どうしてこうなった。
 水面を見る度に俺はそう思う。
 今、水面には凶悪な形相が映っている。
 水面を見る度に、俺はあの瞬間の事を思い出す。
 「お主、転生してみんか」
 死んだ直後に、気付いたらそんな事を言われていた。
 自分が死んだ事は覚えている。
 信号を待ってたら、スピード出しすぎの車が向こうから走ってきた。
 若い奴が片手運転をしていて、危ないな、と思っていたら、猛スピードのまま変わりかけの信号を曲がろうとして見事にスピンして交差点に突っ込んだ。
 結果として、俺は車にぶつかられて、そのまんま猛速度を維持したまま背後のビルとサンドイッチになった。即死出来てりゃ楽だったのに、しばらく意識が残ってたせいで酷く辛かった。
 まあ、間もなく意識がブラックアウトした訳だが、あれで生きてたらそれこそ奇跡が山盛りで必要だろう。
 「はあ、転生ですか」
 だから、死んだのは納得出来るが……こんな展開は予想してなかった。
 まあ、死んだ後どうなるか、なんて誰も知ってる奴はいないんだ。こんなのがあってもいいのかもしれない。
 
 「そうじゃ。実はお主が死んだのがちょうどわしの孫が生まれたのと重なったのじゃ」
 ………なんだって?
 話を聞けば、この爺さんは一応神様に分類される存在らしい。
 神様に子供とか孫とか生まれるのか?ってのはとりあえず置いておいてだ。爺さんが言うにはジャストで死んだ奴に転生の機会を、生まれた奴に祝福を与える事にしたらしい。要はご祝儀みたいなもんだ、とか言ってた。……生まれた奴羨ましい。
 まあ、仕方ない。
 とりあえず話を聞けば、俺は記憶を持って生まれる事が出来るらしい。
 
 「とはいえ、もちろん条件はある」
 まず生まれる世界は元の世界とは異なる世界である事。
 同じ魂をそのまま同じ世界に送り込むと、歪みが生じる云々とか言ってたが、まあ、要はどうにもならないって事だ。
 何か希望はないか。
 そう言いつつ、爺さんが自分が管理してるという世界のリストを見せてくれた。
 俺の世界に似たような漫画とかがあれば、その世界にも行けるとか言ってくれた。
 が、だ。
 殆どろくなもんがなかった。
 世紀末世界だとか、絶滅戦争勃発中だとか、異界からの侵入者と絶望的な戦争中だとかそんなんばっかり。
 
 「……平和な世界ってないんですか」
 「ないのう。わしゃ基本が争いごと司どっとった神じゃし」
 だから、戦争とか争いとか闘いが多い世界が管理に入ってるらしい。
 ……あの元の世界も多い部類なのか。
 そんな中、どっかないか、と探してたら、一つ知った名前があった。『モンスターハンターに似た世界』。
 
 「……これどんな世界なんです?」
 聞いてみれば、モンスターハンターによく似た世界らしい。
 ただ、少し違うのはハンター達の中でもあんなゲームみたいにモンスターを狩れる奴はごく一部らしい。
 ……そりゃそうか。
 幾ら身体能力が高くても、運が悪かったなんて事はあるだろうし。
 そもそも、モンスターもゲームみたいにぽこぽこ出てこないというのがでかいらしいが……。
 そりゃそうか。
 ゲームなら古龍だろうが、クエストが一度出てくれば何回でも、それこそ何十回でも狩れるが、本来希少な古龍種だ。現実にはそんなにほいほい出てこない。
 当然、討伐経験も限られるから、如何に強いハンターといえど、実際に飛竜以上の種を狩った者は限られる、という事らしい。
 反面、飛竜を一度倒せば、その広大な縄張りの領域に人が新たに空白となった領域に飛竜が訪れるまでに街を作れるという利点もあるらしいんだが……。
 
 「して、何か希望はあるかの?」
 
 何でもかんでもという訳にはいかないが、一つや二つなら構わない、という事でとりあえず言うだけは言ってみる事にした。
 「……とりあえず強い体が欲しいですね。見た目は普通で筋肉むっきむきとかじゃないけど、誰にも負けないぐらい強い、そんな感じの。出来れば格好いいと尚更」
 これはモンスターハンター世界に行くというなら当然の話だ。
 だってそうだろう?折角モンスターハンターの世界に行くんだ!ハンターやってみたいじゃないか。
 でも、そうなると飛竜とかにも対抗可能な体が必要な訳で……でも、むっきむきの筋肉達磨じゃなんかなあ……って気がするし。
 あと、運があればより嬉しい、って事で付け加えてみた。
 だってさあ、駆け出しの時に古龍に運悪く出くわしました、じゃたまらんだろう?爺さんは快くOKしてくれて、そうして俺は転生した……。 
 ……ああ、確かに強い体に転生してくれたさ!
 けどな……人じゃないなんて誰が想像したよ!?
 おぎゃーと生まれてみて、初めて見た顔がごつい竜の顔だった俺の驚愕を考えて欲しい。
 びっくりしながらそれでも襲う様子はなく、むしろ愛情を注いでくれているのが分かったから、少しずつ落ち着いた。
 そうして周囲を見てみると……蒼色の鱗の竜と、緑の鱗の竜が一匹ずつ。
 瞬間分かった。……空の王リオレウス(亜種/父親)と陸の女王リオレイア(母親)だと。
 そして、改めて俺の体を見てみると、赤い体……そう、俺はリオレウスに転生していたのだ。
 その後は簡単に述べよう。
 爺さんに頼んだ通り運は良く、というべきか、いや、単純にこの辺はまだ人が立ち入ってなかったのだろう。それもまた運って事はおいといて、弟妹も無事に生まれ、育ち……。
 やがて、俺含む四匹の子供達、内訳はリオレウス2匹とリオレイア+リオレイア希少種の子供達は巣立ちした。
 今、彼らがどうしているかって?それは各自がそれぞれに親の縄張りから離れたから分からないな……。まあ、どっかで会えれば、その時は分かると思うが。
 さて、俺はリオレウスに生まれた。だが、強さは確かに破格だった。
 見た目は普通のリオレウスだ。
 だが……中身は魔改造リオレウスだった。
 パワーも、耐性も強靭さも、そしてゲームでいう所の特殊能力も全てが規格外だった。
 咆哮一つにしてもティガレックスの咆哮を超え、風圧は龍風圧に匹敵。ブレスはラージャンのビームを真っ向からの撃ち合いで粉砕して、相手を吹き飛ばす、といえばその度合いが分かるだろうか。  
 何で分かるかって?そりゃあ、運良く体感出来たからだ……この場合、古龍にまで出くわしたのは運悪くというべきなんだろうか?
 ま、空飛んでれば、行動範囲は広いから可能性はない訳じゃないだろうが……。
 ちなみにゲームではライバルとされてたラギアクルスとバトルした時には、あっさり勝利して獲物として持ち帰ったと言っておこう。 
 ……見た目とかからG級並だと思ったんだがなあ、こいつ。
 そうして、俺はある穏やかな気候の場所に巣を作った。ゲーム風に言えば、森丘に当たるんだろうか。もっとも、巣はゲームみたいな簡単に人が入れる洞窟じゃなく、空高い絶壁に開いた裂け目奥に広がる洞窟だったが……。
 ……人恋しさがなかった訳じゃないが、こんな姿で赴いた所で戦闘になるだけだろう。
 それに竜としての本能、竜生にさすがに慣れていたのもあったんだろうな……。いや、慣れないといけなかったというべきか。
 時折、侵入してくる奴もいた。
 何しろ、獲物は豊富、水も豊富となれば無理もない。だが、その全てに勝利して、この地域に君臨し続け……偶には火山やら密林、砂漠といった他の地域に行ったりもしつつ、それなりの時、きっと何十年かが過ぎた頃。
 
 人間がやって来た。
【あとがき】
見た目は通常のリオレウス
中身だけ魔改造です
弟妹達?出るかは不明です