「ん……ここは……?」
意識がぼんやりと焦点を結んでいく感覚。目覚めの瞬間のように、眠っていた自分が世界を認識し始めるのが、はっきりと感じられる。
しかし、そのとき目の前に広がっていたのは自分の部屋ではなく、全く見覚えのない景色だった。
荘厳な光が降り注ぎどこまでも広がる空間。ゆったりと漂う雲が光を受けて眩しく輝く美しさはとてもではないが言葉にできず、まさに天国のような美しさ。そんな陳腐な表現しか浮かばない。
間違っても、ここは僕の家ではない。さて一体どうしたのだろう。昨日は翌日のことを考え、人生でも超大事な日だからとなかなか寝付けぬ夜を過ごしたはずなのだが。……まさか、寝不足が原因でそのまま死んだのか!?
「ルカ……勇者ルカ……目覚めなさい」
「この声は……!?」
そんな不安にさらされる中、この空間全てに響き渡る美しい声があった。明らかに人の声ではない、と悟らされる神性に満ちたそれを聞けば、この世界の人間ならばおのずと想像するお方がいる。
「私はイリアス……創世の女神、イリアスです」
「ああ……イリアス様!」
そう、数千年の昔、この世界の全てを創ったと伝えられるイリアス様。白く清純な衣服に身を包んで慈愛に満ちた笑みを浮かべ、その背に広がる純白の翼はまさしく神の証。
……そして何より、イリアス教の信者の男であれば誰もがうっとり見とれる豊満エロボディ。造形しが魂込めて作っていると言われる神殿の女神像そのまま、いやそれ以上のエロさを誇るお姿、正直たまんねえ。
「――というわけで、良いですかルカ。あなたはこの世界を救うのです」
「……あっ、はい」
いかん。イリアス様の、腰のスリットから見える眩しい太ももとか、世界が生まれる前にあったと伝えられる奈落より深そうな胸の谷間とか、世界創生という偉業を為したことを納得させるのに十分なたっぷりとしたお尻のラインとかに見とれていたら全く話を聞いていなかった。なんか世界を救えとか言われたような気もするが、これはつまりあれか、明日勇者となるための洗礼を受けることになる僕への激励ということなのだろうか。光栄ですっ!
「わかりましたね、ルカ。私はあなたに期待しています。そしていつでも見守っていることを、どうか忘れずに」
優しく微笑むイリアス様。超お美しいです。
……だが、ちょっと待ってほしい。本当に、イリアス様が僕の夢枕に立つことなどあるのだろうか? こう言ってはなんだが、勇者としての洗礼を受ける男の子はごまんといる。だがそんな彼らが、こうしてイリアス様が夢でお告げを為されたという話はとんと聞いたことがない。
だがそれでもこうして今僕の目の前にイリアス様がいるという事実。これらから導かれる結論は。
「……あ、そっか。これただの夢だ」
「……は?」
そう、夢なのだ! ただの夢。イリアス教の熱心な信者というわけではないが、イリアス様、そしてイリアス様のあの豊かなおっぱいへの崇敬は誰にも負けないと自負するこの僕が、イリアス様からの洗礼を受ける記念すべき日の前日にそのお姿を夢に見たとして、何の不思議があろうか。なーんだ、すげえ納得した。
さて、それではどうしたものか。今目の前には、どこの神殿にある女神像よりも美しい生イリアス様。むしゃぶりつきたくなるようなエロボディが、薄布一枚だけを纏って目の前にいる。しかもここは夢の中。……ならば、ヤることは決まっている。
「ありがたやありがたや……えいっ!」
「え……きゃあんっ!?」
そりゃもう、迷いなくその偉大なるおっぱい様を鷲掴みくらいのことはするだろう!?
「おぉ……何たる柔らかさ。にぎにぎするたびに形が変わる……っ!」
「んっ……あ、あの、ルカ? あなた……あっ! なにを、しているんです……?」
おお……掌から伝わる感動的な感触よ。服なんだか布ひっかけてるだけなんだかわからない白い服の上からでもぷにょんもにゅんと掌に吸い付いてくるイリアス様のいやらしいおっぱいは、指を沈ませれば沈ませるだけ形を変え、まさに夢心地。つーか夢の中だけど。そしてイリアス様の笑顔が引きつってるけど。
「え。そりゃあ夢だとわかって、目の前におっぱいがあれば、揉むでしょう?」
「何を純真な目で語っているのですっ! いくら私でも、そしてあなたが私好みの無垢な少年でも、やっていいことと悪いことが……きゃんっ、そこ、乳首ですぅ!」
何をあたりまえのことを、という顔で返事をする僕に、さすがに怒るイリアス様。しかし見た目の露出度の通り下着も付けていないようなので、服の上からでもぷっくり膨らんできたのがはっきりわかる乳首をつまんであげると、顎を反らして声が跳ねる。どうやら感じてくれたらしい。再びこちらを向いた時には完全に蕩けた表情をしていて、なんというか……たまらない。
「これこそまさに、明日洗礼を受ける僕へイリアス様がくれた理想のドリーム! これは楽しまないほうが失礼ってもんですよね。というわけで、もっと楽しませていただきますっ!」
「きゃっ、は、激しい……っ、らめええっ!」
そんなわけで僕は、夢の中でイリアス様のおっぱいを思うさま楽しんだのでした。
「うっ、うう……こ、これじゃあ今日どんな顔して洗礼に行ったらいいのかわからないですぅ……」
目覚める直前、最後にイリアス様がそんなことを言っていたような気もしたけれど、まあ夢だからしょうがないよね!
◇◆◇
「というわけで、僕はこの戦いが終わったらイリアス様の洗礼を受けて勇者になるんだ……」
「そうやってフラグ立ててる時点でダメだと思うよ~?」
などという回想を、目の前のスライム娘に語る僕ことルカ。
イリアス様が降臨なされるというありがたい夢を見たその日、まさに勇者の洗礼を受けに神殿へと向かう直前にイリアスヴィルの村へと現れたスライム娘退治のため、僕はこうして一人立ち向かうこととなったのだ。
相手は軟体というか液体が人型になっている、としか表現しようのないスライム娘。足元とか液状化しているので完全な人型とは言い難いが……あのどろどろとジェル状の体は触れれば大層柔らかいことだろう。物理的な意味ではなく性的な意味で蕩けた表情や、細い腰に見合わぬあのぽよんたゆんと揺れる大きなおっぱい……今の僕では勝てないほどの強敵かもしれない!
「それでも……村を守るため、僕は戦う!」
「セリフはカッコいいけど、私のおっぱいガン見しながら言ってもね~」
それは男だから仕方がない。そう思いながらも剣を抜き放つ。相手はモンスター娘である以上、実際に戦うこと以上に性的な攻撃にも気を付けなければならない。イリアス五戒においても禁じられている魔物とのエロい行為によっても、この世界の男はノックアウトされてしまうからだ。もし万が一犯されてしまえば即座にあひることになるのは確実だ。
……まあ、僕は正直イリアス様(のおっぱい)は崇拝していてもイリアス教の教え自体は割とスルーしてるので、どうでもいいのだが。
ともあれ今はなんとしてもこのスライム娘を撃退しなければならない。それも可能な限り傷つけない方法で。
未熟な半人前勇者、にすらなれていない僕にそんなことができるかはわからない。だがそれでも、この村を守るため、そして人間と魔物が共存できる世界を作るため、必ず勝つ!
「うおお、いくぞおお!」
「えへへー、いらっしゃーい」
◇◆◇
で、その結果。
「あひいいいいいいいっ!?」
森の中に高らかに響く、その悲鳴。断末魔にも似た絞り出されるような叫びは長く尾を引いて木々の中に消えていく。
「うあっ、あ! らめ……もうらめぇっ!」
結論から言うと、僕はスライム娘に犯されてしまった。僕の剣の腕が未熟だったせいだろう。どれだけ斬りつけても効果はなく、スライム娘の軟体の体に足元を絡め取られ、そのまま押し倒されて一気にその液状の体へと挿入させられた。ぐちゅぐちゅと蠢く膣……というか体の中の感触は僕をあっという間に絶頂へと導き、半透明の体の中に白い精液がたゆた撃光景は、たまらなく淫靡だ。
その結果、息も絶え絶えの悲鳴を上げている。
「らめぇ……もう出さないでぇ……妊娠しちゃう……私の体、あなたのせーえきで真っ白になっちゃうぅ……っ!」
スライム娘が。
なんということでしょう。スライム娘の体の中は全身くまなく僕の精液が満ち満ちて真っ白になり、まるで妊娠したようにお腹が膨らんでもいるという、すさまじい姿になっているのだった。
スライム娘の表情はだらしなく弛緩しきり、よだれとも体液ともつかない汁をぽとぽとと僕の頬にこぼして、それでも快感は彼女の体を勝手に動かし、腰を振るのはやめなかった。
ついでに、その時僕はどうだったかというと。
「あー、いいよスライム娘ちゃん。このおっぱいもお腹も大分育ってきたねー。うっ……またイク!」
「あひいいいっ!? らめ、今どこも敏感だから、さわらないでっ! 出さないでぇ!」
スライム娘ちゃんをものっそい堪能してました。
やー、なんか犯されてるし大量に射精してるのに、まったく萎える気がしなくて。きっとこれもスライム娘ちゃんがあまりにもかわいくてエロいのと、イリアス様が夢に出てきて加護を与えてくれたからに違いない。
「ふわぁ……弾けちゃう。あなたの精液でおなかぱんぱんになって、もう弾けちゃいそうだよぉ……!」
「大丈夫大丈夫。……あっ、またイクよ」
「あひいいいいいい!?」
思えば、この時に僕の運命は定まったのだろうと思う。
人間と魔物の共存のために必要なのは争いではなく、力ではなく、愛なのだと気付かせてくれたスライム娘には、生涯感謝してもしきれない。
◇◆◇
そんなこんなで、僕はスライム娘を退けることに成功した。白スライム娘と化した彼女はしばらく痙攣していたがじきに目を覚まし、ものすごい満足げな慈愛の笑みを浮かべてぽっこり膨らんだお腹を撫でながら去っていった。これなら当分は男の精を奪わなくて大丈夫そうだ、と言いながら。つまり、これでしばらくの間あの子は人を襲わず、そのため討伐されることもないということになる。実にすばらしいことをしたと、晴れ晴れとした気分だった。
しかしそうなると今度は正午に行われる洗礼の儀式の時間が気になってくる。空を見上げれば太陽は大分高くまで登っていた。これは少し、急がなければならないかもしれない。
「そう思っていた時期が、僕にもありました……」
「貴様は何を言っているんだ」
イリアス様の洗礼を受けるため神殿に急ごうとしていたまさにその時、突如森の中に響き渡る轟音と震動。これまでイリアス様の加護によってモンスター娘が寄ってくることもなかったところへ急に現れたスライム娘に続くこの異変。見過ごすわけにはいかないと駆けつけた僕はそこで、新たなモンスター娘と出会った。
まず目に付くのは、人のものではない蒼の肌。なめらかで、宝石のように美しい色をしている。さらに、青みがかった銀の髪。肌を彩る黒の入れ墨のような紋様。下半身は人の物ではなくラミアと似た大蛇の物だが……この世の物とも思えない、美しさだった。
あたりの地面がえぐれていることからして、先ほどの異変は彼女が空から落ちてきたことによるものだろう。それだけのことを引き起こしておきながら珠の肌に傷一つないことからしても、彼女が高位の魔物であることは疑いない。極めて強力で、そして美しい。大事なことなので二回言いました。
思わず見とれることしばし。彼女は自然に目を覚まし、今に至るというわけだ。
「で、貴様はイリアスの洗礼を受けに行くというわけか。くだらん」
「僕の人生をかけた目標の一つが下らんこと扱いされてるっ!? ……まあいいや、美人だから許す!」
「……なんだこいつ、アホか。無性に調子が狂うな」
などと楽しい会話をして過ごしてました。どうやらこの美人ラミアさんは本当に怪我など心配のない様子。そんじょそこらの魔物とは違うとドヤ顔で語っていたが、一体何者なのだろう。正直いろいろ知ってお近づきになりたい。超なりたい。
「ふん、まあいい。余はやることがある。貴様は貴様でイリアスの神殿とやらに行ってみるがいい」
「えっ、そうなの? まあいいや。……また、君と会えるかな?」
「ああ、きっとな」
ニヤリ、と笑うお嬢さん。邪悪極まりない笑顔ではあったがそんなところも超プリティー。さっきから胸の鼓動が止まらない。が、実はさすがにそろそろ時間がマズイ。どうやら彼女はしばらくこのあたりに残るつもりらしいから、まずは洗礼を受けてこよう。その上でまた会いに来ればいい。そう結論付けて、僕は彼女と別れてイリアス様の神殿へと向かって行った。
……ラミア風なお嬢さんに、まだ名前も聞いていないことをすっかり忘れて。
◇◆◇
「ぉぉお……」
そんなうっかりがよくなかったのだろうか。悪いことは重なるもので、なんと驚いたことに僕はイリアス様の洗礼を受けることが、できなかった。
言い訳がましく聞こえるかもしれないが、遅刻したわけではない。正午前には神殿にたどり着き、朝に夢の中でおっぱいの感触を堪能させていただいたイリアス様の本物が降臨なされて再びおっぱいを拝ませてくれることを……ではなく洗礼してくれることを心待ちにしていたのに、何故かお姿を現されなかった。神官の人に曰く、こんなことは前代未聞。一体何があったのかさっぱりわからないというが、ただ確実なのは僕が洗礼を受けることができず、この機会を逃したためもう二度と勇者になることも同じく不可能で、せっかくイリアス様の生おっぱいを拝める絶好のチャンスを逸してしまったということだけだ。
「くそうっ! どうして……どうしてイリアス様は僕にあの豊満なおっぱいを見せに来てくれなかったんだ!?」
「いや、ヤツはそんなことのために降臨してるのではなかろう。ふふっ、しかしやはり降臨しなかったか。……まあ、妙に顔が赤かったりそわそわしていたりで最初からおかしな様子ではあったが」
その行き場のない悔しさを、いつの間にか僕の家に侵入していた例の魔物お嬢さんにぶつける僕。なんでも僕の初々しい匂いを辿ってこの家を見つけたのだとか。初々しい匂いだなんて……言われた時は思わずキュンときた。
「というか貴様、そんなにイリアスイリアス言う割にやつの言うことにはあまり従っていないようだな。貴様、先ほど魔物……スライムあたりに犯されているだろう」
「ど、どうしてそんなことがわかるっ!? ハッ、まさかお前も僕を狙って!?」
「まあ実に美味そうではあるな。思わず襲いたくなるほどに。だが今はいい。それよりも、貴様だ。イリアスを信じるという反面、イリアスが禁じる魔物との性交は特別忌避していないと見える。どういうことだ?」
しかもこんな風に性遍歴まで暴露されるとか、僕の心の中のドMな部分がますます滾ってしまう。
……これはもう、やはりそういうことなのだろうか。
「僕が侵攻してるのはイリアス様のおっぱいとお尻と足とその他エロい部分全てであって、イリアス教の教え自体は割とどうでもいいんだよ。魔物との共存を目指しているわけだし」
「ああ、さっきもそんなことを言っていたな。……幼稚な正義感か、アホめ」
「自覚はあるよ。でも僕はそうしたい。そんな世界が欲しい。だから……」
僕の目指す先を幼稚と断じる彼女、名前はアリスフィーズ・フェイタルベルン。アリスと呼べ、と呼んでくれた美しい魔物の少女。蛇状の下半身を器用にくねらせて椅子に腰かけている彼女。一目見た時、そのサラサラの髪と退屈そうに愁いを帯びた瞳に、僕は心を奪われていたから。
「そういう夢とかなんとかもう全部どうでもいいんで、僕と結婚してください」
「……はあっ!? うおわああ!?」
結婚を、申し込んだ。
僕の言っていることを理解した瞬間、アリスは椅子から転げ落ちてその辺のたうち回ったけど。
「……大丈夫?」
「大丈夫か心配なのは貴様の頭だ! に、人間の分際で余にけ、けけけけけ結婚を申し込むだと!? それも人間と魔物の共存とやらの一環か!」
「いや、違う。確かにそういう世界が欲しいのは今も変わらないけど、それとは全く別次元であなたに惚れました。結婚してください。結婚してください」
「繰り返すなっ!」
ふんがー、と怒るアリス。青い肌に赤みがさして可愛いなあ。
「……ふんっ、悪いが私は魔物の中でも由緒正しいフェイタルベルン家の当主だ。貴様のような雑魚でヘタレな人間ごときと結婚などできん。もし結婚したいなら……」
「したいなら? したいなら、ということはできる方法があるってこと!? 教えて教えて!」
「……あ、い、いや違う! ……ええい鬱陶しい! どのみち今の貴様ではその方法すら夢のまた夢! ひとまずその話は却下だ却下! それよりルカ、お前は洗礼を受けられなくとも旅に出るのだろう。ならば私もつれていけ。せっかくだからお前を案内役に見聞を広める」
「つまり新婚旅行ですね、わかります」
「何もわかっていないわああああ!」
そんなこんなで、母さんが流行り病で亡くなってから一人暮らしとなった僕の家に久々の大声がこだまする。なんだかんだ言いながらもアリスは僕の度についてきてくれることになって、どうやら洗礼を受けられないという最先の悪さなんて帳消しになるくらい楽しい旅になりそうだ。
「さあ行こうアリス。僕たちの戦いはこれからだ!」
「一面の事実ではあるが、無性に認めたくないぞ貴様……」
意気揚々と突き進む僕と、若干げんなりしながら下半身をくねらせついてくるアリスの世界を救い、人間と魔物が共存できる世界を作るための、いろんなモンスター娘に種付けしまくりの旅は、こうして始まるのであったとさ。
これこそが後に、世界に平和と魔物との共存をもたらし、ついでに尋常ではない数のもんむすに子種を授けた絶倫勇者、ルカの旅立ちの姿なのであった。