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[37501] 【ネタ】私の兄者がこんなに強いはずがない【真・三國無双シリーズ×恋姫無双シリーズ】
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2014/02/20 19:19
・真・三國無双と恋姫無双のごった煮世界
・平行世界の同一人物的な方々は双子という設定。きっと異性の双子は同じ名前にするとかいう風習があるんだよ
・上記理由から各キャラの名前が紛らわしいので、三國キャラはそのままの字、恋姫キャラは真名が字ということに
・上記理由により真名の設定は無し
・各キャラの年齢差とか考えたらいかんのです
・こまけぇこたぁいいんだよ!!※ハーメルンにも投稿しています





 後漢末期。政治は腐敗し、大地は荒れ、漢王朝の権威は地に落ちていた。
 各地では混乱が続き、遂には黄巾党と呼ばれる集団による反乱が発生。その勢いは大陸全土を包み込まんとしていた。

「た、助けてくれぇ!」
「村が、オラたちの村が黄巾の連中に」

 そして今また、一つの村が黄巾の波に押し流されようとしていた。

「ええい、道をあけろ!」
「我らを何と心得る!」

 だが民を救うべき官軍は、救いを求める村人たちの声を切り捨てた。
 彼らは今黄巾の本隊を目指して進軍している。寂れた村を襲う小勢を無視し、速やかに本隊を叩くことは戦術的に間違いではあるまい。
 しかしその選択はあまりにも非道。今の漢王朝の有り様を物語っていた。

「う……ああ……あんまりだ」

 膝をつき、項垂れる村人。
 田畑を荒らされ、蓄えを奪われ、明日からどう生きろというのか。
 絶望に打ち拉がれたその姿は、今の大陸の有り様そのものであった。

 だが捨てる神あらば拾う神あり。
 官軍の消えたその場を、未だ立ち去らぬ一団が居た。

「大丈夫ですか?」

 不意に肩を叩かれ、村人は驚いて声の主を仰ぎ見る。

 この場にそぐわぬ、うら若き乙女がそこに居た。
 世界を知らぬ村人からすれば、その少女の美しさは天上のそれ。他者を慈しみ愛する慈悲深きその様子は、地に降りた天女を思わせた。

「あ、あなたは」
「もう大丈夫だ。後は私たちに任せて下がっていてくれ」

 戸惑う村人を安堵させる力強く優しい声がした。
 一対の剣を両の手に持つ精悍な顔立ちの青年が、村人をその背に守るように進み出る。
 そばに立つ少女に比べれば、拠点兵長(平凡)とすら言える容姿。しかし村人は、その平凡なはずの青年に、少女に劣らぬほどの安堵を覚えた。

 劉玄徳。そして劉桃香。
 後に大徳と讃えられる兄妹の戦いが、今始まろうとしていた。

「雲長! 翼徳! 村を襲う黄巾を打ち払うぞ!」
「承知!」
「応よ! この俺様に任せとけ!」

 双剣を手に走る劉備。その後ろへと続くように、二人の男――関雲長と張翼徳が地を駆ける。

「な、なんだてめえら!?」
「悪漢に名乗る理はあらず。黄巾よ、我が義の刃の錆となれ!」

 突然現れた一団に焦る黄巾たち。しかし雲長はそんな黄巾たちに立ち直る暇を与えず、一閃の下に打ち倒していく。

「おらぁ! 張飛様が相手になってやるぜ!」
「ぎゃああっ!?」
「こ、こいつら人間じゃねえ!」

 そして翼徳が矛を振るう度に、黄巾たちは風に巻かれた木の葉のように吹き飛ばされていく。

「な、何てやつらだ。一旦ひ……」
「よし、兄者たちに続くぞ鈴鈴!」
「がってんなのだ!」
「今度はなんだぁ!?」

 たった三人の男たちに押され、蹴散らされ、逃げ惑う黄巾たち。
 たが賊徒となった彼らに逃げ道など存在しない。男たちの隙をつくように、二人の少女が武をふるう。

「な、何なんだてめえらは!?」
「先ほど兄者が言っていただろう。貴様らに名乗る名など無い!」
「悪いやつらはぶっ飛ばすのだ!」

 黒髪の美少女と小柄な少女。愛紗と鈴鈴の手には、各々の兄と同じ武器が握られていた。
 そして二人が得物を振るうや否や、竜巻のような戟を受けて黄巾たちは一瞬で襤褸となって空に舞い上がる。

「みんな凄い……。よーし私も!」

 弟妹たちの活躍を見て、桃香もまた兄と揃いの剣を抜いて走り出す。
 しかし――

「待て! 前には出るな桃香!」
「いかん! 愛紗よ、姉者をお守りするのだ!」
「桃香様! 今参ります!」
「みんな酷い!?」

 張り切って走り出したというのに、過保護な実兄はともかく、義理の弟妹までも戦力外扱いに、桃香は目尻に涙を浮かべ抗議する。
 しかし悲しいかな、桃香の腕では足手まといにしかならないのは事実。
 お兄ちゃんだって戦ってるのにぃと愚痴を漏らしながら、桃香は大人しく関羽兄妹に守られる。

「敵将討ち取ったぜ!」
「敵将討ち取ったのだ!」

 一方張飛(脳筋)兄妹はやや暴走しながら黄巾を蹴散らし続けていた。





「……あれが関羽か」

 反董卓連合。その陣中にて、曹孟徳は集まった群雄の中に一組の兄妹を見いだしていた。
 見上げるほどの長身に見事な長髭を持つ男。
 美しい黒髪を頭部の横でまとめた少女。
 言わずと知れた関羽兄妹であった。

「猛将華雄を討ち取り、あの呂布と渡り合った武。野にあるには惜しい」
「そうね。視野の狭い猪武者では無い、知勇兼備の将。確かに欲しい人材だわ」

 相槌を打ちながら、小柄な、しかし兄孟徳に劣らぬ覇気を持つ少女――華琳がこたえる。
 後に「人材マニア」と呼ばれる二人にとって、関羽は一目惚れしてもおかしくない優将であった。

「しかし兄に比べ妹は熱くなりやすいようだ。将としては兄の方が上やも知れぬな」
「だけど妹の美しさは見逃せないわね。夜伽の相手としてもお買い得だわ」
「……」

 いきなり飛躍した話の内容に、孟徳の動きが止まる。
 しばしの沈黙の後に愛紗を眺めると、顎を擦りながら口を開く。

「……公人としては兄が欲しいが、私人としては妹の方が欲しい。悩みどころだな」
「何を言っているの孟徳。両方手に入れれば良いだけの話じゃない」
「なるほど。流石は華琳。わしをも越える強欲ぶりよ」
「喧嘩を売っているのかしら? なら謙虚な孟徳は私に関羽の初夜を譲るのね」
「それはできん。むしろおぬしは兄の方に初夜の相手をしてもらうべきではないか」
「私が? あの髭と? あまりふざけた事を言うと、貴方の粗末なモノを切り落とすわよ」
「ふっ。わしのモノを切り落としても、ぬしにモノが生えるわけではないぞ」
「いらないわよ。そんなモノに頼っているから、貴方は満足に相手を悦ばせられないんだわ」
「ほう。それは挑戦と受け取った。ならばわしの性技、とくと見せ付けてやらねばなるまい」
「望むところだわ。相手は春蘭でいいわね」
「是非もない」
「そこの色情魔ども、黙れ」

 優将の話をしていたはずが、いつの間にか妹が毒牙にかかりそうになり、夏侯惇は低い声で主二人を威嚇する。

「ああ……華琳様も孟徳様もそんな……」

 一方春蘭は今宵自分はどんな目にあうのかと期待していた。というかぶっちゃけ濡れていた。

「……兄者。何やら寒気がするのですが」
「風邪か? あまり体を冷やすのではないぞ愛紗」





「だから、みんな過保護すぎるの。お兄ちゃんが戦ってるんだから、私だって戦えるもん!」
「そう言われましても」

 桃香の主張に、愛紗は困ったように曖昧な笑みを浮かべる。

「兄者や翼徳の活躍に隠れてはいますが、玄徳様も一角の将です。失礼ながら桃香様では比べ物には……」
「愛紗ちゃん酷い!? 確かにお兄ちゃんのチャージ4からのExチャージを軽功キャンセルした無限コンボは強いけど!?」
「何を言っているのですか。確かに属性しだいで敵将の体力がもりもり減りますが」

 キャンセルしても当たり判定が残ってるのがずるいよねぇと漏らしながら、桃香はどうしたものかと考える。

「うー、やっぱり私が強くなるしか無いんだよね。雲長くんに鍛えてもらってくる」
「……頑張ってください」

 強くなっても心配性な玄徳は桃香を戦わせないだろうが、強くなってもらって悪いことはないため、愛紗はにこやかに桃香を兄のもとへと送り出した。

「……姉者は武を磨く前に、まず力と体力をつけるべきかと」
「そこから!?」

 先行きは長そうだった。



[37501] 董卓さん家の家庭の事情
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/06 18:00
 世界の合言葉はこまけぇこたぁいいんだよ!!





 最強。その名を冠する男呂布。
 彼は何故か自らの屋敷の中、腕組みをして無言で佇んでいた。

「……」
「……わふっ」

 犬である。名は赤兎。
 呂布の愛馬と同じ名を持つ、彼の妹の犬。
 ともすれば踏み潰してしまいそうな小さな犬が、呂布の足にまとわりついていた。

「……」

 無言でしゃがんだ呂布は、じっと赤兎に視線を向ける。
 そしてその小さな体をがしっとわし掴むと、懐から何かを取り出した。

「わふ?」
「……食え」

 手にしたのはホカホカの肉まん。
 呂奉先。妹ほどでは無いが動物は嫌いでは無かったりする。

「……これはまた意外な一面ですな」
「……ですぞ」

 そしてそんな呂布の姿を物陰から覗く陳宮兄妹(モブ軍師と幼女)。
 無論即座に見つかり、ツンデレ属性の付加された呂布においかけられることになる。






「董卓。その命、俺がもらい受ける」

 呂布。最強と呼ばれた男。
 愛する女を手にするため、策であると知りながらも主である董卓へと牙を剥く。

「おのれ呂布め。わしの酒池肉林の野望を阻むと言うのか!?」
「そんなものはどうでもいい。俺が望むものはただ一つ。貂蝉だけだ」

 巨体を揺らし唾を散らしながら喚く董卓に、呂布は日頃の気性からは考えられない静かな声で言った。

「貂蝉じゃとぉ……どっちのじゃ?」
「……」

 聞かれて脳裏に浮かんだのは、麗しき舞姫の姿。
 しかし次の瞬間「あらごめんなさいねぇ」という若本ボイスと共にムキムキマッチョな漢女の姿が脳を占拠する。
 美麗な舞姫ですら打ち消すインパクト。呂布は脳裏を蹂躙するイメージに顔を怒りに染め、董卓も自分で言って想像してしまったのか醜悪な顔をさらに歪めていた。

「貴様ああぁぁっ!? 貂蝉を汚すな!?」
「わしとて想像すらしたくないわ!?」
「あらん。呂布ちゃんも董卓ちゃんもイケず」
「貴様何故ここにいる!?」
「だってぇ私をめぐって二人が争ってるんですものぉ。私って罪な漢女(ハート」
「うおおおおぉぉっ!?(怒」
「わしの酒池肉林がああぁぁっ!?」

「……ねぇ月。何この有り様」
「……知らない」
「……よね」
「……詠ちゃん」
「何?」
「……もうこんなお家やだ」
「……ボクだってやだよ」





 一方呂布(妹)と貂蝉(妹?)。

「さあ恋様。肉まんをお持ちしました」
「……ん」

 大皿に肉まんを大量に乗せて現れた貂蝉。
 それを見た恋は無表情なまま、しかし目を輝かせると、もきゅもきゅと肉まんをほおばっていく。

「……」
「どうかしましたか?」

 しかし不意に口の動きを止めると、じっと貂蝉を見つめ始める。
 何事かと首をかしげる貂蝉だったが、恋は肉まんを一つ手に取ると、そっと貂蝉へと手渡した。

「食べる。一緒の方が美味しい」
「まあ。では私もいただきます」

 とても兄と並び最強と称された将には見えない少女。そんな彼女の気遣いに、貂蝉は微笑みながら応えた。





「あ〜ん呂布ちゃんたら激しいんだから。これは私も本気をださなきゃダメねぇ……ぶるああああぁぁぁぁっ!」
「うおおおおぉぉっ、くたばれ化け物!」
「わしの酒池肉林がああぁぁっ!?」

 最強と最凶。何故か始まった戦いは佳境を迎え、董卓の酒池肉林を焦土へと変えていた。

「ねえ月。ボクが思うに、劉備なら私たちを受け入れてくれると思うの。兄妹そろってお人好しみたいだし」
「確かに優しそうな人たちだったけど、上手くいくかなぁ」
「丁度いい具合に屋敷が崩壊しそうだし、身を隠すチャンスだわ」
「……うん。そうだね詠ちゃん」

 一方一周突き抜けて冷静になった月と詠は、着実に亡命プランを進めていた。



[37501] 常山の昇り竜と聞くと鯉のぼりを連想する
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/06 11:39
 カクさん忘れてた。
 携帯では漢字表示できないから面倒になってはぶったわけではありません。
 兄妹設定に無理がある?
 こまけぇこたぁいいんだよ!!





 趙雲兄妹。趙子龍と趙星は「常山の昇り竜」とまで言われた将であったが、今後の己の行く末に苦悩していた。

 子龍は考える。
(公孫賛殿も白蓮殿も、決して暗愚な方ではない。しかしこの乱世において、世を正し導くほどの器ではない。
 新たな主君を求めるべきか。いや、しかし星は白蓮殿を気に入っている様子。果たして今までのように共に来てくれるだろうか)

 星は考える。
(公孫賛殿は地味で白蓮殿は普通。弄り甲斐があるのは確かだが、今一キャラが弱い。そろそろ兄上に別の主君を探すよう提案すべきだろうか。
 しかし公孫賛殿はともかく、白蓮殿は兄上をいろんな意味で気に入っている様子。泣きつかれたらお優しい兄上のことだから、ほだされて白蓮殿を突き放せないやもしれん)

 美男美女。そう言って差し支えない兄妹だが、頭の中身は残念なくらいすれ違っていた。

(誰か別の……反董卓連合でお見かけした劉備殿。民を守り、癒し、導くあのお二方は正に仁のお心の持ち主。私たちの槍を捧げるに相応しい方々に違いない!)
(劉備殿のところの関愛紗殿は弄り甲斐がありそうでしたな。玄徳殿は私などのからかいは受け流しそうだが、それだけ大器ということ。
 弄りやすい上司と器の大きい上司。もしや理想の職場なのでは!?)

 そしてすれ違っていたはずの思考は、何故か同じ位置に着地した。
 腐っても双子かそれともただの偶然か。ともあれ公孫賛の下を去ることを決めた二人であった。





「兄上。趙雲たちのことなんだが、いつまでも客将にしとくのは惜しいと思うんだ」
「おまえもそう思うか白蓮。しかしあやつらいくら勧誘しても頷かんのだ」

 妹の言葉に、公孫賛は眉間にしわを寄せながら答える。
 趙雲兄妹。その武は大陸でも屈指のものであることは疑いようがなく、兵の指揮もなんなくこなす。
 味方であることは幸い以外の何ものでもなく、是非とも正式に仕えてもらいたいのは当然であった。

「今までより高い役職を与えるとか」
「釣られるようなやつらか?」
「しかし私たちには他に誠意の見せ方がない。私たちの本気を知れば、星はともかく子龍は考えるのでは」
「なるほど。確かに妹はともかく兄は誠意に弱いな」

 白蓮の提案に、公孫賛も多少無茶をしてでも趙雲を引き入れようかと考え始める。
 ちなみに二人の中で微妙に星に対する評価が低いのは、日頃の行いのせいだろう。
 なまじ兄の子龍が品行方正なせいで、妹の星の良い性格が際立っている。

「公孫賛殿。少しお話が」
「おお、趙雲。丁度良いところに」
「何かご用命でしたか?」
「いや、それは後で良い。それで、話とは?」
「はい。星と相談して決めたのですが」
「そろそろおいとまして旅に出ようかと」

 白蓮は石になった。





「行かないでくれ〜」

 突然の退職宣言から数分後。
 石化していた白蓮は何とか立ち直ると、目の幅涙を流しながら子龍にすがり付いていた。
 さながら男に捨てられそうな女のようだが、実際白蓮は子龍に好意を抱いており、いきなりの別離にかなりパニクっていたりする。
「あの……白蓮殿、お手をお離しください」
「嫌だ〜。旅に出ないと約束しないと離さないからな〜」

 武に優れ、優しく思いやりがあり、美男子でありながら嫌みな様子はなく、行動は紳士。
 三國志で部下にしたい男ナンバーワン(作者の独断と偏見による)は伊達ではない。
 もう婿にしてでも引き止める。むしろ嫁になるから行かないでというくらい白蓮はパニクっていた。

「あー、子龍。この際去るのは構わんが、せめて白蓮を連れていってはくれんか?」
「!? 兄上……」

 白蓮は驚き、涙を浮かべたまま公孫賛を振り返った。
 人の上に立つ者として、決して許されない思い。それを兄は汲み取り、後押ししてくれるというのだ。
 白蓮は普通の私の兄だけあって地味だなぁと思っていたことを心の中で謝罪する。

「……ふむ。白蓮殿が兄上に嫁ぐとなれば、私は義妹となるわけですな」

 しかし星から放たれた言葉に、公孫賛兄妹は再び石化した。

「……う……ううっ!?」
「な、悩むな白蓮! わしもあんな義妹は嫌だが、子龍のためにも打ち破れ!」
「し、しかし。しかしーっ!?」

「さて、今のうちに行きましょう兄上」
「……良いのだろうか」

 良くない。
 しかし妹に甘い子龍は、星に手を引かれて素直に公孫賛兄妹の下を去るのだった。


「桃香が子龍を盗った!?」
「ええー!? 白蓮ちゃん私たちそんな関係じゃないよ!?」



[37501] 中国の歴代王朝の名前をリパブリック讃歌の替え歌で覚えさせられた
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/08 20:37
・最初はシリアスをやりたかったが、作者の三國志知識では無謀すぎた
・シリアスは投げ捨てるもの
・思い付きで書いているので時間軸はてきとー。一気に時間が飛んだり、過去に戻ったりします
>さすがに黄忠とかまで兄妹設定は無理がある
・こ、こまけぇこたぁいいんだよ!(震え声





「不思議ですね。私には兄など居なかったはずなのですが」

 どこか憂いを秘めた舞姫は、眼前の漢女に向け静かに言う。

「それはそうでしょうね。私は兄ではなくてお姉ちゃんですもの」
「もう、そういうことではありません!」

 しなを作って言う貂蝉(兄?)に貂蝉(妹?)は拗ねたように返す。

「貴方は何者なのでしょう。いえ、そもそも私は? この世界は……」
「……敏いのも考えものねぇ。『この世界』で貴女と同じ名を名乗ったのは失敗だったかしら」

 ため息をつく貂蝉(漢女)。その様子に、貂蝉(舞姫)は憂いを深くする。

「では私たちは、私たちの思いは……」
「あまり深く考えないことね。一人の人間にとって、世界は大きすぎて理解が及ばないものよん。世界がどうかなんて、考えても無駄。貴女は貴女が思うように生きれば良いの」
「私の思うように……」

 貂蝉(腹黒)が顔をあげると、貂蝉(筋肉)は片目をつぶってみせる。
 他の者ならば戦慄する光景だったが、仮にも妹である貂蝉はどこか安心感を覚える仕種であった。

「まあその前に呂布ちゃんたちを止めるのが先かしら」
「……いつかは対するとは思っていましたが、何故この時に」

 彼方で民家の屋根が吹き飛び、城壁が謎の衝撃波で削れる。
 最強兄妹が突如始めた喧嘩は、人外の域に達しようとしていた。





 現在呂布たちは劉備の下に居たのだが、劉備不在となると何故か呂布兄妹が喧嘩を始めていた。

「……邪魔をするな、恋!」
「……劉備たちいい人。裏切るのよくない」

 理由は単純。劉備不在の隙をつき挙兵しようとした奉先と、あくまで劉備の恩義に報いようとする恋の意見の食い違いであった。

「ふん。まあいい。貴様と俺どちらが上か、いつか決着をつけねばならんと思っていた!」
「……負けない」

 最強と最強。
 後の世にまで語られるであろう伝説の戦いが始まろうとしていた。

「なあ兄やん。あれ止めんでええん?」
「……武人と武人の誇りをかけた戦い。止めるのは無粋であろう」
「……そか」

 張遼――霞は、呂布兄妹の戦いを指して兄である文遠に問いかけたが、答えはなんと言うか予想通りのものであった。
 正直誇りは横に置いて二人を止めるのに協力して欲しかったのだが、霞に比べて文遠は良くも悪くも武人であった。

「陳宮は止めんの? こんなことやっとる間に、劉備ら戻ってくるで?」
「我らの意思決定は呂布殿が握っておりますからなぁ。終わるのを待つしかないかと」
「そんな投げやりでええんか軍師」

 一抹の期待をかけて軍師(モブ)に意見を求めた霞だったが、これまた答えは期待はずれのものであった。
 ちなみに妹の音々音は最初から全力で恋を応援していた。





 あ…ありのまま先ほど起こった事を話そう!
『私が少し留守にしていたと思ったら、いつの間にか居候が城を吹き飛ばしていた』
 な…何を言っているか分からないと思うが、私も何をされたのか分からなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 一騎当千だとか三國無双だとかそんなチャチなものでは断じてない
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…

「……それでわしを頼ってきたということか」

 呂布兄妹の喧嘩(台風)によってお家に帰れなくなった劉備は、曹操へ救援を求めていた。
 たかが兄妹喧嘩。されど兄妹喧嘩。
 最強兄妹の喧嘩は災害指定寸前であった。

「だが確かに、あの狂犬を野放しにはできまい」
「そうね。呂布を討つと言うならば、私たちも兵を……」
「違う。違うよ曹操さん!」

 援軍を送ることに賛同する孟徳と華琳。しかしそんな二人の言葉を、それまで無言であった桃香が遮った。

「呂布さんたちを討つんじゃなくて止めるの! 早く喧嘩を止めさせて仲直りさせないと!」

 おまえは何を言っているんだ。
 そう夏候惇はつっこみそうになったが、主の手前ひっこめる。

「桃香!」

 さすがに今の発言は不味いと思ったのか、玄徳が前に出ようとする桃香の肩を掴む。
 しかし次の発言に夏候惇は再び鉄の意思を要求された。

「すまない桃香。私は自分のことばかり考え、呂布殿たちの思いを理解しようとしなかった……。己が不明を恥じるしかない」

 普通城を吹っ飛ばされたら相手の事情など考慮しない。
 おまえは間違ってないと言いたい夏候惇だったが、主の手前必死に止まった。

「……さすがね桃香。その大器、私の下にはおさまらない。危険な相手だわ」
「オイ!?」

 何故か戦慄している華琳に、夏候惇はつい声をあげてしまう。

「……やはり、世の英雄足り得るはわしたちと劉備か」
「正気に戻れ覇道馬鹿」

 思わずつっこむ夏候惇。
 とち狂った曹操兄妹の呟きに、夏候惇の鋼の意思はあっさり砕け散った。

「……えーと、私はどうすれば良いのだ元譲!?」
「……おまえは何も考えずに敵に突っ込め」
「おお! つまりはいつも通りだな!」

 妹である春蘭を適当にあしらう夏候惇だったが、そのアホの子っぷりに何だか涙が出てきた。

「姉者は可愛いな〜」

 そして平常運転な従姉妹。
 夏候惇は何だか全てがどうでも良くなってきた。

「あー、なんだ、頑張れ惇兄!」
「おまえも少しは世話をしろ淵!?」



[37501] 軍師=ビーム あるいは放火魔
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/07 18:50
・諸葛亮と鳳統も無茶を承知で兄妹設定
・しばらくは蜀ルート。思い付きで書いているので、ネタが出たら他の陣営も書きます
・作者はむしろ三国無双5のモブ陳宮が好きです
>黄忠は親子で
・その手があったか!?
・こまけぇこたぁいいんだよ!!





「朱里。軍師というものは、時に非道と罵られる策をも実行しなければなりません」
「……はい」

 諸葛孔明。臥竜と呼ばれた不世出の天才は、己が半身である妹諸葛朱里に語りかける。

「清濁合わせ飲むのが主のあるべき姿。しかし我らが仕える玄徳様と桃香様は仁の道を行くお方。その手が罪に汚れる事はあってはなりません」

 例えば曹操ならば、覇道を成すため、必要とあらば自ら汚名をかぶるだろう。
 だが劉備たちは違う。彼らは民の希望であり、理想でなければならない。
 その道に汚れはいらない。ならば軍師がとる道は一つ。

「軍師である我らが、お二人に代わって罪汚れを浴びねばなりません。それは仲間に蔑まれ、もしかしたら主にすら疎まれるかもしれない道です。
 ですが私たちは劉備様たちに賭けた。ならば躊躇うことがあってはなりません」
「わかりひた!」

 決意の言葉を噛む朱里。
 あんまりな失態に顔を赤くするが、兄である孔明は優しく微笑んだ。
 決意は本物。未熟な所も多いが、これならば大丈夫だろう。
 そう確信し、孔明は己の小さな妹を誇りに思う。


「……諸葛亮。朱里とうちの雛里のことなんだがね」
「どうしたのです」
「一部の兵士から『はわわ軍師』たの『あわわ軍師』だのと呼ばれているらしくてね。ふぁんくらぶとやらができるくらいの人気だそうだよ」
「……」
「……」
「……鳳統」
「なにかね?」
「汚れ役は任せました」
「あんたもやるんだよ」





「兄様。私も兄様のように戦場でたたかいたいでしゅ!」
「……」

 突然の妹の発言に、孔明は見た目冷静、内心で脳内緊急会議を行っていた。
 それなりの体格な男の自分ならともかく、発育不良で幼女にしか見えない朱里が戦場に?
 認められない。仮に劉備がそんなことを命じたならば、孔明は反旗を翻すだろう。
 水魚の交わりがどうした。即座に沸騰して魚など茹で殺してくれる。

「……良いでしょう。ならば私が軍師の戦いをお教えします」
「本当でしゅか!?」

 しかしあっさりと孔明は了承した。
 これには反対されると思っていた朱里も驚く。
 そんな朱里に孔明は自分の予備の扇を渡すと、見晴らしの良い場所へと誘う。

「さて……ではまずあの岩にビームを撃ってください」
「無理です」

 いきなり無理難題を言い出す孔明に、朱里は珍しく噛まずに即答した。
 それは軍師の戦い方ではない。もっと別の何かだ。

「ああ、いきなりチャージ攻撃は難しすぎましたね。では扇から風圧を放って相手が怯んだ所で雷を……」
「無理です」

 再び即答。
 ああ、うちのお兄ちゃん非常識人だった。
 そう朱里は判断し教えをこうのは諦める。

 しかし後日、魏の高笑い軍師や親戚がビームを撃つのを見て、軍師はビームが撃てて当たり前なのかと悩むことになる。

「あの……周瑜さんはビーム撃てますか?」
「……何を言っているのだ君は」
「そ、そうですよね。撃てませんよね!」
「扇を装備すれば誰でも撃てるだろう」
「!?」





「あの……お兄ちゃん」
「おや、どうしたんだい雛里?」
「私も……お兄ちゃんみたいに戦いたい」
(……朱里といい桃香様といい、何でこの子たちは戦いたがるんだろうね)

 それはきっとお兄ちゃんと一緒に居たいからです。

「……駄目ですか?」
「……いや、教えてあげたいのは山々なんだかね。雛里にこの杖が持てるかい?」

 そう言って手にした杖を雛里に渡す。
 雛里はそれをおっかなびっくり受け取ったが、鳳統が手を放した瞬間、支えを失った杖の先がぐるんぐるんと不安定に動き回る。

「きゃう!?」

 小さな雛里はそれを必死に押さえていたが、とうとう支えきれず、杖に引きずられるように転んでしまった。

「うう……重い」

 幸い怪我は無かったようだが、杖を支えきれなかったのがショックだったのか、涙目になってしまう雛里。

――諸葛亮。
――何ですか鳳統?
――妹ってのは可愛いねぇ。
――ええ。ですがうちの妹の方がもっと可愛いです。

 蜀の軍師は割りとダメダメだった。



[37501] 晋伝での呉の放置っぷりは異常
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/08 20:36
・時間軸を盛大に無視しています
・三國無双で多少のセリフのあるモブはともかく、キャラがまったく把握できないモブを出す予定はありません
・同じく恋姫に居ない女性化武将を出す予定もありません
・蓮華様は俺の嫁
・こまけぇこたぁいいんだよ!





 孫一族が率いる呉。
「仁」を掲げる蜀や「覇」を唱える魏と並ぶその国は、江東の虎と呼ばれた孫堅を頭に、彼の子供たちや多くの仲間に支えられている「絆」の国である。


「よーし、行くずぇ周瑜!」
「ああ! 抜け駆けしないでよ伯符!」
「ふっ。まったくもって君たちらしいよ孫策」
「待て雪蓮!? 公瑾も余裕ぶってないで止めてくれ!?」
「やはり兄上たちは凄い。私には何ができるのか……」
「兄様も姉様も凄い。それに比べて私は……」
「……俺は孫権様を守る」
「お猫様ー!!」
「野郎ども! 鈴の甘寧兄妹がお通りだ!」
「……もう少し大人しくできないのか貴様は」
「よーし! 弓腰姫が相手になってあげるわ!」
「お姉ちゃんたちずるーい! 小蓮も行くの!」
「お兄様! それはもしや私が探していた兵法書では!?」
「うわぁ!? あ、後で読ませてあげますから離れてください隠!?」


「……正に混沌(カオス)!!」

「おい。孫堅様は何を叫んでおいでなのだ?」
「まあ叫びたくなる気持ちも分かるがの」

 虚空に向かって咆哮する孫堅と、その様子を見つつ昼間から酒を飲む黄蓋兄妹。
 いくらなんでも濃い人間が多すぎた(しかもまだ居る)





「公瑾。おまえは伯符や雪蓮を甘やかしすぎだ」
「そうか? 孫策たちは確かに自由な人間だが、己の責務を疎かにする人間ではあるまい」
「いや確かにそうだが、気まぐれがすぎるというか、下に示しがつかないというか」

 特に雪蓮。人に仕事を押し付けるのはやめてほしい。
 しかもこちらの処理能力の限界あたりで見極めたように帰ってくるので、怒っている余裕がなくうやむやになってしまうというたちの悪さだ。

「まあ私が主に世話をしているのは伯符だからな。確かに雪蓮ほど振り回される事はない」
「……」
「どうした冥琳?」
「いや、そういえば二喬をおまえと伯符の嫁にという話があるのだが」
「ああ。悪くない話し故受けるつもりだが」
「私はそれに反対して全身全霊をかけておまえの嫁に雪蓮を推そうと思う」
「私が悪かった」
「何で即答で嫌がってんのよ!?」

 公瑾が謝った瞬間、扉をスパーンと開けて雪蓮が現れる。
 相変わらずの神出鬼没ぶりに、周瑜兄妹は聞いていたのかとつっこむことなく流す。

「雪蓮。私は君のことが嫌いではないが、夫として共に歩む自信はない」
「本音は?」
「友人としてはともかく嫁にこんなじゃじゃ馬はいらん」
「ぐっ、自覚があるだけに反論できない」
「自覚があったのか」
「自覚があるならもう少し大人しくしてほしいのだがな」
「……ホント歯に衣着せないわねあなたたち。酷いわ!」

 話をしながらも政務の手は止めない周瑜兄妹に、雪蓮はすねて見せたが当然無視された。





「はあ疲れた。大喬、膝枕してくれよ」
「ひ、人前でそんな恥ずかしいことできません!」
「そうか? 俺は別に恥ずかしくねえぜ?」
「もう、孫策様のバカ!」

「……」
「どうした雪蓮?」

 訓練の休憩中。雪蓮が珍しく静かなことに違和感を覚え、冥琳は声をかける。

「ねえ冥琳。私もあんな可愛い子と結婚したい」
「そうか。雪蓮も遂に結婚を考え……可愛い?」

 兄に触発されたのかと納得しかけた冥琳だったが、何かがおかしい事に気付き首をかしげる。

「はぁ、どこかに大喬みたいな可愛い男の娘いないかしら」
「雪蓮……いや、探せば……居るかもな」

 深く突っ込んだらダメだ。
 冥琳はそう判断し言葉を濁した。



[37501] 袁紹は本当は凄い人です
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/09 21:46
・感想での横レスは禁止されています

・作者は無印真・三國無双6までしかやってないので、それ以降に追加されたキャラはあまり把握できてません
・先生の武器が杖じゃなくなっただと……!?
・蓮華様は俺の嫁発言がスルーされたので私たち結婚します





 名族としての誇りと地位、強大な兵力を誇る袁紹。
 帝を擁立し、勢力を拡大していく曹操。
 友人である両者の道は交わることなく、ついに官渡の地にて決戦の火蓋が切って落とされる。

「おーほっほっほ! ご覧なさいこの兵力差を。皆さん、孟徳さんと華琳さんの小勢などサクッ☆と捻り潰しておやりなさい!」
「承知しました! この張儁乂、美しく、華麗に進軍いたします!」
「そう! それですわ儁乂さん! 貴方こそ我が軍の美の体現者! 華々しく攻めなさい!」

 高圧的に言い放つ袁麗羽と、一々謎のポーズを決めながら応える張コウ。
 両者色んな意味で輝いていた。

「よっしゃー! あたしたちも行くぜ斗詩!」
「えー!? ダメだよ文ちゃん! 相手はあの曹操さんだよ。絶対何かしかけてくるから警戒しないと。
 本初様も姫と儁乂さんを止め……」
「名族の戦いを曹操に見せつけてやるのだ! 全軍進めえぇー!(↑」
「ですよねー」

 顔良。字は斗詩。
 常識人故に胃を痛めるのは全陣営共通であった。





「曹操様。白馬より救援の要請が届いております!」
「白馬か。相手は袁の二枚看板。生半可な将では持ちこたえられまい」
「関羽たちを使うべきね。この一戦、出し惜しみはできないわ」

 圧倒的な戦力で攻めてくる袁紹軍。
 この窮地に、曹操兄妹は劉備とはぐれ身を寄せていた関羽兄妹の投入を決定する。

「……玄徳様と桃香様以外の下につくことになるなんて」
「愛紗、今は耐えよ。この一戦を生き残り、必ずや兄者たちを探し出すのだ」

 悔しむ愛紗に、雲長は静かに言う。
 しかし雲長とて、曹操らが自分たちを欲し、正式に仕えるよう手を狭めていることには気付いている。
 一刻も早く劉備たちを見つけなければと、焦りを感じていた。

「それと愛紗。今日こそ私の寝所に来てもらうわよ。何なら私が貴女のところに……」
「待て華琳。最初が女同士というのは愛紗も抵抗があろう。ここはわしの寝所に……」

 そして愛紗は曹操兄妹のアプローチに別の意味で焦っていた。

「あ、あ、兄者! 今日は兄者の寝所で休ませてください!」
「……仕方あるまい」

 関雲長。
 特にシスコンでもない彼は成人した妹と共に眠るのには抵抗があったが、その妹の貞操の危機と思えばさすがに否とは言えなかった。

「……やはり雲長が邪魔ね」
「うむ。……夏候惇、雲長を討つのだ!」
「そこの色狂いども、止まれ」

 夏候元譲。
 目的を盛大に見失っている主二人に今日も胃を痛めている。





「寄るべき地を失い、雲長と愛紗まで……」

 何の因果か袁紹の下に居る劉玄徳。
 ストーリーモードでさらっと省略されるほどあっさり曹操に敗北し、さらに義兄弟である関羽兄妹とも離ればなれとなり、絶賛凹み中であった。

「元気出してよお兄ちゃん。大丈夫だよ、雲長くんも愛紗ちゃんも強いししっかりしてるもん。そんなんじゃ二人に再会した時に笑われちゃうよ?」

 一方妹の劉桃香は兄に比べて前向きだった。
 普段自分を引っ張っている兄が沈んでいる故の空元気もあるが、こういうときは案外女性の方が強かったりする。

「しかし私は未だに何も成せていない。……私は一体何のために戦ってきたのだ……」
「『仁』……そのお志のためではないでしょうか」
「え……あなたたちは!?」

 かけられた声に劉備兄妹が振り向けば、そこには白の兄妹が居た。

「……趙子龍。劉備様に仕えるべく参上いたしました」
「こんな私に……では趙星殿も?」
「はい。私も兄同様劉備様たちに槍を……」

 子龍の言葉に目の輝きを取り戻す玄徳。続けて星も口上を述べるが、玄徳に余裕が戻ってくるのを見てとると、ニヤリと笑って言い放つ。

「……預けるついでに玄徳様の嫁になりにきましたぞ」
「ええ!?」
「星!?」

 いきなりな発言に、桃香が驚き、子龍は妹の悪い癖が出たと焦る。

「なんと!? ……私のような者をそこまで思ってくれるとは……私は幸せ者だ!」

(良かった。玄徳様は星の冗談など流してくださった)
(あ、お兄ちゃん感動しすぎて星さんが何言ってるかちゃんと理解してない)
(なんと言うボケ殺し。……この場合私は本当に嫁になるべきなのだろうか?)

 暴走する天然。
 求むツッコミ役。



[37501] 子守りドラゴン
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:5b1483ba
Date: 2013/05/11 12:30
・感想板での横レスは規約で禁止されています
・その場の勢いで書いているので、特にカップリングとかは考えていません
・子供世代が出ても親世代(特に恋姫勢)の年齢とかつっこんだらあかんのです
・そろそろこの前書き部分を読み飛ばす人が出てくるだろうから言う、ぬるぽ





 健安13年。漢の丞相曹操は荊州へと兵を送る。
 その数は十万を越える大軍であり、対する劉備は交戦を避け南へと逃走。
 しかし曹操は劉備を見逃さず、劉備は自らを慕う民を見捨てられなかったこともあり、長坂にて曹操軍に追い付かれてしまう。
 世に言う長坂の戦いの始まりであった。





「阿斗様が取り残された!?」

 曹操軍からの逃亡の最中、侍女から劉備の子である阿斗が逃げ遅れたと聞かされ、子龍は叫び声をあげた。

「星! 阿斗様を救出に向かうぞ!」
「承知! 曹操軍よりも早く見つけ出しませぬと」

 主君の子を救うため、子龍と星は敵中をたった二人で駆け抜ける。
(略)
 そしてついに取り残された阿斗を見つけ出した。

「ああ、ご無事で良かった。星。阿斗様を頼む」
「さあ阿斗様。お母上ほど抱かれ心地はよくないでしょうが、この星がお守りいたしますぞ」

 星が阿斗を抱き抱えるのを確認し、子龍は敵を蹴散らしながら駆け抜ける。

「邪魔だ!」
「阿斗様には指一本触れさせぬぞ!」

「あれは張飛殿たち!?」
「おう! 無事か子龍、星!?」
「ここは任せて早く逃げるのだ!」
「かたじけない!」
「阿斗様は必ずお守りいたします!」

「よし、劉備様たちが見えてきた」
「もう大丈夫ですぞ阿斗様」

 張飛兄妹の足止めもあり、無事劉備たちに追い付く趙雲兄妹。
 しかし阿斗を抱いた玄徳は、どこか浮かない顔をしていた。

「……この子一人のために、大事な将を失うところであった」
「玄徳様……?」
「こんな子など見たくもない!」
「玄徳様!?」
「お兄ちゃん!?」

 激昂し、我が子を地面へと投げ捨てる玄徳。
 あまりの事態に悲鳴をあげる子龍と桃香。

「確保ー!!」
「!?」

 そして見事なヘッドスライディングで阿斗をキャッチする星。
 その早すぎる対応に、子龍たちはもちろん阿斗を投げ捨てた当人である玄徳もすっごいビックリする。

「……」
「せ、星?」

 無言で立ち上がる星。玄徳の奇行と星の奇行という珍しいコラボレーションに誰も動けない。

「……玄徳様」
「な、何だ?」

 星から立ち上る気迫に、玄徳は不味いことをしたかと今更ながらに後悔する。

「この子をいらないと言うなら、私がもらっても構いませぬな?」
「……は?」
「ならば私がお育てするというかもう私の子として扱い挙げ句に成人したら私が名付け親になっても構いませぬな!?」
「い、いや待て。落ち着け星!?」

 目を輝かせて言う星に、さしもの玄徳も戸惑う。というかドン引きしている。

「……子龍さん。星ちゃんどうしたの?」
「……恐らく阿斗様を抱いている内に、庇護欲や母性がわいたのでは?」

 このせいで後の蜀の皇帝が史実以上に趙雲(妹)になついたりするのだが、今は関係ない。





「曹操様! 何者かが我が軍の最中を引き裂いております!」
「何者だ?」

 大軍の中をたった二人で駆け抜ける将。

「あれは趙雲兄妹か」
「無謀だけれど、それをやって抜ける武力と胆力は見事ね」

 その姿を認め、曹操兄妹は感嘆の声を漏らす。

「……欲しいな」
「……欲しいわね」
「……無理だからな」

 ああ、またこの兄妹の悪い癖が出た。
 そう思いながら夏候惇は一応言うだけ言っておく。

「我が将兵に告ぐ。あやつらを捕らえるのだ!」
「殺しては駄目。生かして捕らえるのよ!」
「無理だと言っているだろうが!?」

 無理難題を言う二人に、夏候惇が魂のつっこみをいれる。
 しかし上司にやれと言われたら、無理だと思ってもやらなければならないのが大人の悲しい事情である。
 結果趙雲兄妹のような猛者を殺すならともかく生け捕りにできるはずがなく、まんまと逃走を許すのだった。

「惜しいな。あれほどの将そうは居るまい」
「まったく、元譲がやる気を出さないから」
「おまえら死んだ兵士に詫びてこい」

 夏候元譲。
 例え主の無理難題に忠誠が下がりまくっても裏切らないナイスガイである。



[37501] たまに優しくされると辛い
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:5b1483ba
Date: 2013/07/25 21:47
・定期更新何それ美味しいの?
・そもそももうネタが無いのでその内自然消滅します
・曹操様に仕えたい
・ガッしたね。親父にもぶたれたこと無いのに!?





 未だ曹操の下に居る関羽兄妹。その片割れの関雲長は、夏侯元譲と剣を交えていた。

「ハアッ!」
「ふぬ!」

 一進一退。激しく剣をぶつけ合いながら動き回る様は、さながら舞踏の如し。
 その舞いも終わりを迎え、両者の刃は同時に相手の首元で止まる。

「見事ね」
「ああ。特に夏侯惇の気は鋭い。今にも雲長を斬ってしまいそうだ」

 華琳と孟徳の賛辞に、雲長は無言で頭を下げ、元譲は視線をそらした。
 実際元譲は雲長を隙あらば斬るつもりでいた……わけがない。

 ある日元譲は主二人から命令を受けた。

「愛紗をものにするには、やはり雲長が邪魔ね」
「うむ……夏侯惇よ。雲長を斬るのだ!」
「そこの色情魔共……いや、もういい」

 実は雲長が気に食わず、因縁つけて始末しようかなと考えていたのだが、むしろその命令で斬る気が失せた。
 国を支えるものが私情で動いて良いはずがない。
 主二人が暴走するせいで、元譲の常識には磨きがかかっていた。

「雲長! 次は私が相手だー! おまえを倒せばお二人から可愛がってもらえ……」

 そして妹の春蘭は相変わらずアホの子だった。

「元譲殿。相手をお願いできるだろうか」

 対して雲長の妹は基本的に常識人であった。

「……おまえは俺が疎ましく無いのか?」
「ん、何故だ? 元譲殿は武人としても公人としても好ましい人柄だと思うが」
「……」



「雲長……妹を交換しないか?」
「断る」





「しかし惇兄も少し肩の力を抜けば良いのになあ」

 夏侯淵。字は妙才。
 主やら妹やらに振り回されまくっている従兄弟とは違い、持ち前の要領のよさとおおらかさで上手く立ち回っていたりする。

「何を言う妙才。兄者はああやって真面目くさって周囲に振り回された困り顔が可愛いんじゃないか」

 対して妹の夏侯秋蘭は、今日も可愛い兄者&姉者ウォッチングに余念がなかった。

「……おまえね。惇姉はともかく惇兄を可愛いって、妹ながら将来が心配になってくるぜ」
「あの渋い可愛さが分からないとは、妙才もまだまだだな」
「渋いと可愛いは普通同居しねえだろうよ」

 そうでもない。
 そしてそんな話をしているうちに、二人の近くに張コウがやってくる。

「おや、これは夏侯淵将軍。お二人とも相変わらずお美しい……!」
「私はともかく妙才が美しいとは、どういう審眼美だ」
「自分で言うな。そんでおまえが言うな」

 そう言っては見るが、妙才自身も己を美しいと評する張コウの美的センスには疑問を抱いている。
 スマートとは言い難く、顔も髭面でどちらかといえばおっさん顔だろう。
 渋いとかかっこいいならまだ分からなくないが、美しいとはどう見ても思えない。

「それは仕方がありません。妙才将軍の美は常人には理解されがたいものですから」
「常人に理解できない美って意味あんのか?」
「飛べない豚に意味はあるのでしょうか」
「混ぜんな。というか誰が豚だコラ」

 夏侯妙才。傍観者に徹しようにも、周りが濃すぎてつっこまずにはいられなかった。



[37501] お客様の中に肉まん職人はいらっしゃいませんか?
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:5b1483ba
Date: 2013/08/06 20:54
・作者は別に春蘭が嫌いなわけではありません
・惇兄が嫌いなわけでもありません
・夏候惇じゃなくて夏侯惇な事に最近気付いた
・めんどくさいので誰か直してください





 官渡の戦いの後、関羽兄妹は曹操への恩は返したと判断。さらに行方知れずだった劉備兄妹の居場所が知れたこともあり、曹操の下を去った。
 曹操は二人が去ることを知りながらも、あえて追おうとはしなかった。しかし曹操の決定を是とせず、関羽たちを追う武将たちは居た。
 その中には夏侯惇も含まれていた。

「……やはり来たか、夏侯惇」
「関羽……俺がk」
「関羽ー!! 曹操様たちを裏切るとは何事だ!? いや居なくなるなら構わんがお二人の期待を裏切るのは許せず何だかよく分からんが私の剣の錆にn」
「ちょっと黙ってろ」
「ギャピ?!」

 自分の台詞を遮ってハッスルするアホの子(妹)を、元譲は刀の背で殴って気絶させる。
 いきなり味方のはずの兄に殴られたせいか、春蘭は奇妙な悲鳴をあげてあっさり気絶した。

「……我らを斬りに来たのでは無いのか?」
「斬ってほしいのか?」

 訝しみ言う雲長に、元譲は挑発するように言う。

「元譲!?」
「……冗談だ」

 しかし不安に歪む愛紗に名を呼ばれると、あっさりと否定した。

 実際、自分を差し置いて孟徳や華琳に目をかけられている関羽は気に食わない。
 しかし接してみれば悪い連中では無いし、特に愛紗は日々胃を痛める元譲をそれとなく気遣ってくれたりしていた。

 要するにほだされたのだ。曹操兄妹も逃がして良しとしている以上、あえて立ちはだかるつもりは無かった。

「だが気は抜くな。孟徳や華琳が何の打算も無くお前たちを見逃すとは思えん。劉備たちの下に戻っても、そこに安寧は無い」
「覚悟の上」
「だろうな」

 元譲が何があっても曹操兄妹の下を離れないように、関羽兄妹にとってあるべき場所は劉備兄妹の下のみ。
 例えそこが死地であっても躊躇うはずがない。

「元譲……」
「……」

 自らの名を呼ぶ愛紗から、元譲は視線をそらした。

「胃は大丈夫か?」
「……問題ない」

 心配そうな愛紗に、元譲は無愛想に返す。
 何故未来の敵に胃の心配をされているのか。元譲は我ながら奇妙な状況に笑いたくなってきた。

「……っ、関羽覚悟ー!!」
「ぬぅ!?」

 しかも復活した春蘭が覚醒からコンマ数秒で雲長に斬りかかった。ちょっとやそっとでは止まりそうにない。

「……元譲」
「HAHAHA! 大丈夫だ愛紗。これからも俺は頑張っていけるから……HAHAHA!」
「いや大丈夫ではないだろう!? 何だその笑い方は!? しかも口から血が!?」

 夏侯元譲。ストレスで胃に穴があくことを三國に知らしめたナイスガイである。



[37501] 何故孫呉はハブられ気味なのか
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:5b1483ba
Date: 2013/08/06 20:53
・今更孟を猛と誤字った。
・誤字はちょくちょく直していきます。
・エディットで桃香(劉備モーションの凡将)作ったら、意外に強くてあるぇー?となった。
・細かいことは気にしないで下さい(弱気





「敵将討ち取ったぜ!」

 孫策と劉ヨウの軍勢が激突する戦場。
 仮にも総大将であるはずの孫策は、今日もいつも通りに見た目トンファーみたいだがトンファーじゃない武器を振り回して最前線を突破していた。

 相手はモブばかり。加えて孫策側は謎の双子出産ブームの影響で無双な武将が分裂している。
 もはや戦いは一方的な蹂躙というか殺戮というか、いじめカッコ悪い状態になっていた。

「あれが孫策殿……なるほど噂に違わぬお人のようだ」

 そして劉ヨウ側の数少ない無双な武将である太史慈は、圧倒的不利な中でなお勝機を求め足掻いていた。

「我が名は太史慈! 孫策殿に一騎討ちを申し込む!」

 そして混迷の戦場の中で高らかにそれを告げた。
 普通に考えれば乗ってこない。圧倒的に有利なのは孫策であり、総大将を危険に晒す意味もない。
 だがあの男ならば断らない。太史慈は敵である孫策をそう信頼した。

「太史慈か。面白いやつだな。よし、おまえが勝ったら兵は退いてやる」
(やはり)

 期待通りに応えた孫策に、太史慈は意識せず笑みを浮かべていた。
 勝機を見出だしたからではない。この面白い男と戦える。それが嬉しかったのだ。

「……参る!」

 気が昂る。体の調子は万全だ。今ならば最高の戦いができるだろう。
 逸る意識を抑えながら、太史慈は決闘の場へと向かう。
 そして現れたのは――

「はーい、お待たせー!」

 ――魅惑の肢体を際どい衣装で包んだ褐色美人だった。

「……孫策殿?」
「何?」
「いえ、貴女ではなく」

 紛らわしい。というか何故に女の方の孫策(雪蓮)が来ているのか。
 自分は確かに男(伯符)に決闘を申し込んだはずだがと、太史慈は半ば現実逃避しながら考える。

「だって伯符ばっかりずるいじゃない。だからちょーっと話し合いをして……ね」

 嘘だ。付き合いの浅い太史慈でもそう思った。
 よく見てみれば、雪蓮の剣には真新しい血がついている上に、体温が上がっているのか汗ばんでいる。
 まさか決闘の前に身内で一戦やらかしたのだろうか。どんだけ血の気が多いのだろうか孫家は。

「まあ良いじゃないの。あなたが勝ったら兵を退くって約束は守るんだから」
「いや……まあ……良いのだろうか?」

 そして始まる一騎討ち。
 調子を狂わされた太史慈は最初フルボッコされたが、吹っ飛ばされた先にあった肉まんをダイナミック喫食して何とか引き分けに持ち込むのだった。





「伝国の玉璽か」

 国を左右する重要アイテムなはずなのに、井戸からホイホイ出てきちゃったそれを見て、孫呉の面々はどうしたものかと頭を悩ませた。

「……私は袁術に渡すべきだと思う」
「ええ!? ちょっとそりゃ勿体なくねぇか周瑜?」

 公瑾の提案に、伯符が驚いて聞き返す。
 すると兄の思惑を読んだのか、冥琳が「なるほど」と呟く。

「ちょっと、兄妹で納得しないで説明してよ冥琳」
「なに、あの袁術の事だ。玉璽を得れば増長し、間違いなく皇帝を自称するだろう。そうなれば我々も動きやすくなるという話だ」
「おお、流石だな周瑜」

 冥琳の説明を聞き、素直に称賛する伯符。しかし一方冥琳は、何やら難しい顔で考え込んでいる。

「しかしだ公瑾。袁術ごときに玉璽を使うのはどうかと想うぞ」
「確かに袁術は愚物だが、袁家の力は馬鹿にできな……」
「やつには蜂蜜だけ与えれば十分だ」
「なるほ……いや待て冥琳。いくら袁術でも、嗜好品のために下手をうつとは考えられん」

 一瞬納得したが、常識的に考えてありえないと否定する公瑾。それに冥琳はニヤリと笑って返す。

「ならやるだけやってみせよう」
「……やるだけやってみるがいい」

 実際にやってみた。

「袁術殿。蜂蜜を献上に参った!」
「おおっ!? 蜂蜜がいっぱいなのじゃ!?」
「しかしながら蜂蜜を集めるにも運ぶにも人手が足りず……もう少し手勢を集める許しがあれば、もっと蜂蜜を献上できるのだが……」
「ならば集めよ! この世の蜂蜜全てをかき集めるのじゃ!」


「とまあそういうわけで、袁術から独立するための兵は集まっ……どうした公瑾?」
「……冥琳。私は己の知謀に自信が無くなってきた」
「考えたら負けだ」

 自身の常識を疑う公瑾に対して、冥琳はあくまでクールに対応するのだった。(何かを諦めたとも言う





「……ねえ仲謀」
「……何だ蓮華」
「この世界は間違ってると思うのは私だけかしら?」
「……兄上はまだマシなのだが」
「……兄様はまだマシなのよね」

 孫権兄妹。仲謀と蓮華は、濃すぎる身内に日々精神を磨耗させていた。

「逆に兄様や姉様くらいじゃないと、うちの人間はまとまらないと思うの」
「確かに……真面目一辺倒な私たちでは、あの集団は抑えきれまい」
「ねえ仲謀」
「何だ蓮華」
「尚香の代わりに劉備に嫁ぎたいのだけど」
「……逃がさんぞ! 私にアレを押し付ける気か!?」
「良いじゃない! 貴方は姉様顔負けな巨乳美人とイチャコラしながら呉を治めなさい!?」

「止めないのか幼平?」
「……俺は孫権様を信じる

「……まああれも息抜きか」

 仲良く喧嘩する孫権兄妹を、お守り役である周泰(兄)と甘寧(妹)は生暖かく見守っていた。




[37501] 陳公台と連呼されるとチ○コに聞こえ(ry
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:0628fb02
Date: 2013/12/31 22:49
・ VITAの猛将伝買いました
・ まだ呂布伝しかクリアしてないので他陣営の新キャラについては保留
・ IFストーリーに呂玲綺が出てこないという深刻なバグ
・ やまだああああああああ!!





 陳宮。字は公台。
 後世では「優柔不断」あるいは「運に恵まれなかった策士」と様々な評価をされる彼ではあるが、かの人材マニアである曹操がその才を惜しみ、死後には家族を丁重に遇したというほどに買われていた人物でもある。
 にも拘らず、その陳公台(祝☆脱モブ)は曹操を見限り、呂布を迎え入れての反乱を企てていた。

「ようこそおいで下さりました呂布殿。私は陳公台。陳公台と申します」
「……音々音の兄か」
「おや、自己紹介の必要はありませんでしたかな?」

 そういえば妹の陳音々音は呂布(妹)にべったりだったと思い出し、公台(脱モブ)は乗り出していた身を少しだけ引く。

「お久しぶりでずぞ兄上!」
「これはこれは音々音。相変わらず、相変わらず小さいですな」
「……兄上だってちっさいですぞ、ちんきゅーきっく!」
「なんと!?」
「……仲ええなぁ」

 感動の再会かと思えばじゃれあい始める陳宮兄妹に、霞は生温かい目を向ける。

「それにしても……公台やっけ? 何かこう……前に見たときと何か違うような……」

 前にどこで見たのかは覚えていないが、どうも以前の陳公台(モブ)とは違う。そんな気がして、霞はうむむとうなり声をあげる。

「気付かれましたか。……実はこの陳公台、見くびられぬよう威厳を出すため、髭の手入れに、髭の手入れに力を入れているのです!」
「おお! 中々似合ってますぞ兄上!」

 違う。絶対違う。この違和感はそんなちっさい違いでは無い。
 しかしこれ以上つっこむとメタな領域につっこむため、霞は追求の手をゆるめるのだった。





「父上! 此度は私も戦に出ます」
「玲綺……」

 いよいよ戦いが始まるという時。呂布は突然現れた自らの娘を見て、珍しく呆気にとられ絶句していた。

「……え? 呂布やんあんなでっかい娘おったん?」
「……」

 明らかに成人もしくはそれに近い娘の登場に、霞は思わず隣に居た恋に聞くが、恋は無言でコクリと頷くだけだった。

(というか呂布ちんは玲綺の叔母? それ以前に呂布やんと呂布ちんは双子やから呂布ちんの年齢も……。あかん、これ以上考えたらあかん)

 何か気付いてはいけない事に気付いてしまった霞であったが、そこは出来る女。即座に思考を切り疑問を放り出すのだった。決して作者が細かい設定のすりあわせを諦めたわけでは無い。というかすりあうわけねえだろ!?

「ん? という事は呂布やん、妻子あるのに貂蝉に粉かけよったん?」

 何気ない霞の一言。それによって陣地の空気が兵卒に至るまで凍った。

「ち……父上。わ、私が邪魔ならば縁を……」
「文遠! 玲綺から目を離すな!」
「……御意」
「無理矢理話進めよった!?」

 何やら悲壮な覚悟を決めている玲綺に対し、奉先は対処を張遼(兄)にぶん投げる。
 そしてグルンと勢いよく振り向くと、殺気混じりというか殺気しかない目で張遼(妹)を見る。

「霞! 貴様は俺と共に最前線だ!」
「え……というか呂布やんやる気やん。というか殺る気やん(うちを)」
「さあ、逝くぞ!」
「ちょっ!? 助けて呂布ちん!?」

 殺られる。そう確信して恋に助けを求める霞だったが、当の恋は姪っ子を慰めるのに忙しくその叫びを華麗にスルーしていた。

「で、あんなこと言われてるけど、貴女的にはどうなのかしらん?」
「……わ、私、玲綺様の継母として上手くやっていけるでしょうか?」
「……大丈夫そうで安心したわ」

 密かに覗き見ていた貂蝉(筋肉)と貂蝉(腹黒)。呂布父娘が必死こいてる割に案外気楽であった。



[37501] 虎牢関に張角が居て「!?」てなった
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:0628fb02
Date: 2014/01/02 15:04

・ 今更ですが、この作品のタイトルは無双5で初めて劉備を使ったときの作者の感想です
・ しばらくは無双7をベースにネタ出し
・ こまけぇこたぁいいんだよ!





 黄巾の乱。太平道の教祖である張角が、自らの信徒を率い起こした反乱。
 最初民を救うために始まったはずのその乱は、次第に統制を失い救うはずの民を苦しめる暴虐へと姿を変えていた。
 故に漢王室及び大将軍何進は黄巾の討伐を宣言。多くの群雄がこれに従い、黄巾党討伐へと乗り出した。
 そしてその中には劉玄徳と劉桃香。そして二人の義弟妹たちも加わっていた。

「お、お助けくだせえ!」
「むっ! 待っていろ、今助ける!」

 黄巾討伐の最中、民が襲われているのを見つけると、玄徳は躊躇う事無く彼らを助けるために奔走を始めた。

「お兄ちゃーん! こっちにも襲われてる人が!」
「拙者が参ります。姉者! あまり一人で動かれますな!」
「もう、雲長くんは心配しすぎだよ。翼徳くんや鈴鈴ちゃんの方が一人でつっこみすぎてて危ないよ?」
「あの二人は賊程度に遅れは取りますまい」

 当然妹の桃香や義弟妹の関羽兄妹と張飛兄妹もこれを支援し、無事民たちは守られるのだった。

「よし、では黄巾の本陣へ突入するぞ!」

 そして民を守り抜きながらも黄巾の本陣へと一番乗りを果たす劉備兄妹。しかしそこで彼らが見たものは、信じられない光景だった。

「みんなー! 来てくれてありがとう!」
「数え役満☆姉妹のライブが始まるよー!」

 謎の大舞台の上で、これまた謎の光を浴びながら歌い始める張三姉妹。周囲に集まっている黄巾たちは快哉をあげ、さながらアイドルに夢中になるファンと言うか、まんまアイドルとファン集団だった。

「……何だこれは」
「あ、数え役満☆姉妹だ」
「知っているのか桃香!?」

 ライブというかコンサートと言うか、ともかく時代設定を間違えてるとしか思えない光景に、玄徳は驚愕するが桃香は何故か知っていたらしい。
 歌が始まると結構ノリノリで聞き入ってしまった。張飛兄妹は最初からノリノリで聞いていたが。

「張宝よ!『さび』に向けての準備は万端か!?」
「お任せください兄上!」

 そして張三兄妹は、妖術を駆使して光を出したり煙を出したり火花を出したりして、全力でライブの演出を行っていた。

「……そなたが張角か?」
「いかにも。あいや、待たれよお客人。まもなく『くらいまっくす』に入るため、我ら力を尽くして――」
「あ、兄上! わ、私の力及ばず、このままでは『ふぃなーれ』の花火を上げられませぬ!」
「なんと!? 張梁よ! 死力を振絞るのだ! 天和たちの、妹たちのため! 何としてもこの『らいぶ』を成功させねば!」

「……何だこれは」
「うーん、裏方も大変なんだね」
「いや、そうではなくてだな」

 もう何が何だか分からない玄徳と、何故か普通に感心している桃香。
 結局ライブが終わるまで待つ辺り、お人好しな人間だった。





 劉備らの活躍により黄巾の乱は収束。しかし劉備は張角を斬らなかった。
 ――暴威を捨て、心をもって民を支えよ。
 劉備が告げた言葉。それに深く感銘した張角は、劉備の志を支える決意をしたのだった。

「なんと!? 反董卓連合とな!?」

 暴政を敷く董卓。大陸に吹き荒れる新たな暴威を排すため、袁紹及び曹操が立役者となり発せられた檄文。
 その檄文は、劉備の言に従い大陸を流浪していた張角の耳にも入っていた。

「何を驚いてるの? 私たちには、もうそういうの関係ないでしょ?」
「何を言う人和!? 世を乱す悪逆、許しておけるわけがなかろう!?」
「だから、劉備さんたちに暴を捨てろと言われた私たちには何も……」
「その劉備である!」

 一人ヒートアップする長兄に呆れながら付き合っていた人和だったが、何がきっかけだったのかさらに盛り上がる張角。
 悪い人では無い、むしろ本質的には良い人なのだが、この暴走癖は治らないだろうか。そう人和は遠い目をしながら思う。

「民を思い憂うあの男の事。董卓などという蒼天の獣を放置できようはずがない!」
「なるほど、すると劉備らは間違いなく反董卓連合に参加するでしょう」
「しかし彼らは小勢。そこで我々の出番となるのですね!」

 張角の意を汲み取り、何やら盛り上がり始める張宝と張梁。民を慰撫しているときより明らかに生き生きしている。
 何でうちの男共は、こう変な方向にノリがいいのだろうか。そのノリの良さを、もっと平和的な方向に向けられないのだろうかと、人和は溜息をはく。

「うーん、つまりまた人を集めればいいんだよね♪」
「よーし、ちぃもがんばっちゃうよ!」

 そしてこっちもノリノリだった姉二人。
 ごめん玄徳さん。桃香さん。こいつら絶対迷惑かける。
 そう遠くないであろう未来を予見した人和は、ここには居ない恩人に向かって合掌した。





「というわけで援軍に来たよ!」
「……何が『というわけ』なのかは分からぬが、助力感謝する」

 突如反董卓連合に参加してきた黄巾軍。というか数え役満☆姉妹のファン集団。
 アイドルおっかけ集団と侮る無かれ。彼らは元は民であり装備も貧弱だが、既に実戦を経験し、しかも士気がわけわからんくらい高いという中々優秀な戦闘集団なのだ。
 しかもそんな連中が、天和、地和(消極的ながらも人和)姉妹たちがはりきったせいで、全盛期の黄巾党もかくやというレベルで集まっている。

「あれは……劉備殿指揮下の兵か」
「何という大軍だ。義勇軍と聞いたが、兵力は袁紹殿や袁術殿の軍に匹敵するのでは無いか?」
「流石は劉氏の末裔ということか」
「……」

 そしてその黄巾たちを見て、内実を知らない諸侯は自称漢王室の末裔でしかない劉備をえらい過大評価し始めていた。
 戦いは数だよアニキ!

 ――桃香。このままだと次の戦場辺りでIFルートに突入しそうなのだが。
 ――アハハ。お兄ちゃんそれちょっとメタ発言だよ。

 糧食とかどうすんだ。そんなつっこみすらできず、劉備兄妹は虚ろな目で笑うしかなかった。





[37501] お兄ちゃんは心配性
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:0628fb02
Date: 2014/02/10 21:07
・髭の劉備が好きだけど、桃香と絡ませるなら若劉備の方がいいかもしれないと気付く
・真面目に「恋姫準拠の妹がいたら」と考察を始めると物語が破綻するジレンマ
・こまけぇこたぁいいんだよ!←結論





 劉玄徳。後に蜀漢の皇帝となる彼が、若くは筵売りをして生計を立てていたのは有名な話である。
 むしろ筵売りが本業だったと思われがちだが、彼の父や祖父はれっきとした役人である。
 漢王室の末裔が自称なわけないじゃないですか。

「わー、やっぱりお兄ちゃん筵編むの早いね。……私が遅いだけかな?」

 そしてその妹、劉桃香も稼ぎの足しになればと筵編みを手伝っていたが、兄の成果と比べてしまい少し凹んでいた。

「何を言う。桃香が遅いのは、筵を丁寧に編んでいるからだろう。その証拠に私の筵より桃香の筵の方がきめ細やかで丈夫だ。これなら買った客も喜んでくれるだろう」
「え……そ、そうかな?」

 兄に誉められ、桃香は照れたように笑う。

「よし、それではできた筵を売りにいくとしよう」
「うん!」

 筵を背負い立ち上がる玄徳に、桃香も自分が編んだ筵を背負い後に続く。
 そして街中の人通りの多い場所で売り始めたのだが、意外というか当然というか、二人の回りには客が大量に集まっていた。
 ……主に男が。

「そこのお兄さん! 筵買いませんか!?」
「お兄さんてのは俺のことかい? 上手いね嬢ちゃん」

 桃香に声をかけられ、いい歳こいて顔をだらしなく緩めるおっさんどもと、飢えた獣のような目を向ける若い男たち。

 それも仕方ない。桃香は誰が見ても美しいと評する美少女である。
 着ているものはみすぼらしいが、それすらもちゃんと着飾ればどれだけ光るのだろうかと、妙な期待を抱かせる小道具と化している。
 そんなわけで、筵を売る桃香の周りには下心満載な男が蟻のように集まっていた。

「なあ嬢ちゃん。なんならここにある筵全部買ってやるからよ。代わりに俺と……」

 桃香のゆるい雰囲気を感じとり、欲望まみれの要求をしようとした男だったが、桃香の後ろにいつの間にか居た青年と目が合い硬直した。

「……」

 睨んでた。すっごい睨んでた。
 仁の人なはずの劉玄徳が、殺気混じりというか殺意しかない目で睨んでいた。

 カリスマ以外は並な人と思われがちな劉玄徳。
 しかし彼は袁紹を初めとした有力者に前線指揮官としてそれなりに買われ、何よりあの曹操に「世に英雄は君と余だけだ」と言わせたほどの傑物なのだ。

 その眼力。さながら推理モードのウサ美ちゃんの如し。
 睨まれた男は性犯罪を暴かれたクマ吉くんのように、変態と言う名の紳士から賢者へとジョブチェンジするしかない。

「……お兄ちゃん、ちょっとあっち行ってて」
「何故だ桃香!?」
「男の人が来るたびに威嚇してちゃ商売にならないから」

 そしてそんな兄をシッシと犬でも追い払うように遠ざける桃香。
 過保護な兄貴に慣れると妹はクールになるものらしい。
 単にうざがってるだけとか言ってはいけない。



[37501] 月旦(ゲッダン☆)
Name: ガタガタ震えて命乞い◆6923d890 ID:0628fb02
Date: 2014/02/20 21:21
・劉備に続き曹操の若エピソード。
・三國志にはぶっ飛んだエピソードが多くて困る
・孫権はむしろやることがぶっ飛びすぎてて困る
・こまけぇこたぁいいんだよ!





 曹孟徳。治世の能臣、乱世の奸雄と評された彼も、若い時分は要領は良いが怠け癖があり、その知謀を悪知恵に使う悪童だったという。

「……で? 今回はどんな下らない騒ぎを起こしたのかしら?」

 曹華琳。双子の妹が満面の笑み(怒)で見下ろしてくるのを、孟徳は何故か正座して見上げていた。

「華琳よ。その言いようではわしが騒動の首謀のようではないか」
「実際そうでしょうが!? あなたと本初が揃うと、無駄に張り合って騒ぎが大きくなるのよ!?」

 曹孟徳と袁本初。後に覇権を巡り対立する彼らが、古くからの友人であるのは有名である。
 友人と言っても、その行動を省みれば不良仲間と評するのが適当な悪ガキだったりするのだが。

「待て。わしばかり責めるのは平等とは言えまい。それにおぬしも麗羽と騒ぎを起こしているではないか」
「私たちは貴方たちみたいに周囲に迷惑をふりまいていないわ」

 袁本初の妹である袁麗羽。彼女もまた華琳と何かとよく絡むが、せいぜいが口論程度であり騒ぎという騒ぎは起こしていない。
 双子とはいえ、そこは女子の方が精神的な成長が早いからか、それとも生まれ持った性質か。
 ともあれ、華琳と麗羽ならば微笑ましい張り合いが、孟徳と本初になると傍迷惑なレベルになるのは確かである。

「まったくだ。少しは自重しろ孟徳」
「……むぅ」

 夏侯元譲こと惇兄参戦。
 いよいよ反論の余地がなくなり、孟徳はただ唸るしかない。

 因みに元譲の妹春蘭は、孟徳と華琳のどちらの味方をしたらいいのか悩みオロオロしている。
 そしてそんな春蘭を見て夏侯淵兄妹は「姉者(惇姉)は可愛いなあ〜」とハモっている。
 大丈夫か夏侯家。

「それで、今回は何をやらかしたの?」

 ちょっと身長低めな孟徳よりもさらに小さい華琳だが、その覇気は山を背負っているかのような迫力と威圧感だ。
 嘘偽りは許さない。その気迫にはさしもの孟徳も観念するしかない。

「なに、大したことではない。本初と新婚家庭に上がり込み、花嫁を強奪……」
「何で私を誘わなかったの!?」

 最後まで言わせず、背負っていた覇気を放り出し、正座中の孟徳の肩を掴み激しくシェイキングする華琳。
 曹操兄妹。兄である孟徳が女好きなのは有名な話だが、妹である華琳が女好きなのも有名だったりする。

「……」

 そして無言で胃を押さえる夏侯元譲。
 主二人のせいで胃を痛める未来が約束された、苦労人なナイスガイである。



[37501] こんなカオスな世界に一刀さんを放り込むなんて!
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:845ada2d
Date: 2014/04/23 23:26
・もうどう料理したらいいのか作者にも分かりません
・一刀さんは今後ゲスト参戦
・こまけぇこたぁいいんだよ!





 北郷一刀。
 現代日本に生を受け、平凡な人生を謳歌していた平凡な高校生だったはずの彼は、泥棒を見つけて何やかんやしてるうちに何故か三國志の世界に居た。
 詳しくは恋姫†無双をやってください。全年齢版もあるよ☆(投げやり

「劉玄徳に……劉桃香?」

 気付いたら広い荒野にポツンと居て、涙が知らずに溢れてきそうになった一刀を救ったのは六人の男女だった。
 それぞれが劉備、関羽、張飛と名乗っただけでも一刀には驚愕だというのに、さらにはそれぞれに双子の妹まで居るのには度肝を抜かされた。劉備たちの名前を聞いた時点で色々察した一刀だったが、歴史に残る彼らに妹など居なかったはずだがと首を捻る。
 しかしまあ女性の名など歴史書には「誰々の娘」程度しか残らないのが常であるし、後世に伝わらなかっただけなのだろうと無理やり納得する。

「我々は北郷殿こそが予言の天の御遣いだと思っているのだが」
「そんな……俺は御使いなんかじゃ……」

 玄徳たちは一刀を天下を泰平に導く天の御遣いだと言うが、一刀自身は何の力もない学生である。
 しかし――。

「俺が……俺なんかでも天の御遣いとして皆の希望になることくらいはできると思う」

 人々を救いたい。その劉備たちの熱意に一刀はうたれた。彼らの願いを叶えるため、御遣いという役割を演じる決意をする。

「じゃあ、これからよろしくねご主人様!」
「ありがとうございますご主人様」
「にゃはは、よろしくなのだお兄ちゃん」
「お、おう」

 桃香、愛紗、鈴々。
 三人の美少女にご主人様やらお兄ちゃんと呼ばれ鼻の下を伸ばす一刀。
 ご主人様は思春期。

「どうかこれからよろしくお頼み申すご主人様!」
「ご主人様。身辺警護はこの関雲長にお任せあれ!」
「おう、俺たちが守ってやるぜご主人様!」
「すんません。やっぱ名前で呼んでください!?」

 しかし玄徳、雲長、翼徳の三人に詰め寄られ、あっさりと態度を翻す。
 すっごい暑苦しかった。後にそう語ったとか何とか。





 話し合いの末義兄弟の契りを交わす形で落ち着きました。

「えへへ、何か困ったことがあったら言ってね一刀くん」
「あ、ああ。何か嬉しそうだな桃香」

 いつもの五割増しの笑顔で言う桃香に、一刀は戸惑い気味に返す。

「だって弟だよ弟。私お兄ちゃんに甘えてばかりだったから、弟っていうのは新鮮で」
「(何故か俺の方が年下扱いなのは置いとくとして)あれ? 雲長と翼徳も義弟だよな?」
「あの二人は弟って感じがしないし可愛くないから」
「グハァッ!?」
「無念!?」
「うん。とりあえずあっちで死んだ二人に謝りに行こうか」

 通りすがりに桃香の言葉を聞いてしまい撃沈する髭のおっさん二人。
 別に自分が可愛いとは微塵も思っていないが、敬愛する義姉に可愛くないと言われるのは耐えられなかったらしい。
 難儀なおっさんたちである。





「一刀殿は軍師の才がおありですね」
「えー?」

 諸葛孔明。後世において脈絡も無く罠の元凶扱いされるくらい有名な軍師に言われ、一刀は喜ぶ所かむしろ不審に思い首を傾げた。

「俺そんなに頭は良くないんだけど。そりゃ武将よりは向いてるかもしれないけど」
「謙遜を。確かに常識に疎い部分はありますが、それは天の国で生まれ育った一刀殿にとっては当然のこと。それ以上に、一刀殿の幅広い教養と発想には目をみはるものがあります。この大陸の知を学び生かす術を身に付ければ、他の追随を許さぬ軍師となるでしょう」
「ま、マジ?」

 希代の軍師に将来有望と言われ、何だか自信が湧いてくる一刀。

「なら軍師としての勉強頑張らないとな!」
「その意気です。私も僭越ながら軍師というものをお教えしましょう」

 そう言うと、おもむろに一刀に何かを手渡す孔明。

「では、まずあの岩に向けてビームを撃ってください」
「無理です」

 扇を握らせて無理難題を言い出す孔明を、一刀は間髪置かずに否定した。
 諸葛孔明。実は妹にビーム修行を拒否られて落ち込んでいたらしい。



[37501] 北郷一刀の戸惑い
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:ae926274
Date: 2014/04/30 01:02
・引き続き一刀さん参戦
・やっぱり双子設定は無理があったんや!(確信
・こまけぇこたぁいいんだよ!(開き直り





 今は戦乱の世。自分の身程度は守らねばと一刀は愛紗に稽古をつけてもらっていた。

「隙あり!」
「無い!」
「痛ぁ!?」

 攻撃の機会を見つけ攻勢に出た一刀だったが、あっさりといなされ愛紗に頭をどつかれる。

「な、何で!?」
「隙に見えるのは誘いに決まっているだろう。そもそも一刀程度に見抜かれる隙など存在しない」
「言い切った!?」

 自信満々な愛紗に思わずつっこむ一刀。しかし相手は後に軍神と呼ばれる人間である。言ってることは過信でも何でもなく事実なので性質が悪い。

「だが基礎はできているようだし、目が良く思いきりも良い。あと十年も鍛練を続ければ良い将になりそうだ」
「十年かぁ、長いな」

 一刀とてそれなりに武の心得はあるが、所詮平和な日本で身に付けたもの。命の取り合いをするには心許ない。
 何よりこの世界の人間は、非常識すぎて現代日本人にはまず太刀打ちできない。炎出したり凍らせたり雷落としたりするのがデフォルトなのだ。
 せめてビームが撃てないと活躍は難しいだろう。

「撃てないから!?」
「いきなり何だ!?」

 謎の電波を受信し思わずつっこむ一刀。どっかのナイスガイのように苦労人フラグが立ち始めている。

「い、いや。何でもないです愛紗さん」
「そ、そうか。しかし私たちは姉弟の契りを交わしたのだ。『愛紗さん』などと畏まらなくて良いぞ」

 つい丁寧に話してしまった一刀に、愛紗は苦笑しながら言う。

「『お姉様』と呼べ」
「すんません。義兄弟の件考え直して良いですか?」





「な、何故私を姉と呼ばない一刀!?」
「いや雲長は見た目からして『兄者』って感じだけどさ、愛紗はあんま姉っぽく感じないし」

 あと可愛いし。そう一刀は思ったが、口に出したら人的被害を出す勢いで化学反応が起きそうなので口をつぐむ。

「た、確かに兄者は頼りになる人だが、私だって兄者と同い年だぞ!」
「マジで!?」

 あの髭が素敵なダンディーと同い年と聞き、一刀は驚愕する。

「双子だからな。因みに玄徳様と桃香様も双子だし、翼徳と鈴々も双子だ」
「どんな確率だ……あれ?」

 何か違和感を覚え一刀は首を傾げる。
 玄徳と桃香が双子。これは良い。見た目からしてもあまり違和感はない。
 翼徳と鈴々が双子。……これだ。あのおっさんとロリっ子が双子など、初見で見抜ける人間が居るのだろうか。

「あれ、でも鈴々は俺のこと『お兄ちゃん』て呼んで……」
「よう一刀の兄者! 何難しい顔してんだ」
「……」

 え? 年下? まさか。いや、しかし。

 違和感に悩んでいたら、髭面のおっさんに兄と呼ばれる更なる違和感。
 しかも後に諸葛亮兄妹や鳳統兄妹まで現れたので、そのうち一刀は、考えるのをやめた。



[37501] 一刀くんと趣味に走った作者
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:645f0d1c
Date: 2014/04/30 01:04
・投げ捨てたシリアスを拾ってきたら腐ってた
・便りになる雲長さんマジ千里行(誤字
・魔改造一刀さんとか素敵やん
・こまけぇこたぁいいんだよ!





「……玄徳、桃香」

 穏やかな川。故郷の川と比べると石の少ない川淵に一刀は居た。

「……雲長、愛紗」

 義兄弟たちの名を一人一人呼びながら、一刀は小さな小さな小石たちを積み上げていく。

「……翼徳、鈴々」

 突然見も知らぬ土地に放り出され、行く当ての無かった一刀を拾い、あまつさえ対等な兄弟として扱ってくれた彼等。その優しさを、強さを、今でも覚えている。

「……みんな死んじゃったな」

 そんな彼等も、今はもう居ない。例え万民に讃えられる英雄でも死からは逃れられない。義兄弟たちだけでは無い。長い乱世の中で、一人また一人と仲間は、敵は、死んでいった。

「一刀様。こちらでしたか」
「……星彩か」

 声をかけられ振り向けば、翼徳の娘である星彩が居た。睨んでいるのかと思われるほど鋭利な印象を与える顔立ちだが、この娘がちゃんと自分を慕ってくれている事を一刀は知っている。
 外見は父である翼徳にはまったく似ていない。どちらかと言えば母方の親戚である夏侯淵――秋蘭に似ている。もっともその秋蘭も既にこの世には居ないのだが。

「魏軍が迫っています。こちらの指揮は一刀様に任せると姜維殿が」
「まったく、仮にも兄弟子に容赦ないなあいつも。こっちはそろそろ隠居したいってのに」

 愚痴る一刀に星彩は何も言わず表情も変えない。しかしそれが常であるため、一刀も気にしなかった。

「すぐに行く。先に兵たちをまとめておいてくれ」
「はい」

 一つだけ返事をして去っていく星彩。いっそ無愛想とすら言えるそれは誰に似たのやらと、一刀は心の中で溜息をついた。

「さて、正念場だな」

 言いながら、一刀はそばにあった得物を手に取る。彼の身の丈を越えるほどの長さの偃月刀。それを軽々と一刀は振る。

「……雲長。愛紗。俺に力を貸してくれ」

 亡き義兄と義姉に向けて呟くと、一刀は踵を返し戦場へと向かった。





 魏との戦い。一刀は本隊と別れ山間の谷間を進んでいた。遠回りにはなるが、上手くいけば魏軍の背後を取る事の出来る進路だ。

「よし、このまま進むぞ」

 兵が少数ということもあり、進軍はスムーズに進んでいた。

「甘いな」

 しかし行程も残り半分という所で、一刀たちの行く手を阻む者が現れた。

「……おまえは」
「ふん、やはり伏兵を忍ばせていたか。しかしこの程度の策、英才と誉れ高きこの鍾士季の前では児戯に等しい」

 鍾会。魏軍の中でも性格はともかく能力は随一の男がそこに居た。組んだ右手の指先を向けて、得意げな笑みを浮かべている。

「チッ、面倒なのが出てきたな」
「ほ、北郷様!?」
「おまえ達は下がってろ。ここは俺がやる」
「良いだろう。前時代の英雄の残照……この私が吹き消してやる!」

 一刀が進み出るのに合わせるように、鍾会の背後に幾本かの剣が浮かび上がる。

「ハァッ!」
「フンッ!」

 振り下ろされた鍾会の腕に導かれるように飛来する飛翔剣。それを一刀は偃月刀を振るい全て弾いていく。

「ッ……何てやり辛い間合だ。まったく魏軍の連中、非常識に磨きがかかってる」

 目の前の鍾会の浮遊する剣も非常識だが、今の魏の主力の将たちときたら、ドリルだの巨大削岩機だのガトリングだの時代を先取りしまくった武器の宝庫だ。
 もっとも削岩機の使い手は蜀に寝返ったのだが。

「どうした? 近付く事もできないか?」

 攻めあぐねる一刀に、鍾会が嘲笑を向ける。そんな鍾会に一刀はニヤリと笑い返すと、背に手を伸ばしすぐさま前に突き出した。

「隙あり!」
「何ィッ!?」

 抜き打ちのように放たれたのは一筋の光線。凄まじい速さで放たれたそれは剣群の合間を突きぬけ、鍾会の体を見事に撃ちぬく。
 吹き飛ばされる鍾会。それを見て一刀は手にした羽扇で顔を扇ぎながら言った。

「ビームは軍師の嗜みってな。一騎打ちだって読み合いは大事だぜ、おぼっちゃん」
「おの……れェっ!」
「チッ、浅かったか」

 ダメージはあっただろう、しかし打ち倒すには足りなかった。憤怒の形相で起き上がった鍾会に、一刀は羽扇をしまい偃月刀を構えなおす。

「生きては返さん! 必殺、飛翔千剣!」

 鍾会が叫ぶや否や、彼の背後に無数の剣が浮かび上がり一刀目がけて飛来する。
 正に剣の雨。その死の群から逃れる事など不可能に近い。

「……」

 だが一刀は逃げなかった。怯む様子も無く、ただ静かに自らを殺す剣郡を見つめている。

 ――あと十年も鍛錬を続ければ良い将になりそうだ。

「……愛紗」

 ――十年経ったよ。

「……唸れ! 天空の刃!」

 それは関羽の、軍神の技。赤い閃光となった一撃は飛翔剣を打ち落とし、衝撃波が残りの飛翔剣全てを吹き飛ばしていく。

「ば、馬鹿な!?」

 驚愕の声は鍾会のもの。仮にも必殺を謳った己の技が破られたのだ。その驚きはどれほどのものか。

「今だ!」
「なっ!?」

 一刀が叫ぶとほぼ同時、谷の上から巨大な岩が次々と落下してくる。

「落石計だと!?」

 雨あられと落ちてくる岩の群は、まるで先の剣の雨のお返しだと言わんばかりに絶え間なく降り注いでくる。体勢を立て直し、即座に退いた鍾会だったが、落石が収まるときには自らが嵌められた事を屈辱と共に理解した。

「我が計成れりってな」

 人の身の丈を遥かに越える岩石は、積み重なり谷間の道を完全に塞いでいた。越える事、ましてや排除する事などどれほどの時間と労力がかかるか、考えるまでも無いだろう。

「よし、おまえたち撤収だ!」
『応』
「待て! 逃げるのかこの臆病者!」

 岩の壁の向こうから聞こえてくる鍾会の罵倒。それに一刀は見えないと分かっていながら、ニヤリと笑って言う。

「ああ逃げる。おまえさんも早く『逃げた』方が良いんじゃないか? 俺たちは戻れば拠点はすぐそこだが、おまえたちは戻ってまた別のルートで進軍しなきゃならないだろ」
「ッ……それが狙いか」

 一刀の部隊は伏兵などではなかった。むしろ伏兵を警戒し進んできた部隊に無駄足を踏ませるための囮だったのだ。
 今から鍾会が戦線に復帰しようにも、一刀たちが戦線に戻る倍以上の時間がかかることだろう。

「おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれ! この屈辱、必ず晴らさせてもらうぞ!北郷一刀!」

 憤怒に燃える鍾会。その鍾会の怨嗟の声を背に、一刀は本隊と合流すべく走り出した。





「……という夢を見たんだ」

 とある部屋の一室。珍しく目覚めが悪く義姉たちに叩き起こされた一刀は、びっくりするぐらい真顔で話を終えた。

「……」
「……」

 対する桃香と愛紗。何も言わず一刀の肩を同時に叩く。

「すまん一刀。いつも遠慮無しにおまえを叩きのめしすぎたな」
「疲れてるんだね一刀くん。今日は政務手伝わなくて良いから、ちゃんと休んでね」
「いや夢だから!? 別に頭がどうにかなったわけじゃないから!? そんな慈愛に満ちた目で見ないでくれませんかね、お姉様方!?」

 北郷一刀。果たして彼がビームを撃てるようになる日は来るのだろうか。

「要点はそこじゃ無ぇ!?」
「誰に何を言ってるの一刀くん」
「やはり疲れているのだな」

 本気で心配そうに見てくる義姉たちに、一刀は本気で泣きそうになった。



[37501] 郭嘉さんマジダイソン
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:6632f851
Date: 2014/08/23 22:12
・兄者は滅びぬ。何度でも甦るさ!
・王佐の才な人が参戦予定と聞き作者大歓喜
・戦国4の後に三國7やったら覚醒しようとして馬呼び暴発
・こまけぇこたぁ良いんだよ!





 反董卓連合が解散された後、劉備は空気が読めない呂布に義兄弟にされたり、その呂布と喧嘩したり、袁術を討伐したり何やかやとした末に「おう、最近曹操生意気だからちょっと〆ろや」という帝の無茶ぶりに振り回されたりしていた。
 相手は帝を擁立し飛ぶ鳥を落とす勢いである曹操。いかに劉備兄妹たちが一騎当千の兵であっても、あまりに分が悪い。
 軍師がいればまだ戦えたのかもしれないが、今の劉備軍に軍師と呼べるような人間は居ない。
 居ないったら居ないのだ。

 結果劉備は敗北し徐州の地をおわれる事になる。
 ……義兄弟である関羽兄妹を残して。





「うん、何で此処に居るんだ俺?」

 北郷一刀。
 何の因果か劉備の義弟となっている彼は、徐州から逃げる劉備たちに引っ付いて袁紹の下に……居らず、どっかのハスラー軍師が放った流れ弾を後頭部に食らって捕縛されていた。
 客将となった関羽兄妹の義弟ということですぐに解放されたが、当然そのまま放逐というわけにもいかず、何故か曹操の客人という扱いになっている。

「……何だこの扱い」
「お望みなら牢に繋いであげるわよ?」
「遠慮します!?」

 サディスティックな笑みで言われて、一刀は全力で首を横に振った。
 対する華琳。その一刀の様を見て笑みが深くなる辺り、根っからのいじめっこである。

「まあ気楽に構えてなさい。貴方は関羽たちへの人質という意味合いもあるけど、あの二人は短慮を起こしたりしないでしょうし」
「……」

 安心しろという華琳だが、一刀はまったく安心できなかった。

 史実通りの展開ならば、関羽は曹操の下を去る。
 制止する将をぶっちぎり、関所を強行突破し、立ちはだかる者たちを斬り捨てて千里を爆走しちゃうのである。
 そんな事になったら人質の一刀の命は間違いなくボッシュートなる。関羽兄妹が逃げる時は意地でも付いていこうと一刀は決意する。

「あまり苛めるな華琳。すまぬな北郷一刀」
「い、いえ」

 玩具を前にした子供のような華琳とは逆に、気遣いながら気安く肩を叩く孟徳。

「聞けば兵法に限らず様々な分野について学んでいるそうだな。誰ぞ暇のある者に指南役を命じるべきか」
「い、いや、そこまでしてもらうわけには」

 謎の厚遇に警戒心むき出しな一刀。
 それも仕方ない。何せ目の前に居るのは人材マニアとして有名な曹孟徳だ。
 一刀自身己が武将としても文官としてもまだまだお粗末なことは理解している。将来性を買ったにしても、この対応はいきすぎにしか思えないのだ。

「なに、遠慮することは無い。そなたは客人であり客将である関羽たちの義弟なのだからな」

 どうやら結局人質として大切にされているらしい。
 そう認識した一刀に、孟徳は肩を掴み正面にまわりながら言う。

「故に、わしの事は親しみを込めてお兄ちゃんと呼ぶが良い」
「アンタ諦めて無かったのか」

 真顔で言い放つ孟徳とつっこむ一刀。
 一刀が孟徳を敬うのを諦めた瞬間であった。





「字はある程度読めるのに文は読めない。計算は早くとも実用的な勘定には慣れてない。何とも歪な知識ですね」

 眼鏡をかけた黒髪の女性郭嘉、字は稟に言われ、一刀は苦笑しながら頬をかいた。

「面目ない」
「いえ、責めているわけではありません。歪なのは確かに気になりますが、逆を言えば幅広く基礎ができているとも言えます。
 ある意味困った生徒ですね。何から教えるべきか普通とは逆の意味で困ります」

 目の前で恥ずかしそうにしている青年を眺めながら、さてどんな教育をすべきかと稟は悩む。

 短期間の教師役とはいえ稟が抜擢されたように、実は孟徳は本当に一刀の将来性に期待していたりする。
 稟自身も己の目で確認し、まったく理の違う地で生まれ育った一刀の知識や発想は興味深いと思った。

 しかし一刀は劉備の義弟。いつか敵対するかもしれない人間である。
 稟としてはひっかかる。だが孟徳も華琳も才ある者は敵でも愛するような所がある。
 案外一刀が敵対した後にその才を開花させても、己の目に狂いは無かったと二人して喜ぶかもしれない。

「やぁ、精が出るね二人とも」
「出ましたね不良軍師」

 このまま幅広く専門知識を与えても面白そうだが、とりあえず最初は文を読めるようにすべきだろうと結論した稟。
 そんな区切りを見計らったように彼女の双子の兄、字は奉孝が現れる。
 不良軍師の呼び名の通り、飲む打つ買うの三拍子揃った人生を全力疾走しているような男であり、孫策の動きを警戒する曹操に「もうすぐ孫策死ぬから大丈夫(確信)」という意味の分からない助言をした変態軍師でもある。

「相変わらずキツいね稟は。そんな事では一刀殿が萎縮してしまうよ」
「心配せずとも貴方以外には優しく接しています。一刀殿。コレに近付いてはいけません。伝染ります」
「何が!?」

 いきなり険悪な雰囲気になり戸惑う一刀。
 もっとも相手を嫌っているのは稟だけらしく、奉孝は意にもかいさず楽しそうに笑っている。

「しかし私も心配でね。稟は私自身妹で無ければすぐにでも口説きたいほど魅力的な女性だ」
「い、いきなり何を?」

 突然実の兄に女として称賛され、血がのぼった稟は顔を真っ赤にそめる。

「指導の最中、触れあうほど近付くこともあるだろう。一刀殿も男だ。美しい稟の魅力に耐えきれずそのまま顔が近付いていき――」
「ち、近付いていき――」

 兄の言を反芻しながら振り返る稟。そこには困った様子の一刀。
 その顔を見た瞬間、稟が爆発した。色んな意味で。

「おや、まったく初で可愛いね稟は。一刀殿。そういうわけで稟の扱いにはくれぐれも気を付けて」
「……ご忠告ありがとうございます」

 鼻血を吹き出し昏倒した稟を支える奉孝。
 その鼻血で真っ赤に染まりながら棒読みで礼を言う一刀。
 軍師=変人という間違った知識をインプットしたが、実際変人ばかりなのでその知識が訂正されることは生涯無かったという。



[37501] おまけ的なOROCHI話
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:a4f70fdc
Date: 2014/09/23 07:27
・もしもOROCHI世界に恋姫が参戦したら的な
・OROCHI2の陣地会話をイメージしてるので台詞オンリーです
・陣地BGMを流しながらご覧ください
・こまけぇこたぁいいんだよ!





桃香&信長

「織田信長。第六天魔王。遠呂智亡きこの世界で魔王を名乗る貴方は何を望むんですか?」
「信長の望み……か? 望みなど非ず。信長はただ時代を進めるのみ……ぞ」
「うぅ……曹操さんに似てるかと思ったけど、曹操さん以上に難解だよこの人」


「信長さん。貴方は何かに期待しながら、同時に諦めているように見えます。貴方は時代を進めた先に何を見ているんですか?」
「分からぬと言いながら、なお信長を求めるか。……愛い奴よ」
「そ、そんな愛いだなんて……って質問に答えて無いよ!?」
「クク…クハハ…ハーッハハハ!」
「笑ってごまかさないでー!?」


「色々な人に話を聞いて少し分かった気がします。
 信長さん。貴方は世界の、自分の行く末が見えているんですね。そう、見えすぎる程に。
 貴方は分かっているんですね。自分という嵐が世に必要なことを。
 そして待っているんですね。嵐が過ぎ去った後の世に立つ人々を」
「クク……信長と同じものを見たか。ならばうぬは何を望む?」
「私は諦めません。目に見える人全てを、貴方という嵐が切り捨てる人もみんな救って見せる!」
「クク……全てを救う……か。ならば信長を越え、時代の先を一人駆けよ」
「一人じゃありません。みんなも……信長さんも一緒です」
「魔王すら救う……か。愛い奴よ」

一刀&秀吉

「劉備、曹操、孫権。
 信長、秀吉、家康。
 三英雄に三英傑が勢揃いか。歴史家が見たら泣いて喜びそうな光景だな」
「おお、一刀はずっと先の時代から来たんじゃったな。やっぱり信長様のことは後世にも伝わっとるんか?」
「そりゃあもう、多分日本で一番有名な偉人なんじゃないかな。自分の先生の名前を知らない奴でも織田信長は知ってるくらいさ」
「ほうか! やっぱり信長様は凄いお人じゃ」
「……あんたも信長に負けないくらい有名なんだけどな」
「ん? 何か言ったか一刀?」
「いや、何でもないさ」


「一刀! おまえさんはわしの敵じゃ!」
「いきなり何だ!?」
「何だも何もあるか! 桃香ちゃん愛紗ちゃん鈴鈴ちゃん。他にも沢山の美女美少女に囲まれおって、羨ましいにも程があるわ!」
「それこそ程々にしろよ。秀吉にはおねねさんが居るだろ。夫の浮気癖を何とかしてくれって、信長さんに相談までしたらしいじゃないか」
「それを言われると……って何でおまえさんがその事を知っとるんじゃ!?」
「逸話ってのは下らないものも後世に残るもんさ。有名人は大変だな」
「くぅーっ、そんなん有名になんざなって欲しく無いわ」


「……はぁ」
「どしたんじゃ一刀? ため息なんざついて」
「いや、こうも歴史的に有名な武将や軍師が揃ってるとさ、何だか自分が酷く場違いな気がして。
 ……俺なんか役に立ってるのかな?」
「なんじゃ、そんな事か」
「そんな事とは何だ。これでも真剣に考えて――」
「まあ聞け一刀。わしは自分が有能な人間じゃと思うとるがな、どうやっても信長様にはなれん」
「それは当たり前の事じゃ……」
「そう、当たり前なんさ。わしは信長様にはなれんし、おまえさんも他の誰かにはなれん。
 おんなじように他の誰かもおまえさんにはなれん。一刀が一刀だからこそできる事。そんな事が絶対あるもんなんさ」
「俺にしかできない事。そんなものあるのか?」
「すぐに思い付かんなら、これからゆっくり探せばええ。おまえさんの刻む歴史は始まったばかりなんじゃからな」

蓮華&信玄

「甲斐の虎……か」
「そういうおことは江東の虎の娘さんじゃね。やはり虎が気になるかね?」
「なる。それに私自身は虎と呼ばれてはいないが、虎狩りは得意だ」
「おお恐い。じゃが虎さんだってそう大人しくやられはせんからね。ガオー」
「……何故かしら。この人こんな見た目なのに可愛く見えるわ」


「蓮華。何を悩んでおるのかね?」
「私は兄様や姉様のようにはなれない。……私は虎の娘足り得ているのかしら」
「……人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり」
「それは……」
「孫策ではなく蓮華なら、この言葉の意味が身にしみておるんじゃないかね。
 それにわし、おことみたいな子は好きじゃよ?」
「……ありがとう」


「信玄殿の知恵はとてもためになり面白い。これからも様々な事を学ばせてもらえるかしら?」
「孫子の子孫に教えをこわれちゃったよ。わしって凄い?」
「ええ、信玄殿は凄い」
「……そう素直に言われると照れるのう」
「それに可愛いわ」



[37501] 元譲、それドロップやない。目玉や
Name: ガタガタ震えて立ち向かう◆7c56ea1a ID:5bdaeb0f
Date: 2014/10/12 11:48
・戦国無双×戦極姫という無茶ぶりをされたが戦極姫はやったことないでござる
・課金ガチャを回した俺は負け組
・こまけぇこたぁいいんだ。もういいんだよ。





「義弟だと?」

 手合わせが終わり休憩をとっている最中、元譲は今は客将となっている愛紗の言葉に思わず聞き返した。

「ああ。曹操殿たちの客人として扱われているのだが、元譲殿はまだ会ったことは無かっただろうか?」
「いや、会ったことはあるが……」

 義兄たちとは違い、線は細く頼りない風貌の青年だったと記憶している。
 孟徳や華琳相手に鋭い弁舌をふるっていたあたりを見るに頭は回るようだったが、とりたてて元譲の興味をひくような男では無かったはずだ。

「私や兄者もそう頻繁に会いにはいけなので心配で、元譲殿に気遣ってもらえれば私も安心できるのだが」
「……ああ」

 何故に己がそんなことをと思う前に、愛紗の頼みならと快諾しそうになったのに気付き、元譲はそれを悟られぬようわざと渋面を作り答える。
 絆されている。いつかは敵となる人間に。
 それに気付き、さらに重荷となるであろう頼みを聞いてしまったの何故か。

「……俺も孟徳や華琳のことは言えんな」

 極論すれば、こんな感情は曹操兄妹のそれと同じ“趣味”だ。
 まあたまには良かろうと一人納得し、元譲が愛紗の義弟である一刀の部屋へと赴くと――

「この全身精液男! 本当に頭に味噌がつまってるか疑いたくなる程の学習能力の為さね! アンタなんて便所虫以下の価値しかないんだからわきまえなさいよ!?」
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいません!?」

 ――そこには平身低頭し謝り続ける一刀と、その一刀の頭を踏みつける猫耳フードな筆頭軍師の姿が。

「……」

 どうしてそうなった。
 そんなつっこみもできず元譲は胃を押さえて壁に身を預けた。





 旬イク。字は桂花。
 若くして王佐の才があるとされた程の政治家であり、曹操の覇業を支えた重臣の一人である。
 最近双子の兄が居るとか居ないとか噂されるが、本人が男嫌いなため真相は定かではない。というか定かになったときには作者多忙につき更新停止である。

 ……ハハッ☆

「何をやっている旬イク!?」
「ひっ!? ……な、何よなまくらじゃない。脅かさないでよ!?」

 突然の怒声に一瞬怯んだ桂花だったが、相手が元譲だと分かるとすぐに開き直り文句を言う。

 ちなみに「なまくら」とは元譲のことだったりする。
 以前元譲が戦の動きについて悩んでいると
「ハァ? アンタが悩んだって私が片手間に考えた策以上のものすら浮かぶわけ無いじゃない。無駄に頭を使ってないで動きなさいよ。倉から出さない剣なんてなまくら程度の価値も無いわよ」
 と有難い言葉をもらった事に由来する。

 そのあまりな言いぐさに当然ぶちギレそうになった元譲だったが「俺は妹とは違う。クールだ。クールになれ」と自己暗示をかけ何とかしのいだ。
 ついでに考えなしに突っ込む彼の妹への罵声を鑑みるに、桂花の言はダブルスタンダートにも程があるのだが、それを言ったら倍返し所か十倍くらいになって返ってきそうなので自重した。

「えーと、落ち着いてくれ元譲さん。俺が悪いんだ。桂花が男嫌いだって分かってたのにうっかり躓いて肩を触っちゃって……」
「……」

 それは何も悪くない。
 一刀自身も言いながらそう思ったのか、徐々に声が小さくなっていく。

「……それにしてもだ、仮にも主の客人相手におまえの暴挙はなんだ!?」
「だ、だって華琳様が!?」

 ――一刀? ああ、あの子は誉めても叩いても伸びるみたいだから、桂花は何の遠慮もせずに叩きのめしなさい。誉めるのは稟あたりがやるでしょうし。

「って言ってたんだもの!」
「……」
「……」

 華琳なら言う。間違いなく言う。
 そう確信した一刀と元譲は、無言で壁に手をつくと胃を押さえながら項垂れた。

 未来の蜀の皇帝の義弟と魏の腹心。
 本来敵である二人の間に妙な連帯感が生まれた瞬間であった。


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