そういうものをよく読みあさっていた。読むたびに「わははこいつバッカでー」と文字通り人事のように笑っていた。
うん、もうしません。君たちがどれだけ辛かったか、どれほど不安だったか、先が見えるだけにやがて来ることがわかっている不幸がどれほど恐いか、この身を持って実感したから。
でもさあ、どうせ憑依しちゃうならもう少しましなのに、と思うのよ。たとえば最近の流行り(俺の主観時間)だと、某使い魔の青銅のあいつとかさ。まだ努力とかで才能を伸ばしてなんとかなりそうな見込みが感じられるじゃない。そしてあわよくば原作ヒロインをゲット!とかさらにさらに漢の浪漫ハーレムを!とかを心の支えにして日々を頑張ってゆけそうじゃないか?
準主要キャストのくせに、能力が皆無なキャラになっちまったらどうすればいいのかなあ。
なんで、ヘタレ?なんで、エリート家系の中の落ちこぼれ?出涸らし?
なんで、青いワカメなんだよおおおお
流されたゆたうワカメのごとく
現在、高校一年生。憑依してから半年ほど経過しています。
ブラウニーとは既に友達です。正直、聖杯戦争とかのこれからを考えると不安でしょうがなく、守ってくれそうな人が欲しいけれど、まだこいつぐらいしか味方になってくれそうな算段が今のところたってません。
てか、実際こいつ好い人過ぎます。誰かが見守っててあげないといつか騙されそうです。こいつ早く何とかしないと・・・・という話題で某寺の子と仲良くなってしまいました。だってこいつ庇護欲をそそりすぎるんだもん。
桜は、なんとか黒化を食い止めるため、今更ながら優しくしてます。
ていうかこいつを味方に出来るかどうかが俺の死亡フラグの大半を管理している気がしますよマジでいやマジで。
しかし、原作の衛宮家の光景から想像できないくらいどんよりしてますよこの子。いや、ぶっちゃけこうしてしまったのはこの家なんだろうけど。普段は死んだ目、話しかけると必要以上にビクッと。
にこやかに話しかけたら、「今度は何をたくらんでるの、やさしくするふりで次は私をどんな地獄に突き落とすの」みたいな目で見られた。軽くへこんだ。
未だに笑顔は見せてくれないが、ビクビクプルプルは見せなくなってきている。時折ジジイに連れられていくときは相変わらず目が魚屋の店先に並ぶ魚のそれになっているけど。無力な兄を許してくれ。おれの安全が確保されたら出来ることはしてやるから。
そして、うっかり女王凛。この子確かに優秀だけどほんとに詰めが甘いわ。途中までは完璧なのに最後でしくじる。赤つながりか、ここぞ、でしくじるところは某赤い彗星と同じ気がする。
なんとかつながりを作っときたいので、桜をダシにしてみた。「この前桜が・・・」みたいな話を振り続けたら、こちらへの関心が石ころレベルからクラスメートレベルまで進化しましたよ。
うん、進化したにしても前段階がひどすぎだったと思うんだがどうだろう。
最近は桜が衛宮家に行かないときは弁当を作ってもらってるのだが、凛におかず交換を申し出ると受けてくれる。その味に嬉しそうな顔をしているので、やはり妹の成長に喜びを感じているようだ。
つぎのおかず交換の日には遠坂家の料理レベルも成長していたので、妹の成長にライバル心も感じているようだ。
ともあれ頼りに出来る人材は今のとここいつしかいない。頑張って信頼を得なければ。マキリの魔術をなんとか理解して、凛に教えれば桜の体は何とかしてくれるだろう。
ルールブレイカーとか士郎が投影する手もあるが、やつの体にかかる負担がわからんし、キャスターが士郎の前で確実にルールブレイカーを使ってくれる保証もない。
てなわけで今、間桐家の書庫で魔術書を読み漁っているわけですが、今更ながらに猛勉強を始める俺に家族は無関心です。
「役立たずが何を無駄なことをしとるのか」「兄さん、結局無駄に終わったらまた私にあたるのかな」とか考えてそうです。欝だ。
半ば駄目もとで勉強してたけど、以外に俺が読める範囲でなんとかなる知識だった。
ていうか、俺が普通に閲覧できるとこに桜の胸の蟲に関する記述のある書まで置いとくのはどうなんだろう。
外部からは結界があるんだろうけど、内部に対してのセキュリティ薄すぎじゃね?桜が造反したらどうするつもりなんだろ?
ああ、そういえば、あっさり背かれて取り出されて「ぷちっ」ていうシーンがあったっけ。桜の洗脳と行動パターン認識に絶対の自信があるんだろうな。やっぱ妖怪も長生きしすぎると耄碌すんだろーね。
まして俺の反逆なんてそれ以上に警戒されてないんだろう。
したところで高が知れてるだろうし、オリジナルのワカメくんはどうせ知識つけても魔術行使できないから無駄だし、プライド高いせいでここで得た知識を他の魔術師のとこへ持ってくなんてことしない、と思われてるのか。
甘い!ジジイのように奸知に長けたキャラは自分の頭の中だけで世界が完結してるもんだから、想定外のことですぐ潰されるんだよな。
死に際の捨てゼリフはだいたい「ば、馬鹿な・・・。」とか「こんなはずでは・・・。」とか、そんなん。
くくく、てめーのようなやつは俺のような小物の手にかかって死ぬのが相場なんだよ、と下品に笑ったところで自分の立ち位置を再確認してまた鬱になった。
そんなこんなで原作開始時間までわずか。予定より早くとうとうライダーを呼び出す日がやってきました。あのナイスバディを拝めるのは楽しみだ。朝からワクテカが止まりません。
「桜よ、委細承知しておろうな。」
「はい、お爺様。」
「大丈夫だ。お前ならやれるさ。頑張れ。」
「はい。がんばります兄さん。」
笑顔をみせて応える妹と胡乱気な目で「とっととやれ」と促してくる爺。
桜がようやく懐いてきました。このごろは勉強中の俺に夜食とか作って持ってきてくれる。礼を言ったり褒めてやるとはにかんだように笑顔を見せるようになった。
例の蟲によるごにょごにょのあと、精を補充する役目は当然俺なわけだが、そのときに優しくしてやってるのも大きかった気がする。
しかしこれは喜んでばかりもいられん。桜が家に居易くなったということは衛宮家に行く頻度が下がったということで、桜と士郎、セイバー、凛の絡みが減ることに他ならない。
接点が少なくなったせいで桜を助けるときに間に合わなかったりしたら、即ち、あいつらが桜を救ってくれるついでに俺も助けてくれる目がつぶれてしまうかもしれん。
士郎あたりはそれでも助けてくれそうだが、助ける助けないの方針をめぐって他のメンバーと齟齬が起きそうだ。あいつらのピンチってそういう仲間内の不和の直後にもあった気がするし、気をつけておかねば。
とかなんとか考えてる間にライダー召喚。いろいろジジイに因果をふくまれてます。説明終了し、いざ権利を譲渡!
いやライダーさん「えー」みたいな顔やめてください。目は口ほどにものを言い、とかいうけど、目が隠れててもそれ以外だけであなたの心情を雄弁に物語ってますよ?
もう少し気を使って?うん、あなたの嫌いなペルセウスと俺の類似性については承知してますから。つか中身別物のはずなんだけど。
俺と慎二って結構中身似ていたのかな。みんな違和感を感じてなかったみたいだし。またここでもライダーとも人間関係の構築に悩まなければならんのか・・・鬱だ。
「わかりました。ワカ・・シンジ。あなたをマスターとします。」
「今ワカメって言おうとしたよね?いえすいませんナンデモナイデス」
眼帯の上からでも睨んでみせるとはさすがメデューサ。
「駄目よライダー、兄さんを苛めないで。」
「サクラがそういうなら・・。」
なんだろう。この瞬間マキリのヒエラルキー最下位に落ちた気がする。
そんなこんなで始まってしまいました、聖杯戦争。はたしてどうやって生き残ればいいのか。
ワカメの臆病が冬木市を救うと信じて・・・
続かないんじゃないかな。