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[14264] くものいと(短編)
Name: 赤狼◆292e0c76 ID:00a6b5cc
Date: 2009/11/26 00:25


※この作品は一部ショッキングな表現を含みます。ご注意ください。




 ボクハイッタイ、ナニヲヤッテイルノダロウ、手の中で断末魔の痙攣に震える体を押さえつけながら、ボクはそんな事を考えていた。
むせ返りそうな血の匂い。口の中にひろがる鉄の味は、いつも処理している家畜の血と変わらないような気がした。
 粉砕され、ひき潰された肉と骨が織り成す匂い。なんの代わりばえもしないいつもの匂いだ。体が痙攣して跳ね上がる。もう生きては居ないのだから、死後痙攣だろう。頻繁ではないが、たまにあることだ。妙に冷え切った思考が、そんな結論をささやく。
 顔がぬるぬるするのは、きっと汗のせいだけではない。生温い感触も何故か気にならなかった。
 けたたましい機械の作動音にも関わらず、命乞いの言葉が断末魔に変わるまで、僕にははっきり聞こえた。
 きっと、彼女はどうしてこうなったのかも、理解できていないのだろう。当然だ、こんな事をしたボク自身、何故こうなってしまったのかは理解できていないのだから。
 きっと、一生理解する事は出来ないだろう。
 完全に体が動かなくなったのを確認して、機械を止める。その時になって、ようやく自分が悲鳴を上げ続けていた事に、気づいた。


 最初のきっかけはとても些細なものだった。
朝、自動販売機でコーヒーを買おうとして、落とした小銭を拾ってもらった。きっと相手だって覚えていないような、そんな些細なものだった。
 女性に慣れていなかったボクは彼女にお礼も言えずに、ずっとどもっていた。そんなボクに輝くような笑顔と共に、彼女は拾った小銭を渡してくれた。

 食肉加工業界と言うのはいわゆる社会の汚れ役に類するものだ。毎日、喧騒と悪臭の中で仕事を続け、機械で指や腕を落としたり、足腰を痛めて職を辞するものも多い。あまつさえ自称自然保護主義者から嫌がらせを受ける事も無いわけではない。そんな毎日の中で出会った彼女は癒しそのものだった。
 さりとてはとて、話しかける勇気などあるわけが無いわけで。あちらは私立高校の教師でこちらはしがない食肉加工業者の平社員。釣り合うはずもない。だから、僕にできる事など、ただ、遠巻きに彼女を見つめる事だけだった。帰り道の姿や、朝欠伸をしながら学校に向かう姿を見ると、それだけで幸せだった。仕事中もずっと彼女の事を考えていた。
 いつも彼女の事を見ていたい。隠し撮りした写真で部屋中の壁が埋まるのに、そう時間は掛からなかった。
 絶やすことの無い慈愛を振りまく彼女の笑顔は、まるで天使のようだった。考えれば、考えるほど彼女の全てを知りたくて、彼女の捨てたゴミをあさる事もやった。興信所に依頼して身の回りを調べる事もやった。
 彼女の名は神宮寺まりも、白稜大付属白稜柊学園の教師……。幸いな事に独身であるらしい。恋人らしき男もいないようだ。自分でも普通じゃない事は分かっている。しかし、彼女の事を考えると、どうしても止める事が出来なかった。
 
 今日こそ、彼女に話しかけよう。そう決心したのが、それほどいけない事だろうか。自分のような社会の底辺に位置する人間には、それすら過ぎた望みなのだろうか。彼女は一人の男子生徒と連れ立って歩いていた。どこか、人目を気にしているような、彼女の素振りが嫌な想像を掻き立てた。まさか、そんなことがあるはずは無い。
 ボクは二人の彼女の後をついて入ったファミリーレストランで食べたものの事は、あんまり良く憶えていない。砂を噛んでいるような、気分だった。喧騒で会話が聞こえないのがもどかしかった。ただ、二人がとても親密に話していることだけは、分かった。
 話し相手の男子生徒は、良く赤毛の女の子と歩いてる所を何度か見たことがある。なんとなく、軽薄そうで、若さの勢いと惰性で生きているような、正直、一番嫌いなタイプだった。
 それなのに、何故、彼女はあんなに親しそうに話しているのだろう。ボクハ、ハナシケルコトモデキナイノニ……。
あの少年を見たときの一番の感想は、嫉妬だったように思う。彼は白稜の生徒で、彼女の生徒で、若く未来の展望に満ち溢れている。

「……いつか悩みごと話してね」

 辛うじて聞き取れた彼女の言葉は、その男子生徒に向けられたものだった。今、考えれば別に教師が生徒に言うことに何の疑問も無い台詞だ。だが、その時の僕にはそれが、死刑の宣告のように聞こえた。実際に死刑判決を言い渡された時の方が、衝撃は少なかったように思う。
 抑えがたい嫉妬の気持ちと共に湧き上がってきたのは、失望と怒りだった。一体、どういう仕打ちだろうこれは、あんなにも安らぎを感じてきたはずの笑顔は、もう苦痛でしかなかった。それからの事は、なんだか自分の体なのに、自分がやっていることじゃないような、頭の奥から自分のしている事を見ているような、不思議な感覚だった。あのガキと分かれた後、ボクは彼女の後をつけて、うしろから殴り倒した。
 彼女を運んだときの温もりと、甘い匂いは今でも憶えている。結局、彼女はボクという人間を意識した感情は何も無かった事になる。暗がりでボクの顔は見えなかっただろうし、彼女は直ぐに死んだのだから……。
 挽肉を作るための大型チョッパーを作動させると、聞きなれた機械の音を聞くうちにだんだんと心が落ち着いてきた。
彼女が目を覚ましたのはその時だった。状況を理解したのか悲鳴を上げる何を言ってるかは、機械の音で聞き取れなかったけど命乞いをしている事だけは、はっきりと分かった。ボクは構わず彼女の頭を抑えてチョッパーに突っ込んだ。
 長い栗色の髪が頭皮ごと削り取られて、顔に飛んでくる。ゴリゴリと頭蓋骨を削る震動と首の骨が折れた感触が腕に伝わってきたのは、ほぼ同時だった。
 ビクビクと体が断末魔の痙攣に震えるのを感じて、ボクは彼女が死んだ事が分かった。
指を切らないようにいつもの癖で手を止める。彼女は顎から上がなくなっている状態で、もう彼女の笑顔を見ることは出来ないんだと思い知った。しばらくの間ぼうっとしてて、ふとボクは彼女の体を触ってみた。
 もうあの時かんじた温もりは無かった。甘く感じた彼女の匂いは、かぎなれた死臭へと変わり始めていた。
そして、顔中に返り付いた彼女の血を拭った。僕は自分でも信じられないほど冷静だった。普段道理に、普段よりも手際よく、僕は彼女を殺した。

 それから、悲鳴と機械の作動音を聞きつけた近所の住民が通報したとかで、駆けつけた警察官に僕は直ぐに逮捕された。警察の取調べは本当に確認のようなもので、横柄で傲慢な若い刑事はすぐに口を押さえて出て行ってしまったが、年かさの刑事の方は僕が話す内容を無表情に聞いていた。

 全てを話し終えて、僕は少しだけすっきりして、同時に申し訳なくなって止まらなかった。馬鹿みたいにぼろぼろ泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」といい続けた。
ひと仕切り言い終わるのを年かさの刑事はずっと待っていたようだった。彼は黙って立ち上がり調書をまとめると「……罪を償って来い」とだけ、言って取調室から出て行った。  
 拘置所に戻るときに偶然会った時に「ありがとうございました」と言ったら、彼は少し驚いたようだった。それから拘置所で、これを書いているわけですが、何せ一人でやることはありません。裁判までの時間が待ち遠しい。

 そう思ったのはつかの間のことで、次の日から接見の予定で一杯だった。まず僕の事を弁護しようという弁護士さんたちだ。なんとなく仮面みたいな笑い方をする気持ちの悪い人たちだった。
僕が「弁護士は要らない」と言うにも関わらず、彼らは自分を僕の弁護士にしてしまった。なんていう連中だろう。彼らが言うには僕は鬱病状態であり、まともな判断に基づいてものを言ってないとか。
 二日目に来たのは、傲慢そうで、髪の長い美しい少女だった。彼女は僕が殺した「神宮寺 まりも」の生徒だったらしい。横にメイドのような女性が立っていたが、刺すような嫌悪感をむき出しにして、こちらを見ていた。昔なら女性にそんな目で見られているだけで、いたたまれない気分になったはずなのに、僕はなんにも感じなかった。
 
「どうして、神宮寺教諭を殺したのだ?」

 尊大な口調で尋ねてくる。なるほど、もっともな質問だと僕は思った。しかし、これに関しては、分からないので教えようが無い。

「分かりません」

 そう、答えた瞬間に彼女がわなわなと、肩を震わせながら強化ガラスを思い切り叩いた。その音に驚いて、見張りの刑務官が驚いて、彼女の方を見た。メイドさんのほうと目が会うと彼はそそくさと、退出した。
 金かなにかの力で退出させられた事は明白だった。つまり、彼女は世間一般で言う所のセレブという奴らしい。両親はいつとて、金策に苦しんでは酒を飲み、子供に当る事もしばしばだった過去をもつ僕とは対極の存在と言うわけだ。少しだけ、僕は彼女に嫌悪感を持った。

「なんなのだその目は」

 彼女はもはや嫌悪感を隠さなかった。なにやら傍らの長い棒のような包みを握り締めている。

「貴様のような卑劣漢に神宮寺教諭はっ!!」

 すっと包みが解かれ出てきた刀を、彼女が腰だめに握り締めた。

「おやめくださいメイヤさま!」

「下がれ! ツクヨミっ!!」

 メイドらしき人に、メイヤと呼ばれた少女が怒鳴りつける。強化ガラス越しにあってもなお、彼女の殺気は痛いほど伝わって来た。
彼女ならば斬れるかもしれない。ふっと、そんな思い付きが胸の中に揺らいだ。同時に僕が殺した「彼女」はどう思うだろうか。教え子の手が血に染まるのは喜ばないだろう。  
なんたって、彼女は「良い先生」なのだから。

「慌てなくても、どうせ、死刑になりますよ。あなた方がするんでしょ。お得意の権力を使って」

 無表情に言い放つと、どうやら彼女は限界を超えたようだった。
驚いた事に、硬質ガラスと言う奴は刀で斬れるらしい。特権階級には銃刀法すら意味をなさないと言う事にも驚いた。
 ガラスが飛んだのか彼女の刃が届いたのか、僕の首から一筋の血が流れていた。

「見くびるな貴様! 御剣の名にかけて、そんな卑劣な手は使わぬ。貴様の犯した罪は、死に値する罪だ」

 そんな事は、言われなくとも分かっている。いい加減、世間知らずの小娘の相手は疲れてきた。こんな風に卑屈にならずに他人を煩わしく感じたのは、どれくらいぶりだろうか。

「このやりとりがあってなお、誰も何も斟酌しないのか。御剣の名も大したこと無いね」

「貴様如きが御剣を愚弄するか!」

 今度掴みかかってきたのはメイドのほうだった。いい加減茶番劇にも愛想が尽きる。ふと顔を見ればとても、美しい人だった。とても、真っ直ぐな人なのだろうな。と僕は思った。とにかく、僕は何も言わなかったので、彼女は決まり悪そうに離れた。

「分かった」

唐突に髪の長い少女の方が言った。

「どんな思惑も介在させぬ。純粋に司法の手に委ねるとしよう。御剣の名にかけてな。私は見届けよう。それで、もし万が一貴様が無罪になれば、貴様の首は貰う」

 本気だろう。「彼女」の生徒を人殺しにするのは気が引けるが、あくまで万が一だ。

「…………」

 僕は何も言わなかった。きっと僕の母のように、彼女は僕が何を言っても怒るだろう。黙っている事は大抵のいざこざを遠のかせてくれた。ともあれ、僕は自分に驚いていた。僕は何時の間にこんな勇気が付いたのだろう。

 また「弁護士」達が来た。僕は精神分裂症だか統合失調症などの精神病を……簡単に言うと、僕がキチガイだから、行かせるべきは病院で刑場ではないと言う。
 他人を勝手に病人扱いにするとは、なんと失礼な人々だろう。だが、そんな事はどうでも良かった。どうせ僕は死刑になるのだから……。16歳の頃に首をつった両親のように僕もあんな排泄物や内臓を垂れ流して死ぬのだろか。そう思うと、後片付けをする人が可愛そうだが、僕のように一人でやることもないだろう。

 なんという偶然だろう。今日、拘置所に「彼女」の親友だという女性が来た。なんでも原子力発電所に不法侵入したとか。
わけが分からないが、とにかく綺麗な人だった。意地の悪い刑務官が彼女を僕の房の前まで連れて来たが、彼女は上から下まで僕を見ると罵倒もせずに「あんたも、犠牲者なのね」と小さく呟いた。何がなんだか分からなかった。
 
 午後に再び最初の公判が開かれた。検察の求刑は当然死刑、弁護側は無期懲役だ。「弁護士」達は皆、非難するような目をして検察を見て、彼らに向かって「人殺し」と呟く人も居た。……それは、僕の方だ。
僕の方を振り向くと「必ず護りますから」なんて、言いながら例の仮面みたいな笑顔を見せた。
 この日は驚く事の連続だった。なんと彼らは僕がキチガイであるか、自白が偽物であるという確固たる証拠を提出したのである。僕が話した、あの夜「彼女」と一緒に居た「男子生徒」は存在しないと言うのである。自白は誘導尋問によるもので、顔見知りである彼女に器械を見せていたら彼女の髪が巻き込まれてしまい、助けようとしたがどうにもならなかった事故である、などと飛んでも無い事を言い出したのだ。

「被害者は八方美人でだれにでも優しく接する方だったとか。当時、ストレスと孤独に悩まされていた被告が勘違いしても仕方ないかと思います」

 べらべらと流れるように「弁護士の」人が立ち上がって喋る。その日は検察と弁護人が怒鳴り合いまで演じて、裁判長の怒声で幕を閉じた。

その日、僕は夢を見た。彼女を殺したその日から、あるいはその前から見続けている夢だ。僕は何かから、一生懸命に逃げていて、周りの人は誰も助けてはくれない。辛うじて自分がいま住んでいる柊町であるということは、分かるのだが、何かがおかしい。そしてふっと振り返ると、白くてぶよぶよとした気持ちの悪い生き物がじっとこっちを見ていた。
 そこで、いつも目が覚めるのだ。

 朝から再開された公判は弁護人の優勢で始まった。昨日、検察側が先に怒声を上げた事が響いているらしい。

「彼女の隣を歩く男性は頻繁に変わっていたとか。被害者が彼についていった可能性も十分にあります」

「異議あり、弁護側は憶測以外でものを言ってません」

 裁判長が黙って異議を認めた。憶測でものを言う事は慎むようにとの、警告がなされた。

「酒癖もそうとう悪かったようですね。酔って絡んだ可能性は?」

「体内からアルコールは検出されていません。質問の意図が分かりません」

 検察官は自分を抑える事に、最大限の努力をしているようだった。

「ただの確認です。被害者が被告を誘った可能性もある」

 激昂した検察官が怒鳴り散らした。被告席に戻ってきたその弁護人は、同年代くらいの男だった。僕の横に座ると、彼は小さな声で呟いた。

「……よし、うまくいきそうだぞ」

 その言葉がトリガーになって、僕は彼に飛びかかった。何かわけの分からない罵倒を叫びながら、混乱している彼の細い首を突かんだ。鶏と同じだ、首の骨に親指をかけ、あらん限りの力で横にひねる。骨が外れるゴキリという感触が指に伝わってきた瞬間に後頭部に鋭い衝撃を感じて、目の前が真っ暗になった。僕は警棒で殴られたらしい。喧騒と罵声と騒音、僕の人生は何時だってそればかりだった。

 それから、しばらくして僕は檻の中で目を覚ました。結局、あの「弁護士」達は尻尾を巻いて逃げ帰り、僕がひねった男は一生植物状態になったらしい。一人も二人も大して変わらない。まして、彼女に比べれば、彼はいけ好かない類の男だったと思う。「彼女」を侮辱したのだから、当然の報いだ。

 それから一週間後に再開した公判で、僕は死刑を宣告された。宣告された瞬間は、さしてなんの感慨も抱かなかった。例えば床に落ちた卵が割れるのを見るようなものだ。ともあれ、どうやらあの少女を僕と同類にせずにすんだらしい。とても、喜ばしい事だ。
 僕の人生は物心付いたときから真綿で首を絞め続けれられていたように思える。そんな中でであった「彼女」は間違いなく、唯一の希望だった。あの時、僕はなぜかどうしてもそうしなければならないという気持ちに捕らわれていた。そして、僕はこうしてここで、死を宣告される事になった。小学校の教科書に出てきたカンタダのように、僕は人生と言う緩慢な地獄の中に下ろされた美しい蜘蛛の糸を自分の手でちぎってしまったのだ。





――― 2004年 9月14日

 死刑場までの道を4人の刑務官に囲まれて、その男は歩いていた。男の名は川本実、白稜大付属白稜柊学園に勤務する女性教師を無残な方法で殺害したかどで死刑の判決を下されていた。

「あれから、いつも夢を見るんですよ」

 担当の刑務官に向かって、川本は唐突に話しかけた。

「夢の中でボクは、沢山の怪物に追いかけまわされて、バラバラにされて殺されるんです。そして、気づいたら僕も同じ化け物になってるんですよ。白くて、ぶよぶよした気持ちの悪い化け物なんですけど……それで、彼女の頭を後ろから、そこで目が覚めるんです」

「黙って、歩け」

 刑務官が無表情に言った。相変わらず自制心の塊のような男だ。思えば彼は他の警察官のように自分を罵倒する事も無ければ、あからさまな嫌悪の視線を向けることも無かった。

「どうして、こんな事になってしまったんでしょう。ただ一言ありがとうと言いたかったはずなのに……」

 今度は何も言わず、刑務官は黙って歩いた。

 死刑場に着き、最後の嗜好品を断ると、目隠しをさせられ、首に縄が掛けられた。

「何か言い残す事はあるか」

 唐突に、件の刑務官が口を開いた。川本はしばらく沈黙してから、やがてポツリと呟いた。

「……ごめんなさい、先生」

 執行のブザーが鳴る。
足元の床が開き、一瞬にして首に縄が食い込む。その事に気づく前に首の骨が折れ、川本実は即死した。
 
 後日、川本の部屋から、彼のものと見られる手記が発見された。そこには震えた文字で最後に、こう記されていた。

「神様、もし生まれ変わる事が出来るなら、ボクは地獄に落ちますように……」

 



あとがき
 もうしばらく間が空きそうなので少し前に書いた短編をUPしました。自分が連載している長編とはまったく関係ないので、別々にさせていただきました。
 食肉加工業についてはちょっと偏見っぽく書いてあるかもしれませんが、そういう意図は一切ございませんのでご容赦ください。この辺に関しては、食肉加工をやっている方々の愚痴を集めたスレを参考にしたので、あまり、現実に即していないかもしれません。
 もともと、この話書こうと思ったのは、兵士級の原材料が人間だという話を聞いたときからだったんですよね。もしかして、川本実と言うのは、まりもちゃんを×××した兵士級の材料に使われてたんじゃないか、なんて思ったわけで……。それと食肉加工業につかれている方々が愚痴を綴ったスレを見て、書いてみようと思いました。
 逃げ帰ってきた武が持ってきた因果のせいで、死んだ犠牲者の一人なのかと思う次第で。あの世界だと、君望でも事故に会ったのは孝之で、おまけに死んでたりしてとか、考えれば考えるほど嫌な感じでした。結局、逃げた先にあるのは後悔ばかりって事なのかもしれません。


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