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[18002] レベル1
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 18:30
みなさん色々と感想をありがとうございました。
先に個別に感想を返すべきなんでしょうが、それは後で行いたいと思います。
みなさんのおかげで、この作品の問題点が色々と見えて来ました。
やっぱり短編を引き延ばして長編用のプロットを組み立てたり、3つの作品を混ぜ合わせたりと、私の頭の中で色々無茶をした結果、作品は薄くなる、矛盾は出てくる、独りよがりになると、大きく分けて3つ(他にも色々ありますが……)の問題点が見えて来ました。
結果、このまま書き続ける事は不可能と判断したため、書き直しを視野に入れて、長期の作品放置をしたいと思います。
本当にすみません。
自分に対する戒めとしてこの作品はしばらく残して置きます。



次からが本編になりますので、よかったら見て行ってください。



[18002] レベル1 01
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:29
レベル1









冒険者の国へようこそ。

この国には初級、中級、上級のダンジョンがいくつも用意されている。

ダンジョンにはレベル制限がされており、特例を除けば中級ダンジョンにはレベル15から、上級ダンジョンにはレベル60からしか入る事が出来ない。

このレベル制限は上級者のモンスター独占を防ぐための住み分けとでも言うべきだろう。

むろんむやみに死者を出さない為でもあるが、冒険者にとっては先に述べた理由の方が浸透している。

これはそんなダンジョンを攻略する巨漢の物語。








「……悪い!俺はもう中級用のダンジョンへ行かせてもらう!」

昨日までパーティーを組んでいた男からそう言われてまたかと思った。

この国のダンジョンには制限があり、レベル14までは初級ダンジョンまでしか行けない事になってる。

つまりレベルが15になったと言う事だ。

「構わないさ。そう言う約束だったからな」

去って行く男に未練は無い。

なにせこれで20人目だからな。

金を稼ぐために冒険者の国へ来たのは良いが、俺は何故かレベルが上がらない。

レベルアップはしている。

しかし、何度レベルアップしてもレベルが1から変わらないのだ。

「また追いて行かれたの?」

宿屋の1階に用意された酒場で1人酒をあおっていると背中から声がかかった。

「エイレか……」

「ずいぶんとごあいさつじゃない?」

俺のそっけない態度に拗ねた表情を見せるこの女の名前はエイレ。

俺の最初のパーティーメンバーだった。

今では上級者用のダンジョンで荒稼ぎしている。

「そんな安酒なんか飲んじゃって……今日は儲け話があるのよ!」

「……いつものか?」

「そうなのよ!雇ってた奴隷が殺されちゃって、次が見つかるまでお願い出来る?」

『いつもの』とは簡単に言うと荷物持ちの事だ。

上級ダンジョンには高額なアイテムを落とすモンスターも居るが、そのアイテムを持ちきれなくなったりもする。

そのため高レベルの人間がダンジョン内で荷物を持つ奴隷を雇う事はよくある。

初級ダンジョンでくすぶっていた頃は「私は奴隷なんて雇わないから!」なんて言いながら奴隷を憐れんでいたエイレだが、金は人を変えると言う事だろうか?

奴隷が死ぬたびに俺に依頼をするようになった。

まぁ、良いさ。

他ならないエイレの頼みだ。

「良いぞ」

「ふふふ、流石は私の自慢の彼氏ね!」

思っても居ない事を良く言う。

悪い気はしないがな。







「なんだ、またお前かよ」

上級ダンジョンの前で待ち合わせ。

そう言われて来てみれば、見知った顔があった。

嫌そうにため息をついた男の名前はワーズ。

こいつも最初のパーティーメンバーだった。

「そんな嫌そうに言わないでよ!これでも私の彼氏なのよ?」

「けっ!」

険悪だが何時もこんな調子だから仕方がない。

「オイラの名前はケビンっす!よろしくっす!」

ワーズの荷物持ちらしい男が手を差し出す。

なりを見るに奴隷では無く俺と同じように依頼を受けて荷物持ちをしている低レベル冒険者のようだ。

「ゼオルドだ」

自己紹介をして手を握り返すと悲鳴が上がった。

「新入り、気を付けろよ?そいつレベルが上がらないくせに力だけは強いからな!」

相変わらず人が気にしている事を平気で言いやがる。

いつかその頭握りつぶしてやろうか?

「もう!止めなさいったら!」

「けっ!」

そのやり取りを最後に俺達はダンジョンに入った。

ダンジョン内の通路は普通の人間には広いのだが、俺のような身長が2mを超える巨体が歩くには狭い道だって存在する。

まぁ、そう言った通路はたいていがダンジョンを探索するためのショートカットとして作成された近道なので、広い道はいくらでも存在する。

ただし、広い道にはモンスターが常に存在している為、探索やレベルアップを行う目的地に着くまではショートカットの細い道を通るのが普通だ。

つまり、何が言いたいかと言うと、俺の巨体のせいで進めないショートカットがあるために、移動が大幅に遅れているのだ。

「おら!早くしろよデク!」

何度そう言われたか分からないがこれもエイレの為だ。

そう思えば少しは溜飲が下がる。

「ゼオルドさん、ワーズさんって怖いっすね……」

「気にするな。昔からあいつは俺とそりが合わないんだ」

目的地に着いてモンスターを狩り始めた2人の後ろでアイテム拾いにいそしむ俺にケビンが話しかけて来る。

「新入り!てめえも早くアイテム拾えよ!」

「ご、ごめんなさいっす!」

やれやれ、これは先がおもいやられる。







「俺とエイレはこの先を調べて来るから待ってろよ?」

ダンジョンの探索が進み、また狭い通路に入った所でワーズがそう言った。

荷物持ちで足手まといになる俺達低レベルの冒険者はここで待機と言う事だろう。

「は~給料が良いからって雇われたんすけど、怖い仕事だったんすね……」

ワーズが見えなくなった所でケビンが愚痴をもらした。

「高レベルモンスターがうじゃうじゃ居るんだ。当り前だろ?」

「そっちじゃ無いっすよ!ワーズさんっす!」

なんだ、そっちか。

「それにモンスターはゼオルドさんでもなんとかなりそうじゃないっすか!」

「俺が?冗談を言うな」

「あの怪力は低レベルだなんて嘘っすよね?」

「最初の握手をまだ根に持ってたのか?」

「そうじゃないっすよ!」

しばらくそう言った他愛の無い話を続けているとケビンが急にそわそわしだした。

「ゼオルドさん、オイラちょっと……」

……なんだ、小便か。

「モンスターに襲われないようにしろよ?」

レベルか……

松明を手に小便へ向かうケビンを見送って一人考える。

力がいくら強かろうとレベルが上がらなければ意味が無い。

初級ダンジョンの敵がたった1発のパンチで屠れたところで、モンスターが落とすアイテムは宿代を払うので精一杯だ。

だからこそ危険を冒してまでこんな所で荷物持ちをしている訳だが……

「ぜ、ゼオルドさん!」

しばらく考えに浸っていた俺を大声で呼ぶ声が聞こえる。

何かあったのか?

声の元へ駆けつけると、そこにはモンスターに追われるケビンの姿があった。

……1匹………やれるか?

通路に駆け込むケビンと入れ違いにモンスターへ駈け出した俺はありったけの力を込めてモンスターを殴り飛ばした。

行ける!

そう判断した俺は吹き飛んだモンスターの上へ馬乗りになって殴り続けた。

反撃を許すわけにはいかない。

許せば俺が殺される。

殴り続けているとモンスターが死んだようで、1対の双剣が現れた。

……双剣?

自分で双剣と言っておいてアレだが、その双剣は大剣と言われても納得してしまうような代物だった。

作りはシンプルで鞘も無いような代物だったが、手に取ると奇妙なほど自分の手に馴染んだ。

「す、すごいっす!」

通路に逃げ込んでこちらをうかがっていたケビンが歓喜の声で迎えてくれた。







ゼオルドさんすごいっす!

モンスターに追われてる時はどうしようかと思ったっすけど、この人が一緒で良かったっす!

本人はレベル1だとか言ってたっすけど、そんな人が高レベルモンスターが倒せるわけ無いっす。

きっとレベルを誤魔化してるに違いないっす!

「怪我は無いか?」

モンスターからドロップした大剣2本を腰に吊るしたゼオルドさんがオイラの事を気にかけてくれだ事で、オイラは思考の暴走から帰って来たっす。

「怪我はないっすけど、大変なんすよ!」

そうだったっす、オイラモンスターに追われてたっすけど、そんな事よりももっと慌てるような事が有ったんす!

それで慌てて走ってる途中にモンスターに見つかったんす。

オイラはゼオルドさんを連れてモンスターと一緒に駆け抜けた道を逆走し始めたっす。

「何処へ行くんだ?」

あたりを警戒しながら着いて来るゼオルドさんの言葉を無視して先を急ぐっす。

「ゼオルドさん、驚かずにそこの隙間から中を覗いて欲しいっす」

「何だ?何が有るって………っ!?」

壁一枚挟んだ先にはゼオルドさんの彼女だって言ってたエイレさんとワーズさんが……

「オイラびっくりしたっす。エイレさんはゼオルドさんの彼女だって聞いてたのに、本人はダンジョンの中であんな事してたっす!しかもあの人一緒にダンジョンを探索出来ないような木偶の棒に興味無いって言ってたっす。どう言う事っすか?」

ひっ!

ゼオルドさんの顔を覗き込んでオイラは自分の失敗を呪ったっす。

さっきのモンスターなんかめじゃないっす!

恐ろしくてこれ以上喋れないっす。

「殺す……」

ゼオルドさんは小さく呟くとこぶしを振り上げたっす。

ちょ!

むりっすよ!

いくらゼオルドさんでもこの壁は……

オイラはゼオルドさんを止めようとしたんすけど、ゼオルドさんは止まらなくて……

壁は轟音を立ててぶち抜かれたっす。

「うお!?なん……」

あわわわわわっ……

ワーズさん何も言えなまま頭を握りつぶされちまったっす。

オイラの村でも女を取り合っての殺し合いはよくあったっすけど、ここまで一方的なのは見た事がないっす。

「ひっ!」

それをまじかで見る事になったエイレさんは頭の無くなったワーズさんの下敷きになって、繋がったまま動く事が出来なくなってるっす。

「エイレ……お前を信じた俺が馬鹿だったのか?」

必死にワーズさんの下からはい出そうとするエイレさんの頭を持ち上げてゼオルドさんが質問してるっすけど、エイレさんは気が狂ったみたいに喚いてて何を言ってるのかさっぱり分からないっす。

「……もう良い。昔のよしみで苦しまないように送ってやる」

ぐしゃって音が部屋の中に響いてエイレさんも動かなくなったっす。

ゼオルドさんは泣いてこそいなかったっすけど、しばらくその場から動かなかったっす。

自分を裏切ってた人に対してやさしいっすね……

おいらだったらこんな奴らの事で悩んだりしないっす!



[18002] レベル1 02
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:31
レベル1 2








短い文章中に視点がコロコロと入れ替わると言う事をやってみたかったので読みにくいかもしれません。

回復アイテムやモンスターに困ったので、とあるオンラインゲームから拝借していますが、その世界へ全て準じる訳ではありません。











こんにちわっす!

オイラケビンっす。

とつぜんっすけど、ゼオルドさんが恋人と間男を殺してからもう1年が経ったっす。

冒険者ギルドの掟では、ダンジョン内でのいざこざは個人の裁量に任せられてるっす。

だから人を殺したとしてもおとがめは無しっす。

けど、仲間殺しをしたって事でゼオルドさんとパーティーを組んでくれるような奴は居なくなったっす。

ゼオルドさんは上級ダンジョンで手に入れたアイテムを売ったお金で、町の外れにある小屋を買い取って毎日畑仕事をしてるっす。

もうダンジョンには行く気が無いのかも知れないっすね……

オイラはそんなゼオルドさんをさし置いて、中級ダンジョンへ潜ってるっす。

上級ダンジョンの中で手に入れたアイテムを売り払ったお陰で、他の冒険者よりも数段良い装備が使えるので、あと少しでオイラの力だけで上級ダンジョンへ行けるくらいのレベルになってるっす。

オイラの元に手紙が届いたのはそんな時だったっす。







「ゼオルドのアニキ……たのむっすよ!」

ここ数日ケビンはこの調子だ。

なんでも妹が冒険者として来るので面倒を見てほしいと言うのだ。

そうは言われても俺は冒険者から足を洗った身だ。

エイレの事で良く分かった。

レベルの上がらない俺が冒険者をしても良い事なんか無い。

こうしてクワを振るっている方が堅実だ。

「わかったっす!もう頼まないっすよ!」

しばらく無心でクワを振るっているとケビンは去って行った。

ああ言いながらも翌日になるとまた同じように頼み込んで来る。

俺を慕ってくれるのは嬉しいが、今の俺は何の役にも立てない。







「えっと、確かこの辺りに……」

渡された地図を頼りに町はずれの小屋へ向かいます。

なんでもそこには私のような落ちこぼれでも面倒を見てくれる親切な冒険者さんが居るそうなんです。

あ、丁度良い所に畑仕事をしている人が居ます。

あの人に聞いてみましょう。

「あの、すみません!」

「ん?何だ?」

わわわ、後ろを向いてしゃがみこんでいたので気付きませんでしたけど凄く背が高いです。

それに手なんか私を鷲掴みできそうなくらい大きいです。

筋肉も町で見た冒険者さん達よりもむきむきしてます。

ひよっとしてこの人がそうなのかな?

「あの、えっと、その、この辺りにゼオルドさんって居らっしゃいますか?」







「あの、えっと、その、この辺りにゼオルドさんって居らっしゃいますか?」

ふむ?

年のころは15~6と言ったところか?

冒険者のようだが、この娘俺に何のようだ?

「俺がゼオルドだが?」

「良かった。違ってたらどうしようかと思いました」

ほう、笑顔の良く似合う娘だ。

強張っていた顔が俺の名を確認できた事で花が綻ぶように変化した。

「それで?俺の名を確認してどうする?」

「あ、そうでした。私と一緒にダンジョンへ行って下さい!」

ん?

ひょっとしてこの娘がケビンの言っていた妹か?

しかし……顔も人当たりも悪く無いところを見ると、何か問題でも有るのか?

俺に頼まなくてもパーティーに居るだけで良いなんて言いそうな輩がいくらでも寄って来そうなもんだがな?

……っと、そうか。

逆だな。

大事な妹に変な虫が付かないようにしたい訳か。

「私落ちこぼれだから、ゼオルドさんに教わるように言われたんです!」

どうやら当たりのようだな。

しかし、落ちこぼれか……

そのあたりの事もあって俺に頼んだのか?

ふむ、ケビンの頼みに答えるか。

これ以上付きまとわれても面倒だしな。







「武器と防具はそろっているようだな。回復用のアイテムは持っているのか?」

難しい顔をして考え込んでいたゼオルドさんからそう言われて、私は荷物を確認しました。

クッキーが1つにキャンディーが3つ……

うん。

ちゃんと冒険者ギルドでもらった分はあるから大丈夫!

「はい!ギルドで貰ったのがあります!」

「ギルドでもらった……あぁ、クッキーとキャンディーか。まあ良い」

農具を片付けて一目で高価と分かる大剣を両腰に吊るしたゼオルドさんは、ただ横に居るだけでピリピリするような覇気を放っていました。

頼もしいけどちょっと怖いかも。

「この森を少し入った所にアイバットが居る。まずはそいつでお前の力を試すぞ」
「は、はい!よろしくお願いします」







森へ来てみたは良いが、この娘……

「え~い!と~!や~!」

運動音痴にも程が有る。

「あぅ~!い、いたいよ!」

個人で倒すのは無理だと判断した俺は、アイバットに拳を叩き込んだ。

倒されたアイバットは地に落ちると小額のペニャとキャンディーに代わった。

大きな目玉に蝙蝠の翼が付いたこのモンスターはこの冒険者の国で最弱の筈なんだが……

「……お前は前衛職に向いてないな」

回復アイテムのキャンディーをペロペロと舐めながら俺の話を聞く娘は、耳としっぽがあれば確実に垂れさがるだろう気配を纏っていじけていた。

「うぅ、ティアそんなに冒険者に向いてないかな?」

うん?

ティアとはこの娘の名前か?

その歳になって自分で自分の名を呼ぶと言うのはいかがなものだろうか?

ちょっと引くぞ……

「違う。前衛に向いていないと言っただけだ。お前はレベル15になったら何に転職するんだ?」

「アシスト!私ね、皆を守りたいんです!」

支援系か、それなら何とかなりそうだな。

「パーティーを組むぞ。戦闘は俺に任せてお前はアイテムを集めろ」







「パーティーを組むぞ。戦闘は俺に任せてお前はアイテムを集めろ」

パーティーの申し込みウインドウが目の前に開いたのを見て私はびっくりしました。

だって、ゼオルドさんはアイテムを集めるだけで経験値を分けてくれるって言うんですよ?

「どうした?パーティーの登録方法も知らないのか?」

「い、いえ、それは知ってますよ!けど、良いんですか?」

「良いも悪いも無い。後衛を目指すお前に前衛をさせる必要は無いだろう?」

はぅ、この人本気でいってます!

町の人が言ってた通り良い人です!

私はウインドウのYESをクリックしてアイテム集めを始めました。

「フン!」

ゼオルドさんの拳が振るわれるたびにアイバットが地面に落ちます。

そのアイバットがアイテムに代わる前にゼオルドさんは次のアイバットへ拳を振るっています。

凄いです!

けど……

う~経験値が溜まるのは良いけど、アイテム多すぎだよ~!







俺もティアも持てるアイテムが一杯になったので町へ向かう事にした。

「ゼオルドさん強いんですね。レベルいくつなんですか?」

ん?

ケビンに聞いていないのか?

「レベルは1だ。俺は特殊体質らしくてな、いくらレベルアップしてもレベルが1から上がらない」

「え~!?それなのに私より強いんですか?」

ケビンめ……これくらい教えておけば良い物を。

「それじゃぁ、ステータスの振り分けポイントはどうしてるんですか?やっぱりレベルアップしてない扱いだから貰えないとか?」

ん?

振り分けポイント?

何の事だ?

「ほら、レベルが上がった時に力とか体力のどれかに2ポイントずつ振れる……レベルが上がらないって事はそれも無いんですか?」

あぁ、アレの事か。

アレに関しては意味が分からないから放っておいたんだがな……

頻繁にレベルアップをしていると振り分けポイントが上限値に達したとかアナウンスが流れて煩いんでつい……

「力に全部」

「やっぱり!だからアイバットもただのパンチで死んじゃうんですね」

うん?

あれくらい普通じゃないのか?






「今日はありがとうございました!あの、明日もお願いして良いですか?」

アイバットの落としたアイテムを鑑定屋さんが換金している間に約束を取りつけます。

だって、こんなに良い先生なら他の人も頼ったりするはずだもん!

「ああ、明日はダンジョンに潜るつもりだから遅れずに来いよ?」

ゼオルドさんに指定された時間はいつもなら寝ているような時間でした。

あぅ~

ゼオルドさん厳しい……

でもでも、強くなる為だもんね!







「明日もよろしくお願いします……か」

久しぶりの狩りは楽しかった。

クワを振るっている時には満たされなかったモノが満たされる。

やはり俺は粗暴な生活の方が似合っているらしい。

「こっちの方は相変わらずだな」

1年ぶりのレベルアップ……けれど相変わらずレベル表示が1から変わらない自分のステータスにため息が出る。

ただ、足踏みしている訳ではないと分かっている。

振り分けポイントとやらは今まで分からなかったが、あの娘の言っていた事が本当ならレベルが上がらない俺でも強くなる事が可能と言う事だ。

それにレベルが上がれば上がった分だけステータスにはささやかながらも数字がプラスされている。

高レベルの冒険者のレベルアップに比べれば本当にささやかだがな。

さて、明日も早いし、今日はこのくらいにして寝るとするか。

あの娘がレベル15になる短い間とは言えせっかくパーティーを組んだんだ。

先人として教えられる事は全て教えてやらないとな。



[18002] レベル1 03
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:31
レベル1 3










はうぅ~

眠いよ~

おひさまの登らないうちから出発して、ゼオルドさんと待ち合わせ……

にゅふふ、これってなんだかデートみたい。

行くのはダンジョンだけど、ゼオルドさんと一緒だから大丈夫だよね?

それにしても……眠いよ~







「おはおうございまふ~」

………ずいぶん寝むそうだな。

「すみまふぇん、わふぁふぃあさがよわくっふぇ」

眼がとろんとしてて可愛いんだが、このままダンジョンへ入るわけにはいかないな……

仕方無い一度戻って出直すか。

無防備に俺へもたれかかって眠ってしまった眠り姫を抱きかかえてダンジョンの入り口を後にした。







何時も使ってるベットより柔らかい……

それになんだか暖かい……

暖かいけど……あぅ!?

そうだ!

今日はゼオルドさんとダンジョン前で待ち合わせしてるんだったよ!

急がないと!

「目が覚めたか?」

……ふぇ?

自分の被っていたシーツを蹴飛ばすようにして起きた私が目にしたのはゼオルドさんでした。

あれ?

えっと……?

私はたしか、ゼオルドさんと待ち合わせをしてて……

あ~!

思い出したよ!

私起きる→寝ぼけてダンジョン前→ゼオルドさんに抱き付く→多分ゼオルドさんの家(今ここ?)

あれ?

でもでも、私が家を出たのも朝で、今も朝みたいだよ?

家の外は見えないけど、鶏の鳴き声が聞こえるもん。

きっと朝だよ!

だったら私には記憶の無い空白の1日があるわけだよね……

う~ん。

私起きる→寝ぼけてダンジョン前→ゼオルドさんに抱き付く→記憶に無いけどゼオルドさんと、きゃ~~~!恥ずかしくて言えない!→翌朝(今ここ?)

そっか……そうだよね、記憶に無いけど知らない部屋で寝てて、そこに男の人が居るって事はそうなんだよね?

でも記憶が無いのは何でだろ?

う~ん

あ!

近所のお姉ちゃんが言ってたっけ、最初は痛いけど後から気持ち良くなって、最後は何も考えられなくなっちゃうって!

凄い時は意識も飛んじゃうって言ってたし、きっと記憶もとんじゃったんだ!

でもでも、初めての私にゼオルドさんったら……

「う~私初めてだったのに……ゼオルドさんのエッチ!」

「何故そうなる!!」

「だって、こんな所で寝てるって事はゼオルドさんとその……」

あぅ、恥ずかしくて言えないよ~

「そんな訳あるか!!」







「そんな訳あるか!!」

まったく、何を考えているんだ?

「だってだって、ゼオルドさんの待ってたダンジョンに朝行ったのに、ゼオルドさんの家で寝てる今も朝だって事は……」

朝?

何を言ってるんだ?

「今はもうとっくに昼だぞ?」

「え~!鶏が鳴いてるから朝だと思ったのに!?」

鶏が鳴くから朝ってお前……

「鶏は昼でも鳴くぞ?」

「え~!?」

うん?

何故驚く?

ケビンは農村の出だと聞いているぞ?

「そっか、お昼だったんだ……ティア勘違いしちゃった」

なんだ、勘違いか。







「そっか、お昼だったんだ……ティア勘違いしちゃった」

そうだよね、ゼオルドさんみたいな優秀な先生が生徒に手を出すわけないよね!

でもでも、なんで私ゼオルドさんの家に居るんだろ?

「まったく、朝が弱いのならそう言え、寝ているお前をダンジョンへ連れて行く訳にもいかず、ここまで運ぶのに苦労したぞ?」

あぅ……

「ご、ごめんなさい」

「まぁ良い。だが、朝が弱いとなると致命的だな」

え?

なんでなんで?

「かりにお前がアシストになったとして、昼から夕方までしかパーティーに参加出来ませんって言うのか?そんな短い間だと誰も相手にしてくれなくなるぞ?」

……そっか、そうだよね、私一人じゃ無くて相手も居るんだもんね。

「でもでも、朝が弱いだけでそれ以外は何ともないんですよ?」

「ほとんどの冒険者は朝出発して夕方にはダンジョンから出て来る」

「中には昼出て真夜中に帰って来る人だって居るんじゃないんですか?」







「中には昼出て真夜中に帰って来る人だって居るんじゃないんですか?」

何を言ってるんだ?

「そんな奴はほとんど居ない。真夜中に帰っても宿屋が空いていないだろう?」

「あっ!そっか……」

ケビンは何も教えてなかったのか?

「まあ俺は初心者の間面倒を見るだけだから昼から夕方まででも構わんがな」

「うぅ~明日からは頑張って眼を覚ましますから見捨てないで下さい!」







私はゼオルドさんにお昼ご飯を御馳走になってから宿屋へ戻りました。

昼からダンジョンへ潜っても、先に入った人が狩りをしていて邪魔なんだそうです。

先に居る人が邪魔になるっていうのがちょっと良く分からないけど……

「ティアちゃんお帰り!」

考え事をしながら歩いていると、前の方からレイちゃんが歩いて来ました。

「レイちゃん!ただいま!」

本当の名前はレイチェルちゃん。

長いから皆レイちゃんって呼んでます。

「今日の狩りどうだったの?」

「う~んそれがね、せっかくレイちゃんに起こしてもらったのに、ダンジョン前で寝ちゃった」

「え~!?それってもしかして相手が怒って帰っちゃったりしたんじゃないの?」

「うんん、大丈夫。先生は明日からがんばれって言ってくれたよ?」

「良い先生なんだね」

「うん!」

あれ?

何でだろ?

レイちゃんの顔が曇っちゃったよ?

「ティアちゃんは良いな~、私なんて兄さんが、最高の先生を連れて来るからそれまで待ってろ!なんて言うんだよ?」

「へ~、レイちゃんのお兄さんって確かもう少しで上級ダンジョンに行けるようになるレベルなんだよね?そんな人が最高の先生って言うくらいだから相当良い先生なんだね」

ふえ?

ため息をついて首を振るって事はダメな先生って事?

「それがね、調べてみたらその人、他の冒険者に仲間殺しって言われてるらしいの」

……仲間殺し?

なんだか怖い……

「そんな怖そうな人をお兄さんはレイちゃんの先生にしたがってるの?」

「そうみたいゼオルドって言うらしいんだけどね……」

え?







「ゼオルドのアニキ!」

ん?

時間が空いてしまった為、畑仕事をしているとケビンが訪ねて来た。

妹の調子を聞きたいと言ったところか?

「今日こそ妹の面倒を見てもらうっすよ?」

は?










後書き
えっと、感の良い人なら第2話で気付いてたかと思いますが、ティアはケビンの妹ではありません。



[18002] レベル1 04
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:32
レベル1 4









「今日こそ妹の面倒を見てもらうっすよ?」

そう言ったオイラのへゼオルドのアニキは不思議な物を見るような顔をしったっす。

「ちょっと待て。ティアはお前の妹じゃなかったのか?」

ティア?

間違って無ければレイチェルがここに来て出来た友達だったっすね。

って、事はゼオルドのアニキはティアっちをレイチェルと間違えて面倒見てたって事っすか?

それはつまり!

「アニキ!やっとその気になってくれたんすね?そのティアって子にはオイラが話を通しておくっすから、妹の事も頼むっす!そうときまればオイラは町へ帰るっす!」







ぬ~

まさかケビンの妹とティアが別の人間だったとは……

まぁ、早とちりしたのは俺だ。

しかし、ティアが別人だとすると、何故仲間殺しの俺に師事した?

それも明日の朝になれば分かるか。







「レイチェル!ついにやったっすよ!」

レイちゃんの部屋にノックもせずに入って来たケビンさんが嬉しそうにレイちゃんへ言います。

「兄さん、部屋に入る時はノックして下さいと言っているでしょう?」

「おお!ティアっち良い所に居たっす!明日からゼオルドのアニキの所へレイチェルも行く事になったっすから!」

ケビンさんはレイちゃんの抗議に耳を貸す事もなく、部屋で見つけた私にそういいました。
けど、私はそれどころじゃないんです。

このまま仲間殺しなんて言われているゼオルドさんの所へ行き続けて良いのか迷ってるんです。

確かにゼオルドさんは優しくて強くて色々教えてくれる良い先生です。

でもでも、仲間殺しと一緒に行動するって言うのはそれだけで怖い事なんです。

だって、いつ殺されるかわからないじゃないですか。

あの優しいゼオルドさんが私を殺すなんて思いたくないです。

けど、怖いんです!

「兄さん、その事なんですけど、何故仲間殺しなん呼ばれてる人の所へ行かせようとするんですか?」

「そ、そうですよ!私もレイちゃんに聞くまでゼオルドさんが仲間殺しだって知らなくて……」

そうなんです、私他の冒険者さん達に騙されてたんです。

ゼオルドさんを紹介してくれた冒険者さん達に、何でそんな危ない人に教えてもらえって言われたのか聞いたら、落ちこぼれの私をからかう為に、仲間殺しのゼオルドさんを紹介したって言うんです。

「ティアっちその事知らずにアニキにお願いしに行ったっすか?だったらアニキが良い先生だって言うのは分かるはずっすよ?」

「たしかにゼオルドさんは優しかったです。でもでも、怖いんです!」

「私も怖いよ!兄さん、私そんな人の所に行きたくない!」








「私も怖いよ!兄さん、私そんな人の所に行きたくない!」

あ~

アニキの事きちんと説明しとくべきだったっすね。

「取りあえず2人とも落ち着くっす。話はそれからっす」

オイラ説明は下手なんすけど……

1階の酒場から貰って来たオレンジジュースを2人に渡しながらどこから説明したら良いか迷うっす。

全部話せばアニキが女を寝とられた事まで話さなきゃならないっす。

それはアニキの顔に泥を塗る事になるっす。

だからと言って中途半端に話しても2人とも納得しないと思うっす。

……アニキには悪いと思うっすけど、やっぱり全部話すっす。

オイラにとってはアニキも大事っすけど、妹を誰とも知れない男どもと行動させるのは我慢ならないっす。

「落ち着いてきたみたいっすね」

渡されたコップをしばらく見つめていた2人が落ち着いて来たのを確認して話し始めるっす。

「オイラがアニキと出会ったのは丁度仲間殺しになった日の事だったっす」







「だからな、アニキは彼女の浮気でそうなっただけで、アニキだけが悪いって訳じゃないんすよ」

ケビンさんは丁寧にゼオルドさんがどうして仲間を殺したのか教えてくれました。

レイちゃんは自分の住んでた村でも恋人を取り合って殺し合いが起こった事が有るとかで、納得しちゃったけど、それでもやっぱり人殺しなんて怖いな……

「ティアっちには酷い事を言うようっすけど、ここまで言ってアニキが嫌いになったなら、冒険者なんて止めた方が良いっす」

え?

何で?

「ティアっちは見た感じ裕福な家の出みたいっすから知らないようっすけど、依頼によっては人も殺したりするんすよ?」

……どう言う事?

冒険者は皆モンスターを倒すのがお仕事じゃないの?

「嘘だと思うなら1階の掲示板を見てみるっす」

私は嘘だと思いながらも1階へ走りました。







「兄さん……」

「レイチェルもこれだけ言ってダメならもう良いっすよ」

私は兄さんの言葉を否定するように首を振りました。

「でも、ティアちゃんにあんな事言わなくても……」

ティアちゃんの出て行ったドアを見つめながら思います。

確かにティアちゃんは夢見がちな所があるけど、だからって今のは言い過ぎだと思います。

冒険者でもそんな汚い仕事をせずに過ごす方法はいくらでもあるはずですから。

「深みにはまってから挫折するよりは、早いうちに知っておいた方が良いっす」

そう言って自分の手を見つめる兄さんは殺した人間の事を思い出しているのでしょうか?

この国へ来た私は兄さんから最初に人を殺した事を打ち明けられました。

冒険者になると言う事はそう言った事をする可能性も有ると。

殺した相手は懸賞金のかかった賞金首だったそうです。

私達の家は貧しくて兄がそのお金を送ってくれていなければ、今頃私は娼館で働かされている所でした。

だから兄さんへは感謝こそしていますが、けがらわしいとかそう言った事は思いません。

けれどティアはひょっとしたら軽蔑してしまうかもしれません。

そうなったら、私はティアと友達でいる自信がありません。

だからお願いですティア。

どうか私を友達で居させて!







山賊の討伐、賞金首……それ以外にも色々人を殺してしまいそうな仕事はたくさんありました。

嘘だと思いたかったです。

けど全てが本当の事だと掲示板を見てわかっちゃいました。

私はモンスターから人を守るのが冒険者の勤めだと思ってたんです。

でも、良く思い出してみれば私が初めて出会った冒険者さんもそうだったのかも知れません。

遠出で馬車に押し込められていた私は、何日か冒険者さんに護衛をしてもらっていたんです。

何日目だったか朝起きると昨日までよく話をしてくれた冒険者さんが、顔を青くしてうつむいていたんです。

その人の仲間に聞いたら夜遅くにモンスターの襲撃があった事を教えてくれました。

その後小声であいつは初めてだしみんな最初はこんなもんさなんて言ってました。

私はそんなになってまで私を助けてくれた冒険者さんにあこがれて冒険者になろうとしていたんですけど……

良く考えれば護衛を請け負うような冒険者さんが護衛で初めてモンスターを殺すなんて有り得ないですよね……

きっと襲いかかっていたのはモンスターじゃ無くて人だったんですね。

あこがれていた冒険者さんも人殺し……

お父さんとお母さんに反対されて、家出してまで冒険者になろうとしたのに……

私はどうしたら良いんだろう……

誰か教えてよ……







「ティア……」

昨日掲示板を見て落ち込んだティアが部屋へ戻ったのは確認しています。

だから一緒にゼオルドさんの元へ向かう為に声をかけたのですが、部屋には誰も居ませんでした。

やっぱりティアは冒険者を止めるのかな?

出来れば一緒に行きたかったです。

私は仕方無く1人で兄に連れられてゼオルドさんの家へ向かいました。







人の気配で目が覚めた。

1人か?

その気配はドアを開けようか開けまいか迷っているようだ。

「鍵なら開いている。誰か知らないが入るなら入れ」

俺の声は聞こえているはずだが、それでもドアの前から気配は動かない。

……入って来ないな。







う~

どうしよう。

緊張してきたよ~

「鍵なら開いている。誰か知らないが入るなら入れ」

ドアの前で固まっていた私にゼオルドさんから声がかかります。

あはは、さすがは上級ダンジョンのモンスターも倒せるような先生です。

きっと気配とかで分かっちゃうんですね。

しばらくためらったあとで、私は勢いよくドアを開けました。

「おはようござ……っ~~~~~~~!」

元気よく挨拶しようとした私ですが、ドアを開けた体制で固まってしまいました。

「……出来ればドアを閉めてくれると助かるんだがな」

裸ですよ裸!

うわうわうわ、男の人の裸なんて初めてみました!

ゼオルドさんが少し動くだけではち切れそうなほど盛り上がった筋肉がぴくぴく動いてます。

全身傷だらけですけど、そんなのゼオルドさんの筋肉にとっては飾りみたいに見えます!

それに股の間に見える……

「きゅ~~~~~」







「きゅ~~~~~」

うん?

人の体を凝視したと思ったらいきなり倒れたぞ?

仕方無い。

またベッドを貸してやるか。

昨日と違い寝ぼけている訳では無いようだが今回は何故倒れた?

「……あ」

ティアを抱きかかえてベットまで運ぶ途中に気付いた。

昨日は寝苦しかったから全て脱いだんだが……ひょっとして男に免疫が無いのか?

「おはようございますっす!今日から妹をよろしくたの……へ?」

「……に、兄さん邪魔しちゃ駄目よ!すみません、明日出直します!」







アニキの家が見えて来た所でもう1度レイチェルに言っておくっす!

「いいっすか?くれぐれもアニキに失礼の無いようにするっす!」

「兄さんその話はこれで97回目です」

何度言っても言い足りないから言ってるんすよ!

あれ?

どう言う事っすか?

アニキの家のドアが開いてるっすよ?

……ま、悩んでも仕方無いっすね。

ダンジョンは例え罠が有ったとしても突撃あるのみっす!

「おはようございますっす!今日から妹をよろしくたの……へ?」

家へ1歩踏み込んだ所で罠よりももっとたちの悪い物に引っかかった事に気付いたっす。

そこにはティアっちに覆いかぶさるアニキの姿が……

しかもまっぱっすよ?まっぱ!

朝からだなんてレベル高いっす!

オイラにはとても真似できないっすよ!

「……に、兄さん邪魔しちゃ駄目よ!すみません、明日出直します!」

レイチェルに手をひかれたオイラは来た道を全速力で帰る事になったっす。

後ろからアニキの声が聞こえたような気もしたっすけど、今のオイラにはそんなのを確認してる余裕は無いっす!







「いいっすか?くれぐれもアニキに失礼の無いようにするっす!」

私の先生になるゼオルドさんの家が見えて来た所でまた兄さんが言います。

「兄さんその話はこれで97回目です」

もう96回聞もいてるんですよ?

兄さんがゼオルドさんを尊敬しているのは分かりましたけど、いい加減にしてください。

いくら兄さんでも怒りますよ?

でも、ここまで兄さんが慕うなんて一体どんな人なんでしょう?

もちろん事前情報は仕入れて有りますけど、そのほとんどが仲間殺しをしたゼオルドさんに対する中傷にすぎないんですよね。

曰くレベルの上がらない落ちこぼれだとか、曰く筋肉達磨だとか……

兄さんに聞いても自分が尊敬している事しか教えてくれませんし、本当にどんな人なんでしょうか?

ドアが開いていたのでおかしいとは思いましたが、兄さんが躊躇なく入ったので私もそれに続きました。

「おはようございますっす!今日から妹をよろしくたの……へ?」

そこで目にしたのは、2mを超える巨人がティアちゃんに覆いかぶさる姿でした。

ティアちゃん、夢見がちな所があるなんて思ってごめんなさい。

貴女の方が私よりも大人だったのね……

「……に、兄さん邪魔しちゃ駄目よ!すみません、明日出直します!」

私は兄さんの手を引いて町まで駈け出しました。

後ろから男性の声が聞こえて来ますが今はソレに答える余裕はありません。

ティアちゃん、帰ってきたら感想を聞かせてね。







ケビンとその妹だろう少女がそろって駆け出したのが背中越しに気配で分かった。

……待て、これは不味いんじゃないのか?

思いっきり誤解を受けているぞ?

「ま、待て!お前ら!」

声を張り上げてドアの所まで走ったが、2人の影はもう何処にも見当たらなかった。

は、早い……

まぁ、例え姿が見えていたとしても、全裸で家の外へ出る勇気は無いがな。

ため息をつき、ドアを閉めてた俺は服を着ながら考える。

どうやって誤解を解けば良いんだ?















後書き
……あれ?
ダンジョンに突入するつもりが違うジャンルに突入している。





没ネタ

「ま、待て!お前ら!」

声を張り上げてドアの所まで走ったが、2人の影はもう何処にも見当たらなかった。

だが、ここで誤解を解いておかないとケビンの妹の面倒を見るのが気不味すぎる!

おそらく2人は町に向かった筈だ!

俺は脚に力を込めて走り出した。

しばらく走るとソレらしい2人組の姿が見えた。

「待てケビン!」

「うわ!追って来たっす!」

「きゃーーー!」

ぬ?

何故逃げる?

「待てと言っている!」

「待てないっす!何で追って来るッすか!」

その後止まらない2人を追って、自分が裸なのを忘れていた俺は町中を堂々と駆け抜けてしまった。



[18002] レベル1 05
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:33
レベル1 5














何時も使ってるベットより柔らかい……

それになんだか暖かい……

暖かいけど……あれ?

なんだか前にもこんな事があったような……あぅ!?

そうだ!

ゼオルドさんの家に来てドアを開けたら……きゅ~~~!

あぅあぅあぅ……ど、どうしよう。

きっとあの後気絶してまたゼオルドさんのベッド借りちゃったんだ。

ゼ、ゼオルドさん怒って無いかな?

そっと、そっと目を開けて……

「ん?」

うわ!

ひょっとして起きてるのに気付かれちゃった?

だ、大丈夫だよね?

気付かれてないよね?

薄く目を開けて……

テーブルの上には2人分の食事が用意されていて、ゼオルドさんは私に背を向けるようにして椅子にすわってます。

お昼御飯かな?

2人分って事は昨日みたいに私も食べて良いのかな?

昨日食べたゼオルドさんの料理美味しかったな~

「ん?」

わわ!

慌てて目を閉じたけどまだ気付かれてないよね?

でもでも、なんだか見られてる感じがするよ!

お願いゼオルドさん気付かないで!







さて、昨日と同じでティアを寝かせたまでは良かったが、全然目を覚まさないな。

昨日は徹夜でもしていたのか?

朝早くに訪ねて来たまではそれで説明が付く。

だが、その後何故家の前で躊躇していた?

「ん?」

ティアが起きたのかと思ってベッドに目を向けてみたが、ティアの目はしっかりと閉じている。

……気のせいか?

そう思ってケビンの誤解をどう解こうか考えていると、やはり気配がする。

背中へ視線を感じるのだ。

「ん?」

もう1度目を向けてみたがやはりティアの目はしっかりと閉じている。

……気のせいなのか?

尚もじっと見続けていると、ティアがぷるぷるし始めた。

……気のせいじゃ無いな。

息をひそめると言うのは良く聞くが、息を止めて何をしてるんだ?

「っぷは!」

そうとう苦しかったのだろう、深呼吸を何度も繰り返している。

さっきから何をしているんだ?

「あぅ、ばれちゃった……」

かと思うと今度はシーツを引っ張り上げて顔を隠してしまった。

ふむ?

寝顔を見られていたのが恥ずかしかったのか?







どどど、どうしよう?

起きてるのがばれちゃったよ!?

でもでも、ゼオルドさん怒ってる感じじゃ無かったし、大丈夫だよね?

うんうん、大丈夫だよ!

ティアちゃんファイト!

「お、おはようございます!ゼオルドさん!」







「お、おはようございます!ゼオルドさん!」

ん?

今度はシーツから顔を出したかと思うと一気に起き上がったな。

しかし……

「今はもう深夜だぞ?」

「え~~~~!?」

そう、気絶したティアは起きる気配を見せずに今まで眠り続けていたのだ。

「まったく……取りあえず飯だ。深夜とは言え今まで寝ていたんだ、腹は減ってるだろ?」







「今はもう深夜だぞ?」

「え~~~~!?」

でもでも、今日は鶏さんも鳴いてないし、本当に夜なの?

「まったく……取りあえず飯だ。深夜とは言え今まで寝ていたんだ、腹は減ってるだろ?」

ゼオルドさんに言われて、タイミング良く私のお腹から「ク~ッ」って音がしました。

うぅ、恥ずかしいです。

でもでも、ご飯を食べさせてくれるって事は、怒って無いよね?

ゼオルドさんの正面に用意された席に座ってご飯を頂きます。

あ!

やっぱり美味しい!

宿のご飯ってなんだか味が濃すぎるんですよね……

「それで?家を訪ねて来たのは何か用事でも有ったのか?」

食事も終わって一息ついた所でゼオルドさんが聞いて来ます。

待ち合わせ場所はダンジョン前なのに家へ直接来ちゃったんだから聞きたくなっちゃいますよね。

でもでも、どう話したら良いんだろ?

「私ゼオルドさんが仲間殺しだって知らなくて……でもでも、それは関係無くて…あれ?やっぱり関係してて……あれ?やっぱり関係無くて!?」

うぅ~上手く説明できないよ~!







「私ゼオルドさんが仲間殺しだって知らなくて……でもでも、それは関係無くて…あれ?やっぱり関係してて……あれ?やっぱり関係無くて!?」

ん?

何が言いたい?

最初は何を言いたいか良く分からなかった。

ティアはどうもパニックを起こしやすいようだ。

冒険者としてこれは不味いな。

それから1時間じっくりと時間をかけてようやく話の内容が見えて来た。

昔世話になってた冒険者にあこがれて、冒険者になる為に家を飛び出したまでは良かった。

しかし、モンスターから人々を守る職業だと思っていた冒険者は、実は依頼によっては人も殺す職業だった。

冒険者として落ちこぼれな自分に紹介された先生……つまり俺だな。

先生も実は人殺しで、自分がこれからどうしたらいいのか分からない。

ふむ、冒険者向きではないパーティーに迷惑をかけるようなティアが、嫌がらせで俺の元へ来た訳か。

「他に相談できそうな人も居なくて……私どうしたら良いんですか?」

どうしたら……か。

難しい所だな。

自分で考えろと言ってしまうのも手だが、それはもうケビンが昨晩の内にやっているようだ。

その結果1晩悩んでここへ来た訳だから、ここは何かしらアドバイスを与えるのが俺の仕事か?

「……お前はどうしたい?」







「……お前はどうしたい?」

え?

ゼオルドさんは今まで聞けば何でも教えてくれました。

回復アイテムの素早い使い方や、アイテムの効率的な換金の仕方。

モンスターが襲いかかって来た時の身の守り方。

それ以外にも色々です。

ゼオルドさんは人殺し……その事に悩みましたけど、それを抜きにしたら厳しいけど優しい先生です。

だから相談したのに……

あれ?

何でかな?

涙が止まらないよ?

「……何で教えてくれないんですか?意地悪しないで教えて下さいよぉ~」







「……何で教えてくれないんですか?意地悪しないで教えて下さいよぉ~」

む?

泣かせてしまった。

そんなつもりでは無かったんだが、結果的にそうなってしまった。

まるで幼子のように泣く姿を見て気持ちが揺らぐ。

俺が道を示すのは簡単だ。

だが、選択肢すら無く俺に言われたからと、その道を進むのはティアの為にはならないだろう。

「意地悪で言っている訳では無い」







「意地悪で言っている訳では無い」

ふえ?

「1晩悩んだのだから、気付いているとは思うが、お前には大きく分けて3つの道が有る」
3つ?

冒険者を続けるか辞める以外に何か有るの?

「1つは冒険者を続ける事」

うん。

「2つめは冒険者を辞めて他の仕事を探す」

……あ!

そっか、冒険者じゃなくなっちゃったら、何かお仕事をしないとお金が無くなっちゃうんだ。

「3つめは家へ帰る事だ」

え?

「お前と行動していて気付いたが、お前は一般家庭で育った訳ではないだろう?どれだけ裕福な家かは知らないが、立ち居振る舞いを見る限り、礼儀作法をきっちり仕込まれるような家柄のようだしな」

あ、あは、あはははは……

たった3日でそんなに分かっちゃうんだ。

「どれを選ぶかはお前が決めるべきだ。後になって俺のせいで人生を失敗したなどと言われたくないのでな」

お父さんとお母さん……うんん、もうゼオルドさんには気付かれてるんだし、自分に言い聞かせる必要もないよね?

お父様とお母様に反対されて、それでも冒険者になった。

それまでは2人の言う事を聞くだけが私の生き方だった。

けど、もうあんな窮屈な生活は嫌。

だからあそこへはもう戻らない!

じゃあじゃあ、私は冒険者を続けたいの?

人殺しになりたいの?

「冒険者を辞めて他の仕事をすれば確かに人は殺さずにすむ可能性は有るだろうが、零では無いぞ?」

どう言う事?

他の仕事をすれば人を殺さなくて良いんじゃないの?







「冒険者を辞めて他の仕事をすれば確かに人は殺さずにすむ可能性は有るだろうが、零では無いぞ?」

言っておかなければ、親の反対を押し切ってまで家を飛び出したようだし、3番の選択を選ぶ可能性は低いだろう。

だが、意地だけで生きられるほど世界は簡単ではない。

「それどころか、山賊や盗賊に襲われて逆に命を落とす事もあるだろう」

確率は低いだろうが、零では無い。

現にティアは親と共に馬車を襲われている。

ティアの話を聞く限りでは家が裕福で、護衛に冒険者を雇った事くらいしか分からなかったため、それが物取りだったのか、ティアの家柄が関係していたのかまでは分からないがな。







「それどころか、山賊や盗賊に襲われて逆に命を落とす事もあるだろう」

……そっか、そんな事考えた事も無かったよ。

やっぱり私は世間知らずのお嬢様なんだね。

お父様が危険だって言ってたのはこう言う事も含めた危険だったんだね。

「だから家に戻るのも1つの手だと言う事は忘れるなよ?」

ゼオルドさんはそう言ったけど、家に戻るのは何か違う気がします。

でもでも……







「ゼオルドさん!私決めました!」

ふむ、ずいぶんと悩んだようだが、良い顔になったな。

俺を初めて訪ねて来た時のような良い顔だ。

「私は人を殺さない冒険者になります!冒険者になって皆を守るんです!」

ふっ、あえてその道は示さなかったのだが、自分でたどり着いたか。

冒険者の全てが人を殺している訳では無いからな。

「そうか」







「そうか」

あ!

ゼオルドさん嬉しそう。

「まぁ、お前が他の仕事をしたとしても、そのドジっぷりでは長続きしなかっただろうがな?」

「ぶ~!ゼオルドさんの意地悪!いっぱい悩んだのに、それが馬鹿みたいじゃないですか~!」

「くっはっはっはっはっ!だが、事実だろう?」

確かにそうだけど……

でもでも、これだけは言えます!

「ゼオルド先生!これからもよろしくお願いします!」



[18002] レベル1 06
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:34
レベル1 6











俺の目の前ではティアが、朝飯を食いながらこっくりこっくりと船をこいでいる。

いつぞやティアに言った通り夜になれば宿屋は閉まる。

深夜となればなおさらだ。

そのためティアを家に泊めたのだ。

今日で4日目と言う短い付き合いにも関わらずそのあたり抵抗は無いのだろうか?

まぁ、手を出す気は無いがな。

「あぅ~うまうま……」

寝るのか食うのかどっちかに出来ないのか?

朝から深夜まで寝ていたにも関わらずこの眠り姫は、深夜から朝にかけてまた寝たのだ。

この調子だとティアは朝が弱いのでは無く、何か根本的に眠くなる理由が有るのではないか?

「おはようございますっす!」

む?

家のドアをノックする音とケビンの声が聞こえる。

「うまうま……」

ティアの口に含んだパンが喉に詰まらないか気にしながらケビンとその妹のレイチェルを招き入れる。

「ティアがあの通り飯の最中なんでな、もう少し待ってくれ」

この眠り姫は幸せそうに飯を食いやがる。

「ティアちゃんったら相変わらずね……」

ティアの姿を見てため息をつきながらレイチェルが言う。

どうやらこれがティアの普通らしい。

レイチェルも最初は不味いと思って何度も注意したりしたらしいのだが、この癖だけはどうしても治らなかったそうだ。

最近では喉に物を詰まらせるような事も無い為諦めているらしい。

「さて、改めて今日からお前の面倒を見る事になったゼオルドだ」

「レイチェルです。よろしくお願いします」







兄さんが昨日の事を忘れたかの様にゼオルドさんの家を目指すのに対して、私はいまいち乗り気では有りません。

ティアが今朝になっても宿へ帰って来て居ないからです。

ひょっとするとゼオルドさんは教え子に無理矢理手を出すような方なのかも知れません。

兄さんにそれとなく聞いてみましたが、そんな事は無いだろうと言われてしまいました。

しかし、私は昨日の朝見た光景が忘れられません。

ベッドへ横たわるティアと裸の男……

兄さんを身近に感じて育ったため、男の裸は見慣れています。

けれどアレは異常でした。

2mを超えるだろう体に筋肉の鎧を纏った巨人。

後ろ姿しか見ていませんが相当鍛えこまれている事が伺えました。

私のような冒険者になったばかりの女では、押し倒されたりしたら抵抗のしようが無いように思えます。

「おはようございますっす!」

考え事をしている間にゼオルドさんの家へ着いてしまったようです。

ドアが開いて兄さんの挨拶にゼオルドさんが頷き返しました。

後ろ姿しか見ていなかったため、顔はもっと怖いのかと思っていましたが、それほどでもありませんでした。

そのまま中へ通された私達は寝ながらご飯を食べているティアを見つけました。

「うまうま……」

やっぱりここに居た……

これはつまり、昨晩もティアとゼオルドさんは……

「ティアがあの通り飯の最中なんでな、もう少し待ってくれ」

ティアの食事姿に苦笑いを浮かべながらも、ゼオルドさんはどこか嬉しそうです。

それと同時に寝ながらご飯を食べるティアの事を心配しているようです。

その姿をみて、私は自分の考えが間違っている事に気付きました。

どうやら私が考えていたような、教え子に無理矢理手を出す方では無いようです。

そんな事をする人がこんなに穏やかな顔を出来るはず有りませんからね。

「ティアちゃんったら相変わらずね……」

ゼオルドさんに対しての警戒心がいくらか消えた私は、ゼオルドさんにティアちゃんのこれが何時もの事で、心配する必要が無い事を伝えました。

私も危ないからその癖を直すように何度も言ったんですけど、全然治らないんですよね。

「さて、改めて今日からお前の面倒を見る事になったゼオルドだ」

「レイチェルです。よろしくお願いします」








ティアが身支度を整えるのを待って俺達はダンジョンへ足を向けた。

ティアのようにレイチェルの資質を試してからの方が良いかとも思ったが、ティアと同じく後衛職のマジシャンを目指しているらしいので、それは無しにした。

後衛職に着く人間が前衛の仕事を覚える必要は無いからだ。

「それじゃあオイラはこの辺で失礼するっす!レイチェル、頑張るっすよ?」

ダンジョン前までレイチェルに付き添っていたケビンは、それだけ言うとレイチェルの返事も待たずに駈け出した。

相変わらずあわただしい奴だ。







「それじゃあオイラはこの辺で失礼するっす!レイチェル、頑張るっすよ?」

それだけ言って兄さんは行ってしまいました。

きっと、今まで休んだ分を取り戻すために中級ダンジョンへ向かうんだと思います。

兄さんありがとう。

ここへ来るまでに、ゼオルドさんが優れた冒険者だと言うのは肌で感じ取れました。

どこか柔らかい表情を浮かべていたその顔は、鞘の無い大剣を左右の腰に吊るした事で一変しました。

闘気とでも言うのでしょうか?

近くにいるだけで冷や汗が出て来ます。

「ゼオルド先生!ダンジョン内で注意する事は何か有りますか?」

ゼオルドさんに着かず離れず着いて行けるティアが羨ましいです。

きっとこの威圧感に気付いていないのでしょう。

こんな気配を放てるような人がレベル1だなんて世の中間違ってます。

「ダンジョン内のモンスターは、外で暮らしているモンスターよりも凶暴だ。それに今のお前達では到底かなわないような敵も中には存在する」







「ダンジョン内のモンスターは、外で暮らしているモンスターよりも凶暴だ。それに今のお前達では到底かなわないような敵も中には存在する」

ふぇ~

そんなに危険な場所なんだ……

アイバットで苦戦しているような私じゃ、きっとすぐに殺されちゃう。

ゼオルドさんから離れないようにしっかり着いて行かなくちゃ!

「アシストはまず自分の身を守る事を最優先に考えろ。仲間を盾にして身を庇い、庇ってもらった分を回復魔法と補助魔法で貢献する。他にもアシストなりの戦い方は存在するが、それが一般的なアシストの戦い方だ」

え?

仲間を盾にするの?

「お前が人を助けたいと思うのは勝手だが、今のお前にはそれだけの力が無い。有る程度力が付くまでは不満でも我慢しろ。力が付いてくれば他にやりようはいくらでもある」

納得は出来ないけど、今は我慢の時って事だね……

きっといつかは……

ふぇ?

わわわ!

ゼオルドさんの手が私の頭を撫でてるよ!

……ちょっと気持ち良いかも。

「心配しなくても、パーティーを組んでる間は俺が守ってやる」

ゼオルドさん……







「心配しなくても、パーティーを組んでる間は俺が守ってやる」

頭を撫でながらそう言ったゼオルドさんとティアちゃんの間には確かな信頼関係が見て取れました。

……この疎外感は何でしょうか?

「むろん、それはレイチェルにも言える事だ」

良かったです。

このまま私は居ないものとして扱われるのかと思ってしまいました。

「マジシャンの戦い方はケビンから教わったか?」

「はい。前衛を務める人の援護をするタイプと、単独で敵を寄せ付けずに遠距離から倒すタイプの2種類です」

ゼオルドさんは私の答えに満足したのか、表情を緩めて頷いてくれました。

「お前がどちらを目指すのかは分からないが、ステータスの振り分けには十分気を付ける事だ」

それは兄さんから十分聞いています。

兄さんなんかは、中途半端が一番良く無いからと言って俊敏に全てつぎ込んでいますから、私も知能に全て振るつもりです。

「あっ!だからステータスポイントの振り分けはするなって」

「ああ。1度振ったステータスは2度と元には戻らないらしいからな」







「ああ。1度振ったステータスは2度と元には戻らないらしいからな」

そう。

この2人に冒険者の事を教えるに当たって、俺も色々と勉強をした。

その最たるものが、振り分けポイントだ。

今まで振り分けポイントが上限値に達する度に警告されて力に振っていたが、普通の冒険者ではこうはいかないらしい。

悩み抜いて体力、力、俊敏、知能の4つに振り分けるようなのだ。

っと、考え事も話もここまでのようだな。

このダンジョンの最深部に到着した事だし、そろそろ始めるとしよう。







あれ?

行き止まりだよ?

ゼオルドさんが道を間違えちゃったのかな?

「後ろに隠れていろ」

壁の近くまで歩いて来たゼオルドさんは、振りかえってそう言いました。

つまり壁とゼオルドさんの間に居ろって事?

「2人とも動くなよ?」

え?

ダンジョンに入ったあたりから強くなってたゼオルドさんの……存在感って言うのかな?

体がぎゅ~って締め付けられる苦しいような気持ち良いような感じが消えちゃったよ?

わわわ!

モンスターが一杯寄って来た!

なんでなんで!?







行き止まり?

兄さんからはゼオルドさんはレベルが上がらないと聞いています。

そのためこのダンジョンで何年もお金を稼いでいたと……

そんな人が道を間違えるでしょうか?

「後ろに隠れていろ」

振りかえってこちらを見るゼオルドさんの指示に従って後ろに回ります。

ここに何かあるのでしょうか?

「2人とも動くなよ?」

ゼオルドさんから放たれていた闘気が薄れました。

そのため、急に体が軽くなったような錯覚を受けます。

えっ?

その事にほっとしたのもつかの間、私は自分の目を疑いました。

大量のモンスターがこの袋小路へ集まって来たからです。

その数は10匹や20匹ではありません。

ぞくぞくとこちらを目指して来ます。

ダンジョンに入って以降、ここまで1匹のモンスターに出会わなかったのに……

……1匹も?

そこまで考えておかしな事に気付きました。

兄さんからダンジョン内では気を付けるよう言われていたからです。

ダンジョン内のモンスターは途切れる事無く、出て来ると聞いています。

それなのに私はここに来るまで1匹もモンスターを見ていません。

「ティア1人、もしくはレイチェル1人なら地力を上げつつ教えたい所だが、2人同時となるとそうも言ってられん。今日はお前達2人の地力を底上げする」

腰の大剣2本を抜いたゼオルドさんは、次々と襲いかかって来るモンスターを斬り飛ばしはじめました。

ゼオルドさんの斬激に大剣の切れ味が追いつかないのか、半ばまで断ち切られたモンスターたちは、完全に断ち切られる事無く左右の壁に轟音を立ててぶつかります。

その音に惹かれるように次から次へとモンスターが現れ、それをまたゼオルドさんが斬り飛ばして……







「ティア1人、もしくはレイチェル1人なら地力を上げつつ教えたい所だが、2人同時となるとそうも言ってられん。今日はお前達2人の地力を底上げする」

近くに寄って来たモンスターがゼオルドさんの剣で斬り飛ばされてます!

うわ~

ゼオルドさんが剣を使ったのを初めて見ました!

凄すぎます!

他の冒険者もこんなに強いのかな?













後書き……にしよう!
取りあえずダンジョン突入!
どのあたりで終わりにすればいいのか分からなくなって来たので唐突にぶった切り!!



[18002] レベル1 07
Name: 顔無◆0c3027e3 ID:979e69ab
Date: 2010/04/10 08:35
レベル1 07












「ふむ、今日はこのくらいにしておくか」

ティアとレイチェルのレベルが10を超えた辺りで、モンスターが寄りつかないように俺の気配をまき散らす。

その気配が広がるに従ってモンスターが俺の視界から逃げて行く。

コレが出来るようになったのは何時からだっただろうか?

「悪いが、アイテムの収拾を頼む。さすがに敵を遠ざけながらそう言った細かい事は出来ないんでな」

俺の指示に従って、今まっで隠れていた2人が壁際に出来たアイテムの山を回収して行く。







「悪いが、アイテムの収拾を頼む。さすがに敵を遠ざけながらそう言った細かい事は出来ないんでな」

ふぇ~

やっぱり先生は凄いね~

えっと、これがロングソードで、こっちがクッキー……

クッキーはまとめて保存した方が良いよね?

その方が取りだす時楽だし!

あれ?

レイちゃんボーっとしてるけどどうしたのかな?

「レイちゃんレイちゃん!ぼーっとしてるけどどうしたの?」

……ふぇ?

返事が無いよ?

本当にどうしちゃったんだろ?







「悪いが、アイテムの収拾を頼む。さすがに敵を遠ざけながらそう言った細かい事は出来ないんでな」

ゼオルドさんから再度闘気が放たれたかと思うと、それまで押し寄せていたモンスターの波が消えました。

今のは一体なんだったんでしょうか?

モンスターが寄って来ないようにするスキルなんて聞いた事がありません。

ゼオルドさんに言われた通り、アイテムの収拾をしますが、頭の中は今目の前で起こった現象で一杯です。

「レイちゃんレイちゃん!ぼーっとしてるけどどうしたの?」

ここへ来るまでモンスターは影も形も見えず、ゼオルドさんが闘気を緩めるとモンスターが寄って来た。

そして再び闘気が強まると、モンスターが逃げて行った。

その間に起こった戦闘も確かに凄かったですが、私はそれよりも闘気の方が気になります。

……それとも、私が知らないだけで、実在するスキルなのでしょうか?

帰ったら兄さんに聞いてみましょう。







む~!

ダンジョンから出てもレイちゃん返事してくれないよ~!

何か考えてるみたいだけど、一体何を考えてるのか分からないし……

「レイチェル、体調でも崩したのか?」

「い、いえ……なんでもありません」

ぶ~

何でゼオルドさんの声には答えて私の声には答えてくれないのかな?

「換金については以上だ。明日からはモンスターに対する対処の仕方を教えて行く!」

「はい、分かりました。お疲れ様です!」

やっぱり私だけのけものにされてるよ~!

良いもん!良いもん!

ティアちゃんいじけちゃうんだから!

でもでも、今日もゼオルドさんがカッコ良かったから許しちゃう!

うんうん!

ティアちゃん優しい!

「所でティアよ……お前は家に入り浸る気か?」

ふぇ?

あれれ?

何時の間にゼオルドさんの家に着いちゃったんだろ?







ゼオルドさんと別れた後も、私は今日の事を考えて居ました。

アレは一体……

「お!レイチェル帰って来たっすか!」

「兄さん、入る前にノックをして下さいと言った筈ですよ?」

妹とは言え兄さんは何故こうも女性の部屋へ向遠慮に入って来るのでしょうか?

「あははは、気にするなっす!オイラは気にしないっす!」

「着替えてたりしたらどうするんですか?」

「何言ってるっすか、オイラが1度でも着替え中に入って来た事が有ったっすか?」

はぁ……

そうなんですよね。

兄さんが明けるタイミングが良いのか、それとも私のタイミングが良いのか、そう言った気不味くなるような事は一度もないんですよね……

「それで?今日はどうだったっすか?」

そうでした!

兄さんにあの事を聞かなければいけません!







「それで?今日はどうだったっすか?」

オイラが聞くと、レイチェルは深刻な顔つきで今日の事を話しだしたっす。

ダンジョンンの奥深く……道順聞いて分かったっすけど、最深部っすね……に着くまでモンスターと1匹も出会わなかった。

アニキの闘気みたいなのが収まるとモンスターが寄って来た。

大剣を左右の手に1本ずつ構えて、左右の壁へモンスターを薙ぎ散らしていた。

しばらく戦闘が続いてアニキの闘気みたいなのが戻ったかと思うと、モンスターが逃げて行った。

は~

やっぱりゼオルドのアニキは凄いっすね。

「アレは一体何ですか?」

あ~

そう言った事もアニキに聞けば良いのに……

いや、案外アニキも知らずに使ってるのかも知れないっすね。

「それは多分威圧とか言われてるもんっすね」

「それはスキルなのですか?」

「いや、違うっすよ?上級冒険者が低級ダンジョンで狩りをするのが禁止されて無いのは知ってるっすよね?」

「はい。ですが、上位の冒険者によるモンスターの独占を防ぐ為に暗黙の了解で禁止されているのだと兄さんから聞いたのを覚えています」

相変わらずレイチェルは優秀っすね。

けど、どこか頭でっかちな所が有るのが玉に瑕っす。

知識だけで全部分かった気になってたら、何時か痛い目見るっすよ?

型破りなアニキの所で学べば何か得る物が有るかと思ったんすけど、初日じゃこんなもんなんすかね?

「アレは別に暗黙の了解だからってだけじゃないんすよ」







「アレは別に暗黙の了解だからってだけじゃないんすよ」

どう言う事でしょうか?

「上級冒険者が低級ダンジョンへ行くとモンスターが自分とのレベル差を感知して逃げちまうんすよ。現にオイラももう少しで上級者入りっすけど、モンスターが逃げ始めてるっす」

……それで、私へ直に教えてくれなかったのですか。

思えばおかしな話だったんですよね。

兄さんが教えてくれれば良いのに、他の冒険者を紹介しようとするなんて。

けれど…だとするなら、ゼオルドさんは……

「頭の良いレイチェルなら気付いてるかも知れないっすけど、ゼオルドのアニキはレベルが上がらないってだけで、上級冒険者並の力を持ってるって事になるっす」

そんな事って……







「頭の良いレイチェルなら気付いてるかも知れないっすけど、ゼオルドのアニキはレベルが上がらないってだけで、上級冒険者並の力を持ってるって事になるっす」

驚いてるっすね。

そう言うオイラも実際驚いてるんすねどね。

上級冒険者特有の気配を出し入れ出来るなんて聞いた事無いっす。

けど、低級冒険者のレイチェルにそこまで言う必要はないっすね。

自力で気付いた時にどう思うかが楽しみっす。

「どんな事があっても、アニキが一緒なら守ってくれるはずっすから、安心して色々学っすよ?」

頭を撫でてやると気持ちよさそうに「はい」とだけ返事をしたっす。

あぁ、こんなに可愛い妹が誰か他の男の嫁に行くかと思うと複雑っすね……







「ふぅ~やっぱりゼオルドさんのご飯は美味しいです!」

……本気で入り浸る気か?

「ゼオルド先生!」

ん?

飯を食い終ったと思ったら何だ?

「ダンジョンで、モンスターが逃げたり集まったりしてたのって、ゼオルド先生が何かしてたんですか?その時、先生にぎゅ~ってされてるみたいで苦しいような気持ち良いような感じがしたんですけど?」

あぁ、アレの事か。

最深部へ行く際に、モンスターが寄って来るのが鬱陶しかったので、今では重宝している。

「自分でも良く分からんが、いつの間にか身に付いていた。おそらく、レベルが上がればお前達も出来るようになるのではないか?」

しかし、アレは周りから苦しかったり気持ち良かったりするものなのか?







「ふぅ~やっぱりゼオルドさんのご飯は美味しいです!」

うまうま♪

優しくて強くてご飯まで作れるなんて、ゼオルドさんは凄い人です!

あ!

そう言えば今日不思議な事が起こったのを忘れてました。

「ゼオルド先生!」

あのぎゅ~って締め付けられるような感じが何だったのか気になります!

「ダンジョンで、モンスターが逃げたり集まったりしてたのって、ゼオルド先生が何かしてたんですか?その時、先生にぎゅ~ってされてるみたいで苦しいような気持ち良いような感じがしたんですけど?」

「自分でも良く分からんが、いつの間にか身に付いていた。おそらく、レベルが上がればお前達も出来るようになるのではないか?」

へ~

あんな事が出来るようになるんだ~

でもでも、そうなったら今度は私がゼオルドさんをぎゅ~って出来るようになるのかな?

………ぽっ!

そ、それって抱きしめ合うみたいになるのかな?

あぅ~

どんな感じなんだろう?

きっときっと、気持ちいいんだよね?







この娘はやはり良く分からんな……

俺の話を聞いていたと思ったら、急にくねくねと悶え始めたぞ?

今の会話の何処にそんな事をする要素が含まれていた?

まぁ良い。

俺はコイツとレイチェルに教えられるだけの事を教えるだけだ。

深入りは互いの為にならないからな……













後書き……にしよう!
取りあえずダンジョン脱出!
そしてティアが私特有の狂ったキャラクターへ変貌を始めました!
何で私の書くキャラクターは何処かおかしくなるんだろ?


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