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[27903] 【習作】ISFD~俺の生きる道~ (インフィニットストラトス ※一夏改変モノ)
Name: 改太◆853c263a ID:da7e6e21
Date: 2011/05/21 07:19
 どうも、初めまして改太です。昨今の時流に乗って、ISの二次創作なんて書きました。この作品を見る上で注意事項です。

①一夏のキャラが原作とちょっと(?)違います。
②ヒロインは今のところ未定です。
③作者はダルシムのドリルキックの真似をして骨折した経験を持つバカです。
④え? そんな奴が書いてるのって大丈夫なの?
⑤多分、大丈夫です。
⑥小学校の昼休みや、掃除の時間中に、二重の極みとか牙突とか天翔龍閃とか練習してた人なら大丈夫です。根拠はありません。

 というわけで以上の事を注意して読んで下さい。ちなみに⑥に関しては作者は、中学に入学してもやってました。



[27903] 第一話 フリーダムな新入生
Name: 改太◆853c263a ID:da7e6e21
Date: 2011/05/21 07:21
 『好きなように生きろ』

 俺こと織斑一夏が尊敬する人の言葉で、最も好きな言葉だ。

 だから俺はその様に生きてきたつもりだ。中学校の時、理不尽な理由で怒られて人の話を全く聞こうとしない教師の車のボンネットに大きく十円玉で『ボケ』と書いたり――大体、怒られて1ヶ月ぐらい経った頃にするといい――、全校集会で教壇の所にエロ本を置いてみたり、卒業文集で読書感想文を書いてみたりと、俺は自分が面白いと思った事は即実行して生きてきた。

 まぁその後、何度もお姉ちゃんと妹に怒られたけどな!

 誰だって自分の好きなように生きて、人生を思いっ切り楽しむ事が出来れば世の中きっと平和になるんじゃないだろうか。

 などと殊勝な事を3年に1回ぐらい考えながら俺は今日も俺らしく1日を送る。

 とりあえず今日は高校の入学試験。

 受ける高校の名前は私立藍越学園。俺がここを受ける理由は2つ。『学費が安い』という事と『就職先が安定してる』というまぁ不景気と就職氷河期の時代において何とも素晴らしい謳い文句だった。

 ちなみに俺、学校の成績はトップを維持している。理由は一つ。『成績が良けりゃ多少のやり過ぎも教師は目を瞑ってくれる』からだ。

 たとえば『一流大学確実なぐらい成績が良いが素行の悪い生徒』と『留年ギリギリ成績下位で素行の悪い生徒』だと教師の反応はまるで違う。えてして教師の目は後者に向くのだ。

 生憎、俺は『生徒に違いなんてない!』や『懲戒免職が何だ! お前を立派に更生させてやる!』や『お前達は腐ったミカンじゃない!』とか言うような熱血教師に会った事がない。とりあえず自分の生徒から一流大学を出して株を上げようとするリーマン教師ばかりだったので、成績で上位を保てれば多少の素行の問題は軽い注意で済んだ。

 うん、大人汚い。

 とまぁ俺は俺の生き方につまらない邪魔や茶々を入れたくないので、成績は学年上位を保つ。なので高校入試はハッキリ言って楽勝である。具体的に言うと、レベル12ぐらいでカンダタに挑む感じだ。

 あれ? 具体的に言ったつもりなのに逆に解りにくいぞ。しかも楽勝かどうか微妙じゃね、これ?

 しょうがない。別の例を挙げると、ジャギがアミバと戦うようなもんだ。あれ? アミバがジャギだっけ? つか、こいつ等どっちが強いんだ?

「ジャギかアミバか・・・アミバかジャギか・・・兄か天才か・・・仮面か偽者か・・・ジャギ、アミバ、ジャギ、アミバ、ジャギ、アミバ、ジャギ、アミバ、ジャギ、アミバ・・・俺の名を言ってみろうわらば・・・・・おや?」

 『ママ~。あのお兄ちゃん、ネタキャラの名前言いながら歩いてるよ~』、『しっ! 見ちゃいけません! ちなみにお母さんはジャッカルが割と好きよ』とかお約束な台詞を言われるであろう俺は、試験会場を歩いている間に道に迷ってしまっていた。

 ちなみに入学試験は去年に発覚したカンニング対策の為にその高校で行わず、多目的ホールを使用しての事となった。他の高校の入試も同時に行われている為、かなり広い場所を使用している。

 マ、マズイ・・・このままでは俺は『世紀末的な漫画の事を考えてて入試を受けれず不合格』という史上初の中学生になってしまう。

 ・・・・・・・・・それはそれでおいしいかかも。

 いやいやいや! 流石にマズいぞ。受験失敗して、中学留年なんてしちまったらお姉ちゃんに怒られる! 後、妹にまた馬鹿にされる!

「落ち着けイッチー。俺はやれば出来る子だ。こういう時こそ第六感を働かせろ。そうだ小宇宙(コスモ)を燃やせ! 目覚めろ俺のセブンセンシズ! あ、コレ六感じゃねぇや」

 俺は額に指を当てて受験会場を探る。余談だが、このポーズで瞬間移動の練習を小三の頃までしていたのは俺と君だけの秘密だ。誰だよ、君って。

「む!」

 ビビッと俺は感じた。前方にある扉。あそここそ俺が受ける私立藍越学園の試験会場だ。俺は職員さんに怒られるなどお構いなく、試験会場の扉に向かって走り、扉を開いた。

 何か『関係者以外立ち入り禁止』とか書かれた張り紙があったような気がするけど今の俺は視覚より直感を信じる!

 俺は未来に続く扉を思いっ切り開いた。



「右を見ても女子。左を見ても女子。前を見ても女子。後ろを見ても女子。上を向いても・・・空しか見えねぇや」

 後、下見ると地面しか見えないので、とりあえず前後左右は俺以外は全て女子ばかりだった。

 真新しい白い制服に身を包み、俺は巨大な学園に一歩足を踏み入れた。

 未来へ続く扉を開いた結果、俺は何故か私立IS学園に入学してしまった。

 IS学園と言うのは、IS――インフィニット・ストラトスを扱う人間を養成する世界で唯一の学園だ。

 ISとは一言で言えば『現在最強の兵器』だ。

 当初は宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーマル・スーツだった。しかし、宇宙で活動きても、宇宙へ進出する方は全くもって進まない。まぁつまり『デートで着ていくブランド物の服を買ったは良いが、電車に乗れずデートに行けなかった哀れな男』という事だ。うん、いまいち解らん。

 まぁ早い話が宇宙進出計画は頓挫。しかし、スーツ自体のスペックは高く、お偉いさん達は『兵器』としての転用を考えた。が、アラスカだかマラカスで『戦争ヨクアリマセェーン。平和ニ解決シマショー!』という様な話し合いが行われたらしく、ISは現在、『スポーツ』の枠に落ち着いている。

 でも空飛んでビーム撃って剣使ってミサイル防ぐISをスポーツで括れる筈がない。そんなのはただの建前で、どの国もISの研究を日夜進めてしっかりと軍事利用してるけどな。

 でもISには実は致命的な欠陥がある。

 俺の尊敬する人――師匠と呼んでもいい人――は、かつて言った。

 この世で女しか上手く扱えないものが三つある。『夜泣きした赤ん坊』、『童貞』、『IS』の三つだ、と。そう、ISは何故か女性にしか扱えないのだ。

 そう・・・俺が間違って入った部屋に置いてあったISを起動させるまでは。

「何でこうなるかなぁ」

 女にしか動かせない試験用のISを男の俺が起動させてしまった事は世界的に話題になり、テレビの取材が来たり、変な黒い服のおっさん達が来たりして、俺はこのIS学園に入学してしまった。その時、家族として妹――モザイクかかってたけど――のコメント。

『非常識な人だと思ってましたが、ここまで非常識だとは思いませんでした』

 と、全国ネットで俺が非常識な人間だと言いやがった。

 で、現在、世界でISを動かせる男は俺一人。当然ながらこの学園にいる人間は、教師も含めて全員女である。俺の事は『世界初のISを動かせる男』として既に認知されており、道行く女子達の視線は全て俺に集まってくる。

 生憎、俺にマゾッ気は無いので、視線に晒されても興奮はしない。だが、流石にこうも見られると気分の良いものではない。

「くそ・・・いっそ俺も女子の制服を着てくれば・・・」

「アホかお前は」

「む? 誰だ、人をアホ呼ばわりするのは!?」

 いきなり後ろから無礼な言葉を述べる人物に文句言ってやろうと俺は振り返った。

「! お、お前は!?」

 そこにいたのは、学園の制服を着て、長い髪をリボンでポニーテールにした女子だった。凛とした表情と佇まいは、まるで侍を連想させる。

「ひ、久し振りだな・・・い、一夏」

 そっと視線を逸らしながら俺の名前を呼ぶこの女子・・・間違いない。コイツは、俺の幼馴染。6年前、引っ越してしまったが、間違えよう筈がない。

「お前・・・チリトリぶほっ!!」

「箒だ!!」

 幼馴染の強烈なパンチが飛んできて、地面を転がる。地面に倒れる俺に向かって、幼馴染こと篠ノ之箒は、大股で歩み寄って来て胸倉を掴む。

「貴様、その呼び方で呼ぶのはやめろと昔言っただろう?」

「わ、悪い。久し振りに会ったから忘れてて・・・えっと・・・掃除機」

「箒だと言ってるだろうが!」

「いやでも他にもモップとか雑巾とかハタキとかあるし・・・」

「わざとか!? わざとなんだな!」

「でもまぁゴミ箱とかクズ籠を言わないだけ良心的と思わないか?」

「人の名前を間違って呼んでる時点で失礼だ!!」

 む。確かに一理あるな。だがまぁ今はそれより・・・。

「おい箒。注目されてるぞ」

「え? あ・・・」

 俺が目配せして箒も気付いたようだ。そう。今、俺達は周囲の生徒達から注目の視線を浴びていた。まぁこんな往来で男女が大声を張り上げていれば注目されるだろう。大声出してんの箒だけだけど。

 箒は手を離し、咳払いをすると俺を見据えて言った。

「そ、その・・・何だ。ひ、ひひ、久し振りだな・・・」

「お~。元気そうだな、箒。会えて嬉しいぞ」

「嬉し・・・!? ば、馬鹿! こんな人の前で・・・!」

「?」

 いや、そりゃ6年ぶりに幼馴染に会えたら嬉しいだろ。何で箒の奴、慌ててんだ?

「ふ、ふん!」

 箒は鼻を鳴らし、大股で歩いて行った。俺、あいつ怒らせるような事したか?

「しっかしまぁ箒が同じ学園とはねぇ・・・」

 だがちょっと考えれば、それも当然だと思う。何せ、あいつの姉ちゃんが姉ちゃんだしなぁ。

「っと。感慨に耽ってる場合じゃないな」

 初日から遅刻なんて流石に問題だな。中学の入学式で遅刻しかけて、体育館に自転車で突っ込んだのはいい思い出だった。後でお姉ちゃんに半殺しにされたけどな!




「先生。僕、席替えがしたいです」

 教室に入って俺は入って来た小柄で眼鏡をかけた童顔先生の山田真耶先生に申し出た。

「お、織斑君。まだ自己紹介もしてないのに・・・」

「先生、僕、目が良いんで後ろの席の人と変わりたいです」

 ちなみに俺と先生の現在の距離は1mもない。そう、つまり俺の席は、ど真ん中の列の最前席。教壇の真ん前である。当然だが、この教室に男子は俺一人。そして物珍しさからか教室中の女子の視線が集まってくるのを、ひしひしと感じていた。

「で、でもクラスが決まっていきなり席替えは・・・」

「じゃあ自己紹介するんで、その代わりに席替えを要求します」

「入学早々、教師に交換条件を求めないでください!」

「先生、俺にどうしろと言うんですか?」

「とりあえず自己紹介しますので、それまで待ってください。ね?」

 人差し指を立てて微笑む山田先生。う~ん、流石にそんな笑顔で言われては、俺も折れざるを得ない。あの人が言ってた男が究極に弱いものは『女性の笑顔』、『女性の涙』、『おかんの料理』、『エロ本』と言うぐらいだからな。何か俗物的なものが混じってる気がするけど、まぁ間違ってはいない。多分・・・。

 とりあえず出席番号順に自己紹介が始められる中、俺は何気なく自分の右側、窓の方の席を見る。そこには、先程、再会した幼馴染の箒が座っていた。箒も俺の視線に気付いてこちらを見たが、すぐにプイッと顔を窓の方に背けてしまった。

 くそ・・・箒のクセに俺をシカトするとはいい度胸だ。後で箒絞りの刑を6年ぶりに実行してやる。ちなみに箒絞りの刑とは、箒の腕を雑巾みたいに絞る、俗に言う雑巾絞りだ。単純に箒にするから箒絞りと呼んでいるだけだ。

「・・・・・くん。織斑一夏くんっ」

「はい、何でっしゃろ?」

 山田先生に呼ばれて返事をする。

「え? な、何で関西弁?」

「?」

「いや、そんな不思議そうな顔をされても・・・あの~。つ、次、織斑君の自己紹介の番ですよ。あの、『あ』から始めて、今、『お』の織斑君なのね。だからね、ゴ、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、駄目かな?」

「駄目と言われれば駄目。いいと言われればいい。だけど僕はノーと言える日本人になりたいです」

「え?」

「すいません。自分でも何言ってるか解んないです」

 勢いで適当に言ってみたが、たまに俺は自分でも何を言ってるのか良く解らん時がある。う~ん、ちょっとは考えてモノを言うべきだろうか?

 とにかく山田先生のご指名だ。自己紹介をするか・・・・いや別に順番回って来ただけで指名でも何でもないけど。

「え~・・・織斑一夏です。好きなおでんの具は大根です。以上」

 席を立って自己紹介して再び座る。直後、クラス中の女子がざわついて近くの席の連中と話し始めた。

「何で自己紹介でわざわざ好きなおでんの話を?」

「そうよね。普通は好きなものを言うはずよね。なのに何でおでんの具に絞ったのかしら?」

「そもそもおでんの具で一番美味しいのってコンニャクよね」

「え? 違うわよ。はんぺんよ」

「玉子でしょ、どう考えても!」

「あんた素人? 厚揚げ以外にあり得ないわ」

「牛スジの良さを知らないなんて人生の半分は損してるわ」

 あちこちでおでんの好きな具の話をする女子達。

 ちなみに俺の尊敬する人は、『美女の唾液の垂らした出汁をご飯にかけて食うのが旨い』と人として最低の発現をかましたりする。いや、あんま関係ないけど。

「おかしい・・・どうしてこうなった?」

「お前の所為だろうが、どう考えても」

 不思議に思っている俺だったが、いきなり頭を後ろから叩かれた。

「い・・・・! あれ?」

 痛い、と言う前に俺はある事に気付く。この一番痛い角度と絶妙な威力を俺は知っている。うん、何つーか物心ついた時から知っているようなこの感触は・・・恐る恐る顔を上げる。

「げえっ! 華雄!?」

「微妙過ぎるわ」

 パァン! また叩かれた。好きだけどなぁ、華雄。お茶漬けの次くらいに。

 いやでも・・・俺は再び顔を上げる。スラッとしたボディに、長い黒髪。切れ長の鋭い眼光に、黒いスーツが良く似合うこの女性・・・ってゆーか、俺の姉の織斑千冬こと千冬姉だった。

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「山田君、座布団ほぐ!!」

「お前は黙ってろ」

 山田と言う名前を聞けばお約束で言わなければならない俺のボケを千冬姉が出席簿で頭を叩いてきて黙らせる。

「諸君。私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言う事を良く効き、良く理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干15歳を16歳までに鍛え上げる事だ。逆らっても良いが、私の言う事は聞け。良いな」

 それってつまり『誰も俺に逆らうな!』って言ってるようなもんじゃん。つか、明日16歳になる奴はどうすんだ? 1日で鍛えるのか? ・・・・・・やりそうだなぁ、この人なら。

 俺が怪訝な顔をしているのを他所にクラス中からは黄色い歓声が湧いた。

「キャーーー! 千冬様! 本物の千冬様よ!!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園から来たんです! 北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様の為なら死ねます!」

 人気者だなぁ千冬姉。でもまぁ当然か。千冬姉は、第1回ISの世界大会『モンド・グロッソ』の優勝者だ。つまり世界最強のIS使いという訳なんだな、これが。しかも知人関係で、ISの事についても、そこらの技術者より詳しいし、良く考えりゃ教師としてこれ程、適した人はいないか。人格は別問題として。

 そんな人気者の千冬姉だが、当の本人は重い溜息を吐いた。

「毎年、良くもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 隠そうともしない容赦の無いお言葉。普通なら此処で生徒は心を折られたり、暴言教師と評価を下げたりするが・・・。

「きゃあああああああ!!! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

「でも時には優しくて~!」

「そして付け上がらないように躾をして~!」

「私、鞭で叩いて欲しいです~!」

「蝋燭でも構いません~!」

「ギャグボール・・・! ギャグボールが鞄の中に・・・!」

 このクラス、何か怖い。変態のるつぼか、ここは? クラスメイトに戦慄を覚えた俺は、ここから避難すべく立ち上がった。

「先生、僕身内が危篤なんで帰って良いですか?」

「身内を目の前に堂々と解る嘘をつくな!」

 パァン! また叩かれた。

「え? 身内ってもしかして・・・」

「織斑君って、あの千冬様の弟?」

「じゃあ世界で唯一男でISを使えるっていうのも・・・」

「ああっ! いいなぁ代わって欲しいなぁ!」

「私も織斑君叩きたいなぁ」

「あ、私、鞭持ってるわよ」

「私はどっちかって言うと叩かれたい・・・」

 やっぱこのクラス怖い。俺がもしドMになったら、このクラスの女どもの仕業だ。

「で、織斑。何でお前は自己紹介に、わざわざ好きなおでんの具なんて言った?」

「千冬姉も大根好きだよな?」

「ああ。熱々でホクホクの大根に出汁が染みて、これがまた日本酒に合う・・・って何を言わせる!!」

 パァン! また叩かれた。

「学校では織斑先生と呼べ!」

「はい・・・」

 僕のお姉ちゃんは怒りんぼです。



[27903] 第二話 織斑一夏という男
Name: 改太◆853c263a ID:da7e6e21
Date: 2011/05/23 04:14
「う~む・・・」

 高校初日の初授業を終えて休み時間。俺は何となく教室に居辛かった。
 ちなみにこの学園、ゆとり教育に真っ向から喧嘩を売ってるかの如く、入学式のある日から授業をするというスケジュールだった。
 で、休み時間だが廊下では他のクラスの女子やニ、三年の先輩がたむろっている。
 というか野次馬である。
 というか俺目当てである。
 というか世界で唯一ISを使える男の俺が物珍しいのである。
 というか、というかって言い過ぎである。
 後、であるで終わるのも多過ぎである。

「何か寂しい・・・」

 注目されているが、話し掛けて来る女子は皆無。多分、皆男子に免疫が無いんだろうな~。
 IS学園は世界でここしかない。で、ここに入学する女子は既にISの基礎知識を中学の時点で学んでいる。更にISは女しか使えないので、つまりこの学園にいる女子はまず間違いなく女子校出身だ。だって男のいる学校でISの授業なんてある筈ないじゃん。
 んでもって女の園出身の女子ばかりだから、俺みたいな男は珍しいから好奇の対象になってしまっている。
 つまりアレだ・・・珍獣扱いだ。エリマキトカゲやツチノコみたいな感じ。

「暇だな~・・・練りケシでも作るか」

 中学時代、良く退屈な授業の時は練りケシを作って遊んだものだ。いつの間にか消しゴム全部消費して、野球ボールを作ったら先生に感心された。すげー苦い顔してたけど。

「うん、何だか久し振りに燃えて来た・・・オラ、わくわくっすぞ」

 俺の芸術家魂に火がついた! 早速、作業に取り掛かろうと消しゴムを取り出そうとしたその矢先だった。

「ちょっと良いか?」
「ん? 箒か」

 いきなり話しかけられたので顔を上げると、そこには箒が仏頂面で立っていた。

「ちょっと待て」
「?」
「これから練りケシ作って遊ぶ」
「小学生かお前は!」

 失敬な。つい最近までやってたぞ、俺は。ってか今からする所だし。

「良いからついて来い」

 箒のクセに俺の遊びを邪魔するとはいい度胸だが、俺は大人でジェントルメンだ。仕方ない。ここは6年ぶりに再会した幼馴染の顔を立ててやろう。
 箒の顔を立てて、更に席を立った俺は、箒と教室の外に出る。廊下に出ると、集まっていた女子達が一斉に左右に分かれた。おお、モーゼみたいだ。
 とまぁ廊下に出て、皆が離れたのは良いが、しっかり聞き耳は立ててるなぁ。別に内緒話とかするわけじゃないけどな。

「そういや箒。お前、去年の剣道大会優勝したんだな。おめでとさん」
「・・・・・・・」

 そう言うと、箒は驚いた様子で俺を見てきた。

「・・・・・・何で知ってる?」
「妹に聞いた。あいつもまだ剣道やってるからな」
「秋七(あきな)か・・・」
「しかし箒が全国優勝な~。お前、俺に一度も勝った事ないのにな」

 箒の家は剣術道場で、俺も千冬姉も秋七も通っていた。その頃の箒は、俺に負けっ放しでしょっちゅう俺に勝負を挑んで来ていた記憶がある。

「今やったら私が勝つ」
「だろうな~。俺、剣道やめて結構経つし」

 めんどいからやらんが。
 で、俺の言った事が気に食わんのか箒はますます怖い目で睨んで来た。

「ったく。お前は折角久し振りに会ったのに、そんな顔しか出来んのか?」
「悪いか?」
「ああ、悪い。気分悪い」
「な・・・!」
「俺は久し振りにお前に会えて嬉しい。けど、ずっとお前が仏頂面だと気分が悪い。何か文句あっか?」

 別に昔みたいに仲良しこよし、一緒にお手手繋いで帰りましょうなんて展開は望んでないが、折角、再会したのに箒は、ずっと不貞腐れたままだ。気に食わない事があるなら言えば良い。まだ15年しか生きていないけど、不満を溜め込んで良い事は無いのは知っている。
 だから俺は自分のしたい事はするし、思った事は言う。だから俺は今の自分の気持ちを正直に箒にぶつけた。

「も、文句など・・・わ、私だって、その・・・う、嬉しくない事は・・・ない」

 仏頂面から一転、頬を染めて照れ臭そうに言う箒。
 何だ。嬉しいならもっと笑えば良いのに。少なくとも仏頂面よりもずっと良い。

「そか。そりゃ良かった。じゃ、そういう事で」
「って待て! も、もう戻るのか!?」

 教室に戻ろうとしたら呼び止められた。

「ああ。練りケシ作って遊ぶつもりだったし」
「お、お前は私と練りケシ、どっちが大事なのだ!?」
「そんなカツ丼とカツカレー、どっちが好きかみたいな質問すんなよ。難しいじゃねぇか」
「難しくない! 断じて難しくない!」

 すげー怒って箒は詰め寄って来た。

「じゃあ箒は、俺と期間限定海の幸盛りならどっちが大事だよ?」
「そんなのお前に決まってる!」
「は?」
「・・・・・・・」

 暫く時が止まった気がしたが、突然。箒の顔がボン、と赤くなった。すると箒は両手と首を大袈裟に振った。

「あ、い、いや! 違うぞ! た、食べ物と人を比べてはいけないという意味だ! だ、だからだな! べ、別にお前が一番大事とかそういう意味ではない! 断じて違う! いいな! 勘違いするな!」
「ああ、うん。そりゃまぁそうだ」

 確かに言われてみれば俺も箒と練りケシを比べてしまったが、こいつの言うように人と物を比べるのは良くないな。うん。
 しかし箒の奴、そこまで念押ししなくても充分解ったっちゅうに。

「どっちにしろ休み時間じゃ大した話も出来ないだろ。とっとと教室戻るぞ」
「む・・・わ、解った」

 主導権を握ってるようで何だかんだで最終的に俺の言うことを聞く箒は、やっぱり変わっていなかった。




「――――であるからして」
「すー」
「ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり」
「すかー」
「わ、枠内を逸脱したIS運用をした場合は」
「すこー」
「け、刑法によって罰せられ・・・あ、あの、織斑君」
「すひゅ~」

 山田先生の授業を聞きながら心地良い睡眠を貪る俺。現在、夢の中の俺はフルー○ェ(イチゴ味)のプールをバタフライで泳いでいる。

「せ、先生、最前列の席でここまで堂々と寝ている生徒は初めて見ました」
「山田先生、変わろう」
「あ、織斑先生」
「起きろ馬鹿者」

 パン!
 お姉ちゃんのキツい目覚ましで俺はフルー○ェまみれの夢から目が覚めた。

「・・・・・・フルー○ェが食べたくなった」
「貴様、授業を何だと心得ている?」
「昼飯までの準備時間」
「歯を食い縛れ」

 クリップボードを大きく振り被る千冬姉。勢い良く振り下ろして来る姉の攻撃を、俺は咄嗟に教科書で防御する。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・しっ!」
「甘い!」

 連打でクリップボードで攻撃して来る姉の攻撃を、俺は尽く防御する。

「織斑! 教科書は防御する為のものではないぞ!」
「クリップボードだって攻撃用じゃねぇよ!」
「教師の攻撃は防御してはいけないと法律で決められている!」
「んな法律聞いた事ねぇ!」
「後、姉の攻撃を防御した弟は死刑と憲法一条で定められている!」
「一条から弟の人権無視した憲法なんざねぇよ!」
「あ、あの織斑先生、織斑君! ふ、2人ともやめてください!」

 激しい姉弟の攻防を見ていた山田先生が止めに入る。少し息を切らした千冬姉が攻撃の手を止め、俺を睨みつけて言った。

「織斑、教科書三十四ページの内容を言ってみろ」
「シールドバリアーの運用的な活用方法」
「六十七ページ」
「飛行時における慣性制御」
「二百五十四ページ」
「拡張領域に装備できるパッケージ(遠距離武器・実弾編)」

 質問にスラスラと答えると、千冬姉が苦虫を噛み潰したような顔をする。弟を何て目で見やがる。

「・・・・・・中身、全部覚えたのか?」
「はい! 授業中、堂々と寝れるように努力しました! これなら先生も安心でしょ?」
「織斑君、努力の方向性が果てしなく間違ってます!」

 おかしいな。中学の時は先生が「お前は凄い奴だなぁ。感心するぞぉ」と言っていたのに・・・明後日の方を見ながら。
 千冬姉は溜息を吐くと、背中を向けた。

「もう良い。寝たければ好きにしろ」
「ちょ、ちょっと織斑先生・・・」
「ただし、私は明日からペンチを持ってくる」
「何で?」
「・・・・・・足も合わせれば二十回か・・・」

 これからは真面目に起きて授業を受けようと俺は固く誓った。




「ちょっとよろしくて?」
「よろしくてよ!」
「は?」
「ん?」
「な、何であなたが不思議そうな顔をしますの?」
「解りません」

 ニ時間目の授業が終わって休み時間。十円玉を縦に重ねて遊んでいると、長い金髪の生徒が話し掛けて来た。何か珍しい話し方をして来たので俺もそれに乗って返したが、良く解らなくなった。
 で、俺に話し掛けて来た奴はというと、ちょっとロールした金髪に、白人特有の白い肌と青い瞳。腰に組んでいる手は実に高圧的なのだが、それが様になっている辺り、高貴な印象を窺わせる。

「アンタ誰?」
「わたくしを知らない!? それ本気で言ってますの!?」
「俺はいつだって本気だ」

 面倒な事は手を抜くが!

「わたくしはセシリア・オルコット! イギリスの代表候補生にして、入試主席ですのよ!」

 ふむふむ。代表候補生か。それなら、この偉そうな態度も頷ける。ISは女しか扱えないという事で、現代社会で女性の地位は男性よりもかなり高い。完璧な女性優遇、女尊男卑社会だ。で、女性もまた男性が自分達より下と見ている連中が多いので、この目の前の奴みたいに尊大な態度を取る奴は多い。
 で、更にISは名目上はスポーツ競技だが、その国の軍事力でもある。そんでもって、各国には、ISを使う国家代表というのがいる。まぁ要はその国で一番のISの使い手がいて、代表候補生は文字通り、その候補というわけだ。

「で。その背尻悪さんは俺に何の用だ?」
「・・・・・・・気のせいか、今、わたくしの人生において凄まじく不名誉な呼ばれ方をされた気がしますわ」
「女性の背から尻にかけてのラインは、男の夢へと続く道である、と昔どっかの偉い人が言ってたような言ってなかったような」
「あなた、わたくしをバカにしてますの!?」
「いや、たまたま昔読んだ本の一説を思い出しただけだ」
「何でこのタイミングで思い出して言うのか、本当にそんな本があるのか小一時間問い詰めてやりたいですわ」

 確か自費出版したけど、全然売れなかったと言ってたな~。
 セリシアさんとやらは、疲れた様子で髪をかきあげて言って来た。

「全く。唯一、男でISを起動させたというからどんなのかと思って来てみれば、とんだ期待外れですわ」
「一体、俺の何に期待してたんだ?」
「ふん。まぁでも、わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」
「あんたの優しさで喜ぶのはマゾかMぐらいだ」
「マゾもMも一緒ですわ!」
「ちなみに俺はどっちかって言うとSなんだけど」
「聞いてませんわよ!」

 俺の発言を聞いて、クラスメイトの何人かが頬を染めて、ガッツポーズとかしてるのは何故だろう?

「ISの事で解らなければ、まぁ泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一、教官を倒したエリート中のエリートですから」
「教官なら俺も倒したぞ」
「・・・・・・・は?」

 セシリアさんが目を点にする。クラスメイト達も驚いた顔で俺を見てくる。

「いや、『アレは何だ!?』と他所に注意逸らしてる間に、一発打ち込んだら終わって・・・」
「「「「「「汚っ!!」」」」」

 失礼な。効果的な戦術と言って欲しい。まぁ俺も、あんな幼稚な手に引っ掛かるとは思わなかったが・・・キョロキョロしてた教官の山田先生がちょっと可愛かった。

「そ、それで、恥ずかしくありませんの!?」
「・・・・・・(ぽっ)」
「そこで何で頬を染めるのですか!?」

 恥ずかしくないかと聞かれて、つい昔の恥ずかしい思い出が蘇ってしまった。
 と、そんな事をしている内に休み時間の終了を告げるチャイムが鳴った。

「ま、また後で来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」
「・・・・・・ふ」
「な、何で意味ありげにニヤリと笑うのですか!?」
「さて、何故かな?」

 実は特に意味は無かったりするのだった。



「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 一、二時間目と違って、山田先生ではなく、千冬姉が教壇に立って授業をする。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」

 途中で千冬姉が思い出したように言う。

「クラス代表者とは、そのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席・・・まぁクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで」

 ふむ。つまり・・・面倒な事だと言うのは良く解った。面倒ごとに手を抜く事に関しては、神懸り的とご近所でも評判だった俺だ。こういう時は適当に誰かが決まるまで暇潰ししておくのがベストだ。
 良し、パラパラ漫画でも描いて時間を潰そう。俺はクラス代表が決まるまで、ノートの端っこにパラパラ漫画を描く事にした。

「はいっ! 織斑君がいいと思います!」
「私もそれがいいと思います!」
「織斑君に一票!」
「寧ろ織斑君に!」
「ってか織斑君しかいないと思います!」
「――――――だ、そうだが織斑?」
「へ? 何が?」
「代表者候補だ。推薦でお前が挙がってるぞ」
「へ~」
「・・・・・で? お前は何してるんだ?」
「パラパラ漫画」
「そうか。楽しいか?」
「割と」
「何を描いてるんだ?」
「犬の散歩をしてる人が、足を踏み外して崖から落ちて行くシーン」
「楽しいのか?」
「実は余り楽しくない」
「そうか」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・って俺がクラス代表!?」
「遅い!!」

 パパァン!
 ニ連続で叩かれた。超痛い。

「さて他にいないか? いないなら、このバカが無投票当選だぞ」
「ちょっと待った先生! 誰がバカだって!?」
「織斑君、そこに食いつきますか」
「お前以外に誰がいるかバカ? というか座れバカ。黙ってパラパラ漫画してろバカ。後・・・バカ」

 たまにこの人と本当に姉弟なのか疑う時がある。古今東西、ここまで弟をバカと連呼する姉はそうはいないだろう。俺のガラスのハートはもう崩壊寸前だった。

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 その時、机をバンと叩いて異議申し立てをする人物が一人。おお、セシリアさんではないか。良し、行け。俺は全力で君を支援するぞ!

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと、そう仰るのですか!?」

 あれ? 何気に俺、罵倒されてね?

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由でこんなバカ・・・いえ、バカにされては困ります! わたくしは、このような島国までIS技術の修練に来ているのであって、バカの下に立つ気は毛頭ございませんわ!」

 うん、俺のガラスのハート、完全に砕けたヨ。バカって言い直そうとして、結局バカって言ってるし。

「いいですか? クラス代表は、実力トップがなるべき・・・そしてそれはわたくしですわ!」
「なるほど。確かにオルコットの言う事は尤もだ。だが、それならこのバカが代表でも何ら問題は無いな」
「え? ど、どういう事ですの?」
「コイツの実力はクラスでトップという事だ」
「な・・・!?」
「納得出来んか?」
「出来る筈ありませんわ!」
「なら論より証拠。実戦で試してみるといい」
「望む所ですわ!」
「織斑も構わんな?」
「・・・・・・・・・」
「あ、あの織斑君?」
「ねぇねぇ。僕ってバカなのかなぁ?」
「何、子供っぽく言ってキャラ作ってるんだ。キモいぞ」

 パァン!
 千冬姉のクリップボードがまた炸裂する。恐らく、千冬姉のISはクリップボードだ。しかもメイドインジャパンと来たもんだ。

「と、いう訳で勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑、オルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」
「え? 何? 何なの? What?」

 一体、俺の意識が飛んでる間に何があったと言うのだ?



「良し! 放課後だ!」

 放課後、漸く授業が終わって俺は席から立ち上がる。何か知らない間に俺とセシリアさんが、クラス代表の座を懸けて争うことになったらしい。面倒なので辞退しようとしたけど、セシリアさんが怒って『逃げるなんて許しませんわ!』と言って聞かなかった。俺、何か怒らせるような事したかなぁ?
 身に覚えの無い難癖を付けられて決闘する事になってしまったが、まぁ一週間あれば向こうの怒りも収まるだろうし、適当に流せば良いだろう。

「さて帰るか」

 ちなみに放課後だと言うのに教室の周りには、相変わらず廊下には俺目当てで野次馬な生徒達で溢れ返っている。昼休みになると、食堂に全員付いて来るし、どこに行っても注目される。何つーか凄い息苦しい。

「ああ、織斑君。まだ教室にいたんですね。良かったです」
「はい?」

 呼ばれて振り返ると、山田先生が書類片手に教室に入って来た。

「えっとですね、寮の部屋が決まりました」

 そう言って、部屋番号の書かれた紙とキーを渡す山田先生。

「Why?」

 受け取りながら思わず英語で聞き返す俺。IS学園は、その性質上、生徒の保護目的として全寮制となっている。これは、この学園があらゆる国の干渉を受けないという事から、こうして生徒の安全を確保する為の措置だ。いや、それはまぁいいんだけど・・・。

「俺、確か一週間は自宅から通うんじゃなかったっけ?」
「そうなんですけど事情が事情なので一時的な処置として、部屋割りを無理矢理変更したらしいです。織斑君、その辺りの事って政府から聞いてます?」

 最後の方は俺にだけ聞こえるよう耳打ちしてきた。
 俺が受験の日にISを起動させてしまった後、自宅にはマスコミや各国大使や遺伝子工学の研究者とか色んな連中がやって来た。すげーウザかったので、家の前にブービートラップ仕掛けて、何日かすると何か黒い服着たオッサン達が倒れてた。邪魔だったからゴミ捨て場に、燃えるゴミと一緒に置いて来たけど。あの後、千冬姉にすげー怒られた。

『お前はどこでブービートラップなんて覚えた!?』
『悪戯に使えると思って・・・』
『兄さん、そういう事覚える前に、もっと覚えないといけないのあると思うけど・・・』
『九九とか?』
『『覚えてないの!?』』

 冗談のつもりだったのに、何故か姉と妹は本気で驚いていた。俺の学校の成績は良かったの知ってる筈なんだけどなぁ。あ、でもたまに七の段で詰まる時があるなぁ。

「そう言う訳で政府特命もあって、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。一ヶ月もすれば、個室の方が用意できますから、暫くは相部屋で我慢してください」
「はぁ・・・まぁそれは良いんですけど、荷物取りに帰らないといけないんで今日は帰っていいですか?」
「あ、いえ、荷物なら・・・」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え」

 いつの間にか来ていた千冬姉が凄く恩着せがましそうな顔で言って来た。

「まぁ生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
「え? 机の引き出しに入れておいたワイヤーと十得ナイフとコショウ爆弾と改造エアガンと、天井裏に隠しておいたエロ本は?」
「お前どんな生活を送る気だ? あ、ちなみに天井裏にあった本は全てゴミに出した」

 な!? ひ、酷い・・・思春期真っ盛りの男の子の性書・・・じゃなくて聖書を燃やすなんて! ・・・・・・まぁいいや。殆ど弾から借りパクしてたヤツだし。俺の本命は壁紙で偽装して、壁に縫い付けた一級品だ。そうそう見つかりは・・・。

「ああ、それと壁に偽装してあった本は燃やしておいたぞ」

 俺の姉は悪魔だ。

「じゃ、じゃあ時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど、えっと、その・・・織斑君は今のところ使えません」
「え、何でですか?」
「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
「あー・・・そっか」

 そういやここって俺以外に女子しかいないんだった。

「流石にまた女装して風呂入るのも難しいしな・・・」
「え? あの、それってどういう・・・」
「いえね。中学時代、修学旅行で男子どもが女子風呂覗きに行こうとしたんですけど、それじゃあ時代遅れだと思って、女装して堂々と女風呂入ったんですよ。いや、意外と気付かれないもんですね。あはははは」
「ほお?」
「・・・・・・・あ、ヤベ」

 千冬姉にもバレてない数少ない俺の戦績をつい口走ってしまった。ひい! 怒ってる! 千冬姉、物凄い怒ってる!

「聞いた?」
「ええ、織斑君、女装して堂々と女子とお風呂に入ったそうよ」
「も、もしもの事を考えて、ちゃんと体を綺麗に洗わないと」
「そうね。後、防水カメラも用意しないといけないわ」

 何かちらほら聞こえるクラスメイトの発言が妙に怖い。

「織斑・・・その話、詳しく聞かせて貰おうか?」
「ゴ、ゴメンなさい・・・わ、私、一人でお風呂に入るの寂しくて(超裏声)」
「わ、織斑君、女の子の声みたいです」
「初めまして。織斑一夏子です。よろしくお願いします(超裏声)」
「ふん!」
「あべし!」

 千冬姉の黄金の右ストレートは健在で、正確に俺の顎を狙って来た。



「えーとここか。1025号室」

 砕けたのかと錯覚してしまうぐらい痛い顎を擦りながらメモに書かれた部屋の扉の前に立ち、鍵を差し込む。
 ガチャ。

「あれ? 開いてる」

 もう誰か入ってるのかな?
 中に入ると、まず目に入ったのは大き目の二つ並んだベッド。そこらのホテルのものより大きい。これが税金で作った力か。とりあえず荷物を床に置いて、ベッドに腰掛ける。あ、意外とフカフカだ。

「誰かいるのか?」

 突然、奥の方から声が聞こえた。妙に反響した声だ・・・そう。まるで風呂場のドアの向こうからの声みたいだ。

「・・・・・あれ?」
「ああ、同室になった者か。これから一年、よろしく頼むぞ」

 声がクリアになる。どうやらドアの向こうから出て来たらしい。

「こんな格好ですまないな。シャワーを使っていた。私は篠ノ之・・・」
「箒」

 シャワー室から出て来たのは、今日再会した幼馴染だった。シャワーを浴びていた箒は、俺が女だと思ってたのか、バスタオル一枚を巻いた姿だった。うわ、箒の奴、暫く見ない間に成長したな・・・主に胸が。千冬姉よりデカくね、アレ?

「・・・・・・・一夏?」

 キョトンとした様子から俺の名前を言う箒。マズい。ここは何とかして誤魔化さねば。誤魔化すことにかけては天才的だと、近所の園児達から尊敬の眼差しを受ける俺だ。これぐらい容易い。

「コホン。初めまして。同室になった織斑一夏子です(超裏声)
「チェストオオオオオオオオ!!!!!!!」

 ニコリと笑いかける俺に箒は、自分の鞄から伸びていた木刀を掴んで斬りかかってきた。って、危ね!
 紙一重で避ける俺。

「お、落ち着け箒! そうだ! 掌に人の字を書いて飲んで・・・」
「こっちを見るなああああああああ!!!」
「見てなきゃ何されるか解んねぇだろ!!」

 今度は突きを放ってきた木刀を、顔を横に逸らして避ける。こ、こいつ今、正確に眼球狙ってなかったか!?

「な、何でお前がここにいるんだ!?」

 ブン!

「そりゃ俺もこの部屋だからだよ!!」

 ヒュッ!

「何でだ!?」

 ブン!

「先生が言ったからだ!!」

 ヒュッ!
 箒の剣戟を避け続ける俺だが、マズい。このままだと箒の激しい動きで、バスタオルが肌蹴る。それだけは阻止しないと。俺は、箒が木刀を振り上げた瞬間、箒の手首を掴んでそのまま捻って、木刀を落とさせる。更に背後に回り込んで、箒の片腕を捻って、片手で口を塞ぐ。

「むぐ!?」
「落ち着け箒。まずは落ち着いて話をしよう」

 ガチャ。

「篠ノ之さ~ん。何か今大声聞こえたけど何かあ・・・」

 さっきの箒の大声を聞いたんだろう。女子が一人、扉を開けて固まった。
 ちなみに現在、この部屋の光景は・・・。
 裸にバスタオルを巻いただけの箒。
 その箒の腕を背中で捻り、後ろから口を塞いでいる俺。
 あれ? 何か俺、犯罪者っぽくね?

「え~と・・・うん。そういうプレイもありかな・・・み、皆にも言っておくわ」

 バタン。
 微妙な理解のされ方をして、扉が閉められる。

「ま、待て待て待て待て!! 違う! これは違うぞ!!」
「ってうぉい箒! お前、服着ろ服ーーー!!」
「来るなーーー!!」
「げはっ!」

 箒を追いかけようとした所で彼女の強烈なローリングソバットが炸裂する。微妙に見えそうで見えなかったのが悔やまれた・・・。



 その後、何とかさっきの女生徒の誤解を解き、箒は寝巻き――浴衣――に着替えて俺と反対側のベッドに腰掛けている。

「お前が私の同居人だと?」
「そうみたいだな」
「ど、どういうつもりだ?」
「は? 何が?」
「だ、男女七歳にして同衾せずという言葉を知らんのか!? 常識だぞ!」

 それいつの時代の常識?
 だがまぁ十五歳の男女が一緒の部屋で住むのは問題かなぁ。

「お、お、お・・・」
「お?」
「お前から希望したのか・・・・? 私の部屋にしろと・・・」
「いや、先生から言われたからこの部屋に来ただけだ。さっき言っただろ?」

 まぁ混乱してて聞いてなかったと思うが・・・。
 俺が答えると、箒は何故か渋面を浮かべた。

「そうか・・・」

 何でか落ち込む箒。怒ったり、しょんぼりしたりと良く解らん奴だ。

「だが決まってしまったものは仕方が無い。その・・・い、一緒に暮らす上でのだな・・・き、決まりとかあるだろう・・・」
「ああ、そうだな。とりあえず俺のことは気軽にイッチーと呼んでくれ。俺もお前のことを箒と呼ぶからさ!」
「そんなのよりもっと優先すべき事があるだろう! 後、お前は普通に箒と呼んでるだろうが!」

 おお、これは盲点だった。箒は疲れた顔で溜息を吐く。

「まずはシャワー室の使用時間だ。私は七時から八時。一夏は八時から九時だ」
「え? 俺早い方がいいんだけどなー」
「わ、私に部活後そのままでいろと言うのか!?」
「部活? ああ、剣道部か」
「そ、そうだ」
「でも部室棟にシャワーぐらいあるだろ」
「わ、私は自分の部屋で無いと落ち着かないのだ!」

 むう。譲らんな箒の奴。だが俺も風呂好きじゃそこらの素人には負けないぜ。俺だって早い時間にシャワーがしたい。出来れば箒と同じ七時から八時・・・・お、そうだ。

「素晴らしい名案があるぞ、箒!」
「何だ?」
「俺が夜の七時から八時に使って、お前が朝の七時から八時にシャワーを使えば万事解決じゃないか、うん!」
「アホか!!」

 ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て万有引力を発見したぐらいの俺の偉大な閃きをコイツはアホの一言で済ませやがった。

「ん? そういえば箒。ちょっと気になったんだが・・・」
「今度は何だ?」
「いやな。この部屋ってトイレないよな?」
「ああ。各階の両端に二ヶ所あるだけだな」
「当たり前だけど、全部女子トイレだよな?」
「ああ・・・・・・そうだな」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・(ちらっ)」
「何故、ベランダを見る?」
「いや、立ちション・・・」
「死ねぇ!!」
「うお!?」

 いきなり木刀を振り下ろして来た箒の攻撃を回避する。

「ま、待て! 女子トイレでするより良いだろうが!」
「当たり前だ! だが、乙女の部屋のベランダでするなどどういう神経してるんだ!」

 普通、乙女は『死ね』と言いながら木刀は振り回さないと思う。

「じゃ、じゃあお前は俺が膀胱炎になってもいいと言うのか!?」
「・・・・・・・」
「否定しろよ!」

 俺の幼馴染は暫く会わない間に冷たくなってしまった。
 だが俺もこのまま何度もどつかれて終わる訳にはいかん。丁度、箒の鞄から竹刀が見えたので、対抗する為にソレを引き抜く。

「あ・・・!」
「さあ来い!!」

 片手に竹刀を持って構える俺。が、箒は何故か固まって顔を赤くし、口を金魚みたいにパクパクさせていた。

「ん?」

 そこで俺も竹刀の先端にあるものが引っ掛かっていることに気が付いて、手に取ってみる。大きな穴が一つに、小さな穴が二つ。小さなリボンの飾りが付いている純白のコレは・・・。

「か、か、か、返せーーー!!!」

 顔を真っ赤にしたまま、箒は木刀をベッドに投げ捨てて竹刀の先端のモノを奪い取る。アレってまさか・・・。

「箒・・・」
「な、何だ?」
「・・・・・・パンツ、するようになったんだな」
「ずっと昔からしとるわーーーーーー!!!!!!!!!」

 どごすっ!
 女の子から踵落としを受けたのは初めてだった。




「と、いう訳なんだ」
≪兄さん、それ普通に兄さんが悪いから≫

 俺は携帯で妹の秋七に今日の事を話していた。今日は普通に家に帰る予定だったが、いきなり寮で生活することになったからな。まぁその辺の連絡は千冬姉が既にしてたみたいだから驚いてないけど。

「けどビックリするよなぁ。千冬姉が先生だし、箒と一緒の部屋だし・・・」
≪箒ちゃんは私も驚いたけど、姉さんのことは知ってたから別に驚かないよ≫
「・・・・・・は?」

 おい、ちょっと待て。今、この妹は何て言った?

「おい、秋七。お前、千冬姉がここで教師してたの知ってたのか?」
≪うん≫
「何で!?」
≪姉さんに聞いたから。『何の仕事してるの?』って。そしたら普通にIS学園で教師って言ってたよ≫
「な、何で教えてくれなかったんだよ!?」
≪だって姉さんに口止めされてたんだもの。兄さんには絶対に教えるなって≫
「あ、あの鬼姉・・・」

 以前、俺が質問したら『金を稼ぐ仕事だ』とかいう小学生みたいな答え方しやがったくせに・・・やっぱり一度、DNA鑑定をしっかりして貰うべきだろうか。

≪にしても女だらけの学校に入学して、幼馴染と再会かぁ・・・兄さん、何のギャルゲーの主人公してるの?≫
「違うからね。お兄ちゃん、一日目にして何度か死にそうな目にあったからね。ギャルゲーの主人公だったら、もっと美味しいシーンがあってもいいと思うんだよ」

 何せ今も死にそうな目にあってる最中だし。

≪ところで兄さん。箒ちゃん怒らせて、ちゃんと謝ったの?≫
「ああ・・・部屋に入れて貰えたら謝ろうと思う」

 その日、ベランダから見える星空は綺麗だった・・・・寒かったけど。



[27903] 第三話 一夏vs千冬
Name: 改太◆853c263a ID:4a5d797d
Date: 2011/06/01 09:35
「なあ」
「・・・・・」
「なあなあ」
「・・・・・・・・・」
「なあなあなあなあなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「なあなあなあなあなあなあなあなあ・・・さて、私は今、何回『なあ』と言ったでしょう?」
「十七回」
「おお、正解」

 入学式翌日の朝八時。一年生寮の食堂にて繰り広げられる俺と箒の会話。流石は俺の幼馴染。引っ掛けにもかからなかったか。
 しかし箒は、ずっと不機嫌なままだ。一応、同居人のよしみという事で(一応、言っておくが同居人のヨシミさんとか言う意味ではないぞ。誰だよ、ヨシミさん)、同じテーブルで飯を食っている。折角、俺が空気を読んで会話してるのに、箒は相変わらず素っ気無い。
 ちなみに俺の朝食は和食セット。大盛りご飯に納豆、鮭の切り身と味噌汁。そして浅漬けだ。中々に鮭は塩味が利いていて美味い。
 だが、これだけ美味い飯も隣で、ずっと不機嫌なツラをしている奴がいると旨み半減だ。

「なあ箒。まだ怒ってんのか? あ、これで十八回目だ」
「怒ってない」
「怒ってんだろ。別にパンツに黄色い染みが付いてたのなんて見てなぶほ!」
「綺麗なヤツだ、アレは!!」

 箒の右ストレートが直撃し、椅子から倒れる。しまった失言だったか・・・でも茶色い染みなんて食事中に言うべきじゃないしなぁ。

「なあ箒」

 本日十九回目。

「な、名前で呼ぶなっ」
「・・・・・・・・・・・・・・お前、名字何だっけ?」
「それを本気で言ってるのなら、この箸がお前の眼球を貫く事になる」
「篠ノ之野さん」

 ぐさっ。

「目がああああああああああああ!!!!!!」
「喜べ。箸だと汚れて食事できないから、指にしてやった」

 箸も指も目潰しにゃ変わんねぇよ!! 

「あ、あの織斑君」
「んお?」

 のたうち回っている俺の所に誰かが声をかけてきた。目を擦って何とか見えるようになったので、声をかけられた方を見ると、トレーに朝食を載せた女子が三人立っていた。

「あの、隣いいかな?」
「ああ、別に良いけど」

 さっき俺の血が飛んだような気がするけど、それは黙っておこう。三人が笑顔で席に座ると共に、周囲からはざわめきが。

「ああ~っ、私も早く声かけておけば良かった・・・」
「まだ、まだ二日目。大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」
「そうよ。調教は時間をかけてじっくりやるものよ」
「でもでも昨日の間に部屋に押しかけた子もいるっていう話だよ!」
「何ですって!?」

 一部怖い台詞が聞こえたが、最後の方は間違っていない。何せ昨日だけで一年生が八名、二年生が十五名、三年生が二十一名自己紹介しに来た。そんなに来て、いざ『私のこと覚えてる?』とか言われたら、答えれると思うか? もし答えられるなら俺はこの学園を辞めて学者になる。

「うわ、織斑君って朝すっごい食べるんだ~」

 俺の隣に座った三人の女子の一人が、俺のメニューを見て驚く。

「お、男の子だねっ」
「女の子でも食べる人は食べるぞ」

 主にウチの姉とか、姉さんとか、お姉ちゃんとか、姉君とか、お姉様とか・・・。

「ゴメン、今の発言取り消すわ」
「何で?」
「いや、女の・・・『子』じゃないから」

 不思議そうに俺を見てくる女子達。そうだよね。君達みたいなうら若き乙女と、ゴリラを素手で倒せる人を一緒にしたら駄目だよね。俺また一つお利口になった。

「にしてもお前ら、それで足りるのか?」

 改めて彼女等のメニューを見る。パン一枚に飲み物一杯、小皿のおかず一つ。これで昼まで持つのだろうか?

「わ、私達は、ねぇ・・・」
「う、うん。平気かな」
「そっか・・・女子って省エネなんだな」

 昨今の地球環境にも通ずるものがあるな。

「それにお菓子良く食べるしー」

 全然、省エネじゃなかった! 寧ろ、ゴミ出して地球環境に悪いわ! しょうがない。ここは俺が如何に近年、世界的に環境問題が大きく取り上げられているか語らねば。

「いいか、お前ら。今、地球の自然は何かこう・・・大変な事になってるからとりあえず節電して、何とか自然エネルギーをだなぁ・・・」

 この前総理大臣が、テレビでそれっぽい事を言ってた気がする。

「織斑、私は先に行くぞ」
「え? あ、おお。じゃあまた後で」

 箒がさっと席を立って行ってしまう。ちなみに箒は、こちらの女子三人と違って、しっかり適度な量の朝食を取っていた。メニューは俺と同じ和食。うんうん、今の日本では中々、見られない大和撫子っぷりだ。古き良き日本の伝統だな。

「でだ。大和撫子の着物から肌蹴た鎖骨と太股、どちらにも魅力があると俺は思うが、やはり一番はうなじだと・・・」
「織斑君、話が物凄い方向に脱線してるよ!?」
「え? 俺、何の話してたっけ?」
「環境問題を話してたのに、何で大和撫子の魅力を語ってるの!?」
「しかも適当に言ってた環境問題と違って、凄い流暢だったよ!」

 あれ? おかしいな。どこで話が変わったんだろ・・・さっぱり解らん。

「ね、ねぇ。ところで織斑君と篠ノ之さんって仲良いの?」
「お、同じ部屋だって聞いたし・・・」
「・・・・・・そうだな。ちょっとな」
「何でそんな憂いを帯びた表情を?」
「ちょっと昔、キズモノにな・・・」
「大人の関係!?」
「されたんだよ」
「しかも織斑君が受け!?」

 受け言うな。

「ああ・・・スカート捲りとかしたら、マウントポジションでフルボッコされた」
「「「そっちの意味でキズモノかよ!!」」」

 あの時は怖かった。振り下ろされる拳、耳に響く咆哮、俺を離さない重み・・・すげー怖かった。アレ以来、俺は箒のスカートは捲らないよう誓った。で、翌日、スカート下ろしを実行したら、もっと酷い目に遭った。具体的に言うと・・・初号機とゼルエルみたいな感じだ。俺、良く生きてるな~。

「まぁぶっちゃけ幼馴染だよ」
「え、それじゃあ・・・」
「いつまで食べている! 食事は迅速に効率良く取れ! 遅刻したらグラウンド十周させるぞ!!」

 いきなり食堂に手を叩く音と大声が響き渡る。寮長も兼任しているという千冬姉がいつの間にかいた。全く・・・食事は迅速より、その人のペースってもんがあるでしょうに。俺はこの後、まったりお茶を飲みたい気分だ。
 ちなみにこの学園のグラウンドは一周五キロ。朝飯食ってすぐに走るとリバースするだろう。少なくとも俺ならする。ふふふ・・・千冬姉め。俺が吐いてグラウンドを汚しても構わないのなら、いくらでも走ってやるぜ!

「尚、織斑はグラウンド十周ではなく、生爪を十枚剥がす」

 俺は急いで朝食をかき込んだ。だってペンチ持った千冬姉の目が本気だったんだもん・・・虐待反対。



「と、いうわけでISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸音、発汗量、脳内エンドルフィンなどが挙げられ・・・」
「先生、それって大丈夫なんですか? 何か、体の中をいじられてるみたいでちょっと怖いんですけども・・・」

 既に教科書の内容を暗記してしまった俺なので授業時間は割と退屈だった。今は山田先生がISの基本知識について語っているが、知っている事を聞いていると眠くなる。
 だが、寝てしまうと千冬姉に何をされるか解らないので、とりあえず授業は聞いてるフリして楽しい事でも考えていよう。

(昔々、ある所に女癖の悪いお爺さんと元良家のお嬢様で親の反対を押し切り駆け落ちしたお婆さんがいました)

 何故か楽しい事を考えてるつもりが俺流昔話になってしまった・・・・まぁ良いか。とりあえず完結目指そう。

(ある日、お爺さんが若いOLの愛人を家に連れ込んでしっぽり決め込んでるとは露知らず、お婆さんが川で砂金集めをしていると川上から大きな・・・・)

 ここで一捻り欲しいな。大きな・・・大きな・・・。

「そんなに難しく考える事はありませんよ。そうですね、例えば皆さんはブラジャーをしていますね」
(大きなブラジャーがどんぶらこどんぶらこと流れて来ました)
「アレは、サポートこそすれ、それで人体に悪影響が出るという事はないわけです。勿論、自分にあったサイズのものを選ばないと、形崩れしてしまいますが・・・」
(お婆さんは、そのブラジャーを付けようとしましたが、巨乳美女だったのは半世紀以上も昔。既に垂れた胸に、その大きなブラジャーは合いませんでした。お婆さんは嘆いて川に身投げしました。そしてお爺さんは、気兼ねなく愛人と暮らし、やがてお爺さんも死んで、愛人は遺産を持って別の男とどこかへ消えました・・・めでたしめでたし)

 何か飽きたんで適当に完結さしたけど、全然めでたくねぇなこの話。この前見た昼ドラの影響かな・・・そうなるとお婆さんは川ではなく、岬から身投げ・・・いや、これじゃあ火サスだな。

「あ・・・」
「ん?」

 俺が空想に耽っていると、不意に山田先生と目が合った。すると山田先生は急に顔を赤くして慌てた様子で言って来る。

「え、えっと、いや、その、お、織斑君はしていませんよね」
「え? 何がです?」
「ブ、ブラジャーです」
「してますよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「「「「「「「「「「「「「「「えーーーーーーーーーーーー!?」」」」」」」」」」」」」」」」

 クラスに驚きの声が響き渡る。

「ああ、いや違うわ。した事ありますです」
「そ、それはそれで衝撃的なカミングアウトですけど・・・・一体何で?」
「中学ん時に文化祭で男女逆転で演劇やったんです。俺、監督兼脚本兼演出兼ヒロインだったんで、その時にブラジャーしました」
「何故!?」
「リアリティあると思って」

 下着も女性物を穿こうと思ったけど、弾の奴が血の涙を流して止めに入ったので仕方なく断念した。ちなみにその劇で俺の熱演振りを見た他の生徒や先生からは多くの賞賛が送られた。『感動してモノが食えなくなった』とか『夢に出てきて睡眠不足になった』とか『最近、精神科に行き出した』とか・・・一度本気でアカデミー賞を狙ってみるか。

「お、織斑君がブラジャーを・・・つまり女装してたのね!」
「ちょっと! 誰かその劇の情報集めて来て!」
「今度の休み、織斑君の中学に行くわ!」
「織斑君の女装・・・あ、だ、駄目。鼻血が・・・」

 何かあちこちから脳が病んでるような台詞が聞こえたが、無視しよう。突っ込むと墓穴を掘りそうだ。

「んんっ! 山田先生、授業の続きを」
「は、はいっ」

 そこへ千冬姉が咳払いをして微妙な空気をシャットアウト。でも、千冬姉も苦い顔をしてる。多分、中学ん時の文化祭を見に来た時の事を思い出したんだろう。あの後、家で三時間正座させられて説教されたからな~。

「そ、それともう一つ大事な事は、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話・・・つ、つまり一緒に過ごした時間で解り合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

 つまりアレだ。ニュータイプ的な感じ、昨今ではイノベイターというらしいが、理解と対話がISと操縦者では出来るらしい。

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せる事になる訳です。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」
「先生ー。それって彼氏彼女のような感じですかー?」
「そ、それはその・・・どうでしょう。私には経験が無いので解りませんが・・・」
「じゃあ女王様と奴隷みたいな感じって事ですね」
「織斑君! それ全然、相互的じゃありません! 後、さも私がそれを経験してるかのような言い方はしないでください!」

 山田先生が顔を真っ赤にして怒る。

「全く! 織斑君は私をどんな目で見てるんですかっ」
「普通に可愛いと思って見てますけど?」
「え?」
「ん?」

 山田先生が凄い驚いた顔で見て来る。いや、そりゃ山田先生は、誰が見ても、それこそ男女問わず歳の割りに童顔で可愛いって言うだろ。思ってる事を正直に言っただけなのに何故か驚かれる。

「か、可愛い・・・ですか?」
「はい」
「そ、そうですか・・・」

 さっきまでぷりぷり怒ってたのに急に頬を染めて身をよじらせる。何だと言うんだ?

「ん?」

 その時、何だか周囲の温度が下がった気がした。後、何かすげー見られてるような気がする。何だ? 俺が一体何をした?

 ずご!!

「んが!!」

 するといきなり千冬姉が拳骨で殴って来た。机に突っ伏し、頭を押さえる俺。

「全く・・・馬鹿者が」

 な、何で怒る? 理不尽だ。絶対復讐しちゃる。まず今度家に帰ったら、千冬姉の部屋のタンスの中身の順番を入れ替えてやる。

 キーンコーンカーンコーン。

「あっ、えっと。次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 授業終了のチャイムが鳴り、山田先生と千冬姉は一旦職員室に戻る。

「ねえねえ織斑君さあ!」
「はいはーい! 質問しつもーん!」
「今日のお昼ヒマ? 放課後ヒマ? 夜ヒマ?」

 俺も適当に時間を潰そうかと思っていた矢先、急にクラスメイトが押しかけてきた。見ると、クラスメイト――中には別のクラスの奴もいる――連中が列を作って、俺の前に並んでる。しかも整理券を有料で配ってる・・・後で分け前貰おう。

「ねえ千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの!?」
「だらしな・・・」

 パァン!!

「休み時間は終わりだ。散れ」

 何気なく質問に答えようとした所で千冬姉の登場。今叩いたのはアレか? 個人情報バラそうとしたからか?

「ところで織斑。お前のISだが準備まで時間がかかる」
「へ?」
「予備機が無い。だから少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 千冬姉がそう言うと、クラスがざわつく。

「せ、専用機!? 一年の、しかもこの時期に!?」
「つまり、それって政府からの支援が出てるって事で・・・」
「ああ~、いいなぁ・・・私も専用機欲しいなぁ」

 ここでISの専用機について軽く説明するとだ。現在、ISの研究は国家や民間企業など様々な所で研究されているが、ISの中心となるコアに関する情報は一切解っていない。それはISを造った人物に起因する。篠ノ之束・・・それがISを造った人の名前だ。で、コアは束さんしか造られず、それは完全なブラックボックスで、他の奴が造ろうと思っても造れるものではない。で、束さんは一定数以上のコアを造ろうとしないから、自然とISの上限というものが出来てしまう。
 ズバリ、現在世界にはIS、というよりそのコアは467機しかない。世界人口を六十億として、その半分を女性とすると三十億。その内、ISは467機。どう考えても少ない。で、アラスカ条約だか何だかで、ISのコアは各国で割り振られて、それを研究しているのが現状だ。
 そんな絶対数の少ない中、専用機は国家や企業に所属している者にのみ与えられる。つまりはIS操縦者の中でも特に優れた者が専用機を持つのだ。

「お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意される事になった。理解できたか?」
「いらね」
「・・・・・・何?」
「だって専用機を持つって事は組織・・・この場合は国家に所属しなきゃならない訳ですよね? しかもデータ収集目的なんて・・・嫌です」

 千冬姉の目が細められる。あ、これ本気で怒ってるかな。

「そんな子供の我が侭が通ると思うのか。お前は自分の立場をちゃんと理解しているのか?」
「そんな大人の都合なんて知るか。そっちが大人の都合で来るなら、こっちは子供の我が侭だ」
「一夏」
「千冬姉が言ってもここは譲れない」

 千冬姉が睨んで来るのを俺は真正面から睨み返す。クラスの皆や山田先生は、俺と千冬姉の睨み合いにたじろいでるようだが、ここは譲れない。専用機を持つと、国の利権や企業の思惑なんかに関わる事になる。そんな俺の知らない所で裏でコソコソやられるのは俺は大嫌いだ。
 『好きなように生きろ』。それが俺の尊敬する人の言葉であり、俺自身が信条にしている言葉だ。そもそも勝手に決められるという事が嫌だ。

「一夏。お前の気持ちも解るが、専用機を持てば政府からの保護も受けられる。お前の身の安全の為でもあるんだぞ」

 千冬姉も俺の事を一夏と呼んでいるから、相当マジなんだろう。実際、俺がISを起動させる前の話だが、誘拐された事もあったし。けど、その時も・・・。

「危ないからって自分の信条曲げるんだったら死んでんのと一緒だ」
「・・・・・・専用機は使って貰う。政府にはなるべくお前に干渉しないようこちらで上手く言っておく。それが最大限の譲歩だ」
「いや、俺は別に起動さえ出来りゃ訓練機でも良いんだけど・・・」
「・・・・・全く。余計な考え方を植え付けてくれたものだ」

 それが引き鉄だった。俺は机と教卓を踏み越え、目の前にいる千冬姉の胸倉を掴みかかった。突然の事で千冬姉も対応できず、俺は拳を振り上げた。

「きゃあ!」
「!」

 山田先生の悲鳴を聞いて俺はハッとなる。目の前には驚く千冬姉の顔。後ろには呆然となってるクラスメイト。マズい・・・今の千冬姉の言葉でキレかけた。俺は咄嗟に千冬姉から手を離す。
 ヤベ・・・超気まずい。

「織斑先生・・・俺、生理なんで保健室行って来ます!!」
「ちょ・・・織斑君! 逃げたい気持ちは解りますが、その言い訳はどうなんですかーーー!?」

 後ろから山田先生の声が聞こえたような気がしたけど、俺の耳には届かなかった。



「うーむ・・・『千冬姉 馬鹿な真似して ゴメンちゃい』・・・とりあえずコレで許してくれるだろうか?」
「アホか」
「ぬおっ」

 屋上のフェンスにもたれかかりながら、俺が昔考案した謝罪俳句を読み上げると、後ろからチョップされた。振り返ると、箒が渋面を浮かべて立っていた。

「全く。教師に掴みかかるなど何をしている?」
「あー・・・停学もんだな、コレ」

 手は出さなかったけど、流石にアレはマズいよなー。

「織斑先生からの伝言だ。『私の失言だった。不問にする』、だそうだ」
「そっか・・・」

 後で職員室で身内贔屓とか他の教師に言われないかどうか心配だが、千冬姉がそう言うなら深く追求しない方が良いだろう。
 ふと箒が俺の隣に立ち、質問してくる。

「お前、あの時本気で怒っただろう?」
「おいおい。俺は菩薩のイッちゃんと呼ばれていた男だぜ。怒る筈ないだろう?」
「茶化すな」
「・・・・・はい。結構、危なかったッス」

 箒が茶化すと殴ると言う目で睨んで来るので素直に白状する。

「あの人の悪口を言われたからか?」
「・・・・・・まあ、そだな」

 いくら千冬姉でも俺の尊敬する人を悪く言うのは許せなかった。俺にとって兄代わりで、師匠みたいな人で、目標で・・・でも到底追いつけるとは思えないけど、いつか追い越してやろうとも思える人だった。その人は何にも縛られず、自由に生きて、俺から見ても破天荒な人だった。でも不思議と人を惹き付けて、器の大きさは千冬姉も認めていた。
 あんな人になりたいと俺は小さい頃からずっと思っていた。でも、まだまだあの人の背中は遠い。そんな俺の目標にしている人を悪口は絶対に許せない。

「あー・・・俺、怒るのってイヤなんだよなー。後味悪いし、どんな顔して戻れば良いのか解んないし・・・どうしよっか?」
「それぐらい自分で考えろ」
「千冬姉に土下座して謝ろうか・・・俺、世界土下座選手権目指してるから、割と得意なんだ」
「そんな見苦しい大会あってたまるか!!」
「インターネットで募集してたぞ」
「嘘!?」
「主催者俺」
「お前は世界規模で何をやっとるのだ!!」

 でもそのホームページ、全然人が集まらなかったから三日で閉鎖したけどな。しかし、本気で謝るとなると、俺の最強奥義『ジャンピングスパイラルエターナルフォース土下座(別名:猛虎落地勢)』を披露しなくてはいかなくなる。どれぐらい凄い土下座かと言うと、マニフェストを達成できず言い訳ばかりする政治家を許せるぐらいの土下座だ。

「良し! 教室戻るぞ、箒! 流石にあの状況で生理で保健室行くってのは嘘って丸解りだからな!」
「別にあの状況でなくとも嘘だと解るわ!!」

 なん・・・だと・・・?



 ガラッ!

「授業中失礼します。転入生の織斑一夏美です。初潮が来て驚いて遅れましたが、皆さんよろしくお願いします(超裏声)」

 パァン!

 扉を開けて挨拶する私に叩く横暴な教師が一名! 酷いわ! 折角、慣れない新天地で頑張ろうとした乙女の勇気を初っ端から挫くなんて!

「織斑。授業をエスケープとはいい度胸だな」
「先生、わたくしは授業をエスケープした覚えなんてなくってよ」
「いや、しただろうさっき」
「してないモン! いっちー、ちょっと迸る青春のパトスに任せて走って来ただけだモン!」
「授業中にそれをしたら、エスケープと言うんだ」
「ちょ、ちょっと間違えただけじゃないっ。あ、あんたには関係ないでしょっ。ぷいっ」
「ってゆーか、キャラが安定してないな、さっきから」
「ぐ・・・! お、俺の中の別の人格が・・・!」
「大人しく席について授業に戻るか、今の中二病発言を全校放送で流すか選べ」
「すいません。大人しく席につきます」

 流石の俺もそんな羞恥プレイには堪えられない。俺はすごすごと自分の席に座る。

「篠ノ之。悪かったな」

 俺に続いて教室に入って来た箒に千冬姉が小さく声をかけていた。山田先生やクラスの連中は未だ複雑そうに俺と千冬姉を見ていたが、俺達はもう特に何も言う気は無い。

「では中断してしまったが、授業を再開する。山田先生、続きを」
「あ、は、はい」

 千冬姉も自然体で授業に戻った。うん、これぞ正に姉弟の絆だな!

「ああ後、織斑。さっきのは個人的に腹が立ったので後でお仕置きだ」

 誰か俺に本当に姉弟の絆ってヤツを教えてくれ・・・。



 後書き
 オールギャグだと疲れると思うので、少しシリアス混じりです。ちなみに、この一夏のしていた奇行の内、いくつかは作者が実際にやった事あったりします。どれかは内緒です。



[27903] 第四話 訓練
Name: 改太◆793fc5b0 ID:d88fe3a6
Date: 2011/09/28 17:59
「全く。先生に掴みかかるなんて何を考えてますの?」
「・・・・・・」
「まぁでも安心しましたわ。どうやら専用機を与えられるようで・・・訓練機では勝負にすらなりませんものね」
「・・・・・・・・・・・・」
「何ですの? さっきから人を変な目で見て」
「ああ、悪い悪い。え~っと・・・・お尻屋・ボイコットさん」

 ごっ!
 超殴られた。




「お、おおおおお尻屋・ボイコットって・・・ど、どういう名前の覚え方してますの!?」
「あれ? 違ったっけ? ・・・・・・尻アナ・ザンボット3さん」
「ザンボット3!? 何ですのソレ!?」
「別名『人間爆弾』」
「わたくしは、そんな物騒な人間ではありません!」

 ISを使える時点で既に物騒な気がしないでもないがな。

「まぁ落ち着けよ、お尻の・穴ゲットさん」
「わたくしは、セシリア・オルコット! イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ!!」
「解った解った。え~と・・・アナル」
「あなた、もはや完全にわたくしをお尻人間としか思っていないでしょう!!」

 お尻人間とは、頭にお尻があるという日本古来からいる妖怪であり、似たような仲間に『ニコチャン大王』というのがいる。また、頭隠して尻隠さずという言葉はこの妖怪から来たと言われており、尚且つ尻取りという遊びは、この妖怪を退治した武士が頭を斬り落としたものが、子供の遊びになったと伝えられているが、真相は定かではない。民明書房刊『エジプト神話~アビヌスとアヌスの聖戦~』から抜粋。

「そうか。セシリアさんは妖怪だったのか」
「どういう思考すれば、そこに帰結しますの!?」

 だって自分でお尻人間って言ってたのに・・・何で俺が怒られるんだろう?

「で。一体何の用だ? 俺はこれから白髪にメイドさんを描こうと思うのだが」

 言って、俺は自前の白髪を抜く。う~む・・・この若さで白髪が見つかるのは、ちょっとショックだが、これはやはりストレスだろうか・・・主に姉とか妹とか・・・後、便秘かな?

「何でそんな地味かつ難易度の高い事を休み時間にしようと思いましたの?」
「そりゃお前、下剤飲んでトイレに引き篭もるよりマシじゃね?」
「何でその二択!?」

 だって便秘治すのは寮に帰ってゆっくりしてもイイと思う。そんな風に考えると、セシリアさんがコホンと咳払いした。

「まぁ安心しましたわ。どうやら専用機を与えられるようですわね」
「うむ。不本意ながら」

 正直、国や企業が関わって来られるのは面倒だが、千冬姉に妥協案を出されては仕方がない。大人の事情には、子供の我が侭だが、大人が引けば、子供も素直になるものだ。

「専用機を与えられて不本意とは頂けませんが・・・ですがコレでフェアな戦いが出来ますわね。それでも勝負の結果は見えてますが」
「フェア? ああ、そっか。セシリアさんは、代表候補生だから専用機持ってんだな」
「当然ですわ。全人類六十億人中、現存するISは467機。更にその中でも専用機を与えられるのは、正にエリート中のエリートなのですわ」
「ふむ。何で束さん、467機しか造らなかったんだろうな?」
「は?」

 何気なく俺が疑問を口にすると、セシリアさんが目を点にした。

「なぁ箒。何でか知ってるか?」

 そして俺が箒に質問すると、箒がスゲー勢いで睨んで来た。『余計な事を!』と言うような目つきで睨まれる俺。そこへ、セシリアさんが質問して来た。

「一体何の話をしてますの?」
「ん? いや、箒のねーちゃんがIS造ったから何で、そんな少ない数しか造んなかったのか聞いたんだが?」
「「「「「「えぇーーーーっ!?」」」」」」

 俺の発言に聞き耳を立てていた他の生徒達の驚きの声が響く。

「篠ノ之さんって、あの篠ノ之博士の妹だったの!?」
「珍しい苗字だから、薄々関係者か何かとは思ってたけど・・・」
「あの天才の篠ノ之博士の妹って事は、や、やっぱり篠ノ之さんも天才なの?」

 あ、良く考えたら束さんって、今は行方不明で、全世界共通で指名手配中だった。ISを造れるのは、箒の姉ちゃんの篠ノ之束さんだけだが、そんな人が行方不明なんて各国の政府が血眼になって探すのも無理はない。
 束さんか~・・・今どうしてんだろ? まぁあの人の事だから、国の一つや二つぐらい煙に巻いて、適当にどっかで遊んでんだろうな~。もっとも、その遊びがシャレにならんものでなければいいが・・・。

「驚きましたわ。まさか貴女、篠ノ之博士の妹ですのね」
「妹というだけだ」

 セシリアさんの言葉に箒が睨み返す。う~む・・・どうも箒の奴、束さんの事、良く思ってないらしい。俺としちゃあ面白いねーちゃんなんだけどなー。良く小学生の時、一緒に犬の毛玉を集めて袋に詰め込んで、草野球のボール代わりにして遊んだっけ。打ったバッターが凄まじい事になったけど。
 と、思い出に浸っていると、箒に睨まれたセシリアさんがたじろぐ。おお、何か微妙にヘタれ臭がする。具体的に言うと・・・ヤムチャっぽいスタンド。解りにくいわ逆に。

「ま、まぁどちらにしろ、このクラスで代表に相応しいのはわたくし、セシリア・オルコットではあるという事をお忘れなく」

 ばさっと髪を手で払って回れ右して去って行く。モデルが良くやるアレっぽいターンだな。結構、様になっている。ま、それはそれとして・・・。

「箒」
「・・・・・・・」
「飯行くぞ」
「一人で行け」
「お前、俺が誘って断れなかった事があると思うか?」

 束さんの事を暴露してしまった所為か、クラスの連中が箒に今までとは違う視線を向けている。一クラスメイトが、世界的有名な人物の妹であると解って、物珍しいものを見ている目だ。まぁ別に悪い事ではないが、本人には居心地が悪いだろう。なのでここは俺がフォローしてやろう。優しいな~、俺。織斑一夏の半分は優しさで出来ています。後、三割が水分で残り二割は乾燥剤だ。アレ? つまり水分って一割しかなくね?

「・・・・・名前で呼ぶな」
「断る」
「馴れ馴れしくするな」
「断る」
「一体何のつもりだ? 同情か?」
「は? 自惚れんなよ、箒如きが」

 俺の発言に、箒がムスッとなる。

「俺はやりたいようにやるだけだ。お前と飯食いに行こうと思ったから飯食いに行く。ちなみにお前に拒否権はない。もし拒否するなら、ガキの頃の恥ずかしい思い出を新聞にして屋上から撒き散らす」
「お、お前、それは普通に脅迫だ!!」
「この程度で脅迫だと? はっ! 甘いぞ箒! 俺なんか家じゃグータラしてたら妹に『家事を手伝うか、ご飯を噛む歯を失うか選んで』とペンチ持って脅されんだぞ! 俺、若いのに入れ歯したくねぇよ!」
「お前の事情など知るか!」
「こっちも知るか! とにかく行くぞ!」

 箒の腕を掴んで無理やり立たせる。瞬間、箒の目付きが変わり、俺の肘に手をかける。む、コレは・・・。

「甘いわ!」

 肘関節を極められる前に、俺は自分から体を反転させて箒の足に自分の足を引っ掛けて体勢を崩させる。バランスを崩した箒が床に倒れる前に、肩に腕を回して抱き上げて、そのまま立たせる。キョトンとなる箒の額に指を当てる。

「ふん、甘いな箒。この俺に技をかけようなど1200ヶ月早いわ!」
「織斑君、そこは普通に百年で良くない?」

 見知らぬクラスメイトにツッコまれる。

「て、てゆーか今の何?」
「ん~・・・まぁ古武術だな。昔通ってた剣道場で一緒に教えて貰ってた」

 ちなみに箒は一度も俺に勝った事ないけどな。

「解ったか、箒。お前では俺に勝てん」
「ぐ・・・」
「お前は一生俺の地べたを這い蹲り、届かぬ背中を追い続ける運命なのだ! ひれ伏せ! 泣き叫べ! 命乞いをしろぉ! ふはははははははは!!!!」

 悔しがる箒を思いっ切り嘲笑する俺。

「織斑君、凄い悪役顔・・・」
「そうね。篠ノ之さん、ちょっと涙目だし」
「でもいいかも」

 いいんかい。



 そんなこんなで涙目な箒を伴って食堂へ。どうやら俺に逆らう事は諦めたらしい。実に良い心がけだ。

「いつまでメソメソしてるんだ、箒? 男らしくない」
「私は女だ! それにメソメソなんてしてない!」
「ああ、悪い。失言だった。確かにお前は女だ・・・主に胸が」

 ごっ!
 何で関節技は防げるのに、右ストレートは避けられないんだろう?

「ってか目が痛ぇ!!」

 コイツ、躊躇なく左目狙いやがった! お、お前、これで失明したらどうすんだ!? 眼帯なんかしたら俺の名前はサ○ットか丹○段平になっちまうじゃねぇか!

「と、とにかく万が一の為にボクシンググローブは必要だな・・・」
「お前は蹲りながら何を寝言言ってるんだ?」

 だってムエタイもボクシンググローブ使うし・・・。

「いや、大丈夫・・・痛みは引いてきた」
「全く・・・お前は私を何だと思ってるんだ?」
「哺乳類・・・かなぁ?」
「そこは疑問の挟む余地などない!」
「人生何でも疑ってかからないとな」

 クジラやイルカを魚類と思っている子供は決して少なくない筈。クジラやイルカは、れっきとした哺乳類なのだ。余談だが、某大人気忍者(?)漫画の変態でオカマっぽい喋り方をする悪役の中の人や、出番は少ないが人気の高い中忍も哺乳類だ。
 そうやって何にでも疑問を持つ事がより論理的な思考が出来る大人に成長するのだ。

「ところで箒」
「何だ?」

 俺は食券売りの前で立ち、箒に尋ねる。

「ここで疑問に思ったんだが、この学食は『フレッシュサーモンのポワレ ブルゴーニュ風キャビア添え』はないのか?」
「あるか! そんなもん!」
「じゃあカレーでいいや」
「お前は、もう少しその極論過ぎる思考をどうにかしろ!」

 疲れた様子で箒は鯖の塩焼き定食の食券を買った。おばちゃんに食券を渡して空いてる席につく。

「なあ箒」
「・・・何だ?」

 まだ不機嫌な様子で味噌汁を啜る箒に、俺はカレーを食いながら言った。

「訓練に付き合ってくれないか?」
「は? 訓練?」
「ほら、俺って中学ん時は何の部活もやってないから多分、剣の腕、鈍ってると思うんだよな」

 俺のISがいつ来るのか、それがどんなものかも解らない。けど俺の実戦経験といえば剣道の試合か、もしくは中学の時に一時的にやってた喧嘩ぐらいしかない。
 車の免許取るのも学科と実技があるように知識だけじゃどうにもならん。正直、クラス代表とかは興味ねーけど、勝負して負けるというのは俺の性格上許せん。やるからには勝つ。どんな勝負にも真剣に臨むのが俺のポリシーだ。が、解らない自分専用のISの事を考えるより、実戦の勘を取り戻した方が勝利への近道だと俺は思う。
 正直、クラス代表とか興味ねーけど勝負となると素直に負けてやるつもりは無い。やるからに勝ってやる。そう・・・・・・どんな手を使ってもな。

「情けない」
「言うなよ」

 苦笑してカレーを食べたその時。

「ねぇ、君って噂の子でしょ?」

 いきなり隣から声をかけられた。振り返ると、三年生の女子が立っていた。ちなみに三年だと解るのは、リボンの色が赤色だからだ。この学園は、一年が青、二年が黄色、三年が赤のリボンをしている。三年生の人は人懐っこい笑顔を浮かべて俺の返事を待つ。

「すいません。俺の親、『噂』って名前じゃないんです」

 そもそも親の顔など知らん。

「そういう意味じゃないよ!! 君、噂になってる子だよね!?」

 ああ、そっちの意味か。もしかしたら俺の謎に包まれたルーツを知ってる人かと思ったが勘違いだったようだ。
 噂というと、どうせ男でISを使える云々の話だろうな。適当に相槌を打っておく。三年生の先輩は、自然と俺の隣の席に座って言って来た。

「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど、ホント?」
「ええまぁ」

 もう知れ渡ってんのか。人の噂も七十五日と言うが、広まるのは一日かからんな。

「でも君、素人だよね? IS稼働時間いくつくらい?」
「ん~・・・多分、二十分ぐらいじゃないですかね」
「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がモノを言うの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ? だったら軽く三百時間はやってるわよ」

 ふむ・・・三百時間という事は半月ぐらいは戦えるという事か。まぁそんな長丁場な戦闘、現実的にあり得ないと思うが、数字の上でセシリアさんは凄いと言うのが解る。

「でさ、私が教えてあげよっか? ISについて」
「あ~・・・ありがたい申し出ですがお断りします。俺、コイツと特訓するんで」
「え?」
「な・・・!?」

 俺が箒を指して言うと、先輩と箒が驚きの顔を見せる。

「でもその子も一年生でしょ? 私の方が上手く教えれると思うけど・・・」
「正直、俺、自分のISがどんなのか解んないで、まずは実戦の勘を取り戻す事に集中したいんス。それに、相手が三百時間戦えようが、二十分以内にケリつけりゃいいだけの話だろ?」

 俺の言った事に先輩と箒が驚いた顔になる。何だ? 何か変なこと言ったか?

「君・・・凄い自信だね」
「ああ。最近、痒くて痒くて・・・」
「蕁麻疹だソレは!!」

 俺のボケにすかさずツッコミを入れてくる箒。

「ま、そんな訳で申し出はありがたいが俺の訓練の相手は箒に頼んでるんで、すいませんが」
「あ、う、ううん。無理にって訳じゃないから・・・それじゃ」

 先輩は苦笑いを浮かべて席から離れて行った。すると今度は箒から話し掛けてくる。

「一夏」
「何だ?」
「そ、その、お、お前はアレか? わ、私が訓練の相手でいいのか?」
「? そりゃお前、剣の訓練ならお前がいいに決まってんだろ」
「そ、そうか! 私がいいか! そうかそうか」

 急に機嫌良く食事を再開する箒。何だか忙しい奴だな。と、俺も早いとこ飯食おう。冷めたカレーは苦手だしな。

「・・・・・・」

 ここで箒に『う○こ行きたくなった』と言ったら、殺されると思ったのでやめといた。



 剣道場に竹刀の打ち合う音が響く。

「はっ!」
「うお!?」

 箒の上段からの攻撃を紙一重で避ける。すぐさま箒は後ろに一度引き、そのまま竹刀を突き出して来る。それを竹刀を使って防ぐが、箒の攻めは緩まない。

「ほ、箒! ちょっとタンマ!」
「無しだ!」

 俺の言葉など聞いてくれず、箒は攻め続ける。流石は剣道の全国大会で優勝しただけはある。剣道の腕は、俺の知ってる箒よりずっと強くなっているな。

「織斑君、押されてるね」
「もしかして結構弱い?」

 カチン。
 剣道場の周りを埋め尽くしているギャラリーのそんな声が聞こえた。今の発言は聞き捨てならんな。この俺が箒より弱いだと? そりゃ普通の剣道なら箒に分があるかもしれんが、剣の腕なら話は別だ。

「箒」
「?」
「本気でやるぞ」
「な!?」

 俺が言うや否や、驚きながら箒が振り下ろして来た竹刀を持つ腕を掴んで動きを止める。そこからすかさず蹴りを放って箒を吹っ飛ばす。何とか倒れずに踏ん張る箒だが、俺は一気に間合いを詰めて横薙ぎに竹刀を振るう。防御しようとした箒だが、俺は途中で竹刀を止めて後ろに回り込んで、首筋に竹刀を当てた。

「どうだ?」
「アホか貴様ぁ!!」

 バシン、と竹刀を弾いて箒が大声を上げて詰め寄ってきた。

「今のどこが剣道だ!?」
「いやホラ。俺って昔っから型に嵌まったやり方好きじゃないからさ。良く近所の奥様方に言われてたじゃん? 『織斑さん家の息子さんって型破りねぇ』って」
「褒めてないぞ、ソレは!」
「でも俺は昔からこーだしなぁ」

 俺の性格かどうかは知らないが、型のある剣道は昔から上手くいかない。さっきみたいに蹴りや背後からの攻撃を織り交ぜて戦う方が性に合ってる。まぁ試合じゃ反則だから使えねーけど。

「・・・・・・一夏。お前、中学の間は訓練してないのだったな?」
「ん? ああ、そうだな」
「・・・・・・ズルい」
「? 何か言ったか?」
「い、いや! 何でもない!!」

 激しく頭を左右に振る箒。変な奴だな。

「ま、いいけど。良し、箒! ビシビシ行くぞ!」
「な!? ちょ、ちょっと待て! 何だか私の訓練になってる気が・・・」
「問答無用ー!」

 その後、箒がくたびれるまで俺の訓練は続いた。



「あ、あのバカ・・・・」

 剣道場の更衣室にある長椅子に箒は下着姿で寝そべり、ぐったりしていた。一夏の攻撃は、攻撃の途中で竹刀を持つ手を変えたり、蹴りや掌底を織り交ぜ、更にバク転なども加えた非常にアクロバティックなものだった。良く剣道着つけたまま出来るな、とある意味寒心するが、とても剣道とは呼べる代物ではない。

「しかも、全然鈍ってないじゃないか」

 鈍ってると思うから訓練に付き合ってくれと言われたが、寧ろ自分の中のイメージの一夏より遥かに強い。それで中学三年間、まともに剣を握っていないのだ。箒が思わず「ズルい」と呟いたのも仕方が無かった。
 毎日毎日厳しい練習を積み重ね、自分は中学の剣道の大会で優勝した。その時の優勝には複雑な思いもあるが、自分の強さにも少しは自信があった。だが、一夏はそんな自分より軽く上にいた。羨望と嫉妬を感じてしまうのも無理はない。

(だが・・・)

 箒は仰向けになり、天井を見上げる。一夏は再会してまるで変わっていない。いつも自分の前を走り、しかも時には強引に手を引いて突っ走る。箒は、幼い頃からそんな一夏の背中を見て来た。それは昔も今も変わっていない。その事が嬉しくて、つい笑みが零れてしまう。

(本当、あの人に似てきたな・・・)

 箒は目を閉じて思う。再会した一夏は、小学生の時より更にハチャメチャになっていた。自分が一夏の背中を見て、彼を追いかけていたように、一夏もまたある人物の背中をずっと追いかけているのだろう。一夏が尊敬していると言って憚りなく、目標だと常に言っていた人。
 自分の姉、束と一夏の姉、千冬と共に幼い自分達といつも一緒にいてくれた人だった。その人に今の一夏は良く似ている。誰よりも自由を愛し、やりたい事をやり、絶対に後悔しない生き方をしていた。だからこそ誰からも羨まれ、惹かれたのだろう。

(そういえば今は何をしてるんだろうな・・・)

 引っ越してから全然その人の事は知らない。今、どこで何をしているのか気になった箒は、一夏や千冬にでも聞いてみようと思った。もっとも、今はセシリアとの戦いに集中してもらう為、一夏の訓練(になるかどうか微妙だが)に付き合う事にした。



 翌週の月曜日。セシリアとの対決の日がやって来た。

「箒」
「何だ、一夏?」
「俺はある重要な事実に気がついたんだ」
「そうか。実は私もだ」

 俺と箒は真剣な顔で見合う。ちなみに今、俺達は第三アリーナのAビットにいる。普通なら此処でISを装着して、アリーナに出るんだが・・・。

「俺のISはどうなった?」
「知らん」

 この一週間、俺と箒はとりあえず剣の訓練はしたが、肝心の俺のISに関しては何の情報も無いまま今日という日が来てしまった。

「マズイな」
「ああ、マズイな」
「本当にマズイな」
「ああ、本当にマズイな」
「ヤバイぐらいにマズイな」
「ああ、ヤバイぐらいにマズイな」
「箒の乳ぐらいマズイな」
「ああ、私の乳ぐらいマズイな」

 こきっ。

「腕があああああああああああ!!!!!」

 恐ろしい奴よ、箒。俺のノリに応えながら、サラッと関節技を極めてきやがった。ってゆーかコレ、折れてないよね? 俺、これから試合なんだけど。

「織村君織村君織村くーん!」

 俺が床をのた打ち回っていると三度俺を呼ぶ声がした。こちらに駆け寄って来るのは童顔巨乳の山田先生だった。それはもう凄い。いや、感じで表現すると『猛凄い』だ。バルンバルン揺れてるし。

「はぁっ、はぁっ・・・お、織村君」

 全速力で駆けて来たのか山田先生は激しく息切れしている。

「先生、餅ついてください」
「余計疲れるわ!」
「間違えた。落ち着いてください」

 箒に言われて間違いを訂正する。

「山田先生。ひっひっふー、ひっひっふーって深呼吸してください」
「違う! それ深呼吸違う!」
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「山田先生もしないでください!!」

 素直にやってくれる山田先生は可愛いなー。はっ!? 殺気!
 ひゅっ!

「む」

 突如、背後に殺気を感じたので体を捻ると、千冬姉の拳を空を切っていた。

「甘いぜ織斑先生。後ろからやるなら殺気を隠さねぇと」
「お前のふざけている姿を見ていると抑え切れない自分がいるんだ」
「いや、ってゆーかそもそもそれって姉弟のやり取りじゃないですよね」

 基本的に我が家ではおかずを奪い合うのも命懸けの日が無きにしも非ず。俺の危機回避能力は千冬姉は秋七によって鍛えられたと言っても過言ではない。まぁ8割方喰らうけど。

「で、先生方。何か用ですか?」
「あ、そ、そうでした! 来ました! 織斑君のISが来ましたよ!」
「え?」
「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番でモノにしろ」
「マジすか?」
「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えてみせろ、一夏」
「うぉい」
「頑張ってくださいね、織斑君」

 この人達、物凄い無茶を言ってるよ。え? 今まで使ったこともないISをぶっつけ本番で乗りこなせって? 自転車とワケが違うんだぞ。

「「「早く!!」」」

 三人の声が重なる。うん、駄目だ。この人達、人の意見なんか聞いちゃくれない。俺の意志とは関係なく、ピットの扉が重い音を立てて開いた。そしてその先には・・・『シロ』がいた。

 ・・・・・・・・・・・犬の名前じゃないからね。





 後書き
 お久し振りです。いや、忘れてたわけじゃありませんからね。今回で私の中で『セシリア=尻キャラ』になった気がします。一夏はスペック高いですが、実生活がソレを感じさせないキャラになってます。どうしてこうなったんでしょうか? 次回はvsお尻屋・・・ではなく、セシリアです。では次回で。


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