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[2293] 少女病 《完結版》
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2011/02/06 13:48


 左肩にこてんっと、なにかが乗った。

「…………」

 重さからいってそれは、人の頭だということはわかるし、ふわりと香るシャンプーの匂いで、相手が若いオンナだというのもわかる。

 ところはがら空きの電車内。

 時間は帰宅ラッシュも過ぎた午後九時半。

「…………」

 視線だけを動かす。

 どこのものかまではわからないが、短い制服のスカートが見えた。

 どうもこれは寝てるらしい。

 最近の女子高生は、学業に友情に恋愛に、それから他にも、おっさんとかの交遊とかで色々あって、かなりお疲れなんだろうね。

 そんなことを適当に考えた。

 俺はそのまま女子高生に、肩を貸した状態で、ゆっくりと、べつに眠くも何ともないのに瞼を閉じる。

「…………」

 勿論悪い気はしない。

 その証拠に俺の口元の筋肉は、自然と笑みの形を作っていた。

 癒される。

 行きたくもない会社に行って、下げたくもない頭を下げたくもない奴に下げて、リストラに怯え、安い給料で扱き使われるそんな毎日。

 殺人許可証と拳銃。

 あったら撃ってやろうかって奴が、俺にはいくらでもいる。

 こんなラッキーが偶にはないと、とてもじゃないが、俺は真っ当な社会人をやってられない。

 まぁ、とは言っても、

「はぁ……」

 思わずため息。

 それはちょっとでも冷静になれば、三十歳目前のオトコの癒しとして、やっぱし、誤魔化しようがないくらい虚しいのも事実だ。

 ぎりぎり若者二十代。

 なのにこれは枯れ過ぎてる。

 潤いがない。

 思考が見事におっさんそのものである。

「はぁ……」

 なんてな風にそれこそ、疲れたおっさんみたいな哀愁のため息を、深く深く再度吐いたらば、

「悩みごと? あたしで良かったら、相談に乗るよ」

「……あん?」

 左から瑞々しい声をかけられた。

 そっちに首を捻ると俺の肩を、勝手に無断借用している女子高生が、大人を見透かしたような、生意気そうな瞳でじっと見ている。

 子ネコみたいな印象。

 まるで《ふふん》とでも、いまにも言いそうだった。しかしそれがまた、この娘は滅茶苦茶に可愛い。

 ……女子高生はホント得だね。

 丁寧に揃えた短めの、おかっぱみたいな髪型も(この例えもおっさんだな。正式名称わからん)良く似合ってる。


「誰かにしゃべっちゃえばね、悩みなんて、九割は解決してるもんなんだから」

「残り一割は?」

「またそれを誰かにしゃべればいいんじゃない? そしたらまた九割減るでしょ? そのうちどうでもよくなって、きっと消えてるよ」

 多分ね。

 そう言ってパチンッとウインクしたのが、その娘にはえらくハマってて、最高にカッコよろしく男前に決まっていた。

「面白いこと言うね、きみ」

 っても大人の悩みは、人に相談できないことが、ほとんどだったりするんだけど。

 でも面白い。

 でも素敵だ。

 でもイカす。

「それに一割くらいなら、他人に頼らず何とかする強さも、長い人生には必要なんじゃないかなと、少ししか生きてないけど思うわけ」

「ごもっとも」

 その考え方も見習いたいものだ。

 全面的に。

「気に入ってもらえたみたいで嬉しいな。それじゃこの頼りになるお姉さんに、一丁溜めてる悩みを打ち明けてみたまえよ」

「実はですね――」

 後になってから思い返してみると、軽いノリでの返事、これが良くなかったんだろう。

 ネコ少女を完全に調子に乗せてしまった。

 しな垂れかかってる女子高生の身体の重みと、頬から首筋にかけてをくすぐる、甘くぞくぞくとさせる吐息。

 大変心地いい。

 俺は確実に少女以上に、調子に乗りまくってたね。

 少女と俺。

 二人の力関係がこの瞬間決まった。

「日々の生活に張り合いがないのですよ。ビールとバッティングセンターさえあれば事もなしなんて、全然嘘っぱちなのです」

「ふむふむ」

 わかったように、そして大仰に、少女は深く頷く。

「今日も会社でですね、それはどう考えてもてめぇが悪いんだろうが、ってミスで部署の人間を説教してるお馬鹿な上司に――」

「うんうん」

 娘さんはとても聞き上手。

 お若いのに立派。

 将来はきっとどんな道に進んでも、大成するだろうねこの娘。

「部下の後輩はわかってるのかいないのか、いや、あれはわかってないんだろうなぁ」

「なるほど」

 などと。

 こんな感じで会ったばかりの少女に、日頃の鬱憤を電車内でぶつけていたらば、最寄り駅にあっという間に着いてしまった。

 うぅ~~ん。

 楽しいことは過ぎるのが、つまらない話をしてても早いねぇ。

「そいじゃ俺、次の駅だからさ」

「そう」

 すっと少女がくっつけていた身体を離す。

「…………」

 消えていく温かさが名残惜しいと思ったのと、その様子が以外にあっさりしていて、結構がっかりしたのはここだけの内緒だ。

 しかし何だかなぁ。

 これはやっぱりあれなのかな、もしかしたら、なんてのに期待しちゃってたのかねぇ俺は。

 ……カッコわり。

「そうだ。おじさんのお名前は?」

「ぐはぁっ!?」

 不意打ちで無邪気(だよな?)の刃が、まったく持って気にしてないと思ってたけど、思いの他深く抉るように胸に突き刺さる。

 それはいかんよ女子高生。

 三十路前のオトコはきみたち以上にデリケート。

 髪の毛とその話題は気をつけなきゃ。

「うん? ああ? あははは、ごめんごめん。カッコいいお兄さんのお名前は?」

 頼むよホントにさぁ。

「島田」

「下は?」

「誠」

「オーケー。誠ね。そういやそんな名前だったけ」

「はい?」

「なんでもない。こっちの話だよ、誠」

 言って少女はすくっと座席から立ち上がると、さっきまで自分の頭を預けていた俺の肩を、親しげに軽くぽんぽんと叩いた。

 さり気に呼び捨てにされてるが、不思議と嫌な感じはしない。

 どころかちょっとにやけたりして。

「あたしは洋子。山本洋子。ファーストネームで洋子って、気安く呼んでくれたら嬉しいかな」

「また随分と普通の名前だな」

「ほっといって」

 会ったばかりのおじさんと、これだけ普通にしゃべれるっていうのは、おそらく普通じゃないんだろうが、名前とのギャップが笑える。

「よしっ それじゃ誠、早速呼んでみてよ」

「あん?」

「な・ま・え あたしの名前。恥ずかしがらずに呼んでみて」

「……よせやい」

 こっ恥ずかしい。

 きみは知らないだろうけど、これでも俺はナイーブ誠って、巷じゃなかなかに有名人で通ってるんだぞ。

 ……まぁ、当然で嘘なんだけどさ。

 でも無闇に照れが入るっていうのは本当だ。

 元カノの下の名前を呼ぶまでに、なんせ、二ヶ月も掛かった実績がある。そして三ヶ月目に別れた。

 泣けるぜ。

 笑えるぜ。

 どっちでも好きな方の台詞を選んでくれていい。

「ほらほら誠」

 フレンドリー洋子の方は慣れたもんだ。

 何の抵抗も躊躇もなく、年上の、それも会ったばかりの、ストレス一杯おじさんの下の名前を、実にフランクに呼んでいる。

「早くしないと、もうすぐ駅に着いちゃうよ?」

「あん?」

 外の景色を見ると確かに、行きつけの定食屋とかコンビニがあって、駅に着くまでもう一分もなさそうだ。

「よ・う・こ」

 言いつつ洋子はぴっと、自分の顔を勢いよく指さす。

「……山本じゃ駄目なわけ?」

「洋子じゃなきゃ駄目なわけ」

 生意気な女子高生は疲れてるおじさんに、意地でも下のお名前を言わせたいらしい。

「…………」

「……さあ」

 ブレーキが掛けられて、がくんっと大きく身体が揺れた。この感じだと乗車口からはかなりずれるだろう。

 新人か? 下手くそめ。

 案の定電車は止まってから、バックして微妙な修正を始めた。

「はぁ……」

「…………」

「いくぞ」

「どうぞ」

 くっそう。

 恋に恋する思春期乙女(沙織ちゃん中学二年生)みたいに胸が滅茶苦茶どきどきするぜ。

「よ、洋子ちゃん」

「ちゃんはいらないかな」

「……洋子」

「もう一回」

「洋子」

「…………」

「あのさ」

「なに?」

「お前さん、人に言わせといて、その反応はねぇだろ?」

 ホントにこの小娘。

 あれだけしつこいくらいリクエストしておきながら、耳の先まで一瞬で《病気ですか?》と心配するほど真っ赤々になってやがる。

 可愛いじゃん。

「ああ、……ははは、ごめん。いや、なんかびっくりするくらい、すごくて、その、……予想外のパワーだったんでさ」

 電車がまた大きくがくんっと揺れた。

「…………」

 俺の心も不覚にもがくんっとまた、揺れたり揺れなかったり。

「…………」

 洋子はどうだろう?

「…………」

 なんて、な。

 まぁ、それはそれとして、腕を組んで誤魔化すみたいに、ふいっと洋子は明後日の方向を向いている。

 そんな年頃の仕草が妙に可笑しく、そして似合ってないのが、逆に洋子のキャラとのギャップを感じさせてくれて、可愛らしかった。

 正直もっと俺は、洋子と一緒に居たい。

 最高にハイって奴だ。絶好調のハレバレとした気分。

 けれどぷしゅ~~っと音を立てて、やっとこさで電車の扉がゆっくりと開きやがる。

 あ~~あ、ここでこの洋子とはお別れだ。

 心底波長が合わん。

 いまだったらうっかりと次の駅に行っちゃっても、俺は新米くんを絶対に怒らないのになぁ。

 しかしそれはしゃあない。

 彼だってこれが仕事なのだから。

 慣れてないとはいえ、うっかりで済む限度を、それだと越えちゃうしな。

「んじゃ」

「うん?」

 意味もなく気取って手を軽く上げると、俺は片足だけをホームへと踏み出す。

 洋子は何故か不思議顔だ。

「またな」

「あん?」

 さらに小さく首を傾げる。

「……洋子」

「……ああ」

 ちょっと自分に酔ってるマジ顔で、俺が心の中でBGMを掛けながら別れの挨拶をすると、そこで洋子は合点がいったという顔をした。

 にっこり、ではなく、にやりと、悪戯っぽく微笑むと、

「誠」

 俺の腕を掴み引っ張る。

 すぐにぷしゅ~~っと間髪置かずに、背中で電車の扉が閉じた音がした。

 ホームには二人の姿しかない。

 がたんがたんという音の中で、洋子がネコみたいに眼を細めて笑っていた。気に所為かもしれないが、その瞳が緑色に光ってるような?

「あたしもこの駅に、今日は用があるのだよ」

 ネコ娘の顔は愉しそうに、にやにやとしていやがった。

「ああ……さいですか」

「ふふふ、さいですよ」

 早く言えって。

 ほんの少しだけ過去の島田誠さん(27)が、なんだかモノ凄ぅんごく、恥ずかしい大人になってしまったではないか。

「誠、もう晩御飯は食べた?」

「いや、まだだけど」

「ふ~~ん。……そう、まだなんだ」

 はて? 一体何故だろう。

 どうしてはてんでわからないのだが、俺が晩飯を食べてないという事実は、洋子のお気に召したらしく、その笑みを一層深くさせた。

「コンビニ?」

「の予定」

「グッド。ちょっと待ってね」

 それを訊くと洋子はびっと親指を立て、ソニックのストラップの付いた携帯を取り出し掛ける。

「あ? 紅葉? ホント偶然なんだけどね、電車でお隣さんと一緒になっちゃってさ、うん? そう。201号室の島田誠さんだよ」

「…………」

 待ってくださいよ、女子高生の山本洋子さん。

 わたし、初対面のあなたに、色んな事聞いてもらちゃいましたけど、お部屋の事とかはお話しましたっけ?

「今日はカレーでしょ? なに? それしかできない? そんなんいいから、これから招待するんで、ちゃんと部屋片付けとくんだよ」

 言いたい事だけ言い終えると、洋子は自分勝手に電話を切った。

 天上天下唯我独尊。

 受話器を離したその一瞬、通話口から悲鳴のようなものが聴こえたのは、おそらく空耳とか気の所為だけじゃない。

 そういや何か声に聞き覚えがある。

 隣に住んでいるポニーテールがよく似合っていた、いまどき珍しい苦学生タイプのあの娘だ。

 え~~っと名前は、なんていったかな? 

 全国的にも非常に希少だろうし、特徴的かつ独創的なのは、かろうじてではあるものの覚えてるんだけど。屋号みたいな感じの奴。

「誠」

「なんでしょう?」

「あたしの友人で理由あって一人暮らしをしてる女子高生、松明屋紅葉の部屋で行う、カレーパーティなどにご招待したいんですけど」

「はぁ……」

 そうだったそうだった。

 あの娘は松明屋紅葉ちゃんだったな。うん。近くにある行きつけのコンビニの、地域みんなのアイドルである看板娘だ。


「来るよね? 一人でコンビニ弁当を淋しく食べるのと、可愛い可愛い女子高生とカレーを食べるのを、果たして比べられるだろうか?」

 俺の眼に人差し指をびしっと、突き刺しそうにしながら、洋子は断られるなど露ほども考えてない態度で、自信満々高らかに宣言する。

「…………」

 決めつけられるとこれで、誠さんは子供の部分が大概残っているので、つい逆らいたくなるのだが、

「来るよね?」

「……はい」

 ずずいっと顔を寄せてきた洋子の迫力には、それすらも許されない感じだった。

 いや、勿論、後者の提案の方が遥かに魅力があり、断る気なんて始めから、さらさらありはしないんだけどね。

「オーケー。じゃあ、紅葉の掃除の時間もあるし、ゆっくり行こ、あ? そうそう。明日は土曜日だけど、誠は仕事があったりするの?」

「んにゃ」

「ベリーグッド」

 親指を立てるとそのままその手で、洋子は俺の手を取りきゅっと握る。――ちっちゃい手。ほんのりと人肌に温かくて柔らかい。

 何とはなしに繋いだ手を、じっと見ていたら、洋子が小さく、ぽつりと呟いた。

「どうしよう。これってウマくイキすぎ」

「あん? 何だって? なにがイキすぎだって?」

 確かに俺の言葉が聞こえたはずなのに、洋子は振り向きもせずに、手を引っ張るようにして、ずんずんとえらく早足で歩き出す。

「ゆっくりじゃねぇの?」

「…………」

「なあ?」

「…………」

「なあ?」

「うっさい!!」

 このときはこれで諦めたのだが、無理矢理にでも、爆進するネコ娘の顔を見ときゃよかったと、後でちょっとだけ俺は悔やんだ。





[2293] 少女病 二話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:03



 ポストからチラシの束を回収し、ぐしゃりと丸めて握りつぶす。

 デリヘルとかいい加減にうぜぇよ。

「誠、何してんの?」

 とんとんと軽やかに階段を上がっていた洋子が、くるりと、本人は気づいているのかいないのか、スカートを翻して俺を振り返る。

「…………」

 縞々のストライプ。

 ばっちりがっつりパンツ見えた。確信犯じゃねぇだろうな? 嬉しいサービスだけどさ。

「耳をすませば、……まだ掃除機の音が聴こえるね。急ピッチでやってるんだろうけど、やっぱし十分じゃ終わらなかったかな」

 階段を上がってすぐの部屋。

 201号室の前で、洋子は視線だけを、202号室へと走らせた。

 なるほど。

 微かに掃除機の排気音がする。

 時刻はそろそろ十時になろうかとしているので、本来であれば近所迷惑という奴なのだが、紅葉ちゃんは普段の行いが圧倒的にいい。

 べつに誰に言われずとも、アパートの前を、率先して掃除するような娘だ。

 この程度の些細な騒音如きで、彼女に文句を言う奴はいない。

「ちょいとこの時間からカレーっていうのも、随分とヘビーな気がするんだけど、誠のオナカの空き具合は大丈夫なの?」

「若いもんには負けんよ」

「ははは、オーケーオーケー。それは誘ったあたしも、丹念に作った紅葉も嬉しいね」

 自分の部屋の扉をがちゃりと開けて、ぽいっと鞄を放り込んだ俺をちらりと見てから、洋子は202号室のノブに手を掛けた。

 廻す。

 何の抵抗もなく回転した。

 鍵は掛かってない。

 女子高生の一人暮らしなんだから、それも可愛い女子高生の一人暮らしなんだから、これは是非注意せねばと俺は強く思ったね。

 ここだってそれほど田舎じゃねんだから。

「ただいまぁ、紅葉ぃ」

「!? っきゃあああああぁああああああああああぁあああぁあああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 ずばんと勢いよく扉を開けると、出迎えてくれる黄色い悲鳴。

 それはいきなり開いた扉に対するものなのか、それともいきなり視界に入った俺に対するものなのか、それはわからない。

 わからないが紅葉ちゃん、これでなかなか、いいリアクションだった。

 怪しい関西弁を遣うだけあって、反応がかなりコテコテである。

 こまわりくんのポーズを取りつつ叫んでいた。 ……もしかしてもしかすると、ひょっとしたら紅葉さん、ぼくは死刑なのですか?

「よ、洋子ちゃん、ほ、ホンマに連れて来たん?」

 これはまぁやはり、俺のことなんだろう。

 紅葉ちゃんの背は女の子にしては結構高くて、普段着だろうティーシャツと洗いざらしのジーンズが、とてもキマっていてカッコイイ。

 けれど見た目と中身はかなり違う。

 俺は少ししか彼女とは話したことがないのだが、それでも彼女が、かなりの引っ込み思案なのはわかる。

 いまもちらちらと、上げては下げ上げては下げで、俺の方をしきりに窺っていた。

「平気平気。身元は割れてるんだから、悪いことなんてできないって。いざとなれば二対一だし、大声上げて抵抗すれば大丈夫だよ」

「訴えるぞ女子高生」

 この二人の性格を半分こずつにすれば、それでちょうど、俺にとって扱いやすい少女ができるのになぁ。

「…………」

 でもそれだと面白くない。

 などと詰まらんことを考えながら、俺は隣りの洋子に倣って、男の嗜みは足元からと、無理して買っちゃったブランド物の靴を脱いだ。

「お邪魔します」

「ど、どうぞ。い、いらっしゃいませ」

 その後に《ご主人様》と続きそうな感じで、紅葉ちゃんは愛想を作るのに失敗した、変な笑みを浮かべると、俺にぺこりと頭を下げる。

 うん。

 礼儀正しい。

 多少、顔は強張ってはいるものの、それはこんな時間に、恋人でもない男がいきなり訪ねてくれば当然だし、それでも人に不快感を

与えないのだから、これはもう完璧に重畳な礼儀作法といえた。

「楽にしていいよ」

 俺と紅葉ちゃん。

 どっちに言ったのか知らないが、どっかの小娘もちっとは見習えよ。

「あ、あの、島田さん」

「うん? なに?」

 ああ。

 突然だが思い出した。

 この娘と初めて、挨拶以外の会話を交わしたのは、夜逃げするみたいにパンパンの買い物袋を抱え、途方にくれていたのを助けたとき。

 どこかで安売りでもしてたんだろう。

 バラ肉やら欠けた野菜やらお菓子やらが、それはぎっちりいっぱいだった。

 俺は、

 偶然でそこを通りかかり。

 必然で目が合ってしまい。

 当然だが荷物持ちをした。

『へ~~、紅葉ちゃんは、自分で料理とかするんだ? 感心だね』

『え? あ、ははは、あ~~、ま~~、その~~、……ぼちぼち』

 そういやあんときの材料って、どう考えても、何かルーらしきものもあったし、晩はカレーだったんだろうな。

 あの夜は隣りは賑やかだったっけ。

「カレー、甘口なんやけど?」

「べつに構わないけど、辛いの駄目なの?」

「あたしがね。お? ちゃんと教えた味になってるじゃん、この間より格段に美味しいよ、紅葉。愛情の隠し味も入って今日は八十点」

「あ!? あ、ああ、愛情って、な、なにを言うてんねぇん!! 洋子ちゃん!!」

 そこまで反応しなくとも、というくらいの反応をして、おろおろしたように紅葉ちゃんは、俺と洋子の間に視線を行き来させる。

 隠し味を知られたのが、もしかして恥ずかしいのかもしれない。

 いまどき愛情はないだろうと俺でも思う。

 可愛いけどさ。

 なんてな間にも洋子は、ちゃっちゃと、勝手しったる人の家で、お皿を出して三人分のカレーを盛っている。

 やり慣れてるのか手際が良いね。

「わかったわかった。そいじゃそれはそういうことで、いい加減オナカも減ってるんで、とっとと紅葉の愛情カレーを食べましょうか」

「だから――」

「はいはい。いただきます」

「……いただきます」

 いつまでもショートコントしていると、時刻が十一時を回りかねないので、紅葉ちゃんには悪いけど、俺もそろそろ晩飯を食いたい。

 ここは洋子に乗っておこう。

「ふむ」

 目の前に置かれてるカレーは、これといって見た目は普通、というか、いかにも昔ながらの家庭的なやつだ。

 俺はこういうのが一番好きだね。

 お店で出てくる上品なのとか、少し前に流行ったスープカレーとか、嫌いじゃないけど、野菜ごろごろの市販ルーがやっぱ口に合う。

 家で食べるんだから、田舎のお袋の味っぽい、素人の手作り感がほしい。

「…………」

 そういや帰ってねぇなぁ。がめ煮喰いてぇ。

「島田さん、どないしたんですか? スパイスが効き過ぎとった?」

「いや、平気」

「眼、うるうるしてはりますよ」

「……いや、いやいやいや、いや、うん、大丈夫だから、全然大丈夫だから。さぁ、食べるぞ」

 この程度でホームシックになったなんてこと、いい大人が、それも天下御免の女子高生なんかに、恥ずかしくて知られてたまるか。

 いや、マジで。

 紅葉ちゃんに限ってそんなことはないだろうが、この平均寿命三年間の人種は、鬼の首でも獲ったみたいに、きゃっきゃと喜ぶからな。

「駄目だよ紅葉、そこは見ないふりしてあげないと」

 ほら見ろ嬉しそうだ。

「なんで?」

 スプーンをくるんっと回して(行儀悪いぞ)、洋子は得意気に紅葉ちゃんへと、何故だか妙に鋭い戯言をのたまいやがる。

「故郷の味てのはさ、いつ食べても、いいもんだよね、誠」

「……そうだな」

 エスパーかおめぇは。

「え? ほんなら島田さんって、インドの人だったりするんですか?」

「まあね。ガンジス川で産湯を浸かった、生粋のデリー子っさ。喰っちゃいけないのは、豚だか牛だかいまいち覚えちゃいないけど」

「これは豚肉なんですけど、たくさん食べてください」

「オーケー」

 言ってから気づいたけど、なんか洋子の口癖が移ってた。

 不思議と気分が良いのは何故だろう?

「…………」

 まあいいや。

 どろ~~りといい感じで蕩けてるカレーを、ゆっくりとスプーンで掬うと、口に持っていく前に、紅葉ちゃんと目がぴったし合う。

 心配そうな顔だ。

 口に放り込みもぐもぐする俺の口元を、微動だにしないフリーズ状態でじっと見てる。

 何をここで期待されてるか、それがわからないほど、俺は人生経験がわりかし足りてないが、幸いこの少女に鈍くも冷たくもなれない。

 大体、正直な気持ちを言えばいいだけだし。

「…………」

 だけど俺はとことんで、シャイなあんちきしょうだからな。ってか根性なし。結局はなに一つ、紅葉ちゃんに言ってやれなかった。

「…………」

 ただ親指をびっと立てただけ。

「デリ~~シャス」

 洋子がカレーを作った紅葉ちゃんにではなく、食べてるだけの俺へと、にやにやしながら親指を立てている。

 改めて考えると、言葉にするより、これの方が余程恥ずかしい。

 香辛料以外で頬が熱くなってるのが、ムカつくことに、はっきりとわかりやがった。

「……ふん」

 電車の中で洋子がしたみたいに、ふいっとそっぽを向いて、きっと先天的にそうなのだろう、無邪気な子ネコ(残酷)視線から逃れる。

「うん?」

 すると逃げた視線の先では、紅葉ちゃんが凄い速さで、ルーとごはんをぐちゃぐちゃと、のの字のの字しながら混ぜていた。

 随分と変わった食べ方をする。

 それとも関西方面では、わりと普通の食べ方なんだろうか?

 食文化ってのは実に広くて深いねぇ。

 まだ一口もスプーンを運んだ様子がないのに、すでに顔は激辛を食したように、山から下りてきた子猿色に真っ赤々になっていた。

「…………」

 可愛いって意味なんだよ? 一応、言っとくけど。

「日本猿とチンパンジーだったら、絶対あたしは、日本猿の方が可愛いと思うんだけど」

「同感だ」

 と。

 そんなこんなの大体こんな感じで、会話は噛み合ってるんだかないんだか、疑問はあるがぼちぼち盛り上がって、三人ともキレイに、

ノスタルジーで平凡だけど、とても美味なカレーを完食した。

 時刻は片付けなどをしていたら、もう十一時を、ぱっきりと回ってたりしてる。

「さてと、そいじゃそろそろ俺は――」

「そう言えばさ紅葉。探してた例のあの映画、やっと見つかったんだって? 明日は休みなんだから、誠も来てるんだし観ようよ」

 ジェントルマンな俺の発言を、洋子が横から強引に遮った。

「へ? 洋子ちゃん何言って、……あ!? あ~~、あ、ああ、あれかいな? そ、そそ、そうなん、そうなんや島田さん、そうなんや」

「そうなん?」

 紅葉ちゃんはアドリブに弱いらしい。

 カレーを食べてるときに、映画を観るのが趣味だとは聞いたが、演技の方は間違いなく大根だった。

「昨日やっと手に入ってん。島田さんも観たら、きっと面白いって言う思うで」

「そうなん?」

「そうなんや」

「そうなん?」

「そうなんや」

 なるほど。これはなかなか面白い。

「そうなん?」

「そうなんや」

「そうなん?」

「そうなんや」

「そうな――」

「……誠、もうそれくらいで、いい加減いいでしょ? 紅葉も遊ばれてるのに、少なくとも三回目で気づこうよ」

 はっとなる紅葉ちゃんは置いといて、俺は手招きしてる洋子に連れられ、自分の部屋と同じ間取りの、奥にある小さな四畳間にと移る。

「さてと、そいじゃそろそろ、面白いって評判の映画でも観るか」

 なんとなくだがもう、帰るタイミングを逃していた。

 勘違いだったら馬鹿丸出しなので訊かないが、洋子も紅葉ちゃんも俺が居ても、べつに迷惑ってわけじゃなさそうだし。

 建前はともかく本音では、勿論、俺だって帰りたくないしな。

「紅葉ぃ。あの例の映画っていうのは、どれだったりするのかな?」

 咄嗟とはいえ自分で振った話題だったのに、洋子には責任を取るつもりが、これっぽっちもないらしい。

 感心するくらい見事で豪快に投げっぱなしである。

 ここで映画を観るときは、クッション代わりに使ってるのか、隅にあった抱きまくらをセッティングし直すと、ぽふっと腰を降ろした。

「誠、座れば?」

 抱きまくらの空いてるスペースを、ぽんぽんと洋子は軽く叩く。

 どうもここに座ったら、と言うことらしい。

 でもそこに座ると二人に挟まれて座るということで、それはつまり両手に花ということで、そしたら映画の内容によっては…………。

 う~~ん。

「…………」

「どうしたの?」

 って考えすぎか。ヤメヤメ阿呆らしい。それこそ映画じゃねぇんだから。そんな美味い話はリアルにはねぇって。

「あの例の映画ちゅのは、これだったりするんや、洋子ちゃん」

「あれ? ホントにあったんだ? ちょっとびっくりしたかな」

「…………」

 それよりも何よりも、行き当たりばったりの、お前の性格の方にびっくりするわ。

「はぁ……。デッキもプレステやなくて、もっとええのほしいな。テレビももうワンサイズは、できれば大きいのがほしいわぁ」

 さすがに映画が趣味というだけはあって、紅葉ちゃん、その辺りには、結構うるさいこだわりはあるらしい。

 しかしながら貧乏人の悲しさ。

 ぐちぐちと苦学生は愚痴りつつも、世界に誇るソニーエンターテイメントのゲーム機に、大人しくも渋々とDVDをセットする。

「ほな。電気消すで」

 ジョオォォオンという音とロゴが出たのを確認すると、パチンッと電気のスイッチを切って、部屋に暗闇を招き入れた。

「あ!? …………」

 紅葉ちゃんは一瞬だけ、空いてる俺の隣りのスペースを見て、身体をぴくっと竦ませたが、特に何も言わずにそろそろと腰を降ろす。

 でもその距離は絶妙で微妙だった。

「ジャンルはなんなの?」

「パロデイやないかな?」

 肩が触れ合っても、別段気にしてない様子の洋子に、そういや今日は二回目だな、思いつつ、俺は無言で真っ直ぐに画面だけを見る。

 すぐにタイトルが浮かんできた。

「確実にパロだね」

「確実にそうだな」

 洋子の意見に全面的に賛成。

 それしかありえない。

 申し訳なさそうに顔を伏せた紅葉ちゃんだが、この力の限り《これは洒落ですから》ってタイトルならそりゃそうだろう。

 ローマの牛肉。

「…………」

 約二時間くらいだろうけど、この大作鑑賞、果たして眠ないで済むかな?

「お?」

 なんて俺の努力を嘲笑うように、こてんっと、五分で左肩に洋子の頭が乗った。くっそう。ズルい、じゃなくて、もっと頑張れよな。

「島田さんも、眠ちゃっていいですよ」

「うん? 紅葉ちゃんは全部観るの?」

 考えてみるとこの質問、何気に失礼な気もする。

「どんな作品でも、一度観始めたからには、全部観てやらんと」

 薄く笑うと紅葉ちゃんは、べスパに乗ってる新聞記者と王女様が、肉屋を探してローマの街を走る画面へと、俺の顔から視線を戻した。

「…………」

 その淡い光に照らされてる横顔は、色っぽい、というのとは多分違うけれど、胸の奥を思わずどきっとさせる。

 すーすーと小さく安らかな寝息を立ててる洋子。

 ネコ娘の首筋ピンポイントくすぐったい攻撃もあって、この映画のエンディングを観てもいいかな? 俺はそんな気持ちになっていた。

 寝てる時間が惜しい。

「オリジナルの展開をなぞっていくのかな、これはやっぱし?」

「どやろか? なんぞ雲行きが怪しくなってきたような。パロディ監督が悪乗りすると、大抵はろくなことにならないんやけど」

 ああ。

 そういや本家のローマには、銃を持った追っ手から逃げるのに、二人でラブホに入るシーンなんて、絶対絶無で究極になかったもんな。

 B級監督が本領を発揮しだしたらしい。

 そこそこのアクションとほどほどの濡れ場ってのは、この手の自主制作に近い企画には付きものだからな。

 色んな意味で安っぽい。

 あえてここまで無視していたが、新聞記者も王女も日本人、ロケ地は居住環境の結構悪くない街、一度はおいでの春日部&朝霞である。

「…………」

 作品内では、二人はヨーロッパの人で、場所はローマだって言い張るからさ。

「しっかし、またなんで、ホテルのラブなシーンだけは、こんなに気合入れてムーディなんだろうね?」

 部屋に二人が入って彼此三十分。

 タイトルにある牛肉の《ぎゅ》の字なんか、そりゃ《も~~》徹底的に出てきやしない。……軽蔑してくれていいぜ。飽きてきたんだ。

 延々と二人の退屈なラブトークが続いてやがる。

「……島田さん」

「うん? なんだい?」

 声はうっかりすると、聞き逃しそうなほど小さなものだったが、前方よりもサイドに集中力の偏っていた俺の耳は、しっかりと捉えた。

 どうでもいいけど気持ちいなぁ。

 洋子がときおりホントに不意打ちで、ぐずるみたいに頭をぐりぐりすのが、おじさんにはこれが意外なツボだったり。

 ネコに身体を貸すのは、これだからやめられない。

 それにこいつ、身体はちびっこいくせに、おっぱいは予想外にでかいんだなぁ。

 腕に心地よくむにむに当たってらっしゃる。

 意識は只今左寄り。

「男の人は、ああやって、その、二人になったら、女の人を、ホントに、口説いてるんやろか?」

「どうだろうね? 紅葉ちゃんはそういう経験ないの? モテるでしょ? 最近の高校生男子の方が、確実に俺より巧いと思うよ」

 謙虚な気持ちで言ったんですけど、おそらく、当たってるんだろうってのが、そこはかとなく悲しいね。

「……いっぺんもあらへん」

「そうなんだ。まったく青少年はなにしてんだか。見る眼がないのか度胸がないのか」

 島田誠さんにも、青春時代という名の経験があるからわかるけど、これはまず間違いなく両方だ。逃がした魚の大きさは後で知るのさ。

 だからいまは言っておこう。

「俺が同級生だったらほっとかないのに」

 でも朝の誠さんだったら、こっ恥ずかしくて、成人式をとっくに終えてるいまでも言えない。

 だけど今夜は調子に乗り過ぎてて、普段の自分がどこにいるのか、全然まったく完璧にわかりゃしないから言えちゃうんだね。

 酒なしでハイになれる自分が怖いぜ。

「ほんなら」

「あい? なに?」

「ほんならうちをいま、……口説いてみてくれますか?」

「え゛っ!?」

 どっからその声出してんだてめぇ。そんな素っ頓狂な声が俺の喉から飛び出た。

 意識は只今右寄り。

「あ!? あ、あの、や、れ、練習!! 練習ですよ勿論!! ほ、ホンキで口説けとか、そんななら嬉し、いや、そうでなくて――」

「……ああ、れ、練習、なのね。オーケーオーケー」

 はっきり言ってびびった。

 高校生相手でもこの手の台詞は、告白ってしたことあってもされたことないから、俺って人間はいちいちびびちゃうんだよなぁ。

「…………」

 って、まぁ、だから洒落だって洒落。ローマの牛肉と同じレベルだっての。

「そいじゃとりあえず、軽く肩でも組んじゃう?」

 画面の中の二人が方組んでたから、なんとなく、そうしなきゃいけないのかなって、あるがままに流されてみただけなんだけどね。

「は、はひ」

 お返事がいいからこのまま行っちゃおう。

「では」

 俺はすっと、できるだけ自然を装って手を廻すと、紅葉ちゃんの肩を、細心の注意を払いソフトに抱いた。

「…………」

 そういえばこの感触も懐かしい。

 考えたらこうやって女の肩を抱くのなんて、随分と久しぶりで、さらに言えば、こんなガチガチの肩は、それこそ十年ぶりかもしれん。

 何か言っても無駄なのはわかってるけど、あの台詞をちょっと言ってみたくなるな。

「大丈夫だから。俺に任せて力を抜いてごらん」

 語尾の《ごらん》におっさん臭さが含まれてるが、気負いもなく、そこそこナチュラルに言えたのではと思う。

「うっ、ううぅうう。……すいません、その……ごめん……なさい……」

 勿論そんなの逆効果の台詞でしかないわけで、紅葉ちゃんはパワーアップして身体を固くすると、ちびっとうるうる涙目で謝ってきた。

 イエス。

 エンドルフィンだかドーパミンだかアドレナリンだか知らんが、脳汁がびゅびゅっと出まくりだぜ。

「ふふふ。初めてなんだから仕方ないさ」

 おおっ!! 益々ノリノリだな俺。これからどうする俺? どうしちゃう俺? どうにかしちゃう俺? いくとこまでイッちゃう俺?

「…………」

 洋子の方をちらりと見る。

 良々。

 寝る子は育つ。すやすやと安らかな寝息を立てて、…………ねえじゃねぇかよ。

「…………」

「…………」

 そ~~っと薄目で窺おうとしていた洋子と、どんぴしゃのタイミングで目が合ってしまった。

「ごめん」

「べつに」

 こんなとき、どんな顔をしたらいいかわからないよ。

 傍弱無人の女子高生山本洋子さん(16)も、どうもこれは悪いことしたな、と思ったらしい。両手を合わせてポーズを取ってる。

 小首を子供みたいに傾げるのが、えらく可愛いかもしれん。

「…………」

 肩口で紅葉ちゃんを見ると、両手で顔を覆って、イヤんイヤんをしきりにくり返していた。

「そいじゃあ俺、今日はもう帰るわ。後はよろしくな、洋子」

「……チキンだ卑怯者だ駄目大人だ島田誠だ」

 ネコ少女の謂れのない、こともない罵詈雑言を浴びつつ、俺はそそくさと小走りで、素早く玄関へと逃亡する。

「ふん、また明日ね、誠」

「ま、また……日、島……さん……」

 耳に滑り込むように聴こえる洋子の声と、ぼそぼそと囁くような紅葉ちゃんの声に送られて、すこぶる機嫌良く俺の週末は始まった。

「明日もカレーかなぁ?」





[2293] 少女病 三話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:06



 俺がシャツの端を掴むと、これにはさすがに、少女は慌てて手を掴んだ。

「そ、そんな!? お願いや、し、島田さん、こ、これ以上は、これ以上は、ホンマに、ホンマに堪忍してぇや」

 至近距離。

 潤んだ瞳で見つめながら、ふるふると首を振って懇願する。

「ヨイではないかヨイではないか」

 でもそんな弱々しい抵抗では、今夜の俺は、いや、スイッチの入っちゃってるエロオヤジは、ぴくりとも、止まりませんよお嬢さん。

 そんな苛めて光線を出されては、牡生命体としてはむしろ燃えるね。

「あンっ!?」

 がばりと一気に捲り上げた。

「見んといて。……見んといてくだ…………さい、…………島田、…………さん」

 睫毛を震わせながら、羞恥に顔を背ける紅葉ちゃん。

 それとは逆に身を乗り出す俺。

 これといった飾り気の、まったくないブラだが、そんなものは一切いらないくらいに、その白さは堪らなく眼に眩しかった。

 良々。

 しかしこれはまた、物の見事に思ったとおり。

 洋子のには予想外に驚かされたが、紅葉ちゃんには予想通り驚かされたぜ。

「でかい」

 思うよりも先に、口から言葉が飛び出てやがる。

 巨乳と呼ばれる野卑な感じはない。

 だが、

 そのふんわり上品なふくらみにある谷間は、なにがナニとは言わないが、下品なものを、軽く挟んで隠せてしまえそうなほど深かった。

「…………」

 俺のが特別ビッグじゃないのを、勿論、差し引いてもだからな。

「うっうう」

 当然紅葉ちゃんの耳にも、俺の間抜けな呟きは聴こえて、ぎゅっと目を瞑り、小さく可愛く、子供みたいにイヤイヤをする。

 ぺちぺちと当たるポニーが気持ちい。

 乳房がサァッと恥じらいの色に染まるのが、今度は、絶対完璧間違いなくで色っぽかった。

 ごっくん。

 喉が大きくみっともなく鳴る。

 生唾を飲み込むなんて、随分と久しぶりの経験だった。

 その前はなんだったっけ? ……そうそう、無礼講って言葉に騙されて、酒の席でうっかり、上司のヅラ取っちゃったときだったな。

 頑張ってバイルダ~~オンてやったんだけど、誰一人として笑わなかったね。

「……まぁ、そんなんいいや」

 封印しときたい記憶を穿り返しても仕方ない。

 いまはただ紅葉ちゃんと、素敵な思い出を作ることに集中しよう。うんうん。そうしようそうしよう。

「くぅん!?」

 不意打ちの感覚に、少女の身体が跳ねる。

 肩を抱いていた手をするすると、こっそり降ろして、俺はティーシャツに突っ込むと、ブラの背中のホックに指先をかけた。

 刹那。

 島田誠さん(27)独身は、こんなんだけ、すこぶる付きで巧いのです。

 特技は綾取り。

 とにかく“ぱちんっ”と、小さく小気味いい音がして、まろやかに白く、ふんわりと大きなふくらみが、窮屈な戒めから解放された。

「グレィト」

 それだけでボリュームが、ゆさりと重たげに揺れて、一段も二段も増している。

「あ!? もう、……いや、……やわ」

 清純派の乙女の行動としては、そうしたのは極めて正しかった。ささっと紅葉ちゃんは、両腕を組んで、胸元を隠そうとする。

 しかしそんな程度で、平均を大きく上回る乳房を、とてもではないが隠し切れるわけがない。

 結果。

 乙女の恥じらいでぎゅっと、力を入れているのも仇になり、意図に反して谷間をより深いものにして、俺の熱すぎる視線を誘っていた。

 切れたね。

 乳房の奏でる(俺脳内)むにゅって音と同時に、ぶちんっと、残っていた理性が、二、三本まとめて切れた。

 男はみんなオオカミ。

 はぁはぁと、聞き苦しい荒い息を吐きながら、不安そうな顔で俺を見つめる少女へと、猛然と獣性丸出しで襲いかかる。

「も、紅葉~~~~~~~~~~っ!!」

 どこを触っても柔らかな身体を押し倒し、ブラを引き千切るように力任せに毟り取った。ふるるんと揺れる頂点、乳首の色はピン――。





「…………」

 って、とこまでの夢を見ましたとさ。

「やれやれ」

 髭を剃った顔を撫でる。色んなとこから苦情がきそうな夢だったぜ。

「しっかし」

 オナニー覚えたての中学生じゃねんだから。

 まだまだバイアグラに興味はないが、その必要も当然ないが、それにしても、今朝の我が息子のハッスルぶりは滅茶苦茶凄い。

 近年稀に見るくらいに、びんびんかちかち、立派なテントを張って勃起してる。

 うれしはずかし若返りだぜ。

「…………」

 はて?

 そんなヒットソングがあったような、なかったような、いまいち記憶は定かじゃないが、……まぁ、いまこの際はそれはどうでもいい。

 時計を見る。

「……九時か」

 休みだというのに、えらくまた早くに、目が覚めてしまった。続きが見れないかと、二度寝にも挑戦したが眠れない。

 ちらりと視線を壁に、202号室に走らせる。

「ふむ」

 昨日はまた明日と言われたが、朝から、それもいくらか親しくなったのは、それこそ昨日からなのに、訪ねて行くのはマズいかな。

 腹を撫でる。

 なんだか寝てる間に、精神エネルギーは大分使ったみたいで、昨晩カレーを食べたのに、腹はしっかり減っていた。

「朝飯でも買いに行くかね」

 ジーパンを穿いて、尻のポッケに仕舞っといた、小銭入れの中身を見る。

 じゃらりと唸る三百二十一円。

「パンだな」

 アレも手持ちの金額も中学生みたいなら、それらしく、久しぶりにヤキそばパンでも喰ってみるかと、俺は部屋の扉を開けて外に出た。

「おお、天気良いじゃない」

 雲一つない晴天。

 普段はだったら三文やるから、もっと寝かせてくれって感じだけど、偶にはこうして、早起きしてみるのも悪かないかも。

 ついでだから散歩でもしちゃうかな?

 と。

 まぁそんな感じの、さわやかな気分で持って、階段をてふてふと降りる。

「…………」

 202号室の扉が開いたりしねぇかなぁ、なんて未練がましいことを考えつつ、一度そっちを振り返って見たりなんかした。

 天岩戸のように、びっちり閉まって、少しも扉は開いてない。

「ちぇっ」

 勝手なもんなんだが、がっかり、とまではいかなくても、もやもやして、俺は再び前にと向き直る。

 するとそこへと、狙ったかのように、

「!?」

 きらりと網膜に襲い掛かってくる太陽光線。

 眠くてシバシバしてるところに、問答無用でムヒを塗られたように、俺は何故か懐かしい修学旅行の朝を思い出しながら目を閉じた。

 痛いほど眩しい。

「…………」

 しばらくして、といっても、精々二秒とか三秒だが、目蓋を開けると、階段の下に、女の子がむっとした顔で立っていた。

 紅葉ちゃんと同じくらいだろうか?

 すらりとした長身。

 緩やかにウェーブのかかった長い髪が、ふわっと肩にかかっていて、その娘の大人びた雰囲気もあって、モデルみたいな印象を受ける。

 服装はフリフリがいっぱいの、多分、噂に聞くゴスロリって奴だった。

 けれども外見のパラメーターが、ロリよりもセクシーに傾いてる少女には、はっきし言って似合ってない。

 あまりファッションセンスは良くなさそうだった。

 しかし、一通りこの少女を観察してみて、もっとも視線が集中してしまうのは、やぱっし、ここしかないだろうね。

「…………」

 広いおでこ。

 思わず目を細めて見てしまった。

 前髪をすぅっと、後ろに流してるせいもあるだろうが、それにしてもこれは見事におでこが広い。

 べつに生え際が後退しているわけではなく、単に顔の造作が小さめで、さらに下の方にコンパクトにまとまってるのもあるのだろうが、

いくら理屈で納得しようとも、おでこが広いというチャームポイントに変わりはない。

「…………」

 だが少女の方はそのポイントを、あまり、どうもチャームだとは考えてないみたいだった。

 露骨なまでに不躾な俺の熱視線が、どこに注がれてるか判明すると、《きっ》と、殺気を帯びたような視線で睨んでくる。

 そればかりかそのまま、ずんずんと階段を上がってきた。

「わっと!?」

「きゃっ!?」

 殴られるんじゃねぇかと、一瞬身構えてしまった俺が、思わずびびりの本能で後ろに下がると、真後ろにいた誰かにぶつかった。

「あ? すいませ、って、なんだ洋子か」

 こいつも悲鳴だけは、しっかりと可愛い乙女だな。……いつもこうなら、もっと可愛いのに。でもそれじゃ洋子じゃないか。

「なんだはないでしょ。おはよう、誠」

 足音をまったくさせず、ぴとりと、身体と身体がくっつくくらい接近していた洋子は、俺の背中から抜け出して、ゴスロリ少女を見る。

「まどかも、おはようさん。早かったじゃないの」

 手をにぎにぎさせて、すでに目の前にまで来ていた少女に、親しい間柄を感じさせて挨拶した。――要するに友だちだな。

「今日もおでこ、素晴らしく、ぴかりと輝いてるね」

 言いたいことが言える仲である。ああ、仲良き事は美しき哉。だから当然、言われた相手だって、言いたいことを好きに言う。

「あんたこそっ!! 今日もお目々ぱっちりね、この子ネコちゃん!!」

 どうやらこの娘、まどかって言ったっけ、悪口のセンスもないらしい。どっちかていうと、それは褒めてるんじゃなかろうか?

「…………」

 まぁ、それで本人が納得してるみたいだから、それはそれで、べつにツッコミを入れなくていいだろう。

 洋子もまどかちゃんも、一通り言って、気が済んだみたいだし。

「それじゃまどかも誠も、そろそろ朝ご飯にするから、とっとと来ちゃってくれる」

「ちょ、ちょっと待ってよ。洋子、この人は、……誰よ?」

 その疑問を持ったきみはとても正しい。

 ごもっとも。

 それは当たり前の話で、さわやかな休日の朝、友人を訪ねて行たらば、知らない男とご飯を食べるって、全然少しも意味わからん。

「昨日の晩に、縁が合って洋子と友だちになったんだよ。それで紅葉ちゃんとも仲良くなってね。カレーをご馳走になったんだ」

 って、これでも意味がまったくわからない。

 しかし、説明するんならば、もう少し言い方があるかもしれないが、大体、掻い摘んで言ちゃえば、こんなとこでいいはずだよなぁ。

「あたしと誠は、昨日の夜、電車の中で、友だちに、……なったんだよ、ね?」

「え? あ、ああ。そう……だよ」

 気のせいだろう。

 洋子が俺に望んだだろう言葉が、友だちではなかった気がするのは、自惚れに似た勘違いに決まっていた。

「ふ~~ん。へ~~。洋子の友だちねぇ」

 まどかちゃんはもしかして、目が悪いのかもしれない。

 これは飴かガムによるものだろうか。それとも少女特有のものだろうか。

 吹きかかる吐息は滅茶苦茶良い匂いがする。

 俺が行動力はあるが常識のない男なら、キスできるくらいに、リップでも塗っているのか、濡れてる鮮やかな桜色の唇は近かった。

「三対一なら変なこともできないか」

 類は友を呼ぶ。

 まどかちゃんは間違いなく、俺のシャツの背中をぎゅっと掴んでいる、山本洋子の友だちだった。





[2293] 少女病 四話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:07



 足立区ってのは感覚的には、すでに、東京都ではなく埼玉県である。

 約一時間。

 原宿まで行くのに、電車で掛かる時間だ。

「でも川を越えたか越えないかで、物価が全然違うんだよなぁ。家賃なんか一万は差があるし、利便性を考えたら詐欺だよこれは」

「……そうね」

 俺はどうでもいいけど、結構、どうでもよくない話題を振ったのだが、やはり応える少女の声は固い。

 また電車ががくんっと大きく揺れた。

「きゃっ!?」

 ちょっとでも距離を取ろうとしていた少女の身体が、すぐに俺のさして厚くもない胸板に、どどっと、元気溌剌にただいまする。

 御堂まどか。

 密着・ウィズ・満員電車。

 営団千代田線は、毎週毎週休みになるたびに、ホント地味に混むんだよね。

 一緒に乗ったはずの洋子と紅葉ちゃんは、黒山の人の波に呑まれて、キレイさっぱり影も形も見えやしない。

「平気? 苦しくない?」

「……ええ、大丈夫。平気、だから」

 このおでこのキュートな娘は、女の子にしては、わりと身長が高めなので、俺の肩口の辺りに、ちょうど頭がきていたりしていた。

「…………」

 鼻の穴がひくひくする。

 それでもすでにこうなってから、彼此二駅は堪えていたのだが、俺は結局我慢できず、すぅ~~と、肺一杯に空気を吸い込んでみた。

「……はぁ」

 甘くていい匂い。

 洋子や紅葉ちゃんの髪の毛からも、この甘く芳しい匂いはしたけれど、とてもシャンプーだけのものとは思えない。

 一人一人微妙に違うのもイカしてる。

 それが何の匂いかは、考えてみればよくわからないが、後付の人工ではなく、少女の身体が、本来持っている匂いかもしれなかった。

「…………」

 ヤバい。

 痴漢に間違えられないように、両手で吊り革を握っているが、構うもんかと抱きしめたくなる。

 うぅ~~、だが、しかし、ここは、死んでも我慢だ。

 世間の痴漢犯罪者に対する目は、凶悪な銀行強盗犯よりも厳しい。

 俺はどこかの芸能人や大学教授みたいに、さして登ってはいないものの、人生の山を、ごろごろと転がり落ちたくはない。

「ご、ごめんなさい」

「いえ、全然」

 でもいまなら彼らの気持ちが、わからなくはない、こともないかもかもしれん。

 まどかちゃんの吐息に、耳朶が心地良くくすぐられる。

 さらに胸にひたりと添えられた手のひら。

 それは乙女の恥じらいと、おそらく、警戒心から来るものだろうが、電車が揺れるたびに、すりすりと丁寧に優しく撫でられて……。

「うん? あの、どうかしたの?」

「ベツニナニモシテナイよ」

「……そう。なら、いいんだけど」

 俺は尻だけを情けなく、ぴょこんと、こっそり後ろに突き出していた。

 本人の意志とは何の関わりもなく、恐ろしい速さで、身体中の血液という血液が、ある一点に急激に集まってきてやがる。

 出会ってからまだ二時間と、ちょっとしか経ってない。

 ここで勃ってるなんてことがバレたら、第一印象も悪かったし、これはもう嫌われるのは決定的だ。

 そしてそれはすぐに、洋子や紅葉ちゃんにも、否が応でも波及するだろう。

 折角仲良くなった女子高生グループと、こんなんで、こんな毎朝、どこにでもあるような接触如きで、簡単にオサラバして堪るもんか。

「…………」

 いや、こんなオイシイ接触は、そうそうないけどね。

 しかし、まぁ、とりあえず、なんにしても、これ以上少女の清らかなオナカに、デンジャラスな奴を、近づけとくわけにもいかない。

「……くっ」

 窮屈な車内でこの間抜けな姿勢は、なかなかに腰にクルものがある。だがここは、なんとか頑張るしかあるまい。

 と。

 俺が心中で自業自得の悲壮な決意を固めたらば、

「ひゃっ!?」

 それに合わせるように、まどかちゃんが小さく声を上げて、やはりぴょこんと、俺へと、正確に言えば股間へと、腰を突き出してきた。

「うおっ!?」(これも小さい声です)

 ナイス反射でぎりぎり尻を引く。身体は完全にくの字になっていた。

「すいません」

 後ろの人に「ちっ」と、舌打ちされてしまったので、首だけで振り返って謝る。

 バーコードのおっさんだ。スーツ姿だから休日出勤なのだろう。ごくろうさまです。これでもう緊急回避は禁止になってしまった。

「どうしたの?」

 そろそろと細心の注意を払って、腰を定位置に戻しながら、おでこ、ではなく、顔を赤くしてるまどかちゃんに尋ねる。

「え? あ、あの、ち、う…………な、なんでも…………ない」

 まどかちゃんはなんでもあるような顔をして、ささっと俺から、逃げるように視線を逸らした。

「……あん?」

 しばらく《なんだぁ?》と観察していると、どうもちらちらと、盛んに後ろを気にしつつ身をよじっている。

 なるほどね。

 これで気づかないほどには、さすがに、俺は呆けてはいないし鈍くもない。

「…………」

 どんな野郎だっ!! 痴漢なんて最低だぜっ!! さわやかな休日の電車内で、そういうことするとは、俺には到底理解できねぇっ!!

 怒りに目を血走らせて、まどかちゃんの後ろを見る。

「ちっ」

 またしてもバーコードでやんの。

 俺と目が合うとわざとらしく、混んでるのに、スポーツ新聞でがさがさと、顔をすっぽり隠したことからも間違いない。

 痴漢はこいつだ。

 髪型にはべつに罪はないのだれど、さっき謝ったのが、ひどく無性に腹が立ってくる。

 しかし結果としては、その理不尽な感じが、普段なら取れないこと請け合いの、俺にしては非常に大胆な行動を取らせてくれた。

「へ? あ? きゃっ!?」

 吊り革から手を離し、まどかちゃんの肩を掴むと、身体を巻き込むように、抱きしめるように、強引に二人の位置を入れ替える。

「ちょ!? ち、ちょ、ちょ、ちょ~~」

 あっちこっちで《ちっちっちっ》の大合唱で迎えられつつ、人を掻き分け掻き分け、まどかちゃんを守れるよう壁際まで移動させた。

 親鳥が生まれたばかりの雛をそうするみたいに、後ろから覆い被さるように抱きすくめる。

 この娘には指の一本どころか、髪の毛の一本すらも触れさせんという、俺なりの気概を、周りに見せたつもりだった。

「…………」

 嘘です。

 この体勢になったのは、確かに最初はそのつもりだったけど、まどかちゃんの身体から、離れようと思ったなら全然離れられた。

 ここまで目立てしまえば、手を出す奴なんて、まずいないんだから。

 だが、

「…………」

 それでもこの身体から離れようとは、ちっとばかしも、俺は思わなかったね。

 漫画とかによくあるじゃない? 先に動いたら負けだって奴。いままさに、俺とまどかちゃんが、そのものでズバリそれだ。

「…………」

「…………」

 二人の間に言葉なんていらない。俺たちはわかりあえてる。

 後ろから覆い被さるように、ってことは前屈みになったってことで、ぴったりと、ジャストミートで素晴らしくフィットしてるんだ。

 勃起。

 お尻。

 谷間。

 俺もさすがにびっくりしちゃったけど、こんなことってのも、あるとこにはあるもんなんだね。

「…………」

「…………」

 スペシャルに勃起がお尻の谷間にハマってた。

 スカートの布地如きなんのそので、柔らかな肉の感触を感じながら、どっくんどっくんと、雄々しくも力強く脈打ってる。

 勿論、それがなにかわからないほど、今時の女子高生、まどかちゃんだって初心じゃあるまい。

 とはいえ、

「…………」

「…………」

 いつまでもこのサイレントな放置プレイを、最長で電車を降りるまで、延々と続けてるわけにも、やはりこれはいかないだろう。

 俺は一応大人で男だし。

「わざとじゃないんだよ」

 とても大人で男らしい台詞でしょ? 

 人間ってこういうときに底が見えるんだね。その辺りを踏まえつつ、まどかちゃんの台詞を聞いてくれ。

「……ええ、わかってる」

 短い。

 だけどその簡潔な言葉の中に、十歳以上も年上なのに、ところ構わず勃起してるような男を、《許してあげちゃう》て気持ちが見える。

 だったらいいなって願望込みだけど、多分おそらくきっと、大人なまどかちゃんはそうに決まってた。

 窓ガラスに映る顔。

 切なげに睫毛を震わせながら、羞恥の色に赤く染めてるのが、背筋がぞくりとするほど、裏筋がびくんっとするほどスーパーセクシー。
 
「…………」

 ずっとずっとこの電車、このまま走ってりゃいいのに…………。そう願った二分後に、電車は駅に着きやがった。

「あっ? いたいた」

 はぐれてた洋子と紅葉ちゃんは、一緒に乗ったのに、意外と遠くにいたみたいで、二つ隣の乗車口から、仲良く揃って出てくる。

 二人を見てまどかちゃんが、ささっと俺から、あからさまに不自然な距離を取った。

「うん? どったのさまどか? 誠にエロいことでもされたの?」

「お黙り女子高生」

 いくらなんでも、鋭すぎるだろきみ。どんだけお前は俺のこと知ってんだよ。一度じっくりその辺話し合いたいね。

「べつに、……心配するようなこと、……なんにもされてないよ」

「ほら見ろ」

 これで俺はまどかちゃんに借り一つだった。

「そんなの当たり前でしょ。自慢げに言わないでくれる。そいじゃまずはどこに行こか?」

 何故か非常に面白くなさそうな顔で、気のせいか俺を一瞬、ぎろりと睨んでから、洋子は明治神宮前をぐるりと見回す。

 それに釣られて俺もぐるりと首を振ってみた。

「…………」

 うわぁ~~。気持ち悪いくらいに、くそガキばっかでやんの。

 まぁ、それもそのはずか。渋谷・原宿ってのは、煌く十代思春期ど真ん中の、彼ら彼女ら、穢れなき少年少女の街だからな。

 ウンコ座りしてるのがいっぱいいる。

「ゲーセンでもいく?」

「そんなとこ行きたいのはあんただけよ。それにそんなんじゃ、いつもと変わんないでしょ」

「はんっ。ならそう言うまどかは、一体じゃあ、どこにいきたいわけよ?」

「…………」

 どうでもいいんだけど、《はんっ》て肩を大袈裟に竦めるのが、妙にアメリカナイズされてないか洋子?

「え~~っとねぇ」

「先にあらかじめ言っとくけど、アニメ関係は一切合切で却下だかんね。ここは千代田区外神田秋葉原じゃないんだから」

「あたしが行ってるのは豊島区池袋なのっ!!」

 いいよ。どっちでも。

「紅葉ちゃんにはどっか、行きたいとことかないの?」

 騒がしい二人とは違って、きょろきょろとしきりにしているが、さっきからずっと大人しい紅葉ちゃんに俺は訊いてみる。

「え? うちが行きたいとこ? あ~~、と、そやなぁ。……ボーリングとかはどやろ?」

「それにしよう」

 即決。

 ゲーセンやアニメショップとか行くよりは絶対いい。

 金もそんなにかかんないし。

「ゲーセンに行くくらいならいいわ」

「アニメショップ行くよりはいいか」

 喚いていた二人にも、妥協の結果とはいえ、特に反対はなさそうだ。

「ちょっいとばかり歩ったら、なんぞ、小洒落たボーリング場がなかったっけ?」

「あったあった」

「やたらとムーディな、カップル以外は来るんじゃねぇよって感じの、どういうわけだかミラーボールのあるあそこでしょ?」


 三人が知ってる場所は俺も知っている。

 スキップジャック。

 色んな人から聞いた色んな評判からすると、すでに、開店とほぼ同時に、余命三年と診断された、二年半のボーリング場を目指す。

 着くとその儚い命を表すように、樫鮪の名を持つ店内は、悲しくなるくらいがら~~んっとしていた。

「空いてていいけどね」

 さて。

「とりあえず四人だから、チーム対戦にしようよ。誠はスコアーどのくらい? ちなみにまどかは80切るよ」

「あたしのスコアーはいいのっ!!」

「……ああ、それじゃあ俺が、まどかちゃんと組もう」

 洋子も紅葉ちゃんも上手そうではあるが、女の子同士でそのハンデはキツいだろう。

 それに借りを返すチャンスが、早くも訪れたわけだし、ここは一発、まどかちゃんに良いとこ見せて、点数を稼ぐのも悪くはない。

 なんて。

 都合の良いこと考えていたわけだが、お汁粉のようにその考えは甘かった。

「ある意味凄い」

 とてとてと歩いて、ぼとりと落とした玉が、ピン手前で、どんな物理法則が働いているのか、ぎゅるりと急激に曲がって避ける。

 バレル・ロールと命名したい。

 まどかちゃんは予想を遥かに上回る、高度なガーター投下技術を持っていた。

 さらに。

「イェ~~ッ!! あたしってば天才かもよっ!!」

「ほんまや。洋子ちゃん、連続ターキーやでっ!!」

 対戦チームはこちらと完全に次元の違うことを言ってやがる。

 洋子が上手いだろうというのは、連続ターキーとかの、はっちゃけたギャグはともかく、このくらい下手したらやるかもの想定内。

「これで紅葉を抜いたかな?」

「うんにゃ。まだあと6ピンやけど、うちのほうが勝っとるみたいやね」

 だけど紅葉ちゃんまで、洋子と負けず劣らずのタメ張るくらい上手いというのは、いくらなんでも想定外だった。

「うち、こういう身体を使ったゲームは、わりかし得意なんや」

 できればもっと早く言ってね。

 そんなわけで途中からは、二人には勝手に個人戦でゲームしてもらって、俺はまどかちゃんを隣のレーンで個人レッスンだ。

「…………」

 個人レッスンってなんとなく響きがエロい。…………いや、ちゃんと真面目にやりますよ?

「どうしてだか投げても、真っ直ぐいかないのよねぇ」

「それって結構、難しいんだけどね。とりあえず玉を持ってみてよ。どんなスポーツも、フォームさえ良かったらそこそこ楽しめる」

「んしょっと。こんな感じ、……かな?」

 まどかちゃんはスチャッと、10ポンドの玉を両手で構える。

「ああ」

 こうして改めてじっくり、構えを見てみると、どうしてだか投げても、玉が真っ直ぐいかない理由、その一端があっさりとわかった。

「人差し指は使わないんだよ。穴に入れるには中指と薬指」

「へ? そうなの?」

「それで一度やってみな。投げるんじゃなくて、玉から手を離すとか、置きにいくとか、そんな感じでやると大分違うよ」

「う、うん」

 返事が良いね。

 ちょっと緊張気味にアドレス、ってほど様にはなってないが、まどかちゃんは構えると、二、三歩ちょこちょこ歩いてリリース。

 瞬間、

「!?」

 まどかちゃんが勢いよく振り返る。俺はにやりと笑って親指を立てた。

 ピンはわずかに二本しか倒れてない。

 だが、投げた本人であるまどかちゃんには、いままでとの違いが、はっきりとわかっただろう。投げてる玉の質の変化に。

「…………」

 しかしこうやって説明してると、何か滅茶苦茶凄いことしてる気になるから、不思議な感じだよね。

「今度はもっと腕の振りに注意してみよう」

「はいっ!!」

「お、オーケー」

 返事が良すぎてびびった。

 まどかちゃんは再び、スチャッと玉を構える。呑み込みは悪くない娘なのかもしれない。さっきよりも、すでに様になっていた。

 そりゃ隣のレーンの二人とは、比較にすらならない。

 だけれど最初とは格段の進歩で、指先からすぅっと玉が、音もなくピンへ向かって放たれる。

 がしゃんっ!!

「あっ!? う、……嘘……でしょ?」

 嘘なんかじゃない。白い十本のピンがキレイに倒れていた。

「まどかちゃん」

「え? あ?」

 俺はストライク初体験少女へと、両の手のひらを晒して上げる。

 この恒例の賞賛する儀式にしても、勿論、まどかちゃんは迎えたことはあっても、こうして迎えられるのは初体験だろう。

「あは、あははは、……えっと、い、いくよ?」

「オーケー。ドンと来い」

 照れくさそうにハニカミながら、まどかちゃんはゆっくりと手を上げると、

「い、イェ~~ッ!!」

 思いっきりバシンッと、手のひらを叩きつけた。

 じ~~んと伝わってくる痛みが、ひどく心地よくて、なんだか堪らなく胸躍って気持ちがいい。――いいね。こういう休日。

「なぜだろう? ハイスコアーの好ゲームをしてるのに、イマイチ面白くないのは?」

「なんでやろ? ハイスコアーの好ゲームをしとるのに、イマイチ面白うないんは?」

 声に後ろを振り返ると、洋子と紅葉ちゃんが、ささっと、不自然で不機嫌に、俺から目を慌てたように逸らした。





[2293] 少女病 五話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:10



 洋子のちんまりした背中を先頭に、夕暮れに染められつつある、足立区千住の街をてふてふと歩く。

「ねぇコーチ」

「なに? まどかちゃん」

 右側にある高い壁を、ほけ~~っと見ていた俺は、今日付けで弟子に(強引に)なった少女に、その呆けた顔のままで振り返った。

 美しい。

 おでこで感じる夕焼けの紅さも、それはそれで、結構、なかなかに乙なもんである。

「120台が出せる日、あたしにも、ちゃんと来るかなぁ?」

「そんなのすぐさ。次に行ったときには、きっと出せるようになってるよ」

 随分とまた俺にしては、はっきりと断言しちゃってるけど、べつにこれは、その場限りの、安請け合いってわけじゃない。

 訊いてみればまどかちゃん。

 ボーリングをしたのは今日で三回目だとか。

 しかも見様見真似でやってたみたいで、それじゃ上手くなるわけもなかったが、まともに教えれば、この娘の運動神経は悪くない。

 アベレージ120くらいは、目指すべき数字ですらないだろう。

「そっか。えへへっ。そっかそっか」

「島田さんに教えてもらえば、まどかちゃんやったら、難しいことなんかあらへんよ」

「でへへっ。紅葉もやっぱしそう思う?」

 良かった良かった。

 まぁ、俺が教えたらどうこうって件はともかく、一人の少女に自信を与えることができたんだから、ここはそういうことにしておこう。

 それよりもいまはこいつだ。

 早足になって隣に並ぶと、上半身を折って顔を覗き込む。

「洋子」

「…………」

「洋子」

「…………」

「洋子」

「…………」

「おい」

「…………」

「なぁちょいと、洋子さんや。ホントにどうしたんだよ? 顔が異常に赤――」

「赤くないっ!!」

 林檎みたいに鮮やかに真っ赤々な色で、顔を口にして洋子は、やっと俺のほうを、凄い速さでぐりんっと向いて怒鳴った。

「なにをさっきからそんなに、ちっちゃい子供みたいに怒ってんだよ?」

「……怒ってない」

 と。

 言いながら山本洋子さん(16)は、むすっとした顔で、とても大人な対応をしている俺から、ぷいっとそっぽを向いてしまう。

「…………」

 みたいじゃない。これじゃそのまんま、ちっちゃい子供だ。

「…………」

 こいつってばこんなに、ガキっぽい奴だったけ? …………あれかな? これが女は変わるってやつなのですか?

 十六歳。

 女子高生。

「…………」

 うん。

 寝れば育つて年頃だからな。

 まぁ、そりゃ大人から子供になっちゃうのが、果たして育つてことなのかどうかは、非常にその辺のあたり疑問ではあるけれども。
 羨ましいね。

 ホントにもう愛い奴愛い奴。

「……なにしてんの?」

「ああ、うん、まあな」

 だからついつい気まぐれなネコ娘の頭を、なでなでと撫でたりなんかして。背の高さもこうするのにちょうどいいんだよなぁ。

 かいぐりかいぐり。

 ちんまくて可愛いなぁ。

 膝に乗っけたい。

 願わくばこのまま時間よ止まれ。

 頼むぜ洋子。

 これ以上は是非とも大きくなってくれるなよ。そのままのチビっちゃいままでいてください。

「子供扱いしないでよ」

 でもチビっ娘はぱしんっと、そんな俺の願いも知らずに、頭に置かれた手を、鬱陶しそうな顔で邪険に払いのける。

 顔の色はわざわざ言うまでもない。

 だけど映してる表情は、本当に、心底から不機嫌そうだった。

「子供扱いしないでよ」

 その台詞が恥ずかしげもなく出てくるのが、まさに子供だという証明なのだが、勿論、俺はその言の葉を口になどはしない。

 知ってるから。

 それを人に指摘されれば、大人に指摘されれば、どれだけ惨めか、俺は自らの経験で知っている。

「…………」

 しかし、まいったね。ホントに可愛い奴だよお前は。

 昼間もそんな気持ちになったんだけど、それとはいくらか違う感じで、無性に小さな小さな、折れそうな身体を抱きしめたくなる。

 儚い切ない焦がされたい。

 ついでに《攫いたい》も入れて、未成年者略取上等走って逃げたくなった。

「脱いだら凄いんだから」

「……アホかい」

 でも俺は何とかまだいまのところ、道を踏み外すことは、どうやらぎりぎりのぎりでなさそうである。

 どこでモードが切り替わったのか教えてほしい。

 ほっと心中で胸を撫で下ろしたのを、まるで見透かしたように、洋子がにやりと、あの小悪魔ちっくな微笑を浮かべてる。

 ええい忌々しい。

「…………」

 でもこっちのモードも捨てがたいと思ってる俺は、確実に変な病気に、さほど嫌じゃなく侵されてるうえに、完璧に真性のドMだった。

 ちょっと死にたい。

 時と場所を選ばない股間の奴が、ぴくりと、少女の笑顔にアンタッチャブルで反応している。

「少し早く着きすぎたかな?」

 声の感じがさっきよりも全然軽い。

 洋子の機嫌はいつの間にか、何か知らんうちに直ってた。

 良々。

「しかし……」

 門を仰ぎ見る。仰ぎ見る、だぜ? どんな大きさやねん。これが人様のお家だというんだから笑ってしまう。


「おっ!? ……え? って……マジでせうか?」

 だがその家の真に笑ってしまうポイントは、門の大きさ、敷地の大きさなどではなく、やはりこちらも馬鹿デカい表札の方だった。

 名字。

 日本人はイタリア人なみに、姓に対して誇りのある民族だから、そこを面白がるってのはどうかとも思うけど……。

 やっぱりこの名字は笑うしかない。

 名字。

 紅葉ちゃんの松明屋や、まどかちゃんの御堂だって、それはそれでなかなかだが、この三文字には到底太刀打ちできないだろう。

 山本や島田は当然だが論外。

 名字。

 これと似た傾向のある姓の持ち主は、邪鬼様と光の二名しか、俺はいまのところその存在を知らない。

「これはもしかしてもしかすると? ……白鳳院、て書いてあるのか?」

「もしかしてもしかしなくても、そう書いてあるよ」

 まどかちゃんと紅葉ちゃんが追いついてきたのを待って、洋子は古めかしい門の脇にある通用口、そこにあるインターホンを押した。

「友だちはお嬢様だったりするわけ?」

 少なくとも、この家に住んどいて、庶民ってことはないよな。

 中流家庭の下。

 そこですくすく育った俺が言うんだから間違いない。

「へ? お嬢様? 綾乃ちゃんがかいな? ……う~~ん。このデカい家だけを見ると、そりゃあ確かにそうなんやけど」

「でも結構抜けてるとこがあるから、そこがぽいって言えば、まぁ、ぽいんじゃないかな?」

 なるほど。

 高飛車な高慢チキ系ではなく、ほんわかボケボケ系なわけね。

「会えばわかるって。行くよみんな」

 中から開けてもらったのか、来い来いっと、通用口を押しながら洋子が手招きする。オートで開錠してるみたいで他に人はいなかった。

「いま英美さんに訊いたんだけど、綾乃はまだ道場で稽古中だってさ」

 さすがはお嬢様。

 押さえるところは押さえてるみたいで、華道か茶道かわからんが、なにか、それらに類するものでもやっているらしい。

「二、三十分は掛かるってさ」

 ああ、それじゃその前に、ちゃんと大人として、行っておかなきゃいけない場所に、ここはいまのうちに行っておくとしようか。

「トイレどこだ?」

 敏感な牡のスキンが、元気にパンツをスルーしたもんだから、ジーパンの金具にコツコツ当たっていて、ちょっとだけ非常に気になる。

 何かむずむずしていた。

 一昨日剥けたばかりの中学生じゃあるまいし、痛いってことはないけど、できれば収まりのいい位置に直しておきたい。

「あれ? 誠、トイレ行きたいの?」

「そう言ったろ」

 腕を組んでこれみよがしに《ふふん》と、いっそう小悪魔ちっくに微笑んでいる洋子は、意味も根拠もないがとにかく偉そうだった。

「子供じゃないんだから、ちゃんと行っておかないとね」

 どうもさっきの仕返しらしい。

 子供じゃないからこそ、いまはトイレに猛烈に行きたいのだが、まぁ、そんなのどっちでもこの際はどうでもいいや。

「あれだよ」

「あれか?」

 一応確認。

「あれだよ」

「すげぇな」

 そして驚愕。

 ちんまいガキんちょの指差した先を見ると、公衆、では当然ないだろうが、どう見てもそうとしか見えない建物が立っている。

 家の庭にトイレがあって、男女の区別があるってのも、これは結構、羨ましくはないが新鮮だ。

「そいじゃ行ってくる」

「誠、終わったらしっかり手を洗うんですよ。迷子にはならないようにね」

「言っとれ」

 ちこっとでも弱みを見せたら、笠にかかって口撃してくるネコ娘の声を背中にして、いそいそと俺は小走りになってトイレへと向かう。

 角を折れると、女子高生三人組の姿は見えなくなった。

 トイレは管理が行き届いているのか、床に寝っ転がっても平気、ではないが、それぐらいに清潔である。

 俺は個室の鍵を閉めると、不浄とは言いたくないが、清潔とはとても言えないブツを、ズボンから出していつもの定位置に直した。

「ここが一番落ち着くな」

 旅行から自宅に帰って来たみたいな台詞を呟くと、ハンカチあったけとポッケを探りながら、個室の扉をがちゃりと普通に開ける。

 瞬間、

「!?」

 またびっくりした。

「お? 何だ? 誰だきみは?」

 変なおじさんと答えるほどには、俺はおじさんじゃないし、そんなおじさんギャグは死んでも言いたくない。

「…………」

 大体から用を足しながら、首だけで振り返ってる目の前のおっさんの方が、俺なんかよりも問答無用で絶対に変だ。

 袴を穿いている。

 そっか袴穿いてるときってそうするんだぁ、と、妙なところで感心しながら、頭から爪先までを、じろじろと観察させてもらった。

「うん? もしかして入門者かね?」

 しかしこのおっさん、顔も身体も、そしてなによりその雰囲気も、口調こそ紳士で丁寧だが、とにかく滅茶苦茶に厳つい。

 映画でしか観たことないけど野武士みたいだ。

 やはり嗅いだことは一度もないけど、戦場の空気がぷんぷんと出ている。

 そして下の袴ばかりを気にしていたが、着ている上の道着は、空手とも柔道とも弱冠違っていて、おそらくは合気道のものだろうか?

「英美さんからは何も聞いてないけど、今日は入門者の見学とかはあったかなぁ?」

 身体ごと振り返ったその胸には、小さくはない紅い血の染みが、鮮やかな大輪の華を咲かせている。

「…………」

 お家に帰りたい。

「まぁいいか。それじゃこっちだ。今日は綾乃お嬢様のご友人を呼んで、鍋をやるそうだから、いつもより終わりが早いので急がないと」

「おっとと!?」

 武士であるおっさんからしてみれば、大して力を入れてはいないんだろう。

 だが身長は同じくらいなのに、腕を掴まれた俺はぐいぐいと、何らの抵抗もできずに、トイレから連れ去られようとしていた。

「よ、洋――」

 子と叫ぼうとして、寸でで思いとどまる。

 こんなんで情けなく助けを求めたら、あのドSのネコ娘に、後で何を言われるかわかったもんじゃない。

 したり顔が目に浮かぶぜ。

 それにどこに連れて行かれるかはさっぱりわからんが、おっさんはなんせ武士だし、いきなり獲って食われるということはないだろう。

 てなわけで。

 巧い具合に洋子たちの死角を通って、たいそう立派な道場へと、俺は捕まった宇宙人の気分で連れて行かれた。

「じゃあ、その辺に適当に座って、見学してるといいよ」

「……どうも」

 畳張りの道場の隅で、居住まいをきっちりと正して、やり過ぎなくらいびしっと正座する。

 ここで胡坐を掻く度胸はない。

「…………」

 どうやら俺を捕獲したおっさんが、別段、特異なわけではなかったみたいだ。

「野武士軍団現る」

 十数人の荒れ狂う益荒男たち。

 敷居を跨ぐ前からすでに、むあっと、男ではなく、漢の体臭が、顔を顰めないよう必死になるほど、むんむんと濃厚に臭っていた。

 学生時代の部室を、治外法権の憩いの場を、否が応でも思い出す。

「…………」

 物凄く懐かしいけど、あんまりにも鮮明に思い出すと、ちょっと気持ち悪くなってくるな。

「…………」

 ここは精神の口直しをするとしよう。

「次の方どうぞ」

 凛とした涼やかな声。

 この場においてはひどく場違いなようだが、武士たちの輪に囲まれた少女の声は、完全に道場の空気を支配していた。

「では。一手ご指南願います」

 対するのは野太い声。

 そう言ってすくっと立ち上がったのは、やや緊張している面持ちの、俺をここまで連れてきた、記念すべき武士一号のおっさんである。

 少女が小さくこくりと頷くと、両者は二メートルほど離れて相対した。

「…………」

 こうして比べて見るとよくわかる。

 少女の身長は洋子と比べれば、まぁ高いが、それでもこの歳の平均身長が、あるかないか、ぎりぎりといったところだ。

 要するにちっこい。

 ゴリラみたいな顔したおっさんとでは、すでに視覚的に、可憐な少女は危険といっても過言ではないだろう。
 多分。

 しかし少女は怯えた風もなくにこにこと、

「それでは、……始めっ!!」

 の、

 合図が掛かっても、変わらず人懐っこい笑みを浮かべていた。勿論そこには対峙してる相手を、馬鹿にした感じは微塵もない。

 どころか、

「いつでもいいですよ」
 
 動きやすいよう後ろで束ねた髪を、小首を傾げて揺らすのが可愛らしかった。

 勿論、そう思ったのは俺だけじゃないみたいで、相対してるゴツいおっさんの顔でさえも、一瞬だけだがにやけそうになってやがる。

「はっ!? お、おうっ!!」

 まぁ、さすがにすぐ表情を引き締めたが、取って付けたような素振りは、同じオトコとして、非常におっさんに親近感が湧いた。

 オトコってのはとてつもなく、馬鹿なイキモノなんだね。

「せいやぁ!!」

 そんなわけでとりあえず、それを誤魔化すかのような、気合の入ったおっさんの先制攻撃である。

「えっ!?」

 存在を悟られぬよう慎ましやかに、深窓の令嬢のように座っていたのだが、俺は思わず身を乗り出して声を上げてしまった。

 驚愕。

 合気道だと勝手に決めつけていたが、どうやら、確実にそうじゃないみたいである。

 袴を穿いてるとは、まったく感じさせないほどスムーズに、おっさんは少女の見目麗しい顔面に向けて、高々と脛毛のある脚を上げた。

 だがさらに、

「うぉ!?」

 驚愕。

 掛け声を上げるおっさん以外は、誰一人として口を開かない静かすぎる道場には、俺が一人で騒いでる声がえらく目立っちゃってる。

 まさに紙一重だった。

 漫画の世界だけだと思っていた最小の動きで、少女は蹴りをかわしたが、周囲にいる誰一人として驚いてない。

 蹴りを放ったおっさんですらも、それは例外ではなかった。

 内心はどうか知らないが、外見からは、まったく慌てた様子もなく、極めて落ち着いた動きで、素早く距離を取って元の位置に戻る。

「ふぅ~~」

 何もしていない俺が、どうしてだか、安堵の息を吐いた。

 この家に来てからというもの、五分に一回はこうやって驚愕してる気がして、何だか何も確実にしてないのにすげえ疲れる。

「…………」

 けれど二人からは片時も目が離せない。

 これが真剣勝負の緊張感なのか、膠着状態から、今度はじりじり間合いを詰めだすおっさんの、裂帛の気合が俺にもわかるようだった。

 と。

「!?」

 いきなり少女が俺に、くりんっと首を傾げて微笑む。

 驚愕。

 俺の胸の奥がどきんっと高鳴った刹那、おっさんが胸をどこんっと掌で突かれて、高々と壁に向かってスローで吹っ飛んでいた。

 勝負あり。

「す、すげぇ」

 しか、すぐには言葉が出てこない。

 後で解説を受けたからわかったんだけど、誘いに乗っておっさんが踏み出そうとしたところを、先んじて懐に飛び込んでのカウンター。

 当然だがそれは言葉ほど、簡単ではないのだろうけど。

 どれほどの高みの技なのかも、素人にはまるでわかりはしない、達人のみに可能な超巧絶技だった。

「あの、失礼ですが、初めての方ですか?」

 少女が今度は刹那ではなく、じ~~っと俺を見ながら、にっこりと天使みたいに清純可憐に微笑んでる。

 どうなってもいいから抱きしめたいぜ。

 ああ、でもこんな気持ちで、世の中の金のあるおじさまも、金のないおじさまも、援助交際ってドツボに嵌っていくんだろうなぁ。

「…………」

 ちらっと見ると、その成れの果てのように、さっき吹っ飛んだおっさんが、周りの野武士にわらわらと快方されていた。

 よろよろはしているが、一応、自分の足で立ち上がっている。

「うん? ああ、大丈夫ですよ。今日ここにいるのは、皆さん高弟の方々ですし、でなければいくらなんでも、あんな技は仕掛けません」

「……そうですか」

 なんだろうこの話の流れ? 美少女とのトークは臨むところだが、物凄く嫌な予感がする。

「それではどうぞ。お相手いたします」

「……そうですか」

 できればこの美少女とは、もっと違う形で出会いたかった。

 悪意がこれっぽっちもない眼で、《ラッキーだぞきみぃ》って感じで俺を見てる野武士軍団が、無言のプレッシャーをかけてくる。

「…………」

 しずしずと仕方なしに、刑場に引き出される罪人の気持ちで、俺はドナドナを心で熱唱しつつ少女の前に立った。

「…………一手ご指南、…………願い…………ます」

「はい」

 心地いい返事と一緒にすっと、少女が身体を寄せてくる。――盛ってんなぁ俺。今日一日で何回、少女を抱きしめたいと思ってんだか。

「それでは当て身は一切なしということで。最初はわたしの道衣の、好きなところを掴んでいただいて構いません」

「え? 好きなとこ?」

 道衣の胸の合わせ目を見ちゃった俺は、とことん馬鹿でエロなんだろうね。

 それをやったら、HBの鉛筆を折るよりも確実に、ここから五体満足生きては帰れないだろう。

「あ、じゃあ、ここと、ここで」

 学生時代に柔道の授業で、ちょっとだけだがやったときは、首の後ろと袖を持てば、かなり圧倒的に有利と教わったような。

「そこでいいですか?」

「いいです」

「本当にいいですか?」

「ああ、……ホントに、いいです」

 少女がくすっと、俺にだけ聴こえるように、小さく笑った気がする。

「わかりました。では……」

 野武士の一人に少女は頷いた。

「始めっ!!」

 ぱたん。

「……あれ?」

 時間を省略したかのようである。開始の声と同時に、俺は畳の上に寝ていた。でも、不思議そうな声を発したのは俺ではない。

「…………」

 ゆっくりと見上げると、豆鉄砲を食らったような少女と、ばっちりくっきりと目が合った。

 投げられても道衣はしっかりと握っていたみたいで、下がさらしじゃないのは残念だが、シャツから覗くブラの肩紐もなかなかである。

 ミリ単位でこっそり生地を引っ張ってる自分がいじらしい。

 でもこの娘でも頑張れば、努力すれば、精一杯やれば、何とかあと少しで乳房、ってほどはないみたいだけど見えそう。

「あのさ、どうしたの?」

 気づいたけど、ここまできてやっと、俺は少女とタメ口をきいた。

「こんなのは初めてです」

 相変わらず少女はきょとんとした顔をしている。

 いまさらもう、ああだこうだと言う必要もないだろうが、こんな顔も、いや、ぶっちゃけ美少女は、どんな顔をしてても可愛いね。

 ってか、きょとんとした顔は嫌いじゃ、……いや、正直、かなり俺は好物です。

「こんなのは初めてです」

 余程気にかかるのか、少女は同じ台詞を、きょとんとした顔を崩さず、そのままの姿勢でもう一度言った。

「なに……が?」

 どれだけ稽古してたのか知らないけど、滑らかな肌を流れる汗が、仄かに色っぽいと感じながら、少女の囁く言葉の理由を訊いてみる。

 でも明かされる前に、

「な~~にが、なに……が、だっ!!」

「はぅっ!?」

 密かに勃起し始めていた股間を、ぐりっと素足で踏んづけられた。

 こんなことをしやがるのが誰だかは、勿論、そいつの顔を見るまでもなくわかっている。新しい世界が見えたらどうする気だ。

「あら? いらっしゃいませ、洋子さん」

「うん。お邪魔して、……わっ!? えっ? あっ!? わわ、あ? い、いや、その、お、おお、お邪魔して、……る、るるよ綾乃」

 洋子が禁止された野球の二段モーションみたいに、股間をぐりっと踏んでいたおみ足を、はしたなくもじたばたと上げ下げする。

「…………」

 俺のいまの体勢ローアングル。

 パンツは縞々からライトイエローに変わっていた。

 お泊り着替えは持ってたらしい。

 洋子もナニを踏んでいるか、俺のナニがどういう常態なのか、やっと少しだけ、経験に乏しい知識が追いついて気づいたみたいである。

「…………」

 恥ずかしいような

 困ってるたような

 怒っているような

 そんな色んな感情をごちゃ混ぜにしながら、口を金魚みたいにパクパクとしてる洋子も、歳相応にキュートで可愛らしかった。

「俺、こいつの友だちになった島田。よろしくね、白鳳院綾乃ちゃん」

「ああ、あなたが。洋子さんから電話で、お話だけは窺ってました。こちらこそですよ、島田誠さん」

 またまたにっこりと微笑む綾乃ちゃんの邪気のない笑顔と、汚れた眼には、眩しいばかりの清らかな純白のブラジャーのフリル。

「…………」

 人間ってのは失敗をくり返して、大きく強くなっていくらしい。

 その説教じみた話が本当かどうかは、俺にはわからないけど、少しだけいまぎゅんぎゅんと、大きく強くたくましくなれた気がする。

「どわぁ!?」

 洋子が声を上げて目を逸らすのと、俺が内股になるのは同時だった。





[2293] 少女病 六話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:11



 酒は人類の友。

「おっとと」

 そりゃまぁ、あちらがどう思ってるかまでは、とんと知る由もないが、いまのところは俺から、この良縁を断ち切るつもりは毛頭ない。

 アルコール最高。

 ましてや美少女からお酌されちゃえば、得意がって呑んでる高校生みたいに、これはいくらだってイケちゃうね。

 ビールだろうが日本酒だろうが焼酎だろうがお構いなし。

 多少、まだある緊張感も手伝ってか、酒がどんどんと、それこそ水みたいな感覚で、すーーっと気持ちよく喉を滑り落ちていく。

 もう自分がなにを呑んでんのか、キレイさっぱりとわかりませんな。


「ぷはぁ」

 美味い。文句なんてあるわけもなく美味い。

「…………」

 だけれど、しかし、でも、まぁ、それにしても、なんですか、その――

「うぷっ」

 周りにいる野武士軍団と、同じペースで呑んでしまったのは、こんなの後の祭りもいいとこだが、あきらかに失敗だったかもしれない。

 それなりに強いつもりでいたけれど、この酒豪どもは一般人と桁が違う。

 相撲取りが優勝したとき呑んでるみたいな、馬鹿デカいどんぶりみたいな杯で、豪快にがははっと笑いながらの一気飲みだ。

「…………」

 あなた方ワイルドすぎます。

 普通のコップで普通に、静かに大人しく呑んでる自分が、比べると貴族みたいに上品に感じるから怖い。
 と。

「島田さん、まだまだイケますやろ? ささ、も一つど~~ぞど~~ぞ」

「いただきます」

 口調の感じがいつもよりも随分と気安いけど、普段からこのくらいでも、俺は全然構わないどころか大歓迎だね。

 右隣りに座ってるポニーテール少女の顔を見る。

「やぁんやぁん もうっ イヤやわぁ島田さん、そんなにじ~~っと、うちのこと見つめたりしてぇ。メッチャ照れるわぁ」

 真っ赤な頬に両手を添えて、恥ずかしげにトレードマークであるポニーテールを、ぶんぶんする少女は、問答無用で確実に酔っていた。

 ビールの入ったコップ。

 元々は俺の唇が触れていたそのコップには、いまはもう少女の唇が何度も何度も触れている。

「紅葉ちゃん、あんまし頭、振らない方がいいよ」

 ぺちぺちと顔に当たる髪の毛が、痛いけどちょっと気持ちがいい。

 ウーロン茶とビールの取り間違え。

 これが果たして、狙い通り思惑通りの確信犯なのか、うっかりの偶然なのか、それはわからないが、俺が気づいてからも結構呑んでる。

「…………」

 まぁ、そりゃそうだけどね。

 すでに調子にノリに乗っていた俺が、こっそりちびちび呑んでいた紅葉ちゃんのコップに、へらへらと面白がってお酌したんだから。

 こういう馬鹿で阿呆な大人がいるから、少年少女の非行が、まるでちっともなくならないんだろう。

 困ったもんだ。

 日本の将来はこのままで大丈夫なんだろうか。

「はい、紅葉ちゃん」

 少女のコップにご返杯なぞをしながら、俺は適当に曖昧にそう思った。

「いただきます」

「うん」

 だけどもそろそろ、いい加減にやめとかないと、どこかのお笑い芸人のように捕まるので、おふざけもここまでにしとこう。

 コップには半分も注がなかった。

 今夜は綾乃ちゃんの家に、女子高生たちは泊まるらしいが、二日酔いにでもなられたら洒落にならない。

「…………」

 それに関係はないだろうけど、時折り頬をびしびしと射してくる洋子の、神秘的なだけに、呪いの力でもありそうな緑の視線が痛い。

 こちらの少女は確実にご機嫌斜めだった。

「…………」

 理由はわかってる。

 でも道場でアレがああなってアレになってしまったのは、原因は俺なんだけど、トドメの結果をもたらしたのは洋子と綾乃ちゃんだ。

「…………」

 アレしたままころころと転がって、アレを綾乃ちゃんや野武士軍団に悟られぬよう、道場から速やかに脱出するのは苦労したぜ。

 清純。

 可憐。

 無垢。

 ホントのところがどうだかは知らんが、このあたりがキーワードだったらいいなぁと、おじさんが勝手に想っちゃうそんな青い年頃。

「ふぅ……」

 小さくため息。

 怒るのだってそりゃ納得はできるけどもさ、やっぱし、そこはかとなく理不尽なものを感じる今日この頃だ。

「……誠、何にやけてんの?」

「……べつににやけとらんよ」

「そう」

「そう」

 なみなみとビールの注がれてるコップを、新入生歓迎コンパの大学生みたいなノリで、一気に“ぐいっ”と煽って洋子から顔を隠す。

 あ~~、今日の酒はキクなぁ。

 顔が熱い熱い。

「そんらりガンガン呑んやっで、そえでコーヒはひゃんといへに帰れるにょ?」

「にょ?」

 左隣りに座ってる少女を見る。ちなみに洋子が座ってるのは俺の正面だ。

「わたひらちは、綾乃の部はで寝るだけじょ、コーヒもここで、そのはま寝かへてもらへば?」

 これはしまったぜ。

 左隣りは鍋を囲んで食べ始めてから、ひたすらに静かだったし、洋子と紅葉ちゃんに気を取られていてわからなかったが、

「まどかちゃん、コップの中身は何ですか?」

「うん? 麦汁でふよ。でへっ」

 すっかり油断していた。

 ちゃっかりしっかりとこのおでこちゃん、滅茶苦茶にお呑みになってらっしゃる。おでこが思わず拝みそうなほど赤くなっていた。

「ねぇコーヒ」

 まだそんなに苦みばしっちゃいないけどな。

「なんでしょ?」

「いまあたひのころ、酔ってふって、思ったでひょ?」

「まあ、ね」

 舌の呂律が完璧にオメガ回ってないもん。

 これを酔ってないという奴いたら、そいつがまず酔ってるのを疑った方がいい。

「いふもよふとあたひね、ふまくひゃべれなくなるんだへど、いひきの方は普通にはっひりしてんほよ。ね、ほうだよね魅音?」

「にゃはは、誰が魅音やねん? おじさん全然意味わかんないよ」

 嘘だぁ~~!!

「おや?」

 いきなりの唐突で頭の中に、寒気と一緒に言葉が降りてきた。

 ヤバいなぁ。

 これはかなりキテるぜ。少女を心配するのもいいけど、まずここは俺が、今日はそろそろこの辺で、きっちり酒をやめとくとしよう。

「…………」

 しかし、こんなのはいまさらだが、この娘らはいつも酒呑んでんのね。今時っちゃ今時だが――おマセさんどもめ。

 よく見れば洋子の持ってるコップからも、シュワシュワとしっかり泡が出てる。

「…………」

 暴れるとか馬鹿な一気呑みがなければいいかな。一応は周りに大人がいて、パワフルな保護者同伴なわけだし。

 それに、

「島田さん。もっと。もっとうちのお酒呑んだってください」

「コーヒコーヒ。わたひのも。わたひのも呑んれよ」

 ドボドボと俺のコップにビールのお代わりを注ぐ紅葉ちゃんと、百人一首みたいな難解な日本語を操るまどかちゃん。

 両手に花。

 左右からしな垂れかかってくる二人の、柔らかさと重さがくらくらと心地いい。

 少女万歳。

 アルコールなんてものがなくても、人間は、いや男って生き物は、こんなにも簡単に酔えるんですね。

「…………」

 酒は金輪際やめようかな。

 人数が多いので鍋を囲むとはいっても、三つのグループに分かれているのだが、ここには俺たちしかいないのでちょっとハーレム気分。

 アルコールに酔ってる時間がもったいない。

「……にやにやと嬉しそうに鼻の下伸ばしちゃってさ」

 ぼそっとした声。

 湯気上る鍋を挟んだ向こう側にいるのに、その声はするりと耳朶に入り、胸の奥をちくりと、小さくだが絶妙な角度で突っついてくる。

 恐る恐るそちらを窺うと山本洋子さん(16)が、丁寧にちまちまと細かい魚の骨を取っていた。

「骨も食べないと大きくなれないぞ」

「……変なとこ大きくしてる人に、偉そうに言われたくないんですけど」

「…………」

「…………」

 交錯する二人の視線。

「…………」

「…………」

 その勝負の決着は刹那である。

「…………」

「…………」

 勝った。

 ついっと上げた視線の強さには正直びびったが、すぐにすいっと、逃げるように伏せられた顔の赤さはとても可愛らしい。
 ネコ娘の弱点見たり。

 今度っからは洋子に凹まされそうになったら、大人としてどうかと思うが下ネタ口撃でいこう。

 でも大人になるってことは、こうやって少しずつ、何か大切なものを、クールにドライに捨てていくってことなのかもしれないな。

「…………」

 勿論戯言だよ?

「お楽しみのところ申し訳ありませんが」

 凛とした涼やかな声。

 自己嫌悪に陥りつつ振り返ると、ぶらり武者修行の旅に出た祖父の代わりに、野武士軍団の相手をしていた綾乃ちゃんが立っていた。

 服装は堅苦しい白鳳院流合気柔術の道衣から、楽で清楚なプライベートワンピースにチェンジ。

 美少女は何着ても似合うね。

 良々。

 微笑んではいるがちょっとだけ厳しい顔をしている。

「…………」

 しかし可愛い。

「島田さんはともかく、紅葉さんとまどかさんは、些か以上にお酒の量が過ぎていますね」

 言ってにこにこしながら綾乃ちゃんは、ゆっくり、だけど何故か見ていることしかできない動きで、二人のコップを奪ってしまった。

「皆さんお食事の方は終わってるみたいですし、高弟の方々ももう帰られます。そろそろわたしの部屋に行きませんか?」

 見ると確かに野武士軍団は、音もなく全員立ち上がってる。

 あれだけ荒々しくどんちゃん騒いでいたのに、足取りの覚束ない者など一人としていやしない。

 これから決闘する。

 そう言われても信じられそうだった。

「そうしよっか。後片付けは明日でもいいだろうし。うん。そいじゃま、綾乃の部屋にお邪魔させてもらいますかね」

 使ったお皿を行儀よく重ねた洋子が、最後にコップの中身をぐいっと煽って立ち上がる。

「…………」

 何気なくも格好良く、様になってる仕草を眺めながら、その後ろにある壁掛け時計を見ると、時刻はまだ寝るには早い八時前だった。

「さてと。それじゃ俺は帰ろうかな」

 紅葉ちゃんとまどかちゃんの脇に、嫌らしくないよう注意しつつ手を入れ、少しふらついてる身体を支えながら立ち上が、ろうとする。

「お? おおっ!?」

 いきなしくるんっと世界が回った。

 膝が笑って後頭部から、重力に引かれて、二人の少女を道連れにしながら、畳へ向かって一直線に倒れ込む。

「くっ!?」

 俺はイナバウアー状態になりながら、それでも何とか少女の身体を傷つけまいと、咄嗟に力いっぱい二人を胸へと掻き抱いた。

 打ちどころが悪かったら死ねるかもしれん。

「…………」

 しかしこのままもし死んだら、間抜けで情けなく、そして絶対に大笑いされるような死に様だなぁ。

 ああ、でも少女二人を抱きしめながらは悪くもない。

 見る見ると評判の走馬灯などではなく、二人の少女のびっくりした顔をアップで見ながら俺は、小さな小さな満足を覚えちゃってた。

 でもね。

「誠っ!?」

 洋子の声。

 その初めて聴くだろう切迫した声に、俺はそれなりの幸せに包まれて、閉じそうになっていた眼をかっと開く。

 首を上げて何とかそっちを、洋子の姿を見ようとした。

 けれど。

「あれ?」

 見えたのは洋子の姿ではない。

 上下逆さまでにっこりと微笑む綾乃ちゃんの、人を自然と安心させてくれる、天使のように清純で可憐で無垢な顔だった。

「島田さんも、泊まっていかれた方がいいですね」

 後頭部がえらくふんわりと柔らかい。

「お部屋はありますし、お客様用の浴衣などもありますから、是非とも休んでいってください」

 どうやら俺は綾乃ちゃんに、合気道の技かなんかで、凄く優しく助けられ、嬉しいけど恥ずかしい憧れの、膝枕をされているらしい。

「…………」

 そして落ち着いてみれば、腕の中にある二つのぬくもりも、胸の上にある二つの身体も、滅茶苦茶に柔らかくて堪らんかった。

 視線をそろそろと向けると、二人がじっと、瞬きもせずに俺を見てる。

「…………」

 なんでだろうね。

 アルコールを飲んだ後なんだから、《臭い》と表現するのが正しいんだろうけど、それが少女の吐息なら《匂い》の方がしっくりくる。

 肌に触れるたびに頭の芯がくらくらと痺れた。

 周りからはわからないくらいに、ほんのちょっとだけ、二人の身体を抱きしめる腕の力を強くする。

 紅葉ちゃんもまどかちゃんも同時に、ぴくんっと、身体を微かに震わせはしたが、この束縛から逃げようとする素振りはない。

「…………」

 調子に乗ってさらに力を込めると、俺の厚くもない胸板の上で、二人の少女のおっぱいが、ぐにゃりと、若さで反発しながらも潰れた。

 ナニがいまナニをしてるかは言わずもがな。

 酒を飲んだら勃起しないというあれが、嘘なんだと、たったいま、こうして自らの身体でもって実証された。

 理論よりも証明。

 それはこうして密着してる二人にも、十分以上にわかってもらえたと思う。

「綾乃の部屋に行ってるから」

 冷たい声。

 氷を入れられたみたいに、背筋がぞくりとして、少しだけだが、二人の脇腹の辺りで、びくんびくんしてた勃起が萎んだ。

「…………」

 小さな背中が広間を出て行く。

「それでは島田さん。お部屋にご案内しますので、そろそろ立っていただけますか?」

「……はい」

 もう相当に勃ってるけど、立たないわけにもいかない。

「あのさ。紅葉ちゃんとまどかちゃん」

「な、なな、なんやろか?」

「な、なんなの、コーチ?」

 この場では本当にどうでもいいが、まどかちゃんの口調が元に戻ってる。

「二人にお願いがあるんだけどね。俺の特技を見せるからさ。一、二、の三で、ぱっと俺の身体からどいてほしいんだ。いいかな?」

 眼をぱちくりとさせた後で、二人は顔を見合わせると、こくんと小さく首を引いて頷いた。

「ありがとう。綾乃ちゃんも助けてくれてありがとね。それじゃ綾乃ちゃんは一度見てるけど、もう一回見せるから立ってもらえる?」

「はぁ?」

 あんなの特別に二度も三度も見たいもんじゃないだろう。

 だけど綾乃ちゃんは素直に、ぽか~~んとした顔こそはしたものの、俺の頭をそっと畳に置いてどいてくれた。

「オーケー。それじゃ二人ともいくよ? いい? ……一、二、の三っ!!」

 合図と同時に二人の身体が、ぱっと、素早く左右へと離れる。

「にゃろめっ!!」

 こんな事態のこんな状況なのに、少女の身体が名残惜しいと思っちゃう馬鹿野郎は、出口に向かって猛烈に後ろでんぐり返しをした。





[2293] 少女病 七話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:14



 平たい岩に腰を下ろし見上げる。

「…………」

 虚空に浮かぶその石ころが、今夜は特に美しく感じられた。

「はぁ……」

 ため息。

 昔の人はあそこに、兎がいたりお姫様がいたりと、様々な夢を想い映したのだろうが、それは現代の俺たちだってさほど変わらない。

 月。

 そう呼ばれる石ころには、調査がどれだけ進んでも、魅了されずにいられない悠久のロマンがある。

 と。

「考えてるふりをすれば、やってることもカッコがつく」

 やはりどこか後ろめたいのか、そう声に出して言いながら、俺は広間からパクッてきた日本酒の徳利を傾けた。

 時刻は十時。

 あれから早々に部屋に案内され、布団に横になったはいいが、さすがに酒が入っていても、大人が大人しく寝られる時間じゃない。

「しっかしこれ、本気で美味いなぁ」

 それに俺は酒に関しちゃ結構なスロースターターだ。

 まぁボクシング辺りに例えるならば、初回にこそダウンは取られるものの、終わってみればどうしてだか疑惑の判定勝ち。

 KOじゃないとこなんかがまたニクいぜ。

「どんなもんじゃないっ!!」

 なんてことはさすがに、口が裂けても言わないが、時事ネタはブームが過ぎればだが、呑みに行けば、最後に立ってるのはいつも俺だ。

 っても。

「他にもいっぱい立ってるけど」

 判定だからさ。

 ぐにゃぐにゃのへろへろの、記憶が無くなるまで呑むっていうのは、そりゃ年に一回くらいはあるけど、大人として毎回はマズいしね。

「…………」

 そういやついこの間が、その年に一回だったなぁ。

 こんなに早く年に一回を使っちゃって、年末とかの飲み会は果たして、島田誠さん(27)企画部は平気なんだろうか?

「…………」

 眼鏡のリムをこれ見よがしに、くいっと、意地悪く押し上げる姿が眼に浮かぶ。

 他の奴らはいまさらだから構いやしないが、あの世界の中心は自分と、信じて疑わない女の前でだけは、醜態を晒すのは御免蒙る。

 美人だけに始末が悪い。

 ネチネチとバラエティに富んだ嫌味を、嬉々とした顔で言われるのはわかり切っていた。ドS女め。

「是非ともあの女、豆腐の角に頭ぶつけねぇかな」

 口の中で小さく呟きつつお猪口を煽る。

 するとその百パーの独り言に、酒が喉を滑り落ちていく感覚を、愉しみ終わるのを待ってくれたように、いい間合いで声が掛けられた。

「大丈夫なの? そんなにバカスカと呑んじゃっても」

 何の根拠もありはしないのに、自分のすることに、間違いなどあるわけがない。

 そんな不遜な声。

「…………」

 だけど可愛い声。

 一体全体いつからそこにいたのか、やはり夜行性の動物なのか、足音一つ立てずに、気がつけば洋子が隣りに立っていた。

 やれやれで顔はいまだに不機嫌なままである。

 着ている物は制服ではなく、当たり前だが俺とまったくお揃いの、白鳳院家ご用達の浴衣だった。

「…………」

 短い髪の毛が微かに濡れてる。

「風呂入ったのか?」

「さっきね。誠はもうお風呂入ったの?」

「いや、まだ」

 というよりも、すっかり風呂の存在なんて忘れてた。

「どうせ入らないでそのまま、寝ちゃうつもりだったんでしょ?」

「まあね」

「しょうがないなぁ」

 そう言いながらも洋子は、顔をふっと不意に笑顔に変えると、俺の座ってる岩に腰を降ろしてくる。

「…………」

「うん? なに?」

「いや、なんでも」

 はっきりいって狭い。

 二人の身体がぎゅうぎゅうに密着して、これがオトコ同士だったら、そこに真の友情があっても、断固とした決意で蹴り飛ばしてる。

「…………」

 しかしこの感じている温かくて、ふにゃりと柔らかなぬくもりは、確実に可愛い可愛い女の子のものだった。

 不満なんてものが微塵であってもあるわけがない。

「月がキレイだね」

 深く神秘的な緑の瞳。

 夜の光を浴びて輝いてるようで、なんだか……吸い込まれそうになる。月なんかよりも、この少女の方が何倍もロマンチックだった。

 だからうっかり、

「洋子の方がキレイだよ」

 一生の不覚とはこういうのだろう。ぽろっと口走ってしまった。こんなに酒に弱かったけ俺?

「……嘘ばっかり」

 だけどネコってのは警戒心の強い動物で、餌って言ったら語弊があるけど、この程度の台詞じゃ簡単には信じてくれない。

 心の奥を見ようとでもするように、俺の瞳を緑の瞳でじっと覗きこんでくる。

「本当さ。嘘じゃない」

 それならそれで、この話はここまでということで、洒落にすることもできたのに、独断専行で俺のマウスは、勝手に言の葉を紡いでた。

「あ……」

 さらにそれに腕まで便乗しやがって、手慣れた(洒落じゃないよ?)感じで、洋子の頼りない小さな肩を抱き寄せやがる。

 あっさりこてんっと少女は、俺の胸へと倒れ込んできた。

「月なんて本当にどうでもいい。洋子の可愛さとは比べもんにもならないさ」

 ぺらぺらと滑らかにしゃべってるけど、本当にてめぇは島田誠の口なんだろうな。

 本当はどっか田舎のホストの口なんだろ?

 お願いだ。いまならまだ怒らないからそう言ってくれ。

 穴があったら是非埋めたい。

 もしもこの笑いにもならない会話を、ぶっちゃけて言うと口説きトークを、録音でもされていたら俺は羞恥心で確実に死ねる。

「食べたいくらい」

 頼む。

 お願いだから誰かこいつを殺してくれ。

「んッ!?」

 複雑な造りの小さな耳朶に、唇を寄せながら囁くと、触れる吐息がくすぐったいのか、洋子が驚いたように身体を竦めて首をよじる。

 正直面白い。

 あの洋子がどうしたらいいのかわからずに逃げ惑ってる。

 俺は追いかけるように、追い詰めるように、その折れそうな細いうなじに顔を突っ込むと、鼻孔から肺へと息を深く吸い込んだ。

 島田さんは匂いフェチですばい。

「あンッ!? ま、んッ!! ま、誠っ、なに、まこ、んぅッ!!」

 時折り少女の肌に唇を這わせながら、こっそりと薄目で窺うと、 健気なほどぎゅっと目蓋を閉じて、ふるふると睫毛を震わせてる。

「…………」

 実に面白い。

 さりげなく膝頭に置いた手に、きつく爪を立てられてるが、その痛みすらも、湧き上がるぞくぞくの誘発剤だ。

 SとM。

 これってどうやら簡単に反転するらしいね。

 肩を抱いていた手で、ごろごろと喉を撫でながら顔を上げさせると、洋子の頬は湯上りなのを差し引いても、ほんのりと上気していた。

「…………」

 ああ、苛めたい。

 俺は迷ってる時間こそ長い人間だが、決めたら行動に移すのは、そりゃ例外はかなりあるけど、なかなかほどほどに早い人間だ。

 膝頭に置いてすりすりとしていた手に、今度は自分の意志でちゃんと指令を出す。

「どわぁ!? おお!? って、待った待った!!」

 待つわきゃない。

 しっかり着付けられてる浴衣の裾を、ぴらっと大胆に捲ると、一気に閉じられてた太股を割って、魚燐の型を取った手を突入させた。

 滑る滑る。

 吸い付くような肌っていうけど、こういうときは、ま~~ったく邪魔にならないんだから助かるぜ。

「ひゃっ!?」

 そしてすぐにふかっと、妙に手に馴染む、あの魅惑の感触に到達する。

 俺の興味は主に中身なので、それがシルクや木綿じゃないことだけはわかるが、洋子の穿いてる布地の素材が何かまではわからない。

「…………」

 わからないんだけど、凄くすべすべしている。

 うん。

 世にいる下着泥棒の気持ちが、いまなら、決してわからないことも、ないこともなかった。

「…………」

 しかし、まぁ、勿論そうは言ってみたところで、やはり俺は覆ってる布切れよりも、この少女自身の方に、当然だがより興味がある。
 
 ごっくん。

 思わずほんのりと紅い唇を見て喉が鳴ってしまった。

「洋子」

「な、なにかな?」

 ここまでだってそりゃ、勢いでやっちゃいけないんだけど、これをするのはいくらなんでも、お伺いを立てといた方がいいだろう。

 この様子だと初めてだろうし。

 良くも悪くも大概ファーストってのは、鮮明な思い出として残るもんだからな。

「キスしても、……いいか?」

「へ?」

 洋子。

 そうやって間抜けな返事をする気持ちはわかるよ。本来こういうのは、相手に訊いちゃったりするのは反則だと思う。

「…………」

 どうもこうして考えてみると、俺はかなりフェミニストらしい。

 ましてやその相手が少女というならばなおのこと、オトコが格好良くリードしてやるべきだ。

 なんてなことを随分と強く思っちゃってる。

 我ながらちょっと引くくらいびっくり。

 もしかしてもしかすると、フェミニストというよりも、なんだかあれな病気じゃないかしら?

「…………」

 まぁ、いいか。それでも。

「洋子とキスしたいんだ。滅茶苦茶したいんだ。猛烈にしたいんだ。心底したいんだ。狂おしいほどしたいんだ」

 開き直ったら仕舞ってたものを出すのは楽だった。

「洋子とキスしたいんだ」

「…………」

「いいか?」

「…………」

「だめか?」

 答えを急ぎすぎてるのはわかってる。がっついてる中学生みたいで恥ずかしい。だけどしたくてしたくてどうしょもなく堪らなかった。

「誠はあたしと、そんなにキスしたいんだ?」

 緑の瞳をうるうるさせながらの思案顔。

 めっがさ可愛い。

 少女たちと出会ったこの短い間で、閉店セール大安売りができるくらいに、少し食傷気味なほど連発してるが、可愛いもんは可愛い。

「したいよ」

「……そう」

 でも動かしてないとはいえ、パンツに手を置かれたまま考えられるとは、洋子もちょっと余裕が出てきたのかなぁ。

 冷静になれば結構シュールな絵面である。

 しかし俺って男は本当につくづく、行動も思考もシリアスがそうは長く続かない。

「…………」

 入ってるときは気づかんけど、疲れるんだよね、シリアスって奴は。きっと何事においても、ほどほどが良いってことだな。

 ――多分。

「そんなにしたいんだ?」

「うん」

 そして俺と洋子は相性がホントに良い。

 少女の顔が悪戯っ娘ぽさを、気まぐれなネコっぽさを、段々笑みの深さと一緒に取り戻してきている。

「紅葉とは?」

「したい」

「まどかとは?」

「したい」

「綾乃とは?」

「したい」

「ふ~~ん。……あっそ」

「あれ?」

 あれ? 開き直りすぎましたか? 

 でもいまは隠せないよなぁ。仕舞っといた方がいいものって、誰にでも絶対あるんだけど、さっき全部出しちゃったとこだからさ。

 もう一回仕舞うにゃそれなりに時間が掛かる。

「このお馬鹿な正直者」

 だけど洋子は困ったような怒ったような恥じてるような、色んな感情がごちゃ混ぜになった複雑な笑顔を浮かべると

「んぶぅっ!?」

 しゅるっと素早く俺の首に腕を巻いて、まるっきりの勢い任せで、その初々しい唇を唇に、叩きつけるように押し付けてきた。

「…………」

「…………」

 歯と歯がガツンとぶつかって激しく痛い。

「…………」

「…………」

 けれど少女の柔らかな唇の感触は、総入れ歯にしてもいいくらいに、ふわんふわんで堪らなく気持ちよかった。

「…………」

「…………」

 そのうえファーストキス現在進行形の少女は、触覚だけに留まらず、サービス満点で、その儚い魅力を視覚にまでも訴えてくる。

 眼をぎゅっといっぱいに瞑って、鼻でふんふんと荒い息をしているのが、微笑ましくて可愛らしかった。

「…………」

「…………」

 全然まったくちっともその姿は格好良くない。

 だがそれこそが良い場合だって、曝け出された格好悪さが、映えるチャームポイントの場合だって、こうしてときにはあったりする。

 何より俺が最初に見たんだと思うと、最高にハイな気分だった。

 無論。

 小さな詰まらない征服欲だと言われればそれまでだが、確かに心が洋子で満たされていくのを感じる。

「…………」

「…………」

 だからもっと他の姿を見たいと考えるのも、この少女の隠れてる顔が見たいと思うのも、牡生命体としては至極自然な流れだった。

「ん? んンッ!?」

 真近にある洋子のエメラルドの瞳が、かっと驚愕に大きく大きく見開かれる。

「むうッ!!」

 にゅるりと舌なんか入れちゃったりして。

「んぅッ!? ふぅッ……んむッ…………むぅッ!!」

 ディープという知識はあったろうが、勿論経験などない洋子は、びっくりして反射的に唇を離そうとするがそうはさせない。

 頭はあらかじめがっちり押さえ込んでる。

 舌の動きに合わせるように、パンツに宛がわれてる手も、ゆるゆると動かしてみたりした。

「ふンッ!?」

 唇を塞がれてくぐもった声が色っぽい。

 洋子の頭の中は只今乱れに乱れて、というほどじゃないだろうが、体験したことのない感覚に絶賛パニック中だろう。

 良々。

 俺はその隙にと首を傾けて、伸ばした舌を奥へ奥へと、温かな口内の深く深くへと挿し入れていった。

「………ン………、んふぁッ…………うふぅッ……、ふ…………くんッ……んッ…………」

 怯えて縮こまっていた少女の舌を捉まえると、甘い唾液と一緒に啜り上げ、好き放題に絡め嬲り蹂躙するこの背徳を伴う快感。

 やめられないとまらないって、こういうのを言うんだろうね。

 誤魔化しようがないほど浴衣を押し上げ、いまにも《こんにちわ》しそうな元気で現金な勃起。

「…………」

 このままだと手も触れずにイキそうでちょっと怖い。

「ううッ……むぅ………んッ………んぅッ……ぐぅッ………」

 だけど洋子の方も俺に負けずに、かなりイちゃいそうになっていた。

 鼻をふんふんと豪快に鳴らしてはいたが、上手くは呼吸ができてなかったみたいで、顔をチアノーゼ気味に赤くして震わせてる。

 そろそろ解放してやらないとこれはマズい。

「ぶはぁッ!!」

 がっちりと固めていた後頭部のホールドを解くと、洋子が酸素を求めて弾かれたように唇を離す。

「…………」

 浴衣を内側から持ち上げている乳房が、大きく激しく上下してるのがエロかった。

「…………」

 そんな姿を見てると不思議なもんで、さっきまでは狂おしい嗜虐欲に満たされていたのに、いまははっきりと父性愛を感じてしまう。

 ちなみに笑顔を浮かべる俺の手は、まだ洋子のアソコをしっかり触ってた。

「…………」

 しかし冷静になってみれば、やはりここはここらが引き際だろう。忘れそうになるがここは人ん家の庭だ。

 きっぱりすぽっと、未練を断ち切るように、太股に挟まれていた手を引き抜く。

 夜風が吹くとそれだけで、ぬくくなってる手は、ひどく淋しく、物悲しいほど切なく、いたたまれないほど冷たくなった。

「…………」

 やっぱもう一回トライしちゃおうかな?

 と。

「うん?」

 はぁはぁしながら浴衣を直している洋子を尻目に、後ろをそっと首だけで振り返る。

 音がした。

 それも誰かが葉っぱでも踏んだような、こっそりと忍んで、こちらを窺ってでもいるような、そんな風な足音の気がする。

「おろ?」

 首を戻すとばっちり身なりを整えた洋子が、こちらは現れたときと同じように、足音一つ立てずに、少し離れたところに立っていた。

 何故だか《きっ》と、俺を凄い視線で睨んでる。

 人間の認識できる色が、犬なみにしかなかったなら、刺されるのかと勘違いしたろう。

 でも大丈夫。

 フェイスカラーはものすげぇ鮮やかで艶やかなレッド。

 俺がのそりと立ち上がり、その反動でぶるんっと勃起が揺れると、首が捻じ切れそうなスピードで、慌ててそっぽを向いていた。

 可愛いね。

「…………」

 食べたパンの枚数も覚えてないが、ワードを遣った回数も覚えてない。

「一応言っとくけどね、誠」

「あん?」

「二人が出会ったのは昨日が初めてじゃないんだからねっ!! 軽い女だと思わないでっ!! それだけっ!! おやすみっ!!」

 夜に轟けとばかりの大声で、言いたいことを言うと、洋子はくるっと背を向けて闇に消えようとする。

「いつだよそりゃ?」

 絶対に声は聴こえただろうに、少女は何も答えてはくれない。

 送ろうか。

 そう言おうとして、ここが人ん家の敷地内なのを思い出した俺の前から、現れたときと同じように洋子は闇に溶けて消えた。

「なんだかなぁ」

 呟きつつも顔の筋肉が緩む。

 ヤバい。

 十年前よりも絵になる青春をしちゃってる自分が、小っ恥ずかしくも満更ではなく、大爆笑したくなるのを抑えるのにえらく苦労した。





[2293] 少女病 八話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:16


 
 時計がないので正確な時間がわからない。だけど洋子が去ってから大体十分くらいだろう。

「…………」

 いつまでそうしてるんだろうと思っていたが、どうやら、ここまでのようだった。

「未熟」

 冷たく厳しい凛とした声。

 草葉の陰からかさりと、今度は初めから、音を消す気などないようで、綾乃ちゃんがやや、不満を滲ませた顔で現れる。

 格好はまた清楚なワンピースから、無骨な白鳳院流の道衣に戻っていた。

「…………」

 いや、こっちはこっちで、非常に捨てがたいけどね。

 草鞋の緒をちょんと摘んでいる、少女のおみ足の親指と人差し指。足袋の先割れって何かこう、どことなくだけど色っぽい。

「…………」

 もしかして俺ってマニア?

「あれしきのことで心を乱されるとは、些か自分の技量に自惚れていたようです」

「……そこまで真面目に考えない方がいいよ」

 映画やテレビの画面を見たりするのとは、小説を読むのや人から訊いたりするのとは、そりゃ全然まったくわけも勝手も違うさ。

 ましてやシーンを演じているのが友人ならなおさらだ。

「……失礼ですが。洋子さんとはいつからあのようなご関係で」

「うん?」

 これは確かに失礼な質問だろう。

 綾乃ちゃんの言ってる《あのようなご関係》とは、二人で夜空を眺めてちゅーしちゃうってことだろうけど、そんなのはそれこそで、

島田誠と山本洋子の二人だけの問題だった。

 いくらそれが快く泊めてくれた家人とはいえ、答える義理などない。

「さっき」

 しかし答える必要もない答えも、それはそれで、取りようによっては結構失礼なので、ここは些細なことは良しとしておこう。

「…………」

 頭がぐちゃぐちゃに混乱していて、正直、自分でも何を言いたいのかまるでわからない。

 誰かいる。

 予想はしていた。

 けれど。

 それなりに美少女の登場には驚いている。

 そもそも綾乃ちゃんの視線には、黙秘など認めないという、暴力的ではないけれど、強い意志の力が感じられた。

 見つめられるとひどく落ち着かない。

 大きな声では言えないけど、べつに悪いことしたわけではないのに、謝っちゃおうかな、って、そんな頭を下げたい気分に猛烈になる。

「…………」

 いや、それとも、もしかして、……なるのか? 悪いことしたことに?

 綾乃ちゃんもどうやら、質問というよりも詰問という感じだし、なによりもこれは怒ってるみたいだし。

「怒ってるわけではないのですよ」

「…………」

 サトラレか俺は。考えてること筒抜けだなオイ。

「本当に……、怒ってるわけではないのです。ただ――」

 そこまで言って目蓋を、静かに閉じると、綾乃ちゃんは月を仰ぐように顔を上げ、美しい顎から鎖骨へのラインを晒した。

「…………」

 えぇい。まったくもう腹が立つぜ。

 それこそこんなのは、綾乃ちゃんの台詞以上に失礼ではあるけれど、美少女が語る素敵な場面だってのに、俺はなんでこうなのかねぇ。

 はぁ……。

 心の中でため息。

 ここまでクルと呆れるねホント。

 笑えないよ。

 またしてもしっかりちゃっかり密かに、浴衣をもっそりと持ち上げ勃ってきてた。

「…………」

 でも昨日から刺激こそは、ちょこちょこちょこちょこ受けてはいるけど、ちっとも足りとも火の付いた欲望を抜いてない。

 許してくれとは言わんがわかってくれ。

 勿論。

 そりゃ十代と比べられても困るが、俺はまだまだ、元気一杯若さ爆発の立派な一人の男なんだ。

 だから当然ナニだってすげぇ爆発したい。

「それは高校生にもなれば、友人の中に異性とお付き合いする方がいらっしゃっても、驚きはしますが可笑しくはないでしょう」

「うん。……まぁ、そうだろうね」

 そういや高校生んときゃ俺、毎日オナニーしてたなぁ。

 ノルマとか作って一日五回とか、よ~~し今日は八回に挑戦だぁとか、エロ馬鹿丸出しのことしてた気がする。

「ですがあの洋子さんに、まさかそのような方ができるとは、夢にも思いませんでした」
「…………」

 少女の表情がどことなくではあるが、淋しそうなものに変わったのに、俺の肝心なときに、節穴と評判の眼には映った気がした。

「洋子さんとわたしは、小さい頃からの付き合いで、俗に言う幼馴染というやつなのですよ」

「そうなんだ」

「ずっと隣同士で歩いていくんだと、漠然と、独りよがりで考えていましたが、どうもこれは、……一歩も二歩も先に行かれてしまった」

「そうなんだ」

 綾乃ちゃんのこの気持ちが、なんとなくだがわからなくもない。

 高校生、いや、早ければ中学生、いやいや、今時のマセてるガキどもなら、下手すれば小学生でも味わえる感覚。

 時期は夏の終わりが、何故か圧倒的に多かったりする。

 昨日まではエロビデオが世界の全てだった男が、突然生々しい実体験を、赤面しながら、そのくせやたら饒舌に話し出したりするのさ。

 クーラーのない蒸し暑い部屋。

 興味ないふりで真剣に聞く俺。

 にやにやして話すエロな馬鹿。

 狭い室内に駆け巡る悔しさと自慢と憧憬と歓喜とそして味わったことのない焦り。

「…………」

 あんときゃ確実に奴の方が、ムカつくけど、俺よりも数段の上位機種だったね。

 そんなの早い遅いに意味はないし、勝った負けたで判断することでも、当たり前だがないのだけど、敗北感があったのは間違いない。

「どうすればこの差を埋められるのか」

 やはり静かに、目蓋をそっと開きながら、綾乃ちゃんが俺を見る。

「…………」

 ぴくんっと跳ねた。

 妄想と想像と牡の身体的な都合で、美少女の言葉に、浴衣の下の勃起が急激に硬度を増して、ぴくんっと飛び跳ねた。

 お?

 綾乃ちゃんの表情と身体が、微かに、本当に一瞬ではあるものの揺れる。

「…………」

 顔もよく見ればうっすらと赤いような?

「あるいはわたしも洋子さんと、同じことをすれば追いつけるのでしょうか? 島田さんはどう思います? ……間違ってますか?」

 誘い。

 自分の言葉の意味が、わかってるようでわかってない、危うい年頃の美少女の、あからさまなほど露骨な誘い。

 それに対しての俺の返事は、短く簡潔にとてもわかり易く

「間違ってるよ」

 即答だった。

「え?」

「間違ってるよ」

 何度でも答えは同じ。

 美少女のおそらく真摯で切実だが、感情に流された軽はずみな考えは、やはり間違っているだろう。

「…………」

 飛びつくと思ったかい?

 喉がごくんと鳴っちゃったのは認めるし、さっき洋子と唇を重ねといて、甚だ説得力はないが、これでも大人のプライドはあるのさ。

「…………」

 勃起してなければそれなりに格好いいんだけど。

「一歩二歩先を歩ってるってんなら、ちょっと声を掛ければいいだけだろ? そのぐらいなら伸ばせば手だって届くんだし」

「振り返ってくれますか?」

「友だちならね。無理して隣りを歩こうとしなくても、友だちなら自然と歩調は合ってるもんさ」

 早足になることもない。

 まぁ、その背中を懸命に追いかける友情ってのも、あるにはあるが、それはこんなどうでもいい、詰まらないテーマではないはずだ。

 誰かがしたから自分もする。

 それはそういう問題じゃないだろうし答えじゃないだろ?

 少女の唇は国宝級。

 プルトニウム並みに細心の注意を払って大事にしてもらいたいもんだね。

「なるほど。……なるほど。そうですね。確かにそうです。なるほど。同じこと。些か以上に早計で馬鹿な考えだったようです」

「わかってもらえた?」

 こんなどこにでもある言葉と台詞で、これはころっと意見が変わっちゃうような、ホントにとても詰まらないテーマだってことが。

 命短し恋せよ乙女。

 非常にビューティフルでいい言葉だけど、ぽんぽんと、安売りだけはしないでもらいたい。

「…………」

 それと綾乃ちゃんの口癖は『些か以上』なんだね。ここではどうでもいいけど。

「島田さん」

「うん?」

 綾乃ちゃんがすたすたと、俺との距離を詰めてくる。

「馬鹿で失礼ついでといっては何ですが、いまここでわたしと、一つ試合っていただけませんか?」

「はい?」

「道場のときと一緒で、当て身は一切ありません。さ、よろしかったらまた、わたしの道衣の好きなところを掴んでください」

「……はい」

 どうしていきなり試合なのか、その展開が読めないが、偉そうに説教臭いことを打っちゃったんだし、ここは大人しく従っておこう。

「…………」

 もしかして俺、シメられんのかな?

 些か以上の不安を感じつつ、袖と襟首を持って、林檎を握りつぶせそうなくらい(あくまでくらい)ぎゅっと力いっぱいに掴む。

「ふむ」

 綾乃ちゃんが俺の、弱冠強張ってる二本の腕を一瞥して、小さくだが満足気に頷いた。

「やはりこれは、どうも、そうみたいですね」

「なに?」

「いえいえ。そこでいいですか?」

「いいです」

「本当にいいですか?」

「ホントに、いいです」

 このやり取りも道場のときと一緒で、少女がくすっと笑ってるのも相まって、俺の顔も思わずでれ~~とにやけ、……そうになる。

 いかんいかん。

 一応は試合なんだから、ここは引き締めねば。

 島田誠さん(27)独身は、真剣味が、かなりのハイレベルで足りなさすぎる。

「さて、それでは。開始は島田さんのお好きなタイミングで、声も掛けずに、いきなりでもいいですよ」

「ああ、そう、じゃあ、まぁ、それじゃ好き――」

 ぱたんっ。

 お月様がキレイ。

「いまのタイミングでよかったですか?」

「……ええ、構いませんよ」

 しゃべってるときに仕掛けるとか、そんな芸人みたいにセコいことしても、やっぱ達人にはまったく全然通用しないのね。

「本来ならここで腕を固めながら、顔を踏みつけるまでが一連の流れなんですよ」

「……そうですか」

 悪いんだけどその説明、あんまし聞きたくねぇな。

「でも島田さんとは、やはり相性がいい」

 神々しい光を放つ月をバックに、にっこりと優しく微笑む美少女。勿論、肩から覗く白いブラジャーのストラップも眼に眩しい。

「夕方に道場で投げたときも思ってましたよ。島田さんはふわりと空気のような存在の人だって」

「…………」

「あれ?」

「…………」

「あの?」

「それは褒められていますか?」

「一応はそのつもりですけど?」

「…………」

「本当ですよ」

 まぁ、ここは素直に受け取っておくか。何でもかんでも、捻ればそれで大人、ってもんでもないしな。

 ――最近はガキの方が捻てるし。

「大変に島田さんには技が掛け易い。というより技術がいらない。接触すればそれだけで、意識しなくても投げられる感じです」

「それは褒められていますか?」

「一応はそのつもりですけど?」

「…………」

「本当ですよ」

 いいけどね。うん。いいんだけどね。いいんですよ。うん。うん。うん。……いいんだよねぇ?

「しかしそれが確認できたのも良かったのですが、それよりもなによりも――」

「なに?」

「心です」

「心?」

「島田さんとわたしは、身体の相性だけでなく、心の相性までも良かった。先程していただいたお話、どこかで聞いたお話でしたが……」

「…………」

「とても心に響きました。それは上辺だけの言葉や台詞じゃないのがわかるから」

「…………」

 くっ。マズい。顔が滅茶苦茶熱くなってきた。

 捻った変化球の切れ味ってのも凄いけど、単純なストレートの威力はわかり易い。

 綾乃ちゃんの場合。

 それこそそれが上辺だけの、言葉や台詞じゃないのがわかるから。ズドンと俺の心にも、とても強く重く響いてくれた。

 熱っちい。こりゃ褒め殺しだよ。

「顔が赤いですねぇ」

「…………」

「アルコールが回ってしまいましたか?」

 綾乃ちゃんはまるで、洋子を思わせるような、ちょっと悪戯っぽい顔で(あれほどスパイスは効いてないが)、にこにこと微笑んでる。

「……わかってるくせに」

「ふふふ。ごめんなさい」

「…………」

「なんですか?」

「うんにゃ。なんでもないよ」

 この娘でもこんな風な、お茶目な物言いするんだなぁ。

「ですけど本当にもう少ししたら、お酒はやめて休んでください。こんなところで寝てしまったら風邪を引きますから」

「オーケー。わかった」

「洋子さんの口癖、すっかり移っちゃってますね」

 綾乃ちゃんは固めていた腕を解くと、すっと、洋子のように本能ではなく、技術の裏打ちの足捌きで、まるで音を立てずに身体を離す。

「今夜は愉し、!? こほんこほん、た、愉しかった……です。こほんこほん」

 なんだろう?

 本当にときたまではあるけど綾乃ちゃん、ここまでわかり易いのは初めてだが、不意を打たれたように動揺するときがあるなぁ。

「わ、わたしはこ、これで、部屋に戻りますが、今夜のお礼に一つお教えしましょう」

 綾乃ちゃんの目線は明後日。

「うん?」

「洋子さんとの逢瀬を見ていたのは、何もわたしだけではありませんよ。それでは島田さん。おやすみなさい」

「はい?」

 そう言って今夜二人目の美少女も、ゆっくりと溶けるように闇に消える。

「綾乃ちゃん」

 すぐに追いかけるように呼び掛けたが、もういなくなってしまったみたいで、少女からの答えは返ってこなかった。

「オイオイ」

 まだサプライズが用意されてるのですか?

「やれやれ」

 と。

 口にしてはみたものの、口にしてみただけで、これといった感慨もなく、後頭部に手を廻すと、腹筋を使って身体を起こそうとする。

「あん? って、ああ、これか」

 美少女を動揺させた諸悪の元凶発見。

 浴衣どころかパンツの最終障壁まで見事に飛び出して、勃起が美しい月に向かって雄々しく挑みかかってた。





[2293] 少女病 九話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:19



 おおっ!? ちょっとだけびっくりした。

 庭から宛がわれた部屋に、ぼちぼち寝ようかと戻ってくると、布団があきらかに、不自然にもっこりとしている。

「…………」

 誰かがそこに潜り込んでいれば、自然なくらいにもっこりとしている。

 美少女に投げられてから、おおよそで十分と少し。――この月のキレイな夜の話は、どうもまだ、続こうとしてるみたいだった

「改めてびっくり」

 これでもかと怒涛のイベント攻めである。

 しかもこれが巧いことに、部屋の中には障子越しの、うっすらとした月明かりしか光源がなく、誰が寝ているのかまでは判別できない。

 無論。

 電気を付ければいいだけだが、それは何となく反則の気がした。

「…………」

 野武士だったらどうしよう?

 襲われたら有無を言わさず手篭めにされること請け合い。

 ああいう血と肉と骨で語り合う、言ってみれば体育会系の世界には、あっちの趣味の人が、かなり多いって聞くしなぁ。

 などと、

「…………」

 非常に嫌な方向に逃避してから、目の前の現実を、もう一度再認識してみる。

 どうもこれはドッキリではなさそうだ。

 布団のふんわりとした膨らみ具合や、おそらく、ではなくて、間違いなく起きているのだろう、その少し怯えているかのような雰囲気。

 それは決して男の中の男、野武士の持っているものではないだろう。

「誰なのですか?」

 短く間抜けに訪ねてみるが、

「…………」

 返事はまるでない。

「…………」

 仕方がないので部屋の敷居を跨ぎ、からりと後ろ手に襖を閉めると、布団を被っている誰かが、びくっと、微かに身体を竦ませたのが、

夜目にも関わらずはっきりとわかった。

 抜き足差し足と近づくと、無言で布団のすぐ傍に立つ。

「…………」

 頭から爪先まですっぽりだが、それでも身長だけはわかるので、データを元に容疑者はかなりの人数に絞られた。

 大体の目測では165センチから168センチといったところだろう。

 この家にはいま、天下御免の女子高生グループと俺以外では、英美さんという妙齢の、熱心な内弟子兼有能な事務の女性しかいない。

 彼女を含めても犯人は限られてくる。

「…………」

 俺はゆっくりと、犯人に動きを悟られぬように、静かに屈んで、布団をそ~~っと、細心の注意を払って足元から捲ってみた。

 ちんまい桜貝(ってどんな貝?)のようなキレイな足の爪が覗いてる。

 さらに捲ると外気を感じたのか、二本の足をもじもじっとした後絡ませて、ささっと素早く奥へと引っ込めた。

「…………」

 俺はそれを追いかけて、でも布団を捲ると寒くて可哀そうだから、じゃあどうすると考えて、苦慮の末、ホントにホントの苦慮の末、

「…………」

 0.3秒で頭を突っ込んだ。

「へ? あれ? え……ええっ? わっ? わわっ!? し、しし、島田さんっ!?」

 侵入する気配を感じて、足をバタバタしだした犯人の声で、誰なのかはほぼ確認できたが、島田誠さんはそんなんじゃ騙されないぜ。

 正体を見せろっ!! ペンライトが無性に欲しいっ!!

「ちょ~~、ホ、ホンマに、ホンマに、これ以上は、マ、マズイですやん島田さん、か、堪忍、堪忍してぇやっ!!」

「そんなんで引っかかるかっ!! じっちゃんの名に懸けてっ!!」

 俺の祖父は九州の平凡な茄子栽培の農家。

 弱々しい抵抗を掻き分け掻き分け、布団を掻き分け足を掻き分け浴衣を掻き分けて、身体ごと突っ込ませて上へ上へと目指す。

 うん。

 男なら上を目指すべきだ。

 途中の道程で触れる肌の柔らかさが、段階ごとに違ってて愉しいばい。

 きゅっと握った足の指からふくらはぎ、浴衣の肌蹴た太股から、視覚ではわからないが、ぽろっとまろびでた乳房はノーブラ大歓迎。

「ふぁッ!?」

 一際むにゅっと柔らかい谷間に、鼻先をぐいっと捻じ込むと、犯人の声がオクターブ(ってどのくらい?)上がる。

「…………」

 途中下車決定。

 ずももっと、迫り上げていた身体の動きを止めると、細くくびれてる腰を、がっと思い切り想いのまま、存分に抱きしめた。

「ううッ………くぅんッ…………んンッ………ん…………」

 顔をぐりぐりと柔らかい肉に埋めると、ふんわりとミルクの匂いに包まれて、ひどく呼吸を圧迫されるが、それでも至福のひととき。

 密閉された空間に響く少女の声も、それに否が応でも、びんびんと拍車を掛けてくれる。

「んぅンッ!!」

 いつも通りに調子に乗って、ぺろりと肌を舐めると、嬌声と一緒に、少女の腕が、俺の頭を強く激しく掻き抱いた。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……うぁッ!!」

 ぺちゃぺちゃと腹を空かせてる犬が、それこそミルクを舐めるような音が、何とも我ながら、恥ずかしくも滅茶苦茶にイヤらしい。

 布団の中。

 暗闇の中。

 視覚が閉ざされてるだけに、聴覚と触覚でもたらされるエロは、いつもよりも確実に、想像力も手伝って三割り増しだった。

 想像力。

 創造主が人間に与えた中でも、一、二を独走で争うほどの、これはずば抜けて秀逸な能力だと思う。

「うぁッ……はぁ………んン……くぅんッ…………」

 まったく持って見えはしないのに、少女が浮かべているだろう表情が、はっきりとリアルにクリアーにハイヴィジョンで思い描けた。

 想像力。

 素晴らしい。

 ピンクの乳首まで完璧に描けるもの。

「…………」

 でも、しかし、

「あッ!?」

 そうは言ってはみたものの、想像だけでは、やはり限界もある。

 何事も実践が大切。

 俺は少女の腰を抱いていた手で、中途半端に、色っぽく肌蹴てるんだろう浴衣を捲り、パンツ越しに、お尻の丸みをするっと撫でた。

「んぅッ!?」

 そして間を置かずに、ぐわっしと、痛くはならない程度に鷲掴みする。

 青い魅力を色濃く残しながらも、適度に脂肪の乗ったお尻を、痴漢にでもなったように、好き放題にむにゅむにゅと弄る。

「あ……島……田……はぁ…さ………あ……ふぅ……島田……さ……」

 俺の名前を連呼するのがいじらしい。

 拒絶の意志ではないのだろうが、指先がめり込むたびに、右に左にゆらゆら振られるお尻に、自然と俺の眼は愉悦の形に細められた。

「……はぁっ、あ…ん……、あ……ッ……ぁ、ああ……」

 少女の荒い息遣いにも、大いに勢いを得て、次のステップへにやけ顔で移る。

 窺うように下着のラインをなぞっていた指先を、少しずつ少しずつ、じわじわと、生尻の感触を愉しみながら侵入させていった。

 そこはじんわりと心地よく温かい。

 手がどうも冷えていたのか、肌を這い回るたびに、ぞくぞくと、粟立っていくのが伝わってくる。

「はぁ………うッ…うッ…んあッ……あッ…はぁんッ……」 

 それは奥へ奥へ、谷間の深く深くへと、少女という生き物が一番恥ずかしく感じる秘処に指先を這わせると、顕著に強くなっていった。

「…………」

 ここまできたら認めるさ。俺はマニアだそれが悪いか。

「あッ!? 待っ、……そこは、んンッ……し、島田さ……はくぅううッ………そんなとこ……はぁ………だ……ッ…め………」

 尻たぶを割り開いて、指の腹でくにゅくにゅと、息づく菊花を優しく丁寧にあやす。

 排泄するためだけにある器官への、それは禁断ともいえる接触。

「は……うくッ……はぁ……はぁ………ふぅ………ううッ………」

 例えそれが自分自身のものであっても、洗浄以外の目的では、ろくに触らない部位だというのに、こうして少女のものに触れてる感動。

「…………」

 ん? んん? あれ? れれって? 感動?

「…………」

 どうも俺はマニアを通り越して、すでに立派な変態みたいだった。

「…………」

 しかし、まぁ、それはともかく、

「ひッ!?……くぅんッ……んンッ………ん………んぅッ……はぁ……んぁッ……ふぅ……ぅあッ……は……ぅああッ!!」

 ほんの僅かではあるが、すりすりしていた中指の先を、微かにぷっくりとしてきた菊花に沈ませる。

 効果は絶大。

 少女は甲高い声を上げるて、びくんっと、身体を弓なりに反らせた。

「うッ!! ……、うぅうッ!! …………んぐぅッ!?」

 ぐねぐねと指先を我ながら器用に蠢かすと、思う様に少女の肢体がのたうつのが、かなり、嗜虐欲なんかを刺激されちゃって愉しい。

「ひゃうッ!?」

 俺はケーキなどを食べるとき、イチゴは必ず最後にする派だ。

 だから、吸いたい噛みたい転がしたいと、ずっと三拍子で狙っていた乳首をとっといたが、ついに耐え切れずに、いただきますをする。

「ひッ……あ…あ……んぁッ………ふぁッ…………ぅんぁッ……うぁあッ!!」

 おっぱいの大きい娘が鈍感なんて、誰が言い出したのか知らないが、ホントに眉唾もいいところだ。

「はうッ!?……ひッ……あ、ンぁッ……ひッ……あ、ンぁッ………はぁ……んぁッ…………」

 触れてもいないのに、硬くぴんぴんに起立していた乳首は、吸っても噛んでも転がしても、どれにも素晴らしい反応を返してくれる。

 菊花で蠢く指も連動させると、腰をくいくいっと、俺の腹の辺りに、ぎこちなく擦りつけてくるのがエロ可愛い。

「…………」

 あれ?

 へその辺りがぬるぬるするなぁ?

 ――なんてな風にとぼけるのは、やはり、些か以上に意地が悪いのだろうね。

 ああ苛めたい。

 密着している身体の間に、強引に手を割り込ませると、俺は前から、手をパンツの中へと侵入させた。

「うぁああッ!?」

 こちらも起立していた少女の真珠を、入れたと同時に擦ってしまったみたいで、身体が、いままでにないほどに大きく激しく跳ねる。

 本来なら少女にはあまりにも強過ぎるだろう刺激。

 気遣ってやるのが年上の役目なんだろうが、それはスイッチの入っちゃってる俺には、とてもじゃないができそうもない。

「ひぅッ……ううッ………ひッ……あ、ンぁッ……はぁ……んぁッ……くぅ……ふぁ…………」

 少女から痴態を引き出すのに夢中だった。

 おそらく普段ならば、しゃりしゃりとした毛並みのはずの恥毛は、ぬるぬるに濡れていて、べっとりと指先に纏わりつく触感は重い。

 もうぐちゃぐちゃだった。

「はひッ!?……んくぅッ……あ、………ひッ……ぅああッ!!」

 ちょっと指先を動かしただけでも、すぐに、甘いのだろう少女の蜜は、イヤらしく粘つきながら濃厚に絡みついてくる。

「ん……ンッ……ふぅ……ぅあッ……は………はぁ……んぅッ!!」

 綻びている秘唇に指先を沈み込ませると、居場所を奪われた蜜がどっと溢れて、くちゃくちゃとガムを噛むような音を耳に響かせた。

「くぅんッ!?」

 どうやら終わりは近い。

 ぶるぶると紅葉ちゃんの身体が震えている。

「…………」

 あ? しまった。隠すつもりもなかったけど、少女の名前を、素でぽろっと言っちゃったよ。

「…………」

 まぁ、いいか。少女少女って連呼するのもあざとい気がするし。とっくに正体バレてるのに、誰もツッコまないヒーローみたいだし。

 気を取り直して、

「はひッ……ひッ……あッ……あふぁッ!!」

 乳首と真珠と菊花の三点同時攻撃。

「ひぁうッ…は……ああッ……あ……ぅああッ……ふぅ……うぅ…あ、ひッ……んぁぁッ!!」

 かりっと甘噛みする歯、きゅっと摘まれる真珠、ぐりゅっと指の根元まで挿される菊花。――少女の終わりはあっけなかった。

 頭を抱えていた手が、ぱたっと、電池切れのように力なく落ちる。

「…………」

 もそもそと身体を上へ移動させ、布団を少しだけ払いのけると、呼吸を色っぽく乱し、とろ~~んとした顔をしてる少女と目が合った。

「紅葉ちゃん?」

「…………」

「紅葉ちゃん?」

「…………」

 返事はない。焦点のいまいち定かでない眼で、俺をただじっと見つめている。

「あの、ね」

「……キス」

「うん?」

「うちにも、……うちにもキスして、うちにも……洋子ちゃんみたいに、……キス、……してください」

 囁くように小さな、そして掠れた声だけれど、その意志を無視するなんて真似は到底、とてもじゃないが俺にはできそうもない。

「…………」

 なるほど。

 綾乃ちゃんの言ってたのは紅葉ちゃんだったわけね。

「洋子がしてたから?」

「違いますっ!! いえ、そうだけど、それだけじゃなくて、その、でも洋子ちゃんがしてたからとか、そういうんじゃなくて――」

「うん……わかってる。ごめんね。すげぇズルくて嫌な言い方をした」

 少女の淡い想いに気づかないわけがない。

 わかりづらい洋子などと比べれば、この紅葉ちゃんは、遥かに正統派の、王道の表現をしてくれてるんだから。

 恋心、ってやつですか?

「…………」

 正直、口にするどころか、こうしてそのワードを考えるだけでも、いい年齢のおっさんには、些か以上に滅茶苦茶恥ずかしいぜ。

「…………」

 でも思春期の少女には、それがよく似合ってる。

「あの、さ、俺みたいなおじさんでいいわけ? その、多分だけど、紅葉ちゃんはさぁ、ああ……っと、キスとかは初めてなんだろ?」

 言いつつ思っちゃったんだが、キスすら初めての娘に、俺はナニを血迷って襲い掛かっちゃってやがるんだ。

 マジでホントにアブないアブない。

 危機一髪で穢れなき純情少女と、どさくさで一発ヤっちゃうとこだったぜ。

 お庭でもそうだったけど、島田誠よ、もう一度くっきりしっかり脳髄に叩き込んでおけ。

 ここは人ん家。

「島田さんやないと駄目、島田さんやないと、……いやや、島田さん以外とはそんなん、キスなんて……うち絶対にしとうないねん」

 ヤバいっ!!

「……そろそろ部屋に戻らないと、洋子たちが心配するんじゃない?」

 俺は切なく儚くうるうると、潤みっぱなしの少女の瞳から、逃げる《ように》、ではなく逃げて、布団から出ると素早く立ち上がる。

 股間は言い訳が効かないくらいびんびんだった。

 元気元気。

 このまま布団で添い寝しながらキスなんか、それも少女から求められてキスなんかしたら、確実に止まれないだろう絶対の自信がある。

「こんなとこ見られたら、また、メンドくさいことになるし」

 俺は務めて落ち着いた大人っぽい(笑える)声を出すと、からりと、帰りなさいの意思表示で襖を開けた。

「あ……」

 背中からは紅葉ちゃんの、がっかりと、落胆した声が聴こえる。

「…………」

 ああ振り返って抱きしめたい。

 しかしそんなこと、勿論、するわけにもいかず、布団から這い出し衣服の乱れを直す気配を、背中で感じながら俺は壁を睨んでいた。

 くっそう。

 ここが自分の家だったらなぁ。猛烈に ムキーーッ!! ってな気分だぜ。

「……どうも。勝手にこんな、押しかけたりして。……ごめんなさい。お邪魔しました。おやすみなさ――」

 でもさ。このぐらいだったらいいよな。

 型通りの社交辞令を機械的にして、顔の表情を俯き隠し出て行こうとする紅葉ちゃんの肩を、俺はぐっと掴んで強引に振り向かせる。

 チュッ。

 小鳥の啄ばむような軽い音。

「え?」

 少女の間の抜けた顔と間の抜けた声。オーケーオーケー。問答無用で可愛い過ぎです。

「続きはまたね、紅葉ちゃん。……おやすみ」

 紅葉ちゃんはぽわ~~と惚けた顔から、ハッとなって現世に戻ってくると、ばばっと頭を九十度の角度で豪快に下げて、

「は、はひ。お、おお、おやすみなさいませ」

 裏返った声で挨拶しながら脱兎の勢いで去っていった。

「…………」

 その走りっぷりに感動しつつ、俺は小さく口の中だけで呟く。

「紅葉ちゃん、パンツの代えはあるのかなぁ?」

 少女の蜜で濡れてる手を、そ~~っと鼻先に持っていって、くんくんとしてる姿は、我ながら、百年の恋も醒めるだろうと思われた。

「…………」

 ぺろっと舐めてみるとホントに甘く感じる。

「…………」

 人ん家ではあるけれど今夜は、オナニーでもしないことには、とてもではないが寝られそうになかった。





[2293] 少女病 十話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:20



 良いなら良い。駄目なら駄目。

「島田くん」

 会社という組織が、ボランティアで運営してるのではない以上、上司は部下に嫌われても、はっきり言わなきゃいけないときがある。

 目の前にいる彼女もそうだ。

 チームのリーダーとしての責務を果たすべく、長い髪をふわさりと、長く細い指先で、自然に優雅に豪奢に梳くと言った。

「ちゃんと朝ごはんは食べてる?」

 それはくせなんだろう。

 少しも落ちてない眼鏡のリムを、くいっと、知的な女性の八割はやる、あの仕草で押し上げて、にやりと、愉しそうに薄く微笑んだ。

「…………」

 誰かに似てると、思わなくもない。

「食べてるのなら明日からは、抜いた方がいいかもね。そんなの意味ないから。ダイエットでもした方がまだいいわ」

 しかし、想いたくない。

 この性悪女は嫌われるのが趣味としか思えん。

 ネコ娘のパロメーターも気をつけないと、将来はこんな成長をしてしまうんだろうか? ……やれやれ、洋子の十年後が心配だぜ。

「人の心配をしてる場合なの?」

 もうこの程度じゃ俺は驚かんよ。

「そうそうパソコンにはさ、断片化っていうのがあるよねぇ」

「は?」

「わたし常々思うの。この会社にはそろそろ、最適化が必要なんじゃないかって? 島田くん、あなたはどう思う?」

 知るかよ。

「とりあえず今日はもういいわ。企画案のレポート提出は、来週までの宿題にしてあげる。薄味の脳をフル回転させて考えてきなさい」

 こ、この女、あ、足の裏を滅茶苦茶舐めさせてぇ。

「下がっていいわ。お疲れ様、って言うほどに、仕事をしたかは疑問があるけ――」

「凄んげぇお疲れ様でしたっ!! お先に失礼しますっ!!」

 性悪女の台詞に割り込むように言ったった。

 なんとも我ながらガキ臭くて、非常にちっぽけな仕返しだが、相手がほんの一瞬ではあったが、むっとした顔をしたのでオーケー。

 僅かばかりだが溜飲が下がったね。

 でも、

「島田くん」

 聴こえないふりしときゃいいのに、俺は猫撫で声にうっかりと振り返る。

「…………」

 しまった。

 と、思いはしたが、勿論、島田誠の最近の得意技、後の祭りである。いまさら気づいてないふりはできっこない。

「知ってる?」

 数えるのにも飽きるほど、散々、この女のこの手に俺は引っかかってた。

「頭の悪さがバレない方法っていうのはね、ひたすらしゃべらないことなんだって。あなたは少し口が滑らか過ぎるから気をつけて」

 それだけ言うと興味を失ったのか、俺から視線を外して、あっちいけ、そんな感じで軽く、しっしっと手を邪険に振る。

 くっそう。

 その手のネコ属性は圧倒的にそっちだろうに。

「また来週ね。お疲れ様」

「……どうも、お先です」

 いつも通り完全にわかりやすくやり込められた形。

「…………」

 ずんずんと自分の机に、前のめりで、競歩の選手みたいな早足で戻る。

 椅子に対する愛情表現ゼロで、どかりと座ると、後ろの席にいる奴にも聴こえ易いように、滑舌も良く独り言を口にしてやった。

「いつか押し倒してやる」

 すると向こうも独り言で応える。

「その日が来たら教えてくれ。第二資料室辺りでよかったら、誰も近づけないようにしてやるよ」

 肩越しにそちらをちらりと見ると、同期である野村のパソコンを操る指先は、ちこっと足りとも止まってなかった。

 時刻は只今金曜日の夜七時きっかり。

 ぱっと見だと、仕事をばりばりしてる人に、まぁこれで、真面目っぽい風体だから見える。

 だが、

「なにしてん?」

 やってるのは仕事ってわけじゃない。

「ブログ書いてる」

 野球界に確実に名を残す名将と同姓同名だが、あれほど采配が切れてもいなければ月見草でもない男・野村克也。

 すでにプライベートタイムに入っていた。

 こいつは仕事はちゃんと、それも完璧にするのだが、残業は絶対にしなかったりする。

「なになに――」

 椅子に座ったまま背を反らし、ちょうど書き終わったらしいブログの内容に、興味のないふりで、その実興味津々に眼を通して見た。

 日記とか作文とか、そういった文章は例え下手でも、結構書き手の人柄がでてるので読んでて面白い。

 本人を目の前にしてっては、些か以上に悪趣味かもしれないが、

「先週からそこそこカウンター回ってる」

 べつに野村も隠そうという気はないみたいだ。

 えっと。

「頻繁にメールが来てるみたいで、性悪の上司に呼び出される前まで、熱心に携帯を打っていたが、絵文字とか使ってるかが気になる」

「文章が固いけど速報性を重視した」

 どうもこれは、いまこの場で見た事実を、とりあえず忘れないうちに、書き殴っただけのものらしい。

 誰かに絞って人間観察みたいなことをしてるみたいだ。

「席に戻ってもカリカリはしているが、それほど後に引きずる奴じゃないし、どこかそれも、今夜は取ってつけたように嘘臭く感じる」

 ふうん?

 オフィスを見回して見るが、カリカリしてる奴は、見たところいないみたいだけど、これは一体誰のことなんだろうな?

「おい。そこのボナンザブラザーズ」

 二つ離れた席に座ってる後輩の高取と、その後輩の根立が、ゲームをしてる(こいつらも仕事してないな)顔をこちらに向けた。

「はい? 何ですか先輩」

「この呼び名に抵抗感はなくなりましたね」

「黙れ根立っ!!」

 高取は顔は良いけど、それが格好良さに活かされないタイプ。

 根立は小柄で黒ブチ眼鏡の、いかにもこましゃくれたタイプ。

 二人の説明共々でどうでもいいけど、《ボナンザブラザース》てのは昔のゲームのタイトルで、やってみるとこれが地味に楽しい。

「どっちが勝ってんだよ? 対戦成績教えてくれ」

 時間潰しや気分転換でゲームをしてるならともかく、本気でやってるこの二人なら、負ければカリカリもクルだろう。

 特に高取はのめり込みやすいから、後輩の根立に負けて、頭に血が上ってたかもしれない。

「五分五分ですね」

「途中でリセットがなければ、八分二分ですよ。どっちが八でどっちが二かは、あえて言いませんけど」

「黙れ根立っ!!」

「……まぁ、適当に頑張ってくれ」

 しかし考えてみれば、この二人がゲームで勝った負けたなんて、わざわざブログに書いても、面白くも何ともないネタだよなぁ。

 野村が興味を持つとは思えん。

「皿成」

 それならばと反対側の、俺のすぐ隣りの席で、熱心に、そしてコソコソしているが異様に目立って、いかにもなオタクなにーちゃんが、

真剣だがにやにやした顔でエロゲーをやっている。

「うん? 何ですか先輩」

 画面を見ると女の子がもじもじと赤い顔で、主人公をテレテレしながらデートに誘っていた。

「…………」

 皿成の丸く弛んだ顔を改めて見ると、俺の青春を邪魔しやがってと言っている。……ごめんなさい。申し訳ない。すぐ終わらせます。

「お前さ、あの女にさっき呼ばれたじゃん? 怒られたりとかした?」

「いいえべつに。鯨の話をされただけで、すぐに帰っていいって言われましたよ?」

「鯨?」

「鯨が乱獲されないのは知能指数が高いからだって。どうしてそんな話をしたのかわかりませんが。動物好きだと思われてるのかな?」

「……きっとそうだ」

 無用に傷つかないためには、ときに、素直な気持ちってのも大切なのかもしれない。

「…………」

 しかしそれはそれとして、どうも皿成でもないみたいだ。

「そうするとこれは?」

「もうちょっと先まで読めば、先週のこととかも書いてあるし、思い当たる人間はすぐわかる」

「ふむ」

 ほったらかしになってるマウスを握ると、カチッカチッと、真相に迫る後半を読むべく画面をスクロールさせる。

「先週の土曜日に原宿の某ボーリング場で見たあの娘からだろうか? 大人っぽい雰囲気の娘だったが、おそらくは女子高生なのだろう」

 俺だってね、馬鹿だけど限度は知ってるんだ。

 最初の一文目を読んだ段階で、誰のことかなんてのは、とっくに思い当たっていたさ。

「ハイタッチしていた姿には、まだあどけなさが残っていて、他人事とはいえ、同期が援助交際で捕まらないか心配だ」

「あの原宿の無意味に派手なボーリング場、俺がお前に教えてやったの覚えてる?」

「…………」

 忘れてた。でもたったいまになって思い出した。

「一応は友人として訊いておくけど、前科がつくような付き合いじゃないよな?」

「……当たり前だろ」

 どの辺りからが日本国の法に触れるのかは、キスはオーケー? おっぱいは駄目ですか? とか、非常に気にはなったりしますけど。

 うん。

 やっぱし少女たちとの関係は、あんまり人様には、大きな声で言わない方がいいのだろうね。

「そこに金じゃない繋がりがあっても、捕まる場合があるのは覚えといてくれよ」

「オーケー」

 わかってますとも。

「でもネタとしてはそこそこ面白いから、ほどほどに、女子高生とは突っ込んだ付き合いをしてくれると、ブログ的にはとても助かる」

 どうしたいんだよお前は。

「派手な事件でも起こさない限り、ほとんど問題にはならないし、要するに社会にはバレないように、でも俺にはわかるよう踊ってくれ」

 こいつをフレンドとしてカウントしても、それは果たしていいのかな?

「さてと、これでやりたいことも言いたいことも終わったし、何だか雨も降ってくるみたいだし、今日はもうこれで帰ろうかな」

 ブログを閉じて立ち上がると、脇にどけてあった鞄を手に取って、それだけで仕度が済んでしまったのか野村が立ち上がる。

「え? 雨降んの?」

「さっき天気予報見たら大雨だってさ」

「ふ~~ん」

 あの娘らそれわかってても、今夜俺ん家に来んのかなぁ? 

 ざっとではあるけれど、折角部屋も片付けたんだし、その労力を無駄にはしたくない。……来て欲しいなぁ。

「じゃ、また来週」

 言って野村は軽く手を上げると、企画チームの一番乗りで帰ってしまった。

「…………」

 念のために五分ほども待って、完全に帰って来ないのを確信すると、俺はポッケから携帯を取り出して、まだ書きかけのメールを見る。

 散々遣えと遣えと、約一名に言われてるが、絵文字とかは全然遣ってない。

『八時には何とか帰る』

「…………」

 確かに味気ない文章ではあるが、毎度毎度解読作業が必要な、おでこちゃんの、眼がチカチカするメールよりは良いだろう。

「送信っと」

 どうでもいいけど、女子高生ってメールがホントに好きだよね。

 まぁ、こうやってこの程度の用件を、四人にまとめて伝えられるのは便利だけど、話した方が早いことまでメールでするもんな。

 俺はメールはあんまり好きな方じゃない。

 その意味では俺の知り合いの女子高生グループでは、好きなのは幸い、おでこちゃんだけで良かった良かった。

「…………」

 そういやそのおでこちゃんは、偶然ではあるが、一人だけ遅れて、俺の帰りと同じ、八時くらいに来るとメールがあったなぁ。

 窓の外を見てみると、空模様はすでに、かなり怪しくなってきている。

「…………」

 ふむ。

 この辺りが妥協点かね。まどかちゃんだけにメールを打つ。

『どしゃぶりにならないうちにおいで』

 最後に(はぁと)なんて、絵文字よりも、よっぽど寒い台詞を入れておいた。





[2293] 少女病 十一話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:23



 牡生命体なら誰でも一度は、ムラムラくる欲求を抑えられずに、やっちゃったことがあるんじゃないかな。

 その行為はとてもみっともない。

 でもさ、そんなの俺だってわかっちゃいるけど、って類なんだよねこれは。

「…………」

 まぁ、勿論、そんなのは言い訳だけどさ。

 だけどそんなの、わたしは一度もしたことなんてありません、なんて言い切る奴より、すまなさそうに、若気の罪を告白する奴の方が、

同じ一人のオトコとしても、同じ一匹の牡としても、俺には余程信用できるね。

「…………」

 まぁ、勿論、そんなのも言い訳だけどさ。

 女性には誠にごめんなさい。

 ずりずりと、ずりずりと、少しずつ少しずつ、電車のシートに、異常なほどの集中力を発揮して、深く沈み込むように腰掛けていく。

 前の席に座ってるOL風の女性。

 半分寝ちゃってるのか、短いスカートを穿いてるのに、足のガードがべらぼうに緩い。

「…………」

 もう何をしようとしてるかわかるよね?

 この様子をもしもどこかで、第三者の視点で見ていたとしたら、呆れて失笑くらいしかできないだろう。

 携帯でも構えて捕まった方が、何なら世の中の為にはいいかもしれん。

 だが、

「あ~~疲れたっ!!」

 がらがらの車両中に響くほどの大きな声を出して、どさりと隣りに座った少女は、俺と女性の目を、寸でのぎりぎりで覚ませてくれた。

「あ?」

 ちょうど女性は降りる駅に着いたみたいで、ドアが開くと慌ててホームへと駆け出していく。

 少女と俺。

 これでこの車両は完璧に二人っきり。

 誰も邪魔する者のない空間になった。

「……見てたわよコーチ」

「え? い、いや、ま、まだ全然、ちこっとも見てないですよ」

 しかし、まぁ、だからといってべつに、特別に色っぽい話になるわけでもなく、どころか速攻で、乙女のお説教タイムに突入である。

 ばっちりしっかりがっつり観察されてたみたいだ。

「情けないとは思わないの?」

「思います」

「じゃあどうしてするのよ?」

「本能です」

「…………」

「…………」

 う~~ん。なんだか俺さ、小学校の先生にガミガミと叱られてる、年中鼻垂らしたアホの子みたいじゃない?

 まどかちゃんは滅茶苦茶に怒ってらっしゃった。

「そういうのに興味があるっていうのも、そりゃ男の人だからわからなくはないけど、でも下着を見たからどうだっていうわけ?」

「……それは」

 いくら説明してもわかってはもらえないだろう。

 何故パンツを見てしまうのか?

 うん。

 お答えしましょう。

 それはそこにパンツがあるからなんですね。女の人を馬鹿にした答えのようですけれど、それ以外には的確に真面目に答えようがない。

「…………」

 だけどそれを女性に言ったところで、それも少女に言ったところで、火に油を注ぐだけなのはわかり切ってる。

「なんなのよ?」

「なんでもない」

 そう答えとくしかなかった。

「女性は男性が考えるより、ずっとそういう視線に鋭いのよ。例えそれが見てるだけだって、迷惑防止条例とかもあるんだからねっ!!」

「……はい」

 それに的確に真面目に文句なく、少女のいってることの方が徹頭徹尾で正しいし。

「下手をしたらさっきだって、女性が目を覚まして騒ぎ出したら、捕まってる可能性だってあるんだからっ!!」

 少女がおでこを真っ赤にさせてヒートアップしてきたし。

「……いつもいつもあんなこと、まさかしてるんじゃないでしょうね?」

 ジト目で睨む少女の視線を横面に感じながら、俺は派手に雨の降り出した窓の外を見つつ、蚊の泣くようなか細い声で答えた。

「そんなん全然してへんよ」

「何故、エセ関西弁なの?」

 ずいっと寄せてくるまどかちゃんのおで、じゃなく顔から、俺は逃げたくないけど逃げるように、反対向きへすっすっと素早く反らす。

「コーチ……あのさ。そんなに、さ。その、そんなに見たい……わけ? あの、えっと、……下着?」

「…………」

 あるよね。人に本当のことを言うことも、人に嘘を吐くことすらも、どちらもできないときってのが誰にでもさ。

 俺の場合はいまだ。

 どっちを選択しても、幸せな未来が、まるでちっとも、自信ありありで見えやしない。

「……まったく……もう……」

 寄せていた身体をすっと離すと、まどかちゃんは立ち上がって、隣りの席から、OLさんの座っていた正面のシートに移ってしまう。

「…………」

 あれ?

 ってな感じで、思わず自分で驚いちゃうくらいに、それだけのことが、ずきんっと痛みを伴って、意外なほどショックだったり。

 これは嫌われたかなぁ。

 今時の若者といったところで、やはり少女って生き物は、永遠に変わることのない清純派だからねぇ。

 なんて。

 都合のいい想像と感想と妄想をしてると、

「うん?」

 コンコンと、踵を鳴らすような、いや、間違いなく、踵を鳴らしてる音が、こっちを見ろってな風に、正面のシートから聴こえた。

「…………」

 要望通りにそちらを見ると、まどかちゃんが、首は動かさずにきょろきょろと、やたらと左右に視線を走らせている。

 なんだべさ?

 と。

 思って、なんとはなしに眺めていると、

「へ?」

 長いスカートの裾を掴んでいた少女の手が、ゆっくりと、でも確実に上へと、少しずつ少しずつ、肌を露出させながら捲くられていく。

「…………」

 その速度に合わせるかのように、俺もゆっくり、キレイな足から視線を上へと移すと、少女の顔はおでこまで、真っ赤々になっていた。

 図らずもさっき自分で言ったように、男性の視線を鋭く感じているらしい。

 視線を左右に飛ばしながらも、どんどんと、そしてあきらかに、怒りによるものではなく、羞恥で肌を赤く赤く艶やかに染めていく。

「…………」

 メチャ可愛かった。

 紅葉ちゃんみたいにわかり易くはないが、まどかちゃんも、男に尽くすってタイプなのかもしれない。

 いや、間違いなく、そうなのだろう。

 口では色々と言うけれど、野郎の身勝手な望みを、結局はこうして、恥らいつつも(ここがポイント高い)叶えてくれるんだから。

 ええ娘や。

「…………」

 勿論。

 それがなくても、みんながみんな、それぞれがええ娘で、魅力的なのは変わらないけれど。

「…………」

 ずりずりと、ずりずりと、少しずつ少しずつ、電車のシートに、異常なほどの集中力を発揮して、深く沈み込むように腰掛けていく。

 少女の手はスカートを、もう膝まで捲り上げていた。

 これで足のガードさえ緩んでくれれば、これ以上はないベストポジションである。

 ただ、これ以上のステップとなると、さすがに、少女の手はぴたりと、乙女の恥じらいで止まってしまったみたいだ。

 俯かせていた顔を上げて、俺をちらりと仰ぎ見る。

 スカートの裾を握り締めてる手が、ふるふると震えて、力の入れすぎで白くなっていた。

「…………」

 ああ苛めたい。

 普段が随分と勝気な印象だけに、助けを求めるような視線は、俺の最近寝起きのいい嗜虐心を、ふつふつと煽って煽って仕方がない。

「まどかちゃん」

 短い言葉と目配せだけで、少女に意図を伝える。

 すると、

「はぁ……」

 少女は諦めたように、また顔を俯かせて、切ないため息とともに、ぴっちりと閉じていた両の足を、その奥が俺に見えるよう静かに、

左右へと大きくはしたなく広げた。

「…………」

 薄いピンク。

 着ている服とやはり同様で、過剰なほどに、フリフリのレースが付いてる。

 着ている服とこちらも同様で、ぱっと見ただけでも、その穿いている下着のセンスは、あまりよろしいものとはいえない。

 だけどそれがいい。

 まるで小学校高学年の女の子が、初めて自分で買った下着みたいで、やたらめったらで異様にどきどきする。

「…………」

 確実に俺のアレな病気は進行していた。

 とはいえ。

 瞳をぎゅっと目一杯閉じて、見られているだけなのに、はぁはぁと、肩を緩やかに、そしてエロく上下させているまどかちゃん。

 この病気に治療法なんてもんがあるわきゃない。

 否。

 あったとしても、断固とした決意で、俺はこのアレな病気と、一生涯付き合っていこうと思う。

 まぁ、少女に負けないくらい息を荒くしながら、びんびんに勃起していては、かなりの高レベルで、説得力てもんがないけれどさ。

「まどかちゃん」

「…………」

「まどかちゃん」

「…………」

 呼びかけても少女から返事はない。

 時折り。

 羞恥に耐えかねるように呻いて、いやいやと、首を小さく振りはするが、まどかちゃんから返ってくる言葉はなかった。

 オーケー。

 いま思いついたことには、その反応はとても好都合です。

「嫌なら嫌って」

「…………」

「ちゃんと言ってね」

「…………」

「もっと近くで、まどかちゃんを、見ちゃ駄目かなぁ?」

 我ながらこれは物凄く卑怯もんだ。

「え?」

「駄目かなぁ?」

「……あ、……ううっ………ああ…………」

 予想通り。

 まどかちゃんは何も言えずに、顔をさらにさらに、鮮やかに赤くさせるだけである。

「いくよ」

「……あ?」

 返ってきては困る返事を待たずに、俺は足腰と腹筋だけの、気持ちの悪い動きで身体を起こすと、そのままの勢いで少女の前に跪いた。

 なんかここまでクルと、もう心身ともに、完全無欠の変質者だね。

「…………」

 けれどそんなの空前絶後で構いやしないぜ。

 いい匂いがする。

 少女の大切に大切に守らなくてはいけない秘密が、誇張抜きで目と鼻の先に、可憐でありながらも生々しく息づいていた。

「……可愛い」

 意識せずとも自然に言葉が出てくる。

「んッ!?」

 吐く息が肌に触れたのか、まどかちゃんの身体が、鼻に掛かった呻きを洩らして、大きく短く、そして激しくぴくんっと揺れた。

 それに反応して、

「ひゃッ!?」

 少女の滑らかな内腿に、俺は思わず条件反射で、ぺろりと舌を伸ばし這わせる。

「…………」

 それってどんな条件だって、真面目に訊かれたりしたら、それはそれで大いに困っちゃうけどね。

 って。

 そんなのいまはどうでもいいんだ。

「ふぅッ……んンッ……あ…うぅッ……んッ……はぁッ……ン……んふぁ…………あッ…………」

 唾液を粟立つ肌に塗り込むようにして、丁寧に丁寧に、丹念に丹念に、麗若い女子高生の、張りのある太ももを熱心に舐め回す。

 目指す先は絶対不可侵である少女の聖域。

 けれどさ、

「うッ…うッ…んあッ……あッ…はぁんッ……あ…あぁんッ……ふぁッ…………ぁッ………はぁ……んぁッ……」

 そんなに簡単にそこへは、辿り着けるわけがないんだよね。

 頭のどっかではわかっちゃいたんだ。

 少女のスカートに突っ込んだ頭のどっかでは、人に見られたら容赦なく警察に捕まる姿のどっかでは、残念だけどわかっちゃいたんだ。

 ガクンッ。

「ぶえっ!?」

 電車が大きく下手くそに揺れる。

 ゴムのラインにまでは達していた舌を噛みながら、俺はスカートから弾き出されるように、無様にもんどり打って床に這いつくばった。

「あっ?」

 ぷしゅ~~っとドアの開く音に、まどかちゃんが慌てたように足を閉じてしまう。

「…………」

 若干だが鉄の味のする口を押さえながら、俺は運転手を泣いて謝っても許さないってほど、思いっきりぶん殴りたくなってきた。

「コ、コーチ。も、もう着いたから、お、降りないと」

「……ほうだね」

 痛くて呂律が廻らん。

 まどかちゃんが降りたので、俺も仕方なしに、急いで電車から降りると、まだ雨はぱらぱらとしか降ってなかった。

 そういや大雨になるんだったけ。

「まどかちゃん」

「は、はい?」

 俺が声を掛けると、まどかちゃんは裏返った声だが、車内とは違って、嬉し恥ずかしの沈黙ではなく、ちゃんと返事を返してくれる。

 走り去る電車を横目で見ながら、返す返すも、運転手を殴りたくなってきた。

「傘持ってる?」

「う、うん」

「そう。それはよかった」

 本当に。

 持ってなかったら、相合傘になるんだろうけど、それはロマンチックなんだろうけど……。

「我慢できそうもないもんな」

「え?」

「いやいや。なんでもありませんよ」

 考えてみれば今回は、先週の白鳳院家の一夜と比べても、あまりに、そして遥かに、電車内だってのに暴走の度が過ぎていた。

「コーチ。そこじゃ濡れちゃうわ」

「うん」

 頭を冷やすとしよう。

 社会にはバレないようにって、同僚にも釘を刺されたばっかりだしな。――自分のためにも、少女のためにも。

「そうだコーチ」

「なに?」

「先に言っときますけど、その場の雰囲気でするわけじゃ、絶対にないんだからね? この一週間、わたしなりに考えてみたわ」

「あい?」

「一週間なんて短すぎるかもしれないけど、こういうのはきっと、時間じゃないんだよね?」

「うん?」

「これ見て」

「どれ?」

 まどかちゃんはポケットに、そっと手を入れ、何かを取り出すと、大事そうに包むようにして俺の前へと翳す。

「逃げちゃうから、もっと顔を近づけて」

 言われて俺は素直に、背を屈めて顔を近づけ――チュッ。

「はい?」

 唇を奪われた。

「ファーストキスはレモンの味って、あれってやっぱり嘘みたいね」

 俺の血が少しついた唇を、まどかちゃんはぺろっと舐めて、ハニカミ照れながら微笑む。

「早く行きましょ。洋子たちが待ってる」

 くるりと少女は背を向けて、改札口へと歩き出したが、不意打ちにぼ~~っとなってしまった俺は、しばらくそこから動けなかった。

「…………」

 唇を軽くぺろっと、少女を真似て舐めてみる。

「やれやれ」

 雨で冷ましたはずの頭は、あっという間に、眩暈がするほど熱くなっていた。





[2293] 少女病 十二話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:24



「誰にケンカを売ったか教えてあげる……!?」

 などと。

 少女が遣うには物騒な言葉をセットにして、ヨーコの情け容赦が一片もないエヴァブラックの砲撃が、俺の機体へ雨霰と叩き込まれた。

「…………」

 無理やり売らせたくせに。

 装甲の薄いアーチャーフィッシュが、見事にバラバラになって、哀れ山吹色のガスの海へと消えていく。

 諸常無行。

 なんとも儚いねぇ。

 ほんの僅かな時間驕っただけなのにさぁ。

「長距離からチクチクとかは、あたしって大嫌いな人なの」

「ふ~~ん」

 俺はコントローラーをことりと置いて、洋子へと非常に冷めた返事を返す。

 対戦。

 ゲームを開始した序盤こそは、俺もそこそこやり込んでいたので、ほどほどには良い勝負になると、まぁこれが思ってたんだけど。

 北綾瀬の魔術師。

 千代田線の奇跡。

 足立区の火薬庫。

 私立東綾瀬高校二年山本洋子さんの腕前と、巷で呼ばれてる大層なニックネームを、これっぽっちも知らなかったから。


「…………」

 久しぶりに味わっちゃったね。身の程を思い知るって奴を。

 悔しいとすら感じない。

 レベルではなくステージが違っていた。

「…………」

 洋子はケンカと言ったけれど、ああいうのをケンカとは、多分おそらく絶対に言わない。

 それはいうなればハブ対マングース。

 神速での接近。

 理不尽な一撃。

 荒れ狂う暴力。

 スタートと同時にダッシュで稼いだ距離は、アタック開始と同時に、あれよあれよと詰められて、笑えるほど一方的にボコボコである。

「…………」

 いきなりさせられたゲームではあるが、あそこまで豪快で爽快にやられると、むしろ胸がスカッとして清々しい。

「命令はねぇ――」

 これさえなければ。

 勝った方が何でも命令できるなんて、そんなオイシイ話に飛びついたのがいけなかった。

「ん~~、ど・う・し・よ・う・か・なぁ………」

 言葉を思わせぶりに区切りながら、洋子はそ~~っと首を回して、自分の背後を、そろそろとそろそろと恐る恐るで窺う。

「寝てる、よね?」

 俺も同じように背後を見ると、紅葉ちゃんとまどかちゃんと綾乃ちゃんの三人が、すやすやと安らかに、あどけない顔で眠っている。

 いくつかその周りには、ビールの空き缶が転がってた。

 量は飲ませてないが、大体若い娘はこんなもんだろう。

 勢いでガーーッと飲んでそのままダーーッとつぶれる。

「…………」

 みんな。

 お酒をどうせ飲むんなら、早く上手で格好いい、大人の女の飲み方を覚えろよ。

 俺みたいに人畜無害な男ばかりならいいけど、そうじゃないんだからさ、そんなパンツの見えそうな格好で寝てたら悪戯されちゃうぞ。

 って。

「…………」

 よく考えれば女子高生が、無防備なあられもない姿で、こうして転がってるってのは、夢よりも美しい絶景な空間だった。

「…………」

 何だかムラムラしてきたなぁ。

「誠、目がやらしい」

 洋子の声がひんやりと背筋にひゃっこい。氷をこっそりとシャツに投入された感じだ。

「こほんっこほんっ」

「誠、目もやらしい」

「ああ、三人とも、しっかり寝てるみたいですけど?」

 でなければ、それが誰とは言わないが、ヨダレを垂らしただらしない、だけど可愛い顔を、男の前に晒したりはしないだろう。

「そう」

 洋子は短く応えて、

「そう」

 洋子は短く応えて、

「お?」

 コントローラーのスティックをぐりぐりしながら、こてんっと、俺の左肩に小さな小さな頭を預けてきた。

「それじゃ――」

 ぐりぐりがとまらない。

「キスして」

「え?」

 洋子の短い答えに、俺は首をぐりんっと、起きてるのに寝違えそうになって、弾かれたように、画面を真っ直ぐに見てる顔を覗き込む。

「…………」

 一見すると何でもないような顔をしている。

「…………」

 しかしそれは二見までしなくとも、何でもないのが表面上だけなのは、じっと見ていれば誰にでも簡単にわかることだ。

 唇が微かにだが震えている。

 画面を見てはいても、目の焦点が合ってはいても、そこに意識も関心もまるでない。

「…………」

 俺へと一途に向いてるのがはっきりわかる。こんな命令を拒否することなんて俺にはできっこない。――どんどん命令してください。

「…………」

 もう一度だけ俺は後ろを窺うと、

「あ……」

 洋子のほっそりとした頼りない肩を、猛る気持ちを抑えてソフトに抱き寄せる。

「どっちがいい?」

「んッ!? ……ど、どっち……て?」

 小さな耳孔に息を吹きかけるように囁くと、そこがウィークポイントなのか、洋子は体育座りをしたまま、ぴくんっと身体をすくめる。

 ああ苛めたい。

 ちなみに今日の山本洋子さんのファッションは、タイトなタンクトップのシャツに、少しサイズが大きめの七分丈のキュロット。

 手に伝わる少女の肌の熱が、ダイレクトに感じられて心地いい。

「優しいのと激しいの、どっちのキスが洋子はいい?」

 う~~ん俺なんだかこの頃、こうやってトリップしちゃう回数が、この数日だけで飛躍的に増してるな。

 キャラとは違う台詞がポンポン出てくる。

「命令してくれよ。優しいのと激しいのどっちにするのか?」

 まぁ、嫌いじゃないけどさ。

 新しい自分っていうかのかなんていうか、変わっていくものというか、変わらずにいるものというか、……何だか意味がわからんなぁ。

「どっち?」

「ひッ!?」

 少女の芳香をす~~っと吸いつつ、ぬろりと舌先を、複雑な造りの耳朶に挿し込むと、体育座りの足がぴょこんっと跳ねる。

「どっち?」

 再度同じ質問を囁きながら、するりとシャツの肩紐を外しても、洋子からはこれといって抵抗はなかった。

「ううッ………くぅんッ…………んンッ………ん…………」

 押し殺したような声を洩らすたびに、きゅっきゅっと握って開いてを繰り返してる裸足の指先が、どうしてだか堪らなくエロく感じる。
 ただ、

「ンッ、ンッ…………ふぅッ……はぁ……ぁッ…は……ああッ……あ……………」

 声の質はどんどんと艶のあるものに変わっていってるのに、コントローラーを変わらず持っているのは、間抜けで微笑ましかった。

「どっち?」

 チュッ。

「んッ!?」

 キスマークがつかないよう軽く、首筋に唇を押し当て、舌を這わせながら、シャツと乳房の隙間に指先を潜り込ませる。

「どっち?」

 SとMは紙一重。

 命綱のようにコントローラーを握って固まってる洋子を、意地悪く観察しながら、ずるりと、俺は力任せにシャツを引き下ろした。

「あッ!?」

 青と白の縞々のブラジャーごと。

 反動でぽよんっと瑞々しい乳房がまろびでて、魅惑の曲線を描くその頂点には、乳輪の中心にちょこんと載っている乳首は淡い桜色。

 美乳。


「…………」

 きっとそれはこれだ。これがそうなんだ。思わず魅入ってしまう。冗談抜きで感動しちゃっいましたよ俺は。

 そしてその感動そのままに、

「…………」

 俺の指先は乳房、いや、おっぱいに触れる。

 揉むというよりは、形を確かめるように、なでなでと、さわさわと、赤ん坊でも撫でるように慎重に指先を動かした。

「うッ……うッ…んあッ……あッ…はぁんッ…………んぅッ!!」

 女の子ってのは繊細な生き物だから、やっぱり扱うならソフトな方がいいのだろう。

 いきなり強すぎる刺激を与えてはいけない。

「ふぅッ……んッ……ん……うぁッ………んッ……はぁ、……んぁッ……ぅああッ…………」

 色素の薄い乳輪をなぞるように、だけど決して乳首には触れぬよう、少しずつ少しずつ、洋子の青い身体に快楽パルスを送っていく。

「ん……んぁッ……………ン……んふぁッ……ん……ンッ……ふぅ………」

 目をぎゅっとつぶって眉間に皺を寄せる少女。

 じわじわと悦楽の感覚に、侵され犯されていくその姿は、蜘蛛の巣にかかる憐れな蝶を見るようだった。

「…………」

 俺の手でこの少女を滅茶苦茶にしてやりたい。

 襲ってくる暴力的な衝動。

 まるで深窓の令嬢かのように、大事に大事にされていた敏感な突起を、いきなりの不意打ちで、ちょっと強めにきゅっと捻る。

「ひゃンッ!?」

 命綱であるはずのコントローラーをゴトリと落として、若いだけに経験の足らない身体を、洋子は甲高い声を上げながら仰け反らせた。

「…………」

 少女たちと知り合ってからというもの、溜まりに溜まっていたものが、それを見てあっさりと限界点を超える。

 素早く盛り上がってるズボンのチャックを下ろすと、

「ンあぁッ……はぅッ…………あぁんッ……ふぁッ……ひッ……ンンッ…………ああ…………」

 しだいに硬さを増してくる乳首を弄いながら、命綱だったコントローラーがなくなって、所在なげにうろうろしてる洋子の手を掴む。

 何も言わずにやはり硬くなってる勃起を握らせた。

「あ?」

 洋子が呆けた声を出して、自分の手が握っているものを見る。

「そのまま」

「う、うん」

 それは間違いなくで詰まらない感情だ。

 けれど緑色の瞳を大きく見開き、ぎょっとした顔をする洋子に、牡として無視はできない心が、確かにこちょこちょとくすぐられる。

「…………」

 そうなった経緯は些か以上に情けない。

 でも虎化脅しには十分以上。

 愉しい二人遊びではなく、虚しい一人遊びで黒く逞しくなった勃起が、くわっと縦割れの唇を開けて、少女を威嚇するように睨んでる。

「洋子は握ってるだけでいいから」

「う、うう、うん」

 キョドッてドモって上ずってる声を合図に、俺は非常に慣れた手付きで、少女の手に重ねている手を動かした。

 ゆっくりと。

 そうじゃないと爆発しそうなくらいに今日は凄い。

 一点に収束された血液が、どくんどくんと規則正しく脈打ってるのが、洋子の手を通していても、力強くびんびんと伝わってくる。

「…………」

 代わりに堪え性はないみたいだが。

 いつもならそんなことはないんだけど、ホントなんだけど、十数回ほども擦った辺りから、今日は早くもヤバいことになってきていた。

「ま、まま、誠。な、な、なんか、こ、これ、お、大きくなってきて、な、ないかな?」

「うん」

 火山の噴火とか蝋燭が消える前とかそうでしょ、って説明しようかと思ったが、それはかなり男としてショックで悲しい。

 散るには早すぎだ。

 そもそも洋子があっちの世界から戻ってきちゃってる。

「…………」

 それじゃホントには気持ちくよくなれない。

 それじゃオナニーと一緒だ。

 一人の大人としても、一人の男としても、勝手に一人であっちの世界にイッちゃうのはどうよ? と、まぁ、そんな感じである。

「やンッ!?」

 洋子の腰でそぼっていた手を、すぽっとスムーズに、奇襲攻撃でキュロットの中へと飛び込ませた。

 勃起を握ってない手で、少女は防衛本能が働いたのか、はしっと俺の腕を掴むが、そんな弱々しい抵抗じゃ、やめられないとまらない。

 それに触れてる布地のこの感触。

「……濡れてる」

 と。

 ぽろり呟いてしまった言の葉に、洋子が反応するよりも早く、しっとりと濡れてる秘唇に、指を強く押し込んで沈み込ませる。

「うぁッ!?」

 洋子の身体に刹那で走った快感パルスが、指先から俺にも流れ込んできたようだった。

「やっ……ンッ……やはぁッ………あ……んぅッ……あ、ンぁッ……はぁ……んぁッ……はふぁ……ぅあッ……は………んぅッ!!」

 息つく間もなく指先をぐにぐに動かし続けると、洋子は身体を面白いようにくねくねとくねらせる。

 俺の指先の思うがままに少女は淫らに踊ってくれた。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……あ……ああ、んンッ………くッ………んッ……」

 添えてるだけのゆるゆるとした軽いタッチだとこんな感じ。

「ひぁうッ…は……ああッ……あ……ぅああッ……ふぅ……うぅ…あ、ひッ……ひッ……あッ…ぁんッ……んぁぁッ!!」

 秘裂を抉るような深いタッチだとこんな感じである。

 そんで、

「はひッ!?……ひッ……あッ……んンッ………ふぁッ!!」

 油断してるとこに女の子の真珠を、撫でて潰して転がしたりするとこんな感じね。

「ンぁッ!?……ひッ……あ、……あ、ンぁッ……ひッ……あ、ンぁッ………はぁ……んぁッ……ン……んふぁ…………んぅッ!!」

 ぬちゃりと音をさせてパンツの中に手を忍ばせる。

 すると俺の指揮で奏でられる少女の曲は、さらに艶かしく熱を帯びたものになっていった。

「…………」

 紅葉ちゃんとかもそうだったけど、これは思春期の女の子だからなのかぁ? 洋子も滅茶苦茶に濡れやすい性質らしい。

 自分がテクニシャンだと勘違いしそうになって怖いぜ。

 粘度の高い液が絡みつく。

 そこは布地越しに触れてたときからわかってたけど、ぐちゃぐちゃで、入れたばかりなのに、瞬く間に俺の手をべとべとにする。

「…………」

 サンキュー洋子。

 俺のちっぽけで詰まらない自尊心は、それだけでかなり満たされちゃってますよ。

「…………」

 これはべつにお礼ってわけじゃないけど、

「うぁッ………そんな…ふぁッ…あッ……やンッ……あふぁ……んンッ……は……くぅんッ……うぁあッ!!」

 少女の最奥から甘い蜜が溢れる。

 ちょっと包茎気味の真珠を、優しく剥いてやると、びくんびくんっと俺の腕に抱かれながら、若鮎のように身体を跳ねさせた。

「…………」

 しっかりと捉まえてないと途端に逃げてしまうくらい。

「んぁッ………ひッ……あ、ンぁッ……はぁ……んぁッ……ひぁッ!!」

 洋子の腰をぐっと引き寄せながら、その声でそろそろ、終わりが近づいてきたのを感じた俺は、勃起と秘唇を擦る速度を合わせる。

 くちゃくちゃ…………。

 ちゅくちゅく…………。

 形状と液体の質によって、微妙に響かせる音が違う二重奏は、甲乙つけがたいくらいに、どちらも変わらずでいやらしかった。

 洋子の手も俺の先走りでぬるぬるである。

「んンッ……… ぁッ…は……ああッ……あ……、ぅああッ……ふぅ……うぅ…あ、ひッ…………ンぁッ……………」

 淫らにぬめる粘膜の海を浅く深く、卑猥な音をさせながらピストンさせていた指先を、

「あッ、あッ、ああッ!!」

 溜まりに溜まってた牡の欲望が、尿道口を通って吐き出されるのと同時に、鉤爪のように内側に曲げて、引っ掻くみたいに突き刺した。

「あひぃッ!?」

 洋子は一際鋭く甲高い声を上げると、両足をぴよこんと浮かせて丸める。

「…………はぁ」

 ぶるぶると震えている身体を二、三秒ホバーリングさせてから、少女はぐったりと糸が切れたように脱力する。

 ゴロニャ~~ン。

 なんてことを洋子は、絶対に言ってくれないだろうが、すりすりと身体を寄せてくるのは、そんな感じで滅茶苦茶に可愛らしい。

「…………」

 土下座したらネコ耳つけてくれるかなぁ?

 チュッ。

「ん、……んむ………んふぅ…………」

 ぼんやりとけだるそうに薄目を開けた洋子の、だらしなく開いてる唇に、優しくいたわるように、激しく貪るように、俺は唇を重ねる。

「はぁ…………」

 唇を離すと切なそうな吐息が零れた。緑の瞳にはとろ~~んと霞がかかってる。

「お願いがあるんだけどさ」

 頼むならいましかない。

「つけてほしいものが――」

 白い液体が盛大にかかってるプレステを、俺は極力視界には入れないようにしながら、早くも次の妄想を爆発させていた。





[2293] 少女病 十三話
Name: 青色◆ec0575d6
Date: 2009/05/26 18:25



 部屋の外。

 廊下の手すりにもたれながら、雨が上がって、今夜もキレイな石ころを眺めつつ、俺は小さくため息混じりに呟いた。

「そうか……」

 口にくわえてる煙草に、シュボッと、ジッポで火をつける。

 気管を経由して肺一杯にすぅ~~っと、人間の身体にも、地球の環境にも悪い煙を吸い込み、ふぅ~~っと憂慮の表情で吐き出した。

「嫌かぁ……」

 それも力強く『ぜ・っ・た・い・に・い・や』と、一字一字区切りながら、最上級の決意と迫力で断られてしまった。

 逆鱗。

 何でも龍の喉首にそれはあるらしいが、ネコの喉首にもしっかりとあるらしい。

 きりきりと逆立っているのが、わざわざ見なくとも、俺にはばっちりきっかりこっきりわかった。――吊り上がる緑の瞳の角度で。

「…………」

 正直言ってちょっと怖かったです。16の小娘にマジでビビった27の夜でした。

「可愛いと思うんだけどなぁ」

 あれはあざとく感じるほど露骨な萌えアイテムだけど、誰でも彼でも装備すれば、それで魅力度がアップするってもんじゃないのに。

 ホントに惜しい。

 だけどジェイソンにはホッケーマスク、レクター博士には拘束衣、そして洋子にはネコ耳、ってわけにはいかないみたいだ。

 これ以上はないベストのアイテムなのに残念。

「…………」

 世の中にはネコ耳をつけても萌えどころか、燃えてしまえって奴もいるってのにさぁ。

 ホントに惜しい。

 でもプンプンと効果音がつくほどお怒りになって、とっとと不貞寝してしまった山本洋子さんに、これ以上はお願いしても無駄だろう。

「…………」

 ふむ。

「……まぁいい」

 また次の機会を待つとしようか。急いては事を仕損じる、て言うしな。

 変なとこで諦め悪いんだ俺。

 トントンと携帯灰皿に灰を落としながら、澄み切るほど素晴らしく雨の上がった夜空を眺めると、月のすぐ隣りに赤い星が輝いてる。

「…………」

 あれって果たして見えてもいい星なのかなぁ?

 携帯灰皿を尻のポッケに戻しながら、もう一本だけ吸いたくなった俺は、記憶の引き出しを探りながら、思い出した。

「あ?」

 さっきのが最後だったっけ。

 ないとわかると無性に欲しくなるのが、人間の仕方がない性というか業というか。――仕方がないは遣うなと言われてるんだけどね。

 だけど大人の世界には、確かに仕方がないこともある。

「…………」

 部下を玩具と勘違いしてる性悪な上司とか、仲間を観察対象にしてる同期とか、素で三次元より二次元の美少女を選びそうな後輩とか、

可愛いけどイッちゃった兄ラブな妹を持つ冴えない後輩とか、家庭教師のバイトのときはこんなガキいたなって感じの後輩とか。

 などなど etc etc。

 大人の世界ってのは大概に曖昧にどうしょもなくて仕方ない。

「今回は仕方なくもなんともないけどね」

 ただ単純にニコチン中毒なだけなんだけど、雨上がりの散歩っても、これでなかなかに粋で乙なもんだろう。

「鍵はと」

 みんなぐっすりと寝てるみたいだから、ちゃんと閉めていかないとな。

 言うのをすっかり忘れてたけど、紅葉ちゃんはあれから、部屋に居るときも鍵は閉めてるのかなぁ。起きたらすかさず訊くとしよう。

 と。

「お?」

 考えながら鍵穴に鍵を差し込んだら、内側からカチャリと、ドアがゆっくり静かに開いた。

「お財布は持ってなくて、大丈夫ですか?」

 はい、と美少女に微笑みとセットで、見慣れた、年がら年中オールシーズン休みなく薄い財布を渡される。

「ごめんね。起こしちゃったかな?」

「いえいえ。寝てませんでしたから」

 綾乃ちゃんは『ちっとも』と付け加えながら、するりとドアの間を抜けて俺の背後に廻った。

「ちょっとそこまで、煙草を買いに行くんだけど?」

「わたしもどうも寝付けないので、良かったらご一緒させてもらっても、ご迷惑でなければよろしいでしょうか?」

 そんなの勿論。

「よろしいですよ」

 月夜の散歩。

 それは一人だけでもなかなか、粋で乙なもんだけど、美少女までついてくるてんなら、そりゃもう問答無用理屈不要で格別だろう。

 時刻は十一時三十二分。

 夜も更けてきたので、音を立てないように、てふてふと、二人仲良く並んで階段を下りた。

「風が気持ち良いですね。酔い覚ましにも、ちょうどいいかもしれません」

 ふわっと靡いた髪を撫でつけながら、綾乃ちゃんはにこにこと、幼い仕草で小首を傾げて俺に微笑む。

 それは誰が見ても間違いなくで魅力的だろう。

「…………」

 だけどこれこそがこの娘の、人から心を隠すポーカーフェイスなんじゃないかと、俺はちょっとだけだが疑い始めていた。

「酔ってるようには見えないけど?」

「わたしじゃありませんよ。わたしは最初の一杯しか、お酒を飲んではいませんから」

「そうだっけ?」

「そうですよ。……島田さんは結構お酒は強いみたいですけど、酔ってくると周りが見えなくなる人ですか?」

「どうだろう?」

 それこそそれは酔ってるからわからない。

「…………」

 だけど、わからないならわからないままの方が、特に理由はないけれど、いまはなんだかいい気がした。

「先週の金曜も、洋子が紅葉ちゃんのとこに泊まりに来てたけど、こういうお泊り会みたいなことって、みんなは毎週してたりするの?」

 今日は俺の家だけど。

「そうですね。毎週しようとかは決めてませんけど、紅葉さんが一人暮らしなので、どうしても集まってしまうんです」

「ふ~~ん」

「あの、もしかして、些か以上に騒がしかったでしょうか?」

 すまなそうな顔をして、申し訳なさそうな顔をして、心当たりがありそうな顔をして、綾乃ちゃんは窺うようかのように訊いてくる。

「俺、先々週くらいまではほとんど、休みがなかったからわかんないんだけど――」

 性悪の馬鹿女の所為で。

「逆隣りの203号室は空き部屋みたいだし、下の部屋に響くから、飛び跳ねたりしなきゃいいんじゃない?」

 いまくらいが一番、友だちと騒ぎたい年頃だろうしな。

 五月蝿い親の目が届かなかったら、そりゃ抑えも利かなくなるだろう。

「酒もほどほどならね」

「未成年ですから、本当はいけないのはわかってるんですけど、いまは皆さん、どうもお酒で酔うのが、事の外面白いらしくて……」

「アホなだけの体育会系一気飲みとか、脱いで外に飛び出すとかしなきゃいいさ」

 ああ、そういや、脱ぎ癖のある娘っていねぇなぁ。

「…………」

 残念だなんて思ってないっすよ? とりあえず感激で衝撃で素敵な、そんな熱烈なキス魔を募集したいね。

「綾乃ちゃんは酔うと、どんな感じになるの?」

 べつに期待したわけじゃないんです。純粋にこの娘の酔ってる姿を見たことがないからという、下心のないわけではないけど好奇心。

「わたしはいつもコップ一杯だけですよ。酔ったことはまだありません」

「そうなんだ」

 それは是非とも酔わせてみたいもんだ。

 などとそんな話をしてるうちに、紅葉ちゃんのバイトしてるコンビニに到着。

 カウンターの煙草コーナーをちらっと見てから、

「ついでだからなんか、お菓子とかも買っていこうか?」

 言いつつ俺はお菓子ではなく、飲み物コーナーへと一直線。

 ここまで酒の話ばっかりしてたから、また急激に俺の身体はその駄目っぷりを発揮して、アルコールを摂取したくなってきている。

「まだ飲みますか?」

「まだ飲みますよん」

 ちびちびとだらだらとたらたらと、朝まで飲んだりするのも結構嫌いじゃない。――深夜のファミレスとかも相当好き。

「もしかして、足取りとかヤバいかな?」

「……それはまぁ、大丈夫みたいですけど」

 大人ってのは自分の大体の酒量を知ってるもんだ。今日くらいの量なら無様にはならない自信はある。
 とはいえ。

「酔っ払いは自己採点甘いからさ、オイオイッて思ったら、投げ飛ばしてでも止めてくれると、恥の上塗りせずに助かったりとかします」

「わかりました」

「……うん。頼むよ」

 その淀みない了承の台詞を聞いただけで、ちょっともう酔いは醒めてるけど。

「そういえばさ」

「はい」

 ビールと発泡酒。

 一瞬だけは迷ったりはしたが、どうでもいい見栄もあって、前者を自然なふりで取りつつ後ろを振り返る。

「綾乃ちゃん。俺を投げたとき二回とも、相性の話をしてたよねぇ」

「はい」

 少女はいつの間にかレジカゴを持っていて、ビールをここに入れてください、と出してくるが、俺は逆にレジカゴを奪って話を続けた。

「互いに相性が良いんなら俺からも、綾乃ちゃんをあんな感じで、空気みたいに投げられたりするわけ?」

 出来る出来ないの前に、そんなことしないけどね。

「無理です」

 まぁ、そもそもが、心配する必要もないみたいだけど。

「わたしと島田さんの相性は、おそらくこれ以上ないほどいいですが、これまでに培った技術が失礼ですが違いますから」

「ああ」

 なるほど。

 そりゃまったく失礼でも何でもなくて、考えてみれば至極当たり前の話だな。

「俺が綾乃ちゃんと同じくらい技術がないと、あんな風にふわりとは、とてもじゃないけど投げられないわけか」

「腕力なら島田さんの方がありますから、そこまでの技術はいらないと思いますけどね」

「うん? 腕力は綾乃ちゃんよりもあるんだ?」

「わたしはやはり鍛えても女の身体ですし、まだ成長段階ですから、単純な腕力だけならば、島田さんの相手にはならないでしょう」

「ふ~~ん」

 ニッカのウイスキーに伸ばされた俺の手は、はしっと綾乃ちゃんの手に掴まれて、もとあった腰の位置に引き戻される。

 これは駄目らしい。

 荒っぽい腕力ではなく静かな迫力で戻された。

「成長段階かぁ」

 早くも自己採点の甘さを露呈しちゃった俺は、バツが悪くなったのを誤魔化すみたいに、綾乃ちゃんの女だけど成長段階の身体を見る。

「…………」

 確かに本人の言ったとおり、その身体はまだあどけなくて幼い。

「…………」

 けれどその成長段階で発展途上の身体は、完成された女性にはすでにない、女の子としての魅力がいっぱいに発散されていた。

 脂質とは無縁。

 綾乃ちゃんは全体的に起伏が乏しくて、同年代でも紅葉ちゃんなどとは、その身体つきはまるっきりの対極だろう。

「…………」

 だがそれがいい。

 勿論。

 それは紅葉ちゃんみたいな発育の良いボリュームのある身体が、綾乃ちゃんのような薄いスレンダー(便利な言葉だね)な身体よりも、

魅力が劣るというわけではなく、少女というカテゴリーは一緒なのに、放ってる輝きがそれぞれ異なるとでもいうのだろうか?

 エメラルドは好きだけどサファイアも好き。

 巧い言葉が浮かんでは来ないが、言いたいことは大体でそんな感じかな。

「うん? いや、いやいやいや」

 しかし人間はなかなか、この最も手軽で深いコミニティー手段、言葉以外で真意を伝えるのは難しい。

 胸の辺りに視線をうっかり固定してたら少女に睨まれてしまった。

「これでも日々育ってるんです」

 ささっと隠すように腕を組んでから、わかりやすく珍しくムクれると、踵を返して綾乃ちゃんは、お菓子コーナーへと行ってしまう。

 美少女であっても胸の大きさは、やはり年頃だけあって気になるらしい。

「ある娘はある娘で、それはそれで悩むらしいけど」

 綾乃ちゃんのシークレットなのだろう、そして思春期特有のコンプレックスがわかって、なんとなく嬉しくなったりならなかったり。

「…………」

 飲み物コーナーのガラスに映るニヤけた俺は、自分で見てもかなりのレベルで気持ち悪かった。





[2293] 少女病 十四話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:5faa2a53
Date: 2009/04/27 18:10


 彼此二年近く歩いてた気がする。

 俺と綾乃ちゃんは早足にならないよう注意しつつ、執拗な追跡から逃げるようにしてここに飛び込んだ。

「メイドはメイドであって、決してメードなどではないか」

 日本の治安レベルは下がったなんて言うけれど、それは確かにそうかもしれないけれど、まだまだ高くて捨てたもんじゃない。

 いろんな問題を内包した国ではあるが、やはりその辺りは大したもんだった。

「それには俺も賛成」

 公園のベンチに美少女と腰掛けながら、祖父が孫娘に語った持論に、うんうんと頷きつつ、後方にあるだろうその気配を窺ってみる。

 が。

「…………」

 そんな芸当が自薦他薦ともに自信ありありで、ニュータイプでも何でもない俺にできるわけもなく、その可能性のありそうな美少女に、

こっそりと小声で訊いてみた。

「いる?」

「はい。こっちをじーーっと見てますよ」

「……ホントご苦労だねぇ」

「頼もしいじゃないですか」

 まあ、ね。

 少なくとも少ないけど、税金を払ってる身としちゃ、職務に対して非常に勤勉な警官ってのは、そりゃ居てもらわなきゃ困るけれども。

「ふうん」

 やはり正直言って鬱陶しい。

 コンビニからの帰り際、偶然ばったりしっかりと、見回り中の警官と目が合ったのだが、俺はそこでの対応を完璧ミスってしまった。

 もしかしたら、どこか後ろ暗いところが、あったのかもしれない。

 なんにも悪いことは、少なくとも『まだ』してないのに、ささっと露骨にその視線から逃げてしまった。

 挙句には容疑者確定の回れ右までも披露。

 そこからは正義感かノルマ稼ぎか知らんけど、もうポリスマンから三十分以上、着かず離れずのポジションでマークされていまに至る。

「…………」

 こんなんじゃアパートに、ストレートに帰るわけにもいかんしなぁ。

「どう思ってるんでしょうね?」

「あん?」

「お巡りさんはわたしたちのこと」

「おいおい」

 がさごそとビニール袋からビールを取り出すと、綾乃ちゃんはプシュッと開けて、ゆっくりと優雅にその可憐な唇へと持っていった。

 こくりこくりと二度ほど、美味そうに喉を鳴らすと、にっこりと微笑みながら口を離す。

「どう思ってるんでしょうね?」

 そしてまた同じ質問。

 いつもとそれは変わらない笑顔に見えるけど、気のせいだろうけどどこか、ぺろっと舌を出してるような悪戯っぽい感じがする。

 ああ可愛い。

「ううん。恋人同士、……にはちょっと見えないよなぁ?」

 綾乃ちゃんからはしっとビールを奪うと、俺はそのまま口につけて喉を潤す。

 ちょっとだけ悔しい思いをした。

 とっくのとうで関節キスごときに喜ぶような歳じゃない。それでも自然を装いつつなんか不自然な自分にムカついた。

「やっぱ兄妹あたりじゃない?」

 若干の不自然は否めないものの妥当な線だろう。

 だが後ろで張ってる警官は、もっと違う可能性を予想、否、期待をしているんだろうな。

 変質者から美少女を救出。

 そこそこにほどほどでそれはやっぱりお手柄だろうし。

「兄妹ですか?」

「うん。ああ、でも、恋人に見られないのは癪だけど、綾乃ちゃんみたいな娘だったら、兄妹ってのもなかなか悪くはないね」

 欲しいと思って手に入るもんじゃないからな。

 いまこの瞬間にちょっとどけ、可愛い可愛いシスターがいる高取の奴が、羨ましいなんて気持ちに初めてなっちゃったりしちゃったぜ。

 しかもあそこの妹は《お兄様》なんて呼んでくれんだよなぁ。

 お兄様。

 嗚呼それはお兄様。

 高嶺の花っぽい自分のキャラを良く知ってるというか、ツボを抑えまくりで、他人事なのに聴いたとき、オラぞくぞくしちゃったもん。

 わたしの目にはお兄様しか映りませんみたいな、それを露骨に鬱陶しがる兄に憧憬が湧いたり湧かなかったり。

「…………」

 洋子のキャラだったらば、ここはアニキかしら?

 まどかちゃんならばやはり、お兄さんなのかね?

 紅葉ちゃんは流行の、にーにーとかどうだろう?

「…………」

 素早く想像してみたけど、う~~ん。みんな、どれもなかなか悪くはないね。

 で、

 やっぱり綾乃ちゃんならスタンダードに、

「お兄ちゃん」

「そうだよな。やっぱりそれになるよな」

 深く重く、だけどかなり無意味に頷いた俺の肩に、少女が頭をこてんっと、身体全体をすり寄せるようにして乗せてきた。

 不意に真近で鼻孔をくすぐった匂いは、くらくらとしそうなほど酔いそうに甘い。

 ここでポリスにパクられても『我が生涯に一片の悔いなしっ!!』と、高らかに宣言出来そうなほど危険で魅力的な触感と香りだった。

 一人っ子で良かったと思う。

 両親の家族計画に思わぬところで感謝だ。

 実際にリアルな妹のいる奴はほぼ全員が全員、妹萌えなんていうのは、いないから言える台詞だと、いないから見れる夢だと言う。

 ビバ一人っ子。

 少子家庭万歳。

 来々義理の妹。

「お兄ちゃん」

「どう、した、妹よ?」

 いや、本当にどうした、妹よ?

 可愛い顔が熟れた林檎みたいにして、夜目にも鮮やかに真っ赤々ではないか。

 まさか缶ビールひとつも満足に空けないのに酔ったのか?

 ハトより弱い。

 ちなみに可愛いおまえを映すお兄ちゃんの視界の端にはね、じりじりと距離を詰めてくる公僕まで映ってやがるんだよ。

 職務熱心な彼に点数を稼がせてやるつもりは、悪いんだけどお兄ちゃん欠片もないんだ。

「ふふふっ 呼び方をちょっと変えただけなのに、思ってたよりも、結構どきどきするものですね」

「ああ、俺も色んな意味で、結構どきどきしてるよ」

 距離はすでに10メートルを切っている。

 酔っ払いの手を引いて逃げるには、もう完全に無理な距離になっていた。

 まあ、

 ここで逃げたりしたら事態は、面倒な方向に加速するだけなのは丸わかりだが、捕獲者から逃げたくなるのは動物の本能である。

 人間だってアニマルだ。

 自然という神様の作ったこのたわけた摂理には逆らえない。

 いつ綾乃ちゃんの手を引いてダッシュをかけようかと、小動物ちっくな俺の本能はポリスの隙を窺っていた。

「知っていますか? 紅葉さんはアクション映画がお好きなんですけど、最近はラブロマンスに、些か以上にハマっているみたいですよ」

「へぇ~~、そうなんだ」

 俺はいま確実にアクションを演じたい心境です。

 ジャッキーチェン(52)香港スター、ハリウッドへの進出は成否微妙の、真の偉大さがいまならわかったりします。

「古典の映画にはこういうときの、お約束の誤魔化し方というのがあるんだそうです」

「時計塔から飛び降りたりするんだろ?」

「はあ?」

「いやいや、うん、気にしなくていいよ」

「はあ……」

 テレビで酔拳を観っちゃった次の日の学校では友だちの顔の前で、両手をぶんぶん振ってる奴がどの教室にもいたっけなぁ。

 ぼ~~っとしてたら危うく、木人拳の餌食になりかけたのも懐かしい思い出だぜ。

「こうするんです」

 俺の首に“しゅるり”と細い両腕が廻る。

 武道の成果かもしれない。

 これこそ柔よく剛を制すというのかなんというのか、なんというべきなのか、――まあ、逆らうこともできず唇と唇が急接近していた。

 …………

 いや、そもそも逆らおうという気が、まずはなかったんだけどさ。

「おお?」

 これも見切りというやつだろう。

 初めて会ったときに道場で、見せてというより魅せてもらった、おっさんの蹴りをミリ単位でかわしていたあれだ。

 今回はこの闇の中とあってミリ単位とまではいってない。

 それでも、

 見事である。

「お静かに」

「……はい」

 唇と唇が急接近。

 横から見ればくっついてないのが一目瞭然ではあるのだが、この暗さであればくっついてるようにも、まあ映るかもしれん。

 縦なら尚更だ。

 ポリスマンの前進がぴたりと止まっている。

 どころか“チャラチャ~~”とばかりに、太陽にほえろのテーマソングでもかかってそうな眼を、すいっとベンチから闇夜へ逸らした。

 イケるっ!!

 思わずでビールの缶を握り潰した手を、さらに強く強く握り込みつつ、俺は心密かにそう思ったね。

 なるほど。

 これは確かに古典だ。

 この手法で事なきを得たヒーローやヒロインは、それこそ洋の東西を問わずでいつの時代でも数知れない。

 あいつこいつも、どいつもそいつも、これで結構助かってる。

 気まずそうにしている巡査(仮)の迷いが、達人じゃない俺にもはっきり感じられた。

 うむ。

「…………」

 あともう一押しといったところだろ。

 あともうワンプッシュあれば、綾瀬派出所交番勤務の公務員は、きっと回れ右をしてくれるはずだ。

 コトンッと。

 ビールの缶をわざと音を立ててベンチの片隅に置くと、俺の両手は妙な使命感に燃えまくって行動を開始する。

 こういうときだけ毎度毎度のことだが迅速だ。

 左手は美少女の背中に回し、右手はやらしくならないよう注意しつつ、ちょこんっと、ほんの少しだけ覗いてる膝頭に軽く乗せた。

 と。

 その瞬間にわかったね。

「あ……」

 どうも俺は綾乃ちゃんを誤解していたらしい。

 この娘なら大丈夫と勝手に思っていた。

 年下でも人間としての完成度は、自分より上だと勝手に認識しちゃってた。

 でも、

 決してそんなんじゃない。

 しっかりとしているようでも白鳳院綾乃は、山本洋子や御堂まどか、松明屋紅葉と同じテリトリーに属している存在だった。

 少女。

 自分一人でなにもかもこなしているような顔をしている、小憎らしくて生意気で無邪気に残酷な、未完成こそが魅力の存在なのである。

 変わらないのだ。

 達人の技と風格がすでにその身に備わっていようが、そんな大層なものより、まずはどこにでもいる一人の少女。

「…………」

 圧倒的に経験が不足している。

 世の中には三十路という、忌々しい言葉が見え始めた俺より、濃い経験を積んでいる女の子が、おそらくは盛り沢山で大勢いるはずだ。

 しかしそうであっても、少女は少女であって、儚げな初々しさを失ったりはしない。

 と。

「…………」

 俺は断固としてそう信じてるっ!!

 などという、

 島田誠の深い部分に根付いてるらしい夢見る思想が、刹那で脳内を元気に駆け巡っていたが、七周り半したくらいで平静を取り戻した。

 ええ。

 勿論そうですとも。

 俺も相当にパニっくっていたらしい。

「え?」

 寄り添って抱き合う男女の唇は、夜目にもわかるほど、縦から見ても横から見てもはっきり離れていた。

 これではポリスを誤魔化すことはできない。

 少女の声は喩え微かでも、びっくりするくらい耳によく通る。

 今度はジョーズのテーマソングに乗って、またポリスがジリジリとこっちに近づいてきた。

「え?」

 俺の首から片方の腕を外すと、綾乃ちゃんは『え?』を連発しながら、目をぱちくりとさせつつ、指先で可憐な唇に何度も触れている。

 少女のそこは末期の虫歯よりも遥かに知覚過敏だ。

 異物が触れれば即座に反応を起こし、脳内の乙女回路とでもいう部位に、瞬時ではあるが非常に効率悪く衝撃を伝達する。

「あの、……はい?」

 間違いない。

 白鳳院綾乃も現在進行形で混乱していた。

 物心ついてからはペットの犬や猫にしか許したことのないだろう、世界遺産登録をしてもおかしくない聖地を押さえながら俺を見てる。

「…………」

 やわらかかった。

「あの」

「え?」

「いや」

「え?」

「なんつぅか、ね」

「……はい」

「うん」

「…………」

 たどたどしいノーコンな言葉のキャッチボールを交わしながら、相手の目をちらちら追いつつ、相手と目が合えばささっと逃げる二人。

 おい。

 これはなんなの? 

 なに100%なんですか? 

 葡萄か? 

 林檎か? 

 それともバナナか? 

 くっそう。

 一体いつの時代のラブコメやねん? 

 島田誠さん(27)未だに週間少年誌愛読者は、モロにきまぐれやBOY,S……の直撃世代なんですよ?

 ああ、ちっくしょうめ、猛烈に恥ずかしいなぁ。こんなベタベタな展開なんて舐めんなよ? ――なんだかすんげぇ萌えてくるぜっ!!

 と。

 そうやって変なラブモードに入ったおかげでやっとわかった。

 どうもこの娘、最初っから緊張していたらしい。

 綾乃ちゃんクラスの達人の見切りが、喩え酔いのハンデがあったにしても、あんな中途半端な距離のはずがない。

 また、

 手を背中に回された&膝に手を置かれたくらいで、完全に俺の独断突発事項でも、身体を過剰反応させたのは思えば不自然だろう。

 そうじゃなかったら、俺にあれだけの、ラブコメの主人公みたいな、ご都合主義満載のラッキーは絶対に起こらなかった。

 唇と唇による人身事故。

 接触はコンマ何秒の刹那ではあったがわかる。

「……はぁ」

 メチャクチャに美味。

 なんでだか、なんでなんだか、困ったようにしている綾乃ちゃんを見てると夢心地だ。

 いま俺に現実感を与えてくれるのは、また一歩距離を詰めてきた、空気の読めない真面目なポリスマンだけである。

「ご、ごめんなさい」

「はい? なんで、綾乃ちゃんが、……謝ちゃってるのかな?」

 むしろここは、

 ご馳走様とこちらから礼を言いたい。

「あの、し、島田さんに、その、さ、触られると、声が、声が出てしまうので、そ、それは人に聴かせるのは、ちょ、ちょっと」

「はい?」

 まだ俺も混乱状態から抜けきってないんだろうか? 

 綾乃ちゃんが一体なにを言っているのか、全体なにを伝えたいのかがいまいちわからない。

 おそらく、

 俺にどこぞのAV男優みたいな、怪しい黄金の指設定はなかったはずだ。

「よ、洋子さんの声が、あの、あんなに大きく、いえ、いえいえ、い、いいんですよ? わたしが勝手にびっくりしただけですから!!」

「はぁ……」

 なるほどね。

 いまよ~~くわかったよ。

「洋子の声、やっぱりでかかった?」

「す、すいません」

「……いや、べつに綾乃ちゃんが謝ることじゃないよ」

 本当に。

 謝るのはじゃ誰なのかといえば、この場合はどう考えても俺だろう。今更だがオナニーを親に目撃されるくらい恥ずかしくなってきた。

「でも洋子には、絶対に言わないでね?」

 殺されちゃうから。

 猫は七代まできっちりと祟るっていうしさ。

「い、言いませんよそんなことっ!! い、言うわけないじゃないですかっ!!」

 うん。

 そりゃまぁそうだよな。よく考えればよく考えなくとも、女の子同士どんな流れでそんな話をするんだよ。

「あとそれから、その、……ごめんなさい」

「まだ何か他にも綾乃ちゃんに、俺はやっちゃってますか?」

 これかなぁ?

 あれかなぁ?

 心当たりがあまりにありすぎて、果たしてどれのことについて謝られているのか全然わからない。

 なんだか典型的な自爆男のパターンだ。

 浮気がバレた気分である。

「唇、……ですよ」

「くちび、ああ、いえ、こちらこそ、それはありが、じゃなくて、ごめんなさいだね。……ってかなんで綾乃ちゃんが謝ってるのさ?」

 少女がこういう問題で謝罪する必要は徹頭徹尾でない。

 喩え万が一どころか億が一であったとしてもだ、いっぱしの男がそんなことを、いたいけな少女にさせちゃいけない気がする。

 少女というのは国の宝で世界文化遺産、おまけにその権利は治外法権で神聖不可侵な存在だ。

 …………

 ああ、わかってるぜ。

 俺、もうなんだか確実に精神の深いところが病んじゃってるよね。

 すでに病状がステージ4まで到達しちゃってそうでも、嫌な気が少しもしていないのはかなりの重症だった。

 ってか悪くないとすら思ってる。

「……嫌じゃないですか? 好きでもない女の子と、そういうことを、したりするの? それとも男の人は、誰でもいいのでしょうか?」

「そんなことはない。女の子より間口が広いのは認めるけど、だからって誰でもいいってわけじゃない」

「なら、やっぱり、……ごめんなさいで、この場合の返答は、合ってるんじゃないですか?」

「いんにゃ、この場合間違ってるよ、やっぱり。だって綾乃ちゃんとだったら俺、嫌どころかむしろ、大歓迎で望むところだしさぁ」

「洋子さんとも、あんなこと、してるのにですか?」

「…………」

 いまは唇と唇が離れているとはいえ、なくそうと思えば簡単になくせる距離だった。

 それほどの真近から綾乃ちゃんの瞳はじ~~っと、俺の心底を覗こうとでもするように真摯に見つめてくる。

 男27歳。

 少女の綴った言葉に言外の含みがあるのに気づかないほど、鈍くもなければ経験不足でもなく、無視できる狡さもまだ持ってなかった。

 だから決心する。

 これまで漠然としていたものが、綾乃ちゃんの言葉で不意に固まった。

「洋子にも言ったことがあるんだけど――」

 でも、

 あのときは勢いがだいぶ先行してたかもしれない。

 洋子に吐いた言葉は真実だけで、そこに欠片の嘘もなかったが、やはりそこには重みもなかっただろう。

 開き直りに重さはない。

 が。

「俺はね、みんなと、洋子とも、紅葉ちゃんとも、まどかちゃんとも、そして勿論綾乃ちゃんとも、キスだけじゃなく色々したいんだ」

 これは真実だったら重いとは限らないという、そういった類のお話です。

 まぁもっとも、重ければなんでもかんでも、それでいいのかというのも、まずはあったりなかったりするんだけれど。

 とにかく

「嫌なら投げ飛ばしてくれても、警官に突き出してくれてもいい。綾乃ちゃんならどっちも簡単だろ。さっきのは事故だったけど――」

 俺はスイッチを入れた。

 受動的な『入った』ではなく能動的な『入れた』である。

「キス」

「……あ」

 ゆっくりとだ。

 武道の達人でなくとも避けようとすれば、誰にでも避けられるくらい、俺はゆっくりと綾乃ちゃんの顔に右手を伸ばす。

 女性というよりはまだ子供みたいな、“ふにっ”と柔らかい熱を帯びた頬に触れる。

 襲い掛かろうとしている征服欲を、保護欲が必死に羽交い絞めしている間に、なるだけ優しく見えるよう少女に微笑んで見せた。

 満点で不細工だろうが気にしたら負けである。

「…………」

 光の反射だろうか。

 本当にそうかもしれないが、本当はそうじゃないのかもしれない。

 こういうとき女の子の瞳が潤んでいるように見えるのは、男がどれだけその女の子にハマっているかの目安にもなる。

 小刻みに睫毛を震わせている綾乃ちゃんの瞳は、堪らなく“うるうる”だったりした。

 この娘に全裸で退職届を叩きつけて来いと言われたら、多分だが俺は喜び勇んで従ってしまうだろう。

「…………」

 目蓋をそっと閉じられた。

 性悪女にアイアンクローの十秒間行使おまけオプションまでが追加確定する。

「……いざ」

 うっかり思ってたことを声に出しつつ、俺は頬に当てられていた手を離し、その熱が消えないうちに、そのまま腰に廻して引き寄せた。

 やはりここでも綾乃ちゃんからの抵抗はない。

 小さな身体に体重をかけないよう、しかし覆いかぶさるようにして、変に器用に顔を傾けて唇を重ねようとする。

「…………」

 目が合った。

 祈るように目蓋を閉じている綾乃ちゃんとじゃない。

 ダルマさんが転んだ世界チャンピオンになれそうなポリスマンとだ。

「…………」

 ああ、そうさ、この人の存在なんてさ、もうさらっときれいさっぱりで忘れてたさ。覆いかぶさる『よう』じゃ本当はなかったさっ!!

 でもこれだけはさせてくれと目で訴えながら、俺は真一文字に結ばれている少女の唇を優しく奪った。

 そこだけが雪のように冷たく、けれどしっとりとやわらかい。

 身体はどうしても経験のない接触に強張るものの、それでも少女は守るように抱きすくめる、俺の腕の中から逃げようとはしない。

 舌先を滑り込ませたい衝動を抑えながら、背中をあやすように撫でつつ、俺は綾乃ちゃんが落ち着くのを待った。

 十秒、二十秒、三十秒、

「…………」

 きっとこれこそがあれ、武士の情けというやつだろう。

 鍛え方と年齢による肺活量の差で、綾乃ちゃんの身体から緊張がなくなるころには、俺はチアノーゼ気味だったが網膜に灼きついたね。

 背中がカッコいい。

 ぼくの街のみんなが頼りにするお巡りさんは、若い二人のために黙って後ろを向いてくれてた。





[2293] 少女病 十五話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:5faa2a53
Date: 2009/04/27 18:11


 地元にもゲームショップがあることはある。

 けれどあそこは基本、小学生や中学生、あるいは高校生ぐらいまでの、平成生まれでティーンな思春期世代のテリトリーだ。

 あちらは気にしてないのだが、グループに紛れるのは些か、小学校を入学するくらいの子供が居ても、おかしくない歳だと抵抗がある。

 そんなわけで俺は会社帰り、とある理由でお亡くなりになった、プレステの後継機を買いにわざわざ池袋まで来ていた。

「あ?」

「お?」

 だからこの遭遇は本当の本当に偶然以外の何物でもない。

 秋葉原がオタク文化の聖地なのは知っていたが、池袋までそうなのは知らなかったし、ここが乙女ロードという名なのも知らなかった。

 どうもすれ違う娘すれ違う娘みんな、自己主張の方向が随分とフリフリの服に片寄ってるなぁ、とは思っていたがそれだけである。

 しかし、

 どこかでこのファッションセンス、見慣れているような気もしてはいたが、

「コ、コーチ!?」

 なるほど。

 おでこがチャームなこの娘だったわけだ。

 変わった服というのも、周りの人の反応とセンスを比べたからわかっただけで、どうりで俺には違和感なく受け入れられたわけである。

「うん?」

 何故だか少女は真っ赤なおで、じゃなく顔で、ニックネームを呼んでくれたっきり気まずそうにしていた。

 放課後密かに片想いの女の子の縦笛を舐めていたら本人登場みたいな、見られたくないところを見られたという感じである。

 俺は少女がいままさに入ろうとしていたお店をちらっと見た。

 気づかないふりをしてあげるには、ちょっとシチュエーション的に無理があるだろう。

 少女はるんるんで突撃という感じだった。

 雰囲気から常連ぽい。

 そこはそんな原色だらけの制服は絶対ねぇというものから、オーソドックスにナースやスチュワーデスまであるコスプレ専門店だった。

「うう~~」

 少女は何か口の中で唸ってる。

 所謂世間一般で言われるオタクの人には多いがどうも後ろめたいらしい。

 なんでだろ?

 大きな声で誇れるようなことではないだろうが、趣味というのは大体がどれもこれもそんなものだ。

 車やバイクが趣味だと格好よく聞こえるが、興味のない人には騒音公害でしかない。

 殺人事件が起こったときなどに、容疑者がアニメや漫画が好きだったりすると、諸悪の根源のように叩いたりするがあれはどうだろう。

 アニメに漫画。

 言ってはなんだがそこまで影響力のあるものだろうか?

 だとしたらとてつもなく優れた媒体である。真実ならオタクの人は、むしろ誇ってもいいくらいの立派な趣味だ。

 エロや殺人はなにもアニメや漫画だけの専売特許ではないのに、アニメや漫画だけが家庭や社会よりも影響力があるということである。

 素晴らしい。

 が。

 それこそそんな思春期に在りがちな、風刺ではなく嫌味にしかならない思考を断ち切ると、

「きゃっ!?」

 等身大フィギアみたいに固まっているまどかちゃんの手を取り、足を踏み入れた瞬間異界だとわかる店内に緑の疾風と化して突撃する。

「む?」

 中は狭いようで広い。

 照明にも気を遣っているのか明るいようでいても、微妙にではあったが光度が落とされていた。

 普段は学校でも会社でも孤立しがちな趣味の、共通な仲間を身近に感じながらも、内面の世界に没頭できる絶妙な空間を提供している。

 なので、

 手を繋いで歩く俺とまどかちゃんを、素直な自分を解放するのに夢中な、周りが気にしているような様子は特にない。

「ありゃ?」

 気にしたのは振り解くようにして“ぱっ”と手を離し、店内を素早く怪しくキョロキョロとしているまどかちゃんだけである。

 言ってはなんだがここが異界でなければ、それは返って注目を集める仕草だった。

 しかし、

「…………」

 そんな極めて些細なことは、心底の本心からでどうでもいい。

 俺は『みんな見ろよっ!!』とすら思ってたね。

 人それぞれの好みもあるだろうが、この娘は見た目のセクシーさと、中身のキュートさのギャップが萌え萌えでかなり可愛いもんなぁ。

 乙女の恥じらいで咄嗟に手を離したのだろうが、今度は“ごめんなさい”というような視線で俺をじっと見てる。

 ああ可愛い。

 どうせみんなこっちを見ちゃいないんだから、どさくさにまぎれて抱きしめてやろうかしら?

「こ、ここ、こ、こ、こ、ここ、こ――」

 ドモったりするのがまたしても島田誠さんのツボだったり。

 だから、

「よしわかった。それってニワトリの物真似でしょ?」

 ついついからかいたくなる。

「違うわよっ!?」

 顔を口にして怒られた。

 27歳の社会人が17歳の女子高生に本気で怒られた。

 ――うん。

 そりゃ当然店内の注目の的にもなるわなぁ。

 それにいまになって気づいたんだけど、この店は圧倒的に女の子が多い、というかほぼ女の子しかいない。

 なんかあれだね。

 いうなれば女子高の学園祭にでも紛れ込んだ感じだった。

 まあ、ちょっと違うのは現役だけでなく、OGのみなさんも結構な数がいたことだけど、女の園だということには間違いがないだろう。

「あれれ、れ」

 嬉しいというのもあるにはあるが、それ以上に今更だが気まずいというか、なんだか落ち着かなくなってきた。

 ええ。

 そうなんですよ。

 島田誠さん(27)の存在が只今絶好調で浮きに浮いております。

 よっぽどゲームショップの方がしっくりくるな。

 しかし、

 手と手を繋ぐを軽くオーバーする恥ずかしいことされてるのに、乙女回路の反応する優先順位の基準はおっさんにはいまいちわからん。

 …………

 いや、まあ、そりゃおっさんだってね、まったくドキドキしてないっていたら嘘になるけど、さ。

 などと中学生男子二年の淡い夏休みみたいな物思いに耽っていたら、

「いくわよっ!!」

 今度はまどかちゃんの方から手を握られて、場違いなおっさんはぐいぐいと、力強く引っ張られてあれよあれよと奥に連れて行かれる。

 コスチュームの森は入り組んでいて、二度三度と曲がるとあっという間に、他のお客さんから死角ができる配置だった。

 俺一人だったらあっさりと迷子になれそうである。

「もう…………!! 男の人っていうだけでも目立っちゃうのに。リヒターさんに見られなかったかしら?」

 誰それ?

 目立った主な理由は俺が男だからではなく、まどかちゃんにこそ原因があるとは思うが、ここで少女と言い争うような愚は犯さない。

 興奮している少女を前にすれば法治国家日本でさえ、思想の自由は認められても、言論の自由は認められてはいないのだ。

 決して、

「ごめん」

 チキンだからじゃない。……それもあるがそれだけじゃない。

 その証拠に、

「ここは知り合いのやっているお店なのよ。あんまり、は、恥ずかしいこと、し、したりしないでにょ?」

「うん。ごめん。それはできない」

 相手がたとえ可憐な少女であっても、絶対にオトコとして譲れないところはある。

 即答だった。

 言葉は考えるよりも先に口から飛び出ている。

 だから『にょ?』についてのツッコミは、しつこくドモり噛んだことも含めて、タイミングを外していたので特には入れなかった。

 今度は少女の手をそっと握る。

「あ? そ、そう」

 刹那で乙女回路が起動しまどかちゃんは身体を震わせたが、俺の不躾な手が振り解かれるようなことはなかった。

 それは本当にほんの微かではあったが、少女のやわらかな手が俺の手を握り返してくる。

「……うん」

 判断の基準が何だかよくわからないのは、どうやら乙女回路だけに限った話でもないらしいね。

 俺の胸は告白の電話をする中学生みたいにドキドキしちゃってる。

 あの時代はまだいまみたいに携帯がなくてさぁ、女の子の兄貴が受話器取ったときは、速攻で切ったのも懐かしい中二の夏の思い出だ。

 例外なくどの家も異様に怖いんだよ、兄貴って存在は。

「しっかし、まあ、すげぇなぁ」

「な、なにが?」

 それこそ小中学生のフォークダンスのようにして、俺の手を“ちょんっ”と握っているまどかちゃんを感じながら店内を改めて見回す。

 原作まではわからないが、アニメや漫画のキャラのコスチュームがさすがに多い。

 びっくりするのはどれも意外にしっかり作ってあることだ。

 いやいやいや。

 オタクのみなさんのこだわりはホント凄いね。

 俺の着てるパチ臭いブランド物の服より確実にいいもんばっかだよ。

 地味なやつ買ってみようかなぁ?

「コスプレを甘く見てた」

「だって趣味だもの。そのぐらいこだわってて当然よ。値段だって結構高いんだから、こっちの見る目もそりゃきびしくなるわ」

 感心しきりな俺に何故かまどかちゃんは、えっへんとばかりに、子供みたいな仕草で胸を張る。

 こういうことするから洋子にからかわれるのだが、俺にはやっぱりで堪らないギャップ攻撃だったりしていた。

「ふむ」

 何気なく目についた、なんとなくアニメのものっぽい、しかし配色は抑え目になっている、セーラー服の値札を手に取って見てみる。

 プレゼントしちゃおうかなぁ、などと軽い気持ちで思ってた。

 最新のゲーム機を買おうとしていたくらいなので、自慢できるほどじゃないが手持ちの金はいつもよりそこそこある。

「…………」

 コスプレを甘く見てた。

 勿論、

 買ってやれないことはなかったが、俺が考えてたのと桁が一つ違ってる。

「お、お高いなぁ」

 果たしていくらだったのかは、あえてここで明記はしないが、心の声が思わず外に漏れちゃうくらいだ。

 が。

 衣服としての作りがいいという以上の価値が、このセーラー服から見つけられない人には、そりゃあそうだろうというお値段である。

 己が趣味に関する限りは金に一切の糸目はつけない。

 天晴れだった。

 マニア恐るべしである。

 もしかしたら彼ら彼女らにはこれでも、お手頃な値段なのかもしれないが、ただのセーラー服にしか見えない俺には憚られるお値段だ。

 そして趣味というのは大体がどれもこれもそんなものである。

 真の理解は同属としか共有できない。

 う~~ん、まあ、少なくとも、俺には無理な話だな、とそんなことを、セーラー服をさり気に元に戻しつつ思っていたのだが、

「こ、これはっ!?」

 マニアな彼ら彼女らと共鳴できちゃう部分が、俺にも秘められていたのか案外あっさりと見つかった。

 昔は触れたくとも触れられなかった、そして永遠に失われたと思っていた、さらりとしている合成繊維の滑らかさが心地よく堪らない。

 許すまじ。

 ショートパンツに取って代わられたのはいつだろう。

 なんだか好きだと言ってやれず別れた恋人と、ひさしぶりに出逢えたかのような、懐かしさと切なさで俺の胸は一杯に満たされていた。

「…………」

 うん。

 今度こそこの気持ちを伝えよう。

「まどかちゃん」

「なに?」

「プレゼントしたいんだけどさ、受け取ってくれるかなぁ?」

「え? い、いいわよ、ここのはどれも質はいいけど、それに見合う値段はするし、あたし自分のコスチュームは自分で作ってるし」

「……ああ、そうなんだ」

 へ~~。

 趣味を考えれば不思議でもないけど、まどかちゃんって裁縫が得意な娘なんだぁ。――地味だけど料理と並んで結構ポイント高いな。

「けどこれは作れないと思うんだよ。表舞台からは抹消された、日本が誇るべき匠の技だからさぁ」

 けしからんね。

 日本って国はホントに文化とか伝統にはお金を払わない。

 だからこの瞬間が奇跡。

 俺はネッシーやツチノコを発見したような気分だった。叶わない夢なんてない。少年の心をなくさなければいつか必ず実現する。

 …………

 もう毎度毎度のことだけど何言ってんのか自分でもわかんねぇなぁ。

 自分で自分がわかんねぇ。

「サイズはかなり甘やかされたボディの娘でも大丈夫だけど、買う前に一応試着しといた方がいい。お? あそこの試着室が空いてるね」

「え? え? ええ?」

 俺は怪しさ爆発だったが自然な動作で、まどかちゃんの手をきゅっと握ると、ずんずんと試着室を目指して雄雄しくも脚を進める。

 カーテンを開くと勢いよく少女と一緒に飛び込んだ。

 閉めるときにキョロキョロと辺りを見回してしまったのは、情熱に任せたふりをして、どこかしら計算があったからなのかもしれない。

 入るときに素早く脱いでた靴も、男物の自分のだけは、しっかりちゃんと中に引っ込めてたし。

「ちょ、ちょちょ、コ、コーチ!?」

「お願いしますっ!!」

 この日この瞬間、人間は静かに叫べるんだということを俺は知った。

 伝わるものがあったんだろう。

 まどかちゃんも俺の言葉を待ってくれている。……決してアホを目にして引いてるからじゃないと信じたい。

「これを、これを履いてくださいっ!!」

 おそらく、

 30間近の俺たちくらいの年齢なら、同級生の女の子に最初に性的なものを感じるのは、例外なくでそれは体育の時間だっただろう。

 健全な教育目的で作られたはずなのに、エロスを自覚させずにはいられない、幼い下半身を包んでいる濃紺のブルマ。

 オトコとオンナ。

 はっきりと意識したのは絶対にあのときだった。

「あの、あ、あの、ね? こ、これ、べつに下着じゃないのよ? わかって、るの?」

「わかってる。俺の青春時代はリアルタイムでブルマだったから。これがスカートの下に体育がない日まで履かれているのも知っている」

 そして、

 女の子はパンツをガードする鉄壁の守りだと思ってるんだろうが、男の子がハミパン含めてブルマにエロスを感じてることを知らない。

 大人になるともっと際どいものが好き放題で見れるのだが、ブルマを超える素敵なアイテムがそうはないのに気づかされる。

 少年時代。

 幸せの青い鳥はずっと家にいた。

 嗚呼ブルマっ!!

 その素晴らしさに気づこうともせずに、気づいていても気づかないふりをして、少年は背伸びしたエロを求め旅立ち大人になっていく。

「でも男は生まれた場所に、み~~んな還って来ちまうのさ」

「はぁ?」

「……いや、うん、なんでもないっす。ああ、しつこいようですが、是非とも履いていただけませんでしょうか?」

「まあ、コスプレするときはブルマなんて、しょっちゅう履いてるし、べつにいいけ――」

「早速お願いしますっ!!」

 俺はまどかちゃんの言葉を最後まで待つことなく、少女の気持ちが変わらぬうちにと、それこそ速攻で後ろを向いてその場に正座した。

 思うにポーズかなにかのチェックでもするためだろう。

 試着室の中は二人入っていても、スペースはまだまだ余裕があって広い。

「…………」

 姿見の鏡に映るアホ面のオトコを見つめながら、俺は確信犯“的”ではなく確信犯でスイッチを入れた。

「まず――」

 だから『まずは外に出ろ』とでも言おうとしたまどかちゃんを、これ以上ないというくらいタイミングをばっちりと計って封殺する。

 少女と鏡越しに眼と眼が合った瞬間、俺はゆっくりと静かに目蓋をそっと閉じた。

 どうしてだか紳士っぽい。

 そんな真摯な姿勢だけどちゃっかり座ちゃってる男に対して、いたいけな少女が無下な言葉なんぞはかけられないだろう。

「うう~~」

 少女は何か口の中で唸ってたが雄々しく無視したった。

 やがて諦めたのか(納得ではないだろうな)、背後でがさごそと動いている気配がする。

 ここでいきなり唐突なのだが、

「…………」

 実は島田誠(27)には人には秘密にしている、七つのスペシャルなスキルがあったりなかったり。

 その三番目がブルマを絶賛装着中のまどかちゃんに覚られぬよう、大胆でありながらも細心の注意を払いつつ発揮されていた。

 薄目。

 昔っから自慢じゃないが得意である。――いや、本当に自慢ではないけれど。

 それはともかく、

「…………」

 日常行う何気ない仕草にも、エロというのは仕込まれている。むしろ露骨ではないからこそ逆になのかもしれない。

 乙女らしい警戒をしているのだろうが、返ってそういうのに男はそそられたりする。

 鏡に映っているまどかちゃんは、くるくると丸めたブルマに素早く足を通すと、ロングなスカートの中に手を入れて微調整をしていた。

 視覚ではエロいものなど、何ひとつも捉えてはいない。

 しかし、

 エロというのは見るのではなく感じるものだ。

 想像して妄想して爆発させた分だけ、その威力は天井知らずで増していく。

 限界のない無限の可能性だ。

 小宇宙である。

 うん。

 言葉の意味は言ってる俺にもいまいちよくわからんが、同じ牡生命体にならきっと伝わっていると信じたい。

 ハミパンしてないかのチェックを終えたまどかちゃんが、完璧だと判定したのかスカートに差し込んでいた手を抜き取った。

 腰の横にあるホックに触れる。

 と。

 ごっくり。

 広いといってもやはり狭い試着室の中で、妙に大きな音を立てながら俺の喉が鳴った。

「…………」

「…………」

 鏡越しに少女と俺の眼が合う。

 まだ気づかれていないとは思うのだが、じ――っとまどかちゃんは、薄目の俺にぴたりとピントを当てて睨んでる。

「…………」

「…………」

 強力なプレッシャーに瞼がひくひくしてきた。

 緊張と興奮のコンボ。

 ここが取調室で俺が犯人だったなら、カツ丼を出される前に自白するだろう。

 この刑事さんはおでこに天然ライトも装備してるしな。

 しかし、

「御堂ちゃん」

 それは救いの女神か破滅の悪魔か、試着室の外からの声に俺だけでなく、名を呼ばれたまどかちゃんまではっと身を固くする。

「リ、リヒターさん!?」

 今日のこの娘はドモりっぱなしだった。

「ああ、やっぱりそうか。また来てくれたんだね。靴が御堂ちゃんの履いてたのと同じだったから、そうかなと思って声かけたんだけど」

「は、はは、はい。リ、リヒターさんのお店、わ、わたし凄く好きですっ!! 毎日通いたいくらいですっ!!」

「うふふ。それはありがとう。気に入って貰えたみたいでこっちこそ嬉しいよ」

 姿は見えないがどうやらカッコいい系の女性らしい。

 声は噂のリヒターさんその人だ。

 パニック。

 遂さっきまで詰問するように見ていた俺を、少女はどうしていいかわからず、猛烈に『助けてよっ!!』とSOSな視線を送ってくる。

 面白いから放っておこうかと、ちらっとは思ったりはしたが、そういうわけにもいかなかった。

 相手が女性でそれなりに親しい間柄なら、カーテンを少しだけ開けて、ひょいっと顔を試着室に入れてくるかもしれない。

 困るのは俺だ。

 リヒターさんとやらには洒落っ気がありそうだが、顔も見たことのない人の洒落っ気に甘える気にはなれない。

 薄目を解除してそ~~っと立ち上がると、俺はまどかちゃんの耳元でこそっと、シャンプーのいい匂いに頭をくらくらさせつつ囁いた。

「ここは先手必勝」

「え?」

「先にまどかちゃんから顔を出して話した方がいいよ」

 虎穴に入らずんば安地を得ずと昔から言う。

 この際は藪からなんとかというのは脳から消去だ。

 まどかちゃんは俺の進言にしたがって、おでこから突っ込んでカーテンを弾き飛ばすと、ひょっこりと試着室の外に頭だけを出した。

「うわっと!?」

「あ?」

「元気に喜びを表現してくれるのはうれしいんだけど、ヘッドバッドはお互いのためにならないと思うんだ」

「す、すいません」

 ああ、なんだか俺この人となら、友だちになれそうな気がする。

「どうかな? 新しいのをいくつか入荷してみたんだけど、御堂ちゃんの参考にもなりそうなものはあったかな?」

「いつも参考にさせてもらってます。このお店は流行だけを追わないというか、あたしが言うのは生意気なんですけどこだわりがあって」

「いやいや。ありがとう。半分以上はそんなのだから、売り上げはとんとんになっちゃってるけどね」

「……すいません。もっとわたしが売り上げに貢献できればいいんですけど。あんまり高い買い物ができなくて申し訳ないです」

「うん? いいんだよそんなの。自分の作ったコスチュームを着てくれるのも嬉しいけど、同じくらい作ってくれる人がいるのは喜びだ」

「ありがとうございます」

 などと二人の話が盛り上がっているおかげで、俺にも場を弁えない、なくてもいい余裕が出てきちゃってた。

 話し込むまどかちゃんの背後ですっすっと中腰になる。

 目の前には意図せず突き出されている、スカート越しでもその丸みがわかるお尻だ。

 裾を掴む。

 人間の背中に眼がついてなくて本当によかった。いま鏡には嬉々としている変態がきっとばっちり映っているのだろう。

 スゥ~~~~フゥ~~~~。

 深呼吸をひとつ。

 動揺と興奮を抑えながらゆっくりとゆっくりとスカートを捲くっていく。

「あっ!?」

「……どうしたの、御堂ちゃん?」

「い、いえ、なんでも、なんでもないです」

 微かな衣擦れと外気との温度の違いを、その敏感過ぎる思春期の肌に感じたのか、少女はブルマに包まれてるお尻をぴくんと震わせた。

 剥きだしの白くて長い脚。

 綺麗な膝。

 無駄な肉はないけれど女性らしくしっとりとしている腿。

 ファンシーなソックスを纏っている脹脛。

「…………」

 舐めるように肌を這う牡の視線を感じているのか、白い肌が熱せられて紅くなっていく様がなんとも美しい。

 まどかちゃんは装飾品や仕草が子供であっても、醸しだす色気や身体の反応だけは、もうどこでも通用する立派な大人のレディだった。

 とはいえ。

 俺はもっとジャンジャンそういったものを、大人のジェントルマンとして引き出してやりたい。

 だからこれはオトコとしての使命感に基づいた崇高な行動だ。

「ひゃッ!?」

 お尻に俺の手が触れる。

 想像よりも厚いブルマの布地越しでも、あたたかさと艶かしさが伝わってきて、俺は思わず感動で咽び泣きそうになってしまった。

 それを堪えながら丸みに沿って、赤ん坊にするみたいに優しく撫でる。

 谷間を右から左へと丹念に行き来させた。

「御堂ちゃん」

「は、んふ、はい、な、なん、で、ふ、です、か?」

「もしかして、体調でも悪いのかい?」

「いえ、ふ、だ、大丈夫です、んふ、……から。ええ、は、大丈夫、です」

「ふうん。まあ、それならいいんだけどね」

 どうもこれは人一倍感じやすい性質なのか、コース料理ならまだ食前酒の段階だというのに、まどかちゃんは早くも鼻を鳴らしている。

 表情が見れないのが非常に残念だった。

 リヒターさんが羨ましい。

 そんなわけでその嫉妬にも似た悔しさを晴らすために、俺はモデルのように細くくびれてる腰に両手を廻すと、がばりっと抱きついた。

「あンッ!?」

「……御堂ちゃん?」

「だ、はぁ、だだ、大丈夫、ん、で、です」

 まどかちゃんは明らかにさっきから挙動不審で、さすがに怪しまれだしたが、それを他所にして俺は物凄い癒されていた。

 一位こそおっぱいに譲るかもしれないが、お尻の温かさと柔らかさはやはり和むね。

 おっぱいとかお尻が好きな奴はマザコンなんだってさ。

 うん。

 俺マザコンでもいいや。

 頬で“すりすり”とヒップのやわらかさを感じながら、ときに“もふもふ”と谷間に顔を突っ込んだりするとどうでもよくなる。

 でも決していやらしい狙いはなかったんだけど、“くんくん”と匂いを嗅いじゃったのはマズったかもしれない。

「おぶっ!?」

「あれ? いまなにかラブコメの朝の定番の風景を、リアルにやったときのような音がしなかった?」

「そ、そうですか? わ、わたしの耳には全然聴こえませんでしたけど?」

「う~~ん。昨晩観たアニメの幻聴かなぁ」

「そういうのってありますよねぇ。わたしもパンを食べながら遅刻ぎりぎりで登校したら、先生に本気で怒られたことがありますよ」

「それわたしもやったな」

「ただ最後のツメは誤っちゃいました。廊下に立ってろって言われたら完璧だったんですけど、そのあとは普通に授業だったんですよね」

「あるある。教職員てやつはホント空気読まないんだよ」

 鳩尾に不意打ちの踵蹴りを喰らって悶える俺を、それこそ尻目にして二人はアニメあるあるネタで盛り上がってた。

 けれど俺も腹を押さえながら、ふつふつと燃え上がってきたね。

 ブルマにがっしりと力強く手をかけた。

 躊躇いはない。

 やはりフリフリの小学生みたいなパンツごと、膝の裏まで一気に“ズルンッ”と引き下ろされて、白く滑らかなお尻が剥きだしになる。

「!?」

 少女の声なき叫びが俺の耳には聞こえていたが、嗜虐心を過剰に煽られちゃった牡の動きは止まらない。

 まどかちゃんのは下付きというやつである。

 ぽやぽやとした恥毛がほんのちょっぴりあるだけの、一本の縦溝しかないシンプルな女の子に、飢えた肉食獣のようにして飛び掛った。

 会陰部に鼻面を突っ込む。

「ひッ!?」

 まどかちゃんは試着室のカーテンを両の手で力一杯握り締めた。

 日常にはない感覚が刹那で“ぶるり”と、電流のようにして身体を走り抜けたからである。

 腿の付け根でひっそりと息づく、少女らしい可憐な花びらに、俺は唇のタッチはソフトに吸引はハードにむしゃぶりついていた。

 握ったカーテンが小刻みに揺れている。

 ガチャガチャと鳴っていた。

「……やン……あ……あふぁ……、ん……あ……は……はぁ…………」 

 少女の口からは抑えようと努力はしていても、抑え切れてない声が断続的に漏れていた。

 そして、

「なるほどね」

 その合間を縫うようにしてパチンッと指が鳴る。

 妙に高い音だった。

「御堂ちゃんはやはり調子が悪いみたいだ。気を遣わせてもなんだから今日はこれで失礼するよ。後ろの彼にちゃんと送ってもらってね」

 まあ、

 そりゃ当たり前の話である。

 声しか知らないもののリヒターさんとやらは大人の女性だ。

 俺の姿もどこかで見られていたのかもしれない。

 色っぽい吐息を漏らしている少女の変化が、どういった種類のものかも一目瞭然だろう。――だというのに見逃してくれた。

 うん。

 本当に人間のできた大人ないい人です。

 是非友だちになりたい。 

 間違いなく靴音をわざと床に響かせてくれながら、こうしてリヒターさんは俺たちを二人にしてくれた。

 そして確認した瞬間即座に俺の舌は粘膜の合わせ目に挿し入れられる。

 欲望のままに掻きまわした。

「はひッ!?」

 少女の首がバネ仕掛けのようにして、甲高い嬌声を上げながら跳ねると、すぐに“カクンッ”と折れてずるずると前のめりに倒れる。

 腰はがっちり俺にホールドされたままなので、お尻だけを健気に捧げた犬のような格好だった。

 顔はまだカーテンの外に出たまんまだから、通りかかる人が居れば、なかなかシュールな光景を目にすることになるだろう。

 もっとも、

 この娘のこんときにするんだろう素敵な顔を、俺以外の人間に拝ませる気はさらさらないけれども。

「はぁっ……ああ……んンッ」

 舌で女の子の粘膜を丁寧にねぶりながら、罠に掛かった獲物を巣に引き込むかのように、ゆっくりとゆっくりと試着室の奥に後退する。

 姿見の位置を確認。

 床を爪で“カリカリ”と引っ掻いているまどかちゃんは、想像してたよりも遥かに堪らなく色っぽかった。

 …………

 快感に打ち震えているその顔が少女のままなのがまた堪らない。

 そうやって少女の悶える様を夢中になって観察していると、いつしか“チュクチュク”といった音が“クチュクチュ”になっていた。

 俺の唾液だけが奏でていた無粋なメロディーが、まどかちゃんとの美しいデュオになっている。

 肺活量フル運転で思いっきり啜った。

「うぁッ!?」

 錯覚なのが頭では理解できるが、心では納得しかできない味が口内を満たす。

 甘い。

 そうとしか思えない味が口の中に広がっていた。

 最初こそはスポーツ・ドリンクのようだが、すぐにそれはリンゴのシロップのような甘い味にチェンジする。

 島田家は躾に厳しかった。

 食事中などくちゃくちゃと音を立てていたら、その場で豪快に叱り飛ばされたもんである。

 申し訳ない。

 だが俺はそんな教えなどはどこ吹く風で、大型の動物が喉を潤すかのように、“ジュルルル~~ッ”と大きく下品な音を立てて啜った。

「…………あッ……はぁッ……ン……、んふぁ…………あふぁッ!!」

 するとまどかちゃんの喘ぐ声には益々磨きがかかる。

 色っぽいを超えてもうエロい。

 綻んできた恥丘を指で左右に裂いて大胆に割ると、快楽に導かれ分泌された大量の女の子の粘液が流れ腿を伝っていく。

 終点はパンツだ。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ…………くぅん………ふぅ……んンッ」

 帰りはどうしようかちらりと思ったりはしたが、少女の声を聞いているとあっという間にどうでもよくなる。

 俺はお尻を抱え込むように引き寄せ、ぬめっている秘唇全体を食べるように、一滴も逃すものかと口をつけて飲み下していった。

 包皮に隠れている女の子の真珠も丁寧に舐め転がす。

「はひッ……ひッ……ンあぁッ……あッ…………ンあぁッ……ぅあッ…………はぅッ!!」

 ふるふると震えてて可愛い。

 繊細な箇所なので優しく剥いてあげると、下肢をよろめかせつつも上げ続けてるお尻を、まどかちゃんはあられもなく振りたくってる。

 舌を“ちゅるり”と抜いて身体がくたくたと崩れ落ちても、紅く熱を帯びているお尻だけは高さを保っていた。

 開花させられた秘裂が誘うようにして淫らに“ひくひく”としている。

「…………」

 俺は素早く無言で履いているズボンを下げた。

 パンツを下ろすのには少々手間取る。

 我ながら恥ずかしくなるくらいに、オナニー覚えたての中学生にも負けないほど、ギンギンに脈打ちながら急角度で勃起してやがった。

 きっといまなら“コレ”で、人を殴り殺すのも可能だろう。

「…………」

 だがそんな暴力的な気持ちではあっても、一応のセーブ機能が俺の中では働いていた。

 初体験。

 夜景の綺麗な一流高級ホテルのスィート・ルームは、俺が叶えてやるのは限りなく不可能だが、試着室で迎えさせないくらいはできる。

 そのぐらいの余裕と配慮は大人としてもオトコとしても、勃起が釘を打てる硬度でもぎりぎりのぎりのぎりでまだあった。

 …………

 とはいえそうなると代替案が必要にもなってくる。

 人間だってアニマル。

 こうなってしまうと俺も一匹の牡として色々と、意志が弱いと言われればそれまでだが、どうにかこうにかしないと収まりがつかない。

 床に赤く上気した顔を擦りつけながら、荒くなっている息を整えている、しどけなくもエロいまどかちゃんの細い腰を掴む。

 足の間。

 掲げているヒップよりもやや低い位置へと、滾りまくってる節操のない勃起の高さを調整した。

 レバーを倒すみたいにして、下腹から剥がすと角度を水平にする。

 そのまま腰を突き出すように押し進めて手を離した。

「ひゃぅッ!?」

 女の子の秘唇に触れた熱すぎる硬さに、ぼ~~っとしていたまどかちゃんは驚いたのか、弾かれたようにそこを見て喉を引き攣らせる。

 うん。

 わからなくはない。

 本来ならありえないものが、自分の股からニョッキリと生えているのだ。

 俺も朝起きておっぱいが自分の胸にあったりしたら、確実にいまのまどかちゃんと同じ反応をするだろう。

 下のパーツだったならなおさらだ。

 慣れてくると男女ともに、相手の自分とは異なるパーツに、違う感想を持つようになるが、初見ではグロテスクと感じるのも仕方ない。

 高校生ともなればビデオやらなにやらで、形状をまったく知らないわけもないが、生の経験による迫力は常に想像を上回る。

 それに、

「…………」

 まどかちゃんのリアクションに気を良くしたのか、勃起の体積がいつもよりも、サービスなのか“ぐぐっ”と一回りは増してきている。

 少女を脅かすみたいに“びくんびくんっ”と、エイリアンよろしくで蠢いていた。

「大丈夫だから」

 何がだ?

 そんな疑問が電光石火の速さで、自分の中に浮かんだりはしたが、何かを大人としてオトコとして、言わないわけにはいかないだろう。

 本当ならもっと少女を安心させてやれる、気の利いたことをできれば言ってやりたい。

 しかし、

「大丈夫だから」

 俺は捻りのない言葉を繰り返すことしかできなかった。

 ついでに、

「挿れないから脚を閉じて」

 デリカシーというのもあんまりない。

 それがどのくらいというと、まどかちゃんの記念すべき初体験の場を、試着室にしないための代替案が素股であるというくらいにない。

 いや、わかってるよ?

 もう当選確定で、バカなのもアホなのも、この期に及んでも抵抗があるが、変態なのも重々わかってますともっ!!

 だけどこの娘にどうしてもナニかしたいんだ。

 このドロドロと渦を巻いている欲望を、どうにかしてまどかちゃんにぶちまけたい。

 などという、

「……ありがとね」

 俺の誠にてめぇ勝手な我がままにも、まどかちゃんは応えてくれたりした。

 ふぅ。

 まったく持って大したもんだよ。

 ――この娘の方が俺なんかよりも余程大人だし、すでに立派なオンナなのだと思い知らされるね。

 小刻みに震えてはいるが、静かに左右の足を閉じてくれた。

 勃起がまどかちゃん自らの意志により、スラリと長くても肉づきのいい太ももに圧迫されて、女の子の秘裂にと淫らに喰い込んでいく。

 早くも気持ちい。

「動くよ」

 ここにきて突然恥ずかしくなってきたのか、まどかちゃんは顔を伏せるようにして、だけどはっきり“こくんっ”と頷いた。

 お許しを頂けたので恐々そろそろと、腰を前後に揺すってみたりする。

 白状してしまうが俺も素股の経験は微塵もない。

 むしろ、

 そうだからだろう。

「ンあぁッ……はぅッ……んンッ……ひッ、あ…………あぁんッ……ふぁッ、あッ………んぅッ!!」

 まどかちゃんは探りの段階で早くも悦んでくれていた。

 切ない喘ぎがひっきりなしに漏れてる。

 互いの性器を擦り合わせるという、種の保存だのなんだのを取っ払ってしまった、ある意味変態的な行為が火をつけたのかもしれない。

 そして二人は(俺は素股だが)歴とした初体験同士である。

 火がついたら止まらない。

 足のロックだけでは簡単に抜けちゃわないかと、俺は慎重に動いていたのだが、好きこそものの上手かなというやつである。

 速攻だ。

 あっさりと素股の極意といえるコツを掴んじゃった。

 小さく細かく速く。

 どこかのボクシング漫画でも描写されているインファイトの要領だった。

 勃起を短い助走で連続して叩き込む。

 すると、

「はひッ!?………ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……、んぁッ……ぅああッ!! …………あ!?……ああッ………んぁッ!!」

 もうまどかちゃんの快感を訴えている甲高い声は悲鳴に近かった。

 勃起にもズンッと手応え(?)がある。

 少女はあと二、三発もイイのが入ればKOだった。

 ただ、

「くぅおっ!!」

 俺もふらふらだったりしている。

 思いっきり歯を食い縛り、肛門をあらん限りの力で引き締めた。

 女の子より先にイッちゃったりするのは、たとえ初めて同士であったとしても、オトコとしてはさすがにカッコ悪すぎるだろう。

 オトコは見栄が七割で生きているのだから。

 そして幸いなことに、

「………ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ!! ……あ!? ……ああッ………んぁああッ!!」

 俺は今回見栄を張り通すことができたようである。

 遠吠えをする犬のように伸びをすると、大量の愛液を勃起に浴びせながら、まどかちゃんは“ぶるぶる”と身体を震わせて崩れ落ちた。

「セーフ」

 それを見届けると俺は掻っ攫うようにして、まどかちゃんの履いていたブルマを脚から抜き取る。

 勃起に押し当てた。

 考えてしたことではない。

 まどかちゃんとひとつになりたいという欲求を、たっぷりと愛液を吸い込んだブルマで、少しだけでも満たそうとしたんだと思う。

 多分。

 ブルマ越しに手を強く押してくるような感覚があった。

「……俺のアレはどんだけ元気やねん」

 呆れたようにそう言ってはみたものの、顔がだらしなくにやけているのは、わざわざ鏡を見るまでもなくわりきってる。

 真面目な顔はできそうにない。

 無理である。

 性臭漂う試着室はえらい惨状になっていたし、ぬれぬれブルマのお買い上げ方法や、リヒターさんへの言い訳など問題は山済みだった。

「これじゃ元気になってきちゃうよ」

 それでもである。

 見事にお尻丸出しで倒れ伏してる少女を見ていると、あらゆる問題が本当にどうでもいいこととしか思えない。

「ふぅ~~」

 ため息。

 言ったそばから“ムクムク”と、元気にまた勃ってきちゃってた。





[2293] 少女病 十六話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:5faa2a53
Date: 2009/05/26 18:28



 和やかな雰囲気の広い店内でも、その一角だけは明らかに他とは違う、異様なムードを醸し出している。

 例えるならばそこは魔界の入り口、修羅と化したオトコたちが巣食う戦場だった。

 俺は外界から隔絶するように張り巡らされた、赤い鉄のカーテンをくぐり、古参の連中に侮られぬよう気合を入れて一歩を踏み出す。

 思わず笑みが漏れた。

 首の後ろが充満している歓喜と緊張でぴりぴりとしている。

「ふっ……」

 常識というルールが支配している外の世界でなら、いまの俺は子を持つ親にとっては、遠ざけそうなくらいにちょっとアブない存在だ。

 が。

 ここではそんな俺にもちらっと、刹那だけ視線を送る程度で、特にそれ以上の関心を示す者など一人としていない。

 類は友を呼ぶ。

 誰しもが手にしたDVDのパッケージ、そこから何か読み取ろうとでもするかのように、一心不乱に爛々と鋭すぎる視線を注いでいた。

 ほんの僅かな見落としであっても、それが取り返しのつかない命取りになる。

 ここで生き残りたいなら臆病な方がいい。

 新シリーズや企画物に飛びつく、勇敢ではあるが同時に無謀なバカから、ここでは後悔を抱いて惨めに死んでいく。

 そう、

 ここは戦場だ。紛れもなくオトコたちの戦場である。

「……さてと」

 わざとらしく声を出して身体を割り込ませると、俺はおもむろに女子高生物を手に取った。

 まあ、ごちゃごちゃ能書き垂れたけどぶっちゃけ、若いオトコの憩いのオアシス、レンタルビデオのアダルトコーナーなんですけどね。

 しかし、ここにお世話になったことのない、成人男子は絶対にいない。

 断固として断言だ。

 女の子はよく甘い物は別腹だと言う。

 それとこれの理屈は同じ、では多分確実にないだろうが、オトコはカノジョがいようがいまいが、エロに関して別腹だったりするのだ。

 そして古より綿々と築き上げた数あるエロのジャンルでも、女子高生物は大概の牡生命体が好物中の好物だろう。

 無論、

 俺もその例外ではない。

 現れては消え現れては消えのエロ業界で、常に燦然と輝くこのジャンルは激戦区ではあるが、毟り取るようにして俺は獲物を確保する。

 裏面のパッケージには騙しなことが多いので安心はできないが、リボンタイのブレザーを着たポニーテールの娘が可愛い。

 狙ったわけでは決してないんだけど、知り合いの女の子に似ているのも、ポイントが高かったりした。

 ゲットだぜっ!!

 こういうのはハズれがほとんどなので、二、三本まとめて借りてくのがセオリーだが、俺はこれ一本に賭けるという決め打ち派である。

 俺は目立たぬよう小さくガッツポーズをすると、作戦目的は果たしたとばかりに、戦場からの素早くも落ち着いた離脱を図った。

 獲物を確保したからといって、ここで努々油断してはいけない。

 隙というのはこういうとき、勝利を勝手に確定したとき、往々にして生まれるものなのだ。

 俺もここで何度も苦い思いをさせられている。

「…………」

 カーテン越しに外界の気配を窺った。

 すぐ隣りのコーナーはお笑いの専門だったりしているので、あらゆる世代がとりあえずの巡回コースに組み込んでいる。

 バッタリを警戒だ。

 親子連れとか、カップルとか、それこそ女子高生に会っちゃったら、さすがに歴戦のエロ・ソルジャーである俺でも気まずい。

 真価が問われるのは、情報のある突入よりも、経験頼みオンリーの離脱なのである。

「あれ~~」

 何気ない風を装って後ろをちらりと見た。

 銀ブチの眼鏡をかけた神経質そうでひょろりとしたオトコと、中途半端に髪を金髪に染めた兄ちゃんが、俺の背中に視線を注いでいる。

 熱い。

 勇者が切り込んでくれるのを、彼らは期待を込めて待っているのだ。

「…………」

 俺はこの二人を決してチキンだとは思わない。

 思慮深いだけだ。

 勝算もなしに飛び込んで格好いいのは少年漫画だけである。それ以外では自分本位なナルシストの単細胞でしかない。

 とはいえ、

「…………」

 ずっとここにこうしているわけにもいかないだろう。誰かが貧乏くじを引かなくてはならない。例えそこに勝算がまったくなくてもだ。

 そしてそれは、ベテランからだろう。

 せいぜい遅れず俺に着いて来な、この嘴の黄色いくそったれルーキーどもっ!!

 鼻の下を親指で“ぴっ”と擦りながら、俺はにやりと笑みを浮かべて、モラルとインモラルの境界線を踏み越えた。

 ああ、わかってる。

 このままレジより精神科にまず行けと俺も思うが、今日この瞬間だけは頼むから格好つけさせてくれ。

 ゲットレ、――じゃなくてアクション!!

 赤い鉄のカーテンを捲り、外界に威風堂々一気に飛び出す。

 日頃の行いが抜群にいいからなのか、幸いなことに常に賑わっているお笑いコーナーに、めずらしいこともあるもので誰もいない。

 だが、

「…………」

 結果としてはその良過ぎる絶好のシチュエーションが、なんだか文法として矛盾している気もするが悪かった。

 俺の後ろに続いていた彼らのようにして、そのままの勢いでひたすらに、本来ならばレジを目指せば問題はなかったのである。

 ベテランとルーキーの差が出た。

 最後のボスキャラとしてレジで待ち構えているのが、女の子の店員という可能性も多いにある。

 ここはとりあえず一度、洋画コーナーにでも紛れ込んで様子を見るべきかも?

 なんてな風に、

「あれ? 島田さん?」

 どうやらセーフティーに走ったのが拙かったらしい。俺にとってのボスキャラは、女の子の店員などという生易しいものではなかった。

 隣りに住んでいれば生活エリアが重なっていても不思議はない。

 そしてこの娘は無類の映画好きだった。

 どうやら学校帰りなのか、リボンタイのブレザーに、ポニーテールが妙にハマった制服姿が可愛い。

 この娘は私服ではスカートを、まず穿いたりはしないので、健康的な脛と膝小僧が見えるのが、なんだかやたらと新鮮でドキドキした。

 考えたらこんなにじっくり見たのは初めてである。

 サラリーマンに勝るとも劣らずで、彼女たち女子高生の朝は慌しいのだ。

「……やあ」

「島田さんはもう何か借りはったんでっか?」

「そんなとこかな」

 相変わらずのとてつもなく怪しい関西弁だがそれはいい。良くはないのは“ちらっ”と、俺の手元を意味有りげに見ていることだった。

 こういうところで知り合いとバッタリをすれば、相手が何を借りるのか、気にするのは別段不思議なことではない。

 俺だって紅葉ちゃんと同んなじ立場なら、当然のように聞いているだろう。

 うん。

 そりゃそうだよな。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……あの」

「……うん」

 だからこうやって人生の中に、意味のない空白の時間を作っているのは、紅葉ちゃんにではなく俺に原因があるのは重々わかっている。

 でもそうだからって、一体どうしろっていうんだ。

 素直にタイトルを教えろとでも?

 少女に?

 俺が借りようとしているのは『ポニーちゃんハイヨーっ!! ロデオ遊戯制服にかけろ』だと、胸を張って言うのが正解なんだろうか?

 と。

 俗に言う考えるよりも先に身体が動いてしまうというやつである。

 プレッシャーに負けたのかもしれない。

 こんな具合にテンパっている人間特有の、思考ベクトルが働いちゃった俺は、降参でもするようにしてDVDを渡してしまった。

「なんやの?」

 少女たちと知り合ってからそろそろ二ヶ月が経つ。

 思えば出会って一週間くらいが、イベントラッシュのピークではあったが、紅葉ちゃんとの仲はゆっくりと緩やかに変わってきてる。

 ガチガチに緊張していた口調が親しくも、かなりくだけたものになってきてるのは、やはり素直に嬉しいものだ。

 パッケージをじっと見ている冷たい目にすら、微かな親愛の情を感じたり感じなかったり。

 頬がうっすらと赤い。

 そこには少女の基本アビリティである恥じらい以外にも、色んな理由が内包されてる怒りがありそうな気がして、ええ――萌えました。

「島田さんはこういうのが好きなんでっか?」

「……まあ、ね」

 返答に一瞬だけ間が空いてしまったのは、紅葉ちゃんの視線にびびったからではなく、周りに視線に気づいたからである。

 みんながちらちらとちら見しながら“にやにや”していた。

 親子連れとか、カップルとか、それこそ女子高生とか、ジャンルを問わずで俺たちを見て笑っている。

 嫌な感じはしなかった。

 決して馬鹿にされたり嘲笑われているわけではないのはわかってる。

 俺と紅葉ちゃん。

 二人の関係が果たしてどう映っているのか、そこまではさすがにわからないが、どの視線も微笑ましいものを見ているようで悪くない。

 そういう問題でないのだけはわかっていたけれど、

「ふっ……」

 レジを無事通過し目立たぬように帰ろうとする、ルーキー二人の羨望の視線に、心の中で勝ったと思う俺は、多分器が小さいんだろう。

 だがそれを認め反省はしてみても、これはもう絶対に、今日の最高値でいい気分だった。

「なにをにやけてるん?」

 もとから締りのない顔をさらに緩める俺に、むっとする紅葉ちゃんの表情が、増々持ってそんな素敵な気持ちを加速させていく。

 命名 ガールズ・ハイ。

 こんな気持ちになれるというのなら、偶にはアンブッシュもされてみるものだ。

「紅葉ちゃんはなにか借りたの?」

 わけのわからん理由で精神的優位に立った俺は、少女からさり気に『ポニーちゃんハイヨーっ!! ロデオ遊戯制服にかけろ』を奪う。

 …………

 う~~ん。

 連呼するとやっぱりこのタイトルって恥ずかしいなぁ。

 そこが良いといえば良いのだが。

「うちは大分ブームには乗り遅れたんやけど、HEROESのシーズン・3を借りにきたんや。残念ながら全部貸し出し中みたいやけど」

「ああ、あれ、未だに人気があるんだね。俺もシーズン・1で止まっちゃってるな」

「アメリカのエンタティメントを観たいんやったら、いまはハリウッドよりも断然テレビドラマやさかいなぁ」

「そうだろうね」

 そういった映像業界の現状に不満でもあるのか、紅葉ちゃんは頬を指先で掻きながら、レジへと雄々しく向かう俺の後ろをついてくる。

 レジの担当がこの短い間に、オトコからオンナに代わっていたが、俺の歩みを止めることはできない。

「一週間でお願いします」

 無意味にきりっとした顔を作りつつ、ポニーちゃんの七泊独占宣言をした。

 紅葉ちゃんという高いハードルの後では、店員さんがいくら可愛くても、そんなものは鼻歌交じりの余裕で跨げる。

 密かに熟年離婚なんぞを考えているお母さんが、休みの日にもスポーツ新聞に熱心に目を通す、読書家のお父さんを跨ぐよりも簡単だ。

 俺のお袋の跳躍なんて華麗ですらある。

 親父。

 本人だけはバレていないと思っているんだろうが、家族一同にバレまくっている、フィリピンパブにハマっている場合ではない。

 ちなみに爺ちゃんのカノジョさんは、三十歳年下で福建省出身の方だった。

 愛に年齢は関係ない。

 でも自分の息子より若いのは孫として微妙な気がする。

 祖父の年々広くなる守備範囲について思案しながら、俺は紅葉ちゃんとてふてふと歩きながら店を出た。

「島田さん、もうご飯食べたん? ってまだ六時を過ぎたばっかりやったんか。随分と今日は帰りが、久しぶりに早いんやないですか?」

「うん」

 相当に早い。

 昨日まではもう『労働基準法ってなんですか?』と、真顔で聞きたくなるようなタイム・スケジュールで働いていたのにえらい差だ。

 今月は家賃をまともに払っていたのが馬鹿らしい。

 会社に用意されている簡易ベッド。

 そこにしっくりと、旅行から我が家に帰ってきたように、馴染んでいる自分を発見したのが、無性にムカついたりムカつかなかったり。

 どうにかなる前に終わってくれて、色んな意味で本当に良かったよ。

 赤いきつねVSどん兵衛。

 どちらのお揚げが美味いのかで議論がうっかり白熱し、性悪上司と睨み合いになったときは『ヤバい!?』と思ったね。

 しばらくは、どっちも食いたくねぇや。

「紅葉ちゃんは自炊、ちゃんと続いてるのかい?」

「バイト先でお弁当が出るとき以外は、ちゃ~~んと毎日作ってはりますよ」

「そりゃ感心だ」

 まあ、自炊っていうのは偶にやるんじゃ意味がない。

 今日はやるかじゃ返って高くつく。

 それこそ偶には休んでもいいが、偶に作るというくらいなら、大人しくスーパーなりでインスタントを買っていた方が安上がりだ。

 だから俺みたいに不規則な仕事をしていると、現物支給されても料理をしないので余らせてしまう。

 気持ちは有難いけどさ。

「田舎からまた茄子が大量に送られてきたんだけど、具体的に言うとダンボールで三箱は送られてきたんだけど、またもらってくれる?」

 孫を大食いチャンピオンだと思ってんじゃねぇだろうな?

 普通に食えねぇよそんなに。

「おおきに。いつもいつも助かりますわ」

 こちらこそである。

 紅葉ちゃんみたいな育ち盛りの少女にもらってもらった方が、爺ちゃんが精魂込めて育てた茄子くんもきっと本望だろう。

 食べ切れない分は洋子やまどかちゃんや綾乃ちゃんの胃袋、そしてトドめには、白鳳院道場の野武士軍団に流れるので余ることもない。

「でも茄子ばっか食ってちゃ駄目だよ? あれって栄養価はほとんどないらしいから」

 これ言ったら爺ちゃん物凄い激怒したっけなぁ。

「ダイエットにはええですやん」

「……へぇ~~」

「へぇ~~って、なんですのん?」

「いや、紅葉ちゃんでも、そういうこと気にするんだね」

「むむっ 気にしたらあかのんですか? ……うちだってこれでも、一応は女の子なんやからな」

「そういう意味じゃなくて」

 正直言ってしまえば四人の中で、そういうことに一喜一憂はしゃぎそうなのは、まどかちゃんだけだろうと勝手に思っていた。

 この年頃とダイエットという概念は、例外なしで切り離せないらしい。

 少しぐらい太ってた方が可愛いのになぁ。

 とはいえ紅葉ちゃんには、ダイエットの悪い影響が出ていないようなので、俺的にはこれといって特に文句も不満もなかったりはする。

 安心安心。

「紅葉ちゃんは一応どころか、充分以上に女の子だよ」

「……どこを見て言っとんねん」

 最近の紅葉ちゃんは俺の視線に対して、とっても鋭くなってきていた。

 横目。

 島田誠(27)の人には秘密にしている、スペシャルなスキルの一つが発動しているのだが、少女のレーダーはイージス艦より厳しい。

 制服のリボンタイを内側から豪快に持ち上げている胸を、両の腕で抱くようにして俺の視線から隠そうとする。

「ああ、え~~っと」

 だがその防御手段は稚拙で甘いと言わざるを得ない。

 妄想で回転する俺の相転移炉は、腕のガードをクリアーにスルーして、股間に搭載されているスティクスの発進準備を着々としていた。

 ドンッとばかりの勢いで飛び出さないのが不思議ですらある。

 茄子とおっぱい。

 ふふふっ。

 27歳のいい大人のオトコの妄想力が、オマーン湖を辞書で引いて喜んでる、オナニー覚えたばっかの中学生並みとはよもや思うまい。

 チャックというフライトデッキを、いまにも弾丸のように押し破らんばかりだった。

 ……ちっくしょう。

 缶詰状態にされてたからタマってんだよっ!!

 と。

「タイマツヤちゃん」

 後ろから馴れ馴れしく声をかけられた。

 紅葉ちゃんの名字はカガリヤだが、松明屋という漢字を書くので、読めない人は結構いるし、俺も最初は読めずに同じ間違いをしてる。

 だからすぐに紅葉ちゃんが、呼ばれたのに気づいたというのもあるが、俺が素早く振り向いたのは絶対にそれが理由ではない。

 刹那でカチンッときたからだ。

 声の感じでわかる。

 誰だかわからなくてもこいつは間違いなく敵だ。

 で。

「あん?」

 誰かと思ったらそこに居たのは、さっき店で助けてやったルーキー二人である。

 ポケットに手を突っ込み無闇に肩をいからせている金髪の陰に、隠れるわけもないのに隠れるようにして予備校生風オトコも立ってた。

「…………」

 俺はバイオレンスの類ははっきりいって苦手である。

 校舎裏に来てください。

 そういう手紙をもしもらったとしたら、女の子に告白されるよりも、男塾みたいな奴らのカツあげをまず想像するチキンでもある。

 しかし、だ。

「…………」

 ここでバイオレンスなノリになったとしても、べつにこいつらを怖いとは微塵も思わない。

 エロDVDを堂々と借りられない奴らに、いくら虚勢を張られたところで、びびる理由などどこにも存在しなかった。

 まあ、それだからといって、

「こんなとこで会うなんて奇遇じゃん、タイマツヤちゃん」

 人と人とのコンタクト、その輝く優先順位第一位に、ムカつくからといって喧嘩を持ってくるほど、俺は十五の夜なコドモじゃあない。

 まだ紅葉ちゃんの友だちという可能性も、無くていいけど無きにしも非ずだからな。

「もしかして隣りに居んの、タイマツヤちゃんのお兄さんとか?」

 言って金髪はちらっと俺を見る。

 同時にネタ合わせでもしてたかのようにして、予備校生もタイミングどんぴしゃな視線を送ってきた。

「…………」

 この二人はお笑いのコンビでも組んだらいい。

 生涯ではじめてといっていいくらいに、やる気満々になっている俺の視線に、ささっと顔ごと背けるのも同時だったりした。

 でもこれで安心である。

 確認が取れた。

 どうやらバイオレンスなノリには到底なりそうもない。

 あんまり経験がないので、いまになって気づいたが、俺は紅葉ちゃんの前でカッコつけるために、アドレナリンがぴゅうぴゅう出てる。

 本能なのかどうなのかは知らないが、牡として自然と牝を守る位置に身体を動かしてた。

 ガキじゃあるまいし。

 多分、予備校生の方はともかくとしても、金髪の方とは普通に喧嘩したら、俺は拍子抜けするほどあっさり負けるんじゃないかと思う。

 だけど紅葉ちゃんの前でならそうはならない。

 自信がある。

 それを積極的に確信に変えようとは思わないが、そう思える自分が恥ずかしさ半分で、ちょっと誇らしかったりした。

「違います」

「え? あ、ああ、あっと、お、お兄さんじゃないんだ?」

 にべもなく言い返す紅葉ちゃんの返答に、俺ごときの視線に呑まれている金髪は、どこからどう見ても居心地が悪そうにしている。

 予備校生など『ワンッ!!』と吠えれば脱兎のように逃げ出しそうだ。

 まあ、俺の趣味はそこまで悪くはないけどさぁ。――それにこういうときの台詞は決まってる。

「俺のオンナに手を出すな」

 やべぇ。

 アドレナリンだけじゃなくって、ドーパミンやらエンドルフィンやら、島田誠に搭載されている脳汁が総出演になってるよ。

 スティクスだのなんだのと言っちゃてた人間と、とてもじゃないが同一人物とは自分でも思えねぇっす。

 …………

 興奮してるから未だに臨戦態勢で勃起してるんだけどな。

「これは俺のお奨め。多分気に入ると思う。一週間のレンタルにしてあるからさ、二人で仲良く順番に観て、ちゃんと返しといてくれよ」

 俺にはもう必要ないものだ。

 金髪に借りてきた『ポニーちゃんハイヨーっ!! ロデオ遊戯制服にかけろ』を押しつける。

 こんなヒーロー気分な勘違いがナチュラルにできているのは、こいつらが素晴らしくナイスなタイミングで登場してくれたおかげだ。

「ど、どうも」

 変に恐縮しながら敬語で受け取る金髪の手元を、予備校生も挙動不審に一瞬だけ、ぺこりと頭を下げてから覗き込んでいる。

 俺が年甲斐もなく盛り上がってたので、なんか妙な空気になりかけてはいたのだが、こいつらの根が悪いわけじゃないのはわかってた。

 戦友。

 くそったれルーキーとはいえエロ・ソルジャーに悪い奴はいない。

 紅葉ちゃんの肩に手を廻し背を向ける。

「あ……」

 そっと自分を預けるようにもたれかかってくる少女の重みが、ひどく心地よくて甘美な刺激を俺の身体に走らせていた。

 そして脚も知らず知らずの小走りになっている。

 なるだけ格好いい大人なオトコの余裕を演出しようかと、意識してできるだけゆっくり歩いていたのだが、無意識に早足になっていた。

 このペースだったなら、

 アパートにはこれまでの最速レコードで、おそらく俺と紅葉ちゃんは、着いていたんじゃなかろうかと思う。

 ご近所の目もあるので(俺は構わんが)紅葉ちゃんの事情を考慮し、さすがに大通りに出てからは距離をいくらか置いていた。

 それでも競歩の選手みたいにして、通りをひたすら爆走する二人はかな~~り変だったろう。

 階段を駆け上がりながら、さてどっちにしようか、などと俺が迷ったりしなければ、おそらくではなくもっとタイムは良かったはずだ。

 だからそれがなんなんだよ? というような類のツッコミは、ここではもちろんで当然の無視である。

 言葉の意味はよく分かりませんが言いたいことは理解できなくもない。

 それだけで充分だ。

「うわぁ!?」

 結局紅葉ちゃんの部屋の鍵は紅葉ちゃんが持っているので、俺は素早く鍵を取り出すと少女の手を引っ掴んで島田誠宅に飛び込む。

 巻き込むようにして身体の前後を入れ替えると、“ガチャリ”とやはり素早く外界と遮断するように鍵を掛けた。

 盛り上がっている若い男女に言葉なんて無粋なものは要らない。

 靴を脱ぐのも煩わしそうにして、俺は紅葉ちゃんを抱きながら“ずんずん”と部屋の奥、に行くのも面倒臭くなりその場で唇を奪った。

 逆らえないし逆らう気も起きない。

 激情という名の荒々しい主人に支配された二人は、申し分け程度の可愛らしい接触をすぐに打ち切りケモノのように互いを貪った。

 互いにだ。

 自然界にはインプリティングというのがある。

 雛鳥が最初に見た動く物体を、親として認識するというのが有名だが、なんにせよ最初の体験というのは重要だというわかり易い例だ。

 その後を決定してしまうといっても別段言い過ぎでもない。――こともないがインパクトは絶大だ。

 まあ、とにかくお手本や指針として、刷り込まれるのだけは間違いないだろう。

 そいでそうするとだ。

「…………んっ…………んむッ……ふぅ…………、ン…………、む…………んンッ……んぅ…………」

 紅葉ちゃんにとっての経験とは、誇らしくも光栄なことに俺である。

 ファーストなのか、セカンドなのか、サードなのかなどと、内野手すべてを根掘り葉掘り聞くようなマネはしてないがそこは疑いない。

 キス。

 口づけ。

 接吻。

 変わったところでは唇愛撫というのもある。

 が。

 この際の言い方はそれこそこの際なんでもいいのだが、少女にとっての経験とは素敵なことにこの俺がすべてだった。

 唇を合わせるとはこういうことなのだと、紅葉ちゃんは俺を基準にインプリティングしている。

 まだおののくように震えてはいるが、けれど決して震えているだけではない舌。

 そうするのが自然なのだというように、唇を開き俺の舌を温かな口内に迎え入れると、ぎこちなくではあったが“ぬるり”絡めてきた。

「ううッ…………むぅ………んッ………んぅッ、…………ぅッ………んンッ………ふぅ………………むぅ………………」

 美味である。

 触れ合う部分の心地よさが堪らない。

 しごきたてるようにして少女の舌の不思議なやわらかさを堪能し、母乳を欲する赤子のように唾液を吸い上げて喉を潤す。

「……んン……んー……」

 お返しにと唾液を流し込むと、背中か首か迷っていたっぽい腕を首に廻して、紅葉ちゃんは迷うことなく“こくこく”と喉を鳴らした。

 太腿を撫でていた手を、制服のスカートの奥に奥にと這わせていくと、少女はそれに合わせ身体の密着度をどんどん高めていく。

 厚くもなければ頼りにもならない胸板で、歪に卑猥に“ぐにゃり”とかたちを変えるおっぱい。

 これで実力の半分くらいといったところか。

 シャツとブラジャーという防壁があっても物ともしない豊かなやわらかさ。

 立派です。

 羞恥に悶えるお尻は右に左に逃げようとする、ふりはしているが予定調和であっさりと捉まり、手を“むにむに”と愉しませてくれる。

 やはり生の感触には一段も二段も譲るだろうが、オトコ物にはない滑らかなパンツ越しのヒップも悪くない。

 下着のラインをゆっくり“つぅーー”と指先でなぞると、そのたびに少女の肌が粟立つのが、俺にとっても悦びであり快感だった。

「あ、……やッ、んンッ!?」

 唇が離れるのと歓喜の悲鳴はほぼ同時である。

 オンナとしての初々しさと品格を失わず、ぴたりと閉じられている腿の間に、俺は自分の足を強引にねじ込んで隙間を作った。

 少女の快楽。

 後ろからだけでは飽き足らずに前からも貪欲に引き出そうと、指先は敏感な秘唇を弄ぶリズミカルでアップ・テンポな曲を刻み始める。

 息つく暇も与えず撫で擦った。

「ンあぁッ…………はぅッ……んンッ…………、はぁ…………んンッ…………ふぁッ!!」

 さすがにまだ湿りっ気といった程度ではあったが少女の反応は早い。

 それだけ、

 俺に慣らされた少女ということだ。

 紅葉ちゃんの甲高い嬌声に“くちゅくちゅ”という、絶妙な伴奏が重なるのにはさしての時間を必要とはしない。

「ひッ!?」

 真っ赤になっている耳たぶを“あむっ”と噛むと震えがより一層大きくなる。

 舌を差し入れると自分だけでは、どうやっても発見することのできない性感帯に、紅葉ちゃんの身体は抗う術もなく翻弄され嬲られた。

 潤みを感じる。

 激しい豪雨に曝されたダムが決壊するかのように、コップの表面張力が限界を迎えたように溢れさせる。

 脳内で描いていたとおりの、いや、それ以上の見事なアンサンブルを、紅葉ちゃんのソコは“くちゅくちゅ”と奏でてくれていた。

「…………」

 自分が残酷な人間であると言われても否定はできない。

 親に助けを求める幼子のようにして、俺の首に“ぶるぶる”と身体を震わせながら、一途にすがりついてくる紅葉ちゃんを盗み見た。

 苛めて。

 そんな風な牡生命体には非常に都合がよく堪らんビームが、少女からは放射されまくっているように思えてならない。

 優しいが有無を言わさぬ力で少女の腕を解くと、転ばないようにだけは注意して、我ながら器用にそっと台所のシンクに突き飛ばした。

 内腿をエロく濡らしたお尻が“むぁ”とした熱を纏って掲げられている。

 ああ可愛い。

 俺は床に跪いて野暮だが少女らしいパンツを“ぺろんっ”と剥くと、肌の中でも一際に紅潮しているお尻を露にして牡の視線に晒した。

 欲情の証である銀色の糸が獣性を煽ってくる。

 緩く開いた腿のなかばで止められた、横に伸びてるパンツには股布を中心に、淫らで卑猥としか映らない水溜りができていた。

 そして、

「うう……」

 それだけの仕打ちを受けても、それだけの恥を掻かされても、紅葉ちゃんの身体は俺を愉しませる、それだけのために動くことはない。

 の、

 だということに、とりあえずはしておいて、俺はとりあえずで、ちょうどいい高さになるよう床に跪いた。

 お尻の丸みとふくらみを、ベストなアングルで拝む。

 両の手を左右の尻たぶに当てると、そのまま谷間を“ぐいっ”と押し広げた。

「いやや!?」

 紅葉ちゃんがさすがに鋭い抗議の声を上げるが無視して顔を寄せた。谷底には牡なら誰でもむしゃぶりつきたくなる窄まりがある。

 なので、

「ひゃぅ!?」

 もちろんズボンに“こんもり”シルエットを浮かせた、元気ハツラツ勃起“びんびん”の俺だって喜び勇んでそうしたさ。

 舐めるとその部分が勢いよく収縮していく。

 生々しい味はない。

 神様は人間の身体の構造というのを、なかなか面白いメカニズムにしていて、脳がそうだと感じればワンマン社長のように黒でも白。

 …………

 でも甘いと感じちゃう俺は、たぶんヤバい病気である。

「ンあぁッ……はぅッ…………んンッ……ひッ、あ…………、あぁんッ……、ふぁッ……あッ…………んぅッ!!」

 舌を進入させると紅葉ちゃんは、シンクに顔を伏せながら、アダルトを“ひらり”と通り越し、アブノーマルな感覚に喘ぎ泣いていた。

 萌える。

 音も例によってお約束な脳内変換なのだろうが、可憐な後ろの穴から“ちゅるり”と舌を抜き取ると立ち上がった。

 その可愛らしさに自尊心をくすぐられつつ、俺は腋の下から手を差し入れ、重力に引かれて大きさを増したような双球を鷲掴みにする。

 たっぷりとした量感を味わいながら、おっぱいを“むにゅむにゅ”と揉みしだいた。

 今更のようにこの肉は、蕩けるようにやわらかい。

 でも、

 このやわらかさはわかりきっているのに、何度揉んでも飽きない、永遠のベストセラーなやわらかさ。

 ホッとする。

 そして、

 そうではあってもその反面。

 やはり間にシャツとブラジャーを挟んでるので、100%の実力ではないが、それでもその感触と手のひらに収まりきらない大きさは、

三十路カウント・ダウンでも現在進行形で、身体の一部が思春期な俺を、年がら年中で興奮発情させるのには充分である。

 コレ。

 わけのわからん怪しげな裏ルート販売のドリンクを飲むくらいだったら絶対にいい。

 揉めばそれだけで明日への活力がみなぎってくる。

 うん。

 どうしても紅葉ちゃんにそれを教えたくて、俺は“ぐりぐり”と勃起をお尻の谷間に押しつけた。

 ズボンに“ぬちゃぬちゃ”と音をさせ、いやらしい染みができあがっていっても、だからどうしたと昂ぶりを伝えるために押しつける。

「ハッ……んッ、んッ………んぅッ……ああッ、…………くぅッ………んンッ…………」

 少女にも伝わってるようで嬉しい。

 快楽の波に揺れる紅葉ちゃんの身体に新しい種類の震えが起こっている。

 ウェーブとウェーブが激しくぶつかりあって少女の身体も、おっさんと同じく思春期な興奮発情の鳴門な渦潮状態だった。

 言葉の意味がわからないのはもうデフォである。

 で。

 まあ、

 それはいい。

 気を良くした俺はおっぱいを揉みしだいていた右の手を、湧き水のように“ちょろちょろ”と溢れさせるオアシスの源泉に触れさせた。

 しとどに濡れている秘裂に“ゆるゆる”と中指を、馴染ませるようにしながら撫でて安心させる。

「んッ……ふぅ、んッ………、んぅッ……ああッ………」

 触れた瞬間は少女らしい反応で“びくっ”となった紅葉ちゃんも、我慢強く抑え目な愛撫を続けていると段々落ち着いてきた。

 が。

 それがわかっているのにこういうことをする俺は、自分が考えていたよりも、ずっと意地の悪い人間なのだろう。

 考えるよりも先に動いていた。

 不意を打つ『ように』などではなく確信犯で不意を打って、まだ穢れを知らない初々しいヴァージンのホールに指を浅く沈み込ませる。

「ふぁッ!?」

 隠せもしない羞恥心を隠すために伏せられていた少女の顔が跳ね上がった。

 ポニーテールが揺れて“ぺしっ”と心地よく俺の顔を叩く。

 うん。

 テンションっていうやつは一体何で上がるのか、それは結構自分でもわかってないものである。

 いま妙に俺は上がった。

 豊富な潤滑油のおかげで中指は然したる抵抗もなく、居場所を奪われた女の子のシロップに“ぬるぬる”にされながら迎え入れられる。

 ピンクローターを真似るかのように小刻みにバイブレーションさせてみた。

 指先で軽く入り口を引っ掻いたりなんかもして、少女の秘密にしておきたいだろう快楽神経を剥き出しにしていく。

「はひッ!?」

 痛くなってからする虫歯の治療と一緒だ。

 直接に敏感過ぎる神経に触れられては、とてもではないが平静を保っていられる人間なんぞいない。

 ただ、

「うぁッ…………は…………、ああッ…………あ?……ぅああッ!? ……ふぅ……うぅ……あ、ひッ!?……あッ……ぁんッ…………」

 紅葉ちゃんだけに限った話でもないのだが、リアクションが良すぎて、自分の実力がわからなくなるのが困りものだな。

 まいるぜ。

 テクニシャンなのかと自惚れるくらい、みんながみんな良い反応してくれるんだもの。

 経験だ経験だと再三言っているが、その経験から導き出されている答えは、俺には自慢できるようなテクもセンスもないということだ。

 オンナはよくオトコを騙すのは簡単だというが馬鹿じゃない。

 何度も何度も身体を重ねていれば喘ぎ声というのは、女の子の優しさという成分でできているのが大抵わかってくるはずだ。

 もっとも、

「…………ンあぁッ……はッ…………んンッ、…………ひッ、あ……あぁんッ……ふぁッ!? あッ……んぅッ!!」

 これが嘘だったら俺に見抜くのは一生不可能だし、そもそもライなどは一切含まれていない、完全なトゥルーだとは思っているけど。

 可愛いはジャスティス。

 そしてこの世界で数少ない信じる価値のあるものである。

 うむ。

 俺の病気もかなり進行してきたな。――やたら人が死ぬ小説が流行っているだけに、俺も気をつけないと世界の中心で叫ばれてしまう。

 涙を煽るほどに劇的ではなくむしろ間抜けだが、車からの落下事故で終了もないとはいえない。

 肝に銘じつつ俺はチャックを下ろし、ヒーローは遅れて現れるとばかり、臨戦態勢で出番を待っていた勃起を取り出した。

 角度を調節する。

 実は結構気になっている存在というか、この間の初体験からすっかりお気に入り。

 素股プレイも二度目ともなってくるとこの辺り、いくらかぎこちなさもなくなってきて、なかなかスムーズなアクションになっていた。

「ひッ!?」

 女の子にとっては得体の知れないだろう異質な感覚に、紅葉ちゃんは裏返った可愛い悲鳴を上げて身を固くする。

 凶悪な形状になっている勃起がスカートを内側からまくり、はしたなく妖しくぬめっている女の子の粘膜を“ぬるり”と撫でた。

 我ながらグロテスク。

 縦割れの唇から先走りの液を溢れさせて“ひくひく”と蠢きながら少女を睨み威嚇している。

 正直、

 少女のこの手の反応はオトコとして堪らんね。ちっぽけなプライドを満たしてくれるのにそれは充分過ぎるほどだった。

 が。

 本能的な危機でも呼び起こされてしまったのか、紅葉ちゃんの身体を明らかに、快楽とは違う種類で震えさせているのはいただけない。

 覆いかぶさると安心させるために、興奮しているがなるだけ優しく、静かな余裕を演じつつ少女の耳朶にと囁いた。

「大丈夫だから」

 この状況も二度目なんだから、少しは捻れと思うのだが、紅葉ちゃんには始めて言った台詞なので、これはこれで良しとしとこう。

 ……お願いだからどうかしてください。

「挿れないから脚を閉じて」

 ここで求められているのは格好いい台詞ではなく、安心させるための台詞なのだからこれでいいのだ。

 そして一応やるだけはやったので、もうあとはひたすらに我慢強く待つ。

 苦にはならない。

 外気に晒され冷たくなったシロップと新しい温かなシロップ、微かに律動する粘膜で、それを感じているのも思いの他いいもんだった。

 勃起に絡まり混ざり溶けていくような、そんな恍惚とした極上のトリップ感覚すらもある。

 そして、

 少女ジャンキーだってんならそれはそれで、人生棒に振って廃人になるのも悪くないのかもしれないな。

 と。

 キマリ始めた頃になって、

「…………」

「ありがと」

 紅葉ちゃんは身体の緊張を“そろりそろり”と解いていき、やはり“そろりそろり”と“ぬれぬれ”に濡れた太腿を閉じていく。

 エロい“ぬちゃ……”という音を奏でたのは、気持ちがシンクロした二人の共同作業だった。

 挟まれて圧迫されている猛々しい勃起を、女の子のやわらかな粘膜が、熱くうねりながらも優しく抱きしめるかのように包んでくる。

 肛門に気合を入れると、ゆっくりと腰を動かした。

 静脈の浮いた勃起が短い往復を繰り返して、劣情をそそらずにいられない、いやらしいシロップを塗り込み広げる。

「はひッ!?」

 意図したわけではなかったが、肉の真珠を転がしたようで、紅葉ちゃんは今日何度目かもわからない、鋭い叫び声を上げてのけぞった。

 ブラジャーなどないかのようにして、おっぱいが“ゆさり”と重たげに大きく揺れている。

 煽られるように誘われるように、揉みしだく手にも遂々力が入ってしまい、胸元を強く引っ張り過ぎてボタンが弾け飛んだ。

 レイプでもしている気分。

 中途半端に覗くブラジャーが嗜虐欲を刺激して、牡ならば備えている、獰猛で乱暴で粗野ですらある興奮を掻き立てずにはいられない。

 憑りつかれたように無茶苦茶に、痕がつきそうなほど強く、おっぱいを揉んで揉んで揉みまくる。

 連動して腰の振りも“どんどん”と速くなっていった。

 ちょっとだけ。

 そう。

 ほんのちょっとだけ余り気味のアレな皮が、紅葉ちゃんの秘唇によって、引っ張られては巻き戻されるを繰り返してる。

 そいでそれがおそらくではあるが、なんかこうナイスな、快楽を叩き出す武器に化けてるんではなかろうか。

「はひッ……ひッ……あッ……あふぁッ!」

 いろんな意味で。

 勃起が“にゅぐりにゅぐり”という複雑だが圧倒的な快楽に浸る都度、紅葉ちゃんは可愛さそのままに淫らな声のトーンを跳ね上がる。

 ヤクザな業界の人たちの間ではその昔、本当か嘘かは知らないが実しやかに、勃起に真珠を埋め込むのが流行ってたらしい。

 どうも出来上がる“ボコボコ”が、オンナを狂わすということらしいが、……まあ、もちろんそんなのは都市伝説みたいなもんである。

 噂を信じてやった奴もいたらしいのだが、狂わすどころか痛がるだけでオンナには不評、挙句には化膿した者が続出したそうだ。

 いや、

 続出ということはそれだけ信じた奴が居たということだが、けれどそのくらい、オトコはこのセックスという分野では必死なのである。

「ンあぁッ……はぅッ……んンッ………あぁんッ……ふぁッ……ひッ……うぁッ!!」

 ああでもよかった。

 保険の利かない怪しげな手術を受けたりしなくて。

「はひッ!? ……ひッ……あ、ンぁッ……ひッ……あ、ンぁッ………はぁ……ぁッ……うぁッああ!!」

 俺は少女の後押しするような嬌声に、自らの分身への自信を深め、力強さを増して腰の動きをアグレッシブに加速させていく。

 いまいちバリエーションに乏しかったが、それでも捻りを加えたりとか色々してみたりした。

 できるかできないかは別の話である。

 が。

 たとえそれが僅かではあっても、一秒前よりも一秒後には、そのときそのときの一瞬に、紅葉ちゃんへ最高潮の悦びを与えてやりたい。

 こほんっ。

 そして紅葉ちゃんの次いででもいいので、……本音を言えば是非とも、俺もその魅惑で素敵が確定な恩恵には与っときたいしな。

 甘い痺れが脳天から爪先までを行ったり来たり、背筋をアウトバーンなノリのアンタッチャブルで走り回っている。

「……くっ」

 我慢も限界だった。

 食い縛った歯茎からはそろそろ、血が出ていてもおかしくない。

 ここでなんとしてもキメとかないと、オトコの俺だけ淋しく情けなく見っともなく、エンディングを迎えるという事態になってしまう。

 そういうまたしてもな、ちいせぇプライドも手伝って、俺は一気に腰のギアをトップに叩き込んだ。

「紅葉ちゃん、出る、よ、出して、いい?」

 うん。

 もしも冷静になって聞いていたら、自分の台詞なのに自分でゲロ吐けそうだが、快楽に狂っているオトコにそういう感覚はない。

 狂ってると認められるくらい、後戻り不可で少女という存在に狂ってる。

 もう処置なしだ。

 ブラックジャック先生にだってきっとこの病気は治せまい。

 ってかまずは治療を拒むけどさ。

「あひッ!? …………ひッ…………あ、ンぁッ……ひッ……あ、………ンぁッ………はぁ……はぁ…………んぁッ…………」

 またやはり耳に息を吹きかけられ囁かれたオンナ、少女も狂っているので、残念ながら主観的にも客観的にも自覚のしようがなかった。

 こういうのをあれかな?

 バイオ・ハザードっていうのかな?

 研究所で街中でと、ショットガンをぶっ放してるキャラの気分が、俺にはなんだかわかったような気がした。

「…………ふぁッ…………あッ、……やンッ……あふぁ……ン……ぁ、…………はぁ……んぁッ…………はぁ…………ああ…………」

 嬉しいことに紅葉ちゃんの舌の呂律は、もう満足には回っていないようで、言語として意味のある返事には到底なってない。

 けれど、

 少女の言いたいことは充分以上に伝わってる。

 据わってない生後何ヶ月の赤ん坊だったら怖くなるくらい、紅葉ちゃんは首を“がくがく”と何度も何度もしつこいほど振っていた。

 大人ってのはズルい。

 暴れ馬のようになってしまってる身体の揺れに、ただ任せてるだけかもしれないのにそこは気づかぬふりである。

「うぐっ!?」

 たぶん女の子だったら可愛いのかもしれない表現も、野朗だったらムカつくだけというこれは結構良い(?)例かもしれん。

 紅葉ちゃんの嬌声を断ち切るように、俺は短く叫ぶと限界を迎えてる勃起を、“ぬるぬる”とぬめる太腿の狭間に深く強く突き入れる。

 ふっと。

 刹那で感じるニュートン力学が消失でもしたような浮遊感。

 白い欲望が気持ちよく弾けた。

「はひッ!?」

 コンマ何秒だけである。

 勃起に水道の蛇口でも壊れたような勢いで、ちょっと遅れて思春期な少女に、その可憐な性のしぶきを浴びせられた。

 …………

 差はたったのそれだけしかないんだから、それはもうないといっても、同時だったと言ってしまってもこれは絶対にいいはずである。

 紅葉ちゃんには素敵なおっぱいもあるんだから、並んで走ってたんなら、快楽のゴールテープはきっと一緒に切ってるさ。

 祝砲のようにして勃起も白い弾丸を、連打連打で切れ目なく標的に撃ち続けてる。

 制服のスカートの“はらり”と垂れていた裏布が、直撃に曝されているその一発ごとに、勢いを殺されることもなく浮き上がっていた。

「…………あ、ああ……、んン………は……………」

 ゆっくりゆっくりそ~~っと離していく。

 おっぱいを揉んでいる両の手だけに支えられていた紅葉ちゃんの身体が、支えを失って“ずるずる”としどけなく床に崩れていった。

 いったん根元から大きく下にたわめられた勃起が、戻るときの反動で“ぶるるん”とコミカルに跳ねる。

 若干、

 痛みもあったりはしたが、真珠から秘唇、ヴァージン・ホールから会陰部、お尻の穴まで、フルコースで撫でられた感動が打ち消した。

 ちなみに今日の夕食は、当然だが俺の奢りで外食決定である。

 台所がゲリラ豪雨にでもあったような、いや、なんならいっそ豪雨は抜いて、ゲリラに襲撃されたような惨状になっていた。

 断言する。

 こんな一面が白いシンクで料理なんかできないし、しているやつの料理なんて、食うのがたとえ自分だけでも普通食いたくない。

 出費は嵩むが仕方ないだろう。

 紅葉ちゃんの制服は上半身は破かれているは、下半身にいたっては詳しく説明したくないはで、とりあえずドえらいことになっていた。

 衣替えなのかジャケットを着てなかったのだけが、決して喜ぶ気にはなれないのだが不幸中の幸いである。

 少女は苦学生という絶滅危惧種なので、代えはあるだろうが新しいのを買って上げたい。

「……うう~~ん。制服のときは気をつけないとな」

 そう小さく懲りもしないことを嘯きつつ俺は、ここにきて奥の部屋に、髪まで白く染められた紅葉ちゃんを拭くタオルを取りにいった。





[2293] 少女病 十七話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:5faa2a53
Date: 2009/04/27 18:11


 猫はきまぐれな生き物だ。

 奴らは気分のノってないときには、どんなにこちらが平身低頭ご機嫌を取ろうと、傲岸不遜を絵に描いたような態度で興味を示さない。

 なのに相手の眼が少しでも自分に向けられていないと、ひどく不安そうな顔をして身をすり寄せてくる。

「…………」

 べつに少女たちとの個々の接し方に差をつけたわけじゃない。

 偶々だ。

 少年誌の主人公じゃあるまいし、何故だか何故なんだかはわからないが、彼女たちが好意を寄せてくれていることくらいわかっている。

 鈍感を装うのを武器にはしたくない。

 それがこれまでの人生とこれからの人生の、幸運という幸運を引っ掻き集めた、スーパーなラッキーであるのもわかっていた。

 しかも、である。

 誰か一人が抜け出ているというならともかくとして、一昔前のエロゲーの主人公みたいに、俺は全員が全員ちゃんと別個に好きだった。

 目指しているのはいまどきはない、同時攻略のハーレムエンドである。

 多分、

 真面目な恋愛感を持つ人からすると、相当ふざけているだろうが、これが嘘偽りのない島田誠(27)の真剣な本音だったりした。

 だからこそ、少女たちとの付き合い方には、自惚れもなければもちろん手抜きもない。

 どの娘にも誠心誠意で、手を出しているつもりだった。

「…………」

 手を出しているつもりだったのだが、どうやら誠心誠意の表し方が、こやつには全然足りていなかったらしい。

 時刻は朝の六時四十二分。

 紅葉ちゃんは何でも欲しいものがあるらしく、夕方はほぼ毎日出ているのに、アルバイトをしているコンビニのシフトを増やしていた。

 六時三十分くらいには隣りの部屋のドアが、控え目な音で開いたのを、半分以上の夢うつつではあったが聴いている。

 いってらっしゃい。

 そんなことを感心だなぁと思いながら、口の中で小さく呟き、二度寝という至福のひとときを、およそ一時間ほどは楽しむはずだった。

 少し前まではそれなりに仕事も忙しかったので、もともと煎餅気味だった布団は、だいぶ干していないせいかさらに平べったい。

 微妙だったが変な臭いもしてた。

 加齢臭だったり?

 …………

 いや、それでも一人の暮らしが長いオトコにとって、これほどまで落ち着けるスペースはあんまりないだろう。

 ここで“そわそわ”するのはトイレを我慢してるときくらいだ。

「…………」

 だけどいまの俺は尿意がゼロなのに、薄暗闇の中で現在猛烈に“そわそわ”している。

 一人が寝たらもうそれで、余裕はないと思っていた布団だが、猫というのは、ほんのちょっとのスペースがあればそれで充分らしい。

 横向きで寝ていた俺の背中に、ぴたりと洋子の身体がくっついている。

 臭いではなく匂い。

 ほんのりと仄かに漂っている微かな香りに、『はて?』と気づいて一度鼻をひくつかせただけで、洋子だとわかる自分にびっくりした。

「あのさ」

「うん」

「お前の足音がしないくらいは、いまさら驚いたりはしないけど、今後のためにどうやって入ってきたのかは訊いておきたい」

「この間もらった合鍵で、玄関から入ってきたんだけど?」

「もらった? 誰にだよって? もしかして、……俺にかよ?」

「そんときはかなり酔ってたからねぇ。あたしはいいって言ったのに、どうしてもってべろんべろんな、島田誠くんが利かないからさぁ」

「あ、そ」

 こういうことがあったりすると、たびたび思うんだけど、アルコールって本当に怖いんですね。

 俺の場合は心がすぐに調子に乗りやがって、タフネスどころかガラスのハートなのに、ノーガード戦法を取りたがるので注意せねば。

 もっとも両腕を下ろしたときには、いつも嫌な気分にはならないけどな。

「紅葉ちゃんなら、バイトに行ってるぞ」

「知ってる」

 ぶっきらぼうにも聴こえる声でそう短く言うと、背中に添えられていた洋子の手は、滑るようにするりと俺の胴に廻された。

 肌触りというのか気配というのか、やはりそのもそもそ感は、布団の中で動いている猫を思い起こさせる。

 電気を消すときは一緒にいてくれないのに、起きたときはちゃっかりお腹の上にいる、そんな気ままで憎めない動物と洋子が重なった。

 まあ、そうはいっても、年がら年中重なってるけどさ。

「やっぱりね」

「うん? なにがやっぱりだよ?」

「誠」

「なんだよ?」

「最近運動とかしてる? そんなハードなのじゃなくてもいいけど、お腹が中年のおじさんみたいになってきてるよ」

「あ~~、そういえば最近はまったく運動してないなぁ。この間なんか寝てるだけなのに、足が本気で攣ったときはびびったなぁ」

「……おじさんを通り越して、それじゃもうおじいさんだよ」

「肉を掴むな」

 わざと聴こえるようにして、大仰にため息を吐きながら、洋子の手が“むにむに”と俺の腹の肉をワイルドに鷲掴みする。

 ちょっと気持ちがいいかもしれん。

「これじゃそのうち、ハム太郎ってみんなに呼ばれるんじゃない? お中元とかお歳暮のシーズンになると思い出される人になちゃうよ」

「ジムとかに通うと高い」

「運動なんてその気があったら、何にも道具がなくたってできるでしょ。そういうこと言ってる人は、お金があってもきっと行かないわ」

「……俺のお母さんですか、お前は。ぐうたら人間の逃げ道を先回りして塞ぐなよ」

「はいはい」

 それこそお母さんみたいな口ぶりで、文句を垂れる俺を軽くあしらうと、洋子はチェックするように身体のあちこちをぺたぺたと触る。

 少女のタッチはとても優しくて繊細だった。

 そういう意図が洋子にあったわけではないのだろうが、触り方にオトコのような鼻息荒いがつがつしたところがない。

「…………」

 こういうソフトな触り方とかが、多分だけど本当の意味で、きっと愛撫っていうやつなんだろうな。

 俺は心中密かに妙なところで“うんうん”と洋子という少女に感心していた。

 このまま第二次性長期の女の子みたいに、順調に育ってしまうと、見事おっぱいとして認定されそうな俺の胸を洋子の手が触れている。

 そしてもう立派におっぱいを名乗れる洋子の胸は、薄いシャツ越しの俺の背中に“むにむに”と柔かく押しつけられていた。

「オトコも勃つんだ」

「そりゃあ、まあ、勃つだろう」

 非常に想像するだけで気持ちが悪いが、気持ちが良いとオトコの乳首も、そういうときにしてくれる女の子の反応と同じである。

 で。

 平静を保ってはいても、バレると恥ずかしいのも一緒だ。

 自分の頬が熱い。

 熱を持っているのがよくわかる。

「知ってはいたんだけど、こういうシチュエーションじゃ初めてかな。寒いときとかはみたことあったけど。……下だけじゃないんだね」

 最後の台詞は“ぼそっ”と小さかったのだが、不思議なほどはっきりと鮮明に、俺の耳は洋子の声を捉えていた。

 もしかしたらそこに、恥じらいが含まれていたからかもしれない。

 洋子の頬もうっすらと紅くなっているのが、後ろを見ずとも俺の脳内には浮かんでいた。

 綾乃ちゃんや日々研鑽を積んでいるお弟子の方々には、本当に失礼な話ではあったが、ちょっとした達人にでもなった気分である。

「昔は何かスポーツ、やってたんでしょ?」

「わかる?」

「なんとなく筋肉の感触でわかるよ。もっとも甘やかされてから、大分時間が経ってるみたいだけどね」

「学生時代はスラムダンクの影響をモロに受けちゃってな。これでも三年間、真面目に練習したバスケ部だったんだぜ」

「成果のほどは?」

「地区大会の二回戦を突破したとき、みんなで祝杯を挙げたっけなぁ。三年間公式の試合では、俺、ずっと秘密兵器として温存されてさ」

「ふ~~ん。そうなんだぁ」

 洋子はこれでなかなか聞き上手な奴なので、生返事をするということはなかったが、島田誠の青春時代にあまり興味はなさそうだった。

「…………」

 いや、というよりも、いまはひとつのことで、頭の中がいっぱいになってるのかもしれない。

 俺の胸の辺りをきわめて自然な動きで、縦横に撫で回していた洋子の手が、ひどくぎこちなく“そろりそろり”と下がっていく。

 おっかなびっくりの子猫を、その動きはどこか連想させた。

「…………」

 我慢する。

 その下を目指しているのが見え見えなのに、ヘソの周辺で“うろうろ”している手を掴み握らせたい衝動を、俺はなんとか抑えていた。

 ミルクを飲ませたいからといって、頭を引っ掴んで飲ませてみても、得られるものは不信感と引っ掻き傷だけだろう。

 洋子が自分の意志で触れてくれるのを、俺は硬くさせながらも辛抱強く待った。

 と。

「質問していいかな?」

「いいけど」

「一応ね、成人男子の朝の生態くらいは知ってるわ。でも、こうなってるのは、朝だからなの? それとも、……あたしだから、なの?」

「洋子だから」

 迷うことなくの即答である。

 毎朝毎朝、枯れるような歳ではないので元気に勃ってはいるが、“ここまで”“こうなっている”のは、朝の力でなく洋子の魅力でだ。

 パンツの中

 証明でもするかのように、少女の手に優しく包まれている勃起が、ググッとさらに硬くなり急角度で反っていく。

 熱さと大きさも確実にひと回りは増していた。

 朝の生態だからというそれだけでは、この凶暴なまでの変化の説明は絶対につかない。

「そ」

 洋子の返事は耳にそっけなく聞こえたが、まだ握ったのは二度目で、気遣うように柔らかく握っていた勃起を上下に揺すり始めた。

 当然ではあるが技術的に拙いものはあったものの、洋子がしてくれてるんだと思うそれだけで簡単に興奮できる。

 俺の息遣いが荒くなるのに、さしての時間はいらなかった。

 背中で感じるおっぱいが柔らかい。

 態度こそ素っ気無かったが、早鐘のような速いビートを刻む少女の心音と、勃起の“ドクンドクン”脈打つ鼓動とがシンクロしていく。

 先走りの液が潤滑油となって洋子の手を濡らし、足りない技術を補い快楽のリズムを生み出していた。

「はッ、はッ、はッ、はッ、んッ、はッ」

 まるで水を欲しがる夏場の犬のようなハイ・テンポで、俺は情けない声を漏らしながら、身体を“ぶるぶる”チワワのように震わせる。

 何だか物凄~~く早すぎる気がしないでもないが、俺の快感の堤防が限界だったのは誰の目にも明らかだった。

 なのに、

 なのに、

 それなのに、

「あ」

 そんな間抜けな声を漏らしたのは、果たして一体どちらだっただろう? あともう一歩のところで洋子の手は絶妙に止まっていた。

 きっと見っともない、泣きそうな顔でもしているだろう。

 あんまりオトコが女の子に、見せる顔ではないという自覚はあったが、それでも俺は首だけで勢いよく振り返ってしまった。

「なんでだよ」

 このときの俺は夏でも震えているチワワ以上に、哀愁を誘う存在だったんじゃないかと思う。――その違いは可愛いかどうかだけだ。

 だが洋子はチワワに哀愁も可愛さも、感じるタイプの女の子ではないらしい。

 臨界点突破カウント・ダウンの勃起に、刺激を与えぬよう注意しつつ、そっとパンツから、カウパー線液で濡れ光る手を抜いてしまう。

 布団からも身体ごとするりと抜け出した。

 制服姿である。

 今日は平日なので当たり前だが、学生の皆さんはサボらないのなら、これから学校に元気に登校するお時間だ。

 と。

 そう思って枕元にある時計を見る。

 七時にもなってない。

 こうして早朝にわざわざ忍んで来るくらいだ。洋子にこれから急ぎの用があるとも思えない。ましてやあと一ほんの歩だったのである。

「なんでだよ」

 身体を布団からむくりと起こして、何故だかきちんと正座をすると、俺はさっき言ったばかりの台詞をもう一度言った。

 事態にまったく着いていけずに、これで意外とシャイな勃起はすでに萎えている。

 オトコのここは結構デリケートな箇所なのだった。

 節操とかはないくせに。

「なんでだよ」

「う~~ん。……あ? あったあった」

 何かを探すようにきょろきょろしていた洋子は、俺の三度目の質問にも答えることなく、お目当てのものを見つけて箱ごと手に取った。

 特売りでまとめ買いをした、財布とお尻に優しいティッシュである。

「ふと気づいたんだけど、……そのままじゃアブないよね」

「そのままじゃ?」

「ああ、その、誠、さ、さっきはさ、その、で、出そうだったよ、ねぇ?」

「そりゃ、まあ、物凄~~く、出そうだったけど?」

 洋子よ。

 俺もいまふと思っちゃったんだけどさ、なんでこんな恥ずかしい告白を、いい大人のオトコが少女にさせられてるんだろう?

 それはそれとして、こちらを窺っている洋子の姿が、なんだか妙に可愛く俺には映る。

 う~~ん。

 可愛いのは前から知ってたけど、こいつこんなに可愛かったんだなぁ。

 本当に俺ってラッキー。

「履いたままだと、えらいことになっちゃうよ。パンツは脱いどいた方が、やっぱりいいんじゃないかな?」

「……まあ、そうだな。うん。お漏らししたみたいに、このままじゃなっちゃうもんな」

「うん」

 もうすでに人前ではお見せできないくらい、ちょっと股間は濡れてるのだが、この程度なら慣れているので別段どうということもない。

 しかしこれ以上履いたまま続けようというなら、パンツの中が腐海になる無意味な覚悟が必要だ。

 さっきまでそのパンツに手を突っ込んでいたのに、脱ぐのをなしてそんなに意識するんだ、という洋子を意識しながら俺は素早く脱ぐ。

 そちらに恥ずかしがられると、こちらもやたらと恥ずかしい。

 テレてる洋子。

 眺めているだけであっという間に股間の奴が復活した。我ながら山の天気や猫の機嫌よりも移り変わりが激しい。

「それでね」

「おう」

 変な意識をしてしまい若干の恥ずかしさはあったが、隠したりするのもおかしいので、俺は逆に堂々と胡坐をして勃起を洋子に晒した。

「……それでね」

「おう」

 イチローがネクスト・サークルでするみたいなM字座りで、赤くなっている顔を伏せてティッシュを胸に掻き抱いている洋子。

 恥ずかしさは以前として俺の中にも残っているが、それを上回るものが目を覚ました感じがする。

 何でもないようにしてさり気なく、後ろに手なんか突いたりして、明らかに恥ずかしがっている洋子に、勃起を見せつけたりまでした。

 なるほどな。

 実際にやってみると露出狂の気持ちが、なかなかにこれはわからんでもないね。

「それでね」

「痛っ!?」

 調子に乗りすぎて“パカンッ”とティッシュで頭を殴られた。でも全然まったく少しも痛くない。むしろ心地いいくらいだった。

 顔がにやける。

 なんだかくせになりそうな気がして微妙に怖い。

「まあ、あたしは天才肌の人なんだけど、同時に努力の人でもあったりするわけよ」

「……へぇ~~」

 やっぱり凄いよこの娘。

 自分で自分を天才肌って言い切りましたよ。

 そうじゃないとは誰も言えないほど、オールマイティでどんなことも優秀なのは事実だが。

 容姿は好みとしても、勉強やスポーツなどはどんな科目どんなジャンルも、非常にハイレベルな数字を残しているらしい。

 さらに料理まで区立第十七中学校の、女・周富徳と呼ばれていたほどの腕前だったりもする。

 まどかちゃんが『そんなの反則よっ!!』と叫ぶような、天才としての人生ど真ん中を、威風堂々の傍若無人に歩んできた少女だ。

 隙はない。

 そして何度もいうがそれは本人が望むのなら、一切の区別はなしで、どんな科目でもどんなジャンルでもだ。

「いろいろ調べたりしたわけ」

「何をさ?」

 期待したのかもしれない。

 いや、したのかもしれないではなく、俺の望むことを、洋子が口にしてくれるのを、激しく“ドクンドクン”させながら期待していた。

「――をよ」

「はい?」

「だ、だから、オトコの人の、その、……よ、悦ばせ方とかをよ」

「……はい?」

「でぇいっ!! まどろっこしぃ!!」

 暗黙の了解である。

 俺がわざと間抜けな返事をしたのも、洋子がキレたふりをしているのも、お互い一瞬のアイ・コンタクトでわかっていた。

 エッセンスとして外せないし外したくもないが、こうでもしないと恥じらいをクリアするのに時間がかかる。

 洋子の登校にも俺の出社にも、まだまだ余裕はあるが、この自然だが異様な空気に侵されている、若い二人のリピドーには余裕がない。

 勢い込んで伸ばされた洋子の手が、再び俺の勃起を根元から柔かく掴んだ。

 優しい圧迫。

「んっ」

 俺の予想通りの行動を、洋子が期待通りに応えてくれたことに、それだけで快感がせり上がり小さく鼻が鳴る。

 目算でちょうどいいだろう角度に調節すると、可憐な顔がグロテスクな勃起に近づいてきた。

 少女の吐息がくすぐるようにして裏筋に吹きかけられる。

「…………」

 鼻を“くんくん”ひくつかせていた。

 そこは生殖器官であると同時に排泄器官でもあるので、そういう躊躇いがあるのは、口唇愛撫が初体験の少女としては当然である。

 極端に清潔か不潔かと二択すれば、そこは常に不潔よりの箇所なのだ。

 ましていまは“ぬらぬら”と濡れ光っているので、女の子の腰の引け度もかなり増しているだろう。

 正直、

 猛烈に頑張っては欲しいが、頑張れとはとてもいえない。

「…………」

 目と目が合った。

 これもいろいろしたという、調査の結果に基づいてなのかどうか、勃起を挟んでの少女の上目遣いは結構クル。

 喉を上下させ唾を“ごくり”と呑む音が大きい。

 こんなのはなんでもないというように、俺の視線から洋子は逃げようとはしないものの、伸ばされた舌先は“ぷるぷる”と震えていた。

 おっかなびっくりでちろっとだけ、鈴口から裏筋へと零れ落ちてきたカウパーを、筆で刷けるようにして素早く舐め取る。

「うッ」

 俺はたったのそれだけで腰を“ぐいっ”と前に、オトコの反射で突き出しそうになってしまった。

 洋子は勃起の味を確かめるように、目を閉じて口をモゴモゴとさせている。

「……はぁ」

 これだけでもうゴハン三杯はイケるね。

 美味である。

 そしてそんな感想を俺が浮かべている間に、どうやら洋子も味見を終えたようで、“ふぅ~~”と一度息を吐くと本格的に挑んできた。

 フェラチオを説明する際は、ソフトクリームが例にされるのが多い。

 あれは最初に一体誰が考えたのか知らないが、誰にでもわかりやすいとってもいいサンプル例だと思う。

 垂れてくるカウパーが『次はここです』と、指示するかのように裏筋を伝って、それに素直に従う洋子の舌が丁寧に優しく這った。

 背筋も“ぞくぞく”する。

 風呂に入ったときはしっかり洗ってはいるものの、どうしても汚れが溜まってしまうカリの裏まで舌の動きに手抜きがない。

 またしても技術の話になってしまうが、技術だったらお店のお姉さんの方が絶対に上だ。

 しかし、

 金銭だけで繋がっている関係では、行為をする前にイソジンが必要では、ここまでの懸命な健気さや甲斐甲斐しさは到底期待できない。

 洋子の口唇愛撫には技術や経験を補うものが確かにあった。

 ああ可愛い。

 血が収束しすぎて怒った色みたいになっている亀頭に、舌先をくるんっと回しながら、唾液をまぶすその仕草に速攻で爆ぜそうになる。

「はぅっ!?」

 天使の輪が眩しいゆらゆらとしている髪を撫でると、洋子はそれをGOサインにして勃起を温かい口内に招いた。

 大きさと長さをゆっくりと、測るようにして少女は唇を進めていく。

 勃起の先端が喉の奥を叩いたところでストップすると、同じだけの時間をかけて頭を後退させ、また前進するということを繰り返した。

 しばらくそうしていると慣れてきたのか、天才ぶりを発揮して、洋子のおしゃぶりは早くもリズミカルなテンポを刻んでいる。

 ときおり口の端から零れそうになる唾液を、少女が恥ずかしげに啜るのがまた非常に気持ちがいい。

 欠かせないアクセントになっていた。

 さらに、

「ふッ、はッ、はッ、ふッ、はッ、ふッ、はッ、ふッ――」

 まるで少林寺の修行僧みたいな、規則正しい鼻息を漏らしながら、俺はビジュアル的にもおおいに洋子を愉しんでいたりした。

 淡いブルーのパンツ。

 勃起にあまりに夢中になりすぎて、制服のスカートが捲くれあがっていた。

 小さいお尻をふりふりされたりすると妙にそそる。

 俺は揺れるお尻を眺めながら、今度でっかい姿見を買おうと強く胸に思ったね。

 洋子の履いているブルーのパンツの股布が、いま一体どうなっているのかとっても気になる。

 興奮した。

 いやらしくエロくそこが濡れているのを鮮明に妄想して、俺はいっそう洋子という少女の存在を感じながら興奮した。

 腰が“じ~~ん”と甘く痺れてくる。

「そろそろ出そう」

 言って俺はおしゃぶりしている洋子の肩を“ぽんぽん”と軽く叩いた。

 このままぶちまけたい。

 そういう気持ちがまったくないわけではないが、どころか本当を言わせてもらえれば、洋子の口内にぶちまけたいがそれはないだろう。

 大人だ。

 くらんくらんと欲望に酔ってはいても、口唇愛撫初体験の少女を、気遣うくらいの配慮はぎりぎりでまだありやがる。

「よ、洋子?」

 だけれど洋子は俺の声にも肩叩きにも気づいてないかのように、逆に勃起をしごくスピードをアップさせつつ熱心な口唇愛撫を続けた。

 そして終わりはあっけない。

 ここまでは隙なく天才ぶりを披露していた洋子なのに、唇を窄めて唾液を啜ったとき、ほんのちょっぴりだけ勃起に歯が当たった。

 小さく微かだったが鋭い痛みが走って、俺の限界が見えていた理性に容赦なしのトドメを刺す。

「こふッ!?」

 手でしてもらった第一射を見送っているだけに、第二射のパワーは恐ろしいほど強烈で、洋子の口内を瞬く間に穢し理不尽に蹂躙した。

 量も半端ではない。

 洋子はいろいろと調べていたはずだったが、どう見ても不測だった事態に、目を白黒させながら慌てて勃起を吐き出す。

 だが、

 それは結果として切れ目なく放たれた勢いそのままの第四射、そしてとどまることのない第五射の格好の的になってしまった。

 涙目になっている洋子の顔を、洋子の髪を、洋子の制服を、白い弾丸がこれでもかとヒットしていく。

「ケホッ、ケホッ、ケホッ……」

 むせている間にもしつこく少女の身体に、牡の身勝手な欲望の白さを染み込ませていった。

 と。

 心地よい疲労感と満足感に包まれながら俺はぐるりと首を回す。

 白い流れ弾があっちこっちに飛んで、パンツ一枚の犠牲で済んでいたものが、布団一式が地獄と化したかのような大惨状になっていた。

「…………」

 でも安い。

 朝からこんなめくるめく甘美感を味わえるというなら、カバーの中まで臭いが染みてしまっても惜しくはなかった。

「ま~~こ~~と~~」

 心配なのはこの近所に朝からやっている、制服のスピードクリーニングの店が、どうしても頭に浮かんでこないことだけである。

 落ち着くためにとりあえず一服しようとしたら、洋子に“パカンッ”とティッシュで頭を殴られた。





[2293] 少女病 十八話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:5faa2a53
Date: 2009/04/27 18:12


 白鳳院流は一般の練習生などはほとんど取っていない。

 主な活動は企業相手の護身術レクチャーなどで、月に何度かは地域貢献のためにも、世間にその門戸を開いたりはするがそんなものだ。

 だから綾乃ちゃんの住んでいる家は、云わば白鳳院流の総本山なのだが、普段はあんまり人の出入りとかはない。

「ふぅ~~」

 借り物の道着を無作法に籠に投げ入れる。

 かなり息も上がっていたし、汗も大分掻いたりはしていたが、綾乃ちゃんの稽古は思っていたよりも楽勝で、疲れたという感じはない。

 まあ、それはそれ、俺の体力を見越して、軽めにしてくれたんだろうけどな。

 唯一の内弟子である英美さんによると、綾乃ちゃんに一対一で稽古をつけてもらうというのは相当に贅沢なことらしい。

 急ぎの事務仕事がなければ自分も参加するのにと、口を尖らせながら彼女には本意気で羨ましがられた。

 実際その通りなのだろう。

 白鳳院流柔術。

 運動不足解消というどうでもいい動機で始めたのに、綾乃ちゃんの自主トレに付き合う形にしてもらったのでギャラも発生しないし、

美少女に密着でみっちりと教えてもらえるんだから、これはもう本当に在りえないほど、度が過ぎてる贅沢な話だった。

 なので、

 夕食もご一緒にどうぞとは言われたものの、そこまではさすがに辞退しようかとは思ってる。

 いくらなんでも図々しい。

「ああ、でも、もうタイミングを逃しちゃってるかなぁ?」

 すでに食事の用意をしてくれてたとしたなら、ここで断ったりするのは返って失礼になってしまう。

 と。

 そんなことをつらつらと考えながらも、しっかりとシャワーまで浴び、さっさと着替えを終えた俺はやたらと広い更衣室をあとにした。

「…………」

 道場は母屋や事務所などもある一角から結構離れているので、どこかしら漂っている神聖な空気と相まって一際静かである。

 今日はこの広大な白鳳院家の敷地に三人しかいない。

 師範から電話で急に仰せつかった事務仕事で、傍目にも慌てていた英美さんが、羨ましいからと道場に顔を出してる余裕はないだろう。

 そして、

「…………」

 不覚にも最近になるまで知らなかったが、綾乃ちゃんは服を着替えるのが、もうこれは才能じゃないかと驚くほど飛び抜けて遅い。

 起床から登校するまでに約三時間で、着替えはそのうちの、聞けば六十分強を用いるということだ。

 女子高生がこの世界でもっとも着慣れているだろう、制服の着替えですらも、綾乃ちゃんにとっては毎日の一大イベントのようである。

「…………」

 廊下にある古めかしい壁掛けの時計は、間もなく七時十五分になろうとしていた。

 綾乃ちゃんと練習終わりに別れてちょうど三十分。

 長い廊下は左に進めば、英美さんが孤軍奮闘で活躍中の、事務所もある母屋、右に進めば突き当りが、現在使用中の女子更衣室である。

 迷ったのはほんの一瞬だった。

 俺はその場できっちりときれいに右向け右をすると、廊下の突き当りを目指してずんずんと歩を進めていく。

 早足だ。

 性格がおっとりしている人間というのは、どんな優れた武道の達人であったとしても、例に漏れないくせのようなものがあったりする。

 誰が何度注意してもどうしてだか、着替えるときに鍵を掛けない。

 ドアノブを回す。

 当然のように鍵は掛かっていなかった。

「え?」

 近づいてきてる俺の気配くらい無論察していたろうが、まさか開けるとは思わなかったようで、正面にいた綾乃ちゃんは棒立ちである。

 道衣の裾から覗いている清純派少女の証しである、穢れのない白い下着がおっさんの目にはなんとも眩しい。

 短い時間でもどうにかこうにか、下半分の袴だけは脱げたようである。

「島田さんっ!!」

 綾乃ちゃんが裾をぐいっと下げて、やっと俺から少女の白さを隠したのは、ドアがカチャリと音を立てて閉じてからだった。

 真っ赤な顔で怒っている。

 何度見ても恥じらいを含んでいる少女の怒り顔は、いつになっても新鮮でたまらなく可愛かった。

「公園でさ」

「え?」

「綾乃ちゃんにキスしたときに、俺が言ったことを覚えてる? 綾乃ちゃんとキスだけじゃなく、もっと色々したいって言ってたでしょ」

「覚えて、ます」

「あのときと同じ。嫌だったら俺を容赦なく、投げ飛ばしてくれていいよ」

 べつにそれだけが目的ってわけじゃない。――だけどそれが目的じゃないわけでもない。

 俺は自分の中でラインを引いた。

 それを越えないかぎりはチャンスさえあれば、みんなとエロいことをしようと、無闇に生真面目に固く心にもう誓っちゃってた。

 …………

 据え膳食わぬは男の恥とよくいうが、これからはおかわりも自分から、積極的にガンガンしていこうと思っている。

 俺が何故なんだか妙に自信満々に近寄っていくと、気後れしたように綾乃ちゃんが退がっていく。

 不安の表情を浮かべて、己の身体を掻き抱いている少女を、達人ではなくただの可憐な少女を、壁に追い詰めるくらいは苦もなかった。

 ちなみに、

 対峙した相手から退がるときに真っ直ぐは厳禁である。一時間ほど前に綾乃ちゃんから、レッスンされたばかりだから間違いない。

 逃げ道を限定して相手を誘導し、隅っこに寄せられればさらにベターだ。

「あ……」

 俺には結構武道の才能があるのかもしれない。

 ここまではパーフェクトである。

 壁に手を突き若干背を屈めるようにすると、少女のやはり真っ赤になっている耳朶に、ゆっくりと焦らすように唇を寄せると囁いた。

「色々するから」

「んッ」

 なるだけ安心させるよう優しい笑顔を作りつつも、胸の奥にある牡の嗜虐欲は熱く激しく疼いている。

 部屋に入る前から股間はびんびんに勃起しっぱなしだった。

 吐息を小さな耳朶に吹きかけながら、頭を抱きかかえるようにして、さらさらとした手触りを愉しみながら髪の中に指先を差し入れる。

「…………」

 堪らん。

 後れ毛の生えた白く細いうなじに俺は“チュッ”軽くキスをした。

「ンッ」

 綾乃ちゃんはシャワーを浴びてはいないので、肌には稽古をしたときの名残がまだ消えてはいない。

 ほんのりとしょっぱい味が口の中に広がっていた。

 うむ。

 少女の味は汗すらも甘露。

 そんな当たり前のことに改めて“うんうん”なるほど納得しつつ、だが俺の唇はさらに甘い綾乃ちゃんの味を蜜蜂のようにして求める。

 だがこの間初めて公園でしたときような、それは優しいだけのものではない。

「んむぅッ!?」

 貪るように少女の可憐な朱唇を奪うと、素早く舌先を挿し入れて神聖な口内を蹂躙する。

 キスというのがこんなにもいやらしいものだとは、もしかしたら綾乃ちゃんは知らなかったのかもしれない。

 いや、いまどきの女子高生が知らないということはないだろうが、所詮知識は知識でしかなく、当然現実味など伴っていなかったろう。

 想像していた幻想のキスとの違いに少女の舌は驚いていた。

「ん、んンッ!?」

 簡単に絡め取られて乱暴に吸い上げられる。

 流れ込んでくる綾乃ちゃんの唾液は、わざわざ言うまでもないが極上の甘さだった。

「はうぅッ……んンッ……ふぅッ…………んッ………」

 少女の喉奥から呻きが漏れる。

 涙目になっている綾乃ちゃんを視界に収めつつも、舌の動きまるで止まることはなく、歯茎から口蓋まで届く範囲をすべて擦り上げた。

 顔を傾けて今度は俺から唾液を口内に流し込むと、少女は“こくりこくり”と喉を鳴らして嚥下していく。

「はぁ……」

 唇を離したときにはもう綾乃ちゃんはくったりとしていて、俺にその身を預けるようにして力無くもたれ掛かってきた。

 華奢な肩に腕を廻し支えながら更衣室の床に優しく仰向けに寝かせる。

「んッ……クッ……んンッ……」

 八の字になってしまっている眉がなんだか可愛らしい。

 少女の感じやすい耳を“さわさわ”とこねくり愛撫しながらも、余っているもう片方の手を道衣の襟元に少しだけ侵入させた。

 抵抗はない。

 それを確認すると俺は道衣の前をゆっくりと、しかし“ふんふん”とひどく見っともなく鼻息を荒くしながら開いていく。

 稽古中からなんとなくは気づいていたが、綾乃ちゃんはインナーのシャツを着ていなかった。

 音を立てて生唾を“ごくり”と飲む。

 飾りっ気のない白いブラジャーに包まれている胸は、お世辞にも大きいとはいえないが、未成熟な青い色香を充分以上に放ってもいる。

 中学生のように薄いふくらみが、ただでさえある禁忌の匂いを、より一層強くしているのかもしれない。

 一目でコットン生地だとわかる、バックプリントでもありそうなパンツも、そうした妄想を加速させる一因になっていた。

 そこから伸びている腿にも脂質が足りず、ロリータな体型を完璧なものにしている。

 淫行条例。

 洋子はまだしもだが、まどかちゃんや紅葉ちゃん相手だと忘れそうになる単語が、燦然と輝いて俺の脳裏に浮かび上がったりした。

 が。

「…………」

 あれあれ~~?

 なんかめちゃくちゃ萌えてクルね。

 最早その程度の単語では、俺を止めるのに役者不足(使い方ってこれで合ってたっけ?)である。

 むしろそんなものは牡の持っている苛めたい願望を、勃起と見事に連動させて“むくむく”と、大きく立派にさせていく効果しかない。

 爪でうっすらと浮き出ている肋骨を掠めるように撫でた。

「うッ…………うッ……んあッ……あッ……はぁんッ…………」 

 内腿を擦る。

 おへそを舌先で“こちょこちょ”くすぐてみた。

 赤ちゃんみたいな足の指を一本一本股の間まで丁寧にしゃぶったりもする。

 腋の下も忘れない。

「はひッ!?………ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ!!……あ!?……ああッ………んぁッ!!」

 そうやって自分と綾乃ちゃんのリピドーを焦らしに焦らしてから、ようやく俺は少女のブラをレイプでもするみたいに毟り取った。

 牡の視線に晒されるおっぱい。

 可愛らしくはあっても、そこはやっぱり小ぶりである。

 間にブラだけでなくシャツまで着込んでいても、“たゆんたゆん”する紅葉ちゃんのおっぱいのような迫力はない。

 ぷるるん。

 という効果音をつけるのにも、ちょっとばかり以上の無理があるだろう。

 しかし、

 ノーブラで走っても揺れそうもない控え目なふくらみには、ボリュームを補うようにして、乳房の頂で自己主張しているものがあった。

 儚いほど淡い色をした乳首が“ぴんぴん”にしこって、誘うようにいやらしくも健気に勃起している。

「いやっ!?」

 少女は硬くなった乳首に痛いほどの熱視線を感じたからか、意識の外に押し出していた羞恥心を呼び戻し両手で胸を隠そうとした。

 が。

 俺のアクションの方が一足早い。

 片方の乳首を乳暈ごと頬張り下品な音がするほど強く吸いたてる。

 少女の硬いしこりをねっとりと愛でながら、綺麗な円を描くようにして丁寧に舌先を動かした。

「…………あッ…………や、め…………んンッ……うッ…………、うぁあッ!?」

 声が跳ね上がる。

 ときおりグミを食べているみたいに甘噛みをすると、綾乃ちゃんがわかりやすい反応を返してくれるのが面白い。

「はぁッ、ン……、んふぁ…………ああッ!!」

 仲間外れはいけないと、反対側の乳首を同じように舐めしゃぶり噛んでも、微妙に違った反応が返ってくるのでまた面白く楽しかった。

 少女の嬌声に煽られながら、ぎりぎり谷間を形成するおっぱいの汗を舐め取り、すっきりとした腹部へと舌を滑らせていく。

「ん………ううぅッ、…………んぅッ……あンッ…………は……ぅッ!?………くぅああッ!!」

 縦長のおへそをくすぐると綾乃ちゃんは可愛らしく、そして生々しくオンナを感じさせる動きで、お腹をのたくらせて身をくねらせた。

 それはまるで別の生き物を見ているようで、じっくりと少女の腹部を観察していると、不思議な興奮を覚え改めて鼻息が荒くなる。

 唾液の航跡を引いている“ヌメヌメ”とした図がまたエロい。

 そして舌はそのまま下腹部に達し、どこか“ムアッ”とした熱気すら感じるパンツの上を、――あっさりを装いながら渋々と通過した。

 俺は好きなものは美味しく食べる性質なんです。

 それでも未練たらしく下着のラインに微かに這わせてつつ、舌先は脚の付け根から内腿を経て脹脛へと進んでいった。

 何度も往復させて綺麗な少女のおみ足を、神経質なほどに牡の唾液で汚していく。

「こんなもんかな」

 自分でもどの辺りが合格の分岐点なのかよくわからんが、俺はぐったりしてる少女の膝の裏に手を入れ、とにかくぐいっと持ち上げた。

 その下に身体を潜り込ませて、肩で少女の脚を担ぐようにする。

 美味そうにふっくりとしている恥丘が目の前だった。

 人間にはどうやっても直らないくせがある。

 島田誠の場合はこれで、鼻を近づけて“くんくん”と匂いを嗅いでみると、少女のそこからは誘うように濃い牝の香りがした。

 無論、

 俺はその誘いを断ったりはしない。

 顎が外れるほど“あ~~ん”と大口を開けて、パンツ越しに女の子の大事な場所へとかぶりついた。

「ひぅ!?」

 お尻をブリッジするように綾乃ちゃんが突き出したので、いきなり牝の匂いが濃度を増して鼻孔を満たし脳内を“くらくら”とさせる。

 口をもぐもぐとしているといくらもしないうちに、薄い布地を通して女の子のシロップの味が感じられるようになった。

 綾乃ちゃんの大切にしてきた場所の形状まで舌の腹ではっきりと知覚できる。

 力を込めた舌先で女の子の秘裂をなぞると、それだけで“コンコン”と湧き出る泉のように、綾乃ちゃんの愛液が俺の口唇を濡らした。

 少女のパンツはもうお漏らししたみたいにぐっしょりである。

「…………んンッ……はぁ……うぅんッ…………、んッ、んッ、んッ、…………あはッ!!」

 急ピッチで上ずる声。

 綾乃ちゃんは着乱れた道衣を握り締めると“ぐぐっ”と背を反り返らせ、高々とお尻を突き上げながら初めてだろう絶頂に達していた。

 しばらく身体を“ふるふる”と震わせてホバーリングさせてから、電池が切れたようにドサリと床にヒップを着地させる。

「いまのがイクってやつだよ」

 などとエロ漫画みたいな台詞を口走りながらも、俺は綾乃ちゃんが聞いていないことはわかっていた。

 稽古中にも乱れることのなかった息を、少女は整えるだけで精いっぱいである。

 パンツの中心では女の子の真珠が色まで透けそうなくらいに、さらに大量に分泌された愛液に溺れながら“ぷっくり”と膨らんでいた。

「…………」

 それを物欲しそうに眺めつつ、俺は唇を“ぺろっ”と舐めると、綾乃ちゃんの身体を膝小僧が頭の左右にくるほど折り曲げる。

 俗に言うまんぐり返し。

 女の子からすると肉体的にも苦しい姿勢だし、精神的には大変恥ずかしい姿勢だが、オトコからすると一度はやってみたい姿勢だった。

 が。

 綾乃ちゃんは身体の柔軟性を多大に求められている、打撃ありの武道に幼い頃から慣れ親しみ実践してもいる。

 肉体的に苦しいことはないだろう。

 しかしそれが精神的となると、あまり白鳳院流の修行の日々も、夢うつつから戻ってきた綾乃ちゃんの助けになりそうもなかった。

「……あ……ああ……」

 誰の目にも性に疎いとわかる奇跡のように初心な少女が、どんな修行をしたところで、この羞恥地獄にはとても堪えられなかったろう。

 ってかそんなのは少女に堪えてほしくない。

 断固阻止。

 少女が顔を真っ赤にするような恥ずかしさで地獄を味わえば味わうほど、それを“にやにや”眺める俺は極楽浄土の天国なのだから。

 両足を閉じさせる。

「いやっ!?」

 まだ綾乃ちゃんの身体は蝕む快感から脱し切れてないので、抵抗らしい抵抗もできず俺にパンツを“ぷりんっ”と剥かれた。

 やはり雪のように白いはずのお尻は、顔の色に倣うようにして、鮮やかな真っ赤になっている。

 ちなみに剥いたパンツは腿の途中で止めていた。

 まあ、これはちょっとした、島田誠のこだわりというやつである。

「や、駄目、……です、こんなの、お願いです、島田、さん、……こんなの、こんなの、わたし恥ずかしい、……恥ずかしいんです」

 と。

 そう真っ赤な顔で恥じらいながら言いつつも、瞳を“うるうる”潤ませた綾乃ちゃんは、決してある場所から視線を逸らしたりしない。

 トイレもあればお風呂もある。

 まさか見たことがないということはないだろうが、もしかしたら満足にまともに、そこを見たことはないのかもしれない。

 綾乃ちゃんの視線は“ぱっくり”と淫らに花開いて、蜜を滴らせている自分の秘裂に釘づけだった。

 そして、

 オトコである俺からも見られているというのが、少女のビギナー丸出しな性衝動を間違いなく煽ってもいる。

 やめる理由なしと判断した俺は、綾乃ちゃんの潤んでいる瞳を見つめながら、わざと“ぺろっ”と舐めてから再び口唇を寄せていった。

「…………」

 多分、綾乃ちゃんはまた俺が飽きもせずに、秘裂にむしゃぶりつくと思ったろう。

 もちろん

 少しも飽きてなどいないし、そもそも永遠に飽きるわけもない。

 うん。

 ないが俺のむしゃぶりついた場所は、綾乃ちゃんの予想を裏切って、いや、綾乃ちゃんでは予想などできない場所にむしゃぶりついた。

「ひッ!?」

 今回は獅子奮迅で大活躍の舌。

 またしても鋭く尖らせて、俺は身体の中で最も汗が溜まっている谷間、その奥を優しく割り開いて刷けるように舐める。

 可愛い窄まりが“きゅっ”と収束したのを、視覚と触覚の両方で俺は確認した。

 …………

 我ながらナイスである。

 猛る牡の視線を生まれて初めて浴びてか、ハシタナクもここを“ひくひく”させていたのを、俺は目聡く捉えて見逃してはいなかった。

 皺のひと筋ひと筋を舌をくねらせて撫で上げる。

 綾乃ちゃんが他人を許してしまった、内臓への初めての侵入は清らかな菊座だった。

「んあッ……ふぅッ!?……うッ……はぁッ………うぅッ…………ンあぁッ!! …………はぅッ……んンッ…………ぅああッ!!」

 嬲る。

 そうとしか表現しようのない卑猥な動きで舌を蠢かすと、すぐ綾乃ちゃんの身体も呼応し、陸に打ち上げられた魚のようにして跳ねる。

 武道で鍛えられている括約筋が躍り、奥へ奥へと侵入しようとする舌を、直腸をうねらせて押し出そうとしていた。

 ぶるぶると震えてる身体。

 抉るようにして菊座に突き入れられるたびに、綾乃ちゃんは快感という波に攫われ弄ばれている。

 そして俺はさらなるビッグウェーブを起こすべく、触れないかの絶妙さで会陰部を滑らせると、指先をぬめる秘裂に沈み込ませた。

 温かいそこは貪るようにして慎みなく指先を呑み込み、離すまいと締めつけながら不思議な柔かさで包み込んでくる。

 膣内で大人の玩具を真似るようにして小刻みに振動させてみた。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ…………ぅああッ、あぅッ…………やめッ…………あ!?…………ああッ………ふぁッ!!」

 効果は絶大。

 そうやって増す増す綾乃ちゃんに快楽の毒を流し込みつつ、反対の手は真珠をこねくりながら、薄い包皮を剥いては戻してを繰り返す。

 少女の爪先も“きゅっ、きゅっ、きゅっ”と、結んで開いてをシンクロするようにして繰り返していた。

「ひうッ!?」

 女の子の真珠を親指と中指で摘んで、俺は優しくもしつこく執拗に転がし続ける。

 雨垂れから水滴が流れ落ちるようにして、半透明で粘度の高そうな液体が、綾乃ちゃんのお腹をいやらしく濡らし光らせていった。

 菊座のひくつきもどんどんと大きくなってきている。

 いつのまにかそこからも“ヌチャヌチャ……”と、舌を歓迎するような音が奏でられていた。

 しかし、

「うぁッ…………は……ああッ……あ……ぅああッ…………ふぅ……うぅ……あ、ひッ……あッ……ぁんッ…………」 

 終わりは唐突である。

 少女の下腹部で際限なく膨張していた熱エネルギーが、一気に外の世界へと爆発するように勢いよく激しさをそのままに溢れ出た。

「はひッ!」

 秘裂の小さな小さな可憐な穴から水鉄砲のように液体が迸る。

 二度、三度と“ぴしゅ、ぴしゅ、ぴゅ~~”と、どこかコミカルなのに異様にエロく、綾乃ちゃんはオトコの前で女の子の射精をした。

 焦点のまるで定まってない、ぼんやりとした視線でそれを追いながら、少女は眠りにつくようにして瞳を閉じる。

 倒錯した快楽。

 リアルに経験する初めての性体験が、やたらとマニアックなものになった少女は、快楽にどっぷりと浸って気を失っていた。

 結局、

 その日の晩は白鳳院家の夕食を、図々しくも俺はご馳走になったが、開始の時刻は八時半を回っており終わる頃には十時も間近である。

 事務に没頭していた英美さんは時間に気づかなかったし、綾乃ちゃんの介抱やら着替えやらでいつも以上に時間が掛かったからだ。

 俺はもう腹が“ぺこぺこ”で仕方がなく、ご飯を三杯もおかわりしてしまったがそれも仕方がない。

 …………

 眠っている綾乃ちゃんの寝顔をオカズにして、牡の本能に突き動かされるままに、我武者羅なオナニーを三回も連続でしてしまった。

 白鳳院流の稽古はこれからもガンガン続けていこうと思っている。

 夕食中は俺を一度もまともに見なかった綾乃ちゃんだが、恥ずかしげにおかわりをよそう仕草が可愛らしかった。

 明日も頑張ろう。





[2293] 少女病 二十話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:23



 テクニックはない。

 半端な知識に基づく漠然としたイメージを総動員させての、勢い任せノリ任せのそれは乱暴ですらある激しい接吻だった。

 ちょうど圧し掛かるようにして押し倒されている恰好でもある。

 なんだかレイプでもされているみたいだ。

「んむっ!? んンッ!!」

 侵入した紅葉ちゃんの舌は俺の口内で、縦横無尽の大車輪花車で踊り狂っている。

 なるほどねぇ。

 あれはあくまでフィクションの演出でしかないわけだが、エロ漫画の『らめぇ~~っ!!』みたいな女の子の気持ちがわからなくない。

 イヤよイヤよも好きのうち、というやつである。

 …………

 いや、この場合はそもそも、まるでイヤではないわけだが。

 が。

 それはいい。

 そんな重要だが些細なことよりもだ。

 最高級の肉というのは舌に乗せただけでも、溶けてなくなるという話はよく聞くが、紅葉ちゃんの舌はまさにそれで極上の一品である。

 まあ、

 実際、

 溶けてなくなるなんてことまでさすがにないものの、蕩けるような感触が何度も何度も口内粘膜を健気に擦りねぶってくれた。

 ああ可愛い。

 万有引力の法則に従って流れてくる甘い唾液を、“こくりこくり”と喉を鳴らして呑むと、頬を紅潮させつつさらに動きを加速させる。

「ン……む……ん―……」

 俺の腹の上でラッコ状態になっている洋子が気にでもなるのか、真っ赤な顔を隠すようにして傾けて奥へ奥へと深く潜り込んできた。

 大きなふくらみが首筋に強く押しつけられて、歪な形に潰れているのを想像するとひどく卑猥でいやらしい。

 思うままに揉みしだきたいが、思うままに揉みくちゃにしたいが、しかし残念ながら、俺の手は現在がっちり洋子にロックされていた。

 そっと添えられているだけなのに、恐ろしいほどの拘束力がありやがる。

 何故だかここで紅葉ちゃんのおっぱいを揉むんでしまうのは、どうしてなんだか微妙に洋子に悪い気がしてしまったのだ。

 いつの間にか“ギンギン”の臨戦態勢になっていた股間のブツが、ミニスカートをめくってお尻の谷間を抉るほどに反り返ってるしさ。

 まだ、

「あンッ」

 その間には割烹着もあればシャツもあり、最後の砦のブラジャーもあるわけで、本来の柔かさは幾分損なわれてるがこれも絶品である。

 ちびっちゃい身長からすれば充分に大きなふくらみは、掌には収まりきらずに好きに形を変えて俺に肉の感触を伝えてくる。

「…………んン……くぅん……ふぅ…………んぅ」

 そうやっておっぱいを“にゅむにゅむ”揉みしだいていると、可憐な唇からは悩ましい吐息が洩れて洋子はすぐに肩を上下させ始めた。

 うん。

 自慢じゃないが俺にはほんの少し触っただけで、女の子を狂わせるような超絶なテクなんぞありゃしない。

 紅葉ちゃんのテクのなさを、あれこれどうこう言えた義理じゃないのだ。

 だからそれでもこんなに嬉しいリアクションが返ってくるのは、する側とされる側のタイミングとか波長が合っているからだろう。

 期待してたのは何も俺だけじゃない。

 要するにそういうことだった。

 綾乃ちゃん理論。

 怪しげなこの理論を借りるのなら、島田誠(27)との相性がいいというのは、他の少女相手にも同様に適用できるということらしい。

 なら俺の欲していることは彼女たちも欲している。

 そんな風にしてアクティブでポジティブで積極的な勘違いをして、俺は本能というよりも煩悩の命じるままに行動を開始した。

 拘束力の緩くなった洋子のロックを外し、圧し掛かる紅葉ちゃんのお腹の下を潜らせて、身体をぐいっと不自然に男らしく引き寄せる

 以心伝心。

 ツーといえばスリー。

 紅葉ちゃんは“ひょいっ”と、俺が手を通すときには、身体を浮かせて隙間を作ってくれていた。

 オーケー。

 遠慮はいらない。

 腋の下からたわわに実っているおっぱいを、五指をいっぱいに広げ“たぷたぷ”とした重さを味わいながら揉みしだく。

 う~~ん。

 考えてみれば考えなくても贅沢な話だ。

 だってあれだよ?

 右の手と左の手でそれぞれに、“むにゅむにゅ”と揉んでいる、おっぱいの大きさも柔かさも違うんだよ?

 無論甲乙はつけがたい。

 一長一短。

 どちらかというと洋子のおっぱいには弾くような張りがあり、紅葉ちゃんのおっぱいには指が沈むようなふくようかさがある。

 ええ。

 俺はもちろんどっちのおっぱいも大好きだ。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……、ン…………んふぁ…………はぁ……んぁッ…………」

「ンあぁッ……はぅッ……んンッ……、んッ……クッ…………んンッ…………、んっ、………くぅううっ…………」

 羞恥心の連鎖。

 少女のまだ控え目な喘ぎ声のデュオに呼応して、明らかに初々しさの色濃く残るふくらみ、思春期の火照りとやわらかさが増している。

 ふふん。

 俺だってわかってるんだぜ?

 言葉の意味はよく分かりませんが言いたいことは理解できなくもない。

 そういうやつだ。

 わかる人にだけわかればいいという、ここは放任主義な感じでできればいかせてほしい。――でもオトコならわかってくれるよな?

「だ、…………んッ……だめ………そ……あッ、……ああッ………、だ…………んあッ…………」

 服の上からでは我慢できなくなってきた俺は、二人のシャツの裾からねじ込むようにして手を突入させた。

 ブラジャーの生地(ブラジャーの生地もやはり微妙に違ってる)しかないおっぱいは、その伝わってくる熱とやわらかさが雲泥である。

 より触感がダイレクトなのだ。

 が、

 ここまでくればよりナチュラルなおっぱいを、艶かしくも生々しく感じてみたいのが牡の性。

 多分、

「んンッ、んッ、んッ、ふぅ、…………んふぅッ!?」

 おそらく、

「……はぅッ……んンッ………あぁんッ、……ふぁッ……ひッ……うぁッ!!」

 牝の性もそう言ってるような気もするしな。

 ある意味で雌雄同体。

 縁を指先でなぞりシンプルなデザインのブラジャーの形状を(ここは二人とも共通)、脳内に映しながらふくらみの頂へ登らせていく。

 気分はもうチョモランマを単独制覇した登山家だった。

 二つの山には高さにも大きさにも差があるものの、そこから得られた溢れる達成感には寸分の差もありはしない。

 チョモランマだって富士山だって、その趣に差はあるのかもしれないが、頑張って登った頂上の景色はやはり変わらず美しいものだ。

 見えてはいないがそれでも絶景である。

 山頂で小さく円を描くようにして“くるくる”指先を回転させると、そこは布地を通していてもはっきりとした生理現象を俺に示した。

 二人の少女の可憐な乳首が“むくむく”と恥ずかしげに硬くしこってきている。

 できるものならずっとこねくってたい触感だ。

「やっ……ンッ……やはぁッ………あ……んぅッ……、はふぁ……ぅあッ……は………んぅッ!!」

「……し、島田、さ、……ん……んぁッ、…………ん……ン……んふぁッ……、うぐッ……はぁ……はぁ………ふぅ……ううッ……」

 反抗的な素振りだけど物凄く従順だったりする洋子と、台詞の後半をシクシクと泣き声のようにして喘ぐ紅葉ちゃん。

 ブラジャー越しの弄うような刺激にも、敏感に可愛い反応をしてくれる二人の少女。

 堪らんかった。

 ネコが畳でするようにして“カリカリ”と爪で引っ掻いたりすると、明らかな快感の波に曝されて二人は“ぶるぶる”身体を震わせる。

 そんな少女たちのあられもない姿と仕草に、俺も興奮で“ぶるぶる”身体を震わせながら、感情のままにブラジャーを毟り取った。

 ふにゅん。

 なんてな擬音が脳内で自然に勝手に再生される。

 知らず知らずに汗ばんでいた俺の手に、触らなくてもわかるが触りたい柔かさも相まって、少女の持つ肌のぬくもりが気持ちよかった。

 ああ癒されるなぁ。

 本気でそう思いながら柔らかな、けれど硬さも残すおっぱいを、俺はパン粉でもこねるように執拗に揉みまくった。

 迷信を信じてはいないが『大きくなれよ』と念じていると、出番を待ち切れないようにして、どんどんと勃起が大きく硬くなっていく。

 煽られるようにして癒されてたはずの心は、嗜虐欲をあっという間に取り戻した。

 保護欲をくすぐられるおっぱいの先端を、だが少し強めに苛めるかのようにして、中指と親指でそっと優しく挟んできゅっと摘む。

「ひゃうッ!?」

「ふぁあッ!?」

 腹の上のラッコな洋子は両膝を体育座りのように丸め、紅葉ちゃんは口唇の端から涎のように唾液を滴らせ白い喉を晒して仰け反った。

 過敏で可愛い反応に気をよくした俺は、硬く尖り勃っている乳首を、しごいたり捻ったりしながら調子に乗って弄ぶ。

 彼此五分以上ははそうしていただろうか、

「……おんや?」

 二人のおそらく無意識だろう行動に気づいた俺は、わざとらしい声で喚起を促しつつ、少女たちの変化を『あれあれ? もしかして?』

ってな感じで発表した。

 言うまでもないことではあるが、もちろんそう言った俺の顔はにやけている。

「なんで二人ともさっきから、お尻を“もじもじ”振ってるの? 特に洋子さんは“ぐりぐり”とアレに押しつけていませんか?」

 アレがナニだとは別に言ったりはしない。

 しないが洋子は“ボッ”と漫画みたいに顔を赤くさせて腹から飛び退き、やはり同じ色にした紅葉ちゃんも素早く俺から距離を取った。

 が。

 しかしそれでも二人が俺から、俺の手の届く範囲から、決して離れてしまったわけではない。

 こんなときだけアスリートなボディは、絶妙な安定感で上半身を支え、一息で起こすことに成功すると逃げる獲物の身体を引っ掴んだ。

 二兎を追うものは…………。

 昔の人も結構適当なことを言ったりするもんだ。

 二兎どころか四兎を得ようとしている俺は、先人の言葉も鵜呑みはいかんなと思いつつ、二人の少女の手を握ってソコへと導いていく。

「どわぁ!?」

 声が重なった。

 誇るほど自慢はできないし、哀しくなるほど自虐になることもないが、そこはとてもスタンダードな大きさなので手も重なっている。

 指が廻らないとかの太さにしても残念ながら絶対にない。

 ……まあ、硬さだけは、最近のちょっとした、ホントにちょっとした自慢ではあるわけなのだが。

 あと膨張率とかもなかなかかな?

 俺の手を一番上に三人で手を重ねたまま、どれくらいだったろうか、やっぱり五分くらいは勃起の放射熱に曝されていたろう。

「今度は俺は番」

 あるいは毒に犯されたのか、暗示にでも掛かったようにして、俺が手をどけてみても、少女たちの手が勃起から離れることはない。

 上目遣いでこちらを見てから、思い出したように隣りにいる友人の顔を見て、気まずそうに二人は視線を逸らし合った。

 う~~む。

 趣味がいいとはいえないかもしれないが、っというかかなり悪趣味かもしれないが、正直こういうのって俺はメチャメチャそそるなぁ。

「さ、早く……」

 見っともなく唾を飲み込もうとする喉を抑え、裏返りそうになる声をできるだけ低くして、俺は二人の少女に再度のお願いをした。

 わかってはいる。

 格好つけもそう長くは続かない。

 それはまさに夢よりも美しい光景なのだから。

 どちらからともなくなのか、アイ・コンタクトでも刹那で交わしたのか、二人の少女は息を合わせて同時に俺のお願いを聞いてくれた。

「…………」

「…………」

 洋子の指先がズボンのジッパーを摘むと、ほんの一瞬だけ躊躇ってから下ろされていく。

 紅葉ちゃんは顔を俯かせ、ちらちらと見ながら、僅かにできた隙間を丁寧に、まるで焦らすようにゆっくりと開いていった。

「きゃっ!?」

 また少女の声がぴったりとハモる。

 パンツをカウパーですでに濡らせた勃起が、そこから先は待ち切れぬとばかり、元気ハツラツで少女を睨むようにこんにちはしていた。

 俺には自分で自分がよくわかってないときがあったりする。

 いまがそうだ。

 勃起に釘づけになっている二人の視線を、たっぷりと意識しながら、何故だか自信満々でゆら~~りと立ち上がった。

 この高さの方が少女に俺の望み、お願いを叶えてもらいやすいだろう。

 心持ち腰を“くいっ”と前にと突き出した。

 アホ丸出しである。

 しかし、

 ここは自分でも冷静になったら負けのところだし、ここは二人を冷静にさせても負けのところだった。

「…………」

「…………」

 洋子と紅葉ちゃんが仕切りに目配せをし合っている。

 そのくせ相手と目が合ってしまうと、慌てたように“ささっ”と逸らして、またしばらくすると相手の出方を“ちらちら”窺っていた。

 勝ったと思ったね。

 自主性のなさというのは要するに、主導権のなさということである。

 まあ、紅葉ちゃんはともかくとしても、洋子ですらそれを放棄しているこの場、この空気を支配しているのは確実に俺だった。

「洋子……」

 へそまで反り返らせて裏筋を晒す勃起を、一度だけとはいえ経験のある少女へと、ちょっとだけ向けて催促するように揺らせてみせる。

 紅葉ちゃんがどこかほっとしているような、けれどがっかりしているような顔をしたのはあえて無視して、

「洋子……」

 またネコ少女に気持ちの悪い、甘ったれるような媚を含んだ声で、しかし猛る勃起を鼻先に突きつけて恫喝するようにお願いした。

 自分の声だけはなんだか気持ちが悪くなってくるものの、こうすることには特に罪悪感なんてものは感じていない。

 肌の色。

 怒っているときでは決して発色しない、含有成分の八割が羞恥心の鮮やかで綺麗な朱に、洋子の頬はさらに可愛く美しく染まっていた。

 そして残りの二割はきっと喜びであろうと、俺はオトコの身勝手な妄想と願望込みで信じている。

 瞳を“うるうる”と潤ませて勃起を見つめる少女には、それを無条件で信じさせてくれるだけの魅力が絶対に十割あった。

「…………」

 ゆっくりと洋子の可憐な唇が、グロテスクな勃起に近づいてくる。

 チュッ。

 根元に小鳥が啄ばんでいるみたいなキスをされた。

 それだけで俺の身体には快感パルスが走り抜け“ぶるり”と大きく震わせてしまう。

 洋子はそうやって何度も何度も熱心に勃起に、エロさよりもどこか微笑ましさが先行するキスを繰り返した。

 ジャブのようなものかもしれない。

 そうやってキスの雨を勃起に断続的に降らせながら、洋子が気持ちの良いポイントを探っているのが俺にはすぐにわかった。

「うッ」

 勃起への口撃が不意打ちで、ねっとりとぬめる、生温かく柔らかな感触にチェンジする。

 いっぱいに伸ばされた舌は的確に、俺の快感ポイントを責めてきた。

 裏筋を根元から先端まで“ねろぉ~~ん”と、微笑ましさよりも明らかにエロが先行する艶かしい動きで舐めあげる。

 ぬらつく勃起の表面を“ぬめぬめ”と舌が這い回ると、完全に気のせいではなく、完璧に凶悪に滾っている血の赤黒さを増していった。

「んッ」

 そうやって情けない声を漏らしてしまう俺を、目元を赤くさせながらも洋子は逐一観察している。

 行儀良く正座している姿がなんだか妙に可愛らしい。

 が。

 健気にも甲斐甲斐しく俺の快感を、前より少しでも引き出そうとする舌の動きも、負けず劣らずのハイ・レベルで可愛かった。

 涙のように雫を溜めた縦割れの唇にも、躊躇することなくも“かぽっ”と、唇でエグいほど傘を広げた亀頭を包んでくるのが堪らない。

 肉の実を丹念に舐めしゃぶる。

 洋子の唾液と俺の先走りの液が交ざって、舌の蠢きと啜るときの音が“じゅ・じゅちゅ・じゅる”と卑猥なメロディを奏でていた。

「くッ」

 そうやって洋子の口撃に尻の穴を締めて堪えながらも、俺は微動だにせずに勃起を凝視する紅葉ちゃんを見る。

 喉が“ごくり”と生唾を呑み込んで、大きく上下しているところだった。

「あ……」

 俺の熱すぎる視線に気づいた紅葉ちゃんは、頬を染める羞恥の色をさらに一段階濃くしたが、逃げるために顔を背けることはできない。

 それは狙いを定めるように唇を見つめる、獣性剥き出しの俺のケダモノ・アイが許したりはしなかった。

「紅葉……」

 結構ドキドキする。

 意識して『ちゃん』を外してはみたが、まあ、相変わらずこれが地味にテレるものだな。

 だが、

「紅葉……」

 それだけの効果はちゃんとあったようである。

 泣きそうなときみたいにして、唇を“きゅっ”と真一文字に結んだ紅葉ちゃ、……いや、紅葉は俺が頷くと“こくん”と頷きを返した。

 洋子の隣りに膝立ちで“おずおず”としてはいるが近づいていく。

「も、紅、葉……」

「う、う、うちも」

 友人に気づいた洋子は亀頭から“ぷはぁ”と唇を離し、上・上・下・下・左・右・左・右・B・A 視線を泳がせてから場所を空けた。

 少女たちの体温を是非測ってみたい。

 二人とも顔全体の赤色の濃度が新種のウイルスを心配するくらい、もうかなりどえらいことになってきていた。

 そしてそのウイルスの進行は紅葉の方が、若干ではあるが洋子よりも早いのかもしれない。

「ふッ」

 真似だろう。

 さっき洋子のしていたことをそのまんまトレースするみたいにして、紅葉の舌が勃起の根元から唾液の航跡をゆっくりと引いていった。

 紅葉の舌の方が洋子よりもいくらかではあったが温かい。

 Wでフェラをされている。

 視覚だけでなく触覚でもそれを実感できて、俺の顔は俄然緩みだらしなくもにやけまくった。

 先端にまで達すると口内に広がっているだろう味を、目を閉じて“もごもご”とさせながら妙に色っぽい顔で確認している。

「ふ~~」

 それなのに思ったより不味くはなかったのか、安心したように息を吐く顔は可愛らしくて、少女という生き物の神秘性を改めて感じた。

 二人の舌が縦横無尽に淫らに勃起を蕩けさせながら這い回る。

 たまに触れ合ってしまう二枚の舌がエロい。

 先汁のにじむ切れ込みを“ちろちろ”とくすぐったり、ハーモニカのように横咥えされたり、ときには玉までしゃぶってもらった。

 異なる口内粘膜の温かさに包まれて、玉を“ころころ”と転がされるのは俺も初体験でとっても新鮮である。

 蛇の生殺しのように“じわじわ”と競り上がってくる感覚に髪を掻き毟った。

 出したいっ!!

 マグマを大量に蓄えてる噴火寸前の勃起は、俺の心情をなによりも雄弁に物語っており、太い血管を浮かせて“ぴくぴく”震えている。

 ここは警報をそろそろ出しておかねばなるまい。

「ふ、くッ、ふ、うッ、も、ふッ、あッ、や、やば、い」

 見っともなく途切れ途切れではあったものの、揺れる髪の毛を撫でながら二人にそう告げる。

 そして事前の打ち合わせなどあるわけもないのに、それを合図にして二人の舌は同時に、雁首の裏に集中口撃を浴びせかけてきた。

「んむッ……ふぅ…………、んンッ……んぅ…………」

「ふッ、んンッ、んッ…………むぁッ……ふぅ……んンッ…………」

 ダブルで責められて俺の欲望回路が、あっさりと脳内でスパークしショートする。

 洋子に苦い経験がなかったら、また後先考えないことによる、ぶっかけ惨事がまた起こっていたことは請け合いだ。

「こぶっ!?」

 タッチの差で狭い口内に勃起を収める。

 オトコの反射で欲望のままに後頭部を押さえてしまった俺よりも、洋子の素早い行動は百倍大人で立派なオンナだったかもしれない。

 喉の奥にこれでもかと噛み切れないほどに濃い、ねっとりとした精液を吐きながら、心底でこの少女を俺は尊敬していた。

 洋子が“こくっこくっ……”と白い欲望を嚥下するごとに、性懲りもなく脈打つ勃起はしゃくり上げて清らかな口内粘膜を穢していく。

 最後の一滴まで腰を“ぶるる”と震わせて放つまで、洋子が呑んでくれるまで離すことはなかった。

 ただここで一つだけ俺が、

「……紅葉」

 大人の行動をできてたとしたらこれだろう。

 どこか後頭部を押さえられた洋子を羨ましそうに、そして所在なさげにして見つめている少女に、俺はとても大事なことをお願いした。

「火、止めてくれる」

 冷静になってきてやっと気づいたが、なんだか部屋中がやたらと焦げ臭い。

 既に時遅し。

 手間隙掛けた晩飯のメニューは残念ながら一品減っていた。





[2293] 少女病 二十一話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:25



 星が素晴らしく綺麗だ。

 山篭りと言われたときはどうしようかと思ったが、飽きるほど食っているはずのカレーが妙に美味くて悪くない。

 うん。

 今回はオチから先に言ってしまおう。――ここは東京都足立区北千住である。

 古流柔術白鳳院本家の総本山その敷地内。

 ま、

 それでも、だ。

 誰が何と言おうとこれは、立派な山篭りなのである。

 足立区の外れでテントを張っていても、そんな気分になれればそれは山篭り、……らしい。

「……なんだかキャンプみたいで楽しいね」

 前の日に雨がわんさか降った所為もあるが、市街だというのに空が綺麗に澄み、乙女な表現をするのなら星に手が届きそうな気がした。

 やれやれ。

 雰囲気に流されまくっているだけで、本当はいつもと何ら変わらない星空だろうに、今夜はやけにロマンなんぞを感じてしまう。

「遊び気分は今晩までですよ。明日は朝早くから練習です」

 焚き火を挟んで向かい合っているのが、飛びっきりの美少女だというのならば尚の事だった。

 山篭りは日々の雑念を排除し、自己鍛錬をするために行うものである。

 が。

 はっきりいって俺は雑念入りまくりだった。

 現在効果ゼロ。

 なんなら妄想力はいつもよりも無闇にジャンジャンバリバリ、開放台のフルスロットルで大回転までしていやがる。

 …………

 失敗だな、この山篭り。

 綾乃ちゃんの今宵のファッションはいくらかカジュアルだが、どこにでも売っているような特に何らの変哲もないジャージーだった。

 色っぽさのある意味真逆に位置するそんな姿にも、素早く律儀に反応しちゃっていやがるアホが一匹。

 俺の股間は未だにオナニー覚え立ての、思春期どストライクな中学生である。

 暖かな炎のぬくもりは人を正直にさせるとはいうが、気持ちに素直すぎる自分の身体に、大人としてさすがに内心では赤面ものだった。

「ふぅ~~」

 徹夜明けのようにして“ふるふる”と頭を振る。

 雑念を追い払うためだったが、もちろん効果などあるわけもなく、むしろ少女のイメージが脳内でより鮮明になっただけだ。

 もしいま自分の部屋で一人だったのならば、右手で上下運動を“シコシコ”と繰り返すことは疑いない。

 タンパク100%。

 例え次の日に検尿を提出しなくてはいけなくても、きっと俺はやるだろうしやり遂げるだろう。

 島田誠(27)とはそういうオトコだ。

 うん。

 ものすげぇ馬鹿なんだよ。

「島田さんはお疲れのようですね、それじゃそろそろ休みましょうか。明日は早いですから今日はぐっすり眠って英気を養ってください」

「……そうだね」

 そう言って“にっこり”と微笑みながら、綾乃ちゃんは置いてあったバケツに手を伸ばした。

 少女は焚き火に慣れているのか非常に用意も手際もいい。

 だけではなくテントを張ったのも、そもそもその適した場所選びにしても、すべからく俺は綾乃ちゃんの指示に従っていただけだった。

 綾乃ちゃんは山篭りのレベルが高い。

 夕食のカレーだけは俺が作ったがそれもレトルトで、ここまではまったくの役立たずで完全なゲスト扱いである。

 が。

 お客さんではないのだ。

 どころかご指導ご鞭撻を乞う立場である。

 このぐらいはやはり一般常識がある“はず”の大人としても、オンナの前で見栄を張りたがるオトコとしてもやっとくべきだろう。

 じゃないとさすがに格好悪すぎて、どんなに疲れてはいても眠れそうもない。

「火の後始末はやっとくからさ、綾乃ちゃんこそ先に寝てくれていいよ。お師匠様に仕事させて、ぐっすり寝ちゃう弟子はいないだろ?」

「お師匠様?」

「これから練習のときだけは、そう呼ぶことにするよ。そうした方がそれこそ、そんな気分になれるんじゃないかな?」

「そうですねぇ。……それで島田さんが練習に、身が入るというなら、若輩者には些か過ぎた呼称ではありますが、ええ、わかりました」

「オーケー、お師匠様」

 言って親指を“ぐっ”と立てる。

 俺は弟子としてお師匠様が取ろうとしていたバケツを、横から掻っ攫うように引っ掴み、焚き火に念入りにかけて消火した。

 火の用心というのは徹底的にしといた方がいい。

 俺は火の不始末で先々週は、晩飯のメニューが一つ減ったので、そりゃあもう身に沁みてわかっている。

 ちなみに、

 勉強会まで実施した例のテストの結果はというと、名前は本人の名誉のために伏せておくが、オデコとポニーが特徴の娘は追試決定だ。

 もちろん洋子はラリオス8連射くらいの余裕でクリアー、真面目にテスト勉強をした綾乃ちゃんにも危なげはない。

 そしてこれが、

『ち、ちがうのよ(ちゃ、ちゃうねん)、これが実力じゃないの(ないねん)。追い込まれたらあたしは(うちは)強い(ねん)っ!!』

 敗者たちの気合充分な負け犬の遠吠えである。

 まあ、

 別にいいんだけどね。

 ぎりぎりにならないと集中できない人というのは確かにいる。

 俺もそうだったから心配するな、とは言わなかったが、あの二人の心配はだからこれといって特にしていない。

 学生時代は感じたりしなかったのだが、追試常連組というのはどこかで、はじめっから追試というのを計算に入れている気がする。

 二人からは俺の若かりし頃と(いや、いまだって充分若いけどね?)同じ匂いがした。

 なので無問題。

 山本洋子さんも今度は本腰のマンツーマンなのでノープロブレムだろう。

「それじゃ水汲んでくるから、綾乃ちゃ、――じゃなくてお師匠様は、もう先に寝ちゃっててもいいよ」

 と。

 もったいぶって大仰に言ってはみるものの、無論そんな大したことをするわけじゃない。

 母屋にちょいと行くだけである。

 赤いポリタンクにもしっかり水を入れておいたのだが、俺がハリキってというよりもテンパって使い切ってしまった。

 こういうのはやはり自業自得とでもいうのか、それとも自分のケツは自分で拭けとでもいうのか。

 当初はレトルトのカレーなんぞではなく、もっとこったものを夕食にするはずが、どこをどう間も勘も違えたのかクッキングは大失敗。

 限りある地球の資源と笑って許してくれたカノジョのために、このぐらいするのはなんでもないしオトコとしての義務だろう。

 それに、

 正直言ってしまえば上の俺にも下の俺にも、いまはとりあえずの落ち着く時間が欲しいしな。

 熱を冷ましたい。

 水の補給ばかりではなく風呂からトイレまで、どこが山篭りなんださすが自宅、というくらい母屋に頼ってるが寝るのは小さなテント。

 ほんの軽く寝返りを打っただけでも、身体と身体が触れちゃうような、さして広くもない空間で美少女と二人っきりである。

 むしろここからが今日のメイン・イベントであり、島田誠(27)の真の精神修行の本番だったりしてた。

 山にサルは付き物だ。

 綾乃ちゃんに危害が及ぶか及ばないかは、俺のとてつもなく不安定な怪しい自制心にかかっている。

 ここで望めば今夜はテントでエロいことできるかな?

 そんな微かだが無視できない期待が、ないわけではないどころではないが、ご指導ご鞭撻してくれているお師匠様にそれは失礼だろう。

 本気には真剣で応えたい。

 それはできるだけでも、できるだけはそうするべき、――なんではないかと、思ったりとか思わなかったりとか。

「ふぅ~~」

 こうして大人と呼ばれる歳になって覚えたものは、心の中ですらの曖昧な物言いと、自己保身なのかと思うと軽く欝である。

 ため息にどこまで察したのか、それとも察しなかったのか、心配げな顔の綾乃ちゃんに手を振って、ポリタンクを片手に母屋に向かう。

 三十分は戻って来るまいと密かに誓った。

「ふぅ~~」

 ……おかしい。

 結構シリアスに悩んでいたはずなのに、少女のアンニュイな表情に股間のブツが、エネルギーをたっぷりとチャージしている。

 今日は綾乃ちゃんに遠慮もしていたことだし、ここは煙草でも吸って頭を一度クリアーにしなければ。

 ニコチン切れでチンコがにっこりって、…………駄目だ疲れてるなぁ。

 などと、

 スポーツ新聞のエロコーナーよりくだらないことを考えながら、俺は水飲み場まで来るとポケットから煙草を取り出して口に咥える。

 誰も見ちゃいないのに誰も見ちゃいないからこそ、クラシカルな映画のギャング・スターを真似てジッポで火をつけた。

 ああカッコいい。

 ふんっ。

 自業自得に自画自賛のオマケつきだ。

 白鳳院流門下の高弟の人たちには喫煙者が多いものの、残念ながら煙草が吸える場所は広い敷地内でもかなり限られている。

 女性の声。

 どうやら数は少なくとも発言力が強いという構図は、この武士道一直線な白鳳院流総本山でも然程世間一般と変わらないらしい。

 英美さんを急先鋒にして少数の禁煙派が、圧倒的多数の喫煙派を駆逐する勢いだった。

「年々肩身が狭くなってくるな」

 ニコチン・ジャンキーにはなんとも世知辛いね。

 と。

 そうしてぶつぶつ一人呟いたりとか、わかりもしないのに『あれは白鳥座だな』とか勝手に認定しながら、三、四本吸って時間を潰す。

 おかげでどうにかこうにかで、無闇に元気な下半身も静かになってくれた。

 が。

 そんな健気な努力も一瞬で水の泡。

「……ん」

 えっちらおっちら重くなったポリタンクを持ってテントに帰還し、さらに汗が引くまでぼ~~っと涼んでいたら小さな声が聴こえた。

 それなりに俺もこの山篭りの雰囲気に浸っており、普段よりも神経が研ぎ澄まされていたのかもしれない。

 いつもならそれで成功の抑えられてた声も、牡の鼓膜はしっかり捉えてて聞き逃さなかった。

 発信源はテントである。

 外ではない。

 可愛らしくも憂いを含んで掠れている少女の、いまにも泣きそうに思える切ない声は内から聴こえてきた。

 そうやってひとつ気づければ他の事象も次々と自然に見えてくる。

 あれだ。

 確かこういうのをパズル型っていうんだっけか?

 名探偵にでもなった気分だね。

 ……こほんっ。

 ああ、犯人はお前だっ!! とか言いそうな勢いで、俺は勃ち上がると、しかし心情とは打って変わって、テントにはそっと這入った。

 お師匠様ではなく綾乃ちゃんになってしまった少女の、その背中を向けてる小さな身体が“ぴくっ”と震えたのを見逃さない。

 けれどそこにはまるで気づいてないふりをして、俺はテントのジッパーを聴こえるようにわざと音を立てて閉めた。

 夏も近いので掛け布団はタオルケットのみである。

 それでも両手を太腿に挟んで寝ているのは不自然といえば不自然だった。

 薄闇である。

 外は月明かり星明りで意外なほどに視界は良好なのだが、さすがにテントの中は窓枠となる部分が閉められてもいるので暗かった。

 このくらい綾乃ちゃんであればなんでもないだろうが、俺にはぼんやりと輪郭が浮かぶ程度でちと見づらい。

 少女の頭のすぐそばを通って窓枠を開けた。

 お誂えむきである。

 銀色の光がスポットライトのようにして、綾乃ちゃんの身体を美しくも妖しく照らしてくれた。

 視線を感じてなのか睫毛が若干小刻みに“ぴくぴく”としている。

「…………」

 俺は笑みが零れそうになるのを我慢しながら、ゆっくりと向かい合うようにして、少女の顔を真正面から“ぴたり”捉えて添い寝した。

 ああ可愛い。

 綾乃ちゃんはもう睫毛だけでなく、小さな鼻の穴まで“ぴくぴく”させている。

 起きているのは凡人の目から見ても明らかだった。

 だというのにそれでも続ける気らしい。

「綾乃ちゃん」

 呼びかけてはみるが“びくびく”とした気配を強めるだけで、息を潜める小動物のようにして捕食者をやり過ごそうとしている。

 さてはて。

 育ててはやりたいが育たなくてもいいかなという、慎ましく控え目な胸の鼓動は果たしていかばかりであろうか。

 テーブルの下や押入れなど簡単に見つかる場所に隠れる小さな子供。

 とっくにバレバレなのに、必死でかくれんぼを続行してるオニを見つけたような、そんな微笑ましさを誘われたお兄さんの気分になる。

 妹よ。

 俺の綾乃ちゃんに求める脳内設定が、今夜は忙しいことになっているが、ともかくタオルケットに手を突っ込んでオニを捕まえた。

 技術は比べるのもおこがましい天と地だが、単純な腕力なら当たり前の話でオトコの俺に分がある。

「あっ!?」

 折れそうなほど細く柔らかな手首を掴まえると、太腿のロックをものともせず、力任せにタオルケットから引き抜いた。

 ジャージーのゴムが“パチンッ”と腰を叩いた音がする。

 どうやら手の位置はまだ中だったらしい。

 少女の声と雫が跳ねる。

 下手な寝たふりを瞬く間に放棄し、眼を見開いた綾乃ちゃんの視線の先には、夜目にも鮮やかに艶かしくも濡れ光っている指があった。

 ついさっきまでそういう行為をしていただろうことを、ぬめりが如実に生々しく物語っていてひどくエロい。

「…………」

「…………」

 リハーサルでもしていたみたいにして、ぬめる指先を見つめていた二人の視線が自然と、だがお互いを意識しながら上がり混ざり合う。

 ネズミをオン・ターゲットしたネコの気分とはこんな感じだろうか。

 少女の恥じらいと怯えをブレンドして映す綾乃ちゃんの瞳、見つめているだけでも嗜虐欲を刺激されて“ぞくぞく”とする。

 指に鼻孔を近づけて“くんくん”させた。

 あんまりいい趣味とは自分でも思えないのだがついついやってしまう。

 最近になって気づいたが匂いフェチなのかもしれんね。

 いまにも笑みのかたちになる寸前の口元に、シロップの垂れそうな指先を引き寄せると“ぱくっ”と含んだ。

 あまり味らしい味はしない。

 はずなのだが人間の脳というのは“好い”加減なものだ。

 舌の味蕾が無味無臭と正確に判断していても、心が望む味をあっさりと瞬時に再現してみせる。

 ねぶるようにして“ちゅろちゅろ”と舌を蠢かすと、俺の望んでるベストな甘さが口内を満たしていくのがわかった。

 カップアイスの蓋の裏まで意地汚く舐めるように、人差し指のぬめりを取ると中指、そして指の指の股の間まで丁寧に舐め取っていく。

 そうしなが“アイス”というワードで、俺はふとあることを思い出してたりした。

 フェラチオのレクチャーはソフトクリームを例にする場合が多い。

 女の子はこんな気持ちなんだろうかと思うと、洋子や紅葉ちゃんの顔が自然と浮かび、指をしゃぶる舌の動きにも熱が篭ってくる。

 ちゅく・ちゅぶ・ちゅる……。

 少女たちに口唇愛撫してもらったときそのままの音が、綾乃ちゃんの指から奏でられて勃起がさらに硬くなっていった。

 ふやけそうなほど存分にしゃぶってから、“ちゅぽん”という間抜けな音をさせてやっと解放する。

 俺の唾液でさっきとは違う光を、綾乃ちゃんの指は放ってはいたが、そこから醸し出されてるものがエロであることだけは変わらない。

 そしてこれから、もっともっとエロくなる。

「俺と綾乃ちゃんってさ――」

「……あ」

「本当に相性がいいんだね。したいときのタイミングまで一緒なんだから」

 器用なものだった。

 指をしゃぶっている間にしっかり下げておいたズボン。

 もう毎度のことだが自己主張の激しい我が勃起は、パンツの前開きなど物ともせず、綾乃ちゃんに対して節操なくこんにちはしていた。

 握らせる。

 子供みたいに小さな手に自分の手を重ねると、俺は“ゆるゆる”と反応を確認しながら上下に揺すってみた。

「…………」

「…………」

 世の中にはどんなに結果がわかっていても怖いことがある。

 どこか自分を信じ切れてない。

 チキンである。

 されないだろうとわかってはいたが、綾乃ちゃんの抵抗がないことに、俺は何故だか自信満々の顔をしつつも密かに胸を撫で下ろした。

 勃起の輪郭と昂ぶりを確かめさせながら、一人でするはずの淋しい作業を、少女と妙な一体感に包まれて協同作業する。

 尿道が圧迫されたことによって、溜まっていたカウパー腺液が押し出された。

 俺と綾乃ちゃんの先走った欲望が混ざり合う。

 たっぷりな潤滑油の助けも借りている所為なのか、勃起をしごく動きはとても滑らかなものだった。

 最初こそは俺主導だったものの、いまや積極的に動かしているのは綾乃ちゃんで、呼吸は荒くなっており瞳は爛々と輝いてきている。

 エロい傾向だった。

「……俺もしてあげるよ」

 ご返杯は大人の社会の常識であり礼儀でありマナーである。この精神に早めに触れておくのは悪いことではない。

 と。

 パターン化しだしたわけのわからん理屈を並べ終えて、俺は“むあっ”とした熱気に迎えられながら美少女のパンツに手を突っ込んだ。

 さっきまで指戯に耽っていたそこは湿りがまだ残っていて、牡の指先を“ぬるぬる”と滑らせながら肉の裂け目に導いていく。

「はああ……」

 牝の睫毛が快楽に揺れた。

 俺は綾乃ちゃんの顔をすぐそばで見つめながら、少女のしっとりと濡れている秘裂で指先を踊らせる。

 上へ、下へ、右へ、左へ、くるくると円を描くように、くすぐるように、あるいは掻き毟るようにして柔らかな粘膜を好き放題苛めた。

 まあね。

「ん……やッ……あッ……ン……あふッ、……んン……あッ、あッ……やン……あ……あぁン」

 かな~~りわたくし島田誠(27)独身は調子に乗ってるよ。

 でも、

 オトコなら誰でも乗ってるさ。

 まだあどけなく幼さの色濃く残るいたいけな少女が、自分の指の動きに合わせて、まるで操り人形のようにして身体をくねらせている。

「うあッ!?」

 快楽に犯されている者特有の、甲高くも泣きそうな叫び声。

 中指だけで優しく擦ってくれていたのに、突然人差し指まで抉るように挿れて、綾乃ちゃんの身体が可愛らしくネコのように丸まった。

 反射的に“ぎゅっ”と勃起を握られはしたが、走った痛みはすぐに得も言われぬ気持ちよさにすり替わる。

 …………

 もうなんでもありだな。

 こほんっ。

 ま、

 ともかく。

 綾乃ちゃんの指がストッパーになっていなければ、俺の勃起はオトコとして、悲しくなるほど早々に漏らし暴発していたかもしれない。

 そういった小さいが重要なプライドが守られた感謝の意味も篭めて、浅く深く女の子の粘膜にバイブレーションを見舞う。

「あッ……ふぁッ……あ……ああッ……やッ……んふぅ…………」

 上げる嬌声に間断がない。

 さらにサービスにサービスを重ね出血、は『まだ』させる気はなかったが、でも、それもいいんじゃないかというくらいの大サービス。

 女の子の快楽器官である肉の真珠を探り当てると、“ぐりぐり”と指の腹で丹念に執拗にマッサージする。

 ちょいっと摘むと男性器にするみたいにしてしごき、あまりにも刺激に敏感すぎる真珠の苞皮を“つるんっ”と剥きあげた。

「ひゃうッ!?」

 少女の欲情の高さを知らせるような、指先をさっきまでのさらさらとした液体ではなく、粘度の高い蜜が大量に分泌され濡らしていく。

 綾乃ちゃんの身体が勃起を握りながら‘がくがく”と震えていた。

 マラソンをしたみたいに呼吸が荒くなっている。

 まあ、それもそのはずで、長距離の42・195キロを、短距離の100メートルなノリで走ったようなものだ。

「…………」

 俺は周回遅れ。

 この場合はそれで全然いいんだけどね。

 女の子を置き去りで野郎だけゴールしても仕方がないし。このシチュだったらきっと『仕方ない』が嫌いな山本洋子でもそう言うさ。

 などと思いながら脱力状態でよろよろしている綾乃ちゃんを起こし、そのまま寝そべった俺を上下を逆にして跨がせる。

 可愛い小さなお尻を包んでいる、ジャージーとパンツをまとめて引き下ろした。

 ぴちゅっ。

 微かだったがオトコであれば必ず捉えられる音をさせて、妖しく“きらきら”と光るひと筋の蜜糸が淫らにしたたっている。

 おそらくは年齢平均よりも毛の薄いだろう、ふっくりとしている恥丘は、一流シェフ考案の新作スィーツのようで実に美味そうだった。

 秘裂はほんの少しだけだが物欲しそうにして、卑猥な桃色の粘膜の奥を覗かせて口を開いている。

 その上で“ふるふる”と震えている、充血して膨れ上がった女の子の真珠が、とっても食指をそそるワンポイントになっていた。

 お尻の谷間で息づき触れもしないのに“ひくひく”としてる窄まりも、絶妙なアクセントになりそうでいい感じである。

 うん。

 本人も知らなかったのだが、どうやら俺は甘党だったらしいよ。

「あ~~ん」

 隠していたわんぱくぶりをいい歳こいて発揮すると、極上のスィーツに大口を開けてむしゃぶりついた。

 細い腰を引き寄せて顔から突っ込んでいく。

「あはッ!?」

 虚脱していた綾乃ちゃんの顎だけが、新たな快楽を吹き込まれて跳ね上がった。

 ダイエットなど初めから考慮していない、日本人には甘すぎるほど甘い大量のシロップを、俺は“ごくごく”と喉を鳴らして嚥下する。

 貪った。

 そう表現するしかないほど俺は夢中になって、舌先を尖らせ粘膜を蹂躙し、お尻の窄まりを快楽に濡れた指で存分に弄ぶ。

「あッ……ン……ハッ……、はふッ……んンッ……あ……やン」

 オンナは嘘つき。

 一見すると腰を逃がそうとしているようでも、綾乃ちゃんは実際には俺の顔に、秘唇を押しつけていることに気づいているのかどうか。

 意識してそれをやるオンナには急速に冷めそうだが、無意識にそれをやるオンナは素晴らしいと思うね。

 もう使い古されつつある言葉だが萌える。

 人は感動の生き物。

 どうやら綾乃ちゃんのひたむきさに、ほっとかれている勃起も文句はなさそうだった。

 それはフェラチオなどというようなものでは決してなく、喘ぐ少女の唇はときおり掠める程度だがそれだけでも気持ちいい。

 おかげで、

「あ、あ、あん、あん、あ……あひィッ!?」

 秘裂に下品とすら感じる強烈なバキュームを叩き込み、お尻の窄まりへ中指の第二関節まで挿き刺すと少女の快楽回路はショートした。

 同時に俺の勃起もマグマのように“ぐらぐら”していた欲望を噴火させ、白い尾を引きながら綾乃ちゃんの身体に降り注いでいく。

 しつこくしつこく、さらにしつこく、勃起は煮えたぎるマグマを放ち続けた。

 それから。

 俺はスィーツのおかわりを二回、三回と繰り返し、休憩挟んで四回、五回と繰り返し、さすがに深夜になってやっと仲良く就寝である。

 次の日二人が起きたのは太陽も高い昼も間近だった。

 昨夜のカレーの残りを食う。

 練習?

 そんなの絶対無理に決まってるよ。

 身体は昼間までぐうたら寝てたから疲れはなかったが、到底そういう雰囲気になんてなりゃしないぜ。

 …………

 失敗だな、この山篭り。

 結果からいってしまえば普通のキャンプよりひどいかもしれん。

 うん。

 それは認めざるを得ない事実だろう。――まあ、責任は健気なお師匠様ではなく、完全無欠でアホでエロな弟子にあるわけだが。

 しかしそれを認めても言わずにはいられない。

「お師匠様」

「……はい」

 短い帰り道。

 敷地内にある母屋までのその短い帰り道に、俺は是非とも綾乃ちゃんに言っておこうと思った。

「また山篭りしようね」

「……はい」

 その言葉を聞いただけで荷物が軽くなった気がする。

 これも山篭りの成果かもしれないなと、そんなドツかれるようなことを考えつつも、俺の顔は次の山篭りを思ってにやけまくっていた。





[2293] 少女病 二十二話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:26



 興味があるのはよくわかる。

 アニメの異性にしか関心を示してこなかった愛妹が、初めて自宅に連れて来たオトコ、それも両親がいないときに連れて来たオトコだ。

「…………」

「…………」

 値踏みするように“じろじろ”と見られても、お互い様だし不快とは感じない。

 ましてやこっちは女子大生の彼女と比べたところで、ぎりぎり同じ二十代のカテゴリーではあるがおっさんだ。

 さっき聞いたばかりのまどかちゃんの話では、今日は家族は誰もいないということだったが、これは忘れ物でもあったのかもしれない。

 タイミング。

 真っ赤な顔で挙動不審気味に妹がドアを開けたのと、姉が靴を履き終え出て行こうとするのはぴったりだった。

「どうも」

「どうも」

 それこそ漫画みたいに“ぴきんっ”と音をさせて固まる妹を尻目に、軽やかに手を上げて初対面の挨拶をする姉と俺。

「御堂まどかの姉のひとみです。どうぞよろしくデスデス」

「島田誠です。こちらこそ、どうぞよろぴくお願いします」

 もっともそれなりに二人ともパニクッてたようで、あとから冷静になって考えてみると、なんだかトンチンカンな挨拶を交わしていた。

 ちなみに、

 本人がこうして丁寧に自己申告をしてくれなければ、ぱっと見だけで彼女を、まどかちゃんの姉と断定するのは非常に難しい。

 なんせ背の低い童顔のメガネっ子だった。

 ヘアースタイルもボーイッシュなショートで、まどかちゃんの流儀に合わせるなら、『ぼくねぇ』とか言ってもらいたいタイプである。

 けれどリアルでぼくっ子が居たら、それはそれで大概引くと思うけどな。

「お、お、おお、お姉ちゃ、――お姉さん。た、確か、きょ、今日は、よ、用事があって、い、家に、いい、居ないんじゃなかったの?」

「いや~~、虫の知らせというか風の噂というか、お姉ちゃん猛烈な胸騒ぎに襲われちゃってさぁ」

「……胸騒ぎって」

「唐突に思い出したんだけど、昔、あんたの部屋に足繁く通っていた、え~~っと、光ちゃんだったけ? あの娘いまどうしてるかな?」

「都立を受験したって聞いてるけど」

「あんたたちっててっきり、あんまり世間的にスタンダードじゃない、そういう関係なんだろうと思ってたのよ」

「そ、そういう関係って、ど、どういう関係なのよ?」

「良かった良かった。安心安心。あたしは応援してあげるけど、世間様の目はまだまだ厳しいからね。――カノジョじゃなかったんだ?」

「そんなわけないでしょっ!! 光ちゃんとあたしの関係は純粋なのっ!!」

「うん? BはいいのにGは駄目なの? ノーマルな属性のあたしには、そんなに変わんない趣味だと思うけどなぁ」

「まったく違うものにキマッてるでしょっ!!」

「そうかなぁ? う~~ん。ま、そこはともかくとして――」

 ああ。

 姉妹というか兄弟の掛け合いというのは、やっぱりこういうのがベタだったりするのかな。

 全然羨ましいとは思わないけれど、微妙には憧れるかもしれんね。

「いい歳してBLにハマッていたオタクな妹のまどかが、大人な階段を上るその場面に、姉として立ち会ってみたいというか」

「立ち会わなくていいのっ!!」

「一度体験しちゃえば、あとは回数を重ねていくだけだけど、何事も最初が肝心だから、姉としてしなくていい心配までしちゃうわけよ」

「だ、だから、そういう心配いらないんだってばっ!!」

「…………」

 いらないのかぁ。

 期待していた肩はまどかちゃんの後ろで、こっそり密かに下げたつもりだったのだが、どうやらしっかりと見られたっぽい。

 これがシスター・アイ

「でもオトコはヴァージンってだけで、理性のリミッター外れるんだよ? ケダモノって言葉はきっとこのときのためにある言葉だぁね」

 言いつつひとみさんは携帯のストラップを“くるくる”と、指先で器用に複雑に回しながら俺を窺っている。

 なんかその眼鏡の奥の瞳がオモチャで遊ぶ子供のように“にやにや”していた。

 兄や姉が弟や妹にする特有のやつである。

 俺も含まれそうで怖い。

 年下なのに自然と『ちゃん』ではなく『さん』をつけたくなる。

 この力関係はお互いが成人するまで、ほとんどのご家庭で変わらない。そこで見直しがないようならまずは一生変わらない関係だ。

「余計なお世話なのっ!! 二人っきりだからってコーチがそんなことするはず、…………ないでしょっ!!」

 うん。

 まどかちゃんは声のボリュームだけは最高潮にでかかったけど、歯切れがなんとも悪く最後はほとんど逆ギレと大差ない状態である。

 要するにこの娘もちゃ~~んと、その辺りを意識してくれてるんだなぁ。

 ここまで堪えていたが思わずでにやけてしまう。

「…………」

「…………」

 同種の笑みを浮かべているひとみさんと、眼と眼がばっちし引き寄せられるように合ってしまった。

 なんだかこの人とは上手くやっていけそうな気がする。

 アイ・コンタクトはほんの一瞬ではあったが、それだけで充分なほど深く分かり合えた。――かもしれないようなしれなくないような。

「優しくしてね」

「もちろんだよ」

 まどかちゃんを押し退けて(人間の力って体格だけじゃない証拠だ)ひとみさんは小さな手を差し出してくる。

 俺はその小さな手を何の気もなしに、やんわりと握ってシェイク・ハンドした。

「あ」

 なのですぐに気づく。

 ビニールシートに包まれている丸い輪っかみたいなアレな感触に、俺だって大人なんだし使用経験もあるしオトコな責任とか考えるし。

 感動。

 それは大切だがその場のノリだけでヤッてはいけない。

 昨今はデキちゃった婚などとさらりと言う。

 しかし世間は大きな声で言わないだけで、それを二人の愛情の結晶でなく、欲望の成れの果てとしてしか見てくれないのが現実だ。

 ダイレクトな接触がそりゃいいにキマッているが、ラバーなワン・クッションはやはりどうしても必要である。

 ナマはパパと呼ばれる覚悟ができてからでも遅くはないはずだ。

 ご利用は計画的にである。

「優しくしてね」

「していいの?」

「……何の話?」

「オタクな趣味の妹はあっち行ってな」

「アダルトなトークだから黙っててね」

 固く固く握手を交わしながら、空いている方の手で俺とひとみさんは、会話について来れないまどかちゃんを強引に隅に押しやる。

 リハなしのわりには悪くないコンビネーションだった。

 相性はともかく馬は合う。

 まあ、隅といっても豪邸というわけではないので、物理的な距離では近いのだが、精神的には俺とひとみさんは遥か遠くで話していた。

 無論、

「まったくなんなのよ……、初めて会ったのに、妙に仲良くしたりして」

 何度も言うがあくまでその距離は精神的なものなので、まどかちゃんの小さな呟きも聞き逃すことはない。

 しかし、

 俺とひとみさんは零れそうになる笑みを無理やり引っ込めると、真面目な顔を作る、――のに失敗してエロさ爆発でにやけてしまった。

 だらしない顔ではあるのだが、もしもオンナに生まれ変わるのなら、俺はひとみさんみたいなこういう顔で笑いたいね。

「じゃ、頑張って」

「うん。頑張るよ」

 ゴムの輪っかを有り難くさり気なく受け取る。

 最後に親指を“びっ”と立てると、ひとみさんは颯爽と男前に去っていった。

「なにを頑張るのよ?」

「ナニを頑張ろうかと」

「はあ?」

 まどかちゃんはまだクエスチョンを投げかけてはくるが、それには気づかないふりをして、俺はそそくさと靴を脱ぐと三和土を上がる。

 ラインを破ってしまおうか。

 そうあっさり考えたりする自分が嫌いだが結構好きかもしれない。

 どうしてもどうあってもしようとは思ってないが、そういう雰囲気ならばしてもいいのでは、とレギュレーションに修正が計られてた。

 …………

 はぁ~~。

 まったくこのオトコには毎度毎度で芯がない。

 甘いものを食べ過ぎた抜けかけの、虫歯みたいに“ぐらんぐらん”だった。

 隣りに住んでいるツンデレな幼馴染と、巨乳でロリな義理の妹に、同時に告白された高二の夏くらい揺れている。

 無口でクールな保護欲くすぐる文学少女や、高ビーだけど本当は淋しがりやなお嬢様でも可だ。

 ルール。

 それは破るためにあるという人がいるが、守れない人間のいいわけにしか聞こえないのは、なにも俺だけじゃないだろう。

 あれは守るためにあるんです。

「お姉ちゃんとなにを頑張るのか知らないけど、わたしのサポートもしっかり頑張ってよ、コーチ」

「オーケー」

 そうだそうだ。

 間髪入れずに親指“びっ”と立てて応えたものの、今日はそもそも何のために呼ばれたのか、このときになってやっと俺は思い出した。

 テスト期間中まで書いていたまどかちゃんの同人活動(そんなだから追試なんだと思うが)を今日は手伝いに来たのである。

 ネコの手も借りたいという状態らしい。

 が。

 なのにあらゆることで、高スペック持ちの洋子の手を借りたりしないのには、もちろんでちゃんとしたわけがある。

 修羅場も山場らしく一番苦しいところにどうも差し掛かっているようだが、内容が内容なのでさすがに友だちには見せられないようだ。

 ここまでいってしまえば誰でもわかる話だが、平たくいってしまえば所謂エロ同人なわけである。

 あんまり友だちに性癖を知られたいという人はいないはずだ。

 花も恥らう女子高生なら尚更である。

 で。

 まどかちゃんが尊敬するリヒターさんが何気にバラさなければ、更衣室の彼に手伝ってもらえばと言わなければ俺も今日は来ていない。

 このままのペースでは確実にオトしそうなのは、尊敬する彼女のサークルにゲストで呼ばれたイラストのようだった。

 おそらく、

 リヒターさんからの依頼はまどかちゃんにとって何にも変えられない名誉である。

 普通だったらできないものはできないで、誠心誠意『ごめんなさい』だが、更衣室ぐちゃぐちゃにしちゃったよ事件の負い目もあった。

 と。

 まあ、

 そうなるとである。

 島田誠(27)も御堂まどか(17)の立派な共犯者、というよりもむしろ、完璧な主犯格なので彼女の提案には否も応もない。

 幸いにも俺には学生時代に消しゴム掛けのバイト経験があり、仕事の関係もあってまどかちゃんよりはパソコンも使える。

 漫画家さんのアシスタント、ADとしての能力は一通り備えていた。

「こっちよ」

 今日も今日とてゴスだかピンクだかの、ド派手な服を着ているまどかちゃんの後を追い、玄関からすぐの階段をとてとてと登っていく。

 まるっこい字体で書かれたネームプレート。

 当たり前だが『まどかのおへや』と書かれているそのドアが、残念ながらファッションのセンスがあんましない少女の部屋なのだろう。

「…………」

 ここまで来ておいてというか、この期に及んでというか、年甲斐もなく今更ではあるのだがちょっと緊張してきた。

 オンナの部屋に初めて這入るときというのは、いつになってもいくつになっても構えてしまう。

 両親という最大の難関を早々にクリアしてしまったためなのか、自然とリラックスしちゃってたけどドキドキイベントは終わってない。

「飲み物でも持ってくるわ」

「お構いなく」

「部屋の中のものは絶~~対に触らないでねっ!! 特にそこにある本棚とかは絶対に駄目だからねっ!!」

「え~~っと、それは触ってくれという、前ふりだったり?」

「……さ・わ・ん・な・い・で・ね。とにかくすぐ戻るからテレビでも観ているか、う~~ん、そこの本棚なら見てもいいから待ってて」

「あいあい」

「あいは一回っ!!」

 言ってまどかちゃんは若干俺を疑いの眼で、“ちらちら”と何度も見つつ、お客に出す飲み物を取りに足早に階段を下りていく。

 残された俺は絨毯に腰を下ろすと、部屋をぐるりと改めて見回した。

 ところどころ真新しいというか綺麗というか、壁にそういうぽっかりした部分があったりする。

 正方形の四角いスペースだ。

 きっとそこには好きなアニメのキャラクターのポスターでも貼ってあったんだろう。

「いいのに」

 これからエロ同人のお手伝いをしようという相手に、アニメのポスターが貼ってあるのを見られるくらいは今更なんでもないのでは?

 と。

 そんな風に考えてしまう俺はまだまだで、乙女心というか少女心というかが、おそらくわかってはいないんだろうね。

 他にもあっちこっちに着工は昨晩ではないかと、推理したくなる突貫の大掃除な跡が見受けられた。

 如何にも小学生の頃から使っているっぽい学習机の上は、ものは多いわりにびっしりと、規則正しく整理され過ぎているのが嘘っぽい。

 逆に、

 普段はあの辺ごちゃごちゃなんだろうというのがひと目でわかる。

 まあ、でも。

 ファンシーなキャラもののベッドを、我が物顔で可愛いヌイグルミ群が占拠して、小さいけれど雑多な王国を築いてはいた。

 御堂家の次女が寝起きしている六畳間には、明らかに許容量を超えている物が溢れている。

 しかしさすがに食べ物や洗濯物とかが散乱する、部屋全体がゴミ箱みたいな、ワイルドを勘違いした男の一人暮らしの汚らしさはない。

 不思議といい匂いがする。

 片付け忘れたのか部屋の隅っこにファブリーズがあるが、それだけでこんなにドキドキさせる香りは出せないだろう。

 パンジーの鉢とか淡いピンクのカーテンとか壁紙とか、女の子じゃなかったらまず有り得ないもんな。

「どれ」

 俺は少女の少女らしい部屋に感動している、その激情をそのままにして、NGゾーンにイキたいのを堪えて絨毯にうつ伏せになる。

 まどかちゃんのあの『さ・わ・ん・な・い・で・ね』発言はフェイクとみた。

 眼を離すと熱心にガサ入れを開始しそうな俺の注目を、意図的に集めるためのコメントだったんだろうがそうはいかんね。

「これか?」

 案の定というかどういうかベッドの下には無造作に、俺の胸をドキドキさせてくれそうなブツがあった。

 本が二、三冊積んである。

「…………」

 けれどここで俺は決して焦ったりはせずに、一度意識を鼓膜に集中させて耳を澄ませた。

 階段を上がってくるまどかちゃんの足音はない。

 手を伸ばす。

 俺はなにをしているんだろうと、ほんの一瞬だけ冷静になりかけたが、またほんの一瞬でエロい衝動に引き戻されて手を伸ばす。

 期待に無闇なほどハードル高く胸膨らませて、本を“えいやっ”とベッドの闇から明るい日の下に引きずり出した。

 わくわくと。

 が。

「…………」

 残念ながらそれは俺が邪に妄想してたような、毎夜皆が寝静まるのを待って、少女がこっそり思春期のリピドーを慰めるものではない。

 背表紙を見ただけでもわかる、オーソドックスでポピュラーな作りの、どこでもあるなんのことはないアルバムだった。

「……ふむ」

 勝手にしといて非常になんではあるが、予想というか妄想は、それはもう完膚なきまでに裏切られている。

 しかし、だ。

 期待まで裏切られているかというとそうでもない。

 アルバムというのはある意味では、なによりも雄弁に物語ってくれる人生の履歴書だ。

 少女チックに言えば思い出の宝箱かね。

 見れば言葉以上にその人のことががわかる場合がある場合もある。――半分は覗き趣味を誤魔化すためだが残り半分は本音だ。

 ページを開く。

「お?」

 中学時代のものだろうか。

 まだ着ている制服がブレザーではなくセーラーだからそれとわかるが、このときからまどかちゃんの容姿は大人っぽかったようである。

 というよりも、このときの方がいまよりも、写真越しの印象ではあったが、いまよりも大人っぽい雰囲気を持っている気がした。

 微笑んでいてもどこか隙がないというか、なんだか随分と張り詰めているような感じもする。

 人は簡単に変われるという説と、簡単には変われないという説が、相譲らずで同じくらいの説得力で存在するがどっちが正解だろうか。

 まあ、

「二択で答えが出る問題でもないけどな」

 どこかにいる『見た目は子供、中身は大人』とのたまう名探偵は『真実は常にひとつ』とも毎週断言している。

 が。

 んなことを恥ずかしげもなく言い切れてしまう段階で、あの子は見た目も中身もアダルトではなく未成年なチルドレンの証明だ。

 盗んだバイクで走った次の日は、親と一緒に警察に行く身分である。

 数字は数字でしかないが、ティーンで大人って、世の中ナメとったらあかんぜよっ!!

 と。

 そうやってわかってないのにわかったようなことを、見た目でも中身でも独りごちって次のページをめくる。

 …………

 そして眼を奪われた。

 なにかまどかちゃんはスポーツをやっていたろうと思っていたが、なるほど予想は裏切っても期待は裏切らない少女である。

 どうやら趣味というレベルではなさそうだった。

 それは写真の中で演技している凛とした、まどかちゃんの表情が教えてくれている。

「新体操、かな?」

 それがたとえどんなスポーツであれ、真摯に取り組んでいるアスリートに失礼な話ではあるが、白いレオタードが穢れた眼には眩しい。

 俺にはなに倒立というのかもよくはわからんが、平均台の上でまどかちゃんは、両足を開いてバランスを取り逆立ちをしていた。

 ため息を吐くほど美しい。

 採点方式の競技というのは個々人の主観というか、好みで勝敗が分かれるが、美しいかそうでないかには知識も説明も要らないだろう。

 さらにそれがエロいかどうかにも知識や説明は要らない。

 カメラマンはどこか狙っていると思う。

 芸術性も採点の基準になる競技では、色気というかエロスを、下品にならないよう感じさせるかどうかも重要だ。

 うん。

 おっさんのリピドーに写真の少女は“びしばし”と訴えかけてくるな。

 そいでもって、

「……器械体操よ」

 夢中で中学生のレオタード姿を追っていた俺が、お盆を持って立っている少女に、気づかなかったのも知識や説明は要らないだろうね。

 サイレント・ウォークは少女たちの所持している、固有のスキルなんじゃないかと思う今日この頃だった。

「よく見つけたわね」

 言いつつまどかちゃんはお盆を机に置き、ジト目で俺を睨んで、というほど鋭くはないが、詰問するような視線を送ってくる。

 当たり前の話だった。

 これが隠してあったのか仕舞ってあったのか、あるいは放置してあっただけかはわからんけれど、引っ張り出すのはマナー違反である。

 さらに、

「いや~~寝っ転がったらさ、偶然これが眼についちゃって」

 こうやってセコく嘘をついているあたりが、オトコとしても人としても、ちょっとどうかと思うくらい最低だった。

 けれど、

「いいけどさ」

 まどかちゃんは俺に特に怒る様子もなく、腰に手を当ててアルバムを覗き込んでくる。

 一瞬だけ“ちらっ”と『さ・わ・ん・な・い・で・ね』の本棚を見た。

 表情だけで“よしよし”と頷いてるのがわかる。――どうも考えすぎてたというか、惜しいことに発言はフェイクではなかったらしい。

 残念。

 少女のネタを見る折角のチャンスを無駄にしてしまった。

「これでも昔はオリンピックの強化選手候補、の候補になるくらいには名の通った選手だったのよ」

「へ~~」

「まあ、さすがにポジションが微妙すぎて、自慢する気にはならないけどね」

「そんなことはないだろう……。たとえ候補の候補だったとしても、一般人とは見てる世界感じてる世界が全然違うんじゃない」

「そうかしら?」

「絶対そうだよ」

 それこそ昔だが甲子園出場校チームの万年補欠とキャッチボールをしたことがある。

 加減してもらっても返ってくるボールが段違いだ。

 速いとか遅いとかではなく、受けたボールにはずっしり感がある。

 想いは重い。

 巧いことを言おうとして失敗した感は否めないが、上を目指してた人間とそうでない人間には、きっと違いがあるのだろうと俺は思う。

 まして日本代表が見えていた位置まで上ったことがあるなら、それはもう充分以上に自慢していいはずの実績だ。

 ええ。

 金メダルを狙っていたというのならば、あの神々しい美しさとエロさも頷けるというものです。

「まどかちゃんのしてきたことは、もっとガンガン自慢していいことだ」

「……そう。コーチがそういうなら、コーチがそういってくれるなら、これからは少しだけ、ほんの少しだけ自慢することにするわ」

「イッパイしていいのに」

「できたらそうするわ。さ、それじゃもう時間に余裕がないんだし、いつまでもアルバムを見てないで、ちゃっちゃと始めちゃいましょ」

「おう」

 元気よく応えたがもっともっと眺めていたい。

 満足そうに“にへら~~”とだらしなく微笑んだ顔を、明らかに頑張って“きりり”と、引き締めてる少女は堪らなく可愛らしかった。

 で。

 それから四時間。

 自慢するわけではないが俺の見事にナイスなサポートもあって、なかなかここまではいい進行状態できていたのだが、

「う~~ん」

 まどか先生は最後のラスト一枚は唸ったっきりで、たまに書き殴っては唸ったっきりで、筆がまったくといっていいほどに進んでない。

 後ろからどれどれと覗こうとすると『気が散るから見ないでっ!!』、と怒鳴られしまうので俺はまたアルバムに魅入ってた。

「…………」

 借りられねぇかなぁ、これ。

 レオタードってこんなものだろうというイメージはあるが、実際こんなじっくり見たことはなかったので新鮮なインパクトなのである。

 こうして見るとレオタードってエロいんだなぁ。

 この色を求めるのは、おっさんになった証明なんだろうけども、清純派な象徴の白ってのがまたいいよね。

 青とか緑とか赤とか黒も、無論捨てがたいが、どんな色にも染まる白は再評価だな、無性に汚したくなるというかエロに直結するのだ。

「あ~~ん、もぅ~~、駄目だぁ!!」

「そうかなぁ、って、ああ、イラストの話か。んで、一体なにがどう駄目なのさ?」

「……リヒターさんに求められているものが、こんな風に書いてってリクエストされてたものが、いまんとこ一枚も書けてないのよ」

「うん?」

 背中を向けたまま手だけ“にゅっ”と出して、まどかちゃんは大事そうにして一枚のイラストを見せてくれる。

 手に取るまでもなく『なるほど』と、俺はひと目見ただけで合点が言った。

 その画は単純にまどかちゃんより技術が高いとか、書いてる人が慣れてるというのもあるが、そういうのを抜きにしても伝わってくる。

 一言で表すならこう。

 んまぁ~~、エロいことエロいことっ!!

 技術がどう経験がどうよりもまず、書いている人の滾り迸る熱い激情を肌で感じさせる画だった。

「これさぁ」

「ええ。リヒターさんが貸してくれたサンプル・イラストよ」

「……どうりでねぇ」

 などとわかったようなコメントはしてみたものの、俺はリヒターさんのイラストを見たことなど一度たりともない。

 が。

 まどかちゃんが尊敬するだけあって、このぐらいは書くだろうという、ある意味予想の範囲内ではあったがやはりさすがの出来栄え。

 そして、

 改めてまどかちゃんの書いたイラストを見てみると、似せようとする努力がところどころに窺えてた。

「リヒターさんの画じゃハードルが高すぎたわ」

「う~~ん、いや~~、そういうことじゃ、これはないんじゃねぇのかな?」

「じゃあなによ?」

 おでこに疲れを滲ませつつ、不機嫌に口を尖らせながら、まどかちゃんは椅子を傾けて、俺に拗ねたような視線を送ってくる。

 くっそう。

 少女って生き物はどんな風にしてても反則で可愛いよなぁ。

「あくまで素人が思うになんだけど、画が上手いかどうかだけだったらさ、リヒターさんよりも上手い人はいくらでもいると思うんだ」

「……そうかしら」

 お?

 尊敬している人を馬鹿にされたとでも思ったのか、少女はおでこの赤を濃くして、ちょっとだけ“むっ”とした顔をしている。

 わかりやすい娘だ。

 いいね。

 なんかいいね。

「けどなんか篭ってるものが違うというか、このイラストには技術だけじゃでない色気、――ぶっちゃけちゃうとエロがあるんだよね」

 言葉を取り繕って『色気』と最初は表現したが、ここは誤魔化すところではないので『エロ』と言い切った。

 それに『色気』と『エロ』は微妙だが別の物だしな。

「ラッセンっていう画家いるじゃん。あのやたらとイルカを描きたがる、インチキなサーファー崩れみたいな奴」

「いるわねぇ」

「あいつが全裸のオンナを流行の技術や流行の構図で描くよりも、ダ・ヴィンチが描いたちょとしか肌を見せないモナリザの方がエロい」

「……はぁ」

 少女が若干ついてきていない気配を感じるが、俺は構わずで持論をこの際とばかりにぶちまける。

 というかこんなこと考えてたんだと、自分の言葉でしゃべってはいるのだが、自分の言葉に驚いている自分もいたりした。

 他人だけでなく自分自身だってわかるのは、半分が精いっぱいなのかもしれない。

 …………

 ってか語るなら整理して語れよ。

「それは何故かといえば画家というより人間の本質が違うからだな。ラッセンは商売だろうけどダ・ヴィンチは趣味で描いてるね」

「……うん」

「ラッセンはああ見えて社会の歯車にも成れるまともな人間だろうけど、ダ・ヴィンチは絶対そんなことができないド変態に決まってる」

 ああ。

 言っとくけどまるでわかんないです。

 歴史的な事実とか一切。

 ラッセンがマイケルも逃げ出すガチなショタコンの可能性もあるし、ダ・ヴィンチがみんなから慕われてた紳士な可能性も大いにある。

 それでも俺が彼らの絵画から感じる印象は揺らぐことなく、ファンキーを気取った常識人と賢者の空気漂うド変態だった。

 というわけで、

「まどかちゃんのは綺麗にまとまってはいるけどエロくないんだよ。リヒターさんのイラストはところどころ雑な部分があるけどエロい」

 論点が大幅にズレかけているので元に戻そう。

「同人もお金が発生してるんだから、商売っ気がゼロってわけにはいかないだろうけど――」

 おでこな少女は“やっと本題になったか”とでもいいたそうな顔をした。

 さっきまでは聞いてはいても右から左に、ムーディに受け流していたのはありありだったのである。

 結構現金だ。

 それが少女の魅力だけれど。

「プロじゃないんだから自分の妄想が第一でいいと思うよ。もっとこう上半身じゃなくて下半身でエロは考えないと駄目じゃないかなぁ」

「か、下半身って」

 まどかちゃんの赤色がまた一段“ぼっ”と音をさせつつ鮮やかに濃さを増した。

 見逃さない。

 編集者のようにしてまどかちゃんのイラストと、リヒターさんのイラストを見比べてたが、俺がマークしていたのは少女の視線である。

 なんだかえらそうにエロを語るオトコが、“びんびん”に勃起しているのを、少女が認めたのを見逃してはいなかった。

「今日この家で俺が一番勃ったのは、やっぱりこれなんだよね」

 しかめっ面で二枚の対照的なイラストをテーブルに置くと、俺は飽きもせずに鑑賞していたアルバムの一枚を“トントン”と指し示す。

 わざわざ言うまでもなく中学生時代の、色気たっぷりにエロいレオタードなまどかちゃんだ。

「…………」

「…………」

「……よし」

「……え?」

 変な空気を突然作られ呑まれたのか、指先を眺めたまま黙り込むまどかちゃんを尻目に、俺はテーブルを壁際に“ずずぃ”と押しやる。

 とりあえずスペースを確保。

 飛んだり跳ねたりはしないので、まあ、これでも演技ができないことはあるまい。

 オーケーだ。

 充分以上に少女のエロさを発揮できるだろう。

「……よし」

「……え?」

「レオタードになってみよう」

「……え?」

 少女のキョドッてる瞳を逸らすことなく見つめながら、根拠はないが力強く頷く俺に、まどかちゃんは三回目の間抜けな返事を返した。





[2293] 少女病 二十三話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:28



「手、どけろ」

 羞恥心を失ったわけではない。

 どころかまどかちゃんは身を灼くようにしながら、そうであるのが容易にわかるほど、肌という肌を赤く染めながら手をどけていく。

 …………

 堪らんね。

 おっさんの二年や三年とは比較にならない。

 少女の成長とは早いものだ。

 ましてそれが恋しただけ育つ思春期というのならば尚のことである。

 そのサイズが中学生時代と変化しているのは当然で、バストやらヒップやらが“パッツンパッツン”になっていた。
 
 もともと伸縮性のある素材なのだろうが、かなりカットは際どいことになっている。

 油断大敵。

 普段からヘアーの処理に配慮してない人は、コスプレ趣味でもない人は、脚と脚の付け根の辺りは相当にえらいことになってたはずだ。

 胸には可憐なポッチが浮き出てる。

 チャームポイントもバッチリ赤くしている少女は、俺にも負けないくらい興奮しているのかもしれない。

 困ったものだ。

 まだ触れてもないというのに、まったくけしからんポッチだね。

「…………」

 苛めちゃるからな。

 喉が思わず鳴りそうになるのを寸でで抑えながら、俺は固く熱く密かに心の深い部分で誓った。

 突起が“ぷくっ”と誤魔化しようもなく膨らんでいる。

 白い生地ということもあったし、アンダーを下に付けていないというのもあって、うっすらとピンクの色まで透けて見えてる気がした。

 うむ。

 ここまでは目論見どおりで、少女のボディは圧倒的にエロいな。

 窮屈なレオタードに押し込められたおっぱいは、みっちりと肉感たっぷりで、牡の獣性を煽らずにはいられないほど扇情的である。

 股間を覆っている布地もあまりその役目を果たしておらず、恥丘の丸みどころか秘裂のシルエットまでも見せつけていた。

 ひどく生々しくて誘うようにエロい。

 脳への伝達を蔑ろにして、独断の閃光でひた走った電気信号に従うと、俺は“ごくり”と大きく喉仏を上下させながら唾を呑み込んだ。

「よし」

 手を“ぱんっ”と軽く叩く。

 設定では練習に身の入ってない練習生を、面倒見のいいコーチ(実は悪い人)が、マンツーマンで深夜の居残り特訓するというものだ。

 萌える。

 なんだか昭和のロマンポルノみたいな、安さ爆発な設定の気もしなくはないが、この辺りは変に捻ってみたところで仕方がない。

 妙に複雑怪奇な燃える設定よりも、エロには燃えないけど萌えるわかり易さである。

「御堂」

「……はい」

 自分で提案しておいてとてつもなくアレなのだが、まどかちゃんはこんな馬鹿なことによく納得してくれたものだ。

 エロを実施で説明するにはコレが一番。

 そんな一番頭の悪そうなことを本気の真剣な目で力説した俺に、まどかちゃんは拍子抜けするほどに結構あっさりとノッてくれている。

「足腰立たなくなるまで、――今日はシゴいてやるからな」

 自分でも演技なのかどうなのか、判断できないくらいとても自然に、エロくいやらしく“にやり”と少女に微笑んでみせた。

 オーケー。

 まどかちゃんは強気に“きっ”と睨んでから、しかしすぐに悔しそうに怯えたようにして眼を逸らす。

「…………」

 うぉおおっ!!

 ぞくぞくしてきたぜ。

 弱みを握られ脅迫されているという設定も追加したい。

 どうやらこの女優さんに細かい演技指導なんぞは要らないようである。

 世の中のニーズはギャップだ。

 まあ、これが世の中全体の要求かというと、それは横暴なのかもしれないが、少なくとも俺のニーズは昔っからわりかしそうである。

 それを教えなくてもわかってるこの娘は将来有望だ。

「どんなスポーツもこれを怠ると大抵怪我をする。なのでまずは準備運動の柔軟からだ。わかるな、御堂?」

「……はい」

「よし。それじゃそこで、前屈をしてみろ。あの屈んで床に指をくっつけるやつ。くっつけたら俺がいいっていうまで動くな」

「……くっ」

 反抗するような表情を一瞬だけ作ってから、けれどまどかちゃんは逆らうことなく、すらりと背の高い身体をゆっくり折り曲げていく。

 お見事。

 例題は自分基準だったので指先だったが、まどかちゃんはぴったりと手のひらである。

 もしこれを俺がやるなら、これをやる準備運動が必要だが、少女の身体は勢いに頼ることもなく、柔軟性だけで余裕の床タッチだった。

 そして、

「…………」

 コーチの言いつけを守って、練習生の御堂まどかは静止する。

 その素直さに俺は“うんうん”と満足気に、もちろん、エロくいやらしい笑みを満面に浮かべて頷いた。

 まどかちゃんの表情はウェーブのかかった髪の毛が、“ふぁさ”と隠してしまったので窺うことはできないが想像するのは難しくない。

 オジギしてるような恰好の少女の周りを、勃起を“びんびん”にして、“にやにや”としながら“ぐるぐる”と廻ってみる。

 360度。

 レオタードに包まれた少女の肢体を、舐めるようにしてじっくり観察した。

 ひたりと背後に立つ。

 そこには引き伸ばされ極薄になった白い布地に包まれてる、けれどそれよりも白い、そしてうっすら朱が差したお尻が掲げられている。

 サイズの合っていないレオタードは、谷間に喰い込んでいて、少しだけだがTバッグ気味になっていた。

 さすが体操選手で腿は隙間なく合わされているが、それでも粘着質に絡みつく、俺の“ぎらぎら”な眼からソコを隠すことはできない。

 まどかちゃんは下付きというやつなので、秘唇のフォルムはさらに淫らに、エロくいやらしく卑猥になって強調されている。

「お前は体操も一流だが、ここはもっと一流かもしれんな」

 舌なめずりをして手を伸ばした。

 静止は体操の基本なスキルであると同時に、演技を美しく魅せるための、審判員への最後のアピール手段で最終奥義といってもいい。

 オリンピックを目指すような、まどかちゃんほどの選手が、そんな必須のスキルを持ってないわけもなかった。

 が。

「……んっ」

 知らず知らず無意識に汗ばんでいた俺の手が、しっとりとしてるのに熱を帯びてるお尻に触れると、微かに声まで漏らし身体を震わす。

 これが体操競技だったなら明らかなマイナスポイントだ。

「はっ、ふっ、んっ」

 けれどここでは、この場面では、これしかない、ないに決まってる、と言い切っちゃうくらいプラスなポイントである。

 撫でる手にも知らず知らず無意識に、嗜虐の熱が入ろうというものだった。

 右の尻たぶを鷲づかむ。

「んッ!?」

 力をそんなに入れたりはしなかったのだが、優しく“さわさわ”と撫でられているところに、突然だったのでびっくりしたのだろう。

 まどかちゃんは鼻にかかった声を上げて、身体の反射と乙女の羞恥心に後押しされて、“カクンッ”と膝を折ろうとしていた。

「おっと?」

「うぁ!?」

 だから俺は素早く支えてやる。

 コーチとして選手のサポートは当たり前のことだ。

 よれてTバッグ気味になっているレオタードを咄嗟に引っつかむと、オトコの腕力に任せて“ぐいっ”とパワフルに真上に持ち上げた。

 レオタードは一本の紐みたいになって、Tバッグどころかふんどしに化けると、少女を残酷に辱めながら吊り上げている。

「どうした、御堂? まさかお前、準備運動で、もうバテちまったんじゃないだろうな?」

 それがドーパミンなのかアドレナリンなのか、あるいはエンドルフィンなのかはちょいとわからない。

 わからないがこういうときオトコは、脳内麻薬でドーピングしている。

 普段の俺の腕力なら絶対にこんなことはできない。

 小さな子供ならまだしもで、女性としてはかなり背の高い、大人な身体のまどかちゃんを、片手で持ち上げるなぞ到底無理な話だった。

 しかし、

 いまの俺はジャック・ハンマー。明日を夢見ず今日だけに生きるオトコだ。

「ちょ、んンッ、あ、ま、待って、あンッ」

 右手一本のみでまどかちゃんを吊り上げながら、左手は布地と布地の間に滑り込ませ、若い肌を愉しみながら唇をお尻に寄せていく。

 ほったらかしになっていた左の尻たぶにキスをすると、それがトドメとなってまどかちゃんは膝を“カクンッ”と折った。

 結果レオタードが一層深く喰い込む。

 まどかちゃんはお尻だけを高く俺に掲げながら、土下座でもするような恰好になっていた。

 無論、

 許さない。

 舌を“ぐねぐね”と蠢かせて会陰部を目指しながら、レオタードを“くいっくいっ”と揺する手も緩めることはなかった。

 左手も太腿をねちっこく撫でながら、しっかりと仕事もしていて、ローリングしようとする少女の動きを阻止。

 脚と脚の間に俺が身体をねじ込んでいるので、土下座からでんぐり返しにシフトしようとしているまどかちゃんはガニ股になっている。

 いいね。

 エロは綺麗でなくてもいい。エロければそれでオーケー。

 このあられもないを通り越して、もう下品すれすれのこのポーズに、俺の牡の本能も爆発すれすれ、だったが同時に冷静でもあった。

 まだまだお愉しみがこれからなのは、それこそ牡の本能が教えてくれている。

「あふぁ!?」

 レオタードの布地越しに“こんもり”した秘唇をむしゃぶり、舌先を尖らせて女の子の粘膜を存分に蹂躙する快感に酔った。

 俺の舌先が抉るたびにソコは湿りっ気を増していき、布地にお漏らしのような恥ずかしい染みを広げていく。

 最初は“ザラザラ”していた布地の感触が、ぬめりのある水分を大量に含んだおかげで、“ぬちゃぬちゃ”に変わるのは結構早かった。

「ひゃう!?」

 あまりに可憐であまりに敏感すぎる快楽神経の塊に、俺は真空状態になるほど激しく吸い込み強制的にエクスタシーを送り込む。

 少女は“ぶるぶる”と身体を震わせてあっけなく絶頂に達した。

 そのまま糸の切れた人形ように“ぐにゃり”と脱力し、苦しいだろう不自然な体勢になるが、まどかちゃんには気にする素振りもない。

 でんぐり返しカウント・ダウンのポーズをしたまま、荒くなっている呼吸をどこか切なく色っぽく整えていた。

「…………」

 俺はそんなまどかちゃんを役になりきり、エロくいやらしく酷薄に見つめながら、口元を濡らす女の子のシロップを拭い立ち上がる。

 思わず自分の尻ポケットを探ってしまった。

 そこにはひとみさんから挨拶代わりに拝領していた、ありがたい例のラバーなブツが入れてある。

 距離を取らないとあぶない。

 とりあえず呼吸はまったく乱れてはいないものの、俺は気持ちが相当乱れているので整えとかないとあぶない。

 うっかりラバーな輪っかを装着し、まどかちゃんの十七年守ってきた、もっとも女の子らしい部分に変な棒を挿れてしまいそうになる。

「…………」

 いや、望むところというのも、オトコなんだからあって然るべきなのだが、できるなら良い素材はできるだけ美味しく食べたい。

 やはり料理の下ごしらえというのは、手間隙惜しまず丹念にするべきである。

「まどか」

 名前で呼んでみた。

 慣れない呼びかけに反応してまどかちゃんは“ぽや~~”と、起き抜けでまどろんでるように、閉じていた瞳を開き俺を見つめている。

 妙に妄想を掻き立てられてエロい。

 ああ、なんだかこう無性に、そして乱暴に、嬲るようにして襲い掛かりたくなるな。

「もう休憩は終わりだ」

「…………」

「早くしろ。次はブリッジだ」

「……はい」

 まどかちゃんは“ノロノロ”と立ち上がると、そのまま“ノロノロ”と、しかしそれでも、さすがに美しいアーチを描いて魅せた。

 重たげに“ゆっさり”と揺れるおっぱいの先端は、見ればわかるほど硬くしこってて痛そうですらある。

 お漏らしをしたように濡れている股間からは“むあっ”と、オンナの匂いが薫るようで、牡のリピドーを疼かせずにはいられなかった。

 ごっくん。

 生唾なんかもう好き放題呑みまくりです。

 ブランクはあっても贅肉などというもののないオナカに手を置き、弄うようにして、けれど慈しむようにして優しく繊細に撫であげた。

 そうしながらもこっそりと、眼の端だけでまどかちゃんの表情を盗み見る。

 さっきと違って羞恥と快楽に囚われてる顔を、突き刺さるような視線で凝視してくる牡から隠す術はない。

 まどかちゃんはどこかで誰かがしてたみたいに、薄目でこちらを窺おうとしていたが、眼と眼が合ってしまい瞳を“ぎゅっ”と閉じた。

 涙。

 オンナの零す涙に胸の痛まないオトコはいないだろうが、こんな涙ならオトコとしていくらでも胸が高鳴ろうというものだ。

 からかうように“ゆるゆる”と滑らせながら、重力に負けることのない、若いおっぱいを貪るべく指先を走らせる。

「んン……くぅん………ふぅ……んン……んぅ…………」

 悩ましい吐息とシンクロして、まどかちゃんのお尻が無様に“ぴょこぴょこ”していた。

 静止放棄。

 もうとても美しいアーチとはいえないものになってたが、それでもまどかちゃんのブリッジは俺には堪らなく美しくいやらしくエロい。

 一見しただけでは歪なものにこそ美しさはもとよりで、いやらしさもエロもあるということなのだろうか。

 サグラダ・ファミリアを見たらこういう感想なのかもしれないな。

 などと。

 適当ことを考えつつも絶景見物に感謝の意を込め、窮屈なレオタードに押し込められたおっぱいを、“ぐいっ”引っ張り解放してやる。

「あン」

 まろびでた乳肉の桃色をした頂点。

 盛んに自己主張して出番を待っていただろう、目立ちたがり屋で堪え性のない我侭な乳首を口内に招いた。

 俺の指導方針は昔ながらで、決してご機嫌取りはしないし、慎みのないことをしたりするなら、可愛くても甘やかすようなことはない。

 連帯責任もありだ。

「くはぁ!?」

 乳首に歯を立てるのとタイミングを計って、股布の脇からするりと指を潜り込ませて、ぬかるんでる女の子の粘膜をも同時に抉る。

 クッション代わりに敷いていた座布団の上に、まどかちゃんのお尻が気の抜けた音をさせて“ぽすっ”と落ちた。

「はひッ……ひッ……ンあぁッ……あッ……はぁ……んぁッ……ひッ……あふぁッ!!」

 まるでグミを弄ぶように“コリコリ”と乳首に甘噛みを繰り返す。

 うねり“きゅうきゅう”と指先を締めてくる粘膜からは、絶えることもなく“くちゃくちゃ”という淫靡なメロディが奏でられていた。

 ああ可愛い。

 俺の頭を掻き抱く仕草もそうだし、顔で感じるおっぱいの柔かさもそうだし、指先に伝わってくるハチミツ味の温かさもそうだ。

 そういったことの全てをひっくるめて、この少女が可愛くて可愛くて俺はもう仕方がない。

 で。

 だからこそである。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ……あ!? んぁッ……ひぁッ!!」

 もっともっと可愛いこの娘を見たくなった。

 乳首に対抗するように“ぷっくり”膨らんでいた肉の真珠を、親指の腹で転がし弾き小刻みに振動させながら擦り上げる。

 少女の身体は再度快楽の雷で打ち据えられお尻が浮き上がっていた。
 
 その衝撃は如何ほどだろう。

 さきほどまで披露してくれていたブリッジよりも、少女はさらに一段上のレベルの急角度で美しいアーチを描いていた。

 二秒、

 三秒、

 四秒、

 五秒はいかなかっただろうが、そうして長い時間、与えられた快楽を噛み締めるように、お尻を“ぶるぶる”ホバーリングさせていた。

 一度目よりも高い位置から、しかし同じ気の抜けた音をさせて、“ぽすっ”と座布団の上に弄ばれた身体を着地させる。

 俺は学生時代の理科の実験を思い出していた。

 まどかちゃん。

 身体全体をしどけなく“だら~~ん”と晒しているその姿が、どこかこれから解剖される運命の、憐れな蛙の末路と重なったりしてる。

 もっとも日本で一番虐殺されているだろう両生類は、こんなに可愛くもなければエロくもなかったけれど。

「…………」

 そしてホントに不意に脈絡もなく思い出す。

 乳首を中心におっぱいを唾液塗れにされ、秘唇を“ぐっしょり”と、お漏らししたみたいに濡らしている少女の耳に囁いた。

 なんだかもう毎度毎度で、テンプレみたいになっているのが正直言って恥ずかしい。

 それでもである。

 それでもこの台詞には大きなメリット、かというと微妙なのだが、要するに俺が気に入っている部分がある。

 それは決して格好よくはないことだった。

 嘘だってついてはいない。

 美しくて綺麗で巧いキーワードで誤魔化すことはできないことだった。

 …………

 これも意識してしまえばいいわけになるんだろうけどな。

「俺はね、みんなと、洋子とも、紅葉ちゃんとも、綾乃ちゃんとも、そして勿論まどかちゃんとも、色々とエロいことをしたいんだ」

 ああ、ホントいやになってくるぜ。

 一言一句ほとんど同じ台詞をこれで四人の少女全員に、オールクリアのコンプリートで俺はカマしてしまったわけだ。

 くっそう。

 どこかでこの娘はきっとオーケーしてくれるだろうさという、邪な期待があるのがなんだか妙に浅ましく感じ我ながら嫌だったりする。

「……みんなと?」

「うん。そう。ふざけたことにみんなと。でも真剣にみんなとしたかったりするんだ」

 どういうことやねんっ!!

 自分で自分に激しくツッコミたくなるような、日本の男女のスタンダードな恋愛スタイルを、真っ向から舐めきったアホな台詞である。

 それでいてフラレたときの予防線を張っているのでは、とそんな風に島田誠(27)という人間の自己分析もしてたりした。

 怖いな。

 告白に100%の自信がある人間などどこにもいないというが、とりあえず四度目であってもツッコミなしでなるほど頷ける話である。

「いいわ……」

「……はい?」

 まどかちゃんの台詞を俺は間髪入れずに、ある意味では息の合ったタイミングで聞き返してしまった。

 静かだったが自信を感じさせるだけの力強さが、少女の台詞にあったからなのか、まるで意外なものを発見したかのような驚きがある。

「他の三人だってそれでもいいって言ったんでしょ?」

「ああ、うん、まあ」

 俺的にはそういう風に受け取っているし、三人とも行動でそういう風に示してくれたが、そういや言葉で答えを聞いたことはないなぁ。

 そうしなきゃわからんっていうのも、それはそれで野暮ってもんなんだろうけどね。

「先に言っとくけど」

「うん、ああ、はいはい?」

「……言うのやめた」

「聞く聞く、ごめん、ちゃんと聞くから」

 ここまでやり取りを楽しんで俺はやっと気づいたのだが、悪いコーチと練習生という設定はどうやら終わったらしいな。

 残念。

 ……いや、ホント、マジでさ。

「コーチはその、えっと、エ、エロは綺麗だけじゃないって、あたしに教えてくれたけど、でもそれは女の子だってそうなんだからね?」

「あん? どういうこと?」

「みんなそれぞれにちゃ~~んと、あたしも含めてだけど、男の子には内緒の計算があるってことよ」

「……はぁ」

 わかっているようなわかっていないような、そしてその答えは、確実にわかっていない俺に、まどかちゃんは楽しそうにして微笑んだ。

 微妙に男の子と言われたのが、年齢について色々と気にしだした世代には、なんだかんだでひどく嬉しかったりなんかして。

 そして、

 それから約二時間ほど経った頃になって、まどか先生渾身のイラストは完成した。

 ふ、ふふふっ。

 てやんでぇバァーローっ!!

 これまでの人生でベストに数えられるほど惜しい百二十分になっちゃったぜ。二時間もあったら絶対なんとかしてたよ色々と。

 どっか近所で出待ちでもしてたんじゃねぇだろうな。

 ちょっとなごみ系になりかけてたあの後も、俺はひとみさんからのプレゼントを使うチャンスを狙ってたのに当の本人が壊しやがった。

 帰って来るの早ぇよ。

 家を出るときのように颯爽と男前に帰って来たひとみさんが、親指を“ぐっ”と立てたので俺も格好よく親指を立ててやった。

 ホントはその権利ないんだけどさ。

 上げて下げてでドッキリ風味に弄ばれた気がするのは、きっと心の狭い俺の被害妄想なんだと信じたい。

 PS。

 まどか先生渾身のイラストはその場で自主規制の発禁扱いになった。

 エロさはリヒターさんにも負けず劣らずで、は言い過ぎにしても、申し分はなかったのだが、問題はキャラの元ネタがわかり易すぎる。

 おでこがチャームなポイントで白いレオタードって、そりゃそのまんま御堂さん家の次女じゃん。

 責任とブツは俺が家に持って帰った。

 もちろんアルバムを三冊セットで借りるのも忘れてない。今日は実に公的には無駄で私的には有意義な一日でしたとさ。

 めでたしめでたし。

 ……そう自分に暗示でも掛けるみたいに言い聞かせながら深夜、俺はできたてほやほやの同人誌とアルバム三冊セットに魅入った。





[2293] 少女病 二十四話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:29



 休みの日にまで会社の人間と会いたくない。

 と。

 そういう考えを持っている人は到って多いだろうし、もちろん、休みに会社の人間と会わない人も珍しくはないだろう。

 俺はそうだ。

 どんなに関係の良好な仕事仲間ではあっても、休みの日にまで会ってしまうと、ビジネスからプライベートへの切り替えが難しい。

 会えばそれなりに楽しいのだろうが、それでもなかなか、リフレッシュまではできないものだ。

 だからそんなわけで、

「つまりいたいけな女子高生を毒牙にかけたと?」

「そういえば、この間、ポニーの娘とお前、歩ってなかったか? どんな進展具合なのかと思ってたら、いまは二股になっているのか?」

「こういうのだけは器用なのよ。まあ、もっとも、綱渡りは対岸まで行かないと、ただの無謀な馬鹿ということになるけど」

「で?」

「ん?」

「島田はどっちなんだろ?」

「どっち?」

「どっち?」

「……そんなの全力で馬鹿に決まってるじゃない」

 休みの日にまでこうして呑み屋で会っているこの二人と、俺はおそらく友だちなんではなかろうかと思ったり思わなかったり。

 思っていい?

 野村の奴あれだけ秘密にしとくって言ったのに、話のネタにあっさりと性悪女にバラしやがった。

「べつにいいじゃないか。友だちの輪の外に出したりはしないんだし、俺たちここにいる人間が、掛け値なしで友だちのすべてなんだし」

「おめぇと一緒にすんなっ!!」

 店内に響き渡るほど叫んだあとにはすぐに頭を下げる。

 ごめん店長。

 ごめんその他のお客さん。

 そうやって謝意を込めて丁寧に頭を下げたのだが、もとから騒がしい店なのでほとんど誰も気づいちゃいない。

 むしろ頭を四方に大人な対応で下げてる俺が、周りから酔っ払いみたいな眼で見られてた。

 なんだかさり気に失礼な店である。

 ちなみに、

 叫んじゃてたのは俺だけで、性悪女は悠然とお手本にしたいくらい、いや、実際お手本にしてる格好いい仕草で煙草に火を点けていた。

 まあ、それは浅い量よりも深い質だとは思うのだが、こいつは野村に輪を掛けて、友だちなんていなさそうだもんなぁ。

 年齢制限。

 ツンデレやるのも二十代の前半くらいまでが限界だという、そのぐらいで矯正しとかないとこうなるといういい例かもしれんな。

 ……あ? 

 いや、やっぱそんないい例じゃないや。

 こいつのツンはいつものことだけど、デレったとこなんて一度も見たことないもの。

 とはいえ彼氏の前でだけはするのかもしれないな。

 そうすると俺には一生見れないわけだが、それならそれはそれでいいや。うん。……見るのにちょっと以上でリスクがでかすぎるぜ。

 などと。

「島田」

「おう」

 立ち上がってることもあって、上から目線で生温かく見下ろしていた俺を、とっても冷めた醒めた視線で対抗しながら射抜いてくる。

 ああ、なるほど。

 昔っからの付き合いだといまさらだが、この視線では恐怖の――、なんてな風に外部からも渾名されてるのは頷けた。

「座ってよ」

「は、おう」

 一瞬ではあったが会社にいるような錯覚に陥り、思わず俺は上司に接するときの、あまり上手くもない敬語で応えそうになってしまう。

 微かに唇の端だけで“にやり”と笑った性悪女もそう感じたみたいだ。

「スイッチ入れんなよな」

「そんなつもりはなかったんだけどね。島田との付き合いも長いわ。上司と部下の関係も、前の会社を入れれば約五年くらいだもんね」

「ありがとよ。引っ張ってもらって感謝してる」

 ってな感じで、ちょっと昔を懐かしむやり取りをしていたら、

「あ」

 やはり前の会社からチームの一員であり、いまはフェイズ2チームの一員である野村が、ぽっつりなのに意識してしまう呟きを漏らす。

 通りかかった店員(お姉さんと呼ばないと怒る世代)がその声に振り返った。

 少しだけ不公平を感じる。

 あんなテンション高く叫んだ俺よりも、携帯を適当に操作しながらの、野村の何気なく発せられた一言に反応するとは贔屓だ。

 俺もおばちゃんと同じように振り返ってなかったら、放置プレイ気味だったこともあって抗議してる。

「思い出した」

「なにを?」

「この間お前が連れていた、ポニーテールの娘なんだけどさ――」

 なんだか普通に目撃証言してるんだけど、こいつ、俺とは生活エリアが完全に違う、絶対にカブらないとこに住んでるんだけどなぁ。

 …………

 こいつ某国ばりのスパイ衛星でも持ってんじゃねぇだろな?

 また、もしも持ってるとしてもだ、その使用目的が俺の監視って辺りが、そこはかとなく彼の友情の種類を疑いたくなるところである。

 既婚者で愛妻家という一面を知らなければ、二人っきりになるのは些か怖いオトコだった。

 門間ちゃんは元気?

「最初に見た娘、ボーリングしてた娘の、そういえば隣りのレーンに、ポニーテールの娘がいたなぁ、ということを思い出した」

「……記憶力良いんですね」

「うん? いや、そうでもないよ。こうやって携帯をチェックするまで、おでこの娘のインパクトも強かったからすっかり忘れてたし」

 言いながら“ここ”という感じで妙に親切に、野村は裏返した携帯の画面、そのほんとうに端っこの辺りを指した。

 相手は巧いこと切れているので腕しか映っていないが、ハイタッチしている紅葉ちゃんはバッチリ綺麗に楽しそうな笑顔で写ってる。

 まどかちゃんの映り栄えはわざわざ言うまでもあるまい。

 でも言っちゃう。

 さすがコスプレイヤーだね。

 で。

 後ろから抱きつくようにして手取り足取りレクチャーしている、俺にもピントがバッチリなのに仄かな悪意を感じるのは考えすぎか?

 渡された携帯を“じ~~っ”と観ながら、明らかにわざと、溜めるように弄うようにして視線を合わせない性悪女。

 この二人は本当にぼくの『ト・モ・ダ・チ』と認識しちゃってもいいんですかねぇ?

 友だち。

 たぶん辞書で引いたらもっと、楽しげな例が出てんじゃないかなぁと思う。

「あらあら。二人とも可愛いじゃない。馬鹿なオトコに引っかかってるとも知らず、可愛いもんだわ、まあ、人生って何事も経験よね」

「誰が馬鹿じゃ」

「お前じゃ馬鹿」

 板についた切り返しをながら性悪女は、さっきの野村を真似るように、“ここ”という感じで携帯の端、のさらに端っこを指し示した。

 なに?

 オンナっていうのはもう先天的に、オトコの弱い部分を突いてくる生き物なの?

 それともこいつだけ?

 鋭い。

「根拠なんてなんにもないけど、この巧いこと見切れてる女の子、物凄~~く気になって気になって仕方がないのよね」

 そして、

「ポニーテールの娘とハイタッチってことは友だちだよなぁ。そしておでこの娘とも友だちだろうから、島田も知っている娘になるな」

 合いの手入れるようなオトコはこいつだけ?

「そういう少女の友情に亀裂を入れる、極悪人の断罪はここでは置いといて、島田、この娘もやっぱり可愛いかったりするの?」

「……可愛いよ」

 正直に答える必要なんてないんだけど、嘘を吐きたくないというか、この素敵な少女たちを下心抜きで是非とも自慢したいというか。

 とある事情で(年齢とか。条例とか。世間の目とか)あまりそのチャンスもないことだし。

 他人からすればこういうのはひたすらにアホらしいのだが、少女たちと俺は他人ではないのでひたすらに嬉しくなる。

 アホ丸出しでにやけてしまった。

「三股だ」

「はい?」

「その喜びを隠せない磨きのかかったアホ面、その娘にも手を出そうとしてい、……いやいや、その顔はもう出しているようね、島田」

「…………」

 喜びを隠せない顔だったらお前だって負けてないと言ってやりたい。

 でもどうせ薮蛇になるに決まってる。

 こいつの部下をやってて学ばせてもらったことは、無闇な深追いはしない方がいいということだった。

「当たっちゃった?」

「……そうらしいよ」

 ここまででもかなりズタボロに暴かれているが、最悪の結果は免れているので、これはこれでまるで納得はいかんが良しとしておこう。

 大人になるっていうのは自分に嘘が吐けるっていうことでもあるんだね。

「ダウト」

「はい?」

「と、わたしは踏んだんだけど、野村は横から見ていて、いま島田がブラフをカマしてたと思うor思わない?」

「ダウト」

 くっ。

 このイエスマンめっ!!

 差し出された煙草一本で友だちを売りやがった。――もう三回目でうんざりだろうけど教えてくれ、こいつら友だち?

「白状しなさい。四股なんでしょ。あんた昔っから嘘を吐きたがるけど、間が抜けたポカばかりするんだから素直にゲロしちゃいなさい」

「呑み屋でゲロとか言うな。それになんでいつの間にか、尋問モードに突入してるんだよ」

「拷問モードになる前に吐きなさい。ここは呑み屋ではなくゲシュタポよ。疑わしきは罰せずより、火のないところに煙は立たないのね」

 あれ?

「こいつ酔ってねぇか?」

「いいじゃないか。どんなにベロンベロンになっても、自分の足でちゃんと家に帰れるオンナだから平気だろ」

「いや、そうことじゃなくて」

 輪を掛けた輪にさらに輪を掛けて性質が悪いと言いたいんだよ。

 良かった試しがない。

 なんかジッポを“カッチャンカッチャン”やり始めたのが、それも無表情でやり始めたのが得体が知れずそこはかとなく怖いんです。

「島田」

「はい」

 会社でもしたことがないようなスピーディーさで、実に素直に部下な態度で即座に上司に俺はお応えを返した。

 ええ。

 チキン上等。そう呼びたかったらいくらでも呼べっ!!

「手」

「うん?」

「手を出してみて。手のひらを上にして」

「はぁ……」

 特に何も考えずに従ってしまった俺の手のひらを、ポーカーフェイスな性悪女が軽く叩くと“ポトリ”と落ちたものがあった。

「熱っ!?」

 考えなくてもわかる。

 煙草の灰が落ちて手のひらの皮膚を軽くレアに、でもなかなか食べごろに“こんがり”といい具合に焼いたのだ。

 まあ、

 実際は吸殻の灰なので、そこまで熱くもないのだが、精神的には全身火だるまになったくらいの衝撃、までいかないが熱いもんは熱い。

「いまわたしのことを、ひどい奴だって思ってるでしょ?」

「結構ずっとなんだけどっ!!」

 馬耳東風。

 俺の魂の叫びなんぞ聴こえちゃいないようにして、性悪女は“すぅーーっ”とニコチンを肺に入れると天井に向けて吐き出す。

「それがあなたがしていることの世間の評価」

「はぁ?」

「島田のことだからどうせハーレムとか、わけのわかんないこと考えてると思うけど、考え違いをしないように太い釘を刺してあげるわ」

「……はぁ」

「まずは基本中の基本な大前提。そんな関係は100%と言い切れるくらい長続きしない」

「……わかんねぇじゃん、そんなのやってみなきゃ」

 シマッた。

 なんか子供みたいな答えを返してしまった。

「そうね。極めてごく稀にだろうけど、そんな関係が長続きしている人たちも、広い世の中なら居ないこともないんでしょうね」

「言い方スゴい引っかかる」

 当然だけどわざとそういう風に言ってるのはわかるがな。

「だからここからはわたしなりの、上手くいくかもしれないアドバイスなんだけど、恋愛の生殺与奪の権利はオンナに与えた方がいいわ」

「詳しく」

「一対一の関係でも恋愛っていうのは面倒。それが四対一なのよ。ならできるだけ簡潔に、できるだけわかり易くしといた方がいい」

「そんなもん?」

「そんなもんよ。そんなこともわからないから、毎度毎度手を変え品を変え、ネタじゃないかっていう笑いの取れるフラれ方をするのよ」

 俺ひどいこと言われてるよねぇ?

「とにかく彼女たちがこの関係を打ち切りたいといったら、島田がどんなに盛り上がっててもそこでジ・エンドにすること」

「……えぇ~~」

「決まってるでしょ。あなたに束縛する資格はないの。彼女たちは自由でなくちゃ。ハーレムっていうと主人と召使いの関係だけど――」

 本当に勿体つけるなぁ。

 もう一人の聴衆であるはずな野村に聞いてる素振りがないので、なんかちょっぴり性悪女の仕草が気合の入りすぎで芝居掛かってる。

 オトコが魚の骨をそんな“チマチマ”と神経質に取るなくてもいいよ。

「あなたの役どころは主人なんかではなくて、四人の可愛いご主人様にご奉仕する召使いなんだから」

「召使い」

「オブラートに包む表現をするとね。包まないでそのまま中身を口にすれば、島田には適役なんだけど奴隷という差別的な表現になるわ」

 自信がある。

 このオンナを訴えても俺まず勝てるな。

 イマイチ場にいる証言者が当てにならないどころか、土壇場で華麗に裏切りそうなのだけが非常に心配事ではあるけれども。

「あとはそうね。求められればだけど、その都度その都度で、ちょこちょこ適当にアドバイスしてあげるわ」

「あっそ」

 マジで冗談じゃない。

 もともと強くもないのにこれ以上の弱みを握られて堪るかボケっ!!

「はい」

「なんだよ?」

 自分の手元にあった会計を“ぐいっ”と、俺に押しやって無駄に魅力的に性悪女は微笑んだ。――絶対にチャームの使い方間違ってる。

「初回のアドバイス料ね」

「……言ってる意味が全然わからないんですけど?」

「口止め料っていったらわかる?」

「…………」

 ヤクザみたいなことをのたまっている上司の後ろを、すでに帰り支度を終えた同僚が何食わぬ顔で通り過ぎていく。

 俺に友だちはいない。

 と。

 そんなこんなでフレンドを二人ほど失ったのか初めからいなかったのか、その辺を深くは追求せずに俺は夜の十時前には家に帰ってた。

 趣味を作らないとヤバいかもしれない。

 一日休みだからといっていい大人が三人雁首そろえて、昼間からぶっつづけで呑んでいるしかないというのはどうなんだろう。

 ってな風に反省したふりをつつ、家の鍵を開けるとすぐさま、冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。

 坂道を転げ落ちるように駄目なのはわかっているが、帰って来てからちょっと呑むビールは、また外で呑むのと違う味わいなのである。

 が。

 その至福で駄目な時間を味わおうとプルトップに指先を掛けた、まさにそのときに缶ではなく“ガチャリ”とドアが開けられた。

「こんばんは」

 最近めずらしくサイレントではなく、ちゃんと足音は響かせてくれていたので、べつにこの来訪は突然の不意打ちというわけではない。

 四人の少女たちの訪問には心構えができていた。

 わかる。

 何故だかはいくら考えてもどうせわかりはしないだろうが、『そろそろクルな』と思っていたものが『ついにキタか』といった感じだ。

 ちっこい身体の洋子を切り込み役にして、少女たちは続々と俺の部屋に乱入してくる。

 円卓の騎士をイメージするには人数がかなり足りてなかったが、とにかくそんなこんなで少女たちは奥のテーブルに腰を下ろした。

 時計なら一時に洋子、四時に綾乃ちゃん、八時に紅葉ちゃんで、十時にまどかちゃんが座っている。

「…………」

 俺はなんとなく空いている六時の席にと座を占めた。

 座った場所にはそこがただ単に近かったから、という以外には特にこれといって計算もなければ意図もない。

 それでも洋子とまどかちゃんがちょっと、ほんのちょっとだけ、喜怒哀楽どれにも含まれない、あるいは全部を含んだような顔をした。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 無言×4。

「…………」

 そしてそこに+の1、と俺まで黙ってるわけにもいかんな。

 口火は俺が切るべきである。

「俺はね、みんなと、色々とエロいことを、勿論それだけじゃないけど、やっぱり色々とエロいことをしたいんだ」

 このいつも通りのわけわからんテンプレートで、俺はいつも通り主導権を握ったと、汁粉のような甘々な思考で無意識に巡らせていた。

 ホントに、甘々。

 少女たちは少女同志ですでに覚悟も度胸もキメていて、なんならもう先の展望や責任まで話し合ってるのかもしれない。

 俺のこれまで必殺としてきた台詞にも、誰一人として小揺るぎすらもしなかった。

 で。

「誠」

 少女たちのカウンター攻撃が始まったわけだが、まあ、予想通りというか期待通りというか、トップは真っ赤々な顔をした洋子だった。

 しかし、

 別にそれはアクティブな行動の結果というわけではなく、プレッシャーに耐え切れずに一番最初に動いただけという感じである。

 日常で発揮されてる勇気と、恋愛の勇気は確実に種類が違うからな。

 ああ可愛い。

「あ、ああ、あたしは、ま、誠が好きっ!!」

「う、うん」

 可愛いけど鬼気迫っとるなぁ。

 テーブルを挟んでるんだけど顔が引き攣っちまったぜ。頬が“ひくひく”してるのがわかる。今夜は嬉しくて嬉しくて眠れそうもない。

 …………

 えへへっ。

 そして誰かがアクションを起こせば防波堤が決壊するように一気である。

 神様だか悪魔だかカレイドな究極観測者だかが、ラッキー配分を間違えたとしか思えないハッピー・イベントの連打。

「あたしもコーチが好きっ!!」

「う、うちも、島田さんが好きやっ!!」

「わたしも、……わたしも、島田さんが好きですっ!!」

「お、おう」

 ああ、もう、ああ、もう、なんか気の利いた言葉出て来いっ!! ああ、もう、ああ、もう、感情が乱舞してて言葉が出て来ないっ!!

 なんだか鼻孔の奥が、なんだか“ツゥーーン”と、なんだかかんだかしてきちゃったぞ。

 パニックってこんなに楽しいんだなぁ。

 と。

 少女たちの連打の告白に舞い上がり、生涯最高の浮遊感を俺が楽しんでいると、洋子がそこへスクリューブローを叩き込んでくる。

 最初だったので自分の言葉の新鮮味が、そんなことあるわけないのに、もしかしたら薄れたとでも思ったのかもしれない。

 でも一番最初に言ってる限り堂々巡りではないだろうか?

 いや、まあ、俺としては限界なく嬉しいだけなので、いくら言ってもらってもウェルカムなんだけどさぁ。

「あ、あたしなんかねぇ、…………ヴ、ヴァージンあげてもいいくらい大好きよっ!!」

「あたしだってそうよっ!!」

「うちも、そ、そうやっ!!」

「ええ。もちろんわたしも、みなさんと同じ気持ちです」

「あ」

 これはヤバい。

 頭が酸欠にでもなったみたいに急激に“くらんくらん”してきたぞ。なんならこのまま死んでも、それはそれで結構幸せなんだろうが。

 ただここからは嬉しいだけではなくて、やや微妙にも感じられる、肉を切らせて骨を断つ的な告白も交ざり始めたりした。

 対抗上というか差別化を図るために必要だったんだろう。

「……あたしはねぇ、ま、誠の、誠のお、おお、おちん、おちんちん、だ、だったら、なな、舐め、舐められるんだから、……ねっ!!」

 呼び水。

 そこからは俺の性癖の恥ずかしい暴露合戦のような様相になってしまった。

 やたら匂いを嗅ぐとか。

 腋の下の汗をしつこいくらいに舐めてくるとか。

 後ろの穴とか。

 比べてみるとおっぱいの触り方がひとりひとり変化をつけてるとか。

 舐めさせるの相当に好きとか。

 コスプレにハマり始めた気配があるとか。

 さらにさらにで 羞恥プレイが etc etc アルコールの力では味わえない楽しい夜は深けていった。

 …………

 …………

 …………

 …………

「みんな好きっ!!」





[2293] 少女病 二十五話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:30



 時間というのはないのではなくて、作ろうとしないからないのである。

「よっす」

 無理を通せば道理が引っ込むというやつで、それこそ分刻み秒刻みで動いている人であっても、まったく時間がないなんてことはない。

 あの成り上がりチャンピオンのビル・ゲイツにしても、合間のコーヒーブレイクくらいはあるはずだ。

 余裕のない人にはいい仕事なんぞできっこない。

 たぶん、

 恋愛も同じだ。

「遅いよ」

 ましてや好きで好きで仕方ない相手と会うための、そんな素敵な時間を作るのに、無理なんて言葉がそもそも存在しないだろう。

 社会人と高校生。

 基本的にタイム・スケジュールが違っているのだから、できるのならできるだけでも、逢瀬の機会やそのチャンスを逃すべきではない。

 ちょっとしたことでもいいのだ。

「待った?」

 仕事が早く終わったから、良かったら夕飯を一緒に食べよう、くらいであってもそれは全然構わないのである。

 微妙な時間の呼び出しだったのに、それでもこうして来てくれた洋子も、待ってくれていた洋子も、俺と同じ気持ちなんだと信じたい。

 いや、信じてる。

 今日の洋子のファッションはというと、メンズっぽい少し大きめなサマージャケットに、デニムのスカートでキメていた。

 腕を組みやたらエラそうな態度で俺を待ち構えている。

 本当ならここには洋子だけではなく、他の三人の少女も呼び出すのが、全員と付き合うと宣言したからには筋なのかもしれない。

 しかし、

 確か金曜日のこの時間には、紅葉ちゃんはバイトのシフトが入っている。

 他の三人だけ呼び出してしまい、そういう意図がなくとも、一人だけ仲間外れみたいになるのはマズい。

 疎外感は亀裂を生む。

 もっとも紅葉ちゃんはお隣りさんなので、会おうと思えば時間を作るのは、少女たちの中で一番簡単ではあるのだけれど。

 まあ、

 それはともかくとしてだ。

 フルメンバーで会えないのなら、一人ひとりを順繰りにして、マンツーマンで会うのが、特に根拠はないがなんとなくでいい気がする。

 だから今夜は洋子と食事するということを、他の三人にはちゃんとメールで伝えてあった。

 はっきり言ってあまりノーマルな交際ではない。

 性悪な友のアドバイスにも耳を傾けつつ、俺が重視しようと考えているのは、チームとしての一体感であり団結力である。

 秘密は秘密としてあっていいが、情報はなるだけ共有すべきだった。

 …………

 財布の都合っていう情けなくも切実な問題もあるしな。

 ここであんまり無理を通すと可愛い少女ではなく、道理のない怖いお兄さんが部屋の前でお出迎えだ。

「手っ取り早くファミレスでいいか?」

「いいよ。誠の懐具合くらいわかってるつもり」

「そういうことを口にしないのが、立派な大人のレディの嗜みってもんだぜ」

 かいぐりかいぐり。

 ちょうど撫でやすい高さにある頭を“なでなで”してやる。

 その俺の手を慣れた動きで“ぱしんっ”と、そして『馬鹿にしないでよっ!!』な表情のオマケつきで洋子は跳ねつけた。

 最近このやり取りがお気に入り。

 店に入るとしばし悩んだが、俺はハズれのないハンバーグ定食、洋子は鉄火丼にアイスココアを注文した。

 仕事はどうだとか。

 学校ではいま一体何が流行っているだとか。

 そろそろ夏も本格的に始動するので、みんなで水着を買いに行こうと思ってるだとか。

 シューティング・ゲームはまた地味にブームがキテいるっぽいだとか。

 どうでもいい内容ではある。

 が。

 それこそ話の内容なんてものはどうでもいいのかもしれない。

 食事中はしゃべらないのがマナーなのかもしれないが、洋子とする楽しいトークは弾んで、箸を動かしながらも止まることはなかった。

 そしてこれはその会話で交わされたひとつであり、間違いなく引き金でありきっかけだったろう。

 夏から春へのトーク。

「……夏ねぇ」

 煙草を吸おうとしたが禁煙席なのを思い出して、俺は手持ち無沙汰で箸を“くるくる”回しながら呟いた。

「なに? その話を広げてくださいみたいな、まるで三点リーダーつきの、赤裸々で露骨に溜めてるような意味深な言い方は?」

「よくあるじゃん。夏休み明けとかにさ、この娘なんだか雰囲気が、急に大人っぽくなったなぁ、――みたいな?」

「きっと海外にでも行って、見聞を広めてきたんじゃない」

 そう言って洋子は“ぐいっ”と、アイスココアを喉に流し込む。

 表情を隠そうとしているようだが残念、窓ガラスには『落ち着けぇ落ち着けぇ』と言っている顔がきれいに映っていた。

 ああ可愛い。

 俺がこういう方向の話がしたいんじゃないことくらい、洋子だったら当然のようにわかっているだろう。

 さてさてどうするか?

「それもあるな。新しい経験をすると世界が広がる、ような錯覚を誰でも少しはするから。まあ、実際はそんなに変わってないんだけど」

 会話でしてみる詰め将棋というのも、これはこれでなかなか乙なもんである。

 ああ。

 こういう“じんわり”なエロトークに最近妙に癒されるな。

 どうもこれはいよいよというのか、なんというのか、思考だけでなく嗜好も本格的におっさんになってきたかもしれん。

 別に嫌いじゃない。

「でもそういう勘違いって必要じゃないかな? それこそ少しだっていうんなら、錯覚だってなんだっていいんじゃないかなぁ?」

「うん。もしも分相応を完璧に弁えちゃってたら、ほとんどの人は生きていけないからな」

「でしょ」

「だからってわけじゃないが、海外にまで行かなくともさ、夏休みの開放的な気分が、しとやかな女の子でさえ大胆にさせるんだろうな」

 もうちょっと搦め手で攻めたかったが、いい加減に埒が空かなくなってきたので直球勝負。

 洋子の言葉のチョイスはイチイチ、俺の琴線に触れてくるので、持っていこうとしても話がかなり引きづられてしまうのだ。

 今度の休みは是非海外に行こうと思うくらい。

 金と暇があったらだが。

「あのねぇ。夏だからってなんでもかんでも、そっち方面に直結させないでくれます、思春期と発情期は違うんだからね、エロおじさん」

「お前、思春期なんて人間的に聞こえ良くしてるだけだよ。春画・春情・売春、春っていうのはエロの隠語だぜ」

 応とも。

 人間だって所詮はアニマルである。

「……その理屈だと青春とかは、なんだか大変な言葉になるね」

「どこが爽やかやねんて話だな。青いエロっておっさんが喜びそうだ。まあ、要するに思春期っていうのは、エロを思う期間ってことだ」

「そうすると誠はいまでもさ、まるで成長をしてない、年がら年中の懲りない思春期ってことなの?」

「否定はしない」

 店にある壁掛けの時計を見ると、そろそろ九時になろうかとしていた。

 明日は休みになっている人種も多いので、待ち合わせ場所にでもしているのか店内は、俺たちが入ったときよりもかなり賑わっている。

 遊びたい盛りの高校生や大学生、仕事終わりの社会人まで、どのカテゴリーも比較的カップルの占める割合が高い。

 と。

 ざっと眺めただけなのにそういう風に見えるのは、俺たちもそういう風に見られたいから、という願望の現われなのかもしれなかった。

「出るか」

 コップに残っていた水を一気に飲み干すと、ココアを空にしている洋子を促し会計を持って立ち上がる。

 俺たちがレジを済ませて外に出るとき、入れ替わりで入ってきたのも、エネルギーをこれから使おうとしてるカップルだった。

 ちなみにこれは“ちらっ”と見ただけでもわかる。

 クールを装おうと努力してはいるが、オトコの顔がやたら“にやにや”していた。

「誠」

「ん」

「なに“にやにや”してんの?」

「……別に」

 ここから俺は意識したんだと思う。

 街中を“ぶらぶら”しながら、“ぶらぶら”しているふりをしながら、いくつかのカップルのあとをさり気なくマークして歩いていた。

 別に最初からそうしようと思ってたわけではない。

 ゲームセンターでも行って軽く時間を潰し、家まで送っていってそれでバイバイの今日は予定だった。

「あ」

 けれど周りのカップルの発しているハッピーな熱に、どうやらこれはだいぶ当てられてしまったのかもしれない。

 そろそろ梅雨の季節。

 カレンダーで見てもどちらかというと、春よりは気持ち夏よりの季節になっている。

 夏のサポートも捨て難いが、一年に一度しか望めないのに対して、春の力は年がら年中ののオールシーズン発揮できるのがポイントだ。

 うん。

 もちろんいつも通り意味なんてものはないが、けれど別にそんな野暮なものは、燃えて萌えてればいいカップルには必要ない。

「ここに入りたい」

 その建物はそういうことをするための建物なのに、外観は意外なほど落ち着いているシックで大人な雰囲気だった。

 八十年代や九十年代のときのような、パチンコ屋みたいな悪趣味なライトアップとかはない。

 それでもどこか隠せない淫靡な匂いがする。

「ここって、ホテ、ル?」

 踏み入ったことなどないだろう、少女にもわかるほど濃厚に、怪しいではなく、妖しい感じが香っているのが気に入った理由だった。

 立ち止まろうとした洋子の手を取り、心臓が“バクバク”なのに、ファミレスで擦れ違ったオトコみたいにクールを装って歩く。

 ホテルの入り口で躊躇されるのは、最悪ごねられるのは見っともない。

 自慢じゃないが俺だけなら、慣れているので構いはしないが、女の子にまで掻かせなくてもいい恥を掻かせてしまう。

 この長いようで短いホテル前の通りの距離が勝負だ。

 手を繋いでいる女の子にだけわかるように、外見からはわからないように、身体の体幹というかバランスをホテルへと傾ける。

 繋いでいる女の子の手からちょっと、ほんのちょっとでも、抗うようなパワーが返ってきたらなしだ。

 入り口までカウント・ダウン。

 五歩。

 四歩。

 三歩。

 二歩。

 一歩。

 最後の確認で洋子のやわらかい手を“きゅっ”と握ると、控え目ではあったが間を置かずに“きゅっ”と握り返される。

 ほぼ直角に吸い込まれるように曲がって、俺は洋子の手を引きながら、ラブな大人のホテルに突入した。

 良さそうな部屋のボタンを押し、カードを受け取ったところまでは覚えてる。

 そこからどういう経路を辿って部屋に着いたのか記憶にない。

 俺が冷静さを取り戻したのは、ドアが“ガチャリ”とわざとらしいほど大きな音を立て、洋子と二人っきりの世界になってからだった。

「まあまあだな」

 緊張していたらしく汗ばんでいた手をそっと離しながら、俺は大人なオトコの余裕を過剰に演出しつつ部屋の中を見回す。

 少女は俺よりもさらに緊張してて汗ばんでいた手を、盛んに“にぎにぎ”とさせながら、テンパり気味に“キョロキョロ”としていた。

「ほれ」

 落ち着きのない人を見ていると、逆に自分は落ち着いてきたりする。

 冷蔵庫からウーロン茶の缶を取り出すと、とりあえず一口だけ“ごくり”と呑んで、あとは全部喉が渇いてるだろう洋子に手渡した。

「あ、ありがとう」

 いまどきの女子高生が間接キス程度で“ドキッ”とするとは思えないが、一瞬だけ洋子は躊躇うような仕草をしてから唇を缶につける。

 やはり水分が必要だったようで、喉を“ごくごく”と鳴らして、一気に残ったウーロン茶を飲み干した。

 そして“ぷはぁ~~”と洋子が口を離したのを待って、

「んむぅ!?」

 小さな身体を乱暴にはならないよう、細心の注意をしながら抱きしめると、ウーロン茶で濡れている唇を覆い被さるようにして塞ぐ。

「ふぅッ…………、んンッ、………んむッ、…………んふぅッ!!」

 口腔をかき混ぜる熱く濡れた牡の舌の感触に、少女はくぐもった呻き声を上げてくれた。

 奥で怯えたように縮こまっている洋子の舌を捉え啄ばむ。

 抱きしめられてる少女の身体は“わなわな”と震えて、ファーストのときの初々しさを失わずに刺激に堪えていた。

 睫毛が“ぷるぷる”してる。

 どこか哀願しているような小動物チックなその揺れは、俺の中に潜んでいる獣性を、さらに“ふつふつ”と熱く滾らせ昂ぶらせていた。

 とはいえ、

「風呂入ろうか……」

 現在進行形で思春期というところは同じであっても、自分本位な十代の思春期とは思春期の年季が違う。

 いつまで思春期やねんというのは置いといて、これから人生初体験をするかもしれない少女を、気遣えないほどさすがにガキじゃない。

 が。

 ……初体験、ねぇ。

 そうしようとどこで答えを出したのかは、自分でもまったくわかってなかった。

 年季がといってもやはり、舞い上がっちゃてるんだろう。

 自分を強く戒めるために引いていたラインは、自分の手でとっくのとう、ものの見事の完膚なきまでに破られまくっていた。

「うん」

 見られたくないのか俺の胸に顔を擦り付けるように、洋子は何度も何度も腕の中で“こくこく”と頷いている。

 肩を優しくそっと押して身体を離すと、ベッドの端に耳まで赤くしている少女を座らせた。

 …………

 このまま本能にお任せで襲い掛かりたい。

 ってな気持ちがまるでないわけではなかったが、というか大いにあったりはしたが、ここはぐっと堪えて大人なオトコを演じきらねば。

「お湯溜めてくるよ」

 そう言って俺は風呂場に行くと、蛇口を捻りお湯を出しながら、五分から七分くらいだろうか、あえてその場で溜まるのを待った。

 色々と女の子にはオトコにはない心の準備もあるだろうし、少しの時間だがここは洋子を一人にしてやるべきだろう。

「…………」

 洋子に短くても俺には長すぎるくらいの時間。

 バスタブに溜まっていくお湯の“ざぁ~~ざぁ~~”という水音が、ここでもやっぱり大きくわざとらしく響いているような気がした。

 ちょうどいいところで止める。

 二人でちゃんと温まってしっかり肩まで浸かっても、それほどお湯の無駄遣いにならないくらいで止めた。

「オッケィ、お~~い、洋子、お風呂のお湯溜まったぞぉ」

 服を通常よりも確実に三倍くらい速い、赤い彗星なスピードで脱ぎながら呼びかける。

 いまのこの俺を真にジェントルマンな大人なオトコが目撃したら、絶対に『ボウヤだからさ』と口走ることは究極に疑いなかった。

 素っ裸になる。

 不必要なほど大きな鏡に映った自分の身体を、なんとはなしの、興味なんかなさそうに眺めてみたりなんかした。

「お?」

 こんなに早い効果を期待してはいなかったのだが、いくらか筋肉がついているようないないような、と誤魔化すくらいはできる身体だ。

 鍛えてくれた白鳳院流に感謝である。

 もうちょっと仕上がったらポージングしてもいいな、というくらいの身体に、贔屓目に見ればなっていないこともなかった。

「うむ」

 股間の一部だけは思春期パワー全開でティーンばりに元気“ムキムキ”なんだけどなぁ。

 と。

「……頑張ろ」

 自分に対して一通りの嘘を吐いたところで浴室の外に振り返る。――なかなか洋子が来ないのは、少女の反応として予想通りだった。

 そして、

 とっくに気づいてもいる。

 薄い扉一枚だけで隔てられているすぐそこで、洋子がさっきから“うろうろ”しているのには気づいていた。

「入ってるぞ」

 ここはやはり曲がりなりにもホテル経験者である俺から、どんどんアクションを起こし、未経験者の少女をリードしてやるべきだろう。

 誘導という言葉もあったりはするが、そんなものは脳内からきれいに抹消した。

 髪の毛と身体をざっと洗って湯船に浸かる。

 その頃になって洋子はやっと、“おそるおそる”といった感じありありで、泥棒コントみたいに扉を開けて入ってきた。

「な゛!?」

 ユニークである。

 そういう感想しか出てこない驚愕の声を上げながら、やっとこさ決心固めて入ってきたっぽい洋子がコミカルにのけぞってた。

 何事も経験というのかなんというのか、外から見ているだけでは気づきようのないことがある。

 この部屋はラブホテルとしては良心的というか、少女にも抵抗の少ない内装をしているが、ラブホテルはラブホテルということだった。

 外から脱衣所は見えないようになっているが、浴室から脱衣所は曇り防止ガラスで“スケスケ”なのである。

 部屋のデザイナーと趣味が合うな。

 寝そべると頭の辺りが枕のようになっているし、ゆったりと湯船に浸かりながら、カノジョの着替えをご覧くださいという趣向だろう。

 粋だね。

「……なんなのよ、これ?」

 脱衣所からの洋子の声は浴室に聞こえているのだが、ちっとも聞こえないふりでお湯をすくい顔を“ごしごし”する。

 旋毛に“びしばし”恨みがましい視線を感じるが、そんなものはもちろん無視だった。

 洋子。

 ジャケットはすでにもう脱いできてる。

 ロゴTとデニムスカートだけという、脱衣麻雀だったらソックスだけを残して、素っ裸にひん剥くのはちょろい朝飯前の軽装備だ。

 けれど、

 それでは面白くない。ケース・バイ・ケースではあるが、この場では興がそがれるというものだ。

 できれば洋子には自主的に脱いでもらいたい。

 結局こういうところに来れば、そういうことをするわけだから、遅かれ早かれ俺に少女は、生まれたまんまの姿を見られることになる。

 しかしそこはそれ、人間の心理というのは不思議なもので、結果よりもむしろ過程にこだわったりする人が多い。

 おそらく日本人とかは特にだろう。

 エロ業界に各種あるジャンルの豊富さが、端的にではあるがそれを証明してもいた。

 セックスという結果があればそれでいいというなら、やってるとこを延々映してればいいし、痴漢やらナンパやらのシチュもいらない。

 過程とは美学。

 羞恥心というのは煽れるのなら煽れるだけ煽った方が、あとの展開が美味しくエロくそそられるものになるに決まっていた。

「…………」

 顔を真っ赤にしてシャツの裾を握り締めてる、いたいけな少女である山本洋子の心情を想像してみる。

 きっとストリップでもさせられているような気分のはずだった。

 そしてさらにそこにざっくりと大胆に、最近磨きがかかってきたと自負する、怪しげな妄想の味なんぞをどっぷりと加えてみる。

 俺と洋子は先生と教え子なのだ。

 それだけでも知られてはいけない禁断の関係なのに、先生はきれいな奥さんと結婚までしているのである。

 不倫だった。

 追い討ちをかけるように奥さんは実家に帰っての妊娠四ヶ月でもある。

 また夫婦仲は全然良い。

 だから本当なら洋子の恋が成就する隙など、どこにもなかったはずだなのに、これが最後とご飯を作りに行ったとき間違いが起こった。

 新婚だというのに奥さんとは離れ離れで“ムラムラ”していたところに、少女の健気で一途な恋心は危険すぎたのである。

 行為が終わってから先生は悔いたが、どんな形であれ結ばれた洋子は幸せだった。

 そんな幸せそうな顔をする洋子を先生も拒絶することができず、それからも“ずるずる”と二人の淫靡で秘密の関係は続いている。

 先生は洋子を諦めさせようと呆れさせようと、エロい行為をエスカーレートさせていくのだが逆効果でしかない。

 洋子は先生の愛が自分にないのをちゃんと知っている。

 あるのかもしれないがそれは先生と教え子としてなのを、思春期な少女の心を痛めながらもそれを笑顔で隠して知っていた。

 だから、

 オンナとして振り向いて欲しい洋子は、それがいかに恥ずかしくても先生の要求には、応えないという選択肢がどこにもないのである。

 恥ずかしいけど、先生のためなら、先生にならわたし、こんなの、こんなの平気、だよ…………。

 と。

「……む?」

 ここでパラレルな世界に気持ちよくトリップしてた俺の意識が、こっちの世界の洋子の手が動いたことにより慌てて急いで戻ってきた。

 洋子は始動したらアクションの思い切りがいい。

 手をクロスさせるながらシャツの裾を掴むと、勢いをつけて“がばっ”と、非常に無駄のないスマートな動きで頭から抜き取っていく。

 変なところが妙に女の子らしく映って、足元に脱いだシャツを丁寧に畳んでおくのがなんだか面白い。

 そして、

「…………」

 一見流麗に見える動きではあったが、微かに指先が震えていたりするのが、少女の性格と心情まで如実に表しているのも面白かった。

 洋子は青が好きらしい。

 ブルーのブラに支えられてるおっぱいは、相変わらず誘ってるような、挑発的な熟れ具合を牡に見せつけてくる。

 腰のボタンを外してスカートを脱ぐのにも淀みはない。

 こちらもブラと同じ色で統一をしているのか、ブルーのパンツが女性らしさと少女らしさの狭間で揺れてる、丸いお尻を包んでいた。

 そこまでで一瞬の硬直時間。

「はぁ……」

 肢体のいたるところに視線を感じるからか洋子は顔を伏せると、お湯に浸かってるのに“ぞくぞく”させる切なそうなため息を吐く。

 背中のホックに手を伸ばすと“カチッ”と、オトコなら条件反射で心躍る音がした。

 余裕のできた肩からブラのストラップを抜き取ると、左腕でふくらみを器用に庇いながら、すでに脱いであったTシャツの下に隠す。

「…………」

 うん。

 そんなことをしたところで、焦らしプレイでしかないが、この期に及んでも羞恥心に支配されてるのはポイント高い。

 で。

 そういう過程を選んでくれたおかげで、こういう余計に少女を羞恥で突き落とす、俺にとってはひどく美味しい結果が待っていた。

 パンツに手をかけ“もじもじ”とお尻を振りつつ、股間をカバーしながらなかば強引に身体を屈める。

 男物にはない“みょ~~ん”と伸びるゴムの感じがいやらしい。

「あ!?」

 その伸縮性のあるゴムに洋子が足を取られた。

 女の子には守らなくてはいけない場所が、基本としてむさいオトコとは、比べるのもおこがましいほど圧倒的に多い。

 一方でおっぱいを隠しつつ、その一方で“ちらちら”恥毛が見え隠れする股間を守り、腿をすり合わせ滑稽な姿でパンツを下ろしてる。

 そりゃコケもするさ。

 ああ可愛い。

 目撃したのがオトコだったなら、笑いのタネにするのも嫌なくらいの光景だが、女の子なら一生もので心に刻み付けるメモリー。

 この少女は運動神経が抜群にいいので、下手に体勢を立て直そうとするのもマズかった。

 まあ、

 しっかりと受身を取ってくれたのは良かったが、いや、俺には良いこと尽くめだが、洋子はヒップを突き出して四つんばいになってた。

「み、みみ、見るなっ!?」

 そんなこと涙目で言われても、牡生命体なら絶対無理に決まってるよ。――できる奴はいますぐちんちん切れ。

 そこにはあまりにも清楚な肉色が覗いていた。

 僅かにほころんでいる秘裂は可憐でありながら淫らな、少女という存在だけが咲かせることのできる美しくも儚ない花である。

 心から愛でねば。

 洋子の目の前の脱衣籠にはバスタオルが入っているのだが、教える気は“さらさら”なく、俺は脳内に繰り返しダウンロードし続けた。





[2293] 少女病 二十六話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:32



 理想の男女の関係というものを、あえてクルマで喩えるのならこうだ。

 マニュアルが望ましい。

 アクセルを踏みたがるやんちゃなオトコと、それを冷静に止める大人なブレーキのオンナ、そして二人の愛のバランスで成るクラッチ。

 二人で繰り出す長い道のりは決して晴天ばかりではない。

 雨の日もあれば雪の日もあるだろうし、夏場の渋滞の日だっておそらくあるだろう。

 しかし、こんな関係を続けていけるのならきっと、人生というドライブが、詰まらないと感じることはないはずだ。

 が。

 理想はあくまで理想である。

 そんな素敵な関係を構築するには男女ともに、酸いも甘いも経験している、老いすらもカッコいいとおもわせる年にならないと難しい。

 女子高生と比較してしまうとおっさんではあるが、俺だって世間的にはまだまだ、十年早いと頻繁に言われてる若輩者だった。

 ナイスミドル。

 そうなるにはさすがにさすがで走行時間が、自分でも笑っちゃうほどに全然足りてない。

 うん。

「…………」

 けれど、だ。

 首にしがみついたまま動けない少女とは決定的に違って、ここ三、四年、ペーパー気味ではあったが俺は一応運転免許を持っている。

 だから教習所の教官のようにして今回はアクセルを、路上教習一回目の無免な洋子に譲っていた。

 事故らぬよう危ないときのブレーキだけは俺が踏むが、スタートする心の踏ん切りは運転席に座る少女次第である。

 で。

「もうちょっとだけ、……待ってくれる?」

「別にゆっくりでいいぜ」

 こうして肩に押しつけている頭を、三度ほど離そうとしてる気配があったが、どれも見事に失敗して只今少女は絶賛エンスト中だった。

「…………」

 洋子に覚られぬよう視線だけを“ちらっ”と動かして時計を見る。

 部屋にはお泊りではなくご休憩で入ったので、タイム・リミットがそろそろ気にはなっていた。

 お互いに一糸纏わぬ肌と肌を合わせているので、火照りが冷めるということはなかったが、お風呂によっての効果は消えているだろう。

 早く温かくなりたい。

 そう催促するようにして勃起が“ぴたんぴたん”と、洋子のすべすべしてるオナカをしつこく叩いてもいた。

 とはいえ、

「そんなに頑張らなくてもいいからな。根性とか気合とかもいらないし。無理してあせって得するようなことでもないんだから」

 マジで本当にないんだから。

 いや、オトコの欲求としては是非ともアレしたいにキマってるが、女の子に恐怖心だけを残してしまうような無様な真似はしたくない。

 無理強いは少女のセックスに対する積極性を奪うだけだ。

 それでは意味がないどころではなく、百害あって一利なしというやつである。

 処女。

 ヴァージン。

 生娘。

 言い方は他にも色々あったりするだろうが、人によって色々あったりはするが、基本としてそうじゃなくなるとき痛いのは変わらない。

 聞くところによれば初めてでも、感じる女子はいるようなのだが、それを洋子に期待するのも酷な話である。

 なんだかわからないが俺のテクニック(……自分で言ってて恥ずかしい)に、少女たちは例外なくで皆可愛い知覚過敏ではあった。

 相性が良いのだろう。

 奇跡というワードがひどく陳腐になるくらいに相性が良いのだろう。

 露骨なほどご都合主義だが良いのだろう。

 だがたとえそうであったとしてもここで島田誠(27)は山本洋子(16)に、その素敵なご都合主義を期待する気にはなれなかった。

 が。

 まだ誰も踏み入ったことのない新雪のように穢れなき少女の、栄えある最初の穢れであり侵入者であり開拓者になる。

 これほどまでに牡生命体のロマンを刺激しまくり、下らない征服欲を満たしてくれることもめずらしい。

 なんせ先着一名様。

 二番手三番手には微塵の権利もない。

 たったお一人様だけが味わえるプレミアムでレアな、可憐な少女が捧げてくれるスペシャルな特典なのである。

 あたればアフターサービスでびっくり仰天、脳内フリーズ間違いなしな、二人に絶妙にそっくりの可愛い赤ちゃんまでついてくるのだ。

 …………

 最後のはちょっとこう人生的に、ややこしいので先送りするとしても、少女の身体の最奥に最初にオトコを刻み込める。

 お泊りだったならその魅力に抗えたかどうか。

 その自信がなんだか変な言い回しだが、満々で胸を張ってまるで自信を持って持てない。

 ケダモノっ!!

 と。

「…………」

 洋子に叫ばれてるのを想像すると、興奮しないこともなかったが、勃起にパワーがチャージされてたが、――やっぱマズいよなぁ。

 その場は良くても後味が悪くなることは疑いないし、そこで気づいても壊れてしまった少女との関係はもう後の祭りだろう。

 まあ、それに、大体だ。

 現実は厳しくてエゲツなくて容赦がない。

 少女の視点に立てみれば初めてのセックスなんて、夢描いてるロマンチックの前に、まずは血湧き肉躍る生々しい外科手術なのである。

 一回のオペで上手くいく人もいれば、二回、三回としなくてはいけない人もいるわけで。

 ヤブ医者ほどクランケの了解も得ずにオペを一発で決めたがる。

 ぶっちゃけ告白してしまえば俺にもそんな時代が、うん、結構ごくごく最近まであったりなかったりしてました。

「…………」

 白状してしまえばいまこのときも、牡ならば死ぬまで捨られない欲望が、堤防から溢れ出す“ぎりぎり”の水のようにありまくりです。

 幼子をあやすようにして“ぽんぽん”と、徐々にだが緊張を解きだしてる洋子の背中を叩いた。

 洋子のためというよりも自分にために叩いた。

 こうして少しでも父性愛らしきものを、手を変え品を変え喚起しておかないと、多分などではなく絶対に危ないだろう。

 触れ合ってる。

 肌と肌。

 乳首と乳首が触れ合ってる。

 生理現象と性的な興奮がおそらくハーフ&ハーフで、俺と洋子の乳首はお互いがお互いを、無意識に補完し合いながら硬くなっていた。

「…………」

 いや、それももうすでに、さっきまでなら、という注釈つきの話ではある。

 無意識などという言葉を遣うのは些か以上におこがましい。

 認めてしまおう。

 明らかに意識してるとしかおもえない動きで俺と洋子は、“むっくり”と自己主張している乳首を、呼吸を合わせて擦り合わせていた。

 ああ。

 ふと気づいたがここまでの時間は、洋子を落ち着かせるというよりも、心と身体がシンクロするための時間だったのかもしれない。

 他人の緊張を見て自分はしていないつもりだったが、他人の眼は自分以上に自分のことをよく見ている。

 肌を合わせているのならば尚更だった。

 お馬さんは繊細な動物で、乗り手の緊張を敏感に察知するが、それと同じことで洋子は、俺の緊張を俺以上に感じてくれてたんだろう。

 自惚れていた気はなかったのだが、やはりどこかで自惚れていたのかもしれない。

「誠……」

 テクニシャン面の横綱相撲で偉そうに待ち構えていた。

 いかんいかん。

 土俵に上げるまでのリードはともかくとしても、土俵に上がってしまえば力量に関わらずでお互い対等である。

 獅子は兎をではなく両方が兎。

 初体験の少女へ気遣いを忘れてはいけないが、変な遠慮は膠着の千日手を生じさせるだけである。

 こっちが欲望に素直に動かなければ、あっちだって素直には動けないだろうし、リードする気があるのならそれはこういうことだろう。

 と。

 理論武装には失敗した感があるが、洋子のしてもらいたいことと、俺のしたいことは一緒なのだということはよくわかった。

 よってここからは無闇にいいわけがましい言葉を、……もうここでは無意味な言葉なんぞをこねくったりしない。

 首に廻されていた腕をそっと外すと、洋子は小さく微かに息を呑んだ。

 ああ可愛い。

 僅かに身を引くと、乳首を硬く尖らせてるおっぱいを、ねっとり観察してから優しく手に収め、美しい輪郭をなぞるようにしてさする。

「んっ……」

 肩を震わせた洋子の二の腕に“ざっ”と泡が立つ。

 くすぐったそうにして、もどかしそうにして、少女は咽奥から愛らしい声を漏らした。

「ふ、んン」

 もっともっとおっぱいに、跡がつくくらい強い刺激が欲しい。

 少女のそんな慎みなくはしたない声が、やわらかな肌からは聞こえてきたが、聞こえないふりをして黙々と乳房を撫であげる。

 ……お願いだから。

 声帯を震わせるより明確な意思表示で、洋子はおっぱいを“ぐいっ”と、若干突き出すようにして俺から与えられる刺激を求めてくる。

 しこっている乳首が“ふるふる”と震えている様は、とても憐憫を誘うのだがここは堪えて放置プレイ。

 絞るようにしておっぱい全体の快楽神経を、やわらかな肉の頂点に“じわりじわり”ひとつも逃さず集めていく。

「あッ……や……ンッ!? ……ふぅ……ああ…………」

 握りつぶされて、釣鐘のようになっている先端で、痛々しいほど勃起してる乳首を見ながら、洋子の視線を意識しながら俺は微笑んだ。

 身悶えてる少女の乳首を指の腹ですり潰すようにして弄う。

 エロくいやらしくにやけている唇を開くと、俺は熟れたサクランボのような乳首を口内に放り込んだ。

 舌先で転がし唇をきつくすぼめて、激しく強く下品に吸い立てる。

「ンあぁッ……はぅッ……、んンッ……はぁ……んンッ、ひッ、あ……あぁんッ……ふぁッ、あッ……んぅッ!!」

 不意打ちで噛む。

 突然の鋭い刺激に洋子は身をよじり、思春期少女特有の甲高い叫びを上げて白い喉首を晒す。

 その姿に満足すると間髪入れずにアメとムチ。

 いたわるようにして可憐な乳首の周りを、淡いピンクのリングを、ゆっくりゆっくり丁寧に丹念に卑猥に舐め回した。

 円の中心にある突起は明らかに一段階も二段階も膨らみ具合が増している。

 舌の行方を追う洋子の瞳は熱く潤み、時折じれったそうにして、汗ばんだ肩を揺らし盛んに暗黙のサインを送ってきていた。

「どうした? さっきから随分と落ち着きがないな?」

 そうやって耳元で低く囁かれたことによって、洋子の背筋には青い感覚が走り抜けたようだった。

 痛みとも歓喜とも取れる濡れた声。

 乳首を“くりくり”つまみつつ、もう片方のおっぱいを丸ごと頬ばるようにしてバキュームし、舌先を細かくバイブレーションさせる。

 解放し噛み跡を“ぺろり”と舐め回してから、また乳首を口に含んできつく吸った。

「あンッ……、……だ、め、……んう……あ、んンッ!? ……もっと、……あ? ……んぁ!? してくれなきゃ、…………だめ……」

 洋子がいまにも泣きそうな声なのに、それでいながらもさらに、おっぱいへのはしたない可愛くも淫らな愛撫を懇願する。

 鷲掴みにして左右の乳首をいっぺんに口内に招いた。

 どちらに偏ることもなく分け隔てなく愛でると、グミのような弾力の左右の乳首を口の中で激しく擦り合わせる。

「うぁッ!?」

 お気に召したのか少女は快感を貪ろうと、おっぱいを押し付けるようにして身体を揺らしていた。

 好き放題に嬲られ蹂躙されたおっぱいは、“ぬらぬら”と光る唾液にコーティングされて、やはり憐れを誘いながらも堪らなく美しい。

 虜になっていた。

 洋子ではなく俺がである。

 まだまだいろんな少女を見てみたいし、まだまだいろんな可愛さを貪ってみたい。

「…………」

 形良く“すらり”と伸びている足に先には、洋子の大事にしてきただろう女の子の部分がある。

 膝小僧に手を乗せると、そのまま太腿にそって指先を滑らせていった。

 洋子が慌てて足を合わせるよりも早く、指先は女の子の大事な場所に潜り込んでいく。

 指先がとろりと熱いぬめりに包まれた。

 上下に動かし撫でる

 空気と少女のシロップが混ざり合う高い音が部屋の中に響く。

 薄い繁みの下で膨らみかけてた女の子の真珠に、こすり付けるように指先を揺らしあがら性感と羞恥を煽った。

 勇気を出して先輩に告白する大人しい後輩のように、包皮から“ちょっぴり”だけ顔を覗かせている肉の芽を“ぐりぐり”とこね回す。

 洋子は額に悩ましく汗をにじませ、息も絶え絶えの呼吸困難気味に喘いでいる。

 心配しつつも指先を“つぷり”とぬめる粘膜の中に潜り込ませた。

 一際大きな声を上げるながら洋子は、そのままがくりと後ろに倒れ込む。粘膜から指先が抜けるとひと筋の白い樹液が伝い落ちた。

 イッたようである。

 けれどそこで俺は流れを止めたりはしない。

 両膝を押さえつけて“ぐいっ”と開くと、脚と脚の間に頭を滑り込ませ素早く占領する。

 快楽に弄ばれてはいてもさすが少女、洋子は羞恥心はまだ優先させた行動を取ったが、俺は両手で腰を抱え込みか弱い抵抗を粉砕した。

 鼻先に迫った洋子の秘唇にデリカシーなどないぶしつけな視線を這わす。

 まざまざと女の子を眺めらていれる恥ずかしさに洋子が息を呑むと、恥毛を張りつけた花弁が“ひくひく”と艶かしく震えた。

 艶やかな花びらに“ぷにゅり”指を添えると左右に広げる。

 まだ硬さの残っている花弁の中心には、朝露のように澄んだ甘い蜜がいくつも小さな玉をつくっていた。

 舌で“ぺろり”舐めてから唇を近づけると、滲みでている雫を美味そうにすくい舐め取る。

 押しつけなが頬をすぼめて蜜を吸い、舌先を尖らせ“くるくる”円を描きつつ、秘裂の奥にまで“べっとり”唾液を塗りこんでいった。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……く……んぁッ……ぅああッ…………あ!? …………ああッ………んぁッ!!」

 洋子は激しく小さな子どものように“いやいや””とかぶりを振っていた。

 大きく卑猥な“ぴちゃぴちゃ・くちゅくちゅ”といった音が、少女の股間の辺りを発生源にして俺の鼓膜と心を叩いている。

 一度目か間を置かなかったおかげもあって、どうやら少女は早くも、二度目に達しようとしているようだった。

 しかし、

「あ……」

 俺の舌先は洋子の年頃にしては薄い草むらを掠めると、そのまま“すべすべ”している白いオナカをへその方に駆け上がっていく。

 可愛らしい小さなくぼみを舌先でくじりながら、少女の最も触れて欲しいだろう部位との間を何度も行き来させた。

「んぁッ、あ…………あぁんッ……ふぁッ、あッ……、んぅッ…………」

 洋子の“もじもじ”した堪らんリクエストに応えたわけではない。

 俺が堪えられなかっただけだ。

 舌は肌に唾液の航跡を“ぬめぬめ”と引きながら、おっぱいの谷間を通って首筋に吸いつき、赤くキスマークをつけてから口唇を貪る。

 ほんの一瞬だけは躊躇ったようだったが、自分の愛液と俺の唾液のカクテルを、洋子は“こくこく”と美味しそうに咽を鳴らした。

 その“うっとり”しているところにまたしてもアンブッシュ。

「ふぁ!?」

 やわらかくなっている秘唇に指を“じゅぷり……”とシロップを溢れさせながら沈み込ませる。

 膣の内壁を擦り刺激しながら領域を拡げてった。

「ンッ、ンッ……ふぅッ…………はぁ……んぁッ…………、あ!? …………ぁッ!!」

 口の端から艶かしく唾液と愛液のカクテルを零しながら、洋子はくぐもった呻きとも喘ぎとも取れる青い声をあげる。

 第二関節まで中指に、人差し指を重ねて沈めると、先端を鉤状に曲げながら、腹側の“ぷりぷり”としている新鮮な部分を強く擦った。

「うぁああ!?」

 洋子の身体がくの字に折れる。

 それでも優しく細心の注意払いはしても、しかし容赦せずに指先で内壁を擦り立てた。

「……やっ……ンッ……やはぁッ………、あ……んぅッ…………、はふぁ……ぅあッ……は………んぅッ!!」

 テンポを早くしていくと追いかけるように、洋子の秘裂から響く水尾とのテンポも上がっていく。

 俺はいやらしく微笑むとすっかり剥きあがって、“ぷっくり”膨らんでる真珠に、親指の爪を軽く押し当て“くりゅっ”と引っ掻いた。

 瞬間。

「はひッ!?」

 少女の身体を弄んでいた俺の指先に“ぴしゅ・ぴしゅしゅ”と二度三度と焦らしに焦らされた熱い飛沫が跳ね上がる。

 ぐったりとしている洋子の股間を中心にして、ホテルの白いシーツに黒い染みが広がっていった。

「…………」

 感動しつつベッドの脇にセットしてあったものに手を伸ばす。

 ゴムを装着。

 この間僅かに五秒。

 洋子はそれど頃ではないだろうが、この時間がおそらく大多数の女子が、ふと冷静にこの場のこの状況を客観視するんだろうとおもう。

 あんまり長い時間はかけない方がいい。

 ちなみにひとみさんから頂いたゴムはさすがに装着してなかった。

 あのゴムをまどかちゃん以外に使うのは、いくらなんでも失礼がすぎるので、洋子が風呂に入っている間にさっき自前で買った。

 焦らしに焦らされてのはむしろ俺だと言わんばかりに、我ながら度肝を抜くほど“びんびん”になっている勃起。

 ドーピングしたみたいに猛り狂っていて、ゴム越しであっても血管の浮き具合がわかる。

「……あ」

 ぼんやるとまどろんだ表情をしていた洋子もその威容に、初見でもないだろうに“ぎょっ”とした顔をして引いていた。

「…………」

 にじり寄る。

「…………」

 後退。

「…………」

 にじり寄る。

「…………」

 後退。

「…………」

 にじり寄る。

「…………」

 後退、はできずに洋子がベッドの端に追い詰められた。

 いい大人の男女がどったんばったとん、夜のアダルトなレスリングをするだけあって、ラブなホテルのベッドスペースはそこそこ広い。

 だが物にはもちろん限度があって、ネコを想起させる洋子の小さな身体でも三度が限度だ。

「だいじょうぶ。こんなんだけど無茶はしないよ。洋子が苦しむのを眺めながら、興奮するハードなSの成分は俺にはない」

 …………

 ソフトにならあるんだけどそれはわざわざ言うこともないだろう。

 まあ、どっちにしても今夜に限っては、ハードだろうがソフトだろうが、Sな面の島田誠(27)を活躍させるつもりは極力ないしな。

 しばし見つめ合ってから、

「…………」

「……うん」

 なにも言わず洋子が“こくんっ”と頷いたので、俺も小さく頷きを返し腰をゆっくりと進めた。

 熱した鉄の棒みたいな硬さを掴んで角度を調節する。

 粘膜に触れると勃起の先端が妙に優しく“ぷにょぷにょ”していて心地いい。

「んっ!?」

 洋子の短い声。

 勃起から伝わってくる押し割るような感触。

 傷口に突っ込んでるようなもんだからな、考えてみればオトコって生物は、オンナって生物にひどいことしてるよな。

 と。

 そんなことをおもってみたのはほんの刹那だけで、俺の思考は即座に蕩けるような感覚に夢中になっていた。

 いままで指で散々慣らしておいたのもあってなのか、亀頭の部分こそ洋子は顔をしかめたが、それ以上は痛みのサインを送ってこない。

 ただ当然だが気持ち良さそうな顔をしてくれたりはしなかった。

 スマンっ!!

 心の中だけでだが大音量で謝る。

 客観的な視点もよく映る鏡も一切合切必要なくで、俺も洋子と同じようにして、顔を痛そうにしかめているのはわかっていた。

 けれどその理由は残念なことにかなり違ってたりする。

 まだ半分も猛り狂っている勃起は洋子の粘膜に進入していないが、それでもドえらく素晴らしくヴァージンの締めつけが気持ちがいい。

「くぉ……」

「だ、だいじょうぶ?」

「……おお、だいじょうぶ、だぜ」

 逆に路上教習にでたばかりの無免娘に心配されてしまった。

 ここで無粋で野暮なことを言ってしまえば、フィジカル的には初めての娘より、鍛えられてる水商売の人の方が気持ちいいだろう。

 でもメンタルの影響力って凄い。

 お金でそうする関係と、好き好き大好き超愛してる、な関係でする行為では気持ちよさが歴然だ。

 次元が違う。

 とはいえ初めてならこんなところか。

「……うッ……ふ、……ちょ、……ううん……あ、……ま、痛い、……ちょ、痛い、……痛いの…………ほんとうに、……痛いんだって」

 もう少し進めるかなと、腰を前に突き出すと、粘膜の壁が激しい抵抗をして、洋子が涙目で痛みを訴えてくる。

 この気持ちよさには先があるのはわかっているが、今回は橋頭堡を作った、そんなところで満足しておくべきなんだろう。

 身体が小さいからなのかどうなのか、洋子の膣の中は素晴らしく“みっちり”していた。

「痛いの……お願いだから……、ほんとうに……痛いの……」

「わかってるって。これ以上はしないよ」

 しなくても充分気持ちいいし。

 キザったらしいが誰が見てるわけでもないので、腕立て伏せのように手を置くと、洋子のおでこに“ちゅっ”とキスをして安心させる。

 二、三歩離れて自分のしている格好、冷静になってを眺めてみれば、かなりなレベルで間抜けなのは考えないようにした。

「ふ、くぅ、うう」

 処女にとってははじめてなど苦行でしかあるまい。

 ここは早くイッてやるべきだろう。

 決してスピーディーに俺のナニかが勢いよく漏れてしまうとかそういうことではない。

 粘りっ気のある“ネチョネチョ”したシロップだけではなく、勃起に“ぬるりぬるり”とした感覚を伝えてくるのはやはり血だろう。

 粘膜の海。

 その浅瀬をジャブのような動作の小さい速い連打で我武者羅に叩きまくった。

 ストレートやアッパーを思う存分打ちたい。

 なんかこういろいろローリングとかして、バレルじゃなくてデンプシーなロールとかをカマしてみたい。

 しかし、

「……い、んン、はぁ……くぅ」

 組み敷いた少女の歯を食い縛っている光景を目にしながら、それができるほど俺は幸いドSでもなければ鬼畜でもなかった。

 機会もチャンスもまたある。

 左を制す者は世界を制すともいうのもあることだしな。

 リターン・マッチでは絶対に必殺ブローを叩き込むことを夢見ながら、ジャブをひたすら打ちまくりつつ俺は1Rで壮絶にKOされた。

 後悔はない。

 デビュー戦の相手と倒し倒され最後はKO負けではあったが、いい試合ではあったとあとから振り返れる内容だった。

 程なくしてご休憩の時間が来たので、二人並んでの花道、ではなく帰り道、それを洋子の姿が誰よりもナニよりも雄弁に物語ってる。

「なんだかナニかまだ挟まってる気がする」

 隣りを歩く少女はちょっぴり格好悪いけど、最高に可愛らしいガニ股だった。





[2293] 少女病 二十七
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:33



 絶対に負けられない戦いがそこにはある。

 なにもこの文句は、サッカーだけに限った話でもなければ、某局の専売特許というわけでもない。

 普段の何気ない日常の中にも、ひっそりとその瞬間は潜んでいる。

「……見て」

 と。

 俺は声が震えないよう注意しながら、“ずいっ”と真っ赤にカラーリングされている割り箸の先端を、四人に印籠のように見せつけた。

 金曜日の夜九時三十二分。

 島田誠宅。

 明らかに嫌そ~~うな顔をしている者が二名。

 頬を“ぽりぽり”と掻きつつも、嬉しいような困った顔をしている者が一名。

 この遊戯のルールがわかっているのかいないのか、いつもと変わらずで“にこにこ”している者が一名。

 王様ゲーム。

 その発祥の地がどこだかも知らなければ、考案者が誰なのかも無論わかりはしない。

 しかし、これだけは言える。

 素晴らしいっ!!

 なにがこのゲーム素晴らしいかといったら、誰でも考えられそうなアイディアではなく、誰も口にできそうもない欲望の剥き出し度だ。

 理性を取っ払えば取っ払うほどに楽しくなれる。

 たった割り箸一本のチョイスだけで王様になった者に、指名された者は無条件で従わなくてはならない不条理システム。

 勝ち組と負け組。

 天国と地獄。

 富める者と貧しい者。

 努力という欠いてはならない重大な要素こそはなかったが、二十一世紀の日本社会、その端的な縮図といえないこともないだ、……ろ?

「三番の人が……、王様に――」

 確実に少女たちと俺のテンションには格差があったが、現実の社会がそうであるようにセレブなおっさんは堂々それを無視した。

 気づいているのに知らんぷりというのは、これはもう同罪というか同列というか余計に性質が悪いだろう。

 うん。

 なにしろ自分で言っちゃってるんだから間違いない。

 とはいえ、まあ、まだ序盤なので、ここは軽くジャブから入ろうか。

 若干のアルコールが少女たちにも入っているが、理性のシールドジェネレーターは持続時間が切れてない。

 もう少し不可を掛けた方がいいだろう。

「そうだなぁ、よし、俺が王様をやっている間はず~~っと、正面からダッコちゃんみたいなポーズで抱きつく」

 このぐらいであればそれほど(どうせもっとエロいことを言われると思ってたろう)少女たちも、抵抗なく命令に従ってくれるはずだ。

 ヤクザや教祖の手法である。

 あらかじめされていた最悪の想像よりも、それが低い位置であれば、どう考えても悪な意見なのに結構通ったり通らなかったり。

 人間というのはなんだかんだと言ってみても、どこかでは妥協している生き物ということだ。

 三番の割り箸。

 集まる視線を浴びながら仏頂面で“ふりふり”している洋子でもそれは変わらない。――だって人間だもの。似ていてもネコではない。

「こういうゲームだって、……もちろん知ってるよなぁ、女子高生の山本洋子さん」

 ちょっとだけからかうように言ってみた。

 誰に喧嘩を売ったのかは、洋子に教えてもらわなくとも、重々わかりすぎるくらいにわかっている。

 でも、

 そうした方が洋子も誘いに乗りやすいだろうという計算も、洋子が折れるなら他の少女も折れるという計算もあったりなかったりした。

「抱きつくのが駄目なら、別にこれを付けてくれるだけでもいいんだけど?」

 こんなこともあろうかと、というのはストレートに噛み砕いて訳せば、こんな事態を待っていたである。

 洋子の碧の瞳が“ぎらり”と光ったが、逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だと、内向的なチルドレンばりに心で唱えながらネコ耳を置いた。

 最近はリヒターさんのお店の常連である。

「どっちがいい?」

 他人の嗜好とは面白いものだ。

 もし俺が可憐な乙女であり、そしてこの状況だったなら、どちらを選ぶかなど、イチイチ迷うようなことではない。

 はじめから問題として二択が成り立たないだろう。

 人前でオトコに抱きつくことの方が、普通は恥ずかしいにキマっているし、他の三人だったならそういう答えを避けるに決まっていた。

 というよりもそれが本心であれ建前であれ、少女として抱きつくという答えは選べない。

 だが、

 洋子なら選べる。

 ネコという生き物は大好きらしいのだが、自分がネコ扱いされることを洋子が病的に嫌っているのは、すでに周知の事実というやつだ。

 だから渋々選んだのだという建前が、なんにせよで他の娘よりも、洋子は遥かに容易につくりやすいのである。

「誠、あとで覚えてなさいよ」

「忘れるわけないだろ」

「……バカ」

 今日の洋子のファッションはキュロットだったので、ある程度は大胆な格好になっても、パンツが見えてしまうようなことはない。

 それでも少女がするにはどうかというくらい、“がばっ”とはしたなく脚を開いて、胡坐で座っている俺を跨ぎ全身で抱きついてきた。

 相変わらず軽い。

 そしてその肌は“ふんにゃり”とやわらかくて、髪からは“ふんわり”といい匂いがする。

 俺からも、みんなからも、顔を見られたくはないらしく、首筋に手を廻して力いっぱいで“ぎゅっ”と抱きついていた。

 両足も胴に廻される。

 と。

 この間のことでも思い出したのか、腰だけが“ぴょこんっ”と引けているのがまた可愛らしい。

「…………」

 眼が合った。

 不機嫌というほどではなかったが三者三様、ちょっとだけ、三人が三人とも、抱き合う俺と洋子に面白くなさそうな顔を向けてくる。

 若干、少女たちの妙な迫力にびびりながらも内心、上手くいったと俺は“ぺろっ”と舌を出していた。

 ストレートやらフックやらアッパーやらがこれでやりやすくなる。

「じゃ、コーチ」

「お、おう」

 ピンクだゴスだの服装こそ相変わらずだが、長い“ふわふわ”の髪はさすがに暑くなってきたので、ここのところは後ろで結っていた。

 そのおかげというのか、そのせいというのか、まどかちゃんのチャーム・ポイントは最近一層輝きを増している。

 五本の割り箸を握って“ずいっ”と、前傾姿勢で身を乗り出し突き出してきた。

 ちなみにちゃぶ台は畳まれ脇に寄せられているので、おでこな少女の圧からクッションを置いてくれる防護壁はゼロである。

「二回戦とイキましょうか」

「よしゃ、イこうか」

 良々。

 どうやら少女はやる気になってくれたようだ。

「王様だ~~れだっ!!」

 無闇に元気な掛け声で俺が音頭を取ると、まどかちゃんの握る割り箸の束に、みんなが手を、洋子も顔を伏せたまま後ろ向きで伸ばす。

 抜くと全員すかさず自分の割り箸の色or番号を確認した。

 素早く顔を上げる。

「よしっ!!」

 そして俺は力強くガッツポーズ。

 残った一本を確認したまどかちゃんが最後に顔を上げ、俺の得意げに振られている端っこが赤い割り箸を見た。

「なんでよぉ!?」

「ま~~た島田さんかいな?」

「引きが強いですねぇ」

「…………」

 十人はいなかったが十人十色のそれぞれに、悔しさや驚きや関心や沈黙など、表現はそれこそ色々だった自分のポジションを把握する。

 固唾を呑んでキングからのリクエストを待っていた。

 ええ。

 只今午後十時十一分現在。いつも通りに性懲りもなんてありもせず。島田誠は絶好調で調子に乗っている。

 もっとも王様だのなんだのというキーワードで、性悪上司の言葉をにやにやした顔の裏では“ぎくり”と思い出していた。

 主と従。

 表面上はいくら俺が主に見えていても、本質的には少女は従ではないのである。

 義務でそういうことをする気はさらさらでないし、少女たちに注ぐ愛情にも偏りはないのだが、偏りを感じさるだけでもアウトだった。

 俺には地位があるわけでもなければ、名誉があるわけでもなく、当然だが財力だって胸を張ってありはしない。

 異世界に召喚されるような高校生みたいに、特殊な能力もなければ、彼らなら誰でも無条件で持っている若さすら持ってなかった。

 …………

 いや、これ以上自分を卑下する、ナルシストと紙一重の趣味はないが、事実は事実として揺るぎ難く揺るぐわけもなくある。

 俺なんてどうせ……。

 などと鬱陶しく自虐に走ってもいけないが、

 俺って天然のジゴロだな、ふっはははははは~~。女子高生チョロいぜっ!! 俺がご主人様だぞっ!! ご奉仕しろ少女たちよっ!!

 みたいにアホ丸出しにして、下衆に自惚れてもいけない。

「…………」

 平等に愛でねば。

 リアルな社会で遣えば胡散臭い言葉ではあるけれど、ハーレムなんてドリームでファンタジーな世界では愛と平等は同列の尊い言葉だ。

 ふざけた告白を少女たちが受け入れてくれたからには、俺は真面目にこのふざけた世界を守っていかねばならない。

 少女たちへの平等な愛を実践していかなくてはならないのだ。

 俺だけが抱き心地いいなぁとか、盛り上がっているだけでは駄目なのである。

「三番の人が……、一番の人の――」

 ああ、ここ最近我ながら演技が上手くなってきたもんだ、と自画自賛しつつ、洋子の後頭部を“なでなで”と撫でながらタメに入った。

 てっきり『王様に――』とでも言うと思ってた少女たちの、ややびっくりしたような注目の視線が熱い。

「パンツをじっくり見て、それを王様に報告する」

 凄かった。

 言ったその瞬間にはもう衝撃の波が俺を中心にして、少女たちの身体をニュートリノのようにして突き抜けている。

 そして、

「……変態」

 耳孔に“ぼそっ”と囁かれる洋子の声で、俺の身体にも快感の衝撃が突き抜けた。

 身じろぎしたからなのか頬と頬が“すりすり”と触れ合って、シャンプーと少女の匂い香る髪の毛は鼻孔を嬲りくすぐってくる。

 ダッコしてどっかに行っちゃうとこだ。

 まどかちゃんの視線と綾乃ちゃんの視線が、互いを窺うように交錯しているのを見ていなければ、このままどっかにイっちゃうとこだ。

「あ、あの、さ、コーチ」

「なに?」

「そ、それって、その、パ、パンツ、パンツは、あ、綾乃にだけ見せれば、それでこれってオーケーでいいのね?」

「いいよ」

「え? わたしがただ見るだけで、それだけでもいいんですか?」

「なんの驚きかはあえて聞かないけど、それだけでいいよ、綾乃ちゃん。まあ、まどかちゃんがじっくり見せてくれるんなら見るけどね」

「そんなの見せるわけないでしょ。ほら、綾乃」

「あ、はい」

 綾乃ちゃんを“ちょいちょい”と自分の傍に呼び寄せると、俺に背中を向けてまどかちゃんはスカートの裾を掴む。

「なにを一体期待してるのか知らないけどね、女の子の下着姿なんてお互い、学校の更衣室とかでほとんど毎日で普通に見てるわよ」

 と。

 そんな台詞の割にはなかなか、まどかちゃんはスカートを捲くろうとはしない。

 そりゃそうである。

 シチュエーションの違いというのは恐ろしく素晴らしいものだ。いつも見慣れてるものが、それだけで即座に魅慣れないものに化ける。

 有名な例としては下着と水着の布面積とかがあるが、その下着を同姓に見られるシチュエーションというのもそのひとつだ。

 うむ。

 見られるというのも些かニュアンスが違っていて、この場合より正確には下着を自分から見せるである。

「…………」

 スカートを“えいやっ”と捲られたところでパンツはもちろん、角度的にはまどかちゃんの表情もどうやったっても俺からは見えない。

 しかし、である。

 自分の眼球で直に見るよりも、他人の眼球から間接で得た情報の方が、愉しく面白くエロく素材が味つけされる場合もある。

 少し首を傾けると正座している綾乃ちゃんの表情が見えた。

 達人といっていい武術の腕を持つ綾乃ちゃんが、正座で苦しい顔をするとは思えないが、“じわりじわり”と表情は赤さを増していく。

 視線が上にいってから下に、下にいってから上に、その行き来が繰り返されるたびに色の濃さを増していった。

 膝に乗っけて握られている拳が、“きゅっきゅっ”と結んで開いてをしている。

 四人の少女たちの“奏でているドキドキ”が聴こえてくるようだった。

 当事者であるまどかちゃんと綾乃ちゃんだけでなく、紅葉ちゃんやの頬も真っ赤だし密着してくる洋子の“ドキドキ”は伝わっていた。

「ゆっくりでいいからね」

 言外に『さぁ早く捲ろうよ』の意味を込めて、フリーズしてしまっている少女に声をかける。

 するとコマンドワードを打ち込まれたみたいにして、拍子抜けするくらいに“スルスル”とスカートが持ち上がっていった。

 その様子に俺はちょっと心配になる。

 羞恥心から平常心にシフトをチェンジされてしまうと、それはそれでもう一度というのもあるが、やはりそこに戻すのには面倒だった。

 手間暇を惜しむつもりはないが、四人もいるとどうしたって、一人辺りに掛けられる時間は短くなってしまう。

 至極残念ではあるのだが、焦らしつつも効率よくイキたい。

 が。

「……ああ」

 その心配はどうやら杞憂というか、まるでその必要はなさそうだった。

 少女の後姿。

 スカートの裾を“ちょんっ”と持ち上げている、二の腕から肩のラインが細かく“ぷるぷる”と震えているのを発見し胸を撫で下ろす。

 良々。

 これならこのまま次のステップに進んでしまっても、俺も少女たちも愉しむのに何らの問題もあるまい。

「綾乃ちゃん」

「は、はい」

「まどかちゃんのパンツはどんな感じ? フリルがあるとか柄がこうとか、色とかプリントがあるとか、意外にカットが際どいとかさ?」

 誘導GOっ!!

 これで意識はせずとも無意識に、綾乃ちゃんの視線はそこにイってしまうだろう。

「え、あ、あの、そ、そうです、ねぇ、えっと」

「無理にその場で言ったりしなくてもいいよ。綾乃ちゃんがじっくりと見たあとで、こっそりと俺だけに報告してもらうから」

「……はい」

 消え入りそうなか細い返事があってから約三分後。

 アルコール以外で顔を真っ赤にさせ、缶ビールを一気飲みしている少女を見ながら、俺は“ひそひそ”綾乃ちゃんに耳打ちされていた。

「ふむふむ」

 まどかちゃんの呑んでいるペースはいつもより明らかに速い。

 普段から“バァ~~ッ”と呑んで“ダァ~~ッ”と寝る、ティーンに在りがちな呑み方だが、今夜はダウンをするのがさらに早そうだ。

 倒れないようにと大人的に観察しながらも、少女の恥じらいの赤も牡的に脳内HDDに灼きつける。

 耳に嗅覚はないのに“ぼそぼそ”と綾乃ちゃんに囁かれていると、甘い感覚に身体が包まれて視覚から嗅覚から快楽が走っていた。

 友だちの下着の描写はやはり、本人も傍にいるので言い辛いらしく、声は上ずりつっかえつっかえになっている。

「…………」

 リアリティというか生々しいというか、目の前で“ぷんぷん”しながら呑んでる娘は、そういうパンツ履いてるんだと思うと結構キタ。

 どうでもいいが苦しい。

 気のせいか俺が盛り上がれば盛り上がるほど、洋子の胴をロックしている両足が“どんどん”締まってきてる気がする。

 もっともこの感じはこの感じで、別段嫌いではないのだけれど。

 で。

「三回戦といこうや」

 一人だけ手持ち無沙汰になっていたのか、ちょっと不機嫌気味に、今度は紅葉ちゃんが割り箸を束ねて身体ごと拳を突き出してきた。

 う~~ん。

 しかし、

 この場合は拗ねているという表現の方がより正しいのかもしれない。

 まどかちゃんもそうだが大人っぽい雰囲気のある娘は、こんな子どもっぽい表情をされるとかなり俺のストライクゾーンだったりした。

 逆に子どもっぽい娘の背伸びしてしたがる、無理に大人ぶろうとする仕草とかも大好物である。

 ……あれ? なんでもいいのか?

 まあ、それはともかくとして、我も我もと我先に、紅葉ちゃんの握っている割り箸の束に次々に手が伸ばされていく。

 うん。

 やっと場の空気が暖まってきたというか、ここにきてどうやらみんなが、俄然やる気になってくれたみたいで俺は嬉しいよ。

 そうなってくると自然、

「せぇ~~の、王様だ~~れだっ!!」

 誰も頼んでないのに勝手に率先して音頭を取る俺の声も、余裕で一オクターブは上がろうというものだ。

 変声期前のような甲高いソプラノが出ている。

 ウィーンの少年合唱団にも入れるほどの美声ではあったのだが、カストラートは去勢をしなくてはならないというのだけがネックだな。

 ご免蒙る。

 で。

 俺の“びんびん”になっているアレが、洋子が触れるたびに腰を“もぞもぞ”させるアレが、切られるか切られないかなどはどうでも、

全然良くはないがないのだが、ここはひとまず脇に置いておくとしてだ。

「……ふむ」

 マグレというのは二回はあっても、三回はないということか、残念ながら今回は俺は王様ではない。

 番号は一番である。

「よっしゃっ!! ウチが王様やっ!!」

 どうやら残り物には福があるということか、テレビカメラに映っている大阪の悪ガキみたいに、紅葉ちゃんはピースサインをしていた。

 こういうのもやっぱりで、島田誠(27)のツボだったりする。

「……チッ」

 少女たちの言葉にではなく、背中で感じる視線に促されてか、洋子が身体を離すときの、俺にだけ聴こえる舌打ちもツボだった。

 それぞれがそれぞれ、カテゴリーは同じであっても異なる可愛らしさ、異なるツボを日々呈してくれている。

 それだけでも俺は幸せ者というやつだった。

「二番の人が……、四番の人の――」

 周囲の反応を逐一見ながらの探り探りで、王様なのに妙に気配りをしながら、紅葉ちゃんは一瞬だけ“ちらっ”と俺を見て命令をする。

 思い切れなかった自分にちょっとがっかりした、とそんな風に俺はその視線を勝手に受け取った。

「肩を揉む」

 なるほど。

 わからないでもない。

 確かにこのゲームの建前ではなく本音の部分、欲望を公認で剥き出しにできるという趣旨に、このコマンドは真っ向勝負で反している。

 俺が復権した暁には王様のなんたるかを、この恥ずかしがり屋さんのポニー少女に教えてやろうと誓った。

 ほのぼのと洋子が綾乃ちゃんの肩を揉むほぐした五分後。

「あ、せぇ~~の、王様だ~~れだっ!!」

 今夜の俺は押しも押されもせずの、動かざること山の如しな、九州は大分県の中流家庭出身な終身テンション王である。

 この玉座は誰にも譲らん。

 誰も奪いに来ねぇよというご意見は、至極もっともではあるが断固として却下。

 暴君である。

 だがそんな独善的ではあるが強い信念が実ったのか、アホの一念岩をも通すというか、言いたいことはわかるが言ってることが……。

 相変わらず自分でも自分がわからないな。

 まあ、それはそれで、それなりに、別にいいんだけどさ。

「よっしゃっ!!」

 返り咲ければ文句はない。

 ネロや始皇帝やピョートルやエカテリーナ、ルイやアクバルやアンリ、織田信長に豊臣秀吉なんでもござれな独裁政治の始まりだった。

 島田氏に在らずば人に在らずな、俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものな、この世の春の到来である。

「王様が……、二番の人の――」

 あんれ~~? ど~~してなんだろうか?

 と。

 とりあえずお約束で惚けてみるが少女たちの、どうせろくでもないこと言うんでしょ? みたいな視線を快感に変えてしまう俺は変態。

 そしてこのように、なんであっても開き直ってしまった奴に、脳内麻薬でてる奴に怖いものなんて今更でありゃしない。

「おっぱいをも、……揉みしだく」

 最初はそのまま『揉む』と言おうと思っていたのだが、何故だか『揉みしだく』とちょっとだけ言い方にもこだわってみた。

 少女たちにストレート。

 ピッピッとジャブを打ったあとで、紅葉ちゃんの軽く打ってきたパンチをシュッとかわして、カウンターで豪快に叩き込んでやったた。

「え? あ、あの、その、……は、はい?」

 十数分前と似たような反応をしている。

 二番の割り箸を持っている少女、綾乃ちゃんはめずらしく“おろおろ”と、左右の友だちに助けを求めるように忙しく首を振っていた。

 右にまどかちゃん。

 左には紅葉ちゃん。

「…………」

「…………」

 左右とも目を伏せ沈黙で応えて、この場面での役に立たなさぷりを存分に発揮している。

 そして洋子。

 左右の二人に早々に見切りをつけた綾乃ちゃんは、いつものように期待を込めて対面のネコ娘を見るが無駄である。

 悪いが先手を打たせてもらっていた。

「……こんなんであたしが、誤魔化されるとか思ってんの?」

「思ってないよ。誤魔化してるわけじゃないもん。洋子が二番だったら王様はこうしてるってことさ」

「ふ~~ん」

 真っ赤な顔で不貞腐れたように“ぷいっ”と目を逸らす洋子は、ヘルプの信号を送っている綾乃ちゃんをまるで見てはいない。

 二番の割り箸にみんなの視線が集中したその瞬間に、やわらかなほっぺに“ちゅっ”と軽くキスをした。

 自画自賛ではあるが唇でないのが、ほっぺなのがここではミソである。

 服越しとはいえ肌を合わせていただけに、他の三人よりも、ゲームへの洋子のテンションというのかモチベーションは高くなっていた。

 ご機嫌さえ損ねなければ、ゲームを滞りなく進めていくうえでの、この娘はこれ以上はない心強い味方である。

「では、いざ参る」

 発進だ。

 達人のように“ゆらぁ~~り”と立ち上がると、まだ整理のできてないっぽい綾乃ちゃんの、後ろに回り込み寄り添うようにして座る。

「し、島田さんっ!?」

「ああ、大丈夫だよ。別にみんなの前で服をひん剥いて、そうしてから揉もうってわけじゃないから」

 それでナニが大丈夫なのかの、そこまでを説明をする気は一切合切でない。

 安心という言葉はプライス・レス。

 理由だの意味だのをやたらと求めている人がいるが、そんなもなってもなくても納得させる説得力さえあればそれでいい話だ。

 納得できたのか、説得力があったのかは、その場その場の個人の自己責任で判断しろ。

 綾乃ちゃんは自分で選んだ行動の責任、少なくとも抗おうとすれば抗えた行動を、その結果を人の所為にするような娘では絶対にない。

 友だちがしてるから。

 そんなノリだけで流されてくれる娘ではない。

「……まずは、う~~ん、そうだなぁ、両手を膝の上に置いてくれる?」

 綾乃ちゃんは“ぎゅっ”と可愛らしく、羞恥心を源とする涙を滲ませて瞳を閉じる。

 毎度ではあるが少女の恥じらいは堪らんな。

 肩口から顔を出し“ぷるぷる”睫毛を震わす綾乃ちゃんの横顔を堪能してから、だらしなく“にやにや”して左右の乳房に視線を注ぐ。

 それはじっくりと熱心に観察すれば“ぎりぎり”で、おっぱいと呼べないこともないかなという代物だ。

 けれどその“ぎりぎり”の境界線、昼でもなければ夜でもない、黄昏のおっぱいはおそらく来年は見られない奇跡の存在だろう。

 やわらかさもどこか硬い。

 大きくても小さくても、少女のおっぱいのそれは特徴ではあるが、綾乃ちゃんのおっぱいは特にそれが顕著なのである。

 まだまだオトコの都合で乱暴にしてはならない。

 そういうのを快感として身体が認識するのに、いま少しかいま多しかはわからんが、気長に優しく愛でていくことがやはり必要だろう。

 カジュアルなカッターみたいなシャツの裾から手を差し込み、少女のおっぱいに欲望で“わきわき”する魔指を伸ばした。

 その途端、

「あ……」

 綾乃ちゃんが眉をひそめて小さく、ほんの小さくだったが声をあげる。

「大丈夫だよ。俺が怖いことしたこと、……なかったろ?」

 あれ?

 どうだっけ?

 などと思いはしたものの残酷な真実なんかより、ここでは優しい嘘が全面的に優先されるシーンだ。

「ね」

 なにが『ね』なのか自分でもわからないが、オトコなら自然に出てくるもので、もしかしたらDNAに刷り込まれてるのかもしれない。

 しかし、まあ、とりあえず、綾乃ちゃんは安心してくれたようで、声と同じように小さかったが“こくんっ”頷いてくれる。

 が。

「ね」

 またすぐに綾乃ちゃんは“ハッ”と不安げな顔をすると、俺を“うるうる”と潤む瞳で見てくるので『ね』の二発目を早くも投下した。

 肌を滑った指先がちょっぴりだが、ブラジャーの下に潜り込んだからである。

「ね、ね、ね」

 他の三人の少女は視界に入れないようにしていた。

 連打連打で『ね』爆弾を投下している俺は、きっと百年の恋も醒めるくらいのアホに映っているだろう。

「……はい」

 だがその甲斐あってなのかどうなのか、その辺りはメチャクチャ怪しさてんこ盛りではあったが、とにかく綾乃ちゃんのお許しが出た。

 ふぅ~~、『ね』スゲェ!!

 ってなことを無駄に感心しながら“もそもそ”と、外からのシルエットを無闇にやらしくして、ゆっくり頂に向けて指を滑らせていく。

 程なく先端にたどり着くと、頭の中でイメージを思い起こしつつ、人差し指の腹で薄桃色の乳首を軽く擦る。

「はぅッ!?」

 綾乃ちゃんは不意に肩を震わせると、退路などどこにもない、強制的な背水の陣になっているのに身を引こうとした。

 ウォーミング・アップばっちりで、“びんびん”になってる勃起にお尻が押しつけられて気持ちがいい。

 左右のふくらみ全体を手のひらで押すようにして、ゆっくりと揉みしだいていく。

「ンッ、ンッ…………ふぅッ……、んぅ……はぁ…………」

 こそばゆいのか綾乃ちゃんは二の腕に鳥肌を浮かべつつ、小ぶりなお尻を右に左に振って意図せず勃起にも快感のお裾分けをしていた。

 そうやって愛撫を続けるうちに、俺の手の中で徐々に期待していた変化が現れてくる。

 汗ばんでるおっぱいの中心で、ここも当然のように小さな突起が、慎みなく“むっくり”と勃起してきていた。

「ンあぁッ……はぅッ……、んンッ………あぁんッ……ふぅッ……ふぁッ……、ひッ……ぁッ……あ、ンぁッ……ふ……んぁッ…………」

 ところどころに熱っぽい吐息が混ざるのを見て、俺は唇の間から舌を覗かせると、綾乃ちゃんのうなじに“ぺちゃり”と這わせる。

 上下に、左右に、BAに、円を描くように唾液を導くと、俺は少女の肌の上をかすらせるように、丸い肩にまで口唇を降ろしていった。

「くぅんッ!?」

 よもやそんなところまで舐められるとは思わなかったのか、綾乃ちゃんは意外そうな声を漏らしながら“ぶるり”と身体を振るわせる。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……あ………あ!?、……ああッ………ふぁッ!!」

 少女の反応がいきなり急激なレベル・アップをした。

 俺が綾乃ちゃんの視線を追ってそちらを見たのと、洋子が慌てて“ささっ”と明後日の方向を見たのは同時だった。

 見なくとも気配だけでわかる。

 残りの二人もその必要はないのに“ざざっ”と、仲良く方向まで合わせると、洋子と同じように真っ赤になり明後日を見ているはずだ。

「…………」

 見なくとも重々わかってはいるんだが、わざとじっくり見てやったりなんかして。

 綾乃ちゃんの肩に顔を乗せたままで、“じ~~っ”と真っ赤首筋を、俺の視線を感じて頬を“ひくひく”させている紅葉ちゃんを見る。

 その間も指はしっかりとフル稼働していて、綾乃ちゃんは鼻を可愛く“ふんふん”とさせていた。

「紅葉ちゃん」

「…………」

 返事はない。

 どうやらポニー少女はシカトする構えのようだ。

「…………」

「…………」

「…………」

 チュッ。

「ひゃ!?」

 首筋を押さえてポニー少女が俺の方を向いたときには、今度は俺がシカトするようにそっちを見ないようにする。

 しばらく放っとくとなんだかわからないが、紅葉ちゃんは首を押さえ“きょろきょろ”したあと、そのまま俯き小さくなって沈黙した。

 面白いなぁ。

 と。

 視線を向けぬまま紅葉ちゃんに意識を向けていると、

「はひッ、ひッ……あッ……はぁッ……ン……、ふぁッ……ひッ……ぁッ……あ、ンぁッ……はぁ…………ふぅ…………んぁッ…………」

 こちらに集中してくださいとばかりに、綾乃ちゃんの声のテンポとトーンが上がっていく。

 俺は改めて綾乃ちゃんに集中し直し、再び首筋に舌先を這わせながら、快感に粟立っている乳房をそっと撫でまわした。

 まだ“たぷたぷ”させるには心許ないおっぱいを、ちょっと強引に乱暴に“たぷたぷ”とさせてみる。

「あ!? …………ああッ、ふぁッ!!」

 そして捻ってみた。

 少女の可憐な乳首には痛みに近いものが走っただろうが、艶のある声はそれとは異質のものに身体が疼いているのを俺に伝えていた。

 服の上から俺の手を掴んでくる。

 でもそれは制止するためのものではなく、『もっとして……』と言ってるように思えたのは、自惚れなのだろうが自惚れとは思えない。

「……はぁ」

 それからさらに五分、いや、十分くらいはそうしていただろうか。

 指の力を緩めおっぱいを解放すると、綾乃ちゃんは最後に切ない吐息を漏らして、俺の厚くもない胸に“どさっ”と身体を預けてくる。

 少女の瞳は満足しているような、それでいて不満なような、そんな不思議な輝きで俺を見つめている。

 タイミングよく、

「じゃ、まあ、そろそろ、五回戦といきましょうか?」

 洋子が声をかけてこなければ、そのまま襲い掛かっていた可能性大だった。






[2293] 少女病 二十八話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:35



 餅は餅屋。

 未だ終わらぬお笑いブームに乗っかる形ではあるが、質より量という形ではあるが、テレビを賑わす芸人にはやはり一定レベルがある。

 素人が素人考えで真似をしてみても、そこにはさむい事故が起こるだけだ。

 そう。

 こんな風に。

「な、なんでやねん?」

 綾乃ちゃんが隣りに立つ俺の胸を、手の甲で“びしっ”と見た目よりは軽い絶妙な加減で叩いたが、笑いは微妙すらも発生しなかった。

 なんだか空気が激しく痛い。

 そこに生まれたのは変な沈黙と、即席で漫才をやらされた二人の、トラウマ一歩手前の意外に深い心の傷だけである。

「どうも――」

「――ありがとうございました」

 最後に“ぺこりっ”と昭和な感じで挨拶すると、俺と綾乃ちゃんは目も合わせずに、互いの健闘を讃えることもなく車座に腰を下ろす。

 二人はこの数分間をなかったことにしようと、記憶から抹消してしまおうと魂と魂で誓い合っていた。

 他の三人もそれを察してくれたようで、ダメ出しもなければ慰めの言葉もなく、思い出のページを同じようにして空白にしてくれてる。

 人情紙風船の世の中といわれて久しいが、どうしてどうして、これならまだまだ二十一世紀の日本社会も捨てたもんじゃない。

 と。

 ひとしきり全員が現実逃避をし終えただろう頃合で、

「それじゃ、まあ、そろそろ、節目の十回戦と、洒落込んだりしちゃいましょうかね?」

 第九回のキングである、ボケを二番、ツッコミが三番で、漫才が見たいといった山本洋子さん(16)が、新たな戦いの火蓋を切った。

 割り箸に少女たちの手が伸びる。

 見た目の格好はそのままだが、ブラもパンツも、下着を一切つけてない紅葉ちゃんが手を伸ばす。

 うつ伏せでの膝枕を要求されたまどかちゃんが手を伸ばす。

 足の指をしゃぶられた綾乃ちゃんも手を伸ばす。

 そして俺も手を伸ばして割り箸を取ると、腋の匂いを鼻息荒く“くんくん”嗅がれ、舌でねぶられた洋子も残った一本を確認した。

 現在勝率八割。

 どうもカレードなスコープの究極観測者はサイコロを振っている。

「王様だ~~れだっ!!」

 スベッた過去などお空とお友だちになるくらい吹き飛ばし、元気よく音頭を取って割り箸を掲げたその色は王のカラーである赤だった。

 この場では怪しさ爆発な仮面を被っている皇子の、絶対遵守なギアスよりも絶対な力の証なのである。

 自分のツキが怖い。

 今夜の俺はオリエンタル風の着物みたいなのを着てる女に、憑かれてるんじゃないかというくらいにツキまくっていた。

「仕込んでないでしょうねぇ?」

「……おいおい。王様に対して失敬だぞ」

 などという風にしてやんわりと軽くだが、いぶかしんでる洋子を窘めてはみるものの、逆の立場ならその可能性を疑うほどツキがある。

 しかし、正真正銘でただの何の変哲もギミックもない割り箸だった。

 後ろ暗いところはない。

 だからこそ胸を張って勝者の権利を行使できる。

 ではでは。

 大分県出身東京都足立区在住の島田誠(27)株式会社noyss企画部兼営業部勤務主任イキっま~~すっ!!

 と。

 略式だがプロフィールの紹介を兼ねた気合を入れると、

「二番の人と……、三番の人が――」

 顔には“やれやれ”という表情だけを浮かべようとはしているが、それが決してウマくいっているとはいえない少女たちを見回した。

 幼い頃お遊戯で習った童謡に“ど~~の~~は~~な~~み~~て~~も~~”というのがあったが歌いたくなるほど綺麗である。

 花から花へ。

 わざわざ考えてみるまでもなくで、なんとも我ながら羨ましいいいご身分だった。

 漫画のラブコメな主人公のようにして作為的な勘違い、それは意識・無意識に関わらずで、鈍感を武器にしたりするのは大嫌いである。

 自惚れているのかもしれない。

 でも言おう。

 少女たちの恥じらいという可憐な花びらの奥には、美しくも妖しい期待という花弁が見え隠れしていた。

 などという風に詩的に語ってみようとして、豪快に失敗した気もするが、とにかく少女たちは王様のエロいコマンドを待っているはず。

 俺のエロいコマンドを待っているはず、……だよねぇ?

 このぐらい自分で自分にしつこいほど念を押しておかないと、さすがの俺でも下せない“ちょっと”な命令というものがある。

 それがこれだ。

 ワン・ツー・スリー。

「乳首相撲をするっ!!」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「みんなの気持ちわかるっ!! うんっ!! その気持ちよくわかるっ!!」

 そうだよね。

 なに言っちゃってんだこいつ? みたいな醒めた顔を、まあ、そりゃ普通はどこの誰だってするよね。

 よろしい説明しよう。

「その昔、日出る国の帝がサムライに忠誠を――」

「……いや、そういうのはいいから」

「でぇええいっ!! 二番と三番がトップレスになって乳首を擦り合わせるんだよっ!! もちろん行司はこの俺でっ!!」

 嗚呼。

 言ったその瞬間にもう凄い勢いでみんなの、微々たるものはまだあった、かもしれなかったような尊敬の念が“ぐんぐん”消えていく。

 だがこの世界にリプレイ機能はない。

 口にしてしまった言葉はなかったことにはできない。

 前に進むしかない。

「二番の人」

「…………」

 どうしようかと迷う素振りを見せてから、その迷う素振りで注目を集め、まどかちゃんがゆっくりとした動作で手を上げた。

 結構あっさり観念である。

「三番の人」

「…………」

 悪いね。

 ホントに狙ったわけじゃなく偶然なんだけど俺、お前から割り箸取るときにしっかり見えちゃったんだよ。

 碧の瞳を恨めしげなジト目にして睨んでいる洋子の手を俺は握ると、

「は~~い」

「…………」

 元気にお返事しながら高々と持ち上げた。

 だからご指名にはズルがあるのだが、こういう勝負事のコマンドとなったら、是非とも対戦相手には山本洋子さんが欲しいじゃないか。

 例えば紅葉ちゃんと綾乃ちゃんだったりしたら、試合開始と同時に千日手になる恐れがあるからな。

 そんな二人をけしかけるっていうのも、それはそれで面白そうだけど、外野にお前とまどかちゃんじゃ物言いの声が大きい。

 折角開催に扱ぎつけた島田場所が、悠長に“にやにや”と構えていたら、千秋楽を迎えるよりも先に強制で終了にされてしまいそうだ。

 けれど、

 二人のうちどちらかを土俵にあげてしまえば、と思っていたのだが、二人とも土俵にあげられてしまえそうなのはラッキーである。

 横綱同士の対戦を紅葉ちゃんと綾乃ちゃんを侍らせて、これはどうやらマス席で観戦ができそうだった。

 で。

 アイヒマン実験というのがある。

 細かいことも詳しいことも実はよく知らなかったりするんだけど、大雑把に解釈すれば人間というのは役割の生き物ということらしい。

 看守と囚人を演じさせれば、それは実験で与えられた仮の役でしかないのに、一週間もしない間になにかしらの怖いことが起きる。

 要するになにが言いたいかといえば、環境の影響を受けやすい動物だということだ。

 人間は。

「王様の命令は――」

「わかってるわよっ!!」

「ああん、もう、やればいいんでしょ!! や・れ・ばっ!!」

 ただそうはいっても一時間や二時間、なんなら三時間や四時間足らずで、そんなアブなくて怪しげな実験の効果はまず出たりはしない。

 人間はそこまで馬鹿ではないのである。

 が。

 それでも二人は、いや、四人は、ここでの建前を、王様と従者という役割に求めていた。

 エロいことをするのは王様の命令なんだから仕方ないのだという構図。

 そんな穴だらけの理由を免罪符にして、洋子とまどかちゃんはお互いを窺いつつ、乳首相撲島田場所を取るための準備に掛かる。

「…………」

「…………」

 Tシャツの裾を掴みながら腕をクロスさせ、ブラウスのボタンを外そうとしながら、しばし横綱二人は潤んでる瞳で見つめ合っていた。

 やはり役には成り切れておらず、同じ境遇の奴を客観的に見たからなのか、羞恥の色を立会い前に勝手に濃くしていく。

 いい傾向だ。

 まさにTHE.王様気分で、紅葉ちゃんと綾乃ちゃんの肩を抱き寄せ眺めている、その俺の勃起は痛いほどに“びんびん”である。

 行司なんだからそりゃそうだが、俺に力水は一滴も必要ない。

「……あッ」

 それは果たしてどちらの声だったろう?

 相撲というのは観戦するとき、立会いまでにやたらと時間がかかるのがネックだが、俺は視覚も聴覚も嗅覚も味覚も触覚も退屈しない。

 五感すべてで立会いまでの時間を、洋子とまどかちゃんが“のろのろ”脱ぐ時間を楽しめる。

 肩を抱いていた手を“するする”と降下させ、体型の違いを教えてくれる腰を、ひと撫ですると“するり”と前へ持っていった、

 ジーパンとオナカの隙間に強引に手を突っ込み、

 お嬢さん風のプリーツスカートを乱暴に掻き分けながら、

 一気呵成に女の子の最深部にまで(さらりと忘れていたが一方は下着を着けてなかったんだった)侵入させる。

「んぁ!?」

「……ふぅ」

 右に座っている発育のいい少女からはダイレクトな肉の感触が、左に座っている発育途上の少女からはコットン布地の肌触りがあった。

 二人とも濡れているとまではいかないが、湿りっ気があるのは誤魔化しようがない。

 うっかり紅葉ちゃんの秘裂には指先が沈み込みそうになってしまったし、綾乃ちゃんのパンツにはひと撫でで航跡ができたのがわかる。

 何度触れても不思議な柔らかさの“ぷにぷに”している女の子の花びらに、ぬめるエロい粘液を擦るように塗り込めると、

「だ、……んぁッ…………だめ………そんな…あッ、……ああッ………だ…………んあッ…………」

 紅葉ちゃんの身体はノーブラのおっぱいを、いやらしく“ぶるるん”と揺らしながら跳ねた。

 いくらも擦ってないのにスカートの奥から“くちゅくちゅ”と、雨の日に履いたびしょ濡れのスニーカーのような水音を鼓膜が捉える。

「うッ、くぅんッ、んンッ、ん、んッ、はぅう!!」

 俺の腕に縋るようにしがみつきながら、綾乃ちゃんは背を丸めて耐えながらも、腰だけは“ぐいぐい”と手に押し付けていた。

「んむッ!?」

 白い咽を晒して仰け反り、Tシャツの布地に“ぴんぴん”になった乳首を浮き上がらせている紅葉ちゃんの唇を奪う。

 驚きはあったがすぐに反応して少女の舌は、俺の舌に絡まり戯れてきた。

 唾液の交換をする。

 流し込まれた液体を躊躇することなく“こくこく”嚥下しすると、紅葉ちゃんは唇の端に零れそうになってるものまで浅ましく啜った。

 俺の左手は溺れているような感覚に包まれている。

 そして名残惜しげに追いかけてくる、紅葉ちゃんの口内から銀の糸をきらめかせ舌を引き抜くと、

「……ンンッ」

 快楽にうつむき耐えている少女の、小さくて複雑なつくりの耳朶をしゃぶり、熱くなっている頬を舐めて顔を上げさせると唇を重ねた。

 俺がそうするよりも速く熱い吐息と一緒に、綾乃ちゃんの舌が口内に飛び込んできて逆に犯し蹂躙してくる。

 とはいえその動き自体は稚拙なもので、我武者羅になって掻き回してるだけだった。

 なんとも可愛らしくて、同じくらい苛め甲斐のある舌である。

 どうやら俺がサクランボのへたを口内で結べることを、しかも蝶々で結べることをこのお嬢さんは知らないらしい。

「ンぁッ……はむッ……んンッ……むぅ、ン……ふぁッ、あッ……んぅッ!!」

 本能の命ずるままに激しく動き回る、それだけに無駄に動き回っている舌を捉えると、こうだとレッスンするように絡め思うまま嬲る。

 落ち着きのない柔術少女のやわらかな舌を、大人しくさせるのにあまり時間はいらなかった。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ…………」

 今度は従順すぎるほど従順になり、俺の舌の動きがもたらす刺激を、いじらしく寄り添うようにして絡め待っている。

 花から花へ。

 俺は慌しく右に左に首を振りながら、甘い蜜を味わいかなりのご満悦だった。

 と。

「誠」

「コーチ」

 夢中になって指先を蠢かし唇を貪っていた俺は、そのトーンを落とした棘のある声に、久方ぶりに左右にではなく正面へと顔を向ける。

 二人仲良くジト目になって、二人仲良く手ブラをして、洋子とまどかちゃんは、羞恥心と嫉妬心の入り混じった感じで睨んでいた。

「あ、ごめん」

 そりゃ怒るわな。

 反省しつつ左右の二人の顔を寄せて頬を“すりすり”する。

 手も当ててるだけで“ゆるゆる”と揺するだけの、快感の波を消したりはしないが刺激の弱いものに抑えた。

「時間一杯っ!!」

 ってなことを行司っぽく言ってはみたが、二人の目はそれでもシラケたものである。

「…………」

「…………」

 洋子とまどかちゃんが気を取り直してくれたのは、確実に俺のふざけた言葉なんかではなかった。

 それこそ息を合わせるようにして左右同時に、紅葉ちゃんと綾乃ちゃんが、甘えるように俺へと身体をすり寄せたのを見たからだろう。

 一瞬だけだったが顔色を変えたのを、俺は見逃したりはしなかった。

「見合って見合ってっ!!」

 ここだとそれっぽい台詞をほざいてみる。

「…………」

「…………」

「見合っ、て?」

 ――凄い目で睨まれちゃった。

 でも一応気を取り直してくれた二人が、気を再び害すことはなく、素直に王様であり行司である肩書き頼りな俺の言葉に従ってくれた。

「じゃ、じゃあ、い、いくわ、よ?」

「わ、わかったわ、それじゃ、ど、同時にね? 同時によ? 裏切るの無しだからね?」

「わかってるわよっ!! この期に及んでまで裏切るわけないでしょっ!!」

「せぇ~~の」

 最後の台詞は俺である。

 ああいうやり取りをしているような人たちは大体が、なかなか自分たちでは発進できなかったりするものだ。

 なんにしても切欠を与えられた二人は“ぱっ”と、手ブラしてたことによって、悩ましい谷間のできてたおっぱいから同時に手を離す。

 おっぱい。

 大小の好みはあってもいいが、大小で優劣があってはいけない。

 体格が違えば感じ方も違ってくる。

 洋子のようなおチビさんと、まどかちゃんのようなモデルみたいに背の高い娘が、大小だけで競えば最初から結果は見えていた。

 しかし、おっぱいの愛らしさや美しさというのは、決してそういうものだけではない。

「いい……」

 身長からいけば洋子も巨乳とはいわないが大きい方で、まどかちゃんのおっぱいは、ガリガリとスレンダーの差を見事に教えてくれる。

 どちらのおっぱいも思う存分の好き放題に揉みしだいたことがあった。

 あえて。

 あえてそのときの感想に基づいて差異を語ればだが、洋子の方がより少女らしく、まどかちゃんの方がオンナとして成熟してきている。

 綾乃ちゃんにもいえることなのだが、柔らかさに芯を残したような硬さがあるのが洋子のおっぱい。

 揉めば揉むほどにそれに応え張りが増してくる。

 感度だけは早熟ですぐに生意気に尖る可愛いおっぱいだ。

 紅葉ちゃんにもいえることなのだが、まどかちゃんはボディ・ラインといい、オンナへの完成度は高いがやはり少女のおっぱい。

 しっとりとまろやかではあるが“ぷりぷり”とした、弾力のある若い肉を持っている。

 慎みのないふくらみは誘っているかのような、それでいながら物理法則に逆らい、凛と上を向いてるのが如何にも挑発的なおっぱいだ。

 以上。

 どちらも甲乙がつけ難い、素晴らしくて素敵すぎる、この年頃の少女しか持ち得ないおっぱいである。

 否。

 優劣にしても甲乙にしても、おっぱいという存在にはないのかもしれない。

 ジークおっぱい・ハイルおっぱいである。

 おっぱいよ永遠なれ。

 嗚呼リピドーに従ったまでだが、自分で自分がナニを言っているのか相変わらず、わかるようなわからないようなやっぱりわからない。

 なんにしても洋子とまどかちゃんのおっぱいをこうして、同じ視界に収められているというのは至極壮観である。

 さて、

「い、いつまでそうやって見てんのよっ!!」

「そ、そうよっ!! な、なんか、乳、す、すす、相撲を取るんでしょっ!!」

 まだまだおっぱいを語り足りなくはあったが、午前も一時を回ろうというのに、益体のない持論をだらだら展開している場合でもない。

 力士の二人も待ち切れないようで催促してきているし。

「こほんっ」

 芝居掛かった咳をひとつ。

 相撲というからにはお約束というか儀式というか、なんにしてもこれはやっておくべきだろう。

「に~~し~、山本ススーパートライクよ~~こ~やま~~。ひが~~し~~、御堂スーパースプリントまどか~~うみ~~」

「…………」

「…………」

 む?

 俺は結構好きな感じでできたのだが、どうもイマイチで力士二人のノリが悪いな。

 またの機会までには新しい名乗りを考えておこう。

 四人分。

「見合って見合ってっ!!」

 微妙で複雑な表情を浮かべつつも、俺の行司差配の掛け声に、二人はおっぱいを“ぷるんぷるん”揺らしながら膝立ちで近づいていく。

 あとちょっとで可憐な乳首と乳首が触れ合う、ほんの僅かなそれだけの距離を開けて見合った。

 で。

 互いに相手の眼を見て逸らし、俺の眼を見て逸らし、また相手の眼を見て逸らし、そしてまた俺の眼を見て逸らす。

 短い間にそれを十回ほども繰り返して俺は仕切りの声を掛けた。

「待ったなしよ」

「…………」

「…………」

 少女二人は覚悟が未だに決まっていないようだが、生意気と恥じらいで構成されている少女が、キマるわけもないので無視である。

 あれもこれも好き。

 平気なようでいてもそれは表面上隠しているだけとか、無理してる意地っ張りな少女の姿も嫌いじゃないどころか大好きだ。

 が。

 悪い大人に主導権を握られて為すがままに、あれよあれよと翻弄されちゃってる少女も好きである。

 なんでもいいわけじゃないが、ストライクゾーンは果てしなく広い。

 このままいたいけな少女二人を、両手に花でずっと眺めていようかとも思ったが、キレるという方向に覚悟を決められる可能性もある。

「時間一杯」

 潮時というのが本音だが言う必要は無い。

「ゲットレディ――」

 できるだけ重々しく聞こえるように、しようとはしてみたが、恰好が恰好なので断念すると俺は始めの合図をした。

「GOっ!!」

 自画自賛ではあるがそれなりに、なかなかセリフはカッコいいと思う。

 でも、

「…………」

「…………」

「GOっ!!」

「…………」

「…………」

「GOっ!!」

「…………」

「…………」

「GOっ!! だってば」

「…………」

「…………」

「……あの、GOっ!! してくれませんか?」

「…………」

「…………」

「…………」

 動かざること山の如しである。

 しかし、これは有名な武田信玄の風林火山な一節だが、光栄の信長の野望から入る、俺は戦国時代だけなんとなく詳しいマニアである。

「…………」

「…………」

「…………」

 天下人というものを意識した三人の、それぞれの生き様を表した三節。

 鳴かぬなら殺してしまえホトトギス・鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス・鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス。

「…………」

「…………」

「……えい」

 ポジティブな考え方の秀吉が好きだな。

 胡坐を組んでいた長くもない足を命いっぱい伸ばすと、俺は達人の見切りのような距離で止まっている、二人の腰を同時に抱え込んだ。

「うわぁ!?」

「きゃっ!?」

 両手に花。

 両足も花。

 俺の脚に抱かれて密着した二人のおっぱいが“ぐにゃり”と、妙に卑猥にいやらしく眼に映り歪な形になって潰れている。

 おっぱいの競艶。

 刹那だけ互いの存在を認めないかのように反発したが、それぞれいいところを持っていて、それがエロ・ケミストリーを起こしていた。

「あンッ」

「……んぅッ」

 少女らしい芯の残っている、硬いとすら感じる洋子のおっぱいが、柔らかさでは上回ってるまどかちゃんのおっぱいをまず犯す。

「ッあッ……ンッ……」

「……はぁッ……、あッ……んふッ……」

 だがすぐにまどかちゃんのおっぱいは“たぷん……”と逃げ、圧迫の力を逸らすと洋子のおっぱいを包み逆に肉を纏わりつかせていた。

 とはいえ早熟少女で敏感肌という、エロいスキル保持者同士の対決である。

 諸刃の剣。

 八方塞がり。

 う~~ん。

 たぶん後者が正しい表現なのだろうが、どちらにせよなんにせよで、どっちがどっちかわからないが攻守ともにダメージを負っていた。

 見た目以上にいやらしく激しい攻防なのか、下唇を噛んで耐えようとする二人だがあっという間に口を割っている。

 儚げな吐息が淫らな嬌声へと変わるのに、それほどの時間は掛かりそうにもなかった。

 ん。

「……は……んぅッ、………ふ……、んンッ……」

「ふぅッ……ん………うぁッ、は……んぁッ……」

 だけど。

 これが二人ともシブといというか、諦めが悪いというか、焦らしてくれるというか、次のフェーズにはなかなか進もうとはしない。

 蛇の生殺し状態だ。

 それは素直に認めてはくれないだろうが、見ている俺“たち”だけでなく、乳肉を互いに蕩かし合う二人もそうだろう。

 膠着した試合を面白おかしく、またそれだけでなくテクニカルに、毅然とした態度で仕切ってみせるのが一流のジャッジというものだ。

 二人が動けないのなら、ここは俺が動くしかあるまい。

「待てっ!!」

 相撲でいうところの水入りである。

 両手の花を解放し、両足の花のロックも解いて、がぶり気味に裸の二人の肩を掴むと、乳肉の揺れを注視しながらいったん分けた。

 タイプは違えど等しく可憐な印象の二人の少女のおっぱいだが、やはりどちらも等しく一際この部位は可憐な佇まいである

 淡い色素。

 まどかちゃんの方が若干ではあったが鮮やかだろうか。

 洋子の方は白い肌とリングとの境界線が、よく眼を凝らさねばわからないくらいに薄い。

 そして誰の眼から見ても二人の乳首は、あとちょっとの刺激があれば、“ぷくんっ”と膨らむのが想像できるほど勃起しかかっていた。

「…………」

「…………」

 俺を見つめてくる二人の顔の色が、真っ赤に染まっているのは、恥ずかしさだけで現せるような色ではないだろう。

 腋を締めておっぱいを隠そうか隠すまいか、どうしようか迷っている、そんな微妙な心の揺れからキテる仕草がおっさんには堪らない。

 両の手を握ってそっと開き晒しても、洋子は俺に少しの抵抗もしなかった。

 不満げに順番を待ってるような、そんな可愛い仕草をしている、まどかちゃんだってきっと抵抗したりはしないと確信できる。

 ほんのちょっぴりだったけど“ゆさりっ”と、まどかちゃんはおっぱいを突き出していた。

 で。

「このままじゃ埒が空かないと思うんだよ」

「う、うん」

 手首を掴まれておっぱいを晒されている洋子の、その視線は恥ずかしげにうつむいたからか、それとも違う理由からか下方ベクトルだ。

 そこにはズボンとパンツのボカシなんぞ意味なしで、シルエットクイズはお断り、フォルムばっちりな勃起の輪郭が浮かんでいる。

 少女の視線は微動だにしなかった。

「なのでスピーディーなゲームをするためにも、ペナルティというかハンデもあって二人ともこうするから」

「ひゃっ!?」

 視界の外から素早く顔を寄せ、生意気な少女の象徴のようにして、尖りかかっていた早熟な乳首を“ぱくりっ”口に含む。

 ああ可愛い。

 いきなりだったので、驚きはさすがにあったようだったが、咄嗟にでた反応は俺の口に歓迎するみたいに強く押しつけるというものだ。

 もちろんそんな反応なら、俺だって大歓迎である。

 柔らかな肉に口を塞がれながらも、俺の熱に形状記憶のみたいに反応して、硬くしこった乳首を吸い立て舐め回し甘く噛んだ。

 小指の先ほどの突起を中心にして円を描き、“トロ~~ン”としてきたところにまた歯を立てるを繰り返す。

「はひッ…ひッ……あッ……、はぁッ……ン……んふぁ、…………あふぁッ!」

 酸素が足りず苦しくなって、息継ぎのために解放すると、ひと呼吸だけして今度は、もう片方の乳首に牡の欲望丸出しで喰らいついた。

 身体を“くねくね”とさせて執拗に逃げ回る、それでいて決して大きくは逃げない洋子の乳首に唾液を塗り込めていく。

「これでよし」

 俺が満足げに頷いたときには、乳首を唾液で“てらてら”にぬめらせて、膝立ちだった洋子は“ぺたんっ”と力なく正座になっていた。

 まるで土下座をする一歩手前の恰好で、“はぁはぁ……”呼吸を整えている、少女の肩とおっぱいの揺れは堪らなくエロすぎる。

「…………」

 後ろ髪を毛根ごと惹かれる思いで、俺は洋子から無理やり視線を外した。

 まだ待っている少女がいる。

 メインディッシュを二品も取るという真似をし、……いや、いやいや、さらに二品も取るという真似をしているのだ。

 洋子の美味さは猛烈に名残惜しいのだが、他の皿の味も見ないわけにはいかない。

「まどかちゃん」

「え? あ、う、うん」

 声を掛けられた少女の視線は、さっきまでの自分の対戦相手から、そのエロい姿から俺に移り、そしてそのまま勃起へと移っていった。

 洋子にしたようにして、まどかちゃんの手首も掴まえる。

「きゃぅ!?」

 こうされた友だちをついさっき見たばっかりなのに、なんの警戒もしていなかったぽいまどかちゃんは甲高い声を上げた。

 どころか見ていたせいでそうなったらしく、乳首は口内に迎える前から充血していて、弄ぶ“こりこり”したグミの触感を伝えてくる。

 力を込めれば“くにゅり”とした乳首は、簡単に噛み切れてしまいそうだった。

 脅すようにして歯を立てると、少女の身体は恐怖と快楽の板挟みになったように“ぶるり”と震える。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……、んぁッ……ひぁッ!!」

 紙一重の感覚がいいエッセンスになったらしく、まどかちゃんは触れられてもいない乳首まで硬く尖らせていた。

 ホントにこの娘はMっ気が強い。

 無闇やたらに俺のSっ気を刺激してくる。

 …………

 ってかそれは四人の少女全員に、ある程度は当て嵌まるんだけどさ。

「よし」

 こんなもんだろう。

 もう片方の乳首もしっかりと“ぴんぴん”に硬く唾液塗れの“てらてら”にさせて、

「ぁッ!?」

 最後に軽く指で“ぴんっ”と弾くと、顎にパンチをもらってキレイにKOされるボクサーみたいにして、まどかちゃんは膝から崩れた。

 例に漏れずしばらくは、やはり四つんばいになったまどかちゃんの、色っぽく乱れている呼吸が整うのを待つ。

「…………」

 その間にバレないようこっそり洋子を観察すると、呼吸は整っていたが切ないため息を吐きつつ、勃起を“じーーっ”と見つめていた。

 物凄く牡としてのプライドが満たされていく熱視線である。

 自然とえらそうに腕組んでたもんな。

 頭の中では“オラっ!! コレがいいんだろっ!!”とか、お馬鹿なナレーションの声がエコーで掛かっている。

「時間一杯」

 本当のところはこういうとき、行司がどういう台詞を言うのか知らないが、なんにしても俺を含めていろんな人が時間一杯だ。

 力士二人に感謝の意味を込めつつ、俺は頭を下げた四つんばいの体勢で、座ると同時に擦り寄ってくる少女二人の肩を抱き観戦モード。

「…………」

 ごめん。

 言ってから気づいたんだけど心の中だけとはいえ、力士二人と少女二人って、区別にしても差別にしても前者に失礼なんで謝っておく。

 この年頃のというか女性の形容詞に、力士はいくらなんでも、そりゃないよな~~という話だ。

「見合って見合って」

 呼吸は整っているが三秒に一回の割合で、切ない蠱惑的なため息を吐きながら、また膝立ちになると力、……少女二人は近づいていく。

 取り直しの立会いっていうのは、リアルな相撲であっても特に緊張感があるもんだ。

 が。

 洋子とまどかちゃん。

 二人の唾液で濡れている乳首はきっと、本物にも優るとも劣らない白熱した緊張感と、本物には絶対ないエロを提供してくれるだろう。

 肩を抱いてる二人の耳朶をそっと口元に寄せる。

 興奮で震えそうになる声を、意志の力総動員で抑え込み、なるだけエロく響くようにして囁いた。

「俺、二人にイカせてもらいたいな」

 自分発信で作ったくせに相当に酔ってたんだと思う。

 エロ・カクテルに酔っていた。

 ああ自分で自分がなにを、――そんな俺はもうとっくのとうで末期の、少女という銘柄をこよなく愛し嗜むエロ・ジャンキー。

 でも、

「…………」

「…………」

 激しく断続的に息を荒げながら、くっつけたおっぱいから“ドクンッドクンッ”と大きく速い心音を響かせている二人もジャンキーだ。

 行司が“はっきょい”なんてひと言も言ってないのに、乳首と乳首を触れ合わせようとしている二人もジャンキーだ。

 ジャンキー天国。

 なんか俺が小説とか書くことがあっら、このタイトルでイこうかと思っている。

 少女二人のやわらかな手で取り出された俺の分身も、言葉以上に多弁に“びくんびくん”と脈動して賛成の意志を伝えていた。

 強くもなく弱くもない力で握られている勃起は、堪え切れなかった欲望の先走りが雫となって、縦割れの唇から卑猥に流れ落ちている。

 窮屈な布地に押さえつけられていただけに、ちょっと見ないだけでもいつもよりずっと大きく見えた。

 紅葉ちゃんと綾乃ちゃん。

 二人の手が長くて細く綺麗ではあるが小さいので、角度もあり余計にボリュームがあるように感じられるのかもしれない。

 分担するようにして亀頭を綾乃ちゃん、根元を紅葉ちゃんで、ウォーミングアップなのか“さわさわ”あまり刺激なく優しく触ってる。

 その様子を粘液を“にゅるにゅる”と丁寧に、勃起全体に淫らなコーティングを施しているかのようだった。

 そして潤滑油に化けたのはすぐのことである。

 いくら錯覚をしてみいても、本来のスケールが変化しているわけではないので、少女たちの手が小さくたってスペースはそんなにない。

 しかし、

 紅葉ちゃんと綾乃ちゃんは狭い空間を“ぬるぬる”と、速いテンポと快感のリズムを崩すことなく勃起を上下させている。

「あッ!?」

「ンッ!?」

 さっきは中途半端でお預けになっていた、二人の女の子の大事な部分に手を伸ばし、余韻がなくなってないのを確認して指先を沈めた。

 深く浅く抉るように、少女たちの手が止まると催促するように、速いテンポで快感のリズムを若い身体に容赦なく送り込んでいく。

 触れるか触れないかで女の子の真珠を弄い嬲り、派手な“くちゅくちゅ”という音とお漏らしのようなシミが俺の嗜虐欲を高揚させた。

 すると、

「あッ……う……、はぅ……ひッ……くぁ―――――ッ!!」

「……うッ…………うッ……んあッ……あッ……、はぁんッ……んッ……ふぁッ……あ……やッ……」

 左右からではなく正面から声がするので、そっちばっかりでなくこっちも見ろ、という声がするのでそちらを見る。

 濡れているからかさっきよりも、可憐な乳首のくねりが妖しくてエロい。

 おっぱいの肉で“ぐいぐい”押し合うというよりは、ヒット・アンド・ウェイでつかず離れず乳首での鍔迫り合いを繰り広げている。

「はひッ……ひッ……、あッ……あふぁッ!?」

「ンあぁッ……はぅッ……んンッ………、あぁんッ……ふぁッ……ひッ……うぁッ!!」

 もっとも上半身では女性なら誰でもトップ・スリーに入る、そこは敏感無法地帯なので一撃一撃に二人は身体を跳ねさせてた。

 伝染したのか“ちらちら”見ていた左右の二人も、俺の指が与える刺激をさらに貪欲に貪ってくる。

 四重奏の美しい音色。

「うぁッ……は……ああッ……あ……ぁッ…………くぅん……ふぅ……、うぅ…………あ、ひッ……うあぁぁッ!!」

「んンッ!? ……うぁあッ……むぅッ……あ、ンぁッ……はぁ……んぁッ……ひぁッ!!」

「はひッ……ひッ……あ、ンぁッ……、はぁ……んぁッ……ひぁッ!!」

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……、ぅああッ……あ!? …………ああッ………ふぁッ!!」

 四人の少女と知り合ってからというもの、俺の現実感は日々平行能力を失ってはいるのだが、これは頂点も極まれりという想いだった。

 エロくて可愛い嬌声のカルテットに、リアルを感じれるという奴はいますぐ病院に行け。

「くっ!?」

 苦痛とすら感じる快楽。

 肛門を引き締めて必死に堪えていたが、夢よりも美しい光景に魅入られて、現実的に欲望を抑えつけるなど不可能だった。

 二人の少女の手に導かれて白い弾丸が発射される。

 二人の少女のおっぱいに狙ったようにぶつかってそれは弾けた。

 そして夢は続いていて終わらない。

 俺がイったのとタイミングを計ったみたいにほぼ同時、奇跡のようにして四人の少女も快楽の波に攫われここでない世界にイっていた。

 洋子とまどかちゃんは縋るようにきつく抱き合いながら、紅葉ちゃんと綾乃ちゃんは勃起に顔を擦りつけながらイっていた。

「おや?」

 夢から醒めたのは朝になってからである。

 もう外が明るかった。

 深夜の起きていてもドリーマーな、ましてアルコールの入っている空気というのは怖い。

 全員順番にお風呂に入って着替えると、昨夜の残りを黙々と口に運び、黙々と昼過ぎまで部屋の掃除をしてなんとなく一日が終わった。

「またやろうね」

 一人ずつを個別にこっそりと、お風呂の順番待ちや掃除の合間に誘ったら、全員が恥じらいの赤で頷いてくれたのがうれしい。

 可愛くてエロい少女たちとする王様ゲーム最高最強である

 そんなご満悦のハイな勢いで、夏休みにはどこか遠出したいね、というお願いまで了解された俺は次の日もハイになりっぱなしだった。

 ――嗚呼夏休みよ早く来いっ!!





[2293] 少女病 二十九話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:36



「ファーラウェイ・メリーゴーランド、さいはてのメリーゴーランドか……」

 そう俺は口の中でつぶやいた。

 なんだかラピュタでも潜んでそうなデカい入道雲を従え、これでもかとばかり夏の太陽は、燦々と強烈な日光を地上に降り注いでいる。

 手をかざし眩しそうにして眼を細める、その視線の先には白い砂浜、そしてどこまでも碧の海が続いていた。

 と。

 さすがにそこまでの、地球ではちょっと難しいロケーションではないものの、なかなか悪くはない、どころかイイ感じのビーチである。

 是非とも特一級リゾート地の称号を進呈したい。

 たとえ関東近辺であっても、探せばこういう、穴場スポットというのはあるもんだな。

 いや、うん、まあ、別に今回は、俺が探したってわけじゃないけどさ。

 小さな商店街の旅行券といってもなかなか馬鹿にはできない。

 福引き万歳。

 そいういうのを、夏休みというタイミングで当てちゃう綾乃ちゃんの行いは、普段からきっといいんだろうなと容易に想像できる。

 アイスすら当たらない俺とは大違いだ。

 もっとも四名様だったので、俺だけは自腹ではあるんだが、いや~~、ホテルも安い安い、二泊しても結構財布に優しくて余裕である。

 これ以上望んだら懸賞ではなくて、バチが当たってしまうというものだ。

 まさにバカンスという言葉がふさわしく、実にリッチな気分で、俺はビーチチェアに優雅に寝そべっていた。

 海辺で戯れる三人の少女たち。

 洋子の水着は、まあ、スタイリッシュではあるし、キュートでもあるんだが、イマイチ色気ってもんを考慮していないなとか。

 紅葉ちゃんはなんでビキニじゃなくて、関西ノリの豹柄のワンピースやねんモッタイないとか。

 綾乃ちゃんは逆に予想を裏切って赤のビキニが大胆だなぁとか。

 そういう光景を“ぼけらぁ~~”と眺めていたりすると、些か懐は淋しくなったものの、心は途方もなく豊かになったような気がする。

 旅行とはどこに行くかではなく誰と行くか、とはよく言ったりするが、それはこういうことなんだと妙なほど納得できちゃってた。

 …………

 冒頭ではビーチやホテルをベタ褒めしといてなんではあるが、少女さえいれば俺にはどこでもそこは楽園のようである。

 で。

 俺はその楽園を彩る最後の少女、

「ホント信じらんない。海に来たくらいで、なにがそんなに楽しいのかしら? 子供みたいに無邪気にはしゃいじゃってみんなガキね」

 まどかちゃんの独り言なのか話しかけているのか、よくわからない声で視線を海から横にずらした。

 一昔どころか二昔前くらいに流行っていた、レンズのやたらにデカいサングラス。

 流体力学に真っ向から抗い挑戦しようかというような、相変わらずでフリルだのがやたらと散りばめられた子供っぽい水着。

 そしてトドメにカラフルでパステルな模様の浮き輪まで装備して、まどかちゃんはまるで親の仇を睨むようにして海を眺めていた。

「……またお城作ろっか?」

 格好を見ればお察しの通りで、本人は海を満喫しようと努力しているのだが、残念ながら海が愛してはくれない可哀そうな少女である。

 カナヅチ。

 運動の神経は体操で強化選手(の候補らしいが)になったほどあるが、センスの方には片寄りのある娘だった。

「もういいかげん、お城作りにも飽きてきたわ」

「大分上手くなったよね。なんだか壊すのが勿体ないや。このままずっとビーチのオブジェとして、できるなら飾っときたいくらいだよ」

 古今東西のあらゆる建築様式の城が、砂上の儚さを加味されて見事に再現されている。

 そりゃ、まあ、うん、確かに、もういいよと言いたくなる数だった。

 最初はコーチという愛称は、伊達ではないということで、俺指導により泳ぎの練習に励んでいたが、それは早々に切り上げられていた。

 前述の通りでまどかちゃんの運動神経自体は悪くない、どころか強化選手(候補)ナメんなって感じでかなり良い。

 この娘は努力の娘だ。

 練習量がそのまま力になる娘である。

 が。

 それも当たり前の話ではあるが、練習に身が入っていればという、最低限の条件すら満たしていないようでは発動してくれない。

 泳げない人全般にだいたい言えることなのだが、テクニックよりもなによりも、まず水というものへの恐怖心を失くしてやるのが先決。

 息継ぎやらバタ足やらクロールやらというものは、心から楽しんで水と戯れてさえいれば後から勝手についてくる。

 うん。

 別にまどかちゃんの溺れっぷりを見て『人間ってホントは水に浮かねぇんじゃね?』とか思わず考え匙を投げちゃったわけではない。

「……肌を灼くわ」

「オーケー。そうだよね。そうだともそうだとも。そうするか。それじゃ、サンオイルを早速用意してっと――」

 その言葉をイマカイマカの待ってましたと、俺はいそいそチェアの脇に転がしておいた、肌に程よく適度な火傷をするための瓶を取る。

 十七歳。

 それはもっとも日焼けが、健康的に映える歳だったりするかもしれない。

 偏見なのは承知しているし間違いなく偏見なのだが、この年代を越えてしまうと、どうしても不純さが勝ちすぎてる気がする。

 大人の不純さが嫌いでもなければ、不純は不純で純粋さとはまた別の魅力はあるのだが、少女の儚ささえもともなうあどけなさは……。

 お肌の曲がり角。

 そんな未来など自分には関係ないと本気で信じてそうな、どころか想像すらもしてなさそうなその傲慢さがなんかいい。

 ま。

 けれどこの世の真理のようにして揺るぎなく、水を跳ね返す乙女の珠の肌ではあるが、若いうちからしっかりケアはしておかないとな。

 そう。

 これは昨日でもなければ明日でもなく、今日だけを見て生きる少女のための行動なのである。

 さり気なく明日のお肌のフォローをしてやるのも大人の務めだ。

 率先してやるべきである。

 女の子にお願いされなくとも積極的にそれを察するのが、一人前の大人のオトコの、器量であり度量というものだからだ。

 まどかちゃんに背を向けながら顔が“にやにや”しているのは、手を“わきわき”させているのは、だから決して不純な理由ではない。

 ……えっへへ。

 な~~んかよくよく考えてみたらこれって、ソフトコースというか軽いローションプレイみたいだなぁ。

「じゃ、寝て」

 俺は明日の少女の肌を守るため、崇高な使命のためチェアから立ち上がると、代わりにまどかちゃんに寝るようにジェスチャーで促す。

 波間をいま一度見てみれば三人の少女は、未だ楽しげに人魚と化していて、こちらを気にしているような素振りすらもない。

 少女の珠のお肌にサンオイルを塗りたくる大任。

 周りにはチラホラと家族連れがいるが、まさか見ず知らずの他人に頼めるわけもなく、そして見知っている友人たちも現在海の住人だ。

 もうすでに逃げられないよう、お堀はしっかりと埋まっていた。

「言っときますけどね」

「はい? なんでしょうか?」

 浮き輪を“ストンッ”と細い腰から落とし、サングラスを外しながら、まどかちゃんはゆっくりとチェアにその肢体を横たえる。

 全体の印象としては子どもっぽい水着ではあるのだが、背中だけは妙にセクシーに“ぱっくり”と開いていた。

 首の後ろで結んである紐を“しゅるり”と解いて、俺の視線を避けるようにして、まどかちゃんは“くっきり”赤くなった顔を伏せる。

「その、ぜ、絶対、に、い、いやらしいこととか、……しないでよね」

「もちろんわかってるさっ!!」

 それって『……して』ってことなんでしょ? 三点リーダーの余韻にある言葉なき言葉までちゃんとわかってますとも。

 俺の好き芸人はダチョウ倶楽部。

 熱湯風呂での『押すなよ押すなよ』のあの展開って、もういいかげん見飽きてるはずなのに、何度見ても結構面白いから不思議だよな。

「ふ……」

 微かな鼻息が漏れる。

 蜂蜜のように甘く光っているオイルを“タラ~~リ”と、俺は無意味に高い位置から少女特有の肌理細かい裸の背中へと垂らした。

 なんとも美味そうというか、料理のし甲斐のある素材である。

 パティシエという職業は、毎回こんな気持ちになるのだろうか思うと、転職も“チラッ”とは脳裏をよぎらないこともないこともない。

 いくら少女の肌が敏感に設計されているとはいえ、普段だったらこの程度の刺激で色っぽい鼻息は漏れないだろう。

 つまり普段じゃないという共通認識が、俺とまどかちゃんにはあるということだ。

 端からつもりがないが遠慮する必要はない。

 自分の手にも“タラ~~リ”とサンオイルを垂らすと、わざと“ネチョネチョ”音をさせて丁寧に丹念に塗り広げていく。

「ん……」

 頬に触れるみたいにして優しく、そっと少女の肌に手を置くと、生温かい液体の気持ち良さと相まり、またもやあっさりと声が漏れた。

 残念。

 周りにほんの“チラホラ”とはいえ、海水浴場だけあって人が存在しているのがホント残念。

 近くではどっかのお子様がお父さんと楽しげに遊んでいて、宿題の絵日記に書かれそうな微笑ましいはずの光景が鬱陶しい。

 場違いなのはこっちだと、俺だって成人式が懐かしいと思う大人だし、そんなことは重々わかっちゃいるけど残念なものは残念だ。

 フルな海水欲情をしてしまったらさすがにバレる。

 あ~~くそぅ、せめてここが、更衣室だったら良かったのになぁ。

 まあ、

「……はぁ……ン……、ふぁ……んぅ……」

 コレはコレでそそられるというか、肌に沁みこませるように“ぬるぬる”と、おっぱいやお尻のエリアを微妙に掠めながら塗り広げる。

 開始から約五分。

 だが掠めることはあっても決してそれ以上踏み込んでこないタッチに、じれったさを感じているのはなにも俺だけじゃなさそうだ。

 結果としてそのもどかしいまでの微妙さが、少女の身体を“もじもじ”させる絶妙な愛撫になっているらしい。

「う……あン……、んふァ……あ……、ン、ン、んぅ……ッ……、……ハ……んンッ」

 少女は手で口元を押さえながら、必死になって声を殺そうとはしている。

 が。

 まるでそんな効果などはみられず、むしろ生き生きとした嬌声を上げ、まどかちゃんは太陽ではなく俺の手で身体を火照らせていった。

 ってなことを心の中で自分ナレーションして、ここはどうにかして溜飲を下げておくしかあるまい。

 眼と眼が合った。

 砂浜でビーチバレー(というほどじゃないが)に、お父さんと興じていたらしいお子様が、チェアの近くに立ってこっちを見てる。

 年齢は七、八歳くらい。

「…………」

 ボールをその小さな体躯で抱えながら、不思議なものにでも遭遇したように、その円らな瞳で“ジッ”とこっちを見ていた。

「…………」

 ピュアな視線に動きを封じられる邪な俺の手と、

「…………」

 背中から送られてきていた刺激が、急に途絶えたことによって、“ほっ”としつつも“なんで?”という感じで顔を上げようとしたが、

遅まきながらだが自分のすぐ傍、俺とは違う人の気配にまどかちゃんも、時間さえ“ぴたっ”と止めたようにしてフリーズしている。

「…………」

 まだ穢れなき無垢な少年の視線は俺の、それはもう穢れで“パンパン”になっている股間と、

「…………」

 太陽の下でいやらしく“ぬらぬら”ぬめ光っている、裸の背中を晒してるまどかちゃんに、どこか憑かれたように熱心に注がれていた。

 どうも息子が迷惑をかけていると思ったのかもしれない。

 良い人である。

 そんな良いお父さんが“ぺこっ”とこっちに頭を下げ、大きな声で呼ばなければ、視線のピントを外さず少年はずっと勃ってただろう。

 たぶん精通はまだなんだろうけど。

 毛もないだろうけど。

 もしかしたら俺とまどかちゃんのローションプレイは、少年に性の原体験というやつをつくったかもしれない。

 去っていく小さな背中が思春期を迎えるだろう将来、性に変な目覚め方をしないか、いまはただただひたすらに祈るばかりだった。

「終わり」

「……ありがとう」

 名残惜しいが新たな犠牲者を誕生させないために、後ろ髪が“ごっそり”な断腸の思いで、食べ頃になっている少女の肌から手を離す。

 これ以上ここで野外立食パーティーを続けるのはマズかろう。

 できるんなら個室でゆっくりの時間制限なしで、この最高の料理はあっちこっち味わい尽くし食べ尽くししたいしな。

 なのでここは大人しく体育座り。

 でも股間は勃ってる。

 少年ならば『かわい~~いっ!!』と浜辺の黄色い悲鳴を独占だろうが、三十歳がカウントダウンのメンズではただの悲鳴でブタ箱だ。

 そうやって動かざること山の如しで、“すやすや”と寝てしまった少女に、悪戯もせず真面目に番をしてだいたい三時間くらい。

 電車を乗り継いでここに着いたのが昼過ぎだったので、そろそろ黄昏どきに差しかかろうとしていた。

 海と戯れていた三人の少女も海から上がってくる。

「あれれ? そこの人間太陽は、もしかして寝ちゃってるの?」

「練習してたから疲れたんじゃないですか? 遊んでいるわたしたちとは体力の消費も、精神力の消費の仕方もまるで違うでしょうから」

「でもこうも暑いちゅうのに、ようこんな気持ちよさそうに寝られるもんやな」

「起こすのが可哀そうな寝顔ですね。なんでもコミケとかいうのでも、どうも最近は連日の徹夜続きだったそうですし」

「う~~ん。こういう寝顔を見てるとなんやろ、ウチらん中ではまどかちゃんが、この夏を一番満喫しとるのかもしれんなぁ」

「そうかもしれませんね」

 いくらこのメリーゴーランドが、特一級のリゾート地であっても、南国というわけではないので日が落ちれば“むぁ”と蒸し暑い。

 そこでこうやってヨダレを垂らして寝られるのは、一番かどうかはともかくかなり夏を満喫しているだろう。

 と。

「――もしかしたらどっかのどこかの誰かさんの、いやらし~~いマッサージが、暑くても眠気を誘ちゃうほど気持ち良かったのかもね」

 砂はただでさえ音を吸収する。

 俺にだけ聞こえるような小さな声で、それこそさり気なく唇を寄せて耳朶に囁かれた。

 でもネコって眼に暗視能力があるのは知っていたけれど、あんな距離でも視えちゃうくらい望遠能力まであるとは知らなかったなぁ。

 勉強になったよ、サンキュ、またひとつ賢くなれたぜ、洋子。

「まあ、そうはいうても、そろそろ――」

「そうですね。起こさないわけには、やっぱりいかないですよね」

「お~~い、いいかげんに起きなさい、このナチュラル・ボーン・サン・オデコ」

 洋子が“パチンッ”と小気味良い音をさせ、茜色に染まっているオデコを叩くと、海ではなく夢の世界で遊んでいた少女が戻ってくる。

 ヨダレを垂らした口を“ほけら~~”と開けたまま、ぼんやりとした視線をみんなに送ると“のそのそ”と身体を起こし、

「たっ!?」

「あ? す、すいません!?」

 まどかちゃんは水着の首の紐を解いたまんまだったので、おっぱいが“ポロリ”しそうだったが、電光石火で綾乃ちゃんに阻止された。

 だけど目隠しするのにそのスピードはないと思う。

 オデコの音に張り合うようにして、“パチンッ”と小気味良い音が俺の目元からした。

 ほとんどビンタ。

「寝起きなのにサービス良すぎんでぇ」

「ほぇ?」

「そういうのはもういいから、とっとと水着の紐結びなさいよ。ああ、もう、いいわ。わたしが結んであげるからあっち向いて」

 女の子のこういうときの、咄嗟の連係プレイというのは、男には真似のできない凄いもんがあったりする。

 僅かな時間で目隠しは解除されたのだが、その僅かな時間でまどかちゃんは水着を直すどころか、サマー・パーカーまで羽織っていた。

 オトコなら友人の誰かが素っ裸でも、きっと次の日の朝まで放置だろう。

 そのまま綾乃ちゃんの着替え待ちも考慮して、少女たちはビーチに設置されている更衣室、俺はチェアを返しに海の家へと向かう。

 工程がいっこ多いのに、先にビーチの入り口で、三十分くらい待っていたのは、必然でもちろん俺の方だった。

 水平線に切なく儚く沈む太陽。

 ビューティフル。

 人の編んできた文化・文明がどれだけ発達しようとも、自然という一大スペクタル、この神造の美しさに太刀打ちするのは難しい。

 もっとも勝てそうなものを、俺はこのときいくつか知っていたけど。

「足立区って意外に都会だったのかしらね?」

 腕を頭の後ろで組んだ洋子が遠回しに地元と、現在進行形で眺めているお空に賛辞を送る。

 ここからホテルまでの距離はそれほどでもないが、夕焼けはあっという間に満天、とまではいかないが素晴らしい夜空に変わっていた。

 波の音と潮の匂い。

 生まれてから世界で自分が一番不幸だと思ったことはないが、生まれてから世界で自分が一番幸せだと思ったことはある。

 今夜の俺が望めるだろう最高のロケーションを、今生の俺が望める最高の少女たちと共有できるこの時間。

 大仰な言い方になってしまったが、忘れない夏の思い出として、いまこのときのことを、俺は心のファインダーに刻み付けていた。

 ……デジカメは家の玄関に置いてきちゃってさぁ。

 紅葉ちゃんが持ってきてるから、まあ、帰ったらコピーさせてもらおうかな。

 と。

「しっかし、何度見ても立派なホテルやねぇ。商店街の福引きにしては、こりゃまたえらく奮発してくれたもんやわ」

 その紅葉ちゃんがホテルのロビー、その吹き抜けの天井を見上げて、それこそ何度目になるかわからない、素直で感嘆な言葉を漏らす。

「バブリーな時代に建てられたからね」

 ホテル・ファンキー・バブル。

 まさに名は体を現すといった感じなのかどうなのか、当時は温泉娯楽施設なので付けられた名も、いまは実に皮肉な結果になっていた。

 残念ながら昭和ではなく平成の現在、泡は温泉の泡ではなく、なにもかも水の泡という意味になっている。

 だからあっちこっちが、無闇やたらにゴージャスなつくりになっていた。

 シャンデリア。

 噴水。

 仁王像。

 ここまではいい。オーケー。許そうじゃないか。

 でも、

 ワナナバニ園。

 秘宝館。

 温泉ストリップにスペース・ナインボールまであったりする。

 バランスだとかTPOとかいうのは皆無で、あの時代って狂ってたなと、妙に実感できてしまうラインナップだった。

「そいじゃ荷物を部屋に置いたら――」

 壁掛けの時計を見る。

 結構早くに海からは引き上げてきたと思っていたのに、そろそろ七時半になろうかとしており、大広間でする夕食の時刻が迫っていた。

 こういうところは如何にも日本のホテルらしく、たとえお金を払うお客様であっても時間厳守である。

 八時ジャスト開始の九時半終了。

 さて。

 午後は海に浸かってない俺でも髪の毛が“ガシガシ”するのだから、少女たちも軽くではあっても風呂に入りたいだろうし、

「大広間に直接集合ってことにしようか」

「ん、オーケー、それじゃ、誠、またあとでね」

 そう申し合わせしてから一度エレベーターの前で別れる。

 少女たちは言ってみればパックツアーで来ているので、当然のように全員同部屋だが、俺は一人客の格安な宿泊なので部屋は別だった。

 大浴場はあとでゆっくり行くとして、内風呂に入ると髪の毛を洗い、こびりついていた頭皮の敵を根こそぎ丁寧に丹念に落とす。

 それでもオトコの風呂なんて短いもんで、八時前には大広間で少女たちを待ち席に着いていた。

「……おお」

 十分ほど遅れて現れた少女たちは、水着姿を見たときもそうだったが、ホントに来てよかったと思わせる湯上りの浴衣姿になっている。

 ホテル備え付けの野暮ったい浴衣も、少女が着ればそれだけで、キュートなコスチュームに早変わりだった。

 酒が美味い。

 肴。

 座敷のテーブルに並べられている料理が、口にもせずに判断するのはなんだが、口にするのを躊躇うような外観なので一層である。

 銀河の珍味というキャッチフレーズというか触れ込みも、なるほど頷けるという料理がてんこ盛りになっていた。

 どんなもんなのか詳しくは説明しないけれど、近くに工場があれば、バイオハザード的なことも考えちゃいそうなレアな食材群である。

 都市伝説がひとつできるかもしれない。

「あ、綾乃、お、お先にどうぞ」

「まどかさんこそ、遠慮なさらずに召し上がってください」

 我関せずでバナナみたいなワニみたいなものを、“モカモカ”と食べている洋子以外は、笑顔に拠って互いに互いを牽制しあっていた。

 ま。

 例外はどこにでもいて、

「マズッ!? なんやこれマズッ!! めっちゃマズいなこれっ!! マズッ!!」

 などと口走りつつも箸はまるで止まる様子はなく、皿まで手に取り抱え、腕白小僧が貪るようにかっこみ胃に収めている関西娘もいる。

 もしかしたら見た目が悪いものほど、というやつで美味なのかもしれない。

 が。

 可愛い唇の端から虫の脚みたいなのが、“みょ~~ん”と飛びでてるのは最早ホラーだった。

 シュールな少女を見ながら呑む酒は、それはそれでまた味わい深いというか、見方を変えてみれば粋な気もするけどね。

 だけどその域に俺が達するには、まだまだ修行が必要だろう。

 道のりは長い。

「ちょっとトイレ行ってくるわ」

 只今カキ入れどきなシーズン真っ最中のはずなのに、まばらにしかいないあまりな客の少なさに、ホテルを適当に心配しつつトイレへ。

 そしてその帰り道に気づいたのだが、行きは気づかなかったのは、いま着たばっかりだからなのかな?

 大広間がその名に恥じないくらい大きく広いので、淋しいというか侘しい感じもしたが、賑やかなグループというのはいるものだ。

 どうやら姉妹らしい。

 見た目は全員まったく違うタイプで“バラバラ”だけど、なんとなく印象というか雰囲気の似ている四人だった。

 で。

「……おっと」

 女子高とかによくあるらしいが、同性しかいないのだからという安心感。

 ある意味でそれは怠惰に繋がるだろう。

 旅の開放感もある。

 その姉妹が特にどうこうということはないのだが、こんな時代に取り残されたホテルで、オトコの視線などないだろうと油断していた。

 浴衣を着慣れていないせいもあるのだろうが、どうやらすぐに帯が乱れてしまうようである。

 素早く直そうとしていたが、ほんの“チラッ”と一瞬だけ、それだけではあるが胸元をちょっと開いた隙間に下着が見えた。

 姉妹に気づかれないよう即座に眼は逸らしたが、牡の本能で“ドキッ”としてしまったのは事実である。

「うっ!?」

 だから云わば見てしまったのは事故なので、悪いことをしたわけでもないのに、うっかり感じなくていい良心の呵責を感じるのも本能。

 見ていたではなく、目撃していた、と伝えてくる少女の視線。

「…………」

「…………」

 綾乃ちゃんも俺にそういうつもりがなかったと、即座に視線を逸らしたと、わかっているだろうから別段責めるような気配はない。

 ないんだけど――。

「…………」

「…………」

 え? な、なにこれ? な、なんでこんな意味深な空気が、綾乃ちゃんからは発散されちゃってるのかな?

 目の前の少女の反応がわけがわからず、大人の余裕などというものが、いつものようにあっさり吹き飛んだ俺の眼はたぶん泳いでいた。

 洋子やまどかちゃんならこういうある種、理不尽な少女の反応も予想できるが、綾乃ちゃんとなると完全に予想外である。

「…………」

「…………」

 女子に話しかけられた奥手中学生男子のようにして、けれどもうちっとも初々しくないのに、見っともなくうろたえそうになっていた。

 どうやら自分は自分で思っているほど、それほどに大人でもなければ余裕もない。

 それにやっと気づけたのは、少女の頬が我慢できなくなったのか、小刻みに“ひくひく”と震えはじめてからのことである。

 認識を改めよう。

 この娘も結局は少女という悪戯好きな生き物で、こういう風に人をからかったりするお茶目さんということだ。

 けど。

 きっと誰にでもするわけじゃないんだろうし、きっと誰にでも見せる顔ではないんだろうけどな。

 なんだかスンゲぇうれしいかも。

「子どもじみたことをして、大変申し訳ありませんでした」

 心を許したような笑顔を浮かべたままで、それこそ子どものような仕草で、綾乃ちゃんはその小さな頭を“ぺこっ”と下げる。

 くっ。

 それはもうなんでも、許してあげちゃうという可愛らしさだった。

「……あ?」

 だけど今夜の俺にはこれだけじゃ、こんなもんじゃ、もっともっと可愛いとこを、俺にだけは見せてくんなきゃ許してあげないぜ。

 綾乃ちゃんの手を握ると来た道を引き返した。

 広間にいる人の死角に入る。

 むろん死角とは言ってみたところで、トイレに行こうとする人がいれば、視覚に捉えるのは難しくないどころか無理なら病院にGOだ。

 暢気にホテルなんかに泊まるんじゃなくて、救急でホスピタルに入院した方がいい。

「見せて」

「はい?」

 少女の小さな体躯を壁に押し付け、腕で逃げ道を塞いで顔を近づけると、俺は病気をフルスロットル、はマズいので半分くらい入れた。

 ほんのりとするシャンプーのいい匂い。

 スイッチオン。

 今日はこの娘に散々おっぱいチャンスを邪魔されている。

 ……まあ、実際にはまどかちゃんのだけで、さっき偶然視界に収めただけのおっぱいに、あの女性には失礼だが興味はないのだけれど。

 うん。

 島田誠の脳内での、無茶苦茶な建前を構成するため、ホントに偶然でのチラパイではあったが、ダシにさせてもらとしよう。

 この期せず“ムラムラ”しっぱなしの“ドキドキ”は、一度ちゃんとおっぱいを拝まないと収まらない。

 さっきの姉妹とは違う綾乃ちゃんの、きっちりと着こなされている浴衣の合わせ目に、俺は指先だけを、爪先だけを僅かに侵入させる。

「嫌なら逃げていいからね? 綾乃ちゃんならそんなの簡単だろ?」

 俺と綾乃ちゃんとの間で繰り返されている、逃げてもいいけどどうしますか? これは毎度毎度の儀式のようなものかもしれない。

 そんな質問など別にしなくとも、少女が逃げないのを俺は知っていたし、それを証明するように少女は逃げなかった。

 でも、どこかで、これは信じる信じないの話ではなくて、逃げられたらという気持ちもあって、……この“ドキドキ”も嫌いじゃない。

 そしてこの“ドキドキ”に少女がくれた答えは、

「島田さんならいいんです。この身体に見ても触っても、……なにをしてもいいんですよ」

 最高だった。

 いつ誰が来るかもわからない無駄に極限な緊張感も相まって、“ムラムラ”も“ドキドキ”も加速しっぱなしでブレーキがヤバいよ。

 指を“そろりそろり”と、ゆっくりゆっくり奥へ奥へ沈ませていく。

 ブラジャーの外縁、輪郭をなぞるようにしながら、起伏の乏しい慎ましいふくらみを、手で掬うようにして浴衣を剥ぎ取った。

 人が来たらという緊急避難でこうなってるが、こういうのもこれはこれで案外いいもんだね。

 片方だけというのはシンメトリーじゃないので、気持ちが悪いように思っていたが、このだらしのない放っぽりだした姿も結構エロい。

 うん。

 なんだか襲われてるみたいでさぁ。

 リアルに誰かを襲いたいなんていう怖い願望はないけど、牡生命体としてはそういう妄想で興奮するのは事実である。

「あ……」

 鎖骨から撫でるように肌を滑らせた指先を、やわらかな乳肉を少しだけ押すと、ブラジャーに引っかけ一気に“ぐいっ”とずり下げる。

 ボリュームの関係で豪快に“ぶるるん”とは揺れなかったが、それでも“ふるるん”と揺れるのはまた一味違う可愛らしさだった。

 淡い色。

 見慣れることはあっても見飽きることはない乳首も、生意気に“ツン”と上を向き、牡を誘うようにして挑発的に揺れている。

「……ンふぅッ」

 しとやかな印象を与える小さめの乳輪を、刹那だけ筆で刷けるように掠めると、綾乃ちゃんの口からは堪らず色っぽいため息が漏れた。

 羞恥の赤が滲んでいる顔。

 いつもしよりもさらに注意して、その可愛いさを抑えなくてはいけないのに、堤防が決壊するように確実に声という水が零れていく。

 危機意識があった方が人の心は盛り上がるらしく、こういうのもツリバシ効果というのか俺も少女も盛り上がっていた。

 リングをしつこいくらい撫でまわしては、ときおり息を“ふ~~っ”と優しく吹きかける。

 絶対に芯であり核である乳首本体には触れないようにながら、ブレスだけで愛でるように嬲るように女の子の柔らかな肉をくすぐった。

 吐息の軌跡を追いかけるように綾乃ちゃんの肌は粟立ち、俺の起こす風が去っても快感の波は勝手に巻き起こり広がっていく。

 そして、

「あッ、んぅ、ンンッ、あ、ふ、うンッ、あッ、あッ、んンッ」

 スタッカートで区切られたような可愛い喘ぎ声。

 大きく出したくても出せない音量を、スピードと数で補おうとするみたいな、綾乃ちゃんの涙ぐましいリアクションで俺が先にキレた。

 硬く“ピンピン”に勃起している乳首を、ちょっといったところでがっついてる、紅葉ちゃんばりに口に含むと思う様に頬張る。

 舌を尖らせ乳頭の切れ込みを“チロチロ”と弄ってから、好きな娘を苛める小学生のようにして軽く歯を立てた。

「くぅんッ!?」

 お返しとばかりに甲高い声を上げ、俺の肩に手を置いていた綾乃ちゃんの爪が、与えられた快楽の度合いを伝えるようにして食い込む。

 その鋭いけれどどこか鈍いような痛みが、俺の嗜虐欲を煽りに煽って大炎上させていた。

 たぶん、

「ホントにもうあのオトコは手がかかるなぁ。一体どこまでトイレに行ってるんだか。倒れてるんじゃないでしょうねぇ」

「呼びにいった綾乃ちゃんも、帰ってけぇへんしな」

 そんな声が聞こえてなければ、少女の浴衣を舞わせ、問答無用でパンツを下ろしていたかもしれない。

 冷めた。

 もううっかりすると“バブ~~ッ”とか、口走しちゃいそうになっていた動きが、自分の年齢を思い出すと同時に“ピタリ”と止まる。

 呼吸を合わせたように、綾乃ちゃんの動きも“ピタリ”と止まっていた。

 これぞアイ・コンタクト。

 少女は“ささっ”と中途半端に乱れた浴衣を素早く直し、俺は行きたくもないのに再びトイレに向かって逃走。

 役者である。

 数分後には俺も綾乃ちゃんも、何食わぬ顔で席に着き、なんだかんだで口にしてみたら、意外にイケる銀河の珍味を食していた。





[2293] 少女病 三十話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:38



「いやいやいやいやいや――」

 あ行の二段落目とや行の一段落目を交互に連呼しながら、紅葉ちゃんは俺の背中を“ぐいぐい”と押してくる。

 どこに向かっているのか質問するたびに、なぜなんだか顔を赤らめているポニーな少女は、こんな感じでひたすらに回答を避けていた。

 時刻は九時を少し過ぎたくらいか。

 ステージでは何やら、忍者ショーらしきものをやっていた夕飯を終え、適当にゲームセンターで遊んでいたが一同程なくバラけた。

 地方のゲーセンには掘り出し物が多いということで、洋子は綾乃ちゃんをお供にしてまだ夢中になって入り浸っている。

 ダライアスの三面ぶち抜き筐体なんて久しぶりに見たな。

 技術的には新しいものに無論敵わないのだが、名作というのは何年経っても名作である。

 これから観たいテレビがあるからと言って 家でも録画しているくせに、まどかちゃんだけは一人“いそいそ”と部屋に戻っていった。

 どうでもいいが地方のCMっていうのは、全国区の大手な知名度のものにはない、なんだか独特のものがあって結構好き。

 で。

「どこに行こ――」

「いやいやいやいやいや――」

 紅葉ちゃんと俺はお土産コーナーに行ったのだが、行く予定だったのだが、背中を“ぐいぐい”と押され華麗にスルーさせられている。

 もともとそれほど人気のないホテルではあるが、廊下を進むごとに“メキメキ”と、順調に快調に辺りに人気がなくなっていった。

 実に寂しい。

 …………

 来年もここがまだ営業しているかどうか、さり気に心配ではある。

 まあ、それはいいとしても、いい加減にそろそろ、勘は鈍いが鼻は鈍くないので、紅葉ちゃんの最終目的地がどこなのかわかってきた。

 漂ってくる硫黄臭。

 これがいい匂いかと言われると、別にそんなことはないのだが、このキツい臭いがないと、イマイチ以上に物足りないのも事実である。

 なんでもここは源泉かけ流しらしい。

 残念ながら男女混浴というわけではなかったが、ホテルのホームページを見た限りでは悪くない風呂だった。

「あれ?」

 でも紅葉ちゃんは『男』とプリントされている暖簾を、アウト・オブ・眼中で“ずかずか”とシカトでもするみたいに通り越し、

「おや?」

 同じようにして少し離れた距離にある、『女』というプリントの暖簾も通り越すと、さらに歩調をペースアップさせて廊下を突き進む。

 あとから思ってみればなんだが、それは人気のない廊下の人の気を、神経質に避けるような動きだったのかもしれない。

 現状はこの有様ではあるがこの露天風呂は、一応はホテルのイチオシであり目玉である。

 僅かの可能性であっても“ばったり”を選択肢から排除したい。

 恥ずかしい自分をなるだけ見られたくないという、恥ずかしいという認識があるのに、そうする自分を見られたくないという乙女回路。

 ああ可愛い。

「うん?」

 俺の勘も鼻も別に鈍くはなかった。

 ポニーな少女のハンドプッシュによって、背後からコントロールされつつ、駆け足一歩手前くらいのスピードで廊下の角を曲がる。

 奥には『男』とも『女』ともどちらとも印されてはいない、ハートのマークがプリントされている暖簾がかかっていた。

「……貸し切りなんやて」

 紅葉ちゃんはそう小さく口の中だけで、けれど不思議と俺の耳に流れ込んでくる声で呟くと、まさに暖簾に腕押しで勢いよく飛び込む。

 潜ってからすぐに一回角を曲がって引き戸を開けると、

「なかなかやるじゃん、ファンキー・バブル」

 どうやらこのホテルのホントのイチオシで目玉はこれだったようで、浴場自体はそんなに広くはないが絶景のパノラマ・ビューだった。

 もう夜なので外は当然真っ暗闇なのだが、海が近くに感じられ、宝石箱のように空に輝く星と溶け合い美しい光景である。

 それは人が眼球だけでモノを見ていないという、ロマンが満載の素敵すぎる証明なのかもしれない。

 心で視ている。

 うん。

 決して脳で観ているとは答えないところが、褒め称えられるには程遠く、ひねりも芸もないが、我ながら悪くない表現だと思っていた。

 反論できないだけの説得力がある。

 できるとかできないとかの議論や理屈の捏ねくりあいは、揺るがない事実の前ではただただ吹っ飛ぶしかない。

「……貸し切りなんやて」

 なんせ霊長類などと言い張ってる人間という生物には、背中に視覚はないはずなのに、正面の海を見ながら背後の紅葉ちゃんも視える。

 心にはいつまでも振り向かないこちらを“おどおど”窺いながら、真っ赤な顔で“もじもじ”している少女が映っていた。

 別に俺だってなんでもかんでも、エロに持っていこうというわけじゃない。

 だけどここまでのシチュエーションで期待しないといったら、オトコとして嘘になるだろうし、嘘じゃなければどうかしているだろう。

 最近の女子高生は昔の女子高生ほどには、奥ゆかしさも慎ましさも、それほど前面に出して売りにはしていないかもしれない。

 だが覚悟。

 どんなに時代は違ってオープンになってはいても、少女が決意するオトコとのお泊りには、やっぱり相当量なものが必要のはずだった。

 なら。

 今度はオトコが度胸を見せる番だろう。

 いや、いやいや、もしかしたら、俺が望んでいるような、そんなエロい方向の期待など、少女たちは微塵もしていないのかもしれない。

 みんなで夏のリゾート地でのバカンスを、ただ単純にただ純粋に、紅葉ちゃんは楽しみたいだけなのかもしれん。

 一人で夜の貸し切り露天風呂というのも淋しいので、偶々空いている俺を誘っただけなのかも。

 が、けれども、しかし……。

 などと、まあ、こんな風に、ひたすら考えているだけで、なんにもしないオトコが、なんにも行動しないオトコが結局は一番嫌われる。

 石橋は叩いている暇があったらBダッシュだった。

「……それじゃ紅葉ちゃん、まあ、うん、貸し切りだってんなら、ああ、早速二人占めしちゃおっか?」

 毎度のことなので今更“がっかり”もしないが語彙もセンスもない。

 文才ゼロ。

 なにか気の利いた台詞はないものだろうかと、考えてはみたが何も出てこなかったので、極めて普通の台詞を言いつつ俺は浴衣を脱ぐ。

 自慢できるようなボディではないが、白鳳院流エクササイズのおかげもあって、見苦しくないくらいにはどうにか締まってた。

 女の子と海に行こう。

 みたいなわかりやすい目標があったらすると、現金というかなんというのか、精神に引きずられ成果が出るのも非常に早いものだった。

 張りのない生活が張りのない肉体を生む。

 そういう意味でもこの素晴らしい少女たちとの出逢いは、未来人に遭うよりも有り得ない奇跡に感謝感謝である。

「…………」

「…………」

 脱いでいる姿を見るのは(少女限定で)好きなのだが、脱いでいる姿を(熱視線で)見られるというのはなかなかむず痒いものだった。

 パンツにかけた手が萌えないのに、おっさんにも一応ある羞恥心で一瞬止まってしまう。

 それでも“えいやっ”と勢いよく下ろすと、

「うわぁっ!?」

 おっさんのお尻なんて見慣れているわけではないだろうが、それなりには見ているはずなのに、それでも驚いたような紅葉ちゃんの声。

 やっぱ少女は萌えるなぁ。

 間接照明のムーディーな明るさに“ぼんやり”と浮かび上がる勃起は、常在戦場のスタンバイはお任せオーケーで準備万端である。

「じゃ、紅葉ちゃん、俺、先に入ってるから」

「う、うう、うん」

 たぶん無意味に腰に手を当て、ほんの半身だけだが振り返ったとき、臨戦態勢の牡器官が紅葉ちゃんには“バッチリ”見えたんだろう。

 これから脱ぐのに浴衣の胸元を掻き合わせると、慌てたようにして“ささっ”とその熱すぎる視線を床にと落とした。

 微かに身を震わせている、小動物ちっくなところが堪らない。

 期待に胸とアソコを膨らませながら、風呂に入る最低限のマナーのかけ湯をして、乳白色の海へと洗い流せない煩悩全開の身を沈める。

「……はぁ~~」

 メチャクチャ心地いい。

 じんわりと熱が肌にしみこみ広がっていく。

 風呂は命の洗濯とは、さて、誰が言ったかは知らないが、実に上手いことを言ったものだ。

 問答無用で人を“ほっ”とさせるお湯をすくい“じゃぶじゃぶ”と、そして“ドキドキ”と胸を高鳴らせて俺は何度も顔をこする。

 どうしてこう女の子が脱ぐときに立てる衣擦れの音というのは、オトコの鼓膜というか聴覚をこれほどまで刺激するのか。

 本人は“そろりそろり”と歩いているつもりなんだろうが、なぜ風呂場の“ひたひた”という足音はこんなに心に響いてくるんだろう。

 にやけている顔を元に戻そうとさっきよりも深く、大量にお湯をすくって“じゃぶじゃぶ”とこすった。

 振り返る。

 俺のすぐそばに紅葉ちゃんは、一糸纏わぬ生まれたままの姿で立っていた。

 タオルを縦にして、というよりも盾にして、年齢平均からすれば豊かすぎるだろう乳房から、年齢相応に魅惑の股間までを隠していた。

 もっともたかだか布切れ一枚程度では、とてもではないが紅葉ちゃんの肢体は、隠せるようなボリュームではない。

 胸のシルエットのみならず、ふくらみの両サイドがはみ出していて、タオルを乱暴に引っぺがしたくなる優美な曲線を見せている。

 僅かな動きでも揺らめくタオルの裾から、少女の秘密の繁みが覗けそうになるのが、その荒ぶる牡の想いをより強いものにさせていた。

 マナーを無視して押し倒したくなる。

 そしてさらにその気持ちを煽ってくる追い討ち。

「下ろしてるんだ?」

「……お風呂入るんやから。そら、誰でも下ろすんやないかなぁ?」

「まあ、そりゃそうか。でもさ、そうやって下ろしてるのを、はじめて見せてもらったから、なんだかこう新鮮な驚きがあっていいよね」

「どうも」

「う~~ん。紅葉ちゃんの可愛さを再発見しちゃったよ。変な言い方だけどポニーって二度オイシイよね」

「……どうも」

 ポニーテールという髪型は男が、女の子にしてもらいたい人気ランキング、いつの時代も上位なのだろうが下ろしたときがまた可愛い。

 髪を上げているのか下げているかだけなのに、女の子は“がらり”と雰囲気が変わってしまう。

 またオトコの独りよがりで勝手な妄想なのだが、俺だけにしか下ろしている髪型は、見せないんだとか脳内ででっち上げると萌えるな。

「紅葉ちゃん」

 少女も永遠に俺専用の観賞マネキンになっているつもりはないだろう。

 けれどお湯に浸かりたくとも、オトコが“じっ”と見ていれば、どうせ晒させる予定ではあるが、タオルを少女は外すことができない。

 タオルをお湯に入れないというのも、お風呂の基本中の基本、そして犯してはならないマナーの中のマナーだ。

 夏とはいえこのままほっとけば、紅葉ちゃんに風邪を引かせてしまうかもしれない。

 虚空の石ころ。

 SFのような嘘くささで、妙に明るい光を放つ月に視線を移すと、少女にかかり湯とお風呂への侵入のタイミングを与える。

 紅葉ちゃんはそのチャンスに素早く洗面器でお湯を掬うとかけ湯をし、爪先から飛び込みの選手みたいに音もなくお風呂に身を沈めた。

 だがすぐに“びくんっ”と弾かれたように竦ませ、乳白色の水面に微かではあるが波を立たせる。

 お湯の影響で“ぬるっ”とした肌と肌が触れ、でもそんなの別に初めてでもないのに、そんなウブな反応をなくさないのが嬉しい。

「あったまったら洗いっこしようよ」

 なんでもないようにして、内心は“ドキドキ”なのに、月を映したまま俺がそう言うと、間髪入れずに隣りでまた水面が波立っていた。

 しばらくして“ぽかぽか”してくると、紅葉ちゃんの肩を抱いて、温まってるのを確認すると一緒に立ち上がる。

「ひゃッ!?」

 顔を恥ずかしげに俯かせていたので、結果モロに気合漲る勃起を見てしまい、ういういしさを失わない少女に可愛い悲鳴を上げさせた。

 そのまま肩を抱いて、シャンプーやらリンスやらボディソープやらが置いてある、鏡の前のイスに紅葉ちゃんを座らせる。

 大きなお尻が圧力で“むにゅ”となるのがひどくエロい。

「…………」

「…………」

 鏡越しに眼が合った。

 こういうところの鏡は湯気対策がされており、あまり曇ることはないので、紅葉ちゃんの肢体は“バッチリ”とはいかないが映ってる。

 少しでも映る面積を小さくしようと身体を丸めてるが、その丸みは女らしいまろやかさを、ひたすらに際立たせるだけだった。

 それに日焼けのあとが堪らなく色っぽい。

 紅葉ちゃんはそれほど肌は白くないが、こうやってじっくりと観察させてもらうと、やはり灼けた部分とのコントラストはそそられる。

「ンッ!?」

 ボディーソープのタンクを取ろうと、背後から手を伸ばした際に、達人の見切りのようなミリ単位で、わざと少女の脇腹を掠めた。

 飽きることのない可愛い声。

 たったそれだけのことなのに紅葉ちゃんの身体は、面白いように俺のすることのイチイチに反応してくれる。

 しかしそんな“ぞくぞく”な反応をされてしまえば、さらにもっともっと、“わくわく”することをしたくなってきちゃうじゃないか。

 ごっくん。

 見っともないくらいに大きな音を立てて俺は生唾を呑むと、ボディーソープを手に垂らし“ぬちゃぬちゃ”と泡立てる。

 サンオイルですでにこの手つきは経験していたので慣れたもんだ。

 呂ではなくて俗。

 汚れや疲れを取るためではなく“すっきり”するためのそういったお店に、女性専門があるなら就職できそうな手つきで背中に触れる。

 やはり湯の効能なのか紅葉ちゃんの海で、日焼けしたばかりの肌は“しっとり”していた。

 なめらかだが手に吸いつくようである。

 ソープを“ぬりぬり”と塗り広げていくと、欲望をぶちまけたような液体が、白く覆い隠しても肌が紅潮がしていくのがわかった。

「……ン……ふぁ……」

 どんな部位であってもデリケートにできている女の子に、円の動きでタッチするのは、基本中の基本でありマナーの中のマナーである。

 ゆっくりと素早く“ぬりぬり”“ぬちゃぬちゃ”ローリングローリング。

 例にするのがちょっと以上に些かいやではあるが、満員電車の痴漢のようにして、少女の身体を慎重かつ大胆にまさぐった。

 紅葉ちゃんは同じ年代の女の子と比べれば大柄(この表現は失礼なのかな?)だが、それでも小さい背中はあっという間に洗い終わる。

 となれば当然お次は前を洗わなくてはなるまい。

 ――具体的にはおっぱいとか、オナカとか、まあ、女の子の秘密にしている大事なところとか。

 腋の下から手を潜らせる。

 躊躇なく五本の指を“わきわき”させながらおっぱいにセット。

 このときになっていまさらなのだが、さっきからずっと直手、洗うという名目なのに、俺はスポンジを使ってないのにやっと気づいた。

 が。

「……あ……ああッ……ふぁ……ッ……はふッ……」

 紅葉ちゃんにもこれといって異論はないようなので、このままおっぱいへのハンド・クリーニングを続行する。

 手のひらには大きくてやわらかいだけではなく、喰い込んでくる指先を押し戻そうとする若い弾力。

 少女特有のものだ。

 蕩けるようなやわらかさをここ何年かで獲得したばかりの、芯にはやはりまだ硬いものを残した蒼い張りのある未熟な乳房。

 成熟した果実には完成された甘みがあるが、酸味を昇華し切れてない花開いたばかりの蕾には、未完成にしかない異なる味わいがある。

 コドモからオンナになりかけていた。

 どちらがどうとか優劣の問題にする気はないが、世の中腐りかけに限らずで、なんでも『かけ』というのがプレミアムなのは事実。

 少女という存在はコドモからオンナになり『かけ』る短い、期間限定の旬な味わいであるのは揺るがない真実である。

「んッ……クッ……んンッ……、ハッ……あッ……んふぅ……」

 鏡に映っている紅葉ちゃんのおっぱいは淫らに蠢く両手に揉みしだかれ、いやらしく落ち着きなく“くにゅくにゅ”と形を変えていた。

 いくらもしないうちに少女の息は弾み、好き放題に活動してる手のひらに、牡には無視できないものを伝えてくる硬い感触。

 身体中の血液が沸騰する。

 自分の愛撫にわかり易い欲情の証を示してくれた紅葉ちゃんの、そのお尻の谷間に“ぐりぐり”と俺も硬く熱い欲情の証を押しつけた。

 そうしながら“たぷたぷ”揺れる左右のおっぱいの先端で、刺激を待ち望み“ぴんぴん”に勃起している乳首を指先でそっと摘む。

「ひゃうッ!?」

 すると胎児のように身体を丸めていた紅葉ちゃんは、快楽神経の塊への鋭い刺激に、可愛い悲鳴を上げバネ仕掛けみたいに仰け反った。

 その隙に片方の手を“するり”と、女の子の秘められた部位に持っていく。

 お湯で肌に貼りついている恥毛を掻き分け、花びらを撫でながら、心持ち中指を曲げて少女の“しっとり”温かな粘膜へと挿し込んだ。

 押し出されるように奥から溢れてくる透明なシロップ。

 ソープよりも“ぬるぬる”している。

 エロい。

 指先を濡らす粘液は人をどこか“ほっ”とさせる温かさではあったが、同時にオトコを興奮させるという相反する性質まで含んでいた。

 紅葉ちゃんの頭の重みを心地よく肩で感じながら、鉤型にした中指で少女のやわらかな肉を掻きまわす。

「ふ……ふぁッ……あ……あひィッ……」

 縦横無尽の大活躍。

 耳朶に熱い息を吹きかけながら、ピンクに染まった首筋を執拗にねぶり、おっぱいを揉みしだきながらもう一方で粘膜を蹂躙する快感。

「……紅葉ちゃん、前を、鏡に映ってる自分を見てごらん」

 囁く。

 やっぱり『ごらん』っていうフレーズは“ぞくぞく”すると再認識しながら、ぽってりした花びらを“かぱっ”と大きく左右に開いた。

 人差し指と中指で引っかけ逆Vの字にして、ちょうどジャンケンのチョキのような恰好。

「やッ……ンッ……」

 腕の中で少女は『イヤイヤ』と、駄々をこねる幼子のように首を振る。

 鏡にはまだ誰にも穢されていない可憐なヴァージンのホールが、物欲しげに“ひくひく”と収縮を繰り返す様がはっきりと映っていた。

「よく見て」

 俺にだって調子に乗っている自覚は重々あるのだが、そんなのがわかっていてもやめられない止まらない。

 チョキにしていた指先を、紅葉ちゃんの視線のピントが合っているのを確認して、“ぷっくり”と膨らんでいる女の子の真珠に宛がう。

 薄皮のフードはほんの少しだけ剥けていた。

 美しい鮮烈な色をしたピンクの本体が、儚げに“ふるふる”と震えながら、ほんの僅かだけではあったが覗いている。

「あッ!? んッ、んッ、ふぅ、んンッ、あッ……」

 からかうようにして軽く“ちょんちょん”とノックしてから、人差し指の腹で“ころっ”と転がすようにしながら剥き上げた。

 普段は包茎気味で大事に守られている過保護なソコは、まるで世間知らずで箱入りな深窓の令嬢を思わせる。

 刺激を求めていた。

「……んぅ……はぁ……くぅ……ン……あ……、んッ……うッ……ふ……はひッ!?」

 軟膏を塗り込むようにして無防備になっている真珠を弄い嬲り、途切れることなく紅葉ちゃんの身体に快楽のパルスを打ち込んでいく。

 それに呼応して少女の膣壁は激しく収縮し、出番を待っていたかのように、大量に蓄えられていたシロップを外へと溢れさせた。

 甘く透明なその粘液をたっぷりとすくい取り、翻弄されるがままの真珠へ丁寧に丹念に塗りつけていく。

 やがてそれは大きなうねりとなり、少女の意識を呑み込んでいった。

「あはッ!?」

 女の子にとって快楽神経の塊である両巨頭だろう、乳首と真珠を同時にひねると、紅葉ちゃんは全身を“がくがく”させて悶え乱れた。

 二秒、三秒と痛いくらいに俺の腕を握り締めてから、糸が切れたようにして不意に力を抜くとぐったりする。

「……偶に勘違いしそうで怖くなるよ」

 テクニシャンの気分。

 恥丘を覆うようにして被せている手に熱い迸りを感じながら、それが収まるのを待って、密着させていた身体を俺はそっと離した。

 虚脱状態の紅葉ちゃんがバランスを崩してズッコケないように、座る体勢だけを直すと中腰の姿勢から立ち上がる。

 膝が痛い。

 だがその鈍い痛みすらもいまは甘美である。

 マット代わりだ。

 それほどの大きさもクッション性もないが床にタオルを敷いて、この熱さが消えるとは思わないが“ひやっ”とする万が一を予防する。

 洗面器でお湯をすくい撒いた。

「紅葉ちゃん」

 肩の上下する動きで徐々に少女の呼吸が整ってきたのを確認すると、保温万全な簡易マットに寝そべりながら声をかける。

 ゆっくりと紅葉ちゃんがこちらを振り向く気配を感じつつ、両手を組んでそこに顎を乗せると、にやけている顔を見られぬよう伏せた。

 慣れるというほどこの手の店に通ったわけではない。

 ないが思い出し想像してしまうと、顔はにやけて愉悦を感じるくらいには、まあ、何年か前までだがそれなりに常連だったことがある。

 気持ち良さ。

 そもそも仕事としている者とそうでない者を、同じ土俵で比べるものではないという大前提はある。

 が。

 それはそれとして。

 ああいうプレイが身体的に与えるものは、そりゃプロの方が上なんだろうが、精神的には当然でプライベートにしてもらう素人が上だ。

 エロいことを考えたから顔に緊張感がなくなったのは否定しないが、自分の幸せっぷりを思うとどうしてもにやけてしまう。

「洗いっこ。今度は俺の番だよ」

「あ、……はい」

 人は眼球だけでモノを見てはいない。

 心で視ている。

 紅葉ちゃんが“のそのそ”と、足下のおぼつかない動きで立ち上がると、浴場なので変ではないが、素っ裸で寝そべる俺のそばに立つ。

 ボディソープのタンクを“しゅこしゅこ”している音がした。

 けれど心眼使いと化しているいまの俺には、紅葉ちゃんがいらんモノまで、スポンジなんてモノまで持っているのも視えている。

「紅葉ちゃん」

「な、なん、やろか?」

「できれば身体を洗ってくれるスポンジ、それじゃなくてさ、もっとやわらかいので洗ってくれると嬉しいな」

 少女というのは耳年増。

 この表現自体はかなり古臭いのかもしれないが、知識に経験が追いついてない部分を、とても端的に明快に良く表している言葉だろう。

 寝そべるオトコの望んでいること。

 もっとやわらかいスポンジというヒントだけでも十分に、頭の中だけで世界の真理までわかる少女にはわかるはずだ。

 証拠に戸惑っているような気配がある。

 これが少女ではなく幼女ならば戸惑っている理由は無知だろうが、知識だけは余りある少女の紅葉ちゃんが戸惑ってる理由は羞恥。

 堪らんな。

 ソープ塗れになっている手が、気持ちをダイレクトに伝えてくるように、“ちょんちょん”とおっかなびっくり俺の背中に触れてくる。

 紅葉ちゃんはこれからする本格的な洗いっこのため、肌に“ぬりぬり”と“ぬるぬる”を広げていった。

 首筋から足の裏まで、ざっとソープ塗れの手を触れさせると、それだけでも結構ご満悦になっている俺から少女は距離を取る。

「…………」

「…………」

 しばし戸惑いの間。

 で。

 開き直ったのか覚悟を決めたのか度胸が良いのかは、そこはあえて触れたりはしないが、紅葉ちゃんは俺を“がばっ”と大胆に跨いだ。

 そこから動きというか流れというかを、止まったなら止まったままの自分を、恐れるかのようにして“えいやっ”としゃがみ込む。

 少女はM字座りで“ぺたんっ”と俺の背中に、さっきの洗いっこの余韻を残している濡れた股間を密着させた。

「…………」

「…………」

 これだけ肌と肌を触れ合わせてると、どんなに過敏だろうが、どんなに鈍感だろうが、なんだかんだなんだろうがわかるもんはわかる。

 秘裂から“とぷっ”と濃い新たなシロップが溢れたのがわかった。

「紅葉ちゃ――」

 別に恥ずかしい言葉責めをしちゃおうかなとか、そういう意図があって沈黙を破る、口火を切ったわけではないのだが結果はオーケー。

 一瞬前になにを言おうとしていたのかさえ、すっぱり忘れてしまう素敵な感触が背中を襲う。

 こんなんだったら若年性建忘症になっても本望である。

 濡れている女の子の唇を“ぬるる~~”と紅葉ちゃんは艶かしく滑らせ、天然モノのやわらかいスポンジを“むにゅん”と押しつけた。

「はぁ……」

 耳朶をくすぐる吐息が甘い。

 背中で感じるおっぱいのやわらかさと、乳首の絶妙な硬さの“こりこり”も、手で味わうものとはまた違うものがあり乙だった。

 俺と紅葉ちゃんの身体は、さっきよりも少し、いや、二人分の体重でも軽々とで浮いているかもしれない。

 自分の身体なのに自分でコントロールできない器官の体積が、一段も二段も増して、リミットブレイクしているのがはっきりとわかる。

「んッ……あ……はぁッ……あふ……」

 緩やかだが激しく、なによりいたいけな少女がするには、あまりにもはしたない、淫らに健気に身体をくねらせている前後運動。

 洗いっこなんぞという名目を、律儀に守る必要などもうないが、そんなのがあったことすら、紅葉ちゃんは忘れているのかもしれない。

 足を絡めて尾骶骨の辺りに、秘唇を“ぐにゅぐにゅ”と押しつけてくる。

 乳首も一段と硬い。

 もちろん、紅葉ちゃんに負けて堪るかと、俺の勃起もほとんど毎秒ごとに、順調に軽快に熱く硬く大きくなっていく。

 洗いっこしている二人の荒い息遣いは、微かな音であるはずなのに、お風呂場全体に見事に反響して、シンクロしているみたいだった。

 が。

 このままではじれったい蛇の生殺しでしかないのを、知識としてだけではなく、自分の身体で経験したこととして俺はわかってる。

「紅葉ちゃん」

「……ふぁッ?」

 なんかマヌケな返事だが、それでも可愛いなぁと思いつつ、

「一回タンマして、お尻持ち上げてくれる?」

「あ」

 快楽に支配されている呆けた顔で、夢中になって身体を揺すっていた少女を、肩透かしを食らって泣きそうになった少女の身体を離す。

 ホントに紅葉ちゃんは悲しそうな顔に、瞬時に表情をチェンジさせると、“のろのろ”と俺から身体を離していった。

 同じフレーズやワードをまた連呼することになるが、そんな顔も少女は可愛いと思いつつ、うつ伏せの身体を“くるっ”と回転させる。

 腹に張りつくようにして裏筋を見せつける、美しさの欠片もないグロテスクな牡器官。

「…………」

 もう無垢ではないかもしれないが、それでも純粋さを失ってない視線。

 けれどその無闇に誇らしく曝されている異様から、こんなブツを視界に映したら、穢れるのではという少女は眼を離せなくなっていた。

「今度は前を洗ってよ」

 ミュージカル俳優ばりに芝居がかった仕草で、舞台でもなければ寒いだけのカッコよさで手を広げる。

 でもある意味このシチュエーションというかこの出逢いが、リアルではないというか現実味がないのでイイのかもしれない。

 とりあえずその効果はあったようだし。

「……島田……さん……」

 肉づきのいい豊かな身体のボリュームそのままに、“のしっ”という感じで紅葉ちゃんは、真っ赤な顔をさせて俺に覆い被さってくる。

 視線が絡み合うと二人の唇は自然と重なり、口内を行き来しながら舌を貪りあっていた。

 乳首と乳首が擦れて互いの身体に快楽のパルスを流し合う。

 大変握り心地のいい左右の尻たぶからだけではなく、身体全体を性感帯にしたようにして、紅葉ちゃんは俺に自分の快感を教えていた。

「はぁ……んぅッ……や……ン、ン、ン、う……あン……、んふァ……あ……、んぅ……ッ……ハ……んンッ!?」

 夢のようである。

 初めての相手というのがもっと面倒で苦戦するものだというのは、知識ではなく経験としてわかっているつもりだった。

 うん。

 つもりだけだったようだ。

 やはり少女も十人で十色ということなのだろう。

 下ごしらえも丁寧に丹念にばっちりして、潤滑油も豊富だったとはいえ、勃起は“にゅるり”と処女地に侵入し奥まで挿し貫いていた。

 蕩け合うくらいに真近な紅葉ちゃんの瞳が、突然襲った破瓜の痛みと、驚愕に大きく見開かれている。

 普段はポニーテールな少女の身体は、どうやら見た目以上に早熟かもしれない。

「んむッ!?」

 粘膜を押し割るときだけは、さすがに処女の抵抗感があったものの、オンナになることを命じられた媚肉は早くもオトコを締めつけた。

 こういう場合感じる必要はないのかもしれないが、オトコならなぜだか、どうしてなんだか感じてしまう罪悪感。

 たぶんそれはオトコは、快楽だけ感じていればいいという、不公平感からなんだろうが、それもどうやら最小限で済みそうで安心する。

「うぁッ……、ん……くぅ……、ああ……んくぅッ……あ、……ひッ……ぅああッ!!」

 唇を離すと途端に洩れる嬌声。

 少女の身体の内側から溢れてくるものは、女の子の甘いシロップだけではなく、鉄の味がするだろう赤く鮮やかな液体の感触もあった。

 しかし、それはすぐに悲痛な傷口の痕跡だけではなく、少女がオンナになる一歩目の足跡となってくれたようである。

「……ひッ……んあッ……、はぁッ……ン……、ふぁッ……ひッ……ぁッ……あ、ンぁッ……はぁ……ふぅ……んぁッ……」

 良々。

 ロデオのようにして下から上に乱暴に勃起を、紅葉ちゃんの秘裂に叩きつけるように突いても、返ってくるのは痛々しい悲鳴ではない。

 奏でられているむずがるような喘ぎ声。

 それは勃起が抜き挿しされるごとに、切迫したものへと変わっていった。

「くぉッ!?」

 歯を食い縛るくらいキツい締めつけの媚肉は“キュキュッ”と、クライマックスへの予兆を告げながら淫らに蠢き勃起にも誘ってくる。

 正直な気持ちとしては、

「ふぅッ!?」

 是非ともその誘いには思いっきり率先してでも乗りたい。

 が。

 大人のマナーとしてのゴムを装着してもいなければ、紅葉ちゃんの安全日も知らんわけで、少女の体奥に欲望をぶちまけるのはマズい。

 その場が良ければイイと考えてないくらいには、俺も少女たちとの未来予想図を一応描いてはいる。

 とはいえ、

「おおッ、ちょ、ううッ!! ちょ、ちょっと、も、くぅッ、紅葉ちゃん、お、お尻を、お尻を持ち上げ――」

 マズいというのなら騎乗位という体位こそ、まずはマズかったのかもしれない。

 勃起を抜こうとして俺は“ガクガク”している紅葉ちゃんの腰を掴み、纏わりつくように絡みつく媚肉から脱出しようとしたがアウト。

 オンナとして媚肉でオトコの勃起の味を覚えた少女を、これを傲慢というのかなんというのかナメていたようだった。

「あ……、うぅぅッ、あはッ!?」

 むしろ快楽の階段を“ぐんぐん”と登り詰めようとする紅葉ちゃんに、適正というか絶好の助走距離を与えてしまったのかもしれない。

 壊れても構わないと宣言するかのようである。

 くそっ。

 やっぱり可愛いなぁ。

 紅葉ちゃんは欲望で練成されてる肉の剣を、女の子にとっては心臓よりも大事な、そして大切にしてもらいたい器官に深く突き挿した。

 親の心子知らずというのか、上半身の心下半身知らずというのか、勃起からは呆れるほどの白い精が大量にぶちまけられる。

 万有引力の法則もあってかほとんどは、狭い膣内にはとても収まりきらずに逆流していた。

「……ああ」

 この世に生を受けてから初めて、身体の奥の奥で浴びせられる牡の欲望に、少女は“ぶるぶる”震えながらオンナの快楽を堪能してる。

 うん。

 失敗は失敗だ。

 体位のチョイスがそもそもでマズかったし、ゴムを用意してなかったのはとにかく致命的である。

 どこかで抜けばいいだろうと、どこかで考えていたのかもしれない。

 が。

「…………」

 チャイルドがもし出来てしまったら責任を取る覚悟を固めつつ、俺はいつもと違う髪型になっている少女の髪を幸せに包まれて撫でた。

 飽きることもなく梳き続ける。

 呼応するようにオンナになったばかりの媚肉は“キュ・キュッ”と収縮し、勃起をしっかりと咥え込んでキツく締め上げていた。

 勃起。

 放出したばかりで硬さと熱さとサイズを縮小させていたが、その無意識のいじらしさに急激に力を取り戻していく。

「ひゃぅッ!?」

 少女が跳ねた。

 身体を“ころんっ”と転がし互いの位置を入れ替えて引き抜く。

 雁首が膣口を擦ったようで、ただでさえ敏感になっている少女の身体に、さらに上乗せで過剰ともいえる快楽を走らせた。

 ティーンのように一瞬で完全復活である。

 残念だが俺も年齢が年齢なのでもう高校生のようなわけには、あんな欲望と身体がダイレクトにシンクロしている羨ましい若さはない。

 はずなのだが“ギンギン”に逞しくそそり立ってあの日にプレイバックしていた。

 二ラウンド目のゴング。

 よしっ!!

「おっと」

 気合を入れ直し胸中で高らかと金属音を響かせると、俺は二、三歩“よろよろ”と見っともなくよろけてしまったが立ち上がる。

 効果音は“ネバ~~”と付けるべきなのか、あるいは“トロ~~”とでも付けるべきなのか。

 視覚からも伝わってくる濃厚で粘つくオトコの未練が、散らされたばかりの少女の秘裂と繋がっていてエロかった。

 形状だけならそれは所詮、勃起と同じで生殖器でしかなく、剥き出しの内臓というか、負けず劣らずでグロいもののはずなのに美しい。

 ただ、破瓜というのはようするに裂傷で、血の痕には生々しい痛々しさがある。

 俺は洗面器でお湯を掬って水で薄めると、人肌よりもちょっと低い温度の、些か物足りないくらいに優しいぬるま湯をつくった。

 紅葉ちゃんが虚脱状態であるのをいいことに、ひっくり返したカエルみたいに、だらしなくしどけなく太ももを開かせる。

 その中心で密やかに息づいている鮮やかな傷口に、ゆっくりゆっくりそろりそろりお湯をかけた。

「んッ」

 されるがままだった少女の身体だが、剥けたばかりの中学生男子が沁みるように、ぬるま湯ではあってもやはり刺激が強いようである。

 とはいえこれは誰しもが、かどうかはかなり自信がないが、まあ、とにかく成人の儀式のようなものだ。

 うん。

 経験のある人なら当たり前なのだが『あるあるッ』と、声を大にはしないんだろうが、たぶん賛同してくれるんではないかと思う。

 濡れて肌に貼りついている恥毛。

 その下ではさっきまでまっさらだった新雪の膣口が“ぶくぶく”と、儚げな少女の赤と身勝手なオトコの白で泡立ち淫らに蠢いていた。

「…………」

 クリームの山を崩すようにしながらお湯をかけると指先で、熱さのまるで消えていない淫らで可憐な肉を撫でる。

 やわらかい。

 女の子のソコは何度触れても飽きることはなく、おっぱいとはまた違う、不思議で“くにゅくにゅ”としたやわらかさの花びらだった。

「あッ……ひッ……ンッ……、……ヤ……ン……あふッ……」

 ソフトタッチで弄うようにして、嬲るようにして愛撫をくり返していると、やがてまた甘い声とシロップがにじみでてくる。

 次から次へと泉みたいに“こんこん”と湧きでていた。

 指先を“ぬるぬる”にしながら周辺をマメにコツコツと刺激して、俺は紅葉ちゃんの身体に再び快楽の炎を灯すことに成功する。

「おっと」

 これは無作法。

 心ではなく実際に舌なめずりしてしまいながら、あどけなく初々しく淫らな源泉へと、指先を呑み込まれる様に“にゅるり”沈ませた。

 何事も若いと覚えるのも早い。

 秘裂は“ぱくり”と指を咥え込んでしまうと、条件反射のように“キュウキュウ”と締めてくる。

 自分の勃起が同世代の平均男子と比べて、まあ、正確なデータなんてものはないけど、特別にビッグだなどとは口が裂けても言えない。

 けれどもさすがに、いくらなんでも、指より太いモノは所持している。

 リ・スタート。

 牡器官の持っている熱さと硬さと大きさを、生まれて初めて内部で、真奥で思い知ったばかりの少女には、このくらいがちょうどいい。

「んふッ……くッ……やッ……はンッ……」

 オンナの濡れた喘ぎ声を漏らしながら、薄めでこちらを窺っている少女の瞳には、明らかな情念の炎が揺れていた。

 目は口ほどにものを言う。

 これじゃなくてもっと太いのが、島田さんの激しくて太いのが欲しいんや。

 と。

 いつも通り自分に優しく都合のいい脳内変換をすると、だけど意地悪しちゃうとお花畑思考で“じゅぷじゅぷ”と挿入した指を動かす。

「……ン……ふぁッ……あふッ……んンッ……あはッ……」

 火照った肌よりもなお熱い蕩けるような感触。

 深くこそ突き挿しはしたが、ロストしたてのヴァージンだった粘膜に、あまり“がつがつ”と性急な抽送をしたりはしない。

 ま。

 それでも牡の性衝動には逆らえずに、逆らう気も起こらずに、抜き挿しのスピードを徐々にだが上げていく。

 女の子のヒダヒダがめくれる際、ぬかるみを掻きまわした指先にまとわりつく、卑猥な“にちゅにちゅ”という音が耳に心地よかった。

「くぅんッ!?」

 紅葉ちゃんは俺の指を追いかけるようにして、腰を“くねくね”とくねらせてダンスを踊っている。

 ……イ、イッてまう……イッてまう、……また、ま、また島田さんに、……このままやと、このままやとイカされてまうよっ!! 

 うん。

 わかってはいるんだぜ?

 カウンセリングをいますぐにでも受けろっていうのはさぁ。

 でも少女の心の声が聞こえちゃったんだもん。

 こうなったら超能力者か異常者かは置いておくとして、リクエストに応えてやるのがオトコというものだろう。

「あッ!?」

 紅葉ちゃんの泣きそうな生の声。

 媚肉が“ぶるぶる”と小刻みに震えて、大きなうねりになりかけたイイところで、絡みつく粘膜を振り払うように指を抜かれたからだ。

 だが俺にはその悲痛なまでの声をあっという間に、歓喜なものに変えてしまう自信がある。

「あッ!?」

 おねだりするみたいに小さく円を描いて揺らした腰を掴み、乱暴に“ぐいっ”と引き寄せ首を伸ばすと鼻面を突っ込んだ。

 で。

 …………

 残念ながら考えなしだったので、突っ込んでから気づいたんだが、女の子のシロップだけではなく、そこには自分のだが白いのもある。

 紅葉ちゃんの秘唇と熱烈にキスしながら、ほんの一瞬だけ俺は素面になりかけた。

 なりかけたが、やはり一瞬で立て直してみせる。

 ここでもし『……オエッ』と口を離してしまおうものなら、そんな意図などなくとも少女の繊細な心を傷つけてしまいかねない。

 粘膜に侵入させようとしていた舌を、寸でで踏み止まらせると、唇をそのまま滑らせて真珠にむしゃぶりつく。

 できれば舌でもさっきオンナになったばかりの少女の、媚肉の感触を愉しみたかったのだが、プロットというのはつくづくで必要だな。

 と。

「はひッ!?」

 反省をしつつも鬱憤を晴らすようにして、女の子のもっとも敏感な部位を、快楽を“ぱんぱん”に溜め込んでいる部位を吸引する。

 その強烈で鋭すぎる刺激に、紅葉ちゃんの腰は逃げようとする、ふりをしながら俺の顔に秘唇を押しつけていた。

 肘で身体を支えながら天高く腰を突き上げている。

 手のひらでも感じた熱い迸りを、俺は顔面でも堪能しながら、少女を三回目のエクスタシーに導いたことに満足してロックを解除した。

 それを合図にしたかのようにしてくたりと、美しいアーチを崩して紅葉ちゃんはお尻を着地させる。

 見下ろしながら、

「……美味」

 などと決め台詞のようにのたまいつつ、俺は甘いシロップまみれの口をぬぐった。

 短い間隔で立て続けに三回も絶頂に導かれた秘裂はそれでも、まだ足りないというように“ひくひく”してオトコを誘っている。

 羞恥と快楽に頬を染めてくり返される色っぽくも荒い呼吸。

 肌をソープで“ぬるぬる”とぬめらせている、相変わらずエロいおっぱいも、尖りっぱなしの淡い乳首を“ふるふる”と揺らせていた。

「…………」

 ごっくん。

 喉仏が大きく上下する。

 無論どのパーツも紅葉ちゃんは素晴らしいのだが、こうやって見下ろしていると、俺の視線は自然におっぱいへと引き寄せられていた。

 オトコでおっぱい好きじゃないなんて奴は世界のどこにも存在しない。

 ならばこのプレイを夢見ないオトコも、世界のどこを探してもいないということだろう。

 これは誰にでもできることではない。

 ある意味では神から与えられた才能を持つ娘にしか、天才にしか不可能な、それだけにオトコのロマンを掻き立てるプレイである。

 断言。

「…………」

 俺は紅葉ちゃんがインターバルを取っている間に、軽くお湯で流して勃起に付着しているぬめりを落とした。

 エチケット。

 血の痕は少女に近づけたり離したりするのに、若干だったがあった痛みもリフレインさせるし、まあ、ちょっと以上に生々しいだろう。

 それに夏場なので別に寒くはないのだが、わざわざ温泉にまで来ておいて、洗い場ばかりで盛り上がっているのもなんだ。

「ん、……ふッ……あッ……」

 紅葉ちゃんの身体にも悪戯ぎりぎりのかけ湯をすると、またぐったりとしている肩を抱いて、俺は“ざぶんっ”とお湯に浸かる。

 好きにして。

 とでもまるで言うようにして、紅葉ちゃんは身体を預けてきていた。

 まだまだ身体の疼いている少女には、寄り添うオトコの身体も、さらなる快楽の期待に、疼きまくっているのがわかっているのだろう。

 乳白色のお湯を透かすようにして股間の辺りを、お湯の温度よりもなお熱い勃起を“ジーーッ”と見ていた。

 期待には応えなきゃ。

 俺は適当に温まった頃合で“ざぶんっ”と立ち上がると、それっぽい雰囲気を醸しだしている、座り心地の良さそうな岩に腰を下ろす。

 紅葉ちゃんが中腰になってくれると、ちょうど勃起とおっぱいが同じくらいの高さだ。

 迎え入れるようにして左右の足を開いている。

「…………」

 戸惑いながら顔と勃起を入ったり来たりで注がれている、少女の熱い視線が“ぞくぞく”とくすぐったく気持ちがいい。

 パイズリ。

 この品の欠片もない名称だが、知名度だけは抜群のプレイを、知識だけは豊富な今時の女子高生が、よもや知らないわけもないだろう。

 耳まで真っ赤になっているのが、なにより知識の所有を証明していた。

「紅葉ちゃん」

 できるだけ真面目さを出そうとしてみたが、どうしても愉悦を隠しきれてはいない声で、俺は紅葉ちゃんに催促するみたいにして囁く。

 これまで自分でも知らなかったのだがもしかしたら、島田誠(27)は本当に超能力者なのかもしれない。

「……う、うう」

 羞恥でその身を灼きながらも、少女は暗示に掛かったように中腰になり、開いた足の間に“おずおず”とポジションを取る。

 そして量感たっぷりのふくらみを両手で掬うと、俺に捧げられる供物のようにして持ち上げた。

 清らかで瑞々しい白桃みたいな谷間に“むにゅっ”と、血管を張り裂けそうなほど浮かせた、穢れ満載の禍々しく猛る勃起を挟み込む。

「紅葉ちゃん」

 少しの間躊躇っていたが、覚えたばかりの始動キーを唱えると、紅葉ちゃんの身体は意を決したように上下しだす。

 洗い場での“ぬるぬる”はすでにお互い流されてはいた。

 だが新しい潤滑油はすぐに即座に用意される。

 ふんわりしっとりしていながら“すべすべ”のおっぱいの感触に、欲望を漲らせている勃起が鈴口から“ぬるぬる”の液体を滴らせる。

「はぅ……くぅ……んンッ……」

 ああ可愛い。

 恥ずかしそうにして左右から乳肉を寄せ、おっぱいを揺するそのたびに、紅葉ちゃんの心拍数が早くなっていくのがわかった。

 裏筋にしこっている乳首が擦れると、背中に堪らない痺れが走り呻きそうになる。

 俺の反応を確かめるために、上目遣いで見つめてくる紅葉ちゃんの視線も、一助にも二助にもなって快楽のうねりの後押しをしていた。

 ちゅぷ・ちゅ・ちゅぷ・ちゅぷ・ちゅ……。

 次第に加速していく少女のリズミカルなピストン運動に合わせて、その可憐な唇を狙うようにして俺は勃起を突き出す。

 犯すみたいに縦割れの唇でキスをくり返しても、眉を切なげに歪めるだけで、紅葉ちゃんは絶対に拒もうとも避けようともしない。

 そんな少女の健気さにも身が震えた。

 けれど残念なことに、パイズリというプレイは視覚的なインパクトほど、ダイレクトに肉体的な快楽は感じずらかったりする。

 実際には相当にレベルの高いプロの方でも、それだけで射精に導くのはなかなかに難しい。

 だが、

「も、紅葉ちゃ――」

 俺は精神的にというのを甘く見積もっていた。

 甲斐甲斐しい少女への萌え度がマスク・データでかなり堪っていたようである。

 始動キー。

 それは『もういいよ』という意味で唱えようとしたのだが、先行入力で読み取った少女はうれしい誤作動をする。

 舌が“ぺろっ”と鈴口の雫を壊して、ほんの軽くひと刷けだけした。

 ダムの決壊のようなものである。

 蟻の這い出る隙間でも許そうものならそこからは一気。

 白い欲望が超至近距離にあった少女の顔面に、尿道を刹那で駆け抜けるような、痺れる快感とともに身勝手にぶちまけられた。

 熱。

 質感。

 臭い。

 どれを取っても生々しい性を発散している液体が、眼を瞑っている紅葉ちゃんの顔を、それこそ瞬く間に“ぬるぬる”塗れにしていく。

 少女が避けようともしない、完全無抵抗主義なのをいいことに、俺は乳肉の拘束から解き放たれた勃起をしごいてかけまくった。

 されるがまま。

 中腰の体勢から崩れるように“ぺたんっ”と、お尻を下ろし低い位置になった紅葉ちゃんに、しつこいほど執拗に白い精をぶちまけた。

「はぁ……」

 紅葉ちゃんの可憐な唇からは微かな、そして妙に艶かしくて色っぽい吐息が漏れる。

 その欲望に白く染められた表情は、どこか“とろ~~ん”としていた。

 別に邪な考えがあってしたわけではない。

 珍しく。

 だけどこっちの方がより始末に負えないというか、考えるよりも先に俺の身体は動いていて、少女の顔へと魔手を伸ばしていた。

 指先で触れて“ぬっとり”自分が放った精液をこそぐと、惚けたように半開きになっている口に押し込む。

「…………」

 そうするのがまるで当たり前だというような、紅葉ちゃんはとても自然な動作で、指に付着した精液を舐め取り熱心にしゃぶっていた。

 引き抜かれるときの“ちゅぱッ”という音が堪らない。

 ぬめりこそ落ちたりはしないが、そうやって何度も精液を指でこそいでは、少女の温かな口内へせっせっと運んでいく。

 可愛い顔がきれいになった頃には、俺の勃起も“むくりっ”と雄々しく鎌首をもたげていた。

 岩から腰を上げると紅葉ちゃんを抱き寄せ、複雑なつくりをしている耳朶に、興奮の度合いを伝えるように吐息を吹きかけながら囁く。

「手を突いてお尻を向けて」

 こう言うだけで俺がなにを望んでいるのかは、少女にもわかっているはずだった。

 震えている。

 紅葉ちゃんの身体は歓喜と羞恥で“ぶるぶる”と震えていた。

 身体を離すと少女は岩に“そっ”と手を突いて、迷うような動きをしてはいたがゆっくり、上気している肌をさらに紅潮させ足を開く。

 昂ぶりの雫が“ポチョン”とお湯に落ちて、小さくはあったが心を揺さぶらずにはいられない波紋を広げた。

 この体勢は紅葉ちゃんも経験がある。

 けれど以前のように特殊な刺激こそあるものの、お茶を濁しているだけの素股ではなく、今回は本当にこの体勢で『シテ』しまうのだ。

 お尻の窄まりさえまざまざと晒してしまうこの体位は、女の子には屈辱であり、後ろから睥睨しているオトコには至福である。

 牡はオオカミ。

 三回目だというのに天を衝くかのような、逸る勃起を掴んでその角度を調節すると、周辺のやわらかな部位と一緒に秘裂を割り開いた。

 エロい。

 甘く貪るように襲ってくるだろう快楽という麻薬に、ひくついている艶やかで生々しい肉色の粘膜を露わにする。

「――ッ!?」

 充血しきった亀頭が触れると紅葉ちゃんは、体奥を挿し貫かれる予兆に、期待を隠しきれずにその身を“ぶるり”と震わせていた。

 とはいえすぐにお待ちかねのものを、与えたいけど与えるわけにはいかない。

 オトコの品格。

 自分が初めての傷をつけた少女の粘膜を気遣うように、俺は“ゆるゆる”と腰を振って、自前の先端粘膜でコンディションを確認する。

 もっともそんなものはすでに、指の抽送によって確認しているので、ここまで過保護にすることもなかったりするのだが。

 うん。

「……し、島、田、さん」

「なんだい?」

 ってことは当然違う狙いがあったりなかったりするわけで、

「あ、あの、んッ、そ、……ふッ、あッ」

「もしかしてこれを挿れて欲しいの? この太、……硬くて熱いのを、紅葉ちゃんは挿れて欲しいの? 奥にまで突っ込んで欲しいの?」

 まあ、その、さすがにねぇ。

 無理でしたよ。

 こんなシチュでの勢い任せなエロトークなんだから、多少の嘘は許してほしいけど、太いっていうのは自分でも自分を騙せなかったね。

 正直者は馬鹿を見る。

 紅葉ちゃんが必死になって“カクカク”と頷いてくれたので救われたけどさ。

 でも、

「ならその気持ちを言葉にしてくんなきゃ。ね、ね、ね。ちゃんと紅葉ちゃんが口から言って。ここに俺の硬くて熱いのが欲しいってさ」

 そんな少女の恩を思いっきり仇で返しちゃうぜ。

 我ながら台詞がキモいなぁという自覚はあるんだけども、ハイになるのも事実なんで結構気に入っていたりいなかったり。

 いや~~言葉責め最高っ!!

 なのでまたどっかで使おうかなと、心密かに味を占めながら、腰を“ねっとり”と振りつつ、紅葉ちゃんの情欲を煽り追い詰めていく。

「……ほ、欲しい」

「え?」

 胸を張って俺は若者ですと、ぼちぼち言えなくはなってきたが、まだまだ耳が遠くなる歳じゃない。

 だがそういう主語を端折った言い方では、オトコの耳には到底届かないのだった。

 飢えたケダモノの心には響かない。

「なに?」

 亀頭の丸みを押しつけて圧だけは粘膜にかけるものの、粘膜の奥まで突き挿すようなことはせず、浅瀬だけを小刻みに掻きまわす。

 貪欲な粘膜は“やわやわ”と蠢いて勃起を包み込もうとしているが、深く咥えさせてもらえないのでそれもままならない。

 腰がくねって挿入をせがんでいるが、気づかないように無視して、俺は辛抱強く少女の口からおねだりの言葉が零れ落ちるのを待った。

 結果としては、

「し、島田さ、ぁッ、んンッ、田さ、んッ、んッ、ふ、太くて、か、硬く、熱い、んぅッ、……ほ、欲し、い」

 大仰な辛抱がいるほど、時間は必要ではなかったけれど。

 太い。

 恥ずかしい台詞を言わされているというのに、紅葉ちゃんはオトコのちっぽけな矜持にまで、気を遣ってくれたようでうれしくなるな。

「はひッ!?」

 もうあんまりにもこの少女が可愛くって可愛くって、存分にメチャクチャに苛めたくなってくる。

 待ち望んでいた勃起を一気に根元まで、粘膜の奥に突き挿された快感によってか、紅葉ちゃんは早くも軽くイッてしまったようだった。

 オンナの射精を感じる。

 熱い粘膜の海にまとわりつき包み込まれながら“どぷっ”と、熟成されたハチミツのように甘いしぶきが勃起に浴びせられた。

 犯す。

 そういう形容がぴったり填まってしまうくらい乱暴に、深く荒々しく貫くような速いリズムで腰を前後させる。

 パンッ・パンッ・パンッ・パンッ――。

 マナー教室で習う拍手みたいにして、滑稽だがひどく耳に残る、肌と肌がぶつかる音が、互いの心を煽りテンポ良くくり返されていた。

 まるで交尾する犬のように紅葉ちゃんの背にのしかかり、扇情的に“たゆんたゆん”と揺れているおっぱいを両の手で掴まえる。

 強く握り締めると指と指の間から、やわらかな肉がはみ出して、慎みのないふくらみのエロさをより一層に増していた。

 耳に甘噛みをしながらおっぱいをこねまわす。

 もちろん、

「ひィッ!?」

 そうしている間にも猛っている勃起の方は、それ自体が意志あるもののように、力強い挿き込みを粘膜を抉るようしてくり返していた。

 そしてできればもっともっとこの粘膜の擦りっこを、なんなら俺は永遠でも愉しんでいたい。

 が。

 やはりそれはどんなものにでも、残念ながらなんだかんだで、具体的には焦らされたのは、少女だけではなかったようで終わりはある。

 三回目なのでゆっくり愉しむ予定だったのだが、紅葉ちゃんの可愛さに巻き込まれ、抽送が知らずハイペースになっていた。

 会陰部の辺りを波のように痺れさせながら、尿道口を駆け上がってくるトロミ。

「うぁッ……あッ……やぁンッ……、あッ……んッ……あふ……、……ンぁッ……あ……あひィッ……」

 制御を失った腰が狂ったようにして振りたくられる。

 最後の一突き。

 同時に乳首をキツくひねった。

「んぁッ!?」

 命綱のようにして岩に抱きつき伏せていた紅葉ちゃんの顔が、子宮口にまでめり込むような突きと弾けぶちまけられた精に跳ね上がる。

 人生で二度目となる中出しを少女は、一回目からさして間を置かずに、おっぱいを握られながら心ゆくまで注ぎ込まれていた。

 最後の一滴まで絞り尽くすように、蕩けるみたいに勃起を包みながら媚肉が締まる。

 すべてを出し切ると俺は全身を弛緩させて、一足早く“ぐったり”とした紅葉ちゃんの背に、そのまま倒れ込みそうになったが堪えた。

 勃起を“にゅぽんっ”とコミカルな音をさせ秘裂から引き抜く。

 よろけて後ろに尻餅を突きそうにもなったが、それにも堪え、――ることは残念ながらできなかった。

 覚悟は完了している。

 それでもオトコにとって眼に飛び込んできた立て看板には、まして欲望を放ったあとでは、どんなものにも勝るだけの破壊力があった。

 効能。

 血行促進・リュウマチ・擦り傷・捻挫・冷え性・美肌・そして子宝。

「…………」

 少女の秘裂からは“ごぷりっ”と俺の精が溢れている。チャイルドの名前を真剣に考えておこうと思った。





[2293] 少女病 三十一話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:40



 がんばれ。

 と。

 応援は立場上できないけれども、見守りたくはなる。

 一般にナンパをしているような奴は、それだけでもう即チャラいと思われがちだ。

 ふ~~ん。

 でもどうだろう?

 もちろんしっかりしているなんてことは、とても言えないし言わないけれど、外の世界に自分を曝け出すというのは勇気がいるものだ。

 部屋で淋しく“シコシコ”しているだけの人間や、理屈を“ゴチャゴチャ”捏ねるだけの人間より建設的ではある。

 少なくとも外の世界で保証のない勝負を他人とする彼らは、チャラく見えても結構頑張り屋さんでアクティブなポジティブだ。

 人に自分を認めてもらえないのは、なかなか慣れることではなくつらい。

 笑いも洒落も抜きでそれがいい大人であったとしても、周りが引いてしまうくらい号泣しそうになる。

 まあ、その辺りが麻痺してしまった人種は評価の対象外だが、顔を真っ赤にして女の子に声をかけた彼らに俺はかなりの好感が持てた。

 だけど、

「それとこれとは残念ながら別なんだなぁ……」

 彼らの年齢はだいたいで、中三から高一といったところだろう。

 変な意味とかまだまだマイノリティな趣向とかではなく、あくまでも人生の先輩として彼らの反応は可愛いものだった。

 が。

 その青い行動はできれば褒めてやりたいけど、当時の俺には到底できなかった行動は讃えてやりたいけど、――それはそれこれはこれ。

 不器用というのか要領が悪いというのか、まあ、お人好しというのか、囲まれて困っているカノジョを助けるのはカレシの役目。

 誰にも譲れない。

 綾乃ちゃんだったら彼らが、思春期男子の有り余るパワーで勢い余っても、間違いが起こることはないだろうがそういう問題ではない。

 男女同権平等を叫ばれて久しい昨今ではあったが、それでも男らしさだとか女らしさだとかいうのは普遍に求められる。

 こういうシーンでしっかりと女性に、所謂『らしさ』というのを、魅せられるのがオトコの甲斐性だ。

 決してそれは肉食動物の狡猾さなどではなく、草食動物の臆病さゆえに囲んでしまっている彼ら、その中心に怯えているオンナがいる。

 身体を所在無げに小刻みに揺すりながら、テンパッてる捕食者と同じように、けれどやや異なる色合いで獲物は顔を赤くしていた。

 ……時と場合じゃないわけなんだがなんかいいねぇ。

 奥ゆかしい第一印象を裏切るような、大胆なビキニの効果もあってか、これから颯爽とレスキュー予定な俺でさえもそそられてしまう。

 うん。

 もうちょっとだけカレシの出番というか登場は、ここは引っ張ってみちゃっても、いいかなと思うほどだった。

 イッパイイッパイなメイイッパイの彼らの一人が、その歳でアル中かというくらい震わせて、少女の肩に手を伸ばさなければ待ったね。

 いやいや。

 それはいくらなんでも“オイオイ”だしコラコラ”なんだぜ。

 ボディタッチは厳禁である。

 さすがにNGだ。

 声をかけるくらいなら寛大で温厚なお兄さんぶれるが、おさわりとなると許容量オーバーでオトコとして見過ごすわけにいかない。

 ここでアクションを起こせないようなら、もうそれはカレシもオトコも、問答無用の満場一致で失格というものだろう。

「綾乃」

 こうやってこの少女に対し敬称というか愛称なしで、ぶっきらぼうに呼んだことはないけど、カレシっぽい演出として呼び捨ててみた。

 弾かれたように同時にこちらを見た綾乃ちゃんや彼らより、俺の心臓の方がたぶん“ドキッ”とした事実は伏せておく。

 呼び方を変えるタイミングってのは、結構な“ドキドキ”だよね?

 島田くんから誠くんに、更に誠くんから誠になる瞬間とか、家族だったらお父さんから親父に、お母さんからお袋に変える瞬間とかな。

 とにかく、

「行くぞ」

 そんな馴れ馴れしい、親しんでいる関係を窺わせる雰囲気を作りつつ、包囲網の中にいる綾乃ちゃ、……いや、うん、綾乃の手を掴む。

 以前は紅葉ちゃんにもこうやって、呼び方を変えたことが一瞬だけあったが、今回のこの流れは是非とも大事にしていきたい。

 継続は力なり。

 心臓の鼓動もヤバいほど継続している。

「綾乃」

 しかしこういうのを意識してなさそうな洋子とか、偶には羨ましくも感じるけれど、こういう“ドキドキ”っても悪いもんじゃないな。

 彼らのプライドをなるだけ傷つけないよう注意しながら、そして刺激しないよう注意しながら輪の外に綾乃を連れ出す。

 ここにきてやっと空気を読んだというか察したらしく、うろたえてはいるが彼らも邪魔したりはしなかった。

 オーケー。

 間違った方向に彼らの若さが暴走したところで、綾乃には片手間で処理できるだろうが、熱いだけで無駄なバトル展開は誰も得しない。

 と。

 後ろから別に悪意はないのだろうが、無念は“たっぷり”で篭っている声がする。

「保護者が一緒かよ」

 チッ。

 ここまで大人ぶっておいて、先輩ぶっておいて、お兄さんぶっておいて、いまさら振り返ってバイオレンスの火をつける気はないけど。

 ガキめっ!!

 繊細さがお前ら思春期だけの専売特許だと思うなよ。

 おっさんのデリケートな心は深く傷ついたが、きみらのナンパデビュー記念として堪えてやるけどね。

 最初が肝心だからさ。

 で。

 やっぱり、それはそれ、これはこれ。

 思春期の恨みがましい視線を背に浴びつつしばらく歩くと、手を繋いでいた綾乃は突然振り解き、内股の早足で俺を追い抜いていった。

「……は?」

 完全に予想外だった少女の逃避行と、それを追いかけるコミカルな声。

 そりゃ誰だってこういうときにはこういう反応しか、できなくなるに決まっている。――ナンパ少年たちとハモッてしまった。

 くっ。

 でもさっき登場したばかりのその他大勢な思春期少年たちと、綾乃に対してのリアクションが“バッチリ”でカブっていてどうする俺。

 とにかく一瞬で気を取り直すというか気を引き締めると、砂浜を内股で疾走している少女の背をすぐに追いかけた。

 楽しくない『待て待て、うふふっ、捕まえてごらんなさ~~い』が期せずして開始される。

 あの捕まるのが規定路線ではなく二人ともマジだ。

「待てっ!!」

 まともな走力では綾乃が上だとは思うが、なにしろランには適してない内股なので、ランに適してない俺でも追いつくのは難しくない。

 鼻息も荒い真っ赤な顔で視線をあっちこっちに、目まぐるしく忙しく飛ばしている少女の横に並ぶ。

「お、おい、ど、どうした?」

 眼と眼が合ったがさり気なくも何でもなく、露骨に逸らされたのがショックだったが、フリーズしそうになる脚をそれでも動かし並走。

 見た目の必死さほど綾乃はスピードが出ていないので、顔を下から覗き込んでのしゃべりながらでも全然の余裕である。

 鬼の形相。

 それでも可愛らしさを失わないのは、大したもんだが明らかに切羽詰ってた。

 俺だって馬鹿じゃない。

 少女が現在進行形で、どういう状態なのか薄々は察している。

 だからその瞳が目当てのものを見つけたようで“ホッ”としたのも束の間、息つく間もなく泣きそうに歪められたのも見逃さなかった。

 哀れ。

 このビーチには全部で五基が設置されているのだが、こんなに人が居たんだというほどの列になっている。

 教育の賜物かもしれない。

 最近の日本はモラルの低下というものが叫ばれて随分と久しいが、こうやって見てみると別にそんなに心配はないようだ。

 俺の時代は大はともかく小なら、女の子は知らないが男の子は、みんな海の水に浸かりながら、当然のように済ませていたものである。

 躾けが良い。

 お父さんorお母さんに手を引かれて、未来を担うお子様たちは“ずらり”と、ビーチに設置された簡易のトイレに並んでいた。

 それはちょっとした有名人気ラーメン店の、行列みたいな活気と賑わいと喧騒である。

「……こりゃ駄目だな」

 待ち時間はまだまだでかなりありそうだった。

 このままここで待っているよりは、いっそホテルにまで戻った方が、どう考えたところで安心できるし確実に早い。

 が。

 最早身体を小刻みに震わせている綾乃には、そんな距離を走破する時間は到底なさそうだった。

「うぐっ!?」

 下手をしてしまうと衆人環視のロビーでなどという、夏の思い出というよりは、一生もののトラウマをつくりかねないピンチ状態突入。

 大好評ロングヒットな海物語・CR綾乃は確変リーチだ。

 早くドル箱持ってこい。

 ここでこのままこの長い行列に加わろうものならばそれは、大惨事の現場がロビーかビーチかの違いでしかなくなるだろう。

 武道を嗜んでいるだけあってか、少女は人一倍礼節を重んじていた。

 海で。

 といった提案はこの期に及んでも、綾乃は受けてくれそうにもなければ、女の子にそういう提案を堂々とするほど俺も朴念仁ではない。

 だけどこうなんというかなんだろうなぁ、……これはやっぱり島田誠のリビドーなんですかねぇ?

 なんでもこの広い世の中には自分のカノジョに、その他大勢の前で粗相をさせて興奮を覚えるという人もいる。

 部類としてはアブでノーマルというやつになるのか、少なくともノーマルでもなければ、ポピュラーでもない特殊な分野の趣味だった。

 うん。

 俺にはそんなものはない。

 そんな『その他大勢の前で粗相なんて』ことさせる趣味は、そんな『その他大勢の前で』粗相なんてことさせる趣味は…………。

「わぁっ!?」

 俺は安息の地を見失った綾乃の手を再び取り、指を絡めるようにして繋ぐと、緊急事態なので当事者の了承も得ずに新天地を目指した。

 少女に残されている時間は非情なくらい非常に少ない。

 そして自分の新たな一面に気づくのには、タイミングはともかくとしても、時間なんてものは必要ではない。

 ダッシュ一歩手前どころか半歩手前の速度でビーチの端っこへと、その他大勢の眼がないビーチの端っこにと競歩のように駆け抜ける。

 斥力場ターボが全開だった。

 ……まあ、もちろん、あくまで気持ち的にはで、身体の揺れは最小限に抑えてるけどな。

 そのくせステルス機能でも搭載してあるみたいにして、ほとんど誰の注目を集めてもいないのは我ながら見事なもんである。

 適度。

 距離。

 死角。

 少女。

 羞恥。

 グッドッ!!

 脳裏に超をつけてもいいくらいの高速回転で“パッパッパッパッパッ――”と、キーワードが浮かびそれに身体の行動がシンクロした。

 本能というのかぶっちゃけ百八程度では、収まり切らないだろう煩悩が、思春期も真っ青で暴走しているのはわかっている。

 だがもともと脆弱な俺の理性はとっくのとうに、ジャブからストレートなコンビネーションでKOされていた。

 立ち上がってくる気配はまるで微塵もありゃしない。

 そしてそのおかげなのかどうなのか、たぶんそんなことはないだろうが、少年詩の主人公みたいにして眠っていた能力が発動した。

 …………

 都合が良いにも程がある。

 野を越え山を越え岩場も“ひらりっ”と華麗に飛び越えて、純真な子供が遊ぶには狭いが、不純で邪な大人が遊ぶには充分なスペース。

 脳科学でいうところの視覚ではなくて、意識のエアポケットというやつに無事到着した。

 ちなみに意識のエアポケットについて詳しく調べたりするのは、できることならみなさんなしの方向でお願いします。

 で。

「んぅッ!?」

 少年漫画の熱いが正義の整合性なんてない展開に、ついていけてない綾乃の肩に手を置き、寄り添うようにして体重をかけて座らせる。

 用を足すときに下着を着けているような者は、古今東西で老若男女の区別もなくいないだろう。

 綾乃の水着のパンツは素早く腿まで下げられていて、その周りが些かとはいえ日焼けしているので丸出しのお尻の白さが際立った。

「トイレが一杯なんだから仕方ないって」

 こんな状況になったらきっと、あの山本洋子だってそう言うさ。

 耳朶に囁く。

 不必要な“くらい”ではなく確実に不必要に、熱く“ねっとり”と息を吹きかけながら、歯を“カチカチ”と鳴らしている綾乃に囁く。

 その文化は日本人の心というのか、奥深い部分に沁みついているらしい。

 和式のトイレというのは随分と衰退というか見なくなったものの、この体勢になってしまうと日本人が生理的欲求に逆らうのは困難だ。

 そしてこの少女の家の母屋は未だに、由緒正しいのかどうなのかわからんが和式のトイレである。

 若き達人・白鳳院綾乃。

 そういう意味でもその辺りの、洋式トイレに慣れている女の子とは熟練度が違う。

 ふぅ。

 あ~~も~~いつも通りでお約束のようにして、黄金パターンのようにして、最早予定調和のようにして言っている意味がわからない。

 だがときには完璧なロジカルなんぞより、矛盾だらけのパッションが、優先されるときがあってもいいはずだ。

 この際いつもだろ、というもっとも過ぎる反論は認めない。

「……で、出、ちゃう、も、もう、もうこの、んッ、ま、まじゃ、で、出ちゃ……う、お、お願い、お願い、……します」

 無理。

 そのお願いは聞けない。

 火照ったお尻をあやすように撫でられながら、つらそうに途切れ途切れ言葉を紡ぐ少女の、俺はお願いを察してはいたが聞けなかった。

 むしろ叶えて欲しいお願いがわかっていたからこそ、オトコの欲望フル全開になっている俺には聞けないし聞きたくなかった。

 速攻でどこか遠くに行って欲しいだろうし、せめて後ろだけでも向いて欲しいのは重々わかってる。

 でもそんなこと牡生命体として生まれたからには絶対に無理だった。

 もっとわかりやすく言っちゃったら、断固とした決意でそれはしたくないし、諦めたらそこで試合終了というくらい諦められない。

 仏の誠は白髪鬼になっていた。

 そんな苛めてオーラを“びんびん”に出されまくってしまったら、世界のどこを探してみたところで聞けるオトコなんていないだろう。

「緊急避難……、これは緊急避難だからね、綾乃。悪いことをするわけじゃないんだ。……そう、悪いことをするわけじゃない――」

 恥ずかしいことをするだけで。

 なんてなことを言ったりするわけもないが、M字開脚のオシッコポーズな少女の、股間を乗り出すように覗き込んでいれば言葉は不要。

 小刻みなお尻の“ぶるぶる”が大きなうねりとなって、淡いヘアーに彩られた秘裂で大きな波となっていた。

 こういうものを被虐美というのかどうなのかは知らないが、黒く意地の悪い期待を煽るようにして“ひくひく”している。

「……だからね、別にシちゃっていいんだよ、ここでシちゃってもいいんだよ」

 引きたいというのならば思う存分引くがいいさ。

 これが俺だ。

 これこそが島田誠(27)の嘘偽る事のない秘めたる真骨頂だ。

 THE・ヘンタイ。

 自分の呼吸が自分のものではないように、段々荒くなっていくのも一層の拍車を掛けていた。

 オトコの猛る勃起を痛みと快楽とともに咥え込み、放たれた精を子宮で育むと、新たな生命をやはり痛みと喜びでこの世に送り出す穴。

「う、うぅ、ぐぅうッ!!」

 その上にあるさらに小さくって可憐な穴はもう次の瞬間には、羞恥の壁を打ち崩し決壊しそうにして震えている。

 俺に赦しを請うかのように、涙目になって見つめている少女の瞳も、その未来を物語るかようにして“ゆらゆら”と揺れていた。

 その泣きじゃくる幼子のような瞳の揺らめきには、父性を刺激されてしまうというか、人に備わってる当たり前の罪悪感がなくはない。

 が。

 それはそれ、これはこれ、というやつである。

 なにも切なく震えている少女の姿に、儚げに揺れてる肢体に、刺激されているのはお父さんとしての本能だけではない。

 たとえ農耕民族であろうが狩猟民族であろうがそんなことは関係なしで、オトコという生き物の本性はまずオオカミでケダモノだった。

 草食系男子。

 このような言葉がどうも流行ってはいるようだが、マスコミの造語もいいところで、極めてナンセンスな見当外れワードである。

 ノー・ベジタリアン。

 オンナに対してオトコの生態というのは、いつでもいつだって世界共通認識として肉食だ。

 少女に哀願されればされるほど、乙女の恥じらいの淵で堪えられれば堪えられるほど、その想いを無慈悲に裏切り突き落としたくなる。

「はぅッ!?」

 ホットケーキみたいに“ふっくり”している秘唇と、夏の日の光に白さを際立たせた白いお尻の狭間。

 少女は可憐な眉を八の字にさせ、表情を痛々しく苦悶に歪ませる。

 うん。

 堪らなく艶かしくて色っぽい。

 その中心の会陰部を羽毛で刷けるように優しく、触れるか触れないかの絶妙な接触、それこそフェザータッチで愛でるみたいに撫でた。

 何度も何度も嬲るようにして弄ぶようにして、微妙に羽毛のタッチを変えながら、刺激に慣れさせないようにしつつ往復させる。

「はっ……、やッ、やめッ、あッ、んンッ、……やッ……、やンッ、んッ、んンッ、アッ、はンッ、ヤッ、……ぁッ!?」

 ああ可愛い。

 それはこの先の俺の人生でイク千イク万回、目にし耳にしたとしても、今際の際でもきっと変わることのない感想だろう。

 駄々っ子のようにして“イヤイヤ”と頭を振りながら、けれどそれはイヤよイヤよも好きのうち、としか聞こえない声で綾乃は喘いだ。

 そうしたからといってもうすでに、どうにかなるものでもない。

 が。

 そうしたくなる気持ちは、俺にも経験があるので、とてつもなくよくわかる。

「いやぁンッ!!」

 やや幼児体型気味の腰をよじらせて、小さく白いお尻を左右に振りながら、少女は健気ではあっても無意味な抵抗を続けていた。

 なんともいじらしい。

「んンッ」

 その先に希望などないというのに、絶望しかないとわかっているのに、花も恥らう乙女の矜持として綾乃は抵抗を止めようとはしない。

 だからこそ綾乃だって知っているだろうことを、改めて教えてあげたいし思い知らせてあげたかった。

 頭ではなくて身体にレクチャーである。

 我慢して我慢して我慢し尽くした先に存在している、無我の境地のような解放感と安堵感を味あわせてあげたい。

 俺の手で。

 愛しいという想いとシンクロするみたいに、それは相反する感情のはずだが、俺の心で残酷な想いが“むくむく”と大きくなっていた。

「ンッ、ンッ、んンッ~~」

 会陰部でしつこくねっちこく蠢かせていた指先を滑らせ、お尻の谷間の奥に息づいている、少女の可憐な菊座にアプローチさせる。

 ここが“にやにや”にやけてしまうくらい綾乃は弱い。――責められたらイチコロ。

 たったのひと突きするだけで、これまでの努力はあっさり水泡である。

 ひっそりとしていながら、待ち切れないようにひくつくお尻の穴は、さして指先に力を込めずとも、自ら迎えるようにして呑み込んだ。

 俺には柔かくて蕩けるような感触だが、少女の身体にはトドメの一撃となって、重く“ズシンッ”と響いたかもしれない。

「かはッ!?」

 一瞬だけ指が強くきつく締めつけられる。

 そして間を置かずに“ふっ”と、あらゆる力を消したようにして弛緩させると、堰き止められていたものが奔流となって溢れ出た。

 ビーチの砂を激しく叩く。

「ひッ、も、もう、駄目、でッ、うわぁッ、で、出ちゃ、出ちゃうッ、やッ、あ? あ、ああ………み、見ないでッ、見ないでぇッ!!」

 もうそれは自分のものであって自分のものではない。

 始まってしまえば最早誰にも止めることはできず、気持ち良いくらいにノン・ストップである。

 こんなに大量に溜めさせてしまい、可哀そうなことをしてしたと反省しつつ、にやけた顔のまま俺が挿入したままの指先を揺すると、

「ふぁッ!?」

 弱く小さく収束していく美しい弧が、はしたないほどの水音を響かせ、再び大きなアーチを描くのが悪趣味と承知だったが愉しかった。

 ファーストキス。

 そういう初々しいものへ接するような感情に、子供のようにして無邪気に、そのときは憑りつかれていたかもしれない。

 あれは普通の日常生活にはないタイプの、ある意味で異常で異様な興奮だろう。

 それこそナンパ少年たちに、年上ヅラ、兄さんヅラ、先輩ヅラなんぞ、とても恥ずかしくてできないほど、青く夢中になってしまった。

 お恥ずかしい限りである。

 結局、

「あ……あ……ああ――――ッ!?」

 綾乃が自らのオシッコを“たっぷり”吸い込んだ浜辺に、顔から“ぐったり”と倒れ込むまで、飽きもせず指遊びを愉しんでしまった。

 犬の遠吠えのようなポーズで“ぶるぶる”と身体を震わせ、少女は与えられた快楽を貪り翻弄されている。

 お尻だけがエロく卑猥に咥え込まされた俺の指に支えられて、滑稽なほど“ぴょこん”と高く掲げられたままなのが可愛らしい。

「ぁッ!?」

 痛みを感じさせないようにというのもあるが、なにより粘膜の感触を愉しみたいがために、俺はゆっくりと捻りながら指先を引き抜く。

 我が物顔で蹂躙しておきながら、勝手な都合で無情にも支えは失われた。

 それでも少女の白いお尻は捧げられた供物のようにして、膝を“カクカク”させながらも健気に高度を保っている。

「…………」

 谷間の底で誘うようにして収縮を繰り返しているピンクの唇は、そこが排泄のための器官であるなどと信じることのできない美しさだ。

 抵抗はない。

 老。

 若。

 男。

 女。

 老いも若きも男も女も、そして優でも劣でも美でも醜でも、おっさんでも少女でも、人間なのは変わらなければ生物なのも変わらない。

 人によって定期だったり不定期だったりはあるが、摂取したものは必ず排泄しているはずだった。

 だが俺には微塵すらの躊躇いもない。

「うぁあッ!?」

 悩ましく艶やかに零れる少女の濡れた叫び声。

 上品さの欠片もなく粗野は丸出し欲望は剥き出しにして、唾液を“ぺろり”と舌でひと刷けした唇を押しつけ舐める。

「あ……ン……あふぁッ」

 そのまま“にゅるり”と収縮している粘膜の奥に舌先を滑り込ませると、経験などあるはずのない異様な感覚に綾乃は喘ぎ泣いていた。

 口唇や秘唇とはまた微妙に異なっている、いや、まるで異なっている、不思議な蠢きによって生まれるオンナの柔かさと温かさ。

 くせになる。

 それ自体が意志を持った軟体動物のようにして“ぐねぐね”と舌を踊らせ、綾乃という少女の全てを欲するみたいに激しく吸い立てた。

「んふぁッ」

 少女のそこは吸われるたびに柔かさを増していき、夢中で責めているオトコの唇に舌にと、いじらしくもいじましく吸いついてくる。

 清楚なイメージを維持しながらも堪らなくエロさを醸し、悦びに喘ぎ泣きながら綾乃は、直腸の粘膜をうねらせて俺を締めつけていた。

「あッ、あッ……あぁッ!?」

 波打ち際の砂を滅茶苦茶に掻き乱しながら、何度目かの絶頂に昇り少女は四肢を痙攣させる。

 何度見てもこの瞬間は堪らない。

 そこまで少女の身体を思う存分嬲ると、俺はようやく切れ間のない責め苦から、一時的にではあるが綾乃を解放した。

 海パンを脱ぐ。

 説明の必要もないくらい“ぎんぎん”で勃起は臨戦態勢だ。

「ンッ!?」

 もうどこを触られても感じてしまうのか、もうどこもかしこも性感帯になっているのか、綾乃を抱っこするとそれだけで身を固くする。

 ういういしい可憐なその反応に気を良くしながら、俺は少女を膝に乗せるようにして胡坐をかいた。

「…………」

 そうしてエロオヤジMAXで“しげしげ”と“にやにや”としながら、未だ荒い呼吸を整えている綾乃を観察しつつふと思う。

 ホントに奇跡だな。

 神様という存在がいるならミラクルな確率で絶対に、世に生まれた人に公平に、配分しなくてはいけないラッキー比率を間違えている。

 島田誠(27)

 こいつに幸運があまりにも贔屓されてて片寄りすぎだ。

 そうでなかったらこんな少女とこんなところで、こんなとんでもないことをこんなにしているはずもない。

 そもそもがこうして知り合っただけでも、すでにその有力な証明というものだった。

 断言してしまうが間違いない。

 こんなこと普通の三十路前な会社員のオトコに絶対にありえないもの。

 隣りに住んでいるので紅葉ちゃんくらいは、挨拶をする程度は仲良くなったかもしれないが、たぶんそこから先の進展はなかったろう。

 他の三人も遊びに来たときのすれ違い様でもあれば、会釈くらいはあったかもしれないが望めるのはそこまでだ。

 夢。

 ハーレムだのなんだのなんて馬鹿なことを口走れるのは、夢のまた夢であり、世に見る権利があることすら気づかないドリームである。

「…………」

 いかん。

 自分の置かれているポジションに感極まって目頭が熱くなり、少女を腕に収めながら思わず泣きそうになってしまった。

 いや~~、でもさぁ~~、ねぇ~~。

 そりゃオトコなら誰だってそうなるし、オトコなら誰だってそうならなきゃおかしいよっ!!

 赤いブラに覆われている中学生のような、第二次性長期を迎えたばかりのような、慎ましく控え目に自己主張するささやかなふくらみ。

 鎖骨まで押し上げるように“ぐいっ”と水着をずらす。

 ぶるるん。

 と。

 残念ながら揺れるようなことはない。

 が。

 砂浜に何度も擦れた外側からの刺激なのか、それとも内側からの期待によるものなのか、淡い乳首は興奮で“ぴんぴん”になっていた。

 汗と潮風によっておっぱいに斑に付着している砂が何故だかエロい。

 起伏の乏しい緩やかな丘を“ツツッーー“と流れていく水滴も、むしゃぶりつき噛み付きたくなるくらいに堪らなかった。

 しかし速攻でそうしたい気持ちを抑えて視線を下に、縦長の可愛らしいオヘソを通過してさらに下に持っていく。

 ごくっ。

 喉が大きく上下した。

 性と直結した熱い牡の視線を感じているからか、それともさっきからずっとこうだったのか、海のものではない潤いで満たされている。

「…………」

 少女の望むままに、綾乃の欲するままに、あどけなさ残る綻びを“クチュクチュ”してあげたい。

 俺の中で相反するはずの父性と獣性が自然と混ざり合う。

 モザイクのように疎らな恥毛を貼りつかせてはいるが、放送コードをクリアするには到底及ばないエロさがそこにはあった。

「……おお」

 凝視していると頭の中が“くらんくらん”と、安物でなく高い金を出して呑んだ酒みたいに、酩酊したような気持ちの良い眩暈がする。

 素面でいることはできそうにもなかっが、この酒はどんなに呑んでも呑み尽くしても、悪酔いだけはしそうになかった。

 滑らせる。

 さっきまで散々蹂躙されていた場所に、全身が性感帯になっている少女の、その中でも飛びっきりで一番の性感帯へと指先を滑らせる。

 ほんとうに唇のように柔かい。

「あッ……ン……ハッ……、はふッ……んふぁ……、あ……んンッ……あッ…………」

 上の唇では悲鳴を上げながらも綾乃の下の唇、後ろの穴は小刻みに締めつけて、嬉しげに俺の指先を奥へ奥へと呑み込んでいった。

 少女は横抱きのお姫様抱っこみたいな形にすると、勇者にでもしているように抱きつき快楽の度合いを伝えてくる。

 意識・無意識はわからないが、そんなのはわからなくてもいい。

 首に腕を廻している姿は可愛らしいが綾乃は、誘うようにおねだりするように、俺の口唇に痛々しいほど起立してる乳首を寄せていた。

 もちろん意地悪なんてしたりせずに、少女の望むまま綾乃の欲するまま応えてあげる。

 できればしたいところだけど、俺にももうそんな大人ぶって余裕ぶって、意地悪なんてしているほどの余裕はとうにない。

「あぁン」

 故に同時多発である。

 ヒーローは遅れて現れるの名言通りを体現するようにして、ここにキテ雄々しくエロテロリストが登場した。

 継続しているお尻へのテロを含めれば三箇所の攻撃が、勝手に堪えに堪えたわけだが、同時に烈火の如き勢いで炸裂したことになる。

 ……今回も例によって遣っている言葉に、特にこれといった意味はない。

 まあ、それはそれこそ例によって、毎度のパターンというか、お約束でともかくとしてである。

 脳内会議。

 というか自分で自分のしていることに、ひとまずいいわけを終えると、俺は綾乃の硬くしこっている乳首と濡れる秘裂に襲い掛かった。

 ほんのうっすらとではあるが、浮き上がるように膨張している乳暈ごと吸い込み、それを中心に円を描くのは基本中の基本。

 硬いんだけどやわらかな感触に軽く歯を立てる。

「ンッ……」

 綾乃は小さく鼻を鳴らすと『もっとして』とでも言うように、小ぶりなおっぱいを突き出し、抱え込むようにして俺の頭を引き寄せた。

 ちょっと赤ん坊にでもなったような気分。――こんな穢れているエロい赤ん坊がいるわけないけど。

 そうやってヴァージンのまださくらんぼみたいな乳首を舐めしゃぶりつつ、指先を宛がっていただけだった秘唇への律動も開始させる。

「ひぁッ!?」

 お目当てのものを一発必中で摘んだ。

 女の子の真珠。

 なんやかんやでお漏らししたわけではなかったのだが、お漏らししたみたいに“ぬれぬれ”になっている秘裂を弄り的確に探り当てる。

 下腹部から脳天へと鋭い快感の矢を放たれて、本人の意思とは関わりなく綾乃の肢体が可愛く仰け反った。

 マウスでもクリックするみたいにして“ちょんちょん”とテンポ良く刺激する。

 敏感な突起から快楽のパルスが撃ち込まれるたび、綾乃は釣り上げられた魚のように身体を“ピチピチ”痙攣させていた。

「……はぁ……ンッ……、あッ……、……ふ……ああ……」

 何度も何度も失敗していたが、遂に出そうというクシャミに近い。

 ハクションッ!!

 となったときには焦らしに焦らされただけに、唾液を撒き散らし爆発したときは気分爽快だ。

 お尻の刺激は綾乃の大のお気に入りではあるが、大きくうねるような期待だけを煽り、なかなか望む快楽に変化するには時間が掛かる。

 そういうのを愉しめるのが大人のオトコというものだが、ティーンのようにがっついている俺は少女の刺激を一気に加速させた。

 急いでいる。

 うん。

 こんなところで感じるのもアレだが、俺もまだまだ若いというか、俺もまだまだ青いというか、イキ急いでいるのは綾乃だけではない。

 羞恥心までも快楽に変換してイキたがっている少女を、俺も俺の手でイカせることに至上の快楽を憶えて身悶えていた。

 この少女を思いっきり高みに昇らせるのも自分なら、この少女を思いっきり突き落とすのも自分でありたい。

「はひッ!?」

 こねるように真珠を責めていた中指を、熱く蕩けた媚肉の奥へ“にゅぷり”と沈め、甘いものから一転させて少しキツめに乳首を噛む。

 お尻を苛めていた指は二本に増やされて、痛いほどキツく締めてくる括約筋を、押し分けるようにしながら強くえぐった。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……、……んぅッ……はぁ……んぁッ……ぅああッ……はぁ……んぁッ……うぁああッ!!」

 上の唇からは今日何度目になるかわからない濡れた悲鳴が、そして下の唇からは壊れたホースみたいにして生温かな液体が迸る。

 綾乃は身体を“ぶるぶる”と震わせ、口は雛が親鳥から餌を貰うように“ぱくぱく”させていた。

 ああ可愛い。

 被虐の奔流に曝されている姿はどこか滑稽でありながら、しかしどこからどう見ても、誰がどう見ても少女が持つエロさの具現である。

 せっかく整えた呼吸を短い間に、またしてもあっさり乱された綾乃。

「…………」

 これからまたその呼吸を自分が乱すのかと、少女が乱れるのかと想像するだけで“ぞくぞく”してくる。

 綾乃を腕の中に収めながら、安心しきり身を委ねている少女を眺めながら、俺の欲望の象徴はいよいよ張ち切れんばかりだった。

 脇腹に当たっている勃起は焼きゴテのように熱い。

 どうせすぐにまた乱れるのだからと、綾乃の呼吸が七割方揃った頃合で、少女の“ぐにゃぐにゃ”な身体を一度離し前傾姿勢にさせる。

「んッ!?」

 お尻に指を挿し入れて“くっくっ”と小刻みに揺すると、頭だけが下がって『ごめんなさい』をしている格好になった。

 柔らかに淫らにまとわりつく襞から抜き取り、身体の軸がぶれているみたいに“ふらふら”してる腰を支えながら後ろに廻り込む。

 そして身体が震えた。

 快楽に拠る魔的な刺激がまったくなかったかどうかわからないが、震えは純度百パーセントに限りなく近い驚きに拠るものだったろう。

「あ、……え? し、島田、さん」

 不自然な体勢のまま首だけを“くりんっ”と向けて不安そうに綾乃は振り返った。

 腰を逃げられないように“がっちり”と押さえている俺を、信じる信じないとは別の次元で信じられないように振り返った。

 白いお尻を捧げるようなポーズで振り返った。

 綾乃は四人の中でも比較的うぶというか、性の知識に興味がないというか疎い方だとは思うが、それにしたって保健体育もあるのだし、

子供がコウノトリに運ばれて来ないのも知ってれば、オシベとメシベが、などという実用度ゼロの話を重要視はしてはいないだろう。

 女子高生。

 それは少なくともそういうことができるだけの準備が、心はともかく身体ではできているだろう年頃の女の子。

 セックスというのがメルヘンでもなければ理科でもないのは、性に関して聡かろうが疎かろうが、思春期な少女なら知っているはずだ。

 子孫を授かるという目的であれ、

 愉悦を得る刹那的な手段であれ、

 勃起した牡器官を女体のどこにどう迎えばいいのかというを、少女という存在はイチイチ誰に教えられなくとも本能で全て知っている。

「あ、そ、そこは、あの、ち、違います。そこは、その、そ、そこは……ち、違う場所、です」

 だがここは本能などではなく煩悩こそが教えてくれる場所だった。

 うん。

 DNAに刷り込まれているだろう説明書には、そういった記述はおそらくではなく確実に一切ない。

 神か悪魔かそれとも究極観測者がしたのか、それは永遠にわからないが、人体の設計において肛門にはそういう思想は含まれていない。

 どこにもない。

 まったく持って人の欲望というものは、無から有すら創り出してしまうような、際限のない可能性を秘めているようだった。

 と。

 ……まあ、こんな感じで欲望を肯定するために、理論になっていない武装を施すと、丸く尖った肉の槍を俺は綾乃の粘膜に浅く沈める。

「あ? ……ぁうッ!?」

 逆の経験は健康な身体ならば毎日でもあるだろうが、這入ってくるという感覚にはそうそう接することはない。

 熱さましの座薬がせいぜいだろう。

 お尻の襞を外側ではなく内側に押し込まれる未知の感触に、綾乃の全身に小波のような震えとともに“ぞわぞわ”っと泡が立っていた。

 が。

 堪らず息を呑み込む表情こそ悲壮ではあるものの、初めて勃起を味わう排泄器官はさしたる抵抗もなく易々と侵入を許している。

「……くぅ」

 どころか達人レベルで鍛えられている武道家の括約筋は、噛み千切らんばかりに締めつけ不躾な侵入者である勃起を熱烈歓迎していた。

 亀頭が半分ほど埋まって可憐だったはずの穴を大きく広げている。

 俺も少女の経験については散々語ったりなんかしたが、さすがにさすがで当たり前だがアナルセックスの経験はない。

 ないがこれからはくせになりそうだった。

 膣とはまた異なる趣の締めつけは、それぞれに長所があり甲乙こそ点けがたいが、より情熱的であり動物的であり即物的に感じられる。

 最初はいくらすんなり侵入を果たしたとはいえ、痛いものは痛いだろうと、綾乃が勃起の太さに慣れるまで俺はじっとしていた。

 正直、俺も痛いし。

 少女への配慮に嘘偽りは微塵もないが、キツさに慣れるのに俺にも時間が欲しかったのもある。

「ん……んぁッ……ンふ………はぁッ………ン……んふぁッ……」

 だがそう長い時間も掛からずに牡の勃起は直腸粘膜の虜になり、少女の直腸粘膜は勃起の生贄となるのを欲するように蠢きだしていた。

 その蠢きと呼応するみたいにして、蕩け具合を確かめるかのように緩やかに、でもすぐに荒々しくなって腰は自然と前後してしまう。

 勃起を引きだし突き込むまた引きだし突き込むを夢中で繰り返していた。

「はひッ!? ……ひッ……あ、ンぁッ……ひッ……あ、ンぁッ………はぁ……んぁッ……」

 抜け落ち崩れないようホールドする意味もあるが、無論そんなものがそういった側面はあっても建前なのは今更である。

 少女の身体を抱え込むように手を前に廻した。

 日差しの強い健全な夏の砂浜に“ポタポタ”と、いやらしくも艶やかに雫を撒き散らしているその源泉。

 ぬめっている秘唇を掻きまわすと雨の日の靴底のような、耳に不快であるはずなのに心地よい粘った水音が間を空けず追いかけてくる。

「……あふッ……くぅッ……、あッ、んぁッ、あふぁッ!! んンッ……あッ……、……ふ……ああ……あンッ!!」

 眩い。

 そしてエロい。

 まるで汗がローションのように濡れ光っているのが、いたいけな少女をひどく淫猥なものに映るよう、演出でもしているみたいだった。

「ひッ……あッ……はひッ!!」

 お尻の穴で勃起を迎えたのは今日が初めてのはずなのに、もう甘い声を漏らしているのもその印象を強いものにさせている。

 まだこの娘ヴァージンなのになぁ。

 コッチの味を先に覚えちゃって、大丈夫なものかと心配にはなる。

 けれどまた一方では、ヴァージンなのに処女なのに未通女なのにコッチで、こんなに感じちゃっている娘って萌えるかもしんないっ!!

 萌えのエネルギーをパワーに変えて我武者羅に、テクニックもなにもなく勢いとノリだけで勃起を突き続ける。

 連打連打連打。

「あッ、あッ、んッ……ふッ……クッ……、んンッ……あッ、んぅッ、あッ、あッ……ふぁッ!!」

 それに負けまいとでもするかのように、酔っ払いみたいにされるがまま、綾乃も身体を支えてもらいながら嬌声の勢いを増していった。

 二人の“ねちゃねちゃ”と卑猥でしかない音を奏でる結合部から、快楽という名の甘美な猛毒が全身へ放射状に広がっていく。

 限界。

 致死量はとうに回っていたがミラクルもここまで。

「くぁッ!!」

 俺は呻き声を奥歯で噛み殺したが、肛門を締めはしたが、それには何の意味もなく、綾乃のお尻に包まれた勃起が欲望を放って弾けた。

 無様にも見苦しく先にイッてしまったオトコに、コンマ何秒か遅れて少女も身体を波打たせる。

「うぁッ……は……ああッ……ぅあ……ふぅ……あ、……あッ……ぁんッ……」 

 夏の海でアバンチュール。

 なんていうのは島田誠(27)の父ちゃんや母ちゃんの時代、いや、もっと前の時代から手を変え品を変え言われていただろう。

 旅は人を開放的にさせるというあれだ。

 過程はもちろん結果がどうなるのかは十人十色ではあるが、初体験のシチュエーションとしてはまずまずの上々なのはまず間違いない。

「…………」

 でもそんなロマンチックなものとは、少女の描いているものとはたぶん絶対違うんだろうなぁ。

 そうだったら怖い。

 力を失った勃起が処女でなくなったばかりのお尻から“ズルリ”と抜ける。

「……おお」

 理解されようとは思わないがオトコにとって洒落抜きで、これはもしかしたらもしかすると感動の光景かもしれない。

 秘唇とは違ってゆっくり静かに、浮き上がるみたいに盛り上がるみたいに“ぷくぅ”と、白く濁ってる大量の俺の欲望が逆流していた。

 内股の前のめりで“よろよろ”と崩れそうになっている綾乃を、介抱するようにそっと砂浜に横たえる。

 セックスしたからといって大人になるわけではない。

 だがだらしなく涎まで垂らし、息も絶え絶えで横たえられた少女の、靄の掛かったような表情は堪らなく大人っぽく映ってエロかった。

「…………」

 夏の日差しの下で濃密な性の匂いを嗅ぎながら“むくむく”と勃起が、恥ずかしくなるくらい急速に力と角度を取り戻していく。

 なんだかんだでナンパしてた少年たちより、精神年齢が若いというか未熟かもしれない。

 綾乃が呼吸を整え終わったらすぐさま、少女の描くロマンチックもヤろうと、心に固く誓いつつ“ゆるゆる”で俺は顔をにやけさせた。





[2293] 少女病 三十二話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:43



 夏といえば海という連想はおかしくはない。海といえば水着という連想だっていいだろう。

「…………」

 このホテルからはビーチも近いので、厳密には施設内を水着姿で往来することを、禁止されてはいるのだが部屋で着替える人も多い。

 ファンキー・バブル。

 ビーチに近くて便利というのも売りのひとつなので、ホテル側もその辺りは大目に見ているようだった。

 まして泊まっている部屋の中なら、どんな恰好をしていようが、チェックインからチェックアウトまではお客の自由。

 とはいえ。

 もうだいぶ日が暮れている。

 それはもちろん深夜のスキューバーを楽しむという人もいるのだろうが、高校生にもなって浮き輪が手放せない少女となるとおかしい。

 時刻はそろそろ午前の二時を回ろうかというところだった。

 旅先の恒例というか王道というか定番というか、洋子たちは前の晩も遅くまでおしゃべりしていたようである。

 で。

 同年代のガールズトークに参加するのも野暮だろうと、気を利かせて遠慮していたのだが、どうやら些か気を遣いすぎていたみたいだ。

 ここまで来てしなくてもいいだろうという、なんとなくで始めた将棋が意外だがやたらと楽しい。

『隙あらば浴衣の合わせ目を窺ってる誠の視線が、なにかとムッツリでいやらしい』

『島田さんですからね』

『ううん。そやな。まあ、島田さんなんやから、そらまぁ洋子ちゃん、そのくらいは折込というかしゃ~~ないわな』

 楽しいです。

 地方のローカル番組を観ながら“たらたら”と打ち、どうということもないことを“だらだら”と話しているのに幸せを感じてしまう。

 老けたのではなく大人になったんだとおもいたい。

 この時間と空間にこれ以上ないほど、リフレッシュってこういう意味なんだと、悟りの道を開いてしまうくらい癒されていた。

 うん。

 おっさんは若い娘と違って、スタミナ的に徹夜はキビしいね。

 でも、だ。

 仮にこのまま燃え尽きるようにして、電池が切れたようにして、いつの間にか眠ってしまったとしても、悪くないバカンスだったろう。

 明日っからまた頑張ろうとおもえたはずだ。

 だけどそれでは、それだけでは、この夏の思い出は、三十路目前で謳歌している、サマーなメモリーは終わらない。

 携帯の着信が鳴った。

 飛車角落ちだというのにもう何度目かになる王手を片手間で、洋子に“ふぁ~~”と可愛いアクビつきで掛けられたときである。

 何か最近の洋子は俺に対して接待というか容赦がないなと感じつつ、そんなところで妙に親近を感じつつまどかちゃんに呼び出された。

 観たいテレビがあるからと一人で、別にここで観ればいいのに、俺の泊まっている部屋で深夜に一人黙々とアニメ鑑賞。

 淋しくなったからいますぐの大至急で、スーパースプリントで来てくれと言われた。

 我侭。

 集団行動を乱した結果として勝手に淋しくなり、そして怖くなったんだろうが、少女のこういうところも俺は嫌いじゃなかったりする。

 すでにオンナになっている女性でも、これが計算ずくで巧い人はいるのだが、ナチュラルで口にする少女たちにはさすがに敵わない。

 養殖物は養殖物で味わいがあって結構好きなんだけど、やはり天然物のポテンシャルには一歩譲るというのかなんというか。

 それを可愛く感じるのか、それともイラッと感じるのかの境界線。

 縦横無尽に優美に華麗に操ってみせるのは、自由というワードと掟破りというフレーズを、当然のように同一視する刹那の世代の特権。

 少女。

 大人と子供の間で危なっかしく絶妙に“ゆらゆら”と揺れる、奇跡のような彼女たちにだけ許されてる。

 …………

 などと世の成人女性が聞いたら『オトコは若い娘には甘すぎる』とか、『マジでナチュラルとでも?』とか言われそうだが却下である。

 病も末期のジャンキーに聞く耳などとっくのとうでない。

 このまま間違いが間違いとして一生訂正されず、そのまま“コトッ”と死に到っちゃったとしても本望であり幸せだ。

 駒を初期配置に戻しつつ、手で“しっしっ”と猫でも追い払うようにする洋子から、まるで逃げるように“こそこそ”して部屋を出る。

 で。

 ここから冒頭のシーンに繋がるわけだが、ドアを開けるとベッドの上に“ちょこん”と、水着姿のまどかちゃんが座っていた。

「…………」

 しかもスクール水着で。

 それもリアルの学校にはもう存在していない旧タイプの二層式で。

 う~~む。

 この娘“わざわざ”こんなところまでこんなものまで、準備万端というか用意周到というか、キャライメージ通り持ってきてたんだな。

 貴重で希少なコスプレキャラ。

 まあ、コスチュームの出処がアニメや漫画でなく、たぶんだが文部省考案のものなのは、おっさんの俺に合わせてくれたんだろう。

 残念ながらあんまり現在進行形のアニメや漫画に島田誠(27)は詳しくない。

 ただスク水に詳しいかというと、それはまた別問題ではあるのだが。

 こほんっ。

 けれど、まあ、とりあえず、わかっていることだけでも、わかっているだけはひとまず披露しておこう。

 曰く。

 発育途中の未発達な肢体を包み込み、露出度を極力抑え、清純なラインを穢れた視線から隠すよう、厚手の素材で作られた紺色の水着。

 生地は確かポリエステルだったかナイロンだったか。

 コンセプトは野暮ったい。

 だと思う。

 が。

 できるだけ地味にデザインされており、色気というものを排除していったがために、より異性の禁忌欲を誘う結果になった背徳の聖衣。

 胸の小宇宙を爆発させずにはいられない。

 レジャー目的は言うに及ばずで、競泳用ですらまるで届かない、そのときは気づきもしないが、思い出になると価値百倍のもの。

 これはあれだな。

 制服やブルマにも言えることなのだが、手に入れようとしても手に入らず、大人になりノスタルジーを感じるものは絶えず人気が高い。

 決してその時代その時代の流れに左右されない、揺るがないオトコの嗜好であり至高のアイテム。

 キング・オブとまではいかなくとも、限りなくレジェンドでポップスな一品。

 いつの世も変わることなく常連で、最早伝統のようにトップ集団を、颯爽と形成している一品こそがスクール水着だった。

「ふぅ……」

 熱いな俺。

 真夏の気温より熱っくて暑っ苦しい。

 当然だが俺が部屋に入ってきたのには気づいており、まどかちゃんは“もぞもぞ”としながら身体を横にずらす。

 言葉がなくとも隣りに座れと言っているのが、わからないほど鈍くもなければ人生経験にも不充してない。

 はじめからそのつもりだったので隣りに、身体が触れ合うか触れ合わないかの、でも少女の熱を感じられる微妙で絶妙な距離に座る。

 こういう見切りなら綾乃にさえも負けない自信があった。

「早かったのね」

「そりゃまどかちゃんに頼まれたら、いつだって素っ飛んで来るさ」

「…………」

 鼻孔をくすぐる甘い匂い。

 シャワーを浴びて待ってくれていたようだ。

 髪の毛は“しっとり”と濡れていて、柑橘系のパヒュームが“ふんわり”と香ってくる。

 いつものようにいつもにも増して、頭が“くらんくらん”していた。

 衝動。

 野獣みたいにして、いや、ケダモノみたいにして、なりふり構わずまっしぐらで襲い掛かりたい。

 いまのこのシーンを、いまのこのパートを、本能だけに担当させていたら、きっと絶対間違いなくでそうなっていたろう。

 それは理性などというキレイなものとは違うだろうが、なんとか鼻息荒い本能の手綱を“ドウドウ”と握っているものが確かにあった。

 少女を欲望のまま貪る、ただそれだけの対象にはしたくない。

 そしてなにもそれはまどかちゃんだけに、このスクール水着でアピールしてくれている少女だけだけにではない。

 これまでが上手くいっているのかというと、自分でも疑問符を付けざるを得ないが、少女たちが俺としたあんなことやそんなことを、

なるだけ素敵な思い出として、一つ一つ大事に大切に記憶してもらいたかった。

 この瞬間もそうしたい。

 もう少女たちがどんな気持ちでここに来ているのか、薄々ではなくで重々わかっている。

 わからないままに流されるままに、というラブコメの主人公みたいな、わかっているくせにわからないふりは御免だった。

 優柔不断が可愛く見えるのはティーンまで。

 と。

『返して』

 もしも声紋のチェックをしたのなら、モノマネなんて域でなく、肌を合わせる少女と狂いなしでキレイに“ぴたりっ”重なりそうな声。

 テレビの画面にはまどかちゃんの持参したらしいDVDのアニメ、登場キャラの気弱な少年がお風呂上りの薄幸アルピノ少女を、

主人公の特権というか義務というか、王道・定番・お約束のアクシデントで、見事に押し倒しているところだった。

 ナイスッ!!

 後半はそれなりに自主性も出てカッコよくなるものの、ラストのラストまで流されるままだった少年からいいパスがくる。

「あ……」

 ホントをいえばパスの質はそれほどでもないのだが、二次元のアクシデントは、三次元のアクションを引き起こす呼び水にはなった。

 いくら触れてもそれは飽きることなく新鮮で、馴れることはあっても慣れることはない。

 毎度思春期に突入したばかりの中学生のように、女子の背中に初めてブラの線を発見したように、胸の奥から“ドキドキ”させられる。

 硬く粗く太い繊維の肩紐を“ざらり”と撫で、肥満はもちろん当然として、貧相でもない肉づきの二の腕に触れ引き寄せる。

 すると振り子のように“こてんっ”と、まどかちゃんの頭は重力と、それ以外のものに惹かれ、しなだれかかるみたいに身体の全部で、

俺の厚くもない胸に、全幅の信頼で倒れてきた。

 うん。

 いろいろなところで思ったり思わなかったりするが、こういうときはオトコをやってて良かったと切実に想う。

 牡のホルモンが脳髄から溢れるのが、頭蓋という器で“ちゃぷちゃぷ”しているのが、プールから出て床に耳をつけたくらいわかった。

 いま俺のCTをスキャンしたら医学界に衝撃が走るだろう。

 ――たぶん。

 だが無論、現在も未来もそんな、アカデミックなんだかマニアックなんだか、わけのわからないことはホントどうでもいい。

 設定の考察は邪魔で無粋なだけだ。

「…………」

「…………」

 二人の熱の、二人の吐息の、二人の肌の、それはシンクロの妨げになる。

 で。

 昔の子供はテレビの特撮戦隊アニメを観て二階から、そのまま“トウッ!!”と勢いよく飛び降りたらしいが、

「ごめんなさい。こんなとき――」

 この娘も大概感化されやすい。

 できればできるだけ、一生一緒の趣味を持ちたいもんだ。

 みんなとさ。

 まあ、それはともかくとしても、まどかちゃんは付き合っているカレシの趣味が、まんま自分の趣味にもなっちゃうタイプと見たね。

 ついついうっかりしていると『俺色に染まれっ!!』なんていう、恥ずかしいことを考えちゃうくらい感化されやすい。

「どんな顔していいかわからないわ……」

 アニメキャラとそっくりとか似ているとかの次元ではなく、同一としか聞こえない声でまどかちゃんはキャラの台詞を横取りして囁く。

 その表情は『わからない』と言いつつ、期待と不安を浮かべ、泣きそうにして瞳を“うるうる”させていた。

 笑えばいいと思うよ。

 ほんの微かではあるが“チラッ”とそう応えたくなる。

 しかし、それはさすがに空気が読めないというか、それとも読み過ぎというか、いや、なんにしても悪ノリをしてもいい場面ではない。

 なので俺はまどかちゃんに対して、言葉ではなく行動で応えることにした。

「……んッ」

 当たり前の話だが、ないわけではない。

 それは神にでも悪魔にでも、カレードスコープで待っている、究極観測者であっても力強く誓える。

 が。

 優しさだとかカッコよさだとか、あるいは紳士の真摯さだとかを押し退け、エロが全面に出ちゃった笑顔で俺は少女の唇に軽く触れた。

 合図のキス。

 のはずだったのだが見事なくらいスムーズに例によって例により――

「んむッ!! んんッ!!」

 俺がエロという暴れ馬を御し得たのは、刹那にすら満たないだろう束の間だった。

 鼻面をゲートにぶつけ“ぎりぎり”のスタートを切るダービー馬みたいに、一瞬でも早くとフライング気味に舌を侵入させる。

 自分の唾液を流し込みながら少女の甘い唾液を啜り、口腔の奥で可愛らしく怯えている舌を絡め捕り貪った。

「……ン……む……ふ……んーー……んぅ……」

 息が続かなくなるまで(主に俺の)唾液のやり取りを愉しむと、銀色の糸を煌かせながら、ようやく俺は少女の清らかな唇を解放する。

 そのまま惚けたようにして“ボ~~ッ”となっているまどかちゃんを、添い寝するみたいに“ころんっ”と優しくベッドに転がした。

 芸が細かいというのか抜かりはない。

 なんとなく趣味の方向性がそっち方面の人と、マニアやフェチと呼ばれる人を隔てるものは、その接し方にテレがあるかどうかだろう。

 いや、テレはテレとして、恥を捨てられず自覚していたとしても、それでも、道を追求せずにはいられない人のことだろうか。

 白い名札。

 一目見ただけでで不器用だと判断されてしまうような、わざと大雑把でバラつきのある下手くそな縫い方。

 ちなみにまどかちゃんはソーイングセットを常時携帯するだけでなく、わけもなくこともなく“テキパキ”と活用してしまうほど上手。

 まどか。

 平仮名表記の名札は妙に女の子女の子している、やたらに幼い“チマチマ”した丸文字で書かれていた。

 いやはや律儀というのか画竜点睛を欠かないというのか、学年もしっかりちゃっかりで“ごねんさんくみ”になっている。

 ごくんっ。

 自然と咽が鳴っていた。

 正直、信じてもらえるかどうかはこの際、端っこに置いておくが、俺はあまりロリコン趣味も、コスプレ趣味もない方だと思っている。

 ……自分では。

 だからスクール水着にまったく興味がないかというと、そんなことはないのだが、スクール水着だからそそられるということはない。

 が。

 ロリコンかどうかはまた別の機会にでも考えることとして、コスプレの方は認めてしまうしかないのかもしれんね。

 学生が制服を着ていてもそれはコスプレではない。

 それは彼女たちにとっては当たり前にある、毎日のスタンダードでありベーシックな日常だ。

 コスチュームプレイというのに詳しくないが、やはりそういうのは、ミラクルでスペシャルな非日常を演出してこそだろう。

 ギャップ。

 外見と中身の差異。

 これなくしては成立しないのではないかと、俺なんかは思ったり思わなかったりすのだが、どうなんだかその辺りは定かではない。

 ま。

 真面目にオタクロードを歩んでいる人からしたら邪道だろう。

 だがチョット似合っていないアンバランスさにこそ、にわかに目覚めちゃった俺にはそそられたりなんかした。

 まどかちゃんは背も高く手足も長いモデル体型。

 オンナとしてのラインの成熟度は、少女たちの中でも抜群に一番である。

 あと少しで花開く身体だった。

 こどもっぽさからもう半歩だけとはいえ抜け出しているのに、やっていることはとってもこどもっぽくて可愛らしい。

 そんな娘が恥らいつつ精一杯でしてくれる、イッパイイッパイなセックスアピールに、萌えて燃えないオトコが居ようはずがない。

 大分県出身足立区在住の島田誠さん(27)なんてもう、全焼するくらい萌えて燃え上がったもの。

「あッ!? ……んッ」

 まどかちゃんは清く正しい乙女の反応として、お尻だけを“ぴょこんっ”と引いたが、すぐに“おずおず”と元の位置に戻ってくる。

 それはわかっているのだが、それすらも待ち切れずに、俺はたおやかな腰を捉まえると“ぐいっ”と引き寄せた。

 欲情のバロメーターを“ぐいぐい”と、厚いスク水の布地を透かしたかのように、女の子が大事にしなきゃいけない部位に押しつける。

 魅惑の縦線。

 その中心を狙い通りに“ドンピシャ”で捉えていた。

 どんな精力増強剤よりも効果的で刺激的な、劇薬にも似た狂わんばかりのリビドーに、俺の牡器官はヘソまで反り返り臨戦態勢である。

 乙女のヴェーパーシールドをぶち破る、エロを動力とした安上がりのファランクス。

 ドクンッドクンッ…………。

 心臓よりもはっきりと少女に、俺の鼓動と気持ちを伝えていた。

 激しく脈打ってる。

「ねぇ、まどかちゃん、俺のどうなってるかわかる?」

 思春期な少女のメンタルと同じ。

 複雑なようでいてシンプルなつくりの耳朶に、唇を“そっ”と寄せると熱い吐息を吹きかけながら囁く。

 トランクスのゴムどころか浴衣の裾まで、いつの間にか掻き分けて主張する、これ以上なく島田誠を表現した部位をさらに押し付けた。

 イイ反応である。

 小さく可愛く“ぶるり”と震えはしたものの、密着度を深めた身体は離れる気配すら見せない。

「恥ずかしいくらいに、物凄く興奮しちゃってるのわかる? まどかちゃんのせいで、俺のこんなになっちゃったよ」

 ……うん。

 まあ、なんつぅ~~か我ながらなんだけどこれ、素面では口が裂けても、どころか分離しちゃっても絶対に言えない台詞だな。

 だけどこういうのは恥という概念を無視し、往々にして最初に言ったもんの勝ちである。

 現に言われたまどかちゃんの方が、言った俺より何倍も、耳からおでこから顔一面、病気かなって心配になるほど真っ赤になっていた。

 何倍も。

 そりゃ俺だってもちろん常識ある人間だもの、もちろんちょっとくらいは、演出過多で言ってて今更なんだけど恥ずかしいんだぜ?

 だが恥を掻こうが何を書こうが、この台詞はほざく価値がある。

「まどかちゃんは――」

「ひゃんッ!?」

 少女の肌が“ぞわり”と粟立った。

 抑え切れてない歓喜に踊る舌が“ねっとり”と、まどかちゃんの耳を襲って可愛い悲鳴を上げさせる。

 俺はやたら丁寧に優しくも妙に執拗にいやらしく、牡の本能に逆らわずで耳たぶをねぶり、軽く歯を立てたりなんかしてみた。

「興奮してる?」

「……バ、バ、カ……んンッ……、そ、そんな、の……あッ……うンッ……、い、言えるわけ、あッ……そこ……ダメ……ダメ……」

 大丈夫。

 訊いておいてなんだが、皆まで言わなくともわかっている。

 まどかちゃんは『ダメ』だと言っているが、いや、『……ダメ』と言っているが、そんなのは言われるまでもなく俺にはわかっていた。

 おそらく独りよがりにはならず、よがる二人にとってかなり都合のいい、不都合のない解釈でちゃんとわかっている。

 ええ。

 イヤよイヤよも好きのうち。

 宇宙の真理だ。

「ダメ?」

「……ダメ」

「でもホントはダメって嘘なんだよね?」

「はンッ……うッ、ホ、ホントに、ダ、メ……んンッ……だか、ふッ、ら……」

「おやおや? これだけ優しく聞いてるのに嘘吐く娘には、正直な身体の方に優しく訊くしかないのかな?」

 か細い首筋を弄うようにして“ぺろり”と舐める。

 予定調和の規定路線。

 ストーリーがあるようで初めからそんなものはない、エロDVDのおざなりドラマのような、悪徳〇〇と憐れな少女のようなやり取り。

 NGを告げる言葉とは裏腹に、これといった抵抗は特にない。

 エロの階段をまた一段昇る潤滑油としての、形だけのキュートなレジスタンスがあるだけだった。

 ゼロ距離の密着状態から尋問のために、正直になってもらうために少し間を開ける。

 まだ湿り気の残っている髪を梳いた。

 そして人差し指の先で“ちょんっ”とおでこを突っつき、眉、瞼、鼻、唇と、徐々に、着実に、弄うように下へ下へと滑らせていく。

 甘美な毒を“じんわり”沁み込ませるように流し込み、少女のスクール水着に包まれた身体を“ジグザグ”に犯していった。

 お揃いである。

 俺の凶悪に滾っている牡器官と同じように、イジメてオーラを纏って硬く充血していた。

 愛らしくいじらしく“ぷっくり”膨らんでいる。

 有識者やら教育関係者やらが、考えに考え抜いただろう厚手の布地も、思春期少女の恥かしい自己主張は隠せない。

 が。

 ショートケーキのイチゴみたいにして、後の愉しみに取って置くことにした。

 触れてもいないのに浮き上がっているポッチはあえて無視して、脅すように透かすように小さなサークルだけをくすぐってさらに下へ。

「ン……」

 縦長のおへそを“ぐりぐり”としてから通過し、恥丘の“ふっくり”とした丸みに笑みが零れるが、そこも至極あっさりスルー。

 とことん控え目だけれども、それ故に禁忌の興奮を煽る魅惑のカットラインをなぞり、やたら心地よく“スベスベ”した太腿を撫でる。

 そしてここでいい仕事をしたフィンガーから、待ってましたと躍り出たタンにバトンタッチ。

 もっとも指もこれで、お役御免ってわけじゃないけどな。

 まだまだで大活躍してもらわねばなるまい。

 これから、……だ。

 そう。

 お愉しみはまだまだこれからだ。

「……んッ……クッ……、んンッ……ハッ……ああッ……」

 身を屈めるとにやついた顔そのままで、清らかな乙女の柔肌に舌を、夏場の犬のように“ぬろり”と伸ばし押しつけて牡の唾液を塗す。

 自分でやっててふと思ったが、なんだかまるで、マーキングでもしているみたい。

 困ったもんである。

 困ったもんだと自覚はしていても、全然否定する気にならない。――まったく困ったもんである。

 この娘の魅力は当然これだけじゃないけれど、脚お気に入り。

 人間というのかケダモノというのか野郎の、女性の身体に対しての興味は、概ね年齢とともに、上から下にシフトしていくものだ。

 まず顔から入っておっぱい、おっぱいからお尻、お尻から太腿、太腿から脹脛、脹脛から足首といった具合である。

 俺も三十という年齢が現実味を帯びてきた、最近になってやっと脚線美という言葉が、徐々にではあるがわかってきたところだった。

 地味な紺色の水着から“ニュッ”と伸びている、しなやかで張りつめた脚の白さが、眼に眩しいほどのグラデーションである。

 日頃の怠惰によって震えているわけではなく、瑞々しさと恥じらいによって波打つ肉感。

 スリムなんだけれど女性らしいふくらみを持った腿、丸い綺麗な膝、真っ直ぐな脛、堪えるように何度も結んで開いてをくり返す指先。

 付け根をスタート地点にして、上から下へ下から上へ、丹念に丁寧に、愛でるようにいやらしく、嬲るみたいにして舐めていく。

「はぁッ……あッ……んふッ……」

 乙女の珠の肌を実際は汚しているのだが、執事よろしく磨くかのような舌遣い。

 美味。

 溶けかけたソフトクリームにでもするみたいにして、せっかくシャワーを浴びたのに、早くも発汗してきている少女の甘酸っぱい味。

 脚とひと言に言っても部位によって味が異なっている。

 汗の溜まりやすい膝の裏とかはやはり濃いだとか、腿の内側は刺激的だと、ひとつひとつ微妙な差がまた愉しませてくれた。

 指の一本一本を股の間に到るまで這わせ、可愛く“ぴーーん”と張った脹脛まで、ほぐすように余すことなく俺は舌を触れさせていく。

 ――ちなみにさっきから動きの参考にさせてもらっているのが、少女たちの舌遣いだというのは内緒だ。

 そしてそんなことを十分ほど続け、とりあえず美脚への唾液のコーティングに満足すると、いよいよ先程おあずけを喰らわせた箇所に

その魔手を、……いや、魔舌を、犬にごめんねと謝った方がいいくらいに、情けなくも浅ましく“ハァハァ”と這わせていった。

 ペチャリペチャリ……。

 おそらく仕事にも何にでも、これだけ熱意を持って取り組めば人生、もっと違ったポジションに居るはずだというほど執拗である。

「あッ……ンッ……あッ……あッ……ああッ!!」

 だがそれだとこの素敵な少女たちと、もしかしたら出会えなかったかもしれない。

 現在の俺。

 百パーセント理想的じゃなくても、大切なのは心がけなので、まあ、島田誠(27)の現在はひとまずだけど、これはこれで良しっ!!

 どこか変態じみていて倒錯している禁忌の刺激に、眼が“トロ~~ン”となっているまどかちゃんの腰を引き寄せる。

 M字開脚のひっくり返ったカエルみたいな体勢にして、聖なる存在であるはずな少女の、秘めている淫らなフォルムを暴いていった。

「ふぁッ!!」

 もともと対オトコの視線水中仕様なだけに、ちょっとやそっとの湿りっけ汁っけで、スクール水着が透けることなど本来ない。

 しかし見るのではなく視る。

 眼からの情報に頼らず、舌で捉えた感覚を信じることさえできれば、脳に怪しいではなく、妖しい図面を描くことは難しくはなかった。

 いわんや。

 むしろ失った野生を取り戻したというべきか、それとも本性を現したというべきか、ケダモノにとっては簡単であるとさえ言える。

 そうすることでしか潤すことのできない、喉の渇きがあるかのように、憑かれたように俺は舌の上下運動をくり返した。

 継続は力なりではないがやがて微かに、そして確かに内側からの、蒸れたような熱を感じるようになる。

「はぁ……ク……はぁ……ン……あッ……」

 しかしどうもやっぱりで俺は、この方面に関して好きではあるが、フェチでもマニアでもなく、真のオタクというわけではないらしい。

 様式美として尊重し、ここまで我慢してきた。

 そう我慢してキタのだというのが、我慢できなくなったいまならよくわかる。

 過保護なくらいに厚い繊維越しというのが、段々とまどろっこしくなり、どころかはっきりと邪魔になってきた。

 数ミリ先に“むあっ”とした熱気は感じられるのだが、攣りそうなほど頑張っている舌には、もっとダイレクトなご褒美があっていい。

 ってかあげたい。

 思い立ったら即行動で舌のアクションをひとまずストップ。

 我がことながらフィクションの(主にフランス書院とかマドンナとか)影響を受け過ぎだ。

 処女の匂いでも嗅ぎ分けようというように、鼻孔を“クンクン”させつつ、指先を野暮ったいカットラインの両端に引っ掛ける。

 持ち上げた。

「ひッ!?」

 褌のように一本の細い紐にされた股布に圧迫され、俺の眼を愉しませるようにして卑猥に“ぐにょり”と歪む。

 可憐な花びらは嬲られることによって、美しさを増し咲き乱れる。

 肌から分泌されるよりもさらに濃厚で甘い、透明なシロップをにじませた秘裂が露わにされた。

 防波堤を失ってそれは内腿を滴り“トロリ……”と美味そうに溢れる。

 夏の乙女の義務であり外せない儀式のおかげか、キレイなデルタになっている恥毛の草叢では、女の子の真珠が蜜に濡れて溺れていた。

 裂け目から覗いている淡い肉色。

 物凄くエロいかも。

「……いや……、お願いだから……コーチ……、お願い、だから……そんなに……そんなに見ないで……」

「うん」

 いや、そんな顔で言われてもホント困る。

 今夜は困ってばかりだった。

 そんな“うるうる”に潤んだ瞳の、可愛い泣き顔でお願いをされても、オトコとしてオトコだからこそ、願いを叶えてやるのは難しい。

「んッ!!」

 あまりに繊細な部分なだけに、軽く“ふぅ~~”と息を吹きかけただけで、まどかちゃんの身体が“ぴくんっ”と震える。

 次の瞬間にはもう辛抱堪らずといった感じで猛然と、俺は少女の秘裂にアニマル剥き出しでむしゃぶりついていた。

「ひっ!?」

 まるで活きのいい魚みたいにして、まどかちゃんは“ピチピチ”と腰を捩じらせる。

 しかしそこは“がっちり”とロックして俺は逃がさない。

 大切な部分に無遠慮にキスされている少女に、唯一できたことといえば、両の手でシーツを“ギュッ”と握り締めることくらいだった。

 口の中に甘い味が広がる。

 疲れたときには甘いものというのは、何もサラリーマンや、受験生にだけ適用されるわけではない。

 明らかにオーバーワークを課せられていた舌だったが、どんな栄養剤よりも効果抜群で、パワーが瞬間で“メキメキ”チャージされた。

 熱く“トロトロ”に蕩けるような少女の、未熟な酸味の残る青い果肉の奥へと、先端を尖らせるみたいにして突き挿す。

 蠢かせた。

「うッ……ンンッ あ……はひッ!?」

 ぬめらかでエロい舌の侵入を歓迎するように、まどかちゃんの柔らかさも、一突き毎に連鎖して誇らしく嬉しい収縮をくり返している。

 粘膜の海は慎みなくハシタナクうねって、俺を奥へ奥へと引きずり込もうとしていた。

「んッ、んッ、んッ……、は、あ、ああ、んンッ!!」

 まどかちゃんの腰がキレイなアーチを描きながら、何度も何度も快楽という鞭に打ち据えられてバウンドする。

 それに応えてシロップを掻きだすように、敏感な粘膜を擦っていくと、お漏らしでもしたみたいにシーツを濡らしていった。

 切なくも淫らであり、甘美な感覚を与えてくれる階段を、少女は二段抜かしの駆け足で昇っていく。

 なのでもう当然のようにダメだった。

 手つかずというか、舌つかずにしておいた真珠を、やや包茎気味の女の子の真珠を、器用に舌だけで剥いてしまうと強烈に吸い上げる。

「あふぁッ!!」

 まるで魂まで吸い上げてしまうような容赦のない吸引。

 問答無用で高みにまで押し上げられた少女は、シロップを間欠泉のようにしぶかせつつ、同時に甘い嬌声も部屋中に艶やかに響かせた。

 二秒、三秒。

 さすがもととはいえ体操選手で、眼を奪わずにはいられない美しい静止状態。

 俺が審査員なら十点満点。

 快楽の余韻を堪能するように“ぶるぶる”とホバーリングしてから、まどかちゃんの腰は堕ちるように“ぽふっ”とシーツに着地した。

「……ン……ふ……ぅう……は、ぁ……」

 こういうときの表現というか描写はだらしないではなくて、やはりしどけないというのが正解になるのだろう。

 まどかちゃんの視線は焦点を失って、視線はまどろむようにみたいに宙を彷徨っている。

 息も荒く半開きになっている唇の端からはヨダレが溢れ、真っ赤になって上気している頬に一筋の透明な軌跡をつくっていた。

「…………」

「…………」

 甘いシロップで“ベトベト”な口元を拭い、おもむろに浴衣と、パンツを脱ごうとしている俺を熱視線で“ジーーッ”と見つめている。

 ――はっきりいってテレはするものの、最近はそんなにこの手の視線が、あくまで少女限定ではあるが嫌いじゃないかも。

 否。

『じゃないかも』なんていういいわけはできない。

 どの口で『そんなことないよ』と言ってみたところで、説得力というものははどこにもなかった。

 むしろこうまでなってしまっていると、もう好きという選択肢しか在り得ない。

 それ以外はたとえ俺が許しても、世間が許さないという感じだ。

 喜んでるのに怒ったように青筋を浮かべている、まあ、所謂ツンでデレな牡器官が、心情を何よりも雄弁にこれでもかと物語っている。

 丸く尖った肉の槍はまさに凶器で、血液が収束し過ぎて赤黒くなった勃起は、急角度で天を衝いてその威容を示していた。

 先っちょから垂れているカウパー腺液は、エイリアンのヨダレのようで、自分のものであってもメチャメチャにグロテスクである。

 こんなものでこの娘に……。

 と。

 いうようにこれからしようとしているある種、残酷なことを思ったりすると心が痛むが、興奮している自分も間違いなく存在していた。

「…………」

「…………」

 ベッドのスプリングをわざと“ギシッ”と軋ませながら、少女の開かれたままの脚の間に身体を割り込ませにじり寄る。

 獲物を追い詰めるハンターにでもなった気分だ。

 日本人は由緒正しい農耕民族ではあるが、その前にオトコは誰でも、生まれも育ちも人種も関係なくで、古今東西万国共通の狩猟民族。

 心が穏やかどころか荒ぶっているからなのかどうなのか、とにかく金髪にならないのが不思議なくらいだった。

 スーパー狩人である。

 さらにそれを超えた2や3があるのかないのかは、王道・定番・お約束、そしてなによりもご都合という名の展開次第だ。

 で。

 ひとまずそれはそれとして、だ。

 オン・ターゲットされてしまっている憐れな獲物の葛藤が、手に取るように、はわからないが、まあ、想像はできないこともない。

 性別の違いはあるけれど、オトコにだって初めての経験はある。

 結果から見てしまうと、オトコは愉しんでるだけじゃねぇかと思うし、その通りではあるけれども、初めてに構えてしまうのは一緒だ。

 そこに燃えはあっても萌えがないだけで、初めてに対してはオトコもオンナも一緒だ。

 もちろん両者は等価ではないけどね。

 失うものが童貞と処女では、ひたすら快楽のみと、痛みが前提条件にあるのとで、その価値がまずはそもそもで違いすぎるけどさ。

 セックス。

 性交。

 受精。

 情事。

 あるいはおしべとめしべがこうなってああなって……、etcetc。

 俺に語彙がないので他には出てこないが、まだまだあるだろうその呼び方は、別になんであっても本質は変わらないので構いやしない。

 この旅行が具体的に決まったときから、おそらく少女たち全員に、そうなることへの気持ちはあっただろう。

 きっと期待もしていれば、覚悟も用意してあったんだろうが、それでも未知な経験に、どうしたって不安で怯えてしまう瞳が堪らない。

 見上げているまどかちゃんの顔の脇に肘を突いて、体重を掛けないようにゆっくりと覆いかぶさる。

「……んっ」

 安心させるためのキス。

 そして一度イッてしまったため落ち着きかけた身体に、再び絡みつくように、交じり合うように炎を灯す深く貪るようなキス。

 徐々に徐々にまどかちゃんの心と身体にまた熱が増していく。

 とはいえ熾火になった炭のようなものだ。

 ピークから勢いは弱まっているものの、燻っているだけで火は消えていたわけではない。

 規制前の百円ライターより簡単に、あっけなくもあっさりと着火する。

 互いの唾液と俺の口に残っていたシロップのカクテルを、少女が“コクコクッ”と嚥下する頃には“ぐっつぐっつ”と再沸騰していた。

 うん。

 俺も再沸騰。

「あ……ふぁッ……あふ……」

 右手はまどかちゃんの頭を腕枕のようにして支えているが、左手は縦横無尽に少女の身体を熱心にまさぐる。

 さっきはおざなり加減でスルーされたおっぱいを、五本の指をイッパイに可動させて鷲掴んだ

 まどかちゃんのサイズは紅葉ちゃんのような、片手には到底収まりきらない、巨乳というほどのボリュームまではない。

 が。

 それでも大きな乳房は“ぐにゅぐにゅ”と、いやらしく蠢く手に揉まれて、未発達な乳腺を蕩かせながら落ち着きなく形を変えている。

 授乳器官が可哀そうになるくらい充血していた。

 厚い水着越しでも誤魔化しようがなくそこは“ぴんぴん”で、早く摘んで欲しい苛めて欲しいと訴えるようにして尖っていた。

「きゃふぅッ!?」

 当然だが勝訴である。

 もっとも俺の興奮もすでに最高裁にまで上告していて、これ以上はもうあとのない我慢の限界だったんだけどさ。

 勝手に溜めていた鬱憤を晴らすみたいに、

「あッ、あッあァ――――ッ!!」

 興奮によって硬くなるメカニズムは、よく考えればまったく牡器官と同じもので、感じた快楽の集積地になっているのも同じである。

 ツネるみたいにして少し乱暴に“キュッ”とひねってやると、腕枕をしている少女の頭が無防備に咽を晒して仰け反った。

 しこっている起立を人差し指と親指の腹で弄い嬲る。

 この瞬間はオトコとして生を受けた者の、間違いなくで喜びを感じてしまう事柄のひとつだ。

「はぁ……ぁ……ン……ふぁ……、んンッ……や……あン……あッ……」

 グミのように硬く柔らかな部位の、何がそこまでオトコを夢中にさせるのか、それは“キュッキュッ”とこねくりながらもわからない。

 もしかしたらDNAとか本能とかで説明はつくのかもしれないが、このまま永遠に説明はつかない謎のままでいて欲しい謎である。

 ミステリアスだからこそ惹かれるものも、この世界にはたしかにあるということだ。

 ……なんてね。

 エロいことをするのに細かい説明は要らない。

 考えるのではなく感じろ。

 痛々しいほど勃起している乳首にひたすら魅了され続け、ひたすら丹念に丁寧に貪欲にこねくり続ければそれでいいはずだ。

「やはぁッ!!」

 どうやら少女も積極的に情熱的に熱狂的に、そう言ってくれていることだしな。

 まどかちゃんの身体はどこもかしこも、いたるところが素敵で、素晴らしく敏感に俺の上手くもないだろう愛撫にも応えてくれる。

 乳首だけではなく『ここにもして……』というように、腰を“もじもじ”とよじり、無言であっても雄弁な催促をするハシタナイ身体。

 狭いヴァージンホールに宛がった指先が、さして力を入れなくとも“にゅるり”と呑み込まれてしまう。

 欲望の量に比例でもしているのか尽きることがない。

 甘い匂いで獲物を誘い無慈悲に捕食する花みたいにして、際限なく蜜を溢れさせるそこは、俺の指を“キュウキュウッ”と締め付けた。

「ふぁ……あ……あッ、あッ……ひぁッ……」

 身体だけではなく心の底でも待ち望んでいたろう異物の侵入に、歓喜を羞恥という極上の甘いエッセンスで奏でる艶かしい声。

 我ながらAVの観過ぎかもしれない。

 調子の乗った超振動。

 煽られるように指先のバイブレーションも速さを増して、雨の日の靴下みたいに“クチュクチュ”という濡れた音も大きくなっていく。

 しかしそんな派手なティーンばりの大技で豪快に嬲りながらも、粘つくねちっこいオトナなオトコの小技だって忘れたりはしない。

 何事も助け合いであり連携でありコンビネーション。

 長短強弱織り交ぜたプレイが効果的だ。

 生々しく温かいハチミツ漬けみたいになっている“トロトロ”な膣内粘膜を、

「あッ……あッ……んゥッ……」

 上・上・下・下・左・右・左・右・B・Aと指に沁み込み馴染んだ、平成っ子にはわからん昭和な香りの裏技入力の要領で掻きまわす。

 どうやらまどかちゃんはお気に召してくれているようで、縋るみたいに俺の首筋に抱きつく力が心地よかった。

 感無量。

 オトコとしての本懐である。

 ああ可愛い。

「ん……う……んッ、んッ、んッ、んンッ!!」

 少女は必死だった。

 合間合間の“チュッチュッ”という軽いキスに、返って息は苦しくなる気はするのだが、救いを求めるようにして唇を突き出してくる。

 が。

 無論ではあるが俺がこんな状態の少女を、わざわざレスキューなんてしてやるわけもない。

 むしろ率先して要救護者をデンジャラスなゾーンへと誘っていく。

 二次遭難三次遭難はおおいに望むところだった。

 快楽という山から下りる気は毛頭ない。

 熱い膣壁の中でも妙に“ぷりぷり”してざらつく部位を、抉るみたいに擦りながら、親指で真珠を“つるんっ”と刷けるように撫でる。

 すると、

「はひッ!?」

 奔流となった快楽のパルスが刹那で隅々まで駆け巡ったのか、まどかちゃんは不意に“ぶるぶる”と身体を震わせた。

 初々しい色を晒した秘裂に“にゅぷり”と挿ささっている指先が、これまでにない強い力で“キュウ~~ッ”と締め付けられる。

 まるでザ・ワールド。

 実際にはそんなわけはないのだが、それでも瞬間俺とまどかちゃんの時間は、世界の時間は“ピタッ”と停まっているかのようだった。

 おそらくは五秒も停められてなかっただろう。

 …………

 いや、俺も人のことを大概ああだこうだとは言えないくらいに、漫画の影響を受けているってことはわかってはいるんだけどね?

 ウリリィ~~!!

 最高にハイってやつである。

 だが少女が“ハァ……”と切なく吐息を漏らすまで、食い千切らんばかりの媚肉が緩むまで、二人だけの世界はたしかに停まっていた。

 まどかちゃんが全てを委ねてくれるように、俺の腕に“ガクッ”と力を抜いてもたれ掛かってくる

 その重さは少女が信頼の大きさを、示してくれているみたいで誇らしかった。

“にゅぽ……”

 果たしてこのどこかコミカルな音は、鼓膜で捉えているものなのか、それとも脳が気を利かせ演出したものなのかは俺にもわからない。

 だがどちらであったところでそれはそれ、この場では極めてどうでもいいことである。

 重要なのは少女のシロップで“ネトネト”になった指先が、蛍光灯の下でぬめ光っているのがエロいということだった。

 擦り合わせ広げると糸を引く。

 辱めるためだけにしているような指遊びに、少女の首が“いやいや”と左右に振られるが、それは動きを熱心にさせる効果しかない。

 身体は正直だね。

 おっさんとしての人生を歩むのなら、一度は口にしてみたいフレーズだ。

 目は口ほどにとは昔から言われているが、俺は指でエロ小説(古典)のような台詞を囁きつつ、紺色の繊維の腹の辺りでぬめりを拭う。

 描かれた航跡は梅雨の日のカタツムリを思わせ、なんだか何故なんだかリピドーを刺激して卑猥だった。

「………ッ」

 そんな背徳感漂う光景にまどかちゃんは涙ぐみながらも、火照った身体を“ぶるり”と、抑え切れないらしい期待に震わせている。

 だが俺だってこの後の展開への期待度なら、某少年誌の毎度毎度の、嘘予告にさえも“ドキドキ”していた世代だけに負けてはいない。

 同じ気持ちでまどかちゃんと熱く見つめあったまま、手探りで枕を探し当て、頭の下に敷いてやり腕を“そっ”と抜く。

 そして自由になった身体で取るポジションは、もちろん上も下も潤んでいる少女の腿と腿の間だ。

 もう挑発でもなければ威嚇でもない。

 縦割れの唇をしたエイリアンは、焦らしに焦らされた空腹は、最高の調味料とばかり、ついに捕食を、――されようとしていた。

 触れてはいけないように神聖で可憐な佇まいでありながら、牡を誘うように淫らに美しく咲いている少女の花に。

 甘いシロップを吸い込み、重くなっているスクール水着を横にずらし、全貌を顕わにすると、そういった印象を益々深いものにさせた。

 湯気が立ちそうなほど熱く蕩け潤んでいる秘裂に、角度を調節して勃起の先端を、淡いピンクの粘膜にちょっぴりめり込ませる。

 お互いのもっとも敏感な部分で、これ以上ないほどお互いを感じていた。

 ……まあ、感じる本番っていうのは、これからなんだけどさ。

「はぁ……」

 いよいよなのね。

 と。

 まどかちゃんが思ったのかどうかは定かではなかったが、似たようなニュアンスのことを、たぶんおそらく脳裏に浮かべはしただろう。

 かなり妄想交じりなテレパシーではあるものの、それほど的外れでも勝手な解釈でもないはずだった。

 少なくとも俺の気持ちは『いよいよ……』といった感じの、お祭り騒ぎで盛り上がっているのだけは間違いない。

「あ……ふぁ……ンッ……はふッ……」

 浅ましくもいじらしく勃起に吸い付くようにして、粘膜をひくつかせている膣口に、それが良いのか悪いのかゆっくり腰を進めていく。

 別に処女でなければという馬鹿で幼い、なによりも惨く醜い信仰は持ち合わせていない。

 膜がなければ嫌だなどというのは、女の子の人格否定もいいところである。

 大人としては過去を受け止める器量というのがほしいね。――軽い嫉妬はそりゃいいが固執してしまうようならNGだろう。

 とはいえ、だ。

 やはりヴァージンを相手にしたトリプルヘッダー。

 彼女たちのはじめてに選ばれたオトコとして、連日連夜二十四時間無休、光栄であり感慨深いものがあるのも揺るがない事実である。

 それはフィジカルではなく、メンタルで感じるエクスタシーだった。

 その多幸感に後押しされるように、

「あぐッ!!」

 猛りきっている勃起全体の八割まではゆっくりと侵入させたが、残り二割を腰に力を入れて一気に根元まで沈める。

 これといって、さしたる強い抵抗はない。

 勃起に居場所を奪われたシロップが“とぷっ”と秘裂から溢れるのと同時に、また一人の少女が大切に守ってきた純潔を失った。

 ただ、

「……ふぁッ……あッ……ひィッ……」

 体操や水泳をやっていると、そうなることがあるとよく聞くが、まどかちゃんのそこからも、特に処女膜といったものは感じられない。

 半分常識になっているというか、市民権を得ている誤解というのは昔からある。

 破瓜なんて聞いただけでわかる物騒な言葉もあってか、乙女は痛みに耐えて赤い花を散らすというイメージもその一つだ。

 けれどそんなもんは十人十色、いや、百人だろうが千人だろうが、地球の総人口の分だけ人それぞれである。

 きっと大気圏どころか太陽系からも飛び出して、将来は宇宙規模で人それぞれになっていくだろう。

 だから、

「あ……ン……ぅ……ぁ……んン……、あッ……ぅうあ……んッ、んッ……ふッ……」

 まどかちゃんのように処女膜がないというそれぞれも、王道・定番・お約束からは外れるが、まあ、それほどめずらしいことではない。

 とはいえヴァージンというのは、やっぱりヴァージンなのである。

 痛みと出血というステップがないだけで、少女が初めての経験をしているのだけは、変わらないし代えようがない。

 戸惑いはあるだろう。

 いくら俺が所有している牡の生殖器官がスタンダードな標準サイズでも、まどかちゃんが体奥に迎え入れた最大の異物なはずだ。

 大きな犬の頭を撫でる子供みたいである。

 生意気な襞々が初々しくたどたどしく張り出した雁首に絡みつき、おっかなびっくりで様子を窺うように勃起の胴部を締め付けてくる。

「くっ」

 天国というのは地獄と同義語なのかもしれないな。

 我武者羅に腰を振りたい衝動をどうにかこうにか抑え込んで、ここは少女のなすがままに“ナデナデ”され続けるしかない。

 最初が肝心。

 何事に置いても一番最初に怖いとか痛いとか、マイナスの感情を持たれてしまうと、それこそ後々取り返しの付かないマイナスになる。

 イヤよイヤも好きのうちは不朽の名言ではあるが、読み間違えてホントに嫌がられては元も子もない。

 こういうのはクルマと一緒だ。

 二人で運転しなければまともにドライビングできない、難儀でイカしたスーパーカー。

 ハンドルを握るのは俺だが、アクセルはまどかちゃんに任せるべきだろう。

 本気でレイプ紛いのことをしても、女の子が感じるなんていうのは、フィクションの世界でしかありえないことだ。

 そんなんじゃ無様に情けなく一人でエンストするしかない。

 セックスというクルマでスピードを出すには、優しさでエンジンを温めながら、二人でギアチェンジをすることが必要なのである。

 少女。

 拙い夜毎の指戯にふけたことはあっても、体奥で感じる刺激を悦楽や快感として受け取るのに、まだまだ慣れてはいないのだ。

 どんなオナニーの名手でも決して得ることのできない、オトコの粘膜とオンナの粘膜で感じ合う熱い脈動。

 ヴァージンホールを“みっちり”と満たされている感覚に、情欲で硬くなった肉の感覚に、初々しい身体を馴れさせなくてはいけない。

「ン……あ……クッ……、はぁ……んッ……ンッ……んンッ……」

 まどかちゃんの可愛い反応を見ながら、辛抱強くゆっくりと、振り幅こそは大きいが、慎重に抽送の速さを調節していく。

 バンザイするようにして枕の端を“ギュッ”と握っている少女の顔から、歓喜が浮かび上がるのを待ちつつ前後運動を繰り返した。

 そして鼻に掛かった呻きを経て、

「あッ……はッ……あ……あ……あ……、あぁンッ!? あッ、あッ、あッ、あふぁッ、ん……ああッ……ふ……あッ、あッ、あッ……」

 まどかちゃんの奏でているメロディはいつしか、艶やかで甘いものを含んだ喘ぎ声に変わっていた。

 こうなってくれればもう、ここまでなってくれればもう、ギアをシフトするのになんら遠慮することはないだろう。

「はひッ!?」

 腰と腰をぶつつけるみたいに、生殺し状態で耐えていた勃起を力強く突き込む。

 粘膜の狭間を掻き分けるようにして、興奮で膨らんでいる亀頭が、秘裂のもっとも深い部分、子宮までをも挿し貫かん勢いでえぐった。

 まどかちゃん本人は気づいていないようだが、

「あッ、あッ、んぁッ……、ふ……あぅッ、……ん……はあぁン……ああッ……」

 より深い挿入を求めて、誰に教えられたわけでもなく、オンナとしての本能に命じられるままに、腰が淫らにくねっている。

 ひと突きごとにシロップが溢れ、シーツに新しい染みをつくっていた。

 まるで長年コンビを組んだ熟年の騎手とサラブレッドのよう。

 腰のグラインドが回数を重ねるにつれて、ゴール前の直線を彷彿とさせる、絶妙なシンクロ率で段々激しいスパートになっていく。

 パンッパンッパンッパンッ……。

 このどう聴いてみてもマヌケでコミカルな音が、なんだかもう鞭入れのようにさえ思えてきた。

 デッドヒートである。

「んンッ、ひッ、あッ、ああッ、あッ、ふぅ、ンッ、あッ、あッ、あッ……うぁッ、はぅッ、んッ、あッ、あッ……」

 などとアホなことを考えている間にも、ひっきりなしに耳孔を甘く心地よく叩いていた、まどかちゃんのむずがるようなよがり声は、

スタッカートの間隔をさらにペースアップさせて、絶頂の階段到達二週目間近なのか、より切迫したものに変わってきていた。

 もちろん、

「よっ」

 到達間近までボルテージが上がっているのは、なにも少女だけではない。

 まどかちゃんの左右の膝の裏に手を入れると前のめりに、身体全体で圧し掛かるみたいにして持ち上がる。

 ちょうど爪先は歓喜と羞恥で真っ赤に染めて、“イヤよイヤよ……”を読み間違うことなく、好きのうちで振っている少女の顔の横だ。

 まんぐり返し。

「あ……あ……、イ、イヤ……やめ……、て、……こんな、の……やめて……よ……」

 こうすると菱形に押し広げられた幼さ残る割れ目に、勃起が容赦なく無残に突き挿さっているのが丸見えだった。

 淫らなシロップでコーティングされた牡器官が、濡れ光ながら急ピッチで出入りしている様に、少女の眼と心は釘付けである。

 まったくイチイチ堪らん反応だね。

 元とはいえ体操選手だったまどかちゃんにとって、メンタル的にはともかく、フィジカル的には苦しい体勢でないのはもう証明済みだ。

 掘削するかのように急角度で、まだ誰も踏み荒らしていないまっさらな処女地に、勃起という凶悪な杭を打ち込んでいく。

「あひッ!?」

 ベッドのスプリングが“ギシギシ”と、まるでリズムを刻むみたいにして鳴っていた。

 荒い息遣い。

 腰と腰がぶつかる音。

 そこから漏れる“ぐちゅぐちゅ”という下品で卑猥な粘着音。

 まどかちゃんの喘ぎをメインボーカルに据えて、部屋全体をライブハウスにして淫らに奏でられている旋律。

 うん。

 発禁になることは疑いなしだった。

 だがそうやって禁じられれば禁じられるほど、人というのは魅せられ惹かれていくものである。

 途中で気づいていた。

 思い出していはいた。

 ひとみさんからもらったゴムを使うのなら、ここなのではないかと薄々ではなく、これ以上ないくらい重々でわかってはいたのだ。

 脱ぎ散らかした浴衣の袂を探ればちゃんと入っている。

 常にいつもお守りのようにして、あの日あのときから肌身離さずで、財布の中にちゃんとスタンバイされている。

 が。

 お守りの封というのは切られることはない。

 気がねぇ。

 ホームタウン・デシジョン。

 本能VS理性。

 島田誠(27)というフィールドにおいて、どちらにアドバンテージがあるかなど、アウェイがどちらかなど明言するまでもあるまい。

 なんなら中東の笛よりも露骨である。

 いまさらだが自分の気持ちが、実はわかり切っていたが、誤魔化すことなくはっきりした瞬間だった。

 ――中出しバンザイ。

 まどかちゃんのもっとも深い部分を、好き放題で蹂躙し貫いている牡の槍。

「くっ」

 牝の媚肉に包まれて、バナナのように反り返っていた。その先端からは身体を灼きつくさんばかりの、熱いトロミが一気に昇ってくる。

 収束・圧縮されていた白い欲望は、腰椎の付近で炸裂すると、輸精管をオーバーロード寸前で駆け抜け少女の体奥で爆ぜた。

 撃ち込むのに合わせて勃起は、何度も何度も一滴まで注ぎ込むように、まどかちゃんの膣内でしゃくり上げる。

「やンッ……、やッ……、やはぁッ!!」

 秘裂はそれを大歓迎するかのようにして、しつこいほど脈打つ牡器官を、歓喜に震えながらまたキツく心地よく締め付けてきた。

 吐息が掛かるほどの近くで見つめる少女の瞳は、立て続けに経験させられた、めくるめく悦楽の完全に虜になっている。

 ああ可愛い。

 身体は脱力していくのに、秘唇だけは“キュウキュウ”と、健気な弛緩と緊張をくり返していた。

 そうしてしばらくの間二人は、まどかちゃんは勃起をねじ込まれたまま、荒くなった息を“ハァハァ”と浴びせ合いながら”時を待つ。

 やがて互いの呼吸が静かに整ってくると、柔らかな女体に預けていた上半身を起こし、ゆっくりと腰を後退させようとした。

 と。

「……ち、違うん……だから、ね……、わたし、は、初めて……だから……ね?」

 思い切って口にしたという感じである。

 そして皆まで言わずとも、皆まで言わさずとも、まどかちゃんが何を伝えたいかなど、俺にはわかり過ぎるくらいわかり切っている。

 バカバカしい。

 ってな風にここまで明確に思ったわけではなかったが、ベクトルとしてはそっち方面のワードが、俺の脳裏にはしっかり浮かんでいた。

 しっかしホントにまったくもって、心から困った存在である。

「……バカだなぁ……」

 そんなバカなところまで少女という存在は、俺の心を“がっちり”掴んで離さず、ホントにまったくもって可愛い。

 チュッ。

 オデコに軽いキス。

 アソコから血が出てないだとか、あんまり痛がっていないだとか、そういうベタな表現をしてくれなくとも、まどかちゃんが初めてを、

こんなおっさんに捧げてくれたことは、それこそ血が出るくらい、それこそ痛いくらいに、俺にだってちゃんとわかっているさ。

 それは良い意味でも悪い意味でも、こなれていないというか、遊びがないことからもすぐにわかることだ。

 若い方が牛でも豚でも鶏でも、肉というのは一般的には柔かいものだが、ここだけは別なのか、下ごしらえされていない処女肉は固い。

 だから挿入すれば初めてかどうかなど、大体誰にでもすぐわかるようにできている。

 ……大体だよ?

 いや、そもそもの大前提として、仮に少女が初めてではなかったとしても、この胸に感じている愛しいという想いは変わらないだろう。

 それは自信を持って絶対と言い切れるし、なにがなんでも、どんなときでも、必ず絶対だと言い切ってみせる。

 むしろそんなバカなことまで気にしている、まどかちゃんの一途さに、ラブなパワーはより一層より一段と深まっていた。

 フル充電で補給完了。

「あンッ!?」

 少女の可愛さに対して俺の勃起は形状記憶でできている。

 テレビから聴こえてくる音声に、

『左腕復元っ!!』

 なにもタイミングを合わせたというわけではなかったのだが、我が勃起は雄々しくも、オトコの戦いラウンド2をヤル気満々だった。

 媚肉に包まれたままマックスの硬さと反りを、出し惜しみなしの“ギンギン”に取り戻している。

 腰を“ゆるゆる”と具合を確かめるように振ってから、まどかちゃんの股の間に片足を入れて身体を“グルンッ”と横に倒した。

 かの有名な四十八手の一つ、そしてその中でも仏壇返しの次くらいにメジャーだろう、所謂松葉崩しの体勢である。

 見た目こそ派手でテクニカルなのだが、結構お手軽なうえに挿入感もかなりのものという、虚実揃ってるなかなかに優れものの体位だ。

「あッ……やンッ……あふぁ……、ンッ……ひぁッ……あッ……、ハッ……はぅッ……ああッ…………」

 ほらね。

 股関節の柔軟性もビジュアルの印象から受けるほど必要ではない。

 洋子や紅葉ちゃんに行使しても問題はないだろうし、体操や武道の経験があるまどかちゃんと綾乃になら、心配をすらするまでも――

「あひぃッ!!」

 ないな。

 シンプルだが力強くテンポよく、すっかり火照っているぬかるみに勃起を突き込んでいく。

 下ごしらえが済んだおかげなのか、ただキツく締まるだけではなくなった、媚肉の“ねっとり”とまとわりついてくる蠢きに煽られて、

欲望のままに容赦のないピストンを打ち込んでいった。

 木の葉のように舞い狂う。

 ほんのついさっき、ヴァージンでなくなったばかりの少女に、この暴風雨のような激しい責めから抜け出す術はない。

「あッ、あッ、あぁッ!!」

 まどかちゃんはあられもない声を上げて、艶やかさを増した淫らなダンスを踊って身体をくねらせる。

 空調は利いているのに、全身に汗を浮かべて喘ぐ、大人っぽい容姿なのに、スクール水着で嬉々として嬲られている少女は絶品だった。

 二人の分泌する体液という体液が、股間の結合部を中心にして“ぐちゅぐちゅ”と、回帰するかのように交じり混ざり合っていく。

 しこりきっている女の子の真珠は突き込まれる度に圧迫され、泥濘のようになった秘裂の上で“あっぷあっぷ”と溺れていた

 俺に助ける気は、当然のようにしてない。

 割れ目に出し入れされる“ぬらぬら”濡れ光った牡器官に、シェルピンクの粘膜が纏わりついて、いやらしくも卑猥にはみ出してくる。

「ひゃぅッ!?」

 子宮口が打ちつけられたびに、その衝撃が全身に伝わるたびに、媚肉は淫らに蠢動して、まどかちゃんが腰をうねらせくねらせると、

尿道を圧迫するほどキツく締めつけて、牡の精をねだっているかのようだった。

「うッ」

 少女の慎みなくハシタナイ要望に応えるみたいに、さっき出したばかりだが早くも“ズンッ”と暴発の気配が腰の裏にある。

 そしてあんまり堪え性がないことに掛けて、俺の本能というか煩悩は、定評があったりとかなかったりとか。

「コ、コーチ、んッ、あッ、ンッ……コー、あッ、コ、ひっ!? あッ、あッ、あッ……」

 後ろ向きで片足を抱え上げられた無理な体勢だが苦もなく、けれど親に縋る子供のようにして、まどかちゃんは俺に救いの手を求める。

 俺は片足を抱き枕のようにホールドしていたが、親が子にそうするように、その手を掴むのに躊躇いも迷いも刹那もない。

 まあ、親が子に対してこういうことを、まずはしないというのが、大前提としてあるんだけれども。

 それはそれとして、――着火。

 二人の手が絡み合うようにして握られたとき、触れ合っちゃいけないコードとコードが、切れ目なく触れ合っちゃったみたいに、

「ふぁッ……あ……ああ……あひィッ!?」

 少女の最も深い部分にめり込み、犯している亀頭が弾け、刻み付けるように、秘裂の奥に二度目の、煮え滾る牡の精がぶちまけられた。

 一足早く達していたまどかちゃんだが、まるで誘爆でもしたみたいに、汗に濡れている身体を震わせ勃起を締め付けてくる。

 口を“パクパク”させて仰け反っている、背中のラインが妙に大人っぽく映って色っぽい。

 二度目でも呆れるほど濃いのが自分でもよくわかる。

 快楽の余韻に見っともなく腰を“カクカク”と振りながら、熱く粘っこい体液が膣内に、蕩けるように吸収されていくのを感じていた。

 もしもこのまま腹上死したとしても、それはそれで幸せな人生の終わり方で、結構ありなのかもしれない。

 うん。

 大いにありだな。

「…………」

 などというバカな考えが、一瞬だけ頭の中によぎったりしたが、しかしすぐにここで死んでしまうのは、もったいないなと思い直した。

 こちらを振り向き見上げる少女の目尻は、眉を八の字にしたまま気弱げに下がり、エンドとするには堪らなく扇情的である。

 新たな潤みを帯び始めたひくつく秘裂の締め付けも、勃起をねだるようにしてまたゆっくりと強くなってきていた。

 覚え立ての刺激というのは、誰であっても瞬く間に病み付きになり、快楽中枢を支配されて矢継ぎ早にその刺激が欲しくなってしまう。

 ……なんかこう言うといやらしい感じがするけど、初めて自転車に乗れた日を覚えているだろうか?

 暗くなるまで暗くなっても尚、楽しくて楽しくて仕方なく、親に怒られるまで走り回っていたという人も大勢いるはずである。

 目的の為ではなく手段の為の快走。

 自転車なのでガソリンはもちろん要らないが、脳内麻薬は使い切れないくらい満タンだった。

 乾くことを忘れてしまっている結合部がまた“くちゅくちゅ”いいだし、二人の身体の火照りと息遣いが狂い乱れて昂ぶっていく。

「あンッ」

 繋がったまま“くるり”と回転させたまどかちゃんの、腰を掴み力任せの一気で起こすと、対面座位の形になってその瞳を覗き込んだ。

 そのままただひたすらに“ジーーッ”と見つめていると、少女は不意に羞恥心というものを思い出したのか面を伏せる。

 が。

「…………」

「…………」

 それでも“ジーーッ”と見つめていると、まどかちゃんは“そ~~っ”と顔を上げ、眼が合うと伏せるをくり返して可愛さ炸裂だった。

 勃起の回復度が明らかに不自然にとても都合良く、けれど至極当然のようにして“メキメキ”上がっている。

 これならイケそうだ。

 重くはない。

 たとえ重かったとしてもその重さは、きっと俺に充足感を与えてくれるだろう。

「むんっ!!」

 お尻を掬うようにしてまどかちゃんをリフトアップすると、チョット諸々の事情で視界が黄色く染まりよろけたが立ち上がる。

 たぶんベッドのスプリングが加わった振動が、敏感になっている部分に鋭敏に伝わったからだ。

「はぅッ!?」

 甲高い乙女の嬌声が漏れる。

 遊びのようにしか感じない人もめずらしくはないが、合う合わないが激しいこの体位、駅弁にもまどかちゃんは適正があるようだった。

 歩くごとに動くごとに“ズンズン”真下から突き上げる。

「ダッ、ダメ……あッ……歩いちゃ、あぅッ!! ダメ、ダメ、あッ、あッ、ああッ――!!」

 ベッドから降りたときはひと際深くいい角度で突き挿さったのか、落ちないようにホールドされていた両足が“ぎゅっ”と腰を締めた。

 イってしまったのか首に廻されている両腕は、雷に打たれたように痙攣しながら、切なくも甘い吐息を耳孔に吹きかけてくれる。

 お返しに俺も真っ赤になっている耳に唇を寄せて、にやけそうになる表情筋を抑えながら“そっ”と囁いた。

 ちなみにこういうときの大敵は、羞恥心というなくてはならない感情である。

 だけどこの場だけでもこのシーンだけでも消去。

 じゃないとこんなこと言えないよ。

「……お願いだからお風呂まで我慢してね。それができたらもっともっと、まどかちゃんに気持ちの良いことイッパイしてあげるからね」

 もしも『は?』とか聞き返されたら富士の樹海まで全力疾走できるが、幸い少女は快楽パルスに痺れていてそれどころではない。

 わけもわからず“コクコク”と頷きながら、恥ずかしい声が漏れないよう、歯を食い縛るのが精いっぱいみたいだった。

 まあ、

「はひッ!?」

 無駄なんだけど。

 結局まどかちゃんはシャワーのカランを捻ってお湯を浴びるまでに、軽く二回ほどイクことになるのだが可愛さに免じて大目に見よう。

 達するその都度コーチコーチとうわ言のように、スクール水着でセックスアピールする少女はくり返していた。

 まったく持ってツボというかオトコ冥利に尽きるってもんだね。

 イッパイイッパイ気持ちの良いことしてあげよう。

 ああ、でも、しかし、コーチ、か。

 最初呼ばれたときは、特にどう思ったわけでも感じたわけでもなかったが、コーチ、コーチ、嗚呼コーチ、――イイ響きかもしれない。

 無闇やたらになくてもいい親心というのか、甘いだけでない愛情というか使命感を掻き立て掻き毟る。

 もっともっとこの娘に色々教えてあげたいっ!!

 もっともっとこの娘にエロエロなことを教え込みたいっ!!

 もっともっとこの娘に甘く教えたいっ!!

 そう固く心に誓いながら、

「ひッ、あッ!? あああッ!!」

 年齢的なことも考慮と二回も出していることだし、余裕があるだろうと踏んでいたが、あっさり俺は少女の膣内に三回目の射精をした。





[2293] 少女病 三十三話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:46



 それが果たして真実なのか、それとも迷信なのかはどうでもいい。

 ネット社会。

 調べようとすればご近所の下世話なゴシップから、国家のトップシークレットまで辿り着ける世の中だ。

 提示された情報を自分なりに選択し、判断することは求められるだろうが、しかしそれなりに満足する解答が簡単に得られるだろう。

 だがそんなものはどちらであっても、少なくとも俺のなかではまったく一向に構わない。

 人の手によってマスターベーションを覚えさせられたサルは、やせ細り衰弱死するまで絶対にコスることをやめないという。

 人間とサル。

 ルーツの酷似している二つの種を分かつものは、おそらく理性を尊重するのか、それとも本能を優先させるかの違いじゃなかろうか。

「ん……ふッ……」

 だとするなら俺はどっちだ?

 サルか?

 それとも人間か?

 オナニーで無様に死ぬ気は“さらさら”ないが、洋子にだったら喜び勇んで殺されてもいい。――人生の終幕は腹上死を希望だった。

 バカ野郎。

 人気のない遊技場で朝も早くから何気なく不自然に、ゲームだけが目的ですみたいな顔して待ち伏せていた。

 でもエキゾチックな碧の瞳の奥が、しっかり潤んでいたのを俺は見逃さない。

 ハイスコアーを叩きだしつつ切ない声で、ポツリ囁くようにして『……わたしのこと飽きちゃった?』などと言われては憤慨である。

 洋子のような身体は小さいけど大人びている美少女に、見た目そのまま子供っぽく拗ねられるのも悪い気はしないけど、さ。

 このままこの旅行中、手を出さないと思ったのかもしれないけど、……そんなわけないだろう。

「あ?」

 画面ではダンディライオンに豪快に激突して、TA―29が自爆してしまったが知ったことじゃない。

 ゲットレディ・GOっ!! である。

 女子高生の旅の必需品であるらしいイチゴポッキーと、単純にネコ娘の嗜好品である甘いアイスココアの味がする唇。

 自惚れでもなんでもなく少女は自分から口を開き、きっと俺を深く受け入れてくれるのはわかっている。

 信じるとか信じないとかいうよりも、島田誠の中でそれは当たり前になっていた。

 絶対である。

 恥ずかしさという成分は損なうことなく、アホな『誠のためなら……』という妄想が、リアルな現実でしかないくらいそれは絶対。

 だからこんな強引なことをする必要は本来ない。

「んンッ!!」

 洋子の緊張で“アツアツ”になっている頬に手を添えると、指先にチョットだけ力を加えて些か乱暴に開かせる。

 生々しさは不思議なほど感じない、淡くピンクの色をしている口腔。

 牡の荒々しさが間違った形で発現されているのは承知していても、獲物を貪るケモノのように舌を突き入れるのをやめられなかった。

「ンッ、ンッ、んン~~」

 小刻みに震えている睫毛。

 香る匂い。

 喉奥から漏れるどこか喘ぎにも似た響きの呻き声。

 すでに子供から大人に半歩だけ踏み出し、もう半歩をこれから踏み出そうとしている柔らかな身体。

 …………

 やった過去の経験もやる未来の予定もありはしないけれど、どんなドラッグにも優ると断言できるくらい頭が“くらんくらん”する。

 浴衣の袖が“ぎゅっ”てされてた。

 嗚呼可愛い。

 冷静沈着さで右に出る者はいないと自負しているらしい洋子だが、鼻息を“ふんふん”と荒くしている姿はどう見てもマヌケだった。

 しかしそんなスキのないはずの洋子が見せるスキが、もの凄いパワーとスピードで俺をトリップさせていく。

 破壊力が素晴らしくエグい。

 情報エクセルギーが刺激されまくっていた。

 馴染むことはあっても慣れることはない少女の舌を捉まえると、蕩け合うみたいに絡めながら激しくしごき互いの唾液を交換し合う。

 二つのぬめりが本能に命じられるままに、饗し狂い睦み鬩ぎ合っていた。

「ン……」

 そして熱心で執拗なシェイクによって絶妙なカクテルになった頃、仲良く半分こしながら“こくこく”喉を鳴らして呑み込む。

 もう何度目になるかわからないが毎度毎度の、それは狂いそうなほどの興奮と衝撃だ。

 マグマのように身体中が滾る。

 人間は感情の生き物。

 精神の高揚に誘導された身体はあっさりと限界突破を果たし、アンリミテッドで最奥からケモノじみた熱いものを生成している。

 草食だなんだと言われてはいても、オトコの本質というのは遠い原初から変わらずに肉食だ。

 先祖返りを起こしたかのように野生の血が、ハンドメイドの槍だけでマンモスに対する狩人みたいに騒いでいる。

 肉。

 欲。

 肉。

 欲。

 肉。

 欲。

 それだけを求めているわけではなかったが、それが欲しくて堪らないのは、絶対に偽ることのできない島田誠(27)の真実だった。

 少なくともプラトニックな愛だけでは、説明が付かない。

 まあ、ボディタッチがなければ、それでイコール高潔なラブというのも、イマイチ納得のできない定義ではあるのだが。

 下心を優劣として下に見ているのは、真に高潔か嘘つきかどちらかの気がする。

 しかしひとまずで、中高生が頭の中だけで理解しようとするような、美しくはあっても、薄い概念についてはかなりでどうでもいい。

 いまはそれどころじゃない。

「いいか……?」

「……聞かなくちゃわからないの?」

 ファンキーバブル。

 泡の時代に勢いだけで建てられちゃった一流、『風』を目指して脱線したリゾートホテル。

 何もここにセックスだけをしに来たわけじゃない。

 うん。

 でもいまはとにかくセックスがしたい。

 お姫様だっこで抱え上げた洋子と、とにかくセックスがしたくてしたくて、もうそれしか脳が考えられないくらいに堪らない。

 病気の進行はもう手の施しようがない末期のレベルに達していた。

 洋子。

 洋子。

 洋子。

 愛しさが募る。

 無意識だろうが“すりすり”と俺の厚くも頼もしくもない胸板に、仔ネコみたいに頬ずりしてる洋子と一刻も早くひとつになりたい。

 成長期だけでなく思春期にも第二次というのがあるならば、俺は今まさに真っ盛りど真ん中ストレートだった。

 けれど所詮人間だって霊長類なんぞと恥ずかしげもなく、勝手に名乗ってはいるもののアニマル。

 独りよがりな欲望などでなく、相思し合っている愛情を表現するのなら、選択するのが理性だろうが本能だろうが構いやしない。

 と。

「はぁ……」

 熱く深く色っぽい吐息を可愛らしくも、艶かしく漏らしている未成年を感じつつ、病気みたいに勃起して俺は思案を素早く巡らせる。

 洋子たちのチェックしている部屋は――、無論ダメだ。

 ハーレムなんてアホな宣言をしてからというもの、流れでそうなったのなら『多人数プレーもありかな?』とも思うがこの流れでは、

いまも部屋でくつろいでるだろう紅葉と綾乃には、クーラーで感じる自然な風よりもきっと不自然だろう。

 もうひとつ盛るのなら、オリジナルの替え歌くらい釈然としない。

 却下だ。

 少女たちは性処理の道具ではない。

 こちらの自侭な都合だけで、そういうことに巻き込んでもいいはずがなかった。

 ならば俺の部屋は――、ヴァージンをロストしたばかりのおで、いや、元体操少女が“ぐっすり”とお休みになっている。

 もともとまどかを起こさぬよう“そっ”とベッドから抜け出して、俺は心地良い達成感の一服を求め煙草を買いにここまで来たのだ。

 初めて経験するだろうハチミツ漬けのような甘い疲れ。

 ブランクはあっても体操で鍛えたまどかのスタミナ、そして若い回復力は俺より格段に優るがこの眠りを妨げるべきではない。

 一生に一度の経験だ。

 にやけていた寝顔から想像できる幸せな夢の世界、そこからの強制送還を行使する権利は俺にないだろう。

 バレるかバレないかのドキドキ。

 それはそれとして燃えるし萌えるというのは牡として否定しないが、大人のオトコの配慮というかデリカシーくらい『まだ』あった。

 なんにしても欲望だけで“初めて”を味わう少女の邪魔をする気は毛頭ない。

 ではどうする?

 このまま外にというのは論外だとしても、ホテル内をこのままで徘徊するのは、やはりマズイような気がするというかマズイっ!!

 児童買春。

 未成年者略取。

 淫行条例。

 公然猥褻。

 脳内の紙面を飾る不吉なワード群。

 少女たちとの関係を追及され前科が付いても本望ではあるが、できればそこはそれ穏便に済ませときたいのが本音である。

 できれば目撃される可能性は、ネッシーやイエティよりも低くしたい。

 俺の股間のツチノコは何としてもU.M.A、主食が少女の未確認生物にしておかねばならない。

 そのときである。

「はっ!?」

 天啓なのかそれとも魔が差したのか――、たぶん後者だとは思うがとにかく俺は閃いた。

 このカーメトリックな脳裏の輝きは『黄金の船』と名づけよう。

 遊技場から出る寸前になって足をストップさせると、白馬の王子様というよりは、荒くれ者の山賊のように洋子を抱えたままターン。

 そして素早くオン・ターゲット。

 両目がドット・サイトでも装備しているみたいに“ピタッ”と、赤い光点でポイントしお目当てのものを捉えていた。

 ただし右曲がりの銃身は上を向いている。

 いまかいまかと凶悪な弾丸を、獲物の内部へ吐き出す気満々だった。

 走る。

 奔る。

 逸る。

 まるでアクション映画の俳優のようにして颯爽と、体当たりでもするみたいにそこへ飛び込んだ。

 いってもぶつかったのはカーテンなので、そこまで意気込む必要はないのだが、まあ、こういうのは主に気持ちの問題だったりする。

 細かいことは細かくなくとも、そこは大雑把に良しとしてもらいたい。

 これが島田誠というオトコの、流儀というものなのだから。

「誠……」

 切なさのなかに戸惑いを含んだ洋子の声を無視して、お尻を操作盤の上に“そっ”と下ろすと、乱れたカーテンを“シャッ”と直す。

 カミオカンデ片腹痛し。

 ニュートリノの侵入ですら阻止できるくらい、隙間なく“ぴたっ”とハードバリヤーのようにして閉ざした。

 いや、その前に誰かが遊技場に来た際の、不意に開けられぬための保険と、台の一応の使用料としてお金を投入しておく。

「あ、あの、……さ、もしかして、ここ、で?」

「うんっ!!」

 ゲーム機には当然だが流行り廃りがあり、どんな名作でもいつか消えるものだが、これは最早定番というか設置は常識になっていた。

 鉄板のドル箱。

 とはいえプリクラは厳密にはゲーム機でないんだけど、そこそこの広さの遊技場なら日本全国ほとんど置いてある。

 田舎の遊技場だとフレームはさすがに型落ちだったりもするが、それでも“ワイワイ”な女の子グループから“イチャイチャ”の、

アホ丸出しなバカップルまで、ロングレンジなヒット・メガクラッシュなヒットで大人気だった。

 カラオケBOXもそうだが擬似プライベートな、密室性がきっといつの時代の若者にも、これだけウケている要因なのだろう。

 それは二人だけの独立次元泡。

 誰にも邪魔されることのない二人っきりのバブルボード。

 少なくとも若者を半分以上引退しかけている俺が、現在進行形で強烈に支持している理由はそれだった。

 アドレナリン。

 ドーパミン。

 エンドルフィン。

 揃い踏み。

 オールスターのドリームなフルキャスト。

 脳汁という脳汁が一致団結してここに大集合である。

 後楽園遊園地できみと握手っ!!

 言葉の意味はよくわからんが、とにかく凄い自信でここは押し切るしかない。

「洋子……」

「ま、まこ、と」

 ――もうホントにダメ。

 マジで早漏。

 身体はまだいいけどこのままじゃ心がイキそうになっていた。どんなハイリスクでも、洋子というハイリターンの前では関係ない。

 プリクラのBOXが脳裏に浮かび上がった瞬間、時と場所という常識の堤防が見るも無残に決壊していた。

 フリントロック同時全発火である。

 潮汐力ブースターに斥力場ターボを搭載していても、第二次思春期を自覚したオトコが放つ、愛欲の大爆発から逃れる術などない。

 そしてなにより逃れる気が、そもそもでちょこっとの欠片もありはしない。

「ここは、チョット、その、するの、ヤ、ヤバくないか、な?」

「……ここでできないと、俺もうヤバいみたいだ。洋子とほんの少しでも早く、ひとつになりたくてなりたくて――仕方がない」

 仕方がない。

 その炎に身を灼かれるのならそれは本望であるし、また混じりっ気なしのこれは島田誠の本気である。

 二段ベッドで弟が寝ているか寝ていないか定かでないPM11:00に、それでも自家発電の欲望に身を委ねる兄の心境だろうか?

 ……いや、なんか思いっきり違う気もするが、なんにせよ危険も常識もいまの俺には、ひどく等価で小さく無価値である。

 価値があるのは少女だけだった。

 それを言葉よりも何よりも、雄弁に語るように“ガチガチ”になった勃起は、浴衣の裾を内側から押し上げ想いの解放を訴えている。

「…………」

 熱っぽく瞳を潤ませた洋子の視線が力強い牡の股間の隆起と、薄く見るからに頼りないカーテンの間を思案するように交錯した。

 宙に浮いた足を迷いを表すみたいに、何度も何度も“ぷらんぷらん”させている。

 そして、

「はぁ……」

 少女はあくまでも『仕方がない』というように小さく、あくまでも『我侭をきいてあげる』というように首を振った。

 うむ。

 態度だけなら完全にお母さんモードである。

 だけど“ぴたり”と正面から据えられた視線は、どこまでも甘く“ぞくぞく”させる上目遣い。

 俺の所為だとでも言いたげに年に似合わぬ、けれど洋子には不思議にマッチする、憂いを帯びた悩ましげな吐息とダブルパンチ。

「……虎穴に入らないと、アンチを得ずっていうしね」

 洋子にしては何やらめずらしく、言い訳がましいことを言っている。

 館内は空調が利いているので決して暑くはないはずだが、子供と大人の境界線に存在する少女の肌は、主人の消極的な態度を裏切り、

俺と同じ期待と興奮を感じるだけでなく、またそれを悟られている羞恥を艶にして、色っぽく“ジットリ”と汗ばんでいた。

「ンふぁ」

 手折らないよう注意してしまうほど“ほっそり”とした首筋から、形よく浮き出ている鎖骨のラインに味を堪能しながら舌を這わす。

 汗というのは主に塩分で構成されているはずなのだが、少女のそれは微かな酸味はあるものの明らかに甘い。

 なぜだろう?

 と。

 もちろん脳がプロデュースする錯覚なのは承知していたが、それを『ヤラセだろ』と訳知り顔で論破するほど俺は無粋ではない。

 そして子供でもない。

 UFOやオバケといった類を科学的に信じているわけでなくとも、話のネタとしては楽しめるのが大人というものである。

 嘘かもしれない少女の甘さは、如何なる真実よりも俺を益々昂ぶらせていた。

「あ……ン……ふぁ……あッ……」

 柔らかいがまだまだで芯に硬さの感じられる、熟してはいない青い身体をソフトに撫で回しつつ、時折くすぐるように浴衣を脱がす。

 腋の下や脇腹に軽く触れられただけでも、小刻みに“ぶるぶる”と震えて歓喜のさざ波を伝えてきた。

 肢体をくねらせる。

 そうして我ながら妙に手際よく、嬉々としながら快調に剥いていくと、現れるのは洋子のメイン・カラーというかマスター・カラー。

 お気に入りらしい薄いブルーの下着。

 もっと正確に記するのなら、いつかも見たことがある白地に青のラインのストライプ。

 ワイヤーで支えるなんて涙ぐましい努力をしなくとも、魅力イッパイで“ふんわか”としている青いおっぱい。

 帯だけは腰でしっかり締められてはいるものの、両足は“きっちり”閉じられているものの、中途半端に肌蹴ている浴衣の隙間から、

どうやら上下がお揃いなのか、やはりブラジャーと同色の、ホワイト&ブルーのパンツが覗いている。

 旅先で朝起きると色っぽくなっている寝相の悪い人みたいに、秩序などでなく混沌にこそエロスは眠っているだと教えてくれていた。

 …………

 なんだそりゃ?

 と。

 そうやって心の片隅で自分に詮無いツッコミを入れつつも、もっと色っぽい洋子を拝むべくボケ抜きで手が動いていた。

 しかしまあ、幾度聴いてみてもなんでこう、

 カチッ。

 ブラジャーのホックを外す音というのは、こんなにまでオトコの鼓膜を震わすんだろう。

 ストラップを抜くときに“ふわっ”と香るシャンプーと、少女の体臭がブレンドされた甘酸っぱい匂いや、パンツを抜き取るときの、

操作台の上でさり気なく“もじもじ”としているお尻が、羞恥に炙られたみたいに“ひょいっ”と浮いて俺に協力するのが可愛い。

 堪らない。

 が。

「それは……ダメ……」

 思わずでプリクラのシャッターボタンを押しそうになったが、さすがにそこは洋子にブロックされてしまった。

 女の子というのは写真を撮ることにかけては、あんまり協力的ではない。

 ――いや、こういうシチュエーションでは当たり前だけど、やはり残念なものは残念で、あとでもう一回お願いしてみようかと思う。

 カノジョのエッチな写真を所持するというのは、オトコの夢のひとつなんだけど、女の子に理解してもらうのは非常に難しい。

 もしかして恥ずかしいというのが動かぬ証拠というか、形として残ってしまうというのがやっぱりイヤなのかなぁ?

 う~~ん。

 それがイイのに。

 二十四時間三百六十五日カノジョのエッチな姿を眺められるのは、絶対無敵でオトコにとって明日への完璧な活力になるはずだった。

 ちなみに昨今はネットなどへの流出がコワいので、管理は厳重に厳重を重ねるのが大前提である。

 あるがそれよりもさらに前に、

「ン……あ……クッ……」

 カノジョに気持ちよくなってもらうというのが、まずは一人のオトコとして、果たさなくてはならない真理であり全てだろう。

 写真撮影会の許可申請はとりあえず、そう、とりあえず、洋子がその気になるまで気長に次の機会を待つさ。

 なのでその気になってもらうよう、誠心誠意で頑張っちゃおうかな。

「……はぁ」

 吐息。

 肩を抱くことで深くなっている洋子の胸の谷間も、俺の決意の視線を浴びてなのか、大きく小さく誘うような振幅をくり返している。

 白い喉が“こくっ”と上下していた。

 気のせいじゃない。

 対水着を想定しての夏仕様なのか、普段よりキレイにカットされている股間のデルタ地帯も、何だか“ざわざわ”ざわついて見える。

「やっぱりどうしてもダメ? 俺、洋子の写真をいつも持ってたいなぁ」

「んッ!?」

 我ながら気持ちの悪い甘えたような声音で囁きつつ、脳までも蕩かすみたいに熱く息を吹き込んで耳たぶを噛んだ。

 瞼やうなじにも青い官能を奮い立たせるように、丹念にキスの雨を降らせ舌や唇で貪る。

 誰が言ったかは覚えていないが、たしかに誰かがこんなことを言っていた。

 計算なしでも嘘を吐けるからこそ、オンナは素晴らしい。

 最初に聞いたときは意味がまったく持ってわからなかったが、徐々に経験を積むことで『なるほど。これがそうか』とわかってくる。

「ダメ、……だってば」

 恒例のイヤよイヤよも好きのうち。

 様式美とでもいうのか、守るポーズだけはしっかり取っていた手を、さして力も入れずに解除すると柔らかいものを曝した。

 血の色に“うっすら”染まり興奮の度合いを表すように、痛々しいほど屹立し硬くしこり立っている可憐な乳首。

 心なしかまだ固い芯を残している青いふくらみも、全体に前へ競り出したみたいに、俺を煽るためなのか“ふっくら”してきている。

 そしてどうやらこれが、俗にいうフェロモンというものらしい。

 洋子の肌から発せられている“ふわっ”とした匂いも、若干ではなく明らかなほど激しく強くなっている気がした。

 その瑞々しさはまるで新鮮な果実のようである。

 品質を誇示するみたいにして“ふるふる”と、産地直送お買い上げを期待して小刻みに震えていた。

 召し上がれ。

 こうやっておっぱいの声が聴こえるようになってしまった俺は、きっと客観的にはヤバい人間なんだろうが主観的には大満足だった。

 ……それでは。

 遠慮なくいただきます。

 かぷっ。

 顎が外れそうになるほど無闇やたらに大口を“あ~~ん”と開けると、涎が一杯の口内粘膜で“ぴんぴん”に勃起した乳首を包んだ。

「あンッ!?」

 予測はしていても対処のできない生あたたかさに、エキゾチックに美しい碧の瞳を大きく見開く少女。

 思考するよりも速く咄嗟の反射行動として洋子がしたことは、歓迎するようにして不埒なオトコの頭を掻き抱くことだった。

 うん。

 無論ではあるがこんな反応されたら、素直過ぎるくらいメチャメチャに嬉しい。

「は……あ……ふ……んンッ………、あッ……ン……ああ……んくッ」

 ならばとその気持ちに応えるように俺は、硬度をますます増してくる小生意気な突起を、いまにもにやけそうになる唇で吸い立てる。

 舌先でくすぐると髪の毛を“くしゃくしゃ”にしながら、洋子は半裸の肢体を初々しくも淫らにくねらせていた。

 友だちに貰ったパピコを“チュウチュウ”するみたいにしつつ、小さな円を描いてみたりだとか、ときにはグミを弄ぶかのように、

軽く歯を立て“こりこり”と甘噛みしたりしてみる。

「ひィッ!?」

 オトコを決して飽きさせない程良い弾力と、洋子の“ぞくぞく”が歯茎の神経から、俺の全身へと伝わってくるかのようで堪らない。

 ……もう完全に官能知覚過敏だ。

 今にも血が出そう。

 だが歯槽膿漏になっても虫歯になっても総入れ歯になっても、この美味な甘さを口にするのをやめる気はまるでまったくない。

 愛でる。

 苛める。

 蕩ける。

 対極にあるだろう相容れないはずの感情が、一つの強い意志になってなって俺を衝き動かす。

 牡の使命感に目覚めたのかもしんない。

 ほったらかしになっていた反対の乳首も同じようにして、舐めしゃぶり歯を立て乳暈全体を頬張るように豪快に欲望のまま吸引した。

「ひぁッ!!」

 鋭さと切なさが“ドロドロ”に混在した痛みは熱となって、口を離したときには赤くなるくらい洋子の身を灼いている。

 たっぷりの唾液で“ぬらぬら”濡れ光っていた。

 それは何だか愛でられ苛められた乳首が泣いているかのようで、心に呵責を感じなくはなかったが断然嗜虐の想いの方が勝っている。

 うむ。

 島田誠(27)という個体の満場一致で、その意見には異議申し立てはない。

 さらに血液の収束率を高めていた勃起も、出番を催促するように反り返りながら、パンツに前触れの雫を沁み込ませて賛同していた。

 良々。

 どうやら欲望という民主的でありながら非民主的な、膨張を続ける一党独裁政権は安泰みたいだった。

 するとこれにも島田誠(27)という個体を構成している各部署に、在れば粛清の対象になるだろう反対意見などどこにも在るまい。

 言葉の意味は――、以下略。

 ナニはともあれとにかく羞恥と快楽で“トロ~~ン”としている、洋子の手を腰の両サイドに置くと俺は次の行動に移る。

 やや屈むと膝の裏に手を入れてチョットだけ持ち上げた。

 意図を察したのか少女は上気している顔で、身体を反らして重心を後ろ方向にシフトしていく。

 操作台に足の裏が乗ったときには、洋子はM字開脚の格好を取らされていた。

「…………」

「…………」

 こんなわかり切っていることを、いまさら言うことでもなかったが、わかり切っていようがいまさらだろうがそれでも言いたい。

 洋子。

 洋子。

 洋子。

 安心があるからこそ生まれる不安を湛えて、少女の碧の瞳は“うるうる”潤んでいたが、その奥に潜むものは紛れもなく期待だった。

 だいじょうぶ。

 予想を裏切ることはあっても期待は裏切らない。

 少女と見つめ合いリズムを計るみたいに、速く荒い呼吸をデュオしつつ、俺は膝立ちになって顔の高さを調節する。

 ――美しくしい花があった。

 うん。

 大仰な表現をしている自覚はあったものの、それを改めようとは思わないし思わせない、なんとも美しく可憐な花だった。

 足の付け根の筋肉を微笑ましく“ぴーーん”と緊張させながらも、オトコを誘う妖しい匂いを“むんむん”させ菱形に綻ばせている。

 視線を浴びたからなのかどうなのか、乙女の小さな秘孔が“ひくり”と微かにではあるが蠢いた。

 夏場のイヌのように“ハッハッ……”と無様な息遣いで、そして節操なく舌を“だら~~”と伸ばし血走った目で顔を近づける。

 この旅行のために丁寧に切り揃えただろう恥毛がそよいでいた。

 むしゃぶりつく。

「はひッ!?」

 聴く者にいやらしさしか感じさせない“ヌチュッ”という粘っこい音。

 初々しい薄い裂け目が横に大きく拡げられて、淡いピンク色の濡れそぼった花芯を露わにされていく。

 太腿の柔らかな肉が“ぷるぷる”と震えて、押しつけられた舌との隙間を一滴、二滴と熱い雫になって流れ堕ちていった。

「あ……ああ……あ……ふぁ……」

 幾筋もの汗の玉を浮かせているオナカが膨らんではヘコみ、また膨らんではヘコむを扇情的にくり返している。

 ぬめった花びらの一枚一枚を丁寧に口唇で啄ばむと、洋子は踊るような腹部の収縮に合わせて、熱い飛沫を俺の顔中に撒き散らせた。

 その勢いに負けじと俺は襞を掻き分けて、尖らせた舌の先を源泉へと目掛け突き挿す。

「――ッ!?」

 侵入者に内部で快楽のパルスを生み出されたことによって、少女の肢体は踵を“くんっ”と持ち上げ爪先立ちになってわなないた。

 が。

 粘膜に迎え入れた経験がないわけではなかったが、小指でさえも未だにキツそうなホールの抵抗は強い。

 この期に及んでも頑なに舌を拒んでいる。

 しかし俺は知っていた。

 この青い肢体のリアクションこそが、洋子のツンデレだということを心得ていた。

「はぁ……ン……あッ……、んンッ……あッ……ひぁッ!!」

 それがわかっていなかったなら、きっと俺は戸惑っていたろう。

 ドラマ。

 アニメ。

 マンガ。

 媒体は何であっても構わないが、ストーリーを一周見逃しちゃった人のように、反応が“ガラリ”変わったヒロインに戸惑ったろう。

 もっともっと深く少女の体奥に突き挿すために、ハチミツ塗れになってるみたいな舌を俺はやや後退させた。

 するとそれを恐れるように一転して、ゼリーのような触感の媚肉が舌に纏わりついてくる。

 嗚呼可愛い。

 しかし満たしても満たしても底なしで涌いてくる感情に、おっさんの心は溺れそうになっていたがここは鬼になった。

 そんなつもりはなかったけどイジワルしたくなる。

 追いすがるのを振り払うようにして、無情にも容赦なく舌を引き抜いた。

「……あッ!?」

 チュポンッ!!

 物悲しく未練がましい声に間髪入れずに続く、物欲しそうで未練がましい卑猥で淫らな粘着音。

 舌との間に繋がっている銀の糸の“キラキラ”したきらめきが、輪を掛けて未練がましさといじらしさの印象を強いものにさせる。

 洋子のソコは“たっぷり”で執拗な愛撫を受けたことにより、一層妖しくキケンな開花の度合いを過激に増していた。

 朝露に濡れた花の美しさはどこか儚い。

 包皮の下から半分だけ本体を覗かせている好奇心旺盛で、それでいながら恥ずかしがり屋の女の子の真珠。

 すぐに“ぺろり”と剥いてやりたいところだがここは我慢だ。

「…………」

「…………」

 負けん気の強い意地っ張りな娘というのはどこにでもいたりする。

 そういう娘は涙を人には、親しい友人だけでなく、親兄弟にさえ滅多に見せたりしない。

 ――だけどそういう娘ほど、たとえ涙は流さなくとも、得てして抱きしめたくなるほどの泣き虫だったりするものだ。

 下唇を“ぐっ”と噛む。

 隠せてはいないのだが瞳の奥に涙を隠して“うるうる”と、油断してしまえば一気に“くちゃくちゃ”になってしまう表情を堪える。

 思い出したように鼻息だけが“スンッスンッ”と身体ではなく、隠れた心の動悸の速さを表して自分を訴えたりするのだった。

 うん。

 雨の中に『拾ってください』と書かれたダンボールで捨てられ“にゃ~~にゃ~~”鳴いている仔猫。

 見ているこちらの気持ちとしては、まあ、そんなところになるのだろうか。

 濡れるのも構わず服の中に入れて温めてやりたい。

 ミルクをあげたい。

 名前を付けたら一緒の布団で寝て“ぬくぬく”とかしてみたい。

 そういう保護欲というのか男なんだけど母性愛というのか、とにかくそういった感情を激しく“ぐらんぐらん”揺さぶられたりする。

 いま、

「…………」

「…………」

 位置的には見下ろしているポジションなのだが、俺の気分的には見上げるような、上目遣いになっている洋子がまさにソレだ。

 ホントはこれでもかこれでもかというくらい、仔猫が『もういい……』と言うほどメチャメチャ甘やかしてやりたい。

 しかし、

「…………」

「…………」

 ここはくどいようだが“ぐっ”と我慢の消耗戦である。

 とはいえナニもしないなんてことは、パンツという窮屈な檻に押し込められている、反省の色はナシな少女の敵が許しそうにもない。

 我慢のできない奴である。

 もうナニかして間を繋いでいないと脱獄でもしそうなテンションだった。

 と。

 そういうわけで色々とナニかしちゃうわけである。色々と可愛さ余ってイジワルしちゃうわけである。

 ふぅーーッ。

「あンッ!?」

 身体を“ぴくん”と震わせるのと同時に発せられた、やや舌足らずで甘えるような、甲高いのに決して耳障りではない心地の良い声。

 風邪を引いているとき風呂に入っちゃいけないと云われるのは、どうやら科学的には身体が湯冷めするからという理由らしい。

 要するに人間の身体というのは、濡れていると外気の変化にとても弱かったりするわけだ。

 軽く息を吹きかけられただけなのに、過剰なまでの反応を示す洋子の秘唇が、好い例なのかどうかはともかくわかり易い例ではある。

 優しくしなくてはいけない。

 女の子は特に。

 濡れている女の子ならもうスペシャルなコースで優しくしなくてはっ!!

「あッ……あッ……ン……んあッ……」

 俺の一挙手一投足をつぶさに観察していた洋子だが、それなのにかそれだからこそなのか、優しく優しく撫でても身体を跳ねさせる。

 羽毛よりもフェザーなタッチだったのに、可憐なのに淫らな裂け目を撫でられて、少女は色っぽく弓なりに背を反らしていた。

 ……まったくもう。

 オトコとして冥利に尽きる嬉しいアクションをしてくれたけど、そんなんじゃもっと優しくイジワルしたくなってしまうじゃないか。

 プリクラの天井を向いた洋子の視線が戻ってくるのを待って、半分フードを被っている快楽中枢に俺は“そっ”と触れる。

「ああッ!!」

 透けるように白い喉が、さほどの間を置かずに再び晒された。

 血液が集中していることで、腫れ上がったみたいになっている欲望の核を、人指し指の先で“ぷにゅぷにゅ”と弄び転がしてみせる。

 自分の溢れさせた甘い蜜を塗りたくられ、女の子の真珠は淫らな輝きを増していた。

 ええ。

 牡生命体としてこの世に存在を許されているだけあって、そのぬめりと艶にはわたしもひどくそそられたりします。

 伏せている長い睫毛を痙攣させ“じっ”と覗き込んでいる洋子の視線も、もちろん一助だったり二助だったりしてもう堪らなかった。

 それは無言でありながら何よりも雄弁に『もっともっと……もっとして……』と熱く急かしてくる。

 絶対に独りよがりな幻聴ではない。

「あぁンッ」

 洋子の小さな身体の全部が転がされる女の子の真珠を中心にして、俺の指先をタクトに見立てたかのように“もじもじ”揺れていた。

 いつしか過敏な本体を守るはずのフードは押し上げられて、早摘みの色をしている半熟で鮮やかな赤い実を覗かせている。

 その果実はチョット齧っただけでも、甘味が口一杯に拡がりそうだった。

 だが我慢である。

 イチゴを食す際には練乳が欠かせないように、この果実をより美味しくするワンポイントを俺は用意していた。

「洋子……」

 リズムをゆっくり目にトーンを勤めて落としていないと、声が抑えられない“ウキウキ”と先走る愉悦で震えそうになってしまう。

 口にしても『まあ平気だろう』という安心もどこかにあれば、口にしたら『やっぱ怒るかな?』という不安も同時にあった。

 少女はこの愛玩動物を飼っておるほど大好きなのだが、この愛玩動物扱いされるのは病的なほど大嫌い。

 では果たして一体どちらの病気に軍配が上がるか、

「にゃ~~、って鳴いてみて」

 勝負だ。

 誰にケンカを売られたわけではないが負けて堪るかっ!!

 負けられない戦いがそこにはある。

 何もこのシンプルだがキャッチーなフレーズは、某局がスポーツ中継のたびに流すからって、別段専売特許というわけではない。

 ちなみにその上のは誰かさんの専売特許なフレーズを、勝手に改悪借用しているわけだが良しとしておこう。

 嬉しいことに可愛いことに、文句をつけている余裕はなさそうだ。

 現在のところその専売特許な誰かさんは、ケンカよりも恐ろしいものを身体に教えられてて、とてもじゃないがそれどころではない。

 で。

「ひぁッ」

 只今赤ちゃんのほっぺを触るよりも繊細なタッチ。

 乳首の柔らかさや硬さとは微妙に異なるが、指先から伝わってくる感触はやはり“くにゅくにゅ”してて不思議に胸躍らせる。

 うちの会社は年に一回の健康診断を社員に義務付けているが、年に一回こっきりで本当に大丈夫なんだろうか?

 ドッドッドッドッドッ――――。

 心臓がバカな大学の新入生コンパやフルマラソンでもした直後みたいに、ヤバいくらいのアップテンポで激しいビートを刻んでいる。

 指だけ動かして“にやにや”しているだけなのに、運動量とカロリー消費がもう半端じゃない。

 かなりクル。

 何度ダイエットしてみても、その都度律儀にリバウンドしている人には、試せるもんならば是非とも試してもらいたかった。

「ハッ……あ……くっ……」

 ノーマルというのかスタンダードな趣味のオトコなら確実に病みつきになる。

 指の先で優しく優しく“くりくり”と転がすだけのことが、こんなにもハードでこんなにも愉しいのだとびっくりすること請け合い。

 破裂しそうな肉の芽の限界“ギリギリ””を見極め、生かさず殺さずで嬲り続けるこのスリリングさ……。

「はあぁンッ!?」

 イキそうなのにイケない快楽の無間地獄。

 いや、まあ、実際は有限なんだが、そういうツッコミは野暮というか無粋というか、この際それはどうでもいいだろう。

 なんにしても、だ。

 少女への愛情は素粒子レベルすらも失ったわけではなかったが、俺のマインドが嗜虐と笑顔で肩を組んでやがるのだけは間違いない。

 プリクラのフレームを“キャッキャッウフフ”で仲良く選んでいる。

 どうやら洋子は気づいてないがすでにその背後のフレームは、とってもプリティな『ネコさんだらけ』フレームになっていた。

「……ふ……うッ……ンン……あッ……ううッ」

 そのネコの一個師団をバックにした洋子は快楽と信条が、重力アンカーで格闘でもしているのか、物凄い目で俺のことを睨んでいる。

 でも果たして洋子の胸のうちで鬩ぎ合う二つの心のどちらが、パワーホイールズの餌食になるかはすでにわかり切っていた。

 俺だって日は浅いが伊達に白鳳院流の門下生ではない。

 もちろんで関係ないけど。

 ごめんよ……、綾乃、いえ、お師匠様。感心するほど上手くもなく、爆笑するほど面白くもない比喩表現で。

 まあ、しかし、それはともかくとしてだ。

 人差し指と親指で挟んで女の子の真珠の鞘を剥いたり戻したり、シンクロするみたいにして足の指が“キュッキュッ”となっている。

 洋子が可愛く鳴いてくれるのは、

「……にゃ~~」

 近似値が三十世紀ではないが、情報エクセルギーの豊富な少女には時間の問題だった。

 イヌならこの程度芸と呼ぶのも躊躇われるが、ネコなら隠しておくのが勿体無い、けど俺だけに見せてほしい立派な芸である。

 うん。

 そしてちゃんとできたご褒美をあげるのに、躾のできてるネコを褒めるのに、ほんのこれっぽっちだって時間を掛けるつもりはない。

 何度剥きあげてもいつの間にか過保護にカバーに包まれている真珠、ウブな快楽器官を“つるり”と剥きあげる。

「ひゃッ!?」

 口唇の粘膜に充血した肉の芽が揉みこまれるたびに、洋子の身体に官能のパルスが走って、初々しくもいやらしく痙攣させていた。

 真空になるくらいキツく吸い付くと、もっとも敏感な部分を嬲られて、打ち揚げられた白魚みたいにお尻がくねっている。

 島田誠(27)。

 そろそろ肉系だけでなく魚系も、少しずつだが好きになってくる年頃だった。

 また妊娠したわけでもないし、また妊娠はできないのだが、果物のただ甘いだけではない、真実の美味しさに気づくお年頃でもある。

 唐揚げに頼んでもいないのにレモンをかける奴みたいに、なぜだか説明はできないがアクセントである酸味の重要性に気づくのだ。

「ンッ……あ……あぁン……はぅ!?」

 甘いけど後味スッキリ。

 これならいくらでも思う存分呑めるというものだ。

 舌をバイブレーターも真っ青びっくりな、攣っても仕方がないくらい激しく振動させて、女の子の真珠を一秒間に十六回以上で撃つ。

 無論ではあるが、そうするのに愛はあっても、過剰なほど病的であっても、タネも仕掛けもバネもない。

 乙女の身体にとってこれ以上はないという、まさにウィークポイントを口撃された洋子は、開花してさえ蕾の青さを残す秘裂から、

溢れるシロップでくっついている俺の顎を濡らし、会陰部を伝って浴衣に滴り恥ずかしい染みをつくっていた。

 どころか通気性と単価を重視している、薄い生地だけでは吸収し切れず、操作盤にもしっかりエロ可愛いお漏らし痕をこさえている。

 いかんなぁ……。

 子供にせよ動物にせよ何にせよ、叱り躾けるのなら、後で落ち着いてよりも、勢いと印象の強いその場でがイイらしい。

 教育学的にはどうなのかしらんが、その場にではなくむしろ、この場に都合が良過ぎるが、頷けないこともないこともない話だった。

 内側から欲望のままに“ぐいっ”と押し開く。

 隙さえあれば官能だけではなく、羞恥でも閉じようとしている洋子の太腿。

 嗚呼もうホント可愛いなぁ。

 少女という生き物はどんなにエロに侵されていても、アイディンティでありバクボーンである恥じらいを忘れない。

 それはこの生意気で可憐な生き物の矜持であり嗜みである。

 オトコの我侭さを象徴しているのかもしれないが、堅いだけでは興醒めで柔らか過ぎては物足りない。

 俺なら脱臼しちゃう股関節の可動域“ぎりぎり”まで酷使させ、車に轢かれてるカエルみたいなポーズをさせると口唇を密着させた。

 あ~~ん。

「はひッ!!」

 二人の距離を隙間なく“ぴったり”でゼロにすると、俺の粘膜で洋子の大切にしているものを、余すところなく全部包み込む。

 単品であっても美味しいものは美味しいが、コラボレーションの美味しさというのはまた格別だ。

 口の中で“くちゃくちゃ”してから召し上がると美味さは当社比で三倍。

 合わせ技の妙である。

 人によって好みはあるだろうが、まあ、酢豚のパイナップルや世紀の発明イチゴ大福、そして生ハムメロンみたいなもんだ。

 好きなものを好きなだけまとめて口に放り込む快感は、お母さんにいっくら怒られてもやめられないし堪らない。

 お育ちの悪さが窺えてしまう下品な音をさせて真珠から尿道から、卑猥に息づいている小さな孔まで“じゅるり”一気に舐め上げる。

「んッ……ふぁ……あ……くぅん……うぁああッ!!」

 焦らされ疼いていた淡い花を丸ごと“パクリッ”とイカれて、甘い悲鳴とともに感電したみたいに震える少女のヒップ。

 自分では制御のできない力が“ガクガク”と、洋子の青い身体を激しく荒々しく揺さぶっていた。

「やはぁッ!?」

 官能という引力に導かれるままに、エクスタシーの波が寄せては返すを次々と起こし、少女の迸らせる絶頂の証が至近で俺を濡らす。

 それはまるでいままで溜め込まれていたものが爆発したようだった。

 あられもなくあどけなく、

「ひッ……あッ……ふぁッ……、ああッ……やッ……んふぅ……、あッ……あーーッ……!!」

 だらしなく涎を垂らしている口唇からは、ピンク色の舌が“チロチロ”と可愛く覗いて、尾を引く牝の絶叫をプリクラに響かせてる。

 しつこくエロく“ぴゅっぴゅっ”とオトコの射精みたいにして、俺に熱い飛沫を浴びせながら腰を“カクカク”させていた。

 顔を離し口唇にくっついている粘っこい液体を、舌で“ぺロリ”と魅せつけるように味わってから断ち切る。

 美味。

「……んッ……ン……んふッ……はぁ……」

 その様子を網膜に灼きつけた洋子は満足したように、歓喜の涙を湛えている瞳をゆっくりと閉じて、眠るように身体から力を抜いた。

 待ち焦がれた甘い余韻を愉しむようにして、プリクラのモニターに“だら~~ん”としどけなく寄りかかっている。

 ……正直凄い。

 感動というものは残念ながら経験とともに薄れる。

 あらゆる事象が新鮮さというものを、心で感じ動かす起爆剤にしているからだ。

 なのにこれはなんだろう?

 布地を突き破りそうなほど膨らんでいた勃起を解放してやると、中性子星より圧縮された血潮の色も露わに凶悪な形状を曝していた。

 逞しさもさることながら雁首が鋭角に張り出しているところなど、子供にでも見せたら泣き出してしまいそうな形状である。

 馴染むことはあっても慣れることはない。

 俺が最近お気に入りで遣っているフレーズではあるが、きっとこれ以上にしっくり当て嵌まる言葉はないだろう。

 どんなドーピングにも優る反則的な少女の魅力は、回を重ねるごとにバージョンアップして勃起のレベルを金メダル級に高めていた。

 だって湯気立ってるもん。

「…………」

「…………」

 いつから瞼を持ち上げていたのか、いつしか勃起に釘付けになっていた洋子と、リハーサルでもしていたかのように目が合った。

 蹂躙されたばかりなのに少女の粘膜の裂け目からは、期待と興奮で新たにシロップを滲ませている。

 お尻の方にまでそれは垂れているが“トロ~~”としか、どうやってもSEのつけようがない可愛らしいエロさだった。

 洋子の腰を掴んで挿れ易い位置に引き寄せる。

 特に狙ったわけではなかったのだが、めでたく結合した暁には、どちらにとってもベストアングルになるだろう格好のポーズだった。

 ごっ、くり。

 いつの間にか“カラカラ”になっていた喉に苦労して生唾を落とし込む。

 研ぎ澄まされているのか錯覚か。

 それは定かではないが普段なら感じないことまで感じる。食道を通過し胃に到達するまでがひどく長い。

 世界に二人っきりの気分で“うるうる”見つめ合う、マヌケな二人の鼻息もやたらに“ふんふん”荒くなっていった。

 音はゲーム機から漏れてくるものだけが唯一の異常な静寂の中で、急角度でそそり立つ勃起を調節し淡い粘膜に先端をめり込ませる。

 少しでも余裕を取り戻すためのアイドリングを兼ねて、柔らかなホールの入り口をここでも意地悪く“にゅぐにゅぐ”してみた。

 と。

「……にゃ~~」

 切なさ募るおねだり。

 泣きそうな声での鳴き声にオトコ心が“ぐわしっ”と、もう吐血上等というか握り潰さんばかりで少女の魅力に鷲掴みにされていた。

 オールドタイマーだって振り向くハートブレイクなボイス。

 洋子に望まれるままに望むままに、自分が欲するままに欲するだけ。

「うわぁッ!?」

 猛り狂う勃起を一気に体奥へとねじ込んだ。

 待ち焦がれていた舌よりも太い侵入者に、少女は歓喜の悲鳴とともに勢いよく背を反らし、おっぱいを“ふるるん”と揺らしている。

 ふくらみの頂で硬くしこっている、ピンクの乳首の残像が美しい軌跡を描いていた。

 ピンクだらけ。

 まったく少女の身体というのは、あっちこっちがピンクで彩られているが、どれもこれも微妙に異なり絶妙に俺を愉しませてくれた。

 やはりピンクの唇と触れるか触れないかの“ぎりぎり”まで、上半身を前倒しにすると体重を掛けて腰を根元まで押し込む。

 懸念というか心配がなかったわけではない。

 それが受けた感覚の全てではなかったものの、洋子は初体験のとき痛みの方が圧倒的に勝っていた。

 だがたとえ一度だけとはいえ、経験があるのとないのとでは大違い。

 安心した。

「あッ、ンッ、んッ――ああッ!!」

 狭い“キツキツ”の聖域を満たし掻き乱される快感に、即座に膣の粘膜が反応して“キュッ”と勃起に甘えるように締めつけてくる。

 少女の媚肉は自分を初めて穢したオトコを覚えているのか、荒々しいピストンにも健気に従順に応えて淫らに纏わりついていた。

 これ以上はない極上のフィット感で、しっかり“ぐっぷり”勃起を咥え込んでいる。

 親にしがみつく幼子のようにして離さない。

 結合部の卑猥で凄惨な“まざまざ”魅せつけられているビジュアルも、青い身体で燃え上がっている炎を昂ぶらせているようだった。

 牡器官に絡みついている。

 ネコの舌みたいに“ざらざら”しているのが何だか、くすぐったくもあり愛おしくもあり気持ちい。

 だが、

「ン……う……んン、ふッ……あッ……ああ、んあッ……ぁああッ!!」

 粘膜がまるで『待ってっ!!』と叫ぶように吸いついてくるのを、引き剥がすみたいに腰を後退させ勃起を何度も恥丘に叩きつけた。

 規則正しいリズムで凶悪な牡の楔を打ち込みながらも、ときおり変化を加え少女に艶やかなスタッカートを刻ませていく。

 他人に聞かれるようなところでは鳴らせないが、もしかしたらこれは最強の着信音になれるかもしれない。

 着ボイスNO.1。

 鳴れば気づかないことも、無視することも絶対にないだろう。

 前屈みになった首に“しゅるり”と細い腕が廻り、俺だけに聞かせるようにして、途切れることなく悩ましい喘ぎ声を漏らしていた。

 もう脳が痺れそうになるくらいに激甘い。

 そしてそれに負けまいと結合部からは、セックスの濃い匂いが“ぐちゅぐちゅ”と泡立ち、ひっきりなしに淫音を立てている。

「ンッ……ふぅッ……、はぁ……んぁッ…… あッ、ンッ、んッンッ、――ああッ!!」

 丸い先端の肉の槍に体奥を抉られるたびに、もともとハスキーだった媚声をさらに掠れさせながら、色っぽく悶え髪を振り乱す洋子。

 鼻孔を“ひくひく”させるまでもなく、至近で感じている少女の汗が、牡を誘う芳香となって一層俺を昂ぶらせていた。

 見た目はプリティでミニマムだが、態度というか中身の方はすでに、エクセレントな兆しさえあるガール。

 現在も素晴らしいが、十年後も素敵な期待大である。

 そんな成長すればリスペクトしたくなるだろう、レディの素質を持つ少女を、手を取り足を取り腰を取り大人の階段を登らせる愉悦。

 リッチマン。

 これほどの贅沢を味わえるオトコが、この世界に果たして何人いるんだろうかと考えると、過去の自分の英断を褒め称えたくなった。

 高校卒業間際の十年前。

 御父上のコネで地元の農協に就職というお話もあったのだが、オラぁ東京さ行くだと憧れ全開で上京したのは間違いではない。

 田舎とはいえテレビもあれば無論ラジオもあったけれども、こんな飛びっきりのドリームはどこにもなかった。

「ひィッ!?」

 ホントにマジコレ夢じゃないよねぇ?

 次の瞬間布団の中で眼を覚ましましたなんてオチだったら、陽子崩壊どころか一天文単位をインフレーション沸騰させちゃうねっ!!

 あの手塚治虫先生がそれをたとえ許したとしても、この島田誠さんは全身全霊の渾身で絶対に許しません。

 胡蝶の夢というフレーズはビューティフルではあるが、小汚い蛾であってもリアルの方が愉しいだろうしおそらく尊い。

 っていうかこれがもしも夢だったら非常に哀しいし非情に虚しい。

 悪夢だ。

「ンぁッ………はぁ……んぁッ……、ひッ……あ……、んぁッ………ふぁッ……、ぅんぁッ……うぁあッ!!」

 眼下に映し出されている夢見たよりも夢のような光景に、事象の地平より明後日の方向に決意も新たにしつつ勃起を打ち込んでいく。

 グチュ・チュ・クチュ……。

 股間の激しい水音に合わせて擦れ合う二人の恥毛。

 ほんの少しの間さえも惜しいみたいに、サルだって呆れるほど途切れることがない。

 いくら師匠が良いとはいえ最近になって、チョット鍛え始めたばかりの、俄か門下生のどこにそんなスタミナが貯蔵されているのか?

 休みなく腰を振り続けられるのが、苦しくてもさらにテンポアップしているのが我ながら不思議である。

 否。

 自分で自分の意見を即座に覆してしまうが不思議でもなんでもない。惚れたオンナを抱くときはどんなもやしっ子だって永久機関だ。

 至言であり当然である。

 二人の身体で互いに生み出された快楽パルスが交流し増幅され、より大きな悦びの波を寄せては返すように創造していく。

 最初は小さなうねりでしかなかったものが、もういまや手のつけられない渦潮になっている。

 呑み込まれている勃起は脱出を試みるたびに、ぬめる水底に“じゅぷ・くちゅ”と咀嚼されるかのようにして引き戻されていた。

 さながら光りさえも逃げられない官能のブラックホール。

 そのシュバルツシルト半径は愛する二人がお互いを、どれだけ望み欲するかの想いの強さによってキマる。

 ……なんちゃって。

 と。

「はひッ!?」

 仰向けになっても型崩れの心配がない青く若いおっぱい、その先端で硬くしこっているものを擦りつけながら洋子の柳腰がくねった。

 どうやら残念なことに吸い込む重力の強さはともかくとしても、このエロ可愛いブラックホールには時間制限の概念がある。

 タイムリミットになると弛緩と緊張を、爆縮みたいに繰り返しホワイトホールに化けるのだ。

 そしてそのキーパーソンとなるのは――、貪るように呑み込み“ギュウギュウ”に咥え込んでいる牡のシンボル。

 うむ。

 ちなみにキーパーソンの方ももう限界だったり。

 少女の体奥を突き上げている勃起の脈動が、アンタッチャブルで切実なものになってきている。

「ぁッ……、ああッ!!」

 俺と蕩け合いひとつになっている洋子もそれを察知したのか、肉の槍をキツく“キュキュッ”と締めつける括約筋の力が強くなった。

 あどけなくもエロチックにぬめっている可憐な花は、ますます熱くなっている。

 シンクロした勃起も真っ赤に灼けた焼きごてのように熱い。

 子宮を目指しくり返されていたヒットアンドウェイの牡器官のアタックは、いよいよ最終局面クライマックスを迎えようとしていた。

「ん……ッ……あッ……ン……ふッ、……んン……あッ、あッ……ン……あ……あぁン…………」

 相譲らずデッドヒートを演じているネコ少女も、胸を突き出すようにしながら官能のゴールテープを切ろうとしている。

 勝負というのは勝たなければ意味がない。

 二位に価値はない。

 陰でどれだけ努力していようが、本番で汗水垂らして健闘しようが、観客に感動の涙を流させようが、価値があるのは一位だけ。

 二位もビリも等しく無価値。

 ――のかというとそれは、まあ、モノによるような気もするが、ここは女の子に一位を獲らせ花を持たせるのがオトコの見栄と義務。

 少女よりも先にイクわけには絶対にいかない。

「くっ!!」

 録音した自分の声を聞くと大概の人は不快感、まではいかなくとも好感は持てないものだ。

 コレはソレのたぶん輝かない、くすんだベスト・ワンである。

 奥歯を噛み肛門を締めつつラストスパート、情けない声を漏らしながらダメ押しの一突きをぶち込んだ。

「はひッ!?」

 あどけないあられない可愛い絶叫を上げながら、まるでよくしなるムチで打ち据えられたように、洋子の身体が快楽で大きく跳ねる。

 頭の中でショートしたみたいに“パチパチ”する官能のゴールテープを、半身だけだが先に切らせることに成功した。

 ビジュアルとしては、おっぱいの差で勝敗がキマっていると美しい。

 少女を一位にさせることができた達成感とともに、ターゲットを狙い定めると躊躇うことなくトリガーを引く。

 息も絶えだえだった媚肉に慈悲の一撃、トドメとなる白い弾丸が熱く炸裂した。

 が。

 一撃では終わらない。

「ンッ、ンッ、ンッ……、ぅああッ…………あ!? …………ああッ………ひぁッ!!」

 残酷に弄ぶように苛めるように嬲るように、二発、三発、四発、と容赦なく未熟な青い身体に、全弾撃ち尽くす覚悟で性を叩き込む。

 幼子みたいにして舌足らずな嬌声を上げる洋子。

 最奥を貫かれ媚肉を“びくんびくん”小刻みに震わせながら、救いでも求めるかのように必死で俺にしがみついてきた。

 うん。

 だけどレスキューは到底無理である。

 貪る快感があまりにも大きすぎて、情けないことに腰が“カクカク”するのが止まらない。

 牝の本能に命じられるまま、洋子の両脚がホールドしていたが、それでも壊れた玩具みたいにして狂ったかのように動いている。

 きっとオトコっていうものは、地球上でのバカな生き物代表選手だ。

 そして、

「……ンッ、ンッ……ふぅッ……、ハ……ああッ……くぅ……ッ……、んンッ……はぁ……んぁッ……」

 それに付き合うオンナも似たようなものだろう。

 身体は“だら~~ん”とだらしなくしどけなく脱力をしかけているのに、媚肉だけは“キュウキュウ”弛緩と緊張をくり返していた。

 それはあたかも牡の精という精を根こそぎ奪い取り、牝の子宮へと誘おうとでもするかのようである。

 ある意味ではこれも生命の神秘というのか、種の保存という観点からいけば、とてつもなく神聖な性の営みであり行為だ。

「……んぁッ」

 だが甘い。

 人間だって所詮は立派なアニマルではあるが、そんじょそこらのアニマルとは一線を画している部分がある。

 交尾でも種付けでも性交でも名称は何でもいいが、セックスを愉しみの為だけにするのは、人間だけがする愚かさであり特権だった。

 ……オーケー。

 洋子の可愛さとエロさのおかげで、俺の弾丸はクイックでリロードされている。

 同じように再起動しようとしている媚肉の、優しく“さわさわ……”と包み込むような蠢きによって、銃身は硬さを取り戻していた。

 言葉ではなく“チュッチュッ”と泣き顔にキスの雨を降らすことで、一卵性の快楽を味わった少女にサンキューの気持ちを示す。

 そして必要はないかもしれないがゴメンなさいも。

「あンッ!?」

 自分で発表するのも非常にアレではあるが、島田誠(27)のアレはそんなビッグではない。――がそれでも洋子には容量オーバー。

 なのにどうすればそれで受け入れられるのか、狭い入り口を通過する際に“ぴくんっ”と痙攣。

 淋しげな洋子の声に微かに胸は痛んだが、同時に“ドクンッ”とパンチでも打たれたみたいに高鳴る。

 背筋は“ぞくぞく”していた。

 腰をゆっくり後退させて完全に硬度を復活させた勃起を、瞬く間に空腹になりもう貪欲さを魅せている秘裂から引き抜く。

 心なしではなく明らかに、洋子の愛と交じり合って粘度が濃い。

 栓をしていた勃起が粘膜の裂け目から抜き取られると、注ぎ込まれたばかりの大量の精液が逆流し“ドロリ”少女の内腿を濡らした。

 激しさを物語るように“ぬるぬる”で“ベトベト”になって、卑猥さと逞しさを増した濡れ光っている牡器官。

 怒ったみたいに太い血管を浮かべて、我ながらグロテスクに“びくんびくん”している。

 錯覚なのかもしれないがどこか畏怖するような目で見つめる洋子が、これで終わりではないのだと“ホッ”と安心したのがわかった。

「んッ……」

 身体中が敏感になっているのか、くすぐったそうにするが構わず、腋の下に手を入れて洋子をパワフルに持ち上げる。

 洋子はそれこそネコのように軽いので、まあ、こんなときじゃなくともそれほど大したことじゃない。

 とはいえそこには、体重だけではなくて、信頼の重さがあったんだけど、さ。

 支えきれなきゃそれは、カレシでもなきゃオトコでもない。

 が。

 よろけそうになるのを抱き止めオデコに“チュッ”と、格好つけてソフトにキスはしてみたものの、たぶんその思惑は失敗している。

 確実にカッコよろしくない。

 身長は低くとも股下の高さは、俺よりもあるかもしれない洋子の、生理のときは鬱陶しくなるポイントに“ぴとっ”と接触。

 格好つけの通用しない熱さと恥ずかしさを、言葉よりもストレートに洋子に伝えていた。

 身体の向きを“くるん”と裏返し、前屈みの姿勢で操作盤に両手を付かせる。

 俺がナニをしようとしているのかは、オトコでもオンナでも誰であっても、バカでないのならばきっとわかるはずだ。

 カマトトぶった嘘つきでなければわかるっ!!

「……はぁ」

 うん。

 どうやらちゃんと洋子は、わかってくれているようだ。

 最早色っぽさを演出するためだけにあるみたいな、乱れ着崩れた浴衣のお尻を悩ましげに、桃色の吐息で“ゆらゆら”揺らしている。

 今後の我が身に降りかかるだろうお約束展開がわかっているからこそ、洋子のお尻は闇に浮かぶ妖しい炎のように揺れていた。

 観念。

 もしくは諦め。

 それこそ憂いのファーストモデルだ。

 両脚の間隔は羞恥に“ぷるぷる”と炙られながらも、俺が断れないお願いをする前に肩幅に開かれている。

 もちろんそうしてくれた方が色々し易いし、もちろんそうしてくれた方がエロエロもし易い。

 積極的に協力的だ。

 しかし目論見は見当外れ。

 アグレッシブに自分から動いた方が、少しでも恥ずかしくないと考えたんだろうが、恥ずかしいものは結局恥ずかしいし可愛い。

 っていうかむしろもうカウンター気味である。

「……はぁ」

 洋子は自分で自分に自分の攻撃力を倍返しされたようなものだった。

 やれやれ……、ホント可愛いなぁ。

 目を爛々と輝かせながらサイコロトークなお昼のご長寿番組みたいにして、わかってるのに『ナニがでるかな? ナニがでるかな?』

心の中で嬉々として唱えつつ、浴衣の裾をやたら丁寧に丁重にゆっくりと上げていく。

 足首まで滴りぬめっていたものの航跡をナビにして、ふくらはぎから膝の裏、膝の裏から内腿、内腿からお尻の谷間へ……。

 本来なら真っ白いはずの少女のヒップは、度重なるエロエロな責めに“ほんのり”紅くなっている。

 肌を鮮やかに染めているその熱源が、蕩ける甘い蜜を新たに“たっぷり”満たし、火照っている女の子の粘膜であるのは疑いない。

 しつこく居座り続けている牡の精と“ねっとり”ミックスされ、ぬかるみに無視することはできない淫靡な潤みを与えていた。

 ぬちゅり……。

 勃起の先端を宛がうとジェットコースターにでも乗るときみたいに、落下の衝撃に期待と不安を鬩ぎ合わせているかのような洋子と、

キレイに映り込んでいるフレーム越しに目線のピントが、予め決められていたかのように“ぴたり”と合う。

 まるっきりな暗黙の了解であり、タイミングはまったくのアイコンタクト。

 二人に言葉という便利だが、邪魔なツールは必要ではない。

「うぁッ!!」

 ネコの背がまたしても反り返る。

 カシャッ。

 自画自賛オーケーでまさにそこしかないベストなタイミングの、瞬間のメモリーを捉えているかけがいのない見事な一枚。

 デジタルにはないアナログの良さが、思う存分勘違いして発揮されている。

 一流のカメラマンがそうであるように、モデルさんの魅力と自然な動きに操られて、俺は腰のシャッターを意識もせずに切っていた。

 後背位のケダモノスタイル・キャット仕様で、洋子の青い身体の最も奥まで力強く一気に貫く。

 スタートからギアをトップに入れて、少女の粘膜を犯し穢し貪るため、欲望のままに全開でピストンを開始した。

 じゅちゅッ・じゅちゅッ・じゅむッ……。

 精魂込めて二人で調合した潤滑油のおかげで、強引というより乱暴な抽送だが、洋子に楽はあっても苦にはなってない。

 手加減の必要はなかった。

 なによりも手加減する余裕が俺のどこにもなかった。

 身体の方はともかく心にはない。

 ずっとない。

 ある日突然幼馴染が、女の子であることに気づいた中学生みたいに“ドキドキ”しっぱなし。

 ……嗚呼恥ずかしい。

 んだけどもちろん悪い気は全然してなかった。

 年齢も経験も歴史も身体的な老いさえも吹き飛ばして、自分が若いと証明してくれるのは“トキメキ”というやつである。

 いつも俺の心は落ち着きなく青く未熟で生意気な、可愛い少女たちに思春期みたいに“ドキドキ”していた。

「んふぁッ!?」

 牡の味を覚えて間もない初々しい粘膜を、濡れている靴下のような音をさせて掻き分け、膝が折れそうになるほどの快楽で突き挿す。

 はち切れそうな亀頭で最奥にある子宮口を抉るそのたびに、発情期をアピールしているネコちっくな甲高い声を響かせていた。

 恥ずかしさがどこかに消え去ってしまったわけではないのだろうが、

「んンッ…… ぁッ……、は……ああッ……あ……、ぅあッ……ふぅ……うぅ……あ、ひッ……ンぁッ……くぅん!?」

 少年のように引き締まっていながら、オンナの成熟を魅せはじめているヒップに、そそらずにはいられないえくぼを浮かべた洋子は、

勃起のより深い挿入を求めて腰が淫らにくねるのを、もう抑えることすらもできなくなっている。

 だがそれは俺も同じで、忙しない腰の動きを制御できない。

 馴染んでも慣れることのない気持ち良さ。

 くっそぅ。

 大人のオトコとしてここはテクニックでも披露しようかと思っていたのだが、童貞みたいに単調で稚拙な前後の運動に終始している。

 日本語の文法としておかしいのは重々わかっているが、初めっから二度目のラストスパートを駆けていた。

 ゴールするまで昂ぶりに任せる無計画な激走は止まりそうもない。

 止まる気がない。

「あッ、あッ、あ、ん、あんッ、あ……、あひィッ!?」

 まとわりついてくる媚肉の“ねっとり”した蠢きにパッシングされて、少女の秘裂を力強く貫く勃起の動きは速くなるばかりだった。

 操作盤に手をついている洋子の上体が激しく揺れ、それに合わせて若々しいバストが揺れている。

 こっちのみ~~ずもあ~~まいぞ~~。

 と。

 語りかけてくるというか誘ってくるおっぱいを、まさしくケダモノのように覆い被さって腋の下から鷲掴みにした。

 この淋しがりやさんめ。

 自分の願望と洋子のリクエストに応えて乱暴に揉みしだく。

「はひッ……ひッ……ンあぁッ……あッ、……はぁ……んぁッ……ひッ……あふぁッ!!」

 たしかに甘い。

 俺はいきなり進化でも遂げたみたいに、指先から濃いミルクの味を感じていた。

 うん。

 やっぱり人間の脳の変換能力って凄いね。

 前屈みになっているので一層ボリュームの増しているふくらみは、握り締めると指と指の間から淡い色に染まった肉がはみ出ている。

「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……」

 硬く尖りっぱなしの乳首を“くりくり”させると、入力された快感のコンボに洋子の息もさらに弾んだ。

 髪の匂いを“くんくん”しつつ、同じように弾んでいる息を俺は吹きかけ、複雑な構造の耳朶をしゃぶってから舌先を突き挿す。

 上も下もぬめるモノを挿し込まれた洋子は、

「……ダメ、あッ、……んンッ……ッ……ダメ、あンッ、ダメ、んッ、ダ、メ、なんだって……ぅああッ……、んぁッ……ひぁッ!!」

 と。

 欠片も思っていないくせに拒絶の言葉を撒き散らしながら、抵抗どころか率先して首や腰をくねらせ上も下も俺を歓迎してくれてた。

 そうやって少女と快楽を謳歌する器官をフル回転の総動員しつつ、バックからの強烈な突きで狭いホールを責め立て続ける。

 健気にもイチイチこちらの責めに応えてくれる洋子は、腰を“ぶるぶる”震わせ続けながら甘く喘ぎ泣いていた。

 悦びの音。

 結合部からの粘った音は大きくなっていくばかりである。

「ひッ、あッ、あああッ」

 日がな一日ひたすら“うとうと”していたネコが、起きて“のび~~っ”をするみたいに、歓喜の声で洋子が四肢を痙攣させていた。

 美味そうに勃起を呑み込んでいた粘膜が、断末魔のように小刻みな収縮をくり返して締めつける。

 どうやら終わりが近いようだった。

 ……お互いに。

 洋子は快楽の波にさらわれるのを恐れるみたいにして、濡れているプリクラの操作盤を爪で“カリカリ”引っ掻いている。

 無論そんなことが無駄なのもわかっていれば、エクスタシーの津波から逃れることを少女は望んでなどいない。

 快楽のスプラッシュウェイブ。羞恥の海を豪快にめくる大波の直撃志願者だった

 俺もミルキーなおっぱいに指先の痕がつきそうなくらい握り締めながら、二度目のラストスパートのラストの一撃を粘膜に叩き込む。

 洋子の肉体も最奥で二度目の熱い迸りを浴びながら達した。

「あひぃッ!?」

 悩ましくも艶やかな鋭い叫びを上げつつ、エキゾチックな容貌のネコ娘は肢体を仰け反らせる。

 女の子の粘膜が射精寸前の勃起を、気持ちいけど痛いくらいに締めつけた。――まあメチャクチャ嬉しい痛みだったけどさ。

 びゅッ・びゅぷッ・びゅッ!!

 猛然と吐き出された牡の欲望は相変わらずというのか毎度というのか、夥しい量で少女の聖域を犯てし瞬く間に自分色に穢していく。

 めくるめく快楽の渦に呑み込まれていく少女と、まるで心中でもするみたいにして俺も沈もうとしていた。

 洋子にならこのまま殺されてもいい。

 が。

 ふと閃くというのか、何の脈絡も前ふりもなしで俺はいきなり決意する。

 殺されてもいいと思っていたが全面撤回だった。

 洋子さえ望んでくれるのならば永遠であってもイキ、いや、……いや、というのも、いや、だが、とにかくいつまでも生きてみたい。

「誠……」

「うん?」

「写真」

「うん……」

「……撮っても――、あッ?」

 可愛い仕草とお許しの言葉に、結ばれたままの牡器官が硬さを取り戻し、また“むくむく”節操なしで大きくなっていく。

 抱え込むようにして支えている、洋子の小さな身体が温かい。

 カシャッ。

 プリクラの撮影ボタンをプッシュすると同時に、俺は三度目になるラストスパートを駆けていた。





[2293] 少女病 最終話
Name: 青色◆ec0575d6 ID:439b1cc8
Date: 2011/02/06 13:47



 左肩にこてんっと、なにかが乗った。

「…………」

 重さからいってそれは、人の頭だということはわかるし、ふわりと香るシャンプーの匂いで、相手が若いオンナだというのもわかる。

 誰だかわかってる。

 ところはがら空きの電車内。

 時間はUターンラッシュ前の午後三時半。

「…………」

 視線だけを動かす。

 どうもこれは寝てる――、ふりらしい。

 最近の女子高生は、学業に友情に恋愛に、それから他にも、おっさんとかの交遊とかで色々あって、かなりお疲れなんだろうね。

 そんなことを適当に考えた。

 俺はそのまま女子高生に、肩を貸した状態で、ゆっくりと、べつに眠くも、ないこともないが瞼を閉じる。

「…………」

 勿論悪い気はしない。

 その証拠に俺の口元の筋肉は、自然と笑みの形を作っていた。

 癒される。

 行きたくもない会社に行って、下げたくもない頭を下げたくもない奴に下げて、リストラに怯え、安い給料で扱き使われるそんな毎日。

 殺人許可証と拳銃。

 あったら撃ってやろうかって奴が、俺にはいくらでもいる。

 というのはもうすでに過去形の話だった。

 こんなラッキーが毎日のようにあるのなら、どんなに社会が不景気だろうとなんてことはない。

 まぁ、とは言っても、

「はぁ……」

 思わずため息。

 それはちょっとでも冷静になれば、三十歳目前のオトコの癒しとして、やっぱし、誤魔化しようがないくらい幸福なのも事実だ。

 ぎりぎり若者二十代。

 なのにこれは潤い過ぎてる。

 不満がない。

 思考が見事なほどバラ色に染まっている。――ホントにラッキー。きっと神様は初孫よりも俺を、超猫可愛がりで愛してると思う。

 いやいやモテるオトコは……、べつにツラくはない。

 これからも神様にはドンドン島田誠(27)をエコヒイキしてほしいね。

 どうぞよろしく。

「はぁ……」

 なんてな風にそれこそ、不釣合いなイケメンのスタンスで、ベクトルを確実に間違えたため息を吐くと肩が微かに揺れた。

 依然として瞼は閉じられたままだったが、明らかに起きており笑いを必死になって堪えている。

 しな垂れかかってる女子高生の身体の重みと、頬から首筋にかけてをくすぐる、甘くぞくぞくとさせる吐息。

 大変心地いい。

 こうして出逢えてからというもの俺は少女たち以上に、天井知らずの怖いもの知らずで、すべて突き抜けて調子に乗りまくってたね。

 サーフィングでも始めようかな。

 一生この四つのキュートなビックウェイブに乗りまくってやる。

 こんな感じで何だかくすぐったく将来設計を思案してたら、滑空でもしたみたいに最寄り駅にあっという間に着いてしまった。

 うぅ~~ん。

 楽しいことは過ぎるのが大概早いもんだけど、なんだか今日はぶっちぎりで早く感じちゃうねぇ。

 ロールスロイスばりに(当然乗ったことないよ)流れるようにしてスマートに、電車はホームに僅かの狂いもなくぴったり停車した。

 天才か? センス良し。

 あのときの彼だとしたら随分と立派に成長したもんだ。

 うらやましい。

 ――俺は彼のように成長できてるのかな? まあ、少女たちに見合うように、恥ずかしくないように精進するとしよう。

 しかし何にしても彼のレベルアップは、社会的にはアレだけど、ネットでは頼りになる引き篭りでニートな人みたいに凄まじかった。

 若々しくフレッシュで溌剌としていながらも、ベテランみたいに渋みを感じさせる最高の仕事をしている。

 降車も乗客を追い出すかのように慌てさせ急かすようなことはなく、ゆっくりと落ち着いた完璧な時間と空間を与えていた。

 もしトレイン・ミシュランでもあれば、これは文句なしの三ツ星である。

 でも……、それでも……、俺の心はこの少女たちと出逢ってから、ずっとドキドキのしっぱなしで、ゆらゆらの揺れっぱなしだった。

 毎日が『BYOS,BE』でなく『BYOS,C……』というのか、ラブコメの主人公にでもなったような気分だった。

 少年誌じゃ描写し切れないくらいの想いで恋してる。

 がっくんがっくんしている。

「カレー」

 唐突というくらいのタイミングで大好物の料理名を言いつつ、達人の運転してる電車から俺はホームにセミの声を聴きながら降りた。

 まだ暑い。

 まだ熱い。

 身体も心も燃えるように萌えて火照ったままだった。

 きっといつまでも冷めることはないだろう、この夢よりも夢のような現実から、永遠に覚めないことを切に願って言葉の後を続ける。

「いつかの御礼ってわけじゃないけど、今夜は俺がつくってみんなにご馳走するよ」

 寄り添うようにホームに降り立ったカノジョに、ちょっと自分に酔ってるマジ顔で親指をびっと立てた。

 何年ぶりになるだろう。

 まあ、何にしても、とにかくひさしぶり。

 意識してたわけじゃないけど俺は、どうやら尽くすことに喜びを覚えるタイプらしい。――もしくは褒められたいお調子者。

 カノジョができると『……美味しいっ!!』という言葉を、密かに露骨に期待してカレーなんぞを振舞ったりする。

 ホットドッグプレスか何かで読んだのだろうが、疑うことなく曇りなしで未だに信じていた。

 果たして誰が最初に言い出したことか知らないが、料理のできるオトコはとにかく問答無用でモテ、るまでいかなくともウケがいい。

 好きなオンナ。

 ヤバいくらい愛してる。

 このイカしている女の子たちには、できればではなく絶対に一生モテていたい。

 これも誰が言ったか恋は盲目とはよく言ったもんである。

 治すことなどどんな名医にもできなければ、治ることなど欠片すらも望まない欲しない素晴らしく素敵な病気だった。

 ステージ4の自覚はとうにあったものの、侵食はさらに奥深かったみたいで末期も末期、少女たち抜きではもう生きられそうもない。

 っていうかプラトニックもエロチックもひっくるめ、色んな意味でもう俺は一人ではイキたくない。

 俺は少女の手をきゅっと握る。

 ちっちゃい手。

 ほんのりと人肌に温かくて柔らかい。それだけでハニカミを表現するみたいに、絶妙な力の加減できゅっと握り返してくる。

「…………」

 またしても唐突に、前ふりもなくいきなり、思ったというか閃いた。

 みんなにお揃いの指輪を買ってあげたいなぁ。

 四つともなるとさすがに、そんなに高いものは無理だが、旅行の出費もあって苦しいが、それでも無理をしたくなる強い衝動だった。

 うん。

 もともとハーレムなんていう、バカげた無理をすでにしているのだし、少女たちに無茶をさせている身でもある。

 こんなときだけ訳知り顔で、セコく道理に従う必要もあるまい。

 俺が従うのは少女だけだ。

「…………」

 そこまで先のことを考えるのは妄想というもので、些か飛躍しすぎなのかもしれないが、この関係の未来が見えてないわけじゃない。

 俺たちはアニメやマンガとは違う。

 フィクションの世界の住人ではない以上、決して楽しいことばかりじゃないのはわかっていた。

 少女が結婚というものに究極の幸せを求めているのなら、夢見ているのならたぶん俺には叶えてやることはできないだろう。

 日本には重婚の制度が残念ながら存在しない。

 法律上は無理。

 ハーレムなんて関係を続けながら、俺を一生涯愛してくれるということは、書類に既婚者と記入することが一生涯ないということだ。

 何とも酷い話である。

 子供ができれば無論喜んで認知はするが、形式としてはシングルマザーにさせてしまうだろう。

 どのようにであれ少女たちの誰かだけを区別も差別もできない。

 愛人。

 もしも世間にこの関係を公表するのなら、それ以外の形はおそらく不可能である。

 ……だからだ。

 だから罪滅ぼしなんて恥知らずで、少女たちの選択を冒涜するようなことは言わないが、叶えてやれることは何でも叶えてやりたい。

 人には永遠にナイショのひみつの関係。

 少女たちがそれを納得してくれるのならプロポーズしよう。――俺と結婚してくださいと高らかに宣言しよう。

 せめて。

 心だけでも結びつこう。

 そうするにはやはり指輪がないとカッコがつかない。

 つけている場合でもなければ、まず資格がないのかもしれないが、女の子の前では一生カッコつけるのがオトコの矜持と義務である。

 悲しい見栄ともいうがオトコって、いつの時代でもそういうバカな生き物だ。

 その程度の見栄しか張れないのが情けなく、誇らしく胸を張れないのが堪らなく恥ずかしいけれど……。

 たとえ虚勢であっても、カノジョたちの前ではカッコよくありたい。

「顔が赤いけど病気ですか?」

「そうらしい」

 わざとだろうか?

 少女は俺の心を見透かしたようにして“にっこり”ではなく“にやり”と微笑んでいる。

 生意気なスマイルだった。

 嗚呼可愛い。

 カレーの材料と指輪のコストを計算しながら、俺はハッピーとラッキーを交互に踏みしめて改札を抜けた。




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