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[29087] 【習作】式神探偵 流転抄 (東方project × 式神の城)
Name: S.S◆19bce1c4 ID:bae14d73
Date: 2011/08/06 14:56
※注意事項
・この作品は東方Projectの二次創作+式神の城とのクロスです。
・作品を書くにあたって一部キャラクターの性格及び設定を改変している場合があります。故に、そういった事が受け入れられない方はブラウザバックをおすすめいたします。
・以前、習作とつけずに投稿した際に指摘して下さった方にこの場をかりて謝罪と感謝を。未熟なものでいきおい感情だけで投稿してしまいました申し訳ない。

8/6追記
 あまりにも説明不足&拙い、人物名の間違いがあった為修正しました。
 プロローグを追加。それにともない、投下してあったものを一話としました。






 幻影の城が消え去る。
 夢を見せていた根源を打ち倒した者達。少年探偵、中年探偵、魔女、暗殺術の使い手、傭兵、世界忍者、伯爵、未来から来た警察官、偽名の少女、執事見習い。
 そのなかの悪をぶっとばす少年探偵、玖珂光太郎とその式神の小夜。
 茶髪の少年は隣に添う小夜に無茶のし過ぎを怒られていた。
 光太郎には元々別の式神が憑いていたのだが、その前の事件で重傷を負った小夜を助ける為、その式神が融合し小夜は一命を取り留めた。
 しかし、代償として小夜は光太郎の式神となり光太郎と離れれば消滅していしまう身となってしまった。
「だから、私から離れないで下さい!」
「はあ、小夜タンが遅いんじゃねーか!」
 二人に意見はすれ違う。
「もう、光太郎さんなんか見たくありません!」
 思わず口に出した言葉、本当はそんな事思ってもいないのに。素直になれぬ故にでた言葉は、現実になってしまった……
「え?」
 目の前から光の粒子となって光太郎が消える。それと同時に、小夜は寒気を感じた。
(光太郎さんの記憶が!)
 自分の中から砂粒のように光太郎と一緒にいた記憶がこぼれ落ちて行くのを感じた。
 消えゆく光太郎が叫んだ、しかしその声は届かない。けれど、小夜には唇の動きで彼が何を言っているのかわかった。
『小夜!』
 涙がこぼれた。名をちゃんと呼んでくれた事、そして目の前から彼が消えようとしているのに止められない事に対して。
 涙が落ちたあと、光太郎のいた痕跡はそこには残っていなかった。
 しかし小夜は消滅せず、そこに佇んでいた。何かを失った空虚感だけが胸に残った。

 数日後、日本に帰国した中年探偵こと日向玄乃丈 は懐かしの事務所の表札に首を傾げていた。
 『H&K探偵事務所』、となっている。時差ボケのせいかな、と思いサングラスを取って、眼をこする。次に住所を間違えたかと、確認しそこが愛しの大久保にある事務所だと再認識する。
 数十秒悩んで日向は気にしない事にした。実害はない、それに気に入らなければいつでも消せばいいのだ。
 しかし、心の奥どこかでこれを消す事に強く抵抗する気持ちが生まれたのも事実だった。
 客はその数日後、やって来た。



[29087] 一話
Name: S.S◆19bce1c4 ID:bae14d73
Date: 2011/08/06 14:56
「ある方を探していただきたいのです」
 H&K探偵事務所に訪ねてきた客を日向は困惑しながらも応対していた。ソファを勧められた巫女服の少女は数瞬の間の後に本題を切り出した。
「そいつは?」
 憂いを帯びた巫女服の少女、一風変わったこの姿でも彼女には強い何かを感じさせるものがあった。この感じは男だな、と日向は思った。
「男の人、ある男性を探していただきたいのです」
 ほらな、と日向は内心呟いた、昔から勘はいいのだ。
「で、その男の名前は?」
「わかりません」
「……は?」
 間の抜けた声を上げてしまう日向。
「馬鹿馬鹿しいと思うかもしれません。けれど、私はその男性を探さなければならないのです」
 少女の顔は悲壮な色を帯びながらも必至だった。そこまで思われている男に日向は少しだけ嫉妬した。
「日向さん、お願いします。私にはあなたしか頼れないのです」
 日向玄乃丈は大きく溜息をついた。やっかいな依頼なら幾度も受けた、しかしこれ程嫌な依頼を受けたのは初めてである。しかし、
「わかった、引き受けよう」

  日向玄乃丈 は空を見上げた。空は黒雲に覆われ、月や星の輝きは無い。
不意に大声で言い争うのが聞こえたのでそちらに目を向けた。14階のビルの屋上からではあるがこの男にはその争っている現場、コンビニの前が見えた。
 屯する若者達が殴り合いの乱闘をし、その余波がコンビニにまで及び、くだけたガラス、それによる怪我、血が彼等の興奮に油を注ぐ。
 こんな事が日本全国、いや世界中がこの様なありさまだ。
 世の中が乱れ出したのはつい最近だ。切っ掛けはわからない、しかしいつの間にか起こり、容易く拡散した。誰かの蛮行に触発され、連鎖が起きる。もはや、一度起こった事を収束させる事は今や誰にも出来ていない。
 それでも、それを見てみぬふりを出来ぬ者はいて、そういった者達が事後処理をしている。つまりは、悪い奴をとっちめてムショにぶち込む事だ。日向はそれをやっていた。
「ふっ!」
 鋭い呼気とともに、日向は特注のスナイパーライフルのトリガーを引く。ほぼ無音で飛翔するゴム弾が若者達の意識を無慈悲に刈り取っていった。気絶昏倒し、ぐったりした彼等を確認して日向は携帯を取り出し警察に匿名の電話をする。後は警察が片付けてくれるだろう、警察のなかにもこの事態を憂いて必至になんとかしようとするのがいると聞いた。確か玖珂とかいう刑事だったか……
 ビルの非常階段を何も考えず降りる。コツコツという足音と階段の金属の軋む音を聞きながら、地上に降り立つ。ふと、”浮遊観”を感じた。
 日向の勘が警鐘を鳴らす、これはヤバイ、と。
 抗おうと身構えた日向の視界が、暗転した。

 目を開いた日向の視界に映ったのは、夕焼け空の赤だった。いや、それだけではない。身を起こすと周囲には彼岸花が一面に咲き乱れていた。
「こりゃいったい……それにしてもきれいな景色だ」
 彼岸花の紅と、夕日の赤が見事に調和している。まるで絵画のなかにでもいるようだ。日向はただじっとその風景を眺めていた、この光景に何か懐かしい何かを感じていた。日向は記憶を探る、その背後に迫る何かが迫っても気がつかない程に。
「いただきま〜す!」
 ガブリ、という効果音が聞こえそうな程見事に噛み付かれた日向は一瞬放心した。だが、次の瞬間には噛み付いた少女(?)を引きはがし投げ飛ばした。余談だが、首筋にはくっきりと噛み痕が残っている。悲しそうに首筋をさする33歳の探偵、一方投げ飛ばされた少女は地面に激突する事なく、ふよふよと飛びながら寄ってきた。流れる金髪に赤地に白のラインのリボン、赤い眼をした少女。
「いきなり何をするんだ!」
「え、ルーミアは食べようとしただけだよ」
 何気に恐ろしい事を言う少女、ルーミア。
「……お前、もしかして妖怪か?」
「そうだよ」
 躊躇いの無い返答。日向はサングラスの下で眼を細めた。
(ここは、どこだ?)
 しかし、考えに沈む間は与えられなかった。ルーミアが再び飛びかかってきた。
「うわっ、やめろ!」
 慌てて身を躱し、距離をとる。
「俺はうまくないぞ!!」
「そーなのかー。でもお腹が空いてるから関係ないね」
「人の話を聞け!」
 突如、視界が暗闇に包まれ、少女の姿が掻き消える。日向は彼女が通常の人間ではないと確信した。
「なら……手加減する必要はないな」
 日向の手が閃く、背後から迫る気配の前に無数の雷球が出現した。
 ただの人間だと思っていたので、思わぬ反撃にルーミアは雷球の直撃を受けてしまう。
「!?」
「暗い所で便利だろ、俺の式神は」
 暗闇の結界のなかで、日向は雷球を操りルーミアを寄せ付けない。
「うう、イジワル」
「馬鹿言え、食べられる身にもなってみろ」
 日向はルーミアの気配を読み、正確に雷球で迎撃する。
「埒があかないな、そろそろ休戦しないかお嬢さん」
 日向の問いかけに闇に隠れた気配が動きを止める。
「俺はおいしくないし、こうやってどうどう巡りを続けるぐらいなら他の奴の所に行く方がいいと思うぞ」
 その言葉にルーミアは闇の結界を解いた。
「いいのか?」
「うん。なんだかどうでもよくなっちゃったから、それじゃあね」
 ルーミアはそう言ってふよふよとどこかへ飛んで行った。
「……ふうううううう」
 ルーミアが去った事を確認すると日向は大きな溜息をつき、倒れ込んだ。
(疲れた〜)
 式神の力を使った事と闇の中で感覚を研ぎすまし続けていた事で日向は疲れきっていた。まぶたが重くなり、日向は彼岸花の花畑で眠りについた。



[29087] 二話
Name: S.S◆19bce1c4 ID:bae14d73
Date: 2011/08/06 14:57

 かつて日向玄乃丈には婚約した恋人がいた。名は日和子、数も少なくなった古い蜘蛛神族の末裔であり、月の属性を持つ狼の神族である日向とは老人達の取り決めにより定められた婚姻だった。しかし、二人は太陽と月のように引かれ合った。つまり、若い二人にはそんなのは関係なかったのである。

 しかし、幸せな時は長くは続かなかった。彼女の待つ家に帰った日向の目の前には惨殺された日和子の姿。警察に届けたものの、犯人は見つからず、逆に日向自身が疑われる始末であった。なんとか容疑は晴れたものの、警察に絶望した日向は独自に犯人を探す為に表の世界から姿を消した。裏社会で殺しを請け負い、犯人の手がかりと見つけた時に殺す為の牙を手に入れる事を目的として。

 そんな彼に転機が訪れたのは2005年の俗称”式神の城事件”、正式名称である特定犯罪第568号のでの事だ。
 東京各地で連続猟奇殺人事件が発生、共通しているのはどれも女性の体の一部を刃物で抉り、殺害するという事。更に検死により、20時間前後をかけて生きながら殺された事。
 日向は依頼を受け、人外の亡霊達と対峙する。そしてその背後で糸を引く存在が日和子の残留思念と相対しそれを討ち果たした。東京を押しつぶさんとしていた幻想の城は儚く霧散した。

 次に起こった”ねじれた城事件”でも日向は空に浮かぶ城に向かって行く。
 真犯人は”世界”を騙る存在、幾重にも配置されたガーディアン達を排除しまたも城を消し去った。

 三つ目の事件では、アルカランド王国に出現する城に、眠ったまま起きてこない住民の謎があると踏み、見事その事件を解決した。

 しかし、日向は思うのである。何かを忘れてはいまいかと。
 壬生谷の巫女、結城小夜が悲しむ顔を見る度に何故だかいもしない人間に怒りと、どこで油を売っているという苛立つ。誰に、そもそも何故しがない(過去違法行為をした)私立探偵の日向と裏の世界で有名で、表の世界に忘れ去られた神霊庁の秘蔵の巫女が知り合うのか。
 答えは簡単、例の城事件で出会ったからである。しかし、何かひとつピースがかけているような、大事な部分が欠落しているような感覚に襲われるのは何故なのだろう。
 
 日向は眩しい朝の日差しに眼を覚ます。結局、心身の疲労によりその場で一夜を明かしたのだった。幸い疲れはとれ、心無しか目覚めもすっきりとしている。
「ああ、いい朝だ……それにしてもここはどこだ?」
 日向の記憶には無い場所だ、かといってあの世という訳でもないよな、と日向は思う。昨日襲われた時感じた痛みは本物だった。無意識のうちに首筋に手を伸ばし傷痕に触れる。それにしてもあの妖怪はいったいなんだったのか。
「ま、いいさ」
 とりあえず日向は歩き出した、わからない事は考えても仕方ないと。

 日向は丘の上に到着し、嘆息した。
「まいったな、ここは本当に天国かもしれん」
 目の前には彼岸花にかわり、鈴蘭が群生していた。しかし花が丘一面を覆い尽くす光景は美しく、そして幻想的だった。鈴蘭を一輪、摘もうと屈んだ。
「!?」
 頭上を魔力の塊が通過していった。直撃していたら重傷間違い無しの密度。その発生源を探す。そして本日二度目の驚愕を味わう事になる。
 見間違いでなければ、赤系統の色で固められたフリルドレスの少女が色とりどりの魔力の弾丸が放とうとしている様に見えた。こちらに向かって。金髪の下からのぞく水色の瞳は怒りに燃えている。
「またかっ!?」
 知らず、恨みをかって襲われる事はある。しかしそれが女性ばかり、というのはいただけないと日向は内心で悪態を吐いていた。目の前に迫る避けようの無い広範囲の弾幕。日向は雷球を呼び出し自身の周囲に展開させる。大昔に一族と為した契約により雷球は主に触れようとする魔力弾をかき消した。
「人間じゃない!?」
 メディスン・メランコリーは驚いた。が、瞬時に相手がただの人間ではないと判断し、作戦を変える。
「コンパロ、コンパロ、毒よ集まれー!」
 周囲の鈴蘭の力、毒の力を借りる。メディスンの側に人形サイズのメディスンが実体化する。
「スーさん、力を貸して」
 人形がこくりと頷く。
「いくわよ!」

「おーおー、何だか俺が悪者みたいになっちまったぞ」
 黒いスーツ、サングラス、黒い帽子を被った時点でもう堅気の人には見えないという声は全く聞こえないらしい。少女は距離をとり、宣誓する。日向は嫌なものを感じた。
「霧符《ガジングガーデン》!!」
 宣誓をした次の瞬間、彼女からの魔力弾の弾幕が一層厚さを増した。それは壁だ、膨大な魔力の層が形成される様を見るに彼女が並の術者ではない事がわかる。
「ぐおっ!」
 避けきれず、かすっただけでスーツの一部が大きく引き裂かれ、流血する。
「やるじゃないか。だが、これならどうだ!!」
 日向は雷球を呼び出しメディスンに向かって放つ。
「無駄よ!」
 彼女は魔力弾を放ちながら避ける。彼女の誤解は二つ、まずは日向を幻想郷の住人だと思っている事。故に、彼女達の知る決闘の方法である"スペルカード・ルール"で闘うと思っている。
 二つ目、雷球を只の一過性の弾だと勘違いした事。
「きゃあ!!」
 雷球は主の狙う獲物を忠実に追い、捉えた。雷の生む磁場が彼女の肌を焼き、逃れようとした彼女をしつこく追尾する。
「なによこれ、痛いじゃない。しかもしつこい!!」
 今までにない攻撃に軽くパニックになっているところに声がかかった。
「俺には今の状況がさっぱりわからん、悪いがどういう状況か説明してくれるか?」
「説明ですって、あなた何者よ!!」
「日向玄乃丈 。探偵だ」

 いよいよ探偵には理解し難い世界になってきたな、と日向は呟いた。
「どうしたの?」
「なんでもない」
 ここは外の世界から隔絶された幻想郷という地、ここには外の世界から避難してきた妖怪が暮らす世界、というのがこれまでこのメディスンという少女が語った内容だった。
「つまり、ここには人を襲うようなのがうようよしていると」
「ん〜……それなんだけどあなたの想像するような事はないと思うわ」
 肯定されると思った問いがあっさりと否定されポカンとする日向。
「そもそもここにはそんなに人がいないの、それなのにどんどん人を襲ったらあっという間に全滅してしまうでしょ」
 狩られる側に絶滅を心配される人間側に、なんとなく悲哀を感じた日向だった。そんな日向には構わずメディスンは説明を続ける。それは外の世界を知る日向には奇妙に思えた。
「で、ここからが肝心なんだけど……私達妖怪の間にはあるルールがあるの」
「ルール?」
「スペルカード、というものがあるの。さっき私が宣誓したのがそう」
 日向は先程の弾幕の嵐を思い出した。そう言えばあの強烈な攻撃が来る前に何か言っていたな、と。
「私達が決闘する時には宣誓してさっきみたいな事で勝ち負けを決めるわ」
「はあ、なるほど」
「本当に大丈夫?」
 なにやら考え込んでいる日向。先程の説明からどうもぼーっとしている感じがするのだった。
「人里に行くなら、あっち。あなたが来た再思の道に戻って魔法の森を抜けていけば人里に出るわ」
 南に広がる竹林から行ってもいいのだが、少し厄介な事があるのと、森の方には彼女の友人がいて、いざという時は助けてくれるだろうという考えがあって言ったのだが。
「……ってちょっと」
 日向はふらふらと歩いて行く。しかも説明した道とは反対に。
「もう、せっかく私が親切に教えたのに。もう知らないんだから!!」
 そう言うとメディスンはその憤懣をぶつけようと鈴蘭の群生地から飛び立った。
 日向を止める者は誰もいなかった。


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