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[25203] 【ネタ】魔法少年リリカルぐりむ!
Name: しらが◆da5095d9 ID:ad9d341d
Date: 2010/12/31 23:13
諸注意!!

ネタです! 

深く考えないでおきましょう!

続きません!・・・・・・おそらく。

年末の熱気に当てられて書いたものなので、結構な矛盾や原作上の相違点などが酷いはずです!

そして最重要、


きゃら崩壊!!


やばいです。
ええ、結構なレベルで。

ネタなので感想も帰ってこない可能性も大!!ぶっちゃけ投げっぱなしジャーマン!!

では、一応注意終了!

ゆっくりしていってね!



[25203]
Name: しらが◆da5095d9 ID:ad9d341d
Date: 2011/01/12 23:21
 時空管理局
 無限に存在する次元世界の平和と平穏を維持するために設立された組織である。

「ふん、ふん、ふん、ふん!」

 その職務とは、次元心などの次元災害などの対応、次元犯罪者などの捕縛。

「ふんふんふんふんふん!」

 魔法と呼ばれる超次元の能力を武器として、ありとあらゆる次元犯罪に対応していく組織である。

「ふんぬふんぬふんぬふんぬぅ!」

 そんな時空管理局には、有る一つの噂がある。

「ふんぬっふぁー!!筋肉とは、無敵であぁぁある!!」

 これは、アホみたいな稀少技能《レアスキル》とバカみたいな戦闘能力を保持した魔導師の話である。



「はぁー・・・、どないしよ・・・。」
「どうしたの?はやてちゃん。」

 機動六課、創立して一年にも満たない新設部隊であり、SクラスランカーやオバーSクラスの魔導師を「リミッター掛けてるから!」とか言って平然と保持しているあり得ない部隊である。
 その部隊の長、八神はやては憎っき目の上のたんこぶである地上本部の実質上の長であるヒゲゴリラもといレジアス・ゲイズ中将から送られてきた人事異動の報告に頭を悩ませていた。

 基本的には先程述べたとおりの化け物クラスの戦力をリミッター掛けたからと言って保持している機動六課は地上本部からは非常に嫌われているわけである。
 ので、その本部の人間達は何としてでも生意気新設部隊を潰す口実を探すためにありとあらゆるスパイを送って来たのだが、年齢不詳の異常味覚保持者であるリンディ・ハラオウン総務統括官やシスコン代表クロノ・ハラオウン提督によってことごとく潰され、残った優秀なスパイ達も『闇の書』の元主にして現在魔道書型ストレージデバイス『夜天の書』の主、地球の誇る腹黒狸こと八神はやて、現在頭を悩ましている張本人によって奸計に嵌められて消えていくわけである。

「毎回お馴染みになってきた、本部からの嫌がらせ何やけど・・・・・な。」
「この人のこと・・・・?優秀な人だね、珍しく。スパイじゃないんでしょ、悩んでいるってことは。」
「調べた限りじゃ何もないんよ。リンディさんやクロノくんからの注意もなかったし、問題もないと、思う。やけどーーーー」
「其れが逆に、あやしいんだよね・・・・。」
「オマケに名前と階級、魔導師クラスしかのってへんし・・・せめて顔写真は送れや。ネックの稀少技能《レアスキル》の詳細もなし・・。怪しすぎるんやけどな・・。」
「此処はリンディさんとクロノくんを信じようよ。」

 ちなみに現在はやてと話しているのは管理局の誇る最終兵器、白い悪魔、魔砲少女、と様々な異名を持つ管理局の魔王、高町なのはである。


 一つ暴走しただけでもかなりヤバイ災害をまき散らすロストロギア、『ジュエルシード』。オマケに周囲の強い情念に反応しただけでも暴走するという素敵仕様。ついでに言うと、複数有れば『次元断層まで発生しちゃうよっ★』と言う、トンデモ出力。
 しかも使用目的が『願いを叶える』という意味不明具合。
 で、其れが何と襲撃に遭い、管理外世界にばらまかれ「オワタ」な状態にあってしまった。
 だがしかし、そんな下手物兵器を魔法を初めて知ったごくごく普通?の一般市民、高町なのはが目出度くも魔砲少女デビューしてAAランクの魔導師や、それに匹敵するようなジュエルシードの暴走体をばっさばっさとなぎ倒し、見事事件を解決してしまったのが切欠。
 そしてまたもや少女の故郷を切欠とする事件を解決してしまい、見事今に至るというわけである。


 話を戻すが、はやてが呟いたように地上本部の嫌がらせは毎回である。
 前述したとおりのスパイ攻撃から始まり、別段何の能力もない無能や、精神的に「コレどうよ?」と首を傾げてしまうような戦闘狂、そして何かあるように見せかけての実は何もなかったみたいなブラフ野郎、と様々なパターンが送り込まれてきたわけで。
 
 其れがなければ今の六課の作業効率は数倍に跳ね上がるとはやては確信しているほどである。
 
 だがしかし、今回送られてきた人事はーーーーーーー

「魔導師ランクは・・・AAAランク。しかも詳細は書いてないけど、稀少技能《レアスキル》持ち、殆どSランク判定の陸士・・・・。何だか、信じられないね・・・。」
「正直、戦力は喉から手が出るほど欲しいんやけど、こんな人材、本部が手放すわけないんよ。何かぜっっっったい裏が有るんや!!」
「でも、初めっからそんな風に疑ってちゃ、だめだとおもうよ。」

 必死にはやてをなだめている金髪の少女、金色の死神、首狩りフェイト、フェイト・ザ・リッパー《切り裂きフェイト》等の異名(アンサイクロペディアより)を持ち、魔法もとい魔砲少女、高町なのはと並び立つ管理局の切り札である。

 一目見ただけで「この人いい人!」と分かるような柔らかな印象と、ちっちゃい者とかわいい者を放っておけない性分は過去の色々な事情が関係してくるので以下省略し、最近はなのはとの関係が真しやかに囁かれている今日この頃な天然ッ子である。

「しかし、地上本部にこれほどの人材が居たとは・・・・是非手合わせしてみたい者だ。」
「いや、止めろよシグナム。先週一体何人の陸士沈めたと思ってんだよ。そのせいではやてにも苦情やら慰謝料やらの対応で仕事が増えてんだよ。」
「わぶっ。」
「医務室に有る薬品も只じゃないんですから本当に考えてください。」

 桜色の戦闘狂であるシグナムの呟きに突っ込んだ、永遠のロ(ryヴィータと出番的にも色々問題のあるザフィーラ、そして医務室担当となり戦闘狂の餌食となってくる管理局員の癒し的存在であるシャマル。
 ヴォルケンリッター、世紀の魔道書『闇の書』の守護騎士たる存在であり、現在多少丸くなった魔王と死神、その他化け物メンバーズにO★HA★NA★SI★された結果、色々あって管理局へと奉仕活動を行うことになった。
 そして此処には居ないが、『夜天の書』の管制人格であるリインフォースⅡ。現在、主によって押しつけられたシグナムの後始末のために四苦八苦している最中である。

 さて、こんな化け物メンバーズに加わり、さらに伸びしろ満々な新隊員を加えようとしているこの時期である。シグナムによって潰される可能性よりも、地上本部によって潰される可能性が濃厚になってきたという状況のために招集されたこのメンバー。

 そしてその隊員は、後日ホッとし、驚愕し、驚嘆し、感激?し、この化け物メンバーズを絶望の底どころか奈落へと突き落としてくれた。
 



「我が輩、本日付けで機動六課配属となりました、グリム・グーリル二尉であります。」

 フェイトが沈没した。
 ついでにシャマルも沈没した。
 なのははギリで持ちこたえた。
 新人陸士のスバルは落ちた。
 
 ヴィータとティアナは冷めた目で見ている。
 エリオとキャロは嬉しそうだ。
 はやては別段興味なさ解な様子である。
 ザフィーラは言うに及ばず。

「よろしくおねがいします!」

 計三名が地に沈んだ。



「よ、予想外や・・・まさか地上本部がこんな方法で私らを潰そうとしていたやなんて・・!」
「いや、そりゃねーだろはやて。」
「でも現に結果は出てるんよ?」

 赤と茶色の視界の先は、現在もみくちゃにされているちっちゃい白。
 説明するのも気が引けてしまう隊長陣の豹変振りとグリム二等中尉。
 
 配属された隊員、グリム・グーリル二尉。
 あどけなさの残る童顔に、エリオ達と殆ど差のない身長。
 アルビノなのだろうか、透き通るほど白い肌に、幼年故の丸みを帯びた体躯。
 ぷにぷにした頬は今現在バーサクモードに入った獣たちにもみくちゃにされ、ほんのりと赤く染め上げ、くりくりとした大きな瞳は涙で潤っている。

 無論、やはてはナイス判断でエリオとキャロを適当な理由を付けて退散させた。

 「ヤバス」心の中で一致した一言。
 はやてとツッコミ役なまともな人間さえもダークサイドに落としかけたアレである。

「・・・・あれで、男か・・・。ショタ殺しやな。」
「・・・あれは、仕方無い気もしますね。私も一瞬ぐって来ましたから。」
「おい、ティアナ、間違ってもアレには参加するなよ。するようだったら訓練密度二倍に上げるぞ。」
「ヴィータ副隊長を置いていくような真似はしませんよ。私だってアレを理解するのはちょっと気が引けますし。」
『や・・ちょ、まっ・・・・!!だ・・・!』
「何かうめいてますけど、大丈夫ですかね、主に隊長達の精神が。」
「これ以上攻撃力上げたら多分もたねえだろ。下手すると六課内で乱交騒ぎが起きるな。」
「エリオ達には見せられへんな。」

 とうとうなのはが陥落し、眼前の饗宴へ加わった頃にははやて達三人は事態の収拾を諦めていた。
 もう駄目だ、色々達観した精神でこの乱癖気騒ぎを眺める三人は、隣で不満げに己のデバイスを磨いている戦闘狂(シグナム)の方へと視線を向けた。
 綺麗な白い布で己の愛機、レヴァンティンを磨き、「最近戦ってないな・・・」と呟くシグナムは今回レヴィアティンの錆と成るはずだった新人について愚痴っていた。

「・・・・あれではラジオ体操にも成らん・・。せめてもう少し肉付きが良ければ・・・・。そうだ、切る場所を自分で制限すればいい。はやてがいってた『しばりぷれい』とか言う奴でやればきっと・・・!」
「物騒なこと言ってないで止めて来いよ。」

 ごちんと結構痛そうな音を鳴らしてヴィータのデバイス、グラーフアイゼンが振り下ろされた。
 何気に不満げなシグナムだったが、このまま放置していても現在バーサク筆頭であり最近の模擬戦相手であるフェイトが懲戒免職されそうなことをしてしまいそうなので、渋々といった様子で動く。
 
 シグナムは思う。
 別段幼年な男児には興味はない。其れが戦えるのならばいいが、見た目綺麗なだけなコレがどうしてこの惨事を引き起こせるのかと。

 口に出すのも憚れるといった状態の『泉の騎士』と『魔王』と『フェイト・ザ・リッパー』、そして今回の新人の中では筆頭クラスの戦闘力を誇る陸士を引きはがし、息も絶え絶えといった様子のグリムを肩へと担ぎ上げた。

ーーーーー筈だった。

「なっ!!」
「どうしたんやシグナム?」
「・・・・・落ちたか。」
「・・・・・落ちましたね。残念です、また優秀な武装隊員がショタの魔の手に・・・!」

 動かなかったのだ。
 馬鹿なと思い直して再び力を込め治すと、ようやく身体が浮いた。
 咄嗟にあり得ないと思ったシグナムは、すぐさまにグリムの服へと手を掛けた。

「ちょぉぉぉぉ!!」
「シグナム止めろぉぉぉぉ!!何してんだお前は!」
「し、シグナム副隊長!?流石に其れはどうかと思います!!」

 だが、本当に咄嗟だったためにその多勢にはグリムの障気に当てられたようにしか見えなかった。
 構図で見ると、年儚い男児を剥こうとする大人のお姉さん。
 アウトである。

 しかしそんなことには耳扱かさずに、グリムの服をはぎ取るシグナム。
 体服の襟を盛大にはだけさせた後に、その中をまさぐる。
 
「ーーーーーーーー!!」
「ぶぅーーーーーー!!」
「きゃぁああああ・・・・・ふぅ」
「・・・・・・・・・。」

 四人ほど涅槃へと旅だった頃にはシグナムが漸く目的の物を見つけた。
 其れは基本的には服と大差ないようにも見えるインナー。
 其れを取るまでにティアナの精神に多大なダメージが及んだのは気のせいである。

「主はやて、これを見てくれ。」
「・・・・・・・シグナム、警察行こか。」
「・・・ヴォルケンリッター、止めようかな・・。」
「ちょ、ヴィータ副隊長頑張ってくださいよ!」
「遊んでいないで、問題はコレです。」

 シグナムが高々と戦利品を地面へと放り投げた。
 臭いでも嗅がせようとしたのかこの変態と思ってみていたはやてだが、次の瞬間には目を疑った。

 普通、衣服が落ちる場合は「ふわり」と言った効果音が最も近いだろう。しかし、シグナムの放った其れは、予想外の音を立てて地面へと付いた。
 まず、はやての視界からインナーが消えた。
 そして次の瞬間には布とは思えない音を立てて落下した。

ーーーーズドォン

 揺らし凄まじい勢いで地面と衝突した其れは、床をわずかに揺らし埃を中に舞い上げた。
 数瞬沈黙が続き、涅槃へと言っていたなのは達の理性も元に戻る。

「な、何やコレは!亀仙人の甲羅か何か!?」
「シグナム、其れ服か?」
「ーーーーコレと似たような材質の布が、あらゆる所に編み込まれていた。どうやら先方の報告書、偽造ではないようだな。」

 陸戦ニアSランクの実力者、その言葉が全員の脳裏に過ぎった。

「気が済んだのなら我が輩の服を返していただけないだろうか?其れがないと身体が軽くて困るのです。」
「っ!」

 振り向くと、其処にいたのは衣服の乱れたグリムの姿。
 ショタ耐性の異常に低いフェイトのみが沈没したが、他のメンバーは緊張感を持った目でグリムを見ている。

「・・・・・いつの間に・・。」
「さっきであります。別段、我が輩は気配を消すという芸当は出来ませんので。」
「・・・い、良い臭い・・。」
「ちょぉぉぉっ!何やってるんですか!?我が輩の服返してください!」
「シャマル止めろ。さっさと返してやれよ。」
「ヴィータも一度嗅いだ方が良いと思います。コレは嗅がないと人生の半分を損することに成りますよ。」
「ならねえよっ!・・・たくっ、ほらよ。」

 インナーを奪い取ったとき、その重みに地面へと落としそうになったが、しかし流石はヴォルケンリッター永遠のロ(ry。
 根性でグリムの方へと投げつける。
 其れをどうという様子もなく、普通に受け取り、普通に着込んでいくグリムの様子を此奴化け物化みたいな目で見るティアナ。
 もはやナイスショタの面影は残っていない。

「感謝します、ヴィーダ副隊長。・・・・・では、自己紹介も終わったので我が輩としては仕事の内容を説明していただければ助かるのですが。」
「ーーーーー率直に聞くわ。あんた、レジアス中将のスパイか?」
「いいえ、どちらかというと、転勤・・・いえ、懲罰人事ということになります。我が輩、どうやら先方の気に食わないことをしてしまったようで。」
「それは、命令違反をした、と言うことでいいのなか?」

 なのはが、鼻血を垂らしながら聞いてくる。
 幾分緊張感が削がれもしたが、ティアナは全力で無視し、ヴィータは最早ツッコミを半分放棄していたのでスルーしていた。
 
 なのはの質問に対して、眉間にしわを寄せて苦々しげに答えるグリム。

「・・・そう言うことになるのでしょうか・・。しかしながら、その命令を聞くということは我が輩の陸士生命に関わる者だったので、拒否しました。」
「その命令って、何かな?場合に依っちゃーーーー」
「いえ、それほど危惧する物でもないはず、なのですが・・・。」
「言えない、もしくは言いたくない、か・・。」
「・・・・元上司よりは、公言を禁止されております。それにあの方が急にその様なことを言うはずもない。おそらくは我が輩の修練不足、迷惑を掛けて非常に申し訳ない。」

 上司との仲は良好だったのか、それともかなり慕っていたのか、どちらにしろその時命令を断ったときはかなりの決断が必要だったに違いない。
 沈痛な面持ちのグリムからは、そう言う思いが伝わってきた。

 暫く黙考するはやて達。
 レジアスからの差し金という可能性が抜けきらない以上、その秘密とやらを聞かないわけにはいかない。
 グリムにそのつもりが無くとも、グリムの過去を利用して地上本部が六課潰しに利用しないとも限らない。

 だが、

「安心しいや。別段、聞いたところでグリム二尉にどんなに非があろうとも、直ぐにどっかに飛ばしたりするつもりないんよ。ただ、その懲罰の理由を聞いとかんと、地上本部がやっかみ掛けてきたときに対応出来んのや。」
「そ、それは・・・・・。」
「私たちは、仲間を切り捨てるような真似はしない。信じてくれるか?」
「ーーーーわかりました。正直に言います。」

 うっすらと、グリムの瞳が涙で潤う。
 なのはたちに襲われたときの目の潤みではない、感動したときの、助けられたときの、救われたときの安心感から来る物だった。

「我が輩が、命令された物は、戦闘スタイルの変更。つまり、陸戦前衛から陸戦後衛、もしくは中衛に変更しろとのことでした。」
「なっ!んなばかな!?」
「そ、それはさすがに・・・・・。」

 戦闘スタイルの強制変更、常識からは考えられない命令である。
 魔法には特性があり、其れを扱う個人にも相性があり適正もある。
 
 管理局ではよほどのことがない限りは、戦闘スタイルを強制したりすることはない。
 魔法とは突き詰めれば個人技能であり、それぞれの特性に由来する物があるので、例えどれだけ効率の良い方法を研究したとしても、すべからく全ての人に適応できる戦闘スタイルなど発見は出来ないのだ。
 故に管理局は陸戦、空戦などの種別を付け、その中で魔導師ランクを決定するのだ。

 そしてグリムは陸戦ニアSランク。これは現在管理局の保有する陸戦レベルとしては実質上の最高戦力である。
 そのスタイルの変更を求めると言うことは、どう考えても無駄以外何者でもない。
 
「・・・我が輩は、中・長距離の魔法の適正は殆ど無い故、其れを了承してしまえば何の役にも立たない。だから、拒否したのだが・・・・どうやら、我が輩は上層部に要らないと判断されたようだ。」
「そ、それは」
「主はやて、模擬戦をしたい。」
「シグナムッ!」
「このふぬけ、見ていて腹が立つのだ。・・・戦い方にケチを付けられただけで此処まで凹むなど、六課に置いておくだけで邪魔です。」
「・・・我ら兵士は、使われてこそ。使われぬコマは、埃を被って只朽ちるのを待つのみ。騎士である副隊長ならおわかり頂けるはずです。」
「貴様と一緒にするな、虫酸が走る。その様な負け犬根性、誇り高きヴォルケンリッターには存在しない。」

 見て分かるほどの怒気がシグナムから溢れていた。
 軽蔑の視線と侮蔑の意志がありありと伝わり、不味いと思ったヴィーダが止めに入ろうとする。
 だがはやては其れを止めた。

「ええよ、ただし、怪我せえへんようにな。グリム二尉、それでも良いか?」
「我が輩は、かまいません。ただ、模擬戦となると先程言った事情が関係してきます。ですからーーーー。」

 そこまで言って、グリムの喉元に刃が当てられた。
 たどっていくと、相当頭にきているシグナム。

「騎士との決闘に、手を抜くというのか・・・!!」
「リミッターならば、副隊長もつけています。それを考慮するならば、いい分でしょう。元のランクに差はありません。」
「-----死にたいのか。」

 ちゃきり、といってシグナムのレヴィアティンがグリムののどを薄く切る。
 さすがにここまで行くとなのはたちが割って入ったが、それでもシグナムの怒気は納まらない。

「・・・シグナム、いい加減にしろ。あと、非殺傷設定も入れとけよ。」
「ふんっ、こんな抜け殻、切ろうとも思わん。安心しろ。」
「・・・・そのワリには、結構本気だよね・・。」
「すみませんグリムさん。今治療を。」

 恐縮した様子のシャマルがするに治療をと駆け寄るが、それを手で制すグリム。
 その様子を見て再びシグナむの時が膨れ上がるが、慌てふためいて説明をするグリム。

「か、勘違いしないでください。別段、敵対心とかそういうものではなく、余り意味はないのです。コレぐらいの傷ならば直ぐに治ります故。・・・あ、ほら。」

 喉元を見せ付けるようにあごを上げるグリムに、なのはたちが傷を凝視する。
 正確には、傷跡を。

「なっ、なんだそりゃ!!」
「----希少技能≪レアスキル≫、かな?その様子だと、肉体に作用するタイプ、だね。しかも、代謝強化か全身機能の強化。」
「さ、さすが執務官。正解です・・。」
「色々あって、そういうのの関係には詳しいんだよ。」
「フェイトちゃん・・・何時の間に復活したの・・・?」

 いつの間にかなのはの背後に寄り添う感じで復活していたフェイトは、グリムの傷跡を注視していた。
 そうしているうちにもグリムの傷跡はどんどん薄くなっていき、もうすでに薄く白い線しか残っていなかった。

「副隊長との模擬戦もあるので詳しくはいえないのですが・・・。まぁ、そんな感じですね。どちらかといえば、コレはおまけなのですが。」
「すごいなぁ・・・。あら、傷跡ももう消えてしもうた。便利やな・・・。」
「にゃははは、私たち生傷絶えないもんね。それに、肌に傷が残るのもアレだし。」
「そこまで綺麗に治ると、ちょっとうらやましい・・・・・・。」
「・・・・・・何というか、そういう反応をされたのは初めてですね・・。大抵は引かれるのですが。」
「便利なのは事実なんや。軽蔑したところでなんもかわらへん。」
「それは、そうです・・・ね。」

 半分苦笑いで対応するグリム。
 どうどうと言い切るその様子にはさすがに何にもいえなくなったのか、逆に感心してきた。

「そうそう、話戻すけど模擬戦、いいんやな?」
「はい、別段それに関しては問題はないです。」
「じゃ、やってもらいますか。無論全力やで。」
「はい?」

 気の抜けたグリムの声に、にたりとはやての笑みが深くなる。
 その笑みに背筋に寒気を感じたグリムだが、すでにはやての術中。
 ぺらりと背中の方に隠していた紙を一枚取り出し、広げてみせる。
 それは地上本部からの許可証。
 具体的には一時的なリミッター解除の許可証。

 それを見て、グリムの顔が引きつる。
 
「いやいや本部にグリム注意がスパイじゃ無いかと難癖つけたら、色々説明してくれてな。で、戦闘能力が低いんじゃないかとも難癖つけてみたら、こんなん融通してくれたんよ。いやー、太っ腹やね本部は。」

 実際は今までの嫌がらせの証拠をちらつかせながらの交渉だったのだが、それは気にしない。
 背後に控えるシグナムの闘気が増加していく。

「は、ハハハハ・・・・。」
「じゃ、よろしくな。」

 狸にしてやられた。
 六課にいる全員の視界には、尻尾と耳を生やした狸なはやてが高笑いしているようにしか見えなかった。



[25203]
Name: しらが◆da5095d9 ID:ad9d341d
Date: 2011/01/12 23:21
地上本部某室内

「レジアス中将、本当に良かったのですか。グリムを向こうへやって。」
「別にいい。正直、使い所に困っていたところだ。」

 やや質素な室内では、無駄な威圧感を放つゴリラもといレジアスと名無しの部隊長が会談中であった。
 部隊長はやや不満そうに、実際はらわた煮えくりかえるほどイラッ★て来ているが、もし其れを一言でも漏らせば眼前のゴリラに辺境の地へ飛ばされかねないので何とも言えない。
 だがしかし、あんなのでも相当可愛がっていた大切な部下なのだ。其れをいきなり圧力を掛けられての人事異動など納得がいかない。

「た、たしかに、いえ、かなり、あー、多大な被害?は有りますが、有能ではあります。其れを六課などに放っては・・・・・・。」
「・・・・・戦闘で活躍してくれる分には構わん。大いに結構だ。だがな・・・。」

 ちらりと視線を向ければ紙束の山。
 そう、山である。
 見まごうこと何綺麗な其れは、机一つをまるまる占領しても尚足りず、地面にまでその脅威を振るっている白い軍勢は、現在レジアスの執務室の一角を占領していた。
 おまけに、

「失礼します、例の書類、追加です。」
「・・・・入れ。」
「はっ、失礼します。」

 一兵卒と思わしき人物が、敬礼をして扉を開ける。
 そして入ってきたのは段ボールを持った局員達。その数5人ほど。
 局員達は、先程の紙の山の前で段ボールをおろすと、其れを明けて中身を取り出す。
 
 出てきたのは、紙。
 隙間から見る限りでは、みっちりと詰まった其れは、次々と段ボールから取り出されて軍勢へと追加されていく。
 こっそり除き見えた時の内容は、『被害報告書』。

 そして、全ての筺から書類が取り出し終えた後には、先程の一・五倍ぐらいに増えた書類の山があった。

 その様子に、凄まじい勢いで冷や汗を流す部隊長。
 やっべー何なのとか思って紙を見ていると、眼前のゴリラから発せられる威圧感が数段レベルアップ。
 もやは何処ぞのサイヤ人と言っても過言ではないくらいの闘気を発し、幾分ヒゲが金色に光って見えるという補正まで現れ始めた。

「・・・・何か分かるな?」
「・・・・はい。」
「何が言いたいか分かるな?」
「・・・・はい。」
「何か言いたいことは?」
「・・・・ないです。」

 無理だろコレ。
 そのうちデバイスなしに砲撃魔法でも打てそうな状態のレジアスを前に、名無しの部隊長、そしてグリム・グーリルの元上司は無言のままに部屋を後にした。

 そして誰もいなくなった執務室。
 未だに補正の消えないレジアスは、たまった書類を見て気持ちの悪いニタリ笑い。

「くくくくくっ、只であれ程の戦力が手にはいると思うなよ六課よ・・・・!!」



 所変わって、六課の訓練室。
 静かに対応するシグナムとグリム。
 そしてそれをモニタールームより観戦する六課全員。
 ふと、ヴィータが結構重要なことに気がついた。

「・・・・はやて、シグナムの奴、ちゃんと非殺傷設定にしてたよな・・・・?」
「あ・・・・・。」

 晩飯のおかず買い忘れたわー、見たいな乗りで口元を押さえるはやて。
 それを見て、ヴィータの背中に大量の冷や汗が発生。

 クエスチョン、戦闘狂シグナムが非殺傷設定をいれずに戦闘を行った場合。

 アンサー、ミンチ!!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!とめさせろぉぉぉぉ!」
「どうやって止めるんですか!?シグナム副隊長やる気満々ですよ!?今入ったら死にます!!」
「は、はやてちゃんから言えば・・・!」
「む、無駄や・・・スイッチの入ったシグナムは・・・」

 わたしでも、そこまで頭の中で思っていたはやてに、訓練場からの音声が入った。

『・・・・・・構えもないとは、余程死にたいらしいな。』
『別段、我輩は死ぬつもりは毛頭無いのですが・・・・。というか、非殺傷設定入ってますよね・・・?』
『・・・・そんなものもあったな・・・・。』

 ぴしりと、モニタールームの中が停止した。
 フェイトとなのははシグナムの言ったことを必死に理解しようと反芻しているが残念ながら演算不可能という悲しい結果。
 最後の良心ヴィータははやてに『ヴォルケンリッター止めます』と書いた辞表を手渡している。
 明らかに理解しているティアナは全力でマイクに向かって叫んでいるが、シグナムはとうの昔にインカムを握りつぶしていた。
 そして主はやてはこれから起こる血みどろ惨劇に備えて、キャロとエリオの目をふさいでいた。
 スバルとシャマルは「コレでショタは見納めだね」と言う訳のわからないことを悲しんでいて。

 グリム、ご愁傷様。
 はやては心の中でこっそり謝罪した。

 グリム終了のお知らせ!!


「・・・・・・構えもしないとは、余程死にたいらしいな。」
「別段、我輩は死ぬつもりなど毛頭無いのですが・・・・。というか・、非殺傷設定入ってますよね・・・?」
「・・・・そんなものもあったな・・・・。」

 嘘である。
 シグナムは模擬戦の前にしっかりと非殺傷設定をオンにしている。
 
 目の前からは、過去の自分たちのような臭いがする。

 諦めの染み込んだ、諦観と悲哀の腐臭がぷんぷんするのだ。
 それほどまでに目の前のグリムの目は死んでいて、それが又シグナムを刺激する。
 過去の虚像を見せ付けられているようで、そしてなにも出来なかった自分たちを思い出させるようで、それがシグナムの癪に障っているのだ。

 用は全力で、八つ当たり。

「構えろ、でなければーーーー」

 シグナムが全力で殺気を送り込む。
 それに反応してグリムが両腕を交差させて防御を図る。
 だがしかし、

「----死ぬぞ?」

 シグナムの剣閃はグリムのか細い両腕を吹き飛ばしてなお勢いを失わず、返しの太刀で腹へと一文字に切りつけた。
 
 ティアナの叫び声が訓練場へと響き渡り、グリムの鮮血が舞う、筈だった。

「ぐっふ・・・・さ、さすがに、きついものがあります、ね。」
「ふん、やはりか。本気を出せ。」

 シグナムが切りつけた所は、対服こそ切り裂いてはいるが、その白い肌には傷の一つも入っていない。
 舌打ちをして、レヴィアティンを持った己の右腕を見る。

 痺れたのだ。
 グリムを切った瞬間、人の肉を切る感触ではなく、鉄にたたきつけるような強烈な反動が帰ってきたのだ。
 全く予想外の反撃だったために、それこそ対応することすら出来なかった。

 そんなシグナムに気付いてか、それとも無意識か。
 薄っすらと微笑を浮かべてグリムが問いかけてきた。

「・・・・シグナム副隊長、リミッターは、解除していますね?」
「無論、だから貴様も本気を出せ。」
「----いいでしょう、わかりました。スパルタ、第一制御解除≪ファーストリミテッドリリース≫。」
『Yes.boss』

 グリムの右腕から、抑揚のない人口音声が響く。
 音の発生源へと目を向けると、そこにあったのは腕輪。
 
 それはグリムのオーダーに了承の意を示すと、急に巨大化した。
 それに比例し、グリムから突如大量の魔力が膨れ上がる。

「それが、本気か・・・。」
「いえ、まだです。スパルタ、第二制御解除≪セカンドリミテッドリリース≫!」
『Yes.boss』

 噴出した魔力が、今度は急速に練り上げられていく。
 そして、グリムの足元にはベルカを象徴する三角形の魔方陣。
 高まっていく魔力のあおりを受け、グリムを中心に風がまい起こる。
 砂埃を含んだ風が白い紙をたなびかせ、腕につけた金の円環へと魔力が注がれていく。

「稀少技能≪レアスキル≫起動、第一、第二制御開放、魔力路全開(フルオープン)、最終制御解除≪ファイナルリミテッドリリース≫!!スパルタ!!『バンプ・アップ』!!」



「ふひー、疲れましたーって皆さん何してるんですか?」
「あ、リインちゃんの疲れ様。」
「なにって、あぁ・・・・新入隊員の公開処刑。」
「あー、シグナムさんとの模擬戦ですか・・。」
 
 実際戦闘狂が局員を欲求不満のために叩き潰しているのは日常茶飯事である。
 そして其れが自分たちの隊にまで及んだとしても何ら不思議ではないだろう。
 そんなことよりも、スパイじゃ無いなんて目ずらしーですねといいながら、はやての横へといって画面を覗き込む。
 そして、いつも道理「殺る気」満々なシグナムを見て、ため息一つ。

「で、なんていうんですか?今回の生贄。」
「グリム二尉、グリム・グーリル二尉ってひ」
「ぶーーー!!ぐ、グリム二尉ぃぃ!?あの幻想殺しの!?」

 リインフォースが一気に顔を引きつらせて、フェイトへと駆け寄ってきた。
 顔面中に冷や汗だらだら、ついでに言うと、「うっそだー」みたいなことを期待している切羽詰った顔。
 
 その剣幕に押されるも、なにやらおかしな単語が混じっていたことに気がつく。
 どこぞのフラグメイカー所有の能力みたいな二つ名に、はやてたち全員は首を傾げるが、シャマルだけが反応した。
 さーっト顔を青くしていき、ひざががくがくぶるぶる震えだす。
 そして震えるあごから小さくうめき声のようなものまで。

「ど、如何したンやシャマル!?」
「まままままままずいのです!!みなさん、モニターの電源を」
『・・・・最終制御解除≪ファイナルリミテッドリリース≫!!スパルタ!!『バンプ・アップ』!!』
「ぎゃー間に合わなかった!!」

 モニター内に一瞬閃光が走る。
 服がたなびき、ちょくちょく見えるへそちらにフェイトはノックダウンしそうに鳴ったが、ここは懇親の精神力で押さえ込んだ。

ーーーー後になって、ここで気絶して置けばよかったと、彼女は非常に後悔する。

 ベルカの魔方陣が高速回転し、グリムを包み込んだ次の瞬間。

『『バンプ・アップ』、全力行使状態≪フルドライブモード≫。これが我が輩の全力です。』

 そこに居たのは、アームスト○ング少佐だった。

 世界が停止する。

 シャマルとリインフォースは目を隠して絶対に見ないようにしている。だが、直前までへそちらを堪能していたフェイトはそれを直視してしまった。

 ハゲである。
 筋肉である。
 達磨である。

 遠目からでも汗でてかった見事な肉体美が披露されているのがわかる。
 着ていた隊服は何時の間にか紫色のブーメランパンツへと変貌しており、その丸太のごとき腕にはグリムのデバイス「スパルタ」がみっちりとはまっていた。

 さて、常人ならばここで思考放棄、気絶をするだろう。
 しかし、有能、優秀、切れ者と称される敏腕執務官であるフェイトの頭脳は、残酷なことに演算を続行した。いや、してしまった。

 グリムは何処だ。
 アレだ。
 
 体格その他が一致しない。
 稀少技能、もしくはそれに該当するような魔法による身体強化。
 
 転移などで入れ替わった可能性。
 零、そもそも管理局内は不正な転移防止策がなされている。
 
 高速で入れ替わった可能性。
 入れ替わる直前のポーズ、立ち位置、手の角度から見て同一人物。

 再度思考する、アレはなんだ。
 あれはーーーーーーー、グリムだ。

 そこまで結論に達して一気にめまいがする。がしかしそれよりも早く、悲惨な症状が現れた。
 確か自分はアレに対して、ほお擦りとか撫でまわしたりとか臭いをかいだりとカカカカカカ!!

 脳内に焼き付けていた「ナイスショタ!フォルダ」の画像が変貌する。

 自分が抱きついていたのが全てあのような筋肉の塊のようなこの世のアクをすべて集結したようなというより最早あれ自体がアクでありアレこそが夢幻の欲望でありアレがアレがられれれれれ!!

「あぁぁぁあああぁぁぁぁああぃぃぃぃややややあぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふぇ、フェイトちゃん!?一体どうしっ!!」

 見てしまった。
 かろうじて防いでいたはずなのに、友人の声泣き叫びに耳を傾け、その両手を外してしまった。
 そして視界に移ったのはーーーーー!!

「にゃヌ如丹生ぬゆにゅぬにゃにゅにぃにゅぅぅぅぅぅ!!」

 没。

 十秒にも満たないこの一瞬で管理局の切り札二枚が一瞬にして沈没した。
 
 八神はやては戦慄する。
 今このときほど自分が同姓の胸部以外に対して興味を持っていなかったことを神に感謝したことはないだろう。
 だがしかし、あのなのは達の様子を見る限りでは、自分のような一般人が見たとしても強度の精神汚染に犯されることは間違いないだろう。
 現に、途中見捨ててしまったエリオとキャロの身体からぷるぷると身体が振動しているのが伝わってくるのだから。
 
 決して両手を目から話さないようにして、己のデバイスの管制人格、リインフォースへと呼びかける。

「な、何があったんや!?なのはちゃんとフェイトちゃんが良く分からん状態になってんやけど!?」
「お、おそらくは、グリム二尉の『バンプ・アップ』状態を見たのかと思われますぅぅ!!」
「だからなんなんやそれ!?」
「グリム中尉の稀少技能《レアスキル》、魔法(・・)変換資質『筋肉』と魔力変換資質『筋力』の複合魔法です!!あれをつかうとーーーー」
「使うと!?」
「アームスト○ング少佐になります!」
「なん、やと・・!?」

 曰く、幾千万のショタコン達の精神を崩壊させ、その容貌の変化具合に一般市民にも被害が現れている。その魔法を使うだけで犯罪者は両手を地に着け頭を垂らし泣いてグリムに助けを懇願するのだという。

 数々の大きいお姉さん達の夢と希望を打ち砕き踏みにじり唾を吐きかけていくその様子に、誰が付けたかいつの間にか『幻想殺し』の異名が付いていたという。

 オマケに勤務態度その他諸々良好すぎる上に、直属の上司との仲も良好なので下手なことは出来ないという。そして、その真面目すぎる勤務態度から被害者は鰻登りになる一方だという。

「そして先日遂に『幻想殺し』を葬ったという方を聞いたのですが・・・・」
「そ、そうやシャマル!あんた『幻想殺し』の二つ名知ってたのに何で忠告せんかったんや!?」
「む、無茶言わないでください!!『幻想殺し』の噂なんて半分以上都市伝説ですよ!実在するとは思わなかったんですよ!!だいたい、はやてこそ信じられますか!?」

 見目かわいらしい幼年男子が、瞬きした瞬間に筋骨隆々ガチムチマッチョに変身する。

 無理である。

「す、すまんかったシャマル・・。私が悪かったんや。・・・はっ、ヴィータ!スバルは!ティアナは無事か!?」
「筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉」
「す、すみません!スバルはもう駄目です!何だか視界の端っこに映っちゃったみたいで!」
「わ、私も大丈夫だ!一瞬見たが、其処まで酷くはない!・・・もの凄く吐きたいが!!」

 歯がみするはやて。
 この状態ではうっかり手を外すことも叶わない。
 何せのモニタールームには巨大なモニターが一つと、各机ごとに小さなモニターが複数個設置されているのである。
 後ろの巨大モニターに背を向けたからと言って油断すれば、机に設置されている小型モニターの餌食になるのは目に見えている。

 どうすれば、この状況を。
 若くして腹黒狸と悪名を轟かすはやての思考が高速回転する。同時に、並列思考を行使し一刻も早くこの状況を打破するための演算を行う。

 そして一つの希望にたどり着いた。

「シグナム!今すぐ模擬戦は中止や!緊急事態なんや、あれや今六課が全滅の危機なんや!今すぐ戦闘を中止せぇ!」
『・・・其れがお前の全力という訳か・・。なるほど、面白い。』
『この状態の我が輩は、生半可な刃など全て弾く。覚悟してください。』
『ふんっ、良いだろう。その自慢の筋肉、我がレヴィアティンが切り裂いてくれよう!!』
『我が輩も、只では負けません!!』
「駄目だ此奴ら!!完全にワールドはいっとるぅぅぅぅ!」

 聞きやしないで何だか熱血始めだしたグリムとシグナム。
 何か無いか、何か無いのか。
 スピーカーから聞こえる戦闘の音声でさえも精神力をがりがり削っていくのだ。
 このままではじり貧である。

「・・・っは!そうやモニターの電源を切れば!!」

 そう、モニターの電源さえ切ればこの悪夢からは逃れられるのである。
 そう思って手探りで電源を探り当て、根性で引っこ抜いた。

「み、みんな!もうたすかっ」
『六課諸君、どうやら電源が急に落ちたようなので緊急用の電源へと接続しておいたぞ。なお、これは地上本部の物と連結してあるので強制的には切れないがな。くっくっくっ・・・』
「クソゴリラァァァァァァァァ!!」

 電源を抜いたかと思ったら、突如、非常に聞き覚えのある渋い声がモニタールームに響き渡った。
 そしてすぐさま回復したモニター。

 はやい、いくらなんでも早すぎる。

 今回の件も、恐らくはあのヒゲゴリラが仕掛けてきたに違いない。
 あんなにあっさりリミッター解除の申請が降りたのも、恐らくは其れを予知していたレジアスの根回しだろう。

「こうなったら直接交渉しかない、電話や・・・・・・・っ!!」

 そこまで言って、はやての思考が止まった。

 電話は何処にある?
 モニターの横だ。

 其れはつまり、電話を取るためには必ずモニターを視界に納めなければならない。たとえ先程のように手探りで見つけたとしても、番号まで押すためにはモニターの直視は避けられないと言っても言い。

「あ・の・ゴ・リ・ラァァァァァァァ!!」

 高笑いするレジアスの姿が脳裏に過ぎる。
 今回の件、一体何処まで緻密に計算されていたのだろうか。
 申請を許可したところか、それともグリムを送ってきたところか、いや、もしかすれば今までの使えない連中を送ってきたところからかも知れない。

 どちらにせよ、今このメンバーの中から犠牲が出ることは確実だ。
 今生き残っているのは、シャマル、リインフォース、ヴィータ、ティアナ、そして自分。
 どうするどうするどうする!!

 そんなはやての焦りと迷いが伝わったのか、ふと、肩に手が置かれた。
 こんな状況で手を離すというのは自殺行為だ。一体誰が。
 そう思ったが、その答えは直ぐに出た。
 その優しい声と、豆だらけの手のひらで。

「ーーーーーはやて部隊長、私が本部へと連絡します。ですから、部隊長は本部との交渉を!」
「だ、駄目やティアナ!そんな事したら精神が崩壊してまう!何かもっと別の方法がある筈や!みんなが、みんなが笑って終われる方法が!!」
「・・・・・はやて部隊長。私、六課に来て本当に日が浅いですが、其れまでの日々とても充実してて、楽しくて、・・・だから、六課のみんなは助かって欲しいんです。」
「だめや・・・・駄目やティアナ。そんな事したら本当にっ!」
「楽しかったです、部隊長。」
「ティアナァァァァァァァァ!!」

 がちゃりと受話器を取る特有の音がした後に、電子音が四回鳴る。
 そして、ばさりという人一人が倒れるような音と、はやての足下へと投げられた受話器。
 
 瞳が潤み、喉が震える。
 
 こみ上げてくる物に耐えられなくなりそうだ。
 だが、そんな事で立ち止まってはティアナの犠牲が無駄になる。
 意を決して受話器を手に取り、耳へと当てる。

『何のようかと思えば、八神はやて部隊長ではないか。一体どうしたのだ?』
「惚けよって・・・!あんたの策略やと言う事は既に見抜いてるんや!今すぐモニターを止めなさい!」
『ふむ、其れは困るな。今モニターを止めてしまえば、此方の業務が滞ってしまう。ーーーーーそれとも、此方のモニターを止めなければならないような事態でも起きたのかな?』
「そ、それはーーー」

 言えない。
 此方の副隊長と新入隊員の戦闘映像が気持ち悪いんで止めてくださいなんて言っても無駄だの一言で一蹴されるに決まっているのだ。
 思わず歯ぎしりをしたはやては、それでも諦めずに切り返しを行う。

「ーーーーこちらのモニターが復旧したんで、戻したいだけや。ただ、其方に繋がったままだと、此方に再接続できんのや。ただ、それだけや。」
『ほぅ・・・・ならば仕方ない。』
「なら!」
『だが、此方も遅れるわけにはいかない作業があるのでな。残念ながら、あと二時間ほど待ってくれないか。』
「に、二時間!?」

 無理だ、絶対無理だ。
 この極限状態で二時間は流石に持ちそうにもない。

 此方の焦り用を聞き取ったレジアスが、小さく、本当に小さく喉で笑った。
 
『ーーーーーまぁ、遅れた分の作業を其方で補填してくれるのならば、直ぐにでも停止できるが・・・。どうする?』
「も、勿論受ける!受けるから今すぐ頼みます!!」
『ふむ、ならばいいだろう。』

 プライドなんて気にしている暇などない。
 そんな物を後生大事に持っていれば、六課の全滅と自分の精神崩壊が待っているのだ。
 其れと自分のちっぽけなプライドを天秤に掛ければ、どちらに傾くかは既に分かって居るではないか。
 
 だから気にしないのだ、目から血の涙が流れていようとも。

 そして、多大な犠牲を払って漸く停止したモニタールームには、要カウンセリングな精神異常者が四名、幼い心に多大な傷跡の残った幼気な子供二名、そして子羊のように震える二名と血の涙を流す六課部隊長だけが残された。

 終われ。



[25203] オマケ
Name: しらが◆da5095d9 ID:50552547
Date: 2011/01/12 22:59

か、感想が来ていて超意外だった・・・・。
 
取りあえずは、本作を読んでいただき誠に有り難う御座います!

今回のはオマケです。

感想が来ててテンション上がってそのままその情熱で書いちゃった感じです。
 
ですのでクオリティーは前よりかなり下がるかな、と。

そして何名からか指摘もありましたが、

 シ グ ナ ム が ウ ザ イ !

そこだけは変わらなかった気がする。

では一応注意終了!

ゆっくりしていってね!


ーーーーーーーーーーーーーー



 身体を渦巻く、灼炎の魔力。
 まるで溶けた鉄が身体を流れているかのような高揚感と、相対するように冴えていく理性。
 一撃一撃が必殺を誇る我が輩の拳を全てかわし、いなし、時には受け止め。

 我が輩は歓喜する。
 
 自然と口が綻び、唇がつり上がる。
 振り抜いた右拳の代わりに飛んできたのは鋭い剣撃。
 魔力と稀少技能《レアスキル》によって増幅強化した筋肉の鎧を、まるで存在しなかったかのように内蔵へと衝撃が響く。
 其れによって術の構成が一瞬崩され、局所的に『バンプ・アップ』が解ける。
 其れを見逃してくれるはずもなく、再び銀の連線が奔る。
 此方もカウンターを狙い、クロスするようにして副隊長の顔へと拳を振り下ろす。

 無論、此方は喰らうつもりはない。

『round shield』
「っく!?」

 隙を突くようにして繰り出された剣撃だが、繰り出した魔法によってすぐさま修復された筋肉を見て、とっさに剣筋を無理矢理変えて、拳に当てる。
 金属同士がこすれ合う凄まじい擦過音が空気を振るわせる。
 しかし、そんな苦し紛れの方法で我が輩の拳が止められるはずもなく、副隊長の身体が数メートルほど後方へと吹き飛ばされた。

「ふ、なるほど、自慢の筋肉は伊達じゃないな。」
「・・・・後ろへ飛んで衝撃を逃がしましたか。流石歴戦のヴォルケンリッター、戦闘経験は我が輩の数倍ですか。」

 何のダメージもなく立ち上がる副隊長を見て、思わず顔を顰めてしまう。
 今のは十分に力を込め、必殺のつもりで繰り出した一撃の筈だったのだ。
 其れを苦し紛れの剣撃とバックステップのみでかわされては、流石にコレは。

「お前は確かに堅い、そして力も強い。前衛としては十分すぎる。だが、その程度の速さでは、烈火の将は捕らえられないぞ。」
「と、言われましても、陸では結構早いほうですよ。・・・・ですが、捕らえられないのでは、困りますね。」

 力は十分、堅さは十分、足りないものは速さのみ。
 我が輩は、我が輩の力は『魔法変換資質』と『魔力変換資質』。
 もし、我が輩に筋肉(はやさ)が足りないのならば、簡単な話だ。

「足りないならば、作ればいい・・・!!スパルタァ!」
『OK、stand by Ready・・・・・《flash・mode》』

 全身の筋肉が、収斂する。
 全身の骨が悲鳴を上げるが、其れも当然である。
 この状態を維持できるのは、もって五秒。
 それ以上は筋繊維の力に骨が欠けてしまうために、今の我が輩には過ぎた力故に行使が不可能となる。
 
 だが、問題はない。
 五秒、それだけで十分である。

 先程より一回り小さくなったことに疑問を抱いたのか、警戒度を上げ此方を睨む副隊長。
 ゆっくりと両拳を腰に控えて、ゆっくりという。

「刮目してください、これからは、瞬き一つ許されません・・・・!」
「・・・おもしろい!さぁ、こい!」

 我が輩の言葉に、嬉しそうに笑みを浮かべる副隊長。
 其れと同時に、纏う剣気が先程とは比べものにならないぐらいに膨れあがる。
 その様子を見て、全力で行かなければならないと悟った。

 そして、右足に力を込め、一歩。

 それだけで、視界が歪む。
 あまりの拘束移動に、視界が狭まり、空気が身体にまとわりつく。

 一秒、五メートルほど離れていた副隊長、その正面に潜り込む。

 目を見開いた副隊長の顔が一瞬見えたが、気にしている暇はない。
 左足でブレーキを掛け、そのまま其れを軸にして右足を振り抜く。
 防ぐ暇もなく回し蹴りを受けた副隊長が、地面を水平に吹き飛ばされる。
 
 三秒、方向を変え、吹き飛ぶ副隊長に接近する。
 
 空中で身体を捻り、体勢を立て直そうとしていたところに、上空へと蹴り上げ其れを阻止。
 死に体のまま上空へと上げられ、わが輩も其れを追いかけ数十の拳を繰り出す。

 五秒、空気の層を踏み抜いて、副隊長よりも上空へと行く。
 
 天井すれすれまで行き、浮遊する身体を無理矢理前に潜り込ませるようにしてひねる。
 背中の筋が一瞬全て伸びきり、元に戻そうとする反発力が十分な威力をため込む。
 そして、それら全てを踵へと集約し、我が輩へと向かって飛んでくる副隊長に叩き付ける。
 空気を切り裂き、錐揉みしながら地面へと叩き付けられる副隊長。
 其れを最後に、『flash・mode』が解け、無理矢理に纏められていた筋肉が元に戻る。

 だが、まだだ。

 これだけでは、あの烈火の将を倒せない。
 我が輩の力、我が輩の筋力、魔力、精神力。
 全てを一つに集め、纏め、収束させていく。
 限界まで高められた圧力が、今にも吹き出しそうになる。

「スパルタ!」
『OK、『brave・buster』!」

 我が輩に遠距離の適正はない。無論、中距離もだ。
 それは我が輩の稀少技能《レアスキル》に由縁する。
 『魔法変換資質』、偏に全てコレが原因である。
 
 我が輩は、変換する。
 魔法を筋肉に、魔力を筋力に。
 
 故に、バスターも、バインドも、シールドさえも。

 だから、この砲撃も、撃つのではなく、撲つのだ。
 
 瞬間的に高められた高密度の身体強化が、空気の壁をたやすく突破し、必殺の一撃を副隊長へとたたき込んだ。

ーーーー筈だった。

「なるほど、コレは確かに効いたぞ。グリム中尉。」
「・・・・な、う、うそだろ・・!?」

 帰ってきたのは、鉄の感触。
 土煙が晴れ、視界が良くなって現れたのは、鉄の球体。
 よく見てみると、それは連結刃によって長く伸びたレヴィアティンだった。

 咄嗟に距離を取ろうとするが、副隊長は其れを許さなかった。
 すぐさま刃を閃かせ、レヴィアティンの刃が我が輩の喉元で停止した。
 壮絶な笑みを浮かべた副隊長が、切っ先を突きつけたままレヴィアティンの刃を元に戻していく。
 一歩一歩、あれ程の打撃を加えたにも関わらず、確かな足取りで近づいてくる。
 そして、とうとう普段の長剣型へと戻ったとき、ゆっくりと口を開き問い掛けた。

「どうだ?続けるか?」
「・・・降参です。」

 数秒ほど回避方法を考えるが、無理であった。
 おとなしく両手を宙に挙げ、降参の意を示す。

 開いた拳はやけに涼しげだったが、別段悪くなかった。


「グリムさんは、人間ですか?」

 どことなく死んだ魚の目をして、ティアナが問い掛ける。
 周囲の空気が一瞬固まるかと思えたほど失礼な質問だったが、その様な事態に陥ることには成らなかった。
 なぜなら、既に活動できている人間がグリムとティアナの二人のみであったからだ。

 六課を襲ったあの悪夢の後、偶然(・・)待機していた精神科の医師が負傷(精神的に)した六課のメンバーの治療を行い、そこを偶々(・・)通りかかったレジアス中将がほぼ全滅状態の六課の惨状を事細かく聞いていき高笑いし、不意に(・・・)通りかかった電気工事専門業者がはやての壊したモニターの修復を行ったという、天文学的確率で起こるような事象が幾つも続くという奇跡が起こったため、それほど問題となることなくこの事件は収束へ向かった。

 ただ、向かっただけで終わってはない。
 
 そのまた後日、地上本部名義で大量の書類が送られてきた。
 六課は当然送付ミスとして送り返そうとしたが、送りつけてきた局員が一枚の手紙をはやてに渡すと、額の血管が数本ほど血圧上昇により破裂するという珍事を起こし、満面の笑みでその書類を受け取った。

 と言っても、送られてきた書類はそう仰々しいものでもない。
 ぺらりと捲って判子を押す、只それだけの作業だ。
 ただ、量が尋常でないだけで。

 そして運の悪いことに、比較的傷の浅く回復も早かったティアナはやはてによってすぐさま書類整理へと送り込まれたのだ。
 ちなみに、なのは、フェイト、エリオ、キャロは現在も専門医によって治療中である。

 ティアナの向かい側には、真っ白く燃え尽きて居るであろうはやてとリイン、そしてシャマル。その三名は既に五徹を為している。
 事件の当事者であるシグナムはと言うと、別室にて特別メニューで鋭意書類事務中である。
 内容はと言うと、基本的にははやて達と一緒である。ただし、現在一週間連続徹夜である。此処までやって倒れていないシグナムにも驚愕だが、餌で釣っているのでどうも微妙である。
 その餌というのも、模擬戦なのだが。
 と言うわけで、グリムとのも技専校歌もあり現在疲れ知らずなシグナムに、はやて達は何の躊躇いもなく送られてきた書類の半分を押しつけてきた。

 ちなみに、ヴィータはと言うと現在特別休暇中である。
 目の笑っていない笑みではやてへと迫り、『移籍願い』と『有給休暇』の二択をはやてへと押しつけて居るのをティアナはしっかりと確認していた。
 そう言うティアナも現在二日連続徹夜でいい加減疲れもたまっていた。
 ので、リフレッシュのつもりで聞いたグリムとシグナムとの模擬戦について愚痴を漏らした。
 感想は、なんだそりゃ、である。

 才能のないと何時も悩んでいる自分と比べ、隣で同じく判子をぺたぺたやってるショタは、龍玉ばりの戦闘を副隊長とやってのけてしまっている。
 どういう事だ、コレは。
 バグか?バグなのか。あぁ、バグで良いんだな。

 それにしても、勝ってしまう副隊長も副隊長である。
 聞いた話では音速を超えた右ストレートをデバイスで受け止めるという気違い具合。
 自分ならまずやらない。その前に、攻撃を認識する事から無理である。
 音速超えた右の話を聞いてから、嘘かと思って戦闘記録を覗いてみると、確かに最高時速が音速を超えていたというデータが残っていた。
 普通は身体が衝撃波でバラバラになるだろと、思わず大丈夫かと聞いてしまったティアナだが。
 グリム曰く。

『我が輩の稀少技能《レアスキル》は、魔法その物を筋肉へと変換できるためにそれに適応できるようにある程度肉体に補正が入るのです。例えば、もしフェイト隊長のように電撃系の魔法を使えば、肉体が電撃によって破損しないように自動で耐電性が組み込まれるのです。ですから、それと同じで衝撃波も、まぁ、大丈夫なんでしょう。』

 何が大丈夫なのかさっぱりである。
 寧ろ此奴の頭が大丈夫か心配である。
 大体、例え本当に大丈夫だとしても、そんな魔法を使われたら周囲の人間が大丈夫ではない。
 近距離からの衝撃波で身体が木っ端微塵になってしまう。
 其れを受け止めてしまうシグナムは、既に人間でないだろうと諦めている。

「立派に人間ですよ、我が輩は。」
「止めた方が良いと思うよ、それ。後ろでシャマルさんが暴走状態に入ろうとしているから。」
「ひっ!」

 頬をふくらまし、子供のような、いや実際子供だが一端あの姿を見てしまった今では幼気な美少年を装っているグリムの姿は、提灯アンコウの疑似餌のようなものにしか見えない。
 しかしそれでもシャマルとリインは満足なのか、白い灰だったものがいきなり放送禁止レベルに到達した児童ポルノに引っかかりそうなものへと変貌を遂げた。
 だがはやてとしてもこれ以上部下が居なくなるのは遺憾なのか、シャマルの机のモニターに先日の戦闘映像を流し込んでシャマルとリインを崩壊させた。どっちにしろ部下は減りそうだ。

 最近急激にいたくなり出した胃を押さえ、コレで何度目になるだろうか、未来の六課について想像を馳せた。

 筋肉が踊り、犯罪者が叫び、筋肉が跳躍し、管理局員が崩壊する。

 飛び散る汗は悪しきを砕き、躍動する筋肉は正義を屠る。

 輝く右拳が困難を退け、汗テカる力こぶが幸福を打ちのめす。

 だめだ、吐き気がしてきたところでティアナはその悪夢予想図を止めた。
 犯罪が起こる気がしない、其れは隊長達の掲げてきた『犯罪者への迅速な対応』よりもずっと困難なはずなのだが、グリムと共にならば簡単にできる気がした。

「・・・・・左遷されたもの納得・・・。」
「・・・・ソレは酷いですティアナさん。我が輩だって気にしているのですから。」
「いや、アレは本当にどうにかした方が良いよ。魔法の設定と抱えられないの?」
「無理ですよ。我が輩の稀少技能《レアスキル》に由来しているのですから。それに、高ランクの魔導師には手加減している余裕がないのです。最初から全力で行かなくては被害が拡大します。」
「そうだよね・・・・・。」

 確かに、正論である。

 其れよりもしょげているグリムに対して、不死鳥の如く復活したシャマルとリインが再び特攻を掛けようとしていたのだが、無論はやてが戦闘映像verグリムの拡大版を見せつけることでその企てを粉砕していた。

 話を戻し、グリムの戦闘方法変更であるが、基本的に無理なのだ。
 条件発動型、しかも強制タイプの稀少技能《レアスキル》である『魔法変換資質』はどちらかと言えば『資質』と言うよりも『体質』なのだ。
 バスターも、バインドも、シールドも、はたまた結界すらも、全てグリムの肉体内で起こるように変換されてしまう。
 魔法と人間の融合、聞こえは良さそうだがそれ相応のリスクもあると言うことなのだ。
 
 また、高ランクの魔導師が犯罪者となった場合、ほぼ百パーセントの確率で高威力魔法の応酬となる。
 遠・中距離戦の出来ないグリムは、素早く相手の懐に潜り込み肉弾戦で対応する必要が出てくるのだ。
 距離を取られてバスターやシューターの撃ち合いになってしまうと、周囲への被害が非常に増大してしまう。

 悔しそうにほぞを噛むグリムに、ティアナも同様に苦い顔をした。

「本来なら、そうそう乱発するものでもないのですが・・・。陸の現状が其れを許さないのです。」
「・・・・・・。」
「ちょ、ちょっと待ち、『そうそう乱発するものでもない』って、どういう事や?」
「文字通りなのですが。あれ程強力なものは、基本的には切り札ですよ。」
「どうしたんですか、はやてさん。」

 突如として、はやてが目を輝かせてグリムに迫ってきた。
 あまりの勢いに、この人も落ちたかと思われたが、その様子のおかしさにティアナが間に割っては入りはやてを止めさせた。

ーーーちなみに先日の一件で階級の差を超えて友人という域にまで達したティアナとはやては互いに階級を付けて呼ぶことを止めていた。

「アレ、グリム中尉の魔法やったな。アレが切り札って言うことは、他にもあるのか?」
「魔法?あぁ『バン」
「言わんでいいっ!いや寧ろ言わないでください!と、其れは置いておいて、それのことや。で、どうなんや?」
「無論ありますが。」
「「マジで!よっしゃぁぁぁ!」」

 今、心の底から聖王様に感謝したティアナとはやて。
 先程まで想像していたあの悪夢が現実のものと成らない可能性が出てきた上に、さらに陸戦ニアSランクという実戦力を無駄にすることなく有用出来る可能性も出てきたのだ。
 何という奇跡、今はやてとティアナの脳内はまさにバラ色だった。

「ですが、同様に近距離しかできませんよ。身体強化で。」

 バラ色は今死滅した。



「は、はやてさん、コレ本当にやるんですか?死にますよ?心が。」
「しゃ、しゃあないやろ!あんな顔で泣かれてみ、シャマルが暴走してリインが暴走して、ヴィーダが帰ってこんなって・・・!」
「ですが、もし、もしもですよ。あの時みたくになったら、逃げられませんよ。」
「わかっとる、わかっとるそんな事。此処に逃げ場がないことも、オマケに直視しないと行けないことも。」

 現在、管理局の訓練室。
 グリムの一言によって崩壊した希望だが、其れにはまだ先があった。
 グリムの何なら見せてみましょうかという一言を、はやてとティアナがそれとなく断ろうとしたときだ。
 くしゃりと、本当にそう聞こえてきそうな程グリムの顔が歪み、くりくりとした目に涙を湛える。
 そして呟かれる言葉。

『や、やっぱり、わ、我が輩は、じゃ、邪魔なのですか・・・・?』

 後方にて邪悪な気配が増大し、はやて的直感魔導師ランクで二つの気配がSSSをオーバーしたことを確認する。
 今暴走されては叶わない、主に後ろの二人に。
 そう思ったはやてはティアナを巻き込みグリムをなだめる事にし、何とか其れを成功させたのだ。

 はやての、『ま、魔法の訓練をみてあげよう!』という自殺宣言によって。

 見るからに反応したのを良いことに、その後の展開を何も考えずに煽て宥め褒め立て多ティアナにも責任の一端はあるが。
 無論逃げの口上は用意していた。
 管理局の訓練場とは言え強力な魔導師の訓練の際には、やはり上層部の許可が要る。
 許可が下りなければ無理だというのは、事前にグリムにも説明もしていたし納得もしていた。
 その布石があったからこそなのか、はやては当初それほど恐慌状態に入っていなかったが、その布石は物の見事にしてやられた。
 
 何故か知らないが上層部から圧力が掛かり(・・・・・・)、訓練の許可が下りた(・・・)のだ。

 そして呆然とするはやての前に通りがかりの局員が手紙のような物を渡していき、はやてが中身を覗くと膝から崩れ落ちた。
 同時刻、監視カメラを前にレジアスが高らかに笑っていたという。


 恐怖、恐慌に彩られたティアナがはやての肩をつかんで揺らす。
 友人の、いや、戦友の訴えを受けるはやて。
 その表情は苦渋に染まり、己の判断が間違っていたことを示していた。

 淡きに見えた希望に飛びつき、待ち伏せられた獣に喰われる。

 何と愚かな、何と救いようのない。
 はやては自らの故郷の神から仏森羅万象どれでも良いのでこの状況を何とか出来る存在に必死に救いを求めた。

 だが、どれだけ願っても、どれだけ請うても、どれだけ縋っても、目の前の現実は変わらないのである。
 死なば諸共で、レジアスに対する嫌がらせの数々をストックしていくが、どれもコレも自分が生き残らなければ実行に移せない物ばかり。

「はやて部隊長、ティアナさん!準備は出来ましたぁー!今からやります!」
「お、おー、ガンバッテネー。」
「ムチャシチャイケンヨー。」

 方やうわべだけの言葉で、方や心からの声で。
 掛けられる言葉は正反対だが、その先にある思いこそお互い同じものであったのは、皮肉なものである。

 だがしかし、両方ともまともに受けて、そのあどけない笑顔を満面に浮かべるグリム。
 シャマル筆頭のショタ軍勢ならば悶絶噴血暴走物の一枚だが、今のはやて達からしたら死に神の笑みにしか見えない。
 ゆっくりと金の腕輪へと左手をかけるその仕草は、まさに魂を狩る死に神の優雅さが宿っているようだった。

 そして、始まった。
 遠目からでも、噴出の分かるグリムの魔力。

「はやてさん。私、コレが終わったら結婚するんです。仕事と。」
「そうか、私も一揉みしておきたかったな。ヴィーダの胸を。」

 何だか駄目なフラグを立てて、死んだ四つの瞳がグリムを映す。
 
「スパルタ、第一制御解除≪ファーストリミテッドリリース≫。」
『Yes.boss』
「稀少技能《レアスキル》起動、魔力路解放(オープン)、スパルタ、『セット・アップ』。」
『Yes.boss』
「え?」
「へ?」

 気の抜けた声を、二人そろってあげる。
 無理もないだろう。
 精神崩壊を起こさないようにと頭の中で千を超える筋肉男達を想像していた二人にとって目の前に現れたのはとても予想外な物であったから。

 透き通る白銀を思わせる白い髪。
 すらりと伸びた長身に、紺色のバリアジャケット。
 筋肉は全身にバランス良く付き、細いながらもがっしりとしたイメージを抱かせる。
 
 そして何よりも、その整った顔。

 優しげな目元に、くりくりとした子供らしらも含む大きな目。
 ゲルマン風の少し彫りの深い顔立ち。
 何故か半開きの唇が、絵も言えぬ色気を醸し出している。
 所々に残るあどけなさは、その喜びから溢れている物なのか。

「ど、どうですか?魔力は十全に編み込んだのですが、やはり足りないでしょうか・・・・。」
「「・・・・・・」」

 無言で見つめる二人。
 穴が開いて反対側が透けて見えるのではないかと言うほどグリム(仮)を重視する。
 その視線に何故か気恥ずかしさを覚えたグリムが、恥ずかしげに顔を赤らめ頬をぽりぽりとかくが、その仕草がまたいい。
 脳内で大量の麻薬物質が生産され、今、はやてとティアナの体感時間が十分の一ほどに縮まる。
 構えていた分の余計な苦行が、その精神に与える衝撃を数十倍にまで引き上げていた。

「だ、駄目ですか。や、やはりこの魔法はふうい」
「「いえ、全然オッケー!」」
「え!?」

 だが、何時までたっても言葉を発しない二人に対して、グリムは不安を覚えたようで。
 なにやら不穏な一言を発しようとしたグリムに、二人が咄嗟に遮る。
 
 救いはあった。

 心の底からそう思った、はやてだった。
 地獄で閻魔様の裁定待ちをしている気分だった精神状態は、あっというまに極楽浄土と同レベルまでに癒される。

 其れとは別に、色々複雑な顔をしたグリムが居心地悪そうに顔を赤らめてさらに二人の精神を進行していく。

「はやてさん、救いって有りましたね・・・・。」
「あぁ、確かにあった。コレは保証できる。今度の給料、全部聖王教会に寄付してくるわ。」
「私も行きます。」

 うっとりとした目つきでため息をつく。
 
 しかし、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)は存在するのだ。

 どのような幸せな状況も、力任せの存在が其れをぶちこわしていく。
 はやてとティアナが桃色空間で幸せを味わっているその瞬間、背後のドアが急に開いた。

 桜色の髪はだらしなくぼさぼさになり、目元の熊も尋常でないくらいに深くなっている。
 半開きになった口元からは怪しいうめき声と笑い声が聞こえ、地面に引きずるようにして持っているレヴィアティン。
 刃の通った後は、薄く切り傷が残り、そして何故か発火する。
 我らが烈火の将、シグナムの登場だった。
 慣れない仕事でフラストレーション状態になっているのか、その一挙手一投足からは尋常じゃない魔力を感じる。

 魔力が漏れているのか、それとも意図的に暴走させているのか。
 
 どちらにせよ戦闘狂状態(バーサクモード)に入っているこのシグナムを止められる気がしないことは確かだった。
 死んだ目をしたシグナムが、いや、戦闘狂が自らの主を見つけ雄叫びを上げた。
 高らかに、吼えた。
 只それだけの動作で、身に纏う魔力が熱巻き上げる灼熱の炎とかし、厄災の杖の名を冠するデバイスへと注ぎ込まれる。
 うめき声を少し上げながら、炎の魔神が口を開いた。

 そう、機械仕掛けの神(ごつごうしゅぎ)が今動き出す。

「主はやて!終わりました、終わりましたよ!さあ約束通り模擬戦です!む、グリムじゃないか、丁度良い、構えろ!!」
「え、あ、シグナム副隊長。仕事終えたんですか。」
「ああ、終わった、終わったんだ。そんなことより早くしてくれ、身体がうずいて仕方ないのだ。慣れないことをすると直ぐにストレスがたまる・・・・。そんなときは、模擬戦だ!」
「大分壊れてますね・・・。ですが、いいでしょう。不肖我が輩グリム・グーリル、お相手願います!!」
「さぁ、来い!」
「え、何コレ。」
「いやいやシグナムストップゥゥゥゥ!」
「え、ちょまってなになになになにぃぃぃぃぃ!?」

 レヴィアティンを構え唐突に走り出したシグナム。
 そして相対するかのようにして走り出すグリム。
 
 やはての思考が高速回転し、幾十にも分かれた分裂思考が最良の一手を模索する。
 
 自分が何とかしなければ、何とかしなければならないのだ。
 隣にいるティアナは既に恐慌状態に入り、デバイスで魔法を乱射してグリム、シグナム両名を沈没させようとしている。
 しかし、何故か分からないがと言うか知りたくもないがお互いティアナの射撃魔法を意にも介さずに、剣で切り裂き拳で握りつぶしと言うあり得ない回避方法を持ってして防いでいる。
 どう考えても倒せるような物じゃない。
 自身のデバイスたるリインは何処かに逃げてしまっているし、泉の騎士たるシャマルはこの件を聞きつけた瞬間に転移魔法で逃げた。
 考えろ、八神はやて。
 だてにこの若さでこの地位に就いている訳じゃない、権謀術数ならお手の物だ。
 腹黒い政敵や上官を何人も引きずり落としてきたじゃないか。

 考えろ、考えるんだ、最良の一手を!

 そして、浮かんだ。
 確かに助かる方法が、一手有った。
 思い立ったが吉日、はやては高笑いしながら魔法を連発するティアナの銃口を掴んだ。
 
 その動作に一瞬我に返ったティアナだが、それでも狂ったかのように乱射する魔法を止めようとはしない。
 だが、其れで言い。

「はやてさんそんな事してないで援護射撃お願いします!!」
「ーーーーティアナ、すまんな。後は頼む。」
「へ、?」

 そしてはやては、ティアナのデバイスを、己の額へ(・・・・)と向けた。

 ほぼフルオートで放たれていた魔法は、当然の如く発射され自らの上司の額を打ち抜いた。
 無論非殺傷設定は掛けてあるが、それでも自分の上司を魔法で攻撃したという事実はティアナを正気に戻した。
 慌てて駆け寄るも、無防備な状態で魔法を受けたために魔力ダメージで失神しているようだ。
 
 そして、悟る。

「え、ちょ、これって。」

 はやてが気絶し、自分だけが残った。
 シグナムとグリムが模擬戦をしている。

 分かりたくないが、分かりたくなかったが。

「自分だけ逃げないでくださいよはやてさあぁぁぁぁぁぁん!!」

 必死に方を揺さぶるも、全く起きる様子もなく。
 右手で胸ぐらを掴み上げ、魔力で強化した左手で高速の往復ビンタで起こそうとするも応答はなし。
 どことなく幸せそうな顔で気絶している上司は、全ての後始末を自分だけに押しつけて逃げ出して。
 この腹黒狸とののしっても全く反応がない。
 
 やばいやばいやばい!

 このままでは、またもやグリムがあの魔法を使ってしまう。
 アレをみて、もう一度正気を保てる自信はない。
 というか、事前にハンサムな状態のグリムをみているせいでダメージが余計に大きくなってしまうじゃないか。
 死にたくない、自分には亡き兄の遺志を継ぐという夢が残っているのだ。
 こんな所でくたばってなるものか!

「こうなったら、二人とも相手してやるぅぅぅぅぅ!!」
「ほぅ、其れは面白い。後輩の指導か、そう言えば久しくやっていなかったな。」
「ティアナさん、其れではご教授よろしくお願いします。」
「え?何コレ。」

 急に二人が止まり、此方に向き直る。
 
 まて、どういう事だ。理解が出来ない。急展開すぎるだろコレ。

 鋭い殺気がティアナに突き刺さる。
 その量やたるや常人の数十倍、流石戦闘狂は違うのか。
 グリムの方は殺気と言うよりも純粋に相手して貰って嬉しいようだ。ただ、身に纏っている魔力の量が遊びじゃ済まないだけで。
 前回どんだけ呼びかけても聞きもしなかったというのに何だこの寸劇は。
 ばかなの、死ぬの。主に私が。
 混乱するティアナを余所に、事態はもっと悪化する。

「稀少技能≪レアスキル≫起動、第一、第二制御開放、魔力路全開(フルオープン)、最終制御解除≪ファイナルリミテッドリリース≫!!」
「さぁ構えろ。でなければ死ぬぞ。」
「ちょ、ちょちょちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」

 制止の声を上げようにも、恐怖が邪魔して美味く出ない。
 『待って』その一言が、どうしても出ない。
 何故、後一言なのに。
 動いて、お願いだから。
 絡まる舌も、固まる唇も、嗄れる喉も。
 お願い、お願いだから動いて!

「ま、待ってくださいぃぃぃ!」

 そして、遂に出たその一言が訓練場の空気を振るわせる。

ーーーー勝った、助かった!!

 勝利を確信し、シグナム達に構えたデバイスが自然と地に向かう。
 そして、神は終わりを告げる。

「だが断る!」
「我が輩急には止まれません。」
「え?」

 そう、至福の終演(ハッピーエンド)ではなく、無惨な終演(バッドエンド)へと。 

 シグナム達の発したよく分からない一言が、ティアナの鼓膜を振るわせた。
 その言葉が脳に届くやいなや、ティアナは現実を認識するのを放棄した。

 ドウシタのだろう、早く武器をおろさないのかな。
 アレ兄さん、どうして此処にいるの?
 綺麗な川だね、あ!お花畑も!
 待ってて兄さん、今逝きます!

「スパルタ!!『バンプ・アップ』!!」
「紫電一閃!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 終われ。
 

 


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