<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[28506] 【ネタ短編投下】霊夢さんがデレないかもしれなくもないような気がしなくもないかもしれない【東方オリ主モノ】
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/08/19 14:23
だれにでも無関心らしい霊夢さんをどうやったら自然にデレさせることができるのかが主目的のssです。

言葉の使い方違うお\(・ω・`)

とか

展開無理ないか?(;一_一)

といった内容は悩んだ末まぁいっかで済ませる作者デスがなるべく修正・加筆・勉強を怠りませんのでよろしくお願いします。

一番下に置いてある書きなぐりはちょこちょこ変わります。
会話や描写の練習用に書いた適当なものを変えてます。
なんかこれ面白いなと思ったら感想に書いていただければ嬉しさと共に残します。

あっ、二次設定とか独自解釈、妄想設定を含みます。
完璧に矛盾してるようなところがあったら指摘願います。



[28506] 綺想恋慕曲-1
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/08/11 06:16


さて、神隠しと言う言葉を知っているだろうか。

俺はよく知らない。ジブリ系の映画を見てるときに隣で見てた知り合いに教えてもらった位でこんなもんか程度の知識だ。わからなければグーグルさんに聞いて欲しい。

まぁ言葉からある程度どのような現象かは推測出来るだろうと思っている。出来なかったらやっぱりグーグルさんに頼ってほしい。

あなたが思い浮かべた神隠しが正解だ。でもやっぱり分からないときはグーグ(ry以下略。

さて、神隠しだ。この現代社会にはとても馴染めない上、すでに紙の上の幻想に近い神隠しに、驚くことに遭遇してしまった。

3年程働いた某運搬業者を辞めた折りに出掛けた東北バイク旅【温泉もあるよ】の途中に寄った、古びた鳥居付近で俺は遭遇してしまったのだ。

なぜ立ち寄ったかというと山の中を走っているとき偶然にも鳥居を見つけ、珍しいな。写メでも撮っていくかと思ったのだが、近くに寄ったのがいけなかったのか、木の枝に引っ掛かりながら、湿気った腐葉土を踏み締めながら、近付いている途中でやっぱりメンドイ帰ろうと後ろを向いた瞬間。恐らくその時だと思うのだが、藪の奥に見えたはずの整備された山道も自分が乗ってきたはずの二輪車も影も形も無く、代わりに石畳の道が出来ていた。

はっ?と目の前の光景が信じられず、目を擦る。

しかし掠れも歪みも消えもせず石畳の道はそこに存在していた。

おかしいだろ。幻が見える病に掛かっているわけではない。三半規管も正常で真っ直ぐ藪を抜けたことも証明出来る。ならばこれはあれなのだろうか?千尋さんが両親の食い扶持返す話や猫の国に行ってしまう話のような、所謂神隠し。

・・・・困ったかもしれない(実感はない)。

確証は無いが、これが神隠しならば何もせず帰るというのは無いと思う。

いや、そもそも信じてすらいないからまずは確証が必要である。

しからば探索だという考えに至るのは直ぐだった。



―――――



幸いにもと言って良いのかどうかわからないというか絶対に自分の頭を疑ってしまいそうだが、明らかに先程居た山道とは違うということだけは分かった。

何故ならば山が消えたのである。

これはもう後戻り出来ない予感がひしひしとしてきた。

いうなれば遭難である。

だが遭難ならばまともな遭難が良かった。

こんなジブリみたいな展開はおおいに御免被る。

もし仮にここが先程居た場所と同じ場所だったとしよう。

ならばなぜ、なぜここに神社があるのだろうか?

石畳の道を抜け、現れた石段の上に立つ鳥居。

朱色に塗られた鳥居の上部真ん中に見える神社の文字は間違いなくここを神社だと証明している。

先程居た場所は山も山。人気の無い山あいに伸びた道路だった。

そんなところに神社があるだろうか?

それもこんな荒れていない参道が残っているだろうか?

もしそうなら密かに人気なご利益ある神社なのだろう。

だが神隠しあったんじゃね?という寂しさから来るのか恐さから来るのか純粋な嬉しさから来るのか全く分からない興奮をしていた事で少し思考能力にかけていた俺は他の可能性を見いだして安心するということが出来ず、加速する恐怖に足元が浮きながらも石段を登り神社に近付いていく。

神社に足しげく通うというわけでは無いので本当にそうなのかは良く分からないが、至って普通だと思える神社だ。

正面賽銭箱と大きな鈴からぶら下がる太い紐。そこに行くまでの等間隔に並べられた石畳。

あえてこれが無いと思うならば、手を洗うだか口をゆすぐだかわからない水場が無いことだろうか。

その様子に少し安心と変な事に期待していた自分への呆れを込めて知らず詰まっていた息を吐き出す。

落ち着いて改めて神社の境内に向かい歩く。

吹いた少し寒い風をライダージャケットに受けながらなんかいい場所だなと感じるのは詫び錆びを感じる日本人だからなのかはさておきすっかり気の抜けた俺はどうせ神社に来たのだし賽銭でも放り込んで就職祈願でもして行こうかと思い至る。

あっ、そういえばメインの財布がバイクのバックパックの中だった。だが丁度旅の目的地を回った後で財布にある金は3000も無かったなと思いだし、神隠しなんだしそう簡単に帰れないしなと諦めた。高校時代よりの相棒TW250ともお別れかもしれない。

話が逸れた。

バイクに乗っていれば分かるが、大体財布はいつも二つ以上持つ。

理由としては大金を入れる財布は絶対に落としたく無いのでバックパック内だしそれとなく飲み物が欲しくなった時自販機等でジュースを買うためや駐車場での料金支払い等で小銭が欲しいから1000円程度を入れた小銭入れを常にジャケットのポケットに入れているのだ。

俺も例に漏れず小銭入れを携行する人間なので小銭入れを取りだし適当に100円を取りだし境内に設置されていた賽銭箱にほおり投げた。

カランという木に金属が当たる良い音を聞き、ジャラジャラと鈴を鳴らす。

柏手を打った時、いきなり賽銭箱の奥にある戸が開かれた。それはもう勢い良くバコンと開いたからビクリと反応してしまい、後ずさってから戸を見ると、コスプレとしか思えない高校生くらいだと思える少女。

格好だけみると巫女さんかなーと思うが、巫女服とセーラー服を適当に混ぜたような服の上さらに腋丸出しである。

それがかなり様になってるし似合っている事と少女自体の可愛さ?美しさ?も相まって言葉を忘れた。

9割9分は驚きだったが。

「あなた今お賽銭入れた?」

「はっ?」

彼女が何を言っているのかは直ぐに理解したが何故そんな事を言い出したのか理解できずアホな声を上げてしまう。

「入れたの?入れてないの?」

高圧的。というよりも必死な様子ととてつもない眼力にさらに一歩後ずさる。

「い、入れました」

その答えに何を嬉しいのか急に少女が笑顔になる。

「お茶でも如何ですか?お客様」

「はっ?」

いきなり上客をもてなすかのように柔らかい笑みを放つ(ようは営業スマイル)少女にまたしてもアホな声を出してしまう。

片方は困惑し片方は柔らかいが一発で作ってるなとわかる笑みを作るという、まるで住宅地の往来でいきなりセールスマンに商品を勧められたかのような、不気味な空気が漂い、しばし沈黙が流れる中、これいろいろ聞く所かな?と思い立ち目の前の少女に話掛ける事にした。

「えーと、じゃあ頂きます」

いや、話を聞けよ。と思ったかもしれないが、話を聞くからにはゆっくりしたいからであり。決して生まれてこのかた彼女が居たのは高校時代で高三夏から現在までの4年と少しの間女性との接点が無く、美少女にお茶しましょ?と例え営業スマイルで言われたとしても断れる気が起きる訳がないわけでは無く、そう。決して他意があるわけではないのだ。そうだ。



―――――



通された。というよりは御神体?というのだろうか?鏡が正面に据えられている先程コスプレ巫女さん(仮)が開けた扉の向こう側。

いや、ここに参拝客を入れてお茶をしてもいいのだろうか?と素人にもこれ違ってないかと心配になる場所に通された。

「・・・・」

コスプレ巫女さん(仮)はお茶を淹れてきますということで、置かれた座布団の上に腰掛ける。

あっそうそう聞く内容を吟味しておかねばなるまい。

というか如何に美人さんにお茶を入れてもらえるとはいえ信用しすぎじゃなかろうか?昔の童話でもいきなり現れた親切な人は人を食べる奴だと相場が決まっている。

もしかしたら彼女もその類い・・っていかんいかん。発想が現実離れしてきた。そう、例えばアンビリバボーで取り上げられたようにテレポートとしか考えられない現象にあってしまい、彼女は田舎の過疎化で人気の無い神社が苦肉の策で二次元にありげなコスプレ巫女服を名物とした神社の娘さん。そう。そしてこれから始まるのは一方的な搾取。酒を飲まされ酔い潰れた所に持ってこられる借用書類。そして気づけば億単位の借金がつもり、一つまた一つと腹の中から臓器が消えるという・・・・。

こえー。想像力こえー。

なんだその一番可哀想な人を想像しようぜ!というスレタイが出来そうな話は!いや、多分そのスレでは友達居ない奴が一番可哀想って俺らじゃんで芝を生やした奴が優勝することだろう。

いや待て。緊張と興奮で思考がぶっ飛んでる。

「お待たせしました」

ぶっ飛んだどうでもいい思考をする中巫女さんが戻ってきてお茶と相成る。



―――――



「幻想郷・・ですか」

座布団に正座しお茶を飲みながら語られたこの場所の説明はまさしくジブリ式神隠しの証明とも言えるものだった。信じられないし子供らしく信じたい気持ちもあるが実際目の前で浮かばれたり、掌にエネルギー弾なんか作られてみるとあっさり信じてしまう。そんな自分を少し奇妙に思ったりもするが、見せられたものの説得力は確かにあったので特に不思議には思わない。

ただ、今まで感じてきた常識。例えば人は科学に頼らねば空は飛べないといったものが根底から崩される。そう、一種の賢者モードに入っている。

今までにない世界を見てしまい呆然としているのだ。

「ええ、外の世界から幻想になった者達が集う場所。・・らしいわ。あなたは結界の揺らぎに取り込まれた外来人ってわけ。帰りたければ直ぐに帰れるわ」

そんなに直ぐに帰れるとは更にも拍子抜け。もっとこう壮大なストーリーを期待していただけあって逆に期待外れというか・・英雄願望でもあるのか俺?

「帰りたいですけど、ちょっと色々見て回りたいですね」

妖怪、神様、幽霊。まず間違いなく外じゃ拝めないだろう。すぐに帰れるならば少し見て回りたい。

「あなた、闘えるの?」

「えっ?」

闘うの?

「闘えない人間が行けるのなんか人里くらいよ?」

抜かった。

それはもう学校のテストでよく確認せず丸一日掛けて暗記した内容が実は範囲が全く違うくらいに抜かった。戦闘能力必要なのか・・。あっ、幻想郷なら陰陽師いそう・・。

「闘えないなら里にいる退治屋を雇う事も出来るわよ?」

顔色を見て察してくれたのか救済案を出してくれる。めっちゃいい子だな。

「金あんまりないんです・・」

「それなら、しょうがないわね」

金持良くなきゃ世界は見て回れんとは世知辛い。

でもそれが世間。

巫女さんに護衛してもらうというのはアリなんだろうか?

「巫女さん」

「なに?護衛はやらないわ」

ですよねー。とその言葉に項垂れる俺だが、巫女さんはお茶を一口呑んで一呼吸置くとまたしても営業スマイルをこちらに向ける。その笑顔に嫌な予感がひしひしと背中を打った。

「あなた、知っているかしら?神さえ動く、どんなエネルギーより人を動かす原動力を」

賽銭と営業スマイル。唐突にその単語が+され勝手に=記号が付き解が導き出される。先ほどのことを思い出せばすぐに察しがついた。

ようは・・。

遠回しに金要求されたー!!

えっ、なにこれ?巫女さんが守ってやるから金寄越せってかなり酷い。

最初の行き過ぎた予想が当たるかも知れない。

身ぐるみはがされて外の世界に出されて、裸で歩いて逮捕の連鎖が来るの?

あっ、ここは断っとく?

「そして、ここは神の居る幻想郷で更に今居るここは神社。後は、わかるでしょ?」

その言葉に俺は途端に恥ずかしくなる。

そっか。神頼みがある場所なんだもんな。

勘繰ったりなんかして恥ずかしい。

やっぱり少し興奮しているらしい。もしくは恐怖を無理矢理奮い立たせているか。

「そうですね、神様居ることですし」

疑って悪いことをしたという罪悪感も込め、小銭入れを取り出しつつ、立ち上がって出入口の賽銭箱に向かう。

そしてまた抜かった。

正座なんか久しぶりで足がもつれたのだ。

「うわっ」

おっとっと、とたたらを踏みながらも大股で進んで行く体。

崖は直ぐに見えた。

この場所に上がるまでの賽銭箱の後ろの数段の階段である。

あっ、これは当たる。

一回車で事故った事があるが、当たる前にこれは当たるなと思うのだが、それと似ていた。

バランスを崩す体。

受け身を取ろうとつき出す腕。

落ちる体。

一直線に向かう体の行き先は賽銭箱。

結果導き出される答えは。



バキッ



成人男性一人分の体重と重力を賽銭箱のほそーい木の棒が支えられる訳もなく、約10本。そんな音を立てて俺の体と一緒に賽銭箱の中に吸い込まれて行った。

一方俺の体は賽銭箱の縁に肋骨と頭部を強く打ち、今日あった事が全部夢であればいいなと目が覚めたら白昼夢で済んでればいいなと走馬灯が走るかの如く考えながら意識を闇に落としていった。

ただひとつ気になるとすれば巫女さんがどんな表情で俺が賽銭箱の中に突っ込む所を見ていたのか気になった。

ごめんなさい!



―――――

俺1「どうよ」
俺2「いや、賽銭箱壊すのは可哀想だって」
俺3「むしろセクハラしろよ」
俺4「むしろ腋触れよ」
俺5ガタっ「ねぇよ!!」
俺6「なぁ・・人を縛り付けるものって何だとおもう?」
俺1~5「金」



[28506] 綺想恋慕曲-2
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/07/09 08:48
普通の魔法使い霧雨魔理沙はいつものように親友ともライバルとも言える博麗霊夢の下にお茶をしにきた。

いつものようにお茶を飲みながら他愛の無い会話をして軽く弾幕ごっこをしと、代わり映えのしない行動を取るつもりだった。

だがその日、博麗神社には先客がおり、すでに中で博麗神社の主(詳しくは違う)と茶を飲んで居たのだ。

格好からして外来人。前に外来人が博麗神社に到着出来たのはいつの事だったろうかと思い出そうとするが、いつの間にか五体満足で来た奴は何時だったろうかという内容に思い出す事が変わっていた。少なくとも相当前だという事はよく思い出せる。

魔理沙はその珍しい『無事』な外来人はどうせ直ぐにでも帰るのだろうなと箒の上から俯瞰する事にした。



魔理沙にとっての外来人は苦手では無いが正直、いい思い出のある存在では無かった。

人里で保護されそのまま幻想の住人になった者は除いてであるのは勿論だが、それ以外の幻想郷の常識に適応出来なかった外来人が少し苦手である。

幼い頃は人里に居た魔理沙は人を食べる妖怪は退治して良しという教育の下育つ。
なので、森の付近で人が襲われていたから、軽く追い払うつもりで弾幕を放った。勿論妖怪は追い払えた。後は外来人を人里に案内すればいいかと、汚れ、所々噛まれたような傷が残る外来人の男の方に向かうと近寄るな化物と言われそのまま魔法の森内部に転びながら走り去られた。

しばらく呆然とし、言われた内容を反芻し意味を噛み砕いて理解しようとしたが、自分が化物と言われた意味がわからなかった事をよく覚えている。

あの外来人はどうなったか知らないが、恐らくお化け茸にでも食べられたのだろう。

そんな事もあり、外来人は少し苦手である。

だから、最近は襲われている外来人を見つけたら影から助ける。



一通り回想を巡らせ、まぁあんまり関係無いかで済ませた。

少なくとも今魔理沙が視界に収める外来人は幻想郷の常識に適応出来る外来人だからだ。

それは博麗霊夢が外来人の前で宙に浮いてみたり、弾幕を手の上で弄んでいるのが理由だ。

それを見た外来人も畏怖するわけでも珍しげに見る訳でもなくへーといった感じだ。

しばらくすると外来人が立ち上がる。

あっよろめいた。と思った数秒後。

事は起こった。

前代未聞。

かつて極地地震を起こした比那名居天子が似たような事例を起こしているが、恐らくソレを超える怒髪点を叩き出すだろう博麗霊夢の恐らく宝物であり引いては博麗神社の象徴にも似た賽銭箱に、外来人がバキリという此方にも聞こえそうな破壊音と共に突っ込んだ。

「うわ~」

俯瞰する魔理沙にも分かる。あれはぶっ壊れた。

そして友人のかつての怒りようを思い出し、視線の先で恐らく気絶している外来人の末路を思い浮かべる。きっとあの天人よりも酷いことになる。

案の定、しばらく呆然としていた博麗霊夢がワナワナと震えたかと思ったら叫んだ。

「ああぁぁーーーっ!!!」

かつてない大絶叫が響いた時、魔理沙は放っとくか博麗霊夢を宥めるかの選択をしていた。

(宥めたら色々な捌け口にされそうだぜ・・)

長年連れ添った友人だからわかる。博麗霊夢は恐いのだ。金が関係しなければ関心を示さないし、金が関係しても何が気に入らないのか断るし、かといって金が関係しないのに動く。そんな浮世離れ処かわけわからん彼女が嫌々ながらに解決に加わる異変の際、地獄を見たものは紅魔館のロリミア・スカーレットを始めとし地獄鴉の霊烏路空、前述の比那名居天子等々、数多い。いざ彼女が攻撃を始めたら最後。人間相手ならば、いかに非殺傷のスペルカードとはいえ瀕死の重体が免れない事は容易に想像がつく。

問題はその怒りが自分に向いた時の事だ。

何度も言うが博麗霊夢は恐い。

庇いに入った奴処か近くに居る奴も問答無用。

戦闘モードに移行した博麗霊夢は視界に映る全てに今現在彼女が高らかに振り上げた御札を当てに行く。

「あー、あー、さすがに友達を殺人犯にするのは忍びないぜ!」

少しばかり逡巡した思考だったがすぐに切り替え、今にも攻撃しそうな友人を宥めに霧雨魔理沙は箒を蹴飛ばし、一気に加速した。

―――――

起きたのは額と脇腹の鈍痛が原因であった。

まるで鉄パイプで殴られたかのような・・というより忘れもしないDQN時代に調子に乗った際、経験済みなあの痛みと同等の痛みに、起きてまず取ったのは顔をしかめ呻き声を上げる事だった。

なぜこんな痛みを負っているんだっけ?と不思議に思うも次の瞬間にフラッシュバックした記憶のせいで、ここがどこだか、自分が何をしたかといった記憶が戻り、賽銭箱の中に突っ込む前の光景がありありと脳裏に投影された所で今自分がいるのは賽銭箱の中かと思い出した。

賽銭箱――。

神社にとってはなくてはならないもののはずである。それを不注意で破壊した。しかも巫女さんの眼前で。

弁償の上謝罪しよう。

そうだ。

如何に営業スマイルが似合う巫女さんとて誠意を持って謝罪。弁償の旨を伝えれば許してくれるだろう。

その前にまずは抜け出そうと賽銭箱から出ている下半身に力を入れ、体を抜く。
途中折れた木が刺さりそうになり強烈な痛みに挫けそうになるが、体をずらしたりして一気に体を引き抜いた。

映る青空。秋色に染まる木々の上で赤黄緑の弾丸が舞っていた。

巫女さんが説明の時さりげなく言っていた弾幕決闘の言葉を思い出す。
これか。

説明なんか聞いてないが、覚えていた単語が明確に示す、まさに弾幕決闘と言える光景。

規則性を持った全方向に広がる色とりどりの弾丸。その光景は美しく、見ていて飽きない物だ。その中を、弾丸の隙間を高速で飛び交いながら、更に弾丸を放つ。
決闘。と言うからには二人で対決している訳で、先程の巫女さんと宅配を生業とし、ラジオを持って黒猫でも飼ってそうな箒に乗っている(ただし髪は金色癖っ毛)魔女の姿がある。

どちらも闘っているがどこか楽しそうだ。

全方向にばらまくあたりもあり、本気では無く遊びなのだろうと予測するが、人が気絶してるのに、そんな事をしていていいのか?巫女さん。あんたの賽銭箱壊したんだが気にして無かったりする?

まぁ気にして無い事はないだろうから、謝罪の機会が来るまでここで観戦させて頂くとしよう。

そう思い立ち、社内へ通じる石段に腰かけた辺りで、魔法使い(魔法少女と言うべきか?)の癖っ毛パツキン少女にお札?だと思われる物が当たり小さく爆発した。

「きゃっ!」

それを期に更に追い打ちを掛けるお札の嵐。集中砲火でパツキン魔女っ子が何度も小爆発にさらされる。

おい、あれ死んでんじゃねぇの?

30回程の小爆発で空間の一部がモクモクと煙を立てているが、おそらくその中でケホケホと可愛らしく咳をしているのはパツキン魔女っ子なのだろう。生きていて安心した。

「全く。何でいきなり攻撃してくるのよ。少し見ないうちに随分攻撃的になったわね」

「ケホッ。・・霊夢が外来人を殺しそうだったからだぜ・・親友を人殺しにしないためにやったなら美談だと思わないか?」

俺、殺されそうになっていたのかよ!今からでも逃げるべきか!?

「奇談にしかならないわよ。ちょっと痛めつける位だったに決まってるじゃない。でも、魔理沙が来たおかげでストレス解消にはなったわ」

「思い切り心配損だったぜぇ・・」

「まぁお茶出すから飲んできなさい。そこの貴方も、ちょっと話があるわ」

空から言葉を掛けられビクリと体を震わす。

気付かれていたのか半眼になった所謂ジト目がビクリと体を震わした俺の姿を射抜く。

不覚にもドキドキした。

―――――

日本には便利な謝罪作法がある。

土下座と呼ばれているものだが、謝罪というより目上の人に自分の顔を見せないための作法で、【顔向け】できないなどの言葉もここから来てるとか。

まぁ嘘であるが。

「すみませんでした!」

現代日本人としては土下座に良いイメージはあまりない。

だがやる時はやらねばならないと言うのが男としては当たり前。誠意とは形振りから来るものであるとは誰の言葉であったろうか?と考えて無駄なので止めた。

そんな俺が土下座をしたのは先程まで巫女さんとお茶を飲んでいた場所である。対面に腕組をした巫女さん。横には少し煤を被った魔女っ子が居る。

「謝罪はいいわ。さっさと直しなさい」

巫女さんが細い指を向ける先には、入口を破壊された無残な賽銭箱。

先程我が上半身が内部に失礼していたモノである。

「わかりました」

「修理できるのか?」

間髪いれずに魔女っ子に突っ込まれるが確信を突かれビクリと肩を震わせてしまう。その挙動に察してくれたらしいくうわーという効果音が付きそうなあきれた表情で俺を見始めた。巫女さんはジト目である。こう言っておけば会社ではいけたんだけど通じないか。

「霖之助さんの所に持って行くわ。持ちなさい」

「・・・・はい」

「あっ、香霖の所に行くなら私もお伴するぜ」

霖之助って誰ですか?と聞こうと思ったが察するに恐らく香霖 霖之助(こうりん りんのすけ)さん。高速で呼ぶと偉く舌を噛みそうな名前で、修理屋みたいなものを営んでいるのだろう。でも間違っていたら恥ずかしいので声には出さなかった。



(重い・・)

運搬業だったので上半身の筋肉には自身があった俺ではあるが、背中に括った賽銭箱は異常な負荷を背中及び肩にかけていた。

「ほら、早く行くわよ」

神社入り口の鳥居の下でこちらを急かす巫女さん。その隣では箒に横乗りで胡坐をかくという器用な真似をする魔女っ子がいる。

背中に背負った物理的な重さを奥歯を噛みしめ我慢しながらそちらに歩く。

こういう時、男が我慢の限界でも頑張る所を見ると女子はキュンとなるらしいがそれを見て惚れるならばその女子はきっとSに違いないと思う。残念ながらそれは俺の守備範囲外なのでごめんなさいである。

いや、何考えているんだ。そも修理の金はどうするんだ俺。

体売るしかないかとは思っているものの仕事があるのか全く分からないしなんの仕事があるのかもわからない。

賽銭箱を中破させてしまったのだ。きっとかなりのお金が必要に違いない。

安心する事があるならば、巫女さんがあんまり怒ってないように見えることだ。ジト目で眉間に皺を寄せているので怒っているように見えなくもないが声色は落ちついているし、もし怒っているならば先程二度目のお茶を頂く事は出来なかっただろう。

魔女っ子はどうだか知らないがちょっと痛めつけられそうになっていたらしい俺を助けてくれたらしく先程お礼を言ったら照れたように後頭部を掻きながら笑っていたのでそうそう怒ってはいないのだろう。

有難い限りだ。

とかく金である。金の工面が一番大事だ。

怒ってないとはいえ巫女さんが金を返さないまま帰るのは許さないだろう。俺だったら許さない。

「そう言えば、あんた、名前はなんて言うんだ?」

丁度階段をおり始めた辺りで魔女っ子が問い掛けてくる。そう言えばお互い名前を知らない事を思い出した。

「朝道。八事朝道(やごと あさみち)」

「スキマ妖怪見たいな名字だな」

「ほんとね。聞き間違えそうだわ」

首を傾げると、そのうちわかるわよと言われた。良くわからない。

「霧雨魔理沙だぜ。よろしく」

だぜだぜ口調の魔女っ子は土管工みたいな名前だった。そこはかとなく癖っ毛な金髪がお姫様見たいに見えなくもない。

「博麗霊夢よ」

腋出し巫女さんは腋の下の隙間(サラシの下の脇腹がちらちら見えてドキドキする)に手を突っ込み、ジト目もあってか不良に見えなくもない。

自己紹介をし終わった辺りで石段を登り終わる。もう少しすれば、丁度俺が入ってきた辺りだろう。

「朝道さんを帰すのは先になるわね」

「あはは・・なるべく早く返させて貰います」

幸いにも。幸いにも俺には仕事という名の責務が無い。恋人も子供もいない。両親はすでに3年はあっていない。マンションにもあまり荷物が無い。財産といえば、銀行の残高と今は外にあるバイクだけといっても大丈夫だ。時間が切れると言う事は無い。ゆっくりと自然あふれるこの幻想郷で返していこうと思うが、妖怪とかが怖い。まずは安全な仕事探しというところだろう。

「派手に突っ込んだよなー」

「はぁ?魔理沙あんた見てたわけ?なんで止めないのよ」

「まさか、そのまま飛び込むとは思わなかったんだぜ」

いつ帰れるのか・・いや、案外帰らなくても大丈夫なのかもしれない。

―――――

今回書きたかった事

きゃっっていう魔理沙
サラシの下のチラ脇腹
あっ、ロリミアはわざとです。我慢できなかった。




[28506] 綺想恋慕曲-3
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/07/09 08:45
こんにちは、3話です。

-----

幻想郷は広くない。道中聞いた範囲では街2、3個位の範囲だと言うことが認識出来た。

氷の湖を中心に妖怪の山と呼称される大多数の妖怪の住み処が西の大部分に広がり、北に魔法の森や白玉楼。南に迷いの竹林や人里、田畑を抱え、それだけですでに一杯になる。唯一残る東に在る博霊神社が幻想郷全体を護っている。

博霊神社から目的地である魔法の森入り口には一本道が出来ており、人の交通が想像できた。

日暮れが早い秋なので昼を過ぎれば太陽はすでに傾いており、あと3、4時間で夕暮れになりそうだった。

「18で妖怪退治ですか・・若いのに大変な」

「一年で364日ヤル気が無い事を大変とは言わないぜ」

先頭を一人で突き進む霊夢さんの後方で魔理沙さんと会話をしていた。内容は主に霊夢さんの事を話していた。

「閏年は毎日ヤル気ゼロですか」

「1日減らしたのは親友なりの優しさだ」

「本人の目の前で貶すとはいい度胸じゃない?」

「アハハハ、本当の事だぜ!」

悪気も無く快活に笑う姿は魔理沙さんの裏表の無い人柄を感じさせる。

「ヤル気がないんじゃないわ。やらないだけよ」

はっきり言う当たり霊夢さんも裏表無さそうだ。個人的な事だがそういう裏表の無いはっきりした性格は好意を持って受け止められる。

「結局やらないんですね」

好意を持って受け止められるがそういう人には自身もはっきり言ってしまう。悪い癖だと思うが、裏表の無い人柄なら割合受け入れてくれるので失敗した事はあまり無い。

「む、生意気言うなら神社の掃除もやらせるわよ?」

一瞬、仏頂面の眉間にさらに一本皺を寄せるがすぐに口元をニヒルに曲げ、逆に追い詰められた。

「アハハ・・勘弁してください」

「あと、あんたら間違ってるから訂正してあげる。閏年は一日多いのよ」

「え?」

「え?」

「・・・・やっちまったぜぇ」

やっちまった。と思いつつも自然に俺の口元も笑っていた。というか普通に恥ずかしいです。

不思議だ。

そう思う。

二人の性格がいくら俺にとって好ましいものであっても今まで出会ったどんな人より距離を感じない。

引き付けられる。と言うのだろうか?二人には外見性格以上の魅力があるように感じる。
こんなジブリみたいな神隠し世界に突然来てしまったと言うのに、今俺の心は平常運転で落ち着いている。

慣れた?違う。落ち着くのだ。

二人と話すと、二人の近くに居ると。

言っておくが、恋慕――恋では無い。

親兄弟や長年連れ添った恋人や友人。ペットなんかもある、それらに付随する絆と呼ばれる不確定なモノを例として挙げるが、人は繋がりと言う名の絆があり初めて相手を信じる。
俺も例に漏れず初対面の人間をあまり信じない。

だと言うのに、この18の少女二人を信じ始めている自分がいる。

そこに絆など無い。無いはずなのに親兄弟親友恋人と同レベルの信頼をしてしまっている。

これは異常だ。

もしこれに言葉をつけるならば、俺はこう付ける。

魅力チートと。



―――――



丁度30分程歩いた後だ。

突然7、80センチ程の変な帽子らしき物を被った小人が目の前を低速で横切る。

(キノピオッ!!?)

色こそ赤地に緑と毒々しいがその姿は城の中でスターをくれたりスタートダッシュ後の体当たりで軽々と吹っ飛ばされるあの茸怪人とそっくりだった。

ただし紫の胞子を撒き散らして無ければだが。

あれが妖怪・・ちょっと可愛いな。

「何あれ?」

興味無さげに聞く霊夢さんの隣で魔理沙さんはキラキラと目を輝かせていた。

それはもう宝物を見つけた子供のような表情だ。

「新種のオバケ茸じゃないか!」

胡座をかいていた箒の上から飛び降り、箒を構える魔理沙さん。

その目は獲物を見つけたマサイ族ばりにぎらぎらとキノピオモドキを捉えている。

その視線に気付いたのか、キノピオモドキは逃げ出した。こんな光景をドラゴンがクエストする9序盤で見たな。

「あっ!待て!!」

「魔理沙さんっ!?」

ビュンと風が吹いたかと思うと次の瞬間には木々の間、キノピオモドキが逃げて行った後に土埃が立っていた。

ええー

行っちゃったよ。

お前は土管工かと言いたくなる茸への執着だ。

「霊夢さん。魔理沙さん行っちゃいました」

「そうね。私達も行くわよ」

気にしたら負け。と言うことなのか?

そうなのか。

一人でスタスタと歩き出す霊夢さんを見て、何時もの事なんだなと諦めて霊夢さんの後を追う事にした。

しかし初妖怪がキノピオモドキとは・・なんというか締まらない。肩透かしを食らった。

「霊夢さん。魔理沙さんて茸で巨大化とか出来るんですか?」

「なにその化物?萃香じゃあるまいし」

「・・西瓜は茸で大きくなるんですか」

「ならないわよ。自分で巨大化するの」

「食べがいありそうですね」

「本当は小さいから食べがいは無いと思うわよ、それにどうやって食べようっていうの?」

「え?・・こう、サクっと。塩ふってかぶりつくんじゃ?」

手刀で西瓜を真っ二つにする仕草をすると、霊夢さんのさらにキツくなった人外を見るようなジト目が俺の体を全身を見る。

「鬼に塩ふってかぶりつくとか人間の所業じゃ無いわね」

「鬼?西瓜の銘柄ですか?」

「・・あぁー、すいかってそっちか」

ポンと手を叩いて一人で納得する霊夢さん。俺の小さな頭では残念ながら全く付いていけない。

「そうよね。外の人が萃香を知ってる事がまずおかしいわ」

ん?という事は幻想郷特有のものなのか?

「幻想郷産の茸で巨大化する鬼西瓜・・・・ですか?」

「違うわよ」

口元に手を添えて微かに笑う霊夢さん。顔も柔らかく微笑み、さっきまでの仏頂面のせいでえらくギャップを感じた俺の目には異常に可愛く映った。

「そろそろ休憩しましょう。いい加減重いでしょ?」

「?・・そうですね」

ふと気付けば感じる背中の重さ。確かに少し疲れがきているかもしれない。



―――――



16でバイクに乗り始めた理由は単純である。

突っ張りたかった。その一言で全てが片付く。

そのDQN型厨二病の一言で免許代約16万+車体代約16万+自賠責保険代約1万+任意保険代約1万という計34万の金が飛んでいった。

今考えればよくそんな金を捻出出来たものだと思う。

だがあの時34万という金額を使った事に現在では後悔などしていない。

世界が変わったからだ。

最初こそロケットカウル付き二輪車に跨がり夜の国道で甲高いアクセルを鳴らしてやろうと思っていたが生憎そんな警察の暴走族対策課のお世話になりたいと思う気持ちはあの頃から持ち合わせて居なかったのでやったことはない。

だが、視界が、範囲が、とてつもなく広くなった。

バイクが無い中学生時代など自転車と電車、バス、親に付いて乗っていく車だ。

行きたいところにピンポイントに行けるわけでも遠くに行ける訳でもない。

だからこそバイクという自分の足を持ち初めて電車を乗り継いでいくような遠距離の場所に行ったとき、見る世界が変わった。

初めて入る山道は虫がウザかったり、街中で道に迷ったり、寝不足で畑に突っ込んだりと端から聞けばそんなもん行きたくないと思うだろうが、楽しい。

楽しすぎて高校に行くのを忘れるぐらいに楽しい。

何が楽しいかと言うと、見知らぬ場所で過ごす事が楽しい。

初めて目にするものを見るのが楽しい。

だからだろうか。

幻想郷が自分にとって幼少期の遊園地や動物園と同じくらいに楽しい。

いい場所だ。

キャンプ場やお山の公園とは異なる空気や全く違うモノをもつこの幻想郷が楽しい。

だが。

チキンな俺としてはとんでも無い形相をしながら俺の首根っこを掴んで走り回すこの変な女性をなんとかしたい。

「アハハハハハ!!ザマミロ馬鹿巫女!!」

そして宙を飛んで引っ張られる俺の視線の先で先程天使の微笑みを見せた18歳の美人巫女だったはずの少女が怒りを顕にし、怒号を上げながら低く飛んでいるのも止めさせて欲しい。

「止まりなさい!止まらなきゃ焼くわよ!!」

言葉遣いが変わっていないのがギリギリアレを霊夢さん足らしめているのだが、さっきの微笑みはどこへやら、俺だったらあの顔で睨まれたら迷わず財布を出すくらいに恐い。
そしてもうひとつ悲しい事がある。

それは霊夢さんが俺が拐われた事を怒って居るのではなく――

「賽銭箱直しなさい!!」

まぁ俺を掴む女性が俺を拐う際にぶっ壊したのだ。

この場合俺とこの女性、賽銭箱を弁償するのはどちらになるのだろうか?俺が弁償したとして、求償は出来ますか?出来ない?そうですか。



きっかけというか突然の事だったので俺も良く分からないがとりあえず女性が俺を拐う際に賽銭箱を邪魔だとぶっ壊したのは覚えている。

拐われる最中、視界の端で呆然と賽銭箱を見つめる霊夢さんの姿を確認した。

追っかけっこが始まったのはその直後である。

今現在、霊夢さんが追い掛ける速度の方が速いのか段々と距離が詰めてきている。

もしかしたら直ぐに助かるのだろうが本音を言おう。その顔恐いから頼むから追っかけないでと。

先程仏頂面からの天使の微笑みでノックダウンしそうだったが逆のギャップで違う意味でノックダウンしそうである。

「あのぉ」

ここはやはり当人同士で話し合って貰うべきかと女性に和解を勧める事にした。

「何?!今あの馬鹿巫女撒くので忙しいんだよ!!」

その馬鹿巫女と和解して欲しいです。

「逃げるの無駄じゃ無いですか?もう追い付かれますよ?」

距離はすでに後10メートルも無いだろう。

追い付かれそうだ。

「うるさい人間の癖に!喰っちまうぞ!」

え?

「いや・・えと、男冥利に尽きるというか食べてもらいたいですけど・・その、初対面の方と致すのは・・」

綺麗な女性ではあるが思いを通わせない男に体を預けるっていうのは流石に頂けないだろ。というかそんな脅し文句聞いたの初めてだ。

「ん?・・な!違う!ご飯として喰うって言ってんだ!」

「ご飯?・・・・えと、つかぬことを伺いますが、貴女は――」

「妖怪だよ!!」

聞いた返答に思い出したのはまだ賽銭箱を壊す前の霊夢さんとの会話である。

『妖怪ってやっぱ人食べるんですか?』

『食べるわね。骨ごとゴリゴリ行くわ』

うぇー。

あー。

目の前の女性=妖怪

妖怪さんが俺を食べると→ゴリゴリ

いや、まさか妖怪がこんな美人さんだとは思わなかった。

美人にゴリゴリいかれるとか興奮する。

「霊夢さん、助けて!喰われる!」

「男なんか喰わないわ!!」

女性が何か言ったが多分また俺を喰うとか言ったんだろう。

恐いけどちょっとドキドキするのは美人さんに喰うと言われた(意味は違う)からだ。

「糞、追い付かれる!」

女性妖怪が掌からエネルギー弾を発車し牽制し始めた。しかし全く当たらない。超ノーコンだ。

「来い!」

女性妖怪が掌をグッと握る。すると外れて明後日へと逃避行していた弾が戻ってくる。

なるほど、後ろからの奇襲か。

「霊夢さん後ろーー!」

「言うな馬鹿ー!」

「わかってるわよ!手加減無し霊符「無想封印」!」

飛びながら手に掲げたお札とは違うカードのような物体が一瞬光り、霊夢さんを中心にいくつもの光球がグルグルと回り始めたかと思うと、その光球がすべてこちらに向かってくる。女性が放った戻ってくる弾は光球に当たってはじけ飛んだ。

「えっ?」

疑問の声を上げたのは俺である。

まず助けてくれよ!俺まで撃つ気ですか!?

あぁ、そういや霊夢さんが怒ってたのは賽銭箱壊されたからだっけ。

そりゃさっき会ったばっかの男より大切な財産を守るのが人間か。

「ひぃっ!」

視界いっぱいに光球が広がってくる。

あぁ、そういや最初に壊した時もやられるかもしれなかったんだっけ?その時の魔理沙さんへの借りが超高利息付きで帰ってきたと思えばいいか・・。

「なんであんた俺の事攫う必要があったんだよ」

「親しい人間だとおもったのにー!」

思わず素で聞いてしまう。これが絶望か。

残念ながら先程会ったばかりである。

しかも印象は悪い方だ。

あれ?もしかして俺も狙ってるんですか?

そうですか・・。

「「ごめんなさい!!」」

謝罪の言葉を叫びながら、俺と女性は光球に呑みこまれた。


―――――

ちなみにこの女性、名前は出しませんが朱鷺子です。
後ろから弾幕で狙えるとはどういうことだと考えた末ノーコン球もどそうかとなりました。

地霊殿easyノーコンクリアできた!
ごめんなさい嘘です。嫁(お空)と猫が強くてコンテニューせざるをえない。

なまにくの馬鹿さ加減が表に出てしまった閏年は魔理沙さんも馬鹿になってもらうことで解決しました。本当にありがとうございます。



[28506] 綺想恋慕曲-4
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/07/19 06:22
森近霖乃助は香霖堂の店主だ。

普段の仕事は幻想郷に住まうあらゆる種族の道具を修理したり売ること。

趣味は外の世界を思い浮かべ、道具を見て耽り、考察に熱を出す事。

だが残念な事に、仕事を誉めて貰う事はあれど趣味を認めて理解してくれる知人も常連客も居ない。

彼は決して嫌な男では無い。紳士的でモノを盗ってもあんまり怒らないからいろんな人に商品をかっ攫われるがそんなことで彼は怒らない。でも文句は言う。

更に幻想郷の守護者である博麗神社の巫女のバックアップを取っているのだ。

幻想郷でも重要な位置に立つ森近霖乃助は蘊蓄が好きな事と外の世界への愛がたまに傷だ。

会話を適度に流せる能力がなければ慣れていない者は恐らく彼を苦手になる。

だが彼はそれに落胆せず悲壮せず自信を持って考察を喋る。

彼は今の外の世界が堪らなく好きだ。

だが今の外の世界を実際に見てきた訳ではない。

彼は外の世界の人間から多分こう例えられるはずだ。

宇宙にロマンを抱きすぎてUFOを呼び出す儀式をする人に似てる。



彼の生態は恐らくこれを見ればなんとなく分かると思う。

だがこれを見て只の変態と思う人もいるかもしれないが、別に彼の事を貶す積もりも誉める積もりも無いことをここに記しておこう。

さて、今現在。

森近霖乃助は非常に文句を言いたかったが、一度口に出しては今の今まで溜まりに溜まり蓄積し、もはや年度ごとの層が出来そうなほどに溜まった文句も吐き出してしまいそうだったので、少し用件を聞いたらそうかと諦めた。過去には霖乃助は何度も文句を言っていたがここ数年は既に諦めている。

その原因はいつもの二人の片割れの紅白のほうである。

自身が最も見返りを求めず助力する二人の内の一人。博麗霊夢が外来人と思われる若い男を背中に担ぎ、片手に割と良く来て勝手に本を読んでいた女の妖怪の脚を掴んで引きづりながら入ってきた。女妖怪の方はうつ伏せの状態で引き摺られており、なんとも・・痛そうであった。

「聞いてよ霖乃助さん」

男一人担いでいるのに汗一つかかずに涼しげにしている霊夢。そういう光景には既に慣れた霖乃助なので最早気にしない。

「どうした?」

「賽銭箱が壊れたのよ」

あぁ、その二人が壊したのか。と直ぐに察しがついた。それで直して欲しいというところか。だが何故壊した本人を連れてくる。そう突っ込もうとしたが止めた。多分突っ込む言葉の途中で霊夢の次なる言葉が被せられ強制的に途切れるからである。

「という訳で直して欲しいの。というか大破して粉々だから新しいのが欲しいわ」

ずるずると床を引きづる音を狭い店内に響かせながら奥に進み、霖乃助のいる席の脇を通り店の奥に行く霊夢が想定通りに仕事の依頼を持ってくる。だがタダ働きに終わるだろう。
というか何故彼女は奥に進んでいるのか分からない。そちらには霖乃助の居住空間しかないのだ。

「金は?」

どうせツケで終わるだろうなと思いつつもいつものように聴いてみる。答えは意外なものだった。

「朝道さんが返すらしいわ」

男性名ということは背中の男か。いや待て今彼女はなんと言った?

「返すのか?」

本来の店と客の立場ならまずあり得ない問答だが、ここ香霖堂では通用する。店主が快く引き受けるかはともかくという追加文が入るが・・。

「返すって言ったから返すんでしょ?」

この仮は絶対返す。覚えてろ!の間違いじゃないのか?と霊夢の背中に居る青年の状態を見て思うが、霖乃助にして見ればシメたものである。

今まで霊夢が貯めたツケの1割でも返して貰えば万々歳だ。

ついでに秋の【入荷】も手伝って欲しいが何分行き先が危険すぎるのでさすがに止めた。
債務を引き受けてくれる少年なら丁重に扱わなければいけない。という結論に至るまでそう長くはなかった。

「客人用の布団の場所は――」

「隣の部屋の奥に客人用の布団あったわよね。借りるわよ」

あれ?今まで霊夢の前で客人用の布団出したことあったっけ?という疑問と共に先程まで読んでいた『出来る小学生の英語』を読み耽るのだった。

「それはリンゴですか?いいえトムです・・・・。暗号か?」



―――――



マンションの部屋。

思った以上に疲れの出る職場に居たこともあり、家賃3万5000円の古びたマンションの一室は荷物置き場と寝るための場所と化していた。

それでも自身の生活の場であったあの一室は茶色い薄羽を持った奴等と隣の夫婦の喧嘩が筒抜けで煩い事を除けば十二分に快適だったと思う。

前の賃借人がヘビースモーカーだったのか黄ばんだ壁紙と変色してたまにミチミチと鳴る天井の木目。窓を開ければ立地が良かったのか高確率で涼しい風が吹いてくれ、歩けばコンビニと大病院が5分の距離にあるところだった。まぁ駅は遠かったが。

うん。今思い返せばすごくいいところだった。あの部屋は充実した毎日の、象徴の一つだったのだ。



―――――



「・・・・夢か」

自分でもビックリする位にバッチリと覚醒した意識は、見慣れた天井を見ることで先程の光景が全て夢の中の出来事だと理解した。

随分と珍妙で愉快な夢だった。

腋丸出しのコスプレ巫女と土管工並みに茸に執着を見せる魔女っ子。

自分は幻想郷とかいう場所にジブリ式神隠しに会ってしまい。気付いたら借金を背負っていた。

そして誘拐された挙げ句巫女さんに救出という名の爆撃をされ命を落としてしまう。
デッドエンドだというのに不思議と嫌な寝汗を掻いてないという事は悪夢では無かったと言うことか。

まぁ悪夢だろうが予知夢だろうが明晰夢だろうが何でもいい。起きたからには今日も一日頑張ろう。

仕事無いけど。

とりあえずハローワークか。

時計、時計・・・・。

今何時だっけ?と現在の時刻を確認しようと、長年使っているゲームセンターで取ったブサイク顔のリボンを着けた猫がプリントされている時計を探すため辺りを見渡す。

すると違和感。

あれ?

布団が違う。

とんでも無くジャストフィットしていたのか気付かなかったが布団が違う。枕も違う。良く見れば天井も似ているだけ。

ん?なんで俺浴衣に着替えてるの?

あるぇー。

何処だ此処。と薄暗い部屋を注意深く見渡す。

年期が経っているのだろう畳特有の匂いが薄い部屋内は僅か六畳程の狭い空間。足元側。その部屋の片隅には所々から紙が数枚はみ出た紙の束が乱雑に積まれ、今にも倒れそうな危ない斜塔を支える天井に届きそうな大きな箪笥が一つこれが狭さの原因と一目で分かった。

枕側には軽く開いた襖があり、中から布団の一部がはみ出していることから押し入れと思われる。

右側は壁が一部剥がれ内部の木が露出しており窓は無く、左側は出入口なのか襖がある。
本当に何処だろうか。

今まで生きてきた20年余りに今いる部屋に該当する空間は全く無い。浴衣を着ているが旅館でも無さそうだ。

ん?

何故気付かなかったのか。隣には枕。

枕だと?

嫌な想像が過りシーツを確認。だが心配した感触は指先からしなかったが、自分の隣の人一人分入れる隙間が体温よりちょっと冷たい程度に暖かかった。

おい待て。

昨日の事を思い出せ。

昨夜に寄った港町の飲み屋に寄った帰りに何があった。

だがそこまで酒を呑んだ記憶は無い。

イタしては居ないだろうが、添い寝の時点でもうやっちまった感が強い。

逃げるか?しかしいきなり何も言わずに帰るのは人間として如何だろうか。

いやでもツツモタセとか嫌過ぎる。だがしかしここ数年待ちわびた奇跡の出会いなんかがあるやも。

長年の無駄な経験と余計な妄想力のせめぎあいが拮抗し中々終らず、とうとう唸り出す始末。

だが余計な心配だった。

ザリという擦れる音と共に横の襖が開けられ、そちら側の光が狭い空間を照らした。

「あ、起きたのね」

「霊夢・・さん?」

夢の中で自分を爆撃してデッドエンドにした張本人がそこに居た。

いや、まぁ悪いのは俺ではある。

「夕食だけど食べる?」

「あっ、はい。頂きます」

・・・・余りにも突飛な現状だったからか、どうやら夢と思っていたらしい。

幻想郷。

妖怪。

神隠し。

自分に起こった事柄の全てが、先程まで夢と思っていた事が、現実だった。

恐怖?違う。

寂しい?違う。

嬉しい?近い。

興奮する?多分・・それだ。

この現状は俺を興奮させている。

まさしく夢のような世界だ。

映画の世界にでも入り込んだような危うい錯覚。

それに興奮している自分がいる。

「何かボケッとしてるけど大丈夫?」

「へっ?」

気付くと目の前まで接近してきた霊夢さんが俺の額に手を当てようと手のひらを伸ばして来ていた。

なっ!

いきなりすぎる行動に咄嗟に後退りその手を避ける。

「大丈夫みたいね」

「なっ、何がですか?」

安心したように少し微笑む霊夢さん。というか手が綺麗ですね。細いし白いし。顔も逆光のフィルターを邪魔に思ってしまう処かそれすら似合ってしまうという鬼畜っぷり。

「まだ夢を見てるような顔をしていたからよ。起きたら外の世界に戻ってるとでも思った?」

「・・・・ちょっとだけ」

だが、ここが現実で良かったと思う自分もいる。

「賽銭箱の代金も払って無い人間は帰っちゃいけないのよ。覚えておきなさい」

腰に片手を当てて、上から放たれた言葉は冗談とも本気とも取れないような曖昧さとどんなにやりたくなくても従ってしまうような不思議なカリスマ性を感じさせた。

完璧に上から言われてるし年下の女の子だし、負い目があったとしても他の人に言われたらちょっとはムッとくるような言葉だったが、魅力チート故なのか、不信感も無くすんなりと受け入れられた。

「そう・・ですね。えぇ。きっちり返させて頂きます」

「なら良し。キッチリ働いて手伝って、神社に賽銭箱を再生させなさい」

「はい」

途中から自分の口元が笑っていた事に気付いたのは霊夢さんが部屋を去った後だった。
なんとも、

――もうちょっとだけ『夢』の中に入っていたかったかもしれない。



そう言えば、結局布団の隣には誰が収まっていたのだろうか?更に誰が俺を浴衣に着替えさせたのか。
霊夢さん・・・・だったり・・。



―――――



「おぉ。起きたか、朝道」

恐らく居間と思しき丸テーブルが中央に置かれた場所では魔理沙さんがテーブルの上に湯気を立てて鎮座する土鍋から具材を取り分けていた。何を突っ込んだのか鍋の中身は真っ赤。魔理沙さんの手元の小皿を見るとエリンギ?のような物と鶏肉と思しき物体。いずれも鍋と同じ色に染まっており随分辛そうに見える。が、自身も腹が減っていたのか、美味そうな匂いが腹を刺激した。

「えぇ、ご覧のとおりです。爆撃された割にはどこも痛くないですね」

「そりゃそうだ。スペルカードだしな」

「あぁ。一応遊びなんでしたっけ」

「うんうん。衝撃あるけど直撃しても気絶で済む」

「へぇ・・・・ところで魔理沙さん。そのお肉って鳥ですか?」

「ん?あぁ。朱鷺だな」

「へぇ、朱鷺ですか。・・・・ん?」

今変な言葉を聞いた気がする。

「朱鷺?・・・・眼の赤いトサカのある奴ですか?」

聞いてしまった事に思わず恥ずかしさが出るくらい変な質問をしてしまった。いやいや、まさか。国の天然記念物を食べるはずは・・。

「おぉ。そうそう」

「アウトォォォォオオオオ!」

―――――

変なところで切ります。
さて、ご指摘いただいた場所をいくつか直させていただきました。
ちょっと自分の馬鹿を晒すのは非常に恥ずかしいのでどこを直したかはご確認ください。
あと賽銭箱に関する描写ですが、よくよく考えればまぁ確かにおかしいな。と思ってしまったのでいつかバイクが突っ込んだとか突然神社に乗り込んだ朱鷺子にぶちのめされるついでに破壊されたとかに変えようかな?と思いましたが携帯で書いている現状で直すのはちょっと難しいので先送りです。
それまでは
『あぁ・・またご都合か・・』
と諦めて下さい。

まだ4話ですが期待できる等々のお言葉とてもうれしいです。(言われてたっけ?)
東方原作設定に関してはどうしても学習が浅いし自身も文章能力漢字能力があるとはとても言えないのでいろんな場面で助言頂けるとありがたいです。

長々となりましたが最後に

俺1「わっほぉぉぉぉい!!!DOKIDOKI添い寝ディスクゲットォォォォ!!!」
俺2「解せぬ。なぜうどんちゃんが無いんだ・・・・」

ということです
察してください。



[28506] 綺想恋慕曲-5
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/08/11 06:28
香霖堂住居スペースの居間では卓袱台に乗せられた鍋を囲み4人の男女が食事を取っている。

黙々と箸を進め、土鍋の中から朱鷺肉を多目に取る少女2人と一緒に煮込まれているよく見ると斑模様が薄く浮き出る茸を中心に食事を進める男性2名。片方の男性に至っては朱鷺肉を口に入れる際一回口前で箸を止め、訝しむように眉間に皺を寄せてから口に入れるが結局美味いのか口を綻ばせていた。

「ほぉ、それで賽銭箱を壊してしまったと」

「いえ本当に、申し訳ないです」

「いやいいさ。こちらも仕事をさせて貰う側だからな。壊した際にも過失が無いなら誰も君を責められないよ」

その言葉に幾ばくか緊張していたからなのか、安心し息を吐く青年。

その礼儀正しさに霖之助は債務を弁済してくれるというおまけが付いていたこともあり、涙が出そうな位感動したが残念ながらそれは霖之助の周りの人間が酷すぎるだけである。

「んで結局働き口はどうするんだ?口で言ってもブツを返さなきゃ意味ないだろ」

横から突き出された現実に朝道はビクリと固まった。

(やべぇ忘れてた)

誘拐爆撃のコンボにより、賽銭箱を愽霊神社に返す事は覚えていたが、現実的な問題働き口が無ければ意味が無い。

その事を思い出し慌て始める朝道だが霖之助が助けを用意していた。

「そう心配する事もないだろう。人里で教師をしている上白沢という女性がいる。彼女は外来人が迷い込んだ時の案内役のような事もしているから、助けを求めてみなさい。手伝い程度ならば直ぐにでも紹介してくれるはずだ」

幻想郷では頻度は数年に一度と少ないが朝道のような外来人が迷い混む。偶然か無理矢理かはさておき、そんな外来人は基本的に人里で寺子屋を営む半獣の上白沢慧音女史により仕事の斡旋や生活の拠点が見つかるまでの下宿先探しを手伝って貰う。人里の畑は里の外にあるので妖怪が居る。退治屋が居るにしても農作業は大人数で手早くが常識だ。なので人手は何時でも募集してるし、里には孤児院もあるので下宿先にも困らない。

ただし、現代の楽な生活に慣れてしまった外来人にはキツすぎる生活であるのは当然だった。

生活水準が低いだろう事は予想していた朝道だったが江戸~明治位の生活がどういうものか分かっていないのでどのくらいキツいかの想像がいまいちつかない。中々なブラック企業に勤めていたので体力は有ると自負しているが果たしてそれで足りるのかが不安だった。

「わかりました。ありがとうございます森近さん」

見たところ自分と同年代に見えるのに知性も感じるし、顔も良し、おまけに紳士だ。いや、男としての完敗を意識するな。惨めになる。

自分の男としての小さなプライドがズタボロになる感覚に泣きそうになり、それを隠す為に話題を転換させようと、その材料を探して目線をさまよわせると懐かしの一冊を見つけてしまった。

『出来る小学生の英語』

何故こんなものがあるのかとしばし見つめると、とうとうそれに気付いてしまったか・・。とでも言いたそうに霖之助が眼鏡の中心を軽く押し上げた。

「気になるかい?やはり外から来た人にはわかるか」

いやそれ見たまんまだろ。と思ったが口には出さない。

何か嫌な予感を感じ、横を見るとちっちゃい茸を耳に詰める魔理沙さんとさっきより余計脱力したように見える霊夢さん。

ん?

「それは一見寺子屋で使う英語の入門書に見えるだろう。だが・・その書籍は悲恋の魔女が遺した遺言状でもあるんだよ!!」

自信満々というか確信を得てというか堂々と言うかと今の彼をどう表現するべきか迷ったが俺が言いたいのは結局、何言ってんの?である。

「記述があるのは6頁13頁21頁。その頁にはとても日常では言わないようなおかしな言葉があるが、それを繋げ、解読する事によってこれが魔女の涙が出るような悲しい恋の物語がわかった」

あれ?それ市販のだよね?適当な英文を編集さんとかが作って載せただけだよね?魔女?え、

「まずは6頁。ここにペンとトムを間違えるというありえない会話がある」

それは日本の教科書じゃザラです。

「これは魔女が最愛のトムを変身の魔法でペンに変えてしまったという意味だ」

「ええー・・これは・・」

何て反応すればいいのか?ギャグ?笑えばいいのだろうか?

「魔理沙が耳せんしてるから私が言うけど、霖之助さん全部本気で言ってるから」

ほぼ無表情でそう断言する霊夢さん。どこかウンザリした雰囲気は感じるものの慣れた物なのだろうか気にも止めないで黙々と鍋に締めのご飯を投入して卵を割った。雑炊とは霊夢さんわかってる。

「そして次。私は林檎の木を毎日見上げています。だからどうしたと思ったが、先程の頁にはなぜかペンと林檎が挿し絵で描かれている。これはつまり、ペンでは無く林檎に変えられていたという事実を示している。そしてその林檎を植え毎日眺めることで心を満たして居たのだろう」

色々と突っ込み所はあるのだが、マシンガントークで突っ込む隙が全く無い。あっ、雑炊うまそう。それにしても朱鷺肉美味しかった。オオサンショウウオとかカブトガニとかイリオモテヤマネコとかも食べたら美味しいのかもしれない。

「七味は?いる?」

「欲しいです。あっ、ども」

そうか。霊夢さんのように諦めればいいのか。神職者はこういうスキルが高いのだろうか?羨ましい。

「そして最後。木の傍で女性の友人にあなたとずっと一緒に居たいですと口走るシーンは友人では無く木に言ったとすれば謎は解ける」

湯気の立つ雑炊を一口。赤味噌が効いていて旨い。あっ、酒欲しい。

「お酒は無いわ」

「俺口に出しましたっけ?」

「出してないけど顔に書いてある」

俺はそんなにわかりやすい顔をしているのか。ショックである。

「つまり、魔女が男を愛するあまりに林檎に変えて一生傍に置いたという悲恋の話なのだ!!」

ババーンとスキマ送りにされそうな効果音を伴いながら放たれる断言の言葉。

「悲恋じゃねぇよ!!!」

さすがの俺もその大暴投がホームラン並にありえない結論に敬語なんざ忘れて、突っ込む。

そしてその話を悲恋とは呼ばない。好きな男を監禁するというヤンデレルナティックだ。

「な、なんだと?!ならば朝道君。君の推論を聞かせて貰おうか」

カチャリと眼鏡のフレームを押し上げる。その眼は挑戦者を向かい打つソレ。いや待て。それもおかしいって。

助けを求めようと霊夢さんを窺うがそっぽを向かれる。畜生神は死んだ。

魔理沙さんを見ると見事に土管工がしゃがむ姿を再現しており、もはや助けが無いことを悟ってしまった。

「さぁ」

尚も眼光をギラつかせながら詰め寄ってくる森近さん。この反応だけでも十分先程の推理が本気だったかが伺える。それだけに英語教材の編集は英語と日本語が不自由なんですと一言で突っぱねると俺の印象が悪くなり立場が非常に悪くなる気がする。具体的に言うと金銭的な意味でだ。これは適当な推論をでっち上げるか説得力を持たせて日本の英語教材の誤解を解くかの二択。ボロが出る可能性があるので、結論は後者になった。

なるべくニヒルに見えるよういつも以上に口を歪めようとしたが変な雰囲気を出すのも可笑しいと思い、苦笑いに落ち着いた。我ながら怪しい。

「さぁ、君の推論を・・」

さぁ言え。外の世界の常識を森近さんに言うんだ。

「あー。えーと・・外の世界じゃよくあることというか・・ヤンデレというかルナティックというか――」

端から見たら容疑者の取り調べみたいな状況だろう。だがその実よくわかんないとしかわからない説を論破しているというアホな現状を打破したいが残念ながら抜け道は無くハッキリ言っても森近さんが先程の推論をどれだけ本気で言ったかを考えればここは森近さんを立てたいと思う。畜生一分前の自分を殴りたい。

適当な言葉を紡ぐも文章にはならずいよいよ行き詰まった時である。

「たのもー!!」

俺の丁度真後ろからそんな声が響くと同時に後頭部に何かでかい質量を持つ物体がぶつかり、その勢いを受け継いだ俺の頭が跳ねた。かっこよく言ってみたが簡単に言うと頭が卓袱台に突っ込んだのだ。

俺の顔は自分の分の雑炊に突っ込み湯気をたてる米粒を顔いっぱいに付着させる。

「あっつ――!!」

今の心境はまさしくおでん芸を披露する芸人の気持ちである。超熱い。

「あつ!あっつ!」

具体的に言うと瞼が痛い。ついでに後頭部に、遅れて地味な痛さが広がる。なんだってんだ、誰だコラ!!

「あー・・ごめん。痛かった?」

おそらく犯人だろう女の声が聞こえて熱さと痛さで開きづらくなった瞼を無理やり広げて後方を確認すると俺が霊夢さんの爆撃を受ける切っ掛けとなったにっくき女妖怪が丸太を担いで立っていた。

「痛かった。あと・・熱い」

先程の分も含めて10倍ほどの文句を吐き掛けてやろうと開いた口はしかし、想像以上に熱かった雑炊と恐らく眼に侵入して神経をこれでもかと刺す唐辛子のせいで現状を訴えるので精一杯。いいよ後で文句言うから。ヘタレじゃないぞ?と念のため。

「裏口のすぐ外に水瓶があるから、顔を洗ってくるといい」

微かに見える森近さんの指先。その案内に弱々しく頷き、指先が指す方向に行った。


―――――



水瓶から柄杓ですくい上げた水でもって顔を洗って改めて部屋に戻ると女妖怪が俺の座っていた場所に陣取り雑炊を食べて顔を綻ばしていた。

「あ、馬鹿巫女。七味取って」

「馬鹿巫女じゃないわよ。・・はい七味。楽園の素敵な巫女の愛称で親しまれてるわ」

「自称?」

「誰が広めたかは知らないけど少なくとも私じゃないわね」

超談笑しとるがな。あんたら敵対関係と違うの?

「おー。朝道おかえり」

霊夢さんと女妖怪があまりにも普通に談笑してる光景に暫し理解が追い付かず呆然としていると、いつの間にか復活していた魔理沙さんが雑炊を食べる箸の動きを止めこちらに眩いばかりの笑顔を向けてくる。

「あー、はい。お陰さまで?」

こんな時なんて返せばいいのか分からず思い当たる中で適当だと思う言葉で返したが大丈夫だろう。

「おーい朱鷺子。朝道帰ってきたぞ。席開けてやれ」

「ん?あぁ帰って来たのか。勝手に座ればいいだろ?人間ごときに席は譲らん」

女妖怪は朱鷺子というのか。――いや、それよりも・・。その言い様にカチンと来て、お言葉通り朱鷺子の隣。肩と肩が触れ合う位に近い位置に腰を下ろした。憮然と顔でいるのが気に入らないのか朱鷺子もしかめっ面でこちらを見上げている。

そのまま膠着状態に陥るかと思われたが、森近さんの一言で場が壊れた。

「なんだ。同じ布団で寝ていただけあって仲がいいな。恋仲か?」

その言葉に直ぐに反応したのは意外にも魔理沙さんである。当事者は言っている意味がわからずしばし言葉をかみ砕いて自分なりに理解する努力をしている。

「妖怪と外来人のカップル!なかなかお目にかかる機会の無い組み合わせ!」

いや待て、お前キャラ違うぞ。

「外来人じゃなければ珍しくもないわ。ウチで祝言挙げたいなんて、とちくるった事言わないでね」

興味など既に無いと言わんばかりに明後日の方向に向かってお茶をすする霊夢さん。神は死んだセカンドエディション。

そうか。布団のスキマはコイツだったか。霊夢さんと夢見ていたが残念だ。そしてカップルなんて関係ではない。一緒に爆撃された仲である。まぁ冗談半分で聞いているのか。

着替えはまぁ森近さんだろうな。そこら辺が妥当か。

「なぁっ――!!一緒の布団!?どういう事!?」

いやいや。二人で気絶してたから布団に突っ込んだんだろ?

無駄に過剰反応を見せる朱鷺子。その顔は真っ赤に染まっている。なんだ、妖怪って言っても羞恥は感じるんだな。普通の女性と全然変わらない。そんな事実に俺は少し妖怪を身近に感じた。

「ん?あぁ・・」

気まずい顔で森近さんが視線を向けるのは霊夢さん。どうやら犯人は霊夢さんらしい。それを察したのか朱鷺子が霊夢さんに噛み付いた。

「またお前か馬鹿巫女!!」

うがーとでも聞こえそうなほどに濃紺のメッシュが入った髪を逆立ててふしゃーと威嚇をする朱鷺子はまさしく犬か猫。

それを何処吹く風とばかりに気にも止めない霊夢さんのカッコいい事。滑稽な絵面である。

「まぁまぁ。落ち着けよ。俺は記憶無いんだから」

とりあえず宥めようと朱鷺子の肩に手を置く。一度素の言葉を使ったからかどうにも気安い感じになったが普通な感じである。

「ひゃぅ!」

そう可愛い声と共にこちらを振り返る朱鷺子。顔は真っ赤で眼は潤んで目端を釣り上げ上目遣いにこちらを睨んでくる。そんなに俺の隣が嫌だったのだろうか?いや、そうだよな。見知らぬ男と一緒の布団に入れられ嫌じゃない女性がいるはずもないだろう。

「あー・・その。悪かった」

一体全体何に謝っているのか自分でわからないが何となく謝らなければいけない気がする。

「べ、別に謝ってほしい訳じゃ・・う゛ー・・・・あー!!」

しおらしく目線を彷徨わせた挙句、キッとこちらを睨む。いや、まて。その握った拳はなんだ?振りあげるのか?

「まて!なんで拳振り上げるんだよ!」

いくら嫌いだからってそれは無いだろう!

「うるさい!黙って殴られろ!」

次の瞬間には眼前一杯に広がる拳。




結論的には、

座った体勢の癖に腰の入った良いパンチだった。

-----

りんのすけ動かしづらいな畜生。
おかげで無理やり朱鷺子乱入になった。けどまぁいいか。ちょうどだれそうだったし。
今回はちょっと地の文の練習を入れてマス。そこらへんの指摘いただけるとありがたいです。
次は一気に一週間後くらいにしようと思ってるんだけどどうだろうか?別にけーねてんてー入れなくても大丈夫だし。
あと朱鷺子は当初の予定通り裏ヒロイン。名前は朱鷺子で定着。
これ以上は増えません。
基本メンツも霊夢と朱鷺子。地霊霊夢組。りんのすけ。魔理沙とあとアリスくらいになります。
あ、後今回鍋の下にはコンロじゃなく八卦炉置いてあります。
八卦炉ェ・・。
後教科書なんですけど編集さん悪いみたいに書いてますけど実際は悪くありません。主人公の偏見です。



[28506] 適当に書きなぐってみる。意味は無い。
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/07/19 06:20
諏訪子様が恋する話

「早苗早苗早苗早苗ーー!!!!」
ケロちゃんこと洩矢諏訪子がちょっと散歩に行ったと思ったらすぐに帰って来て守矢神社前で掃き掃除をしている東風谷早苗に途轍もなく興奮した様子で話しかける。
頬は紅潮し、足は落ちつきなく早く交互に地面を打ちつけるというまさに幼児なその行動に東風谷早苗は愛が鼻からライスシャワーしそうになったが何とかこらえた。
「ぐっ、かわい・・ゴホン。どうしました?諏訪子様」
動かしていた箒を止めてから改めて諏訪子に向き直ると2Pカラーな巫女服の袖を鼻に押し付けた状態で興奮する諏訪子に聞く。
「あ、あのねあのね。その・・ちょっとかっこいい男の人が居て・・」
シュパン
「・・・・へぇ・・かっこいい男の人ですか」
「うん・・それでね、もう・・・・あうー//////」
バキリ
ゴリゴリ
シュパパーン
真っ赤な顔を覆い隠す諏訪子は本来ならば早苗の主食だが、今回ばかりは訳が違う。
(絶対に許さない・・)
バキバキバキバキ
「どうした早苗!異変か!?山の地形が変わってるぞ!!」
神奈子さまこと八坂神奈子が驚いたのも当然である。
早苗の怨が籠った奇跡が山全体に降りかかりいろいろぶっ壊れていた。
具体的には烏天狗のカメラが見るだけで吐き気を催す黒い怨念を写真に写してしまい。もう一人の烏天狗の携帯に死とか呪とか怨とか殺とか言った言葉が延々とつづられたメールが何通も来たり、白狼天狗がいきなり遠吠えし始めたり河童が地下の地獄ガラスwith八咫烏が持つ核の力を使った大量殺戮兵器を思いついたり厄神様の回転が止まったりである。
「あぁ・・神奈子様・・・・。えぇ、そうです。異変です。殺(と)らなきゃいけない首があるんです」
「どうした早苗!!?奇跡が暴走してるぞ」
「あうー////////」

―――――

色々カオスだった上に短い。続きは怖くてとてもとても・・おぉ、こわいこわい。
あとミラクルフルーツ。
秋姉妹を忘れてたな。まぁいいか。
ちょっと畑耕してくる。



[28506] 【ネタばれ注意】かくせいがにゃんにゃん
Name: なまにく◆3591bdf7 ID:aa15c546
Date: 2011/08/19 14:23
米、神霊廟ネタ入ってます。









昔、昔、今で言う中国のある場所に、霍桓(かくかん)と呼ばれる男がいました。
男は名のある霍(かく)家の嫡男。
霍桓自身も能力も人格もある、地元でも有数の人気ぶりを持っていました。
霍桓はある日、父である霍家現主人と共に道の教えを乞おうと導師のおわすお山の廟に向かった時の事でした。
霍桓は青娥という女性に会ったのです。
青娥は坤道(こんどう)と呼ばれる女性導師を目指す修行の身であり、霍桓が目指すお山の廟に向かっている途中とのこと。
霍桓は青娥の美しさに見入りました。
聞けば青娥は出家前の駆けだしにもならぬ身とのこと。
霍桓は運命を感じました。
それを切欠に霍桓は無理やりとも言えるほど強引に青娥を霍家に嫁入りさせました。
青娥の嫁入り道具は古い道教の本一冊。父の形見とのことです。
霍桓は結婚してから青娥の気持ちを無視して事を進めた事を後悔します。
霍桓は自分に戒めをします。
青娥が私を愛するまで、青娥が私を求めるまで、自分が青娥を求めるのを止めようという戒めです。

しかしそれは矛盾でした。

青娥を自分の物にしたくて無理やり結婚しました。しかし青娥の一番の幸せを考えるのならばそれは青娥をこの霍家から解放する事が一番だと思えたのです。
それは矛盾です。
青娥を大切にしたい。しかし大切に――彼女を思うのならば彼女を解放しなければいけない。
青娥と離れたくない。しかし離れたくないのならば青娥をこの家に縛り付けなければ行けません。
それは夫婦の確かな溝でした。
現に一度も、霍桓と青娥は逢瀬も閨を共にする事が無く、霍家の屋敷内で一緒に住んでいるというのに文を交換することで夫婦の仲を保っていたのです。
ですが、夫婦の絆が無いわけではありませんでした。
今日は何があった。贈り物はどうだ。食べたいものはあるか。
霍桓は毎日筆を取り妻に文を書きました。
青娥はそれに律儀に返事を書き、返してくれます。
4年間の文のやりとり。それは細くも確かな絆でした。
ですが霍家は名家。次期当主が妻を娶ったというのに子作りをせず毎日文のやりとりだけというのは許されない事でした。
霍桓は焦ります。
青娥を大切にしたい。だが時期当主としてそれだけは許されない。青娥を抱かなければ青娥は間違いなく当主の手によって霍家を追い出されてしまいます。
しかし、やはり自分に課した戒めを破るつもりはありませんでした。
霍桓は4年ぶりに青娥と会う事にしました。
会って、改めて自分の気持ちを伝えようと思ったのです。
好きだと、愛していると、自分の物になって欲しいと、初めて会った4年と少し前から今までずっと声に出さなかった言葉を改めて伝えようとしました。
霍桓は月が真上に来る時間を狙い青娥の部屋に行きました。
しかし青娥は部屋におらず、部屋から外を見た霍桓はそこで青娥を見つけます。
青娥は椅子に座り、古びた本を、月明かりだけを頼りに読み耽っていました。
その本は青娥が持ってきた唯一の嫁入り道具である父の形見の道教の本。
その光景に霍桓は胸を締め付けられます。
大切な、とても大切な事を忘れていました。
青娥は導師になるためにあの日あの山に居たのです。
まだ青娥が導師になる夢を持っているのならば――。そう思うと霍桓は自分がとんでも無い事をしてしまったのではないかという気持ちになりました。
この日、霍桓は青娥に想いを伝える事無く青娥の部屋を去りました。
事が起こったのはそれから数日後。
青娥は病に倒れたのです。
原因は不明。良くなるかもわからない病でした。
当主は青娥の現状を長くは持つまいと霍桓に青娥を抱く命令では無く、新しく妻を娶る命令をしました。
霍桓は流されるままに見合いをし、新しく二人目の妻を娶りました。
それが決定的な溝となったのです。
霍桓は青娥に文を毎日出しましたが、青娥の返す文は次第にその数を少なくしていきます。
霍桓が青娥と結婚してから6年。
ついに青娥からの手紙が途切れました。
霍桓は新しく娶った妻との間に子を儲け、霍家当主の座につきました。
周りの人間は霍桓が淡々と仕事をこなし、自分の子の顔すらまともに見ない事を不思議に思います。
ですがそれは無理なのです。
霍桓の頭の仲は四六時中青娥の事しか思っておらず、元来の頭の良さを使って片手間で仕事を片付け、日々の生活を送っていたのです。
霍桓がその眼に生気を映すのは夜遅く青娥に文を書くその時だけです。
年が明け、霍桓はある仮説を立てます。
もしかしたら青娥は導師になるために自室で修業をしているのではないか?そんな仮説です。
それはある時尋ねた廟の導師の話によって確信に変わります。
死を偽装し、仙人になるために青娥はその準備をしている。
霍桓は思いました。
これは好機だと、自分も導師と、仙人となれば青娥と共に暮らしていけるのではないか?そんな事を思いました。
結婚が8年目になり青娥はとうとう死んでしまいます。
霍桓はそれが偽装であり本当の青娥はこの屋敷から飛び出し導師となるために旅立った事を悟ります。
青娥の葬儀が終わった夜の事です。
霍桓は自分も導師となる準備を始めようと自室に籠った時、机の上に文を見つけました。
青娥からの最後の文でした。
霍桓は食い入るような眼で青娥からの手紙を読みました。
文にはさようなら、ありがとう。そう書かれていました。
必ず迎えに行く。霍桓は手紙にそう誓い、導師となるための計画を実行に移した。

それから10年。息子が当主として相応しくなったのを見届け、当主の座を渡し早めの隠居をする。霍桓は山に籠り、導師の下で修業を始めた。



―――――

100もの年月を要し、霍桓は仙人となります。
仙界に赴き、青娥を探しますがその姿は無く、聞けば、青娥は仙界に拒絶され邪仙となり、下界を彷徨っているとのこと。
霍桓は道の教えを説く旅という名目で妻を探す旅に出ました。
世界中を千年旅しました。
時に道の教えを説き、妖怪を退治し、妖怪と酒を酌み交わし、人を助け、人と酒を酌み交わし、会う人、会う妖怪全てに妻、青娥の事を聞いて回りましたが一向に何も掴めず、時は早足に過ぎていきます。
1000年大陸を彷徨い、霍桓は生まれ育った国と海を隔てたすぐ近くにある小さな島国に行きました。
そこで霍桓はある妖怪と出会います。
「妻を探しながら道の教えを広める大陸の仙人というのは貴方ですね?」
空間に裂けた隙間からズルリと出てきた妖怪に霍桓は驚きもせず、長い杖に寄り掛り空を見上げています。
「いかにも。妖怪よ。貴様は青娥の事を知っておるか?」
「いいえ。ですがいずれ現れるかもしれない場所ならば存じ上げておりますわ」
「それはなんという場所だ?」
「幻想郷。妖怪と人間の理想郷ですわ。旅の仙人殿」

妖怪が霍桓に要求するのは一つ。培ったその智と仙人としての能力を妖怪――八雲紫のために使うという物だった。
根拠は幻想が薄れ始めたら存在を保つため邪仙もいずれは幻想郷にたどり着くというもの。
確かに人々から仙人が伝説であるという意識が強くなってきたのは紛れもない事実。霍桓はその話に乗りました。
霍桓が幻想郷で本拠地としたのは再思の道と呼ばれる幻想郷の死の場所である無縁塚と魔法の森――森という生の場所の中間地点を本拠地とし、幻想郷に住みつきました。
再思の道に巨大な岩を置き、その上で日がな一日空を見上げ青娥を思う。
妻を待ちながら時に来る者たちに生と死を訪ねるだけ。そんな生活です。
幻想郷に住みついてから数百年。
花が咲き誇ったと思いきや、黒と白の魔法使いが霍桓の前に来ました。
「お主は我が妻を知っているのか?」
「なんだ、奥さんに逃げられたのか?」
「いや、ここに来るそうなのでな、待っているところだ」
「待っているだけじゃ恋は成就しないんだぜ?」
「ふむ、一理あるか。魔法使いよ。礼を言う」
「いいっていいって・・それより、この異変の原因について知っていないか?」
「花・・か?知らぬな。生憎花を愛でる趣味は無い」
「そっかそっか。邪魔したな」
「あいや、待て、魔法使い」
「ん?」
「せっかくだ。少し道の教えを説いてやろう」
「うちは生憎無宗教なんだぜ」
「なぁに。少し痛いだけだ。生と死を飲み込む古の道仙として死について講釈してやろう」
「生ならちょっとは聞く気になれたかもなっ!!」

仙丹「五段修錬」

霍桓は弾幕決闘なる遊びが大好きである。

―――――

そして、
霍桓は青娥と出会いました。
「久しいな・・青娥よ」
青い髪に天女のように髷を結い羽衣を纏う青娥を見つけた霍桓は静かに近寄り青娥の前に立ちました。
「お久しぶりです。霍桓様」

-----
青娥娘々かわいい。
人妻とか俺得すぎて10の欲望がすべて人妻愛になる。
だが神子ちゃんには勝てない。

なまにくとしては最後の切り方これでよかったんだがどうだろうか?いいのか?いいか。
突っ込み場所発見したら通報お願いします。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032989025115967