ドラゴンは町を襲う
人々から財宝を奪い取るために。
ドラゴンは巣に魔物を放つ
宝とドラゴンに命を狙う冒険者達を狩るために。
ドラゴンは生け贄を求める。
女を犯し、夜の生活の練習台にするために。
ドラゴンは財宝を蓄える
財産が少ないと許嫁に失礼だからである。
ドラゴンは巣を最上の城にする
下手な巣を作ると許嫁が怒るからである。
ドラゴンは以上のことに全力で取り組む。
下手すると怒り狂った許嫁に殺されるからである。
これらの情報は全て雄のドラゴンについてである。
雄のドラゴンは巣作りのため人間に接触する機会が多いのでかなり信憑性の高い情報が得られている。
しかし雌のドラゴンの情報は巣作りを行わないため研究が進められていない。
だがいくつかの断片的な情報からするに戦闘能力は雄のドラゴンの数倍、性格は凶暴と予想される。
ドラゴン研究家の手記より
かつてドラゴンは隆盛を極めた。
種族の性質として数こそ魔族、天使族に劣っていたものの、個体としての力は比較にならず、最強の種族として三界の頂点に君臨していた。
ドラゴンの繁栄は永遠に続くと思われたが転換期が訪れる。
戦争である。
天界と魔界との戦争がドラゴンの勢力下であった人間界で始まり、激化。
ドラゴンはこの戦争に介入し、その圧倒的な力で両軍を殲滅していった。だが魔族、天使族が手を組み、さらにはドラゴンとの戦闘に特化した竜殺しの一族を開発、形勢は逆転した。
生き残ったのは20にも満たない個体のみ。
その後戦争が終結したことと、絶滅を恐れた魔界と神界がドラゴンを保護したこともあり個体数は回復したものの、二つの深刻な問題が発生した。
それらの深刻な問題を解決するために、我々は未来ある若者達を墓穴に放り込み、墓石で蓋をするかのような行為をすることを決断した。
結婚の管理、許嫁である。ああ、なんと罪深きことか。けんか、嫉妬、八つ当たり。雄ドラゴンの死因は、雌ドラゴン関係が7割を占めるというのに。
長老ドラゴンの回顧録より
竜族と天使族、魔族の戦争については知っているな。
竜族の圧倒的力に前線は一時神界、
魔界にまで押し込まれた。
そこで神界と魔界の間で休戦協定が結ばれ、両軍そろって戦ったがなお力及ばず、かなりの損害が出た。
そもそも生物としての格が違いすぎるからまともに戦っても勝ち目はない。だが竜族と同格の生物なんて存在しないし、創るのも不可能だ。
しかし要するに戦いに勝てばいいのだから、竜との戦いの相性がやたらといい生物をならどうか。そのくらいなら創れるじゃないか、
そのときは本当に追いつめられていたからそんな馬鹿げた計画を実行してな。
両界共同で対竜戦闘用の種族を開発した。
竜殺しの一族のことだ。
繁殖力の強い人間を基盤(ベース)に強力な身体能力と竜に対する強い殺戮衝動、竜の存在を感知する特殊な感覚、高い戦闘センスに加え相対するだけで竜の力を抑え込む呪いにも似た力を持たせた。
完成した竜殺しの一族は期待以上の活躍を示し竜族が12頭にするまで追いつめ戦争に勝利した。
そして天界に降伏した5頭と魔界に降伏した4頭に力を押さえつける呪いをかけルコトをペナルティーとし、また竜族の子供ができるよう特殊な措置をした交配相手を当てが云うことにより三界のバランスを取り戻そうとした。
だが予想外のことが起きた。竜殺しの一族が強すぎ、また制御ができなかったのだ。
天界魔界が竜族を殺すことを禁じてからも竜を殺し続け、竜族は再び絶滅寸前まで追い込まれた。
神界も魔界も戦争への介入を防ぐ以上の意図は持っていなかったのに。
不倶戴天の敵同士である天使族、魔族がこれまで総力戦になることがなかったのは強力な力を持つ第三勢力が存在していたことが大きい。
竜族が滅びれば、三界の均衡が崩れ、天使族と魔族は互いを絶滅させるまで戦争をやめられなくなるだろう。
そこで魔界と密約を結び竜族の力が回復するまで決定的な戦争が始まらないようにし、また人間界の優先権は竜族にあると明確に定め、竜殺しの一族と、そのブースターである竜殺しの剣を回収、破棄をした。
竜族が立ち直るまでこの呉越同舟の残りかすが持てばいいのだが。
とある将軍の部下への訓示
ようこそ竜の村へ。
この村は未婚の竜族の住む村だ。
歓迎しよう。
さて、この村に入る前にいくつか注意があるから聞いてほしい。
知っての通り、竜族の女は男の数倍強く、また凶暴だ。
たまたま通りがかった男をパシリにする、貢ぎ物を要求するなんて当たり前。
機嫌が悪かったというだけで殴られる。
男の立場なんてトカゲ一匹分もない。
そんな凶暴かつ理不尽な女達の中でも特に注意しておかなくてはいけない二人がいる。
この二人は正に別格で、女すらこの二人の前では借りてきた猫みたいになる。
まず、リーゼラベルンについてだ。
愛称はリズというが、呼ばないように気をつけろ、
そう呼ぶことを許されてない奴が呼ぶと殺される。
容姿は金髪、紅い瞳で豪奢な感じがする。
性格はプライドが高く短気で怒りっぽい。
誰よりも竜族らしい女だ。
あの魔界に喧嘩を売り天界に乱入した無敵伝説を持つリュミスベルンの孫娘。
本人もそのあまりにも高い実力と凶暴な性格で、伝説の再来と呼ばれ恐れられている。
沸点が低いから注意が必要だ。
もし機嫌が悪かったら、隅っこで体を小さくして機嫌が直るのを待つしかない。
もう一人注意しなければいけない人がいる。
カオル、竜殺しの一族の血を引く雷光竜だ。
腰まである黒髪、紫の瞳の儚く見える少女だ。
竜族らしくなく、優しくて落ち着きのある家庭的な少女で、
嫁にしたいと思っている奴もいる。
あまり怒らないが、強すぎるし力を持て余している節もあるからついうっかりなんてことがある。
しかもその実力はリーゼラベルンと同等。
注意した方がいい。
この二人は仲が悪い。
頻繁にけんかしている。
巻き込まれたら死ぬ。
近くにいるだけでも危険だ。
前近くにいてぶっ飛ばされた奴がいて、その場で竜に戻って暴走しかけたらしいが
邪魔とか云われて殴り飛ばされたらしい。
…二人ともまだ人間の姿で戦っていたのに。
前は二人をなだめたり、喧嘩に割り込んだりしてやめさせられる奴も居るにはいたが、
何度もひどい目にあって、もういやだって言って村から出て行ってしまった。
それからは基本放置して、シェルターに引っ込んでいることになった。
シェルターに行きたいときは、この転移キーのひもを引っ張る。
そうすると魔法陣が起動して自動的に地下3000メートルにあるシェルターに転移される。
使い捨てだから、常に三つは用意しとけよ。
なくなったら死ぬからな。
命に関わることだから、注意しておけよ。
健闘を祈る。
新入りを迎える先輩の言葉