夏も終わりに近づき、最後の力を振り絞るように太陽じりじりと地上を照らしている。
そんな中、三原修二は車を飛ばしていた。
「はあ、今日も暑いなあ・・・」
実際はクーラーが効いていて修二の体を冷やしているのだが、一度外に出れば同じ台詞を吐き出すのは間違いないだろう。
それでも、今日だけは家で茹だっている分けにはいかなかった。
正確に言えば、毎年の今日は、だ。
「おっと、危ない。」
十字路で、直進しかけて慌てて右に曲がる。
自分が勤めている養護施設「創才児童園」に行くのであれば直進で良かったが、今日は別用なのだ。
街路樹が並ぶ車道を抜けて、修二は車を止めた。
「流星霊園」
そう書かれた看板も、今ではもう見慣れた物であった。後部座席から来る途中で買った花束を取り出し、並んだ墓石で出来た道を歩き出す。
しばらくして、目印となっている桜の木を見つけた。春はもうとっくに過ぎているので、今は花びらの代わりに緑の葉を生い茂らしている。
「乾巧之墓」
乾巧。この石の下に、四年前、ファイズと呼ばれていた青年が眠りについている。
周りはよく掃除されていて、本来なら散らばっているはずの桜の葉も集められ、焚き火となり地に帰っている。
「あれ?」
修二は、墓の前に添えられているアイスクリームのカップに気付いた。中身はすっかり溶けて液体と化している。
「(ああ、園田さん達も来たんだな)」
そういえば、あの人は猫舌で、甘い物が好きだった。
線香にはまだ火が残っていて、自分よりも早く来た事が分かった。
「もう四年になるのか・・・」
思えば、本当にいろんな事があった。
あの凄惨極まる戦いの最中、臆病な自分がよく生き残れたと思う。
ファイズ、カイザ、デルタ。
結局、父の遺産を受け継いだ三人の戦士の中で、生きているのは自分だけだった。
カイザ―草加雅人は、死体も見つからなかった。
そして、ファイズ―乾巧は、自分の目の前で死んでいった。
四年前の今日、突然修二の前に現れた巧は、ファイズギアを自分に渡して、言った。
「三原・・・悪いが、俺はもう、駄目らし、い。俺と、あいつの夢・・・頼む」
そして、灰になってこの世から消滅した。
オルフェノクの寿命は短い。
人間の急激な進化に、その細胞が耐えられないらしい。
咲いた花は、枯れるだけなのだ。
乾巧の夢。オルフェノクと、人間の共存。
それは、決して彼だけの夢では無い。
戦いの中、同じ理想を掲げ倒れていった者たちの魂も込められている。
木場勇治。
長田結花。
彼らも、この墓地に眠っている。
「おお、お前も来てたんか」
振り向けば、バンダナに、整えるのに時間を掛けたであろう髭を生やした青年が立っていた。
海棠直也。
彼も、戦いの中で知り合い、共に戦った仲間だった。