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[4017] アレな使い魔(ゼロの使い魔・憑依系)
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/04 19:03
この作品は、作者が神の啓示を受けて書いた物です。
色々アレだけど気にしないでください。










テスト板の恥が移動してきました。
生暖かい目で見守ってやってください。



[4017] プロローグ~A long time ago in a galaxy far,far away~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/08/30 14:39
ルイズ! ルイズ! ルイズ!
ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ……ああ……あっあっー!
あぁああああああ!!! 
ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ! クンカクンカ! 
スーハースーハー! スーハースーハー!
いい匂いだなぁ……くんくん。
んはぁっ! 
ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!
クンカクンカ! ああぁあ!!
間違えた! モフモフしたいお! 
モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! 
カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい!!
小説十一巻のルイズたんかわいかったよぅ!!
あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ!!
ふぁぁあああんんっ!!
アニメ三期決まって良かったねルイズたん!
あぁあああああ! かわいい!ルイズたん! 
かわいい! あっああぁああ!!
コミック二巻も発売されて嬉し……いやぁああああああ!!!
にゃああああああああん!! 
ぎゃああああああああああああ!!
ぐああああああああああああああああ!!! 
コミックなんて現実じゃない!!!!
あ……小説もアニメもよく考えたら……。
ルイズちゃんは現実じゃない?
にゃあああああああああああああん!!
うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!
いやぁぁぁあああああああああ!!
はぁああああああん!!
ハルケギニアぁああああ!!
この! ちきしょー! やめてやる!! 
現実なんかやめ……て……え!?
見……てる? 
表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる?
表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!
ルイズちゃんが僕を見てるぞ!
挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!
よかった……世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!
僕にはルイズちゃんがいる!!
やったよケティ!! ひとりでできるもん!!!
あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!
いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアン様ぁあ!!
セ、セイバー!! シャナぁああああああ!!! ヴィルヘルミナぁあああ!!
ううっうぅうう!! 俺の想いよルイズへ届け!!
ハルケギニアのルイズへ届け!


とか思ってたら、

「あんた誰?」

本当に届いた。



[4017] 第1話~キスまでの距離~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/04 19:06
抜けるような青空をバックに俺を見下ろす一人の美少女。
ピンク色の頭に特徴的なロリ体型。
不機嫌そうに眉根が額に寄っているが、その仕草もかわいさに拍車がかかっている。
神が作り賜うた奇跡の存在が、そこにあった。
間違いない。
見間違えるはずなんてない。
ルイズちゃんだ。
あのルイズちゃんがいる!
俺の目の前にいる!

「いやっほぅ!!」

とりあえず寝転がりながら叫んでおいた。
ルイズちゃんがビクッとした。
……かわいい。
まるで妖精のようだ。
あぁ、興奮してきた。
まさか、こんな日が来るとは思わなかった。
俺の想いは常識とか次元とか、そういう諸々のアレを色々アレして飛び超えたらしい。
ただのヲタ趣味のおっさんである俺が、気が付いたらここにいる。
さよなら地球。
ようこそハルケギニア。
今日から俺は召喚された愛の戦士。
英語で言うとラ、ラヴ……?
ラヴ……ウォリャー?
まぁ、それはいい。
ひとまず置いておこう。
ここに俺がいるという事実が重要なのだ。
いつの間に、とか、どうやって、とかは関係ない。
細かい原理も知らない。
むしろどうでもいい。
目の前にいるルイズちゃんだけが今の俺にとっての全てなのだ。

「ひゃっほーーッ!!」

立ち上がって力強く叫ぶ。
俺の叫び声は青空に吸い込まれていく。
あの空も俺を祝福してくれている。
爽快感マックス。
胸の高鳴りはノンストップ。
今の俺なら徒歩でも行けるぜガンダーラ!
ビバ・異世界!
あぁ、何て素晴らしいんだ!
まさか本物のルイズちゃんに会えるなんて!
もう死んでもいい。
もう死んでもいい!

「もう死んでもいい!!」

あ、しまった。
声に出てた。
俺の声に驚いたのか、またルイズちゃんがビクッとしてる。
心なしか怯えているようだ。

「おっと、驚かせてしまったようだね。ルイズちゃん」
「あ、あんた……。何で私の名前知ってんのよ……!?」
「そんな事はどうでもいい!」
「どうでもいいって……」
「今の君には至急やる事があるんじゃないか!?」
「え? え?」

唖然とするルイズちゃんに畳み掛ける。

「さぁ、契約の儀式を! 召喚したんだから契約を! さぁ! さぁ! さぁ!」

ルイズちゃんに詰め寄る。
俺が詰め寄っただけ後ろへ下がるルイズちゃん。
だが俺は諦めない。
ここで諦めたら試合終了だって安西先生も言ってたからだ。

「早く契約の儀式を!!」

ルイズちゃんの肩をがっしり掴み、じっと目を見つめる。
やっぱりかわいい……。
しかもいい匂いがする。
あぁ、これが本物の香り。
味わい深いフローラルで上品な香り。
さすがは貴族です。
感服致しました。

「素晴らしい。この香りは世界を狙える」
「ひぃッ!?」

あ、ルイズちゃんが俺の手を振りほどいてのけぞった。
ひどいやルイズちゃん。

「コルベール先生ぇ……」

ルイズちゃんがハゲを呼ぶ。
後ろの方で、生徒達と一緒に俺を遠巻きに眺めていたハゲがやって来た。

「えーとですな……。その、とりあえず召喚は成功したようですし、契約した方が……」
「で、でも、相手は平民ですよ!? しかも何か変です! おかしいです!」
「しかしですなぁ……。これは伝統ある決まりですし、どうしようもないのです。諦めなさい、ミス・ヴァリエール」
「そんなぁ……」

泣きそうな顔しても駄目だぜ、ルイズちゃん。
これはもう運命なんだ。
それにしてもいい匂いだなぁ。

「とりあえず、契約だけは済ましておきなさい」
「はい……」

ハゲに促されてルイズちゃんが小さな杖を取り出して振った。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」

諦めた口調でそう言って、こちらへと近付いて顔を寄せてくる。
……チャンスだ!

「……え?」

俺はルイズちゃんの背中に腕を回してガッチリとホールドした。
これでもう逃げられないよ。
というか、逃がさないぜ。

「ターゲットロック! パイルダーオン!!」
「んんッ!?」

ベロチュー。
その名の通りベロを入れたチュー。
俺の舌は蛇のように蠢いてルイズちゃんの口内を蹂躙する。
舌に舌を絡める濃厚なディープキス。
ルイズちゃんはあまりの衝撃に体が硬直してなすがままだ。
ちなみに俺の下半身の一部も硬直している。
でも、俺は紳士だから今はキスだけで我慢だ。
ルイズちゃんは全然動かない。
……都合がいいからもうちょっと堪能させてもらおう。

「……ぷはぁッ!」

とりあえず、自分の息が続かなくなるまでキスしておいた。
そして俺が唇を離した瞬間、ルイズちゃんは真っ赤な顔のままぶっ倒れた。
どうやら酸欠になったらしい。

「ちょっとやりすぎちゃった。てへ」

俺は唖然呆然としている生徒達とハゲ先生に向かってそう言った。
てへ。の部分がチャームポイントだ。

「うおおおおおおおおッ!?」

戸惑いと混乱が入り混じった、怒号のような歓声とざわめきが俺を包んだ。

「だ、誰かルイズを運べ!!」
「タバサ、あんたの召喚した風竜の背中に乗せてあげて!」
「分かった」
「そ、その前に治療を……」
「いや、まずは学院へ連れて行く方が先ですぞ!」

俺を無視して事態は進行する。
怒涛の急展開。
俺はやる事がないので、ぼけーっと傍観しておいた。
すると、ルイズちゃんはタバサちゃんの召喚した風竜の背に乗って学院の方へと運ばれていった。
コルベールのハゲ先生も付き添いだ。
先生が行ったという事は、当然他の生徒も後を追う。
つまり……。

「あれ? 俺一人?」

風が頬を撫でた。
ちょっと寒い。
心情的とか色んな意味で。
今までゼロの使い魔関連の色んな二次創作は読んできたけど、召喚直後に使い魔が放置された例は初めてじゃなかろうか。
まぁいい。
今日からは俺が平賀才人だ。
理屈や原理は不明だが、俺の体は高校生の時のようなボディになっている。
どうやら、平賀才人の体への憑依とかいうやつらしい。
なら、平賀才人になりきってやるぜ!
そんな決意をした。
ちなみに、体についてはたった今気付いたのは秘密だ。

「俺はやるぞーー! ルイズちゃんは俺のもんだ! うぉおおおおおおおおおッ!!」

両手を挙げて、大空に向かって雄叫びを上げる。
新たな日々、新たな生活がここから始まろうとしていた。
──でも誰もいない草原は、ちょっとだけ寂しかった。



[4017] 第2話~An old maid, an old maid~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/04 19:15
俺は大草原に置き去りにされた後、仕方ないから歩いて学院に向かった。
ルイズちゃんから俺へ課された愛の放置プレイの一環だと思えば辛くない。
愛だからこそ、試練だと思って歩く。
愛ゆえに、人は悲しまねばならぬ。
愛ゆえに、人は苦しまねばならぬ。
こんなに辛いのなら、愛などいらぬ!
お師さん、俺に愛と温もりをもう一度……。
とか、どうでもいい事を考えながら俺は歩いた。
歩いて歩いて歩きまくった。
時々迷ったりもして、結局着いたのは大体一時間少々してから。
かなり長い距離だったが、ルイズちゃんに会うためならば苦にならない。
俺の行く手は何人たりとも遮れないのだ。
そしたら今度は学院手前にある門の辺りで、イカツイ体格の衛兵さんに声をかけられた。
明らかに僕体育会系ですって顔してる衛兵さんだ。
こういう人は口より先に手が出るので、慎重に対応しなければいけない。

「おい、そこのお前。ちょっと待て」
「フヒヒ!? な、何でしょう!?」

慌ててはいけない。
思わず反射的にフヒヒとか言ってしまったが、まだ慌てるような時間じゃない。
仙道さんは何とかしてくれないから自分で解決だ。

「ここから先はトリステイン魔法学院の私有地だ。許可なく立ち入る事はできんぞ」
「あ、えと、いや、俺は関係者ですから!」
「関係者だぁ?」

明らかに不審そうな顔でこっちを見る衛兵さん。
野郎に見つめられても全然嬉しくない。
むしろキモイ。
不愉快この上ない。
男は死ね。
俺以外の男はこの世から消えろ。
あ、そうだ。
男で思い出したが、今後ワルドに会ったらその時は速攻で亡き者にしてくれる。
婚約者だとかふざけんなよ。
ルイズちゃんは俺だけのもんだ。
腕じゃなくていっそ、その首を切り落としてくれるわ。
首は塩漬けにした後でシルフィードの餌にでもしてやる。
……でも正面から戦うのは、ガンダールブの力でもさすがに厳しいな。
原作でもかなり苦戦してたみたいだし。
となると、絡め手でいくのが上策か。

「ふーむ、作戦は……」
「お前が関係者なら、名前は何て言うんだ? 一応上に問い合わせてやる」
「毒殺……。いや、アルビオン行く途中で魔力切れになった時に、船の上から空に落とせば……」
「おい、聞いてんのかお前? おい、コラ」
「クク……。さすがにあの高さから落ちれば助かるまい……」
「聞こえないのか、おい」
「これでルイズちゃんは俺だけのもんだ……」
「おーい……」
「あ? 何だよ?」

ごちゃごちゃうるさいやつが目の前にいる。
怪訝な顔をしてこっちを見ている。
何だこいつ?
俺とルイズちゃんの幸せ家族計画を邪魔する気か?

「だから、名前だよ、な、ま、え! お前の名前を聞いてるんだよ!!」
「え? 俺の名前?」

あ、そうか。
思い出した。
この人衛兵だった。
いかんな、ちょっと考え事に没頭しすぎていた。

「俺の名前。つまり貴方はそれが知りたいんですね?」
「さっきから何度もそう言ってるだろうが!」
「名前、か……」

俺は遠い目をして空を見つめた。
そして、軽く微笑んで告げる。

「名乗るほどの者ではありませんよ」

……決まった。
この台詞、ずっと前から言ってみたかったんだよな。
きっと、男が死ぬまでに一度は言ってみたい台詞ランキングの上位に位置する言葉なはずだ。
ちなみにこの他にも「ここは俺に構わず先に行け」や、タバコを片手に「あともう少しだけ眠らせてくれ……」等様々なバリエーションが存在する。
男なら誰もが憧れる渋い台詞なのだ。
だから俺だけじゃないよ?

「ふざけんなよ……」

あ、やべぇ。
衛兵さんがプルプルと産まれたての仔馬のように震えだした。
今にもテレビの前のみなさんが号泣せんばかりの震えっぷりですよ。
これはきっと怒り心頭ですね、分かります。

「お前……」
「また会おう、明智君!!」

俺は高笑いをしながら、衛兵さんが何か言う前に学院の敷地内へと走り去った。
出鼻を挫かれた衛兵さんは、固まったまま動けない。
見事に逃走成功。
こちとら逃げ足だけは結構自信があるんだぜ。
ざまーみろ、体育会系め。
貴様のような足の臭そうな男といつまでも付き合ってられるか。
やっぱり、どうせ話すならかわいい女の子とがいい。
うふふ、捕まえてごらんなさぁい!
あははは、待てよこいつぅ!
俺は脳内でルイズちゃんと追いかけっこする姿を妄想しながら逃げた。
しばらく走って、気がつけば俺は塔と塔の間にある中庭にいた。

「しかし、これからどうしよう?」

立ち止まってふと考える。
よくよく考えたら、俺ルイズちゃんの部屋知らねーよ。
塔がいくつかあって、どれが本塔でどこが住居だとか分かんねーよ。
どうすんだよこの状況。
どうすんだよ、俺?
そう思っても俺は慌てない。
現実世界では、普段からエロゲばっかりやってた俺である。
何か困った時は頭に選択肢を思い浮かべて考えてみるのだ!
三択もあれば十分だ。
というわけで、いってみよう。
まずは一番。関係者っぽい人を探して聞く。
そして二番。大声を出してルイズちゃんを呼ぶ。
最後に三番。犯人は美樹本さん。

「もちろん犯人は美樹本さん!!」

俺は中庭で叫んだ。
しかし返事はなかった!

「分かってたよ……」

とりあえず俺は、誰か人がいないか探して歩き回る事にした。
中庭をあっちに行ったりこっちに行ったりと、右往左往しながら歩き回る。
……誰もいない。
だだっ広い学院だし、エンカウント率も低いのか。
いや、もしかしたらただ単に授業中なだけか?
授業中だとしたら、下手すればあと一時間くらいは人がいないやも知れぬ。
十分ほど歩いて、さすがにどうしようかと思い始めた頃。

「おや、あれは……?」

俺は学院の裏手にある森に向かってこそこそと移動する人影を発見した。
金髪の巻き髪に、フリルのシャツ。
遠目でも分かるあの姿は間違いない。
ゼロの使い魔界のヤムチャポジションと噂のあいつは……。

「おーい、ギーシュ!」

俺は彼の名前を呼びながら走り寄った。
ギーシュがびくりと反応して振り向く。

「な、何者だい君は!?」
「いやぁ、久しぶりだなギーシュ!」
「え? だ、誰? 僕の知り合い……かい? 見たところ君は平民のようだが……?」
「何言ってんだよギーシュ! 俺だよ俺! 俺、俺! あの時の俺だよ!!」

ギーシュの肩をバンバン叩く。
いかにも親しげにやるのがポイントだ。
それにしてもこいつ、バラを胸ポケットに挿すとか無駄に腹立つな。
裸に剥いて尻に挿し直してやろうか。

「授業をこそこそ抜け出してどこに行くんだギーシュ? もしかしてデートか? この色男! 死ね」
「な、何故それを!? し、しかも最後死ねとか言ってなかったかい……?」
「はははは」
「笑ってごまかすなよ!?」

どうやらデートは図星のようだ。
こそこそしてるって事は、恐らく相手はケティちゃん辺りか……。

「ところでギーシュ、ちょっと聞きたいんだけど!」
「だから君は誰なんだい!?」
「いや、俺だよ俺! そんな事より、ルイズちゃんの部屋ってどっち行けばいいんだ?」 
「え、ルイズ? 彼女の部屋に君は用でも……。あれ、そういえば君はルイズに召還された使い魔に似ているような……」
「黙れ。聞かれた事だけに答えろ。無駄口叩くな。モンモランシーに言いつけるぞ」
「ひぃッ!? ル、ルイズの部屋だったね!? あの塔を上って……」

こうして、見事ルイズちゃんの部屋への行き先をゲットした。
場所さえ分かれば話は早い。
塔に入って石造りの階段を四段飛ばしくらいで駆け上がり、俺はすぐにルイズちゃんの下へと向かった。
塔も階段も石造りだけあって、やたら足音が反響する。
大声を上げたら反響音が凄そうだ。

「フハハハハハハハ!」

試しに大きな声で笑ってみたら、山彦のように俺の声にはエコーがかかった。
……意外と爽快だ。
いや、笑ってないで急がねば。
ルイズちゃんが俺を待っている!

「到着~!」

階段を上り、廊下を走り抜け、見事ルイズちゃんの部屋の前まで辿り着いた俺。
この扉の向こうにルイズちゃんがいる。
ルイズちゃん、ルイズちゃん。
俺のルイズちゃん!
あぁ、心臓の鼓動が早鐘の如く鳴り響く音が聞こえる。
感動のあまり口から尿が出てきそうだ!

「ルイズちゃぁ~ん!!」

ドアのノブに手をかけて、ゆっくりと回して……。

「あれれ?」

ドアは開かなかった。
どうやら留守のようだ。
留守なら仕方ない。
戻って来るまでゆっくり待つか。

「とでも言うと思ったか? 待てねーよ!!」

俺は心の中の声に罵声を浴びせると、ドアから少し距離を取って離れた。

「アンロックゥ!!」

叫びつつ、ルイズちゃんの部屋のドアにタックルする。
割といい音がしてドアは開いた。
これぞ俺流魔法アンロック。
決して強引にドアを開けただけなどとは言ってはいけない。
お兄さんとの約束だ。

「突・入!」

開脚前転をしながら部屋の中へと勢いよく転がり込む。
中央で三点倒立をして、数秒経過してから立ち上がる。
開けたままだったドアを閉め、鍵をかけ直す。

「ふぅ……」

俺は額に流れる汗を腕で拭った。
一仕事を終えた後の、男の汗だ。
部屋に入ったからには、後はルイズちゃんを待つだけだ。
俺は古来よりの作法に則って、彼女を迎える事にした。
──そして数十分後。

「きゃああああああッ!?」

ベッドの上で全裸で正座していた俺を見て、帰ってきたルイズちゃんが悲鳴を上げた。
ちょっと興奮した。



[4017] 第3話~栄光への脱出~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/04 19:23
前略おふくろ様。
俺は今、異世界にある魔法学院の一室にて年端もいかない娘さんに説教を受けています。
ジャパニーズ正座スタイルでずっと聞いているので、足が痺れてきました。
正座と土下座は日本の文化ですよね。
おっと、話がそれました。
閑話休題。
俺に怒っている女の子の名前はルイズちゃんと言います。
フルネームはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールといって、とっても長いです。
ピンク色の髪をした、ちょっとパンクでキュートな女の子です。
この世界の人の染色体はどうなっているのか少し気になります。
気になるけど、ルイズちゃんはかわいいから全て許せてしまいます。
お説教されているのに、本当はこんな事考えるのは駄目だとは思います。
でもルイズちゃんの怒る顔はすごくかわいいんです。
こんなにかわいい子を目の前にしてしまうと、辛抱たまらんです。
あぁ、もう今すぐ食べてしまいたい。性的な意味で。
未熟な青い果実が俺の目の前に。
もぎたてフルーツ収穫祭。
食欲の秋、性欲の秋。
女心と秋の空。
俺とルイズちゃんの甘い恋物語。
俺を見つめるつぶらな瞳。
罵倒の言葉を放つ柔らかそうな唇。
未成熟な禁忌のボディ。
芸術。これはもう芸術だ。
揉みたい、舐めたい、食べたい。
俺の溢れる想いは止まりそうにない。
そろそろ我慢できません。
ルイズちゃん。
ルイズちゃん、ルイズちゃん……。

「ルイズちゃあああああん!」
「ひぃッ!?」

おっと。
ルイズちゃんを怯えさせてしまった。
叱られているのに失敗だ。
紳士を目指す俺にあるまじき失態だ。
反省せねば。

「あああ、あんたね!? 突然大声上げるのやめなさいよ!?」
「はい、すんません」
「大体平民の分際で名前で呼ぶとか馴れ馴れしいのよ!」
「ごもっともで」
「本ッ当に、分かってんの!?」
「もちろんですとも」
「そ、それならね……」

ルイズちゃんの声が震える。
額には青筋まで浮かんでいる。

「何で未だに全裸なのよあんたは!?」
「フヒヒ」

サーセン。


俺がハルケギニアに召還されてから数日が経った。
基本的に、俺はルイズちゃんの部屋に監禁されている。
軟禁ではなく、監禁なのがポイントだ。
授業どころか食堂すら連れて行ってもらえない。
ご飯は一日二回、粗末な余り物を部屋で出されるだけ。
夜寝る時は縄で縛られて床に放置される。
トイレに行く時も縛られてから。
お風呂? 何それおいしいの状態。
朝は朝で、ルイズちゃんの着替えを手伝おうとしたら顔を蹴られる。
……何かがおかしい。

「原作のイベントはどこへ消えたんだ?」

俺はルイズちゃんの部屋で腕を組んで考えていた。
嬉し恥ずかしの着替えお手伝い。
授業中での錬金失敗や、食堂でのシエスタとの出会いにギーシュとの決闘。
どれも原作序盤の大きな見せ場だ。
このままでは、これらのイベントがオール無視になってしまう。
下手をすればずっとこの状態が続くだろう。
召還後その場に放置された後、部屋ではヒロインに監禁され続ける主人公ってどこまで斬新なんだよバーロー。
いや、元はといえば俺がハッスルしすぎたせいなんですけどね!
今後はちょっぴり自重します。たぶん。
ちなみにルイズちゃんは現在授業に出かけているので、部屋には俺一人だ。
一人という事はつまり……。

「そろそろ脱出作戦を決行します!」

俺は誰もいない部屋で叫んだ。
男の決意表明だ。
不退転。背水の陣。
言い方は様々だが、後がないという意味では同じだ。
このまま監禁生活を続けるのも、それはそれでゾクゾクするけど、やっぱり外には出たい。
ルイズちゃんだけではなく、シエスタちゃんやタバサちゃんやキュルケちゃんともフラグを立てたい。
この世の女は全員俺のもんだ。
誰一人として他のやつには渡すものか。

「まずはオーソドックスにドアから!」

扉へ向かってダッシュ。
ドアノブを握って回して……。
残念!
ドアには鍵がかかっていて開きませんでした!
しかも俺流アンロック(タックル)が通用しないように、木製から鉄板仕込みの板へと強化済みです。
防犯レベルがぐぐんとアップ。
俺への対策はばっちりですね。
ひどいよルイズちゃん。

「ならば窓から!」

窓に近寄って外を眺めてみる。

「風が気持ちいいなぁ」

とっても見晴らしもよくて、日当たり抜群で最高の物件ですねお客さん。
そうです、この部屋は塔の三階にあります。
高いですねー。
暖かいですねー。
風が気持ちいいですねー。
ここから飛び降りたら、潰れたトマトみたいになりそうな予感がプンプンしますねー。
というわけで、飛び降りるのは却下です。
どこぞの大泥棒さんのように、屋根から屋根へ、足場から足場へと伝うのも無理です。
落ちたら死にます。
だから無理です。
何度も言うけど無理です。

「分の悪い賭けは嫌いじゃない」

試しにニヒルに言ってみた。
でもやっぱり無理なもんは無理。

「しかぁ~し! こんな事もあろうかと!」

俺はあるものを取り出した。
それは……。

「パパパパーン! ベッドのシーツ!」

自分の口で効果音を表現しながら取り入出したるは、染み一つない真っ白なシーツ。
ルイズちゃんが使っているベッドのシーツである。
予備に何枚か部屋にあったのも拝借した。
本来なら俺がリビドーに任せてそのシーツを汚してもいいのだが、自重する。
何故ならリビドー開放に夢中になっているうちに、ルイズちゃんが戻ってくる可能性大だからだ。
もし俺が行為に夢中になってシーツを汚しているのを見られたら、今度は命の危険もあるかもしれぬ。
今は逃げるが先決。
このシーツ同士を端と端で結べば、見事脱出用のロープへと早変わりって寸法だ。
映画とか漫画では監禁された人は大抵この方法で逃げるという、伝統的な逃走手段である。
高いのならば、シーツを伝って降りればいいじゃない。
昔の人はきっとそう言ってました。
先人は偉大です。

「さっそくシーツを結んで……」

結ぼうとした瞬間に、手が止まってしまう。
シーツを結ぶ、それだけの行為ができない。
結ばなければ逃げられない。
でも、その前に……。

「脱出する前に、ちょっとくらい有効活用を……」

シーツに顔を近づけてみる。
ふわりとした感触。
あぁ、ルイズちゃんのシーツはいい匂いがする。
ルイズちゃんの残り香が溢れている。
シーツにぐりぐりと顔をこすりつけて、胸いっぱいに息を吸い込む俺。
このシーツに包まれてルイズちゃんは眠っていたんだね。
俺がシーツになりたい。
むしろルイズちゃんをシーツにしたい。

「ルイズちゃん、ルイズちゃん!」

ルイズちゃんの香りが俺の中に充満してくるよぅ。
幸せいっぱい夢いっぱい。
天国への扉が開かれて……。

「……ハッ!?」

しまった。
こんな事してたらルイズちゃんが戻ってきてしまう。
馬鹿馬鹿! 俺の馬鹿!
俺はいつの間にか全て脱いでいた服を急いで着ると、今度こそシーツを結んで部屋の窓から脱出した。


自由。
それは素晴らしい言葉。
自由。
それは人としての尊厳。

「俺は自由だぁッ!!」

ルイズちゃんの部屋から見事脱出した俺は、学院の中庭で喜びを噛み締めていた。
仰ぎ見る空はどこまでも透き通っていて美しい。
あの空の青さは、きっと俺を祝福してくれているからに違いない。
全ての人間は生まれながらにして自由である。
こんな台詞を言ったのは一体誰であったか。

「そんなもん知らねーよ!」

自分の心の声に怒鳴り返すという、特に意味のない行為。
つまり、それくらい俺のテンションは高かった。
テンションが高い時の俺は無駄に行動力がある。
例えるなら、二回行動できるくらいのレベルだ。
一ターンクリアには欠かせない特殊技能。
最終ステージでも余裕です。
意味が分からないだって?
知るか!!

「うひょーッ!!」

スキップしながら中庭を駆ける俺。
でも五分くらいで飽きたから、今度はムーンウォークに変更。

「ポゥ! ポゥ!」

奇声を発しつつ、後ろ向きに滑るようにして動く。

「ポゥ! ポゥ! ポゥ!」

一体俺はどこに向かっているのか。
人間には、後ろに目がついてはいない。
前を向いたまま背後を見るなんてできやしないのだ。
つまり、どこへ行くかは俺にも分からない。

「ポーーゥッ!!」

調子に乗ってスピードアップしてみる。
今の俺なら何でもできる。
そんな気がする。
いや、気のせいではない。
俺は無敵だ。
無敵の神だ。
世界は俺のためにあるんだ。
そうさ、世界は俺のもの。
俺がいるからこそ、世界が存在するのだ。
そんな事を考えていたら、

「きゃあッ!?」

短い悲鳴。
背中に何か柔らかい感触がぶつかって、俺は後ろへと振り返った。

「ポゥ……?」

俺の目の前では、黒髪で巨乳なメイドさんがうずくまっていた。
間違いない、シエスタちゃんだ。
タルブ村出身のシエスタちゃんだ。
ルイズちゃんに続いて二人目の原作女の子キャラ発見。
喜びを胸の奥に秘めて隠しつつ、ますは紳士に対応だ。

「失礼。お嬢さん、お怪我はありませんか」
「あ、はい、大丈夫です……」

手を出して起き上がらせる。
握ったシエスタちゃんの手は、とっても柔らかかった。
シエスタちゃんが身を起こす際、大きな胸がぷるんと揺れた。
……興奮した。



[4017] 第4話~EAT-MAN~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/05 18:05
──世界は、欺瞞に満ち溢れている。
虚構で構築された現実。
人は仮面を被って己を騙し、上辺だけの笑みを浮かべて生きていく。
そこには真実など欠片も存在しない。
例え存在するとしても、大抵の者はそれを知ろうとすらしない。
流されるまま、惰性で動くだけ。
水面に浮かぶ葉は、流れに乗って揺う。
どこまでも怠惰な日々は続く。
砂で作った城は当たり前のように脆い。
弱い心は、ゆっくりと磨耗していく。
惰弱で脆弱な砂上の楼閣。
ふとすれば衝撃で全て崩れ落ちてしまうだろう。
そんな自分の心を守るため、人は嘘をつく。
嘘という名の盾で、自分自身を守る。
嘘で己を塗り固めなければ、何もできやしない。
人が生きる上で、嘘は仕方のない行為なのだ。
……仕方ないからには、別にちょっとくらい嘘ついてもいいよね?
いや、だって『優しい嘘』って言葉もあるしね。
あるからには活用しないとね。
使わないともったいないよね。
まぁ、その、あれだ。
俺の嘘は全部優しい嘘なんだよ。
普通の嘘よりもハイレベルでエクセレントな嘘なんだよ。
ブリリアントでマーベラスなんだよ。
とにかくそんな感じで納得してもらいたい。
文句や苦情は受け付けません。
七日以内でもクーリングオフは却下です。
そんなこんなで、嘘を交えてお話中。

「まぁ。それじゃ才人さんはちっとも悪くないじゃありませんか」
「そうなんですよ! 俺は全然悪くないのに、ルイズちゃんったらひどいんですよ!」
「貴族の方とはいえ、していい事と悪い事があると思いますわ」
「俺は全然悪くないのにねー。ひどいよねー。平民同士、お互い大変だけど頑張ろうね、シエスタちゃん」
「そうですね。才人さんも、何か困った事があればいつでも私に言ってくださいね」
「シエスタちゃんは優しいなぁ」
「そんな、私は別に……」
「あ、照れてる?」
「もう! からかわないでください!」

俺はシエスタちゃんと世間話に花を咲かせていた。
話題の中心はもっぱらルイズちゃんだ。

「それにしても、勝手に召還して使い魔にした上にご飯もろくに出さずに部屋に監禁するなんて……。あんまりですわ」
「ですよねー」

え?
俺別にさっきから間違った事は言ってないよ?
一部言ってない事があったりはするけど、些細な事だよ?
ちょっぴり嘘も混ざってるけど、間違った事は言ってないよ?
嘘も方便だし気にしない。
俺は悪くない。
俺は間違っていない。
間違っているのは俺ではなく、世界の方だ!
とか、どっかのアニメの主人公が言ってたくらいだから俺も悪くない。

「ま、そんなわけでどうにも食事の量が少なくて。今の俺はお腹が空いて死にそうなんです。あ、眩暈が……」

俺はそう言って、わざとらしくふらついて見せた。
イメージは酔拳のジャッキーの足取り。
ついでにゲフンゲフンと怪しげな咳もしておく。

「だ、大丈夫ですか!? 賄い食程度ならお出しできますので、よろしければ厨房までいらっしゃってください!」
「あぁ、ぼっけぇありがてぇ。あんた、神様のような人じゃ。ありがたいのぅ、ありがたいのぅ」

岡山弁で感謝しながら、シエスタちゃんを拝む仕草をしてみせる。
別に岡山弁に深い意味はない。
それはともかく、シエスタちゃんはどうやらかなり純真な心を持っているようだ。
俺の話を全て信じきっている。
そもそも空腹と咳に何か関係があるのかとか、それすら疑っていない。
今時珍しい、とってもいい子だ。
いい子すぎて、俺はもっとエスカレートしてしまいそうです。
そろそろ情熱のパトスがオーバーヒート気味ですよ。
激しく刺激されたリビドーが蠢いてきてます。
まぁ、シエスタちゃんならきっと何があっても許してくれるさ。
そうだよね?
はい、許します。
わーい、ありがとう~。
許してもらったぞ~。
俺の心の声が自作自演で勝手に許しただけなんだが、別に気にしない。
許しが出たからには、さっそく紳士的に作戦行動開始だ。

「おっと、空腹のあまり足がもつれて、その上目が霞んで手が震えて勝手に動いてしまったぞぅ!? こりゃ大変だぁ! 一大事だぁ!」
「きゃあッ!?」

俺はシエスタちゃんの方に倒れこむと、さりげなくその大きな乳を一瞬だけ揉んでから離れた。
柔らかだが、確かな弾力を感じた。
これが乳。
別名おっぱい。
女体の神秘に頭の芯が痺れる。
あぁ、素晴らしい。
生きててよかった。
おっぱい! おっぱい!
埋まった指を緩やかに押し返してくるマシュマロのようなそれは、俺の手の平に吸い付いてくるかのようだった。
まさに至福の瞬間。
時間にして一秒にも満たない間だったが、指先に全神経を集中させていたので感触をしっかりと堪能した。
これでしばらくの間は夜のオカズに困る事はない。
ありがたや、ありがたや。

「失礼。あまりの空腹で眩暈がしてしまってね」
「もう……。気をつけてくださいね」
「いやいや、失礼。はっはっは」
「才人さんったら……」

胸を両手で隠しつつ、顔を赤らめるシエスタちゃん。
こいつはかわいいぜ。
しかも、乳を揉んだというのにそこまで嫌そうには見えない。
逃げたりしなかったのがその証拠だ。
──これならきっと、いつかヤれる。
俺は小さくガッツボーズをしながらそう思った。
ちなみに、今の俺はちょっぴり内股だ。
股間の暴れん坊がおっぱいの感触に覚醒してしまったからだ。
今すぐ全裸になりたい衝動が体を支配しようとするが、何とか踏みとどまる。
耐えろ、耐えるんだ俺。
最近全裸になりすぎだ。
ここで脱いでしまったら、今後の計画に支障が出る。

「あら、才人さんどうかしたんですか?」
「いや、別に……」

内股気味の奇妙な体勢でいる俺に、シエスタちゃんが怪訝そうな目を向けている。
これは何とか誤魔化さねば。

「シエスタちゃん、シエスタちゃん」
「はい、何でしょう?」

首をかしげるシエスタちゃん。
人を疑う事を知らない純真無垢な目が俺を見つめている。
世間の汚さとは無縁の、純朴な心。
あぁ、汚してしまいたい。

「さぁ、僕の下腹部に注目」
「え? 下腹部?」

あ、しまった!?
ついいつもの調子で言ってしまった!?

「いやいや、冗談ですよ!? さぁ、厨房へ行きましょう!!」
「あ、はい。そうですね?」
「さぁ、レッツゴゥ!」
「あ、才人さん!? 待ってください~!」

俺は急いで後ろを向いてシエスタちゃんの視線が下腹部に向かうのを阻止すると、厨房の場所も知らないのに適当に歩き出した。
ふぅ、何とか誤魔化せた。
この後、シエスタちゃんに案内されて厨房で食べたシチューはとっても美味しかったです。
賄い食とは思えないくらいの味だった。
思わず「このシチューを作ったのは誰だぁッ!? お前か! お前はクビだ!」とか言ってしまったほどです。
突然俺にクビを宣告された、偶然近くにいただけのコックさんは落ち込んでいました。
ごめんね!
本当は美味しかったんだよ!
食事後、シエスタちゃんはお腹が空いたらいつでも厨房に来てくださいねと、優しい言葉をかけてくれました。
嬉しい事言ってくれるじゃないの。
たっぷりと食いまくってやるからな。
これで食料は無事確保です。
ヤッフゥー!
今後もお腹が減ったら存分に利用させていただきます。
別にお腹が減らなくても、シエスタちゃんの乳を拝みにいく所存であります。
あの乳には拝観料を払ってでも見に行く価値がある。
俺はそう思う。
いつか自由に揉みしだきたいです。
揉むだけじゃなくて、舐めたり吸ったりもしたいです。
さらに、○○○○して、○○○を、あの乳で○○で○○○だよ! 
○○○で○○に○で○○○!!
もう辛抱たまらんですたい!
ちなみに○の中身の用語は自主規制です。
皆様でご自由に想像してください。

「シエスタちゃ~ん!」
「はい、何でしょう?」
「食事のお礼に何か仕事を手伝わせておくれ。俺は何でもするよ!」
「え? そんな、悪いですよ」
「何でも遠慮せずに言っておくれ! 服を脱げと言われれば脱ぐよ。むしろ脱ぎたいから脱いでもいい? いいよね?」
「きゃッ!? さ、才人さん突然服を脱ごうとしないでください!」
「うふふふふ~」
「もう! からかわないでください! なら、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」

シエスタちゃんは赤い顔をしながらも、微笑んで言った。
どうやら、俺が脱ぎだした事に少し照れたようだ。
あぁ、かわいいぜ。
また下腹部に異変が起こりそうだ。

「オッケー! 喜んでデザートを運ばせてもらいます!」

俺は大きく頷いた。
デザートだろうが何だろうが、もちろん了承さぁ。
さて、これでデザート運びとくれば次はギーシュとの決闘かな?



[4017] 第5話~宴の支度~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/11 07:50
さて、突然だがそろそろ今後の身の振り方について考えておこうと思う。
ハルケギニアという異世界に憑依という形で召還された俺。
原作ではルイズちゃんの使い魔として身を削って働き、何度も死にかける才人。
陳腐な言い方だが才人の目的は、現代世界へ帰るという他には、ルイズちゃんを守りつつこちらの世界の平和も守るとかそんなもんだろう。
ガリアの無能王ジョゼフいう悪役に、対するは正義の味方である才人。
ヒロインはルイズちゃんを中心とした美少女のみなさん達。
ある意味、古臭い勧善懲悪型のヒロイックサーガ。
それがゼロの使い魔である。
このまま原作に沿ってイベントを消化すれば、俺もやがてその流れに飲み込まれる事だろう。
最終的にガリアの王様倒して、エルフとも何やかんやあって、伝説とか虚無とか色々あって元の世界に戻って、めでたし、めでたしで完。
……それでいいのか?
否、断じて否。
元の世界に戻る件はひとまず置いとくとしても、俺は正義のヒーロー役には興味がない。
ハルケギニアの平和のためにガリアの無能王を倒したいですか?
ガンダールブの力で世界の平和を守りたいですか?
そう問われたら俺は即答するね。
そんなのどうでもいい、と。
ハルケギニアの平和とか、果てしなくどうでもいい。
戦争紛争大いに結構。
争い、戦うのは人の業である。
むしろ、俺がどこぞの国から王権を簒奪してこの世界の覇権を握るくらいでも一向に構わん。
俺の目的は断じて世界平和ではない。
俺は別に英雄にはなりたくない。
このファンタジックな世界に召還されたからには、やる事はただ一つ。
俺が目指すは、美少女と美女に囲まれた恒久的なハーレム生活だ!

「デザートいかがッスかー」

そんな事を考えながら、俺はシエスタちゃんと一緒に食堂でデザートを配っていた。
銀のトレイにケーキを乗せて、はさみでつまんで渡していく。
それにしても、銀製のトレイとはさすが貴族の学院は違う。
この重さと手触りからして、メッキじゃなくて本物の銀だ。
……そのうち、資金確保のために金になりそうな食器類はこっそり頂こうか。
城下町の質屋でいい値で売れるはずだ。

「才人さん、急に立ち止まってどうなさったんですか?」
「んあ? な、何でもないよ?」
「そうですか……?」

シエスタちゃんが不思議そうにこっちを見ていたので、慌てて返事をする。
いかんいかん、うっかりしていたぜ。
飯の恩にきっちり仕事をせねば。

「デザートいかがッスかー。このケーキは本場直送の生鮮食品ですよー。まだ採れ立てピチピチの新鮮ですよー」

適当な煽り文句を言いながら再びケーキを配る。
もちろん、時々シエスタちゃんの方を観察するのも忘れない。
大きな乳はいいものだ。
ケーキ配りで忙しく動くシエスタちゃんの体。
それに合わせて揺れる乳。
眼福です。
俺は心の中で手を合わせた。
ありがたや、ありがたや。
 
「なぁ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだ?」
「誰が恋人なのか教えろよギーシュ!」

俺が乳神様に祈りを捧げていたその頃。
とあるテーブルでは、数人の貴族が喧しく話をしていた。
金髪の巻き髪にフリルのついたシャツを着た気障なメイジを中心に、女の子の話題に花が咲いている。
そうです、あれがギーシュさんです。
相変わらず、薔薇を胸ポケットに挿してます。
そのうち口に咥えてタンゴでも踊りだしそうですね。
マタドールとかも似合いそうです。
それはともかく、ついに食堂でヤツとエンカウントしてしまった。
という事は、これからシエスタちゃんが因縁つけられて決闘イベント開始でしょうか?
それとも、原作通りに俺が因縁つけられて決闘でしょうか?
きっと概ねそんな感じですね、分かります。

「付き合うだって? 僕にそのような特定の女性はいないね。薔薇が咲くのは、多くの人を楽しませるためさ」

唇の前に指を立てて話すギーシュ。
それを聞いて盛り上がる周りの友人のみなさん。
ギーシュのいるテーブルに向かってケーキを運ぼうとしているシエスタちゃん。
楽しい楽しいイベントの始まりだ。

「失礼致します。デザートのケーキですが」
「ん、デザートかい? 悪いが僕は結構だよ」
「俺もいらないな」
「俺も。デザートより、話の続きを聞かせろよギーシュ」
「そうだぞ。結局誰と付き合ってるんだ?」
「いやいや、だから僕は薔薇であるからして……」

ごく普通にデザートを断るギーシュ達。
再び始まるギーシュの女の子に対する惚気話。
あれ?
あれれ?
何かおかしいぞ?

「そうですか。それでは私はこれで」

シエスタちゃんは、一礼してからテーブルを去ろうとする。
ちょ、ちょっと待ってくれ。
いかん。これはいかんよ君。
何でギーシュが香水の瓶落とさないんですか?
これは俺に対する嫌がらせですか?
何それ、ふざけてんの?
このままでは決闘が始まらないではないか。
決闘が始まらない=シエスタちゃんとのフラグが立たない。
フラグが立たない=シエスタちゃんとアレやコレができない。
つまり、性欲を持て余す。
それは困る、困るのだ!
シエスタちゃんとのフラグを逃すわけにはいかん。
シエスタちゃんは俺のもんだ。
具体的にはっきり言うと、あの乳は俺のもんだ。
誰にも渡すもんか!
そうと決まれば、行動あるのみ。
我が前に立ち塞がる障害は全て排除してみせる。
トレイを適当に近くのテーブルに置いて、作戦開始だ。

「おおっと! 足が滑ったああああッ!!」
「え?」

俺はギーシュに駆け寄ってタックルすると、倒れ込むようにして懐に潜り込んだ。

「手も滑ったああああッ!!」

そしてギーシュのポケットから素早く小瓶を抜き取った。
自画自賛したくなるほどの、電光石火な早業だ。

「うわッ!? き、君は突然何を!?」
「足が滑ったんです!! 手も滑ったんです!! 文句あんのかコラ!?」
「え? いや、その……」

何が何だか分かっていないギーシュに逆ギレする俺。
周りの友人さん達とシエスタちゃんがポカーンとした顔をしているぜ。
このまま計画続行だ。

「あぁ!? キュルケちゃんが全裸で空飛んでる!!」
「何だって!?」
「ど、どこだ!? キュルケはどこだ!?」
「うおおおお!?」

俺が指差した空に向かって、テーブルの周りにいた全員の視線が集中した。
もちろんシエスタちゃんも例外ではない。
みんなに釣られて上を向いている。
これで条件はクリアされた。
俺はギーシュのポケットから抜き取った小瓶をシエスタちゃんの背後付近の足元に転がすと、再び声を上げる。
それも、かなりの大音量で。

「シエスタちゃああああああああん!!」
「きゃッ!?」

反応して後退りするシエスタちゃん。
と同時に、彼女の足元からは何かが砕ける音がした。

「あああああああ!? そ、そこで割れているのは僕の香水じゃないか!?」
「……え? も、申し訳ありません!」

事態に気付いたギーシュと、慌てて頭を下げるシエスタちゃん。
いくらシエスタちゃんが頭を下げてもギーシュは許さない。

「平民の分際で!」

とか言いながら、唾を飛ばして怒り狂っている。
この分だと、簡単には怒りは収まらないだろう。
だが、これだけでは事態は終わらない。

「ギーシュさま……。その香水は、ミス・モンモランシーの……」
「ケティ!?」

後ろの方のテーブルからやって来たのは、ギーシュ君の浮気相手のケティちゃんでございます。

「こ、これは違うんだ。僕の心に住んでいるのは君だけ……」

言い訳をするギーシュの頬を引っぱたくケティちゃん。
バチーンと、食堂に景気のいい音が響いた。

「その香水が何よりの証拠ですわ! さっき自分の物だとお認めになったでしょう!? さようなら!」

頬をさするギーシュ。
まだ終わらない。
ギーシュに対して、更に追加攻撃は続く。
去っていったケティちゃんの向こうのテーブルから、見事な巻き髪の女の子が立ち上がった。
ドリルなヘアーが個性的ですね。
そう、彼女がギーシュ君の本命であるモンモランシーちゃんです。
鬼のような形相でギーシュの席までやって来ましたよ。

「ち、違うんだよ『香水』のモンモランシー!? その美しい顔を怒りに歪めないでおくれ!」

相変わらず言い訳するギーシュに向かって、モンモランシーちゃんはテーブルにあったワインの瓶を手に取ると、中身をどぼどぼとギーシュの頭からかけた。
ワインの赤い水飛沫が舞う。
あっはっは。
こいつは愉快痛快。
一人ビールかけですか、ギーシュ君。

「嘘吐き!」

モンモランシーちゃんは怒鳴って去っていった。
後に残されたギーシュは呆然としている。
沈黙が流れた。
ギーシュはハンカチを取り出して顔を拭くと、またシエスタちゃんに当たり始めた。

「元はと言えば、君が香水を割ったせいでこうなったんじゃないか!? どう責任を取ってくれるんだい!?」
「も、申し訳ありません……」
「謝って済む問題じゃないよ!」
「申し訳ありません、お許しください……」

土下座せんばかりの勢いでひたすら頭を下げるシエスタちゃん。
怒鳴り散らすギーシュ。
面白そうに静観しているギーシュの友人達。
その様子を少し離れた位置から遠巻きに見ている俺。
そろそろ頃合だ。

「ちょっと待ちたまえ、そこの君達!」

ギーシュとシエスタちゃんの間に割って入る。
その際に、さりげなくシエスタちゃんに微笑むのも忘れない。
これで好感度アップ間違いなしです。
殺伐とした雰囲気の食堂に、俺登場。
突然の闖入者に戸惑うギーシュ。
特に意味はないが不敵に笑ってみせる俺。
俺ってちょっとカッコイイ。
──さぁ、舞台は整った。
茶番劇の幕開けだ。



[4017] 第6話~Street Fighter~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/16 21:49
俺ってカッコイイ。
もう一度言おう。
俺ってカッコイイ。
女の子のピンチに颯爽と登場するヒーロー。
それが俺。
これはもう、シエスタちゃんは俺に惚れるしかないんじゃね?
惚れさせてしまえばこっちのもの。
後は薔薇色の生活が待っている。
La vie en roseってやつですね。
うほッ!
こいつはおいしすぎるイベントだ!
燃えてきたぜ!

「そこの金髪糞坊主! か弱い女の子をいじめるとは笑止千万! シエスタちゃんに代わって俺が相手だ!!」

俺はシエスタちゃんとギーシュの間に体を割り込ませると、食堂中に聞こえるように大声で宣言した。
声を聞きつけて、一体何事かと、ちらほら人が集まってくる。
これで第一の布石は打った。

「才人さん!? ど、どうして……?」
「女の子を助けるのに理由なんていらないよ。ここからは俺に任せておくがいいさ」
「でも……」
「デモもストライキもないよ。さぁ、シエスタちゃんは下がって。俺が全て解決してあげよう」
「才人さん、ありがとうございます。本当にありがとうございます……」
「いいっていいって。気にすんな」

何度もお礼を言うシエスタちゃんを後ろへ下がらせ、改めてギーシュに向き直る。
ギーシュは何も言わない。
どうやら、事態が急展開すぎて付いていけていないようだ。
情けないやつめ。

「おい、いつまで固まってるんだギーシュ?」
「……ハッ!? き、君は一体……?」

俺が声をかけると、ようやくギーシュは動き出した。
反応速度が鈍いな。
噛ませ犬の小物臭がプンプンするぜ。
やはり俺の相手ではないようだ。

「俺か? 俺は俺だよ。俺、俺」
「そ、その物言いは……。確か、先日会ったような……? いや、間違いない。やはり君はルイズの使い魔の平民では……」
「細かい事は気にすんな、二股坊主」
「……なッ!? ふ、二股だって!?」
「文句あるのか? そんなんだからフラれるんだよ」

ギーシュの友人達がどっと笑った。

「そうだぞギーシュ! 確かに二股してたお前が悪い!」

ギーシュの顔にさっと赤みが差した。
体は小刻みに震えている。
怒ってますねー。
これは確実にギーシュ君は怒ってますねー。
いいぞ、どんどん怒れ。
第二の布石完了。

「き、君が何者かは今は置いておこう。それよりも、だ。聞き間違いだと思うんだが、君はさっきのメイドに代わって僕の相手をするとか言ってなかったかい?」
「聞き間違いではないぞ。その通りだ」
「……それはつまり、貴族である僕に対して喧嘩を売っていると解釈してもいいのかな? 見たところ平民の君が、この僕に」

ギーシュは、低い声で言った。
俺は顔の前で、チッチッチと人差し指を振りながら答える。

「喧嘩? それは少し違うな」
「どう違うと言うんだい?」
「喧嘩じゃなくって、俺はお前に決闘を申し込んでいるんだよ!」
「なッ!?」

ふははははは!
ギーシュよりも先に決闘を宣言してやったぜ!
ちょっとだけ快感だ。

「平民風情が貴族に決闘を申し込む? 正気かい、君?」
「グダグダうるせーよ。俺が怖いのか? 受けるのか受けないのかどっちかさっさと言え」
「……どこまでも失礼な平民だね。あの『ゼロのルイズ』に相応しい使い魔だよ。いいだろう、決闘を受けよう。無礼な平民に礼儀を教えてあげようじゃないか。ちょうどいい腹ごなしだ」

ギーシュは勢いよく椅子から立ち上がった。

「さ、才人さん、殺されちゃう……。貴族を本気で怒らせたら……」

ギーシュの剣幕に怯えたシエスタちゃんは、走り去っていってしまった。

「……計画通り」

走り去るシエスタちゃんの背を見ながら、俺は小さく呟いた。
最後の布石も完了した。
これで俺がどこでどんな手を使ってギーシュに勝とうとも、シエスタちゃんは後で『結果』だけを知る事になる。
そのために、あえて大声で煽って少数ながらもギャラリーを集めた。
条件は全てクリアされた。
完璧で一部の無駄も隙もない作戦だ。

「では、君との決闘場所はヴェストリの広場で……」
「決闘を受けたなギーシュ!? 今すぐ決闘開始だ!」
「え? ちょ、ちょっと、君? だから、まずはヴェストリの広場に……」

ギーシュが何か言っているが気にしない。
決闘はギーシュが受諾した時点で既に開始されている。
俺はいつだって常在戦場の心得だ。
原作通りにヴェストリの広場まで行って、ちんたら決闘なんてやってられるか。
そもそも俺に宿っているガンダールブの能力は、召還当初のゴタゴタで未だ誰にもバレていない。
広場で決闘なんてしてしまったら、教師陣に能力が発覚してしまう。
わざわざ衆人環視の人目の中で、己の力を宣伝するなど愚の骨頂である。
切り札は最後の最後まで伏せておき、効果的な場面で使うからこそ真価を発揮するのだ。
よって、この金髪坊主はこの場でこっそりと、かつ速やかに処刑決定です。
食堂の一角の、ちょっとした喧嘩騒ぎ程度で終わらせてやる。
俺は素早くギーシュの背後に回り込むと、さっきまでやつが座っていた椅子の背もたれ部分を掴んだ。
その瞬間、自分の身体能力が上昇するのを確認。
体中に力が漲ってくる。
恐らく十キロ以上はあるであろう、重厚な造りの椅子を片手で軽々と持てるすばらしさ。
予定通りだ。
ガンダールブのルーンとは『武器の使用法をマスター及び、武器を使用する者の身体能力を底上げする事』である。
この場合の武器とは、文字通りの武器や兵器だけではない。
対象物を持った者がそれを『武器』だと強く認識さえしていれば、その効果は発揮されるのだ。
分かりやすく言えば、喧嘩する時にバットを持ったヤンキーは、そのバットを使って野球をしたりはしない。
バットは凶器として使用され、その身を返り血で染めるだけだ。
中には釘バットのように、最早野球が一切関係ないようなバットすら存在する。
本来の用途とは違っていても、バットは目的次第で武器に早代わり。
つまり、普段プロレス番組で椅子を武器として使用されている場面を見慣れている俺からすれば、椅子だって立派な武器なのだ。
屁理屈だって?
そんなもん知るか!!
現にルーンの効果が発揮されてるんだから問題ない!
事前にルイズちゃんの部屋で色々研究してた成果なんですけどね。
思い込みさえすれば、どんな物でも武器となるって素晴らしい。
まぁ、その思い込んで強く認識するってのが中々難しいんだけども。
それはともかく、俺は掴んだ椅子を片手で持ち上げると呆然としているギーシュに向かって振り上げた。

「オラァ!」

気合一閃。
ギーシュは椅子を顔面で受け止めて後方へと吹き飛んだ。
衝撃で椅子はバラバラになり、木片が辺りに飛び散る。

「まだまだ行くぞー」

別のテーブルから椅子を持って来て掴み、倒れたままのギーシュへと近付く。
ギーシュはモーゼの十戒のように割れた人垣の真ん中で、盛大に鼻血を垂らしながら呻いていた。

「き、君ぃ!? 卑怯らろ!?」

鼻血のせいか、それとも歯でも折れたか。
呂律が上手く回っていないのが滑稽極まりない。

「ほぅ? まだ意識があるのか。こいつは重畳。しっかり止めを刺してやろう」
「あ、ああ……何をするれろ!?」

再びイスを振り上げ、倒れたままのギーシュに追撃を──。

「馬鹿犬! あんた、ここで何やってんのよ!?」

追撃をしようとして、静止した。

「その声は僕のルイズちゃん!!」
「私はあんたのもんじゃないわよ!?」

声がした方に振り向くと、そこにはルイズちゃんが仁王立ちしていた。
思いがけない場面でのヒロイン登場に、俺は興奮してきましたよ。
おっと、椅子を持ったままじゃかっこつかないな。
椅子を下ろして、ルイズちゃんに爽やかに微笑みかけてみる。

「いやぁ、今日もかわいいね! ルイズちゃん!」
「そんな話はしてないわよ! 何で部屋に閉じ込めておいたあんたが、食堂で喧嘩してんのよ!?」
「ノンノン。これは喧嘩じゃなくて決闘だよレディ? アンダスタン?」
「喧嘩も決闘も一緒でしょうが!?」

あ、やばい。
ルイズちゃんが何故だか知らないけど怒ってるぜ。
怒られている理由はさっぱり分からないが、何とかしなければ。

「ルイズちゃん」

俺は真剣な声でルイズちゃんに呼びかけた。
じっと、目を見つめる。

「な、何よ……」

うろたえるルイズちゃん。
かわいい……。
このまま食べてしまいたい。
揉んだりこねたりしたい。
舐めたい吸いたい。
未発達な体を、思う存分俺が……。

「そ、そのおっぱいを……」
「はぁ?」

……って、そうじゃない。
おっぱいは違う。
思わず言ってしまったが違うんだ。
真面目にしなければ。

「えーと、実はね。ここに倒れているギーシュとかいうアホ貴族が、俺に喧嘩売ってきたんですよ。しかも平民だの、ゼロのルイズにお似合いの使い魔だの、ルイズちゃんは貧乳だのと言いたい放題。これはもう、俺はルイズちゃんの使い魔として名誉のために戦わないといけない場面でありまして」
「わ、私が、貧……乳……?」

額に血管を浮き上がらせて、静かに怒るルイズちゃん。
地響きが聞こえてきそうな雰囲気だよ。
背中から変なオーラが立ち昇ってるよ。

「い、いや、僕は別に貧乳は言ってな……」
「噴ッ!」
「ゴフゥ!?」

ギーシュが何か言おうとしていたので、とりあえずボディに蹴りを入れておいた。
あばら辺りに割といい角度で入ったようで、顔を紫色にしてギーシュは悶絶している。

「あら? 今、倒れてるギーシュが何か言いかけなかった?」
「気のせいですよ、ルイズちゃん」
「そう……。とにかく、ギーシュが私を馬鹿にしたのはよく分かったわ」
「ルイズちゃんを馬鹿にするなんて許せませんよねー」
「平民が貴族に勝てるはずないし、あんたの事だからどうせ不意打ちでもしたんでしょうけど、それは別にいいわ。この際だから、喧嘩するなら徹底的にやってしまいなさい。私が許可するから」
「ラジャーです!」

ルイズちゃんからお許しが出たので、このままギーシュの息の根止めてくれようぞ。
二股野郎に天誅だ。
そうだ、これは天の裁きなのだ。
ただでさえ彼女いる分際で他の子に手を出すとか、マジで死ねよギーシュ。
あぁ、もう腹が立ってきた。
この世の女は全員俺のもんだ!
俺が最強だ!
最強の俺にこそ女の子はなびくべきなのだ!
俺は未だ倒れたままのギーシュに馬乗りになると、マウントポジションをがっちりとキープしつつ両の拳を固めた。

「ちょ、やめ……ギャアアッ!?」
「波動拳! 波動拳!」

適当に叫びながらギーシュの顔面を殴る。
ギーシュが何か言ってるようだが気にしない。
あれは幻聴だと思う事にする。

「昇竜拳! 昇竜拳! 昇竜拳!」
「ぴっぺ、ぷぅ!?」

幻聴を無視して拳をぶつける。
殴る。殴る。殴る。
美形の男は人類の敵だ。
憎しみを込めて殴り続ける。
時々ビンタも混ぜる。
ギーシュの口からは北斗神拳で秘孔を突かれた雑魚キャラのような、そんな感じの変な声が聞こえてくるけど気にしない。
俺は最強だから気にしない。

「覇王翔吼拳!!」

某サカザキさん家の超必殺技で締めだ。
俺の拳がギーシュの顔面に陥没した。
ギーシュの体は一度大きく痙攣し、やがてピクリとも動かなくなった。
口から泡まで吹いている。
蟹みたいですね、ギーシュ君。

「うわーい、勝ったぞー。ばんざーい」

立ち上がって万歳三唱だ。
勝利のポーズ、決め!
拳から赤い液体が垂れているけど、これはきっとケチャップだから問題ありません。
それに、一応手加減したからまだギーシュ君は生きてます。
だから問題ありません。
だから問題ありません。
大事な事だから二回言いました。

「おっと、一つ忘れていたぜ」

倒れているギーシュのポケットから薔薇の形を模した小さな杖を抜き取る。
そしてギーシュをうつ伏せにして、準備完了。
杖を先端からギーシュの尻に向かって、思い切って刺してみる。
挿すとも言う。
ズブリ、と嫌な音がして杖は一気に根元までめり込んだ。
具体的な場所はあえて伏せるが、とにかくめり込んだ。

「アッー!!」

ギーシュの切ない悲鳴が、食堂に響き渡った。
……さて、後始末をしておかなければ。

「おーい、誰かここの金髪坊主をモンモランシーちゃんのとこに運んであげなさい!」

俺の言葉に、ギーシュの取り巻き達が慌ててギーシュを担ぐと、人垣の向こうに消えていった。
尻に薔薇の形をした杖を挿している男を担ぐ貴族とは、何ともシュールな光景だ。
ギーシュの怪我は、水の秘薬とかでどうせすぐに全快するんだろうなぁ……。
さすがはファンタジー。
ビックリな世界ですね。

「それにしたって、私が貧乳ですって……? うふ、うふふふふ……」

背後ではルイズちゃんが怪しく笑ってるが気にしない。
あれは気にしたら負けだ。
そんなこんなで、とりあえず決闘は俺の勝利で終わったのだった。
シエスタちゃんフラグ、見事ゲットだぜ!



[4017] 第7話~宴の始末~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7
Date: 2008/09/21 13:29
ルイズちゃんはよく俺の事を罵倒する。
「馬鹿犬」だの「平民」だの色々言われるが、中でも一番多い罵倒の言葉は「変態」である。
かわいい顔を朱に染めて、声高に叫ぶのだ。
「この変態! あんた最低よ!」と。
よりにもよって変態とはひどい。
大変心外です。
俺は断じて変態ではない。
仮に変態だとしても、変態という名の紳士である。
その紳士っぷりは、本場英国紳士を軽く凌駕するレベルだ。
日ノ本生まれの大和魂溢れる紳士。
まさに俺は最強かつ究極で無敵の紳士なのだ。
大体、ルイズちゃんは怒りすぎですよ。
俺がちょっと部屋で全裸になったくらいで怒るんですもの。
ギーシュとの決闘に勝ったんだし、ちょっとくらい大目に見てくれてもいいじゃないか。
決闘勝った後も全然態度が軟化してないよルイズちゃん。
そもそも、人間は生まれた時は服を着てなかったんですよ?
生まれたままの姿。
それこそが、人という種としての本来あるべき姿。
別に原点回帰して脱いでもいいじゃありませんか。
背徳感も心地良いし、お風呂にもすぐに入れてとっても便利ですよ。
いや、俺は風呂どころか外で行水だけどね。
こっそり外で冷水浴びてると、時々寂しいけどね。
それはともかく、裸体は最高なんです。
身も心も軽くなって開放感に満ち溢れているんです。
つまり、全裸になっても俺は悪くないんです。

「悪くないんですよ!」
「……他に言い残す事は?」
「ありません」
「なら、潔く罰を受けなさい」
「うひゃあ」

ルイズちゃんの部屋で、全裸で正座しながら説教を受ける俺。
全裸なのには、深い事情がある。
俺が全裸になる理由は、ルイズちゃんに俺の全てを見て欲しいという淡い恋心の表れでもあり、男としての本能でもある。
それなのに、ルイズちゃんは分かってくれない。
二人の想いはすれ違う。
何とも悲しい運命。
ルイズちゃんが部屋にいない間に、ちょっとシーツやら下着やらを全裸でクンカクンカと匂いを嗅いでたくらいで怒るのだ。
ひどいよルイズちゃん。
ちなみにルイズちゃん曰く、罰とは馬鹿犬への躾らしい。
馬鹿犬とは何を隠そう俺の事だ。
要するに俺が鞭で物理的にシバかれる事が、ルイズちゃんの言う躾である。
俺が何かすると、ルイズちゃんが怒って鞭で叩く。
これがここ最近の俺の日課になっている。
日課というか、頻度的に生活の一部になってるくらい?
あまりに頻繁に鞭で折檻され続けているため、そろそろ別の世界に目覚めそうだ。
俺が尻を突き出すと、まるで親の敵でも討つかのようにピンポイントで鞭を振るうルイズちゃん。
規則正しい卑猥なケツドラムの音が部屋中に響く。
痛みに混じって、脳内から麻薬物質的な何かが分泌されてくるのが分かる。
E感覚が体中を駆け巡ってきましたよ。

「オフゥ!」

来ました来ました。
何か異次元の扉が開きそうです。
せっかくだから、この状況を楽しもう。
試しに洋モノのポルノ女優風に、スパンキング場面を自分なりに再現して叫んでみる。

「Oh,oh yes! Yes!! Fuck this is good shit! I wanna make love with you!!」
「……もういいわ」

絶叫していたら、ルイズちゃんの手が止まった。

「これ以上あんたの相手してるのが馬鹿らしくなってきたわ。私は少し出かけるから、あんたは部屋で大人しくしてなさい。前みたいに抜け出すんじゃないわよ。いいわね?」
「了解でーす」

笑顔で俺が答えると、ルイズちゃんは無言で部屋を去っていく。
ドアの向こうからはガチャリという施錠の音がした。
いつもの事だが、閉じ込められてしまいました。

「しかし、甘いな……」

そう、甘いのだ!
今回は縄で縛られていない!
窓から余裕で脱出できるのだ!

「栄光への脱出だ!!」

俺は窓に向かって駆け寄った。全裸で。

「シエスタちゃんにでも会いにいこうかな~」

いつものようにクローゼットの裏に隠しておいたシーツを結び、脱出用のロープを作る。
これでもう何度目になるのだろう。
さすがに慣れてきたから、結ぶ手際がよくなってきた。
あっという間に完成する。

「さて、これで準備は完了だ。脱出……の前に」

その前に、やる事がある。

「ルゥ~イズ、ちゃ~~ん!!」

俺はベッドに向かってルパンダイブを敢行した。

「ルイズちゃんルイズちゃん! ルイズちゃ~ん!!」

ふかふかのシーツに顔を埋めて、ベッドの上を転がり回る。全裸で。
ルイズちゃんのフローラルな匂いが鼻腔をくすぐる。
脳髄を刺激する、極上の香りだ。

「いい匂いだよぅ」

昨晩もルイズちゃんはこのベッドで寝ていたんだね。
このシーツに体を包めて、ぐっすりと眠っていたんだね。
この枕に顔を押し付けたり、寝返りを打ったりもしていたんだね。
あぁ、ルイズちゃん。
興奮が収まらないよ。
というか、収める気はさらさらないよ。
俺はもう……。
俺はもう……。

「我慢できんですたい!」

俺は股間で猛り狂うリーサルウェポンのリミッターを解除した。
──戦いが、始まる。


ドアをノックする音が聞こえた。
時間にして、ベッドの上の闘争からは三十分後。
『私』はドアの方へと足を向けた。

「どなたですか?」
「僕はギーシュ・ド・グラモンだが……。とりあえず、ここを開けてくれないか?」
「あぁ、すいません。ルイズさんは留守なんです。それと、実は外から鍵がかかっていて内側からはドアが開かないんですよ」
「え? 君は、平民君……かい? まぁいい。悪いが入らせてもらうよ」

そう言いながら、ギーシュがドアを開けて部屋の中へと入ってきた。
どうやら鍵を開ける『アンロック』の魔法を唱えたようだ。

「ルイズは留守か……って、君ィ!?」
「はい?」

突然大声を出したギーシュに、私は首を傾げた。

「どうしましたか?」
「どうしたもこうしたも、何で全裸なんだい君は!?」
「あ、これは失礼しました」

ギーシュに頭を下げ、急いでベッドの近くに脱ぎ散らかしていた服を着る。
うっかりしていた。
そういえば、脱いだままだった。

「お見苦しいところを見せてしまってすいません」
「いや、それはいいんだが……。いや、よくはないな。ともかく君、何か悪い物でも食べたのかい? 口調が前はもっと傲岸不遜だったし、態度も今と全然違うような……」
「口調ですか? そういえば、ギーシュさんにこの姿をお見せするのは初めてでしたね」
「この姿? 今の君は別の姿だとでも言うのかい?」
「その通りです。私は今、通称『賢者モード』という状態でして。この状態の時は、口調と性格が一時的に変わるんですよ」
「け、賢者モード!? 何だねそれは!?」
「嫌だなぁ、ギーシュさん。男は誰だって一日一度は賢者になるじゃないですか」
「げッ!? もしかして君……!?」

ギーシュが慌てて辺りを見回す。
そして、何かに気付いたのかすぐさま顔をしかめた。

「こ、この海産物のような生臭い臭いは、まさか……」
「ちゃんと換気はしてるから平気ですよ」
「うわぁ!? この臭いはやっぱりアレの臭いか!? アレの臭いなのかい!?」
「あははは。大げさだなぁ」
「笑って誤魔化すなよ!?」

鼻を摘んで私から離れるギーシュ。
大げさ極まりないです。

「ところで、ギーシュさんは何か用ですか? 先ほども言いましたが、ルイズさんは留守ですから、いつ戻るのか分かりませんよ」
「あ、ああ……? えーと、そうだ、決闘。決闘だよ、君!?」
「決闘? それは前に私の勝ちという事で終わったのでは?」
「あんなものが、誇り高い貴族の決闘として認められるものか!! それに、あれは君が卑怯にも不意打ちしたんじゃないか!?」

そう言って地団太を踏んで怒鳴り散らす。
エキサイトするギーシュの剣幕に、私は内心やれやれと思っていた。

「ギーシュさんは軍人の家系でしょう? いつか戦場に出ても、不意打ちは卑怯だの汚いだのと言うつもりですか?」
「そ、それは……」
「まぁいいでしょう。ギーシュさんが納得できないというなら、決闘をもう一度受けるのも吝かではありません」
「本当かい!?」

喜色満面のギーシュに、私は「ただし」と前置きした上で話を続けた。

「決闘の時間帯と場所、立会い人はこちらで選ばせてもらいます。詳しくはルイズさんと相談した上で、後で連絡します。それでよろしいですか?」
「あぁ、それくらいは構わないよ! それじゃ、確かに決闘の件は君に伝えたよ!」

ギーシュは足取りを軽くしつつ、部屋を出て行った。

「やれやれ。また決闘ですか。面倒な事にならなければいいんですが……」

思わず愚痴が漏れる。
こんな事なら、きちんと止めを刺しておいた方がよかったかもしれない。
いや、ネガティブな思考はいけない。
二度目の決闘を前向きに考える事にしよう。
そもそもギーシュは噛ませ犬として、その他道化的ポジションとして今後色々と役に立つはずだ。
だから決闘で勝っても、多少の怪我はともかく殺したりはしない。
安易に亡き者にするよりも、生かしておいた方が私にとって都合がいい。
それに、鍛えればギーシュの土属性魔法は大きな戦力になるはずだ。
もし二度目の決闘で完膚なきまでに叩きのめせば、私との力の差を思い知って言う事を聞くようにもなるだろう。
どうすれば最も効率よく、こちらの手の内を明かさずに圧勝するかが課題だ。
決闘の場所と時刻は指定できるから、地の利はこちらにある。
使用すべき獲物は剣か、それとも別の物か。
どちらにせよ、人目を避ければガンダールブの力は大々的に使わなければ問題ない。
となると……。

「ちょっと、そこの馬鹿犬」

私が思考の海に沈んでいると、背後から声が聞こえてきた。
振り向くと、そこにいたのは桃色の髪をした私のご主人様の姿。

「おや、ルイズさん。お帰りなさい」
「お帰りなさいじゃないわよ!? 何で鍵閉めといたのに開いてんのよ!? あんた、また逃げたわね!?」
「え? いや、今回はちが……」
「黙りなさい変態! しかも何か部屋がイカ臭いし、何よこれ!?」
「いや、だから……」
「うるさい! あんたを信じた私が馬鹿だったわ! まだ躾が足りないようね!!」

こうして日課のお仕置きが再開された。
なお、鞭で叩かれている内に賢者モードは勝手に終了した。


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