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[22793] 一発ネタ・漫画家ルーク 『完結』
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:31
 ルーク・フォン・ファブレの朝は早い。朝日が昇る前に起床する。
 その後は朝食を優雅にとり、庭師のベールが入れたハーブティーを飲み一服。その後は昼までは座学、軽い昼食をとり午後は剣術や武術の鍛錬に使われる。
 そして――日は沈み、夜。
 星が空を照らす中で、作業は開始される。
 小さな小部屋の中、ルークと五人ほどの使用人が存在する。
 ルークが机に着き、作業は開始された。木霊するのはペンが紙の上を走る音だけである。
 そして、ルークが一枚の紙を一人の使用人に渡しながら言った。

「ジェシカ、トーン入れといて」

 トーン。漫画を描く上で表現の幅を広げる必須アイテム。
 そう、キムラスカ・ランバルディア王国の貴族、ルーク・フォン・ファブレは漫画家であった。

  +

 キムラスカ・ランバルディア王国にはQ&S(クリムゾン&シュザンヌ)社と言う会社がある。五年前、華々しく登場した漫画の出版社だ。社長は公爵家のクリムゾン・ヘアツォーク・フォン・ファブレ。年間興行収入は小国の財政を賄えるほど。さらに言えば、国とのつながりも深い。まあ、政治と金と言うことだ。
 そんなQ&S社が売り出しているのが週刊誌“週刊キムラスカ”少年向けの雑誌である。いまや事業は拡大し、今や青年誌や少女向け雑誌まで発売している程だ。
 当然、最初は受け入れない人間もいたが、今ではすっかり軟化しなりを潜めている。
 週刊キムラスカで最も人気を博しているのがビショップ・ヴァレンタインと言う漫画家だ。そもそも、このヴァレンタインこそが漫画の第一人者なのである。
 現在、連載しているのは新作テイルズ・オブ・イノセンスだ。触れ込みは“想いをつなぐ物語”
 そんなヴァレンタイン先生の本名をルーク・フォン・ファブレと言う。
 ファブレと言えばキムラスカ・ランバルディア王国でも上位の家系だ。
 そもそも、漫画を売り出すために作られたコピー機もプリンターも全てがルークの考案したものなのだ。
 そして、ルークには一つの秘密がある。ルークにはもう一人の男性の記憶があるのである。その男の職業は“漫画家”だったのだ。その男が特に好んでプレイしていたのがテイルズ・オブシリーズであった。
 そして、自分の行いも。ぶっちゃけかなりへこんだ。いや、仕方ないじゃんあんな世間知らずな行動をした挙句世界滅ぼしかけちゃうとか。
 まあ、仲間からの仕打ちもひどい気がしたけど。
 故に、全てを知ったルークは行動した。
 まだ間に合う。何か出来る事はないか、と。
 そして、得た知識をフル活用したのが、現在売り出されているテイルズ・オブ・シリーズなのである。
「ふう」
 ルークはペンを置き一息ついた。
「じゃあ、ちょっと休憩しようか」
 その言葉と共に使用人達も背伸びなどをし、コリをほぐす。
「あ、ケインさ、ベールにハーブティー入れてもらって来てくんない?」
「あ、はいわかりました」
 黒髪をバックでまとめた好青年の若い使用人は言葉を聞くとすぐ様に飛び出していった。
「そろそろケインにも連載持たせて大丈夫かな?」
 呟く。
 キムラスカで漫画家になる方法は2つ存在する。週刊誌や月刊誌の新人賞に応募して当選するか有力な漫画家が見染めた人物が連載を持ち、漫画家を名乗る事が出来る。
 因みに、Q&S社での筆頭は当然のことながらルーク。“月刊華と乙女”で少女漫画を連載しているガイ。そしてほかにも五人ほど存在する。
「前に見せてもらったネームも悪くなかったし、そろそろ月間あたりでなら連載しても問題ないか」
 ふむ、と脳内でチェックしておく。
 それにしても、始めた当初はここまで受けるとは思っていなかったんだがなあ、と思う。
 今では従業員数も数百単位まで登り、一大産業として発達しているし、これにかこつけて学校まで増やすことが出来た。
 まあ、ダアト当たりからは未だに批判されるが、こんな万箱を手放すわけも無く発達し続けているのだ。
 そこに、
「お待たせいたしました。ルーク様。ベール様よりハーブティーをいただいてまいりました」
「ありがとう、ケイン」
 一口含み、
 ――うん、美味いな。
 心のあったまる味とでも言うのだろう。良いものだ。
 ルークはカップを置き、
「あ、ケインさ、今度編集長(執事)に連載の許可出しておくから、明日からはここに来ないで自分の連載の準備しておいてくれよ」
 言うと、
「ま、真でございますか!?」
 歓喜の笑みと、驚愕と、嘘ではないのかと言う疑心が複雑にまじりあった声が出される。
「うん、真」
 二度目の言葉でようやくケインはルークの言葉が嘘ではない事を確認した。
「あ、ありがとうございます!! これからも、誠心誠意頑張らせていただきます!!」
「おう、頑張ってくれよ」
 こうして、キムラスカにまた一人の漫画家が生まれたのだった。

  ※

 クリムゾン・ヘアツォーク・フォン・ファブレは小説家だ。
 それも、結構な売れっ子である。
 今日も机に向いながらファンレターとカミソリレターとにらめっこしていた。
 そして、顔をにやけさせながら手紙を見るのである。
 クリムゾンのもっぱらのメインタイトルと言えば冒険小説だ。
 自身の過去を少し誇張して書いたヴァーミリオン戦記はQ&S社のメインタイトルの一つでもある。
 当然、自分とシュザンヌの出会いもものすごくロマンチックに描かれている。
 ……自身とシュザンヌの濡れ場を書いたイチハチ禁も書いてはいるが、それは当然机の中にお蔵入りされていた。
 さて、と、息をつき今日も息子が開発させた“ワープロ”を使い小説を書くのだった。

  ※

 キムラスカで最近起きた祭日に“コミケ”と言う祭日がある。
 これは、もはやキムラスカの一大イベントと言ってもよい。
 他の都市、街、噂では帝国からも参加者が居ると言われるくらいの巨大な祭典だ。始まりは三年前からである。
 これのおかげで、貴族と庶民のつながりが深くなったと言われ、それなりに好評な祭典だ。
 が、
「何で、何でこんな日にヴァン師匠来るんだろう」
 呻く。
 ヴァン師匠、ぶっちゃけ本名は忘れたが今日やってくるのだ。
 ぶっちゃけヴァンの存在は原作程ルークに影響を与えていない。むしろ、ラスボスだったヴァンにどのような対策をとればいいか頭を悩ませるばかりである。
 使用人からも評判は悪い。素行なんかは悪くないのだが、彼が来るとルークが漫画を描けないからだ。使用人にとってルークの描く漫画はかなりの娯楽なのである。
 そして、
「行くぞ、ルーク」
「ハイ、ヴァン師匠!」
 庭の中央にて鍛錬が開始される。
 原作ほどヴァンにくくらずに、普通の兵士や騎士からも多くを学んでいるので、現時点では原作より筋力体力実力技術のどれもが上だ。
 まあ、ヴァンよりは下だが。
 と、ルークの頭に何かが引っ掛かった。
 あれ、と。
「よし、これにて鍛錬終わり!!」
 その声がかかり、鍛錬は終了。
 だが、
 ようやくルークは思いだした。
 あ、と、
 だが、もう遅い。
「裏切り者、ヴァンデルスカ、覚悟!!」
 そう、今日がティアの襲撃日だったのだ。
 ヤバ、と思いつつヴァンの目の前に立ちふさがり防御する。
 ヴァンを守るつもりは毛頭ない。
 だが、ここでヴァンを殺させればティアが死刑になるのは必至。自分の言葉など聞き入れられないだろう。ただでさえ貴族の屋敷に侵入しているのに。
 一応ゲームじゃこっぴどい言葉を掛けられはしたが、それでも一応仲間だった存在である。
「な!?」
 襲撃者(ティアでいいはず)は明らかに狼狽し、
 そして、周囲が揺れ始める。
 あー、もう、こうなっちまったかー、とルークは思う。
 すでに視界が薄れ始めたから対処は遅かったけど。
 ――まあ、
 何とか交渉して屋敷の外には出れるが、未だに外には出れないのだ。これにかこつけて少し外の世界を見るのもよかろう。
 行って来ます、と小さくこころのなかで呟き、そして、飛んだ。
 こうして、ルークの冒険は始るのだった。

  ※

「えっと、はじめまして」
「え?」
 そして、史実とは違う伝説が紡がれる。

 おまけ

 因みに、ルークが漫画を描いた影響。
 ・ガイ先生は少女漫画家。
 ・ナタリアは腐女子。
 ・お母様も腐女子
 ・パパは冒険小説家。
 ・ジェイド大佐はテイルズの大ファン。ついでに、ルークが気まぐれで書いた探偵小説もお気に居りのご様子。
 ・アニスは現在漫画家を目指している。
 ・イオンは漫画で絶賛悪影響を受けている。アニスの漫画選択のせいである(最近、口が悪くなってきたと嘆く声がある。仕方ない、任侠ものだし)
 ・アッシュはツンデレ。悪態をつきながらも全巻そろえてるし(テイルズ)、ファンレターも出してる。
 ・シンクもツンデレ。やっぱりファンレターは欠かさない。面白くないとか言ってるのに。
 ・アリエッタが最近イラストを描き始めたようだ。キムラスカの雑誌に載せたいと言っている。
 ・リグレットはキムラスカで売り出されているぬいぐるみを各種そろえている。
 ・ピオニー閣下も絶賛抜け出してキムラスカを漫遊している。
 ・マルクトでは現在和平を望む声が急増中だ。漫画が安くないからである。

  ※

 オリジナル板で連載しているSSの前身です。フォルダを整理していたら見つけたので乗っけてみました。
 ストーリー的には続かないが、各エピソードのようにときどき投下されるかもしれない。



[22793] 漫画家ルーク
Name: navi◆279b3636 ID:2c11626b
Date: 2010/11/17 09:06
 ティア・グランツ。正式名称はメシュティアリカ・アウラ・フェンデ。
 ぶっちゃけ、記憶に残っている中ではティアティア呼ばれていて正式名称のほうを覚えられているかは疑問だ。
 まあ、そんなことは言い。
 現在、ルーク・フォン・ファブレはそのティア・グランツと対面しているのである。
「あー、大丈夫?」
 ルークは声をかけるが心中は穏やかではなかった。
 ――やべえ、どうやって話しかければいいんだ!?
 正直、ルークは今まで話しかけていたメイドは基本的に女性ではなく職員としてしか見ていなかった。故に、
 ――いやいやいやいや、俺本当にどうすりゃ良いんですか!?
 心の中ではものすごくテンパっているのだ。
「えっと、怪我は無い? 怪我あっても直せないけど――、じゃなくてお金ある?」
 ――わー! わー! 俺、真顔で何言ってんですか――!!
 しかも、見ればティアもルークの様子を怪訝そうにみている。
 ルークは思う。
 記憶にある史実の自分より今の自分のほうが何倍も人間的にも上だろう。だが、あの傲慢不遜さ(後半に掛けては変わるが)が役に立つときなんてあるんだなあ、と。
「いえ、こちらに怪我はありません」
 へ、と思いティアの方向を見ると、
「先程は粗相をいたしました。言葉で済むと思ってはおりませんがここに謝罪を」
 混乱が襲う。
 え、あれ、ティアって娘はこんなキャラだっけ? と、一気に脳みそが沸き立つ。
 それでも、言葉は紡ぐ。
「え、あ、うん。――あまり気にしてないからいいよ」
「有難いお言葉、感謝いたします」
「そ、そうか」
 ティアは頭を深々と下げる。
 ――確か、ゲームの中の出会いではあんまり良い感じじゃ無かったよな?
 こう、割と陰鬱? ではないな、険悪的な感じだったよな?
 ティアが子ども扱いしてルークが切れる(まあ、子供だったけどさ)という構図だったはずだ。
 ――よし。
 ならば、
「俺はルーク・フォン・ファブレ。君は?」
 まずは自己紹介しよう、うん。
「私はローレライ教団所属のティア・グランツ響長であります。よろしくお願いします」
 うん、正しく軍人だ。それは認めよう。
 だが、
「いや、もっとフランクで良いよ? 俺も君も年齢は同じくらいだろう?」
 しかしティアは、
「いえ、軍人ですのでそのようなことは」
 嘘付け――!!
 え? 本当になんでこんなに違うの? 薬? 薬なのか!?
「何か粗相をいたしましたでしょうか?」
「あ、いや、ぜんぜん」
 ――落ち着け、落ち着くんだ俺。あれだ、俺の記憶に入り込んだおっさんの記憶にあったじゃないか。koolだ、koolになるんだって!!
 そこに一陣の風が吹いた。冷たい。あ、と思い後ろを向く。広がる海。水面が輝いている。あ、と声が漏れる。
 ――綺麗、だな。
 史実に比べ身動きがとりやすくなったとはいえ、出歩けるのはキムラスカまで。海などは見ることが出来ない。資料で使う写真は全て兵士が取ってきたもの、実物を見るのは初めてだ。
 染みる。風が、潮が、匂いが、光が、音が、五感を通じ駆け巡り満たす。
 はあ、と出る吐息。感慨。
 告げる。
「いやー、さ、ティア」
「何か?」
「連れ出してくれてありがとよ。良いモンが見れた」
 きっと、ルークはこの光景を忘れない。
 この青を。

  ※

 華麗なるガイ先生の漫画家生活

  ※

 まあ、ルークが初めてを体感しているときにガイはというと、
「えー」
 ペンを握りながらぶーたれいていた。
 事の発端はといえば全てルークに帰結するといってよい。いや、原因の中心といっても良い。
「いや、そりゃルークは親友だけどさー」
 何だか知らないが、自分がコミケ行ってついでに画材買ってきて戻ってきたらルーク様が連れ去れちゃいました、テヘ☆ は無いだろう(誇張)。
 挙句、それを知ったナタリー(って呼べだって)様が探しに行けって勅命を下すという面倒な自体まで作り出されてしまったのだ。
「俺、これでも大御所なんですけど」
「勅命ですので」
 ですよねー。一家臣に断る権利なんて無いですよねー。
「仕方ない。編集長に言って休み貰おう」
 はあ、面倒くさい、とぼやきながらガイは歩き出した。

  ※

 ナタリア様の憂鬱

  ※

 ――BLって知ってますかしら?
 ――ええ、これでもCPには五月蠅いほうですのよ?
 ――ガイ×ルークは鉄板ですわよね?
 ――え? ルーク×ガイこそ王道? それは貴女の王道でしょう?
 貴族の子女と共に談話する一人の少女がいる。
 ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディア。
 キムラスカの皇女であり、ランバルディア流弓術の免許皆伝者であり、そしてキムラスカ腐女子会設立者である。
 ナタリアがBLを知ったのは必然であるといえただろう。
 英才教育の中には当然のように自国の歴史についての授業がある。
 ナタリアはどちらかといえば行動派の人間であり、分からない事柄は少しでも少なくしたいほうだ。
 そして、だ、当然歴史の勉強をする中で触れるものがある。男色。これはナタリアに革命をもたらした。ロマンチックな面を持つナタリアにしてみたらもう、刺激的産物の中でも第一級品といっても言い。
 気づけばずるずるずるずると奈落のふちに引き込まれてしまっていた。
 さらに、漫画の登場はナタリアはうってつけの油だった。
 こうして、キムラスカの皇女は何時しかBL第一人者となっていたのだ。
 そして、そのBLが貴族に伝わるのも早かった。
 ナタリアは国のトップであり、そのナタリアがやってるとなれば貴族の子女も当然のように真似をする。そして流行のコンボにつながり、そして下級貴族から市民に伝わるという二連続コンボはクリティカルヒット。
 そして現在は腐女子会という会合を開くまでにいたるわけだった。
「ええ、ルークの誘い攻めにガイの強気受けこそが至高です」
 そんな会話をしながらナタリアは思う。
 ルークが連れ去られたことをだ。
 ――ちゃんと戻ってきますわよね?
 ナタリアの楽しみの一つに、ルークとガイの朝稽古を見るというものがある。
 当然、フィルターは装着済みだ。
 それをのぞき見るのがナタリアの朝の日課である。
 故に、ルークが連れ去られたことを考えると、
 ――しばらくあれが見れないのですわね。
 これから朝の楽しみをどうしようか、そう思うナタリアだった。

  ※

 そしてルーク一行は……

  ※

「へえ、苦労してるんだな」
「いえ、そのようなことはありません」
 森を抜けるためにだらだら歩いていた。そして、一部ティアから情報を聞き出すことにも成功した。
 つまるところ、史実のあれはティアとしては発破をかけてきたということなのだろう。
 まあ、正直史実の自分には敬語はあんまり使いたいとは思えないだろうし、さらに言えばどっちに転んでも処刑はほぼ確実だったということを考えればある種自棄になっていた部分もあるだろう。いろいろな人間を見てきてどうすれば良いかというのも知らないわけでもないだろう。あの、ひねくれた自分には多少きつい言葉を使ったほうがためになると踏んだのだろう。
 ――そりゃあ、あんな軍人として失格な言葉をぽんぽん出せるわけだ。
 まだ、あまり腑に落ちないところもあるが今はそれで納得しておく。
 ――それにしても――、
 カメラをもってこなかったことが悔やまれる。
 今、カメラがあれば資料としても思い出としてもよいものとなっていただろうに。
「お」
 時々起る魔物との戦闘を切りぬけながら進み続けていると、とうとう見えた。
 馬車だ。すげえぼったくりの馬車だ。
 ――乗りますか? 乗りませんか?
 それなんてローゼン?
 と、いっても乗るしかないのだが。
 そういえば、と思う。
 なんで音素車とかでないんだろうか。良い儲けになる気がするのだが――って、ああ予言があるので無理でした。
「おーい、そこの人ー」
 ルークは叫んだ。
「誰だ!?」
 御者のおっさんは叫び返した。
「こっちこっちー」
 手を振る。御者は視線をこちらに向ける。
「誰だあんたらは?」
 客候補に対して酷い言い草のような気もするが。
「悪いけど、今から馬車に乗れないか?」
「いいけど――、あんたらは?」
 そこに、
「私達は――」
「ちょっと旅行だよ」
 ティアを遮るようにルークは言った。
「へえ、若い二人で旅行ねえ」
「考えているような展開じゃないよ。旅行は旅行でも取材旅行さ」
「取材?」
「ああ、これでも俺、漫画家なんだ」
 御者は驚き、
「へえ! 漫画家先生か! 珍しいこともあるもんだ」
「いやあ、資料がほしくて休みもらって取材旅行なんだよ」
「ってことは、そっちはアシスタントさんかい?」
「い――」
「そうそう!」
「いや、俺の息子も将来漫画家になるんだって張り切っててねえ」
「そっかそっか、有名になれるといいな」
「本当だよ、まったく」
 競争率のことを考えれば、あまりよい言葉は言えない。だが、
 ――無理、とは言えないよなあ。
 お膝元のキムラスカ住民でさえ競争率の高さに挫折する人間がいるのに、マルクトの人間がそう簡単に入選することは低確率と言ってもよいだろう。
 しかし、若い才能の芽を潰すのは忍びないし、今ここでそんなことを言ってしまえば多少和気あいあいとしていたこの空気がつぶれることとなる。それは避けたいではないか。
「それで、お二人さんはこれから何処に行くんだい?」
「いやあ、いろいろ回ったからそろそろキムラスカに帰ろうかと」
「ふうん……、そうだ、エンゲーブには行ったかい?」
「いや、行ってないよ。食料なんかは全部キムラスカで買ったのを食いつないで、だからね。必要なのは森とかそんな場所だから町にもよらなかったし」
 少々苦しい言い訳のような気もするが、もはやこれで押し通すしかないだろう。
「へえ、そりゃ大変だね」
「本当さ。取材費は少しでも抑えたいからね」
「はは、いつの時代も金金っていうのも世知辛いもんだ」
「まあね。ま、これも仕事のうちさ」
 さて、と御者は、
「じゃあ、俺はそろそろ行くけど、乗っていくってことでいいのかい?」
「ああ、頼む」
「うーん、けどねえ。今から向かうのはキムラスカじゃなくてマルクトなんだよ」
「あー、そうか」
「じゃあ、エンゲーブまでは送るからそこで食料を買い足して行きなよ。んで、逆走することになるけどな」
 まあ、今からキムラスカに戻ろうとしても絶対に空腹で倒れてモンスターの餌になるのは免れない。ならば、食料を買い足して戻ったほうが賢明だろう。
 資金は――、御者が見えなくなったらモンスターを狩って手に入れようか。
「じゃ、それでよろしくお願いします」
「そっちのアシさんも一緒でいいのかい?」
 ルークは頷き肯定を示した。

  ※

 さて、エンゲーブにてまた面倒くさいことが起こるわけだが、それはまた別の話。

  ※

 キャラクター紹介。

 ルーク・フォン・ファブレ:染めちゃった張本人。感染元。どうにかインターネットを作れないか模索中。
 ティア・グランツ:自称中立だけどどちらかと言えばモース派なので漫画には触れていない。これから染められる人。
 ヴァン・グランツ:一応ボス? だけど、ルークには思惑がばればれ。きっと、挫折して(運命がうまく動かないから)リグレット教官あたりとくっついてくれるかも。
 黒獅子ラルゴ:きっと、ファミリー漫画で涙を流してる。



[22793] 漫画家ルーク
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:27
「えーっとさあ、ティアさん?」
 エンゲーブの宿屋に気まずい雰囲気が流れる。馬車に乗ったときからからずっとこの調子だ。何故かは知らないがティアが急にむくれてしまった。
 神、あ、居ないんだったなこの世界。だったらユリアよ、俺は一体何をした。俺は今回無銭飲食も何もしていないぞ!?
 ルークは基本的に紳士である。女性を怒らせたことなんてこの方一度だってありはしない。(変態ではない)
「(くっ――、こうなったら――!!)」
 熱の篭った視線でルークはティアを貫いた。



 ヴァン・グランツ師匠の受難(腹痛編)



 聞いてほしい。最近部下が変だ。どれだけ変かと言うと、凄く変だ。最早私の手元と懐から水と胃腸薬が手放せなくなってきている。
 こういえば分かってくれるだろう。ストレスで寿命がマッハだ。
「ハア……」
 この溜息ももう何百しているだろう。いや、もしかしたら既に千を越えているかもしれない。
 ああ、腹が痛い。
 そう思いつつ会議場を見渡す。
 そこに居る面々はと言うと、
 ――なにやら読者アンケートと記された葉書に黙々と記入をしている鮮血のアッシュ。
 ――同じ事をやっている烈風のシンク。
 ――やたら上手くライガルを紙に描いている妖獣のアリエッタ。
 ――無駄に熱っぽい視線でこちらを見ている魔弾のリグレット。
 ――『漫画』を読みながら滝のように涙を流す黒獅子のラルゴ。
 ――何処から手に入れたか知らないが『ワープロ』をカチャカチャやってる自称薔薇、他称死神のディスト。
 どうしてこうなった。
「皆、聞いてくれ」
 アレだ、きっと擬音にしたらシーンとかそんな文字が絶対に似合うような沈黙が場にあふれた。無視られた。
 おかしくね? 私、トップですよね?
 おっと、危ない。少々私の中のアイディンティティがぶっ壊れてしまうところだった。
「皆聞いて――」
「まあ待てヴァン」
 私の言葉を制したのは葉書に何かを記入するのを止めたアッシュだった。
「何だ」
「言いたいことは良く分かる。あのクズを使った『計画』のことだろう」
 そう、私の計画。このスコアに縛られた大地を壊しレプリカを使った新天地を作り出す計画だ。
「その通りだ」
「良く聞けよ? ヴァン」
 いや、聞くのはお前のほうだろアッシュ。
「今のクズは最早ただの甘ったれのボンボンと言う地位じゃねえ、あいつ一人にこの世界の金が握られている」
 確かにそうだ。
 漫画と言う娯楽、コピー機やワープロといった斬新な発明(私も愛用している)、Q&S社と言う名義は両親だが実質はルークの会社である一大産業。また、ボランティアや慈善事業も頻繁に行っている。
 最早時の人といっても良い。
「一応知恵の回るアンタのことだ、コイツが死んだだけでどれだけの死者が出るかは分かっているだろう?」
 ああ、と私は頷いた。
 どれだけの死者といわれればかなりの死人が出るだろう。
 国の補助では手が回らないところを助けているのは実質ルークの指示によるものだし、最近ではキムラスカ、マルクト問わずに医療行為を行う『国境なき治癒術団』などと言う会が発足されている。
 マルクトでは漫画見たさで講和を結ぶ声まで上がっているほどだ、もしもルークが死んでしまえば最悪戦争が起きるとおもっても問題はない。
 大げさのように思えるが、遥か昔の戦争ではたった一人の死者のせいで複数の国家が戦争を開始した記録だって残っているのだから。
 そしてアッシュ、一応は余計だ。
「だがアッシュ、私はルークを殺すつもり毛頭はない。生け捕りにして使うだけだ」
「だろうな」
 だが、と、アッシュは、
「あのクズがそう簡単に言うことを聞くと思うか?」
 そう言われれば、私はノー、と言うほかがない。確実にルークは私に協力はしないだろうし、拒むであろう。
 むしろルークならば協力するくらいなら自殺を図るとすら思える。
「そうなればアンタの計画はお陀仏だ。俺は計画にクズの代わりになる気なんて無いしな」
 だろうな。
「しかも今、あのクズが失踪した状況を受けてまた世界の情勢も変化している。――戦争が起きるぞ」
「ああ、そうだろう」
 アッシュが言ったとおりに、キムラスカ領の金はほぼルークが握っているといってよい。
 今そのルークが失踪した。私の妹が原因でだ。スパイをさせている兵の報告によればキムラスカ上層部はマルクトを疑っているとのことだ。
 一応、私が弁解しておいて入るが、これを機に戦争をしたい人間が居るのだ。そして、そんな人間が『実はマルクトが裏で手を引いているのではないか』などと妙な勘繰りをしている。
 きな臭いでは済まされない状況が刻一刻と近づいてきている。
「戦争が起きれば人が死ぬ――、そうなりゃレプリカ人間も殆ど作れなくなるだろうよ」
「何、少しでも人が残れば問題ない」
「本当にそう思っているのか?」
「――何が言いたい」
 アッシュは、
「自分で考えろ、その大層な計画を考えた頭は飾りじゃないだろう?」
 そう言った。
 


 アッシュは思った。
(ふー、危ねえ。ハッタリが効いたようだな)



 会議が終わった。
「ああ、胃が痛い」
 本当に痛い。言いつつ懐から胃腸薬を取り出す。
 マジうめえ。
「隊長」
 と、
「リグレットか、どうした?」
 後ろから追いかけてきたのは女性――リグレットだった。私の妹もこのリグレットから手ほどきを受けたのだったな、そういえば。
「いえ、その――」
 リグレットは顔を赤らめながら、
「今度私と食事に行きませんか?」
 ……はい?



 私、ヴァンデルスカが苦労するのはまた別の顛末である。



 ダアトがルークを嫌う理由。



 あきれるほどの低姿勢。いっそすがすがしいまでに卑屈。つま先をそろえ、手では素敵に綺麗な三角。誠心誠意真心込めて――、
「すいませんでしたァ――!!」
 俺は土下座をした。
 生まれてこの方したことの無い生土下座だ。
「……」
 声は無い。しかし反応を見るために頭を上げるなどと言うはしたない行為は土下座中に許されはしない。
「――ハア」
 溜息!? 溜息だと!?
「ルーク、頭を上げて」
 御免なさい。上げれません。土下座と言うのは頭を上げて良いといわれてあげて良いものではないのだ。
「……なら良いわ、そのまま聞いて」
 そう言ってティアは語りだした。無論、俺は土下座をしたままである。
「今、漫画と言うものが現れたせいでダアトはかき乱されっぱなしなの、わかる?」
「分かりません」
「そうよね、分かるわけ無いわよね――、だからダアトの現状を教えてあげるわ」
「お願いします」
「今、予言(スコア)というものが覆されつつあるわ、漫画が原因で、よ。本来、予言で農民になると詠まれた人が居たわ、だけどその人は農民にならなかった――、一つの漫画を読んだせいで。
 そうやって予言を無視させるまでに漫画と言う娯楽は強烈だった。分かるかしら、段々と人々は予言から離れていっているのが」
 一息の後に言葉が続いた。
「勿論、予言で詠まれたことを無視するなんていうのはまだ良い方よ――、少し前にダアトで出産した人が言ったわ『あ、息子の予言は詠まなくて良いですから』と。
 求心力もへったくれも無いわ。それどころか人々の心がダアトから離れつつある。退団者も後を断たないわ」
 ああ、と俺は思う。
 俺は少しでも今を変えたくて、自分を変えたくて漫画を描いた。
 しかし、本来あってはならないことであった。そのしわ寄せが今来ているのだ。
「――それにね」
 一際感情の込められた声でティアは――、
「この前私、お姉さまって言われたのよ」
 どんな言葉が――、はい?
「貴方のところから出版されている著書の一つに『ユリア様が見てる』って言うものがあるの。それに当てられた女性信者からお姉さまって言われたのよ――、年上に」
 ああ、影だ、ティアに影が見える!!
「私にはね、同性愛趣味はないのよ、なのに私はお姉さまって呼ばれるのよ、ええ、嫌になるわ。
 しかも最近入れ違いになって入ってくる新規信者の大半は『ユリア様が見てる』と『くそみそアーツ』を見て入ってきた人ばかり――、分かるかしらルーク、貴方達漫画家はとても罪深いことをしているのよ」
 ――正直すいませんでした。いや、本当に。



 某巨大戦艦の中での風景。



 タルタロスと言う戦艦がある。白く塗って危うくホワイト○ースに改名されかけた新造艦だ。
「ふんふ~ん♪」
 その中で一人、眼鏡を掛けた男性が鼻歌を歌いながら袋を両手で持ちスキップしている。
「いやあ、無理言って届けさせた甲斐がありましたねえ、本当に」
 そう言いながら男性は自室に入った。
 男性はマルクトと言う国の将校で、大佐という対それた地位までを持っていた。
 ジェイド・カーティス。死霊使い(ネクロマンサー)とまで称された古強者だ。
 そんなジェイドの趣味は言ってみれば読書である。最近のお気に入りはテイルズの新作である。
「いやあ、やはり良いものですねえ」
 ジェイドの個人的趣味ではエターニアの方が好みだ。しかし、相変わらず面白いものでジェイドは満足していた。
 紅茶を飲み、軽く息を吐く。
 美形といっても差し支えないその姿はリラックスする姿まで美形だった。
「そういえば、ヴァレンタイン先生はもう探偵モノは書かないのでしょうか」
 書斎に飾るように置かれた一冊の本を思い出す。タイトルは『名探偵・モーガン』。ライバルである漆黒の翼を追いかける孤高の名探偵が主役の本だ。
 出来れば続きを書いてほしいとは思うが、アトガキに気まぐれで、と描いてあったので無理だろう。
「ああ、読みたいですねえ」
 ジェイドはゆっくりと息を吐く。
 と、
「警報!?」
 けたたましい警報が響き渡った。



 ジェイドとルークが邂逅するのはもう少し先の話である。



 おまけ
 元ネタ達。
 土下座――境界線上のホライゾン。
 寿命がマッハ――ブロントさん。
 ユリア様が見てる(通称・ユリ見て)――マリア様が見てる。
 くそみそアーツ――くそみそテクニック。
 名探偵・モーガン――名探偵コナン。
 タルタロスの改名の候補――機動戦士ガンダム、あと候補にはフリー伝が存在した。



[22793] 漫画家ルーク
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:29
 唐突にルークは思い出した。
(そー言えば、俺、アッシュと繋がってるんだったよな)
 当然ウホ、っ的な意味ではない。
 ってなワケでついルークは言ってしまった。
「アッシュ、貴様見ているな!?」
 その日、アッシュはなにやら悪寒を感じたらしい。



 ヴァン・グランツ師匠の受難(頭痛編)
 私、生まれてこの方女性と触れ合う機会など殆ど無かった。ティアのおしめを変えていた経験はあるが、それは妹であり庇護する対象であったので除外されよう。
 と、言うわけで、だ。私は今大変なことになっている。
 食事に誘われた。しかも超美人にである。
 リグレットを御存知であろうか。大人の女性を体現した女性である。
 ダアト美女ランキングでは常にトップを独走している程である。
 リグレットさんマジ天使なんて言葉があるくらいだからどれだけ美人かは押して知るべし、だ。
「っていうか、何故私なんだろう」
 私の影のあだ名は『ヒゲ』である。いや、若くても舐められないようにと思いヒゲをはやしたらこのあだ名である。
 そんな私に何故わざわざリグレットが食事を誘ってきたのか意味が分からない。
 しかし、食事の誘いを無碍にするのは男児としては良くない。かつてはそれなりの良家の生まれの長男として育てられた私だ、非紳士的な行為をするのはプライドに反する。
「むう」
 だからと言って私自身が女性と触れ合う機会も少なかったのだからどうしようもない。
 しかし私のせいで女性に恥をかかせるなど言語道断だ。
「仕方ない、か」
 ここは私のちっぽけなプライドは捨て置いて、誰かに教えを請うことにしようか――、

 CASE1 鮮血のアッシュ
「アッシュ、いるか」
「――アンタが自分からたずねてくるなんて珍しいこともあるもんだな」
「悪かったな」
 言いつつ本題を切り出す。
「実はかくかくしかじかで――」
「つまりあんあんうまうま何だな?」
 私が誘拐したとはいえアッシュは貴族だ。私のようにカモフラージュの為に護衛のフリをしていたわけではなく正真正銘の貴族なわけだ。故に、アッシュならば何か良い案があるだろう。
「好きにすれば良いじゃねえか」
「は?」
 思わず間抜けな顔をしてしまった私を赦してほしい。だが、仕方ない。一番頼りにしていたはずの兵が裏切ったのだから。
「っつうか、俺には心に決めた人が居るんだよ、その他はどうでも良いから良く分からん」
 ああ、無情。

 CASE2 烈風のシンク
「シンク、いるか」
「ああ、ヴァンか、何か用?」
「ああ実はかくかくしかじかで――」
 私が全てを話し終えると、シンクは晴れ晴れとした顔を浮かべつつ親指を立て、
「MOGERO」
 ――私が一体何をしたというのだ。

 CASE3 死神のディスト
「――やめておくか」

 CASE4 妖獣のアリエッタ
「――無理だな」
 
 CASE5 黒獅子のラルゴ
「ラルゴ、いるか」
「何だ、ヴァンか」
「ああ実はかくかくしかじかで――」
「ふむ、つまりはあんあんうまうま何だな?」
 ふむ、とラルゴは頷いた。
「まあ、そういうことなら」
 おお! 一番女性が苦手そうに見えたラルゴが実は最も頼りになったとは!!
「まあとりあえずは軽いレクチャーにとどめておこう」
 言って、
「良いか? まず移動をする時だ。馬車などを使う場合は関係ないが歩行の場合は道の中心を歩いてはいけない。なるべく道の右側により、男性は女性の左側に立つ。
 店に入る時は男性が後ろ側に立つべきだな。その場合、女性がつまずいても必ず手を差し伸べられる距離を維持することが大切だ」
「なるほど」
「東方風の食事処ならば男性が上座に座り、女性を下座に座らせる。まあ女性が誕生日だったなどの特別な日であれば女性を立てるために会えて下座に座る。
 普通に高級料亭ならば女性が先、男性が後に座る。だが、気をつけなければならないのは、座る直前に男性が椅子を引くことだ。この場合男性が一度前に出なければいけなくなるがその場合いくつかスマートに前に出るための方法が――」
 ……ティア、兄さんは頭が痛いよ。



 任侠導師対獣達+α



 ルークだ。何か先ほど電波を受信したような気がするが気のせいだと思いたい。特に某師匠から。
 と、まあそんなことは良いのだ。
 俺の知る知識どおりのことが起きた。これも別にかまわない。
 チーグルがライガルの住処を燃やしたって事件だ。そのせいでライガルがチーグルの住処に大移動しかけたって奴である。
 それに対してイオン導師が勝手に動いてしまったなんてのも知識どおりだ。あ、原作どおりって言うんだっけ。
 まあいい。そんなわけで俺はティアの手を借り受けられず(ダアトとの仲的な意味で)、だからと言って言っちゃあ悪いが病弱なイオン導師をほっとくわけにもいかずに、俺は一人森のほうへ向かったわけである。
 そして森の少し行ったあたりで俺は同士イオンを発見したのだが――、
「おうよあんちゃん、助けてもらって悪いねえ」
 言いつつ干し肉にかぶりつくイオンを見て俺は思う。
 どうしてこうなったし。
 いや、だってさあ、俺の知ってる、といっても知識の仲でのイオンはどちらかといえば女々しいというか下手な女の子よりヒロインしているというか、そんな感じだったのに、俺の目の前にいるのは、
 ・緑の頭髪をオールバック。
 ・グラサン。
 ・シルバーのネックレス。
 ・技とらしくぼろぼろにされた導師服。
 ・ついでに汚れ。
 ・やたらと陽気で強気な発言。
 どう見ても何かを間違えている。主にセンスとかセンスとかセンスとか。
「えーっと、導師イオン様、ですよね?」
「おお、そうよ! オレが泣く子も黙る導師イオンよ!」
 ――ああ、やってしまった。これも漫画の影響だというのか!? 違うといってくれ誰か!!
「んで、あんちゃんは誰よ。服装から見ると決行裕福なとこのボンボンに見えるが?」
「あ、私はルーク・フォン・ファブレ、諸事情によりマルクト領にいますが、これよりキムラスカに帰還する予定で御座います。導師イオンは何ゆえこのような場に?」
「がははは、んなかしこまるなや――っと、オレの話だった。まあ、オレも導師なんて肩書きを持っていてなあ、チーグルっつうユリアさまンのお膝元の『聖獣』がちょーっくら悪さしたみたいでよォ、それが分けわかんない方向にこんがらがっちまってオレがここにいるわけだ」
 ぜんぜん説明になってませんよー、導師イオン。
 まあ、事情は分かっているから問題はないのだが。
「ンなことよりルー坊」
「俺ですか!?」
「おめえの他に誰がいるってえのよ、んでよお、乗りかかった船だしちっとばかし俺に強力してくれや」
「いや、良いですけど」
 普通導師の言った提案は俺からするものではないのだろうか。言えないけど。
「おお! そいつあ良かったぜ。いやあ、護衛とか置いてきちまったせいで飯とか持ってくんの忘れちまったのよ」
 だから倒れてたのか、っていうか俺食料係?
「よっし、じゃあ行こうぜ。ちんたらやってると何が起こるか分かんねえからな!」
 こうして俺と導師のちょっとしたサバイバルは始まった。



 ダアト上層部の憂鬱



 ダアトの上層部は荒れていた。と、言うのも信者が年々ガンガン減ってきているのだ。無信教の人間達が道を踏み違えてダアトに入ってくるが、ここは薔薇の国でも百合の国でもありません。
 言いつつも段々と汚れ――、染まってきてはいるのだが。
 さて、話はダアトの上層部に戻る。
 今日は会議があった。非常に重要な会議だ。
『ユリア教信者をどうやって戻すか』
 OHUSE、では無くお布施と言う名の神託の盾や自分達への給料の確保とかの為にどうしても人を戻さなくてはならない。
 兵士達の装備の質もこのままでは下がる一方だ。
 と、言うわけで会議の風景を一部抜粋する。
「さて、今日の議題はユリア教の信者を引き戻す方法についてだ」
 神妙な面持ちで一人が告げた。
「私は漫画を使うのがベストだと思う。アレの吸引力は侮れない」
「何を言っている貴様! プライドは無いのか!!」
 一部から嘲笑が沸いた。
「プライド? プライドで飯は食えないのだよ」
「この……」
「止めたまえ、――しかし、だ、確かにプライドで飯は食えないがプライドが無ければ人足りえないのだよ」
「……申し訳ない」
「さて、続けよう。何か意見のあるものは?」
「女性信者による勧誘!」
「ポスターを使った勧誘!」
「いっそ色仕掛けを」
『却下!』
「だよね」
 全くと、一人が首を振った。
「どうにもこうにも良い意見はないのか?! ダアトを終わらせるというのか!?」
 誰もが首を振った。そんなわけ無いだろうと。
 一人の男性が頷いた。
「私に良い考えがある」
「何かね」
「我々がヒーローになれば良い」
 男性は語った。小さい少年少女の心を鷲掴みにするものを作り出せば良いと。
 つまりはヒーローだ。複数の色をしたヒーローが巨悪を倒すシンプルな勧善懲悪ストーリーを展開する演劇。譜術を使って派手な演出を。
 そう、つまりは戦隊ヒーローによる今までのものとは違うアクション満載の演劇をすれば良いのだと。
 ――数ヵ月後、ためしに始められたそれはちびっ子たちの心を悉く得ることに成功した。
 その名も、予言戦隊(スコア)ローレンジャーである。

 OMAKE
・戦隊モノに許可を出したのは大詠師のモースである。最早金が無い。



[22793] 漫画家ルーク
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:30
「さて、ルーク弁明はあるかしら?」
「すいませんでしたぁ!!」
 人生二度目の土下座は酷くしょっぱかった。



 ヴァン・グランツの受難(外伝・スニーキング編)



「えー、こちらシンクー、どうぞー」
「えー、こちらアッシュー、どうぞー」
「……なあ、これ本当にやるのか?」
『やれ』
「……こちら、ラルゴ、どうぞ」
 今、シンクを中心とした三人が二人の人物を追いかけていた。
 一人はヒゲことヴァン・グランツ。
 一人は教官ことリグレットである。
 さて、今何故三人はこんなことをしているのか、それは昨日にさかのぼらなければならない。



「さて、聞いてほしい」
 仮面を被った一人の少年が言った。
「今、無駄にビッグなイベントが起こっている……分かるかい?」
 それに頷くのは赤い髪の少年で、だるそうにうなだれたのが大柄のオッサンだった。
「あのヒ――ヴァンがデート、だな?」
 その通り、と仮面をつけたしょうねんが頷いた。
 ――さて、ここまでで勘の良い方はお気づきであろうが、この三人の名をシンク、アッシュ、ラルゴといった。ちなみにラルゴにいたってはただのとばっちりである。
 うなだれるラルゴをシンクは無視して言った。
「その通り、あのゲイとかホモとか万年ご無沙汰男とか揶揄されるあのヴァンがこともあろうに『デート』をするという」
 ニヤリ、とシンクが笑みを見せた気がした。
「面白そうだと思わないかい?」
 それに目配せをしたアッシュが、やはりニヤリとした笑みで、
「ああ、確かに面白そうだ」
 答えた。
「ふ、アッシュなら分かってくれると思っていたよ――、ブツは?」
「当然」
 何処からとも無くアッシュが一つの品を取り出した。形状は長方形に近いが、線は緩やかなカーブを描き、親指で操作できるように配列されたボタンと説明が目に付いた。また、長方形の先端側には円状の硝子がはめ込まれている。見れば長方形の左側は開閉できるようなつくりだ。
「流石アッシュ、準備が早い」
「褒めるな。それにしても、こんなときの為にわざわざ用意した甲斐があったな――、ビデオカメラ」
 そう、ビデオカメラである。割と高額だったがアッシュは迷わず購入した。当然、もっとも高性能な良いものだ。
 ついでにもう二つ長方形状のものを取り出した。正面側にレンズがついた一品はカメラと呼ばれるものだった。それも当然高いものであり、それを二つも用意するあたりアッシュの(間違った)気合の入れ方が分かる。
 シンクはそれを見て流石だ、とうんうん頷いてから、
「さて、ヴァンがデートとなれば当然僕達はやらなければいけないことがある」
 それは、と言うと同時にシンクの眼がきらりと光った気がした。
「尾行だ」
 書類整理だとかそんなことを言わなくなっただけきっとシンクは退化した。進化もしたが。
 シンクはこの数年で一気に変化した。生きる気力を失ってこの世界なんてこわれちゃえYO! なんていわなくなっただけたいした進歩である。その代わり余分なものも覚えてしまったが。
 さて、とシンクは一枚の紙を広げた。地図だった。一つの建物を中心として、とある道筋には赤い線が、またとある道筋には青い線が、そしてまたひとつ黒い線が引かれている。赤い線を除いた二つの線のところどころには点線や書き記した文字などがあり、なにやら機密のようにも思える。
「これを見てほしい」
「これは?」
 げんなりしているラルゴが重い口を開いた。
「地図だよ」
「見ればわかる」
 やれやれ、とシンクは首を振った。
「これを見てまだ僕の意図が分からないのかい? 老いたねラルゴ」
「どうにでも言うが良い」
「まあ、知らないままで居られても困るしね、説明するよ。これは、僕が数日掛けて作った地図だ」
 そして、
「この赤い線がヴァンの通るであろうデートコースで、青い線が第一観察ポイント、黒い線が第二観察ポイント。危険度で言えば赤>青>黒だね。この場合、赤いコースを後ろから尾行、青いコースと黒いコースは両側から撮影ってことになる――、と、アッシュ、望遠レンズはあるかい?」
「ふ、無い、とこの俺が答えると思っているのか?」
「いや、ただの確認さ」
 良い笑みを浮かべるシンク。
 それに答えるように笑みを浮かべるアッシュ。
 完璧に放置気味のラルゴ。
 その三人の奇妙な会議は普通、重要と思われる会議より完璧な熱を持って続けられる。
「この線は僕が独自に調査したベストスナップポイントで、望遠レンズを使えばかなりの精度で良い写真が取れるはずだよ。逆に言えばこのポイントを逃せばかなりの確率でヴァンにばれることになる。そうなればこのスニーキングミッションは終わりだ。データもカメラも跡形も無く粉砕される」
 シンクは目元に真剣な表情を見せた。いつものちょっとニヒルを気取ったものではない。人生を掛けているような無駄に真剣で、見る人が見れば格好良いとすら思える表情で、
「それは確実に防がなきゃならない事柄だ。僕達はこのデータを持ってしてヴァンの結婚式の時に盛大にからかってやるための布石だ」
 言っていることは台無しだったが。
「ああ、分かるぞ」
 そこに頷く当たり鮮血の面影は何処にも無いアッシュだった。
「……」
 うなだれるラルゴは黒獅子の異名は何処へやら。その弱弱しい姿は見るものの哀愁を誘った。
「さて、ここからが本題。どのコースを僕たちが選ぶか、だ。ラルゴはもっとも安全な黒のコースに配置するとして、僕とアッシュのどちらかがもっとも危険な赤のコースを進むことになる。さあ、どうするアッシュ」
 ふむ、とアッシュは頷いてから数十秒の黙考を経て、
「赤のコースは俺が行こう」
「理由は?」
「俺もお前も顔が割れすぎている。いや、シンクの場合は仮面の姿しか見られていないが、それでもその仮面は悪目立ちしすぎる。妖しいことこの上ない」
「なるほどね、確かにこの仮面は良く目立つ」
「それに、もし仮面を外したとしてもだ、その仮面の下、素顔はヴァンが知っているのだろう? ならば、シンクが青いコースに行き俺が髪染めを使ってやれば良い。目元はサングラスで隠しカモフラージュすれば問題ない」
「了解」
 いろいろ詭弁を述べたが、実際はただ単にアッシュがビデオカメラを使いたかっただけである。
「さて、作戦の実行は明日……ぬかるなよ? アッシュ」
「当然」
 ふ、とシンクとアッシュは笑みを浮かべて言った。
「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」
「ル・ラーダ・フォルオル」
 最後の最後まで台無しだった。



「何故、ここに居るのだろう……?」
 ラルゴは段々と自分の存在意義に疑問を抱くことになったのであった。



 と、言うわけで話は冒頭に戻るわけである。
 とばっちりのラルゴを除けば二人のメンバーは意気揚々とばかりに活動していた。ナイススニーキングってな感じである。きっと、今なら某蛇の名を持つ傭兵をも越えられるかもしれない、などと思いつつだ。
『シンク、聞こえるか? オーバー』
『こちらシンク、感度良好オーバー』
『撮影は順調、オーバー』
『了解。そのまま撮影されたし、オーバー』
 アッシュは頷きつつ偽装ビデオカメラで前方の二人を撮影する。
 前方には並び歩く男女が居た。どちらも普段では考えられないほどの変わり様。見た人は卒倒するに違いない。
 スーツを着て、さっぱりとヒゲを剃り、最早アイディンティティを失いヒゲと呼べなくなったヴァン・グランツ。
 普段はしない化粧をし、機能的とはかけ離れた美しいドレスを纏い談笑するリグレット。
 そしてその二人が目立たないことなど当然無く。人ごみはおお、だとか、ああ、だとかそんな言葉ばかりを発していた。
(こちらとしては好都合だがな)
 人ごみにまぎれての撮影は実に困難を極めるが、それでもアッシュは挫けなかった。
 自身の持てる全てのポテンシャルをフル活用して撮影に望んだ。全く持って力の入れ所を間違っていた。
(あー、こりゃ今日中にキスまで行くな)
 心の中でアッシュはあたりをつける。
(ああくそ、俺だってナタリアとキスすらしてないのに羨ましいんだよチクショウ。マジMOGEROこのリア充め)
 思いつつもばっちり撮影する辺りやっぱりアッシュはプロだった。
 と、
(お、そろそろレストランに着くな)
『シンク、そろそろレストランに着くぞ、オーバー』
『了解、アッシュ。僕はポイントを変えて撮影するからどうにか侵入してくれ、オーバー』
『分かった。変装して潜り込むオーバー』
『ばれるなよ、アッシュ、オーバー』
『分かっている、と、ラルゴはどうした』
『……なんだ』
『上手く撮影は出来ているか? オーバー』
『お前達はただオーバーって言いたいだけなんだな? まあいい、取れているぞ』
『了解。打ち合わせどおりに回り込んで撮影してくれ、オーバー』
 


(よし、ちゃんとアッシュとラルゴはやってるみたいだね)
 シンクは思いつつシャッターを切る。
 とある宿屋の上より見えるレストランの屋上で食事を取る二人が目標だ。
(フ、これでまたからかう種が出来たね)
 望遠レンズより見えるのは笑いあいながら食事を取るヴァンとリグレット。談笑する二人がまさかダアトでも上層部に名を連ねるものだとは思うまい。ヒゲないし。
 お、とシンクはレンズを覗きながら思った。
(行くか? これはリグレットが仕掛けたのか?)
 見えたのは熱っぽい表情で何かを言っているリグレットだった。
『シンク、聞こえるかオーバー!!』
 通信が入る。アッシュからだ。
『どうした、あわてているのかアッシュ、オーバー』
『驚くも何も! リグレットがヴァンをホテルに誘ったぞ! オーバー!』
 流石にシンクも吹いた。さらに、
『おそらくリグレットは三十路に入る前に決める気だ、雰囲気が尋常ではないぞ! オーバー』
『リグレット、そこまで年齢を気にしていたか、オーバー』
『そのようだな、オーバー』
『と言うか、ヴァンからそういうことをいえないなんてやっぱりヘタレなんだなヴァンは。オーバー』
『何を今更、オーバー』
『まあ、良いさ、今日中にABすっ飛ばしてCに行くみたいなエロ漫画的な可能性は?』
『俺の見立てでは八割は固いな。あのヘタレは自分の計画以外ではとことん流されやすいからな、リグレットに既成事実を作られて終わるような気がする。オーバー』
『了解。オーバー』
『それより撮影はどうする。ここらで切り上げるか?』
『いや、もう少しだけ頼むよ、オーバー』
『了解、オーバー』
 通信終了。シンクは更に撮影を続けた。



 ラルゴは思った。一体何をしているんだろう、と。



 こうして、シンクたちの撮影はホテルに入る寸前まで行われた。
 リグレットからヴァンへの逆プロポーズもばっちりだ。
 そして今日、新たにヴァンの頭痛の種が増えたのだった。



 事件の顛末。事後処理編



 やあ、俺ルーク! なんて陽気な気分で自己紹介できたらどんなに良いだろうか。
「さあ、ルーク。良いわけは聞くけど、罪が軽くなるとは思わないことね」
「あはははぁ、ティアさん、何か後ろから出てません?」
「あら、何のことかしら?」
 終わった。俺ギルティ。
 まあ、何でこんな状況になっているか説明するなら順を追って話さなければならない。
 まず発端として導師イオン失踪の話を宿屋で聞いたのが上げられる。そして、それを聞いた俺であり、要人なんだから助けなきゃなーなんて思ったのが運のつきである。その後俺は一人して森のほうへゴートゥしたわけだ。
 しかし、こればかりは俺が甘かったとしか思えない。導師イオンはダアトにとってかなり重要な人物なのであり、ダアト所属のティアにとってもやっぱり重要な人物だ。
 そうなれば助けに行くのは当然なのだが、ティアから聞かされた話のせいで力は借りられないな、と勝手に判断して動いた結果が今の俺の現状――、人生二度目の土下座である。
「ねえ、ルーク。何故私に黙って出て行ったのかしら?」
 黒いオーラを放ちながらニコニコ笑うティアの前に俺は蛇に睨まれた蛙の如く屈服するしかない。だらだらと脂汗を流しながら弁明する。
「いや、その、ね? いても立ってもいられなくて」
「そのせいで貴方が死んだらどうするつもりだったのかしら?」
「――その、すいません」
「貴方は自分の価値が分かっているのかしら? 貴方は公爵家の息子で王位継承権まで保持しているのよ?」
「すいません、俺が軽率でした」
「分かれば良いわ? 次からこういうことはしないこと――分かった?」
「はい、分かりました」
 言ってもう一度地に頭を擦り付ける。まあ、なんだかんだ言っても俺より強いだろうティアに手を借りずにここまで来た俺も悪いであろう。
「さて、お説教は終わり、行きましょうルーク」
「それって」
「当然、チーグルたちのところよ。ダアト所属の私としても、今この状況は頬っておくことが出来ないわ」
 なら、と俺は横目で隣にいる二人を見た。
 バツが悪そうにしているイオンと、業火の如く説教をしているピンクを基調とした服を着ているツインテ少女。
「あの二人はどうするんだ」
「そうね……」
 言ってからティアは二人のほうへ歩み、
「アニス、少し、良いかしら?」
「アァン?!」
 ものすごい剣幕でアニスに睨まれた。ってっか、知り合いだったんだなティアとアニス。
 アニスの凄まじいオーラ、これには流石のティアもたじろいでしまっている。っつーか、迫力が段違いすぎるだろう。いろいろと。しかしティアも負けじと、
「えっと、チーグルの方へ向かわなければいけないのでしょう?」
「……そうですね、私が止めてもイオン様が向かうでしょうし」
 はあ、と、何かを諦めたかのようにアニスは、
「何処で間違ったんだろ……」
 陰鬱な表情で溜息を吐いた。まるで上司にイヤミを言われて帰り際にワンカップ勝って公園にたたずむオッサンみたいだ。
「まあまあアニス、そんなアンアン悩んでると――、でっかくならないぞ?」
「さりげなくセクハラするのは止めてください」
「はははアニス、俺はおっぱいなんていってないぞ? 背がでっかくならないとは思っただけで」
「だーかーらー……止めよう」
 本当にお疲れ様でした。



 ってなワケで四人パーティで森を進むことになった。戦闘は俺、次にアニス、その後ろにアニスが来て最後にティアである。
「全員、はぐれてないよなー?」
「大丈夫です」
「大丈夫だ」
「大丈夫よ」
 ああ、なんて分かりやすいんだこのメンバー。
 思いつつずんずん進んでいく。それにしても結構深いな、この森。知識の中だとそれほど大きな森で無かっただけに、かなりの大きさを誇るこの森が後ろ三人より大きく感じる。
 と、
「お」
 小さく俺は声を上げた。
 ようやく森の奥深く。チーグルたちの住処までたどり着いたのだから。
「ようやくついたわね」
 いつの間にか前に出ていたティアが言ってきた。声は心なしか弾んでいるように思える。こう、wktkっていう感じの言葉が浮かんでいるような。
「って――」
 ヒャッホーとか言いながら前方へ進む導師イオンとアニスの低身長コンビ。
「お前等勝手に何やってんだぁ――!!」
 なんなんだろうなあ、この状況。
「ハア、全く。私達も行きましょうルーク」
「了解」
 特に害も無いだろうが、それでも走って二人のほうへ向かう。
 そして俺達は見た。
「んじゃ、申し開きはあるか? ん?」
 小動物相手に啖呵切ってる導師を。まるで悪役だ。
 ドン引きする俺。
 頭を抱えるティア。
 最早どうにでもなれという感じのアニス。
 あえて言おう。俺はもう何がなんだか分からない。
「おら小動物ぅ、テメエ等がユリア様んお気に入りだろうと、オレは――」
「イオン様、少々よろしいでしょうか?」
「あん?」
 言ってティアが前に出る。
「導師たるイオン様がここで恐喝のような行為を行ってはダアトの沽券に関わります。ここは私にお任せ下さい」
「だがよぅ、ここはトップのオレがやらねえと、何の意味もないだろう」
 トップがやるから問題があると思うんだ、俺は。
「ですがイオン様、本来ダアトにいるはずの貴方がここにいるということは何か事情が存在するはず――」
「ああ、分かった分かった! ったく、アニスが二人になったみたいだぜ」
 そんなことを呟きながらイオンは後方へ下がり俺の隣に立った。
「なあルー坊、あんなのがお付で気苦労はしねえか? オレんとこのアニスもガミガミうるさくてうるさくて」
「あ、いえ」
 気苦労も何も、まだあって数日しか経っていないのでどうともいえないと言うのが本音だ。しかし、
「俺は、嫌いじゃないですよ。ガミガミ言ってくれるってことはそれだけ気に掛けてくれてる証拠ですしね」
 知識の中には、ティアアンチとか言うのもあったけど、俺は違うように思えた。一旦は見放したといっても、結局は一緒にいてくれたのはティアだったわけで――、って吼考えると意識してしまいそうだ。考えてみればティアは超がつくほどの美人だし。
「ふうん、そういう考え方もあるのかね」
 イオンは腕を組んで考え込む。まさか、俺がこんな諭すようなことを言うとはなあ。
 十分くらいが経過して、
「イオン様、事情が聞けましたのでご報告いたします」
「おう、頼むわ」
 語られた内容は俺のしっているものであった。ここに住んでいるチーグルがライガルが住処を燃やしてしまい、そのせいでライガルがこっちに移住してきたということ。正直に言えば俺はこれに関わるべきでは内容に思う。これはぶっちゃけ自然の連鎖であり、人間が介入できることではないし、何より自業自得と言っても仕方ない状況だ。
 しかしながら俺以外は全員ダアト関係者であり、どうしてもこの問題ではチーグルサイドに立たなきゃならない。このままではいずれエンゲーブの人間に駆除されるかもしれないし。
 どうするかなあ、俺はどちらかといえばライガル側に心が言ってるんだけど。などと思ってる最中、
「おいおい、どう見たってこりゃチーグルたちが悪いじゃねえか」
『イオン様!?』
 ティアとアニスの声が重なった。
「そもそもここに居座られる理由を作ったのがここのチーグルだろ? なのにライガルを責めるのは筋が通らねえだろ? っつーか、そもそもチーグルがライガルの住処まで行っちまったってのがおかしいだろ。そもそもそれくらい大人が手綱をとらなきゃなんのいみもねーだろ」
「ですが……」
 俺はイオンの言いたいことが痛いほどに分かる。しかし、それは立場が赦さないのだ。
「んー、なあルー坊、いやルーク・フォン・ファブレ」
 フルネームで俺を呼んだということはかなり大事なことなのだろう。声もあの少しちゃらけた感じが抜けている。
「なんですか?」
「このチーグル達をオメエさんとこの領地につれてけねえか?」
 誰もがはあ? などと言ってから。
「何言ってるんですかイオン様ぁぁぁぁあああ!?」
 アニスの絶叫が響いた。
「いいじゃねえか。なあ、よけーな諍いも消えるしよ」
「そーいうことを言ってんじゃありません!!」
「ならどーいうことを言ってんだよ」
「あああああまたそういうことを――――!!」
 まるで仲の良い兄妹がじゃれあってるみたいだ。しかし、今はそういう状況ではないはずなのだが。
「いいかアニス。ここのチーグル共はライガルの住処を荒らした。だから、ライガル達がここに来た。原因はチーグルだ。ライガルは被害者だ。なら、ここを出て行くのはチーグルに決まってるじゃねえか」
「それじゃあ生態系が乱れるでしょうが!!」
「そうなのか? ルー坊」
 んー、と俺は唸る。
「まあ、乱れるかもしれませんね」
「ほら!」
 しかし、と俺は、
「チーグルの生態によると思います。見たところ、基本的に肉食ではないようですし、性格も温厚。チーグルに似た精霊がいないわけでもないですし、周囲へ与える被害もそれほど大きいとは――」
 暫くは人間が手を加える必要があるだろう、と付け足して言葉を締めくくる。
「ふふん、どうよアニス」
「あのですねえ」
 心底あきれたように。
「良いですか? このチーグルの森があるのはマルクト領なんですよ? そのチーグルの森にライガルを住まわせてチーグルをキムラスカに移動させるってことはマルクトにある一つの財産を勝手にキムラスカに渡すってことなんですよ? それだけじゃなくていろんな問題が大量に控えることになるんです。分かりますか? このままだとイオン様の席を脅かすことにもなるんです」
「ふうん、ならよ」
 イオンが腕を組み、
「ライガルを聖獣に認定すりゃあ良いだけだろ!!」
「何言ってるんですかアンタはぁぁああぁぁああ!」
 これには俺もティアも呆れを隠せなかった。おいおい、聖獣認定ってそう簡単に出来ることじゃないだろうに。
 しかしイオンは、
「良いだろ、ユリア様がうんちゃらする前はチーグルだってただの獣だったんだしよ、ならライガルを聖獣にしたっていいじゃねえか」
「馬鹿を言うのも程ほどにしてください! んな簡単に認められるわけ無いでしょうに!?」
「は! そんな無理は突きぬいてやるさ! オレに秘策アリ、だ」
「ああ! 嫌な予感しかしない!!」
 俺は頭が痛いです。
「なあ、ティア」
「何かしら、ルーク」
「俺たちは何でここにいるんだろ?」
「さあ?」
 ですよねー、と――、足音!? 
 外から、それももう入り口近くまで誰かが来ている足音が聞こえた。
「皆隠れろ!」
 俺が急激に叫ぶと同時にチーグルたちが一気に周囲に隠れた。
「アニス、導師を守れ、ティア後衛を頼む!」
 何かを感じたのか何命令してんだよ見たいなことは何も言わずに俺の命令は通った。
 俺は木刀を構え、
「――貴方達は一体何をやってるんですか……?」
 侵入してきた人間に問うた。性別は男性で眼鏡を掛けて長……髪。
「おお! ジェイド、遅かったじゃねえか」
「ははは遅かったじゃありませんよ導師。貴方が失踪してしまったおかげでどれだけ私が苦労したことやら」
「まあ良いじゃねえかよお、ジェイド――行くぞアニス」
 アニスとイオンがジェイドの方へ歩いていき、
「っつーわけで改めて自己紹介だ。オレはイオン。導師なんてものをやってる」
 知ってます。
「アニス・タトリンで~す♪ 導師イオンの護衛をやってます! よろしくねルーク様!」
 あ、猫被った。
「ジェイド・カーティスです。階級は大佐と言うことになってますよ、よろしくお願いしますよルーク・フォン・ファブレ殿?」
 まったく、侮れないなこの人は。
 この状況なら俺も自己紹介しないわけには行かない。
「初めましてルーク・フォン・ファブレです。よろしくお願いします」
「キムラスカ帰還まで護衛をやらせていただいてますティア・グランツであります。御噂はかねがね」
「ははは、私も名が知られてますねえ」
 二つ名持ちで大佐で皇帝の懐刀ともなればねえ、
「さて、キムラスカの方とダアトの方が何故ここにいるのかは後で問うとして――」
「おう、ジェイドそのことなんだけどよ――」
 イオンが先ほどまで考えていた計画をジェイドに話していく。
「どうよ、皇帝に融通してくんねえか?」
「ふむ、確かに下手な諍いを起こさなくても良くなりますし、兵への被害も少なく済むでしょう」
「だろ? それにチーグルの持ってるソーサラーリングを使えば意思疎通できるみたいだから一匹通訳のチーグルを持っていきゃ良いだろうしな」
「なるほど」
 ジェイドは眼鏡を押し上げた。
「ですが、それはどのような利がマルクトにあるのでしょうか? 貴方の言う計画では利益はどちらかといえばキムラスカの方が多いではないですか?」
「そうか? 聖獣の委譲なんてこれから行う和平交渉には良いカードだ。確かにダアトの力は段々と落ちてきてはいるが、それでもまだダアトは宗教の国として名声を得ている。俺の口添えもあれば一種の『贈り物』として捉えられるだろ。それに、この和平は必ず成功させにゃあいけんのだろう? カードは多い方が良いだろ」
「ですがねえ、長期的に見ればここにライガルが居座られると金がかかるのですよ」
「おいおい、金がうごかねえと市場もうごかねえだろ? それにライガルがここにいればエンゲーブに金が落ちる。そうりゃまた税で少ししぼりゃあ良い」
「マッチポンプですね分かります。と、そうは言いますが税をエンゲーブだけ上げるなんて事をすれば不平等になるんですよねー、まったく嫌になります」
 そうか、と、イオンは凄んだ。
「まあ、そう簡単にジェイドを落とせるわきゃねえよなあ」
 ふふふふ、と地獄のそこから出すような笑い声を上げてイオンは言った。
「おいルー坊、ジェイドにサインを送ってやれ」
 ――は?
「ちょっと待ってください俺のサインなんて――」
「ビショップ・バレンタイン」
「なぁ!?」
 眼鏡とか目とかがいろいろ光った気がした。
「くくく、俺は知ってんだぜ? ルーク・フォン・ファブレの裏の顔が今巷をにぎわせているビショップ・ヴァレンタイン先生だってなあ!」
「何でそれを!?」
「フフン、この前キムラスカに言ったときちーっとばかし伝手を使って調べさせてもらったのよ」
 何時の間に!? ってか間諜がいることを露呈した!? あ、ダアトだから良いのか? いやいや駄目だろ! そしてそこ! イオン、ふふん! なんて得意そうな顔してるな!
「か……」
 と、そんな何かを誇っているイオンの後ろ、ジェイドが体を震わせて、
「感激しました……!!」
 ワッツ?
 突如その眼鏡に陽光が反射した。都合よく。
「ええと、私ジェイド・カーティス大佐であります。一ファンとして貴方にお会いできて嬉しい限りであります!!」
 おい、何処で螺子を落として来たのだジェイド・カーティス。
「あ、握手してもらって良いですか?」
「え? ああ、うん」
 突如始まる握手会。滝の涙を流すジェイド。
「おお、もう一生この手袋は洗えません……!」
 いや、洗えよ。
「ではヴァレンタイン様はこちらへ」
「へ?」
「私達は今、和平の使節団としてキムラスカへ向かう途中でして――」
 その後延々とジェイドの語りが続き結局俺はタルタロスに乗艦することになった。ぶっちゃけ一瞬で言いくるめられたのでワケが分からない。ついでにティアもキムラスカに来ることになった。俺が父上に取り次いでおくから、まあ無罪的なことを主張しておくからダアトに戻って良いよって言ってもそういうわけにはいかないって断られた。全く持って律儀である。



 おまけ

・結局ライガルはここに住むことになった。暫くはマルクトの方でエンゲーブから食料を買い付けてライガルに渡すらしい。その後はチーグルがエンゲーブで働いて返すようだ。マスコット役として。



[22793] 漫画家ルーク
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:30
 俺は絶叫した。かのヒゲと名高い我が師匠が結婚することになったからである。しかも美人と。



 タルタロス内での出来事ダイジェスト



 さて、キムラスカまでは結局三日ほどかかるわけだが、その間俺は超超超VIP待遇で迎えられた。マルクトの兵士からも割と好印象だったようだ。行く先々でQ&S社のマルクト支店を建ててくださいという要望を聞かされたワケだが、まあ、それはこのマルクトとキムラスカの和平交渉が上手くいけばの話だからどうにも言えない。俺としては上手くいってほしいものだ。戦争とか怖いし。
 と、言うわけで俺は現在タルタロス艦内を散歩中であるジェイドから地図は渡されたがやはりこういうのは自分で見るから意味がある。流石に軍事的に機密な場所とプライベートな場所を除けば、であるが、それ以外ならば何処へでも行き放題だ。正直『知識』とは見知らぬ場所も多くワクトキが止まらない。機械って男の子のロマンだよな。
「おおー、流石新造艦だなあ」
 まだ真新しい廊下、天井は染み一つ無い。食堂にシャワールームも完備され、また娯楽施設も存在した。士気やらなにやらに配慮した設計らしいが、軍艦と言うよりは客船と言う見方も出来る。
「客船かあ……」
 そんなことを呟いていると俺の頭に様々なアイデアが思い浮かんでくる。おおおおお、なんか良い感じだ! ウン。
「こんにちはファブレ様。ご機嫌は如何でしょうか?」
 そんなことを頭で考えていると、いつの間にか兵士Aが前にいた。訓練された敬礼は鮮やかな動作とともに行われ、俺を魅せる。やはり良いよね、こういうの。
「あ、うん、こんにちは。機嫌は上々。こういうのを見て昂奮する辺り俺もまだまだ男の子なんだなあって思うよ」
「それはそれは。かく言う私も昔から軍艦等は好きで今でも昂奮していますがね」
「そっか、男なんて単純なものなのかもね」
 数日間程だがティアと一緒にいてそれは良くわかった。人間と言う同じカテゴリでありながらまるで別の存在のように思える。
「ええ。女性に比べれば遥かに単純ですよ」
 まあ、そうだねえとしか俺は返せなかった。
「そういえばさ、ジェイド大佐は今何処に?」
 これは肝心なことだ。このタルタロスをモチーフに小説を書こうと思ったら、現在この艦の責任者であるジェイドに許可を取らなければならない。無許可でやれば機密漏洩で和平がパーになる可能性だって出てくるのだ。
「ジェイド大佐であればまだ私室の方へいらっしゃるかと」
「ん、ありがとう」
 地図を懐から取り出し俺は歩き出した。



「ジェイド大佐、いらっしゃいますかー?」
 十秒かからずにドアが開いた。
「はいはいルーク様どのようなご用件で?」
 何かをきらきら輝かせたジェイドが目の前に居た。怖えよ。
「あ、うん、取り合えず結構重要? な話だから」
「そうでしたか、では中へ」
 促されるままに中へ入る。ジェイドの資質、というか艦長の部屋とも言える場のソファに俺は腰掛ける。差し出された紅茶は美味しかった。
 と、本題を忘れるところだった。
「さて、ルーク様、どのようなご用件でしょうか?」
「うん、実はこのタルタロスをモチーフに小説を書きたいんだけど――」
 良いだろか、と問う前に、
「是非お願いします!」
 頭を下げられた。ジェイドってこんなキャラだっけ?
 まあ、良いや話を続けよう。
「それでさあ、主人公をジェイド大佐に――」
「是非よろしくお願いします!!」
「あ、ウン」
 手を握られて言われた。はええ、そしてこええ。何この人スタンドでも使えるのか!?
「いや、まさか私がルーク様、いえ、この場合はヴァレンタイン先生の小説の主人公になるとは夢にも思っていませんでした。あ、出来上がった原稿は是非私に送っていただけるとこのジェイド・カーティス感激の雨霰です。――それで、その小説は一体どのような内容になさるおつもりですか?」
「あ、それは、秘密ってことで」



 俺は思うんだ。ジェイドさん、アンタ何処でワープロ手に入れた。まあ、もうツッコミ入れるのも疲れてきたから問わなかったけど。
「さて、書くか」
 夜まで掛けて描いたプロットを見る。
『名探偵・リジェイド・カーフィス』
 流石に実名はまずいのでもじった名前で出演してもらうことにした。内容は豪華客船で起こる密室殺人を探偵リジェイドとワトソン君役に近いアニエスのコンビで説いていくというものだ。勿論アニエス=アニスである。許可を出したのはジェイド大佐だ。うらむなよ、アニス。あと、強い希望で適役に薔薇を自称するオネエ系タカビー野郎を出して暮れとも言われたのでまあ、これはそのうち怪盗として、といったところか。
「ん?」
 軽くドアをノックする音が聞こえた。回数にして三度。規則正しく鳴り響く。
『ルーク、ちょっと良いかしら』
 ティアだった。最初のかしこまった感じは何処へやら。今では名前で呼び合う中に仲に鳴っている。……仲良くなったモンだよな、本当に。
 軽い笑いを起こしてから、
「良いよ、入ってくれ」
 ドアを開きティアが入室してくる。手には二つのティーカップとクッキーが乗ったお盆を持っていた。
「ん、それは?」
「夜更かししてるみたいだったから、ね」
「そっか、ありがとう」
 ワープロから目を離し、部屋の中央にある机の方へ。
「これ、入れたのはティア?」
「違うわ。訓練にかまけてたから料理は殆どする暇は無かったもの」
「ふうん」
 コーヒーを啜る。美味い。何と言うか、体の心からあったまる。入れ方が上手なのかえぐみというか単調な苦味ではなく複雑な苦味やコクが味覚を刺激する。下手な入れ方ではコクも何も無く、泥水とか汚水を啜っている気分になるから本当にそう思う。
「その、ルーきゅ」
 沈黙。しかし俺はうろたえない。
「どうした? ティア、改まって」
 場を流すことでこの微妙な雰囲気を流すことを選択する。女性に恥をかかせることは死罪級の罪であると庭師のベールが言っていたのだからそうなのだろう。
 ティアも俺の意図に乗ってくれたのか先ほどの事を一瞬にしてなかったかのようにしてから、
「その、今回のことは本当に御免なさい――、迷惑をかけたわ」
 頭を下げてくる。
 ああ、律儀だなあ。
「いや、本当にそれは良いから、ね?」
 実際は駄目なんだけど、さ、俺も人間なわけであり、情というものを持っているわけだ。当然、数日であろうと一緒に行動していれば、ね。あと、美人だし。男とは総じて美人とか美少女に弱いのである。ハニートラップってこの世界にもあるんだぜ?
「そうは言うけど……」
「だから、そう気負うなよ。少しくらい気を抜いた方が人生楽しいぜ?」
「でも」
 ああ、もう!
「良いからこの話は終わり! このまま話しててもずっと平行線なんだからさ!」
 パシン、と子気味良い音を手のひらで鳴らす。
「それよりも――」
 師匠(ベール)、俺、教初めて女性をデートに誘います。



 と、いうわけでキムラスカ帰還



「キムラスカよ! わぁたぁしはかぁえってきたぁぁあああ!!」
 と、言うわけで絶叫。すげえ気持ちいいわあ。何と言うか、心のそこから。
「では、行きましょうか」
「ああ」
 先頭は俺、その後ろにイオン(流石にあのぼろぼろの服ではないしグラサンもしてなければオールバックでもない)が来てアニスとティア。その後ろから大佐率いるマルクトである。正直、この配列はあまりよろしくないような気もしたのだが、案内と言う意味も込めてだそうだ。ジェイドさん、アンタキムラスカ来たことあるって言ってたやん。
 キムラスカの国民も、堂々と街中をマルクトの人間が歩いているのにあ、何、珍しい程度で終わらせてる辺り漫画の影響のでかさを感じた。多分TOEの影響じゃないか、と俺は推測する。ほら、インフェリアとセレスティアだって分かり合えたじゃん、最後。
 王宮までの道をずんずんと進んでいく。十数分の道程を経て到着。道行く人々に手を振るのは相変わらず疲れる行為だった。
「ルーク・フォン・ファブレ様のおなぁりぃ!」
 昨日のうちにジェイドから今日到着することは聞いていたので驚くことは特に無い。漫画家であっても一応俺は王位継承権を持っているので結構派手な出迎えだ。大きなファンファーレが響き、メイドに執事に使用人に貴族が総出だ。いくら金がかかっていることやら。
 中央廊下を行く。謁見の間の扉を開くと、既に左右へ騎士達が列を乱さぬよう、美しい隊列を持って並んでいる。あまり考えたくは無いが、マルクトの兵達が暴れだした時への備えと、後は持っている力の誇示である。無意味じゃね? と、言うのは素人の意見だ。
「良く戻ってきたな、ルークよ」
 王の言葉が間に響く。朗々とし、そして厳格な声だ。
「ハ、ご心配及びご迷惑をおかけしました事を真にお詫び存じ上げます!」
 前に三歩、片足を突き頭を下げて一言。
「良い。男児たるもの旅の一つもするものだ」
「もったいなきお言葉に御座います。叔父上」
 まあ、これはリップサービスであろう。しかし心配を掛けたのは事実だ。記憶を失ってからも良くしてくれた叔父上。父上に母上。使用人の皆。ナタリア。ガイ。少なくてもこれだけ、他にも国民でも俺を支持してくれている人や、漫画家の仲間なんかも心配しているはずだ。
「さて、ルークよ。私からもまだまだ言いたいことはあるが、私よりも話したいものを持っている者が存在する。わかるな?」
「ええ」
「クライゼル」
「ハ」
 横に控えていた騎士の一人が返事をした。銀の装飾が美しい鎧、実戦用ではなくこのような儀礼の場で使われる者を装着している。
「小隊を引き連れて屋敷まで護衛をせよ」
「ハ! 勅命確かに」
 同時、父上と母上が騎士の後ろにつき、こちらへ歩いてくる。
「さ、ルーク様」
「ああ」
 俺は最後尾につき、そして部屋を退室した。



「ああ、やっと終わったー」
 と、言うわけでお説教タイム終了である。家族の語らいとも言うが、父上――もう親父で良いか、は殆ど何も言わなかった。むしろお袋の方が凄かった。タルタロスに連絡できるならとっととしろ、とかうんたら。まあ、確かに連絡の一つもしなかった俺も悪いのかもしれない。
 にしてももう数日振りになるのか、俺の自室も。仕事場とは別の世界である俺の部屋。いや、元々半分はアッシュの、本当の俺の者と言って良いかも知れない。そんな結構複雑な事情を受け止めている自室だ。ああ、ベッドがふかふかだ。
「よう、ルーク」
 窓の鳴る音が響いた。
「今開くから少し待ってくれ」
 当然、ガイだった。
「よう、久しぶりだな」
 気さくな笑みを浮かべてすっと部屋の中に入ってくる。
「ああ、本当に久しぶりだな」
 笑ってみせる。
「どうやら元気見たいだな。良かった良かった」
「お、心配してくれてたみたいだな。ガイのことだからてっきり、お坊ちゃんには良い薬だ、なんて思ってるかと思ってたぜ?」
「ひでえなあ、俺薄情みたいじゃんか」
「冗談だよ冗談」
 ああ、こう軽口を叩くのも懐かしい限りだ。
 と、そういえば、
「ガイ、和平の方はどうなった?」
「あーそれか」
 ガイはバツが悪そうに、
「すまんな知らん」
「な!?」
「いや、俺もさっき帰ってきたばっかだし」
「何でだよ!?」
「ああ、実の事を言うと――」
 曰く、ナタリアに命令されて動いたのは良いものの、途中でルークがタルタロスに乗艦したからすぐ帰れ、なんて横暴な命令を受けてとんぼ返りしてようやく帰ってきたのがこの時間だったというわけらしい。
「まったく、この休暇は有給じゃないから給料入らないんだぜ? おーぼうだおーぼう!」
「ま、そこら辺は気苦労を察すよ。ご苦労さん」
 少し笑ってから、
「じゃ、俺は戻るよ。また明日な」
「おう、じゃあなガイ」
 俺はベッドに戻りまどろみの中に意識を落とした。



「おはよう御座います。起きてください」
 聞きなれないメイドの声なのにどこか聞いたことのある声に俺の朝は始まった。
「ああ、おは……」
「……」
「ティア、だよ、な?」
「うう……」
 顔を真っ赤にするティアは可愛かった……じゃなくて、
「何でそんな格好を!?」
「貴方の母上に、償う気があるのなら暫く屋敷で働きなさいって――、しかもそれに導師イオンもOKを出しちゃったからもう引くに引けずにこうなってしまったのよ」
 お袋、毒されすぎだ何読んだ。
 まあ、けど、
「うん、似合ってると思うよ?」
 いや、本当に似合ってる。そして何よりエロい。漫画で出したことのあるオーソドックスのではなくキムラスカ謹製特製メイド服は胸元がはだけていて実にエロい。その大いなる実りは眼福の一言に尽きる。あ、鼻の下が。
「ルーク……?」
「あ、なんでもないから気にしないでくれ」
 さて、男のロマンから目を離すのは少々惜しいが、俺も活動を開始しなければ。
 ……あ、勃ってる。



「師匠、お久しぶりです」
 さて、貴族のお勤め、と言っても俺のやったことは大体全て親父が処理したので改めてやることなんてもう一度叔父上に謁見するとか、ナタリアに只今とか言ってくるとか、ベールのハーブティー飲むとか、友人に挨拶するとかその程度である。
 んで、今何をやっているかといえばいつの間にかやって来ていた、といっても特に不思議ではなくて別ルートからやって来ていたヴァン師匠が今目の前に居るってだけであり、事実昨日の和平には出席してたみたいだ。ってか、モースの妨害が良く入らなかったよね。
「うむ、ルークの方も元気そうで何よりだ」
 互いに礼をする。その後は体をほぐして数度の組み手を行う。
 そして模擬戦だ。
「来い! ルーク!」
「ハイ! 師匠!」
 木刀で切りかかる。振りは大振りなものではなく小振りな、というと朝のティアのメロンを思い出すな、じゃなくてコンパクトなスイングで一振り。素早い振りは牽制にうってつけだ。
 当然とも言ってよいほどにこれは師匠に受け流される。一歩も動かずに俺の一撃を受け流す辺り流石だ。
 だからといって俺もやられっぱなしではいられない。体勢を立て直すのは素早く、動作は小さく、そして隙を見せず。
 ほう、と師匠は小さく笑みを見せた。
「やるようになったじゃないか」
「ええ、やられっぱなしは悔しいでしょう?」
 俺だって師匠がいないからといって訓練を怠ったわけではない。ガイと、騎士と、更にはタルタロスでの三日間はマルクトの兵にも頭を下げて訓練に参加させてもらった。簡単に負けてたまるかと言うのだ。
 息を吸った。精神を統一。気合は十分――!!
「魔神剣!!」
 アルバート流剣術特技、魔神剣。刃に音素を纏わせ、斬撃によって音素の波動を飛ばす技だ。漫画でもお世話になってます。
「甘い――」
 飛ばされたそれに当てるよう師匠は魔神剣を放った。俺の放った魔神剣と師匠の魔神剣が拮抗したのは一瞬だった。あっさりと、あっさりと俺の魔神剣はかき消されてしまった。これは――、
「剛・魔神剣だと!?」
 違うな、と師匠は言った。
「私のこれはただの魔神剣だ」
 ちい、流石にやる――!!
 拮抗にて威力が弱くなった師匠の魔神剣をかき消し、そして、
「双牙斬!!」
 近寄りざまに二連続の斬撃を見舞う。
「その程度か!」
 しかし俺の双牙斬はただの一刀に敗れてしまう。だが、まだだ、
「瞬迅剣!!」
 高速での刺突。しかし脳が一瞬にして結果を未来視させた。あ、これは無理だ、と。
 師匠は一瞬にして右へ。俺の刺突は掠りもしない。
 それどころか逆に――、
「終わりだ」
 ぺしん、と、俺の右手に一太刀を入れた。
 これで教の模擬戦は終了氏のであった。
 ああ、また負けちまったなあ。ってか、この人ラスボスなんだよね、どうしよう。
 へたり込みながらそう思う。
 師匠が俺の隣に座って空を見上げた。何かを思い詰めた表情で、
「なあ、ルーク挫折するってどんな感じだろうか」
「挫折、ですか?」
 言われてもどうもいえない。俺自身挫折といえる挫折は少ないし、そういう経験なら俺より師匠の方が豊富だろう。だから無難に、
「俺は――どうともいえません。まだ『挫折』といえるほどの挫折はしてないですから」
 それに、俺は貴族の息子で挫折とはまだほぼ無縁に位置にいるのだ。恋愛でもしていたら別なのだろうが。
「そうか」
 一言。そして息を呑んでから、
「なら、お前は挫折したならどう行動する?」
 ? 師匠は何かを俺に伝えたいのであろうか? ――ふむ、
「前を向きます。そして、進みます」
 そう、これが俺の答えだ。ゲームだなんだでも、俺が進むであろう可能性を見た。そして俺は自分を省みたわけであり、また自分のあり方をも何度も考えた。故に、俺は進むのだ。
「――そうか」
 師匠はふう、と息を吐いた。
「なあ、ルーク」
「はい、師匠」
「結婚するんだ」
 ――、
「ブっ!?」
 ゲホゲホ。
「そ、そんなに噴出さなくても良いだろう!?」
 いや噴出すよ。ラスボスが結婚するんだ、なんていったら誰だって吃驚だよ。ってか、挫折ってレプリカ大地計画のことなのか!?
「いえ、すみません。突然だったので吃驚して――、ま、まずはご結婚おめでとう御座います」
「ああ、ありがとう。実は先ほど国王と公爵夫妻に伝えてきたばかりなんだ。うん」
「そうなんですか」
 ああ、と師匠は言った。
「来月に式を挙げる予定だ」
「そうですか」
「是非出席してくれ」
「あ、はい」
 いや、親父とお袋に言った時点で俺の出席は決まってるじゃん。ってか、道理でヒゲが無いのか。人間変われば変わるのだな。
「では、私はティアにあってくるから今日の訓練は終わりだ」
 前後が繋がってねえ。
「あ、はい」
 そしてそそくさと歩き出していった師匠は突然こっちに振り向いて、
「なあ、ルーク」
「はい、師匠」
「私をお義兄さん、と呼んでくれても良いのだぞ?」
「ぶッ!?」
 タルタロスの話はちゃんと師匠にも伝わっていたようだった。



 お・まけ

・名探偵リジェイド――シャーロックホームズとか探偵モノ。
・おっぱお――けど作者的には尻が好き。あ、関係ない。
・魔神剣のくだり――DQダイ大のバーン様のメラのくだりをパロッた。



[22793] 漫画家ルーク 本編完結
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:34
 そして結婚式へ。



 やってきましたダアト。宗教地区ってのも伊達ではないね。超荘厳。
 俺もいつもの服ではなくて貴族のたしなみとばかりにスーツですよ? 動きにくいし何時襲われるかびくびくしてる。
「お」
 ティアもそうだ。
「あ、そんな見ないで――」
 俺を萌え殺す気ですかティアさん。
 まあ、見ないでという気持ちも分からないでもない。
 何時のもメイド服からクラスチェンジ。黒を基調としたドレス(当然胸元はばっさりと開いてある)に、お袋が悪乗りして貸したネックレスを下げ、当然の如く髪にメイクだってファブレお抱えの職人に頼んでセットされたのだから。
 ここ数週間で一気にメイド化が進んだティアとしてはこういった格好がこそばゆいのだろう。しかし、しかしである。こんな綺麗な格好をした美少女の恥らう姿はもう家宝ものだが、そうではないだろう、と。こう、もっと堂々としていた方が数倍増し可愛く見えるはず。あ、のろけっぽいな。
 ってか、ガイは何処に消えた。
「まあ、似合ってるんだから良いじゃん」
「でも、こんな高いドレスを汚してしまったら奥様になんて言われるか……」
「まあこれもお古の型落ち品なんだから――」
「あらルーク」
「母上ぇ!?」
 後ろには既に黒いオーラを発しているマイマザーがいた。後で折檻ね、なんて耳元で囁かれてしまえば俺ひるむしかないでしょうに。
 そんな俺の気持ちを露知らずか、笑みをティアに向け、
「気にしなくて良いのよ? ティアちゃん。元々それはクローゼットの中で消えていくかもしれなかったものだし、ね。また日の目を浴びることが出来てその子もきっと嬉しがってるから」
「ですが――」
「良いのよ! 今日は貴方のお兄さんが主役なのだから、その妹である貴方がしゃんとしなきゃ!」
「――はい」
 男にゃ侵入できん領域が展開されていた。なんだかなあ。ほんと。わけ分からんよ。
「あ、そうだ。私達もそろそろ挨拶に行かないと――ルーク、ちゃんとエスコートしてあげるのよ? 男の子なんだから」
「はいはい、分かってますよ」
「ハイは一回よ」
「……はい」



 突撃隣の新婚さん。ルークのししょー編。



「失礼します」
「どうぞ」
 相変わらずしぶい師匠の声が響いた。ドアを開いて入室する。
 そこにはいつもの師匠はいなかった。ヒゲは剃られ――、って言うのは一ヶ月近く前からか。黒いスーツは陽光を浴び、跳ね返し、そして役者である師匠を引き立てている。流石軍人であるとばかりに挙動に無駄なところは無く一挙手一投足が洗礼されている。
 それにしても、ヒゲの無い師匠はまさに別人だ。むしろこちらの方が断然良い。まさしく出来る男を体現しているようだ。
「こんにちは、師匠」
「ああ、ルーク。良く来てくれた」
「いえ、弟子が駆けつけないわけにはいきませんよ」
「そうか――」
 師匠は俺から視線を外した。
「ティア」
「兄さん……」
 この光景を見ると俺は少しドキッとしてしまう。本来敵対するもの同士で、あ、それは俺もだが、対面しているのだから。
「――結婚おめでとう」
 先に口を開いたのはティアだった。何かを決めたかのように一言。
「ありがとうティア」
 聖母、というのには男性であるというハンデが存在するが、それでも師匠の微笑みは慈愛あふれるものであった。ああ、そうか、師匠は敵対してても妹のことを愛していたのだから。
「教官――いえ、ジゼルさんを不幸にしたら赦しませんから」
「それは、怖いな」
 ジゼル・オスロー。偽名はリグレット。ティアの教官にして恩師。カンタビレと呼ばれる女性と共にティアへ多大な影響を与えた女性だ。
 師匠は少しだけ微笑んで、
「ルーク、ティア、ジゼルのところへ行ってあげなさい。喜ぶだろうから」



 突撃隣の新婚さん。ティアのししょー編

「失礼します」
「はい……どうぞ」
 そこには純白のドレスに身を包んだ女性がいた。知識の中では敵対し、そして死んでいった女性。しかしその悲壮な姿(しか俺は知らない)は何処にも無い。白無垢で、可憐なウエディングドレスに身を包み、美しく化生で彩られ、その存在感もさることながらユリアの再来にも思える女性がそこに居た。
「教……官……」
「ティアか?」
 俺が祝いの言葉を告げるより先にティアが言葉を発した。……やれやれ、俺が出るのは無粋、だよな。俺は何も言わずにティアの後ろへ。
 女性、ジゼルは笑った。美しい笑みだ。ヴァンがころっとやられてしまうのもわかるな、これ。それに、このジゼルさんの笑い顔はなんだかティアに似ていた。
 す、とティアが前に出た。少しだけ視線をあわせてから、
「結婚、おめでとう御座います」
「ありがとう、ティア。そして、大きくなったな」
「ありがとう御座います、教か……ジゼルさん」
「そうだったな、私はもうお前の教官ではなかったな」
 ああ、なんだか居にくいなあ。俺、異物じゃん。
「ん? そちらは、ルーク・フォン・ファブレ殿でよろしいかな?」
「え? ああ、そうです――、初めまして。オスロー――じゃなくてジゼル・グランツ殿」
 本当はフェンデとかそんなはずだったけど、今の師匠はグランツだし結局師匠は事実を話さなかったからグランツで良いのだろう。それにもうフェンデ家は無いのだから。
「ヴァンからは良く聞いている。不肖の弟子だと」
「それは手厳しい」
「フフ、冗談だ」
 く、食えねえなあ!
「その……」
 と、ティアが言葉を発した。
「じ、ぜ、る、、、ざ、ん」
 言葉が歪んだ。教官の――恩師の晴れ姿を見て来るものがあったのだろう。
「お、おめ、おめでと、、、、おめでとうございまずずう!!」
 堤防が決壊したのか一気に涙があふれ出た。わんわん子供みたいに泣いている。それを見たジゼルさんは、ふう、と息をついてから近寄ってきてティアを抱きしめ、
「こら、泣くな。まったく、泣き虫め、教官の晴れ姿を見て泣くとは何事だ」
「う、うう、でずが……」
「ですがじゃない。まったく、いつかお前の結婚式で泣いてやるから覚悟しておけよ? ――って、私が泣くことになるのも早いだろうが」
 こっちを見てジゼルさんはにやにやする。ああ、もう、食えないなあ!
 ぽんぽんとジゼルさんはティアの背を軽く叩いて、
「ほら、そろそろ行きなさい。また後で、ね」
「はい」
 すっかり泣くのを止めたティアがジゼルさんから少しだけ離れて頷いた。
 そして、退出。



「はは、また新しいティアの一面が見れたな」
「うう、穴があったら入りたい……」



 俺と俺の邂逅。偽造編。



 ッてなワケでホール。テーブルが並べられ、いくつもの料理が所狭しと並べられている。ところでこの料理はキムラスカのものだけではない。マルクトの物もあるのだ。
 さて、まあそれは置いておいて、だ、
「ねえ、アレ」
「ああ、分かってる」
 目の前にはアッシュが居た。いや、俺はまだ見つかっていないのだが、少し先、大体一〇mほど先の方にハニーブロンドの髪を持った女性、ナタリアに捕まっているアッシュが。ティアは俺の隣で驚いている。まあ、ルークが二人居るともなれば当然だろう。
 す、と、俺とティアは前に進んで行き、
「よ、ナタリア」
「ル、ルーク!? ルークが二人!? けど、この人は私のことをナタリアって……!?」
 あ、驚いてる驚いてる。
 俺は手を出し、
「え、と初めまして、ルーク・フォン・ファブレです」
 少しだけ何かを躊躇ったかのように手を出してきて、
「アッシュだ」
 手を握る。
 さて、と、
「少し待っててください」
 俺が向かう先は一つだ。



 と、言うわけで呼んできました親父とお袋。何かを隠すかのように二人ともバツが悪そうだ。
「さて、父上、母上、これが一体どういうことか説明してもらえるか?」
「それは、だな――」
 まあ、言いにくいだろうな。俺がレプリカでアッシュが本当のルークだなんて。まあ、もう俺は気にしてないけどさ。
 急激にギスギスしてきた空間はやけに居心地が悪い。
 しゃあないな。
「父上、言いにくいなら私が言いましょう」
「む――まさか」
 ふ、と俺はニヒルな笑いをして魅せて、
「アッシュは俺の生き別れの双子の兄弟なんですね?」
『え?』
 誰もがは? みたいな表情を浮かべた。よし、ここは一気に――!
「本来、ここに居るアッシュさんは俺のそっくりさん、世界には五人は顔が似ている人間が居ると言う位ですからそう考えるのが妥当でしょう……、しかし問題は髪の色だ。この髪の色が少々特別なのは俺も承知の上。血縁を疑うのは当然のこと」
 俺の(間違った)名推理をガンガン披露していく。後はアッシュと父上母上のアドリブ力がどれだけ優れているか、だ。
「だが、ならば何故アッシュの存在がファブレから抹消されていたのかが気になるところ――それは! 本来予言の上で双子が生まれてくる予定ではなかった! しかし、運命の悪戯なのか生まれてきたのは俺とアッシュ! つまり一人のはずが二人生まれてきてしまったのだ!! 当然、予言の上ではどちらかを殺さなければいけない。しかしそれをするのが忍びなかった父上母上はアッシュを、いや、俺を一旦預けたのだ」
「そ、それは何処へ!?」
 言い乗りだぜティア。
「さあな、そこはまだ分からない――が、本来アッシュが、いや本当は俺の方がアッシュだったのかな、まあアッシュが本来ルークとして育てられていたわけだが、そこで何かの事件がおきた。それが俺の誘拐事件と何か密接な関係があるのだろうな。何かの拍子に俺とアッシュが入れ替わらなければいけない事情が出来てしまったわけだ」
「な、なるほど」
 ガイ、何処から出てきた。
「アッシュがナタリアを知っているのは当然だ。幼いときにナタリアと遊んでいたのは俺じゃなくてアッシュであり、そして結婚の約束をしたのも俺じゃなくてアッシュなのだから」
「そ、そうでしたの……」
 ナイスだナタリアそのまま頼むぞ……、お前の幸せはお前にかかっているんだから。
「そしてアッシュが表に出てこれなかった理由もある。予言だ。この世界は予言に縛られているといっても良い。それゆえに予言で唱えられていないどちらかは表に出てこれるわけないんだ。そうでしょう父上、母上?」
 父上と母上は俯いている。罪を感じるのは後にしてくれ……無理か!?
「ああ、その通りだ」
 !? アッシュ! お前が神か!
「俺とルークは双子であり、そして本来俺がルークとして育てられるはずだった――」
「やはりか……」
 俺は分かったようなフリをしておく。
「あの忌々しい事件の日、その日は俺とルークが初めて出会った日でもあった」
 うわ! コイツサクセスうめえ!!
「だが、その日予言(スコア)を絶対とすやつ等が何処からか情報を聞きつけ、俺たちを攫っていった」
「なるほど」
「結局助け出せたのはルークの方だけだったがな、記憶を失っていたようだが。そして、俺は途中でヴァンに助けられそのまま預かられることとなったのだ……」
 ちょ、おま、それ攫った本人――!! てか、幼い頃の約束を果たすためにお前必死だなアッシュ!!
「今までは予言に縛られていたが、漫画が出てきて予言の力が弱まっていった今、俺は表舞台に出てくることが出来たのさ」
 コイツ俺より演技上手いよ。いや、アッシュちょっとなんで劇団とかに所属してないの? 
 フ、とアッシュは笑った。
「さあ、ルークよ、確かに今お前がルークであるが、本来俺がルークであったことを考えると俺が兄でお前が弟」
 故に、と、
「お前に俺を、お兄☆さんと呼ぶ権利をやろう!」
「嫌だね、誰が呼ぶか」
 すまん、俺、コイツをお兄さんなんて呼ぶのは絶対に嫌だ。
 まあ、これは冗談だとしても、
「父上、母上」
 俺はリアル灰になったアッシュを尻目に、
「後でちゃんとアッシュと話しておいてくださいね? 先ほどは一瞬で斬って捨てましたが、本当にアッシュが兄になる可能性もあるのですから」
「う、うむ」
 ふむ、これで大丈夫だろう。



 そして結婚式へ。



 てーんてっててーっててってーん♪ 荘厳なパイプオルガンの音色が響く。結婚のための賛歌、こちらの結婚式に使われるポピュラーな音楽だ。
 そこを歩いてくる新婦。花嫁。あ、ティアまた泣いているよ。
 無限の時間を感じるヴァージンロードをジゼルさんは歩いてくる。
 そして司祭の前にたどり着く。ヴァンとジゼルさんは数秒見詰め合ってから前方ユリア像へ、
 そして――、
「汝等、いかなる時、悩めるとき、苦難のとき、あらゆる試練を乗り越え、清く正しく死が二人を分かつまで、ともに夫婦であることを誓えますか?」
「誓おう」
「誓えます」
 こんなときまでヴァン節全開かっ! ってか、ジェイドさんなんでアンタが司祭をやってるんだよ! はまり役過ぎて怖いよ!?
「では、誓いのキスを」
 一瞬。
 ああ、まったく見てくる方が赤面するだろうが、師匠。
 目の前でディープやらかすなんて何考えてんですか!?
 たっぷり十秒くらいやらかしてから互いに口を離す。あ、絶対これ舌入れてたな。唾だらだら。って、ヴァン、あんた吸うとか何考えてんの。
 もうわーわーきゃーきゃー女性陣が凄いことになってるって!!
「では、指輪の交換を」
 そして左右の扉から銀のリングを持ったアニスとアリエッタ――アリエッタぁ!?
 俺の驚きなんぞなんのその、指輪を二人に渡す。ケースを閉じ、アニスとアリエッタは一礼、後方へ下がった。
 ヴァンはジゼルさんの手についているシルクの手袋を外して指輪を薬指に嵌めた。
 教会内をいっそう大きな歓声が包んだ。二人の門出を祝うにはふさわしい祝福ともいえた。
 ああ、もう、おめでとうだ師匠!! 幸せになってしまえ!!



 そしてお楽しみといえばブーケトスである。と、言ってもこれは男性が取ったら女性に大ブーイングだけど。
 やや後方に俺とティアが位置している。
 ぐっと女性人の息が呑まれた。表情が真剣すぎて怖いです。
「あ、」
 間抜けな声。俺の声。ブーケが投げられ。空を飛び。
 そして、
「あ、」
 またまた間抜けな声。それは、
「あああああ――」
 真っ赤になるティアの顔は、ティアがキャッチしたことを見事に表していた。
 そしてジゼルさん、ウインクするってことは確信犯でしたね、ふう。



「まったく、お幸せに、師匠」



 俺は、ふっと息を吐いた。
 ああ、もう、知識とか全く関係なくなったけど、こういうのも、ありかな。
 皆が笑っているハッピーエンドってやつも。



 太陽は、蒼の空に美しく輝いている。



 END



 おまけ。

・ガイは一体何をしていましたか?――他の使用人に混じって働いていました。以上。
・他のかませ……、六神メンバーは何してたんですか? ――普通に飯食ってました。ラルゴはアッシュに死ねビームを熱く送っていましたが。
・アッシュの設定とか――かなりいじらせてもらいましたよ。
・結婚式適当だな――いろいろすっ飛ばしました。申し訳ない。
・ティアのこととか――ご都合主義ですす居ません。
・アッシュの理由とか無理ありすぎ――いいんです、これでいいのです。
・ルーク漫画描いてねえ――あ。



[22793] 漫画家ルーク 外伝
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:32
 外伝、だ。



 ヴァンパパの受難。今日は一人で子育てよ編。



 私、ヴァン・グランツは双子の兄妹の子供が居る。時々ラルゴにいろいろ聞きながら男の子育てをやっている。そのつどジゼルに怒られるのは仕方の無いことだ。
 私の息子と娘を自慢すればきりが無くなる。それはも可愛いこと可愛いこと。目に入れても痛くないという言葉を考えた人間は天才だ。どちらも私とジゼルの特徴を色濃く受け継ぎ将来人目を引く存在になるのはまず間違いないだろう。当然、娘によってきたバカヤロウにはきつく折檻する必要があるだろうけれど。
 ああ、話がずれた。私の息子と娘がかわいいのは当然のことであるが、やはりこうなってくると教育に熱が入るのも当然だ。そのせいでジゼルと喧嘩をするときもあるが、ベッドの上で一晩大人のプロレスごっこをすれば次の日には問題なくなるあたり私もジゼルもまだ若い証拠だ。
 時々ルークとティアが遊びに来てくれるが、これまた二人に懐く懐く。そして息子がティアに、娘がルークに行くのを考えると少々むなしくなってくる。ああ、いつ義弟と妹が我が息子と娘の憧れの人となるのか、と思うと少々複雑だ。
 さて、そういえば私の職業を言っていなかったな。私は剣術同乗でアルバート流を教えている。門下生も居てそれなりに評判だ。奥様方に詰め寄られてジゼルに嫉妬されるのは少々困りものだ。
「さて」
 だがそんな私も困ったことがある。ぶっちゃけ私は子育てが苦手だ。どれだけ苦手かといわれると凄く苦手である。私は細いように見えてかなり筋肉質である。故に息子と娘を抱いてやろうとすると可愛さあまってパワー100倍になり押しつぶしてしまわないか心配なのだ。
 しかし、だからと言って抱いてやらねばミルクを与えられぬのだ。
「むう」
 しかも今目の前ではミルクを求めて泣き出している息子と娘が居るのだから困りものだ。ジゼルが普段いかに苦労しているか私は分かったよ。
「少々待っていてくれ、今ミルクを用意したからな」
 笑ってあやしながらミルクを見せる。余計に泣き出す我が息子と娘。おおう、私の顔はそんなに怖いか。また少しばかり生やしたひげはそんなに怖いか。
 ――ええい! 自分を誤魔化していないで覚悟を決めろヴァンデルスカ!! ラルゴが出来たというのに私ができないはずないだろうが!!
 覚悟を決めて息子と娘を抱いてやる。
 柔らかく、命の感触が私の腕に来た。
 ああ、と罪悪感を感じる。
 私の計画は頓挫した。しかし、もしかしたらこれを多くの無辜の民より奪っていたかもしれないのだ。それはいっぱしの、といってもミルクをまともに上げられぬ情けない親であるが、それでも我が子を見ると余計にそう思うのだ。
「ああ、大丈夫だ。怖くは無い怖くは無いから」
 涙があふれる。私はこうも涙もろい男だったのだな。
 哺乳瓶が空っぽになってから、一旦息子と娘を床に置き、そしてもう一つミルクを持ってくる。
 そして娘に与えた。
 ミルクを呑むその音はまるで命の胎動に思えた。



 さて、何故私がこんなことをしているのか、それは今日の朝までさかのぼる。



「ヴァン、今日は頼みたいことがあるのだが良いだろうが」
 朝、朝食を取っているときにジゼルが唐突に言った。
「ふむ、一体どうしたんだジゼル」
「ああ、実は……」
 最近は専業主婦をしていたのだが、どうやらかつての教え子(ティアではない)より助っ人の要請が来たという。
 私も武術の道場で師範の肩書きを持つ身であり、快く送り出したわけだった。



 と、言うのが朝の顛末になる。
 その後はつつがなく朝食を取り終え、食器を洗い、洗濯を行ったわけである。元々こういう自炊はしなければならない身だった故に、多少さび付いてはいたがそれほど苦になることはなかった。
 しかし――問題はそこからであった。
 我が子が泣く泣く。凄い泣くのだ。私はジゼルに普段のあやし方を聞こうとしたのだが、残念ながら今は出かけていて居ないのだ。
 助っ人を呼ぶために音話(遠くまで声を飛ばせるものらしい)を使いルークを呼び出そうとしたしたのが、生憎と今どこかに出かけているのだろう。お義兄さんと呼ばれる日も近い、か。うむ。
 と、言うわけで仕方ないからシンクに助成頼んでみようかと思えば何時の間にやらアリエッタとデートに行っている。
 アッシュもキムラスカの姫とどこかに逢引しているようだ。
 そしてラルゴはそれをとっちめに行くとか何とか。
 ――駄目だ。ジゼル以外は役に立たん。
 おっと、のろけてしまった。
 まあいい。それよりもおしめを変えてやらねば、って、ジゼルは二人のおしめを何処に置いている。わあ、また強く泣き出した!? 早くせねば!!
 こうして私の慌しい遁走劇が幕を空けたのだ。



「ミルクを飲ませたらゲップをさせること」
 母親向けの雑誌を片手に二人の背を交互に叩く。む、なかなかしないな。だからと言って力を強くするわけにもいかない。
 それでも根気良く背を叩いてやっていると、ようやく小さくけぷぅ、と何かを吐き出す音がした。ふむ、とりあえずひと段落か。
「後は昼寝をさせるだけ、か」
 窓越しに外を見る。快晴。接敵したならばまず私がイニチアシブを取れるだろう。――息子と娘の前で少々物騒なことを考えてしまったな。
 さて、
「では、行こうか」
 私は二人を抱えてベッドに向かった。



「ただいまー」
 ジゼルの声がグランツ亭に響いた。
「む? 散歩にでも出かけているのか?」
 ジゼルは呟くも、もう周囲は真っ暗でありこんな遅くまで散歩をするはずも無いだろう。夜は気温が下がり、ヴァンは体が出来ているからともかくとして、まだ赤子の二人が風邪を引く可能性が高くなるのだから。
 あ、とジゼルは何かに気づいたかのように手を打った。
 ブーツを脱いでそそくさと二階に向かう。
 寝室の方に行けば、
「やっぱり」
 ジゼルが見たのは微笑ましい光景。手に絵本を持ったまま椅子に座って寝ている愛する夫。ベッドの上ですやすやと寝ている愛する我が子。
「まったく」
 寝相が良いのだから一緒に寝てあげれば良いのに、とジゼルは思う。が、無理なのだろうなあ、とも思う。
 ヴァンという男は臆病な男だから。
「さて」
 ジゼルは音も立てずにドアを閉めた。この空間を壊すには忍びない。それに時間は夕食時だ。少し遅くなるが夕食でも作ろうか。ゆっくりとした足取りでキッチンへ向かった。



 おまけ

・ラスボスが幸せになりすぎじゃね? ――俺的には師匠も結構どん底の人だったと思っているから『普通』の幸せを掴んでも良いんじゃね? と、思ったしだい。



[22793] 漫画家ルーク 外伝
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 13:34
 外伝だぜ!



 後付的蛇足的なちょっとした邂逅。



「うづう……」
 ルークはうめきながら目を覚ました。頭が痛いなあ、と思ったがそれはすぐに引いていく。特に記憶を失ったとかは無い。
 今日、突然強烈な頭痛が来た。そして倒れた。全く持って不愉快であった。
「ってか、ここ何処?」
 さて、目を覚ましたというのにルークの視界には何も無かった。真っ白な空間がただただ広がっているばかり。殺風景この上ない。
 それにしても、何故今俺はペンを持っていないのだろうか、とルークは思った。こういう白い空間を見ていると、どうしても何か落書きをしてみたくなる。もはや性だ。
『よう』
「!?」
 声が聞こえた。後方より、
「お、俺!?」
 自身と同じルークの声が。そして同じ『ルーク』の姿がそこにあった。
『おお、驚いてる驚いてる』
 嬉しそうに笑う『ルーク』。しかしルークは不機嫌そうに、
「お前は一体何者だ」
 言った。『ルーク』は笑い、
『お前だよ、ルーク、ってか俺の半身』
「何……!?」
『まあまあ、事情は今順を追って説明してやるから落ち着けよ』
 ふふん、と得意そうに『ルーク』は胸を張った。野郎がはっても嬉しくは無い。
 だが、事情は気になるルークはしぶしぶながら話を聞くことにした。



「んで、お前は一体何者なんだ?」
 口火を切ったのはルークであった。虚偽は赦さぬというように強く、そして圧迫するような口調だ。
『そーだなあ、俺はお前って言っても納得しなさそうだしな――、うん、だからこう言うよ、俺はお前の記憶の半分だって』
「どういうことだ」
 難しいねえ、と『ルーク』は呟き、
『なあルーク、お前って本当は知らないはずの知識を持っているだろう?』
「――ああ」
『その知識の元々の持ち主が『俺』なのさ』
「なあ!?」
 驚きをルークは隠せなかった。だよなあ、と『ルーク』は、
『まあ、驚くのも無理は無いぜ? 俺も驚くだろうなあ、と思ってたからさ』
「――」
『おいおい、そう睨むなよ。俺は男に睨まれてあふんあふん言う性癖は無いんだから』
「や、やかましい!!」
 『ルーク』は笑う。
『ま、ほんのちょっと説明長くなるけど聞いてくれや』
 ルークは真剣な表情を浮かべた。
「ああ」



『まあ順を追えば何で『俺』が生まれたかを説明することになるのかねえ』
 ふむ、と『ルーク』は自身の顎をなでた。む、と何かを思いついたかのように目を細めてルークに一つ問うた。
『俺はな、ルークが実験で生み出されたときに死んだらしいんだよね』
「な――」
『驚くなよ、って無理か。まあ、驚きたければ驚くと良いぜ? んで、まあ死因は交通事故。居眠り運転の軽乗用車がものすごいスピードで俺に衝突。即死したみたいでねえ、痛みも何も感じはしなかった。気持ち悪い浮遊感はあったけど』
「……それで?」
『んで、目を瞑って開いたら俺はお前と合わさりかけてたのよ。いやあ、吃驚だったぜ? 漫画の画材を買いに行ってたら死んで輪廻転生を味わおうとはなあ、ってなかんじで。だけどよお、世界はそううまく作られてるわけじゃなかったらしいね、『俺』とルークが合わさろうとしたらどうにも反発すんのよ、ま、俺が入ったらルークは消えるかもしれないんだから当然だし、元はアッシュだからな、ある意味当然だったのかもな、俺が反発されるのは』
「そうか」
『結構反応が淡白なのな、いいけどさ。――それで、暫く俺とお前で肉体の奪い合いをしてたわけなんだけど、俺は結局奪い合いに負けて精神体になっちまったのよ。ま、それでも俺はルーク、お前の精神の一部を持っていった。代わりに俺の精神の一部もお前に取られたけどな』
 んで、と『ルーク』は、
『そのお前の持っている本来持ちえぬ記憶――後は言いたいこと、分かるだろ?』
「ああ、この記憶はお前のものでもあるって言うんだな?」
『BINGO! その通り、流石俺でお前、頭の周りがハンパじゃねえ』
 褒められてちょっとだけ嬉しかったのは秘密だ。
『んで、その後俺は消えちまうはずだったんだよ。だけど俺はどうしても消えたくなった。消えるってのが怖かったからな』
 『ルーク』はだからよお、と、
『俺はこの世界と同化することに決めたのよ』
「決めたのよ、って、簡単に言ってくれるな……」
『仕方ねえだろ? 適当にやってたらできちまったんだから』
 それでいいのか世界。
『と、ま、それで俺は世界と同化しちまったんだけどよ、そこで凄いことが起きちまったのよ』
「どんなだ?」
『聞いて驚けよ? 俺はなあ、七つある音素の上位になっちゃったんだよ』
「ぶふううううううううう!??!」
『良い驚きっぷりだな、ルーク。俺も最初は驚いた』
「げほげほげほ……」
『ま、続けるぞ? 俺だってどうにも混乱したが、驚くことはねえ、俺一人で七つの音素を独り占めしただけなんだからな』
「それを簡単に言うなや!」
 普通は無理だろう、とルークは叫んだ。
『ま、普通じゃないってことで納得しておけ。――んで、俺は七つの音素の上位になって勝手気ままに音素を扱える立場になったんだけどよ、残念ながら俺から大規模な干渉は出来なかったんだよなあ』
「よ、良かった」
『ひでえなあ。だけど俺はある意味音素、この場合は第八音素とでも言えば良いのか? になってやばいこと知ったのよ』
「それは――」
 ルークの頭によぎるものがあった。
『そ、この世界の崩壊が予言で詠まれてるってことだ。ま、ヴァンが動く要因の一つでもあるな』
「やはり……」
『いやあ焦ったぜ。この世界が崩壊するなんて知っちまったんだからな。嘆きまくったぜ、最初は』
「だろうな。俺もきっと同じ行動をしてた」
『だろ? でも、俺は動いたんだよ。なんたって俺は自己愛の塊だからな』
「自己愛、ね」
『滅びの予言の改鋳とかマジ大変だったぜ?』
「お前は何やってるんだぁ!!」
『良いじゃねえか、別に何が不利益になるわけでもねえんだからよ。っと、んで、俺は預言の改鋳作業に取り掛かったわけ。とりあえず滅びの預言のところだけを必死こいて変えていったのよ』
「大変、だったんだな」
『ま、な。それけじゃねえ、世界を滅ぼそうとしてる人間、直接でも間接でも俺はどうにかしなきゃならなかったわけだ。ま、間接的ってか預言偏向の奴等は預言を改鋳しときゃどうにかなる。だけど、ヴァンみたいな奴はそう簡単にはいかねえ。そいつ等をどうにかしねえと、折角預言を改鋳してみたり滅びの未来を変えてみても何の意味もねえ、だから俺は考えたんだよ』
「何をだ?」
『俺の下位である音素を使って精神に干渉。つまり、本来ローレライの奴がお前に行ったテレパシーみたいな感じでヴァンの精神にちょっとばかし干渉したんだよ』
「お前は何やってんだ!!」
『まあ、怒るなよ。けど俺は原作ローレライみたいに強く干渉できるわけじゃない。預言への干渉はそこそこ上手く出来るが、人への干渉は下位の音素を介さないと出来ねえからな。だからちょっとだけヴァンに『優しい気持ち』を掘り出してやったのよ。目的のためならなんのそのって所にな。ま、思った以上に上手くいって少しヘタレにしすぎた部分もあるがな』
「なるほどね」
『んでもって、俺は必死こいて預言の改鋳だとか滅びの回避に勤しんだのよ』
「ありがとう。おかげで救われたんだな」
『照れるぜ。っと、それで何で俺がお前をここに呼んだか説明しないといけないな』



『滅びの回避が新たな滅びを呼んじまったんだよ』



 ルークは言っていることが理解できなかった。何を言っているのだ、コイツは、と。
『ま、わけわかんねえよな。俺だって唖然とした。まさか俺自身が滅びの元凶だとは思いもしなかった』
「それって……」
『ま、さっき俺が言ったけど俺は七つの音素の上位に当たるんだわ。だけど俺がそうなったときに俺は七つの音素に『鍵』を掛けちまったんだよ。おかげで滅びが新しく出来やがった。世界のバランスが崩壊して星が駄目になるってさ』
「ど、どうにかできないのか!?」
『だから、お前を呼んだのよ』
 『ルーク』は一度指を鳴らした。すると、まばゆい光、甲高い音、ともに一つの剣が現れた。
 そして、それは――、
「ローレライの鍵、だって?」
『違うな。俺が生み出したもんだからローレライの、じゃねえ。鍵であることには変わりないがな』
「それって」
 ふ、と、『ルーク』は笑った。
『ルークそれで俺を斬れ。そいつは『鍵』、そして俺は『鍵穴』だ。それで俺を斬れば音素は開放され滅びは今度こそ、少なくとも星の寿命やら何やらが来るまでは少なくともなくなることが約束される』
 けど、とルークは叫んだ。
 思うのだ。目の前の『ルーク』はいとも簡単にいろいろ言ったが、本当はそんなあっけらかんと言えるものではなかったはずだ。だというのに、ここで消滅などあんまりではないか。
『おいおい、何考えてんだよお前。俺は消えるわけじゃねえぞ?』
「え?」
『俺はお前と同化すんのよ。いや、元に戻るってのが正しいのか? ま、体を持ってるお前が俺の意識を上書きするだろうけど、それでもただ元に戻るだけなんだよ、結局はな』
「だ、だけど」
『おいおい、ここまで来て甘ちゃん宣言か? ったく、もって行くところを間違えちまったかね?』
 はあ、と、『ルーク』は息をつく。
『ったく、俺が死ぬわけじゃねえってのに、何が不満なんだよ。俺が消えることか? ――なら』
 『ルーク』の手には一つの剣が握られた。ローレライの鍵に似た剣だ。
『テメエの体。殺してでも奪い取る』



 剣撃音が聞こえる。刃と刃の合わさる独特の金属音だ。
「双牙斬!」
『双牙斬!』
 二連続の一撃から、
『列破掌!』
「列破掌!」
 気を収束した一撃に、
「崩山脚!」
『崩山脚!』
 蹴りが空中にて合わさり、
「魔神剣!」
『魔神剣!』
 本来覚えるはずの無かった波動が撃たれる。
『流石俺だぜ! やるねえ!』
「もう止めろ! こんなことをする必要が何処にある!」
『あるんだよ、俺にはなあ!!』
 袈裟の一撃と横薙ぎの一撃が斬り紡がれる。
『瞬』
 声が出た。それは高速の一撃。
「迅」
 並ぶものが無いほどの速さを持つ刺突。
 重なる。
「剣!」
『剣!』
 『ルーク』は笑っていた。



 そのローレライの鍵に似た剣は腹部を突き抜けていた。



「お前――」
『ったく、本当に甘いねえ。原作初期の大部分を持っていってしまったからかね』
「何で、こんなこと」
 血は滴らない。代わりに剣の傷口から段々とひびが入っている。
『返すぜ、お前のモンだ』
「バカヤロウ! 何で!」
『世界が死なれちゃ困るからだよ、ばーか』
 それだけ遺し、『ルーク』は光になっていった。
「クソッタレ、バカヤロウ!! 何でそうやって死ぬんだ馬鹿があああ!!」
 ルークの涙は途切れない。



 ルークは超振動を扱えるようになった。
 ロスト・フォン・ドライブ(真)を習得した。



「あ」
 目を覚ました。長い夢を見た。こびりついたかのように離れない。
 ふかふかのベッドの上にルークの体はあった。
「そっか、俺は――」
「ルーク!!」
 扉が開いた。馬鹿みたいに大きな音を立てて開かれ、そこには一人の少女が居る。
「ティア」
「倒れたときは、本当にどうしようと思ったんだから――」
「御免、心配かけたみたいだな」
「まったくよ」
 すまんすまん、とルークは謝ってみせる。
 ――なあ、『ルーク』お前もここに居ればきっと楽しかっただろうな。
 そうは思うがきっとその声は聞こえていないだろう。
 世界が滅びに瀕していたなど思えないほどにゆったりとしたこの時間が流れていく。



[22793] 漫画家ルーク 外伝
Name: navi◆279b3636 ID:d4bafc17
Date: 2011/02/01 15:32
 音素ネット、と言うものが存在する。音素帯を介して世界をつなぐ通信網だ。
 これが作られてもう五年になる。初期、ルーク・フォン・ファブレの発案によりキムラスカ、マルクトの両国間で提携し製作され、今や世界の通信網として活躍している。
 さて、こんな便利なものにQ&S社というかルークが食いつかないはずもない。
 『マイソロジーオンライン』
 ルークが過去に連載していたテイルズ・オブ・ザ・ワールドを基礎として作られたネットゲームだ。
 当然、このネットゲームはまたたく間にオールドランド全土に広がった。
 ルーク(ビショップ)をはじめとする漫画家陣をはじめとし、豪華な面々が製作にかかわっていったのだから。
 


 外伝・ネトゲ編



・注意、ネトゲっぽさを出すためにあえてシナリオ形式にしています。



『soldierさんがログインしました』
“soldier”
[あれ、まだ俺一人?]
[遅かったじゃん、sやん]
[あ、皇帝さんお久ぶりっす]
[おうsも久しぶりだな]
[皇帝さんいい加減その略し方やめてw]
『メガネさんがログインしました』
「ちわーww」
[あ、メガネさんちわっす]
[皇帝がいるとは珍しいですねエww]
[最近仕事が忙しくってな]
[そりゃ大変ですネ]
[けえっ、人ごとみたいによぉ]
『リオンさんがログインしました』
[おひさ]
[お、リオンさんもログインしてきた様ですネ]
[ってことは珍しくアドメン勢ぞろいってか?]
[そっすね]
[のようだ]
[じゃ、久々クエでも受けてみるか?]
[おk]
[良いですよー]
[お願いしますヨ]



[受けてきたぞー]
[ちょ、おまwwwww]
[皇帝さん欲張りましたねヨムルガンド討伐とか]
[俺らだったら行けるって]
[ういー]
[リオンはどうよ]
[かまわない]
[おk、じゃあ準備して出発な]



 洞窟フィールド。
[ヨムさんキター]
[行くぜオラー]
[ちょ、皇帝さん!?]
[重騎士だから問題ないだろ]
[そういうもんだい!?]
[取り合えず補助かけときますヨ]
『シャープネス』
『バリアー』
『皇帝さんの攻撃力がアップしました』
『皇帝さんの防御力がアップしました』
[メガネサンクス!]
[イエイエ]
[私達も行く図、s]
[だぁから、その訳し方はやめろと(ry]
[オラおらー]
[はーい、魔法撃ちますから放ってー]
[ちょ、メテオスとかww]
[巻き込まれる非難非難]
『メテオスウォーム』
[ぎゃー]
『皇帝さんがダウンしました』
[あ、皇帝さんが!?]
[私がリザかけしとくさ]
『リザレクション』
『皇帝さんが復活しました』
[さすがパラディン!]
[メガネ、テメ、コラ]
[まあまあ]
[ってか、まだヨムさん死んでないですって]
[畳むぞs]
[了解ッす、ってだから(ry]
『獅子戦哮』
『散沙雨』
[ナイス二人! ってなわけで俺もっ]
『崩龍衝裂破』
[キター!]
[キター!]
[キター!]
[はもってないでお前らもやれやああ!]
[了解ー]
[わかりましたヨ]
[わかった]
『驟雨双破斬』
『インディグネイション』
『幻魔衝裂破』
『割破爆走撃』
『ヨムルガンドがダウンしました』
[終わったー]
[終わったー]
[終わりましたネ]
[ム……う?]
『リオンさんがアダマンタイトを手に入れました』
[……]
[……]
[……]
[さて、報告に行こうじゃないか]
[待て屋コラ]
[殺してでも――]
[――奪い取る!!]
[ちょ!? 仲間キルとかないだろ!?]
[ふwざwけwんwな!]
[さあ、よこせー]
[ごめんこうむる!!]
[さてサンダーボルトの準備を]
[やめろ]
[止めろやコラ]
[何してるんすか]



[クエ報酬げっとー]
[ありがとうございますー]
[確かにいただきましタ]
[ウム]
[さて、次は――お?]
[どうかしたんスか?]
[ああ、クソ臨時の仕事が入っちまった。わりぃ、先落ちるわ]
[乙かれー]
[お疲れっした―]
[乙]
『皇帝さんがログアウトしました』
[どーします?]
[皇帝ぬき、って言うのもですネー]
[名残惜しいが今日はここで止めておくか]
[わかりゃした]
[ですネ]
『メガネさんがログアウトしました』
『soldierさんがログアウトしました』
『リオンさんがログアウトしました』



「ふう」
 パソコンからルークは目を離した。長時間目を酷使したせいで充血しているようだ。
「さて、仕事するかな



 おまけ
・soldier・双剣士=ルーク――チェスの駒から。
・皇帝・重騎士=ピオニー――まんま。
・メガネ・ビショップ=ジェイド――メガネだから。
・リオン・聖騎士=ラルゴ――黒獅子で獅子=リオンとなるため。

これはマイソロジーオンラインの辞典である。
以下いくつか抜粋

・アダマンタイト
 レアドロップ品であり、最強装備を作るには欠かせない素材

・アドりビトム
 組合の意味。同じ目的を持っていたりする物同士がなる。
 現在大きなアドりビトムが四つ存在する。

・インポ野郎
 前線に出ない前衛職のこと。叱咤の意味も込めて言ってあげよう。
 使用例。
 ・おい、この戦士前に出てないぞ。
 ・このインポ野郎。

・美しい。
 召喚精霊であるウンディーネ様とセルシウス様をほめたたえる言葉。

・ウンディーネ
 水の精霊。セルシウスと人気を二分している。だいたい凌辱同人の対象にって。ウンデールにされたりする。産卵同人誌はきっとこいつが一番多い。
 けど、美しい。

・エロシウス
 やりかた。
 1・ソーサラーを一人用意します。
 2・モルボル(触手を持つモンスターで表面には粘液が)が居るフィールドに行きます。
 3・セルシウスさんを召喚します。
 4・NPCであるセルシウスさんにわざと麻痺を掛けます。
 5・触手に縛られるセルシウスさんが……!!
 6・ジタバタ暴れるセルシウスさんはマジエロス。

・おっぱい
 説明不要だが、おっぱい。人類の至宝である

・カッパーマトック
 初期にお世話になる品。ゴールドを使えるようになっても愛用するプレイヤーは多い。

・格闘家
 素早いフットワークと、繰り出される拳撃を武器とする職……であったが、装備できる防具が後衛装備か軽装しかなく、前衛にでると真っ先にやられてしまう。しかも、攻撃自体が微妙に軽いため、使い勝手もあまり良くない。
 ついたあだ名がカミヒコーキ。三大不遇職の一つである。

・気。
 魔力とは違い、特技に使われるパワー。

・ぐーぱん
 格闘家の攻撃を罵った物。理由は格闘家の項目を参照。

・ゲイ・ボウ
 槍系武器の一つ。名前で不遇を買っている武器の一つ。類似品にゲイ・ジャルグとゲイ・ボルクがある。

・棍棒
 木を切り出して作った鈍器。銅の剣より強かったりする初心者戦士に必須。

・さんをつけろよクソ野郎
 アドりビトムマスターに対してため口をきくと言われる。最悪首をコキャッとされるかも。

・死ね、ばーか。
 調子に乗った重騎士に対して言ってあげる言葉。今後の驕りによる死亡率や、良いコミュニティ成立のために慈愛を込めて言ってあげよう。
 使用例。
 ・フン、この__を倒せたのは俺のおかげだな。
 ・死ね、ばーか。

・重騎士
 重装備をまとえる皆の盾役。一人で前線を維持できたりするほか、多少低い魔法防御も味方が補っておけば全然問題ない。聖属性の武器を持たせておけば霊属性のモンスターも物理で殴れる事が出来、まさに鬼に金棒。
 ただし、この性能が災いしてか、重騎士でマナーの悪いプレイヤーが多いのも事実である。

・尻
 おっぱいと共に男を虜にする存在。尻神様がこの世に顕現するのはいつの日だろうか。

・スケルトン
 聖属性での攻撃でしか倒れず、色々と厄介。

・セルシウス
 氷の精霊であり、ウンディーネと共にファンが多い。同人誌だと大体エロシウスにされたり、ショタシウスにされたり、挙句の果てにはウンディーネとレズシウスになる。
 その美しさにはただただ息の漏れるばかりだ。

・ソーサラー
 精霊使い。居ると便利。
 大体エロ方面に使われる。

・タコ
 モルボルと共にセルシウス&ウンディーネを捕縛させる敵。
 野郎どもの股間の味方。

・チーグル
 マイソロジーオンラインのマスコット。女性ファンが多く、獣姦同人誌ではライガルと共に多い。腐女子の皆さまには大体チーグル×ライガルかその逆がされる。

・ツバサたん
 マイソロジーオンラインのアイドル。追っかけが多数いる。ネカマだと悲しい。

・テキーラハウス
 世界の何処かでテキーラを出してくれる店らしいが誰も見た事がない。ガセだと評判。

・とばっちり
 モンスターを攻撃した魔法に巻き込まれること。

・ナパーム
 アイテムの一つ。炎属性。威力が高く、戦士系アドりビトムだとかなり重宝する品。

・忍者
 汚くなんかないですよ? と、言うのは置いておいて、素早さや回避率はダントツで高い。シーフからの上級職である。シーフの上級職にはレンジャーもあるが、大体忍者が選ばれる。

・ネコ。
 かわいい。

・ノーム。
 土の精霊。モグラっぽいが、モグラ呼ばわりされると起こる。グランダッシャーを使うが無駄に強い。
 クエストにて戦う事が出来る。精霊なのに。

・ハンドルネーム
 ネット上で使われる仮初の名前。

・ヒール。
 初期の方で後衛職が覚える魔法。これがあるだけで戦闘がかなり楽になる。

・フライドチキン。
 料理の一種。初期の方から作れて、なおかつコストパフォーマンスも良く冒険者が良く食べる料理。

・屁こき野郎
 前線にでる後衛職の総称。後衛が前に出ると大体ろくにならない事を体現してくれる。
 使用例。
 ・あ、あの魔法使いまた前に出てる!!
 ・あんの屁こき野郎が!

・ホバー
 移動方法の一つ。フィールド上の状態以上にかからなくなる。

・魔法使い
 後衛職において人気の職業。その威力の高い魔法が魅力だが、力が弱く大体一人だとどうにもならない事が多い。故に前線にでるパーティが呪文を使う時間を稼ぐ。
 コミュ障のやつがなってはならない職業。

・魔法剣士
 三大不遇職の一角。剣技も魔法も中途半端で、何故実装されたのか良く解からないとまで言われる。こいつが日の目を浴びる事は来るのだろうか。

・ミックスジュース
 何がミックスされているのかわからないジュース。

・村雨
 剣士に装備させたい剣第一位の剣。持っていると皆の注目がひける。

・メディック
 大体は僧侶の事を指す。回復状態回復復活と一式揃っているからである。

・モンスター
 マイソロジーオンラインにて跋扈する魔獣。大体オールドランドに居る物から過去の文献から想像された物までさまざまな種類がある。

・やらないか?
 クエストに行く誘い文句。
 使用例。
 さあ(クエスト)やらないか?

・ヨーデル
 魔法剣士を使うプレイヤー。諦めない人であり、いつか日の目を見る為に頑張っている。

・ラスト
 最後の敵に対して大体言う言葉。

・リザレクション
 僧侶の上級呪文。倒れたメンバーを生き返らせれるが、詠唱が長く、一人でいるとほぼ確実にやられる。

・ルーク・フォン・ファブレ様
 マイソロジーオンラインの考案者。時々ログインしていると言われているが真相は解からない。

・レイ
 聖属性の呪文の一つ。下級呪文なのに必要魔力が高めで使いづらい。

・ローパー
 モンスターの一種。触手を落とす。妄想を膨らませてくれるモンスター第一位。


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