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[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 BLACK CATクロス
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/19 01:25
このSSは魔法少女リリカルなのはとジャンプで連載されていたBLACK CATとのクロス作品です。

設定等で多少の違いが出るかもしれませんがご了承ください。


















激しい轟音と光とともに一筋の弾丸が一人の異形とも見える男を貫いた。
その男と相対するように一人の男が銃を構えていた。

トレイン・ハートネット


かつては秘密結社クロノスに所属する不吉を届ける存在、黒猫(ブラックキャット)と呼ばれる抹殺者(イレイザー)だった男である。
その彼も過去の因縁により結社を抜け、掃除屋(スイーパー)に転身することになった。

さまざまな戦いを経て彼はようやく過去との因縁にけりをつけることができた。
目の前の男が倒れたのを確認すると彼も力尽きるように倒れた。

薄れゆく意識の中彼の相棒、仲間の声が聞こえた。

(スヴェン、姫っち。ケリはつけたぜ)

掃除屋としてコンビを組んだ相棒が手を差し伸べるがトレインにそれに捕まるだけの力はすでになく瓦礫とともに飲み込まれていった。

瓦礫とともに落ちてゆくなかトレインは一人の女性を思い浮かべていた。

(サヤ、最後の最後まで面倒かけちまったな。)

因縁の相手を打ち抜いた最後の力、炸裂・電磁銃。
トレインは自身の力では彼女、ミナツキ・サヤが撃たせてくれたものだと感じていた。

「ようやくあんたのところに行けるかもな。」

トレインは自嘲気味の表情だった。
しかしそれは突然の光とともにかき消された。

(ダメだよ。)

(サヤ!?)

かつて自分が守ることのできなかった女性の声が確かに聞こえた。
トレインは目を見開きあたりを見まわした。
そこで彼はある違和感に気づいた。

彼がいる場所があの崩れゆく城のではなく真っ白の何もない空間で空中にいたはずなのにいつの間にか地に足が付いていた。

そして自身のすぐそばに彼女がいた。


「あんたにこうして会うのも久しぶりだな。」

「そうだね。」

トレインの前に立つ彼女は記憶の中の彼女と寸分の違いもない笑顔を浮かべ立っていた。

「さっきだめとか言っていたがどういうことなんだ?」

「トレイン君。君はまだこっちに来ちゃダメってこと。」

「だけどあんたと同じとこに立っているってことは…。」

トレイン自身は自信がもう死に際にいることを感じていた。

「うん、そうだね。でもまだ間に合うかもしれない。」

「間に合う?」

「そう、私が最後に力を貸してあげればね。」

いたずらを考えている子供のような笑顔を浮かべてトレインのほほをなでた。

「トレイン君はようやく私という過去にけりをつけて本当の自由を手に入れたんだよ。君はまだまだ生きなきゃいけないよ。」

「だがあんたは!!」

トレインの唇に人差し指をあて、首を振り

「ううん、私は十分生きたと思うよ。そりゃもう少し君といたいと思うけどそれ以上に君にはもっと生きていてほしいんだ。」

「サヤ…。」

「いつか、またいつか会えるから。それまでは自由な世界を楽しんでみて。ね?」


何かを悟ったようにトレインは笑顔を浮かべ

「わかった。もう少し野良猫生活を続けてみるわ。」

「うん、けどね。」

「???」

「ううん、なんでもない。さあ、あっちにある光のほうに行って。」

彼女が指示したほうには確かにまばゆいばかりの光の塊のようなものがあった。

「んじゃ、行ってくるわ。あんたも元気でな。」

「うん。気をつけてね。」

そこらへんに散歩に行くかの如くトレインは軽い足取りで振り返ることなくその光の中に入って行った。
だがなんともないのは後姿だけであり、頬には一筋の流れ落ちるものがあった。



(君が向かう世界、以前とは違うものでも君ならやっていけると信じているよ。)














トレインは目をあけるとその場を見回してみた。
どこかの山の中のようで自分が寝ているのが雑草の上だった。

おもむろに立ち上がってみると先ほどの戦いがうそのように軽かった。
むしろ軽すぎるほどだった。
そしてすぐそばには壊れたはずの愛銃ハーディスが完全な形で存在していた。

「確か銃口がいかれたはずだったが」

ハーディスを持ち上げまじまじと見ているとある違和感があった。

「なーんか、妙に視線が低いような気がすんな。」

その時は特に気にすることなく人がいるところを探しに歩き始めた。




しばらくして自身の姿を見て途方に暮れるトレインの姿この町、海鳴にあった。














[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 設定
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/19 14:10
トレイン・ハートネット 

25歳(見た目年齢は10歳前後)
10歳前後の体型になってしまったがかつての銃技はそのままに体術面でも常人離れした動きができる。
とはいえ筋力が落ちてしまっていることから本来の実力を発揮するまでにはいかない。また、クイックドロウなどの負担のかかる銃技は多用できなくなっている。
電磁銃に関しては能力を失っておらず一日一回(体力が落ちているため)のみという制限があるものの使用が可能である。


以上のようなさまざまな点で子供化した弊害があるものの今までの戦闘経験、飛び道具などを駆使することにより一般的な管理局の戦闘員では太刀打ちできない戦闘能力を有しておりデバイスなしで魔導師と戦える。
魔法なしで十分な実力を持っているが魔力資質がないわけではなく平均以上の潜在能力を有している。なお現時点での保有魔力量は不明である。

所持品

ハーディス:長年トレインが愛用してきた愛銃。オリハルコンという未知の金属でできており生半可な攻撃では破壊されることはなくまたよほどの高熱でもない限り形を変えることがない。その強度ゆえ防御手段の一つして使用されることもある。オリハルコンの性質のせいか電気を蓄える性質があり、それにより電磁銃という強力な一撃を撃つことができる。またトレインのクイックドロウに耐えられる唯一の銃ともいえる。

実弾60発:トレインの戦闘における主要実弾。

炸裂弾(バーストブレット)3発:相棒スヴェンが発明した特殊弾。着弾とともに炸裂するトレインの武器において破壊力においてはNo1。

冷凍弾(フリーズブレット)3発:相棒スヴェンが発明した特殊弾。着弾するとともに弾に内蔵されている液体窒素が漏れ出し被弾対象を凍らせる。

跳弾(リフレクショット)10発:ミナツキ・サヤが武器としていた。本来は銃技の一つとしていたが本作品では実弾との区別をつけている。

その他にトリモチ弾、麻酔弾、煙幕弾などバラエティーに富んだ武器を所持している。

(ハーディス以外はなぜかタスキ掛けのリュックにつめられている。)





[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第1話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/20 00:09
トレインは途方にくれていた。
自身の姿が10歳前後になっていたことも最初は戸惑っていたが、視点が変わって面白いのと以前も似たようなことを経験したせいか持前の能天気さで乗り切っていた。
しかし、

「イェンが使えないとはな…。」

そう、通貨が違っていたのだ。
街に出てとりあえず腹ごしらえをしようとしてハンバーガショップに入ったところ会計をしようとしたところでお金を出したが使えないといわれ、子供であったせいか店員にやんわりと注意をされたのであった。
ただでさえ先ほどの戦闘での疲労や電磁銃を撃ったせいか強力な空腹が彼を襲っていた。

「いままで金がないとはいえカップ麺ぐらいは食えたからな。」

借金生活が長かったせいかある程度の空腹にはなれていたが今回ばかりはトレインににもこたえるようだ。
なんとかして先立つものを稼ごうと思案したが持ていたはずのスイーパーライセンスがなくなっていた。だが子ども姿になったトレインでは使用できるか疑わしいものだが。
行くあてもなくぶらぶらとしているとやがて夕方になり辺りも暗くなり始めていた。

「へたすりゃ今日は野宿か。」

掃除屋生活をやっていると珍しいことではなかったが現状ではできれば勘弁してほしいものだった。
少しうなだれながら歩いているトレインは子供の姿なのに妙な哀愁が漂っていた。




















そうしてとぼとぼと歩いているとトレインは妙な感覚を感じていた。
先ほどの情けない顔はどこに行ったのか一転表情が変わり妙な感覚を感じた方向に走り出した。

(殺気?いや、なんともいえないいやな感じだな)
以前、星の使徒と戦った時ドクターと呼ばれる男が差し向けてきた掃除屋たちと戦った時のような感覚だった。



















そしてしばらく走って妙な感覚を感じた場所にきてみるとそこはなんの変哲のない公園だった。
時間も時間だったせいか遊んでいる子供たちもおらず閑散としていた。

「………。」

トレインは何も言わず公園の敷地内に入って行った。
眼光は鋭く周りへの警戒は一切緩むことなく一歩一歩進んでいった。
そしてそれはいきなり現れた。

「いっ!?」

嫌な違和感を感じていた時点でただ事ではないと思っていたが目の前にいるモノは想像以上だった。

「俺も黒猫と呼ばれていたがこいつはちょっとな。」

彼の目の前には体長3メートルは超えようかという化け猫がいた。
そしてそれは容赦なく鋭い爪を彼に向けて振りおろした。


トレインはその一撃を難なくかわし、相棒であるハーディスを構えた。
以前のトレインであればもう少し面喰っていたかもしれないが星の使徒との戦いでもはや何が出てきても不思議はないと感じ始めていた。

「シキとかいうやつが出してきた戦闘魔蟲に比べたらマシだしな。」

とはいえ油断はできない。
化け猫が爪を振り下ろした場所には深くえぐられた跡があった。

「腹も減ってることだし一気にけりをつけさせてもらうぜ!!」


シリンダーに銃弾を込め、狙いを定めて銃弾を放った。
音とともにトレインの十八番であるクイックドロウで相手に銃弾を命中させた。
以前Tレックスを相手に仕留めたのと同様に生物にとって神経が集まっている指先、先ほど地面をえぐった爪に狙いを定めて寸分のずれもなく放ち命中したが…。

「はっ!?」

命中してはいるようだったが銃弾は貫通せずはじかれたように足元に転がっていた。
ご丁寧に三発揃って。
獣相手に仕留めることのなかった攻撃は相手を刺激するだけの行為で化け猫も怒りをあらわにしてトレインに突っ込んできた。

「よっと。」

特にあわてるでもなくトレインはその場から跳躍し手近にあった木の枝につかまり相手とは逆の方向に着地した。
化け猫はそのまま木に激突してよろけていた。

「さ~て、どうしたもんかね。」

トレインの中では特に焦りはなかった。
が若干の戸惑いはあった。
通常弾でははじかれて動きを抑えるどころかダメージすらない。
特殊弾、炸裂弾や冷凍弾を駆使すれば倒すことはできるだろうが相手は敵意を持っているが悪意をもって襲ってくるものではないので無暗やたらと殺すことはできることなら避けたいと考えていた。
しかし、ここで自分が下手なことをして相手を逃がすようなことがあれば一般人に被害が出るかもしれないということを考えるとそう甘いことも言っていられない。
トレインは相手に目を向けてみるとある事に気がついた。

(額がやたらと光ってるな)

さっきは気にも留めていなかったが確かに額で何か光っていた。
確信はないがトレインの勘もあれに攻撃しろと告げていた。

(いい解決策がみつからないいじょう自分の勘に頼ってみるか)

即断で決めるとタスキ掛けの鞄から猫の絵柄がペイントされた手榴弾のようなものを取り出し相手に向かって駆け出しながら投げつけた。

すると煙幕とともに化け猫の足元にトリモチが現れ相手の足を絡めてとっていた。
化け猫はそれをどうにかしようと必死にもがくがなかなか取れない。
トレインはそのすきを逃さずに一気に近づき相手の上空にジャンプした。

「ちょっと痛ぇけどかんべんしてくれよ。」

そして銃を振り下ろした。

(黒爪)

銃を撃つのではなく高速の打撃により相手にダメージを与えるトレインの接近戦の打撃技であった。

本来であればかなりのダメージを受けるはずだが体が小さくなったトレインでは威力が落ちているのと同時に加減をしていることから大したダメージにはなっていなかったが

キーーーーーーン

甲高い音ともに何か小さな宝石のようなものが猫の額から転がり落ちてきた。
それは先ほど見えた光の正体で、その光が取り除かれた猫は見る見るうちに小さくなり普通の猫に戻っていた。

トレインは猫の様子を見てみると呼吸もあり、目立った外傷もないことからほっと一息ついた。
すると猫はすぐに意識を取り戻しトレインの姿をみるやすぐに逃げ出してしまった。

「やれやれ、同じ猫なのに嫌われちまったかな?」

飄々と特に気にすることなく呟きながらトレインはこぼれおちた宝石に近寄った。
手に取ってみたが特に一風変わったところはない。
まばゆいばかりの輝きをしているが自分は特に変調はない。

「こいつはいったいなんなんだか。ま、どこかで売り払えばいい金になるかもな。」

自身が考えてもわからないのだから深く考えても仕方がないと考えたトレインは手にしているものを換金し生活の足しにすることにした。
がそこに一人の影が降りてきた。








その影の正体は10前後と思われる少女だった。

(姫っちと同じくらいの歳か?っていまこいつ飛んできたよな?)

さまざまな疑問が浮かび上がったがとりあえずトレインは思いついた一言を言ってみた。

「なあ?それはお前の趣味か?」

「へ?」

相手の少女は予想外の一言だったのか面喰っているようだった。

「人の趣味あれこれいうつもりはないが普段着にしてはちょっとな~。」

「そ、そうでしょうか?なのは気に入っているんですけど。」

なのはという少女は自分の格好を見回してみていた。
すると別のものが声をあげた。

「なのは!!いまはそんなことを気にしている場合じゃないよ。」

声の主は…イタチ?
少女の肩から出てきたイタチと思われる生き物がしゃべっていた。

(ま、まー猿もしゃべるくらいだしな。)

トレインは無理やり自分を納得させ少女に視線を向けた。

「え、えーと私は高町なのはと言います。」

「おう、俺はトレイン・ハートネットだ。」

ごく自然にトレインは自己紹介を返した。
あまりに普通に返してきたせいかなのはが少し戸惑い気味だった。

(ユーノ君がしゃべったり、いろいろとおかしなことになっているのにすごく落ち着いてるね)

(うん。でも彼からは魔力を使用した感じがしないから魔導師ではないはずだけど。)


「えと、トレイン君がもっているその石なんだけど…。」

「こいつか?」

トレインはなのはが指さした石をなのはに見せた。

「それはジュエルシードと呼ばれるものでとても危険なものなんだ。」

「そりゃあなんとなくわかるわ。猫があんな化けものに変るんだからな。」

「「へ!?」」

ユーノとなのはは二人揃って驚愕の表情をみせた。
それに気がつかずにトレインは話を続ける。

「いや~、似たようなやつとは戦ったことはあるけど殺すわけにもいかなかったから光っている部分が見えたもんだからそこに攻撃したらビンゴでな。」

話を続けようとしたトレインを静止しユーノが尋ねた。

「ちょ、ちょっと待って。君はさっきまでここで何をしていたんだい?」

「なにって化け猫退治だよ。妙な感覚を感じたもんだからここに来てみればいきなりあんな化けものに襲われたからな。」

「君の口ぶりからすると倒したみたいな感じだけど?」

トレインはさも当然のように

「倒したけど。」

「「………。」」

(ユーノ君。トレイン君は魔導師ではないんだよね?)

(うん、見たところはね。魔力は持っているみたいだけど使用した形跡がみられないしデバイスらしきものも)

ユーノとの念話していると二人の視線がトレインのもう片方の手に持っているものに集まった。
トレインは二人が凝視しているものを追ってみると自分の愛銃であることに気づいた。

「なんだ?こいつがどうかしたのか?」

「それはなんだい?」

「なんだいって、銃だけど。それがどうかしたか?」

「それはデバイスなのかい?」

(でばいす?)

トレインは何ことやらさっぱりわからず首を傾けた。

「こいつは実銃でおれの相棒だけどそれが?」

「「実銃!?」」


さらに驚愕の表情をした。
続けざまになのはが聞いてきた。

「トレイン君はそれでその、化け猫を倒したんですか?」

「さっきそう言っただろう。」

「ど、どうやって。普通の人間がいくら質量兵器を持っているからって暴走したジュエルシードがとりついた生物と戦うなんて。」

「どうやってって言われてもな。でもここらにある惨状を見れば嘘じゃないってことくらいわかるだろ?」

改めて二人は公園の敷地内を見回した。
そこには無残にもおられている木と深く爪のようなものでえぐられた跡が残っていた。
この惨状をみてトレインの行っていることを否定することは容易ではなかった。

(しかも彼は現にジュエルシードを手にしている。)

その事実が何よりの証明になるものだった。


「まあ、俺としてはこいつを換金して生活費の足しにするだけなんだが。」

「え!?えーとそれはできればやめてなのはたちに渡してほしいのですが?」

「なんで?」

「それは危険なものなんだ。人の手に渡ったらまた暴走するかもしれない。」

「んなこといってもお前らみたいな子どもとイタチに何ができるんだ?」

至極当然の疑問だった。
意を決したようになのははユーノに言った。

「ユーノ君、トレイン君に事情を説明しよう?」

「え!?でもなのは彼は素性もわからないし何より魔導師でもない人間をこれ以上巻き込むわけには。」

「でも……。」

二人で何やらもめ始めていたがトレインも限界が近づいていた。
体がふらふらと頼りなく揺れ始め

そして

バタッ!!!


「ふぇ?ってトレイン君!?」

「え!?し、しっかりして。」

あわてて一人と一匹がトレインに近づき
そしてトレインは半眼開きの状態でつぶやいた。

「は、は。」

「「は?」」

「はらへった…。」


ぎゅーーーーーーーーっ!!!



盛大な胃袋の音とともにトレインは意識を手放した。

戦闘中は気がつかなかったが彼の空腹は、胃は限界に近付いていたのであった。














[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第2話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/20 15:11
なのはは目の前の光景に圧倒されていた。

「す、すごい。」

「う~んいい食べっぷりだ。」

「トレイン君。おいしいかしら?」

「おう、ヘタな高級レストランより全然イケるぜ桃子さん。」

桃子は満足げににっこりと笑いトレインが完食した食器を片づけていった。
トレインも十分食べ満足したのかおなかを二、三度たたき椅子の背もたれによりかかった。

「はー、食った食った。それにしてもサンキューなのは。」

「ううん、気にしないでトレイン君。」

「そうだぞ、困った時はおたがいさまさ。」

あのあと空腹の余り倒れたトレインをなのは一人で運ぶのは無理と判断しユーノに見張ってもらい、自宅まで戻り家族に子供が倒れていると報告し今に至っている。

ちなみに恭也、美由希は帰宅しておらず士郎がトレインをおぶって高町家まで運んだ。


「はい、確か牛乳でよかったのよね?」

「おう、ちっと背を伸ばさないといけないからな。」

そして牛乳が入ったカップに手を伸ばし飲み始めた。

「それにしてもトレイン君、あなたのご家族は?」

「ん?家族か……。」

トレインは一瞬考え込んでしまった。

彼の家族は自信が幼少のころ目の前で殺され、その殺した相手は自信の第二の親、もしくは生きる術を叩き込んだ師ともいえた。

この家族はいたって普通の幸せそのもの家族だ。
一人は自分と同じ匂いを感じる者もいるが、この家族に自分の複雑な人生を語るにはどうしても戸惑われた。
それを空気で察した士郎が

「無理に言う必要は「いや、ここまで面倒かけちまったんだ話させてもらうよ。」

一息おきトレインは話し始めた。

「おれの両親はガキの頃に死んだんだ。」

「「えっ!?」」

なのはと桃子は驚いていたが士郎は特に反応を示すことなく黙って聞いていた。

「親が何をしていたか俺は知らなかったし、殺された理由もよくわからねぇ。まあ俺はこうして生きてるわけだしな特に気にする必要もないぜ。」

あっけらかんとできるだけ自然に話したつもりだったがやはり空気は重かった。
トレインにはこの重苦しい空気は拷問の様に思えた。

「あーーーー、あんたらがそこまで気にするようなことじゃないだろ。はい!!!この話はここまで。」

無理やり大声をあげその場の空気を振り払うかのようにした。

しかし少し気まずい雰囲気を出しているなのは、桃子に対して士郎は厳しいまなざしでトレインを見ていた。

(このおっちゃんはもしかしたら。)

只者ではない雰囲気を感じていたがやはり間違ってはいなかったようだ。

少し落ちつたなのはがトレインに話しかけた。

「トレイン君、あのね…。」

話を切り出そうとしたが、

「済まない、なのは。ちょっとトレイン君と二人で話をしたいんだが?」

「え!?」

「すぐ、すませるから大丈夫さ。トレイン君もいいかな?」

「ああ。」

おそらく拒否権はないのだろう。
目の前の男も自分が普通の人間ではないことくらいとっくに気づいているのだろう。

「じゃあこっちに来てくれないかな?桃子少し道場のほうに行ってくる。」

「はい、わかりました。」

そしてトレインも士郎の後を付いて行きながら道場に向かった。












「こんなところですまないね。」

連れてこられた道場はジパングの文化らしいつくりをしていた。
そして中央へ来たところで士郎は立ち止まり話し始めた。

「君は…。」

「おそらくあんたが思っている存在とかんがえて間違いないと思うぜ。」

「そうか。」

「あんたも似たようなくちだろ?あんたからは薄れてはいるが独特のにおいがするしな。」

士郎はなのはに呼び出されトレインをを助けた時に拾った彼の鞄の中をのぞいていた。
そこには到底娘と同世代の子どもがもつようなものではなくひどくなつかしいにおいをさせる銃弾の数々だった。


「君は暗殺者かい?」

「それは元だな。今は掃除屋だ。」

「掃除屋?」

「知らないのかよあんた?仮にもこっちの世界にもいた人間だろ?」

「聞き覚えはないな。」

「簡単に言えば賞金稼ぎさ。懸賞金のかかった犯罪者連中を捕まえて生活の足しにする。それが俺の生活さ。」

「それが本当だとしても君が俺の家族に危害を及ぼさないという保障にはならないがね。」

その言葉を発した瞬間士郎はトレインに対して明確な殺気を飛ばしてきた。

(ふ~ん、確かにこっちの世界に至ってのは間違いなさそうだな。これだけの殺気を飛ばせる人間はそうはいねぇ。)

殺気を一身に受けているトレインだったがどこ吹く風と言わんばかりに話し始めた。

「安心しな俺は仕掛けてこないかぎりターゲットでもない人間を襲うつもりはない、女、子どもに手をかけんのは俺の趣味にあわねぇ。それにむやみやたらとぶっ殺すのは俺の主義に反するしな。」








しばらく二人は無言で見つめあったままだったがふと士郎は笑みを浮かべ。

「わかった君の言葉を信じよう。」

「そうしてくれ。おれもあんたらに恩を仇で返すようなまねは絶対にしないつもりだ。」

「こんなところで話してすまなかったな。」

「いや、なのはのようなガキに聞かせるようなもんじゃねえしな。仕方ないさ。」

その一言を切った士郎は顔をしかめてたづねてきた。

「うむ、それなんだが。君もみたところなのはとそれほど変わらんだろう?」

「あ!?」

トレインは自信の姿が小さくなっていることを完全に頭から消していた。
自身は25にもなるような男なのだからなのはの様な少女はガキに見えるがそれは中身だけであって外見は10歳前後のこどもなのである。

「まあ、なんというか俺から見れば同じくらいの連中はガキっぽいというか…。」

本当のことを話せばよかったのだがこれ以上ややこしくなるのは勘弁願いたいので自分の姿については黙っていることにした。

「君から見ればそうかもしれんな。おっとずいぶんと話し込んでしまったな。なのはのほうも話があるみたいだから行っていいぞ。」

「んじゃこれで。」

道場から出ようとしたその瞬間

「トレイン君良ければ明日の朝6時くらいにここに来てくれないか?」

「なんでまた?」

「早朝に俺の息子と娘がここで剣術の稽古をしていてな良ければ君も参加してみないかなと思ったんだが。」

正直朝早く起きてまで稽古をしてみたいとは思わなかったが士郎の言っている剣術には興味があった。

「気が向いたら行かせてもらいますわ。」

「あ、あと最後に。」

士郎は笑顔でトレインに近づき肩をつかむと

「なのはに手を出したら………どうなるか分かっているね?」

「は?」

「返事は?」

「は、はい。」

今まで士郎が放っていた殺気の中でもぴか一なものがトレインに向かって放たれていた。








あれから士郎から解放されたトレインはなのはの部屋に来ていた。
コンコン

「あ、トレイン君?」

「おー、入るぞ。」

扉を開けるとベッドの上に座るなのはとユーノとかいうイタチがいた。

「トレイン君どーぞ中に入って。」

「んじゃ遠慮なく。」

部屋に入りとりあえず床に腰をおろして部屋の中を見回す。
なのはくらいの年頃の時の自分は同じ世代の子ども、ましてや女子と遊ぶようなことがなかったため女の子の部屋に入るのは初めてであった。
逆になのはのほうも男の子を自身の部屋のなかに入れるのは初めてであった。
実際はユーノがいるので初めてではないのだがユーノはなのはの中では男の子というカテゴリーから外れていた。

「あ、あんまり見られると恥ずかしいのですが。」

「あ、わりぃーな。んで話ってのはなんなんだ?」

「それは僕からさせてもらうよ。」

そこからユーノが大体のあらましや魔導師やジュエルシードについて説明を始めた。






















「魔導師か…。」

「たぶんトレイン君信じられないと思うけど。」

「いや、お前が飛んで来たことを考えるとあながち否定もできなしよ。」

確かに突拍子もない話だが導士(タオシー)という存在を知っているトレインにとって魔導師という存在も現実味のない話ではなかった。

「大体の事情は分かってもらえたかな?」

「まあな。お前の尻拭いをなのはにやってもらっていることくらいはわかったぜ。」

「!?」

「と、トレイン君!?」

トレインは戸惑っている二人を気にせずそのまま言葉をつづけた。

「なんでお前はその回収を自分一人でしようとしてるんだ?魔導師とかを管理している組織に頼めばいいんじゃねえのか?」

「だけど今回のことは僕の責任だから…。」

「だけど結局解決してねえだろ?お前の手に余ってるんだからこんなことになってるんじゃねえのか?」

「それは…。」

ユーノは反論できずにただうなだれていた。


「トレイン君、ユーノ君を責めないであげて。」

「ん?」

「いいんだなのは彼が言っていることはきっと正しいんだ。」

「ユーノ君…。」

「結果として関係のない君まで巻き込んでしまった時点で僕の手に余っている事態だったんだ。」


完全に意気消沈している二人にわざとらしい溜息をつきながらトレインが口を開いた。

「ったく。ユーノ。お前はどうしても自分でけりをつけたいんだな?」

「はい、これは僕がまいた種ですから。あ「なのははユーノを手伝いたいと?」

「は、はい。」

「ふーっ。わかったよなのはには飯を食わしてもらった恩もあるしな、俺がそのジュエルシードとかいうのを集めるのを手伝ってやるよ。」

「「…えぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」」


「な、なんだよ?いきなり大声あげやがって。」

「む、無理無理。魔導師でもない君がこんな危険なことを。」

「そうだよ。トレイン君。」

「あのなぁ?見てねえかもしれねえけど俺はお前らに心配されるほど弱くはないぞ。」

ナンバーズクラスの相手でなければよほどのことがない限り遅れをとるようなことはまずないという自信はトレインにはあった。
先ほどの化け物相手でも以前子どもの姿のとき戦ったクランツのほうがよほど驚異的であった。

「そうかもしれないがジュエルシードだけが驚異じゃないんだ。僕ら以外にもジュエルシードを集めている魔導師がいるんだ。」

「そうなのか?」

「うん、ものすごく強くてこの前も…。」

そのあとなのはは何も言わなかったが負けたのだろうということは容易に想像できた。

しかしそんな空気を払しょくさせるかの如くトレインは言い放った。

「んならなおさらほっとけねぇーな。なのはがどれくらいの実力かどうかしらねーが間違いなく俺のほうが戦闘慣れしてるからな。」

自信たっぷりに言い切ったトレインだったがなのは、ユーノはまだ納得しないような様子だった。

「わかった、そこまで信じられないなら。なのは。」

「は、はい?」

「俺とひと勝負しようぜ。」











ここから黒猫の新たなる戦いの日々の始まりであった。



[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第3話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/26 21:56
結局あのあとなのはとの勝負!?は実現しなかった。
なのは自身は戦うこと自体にあまりいい印象を抱いていない様子でトレインも無理強いするまではなかった。

トレイン自身も戦闘狂と呼ばれるような人間では腕の立つ者との戦いを多少なりとも楽しむ節があるが、彼にとって魔導師というモノはとても興味深いものだったからあえてなのはとの勝負も彼女の実力を試す、自身の実力を認めさせるというものよりただ魔法というものを見てみたいという好奇心からのであった。






「ふぁーあ、まだ眠ぃーな。」

瞼がまだまだ重く、その周りをこすりながらトレインは道場のほうに向かった。
昨日士郎に誘われたので道場のほうに顔を出してみようと思ったのである。

「実際のところあのおっちゃんはなかなかできそうな感じはしたからな~。」

またなのはの兄と姉の二人にはまだ会っておらず、今から初対面となる。









「っと、やっているな。」

道場のほうに近づくと男女の掛け声のようなものが聞こえてきた。
トレインは戸惑うことなく道場の扉を開け

「うーすっ!!!」

道場とは不釣り合いなくらいの軽い感じのあいさつで入って行った。

「おー、おはようトレイン君。来てくれたのかい。」

「まーな。士郎さんのやっている剣術ってのに興味があったからな。」

二人で軽く挨拶をしながら会話しているとトレインに二人の男女が目に入った。
片方は士郎を若くしたような鋭い眼光を持っている男で、片方は長髪を後ろでまとめている少し抜けていそうな感じのする女だった。

すると男のほうがトレインをみて士郎に話しかけた。

「父さん、この子がさっき話していた子か?」

「ああ、そうだ。トレイン君、こっちにいる二人が昨日話した俺の息子の恭也と娘の美由希だ。」

そして恭也はトレインのほうに近寄り

「高町恭也だ。」

と自分の名前だけ言って自己紹介を終えた。
すると今度はあわてたように美由希が自己紹介を始めた。

「ご、ごめんね恭ちゃんが愛想悪くて。えーと私は高町美由希。よろしくね。」

「おう、俺はトレイン・ハートネットだ。よろしくな。」

トレインは差し出された美由希の手を取り握手した。

(こりゃ、本格的な訓練を受けてる人間の手だな。)

握ったての感触から、一般時のものとは思えない手の固さを感じた。
そして少しの間であったが美由希の手を握った自身の手を見つめていた。

恭也はその姿を冷ややかに見ていた。



「さて、トレイン君も来たところで二人とも体は温まったようだし実戦形式で組み手をやってみろ。」

「はい。」

「は~い。」

「トレイン君はここで見学していてくれ。」

「OK。」

「では、はじめ!!」







士郎の掛け声とともに二人の組み手がはじまった。
組み手といっても木でできた小刀と呼ばれるものでかなりの速度で打ち合っているので実践さながらといっても過言ではないものだった。
一方トレインは道場のはじで胡坐を空きながら二人の様子を見ていた。

「それまで!!」

士郎の掛け声でいったん組み手のほうは止められた。

(みている限りだと恭也のほうが腕は上だな。美由希のほうはまだまだって感じだな。)
実際組み手の中でも恭也のほうが美由希のことを圧倒までいかずとも押し気味に進めていた。


「はぁー、あいかわらず恭ちゃんにはまだまだかなわないな。」

「俺としてもまだまだお前に負けるわけにはいかんからな。」


「おれから見れば二人ともまだまだだな。トレイン君はどう思ったかい?」

「へ!?俺か?」

まさか自分に話が振られると思っていはいなかった。
がトレインは少し考え込むように答えた。

「う~ん、二人とも筋は悪くはないんじゃねえの?まあ実戦のなかでどれだけやれるかがわからねえ以上なんともいえねけどな。」

士郎はうんうんとうなずきながら俺を見ていた。

(俺は特にうなずかれるようなこと言ってないはずだが。)

「あはは、ありがとねトレイン君。」

一方美由希はトレインの発言を少し強がっている子供の発言としてとらえてるようで笑いながら礼を述べていた。
しかし恭也のほうはますます眼光を鋭くしてトレインを見つめていた。

(なんであいつはさっきからあんなに殺気立ってるんだ?)

特に嫌われるようなことをした覚えがないトレインとしてはどうしようもなかった。
ただ、これ以上ここにいても居心地が悪そうなので退散しようと考えた時に

「トレイン君、良ければ恭也とひと勝負やってみないか?」

「ん?俺が?」

「ってお父さん、そんなの無茶だよ。」

「………。」

美由希は無茶だと言い止めようとするが一方の恭也は黙ったままだった。
そしてトレインは心配する美由希を尻目に

「まー、一回だけならいいけどよ。でも俺は刀なんか使ったことねえから素手でいいか?」

「う~ん、そうか。君がそれでよければそれでもかまわない。いいな恭也?」

「…俺は構わない。父さん、手加減は…」

「必要ない。思いっきりやれ。」

「な、何言ってるのお父さん。」

あまりの父と兄の発言に混乱気味の美由希だったがそれを無視するかのように三人は話を進めた。










そして恭也とトレインは開始線をはさんで相対していた。
するとトレインが恭也に話しかけた。

「なあ?」

「なんだ?」

「あんたは士郎さんから俺のことを聞いてんのか?」

一瞬恭也の顔が驚くような感じになったがすぐさま落着き

「いや、ただお前がただの子供でないことくらいは俺にもわかる。」

(眼力もなかなかのもんってことか。)

「二人とも準備はいいか?」

「「はい(おう)!!」」

「では、はじめ!!!!」


恭也は小太刀を二本構え告げた。

「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術師範代、御神の剣士・高町恭也。いくぞ!!」

「っ!?」

そして一瞬にしてトレインとの間合いを詰めて下から切り上げるように一閃。
直撃し、打ち上げられたようにトレインは空中に飛んだトレインは転がるように壁際に転がった。

「きょ、恭ちゃん。ちょっとやりすぎだよ。」

「黙ってみていろ美由希!!」

厳しい面持ちで美由希を怒鳴りつけた。

「それに見てみろ。」

「え!?」

視線をトレインに移すとなんともなかったようにトレインが立ち上がっていた。

「っと。うまく体を受け流してなかったやばかったな。」

不敵に笑みを浮かべながら恭也を見据えていた。
服は木刀の一部がかすったのだろうか破けているところがあった。

会心ともいかなくとも決まったと思っていた一撃を受け流していたのには驚いているようだった。

(感触が軽かったの受け流したからか。それにしても大した体さばきだ。)

「俺は掃除屋トレイン・ハートネットだ。さーて今度はこっちからいかせてもらうぜ!!」

そしてトレインも移動を始めトレインに近づいて行った。

現在のトレインと恭也の身長差はおよそ30センチ。
そして恭也が小太刀を持っているのに対してトレインは素手であり、リーチという点では大きなハンデを背負っているトレインだった。



「きょ、恭ちゃんが押されてる?」

トレインはリーチもなく愛銃ハーディスも使えないこの状況下で恭也の懐に近い近距離戦で戦っていた。
これだけ近寄ればリーチの差など意味がなくなり逆に長いリーチでは攻撃を当てづらい状況になっていく。

防戦に入っている恭也は焦りを感じていた。

(っく。これだけ近づけばかなり危険なはずなのにこいつはまるで怖がっちゃいない。それにこちらの攻撃もまるであたらない。)

それもそのはずである。
かつてトレインは最強のガンマンと目されるほどの腕前であったが格闘戦においてもかなりの腕前であった。
かつて、賞金首であった暗殺者ルガート・ウォンと格闘戦をし互角以上の戦いを見せていた。

トレインと恭也の戦いを見ていた士郎は確信していた。

(彼は間違いなく裏世界の中でもトップクラスの腕前だ。)

トレインのカバンの中身を見た限りであると彼は銃使いだ。
本来銃を使う人間は接近戦はそれほど強くないというのが常であったが。
彼は剣士と手塩にかけて育ててきた恭也を相手に圧倒する戦いを見せていた。
型、動きといったものはどこかの流派のものではなくめちゃくちゃな動きではあったが、持前の運動能力、経験を生かした動きはとても10歳前後の子供のものとは思えなかった。


しかし、一方でトレインのほうも決め手に欠けていた。

(予想以上にパワーが落ちてやがるな。たぶんクイックドロウもかなり負担がかかるな)

子供化したことによる弊害はかつてと変わらず、大きなものだった。
素手のトレインが恭也にダウンさせるほどの一撃を加えるには的確に急所を狙うしかない。
何発か恭也にいれてはいるのだが恭也の腕もなかなかのもので決定打にはならない。

(となると、相手の視界からはずれて隙を作らねーとな。見よう見まねだけどやってみるか)

「おっし!!!」

トレインは声とともに天井へジャンプし、天井に着いたと思いきやまた天井を蹴り地面に、そしてまた地面を蹴り天井へ。
この動きを高速で繰り返し恭也をかく乱した。

(っく、眼で追い切れない。しまった!?)

恭也が自身を見失った一瞬のすきを逃さずトレインは手刀を側頭部へ一閃。
恭也は糸の切れた人形のように倒れそうだったが…。

「まだだっ!!!!」

前のめりになりながらもなんとか立ち上がり、トレインとの距離をとった。


正直決まったと思っていただけにトレインのほうも内心かなり驚いていた。
そして戦闘が開始されてからはじめて両者の間に大きな間合いが生まれていた。

(ここで勝負に出る!!!)

このまま小回りを利かされた動きをされていたら自分に勝ち目がないことを分かっている恭也は一気に攻勢に出た。

「御神流、奥義之壱・虎切!!!」

恭也は遠間からの抜刀による一撃をトレインに放った。

(はやっ!?)

トレインはその驚異的な反射で恭也の一撃を何とかかわした。

恭也もかわされるだろうと予想していたのだろうか次の動作に入っていた。

(これで決める。)

自分に大きな負担がかかるが相対してる相手は並大抵の攻撃ではだめだ。
自身の最高の技で決めなければ。

「恭也!!!よすんだ!!!」

士郎が叫ぶがそれより先に恭也は動き出していた。

「御神流 奥義之歩法 神速」

そう恭也がつぶやいた瞬間トレインの視界から恭也が消えた。

「なっ!?」

恭也は神速の領域に入りトレインの背後に回り込み

「小太刀二刀御神流 奥技之六 薙旋!!!!」

右の抜刀からの高速の四連撃。恭也のもっとも得意とする必殺の技で相手の背後からの一撃だ。

(決まった…。)





がしかしトレインは反応するというより予知していたように前に倒れこみ恭也の連撃に入る一撃をかわした。

「「なっ!?」」

これには恭也以外に士郎も驚きを隠せなかった。
神速から相手の死角に入り込み放った一撃がまさかかわされるとは思ってもいなかった。

トレインは地に着いた手を押し戻し恭也の鳩尾に蹴りを放った。

「ぐはっ!!!」

まさかの反撃に反応できずに動きが止まるとそれを逃さずトレインは鳩尾に蹴りこんだのとは逆の足を大きく振り上げ恭也の顎を踵で蹴りあげた。
そして今度こそ恭也は地面に倒れこんだ。


「それまで!!!!」

そしてそれを見た士郎が止めに入った。














「完敗だな。」

珍しく少々落ち込んでいる恭也だった。

「いや、あんたはなかなか強かったぜ。」

一応フォローのも含めての言葉だったが、お世辞抜きに恭也はトレインから見てもかなりの強さだった。
ナンバーズクラスと戦うとなると厳しいものがあるが、掃除屋として考えてみればかなりの腕前である。

「俺もまだまだ精進が必要だな。」

「なーにあんたはまだまだ強くなれるさ。悲観する必要はないぜ。」

「そうか、ありがとう。」

「おう!!」

そう話をするとなにも言わずに二人は握手を交わしていた。
恭也のトレインを見る目がわずかだがゆるくなった。

一方忘れられかけていた美由希が興奮したようにトレインに近づいてきた。

「す、すごいよトレイン君!!!まさか恭ちゃんに勝っちゃうなんて。最後なんか神速からの動きをかわすなんて考えられないよ。」

「しんそく?」

トレインが首をひねっていると後ろで士郎が答えた。

「われわれが使っている御神流の奥義の歩法さ。」


「へー、そうなのか?俺は何となくあぶねぇって思ったからしゃがんだだけなんだがな。」

とあっけらかんに答えた。

「「………。」」

「ふ、ふはははははははっ。」

トレインの発言に唖然としている二人の兄妹となぜか笑っている士郎だった。















そして鍛錬を終え、食堂のほうに行くと桃子が朝食の準備をしていた。

「あらおはよう、トレイン君はよく眠れたかしら?」

「ばっちし眠れたぜ。俺はどこでも寝られるのが特技の一つだから。」

「あらあら。」

桃子は笑いながらトレインのことを見た。

(とてもじゃないけど士郎さんが言っているような子には思えないわね。)

昨日の晩士郎からトレインのことについて聞かされた。
それは桃子が想像した以上のものであった。
自身の末の娘と同い年くらいであるのに置かれている境遇は違う。

そして桃子は彼に普通の生活を知ってもらいたいと強く思うようになった。
子供らしく、人並みの幸せを彼にも味わってほしかった。

いろいろと考えていたが実の娘のことを思い出し桃子はトレインに頼んだ。

「トレイン君、悪いんだけどなのはのこと起こしに行ってくれないかしら?」

「いいぜ。」

「悪いわね、あの子寝起きが悪くてね。大変かもしれないけどお願いね?」

「まかしとけって。」

そう言うとトレインは階段を駆け上がりなのはの寝室に向かった。


その後ろ姿を見ていた桃子は

「彼の意思次第だけど………。」


何かをつぶやいた。


今日も高町家の朝は平和であった。









[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第4話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/01/27 14:56
コンコンコン

「おーい、なのはー飯の時間だぞー。」

トレインはなのはを起こすべく部屋の前でなのはに呼び掛けていたが反応がない。
これではらちが明かないので中に入ることにした。

「ったく。せっかくの飯が冷めちまうぞっと。」

中に入ると布団を抱きしめたまま気持ちよさそうに寝ている。
近くに目覚ましがあったが寝ぼけながら止めたのかスイッチがオフになっていた。

「ほれ、おきろって。」

「う~ん、んにゃもう少しだけ…。」

「そんなことしてたら飯が食えないだろうが。」

「ん~ん。」

なのは首を振りながらもくずるようにして起きる気配がない。
するとトレインは何かひらめいたのか企むような笑みをうかべて懐から何かをだした。
そして








「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」

なのはの絶叫が高町家にこだました。








「うー、ひどい目にあったよ~。」

なのはは恨めしそうにトレインを見るが当の本人は気にすることもなく朝食に夢中であった。

「ははは、でも恭ちゃんでも起こすのに手こずるのにどうやって起こしたの?」

「んぐんぐ、企業秘密ということで頼むわ。」

朝食を食べながらうれしそうにそう答えた。

「これから毎日なのはのことを起こしてもらおうかしら?」

「にゃ!?」

「おう、俺は別にかまわないけどな。」

そういうとなのは必死な顔で

「それだけはかんべんしてぇーーー!!!」


いったいどんな起こし方をしたのか?














朝食を終え、ひと段落すると大学生の恭也、高校生の美由希、小学生のなのははそれぞれ学校に行った。
もちろんトレインは学校に行くのでもなく高町家に残っていた。
今は朝食の片付けを手伝っているところであった。

「ほい、これで最後だぜ。」

「はい、ありがとう。でもトレイン君も学校のことを考えないといけないわね。」

「は?学校?」

一応断わっておくがこんななりをトレインは25歳でありいまさらちびたちに交じって小学校に行く気などさらさらない。
それに学校に行くにも自分の戸籍などここには存在してないのだから。

するとふと新聞が目に入った。
普段は新聞など目にすることのないトレインだったが先日の戦いのことが気になって何んとなく見てみた。
がしかし星の使徒に関する記事など微塵も載っていなかった。
むしろ自分が見たことのきいたことのない国、地方のことばかり載っていた。

(どういうことだ?俺だってまったくというほどニュースは見てねぇわけでもないんだが?)

なにかいやな予感のしたトレインは桃子に

「なあ、古い新聞ってまだ残ってるか?」

「新聞?えーと玄関のすぐそばにある収納スペースにあるはずだけど…。」

それだけ聞くとトレインは大急ぎで玄関に向かい新聞を見開いっていった。



「ない、そんなバカな。」

そう、ひと月近く前のの新聞を開いてみても星の使徒に関する記事がまったくというほど載っていないのである。
そこに載っているのは聞き覚えのないニュースに関する記事ばかりであった。

「こいつはいったいどういうことなんだ?」

トレインはとりあえず新聞を片づけ始めた。

(情報をクロノスが規制しようにしてもリアルタイムであの惨状が流れていたんだそんなことは不可能だ。)

現にトレイン自身ラジオでその情報を聞いていたのだ。
それにスヴェンの持っていた新聞にそのことに関する記事が載っていた。

「こりゃ、いったん情報を集めたほうがいいかもな。」

今日一日、外に出てみて状況確認を踏まえた情報を集めようとトレインは考えた。

そしてリビングに戻ると桃子が待ち構えていた。

「トレイン君?」

「なんだ?」

「これから時間あるかしら?」

桃子はあふれんばかりの笑顔で聞いてきた。

「特に、急用ってものはないけど。それが?」

「うん、なら今日はあなたの生活品を買いに行きましょう?」

「へ?」

「少し待っててね私の準備するから。」

「って待ってくれよ?」

あまりの急展開にトレインもおされぎみだった。
なんで俺の生活必需品を?
というより今日は情報収集するんだろう俺は?

といろいろと疑問が浮かんでいたが戸惑っているトレインをみて桃子は急に沈んだような表情になる。

「私と買い物に行くのがいやなのかしら?」

「いや、そういうわけではないんだが…。」

桃子はそのままたたみかけるように眼尻に涙を浮かべた。

「やっぱりいやなのね?」

「そ、そうじゃねえって。わかった一緒に買い物に行きます。行かせてください。」

すると一変していい笑顔で

「それじゃあ、トレイン君も準備しておいてね?」

そしてそのまま軽やかな足取りで桃子はどこかに行ってしまった。

「…桃子もなかなかしたたかだな。女ってコエ-わ。」

子どもの姿になろうと女の涙には弱いトレインだった。





身支度を済ませたトレインと桃子は近くにあるデパートに向かうことにした。
家を出るさい留守番を任された士郎の恨めしそうな顔が妙に気になったが。

特に気にする必要もないのだがトレインは居心地が悪いのかすこし桃子との距離をあけて歩いていた。
ふと疑問に思っていたことを口に出してみた。

「なあ?」

「なにかしらトレイン君?」

「桃子っていくつなんだ?」

ピシッ!!!

一瞬だが空気が凍った。
桃子も笑顔なのだが青筋が浮かんでいるのは気のせいではないだろう。

「どういうことかしら?」

桃子は努めて冷静に返した。
トレインは特に気にするでもなく平然と会話を続けた。

「いや、だって恭也が長男で今19になるってことだろ?俺が思ってる年齢で考えると変だからよ。」

「ちなみにトレイン君は幾つだと思うの?」

「う~ん、25,6かと思っていたんだが。」

トレインは率直な意見としてそう述べていた。

(リンスと同い年って感じじゃないしな。タイチョーと同じくらいだと思ったんだが)

すると桃子はとたんに機嫌がよくなり

「トレイン君、今日は何でも買ってあげるわね♪」

そしてトレインの手をとりスキップを始めた。

ここで下手な年齢を答えていたらトレインは25で生涯を閉じていたかもしれない。








その後デパートについた二人は必要最低限の日用品と普段着、寝巻き下着を何着か購入し休憩を兼ねた昼食をとっていた。

トレインは少し疲れ気味であった。

(お、おれは着せかえ人形じゃねえんだけどな…。)

恭也以来となる男の子の衣服選びとなって桃子も少し浮かれ気味になって手当たりしだいトレインに着せていたのだ。
桃子のほうはご満悦でメニューを眺めていた。

「私は日替わりパスタと紅茶のセットで、トレイン君は?」

「おれは白身魚のムニエルと飲みもんはミルクで。」

「かしこまりました。」

ウエイトレスの女性は軽く会釈しメニューを持って行った。

「それにしても何から何まで悪いな。」

「いいのよ気にしないで。困った時はお互いさまよ。それよりね?」

「ん?どうしたんだ?」


桃子は意を決したように述べた。

「トレイン君、うちに養子にはいらないかしら?」

「へ!?」

あまりにも想定できなかったことにトレインはあっけにとられていた。

「聞いたところだとあなたには両親もいないみたいだし、私としてはこのままあなたを放っておくことなんかできないわ。」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。」

あわててトレインも止めに入る。
ここにきて自分の生い立ちを正直に話したことを後悔した。
嘘でもいいから両親が健在であるといっておけばこんな面倒なことにはならなかっただろうと思った。

といっても高町家の人の良さは変わらないので似たり寄ったりの展開にはなったであろうが。

「急な話でトレイン君も戸惑っていると思うけど考えておいてもらえないかしら?」

「まあ…、考えるだけならな。」

とトレインは適当な返事をしておいた。











お昼も過ぎようやく買い物を終えて自宅に戻るとなのはも帰宅していた。

「あ、トレイン君。」

「よう、もう学校は終わったのか?」

「うん、これから友達のうちに遊びに行くんだけど…。」

なのはが語尾を小さくし様子を窺うようにトレインをみてきた。

「なんか俺に用事でもあんのか?」

「うん、友達が昨日の晩お父さんにおぶられてるトレイン君をみたみたいなの。」

「それで?」

「友達がトレイン君も連れてきてって。」


「………まあ、暇だからいいが。」

「ほんと!?じゃあ早く行こう!!!」

そういうとなのはトレインの手を取り走り出した。

「お、おいそんなに急がなくてもいいだろうが。」

(こういうところをみるとただのガキだよな。)

トレインにはいまだにこの少女が昨日の話のような戦いを演じていることが信じられなかった。


がこのあとトレインはその考えを見事に打ち砕かれることになる。
かつての仲間をほうふつとさせる少女との出会いとともに。









[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第5話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/02/15 03:03
トレインはなのはに連れられ現在バスに乗っている。
なんでもなのはの友人のうちに行くにはバスを乗っていく必要があるらしい。
ちなみに運賃はなのはもちである。
小学生にバス代を出してもらっているトレインは特に気にするでもなくバスから見える風景を見ていた。

するとしばらく黙っていたなのはが話しかけてきた。

「ごめんねトレイン君。」

「なんだよ急に?」

「なんか無理やり連れ出すようなことになっちゃって。」

なのは笑ってはいるが少し負い目があるようだ。
なのはは多少人に気を遣いすぎるところがある。
と短い付き合いの中でトレインは感じていた。
自身はあまり人に気を使うようなことはしないのでこれくらいのことで気にされてもトレインとしたら心外であった。

「な~に、別に気にする必要ねえよ。こっちは何から何まで世話になってんだ。これくらいお安いご用さ。」

「あ、ありがとう。」

「んで、その友達のうちはまだなのか?」

「もうそろそろだよ。あっ!?次の停留所で下りるよ。」

「OK。」











停留所を下り、なのはに連れてこられたのは普通の家とは思えない屋敷であった。

「ほえ~、なんだ。なのはの友達ってのはどっかのお嬢様かなんかか?」

「う~ん、そういうわけではないとなのはは思うのですが。とりあえず中に入ろう?」

「そだな。」

そしてなのはがインターホンを押すと

ピンポ~ン
とインターホンが鳴ると同時にドアが開き、中からこの屋敷のメイドと思われる女性が現れた。

「いらっしゃいませ、お待ちしておりましたなのはお嬢様。トレイン様。」

「こんにちは、ノエルさん。トレイン君、この人はこのおうちのメイド長をやっているノエルさん。」

そうなのはから紹介されるとノエルはふかぶかとお辞儀し

「ノエルと申します。ぜひお見知りおきを。」

「ああ、俺はトレイン・ハートネットだ。よろしくな。」

トレインはノエルからある違和感を感じていた。

(なんだこいつ?人なのか?)

一つ一つの動作を見ても違和感もなく、感情もあるように見えるが何か引っかかるものがあったが、トレインはここでなにか言うのも無粋だろうと思いあえてその違和感を無視することにした。

そしてノエルに屋敷の中を案内してもらいついて行くと庭がよく見えるテラスにテーブルがあり、そこにはおとなしそうな少女と、勝気な感じがする少女が向かい合ってティータイムを楽しんでいた。
そのわきにはメイドの一人であると思われる少女!?が立っていた。

「こんにちは、すずかちゃん、アリサちゃん。」

すると三人の少女はなのはのほうに目を向け

「あ、なのはちゃん。いらっしゃい。」

「いらっしゃいなのはちゃん。」

「なのは少し遅いわよ。あ、そいつが話に出てきた男ね。」

アリサと呼ばれた少女は値踏みをするような目でトレインを見てきた。
そしてなのはがそれぞれの紹介を始めた。

「えーと、左にいるのがこのうちの子のすずかちゃん。右にいるのがアリサちゃん。であそこに立ってるのがメイドのファリンさん。」

「あー俺は「知ってるわ、トレインでしょ?」

アリサはトレインの自己紹介を遮るように答えた。

「あ、アリサちゃん。トレイン君がしゃべってたのに」


「あー、気にすんな。なら自己紹介はいらねえか。」

「まあ、話はおいおい聞かせてもらうわ。なのはもそんなところに立ってないで座りなさいよ。」

「う、うん。」

そう言われて二人はそれぞれあてがわれた席に着いた。
ファリンは二人の分の紅茶のように向かっていった。

トレインはユーノがどこにいったのか気になって探すと、なのはの鞄が震えていた。
おそらくだがこの中に入っているのだろうが何かに脅えているようだ。

二人が席に着くと同時にアリサがすぐさま口を開いた。

「単刀直入に聞くわ。あんたとなのはの関係を聞かせなさい。」

「は!?」

「「あ、アリサちゃん!?」」

目の前の少女は何をいっているのだろうとトレインは思った。
聞きたいことはなんとなくわかるが、自身の体は小さくなったとはいえ自分は25歳。
あって間もない、ましてや小学生を相手にするほど落ちぶれてはいない。
そうであったとしたら自身はロリ〇ン以外の何物でもないだろう。

「関係って、ただ空腹で倒れてたところを拾ってもらっただけだが。」

一応真実を告げたトレインだがアリサの視線が変わることなくトレインを捉えていた。

「ふ~ん。わかったわそういうことにしえおいてあげる。」

「あげるも何も「ただし!!!」なんだよ?」

アリサは声を大きくしてトレインに言った。

「なのはを悲しませるような真似したら許さないから。」

「アリサちゃん……。」

(なーるほど。)

トレインは思った。
この少女はかなりのお人よしだと。
強気な態度で相手に接しているが本質的にやさしい人間だと。

そんな少女の態度がほほえましく思ったのかトレインは少し微笑し

「な、なにがおかしいのよ?」

「いや、別に。あと俺はなのはを悲しませるつもりは微塵もないぜ。それだけは約束してやるよ。」

きっぱりと言い切ったトレインにアリサは試すように睨みつけた。
トレインの表情に戸惑いや迷いはなく、そこに写っていたのは当然と言わんばかりの絶対の自信だった。

アリサはひとまず一息つき。

「わかったわ、とりあえずは信用してあげるわ。」

「ありがとよ。」

そして良いタイミングでお茶を持ってきたファリンがやってきた。

「は~い、お待たせしました。紅茶とクッキーをお持ちしました。」

「お、ちょうど小腹がすいていたところだったからな。」

そういうとトレインはテーブルに置かれたクッキーに手を伸ばしクッキーを指で大きくはじきそのまま口に入れた。

「にゃはは、トレイン君。少し行儀が悪いよ。」

「まったく、男ってこんな奴ばっかなのよね。」

「ふふふ。」

四人の中にはさっきの緊張感はなくなっていた。














それから四人は自身の詳しい紹介をしながら雑談をしていた。

そのなかですずかがトレインに話しかけた。

「トレイン君ってなにか特技とかあるの?」

「ん?俺か、う~ん。どこででも寝れることかな。」

それを聞いてアリサは

「なによそれ。特技でも何でもないじゃない、なにか他にはないの?」

「そうだな……。あるといえば射撃か。」

「「射撃?」」

突拍子もない、二人が予想もしなかった答えに驚いていた。
ただ一人、なのはは多少驚いたものの不思議ではないと思っていた。
最初のトレインとの出会い。

公園でからだとは不釣り合いの大きな拳銃を携え立っていたトレイン。
ジュエルシードがトレインの手にあったこと、その場の状況を考えれば彼が銃使いであることは幼いなのはでも容易に予想できた。

なのはが最初の出会いを思い出しているとユーノが念話でなのはに話しかけてきた。

(なのは。)

(なにユーノ君?)

(トレインの腕前を見せてもらっておいたほうがいいかもしれない。)

(どうして?)

(僕にはどうしても彼がジュエルシードを魔法なしで解放したとは思えないんだ。最悪の場合も考えておいてもそれがいいと思う。)

(最悪の場合って…。)

(僕も考えたくはないけど……彼がもしかしたら敵という可能性だよ。)

(!?)

いきなりのユーノからの言葉にとまどいを隠せないなのは。

そんななのはを尻目にアリサは証拠を見せろとトレインに詰め寄っていた。

「射撃~?どうせモデルガンかゲームのなかでの話か何かでしょ?」

「おいおい、そうじゃねえって。わかったよ、実演してやるよ。」









トレインはすずかに頼み大きな壁があるところに案内してもらった。

「ここなら誰もいないし、なにかあっても大丈夫だと思うの。」

「そうだな、あんがとなすずか。」

「ううん、私も少し興味があったから。」

トレインはそれを聞くと

「期待はずれの真似はしねーからみてなって。」

そう言うとトレインは近くに転がっている丸太に空き缶を置き20メートルほど離れた所に立った。

「俺より前には絶対に立つな。まずねーと思うけど銃が暴発したらあぶねーからな。」

「何いってんの?それはモデルガンでしょ?暴発なんて……。」

アリサはハーディスを指さしながらいった。

「これか?こいつは間違いなくホンモノだぜ。」

トレインはそう言ったがなのは以外の三人は疑ったままだった。
すずかは見守るように、アリサは少々小馬鹿にするように見ていた。
それを見てトレインは溜息をつきながらハーディスについたワイヤーを自身の手に結びつけ構えた。

「よーく見ておけよ。」


そして 

ガンッ!!!!

銃声とともに空き缶に銃弾が当たり空中に跳ね上がり

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

続けざまに5発の銃弾を放ち、その5発の銃弾も甲高い金属音とともに命中していた。
その光景に圧倒されたのか、それとも銃の発砲音に驚いたのかわからないが三人と一匹はボー然とみていた。
それに気づかないトレインは

「ん~、ぼちぼちか。かすっただけだな。」

結果に満足しなかったのもあるが

(前ほどじゃねえけどけっこー腕に来るな。長期戦はきついな。)

トレインは空き缶を拾い上げ命中した箇所を見た。
そこには一つの穴を中心に重なるように穴が広がっていた。

「一発目のとこにそのまま通すつもりだったんだけどな。」

少々不満げにつぶやくトレインに

「あ、あんたそれってマジで本物なの?」

「あ?だからそうだって…「すずか!!!今の音はなんなの?」

するとトレインたちに近づいてきた、すずかににた女性が現れた。

「お、お姉ちゃん。えーとその。」

「すごい音がしたから何か起きたと思ったんだけど。って君それは?」

「わりーわりー、こいつの発砲音だわ。であんたは誰?」

「えーと、私はすずかの姉の忍よ。ってそうじゃなくてなんであなたみたいな子供がそんなものを持ってるの?」

ものすごい剣幕でトレインに迫る忍。
さすがのトレインも説明のしようがないので戸惑っていた。

「え、えーとそのだな…。」

(い、いかん。チビたち相手ならなんとかなるが事情も知らん大人じゃ無理だ。)

そんなトレインを忍は怪しむように見ていきなり手をとり

「君、ちょっとこっちまで来て。」

「お、お~いちょっと待っててーーーー!!!」

そのまま走りだしトレインを連れて行った。

その場に残されたなのはたち

「い、行っちゃったわね。」

「そ、そうだね。お姉ちゃんどうするんだろう?」

「トレイン君……。」

二人が連れて行かれるトレインに気をとられているのに対してなのはトレインの銃技に驚いていた。

(ユーノ君、今のどう思った?)

(すごいとしか言いようがないよ。しかも彼は魔力を使った形跡がないから生身であれだけ)

ユーノはトレインの銃技を見て彼が魔法の世界とは関係がないということを感じ取っていた。
当初はあの体に不釣り合いの銃がデバイスのようなもので巧妙に魔力を隠しているのではないかと疑っていた。
しかし、彼が使っているの魔法世界では違法とされる質量兵器。
例外として小銃程度のものであれば申請をすればデバイス扱いとして認可されるがその数は管理局においてはごく少数に限られている。
ましてや彼は管理局の人間には思えない。

(彼はいったい何者なんだ?)

そんな疑問を抱いているユーノだったがトレインはすでに見えないところまで連れて行かれた。












バタンッ!!!

忍はトレインを部屋の中に連れてくると扉を閉め、トレインに向き合った。

「あなたは何が目的でここに来たの?」

「なにって、なのはに連れられてだけど?」

先ほどなのはたちがいた時とは違った雰囲気の忍にトレインは違和感を感じていた。

「そう、じゃあ聞き方を変えるわね。あなたのような血の匂いが濃い人間がすずかに近づいたの?」

「!?」

「図星みたいね。大方私たちを始末しに来たってところかしら?」

忍は容赦のない殺気をトレインにぶつけてきた。
多少驚きはしたものだがトレインはその殺気をなんでもないように受け止めていた。

(こいつも大した殺気を放ちやがるな。並みの奴ならすくんで動けなくなるな)

「確かにあんた言うように俺は片手じゃ数えきれない程の連中を始末してきたが別にあんたたちに危害を加えるつもりはねーよ。」

「口ではなんとでも言えるわ。じゃあ、その手に持っている銃はなにかしら?」

忍はトレインの手にあるハーディスを指差した。
その間も警戒を緩めることなくトレインを見た。

「俺は掃除屋だ。」

「掃除屋?」

(こいつも知らないってのか?裏世界に関係してる人間なら誰でも知ってるはずだろ。)

士郎同様疑問形で返してくる相手に疑問が浮かぶが

「犯罪者を捕まえて賞金を稼いで生活する。要は賞金稼ぎだ。」

「あら?じゃあ私たちにも賞金がかかったのかしら?」

あくまで忍は挑発的に、トレインへの警戒を緩めない。
だがそれは彼女の境遇を考えるとある意味仕方のないことなのかもしれない。
トレインはその様子にやれやれといった形のジェスチャーを取り入った。

「あんたが何を勘違いしてるか知らないが、あんたは恭也と付き合ってんだろ?」

「!?どうしてそれを?」

「俺は高町家に居候してるんだよ。恭也も士郎も俺の事情も知っているそれにな…。」

一息いれ忍に言った。

「掃除屋の仕事は殺しじゃねえ。殺さず相手を制するのが掃除屋だ。」

「…………。」

(だよな?姫っち)


忍はふーっと息を吐き警戒を解き

「…わかったわ。一応だけど信用してあげる。」

「そうしてくれるとありがてぇわ。」

「恭也や士郎さんがが認めた相手を信用しないわけにもいかないわ。それに私たちのことを狙ってきたわけではなさそうだしね。」

「それなんだがあんたらが狙われる理由がわかんねーんだが?」

一見してみれば忍にせよ、すずかにせよ狙われるような要素はない。
しかし、これだけの屋敷を持っているのだから何かしら後ろめたいことがあるだろうと予想していたがこれまでのやり取りを思い返してみるとこの家の人間が狙われるようなことはないとトレインは思った。


「それは……。」

トレインが疑問をぶつけると忍は話しにくそうに口をつぐんでしまった。

「あー、話したくねぇなら無理に話さなくてもいいぜ?」

「…ごめんなさい。」

「いいってことよ。それより…。」

トレインは忍の部屋を見回すと機械があちらこちらに転がっていた。

「あー、私は機械が好きでね。そうそう、あなたの銃少し見せてもらえないかしら?」

「あ?別にいいけど壊すなよ?」

トレインは忍にハーディスを渡した。
すると忍は興味深げにハーディスを見つめていた。

「う~ん、わからないわね。トレイン君、この銃はどんな材質でできているのかしら?」

「俺も詳しいことは分からねえけどなんか未知の金属オリハルコンとかいう金属でできてるらしいぜ。」

「オリハルコン?聞いたことないわね。」

「それよりもういいだろう?返してくれねぇか?」

「あ、ごめんね。はいどうぞ。」

ハーディスを受け取るとトレインは用はすんだだろうと言わんばかりにそのまま部屋を出て行った。


「いったいあの子は何者なんだろ?ね、ノエル?」

そう言うとタンスの中からノエルが出てきた。

「私にもわかりかねますが御信頼に値する方だと思いますが?」

「そうだね…でも…。」

忍にはトレインにこびりついていた濃い血の匂いが気になって仕方なかった。



















三人の元に戻ったトレインは忍には説教をくらったと説明した。

普通に考えれば至極当然のことなので三人とも素直に納得してくれた。
そして時間もだいぶたっており今日のところはお開きになった。
が、また今度ここに来るように約束をさせられた。



バスから降りトレインは大きくあくびをした。

「ふぁぁぁぁぁーーーー。」

「トレイン君だいぶ疲れたみたいだね?」

「おもにアリサの相手がきつかったな。あの手の相手は疲れるわ。」

「にゃははは、でもアリサちゃんもすずかちゃんもトレイン君のこと気に入っていたよ。」

「ふ~ん、まあとりあえず家に戻ろうぜ?」

「うん!!ん?」

トレインが帰宅を促すとユーノがなのはに念話でなのはに話しかけた。

(どうしたのユーノ君?)

(近くでジュエルシードの気配がする。)

(え、本当?)

(うん、しかもこの前戦った娘の魔力も近くにある。)

(あの子が?とにかく急がないと)


二人が念話での会話をしているとトレインはおいてけぼりをくらっているようで不満げに話しかけた。

「おーい、二人で何話してるんだよ?」

「え?なんでもないよ?」

(声がうわずってるな。)

「えーと、私ちょっとコンビニに用があるからトレイン君は先に戻ってて。」

明らかにごまかしているなのはの発言をトレインは全く信用していなかった。
しかし、ここは話を合わせることにした。

「OK、んじゃ先に戻ってるわ。」

そういい手をふりつつトレインは高町家に向かった。
そしてトレインが見えなくなると二人は急いでジュエルシードの反応がする方向へ走りだした。





(追跡は掃除屋の得意分野の一つだぜなのは。)

その後ろからトレインがしっかりついてきているのも知らずに。








現場ではすでにジュエルシードの封印が終わっているところだった。
封印をし終えた少女はそのまま立ち去ろうとしていたがそこになのはが現れた。

「待って!!」

「!?」

少女は少し驚くようなそぶりを見せたがすぐさま臨戦態勢になった。

「私は戦いに来たんじゃないの。あなたはなんでジュエルシードを集めているの?」

なのは少女に問いただすとユーノも少女に言った。

「それは危険なものなんだ、君にだってそれぐらいわかるだろう?」

しかし少女は

「でも私にはこれが必要なの。理由は言ったところで分からない。」

「でも?」

なにか言おうとしたなのはだったが少女の質問によってそれは遮られた。

「それより、あなたの後ろにいる子はあなたの仲間?」

「「へ?」」

少女に指摘され後ろを見てみると目を大きく見開き立っているトレインがいた。

「「トレイン(君)」」

二人は何の気配もさせずついてきたトレインに驚いていたがそのトレインが何かに驚いていた。

「ひ」

「「ひ?」」


「ひ、姫っちか?」

「????」

これがトレインともう一人の魔法少女との出会いだった。









[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第6話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/07 14:18
「姫っちか?」

トレインがそう言うと少女は首をかしげつつ答えた。

「……私はあなたとは初対面ですけど?」

「あー、わりーわりー知り合いにそっくりだったもんでな。」

(それにしてもそっくりだな~。まあ姫っちとは年が違うか)

少女の年齢はなのはと同じくらいの10歳前後といったところでイブとはすこし年が違っていた。
しかし少女はあったばかりのイブのような雰囲気をしていた。

「と、トレイン君。その話はあとでいいとなのはは思います。」

「ん?そうか。んじゃ本題に入ろうぜ。」

トレインはどうぞどうぞと言わんばかりに会話を切り上げた。
そうして仕切り直しと言わんばかりだったが

「………。」

「………。」

「…えーと。」

とてもではないがさっきまでのシリアスな雰囲気の空気ではなくなっているこの空間で会話を続けられるほど三人は大人ではなかった。
が、ユーノは意を決して話を進めた。

「えーと、とにかく!!そのジュエルシードはこちらに渡してほしいんだ。」

「え、えーとその、それはできません。」

若干戸惑い気味で少女は答えた。
そして手にあるデバイスを構え

「邪魔するなら実力で通してもらいます。」

「そんな、待って。私は話をしたいの!!事情を説明してもらえれば!!!」

なのはは必死に語りかけるが少女は黙って首をふるだけだった。

「さっきも言ったとおり話したところで理解してもらえないと思うから。」

ジャキ!!
そういうと臨戦態勢に入った。

「なのは、仕方ないここは戦うしかない。」

「…うん。」

返事をしたもののなのはの表情はすぐれなかった。
その様子を見たトレインは何も言わずに黙ってみていた。

(やっぱその辺にいるガキんちょと変わんねえな。それに比べて向こうは…)

トレインは少女のほうに目を向けた。

トレインほどではないにしても構えからかなり戦い慣れしていることは十分にわかる。
そのまなざしは少し憂いを帯びておりかつてのイブのようだがその奥に見える決意はかなりのものだと感じられた。
トレインのなかでなのは少女との絶対的な違いは秘めている決意、信念の強さなのだろうと思った。
なのはの実力がどれほどのものかは知らないが少女のほうが戦い慣れしている以上に強い決意のもとで戦っているのだと
一方のなのはにはそれが感じられない。

(強い信念はどんな強大な力にも勝てる武器になる…か。)

トレインはクリードにとどめを刺されそうになるさなか聞いたサヤの言葉を思い出していた。

そうこうしているうちに二人の戦いは始まった。

先に仕掛けたのは漆黒の少女のほうだった。
杖をなのはのほうに向け

“Photon lancer, get set”

杖から声が聞こえると二本の槍のような光弾がなのはに向かっていた。
なのははいつの間に着替えたのか学校の制服のような服に着替えていた。そして

“Flier fin”


なのはの持つ杖からその言葉が聞こえると靴に光の翼を生やし、飛び上がって避わす。
その様子をトレインは感心しながら見ていた。

「はー、こいつはすげーな。想像以上だな。」

「感心してる場合じゃないって、あの子はかなりの実力なんだ。なのはもすごい資質を持ってるけど…。」

「ああ、間違いなく負けるだろうな。」

「!?」

その言葉を聞いてユーノは驚愕の表情を浮かべる。

そのころ戦っている二人は

「やぁぁぁぁーーー!!!!」

少女はその機動性を生かし格闘戦に持ち込み手に持っているデバイスから光の刃が飛び出ていた。
そのまま大きく振りかぶりなのはに襲いかかる。

「っ!?くっ!!!」

なのはもそれをデバイスで受け止めるも少女はすぐさま離れ持前のスピードをいかしなのはをほんろうし攻撃を加える。
終始なのはは圧倒されるばかりで防戦一方。
少女は攻撃の手を緩めることなくさらに攻撃を加えようとする。

「なのは、このままじゃやられてしまう。反撃するんだ!!!」

ユーノがなのはに攻撃するよう促す。
なのははデバイスを構え攻撃の態勢に入ったがその表情はさえない。

(相手に遠慮してやがるな。)


“Divine buster”

 それでもなのはは同じく砲撃で対抗する。杖を変形させ火器のように構えると、帯状模様が展開された。桃色の光弾のようなものが打ち出される。
しかしその反撃も少女は難なくかわしなのはに迫る。
一方迫る少女の動きをなのはしっかりと目でとらえていた。
が少女はさらに加速しなのはを撹乱する。

「反応はまずまず。合格点ってとこだろうな。」

トレインは相も変わらず冷静に二人の少女の戦いを見ていた。
トレインがここまで傍観者に徹しているのには理由があった。
ひとつ、攻撃を加えている少女になのはを殺す気が見えていないからである。
かなりの気迫で攻撃を加えているものの相手を殺すのではなく、戦闘不能くらいに制するつもりで戦っているとここまでの戦いぶりでわかった。

そしてもう一つがなのはの実力、ひいては魔法というものがどういうものであるか知りたかった。
かつて自身が戦った道士のようなものかと想像はしていたが、それと同格。もしくはそれ以上の脅威になりうるものだった。

(この年のガキんちょがここまでの戦いぶりができるようになるんだからな)


戦いのほうに目を向けると

「なのは!!!」

眼で追い切れなくなったところを少女は逃さずなのはから死角になっている背後から一閃。
しかし

“Round Shield.”

杖から声が聞こえたと思うとなのはのまわりにシールドのようなものが展開され攻撃を防いだがなのは地面にたたきつけられるように落ちて行った。

だがなおなのはは空中で体制を立て直し地面に立ち相手を見据えるが

“Photon lancer, get set”

少女はすでに攻撃態勢に入りなのはに二つの光弾が迫っていた。

「え!?」

「な、なのはーーー!!!」

なのは迫りくる光弾を眼で確認するだけでとてもではないが回避は間に合わない。
ユーノはなのはの危機に叫ぶことしかできず。
相手の少女もおそらく決着がついたものだと思い安堵の表情で武器をおさめていた
がなのはの前に目にも止まらぬスピードでトレインが立ちはだかった。

「はっ!!!!」

トレインはハーディスを抜き光弾をはじき返すように振りぬいた。

「な!?」

「えっ!?」

「ば、ばかな!?」

三者三様の驚きをみせた。
それもそうだろう。
先ほどまで傍観するだけで何もせずにいた少年がいきなり入りこみ魔力をまとわずに魔力を込めた光弾を止めたのだから。

光弾はかき消えたようにみえたがハーディスに小さな稲光が見えた。

(はじき返したって感触じゃねーな。吸収したのか?)

トレインはハーディスを少しの間見つめたがすぐさま相手の少女に目を向けた。

「と、トレイン君?」

「そこでじっとしてろなのは。おい、お姫さん。」

トレインは少女に向かって話しかけ、少女は自分のことか?というそぶりでトレインをみた。

「そう、おめーだよ。あんたが持ってるそいつを奪う気はないからここは痛み分けってことで引いてくれねえか?」

少女は意外そうにトレインのことを見て聞き返した。

「あなたはそれでいいの?」

「あー、はなから俺はそいつには興味はねーしな。好きにしな。」

そうあっけらかんと言うトレインにユーノはかみついた。

「なにを言っているんだ!!ジュエルシードは、ふぎゃ!?」

二の句をつなごうとした瞬間トレインはあろうことかユーノを踏みつぶした。

「おめーがしゃべると話が進まないから黙ってろ。」

「ゆ、ユーノ君!?」

なのはぐったりと倒れるユーノにふらつきながらも近づき介抱しようとしていた。
先ほどの戦闘のダメージがそこまでないことを確認するとトレインはほっと一息ついた。
そして少女に再び語りかけた。

「で、どうだ?まあ納得いかないってんなら今度は俺が相手になるぜ?」

(さっきの感触に間違いがなければ…。)

そういうとおもむろにハーディスの銃口を少女に向け引き金を引いた。
そして銃声とともに目にもとまらぬ光弾が少女の横をかすめた。


「「「!?」」」

少女は体がすくんでしまったように固まっていた。
また、ユーノとなのはもその光景を目にしてあっけにとられていた。
通常の銃弾程度ならば自分たちが使用しているバリアジャケット、もしくはシールドで防御できるであろう。
しかし今トレインが撃った銃弾は通常ではありえない弾速、威力をしていた。
いかに強固なバリアジャケットといえどあれをまともに食らえばただでは済まない事は確かだった。

少女は魔力を使ったわけでもないのにありえない弾速の銃弾におどろきつつもトレインに答えた。。

「わ、私としてはなにも言うことはありません。これ以上ここで戦う意味もありませんし。」

わりと素直にこちらの要求をのんだことにトレインは安堵の表情を見せた。
口では戦うといったものの女、子供と戦うことはトレインの信念としては反するものがあったからだ。

「OK。んじゃな。」

トレインは一変してかるい表情で手をふりつつ少女にあいさつをした。

「え、えーとさよなら。」

少女は戸惑いつつもしっかりとあいさつを返していた。
そしてどこかに行ってしまった。

「ま、まて!!」

「やめとけ、なのははこれ以上戦える状況じゃねーしどうみてもこっちの負けだ。」

そのまま少女が見えなくなるのを三人は見ていた。







少し時間がたちなのはも回復してきた。

「ふー、なんとかなったな。」

「な、なんとかなっていませんよ。ジュエルシードを取られてしまったじゃないですか?」

ユーノはあくまで何事もなかったのようにふるまうトレインに食ってかかった。
ユーノからすれば確かにあれ以上の戦闘はなのはには無理だっただろうし、デバイスを持っていないトレインに戦ってもらうわけにもいかなった。
自身で戦おうにもこの体ではまともには戦えない。
それでも

「あのジュエルシードがとても危険なものには変わりはないんです。下手な使われ方をしたらどんなことが起こるか君にはわからないんです。」

絞り出すかのようにユーノはトレインに叫んだ。

「ユーノ君…。」

なのはも悲しげにその叫びを聞いていた。
自分がもっと頑張れれば、そう自責の念にとらわれ始めていた。

(ったくお子様の相手も楽じゃねえな。なまじまじめすぎる奴らだから余計にな。)

「確かに俺はお前らの事情もよくわからねえしそのなんとかシードとかいうのについても知らねえ。けど今の状況じゃどうしようもなかったんだぜなんとか三人とも無事だったからよかったじゃねえか。」

「でも…。」

「おめーだってこれ以上なのはに怪我でもされたらたまんねえだろう?」

そう言うとユーノはなにも言えなくなってしまった。
彼の言うことは正しい。
もし彼がこの場にいなくても彼女の持っていたジュエルシードが手に入るわけでもない。
むしろトレインが威嚇してくれたせいか彼女がすぐに撤退してくれ、こちら側のジュエルシードがとられなかったことを考えれば…。

「まーなんにせよ桃子達も心配してるからもどろーぜ。」

「うん…。」

「それに腹が減ったしな。今日の夕飯はなんだろな~♪」













三人が家路につこうとしたときすでにあたりは暗くなっていた。
当然のことながら士郎、桃子を筆頭に心配されたがそのあたりは適当にごまかしなんとか事なきをえた。

「ごちそーさん!!」

「はい、お粗末さまでした。」

「相変わらずいい食べっぷりだねトレイン君。」

「ははは、桃子の飯はうめーからな。食べなきゃ損だしな。」

そう言われると桃子としても悪い気はしない。
また、今までの家族の団らんもよかったがトレインが加わったことでますます明るくなったように桃子は感じていた。


そのトレインは食事を終え、ゆっくりくつろいでいるなのはに近づいた。

「なのはすこしいいか?」

「ん?なにかなトレイン君?」

トレインはなのはに顔を近づけそっと囁いた。

(なのはの部屋で話したいことがある。魔法関係は家族には秘密なんだろ?)

(うん、なにか魔法関連の話なの?)

(まだわからんが、できればユーノにも加わってもらいたい。)

(わかったよ。じゃあすぐにでも部屋に行く?)

(そうだな。)

二人が部屋に移動しようとしたとき何やら二人を見る生暖かい視線があった。

トレインがその視線のもとをたどるとにこにこ顔でこちらを見ている桃子と美由希であった。

「ど、どうかしたのか?」

「いえいえ、いつの間にかそんなに仲良くなったのかしらって思ってね。ね?美由希。」

美由希もうんうんと嬉しそうにうなづいていた。

「そうだね、なのはとトレイン君ってお似合いかもね?」

「は?」

「お、お、お姉ちゃん?」

あっけにとられるトレインと真っ赤になってあわてるなのは。
トレインからすればなのはは完全に対象外の存在だ。しかしなのはにとってトレインは………少し気になる存在?らしい。

「あらあらなのはもまんざらでもないみたいね。トレイン君、お昼の話はなかったことでいいかしら?養子じゃなくて婿養子のほうが私としても安心だし。」

わざとらしく頬に手をつきうっとりするような話しぶりをする桃子。

「お、お母さんまで!?もう、トレイン君行こう!!!」

「お、おい待てって。」

「あらら、愛の逃避行かしらね?」

桃子、美由希はからかうように二人の姿を見ていたがその後ろでとてつもない殺気を放っている男二人がいたことをここに記す。












そしてなのはの部屋では三人!?が話を始めていた。

「トレイン、僕にも聞いてほしいことってなんなんだい?」

ユーノは正直トレインから話があると聞いた時は先ほどのことについてかと思ったがトレインはさして気にするそぶりもせず否定した。
しかし、そうすると彼が何の話がしたいのか正直見当もつかなかった。

「正直俺としてもどう話していいか分かんねえんだが…。」

トレインは少し唸りながら今朝から新聞を見て調べ上げていたことやこちらに着た経緯について説明した。
星の使徒のサミット襲撃事件に関する記事がないこと、サヤによって…いやなにかの光り包まれ気がついた時に海鳴市にいたことなど

「う~ん、なのははあまりニュースとか見ないですけどそんな大きな事件はなかったと思います。」

「そうか~、どうなってやがんだ?こっちの世界地図も見たけど俺のところのとかなり違いがあってよ。」

いろいろとこの世界に来て感じた違和感を話していると沈黙していたユーノが口を開いた。

「もしかしたら君は他次元世界から来たのかもしれないね。」

「他次元世界?」

「ああ、この世界では認知されてはいないけどたくさんの異世界というものが存在しているんだ。僕らの魔法の力も本来この世界にはないものなんだ。それを言うと僕も異世界から来た人間といえるんだけど…。」

そこで一息つきトレインに目を向ける。

「正直君がいた状況がわからないからなんとも言えないけど君がいた地球とこの地球は別物であるという可能性が高い。」

「おいおい、んじゃそれが本当だとしたら俺は元の世界に戻れないのか?」

「それはわからないな。君がいた世界の次元座標がわかれば戻れるかもしれないけど僕の力だけではそれはできないんだ。」

「そ、そんな…。ユーノ君、どうにかならないの?」

なのはは自身のことのように真剣にユーノに問い詰める。

「管理局、時空管理局に頼めばどうにかなるかもしれない。」

「管理局?」

「以前君が指摘していた魔導師で組織された次元世界で起きる事件を解決する組織だよ。」

「そいつらに頼めばなんとかなるのか?」

「わからないけど少なくともここでどうにかしようとするよりは状況はましになると思う…。」

しかしそこでユーノは黙り込んでしまう。
トレインはすぐに察した。

(連絡は取れるが今回のカタをつけるまでは連絡したくないってとこか。)

「ユーノ君?」

なのはは気づいていないみたいだがトレインはユーノに告げる。

「あせってもしょうがねえみたいだからな。今回のことが片付いてからにしようぜ?」

「いいのかい?君はそれで?」

「ああ、俺としても今回のことでお前らを放っておくこともできねえしな。」

パンパンと手を叩きトレインは立ち上がり

「おし、この話はここまでにしよーぜ。俺は少し散歩してくるわ。」

「こんな時間に?お母さんたちが心配すると思うのですが?」

そう言うとなのはのおでことつつくようにした。

「あうっ!?」

「なーに言ってんだ?お前だって似たようなものだろう?見つからねえように出てくから大丈夫だ。」

そういってなのはの部屋から出ていった。















見事!?だれにも見つかることなく外に出たトレインは初めてなのはたちと会った公園にいた。
あたりは暗く人影も見えない。

「おしっ!!この時間なら誰も見てねえだろう。」

そう言うとトレインは足につけていたハーディスを構え目を閉じた。

(今回の体の変化がナノマシンのものと同じとは考えにくいがやってみる価値はあるか)

そう、トレインは以前ナノマシンを克服したように元の姿に戻れないか試しに来たのだ。
すずかの家でのクイックドロウ、先ほど打った電磁銃の反動が予想以上にありこのままではまともに戦うこともできないと感じていたからである。


「ふーーーーーー。」

自身の姿をイメージし集中する。
ティアーユ、イブのアドバイスをもう一度思い起こしイメージを思い浮かべる。






そしてトレインは光に包まれ始めた





[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第7話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/10 00:13
海鳴市。
緑豊かな美しい自然に囲まれた町である。
また、緑豊かな山々だけでなく近くには海もあり至れり尽くせりな町なのだ。
自然が多くある中にも都市としてもかなり発展していたり温泉、スーパー銭湯が存在したりもする。


そんな豊かな町において二台の車が温泉を目指し歩みを進めていた。










普段休むことのない翆屋も連休に入り高町家は店をほかの店員にまかせ月村家、なのはの友人を伴って温泉に出かけることにした。
家族として旅行に出かけることは久しぶりであったので皆の表情は明るく子どもたちも楽しく会話をしていた。




「………。」

士郎の運転するワゴン車の中で二列目に座っていたトレインがいつになく静かに窓の外をじっと見ていた。
その様子を見て隣に座っていた美由希が心配そうに様子をうかがっていた。

その後ろの席ではアリサとすずかが笑顔で話をしていたが隣にいるなのはどこか心ここにあらずというような感じでトレインと同様外を眺めていた。

(なのは!!)

その姿を見たユーノはすかさず念話でなのはに話しかけた。

(なにユーノ君?)

念話の中の会話や話しかけさえすれば普段と変わらぬ様子であるが目を離すとどこかうつろ気になっていた。
そのことをとがめるようにユーノは言った。

(旅行中くらいゆっくりしなきゃ駄目だからね。)

(うん、大丈夫だよユーノ君。)

ユーノに笑顔を笑顔を浮かべつつ答えるなのは。
その様子にとりあえず納得したのかユーノは目線をなのはから外した。
しかしなのはの頭の中にはあの少女のことが頭から離れなかった。

(あの子は今はどうしているんだろう?)

ジュエルシードのこともありいろいろと考えすぎてしまっているなのはだった。

少し暗くなってしまいそうになったがユーノの言うとおり旅行中くらい楽しまなければと頭を切り替えアリサたちとの会話に加わる。

「それにしても今日はトレインの奴いつになく静かね。」

アリサがどこか不満げにつぶやいた。

「そうだね。今日はなんか落ち着いてるね。」

すずかもアリサに同調しつつトレインに目を向ける。
トレインは手に顎をのせながら外の景色を眺めているようだった。

その姿をなのはも見て心配になっていた。
昨日の様子だけ見れば温泉に行くということを聞いて割と嬉しげにしており楽しみにしていたようだった。
それだけに今日のこの様子は違和感があった。
そしてなのははトレインに関してもうひとつ気になることがあった。
あの日以来トレインが夜どこかに出かけ、帰ってきたときにはへろへろになって帰ってくるようになったのだ。

心配になったなのははトレインに問いただすがうまくけむに巻かれてしまいごまかすだけだった。
一人でジュエルシードを探しているのではないかとも思ったが彼には魔力を行使するすべがないことや戦っているような形跡がないのでそれ以上追及しなかった。

ユーノはトレインの表情を窺うように見ていると急に頭をさげなのはに告げる。

(なのは、心配する必要はないよ。トレインは寝ているだけだから。)

(え、そうなの?)

(うん、おおかた…)

なにかを告げようとした瞬間ワゴンが大きく揺れトレインの頭を支えていた手がずれ倒れこむと

(ってえぇぇーーーーーー!!!)

そのままユーノに倒れこんできた。
そして目をこすりながら寝ぼけ気味口を開いた。

「ん~、もう着いたのか?」

その様子を見て運転する士郎や助手席の桃子を含めてみな安心したようにほっと一息ついた。
そして一息おいてアリサが咎めるようにトレインに食ってかかった。

「なーに疲れ切った様子で寝てんのよ?まだ温泉についてもいないのよ?」

「んなこと言ったってねみぃーんだからしょうがねーだろ。」

「あんたはただでさえ気が抜けてるんだからこういうときくらい…。」

「あ、アリサちゃん落ち着いて?」

あくまでひょうひょうとするトレインに食いつくアリサ。
それを必死に止めようとするすずか。
その普段と変わらないどこかおかしい日常になのはすこし吹っ切れたのか笑顔を浮かべ笑った。



















そうこうしているうちに目的地に着き、宿の部屋についた一行はさっそく温泉に入ることにした。

「温泉なんて久しぶりだな。」

トレインが何気なくつぶやいた。
もともとトレインが育った国では湯船につかるような習慣がなかったのと普段はシャワーだけで済ましていた生活が長かったせいか温泉とは無縁だった。
一度だけジパングに行った時にものは試しとスヴェンと入ったことくらいだった。

「トレイン君は温泉はあまり行かないの?」

なのはがトレインに聞いた。
なのはとしてみればトレインのことについて詳しいことを何も知らない、というよりトレインがあまりしゃべらないので知りたかったというのがある。
家の中ではトレインの過去について問いただすことはタブーになっているようでこういう機会でもない限りチャンスはないとなのはは思っていた。

「ん~、まーな。おれんとこはたいていシャワーで済ます程度だったしな。」

「へー、そうなんだ。じゃあ…。」

と話を続けようとするとアリサのせかす声が響いた。

「そこの二人!!なにのんびりしてんのよ?早くしなさいよ。」

「アリサちゃん、そんなに急かさなくてもいいと思うよ?」

すずかがそう言うが

「なーに言ってるのよ。こんな機会は年何回もないんだから時間は有効に使わないと!!」

すずかに熱弁をふるうアリサの姿をみてトレインは苦笑しつつなのはの背中を押し

「ほれほれ、アリサ様がご立腹だ。いそがねーと?」

「って、そんなに押さないでよーーー!!!」






そして浴場の入口のところで
トレインは恭也とともに男湯へ、なのはたちは女湯のほうへ入って行った。

するとトレインはなにか違和感を感じつつ女湯を見ていた。
その様子を見ていた恭也がトレインに話しかけた。

「どうした?男湯はこっちだぞ。」

「いや、そいつはわかってるんだがユーノのやつ…。」

「ユーノ?あいつはフェレットだし問題ないだろう?」

「いや…まあそうだな。」

恭也の言うとおり特に気にする必要はないだろう。
奴がムッツリスケベというだけである。とトレインは認識した。

ユーノはこのことをネタに今後トレインに脅されることになるとは夢にも思っていない。





いざ浴場の中にはいると広々とした空間が広がっていた。

「おー、こいつはなかなか解放感があるな。」

「なんだ温泉は初めてではないんだろう?」

先ほどの会話を聞いていたのか恭也が聞いてきた。

「ここまで広いのは初めてだな。おしっ!!」

「お、おいまずは体を洗え…」

恭也が体を洗うように促す前に駆け足で湯船に飛び込んだ。






飛びん込んだあと恭也に連れられ周りにいたお客に謝らさせられた。
周囲の客も子供のやったことだからそれほど気にするなとやんわりと叱る程度だった。
しかし恭也はトレインを監視するように終始そばで湯船につかっていた。














温泉から出た後はトレインは浴衣に着替え一緒に出てきた恭也と別れ施設内を散策することにした。
土産物屋でしばらくの間物色していたが手持ちがないことに気がつきしぶしぶ引き払った。

施設内をあらかた回ったところで中庭に面した廊下でなのはたちと合流した。

「あ、トレイン君。」

トレインの姿を見るとすずかが嬉しそうに手をふりつつ呼びかけた。
さすがにトレインもここで逃げ出すようなことはせずそのまま三人の所に向かった。

「あんた!!いったいどこに行ってたのよ?」

開口一番アリサはトレインに突っかかってきた。

「ん?建物の中を一通り見てきただけだが。」

「えと、今ね卓球をしようかなって話だったんだけどトレイン君もどうかな?」

卓球か。
いままで娯楽、とりわけスポーツとは無縁なトレインとしては興味はあったので了承しようとしたらそこに大きな女性の声が入り込んできた。

「ヘイ!!おチビちゃんたち。」

四人が何事かと目線を向けると浴衣を着た女性らしい体つきをした、美人といえるであろう女性がいた。

トレインは三人の様子をうかがう限り顔見知りではないことはわかった。
かといって自身も見覚えのない相手だった。
女性はそのままこちらに近づきなのはの前に立ち顔をなのはに近づけると

「ふ~ん君かね、うちの子にアレしてくれちゃってるのは…。」

「え?」

突然のことで戸惑っているなのはを気にすることもなく値踏みをするように見ていた。

「あんま強そうでもないしかしこそうでもないし…。ただのガキんちょに見えるんだけどな~。」

(コイツ、もしかすると…。)

トレインはこの女性が以前なのはと相対した少女の関係者であること確信した。
なのはを性格を考えれば普段の生活で他社とトラブルになることは考えにくい。
例外としてはジュエルシードに関することぐらいだ。
それにこの女性は血の匂いまではしないまでも戦いに身を置いているものの持っている雰囲気がしていた。

なのはの後ろにいる二人に目を向けるとすずかは心配そうにみているが、アリサは爆発寸前の状態だったので助け船を出すことにした。


「あー、あんたが誰かしらねーけど俺達これから卓球しに行くからどいてくんねーか?」

トレインがなのはと女性の間に立ちそう言い放つと女性は少し驚いた表情をしつつ今度はトレインを見つめた。

「君もうちの子にあれしたのかな?」

「あれじゃわかんねーし、うちの子ってだれかもしらねーーよっと!!」

そういうと女性のおでこにでこピンをかました。

「きゃん!?」

思わぬ攻撃に後ろにたじろきつつおでこを抑えつつトレインを睨む。

(あんま騒ぎには起こしたくねーんだけどな。)

そう思いトレインは声は出さず唇だけ動かした。

(ここであんたとやる気はねーから引いてくんねーか?)

「!?」

女性は驚いたような表情をした。
トレインのほうは読唇術が通じたことに確信をもちそのまま口を動かした。

(そのうちいやでもやりあいそうだしな。理由もねえのに他人と戦う気ねえから)

しばらく見つめあっていると女性は突然笑顔を浮かべ

「あははははははははっ、ごめんごめん。人違いだったかな?」

そう言うとそのまま四人のそばを通り過ぎると

(とりあえず今のところはあいさつだけね。)

((!?))

発せられた念話はトレインにも聞こえていた。
なのはとユーノの二人はとまどっていたがトレインは冷静に耳を傾けていた。

(忠告しとくよ、こどもはいい子にしておうちで遊んでなさいよ。オイタが過ぎるとがぶっといくよ?)

「あ!?」

立ち去ろうと歩き出したが突然立ち止まり

(そこのボーヤは少しはやるみたいだけど魔法も使えない人間がしゃしゃり出ないほうが身のためだよ?)

ウインクをトレインにしつつ立ち去って行った。
トレインはその後ろ姿を少し鋭い目線で見つめていた。
そしてふとなのはのほうに目をやるととまどいがはっきりと表情に表れていた。
一方なのは以外の二人はすずかは心配そうになのはを見て、アリサはあまりにも失礼極まりない女性の行動に腹を立てていた。

「いったい何なのよ!!」

「落ち着けよアリサ。一応一発かましてやったんだしよ。」

「一発ってでこピンじゃない!!!でもまああんたにしてはよくやったわ。」

珍しくトレインのことをほめていた。
それにトレインは驚きつつも

「ほれ、気分を入れ替えるためにも卓球しに行こうぜ?」

「うん!!ほら行こうよアリサちゃん、なのはちゃん。」














女性用の大浴場にリラックスながら温泉を満喫している一人の女性がいた。
しかしただリラックスするだけでなく念話での会話を行っていた。

(あー、こちらアルフ。フェイト~?)

(うん、どうかしたの?)

(さっきフェイトが言っていたやつに会ってきたよ。)

(白い服の子と……。)

(見たところフェイトの敵じゃないね特に気にしなくても大丈夫だよ。でも…。)

(でも?)

(片方のぼさぼさ頭のボーヤは実力はどうか知らないけどただの甘やかされて育ったがきんちょとは違うね。)

(そう……だね。)

(フェイト?)

(ううん、なんでもない。それよりいい知らせだよ、次のジュエルシードの位置がだいぶ特定できたよ。)

(ほんとかい?さっすが私のご主人さま♪)

(じゃあまたあとでおちあおう)

(りょーかい)


女性ははーっと一息つくと獣らしき耳が飛び出した。

「おっと!!」













なのはあれからすずか、アリサ、トレインの四人で遊んだりしていたが今日会った女性のことが気になっていた。
布団の中に入っても天井を見つめつつ思うのはこの前戦った少女のことばかりだった。

(ユーノ君が言っているようにあの女の人もあの子の関係者みたいだし…。)

警告ともとれる女性の発言を思い出すとまたため息が出てしまうなのはだった。
その様子を見ていたユーノが話しかけてきた。

(なのは…)

(ユーノ君!!それ以上言ったら怒るよ?)

なのはは起き上がりユーノをとがめるように見つめる。

(これからは僕一人でやる、これ以上なのはを巻き込めない。とか言うつもりだったでしょ?)

(うん…。)

(ジュエルシード集め、最初はユーノ君のお手伝いだったけど今はもう違う。今は自分やりたいと思ってやっているから。)

なのははうなづくユーノを優しくなでつつ決意を新たにした。
最後までジュエルシードを集め、あの子と…

ふとなのはあたりを見回すとトレインの蒲団がもぬけの殻になっていることに気がついた。

(ユーノ君トレイン君はどうかしたの?)

(いや、僕が起きた時にはもういなかったけどトイレにでもいっているのかな?)

(どうだろう、最近よく夜に出歩いてみたいだし。)

トレインの蒲団を見つめていると二人の表情が急変した。


(なのは!!)

(わかってるよユーノ君。)

二人はすぐさま行動を開始した。













一方のトレインは河原でハーディスを構えていた。
あの日以来必ず行っている訓練だった。
そしてあの日のように光に包まれつつあると自身以外の発光物があることに気がついた。

「なんだ?」

向こう岸にあるようだがまばゆいばかりの光を放ちながら水面に浮くように存在していた。

(こいつはたしかなのは達が探しているジュエルシードとかって言うやつか?)

トレイン自身それほどジュエルシードに興味はないが放っておいて以前戦った化け猫のような奴が出てくるの勘弁なので持ち帰ることにした。
川の真ん中にあるジュエルシードを手に入れようと川の中に入った。

「うわっ!!つめてーな。」

これから夏に入ろうとする季節だがまだまだ夜になれば冷え、川の中は一段と冷え切っていた。
そしてジュエルシードをその手に握った瞬間

「おーっとそこまでだよボーヤ。」

「!?」

ふと視線を声の方向に向けると漆黒の少女と昼間会った女性が橋の上にトレインを見下ろすように立っていた。

「おめーらは……。」

いきなりハーディスを構えるようなことはせず相手と相対するトレイン。
対する少女たちも特に警戒することもなくただそこに佇んでいた。

「私は親切に警告してあげたよね?いい子にしないと…「あいにく俺はいい子とは程遠い存在だからなお仕置き受けてもかわんねーぞ。」

トレインは挑発するように女性に言い放った。
女性はきょとんと驚いた表情をみせたが一転すぐさま大きく口をあけ笑い始めた。

「あははははははははははっ、やっぱりあんたはおもしろいね~けど…。」

表情を厳しいものに変え

「魔力もろくに扱えない人間がしゃしゃり出るなって言わなかったっけ?」

普通の人間ならたじろぐか腰を抜かしてしまいそうな殺気をトレインはもろに受けた。
が、あいにくトレインはそれほど脅威を感じるほどのものではなかった。
良くも悪くも死と隣り合わせの世界で長い時間を過ごしたトレインにとってまだまだ生易しいくらいだった。
トレインと女性が視線を交わしていると沈黙を保っていた少女が口を開いた。

「できれば手荒な事はしたくないの。それを私に渡してください。」

言葉は命令しているようだが口調でこの少女が他者を傷つけることをそれほど望んでいないことはわかる。
トレインは何も言わずに黙ってその言葉を聞いていた。

「あんたは魔力もろくに使えないし腰に下げているそいつで戦おうとしても無駄だよ、私やフェイトにとってそいつは脅威にはならない。おとなしく言うことを聞いておいたほうがいいよ。」

小馬鹿にしたようにトレインに語りかけてくる女性。
さすがにここまで言われてトレインも黙ってはいられない。

「おもしれぇ、なら力づくで奪ってみやがれ。」

腰に下げたハーディスを抜くと相対する二人も臨戦態勢に入った。
しかし構えようとしたフェイトと呼ばれた少女を止めるように女性が前に立った。

「フェイト、こんな奴相手にあんたが出る幕はないよ。ここは私がお仕置きしてやるから見てなって。」

「へー、あんたが相手してくれんのか?」

「アルフ、油断はしないであの子は強いよ。」

(あの女はアルフ、あのガキがフェイトだったな。)

目の前の相手を警戒しつつトレインは相手の情報を整理していた。

「だいじょーぶ、あんながきんちょすぐに片づけてあげるからさぁーーー!!!」

「!?」

最後まで言い切る前にトレインに向かい拳を放った。
トレインはそれをハーディスでガードしたが衝撃まで受け切れず藪の中に飛ばされた。

「はっ、口ほどにもないね。」

藪飛ばされたトレインの姿を見て勝利を確信したアルフ。
しかしすぐさまフェイトが声を張り上げる。

「アルフ!!!手の甲!!!」

「へ!?」

アルフが自身の手の甲に目をやると猫のイラストが描かれた爆弾らしきものが貼り付けられていた。

カッ!!!

音ともにあたりに閃光がはなたれた。

「ちっ!!」

アルフは目を隠すように腕を前に組んだ。
閃光がなくなったところで辺りを見回すがトレインの姿は視界の中にはなかった。

ガンッ!!!

するとアルフの足もとに一発の銃弾が撃ち込まれていた。
アルフの上空にハーディスを構え不敵に笑うトレインの姿があった。

「やってくれるじゃないか!!!」

アルフも攻撃を加えようとしたがトレインはそれを許さないように矢次に銃弾を撃ち込んだ

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

それをその場から移動することで回避した。
そのすきにトレインは着地し態勢を整えた。
しかしそこからのアルフの動きはトレインの予想を超える素早いものですでにアルフは自身の目の前に迫ろうとしているところだった。

「もらったよ!!!」

「くっ!?」

ダンッ!!!

アルフがおおきくふりかぶり拳をトレインのボディーに打ち込んだ。
そして先ほどのように大きく飛ばされ気に背中をぶつけた。

拳にあった手ごたえから確実に体に充てたと確信しているアルフは今度こそはという感じでトレインの見た。
しかし

「ちくしょうなかなかいてぇじゃねーか。」

「「なっ!?」」

これには二人とも驚きを隠せないでいた。
確実にヒットしていた思っていた攻撃を受けてなお立ち上がる目の前の相手に戸惑いがあるのだろう。
トレインはおなかのあたりをさすりながらダメージを確認していた。

(あばらはいってねぇしまだ動けるか。しかし当たる直前にバックステップしなかったらやばかったな。)

そうトレインはヒット直前に後ろに跳びダメージを最小限に抑えたのだ。

(この衝撃。あのデブの道士と張り手と同じくらいかそれ以上の威力か。)

その一連の動きを見ていたフェイトは改めて実感していた。

(この子は戦いなれている。)

魔力が使えないことは大きなハンデとなっていることは間違いないがあの子は人の隙を突く、作ることに長けている。
なにより戦いの場において冷静な精神を保っている。
もしこれで彼が魔力を使えるような人間であれば二人ともやられていたかもしれないと感じていた。

「ははは、あんたは化け物かい?バリアジャケットもなしに私の攻撃を受けて立ってられるなんて。」

「あん?別にあんたの動きは速いは速いが動きが単純だから読みやすいんだよ。」

「なんだって?」

「それに魔力とかいうのがないからって俺をなめすぎだぜ?すぐにかたづけられるんじゃなかったのか?」

実際アルフの動きは通常では考えられないほど速い。
しかし動きが単調で読みやすいというのがトレインの印象だった。
動きだけなら恭也のほうがよほど洗練されていた。

とはいっても相手をできるだけ傷つけずに無力化するにはかなり厳しい状況だった。

(この体じゃな~、仕方ねー疲れるが奥の手といきますか!!)

と再び相対しようとしたところで二つの気配が感じられた。
トレイン以外の二人も感ずいたようでフェイトも武器を構える。

「遅かったななのは?」

「トレイン君?」

「トレイン?もしかして君一人で戦っていたのか?」

二人はトレインのところどころ擦り切れている姿をみて心配そうに駆け寄った。

「なにかすり傷だよ。それよりこいつを。」

手を差し出すとジュエルシードが輝いていた。

「「ジュエルシード!?」」

それを手に出すと黙ってみていたフェイト達も動き出す。

「それをこちらに渡してください。」

「そっちのおちびちゃんたちあんたたちにも警告したろ?言うことを聞けないならそいつと一緒にまとめてがぶっといくよ?」

その姿をみたなのはも身構える。

「なのは、やっぱり彼女はあの子の使い魔だったんだ。」

「「使い魔?」」

聞いたことのない言葉になのはとトレインが二人同時に聞き返す。
それにアルフが答えた。

「そうさ、私はフェイトに生み出された魔法生物。主人の魔力で生きる代わりに持っている力の限り主人を守るのさ!!!」

そう言うと女性の姿から一遍赤いオオカミの姿に変わった。

「なっ!?犬っころだったのか?」

「犬じゃない!!!私は狼だ!!!」

トレインの発言が許せなったのかすぐさま突っ込みを入れた。
そして大きく跳躍しなのはたちに襲いかかった。

しかしその攻撃はなのはたちに襲いかかることなく見えない壁に邪魔されていた。

「やらせはしない!!!」

「はん、やってみなよ。」

ユーノはシールドを展開するとそのまま魔法陣を展開し始めた。

「なのは、君は彼女のことを頼む!!」

そう言うとアルフとユーノの姿が消えた。

「ユーノ君?」

「いい使い魔をもっているね。」

フェイトがなのはに語りかけるが使い魔という言葉きにいらなかったのかなのはは言い返した。

「ユーノ君は使い魔じゃないよ!!お友達だよ。」

その言葉を聞いて少し怒気を含めた表情に変わった。
その姿を見てなのはも本格的に構えるがあることに気がついた。

「トレイン君は?」















「なんで俺までこっちに移動してんだ?」

「僕のそばにいたからつい。」

そうトレインはユーノと一緒に転移していたのだった。

「くそっ!!すばしっこい連中だね。」

二人は攻撃を加えることはせずにひたすら逃げ回っていた。

「このままじゃ埒が明かねえな。」

「といっても僕は攻撃魔法はそれほど得意じゃないし…。」

つまり二人とも決め手に欠けていたのだ。
トレインは悩むそぶりをしつつ立ち上がった。

「詳しい説明は後にする。とりあえずあいつをなんとかするわ。」

「なんとかって、無茶だ!!魔法も使えない君が…。」

「まーみとけってここ最近夜な夜な抜け出していた理由がわかるからよ。」

そう言うとアルフのほうへ出て行った。

「へーようやく観念したのかい?」

「いや、あんたを倒すつもりだぜ?」

不敵な笑みを浮かべるトレインだった。
その眼からは負けることなどみじんにも考えていない自身に満ちた目だった。

「その根拠のない自信と度胸には感心するね。けどもう手加減はしないよ。」

「それはこっちも一緒だ。」

そしてハーディスを構え目を閉じるとまばゆいばかりの光が当たりを包んだ。

「くそっ!!!また眼裏ましかい?」

その声に反応して少し低い声が発せられた。

「そいつは違うな。戦闘準備をしただけだ。」

アルフの目の前にいたのは先ほどまでそこにいた少年ではなく

「待たせたな。不吉を届けに来たぜ。」

「あ、あんたは?」

「き、きみは?いえ、あなたは?」

そこに立っているのは長いロングコートをまとい不敵な笑みを浮かべるかつてのブラックキャットの姿だった。












[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第8話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/07 14:22
アルフとともに味方であるユーノですらトレインの変化に驚いていた。

「あ、あんた変化魔法を使えたのかい?」

(いや彼が魔力を行使した感じはなかった。)

「別に魔法を使ったわけじゃねえよ。自分の本当の姿をイメージしただけだぜ?」

「本当の姿?」

アルフは目の前に相手に警戒しつつ聞き返す。
先ほどの少年の姿でも感じていた威圧感がさらに大きくなっていた。
そう、身震いを起こすほど。

「ま、いろいろと説明してやりてーがこの状態はそんなに長いこといられねえから手短に話すと俺はガキじゃないってことだ。」

そしてハーディスに銃弾をリロードし右手で構えた。
その様子をみてアルフもすぐさま構えをとった。

「ふん!!あんたがガキじゃなかったからと言ってなにか変るのかい?魔法を使えないんじゃさっきと変わらない…よっ!!!!」

そう言うと先ほどのように一気にトレインとの距離を詰めた。
アルフは先ほどのような小細工をしてこないか警戒しつつ攻撃を加えた。
しかし、トレインの反応速度は格段に上がっていた。
横っ飛びでその場を離れるとアルフとの距離をとらずそのまま攻勢に出た。

「おらよ!!!」

アルフの横に回り込んだトレインはアルフの腹部に蹴りを打ち込むが

「甘いよ!!」

アルフの反応もなかなかでとっさに腕でガードしていた。
しかしそれでも先ほどとは格段に違うトレインの動きに驚いているようだった。

先ほどまでのトレインは完全に頭の中ではかわしているつもりでも体がついてこないため回避、攻撃がイメージとは程遠いものだった。
しかし全盛期の体になったことでイメージ通りの動きが可能となったのだ。

(ちっ、さっきとは段違いの動きじゃないか。さっきのガキの状態でも厄介な相手だったのに。)

アルフは目の前の相手が魔力を使わない初めての強敵であることを認識せざるを得なかった。
自分にはない戦法、あとは圧倒的に自分以上に戦いなれていること。
フェイトの使い魔であることに誇りをもっているアルフにとって魔力を使わない相手に負けることは許されないことだった。
アルフが憤りを感じている中ユーノも呆然とその戦いぶりを見ていた。

(只者ではないとは分かっていたけどこれほどすごいなんて。)

ユーノもトレインの戦いぶりには脱帽するしかなった。
身体強化をせずにあそこまで反応、動きは常人では到底できないものだ。
おそらく純粋な身体能力では自分やなのは、あの漆黒の少女も足元にも及ばないだろう。
それに彼はあの姿が本当の姿と言っていたが容姿から判断するに彼は20代半ばの人間なのだろう。

(魔法でなければいったいどうやってあの姿に?)

アルフ、ユーノが思考を続けているなかトレインは相手をどうやって無力化する算段を付けていた。
身体が元に戻ったことで圧倒的に有利になったことには間違いないが相手を傷つけずに倒すにはなかなか骨がおりそうなのであった。

(あのアルフとかいうやつは単純だけどタフだし説得なんてまず無理だろうしな。)

麻酔弾でも一発撃ち込むくらいしか方法がないかと考えているとふときがついたことがあった。
外灯がないにしてはあたりが明るいことだった。
もしやと思い振り向くと

(満月か。)

ふだんより大きめに見える満月が空に輝いていた。

(ならこいつを十分に利用させてもらいますか。)


トレインはその場から移動すると同時にユーノに呼びかけた。

「ユーノこっちにこい!!」

「え!?」

「いいから早く!!!」

よくわからないがトレインの指示に従うことにした。
突然動きだしたトレインに反応するようにアルフも追いかけ始める。

「いまさら逃げるつもりかい?逃がさないよ!!!」













ある程度走り木がまんべんなく生えている場所になるとトレインは立ち止まり木に登り始めた。

「何を考えているんですか?」

「なーに、見てればわかるぜ。」

そしてある程度高さにある枝の上にたってアルフがやってくるのを待った。
すると地上にトレインを探すアルフの姿があった。
それを見たトレインはアルフと月の位置を確認して上空に飛んだ。そして一発の銃弾をアルフの足もとに打ち込んだ。

ガンッ!!

「!?そこかい!!!」

アルフの位置からだとつきが逆行となり姿を確認しずらいがシルエットはしっかりと捉えていた。

「はん、あいかわらず目くらましをする算段かい?芸がないねぇ。」

しかしその言葉にトレインは不敵な笑みを浮かべる。
すぐさまトレインに攻撃をしかけようとしたアルフだったが

ガンッ!!!

トレインが一発の銃弾を撃ちはなった。
と同時に

ギンッ!!!

金属同士がぶつかり合うような金属音が聞こえた。
その瞬間アルフの周辺は煙に包まれた。

「こ、こいつは!?」

すぐさま動き出そうとするがアルフの体は重かった。

「な、なんでだい。か、からだが重いよ。」

体が重いのだがどこか気持のいい感覚。
満腹で寝て視界そうになるような感覚であった。

(ま、まさか!?)

「こんな方法使うの趣味じゃねーんだけどな。ワリーけど少し寝ててくれや。」

「く、くそっ!!こんな方法でやられるとは……ね。」

その一言を最後にアルフは意識を手放し眠りについた。

















トレインの近くで戦いを見ていたユーノはトレインの戦いぶりに感心しきりだった。
一発目の銃弾を撃ったあとトレインが爆弾のようなものをアルフに向かって放り投げたがアルフはそれに気づくことがなかった。
それはトレインのシルエットにかぶるようにトレインが絶妙なタイミング強さで投げ込みぎりぎりのタイミングで催眠弾が爆発するように銃弾をうちこんだからである。
あらためてユーノはトレインの強さを認識することになった。
魔力を使わない人間がここまで戦えるとはユーノからすれば非常識極まりないことだった。
またユーノは一つのことにうすうす気が付いていた。
トレインには魔法資質がないというわけでないこと、ただでさえ高い戦闘能力が魔力の行使をできるようになればおそらく管理局の中でも指折りの使い手になれることを。




そんなことは露知らずトレインはアルフが眠りについたのを確認するとアルフを抱きあげた。
気が抜けたせいかオオカミの形態ではヒト型に戻り気持ちよさそうにいびきをかきながら眠りについていた。

「おいユーノ、なのはたちのとこまで運んでくれや?」

「いいですけど彼女は置いて行ったほうがいいのでは?」

「しばらくは起きねーから大丈夫だろう。それより放っておいて後で不意打ちでもされたほうが厄介だ。」

「はあ、わかりました。」

ユーノは魔法陣を展開して移動魔法でトレインと一緒になのはたちのもとに向かった。









なのはとフェイトの戦いは互いの砲撃の打ち合いになっていた。

「レイジングハート、お願い!!」

“Yes Master”

その瞬間なのはの砲撃の威力が高まりフェイトの砲撃を押し切り始めた。

「す、すごい。なのは強い!!」

ユーノは若干興奮気味になっていたがトレインは冷静にそのようすを見ていた。


なのはのピンク色の砲撃がフェイトの砲撃を完全に押し切った。
撃ち切ったなのはは息遣いを少し荒くしつつその場にたたずんでいた。
しかしトレインの眼はフェイトが回避していたのを捉えていた。

「バカ!!油断するな、かわしてるぞ!!!」

トレインの一言に反応するなのはだったがすでに遅かった。
フェイトは魔力でできた刃を振りかぶりなのはの首筋にあてていた。

「あっ!?」


茫然自失といった感じで動けずにいるなのは。
ユーノも呆然としていた。

するとレイジングハートが反応した。

“Put out”

「レイジンハート、なにを!?」

ジュエルシードの一つをフェイトのほうに吐き出される。

「きっと、主人思いの、良い子なんだ」

フェイトは吐き出されたジュエルシードを受け取ると地上に降り立った。
そして背後にいるトレインたちに目をやるとそこにいたのは先ほど少年ではなく自分よりも成熟した青年だった。

「やっぱりおめーはつえーな。」

層いながらフェイトの頭に手をやりなでるように動かした。
フェイトは戸惑いつつも聞き返した。

「あ、あなたは?」

トレインは自身の姿を改めて見直すと

「あ、ワリーワリーこの姿は初めてだったよな?」

ニカッと笑いつつ再びしゃべりだす。

「一応これが俺の本当の姿なんだわ、よくわからねえけどガキの体になっちまってな。」

「え?」

驚きを隠せずにいるフェイトの後ろに同じく驚いたようなかおで降り立つなのはがいた。

「と、トレイン君?」

「おう、また負けちまったみたいだな。」

「う、うん。それもそうだけどどうして大きくなってるの?」

「訓練の賜物ってやつだ。」

「あの~それだけじゃよくわからないのですが?」

戦いの後にもかかわらずゆる~い空気が流れるなかフェイトの目にはいったものがあった。
トレインにいわゆるお姫様だっこという形で抱きかかえられているアルフであった。

「アルフ!!」

一転緊迫した表情になるフェイトだったがトレインは微笑みつつ答えた。

「心配すんな、催眠ガスで眠らせただけだ。殺さずに相手を制するの掃除屋の本分だからな。」

そういうとフェイトの前にアルフを下ろした。
フェイトは笑顔を浮かべ眠っていることを確認すると安堵の表情を浮かべた。

「よかった。」

「どうすんだ、そいつはしばらく目を覚まさねえぞ。お前じゃ運ぶのはつらいだろ?」

「ご心配なく、大丈夫ですから。」

そう言うとフェイトは多少つらそうにしながらもアルフを抱えながら空中に移動した。

「この子を傷つけないでくれてありがとうございます。」

「別に感謝されるようなことじゃねーよ。」

「あとできれば、私たちの前にもう現れないでください。もし次があったら、今度はとめられないかもしれない」

層冷たく言い放つとなのはが気丈にに問いただした。

「名前――――あなた達の名前は?」

「お前がフェイト、その女がアルフ。だろ?」

「ええ、私の名前はフェイト・テスタロッサ。あなたは………。」

なのは、そしてトレインに視線を動かし何かを聞こうとしていたがそのまま飛び去ってしまった。

「あの、私は――――」

なのはがいいかけるが少女はすでにいなくなっていた。














少しの間フェイトの向かった先を見ていたなのはたちだが突然それは起きた

「ぐっ!?」

「と、トレイン君?」

いきなりトレインの体が光り出しトレイン自身が苦しみ出したのだ。
心配し駆け寄るなのはだがトレインがそれを手で制した。

「し、心配すんな。元に戻るだけだ…。」

「も、元にっていったい?きゃっ!!!!」


あたりが光に包まれるとそこにいたのは青年の姿でなくなのはがよく知る少年の姿だった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やっぱり5分ちょっとが限界か。」

「大丈夫かい?」

ユーノが駆け寄りトレインの様子を見る。
ひどく疲労した様子で息も荒い。
しばらくの間うずくまったままだったが

「トレイン君?」

息が少し整ったところで立ち上がりトレインは説明をすることにした。



















「ナノマシン?」

「ああ、予測の範疇でしかないし専門家でもない俺じゃ詳しいことは分からねえけど多分な。」

トレインは自身の体の変化はナノマシンと言われるものが原因であると説明した。
かつてどこかの馬鹿にナノマシンを撃ち込まれたこともあり同じような変化をしたことがあることも経緯も話した。

「じゃ、じゃあトレイン君は…じゃなかったトレインさんはなのはたちよりも…。」

「年上も年上、お前んとこじゃ士郎や桃子が一番年が近いだろうな。」

「ちなみにいくつだったんですか?」

ユーノが好奇心から質問続ける。

「25だな。」

「「………。」」

二人は驚いていたがこれでトレインの戦いぶりにも少しは納得できた。

「ガキの体でも戦えるんだがどうにも体がついていかなくてな。試しに俺の元の姿をイメージしてみたらうまくいったわけだ。」

「その服とかはどうして?」

「あー、たぶんナノマシンが変化したんじゃねえのか?さっきも言ったろ俺も原理までよくわかってねーんだよ。」


トレイン自身も驚いている部分があった。
以前から訓練と称して何度かトランス!?を繰り返していたが以前は服装までは変化しなかったにもかかわらず今回は服装までも自身がイメージしたものに変化していた。

「と、トレインさん?」

「別に呼びにくかったら今までどおりでいいぞ?このことを士郎たちに説明しても面倒なことになりそうだしな。」

「わ、わかりました。」

「敬語もいらねーよ。」

軽くなのはのあたまにチョップをいれつつ笑いながらトレインは言った。
それになのはは嬉しそうに笑顔で答えた。

「うん!!」


こうして温泉旅行で起きたひと騒動は取り合えす終結した。























フェイトは自室にもどって白い服の少女、なのはのことを考えていた。
自分に懸命に呼びかけていた少女。
魔法の才能にあふれ自分と対等の戦いを演じていた。
といっても明らかに戦いに向いていなさそうな優しい子だった。
でも私は止まることはできない。

最後に名前を言いかけていたみたいだがあえて聞こうとは思わなかった。

知ってしまえば戸惑いが生まれてしまいそうだったから。




しかしフェイトにとって気になることはなのはだけではなかった。


「あの人はいったい何者なんだろう?」


フェイトはトレインと呼ばれた男のことを考えていた。
白い服の少女とは違った力強いまなざしをした少年であり青年でもあった男。

ふとアルフのほうに目をやると相変わらず気持ちよさそうに眠りについていた。
確認してみてもこれといった外傷は特に見られなかった。
言葉通り彼は自分の大切な使い魔を傷つけることなく倒しこちらに引き渡した。

どこかひょうひょうとしていてつかみどころのない感じがする人だったが悪い人には思えなかった。



敵対しているはずの私にもまぶしいくらいの笑顔を浮かべ
そしてあたまに残る彼の手の暖かさを思い出していた。

(頭をなでてもらうなんていつ以来だろう?)




そしてベランダに立ちまちを眺めた。


「ジュエルシードを探していればまた会える……会うことになるのかな。」

憂いを帯びていた少女の瞳の中にもわずかながら希望、期待に満ちたものが浮かびつつあった。



[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第9話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/07 14:23
あの温泉での戦い以降ジュエルシードの発見はなく、トレイン達はのんびりした時間を過ごしていた。
とは言うものなのはのほうはトレインと違いフェイトとの考えると溜息ばかりが出てしまう日々が続いていた。
息抜きのつもりで行った温泉でショッキングな出来事ばかりが起こり、無理がないとも言える状況でもあった。

フェイトのこともなのはを悩ませる原因の一つであったがもうひとつあった。





















あの戦いのあと、疲労困憊の三人は旅館に戻ることにした。
その途中でトレインが自身の過去について話してくれたのである。





「トレインさん。」

「ユーノ、それになのはもだがさっきも言ったとおり呼び方と話し方は気にすんな。今の俺はお前たちと同じでガキんちょだ。」

「じゃ、じゃあトレイン。この前の戦いから気になっていたのだけれど君のその戦闘技術はどうやって身に付けたんだい?」

ユーノが少し声色強くし問いただす。
なのはも心配そうに見守るが止めるようなことはしなった。
そしてユーノは言葉を続ける。

「その正確無比な銃の扱い、戦況を冷静に見極める眼力、魔力による強化なしでのあの身のこなし、普通に訓練しただけでは身に付くようなものじゃない。それに君は異常なまでに戦い慣れしている気がする。」

そのセリフにトレインは苦笑しながら口を開いた。

「確かにな…。だがそれを言えばそんなことに気づくお前らも普通じゃない気もするけどな。」

するとここまで黙っていたなのはが口を開いた。

「ユーノ君が言っていることも気になるんだけど私はトレイン君のことをもっと知りたいの。」

トレインは驚きながらその言葉を聞いた。

「なのは、そいうことはもう少し考えていったほうがいいぜ?」

「え!?えーと…。」

「まあ、詳しいことまでは話せねぇが昔話もいいかもな。」

「話してくれるの?」

無言でトレインは頷いた。


なのはからすれば気になっていたことの一つなのでトレインが話してくれるといった時は喜んだのだ。
しかし、その内容はなのはの想像を超えたものだった。




なのはの肩を借りながら歩いているトレインが自身の過去について話し始めた。

「前にも聞いたと思うが俺の両親は暗殺者に殺された。」

「「………。」」

のっけから重い展開で二人は黙り込んでしまった。
その二人を見て苦笑しながらも話し続けた。

「両親がどういうことをしてどういう理由で殺されたかなんてのは分からねえ。ただわかっているの殺した奴の顔と名前だ。」

「と、トレイン君はどうして知っているの?」

「俺は両親を殺した奴に育てられ、人の殺し方を教わったからだ。」

あくまで淡々と語るトレイン。
あまりに現実離れした内容になのはは信じられないという表情になっていた。

ユーノはなのは程ではないが驚きを隠せないでいた。


「信じられねえか?そりゃそうだ、育てるほうも育てられるほうもどうかしてる。でもな俺はそれでも生きたかった、両親の仇である相手をいつか殺すためにな。」

一瞬だがトレインの表情が冷たいものになっていた。
なのはがかつて見たことのない底冷えするような、あの少女とは比較にならないほどの冷たい目線。

「だがそいつに鍛えられているうちに俺は…。俺にとって最強の存在だったあいつが敵じゃなくて目標に変わっていたんだ。」

「目標…。」

「けどそいつも殺された。そこから俺は一人で生きてきた。」

なのは思った。
自身も小さなころ父親が大けがをして、母親の経営する喫茶店も今ほど順調でなく兄や姉はその手伝いに忙しくいつも一人でいた。
小さななのはは一人、孤独だったのだ。
しかし、トレインの抱える孤独はなのはのそれをはるかに超えるものだった。
それを感じると同時に自分が恥ずかしくなった。
これではあのアルフに甘ったれと言われても仕方がないと感じるようになった。

「組織に、あるおっさんに拾われてそこで暗殺者として働き数えきれないくらい人を殺してきた。」

それを聞いた瞬間なのはは立ち止まった。
彼はなんと言ったのか?

(数えきれないほど人を殺してきた。)

その様子に気づいたトレインはなのはに聞いた。

「俺が怖いか?」

「!?」

突然の投げかけに体を大きく震えさせ反応した。
トレインは自嘲気味に語った。

「ある意味その反応は当然だ。もし俺が怖い、近くにいてほしくないのであればすぐにでも高町家を出ていくさ。」

「待って、そんなつもりは…。」

「話を続けるぞ。」

トレインは何かを言いかけたなのはに有無を言わせずに話を続けた。

「組織で実績を上げるうちに俺はBLACK CATと呼ばれるようになった。」

「「BLACK CAT…。」」

トレインにとって捨てることのできない過去でもある。
裏世界で知らぬものはいない伝説的な抹殺者。

「不吉を届ける存在…。しばらくは何の戸惑いもなく何人も抹殺してきたが……。」

突然トレインは黙り、悩んでいた。




そしてまた淡々と口を開いた。

「いろいろあって組織を抜けることになって掃除屋をはじめることになったのさ。」

「掃除屋?」

「犯罪者を捕まえて生活費を稼ぐ連中の呼び名だな。ようは賞金稼ぎだ。」

「どうして掃除屋になったんだい?」

ユーノが当然の疑問ぶつけてきた。
突然抹殺者をやめ賞金稼ぎになる、それも不自然だが組織を抜けるということは何かきっかけがなければないはず。

しかしトレインは

「悪い、これはプライベートなことになるんで勘弁してくれ。」

そう言われるとユーノもなのはもそれ以上の追及はできなかった。

「今までしてきたことを俺は否定することもなかったことにするつもりもない。そいつがそいつである限り過去は切り捨てられるものじゃないからな。」

「トレイン君…。」

なのははトレインの強さの秘密がわかった気がする。
戦いにまみれた生活を続けてきたこともあるが背負っている過去(モノ)が自分とは重さが違うのだ。
今までしてきたごまかすのではなく正面から向き合い今を生きている。

「だからいずれ背負うことになる今をどう生きるかが大事なんだよ。だからななのは。」

トレインは一息おきなのはを正面から見据え言った。

「お前に自分が正しいと思ったことをやればいい。」

「「!?」」

なのは、ユーノににとってその言葉は意外だった。
これだけ厳しい現実を生きてきたトレインに敵対している人間に語りかけるなのはの行動は否定されるものだと思っていたからだった。

「いくら語りかけても気持が通じないことだってあるがそいつは当たり前だ。俺たちはみんなそれぞれ違うんだからな。」

「………。」

「大事なのは…周りになんと言われようとそれでも自分の信念を貫き通せるかどうかだぜ。」


そう言うと丁度旅館についていた。

「俺が言えるのはここまでだ。あとは自分で考えてみろ。」





















場所は変わり私立聖祥大附属小学校教室

なのははトレインの言葉をずっと考えていた。
自分とは比較にならないほどの人生を歩んできたトレイン。
彼が多くの人を手にかけてきたこともなのはに大きなショックを与えていたがそれだけに彼の言葉は重かった気がした。
あれからトレインが言った言葉がなのはの頭から離れることなくずっと頭の中を廻っていた。

そう、目の前でアリサたちが話しかけているのにも気がつかないほどに。


その様子にしびれを切らしたのかアリサがものすごい剣幕で怒鳴りつける。

「いい加減にしなさいよっ!!!!」

「!?え、ご、ごめんアリサちゃん。」

突然のことになのはも驚き、アリサにあやまるがアリサの怒りは収まらなかった。

「なにを話しても上の空!!!そんなに私たちと話しているのが退屈なら一人でいればいいわ!!」

「あ、アリサちゃん!?」

すずかはあわててアリサを追いかけようとするがなのはのことも放っておけないのか立ち止まってしまう。
それを見たなのはは

「いいよ、すずかちゃん。今のはなのはが悪いから。」

うつむきながらそう答えた。

「そんなことないと思うよ。アリサちゃんも言いすぎだと思うよ。」

そう言うとすずかはアリサを追いかけて行った。
その姿を見てなのはは呟いた。

「だめだな私…。アリサちゃんを怒らせちゃった。」













一方トレインは翆屋の手伝いを終えると街に繰り出していた。
魔力の行使ができないトレインではジュエルシードを探すことはできないがなにか情報を集められないかと街に繰り出していた。

「闇雲に探してもやっぱり見つからないよな~。」

あくまで飄々としているトレインに後ろめたさや憂いというものはなかった。
情報収集とは名ばかりで町を散策しているだけにも見える。
なのはに自分の過去、言葉を語りかけた。
正直な話なのはとは若干ギクシャクした感じはあるがこれ以上踏み込むような真似はトレインはしなかった。
自分のことを隠しながら痛い腹の探り合いをするくらいなら話してすっきりすることもあると考えているからだ。

「まあ、だから荷物までまとめたんだがな。うまい飯が食えなくなるのちとつらいがな。」

口ではそんなことを言ってはいるが今回の一件に蹴りがつくまではこの街を離れるつもりはない。
このままだとすっきりしない。
特にあのフェイトやなのはをは見ていて危なっかしくて見ていられないというのもある。


(いつからこんなにおせっかいになったんだかな。)

そうしてトレインはまた雑踏の中に消えていった。











再び場面は変わりなのはは帰宅しユーノとお菓子を食べていた。

「今日は塾もないから晩御飯までの間ゆっくりジュエルシードの探しできるよ。」

笑顔を浮かべながら話すなのはだがユーノからみてもどこか影がさしていた。
友達とけんかしたことを聞いたユーノは自分に責任があると感じていた。

「だから頑張ろう?」

「う、うん。そうだ、なのは。」

なのはに答えると何か思い出したように言った。

「どうしたのユーノ君?」

「トレインの荷物がなくなっているんだ。」

「え?」

「しかもどこかに出かけたわけじゃなくて持っていた荷物がきれいさっぱりなくなているんだ。」

「そ、そんな…。」

なのはは少なからずショックを受けていた。
あの時の反応をみてトレインは去ってしまったのか。
そう思うと後悔の念が浮かぶ。

「なのは、まだいなくなったと決まったわけじゃない。ジュエルシードを探しながらトレインを探してみよう?」

ユーノは努めて元気づけるように言った。
その様子になのはもすこし表情を明るし

「うん、そうだね。」


そうして二人は街に繰り出した。








一方、街で散策を続けていたトレインはなにか違和感を感じていた。
今までに感じたことのない大きな力、それが近くにあるような感覚。
あたりは暗くなり始めていてそろそろ寝どこも探さなければいけない時間だったがそれも気にせず創作を続けていた。

「こっちか…。」

それを感じる方向へ走りだした。
何一つ確信できるものはなかったがそれがジュエルシードと呼ばれるもの存在であると感じていた。
フェイトやなのはにはない戦いのなかで培われた第六感のようなものがトレインに呼びかける。
探しものはこっちにあると。





そして走り出してしばらくして帰路につこうとするサラリーマンやOL、学生でごった返した大通りにでた。

(こんなところにあるのか?だがなにかがここにあるって感覚が呼びかけてきてんだよな。)

目を凝らしながら辺りを捜索してりると道路の真ん中に光るものがあった。
それに近づき手に触れた瞬間あたりにいた人間がいなくなった。

「な!?なんだ?」






「みつけた。」

「ああ、でもあっちも近くにいるみたいだね。」

「うん、でも一番近くにいるのは…。」

「あのぼさぼさ頭の奴だね。でもあいつは魔法も使えないから封印もできない。」

「うん、でも急ごう。」


そう言うと手に持ったデバイスを構えた。

「バルディッシュ。」

(Sealing Mode)









「こいつはなのはたちが近くにまで来てるってことか?」

トレインは手にしたジュエルシードを見つめていた。

(こんななんの変哲もないきれいな石ころがあんな化け物を…。)

改めてジュエルシードを見てみてもそんなものがこの石にあるとは思えなかった。
また疑問におもうのがフェイトがこれを集める理由だ。
なのはが何度問いただしても聞き出すことのできない理由。



ぼーっとジュエルシードを見ていると自分に近づいてくるものに気がついた。

それは…

「ん?ってぇぇぇぇぇぇーーーー!?」

ピンクと金色の閃光が自身に近づいていた。












ジュエルシードは無事に封印されていた。
そこになのはが近づいていた。

それを見つめながらなのははすずかとアリサと初めて会った時のことを思い返していた。

(あの時も話をできなかったから、分かり合えなかったからアリサちゃんを怒らせたのも思っていることをいえなかったから。)

そこにユーノやってきて告げる。

「なのは早く確保を!!」

「そうはさせないよ!!」

アルフが現れつづいてフェイトも現れた。

(目的がある同士だからぶつかるのは仕方がないことかもしれない。それに相手は自分じゃないから気持ちが通じないのかもしれない。でも私は…。)

なのはは一歩フェイトに近づき

「この間は自己紹介できなかったけど…私はなのは、高町なのは。私立聖祥大附属小学校三年生…。」

しかしフェイトは何も言わずデバイスを起動させる。

「!?」

そしてデバイスを構えなのはに切りかかる。









互いの砲撃で撃ち合い続けているとフェイトが接近し一閃するが
以前のようにやられずレイジングハートが反応する。

“Flash Move”

そして回避を行い距離をとったところでフェイトに大きな声で語りかける。

「フェイトちゃん!!!」

その呼びかけにわずかだが反応するフェイト。
なのははそのまま話しかける。

「話し合うだけじゃ、言葉をしてもなにも変わらないって言ってたけど…。だけど言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ。」

その言葉を聞いてフェイトの表情にも迷いが生じる。
なのははトレインの言葉を思い出していた。

(いくら語りかけても気持ちが通じないことだってあるがそいつは当たり前だ。俺たちはみんなそれぞれ違うんだからな。)

「競い合うことやぶつかり合うことは仕方ないのかもしれないけど…。」

(大事なのは…周りになんと言われようとそれでも自分の信念を貫き通せるかどうかだぜ。)



「だけどなにもわからないままぶつかり合うのは………私、いやだっ!!!」

自分の思いのたけを吐き出しフェイトにぶつける。
ここまで何の反応も見せなかったフェイトの心にも大きく響いた。

「私がジュエルシードを集めるのはそれがユーノ君の探しもだから。ジュエルシードを見つけたのはユーノ君で、ユーノ君はそれを元通りに集め直さないといけないからそのお手伝いで……それは偶然だったけど今は自分の意志でジュエルシードを集めてる。」

フェイトは黙ってなのはの言葉に耳を向けていた。

「自分の暮らしている町や自分の周りの人たちに危険が降りかかったらいやだから。これが私の理由。」

「っ……わたしは…。」

フェイトは迷いながらなのはに何かを告げようとする。
しかしそれを妨げるようにアルフが吠える。

「フェイト!!言わなくていい!!」

「!?」

「!?」

「優しくしてくれる人たちに甘えてぬくぬくと暮らしているがきんちょになんて何も教えなくていい!!!」

なのはは愕然とした表情でアルフの言葉を聞いていた。

「ぇ…。」

「私たちが優先するのは……。」


しかしアルフの言葉がすべて告げられることはなかった。


「そいつは……違うぜ!!!!」

ガンッ!!
アルフの足もとに銃弾が撃ちこまれる

「!?またあんたかい?」

そこに立っていたのは月明かりに照らされたトレインだった。

「トレイン君!!」

「吹っ切れたみたいだな?お前らしい信念だな。」

そう答えるとアルフと相対する。

「あんた、そいつは違うって言ったけどどういうことだい?」

「あんたはなのはが甘ったれたガキとか言ってたがそいつは違うってことだ。」

その言葉にアルフは怒りをあらわにした。

「なんだって?」

「あいつはあいつなりの信念をもって迷いながらもここまでやってきた。甘ったれたガキじゃそんなことはできねぇぜ。」

「うるさい!!あんたになにがわかる?」

アルフはトレインを殺さんとばかりに食ってかかる。

「わかんねーよ、さっきなのはが言ってただろうが?言葉にしないとわからないってな。」


「「!?」」

「トレイン君…。」

アルフの言葉に自信をなくしかけていたなのはだったがその瞳に再び強い光がよみがえっていた。

トレインはフェイトに向かって言った。

「お前はどうなんだ?お前にも事情があるなら別に言わなくてもいいけどよ……。」

しかしそこでフェイトがトレインに聞いた。

「あなたは?」

「俺?」

「あなたの名前は?」

「フェイト!?」

アルフが止めるように呼びかけるがフェイトは視線をトレインから外さない。

「トレイン・ハートネット。」

「そうですか…。」

そう言うとフェイトは一目散にジュエルシードに向かった。

「し、しまった。」

ユーノは完全に虚をつかれ反応が遅れていたがフェイトに追いつく影があった。

「!?」

キィーーーンッ!!!!
互いのデバイスがぶつかり合い大きな金属音が辺りに鳴り響く。
そこにいる誰よりも早く反応していたのはなのはだった。

「なっ!?」

フェイトもすぐさま反応したなのはには驚きが隠せなかった。


こう着状態が続いていると突然ジュエルシードから光が漏れだした。

「な、なんだ?」

「ど、どうなってんだい?」


そしてあたりを大きな光と衝撃が包んだ。

























?????

「小規模ですが次元震を確認しました。」

「どこの座標かしら?」

「第97管理外世界ですね、文化レベルはそこそこで魔法技術は皆無ですね。」

「ロストロギアか?」

「おそらくそうでしょうね。それに現地に魔導師が入り込んでいる可能性が高いわ。魔力反応は?」

「ええーと、確認できるだけで五つあります。」

「艦長、現地入りしますか?」

「とりあえずは様子を見ましょう。現状把握が先だわ。」











[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 仮設定②
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/12 23:29
あくまで個人的な設定ですのでご了承ください。





トレイン・ハートネット

 通常時            変身時
 保有魔力量  :A(240000~)⇒A+(430000~)
  魔力資質  :A⁻     ⇒A⁻
  身体能力  :AA     ⇒S    
近距離戦闘技能:AAA⁻   ⇒S
中距離戦闘技能:S       ⇒SS  
遠距離戦闘技能:AAA    ⇒S
総合戦闘技能 :AAA    ⇒S+
状況判断能力 :SS
空間把握能力 :S
  指揮能力  :A
単体戦闘能力 :S⁻     ⇒SS
広域戦闘能力 :D
  空戦適正  :None
  陸戦適正  :AAA
  補助能力  :E
  攻撃能力  :A+(SS⁻)⇒AAA+(SS⁻)
  防御能力  :D      ⇒C
  陸戦     :AA    ⇒S+
  適正ポジション:????

保有スキル・技能

細胞放電現象:ナノマシンと細胞核の結合により電気エネルギーが発生する現象。しかし、あくまで発生する電気エネルギーは静電気程度の微弱なもの。

電磁銃(レールガン):細胞放電現象によって充電された電気エネルギーにより弾速、威力が格段に向上された銃撃。その貫通力、威力はバリアジャケットですら破壊するほど。

自己治癒能力:ナノマシンによる常人をはるかに凌ぐ回復能力。

早撃ち(クイックドロウ):驚異的な速射撃。本人はもちろん使う銃のほうにも大きな負担がかかる。

変身(トランス)能力:ナノマシンに電気信号を送ることにより変身が可能。だがあくまでトランスできるのは肉体の成長に限定されており、イブのような多様性はない。(衣服に関してはある程度の操作が可能)

総評:
魔力資質はあるもののデバイスを持たないのでバリアジャケットの生成ができないため防御面では不安を残す。
だが、身体能力等に関しては変身(トランス)をすることで飛躍的に向上し技能、攻撃能力にも大きく影響を及ぼす。
空戦適性は持たないものの地上戦では無類の強さを誇りほぼオールレンジでの戦闘が可能で特に中距離(ミドルレンジ)での戦闘はもっとも得意とし、空中の敵に対しても対応ができないわけではなくそれほど問題にもならない。対魔導師戦でも豊富な戦闘経験からくる状況判断能力と持前の身体能力、射撃能力、技能を駆使した戦いを展開し圧倒するが強固なバリアジャケットを持つ高ランクの魔導師に対しては決め手に欠くことが否めない。
対バリアジャケットに対する有効手段である黒爪・黒十字といったハーディスの強度を利用した高速打撃も筋力が低下した状態のトレインでは威力が半減し特殊弾、電磁銃(レールガン)も弾数に制限があり苦戦を強いられることもある。

装備・デバイス

ハーディス (質量兵器)
オリハルコン製のトレインの愛銃で攻防一体となった武器。並のデバイスよりはるかに高い強度、性能を誇る。対電気系統の攻撃に対してはほぼ無効化し蓄電する性質を持ち、その他の攻撃もほぼ防ぐことができる。

通常弾:43発
炸裂弾:3発
冷凍弾:3発
跳 弾:10発





高町なのは

保有魔力量  :AAA(1270000~)
  魔力資質  :S
  身体能力  :D
近距離戦闘技能:D
中距離戦闘技能:AAA
遠距離戦闘技能:S⁻
総合戦闘技能 :AA⁻
状況判断能力 :A
空間把握能力 :AA
  指揮能力  :C
単体戦闘能力 :AA
広域戦闘能力 :AAA⁻
  空戦適正  :S⁻
  陸戦適正  :B
  補助能力  :A
  攻撃能力  :AAA⁻
  防御能力  :AAA
  空戦     :AAA
  適正ポジション:センターガード




総評:
魔力資質、保有魔力量は一流の域にあり砲撃と射撃による攻撃力、バリアジャケットの防御力に関しても文句なしの能力を誇る。年齢の割に高い判断能力を持ち平均以上の能力を有している。動体視力も悪くなく反応は魔導師の中でもかなりのものになる。
まだ戦闘慣れをしていないところから指揮能力は低いが資質がないわけではない。
中距離~遠距離戦闘をもっとも得意としているが近距離戦闘に関しては今後の課題となるところである。
身体能力自体もそこまで高くないこともそれに拍車をかけている節がある。


デバイス
レイジングハート:インテリジェントデバイスで一般的に普及している規格のデバイスであるが様々な形態を持っている。主に砲撃、射撃による攻撃をメインとしており生成されるバリアジャケットは強固でよほどの攻撃でない限り破壊されることはないがその分機動は若干は重めになっている。


ユーノ・スクライア

保有魔力量  :A(330000~)
  魔力資質  :A
  身体能力  :D
近距離戦闘技能:C
中距離戦闘技能:B
遠距離戦闘技能:A⁻
総合戦闘技能 :B
状況判断能力 :AA
空間把握能力 :A
  指揮能力  :A
単体戦闘能力 :B
広域戦闘能力 :B
  空戦適正  :A
  陸戦適正  :B
  補助能力  :AAA
  攻撃能力  :C
  防御能力  :AAA
  総合     :A⁻
  適正ポジション:フルバック


保有スキル

フェレット化:人間形態をとらないことで魔力消費を抑えることができる。

総評:
デバイスを必要としない「結界魔導師」で補助、防御魔法を得意とし後方から支援するタイプ。
攻撃魔法があまり得意ではなく戦闘ではあくまで牽制程度にとどまっている。
魔導師としての経験が長いため状況判断はなのはより良い。
攻撃力が乏しい代りに防御面に関しては特筆すべき能力を誇る。




フェイト・テスタロッサ

保有魔力量  :AAA(1470000~)
  魔力資質  :S
  身体能力  :B
近距離戦闘技能:S
中距離戦闘技能:AA
遠距離戦闘技能:AA⁻
総合戦闘技能 :AA+
状況判断能力 :AA
空間把握能力 :AA
  指揮能力  :B
単体戦闘能力 :AAA+
広域戦闘能力 :A
  空戦適正  :S⁻
  陸戦適正  :AA
  補助能力  :A
  攻撃能力  :AAA+
  防御能力  :A⁻
  空戦     :AAA
  適正ポジション:ガードウィング


デバイス
バルディッシュ:インテリジェントデバイス。射撃、砲撃による攻撃も可能だが近接戦闘用に高い性能を発揮する。製作者がフェイトへの愛情を込め作り上げたものでフェイトにとって心の支えにもなっている。

総評:
高い資質と能力を兼ね備えた優秀な魔導師。中距離以上の攻撃も難なくこなし近接戦闘に関して言えばなのはですら圧倒するものがある。
持前の機動性を生かした戦闘が得意で防御面でやや不安を残すが、機動性を生かした回避行動により攻撃をかわす。魔導師としての指導を幼いころから受けていたこともありなのはより高い能力を示す部分が多い。
身体能力も年齢のわりに高く今後向上の余地も大きくある。精神的に危ういところもあるが冷静な判断も下せることから指揮能力も低くない。

アルフ

保有魔力量  :A+(400000~)
  魔力資質  :A
  身体能力  :AA
近距離戦闘技能:AA⁻
中距離戦闘技能:B+
遠距離戦闘技能:C
総合戦闘技能 :A
状況判断能力 :A
空間把握能力 :A
  指揮能力  :E
単体戦闘能力 :AA+
広域戦闘能力 :C
  空戦適正  :A+
  陸戦適正  :AA
  補助能力  :AA
  攻撃能力  :AA
  防御能力  :A
  総合     :A+
  適正ポジション:フロントアタッカー


保有スキル

狼化:身体能力が向上し地上戦闘に適している。

総評:
高い身体能力を生かした格闘攻撃を得意とし魔力を込めた一撃は高い威力を誇る。戦闘では性格がよく出ており、積極的に前に出ていくタイプでやや直進型の戦闘スタイルをもつ。
以外にも抗バリア魔法・捕縛系バインド魔法等の補助系魔法も得意としフェイトのサポートする。



クロノ・ハラオウン


保有魔力量  :AAA(1070000~)
  魔力資質  :S
  身体能力  :B
近距離戦闘技能:AA+
中距離戦闘技能:AAA
遠距離戦闘技能:AA+
総合戦闘技能 :AAA⁻
状況判断能力 :AA+
空間把握能力 :AA
  指揮能力  :AAA⁻
単体戦闘能力 :AAA+
広域戦闘能力 :A
  空戦適正  :AAA
  陸戦適正  :AA
  補助能力  :AA+
  攻撃能力  :AAA
  防御能力  :AA+
  空戦     :AAA+
  適正ポジション:センターガード


総評:
遠近どの距離からの攻撃も得意とするオールラウンダー。補助能力、特にバインドなどの捕縛魔法を得意としておりトータルの能力だけをみるとなのは、フェイトの上を行く実力を持つ。戦闘技能も穴という穴もなく状況判断、指揮能力にも優れる指揮官としての資質をもつ優秀な魔導師。しかし、突出した能力がないのも事実であり本人も気にしているところらしい。


デバイス:
S2U
ストレージデバイス。自立思考、変形能力、対話能力を持たない分、処理能力に重点を置き設計されたデバイス。そのため高速に魔法を発動させることが可能になっている。



[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第10話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/09 09:23
バリアジャケットも持たずあの大きな衝撃を受けたトレインはなのはたちとは違い結界外に飛ばされていた。

「くそっ、ここはどこだよ?」

辺りを見回すとどこかの家の庭だった。
それを見るにそれほど遠くに飛ばされてわけではないとわかった。

「うっ!?」

動き出そうとしたところ痛みが走った。

(こりゃあ何本かいってるかも知れねぇな)

額からはかなりの量の血が流れ出ていた。
このまま放っておけばまずいことは明白だった。
痛みをこらえながら何とか動き出そうとしたものの血が足りないせいか意識がだんだん薄れていく

「誰ですか?」

独特のイントネーションのある声を最後にトレインはブラックアウトした。












一方なのはたちもフェイトたちと別れたあと必死にトレインの捜索行っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、トレイン君どこに行っちゃったの?」

「わからない、彼はバリアジャケットも結界も作ることもできないからさっきのジュエルシードの暴走に巻き込まて結界外に飛ばされたのかもしれない。」

「そんな!?」

なのははショックを受けたような顔になった。
しかし、その表情をみてユーノはすかさず付け加える。

「でも、それほど規模が大きいものじゃないからそこまで遠くに入ってないはずだよ。」

安心できるわけではないがこのあたりにまだトレインがいる可能性があることはなのはにとって少しは落ち着く材料になった。
正直なのはのなかにはもしかしたらこのままトレインがいなくなるのではないかという恐れがあった。
旅行以降気まずい関係が続いていたことも今となっては後悔が残る。

しかし、それでもトレインは駆けつけ自分の行動、信念を肯定してくれた。
揺らぎそうになった自分の信念を支えてくれた。
それだけでなのはにとってはトレインは必要な存在だった。

だがいくら必死に探そうともトレインを見つけることが出来ない。
魔力を探そうにも彼は普段魔力を無意識のうちにか使用していないため手掛かりにはならない。

「なのは君はもう家に戻ったほうがいい。」

ユーノはなのはにそう提案する。
時間はだいぶ遅くなり、小学生が出歩くにはあまりいい時間帯とはいえなかった。

「でも!!!」

なのはユーノに食ってかかるがユーノは首を振りつつ言った。

「もしかしたら家に戻っているかもしれない、その時は僕に念話で教えてくれれば戻ってくる。仮にまだ戻ってなかったら僕が捜索を続けるよ。」

「でもそれじゃユーノ君が。」

「大丈夫、なのはには助けてもらっているんだ。これくらいは僕にやらせてくれないか?」

「ユーノ君…。」

「ほら、早く。桃子さんたちもきっと心配しているよ。」

「わかった、ありがとうユーノ君。」

そういうとなのはは走って家路を急いだ。
トレインが家にいるという可能性を信じて。







「ただいま~。」

多少気まずそうに家に入るとそこには仁王立ちした恭也がいた。

「お、おにいちゃん。」

「今何時だと思っているんだ?」

わずかに怒気を含めながら恭也は告げた。
なのはは小さくなりながら頭を下げた。

「ごめんなさい!!」

「俺だけじゃない母さんたちもどれでけ心配したと思っているんだ?」

その言葉にますます小さくなるなのはだったが桃子がもういいだろうと助け船を出した。

「恭也その辺でいいわ。」

「母さん?」

恭也を後ろにやり桃子はなのはの前にでて問いかける。

「何か理由があるんでしょう?」

「うん…。そう、お母さんトレイン君は戻ってる?」

「トレイン君?いえまだ戻ってきてないわよ。てっきりなのはと一緒にいると思ったのだけど?」

「トレイン君がいなくなったの。持ってきてた荷物もなくなってて…。」

「「「「!?」」」」

その言葉を聞いた高町家の人間は驚きの表情を見せた。






















「ん?ここは?」

「あっ!?先生気がつきました。」

「あら本当?よかったわ。」

気がつくとトレインはベットの上にいた。
病院とかではなく誰かの家の中であるとトレインは気づいた。
そして自分を解放してくれていただろうと思われる車いすに乗る少女と白衣を着た女医らしき女性がいた。

「いや~よかったわ、なにか物音がしたと思ったら君が庭で倒れておってね。血もものすごい出てるから死んでしまうかと思ったで。」

「はやてちゃんが私の所に電話してきてくれてここで治療してたのよ。」

「そっか、ありがとな。」

トレインは二人を見ながら頭を下げた。

「私は八神はやて。こっちは石田先生。君は?」

「俺はトレイン・ハートネット。」

「とれいん・はーとねっと?外人さんなん?」

「まー、そういうことになるかな?」

「???」

なぜか疑問形で返したトレインにはやては首をひねっていた。
そこで石田がトレインに話しかけてきた。

「トレイン君、君の怪我だけど見た目ほど大したことはないけど結構な怪我よ?いったい何があったの?」

「えーとそのだな…。」

トレインは説明に困っていた。
まさか本当のことを言うわけにもいかないし相手はいい年下大人だ。
下手な言い訳など通用しないことは確実だ。

悩んでいるトレインを見て石田はため息をついていった。

「言いたくなければ言わなくてもいいわ。その代り親御さんの連絡先を教えてもらえるかしら?」

「ワリーが俺の両親は二人ともいねーよ。」

「「えっ!?」」

二人ともその言葉に固まった。

「事故で死んじまったからな。」

両親の死は本当のことを話したがその経緯までは話すことはしなかった。
おそらくこんな自分を助けるようなお人好しの人間だ。
聞くだけでもつらいだけだろう。

「私と同じなんやね。」

「へ?」

「私も両親がおらんのよ。トレイン君と一緒や。」

少し影のある笑顔でトレインにそう告げるはやて。

(両親を殺されたときの俺と同じくらいの歳か…なのはと同い年くらいか)

はやてをトレインが見ていると石田がトレインに口を開いた。

「ごめんなさい、私も配慮が足りなかったわ。」

「いいぜ、いまさらそこまで気にしてねーしな。」

「そう…。じゃあどうしようかしら?できれば入院まではいかなくても通院してもらいたいのだけれど…。」

石田が悩みながら思案しているとはやてが口を開く

「トレイン君、今日はどうするつもりなん?」

「ん?ああ、どっかのホテルにでも泊るつもりだったが。」

嘘である。
そんなに手持ちのお金を持っていないトレインはどこかで野宿をする予定だった。

「なら私のとこにとまればいいわ。」

「え、でもよ…。」

「な?先生?」

はやてが後ろにいる石田に同意を求める。

「う~ん、そうねえ。病院に入院させるればいいかと思ったのだけど…それもいいかもしれないわね。」

っておい!!!
トレインは心の中でつこっみを入れた。
得体のしれない男をこんながき一人で住んでる所に居させていいのかい?
姿はガキだけど

「ちょ、ちょっと」

「よし!!決まりや!!よろしくなトレイン君。」

はやてはトレインの手を取り嬉しそうに笑った。
屈託もなく笑うその姿にトレインはサヤの姿がダブった。

「どうしたんトレイン君?私の顔をそないに見て。」

恥ずかしそうにほほを染めるはやてに気づきトレインはなんでもないように

「いや、知り合いに似てるなと思ってな。」

「そうなん?その人トレイン君の恋人?後で聞かせてや?」

「あー、機会があれば話してやるよ。」


二人のやり取りをみて安心した石田は帰り支度をし二人に言った。

「じゃあ、私は病院に戻るわね。はやてちゃん、明日の診察と一緒にトレイン君を連れて来てもらえるかしら?」

「はい、わかりました。今日はどうもありがとうございました。」

「いいえ、じゃあ二人ともおやすみなさい。」


そういって石田は出て行った。

「そういえば、トレイン君おなか減ってない?」

「お?そういえば昼からなんにも食ってないな。」

「じゃあご飯の用意してあげるわ。」

「まじか!?いや~はやてお前っていい奴だな。」

はやてはご飯聞いて目を輝かすトレインの顔をみてクスッと笑いながら

「じゃあすこし待っててや。」

そう言って寝室から出て行った。





少ししてトレインに用意されたご飯は白米と焼き魚、卵焼き、味噌汁とといった典型的な日本食だった。
トレインはそれを見事なはし使いできれいに完食した。

「ぷはぁーーー!!うまかった。ごちそうさん。」

「お粗末さん。いやーそんだけおいしそうに食べてくれるとこっちも作りがいがあるわ。」

トレインは満腹になったところでひとつ気になったことを聞いた。

「はやて。お前、足どうしたんだ?けがか?」

「ああ、これは病気や。うち生まれつき病気をもっててなもともと悪かったのが最近はろくに動かなくなってしまってな。」

「ふ~ん。治るのか?」

「わからへん。石田先生がよく見てくれとるけど…。」

暗くなっていたはやてを見てトレインは努めて明るく言った。

「病は気からって言うんだったかな?そんなに悲観的じゃなおるもんのなおらねーぜ。」

「そやね、全く希望がないわけでもないやろし。」


それから二人はとりとめのない会話をしていた。

そしてやがて時間が12時を回ろうとしていたところで

「そろそろ寝なあかん時間やね。」

「そうだな、そろそろ寝るか。」

「ほんならトレイン君、少し奥に詰めてくれる?」

「!?いいけどよ。」

何のために詰めるのかわからなかったが言われるがまま奥に詰めた。

「お邪魔するで~。」

そう言うとはやては手すりに掴まりながら器用にトレインの隣に入り込んだ。

「って、なんでわざわざおれんとこで寝るんだよ?」

「ん?せやかてここは私のベッドやし。特に問題ないやろ?」

よく見ると手すりやらなんやらがベッドにたくさんとりつけられていた。
おそらく障害者用に設計されたベッドなのだろう。

「いや、まあそうだけどよ。別にほかの部屋もあんだろ?俺はそこでいいからよ。」

出て行こうとするトレインの服をはやてがつかむ。

「お願いや、一緒に寝てくれん?」

おおよそ10歳前後のこどもが言うようなセリフではないとトレインは考えていた。
まだこのころは男女の意識など特にないのだろうと割り切り溜息をつきながらトレインはだまってベッドに戻った。
しかし10年後、いや数年後トレインはこの己の軽率な行動を激しく後悔する日が来る事を知らなかった。

「ありがとな。」

はやては嬉しそうにトレインにお礼を言う。

「はぁ、もういいから寝とけ。」

そう言って瞼を閉じようとしたがはやてが話しかける。

「トレイン君はこれからどうするん?」

「どうするも何も……。まだ考えてなかった。」

そう、こちらに来てからジュエルシードの一件がありそれどころではなかったせいか先のことを全く考えていなかった。
できることならきままな掃除屋家業を続けていきたいと思っていたがこちらに掃除屋なるものがあるかどうかも分からない。

それにスイーパーライセンスがあったとしてもこの体では取得資格すら持っていない。


「どや、もしよかったらうちで暮らさへん?」

「おまえんとこでか?」

「うん、幸いうちは一人やし家もトレイン君一人くらい問題ないくらいやしね。お金も援助してくれとる人がおるから困らへんし。」

ある意味トレインにとっては魅力的な提案であったが簡単にうなずけるものではなかった。
おそらくこの少女は家族というものに飢えているのだろうと気づいていた。
自分と同じように両親がいないトレインに親近感を抱きそのような提案をした。

(家族か…。)

トレインにとって野良猫の自分には縁のないものだと考えていた。

「考えとく。」

とりあえず安易な答えでこの場はかわしておくことにした。

「まだこの街でやり残したことがあるからよ。それが片付いたら決めるわ。」

「やること?」

「ああ、ケリをつけないといけないことがあってな。」

ジュエルシードの一件にケリをつけるまではこの街を離れるつもりはトレインにはなかった。
それにおそらくあのお人好しの高町家の人間だ自分のことを心配して……。

冷たい汗がトレインの背中を流れる。


「ど、どうしたんトレイン君?急に青ざめとるけど?」

(い、一応書置きもしたしな。そ、捜索届けとかでてねーよな?)
















夜が明け朝がやってきた。

高町家ではいつも通りとまではいかないまでも普段通りの生活が進んでいた。
なのはが遅くなって理由はトレインを探していたということになり特に追及されることもなくなった。
肝心のトレインは桃子宛に一筆書いており、トレインがいないということは把握していた。

その内容は

「すこし込み入った事情があるのでここを出るが、落ち着いたらまた連絡するわ。心配はいらないぜ。」

とあきらかに心配されるような内容だったが文面からトレインの様子が浮かぶようだった。
すこしあきれながらも高町家の面々はその内容を信じて待つことに決めたらしい。

「なんかトレイン君がいないとさみしいね。」

とすこし寂しそうにトレインの席を見つめる美由希。
それに同意するように桃子が言った。

「そうね。短い間とはいえあの子もうちの家族だったからね。」

恭也は特にいつもと変わらない様子だったが少し気になるようだ。
士郎も同様だったが落ち込んだ様子のなのはをみて明るく言った。

「なーに彼のことだひょっこりまた現れるさ。だからなのはもそんな顔をするな。」

「うん…。」

文面からはトレインが戻ってくる可能性もあることを示唆していたが事情の知っているなのはは彼が戻ってくるかどうかでなく彼が無事であるかどうかが心配であった。
ユーノは夜遅くに戻ってきたが結局見つけることが出来なかったらしい。
今は部屋でぐっすりと眠っているところだった。











一方八神家でお世話になっているトレインはのんびりと朝食をとっていた。

「おかわり!!」

「はい、どうぞ。」

トレインがお代わりするのを分かってたように素早く茶碗にごはんを盛るはやて。
ちなみに今日の朝食は焼き鮭とあさりの味噌汁であった。

「やっぱり食べてくれる人がおるとやる気が出るわ。」

「そうか?」

「うん、一人だけのためにご飯作るんとはやっぱりぜんぜんちがうわ。それに一人で食べるよりたくさんで食べたほうがごはんもおいしいで?」

はやてはご飯と食べるトレインを見ながら微笑んでいた。




「ごちそうさん!!いや~昨日に続いてうまかったわ。」

「そらよかったわ。じゃあうちは片づけるわ。」

そう言ったところでトレインが止めた。

「片づけくらい俺がやるからいいぜ。」

「で、でも…。」

「これくらいしか俺はできねえからさ。な?」

そういうとトレインは食器を抱え台所へ行った。




片付けも終わりひと段落したところではやてとテーブルに座り落ち着いていた。

「今日のことなんやけど?」

「今日?」

「昨日いっとったやろ?先生が私の診察と一緒にトレイン君もみるって。」

トレインは昨日のことを思い出し手をたたいた。

「そういや言ってたな。けどもう特に痛みもねえし大丈夫だろ?」

事実トレインの傷はほとんどがふさがっており、痛みを感じ折れていると思った箇所も動いても特に問題はなかった。
自分でも驚くほどの回復ぶりだった。
しかしはやては譲らなかった。

「あかんで、ちゃんと病院いかんと。せやないとトレイン君の荷物返さへんよ。」

「あ!!!!!!?そうだよ、俺の荷物どこにあんだよ?」

「病院に行く?」

意地の悪い笑顔を浮かべトレインに問いかけるはやて。

「ぐ、わかった。行くから返してくれよ。」

そうトレインがいうと安心したように安堵の表情を浮かべ車いすを動かしどこかに向かった。
そして戻ってくるとハーディスとリュックを持って出てきた。

「はい、これや。」

「ありがとよ。」

それを受け取りホルスターにしまいリュックを背負った。

「トレイン君、それって拳銃…。それでなにをしてたん?」

恐る恐るトレインに問うはやて。

「…。別に殺しをしてるわけじゃねえしするつもりもねえぞ?」

詳しいことは話せない。
話せばおそらくだが親身になり聞いてくれるだろうがそれはできない。
この少女まで巻き込むわけにはいかない。

そう決めていたトレインは詳しいことは言わなかった。

「詳しいことは言えねえんだ。許してくれ。」

そう言って軽く頭を下げるトレイン。
それをみてやれやれと言った感じで溜息をついた。

「わかった。これ以上詮索はせえへんよ。その代りなにかあったら私を守ってや?」

「へ?」

「あたりまえやん、ただで飯が食べられるほど世の中甘くないで?」

またまた意地の悪い笑顔を浮かべトレインに言う。
その言葉を聞いて大笑いするトレイン

「はははははははは、そうだな。OK、その仕事掃除屋として請け負ったぜ。」

「掃除屋?」

「ほれ、じゃあ準備して行こうぜ?」

トレインははやての背後にまわり車いすを押す。

「ちょ、ちょっと待ってやー。トレイン君?」

それを無視するようにトレインは走って行った。









病院についたトレインははやての診察が終わるまで廊下で待っていた。
いろいろ検査があるらしくしばらく時間がかかるとのことでかれこれ1時間近くたっていた。

「まともな病院なんて来るのはいつ以来かね。」

掃除屋稼業をしているうちは闇医者に診てもらうことが多かった。
といっても医者に診てもらうほどの大けがをおったのは組織を抜けてからは星の使徒との戦いくらいのものだった。

「とっとと終わらせて翆屋にいかねーとまずいことになりそうだな。」

診察を終えたらとりあえず高町家に連絡を入れるつもりだった。
手紙を置いておいたとはいえなのはとはあのジュエルシードの暴走に巻き込まれたあとから連絡が取れていない。
なのは本人の心配もあるがあれだけタフなバリアジャケットとかいうものに守られていることや自分が無事なのだから無事であるだろうと確信していた。
下手に心配されて捜索願など出されて警察に厄介になるようなことは勘弁だった。


「トレイン君、入ってちょうだい。」

「おう。」

そして石田に呼ばれたトレインは診察室の中に入って行った。





「信じられないわね。」

石田は診察をしながら驚きを隠せないでいた。
トレインは上半身裸の状態で巻かれていた包帯を取られていた。

「なにがだ?」

「あなたの回復力よ。正直入院もやむ得ないと思ってたほどだったのだけれどほとんどの傷がふさがっているわ。」

確かにこの回復力は異常だった。
さっきもそう思っていたがトレインには何となく原因が分かっていた。

(これもナノマシンってやつの力か。)

ふとはやてのほうに目を向けていると顔を赤くしながらトレインの体を見ていた。

「はやて、俺の体になんかついてんのか?」

「はっ!?いや、なんもないで。ほんまや。」

なぜか顔を赤くしながら視線をそらした。

(トレイン君って割と着やせしとるんやな。しかもかなりしまった体をしとる。)


不気味に笑っているはやてにすこし引き気味に視線を石田のほうに戻した。

「実際のところ体のほうはどうなんだ?」

「ハッキリ言ってしまえば何の問題もないわね。病院に来ていること自体がおかしいってくらいにね。」

「そっか。まあいろいろありがとな。」

「いえ、医者として当然のことをしたまでよ。それよりはやてちゃんとはうまくやってる?」

突然の質問によくわからないといった表情をした。

「うまくやるも何も昨日会ったばかりだぜ?」

「そうね。だけどはやてちゃんはあなたのことを気に入ったみたいね。」

そういわれてもトレインとしては困るものがある。
いつまでもここにいるとは限らない、あくまでトレインは今回の一件にけりをつけるためにこの海鳴市にいるのだ。

「はやてちゃんのことよろしく頼むわね。」

石田に手をとられ真剣な表情で頼まれてはさすがのトレインも嫌とは言えず。

「……できる限りな。」

それだけ聞くと石田は笑顔になり二人を送り出した。

(高町家の人間といいあの石田っていう医者もそろいもそろってお人よしだな。身元もわからねえような人間をここまで信用するもんか?)

「じゃあ石田先生さよなら。」

「ええ、お大事にね。」














二人は外で昼食を済ませるとのんびりと歩きながら八神家を目指していた。
トレインがはやての後ろに回り車いすを押していた。

特にこれといった会話をしていなかったがはやては終始機嫌がよくすこし浮かれているようだった。
トレインははやてを一度家に送り返したら高町家に行くつもりだった。
そのことをはやてに告げる。

「ふ~ん、その高町さんのとこにいくん?」

「ああ、一応世話になったからな。挨拶くらいしとかねえとな。」

「何時くらいに帰ってくるん?夕飯の準備とかあるから知っておきたいんやけど?」

「そんなに遅くなるつもりはねえよ。てか電話番号を教えておいてくれれば連絡するからよ。」

そういうとはやては急いで持っていた手帳の一枚を破りトレインに手渡した。

「はい、これや。」

「おう。あとはやてひとつだけ言っておく。」

「なに?」

トレインは意を決したように言った。

「俺はお前のとこで世話になってもいいとは思ってるけどよ、そうもいかねえんだ。」

「なんで?どうしてなん?」

悲しそうな表情をするはやて。
正直トレインとしても言いづらい。

「そもそも俺は一か所にとどまるような性質じゃねえからな。いずれこの街をを出ていくつもりだ。」

「そ、そんな…。」

「だがなお前がやばくなったら絶対に守ってやる。全力で。」

いつになく真剣な表情で語るトレイン。
その言葉には迷いなどなく信じるに値するだけの響きがあった。
その表情でに少し見とれるようにはやては見ていた。

「ほんま?」

「ああ、だから…。」

しかし、すべてを言い終わる前にトレインは何かに感ずいた。
そうジュエルシードの気配だ。

(わからねえ、最初の頃はなんにもかんじなかったが最近はいやに感覚が鋭くなっているような感じがしやがる。)

ジュエルシードの感じる方向へ走りだそうとするとはやてが服をつかむ。

「どこいくん?」

「わりぃ、例のけりをつけなきゃなんねえことだ。」

「戻ってくるんやろ?」

そういうとはやてはさびしげな表情をした。
トレインはそれを見て自分の首に下げている

首輪をはずしはやてにつける。

「これは?」

「こいつは俺のお守りだ。決意の表れでもあんのかな。とりあえずこいつをお前に預けるぜ、必ずこいつを取りに戻る。」

そう言うと一目散に走り出した。
はやてはだまってその後ろ姿を見届け、つけている首輪を見つめた。













一方公園ではすでにジュエルシードの暴走が始まっていた。
ユーノにより結界が張られ人の気配はなかったが大樹の怪物が暴れまわっていた。
なのはも攻撃を仕掛けるべく空中にいた。

そして少し遅れてアルフとフェイトが現れジュエルシードを抑えるために攻撃を加えた。
しかしその攻撃はバリアによって防がれていた。

「なんだい、生意気にもシールドまで張れるのかい?」

「今までのより強い、あの子も近くにいるみたい。」

フェイトはバルディッシュを強く握り構えた。

「いくよ、バルディッシュ!!」

そう言うとバルディッシュから魔力の刃が出た。

“Arc Savior”

そして大きく振りあげそのまま振り下ろすとブーメランのように刃が根を切りはらいながら大樹に襲いかかる。
なのはも負けじとレイジングハートを構え。

「レイジングハート!!打ち抜いて!!」

“Divine Buster”

桃色の砲撃を撃った。

しかし両者の攻撃は相手のバリアがよほど強固なのか防がれてそのまま押し切れずにいた。

「なんてやつだい。フェイトだけでなくあいつの攻撃も受けてるのに。」

アルフが驚愕の表情を浮かべ大樹を見据える。

(フェイトはあいつにやられた傷も癒えてないんだ。このままじゃまずいよ。)

そう危機感を覚えていると一発の銃声が聞こえた。

ガンッ!!!

そしてそのまま大樹に向かい命中するはずだがそれもバリアに防がれるが

ドォン!!!!

着弾とともに爆発を起こした。


「おいおい、炸裂弾も防ぐのかよ。」

「えっ!?」

茂みに隠れていたユーノが声のしたほうに視線をやるとそこにいたのはハーディスを構えたトレインだった。

「トレイン君!?無事だったの?」

「おう、心配掛けちまったな。」

そう言うと大樹を見据えた。
今までの相手とは一味違うのは今の一発で分かった。
トレインの持ちうる手段の中で一番破壊力のある炸裂弾でもダメージどころかバリアすら破壊できない。

(となると選択肢は一つしかねーな)

そしてトレインは照準はそのままにハーディスを構えた。
すると同時にトレインの体から稲光のようなものが発生した。

大樹は最後に攻撃を仕掛けてきたトレインを標的にしたようで何本もの根がトレインに襲いかかる。

「あんた、何やってんだ早く逃げな!!!」

「トレイン君逃げて!!」

なのはだけでなく敵であるアルフまでも叫んだ。
しかしフェイトは地面を蹴りトレインに向かっていった。

「フェイト!?」

その行動にアルフが驚く。
だがどう考えてもフェイトが駆け付けようとも間に合わない。
フェイトもそう考えバルディッシュを構える。

もう少しで根がトレイン届くというところでトレインは呟いた。

「充電完了だぜ。」

カッ!!

閃光が見えたと思った瞬間に光弾が走った。


ドゥン!!!!!

その光弾は根どころか大樹の張っていたバリアまでも貫通し大樹を直撃した。

すると大樹からジュエルシードがこぼれおち空中に浮き上がった。

「す、すごい。」

「な、なんてやつだい。フェイトやあのガキんちょの攻撃も防いだバリアを一発で。」

ユーノとアルフがトレインの放った一撃は以前みたことがあったがあれほどの威力があるとは思っていなかった。


その間にフェイトとなのははジュエルシードの封印をしていた。
封印されたジュエルシードをはさんでなのはとフェイトが相対していた。

「ジュエルシードに衝撃を与えてはいけないみたい。」

フェイトがつぶやく。
それになのはも同意する。

「うん、昨日みたいになったら大変だし…。」

なのははトレインに視線をずらす。

「またトレイン君がいなくなったら困るし…。」

「………。」

フェイトは無言でトレインを見つめる。
それに気がついたのかトレインはあろうことか笑顔を浮かべフェイトに向かいピースサインをしていた。

「//////」

それに直視できずごまかすように首を振りなのはに視線を戻す。
なのははその行動を不審に思いながらもレイジングハートを握り返す。

「それに、私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも昨日みたいになったらかわいそうだもんね。」

「うん、だけど譲れないから。」



そう言うと二人は互いのデバイスを構え振りかぶり、ぶつかりあおうとしていた。

しかしその間に光が飛び込んできた。
二人のデバイスをひとりの少年が受け止めた。


「ストップだ!!」

突然現れた少年は毅然とそう告げた。

「ここでの戦闘は危険すぎる。」

なのは、フェイトの両者は突然現れた第三者に驚きながら少年を見た。
そして少年は言った。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらおうか?」




その様子を黙ってみていたトレインだったが管理局という単語に聞き覚えがあった。

(確かユーノが前に言っていた組織だったな。ますます厄介になりそうだな。)






















[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第11話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/09 23:07
突然介入してきた第三者によって二人の動きは止まった。
そんなそことはお構いなしにクロノと名乗る魔導師は淡々と続ける。

「詳しい事情を説明してもらおうか?」

三人はそのまま地上に降り立った。
しかしフェイトのほうは警戒を解いておらずバルディッシュを構えたままだった。

「これ以上この場で戦闘を続けるのであれば…。」

二の句を続けようとしたところにクロノに向かい光弾が襲いかかってきた。
とっさににバリアを張り難なくそれを防ぐ。

クロノが攻撃の出所見ると狼の姿をしたアルフがいた。

「フェイト、撤退するよ!!」

そう言い放つとまたしても複数の光弾をクロノ達がいるところに放った。
今度は防御をせずにクロノとなのはは回避した。

フェイトはそれに乗じて二人から距離をとり離れたところ移動した。
しかしその眼には明らかに今までに見られなかったおおきな戸惑いが見られた。
視線をさまよわせているとトレインがいた。

短い間であったが今までに見たことのないほど真剣な表情でクロノのほうを見ていた。
そのトレインもフェイトの視線に気がついたのかフェイトのほうを向くと二人の視線が重なる。
そしてそのままトレインはフェイトのほうに走り出した。

「あぶねぇ!!!」

「えっ!?」

「フェイト前だよ!!」

トレインに遅れてアルフも叫んでいることに気がつくとフェイトの目の前に光弾がクロノの撃った迫っていた。
トレインはフェイトに飛び込むようにジャンプし抱きかかえるように地面に転がった。
突然のことに呆然としていたフェイト。
目の前にあるトレインの顔を直視できずにいた。

「いってぇーな。大丈夫か?」

トレインが無事の確認をしてくるが目線をそらしながら

「は、はい大丈夫です。あ、ありがとう。」

おそらく自分の顔は真っ赤であろうことを自覚しながらトレインと顔を合わせないようにしているとジュエルシードが目に入った。
その瞬間トレインを振りほどきフェイトはすぐさまジュエルシードの元に向かう。

「あ!?」

なのはがしまったという表情でみつめるがその横のクロノは冷静だった。
デバイスを構えフェイトに向かい攻撃をした。

「あぁぁっ!?」

「フェイト!?」

「フェイトちゃん!?」

直撃したものは少なかったもののダメージを与えるには十分だった。
そのまま地面に落ちるところをアルフが先回りし受け止めた。
しかしクロノはデバイスを構え攻撃を加えようとしていた。

「ダメ!!!」

そんなクロノの攻撃を防がんとすべくなのはがクロノとフェイト達の間に立ちはだかった。

「なっ!?」

「やめて!!!撃たないで!!」

そんななのはの行動に動きが止まったクロノ。
すると三発の銃声が聞こえてきた。

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

その銃弾はすべてクロノのデバイスの先端の同じところに命中した。

キンッ!!キンッ!!キーーーーンッ!!!!
その衝撃にクロノはデバイスを手放してしまう。
攻撃が加えられた方向に目を向けるとハーディスを構えていたトレインがいた。


「トレイン君!!」

「な、なにをするんだ!?」

クロノはトレインに問い詰める。
しかしトレインはクロノを無視しアルフに告げる。

「ここはいったん引いておけ。フェイトはもうまともに戦えねぇだろ?」

「あ、あんた…。」

「いいから早くしな!!」


「わかった、フェイト逃げるよ?」

「あ、あああ。」

アルフに捕まるフェイトの顔色はダメージのせいか熱っぽくどこか視点があっていなかった。
アルフはその場から急いで退避した。
クロノはそのまま追うようなことはせず黙ってみていた。





すこしたち三人と一匹はは顔を見合わせるように立っていた。
そしてなのはが口を開いた。

「トレイン君、無事だったんだね?」


「ああ、心配掛けたな。まーこのとおりぴんぴんしてるから問題ねーぜ。」

「よかった、僕も心配していたんですよ。」

(あれ、トレイン君…?)
なのははトレインの姿に違和感があった。
それを指摘しようとしたところクロノが一息ついた。

「こほん。話をするのは結構なんだがとりあえず後にしてもらってもかまわないかい?」

「あ、はい。」

そして四人がいるところに突然モニターのようなものが現れた。
そこには翆色の髪をした女性が映っていた。

「クロノ御苦労さま。」

「艦長。すみませんでした、一人を逃がしてしまいました。」

「仕方ないわ。それよりそこにいる子たちをアースラに連れて来てもらえないかしら?事情を詳しくききたいのだけれど?」

「了解しました。」

会話が終わるとスクリーンのようなものは消えた。
そしてクロノがこちらに向き直る。

「聞いての通りだ。事情を説明してもらいたいのだけれどアースラのほうにまで来てもらえるかな?」

「え、えーとユーノ君?」

まだ状況を把握しきれていないなのはユーノに助けを求める。

「わかりました。なのは行ってとりあえず事情を説明しよう。」

「う、うん。トレイン君?」

「ん?ああ、わかってるよ。」

そういうとトレインはけだるそうにこちらに向かった。
クロノはその姿を見て厳しい目つきで言った。

「君には事情説明以外に話したいことがある。かまわないかい?」

「別にいいぜ。」

(拒否させるつもりはないって顔に書いてあるしな。)

「エイミィ、転送を頼む。」














転送ご三人の目の前に広がっていたのはSF映画に出てきそうな宇宙船の管内のようなところだった。
目の前の様子に圧倒されつつもクロノについていく三人。
すると突然クロノが立ち止まり告げた。

「いい加減その格好は窮屈だろう?ここまで来たらデバイスとバリアジャケットを解除しても大丈夫だよ。」

「あ、そっか、そうですね。」

そう言うとなのははバリアジャケットを解除しレイジングハートもいつもの赤い珠に変わった。
クロノはユーノのほうにも視線を向け言った。

「君もその姿でいる必要はないだろう?」

「ああ、そういえばそうですね。」

「ほえ!?」

するとユーノは光に包まれだした。

光が収まるとそこにいたのはいつもなのはが知っているフェレットのユーノではなくなのはと同い年くらいの少年だった。

「あ、あ、あ?」

「ふぅー、この姿を見せるの久しぶりだね。あ、トレインには初めてだったね。」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!?」

なのはの絶叫が艦内響き渡った。

「えーと、なのは?」

なのはは震えながらユーノを指差していた。

「ユーノ君ってフェレットじゃなかったの?」

「え!?なのは、最初君に会った時この姿じゃなかったっけ?」

「ち、ちがうよ~。」


両者とも認識の違いがあったらしく互いに混乱していた。
しかしトレインは冷静にこの状況をみてユーノに近づき囁いた。

(お前、下手したら恭也とかに殺されるぞ?)

(な、いきなりなんですか?)

トレインは意地の悪い笑顔を浮かべながら告げる。

(お前の温泉での行動は俺はきっちりと覚えているぞ。)

(うっ!?そ、それは仕方なかったんで。)

(そんな言い訳があの連中に通用するとは思えんがな?シシシシ。)

二人が自分に隠れてしゃべっていることに不審に思ったなのはが近づいた。

「どうしたのトレイン君?なんかお兄ちゃんがどうとか聞こえたけど?」

「いや、あのおん「な、なんでもないんだなのは!!」

トレインの言葉をさえぎるようにユーノが必死に前に出てトレインを抑える。

「????」

目の前の二人がなんでもめているかはわからないが仲が悪いようには見えなかった。
ふとその様子に笑いながらなのはは言った。

「二人とも仲がいいんだね。」

「ゴホン!!艦長を待たせているんだ、できればその話は後にしてもらえるかい?」

「「は、はい!!」」

「じゃあ行くよ。」











そしてクロノについていくとある一室で止まった。

「艦長、失礼します。」

「はい、どうぞ。」

中から女性の声がすると扉が開き中には先ほどスクリーンに映っていた女性がいた。

(どうやらこの女がこいつらのボスってとこか。)
クロノに続き三人が部屋の中に入ると未来的な館内とは不釣り合いなもので埋め尽くされていた。
特にたくさん置いてある盆栽はトレインも若干引き気味だった。
なんというか和風という雰囲気がぴったりの部屋だった。

(そーいやセフィリアのやつもやたらこういうのに凝ってた気がすんな。)

トレインのなかで組織のトップに立つ人間は和風好き!?という仮説が浮かび上がった。

それはさておき招かれた三人は用意されたお茶とお菓子の前に座り込んだ。
そして事の経緯を話し始めた。





「そう、あのロスト・ロギア、ジュエルシードを発掘したのはあなただったの。」

リンディというこの艦の艦長の女が言った。
クロノとは親子の関係だがそれには三人とも驚いていたが桃子の例もあるのでトレインからすれば50歩100歩だった。
会話のほうに戻るとユーノが口を開いていた。

「はい、だから僕がそれを回収しようと思って…。」

ユーノは自身の責任を感じているのか弱弱しく答えた。

「立派な心がけね。」

「だが同時に無謀でもある。」

「………。」

以前にたような問答をトレインとやっていたが改めて言われるとユーノとしてはつらいものがあった。
ここでなのはは疑問に思った事を聞く。

「あの、ロストロギアってなんですか?」

「ああ、それはね…」

ここでリンディから簡単なロストロギアと次元世界についての説明を受けた。
次元のなかにはいくつもの世界がありそこからごくまれに発見されるもの、ロストロギア。
それが進みすぎた文明の遺産であり使用法も分からないが危険なものであり過去になんどか大きな事件になったこともあるということ。
そしてそれらを管理保管することをしているのが管理局でもあるという説明を受けた。



「あのジュエルシードは次元干渉型のものだ。以前黒衣の魔導士と君がぶつかり合った時におきた爆発があっただろう?」

先日、トレインが吹き飛ばされ互いのデバイスにダメージを与えた出来事。

「あれが次元震だ。たったひとつであれだけのことが起こるんだ。もし複数集まったときあんなことが起きればその被害はとてつもないものになる。」




カコンっ!!

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収に関しては時空管理局が全権を持ちます。」

「「えっ!?」」

「!?」

一息入れたところでのリンディからの通達だった。
不服がありそうな二人の様子を見てクロノはリンディに続く。

「次元干渉にかかわる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの事件じゃない。」

「でも!?」

「ちょっと待ちな?」

そこまで沈黙を保っていたトレインだったがはじめて口を開いた。
そして置いてある茶碗の中身を一気に飲み干す。

「あくまでそれはそっちの事情だろう?俺らはいまさら手を引く気はねーぞ。」

トレインは毅然と言い切った。

「トレイン君だったかしら?」

「ああ。」

「急にそんなことを言われてあなた達が納得いかないのもわかるわ。ここは一晩考えて落ちついて三人で話し合ってからお話しましょう?」

リンディはやんわりとたしなめるようにトレインに言った。
しかしトレインは首をふった。

「こいつらがどう考えているかは知らねーが俺の中で答えは決まってる。今回の件はきっちりとけりがつくまで付き合うってな。」

「トレイン…。」

「トレイン君…。」

しかしそれを切り捨てるようにクロノ言う。

「魔法もろくに使えないような素人が口を出すことじゃない。」

「クロノ!?」

リンディが驚き、止めようとするがクロノがそれを制す。

「確かにな、それは否定しないぜ。」

トレインはさも気にしていないように言う。
実際のところそれほど気にしていないのだが。

「それに君のさっきの行動は執務官の職務妨害として現行犯逮捕できたのだぞ?」

「それで?」

「それだけじゃない、君の使っているその銃だ!!」

クロノが指をさしていたのはホルスターにおさまっているハーディスだった。

「戦闘記録から見てもそれからは一切の魔力反応はしなかった。それは疑いようのない質量兵器だ。」

「質量兵器?」

聞き覚えのある単語だったがトレインの頭の中では切れさっぱりに消え去っていた。
その様子をみたリンディが説明した。

「質量兵器というのはあなたたちの世界で使われている銃器の類と言ったらいいかしら。魔法が主流のこちらでは安易に使える質量兵器は使用が認められていないの。」

「そいつは分かった。だがそれで俺がとがめられる理由にはならねーぜ?」

「君は!!!」

クロノがあまりのトレインの態度といいように怒りをあらわにした。
立ち上がったクロノは怒りを隠せずにトレインを睨みつける。
そんなものはどこ吹く風、トレインは淡々と言葉を続けた。

「あくまで今まで言ったことはあんたらの中での話だ。おめーを攻撃したのだって突然現れた得体のしれない奴から知り合いを助けただけだぜ?」

「なんだと?」

「いきなり現れたやつより、短いとはいえ顔見知りな上に目的がはっきりした奴のほうが信用はできるぜ?たとえ立場どういうものであろうとな。」

正直な話トレインは管理局にあまりいい印象を抱いていなかった。
秘密結社(クロノス)に属していた時は組織の行動に興味はなかったが思い返せば碌な事をしていなかった気がする。
確かにクロノスは世界の安定に一役を担っているのは確かだった。
しかし裏では安定のためとはいえ善悪問わずに数々の要人を危険因子として抹殺してきた。
ではこの管理局はどうだろう。
次元世界を守るために行動していると言っているがそれはある意味増長しているとも考えられる。
この世界で起きた事件はその世界の人間が解決すればいいとも考えられる。
確かに次元世界の事件を解決しているという行為をトレインも否定するつもりはない。
しかしクロノが管理局の法を持ち出してこちらを咎めてきたことは納得が出来なかった。

トレインにはこれからの大筋の流れが読めて来ていた。
おそらくこのまま自分たちをこのまま帰って話し合いのうちにこのままこの一件から手を引くことはできない。
結果、管理局に協力することになる。
そして管理局はこちらの指示に従うように言ってくるであろう。

クロノ、リンディは個人としては信用できるかもしれない。
が組織に属している人間は個人の感情で行動することは原則許されない。
おそらくなのはたちが容認できないような判断を下すことも考えられる。
トレインとしてもどこかの組織に飼われるのは二度とごめんだった。


一方クロノもここまで言われて黙っていられるほどまだ成熟していなかったもありデバイスを手に取り、構える。

「クロノ!!」

リンディが大きな声とがめるがクロノは構えたデバイスを下ろすようなことはしない。

「いい加減にしないと本当に…。」

それ以上の言葉を発しないが言わんとすることは分かっている。
しかしトレインとしてももうひとつだけ容認できない言葉があった。

「あんた、さっき俺のことを魔力も使えない素人って言っていたな?」

「それがどうした?自分でも認めていただろう?」

「ああ、だが戦いは魔力が使えるかどうかは問題じゃねえ。それにそこまで言われたらな…。」

ガタッ

物音がしたと思った時クロノの視線がいきなり反転し気がついたらトレインに組み敷かれ頭部にハーディスを突き付けられていた。

「クロノ!?」

「と、トレイン君!?」

「BLACK CATの名前がすたれるってもんでね。」

なのはも今までに見たことのないような雰囲気のトレインがそこにいた。
目を猫のようにぎらつかせ寸分の隙も見せずに構えるその姿になのはとユーノは彼がBLACK CATと呼ばれた暗殺者を垣間見た気がした。
しかしトレインはすぐさまクロノを解放するとその場から立ち上がった。

「どこへ行く気?」

「トイレ。話がすんだら廊下にいるから呼んでくれ。」

片手をあげトレインは出て行った。

「まて!!」

起き上ったクロノがトレインを呼ぶが彼がそれに応じることはなかった。
そしてこぶしを強く握りながらクロノは自身の足が震えていることに気がついた。













結局、一度家に帰ってから結論を出すようにリンディに言われたようでさっきまでいた公園に降り立った。

「さてと、どうするつもりだ?」

トレインはなのはに聞いた。

「とりあえずいったん家に戻って、夕ご飯を食べてから決めようと思うの。」

「OKだ。んじゃあまず家に戻るか?」

「うん、お母さんたちも心配してたから安心すると思うの。」

「あー、そうだったな…。」
















高町家に戻ったトレインは桃子によって質問攻めの嵐だったが事の経緯を八割ぐらいを嘘で固め説明しなんとか納得してもらった。
納得していたかどうかは疑問だが。

その後はやてへ今日はそちらに戻れないということを伝えた。
かなりごねられたが何とか納得してもらったが今度一日付き合うように約束された。
今日はトレインにとって女難が特に出ている日だった。

そして時間が過ぎ、夕食後ユーノがレイジングハートを介してリンディたちと会話をしていた。
内容からするに協力させてほしいと要請しているようだった。
トレインは今後どうするかは二人に任せるといい、そのまま横になり寝ていた。


しかし、トレインは一つだけ決めていたことがあった。





(なのは、決まったよ。)

(うん、ありがとうユーノ君。)

念話でなのはに伝えたユーノは地面で横になっているトレインに話しかける。

「トレイン、起きて。」

「ああ、起きてるよ。決まったのか?」

「うん、僕たちも協力させてもらうことにしてもらった。」

「そっか…。」

そう言うとトレインは起き上がり持っていた荷物を背負い窓に向かった。

「ちょ、どこに行くんだい?」

「わりぃ、俺は野良猫暮らしが性に合ってるんでね。これから俺は俺なりのやり方をさせてもらうわ。」

ユーノはあわててトレインに飛びつく。

「なにを言ってるんだ。君一人でどうにかできることじゃないってことくらいわかるだろ?」

「なのはにわりぃって伝えておいてくれ。なのはのこと頼むぜ?」

トレインは用意してあった靴をはきそのまま飛び降り走り出した。
ユーノにはそれを止めることはできなかった。












アースラ内部


「うわーすごい。二人ともユーノ君より魔力だけならクロノ君を上回ってるよ。」

そのセリフにクロノがおもしろくなさそうにつぶやく。

「魔法は魔力量だけじゃない。それを運用する的確な技術と状況判断だ。」

そのひがみっぽいセリフにエイミィ、アースラの管制官でもある女性が笑いながら続けた。

「じゃあ、クロノ君とやりあった彼はどうなるのかな?」

そう言うとボタンを押してトレインがレールガンを撃ったシーンに変えた。
そうするとクロノは悔しそうな表情に変わった。

「確かにすごいわね。」

そこにリンディが入ってきた。

「この二人のですか?」

クロノはあえてトレインが話題からはずれるように仕向けたがそれに気がついたリンディは苦笑しながら言った。

「三人ともよ。二人は魔力量も資質もすごいものをもってるわ。けど彼は…。」

「はい、魔力は平均以上のものを持ってますけど魔力を行使した形跡がないですね。」

「ええ、彼の持っている銃になにかあるのかしら?」

弱いとは言えないあいてのバリアをやすやすと破る貫通力をもった光弾。
質量兵器が脅威となりうるという認識には違いはないがトレインの持っている銃にそれほどの威力があるとも考えにくい。

「こちらに来た時に改めて聞けばいいでしょう。では僕は。」

そういうとクロノは管制室を出て行った。

「彼とクロノ君、かなり相性悪そうですね?」

「困ったものよ。状況はそうも言ってられないのだけれど…。」














[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第12話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/12 23:09
なのはが部屋に戻ると呆然と窓際に立ち尽くすユーノがいた。
なのはが部屋に入ってきたことに気づきこちら振り向き駆け寄って言った。

「なのは、トレインが出て行ったよ…。」

「え、なんで?どうしてなの。」

なのははユーノに詰め寄るようにして問い詰める。
せっかく無事に戻ってきたのにまたしても猫のようにどこかに行ってしまう。
なのはとしてはトレインがそばにいてくれることは非常に心強かった。
実戦での強さ、実際の年齢が年上であることもあるがトレインが持っているものの中でなのはが惹かれているものはそんなものではなかった。

トレインが持つあの眼だった。
一見、根拠のない虚勢にも見える発言や態度だったがそれは違った。
トレインの眼は常に揺らぐことのない自信で満ちていた。
一時の状況で揺らぐような自身とは違いどんな状況に陥ってもトレインならばどうにかしてしまうのではないかという安心感があった。


「なのは?」

「ごめんユーノ君。私トレイン君のところに行ってみる。」

直接会って話を聞きたい。
なにも言わずに別れてしまうようになることだけは嫌だった。

「待って、僕も行くよ。」

なのはも後を追うようにユーノもついていった。







高町家から少し離れるとトレインはのんびりと歩いていた。
これからどうするかの算段を立てていた。

「とりあえずはやてのとこに戻るとしても長居するわけにもいかねーしな。」

自身の状態を考えると姿が子供と言えホームレスの状態には違いなかった。
自分の身の上のこともあるがとりあえず優先事項としてはジュエルシード関連のことだった。
管理局の協力もなし、唯一の魔法関連の協力者とも言えるユーノたちとも決別とまでいかなくともすでに道は違えている。


「こうなったら地道に歩き回ってフェイト達の寝床を探すか、ジュエルシードの反応を探すしかねーか。」

以前はジュエルシードの反応というものを感知することなどできなかったが日増しに感覚が鋭くなっているようだった。
魔力に触れたことがなかったトレインは当初自分の世界に存在していなかったものを感知することはできなかったが彼は良くも悪くも天才肌だった。
魔法に触れて短い期間で自身に潜む魔法の才能を開花させつつあったのだ。





考えながら歩いているといつの間に公園にたどりついていた。
そこはトレインにも見覚えのある公園だった。

「ここは確か…。」

そう、初めてジュエルシードというものを見た。
化け猫と一戦した公園だった。

ところどころその傷跡が残っているものの修復されつつあった。

(あんときはまた道士にでも襲われてんかと思ったがな。)

蓋を開けてみればアニメやマンガでしか聞いたことのないような魔法という話だ。
あまりの突拍子のなさに笑ってしまいそうだった。
少し前の出来事にふけていると公園に二つの気配がやってきた。


なのはとユーノだった。


「よう。どうしたんだよこんな遅くに?」

「私はトレイン君とお話に来たの。」

なのはは真剣な表情で言った。
トレインはそれに対してあくまでひょうひょうと対応する。
ユーノも口を開いた。

「どうして急に出て行くなんて言い出したんだ?なにか理由があるんだろ?」

ユーノもなのはと同じように真剣な表情で問い詰めた。

「お前には言っただろう?俺には野良猫暮らしが性に合ってるんだよ。」

「野良猫って…。管理局に協力することが不満なんですか?」

ユーノは今日のトレインのクロノに対する行動以前からうすうす感ずいていたが彼は管理局というものにいい印象を持っていないと。
それが彼の過去に起因するものなのかはまでは分からない。
だがこれからジュエルシードの一件に関しては管理局が全権を持ってしまった以上こちらが協力するという形をとる以外のかかわることはできない。

なのはもユーノに続く。

「トレイン君が出て行ったあとお話を聞かせてもらったけどリンディさんもクロノ君もいい人だったよ?あの人たちと協力すればすぐに解決できると思うの。」

確かになのはの言うとおり管理局と協力体制をとれば事件解決はスムーズに進むだろう。
しかし、トレインは今後どこかの組織に属する気。飼われる気はなかった。
そしてトレインが口を開いた。

「なのは、組織に属するってことは飼われるのと同じってことを分かってるか?」

「飼われる?」

疑問符で返すなのは。
いまいち意味をとらえきれていない様子だったが隣にいるユーノは何となくだがわかっているような様子だった。

「組織に属する間は命令には絶対に従う。ユーノ、管理局に協力させてもらうのに条件として出されただろう?」

「はい。協力するからにはこちらの命令には従ってもらうと。」

やはりかという感じでトレインはため息をつきながら続ける。

「組織の中じゃ個人の感情なんか二の次だ。悪く言えば個人的な感情を持つことなんか許されねえ。」

「そ、そんなこと…。」

なのはが否定しようとするがトレインは有無を言わさず言った。

「ある。それが現実だ。俺も10年近く似たような組織に飼われていたからな。」

トレインの言葉はなのはにもわかるくらい実感のこもった重い言葉だった。
しかしなのははトレインが飼われるという言葉にやけにこだわっているような気がした。

トレインは話すことはないという感じでなのはたちに背を向け歩き出した。


「待って!!」

なのはの呼びかけに応じることもなくそのまま歩いていくトレイン。
しかしトレインはその歩みを止めることなく言った。

「お前の信じたものは捨てるなよ。何があろうと信念は曲げるんじゃねえ。俺から言えるアドバイスはこれだけだ。」

以前も言われた言葉。
その言葉を残し今度こそトレインはいなくなってしまった。







なのはと別れてからトレインは八神家に向かうことにした。
行くあてがない以上高町家以外に身を隠す意味では八神家が一番だと判断したからだ。

「とはいっても気が引ける気もすんな。」

と口では言うもののすでに八神家の前に立っていた。
しかし、インターホンを押すことに戸惑っているのか目を細めながら唸っていた。

「トレイン君、なにしとるの?」

唸っているうちに家主に発見されていた。
トレインは頭をかきながら

「ちょっと事情が変わってな。少し世話になることにするわ。」

はやては少し驚きつつも笑顔で言った。

「お帰り、トレイン君。」




「すぐに入ってくればええのになに遠慮してるん?」

家の中に入ってはやてとお茶を、トレインはミルクを飲みながら話をしていると家の前でのトレインの行動についてはやてが口にした。

「そりゃ俺だって遠慮はするぞ?」

すこし胸を張るようにいうがはやてはくすくす笑いながら

「ごめん、全然想像できんわ。」

トレインはずっこけるようにあごを机にぶつけた。
その表情は少し不満げにしてはやてに聞いた。

「おめーは俺をそんなふうに見てたのかよ?てかまだあってから時間が経ってないだろ?」

「そらそうやけど、そんな人なら上がったばっかの家でおかわりはせんと思うけどな~?」

にやにやしながらトレインに問い詰める。
その表情を見てトレインは苦笑した。

「な、なんや急に笑うなんて?」

「いや~、お前もそんなふうな表情すんだなって思ってよ。」

はやてと初めて会った時はどこか表情に憂いがあるような感じがした。
だがいまの表情は違う。
はっきりとした感情が表情に表れていた。

「なんでやろな?うちもこんなに笑うようなこと……誰かと一緒におることなんてなかったから。」

「?どした?」

「なんでもない、もうええ時間やろ。そろそろ寝なあかんで。」


少女は今まで孤独だった。
両親に先立たれ、周りには頼る大人も友人すらいなかった。
彼女はよりどころを求めていたのかもしれない。
たとえそれが何者かもわからない野良猫であろうとも。















「いらっしゃい、時空管理局はあなたたちを歓迎するわ。あら?」

なのはたちは高町家を後にしてアースラに身を寄せていた。
正式に時空管理局に協力することになりいったん身柄を管理局に預けることになったのだ。
なのはたちを出迎えたのはリンディであった。
笑顔でなのはたちを出迎えたが一人足りないことに気がついた。

「トレイン君はどうしたのかしら?」

トレインのことを聞かれなのはとユーノは表情を曇らせ視線を下にしてしまう。
その様子をみて事情を理解したのかリンディは残念そうに

「やっぱり彼はだめだったのね?」

「はい、管理局に協力することはできないと。」

「そう。」

リンディがため息をついた。
そこにクロノがやってきた。

「来たのかい?……やはり彼は来なかったか。」

クロノにはある程度予想していたのかそれほど驚くこともなく淡々としていた。

「ある意味妥当な判断だろうな。いくら戦闘能力が高かろうが魔法に関しては素人だ。それに彼のような人間は組織にとって好ましくないだろうしね。」

「クロノ!!すこし言いすぎよ。」

リンディがあまりのクロノのいいようにたしなめるように言うがそれでもあまり効果がないようだ。
クロノの中でトレインという人物は当初からいい印象がなかったのに拍車をかけるように先日の一件がありますますこじれていた。
トレイン自身はそれほどクロノ本人にはそれほど悪い印象は持っていない。
彼が信用できないのは管理局という組織そのものなのであってクロノではない。
しかし、クロノにとって管理局をないがしろにするということは自身の誇りを否定することになる。
それゆえますますトレインに怒りを覚える。


「艦長、僕はあくまで事実を言ったまでです。彼のような身勝手な人間は…。」

ここまで黙っていたなのはもこれ以上は聞いていられなかった。
声を出し、クロノに反論しようとした。

「それ…「それは違う!!!!」ユーノ君!?」

声を張り上げたのはなのはではなくユーノだった。
ユーノはクロノの前に立ち言った。

「彼が、トレインが身勝手な人間という言葉は取り消してくれないか?」

クロノとしてはまさかユーノがこのような態度に出るとは思わなった。
むしろ自分と同じ意見を持っているとばかりと思っていた。

「彼は身勝手な人間じゃないです。それはマイペースなところもあったりしたけどこれまで彼は僕らのことを考えて行動してくれていた。」

ユーノは短い間に中でトレインに振り回されたりしてきたが自分がジュエルシードを集めるていることをトレインが止めはしなかったことを忘れていなかった。
初めて説明した時はなのはを巻き込んだことなどを指摘されもしたが結局は僕の意思を尊重してくれた。
そしてなし崩しとはいえ僕らの行動に協力してくれた。
結果ジュエルシードをあの子たちに渡すことになってしまったこともあった。
その行動も僕や、なのはのことを思っての行動だった。

「僕となのはは彼が身勝手な人間だと思ったことはない!!」

「ユーノ君…。」

視線がぶつかり合うユーノとクロノ。
しかしリンディが待ったをかけた。

「そこまでよ。クロノもユーノ君も私たちがすべきことを忘れないで。ここで口論することが目的ではないわ。」

そう言われて二人は視線を外しお互い距離をとった。
その様子にため息が出てくるリンディだった。









一方のトレインは一人のんびりと街中を歩いていた。
八神家では意気揚々とはやてが家事に励んでいた。
何か手伝おうにも手を出せるような雰囲気でなかったのでトレインは退散したのであった。
しかし、ジュエルシードを探そうにも気配が全く感じられない。

八方ふさがりと言った感じの状況だった。
しかしジュエルシードを手に入れたからといってトレインには封印することもできない。
ということでフェイト達の所在を探るという方向に切り替えることにしたが

「さすがにその辺をうろうろしてるわけ……。」

そう呟き、視線を前にすると……いた。

薬局の薬コーナーでうろうろと挙動不審な行動をとっている不審者が。
オレンジ色の挑発にラフな格好。ここまではまあよしとしよう。
しかし変装のつもりでしてるであろうサングラスとマスクはいただけなかった。
その姿はどこに出しても恥ずかしくない不審者そのものだった。

「知り合いとも思われたくねーけど。」

せっかくの好機だ。
これを逃すことはなかったが話しかけるのは気が引けた。
トレインは意を決してアルフの肩をたたいた。

「なんだい?……ってあんたは!?」

いきなり現れたトレインに驚きを隠せないアルフだったがトレインはため息交じりに

「あー、あって早々殺気立つな。ここでやりあうつもりもねえしやりあう理由もないだろ?」

「そ、それはそうだけど…。」

トレインに諭されるとアルフはしぶしぶ拳をおさめた。

「てか、その怪しさ爆発な変装で何やってんだ?」

トレインはアルフの手に持っているものを見た。
そこにはパッケージにこう書かれていた。

「超強力下剤」

「なんだお前便秘なのか?」

そう言った瞬間アルフからトレインも反応しきれないほどの速度の拳が繰り出された。
トレインはもろにそれをくらい地面に転がった。
アルフは顔を赤くし言った。

「恥ずかしいことを聞くな!!!しかも私は便秘じゃない、フェイトの薬を買いに来たんだ。」

トレインは殴られた頬をさすりながら立ち上がった。

「ふぇ、フェイトの?じゃあフェイトがべん……わかったからこの拳をしまえよ。」

アルフは力強く拳を握っていた。

「薬?てかそれがなんの薬か分かってんのか?」

「わからないから困ってたんだよ。怪我とかの処置はわかるんだけど病気はさっぱりだから…。」

どうしていいか分からない自分にしょげているように顔を暗くさせているアルフ。
その姿に放っておけなくなったトレインはアルフに聞いた。

「フェイトはどんな状態なんだ?あれから体調崩してんのか?」

「あ、ああ。あのときはあいつの抑えてくれてありがとう。おかげで逃げ切れたよ。」

「んなことは別にいいぜ。実際のとこどうなんだ?」

特に気にするなという感じで言うトレイン。
しかし、病状のことになると口をなかなか開こうとしないアルフ。

「なんだ?俺が管理局にでも報告するとでも思ってんのか?」

アルフは口では答えなかったが目つきでそう訴えていた。

「俺は管理局とは関係ねえ。それどころか今はなのはたちとも決別した。」

それを聞いてアルフがわずかだが反応する。

「どうしてだい?」

「意見の相違ってやつだ。あいつらは管理局と協力体制をとることを選んで指揮下に入った。俺は野良だからな、組織の空気は性に逢わねえ。」

アルフはそれでも疑ったままだったが、トレインが危険を冒してまでフェイトを助けたのは事実だ。
それに何回か対峙しているもののトレインは決して自分たちを危害を加えようとはしていなかった。
攻撃をされるようなことがあったが相手を倒すのではなくできる限りダメージを与えず制する形だった。

「まあ、俺が信用できないってのもわかるけどよ。とりあえずそいつは置いとけ、お前の大事なお姫さんがトイレから出れなくなるぜ?」

トレインが笑いながらアルフの持っている下剤を取り上げ元の場所に戻した。
そして手に別の薬を持って戻ってきた。

「ほれ、とりあえずこいつな。」

「これは?」

「詳しい体調がわかんねーからこれがいいんじゃねえかとしか言えねーけど、たぶん風邪だろ?」

トレインがアルフにそう言うとアルフは頷いた。

「ああ、あれからフェイトの体妙に熱っぽくて。ただでさえ食べないのに食欲もなくなってずっと辛そうなんだ。」

アルフは自分自身のことであるかのようにつらそうに語る。
アルフが辛そうと言っていることは体のことだけではないのだがトレインはまだそこまでは知らなかった。

トレインはフェイトの体調を聞くとまたしてもいなくなった。
そして戻ってくるとスポーツドリンク、ゼリー、パックのお粥をかごに入れアルフに手渡した。

「食欲がねーならゼリーとか食わせとけ。薬を飲むにしてもすきっぱらじゃまずいからよ。あとできるだけ水分をとらせとけよ。」

「あ、ありがとう。」

それだけ渡すとトレインは薬局を出て行こうとした。
しかしアルフがその手をつかんだ。


「なんだよ?まだようでもあんのか?」

アルフはトレインに聞いた。

「あんたは管理局と関係ないんだね?」

「さっきもそう言っただろう?それどころか魔法関係の知り合いとは連絡もとってねえよ。」

「わかった。」

アルフは何かを決意したように頷いた。

「あんた今暇かい?」

「ああ、暇じゃなけりゃこんなとこうろついてねえよ。」

はやてには昼までには戻ると言ってあるので時間はまだ2時間ちかくある。

「じゃあ、フェイトに会ってくれないか?」

「はぁ?また唐突だな。大丈夫なのかよ俺なんか呼んで。」

さっきまで自分のことを疑っていた人間とは思えない言葉だった。
さすがのトレインも多少面食らっていた。

「あんたの言っていることを信じるさ。口だけのなんとでも言えるけどあんたは行動で示してくれた。」

「あんたがいいなら別に行ってもいいけどよ、俺なんかが行ってもあいつは喜ぶのか?」

正直トレインとしてはフェイトに好意を持たれるようなことをした覚えがない。
たまたま助けたことがあったりしたがむしろ敵側にいることのほうが多かった。
キョーコのような奴ならあり得るかもしれんと考えたがフェイトとキョーコがトレインの頭の中でイコールで結ばれることはなかった。

「あの子うなされながらあんたの名前を呼んでいることがあったんだ。それにあの子の口からあんたの名前が出ていたこともあったから…。」


「まあ、嫌がるようならすぐにでも出てくから安心しな。」

「…たけど変な事をしようものなら私はあんたを殺すよ。」

アルフは明確な殺意をトレインにぶつけてきた。
フェイトを守ろうとする意思が明確にわかるほど。
トレインはそれを受けてアルフに相棒を渡した。

「こいつを預けとけば下手なことはできねーだろ?」

「あ、あんた…。」

「ほれ、行くぞ?」









アルフについていき連れてこられたのは高層の高級マンションだった。

「ずいぶんいいとこに住んでんな?」

「そうなのかい?割と広めだからここを選んだんだけどね。」

意外そうにアルフがそう答える。

「お前ら庶民感覚ゼロだな。」



「ここだよ。」

そういってアルフが玄関のキーをあけ扉を開く廊下に倒れこんでいるフェイトの姿があった。

「フェイト!?なにしてるんだい?」

アルフあわててフェイトに駆け寄り抱きかかえる。
フェイトはバリアジャケットこそ装着していなかったもののバルディッシュをその手に持っていた。

「あ、アルフ…。はやく、はやくジュエルシードを見つけないと…。」

「何いってるんだい!!そんな体じゃ無理だよ、仮に見つけられたとしても管理局の人間に捕まるよ。」

フェイトははかなげな笑顔でアルフを諭すように優しく言った。

「大丈夫…私は…強いから。」

そう言うとフェイトは意識を失った。

「フェイト!?」

アルフは気が動転したようにあわてるがトレインが落ち着かせる。

「落ち着け、気を失っただけだ。とりあえずベッドに運んでやれ。」






ベッドに運び込まれたフェイトは多少息を荒くしているが眠っていた。
トレインは氷水で濡らしたタオルを額にのせてやり様子を見ていた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

「なんでこうなるまで無理をするんだか。」

ふとここでトレインはあることを思い出した。
フェイト達がジュエルシードを集める理由だ。

ここまでトレインたちがその理由を聞いてもフェイトは口を開かなかった。
断片的行っていたことは(話しても分からない)ということだけだった。

(コイツの性格からして悪用するとかってわけじゃなさそうだな。となると他の誰かに依頼されていることか?)

トレインはそう仮説を立ててみた。
そうすれば納得のいく部分が出てくる。
たとえば理由に関してだ。
フェイトは話しても分からないと言っていた。
これは本当のところはフェイト自身も分かっていないのではないかということになる。
おそらくアルフも事情は知っているのだろうが話してくれるかどうかは微妙だ。
そんなことを考えているとアルフが土鍋に入ったお粥を持ってきた。

「フェイトはどうだい?」

「相変わらず寝てるわ。」

「そっか…。」

アルフは土鍋をテーブルに置きフェイトに近づきフェイトの頭をなでた。

「まだこんなに小さいのに…こんなに頑張ってるのに…。」

アルフは増えながら呟いた。
トレインは特に反応することもなく二人を見ているだけだった。
不意にアルフが口を開いた。

「あんた…聞かないんだね?」

「何をだ?」

「私たちがジュエルシードを集めている理由を。」

「聞いたら答えてくれんか?」

逆にトレインに聞き返されるとアルフは返答に困ってしまう。
主が黙っていることを使い魔である自身が勝手なことをしてしまうことに抵抗があるようだ。
アルフはトレインに理由を話せば協力してくれるかもしれないと考えていた。
実力はすでに実証済みで人格面でも行動不能になった自分に危害を加えることなくフェイトに明け渡し解放してくれた。
もしかしたらあの鬼婆の説得に一役買ってくれるかもしれない。
そんな希望も頭の中によぎり葛藤するアルフ。

「あ、あぁ、ここは?」

「フェイト!?よかった、気がついたんだね。」

フェイトが意識を取り戻しアルフに気づく。
アルフは主人が意識を取り戻したことに安心しほっと息をついた。
するとフェイトはアルフの後ろにいる人物に気がついた。

「え?ど、どうしてあなたが?」

「よっ!!ずいぶんと無理してた見てーだな?」

「私が薬を買う時に助けてくれたんだ。フェイトもその…気になってたみたいだから見舞いに来てもらったのさ。心配はいらないよ、もうこいつはあの白い子とは行動してないらしいし管理局とも協力も断ったんだって。」

フェイトの顔にはどう捉えていいのか分からないという表情だった。
純粋に自分の見舞いに来てくれたことはうれしい。
だが仮にも自分たちは敵対関係にあったはずだ。

「あなたはどういうつもりでここに来たんですか?」

「どういうつもりも、一応見舞いか?」

疑問形で聞き返すように答えるトレイン。
フェイトは言葉を発しようとするが景色が歪む。
そしてベッドに再び倒れこむ。

「フェイト!!まだ無理しちゃだめだよ!!」

アルフがベッドに寝かせようとするがフェイトは無理にでも立ち上がろうとする。

「平気だよアルフ。急いでジュエルシードを探さないと母さんが…。」

(母さん?ジュエルシードをほしがってるのこいつの母親なのか?)

「なにいってんだい!!!さっきも無理して動こうとして倒れたんじゃないか?いいからおとなしくしておいてくれよ。」

アルフの必死の説得にもフェイトはかたくなに拒んだ。
その様子にトレインが助け船を出した。

「そいつの言う通りだぜ。無理して行動したってろくなことになんねーぞ。」

「あなたには関係ないはずです。」

フェイトはできる限り冷静に答えた。
相手に感情を出すことなく。
そんなことはお構いなしにトレインは続ける。

「このまま長引かせたほうがうまく行くもんうまくいかなくなるぞ。だったら一日でもいいから我慢したほうが体調が良くなるかも知んねーんだぞ?」

「そうだよフェイト。」

ここぞとばかりにアルフがトレインに同調する。

「それがわからねえほどお前は馬鹿でもないしガキでもないだろ?」

「それは…。」

それはフェイトも分かってはいた。
だが自分は急がないといけないのだ。
母が自分がジュエルシードを持って帰るのを待っているのだ。

なおも抵抗を続けるフェイトにトレインは言った。

「なら今日一日ジュエルシードが発動しようものなら俺とこいつで確保するからいいだろう?」

「え!?」

「何言ってんだいあんた?本気かい?」


「マジだ。それなら文句はねーだろ?」

フェイトは目の前にいる人物が何を言っているのかわけがわからなかった。
自分を休ませるために敵対している人物が代わりにジュエルシードを集めてくれるというのだ。

「ど、どうしてそこまで?」

「ん?何となくほっとけなくてな、あとこいつは俺の勝手な行動だから気にすんな?」

笑顔で親指を立てて話すトレイン。

(そうか、そうだよね。)

フェイトはトレインの今までの行動を思い出してみた。
身を挺して自分を守ってくれたり危険を顧みず自分たちを逃がすために管理局に攻撃を加えていた彼にとって敵味方は関係ないのだと。





フェイトはそれからおとなしくアルフの看病を受けていた。

「ほらフェイト口をあけて?」

「あ、アルフ自分で食べれるから。」

フェイトの顔が熱いのは熱があるだけではなかった。
しかしアルフそんなことに気がつくことなくスプーンをフェイトに近づける。

「いいからほらほら。」

「その、他の人がいるしね?」

アルフが視線を向ける先には自分たち以外の唯一の人間であるトレイン。

「は、恥ずかしいから。おねがいアルフ。」

そう言われては無理に食べさせるわけにもいかずしぶしぶ従った。
フェイトはゆっくりとお粥を食べ始めた。

「あとはしっかりと水分を取っとけよ。こいつを作っておいたからよ。」

そう言ってコップにスポーツドリンクを注いでおいた。

「あ、ありがとう。と、トレイン。」

顔をますます赤くしてフェイトは答えた。
トレインは自身の名前をフェイトが呼んだことに驚いた。

「おまえ、俺の名前覚えてたんだな?」

「一度聞きましたから。それに…。」

「?どうした?」


それっきりフェイトは口を開いてはくれなかった。
すると今度はアルフがトレインに話しかけた。

「それよりあんたに聞きたいことがあるんだけど?」

「なんだ?」

「あんたの本当の姿やあの光る弾丸についてだよ?」

アルフは回りくどいことは言わずにストレートに聞いてきた。

「まあお前らの居場所を知っちまったんだ。俺もことも少しは聞かせてやるか。」

そう言い自身の変身と電磁銃についての説明をした。











「へー、ナノマシンと電磁銃ね。正直おろいたよ、魔法以外でもあんなことができるなんてね。」

アルフはトレインの説明を受け感心しきりだった。
一方のフェイトは自身の能力について説明し制限があるなどの弱点をこうも簡単に話すトレインが不思議でしょうがなかった。
しかしトレインの表情を見ていてわかった。
彼はそんな能力に頼らずとも戦い抜く自信があるのだということを。


「ざっとこんなとこだな。満足したか?」

「ああ、一応仕組みはともかくとしてすっきりしたよ。」

アルフはそう答えたがフェイトは言った。

「あ、あの良かったら今見せてもらえませんか?」

「なんだ変身か?」

フェイトは何も言わずに頷いた。
するとトレインは立ち上がりアルフに言った。

「ワリーけどハーディスを返してくんねえか?」

「なんでだい?」

アルフはとたんに警戒し始めた。

「さっき言ったろ?集中力がかなり必要でよ、俺が集中してのはハーディスを構えているときなんだよ。」

会おう言うトレインに若干疑い気味のアルフにフェイトは言った。

「アルフ渡してあげて?」

「でもフェイト?」

「いいから。」

そこまで言われてアルフはトレインにハーディスを渡した。
トレインがハーディスを構え、眼を閉じるとトレインの体から光の粒子のようなものが出てきた。
そして一瞬の間光が部屋を包んだと思ったらそこには成熟したトレインが立っていた。


「はぁーーー、一度目の前で見てたけどこいつはすごいね。」

「俺もまだまだ慣れねえな。んでどうよ?」

そういってトレインはフェイトに聞くが

「………。」

フェイトは目を丸くし、そこに呆然としていた。
そして顔をうつむかせて一言呟いた。

「あ、あの。頭を……。」

「ん?頭がどうしたんだ?」

「頭を……なでてもらえませんか?」

フェイトはこれ以上にないくらい顔を真っ赤にし、消え入りそうな声で言った。
自分でも信じられないような言葉で目の前にいるトレインの顔をまともに見れず顔をうつむかせている。

トレインは何も言わずにフェイトの頭に手をやり前と同じようになでてやった。
決してやさしい感じではないがフェイトにとっては忘れられない感触だった。

「こいつを飲んで今日はおとなしくしてな。」

そういってトレインはカプセルの錠剤をスポーツドリンクが入ったコップと一緒に渡した。
フェイトは無言でそれを受け取り飲んだ。
それを確認したトレインは立ち上がった。

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。」

「そうかい?玄関まで見送るよ。」

「私も…。」

フェイトも起き上がろうとするがトレインに止められた。

「病人が一著前のことなんかしなくていーんだよ。おとなしくしとけ。な?」



そういってトレインはアルフと一緒に出て行った。
フェイトは自身の頭に残るトレインの手の暖かさ、感触を確かめながら眠りについた。










「今日は助かったよ。あんたが来てくれなかったら大変だったよ。」

「ま、気にすんな。今日のところは薬が効いておとなしく寝てるだろ。速けりゃ明日にも治ってるさ。」

「わかった。本当にありがとう。」


「じゃーな。」

トレインはそう言ってエレベーターに乗り込んだ。










お昼というには少し遅めの時間になりようやくトレインは八神家に着いた。
家の中に入ると不満げな表情のはやてがいた。

「トレイン君、今何時やとおもっとるの?」

「わりー、わりー。ちょっと野暮用でよ。」

反省の色の見えない表情で答えるトレインにはやてはため息をつき

「もうええわ。ほら早いとこお昼にしよ?」

そう言われてテーブルを見ると手をつけられた形跡のない二人分の昼食があった。

「お?今日もうまそーだな。」

トレインは自分の席に座ると箸を持ち食べようとした。

「ちょいまちや。手洗いうがいをせなあかんで?」

「大丈夫、大丈夫。」

はやての忠告もむなしく目の前にはおいしそうにお昼を食べるトレインの姿だった。














次の日ものの見事に風邪をひきはやてに看病されるトレインの姿があった。

二日間の間八神邸で療養を余儀なくされたのであった。



うがい手洗いはしっかりと。
それが今日トレインが学んだ教訓だった。







一方フェイトのほうは完全復活しジュエルシードの捜索を再開していた。






[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第13話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/13 23:59
トレインが風邪で寝込んでいる間ジュエルシードのほうにも動きがあった。
海鳴市の海上で複数のジュエルシードが発見された。





アースラ内部

ジュエルシードの反応は管理局側も確認していた。
アースラの内部のメインスクリーンにはジュエルシードを封印しようと奮闘するフェイトの姿があった。
しかし状況をみるにかなり手こずっている様子だった。

「ほんとなんて無茶をする子なの。」

リンディは厳しい表情で呆れ気味に言った。
なのはにもその状況は分かっていたのでいてもたってもいられなかった。

「リンディさん、私も行ってきます。」

転送装置に向かうなのはを止めるこ声があった。

「その必要はない。放っておけば勝手に自滅する。」

その言葉になのはは信じられないという表情をした。
リンディのほうに視線をむけるとクロノと同意見なのか厳しい表情でなのはに首を振っていた。

(なんで?どうしてなの?)

なのはには目の前で苦しんでいる人がいるのに放置しておくクロノ達がわからなかった。
そんななのはの様子を見てクロノは言った。

「残酷に見えるかもしれないが僕たちの任務はジュエルシードの確保と彼女たちの捕縛だ。」

「納得はできないかもしれないけどこれが最善の策であることは間違いないの。」

あくまで淡々と述べる二人だった。
しかし二人ともこの行動に心を痛めていないわけではない。
彼らは何人もの管理局員を従える立場にいる人間で、下のものに模範を見せるためにも感情的に動くことが許されない。
ましてや部下を預かる身としては少しのリスクも犯すわけにはいかない。


なのはは呆然とスクリーンに映るフェイトを見ていた。
善戦しているが複数集まったジュエルシードの封印はフェイトをもってしても厳しいものだった。

(組織の中じゃ個人の感情なんか二の次だ。悪く言えば個人的な感情を持つことなんか許されねえ。)

ふとなのはの頭にトレインの言葉がよぎった。
トレインの言っていたことはこのことだったのかと。
なのはも学校という環境の中に身を置いているため組織のなかで行動するということは分かっているつもりだった。
しかし、現実は厳しかった。
正直な話トレインが管理局に協力できないといった時なのはは納得できなかった。
どうして?なんで?
今まで一緒に行動し、頼りになる兄のような存在であったがゆえに別離はつらかった。

今になってトレインの言葉を痛感したなのはは自身の甘さが悔しかった。



(行ってなのは!!)

なのはに念話でユーノが話しかけてきた。

(ユーノ君?)

(行くんだなのは。フェイトのことを放っておけないんだろう?)

ユーノは真剣な表情で現場に向かうように促す。
でもなのはは迷っていた。

(でもユーノ君私たちは…。)

(大丈夫、こっちは僕が何とかする。…なのは、トレインが言っていたことを覚えているかい?)

(え?)


(お前の信じたものは捨てるなよ。何があろうと信念は曲げるんじゃねえ。彼は最後にそう言ってたよ。)

なのはは思い出した。彼の最後の言葉を、彼の言っていたことを。
彼が大事なのは信じたことを、信念を貫けるかどうかが大事だということを言っていたことを。

なのはレイジングハートを握りしめ転送装置に走った。

「な!?なにをしているんだ?」

「なのはさん?」

突然転送装置に走り出したなのはに驚く二人。
なのはは頭を下げながら言った。

「ごめんなさい、あとでいっぱい叱られますから。」

そしてユーノはなのはを現場に転送した。
それをクロノが追うように駆けだすがユーノが立ちふさがった。

「なんのつもりだユーノ!!!」

「なのはの邪魔をするようならここは通さない!!」

ユーノは毅然と言い切った。
そんなユーノの態度に周囲は驚いた。

「僕はここまでなのはやトレインに助けられてきた。僕の勝手なわがままに文句も言わずに…。」

ユーノは今までのことをかみしめるように続ける。

「信念を曲げるなと言ったトレインのアドバイスを無碍にしないためにも、なのはの信念を貫かせるためにも今度は僕がなのはを助ける!!!」

そう言い切ったユーノの姿はもはや気弱そうな少年ではなかった。













結局クロノ達はなのはとユーノをが現場に向かうことを黙認し様子をスクリーン越しに眺めていた。

「まったく、最初の約束はどうなってるんだ!!」

納得のいかないクロノはいらつきながら呟いた。
リンディもしかないと思いつつも帰ってきたら厳重注意をするつもりだった。

「とやかくいってもしょうがないわ。とりあえず様子を見ましょう?クロノ、すぐにでも現場に駆けつけられるように待機しておいてちょうだい。」

「了解。」

クロノはデバイスを構え転送装置のほうに向かう。
エイミィはその後ろ姿をみて苦笑しながら言った。

「やっぱりクロノ君不機嫌ですね。」

「ここのところいろいろあったからね。エイミィ、転送の準備は?」

「大丈夫です、すぐにでも送り出せるようにしてあります。」

「そう…。あとトレイン君の魔力反応はあるかしら?」

エイミィはキーボードを叩きながら画面で確認して

「いえ、この結界内部では感知されてません。」

「そう、妙ねジュエルシードの反応があればすぐさまやってくるかと思ったのだけれど。」








「へ、ヘックシュン!!!!」

「なんや?おおきなくしゃみして?」

「わからん、誰かが俺の噂でもしてんのか?」

ティッシュで鼻をかみながら答えるトレイン。
そしてはやてはスプーンをトレインのほうに持っていき

「ほな、口あけてや。あ~ん。」

「じ、自分で食えるから平気だっつーの。」

「なにいうてんの?風邪ひきイベントであ~んはお約束やし乙女の憧れの一つなんやで?」

「そんなお約束とあこがれはどぶにでも捨てておけ~!!!」




平和な八神家であった。









ジュエルシードのほうはなのはとフェイトの協力の末になんとか封印することができた。
六個あるジュエルシードをはさみなのはとフェイトは対峙していた。

「なんとか封印できたね。」

「うん…。」

二人の視線の先にはジュエルシードがあった。

なのははフェイトに告げた。

「これは二人で半分こしよう?」

「えっ!?」

「だってこれは私とフェイトちゃんで協力して封印したんだもん。それにだれかと何かを分け合えることは嬉しいし」

なのはは当然のように笑顔で言った。

そしてなのはは気づいた。

(そうか、私この子と分け合いたいんだ。)
フェイトの姿を見ていたなのははようやく気付いた
自分のかつての姿をフェイトに重ねていたことを。
どこか悲しい表情で、さびしげな瞳。

そして言った。

「友達に…なりたいんだ。」

「あっ。」








フェイトは戸惑いつつもなのはに聞いた

「……私も聞きたいことがあるの。彼は?トレインはどうしてるの?」

フェイトがトレインのことを聞いてきて驚いたがなのははとたんに表情を暗くした。
その表情を見てフェイトは悟った。

「トレインが言っていたことは本当だったんだ。彼は管理局には協力していないんだ。」

「ど、どうしてそんなことを知っているの?」

「彼が……話してくれたから。」

あの時のことを思い出してか少し顔を赤くしながらフェイトは答えた。


「トレイン君がどこにいるか知っているの?」

「知らない。たまたま会っただけだから。」

「そっか…。」


なのは少し落胆したようだったがトレインがまだ近くにいることがわかっただけでもなのはにとって朗報だった。

「トレイン君、元気だった?」

「うん、相変わらず。飄々として自由気ままな感じで…。」

(私に優しくしてくれた。)

フェイトはかみしめるように言った。

「そっか。相変わらずか。」

二人は友達のように話をしていた。
アルフもユーノも何も言わずに黙ってみていた。



しかしその雰囲気を壊すかの如くあたりに轟雷が鳴り響いた。

決して自然ではありえない状況になのははあたりを見回す。
しかしフェイトは心当たりがあるのか小さくつぶやいた

「か、母さん?」

そして雷撃がフェイトに襲いかかった。

「きゃぁあああ!?」

「フェイトちゃん!?」

フェイトはそのまま気を失い海に落下していった。
アルフはすぐさまフェイトを受け止め、ジュエルシードのほうに目をやると転位してきたクロノが迫っていた。

「どけぇぇぇぇーーーー!!!」

すさまじい気迫で迫るアルフに不意を突かれ繰り出された拳を受け吹き飛ばされるクロノ。
アルフはすぐさまジュエルシードをつかむが三つしかない。
もしやと思いクロノのほうをみると指にはさみこむようにジュエルシードを持っていた。

「ち、ちくしょう!!」

「あ、アルフ…。」

「フェイト、引き上げるよ!!」

アルフは海面に向かって光弾を撃ち込み水しぶきをあげ目くらましをした。
そしてそのままアルフ達は撤退していった。















雷撃を受けたダメージを回復する間もなくフェイトは母親に呼び出されていた。


広い広間に両手を拘束されつるされているフェイトの姿があった。
装着しているバリアジャケットもところどころやぶけダメージを如実に表していた。

フェイトの目の前には鞭を構える妙齢の女性が立っていた。
その女性こそフェイトの母であるプレシア・テスタロッサであった。

「か、かあさん。」

「フェイト、あなたって子は私をどれだけ悲しませれば気がすむの?」

「ご、ごめんなさい。」

フェイトがいくら謝ろうとも攻撃の手が緩められることはなかった。
親が子にする行動とは思えない常軌を逸している行動だった。

鞭による攻撃で叫び声を上げるフェイト。
その脳裏にはなのはの言葉が頭によぎっていた。

(友達に…なりたいんだ。)

あんな言葉をかけられたことのないフェイトは戸惑いを感じていたが同時に嬉しかったのも事実だった。
母親とアルフ、そして自分の面倒を見てくれた(    )だけが自分の周りにいた人間だった。

そしてもう一人、フェイトの頭の中によぎる顔があった。
自分の頭を暖かい大きな手で撫でてくれた人の顔が。


「あぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

大きな悲鳴を最後にフェイトは気を失った。
それを見たプレシアはつまらなさそうに眼をそむけ別室に向かおうとしたとき気を失っているフェイトがひとりの名前をつぶやいた。

「と、トレイン…。」

「トレイン?」

プレシアは思い出した。
以前からフェイトと交戦していた白い娘と一緒にいた少年だった。
以前からフェイトの口から出ることの多くなった名前であることはプレシアもわかっていた。

「気を失ってでも口に出すということはよほど大切な人なのねフェイト?」

プレシアは嬉しそうに声を上げるがそれはフェイトを思ってのことではなかった。

(このこをもっと効率よく動かせる道具になるかもしれないわね。)

そう言ってすぐさまトレインを探しだした。
スクリーンに写っていたのはけだるそうにベッドから這い出ているトレインだった。






「フェイト!?」

アルフは先ほどまでプレシアがいた広間に駆けつけフェイトを抱きかかえた。
傷が無数にできており痛々しいさまだった。
アルフは歯ぎしりをして主人を痛めつけたであろう人物を許すことはできなかった。
まずはフェイトを落ち着ける場所に移動させ治療することにした。









「なんだよ、こりゃ?」

トレインは目の前に広がっている魔法陣にあっけにとられていた。
ベッドから起き上がり以前買ったパジャマから普段着に着替えていると突然の目の前に魔法陣が現れたのだ。

ハーディスを構え恐る恐る近づくと声が響いた。

(聞こえるかしら?)

「誰だ?」

(私はプレシア・テスタロッサ。フェイトの母親と言えば分るかしら?)

「母親?んでそいつが俺に何の用だ?」

トレインは警戒しつつ聞き返した。

(娘の友人を招くのがそんなに不自然かしら?)

「別にあいつと俺はダチでもないんだが。」

(なら私が個人的にあなたに興味があるということにしておくわ。怖ければ別に無理をしなくてもいいわよ坊や。)

それだけ言うとプレシアは念話を切った。

「あからさまな罠だけどよ…。」

うまくいけば今回の件にけりをつけることができる。

「行くしかねえだろ。はやて、少し出かけるぜ。」

そう言って魔法陣の中心に立ち八神邸からトレインの姿は消えた。






プレシアが嬉しそうにその様子を眺めていると扉を破壊する音が聞こえた。

「?」

「はぁ、はぁ、はぁ。」

息を荒くし、敵意を前面にぶつけてきているアルフだった。

「何の用かしら?」

「あんた…なんであんなことをするんだ?」

プレシアは興味がないのかすぐに視線をそらし

「くだらない会話につきあう気はないわ。すぐに出て行ったちょうだい。」

その言葉にアルフはもう我慢がならなかった。

一気に距離を詰め攻撃を仕掛けるがプレシアには届かない。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

それでも何度も攻撃を繰り返すアルフ。
そしてプレシアの張るバリアを押し返すように破ると胸倉をつかみ言った。

「あんたはあの子の親であの子はあんたの娘だろ?なんであんなことを、あんなに頑張ってるのに…。どうしてだ?」

アルフは叫ぶようにプレシアに問い詰める。

しかし無表情のままアルフの腹部に手をやり衝撃波のようなものを撃ちアルフを吹き飛ばした。

プレシアは淡々と言った。

「あの子は使い魔の作り方が下手ね。余分な感情が多すぎるわ。」

「くっ!!」

アルフは腹部をさすりながら痛みをこらえている。

「今日はせっかくあの子大切な人を招待したというのに。」

「大切な人だって?」

「そう、あの子がずいぶんとご執心だったみたいだからね私としても興味が出てきてね。」

アルフの中で一人の人物が浮かび上がった。

「まさか…トレインかい?」

「そう、その通りよ。気を失っても呼びかけるなんてよほど大切なのね。」

「何を…何を考えているんだい!!!!」

アルフはやな予感がしていた。
この女がフェイトに対して碌な事をしてきていないことを考えれば当然だった。
そしてその予感は的中する。

「あのこがもっとうまく働けるように道具になってもらおうと思っているだけよ?」

「っ!?なんで…あの子はあんたに笑ってほしくて……優しいあんたに戻ってほしくてあんなに…ぐっ!!」


痛みにこらえきれなくなったの顔をゆがめるアルフ。
そんなアルフに無情にも杖を向けるプレシア。

「邪魔よ、消えなさい。」

杖から光があふれアルフも無事では済まないと覚悟した瞬間。

ガンッ!!!

一発の銃声が聞こえてきた。

「あらあら、ずいぶんと手荒なあいさつね。」



プレシアは特に驚くこともなく銃声のほうへ視線を向けた。

「そいつはどーも。育ちが悪いもんでね。」

「と、トレイン!!どうしてここが?」

アルフは驚くように聞いた。

「最初は別のとこにいたんだけどよ。おめーらのやりあう音を頼りに来てみればビンゴだったんだよ。」

トレインはアルフのもとへ行き尋ねた。

「大丈夫か?」

「ああ、なんとかね。」

アルフはよろつきながら立ち上がった。

「大体の話は聞かせてもらったぜ?悪いがあんたの道具になるつもりはねーぜ?」

「あら?じゃあそうするつもりなのかしら?」

プレシアは小馬鹿にしたようにトレインに尋ねた。

「決まってるだろ。掃除屋としてあんたを確保するだけだ。」

「あんた…。」

アルフはそう言い切ったトレインに頼もしさを覚えた。
その眼は自信に満ち迷いも戸惑いもない。


プレシアはその眼をみて忌々しいように見ていた。

「わかったわ、もう頼んだりはしないわ。道具は道具らしくしてもらうわ。」

プレシアは距離をとりトレインと相対した。





「アルフ、お前は後ろに下がってろ。」

「なんで?私も手伝うよ!!!」

トレインはアルフの腹部を指差しながら言った。

「んな体じゃ足手まといなだけだ。俺は絶対に負けはしねーよ。お前が一番わかってるだろ?」

確かに身を持ってトレインの強さは実感しているが目の前の相手はただの魔導士ではない。
かつては大魔導士として名をはせた女だ。

トレインもあいての実力は肌で感じ取っていた。
フェイトの母親ということだけあって魔導士としての実力はぴか一であること。
そしてクリードのように淀んだ目つき。
目的のためならどのような手段、犠牲もいとわない人間がする目つきを。


「そろそろいいかしらね?あなたたちごときにそんなに時間はかけたくないの。」

そう言うと杖を構える。
トレインもハーディスを構える。

ダッ!!!

地面を蹴りある程度の距離を保ちながらトレインは銃口を向け撃った。

(相手を殺すわけにもいかねえからな。動きを封じる!!)

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

プレシアの足にめがけて3発の銃弾が迫るがプレシアは何も反応することなくその場にたったままだった。

(反応すらしねえ?)

不審に思ったトレインだったが次の瞬間それは起こった。
プレシアに迫った銃弾は届くことなく見えない壁に阻まれるようにはじかれた。

「なっ!?」

「そんなおもちゃで本当に私と戦うつもりだったの?だったらいいお笑い草だわ。」

「トレイン、そいつは半端な魔導師じゃない生半可な攻撃ははじかれちまう。」

アルフがトレインに伝える。
トレインは一瞬驚きはしたがプレシアがフェイトの母親であり魔導士であることからある程度予想をしていた。
かつてシキと戦った時も通常弾ではダメージを与えられなかったこともありそれほど深刻にもなっていなかった。

「確かに通常弾じゃ無駄見てーだな。」

「まだやる気かしら?」

プレシアは悠々と立ちトレインに言い放った。
アルフは正直な話トレインでも勝つのは難しいと踏んでいる。
自分の拳が防がれるバリアをトレインの持つ銃が貫くことはできないと考えていた。
しかし、ひとつだけ希望がある。
電磁銃だ。

フェイトやなのはが破ることのできなかった電磁銃であればプレシアの強固なバリアを破れるかもしれない。
アルフはそう考えていた。


「トレイン、電磁銃(レールガン)だ!!!」

アルフはトレインにそう呼びかけるがトレインは難色を示した。
確かに電磁銃であれば相手の防御を貫くことができるかもしれないが威力がありすぎる。
当たりでもすればプレシアといえどもただでは済まないだろう。
下手をすれば死に至るかもしれない。

しかし、トレインの状態はそんなことを言っていられない状況になりつつあった。
病み上がりなのもあるが、熱自体はほとんど下がっているが昼食後にとった薬の副作用が今になって効いてきたのだ。
副作用と言っても睡眠を促しだるさを伴うものだけだが、今の状況ではそのわずかの不安材料が命取りになりかねない。


トレインはリロードしハーディスを構える。


「どうやらまだやる気みたいね?」

「違うな、あんたに勝つ気だ。」

プレシアはトレインの瞳をみて感じた。
この少年は本気で自身に勝つつもりであると。
目に見えない圧迫感は並み大抵の人間に出せるものではなかった。


「なら今度はこちらもいかせてもらうわ!!!」

そう言って杖を振るうとトレインの頭上から雷撃が襲ってきた。

「ちっ!!」

大きく横に跳び回避するが追いかけてくるように雷撃がトレインを襲う。

「ほらほらどうしたの?逃げてばかりでは私に勝てないわよ?」

余裕をもって挑発するようにいったプレシアだったが次の瞬間。

ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

トレインは回避をしながらもプレシアに向かい攻撃を仕掛ける。
しかし無常にも銃弾は先ほどと同じ用ように阻まれた。

カン、カン。

銃弾がプレシアの足もとに落ちるがそこにあるのは二発だけだった。

残りの二発はプレシア背後から迫っていた。
完全に不意を突かれていた。

しかし

カンッ!!!、カンッ!!!

その銃弾ですらはじかれてしまった。

(あのバリアは意識外の攻撃もはじくのかよ。)

プレシアは後ろから迫った攻撃に多少驚いた様子だった。

「なかなかの腕前みたいね。まさか跳ね返ってくる銃弾を利用するなんてね。」

その言葉を返すほどの余裕もトレインにはなくなってきていた。
アルフもトレインの動きが鈍いことに気がついていた。

以前戦ったときと比べ明らかに動きの切れが悪い。


このままでは一向にダメージを与えることができないと考えたトレインは通常弾と一緒に特殊弾をリロードした。


(正直、こいつでだめならやばいな。)

まずはあの強固なバリアを破らなければ話にならない。
そのためには自身の中でもっとも威力あるの攻撃、レールガンを撃つしかない。

ズキン!!

(手のほうもだましだましやってきたが限界が近いな。)

ワイヤーで固めたグリップからはわずかだが血がにじんでいた。
トレインはプレシアを見据えハーディスに充電を開始した。

アルフはその様子を見て電磁銃を撃つということがわかった。
おそらくバリアを貫くことができれば一瞬の隙ができるはず。
アルフはタイミングを見計らい攻撃を加えようと考えていた。

プレシアはこちらを見据えるだけのトレインをただただ見つめているだけだった。

「もう降参かしら?できれば準備をしたいのだけれど。」

「まだだ。こいつをくらってからそいうことを言いな。」

そうしてハーディスを構えプレシアの足にかするように電磁銃を撃ちはなった。

ドォンッ!!!!

そのあまりの弾速と威力にプレシアも驚いたが
電磁銃に対しても反応しようともしなかった。

(くそっ!!!完全に外れてやがる。)

体調の悪さがここにきてピークを迎え普段ではありえないほど射撃精度を落としていた。
しかし直撃こそしなかったもののバリアには直撃し、ガラスのように崩れていった。

(よしっ!!!)

トレインはあいての態勢を崩すために赤い銃弾、炸裂弾を撃ち込もこもうとした瞬間。

「おりゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!」

アルフが咆哮とともにプレシアに迫っていた。

「なっ!?」

予想外の介入にトレインも不意を突かれた。
しかしプレシアは特に驚くこともなくアルフのほうに杖を構えた。
そして

「邪魔よ。」

冷たく言い放ちアルフに向かい光弾を放った。

トレインは照準をプレシアではなくその光弾に合わせ炸裂弾を撃った。
光弾とぶつかり合った炸裂弾は爆発を起こしアルフへの直撃は防いだ。

しかし

「甘いわね。」

その言葉にプレシアのほうに視線を動かすと目の前にはもう一つの光弾が迫っていた。














目の前の爆発に吹き飛ばされたアルフはダメージを受けたものの動けないほどではなかった。

「く、くそ。」

何とかたちあがろうとしたが目の前にはプレシアがせまっていた。

「馬鹿な使い魔。あなたがあそこで下手な行動をとらなければ彼は勝っていたかもしれないのに。」

プレシアは冷たく言い放つ。

「な、なんだって?と、トレインはどうしたんだい?」

「あの子ならあそこよ。」

そうプレシアが指さす方向にはボロボロになったトレインの姿があった。

「あ、あ、あ…。」

信じられないようなものを見るようにアルフは言葉が出なかった。

「あなたが余計な事をしたせいで彼には致命的な隙ができた。それがなければ迷いなく彼は私に攻撃できたのに。」

そして

「今度こそ終わりよ。消えなさい。」


杖から大きな光があふれだした。


アルフは光に包まれる瞬間とっさに転移魔法を発動させた。

(ごめんフェイト、ごめんトレイン。少しだけ、少しだけ待ってておくれよ。)













「さて、邪魔な使い魔は片付いたことだし。」

プレシアはトレインに目を向け

「あなたには役に立ってもらうわ。あの子を動かすために、私の願いをかなえるために。」

狂気に満ちたプレシアの声が響き渡った。






[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第14話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/15 09:32
(ここは?)

意識を取り戻したフェイトは起き上がり辺りを見回した。
そこは時の庭園におけるフェイトの寝室であった。

「アルフがここまで運んでくれたのかな…。」

まだからだに残る傷跡を見つめながらフェイトは立ち上がった。
そして部屋を出ていこうとしたところで突然ドアが開いた。

「フェイト…。」

「か、母さん!?どうしたの?」

突然やってきた母にフェイトは驚きを隠せなかった。
母から訪ねてくるなんてフェイトの記憶からは覚えはなかった。
恐る恐る、しかし少しの期待を抱きながらフェイトは母親に近づいた。

プレシアは大げさに溜息をつくように、優しげに言った。

「フェイト、落ち着いて聞いてちょうだい。あなたの大切なお友達が来ているのよ。」

「ともだち……?」

フェイトの頭にふとよぎったのはなのはのことだった。
ろくに返事をすることもできずに終わってしまっていたが母が言っているのはなのはのことなのだろうかとフェイトは思った。
しかし、危険な状態とはどういうことだろうか?
フェイトは嫌な予感がしていた。
プレシアは要領をえないフェイトに構わず言った。


「ええ、こっちに来て頂戴。」

プレシアはそのまま部屋を出て行った。
フェイトもそのあとを追うようにプレシアについていった。









プレシアについていくとそこは昔はよく来ていた部屋だった。
自分に魔法を教えてくれた、師とも育ての親とも言える使い魔がいた部屋であった。

「さあ、おはいり。」

いつになく優しい母に嬉しさを感じる反面不気味でもあった。
恐る恐る部屋の中に入っていくフェイト。
そして部屋の中を見ると以前と、かつて訪れた時と変わらない状態の部屋だった。
しかし、ベッドのほうに目を向けると誰かが横になっていた。
その人物はなのはではなかった。


あちらこちらに痛々しい傷を残し額からは包帯ににじんでいるほど出血をしているトレインだった。

「と、トレイン…?」

フェイトは呆然としていた。
それはそうだろう。
二日前、体調を崩した自分に見舞いに来てくれた彼がベッドで横になっている。

なぜ?どうして?彼がここに?

さまざまな疑問がフェイトの頭の中によぎった。
呆然とするフェイトの様子に満足するようにプレシアは微笑んだ。
そしてフェイトに告げた。

「彼はね、あなたのためにってジュエルシードを集めているところを管理局の人間にやられてしまったようなの。」

「!?」

その言葉にフェイトは反応した。

プレシアはフェイトが体調を崩していた時偶然にもその様子を見ていた。
トレインがフェイトを見舞い、休むように説得する際した約束を

(今日一日ジュエルシードが発動しようものなら俺とこいつで確保するからいいだろう?)

あのあと眠りについてしまったフェイトはトレインの動向は知らない。
管理局とも接触していたが彼らもトレインの居場所をつかんでいないとフェイトは知っている。
プレシアとしては白い魔導士がやったことにしてもよかったのだが彼女は彼の様子を確認していることから接触してないことがわかってしまう。

ならば面識のない彼が属することを拒否した組織に押しつけてしまえばいい。
プレシアはそう考えた。
そうすることでフェイトは管理局に対していい感情は覚えないだろう。
そしてジュエルシードを管理局と対立することを厭わずに集めることに集中するだろうと。


実際、ほとんどプレシアの思惑どりことは運んでいた。
フェイトはトレインの手を握りしめ胸で抱えるようにしていた。

「ごめんね……。本当にごめんね…。」

消え入りそうな声で、震えるような声でフェイトはトレインに謝罪していた。
あの暖かかった手は傷だらけで冷たくなっていた。

(私は…トレインからもらってばかり。私は何にも彼にしてあげていないのに。)

罪悪感に苦しむフェイトにプレシアは残酷に告げる。

「彼はこのままじゃ助からないわ。」

「!?」

その言葉を聞いた瞬間フェイトは凍りついた。

(か、母さんはなんて言ったの?)

コノママジャトレインハタスカラナイ?

今まで乏しい人間関係しかなかったフェイトにとって初めて自分から接点をもったトレインがいなくなることは恐ろしかった。
何より自分の頭を撫でてくれた温もりをなくしたくなかった。
その様子をみてプレシアはたたみかけるように言う。

「でも、ジュエルシードの力を使えば助かるかもしれないわ。」

「本当ですか?」

「本当よ、だからフェイト…あと最低でも5個、できればそれ以上ジュエルシードが必要なの。」

「五個…。」

それは残っているジュエルシードを集めるだけでは足りない。
管理局の人間から奪わなければ集まらない数だった。

「難しいとは思うわ、けど私としても娘であるあなたの友達を助けてあげたいと思っているの。」

「トレインを助ける…。わかりました。」

そう呟いた時にはフェイトには迷いが消えていた。
立ち上がりトレインを見る。

(今度は私が……。トレインのために…。)

フェイトはベッドから離れ、部屋から出て行こうとしたときアルフの気配がないことに気がついた。
プレシアと一緒にいるときは近くにいないことが多いがこの時の庭園にもいない。

「アルフなら逃げ出したわよ。」

プレシアはフェイトにそう言った。

「もう痛いのも怖いのもやだと言って出て行ったわ。」

「………。」

「フェイト…。なんならもっといい使い魔を作ってあげるわ。だから、母さんのお願いをお友達を助けてあげて?」

そっとフェイトに近づき抱き寄せるようにして言った。

「あなたの本当の味方は母さんだけよ?」

「はい、母さん…。」


そう言ってフェイトは出て行った。
そしてバルディッシュを手に時の庭園から転移していった。



フェイトがいなくなったトレインが眠る部屋ではプレシアが笑っていた。

「本当に馬鹿な子。こんな単純なウソにだまされるなんて。」

プレシアはおかしくてたまらないようだった。
狂気に満ちた笑顔を浮かべ続ける。

「大魔導士である私がこの程度のけがを治せないと思っているのかしら?」

実際トレインの状態は危険に変わりはないがプレシアをもってすれば治せないことのない状態だった。

「さて、これでこの子の仕事は終わったのだけど…。」

プレシアは黙ってトレインを見つめていた。
放っておけば危険に変わりはないが彼がどうなろうとプレシアにとってどうでもいいことだった。

「まあいいわ放っておいてもいいでしょう。どうせまともに動くこともできないでしょうし、放っておけば勝手に死ぬわ。」

そう言ってプレシアは部屋を出て行った。
トレインの体からナノマシンの輝きが出ていることも気付かず。












トレインは夢の中にいた。
正確にいえばいたような気がしていた。
ただ真っ白な世界が広がる自分以外誰もいない空間にトレインは立っていた。
そこはトレインにとって見覚えのある景色だった。

(またここか?)

以前クリードとの戦いを終えた時みた景色。
この世界に来るきっかけ作った、自分に自由な世界を教えてくれた女性がいた景色だった。

そしてトレインの後ろにひとつ気配があった。
振り向きざまにその人物をみたがその人物はトレインが想像した人物ではなかった。

「……誰だ?」

見覚えのない、女性がそこには立っていた。
年は自分と同じくらいか若いくらいだろうか?
その表情は穏やかで慈愛に満ちていた。

ゆっくりとこちらに近づいてくるその女性は立ち止まりゆっくりとお辞儀をして口を開いた。


「あなたがトレインさんですね?」

「ああ、そうだぜ。あんたは誰だ?俺はあんたを知らない。」

「私はリニス、かつてプレシアの使い魔だったものです。」

トレインはリニスと言った女性を見回してみたが特に人間と違うところはない。
まだ使い魔というものの概念を理解していないトレインには普通の人間と変わらないと感じていた。

「ふ~ん、でその使い魔が俺に何の用だ?あんま時間もないみたいだから手短に頼みたいんだが?」

「その心配はありません、こちらでいくら過ごそうと現実ではほんの一瞬の出来事ですから。」

「……わかった。なんか事情がありそうだな。」



トレインはその場に座り込んだ。
リニスも向かい合うようにトレインの正面に座った。

「お話しというのはあなたにお願いがあるのです。」

「お願い?」

「はい、私の主人…いえ主人だった人を止めて、フェイトを救ってほしいのです。」

リニスはトレインをまっすぐに見据え言った。

「あんた、プレシアの使い魔だったって言ってるがあんたはここにはいないのか?」

「はい、しかし私は現実にはもう存在しません。役目を終え契約を解いたとき私は消滅しましたが魂だけは、残留思念とでも言える形でここに残っていたのです。」


トレインは何となくだが納得は言った。
ここがサヤと話をした世界と限りなく近いことを考えれば魂だけの存在の女性がいてもおかしくない。

「使い魔って言うのがどういうもんかよくわからないんだが?」

「使い魔は生物を素体とし擬似的な魂を与えることで誕生する魔法生物です。私の場合はアリシアが飼っていた山猫を素体として作られました。」

そこで聞き覚えのない人物の名前ができた。


「アリシア?」

「これから説明するお話に深くかかわってくる子です。プレシアを凶行に走らせているのはこの子の存在なんです。」

リニスは表情を暗くし語りだした。









「プレシアはかつては魔法技術研究に携わる研究者でした。お分かりだと思いますが魔導士として非常に優秀でした。大魔導士として尊敬される立場にありました。」

確かに戦ってみたがなのはたちとは一線を画すくらいの実力は持っていた。
おそらく魔法の世界でも指折りの魔道士なのだろうとは感じていた。

「結婚もしていましたが夫のことは詳細は分からないのですがプレシアは一人の娘を授かりました。その子がアリシアです。」

「フェイトじゃないのか?」

「はい…。それについてはこれから説明します。」

そう言われたのでトレインは黙って聞くことにした。


「アリシアは魔法の資質は持たないものの明るく活発な子でした。」

(性格的にはフェイトのま逆だな)

「そんなアリシアをプレシアは深く愛していました。二人は父親がいないものの幸せに暮らしていました。」

リニスは一息おき、口にするのもつらそうな表情で告げた。

「でも、そんな幸せも長くは続きませんでした。たまたま仕事の現場を見学していたアリシアがいる時に実験事故が起こったのです。」

「事故?」

「はい、その事故に巻き込まれてアリシアは亡くなりプレシアは責任を取らされるかたちで異動させられました。」

トレインは何となくだが事情が読めてきた気がした。
娘に深い愛情を持っていた母親。
実験事故による娘の死。

今いるフェイトに対するプレシアの行動。


「プレシアは悲しみに暮れるなかアリシアを忘れることができず禁断の技術に手を染めました。」

「プロジェクトF.A.T.E」

「!?」

トレインはその言葉を聞いた瞬間自身の推測はほぼ確信に変わった
そんなトレインを見てリニス続ける。

「もうお気づきかもしれませんがこれはあなた達の言葉でいえばクローン。生命操作技術の一つです。その結果生み出されたのがあの子、フェイトなのです。」

「………。」

予想はほぼ当たっていた。
クローン技術、トレインの世界でも非合法に運用されていた。
その最たる存在が掃除屋仲間のイブだった。

(姫っちは兵器、フェイトは死んだ娘の身代わりか…。)

どちらにしても勝手に作られたほうとしてはたまったもんじゃない。


「この技術ではクローニングした素体に記憶を定着させる事により、従来の技術では考えられない程の知識や行動力を最初から与える事が出来ます。しかし完全な再現まではどうしてもできなかった。」

「そりゃそうだ。どんな形で生まれたにせよそいつと全く同じそんじなんてありはしねーんだからな。」

リニスも同意するように頷く。

「トレインさんの言う通りだと思います。しかし、プレシアにはそれが許せなかった。次第にフェイトにつらく当たるようになっていき教育係を私に任せました。」

「歪んでんな。」

トレインは苦々しい表情でつぶやく。

「そしてプレシアはもう一つの可能性を見出しそれにかけることにしたのです。」

「もう一つの可能性?」

「忘れられし都アルハザード。次元世界の狭間に存在するとされる世界で、そこには時を超え、死者さえも蘇らせる秘術があるといいます。ですがその存在は伝説上のものとされ、実在しないというのが通説です。」

死者蘇生。
現実ではありないことだ。

(あの女は取り戻そうとしてんのか…自身が幸せだった過去を。)


「アルハザードに辿りつくには大規模な次元震を引き起こす必要があって「そいつのためにフェイトにジュエルシードを集めさせてるのか。」…はい。」

大筋な事情がわかった。
すべての元凶は過去の事件。
それによって娘を失った母親の狂った愛情が今回の一連の事件を引き起こしている。



「私はプレシアを止めてほしいのもありますがこれ以上フェイトに傷ついてほしくないんです。」

リニスはトレインの手をとり必死に頼み込む。

「お願いです、あの子をフェイトを救ってあげてください!!!」

その眼に大粒の涙が浮かんでいた。
トレインはフェイトのためにここまで真剣になれるリニスがフェイトの母親ではないかと思えてきた。


トレインはリニスに頼まれるまでもなく決めていた。

「心配すんな、あんたに頼まれなくてもあの女とはけりをつけるつもりだ。」

トレインは立ち上がりそう言った。

(あいつは過去に縛られているだけだ。かつての俺みたいにな。)

トレインにはプレシアの気持ちがわからなくもなかった。
失いたくない人を失ったということに関してはプレシアもトレインも同じだった。


「…プレシアと戦うんですね?」

「ああ、説得でどうにかなる相手じゃねえだろ。心をへし折って間違いを認めさせる。」

「わかりました。」

そう言うとリニスはトレインの手を取った。

「あなたは強い。ですがこのままプレシアと戦うには危険すぎます。」

「どうしろって言うんだ?」

「私が……力をお貸しします。」

トレインの右手に両手を添えるとリニスは言った。

「今回こうしてあなたに話しかけられたのもサヤさんのお力があったからなんです。」

「サヤが?」

「はい、あなたであれば力になってくれると。」

「そうか…。あいかわらずおせっかいなやつだな。」

リニスはくすくすと笑い

「でも私はサヤさんに感謝してます。こうしてあなたとお話しする機会を作っていただいたのですから。」


するとリニスはトレインにつぶやき光となって消えた。
そしてトレインの意識もそこで途切れた。



















一方アースラではリンディがなのはとユーノを会議室に呼んでいた。
以前の命令違反の件の叱責もあったがリンディには聞きたいことがあった。




「まあ今回の件はこのくらいにしましょう。」

覚悟していたとはいえ怒られることになれていない二人は頭をさげ落ち込んでいた。

「次に聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

二人は顔をあげリンディを見る。

「彼、トレイン君について知っていることを聞かせてほしいの。」

「え?トレイン君ですか?」

なのははすこし戸惑い気味に聞き返した。
リンディは頷き続ける。

「エイミィ、戦闘データを映してくれる?」

「はい!!えーとあの子データはっと!!」

そこに映し出されたのは以前大樹と戦った時の映像だった。

「あなたたちのデータを見たところ素晴らしい才能をもった魔導士と言えるわ。」

「え、そうなんですか?」

なのはが意外そうに答えた。
ユーノはなのはに苦笑しながら

「無自覚なところが恐ろしいねなのはは。」

リンディも苦笑しているが、クロノだけはおもしろくなさそうにしていた。

「実際あなたとあのフェイトちゃんに関して言えば管理局でも5%ほどしかいないほどの資質を持っているわ。」

なのははただ驚くだけだった。
自分にそんな才能があるだなんて夢にも思っていなかった。
魔法はユーノのお手伝いのための必要なものだったそれだけだったのだ。

「でも、問題は彼なの。」

スクリーンの映像がトレインをアップにしていた。

「彼も平均以上の資質を持っているわ。けどデバイスを持たない彼は魔法が使えないはず…。」

「なにか問題でもあったんですか?」

ユーノはリンディに問いただす。
リンディは困ったように答えた。

「問題というほどではないわ。ただ彼は魔力を行使していないのにもかかわらずなのはさんよりワンランク下、AAランクの魔導士の実力を持っているのよ。」

「な!?」

「!?」

いまいち要領を得ないなのはと驚きを隠せないでいるユーノ。

「これは普通ではありえないこと。魔力で身体能力を強化しているわけでもないのその能力はトップクラスと言えるわ。」

そしてクロノが続けざまに言う。

「この世界の人間がそうなのかと思って調査を進めたがここに住んでいる人たちはみな僕らと同じ、一般的な人間が持つ身体能力しか持たないことがわかった。」

ユーノは立ち上がり口を開いた。

「わかりました。僕らの知る限りのことを教えます。」

「ゆ、ユーノ君!?」

そう言ったユーノになのはあわてて止めるようにするがユーノは手で制して念話で言った。

(大丈夫、彼の過去については言わないよ。)

(え!?)

(彼が次元漂流者であることはいずれ伝えておかないといけないと考えていたからそれを教えるだけさ。)

(そっか、そうだよね。)

(間違っても僕らを信用して話してくれた過去を話す真似はしないさ。)


そしてユーノは説明できる限りのことを説明した。

突然この世界にたどりついたこと。
この世界に来た時なのはが助け出し家で保護したこと。
こちらに来るまでは賞金稼ぎをやっていたことなど当たり障りのないことだけを簡潔に述べた。


「そう、彼が次元漂流者だったんてね。」

リンディは同情するように呟いた。
クロノも腕を組み難しい顔で言った。

「それは確かに災難なことだ。実際に彼の世界を探すのも簡単な話じゃない。」

「こちらで保護するという形もとれるけど彼は納得しなさそうね。」














その後なのはたちは一時帰宅を許可され自宅に戻ることになった。

メールですずか、アリサに連絡をとった。


そのアリサは迎えの車で家に帰宅途中だった。

運転手である鮫島という老人がアリサの表情がほころんだことをバックミラー越しにみて言った。

「アリサお嬢様なにかいいことでもございましたか?」

「別に普通のメールよ。」

なんでもないようにそっけなく答えるアリサだったが内心なのはからのメールは嬉しかった。
表面上は不機嫌そうにして窓を眺めていると何かに気がついた。

「鮫島!!車を止めて!!」

「は、はい。かしこまりました。」

そう言われ鮫島はブレーキを踏んで車を道の脇に止めた。
アリサは急いで車から降り舗装されていない土の道を進んだ。

そこには血を流しながら息を荒くしているアルフだった。

「やっぱり大型犬だわ。」

「どうやらひどいけがをしているようですな。」

「鮫島!!」

「かしこまりました。」

そういって鮫島は車のほうに向かった。
アリサはアルフのほうに近寄り言った。

「大丈夫すぐ助けるわ。」

アルフは朦朧とする意識の中で目の前の人物を見ていた。

(だ、だれだい?)

そしてそこで意識はなくなった。










アルフが意識を取り戻すとそこは檻の中だった。
ところどころ痛むところはあるが包帯を巻かれているところをみると誰かが治療してくれたのだろう。
すると檻のそとから少女の声がした。

「気がついたみたいね。」

そこにいたのは以前温泉でなのはにからんだとき食ってかかった勝気そうな少女だった。

「お医者さんが見てくれてひどいけがだったみたいだけどもう大丈夫だってさ。」

少女は優しい笑顔をみせアルフに話しかけかける。
少女の横には少女が飼っているであろう犬が周りを囲んでいた。

そして少女は檻を少し上げドッグフードの入った器を差し出した。

「ほらお食べ。」

アルフは恐る恐る口にしていたがすぐさま勢いよく食べ始めた。

「ははは、そんなに食欲があるんじゃもう大丈夫ね。」

嬉しそうにその様子を見るアリサだった。














一方、なのはは家にもどったあと心配をかけていた友人二人と会う約束をしていた。

その際トレインも連れて来いとアリサに言われたがトレインは行方知らず。
なのはは二人に心配かけまいとトレインだけ用事がありまだ戻ってこれないと嘘をついた。




そして今なのははアリサの家で久しぶりに友人とゆっくりとした時間を過ごしていた。

「それにしても心配したんだよ。」

「ごめんね、すずかちゃん、アリサちゃん。」

「な、別に私は心配なんかしてないわよ。それよりあいつは何してんのよ?」

アリサは用意してあった席が空席になっていることが気に食わない様子だった。
なのはとしても説明しにくいことなので苦笑するしかない。

「そうそう、昨日帰る途中で変わった犬を拾ったの。」

「変わった犬?」

「そう、オレンジ色の大型犬なんだけど怪我してて今庭の檻の中にいるの。」

(オレンジ色?)

なのはもしやと思った。
アルフもオレンジ色をしたオオカミの形態をとっていた。

「なに?なのはも気になるの?」

「う、うん。少し見てみたいかな?」

「そうだね私も見てみたいかな。」

「じゃあ、庭のほうに行きましょう。」



アリサについていくとそこにいたのは檻の中にいる怪我を負っているアルフだった。

「この子よ。結構ひどいけがだったけど今はもう落ち着いたみたいだから心配はいらないみたい。」

「そうなんだ、でも本当に大きいね。ね、なのはちゃん。」

「うん…。そうだね。」

なのははどうしてこんなところにいるかを聞きたかったがアリサたちの前で魔法の話をするわけにもいかない。
するとユーノが念話越しにいた

(なのは、彼女からは僕が事情を聴いてみるから行って大丈夫だよ。)

(ありがとう、ユーノ君。)


そしてアリサたちと建物の敷地内に消えていった。



「どうしてこんなところに君がいるんだい?」

ユーノはアルフに話しかけた。

「この状況は管理局の連中も見えてるんだろ?」

「うん、多分ね。」

ユーノとしては確信はできないがおそらく見ているだろうと思っていた。
事実クロノ達はこの様子を見ていた。

アルフは悔しさの余り歯ぎしりをしながら涙を流した。
その姿にユーノはあわて始めた。

「ど、どうしたんだい?落ち着いて。」

「ごめん、本当にごめんよ。」

アルフは突然謝り始めた。
ユーノとしては何が何だかわからなかった。

「フェイトとトレインを助けてやってくれないか?私の知っていることは何でも話すから。」

「今、なんて?」

フェイトという少女はわかるがなぜここでトレインの名前が挙がるんだ?
ユーノはわけがわからなかった。













なのはと合流してアルフを伴いアースラに乗艦するとそこにはクロノとリンディが待っていた。
クロノがアルフに近づき

「君の知っている限りのことでいい。話してくれるね?」

「ああ、ここまで来ておいて逃げる気はないさ。」

なのはとユーノからしてみれば一刻も早く状況を知りたかった。
そしてアルフはここまで起きたことを語り始めた。








「じゃあトレイン君は…。」

「ああ、多分あの女に捕まってる。」

その言葉になのははいてもたってもいられなった。
しかし、そばにいたユーノが服をつかんで止めた。

「ユーノ君!?」

「彼が今どこにいるかもわからないのにどうするんだい?とりあえず落ち着いて話を聞こう。」

ユーノの言葉にクロノも同意する。

「ユーノ言う通りだ。それに彼女の言葉通りなら彼はまだ生きている可能性が高い。」

「ああ、あの女はトレインのことを利用するって言った。だからまだ無事だとは思う…。」

そこでアルフは声を落とす。
リンディが代わりに答えるように続けた。

「でも、プレシア・テスタロッサとの戦闘で受けたダメージはかなりのものなのね?」

アルフは力なくうなずいた。

「あいつは私をかばって、フェイトを助けようとしてあいつと戦ってくれた。けど私は……。」

そう震えながら涙をこぼすアルフ。
そして先ほどまで取り乱しかけていたなのはが近づきアルフの涙を拭いた。

「えっ!?」

アルフはなのはの行動に驚いた。
罵声でも浴びせられ罵られるとも思っていたが目の前の少女は笑って言った。

「アルフさんのせいじゃないです。すくなくともトレイン君はそんなふうには思ってないはずです。」

「そうです。それに彼はまだ生きてるはずです。」

「あ、あんたたち。」



「これで今回の件の黒幕ははっきりしたな。」

「ええ、あとは相手の居所だけね。」





ピィーーーーーーーッ!!!

警報のアラームが鳴るとエイミィが叫んだ。

「艦長、ジュエルシードの反応があります。」

「なんですって?」

リンディはあわててスクリーンに目をやる。
そこにはジュエルシードのほかに空中にたたずむフェイトの姿があった。

「フェイトちゃん!!」

「フェイト!!!」

フェイトはジュエルシードを手にするとその場から離脱せずにまるでこちらを待っているようにその場にとどまっている。
その行動にクロノは顔をゆがめた。

「彼女はいったい何をしてるんだ?まるでこちらがやってくるのを待っているようだな。」

リンディからしても不審な行動だったが彼女を止めるまたとない好機だ。

「なのはさん、ユーノ君。急いで現場に向かって彼女を止めてあげて。」

三人は頷きすぐさま転送装置に向かう。

「待って!!私も行くよ。」

アルフもそれに加わろうとする。

「アルフさん、あなたはまだ怪我が…。」

リンディがアルフを心配して止めようとするが

「大丈夫、あいつに比べたら私の怪我なんて…。それにフェイトのことはほっとけないよ!!」

その姿をみて説得は無理だと考えたリンディはエイミィに指示を出した。

「転送してちょうだい。」

「了解。」

「アルフさん、無理だけはしないでちょうだい。なのはさんたちも気をつけて。」


三人はフェイトのもとへと急いだ。







「来たね…。」

「フェイトちゃん…。」

四人の前には以前よりもさらに冷たい目をしたフェイトが待ち構えていた。
すでにバルディッシュを構えバリアジャケットも装着している。

「大体の事情は彼女から聞いた。情状酌量の余地も十分にある。今からでも遅くはない、投降するんだ。」

クロノがそう呼びかけるがフェイトは首を振る。
そんなフェイトにアルフは叫ぶ!!

「どうしてあんな女なんかのために?もういいじゃないか?」

「アルフ……。それでも私のたったひとりの母さんだから。それにトレインのためにも…。」

「トレイン君?」

なのはがそう聞き返すがフェイトはそのままバルディッシュを四人につきつける。

「トレインのためにも負けられないの!!!」

その瞳は冷たかったが決意に満ちたものだった。

「トレインは…。」

アルフが何か言おうとしたがなのはが手で制した。
そしてレイジングハートを構え封印してきたジュエルシードを浮かべる。

フェイトもそれに習いジュエルシードを浮かべる。

なのはは悟っていた。
この決意は言葉だけでは止められない。
戦うのは、争うのは嫌だけどこのままでは前に進めないとわかったなのフェイトに告げる。

「ただ捨てればいいってわけじゃないよね?逃げればいいってわけじゃもっとない。」

(信じてることは捨てるんじゃねぇ。信念を曲げるんじゃねぇ。)

「………。」

「きっかけはジュエルシード、だから賭けよう。お互いの持っている全部のジュエルシードを!!!」

なのはもレイジングハートを構えフェイトと対峙する。

「それからだよ。全部それから…。」












「クロノ君いいの?」

エイミィは横で黙ってスクリーンに映るなのはたちの様子を見ていた。
普通に考えればなのはの行動は無視することはできないものだったがクロノはそれを黙認した。

「別に、なのはの勝ち負けは正直どうでもいい。」

「なのはちゃんが時間を稼いでいる間にあの子の帰還先の追跡の準備をする。」

クロノはあえてそのことを確認してくるエイミィにため息をはいた。
こんなことを言わずともエイミィは理解している。
クロノはそれがわかっている。
それだけ彼女は優秀なオペレータだし信頼もしている。

「けどあのことを話さなくてよかったのかな。」

エイミィがなのはたちを見ながら呟いた。
フェイトの母親、プレシア・テスタロッサ親子に起きた事件とそのあらまし。
クロノ達は本局から問い合わせた情報から大体の事情は分かっていた。

「今は、なのはを迷わせたくない。この戦いが終わってからでいいだろう。」





「行くよ!!レイジングハート!!」

“Yes, Master. Shooting Mode”

なのはは空に飛び上がりフェイトに向かいレイジングハートを構え

“Divine Shooter”

そしてフェイトに向かい光弾が走る。

フェイトもバルディッシュを構え迎撃する。

「バルディッシュ!!」

“Yes, sir.Photon Lancer”

フェイトのバルディッシュからも光弾が発射されなのはの攻撃を相殺する。
ぶつかり合った光弾は爆発を起こしあたりの視界が悪くなる。

するとなのはが一気に距離を詰めレイジングハートを振り下ろす。

「やぁぁぁぁーーーー!!!」

「!?」

フェイトはバルディッシュでそれを受け止める。
予想以上に速い攻撃にフェイトはなのはに対する認識を変えていた。

(前までは魔力が強いだけの子だったのに…。)

攻撃を撃った後の反応も判断も以前とは比べ物にならないほどよくなっていた。
しかし接近戦ではフェイトに分があった。
つばぜり合いになっていたがフェイトがバルディッシュを引くとなのは前のめりに体制を崩す。

「あっ!?」

そのすきを逃さずにフェイトはバルディッシュでなのはの背中を叩きつける。
そのまま地面に叩きつけられるかと思ったが体を反転し

“Divine Buster”

砲撃を放ちフェイトに反撃をしてきた。
思わぬ反撃にフェイトは反応が遅れたためなのはの砲撃がわずかに肩をかすった。

「はぁ、はぁ、はぁ、やっぱりフェイトちゃんは強いね。」

なのはは笑いながらそう言った。
対するフェイトも

「あなたも強くなった。以前とは比べ物にならないほどに。」

フェイトはバルディッシュを強く握り直し

「でも、私は負けられないの!!!」

“Scythe Form”

バルディッシュを鎌状にしそれを構えながらなのはに接近する。

「!?ディバインシューター!!!」

なのはもフェイトに向かって光弾を打っていくがフェイトはそれを撃ち落としながら接近する。
そしてなのはは防御する以外に手はなく

“Round Shield”

なのはの張るシールドとフェイトのバルディッシュがぶつかる。

「くっぅぅぅぅーーー!!!!」

「やぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」


一進一退の状態だったがフェイトの背後に光弾が迫る。

「!?」

フェイトはそれに気づき片手を構えシールドを展開する。

その合間になのはは距離をとり砲撃をフェイトに打ち込む。

“Divine Buster”

フェイトも負けじと砲撃を撃ち返す。

“Thunder smasher”


二つの砲撃はぶつかり合い拮抗する。


そして相殺しあうと互いに様子を見あう。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」

「ふぅ、ふぅ……。」

以前なら息を切らすようなことにまでならなかったフェイトだが予想以上のなのはの強さに危機感を覚えていた。

「これ以上時間はかけられない。一気に決めさせてもらうよ。」

そう言ってバルディッシュを上に向けるとあたりが雷雲に包まれ雷が鳴り響く。
ただならぬ気配になのはも動こうとする。

「えっ!?」

「まずい!!」

なのはの動きを封じるように光の輪がなのはを捉えていた。

「バインドだ!!フェイトは本気だ。このままじゃまずいよ!!」

「くっ!!なのは!!!」

「ダメっ!!!」

助けに入ろうとするユーノたちを制するなのは。

「これは私とフェイトちゃんの真剣勝負。だから手出しはしないで!!!!」

「でも、これはホントにやばいんだよ。」

アルフが必死に訴えかけるがなのは首を振る。


フェイトは着々と呪文を唱え攻撃の準備をしていた。

「アルカス、クルタス、エイギアス、疾風なりし天神よ。今導きの元、撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

目を閉じ呪文を黙々と唱えるフェイトの姿はどこか神々しくありさながら祈る聖女のようだった。
その聖女の祈りに答えるように無数の光弾が生成されていく。
その数はゆうに30は超えているだろう。
そしてその光弾はフェイトの周りに集結した。

「フォトンランサー、ファランクスシフト」

 そして天に掲げた利き手の人差し指を立て、振り下ろし

「打ち砕け、ファイア!!!!!」



なのはに向かい無情な光弾の嵐が襲いかかった。











「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」

さすがのフェイトもかなりの負担がかかったようだ。
自身が使える攻撃手段でもっとも強力なものを行使したのだ。
フェイトはほぼ勝利を確信しなのはのほうに視線を向ける





だが

「な、なんとか耐えきったよ。」

「う、うそ!?」

フェイトは驚愕の表情を隠せなかった。
あれだけの攻撃を受けてまだ動けるなんて。

「今度はこっちの番だよ!!!」

“Divine Buster”

フェイトに向かい砲撃を放つ。
フェイトはバリアを張りそれを防ぐが先ほどより威力が増しているせいかおされぎみだ。

(あの子だって耐えたんだから私だって。それにここで負けたら…。)

気力を振り絞るようにバリアを張り続けた。
そして何とか耐えきったもののバリアジャケットのところどころがやぶけていた。

それでもフェイトは攻撃を仕掛けようと動くが

「なっ!?」

「なのはもバインドを?」

お返しとばかりに今度はなのはがバインドを使いフェイトを捉える。

「受けてみて、これがディバインバスターのバリエーション。」

なのはがレイジングハートうえに掲げると

“Starlight Breaker”

すさまじいまでの魔力がレイジングハートに収束していた。
おそらく受ければただでは済まないほどの

「これが私の全力全開!!」

(母さん、トレイン…。)

「スターライト……ブレイカァーーー!!!!」



桃色の巨大な砲撃が襲いかかった。







[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第15話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/15 23:47
なのはの砲撃を受けたフェイトは気を失っていた。
そしてそのまま糸が切れた人形のように海中に沈んでいった

「フェイトちゃん!!」

そのフェイトを追いかけるようになのはも海に向かって行った。

薄れゆく意識のなかフェイトはトレインのことを思い出していた。

(トレイン………。)

彼を助けるためにも負けられなかった。
だがあの子に負けてしまった。

(もう……だめなんだ。)









気がつくとフェイトはなのはに抱きかかえられていた。

「大丈夫?飛べる?」

なのはが心配そうにフェイトに問いかけるとフェイトは無言で頷いた。

「大丈夫……。」

その様子に安心したように安堵の表情を浮かべる。
そしてフェイトに告げた。

「私の…勝ちだよね?」

「うん……。」

そうフェイトがうなずくとバルディッシュからジュエルシードが吐き出された。
なのはがそれに手で触れようとした瞬間それは起こった。




以前フェイトを襲ったときと同じ、轟雷が辺りを包む。





「次元干渉魔法を確認!!」

「エイミィ、座標の確認!!!」

「もうやってるよ、クロノ君。」

慣れた手つきでパネルのキーボードを次々と打ちこんでいく。
スクリーン上ではジュエルシードが空間移動をしようとしているところだった。

「物質の空間移動は足がつきやすい。ずいぶんとあせっているみたいだな。」

「おっけぇー、座標を確認しました。」

「今すぐ座標を送ってくれ!!」



そしてリンディも矢次に指示を送る。

「武装局員は転送準備をして、目的はプレシア・テスタロッサの逮捕、および拉致されているトレイン君の確保よ。」

十数人にも及ぶ武装した隊員が一斉に転送された。




「ぐっ、カハァっ!!!」

プレシアは玉座に座りながら嗚咽をもらしていた。
そのしたには血が手からこぼれおちていた。

「これ以上次元干渉魔法は無理だわ。体が持たない。」

そう言って立ち上がりスクリーンに映るフェイトを見てつぶやく。

「もう時間がない。それに今のでここの場所もつかまれたわ。」

(フェイト、やはりあなたではダメみたいね。)

そして玉座の裏に隠された一室に入って行った。









一方のフェイト達はアースラの管制室にいた。
なのはたちをともない武装隊がプレシア・テスタロッサのもとに向かう様子がそこには写されていた。

「母親が逮捕される姿を見るのはつらいでしょう…。」

リンディは悲痛な面持ちフェイトを見る。
なのはもフェイトを慰めるようにそばを離れず手を握っていた。
フェイトは母のこともあるがトレインのことが気がかりだった。

アルフも気がかりだったし真実を告げようとしていたがなのはたちに止められていた。
今そのこと告げてしまえばフェイトがどうなってしまうかわからなかったからだ。





そして、武装局員たちはついにプレシア・テスタロッサのもとにたどりついていた。

「プレシア・テスタロッサ、時空管理法違反及び管理局巡航艦攻撃の容疑で逮捕する。」


プレシアはつまらなさそうに局員を見ながら玉座に腰かけていた。

「フッ。」

そして局員たちを嘲笑するように見ていた。
局員たちはプレシアの周りを取り囲んでいた。

ひとりの局員が何かを発見した。

「こっちに何かがあるぞ!!!」

「!?」

そのひとことににプレシアは反応した。

局員たちがそこに入ると奥に生体ポットらしきものがあった。
その様子はサーチャーからスクリーン越しにアースラに送られてそりフェイト達の眼にも映っていた。
そこに映し出されていたのはフェイトと瓜二つの少女がポットの中に浮かんでいる姿だった。

「え!?なんで?」

なのはは驚きながらフェイトのほうをみた。
そのフェイトも固まっていた。

局員たちがそれに近寄ろうとするとプレシアの怒号が飛びの一番近くにいた局員を吹き飛ばした。


「私のアリシアに…近寄らないで!!!!」


その瞬間プレシアの目つきが変わり武装隊員を睨みつける。
局員たちは隊列を組み、もっている杖を構え

「撃てぇーーーーー!!!」

いっせいに魔法を打ち込んだが見えないプレシアのバリアに防がれた。
そして

「うるさいわね…。」

杖を掲げたと思うと武装隊に紫雷が頭上から襲いかかった。

「あぶない!!防いで!!!」

リンディが叫ぶが間に合わない。

雷が止むとそこに立っているのはプレシアだけになっていた。

「急いで、局員の転送を!!!」

リンディがあわてて指示を出し悔しそうに唇をかむ。
仮にも相手は大魔導士と言われた女性。
いくら優秀武装局員といえど目の前の相手をするには荷が重すぎた。


プレシアはポット見ながらひとり呟いた。

「もう駄目ね、時間がないわ。10個にも満たないロストロギアではアルハザードに辿りつけるかどうかわからないけど…。」

そこで一息つきプレシアはスクリーン越しにこちらに話しかけるように言った。

「すべて終わらせるわ。アリシアを亡くしてからの暗鬱な時間も、アリシアの代わりに作った人形を娘扱いするのも。」

「えっ!?」

フェイトはその一言に目を見開いた。


「フェイト、見ているわね?」

「か、母さん?」

「艦長、サーチャーが乗っ取られました。」

こちらから映像のコントロールが利かなくなったようだ。
フェイトは助けを求めるようにそのスクリーンを見る。
しかし、それはかなわなかった。

「聞いていてフェイト?あなたのことよ?」

「!?」

フェイトは震えるように反応した。
プレシアは冷酷に告げる。


「せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない私の…お人形。」


エイミィは顔をうつむき加減にしながら口を開く。

「プレシアは最初の事件の時に娘の…アリシア・テスタロッサを亡くしているの。そして彼女が最後に行っていた研究が…使い魔とは違う、使い魔を超える人造生命の研究。」

「「「えっ!?」」」

「そして死者蘇生の秘術。フェイトっていう名前は当時彼女の研究につけられた開発コードなの。」




「よく調べたわね。そうよ、その通り。」

プレシアはポットを愛おしそうになでながら答えた。

「でも、ちっともうまくいかなかった。作り物の命は失ったものの代わりにはならないわ。」

そして憎たらしいといわんばかりの視線をスクリーンに送りながら言った。

「アリシアはもっと優しく笑ってくれた、アリシアはいつも私に優しかった、アリシアは…。」

「やめて…。」

なのはは震える声で呟く。
しかしプレシアの言葉が止まることはなかった。

「フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ。せっかくのアリシアの記憶もあなたじゃだめだった。」

「やめて、やめてよ!!」


「あなたは私がアリシアをよみがえらせる間、慰めるお人形…。」

「もうやめてっ!!!」

なのはが必死に叫ぶ。
フェイトは体を震わせながら、顔をうつむせながら聞いていた。

(私は…私は…。)

「フェイト最後にいいことを聞かせてあげるわ。私はあなたを作りだしてからこれまでずっとあなたのこと………大っ嫌いっだったのよ!!!」

フェイトは崩れ落ちるようにその場にうずくまった。
しかし、プレシアは思い出したように告げる。

「ああ、そう。あなたのお友達のトレイン君。彼を傷つけたのは管理局ではないわ、この私よ。」

「えっ!?」

フェイトは視線をあげその言葉を聞く。
信じられないような目をスクリーンに向ける。

「あなたを効率よく動かすための道具になってもらったわ。」

それを聞いたなのはが聞いた。

「トレイン君は?トレイン君はどうなったの?答えて!!!」

ふる絞るようになのはが叫ぶ。

「さあ、ろくな治療もしなかったから…たぶんベッドの上でのたれ死んでいるんじゃないかしら?」

「な、なんだって?」

アルフが怒りにふるえながら拳を握る。
隣にいるユーノも信じられないという表情でスクリーンを見ていたが体が震えていた。

プレシアはとどめを刺すようにフェイトに言った。

「フェイトあなたがうまくやらないから、あなたのせいであの子は死んだのよ。」

「!?」

そしてフェイトの瞳から光が消えていった。








「庭園内に魔力反応多数っ!!」

モニターに映し出されるレーダーを見てエイミィが叫んだ

「何だ、何が起こっているっ!?」

 食い入るようにモニターを見つめるクロノ。

、次々とモニターが映し出されていく中で庭園の各所から鎧をまとった騎士のようなロボット…傀儡兵が出現した。

「庭園敷地内に魔力反応、いずれもAクラス!」

「総数60…80…まだ増えています!」


「プレシア・テスタロッサいったい何をしようというの?」



「私たちの旅を邪魔しないで…。」

そう言うとプレシアはアリシアの入ったポットを切り離し空中に浮かべ玉座の間に歩いて行った。

「私たちは旅立つの。忘れられし都、アルハザードへ。」

そう告げると高らかな笑い声をあげた。

「まさか!?」

「すべてを取り戻すの、この力で…。」


ガンッ!!!!!

プレシアの言葉の途中で一発の銃声が響いた。

カンッ、カン

それは命中するはずだったがバリアによって阻まれた。
しかし、撃った人物はそんなことはわかりきっていた。




スクリーン越しに銃声を聞いていたなのはたち。

「今のって銃声…。」

ユーノがつぶやく

「あんなもの使ってるのって…。」

アルフも信じられないという感じで呟く。

「うん、そうだよ!!」






プレシアは信じられないものを見るような表情だった。
どう考えてもあれだけのダメージを負っていた人間がこの短時間で回復するはずがない。
しかし、目の前にいるのは幻でも目の錯覚でもない。
それは目の前に落ちている銃弾が証明していた。


「不吉を…届けに来たぜ。」


掃除屋時代の服を身にまとったトレインだった。






「か、彼はいったい?」

クロノが驚愕の表情でモニターを見ていた。
彼が生存していたことに驚いていたのではない。
驚くべきは彼の姿だった。

クロノが知っているトレインはおおよそ10歳前後の少年だったはず。
しかし、モニター上に写っている彼はどう見ても20は超えているであろう青年だった。

「なのはさん?これはどういうこと?」

リンディはなのはに問いかける。
ユーノが代わりに答えた。

「あれが彼の本当の姿なんです。詳しいことまではわかりませんけど。」









一方、対峙しているプレシアとトレインは

「ずいぶんと大きくなったのね?」

「ああ、あんたに借りを返すためにな。」

トレインはゆっくりと玉座に座るプレシアに近寄った。
そして辺りを見回すように視線を動かしプレシアに聞いた。

「この様子は管理局の連中は見てんのか?」

「そのようね、いまさらここを監視されようとも関係ないわ。」

「OK、リンディ聞いてたな?俺はこいつと掃除屋としてここでけりをつける!!一切の手出しはすんな!!!」

それと同時進行で念話がリンディたちに聞こえてきた。

(プレシアは次元震を起こしてアルハザードとかいうとこに向かうつもりらしい。俺がこの場で戦っていれば少なくとも時間稼ぎにはなるはずだ。)



「そんな無茶よ!!」

リンディは叫んだ。
それはそのはずだ、相手は大魔導士プレシア・テスタロッサ。
トレインもAAランクの実力を有しているかもしれないが最後に残っている資料から相手はそのさらに上をいく総合SS以上。
戦闘向きではないとはいえトレインとの魔力量の差は歴然としていた。
管理局のほんの一握りの人間しか彼女と一対一ではまともに戦えないだろう。

リンディがトレインを思いとどまらせようとしたときにエイミィが報告する。

「か、艦長。」

「どうしたのエイミィ?」

「トレイン君のデータが…。」


エイミィは少年の時の姿のトレインの戦闘データを現在のトレインの体に認証させ暫定的な戦闘データを算出していた。
モニター上に現れた結果は

(陸戦S+)

陸戦という限定つきながらの数字だがなのはたちより絶対数が少ないオーバーSランクの領域に彼は魔法なしで踏み込んでいた。
この結果にはクロノも驚くしかなかった。
魔法は魔力量だけではない。
自身がエイミィにいったことを目の前の彼は体現していた。
嫉妬心すら浮かぶほどクロノがあこがれた強さをトレインは持っていた。

「うだうだ言ってる暇があったらとっとと対策でもねっとけ!!」
(なのは、ユーノ。お前らには心配掛けたな。だがこれで終わりにしてやるから安心しな。)

「「!?」」

なのはとユーノははっとモニター上に映るトレインを見た。

「トレイン君…。お願い、絶対に負けないで。」

「トレイン、僕となのはは君が勝つと信じてるよ。準備ができ次第、僕らもそっちに向かう。」

二人はうなずき合って走り出そうとしたが

「待てっ!!」

クロノの一言が二人を止める。
クロノはモニターに視線を向け行った。

「僕ら管理局は君に従う義務はない。手出し無用という君の意志は僕らには関係ない。」

「なっ、クロノ!?」

ユーノが食ってかかろうとするがクロノが手で制する。

「ただし、僕らがその場に到着するまでの裁量は君に任す。それでいいな?」


トレインはその言葉を聞いて笑った。

「OKだ。お前にしちゃずいぶんと甘い話だ。」

クロノとしてもこれがトレインにしてやれる最大の譲歩だった。

「あと執務官殿、一応俺は掃除屋だ。報酬のほうも頼んだぜ?」

「「へ!?」」

この状況で何を言い出すのかとなのはとユーノは呆気にとられたが

「無事事件が解決したら本局に掛け合ってみるよ。」

「頼んだぜ~。」

そしてクロノは転送装置のほうに走り出した。

「ま、待ってクロノ君。」

それを追いかけるようになのはたちもクロノについていった。



その場にうずくまるフェイトにトレインは念話越しに話しかけた。

(フェイト…お前のことは聞かせてもらった。信じてたものに裏切られたんだ、ショックだとは思うぜ。)

トレインの言葉はフェイトには届いていたが目はうつろなままだった。
そんなことはお構いなしにトレインは続ける。

(だけどよ、お前の価値はプレシアに認められなかっただけでなくなっちまうようなもんか?
 ちげぇ、お前をアリシアじゃなくてフェイトとして認めてるやつはいるだろ? 
 少なくともアルフやなのははフェイトであるお前が好きになったんだ。アリシアじゃなくてな。
 それになプレシアに否定されたからと言ってお前までそれを否定する必要はない、しつこいくらいに貫き通すんだ。)

フェイトの眼から徐々に光が戻って行った。

「トレイン…。」

(俺はひたすらまっすぐで純粋なお前は嫌いじゃなかったぜ。俺から言えるのはここまでだ。)

そう言って念話を切り上げたトレイン。
フェイトは立ち上がり手にある砕けたバルディッシュを見ていた。

「フェイト…。」

アルフが心配そうに肩を抱いた。
フェイトは目を閉じ決意したようにバルディッシュを握った。

するとバルディッシュは輝き復元し始めた。

「アルフ、行こう母さんの元に、トレインの所に。」

「フェイト?…うん!!!」










リンディたちはフェイト達を止めることはせずそのまま見送った。
するとエイミィがつぶやいた。

「艦長、トレイン君って魔法が使えませんでしたよね?」

「そうだけど?どうかしたの?」

「普通に念話使ってませんでした?」












「もういいかしら?」

「ああ、待たせちまったな。」

プレシアも玉座から降り杖を構えた。
トレインがプレシアのことを認めているようにプレシアも目の前のトレインのことを決してなめてはいなかった。
少年の姿の時から感じていたプレッシャーはさらに大きくなり、自信に満ちた目は変わることなく輝いていた。


「戦う前にあんたに会いたい奴がいるんだが?」

「私に?」

トレインは頷いた。

「あんたのことを詳しく教えてくれた。あんたもよ~く知っている奴だぜ?」

そうトレインが言うと二人の間に一人の女性が現れた。

「あなたは…」

「久しぶりですね、プレシア。」

そこにあらわれたのはプレシアのかつての使い魔であったリニスだった。
プレシアはすこし驚いていたがすぐさまいつもの視線に変わりリニスを見た。

「なぜ?契約を終え、消滅したあなたがここにいるのかしら?」

「確かに私は役目を消滅しました。けど、ひとつだけ…フェイトへの心残りでわずかな魔力と魂だけは残っていたの。」

プレシアは興味なさげにリニスを見る。
その視線はおもしろくないものを見るようであった。

「それで?私に文句でもいいに来たのかしら?あなたは使い魔のくせによく私に文句を言っていたわよね、あの人形に優しくしろとか。」

リニスは冷静にプレシアに言い返す。

「いいえ、あなたを止めに来ました。」

「止めに?」

「あなたがアリシアを思う気持ちはわかります。けどあなたはやり方を間違えた。」

毅然と言い切るリニスにプレシアは

「黙りなさい。私を止めるですって?以前のあなたならいざ知らず今のあなたは以前より弱くなっているじゃない。」

「確かに、私は以前より弱くなっているかもしれません。けど私はサヤさんとここにいるトレインさん…いえ、マスターの力で生まれ変わったんです。」

「そこの坊やの使い魔に?確かに魔力はそこそこあるみたいだけど私と比較したらずいぶんと脆弱なものには変わりはないわ。」

リニスは首を振り言った。

「私はあくまでマスターの手伝いをするだけです。それに私は使い魔として生まれ変わったわけではありません。」

「なんですって?」



そう言ってトレインのそばによる。

「ありがとうございます。私のわがままを聞いていただいて。」

「正直、あんま気は進まないんだけどよ。」

「そう言っていながら私のお願いを聞いていただけるマスターが私は好きですよ?」

トレインは頭をかきながら照れくさそうに

「あと、マスターはやめろ。はずい。」

「わかりました。マスター。」

笑顔でそういうリニスにトレインはあきらめ顔でうなだれた。
そしてハーディスを抜き構えた。

「ぶっつけ本番でいくか!!」

「はい!!」



「セットアップ!!!」

そうトレインが言うとトレインの体は光に包まれ始めた





あまりの光に目を隠していたプレシア。

目が慣れ、トレインたちに視線を向けるとそこに立っていたの先ほどまでのトレインではなかった。
象徴的だった彼の金色の瞳はそのままに、もともと黒交じりの髪は一部にリニスの色が混じったものに変わっていた。
そして黒猫時代の黒一色のロングコートには白と焦げ茶色のラインが入っていた。

「バリアジャケットを生成した?いえ、それだけではないわね……まさか?」

「その通りだぜ、俺はいまいちわからんがユニゾンとかいうやつらしいな。リニスがそう言ってるぜ?」


「融合機…ユニゾンデバイス。」















[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第16話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/16 12:19
「ユニゾンデバイス……なるほど考えたわね。」

プレシアは感心するようにトレインを見据えた。
しかし、プレシアにとってトレインがリニスとユニゾンしようがあまり脅威には感じていない様子だった。

「それにしても私に不吉を届けるなんてね。わたしとしてはそんなものはごめんなのだけれど?」

「フッ、ワリーが黒猫の届ける不吉は受け取り拒否はできねーんだわ。」



軽口を言うトレインたちも不安要素がいくつかあった。
まず、先ほど言ったようにユニゾンするのは本当にぶっつけ本番なのである。
幸いトレインとリニスは適正が高いようで無事ユニゾンできたが不測の事態も考えられる。
また、デバイスとしての設定が不十分で防御、身体能力強化に重きを置いたためなのはたちのような魔力媒介とした攻撃手段がないということだ。

(マスター、状況が厳しいのは変わりません。慎重に。)

リニスはトレインに呼びかけるがトレインはあくまで平然と言う。

「心配すんな、あいつよりイカレタやろーとやったこともある。それにお前がフォローしてくれんだろ?相棒。」

そしてトレインが地面を蹴り戦闘ははじまった。






「信じられないわ、まさか融合機。ユニゾンデバイスを使うなんて…。」

一連の会話から細かい経緯はともかくとし、トレインがユニゾンデバイスを手に入れたことはわかったが見事にユニゾンを成功させたトレインに驚いていた。
ユニゾンは高い適正を持てば強力な力を得る反面、デバイスに飲み込まれてしまうという事態も考えられる。
しかし、トレインは自身の姿をほとんど保ったまま強力な力を得た。
以前は生成できなかったバリアジャケットをまとい不安材料であった防御面での不安はなくなった。
うまくいけばクロノたちの増援が来るまで持ちこたえられるかもしれないと思っていた。



しかし、リンディのこの考えは予想外の形で修正せざるを得なかった。
リンディはモニター上での戦いをエイミィに解析させていた。













ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

移動を開始してトレインはプレシアに向かい六連早撃ちをした。
しかし、普通であれば同じ地点からの射撃だが移動速度がアップしたせいか六発すべての銃弾が違う角度から打ち出された。

(速度が大幅に上がっている?)

プレシアはトレインの身体能力の向上に若干の驚きを隠せなかった。
少年の姿と違い自身の本来の体で本来の動きをとれるトレインは体が意識に十分に反応で来ていた。
それに加えリニスとのユニゾンによる身体能力の向上である。
すでに生身の状態で超人的であった動きにさらに拍車がかかった。

しかしプレシアはあいかわらず余裕であった。
トレインの攻撃が相変わらず銃弾。
ただの質量兵器であるからである。
いくら反応が速かろうと戦闘開始時からバリアを張っていればただの銃弾などプレシアにとっておもちゃ同然だった。

実際トレインが撃った銃弾はすべてはじかれていた。

「無駄よ、そのおもちゃで攻撃するだけ無駄ってことはあなたもわかっているでしょう?」

プレシアはそう言うと魔力を込めた光弾を浮かび上がらせトレインに向かい放った。
その数は20近くでほぼ回避は不可能に見えたが

「やらせるか!!!!」

ハーディスを高速で振りぬき続け光弾をすべてはじいた。

四散した光弾は壁や天井に当たり大きく庭園内を揺らした。




「なるほどね。大口の叩くだけはあるかもしれないわね。」

「別に大口じゃないぜ俺は自分でできないないことは口にしないたちだぜ?」

「あら?魔力による攻撃ができないあなたじゃまず私のバリアを破ることさえできないわよ?大方デバイスとして調整が不十分、攻撃能力にまで手が回らなかったみたいねリニス。」

プレシアはトレインたちの不安要素を捉えていた。

「まあ、あの電磁銃なら話は別かもしれないけど。」

プレシアは以前フェイトの見舞いに来ていたトレインの会話を聞いて電磁銃の特性を理解していた。
また、本来の姿になるだけでかなりの体力を消費するため電磁銃を撃つことはかなり厳しいことも分かっていた。

しかし、プレシアはトレインたちを見誤っていた。

トレインは不敵に笑い、言った。

「確かに電磁銃を一発撃つだけでも体力をかなり持ってかれちまう。この体だって維持するだけでもかなりしんどいからな…。」

自身の不安要素を口にしているがその表情はまったく悲観していない。
むしろ自信に満ちていた。

「だが、あんたは俺たちをなめすぎだぜ。」

トレインはリロードをすると再びハーディスをプレシアに構える。
そしてその瞬間トレインの体が一気に放電したかのように光る。


ドォンッ!!!ドォンッ!!!ドォンッ!!!

先ほどのように撃った銃弾はすべて光弾、電磁銃となりプレシアに向かっていった。
そしてそのすべてがプレシアの張るバリアを貫通しその体をかすめていった。

「なっ!?」

さすがのプレシアも驚愕の表情を隠せなかった。
自身のバリアを破ったのもあるが、一発しか撃てないはずの電磁銃をあろうことか早撃ちで撃ってきたのだ。











玉座に向かう途中トレインとリニスは自身の能力について話し合っていた。
ユニゾンすることになって能力の向上が見込めるがでデバイスとしての設定を行っていないため攻撃にまで手が回らないことについて話していた時。

「ではトレインさんはその銃以外での攻撃はできないのですね?」

「ああ、一応腕ぷっしもそれなりあるつもりだけどあいつにゃ意味がなさそうだしな。」

リニスはひとつ聞いた。

「では電磁銃はどうなんでしょう?聞いたところではプレシアにも通用するみたいですけど?」

トレインはそれを聞くと難色を示した。

「あ~、そいつはもう使えねーな。一発撃つだけで体力をかなり使う上に今この姿になってるもんだから体力的に余裕がねーわ。」

「細胞放電化現象…でしたね?それとそのハーディスがあって成立するものですね。ようは放電の時に体力を使わなければいいのでしょう?」

「そうだけどよ。なんか考えがあんのか?」

「はい。」










「魔力変換資質リニスにはあるらしくてな。俺の魔力を電気エネルギーに変換することで体力を使わずに電磁銃が打てるようになったわけだ。おかげで連射も利くようになったしな。」

細胞放電化現象よりはるかに高い効率性で大きな電気エネルギーを得ることができるようになった。
それにより一発の威力をより高めることや、一発一発の威力を落とすことで多少弾速が遅くなるが連射が利くようになったのだ。

(若干反動のほうもきついがな。)


プレシアからすればかなり脅威になるものだった。
以前は身体能力は高いが強力な攻撃はひとつだけの相手でしかなかったがもう違う。
目の前は自身の最大の障害と認識した。
















一方この戦いをモニター越しで見ていたアースラ。

オペレータもこの戦いに見とれて鼻息を荒くしていた。

「か、艦長。このまま彼が勝ってしまうのでは?」

しかしリンディはプレシアがこれで終わるとは思っていなかった。
そこにエイミィからの戦闘の解析結果伝わってきた。

「艦長、二人の解析データ出ました。」

モニター上に映し出された結果はアースラ全員が固まってしまうものだった。

「プレシア・テスタロッサ:総合SS トレイン・ハートネット………。」

「なんですって………陸戦SS+…。」











トレインはプレシアの雰囲気が変わったことは分かった。
ここまでのプレシアはどこかこちらをなめていたようだった。
しかしこちらが以前とは違うことを認識し、本気モードになったようだ。


「ごめんなさい、あなたたちのことを正直見くびっていたわ。」

プレシアは頭をさげトレインに謝罪をした。
目の前の相手に対して過小評価をしてしまったことは事実で大魔導士としてのプライドを持つ彼女としてそのことは許せなかった。
そのかわりではないが自身の全力をもって目の前の相手と戦うことに決めた。


「黒猫さん……あなたを私の最大の障害として認識するわ。」

魔力の感知に対しては当初から才覚をみせていたトレインにはわかった。
先ほどとは比べ物にならないほどの魔力がプレシアのなかで練りこまれていることを


(来ます!!)

リニスの声と同時にプレシアの周りから光弾が先ほどとは比べ物にならないほどの数が浮かび上がった。

「おいおい、こりゃ二桁ですむのか?」

「いくわよ…。」

プレシアが指を振り下ろすと一斉に光弾が一斉に襲い掛かってきた。
しかし、それらすべてが襲いかかって来るのではなく回避したトレインの次の行動を抑えるように一つ一つが意思を持っているかのような動きだった。

「ちっ!!厄介な攻撃だなおい!!」

次々と襲いかかる光弾だったがトレインは巧みにかわしていく。
そして攻撃が少しの間緩やかになったところを逃さず反撃に出る。

「喰らえ!!!!」

ドォンッ!!!

プレシアの肩口に狙いを定めレールガンを撃つ。
一発の精度と威力に絞って撃ち、回避も防御もできないであろうタイミングで撃った。

しかし

「やぁぁぁぁーーー!!!」

プレシアはそれを手ではじいたのであった。

「なっ!?」

それを見たトレインはあっけにとられ一瞬動きが止まってしまった。

(マスター!!!横です!!!)

ふと横を見た時にはプレシアが直接放った一発の光弾が迫っていた。

(やべぇ!!)

ドゥオォォォォン!!!!!!

一発の光弾がトレインに命中し大きな爆音が響いた。











一方のなのはたちは数で攻めてくる傀儡兵に苦戦していた。

「くそっ!!!こいつらどんどん湧いて出てくる。」

あまりの数にユーノが珍しく悪態をつく。

「泣き言はあとだ、こいつらをどうにかしないと前には進めない。」

「そうだよ、頑張ろう。」


そして庭園全体が揺れるような爆音が響く。


「な、なにいまの?」

なのはが辺りを見回すがそれをクロノが一括する

「なのは!!目の前の戦いに集中しろ!!僕らにできるのこいつらを早く片付けてプレシアのもとに行くことだ。」























光弾によりあたりの視界が砂塵で悪くなりトレインの様子は確認できない。
プレシアは自身の放った光弾がトレインに命中したことは確信していたが油断なくトレインがいた方向を見つめていた。

(間違いなく命中した。並みの魔導師なら動けないはず。そう、並みならばね。)

砂塵が落ちつき視界が晴れてくるとそこにはトレインが立っていた。

「なかなかいてぇじゃねえか。」

ダメージは多少あるものの戦闘ができなくなるほどではなかった。
プレシアとしてもこの程度でやられる相手ではないことは分かっていた。

「まさか電磁銃まではじかれると思わなかったぜ。」

電磁銃をはじいた時プレシアはとっさにトレインの銃口からおおよその狙いを絞りバリアを手の周りに集中させたのだ。
いかに強力な電磁銃であっても防御を一点にに集中させたプレシアのバリアは貫けなかった。
トレインの言葉に対しプレシアも微笑しながら

「そう言いながら普通に立っているあなたにも驚かされるわ。どうやら攻撃を犠牲にしてでも防御面に力を入れた様ねリニス。」

そして杖をトレインに向けてプレシアは告げる。

「でもそれじゃジリ損でいつか必ずやられるわよ?動けるといっても軽いダメージではなさそうだしね。」

「へっ!!決めつけるんじゃねえよ。まだまだこれからだぜ?」


あくまで強気の姿勢を崩さないトレイン。
プレシアもそれが虚勢ではなく確信をもった発言ということは理解していた。

「そう、なら証明して見せなさい!!!」

そしてまたもや数えるのが嫌になるくらいの光弾が浮かび上がった。

「リニス、アレを使うぞ!!」

(ですがあれは…。)


リニスと言いあっているうちに光弾がトレインに迫っていた。

「大丈夫だ!!俺は自分を疑ったことはねえ、だからお前も俺を信じろ!!!」

(!?わかりました。)

するとトレインの体が電気を帯びたように発光した。
そして光弾が着弾したところにはトレインの影も形もなくなっていた。

(消えた?)

プレシアはあたりを見回すがトレインの姿は見えない。
だがたしかに魔力の反応、気配感じる。

ドォンッ!!

するとなにもないはずの所から光弾がプレシアに襲いかかった。

「なっ!?」

突然の攻撃にプレシアは反応が遅れ光弾はプレシアの肩をかすめるように当たった。」

「くっ!?」

そこの傷を抑えるように手をあて、光弾を消すとトレインの姿が突然現れた。


「ふーーっ、さすがのあんたもこいつのスピードは目で追い切れないみてーだな。」

「いったい何をしたの?回避魔法でもなかったわ。」

「なーに、電気マッサージで足を早くしただけだぜ?」

「電気マッサージ?」


トレインはリニスが発する電気を体に流すことで筋肉、末梢神経を刺激し通常では考えられない高速移動をしていたのだ。
これは以前高町家で行った稽古で恭也が見せた神速がヒントとなっていた。
しかしトレインが使った移動法は神速とは違い連続使用、もしくは継続することを前提としている。

(一回目でこれだけ使いこなしているなんて…それに負担がかかるはずなのにそこまで肉体にダメージが見られない。)

リニスはトレインの強さに正直驚かされ続けていた。
今の動きも実際かなりの負担を強いるのだがもともと強靭な肉体だったトレインの体はバリアジャケットや魔力による強化でリニスの想像を上回るほどになっていた。
またあの超人的な速度で正確な動きをするには動体視力もかなりのレベルでないといけないにもかかわらず彼は難なく使いこなした。





もはや、プレシアとしては余裕がなくなってきた。
自身も総合SSランクであったことは自負としてあり、並み大抵の一流と呼ばれる魔導師相手には不覚を取る気はなかった。
しかし、今いる相手はおそらく並み大抵の部類には入らない、戦闘の天才であろう。


アースラで見ているリンディもプレシアに近いことを考えていた。
確かにプレシアは総合SSランクという管理局でも屈指の魔導師であったはずだ。
しかし、相対する彼もSSランクを超える陸戦SS+ランク。

魔力量、魔力の運用など魔法使用技能に関してはプレシアが圧倒的に上回っているだろう。
しかし彼は身体能力など戦闘に必要な能力の大部分がプレシアを勝っていた。
プレシアに劣る魔力分を考えても勝るとも劣らないとも言える戦力だった。
さらにプレシアは本来戦うことを目的として魔導師になったわけではない。
総合ランクというのはあくまで魔力の運用をや技術などをトータルで考えられたランクであり純粋な強さを示すわけではない。
一方のトレインは陸戦という限定ながら戦いにおける技術、強さのみでSS+というランクをたたきだしたのだ。


「もしかすると本当にこのまま…。」

















(あの高速移動は厄介ね。私の眼ではおいきれない上にすべての攻撃を回避される。)

プレシアの持っていたアドバンテージをすべて奪い去りかねないほどトレインのスピードは速かった。
しかもこの限られた空間内ではトレインの動きは特に威力を発揮していた。

「どーよ、俺の知り合いの使ってる技をヒントに使ってみたが結構使えるだろ?名前はまだ決まってねーがそのうちにな。」

(恭也たちは神速とか言ってたがんな大それた名前は付けれねぇな。)

トレインのほうはある程度余裕を取り戻し、ハーディスを構えた。

「一応聞くけどよ、引く気はねーのか?」

「何をいまさら、私は失った過去を取り戻すためにアルハザードへ向かう!!!どんな犠牲を払おうともね。」

プレシアは叫ぶように言った。
トレインはその狂気に駆り立てられている姿に自身のかつての姿を見た気がした。

「確かにあんたの境遇は同情的な気分にはなる。だけどよ、あんたがあんたである限り過去を切り捨てるなんてことはできないぜ?」

「黙りなさい!!大切なものを失なったことのない坊やにとやかく言われる筋合いはないわ!!!!」

目をぎらつかせトレインを睨みつける。
そんなプレシアに

「わかるぜ……。俺もあんたと似たような時期があったからな。」



プレシアはトレインの瞳を見続け、ふと視線をそらし言った。

「ごたくはもう十分だわ。私を止めたければ私を倒しなさい。それが唯一の手段よ。」

そう言い切ったプレシアにトレインはハーディスを握り直す。

「それしかない見てーだな。だが俺はあんたを倒すんじゃない、あんたを救ってやるんだ。」

「!?」

わずかにプレシアの瞳が揺れる。

「過去っていう見えない化け物に取りつかれているあんたをな。」

「いってくれるわね…ならやってみなさい。私は私の道をいかせてもらうわ。」


そしてトレインが動き出そうとした瞬間。

「なっ!?」

「えっ!?」


トレインは掃除屋時代の服装に戻り隣にはリニスがいた。

「ど、どうなってんだ?」

「わかりませんけど……ユニゾンが解けてしまったようです。」

「おいおい、この状況でかよ?」














[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第17話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/18 02:51
突然トレインとリニスのユニゾンが解けてしまった。
呆気にとられるトレインとリニス。
その様子を冷やかな視線で見ていたプレシアがトレインたちに言った。

「どうやらろくに調整もしないでユニゾンしたのがここにきて表れたみたいね。」

そう、トレインたちは打ち合わせをしていたもののぶっつけ本番でユニゾンしたのであった。
適正が高かったため能力の向上などうまく行ったいたのだがユニゾンを持続させることができなかった。

「調整さえしていれば問題はなかったのですけど…。」

リニスが悔しそうに呟く。

「んなこと言ってもしょうがねーよ。今はこの状況をどうするかの方が問題だろ。」

トレインの言うとおり状況としてはあまり分がよくなかった。
幸いトレインの姿までは元に戻っておらず成人の体のままだ。
しかし、バリアジャケットがなくなったことで防御面に大きな不安が残り、効果的な攻撃手段も自分で撃てる電磁銃一発くらいになってしまった。

(通常弾じゃまずダメージはない、特殊弾にしてもあのバリアを破壊できるようなもんじゃねえ。)

いろいろと思考を重ねるが有効な対策が浮かばない。
リニスも同様のようで難しい厳しい表情をしている。





モニター上で見ていたリンディたちもこの状況はかなりまずいと判断していた。
先ほどまではほぼ互角、もしくは有利と言っていい状況だったがユニゾンが解けてしまった今は逆転してしまった。

「エイミィ、二人の転送の準備をしておいて頂戴。」

「了解!!」





「どうやら終りの時間みたいね。あなたはよく戦ったわ、私が今まで会った魔導師の中でもあなたは特に強かったわ。」

プレシアはトレインに敬意を評するように言った。
実際プレシアもトレインのことは認めていた。
ここまで自分を追い詰めた人間は過去にもいなかった。

「ここまで戦ったあなたに敬意を評して見逃してあげてもいいわ。あなたほどの人間を消してしまうのは忍びなものね。」

そう告げるプレシアだったがトレインは吐き捨てるように言う。

「だから決めつけるんじゃねえ。俺はまだ戦えるんだぜ?」

プレシアを見据えトレインは言い切る。
実際戦闘には支障はない。
だが勝ち目は限りなく少ないだろう。

「そう、残念ね。」

そう呟くとプレシアは手から光弾を複数浮かばせ

「さよなら。」

トレインに放った。
それは数こそ少ないもののスピードはさっきのものとは比べ物にならなかった。

(やべぇ!?)

とっさにハーディスで防御しようとするものの間に合わないのは明白だった。
しかし着弾の瞬間、トレインの前に立つ人物がいた。

「リニス!?」

「マスターは私が守ります!!!」

必死にバリアを張りトレインの前に立ちはだかるリニスだったが防ぎきれずあたり爆音が鳴り響いた。







「く、くそ。……リニス!?」

爆発の後なんとか立ち上がったトレインはリニスを探すようにあたりを見回すとそばに横たわっているリニスがいた。
急いで駆け寄り声をかける。
プレシアは攻撃を加えるようなことはせずそれを見ているだけだった。

「リニス!!しっかりしろ?」

バリアで防御していたもののプレシアの攻撃を完全にふさぎきることはできなかったようで身につけていた衣服がところどころ焦げ付き破れていた。

「あ、ああマスター…。」

意識はあるようだがはっきりとしない意識のなかでリニスはトレインに呼びかけた。

「マスター…。」

「いい、無理にしゃべろうとするな!!!」

トレインはリニスを抱き抱えながら声をかける。
リニスはトレインに笑いかけながら言った。

「やはりあなたは私にとっても最高のマスターです。デバイスである私をここまで気をつかって頂けるなんて…。」

「馬鹿野郎!!!そんなことは関係ねえだろ、なんで俺をかばったんだ!!」

「あなたが…私のマスターだからですよ。いえ、そんなことは関係ありませんね…目の前で危険にさらされている人を放っておけないですよ。」

リニスは力なく笑った。

「ごめんなさい、あなたのことはユニゾンしていてよくわかりました。決して折れることのない信念、不器用な人を思いやる心、そしてサヤさんとの過去。」

「!?」

「勝手にあなたの中をみてしまったことは謝ります。後でいくらでも責めてください。ですが…。」

リニスはトレインの手を握りしめ

「私のわがまま……本当は逃げてくださいと言いたいですがあなたはそうはできないでしょう?ですからお願いします、プレシアを止めてください。」

「リニス…。」

「私の……マスター。」


リニスはそこで意識を失った。
トレインは来ている上着を脱ぎリニスに掛けた。
そしてリニスにつぶやく。

「わかったぜ。お前のわがままを聞いてやるよ。けどな俺はマスターって柄じゃねえしお前もデバイスなんてもんじゃねえ。」

ゆっくりと歩き部屋の隅にリニスを運び寝かせる

「俺とお前は……相棒だ。」

ハーディスのシリンダーに銃弾をリロードし構える。
そして姿の見えないリンディたちに言った。

「リンディ!!こいつをそっちに転送してやってくれ。」


「わかったわ。あなたもいったん引きなさい、その状態じゃ勝ち目はないわ。」

リンディはトレインに撤退をするよう言うがトレインは首を振る。

「俺はこいつとの約束がある。それにクロノが来るまでの間の裁量は俺に任されるているはずだ。」

「でも!!!!」

「悪いが引けねぇ。だがもしここであんたら俺をそっちに転送しようものなら俺は一生あんたらを恨む。」

トレインはそう言い切った。
その覚悟にリンディは何も言えなくなっていた。

「艦長、どうしますか?」

エイミィがリンディに問いただす。
リンディは顔をうつむかせながら呟く。

「……リニスさんだけこちらに転送を…。」

「は、はい!!!」



リニスの下に魔法陣が現れ光とともに消えていった。




「短い時間でずいぶんと良い関係を築けていたみたいね。私に対しては文句ばかり言っていたのに…。」

そういうプレシアにトレインは言った。

「それは狂ったあんただからだろう?あいつは基本的には忠実なやつだと思うぜ?」

「主人が狂っていようと付いてくるのが使い魔よ。」

トレインはもううんざりという感じで踏み出した。

「そんなもんは知らねえな、あいつはもう使い魔じゃねえしな。」

そう言ってトレインは駆けだした。
それに対してプレシアは水晶のようなスフィアを4つ出現させトレインに向かわせる。
そしてそれらがばらばらに動き出しそれぞれがレーザーのような光線を打ち出した。

「ちっ!!」

それをうまくかわしていくがスフィアはそれぞれが連携を取るように動き攻撃を加えトレインを追い詰める。

「うまく避けるじゃない。けどそれの多角攻撃にいつまで対応できるかしら?」

ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!

トレインは反撃にスフィアに銃弾を撃ち込むが破壊まではできない。

「無駄よ、私のバリアほどじゃなくとも銃弾を防ぐだけの防御力は持っているわ。」


「ならこいつでどーよ!!!」

ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!

三つのスフィアにトレインは一発ずつ銃弾を撃ち込む。
そして着弾とともにスフィアが凍りついた。

「なに!?」

「冷凍弾だ!!」

そして残った一つのスフィアの攻撃を回避しながら銃弾をリロードし凍ったスフィアに照準を合わせ撃ちこむ。

ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!

それぞれ二発ずつ撃ちこむとスフィアは砕け散った。
そしてまたリロード行い今度は残ったスフィアに撃ちこむ。

ガンッ!!!

見事スフィアの先端にあたり

ドゥオンッ!!!!!

そして着弾とともに今度は爆発が起こった。
そしてスフィアにひびが入るとたたみかけかけるように続けて撃ちこむ。

ガンッ!!!ガンッ!!

最後のスフィアも砕け散った。

(コイツで特殊弾も打ち止めか…。)

最後に放った炸裂弾でトレインの持っていた特殊弾はすべて使い切ってしまった。

プレシアはまたしても光弾をトレインにめがけ打ち出した。
もはやトレインは防戦一方で回避する以外の行動がとれなくなっていた。
次々に襲いかかってくる光弾に追い詰められ完全に回避できなかった一発の光弾の爆風に巻き込まれ壁に叩きつけられる。

「もういい加減あきらめたらどうかしら?」

プレシアは油断なく杖を構えトレインに告げる。
トレインはすでに衣服はボロボロ。
ダメージもかなりのものとなっておりあちらこちらで裂傷ができていた。

「まだだ。このまま引くわけにはいかねえんだよ。」

ふらつきながらトレインは立ち上がった。
息遣いも荒くなっており体力的にも余裕がなくなっていた。

「どうしてそこまでして戦うのかしら?私には理解できないわ。」

「ああ、あんたにはわかんねえだろうな。」

プッ!!

血混じりのつばを地面に吐きトレインは言った

「あんたは娘のアリシアのためとか言ってるがそいつは詭弁だ。」

「……なんですって?」

「あんたの娘はそんなことを望んでないはずだ。」

「あなたにアリシアの何がわかるって言うの?」

「あんたは過去から逃げてるだけだ。起こった現実を認めず過去の思い出にすがって今を生きていない。」

「………。」

プレシアの表情が歪む。
トレインを視線で殺さんばかりに睨みつけていた。

「あんたをここまで駆り立てているのがアリシアへの思いというのはわかった。だがそいつは支えなんかじゃない……単なる鎖だ。」

「黙りなさい…。」

「あんたはそれに……。」

「だまれぇぇぇーーーーー!!!!!」

プレシアは叫び声と同時に光弾をトレインに打ち込んだ。
トレインはそれを回避しプレシアとの距離をとった。


しかしプレシアは次の攻撃に入っていた。
プレシアの前には魔法陣ができあがりすでに構えに入っていた。

「くらいなさい!!!!」

なのはやフェイトよりも大きな砲撃がトレインめがけて襲いかかってきた。

ドゥオォォォォォォォン!!!!

地面をえぐるような跡を残しその砲撃は放たれた。
あたりは砂煙で視界が悪くなっていた。

(手ごたえはあった…。)

プレシアは手ごたえはあったと感じていたが

しかし煙に乗じて横からトレインが現れた。
右肩にはやけどのような跡が残っていた。

(かすっただけ!?)

不意を疲れたプレシアだったがバリアを張り攻撃に備える。
一方のトレインはプレシアにできた一瞬の隙を逃さず攻撃に転じる。

(通常弾じゃ効果はない。レールガンも打ち止めだ、ならこいつしかねえだろ。)

地面を強く蹴りプレシアに接近しハーディスを振るう。

「黒爪ッ!!!!!!!!」

ギィンッ!!!!!

ハーディスによる高速の三連打撃がプレシアのバリアとぶつかり合う。

「自棄になったの?そんな攻撃…。」
そうプレシアが言おうとした瞬間

ピキッ!!

黒爪の打撃が当たった箇所のバリアにほころびが出ていた。

「ま、まさか!?」

単なる銃のによる打撃がここまでの攻撃力を誇るとはプレシアも思っていなかった。

そんなプレシアを尻目にトレインは天井に跳躍しプレシアの頭上に躍り出ていた。

「すべてを断ち切るっ!!!!!」

そして反転し天井を蹴り勢いよくプレシアに向かいもう一度ハーディスを振るう。

「黒十字!!!」

ズンッ!!!!!!!!!!!!












「ここは僕が引き受ける。君たちは早くプレシアの元に急ぐんだ!!!」

クロノが砲撃を放ちながらなのはたちに言う。

「無茶だよ!!こんな数相手じゃいくらクロノ君でも。」

なのはの言葉ももっともだった。
ここまで進む間になのはとクロノ、ユーノによってかなり数を減らしたといえどクロノ一人で相手をするには厳しい状況だった。

「なのはの言う通りだ。君を置いて先に進むことなんかできない。」


ユーノもなのはに賛同してクロノに反対する。

「僕たちの目的は君たちも分かっているだろ?ジュエルシードを、プレシアテスタロッサを止めることが僕らの目的だ。もし手遅れになったらどうするんだ?」

「トレイン君が…。」

「彼も絶対ではない。不測事態を考えた時、僕らが遅れてしまえば取り返しがつかない。」

「でも…。」

言い争っている三人の目の前に迫る傀儡兵に一発の砲撃が撃ち込まれる。

ドゥオン!!!!!!


「こ、これは?」

「フェイトちゃん!!!」

なのはたちが視線を向けるとデバイスを構え飛んでいるフェイトとアルフの姿があった。
二人はなのはたちのそばに降りてきた。

「こんなところで言い争ってる場合じゃないだろう?なにやってんだい。」

アルフが三人にあきれたように言う。

「ここは私とアルフが抑えるからあなたたちは行って。」


そうフェイトが三人に告げるがクロノは首を振る。

「いや、君たちが来たのなら…なのは、フェイトと一緒に先に進むんだ。」

「「えっ!?」」

「変わりにアルフとユーノは僕のフォローを頼む。いいかい?」

「わかった。」

「私としては鬼婆に一撃入れてやりたけどしょうがないね。」

クロノに指名された二人は戸惑い気味だった。
その様子を見てクロノは言った。

「この二人のフォローがあれば君たちも安心していけるだろう?それに貴重な戦力をこんなところにおいてはおけない。」

「クロノ君…。」

「なのは、行って!!!」

「フェイト、行ってきな!!」

「アルフ…。」


そして二人は視線を合わし頷いた。

「僕が突破口を開く一気に進むんだ!!」

そういうとクロノはS2Uに魔力を収束させ一気に打ち出した。
クロノの放った砲撃は傀儡兵を吹き飛ばし道を開いた。

「行くんだ!!!」


そしてなのはとフェイトはプレシアとトレインがいる玉座に向かった。





「何でなのはたちに行かせたんだい?」

ユーノはクロノに問う。

「これが一番ベストな選択だった。それだけだ。」

「……トレインのこともあるんじゃないか?」

その言葉にクロノは少し押し黙った。

「………彼は関係ない。あくまでこれは僕の判断だ。」

どこか自分の思いを隠すように淡々と言うクロノに

「クスッ、わかったよ。」

「それにすぐにこいつらを片付けてプレシアのもとに向かうつもりだ。なのはたちに遅れずにね!!!!」

クロノは再び傀儡へに切り込む。
そしてアルフもそれに続き

「私もとっととあの鬼婆のもとに行って一発でも入れないと気が済まないよ!!!」

「OK、僕もそれに乗らせてもらうよ。」


















「エイミィ、転送はできないの?」

「駄目です、こちらの転送を受け付けません。」

リンディたちはモニターに映っている状況を見て焦っていた。
そうにかして転送を試みようとするがジャミングのようなものがかけられ妨害されてしまうのだ。

「お願い、クロノ、なのはさん、ユーノ君。急いで…。」

リンディは悲痛な面持ちでモニターを眺めていた。
映りの悪い画面の中では壁に打ち付けられ動かないトレインとそれを離れた所から見ているプレシアの姿が映っていた。







「さあ、ようやくアルハザードへの道が開くわ。」

そういうとプレシアはジュエルシード浮かべ魔力を込めジュエルシードを発動させる。
すると庭園全体が大きく揺れた。

「アルハザードへ辿りつけるかどうかわからないけど…これしかもう方法がないの。でも大丈夫よアリシア、私はいつでもいっしょよ。」

プレシアはポットに浮かぶアリシアに話しかける。
その眼は恍惚の表情であった。
しかし手を動かすと顔をゆがめ脇腹を押える。

「くっ!!あそこまでやってくれるとは思わなかったわ。まあそれもここまでね。」

ふと壁に打ち付けられているトレインに視線を向ける





黒十字を放ちトレインはプレシアのバリアを破ることはできた。
そしてそのままプレシアへ攻撃が当たったのだが、それでもプレシアは倒れはしなかった。
トレインは失念していた。
バリアを張り防御をしているプレシアであったがバリアジャケットを装着しているということを。

プレシアはひるんだものの決定打にはならなかった。
トレインにはもう反撃するだけの力は残っておらず動けなくなっているところプレシアに近づかれ懐に衝撃波を当てられ壁に叩きつけられた




「無情ね……。フェイトにかかわりさえしなければこんなことにはならなかったのに…。」

同情するような視線を送るプレシアであったが湧き上がる歓喜にを抑えられず大きな笑い声をあげた。






















[5985] 魔法少女リリカルなのは witn自由気ままな黒猫 第18話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/26 10:31
壁に寄りかかるように気を失っているトレインは死んだように動かなかった。
数えるのがいやになるほどの裂傷の数々、ところどころ破れている服。
もはや誰もがトレインの敗北を悟っていた。

「ようやくよ、ようやく悪夢が覚めるのね。」

プレシアは庭園内にある魔力炉の魔力もジュエルシードに注ぎ込んでいた。
プレシアも無傷とは言えない状態だったがそんなことは気にならないほど歓喜していた。
長年の思いがようやく成就されようとしていたのだから。

「もう誰にも邪魔はさせないわ…。」






一方のアースラでもトレインの様子は確認していた。
その惨状にどのクルーも顔をゆがめていた。
リンディはうつむき加減に立っていたが顔をあげ動き出した。

「艦長?」

クルーの一人がリンディに呼びかけた。
リンディは立ち止まった。

「どこに行かれるのですか?」

「私は私のほうで手を打ってみるわ。ここまでトレイン君はよく時間を稼いでくれたわ。」

リンディは正直な話ここまで彼がやってくれるとは思わなかった。
相手は大魔導師と呼ばれた人物。
かたや相手は資質、技能は非凡なものがあったが質量兵器しか持たない少年。いや、青年。
どれだけの実戦経験を積んだであろう武装隊の局員もできないようなことを彼はやってのけた。
彼がいなければもっと早い段階で緊急事態になっていただろう。


「かれのおかげでプレシア・テスタロッサもかなり消耗してきたはずよ。今ならどうにかして手を打てるはず。」

そう、リンディもプレシアに勝るとも劣らないほどの実力をもった魔導師だ。
クルーもそれを理解した上で


「わかりました。」

「ここは私達で何とかしてみます。」

クルーたちの頼もしい言葉はリンディにとって何よりの後押しになった。

「ありがとう、あとのことはよろしく頼むわね。」

そうしてリンディは管制室を後にし別室に向かった。













(お兄ちゃん)

(な、なんだ?)

はっきりとしない意識の中でトレインは幼い少女の声を聞いた。
それはどこかで聞いたことのあるようなものだった。
動かないはずの体を動かし目を開くとそこにはフェイトそっくりの少女がいた。

(フェイト?)

少女は膨れながらトレインに訴える。

(違うよ~、確かに私とフェイトはそっくりだけどさっき会ったでしょ?)

(……アリシアか?)

そうトレインが答えると少女は満足げにうなずく。

(うん、私はアリシア。フェイトのお姉ちゃんだよ。)

(お姉ちゃん………。)

トレインはアリシアの姿を見る。
  
どう考えてもフェイトのお姉ちゃんというより妹という言葉がぴったりだった。

(むぅ~~、なんか失礼なこと考えたでしょ?)

(いや、そんなことは……ないとは思うぞ?)

(なんで疑問形なのっ?)

ころころと表情を変え、初対面にもかかわらず目の前にいるアリシアトレインに臆することなくしゃべる。
しばし笑っていたトレインだが表情を引き締め

(お前がいるってことは俺は死んだのか?)

アリシアは首を振り否定した。

(違うよ、お兄ちゃんはまだ生きてる。けどもしかしたら危ないかもしれないの。)

アリシアはすこし気まずそうに答えた。

(気にすんな臨死体験に近いもんは慣れてる。)

(大丈夫、サヤさんから聞いてるから。)

サヤの名前が出てきてトレインはまたかという表情をした。

(あいつは…。)

(でもあくまで私はサヤさんからお話を聞いただけ、私はお兄ちゃんを助けに来たの。)


アリシアはトレインに近づき笑い、頷いた。

(お兄ちゃんはお母さんを止めようとしてるんだよね?)

(ああ。)

トレインは力強くうなずいた。

(うん、私もお母さんを止めてほしいの。)

アリシアは悲しそうな表情でトレインにつぶやいた。
何かを思い出すようにアリシアは語る。

(お母さんは本当に優しかった。私はそんなお母さんが大好きだった。)

(アリシア……。)

(でも私が死んじゃってからお母さんは変わっちゃった。病気にもなっちゃって体も心も傷ついて、そんなお母さんを見てるのはつらかった。)


アリシアはその場でうずくまるようにしてしゃがむ。

(フェイトがひどい目に合っているのも見るのもつらかった。どんな形であれフェイトは私の妹だもん。)

(そうだな、お前はお姉ちゃんだもんな?)

トレインがそういうとアリシアは力強くうなずいた。

(私はこれ以上苦しむお母さんやフェイトは見ていたくない。お願い、お兄ちゃん。フェイトをお母さんを救ってあげて!!)


アリシアはトレインに深く頭を下げお願いした。
トレインはゆっくりと近づきアリシアの頭に手をのせフェイトにしてやったように頭をなでる。

(お兄ちゃん?)

アリシアはキョトンとした表情でトレインを見る。

(まかせとけ、そこまでお前に頼まれたんだ。)

(お兄ちゃん……。)

(んじゃ、とりあえずここから元に戻らないとな。)

ゆっくりと動きだしたトレインにアリシアは

(お兄ちゃん、お母さんに伝えて。)

(なんだ?)

(私は幸せだったよ、私のことはもういいから今度はお母さんが幸せになってって。)


トレインは手を振りながら

(確かに伝えておくぜ。)
















そこでトレインは意識を取り戻した。

(何とか立てるか…。ハーディスはあるが銃弾が残ってねえか)

何発か残っていたはずの銃弾もここに叩きつけられた拍子になくなったようだ。
トレインは壁にくいこんだ体を動かし地面に立った。
その拍子にがれきが動き物音が立つ。


「……まだ動けたの?でも残念ね、もう遅いわ。」

プレシアは満足げな表情でトレインに告げる。

「見てみなさい、あちらこちらにできる虚数空間。」

トレインはあたりを見ると変な空間がところどころ出来上がっていることに気がついた。

「もうすぐアルハザードへの道が開くのよ。ようやくアリシアがよみがえるのよ。」


トレインは銃弾が入っていないハーディスを構える。
その姿をみてプレシアはあきれたように言う。

「まだ無駄な行為を続けるの?そこまであなたを駆り立てるのはなんなのかしら?」

「ここで…ここで俺が負けちまったいろんな奴の思いを無駄にしちまう。」

トレインは軽く笑みを浮かべながら

「負けられねえよな…。」

「そう、でもそんなもの私を支えるアリシアへの思いに比べたらチリに等しいわよ。」

トレインは笑いながら首をふった。

「言ったろ、あんたのそいつは支えじゃない。鎖だって。」

「……。」


「俺はいろんな奴の思いにこたえるためにもあんたの鎖を断ち切る。」

トレインはかすむ視線をプレシアに合わせ告げる。
プレシアは侮蔑ともつかない視線でトレインを見据え

「フッ、それをしたところでいまさらどうにかなるわけでもない。それに今のあなたじゃそんな余力は残っていないでしょう?」


「確かに余裕はねえ。けど俺はこいつの一振りに賭ける!!!」

トレインはハーディスに手をあて構えをとる。
プレシアはその姿を見て身構えるが

「まさかさっきの打撃技で来る気?笑わせないで、今のあなたの筋力じゃパワー不足もいいとこ私のバリアを破ることもできないわ。」

「確かにな。たとえ消耗しているあんた相手じゃ普通にやっても通用しねえ。」

「!?」

プレシアは図星を疲れたように反応する。
ジュエルシードのかなりの魔力を注ぎ込みそれほど魔力に余力があるわけではなかった。
しかしそれでも状況はプレシア有利に変わりなかった。


「リニスとユニゾンした時に見せた…俺の力の限りをぶつける!!!」

トレインの体は突然発光しだした。
発行しているというがバリバリといという音を出しながら稲光のようなものも見えていた。

(放電!?)

「いいことを教えてやるぜ。」

トレインは構えたハーディスをプレシアに見せつけるようにする。

「あんたも気づいていると思うがこいつは半端な攻撃じゃまず壊れねえ、なんでも未知の金属オリハルコンとか言うので出来てるらしい。」

「お、オリハルコンですって!?」

プレシアは驚き表情を浮かべた。
次元世界でも現存を確認されたことのない、名前だけが残る金属。
それがオリハルコンだった。

プレシアもかつて文献で見たことのあるだけでその性質も不明だった。

トレインはなおも続ける。

「こいつの打撃による攻撃はあんたのバリアにそれなりのダメージを与えられる。けど筋力が足りねえのも確かだ…。」

「………。」

「だけどよッ!!!!」


トレインの輝きはさらに増していった。
自身の瞳の如く全身を覆うオーラが黄金のように輝いた。

「電気エネルギーによる身体強化をすれば今の俺でも十分あんたに勝てる!!!」

「……フンッ、最後の悪あがきってとこかしら?そんなことで私に勝てるわけないわ。」

「へっ、決めつけてんじゃねえよ。勝利の女神は気まぐれなんだぜ?猫みたいに…。」

トレインは大きく腰落とし前傾姿勢をとった。
その姿はこれから獲物をとらえるような猫のようだった。
それに対してプレシアも杖を構える。

(頼むぜ、俺の全エネルギーを使い果たしてもいい。あいつを、クリードを倒したときの力をもう一度出させてくれ。)

一層の輝きを増していたトレインだったが不意に視界が歪む。

(くそっ!!思ってたより体にきてるみてぇだな。これじゃ…)

体がふらつき倒れこみそうになったからだを支える小さな手があった。
トレインの体を支える小さな姿にプレシアは信じられないものを見たという表情をした。


「あ、あ、アリシア?」

トレインが自信を支える人物を見てみるとフェイトそっくりな快活そうな少女がトレインを支えていた。

「アリシア?」

トレインがそう呟くとアリシアは嬉しそうにトレインに微笑んだ。

「どうして?どうしてあなたがそいつを助けるの?私はあなたを生き返らせようとしているだけなのにッ!!!」

プレシアの必死の呼びかけに悲しそうな表情を浮かべるアリシア。
トレインはその瞬間を逃さずに地面を蹴った。













なのはとフェイトは玉座まで目前に迫っていた。
二人とも先ほどから辺りを揺らしている地響きからジュエルシードが発動していることを確信していた。
同時にトレインがプレシアに敗れたということも。

「もうすぐ…もうすぐで…。」

なのは前を見つめながらトレインのいる方向を見つめながら呟いていた。
フェイトのほうは口数が少なく押し黙っているが内心は気が気でなかった。

あらかた傀儡兵を片付けたのでそれほど時間をかけずに目的の場所までつくことができるが肝心の時間が残り少なかった。
ジュエルシードの暴走による次元震。

それは何としてでも止めなければいけないことだったが少女たちの頭にあったのはプレシアと戦っていた少年のことばかりだった。















「一閃ッ!!!!!!!」

ダッ!!!!!

電気により強化した下半身で地面を蹴ったトレイン。
そのスピードは先ほどとはいかなくともプレシアではとらえきれないほどのスピードだった。
しかしプレシアは冷静に杖を構え前面に集中してシールドを張った。

残りそう多くない魔力だが前面に集中してシールドを張ればトレインの攻撃をしのぎきるには十分だった。
しかしトレインはプレシアに接近するその刹那本来片手で放つはずのハーディスを両手にで握った。
そして両の腕に電気を流しこみ一気に振りぬいた。


「黒爪ッ!!!!!!!」



キィーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!


















甲高い何かが砕けるような音とともにトレインはプレシアの後ろに抜けていた。
その姿からは余裕もなくかろうじて立っているという様子だった。
しかしプレシアのほうは


「ば、バカな……。」

自身の腹部にある傷を押さえながら呟く。

「この、私が……大魔導師である私が……アリシアのためにここまできた私が…。」

「あんたが…負けたのは、あんたにはないからだ……本当にやばい時に支えてくれる信念や相棒、仲間…。」

ふらつく体に鞭をうちトレインは何とか立っていた。
プレシアはその場にうずくまり

「わ、私にはアリシアが……。」

「いったはずだぜ、そいつはあんたを支えていたんじゃない。縛っていた鎖だ。俺はそいつを断ち切った、それだけだ。」








プレシアは崩れるようにその場に倒れこんだ。

トレインはゆっくりと近づきプレシアに聞いた。

「ジュエルシードの暴走を止めるにはどうすればいい?」

「……そんなもの知らないわ。アリシアがいない世界なんてどうでもいいもの。私には何にもないのよ?」

トレインはそんなプレシアをみて言った。

「俺はアリシアをそんなによく知ってるわけじゃねえ。けどあんたが言うには優しかったんだろ?」


プレシアは身動きせずに答えた。

「………ええ、とても優しい子だった。」

それを聞いてトレインはうつぶせになっているプレシアを無理やり仰向けにし胸倉をつかむ

「だったら!!!そんなガキならこんなこと……あんたがこんなにボロボロになってまで生き返らせてほしいなんて思うわけねえだろ!!!」

「!?」

「あんたのその姿をみて、あんたがしてきたことアリシアが知って喜ぶとでも思ってんのか?」

「あ、あああああああぁぁぁっ」

プレシアは顔を覆うように呻いていた。
トレインはそれ以上何も言わずに思案していた。

いまのこの状況を見ているだけでかなりやばいことはわかっていた。
かといって満身創痍の自分に何かできるとは考えにくかった。

そうしているとリンディから念話が頭に響いた。

(大丈夫よトレイン君。)

「リンディ?どういうことだ?」

(私がなんとかジュエルシードのほうを抑えているわ。おそらく次元震が起きるようなことはないはずよ。)

その言葉にほっと一息つくトレイン。

(なのはさんたちもそちらにもうすぐ到着すると思うわ。)

「そーかい、んじゃ後のことは任せるわ。」


トレインはその場で倒れこんだ。
無理な身体強化は幼いトレインの体には大きな負担がかかっていた。

(体全身がきしんでる見てーだな。こいつはしばらくまともに動けそうにねーな。)

首だけ動かし横にいるプレシアの様子を見た。
後ろ姿見えるだけでその様子はうかがえない。

「あんたにアリシアからの伝言を預かったぜ。といってもあれがほんとかどうかわかんねーけどな。」

「………。」

プレシアは何も言わず黙ったままだった。

「…アリシアからの伝言を伝えるぜ。(私は幸せだったよ、私のことはもういいから今度はお母さんが幸せになって。)だとさ。」

「アリシア………………………。ねえ?」

プレシアが突然トレインに呼びかけた。

「私は、私にとってアリシアがすべてだった。私たちに優しくない、この歪んだ世界なんかになんの未練もない私がどう生きればいいというの?」

プレシアの言葉はトレイン、もしくはアリシアに向けられたものなのかはわからない。
しかし、トレインは答える。

「……俺もあんたと同じだった。女…いや、親友を守ることができなかったばかりか死なせちまった。」

「………。」


「俺はかつてイレイザー、抹殺者として組織に飼われていた。両親はガキの頃に殺されて、殺した相手に育てられ、そいつも殺され俺は一人になった。そして俺は誰もいや、世界そのものを呪っていた。」

「…それで?」

プレシアはわずかだが関心を示した。

「さっき言ったとおり組織の抹殺者として俺は数えきれないくらいの人間を殺してきた。それを考えればあんたなんかより俺のほうがよっぽど罪は重い。」

トレインは天井を見つめながら思い出すように話し続ける。

「俺はある任務でへまをしてくたばりかけた。そんな俺を助けたのがサヤだった。」

「…それがさっき言っていた親友さんかしら?」

「ああ、別に最初は単なるお人好し程度の認識だった。けど俺はあいつの生き方に惹かれていった。」


「生きかた?」


「自由気ままに……なんにも縛られずに自分らしく野良猫のような自由な生き方にな。」

「野良猫……。」

「俺は自分のありかたに疑問を持つようになっていったがそいつをよく思わねえ馬鹿がいやがった。そいつに襲われてサヤは死んだ。」


今でもそのシーンは思い出される。
いろんあ人間の死に際をみていたトレインにとって忘れることのできないものだった。

「最後にあいつはなんて言ったと思う?私のことは忘れていいから、だぜ?」

「…………。」

「あいつは最後の最後で俺が復讐という鎖で過去に縛られることを気にしながら死んでいった。けど俺はあいつの言うことももっともだと思うが過去を忘れるのは逃げだと思った。」

「過去……。」

「俺にしてもあんたにしても過去はそんなに簡単に切り捨てられるもんじゃねえ。だからあんたに過去のことを完全に切り捨てろとは言わねえよ。」

「どうしろというの?」

「とりあえず好きなように世界を回ってみな。あんたを縛っていたものはさっき断ち切れたはずだ、焦らすゆっくりと生きていけば過去を背負って、それでも悪くないって思える世界があるはずだ。」






トレインが語り終えると大きな揺れが起こった。

するとトレインたちのいる場所のすぐそばの床が抜けおち異常な空間が広がっていた。

「な、なんだこいつは?」

「虚数空間。」

プレシアは呟く

「なんだって?」

「虚数空間、あらゆる魔法が無効化され重力が続く限り落ち続けていく空間よ。」

続けざまに大きな揺れが起こった。

「くそっ!!!!リンディの奴止められなかったのかよ!!」

「いえ、ジュエルシード自体の暴走の進行は止まっているわ。おそらく不完全な状態の暴走状態にあるだけだわ。」

「どっちにせよやばいことには変わりはないってか?」

「ええ、そう長くない時間のうちにここも崩壊するわ。」


そういった瞬間プレシアのいる地面が崩れた。

「!?」

そのままプレシアは虚数空間の中に引き込まれかけたが

「ちっ!!」

ハーディスのワイヤーを近くにあった柱にくくりつけ片手でプレシアの手をつかんだ。

「くっ、なんとか間に合ったか。」

「放しなさい!!」

「馬鹿言ってんじゃねえよ、ここであんたに死なれたら何のためにここまでボロボロになったかわからねえだろ!!!!」

プレシアは不思議なものを見るような眼でトレインを見た。

「何を言っているの?言ったでしょアリシアのいない世界になんの未練もないのこのまま死んだほうがマシよ。」

「あんたは生きろ!!!この歪んだ世界でもう一度やり直すんだ!!」


「フフフ。」

プレシアは突然笑い出した。

「さっきまで闘っていた人間にかける言葉とは思えないわね。」

「こんな状況で敵も味方もねえだろ?」

「そうね、でもいいから放しなさい。さもないとあなたも引き込まれてしまうわ。」

事実トレインの握力も限界に近づいていた。
体のダメージもあるが成人していないトレインの体でプレシアの手をつかむのはすでに限界近かった。

(くそっ!!!もう握力が残ってねえ。)

「ありがとう、あなたのおかげで少しは救われた気がしたわ。もう少しあなたと話をしてみたいと思ったけど…。」

そういってプレシアが手を放そうとした瞬間


「「トレイン(君)!!!!」」

白と漆黒の少女がこちらに向かって来ていた。



「遅いんだよ。」

そしてプレシアとともに二人がかりで引き上げてもらった。










「よかった、トレイン君無事だったんだね?」

なのはが心配そうに声をかける。

「まあ、無事とは言いずらいけどな。」

トレインは自身の姿をみてくそうしながら答える。
そしてふとテスタロッサ親子のほうに視線を向ける。
フェイトと目線を合わせようとしないプレシア、必死に何かを訴えかけようとしているフェイト。
そしてフェイトが口を開いた。

「私は、私はあなたにとって人形。アリシアの代わりだったのかもしれません。けど私にとってプレシア・テスタロッサはただ一人の母であることに変わりはありません。」

「………。」

「これだけはあなたがどれだけ否定しようとも譲れません。」

プレシアは一言だけ

「かってになさい……。」

「え!?」


そこで反応しかけたフェイトを抑えるようにトレインが手を叩く。

「話はそこまでにしとけ。とりあえずこんなあぶねえ所からはとっと離脱しようぜ?」

「そ、そうだね。暴走が収まったといってもいつ崩落するか分からないもんね。」

トレインはなのはの肩を借りながら立ち上がった。
フェイトもプレシアに手を貸そうとするがプレシアは反応しない。

そうしていると大きく庭園全体が揺れた。


「「!?」」

フェイトとなのははたちまち反応し避難しようと動くがプレシアはある場所を凝視していた。
トレインは何を見ているのかと視線を向けるとそこにはアリシアが入ったポットが崩落しかけている玉座の近くに佇んでいた。

プレシアは動き出そうとするがダメージが残っているのかその場でうずくまった。

「母さん!?」

フェイトはプレシアに駆け寄りプレシアを止めようとするが

「放しなさい!!!アリシアが…アリシアが…。」

悲痛な声を上げながらプレシアが叫ぶ。
フェイトとなのは複雑な表情でそれを見つめる。

「トレイン君?」

トレインはなのはの肩から手を下ろし痛む体を鞭打ちポットへ駆ける。

「トレイン!?」

フェイトは突然駆けだしたトレインに驚き声をかけるがトレインにはそれに反応する余裕すらなかった。

(このままじゃあいつも浮かばれねえ、プレシアも吹っ切れさすためにも…。」

ポットに向かってダイビングをした瞬間玉座の床が抜けおちた。

「!?」


ポットを抱きしめるようにつかんだがその先には地面がなかった。
無限に続いているだろう虚数空間が広がっていた。


「トレイン!!!!」

フェイトが駆け寄り必死に手を伸ばすがトレインにはそれに捕まる余力はなかった。

(結局、あのときと同じか)

クリードとの戦いの週末と同じ展開に自嘲気味に笑顔を浮かべるトレインにフェイトは悲しみくれた表情をしていた。
なのはも必死にトレインを呼び掛けるがトレインはそのまま………





































「トレイン!!!!」

突然の声とともにトレインとポットを縛るように鎖が現れた。
そして引き上げるようにして持ち上げられた。

「ユーノ君!!!」

その声の正体はユーノだった。
それに遅れるようにしてクロノ、アルフが現れた。

「トレイン、大丈夫かい?」

「ユーノ、ナイスタイミングだがこの状態で無事だと思うか?」

「いや……そうは見えないな。」

苦笑しながらユーノはトレインに答える。
続いてアルフが引き上げられたトレインを抱える。


「よかったよ、あんたが無事で。」

「……もういい。とりあえず蹴りは付けてやったぜ。あとおろしてくんねえか?」

アルフはそう言われてゆっくりとトレインを下ろした。
そこにクロノが近づいていき

「まったくずいぶんと無茶をしてくれるな君は。」

あきれるようにトレインにつぶやく。

「……この状態で説教は勘弁してくれ…。正直もう動きたくないわ。」

「とりあえず、ジュエルシードのほうは母さんが抑えてくれた。次元震は起こらないと思うが早いとこ脱出することにこしたことはない。」

「そうだな、んじゃあとのことは頼むぜ。執務官様?」

トレインは精根尽きたという感じでうなだれた。
そして自身を救ってくれたユーノに目をやり親指をたてて感謝の意を示した。
対するユーノもそれに応じるように親指を立てた。

「トレイン君!!!!」

「トレイン!!!!」

二人の少女がトレインに駆け寄る。
そして眼には涙を浮かべながらトレインに抱きついた。

プレシアはその様子をただただ眺めているだけだった。









こうして海鳴市で起こったジュエルシードの一件はとりあえず終結したのであった。




[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第19話
Name: ショージ◆e893f68c ID:3c001e6b
Date: 2009/03/31 10:10
庭園の崩落をアースラ内部で見守るトレイン、なのは、ユーノの三人だった。
プレシアはアースラに収容されるとともに拘束された。
本人にはもはや抵抗の意思はなく黙って拘束されていた。
フェイト達も同様だったがそれほどきついものではなく監視されることには変わりはないが拘束されるほどではなかった。
フェイトとプレシアは別々に収容されることになっており、フェイトはプレシアになにか言いかけるが口にすることができずにいた。






「ようやく終わったか…。」

トレインが一息つきながら呟いた。

「うん。でも終わりだけじゃないよ。」

なのはがユーノの肩を借りているトレインに言う。
おそらくフェイトのことを思いながら目をつむる。

「そうだな…。」

トレインも微笑みながらそう答えた。
すると事後処理を終えたのかクロノとリンディが現れた。


「待たせてしまったね。」

「ごめんなさい、三人とも疲れているところに。」

「できれば手短に頼むぜ?」

「それは君の態度次第だな。」

クロノはトレインに毅然と言い放つ。
それに対してなのは、ユーノは表情を厳しいものに変えた。

「三人とも本当に御苦労さま。あなたたちがいなければ自体はもっと深刻なものになっていたかもしれないわ。」

リンディが感謝の言葉とともに頭を下げる。

「そ、そんな私たちは大したことはしてません。」

「そうです、僕らは僕らの意志であなたたちに協力したんです。」

なのはは恐縮しながら、ユーノは堂々とした態度でリンディに答えた。
そんな二人にリンディは笑みを浮かべていた。
トレインはそんな二人の様子をどこかおかしそうに見ていた。

「僕からも礼を言わしてもらうよ。特にトレイン・ハートネット、君の行動がなければプレシアの狂行は止められなかった。」

クロノがトレインに目を合わせそう言った。
すると

「………。」

「………。」

「………。」

トレインを除く三人が豆鉄砲でも食らったような表情に変わる。

「ど、どうしたんだい?みんな変な顔をして?」

いまいち状況を把握しきれないクロノは戸惑っていた。
そしてトレインは

「ははははははははははっ!!!!」

「な、なんだいいきなり笑いだすなんて。」

突然笑い出した。

「いや~、お前からそんな言葉をもらえるとは思ってなくてよ。どうせお小言ばかりもらうとばかり思っててよ。」

「な、僕は事実から鑑みてそう判断して思った事を言っただけだ。」

「クロノ君はいつも素直じゃないからね。」

後ろからエイミィが現れくすくすと笑っていた。
クロノはおもしろくないといわんばかりにそっぽを向いてしまった。

とりあえずクロノは置いておきトレインはエイミィに声をかけた。

「あいつは……リニスはどうだ?」

そう、戦いの中で自分をかばい倒れたリニスのことがトレインの中では気がかりだった。
エイミィは安心させるように笑いながら


「大丈夫、ダメージはあるけど機能不能になるほどじゃなかったからもう少ししたら意識も取り戻すと思うよ。」

「そっか…。」

トレインは安心したように一息つく。
そこでなのはが恐る恐る手をあげ聞いた。

「あの~、トレイン君が言っているリニスって?」

「そういえば、そんな名前聞いたこともないけど?」


なのはとユーノがトレインに問いかける。
トレインがどう説明したものかと考えているとリンディとエイミィ、そっぽを向いていたクロノまで寄ってきたいた。

「エイミィ、リニスとはなんだい?」

「え~と、一応トレイン君のデバイスだね。」

「えっ!?トレイン君デバイスを持ってたの?」

「まさか!?そんな気配は全くしなかったはずだけど…。」

「そういえば入手について詳しい経緯は聞いていなかったわね。」

五人からの追及に逃れられそうにないと判断したトレインはことの経緯を説明した。















「ユニゾンデバイス…。」

ユーノは難しそうな表情で唸っていた。
なのははそんなユーノに

「どうしたのユーノ君?ユニゾンデバイスがなにか問題でもあるの?」

「簡単に言うとユニゾンデバイスは融合機と呼ばれる特殊なデバイスと融合することで飛躍的にパワーアップするものなんだ。ただ、ユニゾンデバイスというもの自体希少なもので使い手も少ないんだ。」

事実管理局内でも現在ユニゾンデバイスの使い手はいない。
ユーノにクロノが続く。

「しかも適正が低く、デバイスとの意志の疎通ができていない状態でユニゾンすると最悪の場合使い手デバイスに取り込まれる可能性もあり大変危険なものだ。」

「でも、トレイン君はリニスさんとの適正が高かった。結果、この場にいる誰よりも高い魔導士ランクを出したの。まあ調整不足で短時間でユニゾンは強制解除されちゃったけど。」

とエイミィが説明した。



「でも信じられないわね。使い魔の魂が残留思念として残りデバイスとして生まれ変わるなんて。」

リンディはふぅーと一息つき言った。

「まー詳しいことは俺もよくわからねえからなんともいえねぇけどな。」

実際はサヤとのこともあったがここではあえてトレインは言わなかった。
説明すれば余計ややこしくなりそうだったからだ。



「とりあえずトレイン君たちはゆっくりと体を休めなさい。まずはそれからよ。」

リンディが仕切り直しと言わんばかりに三人に言った。

「そうだな、特にトレイン。君はどう見ての満身創痍だからな。」

「ならすぐに休ませてくれよな…。」

苦笑しつつトレインは呟いた。

そして三人には休憩用の部屋があてがわれ、トレインは治療を行うということで医務室のベッドがあてがわれたのだが
トレインは微妙な表情で天井を見ていた。
そんなトレインにエイミィが笑いながら聞いた。

「どうしたの?なんか不満でもあるの?」

「お前…絶対わざと聞いているだろ?」

「え~、そんなことないよ~。」

その言葉と裏腹にエイミィの表情はとてもイイ表情だった。
トレインは声を少し荒げながら言った。

「治療するのはいいとしてなんで一つのベッドを二人で使わないといけないんだよッ!!」

そしてトレインが指さすところには

「マスター、そんなに私と一緒のベッドが嫌ですか?」

「あ、あああ。そういうわけじゃねえけどよ。」

先ほどの話題の中心であったリニスがいた。



「お前、フェイトやアルフに会わなくていいのか?」

トレインはリニスに聞いた。
聞いた話ではアルフやフェイトにとってリニスは育ての親に近いものだった聞いていたのと、リニスが心の残りといていたのはフェイトのことだったことから当然すぐにでも会いに行くと思っていたのだがリニスはそうはしなかった。


「今はまだ……とりあえずプレシアも止められましたしフェイトもこれ以上傷つくこともないですし。まずはマスターの体が治ってからでもいいでしょう。」

「別に気を使わなくてもいいんだぜ?」

「いいえ、これは私の意志ですから。それに……。」

リニスはトレインから視線を外しトレインからは顔色がうかがえなくなっていた。
どうしたのかとトレインは少し心配になった。

「それに、なんだ?」

「私はフェイトやアルフは育ててきましたけど…男の子の面倒を見てみたかったんです。」

「へ?」

一瞬間の抜けた表情になったトレインだがこちらに顔を向けてきたリニスが見たことのないイイ笑顔だった。
そして起き上がり手をワキワキさせ迫ってきた。

「夢にまで見た男の子……。」

「っておい!!!セリフだけ聞くと軽く犯罪者だぞ!?こっちに来るな!!」

必死に逃れようとするトレインだったが狭いベッドのうえダメージからまともに体が動かなかった。
なおもリニスは近づいてくる。

「マスター、マスターは私のことをデバイスではなく相棒(パートナー)と言ってくれました。私もそのご期待にこたえたいと思いまして…。」

なぜかうっとりするように呟くリニス。
よくも悪くも彼女は母性本能が高い女性のようだった。
ある種過保護なまでの。

「ちょ、ちょいまて!!!ってエイミィお前どこに行くんだ?」

「いや~、お邪魔しちゃ悪いと思うから私はこれで退散するね。」

「御協力ありがとうございます。」

「きょ、協力?は、図ったなエイミィ!?」



医務室のドアが閉まるとトレインに断末魔のようなものがこだました。








一方、リンディとクロノはトレインの戦闘記録を見ていた。

「どう思うクロノ?」

「……正直敵でなくてよかったと思います。」

クロノはスクリーンに映し出されたトレインの姿を見て言った。
リンディも同様なのか一息ついた。

「ユニゾンの適性も高いというのも彼の資質だけれど、本当にすごいのは戦闘技能と身体能力の高さね。」

「はい、実際彼の魔力量、魔法資質は平均以上ですけどなのは達のようなトップレベルと比較すると見劣りします。」

「それでもなおなのはさんたち以上のランクを出しているのは彼の技能、魔力の運用、的確な状況判断能力。」

クロノは黙って頷いた。
まさに彼の戦いぶりはクロノ自身が目指しているものだった。
魔力量では圧倒的に劣るプレシア相手に互角以上の戦いを演じていた。
おそらく自分が戦って負けるつもりはないがはたして勝てていたかどうか。
なのはやフェイトにしても同様だろう。



「艦長、おそらく彼は生身の状態でも管理局のトップクラスのレベルの戦闘能力をもっていると思います。」

「そうね。これでユニゾンも安定してくれば間違いなく管理局でも五指に…いえトップの実力者になることは間違いないわね。」

陸戦SS+

トレインが戦闘の中で出した魔導士ランク。
飛行能力を持たないというハンデあるもののまともな空戦魔導士では歯が立たないレベルだった。

「なのはさんたちじゃないけどこのままうちに来てくれないかしらね?」

自嘲気味につぶやく。

「それは難しいと思います。彼は組織に属することを毛嫌いしているようですし、彼らは高ランクの認定を受ければ全員は間違いなくうちではあずかれないです。」

一つの艦や部隊で保有できる魔導師のランクや人数はバランスをとるために規定が定められている。
なのはやトレインをこのアースラに加えることはあきらかな過剰戦力とみなされることは間違いなかった。








なのはたちは食堂にきて軽い食事をとっていた。

「ユーノ君。」

「どうしたのなのは?」

二人は特に目立ったけがなどはなく与えられた自室で休んでいた。
少し休むと空腹が襲ってきたのでユーノと食堂まで来ていた。
トレインも誘おうと思ったが彼の状態を考えてもう少し休ませたほうがいいという配慮から遠慮した。

なのはユーノに不安げに聞いた。

「フェイトちゃんたちはどうなるのかな?」

「……僕も法律にそれほど詳しいわけじゃないから何ともいえないけど、次元干渉に関する犯罪はかなり重い罪になるとおもう。」

ユーノも心ぐるしいように言った。
それを聞いたなのはは落ち込むように食事の手を止めた。

「そんな……。」

「でもフェイトに関しては情状酌量の余地は十分あるはずだよ。きっとそれほど重い罪にはならないと思うよ?」

なのはを元気づけるようにユーノは明るくなのはに告げる。
その言葉になのはも頷く。

「そうなるといいね。」

「なのは…。」

(フェイトちゃん、どうしてるのかな?)

結局アースラに戻ってからは彼女と一度もあっておらずフェイトのことがどうしても気になっていた。
管理局としても重要参考人であるフェイトを簡単に面会させたりするわけにもいかなかった。



そのフェイトはアースラの奥にある牢にいた。
隣にはアルフが心配そうにフェイトのことを見ていた。
フェイトはいろいろなことが立て続けにあり精神的に疲れてしまったこともあったが今は張り詰めていた糸がようやくゆるめることができ放心しているという状態だった。

「フェイト…大丈夫かい?」

「うん、大丈夫。少し疲れてるだけだから。」

そうフェイトが答えるとアルフは驚いたように目を見開いた。
そんなアルフにフェイトは首を傾けていた。

「どうしたのアルフ?」

「久しぶりに聞いたよフェイトのそんなセリフ。」

アルフはどこか嬉しそうな表情で言った。
フェイトも苦笑した。

「うん、そうかもね。」

ここにきて今までの疲労感が襲ってきたという感じだった。
がむしゃらにジュエルシードを集めている時は弱音を吐いている余裕もなかった。
一度だけ、トレインにお見舞いに来てもらったときくらいだった。
ふとフェイトの頭の中にトレインのことが思い浮かんだ。


「トレインは…トレインは大丈夫かな?」

フェイトはふとつぶやいた。
アルフもそれに反応して口を開いた。

「トレイン?ああ、あいつなら大丈夫だよ。あのおにばば…じゃなかったプレシアの攻撃をくらって生きてたんだ。さっきも平気そうだったじゃないか?」

アルフはあっけらかんと言うがフェイトはトレインがプレシアと戦っていると聞いて気が気でなかった。
確かにトレインは強い。
だがバリアジャケットも生成できない彼では母と戦ってただで済むとは思えなかったからだ。
しかし彼は母に勝った。
両者ともにボロボロであったがトレインは最後の最後まで己の信念を貫いた。


アルフも内心では不安だった。
プレシアとの戦いで自分が余計な手を出し彼を窮地に追いやり生命の危機まで追いやってしまったという後ろめたさがあった。
だがアルフには彼ならどうにかしてくれそうな空気を感じ取っていた。
どんな状況であろうと活路を見出そうとする強い意志を感じた。
そしてアルフは言った。

「今回はあいつには感謝しきりだね。」

「そうだね。いろいろと助けてくれた。」

フェイトは頭を、トレインが撫でてくれたところを触れた。
時間がたちぬくもりが残っているわけではないが手の感触は思い出せる。

「じーっ…。」

アルフがフェイトを凝視している。
それに気づいたフェイトは戸惑いながら問いかける。

「ど、どうしたのアルフ?」

「フェイト……最近そうやってることが多い気がするんだけど?」

「そ、そうかな?たぶん癖だよ、うん。」

ごまかすように自分で頷く。しかしアルフは言う。

「ふ~ん、そっか。てっきりトレインの奴のことが好きにでもなったかと思ったよ。」

ぼっ!!!!!!!!!!!!

フェイトはまるで顔だけ沸騰したように真っ赤になった。
それを見たアルフは

「え?本当なのかい?」

「//////////」

フェイトは何も言えなくなっていた。

(どうしてこんなに熱くなるの?どうしちゃったんだろう?)

そして自身の反応に戸惑っていた。

「あいつか~、悪くはないとは思うけど…。」

なぜかアルフが唸っていた。
顔色が落ち着いてきたフェイトは不思議そうにアルフを見る。

「いや、あいつが悪いとかいうわけじゃなくてね。フェイト、あいつの本当の姿を覚えてるだろう?」

「うん。」

フェイトは青年の姿をしたトレインを思い出す。

(ダメっ!!!なんかまた顔が熱くなる。)

アルフはそんなフェイトに気がつくことなく話し続ける。

「ユーノとかの話を聞くとあいつは本当は25歳らしいんだよ。」

「え!?」

「だから年齢差を考えると少しね~。」

苦笑しながらアルフが言った。
フェイトは特に気にすることなく

(年齢差ってそんなに問題なのかな?)

このときのフェイトの疑問がのちのちトレインにあらぬ疑惑を生むことになる。


しかしフェイトにとって気になるのはトレインのことだけではなかった。
なのはのこともあった。
庭園内ではまともな会話もできずに終わってしまった。
フェイトのなかではなのはの一言が頭の中によぎっていた。

(友達に……なりたいんだ。)

「友達…。」

いままで同世代の人間とのかかわりがなかったフェイトにとって新鮮なものだった。
どう接していけばいいか、どうやったら友達になれるかという不安もあるがフェイトもなのはともっと話がしたいと思っていた。
トレインとの関係も含めて…。

フェイトもまだまだ10歳にならない子供だった。
同世代の子どもといろいろな話をしてみたいという願望はあった。
ジュエルシードを探している中でも自分と同い年くらいの子どもが楽しそうにしているのを見ていた。
最初は気にはならなかったが、なのはやトレインたちと接するようになってから気になるようになった。
そして自分もあのような友達がほしかったのだと気づいたのである。

最後は母親…プレシアのことだった。
最後に自分の思いのたけを告げた。
そしてプレシアは一言だけ、勝手しなさいと言った。
母は自分を否定しなかった。
だが肯定したとも思えない返答だった。

(もう一度、もう一度だけ母さんと話がしたい。)

過去と決着をつけるためにもフェイトは母との会話を再び望んでいた。















二日がたちトレインはナノマシンの回復力、リニスの献身的な!?治療のせいか驚異的なスピードで回復していった。
クロノはトレインが休んでいる個室にやって来ていた。


コンコンコン

「失礼させてもらうよ。」

クロノはノックをしてトレインの個室に入っていった。
すると怪我は治っているはずなのに顔色が悪くげんなりとしているトレインがいた。
その様子に若干引き気味クロノは聞いた。

「ど、どうしたんだい?けがのほうは治ったと聞いていたんだけど…。」

「あ、ああ。クロノか…。」

どこか憔悴しきっているようにトレインはクロノに反応した。
その様子はとてもプレシアと激戦を繰り広げた男とは思えなかった。

「え、エイミィの野郎が図ってくれてな。」

「エイミィがかい?」

クロノとしては合点がいかなかった。
トレインとエイミィがそれほど接点があるわけでもないしエイミィはここ二、三日は残務の処理でクロノを手伝っていた。
トレインはうつむき加減で唸るように

「あいつの手はずのおかげでこっちはガキの世話のような手厚い看病を受ける羽目になったからな。」

「そ、そうか。」

「あんな看病は二度とごめんだ。」


トレインは冗談ではなく本気でそう思っていた。
その様子からクロノとしても多少同情的になった。
トレインのいる部屋からは断末魔のような声が鳴り響いていたのはクルーの口から伝え聞いていた。

「まあ、怪我のほうも順調に回復しているようでなによりだ。」

「まあな。んで?俺になんか用か?」

落着きを取り戻したトレインはクロノに聞いた。
するとクロノも表情をしめなおして切り出した。

「とりあえず礼を言っておくよ。今回の件についてのプレシアやフェイト達の処遇についてだ。」

「……。やっぱり厳しいか?」

トレインが真剣な表情でクロノに問いかける。
クロノはそれに黙ってうなずく。

「正直な話、楽観視できる状況ではないね。特に次元干渉に関しての事件はかなり罪は重い。フェイトたちは事実を知らされずジュエルシードを集めていたということから監視はつくかもしれないが保護観察という形にはできる。けど…。」

そこでクロノはいったん言葉を切る。
トレインも覚悟はしていた。
おそらくプレシアはクリードほどではないにしても大きな罪を犯したということは分かっていた。

「プレシアに関しては極刑は免れることはできるかもしれないが厳しい処罰を与えられることは間違いないと思う。」

「そっか。しょうがねぇよな。」

自嘲気味に笑うトレイン。
クロノとしてはもっと食ってかかると思っていた。

「意外だな、もっと食ってかかると思っていたんだがね。」

「これでも一応は組織に属してた人間だ。それにあいつがやってきたことを否定したのは俺も同じだ。しかるべき罰を受けるのが普通だろ?」

「そうだな……。あ、あとこれを君に渡そうと思ってな。」

クロノは懐から封筒をトレインに渡した。
トレインはそれを受け取り中身を確認するとそこには紙幣が二束入っていた。

「こいつは?」

「君に言われたとおりの報奨金だ、紙幣はなのはの世界のものにしておいた。それは前金だと思ってくれ、今回の君の働きを考えればその程度で済まないだろう。」

確かに今回の一件は並みの犯罪者のレベルではなかったことから報奨金も億クラスであってもおかしくないがトレインは笑い。

「こいつだけで十分だ。」

「え?」

「これ以上は俺のポケットには大きすぎるわ。」

「だが君が望むのであればこちらとしてももっと用意できる。」

トレインは首を振り

「んな金があんならやられた隊員やクルーに使ってやれ。俺はこいつで十分だ、それに金のために掃除屋をやってるわけじゃねえしな。」

「………わかった。君がそう言うなら僕からは何も言わない。」



そこにリンディがトレインの部屋に入ってきた。

「あら?クロノも来ていたの。」

「艦長、では僕は失礼させてもらうよ。あとは艦長から話があるはずだ。」

そう言うとクロノはさっさと部屋から出て行った。
リンディはそれを見送るとトレインに話しかけてきた。

「特になんにもなかったようで安心したわ。」

「ん?ああ、あのときは状況が状況だったしな。俺は別にあいつのことは嫌いじゃねえし、あいつとしても譲れないもんがあっただけだろ。」

「そうね。そうかもしれないわね。」

「んで?あんたも俺に話があるんだろう?」

そう言われリンディのほうも話し始めた。

「クロノからも聞いたと思うかもしれないけど、アースラ艦長として時空管理局として今回の一件についてはお礼を言わしてもらうわ。」

リンディは深々とその場で頭を下げた。

「そんなことしなくていいぜ?俺はしたいように行動しただけだ。」

「結果として事件解決につながったことには変わりはないわ。あなたの行動力は認められてしかるべきよ。」

トレインは恥ずかしそうに鼻をかきつつ笑った。
リンディも表情を緩ませ、トレインに切り出した。

「今回の一件の裁判を私たちの世界ミッドチルダで行うのでフェイトさんたちの身柄そこに移送されることになるの。それにあなたもついて来てもらいたいの?」

「俺もか?」

「ええ、一応事件解決の立役者だし何よりあなたの証言が裁判で必要になるの。」

トレインは事件の途中からとはいえ渦中にいた人間には違いない。
特に今回の事件の背景をよく知りプレシアとの接触をしてきた人間として法廷で彼の証言は重要になるだろう。

「それにあなたの今後の身の振り方を考えるとこちらに来てもらったほうがいいと思うの。」

リンディが言うのはもとの世界に戻るということだ。
しかしこれといった手掛かりがない以上トレインとしてはのんびりと構えながら待つつもりだったので見つかったら連絡をもらえないかと思っていた。


「まあ、証言するのは別にかまわねえよ。」

「そう、良かったわ。話は変わるのだけれどトレイン君、あなたは時空管理局で働いてみる気はないかしら?」

リンディの言いたいことはある意味こちらのほうだった。
今まで戦闘記録からトレインの実力は申し分ないほどだ。
もしかすると管理局始まって以来の実力者かもしれない。
そんな人材を逃すのリンディとしてはできなかった。
管理局は優秀な武装隊員の数が慢性的に不足気味で特に隊長格以上の実力者はほんの一握りしかいなかった。
またユニゾンデバイスと高い適正を持つトレインは管理局でも希少な存在だった。

しかしトレインはそれをよしとしなかった。

「悪いがそいつはできねえな。」

リンディはある程度予想していたのかやはりという表情をしていた。
しかしそれでもあきらめきれるものではなく食い下がる。

「どうしても?」

「ああ。俺は一度、野良になったんだ。いまさら飼われる気はねえさ。」

「………。」

「それに猫は自由に生きる生き物だぜ?」

それだけ言うとリンディは黙り、深いため息をついた。

「わかったわ。それがあなたの意志であるなら仕方ないわ。」

「そういってくれると助かるわ。」

「あとリニスさんのことについてはどうするつもりなのかしら?」

そう、リニスとのこれからについては考えていなかった。
便宜上リニスはトレインのデバイスであるが本来はプレシアの使い魔だ。
それにフェイトのことも考えるとトレインとしてはリニスはフェイト達のもとにいたほうが考えていた。
だがそれを決めるのはトレインではなくリニス本人だとトレインは考えていた。

「俺はどうもしねえ。どうするかを決めるのはあいつの意志だ。」

それだけ言うと扉が開き

「では、私はマスターのそばにいますよ。」

笑顔でリニスがそう答えた。
手には昼食らしきものを持っていた。

「リニスさん、それはトレイン君のデバイスになるということかしら?」

リンディがそう言ったがリニスは首を振り笑顔で言った。

「いいえ、私はマスターのデバイスではなくパートナーです。お傍について一生お世話をいたします。」

「お前は……意味を履き違えられると困るんだが…。」

トレインはげんなりといった感じでリニスに言った。
リンディはその様子を見て笑いながら部屋を出て行った。














リンディが部屋を出ていきトレインはリニスに聞いた。

「お前はいいのか?」

「何がですか?」

「フェイト達のことだよ。お前の心残りはフェイト達のことだったんだろう?これから会うことになると思うけどよ、一緒にいたいんじゃねえのか?」

「確かにあの子たちのことが気にならないと言ったらウソになりますけど、あの子たちが前に進むためにも私はそばにいないほうがいいんです。」

トレインとしてはそこまで言うのであればこれ以上なにか言うつもりはなかった。

「わかった、ならこれ以上は何も言わねえよ。お前の好きにすればいいさ。」

「はいっ!!!」











翌日。
なのはとユーノそしてトレインとリニスは海鳴市に戻ることになった。
不安定だった次元もかなり安定してきたのとトレインの状態がかなり良くなったからだ。
ユーノは仲間との連絡が取れるまではなのはのところで世話になることになった。


リンディ、クロノ、エイミィが四人の見送りに来ていた。

「四人とも元気でね。」

「はい、リンディさんたちもお元気で。」

なのははしっかりとお辞儀をしてリンディに答える。
そしてクロノがなのはたちが気にしていたフェイトのことについていった。

「フェイト達のことに関してはまかしてくれ。無罪はにはできないかもしれないけどできる限りの手は尽くしてみる。」

「あ、ありがとう。」

なのはは笑顔でクロノにお礼をいう。
それに顔を赤くするクロノとおもしろくなさそうにするユーノだった。
トレインはそれを面白そうに見ていた。

すると今度はリンディがトレインに向きなおった。

「トレイン君、裁判の準備ができ次第すぐ連絡を入れるわ。そう時間はかからないと思うけどその間はそっちでゆっくりしておいて」

「OK。とりあえずのんびりしてるわ。」

そしてエイミィがトレインとリニスのそばに寄ってきた。

「ゆっくりと休んできてねトレイン君?」

「おめーの仕打ちは忘れねーからな。」

「やだなーちょっとした冗談だよ?」

エイミィはくすくすと笑っていた。

「あと、リニスさんの調整をしたけど今後も定期的なメンテナンスが必要になると思うけど…。」

「それに関しては心配無用ですよ。私はデバイスの扱いにも長けているつもりですからメンテナンスも自身で行えます。」

「そっか、なら大丈夫だね。」

するとクロノもそのれ加わり

「正直リニスのことに関してもいろいろ言及したいのだけれど君も彼女もデバイスではないと言い切るのであれば僕からなにも言うことはない。彼女のことに関しては僕が何とかして見せるよ。」

「ああ、ありがとな。お前も頑張れよ、期待してるぜ?」

それだけ言ってトレインは転送ポートに向かった。
リンディたちは四人に対して手を振りながら見送った。









転送先はクロノ達と最初にあった場所だった。
時間はちょうどお昼前といったところだった。

「さて、ようやく戻ってきたわけだな。」

トレインがホット一息つくように言った。

「そうだね。トレイン君はこれからどうするの?よければうちに……お母さんも喜ぶと思うし。」

「う~ん、せっかくだけどまずは戻らねーとまずいところがあるからよ。」

「そういえば僕らと別れたあとどこにいたんだい?」

ユーノがトレインに問う。
リニスも今後のことをトレインから聞かされていなかったためどうするのかは気になった。

「あー、居候してるところがあるからそこにいったん顔を出してくるわ。プレシアのところに何にも言わずに行っちまったからな。」

「そうなんだ…。」

少々残念そうな顔をするなのはにトレインは

「すぐ近くだからまたすぐにでもそっちに顔を出すぜ。それに俺はすぐにフェイト達の裁判の証言台に立たねーといけないからのんびりもできないからな。」

「そういえばそうだったね。本当なら僕が言ったほうがいいと思うんですけど…。」

「まあ、今回の背景を詳しく知ってるのは俺とこいつくらいだから。お前がわざわざ出る幕もねーさ。」


そして公園の入り口近くで四人は互いのパートナーをごとに分かれた。

「じゃあ、また今度。」

「ああ、こっちの用事がすんだら翆屋にも顔出すから桃子たちによろしく言っておいてくれ。」

「うん、リニスさんも…。」

「はい、マスターと一緒に遊びに行かせてもらいますね。」

リニスは笑ってなのはに答えた。
なのはもそれに答えるように笑顔で答えた。


そしてそれぞれの帰路についた。








「マスター、居候している家のかたはどんな方なんですか?」

「なのはと同い年くらいのガキだな。ジュエルシードの暴走でボロボロになった俺を看病してくれてよ、そいつも親なしらしくて俺にここで暮らせばいいっていいだしたから少しの間世話見なったんだ。」

トレインはのんびりと後ろに手を組みながら説明した。
正直な話何も言わずに出てきてしまってお人好しのはやてを心配させてるだろうと思っていた。

「それでは心配なさってると思いますよ。」

「まあな…。」

それ以上にリニスのことをどう説明するかを考えていた。

「私のことは親戚のものだと言っておけばいいでしょう。」

「うまく口裏合わせねーとな。」




そのまま歩みをすすめ八神家に到着した。
そしてドアを開き中に入った。

「おーっす今戻ったぜ。」




シーーーーーーーーンッ

静まり返る八神家に不気味さが漂っていた。

「ご不在なのでしょうか?」

「いや、でも鍵はあいてたぜ?」

二人で不審がっていると急に物音がしてこちらに近づいて来ていた。

バンッ!!

勢いよくドアが開きそこには息を切らせながら車いすに乗っているはやての姿があった。

「はぁ、はぁ、はぁ、トレイン君…。」

「わり、ちょっと出かけてたわ。」

その辺を散歩してきたように軽い感じで答えたトレイン。
はやてはトレインに近づき腰のあたりに抱きつくように顔をうずめた。

「は、はやて?」

「…っ、ひぐっ、バカ…。」

「へ?」

「ばかっ!!!私がどんだけ心配したと思ってんの?」

トレインのことを見上げると目に溜めた涙がこぼれおちていた。
子どもとはいえ女に泣かれることはトレインは苦手でどうしていいか分からず戸惑っていた。
はやてはそのままトレインにしがみつき放さなかった。

「はやて…。」

トレインはそんなはやてのあたまをなでた。
はやても落ち着きだし一言だけ










「お帰り…トレイン。」
















[5985] 仮設定?
Name: ショージ◆e893f68c ID:cabfbd21
Date: 2009/04/13 19:04
トレイン・ハートネット ユニゾン状態


          少年時    成人時
 保有魔力量  :A(240000~)⇒A+(430000~)
  魔力資質  :A⁻     ⇒A⁻
  身体能力  :S      ⇒SS+    
近距離戦闘技能:S⁻       ⇒SS
中距離戦闘技能:S+      ⇒SS+  
遠距離戦闘技能:S       ⇒S+
総合戦闘技能 :S      ⇒SS
状況判断能力 :SS
空間把握能力 :S
  指揮能力  :A
単体戦闘能力 :S+     ⇒SSS⁻
広域戦闘能力 :B
  空戦適正  :None
  陸戦適正  :AAA
  補助能力  :B
  攻撃能力  :AAA(SS⁻)⇒S+(SSS⁻)
  防御能力  :AA⁻      ⇒AA+
  陸戦     :S⁻      ⇒SS+
  適正ポジション:????

保有スキル・技能

細胞放電現象:ナノマシンと細胞核の結合により電気エネルギーが発生する現象。しかし、あくまで発生する電気エネルギーは静電気程度の微弱なもの。高い集中力によっては大きな電気エネルギーを発生させることも可能。

魔力変換資質「電気」:リニスとのユニゾンにより得た能力でトレインが元来持っている能力ではない。これはリニスが保持している資質で、トレインはユニゾンの恩恵の一つとして利用することが可能。変換効率の良さから細胞放電化現象より負担は少なく自身、もしくはリニスの魔力の続く限り電気エネルギーを発生させることができる。

最大出力電磁銃(フルパワーレールガン):細胞放電現象によって充電された電気エネルギーではなくリニスの補助により魔力で生成された電気エネルギーを用いることで従来の電磁銃をはるかに上回る弾速、威力が格段に向上された。その貫通力、威力はAAA以上の高ランクの魔導師のバリアジャケットですら軽々と破壊、貫通するほど。また有効射程距離が従来のものとは比較にならないほど長い。
欠点としては反動が大きく魔力による身体能力強化が施されていても少年時では命中精度が大きく落ちる。

速射電磁銃(クイックレールガン):上記と同様に魔力による電気エネルギーを用いることで通常弾のように速射する電磁銃。弾速、威力ともに通常の電磁銃よりも若干落ちるものの連射がきくようになったため通常弾と変わらぬ運用が可能になった。

放電加速(ディスチャージ・ブースト):魔力による電気エネルギーによってなされる身体能力の強化。おもに脚力の強化に使用されるが近接攻撃を伴うときは腕力の強化にも使用する。その超スピードはほとんどの人間には捉える事の出来ないほどのものでスピードが自慢のフェイトよりもトップスピードでは上回っている。しかし体にかかる負担も大きくそのスピードについていくだけの動体視力がなければならないのでトレインでなければ運用は難しい。


総評:
唯一の不安材料であった防御面がリニスとのユニゾンによりバリアジャケットの精製の可能なったため一掃された。もともと高かった身体能力が魔力によりさらに向上され身体能力や、射撃能力に関しては管理局内の魔導師のなかでは随一のものになった。魔力によって生成される電気エネルギーにより電磁銃や脚力、腕力の強化も可能となりハーディスによる打撃攻撃も恐ろしいまでに威力が跳ね上がっている。
脚力強化による高速移動は瞬間的なものではなく持続させることも可能。しかしこの高速移動はトレインの強靭な肉体と驚異的な動体視力があってこそなせる技であり、いきなり使いこなしたトレインにユニゾンしているリニスも驚いていた。
また決め手となる攻撃手段の少なさも魔力による電気エネルギー変換によって改善された。魔力量が総じて高くはないトレインだが攻撃手段はトレイン、バリアジャケットの精製などの防御面をリニスの魔力で賄うことで効率的な魔力運用を可能としている。
しかし、広域戦闘に関しては全体と比較して見劣りするものがある。また、調整不足のせいか長時間のユニゾンはまだできない。
それでも単体、対人戦闘に関しては無類の強さを発揮する。


装備・デバイス

ハーディス (質量兵器)
オリハルコン製のトレインの愛銃で攻防一体となった武器。並のデバイスよりはるかに高い強度、性能を誇る。対電気系統の攻撃に対してはほぼ無効化し蓄電する性質を持ち、その他の攻撃もほぼ防ぐことができる。







リニス (ユニゾンデバイス)

保有魔力量  :AA+(700000~)
  魔力資質  :AAA
  身体能力  :A
近距離戦闘技能:AA+
中距離戦闘技能:AA+
遠距離戦闘技能:AA
総合戦闘技能 :AA
状況判断能力 :AA
空間把握能力 :AA
  指揮能力  :A+
単体戦闘能力 :AA
広域戦闘能力 :A
  空戦適正  :AA
  陸戦適正  :A
  補助能力  :AAA+
  攻撃能力  :B
  防御能力  :AAA+
  総合     :AA
  適正ポジション:フルバック


保有スキル・技能

魔力変換資質「電気」:魔力を電気エネルギーを変換することができる。

総評:
トレインのパートナー兼ユニゾンデバイス。以前はフェイトやアルフを育て上げたこともあり、魔導師としての実力も高かった。今は以前ほどの実力はないがそれでも一線級の魔導師を超える実力を有している。遠距離から近距離まで距離を選ばず戦えるオールラウンダーであるが決め手になるほどの攻撃能力を有していない。しかしそれはリニスがトレインのサポート役に徹するためで、補助能力、防御能力は随一である。またデバイスの扱いにも長けておりフェイトのバルディッシュなど個人に合わせた高性能のデバイスを作り上げることができる。使い魔ではなくなったもののほぼ生命体と変わらないが成長はしない模様。



[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第20話
Name: ショージ◆e893f68c ID:cabfbd21
Date: 2009/05/09 14:57
「もう黙ってどっかに行ったりせんといてや?」

「あ~、考えとく。」

苦笑しながらあいまいな回答えをするがはやてはそれを許さなかった。

「ダメや、考えるだけじゃなくて行動で示してや。」

「はぁー、わかったよ。今度からちゃんと報告すっから今回は勘弁してくれ。」

はやてとしてはまだまだ納得いかないが今回はこれでいいだろうと

「今回はええけど今度やったら……どうなるかわかっとるね?」

「OK。」

そしてはやてはトレインの後ろにいるリニスに気がついた。
リニスはにっこりと笑いながらお辞儀をした。
はやてもそれに反応し軽く頭を下げた。

「トレイン君、この人は?」

「え~と、こいつは……。」

どう説明したものかと考えていたトレインだったがリニスはすぐさま口を開き説明し始めた。

「私はトレインの遠縁の親戚のリニス・ハートレットと言います。」

「えと、私は八神はやてと言います。トレイン君は確か家族はいないって話だったと思ったんですけど?」

はやては当然の疑問をぶつけてきた。
実際トレインは天涯孤独の身であったのに間違いはない。
しかし、リニスは動揺することもなく言葉を続ける。

「ええ、最近までまったく連らくがつかずじまいで探していたんですけどようやく見つかりまして。それでここ数日私たちのところでお話をしていたんです。」

「はぁ、そうなんですか。」

いまいち要領をえないはやてだったがリニスの言葉を否定する要素もないのではやては納得することにした。
しかしここでひとつの不安が生まれた。

「もしかしてトレイン君を引き取るとかいう話ですか?」

「いえいえ、あくまで戸籍上の問題とかですのでそういうことではないですよ。それについてはこれからゆっくり考えていけばいいですし。」

リニスは全く動じることなく言葉をつないでいく。
その様子にトレインはただただ感心するだけだった。
















その後嘘で固めた事情でここ数日戻ってこれなかった理由をはやてに説明した。
魔法関係の話をはやてにするわけにもいかなかったからだ。


「トレイン君もよかったな?」

「ん?」

なんのことかと疑問に思うトレインにはやてが言う。

「親戚の人が見つかって、しかもこんな美人なお姉さんや。」

はやてはからかうようにトレインに言うがトレインは首を横に振り。

「何言ってんだか…そんないいもんじゃねえぞ。」

トレインはげっそりとした表情で言う。
リニスに看病された数日を思いだしているようだった。
そんなトレインの横でリニスがわざとらしくため息をつき

「この子は素直じゃなくてほんとに困ってるんですよ。はやてちゃんも苦労するわよ?」

「へ?それってどういうことですか?」

「はやてちゃんはまんざらでもないのかしら?」

リニスがいたずらっぽい視線ではやてをみるとはやては顔をうつむかせてしまった。
トレインはその様子をみて

「リニスもはやてをからかうのもそれくらいにしておけよ。」

そんなことをいうトレインにリニスはおもしろくなさそうに

「そんなつまらないこと言って…。」

と拗ねた真似をする。

(こいつはほんとに油断ならねえな。)




そのあとしばらくとりとめのない会話をつづけていた。
そしてトレインははやてに切り出した。

「はやて。」

「なんやトレイン君?」

トレインは真剣な表情ではやてに向き合った。
いつになく真剣なのではやてもすこし緊張した。

「何日かはこっちにいられるけどよ、少ししたらまたしばらく出かけることになった。」

「え?どうしたん?」

「ちょっと事件に巻き込まれてな。俺もリニスも証言者として裁判に出ねーといけなくなったんだよ。」


そう、トレインは重要参考人として裁判に出頭してほしいとリンディたちに頼まれたのだ。
本来なら勘弁してほしいのだがプレシアやフェイトが関わってることから断ることもできなかった。
なによりプレシアに生きろといったこちらとしてそのまま放っておくのも釈然としなかったのも理由のひとつである。

「どのくらいで戻ってこれるん?」

はやてが不安そうに聞いてくる。
リニスはすこし困ったように答えた。

「書類の手続きとかいろいろ面倒なことが多いですから…もしかしたら年内に戻れるかどうか微妙くらいかもしれないですね。」

「そ、そんな……。」

落胆したような表情になるはやて。
トレインはそんなはやてに言った。

「おいおい、一生の別れになるわけじゃねえしそんなに落ち込むなよ?」

「だって!!!だって…ようやく戻ってきたとおもうてたのにまた何か月も戻らんなんて。」


トレインははやてに近づき視線を合わせるようにかがんだ。

「大丈夫だ、今度は連絡先も教えっから。それに俺からも連絡は入れてやるしできるだけ早く戻ってきてやるからよ。」

「……ホンマ?」

「ああ、ぜってぇーな。」


はやてはしぶしぶといった感じだったが納得した。

「わかった、絶対連絡は欠かさず入れてや?」

「大丈夫ですよはやてちゃん。私がさぼらせませんから。」

リニスは胸を張りながらにっこりと笑った。
それにつられはやても笑い

「そうですね、リニスさんが付いてるんやもんね。すこしは安心できるわ。」

「おい、俺よりさっき会ったばかりのそいつのほうが信用できるのかよ?」

心外だと言わんばかりにトレインが言うがはやては

「当然やん。」

笑顔でそう言い切った。

「ヒデェ……。」



トレインはその日は八神家で一晩を過ごすことにした。
もちろんリニスとはやての夕食を食べたあとの就寝の際にははやてはおろかリニスまで忍び込む始末だった。
おかげでトレインは眠ることはできても心身ともに疲労が抜けることはなかった。














夜が明け、朝食を済ませたトレインはリニスを伴って八神家をでて高町家に向かった。
リニスを連れていったのはあそこのお人よしの家族を安心させるためだった。
自身は25で成人している身としては心配されるようなことはないのだがなにせ体は10前後の子供とかわらないので向こうはそうは考えてくれないだろう。
リニスを遠縁の親戚とでも説明し保護者としておけば一人で出ていくよりは安心するだろうとトレインは考えた。


「というわけだ。昨日見たいに頼むな?」

一通りの説明を済ませリニスに昨日のはやてに説明したようにするよう頼む。
リニスもしっかりと頷いた。

「任せてくださいマスター。」

「返事いいんだけどよ、マスターってのはいい加減やめてもらえねえか?」

トレインはうんざりするように言った。
自分はそんな風に呼ばれるような人間でもないと思っているトレインにとってマスターという呼び方はくすぐったいだけであった。
かつてキョーコに様付で呼ばれた時も違和感があった。

(まー、あいつの場合は意味が違ってたけどよ。)

しかしリニスは首を縦には振らなかった。

「いいえ、マスターが私の相棒であると同時に私にとってあなたはマスターなのです。」

力強く言い切るリニスの様子にトレインも匙を投げた。

「わかったよ、好きにしな。けど桃子たちの前では気をつけろよ?」

「わかってますよ、マスター。」

(ほんとに大丈夫か?)

リニスの猫かぶりには感服しているところがあるが今朝からやな予感がなくならない。
トレインは高町家に到着する前からリニスが何か企んでいるような気がしてならなかった。
















高町家に到着し中に上がるとリニスの紹介を終えたあと近況報告を行った。
内容のほうはリニスのお得いの嘘八百で乗り切り桃子たちを納得させた。
その姿にトレイン、なのはとユーノは感心していいのかあきれたほうがいいのか、複雑な表情で見つめていた。
リンディが一度こちらにやってきて桃子たちに嘘をまじえた話で桃子たちを納得させていた以上にリニスは口が達者だった。

(り、リンディさんよりすごいかも…。)

なのはは苦笑しながらリニスを見ていた。

一方桃子たちは意気投合したかのように楽しげな様子で会話をしていた。
特に気にするほどの内容ではなかったのでトレインもだされたケーキと紅茶を口にしながら適当に聞いていた。
現在、リニスが海外のほうへ用事がありそれにトレインが付いていくことを説明していた。

「じゃあ、少しの間海外のほうへ?」

桃子が驚くようにリニスに問う。

「ええ、この子も私も行かなければいけなくなってしまって……もしかすると数ヶ月くらいかかるかもしれません。」

「あらあら、でもこちらのほうには戻って来るということかしら?」

「はい、貸し住まいという形ですけど近くで部屋を借りることになりまして。」

リニスが言っているのは八神家であろう。
間違ってもおらず本当のことである。

「じゃあトレイン君の学校はどうなさるのかしら?」

桃子がリニスに聞いた。
このことはトレインが高町家にいたときから気にしていたことだった。
桃子はトレインを養子にということまで考えていて学校のほうにも通わせないといけないと考えていた。
トレインのほうとしてはいまさら子供と一緒になって学校に行くということは考えられなかった。

桃子は言った。

「もしこちらに戻ってくるめどが立ちましたらこちらに連絡していただければなのはの学校のほうに掛け合ってトレイン君の編入の手続きを進めておきますよ?」

「え!?」

さすがのトレインもこのセリフは流せなかった。
トレインからすればその気は毛頭なかった。
しかしすぐそばにいるなのはが呆然としていたがすぐさま嬉しそうな表情に変わり。

「うん!!なのはもそれがいいと思います!!!」

元気よくそう言い放ったなのはにトレインは呆然としていた。

(おいおい、なにをいってんだよ?)

「アリサちゃんもすずかちゃんも喜ぶと思うし……なのはもうれしいかな?」

顔をすこし赤くさせながらいうなのはにトレインは心の中で突っ込んだ。

(ちょいまて!!!おまえは俺が25だって知ってるだろう?)

だんだんまずい方向へ話が進んでいることに一抹の恐怖を感じていた。


「そうですね……。」

リニスがうなりながら考えていた。
トレインはリニスに念話で言った。

(リニス、断っちまえ。)

(ですが…。)

(25の俺がいまさら学校になんか行けねーつーの!!!それに金はどうすんだよ?)

(確かに…そうですね。)

(なのはの学校は確か私立だ。金もかかる。そもそも宿なしの俺たちがそんな金を持っているわけが…。)

トレインに冷たい汗が流れた。
あった。

トレインたちは持っていた。
クロノから報奨金として渡されたお金が。

リニスもそのことに気づいたようで

「わかりました、その時になったらご連絡するので頼んでもよろしいでしょうか?」

(おいっ!!!!)

トレインのことを無視するかのごとく桃子に言うリニス。
桃子も笑って快く了承する。


ここでトレインの聖祥への編入が決定したのである。














高町家での帰り道トレインは暗いオーラを背負っていた。

「どーしてこの年で小学校なんぞに…。」

夕焼けの景色がトレインの雰囲気とマッチしトレインの悲壮感を助長していた。
リニスは特に気にすることもなく言った。


「そんなことを言わすに通ってみてください。マスターにとっていいことだと思いますよ。」

「いまさらガキと一緒の勉強ができるかってーの。」

恨めしそうにリニスを見る。
リニスはため息をつき一転真剣な表情でトレインに言った。

「マスターの過去については私も知っています。ご両親を幼いころに亡くされ一人で生きていたことも。」

「お、おう。」

突然にリニスが真剣な表情に変わり少し面を食らったトレイン。


「マスターは普通の子供が普通にすることをできずに大人になってしまいました。」

「確かにな…そいつは否定しねえよ。けどそいつを後悔してはいねーぜ。その過去があるから今の俺があるんだからな。」

トレインはリニスをしっかりと見据えて言い切った。
リニスも黙って頷き

「私もマスターの生き方を否定するわけではありません。ですがせっかくやりなおす機会が…できなかったことをする機会があるのですからそれをしてみてはいかかがですか?」

「リニス…。」


リニスは少しかがみトレインに視線を合わせる。

「最終的な判断はマスターに任せます。マスターが嫌がることを私は強要できませんから…。」

そう言って悲しげに視線を逸らす。
そのようにばつが悪いように頭をかきながらトレインはしぶしぶ

「……わかったよ。」

「………。」

「通ってやるよ、学校にな。」

「…本当ですか?」

「本当だ。」

トレインははっきりとそう言い切った。
するとリニスはこちらに視線を戻すと
























満面の笑みだった。


「よかったですー。」

「おい。」


「じゃあ、さっそく編入試験の対策と…制服の準備を頼まないといけませんね。」

喜々としながらスキップしていくリニスにトレインはおいてかれていた。




リニス、フェイトやアルフを育ててきた彼女は誰かの親になることを強く望んでいたのであった。



















そして次の日

「トレイン君お待たせ。」

「おう、来たか。」

トレインは駅のバスターミナルに来ていた。
そこではやてと待ち合わせをしていたのだった。
無断でいなくなったことを根に持っていたはやてに一日付き合うことになり、はやてに町を案内してもらうついでに出かけることになった。

住んでいるところは一緒なのだから待ち合わせをする必要はないのだがリニスが変に気を使った結果こうなった。
はやてのほうも乗り気でそれに同意したのであった。

「私男の子とこうやって出かけるの初めてや。」

はやてはすこし恥ずかしそうに言った。
トレインは今までにリンスやキョウコといった面々に連れまわされた覚えがあるので初めてというわけではなかった。
そしてサヤとも…

(あいつとはデートって感じじゃなかったしな。)

「トレイン君?」

妙に落ち着いているというか心ここにあらずといったトレインにはやては首をかしげる。
トレインはそれに気づきすぐにはやてに視線を向ける。

「わりぃ、ちょっと昔のことを思い出してな…。」

はやては不思議そうな顔でトレインを見つめていた。

「昔のこと?」

「ああ、

「あ、悪い。ちょっと考え事しててな。」

苦笑しながらトレインははやての車いすを握る手を強く握り駆け出した。

「ちょ、ちょっとトレイン君!?」

「せっかくの機会だしよ時間は有効につかわねーとな。」







トレインたちは駅を中心に海鳴市を見て回っていった。
特に特別なことをするわけでもないゆっくりと街を見て回った。
そのトレインのポケットにはくしゃくしゃになった紙が入っていた。

そこに書かれていたのは


「リニス考案、らぶらぶデートの方法。」




トレインにとって天地がひっくりかえっても実行することのない内容であったことをここに記す。





昼食を済ませ、落ち着いてきたところではやてが行きたいと言っているところに行くことになった。

「ここや。」

「ここは?」

割と大きめなきれいな建物であった。
トレインがまじまじと見ているとはやてが言った。

「ここは私がよく来ている図書館なんや。」

「と、図書館…。」

本の一冊目の目次を見ただけで音を上げてしまうトレインにとってまさに無縁の場所であった。
顔をひきつらせているトレインにはやてが顔を覗き込む。

「どうしたん?トレイン君?」

「い、いや。俺にとってはあまりにも無縁の場所だからよ。」

「なんや、トレイン君は本は読まんの?」

「…目次見ただけで駄目だな。」

そんなトレインの言葉にしかたないといった感じではやては言った。

「ならええ機会や、今日は一冊何か借りてくで。」

「げ!?」

「拒否はさせへんで。」

いじわるっぽい笑顔でトレインにそう告げた。




中に入ると少し埃っぽい臭いが立ち込める静かな空間が広がっていた。
トレインは騒がしいところが好きなわけではないがこの何とも言えない空間は苦手だった。

「うへぇ~。」

「もう、そんな顔せんで本を見るで?」

はやてにうながされ中を進んでいくとそこにはどこか見覚えのある人物がいた。

「と、トレイン君?」

紫色の特徴のある長髪をしているおとなしそうな少女。

「すずかか。」

月村すずかがそこにいた。









「わたしは八神はやてです。よろしくなすずかちゃん。」

「えと、わたしは月村すずかです。よろしくね。」


互いに自己紹介を終え二人とも向き合いトレインに聞いた。

「「トレイン君、どういう知り合いなの?(んや?)」」

ちょっと戸惑いながら二人を見据え

「すずかは前に居候してたとこの友達で、はやては今俺が居候してるんだ。」

にじり寄ってくる二人に多少の恐怖を感じつつ説明をした。
それを聞いて二人は一息つき互いに向き合った。


「すずかちゃん…でええかな?」

「うん、わたしははやてちゃんで…。」

「すずかちゃんはよくここに来るん?」

「うん、私も本を読むのが好きだから、休日とかはよくここにきてるの。」


互いに本好きなせいか会話も弾んでいた。

その様子をみてお邪魔かなと気を利かせてふりをしてその場から立ち去ろうとするトレインを見逃すほどはやては甘くなかった。

「まちや、どこに行くんやトレイン君?」

「い、いやおれはお邪魔だろうと思ってな。」

「そんなこと言って本を読むのがいやなんやろ?」

「え?トレイン君は本が嫌いなの?」

すずかが意外そうに尋ねた。

「いや、嫌いってわけじゃ…。」

悔し紛れに言った一言だったが

「すずかちゃん、一緒にトレイン君のための本を探すで。」

「うん。」

普段おとなしいすずかもなぜか乗り気であった。

本好きにとってトレインのような存在は許容できない者らしい。













デート!?から帰ったトレインは八神家の自室に戻りくつろいでいるといきなり目の前にモニターが現れた。

「いきなりごめんなさい。」

「ほんとにいきなりだな。」

目の前に現れたモニターに映っていたのはリンディだった。

「んで?なんかようなのか?」

「特に緊急というわけでもないのだけれど……プレシアが明日にでも護送されることになったの。」

プレシアという言葉をきいてトレインは表情を引き締めた。
あの戦いからまともに会話もしていなかったので彼女がうまく踏ん切りがつけられたが気になっていた。

リンディはそのまま言葉をつづけた。

「それで護送される前に一度あなたと話がしたいと言っているの。」

「俺と?」

「ええ、今から20分ちょっとでそれほど時間は取れないのだけれどどうかしら?」

「問題ねーよ。」

「わかったわ、今から彼女のほうに通信を切り替えるわね。」

リンディがそういうとモニターは一瞬ジャミングがかかったようになったがすぐさま画面が切り替わりそこにはかつての大魔導師が映っていた。

「ずいぶんと顔色がわりーな。」

「そうかしら?これでもここ最近ではずいぶんましになったのだけれど?あなたのほうは相変わらず見たいね。」

あってそうそう憎まれ口のようなものを言い合いお互い苦笑する。

「あんたが話をしたがっているってきたけどよ、なんか用か?」

「ええ、あなたのことを詳しく教えてほしいの…あなたが死なせてしまった親友のことを…。」

プレシアは真面目な表情でトレインを見据え言った。
トレインもいつもの緩い表情ではなく厳しい表情をしていた。




「わかった…、あんたにはこいつを聞くだけの権利はありそうだからな。」

「ありがとう。私としても気になるのよ、私と同じと言っていたあなたがどうやってそうなれたのか。」


そしてトレインは淡々と口を開き話していった。

幼少時代の両親の殺害。
生きるために銃を手に力を必死に求めたこと。
そして組織に拾われ抹殺者として生きてきたとき。

自分を変えるきっかけになった親友との出会い、別れ。
親友を殺したパートナーとの決着。


プレシアは口をはさむことなく黙って聞いていた。

そしてすべてを語り終えた。



「強いわね、あなたは。」

「そうか?俺はやり方を貫いただけだ。」

実際トレインは自分とプレシアは紙一重の差だと感じていた。
自身も復讐にかられていた時期もあった。

「私にはあなたのような生き方はできなかった。」

「んな悲観することもねーだろ。今からでもやり直しはできるだろう?」

「ふふふ、そうね…。」

自嘲気味にプレシアがつぶやく。
トレインはため息交じりにその様子を見ながら口を開いた。

「あんたがどう思ってるかは知らねえけど、生きている限りどうにでもなるはずだぜ?」

プレシアは相変わらず自嘲気味な笑顔を浮かべたままだったが少し表情が明るくなった。

「わかったわ少しは前向きに生きてみせるわ。………あなたは聞かないのね?」

「何をだ?」

「フェイト達のことを。」

トレインはプレシアの口からその言葉が出るものとは思っていなかった。

「あんたからあいつらのことを話すとは思わなかったな。」

「そうね…正直今でもあの子を見ていると穏やかではいられないわね。」

「さりげなく物騒なことを言うな。」

「で、あなたはどうして聞かないのかしら?」

トレインは頭をかきながらめんどくさげに答えた。

「どんな人間にしろ好き嫌いはあるもんだろ?家族だから、親子だからって好きでなくちゃいけねえってわけでもねえ。俺は誰かを好きになれ、やさしくしろなんて無責任なことも言えねえしな。」

「……。」

「俺から言えるのは……一度でいいからフェイトとゆっくり話をしてみろってことだな。」

「話…。」

「あんたはあいつにアリシアの影を重ねてみてきた。今度はあいつをフェイトとして話をしてみな。それからの判断はあんたがすることだ、誰も非難する権利はねえはずだ。」






少しの間互いに口を閉じたままだった。
そして指定された時間が迫っていた。

「あなた…アリシアに会ったの?」

トレインはふと顔をあげプレシアを見た。
プレシアが言っているのは最後の攻防でトレインを支えていたアリシアの幻のことだろうと思った。

「ああ、あんたにやられたときにな。現実かどうかは知らねえけど。」

「あの子は……優しかった?」

トレインはその問いに頷き

「死んじまってるのにあんたや妹のフェイトのことを心配してたぜ。」

「そう……。」






そして時間も残り僅かになりプレシアがトレインに聞いた。

「あなたはこれから管理局に属するつもりかしら?」

「いや、そのつもりはねえな。組織に縛られたりするのは俺の性にあわねえしな。」

「ここの艦長は残念がっているでしょうね。」

確かにリンディとしてはかなり残念だった。

「でもここまで魔法にかかわってしまったあなたが管理局と無縁でいられる保証はないわ。これは恩人の…いえ友人のあなたに言える私からのアドバイスよ。」

友人ということばに面食らったがプレシアの真剣な表情に気を引き締めた。

「管理局は絶対の正義ではないということよ。あなたは分かっているかもしれないけど管理局の闇はかなり根深いわ、気をつけなさい。」

「ああ、肝に銘じておく。」


「いろいろあったけどあなたという人間に会えてよかったわ。」

「そうか…。あんた達の裁判の証言でおれもそっちに行くからよまた話相手位にならなるぜ?」

「ありがとう。それじゃあ、またいつか…。」



それだけ言ってプレシアを映していたモニターは消えた。















そしてその十日後フェイトの護送とともにトレインはミッドチルダ行きが決まった。



[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第21話
Name: ショージ◆e893f68c ID:e87f56ea
Date: 2009/06/17 13:17
海辺に面した橋の上でフェイトとなのはが立っていた。
ちょっとしたすれ違い、お互いに譲れないものがあったから分かり合えなかった二人だがようやく向き合えることができた。
会話する二人の表情は穏やかで笑みに満ちていた。




そんな二人に気を使ってかアルフとユーノ、クロノは離れた所からその様子を眺めていた。
感極まったのかアルフは涙を流していた。
しかしその場にいるはずのトレインはまだそこにはいなかった。












「んじゃ行ってくるわ。」

どこか近所に買い物に行ってくるような感じで言うトレインにはやては

「ちゃんと連絡入れるんやで?」

心配する親のように言った。
するとリニスがはやてに言った。

「任せてくださいはやてちゃん、私がその辺の指導はしておきますから。」

力強く手を握りながら言いきった。
それをみてはやては安心するような表情で

「リニスさんがそういうなら大丈夫やな。トレイン君、気をつけてな?」

「ああ、何個か納得いかねーこともあるけどよ……お前も体には気をつけろよ?」

「うん、私は大丈夫や。元気に二人が帰ってくるのを待っとるから。」

以前のような影のある笑顔ではなく力強さの感じられる笑顔をみてトレインも笑い

「土産も買ってくるからよ楽しみにしてろよ。」

「うん!!!」

「じゃあ、行きましょうトレイン?」

「ん?……ああ、それじゃあな。」

「いってらっしゃい。」


はやてに見送られトレインたちは八神家を後にした。










「やっぱりはやてちゃん一人にするのは心配ですね。」

八神家を出て少しするとリニスが突然つぶやいた。
確かにはやての病状などを考慮すれば心配すべき点はいくつもあるだろう。
しかし、トレインはそれほど心配はしていなかった。

「そうか?あいつならなんとかなるだろう。」

「そうでしょうか?」

リニスは少々納得がいかないようにトレインに聞いた。

「仮にもあいつは今まで俺らが来るまで一人で生活してきたんだ、体のことは心配かもしれねえけど先生も悪かねえから大丈夫だろう。」

トレインも心配していないわけではないがそれ以上にはやてを信頼していた。
最初会ったときはどこか危うそうな表情をしていたがここ最近でだいぶましになってきているとトレインは感じていた。

「心配してやるのもいいけどあいつのことを信じてみようぜ?」

「マスター……。」

その言葉にリニスは立ち止まり歩みを止めた。

「?どうしたんだよ?」

リニスはそのままトレインに近づき

ギュっ!!!

いきなり抱きついた。

「な!?何してんだっ!!!」

「リニスは感激しています。マスターの心遣いに、私はあなたのようなマスターに出会えて幸せです。」

そういうとますます抱きつく力を強めるリニス。

「それはいいから抱きつくな!!!何かにつけておまえは抱きついてくるな!!!」

「だって~、マスターはこんなに小さくてかわいいですから…。」

うっとりするようにつぶやくリニス。
八神家にいる間に襲撃に近い形でトレインはリニスに何度か襲われ!?かけていた。
ここ数日は枕を高くして眠れた記憶がないトレインだった。














トレインたちが集合場所にたどり着いた。
ちょうどクロノ達に指定された出発時間ぎりぎりであった。
フェイトとなのはの様子を見ていた三人だったがクロノがトレインたちが来たのに気がついた。

「時間ぎりぎりか…君らしいな。」

クロノはすこし呆れているようなそぶりを見せてはいるが以前のようなとげとげしさは少しだがなくなっていた。
一方のトレインは悪びれる様子もなく。

「時間通りきたし問題ねーだろ?」

と笑いながら答えた。
トレインも三人が見ていた方向へ視線を移すとフェイトとなのはがお互いのリボンを交換しているところだった。

「………。」

「麗しい少女の友情ですね。」

黙ってみていたトレインと違いリニスは少し感動するようにつぶやいた。
しかしそのリニスを凝視する人物がいた。

「り、リニス?」

先ほどまでなのはたちのやり取りをみてないていたアルフだった。
信じられないものを見るようにリニスに近づく。

「に、偽物じゃない……リニスなの?」

その言葉にリニスは首を振ろうとするがトレインがリニスの服の裾を引っ張った。
リニスがトレインに視線を向けると首を振っていた。

「マスター…。」

「おまえはあいつらの親代わりだったんだろ?」

リニスはアルフたちにとって唯一の家族とも言えるような存在だったことはトレインも承知だった。
リニスは自分の存在がフェイト達を縛ることになると考えていることも知っていたが、トレインはフェイト達にとってまだまだリニスのように見守る存在が必要だと感じていた。

一方のリニスもトレインに促されアルフと向き合った。
そして穏やかな表情で


「大きくなりましたねアルフ。」

「り、リニス………うわぁぁぁぁぁぁーーーん。」


なのはとフェイトの姿を見て涙腺が緩みっきりのアルフではリニスとの再会で涙を止めるすべはなかった。
アルフの鳴き声につられるようになのはとフェイトこちらにやってきた。

「アルフさんどうしたんですか?…フェイトちゃん?」

「………。」

駆け寄ったなのはがアルフの姿を見て何事かと思ったらフェイトの様子もおかしくなっていた。
何か信じられないものを見るような眼でリニスを見ていた。
そしてゆっくりと歩みをすすめリニスの目の前にきた。


「リニス……。」

呟くようにリニスの名前を呼んだ。
リニスは泣いているアルフの頭をなでながらも笑顔で

「フェイト……あなたも大きくなりましたね。」

「………。」

フェイトは何も言わずにリニスに抱きついた。













一方展開についていけないなのはたちにも大まかな事情をトレインは説明した。
それを聞いたなのははつられるようによかったね、と言いながら泣き出した。
正直お涙ちょうだいな場面は苦手なトレインは苦笑しながら見守ることしかできなかった。


トレインは落ち着いているクロノに向きなおり

「あー、出発時間はいいのか?」

「ああ、こんなことがあるだろうと思ってある程度余裕を持っておいたから少しは大丈夫だろ。といってもそろそろ出発したいのだけれど…」

クロノは四人に目を向けながら言った。
トレインもため息をつきながら四人に近寄りフェイトの肩を叩いた。

「今は時間がねーからよ、あとはアースラの中ででもしとけ。」

「………うん。」

よく見るとフェイトの目は赤くなっていた。
アルフのほうは見るまでもなかったが。
リニスも落ち着いているようだったが少し赤みがかっていたのはトレインの見間違いではないだろう。

そしてトレインはなのはのほうに向かった。
先ほどまで泣いていたせいかなのはまで目が赤くなっていた。

「おまえんとこにもずいぶん世話になったな。」

なのはは涙を軽く拭いトレインに向きなおった。

「ううん、私こそフェイトちゃんとのことでトレイン君には助けてもらってばかりでなんにもしてあげられなかったし…。」

「何言ってんだよ。今回のことはお前が頑張ったからの結果だろ?」

「そんなことないよ。くじけそうになったときトレイン君が励ましてくれなかったら私はきっと…。」

なのははうつむき加減で答えていた。
それを見ていたトレインはなのはの肩を掴み目線を合わせ言った。

「今回のことはお前の頑張った結果だ。そいつは胸を張っていいと思うぜ?」

「と、トレイン君/////」

顔を赤くするなのはを気にせず言葉を続ける。

「むこうで用事がすんだらまた顔出すからよ、元気でな。」

そしてすっと手をなのはの前に出した。
きょとんとしたなのはは少し反応が遅れながらトレインの手を取った。
そしてしっかりと握り合い笑顔で向き合った。

そしてトレインは肩に乗っているユーノにも声をかけた。

「おめーはこっちに残るんだっけ?」

「うん、仲間からの連絡があるまでなのはのところでお世話になることにしたよ。」

するとトレインはにやけながらユーノに言った。

「せいぜい恭也あたりに正体がばれて殺されないように気をつけろよ?」

「な、な、何を言ってるんですか?」

そう言われたとたんにユーノはあわてだしていた。
その光景をよくわからないといった様子でなのはは見ていた。


けらけらと笑っていたトレインだったが笑みを浮かべながら

「いつになるかわかんねーけど…またな。」

「……うん。」


ユーノとトレイン。
今回の一件で二人の関係は良好なものになっていた。
性格的には真逆に近く、相容れないものかとユーノは思っていたが彼という人間を見ていくことでユーノ自身は成長していた。
トレインは友人、ユーノにとって兄貴分ともいえる存在になっていた。








そしてそれぞれが名残惜しむなかトレインたちが一か所に集まると地面に魔法陣が展開された。
そして光とともにトレインたちは消えた。

その様子をなのはたちは見つめていた。


「お別れじゃ…ないよね?」

なのはが誰に言うまでもなく呟いた。
それにユーノが答えた。

「ああ、フェイトもトレインもきっとまた会えるさ。」

「そう……だよね。」

ユーノの言葉に励まされるように顔をあげ

「ユーノ君、行こうか?」


なのはの見上げた空はどこまでも澄み切っていた。













一方アースラ内部



フェイト達は重要参考人ということになり以前ほど拘束は厳しくなくなっていた。
以前まで手に掛けられていた拘束具はなくなっていた。
とはいえ完全な自由ではなく艦内での行動はある程度制限されていた。
転送が終わりクロノが全員に視線を向け、言った。


「これから事件の裁判がおこなわれるミッドチルダの首都クラナガンに向かう。」

「クラナガン?」

聞き覚えのない単語にトレインが首を傾ける。
すると後ろからトレインの服の裾を引っ張るフェイトがいた。
それに反応して後ろを振り向くとフェイトが口を開いた。

「えと、クラナガンは管理局があるミッドチルダの首都にあたる都市なの。」

「へー、そうなのか?よく知ってるな。」

トレインは感心するようにフェイトを見る。
恥ずかしそうにしながらも少し嬉しそうに照れているフェイト。
そしてその光景をみてイイ笑顔のリニスとアルフ。

それをみてやれやれと頭をかくクロノであった。

そこで咳払いをしてもう一度仕切りなおす。

「到着までには少し時間がかかる。それまでは自由にしてもらってもかまわない。けどフェイト達は与えられた自室で待機してもらう。」

「はい。」

「は~い。」

素直に返事をするフェイトと少し不満げなアルフだった。


「あとトレインとリニスはすぐに艦長室に来てくれ。」

「なんかあんのか?」

「一応これからのことと向こうに着いてからの説明だ。特に君はミッドチルダは初めてだろうし戸惑うこともあるだろう。」

「ん~、別に大丈夫だけどよ。」

各地を転々としてきたトレインにとって未知の場所は楽しみになるが戸惑うようなことはないと感じていた。
そんな様子のトレインを見てリニスは

「マスター、説明を聞いておいて損はないと思いますよ。」

「そうだな…。わかった、リンディのとこに行けばいいのか?」


「ああ、場所はわかるかい?」

「一度来た場所は把握してるから大丈夫だ。」

そういって歩きだした。
それについていくようにリニスも歩き出す。
そして歩きながら

「フェイト、こっちの話がすんだらまた後でな。」

そういって曲がり角を曲がった。
フェイトは一瞬呆けていたがすぐに

「……うんっ!!」

嬉しそうに声を上げていた。







「マスター、フェイトにはやさしいですね?」

リニスがうれしそうにトレインに言った。

「何がだよ?」

「いえ、気にしないでください。」

リニスは鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いていた。


そしてリンディのいる艦長室についた。


コンコンコン

「はーい、あいてますからどうぞ?」


許可が下りるとリニスとトレインは部屋に入った。
相変わらず近代的なアースラと恐ろしいほどマッチしていない艦長室だった。
リンディはそんな事を思われているとはつゆ知らず用意してある座布団に座るように勧める。




「んで要件ってのは?」

トレインは単刀直入にリンディに問いただした。

「そんなに身構えなくてもいいわ。話というのはリニスさんとあなたの持っているハーディスについてなのよ。」

「こいつか?」

「ええ、以前クロノが言っていたようにあなたが持っているような火薬や化学など魔力によらず大量破壊を生み出す兵器のことを質量兵器と呼ぶの。そしてそれらはミッドチルダでは使用、開発等は禁止されているの。」

「ふ~ん。」

トレインは特に驚くことなくリンディの話を聞いていた。
するとリンディはふと一枚の紙をトレインに差し出した。

「こいつは?」

「ハーディスのデバイス登録許可証よ。」

「許可証?」

「禁止されているとはいえ許可さえ取れれば小銃程度ならデバイス登録をすれば運用は可能なの。あなたがミッドチルダに行くことが決まってすぐに掛け合ってみたのよ。」

「よくこの短時間でとれましたね。」

リニスは感心するように言った。

「戦闘映像から解析できた結果だけ見ればただの拳銃だったから、これがもっと大量破壊を起こすようなものなら難しかったわ。」

「まあ、早い話こいつがあるってことはそっちでこいつを使っても問題ないってことか?」

「とりあえずはね、けど極力使用はしないでね。デバイスといっても質量兵器には違いはないのだから。」

「善処しておく。」

犯罪者を捕まえに行くのではないのだから相棒を使うことはないだろうとトレインは考えていた。
しかし、当然その考えは打ち砕かられることになる。



「次にリニスさんのことのなのだけれど、彼女もデバイスの登録をしておかないといけないの。」

「そうですね…、無許可のままではマスターにも迷惑がかかりますし。」

リニスは真剣な表情でつぶやいた。

「ただ彼女の場合設計図を送って済むものじゃないの。管理局の研究所でしかるべき調整を行わないといけないの。」

「調整?」

「マスター、プレシアとの戦いのときユニゾンが解けたとのも私が未調整だったからです。これからのことを考えれば保険の意味でも調整はしっかりとしておいたほうがいいと私は思います。」

「私も同意見ね。不具合が起きれば最悪あなたという存在がなくなる可能性もあるわ。

「…そこまで言われたら断る理由はねえな。」

特に調整をするからと言って二人に不満はなかったのでトレインはあっさりとリンディの提案を受けた。

「あとはこれを渡しておくわ。」

そういうとリンディは封筒を手渡した。

「こいつは?」

トレインはそれを手に取りリンディに聞いた。
手渡された封筒は分厚くずっしりとしていた。

「それはむこうでの滞在費……もしくは娯楽費ね。」

「娯楽費?」

「あなたには報酬を与えたけどミッドチルダとなのはさんたちのところじゃ通貨が違うのよ。それにあなたはもっと報酬を受けてしかるべきだったしね。」

笑顔でリンディはウインクをした。

「わかった、ありがたくこいつは使わせてもらうよ。」

そういってトレインは懐に封筒をしまった。
リンディはその様子を確認すると

「向こうに着いたら私たちの家で生活してもらうことになるけど大丈夫かしら?」

「別に、特に問題はねーよ。な?」

「はい、むしろありがたいお話ですし。」

「そう、よかったわ。とりあえずは話はこれだけだわ。向こうに着くまでゆっくりしていてね。」

「おう。」


トレインはリンディに返事をすると背を向け艦長室を出た。









リンディの部屋を出て行ったあとトレインとリニスは艦内をぶらついていた。
頭の後ろで腕を組みながらトレインはこれからのことを思案していた。

(これからどうしたもんかね。きままな掃除屋生活をするにもこの姿じゃきついしな。)

珍しく難しい顔をしているトレインをみてリニスは声をかけた。

「どうしたのですかマスター?」

「ん?ああ、これからどうすりゃいいのかなってな…。」

苦笑気味にそう答えた。

「これからですか?」

「ああ、きままな野良猫暮しをするつもりだけどよ…。」

その言葉にリニスは首をかしげていた。
なにかわすれているような、なにか重要なことが抜けている…。







「いえ、マスターがするべきことは決まっていますよ。」

「へ?」

急にリニスが真面目な顔をして答えた。

「マスターはこれから受験に向けて勉強しなければいけません。」

リニスは力強く言い切った。

「……覚えてやがった。」

「当然です!!」

恨めしそうにトレインはリニスを見た。


その後二人はフェイト達に会いに行った。
フェイト達は今までの時間を埋めるようにただただ話をしていた。
トレインは特に会話に参加することなく傍観していた。
時折フェイトが様子をうかがうが、きまってトレインは寝息を立てていた。









そんな感じで艦内で数日を過ごした後一行はミッドチルダに到着した。












[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第22話
Name: ショージ◆e893f68c ID:71bf7eaf
Date: 2009/08/04 22:16
「へー、ここがミッドチルダか。」

アースラから降りたトレインは興味しんしんと言った感じであたりを見回した。
それにつづいてクロノたちも降りてきた。
そしてクロノはトレインの言葉に付け足す。

「正確にいうと主都クラナガンの次元航行部隊本部、通称(海)だ。」

「海?」

トレインはクロノの言葉を聞き返す。
それにリンディが答えた。

「時空管理局は大きく分けて二つの部署があるの。主に各世界に駐留しての治安維持を務める地上部隊、通称(陸)。」

「そして僕ら所属している次元航行部隊は次元航行艦に乗って多くの次元世界を行き来し、場合によっては介入する。」

「ほうほう。」

腕を組みながらトレインは聞いていた。
といってもそれほどトレインにとって興味のわく話題ではなかった。
するとエイミィが口を開き

「簡単に言うとパトロールをする部隊ってとこかな。」

「そっか…。」

それに対してもどこかそっけない態度のトレインにリニスは心配そうに顔をのぞかせた。

「マスター、どうかなされましたか?」

「あ?いや、なんでもねえよ。ただ単に興味がないだけだ。」

トレインとしては組織のことについては興味はなくいち早くミッドチルダを観光してみたいという欲求が頭の大半を占めていた。
その様子をみてため息交じりにクロノが仕切りなおした。

「とりあえず、これからのことを説明させてもらうよ。」

「頼むわ。」

「まずはリニスはこのまま技術部のほうへ行ってもらう。」

「はい。」

リニスは特に動じることなく返事をした。
トレインも特に反応はなかった。

「デバイスとしての調整を行う。おそらく今日一日はかかると思う。」

「俺はどうすればいいんだ?」

「そうですね、マスターが適格者なので一緒に行ったほうが…。」

リニスがトレインに続いて言葉を発しようとしたがクロノがそれを制す。

「いや、トレインは今日のところは必要ない。」

「どうしてだ?」


クロノの代わりにエイミィが答えた。

「う~ん、リニスはまだまだデバイスとしては不透明なところがあるから今日は解析だけで終わっちゃうと思うだよね。だからトレイン君との調整は明日以降になるのかな。」

「今後のことを考えれば解析のほうもしっかりしておいたほうがいいわ。」

リンディはやさしく諭すようにトレインたちに言った。
トレインは了承し

「OK、んじゃそういうことだからしっかり調整されて来い。」

「なんか言葉がいやですけど、わかりました。」

どこかしぶしぶといった感じをさせながらもリニスはトレインの言葉にうなずいた。


























「んじゃ、俺は適当にふらついてるわ。」

トレインは本部の門の前で見送りに来てくれたクロノにそう言った。

裁判までには少し時間がかかるとのことで、その時間をリニスの調整に当てることになった。
クロノとしてはトレインをミッドチルダで独り歩きさせることに一抹のふんを覚えていたがここのところ大きな事件がないこともあり問題ないだろうと判断した。
そしてトレインは地図代わりになるポータブルナビを受け取りへ向かい歩いていた。




街へと向かうその後ろ姿をクロノ達が見守っていた。
そしてクロノはふと口に出す。


「不安だ。」

「クロノ?どうしたの?」

リンディはいきなり難しい顔をし始めた息子に首をかしげながら尋ねた。
クロノは表情を厳しくしたまま

「彼を独り歩きさせるとなにか問題が起こりそうな気がしてならない。」

「そうかしら?仮にも彼はあなたより大人なのだからそんなことはしないとは思うのだけれど?」

リンディがそういうがクロノはまたつぶやいた。

「不安だ。」














そんなクロノの不安をよそにトレインはクラナガンを満喫していた。
手渡されたポケナビで通貨など一通りの知識は頭の中に入っていたためファーストフード店でハンバーガーを片手に町を見て回っていた。
グラナガンはトレインがみてきたどの町よりも文明は発達しており見るものすべてが珍しいものだった。
向こうでは魔法というものがなかったこともあるが、トレインは歩いているだけでも退屈はしなかった。

「つってもすんでる人間に大した違いはないか。」

トレインとしては魔法というのだからもっと容姿が違う人間がいるのかと思っていたらしい。
しかし実際は人種のような違いがあれど住んでいる人たち自体はそれほどの違いはなかった。

そんなことを考えながらトレインはグラナガンでの観光を続けた。













一方クロノ達のほうではリニスの調整が進められていた。
使い手が少ないことやその希少性から話題になり何人かの管理局関係者が見学に来ていた。
そのなかに眼鏡をかけた女性がいた。
リンディはその姿に気が付き声をかけた。


「レティ。」

「あらリンディお邪魔させてもらってるわ。」

女性の名はレティ・ロウラン。
リンディたちと同じで管理局所属の提督の地位に就く女性だ。
主に人事や艦船の運用にかかわる任務を担当している。
レティは挨拶をほどほどに調整を受けているリニスへと視線を向けた。

「それにしても珍しいものを見つけてきたわね。」

「珍しいってリニスさんのことかしら?」

当然とばかりにレティは頷いた。

「それに話によればちゃんとしたマスターもいるみたいね。」

「ええ、けど彼は管理外世界の民間人よ。」

リンディはレティが言わんとしていることは理解していた。
ただでさえ人材が不足しがちな優秀な魔導師のことについてレティは常々頭を抱えていた。
そんな彼女の目の前には希少であるユニゾンデバイスとそれをうまく運用できる魔導師がいるのだ。
かといって本人の意思に反して管理局に入局させることはできない。
リンディとしてはそんなことをするつもりはないし、レティもそのつもりはないだろう。
しかしレティとしては逃すにはあまりにも惜しい人材であることには変わりはなかった。
そしてレティはリンディに一つ頼んだ。


「リンディ、差し支えなければユニゾンした彼の戦闘映像を見てみたいのだけれど?」

突然の申し出であったが特に問題はないかと判断し了承することにした。

「わかったわこっちにきて。」

映像を見ればますます彼を求めることになるかもしれないが苦労は彼本人にしてもらおう。
そう考え、少しほくそ笑みながら映像を再生した。






映像をしばし見ているとレティの目はいよいよマジモードになっていた。
一緒に見ていたリンディも若干引き気味なるほどだった。

「ふふふ。」

どこか不気味な笑いを浮かべながらレティはリンディに尋ねた。

「リンディ、このときの彼の魔導師ランクは?」

「え、えーと陸戦という結果だけど……。」

「だけど?」

「……SS+。」






その言葉を聞くとレティはおもむろに携帯端末を手に取りどこかと連絡を取った。

「ええ、そうよ。……急な話でごめんなさい。よろしく頼むわね。」

そして手に持っていた端末をポケットに戻した。
リンディはレティに訪ねた。

「ちなみに今どこと連絡取っていたの?」

「武装隊よ。」

「ぶ、武装隊って!?」


「一度でいいからこの目で見てみたいのよ、彼の戦いぶりを……。」














その当事者であるトレインは何もしらずにのんびりと観光を続けていた。
するとどこからか子供の泣き声が聞こえてきた。
普段なら特に気にすることもなかったのだがここ最近はなのはたちのおもり?をしていたせいかどうにも世話を焼いてしまう習性が付いていた。
考えとは裏腹に鳴き声のするほうへと足を進めてしまっていた。


そして声のする場所につくとそこにいたのはショートカットの青い髪をした少女だった。
いや、少女というより幼女行ったほうがいいだろうか?
年はおそらく4歳くらいだ。
近くに親らしき人物がいないことから迷子にでもなったのかと思われる。
トレインはやれやれといった感じでその少女に近づく。

「ヒック、おか~~~さん~~~~~。お姉ちゃ~~~~~~ん~~~何処へ~~いったの~~~」

少女は相も変わらず泣き続けていた。
人通りが少ないわけでもないのだから近くにいる大人がどうにかするのではないかと思っていたがどこの世界の住人も面倒事は嫌なようだ。

(世知辛い世の中なのかね?)

と考えつつ少女の目の前に立ち腰を下ろし少女と同じくらいの目線になるようにして話しかけた。

「どうした?母親とはぐれたのか?」

「ヒック、ヒック、うん。」

少女は泣きながらもトレインの言葉に答えた。
トレインは仕方がないのでとりあえず涙でいっぱいになった目をハンカチでふいてやった。
そうしているにもかかわらず少女はまた泣きそうになていた。
さすがにこれ以上泣かれるのは簡便なのでトレインは口を開いた。


「ああ、一緒におふくろさんを探すの手伝ってやるから泣くな。」

「ぐす、でもおかあさんがしらないひとについていっちゃダメだって…。」

トレインは頭を抱えていた。
変なところで教育が行き届いているせいで話が進まない。
仕方がないので少々強引に話を進めることにした。

「俺はトレイン。トレイン・ハートネット、お前は?」

「ふぇ?」

「名前だよ、な、ま、え。」

トレインのぶっきらぼうな言い方に多少びくつきながらも少女は答えた。

「…す、すばる。スバル・ナカジマ…。」

そう答えた少女にため息をつきながらも苦笑を浮かべながらトレインは言った。

「スバルか、よし。自己紹介を済ませたし、俺たちは知り合いだな?」

「え、え、え、うん。」

スバルという少女は自信なさげに答えた。

「んじゃおふくろさんを探すぞ?」

そう言って少年のような笑顔で(実際は少年なのだが)少女の手を握った。
先ほどまで泣いていた少女もつられるように笑顔を浮かべた。












人見知りする性格なのかスバルはあまり口を開かなかったが徐々に普通に喋れるようになってきた。

「なんだ、おふくろさんだけじゃなくて姉ちゃんもいるのか?」

「うん……ギン姉も一緒だったの…。」

話を要約すると、普段仕事が忙しくなかなか一緒に出かけることのない母親との外出をスバルは楽しんでいた。
そんななかスバルはショーウインドウに飾られていたケーキが目に入りそれに視線を釘づけにされていた。
そしてふと気がつくと母と姉の姿がどこにもないことに気がついた。
おとなしくそこで待っていればよかったものの一人でいる不安に耐えられず母たちを探しに一人で歩き回っていた。
結果、母と姉を見つけることはかなわず途方に暮れ泣いているところにトレインが出くわした。
ということらしい。

話をまとめてとりあえず元の場所に戻ろうと考えたトレインだったが、肝心のスバルがもといた場所を覚えていなかった。
話を聞く限りでは建物の中に入ったりということはなさそうなのでこの通りのあたりを歩いてみることにした。
最悪の場合こちらの警察に厄介になることになる。
とりあえずそれらしき人物を探すが、いかんせんトレイン自身が少年の体なので人探しをするには一苦労だった。

なかなか苦労しそうだなと考えふとスバルのほうを向くとスバルの視線が自分の右手に向けられていることに気がついた。

「………。」

現在トレインの右手はスバルの手を握っており、右手には先ほど昼食代わりに買ったファーストフード店のポテトの残りが入っていた。
残りといっても食欲をそそる香ばしい香りはまだまだしていた。

「………。」

スバルが先ほどからそこから視線を外さないことからトレインは一言言った。

「腹減ったのか?」



キューーーーー


かわいらしいお腹の音とともにスバルがこくりと頷いた。







スバルをさっきのファーストフード店に連れていくとさっきまで泣いていたのがウソのように元気よくハンバーガーをほおばっていた。
その様子に現金だなと苦笑しながらトレインは笑っていた。

「ん?どうしたのトレ兄?」

「なんでもねーよ。気にしないでいいからとっと食べな。」

「うん!!」

スバルは少しずつトレインに気を許しているせいかトレインのことをトレ兄と呼んでいた。
気を許したきっかけがハンバーガーというのもなんとも笑える話だが。
そしてふと視線を窓の外へと移すと青のロングヘアーをしている母娘がそこにはいた。
どこかあわてた様子で何かを探しているようだった。
すぐさまトレインはスバルに声をかけた。

「スバル。」

「ん?な~に?」

スバルはケチャップを口につけながら首を傾けた。

「あれってお前のおふくろさんと姉ちゃんじゃないのか?」

トレインはそういって窓の外にいる二人の親子を指さした。
その瞬間スバルは

「おかあさん!!!ギン姉!!!」

あわてて動き出そうとするスバルをトレインは落ち着かせた。

「落ち着けって、とりあえず残りのもん持ってここから出るぞ。」

そうして二人は階段を下りて通りに出た。
そして一目散で先ほどの女性のところへ駆けつけ

「おかあさ~~~ん」

「スバル!?どこにいってたの?心配したんだから。」

スバルは母親のところへ飛び込むとそのまま抱きつきながら泣いていた。
母親もしっかりと抱き、安心したような表情だった。
その母親のそばにいたギン姉らしき女の子も安心したよう表情でスバルのあたまをなでていた。

そして親子の視線が合うと母親がスバルの口についているケチャップに気がついた。

「あらスバル?口についているケチャップはどうしたの?」

「あ、これね…トレ兄がはんばーがーを食べさせてくれたの。」

にっこりと笑いながら視線をトレインに向け指さした。
一方のトレインは少し離れた所から親子の様子を見ていた。













「本当にありがとう。この子の面倒みてくれて上にご飯まで食べさせてくれて。」

お互いに自己紹介を済ませたあと母親はこれでもかというくらいに頭を下げ感謝を示していた。
ちなみに母親はクイント、姉はギンガというらしい
トレインとしてはそれほど大したことでもないので気にするなと言っておいた。
そして改めて母親、クイントをよく見てみると子持ちとは思えないほどはつらつとしており若かった。
スバルに受け継がれたであろう青いロングヘアーをなびかせる姿はお世辞抜きにきれいだと思えた。
またスバルの姉であるギン姉ことギンガは母親譲りの容姿をしており将来クイントそっくりに成長するだろうと様に想像できた。



「でも本当に助かったわ。それにしてもあなたは一人なの?」

「俺?一応そうだな。」

「あなたのご両親も心配してるんじゃないのかしら?よければ送ってあげるけど?」

何やら面倒なことになりそうなのでトレインは部分部分を省略しながら事情を説明することにした。











「じゃああなたはミッドチルダの人間ではないのね?」

「ああ、なんでも管理外世界とかいうところらしい。事件に巻き込まれて裁判の証言をしてほしいからこっちにきてるってわけ。」

「そう、大変なのね。」

ある程度の事情を説明するとクイントもそれ以上踏み込んでこなかった。
トレインは携帯端末で時間を確認するとそろそろ指定された時間だった。


「わり、ぼちぼち帰らねえといけねえわ。」

「え、もういっちゃうの?」

スバルがさびしそうな声をあげた。
表情もさっきまでの明るいものから迷子になっていた時のように眼をうるませていた。
トレインは頭をかきつつスバルのそばまでいき

「悪いな、俺も帰らねえとこわーい執務官様に怒られちまうからよ。」

「で、でも…。」

「スバル、トレインにも用事があるんだよ。」

なにか言わんとするスバルに対してギンガがたしなめるように言い聞かせていた。
その様子をみてトレインは少し強めにスバルの頭をなでてやった。

「なに、いつかまた会えるさ。な?」

そしてギンガの頭にも手をのせ

「こいつと仲良くな。」

笑顔で親指を立てた。
そしてすぐさま駆け出していった。
クイントよびとめようとするもののすぐさまその姿は見えなくなっていた。











さびしそうにトレインがいなくなった通りを見つめる親子だったが次の日には再開することになることはまだ知る由もなかった。
そして親子二代に続き壮絶な追いかけっこをすることになるとは……。










[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第23話
Name: ショージ◆e893f68c ID:71bf7eaf
Date: 2009/08/11 23:13
ナカジマ親子と別れたトレインはクロノから小言を食らうのも何なのでまっすぐ本部のほうへもどった。
戻ってきたそうそうクロノは

「何もしていないだろうね?え?どうなんだい?」

血相を変えて問い詰めてきた。
ある意味違ったクロノの一面がみれて面白がっていたがさすがにここまで来られるとトレインも引き気味であった。
そこにリンディが間に立ち仲裁して事なきを得た。

その後リニスが待っている研究施設棟へと向かうことになった。
その途中リンディがトレインに聞いた。

「トレイン君、今日一日観光してみてミッドチルダはどうだった?」

「ん?いや、文明が進んでいる以外は特に俺らの世界と違いはねーな。」

トレインは思ったことを率直に言った。
リンディは彼らしい返答だと笑っていた。

「しかし、端末があったとはいえよく道に迷わなかったね。」

クロノは意外そうにトレインに言った。
しかし、掃除屋として世界中を旅してきたトレインからすればそう言われること自体が心外だった。
ターゲットがいる場所であればどこにでも移動する職業柄土地勘のない場所に行くことが多かったトレインは方向感覚はかなりいい。
また、一度地図などで頭の中で把握しておけばある程度その町の配置は記憶できた。

「一応、世界中を回ってたからな。地図さえあれば迷うようなことはない自信はあるぜ。」

トレインは笑顔でそう言い切った。














そして歩くこと数分。
リニスが調整されていた研究施設棟についた。

「へー、ここが研究施設なのか?」

興味深々であたりを見回すトレイン。
その質問にリンディが答えた。

「ええ、ここでは研究以外にもデバイスの調整や開発、修理も行っているわ。」

「大抵の管理局の戦闘員はここで開発、生産されたデバイスを支給されているんだ。」

「ほー。それそうとして肝心のリニスはどこにいんだ?」

トレインたちがあたりを見回すがそれらしき人影は見当たらなかった。

「おかしいな。時間的にはもう終わっていてもおかしくないんだが…。」

そうしてすこしの間探しているとすぐそばにあった部屋が開きそこからリニスが現れた。


「あ、マスター♪」

「おう、って!?」

リニスはトレインを見つけるとすぐさま抱き上げ頬ずりを始めた。
その姿は親子ともとれない光景だった。
しかし念のため確認するがトレインは現在25歳。
いくら体が小さくなったと言えどそのような扱いをされるのは不服だった。

「ちょ、ちょい放せ!!」

「なに言ってるんですか!!!私は今日一日マスターとずっと離れ離れでどれだけさみしい思いを…。」

トレインを抱きつつもわざとらしい嘘泣きを始めたリニス。
その姿に呆れかえるような表情をするトレイン。
さすがのクロノも今回ばかりはトレインに同情するかのような表情をしていた。






「んで、肝心調整は終わったのか?」

数分後満足したリニスがようやく解放したところでトレインは調整の状態を尋ねた。

「はい、ある程度のところまでは。もう少し細かい調整が必要なんですけど八割がたは済んだようです。」

「じゃあ、明日もここに缶詰なのかしら?」

リンディの問いにリニスは首を振った。

「いえ、さっきレティさんという方が来て明日は実践を通してデータをとって調整するみたいです。」

「「え!?」」

リニスの口からレティの名前が出てきたことにクロノとリンディは思わず揃えて声を上げた。
そんな二人の様子がおかしいことにリニスとトレインは首をかしげていた。

するとそこへ狙い澄ましたかのようにレティが現れた。
そしてトレインのそばへ行き笑顔を浮かべ

「はじめまして、私はレティ・ロウラン。管理局の提督という立場で人事を担当しているわ。」

すっと握手を求められトレインは素直にそれに応じた。

「俺はトレイン。ハートネット。掃除屋だ。」

軽く挨拶を済ませレティと視線を合わした。
レティは相変わらずにこにこしているのだがトレインはわけがわからないといった感じでリンディたちを見た。
そこでリンディはさっきの件を含めレティに聞いた。


「レティ、リニスさんから聞いたのだけれど実戦を通しても調整って聞いたけどどういうことかしら?」

「あら?もう話は通ってるのね?言葉通りよ、リニスさんとパートナーであるトレイン君で明日模擬戦形式で戦ってもらいます。」

「ちょ、ちょっと待ってくださいレティ提督。そんなことをしなくても調整はできるはずです。」

クロノはレティに必至訴えかけた。
ここで下手にトレインを刺激するのは得策ではないとクロノも考えていた。
しかし、レティは冷静に言った。

「別に強制じゃないわ。トレイン君が嫌ならそれでかまわないわ。」

そしてトレインは

「ならめんどいからパス。」

そう言い切った。
その瞬間レティは思わずずっこけそうになったがその場で踏みとどまった。
そしてトレインに切り返した。

「ど、どうしてかしら?いい訓練にもなると思うのだけれど?」

「勝っても何のメリットもねえ~しな。あと腹が減るだけだし、今日はここの名物らしきものを何にも食えなかったからそいつを食べ歩きたいしな。」

くるりをレティに背を向けた瞬間

「勝ったらここの最高級料理をフルコースで出させてもらうわ。」

それを聞いたトレインは振り返り

「OK!!!!」


そんな二人のやり取りを聞いてリンディとクロノはため息をついた。


























翌日トレインたちは野外訓練場にいた。
野外といっても市街地戦を想定した作りになっておりビル群があちらこちらに密集していた。

トレインはレティから今回用意された銃弾を渡された。

「一応訓練ということだからあなたが使っている実弾は使用できないわ。」

「別にかまわねーけどルールはどうすんだ?」

「この銃弾はペイント弾になっているからヒットすれば着色されるわ。そこの着弾箇所でこちらが判断するわ。」

少々腑に落ちない部分があるがトレインはとりあえず了承した。

「相手は4人いるわ。一応彼らもエリート呼ばれる精鋭たちだから油断はしないほうがいいわよ。あと、こっちの魔導師たちは非殺傷設定にしてあるから痛みはあっても大きなダメージにはならないはずだから安心していいわよ。」

「いや、安心はできない気が済んだが…。」

「とりあえず、こんなところかしら?なにか質問は?」

「大丈夫だ。リニスもいいな?」

トレインは後ろで座り込んでいるリニスに聞いた。

「はい、問題ありません。」

「じゃあ、あと10分後に開始するわ。がんばってね。」

そう言ってレティは監視モニターのほうへと移動した。
レティが行ったあとにリニスがトレインに聞いた。

「マスター、どうして今回の模擬戦引き受けたんですか?」

「どうしてって、フルコースが食えるなら断る理由はねーだろ?」

そう言うトレインだがリニスは首を振った。

「いいえ、それだけではないと思います。確かにマスターは食い意地を張った人かもしれません、単純な罠に引っ掛かりやすい方かもしれません。」

「…なにげにヒデー言い方だな。」

「ですがこんなに短絡的な行動を起こすとは思えないんです。」


そしてトレインは笑いながら言った。

「今後もためかもな…。」

「今後…ですか?」

「………。」




トレインとしては管理局で働く気はなかったがこちらで掃除屋稼業を続けることはできないかと考えていた。
その中で魔導師というものの実力を身をもって知っておきたかったいうことがあった。
プレシアや使い魔であるアルフと戦闘をしてきたが基準となる強さはどんなものなのかというのを計りかねていた。
実際のところ、トレインは管理局でも指折りの実力者なのだが







一方監視モニターで待機していたリンディはレティに尋ねた。

「今回模擬戦を行うのは昨日連絡していた武装隊かしら?」

「ええ、一応管理局でもトップクラスのエリートたちを招集したわ。」

そう言ってレティは今回戦闘に参加するメンツのリストをリンディに渡した。
リンディはそのリスト見てみた。

「なるほどね、A+が二人、Aランクが二人ね。」

「私たちの感覚からすれば彼らはエリートと言えるわ。でも…。」

レティはそこで言葉を切った。
それに続けるようにリンディは

「でも、トレイン君の相手になるかはわからない。」

「ええ、あなたのところの戦闘員もAランクに達している人がかなりいたでしょ。けどプレシアは彼らを一蹴した。」

「そしてトレイン君はそのプレシアを倒した。」


レティはため息をついた。

「本当は(陸)に頼んでゼスト隊に参加してもらおうと思っていたんだけど…。」

「ゼスト隊って(陸)のなかじゃトップクラスの部隊じゃない。」

「でもやっぱり普段から仲の悪さが出てるせいか隊長と話をする前から断られたわ。」

「やっぱり確執は深いみたいね…。」

リンディは少々表情を暗くしていた。
レティとしてもあまり楽観視できる状況ではなかった。

「むこうのレジアス少将がこちらを毛嫌いしているみたいでね。」

自嘲気味にレティは言った。

「でも、むこうの副官の一人が見学に来ると言っていたわ。実際に目で見てもらえれば副官の人通して交渉できるかもしれないしね。」

「その副官の方は?」

「もうすぐ来るはずなのだけれど…。」

そこに青いロングヘアーをした制服姿の女性が現れた。
レティはあわてて立ち上がり

「あなたが副官の方かしら?」

「はい、クイント・ナカジマ准陸尉です。」














一方トレインのほうは銃弾詰め、戦闘の準備をしていた。

「リニス~。」

「はい?なんでしょうか?」

「とりあえずはユニゾンしないでやってみるわ。」

「え?でもそれでは調整の意味が…。」

リニスは主なぬトレインの発言に反論するがトレインはこう切り返した。

「調整なんて建前だろ?だったらおれの好きなようにやっても問題はねーだろ。」

「そうですけど…。」

「な~にやばそうだったら呼ぶからそんときは頼むぜ?」

「マスター…。わかりました、マスターがピンチになることを祈りながらここで待ってますから!!」

「いや、んなこと祈んなよ。」

苦笑しながらトレインがしゃべっているとトレインのそばにモニターが現れ、そこにはレティが映っていた。

「準備はいいかしら?あら?まだユニゾンしていなかったの?」

「とりあえず様子見だ。必要だと思ったらそうさせてもうわ。」

「はぁ、わかったわ。じゃあがんばってね。」

そう言ってレティの写ったモニターは消えた。







レティはトレインがユニゾンしないで戦うことに軽いショックを受けていると先ほどの会話を見ていたクイントが驚きの表情をしていた。
その表情をみてリンディが声をかけた。

「あのどうかしましたか?」

「あの子は?トレイン君ですよね?」

リンディとレティはクイントがトレインのことを知っているような口ぶりなので少々驚いていた。

「トレイン君とお知り合いなんですか?」

「一応、昨日迷子になっていた娘の面倒を見てもらったんです。でもまさか彼が魔導師とは思いませんでした。」

トレインの写っているモニターを見てクイントはそうつぶやいた。
リンディはそれに付け加えるように言った。

「いえ、彼は管理外世界の住人で純粋な魔導師とはいえません。」

「え!?」

「それに彼は管理局の人間でもありませんし。」













そしてあたりに戦闘開始の合図が鳴った。



「さて……。」

トレインは軽く首をひねりながら行動を開始した。
そして相手を見据えた。

(相手は四人組、しかも同じ部隊でやってきた連中だから連携はそれなりにとれるとみたほうがいいな。)

相手を観察しながら作戦を考えていると男が一人こちらに向かってきた。
ナックルガードのようなものを手と足につけていた。

(接近戦主体のやつか?)

「うおぉぉぉぉぉぉーー!!!!」

気合いの入った声とともに強烈な一撃を放つ。
しかし、

「おせぇよっと。」

軽く地面を蹴りその場から回避した。
よけた場所の地面に拳がめり込み大きくへこんだ。
威力に少々驚きつつもトレインは冷静だった。

(威力はあるが拳のプレッシャーがねえな。これなら雷頭のほうが数段上だな。)

トレインはかつての仲間を思い出しほくそ笑んでいた。
それを見ていた相手は面白くなかったのか、表情をこわばらせさらに追撃する。
拳だけでなく蹴りも交えながらトレインに襲いかかるがトレインはそれらを難なくかわし切っていた。

「くっ!?」

男も余裕をもって交わされているのがわかるのか苦虫をかみしめるような表情になっていた。
そして回避行動しかとっていなかったトレインが反撃に出る。
男がおおぶりに放ったパンチを大きく跳躍して相手の頭上に出たところで腕を振り切った。

ガッ!!!!!

その瞬間男の後頭部に何かが当たった。
そして男は前のめりに倒れていった。

「まずはひとり。」

トレインの腕にはハーディスについているワイヤーが結ばれていた。
さっきはワイヤーを腕に巻いた状態でヨーヨーのようにハーディスを投げつけ相手の後頭部にぶつけたのだ。
体全体でバリアを張れるようなプレシアのような相手には通用しない戦法だが今回のレベルの相手では有効な手段であった。

トレインは後方で動かずに待機していたメンバーに言った。

「お~い、別におれのことをなめんのはいいけどよ、あとで変な言い訳だけはすんなよ?」

カチン。

その言葉に反応して三人はデバイスを構え砲撃、射撃魔法を放ってきた。

「そうこなくっちゃな♪」

そう言ってせまる砲撃をよけつつトレインはビル群に身を隠した。










「全く、あれほど油断はするなって言っておいたのに…。」

レティは一人で戦いを挑んだ隊員の姿を見て深いため息をついた。
あの隊員の独断ではなくほかのメンバーも同意の上での先行だったのだろう。
あまりのお粗末な結果に今回の模擬戦セッティングした当人として、レティは情けない気持ちになっていた。
そんなレティにリンディは仕方ないと言わんばかりに首を振った。

「いえ、そちらの隊員の気持ちを考えれば当然よ。急な訓練につき合わされたと思ったら相手は子供。彼の行動は仕方ないわ。」

そしてそこにクイントが続く

「それにそんなことを気にしている場合じゃないかもしれませんよ。」

「え?」

ふとモニターを見てみるとまた一人が撃墜されていた。






「一分ってとこか。」

先ほどはビル内に先行してきた女の隊員を天井を崩した際にできた砂煙にまぎれてハーディスで一閃し、気絶させた。
ここまで一発も銃弾を撃っていない。
正直本気で戦わなくとも勝てる相手だとトレインは判断していた。
かといってこのまま終わっては何の意味もなくなってしまう。

「慣らしの意味でもトランスしておきますかね。」

そう言ってトレインはいつもの構えをとり神経を研ぎ澄ませた。
するとトレインは光に包まれていった。



モニター越しに見ていたクイントは何が起こっているのかわからなかった。
レティも驚きを隠せずに立ちあがっていた。
そして閃光が収まるとそこには不敵に笑う青年の姿があった。

リンディはその姿をみて

「ようやく本気になったみたいね。」

「どういうことですか?彼は、トレイン君はどうしたんですか?」

クイントはわけがわからないといった感じでリンディに問い詰めた。
レティはあらかじめ説明を受けていたいたので事情は知っていたがそれでも落ち着いてはいられなかった。

そんな二人をみてリンディは笑みを浮かべながら言った。

「彼は普段子供の姿をしているけど実際は25歳の青年よ。自分の本当の姿をイメージすることで数分間だけだけどあの姿になれるらしいわ。」

「一種のレアスキルのようなものですか?」

「そうかもしれないけど彼本人もよく分かっていないみたいなの。」

そこまで聞いてクイントはトレインの姿に視線を向ける。
少年の姿でもあれだけの動きができるのだ。
いったいどれほどの実力者なのか?
クイントはいままでに感じたことのない高揚感を感じていた。









一方リンディたちとは別の場所で一人の青年がこの模擬戦の様子を見ていた。
彼は今戦っている面々と同じ部隊に所属する局員だった。
彼は今回の模擬戦に参加するはずだったのだが、上司の指示によりそれはかなわなかった。
彼にとっては残念に思う以外なんにも感じていなかったはずなのだが、なぜか妙に気になってここまで足を運んでいた。











トレインはビル群にまぎれながら死角を突き、突然姿が変化したトレインに驚きを隠せずにいたところを狙い、一人を撃墜していた。
残るは二人。
ここまでハーディスの引き金は一度も引かれていない。

「時間もねーし正面から一気に行くか!!!」

そして意を決したようにハーディスを構え、ビルの屋上にあがった。
残りの二人はトレインの姿を見つけるとすぐさまデバイスを構え攻撃を開始した。
二人はここまでのトレインの戦いぶりからむやみに近づくことなく飛行を止めることなく打ち続けた。
無数の光弾がトレインを襲うがトレインはそこから動くことなく不敵に笑うだけだった。







ドゥォォォォォォーーーーン!!!!!















爆音とともに砂煙を巻き上げてあたりの視界を奪う。
その上空にいた二人は今の攻撃を回避しきれるわけがないとそこで決め付け動きを止めた。
しかし、二人が相手にしていたのは並の相手ではない。
数々の死線を潜り抜けてきた最強のガンマンだった。
動きを止めたその刹那、二人の胸元に衝撃が襲った。
二人がそれが銃弾であることに気づく。





その戦いを見ていた青年は身震いをしていた。
一瞬しか見ていないが確かに二つの銃弾が同僚である二人に直撃した。
しかも二人が動きを止めた瞬間を狙い澄ましたかのように。
非殺傷設定にしてあると言えど攻撃を受ければ当然ダメージもある。
あれだけの速さで、あのタイミングで打つのはダメージを受けていては不可能だ。
それを確信していた青年は砂煙が晴れるのを待っていた。


そして、砂煙が晴れると青年が予想したとおり無傷で腰に手を当てて笑いながらトレインが立っていた。











[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 第24話
Name: ショージ◆e893f68c ID:86061eac
Date: 2010/05/11 22:48
トレインは埃を払いながら確認するようにつぶやく

「リニス~、タイムはどんなもんだ?」


(2分14秒25といったところです。すごいですよ、相手は一応エリートの管理局員ですし。)

リニスは珍しく興奮気味に答えた。
相手はプレシアやフェイト達と比較すると実力差があったとはいえ、管理局のエリート相手に圧勝。
自分の出番が全くなく終わってしまったことは少々不満だが、それを差し引いてもトレインの戦いぶりはリニスを興奮させるのに充分だった。

しかし、等のトレインはどこか不満げ、もしくは気だるそうな感じにハーディスをホルスターに収めた。
トレインからすればどこか不完全燃焼で納得のいくものでなかった。
それも当然と言えば当然であった、今まで相手にしてきた面々のレベルが違いすぎたのだ。

(まあ、それはそれとしてこれでうまい飯にありつけるんだよしとするかね。)


若干の不満が残るもののこれから口に入るであろう御馳走を想像してトレインはだらしなくよだれを垂らしていた。
どこか食事を待ちきれない猫を連想させる仕草だった。
その様子をリニスは苦笑しつつ眺めていた。






ブゥゥン

「うわっ!?」

そんなトレインの目の前にリンディの顔が現れた。
正しく言うとリンディの顔を映したモニターが現れた。

突然のことに不意を突かれたトレインは躓き後ろに倒れこんだ。

「な、いきなりなんだよ!?」

「ごめんなさい、ディナーはもう少し待ってもらえないかしら?」

「いや、そっちじゃねーだろ。」

リンディの見当違い‥‥とも言えなくない指摘に目を細める。
リンディは微笑みながら続けた。


「もう一人戦ってもらいたい相手がいるの。今回は相手は一人よ。」

「一人?別に俺は構わねえけどよ、大丈夫なのか?」

「その心配は必要ないわ。相手はさっきあなたが相手にしていた部隊の副隊長を務めている人よ。魔導師ランクはAA、クロノやなのはちゃん達より下かもしれないけど実践経験は豊富よ。」

「OK、わかった。」

それだけ聞くとすぐさま銃、ハーディスを抜いた。。
トレインはまだ見ぬ相手を見据えるようにあたりを見回した。

そして、ちょうどトレインの正面にあるビルの上に一人の女性が転送されてきた。
その女性は長い青髪をたなびかせ、トレインを微笑みながら見据えていた。


「さっきはどうも。娘が世話になったわね。」

「あ、あんたは‥‥。」

トレインは呆けながら相手を見た。
そこに立っていたのはさっきまで子供を必死に探していた二児の母、クイント・ナカジマであった。
クイントは微笑んではいたがまとっている雰囲気は先ほどまでの優しげな母のものではなく精錬された戦士のものだった。


「私のほうの自己紹介がまだだったわね。私はクイント・ナカジマ、ゼスト隊の副隊長。そしてスバル、ギンガの母親よ。」

「あんたも管理局の人間だったとわな。」

「わたしのほうが驚いたわよ、まさかあなたが25歳の男性なんてね。」



口調こそ穏やかであったが両者ともに相手と視線を外さなかった。
そしてさきほどとは打って変わって張りつめた空気が流れている。
その様子をみてレティは満足気に頷きマイクをとった。


「二人とも準備はいいかしら?」

無言で頷く二人。

(彼女が相手ならトレイン君も十二分に実力を発揮してくれるでしょう。)

レティはそう考え、合図を送った。

「じゃあ、始めてちょうだい。」










合図と同時に動いたのはクイントのほうだった。
前傾気味に構え、地面を蹴るとすぐさまトレインに接近する。
そして小さく、鋭く拳をトレインに打つ。

「セイっ!!!」

「ほっ!!」

トレインはバックステップで回避する。
しかし、クイントはそれを読んでいたかのようにすぐさまサイドステップを踏むかのようにトレインの横に回り込み連打を打ち込む。
一発一発にかなりの威力が込められているのにもかかわらずクイントの攻撃には隙がなかった。
決して大ぶりはせずに相手を崩すように小さく鋭く打ち込む。
そして決して距離をとらせずに相手を追い詰めていく。






そんなクイントの戦いぶりに管制室で見守っていた二人は感心していた。

「さすがは陸士隊の中でもトップクラスのゼスト隊の隊長格といったところかしら。」

レティの言葉にリンディも頷く。

「ええ、魔道師ランクではクロノ達よりも下かもしれないけど練度という点では彼女のほうが上かもしれないわね。」

「トレイン君の武器は銃。さっきの戦いから考えて接近戦もできないわけではないでしょうけど、ああやって接近戦に持ち込まれたらクイントさんのほうが上手みたいね。」







実際、トレインは反撃できないわけではなかったがクイントの動きを確かめるように回避に専念していた。
隊長格を名乗るだけあってさきほど相手をしていたメンバーとは一味違っていた。

「!?」

するとクイントは今まで使わなかった足を振りぬいた。

「おっと!!」

回し蹴りのような形で右足を横に一閃。
トレインはそれを上にジャンプし回避したがクイントは蹴りの勢いでそのまま左回りに回りトレインに拳を振りぬいた。

「はぁぁぁぁぁーー!!!」

トレインは咄嗟にハーディスを構えてそれを受けるが勢いは殺しきれず後ろに弾き飛ばされる。
飛ばされる間に体をひねらせ着地する。
しかし、背には廃ビルを背負っている状態で目の前に巨大な拳が迫っていた。

(拳のプレッシャーか。)

「リボルバー、グレネイドォォーーー!!!!」

ドゥオォォォォォン!!!!!

激しいナックルの回転とともに拳から放たれる光とともにビルは一気に崩れ落ちた。






(手ごたえはなかった。でもあのタイミングで外すはずがない。)

クイントのなかでインパクトの瞬間までは確信に近いものがあった。
そしていざ振りぬくと相手をとらえた感触がない。
クイントがあたりを見回すと背後から声がかかる。


「ずいぶんと派手にやったな。」

「あなたもうまくよけたわね。」

クイントは笑みを浮かべながらトレインのほうへと振り向く。

「そりゃミサイルみてーなパンチは受けたくねーからな。」

(威力だけならあの雷頭以上だな。最後の一発も放電加速(ブースト)してなきゃやばかったな。)

「けど、よけてるだけじゃ私には勝てないわよ?」

「わかってるよ。んじゃ反撃開始といきます‥‥かっ!!!」

「!?」

言葉を言い終えると同時に地面を蹴りクイントに近づく。
クイントとしてはガンマンであるトレインがインファイトを仕掛けてくるとは思ってもおらず、不意を突かれて対応が遅れてしまった。
それをトレインは見逃さず、ハーディスを振るう。


「くっ!!」

咄嗟にガードしたものの視線を戻すとそこにはトレインの姿はなかった。

(どこに!?)

ガンッ!!!

銃声とともにトレインの姿を探すクイントの足元には銃弾が撃ち込まれている。

「上!?」


ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!

トレインの十八番である四連銃撃(クイックドロウ)がクイントに襲いかかる。
が、クイントはそれをかわす。
それを見たトレインは着地までの間にリロードをすまし、クイントの正面に銃弾を撃ち込む。

「ちっ、装弾が早い!!」

正面に迫りくる銃弾をなんとかかわしたクイントだったが頬に銃弾のかすった跡が出ていた。
だがクイントは気にすることなくトレインに視線を向ける。



















しかし、そのトレインはハーディスを下しクイントを見据えているだけだった。
急に動きの無くなったトレインを不思議そうに見るが、すぐさま顔を険しくしてトレインに尋ねる。

「さっきの銃撃、最初の一発は当てる気はなかったわね?」

「ああ、当てるつもりはなかったな。」

それを聞いた瞬間クイントの表情が歪む。
唇をかみしめるようなその表情からは悔しさがにじんでいた。

「威嚇……いえ、余裕のつもりかしら?私も舐められたものね。」

「そんなつもりはなかったんだがな。」


「じゃあどうしてかしら?」

クイントの非難するような鋭い視線を受けながらも全く動じずトレインは飄々と答える。

「あんたの実力が知りたくてな。ちょうど同じような戦い方をする知り合いがいてな。」

「そう……。どっちにせよ気分のいい話じゃないけど。で、どうっだのかしら?」

「単純に比較はできねーけどあんたは十分つえーよ。」


それはお世辞抜きにトレインの本音であった。
いきなりインファイトを仕掛けられた時は不意を突かれていたのも事実。
そしてそこからの連続攻撃はつなぎの間に隙がなく、なかなか反撃に転じることができなかった。


大規模、特に空中戦になられたらなのはたちにはかなわないが陸上戦闘では間違いなくなのはたちと肉薄する戦いができるだけの相手だと確信できた。






すこしの間無言で視線をかわしていた
クイントは構えを解かず、戦う意思を見せた。
しかし、トレインはそれをみて

「まだやるのか?」

「ええ、やられっぱなしは性に合わないのよ。」


「別にかまわねえけど、今度はこいつを使わせてもらうぜ?」


ドゥゥンッ!!!

クイントの目には何かが光ったのと同時に自分の頬のそばを何かがかすめたの感じた。
すぐさま後ろを見るとなにかが貫通した跡がビルの壁に残っていた。

(なに?いくら銃弾といっても速すぎる。全く反応できなかった。)


「ちょ、ちょっとトレイン君?電磁銃は危険すぎるから使うのはやめて頂戴。」

ここまで様子を見ていたリンディがあわてた様子でトレインに注意をする。

「んなこといってもよ、こうでもしねえと納得しねえかと思ってよ…。」





その様子をクイントはみて
肩を落とし一息つきつつ

(ある程度予想はしていたけどここまでやられちゃうなんてね。ちょっとショックね。)

落ち込んではいるもののどこか吹っ切れたように顔をあげ

「参ったわ、私の負けよ。」



























模擬戦終了後トレインは、ロッカールームでシャワーを浴びていた。
戦闘が終わると同時にトランスを解いて現在は少年の姿をしている。




「ふぅー、さっぱりした。」

シャワーを浴びる前にリニスがお手伝いと称して手をわきわきとさせながら迫ってくるというハプニングがあったのは御愛嬌。
そのリニスは苦笑しているリンディたちの監視のもと縛られていた。


ごくっ、ごくっ
喉を鳴らせ、、牛乳を飲んでいた。

「ぷはっーーー!!」

一気に牛乳をひと飲みするとタオルを首からかけてロッカールームを出た。










するとそこには一人の青年がいた。
ブラウンの髪をした優しげなたたずまいをしていた。
どこか緊張した面持ちでドアが開くと同時にトレインに視線を向ける。

「あ、あの…………。」

「?」

しかし、その青年はトレインの姿を見て固まっていた。
なにか信じられないようなものを見るようで、トレインは怪訝に思い首をかしげてる。

「なんか俺に用か?」

トレインに声をかけられると青年は、はっとし

「あ、あのトレインさんですか?」

「ああ、俺がトレイン・ハートネットだけど?」

「すみません、リンディ艦長からお話を聞いていたんですけど…。どうも現実味がなくて…。」

「んじゃこいつならいいか?」


トレインはその場でトランスをし、本来の姿になった。
青年は驚きつつもすぐさま頭を下げ口を開いた。

「え、えーと自己紹介が遅れました。僕は首都航空隊所属、ティーダ・ランスターといいます。実はトレインさんにお願いがあって来たんです。」

「お願い?」

ティーダは深呼吸をすると

「お願いします。僕に教導をしてください!!!」

「はぁぁぁーーーーー!?」

















「それにしてもティーダ君だったかしら?トレイン君に教導してほしいなんてね。」

特製のリンディ茶を飲みながら向かいにいるレティに言った。
レティはその様子に顔をしかめつつ

「まあ、彼が惚れ込むのも無理はないと思うわ。あそこまで圧倒的にやってしまえば彼くらいに向上心のある子ならひきつけられるものよ。」

レティとしてはある意味トレインをこちら側に引きこむいい口実になるかもしれないと考えているのはここだけの話である。


















一方、青年に頭を下げられているトレインは途方に暮れていた。
かつて自分の強さにあこがれていた後輩はいたものの、こうして教えを請いてくる相手はいなかったからである。
ティーダの様子から、ただの酔狂や気の迷いというものではないとわかったが、トレインにとってはなお性質が悪かった。


「ティーダ、だっけ?」

トレインはどこか面倒くさげに口を開き

「はい!!」

「ワリーけど俺は人にものを教えられるような上等な人間じゃねーからよ、あきらめてくんねーか?」

だがティーダは引き下がらなかった。
なおも頭を下げ、頼み込む。

「お願いします。トレインさんは僕が今まで会った中で最高の銃使いなんです。」

「ん?お前も銃を使ってんのか?」

「はい、銃型の簡易ストレージデバイスです。」

ティーダは腰に下げていた銃をトレインに手渡す。
受け取ったトレインは観察するようにそれを眺めていた。


「けど、俺はそっちの言葉で言う質量兵器?だったか、そいつを使ってるんだぜ?いまいちデバイスとか言われてもアドバイスなんかできねーよ。というより俺が聞きたいくらいだぜ?」

実際トレインが魔力を行使していたのは肉体強化や、電磁銃を撃つ際に魔力を電気エネルギーに変換するときくらいである。
その言葉を聞き、ティーダは首をふり言った。

「いえ、僕が教えてもらいたいのはトレインさんの戦い方なんです。」

「戦い方?」

「多人数相手でも、接近戦を挑まれても難なくこなす。あの戦い方…それをつかみたいんです。」


「いや、そういわれてもな…。」


トレインとしては別に意識して身につけたものではなかった。
数えきれない実践の中で身につけてきたものであって、教えられるものではないと考えていた。




ティーダの様子を見ていてもこのままでは引き下がりそうにもないので一つ提案をしてみることにした。

「まあ、教導云々は置いといて暇なときにさっき見たいな実戦形式の演習をするってのはどうだ?」

「え?」

「正直、俺の戦い方はおしえられるもんじゃねーし。どうせなら身をもって体験したほうがいいしな。俺も魔導師相手の実戦経験はそんなにねーからよ。」

「ぜひ、お願いします。」



さっき以上に頭を低くするティーダにトレインは苦笑するしかなかった。


























しかし、トレインはまだ知らなかった。




この出会いの先にある悲劇と運命を……。






[5985] 魔法少女リリカルなのは with自由気ままな黒猫 設定
Name: ショージ◆e893f68c ID:86061eac
Date: 2010/05/11 22:49
ティーダ・ランスター

保有魔力量  :A+(490000~)
  魔力資質  :AA+
  身体能力  :B
近距離戦闘技能:C
中距離戦闘技能:AA
遠距離戦闘技能:A+
総合戦闘技能 :A
状況判断能力 :A+
空間把握能力 :AA+
  指揮能力  :A
単体戦闘能力 :A
広域戦闘能力 :A⁻
  空戦適正  :AA
  陸戦適正  :B+
  補助能力  :A
  攻撃能力  :A+
  防御能力  :A⁻
  空戦     :A+
  適正ポジション:センターガード




総評:
魔力資質、保有魔力量は平均的な局員を凌駕している。中、遠距離戦闘を得意とし、空間把握能力が優れている。銃使いの典型で近距離戦闘を苦手としている。
しかし、身体能力は低くなく水準以上のものを持っている。空戦適性をもっているのも大きな強みとなっている。


デバイス
デュアリス:銃型のミッドチルダ式ストレージデバイス。通常状態では一丁の銃だが、正確性、連射性それぞれに特化した二つの銃に分かれる。


クイント・ナカジマ

保有魔力量  :AA(630000~)
  魔力資質  :A
  身体能力  :AA+
近距離戦闘技能:AAA
中距離戦闘技能:B
遠距離戦闘技能:C
総合戦闘技能 :AA
状況判断能力 :AA
空間把握能力 :A
  指揮能力  :AA
単体戦闘能力 :AA+
広域戦闘能力 :C
  空戦適正  :None
  陸戦適正  :AA+
  補助能力  :D
  攻撃能力  :AA+
  防御能力  :AA?
  陸戦     :AA
  適正ポジション:フロントアタッカー


デバイス:リボルバーナックル
リボルバー式カートリッジシステム付きで、強度も高く攻撃のみならず防御面でも大きな役割を果たす。


総評:
リボルバーグレネイドのような砲撃魔法を放つことができるが射程が短いため基本的には接近戦をメインに戦う。
生粋のインファイターらしく、機動力をフルに生かした攻撃で相手を追い詰め崩していくという形をとる。
隊長格にいるだけに指揮能力、状況判断能力が高い。



[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第25話
Name: ショージ◆e893f68c ID:64da149a
Date: 2012/04/30 14:34
クイントとの模擬戦後、トレインは裁判とリニスとの調整を並行して行い、ティーダとの訓練につきあう生活が数週間続いた。
裁判のほうは、クロノが用意した証拠やトレインの証言により、終息に向かっている。

「はー、それにしても裁判てのは肩がこるな~。」

肩を回しながら気疲れした様子でトレインはぼやく。
そんなトレインにクロノはため息をつきつつ忠告する。

「もう少しで終わるとはいえ、この裁判でフェイトの今後が決まるんだ。もう少し辛抱してくれ。」

「そうですよマスター、あと少しですからがんばりましょう。」

リニスは駄々をこねる子どもを諭すようにトレインを撫でる。

「だぁー、お前は。」

撫でるリニスの手をうっとうしそうに振り払う。

「あ~ん、マスターどこに行かれるんですか?」

リニスは、名残惜しそうにトレインに尋ねる。

「ティーダんとこだよ。今日はあいつと模擬戦するって約束したからよ。」

それだけ言ってトレインは、脱兎のごとく走り出した。






ティーダの申し出から、早3カ月が経った。
トレインに裁判があるように、ティーダも所属する舞台での任務があるため、そう多くの時間を過ごせるはずはなかった。


はずなのだが、なぜかほぼ毎日のようにティーダはトレインのところに来ていた。
風の噂では、某艦長の思惑があるとかないとか…。

それはさておき、トレインとしても訓練相手がいるのはありがたかった。
先の模擬戦以来、リニスの調整も兼ねての実戦は、トレインが魔法を覚える上でも役に立っていた。

「しかし、あらためて実感するけど、魔法ってのはすげぇな。」

トレインの目から見ても、管理局の戦闘員たちはそれなり以上の実力を持っていた。
それは、素直に驚く部分だ。

しかし、単純な魔力なしの戦いで言うと、管理局の人間よりもトレインの知る掃除屋たちのほうが分がある。
トレインが驚いていたのは、それなり以下の実力であっても魔力量や運用によっては、一級品の戦力になっていることである。



当然、ナンバーズや掃除屋同盟のメンバーに肉薄するというと、限られてくるが。

当のトレインは、魔力量こそ中の上に入るかぐらいだが、身体能力・戦闘技能が圧倒しているため、管理局内でもまともに戦える人間はすくない。
唯一といっていいのは、クイントの紹介で模擬戦をする機会があったゼストくらいであった。

そのゼストも、オーバーSランクの管理局内ではトップクラスの実力者であるから当然だったかもしれない。







鼻歌交じりで、ティーダの待つフロアに向かうトレインだが、携帯の着信が入ってきた。

「ん、ティーダじゃねえか。もしもし、どうしたんだ?」

「あ、トレインさん。こんにちは。」

「今日の模擬戦のことか?」

「はい、その事なんですが、急に悪いんですがキャンセルさせてもらっていいですか?」

申し訳なさげにティーダがうかがってくる。
トレインとしてはさほど気にすることでもなく。

「別にかまわねえけど、どうしたんだ?」

「実は、妹が体調を崩して、家で一人寝込んでいるんですよ。」

「あー、そういえば妹がいるとかいってたな。」

「はい、こちらの都合で申し訳ありません。」

「なに気にするな……。」


ふとトレインは、考えこみ意地の悪そうな笑み浮かべ





「なら、俺も見舞いに行かせてもらうわ。」











トレインによるランスター家のお宅訪問が決定した。













ティーダの運転するバイクに揺られながら、少し郊外にある一軒家にたどり着いた。

「ふーん、ここがおまえんちなんだ。」

「ええ、両親が亡くなってからは妹と二人暮らしで。」

トレインは、ランスター家の身の上話はある程度聞いていた。
改めて聞かされても何も感じない。
また、そこで変に気遣うような関係でもなくなっていた。

3か月の間とは言え、ティーダはトレインの実力に惚れ込んでいたし、トレイン自身も純粋に自身を慕ってくるティーダに好印象を持っていた。
模擬戦がらみとはいえ、トレインにとって年の離れた友人といっても良い関係だった。


ふとティーダがトレインを見ると、すでに成人モードになっていた。

「トレインさん、なんでわざわざこの姿に?」

「いやー、妹もお前が俺に教わっているの知ってるんだろ?」

「はい、そうですけど…。」

「だったら、子どもの姿で紹介されても説得力がないだろう?」

「は、はあ?」


とりあえず気にしないでおこうと、ティーダは玄関のドアをあける。
玄関は電気っも付いておらず昼間だというのに薄暗かった。


「ただいまー、ティアナ?起きてるかー?」

ティーダが呼びかけるが、返事はなかった。

「もしかしたら、部屋で寝てるのかな?」

「そうかもな、んじゃ部屋に行ってみるか?」



そして、二人で会談を上り、ティアナの部屋まできた。

コンコン

「ティアナ、入るぞ?」

「……。ん?おにいちゃん?」


ドアを開くと、顔が赤くどこかぼーっとしているティアナがベッドに寝ていた。」

「大丈夫か?」

「うん。」

ティアナは兄の顔をみてほっとしたのか、笑顔を浮かべて頷いた。
すると、兄の後ろにいる男に気がついた。


「お、おにいちゃん。後ろの人は?」

「この人は、前に話した銃を教わっている、俺の先生…みたいな人かな?」

「おいおい、先生は勘弁してくれよ。」

苦笑を浮かべながら、トレインは腰を落としティアナに近づく


「俺は、トレイン・ハートネット。よろしくな」

笑顔を浮かべながらトレインはティアナにあいさつする。
そして、そっと手をだす。
ティアナも戸惑いながらその手を握り


「て、ティアナ・ランスターです。」




後にティアナが師と仰ぐことになる、黒猫との初めての出会いだった。













ティアナの見舞いから二カ月がたった。
季節が、秋から冬に変わろうとしていた頃だった。



フェイトの裁判も終盤に差し掛かり、証言者としての仕事の一区切りがついたところであった。
トレインは、いつもの通りのんびりと過ごしながらも、リニスとの調整、ティーダとの模擬戦、レティからの勧誘から逃れる日々だった。



その日は、あいにくの嵐だった。
特にすることのないトレインは、雑誌を片手に寝転んでいると

リニスが駆けこんできた。

「お、おいどうしたんだよ?」

いつもになく真剣な表情をしているリニスにトレインは驚いていた。
しかし、次の一言で表情が一変する。


「先ほど、ティーダさんの部隊が戦闘に入ったという情報が入りました。」

「はぁ?てかそんな情報どうやって?」

「そんなことはどうでもいいんです!!」


リニスの剣幕にトレインは頷くだけだった。


「てか、あいつの実力ならよっぽどの相手でなけりゃ…。」







「よっぽどの相手です。魔力量だけなら私も越える相手のようです。しかもかなり旗色が悪いです。」

「……。」

「しかも指揮官が無能なのか、ティーダさん一人で相手にしているようです。」


トレインは黙ってハーディスを持ち

「場所はわかってるんだな?」

「はい。」

「行くぞ。」



それだけ言ってトレインは駆け出した。
















[5985] 魔法少女リリカルなのはwith自由気ままな黒猫 第26話
Name: ショージ◆e893f68c ID:896e3463
Date: 2012/05/04 00:29

第72管理外世界 廃墟


ティーダの所属する武装隊220部隊は、窮地に陥っていた。

本来であれば、管理外世界の簡単なパトロールであった。

しかし、そこで想定外の事態が起こっていた。

ロストロギアの違法な取引をしている組織のアジトを発見した隊員がいたのだ。


組織の規模からいって、本来であれば本局に掛け合って応援を要請するはずであった。

だが、現場の指揮官は、確認された構成員が小数であることをいいことに、220部隊のみで制圧にあたることにしたのだ。

その指揮官は、父親の権威を笠に、ここまで出世を重ねてきた男だった。

現場レベルとはいえ、指揮官という立場にまでなることになったばかりで、浮かれているのが明らかだった。

そんな隊長の意見には何名かの隊員は、難色を示していた。

小数とはいえ、構成員の能力がはっきりしない状況で行動に当たるのは危険が大きすぎるからだ。

組織の規模は、小さいものではないのことからも、慎重に行動すべきだと。


だが、指揮官は頑なだった。

このまま応援を待っていては、取り逃がすことにもなりかねないと言ってきたのだ。

反対意見を言っていた隊員に、取り逃がした場合の責任はとれるのか、と脅し文句をいう始末であった。





こうして、指揮官のごり押しで一部隊のみで制圧にあたることになった。














指揮官の指示を受け、220部隊は、一気にアジトの中に突入し、制圧にあたった。

構成員のほとんどは、低ランクの魔導師であり、制圧には時間がかからなかった。

部隊の中に安堵した空気が流れた瞬間であった。





「た、隊長。高魔力反応です!!」

「な、なんだと?」

「そんな、推定値ですが、オーバーSランクです。」


通信越しにそんな情報が流れてきた。

その話を聞いた瞬間、部隊全体が浮足立ちはじめた。

そもそも、220部隊は結成されてから期間が短い。

総じて部隊全体の錬度も低い。

他の武装隊と比較しても、それは歴然だった。


しかし、構成されている部隊員は、若きエリートたちであった。

ほとんどが、Aランクよりも上の実力者たちだった。


しかし、いくら実力があったとしてもそれに伴う経験が絶対的に不足しているのが現状だった。

現に、ほとんどの隊員が混乱していた。


そのタイミングを見計らったように

「おい、隊長が俺たちを見捨てて帰還したぞ。」

「「「「「「「!?」」」」」」」



その一言に、部隊員は我先にアジトから逃げ出し始めた。

一部の隊員はそれを引きとめようとしていたが、徒労に終わっていた。





結局、残った隊員は数名だけだった。



そんな中ティーダは、冷静に状況を確認し、残った隊員に提案する。


「とりあえず、捕えた構成員とデータディスクを確保してアジトから出ましょう。」

「そ、そうだな。」

「このまま逃げたところで何もならないしな。」


残った隊員は、必死に冷静を装っていた。

しかし、ティーダの目から見ても冷静に慣れていないことは明らかだった。










どうにかアジトから抜け出し、帰艦しようとしていたティーダ達に近づく魔力反応があった。

(ま、まずい。こいつがさっきの報告にあったやつか。)


ティーダは、トレインとの模擬戦を通して相手と自分の力量を見極める観察眼を養っていた。

身の程を知っているとも言えるが、生き残るということ考えた時には必ず必要になる力であった。

近づいてくる相手は、トレインほどではないが、確実に自分たちには手に余る相手には間違いなかった。



他の隊員も近づいてくる敵に戸惑っていた。

その様子を見たティーダは、意を決し。



「僕が、足止めをします。その間にみなさんは、帰艦して応援を呼んでください。」

「な、なにを言ってるんだ。」

「そ、そうだ。無茶なことを言うなよ。こいつらを置いて帰還すれば…。」

「なにを言っているんですか?そんなことをしたら…僕たちが残った意味がなくなっていまうじゃないですか。」


ティーダはそう呼びかけるが

「む、無茶なものは無茶なんだよ!!」



その一言を皮切りに、残っていた隊員たちも帰艦を始めてしまった。


(いくら経験が少ない部隊員が多いとはいえ…。)

正直、ティーダの中で失望感はぬぐえなかった。

執務官という目標を持って入った管理局。


「これが、トレインさんが言っていたことなのかな…。」

ティーダは、トレインがなぜ管理局に入らないのか不思議に思っていた。

「組織が大きければ、それだけ闇も腐敗も大きくなる。俺も実感してることだし、ダチからも聞いているからな。深入りはしたくねーのさ。」

トレインに聞かされていたことを、このときになって実感していた。


そんなことをしているうちに、ティーダの目の前には一人の魔導師がいた。

「ほう、俺の魔力反応を見ても逃げ出さない奴がいたか。」

「みくびるなよ。お前もこいつらの仲間なのだろう?逮捕させてもらうぞ。」

そう言って、デバイスを構える。


「その心意気は買うが……無謀だな。」
















トレインたちは、第72管理外世界に到着した。

「リニス、ティーダの反応は?」

「ここから南西方向に。」

「飛ばすぞ!!」

一緒に転移させたバイクを走らせ、ティーダのもとへと急ぐ。

数分後、上空に帰艦をしようとしてる隊員を発見した。


「おい!!」

トレインが隊員たちに呼びかけると、反応はしたものの、どうしていいかわからずに戸惑っていた。

リニスは、すぐさま隊員たちのもとへ行き状況説明を求めた。







そして、表情を険しくしてトレインのもとへ。

「説明するのも馬鹿馬鹿しいです。急ぎましょう。」


トレインは何も言わずにすぐさまバイクを走らせた。

ミッドチルダと同じように暗雲が立ち込めていた。


















「なかなか、悪くはなかったな。だが、俺と戦うには早すぎたな。」

魔導師は、倒れこんでいるティーダに近づき

ティーダが、手に隠し持っていたチップを奪い取った。

「なかなか仕事のほうも熱心のようだが、残念だったな。」

無情にもティーダの目の前でチップは粉々にされていた。




ティーダは、かろうじて意識があるような状態であった。

「く、くそ……。」

どうにか仰向けになってみたが、近くに先ほどの魔導師はいなかった。

改めて自分の体に触れ、手を見るとおびただしい量の出血があった。

(もう、だめか…。)




すると、どこかからバイクのエンジン音が聞こえてきた。

二つの足音とともに














「ティーダ!?」

「ティーダさん!?」

リニスは、ティーダに駆け寄り、回復魔法をかける。

トレインは、あたりを警戒するように周囲を見つめる。

あたりの様子からみてもティーダと相手の戦いがすさまじいものであったことが分かった。





「マスター!!」

リニスの大声とともに、トレインはティーダに近づき、抱きかかえる。

必死にリニスが治療を行っているが、トレインの目から見てもティーダの傷は致命傷だった。

胸からわき腹にかけて袈裟切りにあったような大きな傷から、致死量とみられる血が出ていた。


「と、トレインさん…。」

「いい、無理にしゃべるな。」

「そうです。」

「い、いんです。自分が……もう駄目だって…わかりますし」

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!!妹は?ティアナはどうすんだ?」

「そうです、執務官になるんじゃなかったんですか?」

必死に二人が声をかけるがティーダは、弱弱しく首を振った。


「ぼ、僕は駄目…ですね。せ、せっかく、確保した…チップも……。」

悔しさのあまりか、抱きかかえていたトレインの指先にティーダの泪が触れた。

「なにが駄目なんですか?ここまで一人で立派に戦ったじゃないですか?」

「リニスの言うとおりだ。今回は駄目でも次があるだろう?」

「あ、りがとうございます。トレインさん、……あなたと過ごせた5ヶ月間は…ゴホっ!!…本当に、じゅ、充実してました。」

「何言ってんだ!!」

「ぼ、僕も…あ、あなたみたいに……強くなりたかった……。」


「馬鹿野郎!!俺みたいになってどうすんだ?お前はお前の道を…。」


「あ、あなたは、ぼくにとって……の………でした…。」

「ちげぇ!!そんなんじゃねえ、俺たちはダチ同士だろ!!」



「あ、ありがとう…ございます。…これを……ティアナに……。」

「受け取れるか、お前が直接渡してやるんだ!!。」




「ティアナ…のこと………よろしく……お願い…………しま……す………。」

「ティーダさん?」

















降りしきる雨の中、廃墟に一匹の黒猫の咆哮が木霊していた。












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