ながらですがオリジナルキャラクターの1覧
Name: きらら◆729e20ad ID:c5df10ff
Date: 2010/06/18 21:54
今更ながらですが、††恋姫無双演義††および外伝的作品に登場させました、
オリジナルキャラクターに関しまして、
「こんなイメージかな」と思いながら執筆しましたキャラクターやCV、インスパイア元などを、
とりあえずは、1覧にしてみようと想いました。
皆様の御1助に成りましたら幸いです。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

曹仲徳
容姿に関しては、北郷一刀と同程度には「イケメン」の端くれに引っかかる。
CVのイメージも容姿を裏切ら無い。
外見年齢は一刀(高校2年生)と同年代に見えるが、実は「現世」年齢は姉(華琳)より2才ほど下。
そのため、華琳の方が一刀の年齢に近い筈だが、外見が14才くらいに見えているため、
仲徳が「姉さん」と呼ぶと、はた目には「ギャップ」がある。
姉の方が、確信的に呼ばせているフシもある。

袁望月(真名)玉羽
袁紹(麗羽)袁術(美羽)姉妹の実妹8才児、と見た目で分る容姿をしている。
CVのイメージはイリス・シャトーブリアン(サクラ大戦)
正し「前世」以来の仲である曹仲徳に対してのみ、年齢(禁則事項)の口調に戻る。

黄権(真名)霧花
容姿・CVのイメージはグリシーヌ・ブルーメール(サクラ大戦〜巴里は燃えているか〜)
正し、外見年齢は鈴々・朱里・雛里くらい。

貂蝉
完全に「原作」キャラより改変。
容姿・CVは朝比奈みくる(大)(涼宮ハルヒ)にアクビ娘(ハクション大魔王)のコスプレ。

華佗
これも「原作」キャラより改変。
イメージとしては、TVドラマ版「JIN」で大沢たかおが演じたキャラクター。

曹騰(真名)華恋
華琳(外見14才)の母親にしては(実は祖母)少しばかり熟女と見える様な容姿・CV。
しかし、如何にも華琳(大)
現在の華琳が小さいと言えば「将来は有望」との反論の根拠に成りそう。

徐庶(真名)蛍
頼れる「先輩」タイプのキャラクター。外見年齢「大学生」くらい。
容姿・CVのイメージは、桔梗や祭の若い頃を連想しそうな感じ。

水鏡先生
読み直した結果「アニメ版」のキャラクターで矛盾し無かった。

簡雍
好い意味での「お坊ちゃま」キャラ。人なつこい。鶴屋(涼宮ハルヒ)に兄が居たら近い(?)

盧植
横山光輝氏作画の劇画版での同キャラクター。

何進
読み直した結果「アニメ版」のキャラクターで矛盾し無かった。

孫堅(真名)水蓮
雪蓮(大)。見た目からして母娘。

済成
池上遼一氏作画の劇画版「演義」に登場する黒幕悪漢キャラよりインスパイア。
劇画の元キャラからして、いかにも月ちゃんの罪を被せそう。

「羅馬」から来た「老師」
「スーパージャンプ」誌連載中の「王様の仕立て屋」に登場する、ジャンニ・ビアッジォ。

馬良(真名)胡蝶
好い意味での優等生キャラ。
イメージとしては、浅倉涼子(涼宮ハルヒ)正し、眉が白く長い。

魯粛
好い意味での「お坊ちゃま」キャラ。正し、簡雍よりは生真面目。

張昭
読み直した結果「アニメ版」のキャラクターで矛盾し無かった。

馬騰(真名)翡翠
チャンスさえあったならば、桔梗や祭と好い3人組に成りそうなイメージで。
案外「虎牢関」の時には、チャンスがあったかも。桔梗が巴郡を離れられたら。

龐徳(真名)翡玉
翠と蒲公英の間で「次女」していそうなイメージで。

韓遂
「松永久秀の前世でも不思議は無い」という記述通りのキャラクター。

諸葛瑾
朱里と対面していると、確かに「お兄さん」にみえるイメージ。
外見年齢「大学生」くらい。徐庶(蛍)と同期の裏設定。

張燕または飛燕
没ネタながら、カリーニン少佐(フルメタル・パニック! )からインスパイアした事あり。

管路
残念ながら「小説版」とは別キャラ。「この」世界で女性として生まれ育った人。
「現代」の『科学者』に対する様な待遇を受けていて「大陸1番」は、決して自称に限らない。

劉表
横山光輝氏作画の劇画版での同キャラクター。

献帝
正太郎複合体タイプのキャラクターと、見ようと思えば可能。正し「天の御遣い」には、そんな気は無し。

司馬仲達
イメージとしては、林水敦信(フルメタル・パニック? ふもっふ)
策士タイプだが、この「外史」では誠心誠意タイプで、職務にも熱心。

夏侯翁
平凡な事が特徴みたいな中年男性。それなのに、周囲の1族が非凡過ぎる事だけは自覚している。

曹月華
華琳(外見14才当時)の隣に立ったら「姉」に見えそうなイメージで。

張孟卓
華琳や麗羽に比較すると、自分では常識人だと想っているつもりだが、
周辺からは類友と見られているタイプ。
容姿・CVのイメージは宮小路瑞穂(処女はお姉さまに恋してる)
正し、性別は外見通り。
したがって、TSでも転生でも無く「この」世界で女性として生まれ育った人。

※ 勝手ながら、投稿名RrrrRrr様の寛容な御方針に甘えさせて頂くと共に『江東に揺れる稲穂の海』に支援のエールを送らせて頂きます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

とりあえずは「こんなイメージ」で読者の皆様に伝わって居れば、
と、特に想うキャラクターを並べてみました。
勝手ながら、今後も適時、追加が有るかもしれません。
更に勝手ながら、これ以外に登場させたキャラクターに関しましては、
皆様方の豊かなる想像力に委ねたいと存じます。



[6955] 『真名問答』+『片翼兵士』(*最新話その1)
Name: きらら◆729e20ad ID:ac7c88fb
Date: 2013/09/14 17:13
日本の歴史時代における武士階級などの礼式、例えば名前の呼び方などは
中国の士太夫階級などから学習したものに日本国内でのアレンジを加えたものが基本でした。
したがって、そうした礼式社会と『恋姫』で言う処の「真名」の付き合いとの両面の顔を使い分けたとの「伝説」を持つ人物が
もしも『恋姫』ヒロインたちと問答したならば、“こんな”感じに成ったでしょうか。

『真名問答』

「遠山金四郎景元」
如何(いか)にも武士らしく、姿勢を保って名乗りを上げた。
「曹孟徳の曹に当る苗字は遠山、字の孟徳に当るのが金四郎。そうだな。四郎を“この”国では季と申したな」
孟が一郎、仲が二郎、叔が三郎。一応、江戸武士としてキチンとした教育を受けているのだから、それ位は知っている。
「景元は無礼ながら操に当る忌み名だ。…それから確かめて置きたいが」

遠山が確認したのは、彼女たち当人同士は『三国志』でも聞き慣れない如何にも今、目の前に居る容姿に似合った名前で呼び合っていた事。
「真名」と言うものについて聞かされて「成程」と思い当たる処もあった。
そこは相手によって呼び方、呼ばれ方を変えなければ成らなかった武士社会で出世だけはシッカリした遠山だ。
「例えば其れは…孟徳などの字を自ら名乗る前に、親御様などから呼ばれていた名かな。
それならば確かに、その子供同士の頃からの幼友達か同じ位に親しい相手以外から呼ばれれば」
遠山が居た武士社会でも、刃傷沙汰に成りかねない無礼だった。

「それがしの幼名ならば通之進。だが」
ここでニヤリと笑うと態度を変える。武士から“遊び人”に。
「その「真名」とかで付き合う様な連中からは、“こう”呼ばれているものさ」

「金さん」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

今回は『フルメタルパニック!』とのクロス短編に成ります。

中国時代ものでラブストーリーと言えば、その1つは『長恨歌』でしょう。
その中で歌われる誓いの言霊(ことだま)が「比翼連理」です。
片翼ずつしか持たないために番(つがい)でしか飛べない伝説の鳥、
枝を絡ませ、ひと固まりに成りながら寄り添い合って立ち続ける2本の木。
そんな「天に在って願わくば比翼の鳥と成り、地に在って願わくば連理の枝と成らん」との誓いの言霊です。

私論かつ個人的見解ながら、元々の『原作』にメインヒロインを残して来ているクロスオーバー主人公がクロス先のヒロインを寝取ったら
そもそも自分の恋人に対する裏切りかも知れません。
したがいまして“この”クロスオーバー作品の相良軍曹は、誘惑されても貞操を死守する予定です。

『片翼兵士』~帰りなん愛しき人よ~

「ここはどこだ?」
相良宗介はメリダ島もろとも、最後の核爆発で消失した筈だった。
どうして自分は存在している?そんな疑問に身を任せたのは、わずかな瞬間だった。
歴戦の兵士は現実家でもある。そして、彼には現実的な目的があった。
「俺は帰る。千鳥かなめが俺を待っている」

先ずは現状だ。
「ここは「北」中国か?」
秘密部隊の傭兵として、紛争地帯ならば世界中をめぐった相良軍曹だ。
風に混じって黄砂が吹きつけ、黄色い大地が地平線まで続く平原も立った事がある。
次は自分の現状だ。
「俺はASに乗っていた筈だ」
しかし確認してみると、確かに「ミスリル」の正式装備だがパイロットスーツでは無い。歩兵としての任務に就く場合のものだった。
そして装備していた武器は、彼女を護衛していた時と同じ「グロック19」だった。念の為、装弾も確認してみる。
「オモチャよりはマシだな」

その宗介の頭上を、晴天を切り裂いて流星が落ちて行った。
「ふむ。あの隕石を見物に来る物好きでも居たら、何か情報が得られる可能性も在る」
黄砂を派手に巻き上げたキノコ雲に向かって歩き始めた。

……何処かの学生服を着た青少年が、どう見ても山賊に見える3人組に襲われていた。

「あ…有り難う。でも、銃なんか使わなくても」
「問題無い。非致死性のゴムスタン弾だ」
山賊どもが自分で用意していた縄で拘束し気絶から目覚めても問題無い様にしてから、さて会話を再開する。
「俺は相良宗介。陣代高校、安全保障問題担当」
「お、俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の高校2年生。剣道部所属」
一刀の方は、突然に出現したサバイバル姿の他校学生を「ミリオタ?」とでも認識した様だ。
「北郷は、ここが何処だか分かるか?」「俺も困ってるんだけど」

戦場慣れしていた宗介は気が付いた。何者かが近付いて来る。
宗介が遣って来た方を除いた3方向から接近して来た。2組は騎馬で、残る1人は徒歩で。
「コスプレ?」
日本国内で育った一刀は兎も角(ともかく)紛争地帯で育ちながらも数ヶ月間は日本国内での学生生活を送った宗介にも、そう見えた。
もっとも宗介は、その少女たちが決して油断出来ない相手だとも見抜いていた。

「おい、そこの貴様」宗介は無愛想である。
「貴様!華琳様が御用だぞ」「俺の上官か?お前が言う相手は」
「貴様!!」
そこへ横から別な声が掛かった。
「ねえ、そこの貴方。そんなのは放(ほ)っといて、聞きたいことが有るんだけれど」

それから少しの間はガチャガチャと混沌(カオス)状態だったが、宗介は空中へ向かってグロックを何発か撃ち、静かにさせた。
もっとも最初の気短(きみじか)だけは尚も「何だ?!貴様、妖術使いか?!」などと五月蝿(うるさ)かったため
残り数発は気短の頭上を弾道が通過する様に狙って撃った。
「1人ずつ話せ」
“気短”の上官らしい小柄だが覇気の大きな少女が部下を宥(なだ)め、ようやっと話が動き始めた。

先ずは、それぞれ自分が何者であるかの宣言だ。
ところが何故か(北郷一刀ほどの『三国志』ファンでも別に無い宗介から見れば何に驚いていると感じる位)
北郷は少女たちが名乗りを上げる度に反応していた。

「私は沛国の曹孟徳よ。これは部下の夏侯元譲と妙才」
「そう…もうとく?魏の曹操?!」
ピクッと特徴ある金髪が悪戯っぽく跳ねた。
「あら。私は字しか名乗らなかったわね」
そんな仕草だと「美少女ゲーム」のツンデレ系ヒロインにも見える。
もっとも、そんな事をウッカリ指摘したら死神の大鎌でも首に落ちて来そうだ。

「私は幽州涿(たく)郡の劉玄徳です!」
今度は、これも「美少女ゲーム」の正統ヒロインにも見える少女がペコンと、桃色の髪と豊かな身体の一部を振って御辞儀をした。
「今度は劉備?!」
武将コスプレ(?)の他の少女に比べれば質素な庶民の衣装で、行商の売物らしい筵(むしろ)とかハキモノとかを身に付けている。
しかし、そんな風体の中で1点だけ、腰には立派な宝剣を下げていた。
「宝剣?もしかして、それ中山靖王?」
「うわあ、どうして知っているんです?もしかして、やっぱり」
北郷からすれば読み慣れた『三国志演義』のスタート、劉備の初登場シーンに当て嵌まってはいるが
どうして劉備の耳では無くって他の部分が福々しいんだ?
「いや、いや。待て、落ち着け、これは孔明の罠だ」
劉備(?)は可愛らしく、はてなマークを浮かべていた。無理も無い。
未だ「筵を織り履(くつ)を売っていた」没落王族の頃の
関羽や張飛も居ない処を見れば「桃園の誓い」も済ませてはいない頃だろう劉備が孔明を知っている筈も無い。
(…いや、そこに納得するんじゃ無くって、どうして曹操や劉備が女の子…)

「私は江東の孫文台の子、伯符よ。そして我が友、周公瑾」
一刀の時代(?)なら「トースト色」とでも形容する容姿の、これも身体の何処かが豊かな少女が宣言した。
虎の子は虎。これもまた、曹操とは別に狩猟者の微笑を向けて来る。
虎が獲物を咥(くわ)えて尻尾を振っているみたいな笑顔だが、曹操(?)とも劉備(?)とも異なった魅力を持った美少女。
「曹操に劉備に孫策まで?!これ一体?何のエロゲ……」

そして「曹操」「劉備」「孫策」と名乗った少女たちが、それぞれに語った。
「天の御遣い」の予言について。
その予言と風評に何を求めているかについて。

……そして北郷一刀と相良宗介は、それぞれに行く途を選択した。

「それで、どうして私を選んだの?」
曹操の馬に続いて、話の邪魔に成らない程度にカポカポ歩きながら質問されていた。
もっとも夏候惇辺りは、そんな疑問を主君が持つこと自体が不愉快の様で妹に宥められていた。
確かに曹操ほどに用意が好い少女が、誰かを連れて帰る可能性が在る時に馬の準備もしていない事は考え難い。
意外な様だが、アフガニスタン育ちの宗介はASだけでは無く馬にも乗れた。

「劉備には北郷が付いて行った。もう、彼女には俺は必要ない」
「ふ―ん。それなら孫策は?」
「孫策が言っていた「天の血」がどうのと言う意味が分からない訳では無かった」
「それが理由?」
「それもだ。俺には其の可能性が存在する女は1人しか居ない」
「天の国に?でも、戻れるかどうか、分からないんでしょう」
「俺は帰る。千鳥かなめが俺を待っている」
もしも「天の御遣い」でも聞いていたら「関羽千里行」とかを連想したかも知れない。

「それにも関連しているが俺は傭兵だ。だから曹操とも契約は出来る。だが、必ず俺は帰る」
夏候姉妹の恒例漫才は、さて置いて
「分かったわ」
もう1人の「関羽千里行」の当事者は曹操だった。
「でも、私は欲張りなのよ」


相良宗介を連れ戻った曹操は、とりあえず確認する事が在った。
「貴方は傭兵だといっているけれど、詳しい事を聞かせてもらえるかしら」
「俺はミスリルという部隊に所属していた。階級は軍曹だ」
「軍曹?」「下士官だ。伍長の上、曹長の下だ」
「伍長ならば、漢にも居るわね」
古代中国での「伍長」とは、最小単位である5人の中で他の4人を指揮する立場だった。
実のところ明治日本でヨーロッパ語から翻訳ずる時、中国史から探して来た単語だったりする。
「本来は其の理解で好い。だが俺たちの場合は専門技術を持った職業軍人の意味だ」
曹操は興味津々している。
「だから俺たちのチームは全員が軍曹で以下の階級は居ない。直属の上官も士官だった」
「ふうん。じゃ、貴方も専門技術とやらを持っているの」
「ここには、俺が最も専門にしていた兵器は無いだろう。しかし」
まるで淡々とすら申告する。
「近接戦闘も射撃も、ある程度までなら出来る」
「射撃?そう言えば、さっきも其れらしいものを使っていたわね」
「残念ながら今はオモチャも同然だ」「貴様!華琳様に対して真面目に答えんか」
「さっき、全ての弾丸を撃って仕舞った。なかなか静かに成らない者が居たからな」
「しょうが無いわね。春蘭たら」クスリと笑った。
「別な方法で静かにさせようとしていたら、どちらかが死んでいただろう」
宗介にしてみれば何が可笑しいのか、曹操はコロコロと可愛らしく笑っていた。

火薬などは未だ発明されていないが「弩」(クロスボ―ガン)その他を使った射撃戦は、中国戦史では古代から存在していた。
余談ながら孔明は連弩(連発式ボ―ガン)の改良でも名を残している。

調練場に連れて来られた宗介は、20本込めの連弩を渡された。
「悪くない」
20本中の17本が的代わりの藁人形に命中していた。
「クルツならば、この倍の距離から20本命中しているだろう。頭か胸か狙った方に、だ」
「その兵も欲しいわね」
見かけは可愛らしく、自称欲深な事を言っている。
「だがヤツみたいな男は何故か、この部隊では嫌われそうだ」
ムッツリとしたまま言い切る。
「まあ、とりあえず貴方が役に立たない訳でも無さそうね」
「それでは契約の話をするか」
曹操は「乱世の姦雄」の顔に成った。
「貴方を傭兵に雇(やと)うわ。相良軍曹」



[6955] 聖杯戦争(*最新話その2)『Fate/』シリーズとのクロスオーバー
Name: きらら◆729e20ad ID:ac7c88fb
Date: 2013/09/14 17:16
『聖フランチェスカ学園』
“聖”と言う字と女性名が校名に入っている学園らしく、理事長室で客を迎えていた部屋の主(あるじ)は修道女姿だった。
片や、客の方はと言えば。
主に相応(ふさわ)しい姿をしている、とも見えなくも無い。
見る限りは聖職者らしい服装をしてはいる、だが。
視るべき眼の所有者が視れば、テンプレートな聖職者のイメージとは真逆な“何か物騒なもの”を感じ取るかも知れない。

「信じ難いですわ」
理事長は彼女らしく品は好く、しかし途方も無い話題に対しては常識的とも言える反応を返していた。
「我々とて、これが何かの冗句であって欲しいのです。大いなる天の父の祝福が在ります様に」
客は兎も角(ともかく)も、教会の人らしい言葉を付けてから話を続けた。
「魔術師を自称する異端者どもが、罰当たりにも“聖杯”などと名付けた魔術装置をめぐって異端の大騒ぎを密かに繰り返していた。
先年、かの冬木市で起こった幾(いく)つかの事件、そして其の10年前にも同様の事件が連続して発生した末の、あの大災害。
その全てが異端者どもの巻き添えだったのです。

流石に異端者たちの中から、この“聖杯戦争”と自称していた異端の大騒ぎ其のものを終わらせようとする者も現れました。
そして異端者の祖先が冬木市の地下に造り上げていた魔方陣も封印された、
筈でした。だが、しかし

尚も“聖杯”を自称する魔術装置の完成を妄想する異端者の後は絶えなかったのです。
もともと冬木市の“聖杯”とやらも、異端者たちが何百番目かに作り出したツクリモノでした。
冬木市での封印を行った者とは別の異端者どもが、新しい“聖杯”などと言うものを懲(こ)りもせずに作り出そうとし…そして」
客の話を聞いている理事長は嫌悪と恐怖、そして信仰の人らしく救済を求める仕草をした。
「どう言う事やら其の“聖杯”と成る“うつわ”が、この学園に存在しているなどというウワサが異端者の間に流れたらしいのです」
この客に対する理事長の反応は、むしろ彼女の様な女性としては常識的だったろう。
「大いなる天の父の祝福が在ります様に」

………。

……。

…そんな理事長と客との対話も知らず、1人の学生が巻き込まれていた。

北郷一刀は流石に後悔した。
(…なんで、こんな好い加減な見回りで見付けて仕舞うんだ…)
これでは何かの主人公補正(?)か何かの様だ。

……そもそもの発端は、この日の放課後だった。

この広く施設の充実した学園の中の歴史資料館。
そこに何人かの男子学生が集まっていた。身もフタも無く言えば宿題が理由だったが。

その中の1人が、とある展示ケースの中の展示物を目に止めた辺りから雑談が始まった。
「古代ローマの軍団兵の槍…マジ?」
見た処は戦国日本の槍などよりも、むしろ19世紀まで捕鯨に使われた銛(もり)とかに近い形にも見える。
実のところ古代ローマ軍団の槍は突き槍にも使われたが、元々は投げ槍だった。
「もしかして…聖ロンギヌスの槍だったりしてね」
少しばかり“そう言う趣味”に興味が有るらしい別の学生がボールを投げ返した。
もっとも其の本人にしても、半分以上は冗句らしい。

ローマ軍団の百人隊長ロンギヌスは、十字架上のイエスが死んだかどうかを確認するために槍で突いた。
そして傷口から流れたイエスの血が奇跡を起こす。
この奇跡の結果、眼病から救われたロンギヌスは改心した。
そして元ローマの百人隊長は後に聖人と呼ばれた、などとキリスト教側では主張している。
同時に、このとき用いられた槍は聖遺物(聖書の奇跡の記念物)の1つとされ、ついには神秘の力を秘めたアイテムとまでの伝説を伝える。

「聖槍…って、アーサー王伝説?それとも…聖杯だったかな?」
他の誰かが発言して、また他の話が始まる
「そう言えば、アーサー王って何をしたの?聖剣を抜いた他に」
「それはだな…」
そう言った事には、ひと言を持っていそうな誰かが論じ始めた。

「アーサー王とかを元ネタにして中世ペルシャ辺りのファンタジーを書いたSF作家がインタビューで答えた事が在るらしい。
そこからすると、こう言う事だな。
アーサー王は王様らしく、無論いい意味での王様らしくしている。
そして“円卓の騎士”たちが戦ったり、冒険の旅をしたり、聖杯を探したりする。
でも、あくまでも其れはアーサー王が王様でいてこそ「アーサー王と円卓の騎士たち」って物語に成る訳だ」

「言われてみると『三国志』も同じパターンだな」
『三国志演義』あくまでも『演義』のファンである北郷一刀も言われてみれば同感だった。
「劉備は理想を唱えている。
戦って活躍するのは関羽とか張飛とか趙雲とかで、頭脳で活躍するのは孔明とかだけど
もしも劉備が居なかったら、関羽の『千里行』も孔明の『出師の表』も忠誠を向ける先が無い」

「お話が出来ん、ちゅうわけやな」
そう“お話”である。あくまでも“三国時代の歴史”では無く“『三国志演義』と言う物語”の話だった。
つまりは“歴史”では無く“伝説”の話。
「要は、こうして掘り出されて展示されたりする歴史と、伝わっている伝説とは違っているかも知れんちゅう事やろ。もしかしたら…」
ここで、ひと呼吸おいてニヤリとして見せる。
「アーサー王とかも、ごっつう可愛い女の子やったりしてな、実は」
「このエセ関西弁の結論は、そこに落ちるか。結局」
そこで友人一同は笑い合った。

……そんな、ある意味では男子学生らしい今日を過ごした彼らが男子寮に引き上げてきた時、なぜか一刀だけが微妙な雰囲気だった。

「何や?心配事でも」
エセ関西弁でヒョウヒョウと生きている様で、肝腎な処では友人思いな親友から心配された。
「いや、どう言う訳だか分からんが、いやな予感がするんだ」
田舎で剣術道場を開いている祖父を持ち、現在は剣道部唯一の男子部員。
その程度の剣士である一刀ですら、何か不審を感じる様な何かが感じられた様な気がしていた。

只この学生たちは知らなかった、理事長を訪問して来た客の事は………。

……。

…結局その夜、竹刀片手に一刀は校内を見回ってみた。

もっとも一刀程度の感覚では確信が持てる程でも無い。あくまで念のため、ちょうど満月だった月夜の散歩半分ていどの
その程度の決して真面目とも言えない見回りで見付けて仕舞うとは、全(まった)く何かの主人公補正(?)か何かの様だった。

……こう言う校名の学園だから当然、ほぼ学園の中央にチャペルが存在している。

罰当たりにも其のチャペル内で、祭壇の近くにある保管場所を破壊していた2人組。
しかも、その片方は古代ローマ軍団の百人隊長のコスプレ(?)をしている。
その罰当たりは、どうやら日曜日ごとにチャペルで使用されていた聖杯を持ち出すと少しばかり弄り回していた。
そして更に罰当たりな事には其の場に放り出すと、何か悪態を吐き出した。
「くそ!ただの普通の聖杯だ。デマを喰ったか?」

本来、信者にとっての聖杯とは『最後の晩餐』に由来する。
『晩餐』の席上イエスは、卓に置かれていた銀の杯を取り上げた。
そして固い無発酵パンをブドウ酒に浸して柔らかくしてから食するための、杯の中の赤ブドウ酒で柔らかくしたパンを弟子たちに与えた。
「受け取れ。これは私の血と肉である」
かくて弟子たちは、イエス・キリストの使命を受け継ぐ12使徒と成った。

以来、日曜日ごとに信者ならば其の追体験をする。
このチャペルにも、その日曜日ごとに使用されるための銀の聖杯は備えられていたのだが。

その聖杯を罰当たりにも放り出すと同時に、相棒の百人隊長(?)の方が一刀を感じ取った。
「悪い処に居合わせたな」
田舎で剣術道場を開いている祖父を偶々(たまたま)持っていた、その程度の一刀にも感じ取れる明確な殺意。
「マスター、余分な殺生かも知れんが」
「ふん。令呪を無駄使いさせる積もりか?あの小僧こそ余分なものを見なければ長生き出来たものを」
その問答ないしは漫才の貴重な数秒を、一刀はムダにはしなかった。
36の計略よりも逃走が正当な戦術だったろう。

とは言え、チャペルから歴史資料館まで逃走出来ただけでも、完全な奇跡か主人公補正だった。
無論、一刀としても闇雲に逃げただけでは無い積もりでもいる。
何とか資料館まで辿(たど)り着くと、あえて手近な窓を適当な石か何かで破り館内に侵入した。
流石にセキュリティ・システムが作動したか、消えていた館内の照明が点灯する。
だが、一刀の期待する警備員とか警察とかよりも先に、危険人物の2人組が到着していた。

どうやら奇跡なり主人公補正なりは、未だ1つだけは残っていたらしい。
無我夢中かつ自分でも信じがたい身のこなしで手近な展示ケースを盾にした瞬間
そのケースはガラスの破片と成って飛び散り、中に展示されていた卑弥呼の時代(?)らしき銅鏡が真っ2つに成って飛び散った。
そして其の後には、やたらと時代考証も正確な古代ローマ軍団兵が投げていた槍がケースの台に突き刺さっていた。
「ほほう、悪運は強いな」
一刀にしてみれば余計なお世話だ。
「何せ、“本物”の聖槍に狙われて生きているとは、な」
そんな事を言いながら一刀が破った窓から資料館に侵入して来る危険人物と百人隊長(?)
せめて逃走中の何処(どこ)かで無くした竹刀の替わりに、とケースに刺さっている槍を抜こうとしたが、その穂先はリサイクル不能に成っていた。

ローマ軍団兵が投げていた槍は敵にリサイクルされない様、そういう構造に造られていた。
そんな処まで正確に再現されていた投げ槍が突然、光の粒子と成って消失する。
同時に完全に使用前の状態に復元されて、百人隊長(?)の利き手に戻っていた。
「流石。“聖杯”がらみで槍と言えば“聖槍”。“本物”は違うねぇ」
「マスター…クラスばかりか正体のヒントまでも、みだりに与えるべきでは」
「どうせ、もうすぐ沈黙するさ。永遠にね」

冗談じゃねええ!!こんな事で死んでたまるか!

事ここに及んで、ここが三国時代(?)の展示物を展示していたコーナーだった事に気付いていた。
同時に憧れていた『三国志演義』の英雄たちが、走馬灯の様に脳内を駆けめぐる。
その瞬間……

2つに割れて床に落ちていた銅鏡が光り輝き始めた。
鏡の性質としての反射では、明らかに無い。鏡自体が何の作用かは知らないが発光しているのだ。
「何?!まさか、こちらだったのか?ここに在る“うつわ”と言うのは?!」
なぜか初めて慌(あわ)てる危険人物。
一刀だって脳内CPUは過負荷状態だ。

そして銅鏡の発する白光が爆発した。その後に……

「貴方が私“たち”の「ご主人様」ですか?」
一刀の正面には新しいコスプレ(?)が登場していた。
それこそ『演義』か『なんとか無双』のコスプレの様な姿をした美少女。
桃色の髪を桃割れにしてニッコリと微笑(ほほえ)んでいる。
その容姿と言い、とある部分が福々しい体型と言い、そして優しげで素直そうな雰囲気まで、まるで「美少女ゲーム」の正統ヒロインの様。
背中には剣こそ負ってはいたが、それを抜いて戦う事など似合いそうも無い。

その「似合いそうも無い」まで思い付くと同時に、一刀は警告を叫んでいた。
「君だけでも早く逃げろ!!危険だ」
美少女は自分の後ろを振り向く。
手元に復元された槍を突きの構えに構え、逆の手には機動隊の盾の様な大きさと形の盾を闘牛士のマントの様に構えた百人隊長。
その影に隠れる様にしている「マスター」とか呼ばれていた危険人物。

「やっぱり…英霊なんかに成っちゃうと、呼ばれるのは戦うためなんですね」
瞬間だけ悲しそうな様子を見せると、次の瞬間には決断の表情を作って背中の剣を抜いた。
「危ない」
一刀程度の剣士が見ても戦いが似合いそうも無い。
それに抜いた剣も戦闘用と言うよりは、むしろ“宝剣”と呼ぶのが似合いそうだ。
だが彼女は其の宝剣を天に向けると何かの、いや『三国志』ファンの一刀には“読み慣れた”筈の言霊(ことだま)を放っていた。

「我ら誓う」

我ら三人、姓は違えども姉妹の契りを結びしからは、
心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。
上は国家に報い、下は民を安んずることを誓う。
同年、同月、同日に生まれる事を得ずとも、
願わくば同年、同月、同日に死せん事を。
天よ地よ!まこと見定められよ、この心を。
もしも義に背き恩を忘れるならば、天も人も殺したまえ!

その瞬間、まるで「龍が天に昇る」かの様な稲妻が宝剣から放たれた。そして次の瞬間には彼女の左右に新たに登場していた。
黒髪をひるがえし、青龍偃(えん)月の大刀を頼もしく構えた美丈夫。片や小柄ながらも力一杯、1丈8尺の蛇矛を振りかざしている。
繰り返しに成るが一刀程度の剣士が見ても分かる。それ程の強者だ。

「ばかな…英霊が英霊を召喚する宝具だと…それにさっきの言霊…まさかこいつらは…」
「マスター、彼女たちの正体に心当たりが」
「在る、と言えば在る。だが当たりだったら、お前だけの2対1で勝てる相手じゃ無い」
先程までの余裕は、どこかへ消失していた。
「ここは戦術的転進だ」

………。

……。

…どうやら一刀は命拾いしたらしかった。

「君たちは誰なんだ?いや、そもそも何が起こっているのか知っているのか?あいつらは何者なんだ?」
疑問だらけなのは当然だろう。
そんな一刀に少しの間だけ困惑していたが、今度は背中の宝剣を鞘(さや)ごと目の前に捧げる様に持つと半ばだけ抜いて新しい言霊を唱えた。

「教えて、伏竜鳳雛」

また新たに召還された2人組が「はわあわ」噛みながらも説明してくれた。
『聖杯戦争』
ようやっと一刀は、自分が何に巻き込まれていたかを理解出来た。

そして北郷一刀は選択する。“聖杯”に何を願うかを。


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