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[12261] 機動戦艦ナデシコ ~守りたいもの~
Name: 黒◆527d4c14 ID:17b00bca
Date: 2009/09/27 16:26
初めまして、黒と言います。
正直書くのは初めてなので拙い点もあると思われますので、どうか温かい目で見守ってください。










「よっ、スケコマシ」
「それが久しぶりの再会で言う言葉かい?」

扉を蹴りで破壊し、一人の青年が笑顔で部屋に入ってくる。
若干ボサボサの髪に、かなりの童顔。その青年を、椅子に座った青年――アカツキ・ナガレが引き攣った笑みを浮かべて出迎える。

「ん? 何だよ、久しぶりに親友が帰ってきたってのに、もうちょっと明るく出迎えてくれてもいいんじゃないか?」
「……相変わらずだね、君は」
「変わらないってのは良い事だぞ。……ところで、エリナは?」
「今こっちに来てるよ。君が帰ってきたって聞いたら血相変えてたよ」

苦笑を混ぜて話すアカツキに、青年は「ふ~ん」と答えると、ソファにふんぞり返った。

「……で、俺を呼んだって事は、完成したのか?」
「ああ。ND-001『ナデシコ』。今現在ある戦艦の中でも、間違いなく最強の戦艦さ」
「ほぉ~。かなり自身がおありの様で。ところで、俺の頼んだアレは?」
「そっちも準備OKさ。エステバリス追加装甲装備型試験機『ブラックサレナ』。しかし、本当にこんなものに乗って体が持つのかい?」

アカツキの問いにニヤリと笑みを浮かべ、




「俺は最強だよ、アカツキ」

自信満々に答えた。アカツキはその言葉に溜息を吐くと、小さく笑みを浮かべる。

「ああ、そうだったね」
「そうさ。……おっ、来たな」

突然、バタバタと大きな足音が聞こえてきた。青年とアカツキが振り向くと、青年が破壊したドアから一人の女性が入ってきた。

「アキトくん!!」
「よっ、エリナ。また綺麗になった?」

アキトと呼ばれた青年の言葉に、エリナと呼ばれた女性は顔を真っ赤にする。
ちなみに、アキトは下心があって言った訳ではなく、純粋にそう思ったから口にしていた。……恐ろしい。

「か、からかわないでよ! それより、帰って来るなら連絡くれれば出迎えたのに」
「仕事の邪魔するのもどうかと思ってさ」
「……僕に対する態度とえらい違いじゃないかい?」

アキトはアカツキの言葉に首を傾げる。アカツキは本日二回目の溜息を吐く。

「……まあ、いいや。そろそろ本題に入りたいし」
「ああ、そうだな」












「――――テンカワ・アキト。君を、ナデシコのパイロットに任命する」
「――――了解。ネルガル会長アカツキ・ナガレ」










これが、全ての始まり。

地球と、謎の侵略者『木星蜥蜴』を巻き込んだ、一大事件の、始まりだった。



[12261] 「ちょっとぶっ飛ばしてくる」
Name: 黒◆527d4c14 ID:17b00bca
Date: 2009/09/28 22:58
地面が柔らかい。掬ってみると、土と草が手に握られていた。芝生だ。
何でこんなとこにいるんだ? つーか……。











俺、誰だっけ?









「話には聞いてたけど、ホントにふざけた形した戦艦だな……」
「いやいや、これは手厳しい」

アキトの言葉に眼鏡をかけたひ弱そうな人物――プロスペクターは困ったように頭をかく。そして、アキトにそう言わせたものを見る。


突き出た何かに、むき出しのブリッジ。お世辞でも戦艦には見えない形。
これこそが、ネルガル重工が作り出した戦艦――ナデシコ。

「……まあ、いいや。さっさと挨拶したいし、入ろうぜ」
「そうしましょうか」

プロスは頷き、アキトとともにナデシコに入っていった。






「…………」
「……テンカワさん、どうしました?」

ここは格納庫。アキトは自分専用に造られたとされる機動兵器――ブラックサレナを一目見ようとやってきた。そして、ブラックサレナを見た瞬間、凍り付いてしまった。

「……なあ、プロスのおっさん」
「何ですか?」
「俺さ、確かに装甲と機動性に特化した機体を造ってほしいって言ったよ」
「ええ。だからその要望に忠実に造りましたよ」

プロスペクターの言葉にアキトはふぅ……と溜息をつき、

「だからって、『コレ』はないだろ」






アキトが『コレ』と言ったもの、それは……。






漆黒の鎧以外に何も身に着けていない、エステバリスだった。







「……ハンドカノンは?」
「現在では威力の低いものしか造れないので必要ないとしました」

淡々と話すプロスにアキトは辺りを見渡し、

「……高機動ユニットは?」
「予算の都合上カットしました」
「……じゃあ、これだけ?」
「ええ、これだけです」
「……そうか」

アキトはにっこりと笑みを浮かべ、

「……最悪だ」

へたり込んだ。










「テンカワさん、いい加減機嫌直してください」
「だってさ~、武器のない機体なんてさ~、ただの鉄の塊じゃ~ん」
「けど、ディストーションフィールドは他の機体よりも強力ですし、バッテリーもエステよりも遥かに長持ちしますよ」
「けど、武器ないじゃ~ん」

完全にいじけているアキト。扱いに困るプロスぺクター。そのとき、





「お前~!! 何勝手にエステバリスに乗ってるんだ~!?」

怒声が響いた。少しだけ意識を向けるアキト。見ると、ピンクのエステバリスが謎の動きをしている。

「どうしたんでしょうか? おや、テンカワさんどちらへ?」

プロスが振り向くと、アキトはどこかに向かおうとしている。振り向くアキト。その顔には笑顔。



「ちょっと、ぶっ飛ばしてくる」







「何なんだよ、パイロットは3日後に乗艦だろ?」
『いや~、本物のロボットに乗れるって聞いたんで、一足先に来ちまいました!』

再び謎の動きをするエステバリス。それを見て呆れている整備班長。






『ギャアギャアうるせぇんだよテメェ!!』

その時、突然現れた黒い何かが、怒声を撒き散らしながらエステバリスを吹き飛ばした。

『うおわあああぁああぁあぁあぁぁぁ!!』

エステバリスは凄まじい速度で吹き飛び、そのまま壁にぶつかった。当然、唖然となる一同。
そんな中、黒い何か――ブラックサレナは殆ど動かない腕を出来る限り動かし、倒れているエステバリスを指差す。

『こっちは落ち込んでんだよ! なのに横からギャアギャアギャアギャアと……喧嘩売ってんのか!?』
「て、テンカワさん落ち着いて……」

ブラックサレナから飛んでくる怒声にプロスは汗を浮かべながら何とか宥めようとする。










その直後、艦内が大きく揺れた。



[12261] 「もうちょいマシなところに出してくれよ」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/09/28 22:59
「……何だ?」
「ブ、ブリッジに行って確かめてきます!!」

突然の揺れに、アキトは眉を顰め、プロスぺクターは慌てて飛び出した。他の整備班員も同様だ。
アキトは暫く揺れを感じていると……。

「……襲撃、か?」

呟き、ブラックサレナのコクピットに飛び乗った。
――何故そう思ったかは、分からない。








「敵の目的は我々の頭上に集中している」

低い声で淡々と告げる巨躯の男性――ゴート・ホーリーが言うと、その正面に居る老人――フクベ・ジン提督は小さく唸り、

「敵の目的はナデシコか……」
「そうと分かれば反撃よぉ!!」

奇声を上げるキノコ……じゃなくて、キノコ頭にオカマ口調の人物――ムネタケ・サダアキ副提督。

「どうやって?」
「ナデシコの対空砲火を真上に向けて、敵を下から焼き払うのよ!!」
「上に居る軍人さんとか、吹っ飛ばすわけ?」

ムネタケの作戦に、胸元を大きく開けた美人操舵士――ハルカ・ミナトは少し顔を顰めて問うと、ムネタケは小さく呻き、

「ど、どうせもう全滅してるわよ」
「それって、非人道的って言いません?」
「ムッキ~!!」

ミナトと顔を見合わせながら言う、そばかすがチャームポイントの女性通信士――メグミ・レイナードに、ムネタケは再び奇声を上げる。

「館長は何か意見はあるかね?」

フクベの言葉に、視線が艦長――ミスマル・ユリカに集まる。実はこの艦長、少し前にかなりはっちゃけた挨拶をして全員を驚かせたのだが、その時とは全く大違いの凛々しい顔で、

「海底ゲートを抜けて一旦海中へ。その後浮上して、敵を背後より殲滅します!!」

そう、言い切った。その際、全員が見直した。とでも言っているかのような視線を向ける。

「だが、今から発進しても間に合わないのでは?」
「その時間を稼ぐために、パイロットの方に囮をやってもらいます」
「そのパイロットのヤマダ・ジロウさん、コクピットで気絶してますよ」
「ほえっ?」

だが、その凛々しい顔はオペレーター――ホシノ・ルリによって呆気なく崩された。
……もうお分かりだろうが、そのパイロット、ヤマダ・ジロウ「ダイゴウジ・ガイ!!」はさっきアキトが吹き飛ばしたエステバリスのパイロットである。

「や、やっぱり対空砲火しか……」
「大丈夫ですよ」

ムネタケの言葉に、今まで黙っていたプロスペクターが、眼鏡を軽く上げ、笑みを浮かべながら言う。








「パイロットは、もう一人居ますよ。しかも、飛びっきりの上物が」










『テンカワさん、早速お仕事です』
「……やっぱり敵襲だったか」
『何か?』
「いや。で、俺はどうすればいいんだ?」

そう言いながらゆっくりと脚部スラスターを使ってカタパルトに移動するアキト。
すると画面が変わり、一人の女性が出てくる。

「えっと……ああ、艦長さんか」
『はい、ミスマル・ユリカです! ……って、そんな場合じゃなかった! ナデシコが上がるまで、囮をして時間を稼いでください』
「了解。そういうのは得意分野だ」

ユリカの言葉にアキトはニヤリと笑い、カタパルトに乗る。カタパルトはブラックサレナを乗せて上に上がっていく。

『あの……どこかでお会いした事ありませんか?』
「は? ……いや、あった事ないと思うけど」
『そう、ですか……』

アキトの返答にユリカは少し残念そうな顔をする。

『エレベーター停止。地上に出ます』
『は、はいっ! そ、それではナデシコと私達の命、あなたに預けます!』
「はいよっ。預かりましたっと」

そして、地上に到達した。









「……預けるなら、もうちょいマシなところに出してくれよ」

そして、大量の無人兵器に囲まれた。



[12261] 「……尚更、負けられなくなった」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/09/30 13:04
今回現れた無人兵器は明らかに百を超えている。
なのにそのど真ん中に置くなど、どういう神経をしてるんだろうか?

「……貸し1な、艦長」

呟くと、バッタに動きがあった。アキトは舌打ちし、ブラックサレナの右側のスラスターのみを噴かす。ブラックサレナは回転し、その後ろに伸びているテールバインダーが周りの無人兵器、ジョロを吹き飛ばした。そして、全速力で上に飛ぶ。

「さて、と。10分か。まあ、何とかなるだろ」

再びスラスターを噴かし、空中の無人兵器、バッタ目指して飛ぶ。気付いたバッタは機関銃で応戦するも、ブラックサレナの厚い装甲には傷一つ付けられない。
ブラックサレナは一瞬でバッタに接近し、テールバインダーを振るう。その先端に付けられたアンカークローがバッタを貫く。バッタは暫く動き、機能を停止した。
そのままそのバッタを投げ飛ばし、他のバッタにぶつける。2体とも小さな爆発を起こし、吹き飛んだ。

「装甲、機動力のテストは完了。次は……」

アキトのIFSが光る。同時にブラックサレナの周りに黒い球体――ディストーションフィールド出現する。アキトは向かってくるバッタの群れを確認し、スラスターを噴かした。そのままバッタの群れを通り過ぎると、一寸遅くバッタの群れは爆発した。

「よし。装備が少ないのは厳しいけど、これならそれなりに行けるな」

アキトは確認を終えると、海に向かって飛ぶ。それを追って、バッタとバッタと連結したジョロが追いかける。










「へぇ~、あのパイロットさん凄いんですね~」

モニターで見るブラックサレナの動きに、ユリカは感嘆の声を上げる。ブラックサレナは猛スピードで走っているものの、無人兵器の動きが他に向かないように、接近して攻撃を加えながらこちらを目指している。

「まあ、テンカワさんは元連合軍のパイロットですからねぇ」
「えっ、そうなんですか?」

メグミが疑問の声を上げる。プロスは頷くと、再びモニターを見る。

「しかし、ある事が原因で軍を辞めまして、それを私達ネルガルが見つけて雇ったんですよ」
「そうなんですか~。……艦長?」

メグミが見ると、ユリカが腕を組んで唸っている。

「テンカワ、テンカワ……何だか懐かしいような……。プロスさん、テンカワさんのフルネームって何て名前ですか?」
「テンカワ・アキトですけど。どうしました?」











「……あと7分。まあ、余裕だろ」

牽制を加えながら、残り時間を見るアキト。バッタの数も最初より大分減っている。

「さ~て、暇になってきたなぁ」

欠伸を漏らすアキト。その間にも敵の攻撃を見事に避けている。

『アキトアキトアキト~!!』
「うおぉっ!?」

突如、目の前のコミュニケが開き、同時に聞こえた大音量。当然驚いたアキト。その状態でもちゃんと牽制を加えていたのは、流石と言うしかあるまい。

『も~、何で知らん振りしてたの? 相変わらず恥ずかしがりやさんだな~』
「艦長、前見えない!!」

アキトの説得はユリカには聞こえなかったようで、未だ笑顔を崩さずに離し続ける。

『やっぱりアキトはユリカの王子様だね。火星に居たときも、いつもユリカのピンチのときに駆けつけて』
「!! 火星!?」

今度はアキトが大声を上げた。さっきとは反対に驚くユリカ。

『あ、アキト。どうしたの?』
「……艦長。後でちゃんと話してやるから、今はちょっと退いててくれ」
『う、うん……。じゃあ、頑張ってねアキト。信じてるから!!』

言い残して、コミュニケを閉じるユリカ。アキトは小さく息を吐く。その目は、さっき以上に真剣みを帯びていた。

「……尚更、負けられなくなった」

アキトはスラスターを全開に噴かし、ディストーションフィールドを展開する。突進し、途中で停止し、回転しながらテールワインダーを振るう。そのうちの一機をアンカークローで捕まえ、投げて爆発を起こす。爆煙でカメラが塞がったバッタを、突進して破壊する。

「……ん?」

そのとき、下に何かの影が見えた。アキトはモニターの時間を確認する。『5分』と示されているモニターを見て首を傾げるも、

「まっ、いいか」

スラスターを全開に噴かし、バッタの周りを円を描くように飛ぶ。徐々に密集していくバッタ。そして、海から何かが現れた瞬間、離脱した。

次の瞬間には、バッタたちは黒い閃光に飲み込まれた。











「敵残存兵器。有効射程内に全て入っています」
「目標、敵まとめてぜ~んぶ!! てぇ~!!」

ユリカの号令と共に発射される黒い閃光――グラビティブラスト。バッタはその閃光に飲み込まれ、一機残さず吹き飛んだ。

「戦況を報告せよ」
「バッタ、ジョロとも残存ゼロ。地上軍の被害は甚大だが、戦死者数は何故かゼロ」
「そ、そんな……偶然よ、偶然だわ!!」

ムネタケの悲鳴は見事に無視された。
そのとき、コミュニケが表示され、アキトの顔が映し出された。

『……後5分じゃなかったのか?』
「貴方のために急いできたの! それよりアキト、怪我なかった?」
『ああ、おかげさまでな』

本当はブラックサレナの装甲は機関銃如きでは効かないようになっているのだが、多分こう言ったほうが喜ぶだろうと思った。実際、ユリカは礼を言われたのが嬉しかったのか、「キャーキャー」叫びながら飛び跳ねている。

『それより、そろそろ回収してくれないか?』
「あっ、そうだった。お疲れ様アキト。後でいっぱいお話しようね~」
『了解。こっちも聞きたいことがあるからな』

二人は笑い合う。その光景にプロスとミナトは微笑を浮かべ、ゴートは無表情。メグミはアキトを見て少し頬を赤らめ、ルリはアキトのデータを検索し、ムネタケはなにやらギャーギャー騒いでいる。










「……ユリカ~」

今まで全く出番のなかった副長――アオイ・ジュンは涙を流していた。



[12261] 「記憶がないんだ」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/09/30 22:38
格納庫。整備班の面々と他一名が、彼の到着を待っていた。
そして、運ばれてくる漆黒の機動兵器。やがて止まると、コクピットが開き、童顔の青年が顔を出した。

「アキト~!!」
「おっ、艦長か。待ってろ、今降りるから」

他一名、ユリカを見ると小さく笑みを浮かべ、コクピットから飛び降りる。おおぉ。とざわめく整備班。そんな中、ユリカはアキトが降りてきたのを確認すると一目散に駆け出した。

「アキトッ!!」
「おっと!」

飛びつくユリカ。それを数歩下がりながらも、抱きとめるアキト。ちなみに、現在地からさっきユリカが居た場所まで、10mはある。さっきの飛び降りと同じく、流石である。
ユリカをゆっくりと降ろすと、ニコニコと満面の笑みを向けてくるユリカに頬を少し赤く染めて頬を掻き、

「艦長。人前で抱きつくのはどうかと思うけど……?」
「え~、何で~? あっ、やっぱり恥かしがりやさんなんだね、アキトは」
「いや、そうじゃなくて……」

苦笑を浮かべるアキト。ユリカは相変わらず笑顔を絶やさない。

「ねっ、それより早くお話しようよ。何話そうかな~」
「えっと……ここじゃ何だから、食堂に行かないか? 俺、昨日から何にも食べてないんだよ」

嘘だ。アキトは昨日も今日もちゃんと食べている。

「え!? 駄目だよアキト、ちゃんと食べないと倒れちゃうよ!」

ユリカはさっきまでの笑顔を一変させ、アキトを引っ張っていく。引き摺られながらも苦笑を絶やさないアキト。そのまま二人は仲睦ましく格納庫を出て行った。

「……あのやろ~、早くも艦長を落としやがって」

その際、整備班長がそう恨みを籠めて呟いていたらしく、アキトは身震いし、ユリカがそれを心配して一悶着起きていた。








「いらっしゃい!! おや、艦長と……」
「パイロットのテンカワ・アキトです」

ナデシコ食堂のコック長、ホウメイにアキトは一礼する。ホウメイは手を繋いでいるアキトとユリカを見ると意地の悪そうな笑みを浮かべ、

「なんだい、あんた等随分とお似合いじゃないか」
「やっぱりそう見えます? 良かったねアキト、私達お似合いだって!」
「か、からかわないでくださいよ!」

頬を赤く染めるアキトに、ホウメイは豪快な笑みを浮かべる。

「いや~、悪かったね。そんなに純情だとは思わなくてさ」
「あんまり慣れてないんですよ、もう……ラーメン一つ」
「私もアキトとおんなじの!!」
「はいよ! ちょっと待ってな」

そう言い残して厨房に消えていくホウメイを見届け、アキトとユリカは椅子に座る。……その際、さり気無くユリカをエスコートしてるあたり、アカツキと同じくスケコマシの素質があるのかもしれない。

「さて、と。あのさ、ホントに俺達って火星で会ってるの?」
「えっ、覚えてないの? 私達お隣さんだったじゃない」

首を傾げるユリカ。アキトは言いにくそうな顔をして、顔を天井に向ける。











「……俺さ、火星に居た頃の記憶がないんだ」

「えっ……」
「気付いたら地球にいて、何度思い出そうとしても、思い出せないんだ」

アキトからの衝撃の発言に、ユリカは固まってしまった。アキトは顔をユリカに戻すと、苦笑して、

「だから、艦長の事も覚えてないんだ。悪いね」
「う、ううん。いいの。それでもアキトが私の王子様なのには変わりないもん!」

そう言って、華の様な笑みを浮かべるユリカ。





その笑顔を見た瞬間、何かが頭の中に浮かんできた。

病院の一室。涙を流す黒ずくめの男と、これから命が散るというのに、それを感じさせない笑みを浮かべる女性。


ゆっくりと上げられる女性の手を黒ずくめの男は掴む。それに満足したかのように、女性は何かを呟き、瞳を閉じた。


そして、慟哭。黒ずくめの男の慟哭。愛する者を失った男の、慟哭。





(!? 何だ、今のは?)

意識を取り戻したアキトは、辺りを忙しなく見渡す。そこにはユリカが一人、心配そうに自分を見ているだけで、他には何もない。

「……アキト、どうしたの?」
「ん? いや、何でもない」

だが、それでも心配なのか、不安そうな顔でこちらを見ている。アキトはどうしようか考え、

「……あ、そうだ。俺は艦長の事を何て呼んでたんだ?」
「えっ、私の事? ユリカって呼んでたよ」
「そっか。じゃあ、これからはユリカって呼んでもいいかな?」

アキトの提案にユリカは顔を綻ばせ、頷く。それを見てアキトも微笑む。

「お待たせしました、ラーメン二つです!」

そこに、従業員の一人がラーメンを運んできた。軽く礼をし、アキトはユリカに割り箸を渡し、

「さて、と。じゃあ、食べよっか、ユリカ」
「うん!」

二人は箸を割り、手を合わせる。

「「いただきます!」」









(それにしても、まだ十分経ってないぞ?)

食べる直前、アキトはそんな疑問を抱いていたのだが、

(あっ、美味い)

食べた途端、その疑問は消え去ってしまった。



[12261] 「疲れる戦艦だな」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/10/01 14:06
ブリッジ。周りが騒がしい中、ホシノ・ルリは黙々と何かを見ていた。
それは、オモイカネで検索した、テンカワ・アキトのデータ。

『テンカワ・アキト 18歳。火星出身。
火星時代については不明の為、地球での彼のデータのみ記載する。
15歳で軍の養成学校に入学。そこで極めて優秀な成績を取り、軍に入隊。
しかし1年後、とある理由で軍を除隊。軍も、その理由のために除隊を許可する。
その後、ネルガル重工に就職し、ネルガル所属のパイロットとなる』

ルリは、それを呼んで眉を顰める。

(……とある理由?)

そう、このとある理由の部分。プロスペクターもこの部分については説明していなかった。

(……オモイカネ、この部分を検索)
《了解》

再び、検索開始。だが、どうも厳重なプロテクトが掛けられているのか、時間がかかる。ルリは溜息を吐いて天井を見ると、

「なにやってるの?」

ミナトの顔が、どアップで映った。

「!!」
「あっ、ごめ~ん。驚かせちゃった?」

びくりと、目を見開いて大きく震えるルリを見て、ミナトは手を合わせて謝る。だが、口元が笑みの形を作っていることから、本気で謝ってはいないようだ。

「いえ、別に」
「ホントにごめんね。で、何見てたの?」
「テンカワさんのデータです」

ルリは抑揚のない声でそう答える。すると、ミナトは驚いた顔をすると、すぐににやける。ルリにはその意味が分からず、首を傾げる。

「ふ~ん、ルリルリ、テンカワくんの事が気になるんだ」
「ええ。あれ程の腕を持つパイロットが、今まで噂一つないなんて変ですから」
「あっ、そう……」

ミナトはつまらなそうに口を尖らせる。ルリが再び首を傾げると、モニターに反応があった。どうやら、検索が終了したらしい。ルリがそれを見ると……。










そこには、黒いエステバリスがバラバラになっている写真が、10数枚映っていた。










テンカワ・アキトは、シャワーを浴びながら考える。

(あれは、何だったんだ?)

あのとき、脳裏に映った映像。黒の男と、死に掛けの女。自分には全く記憶にない。

(もしかして、アレが俺の火星時代の記憶?)

だが、しっくりこない。もしあの映像が自分の失われた記憶だとしたら、黒の男は自分だろう。だが、黒の男は明らかに自分よりも年上だ。

「……訳分からん」

シャワールームから出て、迅速に着替えを行う。そろそろ、プロスからの説明の時間だ。
着替えと、特注品の黒い制服に着替え、アキトは扉を開けた。





「……ユリカ、何やってんの?」

何故か、ユリカが自分の部屋の前で蹲っていた。

「ううっ、ねえアキト、マスターキーって全部の部屋を開けられるんじゃないの?」
「俺、プロスのおっさん、ゴートさんみたいなネルガル職員の扉は特別で、本人じゃなきゃ開けられないんだよ」
「えええぇ!! 何で恋人の私がアキトの部屋に入れないの!?」

いつ恋人になった? アキトは溜息をつき、対応を考える。
そのときだった。

『艦長……って、テンカワさん!?』

突然、コミュニケが開き、メグミが出てきた。メグミはアキトの顔を見た瞬間、顔を茹蛸のように真っ赤にしてしまった。

「ん? えっと……」
『あっ、メグミ、メグミ・レイナードです! ナデシコの通信士をやってます! あ、あの、テンカワさんの戦ってるところ、凄くかっこよかったです!!』
「そう? ありがと」

アキトは軽く笑う。それだけで、メグミは唯でさえ赤かった顔をこれ以上ないほどに赤くしてしまった。それを見て首を傾げるアキト。……やはり、スケコマシの素質があるのかもしれない。

「……む~。で、メグミちゃん、何かあったの?」

当然、ユリカが黙っているはずがない。頬を膨らましてアキトの前に立つ。当然メグミは慌てて、

『そ、そうだ艦長。ブリッジに来てください』
「ほぇ?」
『プロスさんから、重大発表があるそうです』

それだけ言うと、メグミは名残惜しそうにアキトを見てコミュニケを閉じた。頭にクエスチョンマークを浮かべるユリカ。

「……ったく、疲れる戦艦だな」

アキトは苦笑して呟き、ユリカを連れて行った。



[12261] 「褒めてねえよ」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/10/01 17:06
アキトとユリカがブリッジに行くと、全員の視線が二人に向いた。どうやら、彼等が一番遅かったらしい。

「テンカワさん、艦長。もう少し早く来てくれないと困りますなぁ」
「ユリカに言ってくれよ、そういうのは」
「あ~、アキトひど~い!」

頬を膨らませるユリカに手をひらひらと振り、プロスペクターの隣りに移動するアキト。未だ頬を膨らませているユリカに、ミナトとメグミが近寄り、

「ねえ、艦長。アキトくんとはどういう関係なの?」

ニヤリと笑いながら聞く。隣にいるメグミも興味津々だ。

「アキトと? そんなの決まってるじゃないですか~。アキトは私が」
「艦長!!」

このままでは話が進まないと判断したのか、プロスペクターが怒鳴る。ユリカはしゅんとなって、申し訳なさそうに下を向く。

「え~、ではそろそろナデシコの目的地をお教えしようと思います」
「しつも~ん」

ミナトが手を上げる。……小学校か? そう思いながらも、プロスペクターはどうぞと促す。

「何で最初から言わなかったのよ? 普通、目的とかは契約の最初に言わない?」
「妨害者の目を欺くためですよ、ハルカさん」

アキトが腕を組み答える。アキトはプロスペクターを見る。プロスペクターが頷くのを見ると、一歩前に出て説明を続ける。

「これよりナデシコは、スキャバレリプロジェクトの一端を担い、軍とは別行動を取ります」
「で、結局どこに行くの?」

急かすミナトを宥め、アキトはフクベに一礼すると、スッと下がる。フクベは咳払いし、

「我々の目的地は、火星だ!!」

高らかに宣言した。









「それじゃあ、地球は見捨てるのですか!?」

それまで大人しかったジュンが、突然声を荒げる。それを見てアキトは溜息を吐き、ジュンの前に出る。

「そうは言わないさ。だが、火星の住人は? 資源は? まだ残っている可能性だってあるんだ。その救助のために、ナデシコは火星に行く」
「そ、そんな確率の低い事をするより、このままナデシコは地球防衛に使うべきだ!」
「つまり、火星の住人は見捨てる、と」
「そんな事は言ってない!!」
「言ってるだろ」
「ぐっ……」

黙ったジュンを見て、アキトはプロスを見る。プロスは頷き、

「では、これよりナデシコは火星に向けて発進します!」
「そうはさせないわよ!!」

突然の声と同時に、銃を持った軍人が大量にブリッジに入ってきた。
そして、少し遅れてムネタケが入ってくる。

「……何のつもりですか、ムネタケ副提督?」
「この艦は軍が地球防衛に使わせてもらうわよ!!」
「困りますなぁ。軍とのお話はすでに済んでいるはずですよ」
「あら、そうだったの? けど、これも軍の命令なのよ、悪いわね」

ムネタケはふふん、と笑い、アキトに近寄る。アキトは相変わらず腕を組んでいる。

「久しぶりねぇ、テンカワ元中尉」
「そうですね、ムネタケ中佐。ああ、今は副提督でしたっけ」
「相変わらず生意気な奴ね」
「お互い様ですよ」

ニヤリと二人は笑い合う。暫くするとアキトが口を開き、

「しっかし、ホントにムカつく人ですね。わざと大騒ぎして自分を無能だと思わせ、油断したところを突然の奇襲。ホント、あくどい事この上なしですよ」
「褒め言葉と受け取っておくわ」
「お好きにどうぞ。しかし、この人数で何ができます?」
「確かに何にも出来ないわね。けど……」

そのとき、ナデシコのモニターに海から現れる戦艦が映し出された。その名は、連合宇宙軍第3艦隊旗艦、トビウメ。
アキトやプロスペクターなどのネルガル職員以外が呆然とする中、モニターにカイゼル髭の男が姿を現した。

「こちらは、連合宇宙軍第3艦隊提督、ミスマル・コウイチロウである!!」

カイゼル髭の男、ミスマル・コウイチロウは告げる。アキトは苦笑してムネタケを軽く睨み、

「……ホント、あくどい事この上ない人ですね、あんたは」
「ありがと」
「褒めてねえよ」

とうとう敬語を使わなくなったアキト。だが、そこである事に気付く。

「ミスマル? ってことは……」
「お父様!!」
『えぇっ!?』

ユリカの衝撃発言に、全員が驚く。そりゃあそうだ。ユリカとは似ても似つかない。コウイチロウはユリカの姿を確認すると、










「ユウウゥゥウウゥウゥゥゥリカアァアァァァ!!」

涙を流さんばかりの大音量で叫んだ。

『ギャアァアアァアァアァ!!』

その余りの声の大きさに、全員が、ムネタケまでもが悲鳴を上げた。



[12261] 「お前はそのままくたばっちまえ」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/10/01 18:22
藍色の宇宙に、華が咲いた。
その黒い機体が走った後には、色とりどりの華が咲き、散る。
やがて全ての華が散ると、黒い機体はゆっくりとその動きを止める。

『……ラピス、今からそっちに戻る』
『ウン、分カッタ』

機械的な声が、聞こえると、黒い機体の操縦者はポケットから青い石を取り出す。

『……ジャンプ』

一言呟くと、黒い機体は光の粒子を残して、消えた。

後に残ったのは、大輪の華を咲かせていた戦艦、機動兵器の無数の残骸。





嘗て、愛するもののために全てを捨て、復讐鬼と化した青年の記憶である。






「う、く……」
「あっ、テンカワさん起きました?」

頭痛のする頭を押さえながらアキトが起き上がると、メグミが嬉しそうに駆け寄ってくる。

「……ここは?」
「食堂ですよ。あの後、皆アレに気絶しちゃったみたいで、気付いたらここにいたんです」

アレとは、言わずと知れたコウイチロウの大音量ボイスの事である。まさか、気絶するほどとは……。

「……ユリカがいなんだけど?」
「艦長ならプロスさんと一緒にトビウメに行きましたよ」
「……艦長なのに?」
「はい、相手からの要求で」

ちなみに、ジュンも付いて行ったのだが誰にも気付かれることはなかった。

「……ちなみに、その要求には他に何があった?」
「えっと、マスターキーでしたっけ? それの引渡しです」

マスターキーとは、ナデシコを起動させるために必要不可欠なもので、これがなければナデシコなどただの鉄の塊だ。

「……なるほど。流石に抜いてったりしてないよな」
「テンカワさん、今ナデシコ海に浮いてますよ」
「……抜いたのか」

今度こそ、アキトはへたり込んだ。内心、あの馬鹿が。と、今は居ない我が艦のお惚け艦長を罵りながら。

「なぁにを落ち込んでるんだお前!!」
「ん……確かお前は、ヤマダ・ジロ「ダイゴウジ・ガイ!!」……何でもいいよ、もう」
「よぉし、俺がとっておきの元気がでるビデオを見せてやるぜぇ!!」
「……は?」

と言って、なにやらウリバタケと共に準備しているガイ。それを生気のない目でただ茫然と見ているアキト。

「さぁ、見て驚け!! スイッチ、オォン!!」

無駄に高いテンションのヤマダ・ジロ「ダイゴウジ・ガイだって!!」は、腕を高々と振り上げてスイッチを押す。そして……。

『ゲキガンガー3!!』
「……もういいよ。お前はそのままくたばっちまえ」
「まあ、そう言うなって。見てれば絶対元気が出るからよ!!」

ガイの熱弁に仕方なく、ゲキガンガー3を見るアキト。










……数分後

『ゲキガン・フレアー!!』

はまっちゃいました。ガイとポーズを組んでノリノリのアキト。それを、唖然として見ている一同。

「やべぇ、やべぇよガイ!! まさかこの世にこんな素晴らしいアニメがあったなんて知らなかったぞ!!」
「そうだろう、そうだろう! 分かってくれるかアキトォ!! これが熱血なんだよぉ、魂の迸りなんだよぉ!!」
「ああ、分かるさガイ!! 何か、力が漲ってきたぁ!!」
『レッツ・ゲキガイン!!』

完全に洗脳(?)されてしまったアキト。そんな二人を見て、

「……馬鹿」

ルリは一人、呟いていた。

「……さって、と。大分テンションも上がったところで、そろそろ行きますか!」
「ん? どこへだよアキト?」

聞くガイにアキトは「決まってんだろ」と二カリと笑い、

「我等がお惚け艦長の救出だよ」



[12261] 「……悪くないな、こういうのも」
Name: 黒◆527d4c14 ID:d0cffb4c
Date: 2009/10/01 20:02
何かを、殴打する音が聞こえた。それと同時に、食堂の前にいた軍人が倒れる。
殴った人物、アキトは落ちたライフルを取ると、

「じゃ、行ってくる」

と言い残し、格納庫へと走って行った。
……だが、少ししてから戻って来て、

「忘れてた忘れてた。ホシノさんとレイナードさん、それとゴートさん。一緒に来てくれ。良く考えたら俺一人じゃ絶対無理だ」

……どこか抜けているアキトだった。






「さて、と。行こうか、サレナ」

ゴートが抑え付けている間にブラックサレナに乗り込んだアキトは、軽くコクピットを叩いて操縦桿を握る。ブラックサレナの赤い目が光り、ゆっくりと動き出す。

『ゴートさん、後の指示お願いしま~す!』
「了解だ! 発進はルリの指示に従え!!」

アキトはゆっくりとカタパルトに行き、構える。

『テンカワさん、気をつけて!』
『大丈夫。馬鹿を一人救出してくるだけだからさ』

そう言い残し、スラスターを噴かせる。全速力で走ると、絶対にぶつかるから、少しずつ出力を上げていく。

『位置に着いて!』
『マニュアル発進。よーい、どん』

やる気のない声だな。などと苦笑し、直に表情を引き締める。

「ブラックサレナ、出る!!」

エステバリスよりも遥かに速い速度で、ブラックサレナは発進した。







「おいおい……チューリップいたのかよ?」

アキトは舌打ちし、スラスターを更に噴かす。その途中で、一機のヘリが見えた。疑問に思って通信を繋げる。

『あっ、アキト! また囮になってくれるの!?』
「……随分と行動力に満ち溢れたお姫さまだ事」

アキトはここまでの苦労は何だったんだ? と言わんばかりに溜息を吐き、

「ああ、もうそういうことでいいよ。だからさっさとナデシコに戻れ」
『うん! アキト、死なないでね』

言い残してヘリは飛び去っていく。それを見届けた後、

「……死なないよ、やっと『乗れる機体』に会えたんだからな」

アキトはスラスターを全開に噴かし、チューリップに向かう。





襲い来る触手を素早い機動で回避し、注意が引くように周りを飛ぶ。

「ちっ、キリがないな。せめてもう一機居ればなぁ」

ぼやきながら、再び接近する。触手を回避し、その触手をディストーションフィールドを展開して攻撃する。だが、まだ触手はかなり残っている。舌打ちして、再接近。

「ったく、パイロットって俺一人なのかよ? ……なんか、最初の方に一人居たような気がしたんだけど……」
『俺を呼んだかアキトォ!!』

そのとき、突然コミュニケが開き、

「が、ガイ!?」
『応よ!! ナデシコのエースパイロット、ダイゴウジ・ガイとは俺の事だぁ!!』

ナデシコから空戦フレームのエステバリスが一機飛んできた。多分、あれがガイの機体なのだろう。『ゲキガン・ウィ~ング!!』などと叫びながら触手を回避している。

「へぇ……中々いい腕だな」
『あたぼうよぉ!! さ~てアキト、とっととあの気持ち悪い奴を倒そうぜ!!』
「了解。……俺があの触手を引きつけるから、その間に触手を吹き飛ばせ」
『任せとけぇ!!』

その通信を最後にコミュニケを閉じると、アキトは口元を小さく歪め、

「……悪くないな、こういうのも」

呟き、スラスターを全開に噴かせる。そのまま常人では失神してしまうほどの速度で触手を避け、しかし自分に狙いを定めさせるために、一定の距離を保ち続ける。

『行くぜ~!! ゲキガン・フレアアアァアアァァ!!』

そして、ガイのディストーションアタックが、触手を全て薙ぎ払った。

『アキト、お疲れ様!! 後は私達に任せて!!』

ユリカのコミュニケが突然開くと、ナデシコはチューリップ目指して飛ぶ。

「ば、馬鹿!! 何考えてんだあいつ!?」
『アキト、あいつはお前の恋人だろ!! だったら最後まで信じてやれ!!』
「いや、恋人じゃねえし!!」

そんな話をしている間に、ナデシコはチューリップに入り込んでしまった。






そして、チューリップは破裂した。

「内側からの大砲。は、はは……。馬鹿かあいつ?」
『アキト、お疲れ様!! あ、ヤマダさんも』
『ダイゴウジ・ガァイ!! つーかアキト、お前顔が真っ青だぞ!!』
『え~!? アキト大丈夫? アキト死なないで~!!』
「原因はてめぇだ~!!」









「追いますか?」
「鈍足の本艦で追いつくのは不可能だ。作戦失敗だな」

ジュンの言葉にコウイチロウはどこか消沈しながら返す。ユリカが出て行く前の、好きな人発言で落ち込んでいるのだろう。

「しかし、テンカワ・アキト……少し前に聞いた覚えがあるのだが……」

コウイチロウは顎に手を当てて、唸る。

「ユリカ……」

置いていかれたジュンは、ただナデシコの、正確にはユリカの去っていった方角を、見つめていた。











「テンカワ・アキト……テンカワ・アキト……!! おお、思い出した!!」

突然、コウイチロウがガバっと顔を上げ、








「テンカワ・アキト! 嘗ての連合宇宙軍の中尉で、『機体殺し』のテンカワ・アキトだ!!」



[12261] 「……喧嘩売る才能でも持ってんのか、お前は?」
Name: 黒◆527d4c14 ID:14657543
Date: 2009/10/03 15:26
『うおおおぉおおぉおぉおぉぉりゃああぁあぁあぁぁああぁああぁ!!』
「その叫びいるのか?」

青色のエステバリス、ガイ機のラッシュをブラックサレナに乗ったアキトは避ける。上手くスラスターの出力を調節し、脚部スラスターで後退しながら僅かな動きで回避する。

『ちっ、だったらこれはどうだ!!』

ガイはラッシュを途中で止め、エステバリスに搭載されたワイヤードフィストを使う。完全に隙を突いた一撃。にも関わらず、

「おっと」

アキトはそれをテールバインダーで弾く。そのままディストーションフィールドを展開し、

「じゃ、そろそろ終わりにしようか」

加速。最高出力で突進し、ガイ機に激突した。

『おわああぁああぁぁあぁぁ……』

悲鳴を上げながら飛んでいくガイ機は徐々に離れていき……、爆発した。






「くっそおおぉ!! アキト、おめえ強すぎるだろぉ!!」
「当たり前さ、俺は最強だからな」

『YOU LOSE』と表示された画面を見た後、シュミレーターのハッチから出たガイは怒鳴る。アキトは『YOU WIN』と表示された画面を見た後、ニヤリと笑う。

「畜生……。もう一回勝負しろ!」
「ああ、幾らでもどうぞ」
「言ったなぁ! よ~し、見てろよ~!!」

再びシュミレーターに入るガイ。フッ、と小さく笑いながら続くアキト。



「うぎゃ~!!」

数分後、ガイの悲鳴が再び響いた。






「……喧嘩売る才能でも持ってんのか、お前は?」
「え~、だって~……」
「だってじゃねえよ」

怒りを通り越して呆れの色を見せるアキトに、ユリカは拗ねている。
アキトたちがシュミレーションで特訓(アキトのリンチとも呼ぶ)している頃、連合軍との話し合いがあったらしい。ナデシコの要求は、ビッグバリアの一時的解除。当然、軍はそれを拒否。……本来なら、そこまでなのだろうが。

「そんなかっこで出るとか、お前はホントに……」
「だって~、折角のお正月なのに、着物を着ないなんて損でしょ?」

そう、ユリカは着物を着て、司令部に赴いたのだ。当然、相手は激怒し、全軍でのナデシコ撃沈という判断を下してしまったのだ。

「はぁ……。けど、それにしちゃあ迎撃が少ないな」
「ああ、そのことですか。ルリさん、お願いします」

ルリはウィンドウを表示する。そこには、青い矢印と赤い矢印が何個もぶつかりあっている画像。

「……青いのを連合軍だとすると、この赤いのは?」
「今まで停止していたチューリップです。どうやら、連合軍に刺激されて再起動したようです」
「なるほど、ね。となると、現在はミサイルによる追撃だけ、か」

機内を襲う振動を感じながら、アキトは呟く。

「と、いうことは第三防衛ラインのデルフィニウム部隊までは安全か」

アキトはそれだけ言うとブリッジを出て行く。

「アキト、何処行くの?」
「シュミレーションルーム。ガイと再戦の約束してるんだ」

言い残して、手を振りながらアキトはブリッジを出て行った。

「……ああっ! アキトに着物の感想聞くの忘れてた~!!」

ユリカも叫びながら飛び出した。









「……馬鹿」

それを見て、ルリが呟いた。



[12261] 「……寝言は寝て言えよ」
Name: 黒◆527d4c14 ID:14657543
Date: 2009/10/04 16:02
眼前に広がるは大量の機動兵器。自分の使っていたエステバリス。だが、全てボロボロで、酷いものはバラバラになっている。
その相棒達に黙礼し、その場を後にした。




行く場所がない。ただ、ふらふらと歩く自分。そんな自分の前に現れた、一人の男。男は愛想笑いを浮かべると、

「あなたをスカウトしに来ました。テンカワ・アキトさん」

そう言って、名刺を差し出してきた。
名刺には、『プロスペクター』と書かれていた。







ガイを30回位瞬殺してから、アキトはある場所の前にいた。無言でその扉を開け、中に入る。

「……ん? なんだ、あんたか」
「来てやったのにそれは無いんじゃないんですか?」

そこは、少し前に起きた反乱事件の実行者達を閉じ込めている部屋。誰かが、この扱いはどうたら言っているが、無視する。

「まっ、それはいいとして。これからナデシコは第三防衛ラインを突破して火星に向かいますけど、どうします?」
「付いて行く訳ないでしょ。私はまだ死にたくないわよ」
「でしょうね」

アキトは肩を竦めると、ナイフでムネタケを縛っている縄を切る。

「じゃっ、隙見て脱出してください。正直、あんまりあんたの顔見たくないんで」
「こっちの台詞よ」

一寸睨みあい、アキトは後ろを向く。

「そういえば、あんたのあの真っ黒いの、なんだっけ?」
「真っ黒? ……ああ、ブラックサレナの事か」
「そうそう、サレナよサレナ」
「略すんじゃねえよ」

アキトの非難を無視して、ムネタケは続ける。

「考えたわね~。あれなら、『機体殺し』のテンカワ・アキトの名を返上できるじゃない。今からでも軍に入らない?」
「……寝言は寝て言えよ」

アキトは振り返らずにその場を後にする。ムネタケは肩を竦めて部下の縄を切ると、

「さて、と。あいつらがドンパチやってる隙に、とっととこんな所からおさらばするわよ」






「機動兵器を確認。ステーション『さくら』から発進したデルフィニウム部隊です」
「数は!?」
「9機です」

ウィンドウに表示されたデルフィニウム。ユリカはそれを鋭い視線で見つめ、

「エステバリスで迎撃。その後、全速力でビッグバリアを突破します!」
『おっしゃ~!! 任せとけ~!!』

ガイの声と共に、青い空戦フレームが飛ぶ。だが、アキトのブラックサレナは未だ発進されない。

「あれ? アキトは?」
『俺は少し調整がある。だから終わるまでガイに任せるよ』
『おっしゃぁ!! 任せとけアキト!!』

イミディエットナイフを握り、デルフィニウム部隊に向かって行くガイ。応戦するデルフィニウム。だが、その攻撃をガイは容易く回避し、

『アキトの方が何倍もはえぇよ!!』

デルフィニウムの腕を切り裂き、殴り飛ばした。そのとき、後ろから何発ものミサイルが飛んでくる。ガイは舌打ちするとそれを上に飛んで避ける。だが、その進行方向に他のデルフィニウムが現れ、突進してくる。

『おっとぉ!!』

それを間一髪で避けるも、再びミサイルが飛んできて、攻撃に専念できない。









『ユリカ! 今すぐナデシコを地上に降ろすんだ!!』
「ジュン君!!」

そのときだった。ナデシコのウィンドウが開き、パイロットスーツのジュンが現れたのは。


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