マキの捕縛完了後、イレギュラーが現れた。名はトウカ、彼女は一時的に獄卒たちに保護されることになった。
記憶はハッキリと残っている。名前も全て…。「これで任務完了だね」佐疫はそういった。獄卒たちは今回の任務での疲れを言い合ったりしている。だが途中で全員が足を止めた。「君は…亡者?かな…でも任務で言われたのはマキさんだけのはず」「死んでるのは分かってるよ。私は藤香、突き落とされて死んだ駆け出し作家だよ。貴方たちは誰?」「俺たちは獄卒だ。俺は斬島、こっちは佐疫と木舌と平腹と田噛、そして谷裂だ」「やっぱり…」とトウカは呟く。薄々ここが死んだあとの世界だろうと予想をしていたようだ。「あ、いたいた。お疲れ様、みんな。それとそっちの亡者さんは初めまして、私は災藤という。トウカちゃん、君は暫くこちらで預かることになった」
獄卒たちが住まう館に案内され囲まれながら肋角と向かい合う。「君は殺されたんだな。可哀そうに」「可哀そうだなんて…それにはきっと理由がある。ムカついた、嫌いだからそういう理由があるんだと思います。それに私は気にしてませんよ。だって優しそうな人たちに会えたから」トウカはふと笑顔を浮かべた。年相応の優し気な笑顔だ。「怖くはないのか?獄卒が」「目を見れば分かります。ここにいる人たちは悪い人じゃないから」「そうか…キリカ、彼女に服を用意してくれ」「えぇ、もう準備してあるわよ」キリカは両手に服を抱いていた。肋角が席を立ち獄卒たちに外に出るように言った。全員が出て行ったあと、キリカはトウカの方を見た。「さぁちゃちゃっと着替えちゃいましょう。その服はおばちゃんが洗うから」「ありがとうございますキリカさん」トウカは服を脱ぎ貰った服を着る。スカートということ以外はほとんど他の獄卒たちと変わらない。「サイズもピッタリね。よかったわ」「ふぉ~!!なんかすごいぞ」平腹が我慢できずに中に入ってきた。カーキ色の服を着たトウカは少し頬を赤らめている。「じゃあトウカちゃんはこれからここに住むのよね。なんでも聞きに来なさいな」「はい、ありがとうございます」
確かにトウカは死んだ。しかし今、斬島たちといるトウカは生きているに近い状態らしく今のままで死を迎えればそこで跡形もなく消滅。獄卒たちと違い彼女には明確な死という概念が存在するということが全員に伝えられた。「お、東雲と綿貫が帰って来た!」平腹の一声で全員が扉の方を向いた。「はぁ…東雲さん、右腕落としていきましたよ」「悪かった」斬られた右腕を傷口部分に当てたまま東雲はトウカを見た。綿貫も。ピンク色の瞳に片目に縫い目がある男が綿貫、赤い目をしているのが東雲。「あーお前が人間か。驚かせたならすまなかった」そっか、獄卒は死なないんだっけ。腕が切断されても治るようだ。「いや、ああやっていられるのは東雲ぐらいだよ。早く慣れようね」木舌はそういった。「ていうか、女用の服なんてあるんだな」「キリカさんたちが何かしてたのは服を用意するためだったのか」