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[25975] 【習作】 F線上の便座カバー (魔法少女リリカルなのはsts×オリ主オリキャラ)(注)展開不明憑依なし
Name: 戯流我◆b167f322 ID:cdaf299c
Date: 2011/02/12 19:27




みなさん、こんばんは


戯流我と申します。
なんか急になのはでss書きたくなったので書いてみます。
おそらく遅筆です。
処女作です。
処女作にオリ主オリキャラってハードル高いよね~

まあ無謀な挑戦をしてみようと思います




プロローグは完全主人公目線で書きましたが、本編からは第三者目線で書く予定です。



[25975] プロローグ「フォルテ・インプレッサ」
Name: 戯流我◆b167f322 ID:cdaf299c
Date: 2011/02/12 19:31

0075年4月某日 機動六課 某所







「で、君はなぜそんなとこで働きたいんだい?」


「これから管理局の新しい歴史を作るかもしれない部隊をそんなとこ呼ばわりとは、君らしくないねぇ~」


「いやだから俺が言いたいのは、なぜ君が総務部に行きたいのかって話だ!」


「ふむ、なるほどぉ~」


人気の無い廊下の曲がり角で俺は画面越しに友人と話をしていた。
相手は俺と同期にもかかわらず、俺より遥かに出世して今や確か提督だった気がする。
ま、俺は階級に興味はないんで、正直どーでもいい。


「君は一応総合AAAランクの魔導士なんだ。なぜ非戦闘員の総務部に配属されている!一体どうやったんだ?」


「それは企業秘密だよ、クロノくぅん~」


「まあどうやったのかはなんとなく想像はつくから聞かないが..ど「さっき聞いたじゃないかぁ」だーかーらその行動の理由は一体なんなんだ?」


「.....それは俺の存在理由(レゾンデートル)だよ、クロノ、真理の探求のためだ。」


「...そうか、まあ考えた上での選択なら俺は文句は言わん、頑張れ」


「..やけにあっさりしてるねぇ~、さてはこれから何か急ぎの用事があるのか、そうか君は確か今日は久々の非番だったね、そうかぁ愛人だね、熱いね~、全くエロノくぅんは~、エイミィ君に言っておいてあげるよぉ~、じゃまた」


クロノがこの世の終わりみたいな顔をして何か言っていたが、無視して通信を切った。
ん、あの顔はもしかしてひょっとすると図星だったのか、当然冗談で言ったのだが、本当にエイミィ君に言いつけたくなってきやがったぞ。
しかし、今日は初日だし、部長が遅刻するわけにもいくまい。職場に向かうとしよう。







同日 機動六課 総務部







初日は当然のように自己紹介から始まった。

「えー、私が今日からこの部の部長をするフォルテ・インプレッサだ。こういった仕事をするのは実は初めてなので至らぬところがあると思うが皆と一緒に頑張っていこうと思う。特技は魔導工学で博士号も持ってる。趣味は心理学で最近無限書庫にも手を出している。他にもいろいろあるので質問してくれれば答えよう。ま、何はともあれ夜露死苦!」


なんかこう自分でもしっくりこない自己紹介をして次にバトンを渡した。次は茶髪の表情豊かな女性で歳はクリスマスちょっと前ぐらいだろうか。


「はじめまして、私はセレナ・エーデルフェルトって言いますー。セレナって呼んで下さいー。私もこの仕事は資格は結構持ってますがー、慣れてないので不安はありますが...(中略)..ペペラペーラペラ..ということもあったりー「すまないが」はいー?」


「7分と30秒経過している、もう次の人にいってもらわねば困る。」


「わっ分かりましたー。すいませんー。」


全く良くまわる舌だ。
語尾が伸びているにもかかわらず聞き取りやすいし、電話番はこの子に決定だな!
次はまた女性でなんか上品そうなそぶりで手入れの行き届いたキレイな金髪を揺らしている。
歳は..わからない。


「ごきげんよう、私の名前はグロリア・フォン・アルシオーネ、皆様も聞いたことがありましょうが、私は一応あのアルシオーネ財閥と関わりがございます。ですが、皆様には...(中略)..ペーペーラぺーペーラーラ..かつては父も「すまないが」なんでございましょう?」


「7分と35秒経過している、このペースでは全員終わるのに日が暮れてしまう。」


「そうでございますね。申し訳ありません」


「あ、ずるいー、私より5秒多いー」
(これはさっきの子だ、はいはいスルースルー)



はぁ全く今度は舌のまわり方は速くない、というか遅い、遅すぎる。
まあでもお年寄りも含めた万人が聞き取れそうだ、受付嬢には向いているかも。
あ、ちなみに彼女の「私」はワタクシと読んでいる。さすが良いところのお嬢さんだ。
しかもアルシオーネ財閥の娘かぁ~アルシオーネ財閥といやあミッドチルダでも5本の指に入る財閥だ。
何も起きねば良いが。



その後、滞りなく自己紹介は進み、最後の3人になった。なんかキャラが濃そうだ。

1人目は若いというより幼い栗毛の男の子だ。

「はっはじめまして、僕はレミー・オルティアって言います。第55管理世界の出身でミッドには来たばかりなんですけど、将来は自分の情報処理技術を駆使して次元航空部隊に配属になるのが夢なんです。あっいきなり自己紹介で夢を語るってのはおかしいですよね」

「別におかしくないと思うよ。続けて」


「はっはい!僕は田舎育ちなんで基本対人関係その他苦手で、そういうのも含めてここで改善していきたいなーと思うんです。一応空戦Bランクも持っていてー、あっあと僕幼く見えますが今年で16なんで、子供扱いはしないでくださいねー。以上です!」


「質問ある人はいますかー...じゃ次!」
(なんかレミー君が16って言った瞬間に『嘘だ!』って誰か叫んだ気がするが気のせいかな)



2人目はなんていうか見た目完全に中年体型で黒毛にビール腹に丸メガネの筆舌に尽くしがたいオーラを放つ男性だった。


「ボクはー、マルタン・ホンダです。趣味はアニメ鑑賞で特技はゲームです。最近第97管理外世界のゲームにはまってます。ちなみにボクはロリコンでもショタコンでもありません。みんな必ず間違えるので言っておきますがボクは18歳です。そんな体で大丈夫か?とよく言われますが、大丈夫です。問題ありません。よろしくお願いします。」


「しっ質問ある人ー.....では次ラスト」
(18ぃ?38の間違いじゃないのか?俺より若いなんてありえねー。言ってる内容よく分からなかったしホント大丈夫なのかコイツ?手元の資料によればミッド中央情報工科大学を首席で出てるらしいが..)



最後3人目は背が高くがっしりした体と細長い目何より頬に目立つ傷のあるスキンヘッドの男性だった。

「皆さんこんばんは、ガナッシュ・ムルシエラゴと申します。第42管理世界出身で昔は武装隊におりました。いろいろあって機動六課総務部に配属となりました。以後お見知りおきを。」


「はい、質問ある人は..いませんねー」
(この寡黙そうな人は本当にいろいろありそうだ。注意せねば。ていうかまだ日は暮れてない、ていうか昇りきってないにもかかわらず、『こんばんは』って言い間違えか、はたまた天然なのか?)





自己紹介が終わり、各課ごとの談話タイムに突入した。
俺は部長直属の課である総務部総務課にところに参加したのだが..


「で、よりにもよってキャラの濃い君たちが総務課で一同に会しているわけか..えーと左からセレナ、レミー、マルタン、ガナッシュ、グロリアであってたな」


「私はキャラ濃くありませんー。ノーマルですー」


「え!?僕って普通ですよね?ですよね?」


「まあボクはそういう扱い、なれてますから」


「..............ふん」


「あらまあ、ご冗談を、オーホホッホ」


ダメだ5人中半分以上自覚がない、ガナッシュ君の沈黙を肯定ととらえても。
まあコイツらが俺の目の届くところにいるのが不幸中の幸いか..


話は移り、お互いのことについての質問のとなった時、不意にその質問はやってきた。


「あのーさっきから気になってたんですが部長の襟章って..星が2つあるから..」


「ああ、私は一応管理局から階級をもらっていてね~、2等陸尉なんだよ」
(やはりバレたか、まあレミー君は管理局の上を目指したいらしいし、当然気づくか。ガナッシュ君も気づいていただろうな)


「それは一応って階級じゃないと思いますが..」


「けれどそれでは何故総務部にいらっしゃいますの?おそらく相当腕がたつのでございましょう?」


「ふむ、まあそれはいろいろあってな」


「................男には、いろいろある時がある」


(何かガナッシュ君から謎のフォローが入ったああ!)


「とにかくそこはあまり追及しないでくれ、理由の一つは人生を考えるための時間づくり..かな」


「何か部長って人生考えてそうですよねー。眼光が若干怖いしー」

これはセレナ君だ。人生を考える→眼光が厳しい という命題は偽だと思うのだが..


実は俺がかけているメガネには細工がしてあって目つきを穏やかにして第一印象を薄くする効果をもたらす魔法がかけてあるのだが、それでも十分に目つき悪いらしい。

そんなこんなで、セレナ君が俺の歳が20だと知って何故かがっかりしていたり、マルタン君の祖父が第97管理外世界出身でその世界の文化研究にはまっているだとか、レミー君の母親がでべそであることが発覚したりして時間がながれていった。



「明日から通常業務に入るわけだが、私の方針として遅刻は絶対に許さん。それ相応の理由なく遅刻した場合、連帯責任として遅刻者の出た課の構成員全員に罰を設ける。もちろん無断欠勤は論外だ。では明日の9時に会おう。以上、本日はこれにて解散!」




ふぅ~やっと終わったぞ。1時か、ちょうど良い。さっさとたぬkいや部隊長のはやて君に報告してから無限書庫に本を借りに行くとするか。








同日 機動六課 部隊長室








ビーー

バタバタ

「どうぞー」


「失礼します。時空管理局総務部派遣課古代遺物管理部機動六課担当室室長、フォルテ・インプレッサです。報告してもよろしいでしょうか。」


「ええよー」


「本機動六課において担当総務部の構成を完了し、機能開始したことをここに報告いたします。」


「はい、確かに報告受けましたー。でもなんか固いなぁー、緊張しとるん?」


「いや、そんなことはありません。固いのは仕様です。」


「ふーん。ま、ええか。で、ちょい気になることがあるんやけど聞いてええか?インプレッサ執務官」


「なるほど、そう来ましたか..今は執務官ではないのですが、まあ答えられる範囲ならいいでしょう」
(どうやら裏から情報を得たらしいな、さすがたぬk)


「ふふん、私の情報網なめとったらあかんで~、15年前に執務官試験に合格、それから8年間執務官を勤めた後、執務官を辞して捜査官になり、2年後査察官に転向、これもまた1年でやめてこないだまで教導官として陸士訓練校で働いていた...あっとるやろ?」



「全くそのとおりですね。よく調べましたとほめてあげたいところです。」


「もっとほめてぇなー。で、やっぱ気になるんは、ここに来たのになんや裏があるんかって話や。インプレッサさんは特S級の極秘情報所持者指定があるから喋れへんものはしゃーないけどな」


「私から言えることは..ここに来たのは最高評議会等の上の意志ではなく私個人の意志ということだけですね。後、機動六課に迷惑は掛からない。それだけですね。」


「最高評議会?」


「さっきそれだけと言いましたが?」


「なるほど、分かりました。ご苦労様でした。」


「んーさっきからずっと気になってるんですが、何故この部屋に壊れたたらいがあるんです?」


指の先には真っ二つのたらいの前に立つユニゾンデバイスのリイン君がいた。


「こっこれはリインのデスクですぅ~。これしか無かったんですぅ~」


「いろいろ探したんやけど、リインに合うのがみつからんくてな。今のところはあれがリインのデスクや。」


俺はため息をつきながら、腕をめくりブレスレット状態の愛機メルキオールに呼びかけた。


「メルキオール、そこの彼女が使えそうなデスク、この隊舎内でないか探してくれ」


<Σημειώνεται.Κατανοήστε τη μαγεία των πυρκαγιών χώρου.>
(了解、空間把握魔法を展開します。)

赤い光が一瞬あたりをつつんで、消えた。

<Βρέθηκαν.Πίσω από τις κάτω αποθήκης>
(発見しました。下の階の倉庫にあります。)


空間に画面が表示され、リイン君が使えそうな台のデータが表れた。


「おお~、すごいなあ、そのデバイス。そんなアバウトな命令で分かるなんて、しかもこんな短時間で。ありがとなインプレッサさん。」


「ありがとですぅ~」


「いやいや、じゃ俺はこれで」


そう言って俺は部隊長室を出た。
さすが若くして2等陸佐なだけのことはある。深く追及しないことは賢明だな。
少しヒントを言ってしまったが..







同日  時空管理局本局 無限書庫





「全く君は飽きずによく来るね~」

こう言うのは無限書庫司書長のユーノ君だ。彼とはかれこれ13年ぐらいの長い付き合いだ。


「ふむ、これだけの書庫だ。一生かかっても全部読むことはできまい。俺の知への探究心は満たされ続けるというわけだ。ユーノ君、You know?」


「はいはい、僕が言いたいのはよく飽きもせず読みつづけられるねということだよ、内容の話はしていない。」


「......................................................」


「どうしたんだい?」


「俺が昨日夜寝る前に考えた渾身のギャグがぁ~!この妖怪ボケ殺しめぇぇー!!」


「えっいつギャグを言ったんだい、えーとおもしろかったよww」


「それフォローになってないからぁーー!」



という世にもくだらない世間話をしているうちに日がくれてしまった。
まあ本局の外は年中暗いからわからんが。



「では俺はそろそろ失礼するよ。戻るのにも時間がかかるし。」


「時間がかかるといっても君の場合30分もかからないだろう。全く君の次元移動能力には驚かせられるよ。補助もなしにポンポン別の次元世界に行っちゃうし。」


「まあ俺がすごいんじゃなくてこのメルキオールがすごいんだがな、なぁメルキオール」


<Ούτε τόσο>
(それほどでも~)


「全くうらやましいよ、君は他にもアームドデバイスと空戦補助デバイスも持ってるしね」


「バルタザールとカスパーはここ4年ぐらいはあまり使ってないなぁ、あいつら俺のこと嫌ってないといいが..」


「ああ、そういや君機動六課に行くんだってねー。実は僕の友人が設立に関係しているんだけど、高町なのは一等空尉、フェイト・T・ハラオウン執務官、それにたぬき」


「そういえば魔王と死神とたぬきは君の知り合いだったね。しかしはやて君だけなぜ仇名なんだ?何か恨みでもあるのか?」


「いや恨みはないけどなんか脳内でいつのまにかそうなってたんだ...しかし、なのはを魔王呼ばわりはいくら君でも許せん、万死に値するぅ!」


ユーノはいかりくるった。


「ほう、では君はフェイト君が死神と呼ばれてもかまわないんだね、そうかい、へぇー、今度六課でフェイト君に会ったらユーノ君が君のこと死神みたいって言ってたよ~って言っておいてあげるよぉ~」


「いや、そんなことは...て、ちょ、待」


「しかもしかも~俺はただ魔王と死神って言っただけなのに魔王がなのは君のことを指すってどうして気づいたのかなぁ~、日頃からなのは君が魔王っぽいなって思ってなくちゃ普通気づかないよね、なるほど、そうかぁ~、そうなんだねぇ~じゃ今度六課でなのは君に会ったらユーノ君が君のこと魔王みたいだねって言ってたよ~って言っておいてあげるよぉ~」



「そっそんなことしたらこっちも君がなのはって魔王みたいだし、フェイトって死神っぽくて~はやてってまるでたぬきだって言ってること彼女たちに言うからね!」


「くっかっかww、やれるものならやってみたらいい。君にそんな度胸があるならね。まあ君が彼女たちにそれを言う前に俺がこれを彼女たちに聴かせるのが先かなぁ~」


「これ?」


「メルキオール、さっきの録音して編集したよな」


<Απολύτως>
(もちろんです。)


空間に画面が表示され、人をおちょくるように笑っているユーノが表示された。


《..なのはって魔王みたいだし、フェイトって死神っぽくて~はやてってまるでたぬきだ..》


ユーノは青くなった。
おそらくなのは君のスターライトブレイカーに押しつぶされる白昼夢でも見ているのだろう。
放心状態でこちらの呼びかけに反応しない。
仕方がないから、メモを残して帰るとしよう。用事もあるし。










同日 ミッドチルダ 自宅兼ラボ







「ふむ、これで大体完成か。だが、実際対ガジェットドローン用として使うにはこの機体では作成に手間がかかりすぎる。大量生産が簡単なものに仕上げなくては」


俺が図面をみながら呟いたとき、背後に画面が表示された。
面倒くさいことに最高評議会議長からだ。


「こんばんは、フォルテ君。そろそろかな?」


「はい、設計図は完成しましたが、この機体は大量生産には不向きです。そもそもこれだけの機能を付与しながら、大量生産型にするのは不可能です。」


「問題ない。その辺は我々がなんとかする。君はひきつづきVGDⅡ型の設計に入ってくれ。」


「了解しました。」


「頼むぞ。『無限の欲望』の暴走に備えるにはその力を受けた君の力が必要なのだ。」


「『契約』は忘れてないでしょうね?」


「分かっておる。おぬしもゆめゆめ忘れるでないぞ。」


「もちろんですよ。」


「ではできあがる頃にまた、な」


通話は切れ、あたりに静寂が戻った。


「全く、老人たちも無茶をさせる..」


この脳みそやろうめ、と内心で悪態をつきながらソファーに座る。
しかし、まあこの真理を探究するためには仕方ない。
彼らに逆らえばこの生活はできまい。
今日はもう疲れたしトレーニングをしてから寝よう。



そして机の上に無造作に置いてある黒真珠のネックレスに呼びかけた。


「バルタザール..」


<Què va passar?>
(どうかしましたか?)


「おまえを使うときが来るかもしれない」


<Estic content!>
(それはうれしいですね!)


「ま、俺はそんなに戦闘は好きじゃないが、やらねばならないときは..あるよな」





そう、俺はフォルテ・インプレッサ、F計画で生み出された人造魔導士にして、『記憶を持つもの』。




俺が殺す
俺が生かす
俺は抗う
俺は行く
 


            運命―FATE―なんて認めない。




[25975] 第1話「こちら機動六課総務部」
Name: 戯流我◆b167f322 ID:1d3bbf56
Date: 2011/02/17 21:58
0071年 4月29日 ミッドチルダ臨海第8空港





毎日数え切れない人々の足が床を叩く空港は今、燃えあがっていた。
見渡す限りの赤、赤、赤、
人々の悲鳴も、たちのぼる炎にかき消されてしまっているようだ。



その中で黒い甲冑に似たバリアジャケット身をつつみ、体からあたりの炎に似た赤いオーラを纏う男が1人。
彼の名はフォルテ・インプレッサ、その頃は査察官であった。
彼はとある企業の不正に関する情報を持つという重要参考人と空港で待ち合わせていのだ。しかし、突然の火災に見舞われたため、一管理局員として救助に参加していたのだった。


「こりゃあ参考人は生きてないな...待ち合わせ場所がほぼ爆心だ。」


(この火災、まさか故意に起こしたのだろうか...となると犯人はやはり..)


そんなことを考えながら進んでいたが、救助隊員の大声で思考は中断された。



「駄目だ!駄目だ!!こっちじゃ駄目だ!!」


「この先に子供が取り残されているんだ!何とかならないのか!!」


「さっき本局の魔導士が突入した!救助は彼女がしてくれる!!」


「本局の魔導士?」


「あ!インプレッサ査察官!はい!航空魔導士と執務官です!突入は1分前です!」


「なるほど。では私は南側に向かう。ここは頼んだぞ!」


「了解!!」

彼は飛行魔法を発動し、飛び去って行った。


(カスパーが無いが、戦わないのなら問題ないな。ふぅ~、やはり外の空気は良い空気だ。正直火災現場というのはあまり好かん。ちょっとゆっくり飛んで行くか..)


<Φωτιά μαγεία!>
(砲撃魔法です!)


「何!?」


ドゴォーーーーン ドシュドシュドシュー!

桃色の魔力光の帯がエントランスホールの屋根から生えた。

(なんと大胆な....待てよ..こうしちゃおれん!!)


「メルキオール!!」


<Αερίου πέρασμα κλείδωμα στρώμα!>
(気体通過阻止シールド展開!)

赤色の魔法陣が男の足元に生じ、砲撃魔法が開けた穴に透明な栓をした。


直後子供を抱えた白い魔導士がエントランスホールの屋根の穴を通過した。
彼女は男に目もくれなかったが、彼女のデバイスは点滅して何かを伝えたようだった。


「こりゃ魔導士本人は気づいてないな~、火災現場に穴あけたらバックドラフトが起こることぐらい知ってて普通だと思うが、きっと彼女は学が無いんだな、かわいそうに~」


<Επειδή είναι μικρά>
(彼女は若いですからね、仕方ありません)


「いや、俺も十分若いと思うが」


<Είστε τόσο ξεχωριστή.>
(あなたは特別ですよ)



「まあな........さて救助に戻るかあ! といっても後残るは救助隊員の退避ぐらいだろうがな、上で『歩くロストロギア』がなんか準備しているようだしな」


<Αυτός είναι σωστός>
(そうですね)


(しかし、やはりこの火災は妙だ。レリックが関係してるとしても、火のまわり方、空港の消化設備の不具合、人員の集まり、どれをとっても不自然すぎる。まさか、これは老人たちのシナリオか、はたまた....)



この後、彼は突然査察官を辞め、陸士訓練校の教導官となった。
4年前の春のことである。








            第一話 「こちら機動六課総務部」






0075年 4月某日 機動六課 総務部







機動六課という「課」の下に部があることに違和感を覚える人がいるかもしれないが、これにはいろいろと理由がある。いくら人手不足の時空管理局といえども、100を越える次元世界を管理する組織である。当然その人員は日本の公務員の総数より遥かに多い。故に時空管理局総務部はすさまじい数の部そして課全体を担当することはできないし、効率が悪い。したがって時空管理局総務部には派遣課というものが存在し、そこに所属する人員が数多の管理局所属組織のもとで「総務部」を組織し、機能させることになっているのである。この物語?の主人公フォルテ・インプレッサの所属は正式には時空管理局総務部派遣課古代遺物管理部機動六課担当室室長兼古代遺物管理部機動六課内総務部部長というなんとも長たらしいものになってしまっている。



その総務部も機能開始から数日たち、部のメンバーも仕事になれてきて、概ね順調のようだ。

今日も部長の声は総務部に響きわたる。


「レミー君、頼んでおいた書類データまだかー」


「セレナ君、通話が来てるぞ!」


「ガナッシュ君、目をあけて寝るんじゃない!」


「マルタン、エロゲーするな!!」


「グロリア君、お茶はもっと勢いよくそそげ!一滴ずつとか一杯30分かかるわぁ!」


「マルタン、隠れてアニメを見るな!!」


「ガナッシュ君、その脅威のペン回しはすごいが目障りだからやめろ。しかし、今どきタッチペンとは渋いな。キーボードそれで叩くのか...」



「セレナ君、通話を相手も確認しないで勝手に他の課にまわすんじゃない!」


「レミー君、年上だからってメールで会話をすませるんじゃない!目をみてはっきりと喋れ!」



「マルタン、おまえもう減給でいいかな? マンガを読むな!質量記憶媒体といっても私にはバレバレだ。」



「グロリア君、受付にいる時間のはずだぞ! 何? ティータイムは外せないだあ、ここは家とは違うと何回言えば分かるんですかぁ!」




お分かりだろうか。そう、問題児が約5名。


部長フォルテ・インプレッサの一日の発言の9割が彼らに対するものであるのも日常化しつつある。
何とか今日までやってこれているのは幸運といえよう。


「ふむ、全く彼らには困ったものだ。しかし、彼らに小言を言うぐらいしか俺の仕事はないんだな~暇だね~いいねぇ~こういう時間。これも君のおかげだな、メルキオール。」



<Πρέπει να δουλέψουμε>
(働かなかったら負けかなって思ってます。)


「君が何から何まで全部やってくれるからねぇ~、おかげで知の探求ができるというものだ。」


そう言いながらフォルテは次の本に手をのばす。
やはり本はただのデータと違って質量感があり落ち着く。


「しかも今日は隊長陣がフォワードの引き抜きか何かで留守だから、少々早めに帰ってしまっても問題あるまい。」




そして終業1時間前となり、フォルテは帰ろうとした、その刹那!
セレナがデスクの前に走りこんできた。


「部長!!深刻な問題が発生しましたー。設備課からですー!」


「何....だと!?」



「2階の女子トイレの便器が故障ですー。便座の温度調節機能がイカれて便座の温度が常に摂氏0度になっていますー。」


「それならさっさと使用禁止にして修理を手配してください。別にそんな大した問題じゃあ...」



「それが駄目なんですー。2階の女子トイレの便器は本局の払い下げ品なんですが、もうどこにも売ってなくてサポートしてくれる企業もないんですー。修理屋に頼むととんでもない金額になるらしいしー、またー捨てて新しく買い換えるのも考えたそうなんですが、こちらもまた設置環境のせいで馬鹿みたいに金がかかるらしいんですよー。しかもこの六課って女性が意外と多いから便器が一つなくなるだけでもけっこう問題なんです。でーしょうがなく部長にまわすことにしたようですー。」



「.............................」
(くぅ~こんなくだらないことで早く帰宅するチャンスを逃すのは惜しすぎる~。確かに六課は、無茶な人員集めと部隊の人数に対して過剰すぎる設備を持っていて財政は火の車で、総務部のメンバーの給料さえ危ない。がぁ、だからといって俺のスーパー帰宅タイムを邪魔する理由にはならん!! 考えろ!考えるんだ俺!!)


「あの~」

お盆を持ったグロリアが控えめに手をあげた。


「何だね、グロリア君?」


「よろしければ私が持っております便座カバーを寄贈いたしましょうか?」


「便座...カバー? 何だそれは?」



「はい、まだ魔法技術が発展しておらず、便座の温度調節機能がなかった時代にあったものでございます。気温が寒くなり、便座の冷たさをしのぐために使われたものだそうです。たまたま私、今、車の方に置いてありますので、しばらくそれを使えばよろしいかと。」



「なるほど..それは名案だ。恩にきる。....しかし、なぜその便座カバーは君の車の中にあるんだ?汚くないのか?」



「いえ、おじいさまから聞いたところによりますとおじいさまが子供のころから使われているのは見たことないと、つまり100年近く使われていないことになりますので、汚いということは無いでしょう。定期的に魔法で除菌もされておりましたし...少なくとも私が子供の時から車のクッションとして使われておりましたわ。」



「分かった。ありがとう。じゃセレナ君とグロリア君、設置をお願いできるかな?」


「「 了解しました! 」」


(さて、帰るとするかぁ...)

フォルテは今度こそ帰ろうとしたのだが..


「部長~、スミマセン、ボクもちょっと問題があるんですが..」


マルタンに邪魔された。


「マルタン、君は一体何の問題があるんだい!?」


眉をピクピクさせながらフォルテは答える。


「いやーそのー。ボクが毎日汗拭きハンカチを持ってきてるのご存知ですよね?」

彼はデスクに座って何もしなくても汗をかく人なのだ。


「知ってるが...それがどうした!」


「それがボクの問題でして、汗拭きハンカチ16号が昨日から見当たらないんですよ、どうしましょう?」



「知るかあぁぁ!自分でどうにかしろ!俺は何でも相談室じゃねえぇぇ!!」


さすがに頭に来たのかフォルテの言葉は乱れていた。
それを受けてマルタンは少し面食らいつつ...


「あれが無いと生きていけないんですよ...、そういえば部長ボクだけ最近なんか呼び捨てにしてますがそれは...」


...話題をそらすことにしたようだ。


「おまえに対して『君』をつける労力が惜しくなった、それ以上でもそれ以下でもない!」


さりげなくひどい言葉が返ってきたが、マルタンは気にもせず、というかかなり嬉しそうだった。


「ありがとうございます!全く部長は素直じゃないですね~ ふっふっふん♪」

と言いながらスキップしていった...


(一体何なんだ? アイツ?)

フォルテ背筋に嫌な電気が走ったが、予定通り帰宅することにした。



こうして六課の2階女子トイレに『便座カバー』が設置されたのだった。









同日 機動六課  某所









「ふむ、30分も無駄にしてしまった。しかも総務部は隊舎の入口が遠すぎじゃないか?」


フォルテは苦い顔で呟いたその時だった。
唐突にメルキオールからの念話がやってきた。


<Μερικοί άνθρωποι πριν!>
(前方に人です!)


「何!?」


ちょうど廊下の曲がり角にさしかかったところだった。
右からものすごい速度で歩いてきたグリフィスと鉢合わせしてしまった。


「おや、インプレッサ部長ではないですか。こんなところで何を?」


「おおー、グリフィス君じゃないかー、久しぶり~元気にしてたかい?」
(こんなところで出くわしてしまうとは...仕方がないフレンドリーな雰囲気でうやむやにして帰るDADADA大作戦を決行するか...)


グリフィスは思わせぶりにメガネの位置をあげ、メガネを光らせた。


「なるほど、早引きを見つかってしまって焦っているのですね。分かります。」


「ふ、バレたか。相変わらずグリフィス君は鋭いねぇ~」
(くっ!? どうくるか..)


「早くお部屋にお戻りください。終業時間までまだ30分近くあります。」


「いや~あはは、ところでグリフィス君ずいぶん急いでいたみたいだけど...」
(全く生真面目なやつ..コイツ嫌いだ。話題を変えてみるか)


「歩きが速いのは仕様です。さ、戻って下さい。」

(がっガードは固そうだな...)


「それは命令かね?」


「いえ、私も部隊長にもあなたに命令できる権限はありません。これは提案、サジェスチョンです。」

そう、急ごしらえの六課にはフォルテをはじめとして何人かに対しては部隊長他に命令権が無いのである



(仕方あるまい、強行突破するか..)


「分かった。ありがたく提案は受け取ったよ。じゃまた明日!」


「ちょっ、あなたは人の話を...」


「メルキオール!!」


<Περπάτημα Γρήγορη!>
(高速歩行!)

次の瞬間フォルテは時間を早回しにしたかのような動きで歩き去っていった。
確かに廊下を走ってはいない。


「ふ、これが真に歩くのが早いということだよ、グリフィスくぅん~」


<.......................>









同日 ミッドチルダ  自宅兼ラボ






「すまないな、バルタザール、今日もおまえをメンテしてやる時間が無かった。」


<No es preocupi..>
(お気になさらず..)


「VGDⅡ型の開発が遅れていてね、この機動力を重視した機体でAMFをどうやって打ち破るかが問題となっているのだよ。」


<Quin és el mateix que Ⅰ tipus acceptat?>
(Ⅰ型と同じでは駄目なのですか?)


「ああ、Ⅰ型と同様に魔力弾を極限まで収斂して打つ方法にするにはまるで容量が足りないんだ。」


<Veig..>
(なるほど..)



疲れたようにフォルテが瞳を閉じたとき、通話が来た。


「評議長?いや違うか。」


空間モニターに映し出されたのはフォルテが尊敬する一人の騎士。
8年前に死んだはずの亡霊。


「おひさしぶりです。ゼストさん。お身体の具合はどうですか?」


「ひさしいな。身体は半年前おまえに診てもらったときから悪くはなってない。」


「それは予想どうりです。身体についてもスカリエッティ君に感づかれないよう注意してくださいよ。」


「ああ、分かってる。ところでトレディは元気かな? ルーテシアが微妙に会いたがっているような感じだ。」


「トレディは2日前メンテナンスに来たときは元気一杯でしたよ。背も多少肉体年齢のわりに低いですが順調に伸びていますし...で、ルーテシア君はどうですか。相変わらずクールビューティですか?」


「うむ、まあそうだな。表情は相変わらずほぼない。」


「でもトレディの話になったとき表情が微妙に変わったぜ!」


画面の向こうにゼストの顔の隣に赤い髪の小さな女性が現れた。


「アギト!ルーテシアについていろと言ったはずだが?」


「いやアタシもフォルテっと話したかったからさぁ、よおフォルテ!」


「ふむ、相変わらずの高いテンションだね、アギト君。それでゼストさん、用件は何でしょうか?」


「ああ、スカリエッティがナンバーズ、セッテ、オットー、ディードの機動準備に入ったようだ。」


「なるほど、それはまたご苦労なことです。こちらも気をいれなければいけませんね。」


「今回渡せる情報は以上だ。あまり長話は危険だ。そろそろ切る。『忘れるな』」


「もちろん『忘れません』よ。ではまたいつか。」


「へへっ...今度ユニゾンしようぜ、フォルテ~」


通話は切れた、暗い研究室に暗さが戻った。



(ふむ、『無限の欲望』は今年こそ動くつもりか。さて...どうしようかな)



物思いにふけりながら顔をあげた。



視線の先には2つのポッドがあった、その中は.........................。












[25975] 第2話「ふぅ、まあとりあえずキバレ」
Name: 戯流我◆b167f322 ID:2f398e06
Date: 2011/02/20 18:37


0069年 某月某日  ミッドチルダ 某所





暗い路地を魔導士は進む。
彼の名はティーダ・ランスター、
目下逃走違法魔導士を追跡中であった。


『ルータス!さっさと付いて来い!!』

ティーダは部下のルータスに念話を飛ばす。


『ティーダ、これ以上追うのはまずいぞ。このあたりはエルカミーノ財閥の縄張りだ。管理局とはいっても...』


エルカミーノ財閥は言わずと知れたミッドチルダ、いや全ての次元世界で一位を誇る財閥であり、その力には管理局も従わざるを得ない場合も数知れない。


『こっちは完璧な犯罪の証拠も持ってる。縄張りだかなんだか知らないが、次元世界の平和を守るのが俺らの仕事だ、その仕事の邪魔は誰にもさせないし、させない!!俺は行くぞ。』


『........わかった』


ティーダは加速した。
サーチャーによると、この速度なら20秒足らずで追いつける。
そう思ったその時、
ティーダは長年の経験と勘から何かを感じ取り、とっさに身体をひねった。


「がはっ!?」


瞬間、肩に鋭い痛みが走り、赤いものが宙に舞った。
間違いなく殺傷設定の魔力刃で斬られていた。


「..........一撃で仕留め損ねたか。」


そう呟きつつ、
ティーダの目の前にその凶刃の持ち主は現れた。


ティーダは幽霊でも見るような顔をしていた。


「ジェム、お前なの..か?」


「........ああ」

対する男は何でもないような顔をしている。


「なぜ....お前が......いや、はっ!まさか!」


「やはりあなたはよく調べているようだ、『御影』様の予想は正しかった。」


「御影!?『闇の闇の闇』のことか?」


「...そこまで分かっているならもはやどうしようもないな」

男は剣を構える。
間違いなくベルカ式のアームドデバイスだ。


「そうか、そうなのかジェム!!急に管理局を辞め...」

ティーダの言葉はジェムと呼ばれた男の剣によって遮られた。


「くっ、俺にやる言葉はもうないってか?、つれねぇなあ」

ティーダがそう言ったその時、男は何を思ったのか急に間合いを空けた。

間合いが空けば、それはティーダの攻撃範囲である。
疑問を感じつつも愛機の銃口を向けようとしたその刹那。


「何...だと!?」

足元に緑色の魔法陣が発生し、身体中がバインド魔法で拘束された。
さらに、強力な魔力光とともに背後で砲撃魔法が展開されたことを愛機が告げる。

ティーダはゆっくりと振り向いて......


「.....ス、おおまあああえええもっかあああああああ!!!!!」


光につつまれた。




ティーダが最期に思ったこと、それは

(ティアナは...俺がいなくなって.....

俺の枕の中に隠してある『激盗撮!女子トイレっと』ってシリーズ、うまく処分してくれるだろうか?)









0069年 某月某日 ミッドチルダ 某墓地






曇り空の下、ティーダ・ランスター一等空尉の埋葬が行われていた。

参列者は少ない。
ほとんどが管理局関係者、遠い親戚がちらほら。



管理局関係者はしぶしぶ来てるという感じだった。
しかも彼らは口々にこう言っていた。

「航空魔導士としてあるまじき失態だ。」


「たかが違法魔導士ごときにやられるとは、犬死にだな。」


「きっとごますりで一等空尉にまでなったんだろう」


「ルータス、お前も災難だったな~、あんなやつと一緒になったせいで」


「全く、後始末する身にもなってくれよってのー、使えないやつだったよ、そのわりに自信過剰でね」


「管理局の恥さらしめ」


「ティーダのかあちゃん、でーべーそー」



彼らはもちろん小声で言ってはいるが、葬儀という場の性質上、意外によく聴こえる。当然ティーダの妹であるティアナ・ランスターにも聴こえていた。

だが、彼女はまだ幼くそれを黙らせるなどという芸当はとてもできなかった。
ただ、うつむいて湧き出す感情を抑えようと手に力をいれることしかできなかった。



そんな中、一人もの思いにふけっている男、いや少年というべきか、が約一名。
ティーダ・ランスター殉職事件の現場捜査を担当した捜査官、
フォルテ・インプレッサ捜査官(14)である。


フォルテの心の中は、このとき疑念で埋め尽くされていた。


(奇妙だ、実に奇妙だ。不可解な点が多すぎる。右肩の傷はおそらくベルカ式によるもの。しかし、命を奪った身体に大穴をあけるほどの砲撃はミッド式によるものだ。逃走魔導士は一人。一人でミッド式とベルカ式を使いわけるだろうか?上はそう判断しているが,,,常識的に考えてそう判断するのも妙だ。やはり裏があるのだろうか。俺独自の魔力分析方法で調べたが、遺体の大穴の残存魔力から管理局のデバイスとおぼしき波長のものが見受けられた。この方法は正式には認められておらず、上には報告できないが...となるとやはり.............)


そんな考え事をしているうちに埋葬は終わり、気がつけば人がいなくなっていた。


フォルテの視界にとまったのは、墓の前でしゃがみ込んでいる一人の少女......
後、機動六課に配属されるティアナ・ランスターである。


(さて、どう声をかけたものかな......)


考えること3分半、フォルテはティアナの方へ歩いていき...


「....トイレならあっちだよ。」


「は?」


「いやなに、そんなところで苦しそうにしゃがみ込んでいるからトイレしたいのかと思ってね..」


「..................................」


(ふっ、どうやらスベったようだな...)

表情にはまるで出ないがフォルテは内心焦っていた。
フォルテ・インプレッサという人間はとてつもなく明晰な頭脳と類まれな戦闘能力を持っているのだが、空気を読むことが全くできない、というより空気って何それおいしいの?状態なのである。
結果、3分半必死に考えた言葉がこうなってしまうのだ。


「君がティアナ・ランスター君だね?」

気を取り直してフォルテは尋ねた。


「..........帰ってください」


「いきなり拒絶とはひどくないかい?」


「帰ってください! ..あなたも兄さんの悪口言いに来たんでしょう!」


「悪口を言いにきた人がわざわざ冗談を言うかね?」


「......あれ、冗談だったんですか?」


「そのつもりだったんだが...一体なんだと思ったんだい?」


「......ナンパ?」


「いやナンパってのはもっとこう趣がある感じで~こう..........(中略)...そもそも男女の付き合いとは........(また中略).......であるからして、問題となる条件は~」

管理局でも有名なフォルテ式論説がはじまった。
執務官時代には一種の罰ゲームにもなった代物である。
さすがのティアナも...


「あー悪口を言いに来たんじゃないことは何となく分かりました、でも帰ってください。ちょっと独りになりたいんです。」


「ほう、では独りになってどうするんだい?考えごとでもするのかね?」


「まあそうです。」


「ちなみに今考えていることは?」


「母さんがでべそって何でバレたんだろう...。」


「そこ!?」


「知ってるのは家族だけのはずなのに....」


この時のティアナはまだ幼く逃亡違法魔導士がどうのとか、そもそも管理局&事件についてそこまでの知識はなく、参列者たちの言葉もただ悪口を言っているとしか分からなかったのだ。


「どうやら事件についても管理局のことについてもよく分かってないようだね。」


「わっ分かってます!」


「じゃこの事件の概要の説明をしてもらおうか?」


「えーと...」

ティアナは立ち上がって、考えること2分弱。
ようやく答えがでたようだ。

「兄さんが違法魔導士の女の人に一目惚れして、密会しているところを管理局の人に見つかって、それを弁明している時に、後ろから違法魔導士にやられたんです!」


「何その壮大なストーリー!?」


「違うんですか?」

フォルテは深く溜息をついた。
(本当に分かってないようだな..)


「仕方ない、私が知っている限りの情報を教えるよ。ただし、これは私独自で手に入れた情報も含まれている。決して他人、たとえ管理局の人間であっても話してはいけない。そう約束できるなら話そう。」


「..話しません。約束します。」


「分かった。では....かくかくしかじか....」



フォルテはさっきから疑問に思っていることも含めてオブラートに全てを話した。


「そう....だったんですか..」

話を聴き終えたティアナの目には悲しみとは異なる感情も渦巻いていた。


「それはやはり管理局の中に兄さんを殺した、あるいは殺させた人がいるってことですよね?」


「その可能性もあるということだ。断言はできない。」


「ということはその犯人から管理局員になんらかの圧力が働いてて......」


フォルテは正直ティアナを見直した。
先ほどとはうってかわって、真剣そのもの、気迫のようなものも感じる。
本番に強いタイプとはこういうのを指すのかもしれないと内心思った。


「だが今の君が何をしても、この事件の『事実』は変わらない。それだけは分かっていてほしい。」


「分かってます。管理局を敵にまわしても無意味ですしね。でもあきらめません。いつか兄さんの汚名をはらし、犯人を倒す!ランスターの銃の強さを証明してみせます!」


「なるほど。それでどうやってそれを為すのだね?」


「管理局に入って執務官を目指します。執務官は兄も目指していましたし..」


「内側から食い破ろうってやつか。だが執務官ではそれは難しい。」


「どうしてですか?」


「執務官は確かに権限は大きい、だが逆にいえば管理局に大きく左右されるということでもある。管理局上層部の意志によって仕事の内容もほぼ決まるといっていい。そんなのにもし君がなったら、管理局上層部のそのまた上、管理局の『闇』とも言えるものにとって都合のいいような仕事に君は就かされるに違いない。つまりまあ手駒にされるということだね。」


「そうなんですか」


「俺も昔は執務官だったが、ひどいことが多々あったよ。想像以上に深いんだ...管理局の『闇』は..」


そこで静寂が訪れ、
ティアナは考えていた。
これからどうするべきか、どうしたいのか、どうするのか。


「後、これは俺からの忠告なんだが、君には運命に流されてほしくはないな」


「それは、復讐するなって意味ですか?」


「いや違う。俺が言いたいのは外的要因によって自分の行動が変化していることに気づかず、日々を送ってしまうことだよ。」


「?」


「まあまだ分からないだろうな。結局俺が言えることはただ一つ。まあとりあえずキバレ!」


「頑張れでしょwww」


「ふむ、元気が出てきたようで良かった。っと時間があれなんでそろそろ私は失礼するよ、じゃあな!....メルキオール!」


<Περπάτημα Γρήγορη!>
(高速歩行!)

フォルテはビデオの早回しのような速度で歩き去っていった。

ティアナが呼び止める暇も隙もなかった。


「.......名前訊くの忘れたなぁ...一体何者なんだろう?あの変態」

(しかし、何か最後の方少し雰囲気が変わったような...)










        第2話「ふぅ、まあとりあえずキバレ」







0075年 4月某日 機動六課 総務部






「何考えているんです?部長?」


レミーがそう尋ねるとフォルテは驚いたように顔をあげた。


「ああ、フォワード陣のデータを見ていてね、知り合いと知り合いの妹さんがいて驚いていたところだよ。」


「へぇー、誰なんです?」


「ティアナ君とは昔お兄さんの事件を担当したときに話をしたことがあってね。まあおそらく私はこの通り影がうすい人間だから、むこうは覚えてくれてないだろうけどね。そしてスバル君は、私がとある陸士訓練校で教導官をしていた時の教え子、ギンガ君の妹なんだよ。」



「それはまたすごい偶然ですね。ていうか部長は影薄くありませんよ。逆に濃いぐらいです。」


「そうかなあ」
(俺のメガネには影を薄くする魔法がかかっているはずなのだが....)


「それでティアナ&スバルさんには会いに行かないんですか?知り合いなのに」


「ん~、どうしようかねぇ」

デスク上のデータが写されたモニターを見ながら呟く。
そこへ.....


「ボクはティアナちゃんはタイプではありません。」

マルタンがやってきた。


「黙れマルタン!誰もそんなこと聞いとらん!そもそもお前にぁゲットは不可能だ!」


「部長、そんなこと言ったらマルタンさんがあまりにも可哀想ですよ....」
レミーが哀れそうな目でマルタンを見る。


「ティアナちゃんの声はあまり好みじゃないんです!」


「だーかーらー!っていうかマルタン君は女性の優劣を声で判定するのかね?」


「はい、前にも言いましたようにボクは第97管理外世界『地球』の文化に並々ならぬ関心があります。そしてその文化には声を生業とした声優という職業があります。ボクはその声優が大好きなんです。で、いつのまにか声が女性のステータスになってたんです。ボクの中では。」


「むぅ、その文化はよく分からないが知的好奇心から一応聞く、ティアナ君の声はどこが駄目なのかね?」


「ミッド語にも地球語にも声を形容する言葉が少なすぎるのでなんとも言いがたいのですが、ティアナちゃんの声は地球の声優でいうとマイ・ナカハラの声に似ています。ボクはマイはマイでもマイ・ゴトーの声が大好きなんです。よってティアナちゃんの声はタイプじゃないんです。」


「すまないが、私には何を言っているかさっぱり分からない。誰だねそのマイなんとかって?」


「彼女たちは地球の人気声優なんです。ああっ、そういえばボクが今やってるエロゲーにマイ・ゴトーが出てたはずです。『いつか、届く、あの尻に』ってタイトルなんですが........」


「いっ一応知的好奇心から聞いておこう、何だねその『いつか、届く、あの死地に』って?」


「死地ではなく尻です。尻です。大事なことなので2回言いました。『いつか、届く、あの尻に』は、9年ほど前にできたエロゲーです。年々グレードアップして新しいバージョンが出ています。内容の説明をしますと、まず主人公は芸術家の一族の生まれなのですが、彼には才能がまるでなく、ついには家を追い出されてしまいます。」


「ふむ、まあ物語にはよくありそうな設定だな。」


「そして彼はとある街にたどりつきますが、その街は有識結界で閉ざされた街で千年以上もの間外から人が入ったことはなく、彼は住民から不思議がられます。そこでその街の長の娘と彼は運命的な出会いをし.........(中略).......実は幼馴染であったことが分かり.......その子は健気にも自分のピーをピーピーピーして主人公にピーピーさせます......また長の娘の友人とは......主人公が顔ピーをピーピーピーしてしまい.........(さらに中略).....そこで『俺の尻はぁぁ、天を突く尻なんだよぉぉぉ!!』という名言が生まれ、有識結界を崩壊させます。主人公は代償として用をたせない身体となってしまいますが、夜があけ、朝日に向かってヒロインたちがコーヒー牛乳を飲んでいると..............流れ出た金色の液体が主人公の股の間を.......」


「すまん、もういい。なんかなんとも言えない気分になってきた。」


「ちょっと僕は外の風にあたってきます。」
レミーはふらふらと外へ出ていった。


「俺も外に行くとしよう。胸焼けがしてきた。」
フォルテはそう言って席を立とうとしたが...


「ちょっと待ってくださいよ部長!」

マルタンに阻止された。


「あぁん?もういいって言ったはずだが?」


「ボクが部長のところに来た元々の目的はこれを渡すことだったんです。」

マルタンのデバイスからデータが送られてきた。
機動六課のメンバーの名前がリストに並んでいる、女性ばかりだ。


「これは何だね?」


「2階女子トイレの便座カバー存続希望の署名です。」


「そんなに人気なのか?」


「ボクはよく知らないんですが、女性陣が噂話をしているのを聞いたことはあります。」


「まあ、修理する手間が省けていいがな...確かに受け取った。」



そう言うとフォルテは席を立ち、今度こそ外へと向かっていった。









同日 機動六課 屋上






ヘリのパイロットであるヴァイスは屋上から空間モニターを通して新人フォワード陣の初訓練を見守っていた。
そこへ.....


「ん?ヴァイス君じゃないかぁ、久しいねぇ。」


実に偉そうな態度でフォルテがやってきた。


「インプレッサさん!?どうしてここへ?」


「知らなかったかな?ここの総務部の部長をしているんだよ。まあ部隊の挨拶?みたいなのにも出席してなかったからねぇ。知らなくて当然だ。」


「そうだったんですか。どこぞの陸士訓練校で教導官をしていると聞いていましたが、今度は総務部長ですかー、って非戦闘員じゃないですか!一体どうして?というかどうやって?」


「ふむぅ、まあ色々あってね。............それで、新人たちの調子はどうだい?」

フォルテは展開されている空間モニターに目をむけた。
ヴァイスは何かを察したようにフォルテに目をむけた後、告げた。


「全く、あなたは神出鬼没ですね........新人たちは初日だというのに見ての通りエンジン全開みたいですよ。」

画面上ではティアナが魔力弾の上に魔力で膜を張っていた。


「多重弾核射撃とは......やるなぁ....」


「確かAAランク魔導士の技でしたよね、あれ。」


「..................」


「俺も昔練習しましたよ。インプレッサさんはもちろんできますよね?」


「.........................」

フォルテはあらぬ方向を向いて目をつぶっていた。


「インプレッサさん?」


「ん?...ああ今ちょっと考え事をね.....しかし、このフォワード陣はなかなかすばらしい。」


「まあまだまだ俺の目にはひよっこに見えますが、将来は間違えなく有望でしょうね。」



「んー私はそろそろ失礼するよ。確か新人の訓練も正式な部隊員でない私に見せるのはいけなかったはずだしね。」
(戦闘機人タイプゼロ・セカンドに、生きて動くF計画の残滓か.....実に興味深い...)


「インプレッサさんは別に見ても問題ないと思いますが、確かにそんな規則あった気がしますね。」


「ではまた、っとああそうだ、妹さんは元気にしてるかな?」


「はい、おかげさまで元気にしてますよ。....左目の視力も日常生活に問題ないレベルに回復しましたし...」


「それは良かった。妹さんの主治医として患者の経過は非常に気になっていたんでね。」


「あなたには感謝していますよ。あの事件の捜査で、光学魔法による誤射誘導の可能性を指摘し、妹の左目の治療もしてくれたんですから。あなたがいなければ武装隊をやめていました。」


「ふむ、俺は俺にできることをしただけだ。ではな.......メルキオール!」


<Περπάτημα Γρήγορη!>
(高速歩行!)

フォルテはまた例の魔法で、すばやく歩き去っていった。



(あの歩き方、本人かっこ悪いって気づいてないのかな.....)
ヴァイスは内心そんなことを思っていたが、声には出さなかった。









同日 ミッドチルダ 自宅兼ラボ





「ふむ、ようやくVGDⅡ型の完成だ!」

フォルテは設計図のデータを保存しつつ、ソファーに座る。


「おつかれさまです。ドクター。」

そこへ紺色の髪を長く伸ばした女性がお茶を持ってやってきた。


「今日、六課の訓練を見ていて閃いたのだよ。多重弾核射撃とは盲点だった。あまりにも単純かつ大胆な方法なのでね。」


「しかし何故訓練を見に行ったんです? ドクターなら暇さえあれば、本を読むか瞑想してるでしょうに。」


「む、私は本を読むことや考え事以外のこともするぞ、最近はボードゲームの類もやっている。で、まあ~何故かと聞かれれば、そうだな、マルタン君が胸くそ悪い話をしてくれたおかげで外に出たくなったからだな。ということは今日の成果は半分マルタン君のおかげかあ....」


「なるほど。それでその胸くそ悪い話というのは一体.....?」


「いやそれは聴かない方がいい。しかしまあ残り半分は君のおかげだよ、ディーチャ君。老人どもも焦っているんだろう。君を私の元で手伝わせるのだからねえ~」


「いえいえ、私はただドクターのデータの整理をしただけですよ。」


「だからそれが助かったと言っているんだよ。私はものを考えすぎるあまり周りのことが目に入らなくなることが多々あるからねぇ~」


「ところでドクター....」


「何だね?」


「もうそろそろお休みにならないと...明日も仕事おありでしょう?もう日が出てしまいますよ。」


フォルテはガバっという擬音とともに時計を見る。


「し..しまった。集中しすぎたか...やむを得まい。明日、というか今日は有給にしよう。うん、それがいい!....というわけで俺は寝る。昼前には必ず起こしてくれ。」


「..................了解しました。」


フォルテは寝室に向かう前にデスクに立ち寄る。
そこにはフォルテのアームドデバイス、バルタザールがポツンと置いてある。


「バルタザール...」


<Sí?>
(はい?)


「ようやく明日からはお前をメンテする時間ができそうだ。」


<És una sort.>
(それは良かった。)


「うん、じゃ、おやすみだ。」


<Bona nit.>
(おやすみなさいませ。)





ミッドチルダのとあるところで闇は.....動いていた。












[25975] 第3話「ああ、それとおまる」【本編執筆中】
Name: 戯流我◆b167f322 ID:82ed36e5
Date: 2011/02/27 19:00





0060年 2月某日  第64管理世界 「ゲリスール」 インプレッサ家




穏やかな日差しであふれるインプレッサ家リビングは今、白熱していた。


「ふむぅ、やはりワシは『ブリゲリザエモン』がいいと思うんじゃが....」


「そんな汚い響きの名前より『ゼッツリン』がいいと思うわ、おじいさん。」


そう、名前を何にするかについて朝からずっと議論しているのである。
もうお天道様は真上に来ている。

議論し続ける老人ふたりを尻目にため息をつくのは一人の少年......
いや幼児といった方が良いだろう。身長は1mちょっとしかない。
この老夫婦は彼の名前を考えていたのである。


名前を考えられている当の本人は、まるで興味なさそうに

「だーかーら私は呼びやすい名前であればなんでも良いとさっきからずっと言っているでしょう、そんなにこだわらなくても.....なんなら私がテキトーに考えましょうか?」

と言い、

「「絶対だめ(じゃ)!!」」

と返される。

このやりとりも朝からずっとしている。


なぜこのような状況になったのかというと、話は前の日の夜に戻る。

その少年は一晩泊めてほしいと言って前の日の夜インプレッサ家にやって来た。
老夫婦はたいそう驚いた、というのも少年は見た目4、5歳にしか見えなかったからだ。
何故こんな子供が独りで旅をしているのか?一体どんな事情があるというのか?
疑問に思いつつ子供を家へ迎え入れた。

その子供は自分の置かれている状況について簡潔に述べた。
自分がとある実験で生まれた人工生命体であり、身寄りがないこと。これから行く当てがなく、とりあえず旅をして安定して生活できる場所を探しているということ。とにかく裏社会から離れたいこと等等である。

それを聞いた老夫婦は当然驚いた、が二人は同時に同じ考えにたどり着いた。まあたどり着かない人の方がきっと少ないであろう。そうであってほしい。


大方の読者がお察しの通り老夫婦はその子供に家に住まないかと申し出た。
それをその子供は丁重に断った、「他人にそんな迷惑をかけるわけには行かない」と。
だが、老夫婦は引き下がらずこう言った。

「じゃあ家の子になればいい。」

この言葉に対しその子供はひどくうろたえた。きっとあまりに想定外の言葉だったのだろう。
結局、その言葉に返す言葉が思いつかず、今にいたるというわけだ。



そろそろお腹も空き始めたころ、おじいさんがこう言った。

「じゃあお前を生んだもとになったという計画から、フェイトという名前はどうだい?」

それにおばあさんは

「良い名前ね、フェイトってどこかの言葉で運命って意味があるって聞いたことがあるし、運命的なものを感じるわ、どう?ぼうや?」


「..........それだけは絶対イヤだ....運命なんて........絶対...嫌だ。」


その言葉からは悲痛な感情の叫びが聞こえるようだった。この子供はインプレッサ家に来てから人間らしい感情をまるで見せなかったのだが、この時ばかりは違った。歳相応の子と同じ表情だった。



しばらくの沈黙の後、おじいさんは何か思いついたようにこう切り出した。

「では運命が嫌いだというのなら、そのF,A,T,EをAを抜き2つに分け、Aのあったところに選択肢を与える言葉、ORを入れてみるのはどうかな?」



「F,O,R,T,E......フォルテ....?」


「そう、確か意味は、なんじゃったかなばあさん?」


「強い...という意味だったと思うわ。」


「強い...フォルテ...強い....フォルテ...」
その子供は繰り返しそうつぶやき、しばらくしてからうなづいた。

「フォルテ....良い名だ。」


ここに、フォルテ・インプレッサが誕生したのだ。




夕食後、フォルテはこれから自分の部屋となる部屋を訪れた。
その部屋は今は行方不明になっている老夫婦の息子が昔もの置きにしていた部屋だった。
老夫婦の息子は考古学者だったようで、部屋にはいたるところに遺跡等で発見したものが転がっていた。

その中で赤く怪しい光を放つ宝石がはまったブレスレットが、フォルテの目に留まった。

「これは.......」

(どこかで見た記憶がある、いや記憶を持っているというべきか....)

「バルタザール!」


<Què va ser això?>
(何ですか?)


「このブレスレット....デバイスでは?」


<Es tracta d'un dispositiu>
(そのようですね。)


「だが、厳重に封印がされているようだ。魔力すら感じられん。バルタザール、封印を解けるか?」


<Possible.>
(できますよ。)


「やってくれ。」


<És clar!>
(了解!)

次の瞬間、フォルテの足元に複雑な円形の魔法陣が現れた。
なんとも形容しがたいが、一言でいうなら万華鏡に近い印象をうける。

その魔法陣から伸びる触手がブレスレットの宝石に触れると.....
なにかが割れる音とともに、あたりに女の人の声が響いた。

<Ήρθε ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!>
(キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!)


<Aquest tipus és un tipus inquiet....>
(うるさいやつですね.....)

バルタザールはデバイス特有の抑揚の無い声で呆れていた。


<Είναι τέσσερις χιλιάδες χρόνια. Από m από το!!>
(四千年!四千年ぶりに開放されました!!)


<Calla poc.>
(少し黙っとけ。)


<Η εντύπωση αυτή δεν είναι κατανοητή από κανέναν!>
(この感動はどうせあなたには分からないのでしょう!)


<Caldrà veure.De vuit mil anys havia estat segellat també.>
(分かるさ。私も八千年間封印されていたからな。)


<Είσαι γεννημένος Alhazred?>
(ひょっとして、あなたはアルハザードの?)


<Sí>
(そうだ。)


<Ικανός να σας δούμε και τα λείψανα του μεγάλου πολιτισμού σε ένα μέρος όπως αυτό.......!>
(こんなところであの偉大な文明の遺物にお目にかかれるとは......!)


また謎のデバイスが大きな声で感動し始めたところで、フォルテは咳払いをした。


「私を忘れないでくれるかな......君たち。」


<Senyor, no he oblidat i.>
(私は忘れてなどおりません、主よ。)


<Καθένας? Παιδί είναι αγενής?>
(誰です?この無礼な子供は?)


<Vostè! Com per burlar del meu senyor.>
(貴様、我が主を愚弄するのか!)


<Πώς; Και αυτό το μικρό παιδί είναι ο Λόρδος σας!>
(なんと!このおチビさんがあなたの主なのですか!)


<Aquest personatge Alhazred que hagi emmagatzemat en el misteri del més......>
(このお方はアルハザードの神秘を記憶されている方で、それはもう......)


「バルタザール黙れ、そして奴も黙らせろ。」


<Sí.Calla, el dispositiu.>
(了解しました.....黙ってなさいガラクタ!)

この頃のフォルテは情報の不足に耐える、ということが全くできない人間であり、事態が把握できないこ

とに堪忍袋の緒が切れたのだ。


「まずはお前だ、謎のデバイス!名前は何でどこで作られた?」


<Με ρωτήσατε! Έχω μεγάλη προστάτης του ναού της σοφίας

Belka «Μελχιόρ»!>
(よくぞ聞いてくれました!私はベルカ大神殿の知恵の守護神「メルキオール」!)


「なるほど、君は神官を補佐するために作られたというわけだ。しかし、四千年前ってベルカってあったのか?」


<Φαίνεται να είναι μια παρεξήγηση. Έχω Belka είναι το όνομ

α του ναού.>
(何か勘違いされているようですね。ベルカは神殿の名前ですよ。)


<Ella està molt a prop de la fórmula màgica d'aquesta edat Belka. Belka i etimologia de la paraula probablement temple.>
(彼女の魔法はこの時代のベルカ式に極めて近いような感じです。その神殿がベルカという言葉の語源な

のかもしれません。)


「ふむ、ということは仮に言うならば神代ベルカ式とでも言えるようなすごいデバイスということか。」


<Αν και δεν είμαι σίγουρος ότι αυτή τη φορά, είναι μάλλον!>
(この時代のことはよく分かりませんが、たぶんそうです!)


「しかし、バルタザール、いつ彼女の魔法体系について調べたのだね?」


<Durant la xafarderia anterior.>
(さっきの無駄話の間に。)


「仕事がはやいな。.....で、君はこれからどうするんだメルキオール?」


<Κάνω; Για ιερός πόλεμος θα τελειώσει, αλλά πάει πίσω στο σπίτι .....>
(どうって?聖戦も終わっただろうし、神殿に帰るつもりですが.....)


「知らなかっただろうが、ベルカは、お前がいた次元世界はもう無い。跡形もなく消滅した。」


<Τι είναι ...... και .....?>
(何....です..と?)


<Veritat. Quant a aquest moment la dimensió del món saps que sóc tot.>
(事実だ。私もこの時代の次元世界については全部知っている。)


<Τέτοιες ανοησίες.....Έχω uh-------------!!!??>
(そんな馬鹿な.....私はどうすればあああああーーーーーーーー)


「落ち着け!そんなデカい声を出すな!じーさん達が起きてしまうだろ!」


<Chill out! No hi ha lloc per aquesta merda!!>
(落ち着け、この行き場の無いガラクタ!)


「バルタザール......その言葉は火に油注いでるぞ。」


そんなこんなで夜は更けていき、時が流れた。







0060年 4月某日  インプレッサ家 玄関








「フォルテや、お金は持ったかの?切符は?薬も大事じゃぞ。ああ!それとおまる!!」


「おまるはいらない、絶対にいらない!!今どきトイレが無い場所を探す方が難しい!!」


「そうかのう、わしらが若いころはトイレが無い場所多かったがのう...なあ、ばあさん?」


「そうですねぇ~。そうだったかもしれませんねぇ~。トイレが使えないってことも~....」


「ああー、もう時間なんで私は行くとします。ではじーさんばーさんお元気で~さいなら~」


フォルテは何の未練もなさそうに老夫婦に背を向けた。
そう、フォルテは旅立ったのだ。第一管理世界「ミッドチルダ」へと....

背後からは...

「連絡よこすんだぞーーい!」


「良くキバルんだよ~!」


という老夫婦の声が聞こえる。

(キバルって頑張るって意味だよな、たぶん....突っ込む気も起きない...)
フォルテはため息をつきながら歩く。


<Τι είναι καλό; Σε μια τέτοια κρύα καρδιά αποχαιρετισμ.>
(良いのですか?あんな薄情な別れ方で...)


「良いんだよ、メルキオール。もう突っ込み役は疲れた。私のキャラじゃない。それに、ここにはもう知るべきこと、やるべきことはほとんどないからな。」


<Πράγματι, η αφοσίωση σε γνώση του Κυρίου, υπάρχει ακόμα κάτι το εξαιρετικό.>
(全く、マスターの知への執着心は並々ならぬものがありますね。)


「これはどうやら生まれもった特性みたいなものだからもうどうしようもないんだ。.........しかしメルキオールはここ2ヶ月でだいぶ大人しくなったよなぁ、初めて会ったときはどうしようかと思ったが...」


<Ε,Εκείνη την εποχή ήμουν αναστατωμένος!>
(あっ、あのときは気が動転していただけです!)


<Quan la gent està impacient i diu sovint que trec el cap.>
(人間焦ったときほど地がでるとよく言われるけどな...)


<Έχω τη συσκευή! !>
(私はデバイスです!!)


<Un cop a prop de nosaltres, els éssers humans no canviarà molt?>
(我々ぐらいになれば、人間とほぼ変わらないだろう?)


<Αλλά δεν .....>
(いや、でも~.....)


「ふむ、まあ君たちは確かに人間とほぼ変わらないといえるな。しかしお前らそんな高速で話すんじゃあない。私がついて行けん。.......まあ私が言いたいのは私についてきてくれてありがとうってことだ、メルキオール。」

フォルテは優しそうな笑顔でそう言った。

<Το αποτέλεσμα της βαθιάς σκέψης του. Είναι παράλογο, αλ

λά και αυτό που πάω, ό, τι ένιωθα το πεπρωμένο ....>
(自分で深く考えた結果です。そしてやはりなんというか非論理的なのですが、運命を感じたもので....)


その言葉を聞いてフォルテの表情は一変して暗くなり、そして激しくなった。

「メルキオール、運命は理由にはなりえない!これは絶対だ!!」


<Κύριε?>
(マスター?)


「そう!ありえてはならない!いや、ありえる確率も認めたくはないぃ!!」


<Senyor, calma't, que tenen pressió arterial alta. Dolent per al cos.>
(主、落ち着いて下さい、血圧が高くなっています。身体によくありません。)


「.....すまん。ちょっと取り乱したようだ。気をつけよう。だがメルキオール、運命という要素は論理から徹底的に排除してくれ、いいな!」


<Καταλαβαίνω.>
(了解しました。)


<...................>
(...............)

何かを感じとりながらもバルタザールは言葉を発しなかった。


こうしてフォルテはゲリスールを後にした。
彼が執務官試験に受かるのはこの約2ヶ月後のことである。執務官試験合格の最年少記録を塗り替え、一時期はかなり騒がれた。が、なぜかは知らないが騒ぎは一週間ほどで収まり、怪しげな視線を浴びることは多々あったが、一執務官としてその後8年間を過ごしたのだった。





余談ではあるが、

0060年 同日 ミッドチルダへの次元航行船内




「くぅ~、はっ腹が痛いぇ.....」


<D'acord?>
(大丈夫ですか?)


「むぅ、大丈夫じゃない。とっトイレへ行くぞ。」


手で下腹部を押さえ、のろのろとトイレへと向かう。
そこでフォルテが目にしたものとは!

「使用中」「使用中」「故障中につき使用禁止」「使用中」「使用中」....以下同文


チーーーーーーーーーーーーーーーーん

という擬音がフォルテの脳内を駆け抜けた。
フォルテは精神年齢こそ高いが人生経験は希薄だ、あまりのショックに気を失いかけた。
顔面蒼白である。


<Senyor, sens dubte l'atenció. Encara hi ha drogues.>
(主、お気を確かに。まだ薬という手があります!)

その言葉にわずかにフォルテの頬に血が戻った。


「うん、きっと、きっとあるはずだ。解決策が.....」

下腹部の激しい痛みに耐えながら、自分の席へと戻り荷物を確認する。

ガサゴソガサゴソ、テレテレってレーン!救急箱ぉ~ を取り出した。
その中身を見た次の瞬間!


デデーーーーーーーーーーーーーーーーん

という効果音がフォルテには確かに聴こえた。
救急箱の中身は、絆創膏、包帯、湿布等外用薬が多数。飲み薬はな.........い。


今度こそフォルテは燃え尽きていた、そう、真っ白に。
そこへ...

<Senyor, és deixar de moment. Hi ha escrits i diarrea.>
(主、あきらめるのはまだ早いです。下痢止めと書かれたものがあります!)


その言葉にフォルテは一転歓喜した。ああこれでこの苦しみから解放される...と


バルタザールが指し示した袋をあけ、それを見た。
と同時にフォルテの手が震え出した。


「ざ...坐薬.....だと」

(ありえん...ありえん!一方通行の腸内を逆から攻める....そんなコトが...ありえていいのだろうか?こんなものを今使ったら、いや...)

「使うしかねぇぇぇぇー!!」

手際よくズボン&パンティを下ろし、右手にブツをつかんで押し込んだ。


<Senyor ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!>
(主ぃーーーーーーーーー!!!!)

バルタザールが悲鳴をあげる。


フォルテは天を仰いだ。
インプレッサ老夫婦がはっきり幻視できる。
そして、先ほど興味がないと聞き流した言葉が蘇る。


『トイレが使えないってときもあるのよ。』



船内に卑猥な音が流れた...............................



<Βρήκατε αυτό το πάρα πολύ. Αναπτύξτε μαγεία

καθαρισμού.>
(やはりこうなりましたか。クリーニング魔法を展開します。)

赤色の魔法陣が現れ、何事もなかったかのようにフォルテの尻まわりからピーが消えていく.....


<Θα πρέπει να το χρησιμοποιείτε, αλλά μπορώ να χρησιμο

ποιήσω μαγικό διάρροια μου Καλa.>
(まあ私を使って下痢止めの魔法を使えば良かったんですがね。)


その言葉に放心状態だったフォルテとバルタザールが反応する。

「はい........?」


<Vostè, per què no dir en primer lloc?>
(貴様、何故それを先に言わない?)

それに対しメルキオールは

<Μετά από μια συνομιλία με ένα ηλικιωμένο ζευγάρι νωρίτερα, ήδη από αυτή την κατάσταση τώρα, ποια μοίρα.........>
(先ほどの老夫婦との会話の後、こんな状況になりましたんで、何か運命的だなあと思ったんです。)


「それが?」


<Ως εκ τούτου, έχουμε απομακρυνθεί από τη λογική του πεπρωμένου και να δρουν ως Πρέπει να σας πω.>
(ですから、言いつけどおり運命的と思ったことを行動論理から外させていただきましたwwww)


<............................>
(............................)


「........め」


<Εγώ?>
(眼?)


「メ”えええええええるきおおおおおおおおーーーーーーーーーる!!!!!!」


<Ναι?>
(はい?)



どうやら想像以上にメルキオールは厄介なものだったようだ。
彼らの、いやフォルテの苦難は続いていった............













第3話「ああ、それとおまる」



本編執筆中、デバイス同士の会話が時間かかる....
本編はフォルテとシグナムの模擬戦を予定。









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