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[25202] 【習作】トラクローで撃滅のセカンドブリット
Name: 五十三◆8d4ff906 ID:0719c9a4
Date: 2011/01/04 21:06


異形と化した、右腕。



歪なその五指を、広げた状態からゆっくりと、人差し指を折り、そのまま順に中指、薬指、小指と続ける。


最後に残った親指でまるで封をするように、包み込むようにして出来るのが――拳、である。


そして背の一羽を推進剤とし加速しながら、

音が軋む程強く握ったそこに溜め籠んだ力、想いをただただ真っ直ぐに相手へとぶつける。



一撃目の拳、『衝撃のファーストブリット』に続く二撃目の拳。


それこそが彼の必殺技の一つ、その名も――



「ウッオオオオォッ!撃滅のォ、セカン《チュドドドドドッッ!》ウボァーッ!?」


「ああっ!カズくーんっ!?」





・・・・・・・・・・・・・・・撃滅のセカンドブリット、である。





トラクローで撃滅のセカンドブリット





第一話 日野カズヤ





魔法と魔法が交差し、激突し合う事で生まれる衝撃と轟音。立ち込める煙。


戦い合う戦士たちの詠唱や、怒声、悲鳴が夜空へ響く。


向かってくるのは、牙を爪を、鍛えられた己が肉体を武器とするヒトに在らざるモノ、悪魔。


立ち向かうは、『魔術』と言う奇跡の力を操るモノ、魔法使い。


今宵、銃声や硝煙などの存在こそ無かったが、この場所は紛れもない『戦場』であった。



「あ・・・あがががが・・・・・・」



声が、聞こえる。男の声だ。


ぐるり戦場を見渡せば、今なお収まる気配を見せず戦い続ける両陣営を尻目に、

隙だらけの格好でぶっ倒れている一人の男がいた。


年の頃は20手前と言ったところだろうか。


それなりにしっかりとした体つきをしているが、気の弱そうな、何とも無しに情けなさを感じさせる顔立ち。


無造作な短髪に、一目で安物だと分かる服装をしたなんとも地味な雰囲気漂うその男には、

しかし、誰が見ても目を惹く3つのポイントが有った。



一つめは、首に巻かれた深紅のマフラー。


男が地に倒れていると言うのに汚れは見えず、それは暗闇の中で淡く輝いていた。



二つめは、腰部に回されているごてごてと装飾が施された奇怪なベルト。


右側面には円盤のような装置が付いており、中心部には何かを嵌める為だろうか、
上部以外をクリスタルに覆われた3つの丸い隙間があった。



そして、三つめ。


先にあげた二つよりも遥かに圧倒的な存在感を誇るのは―――


男の持つ、異形の右腕。


装甲のようなモノで覆われたその腕は、繋がる背中に一本の赤い羽を生やし、存在していた。


数刻前、戦いを始めた際には三本有ったそれは先の一撃を放とうとした事でその数を減らしている。


恐らく、殴られればタダでは済まない・・・と言うか死ぬんじゃね?


そう思わせる説得力がある、腕だ。



こんな、なんとも怪しい姿をしたこの男、名を日野カズヤと言う。


一応、この物語の主人公だ。



先のカウンターによって見事に吹き飛んだ彼は、

前のめりに崩れ落ちることも叶わず、仰向けで大の字になって倒れていた。



喰らった魔法こそ基本呪文であるただの『魔法の射手』であったがこの男、

魔法障壁どころか魔力そのものを欠片ほども持っていないので、攻撃の直撃が即座に大ダメージへと直結してしまうのだ。



その上―――



「し、痺れびれぇぇ・・・」



受けた射手の属性が雷であったため体が痺れ、立ち上がることも出来そうになかった。


時間が経てば復帰出来るだろうが、今は完全に戦闘続行不可能状態である。


そんな風に、ベストウィッシュ以前のロケット団のようなリアクションを取っているカズヤへ、

銀髪青眼の整った顔立ちをした美少年が、鬼のような姿をした怪物と戦いながら声を掛ける。



「何してる日野!さっさと起きろ!」


「ご、ごめんね織朱(おりしゅ)くん・・・せ、せめて死ぬ前に明日のパンツを干しておきたかったなぁ・・・・・・」


「アホかーーーッ!!」



カズヤの意味不明な発言にツッコみながら、織朱と呼ばれた少年は『無詠唱』で手から雷撃を放つ。


原作でも主人公であるネギ・スプリングフィールドが使っていたその魔法、

『白き雷』は織朱が相対していた化け物に違わず命中、断末魔を上げる暇すら与えず送還させた。



・・・実は上級クラス手前の実力だった今の悪魔を、片手間のように倒してみせたあたり、

どうやらこの少年、容姿だけではなく魔法の腕も相当に優秀なようである。


寝てるロクデナシとは大違いだ。年上の威厳など欠片も無い。



「分かってはいましたが本当に役立たずですね日野さん!これなら案山子でも置いておいた方がよっぽどもマシです!」


「すいません高音(たかね)さんホントすいません・・・」



カズヤの仲間だろうか?


金色の長髪を後ろで結び、頭に十字架のマークの付いた帽子を被った高音と言うらしい女性がカズヤへ怒鳴りかける。


宵闇に映える漆黒の、まるで影で出来ているかのような不思議な衣服を身に纏ったその女性、

どうやらカズヤよりは年下のようだが、そんな彼女の叱咤の声にカズヤは小声で謝りながら、

先の倒れたままの状態でそっと顔を横に倒し、しくしくとヘコんだ。



それなりにガタイがあるので、普通に気持ち悪い。


高音もそう思ったらしく、近くにいた織朱へとヒステリー気味に叫ぶ。



「織朱くんこの人死んだ方がいいのでは!?」


「高音、お前もふざけてる場合かあっ!」



何ともカオスだった。



・・・そんな感じで色々台無しな雰囲気ではあるが、戦いは依然として続いている。

この戦闘が一対一のモノであれば、今のカズヤなどそのままさくっと止めを刺されていたのだろうが、
幸いにも今回は集団戦であり、また相手側は徐々に押され始めてきている為、
今までまったく活躍していなかったカズヤは脅威とみなされず、敵から完全に無視をされていた。


一応ラッキーと言える・・・言えるのだろうか?



「行クゾオオオ西洋魔術師ィィィッッ!」


「いいでしょう悪魔よ、この私の操影術の強さ・・・その身に教えてあげましょう!」


「高音、油断するなよ。お前は直ぐに全裸になるからな」


「よ、余計なお世話です織朱くんっ!!」



ギュウッ!ドタドタドタ!ドドドッ!フミッ!



「ふんげっ!?あんぎゃっ!?あべしっ!おうふっ!・・・ちょ、待って、止めて、踏ま・・・ギエピーッッ!!」



・・・・・・これはひどい。



混戦状態のためだとしてもあんまりな頻度で人、そして魔物に踏まれまくるカズヤ。


と言うか、仲間のコレは絶対わざとだろう。


逃げようにも痺れて動けず、芋虫のように体をくねらせ悲鳴を上げるのが精一杯、

そして懇願は当然のごとくスルー。と言うか味方に踏まれている。


そんな彼の様は傍目に見ていても悲惨であった。まるでゴミのような扱いである。



ああ、顔とも腹とも言わず満遍なく踏まれ蹴られる彼に救いは無いのだろうか・・・・・・



受けた『魔法の射手』とは別の要因で痛んできた体に、

カズヤは年甲斐もなくベソをかき、ふと、雲一つ無い夜空へ目を向けた。


今夜は点検の為の大停電によって地上には明かりは一つもないが、

彼の見た先には雲に遮られることなく輝く今宵の満月が―――



「・・・・・・あれ?」



ぽつり、と墨を一滴垂らしたような黒い点が浮かぶ月がカズヤの視界に映った。



と―――



「メイプル・ネイプル・アラモード」



声と、影が―――



「炎の精霊59柱、集い来たりて敵を射て」



聴こえ、近づいて―――



「『魔法の射手・連弾・炎の59矢』ッッ!!」



チュドドドドドドドドドドッッッ!!!



「ムオゥッ!!?」


「きゃあっ!?」


「何ぃっ!?」


「 」


突如カズヤの周辺に上空から『魔法の射手』が降り注ぐ!


爛々と光を放ち軌跡が踊るそれはさながら連発花火。


視界を埋め尽くさんばかりの炎の塊が向かってくるその光景にカズヤは最早声も出せなかったが、

炎の属性を有した射手は、カズヤどころか近くの植物群や地面に生えた芝生にすら当たる事もなかった。


射手はそれを放った術者が『標的』だと無意識かで認めたモノにのみ軌道を向け、命中。


その宿した効果を発揮していた。



「そ、そう言えば『魔法の射手』にはホーミング性能があるんだっけ。火事にならなくてよかったー・・・」



自分に被害がこなかった為、ズレた発言のカズヤ。



周囲を見渡せば―――



「馬鹿なああぁっ!?全滅、だとォ・・・ッ!!」



今の一撃によって、召喚した悪魔が一体残らず消えうせ、ファビョっている敵の魔法使いや。



「きゃあああああっっ!!み、見ないでください織朱くん!」


「み、見てない見てない!(流石高音・・・脱げ女の異名は伊達じゃないZE!)



ファサッ・・・


「え、これ、あなたの・・・」


「と、とりあえず、俺の学ランで我慢してくれ(落としてみせる・・・このエロ体質は俺のハーレムに欠かせんっ!!)」


「ど・・・どうもありがとう・・・(織朱くんの匂いがする・・・あったかい・・・)」



オリ主パワーでイチャイチャイベント発生中の仲間など。



「うわぁ・・・」


阿鼻叫喚であった。


とりあえず馬に蹴られたくは無いので、走って逃げる敵の確保に代表としていそいそ向かうカズヤ。


この辺り変に空気が読めている男である。



「ヒイィッ、く、来るなあっ!」


「こうなった時に恐怖を抱くんなら、侵入しようなんて最初から企まなきゃよかったんじゃないですか?」



距離を詰め、異形の右腕でドン、と軽く突き飛ばすと、腰が抜けたのか魔法使いは立ち上がらず、ずりずりと尻這いで後ずさった。


その姿に思わず同情してしまうカズヤ。


もみくちゃにされていた先程とは打って変わった余裕の態度だ。


喉もと過ぎれば熱さを忘れるタイプなのだろう。反省を生かせない男である。


彼がゆっくりと歩み寄る間にも魔法使いはなにやらごそごそと怪しい動きをしていて、

どうにもヤバい感じなのだが、カズヤは自身の右腕に怯えているんだろうなどと考え異形を解除。


笑いかけ、ゆっくりと左手を差し伸べた。



「あー・・・大丈夫ですよ。ここの学園長、そんな酷い人じゃないですから。ほら、立てますか―――」



「―――ッ!死ねエエェッ!!」



懐から、銃。



「へ・・・?」



カズヤが事実を認識するよりも早く。


引鉄に掛けられた指が―――



「『武装解除』」



ブン、と風斬り音と共に突風が起きた。


カズヤに向けられていた拳銃が吹き飛びクルクルと宙を舞う。


その様子を呆然と眺める魔法使い、とカズヤ。お前もかよ。



「・・・・・・」



「あ、れ・・・?愛衣(めい)ちゃん?」



いつの間に現れたのか二人の間には、箒を持った一人の少女が立っており、

そして、差し伸べたはずのカズヤの左手は魔法使いではなく彼が愛衣と呼んだ少女に握られていた。


状況から判断するに、どうやらカズヤを助けたのは彼女らしい。



・・・蛇足になるが、手に持っている箒は異界国境魔法騎士団でも正式採用されている優れ物で、

汎用性に富み、オプション機能に優れている。


また、広範囲に「武装解除」をかける魔法『全体・武装解除』を使うことも出来るのだ。



・・・話を少女に戻そう。



彼女の服装は、ブレザーにリボンタイ、チェック柄のミニスカートと

黒のハイソックスにローファーと言う一般的な麻帆良学園本校中等部の制服。


薄く赤みを帯びた綺麗な髪を両側共に団子のように丸め、

余った髪をツーテールに垂らしたその容姿はそれは可愛らしい、美少女であった。



だが―――



「は・・・はひぃぃっっ!!?」



愛衣と目が合った途端、突如奇声を上げた魔法使いにビクッとなるカズヤ。


立ち位置的に庇われるような形で愛衣の後ろにいるカズヤには愛衣の表情が見えない。



―――そう、見えないのだ。



彼女が今、どんな目で、顔で、カズヤを殺そうとした男を見ているのか。


なので、それなりのガタイに異形の右腕を持った男である自分が迫った時よりも更にパニクっている彼の様子に困惑する。


まさか美少女が嫌いなのだろうか、それはお前人生損だなぁなどと考えるカズヤを余所に、愛衣はスッと魔法使いへ手を向けた。



「メイプル・ネイプル・アラモード」



「?」



念を入れた武装解除か、捕縛魔法だろうか、とカズヤは思い。



「ものみな焼き尽くす浄化の炎、破壊の主にして再生の徴よ」



「ブッッ!?」



噴いた。



「我が手に宿りて敵を喰らえ―――」


「うわあああぁっ!?愛衣ちゃん『紅き焔』はヤバいィっ!!」



『紅き焔』―――中級魔法『白き雷』のタイプ違い。対象を焼き払う爆炎を放つ。相手は死ぬ。



・・・いや、流石に死にはしないだろうがこの至近距離では大火傷は免れまい。


それはマズいでしょっ!?と、カズヤは慌ててグイッ、と繋いだ左手を思い切り引っ張る。


あるいはカズヤのその行動も予想していたのか、

フラッ、と愛衣の体勢が崩れるが手は魔法使いの顔からブレず、彼女はそのまま詠唱を―――



「・・・『紅き焔』」



轟ッ!と炎が放たれた。



愛衣が寸前で『カズヤを見、手を退けた』為、炎は魔法使いの頬を掠めてそのまま十数メートルほど進み、消滅。


R18Gに抵触するような事態になることは避けられた。被害らしい被害は男のモミアゲ程度だ。


おおぅ、と思わず安堵の息を漏らすカズヤ。


色々と大事なことに気づいていないのだが、それを指摘できるものはこの場に居なかった。


そして、何とか可哀相な顔と頭にならずに済んだ魔法使いはブクブクと泡を噴き気絶していたが、失禁していないだけ大したものだろう。


オレだったら漏らしてたな、と胸中で呟くカズヤの背中や頬をつぅ、と汗が流れ落ちた。


それぐらい、心臓に悪い出来事であった。



「あー、びびったぁ・・・」


「カズくん、凄い慌ててましたね。ふふっ、いくら何でも本当に当てたりしませんよ?」



繋いだ手をそのままにカズヤへと笑い掛けながら、愛衣はハンカチをだし、カズヤの汗を拭う。


自身が凶行に及ぼうとした魔法使いなどまるで空気扱いである。これはひどいや。泣いていいぞ、失神してるけど。


カズヤはもうどう返していいか分からず、ははは・・・、とただただ乾いた笑みを漏らすだけである。



「いや、まあ、そりゃそうだけどいきなりだったしさ。そりゃ慌てるって」


「あは、ごめんなさい・・・そうだ」



ス。ス。ス。



ハンカチをしまい、愛衣はカズヤの身体に数度触れる。簡易的な触診のようなものだ。


別にドキドキはしないが、くすぐったさからぴくぴくと無意識で体が震えた。



「愛衣ちゃん?え、な、何?何かオレに付いてた?」


「いえいえ。・・・怪我は、無いみたいですね。結構踏まれたりしていたようでしたけど」


「頑丈だからね。愛衣ちゃんは大丈夫?」


「はい。へっちゃらですよっ」



にかっ、と少年のような笑みを浮かべブンブンと腕を回して元気アピールをするカズヤに、ぎゅっと拳を作り笑顔で答える愛衣。


何だろうこのシュールな画は。


それなりにしっかりとした体格ではあるが、へたれ気味で地味な感じのカズヤと。


彼の肩ほどまでしかない小柄で、可愛らしい美少女の愛衣。


何ともバランスが悪い、と言うか不釣合いな感じだった。



通報されないといいね!



・・・ともあれ、戦闘中に攻撃を受けていない愛衣は別段不思議ではないが、

射手を喰らうわ、もみくちゃにされるわしたのに見た目がボロボロなだけで既に完全回復しているカズヤは、なるほど異常な頑丈さである。


戦闘中に見せていた異形の右腕と言い、どうやら何かしらの力を持っているようだが・・・



「そりゃ安心。んじゃまあ、この人連れて織朱くんたちのところに戻ろっか」



愛衣をかるく見て、どうやら本当に大丈夫らしいと判断したカズヤ。


未だ男は気を失っていた為、担いでいくかと男に腕を伸ばす。



―――が、そんなカズヤをまるで、「これは汚いから触っちゃいけません!」とでも言うかのように、

服の袖を掴み、愛衣がやんわりと止める。


おかーさんかキミは。


無論、カズヤは何故止められたのかなどさっぱり分からず、訝しげに愛衣を見やった。



「愛衣ちゃん?」


「戻るだなんて、それは野暮ですよカズくん。お姉様たちいい雰囲気でした。もうすぐ電力も復旧しますし、任務時間は終了です。


後はお二人にお任せして、このまま学園長の所に行きましょう?」



未だ手を離さずに言う愛衣の言葉にカズヤは仲睦まじくイチャついていた二人の姿を思い出し、それもそうかと納得する。


カズヤとしても同僚のような関係である彼らが『そういった』関係になって、幸せになるのは好ましいことだ。


特に、高音が織朱に好意を抱いているのは学園の魔法関係者にはほぼ周知の事実であったので、

カズヤもどうにかその想いが実を結べばいいなあと思い、応援していた。


協力出来る所は、しておこう。



「そだね。じゃあ、行こっか」


「はい。・・・メイプル・ネイプル・アラモード、風の精霊67柱。縛鎖となりて敵を捕まえろ。『魔法の射手・戒めの風矢』」


「ろくっ・・・!?」



普通に担いでいけるよ。数多すぎじゃあ。


そんな言葉を口に秘め、カズヤは状況を成り行きに任せる。


冷めた目で男を見る愛衣の周囲から、これは譲れませんと言うオーラが感じられたからだ。


こういう時の愛衣はとても頑固だとカズヤは知っていたし、

そもそも油断して死にかけた分際であるところのカズヤには何も言う権利など無かった。



助けてもらったのだ、自分は。5つほども年下の女の子に。



・・・・・・情けねぇ・・・ッ!・・・オレってヤツは本当に・・・ッ!・・・クズ・・ッ!・・・救いようの無いマダオ・・・ッ!!



結構マジで凹む(当然)カズヤ。


思わず、麻帆良新聞に『心優しい、いたいけな優等生少女の未来を貪るヒモ野郎』と書かれた事を思い出し、

咽び泣きをしそうになった。


後に詳しい説明が入るが、カズヤは愛衣の庇護によってようやくこの学園で生きていける立場の存在なのである。


カースト的にはぶっちぎりで最下層。オコジョ妖精よりも軽く安い社会的地位だ。


そんなわけでカズヤくんは、麻帆良の教員、生徒からは『ごく一部』を除いてかなり嫌われていたり。



・・・鬱になりそうだったので軽く深呼吸。気持ちを切り替える。


別名、現実逃避。


色々な意味でこみ上げてきた嗚咽をぐっと押さえ、虚ろな目で愛衣の作業を見ると、

捕縛呪文が男の体中を這うようにしてグルグルと絡みついているところだった。


あまりの射手の多さで予想通り男はほとんど見えなくなったが、属性は風だ。危険は無いだろうと判断。



・・・まだ怒っているのかなぁ。



愛衣を見つめながら、カズヤはぼんやりと思う。


拳銃を向けられたあの時、もしも愛衣が来てくれていなければ、確かに自分は重傷を負っただろう。それは確かだ。


だが、死にはしなかったはずだ。それもまた、確かだ。


そして、愛衣もそれは分かっていたはずだ。


自身の、日野カズヤと言う男の、身体の異常性を、彼女は知っているのだから。


だというのに、いくら外す気で放ったとは言え、アレはやり過ぎではなかろうか。



―――いや、いいのか?もし頭だったら流石に死んでたかも。


―――と言うかそもそも、愛衣ちゃんってあんな事するような娘じゃないよなぁ?優しいし。ストレスでも溜まってたのかなぁ。



だとすれば、だとすれば原因は―――当然自分だろうと思い至り震えるカズヤ。


なん・・・だと・・・?と声が勝手に出た。



「カズくん?」



そんな風につらつらと阿呆なことを考えているとくい、と袖を引かれた。


見れば、簀巻き・・・と言うか射手の塊が宙に浮いている。


これはひどい、そうカズヤは思った。



「ああ・・・一応訊くけどその人・・・」


「大丈夫ですよ。ほら、早く行きましょう」



大丈夫らしい。


とてもそうは見えなかったが、もうなんか色々と面倒になってきたカズヤはうん、と返事をし手を引く愛衣とゆっくり歩き出す。


先程よりもやや傾いた満月が夜道を歩く二人の下へと影を落とす中、カズヤはふと、思ったことを口に出した。



「そういえば、さっきの空中からの『魔法の射手』での不意打ち一斉射撃。アレ凄かったね。

驚いたよ、愛衣ちゃんがあんな大胆な戦術使うなんて、って」



「そ、そうですか?それは・・・修行の成果が発揮できて、よかったです」



頬を赤く染め恥ずかしそうに、けれど、嬉しさを隠さずに笑う愛衣。


そんな彼女を見ながら、カズヤは愛衣の言うところの修行についての心当たりを探した。



「修行って言うと・・・」


「覚えてませんか?この前、一緒に図書館島へ魔道書探しに行ったじゃないですか」


「ああっ、あれかぁっ」



ぽん、と手を叩―――こうとして、片手が愛衣の物となっていたので代わりに脚を叩くカズヤ。


そんな彼を微笑ましそうに見つめ、彼女は言葉を続けた。



「そうです。他にもガンドルフィーニ先生や神多羅木先生にも何度か教えを頂いたり、
まほネットの通販とか色々・・・・・・私、頑張ってるんですよ?」



くすっ、と花が咲いたような笑顔を浮かべながらそう言う愛衣を見て、
カズヤはまるで向日葵みたいだなぁ、と戯けた感想を抱く。


得意気な様子でカズヤにそう語る愛衣の表情には、どこか、何かを期待するような感情が見え隠れしている。


実は、佐倉愛衣と言う少女を多少なりとも知る者からすれば、
今の彼女の態度は目を剥く程に常の彼女のそれとは違っていたりする、の、だが。


そんな『自身が努力している』と人に話すようなことを・・・
いや、そもそも思うこと事態無いような彼女が、何故彼には話しているのかなど。


少女の心の機微になどさっぱり分からぬこの男が気づく筈も・・・・・・



―――ぽん、と愛衣の頭に手が置かれた。



「えっ・・・?」



愛衣が、顔を上げる。



カズヤが、笑う。



「頑張ってる愛衣ちゃんには、ご褒美がいるよ。

実は今日、超さんから晩御飯の誘いを受けてるんだ。待ってる、って言ってたからこの人を届けたら、一緒に行こう」



その言葉に彼女は―――



「・・・・・・はいっ!」



今日、一番の笑みを、返した。






・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・





「ネギッ、早く神楽坂と仮契約をするんだ!時間は俺が稼ぐ!!(高音の次はエヴァだ!やれやれオリ主も楽じゃないぜっ!)」


「は、はいっ、分かりました織朱さん!」


「フン・・・来ると思っていたぞ神代織朱(かみしろ・おりしゅ)ッ!!」


「織朱くんったら何も言わずに行ってしまうんですから・・・(でも、そんなクールなところも・・・はっ、私ったら!?)」



同時刻。


そんな感じで多少のイレギュラーを交えながら本編が進行していたのだが、カズヤと愛衣には何の関係も無いことだった。



今は、まだ。





・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



次回の、トラクローでセカンドブリットは!



朝倉「ネタぁ、何かネタはないのかあああぁぁ・・・度肝を抜くようなスクープぅぅぅ・・・・・・」


美空「そういえば・・・知ってる朝倉?少女のヒモになってる男の話」


朝倉「なにそれkwsk」



自称『麻帆良のパパラッチ』朝倉和美。


彼女に起こった悲劇とは!?



・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



愛衣「たす、けて・・・っ」


カズヤ「『変身』ッッ!!!」



《タカ!トラ!バッタ!》



《タ・ト・バ!タトバタットッバッ!!》



エヴァンジェリン「何だ。その、力は・・・・・・?」



愛衣の語るカズヤとの出会いと、彼の持つもう一つの『力』!


そして―――



・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



カズヤ「護衛任務?」


愛衣「はい。関西呪術協会へ新書を渡すネギ先生の護衛。それが任務です」


カズヤ「奈良京都かぁ・・・ガキの頃以来だよ」


愛衣「ホテルももう予約しておきました。背中流しっこしましょうねっ」


カズヤ「ブッッ!!?」



爆発しろ!日野カズヤ!



そんな感じでお送り予定!!



・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



あとがき


大河内さんが可愛すぎてつい書いてしまった。どうしてこうなった・・・愛衣ェ・・・

変身しなかったのは愛衣ちゃんにメダルを没収されてるからです。(コンボの負担的な意味で)



[25202] 第二話 「予告詐欺と修行とシェルブリット」
Name: 五十三◆8d4ff906 ID:83ffe67b
Date: 2011/01/04 21:08



前回までの3つのおさらい!



一つ!主人公、日野カズヤは色々力を持っているらしいのに、どうにもパッとしない男だった!



二つ!その反動なのかカズヤと仲の良い魔法少女、佐倉愛衣が何かやたら強かった!



そして三つ!セカンドブリッ『ド』ではなく、セカンドブリッ『ト』だった!!





・・・・・・・・・・・・ほんとすいませんでした。始まります。





トラクローで撃滅のセカンドブリット





第二話 予告詐欺と修行とシェルブリット





麻帆良大停電から明けて翌日。


早朝。麻帆良大学工学部特別研究室。


数ヶ月前、『とある事情』から新しく造られたその一室には、現在4人の人間が存在した。



「いやー・・・何か、スイマセン。晩御飯どころか朝御飯までご馳走になってしまって・・・」



まずは一人め。


第一話では全くいいところの無かったポンコツ主人公。


近頃の悩みは、歩いていると通りすがりの子供から石を投げられ罵倒される事です。


麻帆良の(ある意味)有名人物。麻帆良学園こんな大人にはなりたくないランキング堂々の第一位。


主人公、日野カズヤ。


なにやら、あんだけ食っても入るモンだなぁ・・・などと呟いている。



「イヤイヤ、気にすることはないヨ。ワタシとカズヤサンの仲じゃあないカ」



続いて二人め。


留学生ながら学年・・・と言うか麻帆良学園一の天才で、『麻帆良の最強頭脳』の異名を持つ中華娘。


チャイナ少女のトレードマークである団子のようなボンボンで髪を纏め、余った部分を三つ編みにした頭に、

日本人形のように額で切り揃えた短いおかっぱのような前髪、

そして、漫画では『元気っ娘』の象徴である『横長の赤丸のようなマーク』の付いた頬。


ぼくのかんがえたさいきょーしゅじんこー、超鈴音(ちゃおりんしぇん)。


・・・ちなみに、オーナーを務める中華料理の屋台『超包子』(ちゃおぱおじー)は年間一億近い売り上げだって。


土下座するから雇って欲しいな!



・・・三人め。



「カズくんに、誤注文で作り過ぎた肉まんの処理なんてモノをさせておきながら、

よくもまあいけしゃあしゃあと・・・」



キャラ崩壊甚だしい、原作ファンの人ホントすいませんな感じのヤンデレ気味少女。


おそらく今後もハイパー化が止まるところを知らないだろう、無双の気配。


現在赤マル急上昇中で力をつけている、カズヤ『の』保護者。


自称普通の魔法使い、佐倉愛衣。



そして4人め。



「まーまー愛衣さん。ほらほらーこのお味噌汁カズヤさんが作ってくれたのよー。凄く美味しいー」



座右の銘は『科学の発展に犠牲は付き物デース』。


超と同じく学園の魔法関係者から危険人物と判断されている、学園で二番目の頭脳の持ち主。


アルバート・アインシュタインを尊敬するマッドサイエンティスト。


三つ編み眼鏡に白衣と意外にフックがいっぱいなハカセ、こと葉加瀬聡美(はかせ・さとみ)。



良くも悪くも個性的・・・と言うか、おめーらキャラ濃すぎだから!と言う感じの面子である(へっぽこ除く)。



そんな彼らが何故サザエさんやちびまる子よろしく、こうしてほかほか一家の体を成し団欒しているかと言うと、

先の愛衣の発言通りなのだが・・・・・・





―――昨夜。



あの後、侵入者を届けたカズヤと愛衣は前回ラストの台詞通り超の誘いを受けてここ、

麻帆良大学工学部の特別研究室へとやって来た。



そしてそこでは。



「ハムッ、ハフハフハフッッ!!ムグムグ・・・今日も元気だお米が上手いアルー!!」


「それは肉まんですよーくーふぇさん。ちなみに今ので74個めよー」


「アイヤーッ!?100個だから・・・まだあと17個もあるアルー!!」


「26個よー」


「アイヤーッッ!!?」



なんか凄いことになっていた。



研究室内には所狭しと置き捨てられた空のセイロや、肉まんの包み紙がそこいら中に散乱し、

部屋の中央では燃えないボテ腹を晒しながら、超や葉加瀬のクラスメイトである古菲(くーふぇい)が、

蒼白を通り越して土気色の顔で肉まんを喰らっており。



その直ぐ横では古菲と同じく『超包子』のメンバーである四葉五月(よつばさつき)が、

おろおろとした様子で古菲の暴食を止めようとしていた・・・が、

ほんわかぽっちゃり、ぽわぽわしている彼女ではバカイエローを止めることは出来ない様子であった。



仕方なく背中を擦ってあげているその姿はまさに天使。五月ちゃんマジでらべっぴん。



そして、機械的に古菲が食べた肉まんの個数をカウントしている葉加瀬。


人間の胃袋の限界を調べる実験だったらしいが、それは平均的な人材を用いなければ意味が無いのではなかろうか。


マッドサイエンティストモードのため、レンズの光で目が見えないのはお約束だ!(意味不



そして、そんな無法地帯をニヨニヨと愉快気に見ていた超がカズヤと愛衣に気付き。



「おォ、カズヤサン。クーのやつ、どうやらもう無理っぽいから代わりに26個頼むヨ。かけつけ26個ネ!」



「おいィ!そんなかけつけ聞いた事無いんですけど!?ちょ、やめ・・・・・・アーーーッ!!?」



「カズくーんっ!?」



・・・・・・・・・・・・そんな感じでガメオベアとなった。


どうやら誘いではなく孔明の罠だったようだ。


人生どこに死亡フラグが立っているか分からないものである。


世界はいつだってこんな筈じゃあなかった事ばっかりだよ!




その後、愛衣が気合で5個を食べ、残り21個をぶふーぶふー言いながらカズヤが食べ終えた頃には、

片方が一歩も動けない・・・って言うか、リバース2秒前状態になっていた為、

なし崩し的に一泊することになったのである。


最初からこの部屋に泊まる予定だったらしい、超と葉加瀬と一緒に。


ちなみに唯一の男であるカズヤは、ひいひいと体を引き摺って備え付けの仮眠室へと逃げたようだ。


愛衣もそこは空気を読み、黙って見送ったという。分かり過ぎてて逆に怖いんですけど・・・



ついでに言っておくと、ボテ腹くーふぇさんは四葉さんが責任を持って連れて帰りました。本当にいい娘である。





―――そんな感じの、回想終了。



戻って現在、食卓である。ただいま、食事を終えて食後のお茶で一服中のカズヤたち。


昨日の惨状がそのまま広がっている室内を見て、カズヤが腹を擦りながらぽつりと呟く。



「あー・・・とりあえず、コレ飲み終えたら部屋片付けましょうか。スッゲー事になってますし」



「別にいいですよー?ここはカズヤさんたちの為に造った部屋な訳ですしー」



「いやいやヤバいでしょう、下着とかあるんですけど。葉加瀬さん、年頃の女の子なんですから・・・」



カズヤの言葉に、何か問題が?と言う表情で見つめてきた葉加瀬に、

・・・大丈夫じゃない、問題です。と、なんかやるせない感じの表情で返すカズヤ。



残念ながら、男性も出入りする一般の研究室にでも平気で下着を脱ぎ捨てたままにして無防備に寝泊りをするほど、

研究以外のことには全く無頓着な彼女との間に存在する価値観の違いの壁は大きいらしい。


壁?そんなモンぶち壊す!・・・には、カズヤのレベルが低すぎるのがまた泣ける話である。


残念ながら壁を壊すには好感度が足りません、と言うやつだ。


そして今後上がる事もないだろう、多分。彼のキャラ的に言って。



そんな二人の遣り取りを見てから、超は視線を愛衣へと向けた。


湯呑みを綺麗に持ち、優雅にお茶を飲む彼女の振る舞いに動揺は見られない。特別興味を惹く話ではなかったらしい。


おそらく普段からカズヤの、少女に対する幻想を壊さないようそれとなく努力をしているのだろう。


五月ちゃんに負けず劣らずいい娘である。



その姿がつまらなかったらしく露骨に面白くなさそうな顔をする超。中々いい性格だ。


が、何か思いついたのだろうか。ニヨニヨ笑いを浮かべ愛衣へと話しかける。



「しかし、愛衣サンもよくこんな甲斐性無しのロクデナシと―――ホアァッチャアッ!!?」



悪ふざけに返ってきたのは無詠唱の炎の射手だった。この場合二本と言うのは多いうちに入るのだろうか。


最後まで言わせもしない所がまたなんとも。


昨夜の魔法使いと同様、頬を掠るのみに済ませたようだがやられる側としては堪ったものではない。


奇声を上げオーバーにのた打ち回る超を見ても愛衣は表情を変えずほう、と一息つき超を見ることも無くぽつりと。



「五月蝿いですよ」


「鬼かヨ!!」



「ははは・・・ついでにそこにヘタレとマダオを足しておいてくだしあ・・・」


「あららー!?日野さんの額に三本の縦線がー!凄ーい漫画みたいですよー!」



起き上がり涙目で文句を言う超。さらりと流す愛衣。


なんか結構ダメージを受けてるへっぽこと、きゃいきゃいはしゃぐ葉加瀬。


・・・なんとも賑やかな光景だった。楽しそうではあるけど同席はしたくないが。



「あ、そうだヨ!今のショックで思い出したケド、この前愛衣サンと修行の約束してたネ!

今からでよければ、やらないカ?」



「また急に話が飛びましたね。確かに、時間が空いた時にと頼んではいましたけど・・・

では、是非お願いします」



本当にいきなりの話題転換であった。


あるいは、先の挑発じみた発言はこの流れを狙っていたのかもしれないが、

だとしたらなんとも無駄なパフォーマンスである。出たての芸人かキミは。



たった今までの怒りや涙はどこへやらそう笑顔で話す超に、やや呆れながらも強く了解する愛衣。


どうやら満更でもない・・・いや、超を見るその真っ直ぐな瞳から察するに、おそらく超の方から言わなければ、

後で彼女の方から言い出すつもりだったのだろう。


自身を見つめてくる愛衣のその気迫に、提案した超の方が少し目を剥いてしまった。


数ヶ月前とは大違いネ、と心中で感嘆を零し先程までとは別の笑みを浮かべる。


ニィ、と口元を吊り上げた、悪役の笑いだ。


その超の笑顔に、愛衣も同じように笑みを返す。この二人、意外と馬が合っているのかもしれない。



「オーケー。じゃあ、早速行こうカ?

言っとくけど、ワタシは鬼コーチアルヨ。泣いて許しを乞うても止めないガ」



「そうでなくては、困ります」



男前な、二人だった。


容姿が双方共に整っているのがまた何とも言えない雰囲気を醸し出している。


葉加瀬が眼鏡を輝かせ「で、データが取れますー!ラッキーですーっ!」とか騒いでいるのも全く気にしていない。


やはり科学者と言う人種は空気が読めない宿命なのだろうか。



・・・そんな感じで完全に背景と化していたカズヤは、

先の超の「やらないカ」発言に何故かビクッと体を震わせ、しきりに尻を気にしていた。それでいいのか主人公。



「じゃあ、ちょっと行って来ますね。カズくんはここで待っててください。

・・・恥ずかしいから、見に来ちゃヤですよ?」



不自然な動きを見せているカズヤを気にした様子も無く、愛衣は弾んだ声をかける。


修行の機会が嬉しいのだろう。何ともたくましい事である。


まあ、講師役が天才『超鈴音』とあってはそれも当然の喜びかもしれないが。


学べるコトはたくさんあるだろう。充実した時間を過ごす事となりそうだ。



「え。あ、ああ、うん。分かった、じゃあ掃除でもしてるよ。・・・あんま無理しちゃ駄目だよ?」



本当に分かってるんだか怪しい返事のカズヤ。


サムズアップした姿がなんとも間抜けだったが、愛衣は何が嬉しいのか笑顔で返し。



「―――そうだ。カズくん、これ・・・」



はっ、と何かに気付き愛衣は制服のポケットを探りそっ、とカズヤへ何かを手渡す。


反射的に手を伸ばし受け取ったカズヤの掌には、キラリと光る三枚のメダルが。


それぞれ色の異なるそのメダルには、存在を主張するようにとある生物の姿が彫られていた。


赤色のメダルには、タカが。


黄色のメダルには、トラが。


緑のメダルには、バッタが。


見覚えがあるのだろう。カズヤはそれらを見て、え、とやや驚いた様子で愛衣へ目を向けた。



「いいの?別に、オレは愛衣ちゃんが嫌なら無くても構わないけど」



「いいんです。・・・昨日のカズくんを見てて、決めました。

だけど、この三枚だけですよ。もし他のメダルが必要になったら、その時は私に言ってください」



「・・・うん、分かった。じゃあありがたく受け取っておくよ」



なんだか二人だけに通じ合った会話の後、カズヤは渡されたメダルを上着のポケットにいれ、

愛衣へニカッ、といつもの子供のような、どこか情けない感じの笑みを向けた。


その笑顔に愛衣も笑顔で応えるが、そこにはどこか不安の気持ちが隠れていて。


それでもカズヤが大丈夫だよと言葉を加えると、

愛衣は頷き彼へすっ、と頭を近づけた。



カズヤも分かっているのか何も言わず、ぽん、と手を置き一度だけかるく撫でる。


ん、と目を閉じたまま嬉しそうな声を漏らす愛衣。



・・・なんだか置いてきぼりな感があるが、まあ、いい雰囲気であった。



流石に空気を読んでか、超も葉加瀬も黙って天井の染みなど数えているし。



「じゃ、行ってらっしゃい」



「はいっ!」



「よっシャ!地下トレーニングルーム『トラの孔』に出発ネ!」



「うおおーいっ!?色々ヤバくないですか超さんそれぇ!」



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



―――そうして、愛衣は超と共に研究室を出て行った。


どうやら、地下に造ってある『トラの孔』なるトレーニングルームで特訓することになったらしい。


超と葉加瀬が主導となってエヴァンジェリンの知識も駆使しながら造ったその施設は、

科学技術と魔法が融合した世界一(にして唯一)の修練所で、重力を2倍3倍にすることも可能とのこと。


一体どこのドラゴンボールなんだろう。やはり愛衣ちゃんは超サイヤ人でも目指しているのだろうか。


二人が出て行ってから一時間ほど、

そんなぶっ飛んだ話を興奮しきりに長文で葉加瀬が話す中(彼女は自分の発明を語る際、饒舌になる癖がある)、

カズヤは宣言通りせっせっと室内の掃除に勤しみながら、

時折相槌代わりのツッコミを入れる事も止めなかった。意外と付き合いのいい男である。


ゴミを拾い袋にしまいながら掃除機を掛け、葉加瀬と協力して清掃活動に努める彼の脳内では、

超に拳法の型を習っている愛衣がたどたどしい動きでえいえいっ、と可愛らしく拳を突き出している。



・・・実際はそんな甘っちょろい妄想とは月とスッポン。


カズヤなら修行内容を聞けばそれだけで、

裸足どころか体液撒き散らしながら全裸で逃げ出すだろう超々ハードなレッスンなのだが、

まさに知らぬが仏と言うヤツだろうか。



身体強化魔法を使いながら、無詠唱かつ5秒で魔法の射手23本生成とか・・・武道大会時のネギ君よりパネェんすけど超さん・・・



ちなみに、既に愛衣は超から一度だけ、多少おざなりながらも拳法の基礎は習っており、

優秀な彼女は独自の方法でそれを一つのカタチとして完成させ、『雷華崩拳(らいかほうけん)』ならぬ、

『焔螺子(ほむらねじ)』を習得している。ど、どこの九鬼先生ですか・・・



掃除機を掛け終え雑巾の水を絞りながら、昨日も言ってたけど頑張るなぁ愛衣ちゃん、

と感心しているカズヤに、気付いてー!と叫んでやりたい気分になってしまう。



「この分だとあと少しでっ・・・・・・綺麗になりそうですけどっ・・・・・・」



「ですねー」



深紅のマフラーを靡かせながら、雑巾で床を掛けそう言うカズヤに、葉加瀬がちら、と時計を見、



「まーあちらは1時間程度では済まないと思うのでー。後でお昼ご飯でも作って持って行きますかー」



「あ、じゃあオレが作るんで持ってってあげてください。愛衣ちゃんに来ちゃ駄目って言われちゃったんで」



わかりましたーと返した彼女は、着ている白衣のポケットからリモコンを出し、何やら操作をする。


と、近くの壁からウイィィンと稼動音を立てマジックアームのようなものが出てきて、

汚水の入ったバケツを持っていき、代わりに新たな水の入ったバケツが床に置かれた。


なんとも便利なモノである。それで掃除すればいんじゃね?などと言ってはいけない。絶対にだ。





・・・そうして、掃除を終えたカズヤと葉加瀬は4人分の昼食を作り始める。


二人とも料理に関してからきしなので、おにぎりやサンドイッチなどの簡単なものではあるが一応の体を成している。


久しぶりに運動をしましたーと微笑む葉加瀬に、掃除は運動にカウントしませんよ・・・と苦笑するカズヤ。


少々時間が足りすぎていたので、軽く世間話の最中である。なんともほのぼのしていた。



「―――なるほどー。学園内で野宿生活をー?でも見た事ないですけどー」



「ええ。生徒さんから『木にパンツ干してる変質者がいる!?』って通報されてしまって・・・それからしばらくは、

学園の人が用意してくれた『麻帆良特別収容施設』と言う場所でお世話になってたんです」



「・・・・・・すいませんちょっと意味が分からないんですけどー」



ほのぼのしてなかった。寧ろ殺伐だった。


勝手に前科が付けられていないか心配してしまう。収容施設て。


穏やかな様子で懐かしそうに話すカズヤの態度とは裏腹に、語られる内容はかなりヘビーかつぶっ飛んだモノだったが、

葉加瀬は多少驚いた様子こそ見せたもののしっかり対応していた。流石である。


麻帆良の裏事情をよく知っているからこそ、この話が嘘でないことが分かったのだろう。



・・・・・・ここで少々ぶつ切りに説明を入れると。



日野カズヤと言う男は、学園への編入手続きを踏み今年の初めに正式にやって来る事の出来たもう一人のイレギュラー、

『神代織朱』とは違い、なんか気が付いたらここに立っていました、と言う怪しさ満点の登場だったのだ。



その上、自分がどこのだれなのかそもそも麻帆良って何さ?と、

名前以外は殆ど記憶喪失と言ってもいい無知も極まった初期状態であったため、

学園側としてもこの得体の知れぬ男をどうしたものかと困り果て、頭を抱えた。


本来であればこんな男、K察に全部投げてしまえばよかったのだが、

残念ながら『そうは出来ない理由』があったのだ。


捨てられないし、かと言って話はいまいち成立しない。



どうすんだよコイツ?



状況は混迷となり、様々な意見が魔法関係者の間で出たが、それでも最も簡単な『隠密に処理』が出なかったのは、

やはり『立派な魔法使い』を目指す彼らの矜持ゆえだろうか。


それだけはカズヤ唯一のラッキーであったと言えよう。



この世界は厳しいが、優しかったのだ。



カズヤが話した『麻帆良特別収容施設』と言うのは、そんな彼らの苦肉の策だった。



本来は、学園へと侵入してきた魔法使いなどの処遇を決めるため、

一時的な間の拘束場所として使われていたその施設を今回、彼に適用することに決めたのである。



その場所でカズヤは約1ヶ月程の間、麻帆良の魔法先生方から尋問を受けたり、この学園についての説明を受けたりしたのである。


周りを結界で覆われているため外に出ることは出来なかったが、きちんと三食の提供は有ったし、

申し出ればトイレや風呂に行くことも出来た、意外と悪くなかった―――



そんな感じの説明をカズヤから受けた葉加瀬は、はぁー、と驚いているのか呆れているのかよく分からない息を吐いた。



「日野さんの現在の状況もある程度聞いてはいますが・・・評判と言い、結構厳しいんですね、立場」


「こればっかりは仕方無いかと。今でも結局不審者ですしね、オレは。

寧ろ破格の待遇だと思いますよ?任務すればお給料出ますし」



やや眉を顰めそう言う葉加瀬に、ニカッ、といつもの頼りなさ気な笑顔で返すカズヤ。


その口調と表情に嘘偽りは感じられない。心底そう思っているらしい。



・・・ちなみに、カズヤの『裏仕事』での給料は時給に換算すると大体630円ほどと、中々イカしたブラックぶりだ。


幾ら、他の同僚と比べて役に立っていないにしても、

もうちょっとどうにかならんのかと言う感じである。コンビニのバイトよりヒデーぞ。



参考例を挙げると、大体基本レベルの活躍である瀬流彦(せるひこ)先生で、


時給2000弱(曲がりなりにも大怪我の危機が有るため、必然給金が高くなるのは自明の理だろう)、


なのだが、その事実をカズヤは知らない。


と言うか、知ったら流石に泣くだろう。泣くだけで改善の行動に移れないのがこの男だが。



ちなみに、余程人員に余裕が無く、かつ緊急の場合で無い限り、

愛衣や織朱などの『魔法生徒』がそう言った『荒事』を任される事は少ない。当然といえば当然だろう。


なので、昨日はその例外のパターンであったと言える。


停電で学園の結界が消滅したのを好機とばかりに、

因縁の有る関西魔術協会の過激派やら、『英雄の息子』であるネギや図書館島の魔道書を狙ってフリーの魔法使いやらが侵入し、

その上、あのエヴァンジェリンがネギと戦うわ、もう何か色々とおかしいカオスだったのだから。



「・・・ちなみに佐倉さんはこの事をー?」



「大体は話してあります。オレには関わらない方がいい、ともそれとなく言ったんですけどね。

それでも何かと世話を焼いてくれて、オレみたいなのとも普通に接してくれて・・・

何と言うかホント、凄くいい娘ですよね。頭が上がりませんよ」



いつも嵌めている黒い指無しグローブを脱いだ右手も使っておにぎりを作りながら嬉しそうに、

けれどほんの少しだけ悲しみを混ぜて言うカズヤ。珍しく真面目だった。


その悲しみは彼が愛衣に多大な迷惑を掛けていると理解していることに起因するのかそれとも―――


無意識に、益体の無いことを考えそうになった自身を戒めるため葉加瀬は数度、軽く頭を振った。


彼女自身、こう言ったコトに関して鈍感、

というか意図せず失礼な思考に逸れてしまう悪癖を持っていると分かってはいるが、それを改善しようとは思っていない。

気付いたときだけ直そうと努力しよう、とかその程度だ。

科学者は心の機微に疎くあるべき、との持論を持っているのだとか。傍迷惑な持論である。


しかし、とカズヤの話を聞き葉加瀬の中にはもう一つ疑問が湧いた。


こちらは別に直接訊いても問題無いだろうと彼女は茶を啜るカズヤへ尋ねた。


「佐倉さんは日野さんに対するその仕打ちについてー学園側をどう思ったんでしょうねー?」


「はいィ?」


オレは愛衣ちゃんじゃないですよ、と不思議そうな顔をして右京さんのような声を上げるカズヤ。


一拍おいてから、うーんと律儀にも思い当たる節を考え出したが、見当もつかなかったのだろう。


どうでしょうねぇ、と呟いた。


「『そうですか』って。あっさり納得してましたよ」


そうですか。


口の中でころがし、その言葉に籠められた意味を吟味しようとし―――さっぱり分からなかった。


今の佐倉愛衣と言う少女を見る限りこの話を聞けば、

彼のされた扱いに対して何かしらの思いを抱いたのは間違い無いと思ったんですがー。

と胸中で一人ごちる。


「それだけですかー?怒っていたりとかしなかったんでしょうかー?」


「ええ。あ、ただ―――」


「ただ?」


「『これからは私がカズくんを守ります』って。

ははは・・・女の子、しかもオレより5つくらい年下の娘(こ)にそんなコト言われるなんてって、

情けなくて泣きそうになったので、よく覚えてます」


「・・・・・・はあーそれはそれはー」



―――それか。


おそらく、佐倉愛衣と言う少女の、最近の急激な成長速度。そのルーツ。

・・・いやそれは言い過ぎかもしれないが、少なくとも一端を、その言葉が担っているのだろう。


その事実に気付き、喜色を浮かべる葉加瀬。


先の掃除の最中に、こっそりと覗き見たモニターから見えたある光景は、

葉加瀬聡美と言う少女に、愛衣についての興味を持たせずにはいられないモノであったのだから。



空間中を覆いつくす業火と、『気と魔力の合一』を果たしたことによる身体の輝き。

虚空を蹴り、駆ける愛衣のその姿と言ったら、学園祭用の装備に身を包んだ超が後手に回り、守りに徹しているほどだった。



だとすれば、彼女がそこまでこの、

ヘタレでポンコツな男に入れ込む理由が気になるが・・・まあそれを知るのは無理だろうと判断する。



このぼへぼへとした姿を見るに、カズヤは愛衣がどれだけ『異常』な勢いで進化をしているのか、

まるで気付いていない・・・というか、知らないのだろうと悟ったからだ。それはただしいわけだが。



まあ、人の心の機微に疎く、特に今回の疑問を解消する『とある感情』のコトをさっぱり理解出来ない葉加瀬では、

真相に辿り着く事など出来るはずも無い。



よく分かりませんがー私が考えている以上に日野さんと佐倉さんはー・・・


そこまで、考えたところで。





―――ドオオオオォォンッッッ!!!





「「ッ!!?」」





爆音が、響いた。



トレーニングールームへ繋がる、スピーカーから。





「お、OFFにしてあるんですがー・・・まさか、何かアクシデントがー・・・?」



「っ!?愛衣ちゃんっ!超さんっ!」


「ああっ!日野さーんっ!!」



叫び、カズヤは駆け出した。


葉加瀬のやや慌てた声を背に、向かうは―――地下に造られた、トレーニングルーム『トラの孔』!



・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



「愛衣ちゃん!超さん!聞こえたら、返事をしてくれっ!!」



トレーニングルームまでの道のりにはさして何の障害も無かった為、

カズヤは音を聞いてから数分足らずで件のトレーニングルーム前までは来ることが出来たのだが―――



「このぉ・・・開けっ、開いてくれぇっ!!」



ダンダンッ!と強く拳を叩きつけるも目の前の・・・

トレーニングルームへの、唯一の入り口を閉ざす巨大な扉はびくともしなかった。


近くに備え付けられた、別のスピーカーから聞こえてくる葉加瀬の声による説明では、セーフティーのようなモノが掛かっており、

扉が開かなくなっているらしい。


こちらからのアクセスで開けることも出来ず、中の様子をモニターで見ることも叶わない状況であると言う。


しかし、中の景色が見えずともカズヤは否応無しに扉の向こう側で起きている惨状を理解せざるを得ない。


何故なら―――



「あ・・・っちぃぃっ!!」



扉を伝わり、此方へと異常な程の熱が届いて来ているのだから。


開けるどころか、軽く触れることすら不可能なそこへ、しかしカズヤは拳を叩き続ける。


ジュウゥッと、肉の焼ける音と独特の匂いが広がるが、カズヤにはそんなモノ知った事ではなかった。



―――居るのだ、中に。大切な人たちが。



―――だったら、足掻くしかないではないか!



「無茶ですよー日野さん!この扉はあらゆる事態を想定し造られていてー!

高畑先生やエヴァンジェリンさんでも破壊出来ない最強のー!」



葉加瀬の言葉を、シャットアウトする。


今必要なのはそんな悲観的な情報ではない。


手段だ。この扉をこじ開ける。力だ。それも圧倒的な。


そして、カズヤには心当たりがある。学園側がカズヤを追い出すことが出来なかったその『理由』。


そう。昨夜、悪魔達との戦いで見せていたあの、異形が。



「・・・・・・」



無言のまま扉から離れ、距離をとり、そして。





―――右腕を、伸ばす。





ゆっくりと、伸ばしたその手の先に在るのは。



扉か。あるいはその先の少女たちか。



カズヤは軽く息を吐き、目を瞑る。そして。





「・・・・・・リット」





聞こえぬほど微かに名を呼ぶと同時、カズヤの右腕を装甲のようなモノが覆っていく。


立ち起こる風に、深紅のマフラーが意思を持つように靡いた。


その光景を、どこかの生きているカメラから見ているのだろう。葉加瀬がヒクッ、と息を詰めた音が響いた。


瞬く間にカズヤの身体を侵食したソレは、最後に背中へ三本の赤い羽を創り、完成した。


ただ殴ることのみに重点を置き、殴ることのみに特化し、殴るためだけに創られた異形の右腕。



日野カズヤが持つ、魔法とは異なる謎の力。その、『一つ』。



「これが、オレの」



その名も――――





「拳、だああぁぁっっ!!」





―――シェルブリット!





「うおおおおぉぉっっっ!!」



叫び、指を折っていく。


人差し指から始まり、中指、薬指、小指、そして親指。


駆けながら拳を構えるカズヤ。その背に付いた羽が一度だけ淡く光り、さらさらと消えてゆく。


原理は不明だが、ソレを推進剤としたのだ。


カズヤの奔りが加速し、腕を、振りあげた。


向かう先には、リノリウムの床が―――





「衝っ撃のおおぉっ、ファーストブリットオォォッ!!」





ドッゴオオオオオォォォンッッ!!!!!



轟音と共に、殴りつけた床へと振動が走り、そして―――



「じ、地面を殴りつけて跳んだーっ!?そんな無茶苦茶なー・・・ッ!!」



物理法則を無視し、人間の跳躍力では不可能な高さまでカズヤの身体が宙を舞う!


くるくると回転する身体をそのままにカズヤは視線を扉へと向け―――



「撃滅のおおぉっ・・・・・・・・・ッッ!!」



更に、一つ、羽を使う!


超加速しながら急降下落下の勢いを乗せ、そして。


そして。そして―――ッ!






「・・・・・・・・・セカンドブリットオオオォォッッッ!!!」





ただ、ただ、拳を前へ―――!





ガギイイイイイイイィィンンッッッ!!!!!















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いってええええええええッッッ!!!??」















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?





「痛い痛い痛い痛いっ!?コレは折れた。絶対折れたぁっ!!?」





・・・・・・あれ?・・・ちょっと?





「フーッ!フーッ!フーッ!い、医者ーッ!医者ああああッ!!!」



「もーだから言ったじゃないですかー。無茶だってー。大丈夫ですかー?

・・・あー!超さんからこれは別に異常じゃないってメール来てましたー」



「痛いぃい!おかーさーん!!」





・・・・・・・・・・・・・・・スーパーカズヤタイム、終了ッッ!!





・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・



次回予告


それは、過去。少女と男の、出会いの話。


聖夜。少女は出会う、男に。


聖夜。少女は出会う、仮面の戦士に。


聖夜。少女はヒーローに出会う。


麻帆良に咆哮が轟く時、鈍色に光る鋼鉄が。


重力を操り、大地を揺るがす。



トラクローでセカンドブリット


第三話 「佐倉愛衣」



・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


あとがき


敗因は『自慢の拳』って言わなかったからです。そうに決まってる。 


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