<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[22278] 〔習作〕 平凡を望む (現実→リリカルなのは)  <完結>
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/06 20:18
現実からの転生者です。
初投降です。コメント貰えると嬉しいです。



[22278] 1話 目覚め
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/01 20:43
目を覚ました時に俺は見知らぬ場所にいてベットに横になっていた。
頭痛がひどい--ぼやけながら思考が鈍っている頭で考えてみる。

確か--そう、俺は自殺したはずだった。
俺こと山井光は、北海道の人通りのない道路で
自殺しようと酒を飲み眠って凍死して自殺しようとしたはずである。

体が鉛のように重く、酷く頭が痛む。だるい体を起こし、周りを見渡してみる。
医療器具と思われるモノ以外何もない部屋だった。
点滴が施され、体温や脈を図るのか体に無数の線がからまっていた。
そうか。俺は自殺に失敗したのか…。ここは病院か…。
そう思いつつ俺は何か違和感を感じた。
何だ? 何かがおかしい…。
まず気付いたのは目線が低いことだった。
そして、点滴をされている腕を見ると見慣れた自分の肌の色が違い
手を見てみると子供のような小さい手だった。
まるで別人の子供になったような…。
混乱していると突然に部屋のドアが開いた。

そして白衣を着た中年の男性が現れ、こちらに近づいてきた。

「目覚めたか。F14型。」

F14型…? 疑問は数多くあるが、まずはここがどこだか知りたかった。

「ここはどこですか」

そう言った自分の子供のように高い声に驚いた。

「グレン第4研究所だ」

にやけながら中年のおっさんは答えた。

何となくバカにされたようで少し腹に立ったが質問を続ける。

「どこですか。それは…。それに何で体がおかしくなってるんですか?」

それを聞いたおっさんは驚いたような顔をしてブツブツ言いながら
部屋を出て行ってしまった。

おっさんが部屋を出る前にいろいろ問い詰めようと思ったのだが
疲れていたのか急激な眠気に襲われ気絶するように俺は寝てしまった。

次に目が覚めた時も同じ場所のベットに寝ていた。
目を覚ましたが前の時のような頭痛も体のだるさもなくなっていた。
体を起こし自分の状況を改めて考えてみる。
「あ、あ」と声を出してみる。
明らかに声が高い。手を見てみると子供のように小さい手だ。
夢じゃなかったんだな…。どうやら俺は子供の体になってしまったらしい。
現在の状況の説明を聞こうと誰かが来るのを待っていたが一向に来そうにない。
とりあえず部屋を出てみるか…。そう思っているとドアが開いた。
前に部屋に来たおっさんだ。

「体の調子はどうだ?」

「まぁまぁです。それより何がどうなっているか説明して欲しい」

俺がそう言うと、おっさんは「ついて来い」と言った。

点滴や体中に張り巡らされている線を無理やり外し、おっさんについて行く。

取り調べ室の様な密室空間に連れて来られ質問を受けた。

「まず、お前の名前は何だ」

「山井光。北海道で酒を飲み凍死しようと自殺を図り、気付いたらここにいたんですけど
どういうことですか」

おっさんは眉をひそめ無言になったがまた質問を始めた。

「記憶があるのか?」

何を言ってるんだコイツは…。

「それより何故ここにいるのか。何故子供の体になっているのかを教えて欲しい」

「いいから俺の質問だけに答えろ」

おっさんは冷たい口調で言ってきた。

何て傲慢な奴だと思い、腹が立ったが、とりあえず質問に答えることにした。

それからおっさんは自分の住んでた場所や家族構成、俺について
しつこく多くのことを聞いてきた。
また自分の星の名前など分けの分からんことも聞いてきた。
そして、魔法、ミッドチルダとかよく分からん単語について分かるかと聞いてきた。
知らないと答えたが、一瞬リリカルなのはにそんながあったなーと考えていたが

おっさんは「管理局は分かるか?」と言ってきた。

ホントにリリカルなのはかよ。俺は一瞬固まったが

「犯罪者を取り締まっている組織」

とリリカルなのはで知っている知識を言ってみた。

そう言うとおっさんも一瞬固まったが今度はデバイスについて聞いてきた。

何がしたいんだ。このおっさんは…。

「リリカルなのはのことですか?そんなこと聞いてどうするんですか?」

「リリカルなのはとは何だ?」

知ってて聞いてんだろ。そう思いつつ好きなアニメだったので
少しだけ嬉しくなったが、それより苛立ちの方が強くなってきていた。

「アニメでしょう。そんな事聞いてどうするんですか」

そう言うと長い沈黙の後、急に席を立ち上がり「ついて来い」と言われ
こちらの質問には一切答えず
状況が全く分からないまま、また元いた部屋に戻された。

何なんだ一体。何がどうなっているのかを知りたい。
変な研究に巻き込まれてしまったんだろうか。
死んだ俺もしくは死ぬ前の俺を使って何かの実験でもしているのか。
ホントにアニメみたいだな。
そういえば、おっさんはリリカルなのはについて言っていたな。
まさかリリカルなのはの世界にでも来てしまったというのか。
何がなんだか分からない。

少し立つと部屋に白衣の若い男性の医者? なのか分からないが食事を運んできた。

そいつにもいろいろ聞いてみたが、何も答えてくれなかった。

持ってきて貰った食事は病院の質素なメニューだったが
久し振りの食事のせいか、やけに美味く感じた。

どれくらい経っただろうか。何しろ時計もないし窓もなく
ドアもこちらからは開けられず密室に閉じ込められているため
時間が分からないのだ。

誰も状況を説明してくれず自分が何なのか分からないまま
おそらく2、3日経っただろうか。
また、おっさんが俺の前に現れた。

「一体何がどうなっているのか、いいかげん教えてくれ」

俺は疲れた声でそう言った。実際、不安と苛立ちで疲れていた。

「いいだろう」

おっさんは俺の存在を説明し始めた。

「お前はF14型。人造生命体であり、管理局の魔導師ツガイ・リオンをベースにしたクローンだ。
記憶の転写のミスにより記憶が混乱しているようだがそれが事実だ」

他にも何かよく分からん難しい事を言っていたが俺には理解できなかった。

「現在、お前は魔法を使うことができるか?」

「分からない…」

混乱している俺がそう一言言うとおっさんは部屋を出て行った。

俺がクローン? 人造生命体? 本当にリリカルなのはの世界に来てしまったということか?
フェイトと同じ人造魔導師? ばかな…。
しかし、実際には俺は子供の体になっているわけだ。
それに、おっさんが嘘を言っているようには見えなかった。

これは夢なのか。指をかじってみる。痛い。夢じゃない。
いや、もしかしたら実際の俺は本物の病院のベットにでも寝ていて
それで夢を見ていて体が動く状態なのかもしれない。
そうならば、周りに医者や患者、家族がいるかもしれない。
俺は指をかじりながら「僕を叩いて下さい。叩いて下さい」とかなり長い時間、言い続けた。
しかし、何も反応がなかった。当たり前か。
もしそうなら今までに食事や物に触れることができているのがおかしい。

だとしたらマ○リックス(名作? 映画)のように視覚、聴覚、痛覚は分かるが
ずっと夢を見るような装置に入れられているのだろうか。
しかし、現代技術では、そんなことは不可能ではないだろうか…。
初めから装置に入れられていると考えると、今までの人生が全て夢ということになる。

もしくは夢だが自分が勝手に現実として認識しているだけかもしれない。
夢という現象でないかもしれない。もっと別の--。
俺は混乱して頭がおかしくなりそうだった。

そうだ。夢だ。こんなことありえない。むしろ全てが夢であって欲しい。
俺は自殺した。家族はいた。迷惑かけっぱなしだった。悲しんだのだろうか。
いや、悲しんだだろう。それが分かっていて俺は自殺した。
自分が楽になりたかったからだ。何も考えたくなかった。全てから逃げたんだ。

全てから逃げたはずなのに俺はまだ生きている。
いや生きてるかも分からない。夢かもしれない。現在の状況が分からない。
もう何も考えたくない。自然と涙があふれてきた。
自殺する前の自分に戻ったようにその場に座り込み何も考えず
俺はまた自分の殻に閉じこもった。





-モニター室-

モニター室でF14型(山井光)を見ながら研究員が同僚に聞いた。

「F14はどうなってんだ? 記憶転写ミスったと聞いたが。
オリジナルの記憶は転写してないからありえないと思うんだが…。」

「だが、実際に死んだ前の記憶が残っている。自分が自殺したのは覚えていると言ってるらしい。
おそらく記憶が混乱しているんだろう。何でも自分は辺境世界の地球人だと言って、
管理局とかについては地球のアニメで知ったと言ってるらしい」

「アニメときたか。そういえば、オリジナルは自殺したんだったな。何で地球人とか言ってんだろーな?」

「地球人の友人でもいたんじゃないか? それで記憶が混ざったとか。実際のところは分からないが」

「それって危険じゃないか? もしかしたら記憶が戻るかもしれないし。自我も強いし」

「危険になったら上が処分命じるだろう」

急にモニターを見ながら研究員が叫ぶ。

「おい。何かF14が面白い事やってるぞ」

「なんだ?」

同僚の研究員もモニターを覗き込む。

そこにはF14(山井光)が指を咥えながら

「僕を叩いて下さい。」

と連呼している姿があった。

しまいには研究員全員が集まりモニター室は爆笑に包まれた。

笑いを抑えながら研究員は言った。

「はーはー。そういえば、もうすぐ人造魔導師4体が完成するらしいぜ」



[22278] 2話 魔法
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/02 17:41
俺は、ただ飯を食って寝るだけの生活を繰り返していた。
いつものように何も考えず寝ていると
若い男に広い部屋に無理やり連れてこられた。

何かするんだろうか…。どうでもいいか…。

男は黒い丸い宝石を俺に投げつけた。
俺は何となくそれを受け取る。

「今からお前に魔法を教えてやる。セットアップしろ」

魔法って…。俺が呆けていると
俺を睨めつけながら「早く契約しろ」と苛立った口調で言ってきた。

そんな事言われたってどうすりゃいいんだよ…。
そういえば、ここはリリカルなのはの世界ということだったな。
とりあえずアニメっぽく適当にやってみるか…。

俺は黒い宝石を掲げてみた。あれ…。どんな感じだったけかな…。

「えーーと、我と契約せよ。えー、我に力を与えよ。えー、天に向かいし
勇気と力を…。やっぱ分からない。とりあえずセットアップ」

何も起こらなかった…。

「何も起こらないんですけど…」

男はため息をついた。

「デバイスの名前を呼んでセットアップしろ」

「名前?」

「何でもいい」

何となくグローウォールという名前が浮かんできた。

「あー、グローウォール。セットアップ」

名前を呼ぶと黒い宝石が輝き始めた。
すごい。ありえないほど光ってる。奇跡だ。
本当にリリカルなのは世界なのか。
心臓の音が本当に聞こえるんじゃないかと思うほど俺は驚いていた。 

「え、あ、あの…。めっちゃ光ってるんですけど」

興奮と驚きで震えながら何とか声を出す。

「武器と鎧をイメージしろ」

武器か…。槍かな…。いやバルディッシュぽいとやつとか…。アイゼンか。
いつの間にか真剣に武器を考えていた。
そして、ハンマーと槍と鎌が合わさった武器のイメージが浮かんできた。
結構カッコいいな。武器はこれでいいか。
次は鎧か。何故か高校の頃の学校の制服が思い浮かんで、それっぽいのがイメージ
として浮かんできた。これだと弱そうだな。何か鎧っぽい感じのが欲しい。
すると学校の制服っぽいのに肩、腕、足、男の急所の部分に鋼の鎧が形成された。

これでいいかなと思うと俺はイメージした。
バリアジャケットに包まれデバイスを手に持っていた。
どうやら本当にリリカルなのは世界に来てしまったらしい。
興奮と驚きで固まっていると

「今から実力を見てやる」

そう言うと、男はデバイスを剣に形成し、いきなり斬りつけてきた。

ちょ…。いきなり。タンマ。

「ガード(英語)」

デバイスが喋り守ってくれた。

初めて魔法を使い、俺は興奮していた。
凄い。これが魔法か。

驚きながら、ハァハァ言って興奮していると
男は容赦なく斬りつけてきた。

くそ…。これでは防戦一方だ。
剣捌きが早すぎる…。やられっぱなしは嫌だ。
バックステップをし、適当にウォールを振り回す。
あれ…。誰もいない。
横に回りこまれ、剣で切り込まれていた。
防御が間に合わない。俺は吹っ飛ばされた。
かろうじて防御はできたものの魔法壁が弱かったのか
ダメージが大きい。
男はゆっくり近づいてくる。
何とか立ち上がり、どうするかを考える。
勝てるわけがない。

「うおおおっぉぉおー」

俺はもうやけくそになり、突っ込んだ。
突きを繰り出したとたん俺は回し蹴りをくらい
また吹っ飛んだ。

「もう少し、考えて行動しろ」

考えろって言ったって早すぎて動きが目で追えないしどうしたらいいんだよ…。
もう一度何とか立ち上がる。頭がくらくらする。立っているのもきつい。
たぶんこれが最後の攻撃になるか。もう何も考えず、感で攻撃するしかない。

俺はふらふらになり叫びながら突きを繰り出す。
突きの後すぐに感で俺は右になぎ払いをした。
感が当たり男は右に避けていた。だがどうせ避けられるか防御される。

「ガード」

俺は魔法壁を展開しながら体当たりをする。
男がバックステップしていたところに俺の体当たりが炸裂する。
よろけたところにすぐにウォールを振り回し攻撃する。
しかし、剣で簡単に受け止められ、
そして、俺のデバイスは真っ二つになった。
って、デバイス折れてるぅーーー。これ大丈夫なのかよ!?

「折れたんですけど大丈夫なんですか!? 貴方に折られたんですが…」

「それぐらいなら大丈夫だ」

「リカバリー(英語)」

デバイスがそう喋るとデバイスは元の形に戻った。
良かった。せっかく貰ったデバイスが壊れたかと思った。

「まず、攻撃する時にデバイスに魔力を込めろ」

「へ!?」

「そんなことも分からないのか…。しょうがない。俺がお前に
魔法の使い方を教えてやる」

それから俺は何時間も魔法の使い方についてレクチャーしてもらった。
初めて聞くことばかりだったが面白くていつの間にか時間が経っていた。

「これで終わりにする。今日はもう部屋に戻れ」

まだ魔法について聞きたい事が山ほどあったが疲れてそうなので頷き部屋に戻った。

教え方も上手いし何気に結構いい人だったなー。そういえば名前聞くの忘れたな。
まぁいいか。今度また教えてもらえるだろう。たぶん。

部屋に戻ると医療器具がなくなり、タンスや冷蔵庫が置かれ普通の部屋っぽくなっていた。
鏡があったので鏡を見てみた。
黒髪、黒眼のアメリカ人と日本人のハーフみたいな
10歳ぐらいの冴えなそうな少年がそこには写っていた。
もっとイケメンが良かったなー。金髪のカッコいい奴が良かった。
そんな事を思いながら本当に自分が別人になってリリカルなのはっぽい世界に来たことを
改めて実感する。

俺は久しぶりに生きているという実感があると思った。
魔法というありえない力を自分が手にしたのだ。
価値のない俺が普通とは違う力を手にしたのだ。
今までこんなに面白いと感じたことがあっただろうか。
前の俺はおそらく死んだ。死んだら、別の世界の魔法が使える別人に憑依していたのだ。
こんなファンタジーみたいなことが起こったら楽しいと思うだろう。

しかし、俺は一度死んでいるのだ。自殺をしたのだ。
家族を悲しませ、イヤなことから逃げたのだ。
そんな俺が今を楽しんでいいのだろうか…。
それに、これが現実か分からない。もしかしたら只の夢かもしれない。
俺はそんなことをずっと考えていた--。



[22278] 3話 仲間
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/02 18:09
俺は一度魔法を教えてもらってからずっと魔法訓練を続けていた。
といっても数ヶ月程度だがかなり成長したと思う。
そして、分かった事だが、ここは犯罪組織所属の研究施設であり
いろいろとやばい事をやっているらしい。人造魔導師作るぐらいだしな。
だが、この時の俺は魔法に夢中でそんな事は全く気にしていなかった。



「ファイア」

俺は無数の赤い魔法の弾を先輩に飛ばす。
先輩とは俺にずっと魔法を教えてくれている魔導師のことだ。
名前はクラウディア・ガンツ。23歳。男。
たまたま前世? の俺と同じ年だった。
最初は師匠と呼んでいたが気持ち悪いと言われ今では先輩と呼んでいる。
先輩と言われるのも何故か嫌がってはいるが。
魔導師ランクはAランクぐらいだろうか。俺もAランクぐらいらしいが。
ちなみに一度も模擬戦で勝ったことはない。
いつも、かなりの手加減をされている。
いつかは勝ってみたい。ある意味憧れの存在である。

先輩が魔法弾を防御している間に

「ソニック」

足に魔力を込め高速で移動し、先輩に攻撃する。
ちまちま突きと斬りで、なるべく小さく攻撃する。
大振りだと全て避けられ、攻撃されるからだ。
隙を与えないよう連続して攻撃していたが全て受け流され、
先輩が大降りの剣撃をしてきた。
何とか受け流し素早く斬りつける。
しかし、予想されてたのか剣撃を軽く受け止め、前蹴りを繰り出す。

「ぐぇっ」

少し飛ばされ俺はすぐに後方に移動する。

先輩は魔法弾を放ってくる。
全てをギリギリ避ける。しかし、魔法弾をコントロールし誘導してくる。

「ガード」

何とか防御をして耐える。
そこへ、高速で飛んできた先輩の剣撃を受ける。

「くっ、ガード」

魔法壁が砕ける。すぐに上方へ移動し思い切りハンマーで振りかぶる。
先輩は後方に素早く移動した。
俺はそれを追いかけるように地面ギリギリに低空飛行をする。
追いついたところでなぎ払うように攻撃をする。
避けられた。どこだ!? 上か。下か--って下は地面か。
右か左か。いない。
そして、後ろから衝撃を受けた。

「ぐへぇっ」

めちゃくちゃ吹っ飛ばされた。もう動けない。今回も負けか。
息を切らしながら何とか立ち上がる。

「はぁー。はぁー。どうでしたか。今日の動きは?」

「一言で言うと一つ覚えのバカだな。もっと大胆に攻撃しろ」

先輩は少し笑いながらそう言った。

「いや、大振りだと全部避けられるじゃないですか」

「でも、お前は瞬間魔力が高いというか。一撃が強いから
お前の思いっきりの攻撃を食らったら俺でもかなりやばい。
これでも毎回ヒヤヒヤしてる。それにお前のデバイスは打撃向きだ。
もっと大胆に攻撃しろ」

そう言って先輩はまた少し笑った。

俺の一撃ってそんなに強かったのか!? てか俺も
結構考えて攻撃してるんだがなぁ。

「それよりそろそろ食堂でも行くか?」

「はい」

俺は結構自由な身になっていた。
さすがに外へは出してもらえないが、食堂にも行けるようになったし
他の魔導師や研究員とも結構仲良くなった。

食堂で飯を食べていると

「今日もコテンパンにされてきたか」

笑いながら研究員が隣に座ってきた。

「いつか倒しますよ」

「それは楽しみだな」

先輩は笑っている。
いつかマジで倒してやる。
もっと大胆に攻撃か…。少し戦い方を変えて見るかな。

「そういえば新しく魔導師が4人配属されるらしいぞ」

研究員の確かフレッチだったかな…。もう数ヶ月ここにいるのに
名前が全然覚えられん。

「本当か?フレッツ。女はいるのか?」

フレッツだったか。まぁ、そんなことはどうでもいい。
新しい仲間が来るのか。可愛い女の子いるかな。

「女の子2人と男2人だと」

「良かったな。F14」

先輩はニヤニヤしながら変態の顔で言ってきた。
実際、先輩は変態である。この前なんかゲフゲフン。
とそれはおいといて。

「何歳ですか?」

「全員お前と同じぐらいの年だよ」

何だ。俺と同じぐらいの年かよ。

「何だ?不満そうな顔して。年上の美女が良かったのか。
ホントにお前はドスケベだな」

確かに年上の美女が良かったが…。

「いや、違いますって。良かったですよ。友達も出来るかもしれない」

俺昔から友達いなかったもんな。別に性格が暗かったわけじゃないが…。
いや暗かったのかな。自分から行動しないで待ってるだけだったもんな。
大人になったらATフィールドずっと張ってたしな。

そういえば、全員同じ年という事は皆、俺と同じ人造魔導師かな。
でも、原作のフェイトみたいに可愛い子ならいいな。
てか、この世界にフェイトはいるのかな。時間軸もあるし。
ま、そんなことどうでもいいか。

いつものように先輩と訓練をする準備をしていると
先輩が4人の魔導師を連れてきた。

「これから全員一緒に訓練を行う」

全員同じぐらいの10歳ぐらいの年だった。俺と同じ人造魔導師だろうな。
それより驚いたのが魔導師の男2人が俺と全く同じ顔だったのだ。
俺は黒髪で2人は茶髪だったが…。
女の子2人は金髪で同じ顔だった。眼の色は赤い綺麗な瞳だった。結構可愛かった。
もしかしてフェイトのクローンか?
どっちにしろ実写版だし年下だし無理だな。
何が無理かって?それは…げふんげふん。
後で聞いた話だがどうやら本当にフェイトのクローンだったらしく、
他の2人は予想通り俺と同じオリジナルからのクローンだった。


「これからよろしく」

とりあえず挨拶をしておく。

「「よろしく」」

女の子2人は小さな声でそう言った。ちなみに男2人は無言だった。

「自己紹介も済んだし。とりあえず実力を測るために
全員で模擬戦でもするか」

今の自己紹介だったんですか!? てか、いきなり模擬戦ですか!?
そう言えば俺も最初いきなり戦わされたな。

「F14。それとG01。戦ってみろ」

G01(俺と同じ顔の奴)が先輩から渡されたデバイスをセットアップして準備を始めた。

マジですか…。

「どうした。F14」

「あ、はい」

とりあえず、やってみるか。
初めてだし、かわいそうだから軽くやるか。

結果は…。ギリギリ勝つことが出来た…。
マジで初めてかよ…。めちゃめちゃいい動きしてたぞ。
普通に臨機応変に魔法使ってたし。

「よし。もういいぞ。次はF14とG02」

「え? また俺ですか? 疲れて死にそうなんですけど…」

「お前なら大丈夫だろ。それでは始め」

マジですか。疲れてホントにやばいんですが。
もうあんまり魔力ないし。あんたは鬼ですか…。

その後G02(俺と同じ顔の奴)と戦った。
もちろん魔力が途中で切れてボコボコにやられました。

訓練を続けるうちに最初は皆無口で無愛想だったが
同じ境遇同士仲良くなろうと話しかけた努力か
次第に向こうから話しかけてきて笑い合うようになった。

それで俺はずっと思っていることがあった。
F14とかG01とかそんなので呼ばれるのはおかしいんじゃないかと。
とりあえず皆を集合させる。

「みんなー。ちょっと集まってくれないか」

集まったところで話を続ける。

「思ったんだがコード名が名前なんて嫌じゃないか。
俺は嫌だ。カッコいい名前が欲しい。みんなはどうだ?」

「欲しい…かな」

「欲しいかも」

「どちらかと言えば…」

「別に…」

素直じゃない奴もいるが放っておこう。

「それで俺はシオンって言う名前にする。何となくカッコいいだろ?」

俺は自信満々で言った。前世?の日本人のダサい名前もイヤだしな。

「いいんじゃない?」

「いや、俺がもっといい名前を付けてやる。エロナメ。ボロッカス。
とかどうだ?」

気付くと、いきなり、先輩が口を出してきて真面目な顔で言う。

「そんな変なのはイヤです。とりあえず先輩は黙ってて下さい」

こちらも真面目な顔で言い返す。

「お前明日覚えてろよ。5対1でボコボコにするからな」

腹が立ったのか不敵な笑みを残して先輩はどこかへ行ってしまった。
恐ろしい。あの人ならたぶんやるだろう。明日俺大丈夫かな。

「それで、欲しい名前とかある?」

「「「………」」」

「えっと、シオン? が付けてくれたら…」

明るいがちょっと抜けてるフェイトがそう言った。

「私も!」

ツンデレのフェイトがそう言った。

「俺も付けてくれ」

暗い寡黙な感じの俺(同じ顔のクローン)がそう言った。まぁ俺も暗いがな…。

うーーん。人の名前付けるって結構重要だよな。
少し悩んだが、よし決めた。

明るいがちょっと抜けてるフェイトは「カレン」、ツンデレなフェイトは
「カノン」、暗い俺は「レオン」という名前にした。

「みんな決まったがお前はどうするんだ?」

生意気だが実は優しい俺(同じ顔のクローン「はーとふるカフェ2回目」)に向かって聞いた。

「俺は自分で決める…。ボロッカスでいい」

「そうか…。とりあえずこれで全員名前が決まったな」

ボロッカスか。さっきの先輩のから取ったんだろうけど。
エロナメだったらやばかったな…。

名前で呼び合ってから俺達の距離は近づいた気がする。

「シオン」

「シオン呼んでるよ?」

「シオン!」

「シオン?」

何だよさっきからうるさいな。シオンって何だよ。

「「「お前だよ」」」

「あ、そうか。シオンか。で何?」

そうだった。俺の名前はシオンだった。
聞きなれないから自分の名前だって分からなかった。
もうシオンと呼ばれてから結構経った気はするが。

「はぁー。何で俺はシオンに負けることがあるんだろうな。
魔力は俺の方が高いのに。同じクローンなのに
何故か髪の色もスキルも違うし」

ボロッカスがいつものように負け惜しみを言ってくる。

「へっ? てか皆魔導師ランク同じじゃないの?」

「たぶんシオンが一番低いぞ」

「そうだったのか…。まぁ、大事なのは魔力の多さじゃないからな。
経験と、どう魔力を制御するか。それが重要なんだよ」

確かそんな事をクロノが言ってた気がする。

「シオンは瞬間的に魔力を爆発させる事ができるからね。
すぐ魔力なくなるけど…」

レオンは一言多いんだよな。あんまり喋らないくせに。

「そうだ。カレン。どうやったらスムーズに移動魔法使えるか
後で教えてくれないか?」

「私はカノン。眼が腐ってるんじゃないの」

「眼が腐ってるって…。いやー、同じ顔だからさ。
まぁカノンでいいや。後で教えて」

「まぁって…。カレンに聞きなさいよ!」

やばいな。ツンデレを怒らしてしまったな…。
そうだ。忘れてた。先輩に頼んでこれを買って貰ったんだった。

「そういえば、これを買ったんだった。はいっ。
できたら付けてくれるとありがたい」

そう言って俺は赤いヘアピンを渡した。
女の子にプレゼントをするなんて
初めてだったので意外と緊張した。

「あ、ありがとう。貰っておくわ」

少し赤くなりながらカノンはヘアピンを受け取った。

「後これはカレンに」

そう言ってカレンには黒いヘアピンを渡した。

さっそく付けて喜んでるみたいだから良かった。
よし、これで名前を間違えることはない。

「やるな。シオン」

先輩が笑みを浮かべている。

「そういえば、カレンさー」

「私はカノンだってーの!」






俺は皆で笑い合うこんな日常がずっと続いたらいいと思っていた。
この世界をそんなに悪くないと思い、昔の記憶を閉じ込め
忘れた振りをしてシオンとして生きようとしていた。

そんなことはありえないのに…。



[22278] 4話 任務1
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/05 17:46
先輩に会議室に呼ばれるといつもの面子に研究所の魔導師
が集まっていた。

メンバーが揃ったのか先輩は口を開く。

「今から1週間後に第4指定ロストロギアの回収を行う。
今から作戦について説明をする」

作戦? 魔法に夢中であまり気にしていなかったが、
ここは犯罪組織である。そんな場所がまともなことを
やっているとは思えない。俺は何となく不安になっていた。

作戦は、ロストロギアが保管してある管理局の研究施設に
俺とレオン、ボロッカス、それに研究所の魔導師が
正面から囮として攻撃し、先輩とカレンとカノンが別ルートで
ロストロギアを奪取するというものだった。

作戦の説明が終わり、俺はすぐに先輩に詰め寄った。

「管理局の研究施設なんて襲って無事に済むんですか?
こちら側はもちろん向こう側にも死人が出るかもしれない」

「そうだな」

それだけ先輩は言って会議室を出て行ってしまった。
その後も何度も俺は不安を口に出したが「命令だから仕方ない」
としか言わなかった。

どんどん不安は高まっていたが
2週間に及ぶシュミレーション訓練を終え、
作戦の日はすぐにやってきてしまった。

作戦は人が寝静まった真夜中に決行された。

「これからは別行動だ。10分後もしくは合図があったら
計画通り攻撃を始めろ」

俺とレオン、ボロッカス、研究所の魔導師は頷き、
先輩とカレンとカノンが別行動を始めた。

不気味な静けさの10分だった。
やっと10分経ったか…。

「攻撃を開始する。まず一つ目の結界を壊す」

研究所の魔導師はそう言うと
立ち上がり、魔力を溜め、研究施設に向けて
魔力をぶつける。
結界が砕けるのが分かった。

「次は、俺だ」

レオンも呪文を紡ぐ。

「凍てつく刃よ。全てを撃ち砕け!」

魔力が放たれ、2つ目の結界が砕かれる。

ついに俺の番か…。

「貫け。炎の槍!」

灼熱の炎が一直線に解き放たれ、結界を貫く。

結界を破壊したのを確認すると、すぐに
研究施設に向かって走る。

「ボロッカス。突入するぞ」

ボロッカスも研究施設に向かって走る。

管理局員が何人か研究施設から出てきた。
レオンと研究所の魔導師が管理局員に魔力を解き放ちながら
研究施設の裏へと向かって移動を開始する。

俺は無数の炎の魔法弾を魔力を込め作る。

「打ち砕け。ファイア」

管理局員に向かって放つ。
管理局員も魔法弾を放ち相殺され爆発が起こる。
いくつかの、それた魔法弾が研究施設を崩していく。

「モードチェンジ(英語)」

デバイスをシューティングモードから打撃モードに変更する。

「何が目的だ!?」

管理局員の言葉を無視して思いっきりウォールでなぎ払う。
管理局員が吹き飛ぶ。

右方からの魔法弾が飛んでくる。

「ガード」

魔法弾を受け止める。

「くっ」

すぐに今度は上空から魔法弾が飛んでくる。
何とか避け、上方の管理局員に高速飛行で近づく。

しかし、また右方から魔法弾が飛んでくる。
ギリギリで避けるが、魔法弾がこちらに誘導されてくる。
ウォールで魔法弾をなぎ払ったが、管理局員に息も付く暇がないほど連続で攻撃される。
攻撃を押しのけ、何とか管理局員一人に接近し、魔法弾を振り払いながら斬りつけ
思いっきりウォールを振り下ろす。
管理局員のデバイスのコアにひびがはいる。

あと少しのところで強力な魔法弾が飛んでくる。

「ガード」

吹き飛ばされながら敵に魔法弾を放つ。

「うっ」

追い討ちに次々と攻撃される。

さすが管理局といったところか…。このままだとやばいな。
こっちに管理局員が集まり始めてきた。

周りの状況を確認すると
離れた場所でボロッカスが倒れているのが見えた。

管理局員の魔法弾を避けながらすぐに俺はボロッカスの元へ向かった。

「シールド」強固な魔法壁を作り管理局側の無数の魔法弾を受け止める。

「大丈夫か?ボロッカス」

ボロッカスは胸を撃ち抜かれ血が地面に広がっていた。
嘘だろ? 嘘だよな?
ボロッカスはもう息がなかった。
俺は一瞬思考が停止した。
頭が上手く働かない…。何も考えられない…。

直後に『作戦は失敗だ。撤退する』と先輩から念話が送られてくる。
この念話がなければ俺はただ立ち尽くし、同じように死んでいたかもしれない。
ボロッカスと同じように…。

「エクスプローション」

逃げるために無数の魔法弾を生成しやみくもに飛ばし爆発させ、
その場を後にした。

その時は何も考えられず俺は先輩の言うとおりに
撤退する行動をとっていた。






作戦は失敗だった。
ロストロギアは回収できず、カレンは傷を負い、ボロッカスは死んだ。

「カレン、大丈夫なのか?」

「うん、2週間ぐらいで治るって」

そばでカノンは泣いて、レオンはずっと下を向いていた。

「そうか。重傷だと聞いてたから心配だったけど良かった」

重くるしい空気に耐え切れずそう言って俺は部屋を出た。

ボロッカスが死んでも不思議と悲しくなかった。
人が死んだ実感が持てなかった。俺は冷たい人間なのかもしれない。
ボロッカスは生きたかったんだろうか。
人造魔導師として生まれ短い人生を終え、何を思っただろうか。
死んでしまったら何もない。
でも、俺は違う。それも自殺という形で自ら人生を終わらした。
忘れようとしていた記憶が甦ってくる。
人はいつかは死ぬ。遅かれ早かれ…。でも、俺は…。
ボロッカスの死に向かい合う勇気が俺には…。

先輩が歩いてくる。

「どうした? 暗い顔して?」

少し笑いながら先輩は言った。
もしかしたら俺を元気付けようとでもしようとしていたのかもしれない。
でも人が死んだのに笑っている先輩を俺は許せなかった。

俺は先輩を、いきなり殴りつけた。上手く感情がコントロールできない。
拳は宙を浮き、逆に殴られ俺は意識を失った…。

「よくある事だ…」

そんな先輩の悲哀に満ちた声を聞き俺は意識を失った。

目覚めると俺はいつもの部屋にいた…。
俺はずっと何も考えず、どれくらい時間が経っただろうか。
思考がクリアになっていく。そうだ…。ボロッカスが死んだんだ…。
俺は今になって涙が出てくる。
そして、考えれば管理局側にも死人が出ていても不思議ではない。
俺が実際に殺している可能性もある。
俺は作戦には反対だった。ただ、どこか簡単に考えて浮かれていたのかもしれない。
この世界を現実だと認めたくない。そうだ。これは夢かもしれないんだ。
目が覚めたら、いつもの生活にーー。また自殺でもするか。同じように。

「ハハハ」

乾いた声が部屋に響いた…。



[22278] 5話 決意
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/06 00:00
いつものように訓練が始まった。
俺は必死で訓練に没頭していた。何も考えたくないからだ。
同じように仲間達も訓練に集中し、笑い合う事も少なくなった。
皆、俺と同じなのかもしれない。

間もなくして、俺達は、2回目の作戦会議に呼ばれることになった。
何でも次はどこかの都市に攻撃を仕掛けるらしい。
理由は分からない。俺にとってはどうでもいいことだ。
俺はただ命令に従うだけ。従う以外に何も出来ない。
例え、ここを逃げるたとしても居場所はないだろう。
管理局に助けを求めても使い捨てと同じ、今と変わらないだろう。
むしろ、もっと酷い結果になる可能性もあるだろう。
逃げる必要もない。俺はただ生きるだけの本当に意味のない人間だ。
それに何度も言うが、ここはただの夢の世界かもしれないのだ…。

作戦に当って、戦力増加のために新しい魔導師が、数十人前後ほど来るらしい。
人造魔導師らしい…。
また人が死ぬな…。俺はそんなことを淡々と考えていた。

翌日から、新しい人造魔導師と交えて作戦に向けて訓練が始まった。
新しい人造魔導師達もまだ子供だった。同じ顔で同じように作られた。
だが、新しい人造魔導師は、俺たち(最初のクローンの仲間達)と比べて劣っていた。
魔力も低く、戦闘に関しても動きは鈍かった。
それでも、普通の魔導師と比べれば遜色もない。これだけの人数がいれば前回のようには…。
俺は、そんな甘い考え…というより正直何も考えていなかったのだろう。
思考能力が低下していたというより、俺は本当に何も考えないようにしていたのだろう。
また、人が死ぬかもしれない。殺すかもしれない。
そんなことを考えないようにしていた。

新しい人造魔導師達は、休憩時間には笑い合っていた。
まだ子供だ。ただの無邪気な…。自分のそうやって笑っていた日々の記憶が重なる…。
幸せとは、こういうことをいうのでないだろうか。ただ単に、笑い合うそんな事が…。


そしていつの間にか、作戦実行の日になっていた。
これだけの人数での作戦であり、奇襲をかけるわけだ。当然死人は出るだろう。
俺は何人かの新しい人造魔導師の指揮官として何故か選ばれていた。
念話による作戦の合図だ。

「αは左へ旋回、βは右へ。γは待機。」

俺は指示をする。
しかし、急に目の前に閃光が走る。
敵からの攻撃だ。作戦と違う。
一瞬、俺は頭が真っ白になった。何故だ…。これは奇襲では…。ありえない…。
しかし、頭を切り替える。

「α、β、そのまま待機」

だが、混乱のためかβ部隊は命令を無視して一人が敵に走り出す。
また、それにつられてβ部隊全員が走り出す。

「何を考えてる。死ぬぞっ!!戻れ!」

だが、声が聞こえてないのか敵に撃たれる。
これでは作戦どころではない。そしてこれ以上人が死ぬのを見たくなかった。
念話で先輩に伝える。

「撤退する。奇襲が敵にバレている」

「こっちもだ。すぐに撤退しろ」

すぐに俺はα、γの部隊に撤退を伝える。
しかし、動けない者や、勝手に応戦してるもの、β部隊と同じく敵に無謀にも
向かっている者までいる。
糞、ふざけるな。

「これは訓練じゃない!!死ぬんだぞ!!」

俺が叫んでも状況は変わらない。

結局、任務は失敗。俺の指揮していた部隊のほとんどは死ぬ事になった…。
訓練では出来てた事が、実戦では全く出来ていなかった。
当たり前か…。アイツ等はまだ子供で、俺が初任務の時に生きていたのも奇跡だ。
普通の大人の精神でもまともにいられないのに、それを子供が…。


人が死ぬのを目の前で見た…。それも何人も…。こんなのが正しいわけがない。
ここにいたらダメだ。逃げるか。ただ、どうやって逃げる?そもそも逃げられるのか?
死ぬかもしれない。それはいい、元々俺は死んだはずの人間だ。
ただ、俺一人で逃げるのか?しかし、他の仲間達と逃げたとしても、誰かが死ぬかもしれない。
それも俺のせいで。それに俺は耐えられるか?無理だ…。だが俺一人で逃げてどうなる?
意味があるのか。死人同然の俺一人が逃げても…。だが俺は俺のせいで人が死ぬ責任も負いたくない。
どうしたらいいんだ。糞。俺は壁を思いっきり叩く。
そこへ、先輩が部屋に入ってくる。

「どうした?うるさくて皆目を覚ますぞ」

何故かいつも先輩は笑っている。何でこんな状況で笑っていられるんだ。仲間が死んだんだ。
頭に血が昇って先輩を殴りつけた記憶が蘇る。
俺は勝手に口が動いていた。

「先輩は何で笑ってられるんです?人が死んだんですよ。それも多くの!」

人の死を何とも思ってないのか。この人は。

「仕方ない」

またそれか…。俺は怒りを覚える。また同じように体が動き殴ってしまうのではないかというほどに。

「この状況を何も思わないんですか。おかしい。こんな事が…」

「俺は慣れたさ。お前も慣れるさ…」

軽く息を吐き先輩は話す。

「俺もお前達と同じくクローンだ。同じように仲間が死ぬのを数え切れないほど何度も見てきた。
俺も最初はおかしいと思ったさ。ただ俺たちにここで生きる以外何が出来る?」

「…先輩は死にたいと思った事はありますか?」

俺はふと唐突に何故かこの言葉を口にした。

「死にたいか…。こんな危険な場所ではいつ死んでもおかしくはない。
死にたくなくてもいつかは勝手に死ぬだろうな」

確かにそうか。死ぬかもしれない毎日に怯えてるのにわざわざ自分から死ぬだろうか…。
だが俺は自殺した。安全な世界にいるために。俺も環境によっては死ななかったのか。
安全という名の元に生活してたから俺は死んだのか。いや違うか。今でも俺は何も変わっていない。
苛立ちが、生まれてくる。俺はいつの間にか叫んでいる。

「自分が死ねば良かった思う事はないですか?人を殺して仲間が死んで自分が生きてる!」

俺の声が大きくなっていく。ただの八つ当たりだ。俺は一体何がしたいんだ。

「…それは…。ただ後悔してるなら…それで生きればいい…後悔しながらでも…生きて後悔すれば。
俺は後悔すら忘れちまった。お前はまだ…。」

生きて後悔か…。人を死なせてしまった事、人を殺したかもしれない事。俺が自殺してしまった事実。
全てを後悔して生きろと?そんな事、俺には…。
先輩はいつの間にか部屋から消えていた。喋るたびに悲しそうな悲哀に満ちいていた声だったかもしれない。
俺は何がしたいんだろう。この世界で。今の自分を。そして過去の自分を。
後悔して生きろか…。後悔して生きればいいんだろうか。それが俺の償いなのか…。


それから、いつもと変わらない日々が始まった。いつもの事だ。いつもの毎日。
そして人の死を何とも思わない無謀な命令…。
ホントにこれでいいのか。ただ、目の前で人が死ぬ日々が。
これが正しいわけがない。こんな生活が。本当にこのままでいいのか。俺はいい。
でも…俺以外の人間、仲間が…。この狭い世界に閉じ込められたままでいいのか。
いや違う…。これは傲慢な考えかもしれない。しかし、何かが変わるのを俺は恐れて何も行動してこなかった。
俺は抗ったか。前世でもそうだ。抗って生きたか。自分の不甲斐なさを認めたか。
抗って、抗って生きたか。ただ、逃げて死んだだけだ。家族が悲しむのも、自分に能力がないのも
自分が何も出来ないのも自分のせいだと分かってて何もしなかった。ただ、逃げただけ。何も背負う覚悟がなかっただけだ。
背負うしかない。自分の起こしてしまった罪を。そしてこれから起こす罪も。抗う。抗って生きるんだ。
自分の意思で、世界に対して。俺は決めた。全てに対して、抗うと。



[22278] 6話 不同
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/06 04:52
「反応するな。ここから逃げる」

俺は仲間達に伝える。仲間は驚いたようだが無言を貫く。

「これは任務だ。俺の指示によって行う。誰かが死ぬかもしれない。
いつもの作戦と同じだ…。作戦の内容は追って説明する」

これは一応の保険だ。これは俺の指示による独断だという…。万が一失敗した場合の…。
失敗した場合、俺に全てを押し付ければ。もしかしたら俺だけの死で済むかもしれない。
それでも俺のせいで最悪を想定すると全員死ぬかもしれない。それでも…。

作戦を追って説明すると言ったが実際の作戦はこうだ。正面突破。
それ以外にない。ただ、大勢で攻撃して逃げるだけ。
俺に戦術技術もないし。それ以外どうする事も出来ない。むしろ、それ以外に何があるだろうか。
こっちには優秀な仲間達がいる。突破を研究所の少ない魔導師の人数で止められるだろうか。
大丈夫だ。出来るはずだ。やるしかない。今よりマシな世界を皆に見せてあげたい。
これはただ俺の勝手な自己満足なのかもしれない。それでも…。
逃げた後は管理局にでも何にでも保護してもらえばいいだろう。ここよりはマシなはずだ。
俺の傲慢な考えによる行動で死人が出るかもしれない。何人も。
ここにいる研究施設にいる人全てが俺のせいで死ぬ可能性がある。
研究員、魔導師にも家族がいる者もいるだろう。
無理やり働かせられてる研究員もいるかもしれない。
それでも何があっても俺が背負う。全ての罪を。

俺は作戦の内容、作戦決行日を仲間達に伝え、何事もなかったかのように振舞うように仲間達に言う。
これでいいんだ…。俺のただの自己満足かもしれない。しかし、俺は抗う。前世でできなかった事を…。
ただ生きて逃げていた自分を…昔の自分を変えるんだ…。

いつものように訓練を行っていると、急にアラームが鳴る。今までに、こんな事はなかった。まさか作戦がバレ…。

「管理局が来た。逃げる準備をしろ。第一部隊は正面へ。第二部隊はA地点へ」

そう放送が告げる。
作戦はバレていない…。それなら…。逆にこれはチャンスか…。迷ってる暇はない。
今しかない。俺は叫ぶ。

「作戦決行だ!俺に続け!!」

仲間達が集まる。一部仲間達が足りない…。仕方ない、これで逃げ出すしかない。
混乱に乗じて一気に、すぐに外へ向かう。

「カレンがいない!」

カノンが叫ぶ。

「大丈夫だ。後で合流する」

泣きそうになりながら叫ぶカノンをなだめる。後で合流か。本当は出来るかなんて分からない…。でも今しか…。
俺は搾り出すように声を出す。

「大丈夫だ。後で必ず…」

後で必ずか…。でも今は…。余計な事を考えないようにする。そうだ俺が背負うんだ全てを。
命令を無視している俺たちに研究員が叫ぶ。

「何を考えている!糞っ…」

しかし俺はそれを無視して正面玄関へと向かう。管理局に…管理局に早く敵意のない事を伝えて保護して貰えば。
こんな小さな子供達を管理局員がいきなり攻撃する事はないだろうと信じるしかない。
幸い魔導師と会わずそんなり外に出る事ができた。管理局員が叫んでいる。

「直ちに投降しろ」

俺は叫んだ。

「投降する。武器は捨てる。助けてくれ。捕らわれているんだ!」

戦闘はもう始まっていた。こちらの仲間、魔導師が応戦している。

「辞めるんだ!投降するんだ!」

俺は何度も叫ぶ。応戦しているその中にはカレンの姿もあった。

「もう自由になれるかもしれない!戦闘を辞めて投降すれば!」

俺は必死で叫ぶ。何人かの仲間は俺の声に応じて戦闘を辞める。
それでも、カレンは戦闘を辞めようとしなかった。
よく見ればカレンの戦闘の相手はフェイトだった。こんなところで原作のキャラに出会うとは…。
驚いたが、フェイトなら同じようなクローンだ。手厚く保護してくれるかもしれない。そんな希望が浮かんだ。

「皆辞めるんだ。カレン!辞めればもうこんな生活は…っ!辞めてくれ…」

何度言っても、カレンは戦闘を辞めようとしない。  

フェイトが何かを言ってカレンに話しかけている。
カレンが叫んでいる。何を叫んでるかは分からない。
フェイトは攻撃するつもりがないのか、カレンの攻撃を裁き続けている。
それでもカレンは攻撃を繰り出し続ける。フェイトがカレンを押し退け、距離が少し開いた。
その時だったーー。横からカレンは他の管理局員に砲撃される。
カレンの動きが鈍くなる。それでもカレンは動き続ける。全ての魔力を放出するかのようにフェイトにぶつかっていく。
しかし明らかに、動きは遅くなり、弱っていくのが分かる。俺は叫びつづけた。

「辞めるんだ!辞めるんだ…もう…」

その声が聞こえないかのようにカレンは攻撃を続ける。そしてカレンは力尽きたように墜落する。
フェイトは墜落しているカレンを抱き上げる。そして、とても悲しい目をした。
直感で分かった。死んだかーーカレン…。何でこんな…。糞っ。
カノンが泣きながらフェイトを睨みつける。仲間達が皆、武器を構え始める。
辞めてくれ。もうこんな…。俺は叫ぶ。

「辞めるんだ。こんなことをしても何にもならない…。攻撃を開始するなら、俺がお前達を止める。
憎むなら俺を憎め。俺のせいでいい。だから辞めてくれ…。こんな…」

俺は泣きじゃくりながら自分でも何を言ってるか分からなくなってきた。
仲間達はそんな俺を見て武器を下ろす。戦闘は終わったーー。
俺達は護送され、どこかへ連れて行かれる。
この戦闘で多くのものが死んだ…。分かってたはずだ。人が死ぬのは…。
俺は覚悟があると思い込んでただけなのかもしれない。
何が全てを背負い込むだ…俺は…何一つ変わっていない…。



[22278] 最終話 最高
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/06 20:17
月日は流れ、俺は管理局の魔導師になっていた。
俺は働き続けた。ただ、がむしゃらに働き続けた。
それこそいつ死んでもおかしくないような無茶をし続けた。
ちなみに、俺と一緒に研究施設から保護を受け、
魔導師になった者でも、今生きているのは数人だけだ。
戦闘で死んだ者も多くいるが、
元々、量産型のクローンには欠陥がいくつかあった。
例えば一つ挙げれば、普通の人間よりは長生きは出来ないなどだ。
ただ俺はそれを聞いても何も感じなかった。


俺はいつものように仕事へ向かう。
今回の任務はクローン研究をしていると思われる違法研究施設の制圧だった。
いつもこんな任務の時は昔を思い出し、苛立ちが募る。

「管理局だ。大人しく投降しろ」

感情のない声でセリフを吐き捨てる。
しかし、頭に血が上っているのか、一人の魔導師が攻撃を開始し、すぐさま戦闘になる。
高速飛行から勢いをつけ、まずは先頭の魔導師を一撃で葬り去る。

その時、正面から声が聞こえた。

「久しぶりだな」

昔、一緒に研究施設で訓練した仲間だった。まだ生き残りがいたか…。

「お前達が管理局に保護された後、お前のせいで俺まで処分されるとこだったぜ。
今はこうして何とか生き残ってるけどな」

敵の魔導師から魔力が放たれる。
魔力込めた一振りで全て打ち消す。

「お前が少し羨ましく思った事があったが…。アア、悲劇の対決ってか!
ハハハ。動きが鈍いぞ。本気で来い!俺達にはそれしかないんだからよ!」

俺の一振りで敵の魔導師を地面に叩きつける。舞空術のように、ゆっくりと
地面に近づき、敵を見据える。

「死にたくない…。アーニ…」

アーニとは大切な人の名前だろうか…。死にたくない…。
何故死にたくないと、そう思えるのだろうか。 
聞こうにも聞く事は叶わない。当り前だろう。もう死んでいるのだから…。

俺は歩き出す。ふと人影が目に入る。

「先輩…」

かつてと変わらない姿で俺が昔、先輩と呼んでいた人物が現れた。

「その名で呼ばれると懐かしくなるな。俺はお前を何故か気に入っていたんだがな。
懐かしんでるどころじゃないか…。早くしないとお前と同じようなクローンを助けられないぞ」

俺達は戦い合う。そうするしか…。
俺の一振りで先輩を地面に叩きつける。舞空術のように、ゆっくりと
地面に近づき、先輩を見据える。

「お前は変わってないな…」

俺は変わってない…。あの頃と何も…。でも、俺が変わったとすれば…。

「いえ、変わりました。俺はあなたのおかげで変わったのかもしれない。
そうでなければ俺は行動を何もしないままだった…」

「そうか…。それなら…。俺は…」

そのまま先輩は息を引き取る。
本当は変わってないのかもしれない。でもあの時は確かに変わったはずだ。
自ら行動起こして、自分の意思で動いた。覚悟を決めた日だ。研究所から逃げ出そうとした決めた日。
それが正しかったかどうかは別としても…。
でも今の俺はどうだろうか…。
俺はまた、いつの日からか停滞してしまったのかもしれない…。
今まで人の死は何度も見てきた。慣れてきた…。先輩がかつて言ったように。俺も慣れたはずだった…。
何故今になってこんなに心が乱れる…。

何故だろう。俺は久しぶりに悲しい気分になった。いや悲しい気分になったことは何度もある。
でも自分自身を悲しいと思う。何で俺は…。

何故だか、俺は研究施設の先輩と仲間を殺して、管理局の同じ境遇の仲間と話しをしたくなった。
電話を掛けて、かつて一緒だった仲間を呼び出す。
待っていると、カレンが最初に来る。

「久しぶりだね。シオンから電話をかけるなんて珍しいね」

「そうだな…。他の皆は?」

「皆、急に仕事で来れなくなったって…」

「そうか…」

「今日、昔の仲間に会ったんだ。先輩ともう一人に…。そして殺した…」

「……」

「先輩を覚えてるか?俺はあの人のおかげで助かった時が何回かあったんだ」

「シオンとはよく一緒にいたね…」

俺はただ先輩に八つ当たりで感情をぶつけて…。先輩から見れば俺はただのクソガキだっただろう。
でもそれが何故かいい思い出に思える。何故だろうか。
何故俺が、こんな事を口走ったかは分からない。俺は勝手に口が動いていた。

「俺はここが夢なんじゃないかと思う時が何度もあるんだ。
ホントの俺はいなくて、俺は死んでいて…」

「シオンは生きてるよ。今私の目の前で」

「違う!そういうことじゃない!!」

俺は何を言っているんだ?何故こんなに感情が止められない。これじゃあの時と同じじゃないか…。 
先輩に八つ当たりをした。あの時と…。

「シオンが何に悩んでいるか正直分からない…。自分を考えず死ぬような無茶ばかりして…
今ままで一人で無茶ばかして…あなたの悩みは私には分からないかもしれない。
それでも一緒に悩みを背負うぐらなら…」

糞っ。何も分かってないくせに…。

「あぁー、ちょっと悩みを聞いてくれて、助かったよ。」

俺は少し笑いそう言い、軽く流す。俺の悩みなんて誰も分かるはずないか。
俺は一度死んでるんだ。自殺という罪を犯して。
そして、こんなありえない世界に飛ばされ、人が平気で死ぬような世界へ。
本当に俺が生きてるかも分からないこの世界で。

「起こってしまった事は仕方ないよ。何かを背負ってても…今を生きるしか…」

もういいって…。俺は笑って誤魔化す。

「そうだな」

沈黙が続く。カノンがその沈黙を破る。

「シオンは逃げてるだけじゃないの?何もかもを拒絶して!」

「逃げてない!何も知らないくせにふざけるな!」

ついに俺は耐え切れず声を荒げてしまう。

「もういい。悪いが帰ってくれ」

俺は冷たく、そう言い放った。

「話してくれないと分からないよ!私は…知りたいから…」

「じゃあ、教えてやるよ!俺は異世界から自殺して気付いたら、この世界にいたんだよ!」

今まで、この事は、この世界に来て誰にも言った事のない…。普通の人から見れば馬鹿丸出しの
精神病患者みたいなことを言って、しかもこんな夢の世界かもしれない世界でこんな事
を言っても仕方ない。俺は激しく後悔した…。

カノンは呆けたような顔をして無言になった…。

「冗談だ…帰ってくれ…」

俺はそういって背を向ける。

「異世界…。仮に異世界からして自殺して、それでこの世界にいたとして、それがどうしたの!」

いきなりカノンの様子が変わる。

「だから冗談だって!」

「今も自殺と変わらないじゃない!」

「同じじゃない!生きてるだろ!」

「さっきは自分のことを死んでるって言ったわよね?ホント同じだわ!死んでるのと!ただ生きてるだけ!」

カノンに俺は掴みかかる。

「矛盾しているわよ。ホントは分かっているんじゃないの?」

いや俺は死んで…。本当はこの世界は…。頭が混乱してきた。
本当は分かっていた?いや本当に分からない…。俺は…。

「私はあなたに生きてて欲しい!生きて…。もう…私は…生きて欲しいから…」

今度は泣きじゃくりながらカノンは言う。

「生きていいのか…生きてるのか…生きている意味が…」

「私のために生きて欲しい…私は…」

カノンは唇をそっと重ねる。
考えても見てくれ。忘れている人に説明するとカノンはフェイトのクローンなわけだ…。
グラマラスでそれでいて…。そして……俺は一晩中、濃厚な夜を過ごした。
胸のうちを吐き出し、ベットで語り合いながら…。
そうして、この時の大量の子種が大当たりした。

時が経ち、俺は今、家族と一緒に幸せに暮らしている。
今でも俺は管理局員だ。昇進も断り、今でもずっと現場にいる。上に立つと人の死を多く見る事になる。
そして責任も…。それが怖かったからだ。根本的な俺の臆病な部分は変わってないかもしれない。
でもそれでも俺は変わった。死ぬのが怖いと思い、生きたいと。しかし、たとえ俺は今死んでも幸せだと感じるだろう。
抗って生きたと胸を張って言えるからだ。もちろん死ぬつもりもないし、死にたくはない。
俺は抗い続ける。生きるために!俺は今を生きてるんだ!幸せになるために!


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.048444986343384