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[11062] 帝国の影に生きる者
Name: 帝国軍衛士◆b147bc52 ID:0d91dbf1
Date: 2009/08/15 22:41
初心者ですのでいたらないところがあると思われますが、そこは目を瞑って見守ってください。
また、誤字や文法の誤りがある場合も指摘していただければ助かります。



            
              ~プロローグ~
12月5日、その日の帝都は朝から雪が降っていた。
遠方より銃声が轟く。「遂に始まったか…。」渡辺依々子大尉は愛機の中でそう呟いた。
「各機、陣形を維持してこのまま前進する。遅れるなっ!!」彼女は部下に指示を出す。
「了解!!」と部下達からの返事が返って来る。

富士教導隊の特殊部隊に配属されて三ヶ月余り。まさかこのような任務に赴くことになるとは誰が予測しただろうか。
きっと転属命令を伝達してきた人事部の小太りの仕官でさえ知るはずがないだろう。
三ヶ月前、本土防衛軍の戦術機甲部隊に所属していた私に突如転属命令が出た。確かに周りの友人達からは、
私の実力ならそのうち教導隊か斯衛軍からお呼び出しが来るだろうとは言われてきた。
しかしそれは冗談の範囲で実際に来るとは誰も思ってはいなかった。同じ部隊の親しい友人達とPXで食事をしていたとき、人事部の人間が直接私のところへ来た。
普通は私の方が人事部へ行くべきなのだが…。
そして部屋に帰り、手渡された文書に目を通して私は何となくそれまでの疑問を理解した。
文書に書かれていた部隊名を今でもはっきりと覚えている。現在の所属部隊なのだから当然といえば当然なのだが…。
「富士教導隊特別任務部隊」どうやら特別任務に当たる部隊のようだ。それが私の考えだった。
そして私は戦友たちに別れを告げる事もできずに新たな勤務先へと赴くことになるのであった。

本編へ続く




[11062] 帝国の影に生きる者
Name: 帝国軍衛士◆a3be3cf2 ID:0d91dbf1
Date: 2009/08/22 19:31
~帝国陸軍富士駐屯地~
「渡辺依々子大尉、転属命令を受け本日着任いたしました。」
私は大隊長以下部隊員の前で着任の挨拶をした。
「渡辺大尉、貴官を歓迎する。」と、特別任務部隊、通称フェアリーズの隊長、朝倉涼介少佐が代表して挨拶する。見た目はまだ幼さが残る。十七、八と言った所か。
「我々は教導部隊としての任務が主だが、時折重要な任務を与えられることもある。それだけ我々の技量が高いと評されているということだ。貴官にもそれを期待されていると言うことを忘れないでほしい。」
と続けて挨拶をする隊長。よく、この年齢で大隊長を務められると思う。
その後、部隊の編成や主要人物を紹介してもらった。
「我が大隊は四中隊に分かれて作戦を行う。第一中隊は私が隊長を勤める。第二中隊は朝倉恋大尉が、第三中隊は梶原剣一大尉が勤める。CPは朝倉悠大尉が勤めている。」隊長が紹介した三名が一歩前へ出てくる。ふと私は疑問に思った。四中隊あると言うのに三名しか各中隊長を紹介されていない。
「少佐、第四中隊の隊長はどなたが…?」と私は聞いた。「第四中隊の隊長、石塚中佐はもうここには居ない。」「では、昇進して別の部隊へ配属されたのですか?」「いや、先の新潟へのBETA上陸の際、要撃級にやられて二階級特進だ。そして君が彼の後任というわけだ。」と隊長は
言う。世間話でもするかのように。「わ、私がですか?」と思わず聞き返してしまう。「君の階級ならば、中隊長でも問題はないと思われるが?」「いえ、そのような問題ではなく、着任したばかりの人物を中隊長に置いても良いのですか?」「資料のデータを見る限りでは前の部隊でも隊長を勤めていたようだし、出来ないことは無いと思うのだが…?」などという遣り取りをする事数十分、結局私が第四中隊の隊長になってしまった。「では大尉、後で中隊の隊員と顔合わせをしておいてくれ。後ほど歓迎会をPXで開くことになるが…。」
などと、こちらの内情をちっとも気にしていない様子で少佐が話を進めている。気がつけば、私と隊長以外は皆解散している。
「我が隊の運用について少し説明する。基本、我々の部隊は他の教導隊と同様に仮想敵機として演習に参加する。だが、それはあくまで表面上だけの話だ。」表面上…。特殊部隊だけに演習だけではなく何かややこしい仕事をやらされるのだろうと前々から予測はしていたものの、改めて言われると少し緊張する。
「まず、我々の部隊に配備されている機体についてだが、全て不知火だ。」
うん、これについては問題ない。富士教導隊といえば、露迷彩の不知火が有名だ。それに私も前に所属していた部隊で使っていた。「だが、通常の部隊に配備されている不知火とは少し違う。センサーや装甲など、常に最新の物へ換装されている。」なるほど、最新の機材のテストをしているわけだ。「機体の迷彩も青を基調とした露迷彩ではなく、黒や灰色がメインカラーになっている。極力視認されないようにだ。」
それは少し残念だ。あの可愛い(?)青い迷彩ではなく、黒い露迷彩だからだ。「うん?何か残念そうに見えるが…。どうかしたか?」「いえ、何でもないです。」人を観察するのは得意なようで油断ならない。「BETAは色を識別しない。なぜ視認されにくい黒色なのかと言うと、我々が相手をするのはBETAだけではないからだ。」対人戦も仕事なのだろう。まさか要人の暗殺なども仕事でやっているのではないだろうか?「まあ、どこかの偉い人を闇討ちするようなことは仕事には入っていない。そこは安心しても良い。」あっさりと否定された。「最近の出撃記録を渡しておくから適当に見ておいてくれ。」
もう適当だ。配属初日は隊長との遣り取りで散々な目にあったのを覚えている。

歓迎会の後、私の副官の七瀬風香中尉から、明日私のために演習を行うとの連絡を受けた。着任して早々、忙しいものである。とりあえず自室に戻り、渡された資料を熟読する。少しでも
私が指揮を執る中隊、通称ピクシーズの部隊構成を見て私は驚いた。機体数九機というのは問題ない(もともと一個大隊三十六機を四中隊に分けている時点で知っていたので)。だが、隊員のポジションを見てみるとどうだ。私のポジションは左翼迎撃後衛。これは問題ない。しかし、他の部下はどうだ。強襲掃討四名、制圧支援が四名。戦力が偏っているなどという問題ではない。前衛が一人もいないのだ。
「大尉、ブリーフィングを始めますのでハンガーまで向かいましょう。」
やるというのであれば仕方がない。私は不安を残しながら部下達の待つハンガーへと足を向けた。

続く


次回更新は都合により9月下旬を予定しています
皆さんのアドバイスを有効活用できるべく努力したいです



[11062] 帝国の影に生きる者
Name: 帝国軍衛士◆ef406e2c ID:0d91dbf1
Date: 2009/12/06 00:34
初めに…。
予告通りに続編を更新できなかったことを深くお詫び申し上げます。

元々は40人で一つの部隊だったらしい。
しかし、厳しい任務を潜り抜ける過程で多くの隊員が命を失い、
その穴を埋める隊員となる人材が居ないため、現在は36名で運用されているようだ。

~帝国軍富士駐屯地第二演習場~
ブリーフィングが終わり部隊は演習場へをむかう。
この演習場は大きな都市の跡地のために多くの障害物がある。

「これより、演習を始めます。各部隊は所定の配置に着いて下さい。」
第四中隊CPの須藤少尉の声が聞こえる。もうじき演習が始まるようだ。
ブリーフィングでは、相手チームの構成や隊員のポジションなどについ
て確認はしたものの、不安が残る。着任二日目でいきなり部隊の指示を
出さなければならない。
「いくらブリーフィングで打ち合わせをしたからと言って…。」
私はつい言葉に出してしまったのだろう。
「心配ないですよ、部隊の動きを確認するのが目的のようなものですか
ら。」と、副官の七瀬中尉から言われてしまった。
「わかっている、この部隊の連携をしっかりと見させてもらうつもり
だ。」
その時は本当に見せてもらうつもりだった…。
演習は統合仮想情報演習システムJIVESを使用して行う。
戦術機の実機の各種センサーとデータリンクを利用した砲弾消費による
重量変化や着弾や破片による損害判定及び損害箇所など物理現象をシ
ミュレートできる優れものだ。そのため演習と言えども実線へ赴く気分
だ。また、今回は部隊が全滅するか、指揮官機が落された時点で戦闘が
終了する。
「戦闘開始です。」
その一言と共に両部隊が動いた。私の部隊は二手に分かれた。強襲掃討
を前に出し、制圧支援にカバーさせる。
一般的な陣形だが、この部隊編成ではこれがもっとも効果を発揮する。
「ピクシー6、フォックス1!」
「ピクシー7、フォックス1。」
制圧支援による誘導弾の攻撃が前方へ扇形を作る。
「北原機、胸部損傷。大破。」
少し間をおいてCPから報告が入る。今の攻撃で1機仕留めたようだが、
油断できない。なぜなら相手はこの大隊の中でもトップの実力を持つ部
隊なのだ。誘導弾を撃ち切った機体はすでにコンテナを投棄して身軽に
なっている。手際のよさは流石としか言いようがない。
(この部隊を私が率いることが出来るのだろうか…?)
その一瞬が仇となった。突如警報が鳴る。私めがけて数十発の誘導弾が
接近している。
(くっ、なんで気が付けなかった…!?)
緊急回避に移る。ほとんどは回避したか撃ち落したが数発被弾してしま
う。損害は…多目的追加装甲に被弾しただけだ。私が攻撃を受けていた
その間、味方機は誘導弾の発射位置を特定し即座に攻撃をかけていた。
「ピクシー2、フォックス3。ピクシー3は私の援護を。ピクシー4は隊長
のカバーを頼む。」
七瀬中尉と三木中尉らが突撃砲を撃ちながらビルの間を縫うように進ん
でゆく。敵チームの機体を追撃しているよう
だ。それとは逆にピクシー4の剣中尉が此方に向かってくる。
「大尉、大丈夫でしょうか?」
剣中尉の問いかけに大丈夫だと答える。
私が全ての損害を確認したとき、敵チーム機を5機撃墜したとの報告が
入った。どうやら展開していた制圧支援の護衛として強襲掃討が付いて
いたようだ。
(二人だけでこれほどとは…。私が出る幕はなさそうだな…。)
そう思っていた時だった。
「中本機、胸部被弾。大破。高山機、胸部損傷。大破。」
と味方が落された通信が入ってくる。
「渡辺大尉、後は頼みました…。」
その通信を最後に、後方に展開していた小隊のマーカーが消えた。
「大尉、どうしましょうか?」
「これより後方の敵機を落しに行く。藤高中尉が最後に敵機をマーキン
グしてくれたおかげで大まかな位置は把握できている。この機を逃すわ
けには行かないだろう。」
そう、藤高中尉らを落した敵機は敵指揮官機なのだ。ここで指揮官機を
落すことができれば此方のチームの勝利となる。
「隊長、一つよろしいでしょうか?」と七瀬中尉が質問をしてくる。
「どうした?」
「追撃をかけるにしても敵機の正確な位置までは把握していません。無
闇に追撃をかけるのは危険ではないでしょうか?」
確かに中尉が言いたいことはよくわかる。
この部隊の不知火はステルス性を高くするための電波吸収塗料が使用さ
れている。そのため、このような演習では位置の特定が困難だ。
「敵機は此方の陣地だった市街地にいる。開けた場所に残っているので
囮と考えられる。恐らくは自分の周囲に僚機を配置して、待ち伏せてい
ると思われる。」
現在敵チームには位置を確認されていない機体が2機ほどいる。
この状況なら奇襲をかけてくる可能性がなくもない。そして相手が起伏
の激しい場所を取っているのであれば待ち伏せすることもできる。
「そうかもしれません。ほかの敵機はいまだ確認されていませんで…。
しかし、仮にそうだとしても潜伏している敵の位置が分からない以上は
迂闊に攻められないのではないでしょうか?」
どうも七瀬中尉は納得が出来ないようだ。
「おおよその推測は付いている。あのポイント付近には二つの大きなビ
ルがある。あの位置なら囮に向かう我々を十分に狙えると思う。」
「と言うことは…先にビルを占拠すると言うことですね?」
「その通りだ。しかしそれは貴様たちに任せる。私は指揮官機を狙う
ルートを進む。一方のビルを片付けた後は即座にもう一方のビルに向
かってくれ。」
三人がビルを制圧しやすくするためには相手の注意を逸らさなければな
らない。
「隊長一人で少佐のお相手をするつもりでしょうか?もしそうなのであ
れば私は反対です。どうしてもと言うのであればせめて2機編成を組んで
ください。」
戦術機の最小戦闘単位は2機編成だ。残存機が4機だけなのでこの場合は
2:2で組むのが最良だと思われる。しかし、私は編成を組もうとはしな
かった。もしもこの時2機編成で行動していたのなら戦況は大きく変わっ
ていたのかもしれない。
「七瀬中尉、反対する気持ちは分かるがここは私の腕を信じてほしい。
どうしても反対するのであれば上官として命令するしかないが…。」
命令は最終手段だ。私は基本、上下関係を気にする方ではない。
前の部隊でも命令をして強制することはなかった。
「・・・了解です。隊長の腕を信じることにします。しかし、言ったか
らには責任を取ってください。私たちの夕食が懸かっていますで…。」
何とか承諾してくれた七瀬中尉の口から聞き覚えのない事が告げられ
る。
「なんだと?それは聞いていないぞ。七瀬中尉、詳細を報告しろ。」
「はい。この演習が始まる前、第3中隊の隊員達と少し賭けをしていまして…。」
衝撃の事実だ。この戦いに私の楽しみ(食事)が賭けられているらい。
「何だと!?貴様ら、賭博が許されるとでも思っているのか?」
「あ、いえ…。これは公認と言うか…。演習時の決まりごとみたいなも
ので…。」郷に入って郷に従えとはこのことだ。
「全く、呆れて物も言えんな…。そうだとしたらなぜ私にその報告が来
ない?」
「それは…。」
網膜に映る七瀬中尉の目が泳ぐ。これは何か裏があるに違いない。それ
にほかに二人も黙り込んでいる。どうやらこの問題は隊全体に関わるこ
とのようなので話を切り替えることにする。
「まあいい。とにかく、先ほど話した通りに頼む。伏兵を早く片付けれ
ば片付けるほど私の負担も小さくなる。」
それに4:1で敵の指揮官機と戦うことが出来る。
「了解です。」
部下達からの返事が返ってきた。
「よし、作戦を開始する。」
私の掛け声とともに3機の不知火が陣地へと向かった。少し間をおいて私
も突入する。
3機はどうやらビルを目指しているらしい。となれば、私はそのビルに居
ると思われる敵の注意を引かねばならない。私は噴射跳躍で大きく跳
び、中央の通りを走り抜ける事にした。通り
をちょうど半分ほど進んだとき、私にレーザーが照射された。
これは突撃砲が相手に照準を点けるときに照射するものだ。
どうやら私の読みは当たっていたらしい。しかし私に向けて1発も銃弾が
放たれることはなかった。先行していた七瀬中尉らに敵機が落されたか
らだ。
「敵機を撃破しました。このまま次のビルに向かいます。」
間髪入れずに報告が入る。
「了解した。もう1機もこの調子で頼むぞ。1機たりとも欠けるな!!」
「了解です。隊長の方こそ落されないでください。」
「なんだと?私がそちらよりも先に落とされると言うのか?良いだろ
う、ならば先に落された方には何か罰でも与えよう。」
「罰ですか…。了解しました。演習が終わったときが楽しみですね。」
完全に私が落されると思っているらしい。なんだか腹が立ってきた。
「おいおい、私が落された場合はチームの負けなんだぞ?そうなったら
夕食が無くなるのではなかったかな?」
「うっ…。」
どうやらこの勝負は私の勝ちらしい。それ以上七瀬中尉は話しかけてはこなかった。
こんなやり取りをしているうちに、指揮官機が潜伏していると思われる
広場にたどり着いた。
目視で周囲を確認する。すると、元は大きなビルであっただろう残骸に
紛れて1機の不知火が隠れているのを発見した。それもあからさまに見
つけてくれと言わんばかりの偽装だ。怪しい
とは思ったものの見つけたからには攻撃を仕掛けるしかない。
私はトリガーを引いた。
此方の八方に気がついた敵機は回避行動に移った。そしてそのまま応射
してくる。こちらも回避しながら攻撃を続ける。そして相手との距離を
詰めた時、私は敵機の異変に気がついた。
朝倉少佐は迎撃後衛装備だ。しかし今対峙している相手は強襲掃討の装
備をしている。
(まさかこっちは本当に囮なのか!?)
そう思った矢先、七瀬中尉から通信が入る。
「隊長、現在敵と交戦を開始しました。しかし…。」
どうやらあちらも戦闘に入ったようだ。私の予想が当たっているのであ
れば相手は恐らく…。
「…敵機は指揮官機です。奇襲を受け、三木中尉が落されました。」
やはり指揮官機だった。私の読みが完全に外れたらしい。さらに三木中
尉を落されてしまった。まだ数では優勢だが、どのくらい持つのかわか
らない。
「了解した。此方を片付け次第、そっちの援護に回る。可能であれば此
方に誘い込んでくれ。もっとも、撃墜できるのであればそれが一番だが
な。」
「了解しました。出来るだけそちらのほうへ誘導してみます。しかし…。」
七瀬中尉の顔が変わったような気がした。何か良からぬことを企んでい
る様な、そんな顔だ。
「…もしも指揮官機を落したら、罰は無しでお願いしますよ?」
「いいだろう、撃墜させるのはちょっと厳しいだろうから…相手の突撃
砲の残弾を全て使わせたらそれで免除だ。」
「了解です。今言ったこと、忘れないでくださいよ?」
そう言って交信を切られる。
「さて、どうしたものかな。」
先ほどから激しい弾幕を張ってくる敵機を確認する。どうやら4門の突撃
砲を2門ずつ交互に使い、此方には反撃をさせる隙を与えさせてはくれ
ないようだ。少しは反撃して見てもなかなか当たらない。
ついには残弾が残り僅かとなった。
(銃撃戦では向こうに分があるか…。それなら白兵戦でも仕掛けてみる
か。)
そう思った直後には突撃砲を投棄する。そしてビルを盾にし相手への接
近を試みる。だが敵もそう易々と接近を許してはくれなかった。
リロード中は相手を自分の懐に入れないよう常にもう一組の突撃砲から
攻撃を加えてくる。
(これでは接近できないな…。だからと言って突撃砲に持ち替える余裕
もない…どうするか。)
そう思ったときだった。突然コックピット内に警報が鳴り響く。
気がつけば七瀬中尉たちが交戦しているエリアまで来ていたのだ。
「隊長、なぜ此方に?」
驚いた表情の七瀬中尉が視界に映る。どうやら七瀬中尉もこっちに気が
ついていなかったようだ。
「すまない、攻撃を避けていたらどうやら此方のほうに誘導されたらし
い。」
それらしい言い訳をしておく。戦闘に集中しすぎて自分の場所が分から
なかったなどとは口が避けても言えない。
「了解です、とにかく無事で何よりでした。」
その時、追撃してきた敵機の姿が目に入る。相手はどうやら此方が味方
と合流したと見えたらしい。そのせいなのか動きか鈍くなったように見
える。
(やるなら今か!?)
私は長刀を構え、一気に敵機へと接近する。しかし此方に銃弾が放たれ
ることはなかった。敵機は長刀を構えて突撃してくる私と、その後ろで
突撃砲を構える七瀬中尉のどちらに攻撃を加えるのかで判断を鈍らせて
いたようだ。相手が後退し始めてももう遅い。十分に接近していた私の
長刀を喰らい撃墜判定を受けた。
「ふぅ、やっと1機仕留められたか。」
「隊長、まだ指揮官機が残っています。油断は禁物ですよ?」
「わかっている。それよりも…剣中尉はどうした?」
私は七瀬中尉一人しか居ないことに気がつく。
「剣中尉も落されました。後は私と隊長だけです。」
「そうか…。それで、指揮官機は今何所にいる?」
「はい、先ほどまでここから1ブロック離れたポイントで剣中尉と交戦
していました。恐らくは今いるブロックのどこかに潜伏しているのでは
ないでしょうか。」
そうかもしれないな。と言おうとした時だった。自機の後方に大きな振
動を捉えた。
「何だ!?」
「隊長、後方に敵機が現れました!!」
粉塵の中を良く見てみると見慣れた影が見える。すかさず七瀬中尉が突
撃砲で攻撃を加える。しかし銃弾は空しく粉塵を抜けただけだった。次
に敵機を捕らえたときには既に長刀を構え、此方に向かって噴射跳躍し
ていた。
「隊長、見てください。長刀を構えています。つまり突撃砲は撃ち切っ
たということですよね?」
七瀬中尉がこの期に及んでそんな事を言っている。しかしこの直後、彼
女の機体はあっさりと切り捨てられてしまい撃墜判定を喰らった。
(バカ者!!何をしているのだ…!!わたし一人になってしまったではない
か。)
などと思っても既に遅く、朝倉少佐の斬撃を避けるだけで精一杯だっ
た。ついには持っていた長刀まで弾き飛ばされる始末だ。
「渡辺大尉、おとなしく諦めたらどうだ?」
突如少佐の顔が視界に映る。
「すみませんが降参するわけには行きませんので。」
「このまま続けても結果は見えていると思うんだが?」
「だからと言って勝負を捨てるわけには行きません。」
「そうか…。では決めさせてもらう。」
そう言い終らないうちに再び急接近してきた。残された兵装と言えば短
刀しかない。抜く余裕すらないので回避行動にでる。少佐の袈裟斬りを
避けたと思ったそのとき、斬り終えた姿勢から突きが繰り出されるのを
見た。突き自体は寸止めであったが判定では胸部を貫通され撃墜。第4
中隊の敗北だ。さらば私の晩御飯。
演習終了後の反省会で朝倉少佐に今戦いでの相手チームの詳細を教えて
いただいた。藤高中尉たちの後衛部隊を強襲した際、マーカーを付けら
れたのはフェアリー4こと北原少尉だった。それもわざと付けられたとの
ことだ。案の定マーカーが付けられた機体を指揮官機だと思い込み、良
いようにやられてしまったと言うわけだ。
反省会の後、第1中隊は食事をしにPXへ、食事がない我々第4中隊は自室
へと戻った。

~兵舎士官用個室~

「おや、ちゃんとロックをしたはずなのだが…。」
自室へ入ろうとした朝倉少佐は異変に気がついた。演習前、自室を出た
ときにはしっかりとロックをかけていたはずなのだ。それが今は解除さ
れている。腰の拳銃に手をかけながらも自室へ入り明かりを点ける。す
ると部屋の椅子に一人の男が座っていた。そして此方に背を向けたまま
話しかけてきた。
「おや少佐、いまお帰りかね。仕事熱心で結構だ。」
「ええ、熱心にやらなければ命に関わりますから。それはそうと、今日
は一体何の用で来られたんですか?村上さん。」
朝倉少佐の問に村上と呼ばれた男は淡々と答える。
「ああ、そうだった。今日は少しばかり重要なお話があってね。」
「重要なお話ですか?帝国情報省の課長さんが来るほどのことなんです
か?」
「うむ、実は先日帝都戦略研究会なるものが出来たのだ。どのような活
動をしているのかと探りを入れたところ、若い青年将校たちが集まり色
々と活動しているようなのだ。」
どうやら厄介ごとの処理を頼みに来たようだ。尤も、この部隊は厄介ご
とを極秘裏に片付けるために情報省が作った部隊なのだが。
「活動ですか・・・?それはまた一体どのようなことをしているのでしょう
か?」
「うむ、確認されているだけでは対戦術機を想定した演習や歩兵部隊の
拠点突入など、どこの部隊でもやっていそうなことばかりだ。」
「青年将校たちが集まって各々の技術を高めているんですか。それの何
所が問題なのですか?」
ただ集まって訓練をしているだけではそれほど重大ではないはずだ。
情報省の課長が直接話しに来る理由が何かあるはずだ。
「これはまだ確定事項ではないのだが…。」
と言って顔を曇らせる村上課長。
「近いうちに彼らが武装蜂起するかもしれないのだ。」
「武装蜂起ですか!?」
「そうだ。どうも現政府の対米追随の政策に不満のある者が集まってい
るという噂があってだな。その噂と今回の研究会の活動を見ていくと実
際に武装蜂起するかもしれないのだ。」
明星作戦以降、国民の反米感情は日に日に高まっている。もちろん帝国
軍の兵士も例外ではない。
「なるほど、わかりました。で、我々はどのようにすればいいので
す?」
「諸君ら特別任務部隊には研究会へ参加してほしい。」
「内部工作をするということですか?」
「そうだ。潜入後、その者たちの動向を報告するとともに武装蜂起を起
こした際には内部から鎮圧してもらいたい。」
「了解しました。ところで、教導部隊のほうには何て言っておきましょ
うか?」
そう、この部隊の表向きのトップは富士教導部隊だ。
「此方の調べによると、君達の上官である秋山大佐もどうやら研究会に
引き込まれたそうでな。近く教導部隊所属の全部隊に研究会への協力及
び参加が指示されると思われる。」
「秋山のおやじさんも参加していたんですか?」
秋山大佐は後退し始めている白髪が目立つ頭髪と濃い眉毛、貫禄のある
太い声から密かにおやじさん呼ばれている。無論、本人はそのことを知
らない。また、秋山大佐の米国嫌いは周知の事実で、教導部隊の不知火
が露迷彩なのが気に入らないらしく技術部へ米国軍の迷彩にしろと文句
をつけたほどである。
実際の訓練でも敵兵を鬼畜米英呼ばわりしているくらいだ。ここまで米
国が嫌いな理由は分かってはいないが、噂では頭の中が先の世界戦時の
まま育てられたとか明星作戦のときに米軍に先祖代々の家を壊されたと
か色々ある。
「少佐、上官をおやじさんと呼ぶとは…。上官侮辱罪だぞ?」
「あ、失礼しました…いつもの癖で…。」
「まあとにかくだ。君達が動くのは正式な指示を出されてからで良い。
もしも指示が出ないようならばまた此方から声をかける。」
「了解です。」
「では、部下達への説明はよろしく頼むよ。」
立ち去ろうとする村上課長に少佐は以前からの疑問をぶつけた。
「はい。それはそうとお一つよろしいでしょうか?」
「何かね?」
「村上課長はどうやってロックを解除して私の部屋に?」
すると課長はおどけた様子で答えた。
「どうやったも何も、ドアが勝手に開いたから入ったまでだよ。」
そう言って足早に立ち去っていった。
(やれやれ、今回ばかりは厄介な任務だな。下手をすれば国家反逆
か…)
そう思いながら朝倉少佐は村上課長が出て行ったドアをぼんやりと眺め
ていた。ふと、村上課長が座っていた椅子を見てみると小さな紙袋が置
いてあった。
「何だこれは?」
恐る恐る中を見てみると、どこかの民芸品らしき木彫りの人形とメモ用
紙が入っていた。メモ用紙には「これは私の知人から頂いたものなのだ
が、特別に君に譲渡することにしよう。彼曰く、自身に訪れる災いを防
いでくれる効果があるそうだ。」と書いてある。
「ようは面倒だから押し付けたということか…。」
朝倉少佐はしぶしぶ木彫りの人形を棚の上に飾った。

後日、教導部隊内での隊長会議の際、秋山大佐から研究会への参加が告
げられた。我々教導部隊はその技術や経験を活かし、研究会に所属する
衛士たちの仮想敵機として協力するとのことだった。この時点では各部
隊長も普段の任務とさほど変わらないことだと思い、異議を唱える者は
いなかった。そして研究会の中心人物「沙霧尚哉」大尉と会い、彼本人
からこの研究会の目的を話された後も誰一人として疑問を持たなかっ
た。秋山大佐の日ごろの賜物である。
そして月日は流れ12月。ついにこの日が訪れることになる。




おまけ:登場人物まとめ1
所属
名前   ポジション  階級 コール


第1中隊(フェアリーズ)

朝倉涼介 :右翼迎撃後衛:少佐:フェアリー1
宮沢誠  :強襲掃討  :中尉:2
中条哲也 :強襲掃討  :中尉:3
北原修一 :強襲掃討  :少尉:4
相原陽子 :強襲掃討  :少尉:5
藤井聡  :制圧支援  :中尉:6
毛利謙一郎:制圧支援  :少尉:7
国木田南 :制圧支援  :少尉:8
竹崎洋一 :制圧支援  :少尉:9
朝倉悠  :CP     :大尉:フェアリー

第4中隊(ピクシーズ)
 
渡辺依々子:左翼迎撃後衛:大尉:ピクシー1
七瀬風香 :強襲掃討  :中尉:2
三木辰則 :強襲掃討  :中尉:3
剣良一  :強襲掃討  :中尉:4
藤高庄治 :制圧支援  :中尉:5
中本春樹 :制圧支援  :少尉:6
藤本良  :制圧支援  :少尉:7
高山愛美 :制圧支援  :少尉:8
佐々木翔 :制圧支援  :少尉:9
須藤   :CP     :少尉:ピクシー

教導部隊司令部
秋山源三郎:大佐

帝都情報省
村上康夫:外務一課







[11062] 帝国の影に生きる者
Name: 帝国軍衛士◆5ee7ce7e ID:79bfbdb7
Date: 2010/12/05 23:36
12.4 都内某所
「同志諸君、ついに我らは決起の時を迎えた。」
狭い室内に凛とした声が響く。
「長期にわたり煌武院殿下を蔑ろにし、この国を蝕んできた逆賊共を粛清する。」

帝都某所、沙霧大尉の下クーデターの中枢を担う部隊の隊長が一室へ集められていた。
「・・・諸君らの手で、この国を本来のあるべき姿に戻すのだ。」

この一言を最後にその場に居た者達は自らの役目を果たすべく席を立った。

12・4-21:00 首相官邸
「榊首相、お勤めご苦労様です。」

「二人だけのときは堅苦しいのは無しだ、戸田君。」

首相官邸の一室で二人の男が会話をしている。一人は戸田と呼ばれた中年の官邸警備の隊長。
もう一人はこの国の現内閣総理大臣。歳の近い二人は昔からの友人の様に世間話をしていた。
「ああ、そうでしたな是親殿。」

「君と二人だけで話すときくらいは腹を割って話したいものだ。お偉い方と話をするとどうにも疲れてしまってしょうがない。」

榊首相はひどく憔悴した様子で言葉を漏らした。

「あなただって十分偉い方ですよ。国連の方が来ていましたが…何かあったんですか?」

「ああ、詳しくは言えないが国連と帝国が主体の大規模な作戦を予定している。」

「成る程・・・。帝国が絡んでくるとなれば甲21号目標…佐渡島を…?」

「それは言えないが…今年はクリスマスに最高のプレゼントを用意できそうだ。」

「クリスマスですか…。そういえばプレゼントをまだ用意していませんでしたな」

「戸田君、それでは子供に嫌われてしまうぞ?」

「えぇ、全くです。最近は何かと気難しい年頃ですよ。」

「だがそれぐらいの頃が一番かわいいものだよ。わしの娘も昔は素直だったが…。」

「そういえば娘さんがおられましたね。今はどちらに?」

「陸軍を志願していたのだがな。わしが徴兵を免除しようとしたら国連へ行ってしまった。」

「そうですか…。娘さんも貴方に似てしまったんですね。」

「本来ならば喜ばしいことなのだがな。」

「私の娘も…今は初等教育ですがいつかは訓練校に行かねばならない時が来てしまいますね…。」

「うむ、それは今を生きる子供達全てに課せられた義務なのだ。だからこそ我々がそのような世界にならないように戦わなければならない。
本来ならば若い者達よりも我々が先立って戦場へ行かねばならないと言うのに…。」

そう言って榊首相は目を閉じた。

12・4-23:45 帝国陸軍練馬基地

「こちらエコー1、所定の位置に付きました。」

「こちらブラボー1、何時でも突入可能です。」

帝国軍練馬駐屯地の管制室に通信が入る。

「CPより各リーダー、作戦開始まで所定の位置で待機せよ。繰り返す、所定の位置で待機せよ。」

つい先ほどまで帝国陸軍の基地だった練馬駐屯地は沙霧大尉率いる戦略研究会の兵士達によって制圧され、
その拠点となっていた。尤も基地所属の兵士のほとんどが決起に参加したために大きな抵抗も無く彼らの手に落ちた。
その制圧されたばかりの管制室は迫り来る決起の時を今迎えようとしていた。

「諸君、ついに時は満ちた。この日を持って帝国は生まれ変わる。我らが進むは血塗られた道。歴史が我らをどう記そうとも知る余地は無い。だがしかし、帝国が新たな道を歩むという事実は変わらぬのだ!!」

沙霧大尉の一言にその場に居た誰もが思った。自分達でこの国を正すことが出来るのだと…。

同時刻、富士駐屯地、フェアリーズ兵舎にて

「これより我が基地は第2戦闘態勢で待機する。各部隊は実弾への換装を済ませておけ!!」

ハンガー内に秋山大佐の声が響く。通常の部隊では対処しきれない敵対勢力が現れたとき、または緊急の要請が
あったときには教導部隊が赴き対処する手筈となっている。普段から反米感情を抑え切れていない秋山大佐は自らの
出撃のときを待ちきれない様子だ。

「まったく、秋山のおやじさんも今日は気合が入っているな…。」

半ば呆れ気味に朝倉少佐は言葉を漏らした。

「隊長、今の言葉、おやじさんに聞かれると後でどやされますよ?」

梶原大尉がいつものノリで隊長を茶化している。今、宿舎の一室には各中隊長とその副官が集められている。
これからの作戦についてのブリーフィングをしているはず…だったのだが…。

「大尉も言っちゃっているじゃないですか、それでは大尉も同罪なのでは?」

「大体大尉も普段は秋山大佐の悪口を…。」

「何だと!?三浦中尉、いつ俺がそんな事を言った!!」

などと言ういつもの口論になってしまう。尤も、私の優秀な副官殿曰く実戦前のリラックス何だとか。
このままでは収拾が付かないと判断したのか朝倉少佐が話を戻す。

「お前ら、じゃれ合うのはブリーフィングが終わってからにしろ。どうしても我慢が出来ないのなら外でやって
貰おうか。」
そのまじめな一言で室内に静寂が訪れる。
「さて、本題に入らせてもらう。戦略研究会の連中は明日、12.5に日付が変わるのを合図に首相官邸、国会議事堂、並びに各軍事基地を襲撃、制圧する手はずとなっている。その後、帝都守備連隊は帝都を制圧した後に煌武院殿下の身柄の確保…。と言うシナリオらしい。まあ、全てが順調に進めばの話だがな。」

朝倉少佐がやれやれと言った表情で話を続ける。

「当然、時間の経過と共に鎮圧部隊が派遣されることになるだろう。また、在日国連軍や米国軍の介入も予想されている。
もちろん、それらの勢力との交戦は避けられないと思われる。」

狭い一室が少しざわめいた。

「そこでだ。今作戦において、我が隊は二つの指令が降りている。一つ目は戦略研究会から…。
『貴官等ノ部隊ハ、現状ヲ維持シ待機サレタシ。尚、障害ノ排除ノ為、常ニ出撃可能ナ状態ヲ維持セヨ』
との事だ。まあ、こっちの指令に従うつもりなど初めからないんだがな…。そして二つ目の指令だが…これは我々のトップ
からの指令だ。内容を見る限り…情報省もある程度把握していたんだろうと推測される。」

「と言うことは…決起が起きたときの指示ですか?」
と梶原大尉が質問した。
「そういうことだ。決起が起きた際、我々は二つのことを同時進行しなければならない。一つ目が決起を絶対に成功させないようにすること。二つ目が、決起をしているフリをして密かに決起部隊を無力化すること。その際、人的損害は最小限に抑えること。…全く、うちのお偉いさん方は難しいことを簡単に言ってくれる…。」

「少佐、つまりは鎮圧部隊と戦いながら気付かれない様に決起部隊に危害を加えろ…と言うことなのでしょうか?」

「簡単に言えばそう言うことだな。ただし、『どちらの勢力にも死人をださないように』だ。まあ、日頃から真面目に訓練を受けている貴様等なら、戦術機を最小限の損害で無力化することなど簡単なことだろうがな。」

戦術機中の衛士を傷つけずに戦術機を無力化するのは簡単だ。頭部のセンサー類、主腕、主脚などを36mmで突っつけば何も
出来なくなるだろう。ただ、それを実行するのが難しい。

「さて、今話しておくことはこのくらいだろう。我々が出撃するのはまだ先になると思われるが、各自自分達のハンガーにて待機すること。また出撃前にも一度ブリーフィングを行う。各中隊長は部下達に先ほどの話をしておくこと。以上、解散!!」

そうして私は部下達にどのように話すか考え、頭を抱えながら部屋を出たのであった。

12.5-00:10 首相官邸
執務を終え、つかの間の休息を取っていた榊首相の耳に突如聞きなれない音が飛び込んできた。それとほぼ同時に地面が
揺れるのも感じた。すぐさま近くの電話が鳴る。受話器を耳に当てると戸田少佐の声が耳に入った。

「首相、緊急事態です。そちらに何名か部下を送りました。彼等の指示に従い、退避願います。」

警備隊長はひどく慌てた様子で用件だけを伝える。
「戸田君、一体どうしたと言うのかね?」

「詳細はまだ分かっておりませんが、何者かによる襲撃です。正門を爆破され、敷地内へ侵入を許してしまいました。
現在、警備の者が応戦中しております。」

何者かによる襲撃…?第4計画に反対する勢力だろうか…。
そんな考えが脳裏を横切る。

「首相、ご無事でしたか!?」

突如掛けられた声にふと入り口の方を見ると肩に自動小銃を提げた兵士が二人居た。

「首相を安全な場所まで誘導せよとの命令を受けました。我々について来て下さい。」

「うむ、宜しく頼むぞ。」

首相は警護の兵と共に部屋を後にした。銃声を爆発音が鳴り響く中、外へ出るための最後の廊下に差し掛かった時だった。
突如壁を突き破って目の前に機械化歩兵が現れた。
「武器を捨ておとなしく国賊、榊を渡してもらおう。抵抗するならば射殺する。」

そう言うと装甲歩兵は腕部に内蔵された銃口を首相等に向けた。

「何をふざけたことを!逆賊がっ!!」

言い切る前に警護の兵が小銃を発砲する。しかし小銃程度の火力では装甲歩兵に有効打を与えることができなかった。それに対して相手の反撃は易々と警護の兵を貫いた。

「さあ、我々の下に来てもらおうか。無論、抵抗するのであればこの場で射殺する。」

榊首相は装甲歩兵に従い外へ出た。外に出た首相が見たものは、日常とはかけ離れた物だった。無残な姿で横たわる警護の兵たち。破壊され、今も煙を上げている装甲車両。門前にたたずむ戦術機。どれもこれもこの場に有ってはならないものばかりだった。ふと、近くの残骸に目をやるとそこにはつい先ほど自分へ警護の兵を送り出し、自らも指揮車両で迎え撃っていた男の変わり果てた姿を見つけた。

(戸田君、すまぬ。私も直ぐそちらへ行くことになるだろう)

先に逝ってしまったかつての友に最後の別れを告げた時、その男は現れた。眼鏡をかけた将校風の男が口を開いた。

「私は帝都守備第1戦術機甲連隊所属の沙霧尚哉。本日00:33時を持ち榊是親、この国の為・・・我等の大義の為に貴様を処断致す。」

そう言うと沙霧と名乗った将校は軍刀を抜き放った。闇夜の中、周囲の炎の光を反射させている刃は人を一人殺すには十分過ぎる。

「沙霧君と言ったね。君達の目的は・・・大義とは一体何なのかね?」
首相の問に刀を構えたまま沙霧大尉は答えた。

「殿下を蔑ろにし、この国を腐らせていく貴様等のような政治家を粛清し、腐敗の根源を全て取り除く。それが我々の掲げた大義である。」

首相は周りを見渡した。周りに立つ兵士たちは皆真っ直ぐな目でこちらを見つめている。その目は事の行く末を…さらには自分達の未来までをも見通しているかのようだった。

(第4計画の結末と娘の成長をこの目で見れぬのは無念だが、今を生きる若い者達に交替するのも悪くないのかもな)

そう心に決めると首相はその場にいる者全員に聞こえる声で応えた。

「よかろう、我々のような古い人間はここで世代交代をすると
しよう。貴官等の覚悟、確かに受け取った。その手で私を斬るが良い。」

「・・・このような時代、このような立場でなければどれほど良かったものか…。」
次の瞬間、榊首相の体を刀が貫いた。薄れて意識の中、榊首相に聞こえてきたのは沙霧大尉の首相に向けた言葉だった。

「後のことは任せるが良い。我等も大義を成し遂げた後、直ぐに参る。」

遅筆ながら続く予定です。
相変わらずの乱文、失礼しました。













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