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[14830] 宇宙忍者になりました(ネギま←ウルトラマン、バルタン星人に転生)新話追加
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2014/06/08 21:11
 いろいろ書いてるんだからそろそろ一つくらい移動させてみようと思いましたのでこいつを移動させてみました。今後ともよろしくおねがいします。

しばらく忙しくなるので投稿間隔はあくと思います。申し訳ありません。

久しぶりだな諸君! てか覚えてる人いないと思うが私だよ!! 嫌なことがあったのでむしゃくしゃして書いちゃったZE

いいぜ、お前らがこいつがエラーしたと思ってるっていうんなら、まずはそげぶっ!!



[14830] プロローグ
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2009/12/15 19:17
 ある日ある時、俺藤田浩樹は死んでしまった。死因はなんというか、銀行強盗に巻き込まれ犯人に見せしめとして殺されてしまったのだ。それだけでもある意味貴重な体験だがさらに貴重な体験をすることとなった。なんと前世の記憶を持ったまま転生したのだ。ここまででも十分腹いっぱいだがさらに続きがあった。なんと俺が転生した場所は地球じゃなかったのだ! しかも姿も人間には遠く、せいぜい体の形が似たようなものといった感じだ。
 そんな世界で第二の人生を開始することとなったわけだが中々楽しかったりする。この星は地球なんか足元にも及ばないほどの技術力があり、興味が尽きないのだ。そして、第二の生が始まってから十五年たったある日、それは起こった。

「うわああああ」

「た、たすけてくれえええええ!!」

突然の終わり。後から知った話によると一人の狂った科学者が核実験を強行し、星は滅んでしまったのだ。運よく脱出する宇宙船に乗りこむことに成功した俺だが両親の姿は確認されなかった。この日から生き残った20億3000万人の長い放浪生活が始まった。

宇宙忍者になりました
プロローグ

 放浪の旅を続け、一体どれほどの月日が流れただろうか? まれに宇宙船を襲ってくる怪物を撃退する以外に特にすることと言えば自身を磨くだけの毎日。俺はまだ平気だが小さい子にはノイローゼ寸前の者もいる。一刻も早く移住する星を見つけなければならない。そんな矢先だった。先行していた宇宙船がとうとう移住するのに適した星を見つけたというのだ。詳しく聞けば修理に立ち寄った際その星を気に入ったとのこと。早速、その星を見て俺は驚く。なんとその星は地球だったのだ。
 かつての故郷を懐かしく思うと同時に、俺は移住は受け入れてもらえないだろうとも思った。俺が生きていたころの地球の人口は60億を超えている。ただでさえ地球の許容限界だったのにさらに20億など住めるわけもない。また放浪の旅が続くのか、地球に向けて宇宙船から飛び立つ大使を見ながら俺はそう思った。しかし、事態は俺の予想を裏切った。もちろん、悪い方向にだ。

「大使が死んだ!?」

なんと交渉に向かった大使が巨人に殺されたというのだ。詳しく聞くとどうやら大使は移住を受け入れられなかったことに腹を立て地球に攻撃を仕掛けたというのだ。何やってんだとも思ったがこちらも長きにわたる放浪生活で精神的に疲弊している。強硬策に出た大使の行動も分からなくはない。しかし解せない。俺は地球で長く暮らしていたがそんな巨人の話は聞いたこともない。俺が死んでから現れたのか? そう、一人考え込んでいるときに、あいつはやってきた。

「な、なんだあれは」

地球からこちらに向かってくるのは光る巨人。そいつは手から光線を放ち宇宙船団の母艦を攻撃、母艦は立った一発で爆発した。その爆発に巻き込まれ、俺のいた宇宙船も爆発。俺の意識はそこでブツリと途絶えた。

≪報告≫
 ある日地球に降り立った異星人。その異星人は故郷を失い放浪の旅を続けているという。移住の交渉に現れた異星人との話し合いは当初受け入れを許可する動きにあったが難民の数を知った地球防衛軍はこれを拒否。異星人は巨大化し破壊活動を行った。その後、一度は核ミサイルで倒したかに思えたが異星人は復活。最後は現れた光の巨人『ウルトラマン』に倒される。その後、ウルトラマンは宇宙に上がり異星人の母艦を破壊、約20億人の異星人が死亡したと推測される。

追記
 異星人の呼称を出身惑星である『バルタン星』から『バルタン星人』とする。

地球防衛軍怪獣資料、『バルタン星人』より抜粋。



[14830] 1バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2009/12/18 19:14
 地球人からバルタン星に転生してからというもの驚くことの多い毎日だった。まあ、見るもの聞くものが新しいものだったのだからそれは仕方ないとしよう。だが、これだけは言わせてもらう。

『どうしてこうなった!?』

1バルタン目

(side バルタン)
 目を覚ますとそこは森の中のようであった。大型の植物の生い茂るここは一体どこなんだろうと思ったがここで自分の体のサイズはミクロ単位であることを思い出す。つまり本来この植物は大きいわけではなく俺が小さいだけということになる。早速大きくなろうとするが自分の中の何かが待ったをかけた。ここがどこかわからない状況で下手に大きくなって姿を確認されたら面倒なことになるのではないのだろうか? それ以前に何で俺は生きてるんだ? 宇宙船が爆発したのは覚えている、ふつうはそこで死んでいるのだがこうして俺は生きている。考えるが答えは出てこない、このままこうしているわけにもいかないので移動することにする。サイズは一応このままで現地住民の姿に変身すれば問題ないだろう。

「それじゃあ行くか」

飛び上がり、辺りを見渡す。一万メートルまで見通せる目だが今回はそこまで見通す必要はなかった。そう離れていないところに大きな都市を発見したのだ。深夜のためか出歩いている住人はいない。まあそんなものをどうでもいいので都市に向かって飛び立つ。本気を出せばマッハ5で飛べるが意味がないのでゆっくりと飛び出した。
 都市に入って数時間後。街並みを見ながら飛んでいた俺はなんとコンビニを見つけたのだ。まさかと思い中を窺うとそこにいたのは地球人、いや地球人にも見える現地民を見つけた。ひとまず物陰に入って変身を行おうとして気づく、服がなかったのだ。このままでは変身しても裸だ。いや、バルタン星にいたころは皆裸というか服という概念がなかったからよかったのだがさすがにここでもそうなわけではない。あせった俺はその辺の人間を襲おうとも考えたがそれは騒ぎになるので最終手段である。結果、

「まあこのままでいいか」

よく考えれば無理に現地民に擬態する必要はないのだ。それでもずっとミクロサイズというのも味気ない、そこで俺はあることを決行することを決意した。

「ふう、これでいいか」

公園のトイレから出た俺の外見は地球人のそれだった。服はどうしたのかというと今トイレの中で眠ってる男が答えだ。太陽がある程度登った時に手ごろな人間を探していた俺は民家の窓から出てきた怪しい男を発見したのだ。早速俺は男に近づき乗り移ったのだ。思った通りこの男は空き巣であり先の民家から金を盗んだばかりであった。俺はその盗んだ金を使い服を買ったというわけだ。男の体から離れる際男から空き巣をしたという記憶を消し去り余った金も持ち去りトイレにて変身し服を着たというわけだ。外道? 知らんなあ。後、先の男から手に入れた情報だがやはりここは地球らしい。しかし、あの男の記憶の中にあの巨人についてはなくそこがやや気がかりであった。
 さて、服とある程度の金を手に入れた俺が向かったのはネットカフェ。インターネットでこの世界のことをさらに詳しく知るためだ。

「うーん」

中に入って数十分。一向にあの巨人の情報は手に入らない。一般教養などは手に入ったのだが巨人についての情報がないのだ。あきらめかけたその時、ふと壁にあったDVDを見てみようと席を立った時だった。俺の目に、それは移った。

「これは、こいつは!」

手にしたのは一つのDVD、タイトルは『ウルトラマン』。
 特撮テレビ番組『ウルトラマン』、光の国からやってきたウルトラマンが地球の平和を守るという話だ。その第二話に登場した宇宙からの侵略者『バルタン星人』それは、まさに俺たちそのものだった。

「どういうことだ?」

なぜ俺たちのことが創作としてこんなものになっているんだ? つまり何か、俺はテレビの中から現れた存在だとでも言うのか? 馬鹿馬鹿しい。今、俺は俺としてこうやって存在している。その俺がテレビの中から現れた? 断じて否だ。

「ふう」

あのネットカフェから出た俺はまたあの公園に来ていた。『ウルトラマン』のことはショックだがあれが真実であるならあの宇宙船の爆発で俺たちバルタン星人は全滅したわけではないのだ。それは、喜ぶべきことだろう。

「これからどうするかねぇ」

そう、缶コーヒー片手に思案するが今一ついい案が思い浮かばない。今回みたいに誰かに乗り移るというのは気分が悪いしあまりやりたくはない。そんな風なことを考えながら辺りを見渡したいた俺は『それ』を目にする。

「見えない?」

森、というか山の中。一か所が何かに遮られているように見えないのだ。することもなく、気になった俺はその山へと歩き出した。

(side ???)

「ぎしゃあ!」

「く、近寄るんやない!」

 跳びかかってきた餓鬼を札で迎撃しながらうちは舌打ちする。事前に聞いていた餓鬼の数よりもはるかに多い数の餓鬼がうちを囲んどる。猿鬼と熊鬼がかろうじて防いどるがそれもそろそろ限界を迎えてきよる、ああもう最悪や!

「この、お札さんお札さんうちを助け、「しゃあああ!」っ! しま」

餓鬼たちを一掃しようと呪を唱えていたところに餓鬼が一匹、猿鬼を抜き跳びかかってきよった。慌てて回避しようとしたが餓鬼が投げつけてきた礫に一瞬身がすくでしもた。礫そのものは障壁に阻まれうちに届かんかったが餓鬼本体を避けることはできへん。猿鬼たちも間に合わないだろう。

(ここまで、なんか)

おとんとおかんの復讐のため、西洋魔法使いどもへひと泡吹かせなあかんかったのに、こんなとこで終わるんか。迫りくる餓鬼がやけにゆっくりとみえ、

「ぐぎゃああ」

「へ」

横から飛んできた白い光弾に吹き飛ばされた。

「無事、みたいですね」

呆然と吹き飛んだ餓鬼が還されるの見てたうちにかけられた声。振り返るとそこにはもやしみたいな細い体をした男がたっとった。

「……あんた、なにもんや?」

助けてもろうたんは事実やがうちはこないな男は関西呪術協会では見たことない。しかもこの男からは魔力も気も感じられない、完全な一般人のはずや。なのに、この男は結界を敷かれとるはずのここに入ってきよった。何者やこの男?

「まあ話はあとで、今はそいつらを何とかしましょう」

「……そうやな」

確かに、今はこの餓鬼どもを何とかするのが先や。この男もうちを助けたんやから敵っていうわけでもないやろ。

「さっさと終わらせるとしましょうか」

「おお!?」

男が一瞬で五人に増えよった。分身、いや影分身やと? この男、本当になんなんや?

(side バルタン)
 見えなかった場所で発見したのは眼鏡のお姉さんとでかい猿と熊、そして化け者だった。とりあえずお姉さんがピンチのようだったので白色破壊光弾をぶつけ吹き飛ばした。その後お姉さんといくらか話、化け者を殲滅することになる。さっさと済ませようと分身を四体作り出し一斉に飛びかかる。立ち位置からして猿と熊は味方と判断し小さな化け者のみを白色破壊光弾をぶつけていく。十分ほどで化け者は殲滅し終え分身を消しお姉さんと向き合う。

「助けてもろたんは礼を言う」

「どういたしまして」

「で、あんたは何者や」

何者ときましたか。嘘をつくことも考えたがこのときの俺はある程度投げやりだったため正直に答えた。

「宇宙人です」

「ふざけるんやない!」

怒られた。まあ当然だろう。しかし事実は事実なので根気強く説得、最後は変身を解くことによって信用してもらう。

「ご理解いただけましたか?」

「……少なくとも、あんたが人間やないことは分かった」

「まあ、今はそれで結構ですよ。それで、あなたは?」

このときはまだ知るよしもなかった、この女性、

「……天ヶ崎千草や」

天ヶ崎千草とそれなりに長い付き合いになるなんて。



[14830] 2バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2009/12/17 16:27
 彼女、天ヶ崎千草はとてもイラついていた。先の仕事での事前調査の不備のこともあるが一番の原因はそこではなく、

「どうかしましたか?」

「どうしたもこうしたも」

 プルプルとやるせない憤りに震えている千草。今、目の前で呑気に煎餅なんかかじっている宇宙人がその理由であったりする。

「なんでうちがあんさんの面倒見なあかんのや!?」

千草の魂の叫びが空に虚しく響いた。

2バルタン目

(side 千草)
 仕事を終えたうちは報告ついでにこの自称宇宙人を上司のもとに連れて行くことにした。見るからに怪しいんやけどうち一人でどうにかできる相手とも思えへん、その辺は戦力のある程度そろっとる本山のほうがええと思うたんやけど。

「あんまきょろきょろせんといてもらえへんか」

「ああ、すいません」

まるっきりお上りさんみたいにせわしなく首を動かすこの自称宇宙人。と、そういえば名を聞いとらんかったな。

「そういえばあんさん名前は? 宇宙人ゆうても名前はあるんやろ?」

「もちろんあります。☆◎@!§Δといいます」

「は?」

今、なんやよう解らんとこがあったんやけどまさかそれが名前なんか?

「ああ、地球人には発音できませんか。でしたら藤田浩樹でよろしいですよ」

「なんやいきなり日本人っぽくなりはったなぁ!?」

ほんとに何なんやこいつは。後、全国の藤田浩樹さんに謝り!
 そんなとりとめのない会話も交えつつうちの上司のもとへ到着する。上司の男は一緒に入ってきた藤田に不審な目を向けるがとりあえずうちの報告を聞いとる。一通り話し終わり、上司の男は口を開く。

「ご苦労だった。で、その男は?」

「はあ、それがどうにもよう解らん男で。自称宇宙人というてはります」

「なに?」

「一応人間やないっちゅうのは確認したんですけど」

うちの言葉に上司の男は胡散臭いもんをみるような眼をしてはる。まあ気持ちはわからんでもない。うちかて同じやし。

「貴様、宇宙人だと?」

「そうですけど?」

それが何か? といった風に上司の男に答える藤田。度胸があるのか鈍感なのか、上司の男からの威圧に全く動じた様子もあらへん。

「証拠は?」

「まあこんなものしかありませんが」

そう言い変身を解く藤田。その姿に上司の男は目を瞠る、まあこんなわけわからん「バルタン星人だと!?」って、

「あ、あの。知ってはるんですか?」

「馬鹿な、実在したというのか? いやしかし」

ぶつぶつとひとり呟きだす男。それにうちは引きながらどうしたもんかと頭を抱える。そこに、

「フォッフォッフォッフォッ」

変な笑い声でいきなり笑い出す藤田、あんさんは何がしたいんや!

「まさか、本物か!?」

あんたも何食いついとんのや!!
 その後、なんや二人で盛り上がっとるのを遠い目で見つつ、うちは思った。ここは、じご

「よし、天ヶ崎千草。この者の面倒はお前がみろ」

「よろしくー」

「はぁぁぁぁぁ!?」

おとん、おかん、うち、もうだめかもしれん。
 結局、何度も訴えたんやけど藤田の面倒はうちが見ることになってしもた。つれてきたんやから面倒見いというこらしい。

「はあ」

「溜息を吐くと幸せが逃げますよ?」

「誰のせいや!」

うう、なんでこんなことになったんや。ていうか。

「あんたはさっきから何しよんや?」

「ネットサーフィン」

「……家にそんなパソコンあったか?」

「作った」

「ほうか、って作った!? どうやって!?」

「その辺のジャンクで、バルタンの科学は宇宙一ィィィィィィ」

フォッフォッフォッと笑いながらキーボードを高速で叩きまくる藤田。

「回線とかはどないしとんや?」

「……」

「なんで黙るんや!? 犯罪はあかんで!」

「フォッフォッフォッ何を言う。俺は宇宙人だ。地球の法になど縛られはしない!」

「郷に入っては郷に従えって言うやろがぁぁぁ!」

「知らんなぁぁぁぁぁぁ!!」

 その後、何とかインターネットの無断使用はやめさせ後日合法的にネットにつなぐこととなった。うう、経費で落ちるんやろか。

「で、何を調べとったんや?」

「これだ」

そう言って藤田が差し出してきたのは数枚の紙。っていつの間にこんなもんを。

「さっきプリントアウトした」

「さよか」

頭が痛くなるのを感じつつ、うちはわたされた紙に目を通す。そこに書かれていたのは、

『バルタン星人 woki』

「これって」

「うむ、まさか俺たちのことがここまで知れ渡っているとは予想外だ」

そこに書かれとったんはこの藤田の言うバルタン星人とやらのことが書かれていた。藤田によると自分は初代タイプらしいんやけどそれよりも気になったんが、

「特撮って書いてあるんやけど」

「それだ。どうも、俺はこことは違う世界から来たらしい」

「は?」

今日何度目かの思考停止にうちはおとんたちの顔を見た。

(side バルタン)
 俺の言ったことにしばらく固まっていた天ヶ崎さんだったがしばらくすると動き出した。

「どういうことや?」

「言葉通りですな。俺がいたのはこのwokiに書かれている特撮番組『ウルトラマン』に酷似した世界からやってきたことになる」

俺はここに来るまでの経緯を簡単に説明する。

「あんさんもなんぎやなあ」

「フォフォフォ、それほどでも」

「褒めとらんわ」

それはともかく、俺は乗っていた宇宙船をこのウルトラマンに酷似したものに撃墜され、気が付いたらこの世界にいたということを話す。

「そのことをあの男には?」

「上司の人か? まあ下手を打って侵略者と思われてもいやなんでそれらしいことは言ってある」

まあ、俺は穏健派だとか何とか言ったのだ。ちょうど何作目かのバルタンにそんな奴がいたことだし。いやいや、ネットカフェで調べておいて正解だったな。

「で、あんさんこれからどうすんや?」

「さあ? もとの世界に帰ろうにも帰り方が分かんないし。しばらく天ヶ崎さんの手伝いをしながら考えます」

第一候補は電機屋です。バルタンの科学にかかれば地球の電化製品などちょちょいのちょいだぜ!

「ってなんでうちの手伝いなんや?」

「それは拾ってもらった恩もありますし。あ、でも異星人の侵略者と取られかねないことはやりませんよ?」

「別にたのまへん」

「ならオッケーです。何でも言ってください」

戦闘から家事まで何でもこなすぜ!

「手始めに夕飯を作ってみました」

「うきゃあ」

台所から出てきた分身にかわいらしい声を上げる天ヶ崎さん。その後なぜか怒られたが夕飯は好評だった。認めたくない! って顔をしていたのが気になったがまあいいか。

(side 上司の男)

「まさか、バルタン星人が実在するとは」

 私室の中で一人、私は興奮していた。子供時代、憧れであったウルトラマン。そのライバルともいうべき存在に出会えたのだから。彼と引き合わせてくれた天ヶ崎には感謝せんとな。ふむ、

「あの女の調べていた古文書。少し流してやるか」

本来なら見向きもせんが、くく、今の私は気分がいい。せいぜい感謝することだ。



[14830] 3バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2009/12/18 18:49
 暖かい日差しの元、うちは藤田と二人山の中におった。渡された緑茶を飲んでいると藤田が弁当を広げだした。それを見てああもう昼なのかとどこか遠くにいるように思うた。藤田の作る料理は正直うまい。それこそなんで宇宙人にうちよりうまいもんが作れるんかと思うくらいに。いや、うち自身料理が得意というわけではありまへん、でもなんか納得できへん。

「平和ですね~」

「……」

のほほんという藤田の言葉にうちは躊躇しつつも頷く。そや、今は平和な時間なんやせやから。

「あ、オヤビン! あいつら今度は弁当食い始めましたよ!」

「え-い! なんやこいつらは!?」

「見せつけてんじゃないわよ!! へぶっ!」

「あ、姐さんがキレたー。そしてあっさりやられたー!」

『フォッフォッフォッフォッ』×たくさん

アーアーウチニハナニモキコエヘーン。

3バルタン目

(side 千草)
 ことの始まりはうちが例の上司から仕事を回された時だった。仕事の内容は血気盛んな若いやつらが東に預けられている木乃香お嬢様を攫おうとしとるらしい。聞いたときはアホかとおもたな。うちかて西洋魔法使いに恨みはある、せやけどそう簡単になんとかできるおもとるほどバカやない。それがわからんなんてアホすぎるで。

「じゃあお弁当作りますか」

「わひゃっ!?」

と、突然背後に藤田の奴が現れよった。いつの間に、待ち、弁当?

「はい、美味しい物作りますから期待してていいですよ」

「それは楽しみ、ってそうやない!」

「? 心配しなくても嫌いなものは入れませんよ?」

「あ、おおきに。ってだかそういうことやなくて、っは!」

し、しもた上司の前やったんや! 恐る恐る上司のほうを見れば、

「仲良くやっているようでなによりだ」

「っ~!!」

えらい生温かい目でうちを見てはった。そ、そんな目で見んといて!

「ふむ、藤田殿も一緒に行かれてはいかがかな」

「殿!? ちゅうかなんでいきなり敬語なんどすか!?」

「彼がバルタン星人だからだ」

「即答!? いやいや、なんどすかその理由!?」

「まあまあ天ヶ崎さん、落ち着いて」

「だから誰のせいでこうなったと思うとるんや!」

あ、あかん。こいつと一緒におったらペース乱されるだけで終わってしまう。
 そんなわけで藤田と一緒に行くことになってしもうたうちやけど藤田の実力自体は評価しとる。前にも出した光弾なら低級の式なら一発で還せるだけの威力はある。それはともかく、件の術者たちが拠点にしとるあばら家についたうちと藤田は中の様子を窺う。そこには12,3人の若い術者がおった。数さえそろえりゃ何とかなる言うわけでもないのにようするわ。

「作戦は、」

「突入、粉砕、確保ですね」

「……一応そうなんやけど、そないな明るい顔で言われてもなぁ。とりあえず分身配置しい」

「ラジャ」

作戦、というほどのものではないが手順は事前に決めてある。まず、藤田の分身をあばら家の周りに配置。そのまま突入させて物量で押し切るちゅうのが一連の流れや。完全な力押しやがまあええやろ。だというのに、

「なんでこないなことになっとんや?」

「どうやら罠があったようです。呪術的なものじゃなくて機械的なものが」

目の前で繰り広げられとるのは確保対象たちが召喚した妖怪たちと藤田の分身たちとの戦い。藤田が言うにはトラップがあったらしいが。

「まあ、ただのバカじゃなかったってことでしょう」

「せやな」

「あ、お茶飲みますか?」

振り返ればそこにはビニールシートを広げ水筒を取り出した藤田の姿。とりあえずうちは、

「もらうわ」

「はい、どうぞ」

考えるのをやめた。

(side 藤田)
 隣でやや虚ろな目をしつつ弁当を食べている天ヶ崎さんを見つつ、後ろの分身VS妖怪に意識を向ける。普通に敵じゃないんだが後から後から現れてくるのはめんどくさい。さて、どうしたものかと考え、

「そういえば、最近新忍術を完成させたっけ」

「どしたんや?」

「いえいえ、ちょっと新技の実験に」

そういい、後ろで起きている乱戦の近くまで移動する。

「えっと、確かこうやって」

手順を確認しつつ、右手におなじみとなった白色破壊光弾を出す。そしてそれを、

「ん? おい、ありゃなんや?」

鬼が一体気づいたようだが遅い。俺は作りだした光弾を思いっきり……蹴る!! そして、その光弾を。

「分身させる!」

「な、なんや!?」

一つだったはずの光弾は分身しどんどんその数を増やしていく。これぞ新技!

「分身・白色破壊蹴光弾!!」

「なああああああ!?」

津波のような光弾に飲み込まれ、鬼たちは消えていく。光弾に巻き上げられた砂塵が消えるとそこには何もなかった。後ろにあったあばら家さえも。

「ってやりすぎやぁぁぁぁぁ!!」

後ろから天ヶ崎さんに引っぱたかれる。いやまあこの威力は俺も予想外だった。まあ、

「確保対象は生きてるし、いいじゃないですか」

「いいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

結局、仕事自体は成功したのだがお叱りを受けることになり、俺は天ヶ崎さんの愚痴とお叱りを受けることとなった。
 それから数ヶ月、いつものように買い物に行った帰りに俺は街中でナンパされている少女を発見した。今時!? という誘い方をしているからかは知らないが少女のほうはそれを拒んでいるようだった。とりあえず通り過ぎようとした時に、俺は少女が背中から何かを取り出そうとしているのが見えた。それが何かに気づいた俺はあわてて少女の腕を後ろから抑え口を開く。

「こんなところで何をしてるんですか?」

「あや~、……お兄さんら、うちがゆうとった連れがきはったんで行かせてもらいます~」

少女も俺に合わせ二人で去ってゆく。後にはナンパ男だけが残された。
 ある程度離れた場所まで付くと俺は少女の手を離す。

「どこのどなたか存じませんがえらい助かりましたわ~、おおきに」

「いえいえ、目の前で殺人事件が起こることに比べればなんてことありませんよ」

「……なんのことですか~?」

そう、少女が取り出そうとしていたのは刀。おそらく殺すまではいかなかっただろうが騒ぎになることは間違いなかっただろう。

「まあいいですけど。では俺はこれで」

「はい、さよなら~」

キン、と目の前を、というか先ほどまで首があったところを刃が通過する。やれやれ、まさかとは思ったけどほんとに口封じか?

「あら~、外してしまいました~。お兄さん中々やりますな~」

「それほどでも。で、ご用件は口封じですか?」

「そうなります~」

そういい、新たに刀を取り出し二刀を構える少女。物騒なことこの上ないが、

「残念」

「へ? かはっ!?」

少女の首筋を分身の手刀が打つ。走っている途中に作った分身をミクロ化させ少女の後ろに配置させて置いて正解だったな。

「く、何が」

「おや、まだ意識がありましたか。タフですねえ」

「気の防御がまにあわんかったらわからんかったですわ。けどお兄さん不意打ちはカッコ悪いで~?」

「まあそういうな。さて、俺はこれから夕食の準備があるのでな、さらばだ」

そういい去ろうとする俺の背に、

「うち、月詠いいます~。お兄さん名前なんて言うん?」

「藤田だ」

そういって瞬間移動で天ヶ崎さんの家に帰った俺は見ることはなかった。白と黒の反転した月詠の目を。

(side 月詠)

「いけずやな~。あのお兄さん苗字しか教えてくれへんかった」

 街中でうっとおしいナンパにおうとるうちに接触してきたあのお兄さん。うちが手も足も出えへんかった。あのお兄さんは敵に容赦なんてしないだろう。今回は騒動を起こしとうないって感じやったしな。それでも、初対面の女の子に手刀なんて普通入れへんやろ。

「また、あえるやろか?」

そんときは、思う存分死合いたいわ~。



[14830] 4バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2009/12/21 18:12
 木々の生い茂る森の中でそれは起こっていた。そこにいるのは一人の少年と一人のバルタン星人。しかし、少年のも犬っぽい耳と尻尾を生やしている、まるで萌えないがどうやら少年も人間ではないらしい。

「ま、まだや。まだ俺は負けてへん!」

「フォッフォッフォッフォッ」

少年はズタボロにされていた。顔は膨れ上がり服もあちこち破れている。体にも傷がいくつかあるがこれは全てがバルタン星人につけられたものではないので今は置いておく。

「地球侵略は俺がさせん!」

少年の名は犬上小太郎、彼はヒーローに憧れるお年頃だった。

4バルタン目

「ただいまぁ、って藤田。アンさんなんしよんねん?」

 いつものように仕事から帰ってきたうちを向かえたんは変身を解いた藤田やった。とりあえず尋ねてみると。

「いえ、このままでいいものかと考えまして」

「? どういうこっちゃ?」

「最近ずっと人間の姿をしているじゃないですか。おかしいですよね。俺はバルタン星から来たバルタン星人ですよ? それが一日に半分以上を人間の姿で過ごすなんて変じゃないですか」

言いたいことはまあなんとなくやけど分かる、せやけど仕方ないんとちゃいますか。あんさんは異星人や、そんなんが大手振って街あるいとったら豪い騒ぎになるで。そう、うちは言ったんやけど。

「それでも、守りたい何かがあるんだー!!」

そう叫び窓を開け飛んでいってしもた。あまりのことに暫く呆然としとったうちやけど拙いおもて窓の外見たんやけど藤田の奴は影も形もなかったんや。ほんま、世話の焼けるやっちゃで。てか、

「何かって何やねん?」

ま、藤田もアホやないんや。そのうち戻ってくるやろ、せやからうちはなんもせんと待っとくとしましょ。うん、これは信頼や、決して現実逃避なんかやあらへん。そう理論武装したうちはテレビのリモコンを手に取った。

「……っは!? 俺は一体何を?」

 気がつけば俺は森の中にいた。えっと、久しぶりに変身解いて自分の姿を見たところまでは思い出せるんだがそのあと何があったんだ? なんか天ヶ崎さんと話していたようなきがするんだが。あれか? 実は本来の姿でいられないことに日々溜まっていたストレスが爆発したりしたのか?

「う~ん……まあいっか」

別に困ることがあるわけでもないし。今日くらいはこの姿で居よう。あ、天ヶ崎さんに連絡入れないと、えっと

『今日は近くの山で過ごそうと思います。夕飯前には帰宅いたしますのでご心配なく』

めるめるっと、よしこれでいいか。あ、返信。

『心配はしてへん。あんま、はしゃぎすぎんようにな』

はーい。さてと、連絡もしたし今日はどう過ごそう「バルタン星人」か。ん?

「呼んだかね?」

振り返ればそこには小学生くらいの男の子がいた。俺を指差しプルプル震えている。しかしこんな山奥でまさかのエンカウントとは。

「……へん」

「ん?」

と、男の子が俯きつつ何か呟いている。何かなーと近づくと。

「地球は侵略させへんで!!」

そういって飛び掛ってくる少年。それを、とりあえず右手で打ち払う。

「ぐはっ」

少年は吹っ飛び木にぶつかる。その拍子に少年のかぶっていた帽子が取れる、その下には。

「犬耳、だと?」

よく見れば尻尾もあった。なんとここの小学生コスプレが流行っているのか? だとしたらなんと歪んだ教育の場だろうか。

「おらぁ!」

なおも殴りかかってくる少年を鋏で殴り倒しつつ、どうしたものかと俺は頭を働かせていた。

 それはいつもと同じ、俺のことが気に入らんっちゅう連中を叩きのめしていつもの場所で修行しよと思ったんや。いつもの山ん中入って暫くすると人影が見えたんや。またあの連中の仲間かと近づいてったんやけどそれは違うことに気付いたんは相手の姿を見てからやった。そこにおったんは蝉みたいな面して両手が鋏になっとるとても人間とは思えんような奴やった。しかもや、俺はそいつのことを知っとった。昔、まだ俺が何の力も持ってへんかったとき、たまたま見た特撮番組。俺はそれを見て強うなりたいと思ったほどやった。で、目の前の奴はそれに出てきた敵の怪獣。確か、

「バルタン星人」

「呼んだかね?」

やっぱりこいつはバルタン星人や! そしてバルタン星人の目的言うたら一つ、地球侵略や!

「させへん」

「ん?」

「地球は侵略させへんで!!」

瞬動をつこて殴りかかる。あの連中はこれで大概しまいやったんやけど、

「ほい」

「な、がはっ」

右手一本で飛ばされてしもた。それでも、俺は殴りかかる。そのたびに殴り返されるけど倒れるわけにはいかんのや!

「フォッフォッフォッ、タフだな少年」

「はっ、そない余裕でいられんのも今のうちや」

ドンだけ向かっていってもぜんぜん届かへん。一方的にボコられたんは久しぶりやなぁと思いつつ日の傾いてきた空を見とると、バルタン星人が喋りおった。

「勘違いしているようだが、別に俺に地球を侵略しようなんて考えは無いぞ?」

「……ほんまか?」

「本当だとも」

「信用できん」

はん、地球侵略しようとした奴の言うことなんか信用できるかい。俺の言うたことに何を思ったんか、バルタン星人は腕組みをしなんか考えとる。今のうちに拳の一発でも入れればええんやろうけど体が動かへん。

「よし」

と、考えがまとまったんか、バルタン星人は腕を大きく振り上げって、

「ま「ていっ!」へぶっ!」

脳天に入った鋏、それが滅茶苦茶痛とうて俺は気絶してしもた。

「うぅ」

 それからどれくらいたったんかはわからんかったが俺が目を覚ましたんは建物の中やった。体を起こそうとするが激痛が走って動けへん。どないしたもんかと考えていた俺のところに眼鏡をかけた姉ちゃんがやってきた。

「気付きはったか」

「ここは、どこや」

「うちの家や。今日はうちの者がすんまへんな」

「うちの? っ! そや、あのバルタンせ、あがっ」

「ほら、まだ動いたらいかん」

そういい、俺に巻かれていた包帯を取り換える姉ちゃん。その間俺のこといろいろ聞かれて姉ちゃんは呪術師やったみたいやから隠すことないやろといくらかは話した。

「ほれ、これで終わりどす。といってもまだ動けんさかい暫くはうちにおったらええ」

「ええんか?」

「構へん構へん、元々宇宙人がおるんや。今更狗族のガキが一人増えたところで変わりまへん」

宇宙人、あのバルタン星人は姉ちゃんの話によるとほんまに地球を侵略する気はないらしい。むしろ地球人と事を構えたくないっちゅうとった。それがほんまなんかはわからんけど、俺は、

「負けたんやな」

口にすると割とすんなり出た。完全な敗北、それがたまらなく悔しっかった。次は負けへん、せやから。

「藤田兄ちゃん、勝負や!!」

「また来たのか小太郎」

「ええやないか。今日こそは勝つ!!」

絶対にいつか勝ったるきんな!!

おまけ

「ただいまー」

「おかえりーって」

帰ってきたバルタン星人を居間で迎えた天ヶ崎はその肩に担がれている少年をみて飲んでいたお茶が咽た。

「げほっげほっ、どっから攫ってきたんや!?」

「山から」

「はあ!? ってこいつ人間やないんか? 狗族、それもハーフか?」

連れてこられた少年、小太郎の尻尾と耳をみて首をかしげる天ヶ崎だったがそんな場合じゃない。すぐさま小太郎の治療に取り掛かる。

「しかし、いくらなんでもやりすぎとちゃいますか?」

「何を言ってるんですか。俺は顔しか殴ってないですよ?」

「なお悪いわ!」

「フォッフォッフォッフォッ」

「じゃかましい!」

そんなやり取りがあったとかなかったとか。



[14830] 5バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/01/07 12:34
 バルタン星人は当然のことだが宇宙人である。しかも、イメージとしては侵略者だ。そんな偏見を持ってもらいたくないこのバルタンは地球人に敵対することはあまりない。的には容赦しないが大多数の敵にはならないし、しない。そのため、

「なあ姉ちゃん。ほんとに、兄ちゃん誘わんのか?」

「……藤田は関係あらへん、それにあいつにはあいつの立場っちゅうもんがある」

「……せやな」

重苦しい雰囲気で話す天ヶ崎と小太郎。二人はこれから起こすことにバルタンを巻き込もうとはしなかった。手を貸してもらえるなら成功率は100%であろうとも、

「どうかしたのかい?」

「なんでもあらへん。それより新入り、初日は様子見や。小太郎と待機しとき」

無表情で声をかけてくるのは今回雇った白髪の少年。表情の乏しいその顔が小太郎は気に入らなかったが腕は確かなようだったので雇った、いや雇っていた。

「わかったよ。僕としてもことが簡単に済むならそれに越したことはないしね」

「わかったんならええ。ほな月詠はん」

「は~い」

護衛として雇った神鳴流の剣士、月詠と共に夜の京都に消えていく二人を、白髪の少年・フェイトは冷めた目で見ていた。

5バルタン目

「う~ん、どうしましょうか」

 今、俺は一人で家にいた。天ヶ崎さんと小太郎は仕事で三四日は帰ってこないらしい。俺も行こうとしたがいつも頼ってばかりだと腕が落ちるというのを理由に引きさがった。しかし、何というかこういやな予感がする。なんというか自分の知らないところで悪いことが起きておりそれに二人が加担しているのではないかという具体的といえば具体的すぎる不安。

「考えすぎでしょうか」

確かに、仕事の時に俺は積極的に動いて、動きすぎて二人の出番を潰すこともしばしあったりするくらいだ。なら、今回のことは不自然でないとも言えるのだが。

「はあ、考えても仕方ない。少し出かけましょう」

変身し、家に鍵をかけて外へ。適当にぶらぶらしてた俺はいつの間にか清水寺にいた。どうやら無意識のうちに瞬間移動してしまったようだ。まあいいかとついでに寺を回っていたのだがやたらと制服姿の少女がいる、どうやら修学旅行のようだ。なにやら清水の舞台から飛び降りろ的なことを言っているようだが元気のいいことだ。
 暫く散策し、そろそろ帰ろうかという時にふと酒の匂いがした。見渡せば先の少女たちの何人かが顔を赤くしダウンしていた。甘酒にでも酔ったのだろうか?
 夜になり家に帰ってみると留守電が入っていた。小太郎からだったのでかけなおしてみると電話に出たのは小太郎とは別の声だった。

『もしもし』

「ん? 小太郎じゃないのか」

『……彼の仕事仲間だよ、彼なら今はいないよ』

「そうか、わかった」

 そういい電話を切る。声の様子からして小太郎と同年代のようだったが感情に乏しい声だったな。まあいいか。さてと、今日の飯はどうしようかな。



「ん? 何や新入り、俺の携帯もって」

「いや、君に電話がかかってきていたから代わりに対応しただけだよ」

「さよか、って相手は!?」

「さあ? 若い男の声だったけど。彼が藤田という人かい?」

 待機していたところにかかってきた電話、出てみると聞こえたのは知らない男の声。この男が藤田という人物なのだろうかと、戻ってきた狗族のハーフの少年、犬上小太郎に問いかける。

「せや」

「強いのかい?」

「強いで、俺なんか手も足も出えへんくらいにな」

どこか誇らしそうに言う犬上小太郎。しかし、強いというのなら何故今回の仕事に連れてこなかったのか。少し気になったがどうせ関係のないことだ、そう思い、僕はルビガンテを通して天ヶ崎千草達の様子を再び監視しだした。



「ちょろいもんやな」

 木乃香お嬢様を学友たちと泊まってはる旅館から攫うのは拍子抜けするほど上手くいった。式神返しの結界が張られとったようやけど中から子供、サウザントマスターとかいう西洋魔法使いのガキがご丁寧に開けてくれはった結界の穴から侵入は成功。あまりにも上手くいくもんやから罠かと思ったくらいや。その後はトイレにやってきた木乃香お嬢様を気絶させてさっさと逃げた。逃げる途中でさっきのガキにもおうたがサルの式で足止めする。

「ほんと、上手くいきすぎや」

「待てー!!」

気を抜きかけたその時、後ろからようやく追手がきよった。振り返って確認すると、

「ガキやて? 舐めとんのかお嬢様にはそんくらいの価値しかないゆうとんのか? ああ、あのガキどもがえらい強い可能性もあったな」

 全く、隠す必要があるゆうても半人前だけで木乃香お嬢様の護衛が務まるわけあるかいな。やっぱ、東の連中にとって木乃香お嬢様はその程度ってことか?

「木乃香さんを返せー!!」

「はん、言われて返すくらいなら最初から攫わんわ」

後ろんガキたちを無視してうちは予め人払いをしとった駅に入り込み電車に乗り込む。当然、ガキ達も乗り込んでくる。電車が走り出し、うちは電車から飛び降りた。

「なぁ!?」

後ろでガキどもが驚いたような声を出すがあないな逃げ場のないもんで移動するわけないやろ。さっさと月詠はんと合流しようかと足に力を込めようとして、

「のわっ!? な、なんや!?」

突然の爆音に振り返ると。

「お嬢様を、返せーーーー!!」

白目と黒目を反転させながら叫ぶ神鳴流の嬢ちゃんが電車の残骸の上におった。って、

「こ、公共のもん壊してええと思っとんのかーーーー!」

「そっちこそ、誘拐なんてしていいと思ってんのー!?」

そんなアホな言葉の応酬をしつつ、うちは月詠はんとの合流地点に急いだ。

「着いた、月詠はーん」

ようやく合流地点についたうちは月詠はんを探すがいない。なんでおらんのんや!?

「追いついたぞ!」

「ちっ」

追手においつかれてしもた。しゃあない、月詠はんが来るまで足止めするしかないか。

『お札さんお札さん、うちを守っておくれやす』

「詠唱!? お二人とも下がって!」

うちの使う符術は昔話で言うところの『三枚のお札』に起因しとる。一枚目は木乃香お嬢様の代わりに返事するように、そしてこの二枚目は、

『壁ではれ!』

「ちょ、何よこれー!?」

うちとガキどもを阻むよう出てきた巨大な壁。本来は山やけどまあそこはええやろ。

「これで少しは」

時間が稼げる、そう思た時やった。

「こんのー!!」

「なぁ!?」

ツインテールゆうたか? とにかくその女の声が聞こえたかと思たら壁が砕けよった。壁が崩れたその先には拳を突き出した小娘。まさか、あれを殴り壊したんか!?

「な、何だかわかんないけど、ネギ! 刹那さん!」

「「はいっ!」」

「舐めんなや!」

向かってくるガキどもに猿鬼、熊鬼で応戦させる。ああもう、月詠はんは何しよんや!? と、少し意識を外したときやった。うちの猿鬼が還された。みれば、あのツインテール小娘がどっから出したんかハリセンをもっとった。

「な、なーんだ。思ったほど大したことないじゃない。刹那さん、その熊? は私に任せて木乃香を!」

「は、はい」

大したことない!? ふざけるなやっ! どう考えてもそっちがおかしいやろ!?

「お嬢様を返せー!!」

向かってくる神鳴流の小娘、逃げようとして。

「え~い」

「くっ、新手か!」

ようやく来おったか!

「遅れてすいまへ~ん」

「ほんまに遅いわ! まあええ、月詠はん後は任せたで!」

「は~い」

ここで気を抜いたのがいかんかった。追ってはこの二人だけやない、

「逃がしません! 魔法の射手・光の十一矢!」

「しまっ」

西洋魔法使いの小僧を忘れとった。咄嗟に、木乃香お嬢様を盾に仕掛け、

「っつ」

懐にあったありったけの札で防ぐ。攻撃は防げたけど、これ以上打てる手はない。終いやな。

「月詠はん、引くで」

「は~い」

木乃香お嬢様を地面に下ろし月詠はんに捕まる。あのままおっても符がないうちじゃ月詠はんの援護はできん、月詠はんも三人は防ぎきれんやろうし防ぐ気もない。ここは引くしかないんや。

「でもよっかたんですか~?」

「なにがや?」

帰り際、月詠はんがうちに問うてきた。

「お嬢様を盾にしとったらよかったんちゃいますか~?」

「そんでお嬢様にけがさせたら元も子もない、あの場はああするのが一番や。それに今日は様子見、そんな無理する必要もない」

そや、なにがあってもお嬢様を盾になんかできん。そないなことしたら、あいつに顔向けできんわ。



[14830] 6バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/01/07 12:29
「……暇だ」

 毎度のことながらこのバルタン星人はたいてい暇を持余している。いつもなら天ヶ崎の仕事をてつだったり小太郎をボコッたりしているわけだが今日も二人ともいない。家事一切も分身がやっているため本当にやることがないのだ。分身じゃなくて自分で家事をやれば良いとも思うのだがそれはそれなのだ。あまりにも暇な彼は今日もどこかへと出かけることにした。

「昨日は清水寺に行ったから今日は、……奈良公園にでも行こうか」

あまりといえばあまりにもピンポイントなチョイスをしつつ、彼は奈良公園に向かった。

6バルタン目

「むう」

 あまりにも暇すぎた今日、なんとなく気が向いた奈良公園に足を運んだ俺。しかし、そこで見たのはまたも修学旅行中と思しき学生だった。そういえばバルタン星人に生まれる前、まだ自分が人間だった頃。修学旅行でなら公園に来た記憶がないでもない。つまりここは定番コースというわけだ。そりゃ、学生も多いわけだ昨日よりも人数は少ないから自由行動か何かだろう、まあいたところで俺に不利益が生まれるわけもないのでどうでもいいことだが。

「きゃぁ!」

「おっと」

と、思っていた矢先、背中に衝撃。振り返ればさっきの学生と同じ制服の少女がいた。鼻を打ったのか、痛そうに抑えている。

「す、すいません」

「いえいえ」

少女一人がぶつかったところでどうにかなる体でもない。因縁つけるとかいったわけのわからんことするつもりもないので謝罪は普通に受け取る。髪を横に縛っているポニーテールの亜種っぽい髪型の少女、分類としては可愛い、つまりは美少女だ。だがバルタン星人に生まれ変わった俺は地球人とは感性が違うので特に思うこともない。前世なら何かしらの反応はしただろうがな。

「修学旅行ですか?」

「あ、はい」

なんとなく気まずい雰囲気になりかけていたので話を振ってみる。あんのじょう修学旅行だった。聞けば中学生とのことだ。

「せっちゃ~ん!」

「お、お嬢様!? す、すみません、私はこれで!」

頭を下げ土煙を上げながら走り去っていく少女。その後ろから、また別の少女がやってきた。手になぜか団子の載った皿を持っているその少女は俺の近くに来ると一度足を止め、息を整えだした。

「はあ、はあ」

「大丈夫か?」

「うん、ありがとーなお兄さん」

息が整ったらしく笑顔を向けてくる少女。着ているものは先ほどの少女と同じものなのでクラスメイトだろうか? ま、別にどうでもいいのだが。
 その後、なぜか少女と行動をともにしている俺。なんでも少女、近衛木乃香は修学旅行に来ており、数年前からよそよそしくなったさっきの少女、桜咲刹那と仲良くなりたいからアタックし続けているのだとか。しかし、それに夢中で現在地がよく分からなくなってしまったという。これを天然というのかは知らないが少女一人にしておくのもあれなのでなんとなく班員のところに送っていくことになった。どうやら俺は思っていた以上に暇だったらしい。ていうか木乃香ってどこかで聞いたような?

「あ、明日菜や」

と、どうやらクラスメイトが見つかったらしい。これ以上いる理由もないので近衛嬢と分かれる。同時に、先ほどまで自分に向けられていた視線も消える。視線の主はさっきぶつかった少女。逃げていたかと思えば遠くから見ているというのはどういうわけだろうか?

「まあいいか」

考えたところで俺には関係のないことだ。というか、俺としてはこの後どうするかの方がよっぽど重要である。またその辺をぶらぶらして時間を潰すべきか、それともゲームセンターでカードゲームでもやるべきか。

♪~♪~♪~

「ん?」

携帯の着信音、見ればそれは小太郎の番号だった。仕事中のはずだがと不審に思いつつ通話ボタンを押す。

『あ、兄ちゃん』

「小太郎か。仕事中じゃないのか?」

『そうやけど今日は休みなんや。明日が本番で今日は作戦ねっとるとこや』

「そうか。何の仕事か知らないけどがんばれよ」

『……もちろんや!』

今、なんだか変な間が入った。それに小太郎の声にもいつもの元気がない。

「小太郎、お前かなりやばいことに足突っ込んでないか?」

『そ、そんなことあらへん。いきなり何言うんや』

「……そうか、ならいいんだ。天ヶ崎さんともども体には気をつけろよ」

『おう』

電話を切る。おかしい、小太郎はこんなに覇気のない声だったか? 何か嫌な予感がする。考えすぎ、ってこれは昨日も陥った思考だ。いかんな、どうもあの二人のことを気にしすぎてる気がする。それだけ、あの漂流時代が尾を引いてるのか?

「確かに、もう失うのはごめんですね」

取り越し苦労であれば、考えすぎであればいいのだが。まあ、仮に考えている通りの事態になっても小太郎には『あれ』がある。まだ調整中で100%の力は出ないがそれでも天ヶ崎さんを守りながら逃げることはできるはずだ。それでも、万に一つということもある。最善を尽くすべきか、そこまで考えたところでふとあることに気付く。

「これは、俗に言うフラグなんだろうか?」

笑い飛ばせない自分に、少し冷や汗が出た。



「はあ」

通話を切って思わず溜息が出る。ああ言うとったけど兄ちゃん絶対なんか感づいとったわ。やっぱ、姉ちゃんの言ったとおりやたらめったらに電話するんやなかったか? でもな~、

「なにしてはるんですか~?」

「月詠の姉ちゃんか。ちょっと電話しとっただけや」

考え事をしとったら後ろから声をかけられた。振り返れば(まあ振り返らんでも誰かはわかるが)そこには仕事仲間の月詠がおった。神鳴流の剣士の月詠は強い、強いんやけどどうも気に入らん。まあ、刀の刃みて悦に入るようなやつとあんま仲良うなりたいとも思わんし。てか、昨日からさらに変態度が上がってへんか?

「電話ですか~?」

「兄ちゃんにや」

「お兄さんおったんですか~、今回のお仕事には来んのんですか~?」

「来んわ、それに兄ちゃん言うても兄貴分ってだけや」

「お名前はなんていうんですか~?」

なんやしつこいな。まだ会ってそんなに経ってへんけど、月詠は死合い以外に興味ないと思とったんやけど。

「藤田や」

「へぇ」

兄ちゃんの地球人としての名前、というか苗字を聞いた途端月詠の空気が変わる。てか、白目と黒目が反転しとるで!?

「な、なんや」

「その人、分身の術とか使えるんやろか?」

「何で知っとんや?」

色々と聞いてくる月詠、人相、髪の色、身長、体格、その他色々と聞いてきてその全部が兄ちゃんの擬態時の姿と一致する。会ったことあるんか? そう続けようとした俺やったが月詠の氣にあてられたんか、上手く喋れん。そして月読は、

「ふふふ、あん時のお兄さん、漸く見つけたで~」

恐っ!? な、なんやこのプレッシャーは!? に、兄ちゃん、この女に一体何したんや!?
 この後、千草姉ちゃんと新入りが帰ってくるまでの間、俺はこの状態の月詠と一緒におる破目になった。兄ちゃん、怨んでええか?

おまけ
 バルタンの携帯の着信音は『スキャット○ルトラマン~光り輝く未来へ~』、メール受信音は『フォッフォッフォッ』という自分の声、アラームは何故か『朝やで』という天ヶ崎千草の声(本人は知らない)。



[14830] 7バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/01/15 12:31
 天ヶ崎と小太郎が仕事(近衛木乃香誘拐)にいってから三日目。今日も暇を持て余していたバルタンは昨日と同じく出かけようとして、拘束された。呪術協会から派遣された術者や神鳴流の剣士がいきなりやって来て問答無用で拘束したのだ。このとき、バルタンは返り討ちにしたり、逃げたりすることもできたのだが、天ヶ崎に迷惑がかかると思いおとなしく捕まった。連れて行かれた先で尋問されたのは天ヶ崎の動向。もちろんバルタンは知るはずもなく、平行線のまま尋問は終わった。その後、客人が来るとのことでバルタンは牢へと連れて行かれた。

「はあ、どうしたものか」

ここから脱出するのはとても簡単なことだ。しかし、現状が今一つ飲み込めていない彼が下手なことをするわけにもいかない。そんなこんなで悩むこと数時間、既に外は暗くなっている。とりあえず分身を外に送り出し適当に情報収集をさせていたバルタンだが不意に分身からの連絡が途絶えたことに動くこともやむなしと牢を抜ける。そして、彼が見たのは、

「石像? いやでもこれは」

そこにあったのは自分に尋問をしてきた男とそっくりな石像。何がどうなっているのかはわからないが大変なことになっているということだけはわかったバルタンはとりあえず外に出ることにした。因みに、このとき天ヶ崎はスクナの召喚に入っておりネギは刹那と仮契約していたりする。

7バルタン目

「むう、これは」

 現在、バルタンの視界に入っている光景は三つ。一つ目は2,3人の少女が式と戦っている光景。二つ目は小太郎が同い年くらいの少年と一緒にいる光景。そして三つ目は天ヶ崎さんが見たことのない少年と一緒に何かしている光景。さて、どこに向かうべきかとバルタンは考える。

「小太郎に状況でも聞いてみようか」

とりあえず向かう先を小太郎に決定。少し目を離したすきに小太郎の相手が少女に変わっているがやることは変わりないのでまあいいかと飛び立つバルタン。

「さて小太郎、少し御話ししようか」

と呟きながら、

「うおっ」

「どうかしたでござるか?」

ところ変わって小太郎。先ほど敗れた少年魔法使い、ネギ=スプリングフィールドにリベンジをするため待ち伏せをしていた彼だが後から現れた少女、長瀬楓によりネギを逃がしてしまう。長瀬がいるためネギを追うこともできず、彼女と戦闘に入ろうとしたその時。背筋に氷を入れられたかのような悪寒が走る。

「や、小太郎」

「に、兄ちゃん!?」

「っ!?」

現れたのは当然バルタン。何の気配もなく現れたこの男に小太郎は冷や汗をかき、長瀬は最大の警戒をする。そんなことは構わず、バルタンは口を開く。

「とりあえず状況の説明をお願いします。今朝呪術協会に拘束されましてね、天ヶ崎さんたちが何やら良からぬことをしているようですが」

「そ、それは」

虚偽は許さないという声。かといって真実をベラベラ喋ってしまうと間違いなくボッコッボコにされてしまうのは確実だろう。あたふたとしている小太郎に何を思ったのか、突然話題を変えるバルタン。

「そういえば小太郎。さっきいた少年はどうしたんですか?」

「そ、そや! ネギ、ネギの奴を追わな」

なぜか知らないが突然話題が変わったことにしめた、と思った小太郎は口早に先ほどの少年、ネギのことを話し始める。

「つまりはライバルですか?」

「そや!」

一通り話を聞き終えたバルタンは小太郎に問いかける。それに即答する小太郎に溜息を吐きつつどうしたものかとバルタンは考える。今の小太郎の頭の中はネギとの決着のことで一杯だろう、仕方ないと溜息をひとつし、

「なら行きなさい」

「へ?」

「その少年と決着をつけるのでしょう? ならさっさと行く」

「お、おう!」

駆け出そうとする小太郎、今まで静観していた長瀬もそうはさせじとクナイを投げるが、

「邪魔はだめだよ」

「くっ」

当然のようにバルタンに邪魔される。その間にも小太郎はその場を離れネギのもとへと急いだ。

「さて、お嬢ちゃん。状況はよく呑み込めてないんだけど、君は敵かな?」

「拙者はネギ坊主から先の少年の相手を承ったのでござるが」

「それは申し訳ない。しかし、あんなのでも弟なのでね」

「いい兄でござるな」

「それはどうも」

軽口をたたきつつも長瀬は自分の後ろにいる少女、綾瀬夕映を守るように立つ。何せ自分が接近に全く気付かなかった男だ、用心に越したこともあるまい。

「でだ、さっきの答えだけど」

「ネギ坊主の助けをするといってしまったでござるからなぁ。すまぬが押し通らせてもらうでござる!」

手にした風魔手裏剣を再度構え長瀬は戦闘態勢をとる。それに対しバルタンも変身を解き構える。いきなり、人間から姿を変えたバルタンに楓は面食らったかのように目をわずかに開く。しかし、反応したのは彼女ではなくその後ろにいる少女、綾瀬だった。

「ば、バルタン星人ですか!?」

「知っているでござるか、リ-ダー」

「は、はい。しかしなぜバルタン星人が」

「時間がないのではなかったんですか?」

困惑している綾瀬に声をかける長瀬だがバルタンの言葉にそれを打ち切り、分身の術を使う。

「甲賀中忍長瀬楓、参る!」

現れた分身は目算で30、この歳では驚異的な数字だろう。だが、相手が悪かった。

「宇宙忍者バルタン星人、死なない程度に手加減はしよう」

バルタン側に現れた分身の数もまた30、しかし両者の分身には決定的な違いがあった。
 両者の分身が衝突する。競り負けたのは、長瀬。それも当然だろう、両者の分身の違い、それは密度。残像を用いる分身ではなくこれはある程度実体を持った影分身だ。そして、長瀬の分身とバルタンの分身は数が同じでもその密度が天と地ほどの差があった。現在の長瀬の力量では本体と同程度の密度をもつ分身は4、5体が限界だ。それに対しバルタンの分身はそのすべてが本体と同程度の密度をもつ。数を増やせば当然密度は薄くなる、しかしそれは長瀬だけに言えたこと。30という数はこのバルタンにとってなんてことはないのだ。

「威勢は良かったんですが、この程度ですか」

「く」

衝突から一分と経たず、長瀬の分身は全滅する。本体もバルタンの一撃をくらい倒れ伏している。圧倒的なまでの力の差、瞬動を使い接近すればいつの間にか背後にまわられ撹乱しようと動きまわれば蹴りだされた光球に面で薙ぎ払われる。手加減はしているので死にはしないがそれがあからさま過ぎる、長瀬はかつてない敗北感にうたれていた。

「う~ん、同じ忍者ってことで期待してたんだけどこの程度か。小太郎よりは強いけどそれだけだし、のびしろはまだあるみたいだから精進しなさいな」

そんなことを言いつつもその声にはもう興味はないということがありありと出ていた。それっきり、バルタンは長瀬に目を向けることなく小太郎を追おうと去ろうとし。

「ま、まつでござる」

「ん? 立てたんですか」

「手加減されてたでござるからな」

立てないほどの重症を与えたわけではないが立てるかどうかは本人の気力次第とい妙に器用に痛めつけたバルタン。ここで彼女が立たなければ思い出すこともないくらいの存在だっただろう。

「まあ、無理はしないことだね。立てるけどそれだけだろうし」

「バレバレでござるか」

「そういう痛めつけ方を知っているので」

フォッフォッフォッフォと笑い声をあげるバルタン。息を荒げなんとかたっている長瀬を先ほどとは逆の感情を持ってみるバルタン、少し興味が出たようだ。

「それじゃ、俺はもう行くからゆっくり休みなさいな」

そう言って飛び立つバルタン、その姿が見えなくなったのを確認し、長瀬は倒れる。

「長瀬さん!」

隠れていた綾瀬が駆け寄る、それに大丈夫と返し長瀬はついさっきまでそこにいた宇宙人のことを考える。手も足も出なかった、甲賀での最高の中忍という位を持っていることに無意識に驕っていた。思えば、麻帆良に来てから自分は修行しかしていなかった。術を磨き、体を鍛えた、しかしそれも一人でだ。分身を使って対人戦をやろうとも所詮は自分、考えていることなど薄々だがわかる。

「精進あるのみでござるなぁ」

帰ったらとりあえずクラスメイトである狙撃手に模擬戦でも頼むでござるか。と考えつつ、彼女はこの敗北を噛みしめていた。



[14830] 8バルタン目(誤字修正)
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/01/20 12:19
 大岩よりはい出したるはかつて飛騨の国にて猛威を振いし大鬼神、両面宿儺。頭部の前後に二つの顔を持ち、両の肩には前後一対の腕がある。本来足も前後一対あるのだがまだ封印から完全に抜け出したわけではないためそれは見えない。しかし、それでもなおその体は巨大。その巨体の上、木乃香の魔力を用い召喚した張本人天ヶ崎はまるで人形のような無機質な目で立っていた。

8バルタン目

 召喚されたスクナを見てフェイトはすこし感心したようなそぶりを見せる。態々関西呪術協会の術者を操るなどという面倒な手を使ってまで復活させたのだ。その苦労に見合うだけの力は感じられるため無駄にはならなかったようだ。一日目の襲撃から戻った天ヶ崎にかけていた術が解けそうになっていたことには少々驚いたが重ね掛けすることによりその心配もないだろう。そのわずかにそらした気、そこに、

「てやああああ!!」

「しまっ」

接近を許した明日菜のハリセンの一撃により障壁を抜かれる。そして、

「うわああああああ!!」

「ぐっ」

それに続いたネギの拳に顔面を殴られる。その間に刹那は木乃香を奪還する。

「……顔に一撃をくらったのは初めてだよ」

そういい、ネギに拳を突き出し、

「いい加減にせえ!」

自分の人形のはずの女性の声にそちらを振り返った。
 神楽坂明日菜は混乱していた。ネギと共に関西呪術協会まで親書を届け、もう安全だと思った矢先に自分の親友が連れ去られたのだ。何とか体制を整え追いかけたら数百体の式に囲まれる。刹那と二人その場に残り式の相手をしていたところにクラスメイトの龍宮真名等の援軍により刹那と共にネギの元へ向かった。召喚されてすぐ視界に入ったのは巨大な鬼。だが、そこまではいい、よくはないがまだ彼女の頭は正常に機能していた。この後、刹那が翼を出したり木乃香を救出したりフェイトに一発入れたりするのもまだ余裕はあった。だが、

「な、なんで」

そのあとにおこったことについては彼女の頭はとうとう考えるのをやめることとなる。それは、

「なんでバルタン星人が出てくんのよーーーー!?」

それなんて怪獣大決戦よ!? などと叫ぶ明日菜の目の前ではさっきの鬼が同じくらいのサイズのバルタン星人が戦っていた。
 時間は少し戻り刹那が木乃香を救出したあたり、背中の翼で空を飛び一直線に木乃香のもとへと向かう。このとき、天ヶ崎はフェイトの人形になっていたので碌に反撃することができずあっさりと木乃香を奪われる。それどころか踏ん張ることもできずスクナの上から落下してしまった。木乃香のことに夢中の刹那はそれに気づけず、ネギと明日菜もスクナの体に隠れていたため見えない。意識がない彼女は水面に頭から落下していき、

「うおおおおおお!!」

小太郎に救われた。当初ネギに向かっていた小太郎だが落下している天ヶ崎に気づき間一髪で救出したというわけだ。

「危ないやろ姉ちゃん! 姉ちゃん?」

天ヶ崎の様子がおかしいことに気づく小太郎。呼びかけに答えず視線も定まっていない天ヶ崎、誰がどう見てもおかしい。

「姉ちゃん! しっかりせえ!」

バシバシと天ヶ崎の顔を叩く小太郎、面白いように左右に揺れる天ヶ崎の顔。

「姉ちゃん姉ちゃん」

バシバシ

「姉ちゃん姉ちゃん!」

バシバシ

「う、あ」

「姉ちゃん姉ちゃん!」

バシバシ

「ねえちゃ「ええ加減にせえ!!」あだ!」

いい加減覚醒したらしい天ヶ崎、どうでもいいが顔が腫れておりどこか笑いを誘う。

「ね~ちゃ~ん」

「ええい、はなさんかい! それはそうとフェイトやったか? やってくれたなぁ」

抱きついてくる小太郎を引っぺがしフェイトに向き直る天ヶ崎。対するフェイトは相変わらずの無表情を貫いている。

「へえ、殴ったくらいで解けるようなものじゃなかったはずなんだけどね。少々見くびっていたよ」

「はっ、そうかいな」

符を取り出し戦闘態勢に入る天ヶ崎、しかしそこに水をさすものが、

「こ、小太郎君!?」

「お、ようやく追いついたでネギ。勝負や!」

「な、長瀬さんは? まさか小太郎君」

「あの姉ちゃんなら兄ちゃんが相手しとる。今頃ボコボコにされとるやろな」

「……待ち、小太郎、今何て言うた?」

小太郎のセリフに出てきた兄ちゃんという単語、それは彼女に聞き流せるものではなく。

「藤田がおるんか?」

「あ、そや姉ちゃん。兄ちゃんにばれてもうた!」

「それを先に言わんかい!!」

まずい、正に天ヶ崎がそう思ったそのときだった。

「フォッフォッフォッフォッ」

「ひっ」

耳に入った笑い声、恐る恐るそちらを見れば。

「お久しぶりです(怒)」

「あ、あははははは」

表情はわからないがまず間違いなく怒っているだろうバルタンがいた。明日菜辺りが「なんでバルタン星人!?」と叫んでいるが全員がスルーした。

「に、兄ちゃん。さっきの姉ちゃんは」

「ボコりましたが?」

「さ、さよか」

自分でもそうなると言ったがこうもあっさりいわれるとなんだかなあと思う小太郎だった。

「ところで天ヶ崎さん、いろいろ聞きたいことはありますがあれは何ですか?」

「そ、そや。今はスクナのことを何とかせな」

話題を変えようとスクナのことを必死に主張し始める天ヶ崎、封印するとバルタンにいい。

「させないよ」

「っ!? しま」

バルタンのことに夢中でフェイトに事を失念していた天ヶ崎。不確定要素たるバルタンごと亡き者にしようとフェイトは石の槍を

「邪魔です」

「がっ!?」

発動させようとしてバルタンにはるか遠くまで蹴り飛ばされる。邪魔者はいなくなったとばかりに天ヶ崎に続きを促すバルタン。それに冷や汗を倍増させつつ答える天ヶ崎。そして

「つまり、あれをボコれと」

「そや、幸いスクナはまだ完全に復活しとらん。叩くなら今や」

「……わかりました。そのかわりしくじらないように」

「誰に言うとるんや」

「なんだかんだでおっちょこちょいな貴女にです」

「うっ」

辛辣な一言を浴びせ、バルタンはスクナに向き直る。そして、

「ふう」

『あっさり巨大化したーー!!』

一瞬でスクナと同サイズになった。そんなことは気にも留めずバルタンはその大きさのまま分身する。ここに、バルタンVSスクナの怪獣大決戦の火ぶたが切って落とされた。
 さて、バルタンにあっけにとられていたネギたちだったが天ヶ崎たちにはっとし、身構える。

「そう身構えんでええ。ちょっと話があるだけや」

「……なんですか」

「スクナの封印や。そのためには木乃香お嬢様のお力がいる」

「そんなこと言って、またあの化け物を操るのに使うつもりでしょ!!」

攻撃的な明日菜の物言いに仕方ないかと自嘲する天ヶ崎、それだけの反応をされるだけのことをした自覚はある。たとえ、操られていたとしても。

「それについては返す言葉もない。でも、今は信用してほしい。虫がええことはわかっとる、けど今はお嬢様の力が必要なんや」

「そんなこと」

「ええよ」

と、いつの間に現れたのか。明日菜の後ろに刹那と木乃香が立っていた。そして、先の木乃香の一言に、皆が目を見開いていた。

「お嬢様!」

「お姉さん、あの大きいのどうにかするのにうちが必要なん?」

「……そうです。うちのもんが戦っとりますが弱らせることはできても封印までは持っていけません」

そういって見上げた先では、

「せやあああああ!!」

「ぐぎゃあああああああ!!」

鋏でスクナの四つの目を突くバルタンがいた。良い子はまねしちゃだめだよ!!



[14830] 9バルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/01/29 17:53
 うなる拳、飛び交う光線。四方八方から襲いかかる攻撃にスクナは四つの手を巧みに使い何とか防いでいた。時間さえ稼げばこの封印から抜け出すことができる。そうすればこんなやつらなど一蹴できる。その考えは間違っていない、封印の解けたスクナならバルタンを倒すこともできるだろう。最も、そんなことができればだが。

「赤色冷凍光線!」

「ギァァァァァァァァァ!!」

襲いかかるは長いウルトラ戦士の戦いに幾度となく登場した強敵、宇宙忍者バルタン星人。その実力はウルトラ戦士たちを幾度となく窮地に陥れた猛者だ。100%の力を発揮できないスクナは徐々に、押されて行っていた。

9バルタン目

 30対1、スクナとバルタンの間にある戦力差だ。この世界の分身の術は術者の技量、そして氣に依存するものだがバルタンの使う分身の術はどちらかというと分裂だ。本体と同程度の力を持ち分身を作りだすことができるのだ。つまり、スクナの視界(治った)に映る全てのバルタンは本体であり分身だ。もちろん分身は一定以上のダメージをくらえば消える、最もその一定以上は核ミサイルなみの威力がいるのだが。

「グァァァ」

スクナはわからなかった。突然現れたこの異形を何故自分は倒すことができないのか? 十数年前に封印された時とはまた違う理不尽の化身。あの時の小さな人間とは違う、自分と同じサイズの者との戦い。なぜ勝てない、封印されているとはいえ自分は大鬼神と称された存在だ。それがなぜこんな蝉とザリガニを合わせたような奴に勝てないのか、スクナには理解できなかった。
 徐々に凍りつき自由を奪われていく中、スクナは恐怖した。圧倒的な力の差があるわけではない。封印が解ければ間違いなく勝てる相手だ。封印されている今でもそれなりの戦いができたはずだ、なのに勝てない。何故何故何故、何故勝てない。そんなスクナの視界に不意に人間が、符を構え封印の祝詞を唱えている天ヶ崎の姿が映る。あいつだ、スクナは直感した。あの人間のせいで自分は力を出し切れていないのだと。しかし、気付いたところで遅すぎた。既にスクナの体はその八割が氷漬けとなっており動くことはかなわなかった。

「ガァァァァァァァァァァァ!!」

それは断末魔の声か呪いの叫びか、スクナは大きく吠え、その体を氷の彫像と化した。同時に四方から白色破壊光球がスクナの氷像を襲い、粉々に砕いた。天ヶ崎もそれを逃さず残りの呪文を一気に詠唱し、スクナは再び大岩に封印されることとなった。

「凄い」

 その一部始終を見ていたネギたちは息をのむことしかできなかった。間近で見せられた文字通り大規模の戦い。それに圧倒されたのだ。気づけば、長瀬や龍宮といった援護に来てくれた面々もそろってバルタンを見上げている。そのバルタンはと言えばいつものように『フォッフォッフォッフォッ』と笑っている。そんな時だった。

『ぼーや、聞こえるか?』

「え、エヴァンジェリンさん!?」

『もう少しでそっちにつく、それまでもたせろ』

「え、あの」

自分の生徒で真祖の吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルからの念話が届いた。もうすべて終わっているのだがもちろんそんなことは知らない彼女、勘違いしたまま念話は切られる。どうしようかとおろおろするネギ、そこに小さくなったバルタンが近づいていく。

「終わりましたか?」

「終わったで、でな「ではお仕置きです」ぶっ!」

「姉ちゃ「お前もな」ごはっ!」

容赦なく鋏を振り下ろすバルタン。変身しないのは服がないからである。一応のお仕置きを終えたバルタンは今度はネギたちの方を見る。思わずビクリとする一同だがバルタンはその中に見たことにある少女を見つける。近衛木乃香だ。

「ん? 木乃香ちゃんじゃないか」

「ふえ?」

思いもよらない相手からかけられた声に間の抜けた声を出す木乃香。この恰好じゃわからないかとバルタンも気付き、とりあえず正体を言う。

「昨日、はぐれたところを助けたお兄さんです」

「あ、あの時の、ほかほかバルタン星人やったんか」

いまだ困惑している周囲を尻目にほんわかかした空気で会話するふたり、正直異様である。
 その後起こったことについてだが特筆すべきこともない。強いて言うなら、

・懲りずにフェイトがバルタンに攻撃し殴り飛ばされたり

・そのフェイトが転移してきたエヴァンジェリンとぶつかって二人で吹っ飛んだり

・封印の完了したスクナの大岩をバルタンの分身が太陽に捨てに行ったり

・ようやく戻ってきたエヴァンジェリンがやることがないということに愕然としたり

したくらいか。ああ、それと石にされていた本山の者たちはネギと木乃香が仮契約することにより元に戻ったというのもあった。

「はふぅ」

 一連のことも一段落ついたころ、ネギは縁側でまったりしていた、バルタン(人間状態)と一緒に。何故こんなことになっているのか。何のことはない、バルタンがまったりしていたところにネギが来たのだ。最初は逃げようとしたネギだがバルタンの分身に捕獲され一緒に座ることになっていた。初めは挙動不審だったネギも日本茶と和菓子によりすっかりまったりしていた。恐るべし和の味。

「えっと、バルタンさんは」

「藤田でいい。バルタンは星の名前だしね」

「あ、すいません」

なんで藤田? と思いつつネギはバルタンと話をしていく。巨大化して凄かったとか、強かったとかそんな子供じみた感想を言うネギだったが実際子供なので微笑ましい限りだ。なお、この光景を影からネギの生徒たちが見ていたのだがネギは知るよしもなかった。

「その、明日菜さんに聞いたんですけど。藤田さんは地球を侵略しに来たんですか?」

少し前にネギが聞いたバルタンのこと、曰く地球侵略に来た異星人。まあ間違ってはいない。このバルタンにそんな気はないが、バルタン星人への共通認識はそんなものだろう。

「ん~、そんなつもりはないですね。こちらとしては日々を楽しく過ごせればいいですし」

「そ、そうなんですか」

あまりにも普通な答えに質問したネギはどういえばいいのか困る。そんなネギの表情を見つつフォッフォッフォッフォッとバルタンは笑う。どうやらこの二人はそれなりにうち解けているようだ。去り際、バルタンが自分のことを知りたいならインターネットで調べればいいと教えたりして別れた。
 去っていくネギを見送り、バルタンもその場を離れる。向かうのは牢屋のある地下、そこでは天ヶ崎と小太郎、そしていつの間にか分身に捕獲されていた月詠がいた。バルタンは今回の事件の解決に加わったということで捕らえられてはいない。

「元気ですか?」

「藤田かい。ま、ぼちぼちやな」

牢屋の中にいるというのに全く悲観した様子のない天ヶ崎、まあ開き直ったともいうのだが。

「あ、おに~さん。お久しぶりどす~」

「……ああ、いつかの辻斬りでしたか。顔が変わっててわかりませんでした」

「自分でやっといてよ~言うわ」

そう、月詠の顔は無残に腫れ上がっていた。どうやら分身がかなり激しく殴りつけたらしい。どうでもいいことではあるが。

「自業自得では?」

「いけずやな~」

「それで結構」

因みに会話に入ってこない小太郎だが、呑気に寝ていたりする。暫くの間3人、起きてきた小太郎も含め4人で他愛もない話に興じていた。この先にあるものをここにいる全員が理解しつつ、時間は過ぎて行った。
 この数十時間後、ついに処分が下される。処分は以下のとおりとなる。

天ヶ崎千草
 関西呪術協会からの除名および魔法世界への島流し。
月詠
 京都神鳴流からの除名および魔法世界への島流し。
犬上小太郎
 数十日の謹慎。

 正直軽いといってもいい。小太郎と月詠は雇われという扱いのため極刑はなしにしても主犯格の天ヶ崎の処分が軽いといってもいい。最も、これは天ヶ崎に意識操作の魔法が掛けられていた痕跡があり、スクナ封印に尽力したという働きがあってこそだが。もちろん、この処分に影で天ヶ崎の支援をしていた旧家の人間はいい気がしなかったが魔法世界という自分たちとは関係ない世界に行くということなので表面上は大人しくしている。小太郎も大いに意義を唱えたが天ヶ崎に諌められ黙る、月詠は強いやつと戦えればいいので設けたと思っているくらいか。とにかく、一月後、天ヶ崎、月詠の魔法世界への島流しが決定した。

おまけ
 ネギとその生徒(本山で石になっていたものを除く)から見たバルタン。

ネギ
 結構いい人? 麻帆良に帰ってからバルタンのことを調べその境遇にちょっと共感。

明日菜
 胡散臭いものを見る感じ。本物なら本物で大変なんじゃないかと思っている。

刹那
 そもそもバルタンを知らなかった。最初は式の一種と思っていた。

木乃香
 凄いな~、といった程度、大物である。

夕映
 宇宙人の存在を確信した? できれば一度話をしてみたいと思っている(石になっていたのどかに付きっきりだったため話せなかった)

長瀬
 弟子入りを願い出たが一蹴。とりあえず修行あるのみ。

龍宮
 スクナとの戦いを撮影しており売るかどうか思案中。バルタンに対しては純粋に驚いている。


 驚いてはいたが即座に戦いを挑む。脳天にいいのをもらい旅館に着くまで気絶してた。

茶々丸
 特撮との因果関係について考察する。おそらく答えは出ない。

エヴァ
 最初は怒っていたが本物のバルタンと知ると子供のようにはしゃぎだす。なお、麻帆良帰還後にエヴァの別荘でネギと共にウルトラマンを鑑賞していたりいなかったり。

おまけ2
 月詠捕獲

 龍宮との戦いから離脱し、戦場から撤退しようとする月詠。しかし、それを分身たちが取り囲んだ。

「あや~、退いてくれませんか~」

「……」

月詠の言葉を無視し方位を狭めていく分身たち、その数は28。引いてくれそうもない分身たちに月詠も押し通ろうと氣を込め、次の瞬間には宙を舞っていた。

「はえ?」

何が起こったのか分からない。そのまま、月詠の意識は沈んでいく。月詠を気絶させた分身たちの攻撃、その名を『アタック28』といった。

あとがき
 ラカンの強さ表で言うと

ウルトラマン:13000
初代バルタン:12500
主人公:6000

つまり主人公は今の倍以上強くなる余地があるのさ!!



[14830] 導入編改め……
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2013/03/30 23:57
 久しぶりすぎて展開を忘れた? 逆に考えるんだ、忘れたなら書き直せばいいと考えるんだ。

 魔法世界に島流しと相成った天ヶ崎千草と月詠、一部から疑問の声もあったが理由がないわけではない。まず今回の事件だが操られていたとはいえ呪術協会のトップシークレットだったスクナの封印解除は見過ごせない、よって協会からの除名処分となった。この処分にはさしたる反論もなくあっさりと決まった。問題はこの後、彼女を影で支援していた者はそれなりの数おり旧家、名家も混ざっている。一介の呪術士がスクナの封印解除の呪文を知るなど普通は不可能なのだ。
 さてその旧家、名家だが今回のことで彼女の口から自分たちの名前が出るのが好ましいことでないのは明白だ。ならどうするのかというと手っ取り早く口を封じればいい、幸いというべきか天ヶ崎は協会からの除名処分が確定している。突然消えてしまっても処理は楽だ。勿論今回の一件で膿を出したい詠春としては彼女は貴重な情報源だ、むざむざやらせるわけがない。しかしそうなると天ヶ崎の身を何処に置くかが問題なのだ。まず呪術協会の手の届く範囲は駄目、本山近くならともかく地方には詠春よりも旧、名家の手の者がそれなりにいる。ではそれ以外、魔法協会の勢力圏内はというとそれも微妙だ。
 西洋魔法使いに共通する概念として存在する『立派な魔法使い』、それを妄信しているレベルの者は多いのだ。日本の拠点である麻帆良はその筆頭だろう。そんな連中に万が一バレたら厄介なことになりかねない、というか確実にバレるだろう。何のことは無い、呪術協会の手の者がそういったやつらの前で何気なく言えばいいのだ、

『あの女はサウザントマスターが封じた化け物を復活させようとした極悪人だ』

と、というわけで日本国内はアウトと考えられる。かといって海外だと今度は詠春の手が届かない。最終的に呪術協会が手を出しにくくある程度自分の顔が利く魔法世界と相成ったのだ。向こうは言ってはなんだが無法地帯という場所も存在し奴隷制度も存在する。魔法使いのモラルも軍などを除けば高くはない、更にかつて『紅き翼』のメンバーだった弟子もいる。彼を通じて情報を手に入れればいいというのもある。以上が天ヶ崎の魔法世界への島流しの主な理由である。
 月詠に関してだが彼女は性格はどうあれ神鳴流の剣士としては一流だ、その彼女を抑えるのに最も適しているのは彼女を取り押さえたバルタンだ。そしてそのバルタンは天ヶ崎と共に魔法世界へ行く。ならついでにという理由だ。
 魔法世界、奴隷とかダンジョンとかファンタジー色の強いこの世界に島流し気味にやってきた天ヶ崎千草+2。異世界とかオラわくわくしますねというふうにやってきた一向は今、

「ぐふう」

「ほれ、無理せんと寝ときや」

バルタン星人闘病中という事態を迎えていた。

導入編改め『導入編 0ハイブリッド強化ベム アンドロ・ザ・キラーメカバルタン目』

 バルタン星人こと藤田は油断していた、地球にいたとき俺TUeeeeeeeをやっていたため失念していたのだ、まさかこの魔法世界に『火星と同濃度のスぺシウム』があったとはこのバルタン星人の目をもってしても見抜けなかったのだ。それはともかく、かせ、魔法世界にきてからグロッキー状態のバルタン星人、趣味の機械いじりもできなくて結構なストレスがたまっていた。

「☆Д↓■¶†」

「宇宙語でとるで」

「かくなるうえは地球に舞い戻って」

「あきまへん」

一日中布団にくるまっているバルタン星人、その隣には水を張った盥からタオルを浸し絞り頭に載せてやるというかいがいしく世話を焼く千草さんの姿が!!

「ま、命にかかわらんいうんならあんさんにはええ薬どす、しばらく大人しくしとき」

「フォー」

因みに命に別状がないというのは死なないというだけであり苦しくないわけではない。ぐぬぬと呻きながらも大人しくすることしかできないバルタン星人、因みに一応一緒にいる月詠は病人に襲いかかる気はないのか今日も元気に闘技場へ出稼ぎである。因みに悪いことではない、魔法世界にやってきてから家族、というかペットが増えた。最も、

「ゼ、ットン」

「なんやゼットン、こっちきいや」

戸口からこちらを伺うように立っているのは黒いボディに黄色のライン、二本の角が雄々しい宇宙恐竜ゼットンの子供である。膝の上にゼットンを乗せ湯呑に茶を入れる千草、実に平和であるが半端なく混沌とした空間がそこにはあった。
 ところ変わって麻帆良学園、天ヶ崎ファミリーの中で唯一地球に残った小太郎は今この学園で生徒をしていた。悪魔襲撃というイベントをまあ色々と頑張って解決し、今この学園は来るべき学園祭に備えいつも以上に賑わっている、小太郎の在籍する初等部も簡単な出し物をすることになり小太郎も協力して、むしろ率先して準備に取り組んでいた、この辺りは母の教育の賜物である、本人は否定するだろうが。

「こら男子ちゃんと手伝いなさいよ」

「うるせー、お前らだけでやってろよ」

ギャーギャーと実に子供らしく騒ぐ生徒たち、その様子をあらあらという風にほほえましそうに見る担任、騒ぎが言い争いに変わろうとしたとき今まで口を出さなかった小太郎が男子の一番騒いでいた少年に近寄り肩を掴む。

「協調性のない奴はほんま苦労するで」

「お、おう」

同い年の少年が発したとは思えない言葉の重みに気圧される少年こと只野茂歩君、この辺りは父の影響だろう、本人は笑って肯定した後に母にひっぱたかれるだろうが。そんなこんなでその日の準備も終了し小太郎はライバルである少年を探しに行く、勝手知ったるというのはまた違うがいつも通る道を駆ける少年、青春してるなー。
 さてこの学園の学園祭であるが学園そのものの規模が大きいため当然祭りもデカい。さらに今年は魔法関係の厄介事も起きたりするので大変である、万全の態勢で待つというのは厄介事の起きるフラグである。まあそんなの関係ねえとばかりに小太郎はネギと学際中の再戦を約束し寮へと帰宅する。部屋に上がろうとした小太郎は寮監のおばちゃんに手紙を渡される、差出人は『天ヶ崎千草』。ダッシュで部屋に戻った小太郎は早速手紙の封を破る、手紙の内容はというと、

『小太郎へこっちが一段落したんで近況報告させて貰うわ。こっちでの生活やけどとりあえず不自由はない、クルトっちゅー兄ちゃんがよううしてくれとるわ。そっちはあんさんのことやから風邪もひいとらんのやろうけどきいつけなアカンで、藤田の奴はこっち来てから寝込みっぱなしやからな、まあええ薬やろ。ほながんばりや』

一部驚きの内容もあったが向こうはおおむね元気にやっているらしいことにホッとする小太郎。

「しっかし何があったんやろ?」

あのバルタン星人が寝こみっぱなしという事態に首を傾げながら小太郎は返事を書くため机に向かうのだった。因みにこの後手紙をどこに出せばいいのか小太郎が迷うことになるがどうでもいいことである。
 同時刻、学園から離れた山の中にそいつはいた。森の中にいきなり現れた彼は周囲に誰もいないことを確認すると耳に当てた通信機を起動させる。

「はい、たったいま現地に到着しました、これから目的に向かい目標の確保に向かいます」

その後、二言三言話をした後男は通信機を切り懐から写真を取り出す。そこに映っているのは一人の少女、頭の上にお団子を作った少女の名は超鈴音、男は暫く写真を見た後歩き出す、目的地は麻帆良学園。どうやら今年の学園祭は例年とは比べ物にならないほど騒がしくなりそうであった。






ひさしぶりなのでここまで、導入部なので短いじぇー(泣)寝込んだバルタン、謎の人物の登場、子ゼットンかわいいよ、一体どうなってしまうんだー(棒)



[14830] 1ハイブリッド強化ベム アンドロ・ザ・キラーメカバルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:4adb891b
Date: 2013/04/07 18:49
 さて、スぺシウムによりグロッキー状態のバルタン星人であるが彼はいつまでも寝ているような大人しい男だろうか? 否、断じて否である! というか溜まった鬱憤を晴らすためいつも以上に彼はやる気に満ち満ちていた。

「フォフォフォフォ、〝●★Т〒ДΘーー!!」

思わず宇宙語が飛び出すほどハイテンションなバルタン星人はその欲望の赴くままに機材を弄る。誰がどう見ても暴走しているが残念ながらここに彼を止める者はいない。 ブレーキの壊れたマッド、嫌な予感しかしない。そして、

「完成!」

ババーンという効果音が聞こえてきそうなポーズをとったバルタンの目の前にはバスケットボールほどの大きさの黒い球体。一体なんなのかはわからないがバルタン星人はキーボードを操作し球体に何かを入力していく、因みにこの辺りから彼の意識の三分の二くらいは落ちている。そして、

「行ってこーい!!」

最後にターンッ! とキーを押す、すると球体の周りが歪みはじめその姿が薄れていく。暫くしてそこに球体の姿はなく、意識不明の馬鹿が一体いるだけであった、勿論怒られましたよ?

1ハイブリッド強化ベム アンドロ・ザ・キラーメカバルタン目

 学園祭、22年に一度の世界樹の魔力がどーたらで告白が10割成功したりする迷惑な催しである(違います)。学園在籍の魔法使いたちは告白を阻止するため学園祭の期間は警備につく訳だが我らの小太郎はそんなん関係ねえとばかりにライバルであるネギと共に格闘大会なるモノに出ていた。どういうわけかバラバラに開催されていた大会が統一され一つの大きな大会になっていた、小太郎としては願ったりかなったりな展開である。手続きを済ませ大会にエントリーを済ませる小太郎、そんな小太郎の前にどこからか黒いボールが転がってきた。

「なんやこれ?」

首を傾げる小太郎、その目の前でボールから音声が流れ始めた。

『モクヒョウ ヲ カクニン ミッション カイシ』

そうして独りでに転がりだすボール、その先にあるのは大会の受付だ。

「なんやあれ?」

再び首をひねる小太郎、彼があれの正体に気付くのは学園祭終了後になる。
 さて時間は流れて大会予選開始時刻となる。登録からいままでイベントはあるにはあったがネギ関係なので総スルー、気にならるなら原作読みたまえ。それはさておき、一千万のかかった大会である参加人数も多く圧巻と言ってもいいだろう。八つに分けられた予選の舞台、屈強な男だけでなく女子中学生の混ざるそこはある種の注目を集めていた、しかし、最も注目を集めていたのは彼女たちではなくましてやネギや小太郎といった子供組でもない。

「ねえ、なにあれ?」

「さ、さあ。魔力は感じないので式の類ではないとは思うのですが」

ネギの従者、神楽坂明日菜と桜咲刹那は自分たちと同じブロックに配置された参加者の一人を見てそう呟いた。視線の先にいるのは人ではなく人型の何か、2mほどの黄色い体に頭部はなく変わりに胴体に一つ目がついている。ほかの参加者たちもざわざわとあの黄色いのの正体が気になっているようだがどうも彼女たちとは様子が違う。

「ま、何だっていいでしょ。それより刹那さん、油断して負けないでよね!?」

「ふふ、そうですね。しかし明日菜さんそれは私のセリフです」

そう余裕をもって話す二人。彼女たちには自信があった、自分たちは処遇裏に関わる人間であり実戦でも戦ってきてここにいるちょっと腕が立つような相手には負けないいう自信が、最も彼女たちはこの数分後その花をぽっきりと折られることになる。予選開始当初、二人は順調に他の参加者を蹴散らしていった、やっぱり自分は強くなった、そう思う明日菜を突然衝撃が襲った。

「ぐっ!?」

「明日菜さん!?」

「大丈夫!」

すぐさま立ち上がる明日菜だが先ほどの攻撃がどこから来たのかわからなかった、正確にはなぜそこから来たのかがわからなかった、だ。衝撃が来たのは背中、しかしそこにはずっと刹那がいたのだ、彼女が攻撃してこない限りそこからやられることはないと思っていた明日菜は困惑を隠せないでいた。一方困惑しているのは刹那も同じだ明日菜が攻撃を受けた瞬間こそ目を離していたが攻撃が来たという気配はなくかつそこには誰もいなかったはずだからだ。彼女たちは知らない、明日菜が攻撃され時、黄色い巨人の体の一部が欠けていたということに。
 そうこうしている間にも予選は進み舞台の上には刹那、明日菜そして黄色の巨人が残されるのみとなった。予選通過は各ブロック2名、あと一人倒れればこのブロックの予選は終了である。刹那も明日菜も互いに戦うなら本戦でと決めていたので必然的に二人はそろって巨人に武器を構える。改めて相対したわけだが二人はこの巨人の正体を測り兼ねていた、予選の最中にも時折巨人の姿は確認したが太い両腕を用いた格闘攻撃のみを行っておりその速度は刹那からすれば余裕で回避できるものであった。

「刹那さん!」

明日菜の声にはっとして巨人に気を向ける刹那、対する巨人のとった行動は二人には理解しがたい物であった、なんと巨人は目を閉じてしまったのだ、諦めたのかと不審に思う刹那、最もそんなことはないのだが、

「なっ!?」

「ちょっ!?」

驚く二人、なにせいきなり巨人の体に亀裂が入ったかと思えば分裂し破片が襲いかかってきたのだ。これに対する二人の反応は刹那は寸でのところで回避、明日菜は、

「きゃああああ!?」

直撃であった、このあたりはまだまだ素人である彼女の限界であるだろう。倒れた明日菜を見て巨人の破片の向かった先を見る刹那はまたしても驚愕に目を見開く、なんと破片が合体し再び巨人姿になったのだ。胴体部分に現れた目が明日菜を、そして刹那を見る。対する刹那も手にした武器を構える、対峙する彼女らに割って入ったのは司会を務めるクラスメイトの声だった。

『決着ーー!! Eブロック、激戦を制したのは美少女剣士桜咲刹那選手と、え、えーと木野選手だーー!! ていうか木野選手あんたいったい何者だーー!?』

沸き上がる歓声に刹那は予選が終了したことを思い出す。去っていく巨人、イエローデビルを一度睨み付けた彼女はすぐさま明日菜の元に向かった。

「明日菜さん大丈夫ですか!?」

「う~なんとか、それより私負けちゃったんだ」

ダメージよりも予選敗退という事実に凹む明日菜、そんな彼女に刹那は微笑みかける。

「大丈夫です明日菜さん、あなたの敵は私がとります!」

「うん、頑張ってね刹那さん!!」

そう言って笑いあう二人、余談だがこの後ネギパーティーの中で唯一の予選敗退ということで明日菜がさらに凹むのだがまあ余談である。
 すべての予選が終了し本戦に出場する選手たちは以下のとおりである。

Aブロック
第一試合
桜咲刹那 対 大豪院ポチ

第二試合
佐倉愛衣 対 山下慶一

第三試合
長瀬楓 対 中村達也

第四試合
古菲 対 龍宮真名

Bブロック
第一試合
ネギ・スプリングフィールド 対 高畑・T・タカミチ

第二試合
木野亜球磨 対 田中

第三試合
犬上小太郎 対 クウネル・サンダース

第四試合
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル 対 高音・D・グッドマン

以上である。組み合わせに一喜一憂する者達、本戦出場者の殆どが顔見知りなら当然と言えば当然か。先ほど明日菜に敵討ち宣言をした刹那に至っては決勝まで行かないと果たせないことに若干冷や汗をかいていた。
 ところ変わって会場をやや遠くから見つめる一人の男がいた、前回の謎(笑)の男である。男の目的はこの大会の主催者である少女、超鈴音の拘束である。彼の所属する組織に齎された情報によると彼女はとてつもないことをしようとしているらしい、それを阻止することがこの男の目的である。

「なんにせよまずは情報を集めないとな」

そう呟き男は通信機を起動させる。

「こちらギャバン、これより捜査を開始します」

伝説の宇宙刑事をも巻き込み、学園祭はさらなる混沌へと向かっていった。


※木野亜球磨→黄の悪魔→イエローデビル



[14830] 2ハイブリッド強化ベムアンドロ・ザ・キラーメカバルタン目
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:0a611663
Date: 2014/06/08 21:14
 銀河連邦警察本部長官室、そこでギャバンとコム長官が向かい合っていた。二人の間には一枚の写真と数枚の書類、その書類が入った封筒には時間保護局という印が押されている。時間保護局とは西暦2990年に確立したタイムワープを管理する組織であり無許可のタイムワープやタイムパラドックスの監視をしている。しかしその設立はギャバンたちにとっては1000年程未来の話だ、そんな時間保護局から送られてきたもの、それは簡単に言うなら『捜査協力』であった。

「しかし珍しいですね、彼らが我々に協力を求めるなんて」

「うむ、聞くところによると向こうの凶悪犯罪者が脱走しタイムワープで逃走しているらしい、その対処で人員がさけなかったというわけだ」

「成程」

そう言ってギャバンは写真を手に取る、そこには一人の少女が映っている。

「容疑者の名前は『超鈴音』、容疑は大規模な歴史の改修及び未来技術の流出、無許可のタイムワープの行使。動機に関しては調査中、ですか」

「そうだ、すまないがすぐに現地へ向かってほしい」

「了解しました!」

伝説の宇宙刑事はこうして地球、麻帆良の地を目指す、学園祭開催の一週間前の出来事であった。
 ところ変わって麻帆良学園、学園祭も二日目に突入しますます盛り上げる中麻帆良武道会本戦は始まる。開会式で超がルールについて改めて説明しているが人々の視線が向かう先は別の場所、選手たちの中に立つ黄色い巨人に向けられていた。超自身後頭部にでっかい汗をかきながらもちゃんとネギを挑発し開会式は終了する。

『お待たせいたしました、只今より麻帆良武道会Aブロック第一試合を開始いたします!』

第一試合
桜咲刹那 対 大豪院ポチ

勝者、桜咲刹那。気を用いた中国拳法で挑む大豪院だったが古との組手で慣れている桜咲の前にカウンターをとられ敗北。

第二試合
佐倉愛衣 対 山下慶一

勝者、山下慶一。序盤障壁などを使い佐倉が有利に試合を進めるも3D柔術というよくわからない技で投げられリングアウト、泳げないためギブアップ。なおイケメンの山下に抱えられ救助背れた際色々とときめいていた模様。

第三試合
長瀬楓 対 中村達也

勝者、長瀬楓。実力がかなり離れた二人の試合、特に山もなく長瀬勝利。

第四試合
古菲 対 龍宮真名

勝者、古菲。Aブロック一回戦で最も白熱した試合。最終的に古が勝利するモノの負傷のため棄権。

『続きまして麻帆良武道会Bブロック第一試合を開始いたします!』

第一試合
ネギ・スプリングフィールド 対 高畑・T・タカミチ

勝者、ネギ・スプリングフィールド。実力的には完全にした出会ったが機転と才能、相手の油断で大金星。
 そして、第二試合が始まる。

『さあ、遂にやってきました。見た目も不信、動きも不信、正体不明の黄色い巨人、木野選手! 対するは麻帆良科学部より参加、背中に怪しいケーブルをさした田中選手!』

現れたのは屈強な大男田中、それに対し、

『おや? 木野選手ー、早く来ないと失格ですよー』

現れない木野、いぶかしんだ審判が改めて声を上げると、

「うわっ!?」

「な、何だ!?」

「黄色いブロックキター!!」

会場の設置されている池、そこから十数個の黄色いブロックが現れたのだ。宙に浮いていたブロックは一か所に集まり黄色い巨人が現れる。

『いきなり現れた黄色いブロックが合体して木野選手になったー!? やっぱあんた人間じゃないんですか!?』

盛り上がる会場を尻目に無言で見つめあう田中と木野、一切の反応を見せない二人に審判もこれ以上の引き延ばしは無用と判断し試合の開始を告げる。

『それでは第二試合、開始!』

 試合開始の声とともに動いたのは田中、口から何か、レンズのようなものが出現、放たれた光線が木野の右腕に命中し着弾部分を吹き飛ばした。騒然となる会場、しかし舞台の上の二人はそんな会場に目もくれず次の攻防が始まる。両手を突き出す田中、その両手が勢いよく木野へと射出される、しかし木野は眼の中心から光弾を放ち右手を迎撃、残る左手も掴んでしまう。両手を封じられた田中は再度レザーを撃とうと口を広げる、しかしレーザーを放とうとした正にその瞬間、田中の顎を何かが強打、強制的に口を閉じさせられレーザーが暴発してしまう。田中の顎を強打したのは先ほどのレーザーで吹き飛んだはずの右手、それが黄色いブロックになりがら空きの顎を強打したのだ。飛び道具? 相手も似たようなの遣ってるので問題ない。

「た、田中―!!」

いつの間にか解説席に座っていたメガネの少女の悲鳴のような叫び、田中はその声にこたえるべく煙を吹く体を何とか動かし、木野のパンチを胸にくらう。文字通り鋼鉄の体をひしゃげさせ柵を破壊し池の中へと沈んでいった。

『き、決まったー勝者、木野選手! というかこの試合だけなんか今までの試合とは毛色が違う気がします!』

盛り上がる会場の中、一人の少年の胸中は穏やかではなかった。その少年、ネギ・スプリングフィールドは冷や汗をかきながら思う。

(え、僕次、あんなのと戦うの)

合掌。


~今日のゼットン~

『ゼットン』

 子供ゼットン、略してコットンは元々この世界にいたわけではなかった。太陽にスクナを捨てに行った分身が帰り際一匹で宇宙空間を漂っていたコットンを発見、保護して連れて帰ったのだ。バルタンの調査の結果コットンは元々バルタンと同じ世界の住人だったが何らかの理由でこの世界にやってきてしまったということだ。放り出すのもいろいろと拙いためコットンは天ヶ崎ファミリーのマスコット兼最終兵器として引き取られた。
 そんなコットンだが好奇心旺盛な彼は家の中をよく歩き回る。ある時は寝たきりのバルタンに悪戯したり、ある時はくつろいでいる天ヶ崎の膝の上に座ったり、ある時は怪しい行動をしている月詠をこんがり上手に焼いている。

『ピポポポポポポポ』

コットンは思う、自分には何かしなければならない事があったはずだ、少なくともここに来る前までは覚えていたことだ。偶に思い出そうとするがすぐに忘れてしまう、そんなことより天ヶ崎の膝の上でお昼寝することの方が大事なのだった、実に平和である。

「いやいや、うちがこんがり焼けとんのは平和なん?」

「自業自得やろ、で何しとるん?」

「あははははは」

「……ゼットン、ごー」

「ゼットン!」

「あやーーーーーーーーーー!!」

平和である。


あとがき
 バルタン何処-!?



[14830] 宇宙忍者になりました外伝~次空を超えた邂逅・ヒーローと宇宙忍者~
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:213e9313
Date: 2010/08/24 12:36
 とある昼下がり、小太郎はバルタンの研究室にいた。といっても勝手に入ったわけではなくバルタンに部屋にある工具箱を取って来いと言われたためだ。

「え~と、これやな」

目的のものを見つけ研究室を出ようとした小太郎。しかし、そこであるものが眼に留まった。それは一枚の写真、そしてそこに写っているのはこの研究室の主であるバルタン。そしてその隣には、

「こ、こいつは!?」

そこに移っている人物達に眼を見開く小太郎、すぐさま彼はその写真を手に取りバルタンのもとに向かった。工具箱を忘れたまま。

「兄ちゃん!」

「小太郎、……工具箱はどうした?」

 瞬動まで用いて自分の前に現れた小太郎に若干訝しげな表情(物凄く解りづらい)をしたバルタン、しかもその手に工具箱は見えず若干声のトーンが下がった。

「それより兄ちゃん! これ!」

「ん? ああ、その写真か」

小太郎の突き出した写真に懐かしいものを見るような顔をしたバルタン、写真にはバルタンを中心にし両脇には仮面ライダー1号と2号が写っていた。

宇宙忍者になりました外伝~次空を超えた邂逅・ヒーローと宇宙忍者~

 それはまだ小太郎が天ヶ崎家にやってくる少し前の話。仕事もなく暇で仕方なかったバルタンは集めた廃材を使って何かを造ろうとしていた。天ヶ崎はこの日例の上司に呼び出されたとかでいない、これ幸いとバルタンは普段造れない物を造ろうとしていた。

「完成だ」

出来上がったのは人一人が潜れるくらいのアーチ、これこそバルタンが炊飯器や洗濯機、冷蔵庫などを用いて造り出した『次空間跳躍機』、解りやすく言うなら異世界にいける機械だ。
 早速バルタンはマシンを起動させる。バチバチと定番のような音を出しながら起動する跳躍機、暫くするとそのアーチに銀色のカーテンのようなものが発生した(ディケイドに出てくるようなの)。バルタンは迷わずアーチを潜りこの世界から別の世界に跳躍した。

「ふむ、これはまたなんとも」

 マシンを使い別の地球にやってきたバルタン、そこで最初に見たのは倒れ伏す二人の男だった。それもただの男ではなく傷ついた体のあちこちから部品のようなものが見えた。この二人こそ仮面ライダー1号こと本郷猛と仮面ライダー2号こと一文字隼人だった。二人は気絶しており動くようすはない、どうしたものかと首を捻ったバルタンだが近づいてくる人影を見つける。全身を黒のタイツのような物で覆っている怪しい奴ら、ショッカーの戦闘員なわけだが生憎バルタンは仮面ライダーシリーズは未視聴なためそこまでは解らなかった。
 なんとなくこのままでは拙いと思ったバルタンは二人を担ぎその場を離れた。この後数時間ショッカーの戦闘員は二人のライダーを探したが見つけることはできず地獄大使に大目玉を食らったとか。
 所変わってバルタンと仮面ライダーは先ほどの場所からそれなりに離れた空き家にいた。既に二人のライダーは目を覚まし体を休めていた。このとき、バルタンの姿を見た彼らと一悶着あったが本郷達の傷が思ったより深く戦闘にはならず平和的な話し合いで敵でないということは分かり合えた。

「あんた、バルタン星人とかいったか? なんで地球にきたんだ?」

「我々の星バルタン星はとある事情により崩壊してしまった。そこで我々は新たに住むことのできる星を探していたのだ。私はその斥候のようなものだ」

「そうかい、それであんたたちはこの地球に移住するのかい?」

「そのつもりだったがこの星には原住民が多すぎる、とてもではないが我々が移住する余裕はないだろう」

勿論嘘だが異世界から来たというよりはましだろう。本郷達もその話をとりあえず信じ再び体を休め始めた。その中でバルタンは何故あそこにいたのを尋ねた。
 二人が言うにはいつものようにショッカーが地球征服を企んでいる事を知りそれを阻止するために行動を開始した。しかしその計画は二人をおびき寄せるための罠であり待ち受けていた怪人に二人はやられてしまったらしい。何とか止めをさされる前にその場を離れることはできたが途中で気を失ってしまったという。

「成る程、世界征服を企む悪の組織ショッカーですか」

「俺たちはやつらの野望を阻止しなければならない、だというのに!」

悔しさからか壁を殴る一文字、それを見てバルタンは一つ提案をする。

「ならばその傷、私が直しましょうか?」

「できるのか?」

「世界一の科学力かなんだか知りませんが所詮は技術レベルが我々を大きく下回ることに変わりはありません。もしかしたらパワーアップも可能かもしれませんよ?」

「……頼んだ」

「いいのか?」

「俺たちがこうしている間にもショッカーの世界征服は進んでいく。なら、ここは一刻も早くあいつらと戦う力を取り戻すことが重要だ」

二人が話している間にもバルタンは準備を始める。何処からか小さな箱を取り出し床に置く。すると箱がどんどん大きくなりその中には寝台が一つと様々な工具が置かれていた。

「ではこちらへ」

こうして、バルタンによる仮面ライダー二人の修理&アップグレードが開始された。

「ふはははは、やれい、戦闘員共!」

「「「「「「「「「「イーー!!」」」」」」」」」」

 街中で暴れ始めるショッカーの戦闘員たち、地獄大使は後ろに一体の怪人を待機させながらその光景を見ていた。そこへ現れる仮面ライダー。

「そこまでだ!」

「ぬうう、仮面ライダー、やはり生きておったか」

戦闘員を蹴散らしながら仮面ライダーは市外から離れていく。それを追う地獄大使と怪人、そして残った戦闘員。暫くし、彼らは荒地に辿り着いた。

「おのれ仮面ライダー、今度こそ息の根を止めてくれるわ! やれっ、ヤドラー!!」

「ヤドラー!!」

地獄大使の後ろに居た怪人ヤドラー、この怪人こそ先ほど二人を追い詰めた怪人である。ヤドラーの体は硬い殻に覆われておりその硬度はライダーキックすら弾きかえす程だ。

「いくぞ!」

「おう!」

まずは最初と同じくパンチやキックなどで攻撃を仕掛けるライダー、しかし、

「ヤドー!!」

「くっ」

「ハッハッハッ、無駄だ無駄だ。ヤドラーの殻は貴様らには絶対に破れんわ!!」

最初のように攻撃を弾き返されてしまう。仕方ないと二人はバルタンの取り付けた装置に手を伸ばした。

『いいですか二人とも、この装置は今の人類の科学力ではなしえない物です。そのため使えば二人の体にもダメージが及ぶでしょう。十秒、それがこの装置の稼働時間と考えてください』

事前にそういわれるほどの装置、しかし二人は躊躇することなく装置に、ベルトに手を伸ばした。

「いくぞ! 『ファイヤートルネード』!!」

二号のベルト、その風車の部分から超高温の竜巻が発生しヤドラーを包み込む。十秒が経過し竜巻の収まったそこにはその身を熱で紅く染めたヤドラー、そこに一号が装置を作動させる。

「『ブリザードサイクロン』!!」

一号述べるベルトからは超低温の竜巻が発生した。
 熱してから冷ます。やっていることは単純だがそれを仮面ライダーのベルトサイズのもの、それも他の機器に邪魔にならないように設置するとなるとそれはとても難しい。まさにバルタンだからこそできたようなものだ。

「ヤ、ヤドラーー」

冷気の竜巻が収まるとそこには体中の殻に罅の入ったヤドラーがいた。
 そして、ライダーが跳ぶ。

「ライダー」

「ダブル」

「「キーック!!」」

「ヤドラーーーー!!」

必殺のキックはヤドラーの殻を破り本体に届く。二人のライダーが着地すると同時に倒れ伏すヤドラー、そのままヤドラーは爆散した。

「おのれ~、仮面ライダーめまたしても」

撤退していく地獄大使と戦闘員達、それを見届けたライダーは、

「ぐっ」

膝を付くライダー、戦闘でのダメージというより先ほどの竜巻の反動が予想以上に負担をかけたようだ。

「やはりそうなりましたか」

「バルタン星人、いつの間に」

「これからお二人の装置を取り外します」

そういいさっきの箱を取り出すバルタン。二人の装置を取り外したバルタン、彼もそろそろ帰る頃になった。

「色々とすまなかった。ありがとう」

「いえいえ、こちらもいい思い出ができました」

「新しい移住先、見つかることを祈ってるよ」

別れ際、バルタンは跳躍装置を発動させようとして一文字が持っていたカメラに気が付いた。記念として一枚とってくれないかというバルタンの頼みに二人は快く頷く。こうして仮面ライダー1号、2号、バルタン星人という写真が誕生したのだった。






「というわけだ」

写真の話を一部始終話し終えたバルタン、解ったら工具箱取って来いと言おうとして、

「ずるい」

「ん?」

「兄ちゃんばっかズルイで! 俺かて仮面ライダーと一緒にショッカーと戦いたい!!」

騒ぎ出す小太郎に無理だと告げるバルタン、実はあの跳躍装置、材料が廃材だったのがいけなかったのかバルタンが戻ったのと同時に爆発してしまったのだ。その爆発に天ヶ崎が怒り以後製作禁止が言い渡されたのであった。

「そういうわけだからあきらめろ」

「ただいまー」

タイミングよくというか帰ってきた天ヶ崎、そこに小太郎は駆けて行き天ヶ崎にバルタンの発明解禁を頼み込む。騒がしい玄関をちらりと見ながらバルタンは写真に眼を落とす。偶然であった二人のヒーロー、あの後仮面ライダーという特撮があることを知ったバルタンだが結局見ることは無かった。なぜなら百の物語を見るよりもずっと価値のある出会いをしたのだから。

「えーやないかー」

「あかんったらあかん!」

いい加減騒がしくなった二人を止めるためバルタンは立ち上がる。ついでに工具も持ってくるかと考えながら。

あとがき
むしゃくしゃして書いた、後悔も反省もしていない。……ごめん、やっぱりちょっと後悔している。
闘将ダイモス? な、なんのことやら



[14830] ご報告とお詫び
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:153b27d3
Date: 2011/03/13 17:30
 皆様お久しぶりです、急でありますがチラシの裏に投稿していたssを全て削除しました。理由といたしましては四月から新しい土地で仕事をするにあたり今のままでも覚束ない更新が更に遅れるものと判断したためです。今まで応援してくださった皆様には本当に申し訳ありません。



[14830] 宇宙忍者外伝~これは魔法ですか? いいえ魔術です~上
Name: 鉞◆c4b654f4 ID:153b27d3
Date: 2011/03/17 14:38
 藤田は現在とても困っていた、それというのもいつものように実験をしていた彼は実験中に事故にあってしまったのだ。実験の内容は簡単に言うと任意の異世界へ行くこと、前回の仮面ライダーの世界に偶然ではなく狙って行けたりするのかという実験だ。結論から言えばそれは可能である、一度行った世界には滞在期間にかかわらず縁が発生する、後はその縁をたどればその世界に行きつくというわけだ。でだ、発生した事故についてだが端的に言うと異世界に行ける装置が暴走して爆発した。原因は作動中にブレーカーが落ちたから、どうやら実験中に天ヶ崎が電子レンジを使ったようだ。それはともかく現在藤田がいる世界だが、

「こいつは参った」

目の前には長い階段、おそらく寺へと続いているのだろうそこには一人の女性が倒れている。その女性がただの人間ならよかったのだがその尖った耳はどう考えても人間のそれではない。

『こいつは臭ぇー! 厄介事の臭いがプンプンしやがるぜ!』

そう思いつつも放っておけないところはこの男が基本的には善人であるからか、藤田は女性を抱え階段を上っていく。聖杯戦争に宇宙人の参戦、前代未聞の聖杯戦争はこうして始まった。

宇宙忍者外伝~これは魔法ですか? いいえ魔術です~上

 聖杯戦争、なんでも願いのかなう聖杯とやらを巡って7人の魔術師がサーヴァントと呼ばれる使い魔を用いて殺しあう儀式らしい。サーヴァントにはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー、キャスターの七つのクラスが存在しそれぞれが過去や未来の英雄らしい。そういった聖杯戦争の基礎知識を助けた女性、キャスターから聞いた藤田は開口一番にこういった。

「面倒だ」

ぶっちゃけ彼には叶えたい願いはない。元の世界に帰るのもわざわざ殺人を犯す必要もないし故郷のバルタン星の復興なんかを願ったところでそれはこの世界のバルタン星が対象になるだけだろう、そもそもこの世界にバルタン星があるかどうかも不明である。従って彼はこの聖杯戦争には消極的だ。キャスターも一応一般人(だと思っている)藤田が快く承諾してくれるとは思っておらず傀儡にしてしまおうと考えた、その後のことをRPGの戦闘風にダイジェストすると、

キャスターの攻撃!

キャスターは精神操作の魔術を唱えた

スキル『高速神言』! キャスターの魔術に藤田は反応できない!

しかし藤田は宇宙人だ、精神干渉系の魔術を無効化した!

自身の魔術が破られたことにキャスターは呆然としている、藤田の反撃!

マッハチョップ、マッハスピードのチョップがキャスターを襲う! キャスターは反応できない!

クリティカルヒット! チョップはキャスターの脳天を捉えた! キャスターは悶絶している!【1more】

藤田の金縛り! キャスターは悶絶している、キャスターはかわせない!

キャスターは金縛りになった

 以上である。いくら神代の魔術師とはいえその魔術は地球で生まれたものだ、地球外生命体で地球人とは異なる進化を遂げたバルタン星人には残念ながら効果がなかったらしい。そのあたりを説明した時のキャスターの顔はまあ面白かったとだけ言っておこう。その後もいろいろとあったがまあ結論を言うと藤田はキャスターのマスターとして聖杯戦争に参加することになった。理由は藤田にバッルバルにされたキャスターがあまりにも不憫だったからだ。
 過程はともかく聖杯戦争に参加することになった二人が最初に行ったには陣地の作成である。キャスターというサーヴァントは殴り合いなどでは全く勝てないのでこうして陣地を築き自分に有利な場を作るのだとか、ちなみにその陣地が作られているのは初日にキャスターが倒れていた階段を上って行った先にある寺である。キャスター曰く龍脈やらなんやらがこの寺に集中しているのだとか、それをいつものように聞き流した藤田は街に出かけてパーツを買いあさっていた。金はどうしたのかというと寺の住職に少し借りて株で増やした。五千円がミルミル増えていくさまは寺の跡取りの青年曰くいっそ爽快なほどだったという。ともあれ当初の予定通りのパーツをそろえていく藤田と街の住人から魔力を集めているキャスター、そんな日々が数日続いたある日キャスターが言った。

「サーヴァントを召喚するわ」

なんでもまだすべてのサーヴァントがそろっていない今のうちに手駒をそろえておきたいキャスターは裏ワザ的だがサーヴァントを召喚しようとしているらしい。まあ召喚したサーヴァントを使って藤田に仕返ししてやろうという気も少しはあったようだが、そうして召喚されたサーヴァント、アサシンの佐々木小次郎を手駒に加えたキャスターはさっそく小次郎を藤田にけしかける。いくらなんでも無傷では済まないだろうと嗤うキャスターはしかし次に瞬間その笑みごと凍りつく、キャスターから死なない程度に痛めつけなさいと命令を受けた小次郎は丸腰の相手に切りかかることに若干躊躇しつつも斬りかかり次の瞬間見事な車田落ちを披露していた。あっさり負けた小次郎に呆然としているうちに再びバッルバルにされてしまったキャスター、単純な戦闘力も高いことが分かったようだ。
 それからさらに数日、キャスターは藤田に全てのサーヴァントがそろったことを伝える、その藤田はというと、

「何それ?」

「ボトルシップだが?」

そう、藤田はボトルシップの前にいた。道具作成スキルのあるキャスターもボトルシップ作りは好きだ、しかし目の前の男の前にあるボトルの中には船が独りでに組み上がって行っている。魔術とかを使って楽してるのかと思ったキャスターだがそれにしては魔力を感じないことに首をかしげる、それに気付いた藤田は虫眼鏡を差し出す。ひしぎに思ったキャスターだが虫眼鏡を受け取り瓶の中を覗き込むと、

「……なにこれ?」

便の中には無数の生物(小さくなった分身)が船を作っていた、その手には鋸や鉋などのあらゆる工具がそろっており1から組み立てていることがわかる。混乱するキャスターに藤田は続きを促し聖杯戦争が始まったことを知る。なるべく陣地内にいるように言うキャスターに彼は、

「ちょっとおでん買ってくる」

「人の話を聞きなさい!」

怒るキャスターを華麗にスルーし寺から出ていく藤田、途中の門で小次郎におでんのリクエストを聞きコンビニを目指した。
 ただおでんを買ってくる、実に簡単な目的だ。だというのに、

「■■■■■■ーーーー!!」

「どうしてこうなった?」

買い物帰り、彼はサーヴァント同士の戦い、メタルなら原作イベントに遭遇した。そしてバーサーカーに目をつけられ、

バーサーカーの攻撃! バーサーカーは殴りかかった!

ミス! 藤田はミクロ化して攻撃をかわした、ミクロ化したことにより藤田の変身が解けた。

いきなり服を残して消えた藤田にバーサーカー以外の面々は驚いている

バーサーカーの攻撃! バーサーカーは本能でミクロ化した藤田の位置を特定した!

藤田の巨大化! バーサーカーの攻撃は当たった、しかし巨大化した藤田には微々たるダメージだ!

今度は数十メートルに巨大化した藤田にバーサーカー以外の面々は困惑している!

バーサーカーの攻撃! 藤田に微々たるダメージ

藤田の反撃! 藤田はバーサーカーを蹴り飛ばした!

スキル『十二の試練』! バーサーカーは藤田の攻撃によるダメージを無効化した、しかし勢いまでは殺せない!

バーサーカーは吹っ飛ばされた

そのほかの面々は状況についていけない!

以上である。突如現れた謎のバルタン星人に困惑する面々をその場に残し服を着直し変身した藤田は悠々とその場を後にしたのだった。

あとがき
 久しぶりなので今回はここまで、次はサクサク進みます。


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