中高年は現代の若者を異邦人呼ばわりする。しかしながら、それは中高年者が日本の若者の現状を知らないだけだ。
そんな無知な中高年者達の為に我々は現代の若者たちの生態を詳しく解説していきたいと思う。
ああ、素晴らしき日本の若者たちよ、これは若者による若者のための若者の物語である。
1
幼いふたりの男の子が、フローリングの床に座って積み木を組み立てながらお喋りをしていた。
今年で二歳になる勉が赤いブロックを重ねながら、友達の貢に尋ねる。
「最近、相続した土地のことでパパが揉めてるんだ。どうすればいいんだろう」
親指をしゃぶりながら、貢が勉に聞いた。
「何か問題でも起こったのかい?」
「土地を叔父さんと共有名義にしたんだけど、叔父さんがお金に困って自分の持分を売りたいらしいんだよね」
「ふーん、でもさ、分割した不動産なんて中々売れるもんじゃないよ」
「そうらしいね。土地には上物も建ってるし、持分の全部ならともかく、一部だけじゃね」
「共有名義って原則は共有者全員の同意が必要になるんだけど、君のお父さんはどう思ってるの?」
「思い出の土地だからできれば手放したくないってさ」
「もしも共有者の同意を得られなくてもまず、叔父さんは土地を分筆、つまり分割すれば、その自分の持分の土地は売れるよ。
他に共有者がいなければ、この場合は二分の一だね。ただ、土地の全部じゃないから、
広さにもよるけど買い手はつきにくいと思うよ。所で土地の大きさは何坪くらいなの?」
「六十坪くらいかなあ」
「そうなると叔父さんの持分は三十坪か。正直、そんな狭い土地じゃ何もできないから、
もし売るとなったら安く買い叩かれるのがオチだね。君のお父さんが持分を買い取ってあげるのが理想的だけど」
「それは無理だね。だって、僕のパパはしがないサラリーマンで、住宅ローンも抱えてるし、不況のせいで年収も下がったし」
「それじゃあ、難しいな。残念だけど君のお父さんと叔父さんは今後の仲は悪くなっていく一方だろうね」
「うん、僕もそう思うよ」
「お金に関する問題は事前にキチンとしておいたほうがいいよ。
どうにかなるだろうって甘いこと考えてると、いつか足元をすくわれるからね」
「それでパパも参ってるんだよね。本当ならママがパパを支えてくれればいいんだけど、ママは君よりも幼いんだ」
「それはどうして?」
「だって、ママは未だに君と同じおしゃぶりをするんだ。昨日の夜もベッドでパパのをしゃぶってたんだもん」
2
小学校二年生になる良一は黒板の前で内股気味に股間を抑えていた。右手で前を隠し、腰をモジモジと動かす。
「九十三+五十七-八十九よ。どうしてこんな簡単な問題が解けないの?」
ピンクのレディーススーツを着こなした担任の裕子が黒板をチョークで叩いた。
黒板を叩く度に胸元がプルンとたわむ。
「先生、俺、集中できなくてこんな問題解けないよ」
「どうして?」
裕子に問われて良一は正直に答えた。
「だって、先生のスリーサイズがそれくらいでしょう?」
3
坂本良太が自宅で弟の良一と甥の貢の面倒を見ていると、同級生の美恵がたずねてきた。
良太がいつもの伝法口調で「おう、遠慮せずにあがんな」と玄関のドア越しに声をかけてやった。
良太がドアノブが回し、玄関を開けてやった。ランドセルを背負った美恵が玄関からひょこっと顔を出す。
玄関の隙間から外が見えた。外ではけぶるような細かい雨が降っていた。夏に近い季節に降る夕方の雨だ。
ちょうど退屈していた所だった。美恵を自室に招きいれ、良太が少女にタオルを手渡す。
良太に礼をいい、勉強机の隣にランドセルを置くと美恵は受け取ったタオルで髪を拭いた。
湿り気を含んだ濡れ羽色の黒髪が良太の目の前で揺れる。良太は美恵の首筋の匂いを嗅いだ。
首筋からは淡い体臭に混ざった少女の汗のにおいがした。良い香りだなと良太は思った。
美恵が顔を赤らめてうつむく。少女の長い睫が微かに震えた。良太が自分の身体の匂いを嗅いだことに気づいたからだ。
美恵は良太がスケベな事を知っていた。美恵が誤魔化すようにしゃべり始める。
「突然、雨が降ってきてびっくりしちゃったわ」
「大地震が起きて、ビン・ラディンが殺されて、金正日が死ぬご時世だ。世の中、何が起きるかわからねえもんよ」
したり顔で冷蔵庫型のドリンククーラーからスプライトを二本取り出し、一本を美恵の前に置く。
「あ、ありがとう。丁度喉乾いてたんだ」
美恵が缶のタブを開けた途端、炭酸の泡がシュウっと噴き出した。零れたジュースが美恵の白いワンピースを濡らした。
「おっと、こいつはいけねえ」
良太がタオルを取ると美恵の身体を拭いてやる。
特に股間の辺りを念入りに拭いていくと、少女が頭を振ってとめてほしいと言った。
「でもよ、ちゃんと拭かないと染みにになっちまうぜ」
「で、でもそんな所ばっかり拭かれたら……」
美恵が喘ぎながら良太の耳元で囁いた。
少女の薄い胸板を右手で撫でながら、良太が美恵の太腿の付け根を左手に掴んだタオル越しにまさぐる。
「何も恥ずかしがることはねえだろう。お医者さんごっこで散々遊んだじゃねえか」
「……お医者さんごっこで思い出したけど、良ちゃん、香ちゃんのお尻の穴に体温計突っ込んだって本当?
他にもお尻の穴、嗅がれたり舐められたってあの子いってたわ。それも嬉しそうに」
良太は極めて冷静だった。なんせ生まれつき、面の皮だけは厚かった。良太の面の皮が、少女の嫉妬心を平気で跳ね返す。
「そりゃ、十日くれえ前の話だな。なんだ、美恵も興味があるのか」
良太が美恵の小ぶりな臀部に手を回す。
「そういうわけじゃないけど……でも、良ちゃんがしたいならしてもいいよ……」
「美恵」
「あ、でも今日はちょっと待って、さっきトイレいってきたからお尻が汚れてると思うの……」
「汚れてるなら俺が舐めて綺麗にしてやるよ」
据え膳食わぬは男の恥という言葉がある。良太という少年は己の欲望に恐ろしく忠実だった。美恵を押し倒す。
「あん……」
4
夏の青い大空、太陽の陽射しが眩しい。昼休みの屋上で良太は友達の義弘とともに休んでいた、
「ねえ、良太君。『古事記』って読んだことある?」
義弘が出し抜けに良太に向かって質問する。いつもの事だった。良太はいいやといって、首を横に振った。
「あれも結構エッチな話が多いんだよね。
例えばこんな話があるんだけど、勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)っていう美女が、、
トイレでウンチしてる時に三輪の大物主の神っていう奴が丹塗矢(にぬりや、赤い矢)に化けてさ、その美女の性器を突くんだよ。
要するに排便中の美女をトイレでレイプしたってことだよね。それで美女が妊娠して子供を生むんだけど、名前が傑作でさ。
『富登多多良伊須須岐比売(ほとたたらいすすきひめ)』っていうんだ。『ほと』っていうのはヴァギナの事なんだよね」
「へえ、古事記って結構エロいんだな。あとで図書館にいってみっかな。
そういえば、前に読んだ旧約聖書でダビデ王が家臣の妻に手を出す話があったんだけどよ、
人妻の夫に浮気がばれるのを嫌がったダビデ王が、その夫を戦死させる為に戦場の前線に送るエピソードがあったよ。
イスラエル人ってのも、結構スケベで笑えたし、イスラエルの英雄も決して聖人君子じゃないってのがよかったよ。
新約聖書はクソ面白くもねえけどな」
昼休みの終わりを知らせる鐘が鳴り響いた。ふたりが屋上から出て行く。