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[14410] 喫茶店(ネギま・ネタ・オリ主バグ・続き未定)
Name: kkk◆42e130d1 ID:9a6088d9
Date: 2009/12/11 23:57
 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事
実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシ
スターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。


■□■□■□■□


 有線放送が引かれた古びたステレオから店内流れる音楽。

 かん。という石と木をぶつける音がなると同時に、むむむ。と、カウンター越しの翁が唸る。ふんどし一枚で。

 ぱちん。という木と木を打った音がなると同時に、くそ。と、店内に響く様な苦悶をカウンター越しで少女が鳴らす。毛布一枚で。あ、それと頭部に人形一つ。ケ
ケケと笑う。不気味である。

 一連の音を出し、出させた厨房に座るニット坊にゴーグル姿の青年程の容姿の店主。唸る翁と顔を歪ます金髪の少女を一瞥し、退屈そうにあくびを一つ。

 外は桜が舞う3月下旬。ウグイスやヒバリの声がちらほらと聞こえる、そんな陽気。春休み真っ只中な事もあり、店内は閑古鳥の泣く有様(誤字にあらず)。そんな店内は、異質な雰囲気で包まれていた。

 ふんどし一丁のぬらりひょん翁。毛布の下は下着姿の金髪少女。ケケケと笑う人形。ニット帽にゴーグルの店主。『差し押さえ』の書かれた札付きのゴスロリと男性用着物。

 一部――特に金髪少女――あたりはあっち系の人が見たなら、血涙血潮を振りまきながら狂乱舞。へっ見てくれよ奥さん、ウチのは生きが良いダロ? 見たいなレベルである。

 店主は再び翁と少女を一瞥し、時計を確認。最低10分で一手を打つルール。既に11分経過。大きなため息を一つ。


「……もう止めないか?」

「ま、まだだっ!! 次は勝てるっ!!」

「つ、次こそわしの実力がっ!!」


 どん。

 カウンターに先の戦役の賭けの対象であった魔法発動体の指輪と高価な転移符を叩きつける敗者の翁と少女の両名。再びため息をつく青年。

 ギャンブルに何故はまるのか? 次は勝てると信じるから☆サ。

 翁と青年は囲碁を、少女と青年も将棋を。実質2対1、戦績は客に勝ち無し負け多し。

 ……いい加減、暇潰しどころじゃなくなったから止めさせたいんだが――藪蛇か。

 苦笑を浮かべながらやれやれと首を振りながら青年は、二人の空いたコップにそれぞれの注文した緑茶とコーヒーを追加で注ぐ。喫茶店『八百万』、一度注文した飲み物のお代わり自由。



 掛け囲碁・賭け将棋のきっかけは簡単。店主に仕事の依頼をした客二人、暇つぶしに丁度良いと店主がゲームで勝てたら無償でやろうと言い出し、客が各々得意なゲームでの勝負。負けに負けた二人はプライドガタガタ。闘争本能に火が付き、賭けたほうが燃えるとのことで、賭けをして再開。

 現実はいつも無情。賭けるものが少なくなり、リアルで身包みはがされた二人。「賭けるモノが無ければ、服賭ければ良いんじゃね?」店主の言である。店長、混沌の原因はてめぇだ。


「つ、次はチャチャゼロを賭けて!!」

「が、学園長の椅子をっ!!」

「待て、超待て。どっちも超待て」


 店主戸惑う。戸惑うどころじゃネェよ。

 前後不覚とはこの事か。そろそろ二人の癖を教えたほうが良いのか? それとも面白いのでこのまま放置するべきか……悩みどころである。


「――――放置かなぁ」


 ポツリと零れた一言も、ぶつぶつと戦術を練っているのか般若心経を唱えているのか区別の付かない二人には聞こえないのか。店主に反応するものは今この店には居な――――


「……放置スンナ」


 居た。喋る動けないキリングドールことチャチャゼロ氏。見え隠れするナイフがとってもシュール。


「ん~、学園長のポストはいらんが、チャチャゼロは借りてぇな」

「ソウカ、オ前ニハ人形趣味ガ」

「ネェよ、腐れ人形。ヒヒイロコガネとか言う異界の金属が入ったから、それで新
しい槍こさえるから手伝え」

「報酬ハ?」

「材料余るから、それで作るナイフ数本と酒だな。良い泡盛が入った」

「ノッタ」


 ぱん。

 店長からの一方的なハイタッチ。動けない故の所業。ハタから見たら、何この変態、ニヤニヤしながら人形とハイタッチしてるよ~。

 ふと、視線を感じた。さっきまで般若心経(?)を唱えていた金髪少女:エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがこちらを見ながら笑い出した。悪役も真っ青な良い感じの悪人面で笑い出した。は~っはははは!! 勝てる勝てるぞ~。椅子の上で仁王立ち。どこからとも無く風が吹いて毛布を靡かせる。どうでもいいが、下着丸見え。


「そろそろ負けてやるか」

「バレタラキレルゼ?」

「ば~か。徴兵をケガ人のモノマネだけで乗り切った小生の演技力舐めんな」



 ふと、思念を感じた。


「(どったの?)」

「(ワシ、そろそろ勝ちたいなぁ~みたいな?)」


 学園長こと、近衛近右衛門。駄目ジジイである。ふんどし一丁である。プライドどうした。


「(外国の神様は言いました、眼には眼を歯には歯を。勝負で取られたら勝負で取
り返せ)」

「(それちょっと意味違う……それに聞こえたぞ? エヴァンジェリンには勝ちを譲
るんじゃろ? ワシにだって――)」

「(女性には優しく、友人には厳しく、身内は千尋の谷へ……)」

「(エヴァンジェリンが女性? ぺっ。主にはこの言葉を送ろう)」

「(おう、言ってみろ。俺の怒りの沸点は高いz)」

「(Mr.ロリペドフィン)」

「(……男には戦わねばならないときがある)」


 ごごごごごごごごごご。

 荒ぶる鷹でポーズ戦闘体制に入る学園長。ふんどし一丁で。

 対する店主、ブンブンと空を切る分銅。ジャラジャラ言う鎌。HAHAHA~、見てごらんマイケル。あれがジャパニーズ鎖鎌だヨ。あ、コレ学園長死んだわ。

 イケイケコロセ。おう、チャチャゼロ任せとけ。あれ、マジでやるの? 死ねよ学園長。チョっ、タンマタンマ。

 ぼくっぼくっ撲っ。ぶすぶすぶす。ジャラジャラ。ズルズル。

 仁王立ちで爆笑する少女は放置。それの横では残虐ファイト。

 喫茶店『八百万』。今日もいつでも平和である。




 むしゃくしてやった。反省しかない。 by作者



[14410] まさかの2話。続くとは……
Name: kkk◆42e130d1 ID:9a6088d9
Date: 2009/12/15 10:12
 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 深夜である。草木も眠る丑三つ時をとうに過ぎ、あと数時間で夜も明けようかという頃合い。学園は眠らない、否、眠れない。

 貴重な書物、重要な人物、重要な魔具、重要な土地……etc.etc.麻帆良学園都市には守るべきものが多々ある。魔法は秘匿とされるもの、必然的に逢魔時を境にしないと野外で活動できないのが魔法、裏の関係者だ。侵入者も警備の者も裏の関係者、夜は彼らの時間だ。

 夜間警備、「こんな事で睡眠時間が削れるから肌に小皺が……あぁ、でもお給料良いし」とは、男子生徒からカルト的人気を誇るメガネ女教師の言である。

 そんな彼ら、勤務時間が終われば仕事の後で腹が減る。深夜で開いている店なんぞコンビに程度。人らしい温かみなぞたかが知れている。そんな時間でも明かりが灯ったお店が一軒。

 喫茶店『八百万』が24時間開いているのは彼らのためなのか? 唯の気まぐれなのか? 知るのは店長ばかりなり。

 深夜である。草木も眠る丑三つ時をとうに過ぎ、あと数時間で夜も明けようかという頃合い。学園は眠らない、否、眠れない。

 そんな時間に入店する客が一人。


「いらっしゃい」


 声が響く。響いた。



■□■□■□■□



 なんなんだろう、この店は……と、桜咲刹那は冷や汗をかきながら思った。いや、他に思う事がないとも言える。

 先日、彼女の敬愛するお嬢様『近衛木乃香』の護衛に関しての報告を学園長にした際に教わった店がある。名を『八百万』、料理は旨くて面白可笑しい店――――との事。ほぼ年中無休との事から夜中警備の終わった時にでも寄るといいと言われ、丁度仕事終わりに店へ寄った。



 外観は問題ない。店員の態度は少し悪い、挨拶をしてから何も言ってこない。水だけ出してメニューも何も持って来ない……まぁ、そこはいい。

 店内、壁に掛かった何処ぞの時の勇者に倒された化身にも魔人にもなれるアレに瓜二つな禍々しい仮面。すごい勢いでぐるぐる捩れた赤い二又の槍。猛犬の異名を持つ人の青タイツ。日本刀。鍵の形をした剣。……何屋さんなのだろうか。

 店の匂い。最初は言ったらカレー臭かったのに、「あ、ゴメンゴメン」と言ってスイッチを入れるなりコーヒーの匂いに一瞬で変わった。

 そして極めつけは――


「オイ、オレ動ケレゼ!!」

「良かったねー。なのはさん観てから魔力カートリッジ考えてたけど案外使えるな」


 がががががが。


「ヒャッハー!!」

「嬉しいのは判ったから斬り掛かるな。ちっ、このページだけわかんねぇ……」


 きんきんきんきんきんきん。

 何か、店員さんと人形が戦ってます。すごい勢いで。

 店員さん……いや、店長さんか。だって赤いエプロンに金色で『外道店長』って書いてあるし――外道?

 いや、そんな事はどうでもいい。問題は店長そのものだ。

 何でこんな時間に店を開店させているのか。

 何でチャチャゼロさんの双剣を包丁片手で防ぎながらウォーリーを探しているのか。

 あんな人、麻帆良で生活してそこそこ経つが知らない。聞いた事もない。正直、知らなければ良かった気がする。何で私はひとりでこんな店に来たんだろう。龍宮も連れて来ればよかった。


「ん? ずっとこっち見てどうした? ――――やりたいの?」


 右手で火花を散らしながらウォーリーを探せを渡してくる店長。


「――――」


 いや、違うんだ店長。察して、私が何を言いたいのか察して。何て言えば良いのか、今下手に店長に話しかけて斬撃のバランスがずれたら手首が落ちる。かと言って私は客なんだからメニューを貰う権利が――――

 じ……っと、視線で訴える事にした。沈黙は美徳なり、うん。

 そんな事を思って視線に力を込める。すると


「――――」

「――――あ、そうか」


 そう言いながら、おもむろに右手の刃物をこちらに向けた。


「変わってほしいなら変わってって言えよ」

「いや、違う違う。というか、危な――」


 ぶすり。


「「あ」」


 この店内危険に付き。


「……(ばたり)」

「てんちょ~っ!?」

「ア、 ヤッベ☆」


 一般人は昼間に来てください。



■□■□■□■□



「ふ~ん、学園長がわざわざウチの店を知らせるとは……相当信頼されてるのか、おもちゃにされそうなのかのどっちかだな」

「そ、そんな事より怪我を」

「大丈夫大丈夫。ガムテープで傷口塞いだから、何かしらの衝撃が無い限り出血しないって」

「ソレ」


びり。ぶしゃー。


「血ーっ! 血ーっ!!」

「だ、大丈夫大丈夫。普段血のっ気が多いから逆にコレくらいが丁度いいから」

「無茶シヤガッテ……」

「誰がやったと思ってるんですか! ねぇ、店長さ――」

「――――」


 返事が無い。刹那が振り返ると蒼白の顔を横に振って一応返答する店主。してるらしいが……痙攣にしか見えない、不思議っ!!

「店長?」

「無茶シヤガッテ……」

「輸血、輸血をっ!」



30分後


「いやぁ、死ぬかと思ったね実際」

「ぜぇぜぇぜぇ……何で……傷口が…もう塞がって……るんですか」

「神のご加護?」

「肉食ッタカラジャネ?」

「 そ れ だ 」

「どこのゴム人間ですか」


 店内の惨状はヒドイ。血みどろの机に椅子。散らばった輸血パックの殻。床に突き立ったナイフと包丁。どこの固有結界だよ。

「それじゃあ、怪我治ったんで通常業務へ。注文は?」


 そんな惨状もどこ吹く風。マイペース? あぁ、鈍感なのね店主。

 何も気にせず注文を取る店主を刹那は呆れ、驚愕、考えたら負けだ。の見事なまでの黄金比で眺めていた。


「メニューもらってないんですk「コノ店ニメニューハネェゾ」はい?」


 いつの間にか飛び上がって刹那の頭部に居座るチャチャゼロが答える。ちなみ
に、先日の賭けのときから放置され続けてる初代従者である。いい加減帰れ。


「いや、看板にあるだろ? 『適当に言ってくれれば何でも作れます』って」

「そうですか。じゃあ……体にいいものを。雑炊で」

「――――あるよ」

「はい?」

「ネタだ。ほっとけ」


 キャ、ハズカシイ。とか言う店主。キモイ。

 キャ。とか言いながらも手を休めずに刻み、割り、湯で、10分経過。


「お待ち」

「恐ろしく速いですね……」


 刹那は目の前に置かれた土鍋に全神経を注いで観察した。匂いは問題ない、むしろ食欲を注ぐような香り。蓋を開ける。見た目はシンプルな卵が雑炊。薬味として入っている刻んだネギと米と卵の黄色と白が好感の持てるような色合い。香りよし見た目よし。問題は、そう、味だ。この胡散臭い店の胡散臭い店主が作った飯である、注意が必要。ソレだけが油断できない。

 恐る恐るレンゲで一口分掬って口に運ぶ。もしコレで死んだらごめんなさいお嬢様……的なことを思いながら。


「あ、おいしい」


 ただのあっさりした雑炊の様だが、ごま油でコクを付け鳥の軟骨を刻んだものを入れて出汁と食感、ボリュームを出していた。警備後の体に少しでもエネルギーになるようにと店主のにくい優しさであったりする

 純粋に声が出た事を刹那は気付かない。そもそも、この場に気付ける余裕のある人が居ない。気付けてたら店主、喜ぶのに。


「オイ、怪我ガ直ッタンダッタラ続キヤロウゼ続キ」

「ちょっと待て。勝手に壁の刀を使うんじゃねぇ」

「イイジャネェカ。一回ヤッテミタカッタンダヨ――永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術……」

「はい、俺死んだ~。へい、嬢ちゃん、刀持った侍ガール。お前の出番だぜ」

「はぐはぐはぐはぐもぐもぐもぐ」

「けっ、可愛く食うなぁコンチクショウ!!」


 刹那。新に腹ペコキャラ認定。


「 イ ク ゼ 」

「『イクゼ』と『エグゼ』って似てるよっぐふぉっ!?」

「はぐはぐはぐはぐ」


 結局オチが残虐ファイト。

 喫茶店『八百万』。今日もいつでも平和である。


 続いた結果がコレだよっ!!
 何か1話と比べて微妙。そしてオチが同じ。 感想ありがとうございました。 by作者



[14410] なんだかんだで3話目うpです。
Name: kkk◆42e130d1 ID:9a6088d9
Date: 2009/12/05 00:05

 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に
関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 桜並木が満開となり、明日からの準備のために駅から校舎へ向かう人が居る。

 その多くが生徒ではなく教師。

 春休みが残すところ今日一日となった日のことである。


「はい、八百万です……あぁ、学園長か。何? ……逃げた? あぁ、あんたが悪いじゃん。あ~あ~あ~、初恋の人を成仏させない変態の言い分は聞かん。俺は今からお仕事です~、新田先生達にお昼ご飯届けるんです~。……そのついでに探せ? はいはいはい、見つけられたらね」


 がちゃん。

 ぴぽぱぽ。


「あ、新田先生ですか? いえ、昼食は今から配達に行きます。チョットお願いがありまして、2-Aの近衛木乃香が校舎にいると思うんですけど、保護してもらっていいですか? 学園長から無理やりお見合い写真を撮らされそうらしくて……あ、それじゃあお願いします。放送で呼ぶのは禁止、行くまでに見つかってなければ自分が何とか探しますんで。それでは」


がちゃん。


「このちゃ……お、お嬢様に何かあったんですかっ!!!!」

「きたねぇっ、口の中無くなってから喋れ。――――お嬢様?」

「もごもごもごもごもご――――よし。それで、店長何がっ!!」


 先日の入店以降、『八百万』が気に入ったのか、桜咲刹那は常連さんになっていた。警備帰りに龍宮真名と立ち寄ったり、お昼を食べに来たり、おやつを食べに来たり……もっぱら、近衛木乃香の護衛の任が無い日にではあるが。

 余談ではあるが、彼女が通うようになって『好き好きせっちゃん』通称『S.S.S』なる非公認団体の男子女子学生が入店するらしい。

 そんな訳で、今日は学園長から休みを頂きの入店であった。パフェを食べながら喋ったせいで白濁色のクリームを飛ばされた店主。背徳感があったのは秘密です。


「お嬢様って呼ぶって事は、お前が護衛の桜咲刹那か。知らんかった」

「あ、はい。そうです……学園長から聞いてましたか?」

「おう、護衛ならさっきの話は気になるわな。え~っと、何か写真撮影から逃げただけらしい。と言うか、昼間の麻帆良は安全だから問題ないだろ」

「大丈夫でしょうか……」

「大丈夫大丈夫、今日は魔法先生が校舎に居るし。それじゃあチャチャゼロ、配達行ってくる。店番よろしく「アイサー」、桜咲はゆっくりしてろ。偶の休みだろ? 学園長も休んでほしいって言ってたし」

「ですが「チャチャゼロ、桜咲のパフェを山盛りに。桜咲、それ完食出来なかったら今後一切店に来るな」殺生なッ!!」

「盛ルゼェ、超盛ルゼェ」


 どっさどっさどっさ。

 やっぱりまだ居たチャチャゼロに手作りアイス一箱載せられて涙目の刹那。それを確認しながら颯爽とスキップで裏の車へ向かう店主。

 すでに許容量超えているのに律儀に食べる刹那に幸あれ。

 只、涙目のわりに少し嬉しそうなのはいかがなものか。



■□■□■□■□



 宅配昼食は『八百万』唯一の定期収入である。メニューは値段を全て300円に統一し、弁当の内容は全てその日の午前に食べたいものを申告する。ステーキだろうがパスタだろうがおにぎりだろうが統一の300円プライスは教師陣に人気だったりする。それでも商売として儲けが出るから不思議である。


「――――やっぱり見つかってませんか」

「すみませんね、一応時間が出来た時に一通り見回ったんですが」

「いえ、いいんですよ。急に言ったこっちが悪いですから。え~っと、はい。新田先生はニシン蕎麦でしたよね」

「おぉ、試しに注文したときは驚きましたがホントに作れるんですなぁ」

「まぁ、そういう商売ですしね。それじゃあ、失礼します」


 ちょっと話してたから麺延びたかなぁ。と思いながら店主は職員室を後にした。



本日の宅配昼食

 ニシン蕎麦(新田)/お肌ぷるぷるコラーゲンサラダうどん(しずな)/酢豚定食(弐集院)たらこパスタ(弐集院)/肉まん(弐集院)/あんまん(弐集院)/フカヒレまん(弐集院)/リブロースステーキ(瀬流彦)/焼き鮭定食(ガンドルたん)/寿司(ヒゲグラ)



「さぁ~て~。どこだ、木乃香は……」


 ゴーグルにニット帽と言うある意味チャライのか厨二なのかよく判らん格好で校舎を闊歩する店主。完全に不審者である。一応胸に着いた『校内進入許可バッチ』(学園長の頭の形をしてる)があるので通報はされないが、エプロンの『鬼畜店主』を消せ、怪しすぎるだろ。

「ボディーガードの人は、校舎はまだ捜索してないっぽいし……」


 お嬢様―。外から聞こえる声がやけに寂しく響く。

 どうしたものかと1分ほど思考――――ぽくぽくぽくぽくちーん。


「そうだ、エミヤンの真似でいこう」


 店主は顔が広いというか、友人が多い。以前、本場のフィッシュ&チップスの修業にイギリスの倫敦へ行った際、冬のテムズ川で溺れる青年に遭遇。青年は通称エミヤン。正義の味方に憧れてて、料理を教えてくれたナイスガイ。が、知らない間にどこかへ行ってしまった……そんな友人。

 そんな友人の特技の構造を把握する技。

 ……ツインテールの彼女は元気かなぁ。

 そんなことを思いながら。


「――――解析、開始(トレース・オン)……ごめん、無理」


 自分でやってて赤面する。やらなければいいのに。

 そんなこんなで店主は携帯電話を取り出した。



■□■□■□■□



「そんなわけで連れて来ました。おいでよ、八百万の店」

「おじゃましま~す」

「あ~っ!? ホンマにせっちゃんおる!!」

「ん”っ!? (口がいっぱいで喋れない)」


 学園長の電話だけでなかったらしい木乃香は、店主からの電話にすんなり出た。古くから交流のある店主の番号は登録してあったということでファイナルアンサー。教室に隠れていた木乃香とネギ少年を発見。ネギ少年も何かに追われていた。せっかくなので二人を小脇に抱えて窓から脱出(木乃香は刹那にあーん出来るぞと誘い、ネギ少年は隠れが提供で墜ちた)屋根を跳んで移動。

 後に麻帆良777不思議の一つ『子持ちスパイダーマッ』の誕生である。そして今に戻る。


「あのぉ……店長さんってもしかして」

「ザッツライト。裏の人間で間違いない」


 男二人、カウンター席で騒ぐ少女二人(内、木乃香8:刹那2)を眺めていると、小声でネギ少年が店主に問う。答えは無論肯定。店主は学園長から『ネギ少年へ自身が魔法使いである事を言わないように』と頼まれているが、完全に一蹴した。


 ……近右衛門の人柄は好きだが、餓鬼を放任して育てるのは気が進まん。


 木乃香のお見合いに関しても気に食わないので妨害。店主の好きなように人払いが掛けられるお店『八百万』である。

 ちなみに、刹那は逃げ出したいのだが、さっきから体がうまく動かない。そして、知らない間に足を信じられないくらい固い手錠で固定されてしまって逃げ出せない。そんな刹那をしたり顔で眺める店主。汚い、さすが店主汚い。


「ここは喫茶店兼何でも屋さんの『八百万』、何かあったら頼れ。コレはサービスだ」


 すっと紅茶を出す店主。


「え……あ、ありがとうございますっ!!」


 紅茶に対してなのか、店主の協力姿勢に対してなのか、それとも両方へなのか。礼儀正しく少年は頭を下げた。


「ほら、せっちゃん。あ~ん」

「え、あ、お、お嬢様っ!?」


 すぐ近くでは刹那と木乃香が――――否、木乃香が過剰に百合の花を満開にしていた。

 少年は安堵の笑顔。侍少女は困惑しつつもの笑顔。撫子少女は満面の笑顔。

 喫茶店『八百万』。今日もいつでも平和である。


おまけ

「(空気読ンデ人形ノヨウナオレ……悪ガナニヤッテンダカ)」


人形が微かにため息を吐いた。





 ほんわかエンドって貴重だと思いませんか?
 コノ×セツいいよね。男をコレに混ぜえるなんぞ……逆にアリか?

 感想返信を感想掲示板に書き込みました。よければどうぞ。 by作者
                              



[14410] 4話うp、ギャグ書いていたらスプラッターになっていた。グロ注意?
Name: kkk◆42e130d1 ID:9a6088d9
Date: 2009/12/20 14:45
 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。
のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 春の麗のSHUMIDAGAWA。SHUMIDAGAWAが何処かは知らないが、とりあえず春である。

 さんさんと煌く春の日差しを一身に浴びる木々。力いっぱいに桃色の花を咲かす桜並木。

 そして、元気良く学園へと向かう若々しい学生達。輝ける明日は明日しかないのだと、前だけを向いて進むのだとでも言いたげに皆笑顔。

 そう、今日から新学期なのだ。

 装いも新たに始まるであろう学園生活、皆心を震わせ登校して行く。

 それに感化されるようにここ、喫茶店『八百万』も通常の一割増しほどに清掃に力を入れ、やる気十分である。――――訂正、『やる気』は十分である。


「客が来ないのは朝だからだよな~」

「オイ、学園カラ弁当注文ノ電話がキタゼ?」

「はいは~い」





 日も十分に昇り、時刻はもうすぐ1時になろうかという頃合。

 中学校含め、本日は学園全体が登校初日もあり、半ドン。そのまま部活へ行く生徒らの他は、そのまま昼食を外食で済ませる生徒がちらほら。

 繰り返す、そのまま昼食を外食で済ませる生徒がちらほら。

 ……そう、ちらほらなのだ。


「そう、『ちらほら』だから……決して店に客が来ないのは、部活動の生徒が皆弁当持参だから……弁当持参弁当持参弁当持参」

「暇ダナー」





 時はさらに進みすでにすでに夜。日はすでに空を漆黒に染め上げ、時期に日も変わろうかと言う時刻……前説はこの辺にしておこう。以下店主とチャチャゼロで察してください。


「客、来ナイナ」

「うん」

「モウ夕食ノ時間トックニ過ギテルヨナ」

「…うん」

「ソノ……ナンダ……」

「……うん?」

「ザマァ☆」

「うわぁぁぁぁぁっぁぁぁぁあっ!!」


 号泣する店主。ケラケラ笑うチャチャゼロ。

 元々、職が無くなった10年ほど前、趣味で始めた喫茶店である。
 麻帆良で始めた本職の方で十分稼げているのだが、趣味とはいえ仕事が無いのは悲しすぎるのだ……と思ったけど、店主。テメー右手の目薬は何だ。


「あ”~。マジで客来ねぇな……せっかく衣装作ったのに」

「人形ニメイド服着セルトカ欲求不満カ?」

「アホか」



 この店主、正直に言ってしまえばどんな奴であろうと客が来ればいいのだ、とは学園長の言。 金の支払い云々は、元手がタダと言うか、自給自足なのでどうでもいい。

 この店主は親しいものの喜ぶことを何よりも望む。それが人であろうが化生であろうが人形であろうが関係なく。今の店主は、今まで約15年間も満足に動けなかったチャチャゼロに少しくらい色々やらせてあげたいなんぞと考えていたりするのだが、いかんせゴーグルとニット帽という顔の見えずらい服装を常にする店主。

 誰も気付かない。せいぜい気付いているのは近右衛門――学園長くらいのものか。
 ちょうどその時である。

「お、案外客が来ないのもいいかな」

「ハ? 何言ッテ……アァ、ソウイウ事カ」


 ふざけ合っているうちに、いつの間にか店内を照らしていた月明かりが消える。まるで外に居る何かに遮られるかのように。


「普通の客が居たらお前動けねぇもんな」

「マッタクダ」

「おい、テメェ、動くんじゃねっ!!!!」


 店を数十の影が囲んでいた。



■□■□■□■□



 深夜の学園長室。学園長の生活スペースは全てこの部屋になっている。就寝のためのスペースも二階部分にあり、いつでも学園での発生する事態に備えて行動できるようにの事である。

 今日もぎりぎりまで関西とのいざこざ、魔法世界からの要請に関しての書類仕事を片付けていた。

 普段は、ふざけて仕事をしない風である様に見えるが、やる事はやっているからこそのふざけである。故に誰も文句は言えず、逆に質が悪いのがこの男であった。
そんな男の部屋に教師が一人、全速力で駆け込んできた。


「学園長っ!!」

「そう騒ぐでないよ、瀬流彦君。君は何時もせかせかしていていかんよ。して、どうしたんじゃ?」

「そ、それが――――」


 いつもと違ってふざけていない学園長にやや困惑しつつ、瀬流彦先生は駆け込んで来た用件を語りだした。

>>>>

>>>>>>

>>>>>>>>


「――――ふむ、それで侵入者は今どのあたりに?」


 状況は、

 曰く、夜間警備の網を掻い潜るべく昼間に学園へ忍び込んだ侵入者が居る。

 曰く、既に警備員が撃退に向かったが逃げられた。

 曰く、召喚術師で下位と中位の鬼を多く従えているとの事。


「はい、今は……大変だっ!! 店主の、『八百万』の付近です!! 店主に至急連絡を「いらんよ、瀬流彦君」――――へ?」

「今連絡入れても無駄じゃよ。あと30分したら連絡を入れてやってくれ」


 慌てた様子もなく、ただ学園長は窓辺へと歩いてゆき、ブラインドを手で少し開いて月を眺めた。否、月に祈った。


「せめて原形は留めておいてくれんものかのぉ……」



■□■□■□■□



「ホラッ」


 重力にしたがって仰々しい鉄の塊が振り下ろされる。

 ずぶり。

 先ほどまでそこに居た子供ほどの大きさの異形がただの肉塊への変わっていく。
赤々しい血を撒き散らしながら、頭部の無い体を痙攣させて倒れる。


「イイネェ、イイネェ、イイネェッ!! 肉ノ感触……タマンネェ」


 小学生、幼稚園児よりも小さい二頭身の体から発する声が、一切の混じりも無く純粋な楽しさを感じてるという声が喫茶店裏の林から響く。


「怖いよ、コイツ超怖いよ」


 声がまったくの棒読みでありながら、まるで我が子が遊ぶのを楽しむのを見守る父性が滲み出て果汁100%な視線で眺める店主である。


『死ねやっ!!』


 そんなわけ判らん店主に一体の人程の大きさの異形が爪を振りかぶる。

 鋭い爪、とがった耳に頭部から突き出た一本の角、人より一つ多い眼球。それらがこの異形を鬼であると決定付ける。

 ソノ襲い掛かられることすらどうでもよさ気に店主は振り返って右手につけた指輪を鬼に向ける。


「ぷらくて・びぎ・なる。あるで~すかっと~」


 ぼん。

 気の抜けるような音と共に一瞬にして発生する火の玉。猫騙しにすらならないソレに驚くことも無く、鬼は爪を振り下ろそうとする――――――振り下ろす腕が無かった。


『……あぁっ!?』

「ナイス、チャチャゼロ」

「褒メンアヨ」


 血振りの動作をしながら鬼の背後にチャチャゼロが立つ。自身より大きな鬼の腕を弄びながら。


「それじゃあ仕上げ」


 左手から消臭スプエレーを取り出し、火の玉越しに鬼の眼球へと吹き付ける。


『をぉぉぉぉぉ!!』


 鬼とはいえ急所である眼球を焼かれ、顔を抑えてあたりを暴れながら悶える。完全に視力を失った鬼は激痛も伴って既に冷静な思考が出来ず、あたりに散らばる下位の同属にぶつかりそれらを還していってしまう。


「はい、全滅~」

『ぐをぉぉ……』

「イイ加減、黙レヤ」


 本当にめんどくさそうに自身の刀身を優に超える大剣を袈裟に振り下ろし、剣先が水音を立てながら先のどれよりも大きな肉塊を作り上げる。





「ヒッ……」

「あらあら、チャチャゼロさん。まだ術士が逃げもせずにこんなところに居ますよ」


 先まで、店主へ刃物を向けていた鬼の術士。店に来たときとはその態度は大きく変わり、地面に泥まみれで尻餅をつき、腰が抜けて立てないのか全力で後ずさっても一向に進めない体であった。


「アァ? 今、最っ高ニ“ハイ”ダカラ話カケルンジャネェヨ……」

「おぉ~、こわっ。それじゃあ、俺が始末すんぞ~……さて、術士」

「ま、待ってくれ……お、俺はただ雇われただけなんだっ! 雇い主の情報は知ってる限り何でも言う、だから――「構成が甘い」――へ?」

「式の構成が甘い、使ってる紙が安物、使ってる墨も安物、字が汚い、魔力の練が足りない……この程度の術士を送り込んで来るんだ、組織のたかが知れてる」

「俺が……この程度………」

「そうか、関西の術士も質が落ちたな……よし」


 顔を青ざめさせる術士に対して店主はいい事思いついたと手をぽんと叩いた。


「今から俺が手本で式を出してやろう。それから生きて逃げ延びれればお前の勝ち、好きなところに逃げてよし。逃げ切れなかったら死ぬ。うん、単純明快」

「なッ!? ま、待て」


 必死で足で立ち上がろうとうつ伏せになる術士。それに構う事無く店主はゲームでもするように禍々しい魔力を練り、道端の小石二つに込める。


「いくぞ~……“カラリンチョウ・カラリンソワカ護法山神”イナリ、ムジナ召喚!!」

「……え?」


 それは口が耳まで裂けた二対の化け物だった。体長は優に3メートルは超え、本来ならば毛で覆われている体はところどころ金属のように硬質化した化け物。化け狐と化け狸。

 地に足を付かずに宙をかける二対の獣は術士に駆け寄り取り囲む。

 二本の尾を持った化け狐“イナリ”。一つ目の化け狸“ムジナ”。

 店主の言を待つ賢い獣は獲物を取り囲んで動きを完全に封じていた。


「ひっは、ははははは。何でなんだろうな……だって俺はただ仕事で――」

「喰い千切れ」


 男は断末魔も、血痕も、肉片も、歯の一部すら無く消えた。





「ケケケケケケケケケケケ……マァ、暇ツビシニハナッタナ」

「よし、たまにはお前らも飲め。お、電話」

『きゅ~ん』『くぅ~ん』


 肉片と化した鬼たちが粒子となっていく様子を酒の肴に飲み始める店主と人形と狐と狸。


 喫茶店『八百万』。今日もいつでも平和である。



 あとがき
 
 今年17になった高校生の弟が、思春期特有の無駄な欲望を解消するエロ本なりAVなりを一切持っていない事を不審に思い、勝手にガサ入れを行った(携帯の中身含む)が、一切発見できなかった。

 弟のことを本気で心肺しなが自分の部屋に戻ったら、妹が俺のエロゲの画集を熱心に拝見してらっしゃった。
 
 死にたい。



[14410] 5話うp。妹ぉぉぉぉお!!
Name: kkk◆42e130d1 ID:9a6088d9
Date: 2009/12/20 18:56
 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 とある日の次の日である。

 本の虫が金髪幼女に襲われた日。金髪幼女が「血~吸~たろか~」って子供先生を襲った日。一人の人間が消えた日。――――まぁ、単純に言えば4話のあった次の日である。

 上記の子供先生こと、ネギ・スプリングフィールドは悩んでいた。

 問題はもちろんエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの事である。

 昨日の強襲未遂による恐怖心。父の偉業により尻拭いをさせられる理不尽さ。

 天才少年と言っても所詮は数えで10の子供。そんなものに耐えられるはずも無く、登校拒。授業に集中出来ずにだらける。あからさまな落ち込み。教師にあるまじき態度であった。


「ど、どうしたらいいんだろう……僕だけでどうしたら(ガクガクガクガクガク)」

「だから心配し過ぎだってばーネギ」


 震えるネギと、それをあやす明日菜の図。

 本気で生命の危機を感じる9歳というのはどれほど存在するのだろうか? 教師陣も心配ではあるが、魔法関係の恐れがあるので極力話せない。

 新田先生に関しては、『教師としての初めての大きな問題……成長するチャンスですよ(グッ)』……長年の経験から、こちら側へ聞いてこない限り対応しない姿勢であった。

 そんな古株の教師に魔法関係のことを話せるわけにもいかない子供先生。唯一の協力者である神楽坂明日菜へ相談しても、軽い考えにやや頭を悩まし眼を潤ませる。

 とりあえず、帰ってなんとか対策を練らないと……とその時、


『ザッツライト。裏の人間で間違いない』

「あ」

「どうしたの?」


 思い出す。


『――――何かあったら頼れ』

「ああっ」

「ちょっと」


 その存在を。


『ここは喫茶店兼何でも屋さんの“八百万”、何かあったら頼れ』

「あああっ!!」

「ネギッ!?」


 子供先生をは駆け出した、頼るために。

 ソレを追う影一つ。訳もわからず。

 ソレを追う影二つ。捕獲のために。



■□■□■□■□



「――――んで、俺を頼りに来たと……ま~た、大変な問題だな。なぁ、チャチャゼロ?」

「………ソンナ吸血鬼、俺ハ知ラナイゼ」


 あら、迎えに来ないから拗ねてる。何? この可愛いナマモノ。と、店長が思ったかは定かではないが、とりあえずチャチャゼロが拗ねた。


 「へ~、店長って魔法関係の人だったんだ……」


 昨今、閑古鳥が絶賛合唱中であった喫茶店“八百万”。放課後にすぐさまの来店に小躍りした店主を誰が攻められようか? まぁ結局、来客は来客でも裏関係の人間だった。すぐに人払いと認識阻害を掛ける。結局客は少ないのだ。泣くな店長、目指せ来客一日10人。

 そんなわけで、来客はネギ・スプリングフィールドと神楽坂明日菜のコンビであった。

 明日菜は、木乃香や学園長やタカミチにつれてきてもらった事があったりするって事でファイナルアンサー。ご都合主義万歳。


「あ~、気にスンナ明日菜。所詮は流行らない喫茶店の店長だ」

「ふ~ん。――――ところでその喋って動くってお人形は何? 私の記憶が正しいと、エヴァンジェリンが頭に乗っけてるのを何度か見た事があるような……」

「え?」

「あぁ、コレは元エヴァンジェリンの従者。この間戦って勝ったら貰った」

「ヨロシクナ、ガキ共」

「本当ですか!?」

「………」


 嘘は言ってない、嘘は。あ、明日菜は怪しんでる。


「何で勝ったの?」

「将棋」

「帰るわよ、ネギ」

「ですよねー。ストップ明日菜。ストップネギ君。アドバイス位ならできるから」

「マァ待テ」


 ざく。

 ドアにナイフが突き刺さる。

 ネギアスコンビ、冷や汗タラリ。進行方向をドアからさっきまで居た座っていた椅子に戻す。賢明な判断であった。シニタクナイヨネー。


「チャチャゼロ、何故に手伝う?」

「御主人ニ一泡吹カセルイイチャンスジャネェカ。オレモ一枚噛ムゼ」

「相当怒ってらっしゃるのね」


 このチャチャゼロ危険につき、接触に十分注意。


「アドバイス……ですか?」

「そうそう。例えば――――エヴァンジェリンがこの喫茶店に近づいてるとか。こっちに隠れろ」

「むぐっ」

「チョッ!?」


 店長は二人の首根っこを掴み、そのまま物量的に入るはずの無いカウンター裏の引き出しに突っ込む。ソレに次ぐようにカラン。もしかしたら今日は来店10人するのかもしれない。と、店主が思ったかは定かではないが、とりあえず二名、来店である。


「ん? 人払い、出直すか?」

「問題無い、いらっしゃいエヴァ。頬が赤いな、俺に惚れたか?」

「茶々丸」

「店長さん、失礼します」


 ロケットデコピンFIRE。

 デコピンが店主の頭部に届く直前、自ら茶々丸の腕に店主自身が当たりに行き、店主貫かれ発散。

 と同時に天井パカリ。


「天井からコンニチワ」

「ちっ……幻術か」

「あぁ、楽しきエヴァいじり。ご注文は?」

「黙れ、いつものだ」

「好きだよね、ネギ抜き塩ラーメン。へい、お待ち」


 ドバー。


「天井から渡すあたり――――ってあちちちちちちちちちちちっ!?」

「店長さん、器が上下逆です」

「いっけね☆テヘ」

「ドジダナ、店長」

「あ、姉さんお久しぶりです」

「ヨウ、妹」

「そこ、和むな!! そ、ソレより早くっふ、拭くもの!」

「オシボリそぉい!!」

「熱っ!?……くなかった」

「熱いのもありますが?」

「こ ろ す ぞ」

「い や だ」


 よっくらどっこいしょ。の掛け声と共に天井から店主落下。着地。

 涙目で睨むエヴァンジェリンを爆笑しつつ、指パッチン一つで豚骨まみれの制服を新品に換える。もう一つ指パッチンでネギ抜き塩ラーメンをカウンターの上に出す。


「転移の練習してたんだが、風属性が一番楽だわ」

「知るか」

「いいじゃん、気ニスンナヨ。で? 頬はどうした?」


 何事も無かったかのように話を振る店主に嫌々しつつも麺をすすりながら答えた。


「……昨日、神楽坂明日菜に蹴られた」

「だせぇ」

「うるさい! 障壁を蹴りのみで突破されたんだぞ!?」

「俺も出来るよ?」


 いや、普通出来ない。


「貴様のは完全に力技だろうが!! 奴は一般人だぞ? くそっ、もう少しでスプリングフィールドの血が手に入るところだったのに……」

「そもそも、勝負必要? 『実は~あなたの父親のせいで監禁されてるので血を分けて開放して~キャピキャピ』とか言えば、案外すんなりくれるんじゃね?」

「消すぞ?」

「勝負だ~勝ったら見逃すが~負けたら血をよこせ~って言えば?」

「絶対ヤダ。私から勝負の申し出とかかっこ悪すぎるじゃないか」


 こいつメンドクセェ。と店主が思ったかは定かでは無いが、とにかく嫌そうな顔をしながら店主は思考し……


「実は、さっきまで居た来客はネギ君だったのです」

「……何?」


 すっごく、ものすっっっっごく良い笑顔で暴露した。

 がたっ。小さく引き出しが揺れるが、さも気にせず店主。気付かないエヴァンジェリンに発したのは、事実無根。


「んで、エヴァンジェリンへ伝言」

「ほぉ、ここに来ると知っていたか。話せ」

「『翌週4月15日火曜のPM8:00、喫茶“八百万”前にて待つ』だって」

「ほぉ、面白い。大停電の日か……丁度良い。受理したと伝えろ」


 ガタガタ。机が鳴るが、店主が手でガード。超ガード。故にエヴァンジェリンは気付かない。

 颯爽と料金の300円を投げつけると不意に振り返りながら腰に手を当てて店主を指差し、


「その日……店主、ついでに貴様とも遣り合おうと思う。チャチャゼロを賭けてな――――待っているチャチャゼロ」

「御主人……」

 それだけ言うと夕焼けに染まる外へと出て行った。茶々丸はお辞儀してその後を追った。

 完全にエヴァンジェリンの姿が見えなくなるのを見届けた店主は、やはりすっごく。ものすっっっっごく良い笑顔で引き出しを開けた。すると、やはり物量的に入るのが不可能な少年と少女が飛び出した。一人は怯えながら、一人は訳判らん顔で。


「と言う訳で――」

「へ?」


 店主はやっぱりすっごく。ものすっっっっごく良い笑顔で、


「俺が鍛えてやる」


そう告げた。



 その頃


「アレ? 長瀬さん、二人どこ行ったの?」

「むむむむむ、拙者の目を出し抜くとは……」


 水泳部員と忍者が迷っていたり、



 さらにその頃


「お嬢様に何をするか!?」

「ぎゃぁぁぁぁあ!?」

「せっちゃん!!」


 オコジョが死に掛けていた。





 あとがき

 0.1秒――奴が見てるのは何だ? →ALICE♥ぱれーど初回限定版についてきた画集。

 0.2秒――奴の見ているページは? →次から搾乳とかロリとか猫耳とかヤバイ感じ
 
 俺「ぬぅぉぉぉぉぉお!!」
 妹「ひっ!?」
 
 ぎりぎり見せずにすんだ。

 俺「何で見たの?」
 妹「だって『のいぢ絵』でしょ?」
 俺「のいぢぃぃぃぃぃい!!」

 灼眼も涼宮も見せなきゃ良かった。

 P.S
 中学生の知り合い(女子)の待ちうけが、『乙女はお姉さまに恋してる』では無く、『処女はお姉さまに恋してる』の方だった。

 中学生怖い。中学生怖い



[14410] 6話うpしました。久しぶりです皆さん、私は生きてます。
Name: kkk◆b66fb364 ID:9a6088d9
Date: 2010/02/06 01:25

 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 カツンカツンと規則的な音を立てて、3人分の足音がその場に響く。

 先まで居た店内から続いてるとは思えないような古い通路を通り、石でできた階段を下る。先頭にはニット帽にゴーグル、黒いエプロンをつけた青年。それに続くのはスーツ姿に眼鏡を掛けた小学生ほどの身長の少年に、ツインテールを揺らす女子中学の制服を着た少女。

 店主、ネギ・スプリングフィールド、神楽坂明日菜の三人である。

 地上の店は、現在、チャチャゼロと影分身の店主が店番中である。

 店主の持つ蝋燭の火がゆらゆらと揺れながらも先を照らし、続くネギ少年は不安と困惑が入り混じったような複雑な顔。神楽坂は、喫茶店の地下にこんなものがあったことにただただ驚いていた。


「さて、ネギ君。君のことを半強制で鍛えることになったわけですが……ザマァ」

「何故っ!?」

「ちょっと、酷いわよ!!」

「ケッ、男子小学生程度の年齢の分際で女子中学校に赴任とかリア充すぎんだよ」

「「私恨過ぎ(です)よっ!?」」


 唾を飛ばす真似事をしながら言う店主に対するツッコミを、予定調和と愉快そうに笑いながら目的地に着いたので店主は歩みを止める。


「と、冗談はさておき。別にいいだろ? 元々、襲われるみたいだし。その状態のお前らがエヴァンジェリンに勝てるわけがない。所詮弱肉強食なんだし……」

「はっきり言いますね……」

「襲われまでの日数もそう無いだろ。多分」

「多分って……あんたねぇ」

「まぁまぁ。文句があるなら、全てが終わってから聞いてやる。まずは、時間を増やす事からな」

「「時間を増やす?」」


 そう言うと、店主は目の前の取っ手を掴み、前へと押す。

 開けた瞬間、地下なの吹く風に蝋燭の火が消され、辺りを暗闇に飲み込まれる。
突然の事態に困惑明日菜と、部屋に感じる巨大な魔力反応に警戒をするネギを放置し、店主は歩み、中心に鎮座する何かの付近で指を鳴らす。

 すると、天井から光が差し込み、部屋の中心を照らす。

 否、中心の巨大な瓶を照らす。

 全長5メートル以上はありそうなそれは、内部に信じられないほど精巧なミニチュアのような風景を持つ。

 それに、蛍光に向かう羽虫のようにふらふらと自然に釣られ、歩みを始める二人。


「さて、久々に楽しめそうか……」


 小さく呟く店長の声は届かない。



■□■□■□■□



「――――と、言う訳で二人を鍛えることにした」


 にこやかにいい笑顔で語る店主。


「何をやってるんですかっ!!」


 だん。と、カウンターを叩きながら、カウンター越しにどなる金髪高校生。


「えーっと……拙くないですか?」


 あははははと、汗を流しながら笑う赤毛の女子中学生


「爺ヲ無視ダナ、店主」


 ケラケラと笑うメイド姿の殺人人形。

 やはり、今日は来客が10人いくかもしれない。と、店主が内心涙していることは最重要秘密である。

 ネギと明日菜を“箱庭”に放り込み、金曜の放課後から住み込みで修行させる有無を伝えて帰宅させ。携帯で刹那に、『明日菜とネギ君が金・土・日は帰宅できないから木乃香の面倒ヨロ』『ちょっ!?』という会話を強制的聞かせたり。学園長室にわざわざ出向いて、『ネギ君と明日菜を鍛えるから』と、拳銃で脅して認めさせたりと、修行のために色々手回しをした後に通常業務に戻った店長であった。

 そんな感じで手回しを終え、何時も通りのダラダラ営業を開始し、夕食の頃合に来店があり、先に戻る。

 裏関係者の女子学生。聖ウルスラ女子校等部2年の高音・D・グッドマンと、その従者、女子中等部2年の佐倉愛衣である。裏関係の事務仕事を終えての帰り道、夕食の支度が面倒だったので寄ったとか何とか。


「――――で、裏関係者だし、打てば響く、からかえば全裸によるツッコミで好評な高音ちゃんに俺の近状報告をしたのでした」

「だ、誰が全裸突っ込みですかっ!!」

「はいはい、叫べばツッコミになるという思ってるんだね。ちょ、ちょっと……店内で全裸はないわ。子供が見てるでしょ?」

「パパ~、アノオ姉チャン全裸ダヨ~」

「まだ服装の描写が無いんですからテキトーな事言うのやめなさいっ!! 着てます服、しかも制服ッ!!」


 バンバンとさっきよりも激しくカウンターを叩く高音。流石はミスリル製のカウンター、凹まない。

 佐倉は、先程から注文したクリーム白玉ぜんざいをぱくついてる。それでも、話を聞いているようで、もぐもぐと食べつつ、話に対してしきりにうんうんと頷いたりしていた。

 丁度その時、高音の突込みが切れ、自身の敬愛するお姉さまを小馬鹿にしてからかう店主にポツリと一言。


「マスターさん……」

「そうですッ!! メイ、先程までの会話を聞いてたでしょ? このマスターに何か言っておやりなs」「次はクリーム白玉ぜんざいをこしあんにしてください。さっきから小豆が歯詰まっちゃって」(ズコーッ!!)」

「うわぁ――――古典的」


 否、一切聞いてなかった。





 突っ込みもボケもひと段落つき。


「……本気なんですね?」


 高音は疑う眼差し全開の半眼で店主を睨みながら問う。彼女も、彼女の隣に座る佐倉愛衣も魔法使い。学園の裏に関わる生徒、通称『魔法生徒』だ。魔法使いにとって『ナギ・スプリングフィールド』の名は『大戦の英雄』、『サウザンドマスター』、『立派な魔法使い』の代名詞。言わば、超有名人だ。

 その息子である『ネギ・スプリングフィールド』、それを、どこの骨とも知れない見た目16~20歳程度の妙な喫茶店の店主が鍛える。不安以外の何者でもない。

 『立派な魔法使い』を目指す真面目な高音にとって、理解しがたいのであろう。


「本気だけど……心配なら手伝う? つーか監視すれば?」

「学園長の許可が下りてるとはいえ、そんな将来有望な子を任せるのは心配ですし……いいでしょう。監視します」


 二つ返事で了承した。


「お前は俺の何を知ってるというんだ……っと、そうそう。高音には一つ協力を要請したい」

「協力……ですか?」


 どん。そう言うと店主。カウンターの下から古びたアタッシュケースを取り出す。

 鈍い銀色を放つソレは魔力を帯びていた。


「ああ。ところで高音、日曜七時は?」

「スーパーヒーロータイム」

「手っ取り早く強くなるには?」

「変身か必殺技か合体です」

「正義の味方といえば?」

「夢です」

「仮面ライダー?」

「1号、2号、V3,――――(以下略)」

「ネギ君にベルトを作ろうとか思ってるんだ」

「ぜひ手伝いましょう」

「もう、お前意外に考えられん」

「監視とか、もうどうでもいいのですぐ取り掛かりましょう。すぐ始めましょう」


 がしっ。という音を立てて、手を交す店主と高音。

 ナニコレー。


「ど、どういうことですか!?」

「病気ダ、病気」


 アタッシュケースからは容量を無視して出るのは玩具のベルト、ベルト、ベルト、ベル……(ry

 病気である。


「あぁ、ネギ先生の明日はどっち……」

「トコロデ、赤髪ノガキ」

「え? あ、私か。はい、何でしょう」


 唐突にチャチャゼロが喋りだす。熱くなるライダートークの二人を酒の肴にしながら。


「店長ガヨ、修行ノ参考資料ニ『鋼ノ錬金術師』『シャーマンキング』『スクールランブル』読ンデタ……どう思う?」

「は?」


 佐倉は考える。ハガレンもマンキンも修行という意味では(絶対に人がやるものではないが)読むのは判る。しかし、スクランはラブコメでは……?


「何故にスクランを?」

「ナイフ2本デ生活出来ル術ガアルラシイ」

「あぁ、ネギ先生の明日はどっち……」


 心配する佐倉をよそに、さらに過熱してどのベルトが実際に作れるか語る高音の店主。それを肴にグイグイやるチャチャゼロ。そんなこんなで世は更けてゆく。





おまけ。
 おれっちはカモミール・アルベール。しがないオコジョ妖精さ。

 本当だったらネギの兄貴にご厄介になろうと思ってたんだがな……フッ、何の因果か謎の美少女剣士に3枚おろしにされそうなのを逃げ出した。

 女子風呂を覗き――ゲフン。ネギの兄貴のパートナー探しを手伝おうとしたんだがな。

 所詮ムショから脱走したおれっちになんかネギの兄貴に合う資格すらないってことか。

 ……もういい、こうなりゃ自棄だッ! ここ、麻帆良の巨大な山の頂点にでも君臨してやろうかな……ふふふふっ、あはははh――――「ぬ、オコジョでござるか。……イタチ鍋って出来るでござろうか」――――走るんだ! 風よりも早く!! 後ろに向かって前進するんだ! コレは逃走ではない。繰り返す。コレは逃走ではない。明日への前進である。前進である。

 駆け抜けろオコジョ……続く?




 あとがき

 最近気付いた、腕相撲で母親にすら勝てない。

 つーわけで、ビリーズブートキャンプを始めました。

 頑張れ自分!! 目標の母親は片手でリンゴを砕ける!!(実話です)



[14410] 7話目うp。あとがき読んでくれるとうれしいです。
Name: kkk◆b66fb364 ID:9a6088d9
Date: 2010/02/08 23:15

 世界には裏がある。世界には裏がある。世界には裏がある。

 それは、幽霊が存在する事実だったり、

 それは、妖怪・精霊・悪魔・天使が存在する事実だったり、

 それは、氣や魔力を用いる秘術。魔法・魔導・陰陽術・呪術・仙術が存在する事実だったり……

 世界には秘密がある。世界には秘密がある。世界には秘密がある。

 埼玉県麻帆良市に存在する『麻帆良学園都市』。ここも世界の裏、世界の秘密に関わる場所。

 そこにぽつんとお店が一つ。

 麻帆良学園中央駅から徒歩10分。立地はそれほど悪くは無い。

 レンガ造りのクラッシックな雰囲気だが、やや薄暗く、食欲を刺激する香りの漂う店内。

 開店時間は存在せず、遇に臨時休業をするが、24時間365日開いているという脅威のお店。

 ニット帽にゴーグルという、あからさまに怪しい格好の亭主曰く、「気合で案外何とかなる」らしい。

 怪しい店主の怪しいお店。客層も怪しく、頭部の長いご老人から褐色朱眼チビシスターまで。もともと客もあまり来ないので、客層も何も無いのであるが。

 そんな怪しい店主の怪しいお店、一応喫茶店の『八百万』。

 のらりくらりと経営していた。



■□■□■□■□



 青い空。白い雲。どこまでも続く水平線。きらめく砂浜。じりじりと照らす太陽。南国の草木。まさに真夏。

 そう、どう考えても夏。子供ならばすぐにでも駆け出して水遊びを開始するような景色。気候。それでも少年は息を潜めて、草葉の陰で気配を消す。

 息音を殺す。

 風の方向を考える。

 アレが確実に罠に掛かるためのえさは風下に。

 自身は察知されぬように風下へ。

 ここに放り込まれて一月。コレは修行なのだろうか? と思ったこと、姉を思い出して泣いた事、今思い出しても何度もあった。それでも……それでも、必死で駆け抜けたこの一ヶ月。

 髪が少し伸びた。眼鏡が必要なくなるくらいに視力が上がった。筋肉が付いた。生き物の裁き方を覚えた。自力で火のつけ方も覚えた。罠の作り方設置の仕方も覚えた。食べ物になった生き物へ感謝する意味が十分に解った。

 今思い起こせば、店長さんが言っていた事が理解できる。身体強化を常時する指輪とナイフ2本を渡されて、その時に言われた。『所詮この世は弱肉強食』の本当の意味。きっと店長さんが僕に伝えたかった本当の意味――――


 アレが来る。準備は万端だ。手に握るナイフに力が篭る。焦る気持ちを抑えながら、隣で息を潜める仲間達に目配せをする。


「(合図をしたら……ヤルよ?)」

 皆の同意と取れるような気配を感じた。

 ――――店長さんは言っていた。僕がエヴァンジェリンさんに勝てるわけがないと。『所詮この世は弱肉強食』だからと。その意味を考えろと。

 だから店長さんは、僕をこの無人島に放り込んだんですね。教えるために放り込んだんですね。


 狐は鳥のように空を飛べない。

 虎は土竜の様に土を潜れない。

 猿は魚のように水に潜れない。


 そう、狐も猿も虎も陸地だからこそ強者で居られるんだ。僕は鳥だ。僕は土竜だ。僕は魚だ。弱者だ。弱者が強者に勝つのなら、自分の場を作ればいいんだ。

 その術だって多少なりともここで身に付けられた。そう、今みたいに。

 アレが来た。一歩、一歩と目的の場所まで近づく。


  後3歩。


 そう、僕は今まで失敗した事がないから。挫折した事がなかったからあんなに思い悩んでたんだ……。


 後2歩。


 僕は甘ったれてた。このままじゃいけないのに。きっと誰かが気付いて助けてくれるんじゃないかなんて考えてた。


 後1歩。


 違う。気付いてもらうんじゃなくて自分から行動しなきゃ。出来ないのなら人に頼ることだってしなきゃいけないのに……ホント、僕は駄目だ。でも――――


「今だっ!!!!」

「「「「「「ウキィィィィィィィイイイイ!!!!!!」」」」」」


 今日から変わろう。

 今から変わろう。


 アレが、森の頂点に君臨する強者のやたら牙の長い虎が落とし穴にかかる。アレは、この島で仲良くなったお猿さん達の天敵。

 今はアレを倒そう。僕がここに来て決めた目標。お猿さん達への恩返し。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!!」


 ナイフを虎に突き刺す。突き刺す。突き刺す。突き刺す。

 一ヶ月……店長さん。言われた通り一ヶ月生き延びました。言われた意味も、僕なりの答えも出せました。

 この駆け抜けた一ヶ月が僕の答えです。



■□■□■□■□



 喫茶店『八百万』。そこは、いつも通りだった。店員増えたのに。


「暇だ」

「暇ねぇ」

「ヒ・マ・ダ」


 上から店主、神楽坂明日菜、チャチャゼロである。

 オッドアイに斬撃系の武器にもなりそうなポニーテールを携えた女子中学生神楽坂明日菜。ネギが修行のために地下の『箱庭』に篭っているさなか、明日菜にも何か手伝いたいと言い出した。

 曰く、『頑張ってる奴は嫌いじゃない。応援したい』らしい。

 正直、店主はお涙頂戴は大嫌いな店主。テキトーに「はいはい」と受け流し、二つ返事で了承した。

  が、異常なまでの身体能力だったので修行しなくていいんじゃね? という結論に達し、修行と称したアルバイトをさせているのであった。自給1000円。金に糸目をつけないバカ店主。客来ないから店員増やしても意味ないのに。


「明日菜~、今日の夕飯何がいい?」

「え~っと……ハンバーグ」

「デミグラ? 煮込み? シソ醤油? 豆腐?」

「シソ醤油」

「わかった~」

「……」

「……」

「ア~アァァァァァァ~ヒマ~」

「……これって本当に修行? バイトよね? バイトだよね?」

「修行だ、うん。何も無い時間、いかに心を無にし出来るかという修行」

「あぁ、だったら得意」


 ボーケ……金曜の夕方、超絶暇である。

 ふと、思い出したかのように店主が多少活気を取り戻す。


「そうそう。明日菜、ネギ君がやってる修行って何か知ってる?」

「教えてくれないのあんたじゃない」


 あぁ、そうだったか。と呟きながら店主は頭を掻く。そんな動作をしながらぽつぽつと語りだす。


「ナイフを2本持たせて無人島に放り込んだ」

「ふ~ん」

「そうそう、ちょい頼むわ。この笛とこの猫飯を持って桜ヶ丘広場の野良猫に餌あげてきてくんない? 俺、魔力構成練らなきゃならないし」

「別にいいけど……魔力構成?」

「うん、ネギ君強化用にアイテム作ってんだ」

「へ~」

「あ、猫は笛吹くと集まるから」


 カ~カ~とカラスの泣き声が遠方から小さく聞こえるような夕暮れ。
 そろそろ野良たちが腹を空かせてるんではないかと思い出した店長は、明日菜にそんなことを切り出した。


「それじゃあ行ってくる……ってっえぇぇぇぇぇぇえ!? アンタ何してくれてんの!?」


 突然叫ぶ明日菜。反応遅し。


「どったの明日菜?」

「生理カ?」

「ちっがぁぁう!! 店長、アンタ何て言った!!」

「『暇だ』?」

「えらく巻戻った!? もっと後!」

「『俺……最後にお前の胸の中で逝けて、幸せだったよ』?」

「壮絶な最後!?  何時言った!! あれよ、無人島とかナイフがどうとか言う」

「あぁ、『無人島ではナイフでサタデーナイトフィーバーが攘夷維新』ってやつか」

「意味判カンネェゾ店長」


 ぎゃーぎゃー吼えている明日菜を尻目に、テンプレ好きの店主がボケるボケる。

 さっきから真顔でボケているが、半目で店主を見るチャチャゼロにはしっかりと笑いで震える肩が見えていた。


「『ナイフを2本持たせて無人島に放り込んだ』ってやつよ!!」

「覚エテルナラ聞キ直ス必要無クネ?」

「そ、それは……」

「馬鹿、チャチャゼロ。テンプレを理解しないと今の世の中生きていけないぞ?
 さっきのの明日菜のフリは、ダチョ○クラブの『上島さんをのせるヤツ』とか、芸人の『押すなよって言われたら押さなきゃいけない法則』だ」

「ナルホド」

「話しを戻しなさいっ!!」


 ちっ。っと、音がしたか定かではないがとりあえず話を戻す事に。


「で? どういうこと?」

「いちいち甘ちゃんだったし、すこぉし世界の真理を教えようかと思って。弱肉強食とか、生きるために殺すこととか」

「ゴメン、意味わかんない。9歳のガキが無人島でサバイバル? バカじゃないの?」

「いや、エヴァンジェリンが相手だぞ? 覚悟を決める心くらいは持たせないと。あの子、絶対に今のままだったらグチグチな泣き出しそだし」

「そうだけど……でも――――」

「そうだな」


 珍しく、まともな雰囲気を孕んだ台詞に明日菜は口を閉じる。

 何時になく真剣な声を出した店主は、夕焼けに染まる窓の外を眺めながら語りだした。


「ネギ君はさ、まだガキだけど、彼がコレから相手にするのは極悪非道な魔法使。命がいくつあっても足りん。手加減とか生ぬるい事考えさせるつもりは無い。――――つーか、修行に関しては大丈夫よ? 監視に狐と狸の神様憑けてるし」

「は? 神様?」


 そうそう神様。といいながら、カウンターの下からタッパーと笛を取り出す。


「つーわけで、明日菜に心配されずともネギ君は絶対に無事。そもそも、あと2時間で帰ってくるし。心配する暇があったら猫に餌あげて、ついでに手懐けるてきて。店主命令」

「……本当に大丈夫なんでしょうね?」

「モチのロン」


 店主はグッとサムズアップ。安心させるような笑顔で。

 少しの沈黙の後、大きなため息と共に明日菜が折れた。


「は~、それじゃあ信用する。行って来ます」


 それだけ言うと明日菜はタッパーと笛を店主から受け取ると、装備していたエプロンを店主に渡して店を出て行った。

 いつもの二人だけになった店内。さっきまでの盛り上がりは無く、いつもどおりの店内へとなった。

 その時、チャチャゼロは口を開いた。


「2時間ッテヨ、“箱庭”ダロ? 設定ドウナッテンダ?」

「10分が一日として今回は設定したから、3時から始めて8時までの予定」

「30日、一ヶ月カヨ。素人ニ無人島ヲナイフ2本デ一ヶ月ネ。ケケケケ」

「案外いけるだろ? 食料調達のためにナイフ。火を起こすためにナイフ。雨を凌ぐためにナイフ。イノシシを撃退するためのナイフ。撃退したイノシシから靴と水筒を作るためのナイフ。遭難したときに寝床を作るためのナイフ。犯人の名前を刻むためのナイフ。ナイフを無くした時の為の予備ナイフ。ほれ、ナイフが優秀すぎて2本しか必要ない」

「ナイフスゲェ」

「………」

「………」

「それにしても明日菜」

「アァ」

「どっからどう見てもお姉ちゃんだよな」

「姉ノ鏡ダゼ」


 そんな感じでナイフ談義と姉談義をしながら明日菜の帰りを待ちつつ、ベルトのための魔力構成を考えつつ、夕食のハンバーグを作りつついつも通りなチャチャゼロと店主であった。





 あとがき

 どうも、ビリーのせいで走れません。ビリーのせいで腕が上がりません。ビリーのせいで猫に噛まれます。作者です。

 ちょっと調べたら、リンゴをつぶせる握力って70kgらしいですね。今の俺の握力が53kgなので……51歳の母がリンゴ潰すのってどうなんだ? 人体は不思議でいっぱいですね。





 あとがき2

 さて、今回ちょっと質問があります。内容は以下の二つ。

 ①題名変えたほうがいい?

 ②キャラ紹介必要?

 以上です。①は、単純に弟に言われました。「魅力を感じない」と……。

 ②に関しては、他の作品でオリキャラの紹介って良く見ます。自分が一般的な小説を読むとき、キャラ設定忘れて読み返すことが結構あるんですが、結構ソレを探すのって大変なんです。ので、出来るだけそういう負担とか減らしたほうがいいのかなぁと、うpした内容ごとに随時店主のプロフィールを変えていこうかなぁと。

 できれば意見欲しいです。よろしくお願いします。


 


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