<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[31220] 【ネタ】ヒキコ→リア充(レイセン、戦闘城塞マスラヲ)R-15
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/04/26 20:19
闇。
黒色の闇。空間を墨で塗りつぶしたような純粋すぎる闇が其処を満たしていた。
否、その空間そのものが闇であった。
その者の名は、眠り続ける者。億千万の闇。ロソ・ノアレ。アンリ・マンユ。世界が誕生する前からこの世に存在する最古最強の神。暗黒神。
彼、あるいは彼女は純粋に光を遮った時に生じる影であり、概念的な要素も含めたあらゆる意味での闇そのものである。
“闇”は眠り続ける。世界の底の底にある澱の底で夢を見る。
まるで恋する乙女のようにお気に入りの“彼”を夢に見る。
















“う、ふふ。うふふふふふふふ……!!”



少女が居た。
見た目だけならば中学生にも満たぬほど幼い少女が居た。
この世ではない、隔離世の底に居た。
だが、その身に纏う仕草、風情は余りに妖艶。
漆黒のゴシックロリータが余りに倒錯的な、くらくらする様な色気を醸し出していた。
脳髄を直接蝕むような、甘ったるい、ねぶるような声。
愉悦の感情がそのまま音になったかのような笑い声が少女の口から洩れていた。

闇理ノアレ。
暗黒神の端末である彼女の視線の先には川村英雄が、本体と彼女のお気に入りの人間が居た。



“ああっ、閣下。やっぱりあなたは最高ですわ”



ノアレは芝居がかったような口調で、興奮に頬を染め、はしたなく悶える。
闇の精霊にふさわしい背徳的で退廃的な様を惜しげなく晒している。
ロソ・ノアレは端末の瞳を通してヒデオの姿を捉えている。
どうやら、今日はとびきりに愉快な夢が見られそうだ。














例によって、ちゃぶ台の上にはビール缶が散乱している。











気が付いたらエルシアを押し倒していた。
たたまずに放置していたせんべい布団の上に横たわる、安い布団には余りに不釣り合いなほど高貴な少女。
常に怜悧な輝きを宿す瞳が微かに見開かれている。
その表情にわずかな緊張と恐怖を見つけ、思わず唾を飲み込む。


(……たまらない)


頭が重い。
思考には微かにモヤがかかったような鈍さがある。
いつもならば抑えられるであろう快楽への欲望が止められない。

目の前に居る高貴な少女を、野卑で下賤な欲望で汚してやりたい。
その様を想像するだけで心臓が痛いくらいに早鐘を打つ。
そういえば、いつだったかこの少女は自分の下僕になると言っていたことを思い出す。
都合のいい事実に思い至り、いよいよ理性が音を立てて千切れた。


「んむぅっ……!」


むさぼるような口づけ。
冷めた彼女にふさわしく、エルシアの唇はひんやりとしていて微かに甘い香りがした。
その唇に自分の熱を押し付けるようにねぶる。
目を見開き体を強張らせるエルシア。
しかし、積極的に抵抗はしない。むしろおそる、おそると言った感じで自分をむさぼる男の背中に腕を廻した。
自分の背に廻された腕の感覚に脳の奥がチカチカと熱くなる。
エルシアの口をこじ開け、舌を滑り込ませる。縮こまった可愛らしい舌を捕らえ、自分の舌を絡ませる。
まるで2人の口唇が溶けて混じったかのように濃厚な口づけを交わす。
自分の唾液をエルシアの口内に送り込むと、彼女は何の躊躇いもなく飲み込んでいく。
全ての唾液を飲み込んだ後、まだ足りないとでもいうかのように、もっと唾液を強請るように、舌が自分の口内に伸びてくる。


「ぅあっ……!!」
「っはぁ、はぁ、はぁ……!!」


息継ぎをするために口を離す。
唾液が糸を引いてプツン、と切れる。

息を荒げ、頬を染めたエルシアを見下ろす。
自分と彼女の涎にまみれた口元が目に入った瞬間、眩暈のするような興奮と達成感が全身を駆け巡った。

じ、と自分を見上げるエルシアを視線が絡まる。
思考を覆うモヤはだいぶ晴れたが、もう抑えが効きそうにない。


「……エ、ルシア」


無意識に彼女の名前が口から零れた。
名前を呼ばれたエルシアは微かに何かを考えるような顔をして、やがて思い至ったような表情になっておもむろに口を開いた。


「旦那様。下僕であるわたくしめにお情けをくださいませ」
「…………っ!!!!」


















暗黒神の力で暗転




















意識が覚醒し始める。


何か凄く良い夢を見ていた気がする。
掛け布団が肌蹴ているようなので、目を閉じたまま手を伸ばす。


むにっ。



「んっ……」





間違っても草臥れたせんべい布団ではない極上の絹のような感触が掌に伝わり、甘えるような音が耳朶を震わせる。

意識が急速に覚醒する。

お も い だ し た!!

走馬灯のように昨夜の記憶が脳内を駆け巡る。
おもに、白い裸身とか喘ぎ声とかが寝起きの股間を直撃する。おうふっ。


ん?ということは……やってしまったのかっ!!自分のようなヒキコが、あの、エルシアと……。え?まじで?下僕とか旦那様とかの関係を盾にして!?




やばい。死んだ。これは、詰んだ。脳裏にエルシアの姿が浮かぶ。

(そう。あんな口約束を本気にして私を犯したの。666ページ)

ちゅどーん、あべし。ざんねん!!ヒデオのぼうけんはここでおわってしまった!!!



だらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらにほほだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだら。






パチリ。


「あっ!」


同じ布団の上で向かい合って寝ている裸身のエルシアとばっちり目があった。
冷めている常と違って、薄青色の瞳に微かな温度が感じられるのは気のせいであろうか?

寝ているヒデオが目覚めるまでじっと見つめていたらしいエルシアはヒデオの起床に気づくと、目覚めのあいさつをした。


「おはようございます、旦那様。昨晩の“熱”はとても素敵でした」
「…………っ」


痴呆のように口を開けて、呆ける。
滅多に表情を変えることのない氷の姫君の顔には屈託のない花が咲いたような笑みが浮かんでいた。

見惚れた、ただただ……見惚れた。

ヒデオは返事を返すのに脳のリソースを割くのすら、もったいないと言わんばかりに、ひたすらエルシアの笑顔に見惚れていた。





ああ、これは別の意味で殺されたかもしれない。



















“うふふふふふ。あははははははは。良~いものが撮れちゃったぁ”


うふふ、あはは。ノアレがハンディカム片手に闇の中で笑う。

闇の本質に従い、本体より与えられた使命を全うする。

もっと面白く、愉快にヒデオを振り回そうとする。それこそが契約の対価。



“エリーゼ工業に魔殺商会、美奈子とかアルハザンにもダビングして送らなきゃねぇ”








ぶるっ!!


「旦那様?」
「え。あ、はい。風邪を、引いたのかも知れません」









続いたよ。



[31220] 2話 巫女巫女とらいあんぐる
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/04/25 14:00








「お、おおぅ!!」


元聖魔王である名護屋河鈴蘭は『ゴスロリの妖精』なる人物より送られてきたエロ映像にかぶりついていた。
さすがにこの歳にもなると多少の知識と耐性はあるが、それが知り合いの絡みになるとまた、エロさが有頂天である。
先程から自室で奇声を上げながら、身を乗り出したり悶えたりしている。
これを最近いい感じの元勇者に見せたら100年の恋も冷める勢いである。

画面の中ではヒデオがエルシアを押し倒し、熱い口づけを交わしながら衣服に手を掛け始めた。


「き、き、き……キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」


いやっほぅ!!とガッツポーズをする元聖女にして元魔王。
先程からテンションがうなぎのぼりである。
鼻息も荒く、雰囲気が年頃の乙女のそれではなく、もはやエロオヤジである。



『旦那様。下僕であるわたくしめにお情けをくださいませ』
『…………っ!!!!』








暗黒神の力で暗転


















「おのれっ!!暗 黒 神 !!!!!」


ズドムッ。画面にデフォルメされたノアレが浮かんだ瞬間に鈴蘭の瞳が紅く染まり、液晶テレビに炎獄がぶち込まれた。

往時の魔力こそ失っているが、神殺しの炎は一瞬でテレビを塵に変えた。













2話 巫女巫女とらいあんぐる 勘違いだけど











「睡蓮、すーいーれーんー!!」
「一度呼べば聞こえます。何ですか姉上」
「え、あー……と。何でもないヨ!!」


名護屋河本家。

鈴蘭は先程から睡蓮の名前を呼んでは口ごもることを繰り返している。
いくらチャランポランな姉でもここまで言い淀むのは珍しい。
何やら悪しき気配を感じた睡蓮は眦を釣り上げ姉に詰め寄る。


「先程からなんですか。言いたいことがあるならはっきりと言ってください!!」
「えーと、うん。怒らない?」
「何か怒られるようなことをしたのですか?」
「した、というか。私じゃなくてヒデオ君が……」
「ヒデオが?」


何故、姉の口からヒデオのことが出るのか分からず、戸惑う睡蓮。
そんな睡蓮に鈴蘭は意を決したように聞く。


「睡蓮さぁ……ぶっちゃけ、ヒデオ君のことをどう思ってんの?」
「……っ!ど、どうとは?」
「この間の合コンで良い感じになってたでしょ?恋愛感情はあるのかなぁって」
「…………あ、悪しき質問です!!そ、そもそもあやつは愚鈍で不出来な後輩であって、名護屋河家第44代当代であるわたくしとは釣り合いがとれません!!い、いえこれは別にヒデオが男として駄目という訳ではなく、いざという時の胆力と頭のキレはなかなか頼もしい……ではなく!!物事には順序というものがあってまずは文通から始めてお互いのことをよく知る必要がある……というか、いきなりなにをっ!そのようなことを答える必要はありません!!」


い、妹よ!!分かりやす過ぎる睡蓮の反応に思わず頭を抱えたくなる鈴蘭。
なまじ2人をくっつけようと画策したことがあるだけに、あってないような良心が痛む。

実はヒデオ君はエルシアさんと……。い、言えない。
妹の初恋が始まる前に終わっているなんて!!というか、アウター級の戦闘力を持つ2人が恋の鞘当などしたら二次被害でヒデオは死ぬであろう。


「妹よ、お姉ちゃんはずっとお前の味方だからな。(ヒデオ君の)死体の後始末と証拠隠滅はうちの会社に任せろ!!」
「な、何の話ですか!?」




















自分の知らないところで、何やら悪しき企みが進行している。
宮内庁の道場で瞑想をする睡蓮。本来ならば心を無にする必要があるのだが、ここ最近は雑念が消えない。
最近挙動不審な姉と何やら雰囲気が変わったヒデオ。
姉が挙動不審なのは、まぁ、良くあることであるが。ヒデオの様子が変わったというか…………


(格好良くなったような……。はっ、わたくしは何を!!)


心頭滅却。心頭滅却。
今までのヒデオは何をするにつけても自信がなさげで、おどおどしていた。
しかし、最近のヒデオには今までと違って積極性というか、熱意のようなものがあるような気がする。
一体何がヒデオにそのような変化をさとしたのかは分からないが、日本男児としての自覚が出てきたのであろう。














「女だね」


開口一番、長谷部翔香はそのように言い放った。
最近ヒデオの様子がおかしいという話を翔香に相談したら予想外の返答が返ってきた。

思わず睡蓮は目をパチクリとさせる。


「し、しかし長谷部先輩。あのヒデオに色恋沙汰など……!!」
「いーや、分からないよ。私の見たところヒデオ君はあれでなかなかジゴロっぽいからねぇ」


まぁ、本人は無自覚でクサい台詞を言うタイプだね。と言って翔香はからからと笑った。
睡蓮は自分でも理解できない焦燥に駆られて、思わず問いただすように詰め寄ってしてしまう。


「か、仮にヒデオにそのような……こ、恋人がいるとしてっ!!相手は誰なのですかっ!!!」
「それは、あれだ。ヒデオ君と同じような時期に挙動がおかしくなった子が怪しいんじゃないかい?」
「はっ!!ま、まさか……」


そう言えばヒデオと同じような時期に姉の様子がおかしくなったような気が……。

え、う…うそ。そんなことって……!!


「……姉上と、ヒデオが」


ぎりっ


否応なしに胸の奥に黒い感情が湧きあがる。
このような感情は悪しきものである。
名護屋河当代である自分には相応しくない。

姉にこのような感情を抱くのは駄目である。
悪し、き所業である。睡蓮は大きく深呼吸をして、愕然とした。


何故ならば、このような感情を抱いてしまうということは、


(そんな、わたくしは、ヒデオのことが……!!)
















暗黒神が端末の為に新たに生み出した特殊な隔離世。
隠密性に特化して、アウター級の存在でも容易に発見することも、侵入することもできない世界。
以前端末がエルシアに拘束され“超電磁鈴蘭MK-Ⅱスペシャル・ヒデオロケッツ!”の決定的瞬間を見逃してしまい、悔しさのあまり思わず目覚めて世界を滅ぼしかけた事を反省して創り出した、覗き専用の部屋である。




“あら、あららら。てっきりお姉さまと睡蓮がぶつかると思ったのだけれど、まさか、鈴蘭×ヒデオなんて新機軸は想像しなかったわ”

“こんなことで姉妹の絆に罅が入ってしまうのは可哀そうよねぇ”


にやにや
うふふ、くすす。

口では可哀そうとか言いながら、その目はどう見ても面白いおもちゃを見つけたという思いを隠していない。
闇とは実にたちの悪い存在である。


“うふふ、あっはははは。これから大変よぉ、閣下”














続いた。感想ありがとうございます。



[31220] 3話 私の妹がこんなにかわいいはずがない by謎の豊満セクシーメイド
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/05/03 12:25
ヒキコ→リア充 

3話 私の妹がこんなにかわいいはずがない by謎の豊満セクシーメイド(漫画版準拠)






「んむぅ……ちゅ、れろ」
「……ぷはぁ!!」


休日に自宅で引きこもっていたヒデオは、突然訪問してきたエルシアに押し倒され、熱烈な口づけをされていた。
ヒデオが恐れ多くもエルシアを押し倒してDTを捨て去った日。
その日から度々エルシアはヒデオの自宅を訪れ、幾度も体を交えていた。

濃厚なキスを中断すると、エルシアは何を思ったかヒデオの足を抱えた。
そして陶然とした表情でヒデオの足に頬擦りをする。

「ふふ、旦那様。おみ足を清めて差し上げます」
「ちょっ……!!」
「れろ…んちゅ……」

何とエルシアはヒデオの足を抱え、それに舌を這わせて丹念にしゃぶり始めたのだ。
処女雪のような頬が桃色に染まり、興奮でエルシアの息が乱れる。
快楽に潤んだ瞳でヒデオの反応を見つめながら、汚れをこそぎ落とす様に舌を動かす。

「はぁ、高貴な私が、こんなことを……。ちゅ、んん!!」
「やめ…!!汚いからっ!!」
「んちゅ、ちゅぱ、れろ、ふぅ、じゅる」

怜悧な美貌を持った少女に足を舐めさせる。
その背徳的な行為は、恐ろしく倒錯的な感覚と快感をもたらした。

エルシアは足の指の隅々まで丹念に舌を這わせ、従属の快感に背筋を震わせる。
高位であり、高貴である自分が膝を折るに値する男。
そのような男に奉仕しているという事実がエルシアの女の芯を熱くする。

(あ、は。これが、人の子の熱……!!)

やがて、欲情を抑え切れなくなったエルシアはそのままヒデオのズボンに手を掛け……










暗黒神バリアー!!!

暗転します。












エルシアと一晩中絡んだあと、ヒデオは睡蓮の送迎をするために名護屋河家に向かって、伊織から貰った車を走らせていた。

主導権を一方的に握られている気がする。
エルシアと幾度となく情事を重ねたヒデオは、生意気にもそんなことを思っていた。
魔殺商会に行けばお金を払ってでもエルシア様に踏んで欲しい覆面タイツがいくらでも居るのに、この元DTはエロい事だけでは飽き足らず主導権を握りたいなどと考えていた。
脱DTで調子に乗っているようだ。

ヒデオはエルシアが自分のことを過大評価して体を捧げていると思っていた。
だから、自分にそんな価値はないと思いつつも、少しでも彼女に相応しい男になるべく取り敢えず仕事から頑張ってみることにした。
そのヒデオの変化を見て睡蓮の好感度が上昇していたりしていたが、ヒデオは知らない。

実のところ、エルシアはヒデオのあり方そのものに惹かれたのであって、能力の有無など何の興味も無いのだがヒデオが知るよしもない。
それどころか、純血の魔族であるエルシアにとって人間の能力の多寡など誤差のようなものである。
彼女は魂に秘める熱量にこそ惹かれるのだ。



(というか。会う度にエロいことばかりしている気がする……)

告白も何もしていないが、肉体関係がある以上、付き合っていると言える、のではないだろうか?
今まで一度も恋人を持ったことのないヒデオは大真面目にそんなことを考える。

(とはいえ、デートプランなど。……思い浮かばない)


キキー


そんなことを考えているうちに名護屋河家の前に到着したようだ。
立派な構えの門前には既に睡蓮が待ち構えていた。
いつも誰かを睨みつけているかのように目つきが悪いのだが、今日はいつにも増して機嫌が悪そうに見える。

「遅かったですね。何かあったのですか?」
「…すいません。少し…寝坊を」

まさか、エルシアと乳繰り合っていて遅れたなどとは口が裂けてもいえない。
理由は分からないが、言ったら最期のような気がする。

「寝坊とは情けない。普段から弛んでいるから、そのようなことになるのです、もっと精進なさい」
「…はい、以後気をつけます」

そう言いつつ、何故かヒデオの隣の助手席に座る睡蓮。

「えっ!!」
「いきなり、どうした?」
「い、いえ。何でもありません!!」

何故か顔を赤くして怒鳴る睡蓮。
ヒデオに向ける目つきは一層キツイものとなっている。

(ヒデオから、香水…女の匂いがする)

女物の香水と体臭が混じった、独特な甘い匂いがヒデオからする。

(そういえば、昨日は姉上も友人のところに泊まると言って家には居なかった)

まさか、そんな馬鹿な。
一度は否定した可能性が鎌首をもたげる。

普通に考えれば、ヒデオから香水の匂いがしたからって鈴蘭の物であるとは限らない。
しかし、精神的に余裕が無くて追い詰められていた睡蓮には、それこそが真実のように思えた。

姉とヒデオは交際をしていて、それを自分に隠している。
根も葉もない思い込みではあるが、それが睡蓮の中で確信に変わる。
自然とヒデオを見る目つきが険しくなる。

(どうして?ヒデオはわたくしの後輩なのに……)

元はと言えば姉上が自分にヒデオを紹介したはずである。
ごうこんなる軟弱な催しにおいても姉は自分とヒデオをくっつけようとしていたのではないか。
ならば、これは自分に対する裏切りではないか。
姉はヒデオに対して懸想する自分を見て嘲笑っているのではないか。

睡蓮は、神殺し当代にあるまじき黒い感情がふつふつと湧きあがって来るのを自覚した。




「……ヒデオ、そこの公園に車を止めなさい」
「…いきなり、どうして」
「いいから止めなさい!!」

鬼気迫った睡蓮の口調に、ヒデオは訳が分からないながらも車を停車させる。
早朝の公園には数は少ないがジョギングをしている人もチラホラと見受けられる。

睡蓮はヒデオの手を掴むと人目の付かない茂みの方に引っ張っていく。

「睡蓮、一体…何をっ」
「黙って着いてきなさい!」

睡蓮は周囲を確認すると、そのままヒデオを地面に引きずり倒した。

「…ヒデオ、姉上と閨を共にしましたね」
「な、何のことだっ」

睡蓮はヒデオの上に馬乗りになると、抵抗できないように両手を押さえつけながら詰問をした。
湿った土の臭いに混じって、睡蓮から爽やかな石鹸の香りがヒデオの脳みそを侵す。
なまじ女の体を知ってしまったが故に、自分に跨る睡蓮の肉感に動悸が速くなる。
具体的に説明するなら、魔眼王Jrが立ち上がった……というか勃ち上がった。

「んっ…!ひ、ヒデオ。これは、もしや……」
「す、すまない!!こ、これは生理現象で!!」

昨晩、散々エルシアとビッグマグナムしていたにも関わらず、睡蓮に対してもソルカノン砲の装填を始めたJrに自分でも呆れるヒデオ。
同時に、あの真面目な睡蓮に対してこのような軟弱を晒してしまったことに対して、血の気が引いていく。

「お、おまえという男は、姉上だけでは飽き足らず、ん、わたくしのような女にまで懸想するのかっ……」
「い、いや、だ…からっ。何のことだっ」

無意識に魔眼王Jrに対して腰を押し付けて、前後に揺らす睡蓮。
頬は赤く染まり、噴き出した汗で黒髪が白い肌に張り付き、凄まじく扇情的な様態をみせる。

「あんっ…!い、良いでしょう。あくまでとぼけるというならば、こちらにも考えがあります。お前が誰の物か、んっ…教えてやりましょう」
「な、なにっ…を」

突然の事態にヒデオが混乱する。
目を白黒させるヒデオに、ゆっくりと顔を近づける睡蓮。
徐々に近づく二人の顔、……やがて、その距離はゼロになった。








暗黒神ディフェンス!!!











事後。

2人は人目を気にしながらそそくさと車の中に逃げ帰った。
今度は助手席に座らず、後部座席に座る睡蓮。
何故か股間をかばっているような動きで、ぎこちない。

「で、では、本当に姉上とは何も無いのですね」
「なにも無い。……というか、一体なぜそのような勘違いを……?」
「う、うるさい!!何もないならばよいのです!!」

勘違いしていた羞恥からか、顔を真っ赤にして怒鳴る睡蓮。

「それにしても、…なぜいきなりあのようなことを」
「お、おまえと言う男は、それをわたくしに言わせるつもりですか!!」

睡蓮の痴態を思い出して顔を赤らめながら、何故あのようなことをしたか尋ねるヒデオ。
その不躾極まる問いに涙目になる睡蓮。

「い、いや、つまり…そういうことなのか?」
「おまえはわたくしが好いてもいない男に、体を許すような淫らな女だと思っているのか!!」

少なくとも好いた男を野外で押し倒すような女だとは思っている。
思わずそのような言葉が喉元まで出かかったが、炎獄が飛んできそうな気がしたからやめた。
いや、流されて最後には失神するまで睡蓮を貪った自分が人のことをどうこう言えないが。

「ま、まぁ。今日は仕事は無理だろう、局長には僕から伝えておくから……」

君は家に帰った方が良い。

そう言おうとしたヒデオであったが、バックミラー越しに見えた睡蓮の寂しそうな顔に言葉が詰まった。

「…今日は、僕も休もう。出てきたばかりで家に帰るのも気まずいだろうから、僕の家に行こうか」

珍しく空気を読んだヒデオ。
睡蓮の反応を確認すると、初めて見るような満面の笑みを浮かべていた。

「い、いいでしょう。ですがっ、ふしだらなことは禁止です!少し休むだけですからね!!」
「……分かった」

(かわいい)
同僚の女性の意外な一面に、思わず頬が緩む。

ヒデオは睡蓮の笑顔をしっかりと記憶に刻み込むと、局長に連絡すべく携帯を取り出した。










質量を伴なったかのような、重厚な闇が広がる空間。
何処までも広がる、その空間に人影が一つあった。


“なーんか、つまんなぁーい”

ヒデオと睡蓮がいちゃついているのを覗いていたノアレが拗ねたように言う。
本体の方はそれなりに満足しているようだが、何故かノアレはモヤモヤしていた。

“そうねぇ、ヒデオが良い思いしかしていないからつまんないのかしら?”

さらっと、守護精霊にあるまじき発言をするが、これが平常運転である。

“ふんっ。なによ、ニヤついちゃって……”

最後にいらついたように悪態をついて、ノアレは闇に溶け込むように消えた。
……その後には何もない、闇だけが広がっていた。





つづく

おひさしぶりです。まだ覚えていますか?
いえ、すいません。このssの更新はかなり不定期なので、ふいに更新したりします。




[31220] 4話 電波的な彼女
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/04/25 14:00
4話 電波的な彼女 というか電波が彼女。










「な、な、な、なんなのよーー!!これはぁあああ!!!!」

エリーゼ工業の社長室。

マホガニーの机を蹴倒して激昂しているのはブレザー姿の少女。

怒りもあらわにエリーゼ・ミスリライトはクソ忌々しい暗黒神の端末より送られたDVDを、再生端末ごと粉砕した。


「お、落ち着いてください!どうしたんですか、社長!?」
「うっさい!!黙れ!!」
「ぐほっ!!」

暴れるエリーゼを止めに入った役員を、蹴飛ばす。
鳩尾に真っ直ぐ入った前蹴りは役員Aの横隔膜を痙攣させ、呼吸困難に陥らせた。

「川村ヒデオ!あ、あンのクソニート!!調子コイてんのか!!」ゲシゲシ
「あふんっ!!そ、そこは駄目です社長!!」
「黙れっ、そしてシネッ!!」
「へぶん!!」

ドッカン、ドッカン。
破壊音と役員の嬉しそうな悲鳴が社長室に響き渡る。

「か、川村ヒデオが、どうか……したんですか?」
「どうもこうも……!!っ、アイツが他の女とどうなろうと、わ、私は何とも思っていないわよ!!」ゲシゲシ
「思いっきり……動揺しまくっている、じゃないですか。ぐふっ」
「だ、誰が動揺しているのよ!いつ、何処で、地球が何周回ったころ!?」ゲシゲシ

子供のようなことを言いながらエリーゼは役員Aにストンピングを繰り返す。

エリーゼに顔面を踏まれて意識を失った役員Aであったが、その顔は幸せそうだった。


後にこの役員Aはこう語る、「黒のレース付きだった」と。













ノルカ、ソルカ姉妹は混乱していた。

主人であるエルシア様の御命令で隔離都市から連れ出されたのはいいが、何故かとても高貴なエルシア様には相応しくない安っぽいアパートに来ることになった。
この部屋の主人らしき人間は、目の前に居るやたら眼つきの悪い痩せた男のようだ。
先程からこちらを睨んでいる(驚いて呆然としているだけ)ようだが、人間の分際で何様のつもりだろうか?


肝心のエルシアは座布団の上に座って読書をしている。
ヒデオたちの方に一瞥もくれることが無いことから、説明をする気はなさそうだ。

「あ、あのエルシア様。なんですか?この眼つきの悪い人g…ぇぐほおお!!」

ヒデオを指差してエルシアに質問をしようとしたノルカが、凄まじい勢いで飛んできた『獣の書』を顔面に喰らって吹き飛ぶ。
そのまま玄関のドアを突き破って外まで吹き飛んだノルカは、後頭部をしこたま打ち付けて意識を失った。
エルシアは突然のことに固まっているソルカ(とヒデオ)に一瞥をくれると、静かな怒りを湛えた口調で話す。

「この方は私の旦那様、お前たちは私の使用人。お前たちのことをそれなりに気に入っているから旦那様に紹介しようと思ったの。でも、これ以上私に恥をかかせるなら……殺すわ」
「ひぃいい!!」
「拾ってきなさい」
「は、はいぃ!!」

急いでノルカを拾いに行くソルカ。
姉をかついで帰ってきたソルカに対してエルシアは……

ばちぃんん!!!

「ぶっ……!!」

ソルカの体が3回転するほどのビンタをかました。

「誰がその雌犬を拾って来いと言ったの?」

どうやらエルシアは『獣の書』を拾って来いと言ったつもりらしかった。

「も、申し訳ありません!!すぐに拾ってきます!!」

未だに気を失っている姉を放り投げて『獣の書』を拾いに走るソルカ。
『獣の書』を拾い上げ、ほこりや汚れを落として急いでエルシアのもとに向かう。
膝をついて両手で捧げ持つかのようにして、エルシアに渡す。

今度は納得したのか、エルシアは冷たい目でソルカを見下ろしながら本を受け取った。

エルシアはおもむろに『獣の書』を開くと、

「12ページ」
「ひっ!!」

魔法発動の光に思わず身を竦めるソルカであったが、書から伸びた光は玄関のドアを包みこみ、破壊される前の状態に戻した。
……ちなみにここまでヒデオは目の前の事態についていけず黙っている。
さしもの魔眼王も特に命のかかっていない修羅場には、悪魔的なひらめきが効かないようだ。

「申し訳ありません旦那様。ペットが無礼をいたしました」
「も、申し訳ありません!!」

エルシアがこちらを振り向き優雅に頭を下げる。
傍にいるソルカも土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
ソルカの目にはエルシアが上位に置くヒデオが、大怪獣のように映っているようだ。
既に慣れた、畏怖するかのような目がヒデオに向けられる。

「あ、あぁ。別に、構わない」
「寛大な御心に感謝を……。ソルカ、旦那様の前で頭が高いわ」
「は、はい!!」

エルシアの指摘を受けたソルカは、すぐさま跪くと懇願するような目でヒデオを見上げた。

「あの。あまり……酷く扱わないであげて下さい」
「……はい、分かりました。立ちなさいソルカ、旦那様に感謝しなさい」
「あ、ありがとうございまひゅ!!」

ヒデオの言葉にあからさまに不機嫌になり、ソルカを睨みつけるエルシア。
主人から嫉妬と殺意すら含んだ視線を受け、ひきつけを起こしそうになるソルカ。





「ぁ、痛ぅ!わ、私は一体?」

赤くなった顔を押さえながら意識を取り戻したノルカ。
エルシアはそれを一瞥するとソルカに目を向けた。
「事情を説明しなさい。次は無いわ」そんなニュアンスを明確に伝えるエルシアのブリザードのような視線にソルカは慌てて姉に飛びついた。










「それで。……これは一体どういうことなんですか?」

突然やたら露出の多い美人姉妹を連れてきたエルシア。
それで特に説明もないまま、先程の折檻の嵐である。

「私の使用人を旦那様にご紹介しようと思ったのですが、躾が足りなかったようですわ。申し訳ありません」
「躾って……」

薄々気が付いていたが自分の前ではやたら従順なエルシア嬢は、実のところかなりのドSらしい。
ちらり、とノルカ・ソルカ姉妹に目を向ける。
ひぃ、と怯えられた。

(……むなしい。引きこもりたい)

最近は人に怯えられることも減ってきただけに、久しぶりにこんな反応をされるとかなり傷ついた。

「そう言えば、旦那様。鈴蘭の妹をお召しになられたとか……」
「ぶっ!!な、何故。それを……!!」

思わず息が詰まる。
隠していたつもりは無いが、やはり言いだせなかったのも事実。
睡蓮とエルシア、2人に対する裏切り行為を働いている事実に胸が痛む。

「すまない。エルシア……それはっ」
「謝る必要はありませんわ。私のお母様も何人か男を囲っていて、私も兄たちとは種が違うらしいですし。高位にある者ならば、妾の1人や2人当然のものでしょう」

衝撃の告白。
いや、確かに男としては嬉しすぎる告白ではあるが……。良いのかそれは?


「ですが、他の女に序列を譲る気はありません」

そう言ってエルシアはヒデオを押し倒して、馬乗りになった。

「ちょ、人が見てるっ」
「私が1番でないと気が済まないわ」

グッ、とヒデオを覗きこむエルシア。
その氷のような瞳には燃え上がるような嫉妬と独占欲が渦巻いていた。

「ノルカ、ソルカいらっしゃい。旦那様を気持ちよくして差し上げるのよ」
「「は、はい!エルシア様!!失礼します、ご主人様!!」」

そう言って3人はヒデオに圧し掛かっていった。









暗黒神イオンブロック!!!















「太陽が黄色い。空はこんなに美しいものだっただろうか」

部屋のベランダから、心なしか干からびたヒデオが空を仰ぎ見る。
関係の無い話であるが、既に隔離都市に帰還したエルシアたちはやたらとツヤツヤしていた。

PiPiPiPiPiPi!!




不意にヒデオの携帯から呼び出し音が鳴る。
ヒデオは携帯を取り出し耳に当てる。

「もしもし、川村ですが……」
『電子の神キィッーーク!!』
「ぐふっ!!」

耳にあてた携帯の液晶から足が飛び出し、側頭部にドロップキックが勢いよく決まる。
もんどりうったヒデオは、そのまま部屋の中に転がり込んだ。

「な、なんだ!!」
「ウィル子なのですよー!!」

バッ、バッと謎の決めポーズを決めるウィル子。
久しぶりというか、ほとんど初めての出番に浮かれているようだ。

「うぃ、ウィル子。いきなり、なにを……」
「何を……ですと?」

ゆらり、とウィル子がヒデオの方に振り返る。





「に、ほほ、にはは。にほはは、にはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははーーーーー!!!!」
「うぃ……!!」


「マスターはぁ!!ウィル子の奴隷でっ!!!私の、私だけの……パートナーなのですよ!!!」


血を吐くような叫び。
憎悪さえ滲ませて電子の神は咆哮した。


「ウィル子の全てはマスターから貰ったもので、ウィル子の全てはマスターのものなのに!!」


ガッ、01構成能力が発動してヒデオを拘束した。
手枷と足枷を嵌められて身動きを封じられたヒデオ。


「ウィル子っ、……何を!!」
「あなたさえ、居てくれれば……私は神になんかなれなくても良かったのに!!神になったことでマスターと離れ離れになるくらいなら、ウィル子はずっと……ウイルスで良かったのに!!」




ウィル子は幼い。
若い神というだけでなく、そもそも自我を得てから10年も経っていないのだ。

そして肉体を得てからの隔離都市での生活は、今のウィル子を形成する核ともいえる経験であった。
当初は神になるために参加した聖魔杯は、いつの間にかヒデオと勝利を勝ち取るための聖魔杯となった。
唯一無二のパートナーと勝利し続けた結果、神になったのに過ぎないのだ。
しかし神になった結果、ウィル子とヒデオの接点は減り、身も心も繋がっていた時からすればその繋がりは微々たるものになっていた。

それでも、それでもヒデオが自分に神となって人類を導くことを望むのならば、ウィル子は離れ離れでも構わなかったのだ。
何処に居ようが、どれだけ離れようとも、自分の1番がヒデオであるようにヒデオの1番も自分であるのならばっ!!!

だが、違った。
神である自分とは違って、人の子である彼は移ろいゆくのだ。
隔離都市では彼の心の中は自分がほとんどを占めていた。
しかし、今の彼には友人も同僚も……想ってくれる女性すらもいる。

精霊であるが故に人の心を感じることができるウィル子は、ヒデオの心の中に占める自分の割合が減っていくことに激しい焦燥を感じていた。


爆発する様な感情の奔流。
ウィル子の叫びを聞いたヒデオは、おぼろげではあるが彼女の心の内を理解した。
例えかつてのような繋がりは無くとも、あの聖魔杯で培ってきたものはそれだけではないのだから。


「ウィル子!止めるんだ!!」
「うるさい!ウィル子より大切な人が居る癖に!!」
「違う!そうじゃない!!」


そうじゃない。
そんなことではないのだ!!
人との繋がりが増えて、結果的に心に占める割合が減ったとしても。
それは決して、今まで築き上げてきた絆の価値を貶めるものではないのだっ。
情を向ける対象が増えたからといって、ウィル子に向ける想いが翳ったことなど1度もない!!


「ウィル子、聞けっ」
「言い訳なんか聞きたくない!!」
「僕たちは、最高のパートナーだろ!!なのにっ、どうして疑う!何故信じられない!!」
「……っ、だって!減っているんです!!マスターの中で、ウィル子が……減っているんですよぉ!!」
「ふざけるな!そんな勝手なことを言うなッ」
「勝手じゃない!ウィル子は精霊だから、そういうことが分かるんだっ!!」


涙を浮かべ、激昂するウィル子。
その姿に心が痛む。



「君は、何も分かっちゃいない!!」
「何を……!?」

「ウィル子、君が好きだっ!!」
「……ふぇ!?」
「君を愛している!!」
「にょおおお!!」
「この気持ちが嘘だと思うのなら、もう一度僕と繋がってみろ!!」
「あ、うあうあうあう」




熱烈な告白にウィル子の顔が真っ赤に染まる。
処理落ちを起こしたのかヒデオの手枷と足枷が消滅した。


「証明……」
「え?」
「証明してください、マスター。ウィル子にマスターを刻み込んで、今の言葉を証明してください……」


弱弱しく、暗黒神を退けた最新最高の神とは思えないほど儚い。
目尻に涙を浮かべ、まるで人間の少女のような嘆願。


「……分かった」
「あっ…」

静かにウィル子に覆いかぶさるヒデオ。
顔を近づけてくるヒデオに、ウィル子はゆっくりと目を閉じた。
やがて二人の影がゆっくりと重なる。













暗黒神的アンチラブコメシールド!!!


















「だ、だいじょうぶですかー、マスター?」
「が、頑張りすぎた。もう、煙も出ない……」


お互い全裸で同じ布団に潜り込んでいるヒデオとウィル子。
ただし、精力の溢れているウィル子と対称的にヒデオの方はミイラ一歩手前といった感じである。

ふわり、裸身のウィル子は宙に浮かぶと、一瞬体がブレる。
次の瞬間にはいつもの衣装に着替えていた。


「ウィル子はもう天界に帰らなくてはいけません。御迷惑をおかけしました、マスター」
「……君と僕は一心同体だ。迷惑なんかじゃない、またいつでも来てくれ」



ヒデオのその言葉にウィル子は、嬉しそうにはにかむ。

「えへへ。だから、ウィル子もマスターのことが大好きなのですよー!!」








つづく
正ヒロインは格が違った。

あと、我らが総帥を立体二次元とか無胸とかクレーターとかブラックホールとか虚数の胸とか言った奴、素直に手を挙げなさい。総帥は大変お怒りです、タキオンの雨が君たちのもとに降り注ぐでしょう。




[31220] 5話 ヒデオ君に女神の祝福を!
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/04/26 21:27
5話 ヒデオ君に女神の祝福を! 聖銀と暗黒編






ある程度、宮内庁での仕事にも慣れたヒデオは1人で外回りの仕事に出ていた。
外回りとはいっても自縛霊や自然霊の様子を見て回るだけであるが、真昼間からサングラスにスーツ姿の男がフラフラしているのは恐ろしく怪しい。

うだるような暑さの中、スーツが不快な汗でびっしょりになる。

余りの暑さにただでさえ体力が無い上に、最近は色々とエルシアや睡蓮に搾られているヒデオは今にも倒れそうである。

「……喉が渇いたな」

ヒデオは道端に自動販売機を見つけると飲み物を買おうと近づく。
150円を投入して『ミスマルSWET エーデルワイス味』を購入する。
「飲んだらなんか背筋がゾクゾクする」と評判の謎の飲料であるが、個人的に気に入ってよく飲んでいる。
キャップを開けて一気にあおる。




キキッーーー!!

「ぶっ!!」
「川村ヒデオを確認!!」
「確保ぉおお!!」
「ちょ、うわ!」

突如、ヒデオの前に凄い勢いで滑り込んできた黒塗りのベンツから黒服がわらわらと出てきて、ヒデオを捕まえる。
帝愛グループに借金を作った覚えなど無いヒデオであるが、本格的に命の危険を覚える。





いきなり車の中に押し込まれたヒデオは、黒服たちに抵抗しようと身をよじった。

「やめろっ、…お前たちは誰だ!」
「抵抗しないでください。社長が会社でお待ちです」

黒服はそう短く説明すると、ベンツを発進させる。

(……社長?)

自分の周りに居る社長と言えば、伊織貴瀬か……あの聖銀の少女くらいしか思い浮かばない。

……どっちも拉致監禁ぐらいなら平然としそうだから困る。
何となく展開が読めたヒデオは抵抗するのを止めて、高級感あふれる座席に体を沈めた。













「やっと来たわね、川村ヒデオ!!」

案の定、エリーゼ工業の社長室に連れてこられたヒデオ。
待ち受けていたエリーゼはいつものブレザー姿ではなく、いつか召喚した時のような余所行きのドレスを着ていた。

エリーゼは黒服たちに退室と人払いを命じると、ヒデオに向き直る。

(嫌な…予感がする)

何故か満面の笑みを浮かべるエリーゼに、寒気に似た感覚を覚える。

……最近、これに似たようなシチュエーションに遭った気がする。

「さぁ、どうして呼ばれたか……分かるわね?」
「呼ばれたというか、あれは拉致では……」
「…何か文句でも?」
「いえ、別にっ」

ギロリ、と睨みつけられて押し黙るヒデオ。基本的に小心者なのだ。


「アンタ確か言ってたわよねぇ。私のような女神から名剣を授けられるようなヒーローになりたいって……」
「あ、ああ」
「ほぉーーー、それはそれは。……アンタの言うヒーローっていうのはタダのヤリチンのことか!!この女ったらしがーー!!」


バン!とエリーゼが執務机の上に叩きつけたのは数枚の写真(撮影:暗黒神)。
その写真にはエルシアや睡蓮と一緒に映っている自分の姿が映っていた……エロい事をしている姿が。


「な、なんだこの写真はっ!?」
「親切な情報提供者が居たのよっ!ヒキオタの分際で2股とか舐めてんのか!!」




正確にはエルシア、睡蓮、ウィル子の3股、プラスαでノルカ・ソルカ姉妹も追加である。
顔を真っ赤にしてヒデオに詰め寄るエリーゼ。




「シネっ!この変態!人間のカスめっ、うだつの上がらない役人風情がハーレム気取りか!?」
「ぐほっ」

げしっ!げしっ!げしっ!げしっ!

またもやストンピングの嵐。
スカートがめくれるのも構わずにヒデオを踏みつける。


「ど、どうして…君が怒っているんだ!?べ、別に僕が、誰と交際していても関係ないだろうっ」
「はぁ!ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!わ、私がアンタごときに嫉妬してるって言うの!?精霊である私がアンタみたいな人間なんかに嫉妬するわけないでしょ!!まったくっ」



顔を真っ赤にして反論するエリーゼ。



ああ、これがツンデレというやつか。
その露骨な反応を見て、なんとなくエリーゼが怒っている理由に察しがついたヒデオ。
最近は意外と人の感情の機微に鋭くなってきた気がする。



(これが……モテ期。できれば、もう少し分散して欲しかった)



今でさえ、自分のような人間にはもったいない女性たちと関係を持ってしまっているのだ。
正直、今でも何かの間違いではないのかと思う時がある。

浮気のような状況に対する罪悪感も少なからずある。
それ以上に魅力的な彼女たちを独占したいという欲望もある。

目の前の少女を見る。

精霊だけあって人間とは隔絶した、ある種幻想的な造形美を持った少女である。
最近似たような存在であるウィル子を抱いたので、この少女の抱き心地もある程度想像できる。

思わず、エリーゼの腰回りや胸元に視線が泳いでしまう。



「あ、アンタ、今なにを考えた!」

ばっ、と自分の体を抱きしめて後ずさるエリーゼ。

「い、いやっ!すまない!!」

無意識に不躾な視線を送ったことを謝罪する。
最近、思考がピンクになっている気がする、猛省せねば。



「本当にすまない!今日はもう帰るっ」
「待ちなさい!」


罪悪感で死にたくなって、帰ろうとしたヒデオをエリーゼが呼びとめる。

首筋まで赤く染めたエリーゼはわざとらしく肩ひもをずらしながら、ヒデオの腕を掴んだ。


「い、今はこの部屋の周りには誰も居ないから、……声を上げても誰も気が付かないわよっ」
「え、エリーゼ。まさか、……君は!」
「う、うん」


頬を染めて俯くエリーゼ。





「僕を始末するつもりか!!その為に人払いを……そんな、あんまりだっ!!」
「そうそう、アンタをこっそりと始末……って、んなわけあるかぁ!!!」

お前があんまりだっ。



「し、信じられない!!何なのこの男は!!脳みそ詰まってんの!?」
「す、すまない」

仁王立ちでブチ切れてるエリーゼと、その前で正座させられるヒデオ。
乙女に恥をかかせた罪は重い。完全に有罪である。
しばらくビクビクと震えているヒデオを見下ろしていたエリーゼであったが、やがて大きく溜息をつく。


「はぁ、そう言えばアンタってこういう奴だったわね。ほ、ほら、これで分かるでしょう」


エリーゼはおもむろにヒデオの手を掴み上げると、掌を自分の胸に押しつけるように動かした。


「ふぁ。い、意外とドキドキするわね」
「いきなり、何をっ」
「往生際が悪いわね!1度しか言わないから、よーく聞きなさい!!」


手の平から伝わる柔らかな胸の感触に、動揺するヒデオ。



「川村ヒデオ!あ、アンタが好きっ。聖魔グランプリで、私はアンタに救われた!だから……ヒデオ、アンタの女になってあげる!!」



聖銀の精霊、渾身の告白。
今日呼び寄せたのも全てはこのためである。
だからわざわざドレス姿に着替えて、化粧にも力を入れた。
嫉妬で思わず暴力を振るったが、悪いのはヒデオだ。


「しかし、僕はエルシア達と……」
「なんの問題もないわよ。一夫一婦制なんて私たち精霊には適用されないわ」
「だがっ、君はそれで良いのか!?」
「良いから言ってんのよ。それに今は1番になれなくても構わないわ、すぐに……アンタは私に夢中になる」
「あっ……」


身を乗り出してヒデオを覗きこむエリーゼ。
鼻腔をくすぐる甘ったるい少女の体臭に、クラクラする。

さすがに人外だけあって、その倫理観は人間のものとは違うようだ。
エリーゼはエルシアと同じく他の女に手を出すくらいは構わないが、自分が1番でないと気が済まないらしい。



「…私は、覚悟を決めた。勇気を出したわ……だから、次はヒデオ、貴方の番よ」
「ぼ、僕は……!!」


脳裏によぎる、睡蓮やエルシアの顔、ウィル子の姿。

目の前のエリーゼは気丈に振る舞っているが、不安そうな雰囲気を隠し切れていない。
自分は……この少女をどうしたいのだろうか?


「あっ」
「エリーゼ!僕も勇気を出す。……君のような女神から好意を寄せられる、これほど嬉しいことはないっ」


エリーゼの肩に手を掛け、マホガニーの机の上に押し倒した。
美しい銀髪がふわり、と広がった。

頬を染めて自分を見上げる、美しい女神。
ヒデオは、その瑞々しい唇に自分のそれを重ねた。
















暗黒神イリュージョン!!















エリーゼと結ばれてから数日後。
日曜日の朝、珍しく何の予定も無いヒデオは家で引きこもりながら、美少女ゲームをしていた。




「川村ヒデオぉおおおおおお!!!!」


バァン!!


いきなり部屋のドアが蹴破られたと思ったら、武装した魔殺商会の総帥と覆面タイツ部隊が乗り込んできた。
見るからに怒り狂っている鈴蘭は、手に持っているサブマシンガンをヒデオに突き付けて詰問する。


「てめぇ!ネタは上がってんだよぉおお!!エルシアさんと付き合っていながら、ウチの可愛い妹に手ぇ出しやがったな!!!」


ヤクザ顔負けの恫喝。
思わず無条件で土下座をしたくなるヒデオであるが、恐怖で身が竦んで動けない。

周りのタイツ部隊は「神殺しとエルシア様に二股とかマジパネェっす」「絶対に頭おかしい」「俺もエルシア様に踏まれたい」「俺が聞いた話だとエルシア様に足を舐めさせたらしいぞ!」「マジかよ!さすが社長の見込んだ男だぜ!!」「ツルペタ総帥ハァハァ」「見ろよあの眼光、総帥にマシンガンを突き付けられているのに冷静そのものだぜ!!」


タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタンッ!!


「黙ってろ!!この変態ども!!!」


振り返って後ろのタイツ共に向かって実弾を乱射する鈴蘭。
負傷して、外に待機していたメイド部隊に搬送されるタイツ部隊。……一体何をしに来たのだろうか?

にこやかにこちらを振り返る鈴蘭。
返り血で染まったメイド服が異様な雰囲気を醸し出している。


ガシッ!!

「さぁ、邪魔者は居なくなったぞ。詳しく聞かせてもらおうかなぁ、ヒ・デ・オ・ク・ン」
「…………っ!!」


あれ……詰んだ?













「えーと、つまり、ヒデオ君と私が付き合っていると勘違いした睡蓮が……その、朝の公園でヒデオ君を押し倒して、あー、そのー。……いたしちゃったと」
「はい。……おおむねそんな感じです」
「……なんていうか、ゴメン」
「…いえ。僕も抵抗しなかったですし、最後の方は……その、はい」


最後の方は自分もノリノリだった。


「あ、あはは。あ、あの娘ったら、いつの間にそんなに積極的に!じゃ、じゃあ!私は帰るね!今日はごめんね!!」



ヒデオの部屋から飛び出した鈴蘭は、いそいそと車の中に乗り込む。
車内で鈴蘭は妹の生々しい初体験について想像をして顔を真っ赤にする。


「ぐあああーー!!睡蓮ーー!!一体いつのまにそんな淫乱になったんだぁーー!!」


初体験が逆レ○プでアオ姦とか……。
お姉ちゃんはそんな娘に育てた覚えはありません!!というか姉である私だって長谷部先輩とは全然ッ進展していないのに!!

「くっそぉー!!何だかちくしょーー!!」

寂しい独り身(22歳=彼氏いない歴)の叫びがこだました。











最近よく破壊されるドアの前で、ヒデオは思い悩んでいた。

先日、鈴蘭の襲撃を受けたが。…やはり、何時までも睡蓮に対して隠し事を抱えているのは良くない。
いい加減、覚悟を決めて睡蓮に打ち明けるべきだ。
……死んじゃうかも。


「……行くか」
「睡蓮のところにかしらぁ?」


覚悟を決めて一歩目を踏み出そうとしたヒデオの背に、冷やかな声がかけられる。

「ノアレか…」

そう言えば最近見ていないと思っていたが、消えていただけでキチンと自分の傍には居たようだ。
振り返って見たノアレの顔は何やら機嫌が悪そうに、眉をしかめていた。


「そんなにあの小娘がいいのかしら?あなたって巫女服が萌えるの?」
「いや、…なにを」
「下手な言い訳は聞きたくないわ。あれから何度も睡蓮とまぐわったものねぇ、仕事中に隠れてヤリまくるとか……それでも公務員なのかしら!」
「見ていた…のかっ!!」
「えぇ、御馳走様!」
「くっ…」


見た目幼女に自分の情事を覗かれ、糾弾されるとかどんな拷問だっ。


「でもぉ、最近のあなたの下半身はすこぉしばかり、目に余るわねぇ!!」


ぐにゃり。
ノアレが右手を掲げると、そこから空間が歪んでいく。
じわり、と闇が滲み出るように広がり、ヒデオを飲み込んでいく。

「……っ!!」

…いしきが…きえていく









見渡す限りに広がる真っ黒な空間の中、ヒデオは横たわっていた。
ノアレはそのヒデオを見下ろす様に、彼の上に浮いている。


「ここ、は」
「おはよう、閣下。ここは本体が作った特殊な隔離世よ、だぁれも助けには来られないわ」


目が覚めたら、何故か麻縄で縛られていた。
そして目の前には不機嫌そうな闇の精霊が居る。


「ノアレっ、これはどういうことなんだ!…本体の命令か!?」
「いいえ、本体は関係ないわ。…これは私の独断よ」
「ぅあ!!」

そう言ってノアレはヒデオの太股をねっとりと撫で回した。
まるで嬲るような手つきで、ヒデオの太股を揉み込む。
ノアレの予想以上に小さな手のひらが、スッと際どいところまで伸びる。

「あらぁ、これは一体どういうことかしらぁ?」
「くっ、や…めてくれ!」

その見た目と相反する壮絶な技巧に思わず、反応してしまう。
幼い少女に嬲られる恥辱に、ヒデオの顔が羞恥に染まる。

「あっはっは、魔眼王閣下は本当に変態ねぇ!小学生みたいな私に興奮しちゃうんだ!!」
「な、にが目的なんだ?」
「…………っ」

笑顔が一転、表情を険しくしたノアレの細腕がヒデオの上着を破り捨てた。

そのまま、露わになった胸元に爪を立てる。
つー、と深紅の血が一筋流れ落ちた。

「れろ…じゅる、はぁっ……ヒデオの味がする」

傷口に顔を寄せ、血に負けず赤い小さな舌が胸元を這う。
聖魔杯の最後にヒデオを丸ごと取り込んだ時のような、恍惚感がノアレを満たす。
さらにヒデオを味わおうと、そのまま胸元の肉に歯を立てる。


「つぅ…!」
「私にだって、…分からないわよ!!何なのよっ、これは!?あなた……私に何をしたのよ!!」

自分でも理解できない感情にノアレは叫ぶ。
ヒデオを観察して、面白おかしく騒ぎ立てるのが自分の産み出された理由のはず。
なのにヒデオが色んな女の所を右往左往しているところを見ると、正体不明の苛立ちが生じる。
こんなのは自分の機能にないはずだ。
本体がヒデオに対して好意を持とうが、端末に過ぎない自分に影響など及ぶはずがないのだ!


「……、私を抱きなさい」
「そんなこと、できるわけない!」

ゴシックロリータのドレスの肩ひもをはずして、ショーツも脱ぎ捨てるノアレ。
あまりに倒錯的なその姿は、もはやそれだけで犯罪染みている。

突拍子もないことを口にするノアレに対してヒデオが拒絶する。

「……他の女は抱ける癖に、私は抱けないと」

ガシッ

ノアレの目が怒りに染まる。
そのままヒデオの顔を掴むと、視線が合わさるように顔を近づける。

「私の目を見なさい」
「え、……ぐぅ!!」

ノアレの目が妖しく光る。
思わず、直視してしまったヒデオの裡に凄まじい衝動が湧きあがる。

「正真正銘の魅了の魔眼よ。薄暗い性欲は闇に属するもの……人の子では抗えないわ」
「あ、あああ!!」
「ふふ、凄いわね。拘束を解いてあげる、本能の赴くままに私を貪りなさい」

パチン、ノアレの指が鳴らされるとヒデオを拘束していた麻縄が消滅した。
ヒデオは理性を保とうとするが、強化された欲望の奔流はあっさりと理性を飲み込んだ。






「ふぁ!んく、じゅる、れろ……あぁ!!」

半裸のノアレを抱き寄せ、貪るような口づけをするヒデオ。

破り捨てるように強引に残った衣装を脱がす。
その病的なまでに白い痩身を前にしたヒデオは……









“うふふ。だめよぉ、デバガメなんて……”   暗転














川村英雄 自室

明朝、まだ太陽の昇り切っていない時間帯に、ヒデオは目を覚ました。
まるで全力疾走をした直後であるかのように、全身に不快な寝汗をかいている。

(何か、とんでもない夢を見ていた気がするが……よく、思い出せない)

思い出せない夢のことがやけに気にかかるが、まだ朝も早いので寝なおすことにしたヒデオ。

そんな彼を、闇だけが見つめている。









…………ジクリと、胸に付けられた傷が痛んだ。





続く
ヒデオ爆発しろ



[31220] 6話 伝説の英雄の伝説
Name: uwa◆153f0aec ID:f3b856e3
Date: 2012/05/03 14:43
6話 伝説の英雄の伝説 だがもげろ













「ん~、ちゅ……ぷはっ!…えへへ」


正面から抱きつくように口づけをしてきたウィル子は、照れたように笑う。
それから額をヒデオの胸元に押しつけるようにしがみ付いて、幼子のように甘えた。


「あ、は。マスターの匂いがします、……ちょっと汗臭いのですよー」
「……夏だから、汗をかいているんだ」
「本当にそれだけですかぁ?」


上目遣いで悪戯っぽく見上げてくるウィル子に、顔が熱くなるのを自覚する。


「にはは、本当にかわいいんですから」
「っと」


どん、と敷きっぱなしにしている布団に押し倒される。


「ウィル子……!」
「かっこいいマスターも好きですけど、……こういうマスターもそそられるのですよ」


ヒデオの上に馬乗りになって、舌舐めずりをするウィル子。
その年齢に見合わない淫蕩な表情と、押し付けられたウィル子の下腹部の感触が堪らなく欲情を駆り立てる。


「ウィル子、もう……」
「分かってますよ。マスター、ウィル子を愛して……」


瞳を潤ませたウィル子が、衣服を肌蹴ながら顔を近づける。









どん!!!!!!




「あら、居たの?電子の神。全く気が付かなかったわ」


轟音とともに、玄関のドアがくり抜かれたかのように消滅した。

そのむこうには無表情だが心なしか苛立っているような雰囲気のエルシアが『獣の書』を開いて立っていた。








「ちっ、エルシアですか。今は取り込み中ですから出直してくるのですよー」
「何も問題ないわ。私が用があるのは旦那様であって、おまえではないから」
「……旦那、様ぁ?」


スッ、と先程まで愛欲に蕩けていたとは思えないような無表情になるウィル子。
ヒデオの上から浮き上がり、衣服が一瞬で正された。

ハイライトが消えた瞳でエルシアを睨みつけるウィル子。
エルシアも負けずに温度の無い視線をウィル子に向ける。


「下賤な魔族風情が、誰が誰の旦那様ですかー?」
「……成り上がりの分際で、この私を下賤呼ばわりかしら?下等の考えることは、これだから嫌なのよ」
「ちょ、2人とも落ちつ……!!」


あたふたと仲裁しようとするヒデオだが、2人はまるで聞いていない。

膨大な魔導力に当てられ、エルシアの持つ魔導書が薄らと光を放つ。
ウィル子の体の周りで0と1が乱舞し、現世の法則を書き換える。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!


かたや魔王フィエルの娘にして、単純魔力量ならばアウター最高クラスの純粋魔族。
魔人などという混ざり者たちとは一線を画すその魔力は天上の神々にすら劣らない。

かたや最新最高の神にして、暗黒神をも退けた電神。
『億千万の電脳』と称するその能力はαからΩまで、あらゆるものを創造し破壊する。


(日本が危険で危ない!)

そんな風にヒデオが考えてしまったのも仕方がない。

というか天界の属するウィル子と魔界の姫であるエルシアが衝突したら、天界と魔界の戦争にすらなりかねず、世界が危険で危ない。


「落ち着け!2人とも!!」


珍しく大声を上げたヒデオの行動に2人は辛うじて矛を収めた。
……忌々しげにお互いを睨みつけ、舌打ちをしつつではあるが。


「マスター?まさかパートナーであるウィル子よりも、エルシアの味方をするのですかー?」
「……旦那様は当然、私の味方よね」


2人から「信じてる、裏切ったらコロス」という主旨の視線がヒデオに送られる。



な、何なんだ!この状況はっ。
川村ヒデオという男はこのような状況とは最も程遠い男ではなかったのか!!
……これでは、まるでリア充っ!!全国3千万の同胞たちに対する裏切りっ!!

未だかつて遭遇したことのない事態に対して、混乱するヒデオ。


「い、いや。どちらの味方ではなく、2人の……!!」
「……はぁ。相変わらずこういうところはヘタレなのですよ。ウィル子としては他の女に手を出していても構わないんですよー、ウィル子のことを一番愛してくれるなら……」
「残念だったわね、電子の神。旦那様は私のことを一番愛していると言ってくれたわ」


そんなことを言った覚えは無い。


「ほ、ほぉー。それは、本当なのですか……マスター?」
「い、いや。そんなことは…!」


底冷えするウィル子の視線に思わず否定の言葉を発しそうになるヒデオであったが、悲しそうに自分を見つめるエルシアの視線に気づいて言葉が詰まる。


「そ、そんなことは………」




「だーーーー!!!もうまどろっこしいわ!!脱いでください!マスター!!」
「はぁ!?な、なにをっ!!」


優柔不断なヒデオの態度にウィル子が、遂に爆発。
突然、ヒデオに飛びかかると服を剥ぎ取り始めた。


「そう。そういうこと」


何故か納得したような表情をしたエルシアまでもが、ヒデオを剥くのに参加し始める。


「にひひ、にほほほ、にははははは!!口で答えてくれないなら、体に直接聞くまでなのですよー!!!」
「大丈夫よ、旦那様。痛くしないから……むしろ凄く気持ちよくして差し上げますわ」
「」


先程まで殺し合いになりかねないほど険悪だったのに、絶妙なコンビネーションでヒデオを裸にする2人。





やがて全裸に剥かれ、布団の上で恐怖に身を縮こまらせるヒデオ。


「じゅるり……こ、こんな風に怯えているマスターも新鮮かも!!」
「そ、そうね、思わず食べてしまいたい……って私は何をっ!?」


完全に男女の立場が逆……というか、微妙にキャラが崩壊気味の2人。
そのままじりじりと間合いを詰める2人。……ヒデオは完全に涙目である。


「や、やめ……!!」














暗黒神タイムスキップ!!
ロソ・ノアレ様は爆笑しております。













「……はぁ、素敵な熱でしたわ。旦那様」
「あう、というか。2対1でこれ程とは……。いっそ聖魔王じゃなくて性魔王とでも名乗ったらどうですか?」
「…………」


ウィル子の戯言に反論する気力も無いヒデオ。
仰向けで横たわるヒデオを挟むように、裸のウィル子とエルシアが腕を抱きしめている。


昨日、追い詰められすぎて魔眼王モードに突入したヒデオは、見事2人を返り討ちにすることができた。
しかし、いくら勝利したといっても、正真正銘の人外である2人の体力は正に底なしと言って良いものだった。
……おそらく、エロゲで磨いたテクニックが無かったなら討ち死にしていたのは自分だっただろう。

しかし……
なんだか、2人との関係についての話はうやむやになってしまったが、これで良いのだろうか?


「えへへ、マスタ~」
「んっ、旦那さま……」


まぁ、良いか。

幸せそうに抱きついてくる2人を見て、自然にそう思うヒデオだった。






















ピンポーン

チャイムが鳴る音にヒデオは玄関のドア(3代目)に向かう。

外を覗くと買い物袋をぶら下げた睡蓮の姿があった。










「1人暮らしをしているお前のことだから、どうせ碌な物を食べていないでしょう。そこで、特別にわたくしが手料理を振る舞ってやりましょう」


そう言って割烹着姿の睡蓮は腕まくりをした。

エプロンではなく割烹着というチョイスの彼女らしさを感じて微笑ましく思うと同時に、女子の手料理と言う伝説の物体に心躍るヒデオ。

……葉多恵さん?メイツは手料理とは言わない!!




トントントントントントン

座布団に座りながら、テンポよく包丁を動かす睡蓮に見惚れるヒデオ。
後ろ姿であるが、淀みない動きから察するにかなり手慣れているようだ。


「睡蓮、君は料理が得意なのか……?」
「ふふん、誰に向かってモノを言っているのです。わたくしは名護屋河44代当代名護屋河睡蓮、炊事洗濯家事神殺し、一通りのことは表に出て恥ずかしくない程度にこなせます」


姉とは違うのです、姉とは。

そう言って、後ろ姿からでも得意げな顔が見て取れるほどご機嫌な睡蓮。
ヒデオに手料理を振る舞えるのがかなり、嬉しいようだ。


「……ちなみに、何を」
「肉じゃがと味噌汁です。あと家で漬けてきた漬物も持ってきました」


おぉ、家庭的だ。
何気に自分の知っている女性の中で一番家庭的なのではないだろうか。

他の女性陣が聞いたら袋叩きにされそうなことを考えるヒデオ。
まぁ、他に料理ができそうなのは美奈子とレナ、花果菜……大穴でエリーゼくらいだろうから仕方ないと言えば仕方ない。


やがて白ご飯も炊きあがり、睡蓮がご飯を茶碗のよそう。
ちゃぶ台の上には出来たての食事が湯気を立てている。

女の子が自分の家でご飯を作ってくれる。
衝撃のリア充イベントにヒデオの心は感動に包まれていた。


「できましたよ。さぁ、どうぞ」
「では。いただきます」


わくわくしながらこちらを見つめてくる睡蓮の視線を感じながら、肉じゃがに箸を伸ばす。


「……おいしい」
「そ、そうですか!まぁ、当たり前ですね。このわたくしがわざわざ後輩であるお前の為に作ったのですから、美味なのは当然ですっ」
「……ありがとう、睡蓮。人の手料理を食べたのは久しぶりだ。…ほんとうにおいしい」


顔を赤くして嬉しそうに照れている睡蓮。


「こちらの漬物も食べてみなさい、お婆様直伝の漬物です!」
「あ、あぁ」


テンションが上がった睡蓮にやや押されながらも、楽しい食事の時間は過ぎていった。












その頃、名護屋河家にて



「ねぇ、鈴蘭。あなたは良い人とか居ないのかしら?」
「い、いきなり何を!?」


特に用事も無いため自宅でTVを見ながら、ぐんにゃりと溶けていた鈴蘭は母親である名護屋河すみれの唐突な質問に驚いた。


「どうやら睡蓮にも良い人ができたようなので、姉であるあなたはどうかと思いまして」
「ぐっ、ぬぬ!」
「はぁ、その反応では居ないようですね。全く…睡蓮は今日、その殿方の家に食事を作りに行っているというのに、貴方ときたら……」
「えっ!なにそれ、なにそのリア充イベント!?」


私は独り身なのに、なんだこの格差はぁぁあああ!!!!

妹のリア充ぶりに心の中で絶叫する鈴蘭。


「ば、馬鹿な……!あの眼つきの悪い妹よりも、明らかに私の方が可愛いはず!!なのにどうしてっ」


ちなみに仲間内での睡蓮の評価は「可愛い鈴蘭」である。……つまり本物の鈴蘭は「可愛くない鈴蘭」と婉曲的に言われているようなものである。
人間的な魅力は高いけど、女性としては微妙と言われていることに本人だけが気付いていない。


「あなたがそんなのだから、いつまで経っても独り身なのですよ。……どうやら孫は睡蓮の方が先に見せてくれそうですね」
「まご!MAGO!?孫ぉお!!!」


くっ、これもそれも全て長谷部先輩が奥手すぎるせいだ!
そもそも、私がこんなにもアピールしているのにいつまでも手を出して来ないなんて!!

別に翔希は奥手などではないのだが、鈴蘭の中ではそういう認識らしい。


「くっ、でも!私が一声かければ男なんていくらでも寄って来るんだから!!」


……覆面タイツであるが。
………しかも、嫌々で脅されてであるが。


「そうですか。なら、今度の日曜日に鈴蘭の良い人を連れてきて貰おうかしら?」
「っよーし!ばっちこーい!!」


連れてくる当てなど無いのに、姉としての意地から見栄を張ってしまう鈴蘭。


「うふふ。では、期待してますよ」
「舐めんなよ!男の100人や200人、軽く連れてくるからなぁ!!」


うわーん。

捨て台詞を吐いて走り去っていく鈴蘭。
その鈴蘭を見て、すみれは楽しそうに笑っていた。























「リア充爆殺する」


そんな物騒な発言をしたのは魔殺商会社員、『哀・殺す団』のリーダーを務める男だった。
彼は魔殺商会の一室に同志たちを集め、演説していた。


「近年リア充共の勢力は拡大を続け、我ら非モテの肩身は狭くなる一方だ」


そこで一端溜めるように区切る。
同志たちは固唾を飲んで聞き入っている。


「あの、元同士・川村ヒデオですらリア充ロードを突っ走っていると聞く」


そんな団長の言葉に団員からは、「そんな!嘘だ!!」「あんな殺し屋がモテて、どうして私は独り身なの!?」「神は死んだ!!」という悲痛な叫びがあがる。


「もはや、生ぬるいのだ。リア充爆発しろ、などという消極的な姿勢では現状を打破できん!!リア充は率先して爆殺せねばならんのだ!!!」
「「「「うおおおおおお!!!そうだ!!そうだ!!」」」」


凄まじい熱気に包まれる室内。
ここにエルシア様がいらっしゃれば「これが、人の子の熱……!」と驚いた後、鬱陶しいから魔法で薙ぎ払うであろう光景である。


かつてヒデオの一言で解散したかに見えた『哀・殺す団』であるが、そうはならなかった。

『哀・殺す団』内で合コンをした結果、あぶれた者達が居た。
悲しいことではあるが、いつの世もあぶれる者達は居るのだ

ヒデオの助言で舞い上がっていた彼らは、だからこそ地獄に突き落とされた。

彼らこそ非モテのエリート中のエリート。


いわば『ネオ・哀・殺す団』である!!!









ちなみに、このあと永久名誉団長として名護屋河鈴蘭を勧誘しに行った彼らであるが、謎の銃撃音と爆発音が響き渡って行方不明となった。
……その後の彼らの消息を知る者は居ない。

『ネオ・哀・殺す団』壊滅。

無茶しやがって……




つづく

ヒデオマジでもげろ

あと私は総帥のことが大好きですよ。だからこの扱いは愛なのです。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.058840990066528